ブーン系男子の雑記◆K8iifs2jk6

ブーン系を書いている◆K8iifs2jk6の雑記。 自作品まとめたり読んだブーン系の感想書いたり雑記書いたり、色々やりたいと思ってます。

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('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 第4話

2 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:38:43.67 ID:DGuHNx3u0
この国は本当にくだらない。

街並みは古く、技術は古く、文化は古く、
何もかもが祖国の十年も前の、昔の姿と変わりなかった。

初めてここに訪れた時、タイムスリップしたのだと錯覚してしまう程に。

だが、こんな国が、この程度の国が、
祖国を滅ぼした国の一つであるのだと言うのだから、侮れん。
まあ、要は覆い囲んでタコ殴りにしてやった。
そういう戦いが出来たからだという、奇跡の結果なのだが。

祖国の住民達には、この運良く勝利を得た古臭い国に落ち延びた者達もいる。

……住み難いことだろうな。
文明のレベルが、違い過ぎる。

しかし、援助という名の“首輪”から逃れた者も、中にはいる。
戦士として、兵士として、ゲリラとして戦い続けている者が、
そう言う奴らの大勢なんだが……。

奴らは国の為に戦う。俺もまた、戦っている。まだ、戦っている。

全ては国の為に。俺の全ては愛した人の為に。
生き残ったニューソク人の為に、仲間の為に、戦い続ける。

首輪を付けて戦う者もいる。
俺には、奴の気持ちが分からない。

何故なら、猫には首輪など必要ないのだから―――



4 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:40:20.38 ID:DGuHNx3u0



         ('A`) ドクオは亡国の兵士のようです 



              第4話 亡国の猫




5 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:41:32.61 ID:DGuHNx3u0

******

何台もの分厚い装甲を持った車が、
群を作り出して街中を走り去っていき、その群れの中には、
巨大で、砲塔を持った車が紛れている。

戦車と装甲車の車列。

低く、唸るような排気音を響かせて走り続けていく。

雲の多い灰色の空には太陽が臨めず、
空気はじっとりと湿っていた。

粘つくような、気味の悪く生暖かい空気。

装甲車の乗り込んだ兵士達は、
その湿気によって上昇した車内の温度に、
うんざりとした表情を作り、微かに汗を流している。

しかし、兵士達が座るベンチのような席に、
同じく座る変わったスーツを着た、傷の刻まれた顔に眠たそうな眼をした男は、

湿度など関係ないといった風に、
無表情な、鉄のように冷たい表情をしていた。


7 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:42:28.06 ID:DGuHNx3u0
  _
(;゚∀゚) 「ったくよぉー、なんなのお前。強化骨格はクーラー内臓なのか?」

彼の隣の席に座る、特徴的な眉をした兵士、
ジョルジュが汗を浮かべた顔で口を開く。

('A`) 「ん? いや、クーラーは流石に着いてない」

強化骨格。

身体を機械化した男、ドクオが言葉を返す。
  _
(;゚∀゚) 「だろーよぉ。そうだろーよぉ……冗談だっての。ボケて返しやがれ。
      『クーラー完備! ただし、エコの為に26度までしか冷やしません!!』みたいな、よぉ……」

('A`) 「エコとか正直どうでもいい」
  _
(;゚∀゚) 「そんな本音いらねーよ。突っ込むとこはそこじゃねぇ」

('A`) 「30年前に、ニューソク、オオカミ、パーソク、ニーソク、テンゴク、
    シベリアの6ヶ国で温室効果ガスの削減20%を決めて、成し遂げたけど、結局何も変わらなかったしな」
  _
(;゚∀゚) 「お前の反エコ思想は聞いてないし、それに、
      もっと削減すりゃあ温暖化も和らぐんじゃね?」



8 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:43:35.22 ID:DGuHNx3u0

('A`) 「無駄だ。人類の技術進歩が停滞するだけで、何の意味も無い。
    削減だとかそんな縛り無しで、どんどん研究進めて行ったほうが、
    ごく少量の燃料で動ける車とか、作れるかもしれないからいいと思うんだけどなぁ……」
  _
(;゚∀゚) 「まっ、こんなバンバン火薬使うような、戦車やヘリ使いまくる俺達に、
      エコなんて程遠い話だろうがよ。にしても、あちーよ、ここは」

そう言いつつ、ジョルジュは運転席の方へと振り返り、
  _
(;゚∀゚) 「おーい! もうちょい冷房上げてくれねーか? 俺はサウナは嫌いなんだ」

     「ダメだ。地球環境の為にヒイヒイ言ってろ。
      ニーソク国は来年までに温室効果ガスの削減-6%を目標としている」

返ってきた運転手の声に、ジョルジュは、
  _
(#゚∀゚) 「やっぱ、エコなんて意味無いかもしれねーな」

若干苛立ったような表情をし、

('A`) 「あぁ、そうだよ。エコなんて意味ねーんだ。
    南極の氷が溶ける? 海の水位が上がる? 国が沈没?
    ふざけんな、目先の変化に囚われてるんじゃねーよ。進化の現実ってやつを教えてやる」


9 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:44:31.34 ID:DGuHNx3u0
  _
(#゚∀゚) 「だーよなぁー! エコなんて無意味だよなぁー! ホント無駄なことしてるぜ。
      暑くなっているのは地球じゃなくて、車の中だろーがよ
      何か? 何だ? そんなにエコバッグ買わせたいんですか?」
  _     
(#゚∀゚) 「レジ袋有料化して、経費浮かせた上に、
      エコバッグまで買わせて、儲かっちゃいますねぇー。
      取りあえず、レジ袋いるか聞いてこない店員は死ねよ、
      ホント。何いらないこと前提で商談進めてるんだよバカヤローが!」

('A`) 「後、『俺エコしてるんだよねー』みたいな話題持ち出す奴死ねよ。
    イケメン限定で。それに食いつくビッチも、エコビシネスに乗せられやがってよぉ……ホント」

    「………」

毒づく彼等に、運転手は無言で、


10 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:45:44.56 ID:DGuHNx3u0
  _
(;゚∀゚) 「なっ、えっ!? 暑うぅっ!? 熱風でてるよコレ!!」

(;'A`) 「流石に熱いぞコレ」

    「お前等の言うとおり、どうやらエコは無駄なようだ。
     どんどん温室効果ガス出していこうぜ。ちなみに、運転席は18度と、非常に快適な温度だ」

HAHAHA、と高笑いを上げる運転手に、
ジョルジュは眉を顰めて、
  _
(#゚∀゚) 「テメェェェェェェッ! おっ死にやがれぇぇぇっ!!」

怒声を運転席へと叩きつけた。

直後、衝撃が彼の頭を揺さぶり、打撃音が車内に響く。
  _、_
(#,_ノ` ) 「暑苦しいんだよバカが! ちったぁ静かにしてやがれ」

ジョルジュの頭に拳を叩き込んだのは、渋澤であった。
痛みと暑さに、伸び切ったジョルジュは、座ったまま項垂れていく。
  _
(  ∀ ) 「うぅ……あちーよー」

暑い車内に絶望し、表情が翳っていくジョルジュと、

(  ω ) 「…………」

遜色のない程に、沈痛な面持ちをブーンはしていた。


11 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:46:36.66 ID:DGuHNx3u0
******

