ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 第9話



2 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:41:27.97 ID:h9HbaRtC0


    ('A`) ドクオは亡国の兵士のようです



        第9話 ローンウルフ




4 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:42:23.74 ID:h9HbaRtC0
青空には太陽が輝き、涼やかな風が吹いている。

それは、ニーソク軍北方基地の前に作られた、
バリケードに隠れる兵士達に火薬と油の臭いを運んでいた。

双眼鏡を覗き、土嚢の後ろに隠れた兵士は言う。

「来るぞ。迎撃用意」

彼の視界には、双眼鏡越しに、
オオカミ軍のデウス・エクス・マキーナ師団の戦車隊が映っていた。

その中には、装甲車なども紛れており、
全てに機関銃が設けられている。

射手は照準を既に合わせ始めていて、こちらを覗く。

兵士が上げた声に応じて、バリケードの脇に設置された機関銃を別の兵士は構え、
また、基地の敷地内にいる兵士が擲弾筒の発射準備を行い、
戦車が何時でも出撃出来るようにとエンジンを鳴らしていた。

放棄されたビル群の中には、ニーソク軍側のスナイパーが潜み、
敵歩兵や機関銃の射手を狙い撃たんと、待ち構えている。


5 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:43:43.73 ID:h9HbaRtC0

迎え撃つ準備は万全であり、進み撃つ準備は万端である。

北方基地の兵士達の中には、同じくニーソクの所属である、
素直中隊の隊員達が混じっていた。

川 ゚ -゚) 「………」

中隊長、素直クールは基地から戦場を見据え、
戦闘の開始を、じっと待っている。

火蓋が切られ、命令が下されるのを、じっと。

無線が開く。

電波が告げる声はモナーの物であり、
耳に入ってくる言葉は、

( ´∀`) 【各位、状況を開始せよ】

戦闘開始の合図であった。

命令が下されるが早いか、空が震えていく。

擲弾が、機銃弾が、小銃弾が、砲弾が、弾頭が、
ほぼ同時に放たれていくことで生まれる、轟だ。


7 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:45:16.18 ID:h9HbaRtC0
敵戦車隊は僅かに遅れて砲弾を放ち、機銃を放ち、
基地へと攻め入って行こうと押していく。

銃弾の雨と、砲弾のあられが激突し合う。
その直後、衝撃が互いに走り、火の手が上がる。

戦車の堅牢な装甲には火花が弾け、バリケードを吹き飛ばし、
機銃座に着く者の頭に赤点が穿たれ、土嚢へと機銃弾が抉りこんでいく。
基地内から砲声が響き、鳥の鳴き声のような落下音が戦場の喧噪に紛れ、
戦車に衝突し、装甲がたわんでいくと共に爆ぜて飛ぶ。

オオカミの戦車隊はどんどんとその数を減らしていき、
あっという間に壊滅してしまう。

しかし、それは第一陣の話であり、第二陣が遅れてやってくる。

射程に入り切る前に、ニーソクの兵士達は仕留めようと、
擲弾筒の照準を合わせ、ロケットランチャーを構え、放つ。

が、先ほどの第一陣の装甲車が下ろした、オオカミの兵士達が、
ロケットランチャーを構えた兵士達を無力化した。


8 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:46:34.51 ID:h9HbaRtC0
擲弾だけでは排除しきれず、残った戦車が射程に入った塹壕を狙う。

砲声が響きわたり、空を切って進む弾頭は、
バリケードごと兵士達を吹き飛ばした。

狙撃手や歩兵達は敵兵士の排除へと回り、
戦車に注がれる火線は薄くなってしまう。

しかし、次いで放たれる擲弾のあられは見事に戦車を撃破してみせた。

火柱が上がり、戦車の破片が宙を舞っていく。

黒煙が空を覆い、それが晴れていくと、
また、新しい戦車隊が現れてきた。


9 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:47:25.36 ID:h9HbaRtC0
******

川 ゚ -゚) 「あの戦艦の、どこにこれだけの数を納めていたというんだ」

基地の敷地内に作られたバリケードに隠れ、
双眼鏡で戦車隊を覗いて呟いたのは、クールだ。

川 ゚ -゚) 「前線に居る部隊は何をしている」

苛立ちの籠もる問いを、彼は通信兵へとする。

「それが、苦戦を強いられているようです。
 援軍が送られたそうですが、状況が好転するかどうかは……」

苦い表情で言う兵士に、クールは一瞥をして、


10 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:48:51.61 ID:h9HbaRtC0

川 ゚ -゚) 「進撃するようにモナー中将に連絡しろ。
      敵は小勢だ。勢いがあるのは今だけだ。
      少し押し返してやれば、敵に反撃する余力は残っていないはずだと」

