ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 第12話

3 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:30:03.38 ID:LzOOGe8K0
世界とは、かくも狭きものである。

世界を想い、こうまでもすれ違うのだから。

もし、世界が広いというのであれば、
このような戦は起きなかったことであろう

戦争など起きぬのだろう。

世界とは、狭い。

人の意志が激突しあうほどに、世界は狭い。

もし、世界が寛容であるというのであれば、
このような衝突は起きずにすんだのであろう。

しかし、しかしだ。

戦争を恐れてはならない。
己の意志を秘めてはならない。

どれほどに世界が狭くとも、どのような衝突が起ころうとも。

世界を回していくのは紛れもなく人の意志であるのだから。

より良き物を目指し、我々は今日も争っていく。




4 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:31:03.82 ID:LzOOGe8K0


         ('A`) ドクオは亡国の兵士のようです



      第12話 昼の世界―――亡国の鬼VS愛国者―――



7 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:32:50.33 ID:LzOOGe8K0
******

戦争を始めようじゃないか、と、そう言われた。

言い、声を放ったのはロマネスクだ。

分厚い装甲を持つ甲冑のような装甲服を着た奴は、
俺へと向かって一直線に進んでくる。

身を前にのめり込ませ、姿勢を低く保ち、
腕を大きく振って迷い無く突っ込むロマネスク。

眼光は鋭く、身体からは殺気が放たれていた。

見る者を怖じけづかせる、強烈なそれを。

奴のその姿を一目見ただけで、
幾度もの戦場を越え、地獄を生き延び、
鍛え抜かれた歴戦の兵士であるのだと理解させられた。



9 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:33:34.89 ID:LzOOGe8K0
強敵に、対峙する俺は両手でバトルアックスを構える。

細長い穂に鋭い切っ先、
そして肉厚の湾曲した刃を持つそれを、
腰を落として肩に乗せるようにして、力を溜める。

最速の一撃を放てるように、無駄な力を込めぬようにして。

迎え撃つ為に構えて、その一瞬を待つ。

来る。

ロマネスクのこちらへと接近してくる速度は、速い。

俺は、間合いへと踏み込んだロマネスクに、
兜割りの一撃を叩き込んだ。

奴の速さに勝る高速を以って振るわれるそれは、
ロマネスクが足を横に移して身を逸らすことで虚空を裂く。

斧を振るった俺の身体は、隙だらけだ。


10 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:34:25.21 ID:LzOOGe8K0
('A`) 「……ッ!」

判断を下すよりも早く身体は動く。

身を独楽の如く回す、攻撃の動作。

リーチの長いバトルアックスは、振り降ろされた身を返し、
ロマネスクの胸元を抉る軌道で振り上げられた。

機敏な反応で、身を後方へと逸らされ、かわされる。

……速いな。

素直に、感心の言葉が頭に浮かんできた。

甲冑のような装甲服は、見覚えのない物だ。
ここまでやってくる兵士達も、あんな物は装備していなかった。

恐らくは、

……特製の装甲服か。

通常の物よりも遥かに優れた、
最前線で戦う兵士達や士官用に作られた物。


11 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:35:12.10 ID:LzOOGe8K0

その装甲服が備える、人工筋肉は強力なパワーアシストを生む。

身体能力の強化を受けたロマネスクが生むのは、
強化骨格にも劣らぬ高速だ。

……全てが速い。

動作が速い。足が速い。反応が速い。

そして、

……攻撃が速い!

