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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第八話「いくさ」

183 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:36:53
第八話「いくさ」


村の入り口に、衝撃が走る。
ハングル国からの、あまりに理不尽な条約に、声も出ないのだ。


( ,,゚Д゚)「ふざけるなっ!」

ギコが声を張り上げる。
騒然とした雰囲気が、一瞬でどよめきの嵐に変わった。

( ,,゚Д゚)「それがハングル国のやり方か!? そんな条約、断固反対だ!」

ギコの叫びに応じて、同意見が村人達からも出てくる。

ノパ听)「そうよ! こんなの認められないわ!」

ヒートが前に一歩出て叫ぶ。
やがて、村人達の声も荒くなり、ヒッキーに対して罵声を浴びせた。
184 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:37:07
(-_-)「黙れ」

(*゚ー゚)「んっ……!?」

ヒッキーの剣先が、しぃの喉元に向けられる。
瞬間、村人達の罵声が止まり、女性の悲鳴が聞こえた。

( ,,゚Д゚)「しぃ!」

(#^ω^)「何のつもりだお! しぃに手を出すなお!」

僕は思わず声を張り上げた。
だが、ヒッキーは表情を変えずに

(-_-)「黙れと言っている」

そう言い放つ。

ヒッキーの剣先が、少し動いた。
僕は足を止め、歯をぎゅっと食いしばる。

(-_-)「命が惜しければ、妙な気はおこさぬ事だな」

そう言うと、ヒッキーは剣を降ろした。
185 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:37:28
(*゚ー゚)「う、うわぁぁぁん!」

( ,,゚Д゚)「しぃ!」

泣き崩れるしぃを、ギコがしっかりと抱きかかえる。

(-_-)「五日後に返事を聞こう。良い返事を期待している」

ヒッキーはそう言い残すと、軍を連れて去っていった。

残されたのは、騒然とした村人達。
僕とて、例外じゃない。

何が起こったのか、頭が状況についていかないのだ。

(´・ω・`)「……皆、これから僕の家に集まってくれ。今後の事を話し合いたい」

村長がそう言うと、村人達は静かに頷き、村長の家へと向かう。

ノパ听)「ブーン……!」

( ^ω^)「……」

ヒートが心配そうな顔で僕を見る。
けど、僕はそんなヒートに対して、何も言えなかった。
186 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:37:44
――…


(´・ω・`)「さて、事態は深刻だ。どうしたものかね」

重苦しい雰囲気の中、村長がそう呟いた。
その言葉に、誰もが俯き暗い顔をしている。

ノパ听)「そんなの決まってるわ! あんな条約、受けられる訳ないじゃない!」

勢い良く大声を上げたのはヒートだ。
怒りのせいか、ヒートからは気迫のようなものが感じられる。

( ^ω^)「そうだお! あんな条約……酷すぎるお」

僕も、続けて声をあげた。
その意見に、何人かの村人達は頷く。

( ゚д゚ )「だが、ハングル軍はこちらが従わなければ、制圧にかかるだろう」

( ^ω^)「制圧……」

そうだ。
断った所で、黙って引いてくれる相手とは思えない。
187 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:37:59
(´・ω・`)「そうだね。反抗をすれば、より酷い扱いを受けるだろう」

ノパ听)「でも……!」

ヒートは何か言おうとしたが、すぐに口ごもった。
村長の言葉に、再び静寂が場を支配した。


( ^ω^)「僕は――戦いますお」


僕の言葉が、静寂を破る。
皆の視線が一気に僕に向いた。

( ^ω^)「この村は、僕達の村ですお。森も、動物も、この村と共に生きてきたんですお。
      だから、あんな奴らに渡したら駄目だお」

僕は、はっきりとそう告げる。
この村は、自然と共存してきた。

森と共に生きてきたのだ、この村は。

だからこそ、守らなければならない。

( ^ω^)「この村を……守りたいんですお」
188 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:38:14
その言葉に、ヒートが答える。

ノパ听)「私も、ブーンと同じ気持ち。あんな奴らに頭下げるくらいなら
     戦って死んだ方がまだいいよ!!」

(´・ω・`)「ふむ」

村長は頷き、問う。

(´・ω・`)「皆に問う。ハングル国の暴挙に対して、戦う者は手を挙げてくれ」

空気が、動く。
ゆっくりと、皆の手が挙がったのだ。

川 ゚ -゚)「私はブーンの意志に従う。武士として、主と共に戦おう」

( ^ω^)「クー……」

そして、誰かが僕の肩を叩く。

( ゚д゚ )「あいつらに、この地は踏ません。なあ、ブーン?」

ミルナが、にやりと笑いながらそう言った。

(´・ω・`)「決まりだ。皆、この地を守り抜こう!」

村人達の雄叫びが響き渡る。
悪しき侵入者を追い返す為に、人々は決意したのだ。
189 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:38:27
(´・ω・`)「さて、奴らが来るのは五日後だ。問題は物量差だね」

