「ねぇさま、外に行きたい!
昔、ねぇさまと行った町。 すっごく楽しかった!」
「だめよ。父様にも母様にもしかられちゃうわ」
――ここは暗くて寂しくて。だけど、落ち着く場所だ。
雨戸の隙間からは、古ぼけた家々と、とどこまでも広がる田畑が見える。
「ねぇ、どうして外にでちゃだめなの?
同じくらいの子たちはみんな外でお仕事してるのに。
……私たちが、変だから?」
「父様たちは、私たちのことを心配してくれているのよ」
「……うん」
豚を追いかける犬の鳴き声、田畑を耕す男、洗濯をする女、赤ん坊をあやす子供。
のどかな光景は、今の私たちには縁のないものだ。
「でも、行きたいなぁ」
弾むような、明るい声が聞こえた。
※
リレー小説 第10話
※
ノハT⊿T)「でも、行きたいぞぉっ!」
||‘‐‘||レ「……え?」
ヒートの言葉に、カウガールははっと息を呑んだ。
ここはあの暗い部屋ではない。弾むような声は似ていても、ヒートはあの子ではない。
(#ФωФ)「だーめ、行くのは我輩たちだけなのである」
ノハT⊿T)「行くって言ったのは、ロマだろ?なんであたしだけ留守番なんだ」
(#ФωФ)「研究所が全滅するほどのウィルスなら行政での対応は不可欠である。
状況を報告する必要があるし、このビーグルもそのまま置いていけない。
それに、ヒートはこの中で一番足が速い」
ノハ*゚⊿゚)「ぎょーせーとかなんとかよくわかんないけど、
足が速いってほめてるんだな! うれしいぞぉっ、ロマぁぁぁぁっ!」
('、`*川「……え? あれ? ちょ」
||‘‐‘;||レ「あら? あれ? ヒートちゃん?」
物思いにふけっていた時間は、思いの外長かったらしい。
真剣に怒りながら説教をする青年・ロマネスクと、素直に感情を露わにする少女・ヒート、
真剣ながらも、じゃれあうような二人のやりとりに、カウガールは戸惑うばかりだ。
('、`;川「みんなで研究所へ行こうって流れだったんじゃ……」
研究所から助けを求めてきた女性も、ヒートたちのやりとりに戸惑っているらしい。
白衣の胸元をぎゅっと握り、トンキーが乗せられた車とヒート達を交互に見回し、声を上げた。
( ФωФ)「心配しなくとも、我輩とカウガールさんが責任を持って研究所へあなたを送り届けるのである。
ヒートは来た道を戻って、役所に行って貰う」
('∀`;川「えーと、ヒートちゃんがいないと正直来た意味がないというか」
||‘‐‘||レ「それ、どういう意味ですか?」
白衣の女――ペニサスの言葉に、カウガールの表情が凍る。
もともと表情が豊かな方ではなかったが、今の彼女の表情は能面のような無表情だ。
押し殺したような低い声で、彼女はペニサスに問いかけた。
('、`;川「えっと、それは……そうだっ! き、危険なのよっ!そのウィルスは」
||‘‐‘||レ「……ウィルス」
( ФωФ)「豚シンデルエンザの危険性なら、我輩たちは充分承知済みなのである。
役所への対応はヒートに任せれば大丈夫だ。
貴女は研究所で何が起こったのか、第二研究所に向いながら話してくれれば……」
ロマネスクの表情は緊張で堅くなりながらも、期待と興奮を隠しきれていない。
豚を突然死に至らせ、ビーグルを凶暴化させ、ヒートが感染しているかもしれない、豚シンデルエンザ。
その豚シンデルエンザに関する情報が、手に入るかもしれない。
ロマネスクが興奮するのも当然のことである。
('、`;川「違うのっ! えーと、豚シンデルじゃなくて……
……そう、えっと、研究所を壊滅させたのは、えーと……
かつて世界を滅ぼしたウィルスなのよっ!」
||‘‐‘;||レ「……え?」
(;ФωФ)「はぁっ?」
ノハ;゚⊿゚)「大変だぁぁぁぁっ!!!」
しかし、続くペニサスの言葉にロマネスクとカウガールは言葉を失った。
彼らは「豚シンデルエンザ」についての話をしていたはずなのに、出てきたのは予想外の一言だったからだ。
ただ一人、ヒートだけが目をキラキラと輝かせて興奮している。
('、`*川「世界はかつて高度な文明が発達していたことは知ってるでしょ?」
ノハ*゚⊿゚)「そうなのかぁ?」
( ФωФ)「……ヒート、その話は前にもしなかったか?」
ノパ⊿゚)「村でしてくれた"お話"かー?」
( ФωФ)「いや、それはそれであっているのだが……。
ほら、超電導式蒸気機関で、車掌さん(‘_L’)と話したときに出てきただろう?
