ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 第7話

2 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:38:26.53 ID:uiWys+l20
何の為に剣を振るうのか?

何の為に戦うのか?
守る為に戦い続け、その果てに敗れた俺達は何をするべきなのか?

例えば、俺は未だに戦い続けている。国の、仲間の、そして恋人の為に。
共に戦ってきた仲間は守る為の戦いで死んでしまい、国は失われた。
では、彼等は一体何の為に死んだのだろうか?

あいつらの死は、何の為であったのだろうか?
己の守りたい物を守る為に命を懸け、命を失った奴らの魂は何処へと行くのだろうか。

何処へも行けない。

彼等が守りたかった国は失われたのだから。
帰るべき場所が失われてしまったのだから。

それらを失ったのは、俺達、生き残った者にも変わりはない。

恐らく、これはあの戦いを生き残った俺達の義務とも呼べるのだろう。
俺は帰るべき場所を奪われた英霊たちの為、
俺の帰りを待つ彼女の為、剣を振るい続ける。

戦争は終わった。

だが、俺の戦いは未だ終わらず、
義務は果たしておらず、戦意は失われることは無い。

守るべきものがある限り。



4 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:39:19.83 ID:uiWys+l20


      ('A`) ドクオは亡国の兵士のようです



         第7話 機械仕掛けの神



6 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:40:28.58 ID:uiWys+l20
******

早朝の空は薄暗く、未だ太陽は昇り切っていない。

ニーソクの北地に位置するここアラスカは、
水産業が盛んな街であり、ニーソク軍北方基地が置かれており、
現在、硝煙が漂い、銃声が響きわたっていた。

あちらこちらから銃弾が放たれ、
爆炎が巻き起こって薄暗闇を照らし、熱気の籠もった風が吹き荒ぶ。

兵士達の怒声が聞こえ、悲鳴までも聞こえるそこは、戦場となっていた。

そんな街中から30kほど離れた場所にある海岸には現在、
戦艦が浮かび上がっている。

巨大なそれの甲板の上にはコンテナ等が置かれており、砲門が設置されていた。
長方形をした5m程のコンテナの上には、男が一人腰かけている。

ゴム質の防護繊維で作られた、ダイビングスーツのような黒服に身を包み、
身体中にナイフを収めたホルスターを装着した彼は、
柵の近くに立つ、黒革のコートを羽織った、白い同じ服を着た男と向かい合っていた。



8 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:41:43.46 ID:uiWys+l20

白服に身を包んだ男が口を開き、

(,,゚Д゚) 「そうか、“奴”と交戦したのか」

( ゚д゚ ) 「あぁ、楽しかったぜ。実に楽しかった。
      終戦後、あんなに楽しかったのは初めてだ」

(,,゚Д゚) 「楽しかった、か。
      それで素直クールもドクオも仕留められなかったというのだから、
      随分と能天気な奴だな、貴様は」

(,,゚Д゚) 「目的を果たせずに手段に没頭するとは、三流も良いところだ」

( ゚д゚ ) 「まぁ、そう言うな。ロマネスクも端から俺が奴らを殺し切るとは思っていない。
      ニーソクの基地に、ましてや、首都に置かれた中央基地だ。
      いくら強化骨格と言えど、単独でやるには戦力不足と言ったところだ」

(,,゚Д゚) 「小手調べと言ったところか」

( ゚д゚ ) 「ご挨拶と言ったところさ。『白猫』」

白猫と呼ばれた男、ギコは不機嫌そうに、

(,,゚Д-) 「フン、貴様はそれでも三流だ。ミルナ。
      戦いに楽しみを見出し、戦うことにしか己の生き甲斐を見出せず、
      戦いの先に何も見出せぬようになっては、兵士として失格だ」


9 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:42:45.01 ID:uiWys+l20
ミルナと呼ばれた、黒い強化骨格を纏った男は口の端を緩めて、

( ゚д゚ ) 「ふふ、それをお前が言うかね。英雄よ。
      お前なら分かっているはずだ。俺達には戦うことしか出来ぬのだと。
      俺達は今を生きることしかできず、未来に生きることは無いのだと」

( ゚д゚ ) 「何時死ぬか分からないんだ。何時まで生きられるのかが分からないんだ。
      どんな大層な理念を、正義を、大志を掲げていようとも、生きていられるのかは分からない。
      俺達に出来ることは所詮今を精いっぱい生きることさ。戦争が無くなれば、俺達はお払い箱」

(,,゚Д゚) 「だから殺しを楽しむというのか? やはり貴様は三流だな」

( ゚д゚ ) 「どうとでも言うがいいさ。英雄には雑兵の気持ちなど分からないだろうよ。
      俺達のやることは人殺しなんだ。どうせなら、楽しんで行こうぜ」

(,,゚Д゚) 「俺には目指すべき場所がある。
     貴様のように今に囚われも、ドクオのように他国に囚われもしない」

( ゚д゚ ) 「ご立派なことだねぇ……まぁ、あの裏切り者とは楽しめるとだけ言っておくよ。
      次に出会えば、必ず殺す。絶対に殺す。あんなに楽しめたんだ。終わりは最高だろう」


12 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:44:14.08 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「裏切り者。オオカミになびいた貴様が言うか」

( ゚д゚ ) 「おいおい、俺はあんた等の味方だろうに」

(,,゚Д゚) 「あぁ、俺達にとってはな。だが、俺には貴様はただの売国奴にしか見えん。
      ニューソクの下では無く、ニューソクの為でも無く、他国の下で戦うのだからな」

( ゚д゚ ) 「今の目的は一緒だろう?」

(,,゚Д゚) 「“今”は、な。いずれ貴様も斬る。
      オオカミに寝返った、裏切り者としてな」

冷えた刃が如き言葉をギコは放ち、

( ゚д゚ ) 「いずれ、ねぇ……じゃあ、今やるか?」

楽しげに、笑いの声にも似た声でそう返す。

(,,゚Д゚) 「………」

( ゚д゚ ) 「………」

静粛が一瞬、二人の間を包みこみ、
凍りついたかのように二人の動きが、時間が止まる。


15 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:45:52.02 ID:uiWys+l20
( ゚д゚ ) 「シャァァァッ!」

コンテナに両手を叩き込み、腕力のみで立ちあがったミルナは、
上昇の動きと共に胸に付いたホルスターから二つのナイフを放つ。

二つの鉛色がギコの首筋目掛けて直進し、
腰を深く落としたギコは、腰に差した鞘から、
肉厚の方刃を持つ剣を引き抜く。

光の反射を防ぐ黒刃が瞬く間に鉛色の刃を叩き落とし、
重心を前へと傾けたギコは、地面を蹴って跳躍。

滑らかな動きでコンテナへと着地したと共に身体を返して、一閃。

翻った刃は左切り上げにミルナの右腕を肩ごと切り落とさんとし、
重心移動が完璧になされた刃は大気を断ち割って振られ、
虚空を切り裂いていく。

跳躍一つで刃よりも遥か上へと行ったミルナは、
ギコの背後へと着地し、距離を取り、
振り返ったギコはミルナへと剣の切っ先を突き付ける。

既に、ミルナの両手には別のナイフが構えられていた。


17 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:47:03.93 ID:uiWys+l20
前屈姿勢を取っており、何時でも攻撃へと行動を移すことが出来る。
そこから繰り出される最速の攻撃は、突き。

