-VIP産小説保管庫-
( ^ω^)ブーン達が廻るようです:1:「Eedstart」
- 3 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:07:03.12 ID:C1NcvE1zO
- 1:「Eedstart」
( ^ω^)
静かな部屋に読経の声が響く。
いつもなら速攻で眠ってしまうような場面にありながらも、僕に睡魔は訪れない。
小綺麗な部屋の一番奥。
遺影の中には、この間まで一緒になってへらへら騒ぎ合っていた親友の顔があった。
('A`)「……」
隣に座るドクオの手は心なしか震えていた。
( ^ω^)「(無理もないお……)」
僕らの友達、ショボンは交通事故で死んだ。
詳しくは聞いていないが、ドクオと二人で歩いている所を、飲酒運転で突っ込んで来た車に跳ねられたらしい。
- 4 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:07:55.53 ID:C1NcvE1zO
- 運転手は軽傷、ドクオは無傷、ショボンは呆気なく死んでしまった。
( ^ω^)「(実感が湧かないお……)」
自分の親友が死んで、もう一人の親友は酷く傷心している。
それなのに、僕にはまるで実感が湧かない。
ショボンが死んだなんて冗談だとしか思えないし、周りのすすり泣く声も演出に思えてしまう程だ。
( A )「悪い……席、外すわ」
( ^ω^)「……把握したお」
そう言って立ち上がったドクオの目元に、光る物を見た様な気がした。
- 5 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:08:35.43 ID:C1NcvE1zO
- ( ω )「僕は親友の為に泣いてあげる事も出来ないのかお……?」
「為に」? 「あげる」?
激しい自己嫌悪が僕を襲う。
( ω )「ショボン……」
僕は立ち上がってドクオを追った。
自分はこの場に相応しくない。
部屋を出る時、振り返って一瞬見た光景は紛れもなく「葬式」だった。
―――あぁ、ショボンは死んだんだなぁ……。
ぼんやりとそんな事を考えて、ふと熱くなった目頭を抑えた。
- 6 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:09:31.98 ID:C1NcvE1zO
- (;'A`)「あっ、あれ? お前も抜けて来たのか……っ?」
やたらと豪邸チックなショボンの家。
その庭の片隅で、ドクオは煙草を吹かしていた。
目が赤い。やはり泣いていた様だ。
( ^ω^)「おいすー」
僕はなるべく明るい、いつも通りの声を出した。
('A`)「いやー、俺、陰気臭いの駄目だわ。こっちまでテンション下がる」
( ^ω^)「全くだお。ショボンは僕らにごめんなさいしなくちゃ、だお」
酷くシュールで、不自然な会話だった。
二人共、くすりとも笑わない。
お互いに無理に気丈に振る舞っていた。
('A`)「ホント……あいつ、俺庇って死んだんだぜ? 俺なんて放っときゃ良いのにさ」
( ^ω^)「え……?」
初めて聞いた内容だった。
ショボンはドクオを庇って死んだ……?
