2 自分: ◆K8iifs2jk6 [>>1代理thx] 投稿日:2011/10/15(土) 20:26:25.55 ID:RpvuJ93L0 [1/34]
私達は出会い、互いに傷を負ってもまだ生きている。
そしてそれぞれの道を歩み、戦い続けている。
さて、過去の話はこれで終わりだ。
私達はこうして出会ったんだ。
現代の話に戻ろうじゃないか。
少女と戦争犬がおよそ7年ぶりに再会する話だ。
4 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:28:59.85 ID:RpvuJ93L0 [2/34]
川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです
第九話 少女と戦争犬の再会
5 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:31:04.01 ID:RpvuJ93L0 [3/34]
******
私は9'scafeでテーブルの上に置かれたコーヒーを飲んでいた。
白いカップには青い花が幻想的に描かれており、綺麗だと感心させられる。
片手で本を読みながらコーヒーを口に運び、
口内が心地良い苦みによって満たされていく。
カップをテーブルに戻すと、黒い液体を微かに残して白い底が覗いていた。
これで三杯目か……。
私は些か緊張しているのかもしれない。
まぁ、それも無理はあるまい。これから滅多に会うことのできない、
十年来の大切な友人と会うのだから。
私は通りかかった店員に再びコーヒーを注文した。
ふと、壁に立て掛けられた時計が目に入り、今は12時40分であることを確認する。
川 ゚ -゚) 「後10分か……」
呟くと、暇だからという理由で、
待ち合わせから一時間半近くも早く来たのは失敗であったと後悔する。
本を読みたかったというのもあるが、それももうすぐ読み終えてしまう。
上下巻合わせて1200ページはある長編小説も、
私のようなチャネラーという存在には、大した長さでも無いらしい。
十年前からだった、このような速読が出来るようになってしまったのは。
7 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:33:35.70 ID:RpvuJ93L0 [4/34]
十年前、あの戦場を駆け抜けてから私はチャネラーとして目覚めた。
遺伝子に抑制された知覚能力が、戦時下での過重ストレスによって解放され、
それ以来あまり自覚は無いが情報把握能力や記憶力が異常に冴えているらしい。
小説の後書きを読んでいると、客の入店を報せるベルの音が店内に小気味よく響きわたって行く。
私がその音に反応して顔を上げると、待っていた友人が私の目の前に立っていた。
('A●) 「久しぶりだな、待たせたか」
かつて私を庇って失われた左目に海賊のような黒い眼帯をした男が、
場にそぐわないような軍服姿で席に着く。
川 ゚ -゚) 「ドクオ……」
川 ゚ -゚)≡つ#;)A●)・∴「何故軍服なんだ!?」「モルスァッ!」
咄嗟に右拳がドクオの頬を捉えた。 私も普段は兵器開発を行っている身だ。
普段は白衣を着ているが、今日は私服の黒のテーラードジャケットに白のシルクスカートを履いている。
わざわざ軍服を着てくる必要などないだろうに。
なんだ?その胸に付けられた勲章でも見せびらかしに来たのか?馬鹿が!
……せっかく気合いをいれてきたというのに。
10 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:36:06.54 ID:RpvuJ93L0 [5/34]
('A●)「いや、俺これ以外に服無い……
何だお前、装甲服でも着て来いってのか?」
川 ゚ -゚) 「誰が戦う準備してこいって言ったんだ。
もう少し普通の格好をしてくれればいいんだ」
('A●)「これが俺の普通なんだよ」
少し捻くれたようにドクオは言う。
これが普通だと言ってしまえば彼にとってはそうなるのだろう。
こいつにとっては戦場が日常で、今が非日常だ。
川 ゚ -゚) 「それもそうだな……後で服を買ってやるよ」
('∀●)「着る機会は無いかもしれないけどね~」
嬉しそうに口元を緩めて、ドクオは再び席に着く。
右ストレートを受けた頬を摩りながらコーヒーを注文した。
∫ハ*゚ヮ゚ノルゝ 「イエッサー」
店員は上官から命令を受ける兵士のように注文を承る。
川 ゚ -゚) 「今は……少佐だったか?」
('A●)「あぁ、そうだ。上の連中はバタバタと死んでいくから、
席がドンドン空いていってこんなガキでも少佐に成れる」
11 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:38:25.99 ID:RpvuJ93L0 [6/34]
川 - -) 「そうか、もう少佐か」
早いもんだな……私は過去を逡巡する。
あの日この男は、少年だったこの男は私を連れて戦場を駆け抜けた。
一等兵であった彼が、あの人に拾われたこの少年兵があの人と同じ少佐に成り上がったのだ。
何とも言えない、不思議な感覚だ。時の流れを感じる。
嬉しいとも思うが、その分心配にもなる。
ドクオはまだ戦い続けているのだ。
国家総合案内所の手先のいるかもしれない軍の中で、
いつ後ろから撃たれてもおかしくない奴らの掌の中で。
('A●)「ハインと同じだ」
('A●)「もっとも、十年前にあの人は大佐になったけどな」
この男も、恐らくは私と同じ気持ちになっているのだろう。
あの時のハインさんと同じ階級になった、不思議な気持ち。
∫ハ*゚ヮ゚ノル 「お待たせしました~」
店員がコーヒーを持って来て、テーブルの上に置く。
ドクオはコーヒーに手を伸ばし、口に運んだ。
('A●)「クーはダーウィン社の兵器開発部だな?」
13 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:40:46.36 ID:RpvuJ93L0 [7/34]
川 ゚ -゚) 「そうだ。忙しいのだが、例の一件で私達には休暇を与えられた。
退屈だったのだが、お前に会えて良かった」
('A●)「悪いな、貴重な休日を。お前は大丈夫なのか?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、戦闘なら10年前に経験している。怖くはなかった」
川 ゚ー゚) 「お前が助けに来てくれたことだしな」
('A●) 「たまたまさ。作戦区域の近くでよかった。
クー、そろそろ出よう」
川 ゚ -゚) 「もう少しゆっくりしていけばいいだろう」
('A●)「ここじゃ話せないことがあるんだ。どこに"奴ら"がいるともしれない。
それに、クーの休みを削りたくも無いしな」
14 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:43:11.09 ID:RpvuJ93L0 [8/34]
川 ゚ -゚) 「休日とはいってもやりたいことはないんだ。 正直退屈だ。
今日一日お前に付き合うよ。久しぶりに会えたことだしゆっくりと話したい」
川 ゚ -゚) 「何ならホテルにでも行くか?」
(メ゚A●)・;゙.:ブフォ
ドクオがコーヒーを噴き出し、咽返ってしまう。
ゴホゴホと咳をしながら、苦しむ。
(メ;'A●)「からかうな」
冷静を装ってドクオが言うが、苦し紛れもいいところだ。
こいつ、スパイとかに色仕掛けとかされたら、絶対に何でも話すな。
少佐になったのはいいが、不安だ。
川 ゚ ー゚) 「これだけで動揺するとは、随分な少佐殿だ」
それでも自然と頬は緩んでいき、私は笑みを浮かべてからかった。
16 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:46:48.70 ID:RpvuJ93L0 [9/34]
******
9'scafeの近くにある駐車場に辿りつくと、ドクオは赤いディーノのドアを開いた。
川 ゚ -゚) 「お前にそんな気遣いが出来たんだな」
('A●) 「うっせー、乗れ」
助手席に乗り込んだ私を見届けるとドアを閉めて、彼は運転席に乗り込む。
エンジンをかけると車体が軽く身震いし、アクセルを踏み込んで発車させると、
道路へと乗りだしてどこかへと向かっていく。
川 ゚ -゚) 「なぁ、どこへ向かうんだ?」
('A●) 「墓地だ。すぐに着く」
川 ゚ -゚) 「そこで話を?」
('A●) 「いや、違う。お前と墓参りをしておきたくてな」
川 ゚ -゚) 「誰のだ」