     「了解」

川 ゚ -゚) 「なに、今日で終わるさ。この戦いは今日ここで終えねばならない。
      これ以上、こちら側に無駄な損害は出させんさ。
      敵の攻勢は去勢にしか過ぎん。水が差せば崩れて落ちる砂上の楼閣だ」

言って、彼女は傍に控える自分の部下を見る。

川 ゚ -゚) 「ドクオ。頼むぞ」


13 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:50:00.64 ID:h9HbaRtC0
******

('A`) 「……了解」

了解と、そう応えたドクオの声はいつも通りの物だ。

いつも通りの無表情に、感情の籠もらない声音。
私は変わらぬ彼に安堵を得るが、

……何かが違う。
と、違和感を感じた。

……どこが違うんだ?
そう自分の違和感に疑問を抱き、もう一度ドクオを見る。

肩に国章である騎馬に跨った甲冑姿の騎士が描かれた、
濃緑色の軍用コートを羽織り、黒い強化骨格に身を包む、
シャキンが新調した籠手と具足を装備した、ドクオ。

胸には防弾ベストを付けて、両脇にホルスターが備えられ、
左右にそれぞれハンドガンとナイフが収められている。


14 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:50:51.14 ID:h9HbaRtC0
……違う。

見るべきところは、そこでは無い。
私は、視線を上に持って行き、彼の顔を見直す。

……目!

眼だ。

何時も通りの垂れ下がった瞳が、普段よりも伏せられているようだ。
それが指し示す事態は、

……何だ?

わからない。

だが、ドクオに何か異常が起きているのだと、察することが出来た。
身体の調子が悪いのかもしれない。心が乱れているのかもしれない。
そこから私が想像して、頭の中に浮かび上がった言葉は、危険、という単語だ。

悪い予感がする。

良い結果が得られない、そんな気がする。


16 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:51:54.20 ID:h9HbaRtC0

川 ゚ -゚) 「進撃せよ。敵軍の中央を突破し、敵の戦列を突き崩し、
      敵の囲みを突き穿ち、敵の本隊へと突き進んでいけ」

しかし、気持ちとは裏腹に、口は次の命令を下した。

川 ゚ -゚) 「進撃せよ。進撃せよ! 戦車の車列を崩壊させ、兵士の隊列を崩落させよ。
      進め! 前へと進め! 前進せよ! 敵が幾千幾万ありとも奴らの攻勢を崩してやれ!!」

そして、と言葉を続け、

川 ゚ -゚) 「この戦争を終わらせて来い。ニューソク国解体戦争を、真の意味で終わらせて来い。
      正誤の判断に囚われ今亡き物を見る馬鹿共のその横っ面を、ぶん殴って来い」

川 ゚ -゚) 「私は命令を下したぞ! 理解したのならば応えよ!!」

……行かせてはならない。
そう頭の中に警鐘が響くが、

……行かせてやらなければならない。
とも思う自分がいる。

やらなければならない、果たさなければならない義務があることを、
私は知っているのだから、当然の迷いである。


17 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:52:41.17 ID:h9HbaRtC0
仲間の安全を祈る自分と、
仲間の義務が果たされることを祈る自分が、
それぞれ存在するのは当然のことだ。

……大切な仲間なのだから。

だから、

行け。行って来い。
行って、自分の想いを果たして来い。

新たな戦いを決意した、あの時の大切な思いを死力を尽くして果たして来い。

('A`) 「了解。これより、デウス・エクス・マキーナへと突撃を行い、
    敵司令、杉浦ロマネスクの抹殺を開始する」

応え、愛銃であるM4A1カービンを携えて、
敵へと向かっていくドクオの背に、私は願いを乗せた。


行け。一人のニューソク人として、行け。
お前の戦争を、行って終わらせて来い。

―――――戦友よ。


19 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:53:37.96 ID:h9HbaRtC0
******

