謝罪 ◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:45:13.11 ID:NupHcb5M0<> ..:::::::::::::::::::
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Λ_Λ ..::::: 投下遅くて本当に申し訳ない。
/彡ミ゙ヽ)ー、 ... 遅筆な上、最近忙しかったんだ。
/ /:ヽ、ヽ、:|..::
/ /:: ヽ ヽ| .:.
 ̄(_ノ ̄ ̄ ̄ヽ_ノ
あと酉がハプニングで◆KUIMWbIYTkから変更。
普通に忘れ去られてしまっているだろうが、ひっそりと投下する。
まとめ ttp://www.geocities.jp/qlimss/boon/world/i.html
地図 ttp://vista.jeez.jp/img/vi8416008391.jpg
<>( ^ω^)ブーンと鋼鉄の城と樹木の民のようです
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:47:34.90 ID:NupHcb5M0<> 『第六章 森の深淵に残り続けるは、消せない傷跡』
1
時が止まった。
そう表現しても決して不自然ではない状況だ。
訓練場には物音一つない。
其処にいた全ての者が瞬きも立てることができなかった。
二者の最も傍にいたスオナも、他の兵同様立ち尽くす。
痛々しく包帯が巻かれた、その両手は震えていた。
首筋には汗の雫が滴り落ちる。
もはや拭う気にはなれない。
川;゚ -゚)「……」
さらに、身体以上にその表情は固まっていた。
見開かれた瞼の下では連動するように漆黒の瞳が揺れる。
(;`A')「……」
(;,,゚Д゚)「……」
その黒瞳に吸い込まれていたのは、ドクオとギコの姿だった。
ドクオは爪と上体を振り翳す構えで、ギコは棍を投擲する構えで立ち尽くしていた。
彼等は至近距離で面を合わせている。
だが、微動だにしなかった。
いや、出来なかった理由があったのだ。
それは…… <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>sage<>2007/07/11(水) 22:47:43.85 ID:63ezGS7h0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 22:48:20.66 ID:pUGdgcUx0<> 支援
地図wwww <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 22:49:33.97 ID:aSc6ppstO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 22:49:40.78 ID:bPF0dl9G0<> ちょwwwwww地図wwwwwwwwwww支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 22:50:25.14 ID:VfnDpSmJO<> 大好きなんだぜ!
携帯から支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:50:41.61 ID:NupHcb5M0<> _
( ゚∀゚) 「……随分面白いことやってくれてんじゃねえか。
ああ、そう言や此処まで身震いするような『模擬試合』は久しぶりだぜ。
俺抜きでやるなんてつれねえじゃねえか。ハァ……正直、嫉妬しちまうぜ」
ジョルジュだ。
衝突の瞬間、両者の間に割って入ったかと思えば、
右手でドクオの手首を、左手でギコの棍を掴み、動きを止めたのである。
驚くべきことは、火花散る高速の衝突だったにも関わらず、
彼等を止めたジョルジュの表情が平然としていたことだ。
むしろ大袈裟に眉を顰め、少々おどけたような素振りさえ見せている。
だが、彼の両掌だけは攻撃の威力を物語っていた。
ドクオの手首を握る掌は、万力で締め付けるように小刻みに震え、
ギコの棍を握る掌は、摩擦で掌から薄らと煙が揺らいでいる。
_
( ゚∀゚) 「やはり、若いことはいいことだ。
俺も無茶をやらずにはいられない時分があったからな。
だが、俺が大将という立場である以上はお前等の試合を止めないわけにもいかねえ。
核になる二つの戦力を一気に失うのは、痛手だからな。
というわけだ。悪ィが、ここまでだ」
(;`A')「……」
(;,,゚Д゚)「……」
ジョルジュはなおも飄々と言った。
その様子は、余裕の二文字以外読み取れない。 <>
修正 ◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:53:23.33 ID:NupHcb5M0<> ギコの棍を握る掌は、摩擦で掌から薄らと煙が揺らいでいる。
→ギコの棍を握る掌は、摩擦で指の隙間から薄らと煙が揺らいでいる。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:55:08.74 ID:NupHcb5M0<> (;,,゚Д゚)「……フン。
少々、熱を上げすぎたようでした。申し訳ありません」
_
( ゚∀゚) 「いいってことよ。指導に熱が入るのはいいことだ。
しかし、己の身分も弁えるんだぜ。
俺がたまたま近くを通りかかったから良かったようなもんだ。
今回は不問にしてやるが、次は処罰の対象にもなりかねんぞ」
暫しの無言の後、ギコは棍を引き抜くとジョルジュに頭を下げ、謝罪した。
振り返ってみれば当然、中将としてあるまじき行為であったからである。
しかし、言葉とは裏腹にその表情は何処か苦々しく歪んでいるようにも見えた。
(,,゚Д゚)「……はい。では、別の部隊の見回りもあるので、失礼させて頂きます」
ギコは謝罪を終えると、言短に踵を返した。
そして、行く手を塞ぐ兵達に道を空けるように命じ、そのまま外へと足を進める。
――と、
( ,,)「……おい、ドクオ大佐補佐官」
('A`)「……あ?」
ギコは兵士の柵の途中で不意に立ち止まり、背を向けたままドクオに言葉を投げかけた。
( ,,)「……まだお前は若い上に荒削りで、さらに、人格的には問題ありだ。
そんな人間を大佐補佐官にするなど、俺は甚だ疑問だ」
('A`)「……」 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:57:00.95 ID:NupHcb5M0<> ( ,,)「しかし、残念ながら実力だけは位に見合っているようだ。
不本意ながらも、そこは認めざるを得ない」
川;゚ -゚)「……」
( ,,)「お前には上官としての経験が必要だ。
所詮、まだまだ半人前の身。スオナの下で振る舞い方を色々と学ぶことだ。
……まあ、今回は大目に見てやる。
だが、今度調子に乗れば、また俺が直々に灸を据えてやるから覚悟しておくことだ」
('A`)「……」
静かに言い終えると、ギコは手当てもせずに訓練場を後にする。
表情こそは伺えなかったが、その声はほんの少し棘が剥がれたように落ち着いていた。
静寂は、彼の姿が見えなくなるまで続く。
そんな中ドクオは、ギコの背中を見守りながらこう思った。
('A`)(……やはり、男のツンデレはキモいな)
_
(;゚∀゚)「……やれやれ。
奴も悪い奴ではないんだが、如何せん頑固過ぎる性格でな。
ま、気にしないでくれ。奴もお前の実力は痛いほど解っただろうさ」
視線でギコを見送ると、ジョルジュは眉を小さく窄める。
そして、ドクオの方に向きなおすと、溜息をつきながら呟いた。
困惑と安心が複雑に入り乱れるその表情から察するに、
やはり、全ての兵を束ねる者としての気苦労は絶えないようだ。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 22:58:52.92 ID:NupHcb5M0<> _
( ゚∀゚)「しかし、試合を見たのは途中からだが、凄いな。
その歳でギコと互角に渡り合えるなんて驚いたぜ。
正直な話、俺がお前程の頃でもここまで強かったかどうか。
流石はスオナの婿になる男だ。これなら安心して預けられるぜ」
('A`;)「……」
次にドクオに飛んできたのは、賞賛の言葉だった。
まさに忌憚の無い、正直な意見である。
その上、ジョルジュの顔に浮かぶのは嬉々とした満面の笑みだ。
婚約者の父親にこうも大袈裟に褒められた時には、天にも舞い上がる気分になるだろう。
そう、いつもならば。
いつもならば、顔を赤らめ飛び跳ねていたはずだ。
だがそれに反して、ドクオの思いはまるで違っていた。
('A`;)「……」
その答は視線の先にある激痛だった。
ギコによって与えられた傷ではない。
先程、ジョルジュに解放された腕だ。
よく見ればドクオの腕にはまだ生々しさが残る、掌の形をした赤痣が浮かんでいた。
