ひとしきりふざけあうと、会話がぷつりと途切れた。
バスはまだ来そうにない。そうすると、俺たちはとたんに時間をもて余しはじめた。
川 ゚ -゚)「……来年は、もうこうしていられないんだろうな」
そんな中、素直がぽつりとつぶやいた言葉に、俺たち全員が沈黙した。
ブーンは口にくわえたアイスの棒をぼきりと噛み、流石兄は「うへぇ」と小さくつぶやいた。
流石弟はといえば、何を考えているのか分からない表情のまま首を縦に動かす。
俺はと言えば、ため息をついて辺りを取り囲む山の緑を見ていた。
('A`)「もうそんな時期か。月日がたつのは早いもんだな」
それは俺が――いや、ここにいる全員が話題にしないように、考えないようにしてきたことだった。
来年になれば、みんなでこうやって学校に通うことはない。
小学校に入った時から当たり前のように続いていた光景が、習慣が、これで終わりを告げるのだ。
∩;´_ゝ`)∩「やめろー! 現実なんて知りたくないー」
(´<_` )「あきらめろ、兄者。それが世界の選択だ」
そうすれば、こいつら流石兄者と弟者のコントを見ることも無くなって。
内藤ホライゾンことブーンと、ブロック塀をいかに美しく渡るかなんてアホ競技もできなくなって。
津出ツンや素直クールのような女子とはお近づきになることなんて皆無に等しくなるのだろう。
川 ゚ -゚)「春になれば卒業。そしたらすぐに家を出なければならないなんて信じられないよ。
来年の今頃、私は何をしているんだろうな」
( ^ω^)「僕はおじさんとこでりんご育てて、バリバリ働くお!」
正直言えば、来年のことを考えるのは無性に寂しくて、悲しい。
だけど、それを言うのはガキ臭い、かっこ悪いことに思えて、俺はただ黙っていた。
ヽ( ´_ゝ`)ゞ「聞いて驚け、俺らは」
(´<_` )「従兄弟者の住んでる都会の学校に行くことになりそうだ」
流石たち兄弟のあげた名前は、新幹線も通っている大きな街の名前だ。
流石に東京とまではいかないが、それでも大きな都市名をあげれば必ず出る街。
ブーンのおじさんの家は遠いが、それよりもはるかに遠い距離だ。
('A`)「俺はまだわからん。
――でも、俺も多分どっかへ行くんだろうな」
遠い。
ブーンも、流石たちも、きっと素直も。
産まれたときからずっと一緒だったのに、こうして離れていく。
そして、それは――俺もだ。
川 ゚ -゚)「そうだ、ツンはどこへ行くんだ」
素直はずっと黙り込んだままの津出に話しかけた。
ξ ゚-゚)ξ「私は――」
津出は無表情だった。
笑ったり、怒ったりといつもコロコロと表情が変わる顔には、何も浮かんでいない。
見れば、津出の手にしたチョコアイスは溶けて道路を無惨に汚していた。
('A`)「津出?」
ξ;゚⊿゚)ξて「えっと、今はそんなことどうだっていいじゃない。
それよりも学校よ、文化祭! 準備! 何でバス待ってると思ってるのよ」
津出は、さっきまでの表情が嘘のように急に話しだした。
「もー、べとべとと」アイスを持つ手を見やり、残ったアイスを慌てて口をつけた。
そこにいるのはもう、口の達者ないつもの津出だ。
( *´_ゝ`)川*゚ -゚)「「液体でべとべとなツン」ツン者」 オマエラヤメロ(´<_` )
( ;゚ω゚)「あああああ、アイスもったいないお!」
ξ゚⊿゚)ξ「もー、アンタたちがさっきからこの世の終わりだーなんて顔するから。
こっちまでアンニュイな気分になっちゃったじゃない!
