スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第4話 

93 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:38:35 ID:JA8mU53Y0





4 ホムンクルスは救うようです


94 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:39:41 ID:JA8mU53Y0


(´・ω・`) 「久々に来るな……」

僕は幾つかの山を抜け、やっとたどり着いた。
山の合間にある小さな村。

十年ほど前に来てから、どうなったのかが知りたかった。

(´・ω・`) 「顔を隠さないといけないな……」

僕を知っている人間はまだ生きているだろう。
顔を見られて騒がれるわけにはいかない。
持参した布を頭から被る。


目的さえ果たせればすぐに去るつもりだ。

背の低い樹木をくぐれば村の入り口のはずだ。
記憶の通り、背の低い柱が二つ地面にさっている。

(´・ω・`) 「倒れてるかと思ったけど、まだ立っていたか」

村は相変わらず寂れてる。
いつ人がいなくなってもおかしくない。

太陽が昇っているのに、人の姿が見えない理由はすぐに分かった。
入口から入ってますぐ進んだところに村人が集まっている。


95 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:47:33 ID:JA8mU53Y0

そこにはこの村に無くてはならない自然のダムがあるはずだった。

(´・ω・`) (水が……)

かつて僕が来た時と全く同じ状況だった。

(´・ω・`) (なんのために僕が……)

以前訪ねた時も同じようにダムには水が無い。
できる限り水を手に入れる方法を教えて村を出たつもりだったのに、
それはどうやら実行されていないようだ。

(´・ω・`) (ってことは……)

村人をかき分けて奥まで進むと、そこには見覚えのある二人がいた。

一人はこの村の村長。
人間にしては恐ろしく長く生きている。

そして、もう一人は娘。
昔の面影が僅かに残っている。

(´・ω・`) 「やめろっ!」

僕は思わず声を張り上げてしまった。
村人全員の視線が突き刺さる。


96 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:55:31 ID:JA8mU53Y0

/ ,' 3 「なんじゃ、ほまえは?」

l从・∀・ノ!リ人 「!?」

村人は皆、僕を訝しがるように見ている。
村の重要な儀式を、突然現れた見ず知らずのしかも怪しい恰好をした男に止められたのだ。
その反応は当然と言えた。

ただ一人を除いて。
村人のなかで、少女だけが僕の存在に気づいていた。

l从・∀・ノ!リ人 「ショボン先生……ですか?」

姿を明かすつもりはなかった。
ただ彼女が無事に生きていることを知りたかっただけだったのだ。

(´・ω・`) 「そうだよ」

でも、ばれてしまったのなら隠す必要はない。
そう判断して、僕は被っていた布を外した。

村人たちが動揺しているのが手に取るように分かる。
十年前に突然やってきた男が、その時と全く同じ顔で戻ってきたのだから。

(´-ω-`) 「まだ、こんなことをやっているのか」

僕はゆっくりと目を閉じて、過去を思い出す。
この村で、命を一つ救った時のことを。
小さな少女の、小さな笑顔を。

98 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:13:59 ID:JA8mU53Y0

■■■■■■■■十年前■■■■■■■■

(´・ω・`) 「おなか減ったな……」

たった一つ山を越えるつもりが、どうやら山岳地帯に迷い込んでしまったようだ。
行けども行けども緑しか見えなから、嫌になる。

食事はほとんどが果実や野草。
動物を調理する腕はあるけれども、捕まえる武器がない。

(´・ω・`) 「種火はあるんだけどな……」

旅をする錬金術師は意外と多い。
その土地の人に嫌われたり、領主に追い出されたりすることはよくある。

旅の必須アイテムは幾つかあるけれども、錬金術師ならば誰もが【種火】を持ち歩く。
特殊な液体を調合した後に、珪藻土に染み込ませたもの。
それに改良を加えて、威力を落としたのが種火だ。

旅先で火をつけるのに重宝する。

(´・ω・`) (でもま、調理するものがないと意味ないよね……)

足を引っ掛けて頭から地面に突っ伏してしまった。

(´・ω・`) (ん?)

顔に影がかかったのに気づいて見上げる。


99 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:22:10 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「大丈夫……ですか?」

小さな少女が覗きこんでいた。
胸元が若干はだけ、僅かな膨らみを持つ柔肌が目に入った。

僕はあの豚とは違うので、それに見とれたりはしないが。
少し見えただけだ。少しだけ。

(´・ω・`) 「どうも、この辺に村でもあるのかい?」

l从・∀・ノ!リ人 「わからないのじゃ」

こんな山の中に十にも満たなそうな少女が一人歩いているのは驚きだった。
しかも、近くに村があるかどうかわからないという。

とりあえず、食料を持っているかどうか聞くべきか。
頭が働かない。

(´・ω・`) 「ところで、食べ物あるかい」

l从・∀・ノ!リ人 「ある……けど……」

少女の動きにつられて、その後ろを見る。
そこには巨大なイノシシが死んでいた。


100 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:31:52 ID:JA8mU53Y0

(´・ω・`) 「君が殺したの……?」

少女が無手でイノシシを殺せるはずもない。
我ながら阿呆な質問だと思ったが、つい聞いてしまった。

l从・∀・ノ!リ人 「違うのじゃ。追いかけられて、木の上に登ったら、ぶつかって死んだのじゃ。
          でも生ではたべられん。 調理も出来ぬし」

なんとタイミングのいいことか。
僕は勝手ながら神様とやらに感謝することにした。

(´・ω・`) 「ああ……それなら僕に任せてくれないか」

腰から剣を引き抜き、イノシシの首に振り下ろす。
数十回の行為の末、首を落とすことに成功した。

次は内臓を引き出し、肉と骨を切り分けていく。
こういうことは何度もやっているから、それなりに得意だ。

l从・∀・ノ!リ人 「すごいのじゃ……」

(´・ω・`) 「さて、次は調理か」

血で汚れた両手を洗うために、荷物から蛇口を取り出す。
掌より少し大きいくらいの金属製の筒で、
片方は薄く広がっていて、反対側は丸くなっている。

これも錬金術師の旅の必需品。


101 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:39:26 ID:JA8mU53Y0

大樹に切り傷をつけ、薄っぺらい方をそこにねじ込む。
水を呼ぶ特殊な金属を用いているから、木の水分を吸いだしてくれる。
ちょろちょろと流れ出る水で手を洗い、種火を使って火をおこす。

(´・ω・`) 「さて、焼き加減はどのくらいかな?」

l从・∀・ノ!リ人 「その水はどうなってるのじゃ? 教えてほしいのじゃ!」

僕の話は聞いてなくて、どうやら蛇口に夢中のようだ。
それもそうだろう。
こんな技術が山奥の国にあるわけがない。

(´・ω・`) 「その水、飲めるよ」

l从・∀・ノ!リ人 「飲んでもいいのか?」

(´・ω・`) 「勿論」

僕の蛇口はひときわ優れものだ。
出てくる水を可能な限り濾過し、そのまま飲めるようにしている。

他の錬金術師が作れば、木の中の水分が出てくるだけだ。
身体に毒な物を含んだままね。

l从・∀・ノ!リ人 「美味しいのじゃ」


102 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:45:30 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「これさえあれば……村も……」