('A`;)(……マジかよ) <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:00:51.73 ID:NupHcb5M0<> 視覚で捉えられない超高速の一撃。
渾身であった。
だが、ジョルジュは涼しげにそれを受け止めた。
しかも、片手だけで。
少なくともあれを受け止めるには人並み外れた反射神経や動体視力が必要なはずだ。
さらに特筆すべきは、あの怪力。
止められた後も振り解ける気がしなかった。
大気が凍りついたように抵抗できなかったのだ。
('A`;)(これが、義父さんの実力……下手すればウチの馬鹿親父に及ぶかもしれん)
心底、慄いていた。
脳ではなく、幼い頃から培ってきた野生の勘がそう言っているのだ。
初見の時にもその威圧感に畏怖したが、
実際にその強さを肌で感じて、一層ドクオは確信した。
ジョルジュは強い。
これまで出会ったどの人間よりも、だ。
_
( ゚∀゚)「まあ、訊きたい事も色々あったんだが、俺もおっぱいウォッチ……
ゲフン!! ゴフン!! ……じゃなくて公務をせねばならん。
これくらいの立場になると、何をするにも面倒だ。
……というわけだ、引き続き頑張ってくれ。お前には期待しているぜ」
('A`;)「……は、はあ」
言いたいだけ言い尽くすと、ジョルジュは生返事を返すドクオの肩を叩き、揚々とその場を後にした。
ドクオはただ、虚ろに彼の背中を眺めることしかできなかった。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:03:01.19 ID:NupHcb5M0<> _
( ゚∀゚)「ドクオはまだ若いが、戦いに関してはピカイチだ。
納得いかない部分もあるかもしれんが、逆にアイツから学ぶべきことも沢山あるだろう。
戦の日まであと僅かしかないが、その時までに更に鍛錬し、己の腕を磨いて欲しい。
ただ、怪我だけはするんじゃねえぞ。お前等一人一人が我が軍の貴重な戦力なんだ。
気を抜かず、だが決して無理はせずに頑張ってくれ」
(兵`Д´)「はっ!!」
_
( ゚∀゚)(ヒソヒソ……で、どうだ? 最近入った給仕に素晴らしいおっぱいの持ち主はいないのか)
(兵`Д´)(……はっ、残念ながらしぃ女史の乳を越える逸材は未だ……)
_
( ゚∀゚)(……そうか、残念だ。ではまた何かあったら報告してくれ。極秘に、だ。
お前の情報収集能力には期待しているぜ)
(兵`Д´)(……素晴らしい新人が入りましたら即刻、報告書を作成いたします)
周りの兵士達に声を掛け歩み行くジョルジュの背中に視線を遣りながら、
ドクオとスオナは思わず口走っていた。
川;゚ -゚)「……ドクオ、お前も感じ取ったはずだ。
ギコ中将もかなりの手練だが……父上は、さらにその上を行く」
('A`;)「……ああ。最初から只者ではないと思っていたが、今ハッキリと解った」
雄大な背中だった。
二メートルに届く程の巨躯のせいでもあるが、それ以上に、
マントの中で煌びやかに靡く、金刺繍の鳳凰がさらに彼の存在感を際立たせている。
まさに、世辞ではなく軍を束ねる者として相応しい装いだ。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:05:24.30 ID:NupHcb5M0<> 川;゚ -゚)「真偽の程は解らないが、この国で父上は生涯無敗の伝説を持っている。
まさに『最強』の称号が相応しい。
はっきり言って、父上が負ける姿を見たことが……いや、想像すらできない」
('A`*)「流石は義父さん……強くて、いい人で……すげえ。
マジな話ウチの馬鹿親父と交換してほしいもんだ」
川 ゚ -゚)「ああ。だからこそこの軍を束ねることができたんだ。
私にとって、軍の中で最も信頼を置ける存在だ」
しかも、素直に尊敬ができる人間だ。
羆のような厳つい体格とは裏腹に、らしからぬ笑顔を見せるその表情。
不思議な愛嬌と魅力を持つ男だ。
さらに言えば大将という確固たる地位に立っているにも関わらず、奢ることはない。
素直に分け隔てなく部下の良さを認め、称える。
地位に対する気負いも、部下に対する傲慢さもない。
他国の将官でも、これほどまでに振舞える者は数人も居ないだろう。
川 ゚ -゚)「……では、訓練の監督もこれくらいでいいだろう。
ドクオ、怪我は大丈夫か?」
('A`)「ああ。ちょっと右腕が痺れているだけだ。放っておけば直るさ」
川 ゚ -゚)「そうか。では疲れているところすまないが、今度は次の公務が待っているんだ。
次は、内務処理だ。訓練と比べて退屈かもしれんが、
いい勉強になるだろう……っておい、お前達静かにしないか」 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:07:54.41 ID:NupHcb5M0<> 「新しい上官に万歳ッ!!」
「すげえええええええ!!!! 何てったってあのギコ中将と互角だぜ!?
信じられるか!? あの歳なら普通なら新卒兵だぜ!?」
「ぶっちゃけスッキリしたぜ!! アイツの鼻に掛けるような態度にはむかっ腹が立っていたところだ。
ついでに、あの荒くれ三兄弟の性根を叩きなおしてくれたことだし、これは救世主の登場だな」
「やべえええええwww何ていう技だあの瞬速移動はwww今度教えてもらおうぜ!!」
('A`;)「しかし……直ぐに騒がしくなる奴等だな」
川;゚ -゚)「むう……こういう騒ぎは滅多に無かったからな。
抑圧された気分が一気に解放されたのだろうが……良くない傾向だ」
ジョルジュが立ち去るのを見計らうかのようにして、静まっていた場内は再び活気に包まれ始める。
かつて訓練中に怒号と掛声以外でここまで喧々とすることはなかった。
だが、目の前で上官同士の真剣勝負が繰り広げられた上に、ドクオの想像以上の実力も露呈したのだ。
日々、戦いを生業とする兵達にとって昂ぶりを抑えずにはいられないのだろう。
川;゚ -゚)(――しかし、ドクオがここまで強いとは予想外だ。
結婚を引き合いに出してまでも軍に引き入れて、本当に正解だった)
(兵`Д´)「ドクオさんカッコいいっすwwwww」
('A`*)「……いや、それほどでも」
川;゚ -゚)(但し、あの年齢でここまで強くなるには相当の鍛錬を積んだのだろう。
爪の力を借りているとは言え、それだけではギコ中将に通用しないはずだ。
幼い頃から命を賭けた戦いを経験しなければあそこまでは……) <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:10:33.07 ID:aSc6ppstO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:11:37.31 ID:VfnDpSmJO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:12:24.33 ID:NupHcb5M0<> 予想以上の賞賛を浴びて顔を赤らめるドクオを眺めながら、スオナは思った。
如何に嵐鷲の爪の能力が強力でも、使いこなせなくては意味が無い。
例えば、あの瞬速移動。
眼にも留まらぬあの速度で移動するには、それなりの筋力と瞬発力、そして覚悟が必要だ。
空気の塊を蹴る際の風圧に耐え、尚且つ速度に感覚が付いていかなければ意味が無い。
さらには、己が弾となり、恐怖せずに果敢に標的に向かわなければならない。
仮に常人があの技を使おうものならば、衝撃に乗り切れず、いとも簡単に自滅するだろう。
川 - )(私にも彼ほどの才に恵まれていれば……いや、止そう)
だが、関心すると同時に、何時の間にか痛かったはずの拳を強く握り締めていた。
怒りとも悲しみとも捉えられない奇妙な感情がスオナを支配する。
その正体は解っていた。
自身の忌まわしい過去だ。
もし己にも『彼女』のような類稀無い才があったならば……
強引に胸の中に仕舞い込もうとする。
残念ながら運命はそれらを与えてくれなかったのだ。
しかし、それを代償として新たな『力』を手に入れた。
日夜休むことなく、噎せ返す吐気と血反吐に耐えて身に付けたものだ。
決して恵まれているとは言えない。
それでも運命は完全に背を向けてはいない。
何故ならば、己を愛してくれる人間を、常人以上の力を、
そして、復讐の機会を与えてくれたのだから。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>sage<>2007/07/11(水) 23:13:18.56 ID:YIn+a7DgO<> こんなくそ作者が合作に参加するかと思うと悲しいぜ <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:14:23.65 ID:NupHcb5M0<> ('A`;)「……どうした? 次の公務に行くんじゃないのか?