彼等、“素直中隊”を乗せた装甲車と戦車は、
硝煙が漂い、瓦礫の溢れる、
灰色に染まり上がった、廃墟と呼ぶべき街に辿り着いた。

火薬の臭いが嗅覚を通じて、鼻をくすぶらせる。

高層を誇っていたビル群は、いまや倒壊してしまっており、
アスファルトの上に破片を撒き散らしていた。

そんな光景の中、巨大なテントが幾つか張られ、
素直中隊の面々と同じ種類の装甲車や戦車が幾つも停車しており、
その数は彼等のそれを遥かに超えている。

それだけで、充分に彼らよりも規模の大きな部隊が、
ここに停留しているのだと察することは容易い。

立てられたテントの内、
だいたい真ん中に位置する所に、一際大きなテントが立っていた。
ここで戦う者達に命令を送り、情報を整理して作戦を立てる場所。


13 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:48:13.06 ID:DGuHNx3u0
司令部である。

そこから、装飾が施された軍刀を腰に差した、
黒い長髪を持つ、切れ長の瞳の軍服姿の女性、
素直クールが出てきた。

待ち構えていたように、男が一人近づいていく。

軍服姿の、頬に皺が深く刻まれ、
しかし、どこか若々しさを感じさせる壮年の男は、
 _、_
( ,_ノ` ) 「大尉よぉ。俺のような下士官が意見するのは、
      あまり好ましくないってのは分かってるがよぉ、少し意見させて貰うぞ」

渋澤だ。

険しい表情を浮かべて、彼はクールに声を掛ける。

川 ゚ -゚) 「どうした曹長。私に何か不満でも? それとも、不安でも?」

顔に一切の変化を見せない無表情で、
おどけるようにそう返してみせる彼女。
 _、_
( ,_ノ` ) 「あぁ。この際だ、俺は昇格にも興味はねーし、
      他の奴らに代わって言わせて貰うとする。不満を、不安をな」


14 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:49:14.84 ID:DGuHNx3u0
 _、_
( ,_ノ` ) 「あの“亡国の鬼”を、強化骨格をいつまでここに置いておくつもりだ?」

川 ゚ -゚) 「何を言い出すかと思えば、ドクオのことか。
      いつまで、とは。すぐに追い出すような言い振りだな。
      生憎、あまり時間は無い。質問は、意見はそれだけか? なら、端的に答えてやろう」

川 ゚ -゚) 「私達の仕事が無くなるまで、または、奴が死ぬまで、だ」
 _、_
( ,_ノ` ) 「へぇ、生涯忠誠ってわけかい。
      俺達は、ずっとあの機械に銃を持たせて、あの素手で人を殺せる馬鹿力を持った、
      他国の兵士とずっと一緒に装甲車に揺られ、背中を見せ、飯を食い、休息を取るハメになるってのか」

川 ゚ -゚) 「ほう、信用出来ん、と? 不安は私では無く、奴にあり、
      不満はその元凶をお前達の中に放った私にある、と?」
 _、_
( ,_ノ` ) 「率直に言うと、そうなるな。歯に衣着せず言えば、
      あんな奴が、ニューソクの残党が俺達と共に戦うのが、嫌なのさ」

フン、とクールは鼻で笑い、

川 ゚ -゚) 「嫌だ、だと? そんな子供の言い分に、私が感化されるとでも?
      ハッ、馬鹿馬鹿しい。お前達の声に私は真摯に答えてきたつもりだ。
      だがそれは、お前達を付け上がらせることとなってしまったようだな」

吐き捨てるようにそう言った。
無表情ではあるが、明らかに呆れてしまっているようだ。


15 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:49:59.38 ID:DGuHNx3u0
 _、_
( ,_ノ` ) 「生涯忠誠。俺達も奴と同じさ。
      俺達は国の為なら、自分の守りたい物の為ならば、多少の不満や嫌悪は飲み込む」

だがな、と渋澤は付け加えて、
 _、_
( ,_ノ` ) 「奴が生涯忠誠を誓っているのは“どこ”だ?
      どんな奴だろうと同じ目的を以って戦う奴を、俺達は仲間と呼んで迎えるさ。
      だがな、だが、だ。敵国に、敵と同じ目的を持った、敵を。仲間と呼ぶことは出来んよ」

クールを見据えて、彼は堂々と言い放つ。
対し、彼女はそれを正面から受け止めて、

川 ゚ -゚) 「ドクオは敵では無い。お前達と違う目的を持っており、思想は違っているが。
      奴の目的にはニーソクを守ることも含まれているよ。一度、本人から聞いてみるといい」

川 ゚ -゚) 「恐らく舌足らずな答えとなるが、仲間であることは理解できる」
 _、_
( ,_ノ` ) 「何故そこまで庇う? たかが、捕虜に。
      何故そこまで与える? たかが、機械に。
      戦士などではなく、詐欺師かもしれないんだぞ」

疑われ、問われたクールは、しかし相変わらずの無表情で、

川 ゚ -゚) 「簡単なことだ。私も、奴と同じ目的を持って戦っているからだ」

聞く者によっては危険視されてしまうような言葉で、即答を返した。


16 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:51:06.23 ID:DGuHNx3u0
******

装甲車から降りて、ジョルジュと雑談を交えていると、
苦虫を噛み潰したような顔をして、渋澤がクールと一緒に戻ってきた。

川 ゚ -゚) 「聞け、兵士諸君。任務だ」

短く、彼女は兵士達を見渡して命じる。

川 ゚ -゚) 「広場で味方が手古摺っている。予想以上の数のニューソク軍残党が潜んでいるようだ。
      これより、一個小隊をここに残し、残る二隊で進撃する。C隊が残れ」

川 ゚ -゚) 「敵は強大だ。敵は莫大だ。残党と言ってしまってはいるが、
      甘い相手では無い。気を引き締めてかかれ。以前の戦車部隊など、比では無いぞ」

川 ゚ -゚) 「以上だ」

クールの言葉に、了解と応えて、
A隊、B隊の面々は再び装甲車の搭乗し、
C隊の者達はそのまま待機する。

俺はクール自身が隊長を務める、
A隊に含まれるため、装甲車に乗り込もうと歩を進めていく。


18 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:52:01.49 ID:DGuHNx3u0
装甲車の車内に足を掛けたところで、渋澤が合流してきた。

横長い、ベンチにも似た座席に腰を落ち着けると、
渋澤は俺の正面に位置する席へ座る。

肩にかけていたアサルトライフルを手に取り、点険を始めたようだ。

視線は鋭く、背景に“ゴゴゴ”を背負っているような、
圧倒的な、もしくは威圧的な雰囲気が感じられる。
気合い充分と言った様子だ。

XM8。

流線形のフォルムをした、制式採用されているアサルトライフルを、
隅から隅まで調べ尽くして、最後に構えてみせる。
正直、正面に座る俺からしてみれば、あまりよろしくない行動だ。
何故なら、銃を突き付けられている形になってしまっているのだから。

