ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 1話

4 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:34:28.95 ID:L+wPTjSV0
命令を下さい。

俺は銃を握る。照準は敵に合わせよう。
どのような距離にいようとも、撃ち抜いて見せよう。
弾丸を弾倉にも込めよう。引き金は俺が引こう。

―――命令を下さい。

しかし……

―――命令を下さい。

殺すのはあなたの殺意だ。命じられただけでは俺の意思までは奪えない。
国の存亡が掛かっていても俺の意志までは、
たとえ上官であろうとも俺の意志までは奪えやしない。

命令を下さい。さもなくば、俺は人を殺せない。
大義や名分の下でなければ人を殺せない。

―――命令を下さい。

あなたの命令で人が死にます。敵も、味方も、友人も、仲間も、戦闘員も、非戦闘員も、
大人も、若者も、老人も、子供も、男も女も関係なしに、死んでいきます。

日に日に仲間達は減っていく。命令の果てに、命令通りに戦えば国を守り切れると信じていた自分達。

―――命令を……、命令を……っ!

命令は無く、闇雲に銃を振り回して俺は抗い続ける。




7 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:37:14.20 ID:L+wPTjSV0



          ('A`)ドクオは亡国の兵士のようです


             第一話 国を失った者



******

ニーソク国、ニーソク軍中央基地の兵舎の一室で、
素直クールという小隊長を務める女性が隊員達の前に立ち、
一人の男を紹介しようとしていた。

彼女は男を手で指す。

彼はゴムにも似た繊維で出来た、
各所に機械が埋め込まれている黒いダイビングスーツのような物を着ていた。

それを見た隊員達は口をきつく引き締めることとなり、
クールは、予め想定していた事実に、確信を得た。
しかし顔は無表情のままに口を開き、

川 ゚ -゚) 「以前にも話していた通り、こいつが新しく配属されてきた、鬱田ドクオだ」

('A`) 「よろしくお願いします」

男、鬱田ドクオは会釈をする。

顔中にキズを刻みこまれていることよりも、
隊員達は、彼の着ている服に注目を集めていた。息を呑んだ兵士が、
 _、_
( ,_ノ゚ ) 「強化骨格………っ!」

目を見開いてその名を呼んだ。
名に彼等はどよめき、対照的にクールは涼しく、


11 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:40:51.79 ID:L+wPTjSV0

川 ゚ -゚) 「あぁ、そうだ。≪ニューソク国≫が作り出した、あの国が作った、あの国で戦っていた、兵士。
      それも、前線で数多くの敵を屠ってきた、“我々の”仲間を数多くを殺してきた≪強化兵士≫」

息を呑んで続け、

川 ゚ -゚) 「≪強化骨格≫を纏った兵士だ」
 _、_
( ,_ノ` ) 「俺はてっきり俺達と同じ思いで戦っている奴が配属されてくると思ったんだがね。
      まさか、まさか俺達の敵がやってくるなんて思ってもいなかったぜ」

川 ゚ -゚) 「こいつが私達の味方であることには変わりない。
      ドクオは、命令されれば迷い無くニューソクの兵士を撃つだろう。
      命令されれば、躊躇せずに裏切り者として討つだろう。私達の敵になる者は、こいつの敵に変わりない」

川 ゚ -゚) 「さ、状況を飲み込んで己の職務を果たしにいこうか。
      新人とは、信頼を寄せられないものだよ。これから自らの手で、勝ち得て行くのだから」
 _、_
( ,_ノ` ) 「……了解」

短く答えた兵士、渋澤は応えて、
他の隊員達も了解の声を上げた。


13 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:41:50.14 ID:L+wPTjSV0

******

アスファルトの上で軍靴を鳴らす兵士達。

武器庫に入って行き、
その中にある、ロッカーを開けると、
黒光りするアサルトライフルが銃身に錠を施されて納まっていた。

('A`) 「………」

ドクオは無言で、≪ニューソク国解体戦争≫の時から扱っている、愛銃。
肉厚の筒のような銃身を持つアサルトライフル、M4A1カービンに手を掛ける。
  _
( ゚∀゚) 「へぇ~、それがお前の得物? ニューソクではそれを制式採用してんの?」

すると、背後から声を掛けられた。

振りかえり、声の主を視界に入れると、
特徴的な濃い眉をした、どこか軽薄そうな男が、
ニヤけた笑みを浮かべている。

ドクオは無感動な瞳で彼を見て、

('A`) 「いや、XM8が制式だったよ」


15 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:43:10.99 ID:L+wPTjSV0
  _
( ゚∀゚) 「じゃあ、それはお前の私物なの?」

('A`) 「俺のいた部隊では、こっちが使われてたんだ。
    スコープとかレーザーサイトとか、アクセサリーが豊富だからね」

ふ~ん、と気楽そうに鼻を鳴らして、
  _
( ゚∀゚) 「いーなー、それ。ダットサイトにレーザーサイト、
      グレネードランチャーにサプレッサーまで付いて、めっちゃ贅沢だな」

