- 「畜生……もう、いいだろ?」
暗澹とした空間で、彼は独り呟く
「なんで俺があいつのために……」
それは怨恨の塊
「ここまで身を削って、助けてやらなきゃならねえんだ」
「それに、このままだともう……」
「……俺だって、俺だってなぁ……!」
その咆哮
聞く者はいない。
・・・
・・
・
- 錆びた廃墟の一室。
白いベッドがそこにあった。
そのうえに一人、少年が横たわっている。
何故か、目隠しされているその少年。
( ^ω^)「・・・・・・・」
彼はブーン。
静かに、手術を待つ。
やがて、一人の男が入ってきた。
その足音を認識して、ブーンは口を開く。
( ^ω^)「ご主人様ご主人様、今日は僕のどこを手術するんですかお?」
???「あー……そうだな、今日は」
???「足だな、うん」
( ^ω^)「わかりましたお」
短い会話はそこで終わる。
男は右手にノコギリを持っていた。
彼はそれを、大きく振り上げて
ブーンの右脚めがけて、振り下ろした。
ザクッと
嫌な音が響いた。
- 血しぶき一つ上がらなかった。
その脚の断面は、まるで小学校の理科室にある不気味な人体模型のように、血管も、骨も、全てただの模様だった。
当然、赤黒い血が吹き出たりはしない。
( ^ω^)「・・・・・・・」
自分の脚がベッドからゴトリと転がり落ちる。
彼は無表情に、音だけを聞いていた。
もう、慣れていた。
しかしそこで、男は舌打ちした。
???「しまった……」
( ^ω^)「どうかしましたお?」
???「あぁ……ちょっと斬りすぎた」
( ^ω^)「…………」
???「ま、まぁ気にするな。大したことじゃない」
( ^ω^)「ま、まぁ気にはしてないですお……」
複雑そうに、ブーンは呟く。
???「……よし、次は腕だ」
( ^ω^)「はい」
再び、ノコギリが振り上げられる。
彼の身体は表面は人のような肌をしているが。
中身はただの人体模型。
すなわち、人形。
ブーンの周囲の人間はそれを知らない。
知っているのはただ ノコギリを持つ男のみ。
ブーンすら知らない。
そう、今となっては
- ???「……よし、終わりだ」
???(あとは記憶の改竄を……ええと、マニュアルはっと……)
( ^ω^)「いつもありがとうございますお」
???「……いや、気にするな」
???(……次だ、次こそ……)
( ^ω^)「どうかしましたかお?」
???「なんでもない。仕上げに入る。そのまま寝とけ」
( ^ω^)「・・・・・・・・」
それは、七月。
日曜日の、夜のことだった
………
……
…
- 月曜日の朝を迎えた。
ブーンはいつも通り高校に行こうとする。
( ^ω^)「いってきますおー!」
靴を履き終えてから、彼は奥に向かってそう叫んだ。
J( 'ー`)し「ブーン、ちょっと」
そんな彼を、母親が引き止める。
( ^ω^)「何か用かお?」
J( 'ー`)し「あんた最近、帰ってくるの遅すぎない?」
( ^ω^)「・・・・・・・」
J( 'ー`)し「いくら高校生になったからって、せめて夜の9時には帰ってきてほしいわ。心配なんだから」
( ^ω^)「・・・・・・・」
( ^ω^)「いってきますお」
J( 'ー`)し「ブーン……」
母の言葉を、ブーンは聞かなかった。
聞けなかった。
- 川゜−゜)レ「ブーン」
( ^ω^)「あ、クー。おはようだお」
川゜−゜)レ「ん、おはよう」
ブーンの家の前にぽつんと、
一人の女性が立っていた。
彼女の名前はクー。
彼女とブーンは付き合っている。
彼らは高校二年生。
中学生の頃から付き合っているのでもう、4年以上の仲となる。
彼らは仲良く手を繋ぎ……いや、正確にはクーがほぼ強制的に手を繋ぐことを要求したのだが……学校に向かって、歩き始めた。
- 川゜−゜)レ「そういえば今日でテスト、終わりだったな。忘れてた」
(;^ω^)「・・・・・・・」
川゜−゜)レ「む、どうかしたか?」
(;^ω^)「い、今の今まで忘れていたのかお?」
川゜−゜)レ「あぁ、忘れてた」
(;^ω^)(優等生はいいお……余裕綽々ってやつかお?)