……痛ててててててて!! ……アッーそこはらめええええッ!!」
柏;゚ -゚)「――ッ!?」
声がした。
スオナは不意にその方向に視線を遣ると、
兵達にもみくちゃにされながらも必死に藻掻くドクオの姿があった。
いや、ドクオの周りだけではない。
スオナの周囲も含めて兵達が我先にと、群がって来ている。
どうやら先程の戦いを見た兵の一部が我先にと、指導を求めて集まって来たようだ。
(兵`Д´)「師匠ッ!! 是非とも俺に指導してくれ!!」
(兵´Д`)「僕にもお願いしますッ!!」
('A`;)「てか、この人数じゃ……
スオナ、なんとかしてくれ!! 俺が幾ら言っても聞かないんだ!!」
川;゚ -゚)「ちょ……皆の者落ち着かんか!!
興奮するのも解るが仮にも上官だ……こらっ!! 押すな!!」
騒動は四半刻程続いたが、スオナが天井に威嚇発砲をしたことで何とかこの場を収めた。
騒ぐことを止めなかった兵士達はその後、
スオナによってきつい灸を据えられたことは言うまでも無い。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:17:43.38 ID:NupHcb5M0<> 2
(;^ω^)「……」
(’e’)「ううう」
ブーンの前に降って来た影は白髪の老人だった。
黒い影が樹上を過ったと思えば、背中から一直線に落下したのだ。
大布を巻きつけたようなローブを纏った円らな瞳の老人は、
小さく呻き声をあげながら、草の絨毯に転がり回る。
「大丈夫かッ!? ジョーンズさん!?」
何者かの声が背後から上がると、周りの木々の震えが止まった。
(;´_ゝ`)「……だからあれほど無茶をするなと言ったんだ」
縛り付けていた方の木の枝から、直ぐに慌てて降りてきたのはアニジャだ。
アニジャは、ジョーンズと呼ばれる老人の近くに駆け寄った。
(´<_`;)「あ〜あ、言わんこっちゃない。
ジョーンズさん、残念ながらアンタはもういい歳なんだ。
無理に参加しなくていいから、戦いは俺達若い衆に任せてくれないか?」
( ゚д゚ )「……ナイス受身」
更に、ブーンの左右の茂みを掻き分けて、オトジャとミルナが飛び出してきた。
オトジャも同様にジョーンズを介抱しようとする。
一方ミルナは、その後ろで様子を眺めているだけだ。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:20:15.31 ID:NupHcb5M0<> (’e’)「ワシも……育ててきた……この森を守るんじゃ……
鋼鉄の蛮人をこの手で討ち取るまでは……」
(;´_ゝ`)「いや、アンタの気持ちも良くわかる。
だが、はっきり言ってこんな様子じゃあ足手纏いだ」
(´<_`;)「うむ。できるだけ犠牲者は増やしたくない。
できればアンタには戦えない村人を守って欲しいんだが」
(’e’)「このまま……砂漠に削られていくこの森を黙って見過ごせん……
ワシは決めたんじゃ……再びこの大陸を……緑で埋め尽くす、と」
( ゚д゚ )「……セント……ジョーンズ」
(;^ω^)「……」
ブーンは彼等の遣り取りを黙って眺めていた。
サスガ兄弟がああ言えばジョーンズはこう言う、ジョーンズがこう言えばサスガ兄弟はああ言う。
状況は掴めないが、意見は順々巡りになっているようだ。
だが、驚きだけは隠せなかった。
外見から判断する限り、ジョーンズはスカルチノフよりも更に年老いているようだ。
湿地が乾いてできた大地の罅の如く顔中に広がる皺が、長い年月を思わせた。
どうして、こんな老人までが戦いに駆り立たなければいけないのか。
( ・∀・)「今僕達は、来るべき戦に備えて訓練をしているんだ。
『樹木の民』だけが持つ、この植物の生長を操る能力を使ってね。
確かに僕個人、西の国に攻め入るのは反対だが、
かと言って攻めて来られるのを黙って指を咥えてみるわけにもいかない。
それで一部の村人は毎日森の奥に集まって、こうやって模擬戦闘を行っているというわけだ」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:20:54.88 ID:bPF0dl9G0<> しえしえ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:22:27.74 ID:aSc6ppstO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:22:33.47 ID:NupHcb5M0<> (;^ω^)「……おっ」
困惑するブーンの肩を叩き、モララーは語った。
だが、まだ解せないと言わんばかりの表情を察してさらに続ける。
( ・∀・)「僕達は戦闘に長けた民族ではない。
元々、この能力も森を育てるために僕達の民族が培ってきたものだ。
それに生憎、僕等は西の国のような兵器が造れるわけでもないし、
閉鎖的な土地柄、他国から武術や戦闘術が伝わっているわけでもない」
(;^ω^)「……圧倒的に不利だお」
( ・∀・)「ああ。だが、唯一有利と呼べるものといえば、迷路のように複雑に入り組んだこの森の要塞さ。
さらに僕達の能力を加味することで、その強固さは増すんだ。
――で、ここからは、僕個人の意見になるんだが……」
と、首を上に仰ぎ言葉を溜めた後、モララーはさらに付け加えた。
( ・∀・)「この森で彼等を一網打尽にする。
勿論、両国側にとって最小限の被害で、ね。
その為には能力の熟練が必要なんだ。
極端な話、この森の植生全てを自分の身体の一部みたいに扱えるほどにね」
(;^ω^)「……」
( ・∀・)「だが、僕達同士がこうやって能力を振るったところで、
敵の戦術のすべてを想定できるわけではない。
さらに時が経つにつれ、敵は思わぬ新しい兵器をこの森に持ち込んでくる。
そこで、君を呼んだんだ。
外の世界で幾多の戦いを経験してきた君に意見をもらおうと思ってね」 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:24:49.41 ID:NupHcb5M0<> (;^ω^)「……おっ」
モララーの頼みは、昨夜、突然現れたまだ若い旅人に請うようなものではない。
それに、決して『樹木の民』は戦闘を好む民族ではないことは肌で感じ取っていた。
樹木の生長を助けるための能力を、本来とは全く逆の攻撃のために用いなければいけないという事実。
改めてブーンはこの国が抱える問題の重大さを再認識した。
(;^ω^)「……では、遠慮なく言わせてもらうお」
( ・∀・)「ああ、その方がいい」
(;^ω^)「おっ。……確かにこの能力は凄いお。
動かないはずの木々が急に襲い掛かってくるのには正直かなり焦ったお。
しかも、この森の中では何処から攻撃が来るかわからないお」
( ・∀・)「……なるほど」
(;^ω^)「ちなみに、これまでに東の国の人間と戦闘をしたことはあるのかお?」
( ・∀・)「ああ。表立って大規模に戦っているわけではないが、
多分偵察の為なんだろうけど、向こうの国の兵士がこの森に現れることは良くある。
僕自身はまだ戦っていないが、サスガ兄弟なんかは何度か戦って撃退したことはあるね」
(;^ω^)「ってことは、当然こっちの能力も知っているってことなのかお?