思わず、両手を上げてしまいそうな衝動に駆られてしまう。

こいつ……なんか言ってやろうか?
あまつさえ、引き金に指を掛けられているのだから、
危ないったらありやしない。

まぁ、安全装置は外していないようだから、
危なくはないと言えるのだが……。

気持ち的には良くない。


19 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:53:02.70 ID:DGuHNx3u0
 _、_
( ,_ノ` ) 「………」

視線を、渋澤は俺に浴びせている。

鋭気に満ちた目だ。

スコープを覗き、照準を定めたまま、じっと。
じっとして動きを見せない。
  _
( ゚∀゚) 「BANG!!―――ってか」

すると、銃声が(口から)響いた。俺の隣から。
  _
( ゚∀゚) 「渋澤さんよ。戦う前だから、興奮するのも無理はねーがよ。
      人を殺しそうな目つきで、味方に銃を向けるのはあまりよろしくねーな」

飄々とした口調で、ジョルジュが言った。
 _、_
( ,_ノ` ) 「イメージトレーニングだ。敵には、強化骨格もいるかもしれないだろ?」

このオッサン、トンデモねーこと言いやがった。

俺を標的として見てやがったのか。
危ねー危ねー。よく見たら、微かに目が血走ってるし!


20 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:53:44.57 ID:DGuHNx3u0
  _
( ゚∀゚) 「だろうな。まっ、落ちつけよ。色々あるだろーがよ。
      俺にも色々あるし、敵にも色々あるだろーし、なぁ?」

ジョルジュの、なぁ?という問いかけが、
自分に向いていることに、遅れて気付いて、

('A`) 「あ? あ、あぁ。そうだろうね」

煮え切らない返答をしてしまった。

あぁ……俺のコミュニケーションスキルって低すぎる……。
 _、_
( ,_ノ` ) 「色々……か……」

ふん。そう鼻を鳴らして、渋澤は銃を降ろし、肩にかけ直して目を瞑る。

沈黙し、足元が震えを感じると、
車内が微かに揺れ始めてきた。装甲車が発車したようだ。


21 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:54:51.64 ID:DGuHNx3u0
******

ニューソク国解体戦争と、後に呼ばれる戦争があった。

当時伍長であった俺は、前線で戦っていた。

ニューソク側は兵器や兵士一人一人の錬度で、
圧倒的にこちら側、つまり、五大国連合側に勝っていた。
だが、こちらは数で勝り、短期間でニューソク国に包囲網を結成することで、
じりじりと攻め寄って行った。

包囲網は、囲みはすぐに突破される。

ニューソクの、他を寄せ付けぬ程の、超越した力を以って。

しかし、囲みは膨大な数を以ってすぐに再構築され、
結果、ニューソクは網を突き破れず、
二重にも三重にも作られた、包囲の網は鉄壁を成していた。

俺は、その包囲網の最前線にいた。
そして、奴らを、奴らの武器を、力を、恐ろしさを実感した。



23 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:57:11.64 ID:DGuHNx3u0
    「撃て! 撃ちまくれっ!」

背後で、俺の後ろで誰かが叫んだ。

銃声にも負けぬ怒鳴り声。
戦場には、爆音と銃声。それらが連続して轟く。

既に視界は赤と橙の炎と、黒の煙で塗りつぶされており、
敵がいるのかもはっきりしない。

それでもなお、恐れる者達は、塹壕に身を隠した兵士達は、
俺達は引き金を引き、グレネードを放り、バズーカやランチャーをぶっ放す。

    「――――――ッ!」

隣の仲間が、息を飲み込んだのが分かる。

俺も、眼に映る物が信じられず、身を強張らせてしまったからだ。

視界に広がる、炎が、爆炎が、煙が、硝煙が割れる。
割れていき、掻き消されていき、
鋼鉄の獣を引きつれて“奴ら”が現れる。


24 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:58:16.18 ID:DGuHNx3u0
ダイビングスーツにも似た、
ゴム質の黒いスーツに身を包み、
捉えきれぬ程の俊敏さで迫ってくる“奴ら”。

強化骨格の兵士達が、
俺達の銃撃にも砲撃にも屈さずに突っ込んできた。
 _、_
( ,_ノ゚ ) 「――――――ッ!」

気付くと、俺は身を伏せていた。
息を殺して、奴らに見つからぬように。

直後、銃声が響く。

衝撃が背中に走り、重たい物がの圧し掛かってくる。

生暖かい、水の感触もする。

奴らが過ぎ去ってから、圧し掛かる物をを退いてみると、
それは、俺の戦友の死体だった。

自業自得かもしれないが、恨むべきは卑怯な自分なのだろうが、
俺は、悔しむ資格も無いと理解しつつも、怒りに身を震わせ、
泣き叫ぶ資格も無いのだと、分かってはいたが、
悲しむことを押し留められなかった。



25 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 22:59:34.29 ID:DGuHNx3u0
******

四台の装甲車と、二台の戦車が、
エンジンを震わせ、廃墟の中を走り抜けていき、
広場へと繋がる十字路を、左へ曲がった、その時だった。

前方、広場への道路。

廃ビルが倒壊した道のど真ん中に、アスファルトの粉塵が舞い散った。

川 ゚ -゚) 「あれはっ!?」

後方を走る装甲車の、
前部座席の窓からそれを見て、クールは声を荒げた。

灰色の霧が晴れて行き、姿が露わとなって行く。

地面に突き立つ、しなやかな両の足に、
六角形をした戦車の砲塔のような分厚い胴を持つ、
動物じみたそれは、無人の戦車だった。

次いで、クールは名を叫び、



26 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:00:27.42 ID:DGuHNx3u0

川 ゚ -゚) 「≪AA≫っ! いかん、迂回しろっ!」

運転手にそう命じる。

彼女が搭乗した装甲車の運転手は、
他の者よりもいち早くハンドルを切ることで道を逸れて停車し、
二足の生えた鋼鉄の獣を避けることに成功した。

が、AAは体中の装甲を軋ませ、

「―――――――っ!!」

雄叫びにも似た金属音を発して、地を蹴った。

その動きによって作られる物は、疾走と破壊だ。

一歩を踏み出し、人工筋肉を用いた、
しなやかな足によって高速を生み出し、
巨体が、目前の装甲車へと肉薄していく。

突然の出来事に判断が遅れた運転手は、
ハンドルを切ることもままならず、

AAの足に装甲車が激突した。

金切り音を響かせて、ガラス片と金属片を撒き散らし、
車体は拉げ、蹴り飛ばされてしまう。


27 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:01:14.95 ID:DGuHNx3u0
最後尾を走る戦車がAAを狙うが、遅い。