(´・ω・`) 「どうしたの?」

少女の声は小さすぎてうまく聞き取れなかった。
肉から滴る脂が火の中で弾ける。

外側はこんがり茶色に焼き、中まで火も十分に通す。

(´・ω・`) 「できたよ」

小さい目の欠片を少女に渡し、自分の分を取った。
齧ると中から肉汁がしみだしてくる。
臭みはなく、硬めの外側と中の柔らかな部分が絶妙に舌を刺激する。

(´・ω・`) 「うん、丁度いい焼き加減だ」

l从・∀・ノ!リ人 「こんなのおいしいの初めて食べたのじゃ!」

少女はびっくりするくらいよく食べた。

残っていた肉を燻製にするために、丁度いい木の枝と草を探す。
それらはすぐに見つかった。
準備を済ませ、少女に話しかけえる。

(´・ω・`) 「さて、君を村まで送っていこうと思うのだけれど」

l从・∀・ノ!リ人 「その必要はないのじゃ」


103 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:55:54 ID:JA8mU53Y0

少女は頑なに僕の申し出を断る。
とはいえ、こんなところに置いていけるはずもなかった。

(´・ω・`) (埒が明かないな……)

(´・ω・`) 「君、名前は」

l从・∀・ノ!リ人 「イモジャと呼んでくれればいいのじゃ。お主は?」

(´・ω・`) 「僕はショボン。錬金術師のショボンだ」

そもそも錬金術を知っているとは思えなかったが、
何も言わないよりは分かり安いだろうと思ってつけ足した。

l从・∀・ノ!リ人 「れんきんじゅつし? よくわかんのじゃが、偉い人?」

(´・ω・`) 「まぁ、そんなものかな」

その解釈には甚だ問題があったが、その程度の理解で十分だった。
村まで送り届けた後には別れるのだ。

l从・∀・ノ!リ人 「じゃあ先生なのじゃ! ショボン先生!」

(´・ω・`) 「ははは……」

先生という言葉が出てきたことにむしろ驚いた。
山奥のコミュニティーに学校があるとは思えなかったからだ。


104 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:02:10 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「先生、それが欲しいのじゃ」

イモジャが指差すのは僕特製の【蛇口】。

(´・ω・`) 「んーでも、これは僕の旅に必要だからな……。
      どうしてこれが欲しいの?」

l从・∀・ノ!リ人 「……村に、水が必要なのじゃ」

(´・ω・`) 「どういうこ……」

草むらをかき分ける音が聞こえてきた。
遠くから名前を呼んでいる声も。

(´・ω・`) 「呼ばれてるよね」

l从・∀・ノ!リ人 「……そうなのじゃ。イモジャは人柱じゃから。みんな探してるのじゃ」

(´・ω・`) 「どういうこと?」

下を向きながら少女は話す。

l从・∀・ノ!リ人 「……水がないのじゃ。水を神様にお願いするのに、イモジャを使うのじゃ
          誇らしいことじゃと、パパたママは泣いていたのじゃ」


105 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:15:40 ID:JA8mU53Y0

隔離された村にはよくあることだ。
今まで何度も見てきた。

その時の理由が不作や災害などの違いはあるものの、
そういった儀式はどこでも行われていた。

何の解決策にもならないのに。

(´・ω・`) 「……村に、案内してくれないか?」

l从;∀;ノ!リ人 「死にたくないのじゃ! イモジャを連れて逃げてほしいのじゃ!」

(´・ω・`) 「それはできないよ。君は僕についてこれない。
       僕なら、君の村を変えることができるかもしれない」


「いたぞ!」


「捕まえろ!」


(´・ω・`) 「信じてくれ」

僕は、現れた男達に連れらて村に辿り着いた。
少女は隣で、ずっとすすり泣いていた。


106 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:25:55 ID:JA8mU53Y0

/ ,' 3 「そのほとこはだれだ?」

「イモジャと一緒にいたので連れてきました。
先生様に用があるそうです」

なるほど、この村では年長者のことを先生と呼ぶのか。
それとも、長老の意で使っているのだろうか。
そんなことを考えながら、僕は年寄りと相対した。

(´・ω・`) 「初めまして。旅の錬金術師です」

/ ,' 3 「んほ?」

間の抜けた返事をする老人だが、村人たちが気づかないほど小さく反応した。
儀式が行われる背景には、二つの理由がある。

一つは、遥か昔から続いている例。
もう一つは、知識のある人間が悪用する例。

(´・ω・`) (後者だな)

錬金術師という言葉に反応した。
この村の誰もが首をかしげる中、この老人だけが。
僕の前では呆けたふりをしているのだろう。

目的は、おそらく……。


107 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:35:09 ID:JA8mU53Y0

知識のある者が、人の命を使う儀式を行う理由などひとつしかない。


…………肉欲だ。


(´・ω・`) 「どうして人柱がいるのか、教えてもらえますか」

答えたのは長老の隣にいる男だった。

「雨が降らないんだ。見てくれ、ここに溜まっている水は底をつきはじめている」

(´・ω・`) 「なるほど……。それなら、私に任せてください。
      人柱など必要ありません。錬金術で解決できます」

村人たちがざわめくのが分かる。
錬金術の存在を知らない彼らは、
きっと僕を神に近しいものと勘違いするだろう。

(´・ω・`) (でも、それでいい。それでこの男の横暴は終わる)

必要なのは時間と労働力だ。

(´・ω・`) 「村の若い者を数人、そして一週間の時間を貰えませんか?」

この村は……イモジャは僕が救う。


108 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:44:36 ID:JA8mU53Y0

水が逃げ出さず、集められる構造に。
自然のダムではそこまでできていない。

だからすぐに水が足りなくなる。
僕の錬金術と知識で、解決できる問題だ。


■■■■■■■■現在■■■■■■■■


そして僕は水の抜けにくいダムを完成させ、その翌日に雨が降った。
問題は全て解決されたはずだ。

それなのに……。

(´・ω・`) 「あなたは、どうしてここにいるんですか?」

この老人は追い出したはずだ。
悪事をばらし、村人たちに真実を告げ。

それがなぜ、年月が立って元通りになっている。
なぜ、イモジャがあの場にいる。

/ ,' 3 「ほっほ?」

/ ,' 3 「簡単ななこほ。村人たちが儂にもほめたのは、すぐにいなくなった神ほ代わり。
     長老ほしてのまほめ役」


109 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:55:28 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「お久しぶりです……。先生がいなくなってしまい、やっぱり私達には長が必要だったのです。
          この人は村をおさめてくれました」