恨めし気な視線をドクオの持つM4A1に寄せるが、
ドクオは男を見据えて、

('A`) 「お前にはお前のがあるだろ。それに、狙撃手ならそっちのほうが良いだろ?」

と、彼の肩に掛けられた、
VSSと呼ばれる消音機の付いたスナイパーライフルを指差す。
男は肩を跳ね上げて、両の手を広げて、
  _
( ゚∀゚) 「いや、単なる興味さ。わざわざ古い銃を使う、
      ニューソクの兵士だったお前へのな。ニューソクは、すんげー国だったよ。
      次々に新しい武器が生まれて、兵士はみんな精強で。俺達は痛い目に遭わされたもんだ」

今まで、軽々しく話しかけてきた彼の口調が、
少し、重い物になったような気がした。


19 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:46:00.70 ID:L+wPTjSV0

('A`) 「でも、ニューソクは負けたよ。消えて、失せた。
    銃の性能なんて、古かろうが新しかろうが、変わらないのさ」
  _
( ゚∀゚) 「だろうね。名銃は何十年にも渡って扱われるもんだ。
      ウチの部隊でもXM8が採用されてる。でも、お前はそれを使わない」

キラリと効果音が鳴るように、彼は瞳を輝かせて
  _
( ゚∀゚)+「つまり、お前が使ってるその銃は名銃なんだろ?」

はぁ、と溜息を吐いたドクオは、

('A`) 「これが終わったら、好きに使って良いよ。貸しちゃる」

対し、男が興奮気味に、
  _
(* ゚∀゚) 「おぉう、ありがとよドクオ。
      俺はジョルジュな、長岡ジョルジュ。忘れんなよ!」

忘れるな、とは名前の事なのか、
銃を貸すと言うことなのか、
ドクオは少し理解するのに遅れたが、とりあえず。

('A`) 「あー。よろしくなー」

間延びした声が口から漏れ出てきた。


20 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:48:17.92 ID:L+wPTjSV0

******

硬いベンチのような座席に座って、
僕は薄暗い装甲車の中で揺られていた。

窓から細い光条となって車内を照らす。

ここに詰め込まれた人々は、
肩と肩がひっつくぐらい、隣り合わせになって座り、
多くの人間が狭い空間で少し窮屈そうにしている。

どこか息苦しく、空気が悪いと僕は思う。

二酸化炭素を吐き出し続ける僕達の体。

装甲車で移動するのは、もう何度目とも知れないが、
やはり慣れられる物ではない。
いや、回りのみんなはもう慣れてるのかもしれないけど、僕は無理だ。

まだまだ、まだまだ僕には経験が足りない。

≪ニューソク国解体戦争≫終結後に軍学校を卒業し、
先月配属されたばかりの僕は、ヒヨっ子という言葉がよく似合うのだろう。
実戦を経験したことは無いに等しい。

訓練なら幾度となく経験したが、やはり、訓練には無い緊張感がある。

23 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:51:05.31 ID:L+wPTjSV0

(;^ω^) 「………」

口の中が乾いていく。
心臓の鼓動が速いペースで刻まれ、経験したことのない状況に僕は陥っている。

('A`) 「……」

今日から配属された、しかし歴戦の兵士であり、
敵国であったニューソクの兵士が、僕の隣で肩を合わせて座っているのだ。

名前は鬱田ドクオと言った。

肩にはニーソク国の国章である、白馬に跨った甲冑姿の騎士が描かれた、
オリーブドラブの軍用コートを羽織っており、
その下には……

(;^ω^) (強化骨格―――っ!)

防弾繊維で体が覆われており、
その下から“作り物”の筋肉が隆起している。

胸には防弾ベスト、腰にはバックパックが装備されていた。


25 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:53:45.40 ID:L+wPTjSV0

ニューソク国解体戦争ではよく見られた姿だ。

というのを、僕は噂で聞いていた。
なにしろ、僕はその頃軍学校で勉強に勤しんでいた身だ。
実際に彼等の姿を見ることは無かったのだ。

が、それで良かった、と僕は思っていた。
彼等の噂を耳にしている僕には、そう思えた。

―――破壊を撒き散らし死へと誘う鋼鉄の人形。
     奴らは群を以って押し寄せて、人間を、兵器を食い散らかしていく。
       何物も無く、万物を無く、まっさらに、戦場を更地に変えていく。

人の形をした機械。人を棄てた亡霊。
噂では、そう聞いていた。

国を失った、亡霊。

僕の隣には今、そんな存在が肩を合わせて座っている。
不意に、亡霊がこちらを振り返ってきた。

('A`) 「緊張してるのか?」

(;^ω^) 「はっ、はい……」

アンタが隣にいるからだよっ!
と言いたいところだが、そんなことを言えるはずも無く、
額に汗を浮かべて僕は声を絞り出す。


26 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:56:21.51 ID:L+wPTjSV0

('A`) 「大丈夫、案外なんとかなるもんだよ」

(;^ω^) 「は、はぁ……」

('A`) 「………」

一言だけ発すると、彼はこちらに向けていた体を正面へと向け、
先程のように涼しげな顔で、無言になる。

('A`) 「………」

何か深く思索しているようにも思えるが、
ただ、ボケーっとしているようにも見える。

何を考えているのだろうか?
国を失い、敵だった国の軍隊で戦うこととなり、
その一部隊で戦う新兵に、気遣いの一言を掛けてくる男の心境とは?

