565 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 00:49:25.73 ID:kLHZ4bS20
ーーー工房ーーー
( ^ω^)「遅いお・・・」
('A`)「途中で襲われたりしてんじゃねえのか?」
(;^ω^)「・・・・・・・」
(´・ω・`)「・・・兄者さん、できそうですか?」
( ´_ゝ`)「・・・できないことも、ない・・・多分な」
(´・ω・`)「頑張って・・・ください」
( ´_ゝ`)「・・・フン」

その時、工房の扉が開かれた。

566 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 00:52:47.61 ID:kLHZ4bS20
誰もがジョルジュだと、そう思った
しかし、入ってきたのは若い女性
(´・ω・`)「・・・?」
( ´_ゝ`)「・・・この工房は、廃業してるんですがね」
女性を見やろうともせず、兄者が言った。
( ^ω^)「!あなた・・・しぃさん・・・!」
ブーンだけが、その正体に気付く。

(*゜ー゜)「・・・・・・」
しぃは沈黙していた。しかし
(*゜ー゜)「しんじゃえ」
刹那、彼女はポケットから銃を抜き放ち、兄者に向けた。
( ´_ゝ`)「!?」
('A`)「チッ!」
引き金が引かれた。
迷わず、ドクオが反応していた。

571 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 01:00:26.25 ID:kLHZ4bS20
その銃弾は兄者に当たることはなかった。
ドクオの腹部が阻んだからである
( ゜ω゜)「ドクオ!」
('A`)「ッ・・・!」
ドクオは力を振り絞り、傍にあった和人形を手にとり、しぃに投げつけた。
(*゜ー゜)「っ」
僅かに、しぃが怯む。

('A`)「逃げろ!」
彼は叫んだ。
('A`)「しょぼん!ブーン!兄者さんをつれて逃げろ!」
( ゜ω゜)「で、でもドクオ」
('A`)「俺が死んだところで何も変わらん!」
(´・ω・`)「!」
('A`)「でも・・・ッ」
彼はそこで腹を押さえた。叫びすぎたようだ。

(*゜ー゜)「この・・・!」
兄者はすでに狂ったしぃの眼中には無い
ただ彼女が狙うのは、ドクオただ一人。

('A`)「はやく・・・!」
(´・ω・`)「兄者さん!」
( ´_ゝ`)「・・・!」
しょぼんが兄者の手を引き、外へと走り出す
( ゜ω゜)「しょぼん!」
('A`)「ぶーん・・・おまえも・・・」
その時、二度目の銃声
('A`)「あぁぁっぁあ・・・・」
ドクオが断末魔の叫び声をあげ、その場に倒れた。

573 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 01:05:09.33 ID:kLHZ4bS20
( ;ω;)「ドクオォ!」
ブーンがさらなる咆哮。
('A`)「ちっ・・・」
ドクオは地面を這いずり、しぃの脚をつかんだ
(*゜ー゜)「!」
('A`)「早く行けぶーん・・・」
(*゜ー゜)「このっ・・・」

( ;ω;)「うわあぁぁぁぁぁ!」

ブーンは最後の叫び声をあげて、工房の外へと走り出した。
彼はめちゃくちゃに走った。
途中、二度ほど銃声が聞こえてきた。
しかし、振り返ることも立ち止まることもできず、彼は走り去っていった・・・
・・・
・・


9 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 18:48:38.77 ID:kLHZ4bS20
ーーー中腹ーーー
( ゚∀゚)「・・・さて、これからどうするか」
策謀をめぐらせるジョルジュ。
彼の目的を知る者は誰もいない。
( ゚∀゚)(俺の目的・・・)

狂気が散って山を包む。
太陽はすでに、真上に昇っていた。

10 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 18:51:56.90 ID:kLHZ4bS20
ーーー路地裏ーーー
( ´_ゝ`)「はっ・・・はっ・・・」
(´・ω・`)「兄者さん・・・大丈夫ですか?」
壁にもたれてしゃがみこむ兄者。そんな彼をしょぼんが覗き込む。

