(;^ω^) 「なんだとお!? 勘定奉行の西村だとお!?」
(;'A`) 「朝っぱらからうるせーなぁ。こっちは眠ぃんだよ」
( ^ω^) 「……よし、夕方にまた来るお、それまでに、あいつら集めとけお」
('A`) 「へいへい、薬が売れたらな」
( ^ω^) 「元締め」
元締め 「こんなに時間にどうした事だ?」
(;^ω^) 「いえ、相模屋の裏には、……勘定奉行、西村幸弘の影がありましたお」
元締め 「……そうか、では仕置料を出そう」
(;^ω^) 「えっ?」
元締め 「仕置するのは、相模屋権蔵、番頭の正八、……そして、勘定奉行の西村幸弘だ。仕置料は百両だ」
(;^ω^) 「百両!?……しかし、本気ですかお? 勘定奉行を殺ると言うことは……」
元締め 「無論本気だ」
( ^ω^) 「弥助はどうしますお?」
元締め 「お前達に任せる」
元締め 「……すまんな」
( ^ω^) 「あんたの真意は分かりかねますお」
元締め 「間違いの無いように、後は頼む」
( ^ω^) 「間違えても仕置料は返さないお」
('A`) 「薬〜、薬。……今日も売れねぇ」
小梅 「兄ぃは売り方下手なのよ」
('A`) 「じゃあ、お前が売ればいいだろ」
小梅 「嫌よ、あたしはこの腕一本でやって行くんだから」
('A`) 「いい加減スリはやめとけ。いつかあげられるぞ」
小梅 「そんなヘマはしないよ。あら、兄ぃ、可愛い客だよ」
おりん 「…………」
('A`) 「今日も薬買いに来たのか?」
おりん 「ううん、ちがうよ、これかえしにきた」
小梅 「これは、薬? しかもうちの薬じゃない」
おりん 「おとっあんがかえしてこいって……」
小梅 「兄ぃ、これ百文はするのに昨日の儲けって言えば八丁堀の薬だけだよねぇ」
(;'A`) 「……あ、いや、その」
小梅 「兄ぃ!」
(;'A`) 「痛えよ小梅! 人が見てんだろ。それにちゃんと金は貰ったよ」
小梅 「……いくら?」
(;'A`) 「さっ、三文」
小梅 「阿呆兄ぃ!」
(;'A`) 「うわっ、やめ……、こうやって薬は帰ってきたんだからよ、あの娘に三文返し……あれ? 居ねぇ」
(;'A`) 「小梅の所為で返し損ねたじゃねーか」
小梅 「人の所為にする前に、自分の行いを正して見ることね」
('A`) 「おめーに言われたかねーよ」
小梅 「一人頭二十両かぁ。本当に久々の大仕事ね」
( ^ω^) 「西村幸弘は俺が殺るお」
(´・ω・`) 「俺は相模屋を殺る」
('A`) 「じゃあ、俺は番頭の正八か。弥助はどうするんだ?」
小梅 「やめようよ、あのおりんって娘が泣くのは見たくないよ」
('A`) 「そうだな、俺も反対だ」
( ^ω^) 「弥助がそんな悪い奴じゃねぇ事は俺も知ってるお。まあこの件は保留だお」
(´・ω・`) 「だが、弥助が仕置現場に現れないって事は保障できないだろう」
( ^ω^) 「もし、見られたら殺せお」
小梅 「……」
('A`) 「へへ、腕が鳴るぜ」
(´・ω・`) 「おめえ、まだそんな針で仕置してたのか」
('A`) 「おいおい、これはタダの針じゃねーぜ。なんせ、南蛮渡来の毒薬が仕込んであるんだぜ。石見銀山で取れるのよりもすげーよ」
小梅 「この阿呆はこれで銭を使っちゃうのよね」
('A`) 「うるせー、これに刺されたら飯食うより早く死ぬぜ」
小梅 「兄ぃの早食いより早いとは驚きね」
('A`) 「うるせー、毒で死んでいく糞野郎の顔を見てると俺は、俺は……」
(´・ω・`) 「趣味悪いのも変わらねえな」
小梅 「ほんと、困ってんのよ」
('A`) 「うるせー」
悪が蔓延る現世の果てに
見果てぬ極楽浄土が目に浮かぶ
殺しても足りぬこの恨み
晴らす輩は鬼となり
闇夜を従えいざ行かん
小梅 「中から錠を外したよ」
(´・ω・`) 「よし」
小梅 「兄ぃ、番頭の正八は出かけてるみたいだよ」
('A`) 「仕方ねぇ、そこらへんで待つとするか」
相模屋 「これだけあれば上方にでも高飛びできるな。ふふふ、京の女は美人らしいからな」
(´・ω・`) 「俺は江戸の女が一番だと思うぜ」
相模屋 「だ、誰だ!?」
(´・ω・`) 「地獄の鬼だ」
ショボ松は逃げる相模屋の顔面を右手で鷲掴みにすると軽く力を込めた。
相模屋 「いたひっ、かねならやる、いのちふぁ」
前腕に更なる力を注ぎこむ。
相模屋 「はひあひうあはぁはぁっやめっああああああああああああああ……」
ショボ松の右腕を心地よい感触が駆け抜ける。
完熟した柿を握り潰したかのように、ぬるりとしたモノが指の間から滴り落ちた。
(´・ω・`) 「……」
鬼は血を好む。
小梅 「来たよ兄ぃ」
('A`) 「頼むぜ小梅」
小梅は闇夜に映し出される人影に向かって突進する。
小梅 「きゃ」
正八 「うわっ」
小梅 「あいたたた、どこ見て歩いてんだよ!」
正八 「も、申し訳ありません、お怪我はありませんか?」
小梅 「う〜、足折れたかも」
正八 「ええっ!?」