「そうだ。貴方とは違うんだよ!
知識だけを置いていったあなたとは!」

叫ぶのは村の住民たち。

「今までの全てを覆され、私達には縋るものが必要だった」

l从・∀・ノ!リ人 「今回の儀式は、真に雨を降らすために必要なのです。
          紛い物ではありません」

/ ,' 3 「そういうこほじゃ」

(´・ω・`) 「やめろっ……何のために僕は君を助けたんだ!」

荒巻の持つ刀が高々と掲げられる。
その真下には、座り込んだ少女。

立派に育った見目麗しき少女。

(´・ω・`) 「雨はそんなことじゃ降らないっ!」

浴びせられるのは罵倒。
雨は降ると信じてやまない村人達。


110 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 20:10:34 ID:JA8mU53Y0

僕は少女の前に走り込み、振り降ろされた刀を体で受け止めた。

(;´・ω・`) 「っ……」

左肩から骨を砕き、肺を引き裂かれる。

(;´・ω・`) 「……ぼくが、悪かった。
       勝手にあなた達の慣習を破壊し、そのまま去ってしまった」

傷は、修復される。
元通りに。

(;´・ω・`) 「知識を授けただけで、自己満足してしまった。
        もう失敗はしない。今度は教え、そして導く」

/ ;,' 3 「なっ! 貴様! なにもほだ?」

(´・ω・`) 「僕は…………」

この村を救うには一つしか方法はない。
知識を正しく理解させ、歴史を教え、村を導く。


僕の時間はここでしばらくの間、費やされるだろう。
ただそれは、無限の前では一瞬にすぎない。


たった一人の少女を救うためには割の合わないことかもしれない。
だけど僕は…………人間を……この村の人を……救いたいと思ってしまった。
だから僕は、その一言を口にした。


(´・ω・`) 「……神だ」



4 ホムンクルスは救うようです  終了


←第3話へ
目次へ
第5話へ→

(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第3話 

65 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 22:58:02 ID:qFOHwhYI0



3 ホムンクルスは抗うようです


66 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:01:22 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「あーもうっ! しつこいっ!」

僕は今、逃げている。
何からって?


───人からだよ。

僕が恐れれるものはこの世に二つしかない、と信じたいね。
これ以上増えないでほしい。

一つは、孤独。

もうひとつは……


「待てえええええええええ、このホムンクルスがあああああ!!
ばらばらにして、臓器を一つずつ研究させて!
俺の研究手伝って!
この世の心理を教えて!

どこに逃げやがったあああああああ」

68 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:08:42 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」

(;´・ω・`) (どこにあんな体力があるんだよ……。
       ただのマッドサイエンティストじゃないのか?)

大木の陰に隠れて休む。
普段から大陸を移動し続けることで鍛えている僕が、
こうも易々と追いつめられると本当に人間か疑いたくなってくる。

「どぉ~~こにいるんだぁ~~い?」

足音はすぐ近くを通り過ぎて行った。

(;´・ω・`) (ふぅ……後はどうやってこの場所から逃げ出すかだけど……)

僕を囲う木々には特殊な紋が刻んである。
これは、錬金術師が好んで使う簡単な図形だ。

でもその効力は、思っていたよりもずっと優秀だった。
森に入った者を迷わせ、逃がせなくする錬金術。

そんなものは僕の知識には無い。


从 ゚∀从 「見ィ~~つけった!!」


69 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:14:17 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「!?」

足音は確かに通り過ぎたはずだった。
それがなぜ、この人は僕の真後ろに立ってるんだ。

っていうか、僕の真後ろは確か木だったはずで……

え?

なんで?

从 ゚∀从 「諦めて俺の研究室に来てもらおうか」

腕を掴まれる。
見た目以上の力で握られているから、振り解けない。

(;´・ω・`) 「僕のホムンクルスとしての生き方はここで終わりか……無念……」

从 ゚∀从 「何言ってんだ? 殺しても死なないのがホムンクルスだろうが。
       とりあえず、自分で歩け。引きずるのは面倒だ」


白衣を着た女性はいい、そんなことを内藤が言っていたのを思い出した。
ああ走馬燈が見える……。

从 ゚∀从 「だから死なねーだろ」


70 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:23:07 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「ようこそ、ハインリッヒ博士の研究室へ」

髪はくすんだ灰色、服の上にはサイズの合わない白衣。
ハインリッヒと名乗った彼女は両手を広げて僕を研究室とやらに連れ込んだ。

(;´・ω・`) 「一体何の用だよ?」

僕を捕まえてこんなところに連れて来たんだ。
大体は予想できるけど。

从 ゚∀从 「テメーはホムンクルスだ、間違いないか?」

(;´・ω・`) 「そうだよ……」

ちなみに、僕は全身を横長の机に固定されて身動きが取れない。
抵抗する暇すらなかった。ほんとにこの人は人間なのか……。

从 ゚∀从 「すげーなぁ。構造はほとんど人と同じ。ちょっと失礼」

彼女がとりだしたのは銀色のナイフ。
切先がランプに照らされて鈍く光ってる。

(;´ ω `) 「っああああああああああああああ!」

僕の服をたくしあげると、いきなり腹部を切り開いた。
臓器を素手で弄られているのだろう。

とてつもない痛みと奇妙な感覚が全身を支配する。


71 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:34:57 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「ふむ、中身も人と変わらない。だけど人よりもずっとエネルギー効率がいいな。
       む……再生の力はどこから得ているんだ……?
       特別な器官はないし……ああなるほど。自然から得られるようにしてるのか。
       こんなの作れねーよ。どんだけ神サマとやらに喧嘩売ってんだ」

拷問が長く続かなかった。
身体の再生が終わると、痛みは嘘のように消える。

(;´・ω・`) 「なんてことするんだ……死ぬところだったじゃないか」

从 ゚∀从 「死なないけどな。お前を作ったのは誰だ? 高名な錬金術師なのか?」

(;´・ω・`) 「もう死んだ」

从 ゚∀从 「そうか。一度は会ってみたかったな」

遠い向こうを見る目は憧れなのだろうか。
錬金術師は他人の成果を奪い、嫉む存在だと思っていたけれど。

(´・ω・`) 「今度は僕が質問させてもらいますよ」

从 ゚∀从 「ああ、好きなだけ聞いてくれ。
       最近他の人間と話してないしな、質問に応えるのは大歓迎だ。
       ホムンクルスってことは錬金術の知識も多少あるだろうしな」