身を捻り一撃を放った俺に、ロマネスクは右の蹴り上げを放つ。
避けられず、俺の胴に装甲に覆われた膝が食らいついた。

重く、鋭い一撃。

衝撃が腹の奥から脳天へと、一気に突き抜けていく。

口が自然と開き、嗚咽が唾液と共に吐き出された。


13 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:35:53.02 ID:LzOOGe8K0
(;゚A`) 「がぁ……ッ!」

身がくの字に折れてしまう。

力が身体から抜けていき、地面へと落ちてしまいそうだ。
しかし、力を振り絞り、右の足で床を踏みしめた。

痛みを無視して、そのまま身を逸らして、

(゚A`) 「オォッ!」

嗚咽を撥ね退けて声を振り絞り、バトルアックスの刃を返す。

宙へと振り上げられた刃を、返す動きでロマネスクの首を薙ぐ。

が、奴へと襲いかかる湾曲した刃は軌道を停止する。
俺の両腕が、奴に抑えられていたのだ。

( ФωФ)「ふむ」

奴と、視線が重なった。

( ФωФ) 「ドクオよ。貴様は、余程経験を積んできたようだな。
        その反射神経と身のこなし、なかなか身に付けられる物でもあるまい」


15 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:37:22.36 ID:LzOOGe8K0
( ФωФ) 「貴様は、多くの戦場を越えて来たのであろう。
        我輩とは違い戦争の数ではなく、長く戦場に身を置き生き延びることで、
        貴様はその力を手に入れたのであろう」

( ФωФ) 「だが、貴様には欠ける物がある。
        なに、思想がなんだのとは、今更言うつもりはない」

( ФωФ) 「数多くの武器を自らの体の一部のように扱い、扱いこなす技術。
         戦場では重宝することであろう。しかし」

( ФωФ) 「戦いの基礎は、殴り合いにあるのだ!」

言い放ったロマネスクは、
俺が両手で構えている斧を片手で押さえ、
片足を穂へと叩きつける。

が、とも、き、とも聞こえる音が響き、
金属片が目の前に散っていった。


18 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:38:13.04 ID:LzOOGe8K0

砕け散り、破片を床に撒くバトルアックス。

軽くなった両手で、ロマネスクの手を払い、
バックステップで距離を取ってグリップのみになった斧を捨てる。

腰のホルスターからスティレットを抜き、
構えようとするが、遅い、という事に気付く。

右手で抜いた銃を持ったまま、後退する。

銃口を敵に向けようとは、しない。
目前を、回し蹴りが抜けていった。

足が起こす破風が顔に吹き荒んでいく。

思い切り、俺は、地面を大きく後ろへと蹴った。

ロマネスクの頭上を行き、背後を取って銃を突き付ける。
銃口が奴を覗き、引き金を引く、


19 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:40:18.99 ID:LzOOGe8K0
怪鳥の鳴き声の如き、凄まじい銃声が鳴る。

火花がロマネスクの胴で散り、命中したのだと理解させる。
が、しかし、傷は浅い。

奴の身を貫くはずであった銃弾は、
装甲服の防御能力によってその威力を削がれてしまったのだ。

俺とロマネスクの距離は2mも無い。

0距離であれば、戦車の装甲でさえも貫く強力な弾丸だ。
スティレットは確かにその35mmもの銃弾を放った。
それは、確かにロマネスクに命中した。

だが、身は貫かれず、弾丸はのめり込むに留まってしまったのだ。

……どんな装甲してやがんだッ!

内心に悪態を吐いて、再び距離を取ろうとする。


22 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:42:43.53 ID:LzOOGe8K0
が、

後ろへと跳躍を行って背を逸らすと、激痛が走った。

(;゚A`) 「うっ……」

痛みに顔を歪めるが、視線は奴を捉えたままに保つ。
背中に感じる痛みと倦怠感を、苦しいと思う。

汗が、どっと噴き出してきた。

痛みを堪えることで生まれる生理反応だ。

着地し、足を踏みしめようとするが、
今まで感じたことも無い身の重さを感じる。
気付けば、俺は足を踏み外していた。


23 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:43:46.67 ID:LzOOGe8K0
('A`) 「――――」

