- ・・・・・・・・・
深夜。
警察署、3階の一室
町に灯る人工的な光の演出を眺望しながら、荒巻はコーヒーカップを傾けていた。
/ ,' 3 「・・・・・・」
後方から音がした。
その直後に
( ・∀・)「まだ帰ってなかったんですか……」
そんな、モララーの眠そうな声が荒巻の耳に入った。
/ ,' 3 「・・・あぁ。お前は?」
( ・∀・)「私も少し残ろうかと……家に帰っても誰もいませんしね」
/ ,' 3 「お互い、独り身の特権だな」
二人は笑いあう。
- だがすぐに、沈黙が訪れた。
/ ,' 3 「・・・・・・・・」
( ・∀・)「・・・あの、少女は」
/ ,' 3 「ん?」
( ・∀・)「結局、なんだったんでしょうね?」
/ ,' 3 「……さぁ、な」
少し大げさに両手を広げて、荒巻は首を横に振った。
荒巻とモララーが発見した少女
名前はペニサス。近くの高校に通うごく普通の高校生である。
そんな彼女が、なぜあのような凶行に及んだのか。
未だ何もわかっていない。彼女と以前と通り魔事件との関連性についても、何も。
結局彼女は警察署に連行されたわけだ。
警察署へ向かう途中の彼女がとても静かだったことは、印象に残っている。
( ・∀・)「取調べでも有益な情報は得られませんでしたし」
/ ,' 3 「……マスコミが騒ぎ出しそうだ」
( ・∀・)「そうなると……あの、少年が行方不明という事件も自ずと明るみに出てしまうでしょうね」
/ ,' 3 「・・・・・・・」
/ ,' 3 「嫌な想像だ」
( ・∀・)「まったくです」
/ ,' 3 「だが放置できない」
( ・∀・)「・・・ですね」
・・・・・・
・・・
・
- ・
・・・
( ゚∀゚)「簡単に言うと、だ」
薄暗い実験室からブーンが出てきた。
引き裂かれた腕も今では元通り接合されている。
( ゚∀゚)「模型と脳が互いに拒絶反応を起こしている」
( ^ω^)「・・・・・・」
(,,゚Д゚)「どういうことだよ」
( ゚∀゚)「無意味な負荷をかけられた脳はやがて劣化し、朽ち果てる」
( ゚∀゚)「つまり、脳は死ぬ……以前にも言ったと思うが、脳の複製を作ることはできない……作ることができるのはあくまで、脳以外の器官だ」
(,,゚Д゚)「あぁ、それは聞いた。自慢話みたいに何度もな」
( ゚∀゚)「実際に自慢話さ。前人未到の功績なのだからね」
( ゚∀゚)「ただ一つ、欠陥がある」
( ゚∀゚)「脳を保護、及び補助する機能があまりにも脆弱だということだ」
(,,゚Д゚)「・・・つまり?」
( ゚∀゚)「脳が正常に機能していられるのは約一年ほどだな」
( ゚∀゚)「それを過ぎると、脳の回路は崩壊し、記憶や思考、あらゆるものに負の作用を引き起こす」
(,,゚Д゚)「・・・聞かされていないぞ」
( ゚∀゚)「教える義務を私は持ち合わせていないのでね」
(,,゚Д゚)「じゃあ俺の……俺の殺人衝動も、その一種か」
( ゚∀゚)「そんな衝動があったのか」
( ゚∀゚)「興味深いな」
(,,゚Д゚)「てめぇ!」
いつもとは別種の殺人衝動がギコを襲った。
- ( ゚∀゚)「ほう、私を殺すか?」
胸ぐらを掴まれ、壁に押し付けられたジョルジュはそれでも笑顔を絶やさない。
(,,゚Д゚)「あぁ・・・!」
( ゚∀゚)「ふぅん……それは残念だ」
( ゚∀゚)「解決策、見つけてやってもいいのだが」
(,,゚Д゚)「なんだと・・・?」
( ゚∀゚)「キミが実験を受けたのは半年前……そうだね?」
(,,゚Д゚)「・・・・・・」
( ゚∀゚)「さすがにそこのモルモットほどに劣化してしまったら救いようがないが・・・君はまだ、救命する余地があると思うんだよ」
( ゚∀゚)「これもまた、興味深い研究になりそうなんだが」
(,,゚Д゚)「・・・・・・・」
( ゚∀゚)「どうする?」
(,,゚Д゚)「・・・ッ・・・!」
ギコは乱暴にジョルジュから手を離す。
ジョルジュは胸元を二、三度手で払う。
そして、デスクに置いてあった一本の小瓶を掴み、ギコに投げてよこした。
(,,゚Д゚)「これは・・・」
中にはいくつかの錠剤が入っている。
( ゚∀゚)「薬だ。脳を保護するものと思ってもらってかまわない」
(,,゚Д゚)「・・・・・・・」
( ゚∀゚)「私が苦心して作った代物だ・・・大事に使ってくれたまえ」
(,,゚Д゚)「畜生が・・・」
