731 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/26(水) 02:57:45.62 ID:lD0V2PTF0
バーボンハウス内


警護団長は刀を構え、しぃを睨む。

(*゜ー゜)「その刀・・・具現化した物ね?」

「・・・」

相手は答えない。しかし、しぃには確信が有った。
一見ただの日本刀に見える。しかし、『感覚的』に何か違和感を持っていた。
警護団長は刺突の構えを取り、刀が鈍く光る。

(*゜ー゜)「(何かしら付加効果はあるはず・・・掠り傷一つでも浴びるのは勘弁ね)」

右足を思い切り踏み込み、警護団長は一直線にしぃへと向かう。

しぃは横っ飛びして、刀の切っ先を交わす。勢い余った警護団長の剣先は、そのまま壁へ突き刺さる。
しかし、警護団長は強引に柄を梃子にして方向転換、しぃへと飛び掛る。

左足のミドルを右腕でガード、迎撃しようと左拳を握り締めた瞬間、警護団長が右腕を振り下ろす動作が見えた。
急いでバックステップ、警護団長の右腕は空を斬るが、振り下ろした地面には切り刻んだ様な跡が有った。

(*゜ー゜)「ウッカリしてたわ。具現化系なら“隠”で刀を隠す事も出来るわね」

しぃはポケットに手を突っ込み、警護団長を見据えた。

(*゜ー゜)「(時間稼ぎ、なんて余裕は無いわね。やっぱり、本気で・・・殺す気でやらないと)」

734 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/26(水) 03:03:57.42 ID:lD0V2PTF0
しぃは、ポケットから花を取り出した。
掌に乗る、そよ風にさえ吹き飛ばされそうな軽々しい花を見て、警護隊長は一瞬で本物の花では無い事を理解した。

「・・・紙、か」

(*゜ー゜)「ふふ、正解」

悪戯っぽく笑うしぃは、またポケットから花を取り出した。
二つの花はしぃの手から離れ、風に乗ったかの様に舞う。

(*゜ー゜)「何で、わざわざ私達が念空間で一対一にしたと思う?」

花は、ふわふわとしぃの体を迂回する。

(*゜ー゜)「警護隊長一人一人の足止めもしかり・・・私の能力は、限られた空間内では絶大に威力を発揮するの」

いつの間にか、しぃの周りの花が増えていた。
十数個の花が、ゆっくりと舞ったかと思うと、その一つ一つが警護隊長へ向かって行った。

む、と警護隊長は唸ると刀を構える。
しかし、花は警護隊長を取り囲む様に散開、しぃの時と同じ様に浮遊し始めた。

(*゜ー゜)「さて、ここで問題。操作系と相性の良い系統は、何でしょう?」

738 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/26(水) 03:13:18.30 ID:lD0V2PTF0
警護隊長はふわふわと浮く花に目を細め、訝しげに見ている。

「・・・主に、放出系y」

言い終わる前に何かが、後ろから警護隊長の頬を掠めた。同時に、ジュッと焦げる様な音。

(*゜ー゜)「正解〜♪」

その声と同時に、ただ浮遊していただけの花がフォーメーションを組み始める。
警護隊長が確かめる様に頬を触ると、焦げた様な熱さと滑りとした液体、血が感じられた。

(*゜ー゜)「せっかくだから、教えてあげる。私の能力は『光吐き出す浮遊花()』。昨日、これをこんなに沢山折るのは大変だったんだから」

花は、一瞬光ったかと思うと、その先から光線の様な物を一直線に吐き出した。

「ちッ!」

取り囲まれた状態で一斉射撃。警護隊長は光線が届く一瞬前に、転がる様にして前方へ飛び込む。
何とか回避したものの、花の追撃は続く。

酒場を回る様にして逃げ続けるが、花は追い続ける。
ふと、しぃが首を動かして警護隊長の姿をずっと眼で追い続けている事に気が着いた。

「(なるほどな・・・視界に入った花を操る能力・・・! 更に、放出系能力もプラスされている・・・)」

撃ち続けるファンn・・・もとい、花の攻撃をかわしつつ何とか視界から消えようとするが、狭い酒場内ではそれは困難だった。


739 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/26(水) 03:17:13.84 ID:lD0V2PTF0
「くっ、はぁっ!」