スコープの十字線越しに、俺は戦場を見る。

木製のボルトアクションライフル、モシンナガンを構え、
路頭に停車した装甲車から降りてくる敵兵士に、
照準を定め、引き金を倒す。

展開したハッチから飛び出した敵は、
その勢いのままに地面へと倒れていった。

遅れて、俺の耳には銃声が残る。

長く延びていく、モシンナガンの銃声だ。

ξ⊆⊿⊇)ξ 「ヘッドショットヒット」

スポッター
観測手の役割を担うツンが、俺の狙撃結果を淡々と告げる。



21 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:54:49.75 ID:h9HbaRtC0
手動で薬莢を排出するタイプの狙撃銃なので、
自らの手で弾を排出し、次弾を装填しなければならない。

その動作が、敵の多い現状では酷く面倒だ。
  _
( ゚∀-) 「ちっ、めんでーなチキショい! ツン、アレ持ってきてたろ?
       こっちに寄こしてくれ! リロードがめんどい!!」

ξ#゚⊿゚)ξ 「アンタねぇ! こだわりかなんか知らないけど、
        そんな古臭い銃使うのやめなさいよ!」

双眼鏡を足元に捨て、ツンは怒鳴りながらもアレを用意する。
  _
( ゚∀゚) 「これにはこれの良いところがあんだよ!」

ケースから、巨大な狙撃銃を取り出し、
ツンが少し重たそうに両手で持って、俺に差し出してくる。
  _
( ゚∀゚) 「へっへ、やっぱ、モシンも良いけど新しいのも良いね~」

掴み、長大なT字バレルを持った、
バイポッドの取り付けられた狙撃銃。


24 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:56:10.87 ID:h9HbaRtC0

アンチマテリアルライフル
対物狙撃銃、バレットM82。

装填数10+1発に射程距離は2000m。

匍匐姿勢のまま俺はバイポッドを地面に立てて、
M82を構えてスコープを覗く。
  _
( ゚∀-) 「BANG!」

神経を研ぎ澄まし、視線の先に居る敵兵士を撃った。

12mmを超える弾頭は、風ごと胴を撃ち抜いてみせ、
火薬が燃焼することによって生まれるパワーは、
途轍もない衝撃を生み出して人間の身体を吹き飛ばす。

……痺れるね~。この威力。

敵は建物の蔭に隠れるが、


26 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:57:22.31 ID:h9HbaRtC0
……無駄だぜ。

壁の端へと照準し、そこを撃ち抜く。
亀裂が走り、風穴が穿たれ、コンクリートが飛沫を上げる。

粉塵が辺りを包みこみ、
隠れた筈の兵士が倒れて壁の端からはみ出した。

一発、一発、更に一発と、壁越しに弾丸を撃ち込んでいく。

確実に敵を排除し、ツンが俺の狙撃の結果を言葉にする。
  _
( ゚∀゚) 「リロード」

マガジンを引き抜き、弾薬の詰まった新しい別のマガジンを詰めこむ。

ξ゚⊿゚)ξ 「ん。クー大尉から通信よ」

頭に付けていたヘッドセットから、
大尉からの命令を聞いたようで、ツンは命令の言葉を告げる。

ξ゚⊿゚)ξ 「ドクオが移動するわ。援護しに行くわよ」
  _
( ゚∀゚) 「了解だ」

短く答え、俺達は移動を開始する。
……そろそろ、ここに留まるのも危険だしな。


27 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:58:17.82 ID:h9HbaRtC0
******

濃緑色のコートを羽織った、黒の強化骨格の男が、
突撃銃、M4A1を構えて進んでいく。

地面を蹴り飛ばし、先へ先へと走って行く。

己が敵へと向けてひたすらに。

停車している装甲車を彼は視界に収める。
一歩を目前に踏み込み、力を込め、踏みしめ、
足をくの字に折って伸ばしていく。

バネの如く。

装甲車の裏に飛びこんでいき、隠れた兵士達の背後に回る。

着地し、前傾姿勢をとって、
片腕を伸ばして銃口を突き付ける。

五名。

フルオートのまま、五人へ向けて一発ずつ弾丸を放ち、
彼等は頭蓋に弾丸を撃ち込まれ、息絶えていく。


29 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 21:59:25.08 ID:h9HbaRtC0
('A`) 「おぉ……ッ!」

強化骨格の男、ドクオは電気が走ったかのような素早さで振りかえる。

装甲車の蔭に隠れた敵達が、
どっと湧き出て、ドクオへと銃口を向ける、

数多くの銃口が彼を覗くが、対するドクオも、
既に彼等へと銃を向けている。

いくら強化骨格の、人工筋肉のパワーアシストを得ていようとも、
無数の銃口よりも素早く引き金を引き、
それらを殲滅することは出来ないだろう。

だからドクオは、この状況を打破する為、

('∀`) 「………」

ニヤ、と笑い、M4A1に追加されている、
アンダーバレルグレネードランチャーの引き金に、指を掛ける。

その砲口は装甲車を向く。否、さらにその下へと。


30 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:00:20.03 ID:h9HbaRtC0
引き金を引く。

