ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 第15話

2 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:43:42.08 ID:znSZ6LJD0

―――――あなたは、自分の住む国が失われたらどうしますか?


自分の守りたい物を守れず、失ってしまったニューソクの兵士達。


ただ生き延びる為に。

戦友たちと共に略奪まで行って戦い続けたシラネーヨ。


己の職務であるが為に。

敵国に囚われ、敵であった者に人形の如く忠実に従ったビコーズ。


許せぬが為に。

敵国に寝返って戦う、かつての仲間が許せずに、己も他国に寝返って戦い続けたツー。


闘争の愉悦を味わうが為に。

今も昔も変わらずただ戦いによる歓喜に身を委ねて滅んだミルナ。



3 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:44:59.39 ID:znSZ6LJD0
平穏な生活の為に。

英雄として兵士達の先頭に立って、未だ戦い続けるギコ。


そして、“国”を守る為に。

感情を殺し、機械の身を敵国の兵士である素直クールに委ねて、
誰からも恨まれながら戦うドクオ。


戦時下には同じ志を持っていた彼等は、
戦後、各々の信念を掲げて、バラバラとなって戦い続けた。

手を組む者もあればぶつかり合う者もあり、殺し合った。

ニューソク国解体戦争では、同じく国を守る為に戦ったと言うのに。

しかし、彼等は国を守れずに、
家を失い、領土を失い、生活を失い、文化を失い、国を失った。


5 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:45:45.44 ID:znSZ6LJD0
全てを失い尽くし、彼等には何も残らずに、
守りたかった物は失ってしまい、残った物は己の命と意思だけ。


彼等はそこから、各々の、それぞれの答えを導き出した。

一つ一つ答えは違ったが、彼ら一人一人の正しさがそこにはある。

では、その答えの先にある物は?

目指した物は何なのであるのだろうか。

国を失い、既に滅び去った物を思って、何を望んだのであるのだろうか?

守るべきものを失い、守りたかった物を失い、国が滅んでしまったその時。


あなたは、あなたならばどうしますか?

あなたは、あなたならば何を望みますか?

――――――彼等ニューソクの兵士達は絶望を抱いたが、それでも答えを出して先へと進んでいく。


7 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:47:12.84 ID:znSZ6LJD0


          
          ('A`) ドクオは亡国の兵士のようです



       第15話 夜の世界―――亡国の鬼VS亡国の猫―――




8 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:47:55.84 ID:znSZ6LJD0
******

(,,#゚Д゚) 「ああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

ギコが咆哮を上げて迫ってくる。

機械剣No.10“ライジングサン”を上段に構えて、
地面を前へと蹴り飛ばし、俊敏な動きで一気に間合いを詰め、
俺に袈裟掛けに剣を振るおうとする。

重機関銃であるGE M134を奴に照準して、引き金へと指を掛ける。

発砲。

六つに束ねられた銃身が高速回転していき、7.62mm弾を吐き出していく。
回転する銃身は装填と発砲を自動的に行い、それは連射となる。
間断なく撃ち出されていく銃弾はギコへと迫るが、

(,,#゚Д゚) 「フンッ!」

気合いを込めた息を吐いて、
ギコはライジングサンの刀身でそれらを往なしていく。



10 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:49:00.78 ID:znSZ6LJD0
(メ゚A`) 「マジか―――ッ!」

秒間100発もの高速連射に対し、ギコは剣で往なしてみせた。

……ありえねえ。
銃弾の雨を、瞬間を以って続々と迫ってくる弾丸を、
見切り、斬るでもなくその軌道を逸らす。

ギコは、そんな神業じみたことをやってのけた。

驚いている暇などなく、連射を続ける俺に、
袈裟斬りを見舞ってきた。

右肩に迫る刃を、大きく後方へと跳んで避ける。

空中でM134をもう一度ギコへと照準し、
引き金を倒して銃身を高速回転させていく。
銃身が回り始めた頃には、ギコが俺の懐へと既に飛び込んできていた。

(メ;゚A`) 「はやッ――――」

驚きに声を上げてしまうが、途中でそれを喉の奥へとしまい込んだ。
ギコはライジングサンをM134に叩き込み、
赤熱化した刀身に、銃身は呆気なく斬り捨てられてしまった。