旧世紀。覚えていないのか?」
ノハ;゚~゚)「そういえば、ロマが言ってたような気がするぞ」
ヒートの言葉の言葉に、ロマネスクの瞳が輝きだした。
グッと拳を握り、まるで演説をするかのように手を大きく広げる。
何時の間に取り出したのか、彼の手には使い込まれた手帳が握られていた。
( ФωФ)「ふむ。せっかくだから旧世紀と旧文明について説明しておくのである。
我々の世界は、一度滅びかけた」
||‘‐‘||レ「滅びかける前の時代を旧世紀。そのころ発達した巨大文明を、旧文明と言うのよね」
ノハ;゚⊿゚)「うぉぉぉぉ、ロマも豚ガールのねーちゃんもスゴイぞぉぉぉっ!」
ロマネスクはヒートのリアクションに気をよくしたようで、手にした手帳をめくり始める。
そこには、『旧文明について』びっちり書かれたページがあった。
( ФωФ)「うむ。この旧世紀と旧文明であるが、これまでは伝説だと思われてきた。
ところが、東の都の調査団はその伝説に果敢に挑み、旧文明の遺跡を発掘したのである。
これにより、旧世紀には今よりも高度な文明が発達していたことが立証された。
余談だが、世界七大奇観の一つ“大地のヘソ”も旧文明の遺物ではないかと言われている」
ノパ⊿゚)「調査団ってすごいんだなっ! ビーグルはつかまえられないのにっ!!」
(*ФωФ)「旧文明の研究は歴史分野だけではなく、科学の分野でも研究されている。
その技術は、最新技術の発展に役立っているのであるよ!
なぜ、東の都の研究機関が巨大で、その技術力が一目置かれているのか?
それは旧文明の遺産の研究を独占しているからなのである!」
ノハ*゚⊿゚)「なんだってぇー!!!」
(*ФωФ)「超電導式蒸気機関をはじめとした、最新科学と旧文明の技術の融合に、
我輩ドキドキが止まらん!
研究所に着いたら、是非ともその研究について、聞かせてもらいたいものだ」
ノハ*゚⊿゚)「研究所ってすごいんだなぁぁぁぁぁ!」
(*ФωФ)+「それだけではないぞ、ヒート。
東の都の研究機関はとにかくすごいのだっ!
我輩がこれまでもっていた、古い書物でもその名は轟き!」
ノハ*゚⊿゚)「うぉぉぉぉぉぉっ、よくわかんないけどすごいぞぉぉぉぉっ!!!」
手帳のあちらこちらを指で指し示しながら、ロマネスクは興奮しきった口調で語る。
こうなっては、普段の落ち着いた様子は微塵もない。
ヒートの心の底から感心する声に気をよくし、ロマネスクはさらに自らの持つ知識を語ろうとし始めた。
||‘‐‘;||レ「そんなことより、今はウィルスです!
伊藤さんっ、一体どういうことなんですかっ!!」
そんなロマネスクを止めたのは、カウガールだった。
彼女らしくない大きな声で、ロマネスクの言葉をさえぎり、彼女はペニサスを見た。
('、`*川「えーと、旧文明に関しては、ロマネスク……くん?言ってたので、いいとして
私たちは、その文明を滅ぼしたウィルスを研究していたの。
――生物の遺伝情報を書き換え、細胞を変異させる、恐ろしいウィルスをね」
|| ‐ ||レ「生物の遺伝情報を書き換える……」
(#ФωФ)「そんな、危険極まりない研究をしていたのか?!」
ペニサスの語るウィルスは、豚シンデルエンザではない。
しかし、その内容とウィルスの力は二人を驚愕させるのには充分だった。
('、`*川「あ、別にそんなに危険なウィルスじゃないのよ。正しくは、ウィルスではないの。
だって、毒性なんかないし、そこら中に普通ーっ、にウヨウヨしてるもの」
(´ФωФ)「はひ?」
('、`*川「危険極まりないってのは当時の人にとってだけで、今の私たちには全然問題はないの。
むしろ普通に存在しすぎて、世界を滅ぼしたウィルスだなんて誰も考えはしなかったの。
一部の特殊な環境下にある生物を除いて、大半の生物がその体内に持っている構造体なんだもの」
(;ФωФ)「ウィルスじゃない……だと……」
ノパ⊿゚)「……あれ?」
('、`*川「そのことが分かったのは、つい最近なのよ。学会ではまだ認められてない、仮説なんだけどね。
みんな持ってるから全然平気、大丈夫っ! 動物さんだって持ってるよぉー!
