-VIP産小説保管庫-

ミ,,゚Д゚彡彼への依頼はV・I・Pのようです:三話 「一人では解けないパズルを抱いて」

134 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:02:15.31 ID:FpmGEvP60
三話 「一人では解けないパズルを抱いて」



記憶の断片、思い出されるのは差し出された手

濡れ、冷えた体を暖めてくれたコートの温もり


「ちくしょう…」

悪態をつく言葉は悲しく響く

元より何を考えているのか分からない奴だった


どうして?


言葉に出さず、何度も何度も疑問を思う

望む答えは返ってこない、返ってくるのは自分を否定する事ばかり


从 -从「私は…そんなに」    ――イラナイノ?
135 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:03:55.14 ID:FpmGEvP60
どこからか聞こえてくる肯定の言葉

「!!」

それを認識した時、世界は黒く染まった

自分が目を閉じている事に気付く


从;゚-从「ぁ…え?」

目を開くと見知らぬ天井が目に映り

一瞬、夢と現実が混ざり思考が混乱する

「あ、そうか…」

だがそれもすぐに落ち着き、自分が夢を見ていたのだと気付く
起き上がり洗面所へ向かう彼女の瞳は赤く、頬は涙の跡をはっきりと残していた



今日は、彼等がここに来て4日目の朝だった
137 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:07:32.18 ID:FpmGEvP60
【事務所】


奇妙な話がある

それはこの事務所に変質者が度々現れると言う物だ
ちなみに被害に遭った子は共通して子役である

(*;゚ー゚)「ねえモナー、放って置いていいのかな」

(;´∀`)「…ま、まあ別に何かされたとか言う訳じゃないモナ」

(*;゚ー゚)「それはそうだけど…」

そう被害と言っても他愛の無い事ではある

やたら声をかけられるとか
やたらお菓子を配っているとか
やたら携帯番号を聞きたがるとか
やたら自分をお兄ちゃんと呼ばせたがる、等といったものだ
138 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:09:27.21 ID:FpmGEvP60
(*゚ー゚)「でも流石にここの威信に関わりますよ」

と、噂をすれば何とやらか
どこからか悲鳴にも似た声があがる

(;´∀`)「…」

(*゚ー゚)「…」

またか…、二人は呆れたように扉の方を見つめた
奥からは尚声が聞こえてくる

「どうしました!?」

「このふさふさした人…変なんです!」

「そうです、俺が、変なフッさんです!」

次いでお約束の台詞
人が転げる音と色々な物が崩れる激しい音が響く
139 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:11:03.32 ID:FpmGEvP60
しばしの間の後、椎が切り出した

(*;゚ー゚)「やっぱりそろそろ帰ってもらった方が」

(;´∀`)「も、モナ…でもまだ何一つ解決してないし」

そう、実際彼等がここに来てからと言う物、何一つ進展していないどころか
ずっと続いていた脅迫行為もピタリと止んでしまったのだ

(*゚ー゚)「だからもう平気なんじゃ無いですか? きっと一時だけの悪戯ですよ」

(;´∀`)「そうなのかなぁ」

( ´∀`)「モナ?」

その時、ドアが数回ノックされた
モナーが入るよう促すとドアが静かに開かれる

从 ゚∀从「失礼するよ」

(*゚ー゚)「あ、ハインさん!」

( ´∀`)「あぁ、良く来てくれたモナ」
141 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:13:07.66 ID:FpmGEvP60
从 ゚∀从「いやいや」

( ´∀`)「それで、早速だけど返事を聞かせてくれるモナ?」

从;゚∀从「それが、その…やっぱりもう少し考えさせて欲しいんだが」

( ´∀`)「んん…まあ構わないモナ」

从;゚∀从「すまん」

( ´∀`)「いいんですよ、でも思えばあの時は驚いたモナ…
      最初はあんなに頑なだったのに急に考えさせてくれって言うから」

从;゚∀从「…はは」

あくまでも柔和な対応をするモナーに対し
不平を漏らしたのは椎だった

(*゚ー゚)「えぇー? まだ迷ってるんですか? 早く受けちゃってください
    ハインさんならきっと大活躍ですよ?」

从;゚∀从「いやでもなぁ…」
142 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:16:05.24 ID:FpmGEvP60
从;゚∀从「っと…いかんいかん、そうだった、ちと話があるんだが」