('A●) 「ハイン達のだ」
17 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:49:12.33 ID:RpvuJ93L0 [10/34]
川 ゚ -゚) 「そうか……遺体は発見されたのか?」
('A●) 「遺体は発見されなかった。MIAに認定されたが、
10年前にカラマロスDNで核の爆心地にいた兵士はほぼMIAだ。
遺体も残らなかったんだ。無名戦士の墓にみんな名前を刻まれ、埋葬された」
('A●) 「ハイン達GJの隊員達の名前もそこに刻まれている」
川 ゚ -゚) 「そうだったのか、知らなかった」
川 ゚ -゚) 「それで、MIAというのは?」
('A●) 「Missing In Actionの略で、戦闘中行方不明って意味だ。
死亡が確認された場合はKIA、Killed In Actionになる」
川 ゚ -゚) 「ほう、業界ではそういうのか」
('A●) 「業界って……まぁそういうことになるか」
川 ゚ -゚) 「花束は用意してあるのか?」
('A●) 「後部座席に置いてある。それを供える」
川 ゚ -゚) 「しっかりしているな」
('A●) 「恩人の墓参りだ。当然だろう」
川 ゚ -゚) 「お前のことだから忘れたんじゃないかと思ってな」
18 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:52:48.63 ID:RpvuJ93L0 [11/34]
('A●) 「実は今朝慌てて買った」
川 ゚ -゚) 「やっぱり」
川 ゚ -゚) 「墓参りは毎年行っているのか?」
('A●) 「いや、行ける時にはいくが、ここ最近は行けなかったな。
戦況が激化し、忙しかったんだ」
川 ゚ -゚) 「近年のニューソク軍の活躍は目覚ましいものがあるよな。
連勝につぐ連勝。三ヶ国大戦から10年が経ち、
つい先日前線基地を陥落させたそうじゃないか」
('A●) 「あれは俺が落とした。お前と会ったあの日にな」
川;゚ -゚) 「マジか」
('A●) 「あぁ、本隊とは別行動を取りお前を助け、基地を急襲。
敵の足並みが崩れた隙に本隊が突撃して殲滅した。
案外脆いもんだったよ」
川 ゚ -゚) 「流石はハインさんの弟子といったところか、戦争犬」
('A●) 「あ?」
川 ゚ -゚) 「結構有名だぞ? ニュースにもお前の写真が出てた。
羽仁同盟軍もお前のことを恐れていると聞いた」
21 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:56:52.22 ID:RpvuJ93L0 [12/34]
川 ゚ -゚) 「"戦士"高岡ハインリッヒの再来であるとも」
('∀●) 「過大評価さ……」
川 ゚ -゚) 「あまり目立った行動をとっては危険じゃないのか?」
('A●) 「大丈夫だ、問題は無い」
川 ゚ -゚) 「正体がバレるかもしれないぞ?」
('A●) 「バレたとしても、有用性を示せば総合案内所は俺を利用する。
10年前にエージェントを殺されたからといって、抹殺されることもないだろう」
川 ゚ -゚) 「そうか……無理しないでくれよ?」
('A●) 「あぁ、お前こそな」
('A●) 「そうだ、お前こそ何のつもりだよ。純粋水爆の開発に新型AAの開発。
軍用ライフルの大幅な製作コスト削減への成功。
功績を上げていけばキリがない」
('A●) 「チャネラーの能力なら可笑しくも無いだろう。
だが、こんな目立つ活躍をしていれば、
いずれは奴らにお前がチャネラーであることを晒しているようなものだ」
('A●) 「俺の身元は割れている。でもお前がカラマロスDNを脱出したことはバレていないはずだ。
何の為に難民キャンプを避けてチューボー基地に送ったと思う?
お前を極秘裏に親戚の元へ送る為だろう」
22 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 20:58:54.61 ID:RpvuJ93L0 [13/34]
川 ゚ -゚) 「私は……」
('A●) 「……」
川 ゚ -゚) 「私はな……」
('A●) 「いや、いい」
川 ゚ -゚) 「え?」
('A●) 「言い辛い理由があるなら、今は話してくれなくても良い。もうすぐ墓地に着くぞ」
川 ゚ -゚) 「……」
ゲートを潜ると、芝生の生い茂った丘が窓から見えた。
広く開いたそこには白い杭のような物がおびただしい程突き立っており、
目を凝らして見るとそれは十字型をした墓標であることがわかった。
('A●) 「無名戦士の墓は中心にある……御両親の墓もここに?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、この墓地だ」
遺体は原形を留めておらず、ほぼ全てが灰になってしまっていたのだが、
両親の物らしき遺体の一部だけが発見され、
それを知ったヒート叔母さんが墓を立ててくれたのだ。
('A●) 「じゃあついでに寄って行こう。花束も二つ用意してある」
23 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:01:27.00 ID:RpvuJ93L0 [14/34]
川 ゚ -゚) 「すまない」
('A●) 「いいさ、時間はあるから挨拶してきたらいい」
川 ゚ -゚) 「お前は来ないのか?」
('A●) 「俺は赤の他人だ。邪魔になるだけだよ」
川 ゚ -゚) 「そんなことはないさ。母さんにも父さんにもお前を紹介したい。
この男が私を助け、護ってくれたってな」
川 - ) 「……きっと、感謝してくれているよ」
もう立ち直っていたはずなのだが胸が痛み、
目頭が熱くなってきた私は顔を伏せた。
すると頭の上に、ぽんと手がのせられた。
川 - ) 「……え?」
\('A●) 「……」
何かを言いこそしないが、ドクオが私の頭を撫でてくれたのだ。
彼なりの気遣いのつもりだろうが……。
川 ゚ー゚) 「バカ、ハンドルを握れ。片手は危ないぞ」
('A●) 「良いんだよ、もう駐車場につく」
川 ゚ -゚) 「ありがとう」
24 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:03:33.02 ID:RpvuJ93L0 [15/34]
('A●) 「気にするな」
駐車場に車を止めたドクオはエンジンを切り、シートベルトを外した。
私も同じくシートベルトを外していく。
('A●) 「もし俺がお前を裏切っていて、
国家総合案内所の手先になりお前を騙していたとしたらどうする?」
川;゚ -゚) 「なっ……」
何時の間にか首元にナイフが当てられていた。
素早く、気配を一切感じ取らせずにドクオはナイフを抜いたのだ。
彼は私を鋭い眼光で貫いていく。
川 ゚ -゚) 「お前は、お前の意志を果たす。私はそう信じる。
守ってくれると約束したじゃないか、ウォードッグ」
('A●)「その約束すらも反故にして、だ」
川 ゚ -゚) 「その時は私はお前と戦うよ。お前を信じて、な」
('A●)「………」
ドクオは黙りこくり、場に沈黙が訪れる。
どんよりとした、重く肩にのしかかるような緊張感に満ちた空気。
皮のホルスターが擦れる音と共に、ドクオはナイフを収めた。
('A●)「俺は―――」
川 ゚ -゚) 「隙ありだ!」
何かを言い掛けたドクオに私は咄嗟に襲いかかり、
運転席のシートに組み伏せていく。
私はドクオを押し倒し、馬乗りになった。
腰のホルスターから十年前に私の首筋に触れたナイフを奪い取り、
彼の首筋に刃の腹を押し当てる。
(;'A●)「な……っ!?」
ドクオは予想もしていなかったのだろう。
驚きの声を上げて私を見上げた。
それを私は冷徹に見下ろす―――何かに目覚めそうだ。
川 ゚ ー゚) 「あれから私は身体を鍛えることを怠っていなくてね。
気まぐれに私にCQCを教えたのが間違いだったな」
(-A●)「そうか、チャネラーか……これが……」
勝利の笑みを浮かべて言う私に、ドクオは何かに納得しているようだ。
私は彼のホルスターにナイフを挿し込んで返す。
(メ'A●)「殺さなくていいのか?」
26 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:06:43.91 ID:RpvuJ93L0 [16/34]
川 ゚ -゚) 「これは警告だ。お前の警告に、私を嘗めるなといった警告で返してやったまでだ」
(;'A●)「だったら早く退いてくれないか……?」