( ´_ゝ`)「・・・俺の心配をするとは、余裕だな」
(´・ω・`)「え・・・」
( ´_ゝ`)「いや・・・今、気付いたよ」

( ´_ゝ`)「お前はもう、人でなしだ」
(´・ω・`)「・・・・・・・・」
さすがに、その言葉は予想していなかった。

11 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 18:58:27.72 ID:kLHZ4bS20
( ´_ゝ`)「俺の心配をするぐらいなら撃たれた男を心配しろ、もしくはあの場に残ったもう一人の男を心配しろ・・・」
(´・ω・`)「でも一番大切なのは」
( ´_ゝ`)「損得勘定か」
(´・ω・`)「・・・・・・・」
( ´_ゝ`)「頭のいい奴は皆そうなのか?」

( ´_ゝ`)「読めたな、大体・・・お前は全て・・・そう、品物と同じように考えている」
(´・ω・`)「そんなことは」
( ´_ゝ`)「だからお前だけは冷静に、俺だけを連れ出して、逃げた」
(´・ω・`)「・・・・・・・」
( ´_ゝ`)「・・・まったく」

( ´_ゝ`)「呆れた」

12 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:02:42.38 ID:kLHZ4bS20
(´・ω・`)「僕は・・・そんなこと・・・」
( ´_ゝ`)「いい加減自覚しろ・・・お前にとっては世界は何かの学問で回ってる・・・そうだろう?」
(´・ω・`)「・・・・・・・」
( ´_ゝ`)「・・・いや、やめておこう」

( ´_ゝ`)「俺が言及するべき問題ではないな」
(´・ω・`)(・・・僕は・・・でも・・・)
( ´_ゝ`)「いや・・・笛は造る・・・だが」

( ´_ゝ`)「お前のためにでは、なくなった」
彼の呟きは何よりも、重かった。

13 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:06:00.70 ID:kLHZ4bS20
ーーー別所 路地裏ーーー
( ;ω;)「ドクオ・・・ドクオ・・・」
足取りが重い。
それでもその足は・・・引き返そうとはしなかった。
( ;ω;)「くそっ・・・くそぉっ・・・!」
彼は自らの足を殴りつける。
( ;ω;)「な、なんで僕の思い通りに動かないんだお・・・」

( ;ω;)「戻れ・・・戻れお・・・僕・・・・」

( ;ω;)「ドクオを助けに行かないと・・・いけないんだお・・・」
しかし、その足は彼の意に反し
・・・いや、実際には、彼の意に即しているのかもしれないが。

ついに、彼は立ち止まってしまった。

14 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:11:49.66 ID:kLHZ4bS20
( ;ω;)「あぁー・・・」
彼は天を仰ぐ。
眩いばかりの太陽が、空気も読まずに輝いていた。
( ;ω;)「・・・うぅ・・・」
伝う涙が徐々に乾いていく。

逃げ出した理由など
落ち着いて考えればすぐにわかることだ。
すなわち、死ぬのが怖いから。
ドクオを助けて死ぬよりも、生きたかったから。
だから、彼を見捨てた。
簡単な理屈だ。それは間違いでもなんでもない。

( ;ω;)(・・・・・・・)
だが、それ故に、
彼は、自分を責めていた。

15 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:15:29.94 ID:kLHZ4bS20
ならばどうする
今戻ればもうしぃはいなくなっているかもしれない。
そうすれば、ドクオのところに戻れる。
しかし
ドクオが生きているとは考えられない。
ならば戻ることに意味は無い

いや、意味はあるかもしれない。
見栄を張れる
誰に
しょぼんと兄者に・・・
・・・
・・

彼の内側に、邪が湧き出した。

16 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:18:59.30 ID:kLHZ4bS20
( ´_ゝ`)「・・・子供がいないな」
(´・ω・`)「え・・・」
数分の沈黙の後、兄者がふと口を開いた。
( ´_ゝ`)「誰かが言っていたのだろう?子供が街で暴れていると」
(´・ω・`)「・・・・・えぇ、そうです」
( ´_ゝ`)「フン・・・」

兄者は目を閉じた。何かを、考えているようだ。

19 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:23:34.83 ID:kLHZ4bS20
( ´_ゝ`)「・・・その男、信用できるのか?」
(´・ω・`)「え・・・?」
( ´_ゝ`)「どう見ても子供が暴れている気配は無い・・・つまり」