少しだけドクオの印象が変わり、

(;^ω^) 「あの、ドクオさんは緊張しているのかお?」

恐らく目上である彼に、敬語で話しかけてみた。
敵だった者達と共に戦うなど、どれほどの重圧なのだろうか?
戦ったことのない僕には、全くわからない。


27 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 22:59:32.09 ID:L+wPTjSV0

もしかしたら、この男も僕と同じく緊張しているのではないか?

('A`) 「んー……ちょっとね」

軽く答える彼の言葉に、僕は安心のような物を感じた。

自然と頬が緩み、

( ^ω^) 「おっおっおっ、ちょっとですかお」

弾むような声音で僕は言った。

すると、正面から何か鋭い気配を感じる。
僕を貫くような視線を、フルメタルジャケットよろしく飛ばしてくる彼女。

ξ#゚⊿゚)ξ 「――――っ」

カールされた金髪が美しい、
ツンがキッとした目付きで睨んできていた。

僕は、大丈夫だお、というようなアイコンタクトを送ろうと、
どうするべきか悩んだ末に、


29 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:03:05.34 ID:L+wPTjSV0

( ^3^)シ 「チュパッ」

投げキッスをツンに送った。

届けっ!僕の思い……っ!!

直後、獣の咆哮が聞こえたかと思うと、
僕はツンに殴り倒されていた。

ドクオはヒッという声を上げて身を竦めていたが、
ジョルジュはケタケタと笑っており、
ツンの拳は渋澤さんが止めに入ってくれるまで、止まることは無かった。

31 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:05:35.38 ID:L+wPTjSV0

******

小高い丘がいくつもの隆起を生み出している森の中で、
装甲車が停車すると、運転席からオリーブドラブの戦闘服を着た、
素直クールが降りて来た。

次いで、装甲車のハッチが開き、
ぞろぞろと兵士達がスムーズな動きで車内から出て行く。

が、先月入隊したばかりの新兵、
ブーンという男だけがフラフラとした、
覚束ない足取りで降車していた。顔には青痣が浮かんでおり、表情には力が無い。

川 ゚ -゚) 「出撃前にも説明したとは思うが、この先にある村がテロリスト、
      “ニューソク軍”の残党と思われる者達に占拠された。
       我々はこの者達を排除し、村民を虐殺し、食料を貪る外道共を殲滅する」

無表情で兵士達の前に立ち、クールは透き通るような声で言い放つ。

川 ゚ -゚) 「まず、小隊を3班に分ける。狙撃に2班、突入に1班だ」

川 ゚ -゚) 「今回の作戦展開は、普段とは違った物となることだろう。
      何故ならば、我々の元には、今や消え去った国であるニューソクの、
      サイバネティックスの結晶である、強化骨格の兵士がいるからだ」

彼女の言葉に、兵士達は息を飲み込み、
一同は、件の強化骨格の兵士を見やる。


34 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:08:09.00 ID:L+wPTjSV0

('A`) 「………」

彼はただ、呆然とも言える表情でクールに視線を送っていた。

川 ゚ -゚) 「狙撃班にはここの丘から狙撃を行って貰う。
      突入班はドクオを中心とし、援護射撃を行う。
      ドクオ、お前には敵が占拠している村へ、単独で切り込んで行って貰う」

無表情に、鋭い光を瞳に宿して、

川 ゚ -゚) 「出来んとは言わせんぞ?」

確認を取るように疑問詞を投げかけた。
ドクオは短く「了解」とだけ答える。

川 ゚ -゚) 「では、これから配置について貰う。
      突入班はこのまま装甲車で村まで移動するぞ」

出撃前に、割り振られた人員がそれぞれの動きを作り、
各々の持ち場へと赴いていった。


37 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:10:23.36 ID:L+wPTjSV0

******

( ´ー`)「うおっ、眩し」

朽ちかけた戦車の上で、真昼間の真っ青な空を見ると、
その青の清々しさにシラネーヨの目がくらんでしまう。

瞳を閉じて、暗闇に視界を落とすと、
心地の良い風が俺の肌を撫でる。
日差しもポカポカと温かく、気持ちが良い。

迷彩服を着た身体が、つい眠りに落ちていきそうになる。
木で出来た家が多く、農園が置かれた村。

そこに立ちこめる陽気に惑わされ、
自分が何故ここにいるのか、忘れてしまいそうになる。
だが、視界の端に積まれたここの村人たちの死体が、自分の目的を思い出させた。

何故こんなことをしているのだろうか?

何故村人を殺したのだろうか?

何故こんなにも心が乾く?

何故体に力が入らない?

全身が軋みを上げていて、油と血の混じった、
どす黒い液体が体に纏わりついている。

40 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:13:26.83 ID:L+wPTjSV0
この軋みは、何に対しての物だ?

何故、何故、何故、何故、何故。
幾数もの何故という問いが自分の中で生まれており、
俺は答えられずにいる。

何故人を殺すのだ?

