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( ^ω^)ブーンと森の木々のようです:第四話「くー」

186 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:49:09.75 ID:NTeZvcOc0
第四話「くー」


村の掟その一、村の男は農作や力仕事に精を出すこと。

( ゚д゚ )「よいしょっと!」

( ,,゚Д゚)「ほっ!」

威勢のいい声と共に、男達は働く。
その額には汗が輝いており、まさに働く男達である。

ノパ听)「ブーン、お米炊けた―?」

( ^ω^)「もうすぐ炊けるお! ふーふー」

ノパ听)「うん、じゃあ炊けたらお弁当にして、兄貴達のとこに持ってってねー」

( ^ω^)「わかったおー」

女の中に、男一人。
そう、僕は右腕の怪我がまだ治っていないので、家事手伝いをしている。
187 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:51:07.85 ID:NTeZvcOc0
(*゚ー゚)「ブーン、ほしがきたべる?」

( ^ω^)「お、しぃは気が利くお。ありがとうだお」

しぃから干し柿を受け取り、一服する。

ノハ#゚听)「こら! しぃ、餌付けしちゃ駄目!」

(;^ω^)「餌付けって……」

しかし、怪我の功名とはよく言ったものだ。
僕は、女の子に囲まれながら仕事をするのは悪くない。

ノパ听)「ほら、ブーンはお弁当詰める!!」

( ^ω^)「はいはいだおー」

ノハ#゚听)「はいは、一回でいいの! お姉さん怒るよ?」

あれから、ヒートは自分のポジションをお姉さんに定着させたいのか
何かと『お姉さん』という言葉を使う。
188 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:53:22.50 ID:NTeZvcOc0
(*^ω^)「お姉ちゃんも悪くないお……」

僕はお弁当を三つ持って、畑へと向かう。
小川沿いの道では、わんぱくな子供達が走り回っている。

「あ、ブーンのおっちゃんおいすー!!」

( ^ω^)「おいすー! って、おっちゃんじゃないお―!」

笑いながら、子供達は逃げていく。
こんな小さなやり取りでも、僕の心は満たされていく。


でも、何か大事なことを忘れているような気がする。

それを忘れているからこそ、素直にこの幸せを受け入れられない自分がいる。
189 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:54:45.58 ID:NTeZvcOc0
( ^ω^)「……考えすぎだお」

記憶とか、昔の自分とか、どうでもいい。
僕はブーンだ。それ以外の何者でもない。


( ^ω^)「……お?」

気持ちを吹っ切って、足を進めていると、何か大きいものにつまづいた。

( ^ω^)「何だお?」

足元を見る。

川 ゚ -゚)「う……」

それは、紛れも無い。
倒れている人間だった。
190 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:56:47.01 ID:NTeZvcOc0
(;^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「う……ん」

長く伸びた、美しい髪の女性だ。
袴のような服装をしており、腰には木刀を装着している。

(;^ω^)「って、見とれてる場合じゃないお。大丈夫ですかお!?」

僕は、女性の肩を掴み、声をかける。

川 - )「腹が……」

(;^ω^)「お腹が痛いんですかお!?」

川 ゚ -゚)「腹が減った……」

そう呟くと、彼女のお腹が盛大に鳴った。

(;^ω^)「と、とりあえず、こっちで休むお」

僕は彼女を木陰に移し、座らせる。
生まれて初めて、お姫様抱っこというのを経験した。

いや、昔の記憶は無いけれども。
191 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 20:59:45.18 ID:NTeZvcOc0
……



川 ゚ -゚) ガツガツガツモグモグゴクゴク

(;^ω^)「……」

僕の目の前に居る女性は、三人分の弁当を物凄いスピードで食べている。
そんな細い体にどうやったら三人分も入るのだろうか。

川 ゚ -゚)「ふう、美味かった。ありがとう少年、命拾いしたぞ」

頬についたご飯粒を親指で取りながら、彼女はそう言った。

( ^ω^)「ど、どういたしましてだお」

川 ゚ -゚)「名乗りが遅れた。私の名はクーと申す。見ての通り、武士として身を立てている」

クーは、僕の目を見て自己紹介をした。
……最近の武士は、袴を着ているか。
192 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:01:59.68 ID:NTeZvcOc0
(;^ω^)「はぁ、僕はブーンですお。それじゃ、お元気で……」

