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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第三話「おおかみ」

128 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 14:52:16.25 ID:NTeZvcOc0
第三話「おおかみ」


月明かりも木々に遮られ、真っ暗な森の中をたいまつの火だけが照らす。
僕は、ヒートの指差した丘へ向かって走っていた。

( ^ω^)「しぃ――! いたら返事してくれお――!」

返事は無い。
もう丘の所まで行ってしまったのだろうか?
それとも、行き違いで、しぃは村に戻っているのだろうか?

まさか……。


( ^ω^)「!!」

僕は、頭から嫌な考えを取り払った。
大丈夫。そう自分に言い聞かせながら、森の中を走る。

( ^ω^)「しぃ……!」
129 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 14:54:14.33 ID:NTeZvcOc0
木々の間を走り抜けると、急にひらけた場所に出る。
そこには、ぽつんと立っている二つの墓石。

そして

( ^ω^)「しぃ」

(*゚ー゚)「……」

しぃが、墓石の前で静かに座っていた。
僕は安堵のあまり、斧をどさっ、と地面に落とす。

( ^ω^)「しぃ……」

(*゚ー゚)「こないで」

近づこうとした、僕の足が止まる。
しぃは、僕に背を向けたまま

(*゚ー゚)「どうして……」

消えるような声で、言う。
132 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 14:56:34.99 ID:NTeZvcOc0
(*゚ー゚)「どうして、みんな忘れちゃうの?
     死んじゃったら、もうどうでもいいの……?
     わかんないよぉ……お母さん、お父さん……」

( ^ω^)「……」

しぃの小さな背中が震える。
僕は、たいまつを地面に立て、しぃの隣に座る。

( ^ω^)「しぃ、ごめんなさいだお」

(*゚ー゚)「……」

( ^ω^)「しぃは、辛かったんだお……。
       僕、しぃの気持ちも知らずに浮かれていたお」

僕は、しぃに向かって頭を下げる。

( ^ω^)「本当に、ごめんだお」
133 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 14:58:16.79 ID:NTeZvcOc0
それから、しぃの嗚咽の声が続いた。
僕はただ、黙ってそばに居ることしか出来ない。

(* ー )「……ンッ……寂しかった……」

しぃが、僕の胸に飛びついて、泣きじゃくる。

(* ー )「……ずっと……ヒクッ!……寂しかったぁ……」

( ^ω^)「しぃ」

僕は、しぃの頭に手をおき、優しく撫でた。
134 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:01:14.92 ID:NTeZvcOc0
( ^ω^)「しぃ、君は一人じゃないお」

(* ー )「……ンッ……ヒクッ!……えっ……」

( ^ω^)「村の人は、みーんな君を大事に思っているお。
       僕も、ヒートも、ミルナも……ギコおじなんかは、
       息を切らしながら君を探していたお」

(* ー )「……ンッ……」

しぃが、僕を掴む手に力が入る。

( ^ω^)「だから、村へ帰ろう? みんな、心配してるお」

しぃは、小さく首を縦に振った。

( ^ω^)「うん、いい子だお。……ほら、背中に乗るお」

(*つー゚)「……ん」

僕は、しぃを背中に乗せ、歩き始める。
地面に挿した、たいまつの火は消えていた。

( ^ω^)(斧は、明日にでも取りに来ればいいお)

両手でしぃの体を支え、僕は丘を後にする。
136 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:03:17.53 ID:NTeZvcOc0
背中から、心地よい重さが伝わってくる。
あたたかい吐息、手から伝わってくる体温。

生を実感するって、こういうことなんだ、なんて思いながら、足を進める。

(*゚ー゚)「おと……さん」

( ^ω^)「お?」

(*-ー-)「……」

( ^ω^)(寝ちゃったお。よっぽど疲れてたんだろうなぁ……)
137 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:04:33.41 ID:NTeZvcOc0
その時だった。


背後の草むらが、がさがさ、と音を立てて揺れる。

( ^ω^)「……!?」

音のした方へ振り返る。
だが、今度は横方から草の揺れる音。

獣のうなり声。

暗闇に光る、赤い目。


( ^ω^)「っ!」


走り出そうとしたが、咄嗟にそれは駄目だと判断する。
何故なら、そこに現れたのは、獲物を狩ろうと目を光らせる狼だったから。
139 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:06:52.28 ID:NTeZvcOc0
ミ,,`Δ´彡「ウ……ウゥゥ……!」

(;^ω^)「うっ」

僕は、たいまつを置いてきてしまったことを後悔した。
ヒートに言われた事を、今更になって思い出す。


――ノパ听)「火があれば狼は寄ってこないから…!!」――


(;^ω^)(くそっ!)