小梅 「そういうあんたも足痛そうよ」
正八 「これは捻っただけですので」
('A`) 「どうされましたか?」
('A`) 「ふむ……、なるほど、あっしは薬屋でしてね。よく効く薬があるんですよ」
('A`) 「お嬢さんの方はただの打ち身ですね。この薬を塗っとけば大丈夫でさぁ」
小梅 「あ〜、よく効くわ」
正八 「私にもお願いできますか? さっきから足が痛くて、……あっ、お代はお嬢さんの分も持ちますんで」
('A`) 「……これはいけませんね。う〜ん良くない」
正八 「ええっ!? ど、どうにかなりませんかね?」
('A`) 「大丈夫ですよ、あっしは針師でもあるんで、こんなの針を打てば一発で治りますよ」
正八 「そ、それは有難い。すみませんが、急用があるので早く打って頂けませんかね」
('A`) 「へいへい、この針でさぁ。……ちょっと太いけどこれがよく効きますんで」
正八 「うっ、お願いしますよ」
銀針が正八の足へと打たれた。
正八 「痛ぁ、……ほ、ほんとに針師なんですか?」
('A`) 「もちろん、……自称ですがね」
正八 「なっ、なんですって!? ふざけないでください!」
('A`) 「ふざけてませんぜ、あっしは針師だ。刺すのはもっぱら悪人だがね」
正八 「ふざけ……、ぐるじ、……ああ、……ぐぐ、……ギギギ」
('A`) 「悪人だろうと善人だろうと、毒は正直に体に回っていくぜ」
正八 「ああ…………あ、ああ、ぐ…………」
('A`) 「……地獄であったら普通の針を打ってやるよ」
小梅 「ぶつぶつ言ってる暇あったらこの死体を運ぶのを手伝えってんだ」
('A`) 「俺よりお前の方が力があるだろ」
小梅 「うるせー、重いもんは重いんだよ」
('A`) 「それも仕事の内だ、後は頼んだぜ」
小梅 「くそっ、いつもながら嫌な役割だよ」
物陰で観察する穴二つ。
毒男と小梅は過ちに気づいていなかった。
弥助 (……あの兄妹、まさか、びいっぱぁか?)
小梅 「よいっしょっと、ここなら見つかっても心の臓の発作って事で片付けられるでしょう」
弥助 「おい」
小梅はかんざしを髪から外すと声の主に向かって構えた。
弥助 「おっと、そんな物向けないでくれ」
小梅 「弥助親分!?」
弥助 「まさか、譲ちゃんがびいっぱぁだったとはな」
( ^ω^) 『もし、見られたら殺せお』
小梅 「くっ」
弥助 「そんな怖い顔しないでくれよ。俺はあんたらを探してたんだ」
小梅 「探してた? 召し上げるためでしょう?」
弥助 「違う、聞いてくれ」
小梅 「殺す!」
弥助 「殺してもいい、聞いてくれた後なら殺されてもいい、聞いてくれ! おりんが、おりんが連れ去られたんだ!」
小梅 「……話してみて、……ただし、後ろ向きになってあたしに背を向ける事!」
( ^ω^) 「西村様」
西村 「内藤か。入れ」
( ^ω^) 「本日はあなた様を斬るために馳せ参じましたお」
西村 「ご苦労。私には斬られる理由は十分にある」
( ^ω^) 「ですが、何故、自分で自分を?」
( ^ω^) 「元締め!」
西村 「説明せねばならんな」
小梅 「弥助親分と盗賊の弥七が同一人物!?」
弥助 「そうだ、俺は盗賊の弥七として名を馳せていた。そんな時、俺は始末されるという噂を聞いた」
小梅 「……」
弥助 「俺が義賊まがいの事をしてたんで、旗本や商人からは嫌われてたしな。……解せんと言う顔をしてるだろ?」
小梅 「ええ、解せないわ。盗賊の弥七は確かに仕置に掛けたはずよ」
弥助 「俺の双子の弟だ」
小梅 「弟……、おりんちゃんのおとっあん!?」
弥助 「そうだ、あいつが死んだ後、俺が引き取った。それが現実だったよ」
弥助 「おりんの奴、俺が心が苦しいって言ったのを覚えていやがったんだよ。それであいつ薬を買ってきて……」
小梅 「三文よ三文」
弥助 「やっぱり毒男の薬だったのか。すまねえ、でも俺はそんなおりんを助けたいんだよ」
西村 「私には弟がいる。年は離れているが、弥助と弥吉という双子だ」
( ^ω^) 「あなたと盗賊の弥助との関係を誰かに知られたとでも?」
西村 「さすがだな内藤。貴公の言う通りだ。勘定奉行の実弟が盗賊などという訴状でも出されたらどうなるか分かるであろう」
( ^ω^) 「それで、阿片を相模屋と結託して流したと?」
西村 「うむ、従わざるを得なかったのだ。だが、私はもう疲れた。後は貴公と弥助に任せる」
( ^ω^) 「あんたの裏に何が居るお?」
西村 「……回船問屋の上総屋だ。それにその後ろには――――」
( ^ω^) 「……あんたの恨みも晴らしてやるお」
西村 「すまん、罪を問うなとは言わん、だが私は……」
( `ω´) 「……あんたも結局その地位が愛しかったんだお」
西村 「せめて最後は武士らしく腹を切らせてくれ!」
( `ω´) 「それはできん相談だお。あんたは俺が斬るお」
内藤の刀は新たな血を吸った。
やはり人は分かり合えない、死線を共にした古き仲間でも……。