切断面が、熱によって赤く輝く。


12 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:50:07.20 ID:znSZ6LJD0
(,,゚Д゚) 「無駄だ。貴様の朽ちかけの人工筋肉では、俺から逃げ切れん」

言葉よりも僅かに早く、奴の左足が飛んできた。
爪先が鳩尾を狙っており、切られたM134を持ったままの右腕でそれを防ぐ。

強化骨格スーツの黒の防護繊維と白の防護繊維が激突し、
鈍い打撃音が響いていく。

防護繊維によって衝撃がある程度吸収されるが、
腕で足を受けたのでどうしてもダメージは大きな物になる。
重く身にしみる打撃に、俺は眉を歪めた。

が、反撃として空いてる左の肘をギコの脇へと叩き込む。

……入った。
肘が打撃の感触を得て、そう思ったが、
……防がれた!?

左の肘が打ったのは、奴の右腕だった。

防御に使った右腕を、ギコはそのまま伸ばして、
俺の胴を狙った拳を放ってくる。
しかし、俺も同時に拳を放っていた。


16 名前:>>14コピペミス 忘れてくれ ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:53:21.21 ID:znSZ6LJD0
(,;-Д゚) 「「がぁ………ッ!!」」(゚A`;メ)

共に嗚咽を吐き出し、身をくの字に折る。

それでも、俺達は攻撃の手を緩めず、
俺はくの字に折った上半身からそのまま頭突きを繰り出した。

(,;-Д゚) 「ぐっ……」

脳に響く衝撃にギコは苦悶の声を上げて、

(メ;゚A`) 「うぁ……ッ!」

俺は左の肘を脇に受けて苦い声を漏らす。

痛みに苦しみながら俺達は落下していき、次に繰り出される一撃は同時だった。
右の足を放ち、爪先を腹に食らいつかせる。

互いに互いの右足からの蹴りを放って、

(,;゚Д゚) 「「――――ッ!?」」(゚A`;メ)

衝撃を受けて、お互い吹っ飛んでいった。

腹に受けた痛みが脳天へと突き抜けて行って、俺は唾液を吐きだす。


17 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:54:07.09 ID:znSZ6LJD0
……血じゃないだけまだマシだ!
空中で身を翻し、衝撃を緩和して着地する。

片膝を突いて、胸のホルスターからハンドガンを抜き、
腰のホルスターから大口径を超えた超大口径を誇るリボルバー、
スティレットを抜いて双銃を構える。

ギコは、既に疾走を開始していた。

ライジングサンを構えて、勢いよくこちらへと飛び込んでくる。
双の銃口を奴へと向けて俺は引き金を引く。

ハンドガンを連射し、スティレットの銃撃をそれに挟む。

(,,#゚Д゚) 「ごるぅああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

9mm弾を軽く往なし、スティレットの35mm弾をもギコは往なしてみせる。

……なんだこいつ。銃が効かないのか!?
今までと、段違いな反応速度だ。

いや、


18 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:55:07.64 ID:znSZ6LJD0
……俺が遅くなってるのか!

内心に舌打ちをして、俺は迎撃の姿勢を取る。
剣の間合いへと入ってきたギコが、刃を振るう。

カコログ粒子によって活性化された人工筋肉が、
パワーアシストによってギコの力を強化し、刃は亜光速の域に達する。

しかし、

………もう慣れたわッ!!

何度と受けてきた、何度も見てきた剣の軌道を、俺は見切った。

ハンドガンの銃身でそれを弾いて、
弾かれたことで刃はあらぬ方向を向く。

ガラ空きとなった胴へとスティレットの銃口を突き付け、弾丸を放つ。

咄嗟に身を捻ることでギコはそれを避けてみせたが、
しかし、銃弾は奴の脇腹を抉って行った。

(,;゚Д゚) 「ぐ……ッ!」

黒い血が脇腹から噴出し、ギコは眉を顰めた。


19 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:56:15.39 ID:znSZ6LJD0
一歩後ろへと下がっていき、隙を見せたギコに、