72 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:41:05 ID:qFOHwhYI0

(´・ω・`) 「あなたはなぜ、僕を連れて来たんですか?」

从 ゚∀从 「勿論、ホムンクルスの存在を知りたかったからだ。
       テメーの存在は錬金術師の夢じゃねーか」

支配者たちはホムンクルスの存在を嫌い、作り出そうとすることすら禁止していると言うのに。
錬金術師は本当に愚かな存在だ。

あの人も……。

(´・ω・`) 「まぁ、そうですよね。僕がこの森から出られなかったのは?」

从 ゚∀从 「ああ、あれな。錬金術を土台にして、環境そのものに変化を加える。
       人や獣の五感を惑わすことができる。
       俺は【地金術】って言ってるけどな」

(´・ω・`) 「つまり弱虫に最適であると」

(;´・ω・`) 「やめてごめんなさい許して」

ハインは僕の頭の上に大槌を振りあげた。
あんなもので頭を潰されてたまるか……。
死なないとは言っても痛いんだよ……。


73 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:46:50 ID:qFOHwhYI0

(´・ω・`) 「じゃあなたの力が異常に強いのもそれに関係が?」

从 ゚∀从 「半分正解だな。でもまーこっちも俺のオリジナルだ
       術者の血液に特殊な式を介在させることで、身体能力の向上を図ってる。
       【血金術】この二つが俺の研究の成果だ」

(´・ω・`) 「結論、よわ……」

最後まで言えなかった。
気づいた時には、頭のあった部分の机が完全に崩壊していた。

从 ゚∀从 「で、お願いがある。ホムンクルスの秘術、教えてくれないかな?」

(´・ω・`) 「知らない方が幸せですよ」

本心からだった。
満たされるのは、術師としての心だけだ。

生み出された僕らも、生み出したあの人も、その家族も。

(´・ω・`) 「興味本位で僕らを生み出させたりはしない」

从 ゚∀从 「……」


74 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:53:34 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「んーてめーが何か抱えているのはよく分かった。
       だけどな、俺もやる前からはいそーですかわかりましたってわけにはいかない」

(´・ω・`) 「プライド……ですか?」

从 ゚∀从 「俺は錬金術師として並大抵のレベルじゃない。それは分かってる」

その通りだろう。
ほとんどの錬金術師は、他人の模倣で満足してしまっている。
ごく僅かな金を得るだけで止まっているんだ。

それ以上を求めている術師はごく一握りだけ。
その点で言えば、オリジナル派生を生み出しているだけでも、
ハインは一流だ。

从 ゚∀从 「だがな、自分の身体を改造して、長生きしても未だにホムンクルスを生み出すことができない。
       人類の、人間の限界を超えることができてない」

从 ゚∀从 「だから頼むっ! 決して不幸にはさせねぇ!
       悪用もしねぇ! 俺にホムンクルス作成の秘術を教えてくれ」

言っていることをこの人間は守るだろう。
その真摯な目を見ればそのくらいは分かる。

だけど、それでも……

(´・ω・`) 「教えることは……できない」


75 :すいません、出てきます。:2011/12/03(土) 00:00:50 ID:Yr1wJzE.0

从 ゚∀从 「そうかよ……悪いが、俺に時間の余裕はそんなにねぇんだ。
       乱暴な手段を使わせてもらうぜ」

(´・ω・`) 「喋りませんよ……絶対にね」

痛みは苦しい。
それでも、僕らホムンクルスは人間よりもずっと痛みに強い。
心が強い。

何百年も生きていけるように、そう設計されている。
だから、何をされても喋らない。

不幸なホムンクルスは、僕らだけでいい。
そう思っていた。

从 ゚∀从 「がふっ……」

ハインは噴き出した血を白衣で拭う。
無理な人体の改変によって相当な負担が出ているのだろう。
そこまでして、なんで人間の神秘を知りたがるのか。

77 :寝てしまっていた……おはようございます:2011/12/03(土) 04:07:51 ID:Yr1wJzE.0

从;-∀从 「ふぅ……」

(´・ω・`) 「無理をしない方が……」

口を衝いて出た言葉は嘘じゃない。
この時点ではまだ、他人を心配するくらいの余裕があった。

从 -∀从 「悪いな……俺はどうしても知らなきゃならねぇ」

僕を縛りっていた机は、足側を下に傾けられる。
これでより部屋の中がよく見えるようになった。


乱雑に散らばった紙には、びっしりと計算式が書きこまれていた。
粉々になった実験器具が片づけられることなく散らばっている。

从 ゚∀从 「aqua regia 知ってるか?」

その存在を知らない錬金術師なんていないだろう。
金をも溶かす、王の水。

(´・ω・`) 「王水、ですか」

从 ゚∀从 「テメーの足元にあるガラスの入れ物の中にたまってるのがそれだ。
       後は想像にお任せするよ」


78 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:17:33 ID:Yr1wJzE.0

緊縛が一瞬緩んだ。
身体がずるずると机をすべり落ちる。
次の瞬間に襲い来る激痛に向けた僕の覚悟は、吹き飛んだ。

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

足の指が形を無くし、骨までゆっくりと溶けていく。

从 ゚∀从  「俺の…存でいつも※められ──るんだ。
        無理せせせせず●せよ」

ハインの言葉の意味が理解できない。

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

足の先端の感覚はもうない。
そこに僕の足はないのだろう。

从 ゚∀从 「想像以上に頑固だな……」

ハインが僕を引っ張り上げたようだ。

足は既に修復し、直接的な痛みは無い。


79 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:27:22 ID:Yr1wJzE.0

脳にガンガンと響く痛みは幻覚だ。
分かってはいても、耐えることは容易くない。

(#´ ω ) 「はぁっ……はぁっ……話しませんよ」

溶液は化学変化をして物質を溶かすから、溶かすことのできる総量は決まっている。
でもこの場合、僕の身体という不純物はこの世界から失われるから……。

从 ゚∀从 「この王水にずっと浸けててやることも出来るんだが。
       それをやってお前さんの精神がトんじまったら意味ないからな」

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

从 ゚∀从 「人間は継続的な痛みよりも、断続的な痛みに弱い。
       これは私の考えだけどな」

(#´ ω ) 「っあ…………」

从 ゚∀从 「痛みがない状態を頭で理解しちまうからだ。
       常に痛みがあれば存在しない『救い』に縋っちまう」

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

从 ゚∀从 「ホムンクルスはどうかな?」


80 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:36:02 ID:Yr1wJzE.0

もう何度目だろうか。
修復と破壊を何度も何度も繰り返される。

目の前にはハインの言う『救い』があった。
ホムンクルスの秘密を喋ってしまえば、彼女はいとも容易く僕を逃がすだろう。

(#´ ω ) 「そ……れ……でも……無限の……不……幸と比……べれば」

生き続けることよりも苦しいことなんて、ない。
僕は、誰よりもそれを知っている。

从 ゚∀从 「……これでも喋らないか……。相当な精神力だなッゴフッ……」

何度目かの吐血。
白く綺麗だった衣は、汚れきっていた。

从;-∀从 「頼む……俺には時間がない……んだ」

人が倒れる音がした。
一定のリズムで繰り返されていた拷問は止まっている。

(#´・ω ) 「……?」

視界はぼやけているが、なんとか現状を理解した。
ハインは倒れたのだ。


81 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:43:49 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「どうしてそこまで執拗に……」

右手の骨を折り、無理やり束縛から自由にする。
ホムンクルスの動きを真に止めようと思ったなら、
身体の全体を縛りあげなきゃいけない。

片手が自由になったところで、残りの拘束具を外した。

(´・ω・`) 「さようなら……」

血だまりの中にたたずむハインを置いて僕は研究室を出た。
はいって来た時の感覚で言えば、この森は大きくないはず。

(´・ω・`) (すぐに出れるか……?)

