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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:最終話「もりのまもりがみ」
- 4 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 22:47:17.90 ID:25dHDhZm0
- 最終話「もりのまもりがみ」
夜空に響く、忌々しい咆哮。
巨大な八つの大蛇は、ゆっくりと動き出した。
<ヽ;`∀´>「い、一体何ニダ!?」
ニダーが震える声で叫ぶ。
すると、大蛇の目がニダーの方へと視線を移す。
<ヽ;`∀´>「まず……撤退ニダ!」
周りの兵士達も、その声で我に返り、一斉に逃げ出す。
- 8 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 22:50:10.05 ID:25dHDhZm0
- それは一瞬。
巨大な大蛇の首が、逃げ惑う兵達を食らおうと襲い掛かった。
<ヽ;`∀´>「が、がぁぁぁぁ!!」
自分のすぐ横に居たニダーの体が、宙に浮いた。
半身をその巨大な牙で刺され、嫌な音と共に大蛇の口の中へと消えていった。
( ゚ω゚)「く……!」
恐怖からか、体が動かない。
ここに居ては死ぬ。
本能が、逃げろ逃げろと告げているが、体は全く言うことを聞かない。
(メ゚W゚)『オォォォォォ――!!』
闇夜に放たれる咆哮と共に、森を激しい炎が包み込む。
大蛇の口から放たれた火炎は、見る見るうちに木々を燃やていく。
木々は倒れ、逃げ惑う兵に炎が襲い掛かる。
( ゚ω゚)「やめろ……やめてくれ……!!」
心臓を潰されたように、胸が痛む。
もう、自分では止めることは出来ない。
村も、森も、何もかも守れなかったのだ。
- 10 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 22:53:00.68 ID:25dHDhZm0
- ※
「なんだよありゃ……!」
「化け物だ、逃げろ! ここに居たら死んじまう!」
村の戦闘は、ヤマタノオロチの出現により中断される。
武器を捨て、我先にと逃げ出す兵士達。
(-_-)「く――皆、どこへ行く! 留まれ!」
ヒッキーがそう叫ぶも、撤退する兵の足は止まらない。
巨大な大蛇――そんなものが森に現れ、火を吹き暴れているのだ。
ヒッキーですら、この場から逃げたいと思わざるを得ない。
ノパ听)「兄貴、あれってまさか……!」
( ゚д゚ )「ああ、ヤマタノオロチ――神木に封印されし疫神、だ。まさか実在したとは……」
夜空に届くほどの大蛇の姿を見て、ミルナは呟く。
( ・∀・)「ふむ、不味いな。このままでは村へ下りて来るのも時間の問題だ」
森を死滅せんとばかりに暴れる大蛇の体は、徐々に村へと向かっている。
炎を吐き、木々を倒しながら動く姿は、抗う者の心を奪うかのように荒々しい。
村の皆は、呆然とその惨劇を見つ続ける。
否、見ていることしか出来ないのだ。
- 11 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 22:55:50.56 ID:25dHDhZm0
- (メ゚W゚)『ウォァァァ――!!』
( ゚ω゚)「くっ!」
大蛇は、その巨大な胴体で木々を倒しながら移動する。
その先は――ヴィップ村だ。
( ゚ω゚)「止まれぇぇぇぇ!!」
走りながら、巨大な体に向け剣を振る。
だが、当然の如く、大蛇を止めるどころか傷さえつけることが出来ない。
( ゚ω゚)「あっ!」
足がもつれ、地面に叩きつけられる。
その間に大蛇の体はずんずんと前へ進んでいく。
- 14 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 22:59:06.34 ID:25dHDhZm0
- ( ω )「く……」
無力だ。
己の無力さに、嫌気が刺す。
森の民と言われ様と、所詮は力無き者。
大切なものを、何一つ守れない――――
『本当に、そうか?』
誰かが、僕に語りかけてくる。
その声は、空から聞こえたようで、すぐ近くで呟かれた気もする。
- 15 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:03:59.24 ID:25dHDhZm0
