847 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/10(月) 17:06:10.04 ID:dKCqZqNU0

試合から一日後

疲労しきったブーンは、しばらく体を動かす事すら出来なかった。
一方の兄者は、あまりダメージも疲労も無さそうだった。

ブーンは、ベッドからのんびりと起き上がる。
伸びを一つして、カーテンを開ける。
朝日が差し込み、町々の景色が眩しい。

コンコンと、ドアからノック音。

( ^ω^)「・・・誰かお?」

(´<_` )「俺だ。入ってもいいか?」

( ^ω^)「いいお」

何やら神妙な面持ちで入ってきたのは、弟者だった。

(´<_` )「見舞いの花束でも持ってきた方が良かったかね」

冗談めかした言い方では有ったが、何かいつもと違う、真剣味を帯びたふいんき(何故か変ry)だった。

(´<_` )「少し、話を聞いて貰おうと思ってな」

弟者の手には、いつの間にかパソコンが有った。

871 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/10(月) 17:48:27.73 ID:dKCqZqNU0
( ^ω^)「話って、何の話かお?」

(´<_` )「今から三ヶ月後・・・ある都市でオークションが開かれる」

弟者は、パソコンの画面をブーンへと見せる。
そこには世界地図、マークされた都市の名は「ヨークシンシティ」

(´<_` )「そのオークションにはマフィアが多数参加する。特に“十老頭”と呼ばれ(ry」

要約すると『6大陸10地区を縄張りにしている大組織の10人の長』である十老頭を中心にしたマフィアンコミュニティーが、地下競売を牛耳っているらしい。

( ^ω^)「いきなりブラックな話だお・・・で、それがどうかしたかお?」

(´<_` )「・・・そのヨークシンシティに行って『十老頭の暗殺』を手伝って貰いたい」

( ^ω^)「えwwwwちょwwwwおまwwww」

884 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/10(月) 18:20:33.14 ID:dKCqZqNU0
( ^ω^)「マフィアのトップ連中をヌッコロスなんて、不可能だお!」

(´<_` )「大丈夫だ、勝算はある。それに・・・お前に拒否権は無い」

急激に弟者のオーラが跳ね上がる。
竦みあがる程の気迫と、鋭く光る眼光。

(´<_` )「今更言うが・・・お前を育て上げたのも、この仕事の戦力になって貰う為だ」

(;^ω^)「な、なんだtt(AAry)」

(´<_` )「俺と兄者の他に、後五人ほど仲間が居る。勿論、お前の様に育て上げた者も居る」

(;^ω^)「・・・・・・」

話が飛躍し過ぎたのか、ブーンは呆然としていた。
それを見た弟者は、小さく溜息を着いた。

(´<_` )「直に返事をしなくても良い。まだ三ヶ月ある、じっくりと考える事だ」

弟者が去った事にすら気が着かず、ブーンはただ呆然としているだけだった。

885 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/10(月) 18:21:31.17 ID:dKCqZqNU0
天空闘技場から遠く離れた、廃墟ビル

(´・ω・`)「本当かい?」

('A`)「ああ、確かな筋の情報だ。蜘蛛が、来る」

(*゜ー゜)「流石兄弟に連絡しないとね。状況によっては、もっと動き易くなるかもね」

(´・ω・`)「そうだね・・・ニダーにも協力して貰おう。キムチで手を打ってくれる筈だ」

(*゜ー゜)「あいつ、あんまり好きじゃない・・・あっ、そういえば流石兄弟が育てた奴も来るのかな?」

('A`)「来るしかない、だろ。どこまで使えるかは分からないけどな」




7 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 14:54:12.80 ID:W4w26fqU0
あれから三ヶ月ほどが過ぎた。


試合の申し込みは有ったが、全て断ってしまった。
しかし念の修行を怠らなかったのが幸いしたか、腕は余り落ちなかった。
ずっと引き篭もっていた訳では無く、たまには近隣を散歩していた。
ゲームセンターで遊んだり、裏通りを探索したりもした。街で絡んできたDQNを打ち倒した時は爽快だった。
いつも苛められていた自分が変わってしまった事に、もうブーンは慣れた。

夕暮れ時になり、ブーンは家路に着いた。天空闘技場の自動ドア。いつもと同じ光景。

二つの、人影。

(´<_` )「さて、時が来た訳だが」

( ´_ゝ`)「随分と長く感じたよ、この三ヶ月間はな」

夕日を背に伸びる二つの影。
ブーンの体は硬直した。今、一番見たくない人達であった。

8 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 14:57:17.47 ID:W4w26fqU0

( ^ω^)「もう、かお?」

( ´_ゝ`)「名残惜しい気持ちは分かる。だが、もう直にでも出発しなければならない」

(´<_` )「とりあえず、君の答えを聞こう。二つに一つ。誘いを断り、死ぬか。俺達に協力するか」

ブーンは大きく深呼吸を一つ。
体中から汗が吹き出す。自分の、人生の運命の分かれ道に立っている。
どちらへ進むか、答えは決まっていた。しかし、それを認めたく無かった。