川 ゚ -゚)「ふむ、君には借りが出来てしまったな」

クーは、立ち去ろうとする僕の首根っこを凄い力で掴んだ。
一瞬、息が止まって三途の川らしきものが視界に入ったが、気のせいだろう。

( ^ω^)「あの……」

川 ゚ -゚)「恩を返さねば、武士の名が泣く」

クーは僕を無視して、なにやらぶつぶつといい始めた。

川 ゚ -゚)「故に!」

ぱん、とクーは自分の膝を叩く。
僕は、なんとなく嫌な予感がしていた。

川 ゚ -゚)「何か恩返しをしたいのだが、手伝えることは無いか?」

( ^ω^)「お、恩返しですかお?」
194 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:03:59.18 ID:NTeZvcOc0
川 ゚ -゚)「そうだ。悪代官の討伐でも獣の退治でも、喜んで引き受けよう」

(;^ω^)「えーっと……」

川 ゚ -゚)「む、その目は私の腕を信じていないと見た。よかろう、私の剣術をとくと見よ」

そう言うと、クーは立ち上がり木刀を構えた。
ひゅ、という音と共に木刀を振り上げると、木の葉が一枚落ちてくる。

川 ゚ -゚)「はぁっ――」

瞬間、風を切る音。
僕が次に目にしたのは、粉々に切られた木の葉だった。

川 ゚ -゚)「どうだ? これで私の腕が信じてもらえたでござるか?」

( ^ω^)「えーっと、よくわかんないけど、凄いと思いますお」

僕が拍手すると、クーは「ふっふっふ」と鼻を伸ばして微笑んだ。
195 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:06:05.84 ID:NTeZvcOc0
( ^ω^)「じゃ、そういうことで」

川 ゚ -゚)「そう急ぐな」

(;^ω^)「ぐえっ」

さりげなく立ち去ろうとするが、クーはそれを許さない。
首根っこをむんずと掴まれ、僕は身動きが出来なくなった。

川 ゚ -゚)「さあ、悪代官の所へ案内しろ!」

(;^ω^)「いでででっ! そ、そんなのいな――むぐ、息が、息がぁ!」

僕は、クーと共に悪代官を探す旅に出る。
……無論、有無も言わずに強制参加で。
196 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:08:11.08 ID:NTeZvcOc0
川 ゚ -゚)「風が気持ちいいな」

クーと一緒に、村を当てもなく歩く。
僕は逃げようとしても無駄だと観念し、クーに付き合うことにした。

( ^ω^)「それにしても、どうしてあんな所で倒れてたんですかお?」

川 ゚ -゚)「む? ああ、私はとある村で用心棒をやっていたのだが……
     色々ともめてしまってな。行く当ても無く歩いていたら、この村にたどり着いたんだ」


僕達は、そんな話をしながら、とある家の前で足を止めた。


( ^ω^)「ここが村長の家だお。とりあえず、事情を話して……

川 ゚ -゚)「ここが悪代官の屋敷か。ブーン、行くぞ!」

(;^ω^)「え?」

呼び止める間も無く、クーは木刀を振りかざし村長の家へ入る。


そして、村長の悲鳴が村中に響き渡った。
197 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:10:12.89 ID:NTeZvcOc0
……



(´・ω・`)「後3秒、ブーンが入ってくるのが遅れていたら、僕は死んでいた」

結論から言うと、村長は奇跡的に無傷だった。
僕が急いでクーを止め、双方に事情を説明すると

川 ゚ -゚)「村長、すまなかった。色々と誤解があったようだ」

クーは、表情一つ変えずに頭を下げた。
一方、命を奪われかけた村長はというと、

(*´・ω・`)「いやぁ、とんでもない。あなたのような美人なお方に斬られるなら、
       もう本望ですから、 はい」

(;^ω^)(村長……あんたって人は、心の広い男だお)

村長の、そんな所に憧れるけど尊敬はしない。
199 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:12:44.07 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「村長、どうしたんですか!?」