- 7 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:12:39.37 ID:C1NcvE1zO
- ('A`)「馬鹿だなぁ。ホントに馬鹿だ。大馬鹿野郎だよ。アイツは」
( ^ω^)「……」
( A )「……でも、俺はもっと馬鹿だな……なぁ?」
僕は何も答えられない。
急な情報に脳が追い付かない。
何の反応も出来なかった。
(;A;)「俺のっせいで……し、ショボンは死んだん、だ……俺が、殺したんだ……」
( ω )「……落ち着くお」
ドクオは基本的に、余り感情を表に出さない。
泣き喚くドクオを見て、僕らが失ったものの大きさを実感した。
- 8 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:13:43.27 ID:C1NcvE1zO
- (;A;)「俺を殺せよ!! 親友を殺した犯人が目の前にいるんだッ!!」
僕だって、ショボンがいないのは辛い。悲しい。
事故とは言え、犯人を殺してやりたいとも思う。
でも、ドクオを殺せる筈はないし、殺したいとも思わない。
( ω )「――黙れおッ!!」
予想外に大きな声。自分でも少し驚く。
そして、恐ろしい程の静寂が訪れた。
室内の方から視線を感じる。
少し、騒ぎ過ぎたらしい。
( ω )「……ドクオ。ちょっと歩くお」
( A )「……悪い」
- 9 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:16:53.68 ID:C1NcvE1zO
- 僕達は揃ってショボンの家を出た。
会話はない。
平日の街はやたらと薄暗くて、とても静かだった。
隣でドクオが静かに泣いている。
どうやら僕も泣いている様だった。
ひたすらに静かな時間が流れた。
- 10 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:17:43.06 ID:C1NcvE1zO
- 今にも崩れそうなボロアパート。
一目で人が住んでいないと判る。
ここは通称「幽霊アパート」。
僕とドクオ、ショボンが良く一緒に過ごした場所だ。
最初にここに来たのは三年前、僕らが高校一年生の時だ。
事の始まりはショボン。
どこからか「あそこは出る」との噂を聞きつけて、僕ら三人は「幽霊アパート」を訪れた。
( ^ω^)「あのー、ショボンさん。それは何ですかお?」
(´・ω・`)「見て判らぬか? 酒じゃ」
('A`)「凄く……抜け目ないです……」
- 12 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:18:55.11 ID:C1NcvE1zO
- その日から「幽霊アパート」は「宴会場」に姿を変え、僕らは事ある毎に足を運んだ。
そんなどうでも良い、昔の事を何故か思い出した。
( ^ω^)「……」
それから三年たった今、僕とドクオだけがここにいる。
少しだけ湿っぽい土の匂いがした。
門を抜けてすぐの、階段の手前に腰を降ろす。
先に口を開いたのはドクオだった。
('A`)「……ごめん」
( ^ω^)「謝るなお……」
('A`)「本当にごめん」
(;^ω^)「ちょっ、しつこいお!!」
(;'∀`)「うはっ、正直スマソかった」
- 14 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:19:42.99 ID:C1NcvE1zO
- 何をどうしたら良いのか判らず、二人して腫れた目で笑った。
ふと、ショボンがいなくなった日常は、こんな風に過ごせば良いのかな、と思った。
何故か、隣にショボンがいる様な気がしたが、確認するのは止めた。
('∀`)「ははっ」
- 17 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:24:36.33 ID:C1NcvE1zO
- 僕は正面にいるドクオを見た。
その笑顔はぎこちなくて、痛々しい。
( ^ω^)「そういえば、さっき『殺してくれ』とか言ってなかったかお?」
(;'A`)「あ……ごめん」
ドクオは気まずそうに目を反らした。
僕も恥ずかしくなったけど、止める訳にもいかず続ける。
( ^ω^)「もう一人の親友まで失ったら、僕は生きていけないお……甘ーい!!」
つい、ごまかしてみる。
勿論、上手くは行かず、ドクオはきょとんとしている。
- 18 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:26:02.70 ID:C1NcvE1zO
- (;^ω^)「あうあう……そ、そうだお。葬儀に戻るお!!」
急いで立ち上がって、ズボンの汚れを叩く。
直接、地面に座っていたせいか、少し湿っぽい。
('∀`)「おう!!」
「ありがとう」と小さな声が聞こえた気がしたが、返事はしなかった。