あっ……、と呟く暇もなく、

( ФωФ) 「るおおおおッ!」

何時の間にか懐に飛び込んできたロマネスクの膝蹴りを胴に受けた。

衝撃に身体が浮き上がり、
背中に強烈な痛みと叩きつけられる感触を得る。

豪快な破砕の音が轟き、俺の鼓膜を震わせた。


24 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:44:27.53 ID:LzOOGe8K0
******

ドクオが天井へと激突し、壁の破片が舞って煙が立つ。

それらと共に、ドクオは力を失ったのか、
右腕に持っていたスティレットを落とした。

雫が零れ落ちていくような軌道で、スティレットは床に落下。

しかし、雫とは違い、スティレットは床に衝突しても弾けはしない。
その持ち主も、ゆっくりと落下していく。
ドクオは重力に従って落ちていき、ロマネスクはその下へと駆ける。

彼が見せるのは、隙だらけとなったドクオへの追撃の動き。

目を瞑り、死んだように動かないドクオ。
それでもロマネスクは容赦なく攻撃を加えようとする。

跳躍をし、上昇してドクオへと近づいていく。

床を蹴った足を、そのまま振り上げて蹴りを放つ。
装甲と布製の防護繊維に包まれた足が、ドクオへと迫る。


25 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:45:37.35 ID:LzOOGe8K0
鎌の如く足は振られ、空を薙いで行くそれに対して、

ドクオは、

(メ゚A`) 「………つあああああッ!」

苦しげな表情で、目をパッと見開いて蹴りを放つ。

戦車の複合装甲を用いた具足を履いた足が、
装甲服に覆われた足と激突する。

風が起こり、衝撃波が抜けていく。

次いで、拳を身を捻って放つドクオ。

籠手の付いた右の拳を頬に食らい、ロマネスクの跳躍は止まる。
止まり、衝撃に叩きつけられて彼は落ち、着地。

落下してくるドクオに対し、ロマネスクは拳を放つが、
伸ばした腕は相手の腕に絡み取られ、
その勢いを受け流されて投げ飛ばされてしまう。



28 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:47:03.04 ID:LzOOGe8K0
宙に身を浮かせたロマネスクは、身を返して床に足を着ける。

勢いを殺し切れずに、そのまま彼は2m程後ろへと下がってしまう。
腰を落として、接近していこうと彼はするが、
それはドクオの迎撃の構えとなった。

彼は、既に接近している。

右腕を後方へと大きく引いて、前屈姿勢のままで疾走し、
疾走の勢いを活かして拳を前へと突き出していく。

空を切る拳はロマネスクの胴を捉えていた。

対し、彼は防御すら取らずに受けてみせ、
そのままカウンターの拳を放った。
ドクオの胸を拳は捉え、食らいつく。

ドクオは、身を逸らすことでダメージを軽減するのみで、
防御はせずに次に左の膝をロマネスクの脇へと抉りこませた。



30 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:48:10.27 ID:LzOOGe8K0

ぐ、と苦い声をロマネスクが漏らすが、次いで頭突きを放つ。

額が額に衝突し、衝撃が互いの脳を揺さぶるが、
ドクオはロマネスクよりも強い揺さぶりを受ける。

思考が、ほんの一瞬だけ止まってしまう。

が、彼は即座に拳を放っていた。

考え、などではなく、ただ、闘争本能のみで拳を放った。
放たれたドクオの拳はロマネスクの左頬を殴り飛ばす。

対し、ロマネスクもドクオへと拳を放った。
鳩尾に食らいつく、重たい拳。

しかし、構わずに、そんな攻撃など無かったと、
ダメージなど一切ないと言わんばかりに、
彼は、彼等は攻撃の応酬を行う。


32 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:49:00.16 ID:LzOOGe8K0
殴り、蹴る。

