プロローグ 乙女とチョコレート
2月14日、聖バレンタインデー。
菓子製造メーカーはその社運と売り上げを賭け、
女は人間関係を潤滑にするためにささやかな資金を投資し、
乙女が自らの思いをチョコレートに託す日。
川 ゚ -゚)「このチョコレートをプレゼント用に包装してくれ。」
ある乙女は何件も店を回り吟味した上、こう言うだろう。
ξ*゚⊿゚)ξ「……受け取ってくれるかしら」
また、ある乙女は慣れない作業にヤケドや傷を作りながらこう言うだろう。
(*゚ー゚)「こっちが、お父さんの分。こっちが、友達の分。
それから……本命チョコ」
ある乙女は、一つのチョコレートに他とは違う思いをこめて、こう言うだろう。
(#'A`)「見える見えるぞ、資本主義に踊らされるリア充の姿がっ!!!
許してなるものかぁっっ!!!!」
これはある一人の男が起した、愛のための戦争の物語である。
('A`)( ^ω^)(´・ω・`)愛は戦争のようです
第一話 少年は反乱を決意する
【 ('A`) 】 2月13日 某ファミレス
(#'A`)「見える見えるぞ、資本主義に踊らされるリア充の姿がっ!!!
許してなるものかぁっっ!!!!」
(;^ω^)「ちょ、落ち着けお」
(#'A`)「これが落ち着いてられるかっ!!!
絶望したっ!ぶったぎってやるっ!」
俺は世間にはびこる不条理に声を上げた。
だって、そうだろう?
リア充とモテだけが、優遇され非モテが辛酸をなめる日なんてあっていいものか!
そんな日、クリスマスだけで充分じゃないか。
(;^ω^)「気持ちはわかるけど、ファミレスで叫んだら追い出されるお」
('A`)「……だが断るっ!」
( ^ω^)「そんなことしたら、注文しているポテト山盛りはどうなるお」
コーラとオレンジジュースを混ぜた物体をズズッとすすりながら、内藤が言う。
ポテトには俺も出資することになっていたから、俺はドリンクバーへとおとなしく向う。
次の飲み物はオレンジジュース+サイダー。君に決めた!
('A`)「しっかしなー、今もリア充たちがエロを最終目的にして黒い物体を購入してると思うと」
( ^ω^)「まあまあ、外でも見て落ち着くといいお」
('A`)「思いっきりバレンタインフェアじゃねぇか、死ね」
といっても、ショボンが合流するまで特にすることもないので、俺たちは外をぼんやりと見る。
俺たち高校生を狙ってか、窓から見える店がことごとくチョコを売ってるのが死ねと思う。
おい、本屋でチョコを売る必要は無いだろう常考。
(;´∀`)(,,#゚Д゚)
( ^ω^)「おっおっ、モナーたちがいるお。」
('A`)「ああ、お前ら同じ委員会だっけ。でも、モナーがいるってことは……」
( ・∀・)「……え?いいの?悪いね」
<(' _'*<人ノ「いえ、受け取って下さるだけで嬉しいです」
| l|*゚ー゚ノl「私のチョコも受け取ってください!」
おにゃのこ達に囲まれるイケメン。それをなすすべもなく見守るその友人二人。
不条理な世の中の縮図が光景がそこにはあった。
( ´∀`)ノシ (,,゚Д゚)ノ
(*^ω^)ノシ「あ、向こうも気づいたみたいだお
おいすー、だお」
('A`)「アイツらよく友達やってるよな。俺ならキレる」
いちゃつくイケメンの隣で待ちぼうけなんて真似、俺なら絶対にごめんだ。
俺ならまず丑の刻参りだね!
( ^ω^)「あの三人と、しぃちゃんは生まれる前からご近所さんの幼なじみらしいお」
(;'A`)「mjd?しぃって、椎野だよな。あのやけにおとなしい子。幼なじみ属性かよ。
それにしても、生まれる前からって相当だな。
俺らだって小学校くらいからだろ?」
( ^ω^)「そうそう。ギコはしぃちゃんが好きなのに、もう10年も告白できてないとか。
モナーが言ってたお」
(;'A`)「ヘタレってレベルじゃねーぞ」
( ^ω^)「ちなみにしぃちゃんもギコのことが好きだとか。で、こっちも10年ほど」
('A`)「ヘタレGJ!一生くっつくな」
Σ三(;><)(;´∀`)ドンッ (゚Д゚;,,)
( <●><●>)「君は一体何をやってるんですか」
(*‘ω‘ *)「あぶないっぽ」
(;><)「あう。ごめんなさいなんです」
窓の外では、そのモナーに誰かがが突撃していた。というか、ぶつかっていた。
ん?一緒にいるギョロメに見覚えがあるな?
