※
(´<_` )「そうだ、兄者だ」
そして、俺は目を開いた。
この俺、流石弟者の双子の兄、流石兄者。
なぜとまどったのかわからないほど、簡単な答えだった。
大体、俺も「兄者」と言っていたではないか。
l从・∀・ノ!リ人「おはようなのじゃー。今日もよいお天気なのじゃ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「おお、弟者か。今日はずいぶん遅いじゃないか」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「挨拶はいいから、早く飯食いな」
リビングに下りると妹の妹者、父の父者、母の母者がすでに朝食を食べていた。
不在なのは兄者と、俺の姉に当たる姉者だけの様だ。
(´<_` )「姉者は?」
l从・∀・ノ!リ人「徹夜でお仕事してたから、まだ寝てるのじゃー。
お部屋から出てこなくて、妹者ぷんぷんなのじゃ」
俺は妹者に生返事をかえすと、起きてこない兄者のことを考えた。
飯を食い終わったら、兄者を起こさなくては。
※
食事が済むと妹者は小学校、父者は会社、母者はパートへといそいそと出かけていった。
一方、高校生の俺はといえば制服に袖を通しただけで、まだ家にいた。
(´<_` )「兄者、早く起きろ。このままじゃ遅刻してしまうぞ」
兄者の部屋に声をかけるが返事はない。
ノックを数度繰り返すが、反応すらしない。
ドアノブを回すが、鍵のかかった扉はうんともすんとも言わない。
(´<_` )「兄者開けろ!今日もまた学校へ行けないじゃないか」
鍵がかかっている以上部屋にいるのは確かだ。しかし、反応はない。
兄者は、誰が話しかけても絶対に部屋に入れようともしないし、答えようともしなかった。
もう、こんな状態が何ヶ月も続いている。
兄者は昔から破天荒というか珍妙な行動が多かったが、部屋にひきこもるなんてことはなかった。
(´<_` )「学校はあきらめていいからせめて返事はしてくれ」
兄者はどんなに機嫌が悪いときでも、病気の時でも俺が話しかければ何らかの反応をした。
しかし、最近はそれすらもなかった。
俺たち兄弟が悪戯をするたび鉄拳制裁する母者も、あきらめたのか、最近は兄者のことを口にしなくなっていた。
兄者の引きこもりという異常事態は我が家の中で日常になろうとしていた。
※
∬´_ゝ`) 「兄者、まだ出てこないの?」
ウエーブがかった髪を寝癖でぼさぼさにしながら姉者が起きてきたのは、すでに昼を回った頃だった。
気合いの入った格好をすればそこそこなはずだが、家での姉者はいつも寝癖の化粧無しで、
ジャージか下着姿なのが常だった。
研究で忙しくて気が回らないとは本人の言だが、かわいい妹者が悪影響を受けないか心配である。
(´<_` )「ああ」
∬´_ゝ`) 「それで、あんたは高校にも行かず引きこもりなわけ?
これじゃあ、どっちがひきこもりかわかったものじゃないわね」
(´<_` )「ひきこもりなのは兄者の方だ」
∬´_ゝ`) 「はいはい、部屋を出るか出ないかの違いね。
あんたもいいかげん目を覚ましたらどう?」
(´<_` )「兄者が元にもどったら、考える」
∬´_ゝ`) 「ブラコン乙。
……でも、あんたが望むなら兄者に会う方法があるわよ」
(´<_`;)「ブラコンじゃな――それは、本当か?!」
∬´_ゝ`) 「あんた私の研究の内容知ってる?」
(´<_` )「……?」
∬´_ゝ`) 「私の研究は、『人の夢に入る方法』よ」
∬´_ゝ`)「兄者も、夢の中までは鍵をかけられない。これ、常識。
で、あんたが夢に乱入。わかる?
