-VIP産小説保管庫-

( ^ω^)ブーン達が廻るようです:4:「Mu:sic hippie」

6 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 23:55:30.07 ID:IOCbsmrpO
4:「Mu:sic hippie」

('A`)

('A`)「さて……」

(;^ω^)「……」

 俺達は相も変わらず階段を登っていた。
 時は一時間程遡る。

('A`)「せーのっ!!」

( ^ω^)「よいしょーっ!!」

 ブーンが勢い良く開いたドアの先。
 そこには、世にも奇妙な世界が、

('A`)「……山、だな」

(;^ω^)「山だお……」

 何て事もなく、今までと何ら変わらない景色が続いていた。
8 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 23:56:32.94 ID:IOCbsmrpO
 つまり、俺らは放置されていたドアを普通にくぐり、そして普通に通り抜けた訳だ。

('A`)「……『行けばわかる』っつったよな?」

(;>ω<)「……わかんないです!!」

 取り敢えず「闇雲に歩いても仕方ない」「疲れた」、「死にたい」と言う意見の間を取り、休憩する事にした。

('A`)「でもさ、可笑しくね? 絶対、不自然だろ?」

 そう、これはどうしようもなく不自然だった。
 そもそも、この山がここまで高い筈がないのだ。
9 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 23:57:49.60 ID:IOCbsmrpO
( ^ω^)「二時間前くらいから知ってたけどNe!!」

(;'A`)「ですよねー」

 もう、どこからどう見ても手詰まりだ。
 精神的にも体力的にもかなり辛い。
 二人して「もう勘弁して下さい。すみませんでした」と、必死に祈り始めたその時、異変は起きた。

( ^ω^)「お……?」

('A`)「あー……何か来たな」

 誰かが草を踏み締める音。
 それも、「極力、音を立てない様に」歩く音だ。

(;^ω^)「……」

('A`)「(ショボンやクーじゃ……ないな)」

 せめてもの抵抗として手頃な木の枝を拾う。
11 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 23:59:17.53 ID:IOCbsmrpO
('A`)「(剣道初段は伊達じゃないぜっ!!)」

(;^ω^)「(『初段はチョロい』って聞いた事あるお……)」

(;'A`)「(おまっ、全国の初段っ子に謝――)」
 _
( ゚∀゚)「おいすー」

从 ゚∀从「……」

 何か、出た。
 階段を挟んだ左右の草村から現れたのは、一見して普通の男女だった。
 ラフな格好、金髪、どう見ても誠実そうには見えない男。
 真っ黒なショートヘアー。華奢な体には不釣り合いな大きいヘッドフォンを付けた女。
 状況を把握出来ずに狼狽える俺ら。
13 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:02:20.12 ID:X1kSWEfDO
 何故か、いがみ合う男女。
 _
( ゚∀゚)「あ? なんで、てめーがいんだよ?」

从 ゚∀从「ア? ……そレ、こッちノ台詞」

(;^ω^)「……」

(;'A`)「……」
 _
( ゚∀゚)「あー、面倒クセー。今日こそ殺してやるよッ」

从 ゚∀从「ソれハ……こッチの台詞ッ!!」

 二人はお互いに何かを取り出して、お互いにそれを相手に向けた。

(;^ω^)「(銃……っ!?)」

(;'A`)「(人生オワタ……)」

 やばい。
 これは圧倒的にやばい。
 俺があれこれ考えている間にも二人は元気に走り回っている。
15 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:05:58.38 ID:X1kSWEfDO
 _
( ゚∀゚)「っつーか……ちょっと待て」

从 ゚∀从「……逃げル?」
 _
( ゚∀゚)「うっせー、殺すぞ」

 生まれて初めての銃声に浸る間もなく、俺達に声が掛かった。
 _
( ゚∀゚)「『ブーンとドクオ』ってのはお前らか?」

('A`)「あぁ、そうだ」
 _
( ゚∀゚)「クーに頼まれて来た。お前らで間違いねーな?」

从 ゚∀从「……嘘ツき。私、クーニ頼まレた」
 _
(#゚∀゚)「ハァ!? てめー喧嘩売ってんのかッ!?」

从 ゚∀从「こイツ、野蛮。ブーン、ドクオ、私、信ジた?」

(;^ω^)「……」

(;'A`)「……」
16 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:07:17.66 ID:X1kSWEfDO
 この空気は何だ?
 要約すると、どちらかがクーに頼まれて俺らを迎えに来た。
どちらかは嘘を付いていて、俺らはそれを見破らければならない、とそう言う事らしい。
 それを請けて急遽、作戦会議が始まる。