だからミルナは、右に構えたナイフを順手に持ち、
切っ先をギコの喉元へと定めて、左に構えたナイフは盾の如く逆手に構えた。

周囲の流れが停滞していく。

集中力を極限にまで高めた二人は、じっと相手の挙動一つ一つを捉え、
視線を絡ませ合い、殺気をぶつけ合う。

ギコの構えた黒剣の刃が、赤熱化していき、
空間が刃の存在する所だけが歪み、刀身が青い電流を帯びて、
バチバチと音を発てて電撃が爆ぜていった。

機械剣No.10“ライジングサン”に滞留する≪カコログ粒子≫が、
ギコの人工筋肉を活性化させてゆき、柄に力を込めて掴み直す。

次いで、彼は一歩を踏み出そうとして……

(,,゚Д゚) 「フン、やめだ」

戦闘の中止を申し立てた。

空を裂く音を響かせて剣を収め、息を吐く。


20 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:48:57.76 ID:uiWys+l20
( ゚д゚ ) 「俺はいっこうに構わないのだが」

(,,゚Д゚) 「裏切り者を一匹始末するなど、取るに足らぬことなのだが、
      生憎、俺達が互いに敵とする“裏切り者”がやってきたようだからな」

ギコは言うと、腕を柵の外へと向けて人差し指を伸ばす。
その先へと視線を飛ばしたミルナは、

( ゚д゚ ) 「ほう、装甲車に戦車か。恐らくは中央基地からの援軍。
      そして、恐らくはあの中に亡国の鬼が紛れ込んでいるのだな」

(,,゚Д゚) 「あぁ、先程、体内通信でFOX大佐から連絡が入った。
      ここで貴様と遊んでいるわけにもいかんだろう」

( ゚д゚ ) 「そうだな。そうだとも。お前との楽しい時間は取っておこう。『白猫』」

(,,゚Д゚) 「とっとと行くと良い。行きかけの駄賃だ。
      奴らの数を少々減らしておいてやろう」

装甲車と戦車の一団を見つめて、ギコは甲板から地面へと飛び降りて行く。
彼の姿を見届けていたミルナは、

( ゚д゚ ) 「数は多い方が楽しいんだがな……」

ぽつり、とそう呟いた。


22 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:50:17.16 ID:uiWys+l20
******

オオカミ製の戦車の砲口が、俺を覗いていた。

車内にいる操縦兵がトリガーを引けば、
兵士達の命の盾となる堅牢なトーチカでさえも破壊する、
大量の爆薬が詰め込まれた砲弾が発射され、俺を消し飛ばすことだろう。

危険な状況だ。

すぐにこの場から退避しなければ、やられてしまう。

しかし、照準を合わせ、
トリガーを引くまでには僅かなタイムラグが存在する。

………遅すぎる。
全身を機械化して人工筋肉が装備されたこの身には、
その時間の隙間は大き過ぎた。

ましてや、機械剣No.10“ライジングサン”の、
身体能力向上の恩恵を受けた俺には、

………貴様等の動きは遅すぎる。

身を独楽の如く回転させ、戦車の懐へと潜り込んでいく。
前進を始めた頃には既に遅く、俺は砲塔へと跳躍を行って飛び乗る。


24 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:51:19.39 ID:uiWys+l20
何もかもが後手に回ったオオカミ製のそれは、
加速によって生まれる慣性力を活かして急停止をしかけ、
俺を振り落とそうとするが、

………やはり、遅い。
速度が足りない上に、判断も遅い。

既にライジングサンの赤熱化した刀身を砲塔へと突き刺し、
高熱を帯びた刃が突き立つことで、
装填されていた砲弾が誘爆を起こしていき、
戦車から火柱が上がるよりも早く俺は跳躍を行う。

鉄片が宙へと飛沫を上げる頃には、地面へと着地していた。

(,,゚Д゚) (次ッ!)

更なる獲物を求めて、廃墟となった街を見渡す。
が、そこで体内通信を介して声が飛んできた。


26 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:52:25.28 ID:uiWys+l20
<_フ;゚ー゚)フ【ちくしょう! ドクオ達が吹っ飛ばされた!!
           誰か、近くにいたら運ぶの手伝ってくれ! C-3だ! C-3にいるッ!
           メディックを待ってられるほど時間はねぇっ!! 近くにいたら……】

と、エクストの荒げた声が爆音と共に途切れる。

………C-3か。

余程切迫した状況らしいな。
衛生兵に任せておけば良いのだが、それでは間に合わないかもしれない。

仕方ない。

仕方ないだろう。放っておくわけにもいかないだろう。

奴を、ドクオを見殺しにするというのは寝覚めが悪くなる。
軍学校からの友人である男だ。奴のことはしぃも知っている。

やれやれ、と内心に呟きながら、剣を携えてC-3区域へと向かった。



28 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:54:09.49 ID:uiWys+l20
******

翌朝の休憩室で、俺達は顔を合わせた。

出撃前に残された僅かな休憩時間であり、
俺とエクストとドクオはコの字型に設置されたベンチに腰かけて、
椅子を間において向かい合う。

(,,゚Д゚) 「しかし、綺麗に治った物だな」

ドクオの顔を見て、俺はそう言った。

('A`) 「あー、俺もビックリしたよ。
    人工皮膚を爆発で吹き飛んだ皮膚の代わりに付けたらしい」

<_プー゚)フ「ホント、ビビったぜ。
         あの傷じゃあ復帰できないかと思っただけどな」

('A`) 「まあ、直撃じゃないだけマシだったよ。
    ………危うく、阿倍さんと仲良くおっ死ぬとこだったけどね」



31 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:55:39.00 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「人口皮膚、か。継ぎ接ぎのようだな」

('A`) 「ズボンと一緒にするなよ?
    近くから見たら違和感あるかもしんないけど、
    まっ、命が助かっただけめっけもんだよ」

ありがとうなギコ、とドクオは礼を述べる。

<_プー゚)フ「アンタがいなかったらヤバかったよ『白猫』。
         俺達だけじゃ、いや、他の奴らじゃ死んでたかもしんねーわ。
         俺からも礼を言うよ。サンキューな」

(,,゚Д゚) 「何、気にするな。作戦に無理があったのだ。
      お前達の小隊だけでは、あの数を相手にするには些か戦力不足だった」

('A`) 「何にせよ、お前のおかげだよ。戦友。
    VIPの頃からツケが溜まってばかりだな」

(,,゚Д゚) 「たしかお前との借りは今、7個だったか?
      じゃあこれも含めて、8個だな。KIAにならない内に返してくれよ」


34 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:57:03.91 ID:uiWys+l20
('A`) 「いや、7個だよ、VIPの頃は6個しか借りを作っていない」

