6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:01:58.73 ID:lhhi4eEd0

( ^ω^)「日差しがまぶしいお」

ここはアパートの屋上。人生に疲れたブーンは、
小さいころの夢だった『空を飛ぶこと』を実現することにした。

( ^ω^)「僕の人生バイバイだお」

しかし彼はビビリのため、二階建てのアパートを選んだ。

(;^ω^)「……」

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:02:25.16 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「ちょwwwww結構高いおwwww空飛ぶとかムリスwwwwwwww」

夢を早々に断念したブーンは踵を返し屋上から立ち去ろうとしたが

( ^ω^)「!!」

向かいの部屋から覗き見える、女子高生の生着替えに釘付けになり

(lli゚ω゚)「!!」

足を滑らせた。

(lli゚ω゚)「ふおおおおおおおおおお!?」

空中で手足をバタつかせてみるが、空なんて飛べやしなかった。
というより、彼には試行錯誤の暇さえなかった。

(lli゚ω゚)「ふんが!!」

鈍い音と共に彼はなんとか両足で着地した。
足のつま先から頭の天辺まで衝撃が突き抜ける。

(;^ω^)「……お?」

……と思ったが、衝撃は大したことなかった。
予想外の出来事に自分の足をまさぐってみる。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:02:46.93 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「……なんだおコレ……」

足は骨折どころか、自分のモノとは思えない程『黒かった』。

(;^ω^)「ちょwwww内出血しすぎwwwwwwww」

シミのようなものが足全体を覆っている。
不思議に痛くもなんともない。
それどころか、今なら空だって飛べそうな……。

( ^ω^)「ねーよwwwwwwwww」

シミは恐ろしく硬かった。
そして異様に冷たい。

鉄のような感触に、ブーンは自分がロボコップになったような錯覚を覚えた。

( ^ω^)「ねーよwwwwwwwww」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:03:01.86 ID:lhhi4eEd0

不自然な程のどす黒さに普通なら慌てようものだが、ブーンは阿保なので気にせず家に帰った。

( ^ω^)「うるせーよwwwwww」

階段を上る。
そこでブーンはようやく自分の体の異変に気づいた。

( ^ω^)「なんか簡単に上れるような……」

ピザな彼は家の階段ですら息が上がるほどだった。
ところが今は、足を酷使するのに何も疲れを感じない。

( ^ω^)「?」

さすがに足の事が頭から離れなくなったブーンは、夜中にこっそり家を出た。

( ^ω^)「まだ黒いお……」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:03:23.22 ID:lhhi4eEd0

('A`)「……」

( ^ω^)「おっ、ドクオハケーンwwwwwww」

ニート友達のドクオが百メートル向こうを歩いている。
おそらくコンビニでも行くのだろう。

( ^ω^)「おーいドク……!?」

小走りのつもりだった。
しかし彼のスピードは隣の車を追い越してしまった。

( ^ω^)「ちょwwwwwwwww」

('A`)「??」

( ^ω^)「!! まず……っ」

ドクオに見られることを急に後ろめたく感じたブーンは、思いっきり地面を蹴った。

(;^ω^)「ふおおおおおおおおおおお!?」

そうすることで、家を飛び越すほどの大ジャンプが出来るとは思ってもみなかった。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:04:36.63 ID:lhhi4eEd0

(*^ω^)「うっひょおおおおおおおおお!!」

その日の出来事から、ブーンは夜な夜な住宅街を跳ね回っていた。
体の使い方は大分覚えてきた。
今では十階建てのマンションも飛び越せるほどになっていた。

(*^ω^)「うひょひょひょひょひょ!!」

調子に乗って走り回っていたら、一度車にはねられたことがあった。
しかし何事もなかったかのように立ち上がり、夜の闇に消えていくブーンを見て、
運転手は狐につままれた思いをしたことだろう。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:05:00.02 ID:lhhi4eEd0

大きな満月の夜。
その夜もブーンは家を抜け出し、縦横無尽に飛び跳ねていた。

無我夢中で空に思いを馳せていたら、全く見知らぬ場所に来てしまった。

(;^ω^)「……ここどこだお……ん??」

耳を劈くような女の悲鳴。
ブーンは一瞬、自分の姿を見られたのかとドキリとした。
慌てて身を隠し、声のしたほうを伺ってみる。

そこには倒れている女性と、それにのしかかる男の姿があった。

(;^ω^)「(レ、レイープだお!! あわわ……)」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:05:18.67 ID:lhhi4eEd0

今までのブーンなら、足早にその場を立ち去るか、チャックを開けるかの二択だっただろう。
しかし、黒いシミの能力を駆使する毎日で、ブーンは自分がヒーローになったかのような気がしていた。

(#^ω^)「(……許せないお!!)」

正義感を拳に握り締め、隠れていた草むらから勢いよく飛び出した。

(#^ω^)「やいそこのレイプ魔!! その女性から手を放……せ……!?」

レイプ魔は驚きでブーンを凝視した。
しかし、レイプ魔の顔を見たブーンの方が驚かされることになった。

口元からだらしなく滴らせるモノ。

その赤い液体は顎を伝い、女の顔に落ちる。
口の端からは、女性のモノと思わせる長い毛髪が覗かせていた。

(;^ω^)「お……。お……?」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:05:52.66 ID:lhhi4eEd0