結果として、僕は研究室に戻ってきた。
ハインが倒れても森の術は消えておらず、独力での脱出は困難だと思ったからだ。

(´・ω・`) 「ハイン……起きてくれ……森から出るにはどうすればいい?」

頬を軽く叩き、意識を取り戻させる。

从;-∀从 「ああ……ここまでか……。俺の部屋にある鍵……を身につけてればすぐに出れるさ」

今の自分の状態を知り、諦めたのだろうか。
素直に森の抜け方を教えてくれた。

僕は研究室の奥にある扉を開けた。


82 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:51:00 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「鍵……ね……」

おそらく鍵の形状をしているのではなく、
key としての役割を与えられたものが部屋の中にあるはずだ。

女性の部屋で探し物をするのは気がひけたが、
戸棚や机の引き出しをあさる。

そこで見つけたのは一冊の本だった。

(´・ω・`) 「これは……?」

普段の僕なら気にも留めなかったかもしれない。

ただの私物と割り切っていただろう。
でも今は、あれだけの拷問を与えられながらも、
ハインの行動原理を知りたいと思ってしまっていた。

そしてこれを見たらきっとわかるだろうとも確信していた。

だから鍵探しを諦め、椅子に座って表紙をめくった。


83 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:58:53 ID:Yr1wJzE.0


パラパラと流し読みをする。


「今日は彼との結婚式がある」


「新婚生活がうまくいかない。料理の味で喧嘩をしてしまった」


「彼がイノシシを仕留めてきた。今夜は御馳走」


「娘が生まれた。大変だったけど、これからは家族三人で幸せに暮らそう」


「娘が初めて言葉を喋った。ママだった。ちょっぴり優越感」


「娘の額が熱い。夜遅くに、彼が医者のいる隣村まで連れて行った。不安で寝れない」


「娘が元気になって帰ってきた。何よりもうれしい」


「今日は5才の誕生日。お祝いの準備をしなきゃ」


書き連ねられているのは今の彼女と全く違う姿。
結婚し、子どもができ、幸せな家庭を築いていた。

何が彼女を変質させたのか。
それは次のページをめくってわかった。


84 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:04:49 ID:Yr1wJzE.0

「彼が流行病にかかった。医者は治せな……
そんなそんなそんなそんなそんなそんなそんなそんなそんな」

ところどころ筆がにじみ、紙が皺っていた。


「近隣で一番有名な錬金術の先生のところへ行く。
そこでも治せないと言われた」


「苦しそうに呻いている……。助けてあげたいのに、私には何もできない」


「彼が死んだ……これからは娘と二人で生きていく」


日記はそこで終っていた。
おそらく娘も流行病で失ったのだろう。

だからこそ、ホムンクルスの秘術を求めた。
応用すれば、人を生き返らせることができると信じて。

机の上の小さな箱。
その中にあるのがこの森の鍵なんだろう。

(´・ω・`) 「骨……か」

小さな骨と大きな骨が一つずつ。


85 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:14:09 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「……人間は愚かだ」

死者の魂は失われてしまっている。
ホムンクルスの秘術を駆使したって戻ってくることはない。

(´・ω・`) 「……」

ハインに与えられた苦痛は、もう忘れていた。

研究室に戻ってハインの体を持ち上げ、机の上に寝かせた。

(´・ω・`) 「せめて少しでも……」

最期に夢を見させてやりたかった。
愛する人のために、人の道から飛び出した女。
それは苦しい道だったに違いない。

だからこそ、報いてやりたかった。
それが自己満足だとしても。

簡単な延命治療で、彼女の苦痛を和らげる。

(´・ω・`) (ブーン、君の研究は役に立つかもしれない)

時間は無い。
それでも僕はやってみせる。

うろ覚えの術式を紙に写しだし、材料を用意する。
幸いにして優秀な術師であったハインの研究室には、
必要な物が全てあった。


86 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:24:38 ID:Yr1wJzE.0

何度かの失敗を重ね、完成させるのに一週間もかかってしまった。

ハインはまだ、生きている。
おそらく、精神力だけで持ちこたえているんだろう。

(´・ω・`) 「ハイン…………これは僕のエゴだ。許してもらおうとは思わない」



琥珀色の液体を、ハインの喉に流し込んだ。
小さく喉が動き、液体は彼女に吸収される。


延命治療の苦しさに、歪んでいた顔の皺は取り除かれ、穏やかな顔で寝ていた。

心の支えを失った肉体は、じきに生命活動を停止するだろう。
それでも僕は、彼女を夢の世界に連れて行ってあげたかった。

せめて夢の中で、幸せであることを祈りつつ。

(´・ω・`) 「さようなら……」

森の術式の解明は終わっていた。
だから僕は二つの鍵を彼女の横に並べて家を出た。


87 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:25:58 ID:Yr1wJzE.0


3 ホムンクルスは抗うようです  終了


←第2話へ
目次へ
第4話へ→

(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第2話 

29 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:41:46 ID:HknsixXc0



2 ホムンクルスは稼ぐようです

30 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:48:58 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「金がない……」

当たり前か。
道にぶっ倒れて気を失っていたけれども、目が覚めた時にお金が残っているほどイイ時代じゃない。

(´・ω・`) (どこかで稼ぐ必要があるな)

お金を稼ぐのは簡単だ。
僕にはおおよそ人の及びもつかない錬金術の知識がある。

できれば使いたくはないのだが、資金調達のためならば仕方ない。
ホムンクルスであってもエネルギーを必要とするんだから。

(´・ω・`) 「一番近い……町は……いい所があるじゃないか」

ローマの土を踏むのはこれが二度目になるな。

(´・ω・`) (あれから少しは変わっているのだろうか……)

あの場所の賑やかな喧騒は忘れられない。
後頭部が痛むけれども、関係ないか。

(´・ω・`) 「彼は元気にしているだろうか、いやしているのだろうな」


31 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:55:36 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「大体予想どおりかな」