(,,゚Д゚) 「ん? 俺は7個あったと思っていたんだがな」

('A`) 「お前、卒業前に俺が論文書いてやった時の借りを忘れてるだろ?」

(,,゚Д゚) 「あぁ、アレか。あれは無効だ」

('A`) 「何でだよ、アレめちゃくちゃ有効じゃねーか」

(,,゚Д゚) 「お前の字が汚くて再提出喰らったのを忘れたのか?
      危うく≪VIPPER≫になれなくなるとこだったろ。
      死に物狂いで書き直したのを俺は忘れていないぞ」

('A`) 「内容を考えたのは俺だろ? だったら借りには変わりないよ」

<_フ;゚ー゚)フ「まぁ、ドクオ。6個も7個もあまり変わりないと思うんだけどな俺は」

そう言って二人のいがみ合いとも呼べる会話に、
エクストはなだめるように割って入って行った。


36 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:58:04.60 ID:uiWys+l20

(;'A`) 「まぁ、その通りかな……」

ドクオは眉を下げて呟き、壁に掛けられた時計を見て、

('A`) 「あ、そろそろ出撃か。んじゃ、行きますかね」

<_プー゚)フ「もうそんな時間か。ビロード達の治療が終わってると良いんだけどな。
         トロくせーけど、戦力っちゃあ戦力だからな。万全だといいんだがよ」

(,,゚Д゚) 「お前等、今日から≪ノトリ谷≫へ転属だったか。
      あそこはここよりも戦力が集中していないが、増援が次々にやってくるようだぞ」

('A`) 「何、心配しなくても大丈夫さ。VIPPERの英雄ほどじゃねーけど、
    俺達も強化骨格だ。心配されるほど弱くもねーよ」

(,,゚Д゚) 「ふん、嫌味に聞こえるんだがな。落ちこぼれめ」

<_プー゚)フ「まっ、アンタにはアンタの、俺らには俺らの持ち場があるってことさ。
         お互い、死なねーようにがんばろうぜ」

('A`) 「よし、行くか」

ベンチから腰を上げるよりも早くそう言って、
ドクオとエクストは装甲車の置かれている倉庫へと向かって行き、


38 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 21:58:59.95 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「待て」

俺はそう言って呼び止めた。

('A`) 「なんだ?」

(,,゚Д゚) 「お前等、生き残ったら家に遊びに来い。
      しぃが飯を作ってくれるぞ。あいつの飯は美味い」

へっ、とエクストは笑って、

<_プー゚)フ「アンタの女房自慢に誰が付き合うかよ」

('A`) 「あぁ、全くだな」

ドクオは頷いた。

ちっ、素直じゃない奴らだ。少しムカつくな……。
何だこのウザさは。


40 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:00:26.40 ID:uiWys+l20

(,,゚Д゚) 「僻むなよ。彼女の作る飯は本当に美味いぞ。
      それにドクオ。お前はしぃと面識があるじゃないか」

<('3`)> 「べっつに~僕にはコンビニ弁当がお似合いですし~」

おどけて返すドクオに、呆れにも似た感情を覚え、
俺は溜息を吐いて、

(,,゚Д゚) 「そうかいそうかい、あばよ戦友」

(,,゚Д゚) 「………また、いずれ」

遠ざかって行くドクオ達は、一瞬だけこちらを振り返り、

<_プー゚)フ 「おう」 ('A`)

と短く応えて、敬礼を返してきた。


44 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:01:47.09 ID:uiWys+l20
******

行く。

地を蹴り、敵の許へと赴いて行く。

俺は居る。
戦場に、居る。

かつてとは違う戦場で、違う敵と争っている。

違う。

何もかもが、違う。
味方が敵となり、今、敵へと刃を向けている。

ニーソク軍の物である、戦車へと振るわんと。
敵を切り裂かん、と。

かつての戦友が属する、敵軍へと。
違う。全てが、違う。

しかし、俺だけは変わることはない。

振るう刃の許には抗いの意思があり、
恋人を一人取り残してしまっていることに、
過去の戦場と現在の戦場に、変わりは無い。

変わらない。変わらず、俺は刃を振るうのみだ。


46 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:03:03.28 ID:uiWys+l20

******

装甲車と戦車が列を作って街中を進んでいく。

人気はなく、民間人の非難はすでに済んでいるようだ。
しかし、無人、というわけではなく、
周囲からは銃声や爆音が上がっており、兵士達が交戦していた。

ニーソク国とオオカミ国の兵士が、だ。
彼等は、建築物の蔭や塹壕に隠れて、銃を撃ち、
各々の敵と戦っている。

そんな戦禍の只中を突き進んでいく戦車と装甲車。

エンジンが唸りを上げ、
砂埃を散らして真っ直ぐに北方基地を目指して進んでいく。

後ろに引かれていく戦場の光景を見ずに、ただひたすらに。
早朝の涼しい空気のおかげで車内の温度は低く、

搭乗している兵士達には快適だ。

だが、ベンチに似た横長の座席に座る顔に傷を負った、
眠たそうな眼をした兵士、ドクオの表情はいつもと変わらぬ無表情である。



48 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:04:55.55 ID:uiWys+l20
('A`) 「………」

この男は、暑かろうが寒かろうが、湿気が酷かろうが、
その無表情を崩すことはない。

何も写さない瞳で地面を見て、ただ、じっとしている。

ただそこにある、置物のように。

運転席から後部座席まで聞こえてくる、大声が上がってきた。
動揺を隠しきれない声音で、兵士達へと異常を知らせる。
が、それよりも早く金属を断ち切る異音が車外から響いた。

「戦車が………ッ! 切れた!?」

いや、と小さな声で彼は呟く。

('A`) 「“斬られた”んだ」
            
          【強化骨格】
――――自動変動モードより、任意固定モードへ変更。
      人工筋肉稼働率、80%での稼働開始―――――



50 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:05:42.36 ID:uiWys+l20
******

街中を前へと進む、六角を描いた重厚な装甲に覆われた車体が、
突然として縦に二つへと裂けていく。

遅れて、身の毛の弥立つ、金属音が木霊する。

熱の籠もる赤い飛沫を散らせ、戦車は己の身を裂かれていき、
灼熱した切断面をさらけ出して破壊されていく。
裂けた空間から飛び出してくる影が、一つある。

白いダイビングスーツのような物を着た、
黒革のコートを羽織る方刃の剣を持った男のものだ。

短髪の側頭部に備えられた機械から展開される、
バイザーで顔を覆っている為に、表情は分からない。

切り裂かれた戦車が、男の後に続き爆発する。

炎が酸素を求めて広がって行き、爆炎がドーム状に衝撃波を放つ。
それを背に、熱を孕んだ風を受けながらも男は疾走する。

装甲車と戦車の一団へと。



51 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:06:28.22 ID:uiWys+l20
すると、装甲車のハッチが開き、屋根へと登る兵士がいた。

