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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第九話「よみがえるひげき」

202 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:09:26
第九話「よみがえるひげき」


カーンカーン、と金属を叩く音が村中に鳴り響く。
意識がゆっくりと覚醒し、その音がはっきりと耳に入ってきた。

( ^ω^)「ん……鐘の音……?」

起き上がると、続けて大声が聞こえてくる。

「敵襲だ――! ハングル軍が迫ってきてるぞ――!」

――すぐに、眠気など何処かに飛んでいった。
203 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:09:40
慌てて外へ出ると、すでに何人もの人々が武装し、駆け回っている。

ノパ听)「ブーン!!」

( ^ω^)「ヒート! これは一体どうなってるんだお!?」

ノパ听)「ハングル軍の奴ら、寝込みを襲うつもりだったらしいわ!
     最初から条約なんて守る気は無かったみたいね!」

( ^ω^)「ハングル軍が……!」

ノパ听)「ミルナやクーはもう村の入り口に行ったわ! ブーン、私達も行きましょう!!」

そう言い、ヒートは剣を背負い走り出す。
僕も慌てて家の中へ戻り、支給された剣を手に取る。

戦う時が来たんだ。

僕は、ブーンとして村を守りたい。
僕は、森の民として森を守りたい。

この時の為に、僕は此処に現れたんだ。

( ^ω^)「絶対に……負けられないお」

僕は剣をぎゅ、と握り締め、走り出した。
204 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:09:56
( ゚д゚ )「奴らの数はどの程度だ?」

( ・∀・)「見たところ50、と言った所かな。舐められたものだ」

村の入り口。
すでに武装し、戦の準備を整えた人々が集まっている。

川 ゚ -゚)「だが、それが幸いした。こちらは80はいる。数ではこちらのが上だ」

( ・∀・)「ああ。だが、戦力としては五分五分と言った所か」

モララーは遥か遠くから近づいてくる影を見ながら、呟く。
と、背後から慌しい足音が近づいてくる。

ノパ听)「モララー! ハァ、ハァ……。ハングル軍は!?」

息を切らしたヒートが姿を見せる。
205 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:10:12
その姿を横目で見ながら、

( ・∀・)「おや、ヒート。悪いが、まだ奴らの到着には時間が掛かりそうだ」

ノパ听)「あ、そう。って、無駄に体力使っちゃったじゃない!!」

(;゚д゚ )「ヒート、お前少しは緊張感ってもんを……」

多少、場の緊張感は緩んだが、それでも皆の顔は強張っている。
徐々にだが、足音が近づいてきているのだ。

戦闘慣れしていない村人達ならば、この状況に緊張しないほうがおかしい。
206 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:10:25
(´・ω・`)「皆、絶対に勝――

( ,,゚Д゚)「絶対に勝つぞゴラァ!! 俺達の村をハングル軍から守るんだ!!」

その一言で、士気が一気に上がる。
雄叫びに似た人々の声が、夜のヴィップ村に響いた。

(´・ω・`)「……」

兎に角、決戦の時は近づいていた。


ノパ听)「そういえば、ブーンは……?」

( ゚д゚ )「まだ姿を見てないが、後ろの方にいるのかもしれん」
207 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:10:37
ハングル軍は、馬を走らせながら村へと近づく。
村の門が見えてくると、たいまつの火が集まっていることにいち早く気付いたのは

(-_-)「あちらも、やる気のようですね」

ヒッキーだ。
腰から剣を取り出すと、片手で軽々と持ち上げる。

(-_-)「皆、このまま村の中へ押し通る。多少の抵抗があれば殺しても構わん」

「はっ!」

(-_-)「久々に腕が鳴る……楽しめそうだ」

ヒッキー率いるハングル軍は、村の目前まで差し掛かっていた。
208 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:10:49
(=゚ω゚)ノ「弓矢用――意!」

イヨウが腕をあげると、一斉に弓を引く音が鳴り響く。
ハングル軍を限界まで引きつけ、イヨウの腕が勢い良く振られた。

(=゚ω゚)ノ「放て!!」

同時に、矢の雨がハングル軍に襲い掛かる。

(-_-)「盾で守り通せ! 止まるな、進め!」

放たれた矢は、ハングル軍の馬を仕留め、また兵にも襲い掛かった。
だが、それでも50の軍勢は止まらない。

ノパ听)「来るわ!!」

( ・∀・)「皆、かかれ――――!」

大地を割らんばかりの怒号。
そして、村人達は武器を手に兵の群れへと突っ込んでいく。

金属のぶつかり合う音。

そして、戦は始まった。
209 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:11:02


(;^ω^)「はぁ、はぁ――っ!」

僕は遠くから聞こえる音に、一瞬足を止める。
だが、再び思い直し、先を急いだ。

森の悲鳴。

それが、僕を村の入り口ではなく森へ走らせたのだ。

(;^ω^)(何やってるんだお。村の皆が危ないっていうのに……!)