( ´∀`)「なんだモナ?」

从 ゚∀从「ああ、依頼の件だけどな、なんか何事も無さそうだし
     そろそろ解約してもらおうと思ってるんだが」

(;´∀`)「え…」


……。

  _,
ミ,,゚Д゚彡「えー、もう帰るの?」

そうして二名程、依頼終了に若干不服を垂れていたが
結局今回は未遂という事で終了となった

从 ∀从「…」

事務所を出た頃
相変わらず普段どおりのフサに対し
ハインはどこか気まずそうにしている
143 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:18:03.35 ID:FpmGEvP60
そんな彼女に調子を狂わされたのか、すぐにフサも大人しくなった

車内では椎が楽しそうにハインに話しかけているが、彼女はどこか上の空
時折助手席に座る男に視線が向かうが、それもすぐに他所へ泳ぐ

対するフサはただ窓の外を眺めていた

どこか重苦しい空気の中、車は椎の家まで辿りついた

(*゚ー゚)「ハインさん、家に寄っていきません?」

車を降りる際、椎が言う

从 ゚∀从「え、うーん…どうしよう?」
 _,
ミ,,゚Д゚彡「何で俺に聞くかな、行けばよくね?」

从;゚∀从「…おまえは?」

ミ,,゚Д゚彡「俺は帰る」
144 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:20:20.67 ID:FpmGEvP60
ミ,*゚Д゚彡「そろそろ下校の時間だしね、フヒヒwwww」

从 ∀从「そ、か」

ミ,,゚Д゚彡「てことで俺はここでいいや」

そう言ってフサは車から下りると、どこか楽しそうに歩き去った

从 ∀从「ぁ…」

車の横を通り過ぎる彼を、彼女の目は自然と追っていた
そんな様子を知ってか知らずか椎が話しかける

(*゚ー゚)「…えと、それじゃあ来てくれます?」

そしてその言葉に了承し、二人はマンションへと向かう事になった
146 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:22:13.45 ID:FpmGEvP60
(*゚ー゚)「それじゃ、また明日」

( ´∀`)「今日もお疲れ様モナ」

从 ゚∀从「それじゃ」


( ´∀`)「…いい返事を期待してますモナ」

モナーは去り際にそう言い残し、車はどこかへ駆けて行った

その後、エレベーターを昇り、彼女の部屋へ向かう

(*゚ー゚)「ここですよ、鍵開けますね…あれ」

从 ゚∀从「どうした?」

(*;゚ー゚)「開いてる…」

从;゚∀从「なに?」

室内に入り、椎は絶句する

(*; − )「なに…これ…」
147 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:24:03.64 ID:FpmGEvP60
中はまるで泥棒でも入ったかの様に荒らされていた

部屋中の引き出しという引き出しは開かれ

床には物が散乱している

从;゚∀从「…これは、まさか例の脅迫の犯人が」

(*;゚−゚)「そんな! だってあれは私が…!!」

从;゚∀从「はぁ?」

言いかけて、椎はハッとした様に口を閉じ黙り込んだ

(*;゚ー゚)「な、なんでもないです…」

从 ゚∀从「…どういう事だ?」
149 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:25:59.06 ID:FpmGEvP60
不可解な言動をハインは追及するが
彼女は黙ったまま答えようとしない

その時、見計らったように入り口から騒音が聞こえ
二人は驚き振り返る

从;゚∀从「な、なん!?」

言葉も途中に、あっという間に室内に現れたのは
顔全体を覆う黒いマスクを被った数人の人間だった

(*;゚−゚)「え、きゃああああああ!!」

連中は何を話す事もせず
突然椎に組み付き口に白い布を押し付ける

(*; ー )「むーーーっ!? ん…む…」

動揺し、暴れていた椎が途端に大人しくなり
ゆっくりと目を閉じ、組み付く男に身体を預けた
150 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:28:01.20 ID:FpmGEvP60
从;゚∀从「おいお前等! 何やって!!!」

慌てて止めようとするハインの腕を一人の男が掴み
頬に平手が一発、そして乱暴に放り投げた

从;゚-从「っ…う」

そのまま床へ倒れるように寝転ぶと、痛みを訴える声を上げた

「おい、こいつはどうする」

「見られた以上しかたねえ、連れてくぞ」

从;゚-从「な、あ…」

その手に折りたたみ式ナイフを握り
ゆっくりと彼女へ近づき…

「やめ…!!」
152 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:30:12.14 ID:FpmGEvP60
脅すようにナイフを向けたまま
その手が彼女へと伸ばされ、捕まる

