タヌキ学園は、全国からタヌキの才能がある少年少女を集めて、立派なタヌキに育て上げる学校だ。
まれにおっさんも連れてこられるが、それはタヌキのミスではなく、
力が弱いか、才能がなく一般社会にいても問題ないものが、
ふとした拍子に才能の片鱗を見せ、再び候補に挙がっただけである。
そういうおっさんのなかに、ブーンもいた。
そして、ブーンと同年代の男がもう一人。
('A`)「俺、いつまで処女でいればいんだろ……。鬱だ氏のう」
彼が自分の部屋で首を吊ろうとしたとき、才能が開花した。
ドクオが首に縄をかけた状態で椅子を倒しても、死ぬことができないのだ。
どんなに丈夫な縄を使おうとも、体重がかかった瞬間に切れてしまった。
('A`)「何故だ。俺は、首吊りすらまともにできない男なのか?」
頭を抱えるドクオの横で着信音が鳴り始めた。
('A`)「カーチャンか? ちくしょう。俺はどこまでついてないんだ」
だが、携帯から聞こえてきたのは、野太いおっさんの声だった。
('A`)「あ、あんただれだ?」
「私はタヌキだ。村長をしている。どうだ、お前の人生を俺に預けてみないか?」
わけもわからずに頷くと、玄関のドアが小さく軋み、
ヒゲを蓄えたいかついじじぃが入ってきた。
( ´┏_⊃┓`)「おいすー」
そうしてドクオはじじぃに連れられ、長野の山奥までやってきたのだった。
('A`)「それで、俺はこれからなにをすればいいんだ?」
( ´┏_⊃┓`)「もう一人、お前と同年代の男がやってくる。
そいつと共に学校で学んで、立派なタヌキになって欲しい」
('A`)「タヌキだ?」
( ´┏_⊃┓`)「ああ。ここに来るまでに私が見せたさまざまな力があっただろう?
お前も勉強さえすれば、使えるようになるんだ」
('A`)「へえ。俺にも才能があったんだな」
( ´┏_⊃┓`)「誰にでも才能はあるさ。おっと。もう一人が来たようだぞ」
女の声の後、変な語尾の男の声が聞こえ、村長が部屋を出て行った。
五分後に、村長が戻ってくる。
( ´┏_⊃┓`)「今日はゆっくり休むといい。明日から忙しくなるぞ」
('A`)「学校か。みんな俺より年下なんだろ?」
( ´┏_⊃┓`)「そうだな。お前たちは力が開花するのが遅かったんだ。
他の生徒は七歳ってところだろう。この村の子供たちも入れてな」
('A`)「この村の子供ってことは、俺たちよりも力について知ってるんだな」
( ´┏_⊃┓`)「もちろんだ。小さいころから力に接しているからな。
だが、能力を使える子供は稀だぞ。明日、学校へ行って確かめてみろ」
( ^ω^)「ここが学校かお」
ξ゚听)「そうよ。汚い校舎だけどね。さ、席についてね。ドクオも」
('A`)「りょーかい」
( ´ー`)「うぇwwなんかじじぃがいんぞwwwきめぇwwww」
( ゚д゚ )「黙ってろ。やあ」
( ^ω^)「おいすー」
( ゚д゚ )「僕はコッチミンナ」
('A`)「ぷっ」
( ゚д゚ )「僕の名前がおかしいかい? 君は引きこもりのロリコンだな。
ブーン君。付き合う友達は選んだほうがいい。なんなら、僕が選んであげようか?」
('A`)「……」
( ^ω^)「大丈夫だお。付き合う友達くらい、自分で選べるお」
(*'A`)「ブーン。や ら な い か」
(;^ω^)「うほっwwwねーよwww」
( ゚д゚ )「フン。勝手にすれば良いさ」
ξ゚听)ξ「ほらほらー。席についてね。授業始めるから」
ツンがそれぞれの生徒に二枚ずつ葉っぱを配った。
ξ゚听)ξ「力を使うには、それが必要なの。安物だと使い捨てだから、注意が必要ね」
( ゚д゚ )「ふん。こんな安物を使えるか。僕は自前のを使わせてもらう」
ξ゚听)ξ「はいはい。勝手なことをするなら、出てってもらうわよ」
('A`)「だせぇwwww」
( ゚д゚ )「ふん。ロリコンは黙ってろ」
(#'A`)「ああ?」
いまにも互いを絞め殺しそうな目で睨みあうドクオとコッチミンナを抑えたのは、大きな音だった。
全員が音のした方向を見ると、ツンが手にボウガンをもって立っていた。
ξ゚听)ξ「こんなふうに、ある物をまったく別のものに変えるのが一般的な使い方ね。
さあ、喧嘩してないで、自分の靴下を脱いで」
生徒が一斉に靴を脱ぎ出した。
ξ゚听)ξ「そしたら葉っぱを持って、大根をイメージして」
('A`)「だいこんだいこんだいこんだいこん」
( ´ー`)「ぷっ」
('A`)「んだよてめえ。喧嘩売ってんのか?」
ξ゚听)ξ「それでいいんだよ。はじめは、声に出すのが大事だからね。
慣れてくれば、声を出さないでも変化させることができるようになるから」
クラス中の生徒全員が大根と連呼する。
ξ゚听)ξ「いいよ。そしたら、続けながら葉っぱを靴下の中に入れてみて」
( ^ω^)「だいこんだいこんっと。よし。靴下に入れるお」
ポン! と小気味よい音がして、ブーンの靴下がへにゃへにゃの大根らしきものに変わった。
(;^ω^)「ちょwww靴下なんだか大根なんだか、よくわからないものになっちゃったお」