僕らはそのまま「幽霊アパート」を出ようと、門までの道を辿る。
「内藤……」
( ^ω^)「お? どうしたお?」
('A`)「は? 俺じゃねぇぞ?」
確かに今、名前を呼ばれた。
二人同時に振り返るが、やはり誰もいない。
- 19 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:27:10.50 ID:C1NcvE1zO
- ……ここは通称「幽霊アパート」。
(;^ω^)「……」
気のせいか、と思い直した所で、不意にドクオが叫んだ。
(;'A`)「うをッ!!」
突如、ガキィン、と甲高い音。
それに合わせる様に目の前の鉄格子がひん曲がった。
(;゜ω゜)「ッ……」
まるで透明の金属バットで殴りつけたみたいだ。
とっさの事で声も出ない。
「死ね」
(;'A`)「……ッ!!」
突如、ドクオの体が宙に浮いた。
(;゜ω゜)「ど、ドクオッ!!」
まるで、誰かに殴られたかの様に。
状況がまるで飲み込めない。
- 20 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:28:28.09 ID:C1NcvE1zO
- 金縛りに遭った様に体が動かない。
( A )「……」
( ;ω;)「ドクオっ!! ……ドクオッ!!」
僕は必死で叫ぶ。
目の前で倒れているドクオはピクリとも動かない。
「……ごめんね。もう大丈夫だよ」
立ち尽くす僕の後ろで声がした。
それはとても懐かしい声。
( ;ω;)「ショボう……っ」
そこにはやはりショボンがいた。
あぁ、僕は幻覚を見ているのか。
変に冷静な思考は、ただただ懐かしさを感じさせる。
(´・ω・`)「ドクオも無事そうだね。おーい、起きろー」
- 22 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:30:44.51 ID:C1NcvE1zO
- (;'A`)「あれっ? ……え? ショボンッ!?」
倒れていた筈のドクオは何事もなかったかの様に起き上がる。
それでもショボンの登場は予想外だった様で、目に見えて狼狽えていた。
(;A;)「お前ッ、生きてたのか!?」
「お前がショボンか……まとめて始末してやんよ」
(´・ω・`)「うん……ごめんね。今、ちょっと忙しいみたい」
最初に僕らを呼び止めた声がショボンを呼んだ。
ドクオに何かしたのも恐らくこいつだ。
やはり霊的なものだろうか。
- 25 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:36:37.23 ID:C1NcvE1zO
- 恐ろしく感じていた筈のそれも、ショボンが来たせいか、冷静に分析出来る。
(;^ω^)「悪霊とかそんなもんかお?」
(´・ω・`)「まぁね。二人はとにかく逃げてくれる? 赤坪山まで大至急」
赤坪山とはここから五キロ程、離れたどこにでもあるような普通の山だ。
僕ら三人は小学校の遠足で何度か行った事がある。
(;'A`)「あんなとこ行ってどうするんだ?」
(´・ω・`)「車……行ける?」
「いつでも」
- 26 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:38:11.63 ID:C1NcvE1zO
- 背後から突然、聞こえた声に振り向くが、やはり誰もいない。
今度のそれはどうやら女性のものらしかった。
(´・ω・`)「彼女は味方だから安心して欲しい」
(;'A`)「状況がさっぱりなんですが」
(;^ω^)「同じく……」
「兎に角、早く乗れ」
正体不明の声に促されるまま路肩に止まっていた車に乗り込む。
ドクオは後部座席、僕は助手席。勿論、二人とも無免許だ。
(;^ω^)「……誰が運転するんだお?」
(;'A`)「これは、もう駄目かも知らんね……」
- 27 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:39:11.87 ID:C1NcvE1zO
- 「私が運転する。どちらか一応、運転席に座ってくれ」
僕は頷いて運転席に移る。
運転席の空気は気のせいか、ひんやりとしていた。
窓の外を見ると、ショボンは空を睨みつけている。
(;^ω^)「ショボンは大丈夫なのかお……?」
「問題無い。……恐らく」
(;'A`)「恐らく、ね……あんたは何なんだ?」
ドクオが質問すると同時に車は走り出す。
かなりのスピード。
あっ、と言う間にショボンは見えなくなった。
「私の事は『クー』で頼む……悪霊の様なものだ」
「悪霊」。
- 28 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:40:21.63 ID:C1NcvE1zO
- 全く理解出来ない様で、実は予想通りの答え。
(;'A`)「クー……さん? あだ名?」
「敬称は良い……が、訳あって本名は言えない。君達も本名は名乗るな」