三日三晩歩いてやっと城壁が見えてきた。
世界の中心とは名の通りに、ここいらの道はしっかりと舗装されていて歩きやすい。

後ろから来る馬車にさえ気をつけていればいいのだから。

(´・ω・`) 「まずは……いつもの場所かな」

僕が稼ぐのにローマによる理由はいくつもあるけれども、一番大きいのは友の存在だ。
僕が生み出してしまった罪の存在であるにもかかわらず、彼はとてもよくしてくれる。

「感謝してもし足りないくらいだ! あんたがいなけりゃ俺は生まれてなかった!」

彼はいつもそう言ってくれた。
久しぶりに見る友を思い浮かべると、嬉しくなってくる。

(´・ω・`) 「こんにちわ」

ローマに入るのに許可はいらない。
そんなことをしていたら、大量の物資が腐ってしまうこともあるからだ。

ここは365日いつでも騒がしい。


32 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:02:02 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ふむ」

軽いノックを三回して扉を開けた。
中は昔訪ねた時と変わらない。

僕ですら用途の知らない実験器具が所狭しと並べられている。
それは所々怪しい煙を噴きだしていた。

毒々しい煙を払って奥に進むと、目当ての人物がソファーに寝ていた。

(´・ω・`) 「起きろよ、久しぶりに来たんだ」

声で僕だと気づいてくれたみたいだ。
大仰に立ち上がり、肩を抱き寄せてくる。

この厚かましさが、僕には心地いい。

( ^ω^) 「久しぶりだお! 元気にしてたかお?
       かれこれ35年ぶりかおね」

(´・ω・`) 「36年ぶりだね、ここに来るのは」

彼こそが僕の友人、兼兄弟。
奇跡の種から生まれた人にあらざるもの。


33 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:11:12 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「調子はどうだい?」

( ^ω^) 「いやね、最近思いついたんだお。仮面をつけて人前に出れば、年は見られなくなるお。
       だから、ずっとこの一か所で商売を続けることができるお」

彼、ブーンはホムンクルスだ。
僕が所在を明確に知っているただ一人の。

(´・ω・`) 「なるほど、それでもばれるんじゃないかい?」

( ^ω^) 「荒稼ぎをしてなきゃ目をつけられることもないお。
       ちゃんと、コレもしてるしね」

右手の親指と中指をくっつけて円を作る。
賄賂をあらわす彼の独自の動作だ。

( ^ω^) 「久しぶりに寄ってくれたんだお。まぁ、ゆっくりしてけお」

(´・ω・`) 「そうさせてもらうよ」

ブーンが入れてくれたコーヒーを啜りながら、僕はこの40年に届くほどの旅の話をした。
珍しく獣に襲われた話、海を見に行った話、人間と仲良くなった話。

そのどれもを楽しそうに聞いてくれるブーンは聞き上手なのだろうな。


34 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:18:48 ID:HknsixXc0

( ^ω^) 「またいろんなところに行ったみたいだおね」

(´・ω・`) 「うん、色んなことが分かった。生きている意味も見つかるかもしれない」

僕が旅をする理由は自分の存在理由を知るためだ。
暗い研究室の中で、土塊から生み出された不死の僕の存在は、一体何なのだろうか。

( ^ω^) 「また顔が暗くなってるお? つまらないことを考えるなおー」

(´・ω・`) 「ああ……すまない。ところで、今は何をしているんだい?
       どうやら寝ていたみたいだけど」

僕らホムンクルスは睡眠を必要としない。
勿論、寝ることはできるけれども。

( ^ω^) 「ああ、面白いものを作ったんだお……ショボンもどうだお?」

ニヤニヤと降格を釣り上げるブーン。
そこで初めて、僕はコーヒーに細工をされたことを知った。

(´・ω+`) 「くそっ……覚えてろよ豚野郎!」

睡魔が襲ってくると言うのはこういうことなのかと僕は理解した。
意識は無理やり切られた。


35 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:27:10 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ここは……」

真っ暗な場所に立っていた。
一切の光がなく、一寸先すら見えない。

(´・ω・`) 「夢……か……?」

不思議とここに来る前のことは明確に覚えている。
ブーンに怪しい薬を飲まされ、意識が途切れたのだ。

もしこれが眠っているということならば、ここは夢の世界と言うことになるだろう。
僕達ホムンクルスは夢見る存在ではないのに。

耳に響く不快な音は雨の音だろうか。
人間は情報の大部分を視力から得ていると言うが、
それは体の構造が基本的に同じホムンクルスにも当てはまる。

(´・ω・`) 「っ!」

爆音とともに一条の閃光が空を駆け抜けた。
たった一瞬の光が部屋の中を明るくさらけ出す。

(´・ω・`) 「はぁ……、まさかこの光景をまた見るとは……」


36 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:32:29 ID:HknsixXc0

木張りの床は血液で真っ黒に染められ、ばらばらになった人間が散在している。
その中には子どもの骸もあった。

人形を両手に抱いたまま、頭部を失って絶命している。

(´・ω・`) 「帰ったら何回か殺してやらなきゃな」

どうせ殺しても死なないのだ。
傷もすぐに完治するのなら、少々は教育だろう。

決して、この死体のようになることはないのだから。

(´・ω・`) (僕は、予想以上に冷静だな……)

二度と見たくない、考えたくないと思っていた情景が目の前にあって、
未だ絶望という感情を抱いていない僕はなんなのだろうか。

ブーンが僕に飲ませたのは何なのだろうか。

(´・ω・`) 「普通に考えたら睡眠薬だろうけど、それじゃ説明がつかない」

夢の中で夢だと断言できる状態にあること。
これを明晰夢だと言うらしいけれど、これはその状態にぴったりだ。

(´・ω・`) 「明晰夢を見させる薬……ってところか」


37 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:41:13 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「薬の効果はどれくらいできれるのだろうか」

どれだけ僕は、ここにいなければならないのだろうか。
この光景を、もうすでに目に焼き付けているこの光景を、どれだけ眺めさせられるのだろうか。

(´・ω・`) 「いや、僕の夢なら、僕自身の力で終らせることができるはずだ。
       願わくば、一番幸せだったあのころの夢を……」

目を閉じ、願う。
その場に立っている自分を想像し、その匂いを、音を、空気を、思い出す。

(´・ω・`) (……っ!)