( ゚∀゚)「用はこれで終わり・・・かな?」
- (,,゚Д゚)「あぁ、そうだよ!」
無意味に叫ぶギコ。
( ゚∀゚)「ならば・・・そうだな、三日後、もう一度ここに来るがいい」
ジョルジュは片手をひらひらさせて、野良猫を追い出すような仕草をする。
(,,゚Д゚)「三日だと?」
( ゚∀゚)「治療法を模索する。その期間は三日で十分だと言うことだ」
(,,゚Д゚)「・・・・・・」
( ゚∀゚)「まぁせいぜい生き急げばいいさ・・・治療法は、見つかるとは限らないからな」
(,,゚Д゚)「野郎・・・」
( ゚∀゚)「まだ、やることが残ってるんだろう・・・?」
( ゚∀゚)「また会おう。モルモット・・・」
(,,゚Д゚)「!」
ギコは呆けているブーンを引き連れて、部屋を出て行った。
鉄扉が勢いよく閉められる。
( ゚∀゚)「・・・・ふむ」
残されたジョルジュは変わらぬ笑顔でデスクに座る。
( ゚∀゚)「あの男……ほう」
( ゚∀゚)「どうやら、面白いことになりそうだ……」
・・・
・・
・
- 川゚−゚)レ「ふう」
時刻は午前0時22分。
クーは自室のベッドに寝転がり、その部屋唯一の光源である携帯電話のディスプレイを眺めていた。
そんな状態がすでに1時間ほど続いている。
送信したメールは合計3通。
あて先は全て同じだ。
いつもならばこんなに遅い時間でも彼はすぐにメールを返してくれる。
しかし今日は
音沙汰なし。
川゚−゚)レ「・・・・・・」
携帯を無造作に置いて、クーは天井を見上げる。
川゚−゚)レ「ブーン……今お前は、何をしている……?」
彼女の呟きは、宵闇に溶ける。
- そしてもう一人
電話を相手に苦悩している人物がいた。
('A`)「うおぉぉぉぉぉ」
数時間以上
ドクオは頭を抱えて悶えていた。
情動とは人知を超える何かを発揮するようである。
('A`)「……よし」
おそるおそる新規メール作成を選択する。
手が震える
心臓がハイテンポで鼓動する。
('A`)「ま、まぁあたりさわりないこと送ればいいんだよな……うん」
男、ドクオ
初めての、女性へのメール送信である。
('A`)「・・・・・・」
('A`)「バカじゃね?俺」
- ・・・・・・
(*゚ー゚)「・・・んぇ?」
もうすぐ薄明が始まる頃か
そんな時に、しぃはけたたましい着信音によってたたき起こされた。
(*゚ー゚)「・・・うー、マナーモードにしとけばよかった・・・・・・」
そんなことを呟きながらもぞもぞと、暗闇に光るイルミネーションをたよりに携帯電話を取り上げる。
(*゚ー゚)「めーる・・・んん、誰だろ、このアドレス……」
見たことのないアドレス。
(*゚ー゚)「ううん・・・」
不審に思いながらもとりあえずメールを開いてみる。
- そこにはこんな内容が
拝啓
前略
メール届いた?
後略
(*゚ー゚)「・・・・・・」
以上である。
名前も何も書いていない。
(*゚ー゚)「うーん」
考え込むしぃ
しかしやがて、何かを思いついたかのようにボタンを押し始めた。
(*゚ー゚)「届きましたよ・・・っと。よし、送信」
(*゚ー゚)「・・・・・・」
(*゚ー゚)「誰からのメールなのかな、これ……」
幸か不幸か
しぃはドクオにアドレスを教えたが
ドクオはしぃにアドレスを教えていなかったのだ
(*゚ー゚)「まぁいいかぁ・・・」
深く考えることもなく彼女はまたまどろみの世界に浸る。
彼女らの夜は何事もなく更けるようだ。
- 翌日の朝刊の一面を飾ったのは
「女子高生、通りすがりの女性を殺害」
なるまことに物騒な事件だった。
テレビのニュースでもしきりにこのことが報道され
現場のリポーターが神妙な面持ちで動向を伝え
スタジオのコメンテーターは日本の将来を憂い
近所の住民はインタビュアーに「おとなしそうな子で・・・」とおざなりな答えを返していた。
・・・
・・
・
- J( 'ー`)し「・・・・・・・」
一人で住むには少し広い家にブーンの母は独り。
J( 'ー`)し「ブーン・・・」
彼女も等しく、近所で発生した奇怪な殺人事件の報道を眺めていた。
自分の息子に関係あるはずがない。
むしろ、関係あると思いたくない。
しかし
妙な胸騒ぎはおさまる気配を見せない。
J( 'ー`)し「ブーン……あんたのお友達も、あんたを心配して探してくれてるよ・・・」
J( 'ー`)し「私も探すからね・・・ずっと、ずっと・・・」