だが、自分は森へと向かっている。
やはり、僕は人間達よりも、森の方が大切なのか?

違う、どちらも大切だ。

だが、今は森の方を優先している。

(;^ω^)「おかしいお……狼達の声も、全然しない。それに、この音――」


ギギギギ、という声とも音とも取れる、嫌な音。
まるで、死という音をスローモーションで再生しているような音だ。
210 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:11:14
( ^ω^)「神木に何か起こってる……」

音は神木のある場所から聞こえるのだ。
僕は、草を掻き分け必死に走る。

走って、走って、走って――――

そして、神木のある場所が見えてくる。


( ^ω^)「あ……!?」


視界に入ってきたのは、虫の息である狼の民。
体には、何かで刺されたような傷。

そして

<ヽ`∀´>「おら、さっさと切り倒してしまうニダよ」

いかつい目つきをした男。
その周りには何十人もの兵がおり、神木に刃を入れている。
211 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:11:27
ミ,,゚¬メ彡『ガゥゥ……!』

<ヽ`∀´>「あん? まーだ動ける獣がいるニダか?」

手負いを負った狼が、ニダーへ牙を向ける。
その姿は紛れも無い、狼の主ウルフェルだ。

ミ,,゚¬メ彡『ガルァッ!!』

搾り出したような声と共に、ウルフェルは地を蹴り、ニダーの喉元へ飛び掛る。

<ヽ`∀´>「アイゴー!!」

ミ,,゚¬メ彡『!!』

対し、ニダーは長い槍を横払いに繰り出し、ウルフェルを吹き飛ばす。
一撃を食らったウルフェルは、力無く地面に叩きつけられた。
212 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:11:40
<ヽ`∀´>「息の根を止めてやるニダ」

そのまま、ニダーは槍を構え直し

(#^ω^)「やめるお――!!」

<ヽ`∀´>「っと、何者ニダ!?」

茂みから飛び出し、剣をニダーに向け、思い切り叩きつける。
だが、ニダーの槍によって、その一撃は防御された。

( ^ω^)「ウルフェル!」

僕は狼の主の元へ駆け寄る。
もはや、その体に昔の気迫は残されていない。

ミ,,゚¬メ彡『……森の、民』

弱々しく息をしながら、ウルフェルは答える。
213 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:11:54
ミ,,゚¬メ彡『すまぬ……我は、悪しき心を持つ者から森を守ることは出来なかった。
      仲間も、やられてしまった。何一つ、守れぬとは、情けない……』

( ;ω;)「大丈夫だお、僕が守るお! だから、だから……」

ミ,,ー¬メ彡『……』

言葉が続かない。
いや、もう何を言っても意味が無いのだ。

ウルフェルの体は冷たくなってしまった。

命という温かみを失った体は、もう動くことは無い。
二度と、言葉を受け取ることも出来ない。

<ヽ`∀´>「おい小僧! 貴様、村の人間ニダ?」

ニダーが槍をこちらへ向け、問う。

<ヽ`∀´>「武器を捨て、大人しくするなら命は取らんニダよ? 這い蹲って、命乞いするニダ!」

ああ、醜い。
僕の体から怒りが湧き出てくる。

怒りという、力が体を駆け巡っている。
214 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:12:06
( ゚ω゚)「黙れ」

ゆっくりと、立ち上がる。
剣を握り、憎き相手の面を見る。

<ヽ`∀´>「ほう……。ウリがハングル国の王にして武将、ニダーと知っての言動ニダ?」

ニダーも槍を構える。
周りの兵が、一斉に僕の方へ武器を向けた。

<ヽ`∀´>「お前達はさっさと神木を切り倒すニダ! こいつはウリが始末するニダ!」

( ゚ω゚)「貴様、神木を切り倒すだと!?」

同時に、剣と槍が交える。
僕は前へと踏み込み、もう一度振りかぶった。

<ヽ`∀´>「遅いニダ!」

容赦なく、槍で突いてくるニダー。
だが、僕は姿勢を低くし、回避しながら接近。
215 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:12:17
剣の間合いにつめ――

