( ^ω^)「またかお」
振動を続ける携帯電話を遠くに放り投げる。
携帯電話は綺麗な弧を描くように飛んで行き、壁にぶつかって落ちた。
出会い系、アダルトボイス、ツーショット。
ブーンが暇つぶしに登録したさまざまな番組から、料金催促の電話がひっきりなしにかかってくる。
( ^ω^)「どうせ架空請求だお?」
再び携帯電話が振動を始めた。
ブーンは飽き飽きしながらも、仕方なく携帯電話を手に取った。
(#^ω^)「いい加減にしろお! この架空請求業者め! 死ねお! 氏ねじゃなくて死ねお!」
「ハァ? あんたなにいってんの? とりあえず、今からあんたの家いくから」
使い古された、ありきたりな脅し文句だ。
しかし、女性が架空請求とは……世も末だな。
( ^ω^)「来れるもんなら来てみろおwwwバーヤバーヤ!」
三分後。
ξ*゚д゚*)ξ「おんどりゃぁボケがこらぁ!」
玄関のドアを蹴飛ばして入ってきたのは、可愛いおにゃのこだった。
(;^ω^)「ひー」
ξ*゚д゚*)ξ「オラ、来てやったぞボケがおぉ?
なんだお前あの電話はコラ。人が親切でかけてやったってのによお」
それだけ言うと、急にしおらしいおにゃのこに戻った彼女は、猫なで声で続けた。
ξ゚听)ξ「えーっと、あなたはタヌキなのね。あ。鏡見れば分かると思うけどね」
(#^ω^)「ビキビキ」
ξ゚听)ξ「あーもー。怒らないでってば。あなたニートでしょ?
私はそんなあなたを救いにきたんだよ。こんな生活には嫌気がさしてるでしょ」
(;^ω^)「否定できないお」
ブーンは仕方なく頷いた。
架空請求業者をからかうのも、巨大掲示板に書き込むのも、確かに飽きた。
しかし、働く気は起きず、親からの仕送りで、中身のない生活を三年も続けているのだ。
アルバイトから始めようと思っても、やる気が出ない。
( ^ω^)「こんな生活はいやだお? でも、いまさら社会復帰なんて無理なんだお」
ξ゚听)ξ「あー、大丈夫だって。あなたも修行すれば、良いタヌキになれるから」
(#^ω^)「僕はタヌキじゃないお! さっきから人を馬鹿にしてんのかお!?」
ξ*゚д゚*)ξ「いいから黙ってついてこいや!」
二重人格っぽいおにゃのこに連れられて、ブーンは汚いアパートを出た。
( ^ω^)「どこへ行くんだお?」
ξ゚听)ξ「人里ではあまり力を使えないから、特急電車で私たちの住んでいる近くまで移動するの」
こいつ本当にタヌキかよ。
実際問題、タヌキがなんなのかよく分からなかったが、
こんな可愛いおにゃのことお知り合いになれるなら、カルト宗教でもなんでもいいや。
そんな風に考えていた時代もありました。
失うもののないブーンには、怖いものなど何もなかった。
「長野ー長野ー」
ξ゚听)ξ「降りるわよ。ここからは、車ね」
(;^ω^)「ずいぶん田舎だお」
ξ゚听)ξ「仕方ないでしょ? 人里はなれた場所にしか住めないんだから」
タクシー乗り場を回って人気のない路地までくると、おにゃのこが上着を脱ぎだした。
(*^ω^)「セクロスフラグktk」
ξ*゚д゚*)ξ「……」
口を閉じたブーンを見て普通の顔に戻ったおにゃのこは、尻ポケットから葉っぱを一枚取り出した。
ξ゚听)ξ「よく見ててね。あなたもいつか、こんなことができるようになるから」
葉っぱを脱いだ上着で包んで少し離れたところに放ると、上着が地面に触れた途端に、煙が噴き出した。
(;^ω^)「あうあう! 目に沁みるお」
ξ゚听)ξ「だからよく見ててって言ったのに」
ブーンが目を開けると、上着の落ちたあたりにピカピカのフェラレディがあった。
