21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:08:35.09 ID:lhhi4eEd0

( ^ω^)「シカトしてんじゃねえお。さっきの豚男の時からお前がいるの気づいてたお」

返事はない。

(#^ω^)ヒ゛キヒ゛キ

それに苛立ったブーンは宙に向かって手を振った。
何かを捕まえる動作。捕獲。
そしてゆっくり拳をあける。

(#^ω^)「シカトしてると握りつぶすお」

∞「待って!! ごめん!!」

手のひらで喋るのは、ビー玉サイズの蝿だった。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:09:11.36 ID:lhhi4eEd0

ブーンの第六感が告げていた。
この蝿は自分と同じモノだと。
自分と同じ。
そう。さっきの豚男と、同じ。

( ^ω^)「よくここまでついてこれたおね……結構飛ばしたつもりだお」

∞「ヒヒ、あれで飛ばしたつもり?? 見た目どうりに豚さんなんだね!!」

(#^ω^)ヒ゛キヒ゛キ

ゆっくりと拳を閉じる。

∞「アッー!! ごめん嘘だよ!! ジョークだって!!」

(#^ω^)「お前何者だお」

∞「君こそなんなんだい? 随分高くジャンプできるようだけど、所詮飛べない豚はただの豚だよ?」

ブーンは拳を握り締めた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:09:41.12 ID:lhhi4eEd0

∞「痛い痛い痛い痛い!! 嘘!! 今のノーカン!!」

(#^ω^)「お前のその電子音みたいな声、癇に障るお」

∞「自己紹介がまだだったね。僕は……ムゲンでいいや」

(;^ω^)「でいいや、って……」

∞「君はブーンだっけ? 初めまして」

(;^ω^)「初めまして。……ってオイ。なんでブーンの名前知ってるんだお!!」

∞「見てたからね。深夜に飛び回るのはさぞかし気持ちよかったろう?」

(;^ω^)「……いつでも握りつぶせるお」

∞「……好きにしたらいい。どうせこの姿は本体じゃないからね」

(;^ω^)「??」

∞「蝿を操っているんだよ。それが僕の能力だ」

(;^ω^)「ショボスwwwwwww」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:10:04.64 ID:lhhi4eEd0

∞「散々悪態ついてしまったが、僕は君に敵対しようとしているわけじゃない」

(;^ω^)「お??」

∞「頼みがあるんだよ……君のその黒いシミの力を見込んでね」

ムゲンの言うことには、どうやら自分に殺してほしい相手がいるらしい。

報酬は金。
ニートの自分には腰を抜かすような魅力的な額だった。
でも……。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:10:23.95 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「……だが断るお」

∞「……ほう。そりゃまたどうして」

(;^ω^)「殺人の片棒はごめんだお。やりたいなら自分でやればいいお」

∞「何を言う。君はもう殺人者じゃないか」

(;^ω^)「!!」

∞「殺した数が、一人が二人になったところで大差ないさ……それに、君はあれを人と呼ぶのかい?」

(;^ω^)「……!!」

∞「殺して欲しい相手は、君や僕と同じ能力者だ……ヤツだけは許すわけにはいかない」

不意に声のトーンが変わる。
蝿の様相からは表情は読み取れなかったが、男は確実に復讐の念に捕らわれていた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:10:40.22 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「……考えとくお」

ムゲンを開放し、ビルの端に立つ。
ムゲンは背を向けるブーンに声をかける。

∞「いい返事を期待してるよ。また会おう。君とはいい友達になれそうだ」

振り向いた先に、もう蝿の姿はなく気配さえも消えうせていた。

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:23:32.42 ID:lhhi4eEd0

ジリリリリリリリリリリリリリ!!

( -ω-)「お……」

リリリリリ…………

( -ω-)「もう朝……いや夕方かお……寝たりないお……」

夕方に鳴る目覚まし時計。
ニートの彼には必要のないものだったが、今夜はドクオと会う約束がある。
珍しくドクオが誘ってきたのだ。

( っω-)「……」

寝ぼけ眼のまま服に袖を通す。
ドクオとの約束までまだ時間がある。
軽く腹ごしらえでもしてから行こうかとあらためて時刻を確認する。

( っω-)「……18時50分?」

( ゜ω゜)「18時50分!?」

約束は駅前に19時。
アラームのセットを間違えたようだ。
おかげですっかり目の覚めたブーンは、急いで出かける支度をした。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:23:53.53 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「間に合わないおwwwwwww」