その者は、男とは色違いの服を着ており、
肩にニーソクの国章である白馬に跨った甲冑姿の騎士の描かれた、
濃緑色の軍用コートを身に羽織っている。

彼は、あらゆるカスタマイズの施された突撃銃、
M4A1カービンの銃口を男へと向けて、鋭い視線を男飛ばす。

その姿を見た男は、バイザーから露わとなっている口元を微かに歪めて、

(,,\::::/) 「やはり貴様がいたか、ドクオ」

赤熱化した刃を構えて、装甲車の上に立つドクオへと向かっていく。

サプレッサーの取り付けられた銃口から、
圧縮空気と共に弾丸が吐き出され、男、ギコの身を貫かんとする。
が、バイザーに映る電子画面から弾を見切った彼は、
バネの如く身を縮め、放たれた銃弾を避ける。

次いで、身を低くするのに縮めた両の足を、
思いきり伸ばして地面を蹴り跳躍。

瞬きの間に宙へと浮かび上がり、正面の装甲車へと飛び乗る。



54 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:07:52.56 ID:uiWys+l20
ドクオは銃口を跳ね上げ、横に振り、
ギコへと追従させて狙いを定める。

引き金を引き、連続して放たれる弾丸が生む物は、火花だ。

空を突き進む銃弾は敵を貫くことが出来ず、
ギコの構える刃によって、斬られ往なされ散っていく。

剣を振るう彼は、そのまま一足跳びにドクオへと接近。

連射される弾丸を前に、物怖じ一つせずに進むギコ。
素早く、鉄砲玉の如く進む英雄に対し、
ドクオの銃撃は無力である。

('A`) 「チッ………」

舌打ちをし、銃身へと掛けていた左手を、
追加装着された、アンダーバレル・グレネードランチャーへと寄せて、
その引き金に指を掛け、力を込めて倒す。

擲弾が音と共に放たれ、宙に放物線を描く。

ギコへと命中する軌道だ。



56 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:08:39.38 ID:uiWys+l20
斬るわけにもいかず、往なすにもいかず、
彼は身を逸らして避け、剣を上段に構えなおして装甲車へと着地。

と、同時。

剣を唐竹に思いきり振りおろした。

足を一歩引くと、ギリギリ剣先が外れる距離となり、
ドクオの最小の動きによる回避行動となる。

熱を帯びた刃風が彼の身に降りかかるが、
彼は身じろぎ一つ、顔色一つ変えやしない。

怯えは無い。

身を引き、そのまま両の腕で構えたM4A1を連射する。

圧縮空気と弾丸を吐き出す銃口は、
しっかりとギコへと向けられており、確実に命中するはずだ。

が、それらは全て、彼の目前で火花となって散っていってしまった。


59 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:10:09.73 ID:uiWys+l20
('A`) 「――――ッ!」

ギリ、と奥歯を噛み締め、ち、と舌打ちを一つ。

弾丸を往なした刃の動きを、斬り払いの動きへと変えて、
ドクオの胴へと横一線を作り出す。

更に一歩を引こうとするが、その先には足場が無い。

もはや間合いは開けず、ギコは刃の先を腹部へと突き付け、突く。
引くことは出来ない。よって、ドクオは装甲車の屋根を下へと蹴って跳躍。

そのまま宙で身を捻り、下を見る。

刺突を放ち、腰を低く落とした前屈姿勢のギコがそこにいる。
彼は、上を見て、ドクオを視界に入れた。

M4A1の銃口が、ギコを覗いていた。
引き金が倒され、サプレッサーからは圧縮空気が吐き出され、
銃弾がギコへと殺到していく。


60 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:10:55.57 ID:uiWys+l20
すると、彼は身を前へと投げ出し、飛び上がった。
風を身に纏い、銃弾が装甲に爆ぜる金属音を背景として、
前方を行く装甲車に着地。

その時には、ドクオも既に装甲車の端に両の足を着けていた。

膝を突き、銃を構えるドクオ。

対峙するギコは刃を突き付け、

(,,゚Д゚) 「どうした? 動きが鈍いぞ、そろそろ限界か?」

赤い光を帯びたバイザーを格納し、素顔を現わす。

短く刈った髪に、鋭く、精悍な顔立ちをしたギコが、
ドクオへと挑発じみた問いをした。


62 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:11:40.20 ID:uiWys+l20
******

俺は問う。

かつての戦友の、実力のほどを。
裏切り者の身体の限界を、問う。

聞いた。そして、答えは返ってくる。

('A`) 「まだまだ俺は戦える。でも、お前は戦わなくて良い。
    ここで戦う必要はないはずだ」

答えとは、戦い自体を否定するものであった。

……俺に戦う必要が無い、だと?
疑問を感じる。この男の言葉に。

言葉は、戦い自体を否定するものではない。
ドクオは、まだまだ戦えると、言った。


65 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:13:02.24 ID:uiWys+l20
しかし、

……俺は戦う必要がない?ここで戦う必要がない?
奴は、戦いを望んでいるのだろう。

だがここではないのだと、そう言う。

お前の言う、“ここ”とは?

(,,゚Д゚) 「ならばどこで戦う? 俺の力を、どこで振るえと。
      ここ以外に、ここ以上に戦場となるべき場所は無い」

返す言葉に、ドクオはニヤリ、と笑みを見せ、

('∀`) 「お前にはしぃがいるだろ?」

(,,゚Д゚) 「しぃは待つ。俺は行く。
     彼女と住むべき国を取り戻すため、俺は行く。しぃは俺を待っている」

('∀`) 「じゃあ、早く帰ってやるんだな」

言葉を返す。

笑みを作ったまま、言葉を発さずに視線を交わす。
動きもせずに、ただ、対峙するのみ。

俺は、深く息を吸い、

ドクオは即座にM4A1の連射を行う。


67 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:14:16.40 ID:uiWys+l20
音速を超える弾丸を、通常の人間の目では負えない。
しかし、神経を機械化した俺の視神経は、はっきりと弾丸を捉えている。

機械剣No.10“ライジングサン”に滞留する、
≪カコログ粒子≫の身体能力活性化のおかげもあり、
弾丸を往なすことは容易い。

反射的に、俺は弾丸を切り払っていた。

弾雨はそれでも止まず、ドクオは連射を行いながらも跳躍を行い、
M4A1を肩にかけて武器をナイフに持ち替える。

タクティカルベストの両脇にある、
ホルスターから二つのナイフを抜き、俺へと切り掛かり、
首筋を狙ってきた刀身をライジングサンの刃の腹で受ける。

次いで、空いている刃は刺突を放つ。

爪先で前の屋根を蹴り、小回りのような動きで後ろへ下がって、
身にかかる勢いを活かして剣を横に振るう。

前の空間を貫く動きをしたドクオには、隙がある。

だが、膝を折り、低くしゃがみ込むことで、
奴は寸でのところでかわしてみせた。


69 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:15:03.50 ID:uiWys+l20
………読まれていた?