頬に感じた衝撃で僕は……目を覚ました。
目の前に豚が一匹、僕を覗きこんでいる。

そのニヤケ面の余りの気持ち悪さに、思わず右手を振り抜いていた。

(メ ゚ω゚) 「へぶっ!」

錐揉み上に吹っ飛んでいくブーンだが、それだけでは許せない。
夢の世界で誓った行為を実現に移すため、足元の重量のある金属棒を拾い上げた。


38 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:46:32 ID:HknsixXc0

(メ ゚ω゚) 「まままままm、まてお! それは死ぬ! 間違いなく死ぬお!」

両手をあげて降参の意を示していたが、そんなものは関係ない。
僕は珍しく、怒っていたのだろうな。
知りうる限りで最も残虐な表情を張りつけ

(´゚ ω ゚`) 「死ね」

右手で持ちあげた棒を全力で振り下ろした。

(メ ゚ωメ) 「はぶんっ」

一撃目で脳が露出した。
成程、いい威力だ。

二撃目は肋骨を折るべく、胴体に叩きこんだ。

(メ ゚ωメ..,, 「っぶぇぇ」

三撃目はもう一度頭に。
殴って殴って、殴り続けた。


,....,;:。ω;∵。.,,

40 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:54:59 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ふぅ……」

何とか落ち着きを取り戻した時、部屋は惨殺現場も吃驚なほど汚れていた。
飛び散った血液も、脳漿も、骨片も、全て粒子となり、ブーンを再構成する。

さながら時を巻き戻すかのように。

(; ^ω^) 「死ぬかと思ったお……」

(´・ω・`) 「何であんなものを飲ませた?」

(; ^ω^) 「いや、明晰夢を見れる薬を作ったのだけれど、自分だけが被験者だと心許なかったので」

謝る気はないようだった。

(´・ω・`) 「何の夢を見たんだ……?」

自分だけがあんな夢を見るのだろうか……。
同じホムンクルスのブーンはどんな夢を見たのか非常に気になった。

(//^ω^) 「内緒だおっ」

声に楽しげな響きが混ざっていたから、僕ほど悪い夢ではなかったのだろう。
腹が立ったので、右手の金属棒を再び持ち上げようとする。

それを察知してか、ブーンは夢の内容を話しだした。


41 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:02:52 ID:HknsixXc0

(; ^ω^) 「その……女の娘と……ゴニョゴニョ……」

こいつはなんて俗物なのだろう。
僕と同じホムンクルスであるのに、その人生に迷いがない。

酒を飲み、飯はたらふく食べ、人と同じように生きている。
女を抱き、庶民と賭け事をする。

そんなブーンが、僕は羨ましいのだろう。
だから、つい金属棒を投げてしまった。

(  ゚ω^) 「何か言うことは?」

頭の左側を吹っ飛ばしてやるつもりだったのだが、どうやら加減を間違えたようだ。
僅かな傷跡をつけるだけであった。

(´・ω・`) 「ごめん、つい」

( ^ω^) 「ショボンは難しく考え過ぎなんだお。
       人間が楽しめる行為は僕達も楽しめるんだお。生憎、まだ子供はできていないけど。
       できるかどうかも、分からないけど」

いつか子育てをするのが僕の夢だお、とブーン嬉しそうに語った。


42 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:09:58 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) (いつか、僕も彼のように笑って暮らせるのだろうか……)