迎撃体勢に移り、花の一つに刀を振り下ろすがヒラリと花自身に意思があるかの様に交わされてしまう。

(*゜ー゜)「一つ一つが私の脳波でコントロールしてるからね、その刀を交わす事くらいは簡単よ」

花の一つから光線が放たれ、警護隊長の左腕を貫通した。
痛みに悶えて思わずよろけると、他の花達が次々と光線を放った。

「あぐっ! がはっ! ごあっ!」

左肩、右腿、脇腹を閃光が貫通し、血を吐きながら警護隊長は仰向けに倒れた。

立ち上がろうとした警護隊長の眼前には、花が一杯に広がっていた。

「(殺られ――)」

そこで、警護隊長の意識は途切れた。

966 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 17:23:20.35 ID:52Zj8VWg0

ゴウン、ゴウンと機械音を鳴らしながらエレベーターは上昇を続ける。
その中で相田は腕を組み、ジッと眼を瞑っている。

ブーンの陽動が上手く行ったのか、今まで誰にも見つかる事無く相田は上階へ向かう事が出来た。

通信機でしぃとは連絡が取れたが、それ以外のメンバーは反応が無い。

(・ω・ )「・・・」

目的の階に着いたらしく、電子音と共にエレベーターが止まる。
ゆっくりとドアが開き、視界には長い廊下が映っていた。

歩き出す相田の手が、いつの間にか鎌の様に鋭利な物に変わっていた。

967 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 17:28:24.33 ID:52Zj8VWg0
<丶`∀´>「ニダッ!」

ニダーの体は豪快に飛び、酒場のテーブルに打ち付けられる。

「もう、やめておけ。これ以上やってもお前では私に勝てん」

ヨロヨロと立ち上がるニダーに対し、無傷の護衛隊長。
警護隊長に殴りかかるが、軽く交わされる。
ニダーは切り返し、再び拳の連打を放つが全てが空を切る。

そして、軽く振り払うかの様な勢いで放たれた平手打ちが、ニダーの頬にヒットする。
まるでボールの様に簡単に吹っ飛び、そのままニダーは壁に激突し、再び倒れこんだ。

「実力の差はハッキリしている。空間内からの脱出方法を教えれば、これ以上の危害は加えないつもりだ」

<丶`∀´>「に、ニダ・・・お前は、ウリを・・・怒らせたニダ・・・!」

額に大きなタンコブを作りながら、ニダーはキッと警護隊長を睨む。
やれやれ、と言った形で警護隊長は肩をすくめる。

「あまり気が進まんが・・・もう少し痛い目を見ないと分かって貰えないようだな」

小さく溜息を着くと、警護隊長はゆっくりニダーの方へ歩き出していく。

975 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 18:20:31.41 ID:52Zj8VWg0
<丶`∀´>「お前はウリに酷い事をしたニダ・・・その痛み、お前に分けてやるニダ!」

「・・・?」

タンコブを擦りながら、ニダーは叫ぶ。
すると突然、ニダーのオーラが猛々しく揺らいだ。

<丶`∀´>「実力差がハッキリしているのは、最初から調査済みニダ。だからこそ、ニダーはお前の相手をしているニダ!」

「・・・? 解せないな。まさか、わざわざ殺されにでも来たって言うのか?」

<丶`∀´>「ふん、ト゛クオとニダーの場合は特別ニダ。実力差があればあるほど、能力は際立つニダ!」

「そうかい・・・なら、早速見せて貰おうじゃないか。その能力とやらを」

<丶`∀´>「後悔しても遅いニダ・・・『要求する謝罪と賠償(コリアンソウル)』!」

977 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 18:27:05.56 ID:52Zj8VWg0
「・・・何だ、これは」