危険を感じ取り、ナイフの間合いの外へと逃れる。
が、ドクオは右手に持つナイフを手首を返し、
俺に向けて投擲した。

空を切り進み俺を貫かんとする刃は、しかし遅い。
弾丸を見切ることが可能な俺には遅すぎる。

剣で刃を弾く、と、ドクオが既に踏み込んできていた。

残った刃を眼前に突き出され、風を切り、胸を捉えていた。
振るった刃を正面に返し、ナイフの刃先を防ぐ。

軽い金属音が鳴り、重なり合った刃を振るい上げると、
ドクオは身を引いて、刀身を跳ね上げて左肩を切りつけてくる。
それをも俺は防ぎ、再び金属音。

刃を返し、首を狙った横薙ぎが、身を振るい、返される刃が胸を裂こうとし、
追撃の刺突が胸を貫かんと、剣とナイフの攻防が繰り広げられていく。

金属音と金属音が、合奏されていき、
ドクオは俺が開いた間合いを詰めようとにじり寄ってくる。


70 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:15:48.79 ID:uiWys+l20
奴の攻撃は止むことはなく、それどころか、
……ますます勢いが増していく。

攻撃、というには温く、猛攻、というに相応しいナイフの連続攻撃。

突く、突く、突く、裂く、裂く、裂く、
斬り、斬り、斬り、斬り、薙ぎ、薙ぎ、薙ぎ、振るい落とす。

頭蓋を目掛けて振るわれた刃を剣の腹で受ける。

火花が金属の残響とともに宙へと広がって行き、
ナイフにしては重い一撃であった。

しかし、

……受け切った。

その手応えに満足感にも似た感情を得て、

……取ったぞ!

刃を防ぐと同時、俺は右の膝を正面へと突き出す。
突きを放ち、前屈姿勢となったドクオの、胴へと。

驚くほど綺麗に鳩尾へと膝が食らいつき、衝撃が右足へと走って行く。



73 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:16:46.29 ID:uiWys+l20
勝利の確信を、ここで得る。
足に残る衝撃は、ドクオの体内で何倍にもなって炸裂していることであろう。

(;゚A`) 「がぁ………ッ!」

身をくの字に折り曲げて、嗚咽を唾液と共に吐き出すドクオ。

刃を頭上へと振るい上げ、そのまま腕を振るい落とし、
奴の背に刃を叩き込んでいく。

……これで、厄介な者が一人減る。

奴を斬り伏せようと、意思が働く。
しかし、振り降ろされる刃は何処か鈍い。

突如、背後から銃声と衝撃が走った。

身を返し、後ろを見る。

すると、ドクオが乗っていた装甲車が、
ハッチを開いてこちらの正面へと回っていた。

車内の兵士達が、こちらへと銃を向けている。

(,,゚Д゚) 「貴様ら―――ッ!」


75 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:17:33.70 ID:uiWys+l20
******
 _、_
( ,_ノ` ) 「おい! 急いでドクオが飛び移った装甲車の前に付けろ!
      ハッチは空けておけ!!」

装甲車の車内で、渋澤は運転席へと力強い声を投げかけていた。

「何をする気ですか!?」

運転席から、疑問の声が返り、
  _
( ゚∀゚) 「知れたことじゃねーか。
      装甲車の上でドンパチやってる奴の援護をすんのよ」

気の抜けた声でジョルジュは応える。

「な、当てられるんですか!? 走行中ですよ!?」

装甲車の車内は、狭い。
縦長、横短、といった空間だ。

車内から射撃を行うとすれば、横に並べる者は二人ほど。

だが、二人が匍匐の姿勢を取り、二人が立つことで、
同時に射撃を行える人数は四人となる。


77 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:18:25.48 ID:uiWys+l20
走行中の車内からの射撃。

移動し続ける装甲車の動きに合わせて照準をしなければならないので、
着弾させるには困難が伴う。

ましてや、向こうも走り続けるというのだから。

しかし、

川 ゚ -゚) 「ふむ、良い提案だ曹長。いいか、正面に付いたらそのまま前進し続けろ。
      速度は一定に保ち、絶対に横にずらすな」

運転席から、クールが肯定の言葉を言うのが聞こえ、

川 ゚ -゚) 「渋澤、ジョルジュ、ツン、ブーン。お前達に任せる。やれるな?」

問われた四人はただ、短く、
 _、_    _
( ,_ノ` )  ( ゚∀゚)  「了解」 (^ω^ ) ξ(゚△゚ξ

命令承服の言葉を返した。

ジョルジュは、旧式の木製狙撃銃、モシンナガンを構え、
渋澤、ブーン、ツンの三人は強化プラスチック製の突撃銃、
XM8を構えてハッチへと向かう。


78 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:19:18.25 ID:uiWys+l20
機械の駆動音が車内に響き、ハッチが展開されていき、
新鮮な空気が流れ込んで、外の景色が四人の前に広がって行く。

座席に座る他の兵士達は固唾を呑んで四人を見守る。

己の銃を握り、何時でも後退できるように身構えて。

装甲車が、加速していく。

エンジンが足元を振動させ、グングンと速度を上げていき、
やがて、ドクオが屋根の上に立つ装甲車の正面へと回った。

ドクオは、彼は今、戦っている。

走ることによって車体が帯びる風圧に耐えながら、
二人の兵士は、二体の強化骨格は戦闘を行っている。

ナイフを振るい、剣に防がれる接近戦。

間合いは、ほぼ零に近い。
その中でドクオは、鬼気迫る表情で怒涛の攻撃を浴びせ続けていた。

クール達の乗る装甲車は、彼等が戦闘を繰り広げる装甲車を、
更に加速して前へと進み距離を取る。


80 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:20:23.57 ID:uiWys+l20
彼我の距離は開き、渋澤達は車内からドクオを捉えた。
そして、ギコの背後に照準を合わせ、
ドクオに赤熱化した剣を振るおうとするギコへと発砲。

黒革のコートの背が弾け、火花が咲く。

着弾こそしたが、強化骨格の防護繊維に防がれてしまったらしい。
小銃弾の威力では、強化骨格は穿てないようだ。

ならば、――――連射して防護繊維を削って行く。

それだけだ、と言わんばかりに、彼等は無言で銃撃を続ける。
ギコは、着弾の衝撃に背後へと振りかえり、振り向きざまに剣で弾丸を弾いてみせる。

と、同時。

一足飛びに跳躍を行い、彼等の乗る装甲車に飛び移った。

着地し、そのまま剣を上段に構えて、
装甲車ごと兵士達を断ち切らんと、刃を振り落とす。


82 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:21:42.15 ID:uiWys+l20
屋根へ後数センチと迫った刃は、衝撃を受けて跳ねのけられてしまう。