寸前

銃声と共に、窓のガラスが音を立て砕け散り
握っていたナイフが弾け飛び、床を転がる


「!?」

从; -从「!?」


全員の目線は一点


そこには愛銃のコルトパイソンを構え

蹴破られ、散らばるガラス片の上に立つ


一人の男へ向けられた
153 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:31:55.41 ID:FpmGEvP60
  _,
ミ,, Д 彡「…てめぇ」


从;゚∀从「フ…サ? お前、なんで…」

「な、なんだあいつは!?」

「銃…ほ、ほんもの!?」

フサは何も言わず連中を睨みつけながら室内へ入ると
髪の毛を掴み、思い切り引っ張る

マジックテープを剥がした様な音が響き


次いで、咆哮


(,, Д )「なに、してくれてんじゃゴルァァァァァアア!!!」


「!?」
155 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:35:47.07 ID:FpmGEvP60
「おい!!逃げるぞ!!!」

(,♯゚Д゚)「…!!」

床を蹴る、怯み逃げ出す連中の背中へ一瞬で追いつくと
その内の一人を捕らえ、胸倉を掴み上げるとそのまま殴りつけた

「あ゛……が…」

マスクの下に見える左右の目が逆に泳ぎ
呻き声を上げる口から血が伝う

「ひっ!?」

その隙に他の連中が逃げ出し、椎を抱えて部屋を飛び出ていく

(,,゚Д゚)「…」

そんな様を彼は黙って見つめていた

从;゚∀从「お、おい!! 行っちまうぞ!?」
156 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:37:37.39 ID:FpmGEvP60
(,,゚Д゚)「ああ」

从;゚∀从「おいってば!!」

(,,゚Д゚)「心配すんなって、一人は捕まえてあるからな」

从;゚∀从「そ、そうか…」

从;゚∀从「あ、いや、それよりお前…なんでここに」


(,, Д )「……」

从;゚∀从「…」

答えは返ってこない、フサはただ目線を外したまま黙り込んでいる
そんな彼の様子を前に彼女の心に不思議な感情が湧き上がる

从 ∀从(まさか…私を心配して…?)
157 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:38:59.34 ID:FpmGEvP60
(,,゚Д゚)「…この家には盗聴器やら何やら色々と仕掛けられていた」

从;゚∀从「へ?」


(,,゚Д゚)「前来た時にそいつは壊しておいたから、彼女がしばらく帰らなければ
     連中は必ず行動を起こすと思っていた…そしたら案の定だ」


从;゚∀从「えーと…」

(,,゚Д゚)「泊り込んでる間はどうやら俺を警戒していたようだな…
     それで帰る振りをしたらこの通りって訳だ」


从; -从「そ、そっか…」

ハインはがっくりと肩を落とす
期待していた言葉は見る影も無い
159 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:39:58.43 ID:FpmGEvP60
それ所か、自分の知らない間に事は彼の思う通りに進んでいたようだ

確かにこれじゃあ私は必要無いのかもしれない
きっと、本当に誰でもいいんだ


从  -从「…」

無性に自分が情けなく感じ、悔しさに唇を噛み締める


从  -从(結局…私は何の役にも立てないんだ…)

この人に『拾われた』あの日から…


フラッシュバックする記憶


  差し出されるテノヒラ


从;゚-从「え?」
161 :週末都民(栃木県) 2007/04/07(土) 18:43:11.65 ID:FpmGEvP60
从;゚-从「え?」

(,,゚Д゚)「とっとと行くぞ」

从;゚-从「でも…」


(,,゚Д゚)「お前は…俺のパートナーだ、違うか?」


从 -从「!!」

从;゚∀从「ぁ…あ」


(,;゚Д゚)「違うってんならそれでいいさ、だがそう思うならさっさと…」


从 ;∀从


差し出されるテノヒラ

日が暮れ始め、オレンジの陽光が室内を優しく照らし
床に散らばるガラス片がキラキラと反射し輝く

ガラスに映りこんだ二人の手は、確かに重なっていた

                           三話 終