僕が村長に哀れみの目を送っていると、ヒートが勢いよく藁の扉を開けた。

( ゚д゚ )「痔が再発したのかい?」

( ,,゚Д゚)「足でもつったか?」

続いて、ミルナとギコがやってくる。
見事なまでに、全員ゆったりと歩いての登場だ。

(´・ω・`)「うう……この扱いはなんだろう。そして痔という事実を
      さりげなくばらされてるのは意図的なのか!? ねぇ、意図的!?」


ノパ听)「そんなことより、ブーン! あんたお弁当くすねたでしょ!」

『そんなこと』という言葉で、村長の嘆きは一瞬でかき消された。

( ゚д゚ )「そうだ、ブーン。いくら腹が減ってるからって俺達の弁当を食うとは……
     意地汚いにもほどがあるぞ」

( ,,゚Д゚)「そうだ。まったく、お前はいい年していたずら坊主みたいな真似を」

(;^ω^)「えーっと……」

三人は一斉に文句を垂れ始める。
僕は、とりあえず事情を説明しようと、一旦落ち着くことを提案した。
201 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:15:26.10 ID:NTeZvcOc0
――…


川 ゚ -゚)「と、言うわけで、以後よろしく頼む」

(*´・ω・`)「こちらこそ! あ、今日は宴にしましょう! 二人っきりの宴を!」

村長の積極的なアピールに対し、クーは見向きすらしなかった。
クーは、僕のことを真っ直ぐに見つめている。

ノパ听)「村長、そんなに簡単に決めちゃっていいんですか!?」

(*´・ω・`)「何を言ってるんだ! 僕は厳重に人柄を見て、それでクーさんを迎え入れようとだね……」

(;^ω^)(なんという嘘……これは間違いなく、村長は恋をしている)

僕が心の中で突っ込みを入れていると

川 ゚ -゚)「うむ……私はブーンに借りがある。ブーンよ、私を用心棒として
     雇ってはくれないだろうか?」

( ^ω^)「ええ!?」
202 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:17:12.98 ID:NTeZvcOc0
突然の提案に、僕は目を丸くする。
全員が唖然とする中、クーは気にした様子も無く、さらに


川 ゚ -゚)「私の身を君に捧げても構わない。……武士として、命を救ってくれた者に
     全てを尽くしたいのだ」


( ^ω^)「な、な、な……」


ノパ听)( ゚д゚ )( ,,゚Д゚)(´・ω・`)「なんだって――!?」


家が揺れるほどの大声。
あまりの衝撃的な発言に、全員が一時呆然となり、静寂になった。
203 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:19:46.25 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「ぜ、絶対はんた――い!!」

ヒートが鼓膜を破るほどの声で、叫ぶ。

ノパ听)「あ、あなた! ええと、クー! まだ内藤はこの通り子供よ!?
     そ、そ、それなのに、そんな……とにかくダメ!!」

ヒートは僕の頭を掴み、ぶんぶんと振り回す。

( ^ω^)「ひ、ヒート、落ち着いてくれお……目がまわるお――!」

だが、クーはさらに火に油を注ぐように


川 ゚ -゚)「年は関係ない。私は、墓まで内藤に仕えることに決めた。
     それに、私はブーンの子供を産みたい」


ノパ听)( ゚д゚ )( ,,゚Д゚)(´・ω・`)「――――っ」



もはや、衝撃的過ぎて声も出ない。
無論、僕も、開いた口が塞がらないのだ。
206 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:21:28.61 ID:NTeZvcOc0
川 ゚ -゚)「あんなことをされたのは……ブーンが初めてなんだ。
     だから、私と添い遂げてくれないか?」

最大級の油が、ヒートという火に注がれ

ノパ听)「ブーン!! あんた、あんたいつの間にそんなことを……!!
     この、バカ――ッ!! マセガキ!! むっつりスケベ!!」

(;^ω^)「ご、誤解だお! う、うわぁぁぁ!」

胸倉を掴まれ、僕は勢い良く投げ飛ばされた。

――が、一瞬で移動したクーが、僕の体を受け止める。

川 ゚ -゚)「大丈夫か?」
208 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:23:10.40 ID:NTeZvcOc0
(*^ω^)「あ、ありがとうだお」

