1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:49:52.92 ID:2dROaSJA0
狂うことに固定した理由はない
ただ、必要な時に、人は狂うのだ。
ーーー某所ーーー
そこは木製の椅子や不気味な雛人形・・・その他、様々な芸術品と呼べるであろうモノが多数並べられている工房だ。
その小さな部屋の中心に、ベッドが一つ。そこに、若い男が一人、横たわっていた。
やつれた表情。ぼんやりと目を開け、宙の何かを見ている。
その横にはもう一人、その横たわっている男よりかは少し若い男が座っていた。頭を抱え、身動き一つしない。
(´<_` )「げほっ・・・げほっ」
突然、ベッドの上の男が苦しそうに咳き込みだした。直後、傍に座っていた男が顔を上げ、その男の顔を見る。そして、叫んだ。
( ´_ゝ`)「弟者、弟者!」
弟者と呼ばれたその男は少しだけ顔を傾け、微笑を浮かべた。
(´<_` )「ぁぁ・・・兄者・・・か」
( ´_ゝ`)「そうだ、兄者だ・・・弟者・・・」
(´<_` )「・・・は・・・俺は・・・もぅ、ダメだ」
弟者が僅かに手を動かし、兄者の方に向ける
彼は慌ててその手を握り締めた。
( ´_ゝ`)「何を言ってるんだ、弟者・・・お前は・・・俺なんかよりも・・・もっと、もっと腕のいい、職人なんだぞ・・・それなのに、お前が、今死んでどうするんだ・・・!」
(´<_` )「・・・す、まない・・・な・・・げほっ」
人の死期はその人自身が一番よくわかるという。
弟者はすでに、生きることを諦めていた。
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:51:30.97 ID:2dROaSJA0
(´<_` )「・・・あんなものをつくってしまった、罰だ」
吐き捨てるかのように、弟者が呟く。
( ´_ゝ`)「そんな・・・」
(´<_` )「やっぱりあれは・・・造るべきじゃなかったんだ・・・あんな、道具を・・・」
( ´_ゝ`)「・・・・・・」
(´<_` )「兄者・・・最期に一つだけ・・・」
( ´_ゝ`)「!・・・」
(´<_` )「あれを・・・処分・・・して・・・」
彼の遺言は、最後まで兄者に伝わることは無かった。
次の瞬間、弟者の手は兄者の手の中からするりと滑り落ち、だらりとベッドの傍に垂らされた。
それと同時に、弟者の目もゆっくりと閉じられる。
( ´_ゝ`)「弟者・・・おと・・・」
力無い兄者の言葉も、弟者には届かなかった。
その瞬間に弟者は、天に昇ったのだから。
兄者は彼の亡骸の傍で突っ伏し、声を上げて、泣いた。
・・・
・・
・
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:53:11.29 ID:2dROaSJA0
ーーー数日後 路上ーーー
弟者が亡くなって数日経った。
あいにくの、雨。
右手で傘を差しながらとぼとぼと、閑散とした道路を歩いていた。
左手に一つ、大きめの紙袋をぶら下げて。
( ´_ゝ`)「・・・・・・」
静かだ。しとしとという、流れるような雨の音と、ぴちゃり、ぴちゃりという小さな足音しか聞こえない。
しかし
兄者を狙う獣が一匹、彼の後方、電柱の影から目を光らせていた。
勿論、兄者は気付いていない。
(・∀ ・)「・・・・・・」
虎視眈々と獲物・・・兄者の紙袋を狙うその男・・・
ひったくりの常習犯、またんき。
彼はゆっくりと彼の後を追い、隙をうかがう。
(・∀ ・)(もうそろそろお金が無くなりそうだから・・・あの紙袋にお金、入ってるかな)
その表情は半ば、愉快犯のもののようにも思える。
(・∀ ・)(ま、いーや・・・盗れる物は、盗っとかないと・・・)
次の瞬間、彼は走り出していた。
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:55:05.50 ID:2dROaSJA0
またんきはバイクや自転車といったようなものは使わず、実に古典的に、走りながら兄者の紙袋を奪い取った。
( ´_ゝ`)「!」
(・∀ ・)「よし・・・」
そしてまた、またんきは全力で走り出す。
雨で紙袋が濡れないように、しっかりと抱きかかえて。
( ´_ゝ`)「・・・!」
兄者は次の瞬間、傘を放り捨て、鬼のような形相でまたんきを追いかけ、駆け出した。
しかし、またんきには自信があった。その辺の一般人には追いつかれない自信が。
(・∀ ・)(必死に追いかけてくる・・・やっぱり、この中にはお金が!)
