24話
- ツン:明日は渡米の日。色々と準備があって面倒だわ
ツン:さっさと向こうの高官たちを黙らせて帰って来る事にするわよ
ツン:お爺様、明日より米国へ行って参りますわ
海音寺:うむ。宜しく頼むよ
ツン:で、他に用件があるとお聞きしましたけど?
美鈴:実はアメリカに一緒に連れて行きたい人がいるんです
ツン:一緒に?別にいいんじゃない?わざわざ私に言う必要があるの?
海音寺:それがの、どうにも砂漠の国の事情と深く関わっているようでの
美鈴:荒巻さんが連れて帰られた方なんですけど
海音寺:何か情報を聞けるかと思ったんじゃがな。自分の名前さえも覚えておらんのじゃ
ツン:記憶喪失ね、それが私と何か関係あるの?
美鈴:それが大有りなんです。唯一覚えているのが、あなたなんですよ
ツン:私?じゃあ私の知り合いな訳?
美鈴:そこまでは……身元も分かりませんし。けど、あなたの写真を見て覚えている、と
海音寺:アメリカ訛りの英語を話しているからアメリカ人じゃと思うが
ツン:アメリカに連れて行けば他に何か思い出すかもって事ね
海音寺:そう言う事じゃ。向こうの病院とは話がついておる
ツン:分かりました。で、その人は今はどこにいらっしゃるの?
海音寺:美鈴、案内してやってくれ。ワシはこれから別件があっての
美鈴:分かりましたわ。こちらです
ツン:では、お爺様、また
海音寺:あぁ、気を付けて行っておいで
ツン:アメリカ人に知り合いなんていたかしら?
海音寺:どうでしょう?さぁ、ここです
ガチャ
????:ツン……さん?
ツン:え!?ちょっと!!どうしてこんな所にあなたがいるのよっ!!
- ツン:どうしてこんな所にあなたがいるのよっ!!
ツン:トレイシー!!
ツン:ちょっとどう言う事よ!?
トレイシー:え…?え……?
ツン:死んだんじゃなかったの!?ちょっと顔見せなさいよ!!
グイッ
トレイシー:い、痛っ……ツンさん、痛いです
美鈴:お、落ち着いて!!
ツン:あ…?ご、ごめんなさい
美鈴:大丈夫ですか?
トレイシー:……?
美鈴:この方、トレイシーさんて言うんですか?
ツン:そ、そうよ。トレイシーよ……
トレイシー:トレイシー…?私、トレイシー?
ツン:(ちょっと場所を変えましょう)
美鈴:(そ、そうですね)
美鈴:ちょっと待ってて下さいね。お茶を淹れてきますから
ツン:私も手伝うわ
――――――――
美鈴:そんな事が……
ツン:死んだとばっかり思ってたのに、驚いたわ
ツン:トレイシーが生きていたわ…
ツン:じゃあ…ブーンとドクオは……無駄に戦ってるだけじゃないの!!
- ツン:どうしてこう死んだと思った人間がケロっと生きてるのかしら
ツン:とにかくトレイシーが生きてて良かったわ
ツン:どうしてすぐに会わせてくれなかったの?
美鈴:それが目が覚めたのが昨日の朝なんです
ツン:目が覚めた?
美鈴:荒巻さんが連れてくる以前からずっと眠っていたそうです
ツン:昏睡状態?やっぱり墜落した時の影響で?
美鈴:恐らく。それで目が覚めたあと、話をして何も覚えてない事が分かって
ツン:それで新聞か何かで私を見たのね
美鈴:えぇ。それで昨日は忙しいようでしたし、今日にしたんです
ツン:そう言う事ね。けど、トレイシーはここに来る前はどこにいたの?
美鈴:反政府軍の基地にいたそうです
ツン:反政府軍?でもドクオはトレイシーは死んだって言ってたわ
美鈴:荒巻さんの話では、FOXさんの弟さんが助けて匿っていたとか
ツン:匿ってたって事は、狙われてたって事?
美鈴:そのようです。このままでは殺されるからって託されたそうです
ツン:利用されているのね。ドクオが
美鈴:そうかも知れません
ツン:とにかくトレイシーが記憶喪失で助かったわ
美鈴:え?どうしてですか?
ツン:あの子の性格だったら、起きた瞬間ドクオの所へ飛んで行くわ。文字通りね
美鈴:そ、そうなんですか……
ツン:連れて行きましょう。幸い、トレイシーの実家の町も聞いてるから
美鈴:お願いします。何だか可哀想で……
ツン:これでブーン達の所へ行く理由がもう一つ増えたわね
ツン:すぐにでも行きたいけど、仕事を片付けてからそっちに行くわ
- ツン:アメリカに来るのはいつ以来だったかしら?