- 『森の民よ。今一度、森の神として目覚める覚悟はあるのか?』
森の神として。
それは、この身にはもう戻れぬということ。
( ω )「……ああ。何も守れずして、何故我が身を存命させる価値があるのか」
『ブーンという名を持つ人格――それを捨て、戦うというのだな』
( ω )「一時の名だ。我の真命はサカズキノカミ。森の木々よ、この身に汝らの力を貸してくれ」
辺りがざわめく。
風が吹き、視界が白一色に覆われた。
そうだ、我は――――
- 17 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:08:46.63 ID:25dHDhZm0
- ( ゚ω゚)「おおおおおお――――!!」
大地の力が体に流れ込む。
体がめき、という音を立てながら巨大化し、やがて木人の形と成す。
幾多もの命が自分の中に入り込み、力として宿っていく。
それは遠い昔、かつて森を守ったサカズキノカミとしての姿。
( ゚ω゚)「ヤマタノオロチよ、汝の好きにはさせぬ!」
(メ゚W゚)『――、―!』
大木と化した腕で大蛇の首を掴む。
だが、相手は八つの首を持っている。
一つの首が、強烈な炎を吐き出した。
( ゚ω゚)「がぁぁぁ!!」
咄嗟に手を離す。
――厄介だ。ただでさえ、力が失われたこの体では、勝機は薄い。
- 18 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:11:07.88 ID:25dHDhZm0
- ノハ;゚听)「あれは……!?」
村から見える光景に、誰もが息をのむ。
巨大な木人が突如として現われ、大蛇と戦っているのだ。
( ゚д゚ )「森の護り神、サカズキノカミ」
ミルナが、ぼそりと呟く。
( ・∀・)「なんということだ……。まるで、昔話の中に居るようだな」
(*゚ー゚)「ぶーん……ぶーんがたたかってる!」
しぃが叫ぶ。
その声に、誰もが驚き
(;´・ω・`)「な、何言ってるんだい。しぃちゃん」
だが、しぃの言葉をかみ締めるように、ヒートが前に出る。
ノパ听)「……いや、あれはブーンだよ! ブーンの声が聞こえる!!」
川 ゚ -゚)「信じがたいが、私にも聞こえるぞ。今、戦っているのはブーンだ」
- 20 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:13:06.56 ID:25dHDhZm0
- ( ゚ω゚)「ぐぁっ!」
右腕を噛み千切られ、痛みに堪えきれず声を出す。
ヤマタノオロチは雄叫びを上げ、口をあけて威嚇している。
( ゚ω゚)「やはり、力が足りぬか――」
違う首が追撃してくる。
その牙を左腕で受け、足蹴を喰らわす。
(メ゚W゚)『オォォォ!!』
だが、突き放しただけで、ダメージは少ない。
倒す――否、封印さえできればよい。
だが、自身の全てを用いても封印させるだけの力が無いのだ。
- 22 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:14:25.47 ID:25dHDhZm0
- ( ゚ω゚)「護らなければならぬ……! 貴様などに踏みにじられてたまるものか!!」
大切な森を。
ミ,,゚¬メ彡
大切な、家族を。
( ゚д゚ )川 ゚ -゚)(´・ω・`)( ,,゚Д゚)(*゚ー゚)( ・∀・)
そして――――大切な人を。
ノパ听)
- 27 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:16:32.68 ID:25dHDhZm0
- ( ゚ω゚)「!!」
不意に、力が身体の中に入り込んでくる。
どこからか、暖かい想いが自身の力として湧いてくるのだ。
( ゚ω゚)「これは……!」
『ブーン、頑張って!』
『負けるんじゃねぇ、ブーン!』
『俺達の力を受け取ってくれ』
『ぶーん、まけないで』
『ブーンよ、私達の想いを受け取ってくれ』
『ブーン、行け!』
『ブーン、私達の希望を――!!』
それは、祈りだ。
自身に向けられる、無垢なる想い。
その想いは力となり、体中を駆け巡る。
( ゚ω゚)「皆――!」
溢れるほどの想い。
それは、奴を封じるのに十分なほどの力となる。
- 28 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:20:15.90 ID:25dHDhZm0