ぶっちゃけ、隔離されたとことかで育ちましたとかない限り全然平気。
問題ないなーい! 天に誓っても、全然平気! それこそ、残念なくらい」
(;ФωФ)「だったら、何で研究所は全滅したのだ?」
('、`*川「それは、私が――
じゃなくて、えーと、私たちが……」
ノパぺ)「……んー」
信じられないほど自信たっぷりだったペニサスは、ロマネスクの言葉にあっさりと沈黙した。
顔色はさっと青くなり、口ごもり視線をきょろきょろと彷徨わせる。
わかりやすいほどの豹変ぶりだった。
||‘‐‘||レ「……」
ノパ⊿゚)「ねーちゃん、ひょっとして」
('、`;川「……変種。 そうよ、変種がみつかったの?!」
ヒートがぽつりと言った瞬間、ペニサスはうわずった声をあげた。
白衣の襟元を片手でつかみ、もう片方の手を振り回しながらペニサスは語り始める。
(*ФωФ)「そうか、それが豚……」
('、`*川「一番始めに見つかった感染者は、ある部族の長の娘。
いわゆる、少数部族の姫ってやつだったわ」
|| ‐ ||レ「――っ!!」
(;ФωФ)「シンデル……って、え?」
※
「ねぇさま。私、外に行きたい」
記憶の奥底から聞こえてくる声は、とても懐かしくて愛おしい。
※
|| ‐ ||レ「……なんで、」
('、`*川「その部族は、滅びた文明の血を引く古い血族だったの。
他の部族や、村や街とはほとんど親交を持たず、自給自足で暮らしていた」
カウガール声は、ペニサスの声にかき消されて、ロマネスクたちには届かなかった。
(´ФωФ)「……あれ?」
ノパ⊿゚)「なーなー、白衣のねーちゃん?」
('、`*川「だからかしら、そのウィルスに感染しちゃったみたいなのよねー。
抵抗力の無いその体はウィルスに蝕まれ、そして」
予想が外れしょんぼりするロマネスク。
そんな、彼らの横でペニサスの声は少しずつ熱を帯びていく。
( ФωФ)「その感染者は……死んだのか?」
(゚∀゚ 川「進化したの。 その身は人でありながら、人ではないものへと変わったの。
それは、進歩。 それは進化。 人類を新たなステージに立たせる選ばれた力」
ロマネスクの言葉をきっかけにして、ペニサスの熱狂は頂点を迎えた。
とぼけた様子が消え、その瞳には不気味な光が宿る。
黒髪は振り乱され、口元がニヤリと吊り上がった。
( ∀ 川「進化っ、なんて素晴らしい言葉なのかしらっ!!!
人は進歩無しには前に進むことすら出来ない」
|| д #||レ「ふざけないで! それが進化なはず無いじゃない!」
ペニサスの様子に刺激されたかのように、カウガールが声を荒げる。
彼女の表情は怒りで染まっているのに、なぜか今にも泣き出しそうだった。
('、`*川「人々はウィルスに適応した。 だけど、そこに先はなかった。
絶滅を回避した。ただ、それだけ。
そこにはかつての栄華はなく、衰退だけが残った」
|| ‐ #||レ「私は、私はっ!」
ノパ⊿゚)「ねーねー、豚ガールのねーちゃん」
('、`*川「だから、私たちは研究したの。人の新たな進化の道を探すために。
人体実験が生命の倫理に反すると決めた愚か者は誰なのかしら?
倫理なんてその時代が都合良く定めるもの。そんなもの本来はありもしない。
進歩の前には犠牲が出るのは当然のことなのにっ!」
ペニサスは取り憑かれたかのように、語り続ける。
※
「ちょっとだけよ。 昔みたいにちょっとだけ」
「カウガールねぇさま、だいすきっ!」
ああ、これは私と妹の声だ。 私と、私の大切なあの子の声。
※
――何かが変だ。いや、奇妙な事だらけと言い換えた方がいい。
ペニサスの話に驚愕しながらも、ロマネスクは違和感を覚えていた。
('ー`*川「ねぇ、そうでしょう?