それで兄者を説得できればよし、ダメでもあんたのあきらめがつくでしょ」
(´<_`;)「……それは可能なのか?」
∬´_ゝ`)「この姉者様が望んで叶えられなかったことはない」
姉者は確かに何たらという研究機関で、研究員をしている。
昨日みたいに家に仕事を持ち帰ることも多い。
しかし、夢に入るなんて途方もないことできるのだろうか。
∬´_ゝ`)「男は度胸。何事もやってみるもんよ。
兄者に会いたいのなら、私の部屋に来なさい」
姉者は返事も聞かず、自室のある二階へと上がっていく。というか、飯はいいのか。姉者よ。
俺は一人、リビングに取り残される。
(´<_` )「兄者に会える――か」
鍵のかかった、兄者の部屋を思い浮かべる。それから、踏切と戦っていた兄者を思い浮かべる。
俺の答えは、考えるまでもなく決まっていた。
兄者の夢に入り、引きこもり兄者を部屋からたたき出す。
それ以外に選択肢なんてあるはずがない。
※
姉者の部屋には色気のかけらもなかった。
女らしさというものを全てゴミ箱にたたき込んだかのようだった。
部屋にはパソコンが3台置かれ、そこからは赤や黄色や青といったカラフルなケーブルがのびている。
床には分厚い専門書が山のように積まれ、大量の工具やら電子機器などが無造作に転がっている。
ベッドやタンスがなければここが誰かの部屋だとはとても思わなかっただろう。
∬*´_ゝ`)「ホントは持ち出し禁止なんだけど、ついやっちゃった☆」
(´<_` )「正直、☆をつけてもかわいくないと思われ」
∬♯´_ゝ`)
(´<_`;)「おk。我が家が研究所になっている件については把握した。素晴らしい部屋だ」
∬*´_ゝ`)「兄者の夢には実はもう繋いであるの。こう、電波を拾う感じでちょちょいと
で、あんたがこの機械をかぶって目を閉じれば、ばっちりなはずよ」
Σ(´<_`;)「(ばっちりな 「はず」 ?!)」
姉者の機嫌は、部屋を褒めたとたんころりと直った。
この扱いやすさはかつての兄者を彷彿とさせる。
姉者は「限られた症状の病人じゃなきゃ使っちゃだめなんだけどね」とか不安をかき立てることを話し続けている。
∬´_ゝ`)「夢の中に入るということは、その人の深層心理に入ることでもあるわ。
夢は記憶の整理だけではなく、その人の願望やトラウマが様々な形を借りて現われる場でもあるわ。
まあ、化石みたいな古い学説の一つだけどね」
姉者は俺をベッドに座らせると、俺の頭にヘッドホンと一体化したゴーグルのようなものをつけた。
∬´_ゝ`)「あんたの見たいこと、見たくないことが沢山あるだろうけど、目をそらしちゃだめよ」
ヘッドホンのせいだろうか、姉者の声が妙に遠い。
ゴーグルのせいだろうか、視界が妙に暗い。
兄者、兄者は本当にこの暗闇の中にいるのだろうか?
それとも、兄者の夢につながってるなんて嘘で、これは単に姉者の人体実験なんだろうか。
「目をそらさないで、××。××を××××せることができるのはあんただけだから」
これは誰の声だっただろう。
とぎれとぎれではっきり聞こえない。
ここはどこだろう。
俺は、
俺は、暗いやみの中を、どこまでも、おちて … …
……
大丈夫
……だから
……

空を飛ぶ少女の姿が見えた。
大きく浮かんだ少女の姿は、俺の何十倍の高さの背があるようだった。
鮮やかな水色のセーラーが茶色の髪によく似合う。
それにしても、あの黄色いリボンはどこかで…
Σ(´<_`;)「て、いうかハルヒじゃん!」
そうだ、アレは兄者が好きだったアニメの主人公じゃないか。
兄者はあのアニメについて嫌というほど、語っていた。
そういえば、DVD俺も出資させられたんじゃなかったっけ。
( ´_>`)「兄者の好きなアニメキャラということは、ここが兄者の夢なのか?」
どうせならもっといい夢をみればいいのに。
あいつ部屋にこもって何やってると思えばアニメ見てるのか?