( ゚ω゚)「はぁっ!」

キン、という音。

武器と武器がぶつかり合う。

( ゚ω゚)「何故、貴様は森を殺そうとするのだ……!!」

<ヽ`∀´>「我が国、そして自分の為ニダ。お前こそ、どうして森なんぞに――」

ニダーは槍を一回転させ、再び喉元を狙う。

<ヽ`∀´>「命を懸けるニダ!?」

鋭利な切っ先が顔をかすめた。
僕の頬から、血が垂れているのがわかる。

( ゚ω゚)「我は森と共に在り! 悪しき欲望の果てに死ぬわけにはいかぬ――!」

<ヽ`∀´>「ウェハハハ! その信念、我が槍で打ち砕いてやるニダ!」

月夜の下、剣と槍の一騎打ちは続いた。
216 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:12:30
(-_-)「ふっ!」

川 ゚ -゚)「はぁ!」

互いの剣が舞う。
まるで演舞のように美しくも殺しに行く剣先。

川 ゚ -゚)「甘い!」

一瞬の隙をついた一撃。
クーの剣がヒッキーを貫き――

(-_-)「効かぬわ」

鉄の鎧が、クーの剣を防いだ。
瞬間、ヒッキーは大きく剣を振るう。

川 ゚ -゚)「っつ!」

咄嗟に回避するが、ヒッキーはそのまま体当たりをぶちかました。

(-_-)「久々の獲物だ。そう簡単に殺しはしない」

川 ゚ -゚)「その余裕がどこまで続くのか、試してみるか?」

剣を構える。
その様子に、ヒッキーはわずかな笑みを浮かべた。
217 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:12:43
ノパ听)「ちぇい!!」

( ・∀・)「ヒート、背後を取られるな!」

村の入り口付近。
白兵戦は激しさを増していた。

( ゚д゚ )「おおおおおお!!」

ミルナは斧を振り回し、馬に乗った兵をも圧倒する。

(´・ω・`)「いてて、足がつった!」

( ,,゚Д゚)「村長、だから無理しないで家の中に隠れてれば……」

(´・ω・`)「馬鹿もん! 長が戦わんでどうする!!」

皆、武器を持ち戦っている。

大切なものを守るために。

奪われない為に。

己の信念の為に。

……争いの果てにあるのは絶望だけだと、何度経験すればわかるのだろう。
218 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:12:53
( ゚ω゚)「はぁ……はぁ……」

<ヽ`∀´>「ニダニダ、遊びは終わりニダ」

( ゚ω゚)「何?」

直後、大地が揺れるほどの音が鳴り響く。
音の元は――神木。

( ゚ω゚)「そ、そんな……」

ゆっくりと、音を立てて倒れていく神木。
その巨大な大樹は、地面へと吸い込まれるように倒れた。

<ヽ`∀´>「よーし、よくやったニダ! 手分けして運ぶニダよ!」

目の前の光景が、信じられない。
嘘だ。神木が倒れたら……奴が。
219 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:13:05
( ゚ω゚)「なんということを……」

空気が歪む。
あの時と同じ空気だ。

<ヽ`∀´>「ん? 何ニダ? この薄気味悪い空気は……」

黒い霧が、神木のあった場所から吹き出す。
忌々しい疫神が目覚める兆しだ。

( ゚ω゚)「終わりだ……。森も、村も、この地の全てが終わってしまう」

やがて、黒い霧は形を成していく。

それは、八つの頭を持つ怪物。
欲望の果てに現れた、邪神。

<ヽ;`∀´>「こ、これは一体何ニダ!?」

巨大な体が、空へと伸びる。
木々を倒しながら具現化する姿は、八つの頭を持った竜。
220 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:13:18
(-_-)「む……あれは?」

川 ゚ -゚)「何を見ている。……なんだ、あれは?」

――人々の悪しき心から生み出された。

ノパ听)「ちょっと、あれ見て!!」

( ・∀・)「巨大な影……? いや、何だあれは」

――全てを破壊し、焼き尽くす怪物

( ゚д゚ )「あれは……まさか、伝説の……」

(´・ω・`)「何、ねぇ、何!?」

( ,,゚Д゚)「村長、落ち着け。……いや、俺も足が震えてやがる」

――愚かな想いは、やがて蘇らせる。
221 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/25(水) 09:13:30
( ゚ω゚)「疫神――ヤマタノオロチ」



(メ゚W゚)『オオオオオ……!! オォォォォォ!!!』




第九話「よみがえるひげき」    終わり