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( ´ω`)枯れて('A`)苦悩し虹を探して生き抜くようです:3
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:29:46.20 ID:t/LjLsSR0
- -3- Cool
扉の奥は、やはりと言うべきか。
同じような。いや、全く同じ部屋だった。
( ^ω^)「ここまで来るとこの部屋に愛着すら沸いてくるお」
从 ゚∀从「部屋フェチ?」
( ^ω^)「その性癖はありえないお」
僕は既に定位置となった部屋の中心にあるソファに勢いよく座る。
( ^ω^)「君の仕事は僕をここに連れてくることかお?」
从 ゚∀从「いや」
( ^ω^)「違うのかお?」
从 ゚∀从「間違っては無いが、正解でもないな」
彼女の曖昧な返事に眉を潜める。
自然と視線を逸らし、そっぽを向いている。ということはそれ以上はなす気は無いのだろう。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:30:35.71 ID:t/LjLsSR0
- 要するに、彼女の目的は別にあるということだ。
( ^ω^)「…………」
从 ゚∀从「聞きたいか?」
( ^ω^)「いや、僕も質問には答えて無いから言わなくていいお」
ハインはほんの少しだけ含み笑いをし、僕の座るソファと対になっている向かいのソファに座った。
从 ゚∀从「夢ってあるか?」
突然の質問だ。それにあまりに突拍子で返す言葉が浮かばない。
夢があるか。僕に。
( ^ω^)「あったお」
从 ゚∀从「……今は違うと、そう言いたいのか?」
( ^ω^)「今もあるお」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:31:17.31 ID:t/LjLsSR0
- 僕は立ち上がり、ハインを見据える。
( ^ω^)「虹を見ることだお」
僕の言葉にハインが顔を俯かせる。元々長い前髪が残り半分に掛かり、顔が見えなくなっている。
そこで気付く。何やらハインの様子がおかしい。
表立ってのことではないが、絡めた指を組み直したり、足踏みをしたりと落ち着かないのだ。
( ^ω^)「どうしたお?」
从 ゚∀从「……いや、何。歯がゆくてな」
僕がもう一度ソファに座り込むと、同時にハインがゆっくりと立ち上がる。
从 ゚∀从「俺はもう嫌なんだ」
バツの悪そうに顔を一度しかめて、また口を開く。
从 ゚∀从「頼む。帰ってくれないか?」
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:33:10.58 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「…………」
从 ゚∀从「勝手な言い分だってのは分かってる」
( ^ω^)「……つまり、すぐそこに虹があるってことだお?」
僕の言葉にハインが露骨に反応する。
つまり、正解だ。
( ^ω^)「僕だって、何のも覚悟無しで来たわけじゃないお」
ハインは脱力するように、もう一度ソファに座る。
( ^ω^)「会いたい人が居るんだお」
ふいに静寂が訪れる。互いに一言も発することなく、視線も逸らさない。
ハインが何を考えているのかは分からないが、それは向こうも同じことだろう。
互いを理解するなんてことは不可能だ。
( ^ω^)「……少し、昔の話だお」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:33:58.63 ID:t/LjLsSR0
- 僕は背もたれにゆっくりと身を任せ、ソファに身を委ねる。
( ^ω^)「僕はツンデレと出会ったお」
( ^ω^)「彼女はとても強気で、でもたまに凄く優しい女の子だったお」
僕の言葉に、ハインが頷く。
どうやら聞き手に回ってくれているようで、僕も話しやすい。
( ^ω^)「学校で一人だった僕に、救いの手を差し伸べてくれたんだお」
从 ゚∀从「……いい娘だな」
(*^ω^)「しかも可愛いんだお」
何がおかしかったのか、ハインが少し苦笑する。
(;^ω^)「お? 何も面白いこと言って無いお」
从 ゚∀从「何。急に元気になったと思ってな」
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:34:36.76 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「そうかお?」
そうかもしれない。彼女のことを口にすれば、いつだって元気が出る。
彼女は僕にとってかけがえのない存在で。僕とツンは二人で一つだ。
( ^ω^)「懐かしいお。僕は勇気を出して、告白したんだお」
