81 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:06:19.43 ID:900fxlnN0
分厚い雲が空を覆ったその日、俺は一人車から降り出す。
こんな日でも気温はいつもどおりに上昇し、そのうえ湿気で蒸し蒸しとして最悪だった。
家を出る時にカーチャンが言っていたことを信じるならば、夕方には雨が降り出すはずだ。
そうなる前にさっさと済ませて、家に帰ろう―――――
俺はぼんやりと、そんなことを考えていた。
('A`)は墓参りをするようです
82 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:07:10.25 ID:900fxlnN0
クーが自殺したということを聞いたのは、俺がこの村を出て2年くらい経った時のことだった。
彼女が何を思って“そう”したのかは、見当もつかない。
葬儀の連絡も来たが、俺は行かなかった。
だらだらと都会でフリーター生活をする身で、来にくかったというのもあるが。
何も思わなかったといえば、嘘になる。
だが見境なく感情が昂るほどには、ならなかった。
気丈で、世話焼きなクー。
でもちょっと臆病で、俺に頼りがちで。
笑ったときの笑顔が可愛くて、俺はずっと昔から友達以上の感情を抱いていて―――――
('A`)「……おっと」
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか彼女の墓前にまで来ていた。
その前には、前髪を垂らした見知らぬ女性が立っている。
川д川「あ……、どうも……」
('A`;)「あ、どうも、こんにちは」
透き通るように弱弱しい声で、話しかけられた。
相手につられて返事をしたのはいいものの、その後が続かない。
別に知りあいとういう訳でもないし、それが普通なのかもしれないが。
84 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:07:40.82 ID:900fxlnN0
('A`)「…・・・クーさんとは知り合いなんですか?」
線香をあげながら、しばらくはそんな微妙な空気を背中に感じていたが、
やがていたたまれなくなった俺は、思い切って彼女に尋ねる。
川д川「……そうですね、古い知り合いです」
('A`)「そうなんですか……」
それっきりで、また会話が続かない。
続かないなら続かないで別にそれでもいいのだが、なんとなく不安になる。
何か話のネタになるものはないかと焦って探し出す。
そういえば、名前も聞いていない。
聞いてみるか……?
いや、別にたいして必要だとも思わない。
クーとの関係?
古い知り合いとしか言わなかったし、言いたくない理由があることなども考えられる。
そこを突っ込んでいけるほど、度胸もない。
どうする?マジでどうする!?
落ちつけ!素数だ!!素数を数えt
85 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:08:13.63 ID:900fxlnN0
川д川「……雨」
('A`;)「はひっ?」
川д川「雨、降ってきましたね」
彼女の言葉で空を仰ぐと、ぽつりと雨粒が顔に当たる。
どうやら予報通りになってしまったようだ。
あの曇り空からこうなることはわかりきっていたが、特に傘の準備などをしてきているわけではない。
('A`)「あー、さっさと帰った方がよさそうだな」
川д川「そうみたいですね……」
雨の滴はだんだんとその数を増やしていく。
俺は手早くお供え物を仕舞いながら、彼女に向きなおって言った。
('A`)「俺、車で来たんだけど…・・・。
良かったら、家まで送りましょうか?」
87 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:08:49.28 ID:900fxlnN0
名前も知らないその子を助手席に乗せて、俺は適当にそこらの道を走る。
いつの間にか、自然と彼女と会話ができるようになっていた。
('A`)「…・・・そっか、隣町の方の人なんだ。
道理で見覚えがないわけだ」
川д川「ええ……、そうですね……」
('A`)「そういやクーのやつ、習い事だか何だかで結構行ってたしなぁ」
そう言うと彼女は、力なく微笑む。
その顔を見て一瞬心を奪われそうになるが、あわてて前を向いた。
('A`;)「そ、そういや、隣町の方は道とかわかんねぇから、ナビ頼むよ」
取り繕うように言ったが、若干声が上ずっていたような気がする。
どこか懐かしくて、胸が締め付けられるような気がした。
そんな俺を見つめながら、彼女は静かに言った。
川д川「……ここまでで、結構です……」
89 名前: ◆KAKASHIqlM
投稿日: 2008/08/14(木) 00:09:30.56 ID:900fxlnN0
ドアに手をかけた彼女をあわてて止める。
('A`;)「待って!」
川д川「……?
何か、ありましたか?」
何か話題を、
名前を聞く?
いや、でも、
('A`;)「か、雷も鳴ってるし、急がなくてもいいんじゃないかな」
川д川「…・・・はぁ」
('A`;)「カミナリサマも怒ってるし、もう少し話そうぜ」
川д川「……そう……ですかね……」
('A`;)「そうだよ!!」
我ながらよくわからないことを言いながら、必死で彼女を引き留めようとした。
だって、彼女はきっと、
いや、絶対に―――――
91 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:10:04.91 ID:900fxlnN0
彼女はふふっと小さく笑うと、こちらをしっかりと見つめながら言う。
川ー川「……でも、もう行かなきゃならないんだ。
だいぶ長居しちゃったからな」
('A`;)「駄目、なのか?
もう少しだけでいいから・・・…!」
川ー川「ごめんな、でも、最後に会えてよかった。
ありがとう、ドクオ」
(;A;)「雷、鳴ってんだぜ?
お前苦手だって言ってたじゃんかよ!!」
川ー川「最後なんだ、笑って送り出してくれよ」
俺の顔はもう、涙だか鼻水だかでぐちゃぐちゃになっていた。
だが、構うもんか。
俺はクーを抱きしめて叫ぶように言う。
(;A;)「クー!!」
川ー川「なんだ?」
(;∀;)「また、会おうぜ!」
川ー川「ああ、約束だ」
92 名前: ◆KAKASHIqlM 投稿日: 2008/08/14(木) 00:10:31.64 ID:900fxlnN0
そのあとのことはよく覚えていない。
カーチャンによると、いつの間にか帰ってきていて、車の中で涙流しながら寝ていたそうだ。
「自殺したかと思った」といって一騒動あったのは、また別の話。
クーに会ったことは、誰にも言っていない。
言ったところで冗談と思われるのが関の山だろうし、何よりそんなことはクーが望まないはずだ。
('∀`)「『最近のドクオがだらしない!』って怒りに来てくれたんだよな」
そう呟いたところで答えがないのはわかっていたが、
澄み渡るほどに晴れ渡った青空が、その答えで良さそうだった。
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