うん……確かに、直接戦う必要がなくて、リスクが少ない能力だお。
でも、これはあくまで未見の能力であるっていう前提で脅威が増すんだお」
( ・∀・)「ふむふむ。それは僕も感じていたところだ。
彼等は現れる度に新しい兵器を持ち込んでくるからね」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:25:28.88 ID:gNsNxVLM0<> 【審議中】
∧,,∧ ∧,,∧
∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` )と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u'. `u-u'
【可決】
∧,,∧ ∧,,∧
∧∧(`・ω・´)(`・ω・´)∧∧
(`・ω・´).∧∧) (∧∧(`・ω・´)
| U (`・ω・´)(`・ω・´) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u' `u-u'
【支援】 ゚・ *: : *・
*・ ゜゚・ * : .。. .。.: *゜
* ・゜ ゚・ *: . .。.: *・ ゜゚ ・ * :..
。. ・ ・*:.。∧,,∧ ∧,,∧ .:* ・゜
∧∧(´・ω・`)(´・ω・`)∧∧
(´・ω・`).∧∧) (∧∧(´・ω・`)
| U (´・ω・`)(´・ω・`) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u' `u-u'
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:26:48.27 ID:VfnDpSmJO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:27:36.48 ID:NupHcb5M0<> (;^ω^)「敵は多分現れる度に違う手を打ってくるお。
能力が知れ渡って、万が一能力者の位置がばれて集中攻撃されたり、
木々を焼き払われたりすれば、勝ち目は一気に低くなるお」
ブーンは、どこか彼等の訓練に、ぎこちなさを覚えていた。
確かに、彼等の能力は戦闘において、特異だ。
実際にツンと戦った時は、戸惑い、追い詰められた。
しかし、弱点を突こうと思えば刺せる。
まずは能力者そのものの戦闘経験が浅い事だ。
位置が捉えられ、その姿を露呈する事になれば否応無く肉弾戦になる。
そうなれば、差は歴然だ。
日々戦いを糧として生きる、敵兵に適うはずがない。
さらに致命的な弱点が存在する。
それは、ブーンも使用した炎である。
単純な話だ。
木は炎に弱い。
それにこの森を焼き払われてしまえば、最早能力云々は関係ない。
一番の能力者、ツンですら炎の前では何も出来ずに、ブーンにその姿を曝す事になったのだ。
彼女よりも数段劣るであろう彼等に、抵抗の術は無いだろう。
(;・∀・)「……まいったね。全く以ってその通りだ。
こうも完膚なきまでに指摘されたら反論の余地もないよ」
モララーの表情は陰りを見せ始めていた。
ツンと一度戦っただけのブーンであったが、それだけで的確に『樹木の民』の弱みを指摘したのだ。
ブーンははっきりとは言わなかったが、モララーは直ぐにその真意を理解する事ができた。
純粋に、勝ち目は無いに等しい。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:28:41.44 ID:aSc6ppstO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:29:52.46 ID:NupHcb5M0<> ( ´_ゝ`)「そうか……此処までハッキリ言われてしまっては如何し様もない。
ならば少年よ、頼みがある。俺達に戦いの術を教えてくれないか?」
(´<_` )「うむ。戦いに長けている人間が居れば心強い。
我々にも、身体一つでの戦いというものを教えてくれ」
と、モララーとブーンの間を割るように、突然、アニジャとオトジャは口を挟んだ。
ジョーンズの手当てをしながら、遣り取りを聞いていたのだろう。
だが、二人の言葉に、降伏する意思は読み取れない。
彼等もこの森を守るために、必死なのだ。
(;^ω^)「残念ながらそれも無駄だお。一朝一夕で強くなれるなら苦労はしないお。
逆に中途半端にそんなこと教えたら、痛い目に遭うのがオチだお」
( ´_ゝ`)「いいや、俺は諦めない。
どんな辛い訓練でも耐えてみせる!! だから教えてくれ!!」
(´<_` )「俺からも頼む。最早他に方法が無いんだ!!
片腕一本失おうがこの森を守れるなら惜しくは無い!!」
(;^ω^)「……違うんだお。敵も戦うために日々訓練してるんだお。
それに追いつこうなんてのは現実的じゃないんだお」
確かに、ブーンの意見が正しいと言えた。
『鋼鉄の国』の兵は、敵を倒すことの一点を目的として日々訓練を重ねている。
人間としても、民族としても戦いに関して素人の彼等に追いつけるはずもない。
致命的なことに、戦闘そのものに対する意識が民族レベルで食い違っている。
こればかりは、埋めようの無い差だ。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:32:51.87 ID:NupHcb5M0<> そして、場は騒然とした空気に変わる。
当然のことであった。
普段から意見が纏まらないというのに、この期に及んで絶望的な状況が露呈されてしまったのだ。
ただ、面倒な事に誰一人として『鋼鉄の国』に屈しようとはしない。
(♯´_ゝ`)「じゃあ、どうしろと言うんだ!? このまま黙って奴等に従えとでも言うのか!?」
(;^ω^)「おっ……僕個人としては逃げた方がいいと思うお。
そもそも、西の国と戦おうとすること自体無謀だお」
(♯´_ゝ`)「何だと!? 何故俺達が尻尾を巻いて逃げなければいけないんだ!?」
(´<_`♯)「そうだ!! 俺達にだって『樹木の民』としての誇りがある。
どうして何もしていない俺達が脅かされなければいけないんだ!?」
(;^ω^)「でも被害を一番少なくするのなら……そうするのが得策だお」
( ゚д゚ )「お前は、トウモロコシになれてない……欠陥品だ」
(;・∀・)「皆落ち着きたまえ。いや、約一名噛みあってないが。
ともかく、僕たちの能力の弱点がはっきりした以上、
これからどうすべきかが問題じゃないのかい?」
(;^ω^)(参ったお……)
ある程度ブーンにも予想は出来たが、それ以上の反論だった。
とは言え実はブーン自身も、彼等と同じ思いである。
この国の情勢を耳にして、思わず憤慨したほどだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:34:18.95 ID:VfnDpSmJO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:34:23.82 ID:bPF0dl9G0<> 支援! <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:34:38.90 ID:NupHcb5M0<> しかし、彼等の身を案じて冷静に考えると、やはり全てを投げ捨ててでも逃げることが最良の選択だった。
現実は、こと闘いに於いては尚更、甘いものではない。
常に生死と隣り合わせであったブーンにはそれが充分に解っていた。
実力が拮抗している場合なら、勝敗が運に左右される部分もあるが、
今回のように明らかな不利が目に見えている場合は、それを少々の幸運では補いきれない。
言わば、彼等の意見はどれを取っても理想論なのだ。
当然そんなことでは事態が解決することはない、とブーンは感じていた。
「ちょっと!? 何やってんのよ!?」
と、議論にならない議論の中で、背後から茂みが揺れる音と女の声が響いてきた。
ξ;゚听)ξ「マジメに訓練していると思ったら……アンタ達何をやっているの!?」
飛び出してきたのはツンだった。
ブーン達の様子から只事ではないと感じたのだろうか、
衣服が引っかかることも厭わないで、叫ぶと同時にこちらの方に駆け出してくる。