巨体に似合わぬ高速で戦車へと接近し、
地面を蹴っていたAAの足が振り上げられ、
戦車の砲塔が鎌で薙がれたかのように切断されてしまう。

人間で言うところの、回し蹴りだ。

その勢いのままに、一回転をして、
AAはもう一度足を高く振り上げ、戦車の砲塔を目掛けて、
強靭な脚力を以って振り下ろす。

戦車は、強烈な踵下ろしを食らった。
重厚な複合装甲が砕かれ、破片をぶちまけて金切り音が上がる。

川 ゚ -゚) 「ちっ、戦車が……」

クールは、その光景を見ていた。

舌打ちと共に悪態を吐き、打開策を模索する。
冷静に、あくまでも冷静にならなければならない。

しかし、廃ビルに囲まれ、縦一直線となった道で、
二次元機動しか出来ない装甲車と戦車と、
その両の足によって三次元機動を可能とした、
AAとでは、絶望的なまでの戦力差である。


28 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:02:16.92 ID:DGuHNx3u0
せめて、この場が開けていたのならば、
勝率はぐっと上がる。

だが、そんな希望的観測をしている暇は、彼女には無く、

川 ゚ -゚) 「各位、装甲車から降りろ! ビルの蔭に隠れるんだ!!」

後部座席の兵士達に聞こえるよう、
大声で彼女は命令を下した。

が、兵士達が動くよりも早く、AAは振り返った。

胴体の上に備えられた、機関砲がこちらを覗き、
一つ目のカメラアイが赤い光を輝かせている。
得物を捕らえた、肉食獣の舌舐めずり。

そんな凶暴さをクールは感じた。

………遅いかっ!
舌打ちをし、内心に悪態を吐く。
AAは既に攻撃の態勢に入っているが、兵士達はまだ降車していない。

しかし、それよりも早い動きがあった。

装甲車のハッチが開き、濃緑色の軍用コートを羽織った、
黒い強化骨格が飛び出す。


29 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:03:24.05 ID:DGuHNx3u0
強化骨格、ドクオは銃を構えている。

M4A1カスタム。
グレネードランチャーが取り付けられ、
ダットサイトやサプレッサーまで付いた、一品。

グレネードランチャーの引き金に指を掛けて、
シュッと言った音共に、榴弾がAAのカメラアイへと向けて発射された。

機敏に反応したAAは弾道を予測し、
一歩を下がって避けようとするが、
AAのAIは、ミスを犯した。

    「―――――――ッ!」

装甲の軋みが悲鳴と化し、
突如に閃光が発し、あたり一面を轟音と白光が埋め尽くしていく。

高度の視覚素子を持つ、AAのカメラアイがショートを起こし、
ブラックアウトへと陥ってしまう。
だが、高性能を誇るニューソク性のカメラは、
瞬きの間に回復してみせた。


31 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:04:42.13 ID:DGuHNx3u0
が、既にその時には、

同じくニューソク製の機械が迫っていた。

          【強化骨格】
――――自動変動モードより、任意固定モードへ変更。
     人工筋肉稼働率、70%での稼働開始―――――

強化骨格、ドクオはAAの胴体へと取り付く。
カメラアイや、機関砲の取り付けられたそこに、足を掛け、
肩に掛けたM4A1の代わりに、右手に無骨な超大口径のリボルバー、
スティレットを構えて、ゆっくりとカメラアイへ銃口を突き付ける。

AAはその巨体故、運用する際は味方を巻き込まないよう、
注意しなければならない。もし、カメラアイが破壊され、
出鱈目な行動でも起こせば、味方を巻き込んでしまう可能性は高まる。

よって、製作者に、AAはカメラアイが破壊されれば、
行動不能となるようプログラムされているのだ。


32 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:05:51.09 ID:DGuHNx3u0
ドクオは、ニューソクの兵士であったドクオは、それを知っていた。

('A`) 「………」

だからこそ、始めからここを狙っていた。

引き金を引き絞る。

リボルバーとして、規格外な破壊力と反動を持つ、
35mmもの馬鹿げたサイズである銃弾が、
唯一の利点であるその高威力を以ってカメラアイを破壊した。

火花が飛び散り、風穴が穿たれると、
AAは足を痙攣させて崩れ落ちて行く。

ドクオはそのまま飛び降り、片膝をついて着地。

川 ゚ -゚) 「ご苦労だ。お前がいることを、失念していたよ」

ふっ、と笑い、運転席からその様子を見て、
クールは独白した。



33 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:07:05.18 ID:DGuHNx3u0
******

僕は、クール大尉の命令に気付くのに遅れた。

みんなが銃を構えて、装甲車から降りようとしているのを見て、
やっと降りようと思ったほどだ。

だけど、その時にはもう、
AAはこっちを向いていて、機関砲を向けてて……、
みんなを押し退けて、ドクオさんが飛び出していた。

(;゚ω^) 「おっ……?」

その速さに僕は驚いて、
思わず、目を細めてしまう。

まるで、あらかじめ予測していたかのような、
スイッチを押されたから動いたような、
そんな、迷いの無い行動だった。


36 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:08:35.99 ID:DGuHNx3u0
あの人に振り返ったら、すぐに遠くから轟音が聞こえてきた。

スタングレネードを放ったようだ。
食い入るように、僕は装甲車のハッチから、
あの人の動きを視線で追う。

その時にはもう、AAの胴の上に登っていた。
あの大きな銃を構えて、銀行の時にも使った銃で狙いを定めて。

撃った。

砲声にも似た銃声が空気を震わせて、
僕の鼓膜までも震わせてしまう。

ガクガクと震える、AAの両足。
倒れて、衝撃音が鳴り、
何時の間にかドクオさんは地面に着地していた。

単純に、僕は凄いと思う。
ほんの一分も掛からずに無傷でAAを倒してしまう、あの人が。


37 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:10:11.19 ID:DGuHNx3u0
こんな人がいるなんて、軍学校では教えてくれなかった。

噂で、存在だけを知っていたけど、
ここまで凄いとは聞いていなかった。

強化兵士。

非人道的ではあるが強化骨格の、
その戦闘能力には感動すらをも覚えてしまう。

だが、車内を振り返り、みんなの顔を見てみると、
青ざめた、恐れているかのような表情を浮かべていた。

中でも、
  _、_
(;,_ノ ) 「………」

渋澤さんは脂汗を浮かべて、目頭を片手で押さえ、
何かを堪えているようだ。


39 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:12:39.82 ID:DGuHNx3u0
******

先頭を切る、装甲車と戦車は、
クール達を置いて走り続けていた。

運転席から、クールはそれを見て、

川 ゚ -゚) 「いかんな。急ぎ、目的地に向かうぞ」

運転手に言い、ドアを開けて身を乗り出し、
ドクオへと振り返って、

川 ゚ -゚) 「早く戻れ、ロスタイムを取り戻すぞ」

遠くに居る彼に、聞こえやすいように、
大声でそう言った。

言葉を聞き取った彼は、駆け足で装甲車へと向かう。
ハッチは開いたままであり、ドクオがそこから乗り込もうとした、その時。

シィン、と、鋭い音が響き渡った。

ドクオは、音の来た方角を見る。
運転席からも、クールがその光景を見ていた。

突如、前方を行く戦車と装甲車が、
横一線に、真っ二つの斬り裂かれたのだ。
爆炎が巻き起こり、爆風が吹き荒んでいく。


40 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:14:41.82 ID:DGuHNx3u0
二つの爆発が重なり、視界が赤に埋め尽くされ、
赤の間を抜けるようにして、刃を持った人影が現れた。