(;^ω^)「把握……僕は『ブーン』だお」
('A`)「俺は『ドクオ』で」
「把握した。ブーン、ドクオ。君達には一度、安全な場所に逃げて貰う」
それぞれが自己紹介を終えると、眼前には赤坪山が見えて来た。
ここがどうやら「安全な場所」らしい。
「君達は悪霊に憑かれた……本来なら放って置くのだが、何せショボンが五月蝿い」
(;^ω^)「……」
('A`)「ショボン……」
ショボンは死んでも尚、僕らを助けに来てくれた。
その事が嬉しくもあり、同時に申し訳ない。
ただ、単純に「ショボンと再開出来た」と言う事実は喜ばしい。
僕の心境はどうしようもなくゴチャゴチャだ。
- 29 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:42:28.28 ID:C1NcvE1zO
- ( ^ω^)「(複雑だお……)」
「さて……到着だ。後はこの階段を真っ直ぐ登れば良い」
('A`)「ここは……」
クーが指す「真っ直ぐ」の先には長い階段があった。
赤坪山には何度か来ている筈だが、初めて見る場所だ。
気付けば、すっかり日は落ちて、辺りは闇に包まれていた。
( ^ω^)「登るとどうなるんだお?」
「行けば解る、としか言い様がないな……私はショボンの方を見て来るが、行けるか?」
('A`)「登らなきゃ悪霊とやらにやられるんだろ? 俺らは大丈夫だ」
- 30 :留学生(樺太) 2007/04/10(火) 22:44:01.84 ID:C1NcvE1zO
- 階段の頂上は暗くて見えないが、「行けば解る」との事だ。
上に目を取られている間に、ドクオは座り込んでいた。
( A )「ショボンを……頼む……ッ」
そのまま地面に突っ込む勢いで頭を下げる。
僕は、と言えば隣で呆けていただけだ。少し悲しい気持ちになった。
「勿論だ。彼は私達に取っても貴重な人材……こんな所で死なせるつもりはない」
クーは「頭を上げてくれ」と言葉を繋ぎ、僕は立ち上がるドクオに手を貸した。
('A`)「ブーン……行こう」
「うん」と短く返事をして階段の方を見る。
まるで不吉に手招きをするように、その闇はあった。
「では、健闘を祈る」
車は置き去りのまま、クーの気配は消えた。
姿の見えない自称「悪霊」には、テレポートくらい訳ないのかも知れない。
- 41 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 00:37:11.59 ID:IOCbsmrpO
- その場に残された僕らは、すぐ様、階段を登った。
そして、お互いに全く口を開かないまま、一時間が経過した。
(;^ω^)「ど、ドクオ……」
('A`)「……は?」
(;^ω^)「……長過ぎないかお?」
いや、確認するまでもなく長過ぎる。
後ろを振り返ると、既に出発点は見えなくなっていた。
前を見ても頂上らしきものは見えない。
ひたすらに無機質な階段と闇だけが続いていた。
ここは元々、大した標高ではない山の筈だ。
('A`)「なぁ……ショボンは死んだよな……?」
(;^ω^)「……」
- 42 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 00:38:31.37 ID:IOCbsmrpO
- 急な質問に少したじろぐ。
('A`)「いや、俺の目の前で死んだんだ。間違いない」
ドクオの表情は見えない。
('A`)「……間違いない。でも……」
( ^ω^)「ショボンはいたお」
そう、確かにショボンはいた。
謎の悪霊を引き連れて。
('A`)「ショボンは霊になって帰って来たんだ……俺らの為に」
一言一言を確かめる様にドクオは言った。
僕は曖昧な返事をして、額の汗を拭う。
(;^ω^)「(疲れて来たお……)」
ドクオは最初のペースのまま、僕の前を歩いている。
- 43 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 00:47:36.81 ID:IOCbsmrpO
- 疲れのせいか、何となく今の状況に腹が立って来た。
(;^ω^)「(そもそも、何で山登りしてるんだお?)」
('A`)「なぁ、ブーン。聞いてくれ」
(;^ω^)「お?」
どれくらいか振りに会話が生まれた。
僕は疲れを紛らわせ様と大きめの声を返す。
('A`)「ちょっと状況を整理したい」
そう言うとドクオは、順を追って話出す。
間違いなくショボンは死んだ事。
僕らが謎の悪霊に追われている事。
ショボンが霊になって帰って来た事。
そして、僕らが助けられた事。
('A`)「ショボンは『至急、赤坪山に向かえ』っつったよな?」
( ^ω^)「だお……何で、ここなんだお?」
最も大きな疑問。
正直な所、何もかもが疑問だらけだったが、まずは目の前の問題から、だ。
- 45 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 00:58:31.20 ID:IOCbsmrpO