川 ゚ -゚) 「お前が話を終えたらな」
(;-A●)「フー」
ドクオは溜息を吐いて一拍置き、
私を見上げて――見下ろす側とは良い物だな――口を開く。
('A●) 「俺は案内所の調査を三年前から開始した」
川 ゚ -゚) 「けっこう最近の話なんだな」
('A●) 「あぁ、用意に時間がかかったんだ。
今は少佐という権力もあり、部下も揃っている。
その代わり仕事も増えたがな」
('A●) 「部下達に調べさせ、俺自身も色んな場所に潜入した。
案内所と関係している疑いのある研究所、病院、軍基地、会社、
エトセトラ……臭いところを見つけては調べまくった」
('A●) 「そして先日、ウプスレッド研究所に潜入して調査した」
川 ゚ -゚) 「ウプスレッド、ダーウィンに依頼をしてきたところか」
27 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:09:13.27 ID:RpvuJ93L0 [17/34]
('A●) 「そうだ。お前を拉致しようとした部隊もそこの所属だ。
あの時の尋問で情報を仕入れたからな」
('A●) 「十年前から俺は案内所とはチャネラーの研究を行う帰還だと思っていた。
調べた結果、装甲服の開発も奴らが携わっていたらしい。
武器の開発に留まらず、政府、企業、軍へなんらかの干渉を行っているようだ」
('A●) 「そして徹底的な情報統制。漏洩を防ぐ為の暗殺機械。
組織の障害となる者へ武力行使をする直属の部隊に、傘下の部隊。
案内所の名を口には出来ず隠語である"鮫島"としか発音することは出来ない」
('A●) 「尋問である男が言っていた」
('A●) 「鮫島とは国家の規範であり、国家をあるべき姿へと案内していく為の組織。
鮫島は、国家を真に憂う者達の集まり、真の愛国者たちの集い。
彼らの行いと決断は全て、ニューソクの為に行われている」
川 ゚ -゚) 「だいぶ胡散臭い話になってきたな」
('A●) 「俺もそう思う。だが俺達はそれを目にし、それと戦っている」
川 ゚ -゚) 「しかし十年前に遭遇した案内所の部隊は、自ら案内所と名乗っていたぞ?」
('A●) 「俺にもそれはわからないが、恐らくは何らかのイレギュラーがあるのだろう。
もしくは、単純に十年前はそこまで情報統制が進んでいなかったのかもしれない」
川 ゚ -゚) 「推測の域を出ない話だな……」
28 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:11:27.84 ID:RpvuJ93L0 [18/34]
('A●)「話しは終わったんだ。そろそろ降りてくれない?」
ドクオが私を見上げたまま、歴戦の兵士には似つかわない情けない恰好で頼むと、
私はある異変に気付いた。
川 ゚ -゚) 「ん? 太ももに何か固い物があたっているんだが……」
('A●) 「あの……それは決して変なものではありませんよ?」
川 ゚ -゚) 「……?」
(;゚A●) 「ホントだって! ほれ、左足見てみ!?」
動揺したドクオはズボンをめくり左足を露出させていく。
すると……。
川 ゚ -゚) 「……!?」
そこにあったのは肉などでは無く、鉄だった。
筋肉の代理を果たすアクチュエーターに、神経と繋がれたコード類が、
チタン製義足の装甲の隙間から見え隠れしていた。
私は機械の足を確かめる為に右手をあてていく。
33 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:14:16.08 ID:RpvuJ93L0 [19/34]
川 ゚ -゚) 「ドクオ……何時の間にこんな怪我まで……」
('A●) 「ちょっと捕虜を救出する時にミスってな、でも歩ける」
川 ゚ -゚) 「こんな足で戦えるのか?」
('A●) 「問題はない、ただ、やっぱり生身の足よりはどうしても重くなるな。
ゆくゆくは軽量化されると聞いているが……」
川 ゚ -゚) 「私はな、サイバネティックスにも知識がある。
会社で今進めているプロジェクトが終わったら、私が義肢の軽量化をしてみせるよ」
('∀●) 「期待しないで待ってるぞ、何時までも人の上に乗っかってないで、早く墓参りしようぜ」
川 ゚ー゚) 「あぁ、でも待ってろよ。絶対にそんな義足より良いものを作ってやるからな」
冗談のように思われてしまったかもしれないが、私は本気だった。
今開発中の対装甲服用の武器"機械剣"を完成させたら、私は義足を作りたい。
仕事の楽しみが少し増えた、と思いながら車から出ていき、墓へと足を運んでいく。
ハインさん達が眠るであろう、無名戦士の墓へと。
34 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:16:33.43 ID:RpvuJ93L0 [20/34]
******
駐車場から出ていくと数多くの石碑が建てられた、
草原のような場所に私達は足を踏み入れた。
とても静かな場所であり、人の声もせず、
墓地に吹いていく風の音だけが耳に届いてくる。
暖かい空気を運んでくるそれはとても気持ちが良い。
草を踏みつけて目当ての墓標に辿り着く。
墓には短くこう刻まれている。
己の守るべきものの為に戦った
誇り高く勇敢な名も無き戦士達が
英霊となりてここに眠る
私は墓前に花を添え、両手を合わせて黙祷を行う。
川 - -)人 「………」
目を閉じているからハッキリと分からないが、
ドクオも私の隣りで黙祷を捧げているようだ。
捧げる、とは言っても私達は宗教に入信してるわけじゃない。
所謂、無神論者と言う奴だ。
しかし、墓の前ではこういうふうに合掌をして、
相手を敬うことが墓参りというものなのだろう。
今は亡き人の事を思う、憩いの場。
37 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:18:36.17 ID:RpvuJ93L0 [21/34]
ハインさんの事を思う。
私を見付けてくれたジョルジュさんという人、
救助の為に瓦礫を撤去してくれたブーンさんとモナーさん。
怪我の手当をしてくれたペニサスさん。
救助までの時間を稼いでくれたつーさん、ビコーズさん、アサピーさん。
彼等全員に私は感謝を込めて祈りを捧げる。
そして、隣にいるドクオにも。
私が目を開けると、彼は黙祷なんかしていなかった。
('A●)ゝ「………」
やはり、彼は兵士なのだ。
兵士らしく、墓に向かって敬礼をしていた。
私がその姿を見ると彼は口を尖らせて敬礼を解いてしまった。
川 ゚ -゚) 「ハインさん」
川 ゚ -゚) 「あなたが命を捨ててまで助けた命が、
あなたに後ろを押されて、戦場を駆け抜けて生き延びた命が」
川 ゚ -゚) 「今、大勢の命を奪う兵器を作る為に駆け抜けています」
38 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:20:40.08 ID:RpvuJ93L0 [22/34]
川 ゚ -゚) 「私の能力を活かすには、あなたのような人を生み出さない為には、
私はこうするのが一番だと思っています。
ですが、その反面。私の作った兵器で大勢の命が失われていきます」
川 ゚ -゚) 「それでも、私の兵器は人を守りきれません」
川 ゚ -゚) 「ハインさん。あなたは自分が死んでまで、こんな命を生かして良かったのですか? 」
日夜、私が作り出していく兵器が人の命を守り、人の命を奪う。
私は最近、どうにもこの重みが辛くなってきていた。
人を守っても、守れなくても、私が作った兵器が扱われる場所では、人の命が失われていく。
それは当然のことで、今この瞬間にも人は死んでいる。
戯言だ。世界を知らないガキの戯言で、
下らない平和主義者共の幼稚で無知な戯言。
唾棄すべき、忌むべき思想。
その思想を持つ者達は、大概が銃を握ったことも無い連中だ。
自分達が言っていることの、意味と重みが分かっていない大馬鹿者共。
だが、私は銃を握ったことがある。
この兵器を作る指で引き金へと指を掛け、引いた。
この掌で銃の内で起こる弾薬が爆発する衝撃を感じた。
40 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:22:56.04 ID:RpvuJ93L0 [23/34]
人を殺した虚しさが手に残った。
その時から私は殺人者だ。
でも、ドクオは、その時のドクオは、
ありがとうと私に礼を言ってくれた。
何度も、何度も私の頭を撫でて。
あの時の罪悪感は忘れられるものではない。
ドクオにも、そんな感情があるのだろうか?