(;・∀・)「丁度いい時に来た。
実は、僕がブーン君をここに連れてきて訓練に関して意見をもらおうとしたんだが……
思わぬ程に厳しい意見が出てね。そのせいで話がややこしくなってしまったようなんだ」
ξ;゚听)ξ「ええ……何それ?」
(;・∀・)「ああ、実は……」
サスガ兄弟の非難の矢面に立たされたブーンの横で、モララーはこれまでの経緯をツンに説明した。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:35:23.26 ID:45YvEiY40<> しえ <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:36:44.89 ID:NupHcb5M0<> ξ゚听)ξ「……成程ね。確かに誰も傷つかなくていいならそれに越した事はないわ」
(;^ω^)「おっ……」
(※)_ゝ`)「……」(´<_(※)
数分後、ツンはモララーから大体の事情を聞き出すと、
三人を(サスガ兄弟だけは強引に)落ち着かせ、静かに語り始めた。
ξ゚听)ξ「でもね……逃げられるものならとっくに逃げているわ。
この争いは、そんなに簡単なものじゃないの。
私達は西の国に色々なものを奪われた。逃げるにはもう遅すぎるのよ」
(;^ω^)「僕もそれは解っているお。でも、残念ながらそれが一番いい選択なんだお」
ξ゚听)ξ「アナタの言いたい事は解るわ。でもね、この森だけは捨てられない。
この土地を見捨てるということは、つまり、私達が『樹木の民』であるという事を捨てるに等しいの。
私達の神様『精霊の木』を裏切ることなんてできない。
この村には色んな考えを持っている人はいるけど……そこだけは皆一緒なの」
( ・∀・)「残念ながら、そういうことなんだ。
僕だって戦うことは避けたい。でも、逃げると言う選択はさらにありえないんだ。
この地を去って暮らすなど考えたくない。それならば命を落とす方がましだ」
(;^ω^)「……」
やはり誰一人として、穏健派のモララーですら、ブーンの意見に賛同する事はなかった。
ブーンはこれ以上、言葉が見つからない。
改めて穏やかな民族色の裏に隠れた強固な意思、
そして、彼等のこの森に対する信仰の深さを感じ取った。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:39:23.27 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:39:47.66 ID:NupHcb5M0<> ξ゚听)ξ「アナタの思いは受け取ったわ。
まあ、これで私達に付いて行けないと思うのなら別に止めはしない。
でも……それでも私達は抗い続ける。最後の一人になっても、ね」
(;^ω^)「……別にそういうわけではないんだお。
これ以上いい考えが浮かばないんだお。
できればこの美しい森も、皆も傷ついて欲しくないんだお。
本当に役に立てなくてごめんお」
ξ゚ー゚)ξ「ううん、いいのよ。こんな事に巻き込んでしまった私が悪いの。
それに、来たばかりなんだしそんなに焦る必要もないわ。
新たな課題が出てきただけでも良しとしなきゃ。
それならそれで、また皆で考えればいいわ」
( ・∀・)「この土地の人間でもないのに君は真剣に考えてくれている。
謝るべきは僕たちだ。本当にすまない。
……ところで、ツン。一体どうしてここに来たんだい? 何か用があったのだろう」
ξ゚听)ξ「あ……そうだった。ブーン?」
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚听)ξ「長老が話がしたいって呼んでたわよ」
( ^ω^)「わかったお。あ、でも……」
( ・∀・)「ああ、訓練のことなら心配要らない。
ツンも丁度来た事だし、改めて今後について話し合いたいと思う。
……ああ、でも帰り道がわからないか。よし、僕が送ろう」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:40:21.57 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:41:35.46 ID:NupHcb5M0<> 3
('A`;)「はぁ……軍ってのも大変なんだな」
川;゚ -゚)「いや……正直今日は予想外のことだった。
しかし、このような雰囲気が続くのであれば監督の方法を改めなけれb」
(兵`Д´)「失礼致します!! 大佐、周辺国の情勢を報告書に纏めました」
川 ゚ -゚)「うむ、ご苦労。机の上に置いておいてくれ。後で目を通しておく」
午後、昼食を取り終えたドクオとスオナは執務室に居た。
佐将官には、それぞれの私室の他にもう一つ部屋が執務室として用意されており、
主に内務はその中で行っている。
室内はスオナの私室同様に簡素なものであった。
見当たるものと言えば、入口にある装飾用の鋼鉄製の甲冑と、中心に佇む、書類で覆われている机のみだ。
だが、慌しい様子だった。
隙間なく次々と報告兵が出入りを繰り返しているのだ。
口早に用件だけを告げると、直ぐに去ってゆく。
対してスオナは報告を受け、優先度を判断し次々と指令を出す、と言った具合だ。
(兵‐Д‐)「失礼致します。製鋼工場で事故が発生しました。
作業員一名が鋼材の積み下ろしの際に腕を挟み骨折した模様です。
但し、命に別状はないとのことです」
川 ゚ -゚)「何だと!? あれほど事故には注意しろといったはずだ。
早急に作業を中断し、事故の原因を追求するんだ。
詳しい状況が解ったら、直ちに報告してくれ!!」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:42:27.87 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:43:20.85 ID:NupHcb5M0<> (兵‐Д‐)「はっ!!」
('A`;)「慌しいな。戦場のようだ。
……で、今度は何をするんだ? イマイチさっきの説明じゃわからん」
川 ゚ -゚)「む、そうだったな。
私の仕事を説明する前に手短にこの軍の概要について説明しよう。
軍の佐将官には訓練の監督以外にも、それぞれ専門の公務が割り振られている」
('A`)「ほう」
川 ゚ -゚)「私が担当しているのは、『バロウ帝国』周辺の警備全般と、製鋼工場の管理だ。
ちなみに他の者、例えばニダーは砂漠側警備の現場指揮やその他軍設備の管理を、
ヒートは湾口側警備の現場指揮及び、帝国北の鉱山管理を行っている」
('A`)「……うん」
川 ゚ -゚)「さらに、将官級になるとさらに仕事が大きくなる。
ヒッキー少将は製鋼全般……ああ、政治面でも一枚噛んでいるな。
ギコ中将は軍備全般を担当している。
で、我が父上ジョウジュ大将はそれを総括する形になるな」
('A`)「うんうん」
川;゚ -゚)「本当に分かったのか?」
('A`)「……」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:43:36.45 ID:VfnDpSmJO<> 面白いんだが…投下ペースはもう少し早くならないか? <>
◆foDumesmYQ <>>>45さるさん防止すまん<>2007/07/11(水) 23:45:28.23 ID:NupHcb5M0<> ('A`)「とりあえず、義父さんが『おっぱいを愛でる会』会長であることは把握した」
川;゚ -゚)「いや、そんなこと一言も言っていないが……まあ、いい。とりあえず、
訓練の監督、
城内外の警備、
製鋼工場の管理の3つが主な我々の仕事」
('A`)「把握した」
川;゚ -゚)(……本当に大丈夫か? 不安だ)
('A`)「で、さっきから言ってる製鋼工場とか、鉱山って一体何だ?」
川 ゚ -゚)「説明がまだだったな。
この城の西側は海に面していて、そこに鋼鉄製のものを生産する工場があるんだ。
ちなみに鋼鉄の材料となるものが、石炭とコークスと……って言っても解らないか。
つまり、その材料が城の北にある鉱山で採れるんだ」
('A`)「う〜ん、鋼鉄云々の製法についてはよく解らんが把握した。
だが、鋼鉄製の武具を他国に売っているのか?
