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( ^ω^)ブーンと鋼鉄の城と樹木の民のようです:『第四章 憎しみの炎は燻り、思惑は交錯す』
- 3 :あらすじ 2007/06/14(木) 21:57:16.98 ID:koVLWYvK0
- ( ^ω^)「ギャ!グッワ!待ってくれ!待ってくれ!」
ブーンは、叫んだ。
( ^ω^)「許してくれよ!入れたかっただけなんだから」
('A`)「バキッ!ボコッ!」
ドクオはかまわず殴り続ける。
( ^ω^)「ヒッー!助けてー!助けてー!」
ブーンが悲鳴に近い叫び声をあげた。
('A`)「お前みたいな奴がいるからいけないんだ!」
ドクオが叫びながら殴り続ける。
( ^ω^)「ギャー」
ブーンの血があたりに飛び散った。ドクオのコブシも血で染まっている。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:00:03.07 ID:koVLWYvK0
- ('A`)「世の中!狂ってんだよ!狂ってんだよ!」
ドクオの形相は、もうフツウではなかった。
その様子を見ていた、ツンも従業員も言葉を失ってしまっていた。
思わずツンが言った。
ξ゚听)ξ「店長!それ以上やったら死んじゃう!」
('A`)「ガッシ!ボカ!」
ドクオには、まったく聞こえていない。
ブーンも失神したのか動かなくなった。
ξ゚听)ξ「キャー、やめて!」
ツンが叫んだ。
(,,゚Д゚)「あっ……はい」
従業員が後ろからドクオを押さえた。
これで、大体の話は掴めるはず。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:05:34.67 ID:koVLWYvK0
- 『第四章 憎しみの炎は燻り、思惑は交錯す』
1
スオナに手を引かれるままに辿り着いたのは、壮厳な鋼鉄の扉の前であった。
川 ゚ -゚) 「着いたぞ」
('A`;)「……」
息が詰まる程に重い。
周囲の空気が違う事をドクオは一目見ただけで感じ取っていた。
スオナの部屋に比べて、倍は大きい扉であった。
全体に箔であしらわれた不死鳥の装飾は、その重厚さを一層引き立たせている。
さらには、扉を取り巻く兵士の数は尋常ではない。
壁に沿うようにして、十人の男達が守りを固めているのだ。
('A`;)「……一体どんな奴が居るってんだ」
だが、ドクオが感じ取った異様さはそこではなかった。
それは、扉の奥の気配だ。
分厚い鋼鉄を隔ててすら感じ取れる、覇気。
実はこの部屋で猛獣が飼われているのではないか。
そう錯覚させられる程に、濃厚な存在がひしひしと伝わってくるのである。
川 ゚ -゚)「父上、話がある。急なことだが、大丈夫か?」
「ん、スオナか。……ああ、大丈夫だ。入れ」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:08:23.27 ID:koVLWYvK0
- だが、スオナはその横で平然と扉を叩く。
同時に中からは、男の声が響いてくる。
そして、扉の両端に立っていた兵士が扉を開いた。
ドクオとスオナは促されるままに中へ足を踏み入れた。
('A`;)「……すげえな」
部屋の概要を目の当たりにして、ドクオは感嘆の声を漏らした。
スオナの部屋とはまさに正反対だ。
入口付近には脇を固めるように、六の翼を持った天使の彫刻が一つずつ。
床を見れば、金銀の刺繍が編みこまれた純赤のカーペットが敷かれている。
さらに、壁には美術館の如く世界中の名画が所狭しと掛けられていた。
調度品ですら豪華であった。
ベッドや箪笥、椅子、机、燭台、全ての小櫃にさえも金銀箔の細工が施されているのだ。
そのお陰で、部屋の主が明らかに周りの者と位が違うことは簡単に理解できる。
部屋の中心には円卓が置かれていた。
一個人の部屋に置くには、巨大過ぎる卓だ。
卓の向かって一番奥には、一人の男が大椅子に身体を委ねていた。
鈍重な装甲を全身に纏った、豪壮な男である。
_
( ゚∀゚) 「いよお、どうしたこんな夜遅くに?
……ん? その横のボウズは何だ? 新卒兵にしては見ない顔だが」
川 ゚ -゚)「父上、彼は私が招いた客だ。実は彼を紹介したく急遽ここに伺った次第だ」
('A`;)「……」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:10:41.93 ID:koVLWYvK0
- 一言で言えば、羆だった。
羆のような巨躯の男が装甲を纏っているのだ。
山のような質感があった。
岩石が積み重なって出来上がったような男だった。
丸太のような首の上には、身体に似つかわしい岩の顔がある。
幾多の戦いの跡だろうか、よく見れば皺に混じって無数の傷跡があった。
そして、厚い唇に、大きな獅子鼻。
さらに特徴的なのは、その墨で書かれたような太い眉だ。
端整とは言い難いが、まさに漢らしい魅力が滲み出た顔である。
_
( ゚∀゚) 「ほう……コイツが、東門で暴れ回っていた……
なるほど、驚いたな。まさかこんなボウズが屈強な兵を掻き回していたとはな」
('A`;)「……」
ドクオは目前の男に呑まれ始めていた。
だが、直ぐに彼は思い直す。
嘗められてはいけない。
眼を逸らしてはいけない。
己も、幾多の猛獣相手に戦ってきたのだ。
ここで怯むわけにはいかない。
('A`♯)「……」
ドクオは、男の雰囲気に負けじと睨んだ。
腹に力を込めた。
そして――
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:12:36.75 ID:koVLWYvK0
- ('A`)「義父さんッ!! 俺はドクオ=ナイトと申します!!
ノ ノ 不束者ではございますが、娘さんを俺に下さい!!
命を掛けて一生守り続けますッ!!」
土下座した。
ドクオが(彼女が居た事がないにも関わらず)読んだ事のある書物、
『☆How to 彼女の父親対策☆(糞味噌出版)』にはこう書かれていた。
『男は第一印象が大切である。
まずは、心からの誠意を身体で表すべし』
('A`*)(よし!! 第一印象は完璧だッ!!)
地面に手を付けるまでの速度。
一直線に延ばされた背筋。
そして垂れた頭の角度といい、全てが完璧である。
全てが上手くいったことを確認し、ドクオは心の中でガッツポーズをした。
だが、
_
(;゚∀゚)「…………は?」
太眉の男は完全に引いていた。
それもそのはずだ。
面識のない男が目の前に現れ、いきなりの『娘さんを僕に下さい』宣言。
実は、ドクオは失敗を犯してしまっていたのだ。
そもそも、彼氏として認識されていないという失敗を。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:15:05.24 ID:koVLWYvK0
- _
(;゚∀゚)「いや……あの、一体これはどういうことなんだ?」
川 ゚ -゚)「ああ、実はこの件で父上に話があったんだ。私から説明しよう」
スオナは、唐突な出来事に戸惑う男の表情を察したのか、
ドクオが軍に参加する条件として彼女が将来の妻となること、
そして、誓約書の保証人として父親である彼に同意を得に来たことを説明する。
_
( ゚∀゚)「成る程な……いや、正直焦ったが。
なあ、ドクオとやら」
('A`*)「は、はひッ!!」
ドクオは直立の姿勢で返事をする。
だが、緊張のあまり若干噛んでしまったようだ。
_
( ゚∀゚)「俺はスオナが誰と結婚しようが、とやかく言うつもりはない。
……但し、一つだけ条件がある」
く('A`*)「い……イエッサーッ!!」
太眉の男はコホン、と咳をつき、一間開けた所で言った。
_
( ゚∀゚)「……それは強えェことだ。今、お前はスオナを守ると言ったな?
