1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:38:53.01 ID:YYIkN5xCO
ミ,,゚Д゚彡「君の配属先についてなんだが、話しておきたいことがあってな」
フサギコ小将に声をかけられ、ブーンは全身を強張らせた。一介の新任士官にすぎない内藤が直々に話せる相手ではなかった。小将といえば雲の上の存在なのだ。
( ^ω^)「なんでありますかお」 帝都にある空軍省本部の薄暗い個室で、不動の姿勢をくずさないまま訊いた。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:41:58.68 ID:YYIkN5xCO
ミ,,゚Д゚彡「内藤空軍准尉、君が配属されるVIP基地には、四つの航空隊がある。その第四航空隊が君の所属となるわけだが、その部隊には女がいる」
内藤は驚きが面に現れるのを堪えた。戦局の膠着化に伴い陸海空の三軍でも女性兵士が増えてきたというが、いまだに数は少ない。航空戦隊となれば、その女とは将校のはずだ。女性将校になるとさらに希少なる。帝国全軍で十名にも満たない。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:43:25.17 ID:YYIkN5xCO
ミ,,゚Д゚彡「女だからといって喜ぶなよ。とても喜ばしい相手じゃない。普通とは思うな。とんでもねぇ女だから」内藤の緊張を解こうしたのか、語調が崩れた。
( ^ω^)「とんでもねぇ、とはいかなる女なのでありましょうかお」
ミ,,゚Д゚彡「魔女だよ」返答に窮した。困惑した気持ちを隠すことができなかった。
ミ,,゚Д゚彡「その女はとにかく抜群の撃墜率を誇っとるんだ。VIP基地だけではなく全空軍でもトップクラスだ。異常なほどの腕なんだよ。前線のなかじゃ、いつしか変な噂がたち始めた」将管は溜息をつく。

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:45:26.04 ID:YYIkN5xCO
ミ,,゚Д゚彡「噂だけなら、わが軍としても気にすることではないんだが、いくつか不穏な情報が入り始めてな。一介の飛行士が入手できるはずのない、薬物や書物、貴金属が、裏ルートでその女の手に渡っているらしいのだ」
(; ^ω^)「あの……いわゆる魔術を使っているとでも仰有るのでしょうかお」
いくらなんでも魔女が現実にいると、信じることなどできはしない。いまや、人間が機戒で空を飛ぶ、科学文明の時代なのだ。科学は多くの迷信を否定してきた。箒などで人が空を飛ぶことはできないと、小学生でさえ知っている。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:47:30.98 ID:YYIkN5xCO
ミ,,゚Д゚彡「別に軍としては彼女が魔女かどうかを問題にしているわけではない。そんなこと議論してもなにもならんよ。問題は、裏ルートのことだ。非合法なことをしている節がある。」将管が真正面に立って肩に手を置いてきた。
ミ,,゚Д゚彡「気をつけることだ。わしの老婆心と思ってくれ。君の父上にたのまれて君を配属させたんだ。なにかあってはと思ってな」小将は父親のような笑みをむけてくれた。
( ^ω^)「ご心配おかけいたしますお」内藤は感謝の言葉を述べて敬礼した。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:52:03.68 ID:YYIkN5xCO
ksk海を渡ったのは二週間後である。
大照二十五年の1月末であった。今次大戦が始まってから九ヶ月が経過していた。
軍の輸送船は、波濤を乗り越え、大陸へとむかっている。
内藤は、甲板にでて、青一色の空と紺碧の海を眺めた。
護衛艦隊の艦影と白い軌跡を見つめる。
海軍の補給部隊である。
塩の匂いを含む風を受けながら、手摺によりかかった。左胸に手をおく。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:53:45.72 ID:YYIkN5xCO
( ^ω^)「とうとうここまできたかお」
甲板の端には索具を束ねる水兵の姿があった。
大陸は水平線の彼方に見える。
船内に入ろうと体を返した。外部階段を通り過ぎたときだった。
階段の陰から手が伸びてきて、腕をつかまれた。逆らいがたい力で陰にひかれる。
声をだす間もなく気づいたときには、腕を首に回され、頬に小刀の刃を突きつけられていた。男「貴様が内藤准尉だな」凄みのある声がすぐそばから聞こえる。顎と首を抑える腕は太く、力強かった。逆らおうとしても、内藤の腕力でははずすことはできそうもなかった。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:57:39.49 ID:YYIkN5xCO
(; ^ω^)「だ、だれですかお」
視野のなかには、人の姿がない。さきほどの水兵からは死角になって見えない位置だった。
男「質問に質問で答えるな」
顎にかかる圧力が増す。横目で相手の腕を見ると、碧の色だとわかる。空軍の軍服の色だ。
(; ^ω^)「自分は、たしかに内藤准尉ですお」
男「たいした実力もないのに、親の七光りで、飛行士になったっていう坊ちゃまだな」
内藤は歯を食いしばった。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 13:59:09.04 ID:YYIkN5xCO
男「貴様が採用になったために、別のひとりが地上勤務に回されたっていうことを知っているか」声がだせなかった。無視したのではなく、答えることができなかったのだ。
男「中嶋バルケンという男が航空士官学校の同期にいたはずだ。覚えているか」
記憶をたぐった。
( ^ω^)「……覚えていますお」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 14:03:39.50 ID:YYIkN5xCO
男「それはな、俺の弟だ」息をのむ。
「それは」といって言葉に窮した。
男「申し訳ありません、か?
あやまるくらいなら、親の権力を振りかざすな。このまま海に叩き落としてやろうか。
そうすれば欠員ができて、弟も飛行士として配属されるだろうしな」
男は内藤の体を甲板の縁にまで力任せに押していった。
上半身が縁から乗り出す形になった。船体のはるか下に、海が見える。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 14:05:33.26 ID:YYIkN5xCO
男「おまえ、震えているのか」笑い声がする。
急に首が楽になった。腕が離れる。
男「いまのは、挨拶がわりだ」
ふりむくと、肩幅も広く、背も高い、違丈夫がたっていた。
太い眉と鋭い眼光は気性の激しさを醸し出しているように見えた。
着てる制服はまぎれもなく空軍士官のものだ。
階級は小尉である内藤のように任官したばかりの新米士官ではない。
本土で任務があって帰還するのか、配置換えで大陸の戦線にむかうところなのだろう。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/26(月) 14:08:35.60 ID:YYIkN5xCO
/ ,' 3「俺は、VIP空軍基地所属第三航空隊荒巻スカルチノフだ。
おまえが俺の部隊じゃないのが残念だ。同じ部隊だったら、さんざん可愛いがってやるのにな」
荒巻は高笑いを残して、去っていった。
刃が触れていた頬に指をあてた。
濡れた感触がある。見ると、指先には赤い液体が付着していた。
大陸内陸部のVIP市・空軍基地に到着したのは、三日後だった。