('A`)「(男がガチだろ? 雰囲気的に考えて……)」

( ^ω^)「(ドクオ……)」

('A`)「(いや、にしてもガラ悪ぃなぁ……あ?)」

( *^ω^)「(……綺麗なお姉さんは好きですか?)」

 ますますこじれて来た。
 女とブーンは何故か見つめ合っている様な気がしたが、そこは華麗にスルーした。
17 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:10:55.65 ID:X1kSWEfDO
 _
( ゚∀゚)「はぁ……お前ら、もう良い。取り敢えず山、降りろ」

从 ゚∀从「コいつ、私、食い止メる。二人、尻尾巻ク。逃げロ」

 もう何でも良い。
 状況の整理は諦めて、おいとまする事にした。

('A`)「……ブーン、逃げるぞ」

( *^ω^)「……」

 俺はブーンを引き摺る形で山を降りた。
 現実的に考えて、深夜の山奥で男女のドンパチはありえない。
 つまり俺達は既に神隠しにあっている、と考えて良さそうだ。
19 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:18:45.75 ID:X1kSWEfDO
( ^ω^)「……何で見えたお?」

 俺の手から逃れたブーンが言う。

('A`)「『見えた』?」

 「転げ落ちる」のと変わらない速度で山を下りながら、言葉を返す。

( ^ω^)「さっきの二人は十中八九『悪霊』だお。最初の奴とかクーは見えなかったお」

 そう言えばそうだ。
 ついに俺らも「悪霊」の仲間入りを果たしたせいかも知れないな、と思った。

「おー……い」

(;'A`)「クッソ、今度は何だ?」

 ない頭を捻る暇すらなく、またしても何か来る。
 これまでの人生で一番の多忙具合かも知れない。

( ^ω^)「ショボンっ!!」

('A`)「え……?」

 ブーンが立ち止まったのを振り返り、ゆっくりと引き返す。
21 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:31:32.24 ID:X1kSWEfDO
('A`)「ショボン……」

 ブーンの視線の先を複雑な気持ちで見つめる。

(´・ω・`)「やっと……また会えたね」

川 ゚ -゚)「無事で何よりだ」

 ショボンの横には見知らぬ女がいた。が、もう、そんな事はどうでも良かった。

( ;ω;)「ショボン、ショボう!! ごめんお!!」

(´・ω・`)「ハハ、なんで謝るのさ」

( ;ω;)「うぅ……」

(´・ω・`)「僕の方こそ、巻き込んでごめんね……」

 目の前のブーンとショボンは、やけに遠くに見えた。
 まるで自分だけ違う空間にいる様な感覚。
22 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:34:17.65 ID:X1kSWEfDO
(´・ω・`)「ドクオ……」

 俺はショボンによって、その空間に踏み入る。

( A )「ショボン……ごめん」

(´・ω・`)「なんで謝るのさ。……こちらこそ」

 ショボンはやはり、ショボンだった。
 何の変わりもないショボンが、ショボンとしてそこにいた。

(;A;)「ごめん……俺のせいで……」

(´・ω・`)「もう、君も泣くの? 釣られちゃうよ……」

 何だか、俺は可笑しかった。
 もう、何もかもがどうでも良くて、

(´;ω;`)「二人共、本当にごめんね……」

 妙に満たされた気分だった。
23 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:37:32.29 ID:X1kSWEfDO
 _
(#゚∀゚)「あのクサレアマッ!! 今日は殺す!! マジで殺すッ!!」

(;^ω^)「……」

(;'A`)「……」

(;´・ω・`)「……」

川;゚ -゚)「……空気読め」

 その場の全員が凍りついた。
26 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 00:44:30.63 ID:X1kSWEfDO
 _
( ゚∀゚)「おー!! クー、ショボン、お帰りー。早かったな」

(´・ω・`)「おかげさまで、ね」

川 ゚ -゚)「あぁ……所でジョルジュ。私は彼らの保護を頼んだ筈だが?」

 ようやく冷静さを取り戻した俺は、今更になって、この女がクーだと気付く。
 そして「ジョルジュ」と呼ばれたこの男こそが俺らの味方だったらしい。
 _
(;゚∀゚)「あー……すまん」