ツン:すでに向こうのお偉方とは話がついたわ
ツン:向こうも掴んでいたらしいわね。ナチスの事
美鈴:さすがはアメリカ、と言ったところでしょうか
安田:以前にナチス絡みの事件が起こっているそうですわ
ツン:これでロッキーさん達が突き止めた所に特殊部隊を送って貰えるわ
安田:うまく行けば南米に残った勢力を一掃出来ますね
ツン:そうね。とりあえず用は済んだわ
安田:これからどうします?
美鈴:一旦ロッキーさん達と合流しましょう
安田:あら、何か用でもおありなんですか?
美鈴:ちょうどトレイシーさんの実家がある所にいるんですよ
ツン:あら、そうなの。けどあんな所にマフィアの影なんてあったかしら?
美鈴:沢さんが足を怪我したそうで、今は療養中だそうですよ
ツン:ふ〜ん。じゃあなおの事行かないといけないわね
美鈴:そう言うことです
ツン:安田さんが行けば何よりの薬ですものね
安田:お、お嬢様っ!?
ツン:そうと決まったらさっさと行きましょ
ロッキー:おう、沢。お客さんだぞ
沢:おや、私にお客とは珍しい。一体誰がこんな男に?
ロッキー:まったく、俺も物好きだと思うよ
安田:ロッキーさんっ!そんなんじゃないんです!!
沢:そ、その声は!!
ロッキー:うーん、こう言うのはむず痒くて居ずらいなぁ
ツン:二人にしてあげなさいよ。こちらはこちらでエリアVIPの話がある事だし
- FOX:一応津雲殿のルートからエリアVIPの事は分かるが…
FOX:じっとしていると言うのは気分がジリジリしていかんな
医師:経過は順調なようですね
FOX:ええ。日常生活は何ら問題ありません
医師:一年の間我慢すれば、また戦闘機に乗っても構いませんよ
FOX:そ、それは本当ですか!?
医師:我慢出来ればですがね
FOX:……
医師:まぁこの分なら来週にでも退院できるでしょう
FOX:ありがとうございます
医師:しかし、忘れないで頂きたい
FOX:なんでしょう?
医師:我々医師は戦場に帰らせるためにメスを振るう訳では無いのですよ
FOX:胆に銘じておきます。しかし、私を待つ者が、私を待つ国があるのです
医師:いいでしょう。あなたの目です。自由にすればいい
FOX:ドクター……
チュンチュン
FOX:暖かいな。それにいい風だ
FOX:こののんびりとした生活とも今週一杯でお別れか
FOX:こう言う生活も悪くは無いんだがね
FOX:どうにも落ち着かないな
FOX:ん?また飛行機か。そう言えば空港が近いのだったな
FOX:出来れば私も、戦いなどしたくは無い
FOX:しかし戦わねばならない。エリアVIPがエリアVIPである限り
- FOX:外出の許可は出ないから病院から出れんな
FOX:正直、退屈だな。こんな時ブーン達なら何をするんだろうな
FOX:……
FOX:む、いかん、眠ってしまっていたか
FOX:平和ボケしたかな……部屋に戻るか
FOX:ん?護衛がいないな。手洗いか?
FOX:!?
FOX:(血痕だと!?反政府軍の刺客か!!)
FOX:(ここにいては危ない、逃げなければ)
ソーッ
黒服A:待て!
FOX:チッ!
ダッ
黒服B:いたぞ!!入り口を封鎖しろ!
黒服C:サイレンサー確認しろ!追うぞ!!
FOX:くそっ!まさか病院にまで刺客を送り込んでくるとはな!!
ドンッ
女性:きゃっ
FOX:すみません、マダム、急いでいるので!!
FOX:どこだ!?どこへ逃げればいい!!
FOX:このままではいずれ追い付かれる!
- FOX:ヤツらは分別が無いのか!?ここは病院だぞ!!
FOX:父上もFALCOもこんな事は絶対にしない。これはナチスか!!
FOX:失礼!!
タタタタ
婦長:FOXさん!廊下は走ってはいけませんよーー!!
ダダダダダ
黒服A:どけっ!!
ドンッ
婦長:ひえっ!?
黒服B:喰らえ!!
ピシュンピシュン
FOX:ちぃっ!?
ゴロゴロゴロ
黒服B:外したか!
黒服A:追うぞ!
FOX:ハァハァ……まだだ…まだ死ぬ訳にはいかんのだ…
FOX:一旦外へ!
黒服D:こっちだ!いたぞ!!
FOX:くそっ、こっちにもいたか!?
FOX:一体何人居るんだ!?このままでは追い詰められる!
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