*(‘‘)*「で~すまっち、で~すま~っち~♪」
从'ー'从 「あれれ~、変身ステッキがないよぉ?」
(゚、゚トソン「あなたが犯人です」
(´<_` )「暗黒魔法少女デスメタルヘリカル、萌えっ娘戦隊渡辺たん、名探偵トソントソン…」
どれも見覚えがある、兄者が毎週DVDに録画していたアニメの少女達だ。
身長10メートルはあろうかという少女たちが、空を飛び、シャララン☆という効果音をまき散らしている。
从'ー'从「私のステッキ知りませんかぁ?」
(´<_` )「知らないよ」
从'ー'从「どうしよう、怒られちゃうー」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「あんたたちまた、ファミコンやってるのかい!!!」
クレバスが開き炎の鬼神母者が登場した。
(゚、゚トソン「私がやっているのはPCです
ファミコンなんて旧世代もいいとろこです」
( ´_>`)「母者はPCもスーファミもプレステもWiiも全部ファミコンだな」
( ゚д゚ )「宿題はやったのかい!」
ごめんなさい、今やりますから。
そうだ、夕飯をたべなきゃ宿題ができないじゃないか。
(´<_` )「そうだ、トイレにいこう」
間違えた、兄者を探さなければならないじゃないか。
しかし、突然訪れた尿意がそれを阻む。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「まったくあんた達は、そうやっていつも悪戯ばかりじゃないか。
大体、どうしてあんな所にいったんだい」
母者がははじゃがとてもうるさい。炎でクレバスが溶けてるじゃないか。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「なんで、あんなところで遊ぼうと思ったんだい?」
うるさいうるさいうるさいうるさい
今は、トイレだ。そうだ、しょんべんがもれる。
そうだ、ここはトイレだった。
個室がいっぱいある。急がなければ。
コンコン
(`・ω・´) 「はいってます」
ここは、ダメだ別の個室へいかなければ。小便器でもかまわない。
大体なんでここは個室だらけなんだ。
( ´_>`)「というか、御手洗を捜しに来た訳じゃないだろう?」
ああ、そこにいるのは俺じゃないか。
( ´_>`)「しっかりしろ、それじゃどっちが兄者かわからんぞ。」
(´<_` )「それは、確かだな俺。
しかし、探そうにも兄者がどこにいるのかわからない」
( ´_>`)「ふむ。それは一理あるな。心当たりはないのか?」
「流石だな俺」と言いたくなるような俺っぷりだった。
やはり、俺はこうでなければならない。
流石弟者は常に冷静沈着。
( ´_>`)「――という、仮面をかぶりたいわけだな」
(´<_` )「人間誰でも、よく見られたいものじゃないか」
俺が笑ったので、俺も笑った。
これはきっと兄者から見た俺に違いない。
ふと、頭上を見上げると空の上を魚と父者が泳いでいた。
流石は父者、夢の中でも頭が薄い。
自分も将来はあんな髪になるのだろうか?だったら、嫌だろう常考。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「ごらんの有り様だよ」
ぷかぷかと空を浮きながら父者は魚に話しかけた。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「結果を見ないのにこれだ。逃避としか言い様がない」
(´<_` )「今日の父者は妙に思慮深いが、いつもそうだったような気がするな」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「自分で結論を出さず、周りの様子をみるといい」
ふむ。禿げるか禿げないかはその時にならないとわからないと言うことか。
そういうものなんだな。
魚がぴちぴちと跳ね、父者の頭を濡らす。
父者の頭は太陽のように輝いている。