分からない。知らない。理解できない。
だから俺はこう答えてやるんだ。自問の念に。

( ´ー`)「知らねぇーよ」

ただ、ただ生き延びる為に。
生き残るために殺すのだ。生きていく為に殺すんだ。

何故ならば俺は死ねないからだ。死ぬわけにはいかないのだ。

かつて、俺はこう命令された。
あの狐のコードネームを持つ、皺と傷が刻まれた頬を持つ上官に。

爪 ー ) 「国を守るために生き延びよ。
     最前線で、生き続けると言うことは、戦うという行為に他ならない。
     戦え、生きよ。我々の国は君達の生存を望むだろう。我々は英雄の戦を望む」

そう言われ、俺達はニーソク国へと攻め入った。
無謀とも言える、逆転を狙った侵攻。


41 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:14:42.27 ID:L+wPTjSV0
俺達は命じられたとおり、最前線で生き続けていた。

強化兵士共も、俺達と共に戦い、
真っ先におっ死んでいきやがった。

強化骨格。

奴らの能力は非常に優れていた。
たったの4人で、ニューソクやオオカミの大隊を殲滅する程に。
俺達は、その働きに何度も救われた。

だが、あいつらは時が経つごとにその数を減らしていき……

( ´ー`)「生き残った、俺達の方が優秀だったのかね」

呆れ、とも、自嘲、とも言える吐息を、俺は漏らす。

そうして、仲間達の居る家屋に入って行く。

生きていくためだ。空腹を満たすためだ。
自分が生きるにはこの方法しかなかったのだ。恨んでくれるなよ。
充分、この世界でも恨まれているというのに、死人にまで恨まれるのは勘弁だ。


42 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:16:05.73 ID:L+wPTjSV0
******

村から200メートルほど離れた場所の、
砂利道に装甲車が止まり、軍服を着た黒の長髪の女性が、
5人の兵士に言い聞かせている。

川 ゚ -゚) 「いいか? 私達はここで援護射撃を行う。それだけだ。
      装甲車の蔭から出るんじゃないぞ。無駄に戦死者を出したくはないからな」

彼女、素直クールは強化骨格の男を見て、

川 ゚ -゚) 「ドクオ、頼むぞ。状況は随時無線で伝えろ」

('A`) 「了解」

男、ドクオは短く答えて、
人工筋肉の稼働率を戦闘態勢に整えた。
右手を握りしめ、強化骨格の力を確かめるようにする。

しかし、その姿を不安気に見つめる者がいた。

(;^ω^) 「ホントに一人で大丈夫なんですかお?」

尋ねる彼は、新兵のブーンといった。
ブーンの疑問に、険しい顔をして答えるのは、


43 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:17:20.71 ID:L+wPTjSV0
 _、_
( ,_ノ` ) 「無駄口叩くなブーン。俺達の援護も、こいつにはいらねーぐらいさ。
      一人で戦って、一人で死体の山を築けるのがこいつらだ。
      実際、こいつら強化兵士は前の戦争で死体の山を築いていた。敵も味方も関係なしにな」

渋澤だった。

毒の有る声音で、そう吐き捨てる。
冷やかな視線でドクオを見つめるが、
彼はそれに見向きもせずに無視をする。

('A`) 「………」

いや、無視のように思われたが、
これは、ただ自分の敵の様子を窺っているだけであったようだ。

装甲車の蔭から村を見るドクオの目には、
家屋の中から出てくる、ボロボロの戦闘服を着た兵士達が映っていた。


44 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:18:28.77 ID:L+wPTjSV0

クールもそれに気付いていたようで、

川 ゚ -゚) 「相手は非戦闘員を殺しつくした下衆共だ。無抵抗な民を殺した虐殺者だ。
      己の為に、己自身の為だけに殺戮の限りを尽くした、最悪の人殺しだ」

川 ゚ -゚) 「遠慮はいらん。殺してやれ。心臓を撃ち抜き、肉を抉り、
      臓物をぶちまけさせて、無様な死に様を与えてやれ。我々は殺戮者だ。
      人殺しに過ぎん。だからこそ、奴らのような下衆共を虐殺してやろうじゃないか」

無感動な鋭い瞳に、鋭利な殺意の光を浮かばせて、
無線機へと声を吹き込み、

川 ゚ -゚) 「各位、状況を開始」


46 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:22:38.67 ID:L+wPTjSV0
******

クールの言葉に、飛び出して行った影があった。

装甲車の裏からまっしぐらに村へと、
砂利道を踏みしめて突入して行くが、しかし音は発てず、
高速で駆け抜けていく者。

軍用コートの裾をはためかせ、
アサルトライフルを構えているのは、

('A`) 【村の内部に侵入した。敵を4名確認】

ドクオだ。

声を吹き込むが、ヘッドセットは無く、
しかし言葉は仲間達に運ばれていき、短く「了解」と応答が返ってくる。
≪体内通信≫と呼ばれる、ニューソクの最新技術で作られた、
ナノマシンによる無線通信方法だ。

声が返って来るよりも早く、ドクオは銃口を敵に向けて、引き金を引き絞る。

敵はドクオから見て、2人が左の家屋の裏で死体を引き摺っており、
1人は死体の山に火を着けて、残る1人はその光景をぼんやりと見つめていた。


47 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:24:12.64 ID:L+wPTjSV0
取り付けられたサプレッサーから、
銃声を掻き消したことで生じる、圧縮空気が噴出され、
プシュという音が、連続して生まれていく。