- (メ゚W゚)『ウオォォ――!!』
暴れる大蛇を片手で掴む。
そして、体中の力を解放した。
( ゚ω゚)「疫神よ。目覚めた所すまないが、再び我と共に眠ってもらおう」
大地が揺れる。
大蛇に力の全てを注ぎ込み、自身の体の中へ吸収する。
( ゚ω゚)「我はサカズキノカミ! 悪しき疫神よ、この地に再び眠れ――――!」
光が溢れ出す。
暴風と共に、その光は全てを覆う。
それは森の力。
それは想いの力。
悪しき心を封じる為に、全てを出し尽くす。
(メ゚W゚)『アァァァァァ!!』
大蛇は叫び、八つの頭を振り回し暴れる。
だが、もはや無駄だ。
奴の体は我の中へと入っていく。
- 31 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:23:23.14 ID:25dHDhZm0
- 身体が大地へと沈んでいく。
(メ゚W゚)『――――!!』
大蛇はもはや声すら出せない。
それは自分とて同じか。
これで、やっと護れたのだ。
よもや、人間との絆が森を救うとは。
( ゚ω゚)「ウルフェルよ、人間も捨てたものではなかろう?」
――消え行く中、月を見ながら、ぽつりと呟いた。
- 32 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:25:40.04 ID:25dHDhZm0
- ――…
( ゚д゚ )「これは……!」
ノパ听)「神……木?」
朝日がさんさんと照らす森の中。
あの大蛇が消えた地点に、巨大な神木が生えていた。
『その声は、ヒートかお?』
ノパ听)「ブーン? ブーン、どこにいるの!!」
ヒートが大声を出す。
不意に、僕は初めてあった時を思い出した。
よもや、最後に皆の声が聞けるなんて。
僕は神に感謝した。
いや、自分も神であるから、ちょっとおかしいな、なんて思いながら。
- 34 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:29:02.63 ID:25dHDhZm0
- 『僕は、ここにいるお。と、言っても、もうすぐこの意識も消えてしまうお』
皆が目の前の神木を見つめる。
誰もが驚き、同時に悟ったような顔をする。
『僕は、森の神様だったんだお』
そう言うと、沈黙の中、ミルナが一歩前へ出る。
( ゚д゚ )「ブーン……、お前が神様だったとは、今でも信じられんな」
ミルナは笑いながら問う。
その声は、別れの空気を察しているのか、少し寂しげだ。
『ミルナさん、あなたに救ってもらった事、感謝してますお。今まで、ありがとうございましたお』
その言葉に、ミルナは微笑みながら
( ゚д゚ )「礼など無用だ。私達は……家族だろう?」
そう言った。
- 35 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:30:31.91 ID:25dHDhZm0
- 『僕を家族と言ってくれて、嬉しいお。この村で過ごした日々は、今まで一番幸せだったお』
ゆっくりと、意識が薄くなるのがわかる。
お願いだ、もう少しだけ、皆と一緒に居させてくれ。
川 ゚ -゚)「ブーン、お前が神でも何でも構わない。私は、ブーンと一緒にいられて……」
クーは、そう言って黙りこむ。
肩が震え、鼻をすする仕草を見せた。
クーも、最後まで強がりだ。
(´;・ω・;`)「ブーン、僕は君の事を忘れないよ。君と過ごした日々は……
あれ、おかしいな。涙で……言葉が」
( ,,゚Д゚)「ちぇ、最後くらいきっちり締めろよ村長。ブーン、ありがとな
村の皆を代表して言っとくぜ」
ギコおじも、今までありがとう。
そう言おうとしたが、僕の口からは、もううまく言葉を出すことができない。
- 36 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:32:15.43 ID:25dHDhZm0
- (*゚ー゚)「ぶーん……いなくなっちゃうの?」
『……ん、しぃ……ごめ……お……しっかり、生きるお。しぃ、元気……お』
もう、意識が消えようとしている。
最後に、ヒートにお別れの言葉を言わなきゃ。
そう思い、ヒートの方へ視線を向ける。
( ・∀・)「ほら、ヒート。早くしないと間に合わなくなるぞ」
モララーがとん、とヒートの背中を押した。
ヒートは、深く深呼吸をして、口を開ける。