……追撃のチャンスだ。
と思い、一気に奴を追い詰めていこうとする。
3発目の銃弾を放とうと、スティレットの引き金を倒していく。

が、

奴は、一歩下げた足で跳躍を行った。

上空へと昇って行き、視界から消えたギコを視線で追おうとするが、
振りかえる間もなく俺の肩に何かが食らいついた。

(;゚A`) 「クソッ!」

肩に食らいついたナイフを確認して悪態を吐く。

……跳躍と同時にナイフを投げたのか!
次の一撃を予測し、俺は前へと身を投げて行く。

ハンドガンを放り投げ、空いた片手で地面を手で突き、
俺は背後へと振り返った。そして右手を伸ばし、
スティレットの銃口を向ける。

ギコは剣を振りかぶっており、俺は奴に銃を向けた。


21 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:56:59.67 ID:znSZ6LJD0
発砲。

ギコの防護繊維に覆われた肩から火花が弾けて、
肩の肉を抉った銃弾によって黒い血が飛沫きを上げた。

しかし、奴は身じろぎすらせずにそのまま突っ込んでくる。
もう一発放とうとするがそれよりも早く、
長い足で蹴りを放ってきた。

剣よりも早くリーチの長い、一撃。

突いた手に力を込めて跳躍をしようとするが、遅い。
力が籠もって行くのが、遅い。

跳躍をするよりも速く、ギコの足が俺を蹴り飛ばした。

衝撃が腹から背へと抜けていき、
背には新たな衝撃を受けた。

何かに激突し、俺の周りが煙に包まれていく。

すぐにこの場を離れないといけないと思うが、

……力が入らない。


22 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:57:58.25 ID:znSZ6LJD0
******

俺の蹴りを食らって、ドクオがビルに背中から激突した。

力を失ったようにビルにもたれ掛かる奴に、
俺は一気に間合いを詰めていった。

ライジングサンの切っ先を、ドクオへと突き付け、刺突を放つ。

奴の胴に刃が食らいつき、
赤熱化した刃が防護繊維ごと奴を燃やし尽くしていく。
炎を身体が覆っていき、燃える。

が、奴は胴にライジングサンを突き刺されまま、俺に拳を放った。

俺は軽く後ろの下がるだけでそれをかわし、
バックパックからナイフを抜き、
逆手に構えてドクオを切り裂いていく。

炎を纏う身体から血飛沫があがり、
肩を、腕を、胴を、足を、次々に刻みつけていく。



23 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 22:59:44.13 ID:znSZ6LJD0
止めに、左胸に刺突を放つ。

ドクオはバックステップを行って避けようとするが、遅い。

俺はナイフの軌道を下へと逸らして、
地面を離れようとする奴の右足に突き刺した。

防護繊維ごと奴の足を貫いた刃は、地面にまで達する。

釘に打ち付けられた板のように、奴の動きが止まる。
次いで、俺は再びバックパックからナイフを取り出し、
一挙動のみで左足へと切っ先を叩きつけた。

両の足を封じられ、動けなくなったドクオは、
前に倒れて行くように両の膝を突いた。

(メ A ) 「………」

うな垂れ、力の無い表情を浮かべるドクオ。
胴に突き刺さった刃から火の手が上がって行き、
ドクオの体は炎に侵食されていく。

強化骨格スーツの防弾繊維は炎を纏う。
全身が炎に覆われ、ドクオは燃えていく。

燃える。

かつての戦友がライジングサンによって、燃やされていく。
そのまま放っておけば、奴は勝手に死ぬだろう。


25 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:01:06.64 ID:znSZ6LJD0
しかし、奴がその気になれば、
もし抵抗するだけの力が残っていれば、
ライジングサンもナイフも引き抜き、こちらへ襲いかかってくることだろう。

