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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第二話「しぃ」

56 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:04:55.23 ID:gnhv+pvO0
第二話「しぃ」


村長の家。
僕は、自分のことを村長に話した。


(´・ω・`)「なるほど、今までの記憶が無く、森に倒れていた所を
      ミルナに拾われたと」

( ^ω^)「はいですお」

村長はふむ、と頷く。

(´・ω・`)「しかし、記憶が無ければ行く所も無かろう。
      何も無い村だが、記憶が戻るまでここで暮らすのがいいだろう」

ノパ听)「村長……!」

(´・ω・`)「ただし」

村長はとん、と杖で地面を叩く。
57 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:08:37.32 ID:gnhv+pvO0
(´・ω・`)「村の住人として、畑仕事や力仕事に精を出すこと。
      そして、夜の森には行かないこと。
      この二つを約束してくれ」

僕はその二つを頭に刻み、答えた。

( ^ω^)「わかりましたお!」

(´・ω・`)「うむ。改めて我らがヴィップ村にようこそ。まず、この酒は(ry」

ノパ听)「そ、村長! 昼間からお酒は駄目!」

(´・ω・`)「……うん、じゃあ歓迎の宴は夜にしよう」

しょんぼりした村長を背に、僕達は外へ出た。
59 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:09:39.42 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「これでブーンも村の一員だねっ! おめでとう!」

ヒートが親指を僕に向かって立てる。
やっぱり、ヒートには笑顔が一番似合う。

( ^ω^)「ありがとうだお! それに、宴まで開いてもらえるなんて……
       なんか、本当にお世話になってばっかりだお」

ノパ听)「いいからいいから! 私も家族が増えて嬉しいぞ!」

(;^ω^)「家族、ね。うん。これからよろしくだお!」

ヒートにとって、僕は弟のような存在なのだろうか。
人知れず、失恋気分を味わいながら歩いていると、前方から聞きなれた声がした。

( ゚д゚ )「おう、二人とも。挨拶回りは終わったか?」

クワを持ったミルナが、汗を拭きながら話しかけてくる。
61 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:11:33.35 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「うん! 今日の夜にブーンを歓迎する宴をやるよ!」

( ゚д゚ )「おお、そうか。よかったなブーン」

( ^ω^)「はいだお! あ、ミルナさん。それ、僕にも手伝わせてくれませんかお?」

( ゚д゚ )「ん、ああ」

僕はミルナの持っているクワを指差す。
ミルナはにやっと笑いながら


( ゚д゚ )「しんどいぞ」


そう言い、僕にクワを手渡した。
62 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:13:09.21 ID:gnhv+pvO0
……



(;^ω^)「ふおぉぉぉぉ! ていっ!」

懇親の力を込め、クワを上下に振る。
一回振り上げる度に足腰がふらふらしてしまう。

ノパ听)「おうおーう! 腰が入ってないぞブーン!!」

(;^ω^)「はいだお! うりゃぁ!」

(;゚д゚ )「こ、こら! こっちへ振るな!」

クワを振るというのは、やってみないとわからないが本当に重労働だ。
ミルナの太い腕が、農作業がどれだけきついかを物語っている。
63 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:17:43.50 ID:gnhv+pvO0
(;^ω^)「これはきついお……」

1時間ほど作業をすると、もう息があがってしまった。
肩の筋肉は張り、腕はもう上がらない。

ノパ听)「あれ、もう終わり?」

(;^ω^)「きゅ、休憩してるだけだお! なーに、これから本気だすんだお」

( ゚д゚ )「ははは、無理するな。誰でも最初はこんなもんだよ」

僕はクワを置いて、木陰で休む。
まだ春だというのに、僕の額からは汗が滝のように流れていた。
64 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:19:01.23 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「じゃ、その間に私も耕そうっと」

(;^ω^)「へ?」

ヒートは木に立てかけておいたクワを取ると、畑の上に立ち

ノハ#゚听)「どりゃぁぁぁぁぁ!!!」

男の僕でも重いと感じるクワを、まるで木の棒のように軽々と扱う。
目にも留まらぬクワ振りで、みるみる畑は耕されていく。

(;^ω^)「……」

僕はただ、呆然と木陰から見つめることしかできなかった。
66 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:21:06.29 ID:gnhv+pvO0
( ^ω^)「ふう……」

僕は、寝転がって空を見上げた。
木の葉が風になびき、どこからか鳥の声が聞こえる。

(*゚ー゚)「……」

( ^ω^)「お?」

ふと、木の裏に子供が立っていた。
女の子だ。

( ^ω^)「こんにちはだお!」

(*゚ー゚)「……」

ヒートを見習って、元気よく挨拶をする。
…が、女の子から挨拶は返ってこない。
67 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:23:20.20 ID:gnhv+pvO0
(;^ω^)「こ、こんにちはだお!」