だが、俺の娘はそんじょそこらの男よりも強い。
妻として守るのなら、当然スオナよりも強いんだろうな?」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:16:50.58 ID:koVLWYvK0
- 川 ゚ -゚)「それなら、問題ない。先程私は彼と一戦を交えて敗北したのだからな」
_
( ゚∀゚)「……ほう、そいつは驚いたな。
軍の中でもスオナに勝てる奴なんざ、数人居るか居ないかだ。
成程、これは面白いな」
('A`*)「……」
太眉の男は、眉を小さく動かしてドクオを凝視した。
ドクオの体格は細く、背もそれほど高くない。
だが、高密度に凝縮したダイヤモンドの如く、洗練された筋肉だ。
それに、幾年の間風雨に曝された山肌のように逞しい貌付き。
気が付けば太眉の男は、まだ少年とも呼べるドクオの姿に釘付けになっていた。
_
( ゚∀゚)「もう少し、詳しく話が聞きたくなった。ドクオ、ちょっとこっちに来い」
く('A`*)「イエッサーッ!! 義父さんの頼みとあらば世界の果てまで飛んで参りますッ!!」
川 ゚ -゚)「では、私も」
_
( ゚∀゚)「あ、お前は大丈夫だ。ちょっとドクオと二人きりで話がしたいんでな」
川 ゚ -゚)「?」
そして太眉の男は、ドクオだけ自分の方へと呼び寄せると、
椅子ごとスオナに背を向けて、耳打ちするように話し掛けた。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:18:49.31 ID:koVLWYvK0
- _
(;゚∀゚)「なあ、一つ聞くが、アイツの何処に惚れたんだ?
……いや、確かに見た目は綺麗だと思うぜ。
しかし、俺が男社会の軍に連れてきてしまったせいか、
知っての通り、男勝りの性格になってしまったんだ。
自分の娘のくせにアレだが、いまいち解せないぜ」
('A`*)「そこが『萌え』るのであります!!
男勝りの性格に反比例するかの如く、パジャマはヒヨコ柄ッ!!
俺にはそのギャップがたまらんとです!!
しかも、あの胸元から察するに『Dカップ』はあるかと思われます!!
まさに最高のプロポーションッ!! 俺にはそれだけで充分です!!」
ドクオは、また失敗を犯してしまった。
父親の前で娘の身体の話をすることは、一般的に禁忌とされている。
だが、ドクオの性癖がそれを憚ることなく、彼にそれを口にさせてしまったのだ。
ところが、その言葉を受けた瞬間、太眉の男の瞳が朝日の如く輝きを見せた。
_
( ゚∀゚)「『萌え』、か。
成程、お前も伝説の『おっぱいスカウター』を持つ者だったのか……。
なおさら驚いたぜ……。ならば話は早い。
給仕にしぃという女が居るんだが……お前は見たことあるか?」
('A`*)「……しぃさんは素晴らしい巨乳の持ち主です。
Fカップの特大サイズ、しかもお椀形の美乳ときた。
さらに、特筆すべきは、メイド服+ロリロリフェイスのコラボレーションッ!!
やはり、義父さんも目を付けてらっしゃったんですね」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:20:46.47 ID:koVLWYvK0
- _
( ゚∀゚)「……服の上から形状まで判別できるとは。
お前、中々の実力の持ち主だな。
その若さでスカウター『第二形態』を極めるとは。
俺が『第二形態』にまで登りつめるには十年ほど掛かったぞ。
だが、俺にも伊達に鍛錬を積んだわけではない。
先日、とうとう『第三形態』にまで登りつめたんだ」
Σ('A`;)「何ですって!! あの、服の上から乳輪の色と形まで判別できる『第三形態』にッ!!
……信じられん。世界に三人居るかと呼ばれる域にまで達したとは。
義父さん、是非とも『師匠』と呼ばせて下さいッ!!」
_
( ゚∀゚)「ああ。だが、『おっぱい』の道は荊の道。
俺の鍛錬は厳しいぞ。下手すれば命をも失いかけない程に危険だ……」
('A`*)「ハイッ!! 義父さんにならば、命を掛けて付いて行く所存でありますッ!!
血反吐を吐いても……片腕を失っても決して諦めませんッ!!」
_
( ゚∀゚)「そうか。ならば、共に行こう!!
俺達がまだ見ぬ楽園『おっぱいの園』へ!!
俺は、この軍の大将、ナガオカ=ジョルジュだ!!
ドクオ=ナイトよ、お前がこの乱世に新たな風を吹き込むんだッ!!」
こうして、両雄は固い握手と抱擁を交わした。
ちなみに、この二者の結束はあの有名な『乳の契り』として後世にまで語り継がれることとなる。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:22:31.94 ID:koVLWYvK0
- _
( ゚∀゚)「というわけで、俺がこの誓約書の保証人となり、
ドクオは軍に加わることに同意したわけだが……
そうだな、明日の朝に丁度軍議があるからお前も参加するといい。
お前の待遇は色々と協議しなければならんが、恐らくスオナと同等の地位に立って貰うことになる」
('A`*)「はいッ!! この軍の将来を担う戦士の一人として、頑張らせて頂きます!!」
_
( ゚∀゚)「ああ、お前には期待してるぜ。
んじゃ、明日も早いことだ。俺は休ませてもらう」
話もそこそこに、スオナとドクオは挨拶を終えた。
父親であるジョルジュに認められ余程嬉しかったのか、上機嫌のままドクオは部屋を後にしたようだ。
ジョルジュは二人を見送ると、椅子に再び身体を預け、天井のシャンデリアをぼんやりと眺めた。
硝子の装飾は、部屋の灯りの光を受けて静かに輝きを映している。
_
( ゚∀゚) 「ドクオ=『ナイト』……か」
ジョルジュは、ふとドクオの名を口にした。
若かりし頃に耳にした、懐かしい響きだった。
左頬に疾る古傷を撫でてみる。
他の傷に比べて一回りも大きな傷。
あの忘れもしない敗北の日に、付けられたのだ。
だが、何故か不思議と笑みが零れてくる。
_
( ゚∀゚) 「運命とは不思議なもんだ。
『アイツ』の意思を継ぐ者がこの地に現れるなんてな……。
へっ、こいつは面白いことになりそうだな。何が起こるか楽しみだ」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:24:39.81 ID:koVLWYvK0
- 2
「大丈夫、ブーン!!」
(;´ω`)「う……ん?」
「しっかりして……目を覚まして頂戴!!」
(;^ω^)「…………おっ?」
ξ;゚ー゚)ξ「ほっ……良かった。気が付いたみたいね」
ブーンは声に呼び起こされ、ようやく瞼を開いた。
彼の目に最初に映ったのは、心配そうに彼の顔を覗き込むツンの姿だった。
余程不安だったのか、今にも泣き出しそうな眼差しだ。
(;^ω^)「僕は確か……」
そこで初めて、自分がベッドに寝かせられていることに気づいた。
何処かの一室であろうか。
よく見れば、木の幹と枝葉がドームのような空間を造り、ブーンの周囲を覆っている。
天井からぶら下がる無数の木の実が、仄かに薄暗い室内を照らしていた。