(;^ω^)「クラスメイトの顔くらい覚えろお」
('A`)「あー、なんかいつも三人でつるんでるやつらだっけ?
あいつらも仲いいよな」
(´・ω・`)「なんか、幼なじみらしいよ」
窓の外の光景に夢中になっていた俺たちは、その声に振り向いた。
きっちりと着込まれたブレーザーに、高いだけの身長、それにしょんぼり顔。
間違いないショボンだ。
( ^ω^)ノシ「ショボンおいすー」
(´・ω・`)ノシ「おいすー」
ショボンと内藤はお互いに手をブンブンと振り合う。
何だこれ、はやってるのか?俺はやらないぞ。
('A`)「幼なじみ大杉だろう常考」
さっきから話している、よく言えばぽっちゃり悪く言えばピザの内藤ホライゾン。
今やってきたノッポのショボンこと眉下ショボン。
そして、身長こそ低いけど魅惑的なフェイスのこの俺、鬱田ドクオの三人は小学校からのつきあいだ。
(´・ω・`)「まあ、住民の移動も少ない街だからね。この辺り学校も少ないし」
そんなもんか?答えようとしたところで、店員がポテトを持って現れる。
ショボンはこれ幸いとドリンクバーを注文し、内藤はポテトにむしゃぶりついた。
(*^ω^)「芋マジうめーwwwww」
(;'A`)「おい、俺も金出してるんだから全部食うな!」
(´・ω・`)「あ、僕も食べようかな」
男三人でムシャムシャとポテトを食うことに集中する。
内藤が馬鹿みたいに食うので、俺とショボンは自分の分を確保するので精一杯だ。
ほぼ一人でポテトを食い尽くした内藤は、ピザと丼を追加注文する。
( ^ω^)「あぶりトロ丼!あぶりトロ丼っ!」
ピザがピザ食ってどうするんだよ。俺はため息をつきながら、窓の外に目を移す。
畜生、イケメンの周りに女が増えてやがる。
イケメンが女を呼び、店頭に置かれたチョコが売れていくってどんなループだよ。
(;´_ゝ`)
ん?あそこにいるのってうちの学校の生徒じゃね?
本屋の袋を持ってやたらとキョロキョロしてやがる。
俺は今、確信を持って言える。ぜってーアイツはモテない。完璧な非モテオーラだ。
('A`)「おっ、本屋の前に不審者がいるぜ。エロ本か?」
(´・ω・`)「あー、あれは二年の双子の片割れだね。
髪型的に兄のほうかな?」
(;'A`)「お前無駄にくわしいな」
注文しやがったのにまだメニューを見ていた内藤が、顔をあげる。
そういえばこいつって目はよかったっけ。
せっかくなので、不審者を指さして「アイツ何持ってんの?」と聞く。
( ^ω^)「なんかピンク色の紙の束?みたいのが見えるお。
本とか雑誌じゃないみたいだお」
何だ、ツマンネ。
エロ本じゃないなら、男に興味はないというわけで俺はショボンに目を戻す。
俺たちがファミレスに来たのは、ドリンクバーで錬金術でも人間観察でもないんだから。
(´・ω・`)「ごめんよ、遅くなって。委員会だったんだ」
('A`)「ほっとけよ、図書室なんか」
(;´・ω・`)「開けないと生徒会長がうるさいんだよ。
あの人常連だし、他の委員出てこないし」
('A`)「生徒会長ってあの美人だろ。超美人。
どうせ、話すなら会長より、断然学園のアイドルデレたんζ(゚ー゚*ζだね」
まあ、デレたんと話たことなんて一度もないんですけどねー。
ハハッ。俺が最後におんにゃのこと話したのはいつだったかなー。
どうしてだろう、涙が止まらないよー。
(´・ω・`)「でも、話してみると意外といい人だよ」
('A`)「そうか?」
( ^ω^)「まあ、委員長よりはいい人だと思うお」
ピザをもっしゃもっしゃと食いながら、内藤が話す。
畜生、芋ほとんど食ったくせにいい身分だな。
(;'A`)「あー、津出はキツイな。顔は悪くはないんだが」
(*^ω^)「まあ、僕はあの子一筋なんですけどねー」
(´・ω・`)「それ幼稚園の時の話なんでしょ。しかも、一度会ったっきり」
(*^ω^)「それでも、あの約束は今も有効だお。
迷子になってたどり着いた公園で、いっしょに遊んだ女の子。
ちゃんと結婚しようって約束もしたんだお!」
ピザがピザを食いながらモテエピソードを語る。いや、この話何度目だよ。
次に続く言葉は、「あの子は僕のことをブーンって呼ぶんだお。だからすぐわかるお」だろ?
