-VIP産小説保管庫-
( ´ω`)枯れて('A`)苦悩し虹を探して生き抜くようです:7
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 19:55:37.30 ID:ei2LhoLG0
- -7- Otoja
( ´_ゝ`)「ほう。君が使用人志望の子か」
(´<_` )「兄者、登場がいきなり過ぎて何もかもぶっ飛んでるぞ」
シャキンの説明を受けた後、直後に扉が現れ、二人の男が現れた。
様子から、二人も使用人なのだろうと思う。
その質問に一瞬考え、答えを探す。しかし選択肢は無かった。
( ´_ゝ`)「違うのか?」
そうだと言わなければ、シャキンはすぐに襲ってくるのだろう。
だから。
('A`)「……そうです」
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 19:56:48.89 ID:ei2LhoLG0
- そう言うしかなかった。
左足首辺りが、赤く滲んでいるのがよく分かる。
出血こそ止まってはいるものの、ロクに力も入らない。こんなにも、俺は弱かったのか。
(`・ω・´)「基本的なことは説明しましたので、後は一人で大丈夫だと思います」
シャキンの機嫌はあまりよくない。
そうだ、思えばずっとコイツは。
内藤がいたときも、俺と二人になった時も。そして今も。
ずっと不機嫌そうな顔で。今にも秘めた殺気をぶつけてきそうな。そんな不安定な状態だったんだ。
('A`)「ああ。まず俺はどこに行けばいい?」
それなのに俺は、ずっとシャキンを目の敵にしてて。
内藤はずっと教えてくれてたんだ。
シャキンを挑発しないように。使用人であるシャキンを、城の中では有利な使用人を敵に回さないように。
馬鹿だな、俺。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 19:58:33.38 ID:ei2LhoLG0
- (`・ω・´)「まず、フロアの移動ですね。今私達がいるのは一階」
( ´_ゝ`)「次は二階に行ってもらおう」
(´<_` )「ちなみに、最上階という概念は無い。人それぞれだからな」
おいおい、一度に言われても理解しきれないって。
――まて、最上階が無いだと?
('A`)「……人それぞれって。最上階はどうしたって最上階でしょうに」
(`・ω・´)「いいえ、違います。それも直に分かるでしょう」
結局やつらとの会話はそれまでだった。
その後、三人はすぐにまた壁に扉を作り、厨房を移動し姿を消す。
('A`)「そして今に至る、と」
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:00:42.16 ID:ei2LhoLG0
- 小さなメモ帳に今までのことを記す。
これは子供の頃からの習慣で、頭の中で整理しきれない時によく使う。
女々しい、とはよく言われたもので今ではなんとも思わない。
('A`)「さぁて、これからどうすっかな」
当ては無い。考えも浮かばない。さて、どうする。
('A`)「……腹、減ったな」
ここは厨房で、先ほどから常に耳に入る機械の音は間違いなく料理を作っている。
なら少し腹ごしらえをしよう、と辺りを見回した。
('A`)「お、あんじゃん。美味そうだな」
食べたい。そう思ったとき、既に行動は終わっているんだね。
しかし思ったようにはいかなくて。
そもそも、ここがどこだか忘れていた。得体の知れない謎の城。あれ、忘れる以前に理解できてない。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:02:36.98 ID:ei2LhoLG0
- ('A`)「……模造品かよ。どう見ても職人芸です。本当にありがとうございました」
リアルすぎて全く分からなかったが、どれもこれも、全てがサンプル。
展示用の食べられたものではなかった。
('A`)「うへぇ……。腹減ったわ……」
从 ゚∀从「悪いな、ここではお前たちが食べるようなものはおいてないんだ」
目の前に、そいつは突然現れた。
顔半分を前髪で隠した、おそらく女であろう、人間……か?