あれだけ強力なものだ。下手すれば相手の国に戦力を与えると思うんだが……」
川;゚ -゚)「いい所を突く、というか戦いに関しては頭が回るんだな。
その点については心配要らない。そもそも輸出しているのは食器や家具などの調度品だけだ。
それに製法も他国には極秘……というか漏れたところで他の土地では大規模に作れないだろう。
我々が知る限り、鋼鉄を造る資源や環境が整っている土地は世界でここだけだからだ」
('A`)「な〜る。まさに、『鋼鉄』がこの国だけの強みと言っても過言ではないな」
川 ゚ -゚)「うむ。だからまさに『鋼鉄の国』なんだ」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:45:58.99 ID:bPF0dl9G0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:46:46.29 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:46:54.24 ID:NupHcb5M0<> (兵・Д・)「報告いたします……」
川 ゚ -゚)「うむ、この案件は急ぎではないが今週中に纏まるようにしてくれ。
但し……」
('A`;)「正直、俺の出番はないな……ってかわけわからん」
報告の隙間を縫ってスオナは、ドクオにこの国の状況を様々に説明する。
どの内容もドクオにとっては難しく、理解しがたいものが殆どだ。
だが、スオナも細部までは上手く説明する暇がないようだ。
どうやら、現場の兵士には些細な異変でも報告する義務があるようで、報告者の数は増すばかりである。
('A`;)「……はぁ、やっぱ俺は戦い以外はダメだな」
ドクオは机の上に置かれた、一枚の報告書を手に取った。
整然とした文字で『近辺諸国状況』と記された、数枚綴りになっている冊子状の書類だ。
('A`)「何々?
大陸北の『コナユキ国』に数名ほどの賊が攻め入った模様。
だが、戦況は予想以上に逼迫している。『コナユキ国』は周辺国軍に兵の派遣を要請……か。
……随分情けない国だな。たった数人の賊なんかに梃子摺るのか」
その書類には続きがあった。
しかし、びっしりと敷き詰められた文字列に全てを読む気にはなれなかったようで、
ドクオはそっと、その書類を机上に戻した。
('A`)「まあ、ここからかなり離れた国らしいし、大して影響はないだろう。
……しかし、まあ軍のオエライさんも面倒だな。
やっぱ、集団に属するのは苦手だな」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:47:35.17 ID:VfnDpSmJO<> すまなかった。
支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:47:41.26 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:48:25.91 ID:NupHcb5M0<> 川 ゚ -゚)「すなまい、ドクオ。思ったよりも仕事が溜まっているようだ。
これ以上は順を追って説明する時間がない。夜にまた改めて説明するとしよう。
とりあえず退屈なようなら城内をぶらついてくれて構わない」
('A`)「ああ。そういや城内全ては見ていないからな。
手伝いたいのはやまやまだが、俺が居ては足手纏いのようだ」
川 ゚ -゚)「基本的に何処に行こうと立場上問題はないが、無用な問題事は起こすなよ」
('A`)「おk」
暇を持て余すドクオの様子を察して、スオナは城内を見て回るように促した。
確かに出来る事は特に無いようだ。
それに、実際にこの国の情勢を知るには、見た方が手っ取り早い。
そういうわけでドクオは彼女の提案に素直に従う事にした。
('A`)「……しかし、本当に広いな。何処に行こうか迷ってしまう」
一歩廊下に出れば、延々と廊下が続いていた。
その全容はまだドクオは知らないが、やはり、巨大な城である。
ここまで大規模に造れるのは、進んだ文明の賜物か。
ドクオの興味は尽きる事はなかった。
(兵`Д´)「ドクオ様、お疲れ様です」
('A`)「……あ、どうも」
途中、すれ違う兵が挨拶を投げかけてくる。
改めて己が上の立場にいると実感する瞬間だった。
この国に来てからというもの、まさに、新鮮な体験の連続ばかりである。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:49:53.32 ID:VfnDpSmJO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:50:15.52 ID:NupHcb5M0<> 千歩は歩いただろうか。
それでも、城の果てに辿り着く事はできなかった。
だが、先程の執務室の辺りとは違って、周囲は簡素な造りだ。
さらに廊下を歩く者が、物々しい雰囲気の警備兵だらけの状況から打って変わって、
慌しく、忙しそうに過ぎ去っていく給仕で埋め尽くされていた。
('A`)「え……と」
ドクオはスオナから渡された城内地図を広げる。
足取りから現在位置を辿ってみると、どうやら主に軍の関係者が利用する区域を抜け、
給仕達の部屋が連なる区域に来たようだ。
从'ー'从「こんにちわ〜」
('A`*)「……あ、こ……こんにちわ」
ドクオの鼻の下は何時の間にか伸びていた。
男達の臭気で噎せ返す、軍の施設に比べればここはまさに天国であったからだ。
しかも、すれ違う給仕達は皆美しい。
本来ならば一般兵は出入りが制限されているが、ドクオは上官としての特権を存分に堪能していた。
('A`*)「……そうだ、しぃさんを探そう」
そして、ドクオは決意した。
しぃを一目見るのだ。
今日は扉越しに起こされたのみで、まだ会っていない。
ギコとの戦いでの疲労を癒すためには、目の保養が必要だ。
ドクオはそう思い立つと、しぃ(の胸)を求めて彷徨いはじめた。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:50:50.86 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:51:40.17 ID:NupHcb5M0<> ('A`)「ん? ここは?」
途中でふと、ドクオは足を止めた。
部屋の扉の一つが少しだけ、開いていたのだ。
隙間からは薄く光が漏れ、中からは数人の女の声がしていた。
休憩中の雑談でもしているのだろう。
給仕達は何を話しているのか。
単純な好奇心に駆られドクオは気づかれないように、扉の陰の前に立つ。
「でさ〜、あの問題のスオナ大佐をやっつけた、あの……ドクオ補佐官だっけ?」
「うんうん。そのドクオとか言う人が、あのギコ様と互角に戦ったらしいのよ!!」
('A`*)(俺の噂がもう、広がっているのか。
『キャードクオ様、ス・テ・キ(はぁと』とか言うのかな?
……君たちの王子様は案外近くにいるんだぜ)
「え〜マジで!? あのギコ様に傷をつけたの!?
何それ〜〜!! チョー許せないんだけど!!」
「しかも、そのドクオの世話係になったのがしぃちゃんなの。
彼女言ってたわ。いくら上官とは言ってもあんなにキモい奴の世話をしたくない、って。
アイツ、舐めるような視線でしぃちゃんの胸を見ていたらしいのよね」
「チョ〜最低じゃん!! スオナ大佐もなんであんな奴スカウトしちゃったのよ!?
しかも、婚約までして。相当の変人よね〜」 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:53:18.10 ID:NupHcb5M0<> ( A )「……」
その瞬間、ドクオの抱いていた妄想は、脆くも音を立てて崩れ落ちた。
己の武勇伝が語られるのかと思いきや、散々な限りの悪口で叩かれていたのだから。
しかも、あの、忌々しげなギコを王子様扱いにしている。
何時の間にか、ドクオの心には沸々と憎しみの炎が拡がっていた。
( A )(許せねえ……あの野郎、戦争が始まったらドサクサに紛れて刺し殺してやる)
そして、密かに謀反を決意した。
――しかし、ドクオが驚いた内容はそれだけではなかった。
なぜならば次に語られる内容が、さらに衝撃的なものであったからだ。
「しっかし、ホントに変人よね、スオナ大佐って」
「あの人は仕方ないよ。剣の素振りと射撃が趣味らしいからね。
しかも、あんなにキレイなのに女らしさのカケラもないのよ。
まあ、ヒート中佐はもっと酷いけど」
「違うわよ。そうじゃなくて……知らないの?