しかし、何故このような状況に陥ったのか。
混乱も醒めないまま、必死に記憶の糸を手繰り寄せる。
ξ;゚听)ξ「心配したんだから……まさか、私の料理が美味しすぎて気絶してしまうなんて。
本当にどうしようかと思ったわ」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:26:58.54 ID:koVLWYvK0
- (;^ω^)(……いや、絶対違うお。自覚が無いだけタチが悪いお……)
と、反射的に心の中で突っ込みを入れると、完全にブーンの記憶が蘇った。
そうだ、ツンの兵器とも呼べる手料理を一気に胃の中に入れた瞬間、ブーンは気を失ったのだ。
あのスープの形容し難い、混沌とした味は一生忘れることはないだろう。
喉が溶けるような刺激感、鼻を劈くような酸味、未だに抜け切ることのない苦味。
間違いなく、一滴でクジラ一頭を殺せる程の威力を持っているはずだ。
(;^ω^)(生きてて良かったお。毒殺されたなんて死んでも死にきれないお……)
だが、幸運な事に、ブーンは死の世界を彷徨いながらも、無事、生還した。
朧げに、巨大な川の岸を渡ろうとする寸前まで来ていたことを思い出す。
向こう岸で、亡くなった祖母が手を振っていたことが印象に残っていた。
ξ゚听)ξ「でも……折角の宴だったのに、本当にごめんなさい」
ツンは、それでも(自分の料理が美味過ぎたことに)責任を感じていたのか、
しおらしくブーンに謝罪の言葉を投げかけた。
(;^ω^)「大丈夫だお。ツンが気にする必要は無いお。
……ところで、僕はどれ位寝ていたんだお?」
正直、色々と言いたい事はあったが、あまりのツンの落ち込みぶりに何も言えなくなってしまう。
そこで、ブーンは話題を切り替えることにした。
窓の外からは、薪の火が放つ光と、虫の羽音だけが漏れてくる。
どうやら、宴は終わりを迎えたのだろう。
葉と枝の隙間からは、暁に近づく空の紫が漏れ出していた。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:28:48.19 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「二刻ほど、ね。でも、宴はついさっきまで続いていたわ。
って言うか、主役を差し置いて、男達が飲み騒いでいただけなんだけどね」
ツンは窓の方向に視線を投げ掛けた。
外では、数十人もの男達が鼾を上げながら横たわっていた。
周りは食器と、食べ掛けの料理と、無数の酒瓶で散乱している。
余程、飲み暮れていたのだろう、男達は動く気力さえも奪われてしまったようだ。
( ^ω^)「なんだか当の招かれた僕が寝ていたのは悪い気がするお。
皆が起きたら謝らないといけないお」
ブーンも同じく外を眺め、溜息をついた。
ξ゚听)ξ「気にしなくてもいいわ。
むしろ皆してブーンの事を心配していたようだし、大丈夫よ」
( ^ω^)「……そうかお」
と、生返事をしながら、おもむろにブーンは身体を起こし立ち上がろうとする。
未だツンの料理が尾を引いているのか、やや足元が心許無い。
Σξ;゚听)ξ「あっ!! 無理しちゃ駄目よ!! 安静にしてなきゃ」
( ^ω^)「大丈夫だお。一旦寝たから、調子は良くなってるお」
少し朝風に当たってくれば完全に治るお」
ツンの制止をやんわりと跳ね除け、ブーンは立ち上がった。
まだ足元には毒が残っているようだったが、その言葉通り顔色に生気の色は戻りつつあった。
それに室内はじんわりと汗が滲み出る位に、若干蒸し暑い。
そろそろ外の新鮮な空気が吸いたくなり始めた頃合いだ。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:30:31.53 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「仕方ないわね。だったら、私が良い所に案内してあげる。
そこに行けば、重い気分も吹き飛ぶわ。最高の癒しスポットよ」
( ^ω^)「おっ? だったら頼んだお」
ツンに肩を支えられながら、ブーンは外に出た。
すると、彼の目に飛び込んできたのは、輝きを失った森の木々であった。
それまでめまぐるしい色だった樹木の海は、沈黙するようにして光を顰めていたのだ。
(;^ω^)「光が消えてるお……」
ξ゚听)ξ「ええ。この森の植物達は、日中は太陽の光を吸収する為に眠りにつくの。
で、日光を蓄え終えて夜になったら、再び輝きを取り戻すの」
( ^ω^)「本当に不思議な森だお」
二人は村の集落を離れ、森のさらに奥深くへと足を踏み入れた。
朝の森は昨夜の華やかさが嘘だったかのように沈黙を見せている。
代わりに、頭上から降り注ぐのは木漏れ日だ。
鬱蒼とした枝葉が生み出す仄暗さも相俟って、目覚めの瞳には突き刺すように痛い。
だが、この景色もまた美しい。
いや、もしかしたらこの眼に広がる世界が、『精霊の森』が持っている本来の美しさなのかもしれない。
深淵の見えないほどに濃い緑。
そして、要所に彩りを添えるかのようにして点在する花々。
まさに自然が生み出した、奇跡とも呼べる調和であろう。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:32:59.54 ID:koVLWYvK0
- 半刻ほど掛けて、二人は歩いた。
昨夜とは打って変わって、互いに言葉を交わすは少ない。
しかし、心地よい沈黙だった。
何処からとも無く耳に入ってくる音、
つまり、囀る小鳥の歌と囁く葉々の声が彼等の心に安らぎを齎しているのかもしれない。
ξ゚听)ξ「……ここよ」
ふと、ブーンは立ち止まった。
ツンの声が聞こえてくるよりも早く、天井から眩い白が溢れてきたのだ。
ブーンは薄く瞼を開きながら、前方の景色を覗った。
朧げに、輪郭が浮かんでくる。
よく見れば、目前の地面は光の波を立てているようだ。
そして――
(;^ω^)「おお……これは……」
漸く己の眼が日に慣れた時、自分が何処に立っているのかを理解した。
その先に在ったのは、径が数十メートル程の湖だ。
肌を撫でるような微風を受けて、湖水が波を立てて陽射しを反射していたのだ。
さらに前に視線を移してみると、湖の中心からは天にも昇る程に高い柱が聳えていた。
いや、巨柱のように見えただけだ。
十の人間が手を繋ぎ合い、輪を作っても囲いきれないほどに太い幹であった。
己の背丈の数十倍にも及ぶ巨木が、湖に根を張っていたのだ。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:35:09.05 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「これが、私達『樹木の民』が『神』として崇めている、『精霊の木』よ」
(;^ω^)「……すげー」
もはや、その衝撃を表現できる言葉はない。
……違う。
人間が表現するには畏れ多い、と言った方が正しいようだ。