原始的で単純な戦闘行為。

拳と拳、打撃と打撃を交える彼等は、もはや防御など行わない。
ダメージを軽減することのみを考えて、
相手よりも早く敵を倒すことだけを目的とする。

防護繊維は抉れ、肉は打たれ、血を撥ね散らせた彼等は、満身創痍だ。
しかし、それでも何十発と打撃を放ち合おうとも倒れはしない。

互角。

互角だ。


33 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:50:00.50 ID:LzOOGe8K0
両者とも一歩も譲らず、ただ打撃のみを行っていく。

相手よりも速く、相手よりも重い拳を放たんと、
常に全力を以ってして、攻撃を行う。

打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。
打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。
打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。
打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。打撃。

         打撃。

拳がロマネスクの頬に食らいつき、彼は笑みを浮かべた。

そして、身を後ろへと引かせて後方へと飛ぶ。

(メФωФ) 「はあ……はぁ……」

肺が慌ただしく空気を得る為に動き、
荒い息を着くロマネスクは、息を整えていく。


36 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:52:06.72 ID:LzOOGe8K0
距離を取られたドクオは、迂闊に接近しようとはせず、
同じく、息を整える。

(メФωФ) 「楽しいぞ。楽しい。この戦争は、愉快であるな」

笑みを浮かべて、ロマネスクは言う。

呼吸は、既に整っていた。

(メФωФ) 「それもこれも、我輩に敵がいるからだ。
        敵がいなくては争えない。
        敵がいなくては勝とうという意思は生まれない。
        敵がいなくては人は団結しようとはしない。
        敵がいなくては己を高めようとはしない」

(メФωФ) 「我輩の敵は貴様である。貴様の敵は我輩なのだ」

(メФωФ) 「我輩は貴様に倒されるべきで、貴様は我輩に倒されなければならないのだ。
        敵を打倒し、敵を乗り越えることでしか、人は前へと進めぬのだ」


38 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:53:18.72 ID:LzOOGe8K0
(メФωФ) 「五大国連合は戦に満ちて溢れる夜の世界を、
        ニューソクの、国家総合案内所の治める夜の世界を払った。
        自分達もそれに密かに加担していたというにも関わらずに」

(メФωФ) 「彼等は、ニューソクを解体し、国家総合案内所を解体した。
        そうしてやってくる物は戦の無き昼の世界だ」

(メФωФ) 「戦が、戦争が無くては、敵がいなくては人は前へと進めぬのだ」

(メФωФ) 「今の貴様が、今の亡国の鬼があるのは、ニューソク国解体戦争という、
        巨大な戦争が、五大国連合という強大な敵があったおかげだ。
        貴様はあれらがなくては、今のような強さは得られなかった」

(メФωФ) 「我等を、人類を戦争は育ててきた」

しかし、とロマネスクは続けて、

(メФωФ) 「我等の世界に既に夜は無く、昼ばかりが続くばかり。
        夜無き世界に繁栄は無く、昼のみの世界に秩序は形骸と化す」

(メФωФ) 「我等は我等の自由の為に秩序を破壊してしまった。
        最早この世界は昼でなく夜でも無い。
        争いと呼べるものも無ければ平和も無い」



39 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:54:41.47 ID:LzOOGe8K0
(メФωФ) 「ニューソク無き世界を人の理を以って統制していくには、
        新たな国が、新たな国家体制が必要なのだ」

(メФωФ) 「戦争無き秩序はあり得ない」

彼は、力強く、迷い無く、断言した。

(メФωФ) 「亡国の鬼よ。いや、鬱田ドクオよ。
        貴様は何の為に戦うというのだ?