すると、手榴弾はそこへと潜り込んでいき、
地面に激突して炎を巻き上げた。

爆炎が装甲車の固い車体を飲み込んでいくが、
攻撃されることを前提とした、堅牢な装甲を持つ装甲車には、
そんな攻撃だけでは破壊するには至らない。

が、それは装甲の話だ。

底にある、燃料の入ったタンクなどは別だ。

……弾丸は効かないだろうが、グレネードはどうかな!

ドクオは好奇心にも似た感情を込めて、放った。

装甲車の周囲にいた兵士達は、
爆風の衝撃と炎に身を呑まれて吹き飛ばされていった。

手際よくリロードを行い、更に先へと進むドクオ。

デウス・エクス・マキーナの兵士達は、戦車の車列は、
北方基地へと進むのに対し、ドクオは逆行する。
互いに進む反対方向である彼等は、ぶつかり合う。

視界の先に、戦車隊をドクオは捉えた。

キャタピラを地面に食いこませて進む戦車は、高速で地を走る鉄塊だ。
その正面に出れば、無事では済むはずもない。


33 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:01:13.34 ID:h9HbaRtC0
しかし、ドクオは迷わずに前へと進む。

跳躍し、砲塔に掴まり、戦車の車体に取りつく。

加速による風圧を身に受けながらも、
ドクオは片手で腰のホルスターからスティレットを抜き、
操縦席があるはずの装甲へと向けて弾丸を叩き込む。

砲声にも似た銃声が、空へと突き抜けていく。
戦車の複合装甲には風穴が空き、
遅れて、金切り音が響き渡った。

続けて、ドクオは残る弾丸を全て吐き出して、
車内の兵士を全て無力化した。


31 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/26(日) 22:00:33.46 ID:kZaN88CMO
M203かしら?


35 名前: ◆K8iifs2jk6 [>>31Yes]:2009/07/26(日) 22:02:45.12 ID:h9HbaRtC0
シリンダーを外し、空になった薬莢を排出。

更にクイックローダーをシリンダーに接続し、
瞬時に弾薬を装填する。

現在取りついている戦車の、
背後の戦車の機銃手が、こちらを照準している。
銃口がこちらを覗いており、弾丸が吐き出されていく。

遅れて、ドクオはスティレットを向けた。

左肩に弾丸が食らいつき、防護繊維を一発が撃ち抜き、
もう一発が火花とともに弾ける。
引き金を引き、スティレットから弾丸を放つと共に跳躍。

機関銃の射手は上半身を吹き飛ばされてしまい、
ドクオは砲塔に取り付いた。

左肩を穿たれたドクオは、左に傾きがちに銃を装甲に突きつけて、放った。
もう一度、ドクオは戦車の乗員を全て始末し、
戦車を足場にして跳躍。彼は、更に先へと進んでいく。

……楽しいな。


36 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:03:45.52 ID:h9HbaRtC0
******

( ゚д゚ ) 「ハッハッハッ!」

面白い。

( ゚д゚ ) 「ハハハハハハハハハ!!」

これほどまでに練り上げたか。

これほどまでに鍛え抜かれたか。

これほどまでに強き者がいるのか。

英雄に、『白猫』にも劣らぬほどの強さを持つ兵士。
無名であったにもかかわらず、そこまでの強さを持つ兵士。

( ゚д゚ ) 「楽しいなあッ! いいなッ! いいじゃねーかッ!!」

まだまだこの世界には強者がいるようだ。

あの男のような、ドクオのような兵士がまだこの世にいるのだ。


37 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:05:01.89 ID:h9HbaRtC0
( ゚д゚ ) 「世の中まだまだ捨てたもんじゃねーな」

楽しめそうだ。

見ているだけでこれほどまでにたぎるのだ。
戦えば、どれほどまでに面白いのであろうか。

奴を殺した時に訪れる達成感は、俺をどれほど満足させてくれるのだろうか。
戦い、競い、追い詰め、止めを刺した時、それは訪れる。

だが、俺は未だに満たされない。

解体戦争でも満たされることは無かった。
殺した時に訪れる快感は、俺を一瞬だけ満たすが、
過ぎ去ればすぐに消えて失せていく。

……手に入れたい。

奴を殺せば、それが手に入るかもしれない。


39 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:06:22.70 ID:h9HbaRtC0
あの亡国の鬼を倒せば、俺の全力を以って倒したその時、
真に満たされるのかもしれない。

奴は、そんな期待が出来る兵士だ。

……早く来いよ。

早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く!