私たちは進化を望み、その可能性を求め続けているの。
それって、自然なことでしょう?」
|| ‐ ||レ「……ちがう、そんなのはちがう」
取り憑かれた様に語るペニサス。 普段と様子の違う、カウガール。
ノパ⊿゚)「なーなー、ロマ?」
(;ФωФ)「む? さっきからどうしたのである、ヒート」
服の袖を引っ張られ、ロマネスクはヒートへと視線を移す。
そこで、様子がおかしいのはカウガールたちだけではないと言うことに、ようやく気づいた。
ノパ⊿゚)「あのなー、思ったんだけどなー」
( ФωФ)「……。どうした?」
素直と言えば聞こえはいいが、悪く言えば感情がだだ漏れなヒートが、めずらしく口ごもった。
ヒートはキョロキョロと落着きなく視線を巡らせ、軽く首をひねっている。
ノパ⊿゚)「あの白衣のねーちゃんケガしてるんじゃないのか?」
( ФωФ)「怪我? 見たところ元気そうではないか?
それより、今はウィルスの方が……」
ノパ⊿゚)「でも、あのねーちゃんからな、血の匂いがするんだ」
――我輩は何と愚かだったのだろうか。
頭を強く殴られたような衝撃と共に、ロマネスクは思った。
汗が止まらない。それなのに、体はじんとしびれて、吐き気がこみ上げてくる。
ノパ⊿゚)「でも、何か元気そうだし……ロマ?」
( ФωФ)「……一つ聞いてもいいか?」
不思議そうな表情のヒートを無視し、ロマネスクはこわばった表情でペニサス問いかける。
疑惑を問いただす前に、どうしても確かめなければならないことがあった。
('、`*川「んー、なんだい?」
( ФωФ)「豚シンデルエンザとそのウィルスは、関わりがあるのか?」
ペニサスたちの研究していたウィルスは、当たり前のように存在しながら、これまで発見されていなかった。
――ペニサスたちの研究していたウィルスは、遺伝子と細胞を書き換えるといった。
( ;ФωФ)「頼む、教えてくれっ。これは大切なことなのだっ!」
ロマネスクの脳裏には、ヒートの超人的な力が浮かぶ。
ヒートの力は、その年頃の少女の出せるものではない。人が出せるかどうかも怪しい力だ。
もし、ヒートの力が遺伝子と細胞が書き換えられたものだとするならば……。
ヒートが感染しているかもしれないウィルスが、ペニサスたちが研究していたものの可能性がある。
('、`*川「豚シンデル……? ああ、あれはダメよ。
自然の状態のウィルスはどれだけいじっても、人には適応出来なかった。
あれに出来ることは、人や豚を死亡させることくらいよ。
だから、感染者が……ウィルスにもっと適応した者が必要だったの」
それは、決定的な一言だった。
その言葉は、ペニサスたちが豚シンデルエンザを作り出したと告白したに等しかった。
それだけではない、彼女はもっと恐ろしいウィルスにも関与していると言ったのだ。
(; ω )「――くっ」
彼女の分まで、自分が疑わなければならない――彼は、そう決めたはずだった。
だが、この現実は何だ?
ヒートに指摘されるまで、自分は少しも疑うことが無かったではないか。
※
「ねぇさま、たすけてっ! ねぇさまっ!!!」
妹が助けを求めて、泣いている。
「豚が死んだ今、我々には別の生活手段が必要なのだ」
「豚ならトンキーがいるじゃない、まだ生きてるわっ!」
「お前は、大切なトンキーを食べるというのか?
それに、ここよりも金のあるところへ行った方があの子も幸せだ」
「わかってくれ、ガール。お前だって、売られたくはないだろう?」
私は、父様の言葉に頷いた。 私は妹を見捨てた。 私は怖かった。
苦い後悔と、無理矢理押さえ込んでいた痛みが、じわじわと広がっていく。
「痛いのはいや、苦しいのはいや、痛い、痛いの
ねぇさま助けて、嫌、いたいイタイ、いたいのねぇさまっ!!
ねぇさま! ねぇさま! ねぇさまっ!!!
いやいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい」
――あの子を殺したのは、私だ。
※
||;д;||レ「アンタたちがウィルスをっ、妹をっ!」
('、`;川「いもうと? え、もしかして」
ロマネスクの思考を切り裂くようにして、声が響いた。
後悔と悲しみに彩られたその声は、怒りながら泣いていた。
(#ФωФ)「――しまっ、豚ガールっ!」
カウガールの手がひらめき、乾いた音と共にコルク銃の玉が放たれる。
ろくに狙いもせず放たれた、銃は白衣の女には当たることはない。
それでも、カウガールはその引き金を続けて引こうとする。
(#ФωФ)「退けっ、カウガールっ! そいつはマズイっ!」
ノハ;゚⊿゚)「え? どうしたんだ、ロマ?
さっきから、何か変だぞ?!」
今ならわかる。
不自然な沈黙、動揺。それとは、逆に機密だと思われることを滔々と語り続けるその姿。
進化と嬉しそうに語った、爛々とした瞳。
豚インフルはダメ――失敗であると、ペニサスは言った。
('∀`*川「あなたが、カウガール姫?」
ニタリと笑う女の手には、黒光りする銃が輝いている。
(#ФωФ)「カウガールっ!」
||;。;||レ「嫌、私はっ―――私はっ」
子供のように首をふるカウガールの体を、ロマネスクは思いっきり突き飛ばした。
不意をつかれた彼女の体は抵抗もなく、あっさりと地面に倒れ臥す。
その衝撃で、彼女がいつもつけているテンガロンハットが外れ、その下が露わになる。
(;ФωФ)「お前は、」

テンガロンハットの下から現われたのは、牛を思わせる見事な角。
帽子の飾りだと思われたそれは、彼女の頭皮から生えていた。
それは、人にあってはならないもの。それは、獣にこそふさわしいもの。
ノハ;゚⊿゚)「豚ガールのねーちゃん?」
カウガールは以前、「人がウィルスの感染源かも知れない」と言った。
彼女がウィルスのせいで死んだと疑っていた妹には、何も症状がなかったというのに。
何故「豚のウィルスが人に感染した」のではなく、「人を感染源だ」と考えたのだろうか。
答えは――妹だけではなく、彼女自身も感染していたからではないのか?
('、`*川「やだ、私ったら超お手柄じゃないっ! 貴重な研究素体が一度に……」
||;Д;||レ「あの子をかえして! 生きかえらせてよぉっ!!!」
ペニサスが嗤い、カウガールが泣き叫び、ヒートは呆然と立ちすくむ。
ロマネスクもまた、立ちつくしている。
一度に多くのことが起こりすぎて、情報が整理できない。
何が真実で、何が嘘なのか。全てがあやふやで理解できない。
それでも、後悔している場合ではないのだ。情報の整理など、後ですればいい。
('、`*川「なんか、いろいろ想定外だけどもうこれはこれでいいよねー!
ペ二ちゃんスゴイ! 博士歓喜! ニダーざまぁwww」
(;ФωФ)「――っ!!」
考えろ。
戦えないのならば、動け、疑え、思考しろっ! わからないのならば問い詰めろ!
今することは、今本当にすべきことは―――――
('、`*川「ああ、でもコレはいらないや」
(#ФωФ)「逃げろっ!!! ヒート!!!」
ありったけの声を出して、ロマネスクは叫んだ。
張り巡らせた思考が、そうしろと叫ぶ。
今、自分たちはとんでもないことの渦中に放り込まれている。
そして、この女は敵だ。
('、`*川「まずは、一人っ!」
(#ФωФ)「ガールを連れてっ、早くっ!!!」
パンッ
かわいた音が、周囲に響き渡った。
※
( ; ω )「――っ、トっ」
真っ赤な花が、ロマネスクの胸に咲いた。
いや、それは花なんかじゃなくて。 もっと、別のもので。
嫌な臭いが、ヒートの鼻をつく。 胸から流れ出す、赤いそれは止まらない。
( ; ω )「 て、 き ……だ」
「敵」だ。
ロマネスクの言葉の意味を理解した時、その胸を流れるものが血だとヒートは気づいた。
ノパ⊿゚)「ロマ?」
ロマネスクの体からは血が流れている。
ロマネスクは怪我をしている。
ロマネスクは、ロマは、ヒートの大切な幼なじみは、
ノハ ;⊿ )「ロマぁっっ!!!!」
――死んでしまう。
それは、ヒートにとって恐怖そのものだった。
続く