-VIP産小説保管庫-

( ´ω`)枯れて('A`)苦悩し虹を探して生き抜くようです:2

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:18:15.64 ID:t/LjLsSR0
 -2- Hein


先ほどまで無かったはずの扉を抜け、僕は思わず言葉を失う。
僕の少し後ろをドクオがついてくるが、やはり同じような反応だ。
景色が変わらない。

全く同じ部屋なのだ。


( ^ω^)「これは……どういうことだお?」

(`・ω・´)「どういうこと、と申されましても。ここが第二の部屋です」

( ^ω^)「第二?」


咄嗟に彼の言葉に耳を傾ける。
つまり、そういうことなのだろう。第二。部屋は複数存在する。


(`・ω・´)「はい。……とは言っても、第三、第四と部屋が続く訳では無いんですけどね」

( ^ω^)「あ、そうなのかお」


はは、とシャキンが苦笑する。
僕の心中で思い切り予想が外れたことも、どうせ見透かされているのだろう。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:19:02.06 ID:t/LjLsSR0
('A`)「それで、この部屋に移動した意味は?」


もうお前はどうにでもなれ。


(`・ω・´)「安心してください。正規のルートで、ゴールに向かってますよ」

( ^ω^)「つまり、虹には近づいてるのかお?」

(`・ω・´)「その通りです」


途端にドクオが噛み付くようにして口を挟む。


('A`)「さっきも聞いたけどその虹ってのは何なんだ?」


シャキンが僕に視線を向ける。
それに気付き僕もシャキンに視線を合わせるが、何を悟ったのかシャキンが一つ溜め息をつく。


(`・ω・´)「……ドクオ様は何も知らないのですか」

( ^ω^)「そうらしいお。気付いたら部屋にいたと言っていたお」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:19:38.77 ID:t/LjLsSR0
僕の一言にピクリと反応し、ドクオが取り乱す。
そしてまた吼え始めた。


(;'A`)「ちょっと待てよ! アンタは違うのか!?」

( ^ω^)「お?」

(;'A`)「アンタも気付いたらこの部屋にいたんじゃなかったのかって、そう言ってんだよ!」


僕は後ろ髪を掻きながら、口を開いた。


( ^ω^)「……違うお」

(;'A`)「どういうことだよ、そんなこと一言も聞いてねぇ!」

( ^ω^)「聞かれてないし、言う必要もなかったお」

(;'A`)「……何だよ、それ」


ドクオの表情が少しずつ曇り始める。
その意図は僕には分からない。しかし、そんなことを気にしていられるほど僕にも余裕があるワケではなかった。
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:20:11.22 ID:t/LjLsSR0
( ^ω^)「正規のルートかお」

(`・ω・´)「……はい?」

僕の言葉にシャキンが顔を歪ます。今度こそ僕の予想は的中したようだ。


( ^ω^)「つまり、他にもルートはあるんだお?」

(`・ω・´)「あります。一応」

( ^ω^)「質問があるお。正直に言って欲しいお」

(`・ω・´)「お好きにどうぞ。答えるかどうかは内容次第ですが」

( ^ω^)「……正規のルートと“その”ルート。どっちが虹に近いんだお?」


僕とドクオの視線がシャキンを捉え、そしてシャキンが僕らを見返す。
そして少しの間を空け、ゆっくりと口を開く。
ほら、やっぱり。僕の予想通りの言葉が。


(`・ω・´)「お勧めはいたしません。ですが、近いのは確かです」


ほんの少しだけ、優越感に浸る。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:20:47.47 ID:t/LjLsSR0
( ^ω^)「そうかお」

(`・ω・´)「ですが、私が貴方をご案内出来るのはここまでです」

( ^ω^)「お?」


そう言うとシャキンはその場で振り返り、入ってきた扉の向こうへと向かっていく。
ドクオがシャキンを追う。
そして僕も追いかけようとするが、なぜか体が動かなかった。


(;^ω^)「待ってくれお! 何処に行くんだお!」


しかし彼等は既に扉の向こう。


('A`)「…………」


薄らとした笑みを浮かべ、僕を見つめるドクオが見えた。
そしてドクオはシャキンについていく。

差し詰め、僕を置いて自分だけは脱出できる、とでも思っているのだろう。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:21:20.74 ID:t/LjLsSR0
(;^ω^)「待てお!」


僕の声が彼等に届くことはなかった。
ゆっくりと。ゆっくりと。僕の目の前で扉が閉まっていく。
最初は普通に。しかし次の瞬間、扉の両端がさらに閉まっていった。まるでファスナーを閉めるような。


(;^ω^)「お。何だお、これ」


気付けば僕は、もと居た部屋と同じ部屋に一人、取り残されていた。

見たままでは、数時間前と同じ状況だ。
無駄に広く豪華な家具の整った一室。まるで王室のようだ。


( ^ω^)「……まただお」


僕はゆっくりと、先ほどの部屋と同じ位置に置かれたソファの上に倒れこむ。


( ´ω`)「また虹から遠ざかってしまったお……」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:21:55.83 ID:t/LjLsSR0
すると腹部に何か違和感を感じる。
ソファと腹の間に手を突っ込み、違和感の根源を弄り探す。