もう一度。

(*゚ー゚)「……」

もしかして、耳が聞こえないのか?
それとも、単に人見知りをしているのだろうか。


(*゚ー゚)「……出て行け」

( ^ω^)「お?」

女の子は僕を睨み付け

(*゚ー゚)「よそ者は出て行っちゃえ!」

(;^ω^)「ちょ、待っ――」

そう叫ぶと、走っていってしまった。
68 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:25:21.62 ID:gnhv+pvO0
(;^ω^)「……」

よそ者は出て行け、と。
女の子はそう言った。

( ゚д゚ )「……しぃ」

ふと、後ろでミルナがつぶやく。

( ^ω^)「あの子、しぃっていうんですかお?」

( ゚д゚ )「そうだ。両親を失っていてな。今日が命日なんだ」

( ^ω^)「そうなんですかお……」

あんな幼いのに、両親を失っているなんて。
……両親の命日なのに、今夜が歓迎の宴なんて周りの人々が浮かれていたら
僕だって嫌な気持ちになるだろう。
71 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:28:47.36 ID:gnhv+pvO0
( ゚д゚ )「ブーン、村長との約束の一つに『夜の森へ行くな』というのがあっただろう?」

ミルナさんは、僕の目を真っ直ぐに見て話す。

( ゚д゚ )「あれは、しぃの両親が森で狼に食い殺されたからなんだ」



ひゅ、と風が吹きぬけた。


その風で、ざわざわと木々が揺れる。


( ゚д゚ )「悲劇を二度と繰り返さないように、俺達は夜の森へ行ってはいけないという掟を決めたんだ」


僕は、胸が苦しくなった。
この村の人々の笑顔を見て、無意識の内に皆、幸せなんだと思い込んでいたから。
72 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:32:18.85 ID:gnhv+pvO0
( ^ω^)「どうして、僕にそれを?」

( ゚д゚ )「……知っておいて欲しいから、だな。
     夜の森には、何があっても行かないでくれよ」

僕は、ゆっくりと頷いた。


ノパ听)「お―い!! いつまで休憩してんの――!」

畑の方を見ると、ヒートがクワを振り回しながら叫んでいる。

( ゚д゚ )「ほら、休憩は終わりだ。仕事をしよう!」

( ^ω^)「はいですお」

僕は立ち上がり、畑でクワを振り回しているおてんばの元へ駆け寄る。
74 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:34:25.39 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「ね――! 二人で何の話してたの!?」

( ゚д゚ )「なんでもないさ。ほら、ブーンにクワを貸してやれ」

ノパ听)「ちぇっ! はい、ブーン! 今度はしっかり腰入れてやりなよ!」

(;^ω^)「痛っ――!!」


ヒートはばしん、と僕の腰を叩く。
僕は、へっぴり腰のまま再び畑を耕し始めた。
76 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:36:31.06 ID:gnhv+pvO0
……



(;^ω^)「も、もう体が動かないお」

日が沈み、僕は家に着くなり寝転がった。

ノパ听)「もうっ! ブーンはもっと鍛えないと駄目ね!!」

(;^ω^)「まことに遺憾でありますお」

僕は、震える手で茶を飲みながら答えた。
こりゃ明日は筋肉痛だな、なんて考えていると、外から鐘の音が鳴り始める。

( ゚д゚ )「お、そろそろ宴の準備が出来たようだな」

ノパ听)「え、もうそんな時間!?」

ヒートは慌てて僕の手を掴み

ノパ听)「ほら、ブーン歓迎の宴なんだからはやく行こ!!」

(;^ω^)「ちょ、痛い痛い!! 引っ張らないでくれお――!」

悲鳴をあげる足腰をよそに、ヒートは僕の手を掴んでずんずんと外へ出る。
ミルナも「やれやれ」と言いながら、家を出た。
77 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:38:50.42 ID:gnhv+pvO0
村の中央へ来ると、大きな鍋を囲んで村の人達が談笑している。

ノパ听)「おー、やってるやってる!!」

(;^ω^)「痛い痛い……って言ってるのに」

(´・ω・`)「お、きたね」

村長がこちらに気付くと、周りを見渡して

(´・ω・`)「今夜の主役、ブーンがきたぞ! 皆、乾杯の準備をしようか!」

そう叫んだ。


「おお! あんたが新入りか!」
「ヒートちゃんのとこに住むんだって? 若いっていいねぇ」
「おう、よろしくな!」

(;^ω^)「おっおっお?」

あっという間に、僕は村人達に囲まれる。
老若男女からあれやこれやと質問攻めを受け、僕はただあたふたとしていた。
79 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:42:19.34 ID:gnhv+pvO0
(´・ω・`)「乾杯しようっていってるのにぃ〜…」