( ´_ゝ`)「人を探しておきながらその様か、いい様だな弟者」
ふと、振り向くと兄者が立っていた。
俺とそっくり生き写しの姿はまさしく兄者のものだ。
姉者の言うとおり、夢に鍵がかからないというのはやはり、本当らしい。
(´<_`*)「おお、兄者じゃないか。ようやく会えた!」
( ´_ゝ`)「この裏切り者」
(´<_`;)「兄…者…?」
( ´_ゝ`)「お前が死ねばよかったんだ。
普段冷静ぶってるくせして、いざとなればこれじゃないか」
俺が会うことを渇望していた兄者は、ひどく冷たい声でそう言い放った。
俺の知る兄者はバカで、明るくて無意識でないかぎり人を馬鹿にするようなことは言わない。
しかし、今兄者の声ははっきりと悪意を放っていた。
( ´_ゝ`)「冷静な態度は、人からバカにされたくないから。
俺と普段一緒にいるのは、俺以外と話すのが怖いから。
そして、ここにいるのは」
(´<_`;)「違う。俺は、兄者に会いたくて…。話がしたくて」
( ´_ゝ`)「話したいなら扉をやぶればいい。なぜ、それをしなかった」
(´<_`;)「それは…」
いつの間にか辺りは夕闇に包まれていた。カンカンと耳障りな音がしていた。
カンカンという音がうるさいはずなのに、兄者の声は明瞭に響く。
( ´_ゝ`)「怖かったんだろう、弟者?
部屋を開けても誰もいないとわかるのは」
俺の意識が警笛を鳴らす。
これ以上聞いてはいけないと悲鳴を上げる。
心拍数が上がり、頭がガンガンする。
耳をふさぎたいのに、俺の体はぴくりとも動かない。
( ´_ゝ`)「最低だよ、弟者。お前が死ねばよかったのに」
(゚<_゚ )「ああぁああぁぁあああああぁっぁぁぁぁぁぁ」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ
偽物偽物偽物偽物偽物偽物偽物偽物偽物偽物
こんなの兄者じゃない兄者じゃない兄者じゃない兄者じゃない
だって兄者は兄者は兄者は兄者は兄者は
今も、部屋に――。
l从・∀・ノ!リ人「顔が真っ青なのじゃ。どうしかたのじゃ?」
(´<_` )「……妹者?」
妹者が愛らしい笑顔を浮かべていた。
辺りは夕闇ではなくて、ぬいぐるみが沢山並べられた部屋だった。
そうだ、俺は妹者とトランプをしていたんだっけ。
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者、負けそうだから焦ってるのじゃ」
(´<_` )「そうか、俺の番だったな」
俺の手札はジョーカーばかりだった。
いくら頭を使おうと、これじゃあババ抜きでは勝てっこない。
俺は近くにあった猫のぬいぐるみを抱えると小さくため息をついた。
l从・∀・ノ!リ人「また、ため息なのじゃ。妹者とのトランプはそんなにつまらないのじゃ?」
(´<_`;)「いや、そんなことは」
l从^ー^ノ!リ人「それともちっちゃい兄者は、こっちのほうが好き?」
妹者は、その言葉と共に洋服を脱ぎ捨てた。
小学生のはずなのに胸は大きくふくらみ、その体は艶やかだった。
妹者はゾッとするほど大人びた表情で、俺の体を抱きしめた。
l从^ー^ノ!リ人「弟者はこのままでいいの。何もしらないままで、ずっと妹者とこうしていればいいの。
弟者は悪くない。貴方は悪くないの」
妹者の声は完全に大人のものだった。
その体はやわらかく完全に小学生のものではなかった、言葉遣いも大人そのもの。
その声は甘やかで、くらくらするほどいい香りがした。
l从・∀・ノ!リ人「妹者と、して。ね?」
愛らしい妹が、俺の知らない大人の姿で俺を誘惑する。
ずっとここにいましょうと告げる。
ずっとこのままここにいてもいいかと、俺は考えるのを止めてしまいそうになる。
暖かい手が俺の体をまさぐり、俺を裸にしようと――。
(♯゚_ゝ゚)乂「テメェ!何うらやましいことしてやがる!!!」
部屋に漂う甘い空気は乱入者と共に霧散した。
\(♯´_ゝ`)/「弟者、テメェ人がいない好きに妹者たんと何いちゃいちゃしてやがる!