川 ゚ -゚) 「ドクオ、ハインさんは……」
('A●)「ハインはただ目の前の可能性を守りたかっただけだ。
目の前の命を、死にかけていた女の子の命を守りたかった」
('A●)「クーだから護ったんじゃない。チャネラーだったから護ったんじゃない。
目の前に拾える命があるから、消えかけていた命があったから護っただけだ。
自分よりも多くの可能性を秘めたその小さな命をな……俺も、ハインに生かされているんだ」
川 ゚ -゚) 「………」
42 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:25:01.25 ID:RpvuJ93L0 [24/34]
('A●)「最近、あの人の気持ちが分かる気がするよ……」
ドクオはそう言って墓を見つめる。
彼は私にではなく、もしかしたらハインさんに話しかけていたのかもしれない。
だが今度は、ドクオはしっかりと私の目を見据えて言った。
('A●) 「だからクーは自分の望む物を、自分の幸せを掴んでくれ。
気負ったりせず、過去に囚われずに、自分の思うようにさ」
('A●) 「お前は俺が護るから」
川 - ) 「なら、これからはずっと一緒にいてくれるか?」
川 ゚ -゚) 「私と、共に駆けてくれるか? ウォードッグ」
私は彼を見据え、覚悟をして言う。この覚悟が何なのかは分からない。
本能的に、女がある局面で固める覚悟、と言えばしっくりくるかもしれない。
私はこの男に、そんな覚悟をして尋ねた。
44 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:27:05.59 ID:RpvuJ93L0 [25/34]
('A●)「それが俺の仕事だ。戦うのが、な……。
俺は"奴ら"を確実に潰し、お前の安全を保障する」
緊張感を持って尋ねた私に対しけろりとした声でドクオは応えると、
深刻そうな、緊張に支配された顔で口を開く。
(;'A●)「悪い、トイレ行ってくるわ」
そう言ってドクオはゆっくりとした足取りで、
墓地にある公衆便所へと向かっていった。
先程の緊張感が嘘のように四散していく。
私は溜息を吐き、目の前にある、無名戦士の墓に眠る筈のハインさんに語りかける。
川 ゚ -゚) 「ハインさん、あいつは鈍いです。
あの戦争犬が私の言葉を理解できるようになるには、
まだ時間が掛かりそうです。その時が来るまで、私は待とうと思います」
どうか見守っていて下さい。そう付け加えて、私は苦笑ともとれる表情で黙祷を捧げた。
45 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:29:07.19 ID:RpvuJ93L0 [26/34]
******
クーと別れた俺はトイレへと向かった。
と、見せかけて……。
('A●) 「ッ!」
<ヽ;`∀´> 「ゴッ!?」
林の中に潜んでいた不審者の視界から外れ、
そっと背後に忍び寄った俺は後頭部に肘鉄を極め、
木に顔面を抑えつけてやった。
右足の踵を外側からを踏みつけて関節を外してやると、
男は激痛に叫びを上げようとするが口を片手で塞ぐことでそれを抑える。
('A●) 「じゃあ自己紹介してみようか。お前の所属と名前は?」
<ヽ;`∀´> 「……」
首を左右に振ったその男は、黙秘するつもりらしい。
喋らせる為に離した手を、俺はもう一度口に当てた。
そして右腕を引っ張り、背中を足で押しつけると異音が響いた。
男の背が痛みにびくりと震えるのが足から伝わる。
('A●) 「自己紹介出来るか?」
47 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:32:18.92 ID:RpvuJ93L0 [27/34]
<ヽ;`∀´> 「国防情報局第一課所属! 諜報員のニダー=イルソン二ダ!! あぁっ、あぁ……ッ!」
('A●) 「お前の任務は?」
<ヽ;`∀´> 「……」
('A●) 「もう少し話しやすくしてやるよ」
今度は左腕の関節を外し、左足を思いきり蹴りつけて骨折させてやった。
呻こうとするも口を抑えられている為に出来ず、
身震いする身体だけがその痛みを物語る。
('A●) 「これで話せるか?」
<ヽ;∀;> 「任務は……高岡ドクオと思われる鬱田タケシの監視。
必要であれば排除。素直クールとの関係を明らかにするのが目的ニダ」
('A●) 「人数は?」
<ヽ;∀;> 「ウリともう二名ニダ……」
('A●) 「残る二名の現在地は?」
<ヽ;∀;> 「丘の頂上から望遠してる者が一名、駐車場の近くに潜伏する者が一名ニダ」
('A●) 「誰に頼まれた?」
<ヽ;∀;> 「……それは言えないニダ」
49 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:34:37.51 ID:RpvuJ93L0 [28/34]
('A●) 「そいつは彼女に近い位置にいるのか? 名前は?」
<ヽメ;∀;> 「そこまでは知らされていないニダ……」
('A●) (これだけ痛めつけたんだ。嘘をついている訳ではないな……)
('A●) 「ではお前の上官について聞こう。名前は?」
<ヽメ;∀;> 「FOX……そのコードネームしか知られていないニダ」
('A●) 「FOXか。役職は?」
<ヽメ;∀;> 「国防情報局の局長ニダ……」
('A●) (局長直々に?……じゃあ、情報局は案内所に抑えられていると見て間違いないな)
('A●) 「FOXは国家総合案内所と通じているのか?」
<ヽメ;∀;> 「さめじ……」
<ヽ;゚∀゚> 「ぐっ……!」
ニダーはいきなり目を見開くと顔をぶるぶると震わせ、
苦しみ出すと口から泡を吹かせて倒れていった。
(;'A●) 「ちっ……またか」
舌打ちをつくと同時に俺は気配を感じて振りかえり、銃を抜いた。
コルトパイソンの銃口が、大柄なモヒカン頭の男を覗く。
51 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:36:49.11 ID:RpvuJ93L0 [29/34]
( ゚∋゚) 「鬱田タケシ少佐か? 銃を降ろしてくれ、私はフサギコさんの部下だ」
('A●) 「傭兵か、遅いぞ」
( ゚∋゚) 「申し訳ない、だが他のスパイは別働班が片付けた。
気にせずに素直の元に戻ってくれ」
('A●) 「言われなくても戻るさ、サンキュー。フサは来ているのか?」
( ゚∋゚) 「あぁ、今も素直クールの周辺を警備している。
家から出る時から今まで、ずっとな」
('A●) 「そうか……きちんと働いているようで何よりだ」
( ゚∋゚) 「あれだけの報酬を貰えるんだ、下手に政府に雇われるより稼げる。
そりゃあ気合いも入るというものだ」
( ゚∋゚) 「もっとも、今日は特に気合いが入っているようだがな」
('A●) 「何か言っていたか?」
( ゚∋゚) 「あぁ、あんたと素直クールの会話を聞いている時」
ミ,,゚∋゚彡 「いいぞ! 良い雰囲気だ!! ドクオ行け行け、抱きしめてキスしちまえ!!
ハインさんもお前が男になったところを見たがっているはずだ!!