( ´ω`)「何だお、これ」


それは一枚の紙だった。

紙には僕のこれからを指示するような文字は見当たらない。
かといって何も書かれていないわけでもなかった。

落書き。というわけでもないだろう。


( ´ω`)「子供の描いた絵……かお?」


クレヨンで色鮮やかに満遍なく彩られたその絵を僕はその場で放り投げ、
もう一度立ち上がる。


( ´ω`)「行かなくちゃ。ここで立ち止まってるわけにはいかないお」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:23:10.09 ID:t/LjLsSR0
長方形に模られているであろう、その部屋の四隅には台座があり、その上には壷。
僕はそのうちの一つの壷を持ち上げ、壁に投げつける。

派手な音を上げながら、大きな欠片を残し破損する。


( ^ω^)「何とかしないと」


十数メートル先にある、もう一隅まで走り向かう。
そしてまた壷を持ち上げ、投げ捨てる。地に着いた瞬間、耳障りな音と共にその形は成さなくなる。


( ^ω^)「何かしてないと」


また隅へと走る。
そして、壊す。


( ^ω^)「何も出来なくて」


最後の一つをゆっくりと持ち上げ、一気に地面にたたきつけた。


( ^ω^)「狂いそうだお」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:23:51.53 ID:t/LjLsSR0
最後の壷の中から、また一枚の紙が出てきた。
先ほどと同じような絵だったが、描かれた人物は明らかに違っていた。


( ^ω^)「……まぁ子供の絵に大した違いなんか無いお」


どうしたらここから出られるか、まずそれだけを考えなければ。
そのとき僕はふと、天井を見上げた。


( ^ω^)「電気が切れそうだお」


さっきから我が目を疑っていたのだが、どうやら僕のせいでは無いらしい。
目がちかちかとして気持ち悪い。どうにかならないものだろうか。


从 ゚∀从「申し訳ない、今すぐ電球を取り替えよう」


突然発せられたその声に驚き、勢いよく振り向く。
そこには前後共に長髪の、顔の半分隠れた女性が立っていた。


(;^ω^)「だ、誰だお!?」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:24:45.13 ID:t/LjLsSR0
从 ゚∀从「誰、と言われたらハインだとしか言いようが無いな」


僕の反応に対して彼女は微塵も動揺した様子は無い。
しかしそれも当然のことなのかもしれない。何故なら彼女は。


( ^ω^)「……使用人かお」

从 ゚∀从「お、よくご存知で。どうする?」

( ^ω^)「どうするって何だお」

从 ゚∀从「ここで延々と文句垂らしてここで一生過ごすか、俺についてくるか」


隠れて殆ど見えないのだが、彼女はきっと美人なのだろう。
そのまっすぐな視線が僕にそう感じさせる。


( ^ω^)「……いくお」


僕の言葉を聞くと、使用人はにやりと笑った。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:25:16.92 ID:t/LjLsSR0
もっと、こう。表現に「微笑んだ」と言わせるような笑い方をすればいいのに
彼女のそれは間違いなく、にやりとした笑い、なのだ。


从 ゚∀从「着いてきな」


彼女の最初の口調との微妙な変化に違和感を覚えつつ、僕はまた歩き出した。
何処に行くかはわからない。
それでも、ここに居るよりはマシだろう。


从 ゚∀从「……気でも触れてるのか?」

( ^ω^)「お?」

从 ゚∀从「あれ」


ハインが指差す先を見て納得する。
僕が先ほど投げ割った壷の破片が派手に散らばっていた。


从 ゚∀从「破壊衝動?」

( ^ω^)「……別に、そんなんじゃないお」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:26:27.88 ID:t/LjLsSR0
僕の目の前で、それは起きた。
壁に、扉が出来たのだ。


从 ゚∀从「行こうか」


説明する気は毛頭無いそうだ。当たり前のように、いや、実際当たり前なのだろう。
彼女が壁に手を当てると、まるで口を開いたかのように扉が出現する。

……当たり前であってたまるか。


( ^ω^)「把握した」


おそらく、シャキンも同じようにして扉を作り出したのだろう。
見たところ鍵は無い。


从 ゚∀从「あ、そうだ」

( ^ω^)「何だお?」

从 ゚∀从「お前も虹を探しているんだろう?」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:26:58.82 ID:t/LjLsSR0
このタイミングで聞かれるとは思っていなかったため、少し返事に困ってしまう。
そして僕の返事を待たずに、ハインは続けて言う。


从 ゚∀从「虹を見て、どうする気だ?」


その質問が何を意味するのか。
その質問にはどう答えればいいのか。


( ^ω^)「虹を見ることが出来た時、話すお」

从 ゚∀从「そうか。……なら、その答えを俺が知ることは無いだろうな」

( ^ω^)「お?」

从 ゚∀从「無理に聞こうとは思わない。ただ、覚悟はしておけ」


ハインの言葉の意味を、僕が知ることはなかった。


从 ゚∀从「さぁ、行こう」


何故ならこの先、僕はハインと二度と会うことはなく
この貴重な関係を、彼女を、僕は思い出すことも出来なかったからだ。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/19(火) 21:27:33.60 ID:t/LjLsSR0
从 ゚∀从「お前が虹を求める時、虹もお前を求めるだろう」

从 ゚∀从「求める者の渇きを潤すため、虹はその身を捨てることになる」

从 ゚∀从「虹の城は、確かに存在する」


「それを、疑うな」



ハインの言葉がそこで止まると同時に、扉が開く。
僕は臆すことなく歩を進める。

そのとき、別れ際のドクオの不愉快な笑みが頭に浮かんだ気がした。