実妹とパチキンイベントなんてうらやましい真似誰がさせるか!!」
(´<_`;)「あ、兄者っ?!」
(♯´_ゝ`)「そもそも、妹者たんは小学生のロリ体系なのがいいんじゃないか!
都合良くエロ本のお姉さんと混ぜるんじゃない!兄者悲しい!」
それはどこからどうみても、兄者だった。
ただし、ハートとピンクとレースがふんだんに使われた見るに堪えない少女趣味満載のひらひら衣装だ。
妹者が着るならともかく、自分と同じ顔の男が着ているのを見るのは見るに堪えない。
(♯´_ゝ`)「わざわざ探しに来てあげた、お兄ちゃんにこんな仕打ちをするのが弟ですか
兄者信じられない!」
探しに来てあげたのはこっちの方なのだが、そんなことはお構いなしに兄者がさわぐ。
お前はロリの良さがわかってないとか、三次元ロリに手をだすの正しくないと、兄者は自説を並べ立てた。
(´<_`;)「本当に兄者か?」
( ´_ゝ`)「これが兄以外の何に見え
……あ、そういえば、変身中か。
今の俺のことは魔法少女兄者と呼んでくれ!」
兄者は衣装とおそろいのピンクのステッキをふると、ばっちりポーズを決めた。
(´<_`;)「本当に兄者なのか?
でも、兄者は――」
カンカンと耳障りな音がし始めた。
夕闇の中には線路と道路と踏切が一台たっている。
( ´_ゝ`)「おい見ろよ、弟者! 踏切だ」
( ´_ゝ`)「何って、見ればわかるだろう。
踏切を持ち上げているのだ!」
( ´_ゝ`)「何を言う弟者!
これは俺らと踏み切りとの真剣勝負…! 叩き折るなど邪道だあああぁああぁ!!」
そうだ、はじめて目の前でみる踏切に俺と兄者は興奮していた。
兄者は踏切を持ち上げようとはしゃいで。
それから、
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
衝撃が体を走って
真っ赤な血が広がって
兄者はピクリとも動かなくなって
つまり、兄者はとっくの昔に死んで――
( ´_ゝ`)「裏切り者」
兄者が言うのも当然だ。
俺が止めなかったから、兄者は死んだのだ。
俺は兄者が死んだことを認められなくて、兄者が部屋に引きこもっているのだと信じようとしていた。
∬´_ゝ`)「あんたの見たいこと、見たくないことが沢山あるだろうけど、目をそらしちゃだめよ」
姉者の言葉がよみがえる。
姉者、あんたは真実を知っていたのか?
知っていて、俺に見せつけようとしたのか?
( ´_ゝ`)「お前は俺を殺したのに、なぜのうのうと生きている。
なぜ、死なない?なぜ認めない」
(;<_; )「う…あ…」
涙が、罪悪感があふれて止まらない。
俺は双子の兄者を殺した。殺したのに知らない振りをして、のうのうと生活していた。
この世に、これ以上罪深いことがあるだろうか。
兄者ごめんなさい。殺してしまって、忘れてしまって、信じようとしなくって。
俺は兄者の言うように死ななきゃいけない最低野郎だ!!!
(;<_; )「あにじゃっ、ごめ」
(;´_ゝ`)「いや、こっちのほうこそスマン」
(;<_; )「ごめんなさ…って、あ」
俺の謝罪に答えた兄者の声は妙に軽かった。
先ほどまでの冷たい声が嘘のように兄者は魔法少女ルックで笑っている。
(*´_ゝ`)「いやぁ、弟者ったら責任感強い方だと思ってたけどここまでとは、思わなかったわ
悪いのは俺の方なのに、謝り出すとは予想外☆」
(;<_; )「でも、兄者は死ねって」
( ´_ゝ`)「そうだ。流石弟者は死ぬべきだ」
Σ(´く_` ;)「誰っ!? 俺か?俺なのか?