(´・ω・`)「……しね」
 _
( ゚∀゚)「あ? ショボン、てめー、今なんつった?」

川 ゚ -゚)「良し、ショボン。私が殺ろう」
 _
(;゚∀゚)「あ、いえ。すみませんでした……」

 物騒な表現が飛び交う、和やかな会話。
29 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:00:50.67 ID:X1kSWEfDO
 ここが「死後の世界」だと言うのが信じられないくらいだ。
 _
( ゚∀゚)「……そいつらにはもう説明したのか?」

 ジョルジュが突っ立っていた俺とブーンを指差した。

川 ゚ -゚)「否、まだだ」

(´・ω・`)「……僕が話すよ」

 何となく引きつった表現のショボンが近付いて来る。

(´・ω・`)「ふぅ……実はブーンとドクオに話さなきゃいけない事があるんだ」

( ^ω^)「何だお?」

(;'A`)「何か、偉いのが来そうだな……」

 息を呑む。
 わざわざ「死後の世界」にまで踏み込んだんだ。
 ただでは帰れないだろう。

(´・ω・`)「二人はこれから、向こうに帰らなきゃ、だよね? それには、
色々な手続きが必要なんだ」
30 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:03:03.80 ID:X1kSWEfDO
 僕は帰れないけどね、と付け足したショボンの顔は、正直、俺には直視出来ない。
 俺はショボンを殺した挙げ句、今回はショボンに助けられたんだ。

(´・ω・`)「巻き込んでしまって本当にすまない。勿論、僕は死ぬ気で二人を手伝うよ」

('A`)「……」

( ^ω^)「ショボン……」

 申し訳なさで心臓が痛い。
 俺には弁解の余地も、言葉も、資格さえもなかった。
 _
( ゚∀゚)「……お取り込み中に悪いんだが、場所移すぞ。ハインのクソがうろついてやがる」

川 ゚ -゚)「……そうしよう。二人には色々と話さなくてはならない事もある」
32 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:14:21.44 ID:X1kSWEfDO
(´・ω・`)「そうだね。今日は帰って休もう」

 ショボンは大袈裟に肩を回し、「いかに疲れたか」を全身で表現した。
 五人でぞろぞろと山を下る。
 俺は少し後ろから着いて行く。
 登りの時とは違い、あっ、と言う間に下山出来た。

(´・ω・`)「元気ないね?」

 いつの間にか隣を歩いていたショボンに声を掛けられた。
 少し、たじろぐ。

('A`)「あ、いや……別に?」

(´・ω・`)「あのさ。さっき、巻き込んでごめん、って言ったよね?」
33 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:15:27.27 ID:X1kSWEfDO
('A`)「あぁ、俺の方こそ……ごめん」

(´・ω・`)「実は僕、ちょっとワクワクしてるんだ」

('A`)「ワクワク?」

(´・ω・`)「『一人じゃ生きていけないのは俺だけか』。それ、僕も思うよ」

 ショボンが挙げたのは、いつか俺が言った言葉だ。
 皮肉にもそれは、ショボンが死ぬ間際、最期の会話だった。

(´・ω・`)「僕は死んじゃったけど、一緒にいられるなら、それもアリかな、ってね」

('A`)「……」
35 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:29:46.65 ID:X1kSWEfDO
(´・ω・`)「勿論、ずっと、って訳にはいかないけどね。二人に迷惑は掛けられないし……」

('A`)「迷惑な訳ねぇよ……」

(´・ω・`)「でも、これで……ちゃんと『さよなら』が言えるんだ」

('A`)「『さよなら』なんていらねぇな」

(´・ω・`)「二人には絶対、生きて帰って貰うよ」

 それ以上、俺は言い返せなくて、黙り込む。
 俺には「最善」を見極める事は出来なかった。

(´・ω・`)「だから、死なない様にね。明日から死ぬ勢いで鍛えて貰うから」

(;'A`)「……マカセトケ」
36 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 01:34:06.15 ID:X1kSWEfDO
 ショボンは俺に気を遣ってか、また少し距離を置いて、前を歩き出した。
 俺が幾ら悩もうが、生きようが死のうが、何の影響もなく、時間はいつも通りに過ぎて行く。

('A`)「……」

 ふと、右手を見ると木の棒が握られていた。
 「僕らは大丈夫」。
 急に、そんな言葉を思い出した。

('A`)「ふぁっきゅー……っ」

 力任せに放り投げられた棒は、高く高く飛んで行く。
 前を歩く二人。

('A`)「俺ら三人なら無敵だろ。常識的に考えて……」

 俺は二人に追い付こうと、ゆっくり走り出した。

4:「Mu:sic hippie」

―fin―