内心またんきはほくそ笑み、更に速く走る。
どんどんと距離が広がっていき・・・
曲がり角を曲がったあたりで、ついに兄者からまたんきを視認することはできなくなってしまった・・・
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:55:51.92 ID:2dROaSJA0
( ´_ゝ`)「・・・・・・」
一言も呟かず、叫ばず、ただ無言で追走していた兄者。
彼は、片ひざを濡れた地面に落として、両手をついた。
もう、絶望的なのだ。
( ´_ゝ`)「弟者・・・すまない・・・」
息を切らしながら兄者は呟く。
なんのことはない、あの紙袋に入っていたのはお金などではなく、弟者の遺品だったのだから。
アレ、も、紙袋に入っていた。
しかしそれ自体はどうでもいい。
兄者が悔やんでいるのは、自らの弱さに対して、なのだから。
( ´_ゝ`)「俺は・・・・・・」
虚ろな呟きは雨空に吸い込まれていった・・・
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:56:39.55 ID:2dROaSJA0
ーーー路地裏ーーー
(・∀ ・)「なんだー・・・ガラクタばっかじゃん・・・」
路地裏で紙袋の中身を漁っていたまたんきは、思わず溜息をついた。
(・∀ ・)「はーぁ・・・金目のものでもあるのかと思ったら、人形とかガラス細工とか・・・くだらないものばっかりじゃん」
芸術に関心のないまたんきには袋の中のものがそのようにしか見えないのだ。
(・∀ ・)「つまらないな・・・奪って損した」
そういって、またんきはその紙袋を放り投げて、その場を歩き去った。
(・∀ ・)「次の獲物はー・・・っと」
能天気にそんなことを呟いて去っていくまたんきは当然気付かない。
地面に落ちた拍子に、小気味よい音をたてて一本の短い笛が袋の中から転がり出ていたことに・・・
・・・
・・
・
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:57:43.38 ID:2dROaSJA0
ーーー数分後 同所ーーー
???「少女可愛い少女可愛い少女可愛い・・・・・・」
妖しげな呟きを発しながら歩く男が、一人。
(-_-)「少女欲しい少女欲しい少女欲しい・・・・・・」
(-_-)「・・・ん?」
その男、ヒッキーは途中で、地面に転がる一本の笛を見つけた。
(-_-)「・・・妙に綺麗な笛だな・・・」
空色に輝くその笛は、変質者であるヒッキーの心も惹きつけた。
(-_-)「・・・・・・」
特に意味も無く、それを拾い上げ、眺めるヒッキー。
そしてそれをポケットにさしこみ、また歩き出した。
(-_-)「少女買いたい少女買いたい少女買いたい・・・・・・」
・・・
・・
・
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 01:59:25.92 ID:2dROaSJA0
ーーー某所 公園ーーー
雨はいつの間にか止んでいて、太陽が垣間見えるようになっていた。
(-_-)「少女・・・いないなぁ・・・」
ヒッキーは公園のまだ濡れているベンチにすわりこみ、呟く。
彼の趣味、少女の観察。
変態以外の何者でもない。
しかしその時、彼にとっての幸運が訪れた。
(*゚ー゚)「〜〜♪」
男子A「よし、かくれんぼしようぜ!」
男子B「おぅ!」
(*゚ー゚)「うん♪」
公園に、3人の子供がやってきたのだ。
(-_-)「あ、少女・・・」
彼の目は、一人の女の子を射止めた。
(*゚ー゚)・男子A・B「じゃーんけーんほいっ」
(*゚ー゚)「よし、じゃぁ私が見つけるからね」
男子A「俺、ぜったいみつかんねーからな!」
男子B「俺もやしっ!」
(*゚ー゚)「じゃー、数えるよー」
その声と同時に、男の子二人は駆け出していってしまった。
(-_-)「・・・ふ・・・」
今この空間に、ヒッキーとその女の子しか、いない。
(-_-)(あは・・・ちゃ・・・ちゃんす・・・?)
彼は心の中で狂い笑う。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 02:00:50.28 ID:2dROaSJA0
しかし
彼には勇気がない。度胸がない。そもそもそれらがあったのならばすでに行動しているだろう。
今回も彼は、大声で数を数える女の子の姿を凝視するのみで、立ち上がろうとさえしない。
・・・だから彼は今まで、犯罪者にならずに済んでいたのだが。
(-_-)(どうすればいいのかなぁ・・・)
いつも通り、答えの見出せない妄想に入り浸ろうとするヒッキー。
しかし、今回は、違った。
(-_-)「そうだ、この笛・・・」
ヒッキーは先程拾ったばかりの笛を取り出した。
(-_-)(吹いてみようかな・・・)
吹けばどうにかなるというのか。
多分どうにもならないだろう。
しかしヒッキーは、僅かに邪悪な希望をもって、それに口をつけた。
おっかなびっくり、息を吹き込んでみると。
とても細やかで、新鮮な音色が流れた。
超音波・・・そんな印象のある、音。
とても笛から流れ出たものとは思えない音色なのだ。
そして。
あってはならない奇跡が起きた。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/28(日) 02:01:50.80 ID:2dROaSJA0
(-_-)(まーどーせむだだよな・・・)
そう思い直して笛を吹くのをやめた時、彼は気付いた。
(-_-)「!」
(*゚ー゚)「・・・・・・」
目の前に、あの、女の子が立っていた。
(-_-)「え・・・」
さすがに驚きを隠せない。
無言、無表情で、自分の目の前に、女の子が突っ立っているのだ。
妄想が具現化したのかと、さすがのヒッキーも疑った。
(-_-)(・・・ど、どうして・・・)
(*゚ー゚)「・・・おじちゃん」
(-_-)「は、はい!?」
(*゚ー゚)「・・・あそぼ」
(-_-)「な・・・!?」
だがその声は
変質者で
ロリコンの
ヒッキーを狂わせるには十分すぎる、天使の声だった。
(-_-)「はは、そ、そうだね・・・あははははは・・・」
何して、遊ぼうか?