川 ゚ -゚)「うむ。村長、この中で武術を心得ているものは何人ほどいるんだ?」

クーの質問に、村人達は申し訳なさそうな顔をして

「俺達は剣も握ったことねぇ……。せいぜいクワか斧くれえだ」

川 ゚ -゚)「相手は兵だ。戦闘慣れしていないあなた達では分が悪いな」

再び、壁が立ちふさがる。
戦う決意は出来ても、圧倒的に不利である事実は変わらないのだ。

(;^ω^)(どうすればいいんだお……)
190 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:38:40
再び、諦めに近い空気が流れる。
そんな中、男の声がその雰囲気を打ち崩した。

「失礼。村長はいるかな?」

声は、家の入り口から発せられた。
その声の主へ、視線を向ける。

ノパ听)「あ、あんたは……!」

ヒートの声が震える。
なぜなら、声の主は

( ・∀・)「やあ、久しぶり……でも無いかな」

ハングル国のモララーだったからだ。
191 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:38:55
村人達が一斉に脅え出す。
モララーの後ろには、何十という武器を持った者達が控えていたのだ。

ノパ听)「何しにきたのよ! まさか、私達を殺しにきたってわけ!?」

モララーは、やれやれ、と呟きながら

( ・∀・)「まさか、その逆さ。協力する為に来たのさ」

そう言い、村長の前まで歩を進めた。

( ・∀・)「村長、私達はハングル国の暴挙に耐え難い感情を抱いている。
     後ろに控えてる彼らとて同じだ」

(´・ω・`)「モララー、じゃあ、君達は反乱軍と言う訳かい?」

(=゚ω゚)ノ「そうですよう! この村の件についても、僕達は納得いってないよう!」

モララーのすぐ後ろに付いていたイヨウが、大声で言う。
その言葉に、村人達は動揺を隠せない。
192 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:39:10
( ゚д゚ )「つまり、戦力になってくれる、ということか?」

( ・∀・)「私はそのつもりだ。まあ、皆が信用してくれればの話だが……」

モララーがヒートを見ながら、言う。

ノパ听)「な、なんで私を見るのよ!!」

( ゚д゚ )「ヒート、突っ掛かるな。話が逸れる」

そんな二人を他所に、村長はすぐに返事を出した。

(´・ω・`)「モララー、力を貸してくれるか?」

( ・∀・)「勿論です」

村長は、そうか、と言い笑みを浮かべた。

そして、モララーと握手を交わす。

( ・∀・)「この村を守り、ハングル軍を追い返そう。……戦は五日後だ。
     すぐにでも準備に取り掛かろう」

皆が同意の声をあげ、動き始める。
戦への時間は、刻一刻と近づいていった。
193 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:39:25
――…


(=゚ω゚)ノ「弓矢はしっかりと引かないと真っ直ぐ飛ばないよう!」

広場では、イヨウが弓の使い方を村人達に教えている。
モララー率いる反乱軍は、総勢で50はいる。

元々、ハングル国の兵士だった者。
支配下に置かれ、酷い扱いに嫌気がさした者。

あらゆる人間が集っていたのだ。

( ^ω^)「もうすぐ、この村が戦場になるのかお……」

僕は、支給された剣を握り締め、呟く。
戦になれば、負傷者が出るだろうし、死人だって出るだろう。

何故、そうまでして人は争うんだ。

( ・∀・)「どうしたんだい? 浮かない顔をしているが」

( ^ω^)「モララーさん……」
194 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:39:41
そんな事を考えていると、モララーに声を掛けられた。
僕は、その疑問をモララーに問いてみる。

( ・∀・)「ふむ、何故人は争うのか……」

( ^ω^)「そうですお。それぞれが協力し、助け合っていけば争いなんて必要無くなるお」

モララーは、少し考え

( ・∀・)「人間はね、欲望がある限り争う生き物なんだよ。
     奴ら……ハングル国の王も、この村の森を欲しているから仕掛けたのさ」

そう言った。

( ^ω^)「……愚かですね」

( ・∀・)「そうだな。人間というのは愚かな生き物だ。
     貪欲であり、その先にあるのは絶滅かもしれない」

モララーは「それでも」と付け足し、

( ・∀・)「私達は生きていかなければならない。命を与えられた限り、ね」

( ^ω^)「……」

僕は、何も言わなかった。
いや、言えなかったのかもしれない。
195 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:39:55