返事をしてやれYESYES! はい黙りこくるかーらーのー……あー」
54 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:41:06.74 ID:RpvuJ93L0 [30/34]
('A●) 「何でそんなテンション高いのあのオッサン」
( ゚∋゚) 「上司の見てはいけない一面を見た気がしました」
('A●) 「とりあえず素直クールのとこ戻るよ。引き続きガードを頼む」
( ゚∋゚) 「イエッサー! あ、そうだ。フサギコさんからの伝言だ」
('A●) 「……?」
( ゚∋゚) 「そろそろ自分に正直になったらどうだ? だそうだ」
('A●) 「そうか……」
( ゚∋゚) 「あと、夜はカーテンきちんと閉めて俺達から見えないようにして、
ゴムを忘れ……」
('A●) 「うっせーエロ中年って伝えておいてくれ」
巨漢の言葉に途中で耳を傾けるのをやめ、俺はクーのもとへ戻っていった。
55 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:44:10.88 ID:RpvuJ93L0 [31/34]
******
川 - -)人
戻ってきたドクオと共に私は両親の墓へ赴き、黙祷を捧げる。
母さん、父さん。久しぶり。
今日は会わせたい人がいてここに来たんだ。
(-A●)人
私の隣に立つこの男だ。名前は高岡ドクオって言う。
彼はな、10年前カラマロスDNで私を助けてくれたんだ。
そして今もなお、総合案内所と戦い私を護ってくれている。
貧相な顔をしているが強く、優しい男だ。
愛想がなくて時に冷徹で厳しくもある。
そんな彼は10年前に私を護ってくれるって約束してくれたんだ。
どんな気持ちでそんな約束をしてくれたのかはわからないが、
今もその約束は守られている。
あの時はお互い一人ぼっちだったが、今は違う。
私には家族があり、彼には仲間がいる。
それでも彼は我が身の危険を顧みずに私を護ってくれる。
ドクオに見返りは無い。ただ約束したからというそれだけの理由で護ってくれる。
57 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:46:10.81 ID:RpvuJ93L0 [32/34]
だから私はそんな彼に応えたいと思った。
自分の気持ちに従ったうえでの判断だ。
後は彼が受け入れてくれればいいのだが……。
母さん、父さん。どうか見守っててくれ。
私と彼の行く末を。
川 ゚ -゚) 「ドクオ、行こう」
('A●) 「もういいのか?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、充分に近況を報告できた」
('A●) 「そうか……じゃあ家まで送るよ」
川 ゚ -゚) 「なに、もう帰るのか?」
('A●) 「俺が話せることはもう話した、用事はもうこれで終わりだ。
これ以上うろうろするのも危ない」
川 ゚ -゚) 「久しぶりに会ったと言うのに、寂しいことを言ってくれるな」
('A●) 「……状況が状況なんだ」
川 ゚ -゚) 「私の心配はしなくていい。だから、どこかに行こう。
服を買ってやるとも約束したしな」
59 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/15(土) 21:48:29.06 ID:RpvuJ93L0 [33/34]
('A●) 「そういえば……そうだったな」
川 ゚ -゚) 「決まりだ、街に遊びに行こう」
(;'A●) 「へ?」
川 ゚ー゚) 「デートだ、デート!」
(;'A●) 「え? えぇーっ?」
川 ゚ー゚) 「行くぞ」
私は駐車場のほうへ向かって歩いていき、
ドクオはそれにゆっくりとついてくる。
彼は空を見ながら何かを呟いた。
私はドクオを待ち、彼が横に並ぶと一緒に駐車場へと向かっていった。
さて、まずどこへ向かおうか>>62
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/15(土) 21:53:22.12 ID:iwa+ajZZ0
ラブホテル
ラブホテルへ ※閲覧注意 R-18
18 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:31:51.24 ID:ngm8Fy4m0 [5/31]
******
街を巡っていった頃には既に19時になっていた。
まだ休暇は三日ほど残っており明日も暇だが、ドクオは仕事だ。
あまり付き合わせるわけにもいかず、
しかし何か礼をしたいと思った私はドクオを自宅に誘った。
私の住むアパートに駐車場は無く、近くの駐車場に車を止めると、
ドクオと私はアパートに歩いて向かい部屋に入っていく。
('A●) 「お、綺麗な部屋だな」
居間に足を踏み入れたドクオは感心したように言った。
川 ゚ -゚) 「そうだろう、マメに掃除はしている」
川 ゚ -゚) (実家から慌てて帰って掃除してよかったな……)
川 ゚ -゚) 「今晩飯を作るから、待っていてくれ」
('A●) 「すまんね、何か手伝うか?」
川 ゚ -゚) 「お前料理出来たのか?」
('A●) 「あぁ、サバイバルについて学んだ。いちおう料理は出来る。
蛇とかけっこううま―――」
川 ゚ -゚) 「ゆっくりしていてくれ」
23 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:34:42.51 ID:ngm8Fy4m0 [6/31]
('A●) 「いやいやてつだ――――」
川 ゚ -゚) 「大人しくしててくれ。お前に私の料理を振舞いたいんだ」
(*'A●) 「あぁ、そう。いや悪いね」
ドクオは納得したのかテーブルに向かって座りこんだ。
川 ゚ -゚) 「今コーヒーを淹れるから」
インスタントコーヒーを台所から取り出し、
私はカップに淹れて電気ケトルからお湯を注いでいく。
川 ゚ -゚) 「砂糖やミルクは?」
('A●) 「あぁ、いらないよ」
川 ゚ -゚) 「ブラックか、厨二乙」
('A●) 「食事の前に口の中を甘くするのが嫌なだけだよ。飲み分けてんの」
25 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:36:57.95 ID:ngm8Fy4m0 [7/31]
川 ゚ -゚) 「はいはい」
粉を溶くためにスプーンでコーヒーをかき混ぜていく。
インスタントではあるが心地よい香りが鼻腔を満たしていき、
コーヒーは色を更に深めていった。
川 ゚ -゚)つ旦 「どうぞ」
('A●) 「サンキュ」
川 ゚ -゚) 「じゃあ、ちょっと待っていてくれ」
('A●) 「あいよ……ベランダ借りていいか?」
川 ゚ -゚) 「あぁ」
ドクオはそう言うとベランダへと向かい、
私は冷蔵庫から食材を取り出し、調理をしていった。
27 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:39:01.90 ID:ngm8Fy4m0 [8/31]
******
ε=('A●)y━~~「ふぅー」
ベランダの柵に上半身を預けたドクオはタバコを吹かす。
肺から口腔へと煙が抜けていき、辛みが残っていく。
ピリピリとした感触が舌に染みいり、タバコの香りが鼻をついた。
('A●)y━~~ 「我慢して数時間ぶりに吸うタバコは格別だな」
呟いた彼はクールが台所で料理をしているのを見て、笑みを浮かべた。
('ー●)y━~~ 「綺麗だな……あの姿を見られるまで生き延びることが出来て、よかった」
(‐A●)y━~~(でも、俺には無理なんだ。俺がクーを守り続けることなんて出来やしない)
偶々ドクオがパーソク領への侵攻作戦に参加していなければ、
クールは案内所の連中にさらわれていたことだろう。
ドクオはそんな考えをし、背筋に寒気が走るのを覚えた。
(‐A●)y━~~ (果たして、何時までこんなことを続けていけるのかね)
(‐A●)y━~~ (あいつはいずれ、避難させなければいけないな……。
奴らの手の届かない場所に、人知れず)
しかし、そんなことをクールは承知するだろうか、ともドクオは思う。
悩み苦しみ、全ての思考を停止させる為に彼はタバコを吸っていくと、
川 ゚ -゚) 「タバコ……吸うようになったんだな」
30 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:41:18.80 ID:ngm8Fy4m0 [9/31]