(メФωФ) 「何故ニーソクの下で戦う。
        人工筋肉の寿命が尽きようとしているにも関わらず、
        貴様は何故汚名を受けて戦える」

(メФωФ) 「ニューソクを想うのであれば、我輩と共に来い。
        新たなニューソクを作ろうではないか」


42 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:55:35.63 ID:LzOOGe8K0
(メФωФ) 「ニューソク人達の住む場所を、
        彼等が今まで通りの暮らしを送れるようにすると、約束しよう。
        亡国の鬼よ。我輩はこの場に誓うぞ。では、君はどうするかね?」

名を呼ばれ、ドクオは鋭い視線をロマネスクへと返す。
視界の端には、先ほど落としてしまったスティレットが映る。

その銃身には、雑な字ではあるが、名がはっきりと彫られている。

          エクスト・プラズマン
        Ecst・Plazman

確かな存在感を持つその名前は、ドクオの戦友の物であった。


43 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:56:50.79 ID:LzOOGe8K0
******

真っ暗闇に染まるノトリ谷は視界が悪い。

黒く染まる景色の中、闇を照らす光がある。
幾数もの赤い光と黒煙を上げるのは、戦車の爆発だ。

燃え上って行く戦車は炎を抱き、ノトリ谷を照らす。

十台では効かぬ、何十台もの破壊された戦車。
それら残骸はニーソク製の物。

ニーソクの戦車隊は、敵に殲滅されたのだ。

ニューソクの精鋭部隊である、強化兵士部隊の、
強化骨格の手によって。

敵を殲滅した彼等は、現在、
ニューソク軍が作った地下坑道の中に潜伏している。
坑道内のドーム状に広がった空間には、二人の強化骨格がいた。


46 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:57:39.97 ID:LzOOGe8K0
一人は、壁に背をもたれさせて座り込み、
もう一人は、彼の傍に座って視線を寄せる。

心配そうに、辛そうに、悔しげに、左半身を吹き飛ばされ、
胴にハチの巣のように穴が穿たれた、戦友へと。
苦しげな表情と汗を浮かべる彼は、

<_フメー゚)フ「おいおい、そんな面するもんじゃねーよ。ドクオよぉ」

気楽な声で、本人に異常に苦しそうな顔をする、
ドクオに言った。

(メ;'A`) 「何でそんな余裕なんだよ……
      応急処置も出来ないんだぞ?」

消え入りそうな声で、問いを返すドクオ。

<_フメー゚)フ「へへ、受け入れてるからさ。
         治療する術はねーし、医療用キットも無い」


48 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:59:02.95 ID:LzOOGe8K0
<_フメー゚)フ「血が止まらねーし、痛てーし、死ぬんだな。ってよ」

弱り切った身体から声を振り絞ったエクストは、
微笑を浮かべて答える。

(メ'A`) 「受け入れんな。まだ、なんか方法はあるはずだ。
     人工血液ならまだ、まだ残ってる。
     出血は止めることは出来ないけど、時間は稼げる」

<_フメー゚)フ「仲間の死体から血を奪って、か?
          俺はゴメンだね、そんなの。それはあいつらのもんじゃねーか」

(メ'A`) 「それでも、お前が生きる為の時間は稼げる。
     俺がお前を担いで近くの基地まで運ぶ為の、時間が」

<_フメー゚)フ「方法がねーだろうがよ。
         俺達にはもう、そんなことも叶える力が残ってねーんだよ」

(メ;'A`) 「やってみなきゃ……」

<_フメー゚)フ「分かるんだよ、これが。俺は絶対に死ぬ。
         お前がどんだけ頑張っても、間に合いやしない。
         もう、十分ほども生きられないだろう、ってよ」


50 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/29(水) 23:59:44.92 ID:LzOOGe8K0
だから、とエクストは続けて、

<_フメー゚)フ「お前だけでも逃げろ」

言い放つ。

自分の仲間へと、この戦場から逃げろ、と。

しかし、

(メ'A`) 「ゴメンだね、そんなの」

強い口調で、はっきりと拒否をした。

(メ#'A`) 「何の為にここまでやってきたつもりだ?
      何の為にこんなことになってると思う!?」

八重歯を剥き出しにして、怒りの形相でエクストへと、
ドクオは強い問いを送る。対するエクストは、



52 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:00:38.05 ID:U4DVUcie0
<_フメー゚)フ「俺達の目的は失われただろ?」