『精霊の木』と呼ばれるこの樹木の雄大さは、周りの木々が霞まざるを得ない。
樹齢は数百年だろうか。
下手をすれば、十の世紀も超えているかもしれない。
ξ゚听)ξ「この木はね、私が生まれるずっと前から……いえ、
私のひいひい、ひいおばあちゃんの生まれるよりも遥か昔から存在していたわ。
私のご先祖様が、この木がいつから存在していたかを忘れてしまうほど昔に、ね」
(;^ω^)「……そんなに、かお」
何時の間にか、身体を支配していた気怠さはすっかり吹き飛んでしまっていた。
ブーンは気が遠くなる程の過去の時代に心を支配されていたのだ。
だが、空想の終わりは一向に見えない。
兎も角、凄い昔のことなのだろう。
しかし、大きな木だ。
神として崇められるのも頷ける。
証拠に、湖を囲うようにして群生する他の木々は、
畏れ多いのであろうか、その枝葉を遠慮がちに広げていた。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:37:08.94 ID:koVLWYvK0
- 一方、『精霊の木』は、湖の辺にまでその枝葉を伸ばす。
現に、ブーンの頭上を埋め尽くしていたのは、森の神の身体の一部である。
世界の四半分を渡ってきたさすがのブーンも、これ程までに巨大な樹木は見た事が無い。
ξ*゚ー゚)ξ「この木は、この森の始祖。そして、神様なの。
私達はこの森の恵みを受けて生きてきたわ。
そして、命を脅かす獣や外敵からも私達を匿ってくれた。
彼は、悠久の時を越えて、ずっとこの土地を見守ってきたのよ」
( ^ω^)「……この木は、ツン達『樹木の民』の誇りなんだお」
ξ*゚ー゚)ξ「ええ。ここは文明も発達してないし、大きな国でもない。
でも、この森が存在しているだけで、胸を張って『樹木の民』だと胸を張れるわ」
そう言って、ツンはブーンに微笑みを投げかけた。
屈託のない、純粋な笑顔だった。
ツンの表情を受けて、ブーンは直ぐに理解する。
彼女達は敬虔に己の民族、そして、国を愛しているのだということを。
同じ自然を愛する民族として、素直に共感出来た。
自分も獣を愛し、獣の恩恵を受け、獣と共に生きてきたのだ。
違いはあれど、どの民族にも尊ぶべき対象はある。
ブーンは己の思想と彼女の思想の類似性に喜びを覚え始めていた。
ξ゚听)ξ「でもね……」
だが、言葉の途中でツンはその表情を強張らせた。
予兆も無く透き通った青空のような眼が曇りを見せ、暗雲の海に飲み込まれ始める。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:39:50.77 ID:koVLWYvK0
- ツンは視線を下げ、険しい眼差しでこう言い放った。
それまでの優しげな面影はもはや、無かった。
むしろ、黒い感情で彩られた、どろどろとした渦のようなものが、
完全にツンを支配しているように感じられたのだ。
ξ゚听)ξ「始まりは、少し昔に、西の『鋼鉄の国』が持ち掛けてきた一つの提案だったわ。
『進んだ文明と技術と引き換えに、この土地を分け与えてくれ』ってね。
勿論、断ったわ。私達には必要無かったから。
この森さえあれば生きていけるから。でもね……」
(;^ω^)「……でも?」
ξ゚听)ξ「私達が譲らないと知ったら、今度はアイツ達は強引にこの森を奪おうとしたの。
そして……十年前を境に、ここの村人達を殺し始めた。
それまでは私達から何もしなかった。けど、アイツ達は無理矢理にでもこの森を手にしようとした」
(;^ω^)「それは酷いお……」
ξ゚听)ξ「アイツ達は、私の大切なものを次々と奪っていったわ。
いつも可笑しな話を言い聞かせてくれた近所のお兄ちゃんも、
いつも美しい曲を奏でてくれた向かいのおじさんも……いえ、それだけじゃない」
ツンの声は、震えた。
心の底から搾り出すような細い声だ。
何かを押し殺すようにして語るその口調は、何処か鬼気迫るものを思わせる。
そして、腕に掛けられたブレスレッドを睨みながら忌々しげに、言った。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:41:53.98 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「私の大切だった――本当の姉妹とも呼べる位に大好きだった人も奪っていったの」
『精霊の木』が聳える広場に、突風が吹き抜けた。
肌を刺すような、冷たい風だった。
枝々は激しく揺り動かされ、葉々は厳しく悲鳴をあげる。
悲しみの慟哭か、怒りの咆哮か。
ツンの想いに揺り動かされるようにして、『精霊の森』は声を響かせた。
ξ゚听)ξ「……何で? 私達が何か悪い事でもした!?
いえ、私達はただ静かに生きていただけ……ただそっとしておいて欲しいだけなの!
何の権利があって、アイツ達は私達の大切なものを取り上げるの!?」
箍が外れたように、ツンは想いをぶち撒けた。
悲痛な叫びだった。
押し付けられた理不尽な現実。
嘲笑うかのように消えてゆく平穏。
決して望んだわけではない。
戦うためにこの力を振るっているわけではないのだ。
(;^ω^)「……ツン」
もはや、ブーンに返す言葉はない。
ただ、黙って彼女の言葉を受け止めるだけだ。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:44:01.65 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「……ごめんなさい。アナタには関係の無い話なのに。
でも、日に日に不安は募るばかりで、この戦いに終わりを見ることができないの。
この月に入っても、犠牲は止まらない……いえ、むしろ増えて行くばかりだわ」
一通り想いの丈を出し尽くし、ツンははっと我に還った。
いくら辛いとは言え、出会ったばかりの旅人にするべき話ではない。
だが、それでも聞いて欲しかった。
この行き場の無い苦しみを、押し込めていた悲しみを。
(; ω )「……い……お」
しかし、ツンの言葉を聞いているのかいないのか、
今度はブーンが俯き、小刻みに身体を震わせ始めた。
言葉にならない言葉が、彼の口の中を走り回る。
何を言っているのかツンは聞き取れず、戸惑いの色を浮かべ始める。
ξ゚听)ξ「……え?」
だが、ブーンは面を上げると、
(♯^ω^)「ビキビキ……許せないお!! こんなに平和に暮らしている人達を苦しめるなんて!!
何様なんだお、『鋼鉄の国』っていうのは!!
ムチャクチャだお!! ウチの親父よりも狂ってるお!!」
心の底から、怒り、叫んだ。
ツンが見せた以上の激情だった。
目は血走り、顔は皺で歪んでいる。
ツンが驚くのを他所に、止め処ないまま猛りは増すばかりだ。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:46:28.02 ID:koVLWYvK0
- ξ゚听)ξ「ブ……ブーン?」
(♯^ω^)「ほっとけないおッ!! ツン!! 西はドッチだお!?