- 39 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:34:01.49 ID:25dHDhZm0
- ノパ听)「ブーン……あの、ね」
『ヒート……』
時間が止まったような、そんな空間。
僕の姿は見えないはずなのに、ヒートは僕の目を真っ直ぐに見つめている。
ノハ;凵G)「いきなり……すぎるよ!! もう、何言っていいのか……わかんないじゃん!!」
『ヒート、僕は――』
意識が消えかかっている。
最後に、これだけは伝えなければ。
『ヒート、大好きだお』
それだけ、言いたかった。
最後に、伝えたかったんだ。
- 43 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:35:37.80 ID:25dHDhZm0
- ノハ;凵G)「私もブーンのことが……好きだよ! だから、消えないでよ……!!」
『大丈夫だお――――僕は、いつでも、ここで見守ってる。だから――』
またね、と呟いた。
聞こえたかはわからない。
でも、僕はいつまでもここに在り続ける。
森の、まもりがみとして――――
- 44 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:37:19.45 ID:25dHDhZm0
- ※
さぁぁ、と風が吹いている。
季節は春。
新たな生命の芽が生まれ、育っていく季節。
草木の生えた森の中、二人の男女が歩いている。
ノパ听)「んー、気持ちいい!!」
一人はヒートだ。
太陽の光を体いっぱいに浴びながら、森を歩いている。
( ・∀・)「ここに来るのも久しいな」
もう一人はモララーだ。
その胸には、緑に輝くバッチをつけている。
- 45 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:38:59.23 ID:25dHDhZm0
- ノパ听)「それにしてもさー、一国の王が一人で出歩いていいわけ?」
ヒートが問う。
その言葉に、モララーは笑いながら
( ・∀・)「何、抜け出してきたのだよ。今頃大騒ぎになっているに違いない」
などと、子供のように笑っている。
ノパ听)「呆れた! まったく、村を守ってる国の王がこれじゃ、前途多難ね!」
( ・∀・)「ははは。何、せっかく忙しい中来たのだ。ブーン君に挨拶くらいしておかないとね」
そんな話をしながら、二人は歩く。
しばらくすると、立派な大樹が視界に入ってくる。
神木だ。
かつて、村を救った森の護り神の眠る場所。
- 46 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:40:22.66 ID:25dHDhZm0
- ノパ听)「……」
ヒートとモララーは、静かに祈りを捧げる。
時折、二人の間を気持ちの良い春風が吹き抜けた。
ノパ听)「……」
ヒートの頭に、彼――ブーンとの思い出が蘇る。
初めてあった日のこと。
一緒に畑を耕した日のこと。
一人で森にいったブーンを、殴った日のこと。
それから……それから――――
- 47 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:41:45.66 ID:25dHDhZm0
- ( ・∀・)「ヒート、お祈りは終わったかい?」
ノパ听)「……うん!」
( ・∀・)「それじゃ、そろそろ行こうか。あんまり遅いとイヨウの逆鱗に触れてしまう」
モララーはそう言い、村へと歩き出した。
ヒートも、その後を追う。
足を止め、もう一度、神木の方を振り返る。
ノパ听)「……」
それに答えるように、木々が音を立てて揺れた。
いや、単に風が揺らしただけかもしれない。
それでも――――ヒートには、ブーンが語っているように見えたのだ。
- 49 :通訳(神奈川県) 2007/04/26(木) 23:42:59.49 ID:25dHDhZm0
- ( ・∀・)「ヒート、ほら、早く行くぞ――!」
遠くで、モララーが手を振っている。
ノパ听)「あ、待ってよ――!!」
ヒートは駆け出す。
森の木々は、そんな彼女を静かに見守っている。
「ヒート、今日も元気でなによりだお」
そんな声が、どこからか森の中に響いた。
だが、風に吹かれてヒートの耳には届いていないようだ。
今日も、森のまもりがみは、平穏な人々を見守っていた。
( ^ω^)ブーンと森の木々のようです
fin