(,,゚Д゚) 「なっ………!」

後ろから、発砲の音がある。

速射に優れた、拳銃の小さな発砲音だ。
そして振り向けば、こちらに飛び移ってくるドクオがいた。

空宙で銃を構えて、銃口から更なる弾丸を発射して、
ギコへと迫って行く。片手にはナイフが構えられており、
着地と同時にそれは首を狩る一閃を放った。

対するギコは、ドクオへと振り向きざまの一閃を放つ。

ガ、とも、ギ、とも聞こえる金属音が、
激突の火花と共に響いていく。

(,,゚Д゚) 「オォォ―――ッ!」

ギコが咆哮を上げ、力が加えられ、
ナイフの刃が弾かれてしまう。

その衝撃に、ドクオは身を任せてナイフを手放す。
宙に浮いたナイフに構いはせず、彼は身を崩してギコの横をすり抜ける。



85 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:23:03.38 ID:uiWys+l20
地を這う様にして移動するドクオは、

(;'A`) 「く……」

そのまま倒れてしまう。

装甲車の屋根の上に横たえ、そのままギコへと振り返る。
すると、ギコは剣の切っ先を下へと向けており、突きを放っていた。

一瞬、回避の動きを取ろうと、体は反応する。

だが、ドクオはこの一撃を避けられない。
避ければ、車内にいる仲間の誰かが、刃に貫かれるかもしれない。

瞬間を以って判断は下され、ドクオの腹を刃は突き破った。

強化骨格の防護繊維を貫いて、肉を裂いていく剣の切っ先。
しかし、その動きは止まってしまう。

(,,;゚Д゚) 「お前………ッ!?」

ギコの剣、機械剣No.10“ライジングサン”の刀身を、両手で掴み取っていた。

赤熱化した、高温の刃を掴む彼の両の手からは、
黒煙が上がり、防護繊維の焼ける異臭がする。


88 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:24:07.18 ID:uiWys+l20
それでも、ドクオは力強く刃を握って、

(#゚A゚) 「ああぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

腹に突き刺さった剣を引き抜き、ギコごと放り捨てた。

(,,;゚Д゚) 「な……っ!?」

驚きによる虚脱によって、緊張感の抜けていた彼は、
呆気なく宙を舞うこととなってしまう。

装甲車から離れていく彼は、
地面へと激突していき、大きく身をバウンドさせた。


91 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:25:12.29 ID:uiWys+l20
二度、三度と身を地に跳ねさせたギコは、
やっと持ち直し、片膝を突いて、

(,,゚Д゚) 「逃がさんぞッ!!」

刃を構えなおして、歯を剥き、疾走の動きを作ろうと足に力を込めた。
その時、彼の体内のナノマシンが、通信を受信する。

内容は、帰還を促す物であった。

命令に忠実に、ギコは赤く染まり上がった剣を鞘へと納めて、

(,,゚Д゚) 【……了解、帰還する】

遠ざかって行く装甲車を背にして、駆け抜けていく。


93 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:26:09.01 ID:uiWys+l20
******

装甲車のハッチの縁を掴み、ドクオが車内に入り込んできた。

肩にM4A1をかけ、腹に大きな切創を作り、
そこから白い血をだくだくと流している彼の顔には、汗が浮かんでいる。

(;-A-) 「ふぅ……」

目を瞑り、息を一つ吐いて、彼は横長の座席に腰を落ち着ける。

硬い壁に背をもたれさせ、身を預けた彼は、
荒い息を落ちつけていく。

すると、ジョルジュの気楽な声が投げかけられてきた。
  _
( ゚∀゚) 「ドクオ、大丈夫か?」

しかし、声とは裏腹に、言葉は彼を気遣う物である。

('A`) 「ん? あぁ。腹の傷なら大丈夫だよ」


95 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:27:05.24 ID:uiWys+l20
次いで、別の声が不審げに疑問を飛ばし、
 _、_
( ,_ノ` ) 「あの敵は、『白猫』は、お前の顔見知りか?」

('A`) 「今は敵だ」

無感動な声で、短く、渋澤の問いへと、ドクオは答えを返した。
渋澤は眉をひそめ、口元に出来た皺を歪ませる。
 _、_
( ,_ノ` ) 「俺はお前が気に食わない。
      昔の戦友相手に、昔は国の為に共に戦った戦友に銃を向けて、何故自分の敵だった国の為に戦える?」
 
渋澤の、彼の疑問は、この国へとやってきたドクオへの、
国を裏切ってこの国で戦う他国の兵士への、憤りが含まれていた。

戦友を、ニューソク国解体戦争で多く失った渋澤は、それが許せずにいた。


96 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:28:01.20 ID:uiWys+l20
 _、_
( ,_ノ` ) 「国を守るだなんて大層なことは言わない。
      だが、何故共に戦った仲間を撃てるんだ」

自分の守りたかった、戦友に銃を向けることが、許せないのだ。

自分ならば、仲間は絶対に裏切らない、と。
自分ならば、ドクオのように国を裏切り、仲間に銃を向けたりはしない、と。

そんな憤りが彼にはあるのだ。

('A`) 「俺はまだ、ニューソクの為に戦っているよ」

言われた意味が、彼には分からなかった。

しかし、言葉通りに捉えるのであれば、
ニューソクの為に仲間達を殺している、という解釈が出来る。
だが、深く捉えるのであれば、ドクオはニューソクの残党のスパイとして、戦っていると解釈できる。

後者は、不可解な言葉であるかもしれない。
スパイである、と、自白するスパイなどいるはずもないのだから。

それでも、前者も少々不可解である。
国の為に、国の為に戦う仲間達を、殺しているというのだから。

どちらにしても、ドクオは、この亡国の兵士は、ニーソクの為に戦っているわけではないという。



98 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:28:46.45 ID:uiWys+l20
彼の言葉を聞いた兵士達の間に、不穏な空気が流れていく。
その中で、じゃあ、とツンがドクオに問う。

ξ゚⊿゚)ξ 「私達にも銃を向けられるってこと?」

彼女は、切れ上がった目でドクオを見て、聞いた。
彼は無感動な瞳のまま振り向いて、やはり、短く、

('A`) 「君が敵になり、クーに銃を向けるというのなら」

と、そう返した。

ニューソクの為に戦っていると言った男が、
ニーソクの士官である素直クールに銃を向けるのならば、
銃を向けると、そう言った。

彼の意図が、ますますわからなくなってしまっていく。

運転席から、凛としたクールの声が響く。

川 ゚ -゚) 「後数分で北方基地へと到着する。各位、気を引き締め直せ」

ドクオはその声を聞き、瞼を閉じる。

壁を枕代わりに、身を預け、心を落ち着けていき、
全身の疲労感と痛みを感じながらも、意識が暗闇へと落ちていった。


100 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:29:35.15 ID:uiWys+l20
******

ドクオは濃緑色の軍服を着て、コンビニの裏に佇んでいた。
暗くなった空を見上げ、発泡酒の入ったアルミ缶を傾ける。

口の中で苦みと共に炭酸が弾けていき、飲み下していく。

隣にはギコがおり、目の前に広がる街灯の薄明りを見て、
彼もまたアルミ缶を傾けていた。

空を見たまま、ドクオは口を開き、

('A`) 「ギコ、お前ホントにVIPPERになっちまうなんて、すげぇよなー」

呆けたように言って、また、発泡酒を口へと運ぶ。

(,,゚Д゚) 「今日で何回それを言った?」

('A`) 「さあね」

問いに、いい加減な返答を寄こし、

('A`) 「何処の配属になるんだ?」

と、短く再び尋ねた。


101 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:30:16.41 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「中央基地の、強化兵士部隊だ」