<_フメー゚)フ「戦争は終わっただろ? 俺達の負けだったろ?」

柔らかい表情でそう返す。

でも、と淡い期待を抱いた反論を、ドクオはする。

(メ'A`) 「俺達が戦い続ければ、いずれ仲間がやってきて、
     ニューソク再興の為に戦えるかもしれない。
     確かにニューソクは亡びた。でも、まだやり直せるはずだ」

<_フメー゚)フ「はっ、夢想家だな。
          地に足の着いていない、何も見ようとしていない盲目の理論だ」

苦笑を浮かべて、鼻で笑う様に言葉を放つ。
時折、苦しげに眉をしかめながら口を開き、

<_フメー゚)フ「俺もよ、何も見えてなかったよ。
          だがよ、今は見えるぜ。何かを守るってことが、何なのかよ」


54 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:02:05.16 ID:U4DVUcie0
ぐっ、と呻いて、彼は、巨大な血の塊を吐き出した。

地面にそれは弾けて、黒い飛沫が跳ねていく。
ボロボロのエクストの姿を見たドクオは、表情をかげらせる。

( A ) 「もう良い。喋るな」

<_フメー゚)フ「いや、言わせて貰うぜ」

<_フメー゚)フ「ドクオ、お前は国の何を守ろうとしたんだ?
          何が守りたかったって言うんだ? 何の為に守ろうとしたんだ?」

( A ) 「俺は……」

ドクオは言い淀むが、間髪入れずにエクストは言葉を投げていく。

<_フメー゚)フ「戦いにはよ、勝敗があるだろ?
          だったら負けたら銃を置くのも、戦いなんじゃないか?」

( A ) 「………」


57 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:03:45.23 ID:U4DVUcie0
<_フメー゚)フ「俺達は負けたんだよ」

<_フメー゚)フ「だから、戦いを終えないといけない。
         終わらせないといけない。これ以上戦っちゃいけない」

<_フメー゚)フ「負けたさ。確かに負けたさ。負けて仲間もみんなおっ死んぢまった。
         負けて守りたかった物は失っちまった。
         だがよ、守れる物はまだ残っているんじゃないか?」

!と息を呑み、ドクオは叫ぶ。

(メ#゚A`) 「だからこそ、取り戻す為に戦うんじゃないか!」

そんなドクオを見て、
エクストは、ふっ、と笑みを浮かべる。

<_フメー゚)フ「人だよ」

<_フメー゚)フ「取り戻せない物は沢山あるだろうが、人を守ることは出来るんだよ」


58 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:04:46.35 ID:U4DVUcie0
(メA ) 「もう良い、もう良い! 喋るな、喋らないでくれ。
     体力が消耗していくだけだ。もう良い。もう、もう分かったから……」

懇願するようにドクオは言うが、無視して言葉を続け、

<_フメー゚)フ「戦いは終わった。でも、この戦いは、だ。
          俺達にはまだ戦いが残っているじゃないか」

<_フメー゚)フ「無限にも近い戦いの連鎖の中で、俺達は生き続けているんだからよ。
          そろそろ、お前は新しい戦いを戦え」

そして、断言をする。

衰弱していく身体から、小さいが、芯のある声を吐き出していく。

<_フメー゚)フ「お前の戦場はもうここじゃない」


59 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:05:27.39 ID:LisgiInD0
次いで、

<_フメー゚)フ「他の馬鹿野郎どもが何を叫ぼうが、
         お前は次の戦いの為に生きろ」

エクストは溜息を吐いて、

<_フ ー)フ「俺の守りたかった物……しっかりと守ってくれよ」

微笑と共に最後の息を吐いた。

ドクオは、目をつむったまま笑みを浮かべる彼を見る。

(メ'A`) 「………」

視線を集め、彼の、戦友の表情を見る。

何も言わなくなった彼を、見て、

(メ'A`) 「……エクスト?」

名を呼ぶ。

呼びかけに応える者は居ない。


60 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:06:08.28 ID:U4DVUcie0
ドクオの目の前にある者は、人の残骸だ。

