私が何故、強大な魔法が使えるのか。それには深い理由がある。
私は生まれつき半陰陽と呼ばれる性別だった。
男と女両方の性別を持つ半陰陽。私はそれがずっと疎ましかった。
そのせいかどうかはわからないが、私には友達というものは出来たことが無く、性格も根暗だった。
そんな私が唯一持っていた特技が、超能力。10円玉をほんの少しだけ動かせるくらいのささやかな力。
優れたところが何一つない私は、自分の不思議な力だけを心の支えに生きていた。
私には不思議な力がある。他の人とは違う。だから、私は生きていてもいいのだ。そう、思ってきた。
_
( ゚∀゚)「超能力?それはねーわwwwwwあと、オッパイwwww」
だけど、私のささやかな力は否定されてしまって……。
心の支えを否定された私が、死を決意したのはある意味当たり前だったとも言える。
川д川「こっくりさん……こっくりさん……
……死ぬには……どんな……方法が……いい……です……か?」
自殺することを思いついた私は、こっくりさんにお伺いを立てた。
死ぬのが怖かったからじゃない。自殺初心者の私はこうでもしないと心配で心配で、安心できなかったのだ。
上手く死ぬ方法さえわかれば、死に際くらいは上手くいく。そう思っていた……。
川д川「こっくりさん……こっくりさん……
…私の……言葉に……応えてください……」
そして、私の前にそれは姿を現わした。
( )「死にたいのか、女?」
川; д川「え?」
自分の血で書いた五十音の文字、「はい」「いいえ」の言葉、数字、アルファベット。
手にした10円玉と、私の血と文字にまみれた白い髪。
――その上に、それはいた。
私の知る言葉ではとても説明することの出来ない不吉で、奇っ怪で、名状しがたい何か。
四本足の巨大な獣。顔のある場所には何もなく、背には巨大な翼。
尾のあるはずの場所からは蛇が生え、それは体にからみついていた。
( )「死にたいのか、女?」
それは、その獣は人の言葉で告げた。
いや、そんなはずはない。だけど、私は確かにそれの言葉を、声を、明確な意志を聞いた。
( )「死にたければその命を捧げよ。我が意に従え。
お前の矮小な悩みを消し、望みを叶える力をくれてやる」
川д川「悩みが……消え……る?……望みが……叶う……力……?」
宙にふわりと浮いた金属製の小箱。
その中には、
川д川「……黒い」
輝く黒の多面体。
私に力を与えてくれる不思議な、トラペゾヘドロン。
その黒の多面体は私に力を与えてくれる。
その輝きは私の力を引き出してくれる。
私の望みを叶える力、私の体を人とは少し違うそれへと変える不思議な物体。
( )「我を称えよ。敵は全て滅ぼせ。お前の望みはその先にある」
トラペゾヘドロン。その物体は私の心を漆黒に染め、力を与える。
その力に染められた私は、私ではないみたいで。
魔法のアイテムによって変身する、魔法少女を思い出させた。
私はその日、神に出会った。
あの存在が神でないのならば、他に神などいるはずがない。
川*д川「あの人……同じ制服……着てた……」
私は500円玉を握りしめたまま、彼の走り去っていった方向を見つめていた。
同じ学校の制服。同じ学校。遅刻同士。素敵な素敵な繋がり。
私を馬鹿にした愚かな奴等とは違う優しい、声。優しい姿。優しい態度。
川*ー川「……素敵」
ノハ#゚⊿゚)「朝っぱらから色恋にうつつを抜かすなど愚の骨頂ぉぉおおお!!!」
耳障りな声が、彼へと思いを巡らす私の心を現実へと引き戻した。
ふわふわとした甘い思いを打ち砕く、非現実への呼び声。
ノハ ⊿ )「フングルイ ムグルウナフ クトゥグァ フォーマルハウト」
少女が吼えた。
炎のような赤い髪をたなびかせて、この近くの学校のものではない制服をたなびかせて。
ノパ⊿゚)「ウガア=グアア ナフル タダン!」