僕が行ってソイツらをぶっ飛ばしてくるお!!」
ξ;゚听)ξ「ちょっ!! ブーンったら、どうしたの? 落ち着いて!!」
ブーンはツンの制止を無視するかのように、唐突に森の主に背を向ける。
そして、腰の双刀を握り締めると、再びずかずかと森の中へと足を踏み入れた。
ξ;゚听)ξ「待って、待ってったら!!」
(♯^ω^)「大丈夫だお!! 三日もあれば、片がつくお!!」
若さ故の激昂、だろうか。
ブーンは、直ぐに感情を行動に移そうとした。
無抵抗の者に対する理不尽な仕打ち。
幼い頃からそれを父親に受けてきたブーンは、その悔しさが痛いほど解っていたのだ。
冷静に考えれば、一国を相手に喧嘩を売るなど無謀極まりないのだが、
現実を鑑みることすら出来ないほどにブーンは怒っていた。
ξ;゚听)ξ「冷静になりなさい!! さすがにそれは無茶よ!!」
(♯^ω^)「ツン、止めてくれるなお!!
『鋼鉄の民』っていうのは相当キチガイだお!!
きっと、(ピ〜ッ)な(ピ〜ッ)が、(ピ〜ッ)を(ピ〜ッ)してるんだお!!」
口に出すのも躊躇われるような単語を隠そうともせずにブーンはDQNの如く叫ぶ。
他人事にも関わらず、怒りの根は相当深いようだ。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:48:38.84 ID:koVLWYvK0
- ξ♯゚听)ξ「待ちなさ〜〜い!!」
(;゚ω゚)「ガッ!?」
ツンは素手で止められないことを悟ると、近くの木に手を掛け、
その不思議な能力で幹を真横に倒し、ブーンの脳天に衝撃を喰らわせた。
すっかり頭に血が昇っていたブーンにかわす事など出来るはずもなく、
小さく呻き声を上げると、簡単に地面に倒れこんだ。
(;゚ω゚)「……」
ミつ-ω-)つ「……ガクッ」
ξ;゚听)ξ「……まったく」
そして、ツンは直ぐにブーンの身体を地面に下ろし、手首を軽く確認する。
( -ω-)「……うう」
ξ;゚听)ξ「うん、脈は大丈夫なようね……あ〜びっくりした。
案外ムチャするわね……」
流石に『獣の民』というだけあって、生命力は強い。
頭に大きな瘤は出来ていたが、それ以外は何ともないようだ。
それにしても、先程の急変した態度。
ブーンの無鉄砲な一面に、正直呆れ返ってしまうほどだ。
ξ*゚ー゚)ξ「……でも、怒ってくれてちょっぴり嬉しかったわ」
だが、すうすうと寝息を立てて気絶するブーンに微笑を投げかけずにはいられなかった。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:52:14.16 ID:koVLWYvK0
- 3
――朝。
「ドクオさん、半刻後に会議場で軍議が始まります。ご準備の方宜しくお願いいたします」
Σ('A`*)「しぃさんッ!?」
ドクオは給仕が扉を叩く音で、目を覚ました。
そして、飛び跳ねるように身体を起こし、素早く扉を開いた。
だが……
('A`;)「あれ? いねえや……」
外にしぃの姿は無く、床に朝食の膳が置かれていた。
廊下を見渡すも、他には兵士が歩いているのみだ。
ドクオは扉を閉め、怪訝そうに首を捻る。
('A`*)「はっは〜ん、もしかしてしぃさん俺に照れてるな。
恐らく恥ずかしくて顔を合わせられないのだろう」
だが、ドクオは直ちに妄想を膨らませ、事実を良い方向に解釈した。
その後、ドクオは朝食を平らげると、仕度をして軍議が行われる会議場へと足を運んだ。
道中城を行く者達の視線が気掛かりだった。
皆、ドクオの姿を見かけるとひそひそと小声で何かを囁き合っていたのだ。
成程、今は軍に協力することになったが、元々は侵略者の身。
勿論それは異例のことで、皆ドクオのことが気に掛かるのだろう。
しかし、呼び止められないところを見ると、スオナやジョルジュ辺りから話は伝わっているようだ。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:54:52.51 ID:koVLWYvK0
- こうして、昨夜に渡された城内地図を見てドクオは難なく会議場に辿り着く。
('A`)「……」
だが、一歩足を会議場に足を踏み入れた瞬間、ドクオは異変を感じ取った。
廊下とは比べ物にならない程の、厳しい視線を受けたからである。
会議場は大広間と呼べるほどに広く、
その中心にはジョルジュの部屋にあったものと同等の円卓が備えられていた。
( ´∀`)「おお、そなたがドクオか。話は聞いておるぞ」
向かって上座には、太った男が座っていた。
頭には宝石が付いた冠を被っている。
そして、肩からは赤い外套を羽織り、その上に金鎖を走らせている出で立ちだ。
察するに、この国の王と言った所か。
_
( ゚∀゚)「モナー様、この少年が例の少年です。
ドクオ、こちらは我が『バロウ帝国』の君主、モナー六世様だ。
……ほら、挨拶だ」
('A`)「……ドクオ=ナイトと申します」
モナーの向かって右側には、ジョルジュが座していた。
ジョルジュはぼんやりと立ち呆けている少年に挨拶を促す。
ドクオは言われるまま、仕方なさそうに肩膝をつき己の名を名乗った。
_
( ゚∀゚)「他の皆の紹介もしておこう。
俺の左……お前からは右か。右に座っているのがギコ=ハニャーン中将だ。
兵の中でも一、二を争う腕前の持ち主だ。ま、俺が一番だがな」
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 22:57:12.13 ID:koVLWYvK0
- (,,゚Д゚)「……なんだ、まだ餓鬼じゃないか。こんな奴にスオナが遅れを取ったとは信じられんな。
実は大将に上手く取り入ったんじゃないのか?」
('A`♯)「……あ? 何か言ったか?」
_
( ゚∀゚)「おいお前等、王の御前だ。少し静粛にしろ」
('A`;)「も……申し訳ございませんッ!!」
(,,゚Д゚)「フン……まあいい」
ジョルジュの隣に座っていたのは、三十前後の軽装の男だった。
他の者達はモナーを除いて鎧を纏っているのに対して、肩当てと胸当てのみという異様な姿だ。
外見は、良く整えられた金髪に精悍な顔立ちを持ち、美男子と呼べる程に整っていた。
だが、その瞳だけは狼の如き鋭さを持ち合わせているように感じられる。
開口一番、初見にも関わらずこの男、ギコから出てきたのは皮肉だ。
確かに言わせてみれば、己よりも一回りも若い少年を軍に、
しかも、それなりの待遇で迎え入れることは、まさに異例のことだ。
恐らく、この目前の少年が軍の兵達を混乱に陥れたなどとは露にも思えないのだろう。
_
( ゚∀゚)「んで、その横がヒッキー=コモリ少将だ。
戦いについてはまあ、アレだが、聡明さに関してはこの城では誰にも負けん」
(-_-)「……宜しく」
見るからに陰鬱そうな男だ。
彼も同じく重厚な鎧を纏っていたが、どう見ても鎧に着られているようで滑稽な姿であった。
成程、どちらかと言えば知将型の人間らしい。
恐らく、机上での戦いに力を発揮するのであろう。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:00:02.83 ID:koVLWYvK0
- _
( ゚∀゚)「後に並ぶのは、佐官の者たちだ。スオナに関してはお前も知っているな。
あ、あとニダーとも戦ったんだっけな?」
川 ゚ -゚)「前にも言った通り、私はこの軍で大佐を勤めている。
ドクオ、お前には私の補佐官として腕を振るってもらうことになる。
既存の役職を与えるとなると、色々とややこしいことになるからな。
というわけで新たに役職を設けたのだが、問題は無いか?」
('A`)「おう。よく解らんが、俺は戦えれば文句はないぜ」
<♯ヽ`∀´>「ブツブツ……何故ウリを差し置いてこんな子供が上官に……くそ、あの非国m」
川 ゚ -゚)「ニダー少将、何か問題でも?」
Σ<;ヽ`∀´>「あ、いえ、特に問題ございません!!」
今後のドクオの待遇についてスオナが説明している間、
ニダーは小声で不平不満を漏らしていたが、スオナに問いただされると直ぐに同意の念を口にした。
その後、次々と佐官達が自己紹介を行っていく。
ちなみに、紹介の流れでドウオはふと、気が付いた。
どうやら、将官はそれぞれ一人ずつ存在するのに対して、
それに次ぐ佐官は複数人存在しているらしい。
だが佐官級に下がってくると、ドクオの目に留まる者はスオナ以外に存在しなかった。
幾多の戦いの経験から、顔を見ればどれ程の実力を有しているか大体解るのだ。
いかに屈強な軍隊とは言えど、ドクオから言わせれば彼等の殆どは只の凡人に過ぎなかった。
……ただ、一人を除いては。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:02:42.06 ID:koVLWYvK0
- ノハ♯゚听)「お前がドクオかあああああああッ!!!
