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( ^ω^)大物バンドが来日したようです 

4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 22:59:44.16

十六日に待望の初来日を果たした米国を代表するロックバンド・VIPが昨日、
合計三十三カ国を巡る結成二十周年記念ツアーの日本公演を開始した。
この長期大型巡業は先日リリースされたアルバム『フロム・シベリア』の宣伝を兼ねており、
それもあってか新譜からの曲を大いに盛り込んだステージとなった。
キャリア初の日本でのライブということもあり会場に詰めかけた二万五千人のファンは熱狂。
改めてアメリカだけに留まらない世界規模のVIP人気を確認することになった。
既に各メディアはスケジュールを押さえ、彼らに直撃インタビューを敢行する構えである。

                                    (記事全文・鳥山クックル)



           4/18付 ニューソクスポーツ一面記事
 


5 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:00:26.17
~楽屋~


オツカレサマデシター

('A`)「テレビ局の取材は終わり、か……」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「ああ疲れた。朝から質問攻めで困るお」

( ^ω^)「おいマネージャー、次の予定はなんだお」

(-@∀@)「はい。えーと、ロック専門誌『ラウド・ラウンジ』のインタビューになりますね」

( ^ω^)「ああ、例の雑誌かお。何度か電話応対したことあるお」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「うるせぇ」

(´・ω・`)「ごめん」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:02:22.89

ついに来日したVIP。『最後の大物』と呼ばれるビッグネームであるだけに、
日本ツアーを待ち焦がれていたファンも多かったことであろう。
しかし、同時に現在の彼らに不安を抱いていたファンも少なからずいたはず。
長年看板を務め続けたボーカリスト、カイル・シャーキンの突然の脱退。
直後に伝えられた新ボーカル、フサ・ワイルドの加入。
多くの噂が渦巻いた交代劇であったが、それらの疑惑を含め、
ラウド・ラウンジ編集部がVIPに直撃独占取材を行った。



                    インタビュワー:猫原ギコ
                    訳:砂尾クール

9 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:05:39.86
――まずはバンド結成二十周年、おめでとうございます。

ブーン・ホライゾン
「ありがとう。といっても、個人的には二十年という月日に対して実感はないんだ。
 なぜなら僕たちがデビューしたのは結成から五年経った一九九七年のことだからね」

――バイオグラフィー的な意味も込めまして、当時のメンバーは?

ブーン
「一番初めからかい? そうだな。まず、今も残っているのは僕しかいないね。
 始まりはハイスクールの友人二人を集めたちっぽけなお遊びバンドだったんだよ。
 三人の頭文字を取って『BIP』と名乗っていたんだけれど、それじゃあまりにも間抜けだったから、
 『VIP』に名前を変えたのさ。特別な感じがするだろう?」

ドクオ・ウッツ
「俺が加入したのはベースをやっていた男が学業を優先するだかで抜けて、
 ブーンが誘ってきたのがきっかけだった。俺たちは何度かライブハウスで顔を合わせていたんだ」

ブーン
「それからしばらくスリーピース体制でのバンドが続いたよ」

ドクオ
「ああ。あの頃は俺とブーンが交互にボーカルを取り合うスタイルだった。
 演奏はクールだった自信はあるが歌は残念ながら不評だったよ(笑)」

12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:12:39.25
――いつ頃から専任ボーカルを迎え入れることになったのですか?

ブーン
「バンドを組んで三年が経過した頃だね。VIPには歌のうまいボーカリストが必要と感じたんだ。
 理由は簡単で、僕が歌っていたのでは未来がなかったからさ」

ドクオ
「だが、そうそう名シンガーは捕まえられるもんじゃない。
 俺たちが求めるタイプのボーカリストは中々見つからなかった。
 だがある日、素晴らしい声の持ち主をテキサスで見つけたんだ」

ブーン
「それがカイル・シャーキンだった」

ドクオ
「俺たちは虜になったよ。ストロングなハイトーンボイスで、たまらなく扇情的に歌うんだ。
 これだ! と即座に思ったよ。だけどシャーキンは既に別のバンドで活動していた。
 だからまずは一ステージ二百ドルで雇って、少しずつ俺たちの中に溶け込ませていったのさ
 幸い、シャーキンは所属しているバンドよりも、VIPが気に入ってくれてね。そのまますんなり加入したんだ」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:20:13.97
ブーン
「シャーキンを迎えた僕たちはすぐにレコード会社の目に止まった。
 元々楽器陣のサウンドには自信を持っていたからね」

――それでファーストアルバムの『VIP』でデビューをしたんでしたね。

ブーン
「そう。だけど、知ってのとおりドラマーが病気を理由にこの一枚で辞めてしまってね。
 モナーが加入したのはその時期だ」

モナー・オールドマン
「夜中の三時に電話が掛かってきたから驚いたよ。
 酒を飲んでベッドで寝転がっていたらいきなり起こされてね。今でも覚えている(笑)」

ドクオ
「モナーの奴は当時から腕利きのドラマーだったが、いかんせん渡り鳥気質でね。
 ひとつのバンドに定住することはなかったんだ。
 フリーの期間が長い男だから、いちかばちか勧誘してみたんだよ」

モナー
「結局、それが俺の墓場になっちまったけどな(笑)」

16 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:34:32.72
ブーン
「僕、ドクオ、シャーキン、モナー。だからこれが、事実上のオリジナルメンバーになるかな。
 この四人で活動していた期間が一番長いからね。
 二十年のうちの、およそ半分はこの面子で過ごしてきた」

――ファンの間で名盤とされる『トゥー・ザ・ヘブン』『ウルヴズ』もこのメンバーによるものでした。

ドクオ
「セカンドアルバムとフィフィスアルバムだな。
 『トゥー・ザ・ヘブン』ではモナーのダイナミックなドラミングが聴ける。
 こいつは俺たちもお気に入りで、タイトルトラックはライブでは外せなくなっているよ」

ブーン
「『ウルヴス』は三十を過ぎて初めて作ったアルバムだったな。
 意識はしていなかったけど、落ち着いた雰囲気の作品に仕上がっている」

――そんな中、もう一人のギタリストとして招かれたのがショボン・オメガでした。

ブーン
「以前にも話したと思うけど、彼の加入は本当に必要に迫られてのことだったんだ
 VIPはギターを中心にすえたバンドだけれども、
 どうにも年々サウンドに厚みが足りなくなっているように感じたんだよ。
 それはギターを弾く僕自身が一番痛感していた」