直後に、死体の山を見つめる男の額から血が飛沫きを上げた。

瞬間。身を硬直させ、ドクオを振り返る兵士達。

だが、ニューソク国解体戦争を生き延びた彼等は、
鍛え抜かれた反射神経で、驚きの虚脱から逃れた兵士達は、

 「てっ敵d……」

叫びを上げることも叶わず、
ドクオの銃に急所を撃ち抜かれてしまい、絶命した。

か細い白煙がサプレッサーから立ち上り、火薬の臭い嗅ぎ取る。

……あぁ、いつも通りの臭いだ。
ドクオはこの臭いを嗅ぎ取り、安堵にも似た感覚を得た。
この臭いだけは、どこで戦おうと、何の為に戦おうと、変わりない、と。

それは、ある一つの解を表してもいる。

戦いなんて物は、所詮人殺しに過ぎないと―――


49 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:25:58.16 ID:L+wPTjSV0
******

家屋の中に居た仲間達は、必死に飯に食らいついていた。
ボロボロの体に、大半の物は包帯を巻いていて、
初めは真っ白であった包帯も血が混じり、煤けてしまっている。

身体に残った力を全て掛けて、
飯をかっ込む姿は、まるで生への執念が滲んでいるようだ。

( ´ー`)「俺もそうなのかね」

呟き、胡坐をかいた自分の両の太ももの上へ載せた、トレーを見る。

村中の食料を集め、人数分均等に配分されたそれは、
1人では食いきれない程の量になっていた。

トレーの上には、食いかけのパンがポツンと残されている。

( ´ー`)「おい、俺はもう腹が一杯だ。誰か、食ってくれる奴はいるか?」

俺がそう皆に呼びかけるが、誰も応えやしなかった。
皆、息を呑んで、身を硬直させて木製の壁の一点を見やる。

……なんだよこいつら。シカトすんなよ。

そう飽き飽きとしながらも、俺も身を固くしていた。


51 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:27:18.38 ID:L+wPTjSV0
何かの、音が聞こえたのだ。それも人の悲鳴のような音と、
……銃弾が音速を超えた時の音っ!

恐らく、ニーソク軍が俺達のことを嗅ぎつけたのだろう。
早い対応だな、と感嘆する自分と、もう来やがったのか、と愕然とする、
軍人と、ただ生き延びることを望む人間である自分の二人が居て、
思わず苦笑を浮かべてしまう。

こちらの数は全員で23人。

しかし、その中には2人動けない者が混じっている。

今外に出てたのは、4人。
銃声が聞こえなかったってことは、
消音機でも敵は付けているのだろう。

生憎、こちらはそんな装備は持っていないので、
残念だが味方は殺されたのだろう。4人KIAか。

これで、戦闘可能な人員は17人になってしまったというわけだ。

正直、俺は腹が一杯で苦しいので、頭数からは外して16人としたいところだが……

――――俺がやらなきゃあ、皆おっ死んぢまうよなぁっ!!

よし、そんじゃあ、戦闘態勢といきますか。

( ´ー`)「はいはい、皆さん状況開始ですよ。っと」


52 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:30:15.97 ID:L+wPTjSV0

******

ドクオが村のど真ん中で仁王立ちをする。

家屋を一軒一軒回って、しらみ潰しに敵を捜索するのもいいが、
彼はあくまでも囮であるので、あまり奥に行きすぎて、
味方の射程距離から離れるのは好ましくない。

このように、撃ってくれと言わんばかりに突っ立っていれば、
釣られて身を乗り出してくる者もあるだろう。

……来いっ!

その一念で彼は村を、戦場を見渡す。
すると、右の家屋の裏から、銃口が覗いてきた。

その銃の持ち主である男が身を乗り出していき、
ヒュ、と空を切る音よりも早く、
男は額に赤い点を穿たれて、そのまま倒れて行く。

直後、支援射撃に気付いた敵は、一斉にドクオへと銃口を向ける。

感情の籠もっていない瞳で、ドクオは彼等を見据えると、
一気に村の中央へと駆け抜けて行った。


54 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:32:13.56 ID:L+wPTjSV0
敵が、隠れた兵士達が気付いた頃には―――

グシャ、という音が聞こえた気がした。
内臓を骨ごと叩き潰された音だ。
隠れていた兵士達の数は6から5へと減っており、
ドクオは1人の兵士の上に、赤い水溜りを作った彼の上に片膝を附いて立っていた。