从 ゚∀从「へぇ。それで、どうだったんだ?」
一瞬の間を空け、僕は言う。
(*^ω^)「それが、OKだお。流石にこれは予想外だったお」
从 ゚∀从「やるじゃないか!」
僕の思い出を通して言葉を紡ぎ、話を弾ませる。ハインも楽しそうに話を聞いてくれた。
( ^ω^)「あれ」
ハインが消えた。
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:35:50.23 ID:t/LjLsSR0
- 目の前にいたはずなのに、いない。
どこにもいない。
( ^ω^)「……お?」
瞬きの一瞬で、彼女は何処かへと消えてしまった。
そして僕はまた、この広い部屋に一人、取り残されてしまったのだ。
( ^ω^)「……何だお。急に」
いなくなるなら、一言くらい欲しかった。
もっと話そうと思っていたのに。大事なのはここからなのに。
( ^ω^)「仕方ないお。きっと仕事が忙しいんだお」
来訪者は僕だけじゃない。だから、使用人に休む暇などないのだろう。
( ^ω^)「お仕事頑張ってくれお、ハイン。僕も頑張って虹を見つけるお」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:36:27.00 ID:t/LjLsSR0
- 結局のところ、僕の耳にハインの言葉は一つとして入っていなかったのかもしれない。
ただ自分の寂しさを紛らわすためだけ、話相手になってもらいたかったのだ。
( ^ω^)「これから僕はどうなるんだお?」
答える相手のいない問いかけは、虚しく木霊して消えた。
急に痛みだす左腕を押さえながら、僕はまた立ち上がり見上げる。
天井には大きなシャンデリア。そして切れ掛かった電球。
( ^ω^)「ハイン、この部屋の電気も切れそうだお」
だから戻って来てくれ、そう言おうとして口を噤んだ。
彼女の顔を隠していた前髪が途端に恨めしくなる。
そうだ。一度も彼女の顔を全部見ることが出来なかった。
( ^ω^)「僕は虹に近づいているのかお?」
返事は返ってこない。
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:37:53.00 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「……虹とは、願者の願いを叶えるものだ」
何故だか、先輩の言葉が浮かんだ。
いや、何か違うな。もう少し長かった。記憶が曖昧で断片的な台詞になっている。
独り言も多くなった気がする。きっと、孤独に弱いんだ。僕。
( ^ω^)「……孤独に強い奴なんか、いないお」
特に何か考えていたわけでもなく、ただ振り返っただけだった。
しかし、目前には先ほどまであったものがない。
扉が、ない。
(;^ω^)「どうするお」
閉まっているのではなく、ないのだ。
ハインがここから消えたときに一緒に無くなってしまったのだろうか。
残しておいてくれればいいのに。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:39:02.75 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「ツンに会いたいお」
さっきから気になっていた。
向こうからのアクションを待っていたのだが、何もしてこない。
僕の後に誰かがいる。
( ^ω^)「……誰だお」
僕は振り返ることなく、ソイツに向けて言葉を放つ。
ゆっくりと右手をポケットに突っ込み、護身用のナイフが……ない。
まさか、落としたのか? どこで。
「内藤……?」
その声は。
川 ゚ ー゚)「内藤じゃないか」
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:41:20.77 ID:t/LjLsSR0
- (;^ω^)「クー先輩?」
内心、ガッカリした。などとは口が裂けてもいない。
何を期待していたんだろう。少なくとも、感動の再会、みたいな場面とはかけ離れていたじゃないか。
それよりも、クー先輩がここにいるというこの事実。
(;^ω^)「何で先輩がここに……」
川 ゚ ー゚)「決まっているだろう、虹を見に来たんだ」
(;^ω^)「おかしいですお。先輩が一番、虹について知っていた筈なのに」
そこまで言いかけて、自分の言っていることが何かおかしいことに気がついた。
一番知っているからこそ、来たのではないか。
川 ゚ ー゚)「知っているから、来たんだよ」
ほら、やっぱり。
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:42:06.54 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「先輩は、まだ……」