ε=('A●)y━~~ 「あぁ、お前と別れて、ちょっとしてからな」
川 ゚ -゚) 「この不良め」
('∀●)y━~~ 「もう大人だ」
苦笑を浮かべたドクオはクールから離れ、煙を吐いた。
だがクールは彼の傍によっていく。
('A●)y━~~ 「?」
傍らに寄り添った彼女はドクオの顔を見ると口を開いた。
川 ゚ -゚) 「私にも一本くれ」
('A●)つ━ 「あぁ……吸うのか?」
川 ゚ -゚)y━ 「いや……」
タバコを受け取ったクールはそれを咥え、ドクオはライターを取り出したが、
31 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:43:20.63 ID:ngm8Fy4m0 [10/31]
川 - -)━ ~~━('A●;) 「?」
彼女はドクオの顔に自分の顔を近づけていき、
タバコを重ねあわせようとした。
川 - -)━━('A●*) 「……」
火種がクールのタバコに火を着けていき、
煙を吸い込んだ彼女はそれを吐きだそうとするが、
川;´-゚)y━~~ 「げほっごほっ……がはっ!」
タバコになれないクールはむせ返ってしまった。
更に煙が目に染みたのか涙を目に浮かべており、
ドクオはそっと彼女の背中を摩っていく。
('∀●)y━~~ 「バカ、吸えないなら吸うな。何がしたかったんだよ」
川;´-゚)y━~~「いや、あれやりたかっただけなんだ……すまん」
川 ´-゚)y━~~「しかし、良いものだな」
('A●)y━~~ 「片目開けられるようになってから言えよ」
川 ´-゚)y━~~ 「いや、味じゃなくてな……」
34 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:45:31.24 ID:ngm8Fy4m0 [11/31]
川 ゚ -゚)y━~~「二人でこうしていられることがな」
('A●)y━~~ 「あぁ、そうだなぁ……」
クールはドクオをじっと見つめていた。
だが、彼は虚空を見つめて再び煙を燻らせていく。
('A●)y━~~「……」
川 ゚ -゚)y━~~ 「……」
('A●)y━~~ 「……」
川 ゚ -゚)y━~~ 「……ドクオ」
('A●)y━~~ 「なに?」
川 ゚ -゚)y━~~ 「ごはん出来たよ。パスタだから冷める前に早く食べよう」
('A●)y━~~ 「ありがとう……でも、最初に言ってくれたらいいのに」
川 ゚ -゚)y━~~ 「スマン、だが反省はしていない」
37 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:48:27.36 ID:ngm8Fy4m0 [12/31]
******
川 ゚ -゚) 「冷める前に食べてくれ」
('A●) 「もうカチカチになりかけてるのですが」
テーブルに置かれたパスタを前にした二人はフォークを手に取る。
ミートソースの乗ったその黄色い麺は弾力さを主張しており、
アルデンテに茹であげられていることが見て分かった。
('A●) 「イタダキマス」
赤々としたミートソースにはナスとバラ肉が絡み合っており、
黄色い麺と赤々としたソースが絶妙な色彩を作り出し食欲をそそる。
しかしフォークを通すと冷えて少々固まってしまっているのを触覚から感じ取れた。
('A●) 「だが美味い」
川*゚ -゚) 「本当か? 良かった」
川*゚ -゚) (引っ越してからしばらく料理などしていなかったんだが……)
('A●) 「あぁ、久しぶりにこれほど美味い物を食った」
川*゚ -゚) 「そうか」
40 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:50:30.94 ID:ngm8Fy4m0 [13/31]
川 ゚ -゚)「普段どんな物を食べているんだ?」
('A●) 「最近は……レーションだったな。休暇に入ってからは主にハンバーガーを」
川 ゚ -゚) 「レーションってあの……ぬるぬるした……」
(;'A●) 「違う違う!軍の野戦糧食だよ」
川 ゚ -゚) 「どんなものなんだ?」
('A●) 「色々入ったパックがあって、パンとかポークパテとかたくさん詰まってんだ。
クラッカーとかも入っててさ」
川 ゚ -゚) 「けっこう美味しそうじゃないか」
('A●) 「言葉で聞いたらね。実際は酷い味だ。
保存性を重視していてな。臭いしぐちゃぐちゃしてて気持ち悪い上にまずい」
川 ゚ -゚) 「そうなのか、一度食べてみたい気もするがな」
('A●) 「ふぅ……御馳走さま。やめておけ、あの味は知らない方が幸せだ」
川 ゚ -゚) 「お粗末さま。お前がそう言うならやめておくかな」
('A●) 「どうしてもっていうのなら用意してやるかな」
川 ゚ -゚) 「いいのか?」
42 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:52:35.23 ID:ngm8Fy4m0 [14/31]
('A●) 「僕少佐。レーション用意させるくらい造作もないよ多分。
いざとなればパクってくるし」
川;゚ -゚) 「無理しなくてもいいぞ?」
('A●) 「いやいや、今日のお礼にと思ってね」
そう言ったドクオは立ち上がり、玄関へ向かおうとした。
川 ゚ -゚) 「ドクオ、行くのか?」
('A●) 「あぁ、良い時間だしな。お前も早く寝ろよ」
川 ゚ -゚) 「そうか……」
('A●) 「じゃあな、また会おう」
川 ゚ -゚) 「また、か……次はいつ会えるんだ?」
('A●) 「……」
クールの言葉に、ドクオは表情を変えた。
無機質で、一切感情を窺わせない鋭い瞳をして彼はクールを見る。
('A●) 「次はわからない。出来れば接触は控えた方が良いしな。
もしかしたら俺が案内所と決着をつけるまでは無理かもな」
('A●) 「それと一つ提案だ。クーはこのままじゃいずれは案内所の手に落ちるだろう。
だからそうなる前に、お前には移住してもらおうと思う。
今のままの生活はおそらく長くは続かないだろう」
46 自分: ◆K8iifs2jk6 [>>44おいww] 投稿日:2011/10/16(日) 01:55:07.60 ID:ngm8Fy4m0 [15/31]
川 ゚ -゚) 「どこにだ?」
('A●) 「他国になるだろうな。ニーソクかテンゴクかはたまたカナソクか。
いちおうこちらで用意は進めておく。お前が承諾さえしてくれればな」
川 ゚ -゚) 「……」
('A●) 「答えは二日以内に決めてくれ。こっちにも準備がある。
準備が終わり次第こちらから連絡をする」
川 ゚ -゚) 「どうしてもそうしなければならないのか?」
('A●) 「あぁ、いずれは俺達では手が回り切らなくなってしまう。
そうなってからじゃ遅いんだ。クーが決めることだから、
俺が強制することも出来ないが、"奴ら"の目から逃れない限りお前の安全を保障できない」
川 ゚ -゚) 「守ってくれるって、約束してくれたばかりだろう?」
('A●) 「そうだ、その通りだ。だからクーを移住させたいと思っている。
資金ならある、俺が溜め続けてきた金だ。
贅沢をしなければ数十年は生きていけると思う」
('A●) 「ただ決断が必要だ。覚悟する必要がある」
川 ゚ -゚) 「……」
50 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:57:19.15 ID:ngm8Fy4m0 [16/31]
('A●) 「二日だ、二日だけ猶予を―――」
川 ゚ -゚) 「ドクオ、私はな」
クールは立ち上がり、ドクオと向かい合って語る。
その眼はドクオの目を真っ直ぐと貫いており、彼女は彼へ自分の胸中全てを明かそうとしていた。
川 ゚ -゚) 「私は自分の能力を、チャネラーの能力を最大限に活かそうと思ってダーウィンに入った。
労を惜しまず働き続け、仕事に一切の妥協を許さなかった。
私の願いを、私の夢を叶え、敷いた道しるべの上を駆け抜けていく為に」
川 ゚ -゚) 「私はな、10年前にお前に助けられてから、ずっと抱えていたんだ。
お前のことが気にかかってしかたなかったんだ。
助け出して貰った上に、お前に目を失うような怪我までさせてしまった」
川 ゚ -゚) 「だというのに7年前私だけ親戚に引き取られて、戦場からお前を置いていって、
のうのうと今まで生きてきてしまったんだ」
川#゚ -゚) 「お前が苦しい目に沢山あってきたのに! 私だけ! 私だけ家族が出来て!!
