37 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:52:24.93 ID: x4uqlfFo0 Be:
/ ,' 3 「まったく、今は子供探しなんてやってられるほど暇じゃないんだ」
路上で一人、荒巻は言を捨てる。
/ ,' 3 「消えた人間に連続殺人犯……やれやれ」
大げさに肩をすくめながら、荒巻は閑静な住宅街から、騒音響く繁華街へと向かっていた。
38 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:52:58.85 ID: x4uqlfFo0 Be:
J( 'ー`)し「はぁ、疲れるねぇ」
彼女は必死にペダルを踏む。
当てはない。
あるのはただ、勘。
J( 'ー`)し(ブーン……)
心に在るのは自分の息子の顔。
それだけ。

・・・・・・
40 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:53:35.58 ID: x4uqlfFo0 Be:
ふらりふらりと、死に損ないの踊り手のように
ブーンは路上を彷徨っていた。
閑静な住宅街。
通りすがる人はいない。
時刻は、午後4時11分。
彷徨い始めて約2時間……
( ^ω^)「ここは……ここは、どこだお?」
その答えは彼自身、知っているはずだ。
何故ならそこはブーンの家のすぐ近く。
というより、通学路だ。
( ^ω^)「……そうだ、家に帰らないと……」
また、彼はふらふらと歩き出す。
その時
彼方から、断末魔の叫びが聞こえた。
41 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:54:18.56 ID: x4uqlfFo0 Be:
( ^ω^)「!」
ブーンはその場に立ち竦む。
彼の真正面から、一人の男が走ってきた。

(,,゜Д゜)(はぁっ………)
男は走る。
右手に血に塗れたナイフを握り、ただ走る。
ブーンの姿には未だ、気付いていない。
(,,゜Д゜)(これで……6人……目……っ!)
だがやがて、ブーンを視認するその男。
名前は、ギコ。
42 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:55:51.09 ID: x4uqlfFo0 Be:
(,,゜Д゜)(餓鬼か……ッ………!)
苛立ちのような感情を覚えるギコ
しかしそれ以上に
彼は、目の前の少年、ブーンが逃げようとしないことに驚いていた。
(,,゜Д゜)(……どちらにせよ、見られた以上ほっとけねえな……!)
彼は、ナイフを振りかざした。
未だ、ブーンは逃げない。

( ^ω^)(あの人は、何をしてるお……?)

( ^ω^)(持ってるのは……ナイフ?)

( ^ω^)(ナイフで……どうするつもりだお……)

( ^ω^)(殺す……?)

整然としない思考
霧中の記憶
得られない確信
全てが混乱していた。
43 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:57:42.45 ID: x4uqlfFo0 Be:
(,,゜Д゜)「ッ!」
振り上げたナイフを、ギコはブーンの肩に突き刺す。
別に意味は無い。ただ、振り下ろした先が肩だった。
(,,゜Д゜)「!」
しかし、当然のように血は出ない。
それどころか、感触もおかしい。
ずぶり、と。まるで硬質のゴムを刺したかのような感覚。

(,,゜Д゜)「これ……は……」
うわ言のように呟く。
デジャヴを感じながら。


( ^ω^)「・・・・・・」
一方ブーンは未だ、一歩として動こうとしない。
感覚がないのはいつものこと。
しかし、今回は思考も麻痺していた。

だから、叫ぶことも、逃げることもしない。
ただ、立ち尽くす。
そんなブーンの腕を、ギコが勢いよく掴んだ。
それとほぼ同時に、
彼方、ギコがやってきた方向から泣き声にも似た悲鳴がこだました。
(,,゜Д゜)「お前!」
( ^ω^)「・・・・・・・」
(,,゜Д゜)「こい!」
彼はそのまま、彼を引きずるようにして走った。
・・・・・・
・・・
44 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:58:22.62 ID: x4uqlfFo0 Be:
/ ,' 3 「何……」
繁華街。
荒巻は携帯電話を片手に、歩道の真ん中で呆然と立ち尽くしていた。
/ ,' 3 「……わかりました。はい、すぐに行きます……」
突き刺すような勢いで電源ボタンを押し、そのまま電話をポケットにぶちこむ。
そして、反転し、小走りで移動を始めた。
/ ,' 3 (ここにきて住宅地で、だと……)

/ ,' 3 (何が目的だ……)

この街に
数日前から出没する通り魔。
深夜から明朝の繁華街、それも路地裏に出没する通り魔。
被害者は全て死体と化していた。
警察が対策を立てた直後の、住宅地での犯行。
あざ笑うかのような犯行。

/ ,' 3 (……)
彼は路上に転がる空き缶を蹴っ飛ばす。
この時点で頭の中の行方不明となった少年のことは一切、削除されていた。

・・・
・・・
・・・
45 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 21:59:22.44 ID: x4uqlfFo0 Be:
(,,゜Д゜)「さぁ、答えろ」
まるで廃墟のように崩れかかったボロボロの小さなアパート。
その一室に、ギコはブーンを連れてきたのだ。
( ^ω^)「……何を……だお?」
(,,゜Д゜)「とぼけんじゃねえよ……てめぇ、受けたんだろ?」