川゜−゜)レ「ブーン?」
(;^ω^)「あ、いや、なんでもないお……それより」
川゜−゜)レ「?」
(;^ω^)「あまりくっつかないでほしいお」
川゜−゜)レ「どうしてだ?君は私の彼氏だろう?」
(;^ω^)「あぁ、まぁそうですけど」
川゜−゜)レ「ならば遠慮することもあるまい」
(;^ω^)「・・・・・・・・・」
- 川゜−゜)レ「……そういえば、ブーン」
( ^ω^)「どうしたお?」
川゜−゜)レ「背、のびたな」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「気のせいだお」
川゜−゜)レ「そ、そうか?」
( ^ω^)「そうだお」
川゜−゜)レ「むぅ……いや、たしかにこれくらいのびたような……」
( ^ω^)「・・・・・・・」
・・・
・・
・
- 徒歩十数分。
彼らは学校に到着した。
すでに殺伐とした雰囲気が漂っている。
テスト直前の、独特のそれだ。
(´・ω・`)「おはよう、ブーン」
彼らが教室に入るとまず、ブーンの友人、しょぼんが彼らに話しかけた。
(´・ω・`)「いいよね、君達。いつもいつも」
川゜−゜)レ「うらやましいか?」
(´・ω・`)「正直ね」
川゜−゜)レ「ならば君も早く婚約者を見つけるがいい」
( ^ω^)(婚約者て)
川゜−゜)レ「そうだな……ツンさんなんかは、どうだ?」
(´・ω・`)「んー、あの人結構近寄りがたいからなぁ」
川゜−゜)レ「そうか?話してみると、結構楽しい人だとわかると思うぞ」
(;^ω^)(こそばゆい会話だお)
- そして、数時間後
テストは難なく終了した。
ブーンは落ち込み、クーは冷静な表情を見せ、そんな二人をしょぼんは苦笑して見ていた。
川゜−゜)レ「さ、帰るぞ、ブーン」
( ^ω^)「……はぁ」
時刻は未だ午前11時半。
いつもの調子で、ブーンとクーは帰路についていた。
そこに、一つ、迫る人影が。
- ('A`)「よう、ブーン」
( ^ω^)「あ、ドクオじゃないかお」
('A`)「どうだった?今日のテスト」
(;^ω^)「・・・・・・」
('A`)「あー、わかった。言わなくていい」
川゜−゜)レ「ドクオくんか……近頃あまり見ないな」
('A`)「あぁ、いや。同じクラスじゃなくなっちまったからな」
一年の時は
ドクオ、ブーン、しょぼん、クーは仲良く同じのクラスにいた。
しかし二年になって
ドクオだけ、違うクラスに配置されてしまったのである。
('A`)「俺もヒッキーみたいに引き篭もろうかと」
川゜−゜)レ「それはだめだ。現実から逃げてどうする」
('A`)「へいへい、俺はどーせ甲斐性無しですよっと」
川゜−゜)レ「まったく……」
( ^ω^)「・・・・・・・・・」
それは いつも通りの光景。
- 川゜−゜)レ「そういえばブーン」
( ^ω^)「お?」
川゜−゜)レ「勉強、私が見ようか?」
( ^ω^)「ほんとかお!?」
クーが勉強を教えてくれると言う。
ブーンにとっては願ってもないチャンスだ。
色々な意味で。
川゜−゜)レ「あぁ、そうだな……今日の午後はどうだ?」
( ^ω^)(午後、午後……あ)
しかしその表情は嬉々としたものから一気に落胆へと変わる。
(;^ω^)「ごめん……今日は無理だお」
川゜−゜)レ「そっか……」
川゜−゜)レ「また、家の用事か?」
( ^ω^)「・・・・・・・」
ブーンは黙りこくったまま、一度頷いた。
ブーンが家の用事だと言ってクーの誘いを断るようになったのは一年ほど前からである。
それも頻繁に。
クーは何度も詳しく聞こうとした。
しかしブーンはかたくなに、それを拒んだ。
- 川゜−゜)レ「わかった……それでは、また次の機会にな」
( ^ω^)「うん……ごめんだお」
川゜−゜)レ「いや、気にしなくていいさ」
そこでちょうど、分かれ道に来た。
ブーンとドクオは左、クーは右である。
朝、いつもクーがブーンの家の前にいるのは彼女が早起きしてブーンの家まで行っているに他ならない。
川゜−゜)レ「それでは、また明日」
( ^ω^)「わかったお」
短く言葉を交わして、ブーンとクーは分かれた。
('A`)「・・・・・・・はぁ」
クーが去ってから、ドクオは非常に深いため息をついた。
( ^ω^)「どうかしたのかお?」
('A`)「いーや、別に」
何故か彼は不機嫌そうに吐き捨てた。
( ^ω^)(?)
………
……
…