( ^ω^)「あの子は僕のことをブーンって呼ぶんだお。だからすぐわかるお
だから、僕はあの子と再会していつか結婚するんだお」
俺とショボンのはため息をつく。
いくら輝かしいモテエピソードがあったとしても、これはねーよ。
思い出の国へとダイブしかける内藤を引き留めるため、俺は口を開いた。
('A`)「内藤、ショボン聞け、現実を見ろ。
いくら輝かしいエピソードがあったとしても美人と知り合いでも、現実はどうだっ!!!」
(;´・ω・`)(;^ω^)「……っ」
(#'A`)「思い出の女の子はチョコをくれたか?会長はどうだ?お前らのことを見てくれたか?
俺たちが求めているのは、チョコレートと名付けられた神々しいあの物体!
ひいてはモテの証明だろっ!」
(;´・ω・`)「……確かに」
(#'A`)「しかし、外をみろっ!
現実はごく一部のモテに世界は支配されている。
俺たち非モテと言ったら人間以下の扱いじゃないか」
(;´∀`)(,,;-Д-)=3
モテ モテ
| l|*゚ー゚ノl( ・∀・)<(' _'*<人ノ
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi リ´-´*ル
モテ モテ
('A`)「一握りのモテだけが勝利し、非モテは虐げられる。
俺はそれに耐えられない!
だから、俺は決意した」
(;^ω^)「一体、何なんだお!」
(;´・ω・`)「ドクオ。君……」
('A`)「俺は明日、学校を乗っ取る。
バレンタインと全てのモテ男に、俺は戦争を申し込む!」
溶けた氷が、ガラスにぶつかりカランと音を立てる。
それは、俺たちの勝利を約束する鐘の音に聞こえた。
【 ξ゚⊿゚)ξ 】 2月14日 1-3教室 休み時間
ξ゚⊿゚)ξ「――よしっ」
鞄を開けると、チョコレートを入れた袋が無事か何度もチェックする。
リボンは曲がってない?ラッピングに変な皺は?チョコは割れてない?
そんな確認を、休み時間になるたびにしてしまう私はきっと馬鹿なんだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「今日が学校でよかったわ」
週休二日を完全に無視した補習授業。
いつもは休みたくてたまらないけど、今日だけは感謝したい。
バレンタインなんだから、好きな人に会いたい。そう思わない?
まあ、三年生は休みだから三年生が好きな子には可哀想だけど。
ちらりとアイツの方を見る。
アイツは友達に囲まれてなにやらわいわい話し合っている。
「昼休み」、「決行」?何のことだろう?
ξ///)ξ「……まだ渡したわけじゃないんだから」
アイツを見ていると顔が赤くなって、心臓が早くなる。
それから、鞄の中身をもう一度チェックする。チョコレートはちゃんと鞄に入っている。
不格好なチョコレートだけど、アイツは気に入ってくれるかしら?
(*'A`)「これで俺たちの勝利だぁぁぁぁっ!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさいっ!」
突然の大声に私は、大声で怒鳴り返していた。
見れば教室中が私の顔を見ていた。もちろん、アイツも。
どうしよう。やってしまった。これじゃあ口うるさい女子じゃない。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、」
違うの。私、考え事をしていてつい。その、一言がどうしても言えない。
アイツのぽかんとした顔に、ズキンと心が痛む。
お願い。他人に嫌われてもいいから私のことキライにならないで。
(#'A`)「委員長様はいつも偉そうでいいですねぇ
ちょっと、はしゃいだだけですぐに怒鳴る権利があるんですから」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、アンタ達がうるさいのが悪いんでしょうがっ!」
私のバカっ!ゴメンでしょう、ここは!
