小梅 「それで西村は阿片を……、でも何故、おりんちゃんがさらわれなきゃいけないのよ」
弥助 「相模屋から突き止めたんだよ。裏には回船問屋の上総屋と―――」
?? 「そこまでだ」
小梅 「くそっ、逃げるよ親分!」
弥助 「……」
小梅 「!? 離して親分! ……まさか」
弥助 「すまねぇな、おりんが心配ぇなんだよ」
('A`) 「おっせえなぁ小梅の奴」
自宅の長屋で小梅の帰りを待っていた毒男の元へ、文が投げ込まれる。
('A`) 「な、なんでぇ、脅かしやがって、誰もいねーじゃねぇか。また小梅の悪戯か?」
毒男は無視しとうと決めていた投げ文を何となく開いてみた。
('A`) 「妹は預かった。返して欲しくば回船問屋上総屋まで来い。びいっぱぁの薬屋へ」
('A`) 「!? ばかやろー。いつもいつも、迷惑千万だぜ」
(´・ω・`) 「助けに行くんだろ?」
('A`) 「おめえいつからそこに? へへ、頼むぜ」
(´・ω・`) 「お前が俺達の事をばらす前に殺さにゃならんのでな」
(;'A`) 「おめえはいつも冷てぇな」
( ^ω^) 「おい、毒男、小梅、……いねぇのかお?」
( ^ω^) 「ん、なんだお? 文かお?」
(;^ω^) 「……小梅!? あの馬鹿共、先走ってなきゃいいがお」
上総屋 「言え! びいっぱぁの仲間は誰なんだ!」
小梅は縄で縛り吊るされ身動きの取れない状態だった。
小梅 「言うわけないでしょうに。あんた馬鹿か? ……いった〜い! もうちょっと優しくしろよな!」
上総屋 「優しくしたら拷問にならんだろ! お前こそ馬鹿か!」
小梅 「狸みたいな顔して言ったって怖かないんだよ!」
上総屋 「口の減らんガキだ!」
弥助 「上総屋さん、おりんはおりんは無事なんで?」
上総屋 「ああ、親分の姪は大事に預かってますよ」
弥助 「よかった。俺はおりんさえ無事なら――」
小梅 「あんたなんで、おりんちゃんが弥助親分の姪だって知ってるんだよ」
上総屋 「!? それは、だな。聞いたんだよおりんちゃんの母親からな。残念な事をしたなぁ、殺されちまって」
弥助 「……上総屋、なんでおりんの母親が死んだ事を知ってる?」
上総屋 「え? いや、恥ずかしい事ながらお相手させて貰った事があるんで。夜鷹にしとくのは惜しい器量でしたねぇ」
小梅 「夜鷹ってのは身元不明で無縁墓地に葬られるのよ……」
弥助 「まさか、おめえが殺したのか!? 上総屋ぁぁぁあああ」
?? 「そこまでだ、弥助」
弥助 「あ? あんたは?」
上総屋 「村上様!」
村上 「弥助、俺の顔に見覚え無いとは言わないだろうな」
弥助 「……北町奉行筆頭同心、村上正二郎……、そうかい、あんたが黒幕かい」
村上 「時に弥助、兄は元気か?」
弥助 「なんであんたが兄貴の事を……」
村上 「先程、吉報が届いたぞ。勘定奉行西村幸弘は死んだそうだ」
弥助 「なんだと!? てめえが殺したのか!」
村上 「いやいや違うぞ、何者かに殺されたんだよ。得体の知れない殺し屋にな。なあそこのお嬢さん」
弥助 「小梅ちゃん……まさか?」
小梅 「……」
弥助 「なんてこった、……それじゃあ俺は一体……」
村上 「もはや貴様に用は無い。小娘だがこうしてびいっぱぁの一人を連れて来てくれた事には礼を言うぞ」
弥助 「くっ」
村上 「さて、お前に褒美をやらなくてはな。姪のいる冥土に送ってやるぞ」
小梅 「…………冥土? この畜生が……」
弥助 「うっ、うわあああああああ」
村上 「愚か者めが!」
村上の凶刃に弥助は抵抗虚しく倒れた。
?? 「下衆が!」
村上 「来たか、びいっぱぁ」
小梅 「……兄ぃ」
('A`) 「そこ娘を放せ! 俺が代わりに吊るされてやるよ!」
村上 「上総屋、死に掛けの小娘などいらん、放してやれ」
小梅 「兄ぃ……」
('A`) 「小梅、これを八丁堀に……行け!」
上総屋 「逃がすか!」
('A`) 「へへ、そうはさせないぜ」
村上 「上総屋、気にするでない。さあ約束どおり縛られて貰おうか」
('A`) 「ぐあっ! くそっ、いてえ! もっと優しくしろよ馬鹿狸!」
上総屋 「誰が狸だ!」
村上 「さあ吐け、貴様の仲間は誰だ?」
('A`) 「吐けと言われて吐く馬鹿は居ねえだろ?」
村上 「我等がびいっぱぁ狩りを開始すれば貴様の妹なんぞあっと言う間に打ち首だぞ」
('A`) 「うるせー、死ぬ事なんて怖かねーよ。俺もあいつも」
村上 「あの娘を助けたいと思わんか?」
('A`) 「何の事だ?」
村上 「あの小娘に毒を飲ませた。それも後半時もすれば効き目が表れてくるだろう。そうだな上総屋」
上総屋 「へへへ、あの薬はうちの秘伝でしてね。解毒薬がなければ一時後にはポックリ逝きますよ」