警護団長が纏っているオーラが、まるで削り取られる様に体から離れ、ニダーへと一直線に向かう。
それはニダーのオーラと混ざり合い、吸収される。

「オーラを奪う能力・・・なるほど、特質か」

<丶`∀´>「回復も兼ねているニダ。よくも、今まで好きにやってくれたニダ! 要求する謝罪と賠償(コリアンソウル)!」

すると、また警護隊長のオーラがニダーに吸収される。
元気を取り戻したかの様に、ニダーは突っ込む。

「ち・・・!」

またも拳の打ち合いになるが、体術では警護団長の方が上なのか、鮮やかな左フックがニダーの脇腹に入る。

<丶`∀´>「二、ニダ・・・要求する謝罪と賠償(コリアンソウル)!」

再び、警護隊長のオーラが吸収される。
段々とニダーのオーラは少しずつだが力強さを増していく。逆に、警護隊長のオーラは減っていくばかり。

「(なるほどな・・・キーワード+一定のダメージ、か。確かに、格上に対しては相性の良い能力だな)」

978 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 18:28:08.93 ID:52Zj8VWg0

襲い掛かる打撃を軽く往なし、警護団長はニダーを蹴り飛ばす。
しかし、前と比べて手ごたえがあまり無い。

ダメージは確実に減りつつあった。

「(マズイな・・・これ以上チマチマと打撃戦をやっていては、こちらが不利になるだけ・・・ならば)」

警護隊長は右拳を握り締める。
すると、纏っているオーラが滑らかに拳へと集中していく。

<丶`∀´>「(凝? いや、あれは・・・)」

凝では無い。体のオーラは全て右拳へ集まっていた。
“硬”を行っている右拳を掲げ、警護団長は言った。

「一撃で倒せば、能力は発動出来ないだろう?」

982 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/27(木) 18:53:48.09 ID:52Zj8VWg0
幾度か吸収されたとは言え、そのオーラの密度にニダーは慄き、一歩足を下げる。
その隙を、警護隊長は見逃さなかった。

「(今だッ!)」

ダン、と思い切り地を蹴りニダーへと一直線へ向かう。
右手は呆気に取られる程の膨大なオーラ。喰らえば、耐えられる保障は無い。

<丶`∀´>「(ま、ままッままあまっマズいニダ! あんなの喰らったら、無事では済まないニダ!)」

回避出来るほどの余裕はもう無い。
すぐ目の前にまで、警護隊長は迫っている。

<丶`∀´>「(お、落ち着くニダ! と、とにかく硬以外の場所に先に当てれば、ウリの勝ちは決定! 覚悟を決めて、やるしか無いニダ!)」 

一度、自分も硬を使って防御する方法も考えたが、リスクが大きすぎる。
覚悟を決め、大きく右腕を振りかぶり、迎撃体制に入る。


「オラアアアアアアアアッ!!」

<丶`∀´>「ウリイイイイイイイイイッ!!」

二人の拳が交差した。

192 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/28(金) 21:25:28.30 ID:KIb1zWhG0
ニダーの拳は、警護隊長の顔面へ向かって一直線に飛ぶ。
当たるか、当たらないかと言う所で警護隊長の首が僅かに傾いた。

<丶`∀´>「(ニダッ!?)」

ヒュン、と風を切り裂く音と共にニダーの拳は警護隊長の頬数ミリを通り、耳を捉えた。
乾いた音が響き、警護隊長の耳は弾け飛ぶ。

血が沸き飛ぶ光景を目の当たりにしていたニダーの視界が、急に暗転した。
そう思うと、何かがめり込む様な嫌な音と、腹部の激痛が同時に走る。

<丶`∀´>「に、ゴフッ!」

圧迫感に押され嘔吐すると、夥しい量の血がバーボンハウスの床を染めた。

「惜しかったな・・・耳痛ぇ」

ニダーの拳が交わされ、警護隊長の拳がニダーの腹に命中し、めり込んでいた。
貫通はしなかったものの、かなり深く入っている。

「最後に体術の差が出てしまったが・・・命中する瞬間に、咄嗟に腹を凝で守るとは天晴だ」

<丶`∀´>「こ・・・こッ・・・」

警護隊長はニダーの腹から手を抜く。
グロテスクな音、真っ赤に染まった警護隊長の手がニダーの視界に映る。

力無く、ニダーは地に伏した。

倒れた箇所から、ジワジワと血溜まりが広がっていく。

200 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/28(金) 21:55:50.53 ID:KIb1zWhG0
<丶`∀´>「(や、ヤバいニダ・・・か、体が動かないニダ)」