そっか、アナタ新入りだからまだ知らなかったのね」
「え? それってどういう……」
「驚かないでね。
これは誰にも言っちゃだめよ。暗黙の了解と化しているから。
実はあの人ってさ――」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:53:31.47 ID:VfnDpSmJO<> ドクオ… <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:55:07.61 ID:NupHcb5M0<> ('A`;)(……なん……だって?)
給仕の一人の言葉を受けて、ドクオの身体は硬直した。
全く予想だにすることの出来なかった事実。
言葉が耳に入った瞬間、理解さえできなかったのだ。
嘘だ。
なぜ、彼女が……
「――東の『樹木の国』の出身らしいのよね」
「え〜〜〜ッ!? ちょっとそれ本t」
「シッ!! 声が大きいわよ。誰かにこんなこと聞かれたら大変じゃない」
「え、いや、でも……」
「これは本当よ。ウチの担当のお局様から訊いた話なんだけどね。
彼女は10年前に、東の国から亡命してきたらしいのよ。
当時のジョルジュ大将に連れられて、ね」
「えっ、でもどうしてそんなこと?
今ほどではないにしろ、10年前も東との関係はあまり良くなかったんでしょ?」
「その理由は明らかにされてないわ。
当の本人も、ジョルジュ大将も頑として語ろうとはしなかったから」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:55:35.55 ID:bPF0dl9G0<> キニスルナドクオ!! <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:56:33.75 ID:NupHcb5M0<> 「でも、どうして東出身のあの人が大佐になんてなれたの?」
「まあ、本人が強かったことに加えて、ジョルジュ大将の後ろ盾も大きかったようだけど……」
('A`;)「……」
もはや、その場から離れることは出来なかった。
気丈な彼女の裏で見え隠れする真実。
頭では拒否しているが、それでも足は動こうとはしない。
ドクオは固唾を飲みながら、続きに耳を傾ける。
「一番のキッカケは、五年前の事件ね。
ジョルジュ大将の元で訓練を受けてきた当時のスオナ大佐が軍に正式に入隊する時のことよ。
やはり、東の国出身だけあって、軍の中で反対意見も少なくなかったらしいわ。
もしかしたら、間者じゃないかって。相当彼女叩かれたみたいね」
「……で、スオナ大佐はどうしたの?」
「余程ショックだったのか、彼女は無断でその日の晩にこの国から姿を消したのよ。
反対派だった兵士達は、やはり間者だったかって確信したらしいわ。
でもね、それから一週間後、問題の事件は起こったの」
「……うん」
「一週間後の朝に、突然彼女は埃だらけになりながら戻ってきたの。
しかも片手に大きな袋を持って、ね」
「……それで?」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:57:40.66 ID:liVJWB1X0<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/11(水) 23:58:23.55 ID:NupHcb5M0<> 「そして、当時の軍の人たちは彼女を問いただすために拘束しようとしたわ。
国を無断で抜け出すことは、下手すれば重罪になりかねなかった行動だから。
でも、彼女が彼等の前でその袋の中身を出した瞬間、その場に居た人たちが恐れおののいたの」
「え? その中身って……」
「……人の生首だったの。
それも三つの。
特徴的な金髪と青い瞳で、直ぐに東の国の人間のものだって解ったらしいわ」
「何で? 元々自分と同じ民族でしょ? どうして!?
どうしてそんな惨い事……」
「それは誰にも解らない。
――ただ、それを機に反対派だった軍の人たちは彼女の入隊を認めたの。
で、それからは異例の速さで大佐まで登りつめたってわけ。
……いいこと? これはおおっぴらに人に話しちゃだめy」
('A`;)「……マジかよ」
ドクオは彼女達の言葉を聞き終わらないままに、踵を返していた。
これ以上は聞くに耐えなかったのだ。
正直、触れてはいけないものであったとドクオは後悔した。
だが、解せなかった。
どうして、彼女は同じ民族であるはずの『樹木の民』を憎むのだろうか。
同胞の首を迷いも無く刎ねるなど、正気の沙汰ではない。
彼女の過去に何があったのだろうか。
もはや、ドクオの耳には廊下を行く給仕の挨拶が届いていなかった。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/11(水) 23:58:33.46 ID:VfnDpSmJO<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:00:08.96 ID:acm6TRRI0<> 4
ブーンは孤独に森の中を歩いていた。
あの後、モララーは送り届けることを再三申し入れたが、ブーンはやんわりと断った。
( ^ω^)「大丈夫だお。太陽の位置と匂いで多分辿り付けると思うお」
『獣の民』だけあって、言葉の通り迷わない自信があったこともあったが、
同時に、独りになってじっくりと考えたかった。
彼等『樹木の民』とこれから起こるであろう戦いのことだ。
『樹木の民』は、思った以上に敬虔な民族だ。
『獣の民』である己と照らし合わせてみても、不気味な程だ。
確かに、その気持ちは理解できないことも無い。
しかし、それにしても真面目過ぎるのだ。
仮に己の民が思わぬ勢力によって生まれの地を追われることとなり、
その上絶望的に勝ち目の無い状況だった場合、全てを投げ捨てても逃げるであろう。
……いや、そもそも遊牧狩猟民である己と比べるのが間違いなのかもしれない。
確かに信仰の対象はあるのだが、それは、
民がそれぞれに持つ『クヴェル』に残された獣の魂であり、
『樹木の民』のような唯一存在の『精霊の木』ではない。
民族そのものの成立から考えてみると、
『樹木の民』の思想の源流は唯一神『精霊の木』を第一とする原理主義にある。
だが、ブーンやドクオを含めた『獣の民』は、各々の『クヴェル』の数だけ神的な象徴が存在する。
要するに、『獣の民』は性質として多神教的かつ個人主義的なのだ。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:00:16.35 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:01:43.43 ID:acm6TRRI0<> ブーンは鬱蒼と生い茂る草木を掻い潜りながら、溜息をついた。
( ^ω^)「しかし、ややこしい話になってきたお……」
どうしても、いい考えが浮かばない。
敵の規模や能力が不透明な上、『樹木の民』は戦う術を知っているわけではない。
ブーン一人の戦いであれば、幾らでも戦術は思いつくが、
生憎こちら側の人間は、その不思議な能力を除けば唯の一般人の寄せ集まりだ。
それに、ブーンが少人数の戦いに長けてはいるが、戦争規模での戦いに通じているわけではない。
その上、彼等は逃げる事を拒絶する。
彼等の妙な頑固さが話を複雑にしているのだ。
攻めることも満足にできず、退く意思もない。
この状況で上手い案を考えろという方が無理だと言うものだ。
( ^ω^)「……まあ、難しく考えても仕方ないお」
それにしても久しぶりに頭を捻って、疲れた。
いかに二国の関係が緊迫しているとは言えど、
彼等の様子から察するに、今日明日に戦争が始まるわけでもないのだろう。
とりあえず時間はまだ、ある。
ブーンは結論の出ない思考を一旦諦める事にした―― <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:02:14.73 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:03:09.28 ID:acm6TRRI0<> (;^ω^)「……ッ?」
――不意に、ブーンの足が止まった。
人の気配がしたのだ。
距離は近い。
その姿は森の植生に覆われて見ることはできない。
緊張が、顔に露になる。
(;^ω^)「まさか……西の兵が?」
殺気と言うほど物騒なものではないが、どちらかと言えば負の感情に塗れた気配だった。
怒りと悲しみが絡み合ったような、居心地の悪いものだ。
ブーンは先程のモララーの言葉を思い出していた。
偵察のために兵がこの森に足を踏み入れることがある、と。
(;^ω^)「……お?」
しかし、一向に動く様子はない。
一箇所に留まっているような感覚だ。
その上、相手の視線がこちらに向いていない。
ブーンは、短剣を握り締め、気配の方向にじりと歩を進める。
どの道こちらに気づいていないならば、都合がいい。
もし敵ならば、先に見つけて奇襲もできる。
だが、次の瞬間ブーンは予想だにしなかった人物の姿を見ることになる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:04:12.59 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:04:47.31 ID:acm6TRRI0<> ( ^Д^)「……」
(;^ω^)(……プギャ、さん?)