寝癖がついたまま家を飛び出す。
18時55分。
駅までは20分ほどの距離がある。

(;^ω^)「ドクオは遅刻するとあとでグチグチうるさいお!!」

ブーンは思わず全力で走り出した。
ジーパンの下には黒いシミ。

(;^ω^)「ちょwwwwやべwwwwwwハヤスwwwww」

景色が高速で後ろに流れていく。

まだ時刻は夕飯時だ。
周りには帰宅するサラリーマンが大勢いる。

自分に集まる視線を感じ、ブーンは急いで路地裏に入った。

(;^ω^)「走れないおwwwでもこのままだと時間が……」

( ^ω^)「……まぁいいや」

ブーンは開き直った。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:24:10.46 ID:lhhi4eEd0

時刻は19時20分前。
待ち合わせの場所にドクオの姿はなかった。

(;^ω^)「いないお……ドクオ帰っちゃったかお」

キョロキョロと周りを見渡す。
雑踏でごった返す駅前では、ドクオの姿を見つけることは難しそうだ。

(;^ω^)「あ。携帯の存在を忘れてたおwwwwバカスwwwwww」

少し型が古い携帯を取り出し、ドクオのメモリを呼び出す。
発信ボタンを押そうとしたその時、

「きゃあああああああああああ!!」

耳を劈く女の悲鳴。
昨夜の出来事がフラッシュバックした。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:24:30.65 ID:lhhi4eEd0

「うわああっ!?」
「ちょ、いやああああ!!」
「なにアレ!!なになになに!!!!!」

ブーンは反射的に駆け出していた。
人だかりが出来ているその中心。

人の波をかき分け、ブーンが見たその先には

血にまみれ、立ち尽くしているドクオの姿があった。

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:25:05.22 ID:lhhi4eEd0

( ^ω^)「……ドク……オ……?」

('A`)「ウゼエ……こいつらマジウゼエ……」

足元の赤い塊に向かってブツブツ呟くドクオ。
その塊は、元は人間だったモノ。

またブーンの脳裏に、昨夜の女の欠けた顔が浮かび上がる。

('A`)「馬鹿にしやがって……クソ、馬鹿にしやがって……」

( ^ω^)「……ドクオ……」

ドクオに付着する血は、明らかにドクオのではなかった。
おそらくはあの塊が吹き出したもの。

('A`)「クソ、クソ、クソッ!!」

(;^ω^)「ドクオッ!!」


('A`)「!! ブーン……」

振り向いた顔は、ブーンの知っている男の顔ではなかった。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:25:24.50 ID:lhhi4eEd0

元々覇気のない顔つきだった。
しかし今、目の前にいるドクオは、病的なまでに変わってしまっていた。

目をギョロつかせ、それでいてどこか自信に満ちた顔つき。

('A`)「なんだ来てたのかブーン。遅刻だぞ」

顔を真紅に染めたまま言うその台詞は、かなり違和感があった。

('A`)「全く……また絡まれちまったじゃねえか」

(;^ω^)「ドクオ……それドクオが……?」

('A`)「ああ、見ろよ。俺がやったんだぜ……」

('A`)「今日もお前にコレを見せたくてさ」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:25:50.77 ID:lhhi4eEd0

警官1「手を上げろ!!」

警官2「離れて!! 離れてください!!」

騒ぎに駆けつけた警官が、拳銃を構えドクオに威嚇する。

('A`)「……なんだよ。悪いのはこいつ等だぞ」

凶器を持ってないトコを見て、警官は拘束しようとドクオに近づいた。

('A`)「……んだよクソが……」

(;^ω^)「!! ドクオ!! やめるお!!」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:26:40.14 ID:lhhi4eEd0

ドクオは警官に手をかざした。

警官1「っ!!」

その先に、プラズマを伴う黒い球体が出現する。

('A`)「死ね」

死の宣告を言い放つとともに、バスケットボール大の球体が射出された。

警官1「うぐっ!!」
「ぎゃっ!!」
「うわ!!」

真っ直ぐに放たれた球体は警官の胸を貫通し、後ろの一般人をも巻き込んだ。

ドミノ倒しのように一直線に人が倒れていく。
倒れた人間は一様に、胸にぽっかりと穴が空いた。

(;^ω^)「ドクオーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:27:44.78 ID:lhhi4eEd0

('A`)「!?」

ブーンの不意のタックルを食らい、くぐもった声を漏らしドクオは後方に吹き飛ぶ。

('A`)「っぐ、お前……!?」

(;^ω^)「やめるお!! お前何考えてるんだお!! こんな……こんな……」

('A`)「んだよ……」


('A`)「お前も、能力者か」


ドクオは上体を起こし、ブーンを睨んだ。
それはどこか嬉しそうな眼差し。
何かを期待しているような視線。