しぃを背負っている為、手も使えない。
走って逃げた所で、すぐにつかまって食事にされるのがオチだろう。
140 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:09:21.68 ID:NTeZvcOc0
ミ,,`Δ´彡「ウゥゥ……」

僕は、うなり声をあげる狼とにらみ合う。
どうすればいいのかわからず、立ちすくむ。

せめて、しぃだけでも逃がしたい。

(*-ー-)「……」


ミ,,`Δ´彡『森の……民……が、何を……てる……』


不意に、耳鳴りがした。
どこからか、低い声が聞こえる。


ミ,,`Δ´彡『貴様……人間……に、……たか……』


目の前にいる狼。
声は、その狼から放たれている。
141 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:11:09.76 ID:NTeZvcOc0
(;^ω^)(頭の中に響いてくる……!?)

ミ,,`Δ´彡『何も……ならば……我ら……されても……言えまい』

直後、3匹の狼が跳躍する。
牙を向き、僕の喉を切り裂こうと襲い掛かってくる。


(  ω )(森の……民……)


頭が真っ白になり、直後、あらゆる光景が浮かんでは消えていく。


ミ,,`Δ´彡『さらばっ!』


狼は、地を蹴り、僕の喉元へ飛び込んでくる。



( ゚ω゚)『待てい狼の民っ!!』


ミ,,`Δ´彡『!!』
142 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:14:20.38 ID:NTeZvcOc0
人間のものではない言葉で、叫ぶ。
僕は右腕を突き出し、狼の牙を受けた。

右腕に強烈な痛みが走る。だが、痛みを嘆いている場合じゃない。


( ゚ω゚)『約束を忘れたのか? 手出しはしないと、お前達は言った筈だが』


僕の言葉に対し、狼は腕に噛み付いたまま返す。


ミ,,`Δ´彡『我らの縄張りに足を踏み入れたのは、貴様の方だ。
      食されても文句は言えまい』


( ゚ω゚)『あくまで自然の摂理と共に行動しようと言うのか。
     ならば、こちらも手を打つがいいのか?』


辺りの木々がざわめき始める。
草が、木が、地面の呼吸が唸りを上げ始めた。
143 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:16:36.13 ID:NTeZvcOc0
ミ,,`Δ´彡『……やめておこう』

狼は、僕の右腕から牙を離した。

ミ,,`Δ´彡『しかし、後ろの人間は頂こうか。森の民でない者が縄張りを侵したのだ』

狼は、視線をしぃに向ける。
ずり落ちそうになるしぃを、もう一度両手で支え直し

( ゚ω゚)『ならぬ』

そう言った。
146 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:21:13.36 ID:NTeZvcOc0
ミ,,`Δ´彡『何故だ! 貴様はすでに悪き人間へ寝返ったと言うのか!』

( ゚ω゚)『違う!』

森が揺れるほどの声。
眠っていた鳥が驚いて、どこかへ飛び立つ。

ミ,,`Δ´彡『ならば、何故そんな人間を庇う!』

牙を向き、唸り声を放つ狼に対し、僕は


( ゚ω゚)『……家族だからだ』


そう、答えた。
148 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:23:30.92 ID:NTeZvcOc0
静寂が森の中を駆ける。
数分とも、数時間とも思える無音の時。

その無音を破るように、狼が背を向けた。


ミ,,`Δ´彡『約束は守ろう。だが、忘れるな。我らの行動は自分達で決める』


( ゚ω゚)『すまない……』


狼は、森の奥へと消えていく。
僕の呟きに、かえってくる声は無かった。


それから、夢中で歩いた。
さっきまでの出来事を、考える間もなく、右腕の痛みさえも忘れて。
149 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:25:45.09 ID:NTeZvcOc0