強いんだな!? 勝負だ!! 今すぐ私と試合しろ!!
内容!? 何でもいいぞ!! ……よし、相撲だ!!
すぐにふんどしを巻け!! 私も巻くぞおおおおおおおッ!!
っていうか、むしろ鎧の下に履いているぞおおおおおおッ!!
さあ、ばっちこ〜い!! いざ勝負だッ!!」
('A`;)「…………へ?
って、いや……アンタ誰?」
それは、スオナの四つ隣に座っていた、もう一人の女性佐官であった。
耳鳴りを起こすほどの大声が聞こえてきたかと思えば、
円卓の上に立ち上がり、掴み掛からん勢いでドクオの前まで迫って来たのだ。
歳はスオナと同じ程だろうか。
燃えるような緋色の髪に緋色の目が印象的な女であった。
が、今はゆっくりと彼女を見定めている場合ではない。
いきなり試合を申し込まれたのだ。
しかも、褌一丁での相撲と来た。
第一印象として、彼女はスオナ以上の異質さを醸し出していた。
川;゚ -゚)「ヒート、静かにしろ。会議中だぞ」
ノハ♯゚听)「スオナ、止めるなッ!! これは漢と漢の勝負だッ!!
……ええいっ!! 鎧が邪魔だッ!! こんなもの脱いでしまえ!!
うおおおおおおおお――」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:07:24.17 ID:koVLWYvK0
- 川♯゚ -゚)「五月蝿い」
ガッ。
ノハ;--)「――う゛っ!? ……ガクッ」
川;゚ -゚)「……まったく」
――と、突然、緋髪の佐官は糸が切れたように大人しくなった。
その背後には、長剣の柄を握り締めたスオナの姿があった。
様子から察するに、柄で後頭部を思い切り殴って気絶させたようだ。
('A`;)「……一体何者だ?」
川;゚ -゚)「……こいつは、ヒート=オベディ。中佐だ。
すまん、こいつは強い人間を見ると見境なく戦おうとするからな。
まあ、放っておけば大丈夫だ……多分な」
('A`;)「……あっそ」
_
(;゚∀゚)「また、いつもの発作か。
……ま、いいか。では軍法会議を始めるとするか」
('A`;)(あれって発作なのか……?)
素朴な疑問をよそに、ヒートが警護の兵士に運び出されたところで、
何事も無かったように会議は始まった。
だが、ドクオだけはこの軍にある種の不安を抱かずにはいられなかった。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:11:41.95 ID:koVLWYvK0
- (-_-)「昨今、我が国の鉄鋼製品は輸出諸国にも好評であり、
表の通り、積込重量は右肩上がりになっています。
バルキスの定理に当てはめると、私の予想は……
……そういうわけで、我が軍の予算が(ry」
('A`)(ふぁ〜〜〜〜……眠い)
だが、会議は非常に退屈であった。
証拠に、ドクオは憚ることなく大欠伸をあげている。
耳に入ってくる単語は、ドクオにとって覚えのないものであり、
その概要でさえも掴むことすら出来なかった。
('A`)「……」
周囲を見渡せば、ドクオを除く全ての者が羊皮紙に議事録を記している。
あの豪快なジョルジュですら、熱心にヒッキーの言葉に耳を傾けているほどだ。
しかし、あのヒッキーの抑揚の無い声は子守唄の如く心地よいものである。
聞けば聞くほど瞼が重く……なる……
「スオナ……あの大型兵器……現状……どうなって……」
「はい……現段階では……割ほど……出来……」
('A`)(……何を言っt……ああ、もう駄目だ、本能には逆らえん)
意識の奥深くで、重要機密だとか何とか小難しい単語が聞こえてくる。
でも、そんなことは関係が無い。
飛び交う言葉の量に反比例して、ドクオの意識は遠のいていく――
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:13:26.47 ID:koVLWYvK0
- 4
「……クオ」
何だよ、こちとら眠いんだよ。
「ドクオ、起きるんだ。もう会議は終わったぞ」
いや、だから眠いんだって。
……お願いだ、あと数秒だけ寝かせてくれ。
川 ゚ -゚)「起きろッ!!」
Σ('A`;)「はっ、はひッ!?」
('A`;)「……」
('A`;)「……あの、会議は?」
川 ゚ -゚)「半刻程前に終わったぞ」
('A`;)「……うそ?」
川 ゚ -゚)「本当だ、周りをよく見てみろ」
('A`;)「……」
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:15:19.76 ID:koVLWYvK0
- 確認の為にドクオは周囲を見渡した。
自分とスオナを残し、会議場には誰も居ない。
円卓に目をやると、涎を限界まで吸い取った羊皮紙がべったりとくっついていた。
ここで初めて、ドクオは自分の状況を理解した。
('A`;)「何ていうか……すまん」
川 ゚ -゚)「気にするな。どうせこういう場には慣れていないのだろう?