18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:44:35.86
ショボン・オメガ
「そんな時、ブーンが僕に連絡をくれたんだ。二〇〇八年のことだ」

ブーン
「ショボンが売れっ子のスタジオミュージシャンとして活動していることは知っていたんだ。
 彼のような技術的に優れたギタリストが加わってくれれば、
 きっと僕に不足している部分を埋めてくれると、そう思ってね」

ショボン
「二つ返事でオーケイしたよ。VIPは国民的スターバンドだったからさ」

――翌年リリースされた『ノット・マネー』は好評でした。

ドクオ
「不安だった部分が大きかったからこのアルバムの成功には安堵したよ。
 今更メンバーを増やしてどうなるんだという声が大きかったのでね」

――確かに、ファンの間では「今になって?」という気持ちがあったことは否めません。
   ですが蓋を開けてみれば、煌びやかなギターサウンドはVIPに新しい風を吹き込んでいました。

ショボン
「それは心から喜べることだよ。VIPには”四人組”の印象が既に根付いていたからね。
 新参者に対してあまりよくない目が向けられるんじゃないかと内心おびえていたんだ。
 だからファンが僕の存在を受け入れてくれたことには今でも感謝している」

20 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:52:49.59
――ショボンさんを迎えた新生VIPは、まさに磐石と呼べる体制でした。ですが……。

ブーン
「ああ。訊きたいことはわかる。なぜシャーキンが脱退したかだろう?」

――ええ。そのことに関して様々な噂が飛び交っているようですが。

ブーン
「そんなに厄介な問題じゃないんだ。喧嘩別れというわけでもないしね。
 ただ、彼が自分のペースで活動したいと僕たちに打ち明けたんだ。
 VIPは今でも年に百日以上はライブステージに立ち続けているから、
 きっと彼は自分の時間が欲しかったんだろうな。
 無理に引き止めるのもお互いにとってよくないだろうから、彼の申し出を了承したのさ」

モナー
「だから不仲というわけじゃない。むしろ未だに良好な関係は続いているよ。
 シャーキンのソロデビューアルバムに俺はドラムとして参加する予定だしな」

ブーン
「僕が製作しているソロアルバムでも、彼に一曲歌ってもらうつもりさ」

――それは安心しました。

23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:06:50.03
ドクオ
「そんなことより、俺たちとしては新メンバーのフサについて質問してほしいね」

――失礼しました。では、フサさんにインタビューさせてもらいます。

フサ・ワイルド
「よろしく頼むよ」

――プロフィールを見ますと、これといった経歴は見当たりませんが……?

「オーディションを受ける前はデトロイトの車の整備工場で働いて、
 地元のコピーバンドで週末ひっそりと歌うような、そんな生活だった。
 VIPがニューシンガーを探しているという一報を聞いたときも、駄目元で応募したんだよ。
 それがまさかの合格さ! 元々VIPのファンだったこともあって歓喜したよ」

モナー
「一人だけ飛びぬけてインパクトがあったからな。
 髭面で、とんでもなくパワフルな声で歌うもんだからさ」

ドクオ
「即決だったよ。こいつしかいねぇ! ってな(笑)いやいや実際衝撃的だった」


24 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:11:45.03
――『フロム・シベリア』を聴く限りでは、前任者とはタイプが大きく違いますよね。

ドクオ
「別物だね。シャーキンは伸びやかなハイトーンを武器にしていたけれど
 フサの歌唱スタイルはもっと攻撃的だ。声質もハスキーだしね」

ブーン
「僕たちは強烈な個性を求めていた。
 仮にシャーキンと同じタイプの人間を選んだとしても、シャーキンと比べられるだけだ。
 それよりは全く違うタイプのシンガーを迎えたほうが絶対にいいと思ったんだ」

ショボン
「うん。僕が言うのもなんだけど、VIPは現在進行形のバンドだからね。
 新しい要素を取り入れていくことで成長していくんだ」

ブーン
「だけど、声域自体にはなんの問題もないから過去の曲も歌いこなしてくれる。
 さすがに高音はシャーキンほど強靭じゃないけど、中音域で歌う曲はむしろフサのほうが向いている。
 これには驚いたよ。シャーキンの声を基準に作った曲がフサにぴったり合ってしまうんだからね」

フサ
「VIPの曲を、VIPのステージで、VIPのフロントマンとして歌っていることが今でも信じられないよ。
 毎日が夢心地さ。未だに慣れない(笑)」

26 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:19:46.87
――昨夜のステージでは堂々たる立ち振る舞いでしたが。

ブーン
「フサは逸材シンガーだよ。VIPのボーカルを立派に務め上げてくれている。
 彼によってVIPはますますいい方向へと進んでいくだろうね」

モナー
「新作ではこれまでのスタイルを踏襲した楽曲を収録したけれど、
 次回のアルバムではフサの意向を聞いて実験的なアルバムを作りたいね」

ドクオ
「もしかしたら彼自身にもペンを取ってもらうかもな」

――最後にこのページを読んでいる方にメッセージをお願いします。

ドクオ
「中々機会がなくて来れなかった日本にようやく来ることができて最高だ」

ブーン
「日本のファンにも是非僕たちのライブを楽しんでもらいたいね」

――本日はありがとうございました。

29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:24:58.26
~楽屋~


オツカレサマデシター

( ^ω^)「ようやく終わったお……はあ」

( ´∀`)「休憩まだー?」

(-@∀@)「次の予定はブーンさんとショボンさんだけですね」

('A`)「えっ、じゃあ俺は休めるの?」

(-@∀@)「ギター雑誌の取材ですから」

(´・ω・`)「日本のギターマガジンというと……あ、もしかしてロビー・ギターズ?」

(-@∀@)「そのまさかです」

( ^ω^)「あそこ慣れなれしいから苦手だお……」

33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:31:32.34

九七年のデビュー以来ハードロックサウンドの”王道”を行くVIP。
長年望まれていた来日公演がついに実現!
日本縦断ライブ・サーキット実施中という忙しいスケジュールの間隙をつき、
VIPサウンドの核を担うギターチームの二人に突撃インタビューを決行したぞ!!
ロビー・ギターズ読者の皆、刮目せよ!!