高高度からの落下のインパクトと、強化骨格の脚力を受けたのだから、
脆い人間の体などではこうなってしまうことは、ニューソク人にとって常識であった。

ドクオは足蹴にしている骸を、思いきり蹴り飛ばし、
正面にいる兵士に飛び掛かって行く。
兵士は咄嗟に銃を構えて、ドクオに銃口を向けるが、

    「――――ッ!?」

銃口はあらぬ方向を指しており、
ドクオは既に彼の目前に居て、銃を掴み取っていた。

遅れて指が動くが、銃弾はドクオに当たることなく、家屋の壁に爆ぜるばかり。

ブンと風を切り、ドクオの手刀が兵士の首に炸裂する。
直後、彼の首は衝撃を受けた方向にくの字に折れて行き、
首の骨が砕けて肉を突き破り、血を飛沫かせた。

その勢いのままに体当たりを食らわせ、突き飛ばす。

背後にいた二人の兵士は飛んできた骸を咄嗟にかわすが、
ドクオは既に動き出していた。


55 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:35:50.26 ID:L+wPTjSV0
彼等の回避の動きは、ドクオへの対応をほんの少しではあるが遅らせる。

瞬間という時間を以って懐に踏み込んできた彼は、
ベストに備え付けられた左右のホルスターに両の手を伸ばす。
そこにはナイフが収められており、地を踏みしめた足がそのまま跳ね上がっていくと。

跳躍を行った彼は、二人の兵士の間をすり抜けていった。

次いで、二人は一つの動きを見せる。

膝を附き、力無く倒れて行ったのだ。
彼等の首には赤い線が刻まれており、
ドクオの両の手には、血に濡れた黒い刀身が握られていた。

一挙動で相手に叩き込まれた、斬撃。
無駄の無い、素早い攻撃だ。

両の手に握られた、サバイバルナイフとスローイングナイフを、
ドクオは振り向きもせずに後ろへと放った。
背後で蠢き、攻撃の気配を浴びせてくる二人の兵士へ、だ。

('A`) 【クリア】

肉を裂く音が二つ聞こえるよりも、僅かに早く。
ドクオの体内通信はほぼ同時に行われた。


56 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:38:26.59 ID:L+wPTjSV0

******

村から200メートルほど離れた場所にある、
舗装もされていないジャリ道に置かれた装甲車の裏で、
クールは通信を聞き取っていた。

川 ゚ -゚) 【了解】

川 ゚ -゚) 【現在、敵兵12名の無力化を確認している。
      こちらの損傷は0。戦況は沈静化しつつある】

ヘッドセットに声を吹き込むと、そこから「了解」と短く返ってくる。
通信を終え、彼女は無感動な瞳で村を見据える。

すると、横から声を掛けられた。
  _
( ゚∀゚) 「へへっ、凄いですね~強化骨格って。
      俺が初年兵の頃に見た、ニューソク解体戦争での姿そのものだ」

振りかえると、ジョルジュが狙撃銃のスコープを覗きこんでいる。
気楽そうに、薄ら笑いを浮かべながら、
  _
( ゚∀゚) 「あいつ、どんな奴なんですか?
      強化骨格の力に頼ってる……そんな感じじゃない。
      あの腕なら、あの技量なら、あんなパワーアシスト無しにでも相当やれますよ」

感嘆にも似た声音で問いかけてくるジョルジュ。
クールは無表情のまま、固まってしまったような口を開いて、


57 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:39:19.05 ID:L+wPTjSV0

川 ゚ -゚) 「私もよく知らないんだ」
  _
( ゚∀゚) 「……マジ?」

あまりにも淡白な答えに驚いてしまい、彼は敬語を忘れた。

川 ゚ -゚) 「マジマジ超マジ。チョベリバ、チョベリグ」

いい加減な略語で応える彼女の表情は、冷ややかだ。
はぁ、と溜息を吐こうとするが、
突如、ジョルジュは息を呑むこととなる。
  _
(;゚∀゚) 「やっべぇ、やばい。クー大尉、戦車だ!」

覗きこむスコープ越しの視線の先、
ジョルジュの目には戦車が映っていた。

川 ゚ -゚) 「砲撃用意。装甲の一点に火力を集中させろ」

その言葉が送られるよりも早く、
渋澤はキノコ状の弾頭が剥き出しになった、ロケットランチャーを構えていた。

スコープを覗き込み、引き金へと指を掛けようとするが、
  _、_
( ;,_ノ`) 「なっ……クソっ! あの間抜けめっ!!
      ダメだ、撃てん。戦車とドクオの距離が近すぎる!」

苛立ちと焦りを浮かべて渋澤が吠えた。


59 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:40:13.67 ID:L+wPTjSV0

******

あぁ、あぁ……まさか、まさかこいつが相手だとは思わなかったぜ。

こいつと俺は赤の他人だ。
名前も知らないし、口を利いたことも無い。

だが、おれは分かる。

今、俺の目の前に立ちはだかっているのは、
俺に敵として立ち塞がっているのは、
必死に生き延びてきた俺の仲間を殺したのは……

(#゚ー`)「裏切り者が……っ!」

そう、裏切り者だ。
こいつのことを知りはしないが、こいつの素性は分かる。

  「強化骨格……強化兵士っ!!」

戦車の車長席に座る俺の隣で、
砲塔に搭載された機関銃を構えた奴が、その名を吼えた。

強化兵士。

ニューソク国で進められていた研究計画に作られた、
最新の装備を供給されていた部隊に所属していた者をそう呼ぶ。
あの男も、そう呼ばれていたのだろう。目の前の知らない兵士。


60 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:41:15.04 ID:L+wPTjSV0
俺達と共に戦った強化兵士達の内が一人。

共に戦った。共に生き延びた。共に助けあった。
共に死んでいった。共に、共に国の為に戦い続けた。
共にあった仲間達の一人が、今、俺達の眼前に立ちはだかっている!
共に敵とした国の一つであるニーソクの兵士として、立ち塞がっている!!