それなのに、言えない。ゴメンのひとことが口から出ない。
(;´・ω・`)「……落ち着こうよドクオ」
(;^ω^)「委員長も落ち着くお。うるさくしちゃったのは謝るから」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、アンタが謝っても仕方ないでしょ。悪いのは鬱田なんだから」
(;^ω^)「でも……」
ξ#゚⊿゚)ξ「私は鬱田に言ってるの!アンタじゃないわ
だから、何でアンタが謝るのよ」
(#'A`)「そうだ、お前はひっこんでろ!」
売り言葉に買い言葉。
どうにかしないとって思うのに、私の口はどんどん酷い言葉を並べ立てていく。
何でこんな態度しか、私はとれないの?
さっきまでアイツは笑っていたのに。私がそれをダメにしてしまった。
浮かれていた気持ちがしぼんでいく。
そのかわりに、ドロドロとした自己嫌悪が私をいっぱいにする。
ξ ⊿)ξ「……何やってるんだろう、私」
素直になりたいのに、なれない。
鞄に入れたチョコレートがやけに重かった。
【 ('A`) 】 1-3教室 昼休み
( ´∀`)「内藤君はいるモナか?」
( ^ω^)「あー、こっちだお。急に呼び出してスマンかったお」
モナーは昼休みが始まってきっかり5分後にあらわれた。
補習が終わったらすぐ来いとメールに書かせたはずなのだが、まあいいだろう。
休み時間にこっちを見ていた委員長だけが気になるが、俺は使命に準じるだけだ。
( ´∀`)「で、用って何モナ?」
( ^ω^)「悪いけど、僕たちに協力してもらうお」
(;´∀`)「え?」
(´・ω・`)「君なら僕たちの理想をきっと理解してもらえると思うよ」
内藤がモナーの体をがっちりとつかみを拘束したところで、俺は教壇に駆け上った。
黒板の傍に置いてある三角定規を手に取り、教卓を蹴飛ばす。
派手に金属音が響き、教室にいる全ての奴が俺を見る。
('A`)「この教室は俺たちが占拠したっ!
俺たちは今より学園全土を支配し、バレンタインとモテ男を抹殺するっ!
おとなしく投降して、チョコレートを差し出せっ!!!」
(#'A`)「この俺の計画に賛同する全ての非モテたちよ!
武器を持ち、いまこそ立ちあがるのだっ!!!!」
手にした三角定規を頭上に掲げる。
今や教室は大混乱の渦にたたき込まれていた。
(;=゚ω゚)ノ「え?え?何なんだよぅ」
(#'A`)「その手に持っているのはチョコレートだなっ!
かかれっ、ショボンっ!」
(´・ω・`)「まかせてっ!」
ショボンが教科書や辞書で一杯になった革鞄を振り回して、いよぅに迫る。
円の軌道を描いた鞄は、いよぅの手からチョコの入った箱をたたき落とす。
(;=゚ω゚)ノ「痛っ」
同じ軌道を描いて戻ってくる鞄が、今度はいよぅの肩を打つ。
いよぅはもんどりうって、その場に倒れた。
いよぅの両手をビニール紐で拘束すると、ショボンは飲みかけの牛乳をその体にぶっかけた。
ショボンの奴、おとなしい顔してやるな。
ξ;゚⊿゚)ξ「な、なにしてんのよ!
内藤、アンタ鬱田の友達でしょ?止めてよ!」
( ^ω^)「それはできないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「何でよ、アンタも仲間……なの?」
さわがしかったはずの教室はいよぅが倒れたことにより静かになっていた。
そんな中で、一番はじめに我に返ったのは委員長・津出だった。
昼の件といい本当に油断のならない女だ。
津出の野郎、俺らの中で一番温厚な内藤につけ込むつもりか。
(#'A`)「内藤!委員長の言葉に惑わされるな!」
( ^ω^)「僕は、ドクオに従うだけだお。
今の僕を止められるのはたった一人だけだお」
(´・ω・`)「逆らう様なら実力行使をさせてもらう。
この学園からバレンタインを無くすまで、僕らは止まらない」
ビニール紐でモナーを拘束し終えた内藤と、武器である鞄を持ったショボンがそう宣言する。
俺たちはこのVIP高から、バレンタインという6文字の悪魔を倒す立ち上がった同士。
下駄箱をあけため息をつき、机をさぐり涙し、一日の終わりに絶望するような屈辱はもうゴメンだ。
そう、これは戦争なのだ。
('A`)「机の上と中、それからロッカーと鞄の中のチョコは回収する!」
⌒*リ´;-;リ「ひどいっ、ひどいよぉっ」
爪;゚ー゚)「ちょ、やめな!」
爪;゚∀゚)「……チョコが」
友チョコ?自分へのご褒美スイーツ(笑)
どうせお前らそうやって言い逃れておきながら、男にやるんだろ。
義理やるから見逃せ?