黒皮のコートに身を包み、
白いゴム質の防護繊維に肌を覆われた、
顔を隠すバイザーをした男。

川;゚ -゚) 「あれは……」

その姿を見て、クールは息を飲み込む。

赤い光の帯を映したバイザーが展開し、
男の顔が露わとなって行き、

     「『白い悪魔』!『鉄血猫』!『不眠の山猫』!『白い閃光』っ!『白猫』……っ!!」

クールの隣で、運転手が目を見開いて叫び、

(;゚A゚) 「ギコかっ!」

同じくして、その者の名をドクオが呼んだ。


41 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:17:03.68 ID:DGuHNx3u0
******

ギコ、と呼ばれた。

戦友に、そう呼ばれた。

久々に見る戦友の姿は以前と変わりなく、
どこにも外傷は見られず、五体満足であの戦争を乗り切ったのだと、
安心にも似た感情を覚える。

ドクオ。

あいつも、俺も、生き延びた。
ニューソク国解体戦争を。あの、負け戦を。

だが、当時の俺達は勝利を信じ切っていた。
ニューソクが、この国が負けるはずはないのだと。
信じて疑わなかったし、例え劣勢であろうと、
俺達は戦い抜くと決めていた。

そう、戦い抜くと、な。

その結果俺達は国を失った。俺達は領土を失った。
俺達ニューソク人は住むべき場所を失った。

今やニューソクは、跡形も無く消し去ってしまったのだ。


44 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:17:56.77 ID:DGuHNx3u0
だが、だが。

誇りまでも失ってはいない。戦う意思までも失ってはいない。

まだだ、まだなのだ。

各地に、俺のような意志を持った者達が、大勢いる。
彼等にもまた、ニューソクは存在し、ニューソクの為に戦っているのだ。

ニューソクはまだ、滅んじゃいない。

今、眼前に立つ、戦友。

ドクオは、ニーソクに転がりこみ、
“亡国の鬼”などと言われて、奉られている。

そうだろう。

こんな技術レベルの低い国にとって奴の身体は、
強化骨格を埋め込んだ身体は、非常に重宝することだろう。
……生き残りも少ないことだしな。


45 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:19:14.00 ID:DGuHNx3u0
この国に、敵国に、身を売ったのだ。
奴は、ドクオは。臆病者らしい判断だと、そう思う。

許せん、とは思わない。

だが、眼前に立つのならば、
俺達の前に立ちはだかるのならば、銃を向けると言うのならば。

お前はもう、戦友なんかじゃない。

ニーソクという首輪に、貴様は繋がれたのだ。
俺達はその輪を外れ、その輪を取り戻す為に、戦っている。
貴様の国が与える首輪などいらん。

切り伏せてくれる。

その首輪ごと、貴様を。


46 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:20:23.24 ID:DGuHNx3u0
******

装甲車の運転席にドクオが近づいていく。

――――命令を下さい。

('A`) 「どうする? クー」

川 ゚ -゚) 「ふむ、逃げても無駄だろうしな。逃げても、追い付かれてしまうだろう。
      お前と同じ強化骨格ではあるが奴はお前と違う。奴は、『白い閃光』だ」

クールは、むう、と唸って、

川 ゚ -゚) 「倒せるのか? 奴が。お前に打倒できるのか?」

確認するかのような、疑われているような口調に、
ドクオは感情の籠もらない声で応え、

('A`) 「難しいかな。相手は元戦友だしな。
    そして、片や俺はただの歩兵。片やあいつは……英雄」

だが、と彼は続けて、


47 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:21:34.44 ID:DGuHNx3u0

('A`) 「命じられれば戦友殺しだろうが、英雄殺しだろうが、やってみせる」

ただし、と更に付け加え、

('A`) 「殺すのはお前の殺意だ。俺は俺の力を、お前に預けた。
    いや、くれてやった。命じられれば殺す。でも、俺は殺意を持たない。
    俺の意志は殺したいと思わないし、殺したく無いとも思わない」

対して、クールは無感動な瞳をしたまま、
口の端を釣り上げて笑みを作り、

川 ゚ ー゚) 「何を今更。お前は既に、人間としてKIA認定されているじゃないか。
       人としての体が滅び、人としての精神まで滅んだ、
       こちら側に来た時に滅び尽くした人間に、意思などある物か」

笑みを消して、次いで、

川 ゚ -゚) 「強化骨格、鬱田ドクオよ。亡国の兵士よ。命令する」


49 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:22:24.44 ID:DGuHNx3u0
川 ゚ -゚) 「迫りくる、ニューソク国が強化兵士を排除せよ。
      亡びた国の、英雄を討て。亡国の猫を撃て。射ち滅ぼせ!」
     
川 ゚ -゚) 「例え同じく機械の身となった、仲間であったのだとしても、
      例え我が国では最悪の敵として恐れられる天敵であろうとも、
      例えお前が守ろうとしていた国の、同じ志を持った英雄であろうとも」

捲し立てる彼女は、すう、と一息を吸って、

川 ゚ -゚) 「お前は、鬱田ドクオは、我が国の亡国の鬼は、機械の如く冷徹な判断を持ちて討て!
      私の戦意を、敵意を、殺意をお前の中で燃やし尽くし、激情を以って鬼の如く引き金を引き絞れ!
      得物を見定めろ! 照準を定めろ! 奴は強大だ! 奴は英雄だ! だが、お前はただの機械だキリングマシーン!!
      英雄を、殺せ。かつての仲間を、撃ち果たせ。お前の任務は大物殺しっ! ジャイアントキリング……っ!!」

川 ゚ -゚) 「私の、お前の大義の為、目的の為。『白猫』を討滅しろ!」

川 ゚ -゚) 「さぁ、私は命じたぞ。お前の意志を、お前の意志を授かった私の命令だ! 理解したのならば応えよ!!」

命令を下された機械は、何も映らぬ瞳にかつての戦友を捉えて、

('A`) 「了解。これより、敵強化骨格の排除を敢行する」

短く答え、己の敵へと銃を向けた。


50 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:23:15.11 ID:DGuHNx3u0
******

装甲車の傍で、ドクオは何やら会話をしているようだった。

……余裕、か?
頭に浮かんだ一語を、真っ先に消し去る。
あいつのどこにそんな物があるのだ、と。

何せ奴はたったの一人。
この国に、ここニーソク唯一の強化兵士。
唯一という物は孤高であって、孤独でもある。

それによって掛かる精神的負担は甚大な物だ。
ニーソク人に紛れる不安感に、ニューソク人は自分だけだと言う孤独感。

ましてや、亡国の鬼などと呼ばれ、強化骨格ともなれば、
作戦の中核をなすこともあるだろう。

ゆっくりと一歩ずつ地面を踏みしめ、
機械剣No.10“ライジングサン”を、
肉厚の刀身を持つ方刃の剣を片手で構えて、奴に近づいていく。


51 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:24:14.41 ID:DGuHNx3u0
ドクオは会話を終えたようだ。

