-VIP産小説保管庫-

( ^ω^)ブーン達が廻るようです:5:「P.エリア」

72 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:01:06.38 ID:X1kSWEfDO
5:「P.エリア」

( ^ω^)

 薄暗くて眩しい。
 広過ぎて窮屈だ。
 ここでは、背反する二つの要素が、違和感なく同居していた。
 全てに与えられる筈だった名前は、既に存在しない。
 「僕」である筈の何かは、いつからかここにいて、いつかはここを出る。
 何故か、それは知っていた。

「君は何がしたい……?」

 それは一方的に、僕に声を掛ける。

「……」

「……君が望む力は何? 君が信じたいのは誰?」

 僕は答えない。
73 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:02:00.92 ID:X1kSWEfDO
 ここには「声」がない。
 「空気」も「答え」もあり得なかった。

「君がいたい世界はどこ? 君がいない世界はどう?」

 それは一気にまくし立てる。

「……正解は?」

( ^ω^)「空……」

「……」

 その時、そこに空気が生まれた。
 僕は全力でそれを揺らす。

「……叫べッ!!!!!」

(  ω )「飛べるおッ!!!!!」

 その声に反応して、ようやく「僕」は形を得た。
 透明な景色に色が塗られる。

(; ω )「……ハァ、ハァ」
74 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:03:18.95 ID:X1kSWEfDO
 夢。

(;^ω^)「(……かお? ヤケにリアルだったお……)」

 体を起こすと隣にはドクオがいた。
 辺りを見回して、一瞬、焦る。

(;^ω^)「(そういえば自分の家じゃなかったお……)」

('A`)「……見たのか? お前も」

( ^ω^)「お?」

 「見た」?

( ^ω^)「見た……お」

 「何を」?

(;'A`)「これ、ショボンらの言ってたやつだろ? 心臓にワリィ……」

 確かな「何か」を。
76 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:05:25.39 ID:X1kSWEfDO
 山を降りた僕らがクー達に言われるがままに、
案内されたのは「秘密基地」と言うより、「体育館」に近い建物だった。
 _
( ゚∀゚)「テメェら、起きたんなら体育館裏に集まれ。『クオリティ』、見てやるよ」

 そして、通称「体育館」。
 どうみても体育館です。本当にありがとうございました。

('A`)「ふぅ……ブーン、行くぞ」

 ここに案内された後、僕らはクー達から、この世界の説明を受けた。
 何もかもが胡散臭いが、実際に見ているのでどうしようもない。
77 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:07:01.43 ID:X1kSWEfDO
川 ゚ -゚)「そして、『クオリティ』についてだか……」
 _
(#゚∀゚)「あーッ、話が長ぇ!! もう良いだろ!?
寝りゃわかる!! 以上、終了ッ!!」

(´・ω・`)「まぁ、確かにね。今日は色々あったし……明日にしようか」

 そんな訳で、今に至る。

('A`)「ふぅ……行くか」

 僕らが寝ていたのは、体育館的に言う所の「体育館倉庫」だ。
 ショボンとクーは外の見張り。
 ジョルジュは僕らの護衛、らしい。
 _
( ゚∀゚)「馬鹿ミテェに寝てられんのは今日くらいだと思え?」

 ……らしかった。
80 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:16:28.91 ID:X1kSWEfDO
(´・ω・`)「おはよう。どうだった?」

(;'A`)「恐ろしいものの断片を味わったぜ……」

(;^ω^)「イカドーブン……」
 _
( ゚∀゚)「ヨシッ、見せてみろ。期待外れだったら殺す」

川 ゚ -゚)「相手が要る要なら手を貸すが」

 体育館裏には既に全員が集まっていた。
 昨晩は暗くて気付かなかったが、ここら一体は荒野らしい。
 いつかテレビで見た「サバンナ」に近かった。

( ^ω^)「僕からで良いかお?」

 ドクオがニヤニヤと僕を見た。

(*'A`)「ほぅ……お手並み拝見と行きますか」

(;^ω^)「(キメェお……)」
82 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:25:32.91 ID:X1kSWEfDO
 頭に今朝見た夢を浮かべる。
 僕に問う声。
 僕は答えた。