学校に通って、友達が出来て! 暖かい食事と暖かい布団で眠り、のうのうと日々を過ごしていた!!」
川#゚ -゚) 「自分が許せなかったんだっ! ドクオはハインさん達を失い、
傷を負ってまで戦っていると言うのに、私は……!」
('A●) 「それが本音か?」
川#゚ -゚) 「あぁそうさ! 私はこの数年自分を恨み続けた。
この国のどこかで戦い続けているお前を思い、泣いたこともある。
どうしてお前にもこの暖かさに触れさせてやれないんだろうって!!」
53 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 01:59:22.11 ID:ngm8Fy4m0 [17/31]
川#゚ -゚) 「だから私は、少しでもお前に近づこうと思って……。
ダーウィンで働いて私なりに戦争に携わろうとして、自分の能力を活かして認められて……」
川 -) 「案内所に接触しようと……」
('A●) 「先日の合同実験で襲われたところを助けたのは、邪魔だったか?」
川 -) 「いや、そんなことはない……それは嬉しかった。
お前と再会出来たのは、すごく嬉しかったんだ」
川 ゚ -゚) 「でも私は案内所と接触しさえすれば、奴らの中に入り込むことが出来れば、
内部から崩壊させることも出来るかもしれないと思ったんだ」
('A●) 「どんな処分を受けるかはわからない。下手すればただのモルモットにされるぞ」
川 ゚ -゚) 「その通りだな。浅はかだったが、でも私に出来る戦い方といえばこうするしかなかったんだ」
川 ゚ -゚) 「家族といれば巻き込んでしまうかもしれないし、友人も巻き込んでしまうかもしれない。
だから私は、ずっと人を寄せ付けないように生きてきた。それが彼らを守る為でもあった。
そうやって戦い続けてきたが、ドクオが現れたことで全部変わった……」
川 ゚ -゚) 「それで、気付いたんだ。自分の中にある本当の気持ちに。
そして今日それを深く実感した……私は、私はなドクオ……」
('A●) 「……」
55 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:01:44.38 ID:ngm8Fy4m0 [18/31]
川 ゚ -゚) 「お前に、幸せになって欲しかったんだ。お前が喜んでるところもっと見たいんだ。
その姿をずっと傍で見ていたくて、一緒に戦って、一緒に苦しいことも分かち合いたいんだ」
川 ; -;) 「私はただ、お前と一緒にいたかっただけなんだ……っ!」
クールの声は震えていた。
目からは涙が零れ、様々な感情が入り混じり混沌とした彼女の心を洗い流し、
根元にあるただ一つの意思を明白にさせていく。
クールの強い思いを受け止めたドクオはそっと彼女に歩み寄り、
川 ; -;) \('A●) 「クー、俺はな」
いつぞやのように頭を撫で、言い聞かせていく。
その表情は何時の間にか柔らかな物となっており、口調もまた優しく変わっていた。
('A●) 「俺はお前を護る。それがハインから与えられた任務で、俺の決意だ」
川 ; -;) 「任務だから仕方なくやってるの……?」
('A●) 「違う、俺はお前を守りたいんだ。十年前からその気持ちに変わりは無い。
クーも俺も大事な者を失って、一人ぼっちになってしまって、
これ以上悲しませたくないと思ったんだ」
('A●) 「一種の仲間意識みたいなものだったんだと思う。
俺とクーが、同じものみたいにあの時は思えた」
57 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:03:59.74 ID:ngm8Fy4m0 [19/31]
('A●) 「でも、違うんだ。俺とお前は」
('A●) 「俺は兵士だ。クーのような一般人を護る為に俺達は戦っている。
俺は少年兵だった。だから身寄りなどあの時無かった」
('A●) 「いずれ俺達は離れ離れになるだろうとわかっていた。
いずれは別れる時がくるだろうとわかっていた。
俺にとっては赤の他人だったそれでも! クーを死なせたくは無かった!!」
('A●) 「俺達の道は重なり合ってはいない。俺達は別々の道を駆け抜けていくことになる。
だから俺は10年前お前と出会ったあの戦場では、その時が来るまで護り続けようと誓った」
('A●) 「銃を握り続ける道。平和に溶け込む道。俺の目の前には銃の道があり、
クーの目の前には平和の道が続いていた。
その道にお前を戻してやることが俺の使命だと信じていた」
(-A●) 「別世界へと続く道だった、俺にとって。全く知らない世界だ。
7年前、親戚に引き取られていくお前を見送って、これからは戦いとは無縁のその道を、
幸せに歩んでいくものだと、誤解していた」
(-A●) 「クー、お前の話を聞いて、お前が苦しんでいたことはよくわかった」
(-A●) 「ごめん……」
川 ; -;) 「……なんであやまるの?」
(-A●) 「わからない……あの時の俺にはどうすることも出来なかったに違いないのに、
俺がお前と共に歩んでいける道なんかないと分かっていたのに、
それでもお前を今までずっと苦しませていて、こうして泣かせてしまっているのは、駄目だと思ったんだ」
59 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:06:19.86 ID:ngm8Fy4m0 [20/31]
川 ; -;) 「うっ……うぅ……」
(-A●) 「俺は戦う事しか出来ない。戦いの中でしか自分を表現できない。
戦い続けることこそが俺の生きている証を世の中に刻みつけることになる。
銃を握ることでしか生を実感出来ない男だ」
(-A●) 「俺達のような人間のことをハインはよく知っていた」
('A●) 『人を殺した時から私達は地獄に落ちた。天国なんか用意されていない。
殺人の罪を背負い続ける限り永遠の闘争に縛られ続ける
勝ち負けじゃない。生きている限り、私達は果てしない戦場を彷徨い続けるのだ』
('A●) 「ハインが俺に言った言葉だ。俺はこの言葉を忘れた事が無い。
一度銃を握り、生き残ってしまった時から俺達兵士は戦争の呪縛に囚われてしまうんだ」
('A●) 「だけどハインは、それでも俺が銃を捨て平和な世界で生きることを望んでいた……」
(-A●) 「俺はいずれ銃を捨てる……」
川 ; -;) 「うん……うん……」
ドクオはクールの両肩に手を置いて、彼女を見つめて言った。
61 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:09:21.73 ID:ngm8Fy4m0 [21/31]
('A●) 「クー、俺はお前が好きだ」
川 ; -;) 「ありがとう……私も、ドクオのことが大好きだ。
ずっと、ずっとお前に会いたいと思っていた……」
('A●) 「でも俺達の生きる道は違うんだ。生きる世界が違うんだ。
俺にお前の傍にいる資格なんてないんだ。
だから、俺がいずれ銃を捨てるその時まで、待っていてくれないか?」
川 ; -;) 「わかった……」
('A●) 「じゃあ、こいつを持っていてくれないか?」
ドクオは懐にしまっておいたコルトパイソンを抜き出すと、
銃身を持ってクールへと差し出す。
クールにも見覚えのあるその銃は、
彼の師であり母でもあるハインリッヒの形見と言えるものだ。
川 ; -;) 「い、いいのか?」
('A●) 「あぁ、俺を護る必要はもうない。
だから今度はクーを護ってくれって、ハインにも頼んでおいた。
きっと、ハインもお前のことを護ってくれるよ」
65 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:11:38.51 ID:ngm8Fy4m0 [22/31]
('A●) 「俺がお前の許に戻るまで、預かっていてくれ」
川 ; -;) 「あぁ……あぁ……っ!」
('∀●) 「まっ、待ち切れなかったら、その時はその時でいいさ。
もっと相応しい奴と幸せになればいい」
川 ;ー;) 「ふふふ……何を今更。7年も待てたんだ、私はしつこいぞ?」
('∀●) 「それもそうだな」
ドクオはクールを抱きしめた。
彼女はそれを受け入れ、自ら彼の背に腕を回していき、しがみつく。
10年来の抱擁を交わした二人は、その場で互いの想いを確かめ合うかのように抱き合い続ける。
しかし、空白の時間を埋め合わせるには、残された時間は二人にとってあまりにも短すぎた。
69 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:13:40.28 ID:ngm8Fy4m0 [23/31]
******
6月1日 0600―――――素直クール宅
台所で調理をしていた俺は出来あがった料理を皿に載せ、
テーブルの上に置いていく。
('A●) 「おっしゃあ!」
スクランブルエッグとサラダの皿に出来あがったトーストを載せ、
隣にはインスタントではあるがコーンスープの入ったカップを置く。
二人分出来あがった朝食を見るが、しかし人数が足りなかった。
('A●) 「……」
州レ-~-)レ zzz
('A●) 「まぁ、無理に起こすのも悪いし……」
呟いた途端、眠っているはずのクーの鼻がヒクヒクと動き出し、手は目を擦っていく。
……メシの匂いを嗅ぎつけたのか?