剣もナイフもドクオに突き刺さっている為、俺は今丸腰だ。

背後へと回り、俺は奴に突き刺さったライジングサンを引き抜く。

そして、力を失った奴の頭上に剣を構える。

(メ A ) 「お前の戦いはここで終わるのか?」

力の無い声で、苦しげにドクオが尋ねてくる。

振り返ってこない為、振り返られない為、
その表情は分からない。

(メ A ) 「俺を殺したらしぃの元に行くのか?」

(,,゚Д゚) 「あぁ、そのつもりだ」

(,,゚Д゚) 「やっと、やっと俺は彼女の元へ戻れる。
      戦争がやっと終わる。俺が戦う必要がなくなる」

(,,゚Д゚) 「お前を殺して、俺のニューソク国解体戦争は、
      ニューソクの逆転劇によってやっと終結する」



26 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:01:52.55 ID:znSZ6LJD0
(メ A ) 「終わらないよ」

(メ A ) 「俺を殺しても、ニーソクを倒しても。お前は絶対にシィのとこに戻らない。
     一生何だかんだと言い訳を続けて、シィの元を離れて戦い続ける。
     頼む、ギコ。早くシィの元へ戻ってやってくれ。お前には待っていてくれる人がいる」

(メ A ) 「俺にはいない。だから、俺は戦い続ける。
     戦場で、ニューソクの為に戦い続ける」

(メ A ) 「シィは、寂しがっているはずだ。
     国なんてもんよりも、一緒に居てくれる人間のほうがよっぽど大事なんだよ」

ドクオの言葉に、シィの顔が脳裏を過ぎる。

……速く帰らないとな。
そう思って、俺は口を開く。

(,,゚Д゚) 「あぁ、そうするとも」

ライジングサンを構える手に力を込めて、俺は振るう。

(メ A ) 「………」

何も言わぬドクオの首に、刃が振り下ろされる。

斬った。

柄を握る両の手に感触が残る。
人を斬った時に生じる、肉の感触。


28 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:02:39.97 ID:znSZ6LJD0
(,,゚Д゚) 「なっ……」

が、

斬ったのは奴の首ではなく、左腕だった。

瞬時に振り返った奴に首へ迫っていた刃は腕を斬り、
残った右腕に構えたナイフで刺突を放ち、
瞬きの間に俺の左胸へ刃を突き立てた。

衝撃が胸から背へと抜けていく。

遅れて痛みが来た。

膝から力が抜けていき、俺はライジングサンを杖のようにして片膝を突く。

片腕を失ったドクオは、そんな俺を見下ろしている。
その瞳は、どこか悲しげに垂れ下がっていた。

……情けない顔をするな。
と思うが、

……あぁ、昔からそういう奴だったな、お前は。
懐かしい記憶と共にそうも思う。

今までが可笑しかったのか。今までが偽りだったのか。
と、一人で納得して、俺は口の端が緩んでいくのを感じる。



29 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:03:35.85 ID:znSZ6LJD0
(,,゚Д゚) 「ここで終わりか。俺の戦争は」

呟き、

(,,゚Д゚) 「同じ国を思い、同じ物を目指すというのに、同じ境遇であったというのに、
      どうして導き出した答えは違う物になったんだろうな。戦友」

必死に声を絞り出して、ドクオへと言葉を放つ。

(メ'A`) 「ギコ、俺……お前を裏切ったんだよ。それだけのことさ」

(,,゚Д゚) 「ふっ、同じ物を守る為に戦うというのなら、俺達は戦友だ。
      ニューソクを守る為に敵同士になったとしても、変わりはないだろう」

懐かしいセリフを思い出しながら、俺は尋ねる。

(,,゚Д゚) 「お前に……恋人は出来たか?」

(メ'A`) 「いや、出来てない。でも、大切な人はいるよ。
     俺を拾ってくれた、俺を導いてくれた人が」

その言葉に、俺は喜びにも似た安堵を感じる。
ほっ、と一息を吐いて目を瞑り、

(,,-Д-) 「そうか。それは良かった……お前を、導いた、か。
      ……これで、良かったのかもしれないな」

(;メ'A`) 「良いわけ……」

言葉を言い掛けようとしたドクオの声を打ち消し、


30 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:04:23.08 ID:znSZ6LJD0
(,,-Д-) 「ドクオ。最後に俺の我が儘を聞いてくれ」