何で?どうして?!何がびっくりファンタジー!」
俺の前にはいつのまにか二人の兄者が立っていた。
片や冷たい声で俺を糾弾する兄者、片や珍妙な魔法少女姿の魔法少女兄者。
兄者は冷静に、魔法少女兄者はもう一人の兄者の出現にうろたえながら立っていた。
( ´_ゝ`)「死ねばいいんだ」
(;´_ゝ`)「弟者たん死んジャイヤン!!!」
二人の兄者の声が響いた。
俺と兄者と魔法少女兄者は夕闇の踏切前にいた。
カンカンと踏切は音を立て、遠くには電車の姿が見えている。
俺の近くには、見覚えのある俺たちの自転車が転がっていた。
( ´_ゝ`)「流石兄者はここで死んだ」
(;´_ゝ`)「いや、死んでないから。ピンピンしてるから」
兄者は死んだという。
魔法少女兄者は死んでいないという。
どちらも兄者で、俺はどちらを信じていいかわからない。
(;´_ゝ`)「っ…。ここまで来てダメなのか?」
魔法少女兄者が冷や汗をたらして言う。
なぜ、そんな顔をするのだろう?
兄者が死んでいなくても死んでいても、俺は最低野郎で死ななきゃいけないことに変わりはないのに。
(;´_ゝ`)「どうする、せっかくここまで来たのに。
弟者が信じてくれないと、ダメなのに」
(´<_` )「もう、いいんだ兄者
そんなに気をつかわなくて。俺は自分のことしか考えない最低野郎なんだ」
(;´_ゝ`)「弟者っ!お前人の話を聞けっ!」
(´<_` )「ありがとう、魔法少女の方の兄者。会えてよかった」
兄者の顔が歪む。そんな反応をしてくれるなら死にがいもあるってもんだ。
俺は踏切をくぐり、兄者の変わりに電車にひかれようと、線路内に降り立つ。
そして、
(♯゚_ゝ゚)「こんの、あほんだらっ!!!」
バキッという異音と共に、踏切棒が叩き折られた。
魔法少女兄者が呆然とする俺の手を引き、そして思いっきり後ずさり
――そして、後方から走ってきた車にぶつかった。
衝撃、列車の通り過ぎる轟音
血だらけの兄者の顔が見えた
ついでにいうと俺もどこかをぶつけたらしい。体のあちこちが妙に痛かった。
(♯´_ゝ`)「同じ事二回も繰り返すつもりですか?
もうアボカドバナナかと!
なんで、お前と二人してまた車にひかれなきゃならんのだ」
(´<_`;)「車?あれ、電車にひかれたんじゃ」
(♯´_ゝ`)「車だよ車!
踏切で遊んでて、電車にびびって逃げたら、急に来た車にドーン」
(´<_`;)「兄者は死んだんじゃなかったのか」
(♯´_ゝ`)「気絶してただけだ。
目が覚めたら病院だし、お前はいつまでも目をさまさないやらで大変だったんだぞ」
(´<_`;)「でも、兄者は部屋で引きこもって」
(♯´_ゝ`)「病室で未だに目覚めてない奴が何を言う」
(´<_`;)「……は?」
何が何だかわからない。
魔法少女兄者が言うには、踏切前で車にひかれた俺はずっと眠っているらしい。
( ´_ゝ`)「お前、俺より外傷が軽いはずなのにずっと目が覚めないから、皆心配してて。
意識が戻らない原因がお前の夢――つまり、深層心理にあるんじゃないかって、姉者が。
それで、お前の夢にに潜って、探していたんだ」
(´<_`;)「ここは俺じゃなくて、兄者の夢だろう?