                        聞き手:河内ミルナ
                        訳:斉藤またんき

37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:40:29.21
――前作『ノット・マネー』から華やかなツインギター体制になったわけだけど、
   今回でもそのサウンドスタイルには変化なし?

ブーン・ホライゾン(以下BH)「当然」

ショボン・オメガ(以下SO)「むしろ、よりギターを前面に押し出してるよ(笑)」

――アルバム一曲目からリズミカルなリフが炸裂するね。
   耳にした感じでは、今までのVIPにはない新鮮なサウンドに聴こえたけども。

BH「そう! あのリフはショボンのアイディアだ。かなり技術的にも難しい」

SO「六弦から四弦にまたがる分、音程差がついて緊張感を演出できるんだ」

――今作ではシンガーの変更に合わせて意図的にサウンド面でも狙った部分はある?

BH「それは関係ないな。むしろ、フサ(・ワイルド)のアイディアはほとんど含まれていない。
   ショボンが参加して二枚目ということで、彼に自由にやらせてみた部分が大きいな」

SO「ブーンからは作曲面で多くのことを学んだから、僕なりの解釈を加えてみたんだ」

BH「俺以外にギターを弾ける人間がいるということは大きいよ。
   何よりレコーディングで楽できるしな(笑)」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:49:20.25
――ギターソロの配分はどんな感じ?

BH「俺は今回ほとんどソロは弾いていないな。十一曲中、二曲で掛け合いソロをやったくらいだ。
   というより仕事自体が今までと比べて圧倒的に少ない。
   ショボンとドクオが書いてきた曲にボーカルのメロディーラインを乗せた程度だよ」

――前作ではソロの割り当ては半々と語っていたけれど。

BH「『ノット・マネー』はショボン初参加ということで俺が手本になる必要があったが、
   彼がすっかり馴染んだものだから、俺は一歩引くことにしたんだ」

SO「おかげで伸び伸びとギターソロのレコーディングができたよ」

――確かにこれまでになくソロパートが充実しているね。
   特に四曲目ではかなり長い、それでいて飽きさせないギターソロがハイライトになっている。

SO「あのソロは僕にとってもフェイバリットだ。
   テクニックだけじゃなく、フィーリングがあるからね」

BH「ショボンが信じられないくらい凄いソロを弾くもんだから、
   スタジオで俺は引っくり返りそうになったよ」

40 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:59:35.57
――あとひとつ、演奏がいつもよりタイトに思えたんだけども。

BH「それはプロデューサーのモラル(・ギャクタイネン)のおかげだな。
   欧州にモラルという敏腕プロデューサーがいると小耳に挟んでね。、
   フィンランドのスタジオに機材を持ち込んで、そこでレコーディングしたんだ」

SO「それとジャック・ダニエルの瓶を大量にね」

BH「ああ、そいつを忘れてた。一番の重要物件だ!(笑)」

――(笑) 異国でのレコーディングはどうだった?

BH「特別苦労したことはないね。ただ、食べ物には少し困ったかな。
   特に俺の好物のピザだ! ヨーロッパのピザは薄いんだ。
   シカゴのディープディッシュピザが恋しかったよ」

SO「あれは最高。分厚い生地に、たっぷりチーズとミートソースを乗せてね。
   僕としてはニューヨークスタイルのピザのほうが若干好みだけどさ」

BH「そいつもいい。だけど俺はシカゴピザが一番なんだ」


41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:13:11.49
――では、今作における使用機材を。

BH「まずアンプはいつもと同様にメサ・ブギーのデュアルレクチファイアーを使った。
   何曲かでモラルが所有していたマーシャルのヘッドを使ったけれど、
   どの曲だったかは覚えていないな。クリーンはフェンダーのツインリバーブ」

――同じとは意外。音を聴いた限りでは何かしら変更があったように思ったけども。

BH「モラルのプロデュースのおかげだな。よりソリッドに聴こえただろう?
   ギターはこれまたいつもと同じ、ギブソンのエクスプローラー・ゴシックだ。
   フロント、リアともにEMGピックアップスがマウントしてある。
   俺はもう一本型番違いのエクスプローラー・ゴシックを持っているんだけど、
   そっちはネックがやや薄いから単音弾きの間奏に向いている。
   だからソロアルバムではそっちを使うつもりだよ。
   ペダルはワウくらいだ。あとはミックスダウン段階で掛けてもらっている」

SO「僕はバッキングのメインはスタジオにあったギブソンレスポールだ。
   弾き心地といい音といい素晴らしいギターでね、永久貸し出しを希望したくなったよ(笑)。
   それ以外だとポールリードスミスを何本か。アンプもブーンと同じメサ・ブギーだよ。
   あと、せっかくヨーロッパに来たということでドイツのメーカーであるエングルのアンプを試したりもした。
   エフェクターはチューブスクリーマー、モーリーのワウ、MXRのフェイズ90……色々使ったな」

43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:20:28.67
――ありがとうございした。最後に何か一言あれば。

BH「近頃は音の厚みを増すときはコードの裏でピアノを鳴らしたり、
   あるいは隙間をシンセサイザーで埋めたり……そういうやり方が主流だ。
   だけど俺たちは真っ向から否定するね。
   ギターに隙間があったら、ギターで埋めればいいんだ」

SO「ロックバンドの基本は骨太なギターサウンドだ。それを忘れちゃいけない」

BH「それと、ロックには酒が付き物だ。
   日本を訪れて一番でかいと感じた点はいつでもどこでも簡単にアルコールを買えるところだ!」

――飲みすぎには注意してよ(笑)

SO「どうだろうね。ブーンは暇があれば、片手にビール瓶を握り締めているような人間だから」

BH「まあな。ライブでは酔っぱらってまともに演奏できなくならないよう気をつけるよ(笑)」

44 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:25:45.63
~楽屋~


オツカレサマッシター

(;^ω^)「だるいお……なんで本番前にバテてるんだお僕は」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「もうちょっと隅っこで練習してくれお」