ヒートの家の前から、気合の入った声が聞こえる。
それは女性の声ではあるが、気迫の篭った声は男性以上に圧倒する力を持っている。

川 ゚ -゚)「ヒート、大振りだ。もっとコンパクトに振れ」

ノパ听)「わかってるわよ!! ちぇい!!」

重い剣が、勢い良く空を切る。
その音から、よほどの重量だと感じ取れるが、ヒートはいとも簡単に扱っている。

( ゚д゚ )「ヒート、無理をするな。お前は女だから弓矢でも……」

ノパ听)「え? 何!?」

再び、鋭利な切っ先が空を切る。
ミルナの目の前をかすめた剣は、ずん、と重そうな音を立てて地面に突き立てられる。

( ;゚д゚ )「……いや、何でも無い」

ミルナは冷や汗を流しながら、ヒートには近寄るまいと心に誓った。
196 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:40:08
(*゚ー゚)「みんな、おちゃ〜」

( ^ω^)「お茶どうぞだおー」

僕としぃは、お茶をヒート達に渡す。

ノパ听)「ありがとー!! もう喉カラカラ!!」

ヒートは一気にお茶を流し込む。
腰に手を当てて飲む姿は、女性らしさを微塵も感じさせない。

ノパ听)「っぷは! おし、クー! 特訓、続けよっか!」

川 ゚ -゚)「うむ」

お茶を飲むなり、剣を取る二人。
そんな光景を見て、僕とミルナは

( ^ω^)( ゚д゚ )「……」

その勇ましさに呆然としていた。
村の女は、オトコより強い。

そう、しみじみと感じていた。
197 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:40:21
――…

(´・ω・`)「皆、よく頑張ってくれた。いよいよ明日だ」

村の広場。
武装した人々が集まり、その中心に村長が立っている。

( ・∀・)「明日は作戦通り、相手の出鼻を挫く。ニダー王は戦線に立つ王として有名だ。
     ニダー王を仕留めれば、相手も総崩れになるだろう」

ノパ听)「なんで王様が戦線に出てくるのよ?」

ヒートの問いに、イヨウが一歩踏み出し答える。

(=゚ω゚)ノ「ニダー王はかつては賊にいたんだよう。そのせいか、戦では先陣を切って
     自ら戦う武将でもあるんだよう」

( ゚д゚ )「ふむ……。ハングル国もそう大きな国では無い。
     王が自ら指揮をしていると言う事か」
198 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:40:36
(´・ω・`)「それじゃ、明日に備えて休もうか。皆、この村を守り抜こう!」

村長がそう言うと、村人達は声をあげる。
無論、仲間になった反乱軍の人々も。

(´;・ω・;`)「うっう……皆が反応してくれてる……村長バンザイ!」

広場の声は、少しだけ笑いに変わった。
中には失笑も混じっていたが。

ノパ听)「ブーン」

( ^ω^)「お?」

ヒートが僕の裾を掴み、声をかける。

ノパ听)「絶対……勝とうね!」

ヒートは、笑みを浮かべながら、そう言った。
僕はヒートの手を掴む。

( ^ω^)「もちろんだお!」

大丈夫。

そう、心の中で呟いた。
199 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:40:49


戦の前夜。
静まり返った真夜中のハングル国。
そのハングル国の門前に、幾多の兵が集まっている。

<ヽ`∀´>「ヒッキー! 準備は出来たニダ?」

(-_-)「はい。いつでも出陣できます」

月明かりに照らされ、ハングル国の王、ニダーとヒッキーの姿が現れる。
鎧に身を包み、馬に跨っている。

<ヽ`∀´>「わかってるニダ? 村人は殺さずに生け捕りにするニダ!」

(-_-)「仰せのままに……」
200 :1 ◆riqWqftSgc 2007/04/22(日) 17:41:01
<ヽ`∀´>「では、作戦通りに進軍を開始するニダ。ヒッキー、村の制圧は任せたニダよ?」

(-_-)「承知」

ニダーは長い槍を手に持ち、不適に笑う。
そして、その槍の切っ先を前方へ向け

<ヽ`∀´>「さぁ、進軍ニダ!」



――暗闇の中、ヴィップ村へと兵を進めた。


第八話「いくさ」     終わり