川д川「遅刻……遅刻……」
私は貞子。フルネームは山村貞子。
私が他の女の子と違う所を挙げるとしたら、魔法が使えることかな?
川д川「どうしよう……まにあわな……い……」
私はポケットから金属製の小箱を取り出すと、それを開いた。
小箱の中には漆黒の多面体が輝いている。
これを使えば、遅刻は避けることが出来る。
ううん。せっかく授かった大切な力をこんなところで使うわけにはいかないわ。
私は小箱をポケットに戻すと、かわりに鞄から朝食用のパンを取り出した。
どうせ、間に合わないのなら、このままのんびり朝食を食べながらいこう。
そう思った時、
川; д川「……わ……っとっと……」
何かがぶつかってきたかのような衝撃。
私は無惨にも体勢を崩し、地面に倒れ込んでしまった。
ああ、私の朝ご飯が地面に落ちてしまう。
私のご飯。私の朝ご飯。おいしいおいしいパンが――。
川;д;川「……私の……ご飯が……」
(; )「大丈夫っ?!」
帰ってこないパンを嘆く私の前に、そっと手が差し出される。
黒い制服に包まれた男の子の手。私はそっと、その手の持ち主を見上げ、
(;´・ω・`)「ごめん、僕急いでて……。
大丈夫?怪我してない?そのパンはちゃんと弁償するから」
――恋をした。
吸い込まれそうな黒目がちの瞳、優しい声、心の底から私のことを心配しているその態度。
彼のその姿に、彼のその全てに、私の心がトクントクンと音を立てる。
彼ともっと話したい、彼のことがもっと知りたい。彼はどんな人なんだろう。どんな風にものを考えるんだろう。
川*д川「あっ……あの……」
(;´・ω・`)「これ500円。本当にゴメン!」
川; д川「え……あ……」
呆然と立ちつくす私の目の前を、彼は走り抜けていく。
私は、彼のぬくもりの残る500円玉を、そっと握りしめた。
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