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( ^ω^)ブーン達が廻るようです:12:「toy」

4 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:04:52.81 ID:DHCVsjy5O
12:「toy」

ξ゚听)ξ

 ある冬の、たった一日の話。
 いつだったか「幽霊が出る」と騒がれたこのアパート。
 灰一色を塗りたくった様な外観は、それこそ何が出ても不思議でない雰囲気で、それでも、何故か探し人は見つからない。

ξ゚听)ξ「……駄目ね」

 私が言うと、ドクオはため息をついてコンクリートの階段に座り込んだ。

('A`)「ここにも手掛かりなし、か……」

 どこか放心した様な、投げやりな口調。
 唯一の手掛かりである自分が何も思い出せないのが悔しいんだろう。わかり易い。
6 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:05:54.20 ID:DHCVsjy5O
ξ゚听)ξ「帰りましょ……もう暗いし」

 もうすぐ夜が来る。
 何も見つけられないまま。

('A`)「……悪い」

ξ゚听)ξ「うるさい。別にアンタが悪いなんて思ってないわよ」

 それは本音なような、でも嘘みたいな言葉だった。
 自分でも良くわからなくて、少しだけ気持ち悪い。
 ドクオと別れて、彼の背中が消えても妙な感覚は続く。

ξ゚听)ξ「ふぅ……」

 そうだ、誰かが悪い訳ではない。
 ブーンを最後に見たのがたまたまドクオだっただけだ。
7 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:07:12.21 ID:DHCVsjy5O
 これは事故で、ブーンは道にでも迷っていて、ドクオだって辛くて、

ξ゚听)ξ「私だって……」

 だから、つまり、そう、これは事故だ。
 気にする必要はない。
 明日にでもブーンはヘラヘラ現れて、私はそいつをぶん殴って、それで全てが片付くんだ。
 薄暗い道を中途半端に照らす、少ない街灯と、刺す様に吹く冷たい風。
 長く続く灰色の景色は、何故だか私の不安を煽る。

ξ゚听)ξ「……え?」

 灰色の先に浮かぶ、透明な違和感。
 それは明らかに異質だった。
 沈む空気の中、まるで静かに輝く様に、それは存在していた。
9 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:08:19.36 ID:DHCVsjy5O
「……見えるよね?」

 そして、それは声を上げ、私に向けて歩を進める。
 逃げた方が良い様な、実はただの錯覚な様な、そして、私は動けずにいた。
 近付くにつれ、透明の歪みは「人」の形に、
そして、目の前に来る頃には完全な「人」として私を見詰め返す。

ξ;゚听)ξ「あ……、アナタ誰よ……」

 私の目の前には極普通の小柄な少女が立っていた。

(*゚∀゚)「あのね、探してるんでしょ? あー……記憶?」

ξ;゚听)ξ「え、何? だから、誰? 何なのっ?」
10 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:09:23.43 ID:DHCVsjy5O
 こうして見ると、さっきまでの嫌悪感が嘘の様に、それは当たり前の存在としてそこにいた。
 ただ、当たり前の「初対面」の不審人物として。

(*゚∀゚)「あっ、失礼。私はね、知ってる訳さ。『ブーン』くん」

ξ;゚听)ξ「……何なの」

(*゚∀゚)「私は『お化け』、探偵さっ。『ドクオ』くんも知ってるよ? ……興味あるでしょ?」

 第一印象は最悪だった。
 それでも私には彼女の話を聞く事しか出来ない。

ξ;゚听)ξ「……良いわ。家まで来て」

――もう、嘘でも何でも良いや。
12 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:11:45.65 ID:DHCVsjy5O

 ただ、それだけの事だった。
 ある冬の、たった一日の話。
14 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:12:58.36 ID:DHCVsjy5O
ξ゚听)ξ「ただいま……」

 我が家は、今日も変わらず静かだった。
 返事が帰って来る事なんて有り得なくて、それを知っている私は何事もない顔で階段を登る。
 時刻は午後八時前。
 居間に行けば、恐らくグダグダと書かれたホワイトボードと多過ぎる夕食費が私を待っている。
 間違えても、それを見たくない私は自分の部屋に入り、静かに窓を開けた。