('A`) 「へぇー、希望通りになったんだな。でも、何であんな実験兵器を扱うところに?
    もっと普通のとこだったらさ、すぐ出世できると思うのに」

(,,゚Д゚) 「あそこは軍の最新技術の詰まったところだ。最先端の力を存分に振るえる場所だ。
      それにあまり前線にも出ないだろうから、長生きできるだろう」

(,,゚Д゚) 「俺は明日からしぃと同棲だ。彼女のことも考えないといけない」

はっ、と笑って、ドクオは、

('A`) 「自慢にしか聞こえないな」

不貞腐れたように、そう言った。

(,,゚Д゚) 「……お前には、良い人の一人もいないのか?」

('A`) 「俺には無理だね。俺は未熟すぎる。あの……」

少し言い淀んで、一瞬間が開くが、
ドクオは言葉を続けて、

('A`) 「まぁ、顔もあんまよくないし……」


103 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:31:14.53 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「その自信の無さを克服するのが第一歩だろうな、俺もまだまだ未熟だ」

だがな、と付け加えて、

(,,゚Д゚) 「そういう所を見せ合うのも恋人ってもんだろ?
      未熟でも、ダメでも、人と関わっていかないと人は生きていけない。
      逆に言えばだ。どんなに未熟だろうが、どんなに馬鹿だろうが人は人と関われるんだ。自信を持て」

('A`) 「そんなもんかなー」

そうだ、とギコは言って、

(,,゚Д゚) 「どういうのが好みなんだ?」

えーっと……とドクオは呟いて、
空を見たまま目を瞑って、思考を始める。

やがて、瞼を開き、

(*'A`) 「素直で落ち着いててさ、黒髪のストレートで、
     背の高い、目がキリッとした感じの人が良いな。胸は大き過ぎず、小さ過ぎずさ」

少々恥ずかしそうに、ドクオは言い、



105 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:32:05.79 ID:uiWys+l20
(*'A`) 「お前はどういうのが良いんだよ」

と聞き、直後に、はっとして

(,,゚Д゚) 「俺か。俺はショートカットで丸い目をした……」

('A`) 「待て、ギコ。シィの特徴を上げるのは禁止だ。惚気るな馬鹿野郎が」

(,,゚Д-) 「お前が言えと言ったんだろうに……」

ギコのその言葉を最後に、彼等の会話はプツリ、と途切れてしまう。
お互い、それぞれ景色を見て酒を楽しむ。

夜も深まって行き、酒が無くなりかけたその頃、
不意に、ギコはそういえば、と呟いて、

(,,゚Д゚) 「お前はどこの配属になるんだ?」

('A`) 「俺はオカ基地の小隊」

ドクオは短く答える。


107 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:32:58.80 ID:uiWys+l20

(,,゚Д゚) 「オカ? 何でまたあんな田舎に?」

('A`) 「あそこは俺の故郷なんだよ」

(,,゚Д゚) 「俺は故郷に帰りたいと思わないな」

返ってきたギコの言葉に、ドクオは沈黙する。
そして、ふと、もう一度空を見てから言葉を返す。

('A`) 「あのさ、ホントに国を守りたいって思ってる?」

と、兵士として、重い問いを投げかける。が、

(,,゚Д゚) 「思っていないな」

ギコは、短い言葉で否定を返す。

(,,゚Д゚) 「それでも、しぃは守りたい」

結局惚気か……と呟いたドクオは、

('A`) 「国を守るってスケールでけーよなー」

そう言葉を繋げて、


109 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:33:39.99 ID:uiWys+l20
('A`) 「俺はさ、守りたい物って何なのか分からないんだ」

('A`) 「お前みたいに好きな人がいるわけじゃないし、
    俺はお前以外に友達がいるわけじゃない。だからさ、余計守りたい物ってのが分かんないんだ。」

(,,゚Д゚) 「では、何故兵士に?」

('A`) 「分かんね」

('A`) 「国とか文化とか人とか領土とか、そんなもんを守る為に戦うっつーけどさ、正直わかんね。
    でもさ、今のままで有りたいと思うんだ」

(,,゚Д゚) 「今?」

('A`) 「そう、今。何かあるかもしれない今は譲れないし、今この場所にいたいんだ」

だから、と付け加えて、

('A`) 「俺は今のままである為に戦いたいんだ」

ドクオの言葉に、
ほう、と感嘆ともつかない声を漏らしたギコは、口を開き、

(,,゚Д゚) 「俺もそうかもしれないな」


113 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/19(日) 22:46:43.60 ID:4SlLe1UZP
どうした?


114 名前:>>113ちょっとおさるさんが…… ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:47:40.57 ID:uiWys+l20
(,,゚Д゚) 「俺は彼女との“今”を守りたいからな」

('A`) 「お前は結局惚気か」

('A`) 「でも、案外国を守りたいって気持ちって、
    そういうのと変わらないのかもしれないね」

(,,゚Д゚) 「なら、俺達は戦友だな」

('∀`) 「戦友……か。あぁ、そうだろうな。戦友」

ドクオは笑みを浮かべて頷き、

(,,゚ー゚) 「おう、戦友」

満足気な微笑を、ギコは彼に返した。


119 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:50:08.89 ID:uiWys+l20
******

北方基地に辿り着いた頃に、ドクオは目を覚ました。

抜けきらない疲労感と、揺り動かされた過去の記憶に、
彼は溜息を吐いて装甲車から降りていく。

川 ゚ -゚) 「ドクオ、ついて来い。モナー中将の元に行くぞ」

既に降車していたク-ルはドクオに言う。
彼女の視線は彼の顔ではなく、白い血が固まりつつある腹部の傷に当てられていた。
しかし、彼女はそれでも付いて来いと言う。

機械であるドクオは、この程度では死なないことを理解しているようだ。

だからこそ、何も言わずに、それには触れずに話しを進めていた。

('A`) 「了解」

背を向けて歩き始めるクールに、ドクオは応え、
何時でも彼女を守れるように、傍を歩いていく。

格納庫を抜けていき、細い道を歩き続ける。

アスファルトの床の上で、クールの軍靴が、
規律のとれた、コツ、コツ、という小気味の良い音を奏でていく。
が、ドクオの強化骨格スーツに覆われた足は、ほぼ無音である。



121 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:52:58.48 ID:uiWys+l20
足音が発つことは無い。

音もなく、揺れる黒の長髪の傍らを歩き続けていると、
司令室へと辿り着いた。

ドアを開き、中へとはいると、様々な機械が置かれており、
巨大な画面が幾つも部屋中に貼り付けられていた。

機械の前に座り、ヘッドセットを被って通信を行っている者や、
レーダーの管理を行っている者が大勢いる。
その人々の中で、一人の軍服を着た中年男がこちらへと近づいてきた。