話しながらも油断のない視線を送ってきていた、亡国の鬼が動きを見せた。
両腕で持っていた銃、M4A1カービンを俺に向ける。

………殺気っ!
肩に重くのしかかる空気が、緊迫感をもたらす。
鋭い視線を弾丸のように飛ばしてくるドクオ。

奴は元戦友を前にして、躊躇いの無い動きで引き金を引いた。

引き金を引くのが、俺には“見える”。
奴のその動作に必要な動きの、一つ一つが。

(,,゚Д゚) 「………おっ!」

短く咆哮して、右足を大きく後方へと蹴り飛ばす。

その一歩を加速の足掛かりとして、もう一歩を飛ばしていく。
既にドクオは引き金に掛けた指を倒しており、引き金は中ほどまで倒れている。
たった一瞬にも満たない短い時間。だが、俺はその間にももう一歩を踏み出して見せる。

奴が銃口を向けている、一直線上から、左へと。

サプレッサーによって消音効果を得た銃からは、
火薬の燃焼する音こそ聞こえなかったが、銃弾自体が音速を超えることにより生まれる、
風音までは消すことはできないようだ。視界に、ドクオが放った銃弾が映るが、
外れていき、俺はそのまま接敵していく。


52 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:25:01.92 ID:DGuHNx3u0
もう一度片足で地面を大きく蹴り、更に距離は縮まる。
ドクオは引き金を引いたまま、銃口をこちらへと向け直す。

フルオート射撃。

射撃の精度こそ劣るが、銃弾の連射は接近戦において脅威となる。

ニヤ、と自分の頬が釣り上がり、勝手に笑みを作り出すのが分かった。

………無駄だ。正面からの銃撃など俺には効かん。そう思うが、
……面白い、とも思う。

連続して放たれる銃弾が、群をなして俺へと向かってくる。
片手に持ったライジングサンのぶ厚い刀身を、
横一文字に前へと構えて、軽く振るう。

すると、手元で火花が弾け、硬い金属音が鳴り響いた。
そのまま、刃を振るい続ける。

振りの動きと共に火花が踊るように散っていき、
金属音がメロディーを奏で上げて行く。

その音が、火花が、弾丸を弾いたことを確かにさせた。


53 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:26:18.93 ID:DGuHNx3u0
自分の攻撃が無力化されているのにも関わらずに、
ドクオは一切の動揺を見せもせず、銃撃を継続していき、
俺は弾丸を弾き続け、その間に奴へと後2歩の距離へと迫った。

疾走の勢いを活かし、袈裟がけにライジングサンを振り下ろす。
右肩を狙った斬撃。だが、奴は銃を構えたまま身を低くし、

(,,゚Д゚) 「………ッ!」

袈裟がけに振るわれる、両の腕へと向けて銃をぶつけてきた。

銃は俺の両腕を押し上げようとしてくるが、
腕力に加えて体重をも掛けて奴の肩を捉えている刃を振るおうと、
力押しを仕掛ける。が、何かが警鐘を鳴らした。

何かは分からない。だが、ハッとしたように俺は身を捻り、
左の膝を繰り出して奴の銃を蹴り飛ばす。


54 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:27:48.62 ID:DGuHNx3u0
('A`) 「ちっ………」

舌打ちと共に後退していくドクオ。

宙へと舞った奴の銃は、あらぬ方向へと向けて弾丸を発射した。
後少し反応が遅ければ俺の腹を貫いていたであろう、弾丸だ。

………成長、か。

先程の反応は、ニューソク国解体戦争中期では、
俺と共に戦っていた頃には出来なかった反応だった。

あの頃のドクオならば、接近する俺に対して後退していたはずだ。
そして銃撃を浴びせ続けるが、いずれ距離を保つことも出来なくなり、敗れる。

だが、今の奴は、俺の剣を受け止めてみせ、
そのカウンターを狙い、急所狙いの一弾を浴びせようとしたのだ。
ニューソク国解体戦争を、生き延びただけの意味はあるということか……。

臆病風に吹かれた……そんなわけでも無いのかもしれんな……っ!


55 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:30:07.23 ID:DGuHNx3u0
******

二人の強化骨格の兵士が接触することで展開された戦闘は、
現在、苛烈を極めていた。

(,,゚Д゚) 「どうした? 亡国の鬼じゃなかったのか?
      敵国に寝返った鬼よ。裏切り者よ。お前の弾丸は俺に届いてはいないぞ」

白の強化骨格、
ギコは剣を振るいつつも口を開き、

('A`) 「俺なんかただの機械でしかないさ、猫め」

黒の強化骨格、
ドクオがナイフでそれを往なしながら応える。

両の手にナイフを構えた彼は、白の強化骨格が浴びせてくる刃を、
最小の動きで往なしてはいるが、反撃の機会を得られずにいた。

怒涛、という勢いを以って攻め立ててくるギコの、
その速度に彼は付いていけていないのだ。
最小の動きで攻撃を防ぎようにも、反撃が出来なくては勝機は無い。

両者の間に、火花が舞い散り、対峙する廃墟からは、
甲高い金属音が木霊する。


56 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:32:45.36 ID:DGuHNx3u0
鋭い目つきで、ドクオはじっとギコを観察する。

どこかに隙はないのか、と。

('A`) 「ギコ。俺達は戦うしか無いのか? お前達と戦うしか無いのか?
    ニューソクは、今まで散々戦ってきただろう。
    そして、その結果敗れた。消えた。そして、お前達はテロリストに成り下がっている」

(;'A`) 「それでいいのか? ギコ!」

影が差した表情でドクオは問う。

(,,゚Д゚) 「俺達は散々戦ってきた。お前も、俺達の親達も。
      ニューソクは、ニューソクにはニューソクの誇りがある。
      そして敗れた。敗戦国となった。世界の地図から、名が消えた」

そして、とギコが言葉を繋げて、

(,,゚Д゚) 「お前は裏切り者に成り下がっている」

弾かれた刃を、腰を引く動きと共に引いて、


57 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:35:00.50 ID:DGuHNx3u0
(,,゚Д゚) 「俺達は負けた。されど戦意揚々っ!
      兵器は揃い、武器は揃い、兵は揃い、意思は揃い!
      俺達は祖国を未だ守ろうとしている」

(,,゚Д゚) 「亡国の愛国者としてっ!」

言葉が発せられるが早いか、剣の切っ先をドクオへと向けて、
身体を前に倒すと共に、剣を持つ腕をバネのように伸ばし、突きを放った。

強化骨格の人工筋肉と、機械剣に施された細工によって、
刃は亜音速を以って刺突を行う。

至近距離で、音よりもほんの少しだけ遅れて進むそれを、
ドクオはギコの身体の動きで見切ってみせる。
突きが放たれるよりも早く身体は動いたが、地面を蹴って跳躍を行った頃には、