ドクオは無言で頷く。

……あぁ、何だか眠くなってきたな。
早く言い切らないとな。言葉を、残さなければ。

(,,-Д-) 「シィを、見守ってやってくれないか?」

彼女のことだけが気がかりだ。

一人だけ残していってしまう、シィのことだけが心配だ。
結局、彼女の笑みは見られなかったが、
俺はこれから見られそうにないが、それでも、彼女には笑っていて貰いたい。

……だから、頼む。戦友。
彼女の幸せを、見守ってやってくれ。

(メ'A`) 「分かった……」

俺を見て、力無く頷くドクオに不安を覚えるが、

(,,-Д-) 「礼を、言う……」

こいつならやってくれるだろう、と思う。
その信頼から、俺は礼を言った。

安心だ。

これで、安心。


32 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:05:12.22 ID:znSZ6LJD0
……しぃ。

すまん。

生きて帰ることは、叶わなかった。

再会は出来なかった。

でも、こいつならきっと、
俺よりも君が幸せになれる環境を作ってくれるだろう。

……不器用な奴だが。

でも、ドクオを導いてくれる者が居る。

なら俺は、もはや何も憂いは無い。

全力で戦い、全力で譲れない物を譲らなかったのだから。
出来うる限りの抵抗を、俺の絶叫を奴らに聞かせてやれたのだから。

シィの幸せを見守ってくれる者が出来たのだから。


33 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:05:57.14 ID:znSZ6LJD0
……憂いは無い。後悔はあるが、不安は無い。

意識が、眠りへと落ちて行く。

力が抜けていく。

身が軽くなったような感覚を得ていき、
俺の視界が更に真っ黒に染まって行く。

その黒の奥に、ロウソクが灯るように追い求め続けた物が浮かんだ。

    (*゚ー゚)

シィの、優しい、柔らかな笑み。

ニューソク国解体戦争が始まる前に何度も見て、
絶望的な戦況に置かれた戦場で、何度も勇気づけられた、笑顔。

……銃なんて取らなくても、君を幸せにしてやれたかも……しれないな。

        (* ー )

浮かんできた笑顔は、炎が消えていくように……


35 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:06:42.16 ID:znSZ6LJD0
******


(,, Д )


ギコが死んだ。


俺が、殺した。

両足に突き刺されたナイフを抜き取って、
俺はギコの左胸に突き刺した。

ギコは、裏切り者である憎いはずの俺を『戦友』と再び呼んだ。

(メ'A`) 「………クソ」

どうしてだ。

どうしてこうも迷う!?

(メ;A;) 「クソが……」

命令を果たした。任務を果たした。


36 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:07:44.26 ID:znSZ6LJD0
ただ、それだけなのに、どうしてこんなに後悔しているんだ!
俺は機械だろ?お前は機械何だろ!?

だったら迷うなよ。

ギコを殺しても、例え仲の良かった友達を殺しても、
機械の如く平然としていろよ。

今までそうしてきただろ?

自問して、俺は口を真一文字に結び、
零れそうになった嗚咽を噛み殺すが、
涙は止めどなく零れ落ちていく。

……俺は機械だ。

思い、思う事を止める。感情を止める。

だが、腹の奥底がキリキリと痛み、
胸の奥が肺を締め付けられるように痛む。
内臓までズタボロにされた身体が痛みを俺に与えて、訴えてくる。

抑えきれない心の絶叫を訴えてくる。
今まで耳を背けていた分まで、一気に押し寄せてくる。

ギコの顔を見る。

(,, Д )

ギコの顔は苦笑を浮かべているが、どこか満足しているように思えた。


38 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:08:39.31 ID:znSZ6LJD0
……あぁ、そうか。
納得をする。自分の誤まりに気付く。

ギコと同じく苦笑いを浮かべて、何が機械だ、と。

……言い訳をしていたのは、俺も一緒じゃないか。

機械と言えば命令で仕方なしにやっている、と逃げられる。
機械であるのだからどのような非道なことをしても、
痛む良心は持ち合わせていない、逃げられる。

言い訳だ、と思い、やめよう、と思う。

心の奥底の絶叫を聞き取り、俺は心に向かって呟く。

……俺は人間だ。

そう力無く呟いて、次いで、

……ニューソクの兵士、鬱田ドクオだ!
と、心に向けて絶叫をぶつける。

朽ち果て掛けた身体を奮い立たせ、
勢いが弱まったにも関わらず、
まだ残る炎を、俺は身を振るうことで払う。

濃緑色の軍用コート翻すと共に脱ぎ捨てる。


39 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:09:40.70 ID:znSZ6LJD0
そして、進んでいく。