それに、お前は実務をこなす方が向いているようだ」
('A`*)「……面目ない」
補佐官の初仕事としては散々な結果に終わったようだ。
それを少々恥じているのか、ドクオは顔を赤らめ謝罪する。
川 ゚ -゚)「では、そろそろ一般兵達の訓練が始まる頃だ。
それを監督するのが次の仕事だ」
('A`;)「お、おう」
こうして二人は訓練場へと足を運んだ。
スオナの話によると、訓練場は本城から離れた別棟にあるらしい。
見れば、廊下を行く一般兵も慌しく二人を追い越していく。
それも何百人もの数だ。
恐らく、大規模な人数での訓練が行われるのであろう。
ドクオはその様子を眺めながら、退屈な会議とは違った次の実務に胸を躍らせていた。
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:19:22.23 ID:koVLWYvK0
- 川 ゚ -゚)「ここが、訓練場だ」
('A`;)「すっげ〜」
案内された先には、広大な屋根付きの敷地が拡がっていた。
その面積は本城と同等で、城内の一般兵を全て詰め込んでもまだ余裕がある。
天井と柱は鉄骨と鉄板で構成された造りになっていた。
本城と比べると装飾等は全く見当たらず、無骨さが際立っている。
だが、見るからに頑丈そうな構造だ。
少々の地震や風雨にはびくともしないであろう。
『うおおおおおおおおッ!!』
さらに壮観だったのは、その兵の数だ。
実は、先程城内で見かけた兵はほんの一部である。
眼前には千を超える兵士達が組を作り、互いに模造刀で試合を行っていたのだ。
訓練場の端に立っていても、その熱気と振動が伝わってくるほどに緊迫した空間だった。
だが、スオナはさらに驚くべき発言をする。
川 ゚ -゚)「此処にいる兵が全てじゃない。城の外側にも幾つか訓練場があるんだ。
……そうだな、ざっと全部で万に届く程だろうな」
('A`;)「すげえな。余程大規模な戦いになるはずだ」
川 ゚ -゚)「うむ。我々も気を引き締めないといけないな」
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:21:52.82 ID:koVLWYvK0
- 「大佐と補佐官が来られたぞ!! 皆の者集合ッ!!」
Σ('A`;)「!?」
と、会話の途中で大きく号令が響いた。
同時に、兵達は雪崩込むように二人の前に整列する。
これだけの大人数にも関わらず、統率の取れた動きにドクオは感嘆の息を漏らした。
そして、隊列が成されたところでスオナは全員に言葉を掛ける。
川 ゚ -゚)「皆、訓練ご苦労。精が出ているようだな。
実は今日、皆に紹介したい者が居る。
隣に居る彼、ドクオ=ナイトが、今日付けで私の補佐官に任命された。
では、直接挨拶してもらうか。頼んだぞ」
('A`;)「……俺が今紹介された、ドクオ=ナイトだ。……えっと……よろしく」
ドクオの短い挨拶で、場は静まり返った。
だが、次の瞬間、大きなざわめきが起こる。
「嘘だろ……? こんな子供が大佐を?」
「ちょっ、見ろよ!! あいつ俺よりも年下じゃねえか?」
一般的に考えれば、彼等が驚くことも無理はない。
外部から軍に参加するだけならいざ知らず、
少年と呼べる程の歳のドクオが、急遽上官として迎えられたのだ。
スオナも昇格が早かったが、ドクオのそれはまさに異例中の異例だ。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:24:25.17 ID:koVLWYvK0
- 川 ゚ -゚)「静粛に!!
……確かに、彼はまだ若い。だが、その実力は私が保証する」
スオナの凛とした声に、再び場は静まり返った。
しかし、彼女の言葉ですらも混乱を抑えるには至らない。
直ぐに場は喧騒の渦と化してしまった。
……と、
「あれれ〜? 本当にスオナ大佐は負けたんですかねぇ〜?」
「補佐官、ホントは賄賂とか渡したんじゃないっすかwwwww」
「マジっすか!? 犯罪っすよwwwwシャレになんないっすwwwww」
唐突に兵の隊列の中から何者かの声が上がった。
明らかに、侮蔑を含んだ声だ。
しかも、わざと聞こえる程に大きく言葉を発している。
そして、畏れ多くも声の主達はずかずかと前へと進み出してきた。
(A`Д´)「あれ? 補佐官随分と若いっすねwwwww」
(B`Д´)「義務教育とか終わったんですかwwwww!?」
(C`Д´)「いや、むしろオムツとか履いてませんwwwww?」
(A`Д´)B`Д´)C`Д´)「ギャハハハハハハwwwww」
三人の兵だった。
背の高い兵士と、背の低い兵士、そして太った兵士の三人だ。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:27:20.47 ID:koVLWYvK0
- ('A`♯)「……んだと?」
よほどドクオが補佐官の位に就いたことが許せなかったのだろうか。
上官への侮蔑は重罪であるにも関わらず、
三人の兵達は止めようともせずに囃子立てる。
それに対しドクオは表情を強張らせて、彼等を睨む。
('A`♯)「……おい、そこのお前等。
いい機会だ、俺が稽古をつけてやるよ」
川;゚ -゚)「ドクオ、落ち着け!! 何とでも言わせておけばいい。
後で私が然るべき罰則を下すから放っておけ」
(A`Д´)「うはwwwwwマジっすかwwwww僕ちゃんうれぴ〜wwwww」
(B`Д´)「いいっすねえwwwwwやりましょやりましょwwwww」
(C`Д´)「じゃあコッチが勝ったら、俺達が補佐官になるってのはどうすかwwwww?」
('A`♯)「フン、別に俺はどうだって構わないさ。
なんなら三人一緒に掛かってきてもいいんだぜ?」
川;゚ -゚)「おい、何を勝手に……お前には補佐官としての立場があr」
('A`♯)「大丈夫だ……手加減はする。
それに俺への侮辱は、お前への侮辱にもなるんだ。
このまま放っておくわけにはいかんだろ?」
川;゚ -゚)「ッ!?」
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:29:47.30 ID:koVLWYvK0
- ドクオが怒った理由は、己が馬鹿にされただけではなかった。
ドクオ自身への侮蔑は、彼を補佐官に任命したスオナにも向けられることとなるからだ。
己が認めた者が嘗められることは、ドクオにとって苦痛であった。
その為にドクオは補佐官としての立場を弁えず、稽古を申し出したのである。
川;゚ -゚)「……わかった。立会いは私が務める。
だが、危険と認めた場合は直ちに止めるからな」
('A`♯)「……」
ドクオはああ、とだけ短く答え前へと進み出た。
そして、両腕に備えられた巨爪の感触を確かめると、三人の兵に向かってこう言い放った。
('A`)「俺はこいつを使う。お前達はそれぞれ好きな獲物を使うといい。
確か、『銃』とか言ったか? そいつも使っていいぞ」
(A`Д´)「いやいや、補佐官がハンデ付けてそんなショボイ武器で戦ってくれるなら」
(B`Д´)「俺達は模造刀でいいですよwwwww」
(C`Д´)「銃なんて畏れ多いっすwwwww怪我でもしたら大変ですからねwwwww」
('A`)「……やれやれ」
ドクオは溜息を付いた。
彼等の愚かさに、だ。
敵の力量を測ることこそ、生き残る為に必要最低限な術だ。
しかし、彼等にはそれすら備わっていなかった。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:32:09.33 ID:koVLWYvK0
- 川 ゚ -゚)「では厳粛に……始めッ!!」
スオナの一言で、試合の始まりは告げられた。
周囲では試合場を造るかのようにして、円状に鋼鉄の兵の壁が出来上がっていた。
皆の視線はドクオに注がれている。
実質、彼の戦う姿を知っているのは、昨夜東門で戦闘を行った一部の者達だけだ。
ベールに包まれていたその実力を見逃すまいと、兵士達は固唾を飲んで見守った。
(A`Д´)「俺から行きますよ〜♪」
('A`)「……御託はいい。さっさと来い、馬鹿」
最初に名乗りを上げたのは、一番背の高い兵士だった。
飄々と遊ぶようにして、模造刀を振り回しながらゆっくりと間合いを詰める。
一方、ドクオは腕組みをしたまま動かない。
そして、間合いが互いの制空圏にまで入り込んだ、
その刹那――
(A`Д´)「うおおおおおおおお!!」
背の高い兵士が、先に動きを見せた。
紛う事の無い殺意だ。
模造刀とは言えど、その重量は本物と寸分も変わらない。
兵士はドクオの頭蓋骨を砕くつもりで、刀を振り落とす。
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:34:35.22 ID:koVLWYvK0
- ……はずであった。
(A`Д´)「……へ?」
('A`)「っていうか剣筋が遅すぎ。これじゃスオナの足元にも及ばんぜ」
刀は振り落とされることは無かった。
振り抜いたと思われた刀先が、ドクオの右手に然りと握られていたのだ。
ドクオの動体視力には、兵士の剣が遅すぎたのである。
(A`Д´)「ち……畜生ッ!!」
兵士は急いで刀を振りほどこうと両手を引く。
だが、既に遅かった。
('A`)「0点」
ドクオは強引に模造刀を奪い取ると、
柄をぶつけるようにして兵士の胴体目掛けて思い切り突く。
模造刀の柄は見事に兵士の腹に突き刺さった。
(;A`Д´)「グアアアアアアアアアアアッ!!」
兵士は悶絶した。
口から吐瀉物を容赦なく吐き出し、毛虫の如く身悶える。
('A`)「戦場だったら、ジ・エンドだぜ?