炎のような髪の少女の言葉は人には発音できないもの。少女の纏う空気は炎。
それに気づいた私は、ポケットから金属製の小箱を取り出す。
ノハ#゚⊿゚)「イア! クトゥグァ!」
川; д川「――くっ」
少女の体から炎が吹き上がる。それと同時に現われる、炎というものを冒涜したかのようなクリーチャー。
そのクリーチャーは、何故か赤い髪の少女へと襲いかかった。
ノハ;T⊿T)「しまったぁーー!!炎のクリーチャー出ちゃった!!」
自らの身を焼かれながら少女が叫ぶ。
焼けこげながらも少女は、懐からネクロノミコン印の祓い文100%とかかれたペットボトルを取り出す。
ノハ;゚⊿゚)「ヤマンソ死ねっ!成仏しろーーっ!!!」
少女がクリーチャーに気を取られている間に、
私は小箱に入った黒い多面体、輝くトラペゾヘドロンを宙に掲げる。
川д川「イァ! イァ!」
トラペゾヘドロンから生じる心地よい黒。
私の髪は風もないのに舞い上がり、漆黒の輝きから巻き起こる黒が私を染めていく。
黒い翼と三つに分かれた燃え上がる目が私を見て、私に力を力を与える。
川∀川「にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!」
意味をもたない音の羅列を私は紡ぐ。それは呪文となり、祈りの言葉となる。
クリーチャーに気を取られた少女に、私の髪から影から現われた触手が放たれる。
ノハ;X⊿X)「――くっはっ」
胸ポケットに入れていたシャープペンシルを、少女の目に突き刺す。
それと同時に、私の影が、触手が全ての炎を黒に鎮める為に蠢く。
這い寄る私の影、私の黒、私の憎悪、全てが染まればいいこの漆黒に。
――何て綺麗な黒。
川∀川「くとぅるふ・ふたぐん にゃるらとてっぷ・つがー しゃめっしゅ しゃめっしゅ
にゃるらとてっぷ・つがー くとぅるふ・ふたぐん 」
ノハ#X⊿゚)「この卑怯者がぁぁぁぁぁっ!!!」
炎なんて要らない。
私が欲しいのは全てを塗りつぶす黒。世界を闇へと沈める力。
私を半陰陽に産んだ世界に、私の力を否定した全てに復讐する力。
普通の女の子になれないのなら、特別な存在になればいい。
特別な存在にすらなれないのならば、バケモノになればいい。全てが無くなれば、私はきっと幸せ。
(;´・ω・`)『大丈夫っ?!』
きっと、彼も私の超能力を不思議な力を馬鹿にする。
そうでなくても、私の裸を見れば目をそらすに決まっている。
だから、だから――
川゚ー川「ねぇ、全てを染めて私のカミサマ。
真っ黒に染まればきっと何も見えないから、きっと幸せだから」
ノハ# ⊿ )「ああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」
全てを染める私の黒。
それさえも焼き尽くそうと燃え上がる、赤い髪の少女の炎。
ノハ#X⊿ )「アタシはこの炎で!腐った世界を!全てを燃やしてみせる!!
全てを焼いてまっさらな世界で!みんな立上がるんだぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
川゚∀川「イァ!全てを黒く!イァ!全てを染めろっ!!!!」
燃える炎、全てを飲み尽くすように広がる混沌たる闇。全ては、全ては―――
この世には、かつて世界を支配した恐ろしい神がいる。
強大な力を持つ神格。その加護と恩恵を受けた人間をある者は「邪神憑き」と呼んだ。
神格の祝福を受けた者たちは、自分の願いを叶えるために、他の邪神憑きと戦う。
('A`)「予言は絶対なんだ。絶対確実の未来
アイツは幼女との輝かしい絶対の未来を約束してくれた。
その為に俺は――」
川 ゚ -゚)「初音姉様――ごほん。もとい、アトラク=ナクアの加護を受けた私に勝つつもりか?