(,,゜Д゜)「人体改造をよ」
( ^ω^)「じんたい……」
聴いたことあるような気がする。
ブーンの脳がそう答える。
しかし、記憶の引き出しに詳しいものはない。
いや、むしろ。
記憶の引き出しが存在しているかすら、曖昧だ。
返事をしないブーンに、ギコは食って掛かる。

(,,゜Д゜)「知ってんだろ!?教えろ!」
(;^ω^)「な、いきなりなんなんだお。そもそも何を教えろって」
(,,゜Д゜)「俺が!」

(,,゜Д゜)「生きていられる方法だ!」
(;^ω^)「?」
(,,゜Д゜)「俺もなぁ」
先程ブーンの肩に突き刺したナイフを、今度は自らの腕に突き立てるギコ。
やはり、血はでない。
(,,゜Д゜)「俺も……受けたんだよ。お前と同じ、人体改造をな」
苦しげに、ギコは吐き捨てた。

・・・・・・
46 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 22:00:47.83 ID: x4uqlfFo0 Be:
静寂漂う住宅地に、いつもとは違う狂騒が渦巻いている。
/ ,' 3 「……」
そこに引かれている人体をかたどったと思われる線。
アスファルトをどす黒く染める血液。
/ ,' 3 「白昼堂々と、殺人とはな……」

( ・∀・)「お疲れ様です」
/ ,' 3 「あぁ、モララーか」
現れたのは荒巻の職場の後輩、モララー。
/ ,' 3 「間違いないのか?これも……」
( ・∀・)「いえ、詳細はわかりませんが……おそらくは」
/ ,' 3 「フン……」

/ ,' 3 「目撃者は?」
( ・∀・)「いえ、いないようです」
/ ,' 3 「・・・・・そうか、いつも通りだな あぁ」
半ば自棄気味に呟く荒巻。
( ・∀・)「もともとが静かな住宅地で……悲鳴をきいて近くの住人が駆けつけたときには既にもう……」
/ ,' 3 「ほう……」


/ ,' 3 「ところで、モララー」
( ・∀・)「はい?」
/ ,' 3 「今、何時だ」
( ・∀・)「ええと、午後4時32分です」
/ ,' 3 「そうか」
( ・∀・)「・・・・・・?」
/ ,' 3 「何か、忘れている気がするな……」
47 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 22:02:29.19 ID: x4uqlfFo0 Be:
その頃
近くの路上にて
川゜−゜)レ「もうすぐだ」
(´・ω・`)「ブーン、元気かな……」
川゜−゜)レ「元気だろう。多分 彼のことだからな」
(´・ω・`)「うーん……」
少しだけ懸念を抱いて。
しょぼんとクーはブーンの家に向かっていた。


48 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 22:03:53.41 ID: x4uqlfFo0 Be:
川゜−゜)レ「ここだ」
(´・ω・`)「よし」
ブーンの家の前にたどり着いて
しょぼんがまず、チャイムを押す。
かん高い音が響く。
川゜−゜)レ「・・・・・・・」
(´・ω・`)「・・・・・・・」

川゜−゜)レ「・・・・・・」
(´・ω・`)「・・・・・でないね」
川゜−゜)レ「あぁ、でないな」
(´・ω・`)「どうしたんだろう?」
川゜−゜)レ「・・・むぅ」
何を思ったのか。
クーは思いっきり息を吸った。
(´・ω・`)「?」
川゜−゜)レ「……ブーン!」
そして、ありったけの声量で叫んだ。
川゜−゜)レ「ブーン!いるのかむぐ」
(´・ω・`)「さ、さすがにそれはやめたほうがいいって」
川゜−゜)レ「むむぅ・・・」
口をふさがれたクーは不機嫌そうに唸る。
53 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 22:10:43.91 ID: x4uqlfFo0 Be:
そこへ
J( 'ー`)し「あら……クー、さんと、しょぼんくん…?」
(´・ω・`)「あ・・・」
川゜−゜)レ「こんにちは」
ブーンの母親が、憔悴しきった表情で現れた。
川゜−゜)レ「こんにちは、お義母さん」
(´・ω・`)「こんにちは」
J( 'ー`)し「わざ、わざきてくれたの・・・?」
川゜−゜)レ「当然ですよ」
J( 'ー`)し「ありがとう……でも、今ブーンは家にいないの」
言ってから
母は、後悔の念に襲われた。

川゜−゜)レ「どこにいるんです?」
少し眉をひそめて
クーが尋ねる
J( 'ー`)し「ええと……」
案の定
回答に困ってしまった。
55 Name: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] Date: 2006/06/29(木) 22:14:22.70 ID: x4uqlfFo0 Be:
J( 'ー`)し「ええと、その、ね」
川゜−゜)レ「・・・・・・」
J( 'ー`)し「少し、家を出てて、ね」
川゜−゜)レ「家を・・・?」
(´・ω・`)「まさか、家出…」
J( 'ー`)し「ううん、そんなたいしたものじゃないの」
川゜−゜)レ「・・・・・・・」

J( 'ー`)し「そういうわけだから……ごめんね」
川゜−゜)レ「・・・わかりました」
意外にあっさりと
クーは引き下がった。