(*^ω^)「ちょwww高級車www」
ξ゚听)ξ「修行すれば、こんなことができるようになるんだよ。さ、運転して」
(;^ω^)「自分で運転しないのかお?」
ξ゚听)ξ「免許持ってる年に見える?」
小学生は免許持ってないわな。ブーンはおとなしく運転席におさまった。
それから、細い道を何時間走っただろうか。
久しぶりの運転のせいで、体中の筋肉が痛んだが、ドライブは楽しかった。
途中で見た巨大な橋で、身が竦むほどの恐怖を味わったり、
牧場でソフトクリームを食べて、気を取り直したり。
都会でしか暮らしたことのないブーンには、
視界を埋め尽くすような自然が、とても心地よかった。
車通りが少なくなってきた頃に、ツンが右手を上げた。
ξ゚听)ξ「路肩に停めて」
言われたとおりに停める。車一台がようやく通れるような細い道だが、
一時間ほど前から対向車を見ていないので、問題ないだろう。
ξ゚听)ξ「車を戻してっと」
ツンが葉っぱでボンネットを軽く叩くと、フェラレディが上着に戻った。
ξ゚听)ξ「んーと、飛行機は運転できないよね?」
(;^ω^)「ムリス」
ξ゚听)ξ「まあ、滑走路ないから、運転できても意味ないけどね〜」
ツンはニヤニヤしながら新しい葉っぱを二枚取り出し、ブーンのほうを見つめた。
(*^ω^)「うはwwセクロスフラグktkrwww」
ブーンはひっくり返されて、靴を取られた。
(;^ω^)「痛いお」
頭をおさえるブーンの目の前に、竹とんぼが差し出された。
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「タケコプター。人に見つからないように、低く飛んでね」
そう言うと、ツンはタケコプターの吸盤を頭につけた。勢いよく羽が回転する。
ξ゚听)ξ「おっ先〜」
(;^ω^)「あっ。待っておー!」
ブーンもツンを真似て吸盤を頭に貼り付けると、羽が高速回転を始めた。
⊂二(*^ω^)⊃「うはww空も飛べるはずだおwwwww」
タケコプターを使っての山登りは、楽しかった。
途中でパンチラと叫んだら蹴飛ばされたが。
二人はしばらく空中飛行を楽しんだ後、無事にタヌキの村に下り立った。
ξ゚听)ξ「さ、村長に挨拶に行くよ」
⊂二(*^ω^)⊃「ブーン! ブーン! 空もーとべーるはずー♪」
ξ*゚д゚*)ξ「うりゃりゃりゃりゃ!」
(/////)ω;)「ごめんなさいお」
ブーンは涙で霞む目を擦りながら、村を眺めた。
テレビでしか見たことのないような、古い日本家屋が連なっている。
奇妙な懐かしさを覚えながら、ツンの後について、一際大きな家に入った。
ξ゚听)ξ「そんちょー。戻りましたよ」
( ´┏_⊃┓`)「おお。ブーンだね? おいすー」
( ^ω^)「おいすー」
ξ゚听)ξ「村長。これで、私の試験は合格ですよね?」
( ´┏_⊃┓`)「うん。そうだね。これで君は、一人前のおにゃのこだ」
ξ゚听)ξ「あ?」
( ´┏_⊃┓`)「じょ、冗談だよ。君を一人前のタヌキと認めよう」
ξ゚听)ξ「やったー!」
( ´┏_⊃┓`)「ついては、君をブーンのクラスの担任に任命しようと思う」
(;^ω^)「は?」
ξ;゚听)ξ「は?」
( ´┏_⊃┓`)「ブーン。すまないが、君には小学校からはじめてもらうよ。
一から勉強して、いいタヌキになれるように、頑張ってくれたまえ」
村長は笑いながら、奥の部屋に入っていってしまった。
(;^ω^)「ど、どういうことだお?」
ξ;゚听)ξ「さぁ……」
ブーンは一人前のタヌキになれるのでしょうか。続く。