(*゚∀゚)「おかえりっ!! 誰もいないの?」

ξ゚听)ξ「『お邪魔します』……、靴、脱いでよね」

 ズカズカと上がり込む、自称「霊界探偵」は満面の笑み、
と呼ばれるそれを撒き散らしながら、声を上げた。
15 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:14:25.57 ID:DHCVsjy5O
(*゚∀゚)「あー……私、『お化け』なのね? おけ? ユーレー。だからさ、靴、関係ない訳さ?」

ξ゚听)ξ「うるさいわね、気分の問題よ……どっちでも良いから早く話して」

 何故か照れ笑いを浮かべながらスニーカーを脱いだ自称「霊界探偵」、

ξ゚听)ξ「アンタ名前は?」

(*゚∀゚)「あ、『つー』で!! よろしく!!」

 もとい「つー」はベッドの上に寝転んで、天井を仰いだ。
 脱いだ靴は、いつの間にか消えていて、本当に幽霊なんだ、と呑気に気付く。

(*゚∀゚)「じゃー……どこから話そっか?」

ξ゚听)ξ「……『一』からよ」
16 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:15:35.45 ID:DHCVsjy5O
 幽霊のイメージをまるまる覆した彼女は、ベッドの上に座り直し、やけに嬉しそうに語り出す。

(*゚∀゚)「じゃあね……、私は『幽霊』な訳です。信じますか?」

ξ゚听)ξ「一応は、ね」

(*゚∀゚)「『幽霊=非科学的』な概念がダメなんだよねー……私は『生きていた人』です。どう?」

ξ;゚听)ξ「まぁ、分かったから……続けて」

 つーはさも当然の様に、そんな事を言った。
 そう言えば、最近は色々あり過ぎて、そういう感覚が麻痺しているのかも知れない。

(*゚∀゚)「『天国と地獄』。これは信じる?」

ξ;゚听)ξ「信じるも何も……あるの?」
18 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:17:14.12 ID:DHCVsjy5O
(*゚∀゚)「まぁね。これ、実はあります。お互い徒歩五分くらいの距離にね」

ξ;゚听)ξ「徒歩? ……それで?」

 信じるとか、信じないとか、そんな事は関係なく、私は黙ってそれを聞く。

(*゚∀゚)「『ショボン』くんは知ってる?」

ξ゚听)ξ「……当然よ」

 全く予想していなかった名前。
 「色々」の一つ。理不尽な事故。

(*゚∀゚)「彼もそこにいる訳です……ブーンくんも、ね?」

ξ;゚听)ξ「はぁ!?」

(*゚∀゚)「おっと!! 死んじゃいないさ!! ちなみに、ドクオくんもそこにいました」

ξ;゚听)ξ「ちょ……っと待った。訳わかんない」
19 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:19:04.83 ID:DHCVsjy5O
(*゚∀゚)「だよねぇ……私もさ、良くわかんないけどさ。まぁ、地獄から来た訳さ」

 つーは少し泣き笑う表情で、私を見た。
 ふと、浮かんだ疑問を口に出す。

ξ゚听)ξ「……どうして私の所に?」

(*゚∀゚)「良くぞ聞いてくれましたっ!! ……聞きたい?」

ξ#゚听)ξ「あ?」
21 :◆NIKKO.Rzcc 2007/05/25(金) 21:21:59.73 ID:DHCVsjy5O
 一瞬で、笑みを取り戻して、少女はいかにもおずおず口を開く。

(;*゚∀゚)「すみません。実はさ、通訳をお願いしたいなぁ、と……」

ξ゚听)ξ「通訳? 誰の?」

(*゚∀゚)「あのさ? 私、幽霊じゃん? するとさ、普通の人には見えない訳さ?」

ξ゚听)ξ「何よ、それ。私だって普通よ」

(*゚∀゚)「ツンちゃんはね、素質あるよ? とても」

 私は今まで普通に生きて来たし、そんな素質を発揮した記憶はない。
 それでも、あるなら活かしたい。

ξ゚听)ξ「それ……役に立つんでしょうね?」

 ドクオの記憶も、ブーンも、全部、

(*゚∀゚)「勿論っすよ。それでね――」

 全部を取り戻す為の、無謀な計画が、かなり唐突に幕を開けた。

12:「toy」

―fin―