('A`)「……あぁ、何となく分かってきた」
心を少し落ち着かせてみる。
そうだ、内藤もそうだった。だから分かったんだ。
このわけの分からない場所で、精神的に平常である者は皆。
('A`)「使用人か」
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:04:44.34 ID:ei2LhoLG0
- 从;゚∀从「あっれぇ。お前も驚かないのか」
('A`)「驚くだけの気力もないもんで」
心が、限界まで磨り減っているのがよく分かる。
何から何まで突然なんだ。少々、急なことに対して免疫が出来ているかもしれない。
だから、お前もって言葉にも特に疑問は抱かなかった。どうせ他にも俺みたいなのがいるんだろ。
从 ゚∀从「まぁいい。お前は一人なのか?」
('A`)「そうだな。本当は一人、いたんだけどな」
ただの顔見知り、というだけだが少し見栄を張ってみる。
つまり内藤のことだ。
从 ゚∀从「なるほどね。そんで、お前の望みは? やっぱり虹かい?」
彼女にそう問われ、初めて気がつく。
いるじゃないか。目の前に。
虹が。
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:05:53.47 ID:ei2LhoLG0
- ('A`)「俺、使用人志望なんだよね」
从 ゚∀从「ほう、そりゃ珍しいな。何でまた使用人なんだ?」
話すべきか迷った。
けど止めた。
俺の目的はこいつだから。これ以上関われば、情や何やらで何も出来なくなってしまう。
('A`)「悪いんだけど、アンタには俺のために死んでほしいんだ」
从 ゚∀从「ほう。標的に俺を選ぶ、か」
一瞬にして女の目付きが変わる。その瞬間を俺は見逃さなかった。
冷たい視線に、殺気を隠すことなくこちらを向いている。まるで先ほどのシャキンだ。
やってらんねぇ。
('A`)「えーっと。よろしくお願いし……」
言い終える前に、女は突っ込んできた。
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:07:33.79 ID:ei2LhoLG0
- 女の狙いはおそらく足だった。
左足は依然として力が入らないため右足を軸に、後方へとステップ。
(;'A`)(これだ)
俺はその場にあったフライパンを手に取り、投げつける。
使える武器は何だって使うべきだと俺は思う。
というか、考えている暇も無い。
女はそれを避け一瞬動きを止めたかと思うと、もう一度突っ込んでくる。
すぐに間合いを詰められてしまい、左半身のガードに徹する。
从 ゚∀从「甘い、甘い」
左腕を掴まれ、易とも簡単に捻り上げられてしまった。
ガードの解けた俺に、すかさずまた左足目掛けて蹴りを放ってくる。
(;'A`)「やっべ……ッ!」
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:09:22.39 ID:ei2LhoLG0
- 気付いた時には左足首を抉られており、同時に激痛が走る。
力が抜け倒れそうになり、何かに掴まろうと手を伸ばすが何も出来ずにそのまま倒れてしまう。
何だこの人。強ぇ。
(;'A`)「……学生の頃、何かやってましたか」
从 ゚∀从「バスケットを少し」
なんてやり取りで時間を稼ぐ。
そこに意味があるのか分からないが。
从 ゚∀从「まぁ、挑まれればそれに対応はするけど、それ以上のことはしないから」
それはシャキンから聞いていた。
まさか使用人が、本気で来ることは無いだろうと言っていたが
どの口でそれを言うのか、とシャキンに突っ込みたい気持ちで一杯だった。
从 ゚∀从「そっちは本気でいいんだぜ?」
- 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:11:14.85 ID:ei2LhoLG0
- (;'A`)「うっせ、本気だよ畜生が。痛ぇ……」
塞がってきていた切り口がまた開いてしまい、出血し始めていた。
混同してしまってよく分からないが、もとからあるこの傷が痛いのではなく、
単純に蹴られた箇所が痛いのだと思う。
(;'A`)「やってらんねぇ」
もうこの女には挑まないと心に刻んでおく。
次は本当に死んでしまうかもしまうかもしれない。こいつにはそのつもりがなくても、だ。
从 ゚∀从「さーてさて。どうすんの新人」
なりたくもない使用人とやらにならざるを得なくて、
現状もよく分かってなくて、
既に新人扱いで。
从 ゚∀从「……お前は何で使用人なんかになりたい訳?」
- 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:12:29.79 ID:ei2LhoLG0
- (;'A`)「なりたいわけじゃ……!」
その続きを言おうとして、口を噤む。
ダメだろう。ここで否定したら。あいつ等が来たら俺にはもう何も出来ない。
从 ゚∀从「まぁ、事情があるんだろうけどね。それは皆同じか」
(;'A`)「…………」
从 ゚∀从「元々お前に用があって来たわけじゃないんだ。それじゃあな」
そういうと女はシャキンがいなくなった位置に行き、扉を作った。
そしてドアを開け、その向こうに行ってしまう。
从 ゚∀从「あ、そうそう」
(;'A`)「へ?」
从 ゚∀从「俺はハイン。ハインリッヒな。お前は……聞かなくていいや」
(;'A`)「俺……」
- 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:13:22.41 ID:ei2LhoLG0
- 从 ゚∀从「頑張れよ、新人。未来なんてないけどな」
にしし、と両頬を吊上げて笑うハインに、少しだけ見とれていた。
別にだからと言ってどうということもなかったが。
ただ。何かこう、儚げなものを感じたのだ。
何言ってんだ俺。あの強さにあのテンションで、何が儚げか。豪傑もいいところだ。
(;'A`)「……あぁ。しんどい」
一向に休めずにここまできているために、正直今にも倒れそうだ。
肉体的には勿論だが、精神的にも疲労が溜まっている。
(;'A`)「とにかく、ここを離れないと……」
途端に眠気が込み上げてくる。出来ればこうなる前に、移動しておきたかった。
ああ、ダメだ。もう動けない。
ちょっとだけ、眠ってしまおう――
- 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/23(土) 20:13:59.15 ID:ei2LhoLG0
- ( ´_ゝ`)「一日に二人の侵入者か。悪くないな」
(´<_` )「来賓も二人いる。こんなに賑やかなのはいつ振りだろうな、兄者」
( ´_ゝ`)「一年ぶりだろう」
「……随分と経ったものだな」
赤いカーペットに、茶色の小汚いレンガの壁。
暗く、ほんのりと照らされた廊下を二人は臆すことなく、歩いていく。
来賓二名、侵入者二人。
城はそう認識した。
冷たい風が勢いよく城内へと流れ込んでいく。
正面玄関が、開いていたのだろう。