川 ゚ -゚)「うむ、無事でよかった」

クーの手が、しっかりと僕を抱きしめる。
やわらかい感触、女性独特の良い香り。

(*^ω^)「……」

川 ゚ ー゚)「……」

僕は、クーと見つめ合う。
凛とした瞳が、まるで母親に抱かれた赤子のような安心感を……


ノハ#゚听)「いつまで抱き合ってんのよ――!!」

ヒートが、近くに置いてあった壺を投げ飛ばしてきた。

川 ゚ -゚)「ふんっ!」

咄嗟に、クーは木刀で壺を切り裂く。
そして、キッ、とヒートの方を睨み付けた。
209 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:25:33.03 ID:NTeZvcOc0
川 ゚ -゚)「私の主に乱暴はやめてもらおう」

ノパ听)「勝手にブーンを主にしないで。ブーンは『私』の弟よ」

ヒートとクーはお互いに火花を散らしている。
問題の僕はというと、どう見ても蚊帳の外です、本当にありがとうございました。


(;^ω^)「二人とも、喧嘩はやめるお! 皆も見てないで止めてくださいおっ!」

僕は、他の三人の方を見る。

( ,,゚Д゚)「いや、若いってのはいいな。俺も昔、浮気がばれた時は……」

誰も聞いてないのに、昔の話をし始めるギコ。

( ゚д゚ )「うむ。これが青春、か」

目が輝いているミルナ。
……初めて、あんなに目の輝いた表情を見た。

そして

(゜・ω・゜)「はは、ははは……」

色々と可愛そうな状態になってしまった村長が、そこに居た。
211 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:27:36.90 ID:NTeZvcOc0
……




ノパ听)「クー、あなたの寝床はここよ」

川 ゚ -゚)「む、私は内藤の寝床で眠るから、必要ない」

ノハ#゚听)「絶対ダメ!!」

結局、クー本人の強い希望により、クーはうちで引き取ることになった。
クー曰く、用心棒として仕えるなら住み込みのほうがやりやすい、とか。

( ゚д゚ )「うむ、我が家も賑やかになってきたな」

( ^ω^)「そ、そうですね……」

ミルナは微笑みながら、ヒートとクーのやり取りを見ている。
僕はというと、心配や不安で胃に穴が開きそうだった。
213 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:29:53.68 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「さて、新しい家族も増えたことだし、今日はささやかながらご馳走にしよう」

川 ゚ -゚)「ご馳走? ミルナ殿、私はこの家に仕える身。そんな、ご馳走なんて、ねぇ」

ノパ听)「……よだれ、垂れてるけど」

クーは、表情を変えずによだれを拭う。
そして、誤魔化すように咳払いをした。

( ゚д゚ )「そこで、だ。三人でちょいと山菜を取ってきてくれないか?」

( ^ω^)「山菜ですかお?」

( ゚д゚ )「うむ。あ、ちなみに俺は用事があるから、三人で行ってきてくれ」

一瞬、ミルナの口がにやりと笑ったような気がする。
……また、嫌な予感がした。
215 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:32:45.72 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「クーはいけないよね? だって用心棒って言ったら留守番も仕事の内に入るでしょ!?」

ここぞとばかりにヒートが噛み付く。
勝ち誇ったような笑みが、ちょっと、いやかなり怖い。


川 ゚ -゚)「いや、私はブーンに仕える身。主に何かあっては武士の名が泣く。
     私もついて行くぞ」

ノパ听)「ちょっと! さっきと言ってることが違くない!?」

川 ゚ -゚)「気にするな」

早速始まった口喧嘩に、僕は大きくため息をつく。
216 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:34:24.49 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「青春……」

( ^ω^)「……ミルナさん、何かいいましたかお?」

( ゚д゚ )「いや何も」

口が笑っているように見えるのは気のせいだろうか。


ノパ听)「ブーン! ほら、早く行かないと日が暮れちゃうよ!!」

川 ゚ -゚)「ブーン、お仕えさせてもらうぞ」

そして睨み合う二人。
僕は、がっくりと肩を落としながら、しぶしぶ山へと向かった。

( ^ω^)「はぁ……」
217 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:36:17.06 ID:NTeZvcOc0