ミ,,゚Д゚彡「次のスケジュールはどうなっているんでしょう?」

(-@∀@)「今度は一般音楽総合誌の記者が来ます」

('A`)「ちっとも取材が途切れないな」

(-@∀@)「今度はリーダー単独ですね」

( ^ω^)「僕の休憩はいつなんだお」

46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:31:57.23

今月の洋楽特集記事は初来日となるロックバンド”VIP”にスポットを当てる。
年表と共に送るバンドの軌跡、ディスコグラフィーを中心に、
専門家が挙げる名盤とその解説などをお届けしていく。
洋楽初心者のあなたもこれを気に興味を持ってみてはいかがだろうか。
またバンドを率いるブーン・ホライゾン氏の独占インタビューも掲載。



                            記事全文:若枡ベルベット

48 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:42:17.85
――それでは、よろしくお願いします。

ブーン氏「よろしくお願いします」

――まずは簡単な略歴のほどをお願いできますでしょうか。

ブーン氏「我々は一九九七年にデビューアルバムを発表して以来、
      今日まで自分たちが思い描く理想のロック・ミュージックを追求してきました。
      今回、ようやく日本のファンの方々と触れ合える機会を設けてもらい、大変光栄に思っています」

――日本国内でも絶大な人気(※1)を誇っておりますが。
   (※1 洋楽チャートでは常に一位を獲得し、『フロム・シベリア』も例に漏れず初登場首位)

ブーン氏「非常に喜ばしいことです。我々はライブバンドであるという自負がありますので、
      そうした側面からのアピールを行ってないのにもかかわらず……ですから。
      ですので今回のツアーでは私たちの魅力を存分に伝えられると思います」

――ファンの間では前任ボーカリスト(※2)との確執が噂されています。
   誠に恐縮ですが、そちらについて語っていただけることは可能でしょうか。
   (※2 カイル・シャーキン氏。現在はVIPを離れソロ活動をスタートしている)

ブーン氏「いえ、関係が悪化したということはありません。彼とは現在も交流が続いています。
      音楽性の相違などというわけでもなく、ただ、単純に彼の心境、モチベーションの問題でした」


49 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:53:33.68
――では、新しいボーカリストであるフサ・ワイルド氏は、
   どのような経緯でVIPへの加入が決まったのでしょう?

ブーン氏「当初の予定では、私はフランス人シンガーのジョルジュ(※3)を誘うつもりでした。
      ですが、過去にアメリカとヨーロッパの混成バンドが、
      主に地理的な理由で失敗していくのを目にしていたために、これは白紙になりました。
      そこでオーディションを行うというアメリカ各地の紙面に掲載してもらったのです」
      (※3 フランスで活動するソロ・アーティスト)

――公募したのですね。

ブーン氏「そうなりますね。そこに、一通の手紙とCD-ROMが送られてきました。
      それこそがフサのデモ音源で、何曲かの私たちのナンバーを見事に、
      かつ大胆なアレンジで歌いこなしていたんですよ。
      私たち一同、稲光が走ったかのような衝撃を受けました」

――直接会ってオーディションも行ったと思います。どのような具合だったでしょう。

ブーン氏「はい。他に気になった人物と一緒にスタジオに招いて審査しましたが、
      やはりそこでもフサが群を抜いて素晴らしいパフォーマンスをしてくれました。
      彼しかいない、と満場一致で決まりましたね」


50 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:03:25.60
――新たなラインナップで望んだ新作『フロム・シベリア』ですが、
   こちらに関する率直な本人の感想はいかがでしょう?

ブーン氏「自画自賛になりますが、非常に気に入っています。
      何よりもフサの力強い歌唱が素晴らしい。
      この魅力を一人でも多くの方に、ライブ会場で生でお届けしたいと思います」

――やはりライブこそが本領なのですね。

ブーン氏「もちろん。最高のステージを用意することを誓います。
      セットリストは新作からの曲を中心に、人気の楽曲をプレイしていきます」

――ライブでの見所などありましたら。

ブーン氏「先程話したとおり、まずはフサの歌になりますね。
      他にはモナー・オールドマンのドラミングは円熟味を増し、
      今が全盛期といえるほどのサウンドを聞かせてくれますので注目してください。
      ドクオ・ウッツは普段は目立ちませんが、堅実な仕事をしてくれます。
      私とショボン・オメガのギターワークにも耳を傾けてくだされば嬉しいです」

――本日はお忙しい中本当にありがとうございました。

ブーン氏「はい。ありがとうございました」

53 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:07:27.17
~楽屋~


オツカレサマデシタ。コンゴモヨロシクオネガイモウシアゲマス

( ^ω^)「マネージャー!」

(-@∀@)「はいはい」

( ^ω^)「あとどのくらいあるんだお」

(-@∀@)「さっきので雑誌取材は終わりですよ」

ミ,,゚Д゚彡「では、そろそろ軽くリハでも……」

(-@∀@)「いや、まだテレビ向けの仕事が残ってますよ」

( ^ω^)「えー」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

('A`)「その曲しか弾けんのか」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:18:12.50
ナレーター:伊与田いょぅ


先日待望の初来日を果たしたアメリカのロックスター『VIP』が、
福岡のヤフーBBドームから北上する全国ツアーを開始しました。
生で見るド迫力のVIPのステージにファンは大・大・大熱狂~。
あらら、中には興奮して上半身裸になる人もいたりして!

そんなVIPのリーダーであるブーンさんから、
なんと日本語でメッセージが届いています!