( ´∀`) 「よく来てくれたモナ。遠路はるばるお疲れ様」

目尻を垂らし、口元に張り付いたような笑みを浮かべる彼は、モナーだ。
労いの言葉をかける彼は、クールが口を開く前に、

( ´∀`) 「戦闘は沈静化しつつあるみたいだモナ。今日はこれでお終わり。
        君達はここまでやってきた疲れを癒してほしいモナ」

川 ゚ -゚) 「御配慮頂き、ありがとうございます」

( ´∀`) 「それでも、何時でも出撃出来るように備えておくモナ」



124 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:53:46.12 ID:uiWys+l20
川 ゚ -゚) 「了解致しました。では、隊員達に伝えてまいります。
      それでは、失礼いたします」

と、クールが彼に敬礼をして、背を向けて歩いていくと、

( ´∀`) 「え~、もう行っちゃうモナ? もうちょっとお喋りしたいモナー」

川 ゚ -゚) 「………」

(;'A`) 「………」

ドクオとクールは、一瞬顔を見合わせ、
同じ感情を共有した。

――――なにこいつうざい………。

( ´∀`) 「君はスイーツ(笑)を……」

モナーが言葉を言い掛けた時、

      「通信です! オオカミの、デウス・エクス・マキーナ師団、
       杉浦ロマネスクからです!!」


127 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:55:35.73 ID:uiWys+l20
川 ゚ -゚) ('A`)「!!」(´∀` )

その場にいる全員が、通信兵の言葉に反応した。
身に緊の一字を走らせて、正面にある巨大な画面へと視線を集めていく。
彼等の動きに、僅かに遅れて、傷だらけの顔をした初老の黒の軍服の姿が映り出す。

口元に動きを作り、言葉を生んでいく彼は、

( ФωФ) 「デウス・エクス・マキーナ師団。師団長、杉浦ロマネスクである。
        ニーソク軍北方基地の諸君よ。聞こえているかね?」

ロマネスクであった。

( ´∀`) 「聞こえているモナよ。杉浦ロマネスク」

( ФωФ) 「では、話をしようじゃないかね。
        貴方がこの基地の司令官か? 茂名モナーであるか?」

( ´∀`) 「そうモナ」

( ФωФ) 「お初にお目にかかるモナー中将。我輩はあなた方を滅ぼさなければならない。
        滅ぼすにあたり、あなた方には問わねばならない事があるのだ……」

ロマネスクは、そこで間を空けて、息を飲み込む。
こちらの様子を窺ってから、口を開け、


128 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:56:23.54 ID:uiWys+l20
( ФωФ) 「あなた方は、ニューソク人達を滅ぼしたことを正しいと、正しかった、と。
        彼等を見て言いきれるのかね? 亡き国を思い、亡き者を思う者に、言えるのかね?」

( ФωФ) 「そして、未だニューソク人達を滅ぼし続けることに、正しさはあるのかね?」

( ФωФ) 「仲間を裏切り、その仲間を殺し続けることを、正しいと言えるのかね。“亡国の鬼”よ」

(#'A`) 「………!」

渾名を呼ばれ、ドクオは、ロマネスクへと浴びせる視線を強くする。

( ФωФ) 「あの国は間違えていたと、言い切れるのかね君達は」

( ФωФ) 「我輩は、あの国こそが正しきを貫いていたと、そう思うのだよ」

( ФωФ) 「世界とは争いの下に回っている。人とは平和の下に成り立っている。
        秩序なき世界に人は人にあらず、乱れの無い世界に革新は起きぬのだ」

すう、とロマネスクは息を吸い込み、
周囲の者達は画面ごしにその姿を見つめる。

( ФωФ) 「世界は血のたぎる、血潮湧く戦場に、戦争に、闘争に満ちて溢れて、
         止まることを知らずに堰を切った濁流のごとく押し寄せて、
        感情の渦を飲み込んで、呑んで取り込み肥え太る」



131 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:57:23.97 ID:uiWys+l20
( ФωФ) 「そうして膨らみに膨らんだ戦場を、掌握し、支配し、
        コントロールを可能とした一大国を、世界は敵とし、人々は敵とし、我々が滅ぼした」

( ФωФ) 「五大国は世界の基幹であり、世界の警察であり、世界の暴君であり、
        世界のバランサーであったニューソクを滅ぼした。自由を謳い罪を叫び、
        憎しみの絶叫を上げて。何も知らずに、何も知ろうとせずに、
        ニューソクは世界の的であり世界の規範であったとも知らずに!」

否!!と声が張り上げられ、

( ФωФ) 「知らぬふりをして! 己の利権の為! 利益の為! あの強国を打ち倒す為!
        五大国の存亡を賭け金として差し出して博打を打った!!」

( ФωФ) 「≪国家総合案内所≫。ただ、それだけを壊滅させる為だけにっ!!
        流血を生み! 死体の山を築きあげ! 兵を殺し! 民を殺し!
        人を! ニューソク人を! 人々を! 人々を殺し尽くし!
        絶叫の響く地獄を作り上げ、ニューソクを滅ぼし尽くした!! 」

( ФωФ) 「否、否! 否!! 断じてしまおう! 我々は善などなしていないのだと!」

( ФωФ) 「我々は、五大国連合は独善を掲げて世界を破壊したに過ぎない!!
         我々は、我等が国は世界の秩序を滅ぼした」


133 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:58:04.90 ID:uiWys+l20
( ФωФ) 「もはやこの世界に、戦無き昼の世界に平和など無く、
        安寧は無く、また秩序も無い。後に残るは錆びの如く侵食する腐敗のみ!」

( ФωФ) 「我々は、我がオオカミは、この杉浦ロマネスクは為し代わろうと言うのだ!」

( ФωФ) 「世界の標に! あのニューソク国に!」

では、と言葉が続き、

( ФωФ) 「では! 始めようか、ニーソク国解体戦争を!!」

( ФωФ) 「全力を用いて抵抗するがいい! 抗うが良い! 抗争の意志を見せてみろ!
        世界には未だ暴君の残滓が漂い! 未だ闘争を! 戦争を! 殺し合いを! 戦いを求めている!!」


135 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/19(日) 22:58:50.46 ID:uiWys+l20
( ФωФ) 「オオカミは、我輩はそれを叶えてやろうと言うのだ!!」

ロマネスクは、ドクオへと視線を浴びせて、

( ФωФ) 「亡国の鬼よ、裏切り者よ、我輩の眉間を狙いに来ると良い。
        我輩は、我々は、抗う諸君らを全力で滅ぼしてくれよう」

告げると、画面が黒く染まり、ロマネスクは消えていった。
それを見て、不敵な笑みを浮かべる者がいる。

( ´∀`) 「嬉しい宣戦布告だモナ。テロリスト君」

皺の増えた口元を歪ませて、笑みを作るモナーの胸の奥には、
ふつふつと戦意が込み上げているかのようであった。


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  1. 2011/10/06(木) 13:28:02|
  2. 自作品まとめ
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