川 ゚ ー゚)「仕方ないさ。私だって、一人の女だからな。人並みの恋心くらい抱くよ」
人並み、とは少し違うかもしれない。
そしてそれは僕にも言えることだ。
川 ゚ ー゚)「私はもう一度、ショボに会いたい」
先輩の声を聞いていると、記憶が少しずつ蘇ってきた。
そうだ、さっきの台詞もどうやら間違っていたらしい。
川 ゚ ー゚)「君はやはり、ツンか?」
その言葉に一瞬、躊躇った。
川 ゚ ー゚)「いいさ。私だって、君には申し訳ないと思いながらここに来たんだ」
( ^ω^)「そうですかお」
川 ゚ -゚)「……それにしても何だ、ここは」
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:42:37.13 ID:t/LjLsSR0
- ( ^ω^)「虹の城って言うらしいですお」
僕の言葉に先輩が眉を顰める。
川 ゚ -゚)「虹の城?」
やはり知らなかったようだ。
僕も今まで、先輩の口からその言葉を聞いたことがなかった。
川 ゚ -゚)「ここに名前があったのか。しかし安易な名前だな」
( ^ω^)「僕はここが城だということに驚きましたお。まぁ確かに広いですお」
川 ゚ -゚)「いや、どう見ても城だろう。見た目とか、今にも吸血鬼とか出てきそうだったじゃないか」
僕は先輩の言葉に耳を疑った。
見た目。先輩は確かにそう言ったのだ。
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:43:29.40 ID:t/LjLsSR0
- (;^ω^)「見た目って、どういうことですかお?」
川 ゚ -゚)「外壁のことさ」
(;^ω^)「いや、そうじゃないですお!」
僕の言いたいことはそんなことじゃない。
きっと先輩は、この城の外側から“来賓”として来たんだ。何らかの方法で。
( ^ω^)「正門玄関から、入ってこれたのですかお?」
ふいに先輩の視線が泳ぐ。僕はそれを見逃さなかった。
( ^ω^)「そういえば先輩は、一度も、この城の所在地を話してくれませんでしたお」
川 ゚ -゚)「……そうだな。あえて話さなかった」
( ^ω^)「知ってたのですかお?」
川 ゚ -゚)「あぁ、知っていたよ」
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:44:19.27 ID:t/LjLsSR0
- 先輩の目的はショボン先輩だ。
ショボン先輩も、虹についてよく調べていたことを覚えている。
それこそ、先輩以上にだ。
逆に言えば、ショボン先輩が虹について調べていたからこそ、
先輩も必然的に知ることになったのだろう。先輩の知識は全て、ショボン先輩から譲り受けたものだ。
突然、ショボン先輩が姿を消したのだ。
川 ゚ -゚)「虹が複数存在する可能性もあれば、限りあるものなのかもしれない」
( ^ω^)「だから、教えてくれなかったのかお」
川 ゚ -゚)「ああ。第一な」
先輩は僕とすれ違うようにして壁に向かい歩き出す。
そして完全に僕を通り過ぎ、距離を置いたところで口を開いた。
川 ゚ ー゚)「君に教えたところでメリットがない」
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:45:16.14 ID:t/LjLsSR0
- それだけのことだ。
確かに、自分の探しているものの場所を他人に教えたところでメリットなど無い。
それどころか、横取りされるかもしれなというデメリットがついてくる。
分かってはいるんだ。頭では。
( ^ω^)「先輩……僕は」
それでも信頼していた先輩だからこそ、自分勝手な憎しみを抱いてしまっている。
エゴだというのは間違いない。
でも、貴方の笑顔が憎い。
川 ゚ ー゚)「それでは私はもう行くよ。来賓には特権が与えられているんでな」
そう言うとクーは指を伸ばし突き出した手を水平に、振り払うような動作をする。
もう驚きもしない。一度見ているからだろうか。
扉が出現した。
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:45:52.54 ID:t/LjLsSR0
- 川 ゚ ー゚)「無力で無気力な君はいつだって追い求めるだけだ」
川 ゚ ー゚)「私にはある、手に入れるだけの知識が」
川 ゚ ー゚)「君にはない、這いつくばるだけの思いが」
「出来れば君とはもう、会いたくなかった」
彼女の最後の言葉はあまりに小さく、僕には聞き取ることが出来なかった。
それにどうせ、聞く気もなかった。
今はただ、どうしようもない虚しさに包まれながら、衝動的な感情に身を任せているしかないのだ。
椅子が飛び、花瓶が割れ、ソファが倒れる。
こうしていないと、気が狂ってしまう。
そうだ。僕はツンが好きだった。
「――――ッ」
そして貴方も、好きだった。