(メ゚A゚) 「エクスト!」

死体。

ドクオはエクストの死体の手首を握り、脈拍を測る。

が、動いてはいない。

(メ;A;) 「エクスト……」

誰も聞かぬ呟きをドクオはして、仲間達の居た筈の坑道の中で、
涙を流し、絶叫を上げて泣きじゃくっていく。

ニューソク国解体戦争の終戦から、三か月ほど経った戦場で。


61 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:06:57.31 ID:U4DVUcie0
******

視界の端に転がる、
戦友の物であったスティレットを見て、
俺はあいつの言葉を思い出す。

そして、俺の望みを叶える筈である提案をした、
ロマネスクの問いかけに答える。

(メ'A`) 「俺はまだニューソクの為に戦っている。
     ニューソクは、まだ失われていない、今この瞬間も」

否定の言葉。

対し、ロマネスクは、そうか、と言って。

(メФωФ) 「では、戦争を始めようじゃないか。我輩の戦争を」


62 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:08:03.84 ID:U4DVUcie0
(メФωФ) 「我が名はロマネスク。杉浦ロマネスク」

名乗り、

(メФωФ) 「オオカミを憂い、オオカミを愛し、
        オオカミであることを望み、オオカミを守る、愛国者なり」

(メФωФ) 「我が目的は祖国の繁栄、祖国の自由、祖国の平和を犯す物全てを、打ち倒すことなり」

(メФωФ) 「勝負!!」

咆哮する。

俺を視線で貫き、その先をも見通すような鋭い視線を。
迷い無く、歪みなく己の信念を貫く、強い人間の瞳。

俺は奴のことを少し理解した。

奴の起こしたことはただの暴動であるが、
本当に国を想って戦っているのだ、と。


63 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:08:44.68 ID:U4DVUcie0
俺の眼前には、オオカミの真の愛国者が立っていた。

愛国者は、俺へと目掛けて真っ直ぐに突っ込んでくる。
拳を構えて、打撃をこちらに行おうと。

俺は、腰を低く下ろす。

人工筋肉が軋みを上げるが構いやしない。
前進に痛みが駆け抜けていくが構いやしない。

……もう、そんなもん関係ねーよ。

今この瞬間こそが全てだ。

今この時こそが全てだ。

今この場で行われる勝負に、今という一瞬が決着を着けるのだから。

脳裏に、クーの言葉が、命令が浮かんできた。

川 - ) 「この戦争を終わらせて来い。ニューソク国解体戦争を、真の意味で終わらせて来い。
      正誤の判断に囚われ今亡き物を見る馬鹿共のその横っ面を、ぶん殴って来い」

彼女の命令を果たす為、俺は今この瞬間に全てを捧げる。


64 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:09:25.80 ID:U4DVUcie0
終える為に、全力を捧げる。

拳を振りかぶり、左手をロマネスクへと掲げて照準を合わせる。
拳撃を確実に送る為の照準を。

限界を告げる激痛を人工筋肉は引き起こすが。足に思いきり力を込める。

疾走の為の力を溜めていき――――

行く。

……行こう、ビロード。

……行くぞ、エクスト。

今は亡き戦友達の名を心の内に呼んで、

……行ってくるよ、クー。

戦友の名を呼んで、俺は駆け抜けていく。

ロマネスクへとまっしぐらに突っ込んでいく。


65 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:10:13.81 ID:U4DVUcie0
       【強化骨格】
――――人工筋肉稼働率100%――――