俺の方は兄者が部屋に引きこもって返事もしないから、姉者が夢なら話せるんじゃないかって」
( ´_ゝ`)「俺が、お前に返事をしない時点でおかしいと思わんのか貴様は」
(´<_`;)「いや、しかし」
どういうことだ?
さっきから俺と兄者の意見が食い違って一致しない。
俺は姉者の手によって、兄者の夢に入った。
なのに、兄者も姉者によって俺の夢に入ったのだと言う。
(♯´_ゝ`)「大体、俺がひきこもったら母者は鉄拳でドアを叩き破るだろうが。
妹者は泣くに決まってるし、父者は…そうだな、学校に土下座にいくな。
というか、そもそもお前と姉者以外俺を放置っておかしいだろ常考」
(´<_`;)「あんたの見たいこと、見たくないことが沢山あるだろうけど、目をそらしちゃだめよ
と、姉者は言っていたぞ。いかにも姉者が言いそうなかっこつけじゃないか」
( ´_ゝ`)「その夢で追い詰められていたのはお前だけの件について。
俺はお前が電車につっこんだ以外は、生ヘリカルたんを堪能してたぞ」
(*´_ゝ`)「ちなみに、姉者が言いそうなかっこつけポエムなら俺も聞いたぞ!
『目をそらさないで、兄者。弟者を目覚めさせることができるのはあんただけだから』
これなんかいかにも姉者が好きそうだろ」
「目をそらさないで、××。××を××××せることができるのはあんただけだから」
Σ(´<_`;)「それは、姉者の言っていた意味不明発言……」
( ´_ゝ`)b「まあ、起きてみればどっちが正しいかわかるだろ。
妹者がお前とセクロスしようとした理由とかな」
(゚<_゚ )「それは言うなぁああああああああああああああああ!!!!!」

そして、俺は目覚めた。
目を開いたのではない。はっきり目覚めたのだ。
俺は見覚えのない入院着を着ていて、白い病室の中にいた。
l从;∀;ノ!リ人「ちっちゃい兄者っ!」
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「うぉぉぉぉん、弟者ぁあああああ!!!」
@@@
@# 、_@
( ノ ) 「心配かけるんじゃないよ。まったく…この子たちは」
俺の周りでは、妹者と父者が号泣していた。
母者は起こっていたけど、その怒り声に力は入っていなかった。
∬´_ゝ`)「おはよう、弟者」
姉者がヘッドホンとゴーグルが一体化した様な機械を手にし微笑んでいた。
化粧もセットもバッチリな姉者は気合いの入った服装で立っていて、流石に夢と違っていた。
( ´_ゝ`)「やっぱ、壮大な夢オチだったろう?弟者」
――どうやら、兄者の言葉は正しかったらしい。
※
長い間寝ていたせいもあって、俺はリハビリ生活を余儀なくされていた。
ちなみに、早々に目覚めていた兄者のほうはとうに退院していて元気なものだった。
そんな俺の病室に、兄者と姉者は俺の疑問に答えるという名目で訪れていた。
(´<_` )「それで、何故俺はずっと寝ていたんだ?体に異常はなかったんだろ」
∬´_ゝ`)「そうねぇ、夢の中で兄者の姿を借りて出てきたのが弟者の見たくない記憶だったとすると
そうねぇ…」
(♯´_ゝ`)「俺を見たくないとは、ひどいやつだな弟者」
∬´_ゝ`)「夢の中の弟者は自分のせいで兄者が死んだと思いこんでいた。
でも、その記憶を忘却し兄者は部屋に引きこもっていると考えていた」
(´<_`;)「……改めて言わないでくれ、死にたくなる」
∬´_ゝ`)「まあ、あれね『兄者が死んだ。しかも自分が殺した。という現実に対面したくないから夢にひきこもっていた』
このあたりが妥当な解釈じゃないかしら?