('A`) 「糞が……」
村上 「いい加減に吐かんか! このままじゃあ貴様も娘も死ぬぞ!」
('A`) 「……やだね」
村上 「びいっぱぁってのはなんとも強情だ。いくら痛めつけても、いくら金を積んでも仲間の事は言わん」
('A`) 「当たり前だ。死んでも仲間の事は……ん? 金積んだ事あるのか?」
村上 「あるぞ、つい最近も積んだが断られたがな」
('A`) 「……そうか、まあそうだろうな。……そろそろ潮時だな」
村上 「喋る気にでもなったか?」
('A`) 「いや、オサラバだ。……ウッ」
上総屋 「村上様、こやつ舌を噛みましたぞ!」
村上 「愚かな」
上総屋 「おい、死ぬな、お前らの仲間を言え! おい!」
村上 「ふん、死んでは仕方がない。さて……」
上総屋 「うがああああああああああああああああ」
村上 「なんだ!?」
毒男は上総屋の喉元へと噛み付いていた。
この機をうかがっていたのだ。
('A`) 「ぐぅ……」
村上の刀が毒男の胸を貫いたと同時に上総屋は自由になる。
村上 「上総屋、大丈夫か?」
上総屋 「うぅう、傷は浅いようです。しかしながら本当に狂犬のような輩……うぅ」
('A`) 「……効いて……来たろ?」
村上 「上総屋! どうした!?」
('A`) 「俺特製の毒だ……、はは、俺は毒で死ぬのが……、先か……、胸の風穴で死ぬのが……先か……どっちかな……」
村上 「歯に毒を仕込んでやがったのか!? くそっ、おい上総屋!?」
上総屋 「ぐあああああ。ぐ、るじ。ギギギ」
村上 「貴様! 解毒薬は……、もう死んでやがる……」
('A`) 「……」
( ^ω^) 「しっかりしろお小梅! おい小梅!」
小梅 「……八丁堀ぃ、死んじゃったよ、弥助親分もおりんちゃんも……、きっと兄ぃも……」
( ^ω^) 「毒男はどこに居るんだお!?」
小梅 「回船問屋上総屋だよ。……これは兄ぃから預かったものだよ」
( ^ω^) 「これは……、三文?」
小梅 「おりんちゃんに返し損ねた三文だよ……。これで殺っとくれ」
( ^ω^) 「誰を殺るんだお?」
小梅 「上総屋と筆頭同心の村上正二郎だよ……」
( ^ω^) 「分かった、安心して休めお」
小梅 「……すごい眠いや。……明日は寝坊しそう…………」
(´・ω・`) 「死んだか」
( `ω´) 「ショボ松、てめえ今まで何してやがったお!?」
(´・ω・`) 「見てた」
(;^ω^) 「見てた?」
(´・ω・`) 「そうだ」
( ^ω^) 「何故助けなかったお」
(´・ω・`) 「義理もなければ理由もねぇ。あいつらがあんたの事を喋ったら消すつもりだったけどな」
( ^ω^) 「おめえ、やっぱり……」
(´・ω・`) 「俺は知ってるぜあんたがワザと俺を島送りにした事をな」
( `ω´) 「おめえが裏切り者だったからだお」
( ^ω^) 「俺も馬鹿じゃ無いお。弥助が偽者だってのは知ってたお。おめえが意図的に弟の方を殺したって事も」
(´・ω・`) 「どうして分かった?」
( ^ω^) 「おめえは弥七を殺った時に顔を潰したって言っていたが、実際は顔は判別できたんでな」
(´・ω・`) 「で、俺を殺るのか?」
( ^ω^) 「受け取れお」
(´・ω・`) 「ん? 一文?」
( ^ω^) 「お前の取り分だお」
(´・ω・`) 「誰を殺るってんだ?」
( `ω´) 「俺だお」
内藤は刀を抜きショボ松へと突きつける。
( `ω´) 「何故弥助の弟は殺されたんだお?」
(´・ω・`) 「知ったんだよ。村上の悪行をな。そりゃあ西村は反対したさ、実の弟だからな」
( `ω´) 「それが分からんお。何故、盗賊の弥七として殺さなきゃならなかったんだお?」
(´・ω・`) 「どうせ殺されるんだ。盗賊の弥七になって殺された方が、兄貴の弥助も喜ぶだろ?」
(´・ω・`) 「西村という男は利口だったよ」
( `ω´) 「……おめえ言い残す事はあるか?」
(´・ω・`) 「ねぇな」
刹那、ショボ松は動いた。
右前腕を内藤の顔目掛けて伸ばしてくる。
寸でかわした内藤はショボ松の体に刀を当てると一気に引き抜く。
闇夜の中でもどす黒い血が流れるのが分かった。
( `ω´) 「なんでワザと斬られた?」
(´・ω・`) 「……へっ、本当は半年前に斬られてたんだぜ。覚えておけ……、常念寺、北の縁の下」
(´・ω・`) 「……早く行け、村上を斬ってこい」
( `ω´) 「おめえ、先に逝ってろお。……毒男と小梅によろしくお」
(´・ω・`) 「……あ〜、血はいいなぁ。……血のこの感触が最高だ」
鬼は血の海へと堕ちて行った。