……お前ら、俺たちがこうやって行動しなければ渡したか?違うだろ!
(;’e’)「おい、チョコのためにそこまでやるか?」
\(^o^)/「ざわざわ これは大物のよかんが します」
(‘_L’)「私たちもこのままで、いいのでしょうか……」
ん?男子の中でも俺たちの信念に賛同するやつがいそうだな。
さあ、立ち上がるんだ非モテたち。
俺は息を吸い、一人アニソン耐久カラオケで鍛えた声を張り上げた。
(#'A`)「俺たちは非モテにあらず。崇高な理念を持った同士たちだ!
さあ、俺たちを見下した糞ビッチ共のチョコは捨てろ!
勝ち組とイケメンに粛清を下す時が来たのだ!
俺たちは決して、負け組ではないっ!!!」
(#^ω^)「そうだお、立ち上がるんだお!」
(#´・ω・`)「僕らは来る者は拒まない!さあ、立ち上がろう!」
< ;∀;>/^o^\( ;e;)( ;_L;)「俺たちはお前について行くぜ!!!」
男達の彷徨で教室が揺れた。
一人、また一人と俺たちの理念に協力するために漢たちが立ち上がっていく。
俺たちは女どもにひれ伏す弱い男ではない。
俺たちが集まれば何だってできる。
ξ゚⊿゚)ξ「やめなさい、男子」
('A`)「やはり、お前か委員長」
ξ#゚⊿゚)ξ「クラス占拠?学園占拠?おまけにバレンタイン中止?
冗談じゃないわ!この日を何人の乙女が楽しみにしてきたと思ってるの」
ツインテ縦ロールを揺らして、委員長が吼えた。
たった一人で男子の群れにも匹敵するような気の強い声。
マズイな。この調子で言われるとせっかくの仲間が再び裏切りかねん。
ξ#゚⊿゚)ξ('A`)「内藤っ!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「……っ」 ('A`;)
畜生、何故ここでタイミングが被る。
乗っ取り計画を相談中の休み時間といい、コイツ気づいてやがったな。
(;´・ω・`)「内藤、いいから早くっ!」
(#^ω^)「まかせるお!」
内藤の声とその手に持つものに、俺はニヤリと笑った。
ざまあみろ、委員長。こっちの計画通りだ。
(#'A`)「俺に続くものは窓際へ行け!それ以外は……出て行きやがれっ!!!」
(♯`ω´)「うぉぉぉぉおおおお!!!」
雄叫び。そして、内藤が手にした消火器から消化剤が噴出された。
教室中はあっという間に黄色い粉煙に包まれた。
内藤の声に慌ててマスクをはめた俺たちとは違い、まともに粉を吸った奴らは大騒ぎだった。
ξ#;⊿;)ξ「ゲホッゴホッ、みんな逃げてっ!」
委員長は鞄をひっつかみ顔をガードしたが、若干タイミングが悪かったらしい。
咳き込みながらも大声をあげて指示し、女子並びに委員長と一部の男子は教室から脱出した。
(#'□`)「封鎖だっ!!!残りの奴らは窓開けて換気っ!
マスク持ってない奴はハンカチとかで防備しろっ」
(*´・□・`)「こっちはばっちりだよ」
(;ФωФ)「ゲハッゴホッひ、酷い煙なのである」
( ;_L;)「換気、開始ですっ」
俺の指示に従い、ショボンとブーンがドアの封鎖へと向う。
こっち側についた男子は……10人。
クラスの男は全員で20人だから、まあまあか。
(*^□^)「ドアの封鎖完全終了だお!