「そのまま、ゆっくりと死ね」

耳の有った場所から、血が流れ続けている。
だが、まるで感覚など無いかの様に警護団長は平然とした顔だった。

ゴミでも見ているかの様な目で、警護隊長はニダーを見下す。

「さて、どうやって脱出するかな」

クルリと振り向き、ニダーから一歩一歩遠ざかる。

<丶`∀´>「・・・リッ・・・!」

酒場の壁を触ったり、カウンター内をゴソゴソと荒らし始めるが、特に何の変化も起こらない。
ニダーの血溜りはゆっくりと、確実に広がっている。

意識も朦朧とし始め、既に目がぼやけている。

211 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/28(金) 22:40:08.61 ID:KIb1zWhG0
<丶`∀´>「・・・あっ!」

手で床を引っかき、ガリガリと傷を着ける。

「足掻くな、生きられる時間が短くなるだけだぞ」

酒場を見回しながら、警護隊長は呟く。
あらかた探したが、出口は開かないし、何か特別な物が有る訳でもない。

「ぬっ!」

ドゥン、と大砲が撃たれたような音がしたかと思うと、警護隊長がパンチを放っていた。

「硬でも、穴は開かないか・・・やはり、何か条件の達成が必要?」

<丶`∀´>「ン・・・ソ・・・ウ・・・(もう少し、もう少しニダ!)」

「ん? まさか、貴様!」

ニダーの意図に気が着いたのか、警護隊長が焦った顔でニダーの元へ急ぐ。
しかしニダーは僅かに笑って口を開き、血を吐きながら、言った。

「・・・ルッ!」

その瞬間、警護隊長のオーラが弾ける様に飛び、ニダーへと向かった

258 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/29(土) 00:48:58.11 ID:eoX26Ghf0
「これ程までに吸収されるだと・・・!」

物凄い勢いでオーラは削り取られ、倒れているニダーにドンドン集まっていく。
やがて警護隊長のオーラは出し尽くしてしまったのか、絶状態になってしまう。

逆に、ニダーのオーラは強大な物へと変わっていた。
相変わらず地に伏したままだが、血溜りの広がりは止まっていた。

<丶`∀´>「ニダーを殺すなら、即死させなきゃ駄目ニダ」

何事も無かったかの様にニダーは立ち上がる。
腹はポッカリと穴が開いていたが、出血は止まっていた。
不自然な光景が、やけにグロテスクだった。

「まさか、ここで逆転されるtごあッ!」

言い終わる前に、ニダーの拳は警護隊長の顎に入っていた。
先程までのニダーの様に、警護隊長はいとも簡単に吹っ飛んだ。

<丶`∀´>「かなり手加減したニダ・・・まだ、生きている筈ニダ?」

259 :1  ◆7Dk4kD/nhE :2006/04/29(土) 00:49:45.03 ID:eoX26Ghf0

酒場のカウンターに打ち付けられた警護隊長は、呻きながらグッタリとした様子で倒れている。
しかし、ニダーは警護隊長に近づき、襟首を掴んで持ち上げた。

<丶`∀´>「こんなモンじゃニダーの気は済まないニダ! 謝罪と賠償を請求するニダ!」

左手で持ち上げたまま、ニダーはもう片方の手で平手打ちを放つ。
警護隊長は喰らい、顔が吹き飛ぶのでは無いかと思う位の勢いで仰け反る。
それを何度か繰り返すと、警護隊長の顔は完全に腫れ上がった。

すると、突然酒場全体の空間が歪む。
元居た、長い廊下に景色が戻る。

<丶`∀´>「気を失ったニダか・・・ま、仕方ないから許してやるニダ」

ニダーを覆うオーラが、手を伝い警護隊長へ戻る。
そして、まるでゴミを捨てる様な動作で警護隊長を壁へ投げ捨てた。

<丶`∀´>「この分だと、能力も賠償して貰ったニダ。オーラは返すけど能力は返せないニダー!」

ニダーは高笑いしながら、そのままゆっくりと倒れこんだ。