州レつ o;)レ 「ふわぁ~、おはようドクオ。今朝食を作……」
州レつ -゚)レ 「る……って、え?」
73 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:15:42.15 ID:ngm8Fy4m0 [24/31]
州レ;゚ -゚)レ 「あああもう朝食が……! すまない寝過ごしてしまった!!」
('A●) 「いいよ俺が早いだけだし。それにその前に寝癖直せよ、あと服着ろ」
州レ;゚ -゚)レ 「うわっ、あぁそうだ寝癖! と服服……! 見るなバカ!!」
素っ裸のまま起き上がってきたクーは慌てて薄掛けで身を隠し、
生地が豊かな膨らみを作って白い肌を覆っていくと、
彼女は手探りで服を探っていく。
('∀●)9m 「はっはっはバカめ。普段冷静な癖にとんだ醜態だな」
州レ#゚ -゚)レ三つ#;)A●) 「うるさい!!」「右目はやめてっ!!」
(#;;)A●) 「しかし良いものが見れた」
州レ゚ -゚)レ 「フン、昨日の夜散々見ただろうが」
(#;;)A●) 「夜のほうはもっと良いものを見れましたがねぐへへ」
州レ*゚ -゚)レ 「お前のせいだろ……責任はとって貰うからな」
(メ'A●) 「お前が待ち切れたらな」
州レ*゚ -゚)レ 「昨日のは担保だ。お前が絶対に私の元に戻ってくるようにな」
(メ'A●) 「俺を待つより、もっと良い人がいると思うんだけどな」
州レ゚ -゚)レ 「私はずっと待ち続けるぞ、お前が銃を捨てるのを」
76 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:17:43.01 ID:ngm8Fy4m0 [25/31]
(メ'A●) 「俺は銃を捨てるさ、案内所の連中を倒してな。
何時になるやらわからないが」
州レ゚ -゚)レ 「別に倒さなくても、お前が銃を捨てれば私との話はそれですむんだぞ?
ずっと傍にいてくれれば、お前は私を護れるんだからな」
(メ'A●) 「そういうわけにもいかないさ、でも、それもありだな」
州レ゚ー゚)レ 「じゃあ、どっちの根が折れるのが先か、だな」
('A●) 「そうだな」
州レ゚ー゚)レ 「ふふふ……」
('∀●) 「ははは……」
(;'A●) 「って、やべ……時間!」
クーの笑みに釣られて笑みを浮かべていると、
俺は目覚まし時計の示す時間が目に入り驚愕した。
時刻は0620であり、0700には基地に戻っていないといけないので余裕はない。
(;'A●) 「すまん、俺はもう基地に戻るぞ!」
慌てて玄関まで走っていき、ドアを開けて外へ出ようとするが……。
州レ゚ -゚)レ 「ドクオ」
(;'A●) 「あ?」
79 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:20:02.45 ID:ngm8Fy4m0 [26/31]
(;'( 州州州「んん!?」
何時の間に追いついてきていたクーが俺を抱きしめ、キスをしてきた。
触れ合う唇からは彼女の味がし、鼻腔が彼女の匂いで満たされていくと、
俺の慌てふためいていた心は途端に静まり返り、彼女が俺の中に流れ込んできたかのようだった。
州レ゚ー゚)レ 「いってきますのちゅーだ。これも担保だから、戻ってこいよ」
(*'A●) 「あ、あぁ……いってきます?」
州レ゚ー゚)レ 「いってらっしゃい」
クーがそう言ったのを耳にすると、
どこか新鮮な響きで、しかし不思議と落ち着く変わった感覚を覚える。
……もし、夫婦になれたら、こんな感じなのだろうか。
俺はそんな考えを胸に秘めながら、駐車場へと向かっていった。
それは前進への一歩だった。それは未来への確かな歩みだった。
別の世界を歩む二人の、存在するかもしれない交差点へ続く道しるべ。
俺はそれまで駆け抜けていこうと思った。
83 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:22:07.84 ID:ngm8Fy4m0 [27/31]
だが、
(,,\=◎) 「お前……高岡ドクオだな……」
謎のバイザーを着けた黒コートの男が俺の前に立ち塞がり、
住宅街のど真ん中で立ちつくすことになってしまう。
合成音声で尋ねるこの男からは、嫌な予感しかしない。
('A●) 「違います、人違いです。だからどいてくれません?」
(,,\=◎) 「ならば鬱田タケシか?」
('A●) 「はいそうですが、何か?」
(,,\=◎) 「ならば死ね!!」
バイザーの男は腰から何かを抜き出すと、
俺はバックステップで咄嗟に距離を取った。
(;'A●) (速い……)
あまりの速さに、獲物を確認する余裕も無かったほどだ。
距離を取り、ナイフとコルトパイソンを抜いて構えようとするが……。
(;'A●) (しまった、パイソンはクーに渡したんだったか……クソ、ついてねぇ)
左手でナイフを構え右手は自由にし、男と対峙する。
86 自分: ◆K8iifs2jk6 [] 投稿日:2011/10/16(日) 02:25:01.58 ID:ngm8Fy4m0 [28/31]
するとバイザーが展開していき、男の顔が露わとなる。
(;'A●) 「なにっ!?」
(,,ナД゚) 「俺の顔を忘れたとは言わせんぞ、小僧ぉ……」
それは、10年前にクーに射殺されたはずの男、
国家総合案内所のエージェントであるギコの顔であった。
(;'A●) 「どうしてお前が生きている!?」
過去の負傷だろうか、右目を傷に覆われたギコは、
隻眼で俺を身の毛もよだつ様な殺気を込めて射抜くと、
激しい怒りを込めた口調で叫ぶ。
(,,ナД゚) 「その理由はあの世でしぃとシャキンに聞け!!」
ギコが駆ける。
日本刀――恐らくはこの間のロマネスクとかいう奴と同じ物――を構え、
奴は俺へと一直線に飛びかかってきた。
10年間積み重ねられてきたであろう憎悪を発したギコを迎撃すべく、戦闘態勢へと入っていく。
クーと共に歩む道の為にも、俺はこの闘争の道を駆け抜けていく。
決意を新たにし、そう誓ったのだから……。
再び、クーにまた会える日まで、俺は戦い続けるだけだ。
ナイフと刀が激突しあい、堅い金属音が火花と共に散っていった。
≪前へ 目次 次へ≫
スポンサーサイト
- 2011/10/16(日) 02:53:36|
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0