( ^ω^)「ハイ! ニッホンノミナスァン、ヴィップノブーンディス。
      ボックータチノー、ライヴ、ミニキッテクダサーイネ。
      アッコニーオマカセー」

56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:19:02.56
あっこにおまかせワロタ

57 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:23:01.72
~~


オッツァッシター

( ^ω^)「変な外人って思われるんじゃないかお」

('A`)「気にするな」

( ^ω^)「そんなことより、さすがにもう終わりじゃないのかお!?」

(-@∀@)「まだDVDに収める特典映像のシューティングがありますよ」

( ´∀`)「寝たいモナ」

(-@∀@)「それとブーンさんはアルバムの宣伝用の映像撮影も行いますので」

( ^ω^)「僕の仕事量はどうなってるんだお」

(-@∀@)「円高だからジャパンマネーを存分に獲得してこいとの社長連絡が」

('A`)「外タレのいやらしいところを公開するな」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

60 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:31:15.95
~女子校内~


ζ(゚ー゚*ζ「ねーねー、昨日のBS見た?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや見てないけど。何があったの?」

ζ(>ー<*ζ「VIPのライブがちょっとだけ流れたの! かっこよかったー!」

ξ゚⊿゚)ξ「あー、あんたあのバンド好きだったっけ」

ζ(゚ー゚*ζ「早く見に行きたいなぁ……名古屋公演が待ち遠しいな」

从 ゚∀从「なになに、なんの話? 混ぜて混ぜて」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、今来日してるっていうVIPの話題」

从 ゚∀从「おっ、聞いたことあるな。弟の読んでる雑誌に載ってたっけ」

(*゚ー゚)「日曜日にお昼の番組に少しだけ出てたよ」

ζ(゚ー゚*ζ「嘘っ!? バイトさぼればよかった~」

62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:38:07.85
ξ゚⊿゚)ξ「そんなはまるもんかね」

ζ(゚ー゚*ζ「一回聴いたらわかるよ!
       って、ツンにはアルバム新作以外全部貸してるでしょ」

ξ゚⊿゚)ξ←GEOに売った

ξ゚⊿゚)ξ「うん、まあ、そのうちわかるかな、うん」

(゚、゚トソン「そんなデレのためにラウド・ラウンジの今月号を買ってきましたよ」

ζ(゚ー゚*ζ「わっ! 十四ページもインタビューがある! 完全に私得!」

(*゚ー゚)「む、貪るように読むね……」

(゚、゚トソン「私も参考にと思って拝見させていただきましたが、
     これは熱意のある方しか読破できないのではないかというほど濃密な内容でした」

从 ゚∀从「あんなおっさんによくそこまで入れ込めるわい」

(*゚ー゚)「確かにおじさんだったかな……ちょっと太めの」

ξ゚⊿゚)ξ「デレ=中年マニア説浮上」

ζ(゚ー゚;ζ「ひどっ! もう、みんなVIPにどんなイメージ持ってるのよ」


63 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:44:05.13
从 ゚∀从「えっ、どんなイメージって……」

(゚、゚トソン「ううん……」

(*゚ー゚)「ええと、素直な感想でいい?」

ξ゚⊿゚)ξ「私がいつも買ってる雑誌にも特集載ってたけど、それ読んだ感じだと」

ζ(゚ー゚*ζ「うんうん」

(゚、゚トソン「真面目かつ相当に弁が立つ方かと」

从 ゚∀从「酒浸りの荒っぽいオヤジ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんかロックっぽくないめちゃくちゃ丁寧で腰低そうな人」

(*゚ー゚)「面白い外人さん」

ζ(゚ー゚*ζ「なにそれ」







                               ~おわり~

65 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:46:27.07
あとがき

みんな翻訳記事には気をつけよう
一人称「I」を平気で僕・俺・私で使い分けてキャラクターを後付けしてくる
奴等は危険だ




ブーンお誕生日おめでとう!


目次へ

(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第8話 

245 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:19:15 ID:lvNlMSaA0


絶望の淵にあったホムンクルスを救ったのは一人の少女。

ある事件をきっかけに、少女もまた不死の存在となる。

二人の物語は永遠に続くはずだった…………。


ホムンクルスは生きるようです


──少女編最終話





8 ホムンクルスと少女のようです



二人の愛の行方は────


246 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:20:03 ID:lvNlMSaA0



リリの傷口から体内に染み込み、その定義が彼女の体を変質させていく。
見た目は変わらないまま。


傷口は完全に消えたとき、リリの顔に血の気が戻った。

(;´・ω・`) 「リリ?」

僕の呼びかけに応えるかのように、彼女は目を開けた。

⌒*リ´- -リ 「ショ……ボン? 私は……?」

「あ、あ、有り得ない……。奇跡だ!」

(´;ω;`) 「奇跡じゃ……ありません。……錬金術です」

リリの手がゆっくりと傷口に触れた。
そこにはもう、何もない。

万能に見える錬金術も、死者を元通りに生き返らせることはできない。

(´ ω `) (リリを生かしてくださったことを感謝します)


247 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:21:49 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´- -リ 「……助けてくれたんだね。ありがとう」

(´;ω;`) 「当たり前だ」

リリの手を強く握った。
もう二度と手放さないと、決意して。

⌒*リ´ v リ 「……これで、私もショボンも同じだね」

既に彼女は"知っている"
自分がもはや人間ではないと言うことを。

殺しても死なず、朽ちゆくことのない存在だと。

知った上での、優しい微笑み。
ただそれだけで許された気がした。

(´・ω・`) 「……行こう。ここに長居は出来ない」



⌒*リ´*・-・リ 「……はい」


248 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:23:10 ID:lvNlMSaA0


ベッドから起きあがったリリに寄り添って支え、教会を出る。
腰を抜かした司祭はそのまま置いてきた。

馬は一頭しかいないが、しばらくは急ぐ必要もないだろう。

自由気ままな旅が楽しめるはずだ。

(´・ω・`) 「当初の予定通り、港へ向かおう。そこから先は、またその時に考えればいい」

⌒*リ´*・-・リ 「ショボンと一緒なら、どこまででも」



・  ・  ・  ・  ・  ・


249 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:28:32 ID:lvNlMSaA0




僕らは二人で、世界中を旅した。いろんな国を見て回った。いろんな出来事があった。

数万人が住む都市で商売をして、数百人もいない村で暮らした。


錬金術を用いて人助けをし、知識を授けて平和に一役買った。


神と崇められて、悪魔と罵られながら。


幸せだった。
二人で笑って、泣いて、生きて。


(´・ω・`) 「…………君と一緒でよかった」



⌒*リ´ v リ 「私もだよ」


250 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:30:50 ID:lvNlMSaA0



気づいたのはいつ頃だったか。
100年は経っていなかったと思う。

リリの様子が少しおかしいことに気づく。。
僕の前では明るく振る舞っていたけれど、何かを隠しているのは明らかだった。

だから彼女に直接聞いた。
どんなに悪いことだろうと、一人で背負わす訳にはいかなかった。

(´・ω・`) 「リリ。言いたいことがあるのなら、言ってくれ」

⌒*リ´・-・リ 「……。ショボン……。
        なんでも……ないよ」

(´・ω・`) 「隠すなよ」

⌒*リ#´・-・リ 「何でもないったら!」

リリは答えてくれなかった。
それどころか、こんなに怒らせてしまったのは数年ぶりのことだ。


251 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:35:15 ID:lvNlMSaA0


(´-ω-`) 「……ごめん」

⌒*リ´- -リ 「私こそごめん……」

微妙な空気が僕らを包む。
お互いの距離感を測りかねていた。

強引にでも聞くべきなのか、そうでないのか、僕にはわからない。

(´-ω-`) (いつからだったかなぁ……)