( ‐ω‐)「飛べるお……」

 地面を消すイメージ。
 空気を裂くイメージ。
 世界を観るイメージ。

( ‐ω‐)「……」

 体が溶けそうに熱い。
 立っている感覚が薄れて来た。

川;゚ -゚)「ほぅ……」
 _
( ゚∀゚)「これはなかなか」
85 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:43:10.29 ID:X1kSWEfDO
(;'A`)「ちょ……おま……」

 答えなんて、端から用意されていない。
 世界なんて、見た事もない。

( ‐ω‐)「知ったこっちゃねーお」

 目を開けると、僕は「空の中」にいた。

( ^ω^)「うはっ、キタコレ!!」

(´・ω・`)「凄い……」

 体が軽い。イメージ通り、三百六十度全てに体を揺らす。

( *^ω^)「おっおっおっ」
 _
( ゚∀゚)「おいッ!! 良いぞ、降りて来い」

( ^ω^)「こんなもんじゃないお……」

 下にいる四人に目をやる。
 スペースは十分だ。
86 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 14:44:16.36 ID:X1kSWEfDO
 適当な位置に狙いを定めて、僕は急降下を始めた。

( ^ω^)「おおおぉぉぉォォッ!!」

「「「「アッー!!!!!」」」」」

 気持ち良い風を受け、眼前に地面が迫る。
 僕は轟音を響かせながら着地した。

(;'A`)「ゲフッ、ゴホッ……おい、ブーンッ!! 無事か!?」

(;^ω^)「お、おいすー……やりすぎたお」

(;´・ω・`)「ブーンは僕らに酷い事をしたよね」

川;゚ -゚)「見た事のないクオリティだ。『浮遊』とも違う……」
 _
( ゚∀゚)「重力とかイジるやつだろ? 悪くねぇな」
88 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 15:04:25.66 ID:X1kSWEfDO
 自分の体で飛んだ。
 充実感、開放感、僕は確かな手応えを感じた。

( ^ω^)「(……計画通り!!)」
 _
( ゚∀゚)「じゃあ、次。ドクオ」

(;^ω^)「ナンテコッタイ」

(;'A`)「ハードル高ぇ……」

 僕はジョルジュから「フワフワすんな」とのお言葉をいただき、大人しく見学する事にした。

('A`)「俺のは地味なんだが……」
89 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 15:05:47.00 ID:X1kSWEfDO
 必死にハードルを下げる様はなかなかに泣かせる。
 そんな事を考えていた僕は次の瞬間、我が目を疑った。

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「クーに近いね」

川 ゚ -゚)「これは鍛え甲斐がありそうだ」
 _
(;゚∀゚)「……か、カッケェッ!!」
 ドクオの右手には、いつの間にか刀が握られていた。
 どこもかしくも、刀身全てが真っ黒い刀。

(  ω )「(何も出せない僕は負け組……)」

川 ゚ -゚)「ドクオ。振ってみてくれ」

('A`)「……把握した」

 ドクオは腰を落として、居合いの様に刀を構える。

( A )「ふぅ……ッ!!」
90 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 15:14:59.35 ID:X1kSWEfDO
(;^ω^)「あるある……」

(;´・ω・`)「ねーよ……」
 _
(;゚∀゚)「予想外です……」

川 ゚ -゚)「ほぅ……」

 一瞬後。
 ドクオは五、六メートル先に、刀を振り切る形で立っていた。

('A`)「こんなもんかな……後、刀は伸びるっぽい」

( ^ω^)「ブーンはいらない子……」
 _
( ゚∀゚)「……生きろ」

 和やかなムードに包まれた、僕とドクオの発表会が終わると次は、また話があるらしい。
 ここは「死後の世界」。
 とは言え「こんな時間が続けばな」と、思える時間が流れた。
 油断し切っていた僕はクーの一言に打ちのめされた。
92 :農業(樺太) 2007/04/12(木) 15:17:41.59 ID:X1kSWEfDO
( ^ω^)「『話』ってなんだお?」

 どことなく浮かれた声で訪ねる。
 クーは表情一つ変えずに答えた。

川 ゚ -゚)「あぁ。いよいよ――」

―――「戦争」だ。

5:「P.エリア」

―fin―