ギコの目前に突き刺さり、カコログ光を纏う刃を、
戦友の愛刀、機械剣No.10“ライジングサン”を、掴む。

残った右手で地面から引き抜いて、振るう。

空を断ち、シィンという鋭い音が鼓膜を震わせた。
カコログ粒子が人工筋肉を活性化させ、身が軽くなって行くのを感じていく。

電流の糸が、俺の身体を隅々まで這っていく。

……良い気分だ。

心の迷いのなくなった、悩むことのなくなった、
晴れた、澄み渡ったような感覚。

体内通信で中央基地の通信室へと回線を繋ぎ、

(メ'A`) 【戦況は?】

と短く尋ねた。



40 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:10:26.53 ID:znSZ6LJD0
   【東方面が壊滅的打撃を受けています。早く迎撃に向かってください】

落ち着いた声で、女性オペレーターの言葉が返ってきた。
綺麗な声だ、と思い、

(メ'A`) 【了解】

短く応えてから、

(メ'A`) 【君、この戦いが終わったら食事にでも行かない?】

呑気な声でそう誘った。

    【お言葉ですが、私は外国人に興味はありませんので】

きっぱりと断られ、通信が切れた。

……テンションに身を任せるもんじゃないな。傷つく。
断られたことに、少しがっかりするが、

……まあいい。今は良い気分だ。
へこみはしない。今は、とても良い気分だ。

ふっ、と微笑を浮かべて、俺は軽くなった体で駆けて行く。

目指すは、東方面だ。

向かいながら、俺は腹の奥から力を込めて、声を一気に吐き出す。
そうして発される言葉は、味方への鼓舞だ。


43 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:11:34.27 ID:znSZ6LJD0
******

ドクオは叫ぶ。

その形相は凄まじく、声には闘志が籠もっていた。

首都ビーを、戦場を、彼の声が木霊していく。

(メ#'A`) 「今ここに宣言しよう!
     
     俺は、今は亡きニューソクの兵士鬱田ドクオは!
     
     ニューソクを護ると! ニーソクに住まう人々を護り通すと!
     
     亡国の鬼は、亡国の兵士はこの場で戦おう! この地を守る鬼神に成ろう!!」

(メ#'A`) 「今より、只今よりこの場は、この先はかつての戦友であろうが!
     
     かつての上官であろうが! 一切! 一歩ですら通しはしない!!
     
     何人であろうが! 何者であろうが! この先を望むのならば相手をしよう!」


(メ#'A`) 「亡国の兵士鬱田ドクオが相手となるッ!」


44 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:12:21.64 ID:znSZ6LJD0
(メ#'A`) 「時間が経てば援軍がやってくる!
     
     みんな! みんな!! この声が聞こえるニーソクの兵士達よ!
     
     守るぞ! 守ってみせるぞ!! ニーソクを!! 
     
     俺はここで己の戦意と信念を以って宣言する!!」
   

(メ#'A`) 「鬱田ドクオの戦争を! 始めるぞッ!!」


朽ち果て掛けた機械の身に、燃えたぎる人の魂を宿して彼は言う。


魂の灯が浮かんだドクオの顔は、
オオカミの繁栄を願って戦争を始めた、
ロマネスクの顔に似ていた。

ドクオの言葉の後に、戦場と化した街からは、

    「了解!!」

と張り上がった声で答えが返る。

眼光を更に鋭くした彼は、己の敵であるかつての仲間達へと向かう。

長年の戦友の愛刀を隻腕で構えて、油断なく。


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  1. 2011/10/06(木) 14:36:22|
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ボーコク

Author:ボーコク
最近ブーン系に出戻って、現在は少女は戦争犬という作品をVIPで書いてます。MGSとACが大好物。ブーン系の自作品まとめや感想、自作品語りと近況報告をしていこうと思っていますので、よろしく!

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