ブーンが辺りを見回すと、燃え出した靴下に驚いて床に落とす生徒や、
ものすごい勢いで伸び続ける靴下に絡まって息も絶え絶えな生徒がいた。
ドクオの靴下からは陰毛らしきものが三本生えている。
ξ゚听)ξ「あーあー。落ち着いて。落ち着いて」
ツンが右手を消火器に、左手をカッターナイフに変化させて、生徒の間を駆け回る。
(;^ω^)「これはひどい」
('A`)「ばっか。俺なんて陰毛が生えてきたんだぞ? お前はまだ良いほうじゃねーか」
コッチミンナの靴下は、見た目はそのままだが硬度が増しているらしく、靴下で机を叩いている。
シラネーヨの靴下からは根が生え、歩いて窓から飛び出していった。
('A`)「それにしても、変化だっけか? いくらでも悪用できそうだな」
そんなこんなで、騒がしい日々は瞬く間に過ぎ去っていった。
どの生徒も、暇さえあれば教科書を読み、コツを覚えていった。
('A`)「俺は変化より、増殖のほうが得意みたいだな」
増殖は、その名のとおり、物を増やす力だ。
ドクオの増やした靴下はどれも酷い匂いがしたが、変化と比べれば、上手なほうだ。
( ^ω^)「僕は変化が得意だおっ。ほら!」
ブーンが葉っぱを頭に乗せると、髪の毛が大蛇に変化した。
('A`)「うぇwwwwきめぇwwwww」
(;^ω^)「メドゥーサだおwwwでも制御ができないから、顔を噛まれるお! 痛いお!」
('A`)「血が出てんぞwwwはやく戻せwww」
(;゚ω゚)「アー! もう葉っぱがないお!」
ξ゚听)ξ「なにしてんの? あんたたち」
('A`)「よう、ツン。ブーンを助けてくれよ」
ツンが面倒くさそうに、葉っぱを蛇に押しつけた。
蛇が消えるとともに、髪の毛も消えた。
(;^ω^)「ちょww僕の髪の毛www」
ξ゚听)ξ「罰よ。しばらくそのままでいなさい」
楽しい学校生活だった。いまだにコッチミンナとシラネーヨは嫌なやつだったが、
どちらもブーンより才能がなかったので、たいして気にならなかった。
(´・ω・`)「いいか。何度も言うが、この授業では馬鹿みたいに葉っぱは使わん。
己の妄想力を使い、物を具現化させるのだ」
('A`)「この授業が一番つまんねーんだよな」
(;^ω^)「しっ。聞こえ」
(´・ω・`)「ドクオ君。君は、貞子先生の授業だけ点数がいいらしいな。
だが、貞子先生の教える増殖と我輩の具現はまったくの別物だ。
しかと集中することをお勧めするが」
('A`)「うい。以後気をつけまーす」
クラスに笑い声が響いたが、それもショボンがクラスを見回すとすぐに収まった。
ショボンの脂ぎった長い髪と、蛇のようないやらしい瞳は、どの生徒も怖がっていた。
少なくとも、コッチミンナとシラネーヨ以外には。
(´・ω・`)「心を落ち着けろ。右手の上に、米粒を思い浮かべるのだ」
('A`)「うーん。うーん」
( ^ω^)「お。ちょっと見てお、ドクオ。これ、米粒じゃないかお?」
('A`)「うひゃひゃwwそりゃあお前、スズメのウンコじゃねーのwww」
( ^ω^)「きたねwww」
(´・ω・`)「ふむ。君たちは、真面目に授業をする気がないのかね?」
今まで教壇にいたと思っていたショボンが、知らぬ間に二人の背後に移動していた。
('A`)「だって具現しねーんだもんよ」
(´・ω・`)「黙らんか!」
ショボンの濁声がクラス中に響く。何人かの生徒が息をのんだ。
(´・ω・`)「君たちには、我輩の高尚な考えが理解できないようだな。罰則だ」
(;^ω^)「ちょ。僕は真面目に授業を」
(´・ω・`)「言い訳はよろしい。放課後、隣にある我輩の研究室にこい」
('A`)「はいはい、わかりましたよーだ」
(´・ω・`)「ふん。君たちにくらべ、コッチミンナ君は見事だ。
見たまえ、彼の右手を。見事に米粒が具現している」
コッチミンナが嬉しそうに右手を高く掲げた。
薄黄色の米粒が手のひらで光っている。
('A`)「不味そうじゃねーか。あんなもん、食えねーよ」
コッチミンナの顔が歪んだが、ドクオは気づかないように、自分の手のひらを見つめた。
薄暗い教室、濁った空気、不気味な雰囲気。
鳥肌が立つような狭い教室に、ボソボソとした声が響く。
川д川「今日は前回の延長で、鉛筆を五本に増やしてください。
ぴったし五本っていうのは、意外に難しいですよ」
二ヶ月ほど経つと、生徒はそれぞれ自分専用の葉っぱを持つようになる。
青や赤など色取り取りな葉っぱもあれば、ギザギザの葉っぱもある。
村にある葉っぱ屋でそれぞれ好き勝手に葉っぱを買うから、個性が分かれるのだ。
ブーンの葉っぱは、変化しやすいように作られた、柔らかい青い葉っぱで、
ドクオは増殖のしやすい硬めの白い葉っぱを買っていた。
('A`)「五本五本五本五本」
ドクオが呟きながら白い葉っぱを鉛筆に当てると、大きさはバラバラだが、見事に鉛筆が五本に増殖した。
( ^ω^)「おー。凄いお」
(*'A`)「まーな。ざっとこんなもんだ」
二人はそれぞれ得意分野が違うこともあって、ライバル関係にはならず、仲が深まっていった。つづく。