( ^ω^)「ブーンは・・・」

次の日。飛行船が闘技場を静かに飛び、去った。
行き先は『ヨークシンシティ』


ヨークシンシティ外、今にも崩れそうな廃墟ビル街の一角。

(*゚ー゚)「流石兄弟と協力者、今朝闘技場を発ったってさ」

('A`)「よし、俺達もボチボチ動こうか」

(´・ω・`)「落ち合う場所はセメタリービル。集合時間は、分かってるよね?」

三人は同時に立ち上がり、そして、消えた。

9 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 15:03:09.77 ID:W4w26fqU0

それから、数日後。
飛行船は、ようやく目的地へと辿り着いた。
ゾロゾロと降りて行く人込みにブーンと流石兄弟は続いた。

遠くにビルの山々が広がる。正に『都会』と言うべき光景だった。
オークション開催も影響しているのだろうか、飛行場から見ても分かるほど街は人でごった返していた。

(;^ω^)「・・・はぁ」

こういう騒がしい所は、ブーンは好きだった。
しかし、どうにも気乗りしなかった。人殺しに加担する、と言う後ろめたさが心に重く圧し掛かっていた。

(´<_` )「そんな顔をするな。実際にお前が手を下す訳では無いんだぞ」

( ´_ゝ`)「・・・ふむ。まだ集合する時間まで間があるな・・・気晴らしに、街でも散策してみるといい」

(;^ω^)「そうさせてもらうお・・・」

足取り重く、ブーンはフラフラと街の方へと歩を進めて行った。
ブーンの姿が人込みに紛れるまで、兄者と弟者はジッとその姿を見送っていた。

24 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 16:13:33.76 ID:W4w26fqU0

( ´_ゝ`)「彼は、大丈夫なのか?」

(´<_` )「あれは、慣れるしかないからな。だが、それを乗り越えられれば彼は今まで以上に強くなれる」

兄弟の姿は、いつの間にか雑踏に消えていた。


( ^ω^)「おおッ! この価格でクリムゾ(ry)」

路上で開かれている露店、とは言っても流石はヨークシンシティだった。
場所を変えれば、品物のジャンルもそれに応じてガラリと変化する。
ブーンが見ている物、それは(PTAからの抗議により削除されました)

ジャンルがジャンルなだけに、人通りは少なかったが。


「おい(゚Д゚)ゴルァ! 何処見て歩いてるんだ(゚Д゚)ゴルァ!」
「お〜、痛ぇ痛ぇ・・・肩の骨が折れちまったじゃねぇか!!」
「治療費払え(゚Д゚)ゴルァ!」


( ^ω^)「か、からまれてるお・・・!」

893二人に絡まれているのは、小柄な青年だった。

25 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 16:14:33.87 ID:W4w26fqU0

893はあれこれ怒鳴り散らしていたが、当の青年は全く堪えていない様子。

「払えねぇって言うなら、体で払って貰うか!?」

痺れを切らしたのか、強引に青年の腕を掴んで893は路地裏へと連れ込んだ。


(;^ω^)「やばいおッ! 893に掘られるおッ!」

呆然と見ていたブーンは我に返り、急いで893達を追って路地へと入った。
その瞬間、ブーンは何かに躓き、盛大にすっ転んだ。

鼻を地面に思い切り打ったが、痛みを堪えて躓いた物体を確かめる。

それは、背中を丸めてうずくまっている人間だった。
服装からして、それは青年を連れて行った893の一人だ。
左右を見回して青年ともう一人の893を探すが、思ったよりも路地裏は暗く、見つからない。

26 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/16(日) 16:16:10.07 ID:W4w26fqU0
「う・・・ぅ・・・」

呻き声。急いで声の方向へ眼を向ける。
多少、眼が慣れてきたせいか、二つの人影を確認できた。

小柄な青年が、893の首根っこを掴み、持ち上げていた。
宙に浮く形になった893は、呻き声を挙げて悶える。
地に這いつくばったまま、ブーンはその光景を見る事しか出来なかった。

(;^ω^)「(こ、こいつはヤバいお!)」

危険を感じたブーンは“絶”を行い、自分の気配を絶った。
見つかったら、自分まで殺される。

やがて、ギリギリと音を立てて首を絞める力が強くなっていく。
このままでは危ないと思ったのか、893はジャケットのポケットに手を突っ込み、黒光りする物を取り出した。

スパッ、と何かが切れた音がした。

893が取り出した物は、綺麗に真っ二つに割れ、地に落ちた。
当事者である893には分からないだろうが、ブーンには見えていた。

(;^ω^)「(・・・手刀で銃を切り落とせるなんて・・・あいつも念能力者かお)」

まるで念能力者のバーゲンセールだお、と考えている内に、青年は893を投げ捨てた。
893は壁に激突し、「オエッ」と唸り、気絶した。

「オークションともなると、こういう連中がフラつく事が多いんです。一応、貴方も気をつけた方がいいですよ。ブーンさん」

ブーンの方へ振り向いた青年は、薄く微笑んで、言った。