不安は、顔に出さないように押しとどめた。

(´・ω・`) 「で、話を変えるけど、今回寄ったのは資金調達だよ。たんまり稼いでるんだろう?
       少しくらい分けてくれてもいいんじゃないか?」

このままだとブーンの話を長々と聞く羽目になるだろうと思って、本題を提示した。

( ^ω^) 「んー構わないけど、条件があるお」

彼の居場所によったことは何度もあるけど、
常に無償で資金提供を続けてくれていたから、今回もそうだと思っていたんだけどな。

(´・ω・`) 「何?」

彼は僕よりもずっと優秀なホムンクルスだ。
長年の研究で僕よりもはるか高みにいる。
旅ばかりしている僕に役立てるようなことなどないと思ってた。

( ^ω^) 「この薬、売るの手伝ってくれお」

彼の提示した条件は、酷く簡単なものに思えた。


43 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:14:47 ID:HknsixXc0

明晰夢を見る薬。
それを売ることなどブーン一人いれば十分ではないのか。
効力も、充分以上に体感した。

(´・ω・`) 「ああ……」

そこで気付いた。
この薬は飲まないと効力を発揮しない。
でも、飲んだものが必ずしも本当のことを言うとは思えない。

何もなかった、嘘つきが。

そう言われてしまえば、今後の商売にもかかわるわけだ。

(´・ω・`) 「で、何をすればいいの?」

( ^ω^) 「有り体に言えば、実演してほしいんだお」

そういうことか。
僕がブーンの薬を最初に買い、皆の前で飲む。
そうすれば、この薬の効力を信じるに違いない。

そして、この薬は正真正銘、明晰夢を見せる力がある。

( ^ω^) 「いつもの市場に行くお。この仮面をつけてくれお」

ブーンが投げてよこしたのは木彫りの面。
それを顔につけ、僕らは出発した。


44 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:24:47 ID:HknsixXc0

( ^ω^)) 「ここだお」

ブーン声は仮面越しのせいでくぐもって聞こえる。
案内されたのは市場の中心。
小さな机と椅子がならべてあるだけの場所だった。

(´・ω・`)) 「こんなぼろいところが……?」

周りの商店は煌びやかな装飾が施されている。
これじゃあまるで貧乏店にしか見えない。

( ^ω^)) 「失礼だおね。錬金術師の店はここいらにたくさん並んでいるけれども、
        本物はブーンのところだけだお」

(´・ω・`)) 「ふぅん……」

確かに周りに見えるところで売っている商品はつまらないものばかりだ。
肌が潤うだとか、お金が増えるだとか、そんなつまらないものばかり。

( ^ω^)) 「じゃあ始めるお。 寄ってくるおー! 稀代の錬金術師!
        ブーンの夢見薬! 安いし買っていくおー」

ひとたびブーンが口を開けば、辺りには人だかりができた。
どうやらここらでも人気の錬金術師のようだ。
本物なのだから、当然だけれども。


45 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:28:53 ID:HknsixXc0

( ^ω^)) 「この薬、なんと飲めば見たい夢が見れるようになるんだお!」

ブーンが箱から取り出したのは小さな瓶に詰められた琥珀色の液体。
同じものが、30ほど並んでいる。

( ^ω^)) 「じゃあ早速飲んでもらうお」

僕はその手から瓶を受け取り、一口だけ飲んだ。
全開と同じように、強烈な眠気がやってくる。

(´・ω+`)) 「よろし……く」

ブーンに体を預けるようにして座り込んだ。
意識は深海に溶けていく。


46 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:34:45 ID:HknsixXc0

目が覚めたのはどの位経ってからだろうか。
客の様子を見ると、先程から変化していないからそう時間は立っていないのだろう。

( ^ω^)) 「何の夢を見たかお?」

ぼやけていた夢を思い出そうとする。

(´・ω・`)) 「空を……飛んでいた。次に、海を潜って魚と遊んでいたところで目が覚めた」

( ^ω^)) 「ということだお! みんな、買ってくれお!」

あちこちから声がかけられる。
瞬く間に完売してしまいそうな勢いだった。

「おうおうおう! 効果があるわけねーだろ!」

「夢の中のことなんて、いくらでも嘘つけるんじゃねーか!」

野次を飛ばしていたのは近隣の似非錬金術師の集団。
こちらに客を取られた腹いせをしてくる。

「みなさーん、そこの錬金術師は嘘をついているー。二人グルになっているからなー」

( ^ω^)) 「そ、そんなことないお! ちゃんと効力があるお!」

必死に抵抗するブーンだけど、人数が違いすぎる。


47 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:40:01 ID:HknsixXc0

(´・ω・`)) 「ブーン、立場が悪いよ。明日にしよう。
       今日使ってくれた人が明日は味方になってくれるはずだ」

( ^ω^)) 「しょ、ショボンの言うとおりだお……。今日の販売はこれで終わりだお!
        明日も来るから、また買いに来てほしいお!」

購入できなかった人から罵声が飛んでくるけど、こればかりは仕方ない……。
効果を分かってくれる人がいれば、明日からも売れるはずだ。

家まで逃げるように帰ってきて、僕たちは椅子に倒れ込んだ。

( ^ω^)) 「予想してた通りだけど、いつもよりひどいお……」

うっとおしい面を投げ捨てる。

(´・ω・`) 「いつもあんな感じなのかい?」

( ^ω^) 「大体そうだお。あいつら、ブーンの販売の邪魔ばっかりするんだお……。
       自分達は碌なものも作れないのに」

(´・ω・`) 「ちなみに君、今まで何作ったの?」


48 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:47:45 ID:HknsixXc0

( ^ω^) 「夢見薬だお。 後は胡椒の味がする魔法の粉、水が綺麗になる濾し機。他にもいろいろ作ったお?」

思わずため息が出てしまった。
ブーンのことだから、全て事実なのだろうけど、あまりにも胡散臭すぎる。

(´・ω・`) 「もっと現実に即したものを作りなよ……」

( ^ω^) 「錬金術はロマンだお。普通にできないことをするから面白いんだお!」

同じ錬金術師としてその言い分もわかる。
だが、現実的な道具に絞れば、あいつらも邪魔できないのにとは思う。

(´・ω・`) 「まぁいいや。さっさとお金ちょうだいよ」

( ^ω^) 「まだまだいっぱい残ってるおー」

ブーンが指差す先には、今日薬を運んだ箱が10以上積まれていた。
それを全部売りさばくとなれば、明日だけでは済まないだろう。

(´・ω・`) 「全部?」

( ^ω^) 「8割売れたら解放してやるお」

8割なら我慢しようか。
その日は夜まで販売戦略を相談し、僕らは寝ることにした。

内藤は薬を使っていたようだが、僕はやめておいた。


49 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:54:06 ID:HknsixXc0

僕の予想は大いに外れた。
内藤と売り場に向かうと、そこには甲冑に身を包んだ数人の男が待っていた。

( ^ω^)) 「僕の売り場に何の用だお?」

「貴様か、この売り場の錬金術師は!」

「販売していた薬をすべて回収させてもらう!
強制的に人を眠りに落とす薬は危険すぎると判断された!」

(; ^ω^)) 「そんなっ! むちゃくちゃだおっ!」

(´・ω・`)) 「流石に酷すぎませんか?」

金属音と同時に僕らに槍が向けられた。
丁寧に磨かれたそれは人間ならばただの一刺しで殺しうるだろう。

「逆らうなよっ! 逆らえばこの場で処刑することも出来るのだ!」

騎士と言うのはどの場所でも傲慢なのだな。
大人しく従うか、と荷を下ろしたショボンだが、ブーンは驚くべき行動を取っていた。

(; ^ω^)) 「こ、これは研究の成果だお! 僕にはこれを売る権利があるお!」

箱を腹の下に抱え、うずくまって守るブーン。
上から騎士の蹴りが何度も振り下ろされる。


50 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:03:44 ID:HknsixXc0

「さっさと、それを離せ!」

(; ^ω^)) 「嫌だおっ!」

周りで見ている連中は笑っているばかりで助けようともしない。
おそらく似非錬金術師が雇った人ごみで、中の様子が見えないようにされているのだろう。

「こいつっ……!」

騎士はその穂先を振りあげた。

(´・ω・`)) (まずいっ!)

ブーンがホムンクルスだとばれてしまえば、この先の商売は難しくなる。
最悪、捉えられて切り刻まれるのは分かっていた。

(; ^ω^)) 「ショボン!」

その声で斬られたのだと知った。
吹き出した血は赤く大地を濡らすが、それは一時的なもの。

僕の傷が回復していくことに、混乱の声が大きくなっていくのが分かる。

「化物めっ……!」


51 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:06:37 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「僕は……ホムンクルスだ。殺しても死なない。
       あんたの支配は受けないよ。僕は僕の生みの親である───様に従う!」

黙って見ていろ、とブーンにはアイコンタクトで伝える。

(; ^ω^)) 「…………」

(´・ω・`) 「行きずりの所を変な錬金術師に拾われたが、助かったよ。
       もう十分利用させてもらったからね。これは、せいぜいの恩返しさ」

ホムンクルスを作ることは禁止されている。
ブーンの安全と地位を守るには、こうするしか方法がなかったのだ。

「貴様っ! 誰に生み出されたっ!」

ほら、簡単に引っかかった。
騎士と言うのは頭の弱い奴が多い。
僕の……嫌いなタイプだ。


(´・ω・`) 「───様と言ったのさ。こんなゴミみたいな錬金術師にホムンクルスが作れるわけがないだろう」

「さぁ! 我等と一緒に王城まで来てもらおうか!」

またしばらく会えないかもな、ブーン。
元気で。

(´・ω・`) 「それは……断る!」


52 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:15:08 ID:HknsixXc0

槍の間をくぐり抜け、全速力でローマ市街を駆け抜ける。
重装備をしている騎士なんかに後れを取るはずがない。

もともと長旅で鍛え抜かれている身体だ。

門をくぐり抜け、暫く走り続けた。

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」ここまでくればすぐには追いかけてこないか……
       身体が予想以上に重いな……」

お金は手に入らなかったけれど、まぁ問題ない。
ブーンの立場が守れたかどうかだけが気になる。

(;´・ω・`) 「また、時が経ってから見に来るかな……」

旅先は決めていないが、今までもずっとそうだった。
これからもきっとこうだろう。

それにしてもなぜこんなに体が重いのだろうか。
その原因は服にあった。

(;´・ω・`) 「馬鹿なのか賢いのか……」

大量の金貨が服の裏地に仕込まれている。
何かあった時のために、ブーンが用意してくれていたのだろうか。

姿見えぬ友に礼を言い、彼はローマを後にした。



2 ホムンクルスは稼ぐようです  終了


←第1話へ
目次へ
第3話へ→

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。