私は――」
川 - )「いや、やめておこう。
これから殺し合う私たちには関係のない話だな」
貞子の前に、次々と現われる強敵。
川д川「……ジョルジュ……くん……?」
_
( ゚∀゚)「世界をおっぱいで満たすまで俺は止まらない!」
再会。
( -∀ー)「ムニャムニャ」
深き海の底、海底都市で眠り続ける青年。
(*^ω^)「おっおっ、君は誰だお?」
宇宙の果てで、たゆたうアホ。
ξ#゚⊿゚)ξ「――邪神憑きだけは絶対に許さない」
(*゚ー゚)「私は八百万の一柱。あなた方が言うところの神のうちの一人かしら?」
(#@∀@)「超常現象など、この世には存在しない!科学こそが全てだ!!!」
姿を現わす、新たな勢力。
(´・ω・`)「――僕は彼のことが好きなんだ。
そのためなら、何だってする。人だって殺してみせる」
川;д川「……あなた……は……」
彼との悲しき対立。
('A`)「ティビ・マグナム・インノミナンドゥム・シグナ・ステラルム」
川 ゚ ー゚)「ありがとう」
_
( ∀ )「俺は……おっぱいよりもっ!!!」
ξ*^ー^)ξ「ねぇ、 」
(,,゚Д゚)「我らは、しぃ様のために」(゚∀゚*)
ノハ#゚⊿゚)「アタシがここで死ぬと思ったら大間違いだぁぁぁっ!!!」
(;@∀@)「ひぃぃぃぃぃいぃ!窓っ、窓にぃ!窓にっ!!!」
(*゚-゚)「下郎め。それが目的か」
(^ω^ )「僕は、ずっとずっと待ってたんだお」
(´・ω・`)「貞子さん。僕は……」
川;д;川「……ショボン……くん……」
( -∀-)「……」
そして――、
( ・∀・)「さあ、解答編をはじめようじゃないか。内藤」
(^ω^ )「……いいのかお?」
( ・∀・)「もう茶番には飽き飽きだ。
それに、君たちには聞く権利がある」
戦いの果てに明らかになる真実。
川д川「……嘘よ……嘘……」
( )「どうせ、死者と自殺志願者たちの集まり。
せいぜい面白く踊ってくれるがいいさ」
(゚川゚)「……つまらん」
( )「退屈しのぎになれば、それこそ僥倖」
(゚川゚)「せいぜい楽しい余興を頼むぞ」
( )「誰が勝つと思う?」
(゚川゚)「この勝負自体何度目だったか?」
( )「さて、忘れたな」
神格の力を手にした者たちは、死なない。
神格の恩恵を受けた者たちは、死ねない。
それに気づかぬまま、愚かな人は永遠に殺し合い続ける。
願いは決して叶わない。
ノハ#X⊿ )「アタシはこの炎で!腐った世界を!全てを燃やしてみせる!!
全てを焼いてまっさらな世界で!みんな立上がるんだぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
川゚∀川「イァ!全てを黒く!イァ!全てを染めろっ!!!!」
燃える炎、全てを飲み尽くすように広がる混沌たる闇。全ては、全ては―――
川゚д川「獣よ喰らいつくせっ!!!!!」
―――神の手のひらの上
END
クトゥルー神話祭りゲリラ投下作品(リンク先は
7×まとめさんの特設ページ)
用意していた短編が間に合わなくて、ついかっとなってやった。
どうしても祭りに参加したかった。今では反省している。
祭りの主催の鋼鉄処女さん、7×さん、参加者の皆さんお疲れ様でした。
デモベ漫画版くらいしか知識のないクトゥルー神話初心者でしたが、楽しかったです。
あくまでも嘘予告編なので本編を書く予定はないです。
期待してくれた人、申し訳ない。