森の外。
たいまつを持った村人が、立ち往生している。

ノパ听)「……やっぱり、私探してくる!」

痺れを切らし、ヒートが森へ入ろうとする。
だが、その腕を村長が掴んだ。

(´・ω・`)「駄目だ。 さっきの遠吠えを聞いただろう?
      僕達が行っても……悲劇を繰り返すだけだ」

ノパ听)「でもっ!!」

村長は、ヒートの腕をさらに強く掴む。

(´・ω・`)「僕だって……心配だよ。
      だけど、村長として、村の皆を危険に晒す訳にはいかない」

ノパ听)「……」

ヒートは黙り込み、うつむいた。
村人達も皆、暗い顔をしている。
150 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:28:56.04 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「ヒート、大丈夫だ。ブーンなら、きっとしぃと一緒に戻ってくるさ。
     ……ブーンを、信じよう」

ノパ听)「うん……」

ミルナの言葉に対し、ヒートは小さく頷いた。

たいまつの燃える音だけが、むなしく響く。


( ,,゚Д゚)「お、おい。ありゃ……ブーンじゃねえのか!?」

静寂を破ったのは、ギコだ。
その声に、皆の視線が一斉に森の方へと向けられる。
151 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:31:05.68 ID:NTeZvcOc0


( ^ω^)「お――いだお!」

前方に、たいまつの火が見える。
もっと近づくと、そこには村の皆がいた。


ノパ听)「ブ――――ン!!」


ヒートの叫びと共に、皆が駆け寄ってくる。

( ,,゚Д゚)「しぃ!」

(*つー゚)「んにゃ……」

僕は目を覚ましたしぃを背中から降ろす。
同時に、ギコがしぃの頬を引っ叩いた。
152 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:33:12.05 ID:NTeZvcOc0
(*つー゚)「っ!!」

( ,,゚Д゚)「このバカ! 夜の森には行くなっていっただろうが!」

ギコは、ものすごい剣幕で怒りの声をあげる。
しぃの目頭に、また涙が浮かび

(*つー゚)「ングッ……ごめんな……さい」

( ,,;Д;)「心配したんだぞゴラァ!!」

ギコはしぃをしっかりと抱きしめた。

お互いに、安堵の涙を流しながら。
154 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:38:03.03 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「ブーン……」

( ^ω^)「ヒート……」

ヒートは口をへの字に曲げながら、僕を見る。
怒っているのも、当然か。
僕も、しぃと同様、心配をかけてしまったんだ。


( ^ω^)「ヒート、心配かけてごめ……ひでぶっ!」


言い切る前に、ヒートの拳が僕の頬を捉えた。


ノパ听)「待っててって、言ったのに、言ったのに!!」


続いて、腹部に強烈な一撃がぶち込まれる。
その重い突きに、僕は思わず仰け反った。
155 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:40:38.53 ID:NTeZvcOc0
(;^ω^)「あ、あの……ヒート」

僕は手を前に出し、ヒートの怒りを止めようと試みる。

ノハ#゚听)「一人で夜の森に行くなんて、自殺行為よ!
      よくもまあ生きて帰ってこれたね! 奇跡だよ、奇跡!
      一人で助けたらカッコイイとでも思ったの!?」


ヒートの怒りの拳は止まらない。
一言喋るごとに、打ち込まれる。
僕の頭から、ここまでの記憶すら飛びそうになった時

( ゚д゚ )「ヒート、そのへんで許してやれ」

ノパ听)「……」

その声で、ようやくヒートの拳が止まった。
157 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:44:06.01 ID:NTeZvcOc0
( )#ω^)「ミルナさん……」

( ゚д゚ )「しぃを助けに行った勇気は尊敬に値する、が」

鈍い音と共に、僕は吹っ飛んだ。

( ゚д゚ )「俺も、お前のことが心配でたまらなかったんだ。
     今度から、こんな無茶なことはしないように」

( )#ω#( )「はいですお……」


両頬に愛のムチを喰らい、僕は面白い顔になってしまった。

でも、嫌な痛みじゃない。
むしろ、ここまで心配してくれて嬉しいんだ。

……決してマゾっ気があるわけじゃない。
158 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:46:29.98 ID:NTeZvcOc0
( ,,゚Д゚)「ブーン」

ギコはしぃを背負いながら、僕の前まで来る。

( ,,゚Д゚)「ありがとうな。この礼は必ずするよ。
     ほら、しぃもお礼を言いな!」

背中から、目を真っ赤にしたしぃが顔を出し

(*゚ー゚)「……ブーン、ありがとう」

そう言った。

『ありがとう』

その一言を聞いたら、体の痛みなんか気にならなかった。

(´・ω・`)「二人とも、十分反省しているようだし……。
      そろそろ、帰ろうか。皆、今日はありがとう。
      ゆっくり休んでくれ」


村長がそう言うと、村人達はそれぞれ安堵の言葉を言いながら家へと帰っていく。
159 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:48:25.20 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「それじゃ、俺達も帰ろうか?」