アンタ命のやりとりは初めてか? だったら覚悟をしたほうがいいぜ。
そんな甘さじゃあ、すぐにお陀仏だ」
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:36:22.83 ID:koVLWYvK0
- ドクオはその様子を冷静に見下して、言った。
そして、奪い取った模造刀を徐に投げ捨て、
背後で口を開けて硬直していた残りの二人にも声を掛ける。
('A`)「どうした? 来いよ。これでわかったろ?
二人同時に掛かって来なけりゃ万に一つも勝てん。
……あ、勝つ確率が気持ち上がるくらいか」
(B`Д´)C`Д´)「……」
(♯B`Д´)「この糞餓鬼ィいいいい!!」
(♯C`Д´)「ぶっ殺す!!!!」
ドクオの挑発と共に残った二人は刀を握り締めると、それぞれ左右に散って突進する。
向かって右が背の低い男で、左が太った男だ。
彼等が狙うのは、両脇からの同時攻撃。
一斉に攻撃すれば一撃を加えられるだろう、という思惑が見え隠れする。
('A`)「……ったく、何の工夫もない攻撃だ」
ドクオは動かない。
それどころか、余裕の溜息を漏らすばかりだ。
(♯C`Д´)「オオオオオオオオオッ!!」(`Д´B♯)
二者の軌道は一点へと向かっていく。
無論、ドクオだ。
彼等は同時に模造刀を放った。
背の低い男が突き、太った男が薙い――
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:38:23.24 ID:koVLWYvK0
- (♯C`Д´)「――ッ!?」(`Д´B♯)
兵達の頭上だった。
('A`)「おまけして、5点ってとこか……」
ドクオは、天井を背にして宙に舞い上がっていた。
衝突の瞬間に、その超人的な跳躍力で飛び上がったのである。
優にドクオの足は、二者の頭を超えた位置にあった。
そのまま優雅に宙返りを見せると、その勢いで、
(C`Д´)「――ガグッ!!」
痩せた男の顔を、踵で思い切り踏みつける。
骨が割れる鈍い音が響く。
鉄槌の如きドクオの蹴りが、標的の歯を粉々に砕いたのだ。
模造刀を握り締めたまま、太った男は、
血と、折れた歯を撒き散らし、地面に崩れ落ちる。
('A`)「とどめだ」
滞空の勢いを殺さぬまま、ドクオは次の体勢に移っていた。
宙に横たわるように身体を預けると、地面に向かって肘を突き出した。
その向かう先は……
(;B`Д´)「うわああああああああッ」
背の低い男の脳天だった。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/14(木) 23:40:27.21 ID:koVLWYvK0
- 川 ゚ -゚)「……息はあるようだ。おい、誰かこの三人を医務室へと運べ。
それから目が醒めたら、軍から除籍する旨を伝えておいてくれ」
まさに一瞬の出来事であった。
試合が始まったかと思えば、もう終わっていた。
あの三人は一般兵の中では決して弱い方では無かった。
横暴な振る舞いこそ目に余っていたが、抜きん出た実力はあったのだ。
だが、眼前のドクオという少年は、圧倒的な力の差で一撃の元に三人をのしたのである。
「す…………」
「すげえッ!! 強ええよアイツッ!! おい、お前見たか!?」
「ああ、信じられん。まさか、あんなに幼い少年が……」
訓練場には割れんばかりのどよめきが沸き起こった。
飛び交うのは、賞賛と感嘆の声ばかりであった。
中には、ドクオに握手を求める者まで居る始末だ。
その場に居た全ての兵が、まだ若過ぎる上官の力を認めた瞬間であった。
(兵`Д´)「凄いぜアンタ!! どうやったらそんなに強くなれるんだ!?
今度俺にも稽古をつけてくれ……いや、付けて下さいッ!!」
('A`;)「ってか、あれでも全然本気じゃ……」
川;゚ -゚)「こら、お前達落ち着け。一応訓練中d――」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/15(金) 00:00:11.12 ID:nLZ0QTEQ0
- 「――何やら騒がしいな。……宴会でもやっているのか?」
『!?』
しかし、熱狂の渦は長くは続かなかった。
訓練場の奥から何者かの声が響いてきたのだ。
沸き上がった空気は一変し、周囲は水を打ったように静まり返る。
さらに、同時にして変化が起こった。
訓練場が息が詰まる程の重い雰囲気に覆われたのだ。
Σ('A`;)「ッ!?」
唐突に、ドクオはある気配を感じ取った。
はっきりと身に染みて解る。
今まで、幾度と無くこのような気配に出会ってきた。
だが、これほどまでに包み隠そうともせず、
猛々しさを剥き出しにした『それ』は数えるほどしか感じたことがない。
間違うことなどあるはずがない。
明らかに己に向けられたものである。
この恐々とした感覚。
そうだ、これは
――殺気だ。
そして、黒山の人だかりは二つに分かれるように裂かれた。
出来上がったのは、兵士達が壁となった一本の道だ。
道はドクオを終点として徐々に広がっていく。
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/06/15(金) 00:02:17.91 ID:nLZ0QTEQ0
- ('A`♯)「……」
ドクオはその方向に険しい眼差しを見せていた。
よく研ぎ澄まされた刃物の如き、危うい様相だった。
彼と視線を合わせるだけで、一発触発の事態が巻き起こるのではないか。
横目で見ていて、そう思わざるを得ないほどだ。
だが、そんなドクオに怯みもせずに、真っ向から睨み返す男がいた。
(,,゚Д゚)「……何やら面白そうなことをやっているな。
ついでに俺も混ぜてくれないか?」
('A`♯)「……アンタか」
それは、『バロウ帝国』軍、中将ギコ=ハニャーンだった。
『第四章 憎しみの炎は燻り、思惑は交錯す』 終