( ゚д゚ )「ほら、皆! とりあえず乾杯をしようじゃないか!」

ミルナがそう言うと、村人達はおぉー、と声をあげる。

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「ドンマイ」

僕は、村長の肩をぽん、と叩く。
この瞬間、僕と村長の間になんともいえない友情が生まれた。
80 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:43:29.04 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「それじゃ、新しい家族を祝って―――

ヒートがお酒を高々とあげながら、乾杯を叫ぼうとした時。


( ,,゚Д゚) 「お――い、大変だ――!!」


( ゚д゚ )「ギコおじ……?」

遠くから、ギコが息を切らして走ってくる。
乾杯をしようとしていた村人は、その様子を笑いながら見ていた。

( ,,゚Д゚) 「ぜぇ――ぜぇ――……うぇっ」

(´・ω・`)「ギコおじも祭り好きだねぇ。よかった、まだ乾杯はしてないよ」

村長はにやにやしながらギコの肩を叩く。
しかし、ギコはぴくりとも笑わず、息を整える。


( ,,゚Д゚) 「しぃが……ングッ……いないんだ!!」
82 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:46:19.08 ID:gnhv+pvO0
( ゚д゚ )「何だと!?」

( ,,゚Д゚) 「さっき、祭りに行こうって誘おうとしたら……どこにもいねえんだ!
      村も一通り探してみたんだが……」

ギコの真剣な表情から、冗談や嘘では無いことは確かだった。
村長の顔からも、笑みが消える。

(´・ω・`)「……不安だな。皆、すまないが、しぃを探してくれ!」


ざわざわと村人達が動き始める。
不安は広がり、やがて焦りとなって人々を駆り立てた。


(´・ω・`)「ブーン君、すまない。歓迎の宴は後で必ずやろう!」

パ听)「ブーン! 私達も探しに行こう!!」

( ^ω^)「わかったお!!」
83 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:49:47.94 ID:gnhv+pvO0
僕達は一旦家に戻り、たいまつを準備する。
ミルナは念のためだと言って、僕に斧を持たせた。

( ゚д゚ )「俺はこっちを探してみる! ブーンとヒートはそっちを探してくれ!」

( ^ω^)「わかったお!」


僕達はミルナと別れ、村のはずれを探す。
日の沈みきった夜の村を照らすのは、うっすらとした月明かりのみ。

大人ですら、闇に惑わされて迷ってしまうだろう。
子供なら、なおさらだ。


( ^ω^)「しぃちゃ――ん!」

ノパ听)「しぃ――――!!」

僕とヒートは、たいまつを持ちながら探索する。
大声でしぃの名前を呼ぶが、反応は無い。

ノパ听)「しぃ、どこに行っちゃったの……?」

( ^ω^)「……僕のせいだお」
84 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:52:16.48 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「え?」

( ^ω^)「僕の宴が、今日だったから……」

ふと、気付いた。
そうだ、今日はしぃの両親の命日?

( ^ω^)「ヒート、しぃの両親のお墓ってどこにあるお!?」

ノパ听)「えっ!? えっと、確かあの丘の上だけど……夜は危険だから
     入っちゃいけないはず……!!」

ヒートが指さしたのは、森の奥にある小さな丘。

( ^ω^)「そこだお! きっとしぃはそこにいるお!」

僕はヒートの肩を掴み、叫ぶ。
確信があるわけじゃないけど、可能性としてはそこしか無い。
85 :スレスト(神奈川県) 2007/04/02(月) 22:54:24.06 ID:gnhv+pvO0
ノパ听)「ブーン、待って! あそこは夜になると狼が出るの!」

( ^ω^)「!?」

ヒートは、走ろうとする僕を掴む。

ノパ听)「私、みんなを呼んでくる! 火があれば狼は寄ってこないから……!
     絶対、待っててよ!」

ヒートは村の方へ走っていった。
僕は、ヒートが見えなくなったのを確認し、丘のほうを見上げる。

( ^ω^)「……」

確かに、みんなが来てからの方が安全だろう。
だけど……何故だろう。
それだと間に合わないと、僕の心が訴えている。


( ^ω^)「ヒート、ごめん……!」


僕は、たいまつと斧を手に、夜の森へと入っていった。


第二話「しぃ」 終わり