最初の数年は喧嘩なんて一度もなかった。
一緒に過ごす年数が二桁になるころに何回か喧嘩をした。

つまらないことだったけど。
長く一緒にいるから、お互いのことはよく知っている。

だからこそ、違和感を感じる。
僕のことじゃなく、自分のことで悩んでいるのだと。
そう確信できるものが、心の中で渦巻いてる。

(´-ω-`) (でも、どうすれば……)


252 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:36:42 ID:lvNlMSaA0


僕らが出会った村よりも、ずっとずっと南西にある小さな漁港。
ここで過ごし始めてもう20年にもなる。

⌒*リ´ - リ 「……ちょっと……出掛けてくるね」

それだけ言うと、リリは外に歩いていった。
外はまだ明るいし、心配はいらないだろう。

(´・ω・`) 「ふぅ……」

思わずため息が漏れる。


思い当たることがないわけではない。
一年365日ほとんど一緒にいるのだ。

むしろ喧嘩の理由が無い方がおかしい。

(´・ω・`) (寂しいのかな……)


253 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:39:38 ID:lvNlMSaA0



最初の頃はずっと一緒に暮らしていた。
錬金術を使ってお金を稼ぎながら。

二人でどちらがより売れるか競い合ったり、共同で新しいものを作ったり。

彼女はホムンクルスの僕には無いアイデアで錬金術を行っていた。

リリにとって新鮮だった錬金術は、数年もすればつまらないものになった。
それから僕らは世界中を旅行した。

先人達の偉大な歴史を見て回った。
リリにも純粋に旅行として楽しんでもらえたと思う。

それでもやっぱり定住意欲の方が強くて、旅行先に何度か住み着いた。
だけど十数年が限界だった。

年をとらない僕らは、年数がたてばたつほど怪しまれる。
今住んでいるこの地だって、しばらく住めば離れなければならない。

最近、僕は食べ物の調達によく狩りに出掛けている。
リリは家の近くで野菜を作っていることが多く、そのせいかもしれない。

(´・ω・`) (寂しさを紛らわす方法か……)


254 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:41:31 ID:lvNlMSaA0



椅子から立ち上がって、家の外に出た。

雲一つない真っ青な空に、まだ雪の解けていない白い峰。
まるで自然の美しさが今この景色に凝縮されているかのようだ。
牛は暢気に草をはみ、羊は少し長い昼寝を楽しんでいる。

少し歩いた先にリリはいた。
大樹に寄り添って座っている。













聞き覚えのあるメロディが、風にのって届く。



僕の、一番好きな調べ。


255 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:46:55 ID:lvNlMSaA0




春の陽のように優しく

雪解け水のせせらぎのように心地よい


立ち止まって耳を傾けていた。


パキ


演奏は歪な音で中断された。

⌒*リ´ - リ 「…………」

(´・ω・`) 「…………リリ」

リリの胸には二つに割れた横笛が抱かれていた。


256 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:50:50 ID:lvNlMSaA0


⌒*リ´ - リ 「仕方ありません……いずれ朽ちてしまうものです。
        形を変えないものなどないのですから……」

(´・ω・`) 「まだ、直るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「いえ、いいんです。もう、充分です。休ませてあげましょう」


(´・ω・`) 「……僕が新しいのをプレゼントするよ。
      上手に作れる自信はないけれど……。
      錬金術じゃなくて、僕の手で」

⌒*リ´*・v・リ 「ありがとうございます」

(´・ω・`) 「家に帰ろう」

僕らは並んで家に帰った。
壊れてしまったリリの横笛は、大事にしまい込んだ。


257 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:52:45 ID:lvNlMSaA0




(´・ω・`) 「リリ、あのさ…………子どもを作ろうか」

⌒*リ´・-・リ 「!?」

⌒*リ´//-/リ 「あ、あああああ、あの……そういうのは……ですね……えっと……」

動揺して真っ赤になるリリ。
慌てすぎてて舌が回ってない。

⌒*リ´//-/リ 「えーあーそのーえーでも……うん……」

(´・ω・`) 「まぁ落ち着いてよ。別に今すぐどうのこうのってわけじゃないし」

⌒*リ´//-/リ 「ま、まだ昼なんだから当たり前です!」

論点がずれていた。
リリが落ち着くのを待ち、それから話を進める。

(´・ω・`) 「僕は君を寂しがらせてるんじゃないかって。
      子どもがいれば、そんなことはないんじゃないかな」

⌒*リ´・-・リ 「……」

(´・ω・`) 「人間と同じように子供を作ることはできないけれど、僕なら……」


258 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:54:31 ID:lvNlMSaA0



黙っていたリリはゆっくりと口を開いた。


⌒*リ´・-・リ 「その子供は、人間ですか? それとも、ホムンクルスですか?」

その静かな質問の答えを、僕はもっていなかった。
ただ彼女のことだけを考えていた僕には、答えることができなかった。


⌒*リ´・-・リ 「人間の子どもを私達が育てた時、大きくなったその子は何を思うでしょうか。
        親が不老不死の人外だと知って、その子はまだ自分が人間だと信じられるでしょうか」

(´-ω-`) 「………………」



⌒*リ´・-・リ 「ホムンクルスの子どもは一生子供のままです。もし、大人になるとしても彼もまた不老不死なわけですよね。
        私は、ショボンの言うとおり寂しいと感じています。
        友人もいない、家族もいない、愛する人とたった二人でいるには、あまりにも長すぎる時間を過ごしてきました」



