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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第七話「あしきこころのししゃ」
- 3 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 20:59:10.87 ID:BEpWB5SA0
- 第七話「あしきこころのししゃ」
声が聞こえる。
それは、人間の言葉では無い。
救いを求めるような、悲痛な叫びのようなもの。
まるで地獄へ落ち行く者が、慈悲を求めるような声。
何故だ。
何故僕を見ながら、叫ぶのだ。
誰かが僕の足を掴み、引き込もうとしている。
やめろ、やめ――――
- 4 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:00:33.81 ID:BEpWB5SA0
- (;゚ω゚)「――っ!!」
声にならない叫びを出し、体を勢い良く起こす。
乱れる呼吸を整えながら、少しずつ意識がはっきりと戻ってくる。
(;゚ω゚)「ここは……」
辺りを見回すと、見慣れた風景。
僕のいる場所が、自分の寝床だと気付く。
(;゚ω゚)「夢……だったのかお?」
昨日の記憶を思い出してみる。
だが、そう思考した瞬間
(;゚ω゚)「ッ!?」
- 6 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:03:36.18 ID:BEpWB5SA0
- 『貴様は森の民』
『今はブーンか?』
『力は無い者が、何を言っている』
『もはや無駄だ』
『声が聞こえぬのかっ!』
『信じるとしよう』
頭の中に、あらゆる声と情景が再生される。
同時に、悪寒を感じ、体が震えた。
- 9 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:05:12.51 ID:BEpWB5SA0
- その記憶は、自分の物のようで、どこか違う気がする。
そもそも、僕は……誰なんだ?
ブーンと呼ばれる者か。
森の民と呼ばれる者か。
僕は、何をしようとしているんだ?
僕は、何が目的でここに居るんだ?
(;゚ω゚)「おっ……」
まただ。
頭が、割れるように痛む。
まるで、初めて目覚めた時のような痛みだ。
(;゚ω゚)「う、うぁぁぁっ!!」
大声を出し、自分の頭を掻き毟る。
僕は誰だ?
この意識は誰だ?
本物の僕はどれなんだ?
- 10 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:07:53.43 ID:BEpWB5SA0
- ノハ;゚听)「ブーン!!」
その声に気付いたのか、ヒートが部屋に入ってきた。
僕の様子を見るなり、慌てて近づいてくる。
ノハ;゚听)「ブーン! お願い、やめて!!」
ヒートが僕の腕を掴む。
……ブーン、それは僕の事か?
(;゚ω゚)「ヒート!! ブーンって誰のことだお! 僕は、僕は何者なんだお!?」
ノハ;゚听)「ブーン、落ち着いて……!」
(;゚ω゚)「ブーン……? 僕はブーンなのかお!?」
ヒートの肩を掴み、問う。
興奮のあまり、掴んでいる腕に力が入る。
- 11 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:10:37.47 ID:BEpWB5SA0
- ノハ;凵G)「ブーン、痛い……! ブーン……!」
(;゚ω゚)「っ!」
ヒートの涙を見て、咄嗟に腕を放した。
そして、罪悪感が波のように押し寄せてくる。
ノハ;凵G)「ッン……ヒッ……」
(;^ω^)「ひ、ヒート……」
ヒートの涙が頬を伝い、落ちる。
僕は、初めて見たヒートの涙に、頭が真っ白になり呆然としていた。
- 12 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:14:08.99 ID:BEpWB5SA0
- ノハ;凵G)「ヒクッ……ブーン……」
ヒートは、涙を拭いながら、言葉を飲み込む。
そして、搾り出すように
ノハ;凵G)「ブーンはブーンだよ……! へっぴり腰で……心配ばかりかけて……」
その言葉は、僕に言っているのか、或いはヒート自身に言い聞かせているのか。
僕はただ、黙ってヒートのことを見つめる。
ノハ;凵G)「かけがいのない、大事な家族なんだから!」
( ^ω^)「っ!」