別に、卒業したって引っ越したって、死ぬわけじゃないんだから」
(;'A`)「そ、そうか?」
ξ´⊿`)ξ「鬱田なんか、こーんな顔してたわよ」
俺に向かって大げさに眉をしかめた津出は、しばらく目を閉じた後に「決めた」と、口にした。
何を言うのだろう? いつもはすぐにふざけ出すブーンや流石兄もこの時は黙ったままだった。
ξ゚⊿゚)ξ「来年のこの日この時このバス停で、また会いましょう」
('A`)「は?」
( ^ω^)? ( ´_ゝ`)(´<_` )
予想をしてなかった一言に俺は息を飲んだ。
ブーンは首を傾げ、流石兄弟はお互いに顔を見合わせ、そして素直は眉を寄せた。
川 ゚ -゚)「ツン……でも、それは……」
ξ*゚ー゚)ξ「知ってる? 言葉っていうのはね、魂が宿るのよ。
だから、こうやって口に出せば絶対に願いはかなうの」
くるくると巻いて二つに分けて結んだ津出の髪が、揺れる。
ξ゚⊿゚)ξ「だから、ダメだなんて言わさないわよ。
私たちは来年も再来年もずっと、ここでみんなと楽しく過ごすの。これまでみたいにね」
そう言う津出の顔は笑っているはずなのに、泣いているように見えた。
祈るように告げられる言葉に、俺たちは誰も無理だとは言わなかった。
(*^ω^)「約束するお!」
( ´_ゝ`)「俺は喜んで参加するぞ、バスに乗り過ごして遅刻しない限りな」
(´<_` )「それは兄者だけだろう」
ざざざと木々が風に揺れ音を立てる。
どんどん人が減っていく村の、その中でもとりわけ小さな俺たちの集落。
ド田舎もいいところのバス停で、俺たち6人はずっと過ごしてきた。
('A`)「俺はもちろん行くわけだが。素直、お前はどうだ?」
川 ゚ -゚)「当たり前だろ」
――だから、俺たちは約束した。
その約束は叶えられることはなかったけれど。
俺たちが学校を卒業した、春。
約束したあの日を待たずに――――俺たちの集落は、ダムの底へと沈んだ。
バス停。
軽トラックが走った道。
アイスやコーラを買い込んだ酒屋。
ブーンの家、流石たち兄弟の家、素直の家。
魚や蟹を捕まえた川。遊び場所を求めて走り回った山。竹林。手伝わされた畑。
祭りがあった神社。雪下ろしをした屋根。栗がいっぱいなった木。たまに連れて行ってもらった食堂。
他にも、他にも――いつも見ていた家の形とか、見上げた空とか。ブーンたちと走り回った時間とか。
――沈んだのは集落だけなのはずなのに、世界の全てが終わってしまったみたいだった。
ξ ⊿ )ξ「別に、卒業したって引っ越したって、死ぬわけじゃないんだから」
( A )「はは、いつだかも言ったよな。その言葉」
俺や津出の家は辛うじて残ったが、それだけだ。
何もなくなってしまった場所に耐え切れず、俺の家は引っ越すことになった。
そして、俺達が暮らした場所には、津出たち一家だけが残った。
ξ ⊿ )ξ「それじゃあまた、ね」
その時の津出の表情を、俺は覚えていない。
はじめからここには何もなかったとばかりに、すましかえったダムの姿だけが、俺の脳に焼きついている。
※
今でも目を閉じれば浮かぶのは、あの日のあの時のあのバス停での出来事だ。
(*^ω^)「見るお、見るおー、ぶらんぶらーんだお!」
(;'A`)「ヤメロ、屋根が壊れる」
衣替えを終えたばかりの夏服、しょぼんのおっちゃんの酒屋で買った冷たいコーラ。
ブーンや俺は中途半端な高さのブロック塀によじのぼったり、屋根に登ろうとする。
気を抜くとブーンは危ないことをするから、俺はそのたびに必死だ。
川 ゚ -゚)「ほら、ツン。口をあけてこの白いものをごっくんちょするんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、アイスね。私のも一口食べる?」
全員で座るには長さの足りないベンチに座るのはいつも、素直と津出の二人。
素直の意味ありげな発言は、俺や流石兄にはなかなかに刺激的だった。
( *´_ゝ`)「見ろ、弟者! クー者と、ツン者が百合ん百合んだ!」
(´<_` )「まったく……兄者はこの上もなく阿呆だな。自重しろ自重」
流石の兄弟はそんな俺たちの様子を眺め、たまに二人にしか分からない冗談で笑う。
この双子はそっくりな顔をしているのに、笑う時の表情だけは違っていた。
いつもよりも少しだけ暑かった、あの日。
俺たちはかなうはずのない約束をした。
翌年には全てが水に沈むことを俺たちは知っていて、それでも願えばかなうと信じたかった。

『来年も再来年もずっと、ここでみんなと楽しく過ごせますように』
ただ、それだけの出来事だ。
あの日あの時あのバス停で……のようです
了
( ^ω^)*゚⊿゚)ξ< GW! 感想&絵祭り! >('A`(゚- ゚ 川(ここから先のリンク元は
ブーン系小説総合スレ 【 イラスト+α 】 まとめ様)
プチラノベ祭り参加作品 同まとめさんの
こちらでもまとめてもらっています
No.13の青春を感じるイラストで書かせて頂きました。
ありがとうございます!
問題があれば対応させて頂きます。
悩んだけどスレ投下したものほぼそのままで載せてます。