( ゚д゚ ) 「来たか」

見えた。

奴の姿が目に映った。

胸のホルスターからナイフを一つ抜く。
小振りな、取り回しやすいナイフだ。

鉛色の刃を口へと運び、舌をのばして舐めていく。

逆手に持ったそれを舐めると、俺は手首を返してそれを放った。


41 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:07:21.64 ID:h9HbaRtC0
******

鉛色の刃が、目の前から飛んできた。

('A`) 「―――ッ!」

反射的に、M4A1で飛来物を弾く。
銃から腕に振動が伝導していき、硬い金属音が鳴る。

視界をM4A1が遮った、ほんの一瞬。

( ゚д゚ ) 「シャアアアアアアアアアアッ!!」

頭上に強化骨格を着た男が、
ナイフを振りかぶって飛びかかって来ていた。

天へと向けて大きくかざされたナイフが、
上半身を勢いよく傾けることで振るわれる。
凄まじい速度を以って迫る刃は、俺の額を捉えていた。

両手に構えていたM4A1をそのまま頭上へと持って行き、
腰を深く落として刃を防ぐ。


42 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:08:17.67 ID:h9HbaRtC0
が、両手に籠もった力が、左右から正面へと抜けていった。

(;゚A`) 「なッ!?」

ニューソク解体戦争当時からの愛銃である、
M4A1が、真っ二つに裂けてしまったのだ。

悲しみ、ではなく、驚きが先にきた。

しかし、行動を停止するわけにもいかずに、
俺は両の手に残ったM4A1であった物を、
手首の力を使って放り捨てる。

そして、地面を後方へと蹴って間合いを開く。

防弾ベストのホルスターから、
ハンドガンを二丁引き抜いて敵へと向ける。

強化骨格を着た男は、地面を這うような低い姿勢で、
恐れる素振りすら見せずにこちらへと疾走し、
俺は二丁のハンドガンを連射していく。


43 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:10:27.67 ID:h9HbaRtC0
弾丸が二丁分連射されるが、
敵は、瞬きの間に懐に入り込んできた。

右からの切り上げで迫る刃を、ハンドガンを交差させることで防ぐ。

挟み込んだ刃をそのまま返して、
体重を前方へと傾けて右足を伸ばす。

その動きは、蹴りとなった。

強化骨格の防護繊維に、戦車にも扱われる複合装甲を用いた、
具足の足が食らいついていく。強固な具足は、
強化骨格のパワーアシストによって強烈な衝撃を敵へと与える。

防護繊維が吸収しきれぬ程の、衝撃を。

( ;゚д゚ ) 「がぁっ!!」

嗚咽と共に唾液が吐き出され、
敵は身をくの字に折っていく。

……ここで仕留める。

その一念で、俺は追撃の動きを作る。

交差させて防御に回したハンドガンを、
片手で水平に構え、奴の頭に突きつけて引き金を引いた。


45 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:12:46.09 ID:h9HbaRtC0
瞬間。

奴は身を捻って避けてみせた。
しかし、既に遅く、左目が弾丸によって潰され、
黒の血飛沫が噴き上がった。

重傷を負い、敵は身に動きを作る。

戦線離脱の為の、後退の動き。では無い。

(メ"д゚ ) 「ハッハッハッハハハハハ!!」

こちらへと攻め入ってくる、敵を倒さんとする、前進の動きだ。

(;゚A`) 「………ッ!?」

思わぬ行動に、挙動が遅れてしまった。
咄嗟に両の手の銃をしまい、返す手首の動きでナイフを抜く。
バックステップで距離を稼ぎ、両のナイフで防御行動に移る。



47 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:14:11.04 ID:h9HbaRtC0
腰を深く落として、敵を迎え入れる体勢。