( ´_ゝ`)「その言葉、虚言だった可能性がある」
(´・ω・`)「そ、そんなはずは・・・」
( ´_ゝ`)「・・・・・・・」

(´・ω・`)(・・・でも・・・本当に・・・)
( ´_ゝ`)「それに、突然俺らの工房に殺し屋がやってくるというのもおかしな話だ」
(´・ω・`)「じゃあ」

( ´_ゝ`)「そもそも、全て罠だとしたら」
(´・ω・`)「・・・・・・・・」

20 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:26:45.97 ID:kLHZ4bS20
ーーー工房周辺 路上ーーー
血にまみれたその女性は、閑静な街中で、嫌でも目立つ
(*゚ー゚)「・・・はぁ、なんか気分悪い・・・」
しぃはそう吐き捨て、銃をコンクリートの壁にたたきつける。
(*゚ー゚)「・・・・・・・ま、いっか」

(*゚ー゚)「なんか一人、殺せたし」

その時、彼女のポケットが震えた。

21 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:29:38.01 ID:kLHZ4bS20
(*゚ー゚)「・・・・・・」
携帯電話だ。彼女はポケットをまさぐり、それを取る
(*゚ー゚)「・・・はい?」
( ゚∀゚)「俺だ」
電話の向こうからジョルジュの声が響いた。
(*゚ー゚)「・・・・」
( ゚∀゚)「どうだ?上手くいったか?」
(*゚ー゚)「・・・さぁ」

( ゚∀゚)「さぁ?どういうことだよ」
(*゚ー゚)「皆殺しにはできなかった」

( ゚∀゚)「何ぃ!?」

22 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:32:49.53 ID:kLHZ4bS20
(*゚ー゚)「・・・うるさい」
( ゚∀゚)「じゃ、じゃあ何人殺した?」
(*゚ー゚)「一人」
( ゚∀゚)「一人・・・・・」
大げさなほどに大きな溜息が聞こえてくる。
( ゚∀゚)「言っただろ?皆殺しにしろって」
(*゚ー゚)「・・・いいじゃない、そのかわり」

(*゚ー゚)「ぐちゃぐちゃにしといたから、一人」
( ゚∀゚)「・・・・・・・・」

23 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:38:29.49 ID:kLHZ4bS20
ーーー名も知らない山ーーー
( ゚∀゚)「あーあ、やっぱ人使うのって難しいな」
ジョルジュは電話を切ってから、そう愚痴った。
目の前にいる無表情な子供達は何の反応も示さないのだが。

( ゚∀゚)(・・・さて、次の手は・・・)
いつまでも悔やんでいられない。
こうなった以上、ジョルジュにも時間が無いのだから。
( ゚∀゚)(ニダーみたいに極論に走るわけにもいかねえしな・・・)

( ゚∀゚)(・・・よし、決めた)
心の中でそう呟いて、彼は子供達を見る。
( ゚∀゚)「お前ら」

( ゚∀゚)「一旦、山を降りるぞ」

( ゚∀゚)(・・・あれだ、時間稼ぎって奴だ・・・諸刃の剣だが)

24 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:44:11.46 ID:kLHZ4bS20
ーーー路地裏ーーー
( ´_ゝ`)「その男に電話して確かめるのが確実だとは思うのだが」
(´・ω・`)「・・・・・・・」
( ´_ゝ`)「・・・まぁ、そろそろ俺は工房に戻らないといけない」
(´・ω・`)「え・・・」
( ´_ゝ`)「道具やらなにやら、全部あそこにあるわけだからな」
そういって兄者は立ち上がり、一人歩き去ろうとする。
(´・ω・`)「じゃ、じゃあ僕も・・・」
( ´_ゝ`)「今更自己アピールか?」

( ´_ゝ`)「・・・まぁいいが・・・お前の連れが、まだいるかもしれないしな」
(´・ω・`)「・・・・・・・」

どこまでも、卑屈。

25 : ◆xh7i0CWaMo :2006/05/31(水) 19:49:52.72 ID:kLHZ4bS20
ーーー路上ーーー
???「おぉぉぉぉれぇぇぇぇはぁぁぁぁぁぁぁ」
???「・・・いい加減、どこでも叫ぶそのくせはやめたほうがいいと思いますが」
???「るせぇなタコスケ・・・それにしても・・・あの事、本当なんだろうな?」
???「ニュースでも報道されていましたから、間違いないと思いますが」
???「・・・・・・そうか」
???「・・・・・・辛いですか」
???「まぁなぁ」
???「・・・・・・・・・」
???「いや・・・沈んでても仕方ねえや・・・行くぞ!」
???「この辺りは例の事件で極めて危険ですから・・・ご注意ください」
???「あぁ、わかってる」
・・・
・・

狂気の礎、また一つ。