何故?何故お前がそこにいる?お前は……

(#゚ー`)「知らねーよ」

沸々と込み上がってくる怒りを抑え込み、
疑問を消し去り、否定の一語を俺は発する。

そう、知ったことじゃあないんだ。

奴がどこの所属になろうとも、奴がどういった理由で戦おうとも、

……俺達は生き延びてみせるだけだ!
立ち塞がるのならば消し飛ばす。
襲いかかるのならば振り払う。追って来るのならば駆け抜ける。

( ´ー`)「撃て。生きる為に撃て! 奴よりも早くっ!!」

砲塔を操作する兵士は既にトリガーを握っていた。


62 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:43:16.94 ID:L+wPTjSV0

******

濃緑色をした戦車の砲塔が、俺を覗いている。
その上に備え付けられた機銃もこちらを向いていて、
つまり、言ってしまえば俺はピンチだった。

('A`) 「………」

だが、慌てず。冷静に構える。
50トンを超える巨体を、真っ直ぐに見据えて。

肩に銃帯で提げたM4を両手で構えて、じっと。

――――命令を下さい。

待つ。

俺は待たないといけない。

――――早く。

落ち着いた気持ちとは裏腹に、
身体はすぐにこの場を去りたがる。

恐怖だ。
歩兵をゴミクズのように轢き殺す、戦車に相対する恐怖心。
身が軽く震えているのに、今更になって気付いた。


63 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:44:15.70 ID:L+wPTjSV0

――――命令をくれ。

命令がなければ、いけない。
あの時も、あの時が、あの時は、命令で始まったんだ。

――――命令を……命令をっ!!

だが、今、命令を下す者は、あの時とは違う。
戦う場所も戦う理由も昔とは違う。今の俺に命令を下すのは……っ!

【聞こえるか? ドクオ】

――――命令を!命令を下せ!素直クール!!

川 ゚ -゚) 【命令だ、鬱田ドクオ。我等がニーソクの村民達を虐殺し、
      食料を貪る畜生共を、彷徨い続けるニューソクの亡霊を、
      生き続ける死者共を撃滅せよ。目前の敵を殲滅せよ。
      一人たりとも生かしてはならん。奴らは敵だ。奴らは我々の敵だ】

川 ゚ -゚) 【掃滅せよ。悉く、悉くを破壊しろ。理解したのならば唱えよっ!】

一喝し、命令は下され……

('A`) 「了解。敵戦車の破壊を敢行する」

俺は命令を承認した。



64 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:45:15.79 ID:L+wPTjSV0

******

戦車と一人の兵士が相対する場に生まれたのは、
まず、銃声であった。

戦車の砲塔に備えられた機関銃から、
銃弾が続々と吐き出されていく。
兵士に弾丸の雨が空気を切り裂いて殺到する。

だが、兵士は身を屈めて、M4の銃口を向け、
備え付けられたグレネードランチャーの筒から軽い音が生じる。

戦車の砲塔に衝突音が響くと、そこからは白煙が立ちこめた。

   「―――――ッ!」

咳き込み、咽かえる機銃手。

白煙に気付いた操縦手が戦車を急後退させるが、
既に遅く、煙から抜けた時には既に、
機銃手は力無く倒れてしまっていた。

頭を、あらぬ方向へと圧し折られて。


66 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:46:54.86 ID:L+wPTjSV0

(;´ー`)「まずいっ、砲塔を左に回せ! 払い落とせっ!!」

驚愕し、シラネーヨが車内で叫びを上げる。
直前に彼はある音を聞いていたのだ。

小さな、金属を蹴る靴の音。

兵士、ドクオが戦車のサスペンションの上に立って、
取りついていたのだ。修羅場を潜って来ていた砲手は咄嗟に砲塔を回転させ、
ドクオの脇腹に砲身が食らいつく。

直後、衝撃音。

鈍い音が生じ、ドクオは左手だけで砲塔を抑え込んだ。
圧を掛けられて、機動を封じられてしまう砲塔。

左手をそのままに、残った手を腰に伸ばす彼。

その手の先にある物は、強化兵士達が扱っていた、
対物用の特殊兵器が収められている。
無骨なフォルムを描いた、巨大なシリンダーを持つリボルバー。
35mmの弾丸を用いる、大口径を超えた、超大口径。

スティレットと呼ばれるそれを手にして、操縦席を守る装甲に突きつける。
次いで、引き金に手を掛け、引き倒す。同時に撃鉄も倒れ、その後には、

轟音が生まれた。大気を震わせ、
零距離から放つことにより、戦車の複合装甲ですら打ち抜く、一撃。


67 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:48:14.22 ID:L+wPTjSV0
弾丸が鉄を貫き、金切り音が響きわたった。