既に強化骨格は全力を出している。
人工筋肉は限界まで稼働している。

俺は自分の体の全てを以って疾走する。

一陣の風となって、行く。

行く。

床を後ろと蹴って行き、進む。

目の前に広がる光景が後ろへと流れていき、
ロマネスクが近づいてくる。

互いに拳を構えて、俺達は間合いを詰めていく。

腹の力から、全身に力を込めて、


68 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:11:44.58 ID:U4DVUcie0
(メ#゚A`) 「おおおおおおぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

咆哮する。

(メ#ФωФ) 「るううぅぅぅぅぅぅぅぅああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

ロマネスクが叫ぶ。

互いに獣の如く叫び合い、互いに原始的な一撃を放つ。

大きく振りかぶった腕を身の捻りを加えて、
全体重を前方へと傾けて、前へと腕を伸ばして、
最高最速の威力を持った拳を放つ。

ロマネスクが装甲服に包まれた拳を放ち、俺の視界を埋めていった。

放たれた拳を確認するのと、放った拳に衝撃を感じるのは、ほぼ同時。

しかし同時では無い。



71 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:13:11.56 ID:U4DVUcie0

籠手に覆われた右の拳はロマネスクへと激突した。

ロマネスクの装甲服を貫き、ロマネスクの左胸を破り、
ロマネスクの骨を砕き、拳はロマネスクの心臓を掴み取る。

衝撃によって奴の放った拳は俺の顔を逸れていき、俺は腕を引き抜く。

上半身を根こそぎ抉り取り、
装甲服と肉体が砕かれていく音が響き、
俺は掴んだ心臓を握り潰す。

奴の心臓を潰す。

拳に全力を掛けて潰し、握った拳からは血の噴水が噴き上がった。

艦橋の中が赤く染まり上がって行き、ロマネスクが倒れる。

上半身だけで俺を見て、

( ω) 「良い戦争であった……亡国の鬼……否、ドクオ……礼を……言う」

微笑を浮かべて、今にも止まりそうな呼吸でそう言った。

目を伏せて、俺は言う。

(メ A ) 「俺も、お前と同じだ……」



72 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:14:37.00 ID:U4DVUcie0
本編終わり
続いて、おまけのNGシーン行ってみよう


73 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:15:36.57 ID:U4DVUcie0
NGシーン

*******

(メ#゚A`) 「おおおおおおぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

咆哮する。

(メ#ФωФ) 「るううぅぅぅぅぅぅぅぅああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

ロマネスクが叫ぶ。

互いに獣の如く叫び合い、互いに原始的な一撃を放つ。

両腕を大きく振りかぶり、熊手の形を取って、
思い切り、全身で仰け反るように振りかぶって―――両腕をロマネスクへと向けて振り下ろした。

(メ#゚A`) 「だらああああああああああああああああああああああああ
     あああああああああああああああああ――――――暴飲暴食ッ!!」

( ФωФ) 「え?」
     イーティングワンッ!
(メ#゚A`) 「≪一喰い≫ッ!」(;ФωФ) 「ちょwwwwwwおまっwwwwwwwww」

両腕が手首の辺りまでざっくりと床に突き刺さり、
ロマネスクが、ごっそりと、それこそグリズリーの張り手にでもあったかのように、
――――――食われたように抉り取られた。


74 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/30(木) 00:16:19.18 ID:U4DVUcie0
NGシーンパート2

******

(メ#゚A`) 「まだまだイケるぜぇぇぇぇぇメルツェェェル!!」

咆哮する。

(メ#ФωФ) 「ハラショオオオォォォォォォォォォッ!!」

ロマネスクが叫ぶ。

互いに獣の如く叫び合い、互いに原始的な一撃を放つ。

大きく振りかぶった腕を身の捻りを加えて、
全体重を前方へと傾けて、前へと腕を伸ばして、
最高最速の威力を持った拳を放つ。

ロマネスクが装甲服に包まれた拳を放ち、俺の視界を埋めていった。

放たれた拳を確認するのと、放った拳に衝撃を感じるのは、ほぼ同時。
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  1. 2011/10/06(木) 14:25:21|
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