夢の中に現れた私は、『弟者の目覚めたいという意志』ってところかしら」
姉者は俺の疑問に次々と答えていく。
この姉者の解答っぷりをみると、本当に全てを知っていたんじゃないかという疑念が働いてしまう。
( ´_ゝ`)「ブラコン乙」
Σ(´<_`;)「お前が言うな!」
∬´_ゝ`)「結論から言うと、我が家の弟者くんは壮大な早合点のため皆に迷惑をかけたってわけね」
( ´,_ゝ`)「やーいやーい。早合点早合点!」
(´<_`;)「そこまで、言わなくてもいいだろうが!」
∬♯´_ゝ`)「反省の足りない元凶の元凶にはお仕置きが必要ね。
大体、踏切で遊ぼうなんて兄弟そろっておつむがたりなすぎよ」
(´<_`;)「いや、アレは兄者が踏切に勝手に興奮して」
(;´_ゝ`)「だって踏切だぞ。
家のそば踏切なんかないから超レア☆じゃん!」
∬♯´_ゝ`)「あんたたち~」
あんたたちを轢いた車の運転手さんがうんちゃらかんちゃらとか。
爺者や婆者をはじめ、親戚中があつまって大変だったとか。
夢に侵入する機械を勝手に使用したのがバレて怒られた。ひょっとしたら首になるかもとか。
俺たちは、その後延々と姉者に説教をうけた。
(;´_ゝ`) (´<_`;)「すみませんごめんなさいもうしません本当にごめんなさい」
ちなみに、俺と兄者は皆に迷惑をかけたとして母者からもきつく制裁をうけた。
妹者と父者には泣かれるし、今後踏切にだけは絶対に近づくまいと決意した。
あと、悪戯は兄者がどう言おうと絶対にやらない。ピンポンダッシュもオレオレ詐欺ごっこも絶対にだ。
これは後日のことであるが、部屋から夢の中の大人妹者にそっくりなお姉さんの出ているエロ本が出てきたときは、正直泣いた。
妹者には心の中でいくら謝っても謝りきれず、プリンとアイスクリームとパフェを後日おごった。
お菓子を食べる妹者は本当にかわいらしくて、夢の中とはいえ邪な思いを抱いたことを俺は反省した。
( ´_ゝ`)「それにしても見事なまでの壮大な夢オチだったな」
(´<_` )「ああ、壮大な夢オチだったな」
( ´_ゝ`)「そんな壮大な夢オチワールドの中、お前を捜し回ったこのお兄様は偉大だろう」
(´<_` )「魔法少女姿だったがな」
(*´_ゝ`)「あの変身ステッキは、渡辺たんのものだ。いいだろ、いいだろ」
夢の中でアニメ美少女はステッキがないと言っていたが、兄者が持っていたのか。
助けに来たといいながら、平然と遊んでいる兄者につい笑いがもれる。
(´<_` )「流石だな、兄者」
( ´_ゝ`)「壮大な夢オチにもめげないとは弟者も流石だな。
ついでに、いつものやっとくか」
Σd(´<_` )「まかせておけ」
俺の家族は、ふがいない俺でも心配してくれる世界一流石な一家で、
俺の兄者は夢の中でも助けてくれる世界一流石な兄者で、
そして、そんな家族を持った俺は世界一流石な弟者なのだろう。
( ´_ゝ`)b 「「流石だよな俺ら」」 d(´<_` )
END
お題
開くクレバスから出現する炎の鬼神母者
ごらんの有り様だよ
「これは俺らと踏み切りとの真剣勝負…! 叩き折るなど邪道だあああぁああぁ!!」
魔法少女兄者
玉兎の夢さんの
こちらにまとめてもらってます。
いつもありがとうございます。
[私信]
感想スレ、ブログ等で感想くださった方々ありがとうございました。
ストーカーの如くチェックしてます。
絵スレで貰ったイラストは家宝です( ´_ゝ`)bd(´<_` )