動かなくなる砲塔。引き離される左手。
砲手が無力化されたことで、砲塔は動かなくなってしまう。
が、突如としてエンジンが唸り声をあげた。

鋼鉄の巨体に取り付いた、己を破壊しうる武器を持った兵士を振り落とす為に。

加速を得た巨体は高速を得て、その速力でドクオを振り落とそうとする。
しかし、先ほど彼の脇腹に食らいついた砲身が、仇となった。

それを掴み、ドクオはこの加速に耐えてみせた。
風が暴力となって身に襲いかかるが、
強化骨格を纏った身体の前では脅威となりえない。

何の問題も無しに、彼はもう一度操縦席へと銃を突き付ける。

発砲。金切り音と轟音が発される。

すると、戦車は急停止をしてみせ、その衝撃にドクオは身構える。
身体を宙に投げ出されそうになるが、砲身に込めた腕の力を強めて、耐えてみせた。


70 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:49:14.64 ID:L+wPTjSV0

******

ハッチをこじ開けた。

仲間はみんな死んでしまった。殺されてしまった。
全力で挑んだはずだ。必死に抵抗したはずだ。
生き延びる為に、今までそうしてきたように。

車内から飛び出し、砲塔のハッチから飛び出した俺は奴を睨む。

ハンドガンを突き付け、口を開く。

( ´ー`)「どうしてだ? どうしてなんだ強化兵士。お前はニューソクの為に戦っていたんだろ?
      機械の体になってまで、人の体を捨ててまで国の為に尽くしてきたお前達が、
      どうして、どうして俺達を殺す? どうして俺達の敵になるっていうんだ」

俺は今、多分、情け無い顔をしているんだろう。

こんな擦れた、小さい声しか出ないんだから、
酷く哀れで惨めな顔をしているんだと思う。

必死に生き延びてきた。

あの生きているんだか死んでいるんだか、
自分でも分からなくなってしまうような地獄を。
弾丸が飛び交い、次々に隣で戦っていた仲間達が死んでいき、
援軍も送られてこない、孤立無援の戦場を。


72 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:50:26.43 ID:L+wPTjSV0
地獄を、戦場を共に生き、
国の為に戦うというたった一つの意志を共有してきた、仲間達。

奴にも、その気持ちはあったはずだ。

そうでなければ、奴は強化兵士などになってはいない。
なのに、なのにどうして奴は、今俺の前に立ち塞がっているんだ。

裏切りだ、裏切り者。

俺達は国の為に戦っている。
必死に生き抜き、死に物狂いで生き残ることこそが、坑戦の証だ。

( ´ー`)「お前はこっち側だろ……強化兵士」

銃を右手に握ったまま、俺を無感情な視線で捉える奴。

サスペンションの上に立つ兵士は、銃口を持ち上げてこちらに向けてくる。
そうかい、そうかい……馬鹿野郎がっ!!


74 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:51:35.86 ID:L+wPTjSV0

(#゚ー`)「おおぉぉぉっ!」

突き付けた銃の引き金を引き、直後に轟音が来る。
衝撃が体を貫くが、不思議と痛みは無かった。

俺の左胸は、吹き飛ばされしまっていた。

揺らぐ視界。

冷たく、鋭い、ナイフのような眼をした奴は、
未だに銃を構えている。油断のない、訓練された兵士の瞳。

はは……もう、俺は戦えねーよ……
内心に苦笑を浮かべ、辛うじて呼吸の出来る肺から息を漏らし、
言葉をたどたどしく作り上げる。

( ー )「……何故ぇ……戦って……い…る?」

('A`) 「俺は……」

問いかけに、奴は口を開こうとするが、

( ー )「いや……いぃ………しらねーよ……」


75 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/18(木) 23:52:17.73 ID:L+wPTjSV0

******

兵士が最後の言葉を呟き、俺は体内通信を行う。

('A`) 【敵戦車を無力化した。指示を】

川 ゚ -゚) 【了解した。敵戦力は無力化したようだ。
      これから突入し、生き残りを始末する。その場でお前は待機だ】

('A`) 【了解。周辺を警戒する】

そう呟き、俺は体内通信を切ろうとするが、
向こうから「それと」と言葉が続き、

川 ゚ -゚) 【改めて。ニーソクへようこそ、国を失いし兵士よ】

クーの言葉を聞き、俺はそのまま回線を切る。

直後、叫び声が背後から聞こえてきた。

   「裏切り者がぁぁぁあぁっ!」

ボロボロの兵士が一人、
雄たけびを上げてアサルトライフルを連射し、突貫してきた。
怒りの形相を浮かべ、定まらない照準でこちらに銃弾を放ってくる。
弾丸が頬を掠めるが、そんな撃ち方では当てられやしない。

右腕を伸ばし、スティレットで兵士の頭を吹き飛ばしてやった。
同じ国の兵士に裏切り者と罵られ、同じ国の兵士を皆殺しにしたが、
不思議と、俺の心が痛むことはなかった。俺には、俺の“命令”があるのだから。


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  1. 2011/10/06(木) 02:17:15|
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最近ブーン系に出戻って、現在は少女は戦争犬という作品をVIPで書いてます。MGSとACが大好物。ブーン系の自作品まとめや感想、自作品語りと近況報告をしていこうと思っていますので、よろしく!

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