ヒートは、僕を抱きしめた。
泣きじゃくりながら、僕の胸に顔を押し当てる。
- 13 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:15:30.61 ID:BEpWB5SA0
- ノハ;凵G)「大丈夫だから……」
そう呟き、ヒートは嗚咽する。
僕は、そんな彼女の背中に手をまわし、抱きしめる。
あたたかい体、近くで感じる吐息。
その全てが、僕の心の乱れを癒していく。
( ^ω^)「ヒート」
僕は、抱きしめたまま彼女の名を呼ぶ。
( ^ω^)「ごめんお。もう、大丈夫だお」
ノハつ凵G)「……うん」
それから、しばらくの間、僕達は抱き合っていた。
離れたくない、そんな思いが僕の頭を駆け巡る。
ヒートのことが好きだ。
僕が何者でもいい。
この意識が偽者だろうと、本物だろうと、この気持ちだけは確かに在るんだ。
- 14 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:18:36.69 ID:BEpWB5SA0
- ――…
ノパ听)「もう、落ち着いた?」
( ^ω^)「うん……」
ヒートは、目頭に残った涙を拭い、立ち上がり
ノパ听)「よし! じゃあ、朝ごはん食べよっか!」
そう言いながら、僕に手を差し出した。
( ^ω^)「……うんだお!」
僕は、その手を掴み立ち上がる。
迷ったり、考えたりしても仕方ないんだ。
自分を信じるんだ。
そして、何があっても皆を守る。
そう、僕は心に決めた。
- 15 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:19:59.33 ID:BEpWB5SA0
- 僕がそんなことを考えている間に、ヒートが藁の扉を潜る。
川;゚ -゚)「あ、ダメ……」
( ゚д゚ )「っ! しまった!」
ノハ#゚听)「……」
扉を開けると、そこに二つの見慣れた顔。
(;゚д゚ )「いやー、ははは。あまりに遅いんで、様子を見に来たんだよ。うん、たった今」
川゚ -゚)「ん、ミルナ殿。正確には、ヒートが泣きながらブーンを抱きしめる辺りからじゃないか?」
(;゚д゚ )「ちょ……!」
その言葉に、ヒートの目が鋭くなる。
そして、拳を思い切り握り締める音。
- 18 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:21:36.66 ID:BEpWB5SA0
- ノハ# )「なるほどね……。ふーん、そう……」
いつもの大きな声とは違い、怒りを凝縮したような発音で呟く。
その強烈な殺気に、ミルナも思わず腰を抜かしている。
(;゚д゚ )「ま、まあ落ち着け。話し合おうじゃないか」
ぷつん、と何かが切れる音。
ノハ#゚听)「この腐れ野次馬兄貴―――ッ!!」
地震でもないのに、家が揺れる。
それは、見ているこっちまで痛くなるような光景だった。
(;^ω^)「……」
川 ゚ -゚)「ううむ。今のヒートは、私より強いかもしれんな」
- 19 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:23:38.80 ID:BEpWB5SA0
- ノハ#゚听)「まったく」
(#)д(#)「……」
外への逃亡を試みたミルナは、十歩歩く間も無くヒートに捕まり、タコ殴りにされていた。
頬に拳の跡がついており、みるも無残な姿で倒れている。
(;^ω^)「ミルナさん……」
川 ゚ -゚)「無茶しやがって」
僕とクーは、哀れみと同情の目を向ける。
そして、静かに手を合わせご冥福を祈った。
(#)д(#)「……勝手に殺すな」
川 ゚ -゚)「お、生きていたのか」
(#)д゚ )「久々にヒートの逆鱗に触れてしまったようだな……」
ミルナは笑いながら、拳の跡がついた頬を擦る。
その様子を見たヒートは、横目で睨みながら舌打ちをした。
(;^ω^)「……」
うん、見なかったことにしよう。
- 20 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:25:20.85 ID:BEpWB5SA0
- 川 ゚ -゚)「それより、早く朝飯を食べないと冷えてしまうぞ?」
クーがお腹を擦りながら言う。
ノパ听)「あ、ごめん! まだ味噌汁しか作ってないや!」
( ^ω^)「じゃあ、みんなで作るお!」
僕達が再び家へと入ろうとした時
( ^ω^)「……お?」
地震だろうか、僅かに地面が揺れている。