男「……てめえ……見たな」

(;^ω^)「お前……何して……?」

愚問というモノだった。
男は、食事をしていたのだ。
女の頭が半分かけている。もうピクリとも動かない。

(lli゚ω゚)「な、何してるお!! お前何してるお!!」

男「……」

男はのそりと立ち上がり、ベッ、と口に含むモノを吐き出した。

赤い、塊。

それは咀嚼されていた女の頭部の一部。

(lli゚ω゚)「う、うわわああわあわ」

男「……もう今日は腹一杯なんだがな」

(lli゚ω゚)「ひっ」

ブーンが後ずさる。
男はブーンの目の前で、体を震わせた。
骨が鳴る様な乾いた音の後、男は変態を始めた。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:06:10.59 ID:lhhi4eEd0

(lli゚ω゚)「……!!」

ブーンはただただ口をあけて見つめていた。
男は見る間に体積を増やしていく。
あっという間に2メートルを越した身長。顔は醜く豚のようだった。

男「おぅらぁっ!!」

ブーンは固まっていた。
自分の足も、傍から見たら十分に異様なモノだったが、男の場合は常軌を逸していた。

男の拳が顔面に直撃し、ブーンは横っ飛びに吹っ飛んだ。

男「ブヒヒ!! おいおい、久々にこの姿になったんだからもっと楽しませてくれよ!!」

(lli゚ω゚)「お……お……」

コンクリの壁に直撃し、体をしこたま打ちつけた。
味わったことのない衝撃を予想し、ブーンはそのまま……

(;^ω^)「……あれ?」

倒れこもうとしたが、体はいたって平気だった。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:06:36.70 ID:lhhi4eEd0

そしてブーンは体の異変に気づいた。
足だけに広がっていた黒いシミが、上半身にまで広がっているのだ。
服をめくり、自分の腹をのぞく。


それはまるで血管のように。

それはまるで刺青のように。

それはまるで炎のように。


ブーンの体に黒く、太い線が走っていた。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:07:01.68 ID:lhhi4eEd0

(;^ω^)「ちょwwwwレベルアップktkrwwwwww」

男「なんだてめえ……」

男「そ、そうか!! 俺と同じなんだな!! くっそ!!」

男は焦りを隠せなかった。
自分の渾身の力を込めた攻撃を受け、相手は何事もなかったかのように立ち上がったのだ。

(#^ω^)「さっきはよくもやってくれたお……」

男「うっ」

(#^ω^)「許さないおwwwwっうぇwwww」

男は焦っていた。
……しかし対峙している相手からは全くプレッシャーが伝わってこない。
むしろ馬鹿にされてる感が強い。

(#^ω^)「くらえっ!!」

ただ頑丈なだけで、実は大したことないんじゃないだろうか。
男の脳裏によぎる推理。

しかし次の瞬間、腹にめり込む拳を見て、自分の考えは間違いだったことを思い知らされた。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:07:28.06 ID:lhhi4eEd0

男「うっっっぐぅ!!」

前のめりになる男に、そのまま返す拳でアッパーを繰り出す。
出した拳は男の鼻面にめり込み、嫌な音がして後方にはじけとんだ。

男「っぎゃああああああああ!!」

( ^ω^)「うはwwwwwツヨスwwwwww」

男「いてえええ!! いてえ!! いてえよおおおおおおおおおお!!」

( ^ω^)「ウタレヨワスwwwwwwww」

ブーンにはすでに正義感など微塵も残っていなかった。
あるものは、自らの力を行使する快感。

一方的な己の干渉に酔う、暴君と化していた。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:07:50.36 ID:lhhi4eEd0

( ^ω^)「ふう……」

男はもう動かなくなっていた。
あるものは、頭が欠けた女の死体と、大の字に倒れこむ豚男の死体。

( ^ω^)「……」

殺人というのだろうか。
たった今、自分は人を殺めてしまった。

いや、コイツはもう人間ではなかった。
それにコイツは女を殺した。

正義は自分にあるのだ。

誰かに目撃されたら厄介になる。
ブーンは足早に現場を立ち去ろうとして足を止めた。


コイツはもう人間ではなかった。


……じゃあ……俺は……?


頭をふって膝を曲げる。
臀部が地面につきそうなくらい力を溜め、ブーンは満月の夜空に跳ね上がっていった。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/30(金) 11:08:11.25 ID:lhhi4eEd0

( ^ω^)「はぁ……」

ようやく地元の位置がわかったところで、高層ビルの屋上で一人たたずむブーン。

まだ興奮が収まらない。
黒いシミが出来てから、あまりにも現実離れした日常。

狂気。
快楽。
殺人。

震える腕を押さえ、ブーンは立ち並ぶ高層ビルを眺めたまま言った。

( ^ω^)「で、お前は何者だお」

周りに人影はない。
独り言のようにブーンは続ける。