違う、とは言えない。
彼女の言うことは正しい。
そして、その言葉は僕を苦しめる。


259 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:01:18 ID:lvNlMSaA0



(´-ω-`) 「………………」

⌒*リ´・-・リ 「でも、だからと言って、私は、自分のエゴのためにそのような存在を生み出すことを良しとしません。
        ショボンの心遣いはとても嬉しいです」


窓から差し込む陽光を眺めつつ、リリは口を開いた。




⌒*リ´・-・リ 「……怖いのです」

⌒*リ´・-・リ 「死ぬことのない私たちは、いつまで生きればよいのですか?」

(´-ω-`) 「…………」

⌒*リ´・-・リ 「人が死に絶え、植物が腐り落ち、世界が滅んだら、私たちはどうなるのでしょう」


⌒*リ´・-・リ 「この数十年は、この考えが頭から離れません」

だから、僕の心遣いは嬉しかった、と。

(´・ω・`) 「それは……」

続ける言葉もないのに、声を発してしまった。


260 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:05:39 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「……リリは……」

⌒*リ´・-・リ 「ショボンを責めているわけではないです。
        むしろ死んでいたはずの私にこれほどまでに多くの幸せを下さって、とても感謝しています」

⌒*リ´・-・リ 「私がいなければ、ショボンは一人で生きていくことになってしまいますから。
        ただ少し、そう少しだけ、疲れてしまったのかもしれません」

今になってようやく気づいた。


リリは人間の心を持つホムンクルスだ。
人の心は数百年を生きるようにはできていない。
長生きすることを想定して作られた僕とは、決定的に、絶望的に違う。

今はまだ『少し疲れた』程度かもしれない。でも、いずれは……。

深く沈んだ僕の表情を見て、リリは言った。


261 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:11:06 ID:lvNlMSaA0
]


⌒*リ´*・-・リ 「心配しないで下さい。そうそう簡単に負けたりしませんから」

(´ ω `) 「うん……」

ただ頷き返すことしかできなかった。

リリの心を人間の時そのままに残したのは、彼女の心に干渉したくなかったからだ。
僕によって強く作りかえられた心は、果たしてリリのものなのか。
そういう疑問を持ちたくなかった。

だから、彼女の精神には何も施さなかった。
それが今のこの状況を作り出している。

何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなってしまった。
静かに泣いていた僕を、彼女は優しく抱きしめてくれた。



・  ・  ・  ・  ・  ・


262 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:26:20 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´*・-・リ




⌒*リ´・-・リ




⌒*リ´ - リ




 リノ´ -川


263 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:20:57 ID:lvNlMSaA0


・  ・  ・  ・  ・  ・



僕とリリはただひたすらに生きた。

そこに神様が願いを聞いてくれて幸せになる奇跡はなく、
悪魔と戦って生きる意味を知るような物語もない。

平凡で、それ故に平和な百数十年だった。
長い年月で得たものは、両手では持ちきれないほどの思い出。
それとは逆に、リリの心は少しずつ磨耗していった。



 リノ´ -川 「ごめんなさい、ショボン……」



一番聞きたくなかった言葉が容赦なく鼓膜を震わせる。

ただぼーっと指をくわえて見ていたわけではない。
心の劣化を防ぐ研究を、元へ戻す研究を続けてきた。


264 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:23:00 ID:lvNlMSaA0



ついぞ答えを見つけることはできなかった。
いずれの手段をとるにしろ、彼女の性格を手付かずで残すことができないのだ。
心とは性格そのものだと言うことを、理解した。

(;´・ω・`) 「頼む! もう少しだけっ!」

そう言ってリリを引き留めた。
何度も。何度も。


265 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:25:30 ID:lvNlMSaA0












 リノ´ -川 「…………ごめんなさい」










.


266 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:31:57 ID:lvNlMSaA0


研究に疲れて寝ていた僕が、そのことに気づいたのは、次の日の朝だった。

(´-ω-`) 「リリ……?」

扉が強く叩かれる音で目を覚ました。

(´+ω-`) 「ん……」

普段ならリリが対応するはずだが、姿が見えない。
仕方なく机から起きあがり、来訪者を迎え入れた。

「ショボン様、リリ様が……」

村人の尋常でない様子から、リリの身に何か起きたのだと悟る。

(#´・ω・`) 「何があった!?」

まどろみから一瞬で覚めた。
語気を荒くして問う。

「リリ様が……川に」

(;´・ω・`) 「っ! どこだっ! 案内しろっ!」


267 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:32:56 ID:lvNlMSaA0



連れてこられたのは、村に流れ込む大きな川。
流れは早く、リリの姿は見あたらない。

(;´・ω・`) 「いつの話だ?」

「つい先程です。一人ふらふらと歩いてこられて……」

(;´・ω・`) 「リリっ……くそっ……リリぃっ!!」

叫んでも返事はない。
水の流れる音だけが、聞こえていた。

(;´・ω・`) 「しばらく家を空ける。村の者にも伝えといてくれ」

「わかりました」

河口へは遠く、この辺りはかなりの深さがある。
おまけに急流ともなれば、川底を調べるのは不可能だ。

(;´・ω・`) (どこから探せば……)

家に戻って旅支度を整える。
必要なものはまとめて革袋へ放り込んだ。

そこで一枚の紙切れが目に付いた。
手に取って見てみると、リリの字で書かれた手紙だった。


268 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:34:43 ID:lvNlMSaA0












「ショボンへ。あなたに救ってもらったこの命を、無駄にしてしまうことを許して下さい。とても幸せでした。さようなら」











.