奴は、俺に刺突を放ち、それを防ぐ。
刃と刃が触れ合い、振動し、金属音が耳朶を打つ。

飛び上がり、俺の頭上の高度までに浮き上がった奴は、
肩を足場にして蹴り、刺突に使ったナイフを放ってくる。
軌道を見切り、首を逸らすと右肩に刃が突き立った。

(;゚A`) 「ぐっ……おぉ……ッ!」

力の籠もった吐息をし、上半身を持ち上げて奴を捉える。

(メ"д゚ ) 「シイイイイイイイイッ!!」

身体中に取り付けたホルスターの内、二つに手を掛け、
抜くと同時に投擲し、次いで、素早く他のホルスターに手を伸ばし、
目にも留まらぬ速さで全てのナイフが放たれた。

群をなして迫る鉛色の刃。


48 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:15:44.91 ID:h9HbaRtC0

(#゚A`) 「オオオォオォォォォォッ!」

咆哮を上げる。

逃げようとする本能に打ち克つ為、声を張り上げていく。
両の手のナイフを構えて、迎撃を行う。

目と鼻の先に迫るナイフを、弾く。

左胸へと迫る刃を、往なす。

頭上から迫る切っ先を、防ぐ。

全てを防ぎ切ることは、どう考えても不可能だ。
よって、急所に命中するナイフだけを狙って防ぐ。

金属音が連続して鳴り、何羽もの鳥達の鳴き声のように響く。

雨の如く降り注ぐ刃の群は、
俺と地面に突き刺さり、身体からは白い血液が滴つ。



52 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:16:57.08 ID:h9HbaRtC0

だが、

……まだ、やれる。

余裕だ。

まだまだ余裕だよ。

行く。

走る。

身体に突き立った刃を無視して、抜けていく。
一陣の風となって、俊敏な動きで、

(メ"д゚ ) 「ハハハハハハハハハハハ」

奴の、落下点へと進んでいく。

跳躍し、宙へと舞い上がり、食らいついていく。
上昇の勢いを刺突の力へと還元していき、
敵の左胸へと放っていく。

上空では回避行動は行えない。
だが、身を反ることによって奴は避けた。


54 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:17:45.25 ID:h9HbaRtC0
俺は、第二の刃を振るう。
それは奴の回避行動とほぼ同時だ。

一閃が強化骨格を纏う身を切り裂いた。

(メ"д゚ ) 「アッハッハッハッハ!!」

それでも奴は笑みを絶やさず、それどころか更に笑みを強くする。

俺へと向かって、落下してきた。
覆い被さり、俺の両肩を押さえつけて地面へと落ちる。

……しまった!

奴は俺に馬乗りになって、体に突き刺さったナイフを抜き、
大きく振りかぶって切っ先を喉元へと向ける。

口の端を大きく裂いて、凶悪な笑みを浮かべる奴は、
舌舐めずりをして俺を見た。

押さえつけていた手が退けられたことで、
自由になった片腕のナイフを、奴の脇に叩き込んだ。
肉を貫いた感触を、確かに手に得た。


56 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:18:56.02 ID:h9HbaRtC0
だが、奴は苦しみもせずに、

(メ"∀゚ ) 「ハハッ!」

理性が消し飛んだような、
知性を失ったような、人として外れてはいけない、
何かから外れてしまったような狂笑を浮かべていた。

ぬらり、と鉛色に輝き、白濁の血液に塗れた刃の、
切っ先を俺に向けて振り下ろす。

力強い振り。

ただ、がむしゃらに振られる一撃。



57 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:19:40.55 ID:h9HbaRtC0
風を切り進む刃が俺の額に突き立っていく。
その寸前で、奴は衝撃を受けて身を仰け反らせた。

(;゚A`) 「――――ッ!?」

強化骨格の左胸に、風穴が出来ていた。
それに僅かに遅れて、銃声が響く。

力無く、だらりと敵は両腕を下ろし、
狂った笑みのままで、

(メ"∀゚ ) 「たの……しい…だろ?」

言い残すと、奴は横たわって行った。

立ち上がって奴を見下ろすと、その顔には満面が浮かんでいた。


60 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/07/26(日) 22:21:27.15 ID:h9HbaRtC0
******

ξ⊆⊿⊇)ξ 「ハートショットヒット」

ツンの声が、淡々と結果を告げる。
  _
( ゚∀-) 「………」

俺は敵を倒した。

淡々と、その事実を受け入れる。

スコープ越しに映る敵の死体は、笑っていた。
悔いはないと、死ぬ事に恐れはないと、そんな風に語る様な笑顔だ。

対して、生き残ったドクオは悲しげな表情をしていた。
あいつは踵を返すと、そのまま敵の戦艦へと向かっていく。

一人で、一人のニューソクの兵士として、戦場を駆けていった。



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  1. 2011/10/06(木) 14:15:46|
  2. 自作品まとめ
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