ノパ听)「そうだねっ! ブーン、今日は特別に、お姉ちゃんが肩をかしてあげるよ!!」

ヒートは、僕の体を支える。
体が密着し、僕の心臓の鼓動が一気に速くなった。

(*^ω^)(幸せだお……)

むっつりスケベと言われようが、僕だって男だ。
女の子と密着すれば、誰だって嬉しいと思うだろう?


たとえ、自分が傷だらけでも。さりげなくお姉ちゃん宣言されても。


( ゚д゚ )「おい、ブーン……。お前、右腕は大丈夫なのか?」

(*^ω^)「え?」

( ;゚д゚ )「めちゃくちゃ出血してるが……」
160 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:50:10.01 ID:NTeZvcOc0
僕は、自分の右腕に目をやる。
地面にポタポタと滴るほど、出血している。

(;゚ω゚)「キャ――!!」

悲鳴と共に、僕はぶんぶんと手を振り回す。
ヒートの肩にまわしている左腕が、柔らかいものに触れた。

ノハ#゚听)「ちょ、ちょっと、どこ触ってんのよこらぁぁぁぁ!!」

( ;゚д゚ )「お、落ち着け!! まずは止血……ぶふぅ!?」

ノハ;゚听)「あ、兄貴ごめん!!」

(;゚ω゚)「キャ――! 血が、血がぁぁぁぁ!」

ノパ听)「何ようるさいわね……ってキャ――!!」


(#´・ω・`)「安眠ぼうがー―い!!」

窓から村長が大声で叫ぶ。
その後、僕達は騒ぎながら家へと帰り、出血の激しい右腕は大量の布によって止血された。
162 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:52:06.55 ID:NTeZvcOc0



一方、同じ時。
ヴィップ村の北に位置する城下町。

発展した町並みと、大きな城を構える小さな国。

( ・∀・)「ニダ王、失礼します」

城の内部。
王の間と呼ばれる場所にいるのはモララーだ。

<ヽ`∀´> 「ニダニダ、楽にするニダよ」

立派な王座に座っているのは、目つきの悪い男。
体中に、光り輝く宝石類をつけ、ふんぞり返って居る。
163 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:54:13.16 ID:NTeZvcOc0
( ・∀・)「はっ。失礼します。……私に御用があるとお聞きしましたが」

<ヽ`∀´>「ヴィップ村のことニダ」

その言葉に反応し、モララーの肩がぴくりと動いた。

<ヽ`∀´> 「どうニダ? あの村の連中に条約は結べたニダか?」

( ・∀・)「それは……その、もう少し時間がかかるかと」

ニダ王の顔つきが険しくなる。
その顔は、見事に不機嫌さを表すものだ。

<ヽ`∀´> 「何をもたもたやってるニダ。あんなチンケな村、少し脅かしてやれば
       すぐに我が傘下に入れることができるニダ!」

( ・∀・)「……しかし」
165 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:57:30.14 ID:NTeZvcOc0
ニダ王は、おもむろに果物を掴み、モララーに投げつける。

<ヽ`∀´> 「しかしもクソも無いニダ! さっさとこのニダ国の資金源にしてしまうニダ!
       モララー、お前に頼まれたからこそ、あの村のことはお前に任せてやってるんだニダ!
       でも、もう我慢の限界ニダ!!」

( ・∀・)「ま、待ってください。必ずや、条約を結ばせてみせます。
     もう少しお時間を……」

モララーは膝を着き、頭を下げた。

<ヽ`∀´>「ニダニダ、ならば2週間ニダ。2週間たっても奴らと条約が結べなければ
       武力行使をしてやるニダ!」

モララーは、ゆっくりと頭を上げ

( ・∀・)「……わかりました。必ずや、使命を全うして見せます」

そう言うと、モララーは王の間を出た。
166 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 15:58:23.83 ID:NTeZvcOc0
( ・∀・)「……二週間、か」

モララーは自室に戻り、考える。
村を救う方法を。


――否、皆を救う方法を。




第三話「おおかみ」   終わり