269 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:48:47 ID:lvNlMSaA0







(´;ω;`) 「っ…………」

涙が止まらなかった。
短い手紙には、リリの苦労が一言も書かれていなかった。
彼女は、僕を気遣ってくれたのだ。
エゴで彼女を苦しめた僕を。

罵詈雑言で埋め尽くされていてもおかしくなかった。
呪いの言葉を残されても自業自得だ。

それなのに彼女は……。

(´・ω・`) (探さなきゃ……こんな終わり方は駄目だ……)

ホムンクルスの命を終わらせる方法なんてわからない。
それでも、リリが本当に死を望むなら、見つけなきゃならない。
水底で眠るのは一時的な逃避だ。数百年後、数千年後にさらにひどいことになるかもしれないのだから。

(´・ω・`) (必ず見つける。見つけて、二人で最善な道を探すんだ。
       それがもし離れ離れになってしまうことだとしても。僕が逃げてはいけない)


270 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:12:09 ID:lvNlMSaA0


手紙も袋の中にしまい込み、まずは川下へ向かって歩くことにした。
人の体は浮くものだし、どこかで引っかかっているかもしれないからだ。
乾季になれば、少しは水の量が減る。それまでの凡そ三カ月は川の周辺を調べるしかない。

数百キロの途方もない道のりも、リリを想えば容易かった。

(´・ω・`) (見つけて、今度こそリリを救う)

彼女が、彼女らしく生きていけるように。
彼女が、彼女らしく死ねるように。



僕は……もう逃げない。


271 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:41:57 ID:lvNlMSaA0



日の出ている間は、ひたすら川下に向かって歩いた。
下降にある港町まで二週間かけて歩いたけれど、リリの持ち物一つ見つけることすらできなかった。

港町で聞き込みをする。

海に流れ込む河口は人を運ぶだけの勢いも、深さもない。
ここまで流れ着いていれば、誰かが気づくはずだ。

(´・ω・`) 「すいません、普段町で見ない女の子を知りませんか? 
       リルケット・リファリアという名前なのですが」

「いや。交易都市だからなぁ。人の出入りも激しいし、それだけの情報じゃわからない」

(´・ω・`) 「そうですか……ありがとうございました」

(´・ω・`) 「すいません、あの……」


「いや、知らない」

「知らんなぁ」

「わからん」


272 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:49:46 ID:lvNlMSaA0


聞き込みの成果はゼロだった。
リリの姿形を表現できる手段がなければ、当たり前かもしれない。
かといって絵が描けるわけでもない。
状況は最悪だった。

(´・ω・`) (しばらく、ここで暮らすか……)

いつ彼女が流れ着くかわからない。
焦って何往復もするよりは、このほうが良いはずだ。

用意していた金銀をもってギルドに建築の依頼をする。
中心部から離れた、河口を見下ろせる丘の上に小さな小屋を建ててもらうことにした。

完成するまでの一週間は宿屋に泊まり、朝から晩まで河口を眺めて過ごした。

「ショボンさん、でしたっけ。注文通りの家を完成させました」

きっちり一週間後、職人が報告しに来た。
残りの代金を払い、あらかじめ予約していた錬金術の道具店へ向かう。
錬金術師が広く知られていないこの時代に、こうした店を見つけることができたのは運が良かった。


273 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:58:59 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「フラスコを10、試験管を12、固定具を2、ランプを2、用意できてますか?」

「ああ、新しい研究所を作る人だったけな。全部できとるよ」

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

「サービスにフラスコと試験管二つずつ増やしといたから。また利用してくれよ」

(´・ω・`) 「はい、そうさせていただきます」

両手いっぱいの器具を抱えつつ、家に帰った。
全てを使いやすいように並べて一息つく。
ふと、西側の窓から河口を見下ろす。

川で水遊びをしている子どもたちが目に入った。
覚悟を決めて手元の器具に目線を映す。

(´・ω・`) 「ホムンクルスの研究を一からしよう……」

僕はホムンクルス、ひいては賢者の金属について知らないことはないだろう。
だが、今ある知識だけでは足りない。
リリを見つけたときのために、全てを知っておかなければならない。



・  ・  ・  ・  ・  ・


274 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:01:17 ID:lvNlMSaA0





数十年の年月はあっという間だった。
一匹の兎を検体として百を越える実験をし、千を越える種類の薬品を投与した。


その何一つとして有効な結果は得られなかった。

調べれば調べるほど、ホムンクルスの不死性は完璧な論理の上に組みあがっていた。

(´・ω・`) 「くそっ……」

書きあげた式を破り捨てる。
これもうまくいかなかった。

未だリリを見つけることも出来ていない。
一年に一度、彼女が身を投げた村まで川を遡っていが、手掛かりはない。

リリは記憶を失ってどこか別の場所で生きてるんじゃないだろうか。
どこかで、一人苦しんでいるのではないだろうか。

そんな考えが浮かんでは消えていく。

ここにいれば彼女が見つかる、そう信じていた。
でももう、それすら信じられない。

港町に長居し過ぎたせいで、僕の名もだいぶ知られてしまっている。
ここも安全ではない。


275 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:02:02 ID:lvNlMSaA0
(´・ω・`) (世界中を巡って、不死の解決の手段を探す)

流通する品は限られている。
ここにいたままでは手に入らない素材は山ほどあるし、知らない植物も旅の途中で多く見て来た。
それならば、新しい発見を求めて。

(´・ω・`) (世界を歩き、リリの痕跡を見つける)

それが、僕の今すべきことだ。


でもその前に、やることがある。

ここに僕がいた証を残そう。
リリの手掛かりになるように。

(´・ω・`) (ただ彷徨うのではなく、帰ってこれるように)

買ってきた塗料で家の壁に大きく文字を書く。
ここが、僕の家だとわかるように。


Death is only the begining except for Us


276 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:03:55 ID:lvNlMSaA0


そして家を守るための仕組みを作った。
家を中心に二重の黒線を描き、そこに錬金術を組み込む。

それは人間の意識を逸らす。
定期的に帰って来なければならないが、これで家は残されるはずだ。


(´・ω・`) 「ふぅ…………」

勢いつけて起きあがり、机の上の紙を全て暖炉に放り込んだ。
実験道具に残っていた研究素材も全て。

炎の色は夜のように黒く、紫の煙を出して燃え上がる。

最後に机の上に丁寧に横笛を置いた。
砕けてしまった、彼女の最も大切な物。

欠片を繋ぎ合わせ、接着した。
別れてしまった僕らが再び出会えるように願いを込めて。




最後に一度だけ振り返り、家を出発した。


277 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:04:57 ID:lvNlMSaA0









8 ホムンクルスと少女のようです  End

             

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