1-3完全制圧だお」
【 ('A`) 】 1-3教室 作戦本部
('A`)「……同士諸君。まずは、協力してくれたことに感謝する。
改めて名乗ろう。俺は鬱田ドクオ。
このVIP高占拠計画のいわゆる首謀者だ」
( ^ω^)「内藤ホライゾンだお。いわゆる副隊長ってやつですお。
体力と足には自身があるお」
(´・ω・`)「眉下ショボン。参謀になるよ」
チョークの粉みたいな消化剤まみれの教室で、俺たち三人は新たに自己紹介をした。
空中に漂う粉は落ち着いてきたが、消化剤ってのは泡みたいに消えないものらしい。
事前に実験した方がよかったかと、今更反省する。
いよぅの奴死んでないよな。内藤に確認させとこう。
('A`)「我らの今後の作戦方針に関しては、ショボンから今から説明する」
(´・ω・`)「これから僕たちが行う作戦行動は、大きく分けて五つになる」
ショボンはそう宣言すると、黒板にサラサラと字を書き出す
こいつ無駄に字が上手えwww
一方、俺は生徒手帳のメモスペースに同士たちの名前をメモしておく。
裏切ってない奴と、同士を間違えたら仕方ないもんなー。
そんな、しょうもないオチだけは絶対に避けたい。死んでも浮かばれん。
①放送室を奪取して反乱宣言。
②校門封鎖
③イケメン四天王の処刑
④チョコレート没収、チョコを貰った裏切り者の処刑
⑤職員への対応
(´・ω・`)「うんすまない。
見ればわかるとおり、結構行き当たりばったりなんだ」
俺らの計画はシンプル。悪く言えば無謀だった。
いや、100パーセント無謀だと言い換えてもいい。
それでも、俺たちはバレンタインを潰すことに全てをかけていると言ってもよかった。
リア充、カップル御用達行事を潰すためなら俺は鬼でも悪魔にでもなる。
\(^o^;)/「イケメンしてんのう ですって」
(;‘_L’)「まさか、ここまで大規模な作戦だとは
……無謀というべきか、何というべきか」
('A`)「それでも、やるのが男ってやつだ」
(´・ω・`)「①③は僕たちが担当する。
君たち同士には校門封鎖と、チョコレートの没収、モテ男の処刑を担当してもらいたい。
僕たちも作戦が済み次第、救援に向うつもりだ」
< `∀´>「イケメン四天王って誰ニダ?ウリのことカムサムハムニダ?」
(’e’)「校内新聞嫁」
(‘_L’)「VIP高校学園新聞『某スレ』の「マジ死ねモテ男ランキング」の上位常連の男たちのことです
生徒会通信『総合』でおなじみの学園のアイドル、デレたんに匹敵する人気があるとか。
その名前は確か……」
(´・ω・`)「流石弟者、長岡ジョルジュ、眉上シャキン、浦良モララーの四人」
その名前を聞くと、同士たちは息をのんだ。
イケメン四天王を敵に回すことは、全校の女どもを敵に回すことを意味する。
イコール社会的な死。タダで済むはずがない。
('A`)「奴らはVIP高の女子を独占する憎き四人の野郎共だ。
この学校のチョコはやつら四人が独占してると言ってもいい。
だからこそ、奴らを見せしめにする必要があるんだ」
( ^ω^)「それでも、僕たちはやると決めたんだお」
(´・ω・`)「参加できないならおりてもかまわない。
だけど、おりたらどうなるか。わかってるよね」
(#’e’)「やろう!こうなったら俺たちには進むしか道はない!」
一人の男いや、漢の掛け声によって教室は大歓声につつまれた。
納得してない者もいたようだったが、気にすることはない。これで同士はそろった。
lw´‐ _‐ノv「⑤はどうするん?」
(;゚ω゚)(;'A`)(;´・ω・`)「――っ」
大歓声に湧く空気をぶったぎるようにして一人の女生徒が姿を現した。
――何故か、掃除道具入れから。
lw´‐ _‐ノv「びっくりした?ねえ?ねえ?びっくり?」
女は消火器の粉が舞い上がるのもかまわずに、掃除道具入れの傍でくるくると回る。
これミニスカートならパンツ見えるのに、なんでそんなにスカート長いんだ!ねえ?