- それに関してはドクオも同じ様で、二人して首を捻る。
何故、『赤坪山』なのか。
('A`)「……昔、婆ちゃんに聞いたんだが……っと、ちょっと座るか」
( ^ω^)「休憩キタコレ!!」
大袈裟に、いや、素直に喜んで、適当な場所に腰を下ろす。
冷たい階段が火照った体を冷やす。
足に血が巡る様な感覚に浸りながら、ドクオを呼ぶ。
( ^ω^)「婆ちゃんがどうかしたのかお?」
- 46 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 00:59:12.98 ID:IOCbsmrpO
- ('A`)「あぁ……胡散臭い話ではあるんだが……」
(;^ω^)「……悪霊に追われる状況もかなり胡散臭いお」
(;'A`)「まぁ、な」
ちょっとふざけ合って、唐突にドクオは言った。
('A`)「ここ、神隠しの名所らしいんだ」
(;^ω^)「……よんでいるーむねーのーどーこかおーくでー」
(;'A`)「いやいや、マジ。今はどうか知らないけど……」
「神隠し」。
要は、急に行方不明になった人が数年後、
いなくなった時のままの姿で帰って来たりするアレだ。
- 49 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 01:13:24.81 ID:IOCbsmrpO
- (;^ω^)「それは、つまり……」
('A`)「……こっから先は全部、俺の憶測だ」
そう切り出して、ドクオは妙に説得力溢れる「憶測」を伝えた。
僕は黙ってそれを聞いた。
(;^ω^)「凄く……ファンタジーです……」
(;'A`)「まぁな」
ドクオの話はこうだった。
ショボンは死後の世界から僕らを助けに戻って来た。
勿論、僕らを謎の悪霊から守る為に。
そして、僕らはこれから「神隠し」に合う。
「神隠し」は一説によると「死後の世界への入り口」らしく、
僕らは何らかの理由でそこに向かわなければならない。
- 50 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 01:16:41.76 ID:IOCbsmrpO
- (;^ω^)「……結局、肝心な所はわからずじまいだお」
(;'A`)「まぁ……」
何故、僕らは死後の世界へ?
何故、急に悪霊に狙われる?
そして、クーと言う女性に関しても何も知らない。
('A`)「でも、まぁ……」
( ^ω^)「だおね……」
僕らの親友、ショボンがそう言うのなら間違いない。
ショボンは僕の数百倍、賢い。
少し懐かしい気持ちに浸りながら、僕とドクオはしばらくそこで話し込んだ。
幼馴染みである僕らの思い出。
( ^ω^)「(これからは、また三人で……)」
数十分後、足の披露が薄れたのを見計らって、僕らはまた歩き出した。
- 52 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 01:28:01.05 ID:IOCbsmrpO
- そして、「終わり」は唐突に訪れた。
(;'A`)「……おい」
(;^ω^)「……」
突如、僕らの目の前に現れたのは「扉」。
何かの建築物がある訳でもなく、ただ単体でそこには「扉」があった。
(;^ω^)「ど、どこでもドアー……」
高さ、およそ三メートル。
どこぞの青狸のそれとは明らかに違う、煌びやかな装飾。
真っ暗な闇が包む石段の途中で、「それ」は明らかに異質だった。
(;'A`)「あー……入んの?」
- 53 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 01:29:06.24 ID:IOCbsmrpO
- ( ^ω^)「あっ、僕が入りますお!!」
(;'A`)「えっ、あ、じゃあ僕が……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
静寂。
( ^ω^)「同時に入るかお……」
('A`)「把握。『せーの』、な」
僕は扉のノブに手を掛ける。
( ^ω^)「(冷たい……)」
静けさの中特有のノイズが耳に痛い。
僕の頭の中に走馬灯の様なものが浮かんだ。
( ^ω^)「(……死なないお)」
死ぬ訳には行かない。
死後の世界でも生き抜いて見せる。
- 54 :こんぶ漁師(樺太) 2007/04/11(水) 01:34:49.21 ID:IOCbsmrpO
- 走馬灯の中にショボンの顔が見えた。
今はもう、いない親友。
例え霊であったとしても、僕はもう一度、彼に会いたい。
( ^ω^)「(このドアの向こうに……)」
このドアの向こうに、走馬灯から欠けてしまった「当たり前の風景」がある。
( ^ω^)「……どこへでも行ってやるお」
小さく、確かめる様に呟いてみる。
('A`)「せーのっ――」
静かに、ドアが開いた。
1:「Endstart」
―fin―