昼間に来る森は、夜の雰囲気とはまるで別物だった。
日の光が木々の隙間から差し込み、気持ちのいい風が吹き抜ける。


( ^ω^)「うーん、やっぱり自然はいいお……」


大きく伸びをして、僕は地面に寝転がる。
土や草木の香りが心地よい。


ノパ听)「ブーン! ほら、寝てないでちゃっちゃと山菜を摘む!」

( ^ω^)「ちぇ、わかったおー」


とは言ったものの、どれが食べられるかわからない。
大地に根を張り、しっかりと生えている草はどれも同じようにしか見えない。

( ^ω^)「んー、まぁ適当に摘んで、ヒートに見てもらえばいいお」

僕は、それっぽい草を探し、森の中を歩く。
219 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:39:37.08 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「あー!! 二人ともちょっと待った――!!」

(;^ω^)「うわっ!」

突然、ヒートが大声を出す。

川 ゚ -゚)「どうした?」

ノパ听)「山菜を摘む時は、神木にお祈りしなきゃいけないんだった!
     二人とも、こっちに来て!!」

( ^ω^)「神木……?」

僕とクーは、ヒートの後を追いかける。
道から少し外れた獣道を、草を掻き分け進んでいく。

川 ゚ -゚)「道無き道を進んでいる、といった感じだな。ブーン、足元に気をつけろ」

僕は、躓かないように注意しながら進む。

(;^ω^)「ヒート、本当に道はあってるのかお?」

ノパ听)「近道だよ! ほら、もう見えてきた!!」

僕は先を見据える。
生い茂った獣道の先に、森の中でぽっかりと開けた場所が姿を現し――
220 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:44:10.55 ID:NTeZvcOc0
( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「これは……」


僕は、言葉を失う。

僕達の目の前に現れたのは、巨大な樹木。
その高さは空へ届くのでは無いかと思うほど高く、枝は幾多にも広がっている。
そのどっしりとした佇まいは、見るものを圧倒するのに十分なほどたくましい。

( ^ω^)「……」

それは、この『森』を象徴するかのように、力強く立っていた。
221 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:48:12.49 ID:NTeZvcOc0
ノパ听)「さ、二人とも、手を合わせて!!」

僕とクーは、言われた通りに神木へ向かって手を合わせた。

ノパ听)「森の護り神、サカズキノカミ。我らに自然の恵みを分け与えてくれることを
     大いに感謝します……」

ヒートは祈りの言葉を捧げ、目を瞑る。
僕もヒートに続き「感謝します」と、神木に祈った。

祈り終えると、ヒートはこちらに振り返る。

ノパ听)「さ、それじゃ山菜を摘もうか!!」

( ^ω^)「わかったお!」

川 ゚ -゚)「うむ」


僕達は山菜を探すため、再び森の中を歩み始めた。
222 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:50:20.00 ID:NTeZvcOc0
川 ゚ -゚)「ヒート、これなんかどうだ?」

ノハ;゚听)「これはドクツルタケ……毒キノコよ」

川 ゚ -゚)「これは?」

ノハ;゚听)「ニジイロサンポウ……1時間ほど幻覚が見れるようになるわ」

川 ゚ -゚)「じゃあ、これ」

ノハ#゚听)「蛙なんて食べられるわけないでしょ!! さっきからわざとやってない!?」

川 ゚ -゚)「いや、全くもって偶然だ」


(;^ω^)「……」

言い合う二人の視界から逃れ、僕はひっそりと山菜を摘む。
そんな、冷や汗タラタラの山菜摘みだった。
224 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:54:37.30 ID:NTeZvcOc0
……



ノパ听)「それじゃ、新しい家族を祝って――」


ノパ听)( ゚д゚ )川 ゚ -゚)( ^ω^)「かんぱーい!!」


僕達は、山菜や米の入った鍋を囲む。

ノパ听)「んー、おいし―!!」

( ^ω^)「ハムッ! ハフハフッ!ハム!」

あまりのおいしさに、僕は夢中で箸を進める。

ノパ听)「こら! 汚い食べ方するんじゃない!」

それを見たヒートが、僕の頭を軽く叩いた。
軽く、とは言っても、今までの経験からつい体を強張らせてしまう。

(;^ω^)「ご、ごめんなさいだお」

ノパ听)「よし! 以後、気をつけること!」
225 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:57:02.11 ID:NTeZvcOc0
そんな様子を見て、ミルナは笑いながら