というか、コイツ誰だよ。何で掃除道具入れに何て入ってたんだよ。
(;ФωФ)「っ、何で!!!」
(=;ω;)ノ「そんなのどうでもいいから助けてくれよぅ
協力でもなんでもするから」
<*ヽ`∀´>「ウリと結婚するニダ!」
lw*´‐ _‐ノv「我輩は米の女王。
というわけで、行こうではないか同士諸君!」
(;´・ω・`)「……三行でお願いできるかな」
制服のスカートの裾をつまんで一礼した道具入れ女におそるおそる声をかけたのは、ショボンだ。
GJ!俺たちが聞けないことをよく聞いた。そこにしびれるあこがれるぅ!
lw´‐ _‐ノv「⑤番はまかせろ」
(;‘_L’)「それ一行です」
lw*´‐ _‐ノv「お米
大
好き」
(#ФωФ)「さっさと出て行くのである、この米女!」
猫目の巨大な男(クラスメイトらしい)のひどくまっとうな意見に、道具入れ女はにこりと笑った。
あれ?この女、ひょっとしたらかわいくね?
掃除道具入れに入っているのはごめんではあるが。
(;´・ω・`)「ちょっとまった。今、五番は任せろっていったよね」
ショボンの声に、教室中の視線が道具入れ女に道具入れ女に集中した。
道具入れ女は、ポケットからラップに包まれたおにぎりを取り出す。
そして、「任せろ」と答えた。
【 ξ゚⊿゚)ξ 】 1-3教室前、廊下
ξ;゚⊿゚)ξ「ゲホッゴホッ……苦し……」
消火器の粉が喉に引っかかって未だに苦しい。
どうしてこんなことになったのか、混乱してよくわからない。
今日は気合いを入れて髪をブローしたのに粉まみれなんて最悪、とぼんやり考える。
ξ゚⊿゚)ξ「何で、こうなっちゃったんだろう」
普段は静かなのに大声を張り上げた鬱田、鞄を振り回して暴力を振るう眉下、
――私に消火器を向けた、内藤。
教室はめちゃめちゃでバレンタインどころじゃない。
それでも、アイツが好きという気持ちを捨てられない。
ξ゚⊿゚)ξ「……好きって、言いたいだけなのに」
アイツの顔を思い浮かべる。
笑った顔、ぼんやりとした顔、驚いた顔。それから……
好きの気持ちがあふれて止まらない。だって、私はずっとずっと……
手にした鞄に目を落とす。
……消火器の粉にまみれた鞄の中で、チョコレートの包みは綺麗だった。
【 川 ゚ -゚) 】 職員室
昼休みといえば図書館は開いているものなのに、その扉は閉ざされたままだった。
補習日だからだろうかと考えてみるが、それはないだろうと思い直す。
我が校の優秀な図書委員は、補習日でも仕事をさぼらなかったはずだ。
川 ゚ -゚)「風邪でもひいたのか?」
仕方なく職員室へいって、図書室の鍵を借りる。
今年になって優秀な図書委員が入るまでは、自分で図書室を開けていたので問題はなかった。
さて行こうかと思った丁度その時、全身を黄色い粉で染めた女生徒が職員室に現れた。
J( 'ー`)し「あら、津出さんどうしたのかしら?真っ黄色よ」
ξ゚⊿゚)ξ「男子が教室を乗っ取りました」
川;゚ -゚)「……」
女生徒の言葉は信じられないものだった。
しかし、冗談で済ませようにも彼女は真剣だったし、何よりもその姿は異常だった。
一体何が起こっているのか知りたい。だが、盗み聞きは私の主義に反する。
彼女の言葉に興味はあったが、私は図書館へと向うことにした。
――その時の判断を、私は後になって後悔することになる。
【 ξ゚⊿゚)ξ 】 職員室
ξ゚⊿゚)ξ「だから、バレンタインに反旗を翻すと言って、教室を乗っ取ったんです!」
J( 'ー`)し「その黄色い粉はチョークかしら?
あらあら、ぶつけられちゃったのね!」
ξ#゚⊿゚)ξ「消火器なんですっ!!!」
担任の母谷先生はニコニコとしながら私の話を、流した。
何、このスルーっぷり!私は真剣なのに!