既に刃が腹を捉えていた。

('A`) 「――――――ッ!」

咄嗟に身体を捻るが、脇腹へと食らいついてく刃。

黒煙が黒い防護繊維から立ち昇り、そこを焼き切られたのだと理解した。
上空へと跳んでいき、ギコから離れることで広まる視界は、彼の持つ刃を捉える。
刀身が真紅に染まり上がり、青の電流が蛇の如く這いまわっていて、陽炎を引き起こす。


58 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:36:07.38 ID:DGuHNx3u0
(;'A`) (機械剣“ライジングサン”。身体能力強化の活性化刃、ヒートブレードか)

内心に呟くと共に、ドクオは両のナイフをギコへと放る。
獲物へと目掛けて一直線に突き進む双刃。

ガラスの裂けるような甲高い音が発し、火花が散った。

刃を往なしたギコは、そのまま追撃の動きへと移る。

跳躍一つで、ドクオへと接近していき、
あっ、と言う間も無く追い詰める。

跳躍の勢いを活かして刺突を放つ、が、

(,,゚Д゚) 「――――――!」

ドクオが背後の廃ビルを蹴り、さらに跳躍。
刃の切っ先が虚空を貫き、ドクオはギコの背後へと回る。
身を振って振りむくよりも、跳躍の慣性力を活かし、
逆さの姿勢を取った方が早く後ろへと方向転換を行える。

頭を地面へと向けたドクオは、右手を伸ばし、
腰のホルスターに備えられた超大口径のリボルバー、
強化骨格が扱う特殊兵器、35mm弾を取り扱うスティレットを引き抜く。

同時、銃口をギコへと向けて、発砲。


60 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:36:58.85 ID:DGuHNx3u0
大気を震わせ、砲声にも似た銃声が響き渡る。

ギコの反応は、咄嗟の一言に尽きた。
背後を取られて取った本能的な行動であり、彼はドクオへと振り返ったのだ。
直後、ギコの右肩が大きく爆ぜていった。

強化骨格スーツの防護繊維が弾け、その下にある人工筋肉が弾け、
黒い血液と共に肉が飛び散って行く。

衝撃が、彼の身に走る。

35mm弾という、拳銃として、
いや、軽火器としては論外の弾薬がもたらすマンストッピングパワー。

彼は、それに身を持って行かれ、吹き飛ばされてしまう。


61 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:39:04.37 ID:DGuHNx3u0
銃を放ったドクオはその姿を見て、体勢を戻し、
地面に片膝をついて着地してみせる。

が、

('A`) 「ん?」

身体がぐらつき、バランスを崩してしまう。
咄嗟に手を着いて、持ち直す。

(;'A`) (あらら、ちょっと無理し過ぎたかね……)

内心に呟くに止め、立ち上がろうとする。

が、殺気を背後に感じ、空気の流れを感じ取り、
ドクオは即座に前転をしてその場を離れる。


63 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:41:32.75 ID:DGuHNx3u0
振りかえると、ギコが刃を地面に振り終えていた。

(,,゚Д゚) 「おぉっ!」

咆哮。

そして、右足から繰り出される蹴撃。

爪先がドクオの鳩尾に直撃し、吹き飛ばされ、
アスファルトに2、3度バウンドしてしまう。

肩や脇、背中などを強打したドクオを、ギコは追撃する。

だが、

「おおおおぉぉおおぉぉおぉぉっっ!!」

聞こえた叫び声に動きを止めた。


64 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:43:28.51 ID:DGuHNx3u0
******

川 ゚ -゚) 【各位、ジョルジュが撃ったら続いて撃て。
      相手は英雄で、それでいて機械だ。遠慮はいらん、人だと思うな。
      撃てるだけ撃ち、浴びせられるだけ弾雨を浴びせてやれ】

廃ビルの蔭に隠れた兵士達が、
中隊長である素直クールの通信を聞いていた。

銃を構え、じっと息を潜めて。

その中で、一人だけ落ち着きのない青年がいた。
巨躯を震わせる鼻息の荒い青年は、ブーンだ。
彼は必要以上に瞬きをし、額には汗を浮かべてギコを見ている。

(;^ω^) 「………」

緊張感により早鐘を打つ心臓は、
無言で、じっとしている彼にはうるさく聞こえる。

早く撃ち、敵を仕留め、この緊張感を終わりにさせたい。

しかし、相手はそれほどに甘くはない。
先程、ドクオの放った銃弾が“切り払われて”しまうのを、
ブーン達は目に焼き付けていた。


66 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:44:40.06 ID:DGuHNx3u0
ドクオが破壊した、AAの蔭に隠れたジョルジュが、
ギコを撃つまで耐えなければならない。

彼が狙撃し、急所を撃ち抜いたと共に、自分達が一斉に攻撃を仕掛ける。

前衛を、囮をドクオに任せて、自分達が隙を打つというつもりだ。

だが、ドクオはたった今、
ギコを撃ち抜き、着地したその時に蹴り飛ばされてしまった。
追撃され、起き上がろうとするが、既にその頃にはギコが迫っていた。

(;゚ω゚) 「―――――ッ!」

その時、ブーンの中で何かが弾けた。

フラッシュバックする、銀行での光景。
自分が狙っていた敵が人質を撃つ場面。

人質が倒れた光景と、ドクオが倒れている光景が、重なり合い、

( ゚ω゚) 「おおおおぉぉおおぉぉおぉぉっっ!!」

気付けば、ビルの蔭から飛び出していた。
照準を敵へと定め、引き金を引き絞り、銃弾を放つ。


67 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:45:25.63 ID:DGuHNx3u0
******

(,,゚Д゚) 「ふん……」

ギコの強化骨格スーツの防護繊維に火花が弾けた。

だが、貫かれることは無く、損傷は無いに等しい。
………新兵か。
内心に呟き、ギコは銃を放ったブーンへと接近。

彼ならば、一足飛びで充分に近づける距離だ。

眼前に立ち、ギコは刃を縦へと一閃する。
切り裂かれ、竹が割れるかのように、
ブーンの身体が割けるかと思われたが、刃は彼を斬りはしなかった。


69 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:46:31.64 ID:DGuHNx3u0
(;,,゚Д゚) 「なっ!?」

驚きの声を上げ、ギコは背中に衝撃を感じ、
吹き飛ばされてしまう。が、即座に宙で一回転をして衝撃を殺し、
自分の背後から一撃を加えた者を見る。

ドクオだった。

蹴りを放った彼は、ブーンへと回り、
スティレットを両手で構え、盾となるようにギコへと立ちはだかる。

(,,゚Д゚) 「ははっ」

軽く笑い声を洩らし、ギコは剣を構え直す。

対峙するドクオとギコ。

油断のない視線を交わす、元戦友同士は、
相手の動作の一つ一つを捉える。

張りつめた、両者の殺気。



70 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:47:54.79 ID:DGuHNx3u0
(,,゚Д゚) 「む……」