( ゚д゚ )「はは、すっかり姉代わりだな」

川 ゚ -゚)「お姉さん……。ブーンは私に任せてくれ」

クーが瞳を輝かせてヒートを見つめる。
どうして、そっちの話にもっていくのだろうか。

ノハ#゚听)「ちょっと、勝手にブーンを取らないでよ!」

予想通り、ヒートが噛み付いた。
僕は、嬉しいやら怖いやら、微妙な心境で

(;^ω^)「ははは……」

乾いた笑いをする。

最近、色々と苦労が絶えないのは何故だろうか、なんて考えながら。
227 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 21:59:15.54 ID:NTeZvcOc0
――…


賑やかな宴の後、ヒートとクーはすぐに眠ってしまった。
あれだけ口喧嘩をしていれば、疲れるのも無理は無い。


( ゚д゚ )「あの二人は寝たのか?」

( ^ω^)「ええ、ぐっすりですお」

( ゚д゚ )「そうか」

ミルナはそう言うと、薬草を擦り続けた。
ぱちぱちと釜戸の火が燃え、ただその音だけが部屋に響く。

( ^ω^)「ミルナさん」

( ゚д゚ )「うん?」

僕は、今日ふと気になったことを問う。

( ^ω^)「あの神木って……」

( ゚д゚ )「ああ、あれか」

ミルナは手を止め、ゆっくりとこちらを向いた。
228 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 22:03:25.27 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「立派な木だろう? 我々が住み始める何千年も前から、あそこに立っているんだ」

( ^ω^)「そうなんですかお。確かに、立派な木でしたお……」

僕は、あの巨大な樹木を頭の中に思い起こす。
『森』を表すように、堂々と立つ樹木。
何故か、僕は神木を見た瞬間から、そればかり頭に浮かんでしまう。


( ゚д゚ )「神木には、古い伝説があってな……」

ミルナは、再び薬草を擦りながら、ゆっくりと語り始める。

( ゚д゚ )「昔、自然豊かなこの地には、多くの人が住んでいたんだ」

( ゚д゚ )「ところが、ある日、疫神と呼ばれる大きな怪物が現れたんだ。
     疫神は八つの頭を持ち、竜のような様で、口からは火を吹き
     たちまち辺りの森や村を破壊し始めた」


僕は、ミルナの口から語られる伝説を、食い入るように聞く。
230 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 22:06:35.22 ID:NTeZvcOc0
( ゚д゚ )「しかし、森の護り神であるサカズキノカミが疫神に立ち向かった。
     サカズキノカミは自然の力を自在に使い、ついに疫神を倒したんだ。
     森の神は、疫神を神木に封印し、やがてこの地に平和が訪れましたとさ」


僕は、ごくりと唾を飲む。

( ゚д゚ )「と、まあ古い言い伝えだよ。退屈だったか?」

( ^ω^)「いや……なんだか、すごい聞き入ってしまったお」


そう言うと、ミルナは「そうか、よかった」と言い、笑う。
まるで、子供に昔話を聞かせ、喜んでいる親のように。
231 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 22:07:16.64 ID:NTeZvcOc0
( ^ω^)「それじゃ、僕は寝ますお。
       また、何か面白い話があったら話してくださいお」

( ゚д゚ )「ああ、また何か仕込んでおくよ。……おやすみ」


僕はそう言い、寝床へと入っていく。
疲れが溜まっていたのか、すぐに寝付くことができた。
234 :パート(神奈川県) 2007/04/03(火) 22:09:13.39 ID:NTeZvcOc0
その夜、また懐かしい夢を見た。

この村で、皆と出会うよりずっと前の夢。

そこで僕は、見覚えのある森を見下ろしていた。

ただ、それだけなのに、僕は懐かしさで涙を流してしまう。


森の中で、僕は想っていた。
この森を護らなければ。
悲劇を食い止めなければ。




夢の中の僕は、そう強く想っていた。


第四話「くー」    終わり