真剣なのを伝えようと声を大きく上げればあげるほど、先生は笑ってあしらってしまう。
私は三人を止めようと、職員室に来ていた。
どうしてもこの思いと、チョコレートをあきらめたく無かった。
素直になれない私でも、勇気を出せそうなこの日を絶対失いたくなかった。
J(;'ー`)し「消化器……胃でも痛いの、津出さん。
保健室行く?」
ξ#゚⊿゚)ξ「違うんですっ!」
(-@∀@)「まあまあ、落ち着いて母谷先生。
津出~お前のクラス乗っ取られたんだってな?」
母谷先生の向かいの机に座っていた旭先生が、眼鏡を拭きながら私を見た。
ξ*゚⊿゚)ξ「そうなんです!
鬱田がバレンタインを無くすって馬鹿なことを言って。
教室だけじゃなくて、全校をのっとるって」
私は旭先生を見つめて、そう説明した。
よかった。これであの三人を止めることができる。
恨まれちゃうかもしれないけど、誰かが止めなきゃいけないんだから仕方ない。
……わかってくれるよね、うん。
(-@∀@)「いやぁ~母谷先生のクラスは面白いですねぇ。
最近の生徒は元気がないと思っていたけど、そんなこともないですなぁ」
……何、この流れ?何で先生は笑ってるの?
ねぇ、ちょっと笑わないで真剣に聞いてよ。
私こんなに粉まみれになってるのよ!
(-@∀@)「いやぁ~、僕たちもやりましたね。
バレンタインは製菓業界隠謀!バレンタイン不要!中国万歳!」
J( 'ー`)し「津出さん。昼休みが終わるまでには止めるように言っておいてね」
ξ# ⊿)ξ「……もう、いいです」
先生は当てにならない。もう、私が戦うしかない。
【 ('A`) 】 放送室
(´・ω・`)「電源は入れたよ。どのスイッチを押せばいいのかな?」
('A`)「そっちとそっち。
でもって、こっちを押せばピンポンパンポーンって音が流れる」
(*^ω^)「なんだかかっこいいお!」
俺たちはベランダ伝いに隣の教室に入ると、セントジョーンズたちに教室を再び封鎖させた。
セントジョーンズたち同士は、俺たちの放送を待って行動することになっている。
そして、今俺たちは放送室にいる。
放送室の鍵は昨日ちょろまかしておいたから侵入はスムーズだった。
(*'A`)「おう、放送委員なめんな!」
( ^ω^)「僕は緑化委員だからうらやましいお」
(´・ω・`)「どうせ僕は微妙の代名詞図書委員さ……」
めんどくさいと思っていた委員会だが、そこでの経験がこうして生かされている。
いやぁ、経験って大切だねっ☆
俺は今、経験し学習することの大切さを感じているよ。
主に、放送的な意味で。
(´・ω・`)「じゃあ、行くよ」
(*^ω^)「がんばるお、ドクオ」
ピンポンパンポーンと、放送の前に流れる独特の音楽が流れる。
俺は息を吸って、緊張を鎮める。
そして、マイクのスイッチを入れて、
('A`)「我々は今ここにVIP高の占拠と、バレンタインの撲滅を宣言するっ!」
(;^ω^)(´・ω・`)
(-A-)スウッ
目を閉じる。
自分が高揚していくのが嫌というほど、感じられた。
もう戻れない緊張感。それと同時に感じる、信じられないほどの充実感。
俺は目を開く。
(#゚A)「虐げられ続けてきた我が同士たちよ、今こそ立ち上がれ!
リア充とモテに血の粛清を!カップルに死を!チョコを燃やせ!」
(;><)「……?」(*‘ω‘ *)
( <●><●>)「……ふむ」
ζ(゚ー゚*ζ「なーに、この放送?」
(゚、゚#トソン「……バレンタイン禁止」
ミセ;゚ー゚)リ「何これ、冗談かなぁ?」
(`・ω・´)「バレンタイン中止とは面白い冗談だね」
*(‘‘)*「バレンタインなくなっちゃうの?シャキン君」
_
(;゚∀゚)「何だコレ」
从;'ー'从「あれれー、バレンタインがなくなっちゃうと困っちゃうよぉ」
( ´_ゝ`)「むっ、これは俺処刑フラグだと思われ」
(´<_` )「自分にそこまで自信がもてるとは、流石だな兄者」
(*´_ゝ`)「何、俺はチョコもらっちゃうくらいのモテ男子だからな」
(´<_` )「はいはい」
2月14日 12時45分ジャスト
俺たちの宣言は全校に響き渡った