それは、森の一角で孤独に佇むプギャであった。
ブーンに殆ど背を向けるような形で、ある一点を無言で見つめている。
(;^ω^)(……一体、何を?)
辛うじて伺える表情は、陰鬱であった。
険が取れ、最初に見た時の雰囲気とはまるで違っている。
しかし、ブーンは何処か彼の背中に悲しみを見た。
黙祷の祈りを一心に捧げている。
そう形容しても過言ではないほどにプギャは沈んでいるようだ。
( ^Д^)「……お前がこの森から消えてからもう直ぐ10年になるか。
今ごろは若い頃の母さんのように綺麗に育っているんだろうな」
煤i;^ω^)(!?)
突然、プギャは語り始めた。
ブーンは気づかれたのかと思い一瞬身構えたが、内容から推測するにそれは違うようだ。
( ^Д^)「……他の奴等は殺されたと思っているようだが、この目で見るまでは俺は信じない」
(;^ω^)(……誰に喋っているんだお?) <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:05:22.64 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:06:43.02 ID:acm6TRRI0<> 疑問に思うブーンを他所に、プギャはなおも続ける。
優しい口調だ。
まるで赤子を寝かしつけるかのように穏やかだった。
( ^Д^)「少なくとも、この村で生活するよりは幸せなんだろうか。
……いや、あの野蛮人に連れられてしまって、さらに苦しんでいるんだろうな。
ともかく、お前が消えてしまったキッカケを作ったのは俺のせいだ。
他人の、幼かった頃のツンですら、お前に優しく微笑み掛けていたのに……
その一方で……親である俺は村の掟に怯え、手を差し伸べることもできなかった」
彼の視線は真っ直ぐに前を向いていた。
だが、それは森に溶け込むように聳える一本の樹木である。
まさに、奇妙な光景であった。
傍から見れば、気が触れたと思っても仕方はない。
(;^ω^)(……って、えっ!?)
するとそこで、ブーンはあることに気づく。
ブギャの前に佇む木の形だ。
葉陰で隠れるように見ていたため、ブーンはその全容に気がつかなかったのである。
(;^ω^)(女の……人?)
様子を詳しく見ようと前に一歩出た瞬間、その全貌は明らかになった。
葉は簾状に、垂れ下がるように地面に向かって伸びている。
まさに絹のように滑らかな、長く伸ばされた髪のように見えた。
幹は緩やかに曲線を描くようにして、弛んでいる。
人間で言うならば、頸部、胸部、腰部のあたりが窄み、あたかも女性の身体を模っているように見えた。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:08:32.11 ID:acm6TRRI0<> (;^ω^)(……すごい、お)
しかも良く出来た彫刻の如き繊細さだ。
もしこの森に天使が舞い降りてきて息を吹きかければ、今にも動き出しそうな程に美しい。
まさに、その肖像は何者も寄せ付けないような神々しさを放っていた。
これも『樹木の民』の能力で造られたのだろうか。
その詳細はともかくとして、ブーンの目は樹木の女神像に釘付けになっていた。
(♯^Д^)「……森の神よ。
どうして、彼女にも我々と同じものを与え給わなかったのか!?
どうして、俺達の子にだけこのような不幸を、苦しみを……
……どうして……」
(;^ω^)「……」
徐にプギャの貌は一変し、再び前の時と、同じ険しい皺が浮かぶ。
そして、そのまま崩れ落ち、思い切り地面に拳を突き立てる。
只ならぬ形相だった。
何しろ『樹木の民』が例外なく崇拝しているはずの『精霊の木』に、
隠そうともせずに怒りを吐露しているのだ。
もはや、民族として常軌を逸した彼の行動を、ブーンは見守ることしかできなかった。
(♯^Д^)「……っく。
必ずだ。必ずこの手で西の野蛮人共を根絶やしにして、お前を救い出す。
そして、この森を出て、何処か遠い地で静かに暮らすんだ。
その日までは必ず、泥を啜ってでも生き延びる」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:10:01.64 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:10:17.56 ID:acm6TRRI0<> (♯^Д^)「……」
プギャは全てを吐き出すと何かを決意したかのように、すっくと立ち上がり、
周りに目をくれないまま、森の奥へと足早に消え去ってしまった。
(;^ω^)「結局、何だったんだお?
……しかし、こんな事も出来るのかお。『樹木の民』ってやっぱり凄いお」
プギャが去ったのを確認すると、ブーンは陰から出て樹木の像の前に立つ。
改めて、間近で像を眺めてみれば、その精巧さに息を呑むほどだ。
目も鼻も口も、そして衣服や装飾品ですらも、幹の生長によって詳細に再現されているのだ。
恐らく象られているのは、十を超えた程の少女だろうか。
何処と無く凛とした美しさが感じられる。
(;^ω^)「まあ、よくもここまで造ったもんだお。
プギャさんにも、意外な特技があったもんだお」
ありありと、この像に模されたであろう少女の姿が目に浮かんでくる。
しかし、このような芸術品を創り上げるなど、あの粗暴なプギャからは想像できない一面だ。
その懸隔に、ただただ驚くのみである。
(;^ω^)「ありゃ、ブレスレッドまで……芸が細かいお」
像の左腕には、腕輪らしき装飾品まで施されていた。
だが、ほかに比べてそれだけは形が何故か、たどたどしい。
と、そこでブーンは腕輪に何かがあることに気づく。
(;^ω^)「何だお……これは」 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:10:43.30 ID:j2vGubN70<> 支援 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:12:07.63 ID:acm6TRRI0<> ブーンが見つけたのは、ブレスレッドに小さく刻まれた文字であった。
木目に埋もれて、良く見なければ解らないほどに小さなものだ。
(;^ω^)「えっと……何々?」
ブーンは顔を左腕に近づける。
注意深く視線を落とすと、そこには……
『我が愛しの娘 クー』
乱暴な文字で、或る少女の名前が刻まれていた。
『第六章 森の深淵に残り続けるは、消せない傷跡』 終 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:12:39.20 ID:j2vGubN70<> 乙!! <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:15:59.78 ID:acm6TRRI0<> 訂正
>>27
(;^ω^)「ちなみに、これまでに東の国の人間と戦闘をしたことはあるのかお?」
→(;^ω^)「ちなみに、これまでに西の国の人間と戦闘をしたことはあるのかお?」
皆さん支援d。
まとめさん、待たせてしまって申し訳ない。 <>
◆foDumesmYQ <><>2007/07/12(木) 00:17:47.76 ID:acm6TRRI0<> ああ、忘れてた。地図が間違っていたようだ。
ttp://vista.jeez.jp/img/vi8416018666.jpg <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:19:00.92 ID:fBicwUe00<> >>81
素だったのかよ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:24:47.04 ID:ve9BFOc7O<> ksms乙! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2007/07/12(木) 00:25:44.70 ID:DOJ3kvrx0<> 相変わらず地図のクオリティすげえwwww
乙! <>