いや、違う。揺れているのは空気だ。
- 21 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:26:34.49 ID:BEpWB5SA0
- ノパ听)「ブーン、どうしたの?」
( ^ω^)「何か、村に近づいてきてるお」
空気の揺れは、徐々に大きくなる。
耳を澄ますと、遥か遠くから足音が聞こえた。
( ^ω^)「何か……すごい数の足音が、ここに向かってきてるお」
( ゚д゚ )「足音、だと?」
ミルナは立ち上がり、目を閉じる。
そして、何か聞こえたのだろうか
( ゚д゚ )「気になるな……。ちょっと様子を見てこよう」
そう言い、ミルナが村の入り口へと走っていく。
ミルナに続き、僕達も走る。
空気の揺れは、徐々に近くなっていく。
- 22 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:29:18.12 ID:BEpWB5SA0
- (;゚д゚ )「っ!」
村の入り口まで来ると、急にミルナの足が止まった。
ミルナの顔を見ると、目を見開き何かを見ている。
川 ゚ -゚)「あれは……!?」
(;^ω^)「お?」
一番後ろを走っていた僕は、皆の視線の先を見る。
僕の目に映ったのは、五十はあろうかという影。
隊列を作り、人を乗せた馬が、足音を立てながら近づいてくる。
その胸には赤いバッチ。
ノパ听)「ハングル軍……!」
ヒートが、唇を噛みながら呟いた。
- 23 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:30:55.09 ID:BEpWB5SA0
- ――…
(-_-)「あなたが、この村の長ですか」
馬に乗ったヒッキーが、視線を落とす。
朝のヴィップ村、その入り口の前に村人達が集まっている。
何故なら、馬に乗った屈強な兵士達が、五十人近く村にやってきたのだ。
(´・ω・`)「人に名を名乗る時は、自分から名乗るのが常識でしょう?」
(-_-)「これは失礼……私は」
(´・ω・`)「僕の本名はショボン。村の長をやってるピチピチの五十代だよ」
ヒッキーが名乗る前に、おどけた口調で村長が名を名乗った。
その行いに、一般兵が凄みながら一歩前に出る。
- 24 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:33:10.71 ID:BEpWB5SA0
- 「貴様、舐めた真似をすると怪我をするぞ」
(´・ω・`)「舐めた真似? ……それはこっちの台詞でしょう。
条約が結べないから、数をそろえて来たんですか?
こんな小さな村一つに、いい男がみっともない」
村長は馬に乗る兵士達を睨み付けながら、淡々とした口調で皮肉る。
瞬間、兵士は腰から剣を抜いた。
ノパ听)「村長!!」
(´・ω・`)「……」
剣の切っ先は、村長の目の前で静止する。
ヒッキーが兵士に向かい手を出し、止めさせたのだ。
(-_-)「眉一つ動かさないとは、立派な覚悟だ。
だが、こちらは王の命令に従うのみ。お前達に選択の余地は無い」
そう言い、ヒッキーは懐から文書を取り出す。
(-_-)「我が国からの、新たな条約内容だ。目を通せ」
村長は、ゆっくりとヒッキーに近づき文書を受け取る。
そして、口を開かぬまま目を通し始めた。
- 27 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:35:49.23 ID:BEpWB5SA0
- ノパ听)「くっ……」
ヒートは、兵士達を睨み付ける。
その様子を見たミルナが、ヒートの方を向いて首を横に振った。
今、手を出したら相手の思うつぼだ。
(;^ω^)「……」
ただ見つめることしか出来ない自分に、苛立ちが沸いてくる。
どうして、この村をそっとしておいてくれないんだ。
どうして、全てを自分の手の中に入れようとするのだ。
人間は、何故、自己の欲望しか考えないのだ。
- 28 :理学療法士(神奈川県) 2007/04/06(金) 21:36:44.80 ID:BEpWB5SA0
- (´・ω・`)「馬鹿な……!」
不意に、村長が文書を握り締めた。
その手は、怒りからか震えている。
( ,,゚Д゚)「村長、何が書いてあったんだ?」
ギコが問う。
村長は、呆然とした様子で
(´・ω・`)「……この地の権利を全てハングル国に捧げ、村の衆はハングル国にて強制労働」
そう、ぽつりと呟いた。
第七話「あしきこころのししゃ」 終わり