そう唸ると、ギコは突然として剣を鞘に納めた。

(,,゚Д゚) 「残念だったな、ドクオ。お前の負けだ。
     数ある戦いの中での一つ。お前はそこで負けた」

(,,゚Д゚) 「ニューソクは勝ち続けた。ニューソクは戦い続ける。俺は戦う」

(,,゚Д゚) 「我等が使命は、国に捧げたこの身の使命は、
     我等領民の使命は、我が国に牙を向けた者達全てを、ネズミ一匹でさえも殲滅し、
     我等が同胞に仇なす者を掃滅すること。敗北など、覆してくれる」

(,,゚Д゚) 「裏切り者が……逃れられるなどと思うなよ」

そう言い残すと、彼は大きく跳躍し、この場を去って行った。


72 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:49:03.82 ID:DGuHNx3u0
******

白の強化骨格。
『白い悪魔』『鉄血猫』『不眠の山猫』『白い閃光』『白猫』などと、
数多くのあだ名を持つ英雄がこの場を去り、張り詰めていた緊迫感が過ぎ去っていく。

('A`) 「ふぅ………」

溜息を吐いたと同時、

川 ゚ -゚) 【ドクオ。作戦が失敗した。
      いや、味方は生き残っているようだが、どうやら敵が撤退したらしい】

クールの声が、体内通信を通じて彼の耳小骨を震わせた。

川 ゚ -゚) 【帰還するぞ。私達の任は、意味が無くなった。
      追撃はここの部隊が行うだろう。私達には、他にも仕事があるのだからな】

了解、と短くドクオが応えると、通信は切れた。

ドクオは頬を緩めて、苦笑いを浮かべる。
……俺の負け、か。

('A`) 「まぁ、そんなこともあるだろう」

呆気の無い感想を漏らし、ドクオは装甲車へと戻って行く。

彼のその後ろ姿を、白い強化骨格の英雄、
ギコの威圧感に当てられたブーンは、腰を抜かして見送った。


73 名前:VIPがお送りします[]:2009/06/23(火) 23:49:57.71 ID:DGuHNx3u0
******

基地へと帰還した後、僕はすぐに訓練を行った。

人の姿を描いた黒い板に向けて、
仕切りの作られた狭い空間で銃を握っている。

だけども、全く当たりはしない。

照準を定め直し、頭を狙って、思いつくのは、
ギコと相対した時の恐怖と、
人質が死んでしまった時の悔しさだ。

それもこれも、………僕が未熟だったから。

あの時、僕が飛び出したりしなければ、
きっとジョルジュさんがギコを撃ち抜いて、
僕達は一斉に攻撃を仕掛けられたはずだった。

なのに、僕は出てしまった。
耐え消えれず、あの人へと銃を向けた。

でも、強化骨格の防護繊維に銃弾が弾かれてしまい、
ギコを撃ち抜くに至らなかった。



77 名前: ◆K8iifs2jk6 [サル食らった。すまん]:2009/06/24(水) 00:09:44.66 ID:Fx4WFZ1Y0
僕は、悔しい。

自分の弱さが。未熟さが。浅はかさが。

そうして銃を握り、標的へと銃を向ける。
が、頭を狙った弾丸は逸れ、板の縁を抉るだけに留まる。

(#゚ω^) 「おぉっ!!」

堪らず、叫びを上げる。

しかし、ある声にそれをとがめられた。

('A`) 「うっせーよ」

ギコと相対し、尚且つ、互角の勝負を繰り広げた、
黒の強化骨格、ドクオさんが僕の背後に立っていた。

('A`) 「叫ぶな、迷惑だよ」



78 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:11:17.18 ID:Fx4WFZ1Y0

('A`) 「にしても、随分と調子が悪いみたいだね。
    そんな時は、やめておけ。身の入ってない証拠だ。
    銃なんて、標的の正面に構えて、ただ引き金を引けばあたるもんだ」

('A`) 「集中してれば当たる。当たらないってことは、集中してないってことだろ」

ドクオさんはそう言って、僕の持つXM8を奪う。

('A`) 「やめといたほうがいい。何か、気負ってるだろお前」

僕は、さっきから何も言い返せていない。
無言の僕に、普段あまり話しをする方では無いドクオさんは、
珍しく多弁に振る舞う。

僕は、すっかりと重くなってしまっていた口を開き、

( ^ω^) 「………僕は、みんなを守りたいんですお。友達とか、かーちゃんとか、
        知らない人でも、戦えない人なら守ってあげたいんですお」


81 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:12:56.14 ID:Fx4WFZ1Y0
('A`) 「無理だ。ブーン。強くなるにはな、戦い続けないといけないんだよ。
    戦うからには周りの人間はどうしても死んでいく。生きる人間もいれば死ぬ人間もいるからね。
    だから、強くなるってことと、守るってことは、必ずしもイコールじゃない」

(;^ω^) 「そんなこと……っ!」

突然、喉の奥から否定の言葉が出てきた。
だが、ドクオさんは構わず続けて、

('A`) 「だから必死になるんだ。お前も、俺も。守りたいってのは理由で、
    強くなるのは結果だ。日々のトレーニングなんかじゃ、戦場の緊迫感は得られない。
    あれだよあれ、経験だよ。経験。お前はまだ、ヒヨっ子だ。お前は今日、生き延びてみせただけでも充分だ」

('A`) 「よくやった。よく生き延びてくれた」
    
('A`) 「でも自主トレーニングやめとけよ。気持は分からなくもないけどね。
    俺も、昔はそうだった。でも、仲間に余計迷惑をかけただけだったよ」

('A`) 「生き続けろ、生き延び続けろ、そうすりゃ勝手に強くなる。日常も戦場も、全部が訓練なんだ」

そう言い残し、彼は僕に背中を向けた。

何か、何か声を掛けないと……。
しかし、僕が言葉を探しているうちに、
既にドクオさんの背中は見えなくなってしまっていた。



83 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:14:53.94 ID:Fx4WFZ1Y0
******

一つの生命は技術により昇華され、
鋼鉄の身体は朽ちること無く、失われた外皮は継ぎ接ぎで取り繕われ、
血流は施しにより渇くことは無い。

体内に張り巡らされた管は、潜む機械と共に身体を支配し、
機械仕掛けを成り立たせていた。

冷たく、強靭な、刃が如き身体。

命令が下れば、その肉体をもって障害を排除する。

だが。

機械仕掛けを施せるのは身体までであり、
当人の精神までは冒せない。

鋼鉄の、強靭で、堅牢な身体には、
人の、弱く、脆い、魂が宿っていた。

彼は、心を押し殺し続けた。
その果てに屍の山を築き上げていた。

耐えきれぬ苦しみに、心も身体も軋みを上げながら。



84 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:17:13.71 ID:Fx4WFZ1Y0
サル食らったけど、
何とか第4話“亡国の猫”終了。

支援ありがとうございました。



続いて、おまけを投下します


86 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:21:14.37 ID:Fx4WFZ1Y0
>>40のNGシーン

******

川;゚ -゚) 「あれは……いかんっ!」

その姿を見て、クールは息を飲み込む。

赤い光の帯を映したバイザーが展開し、
男の顔が露わとなって行き、

     「『白い悪魔』!『鉄血猫』!『不眠の山猫』!『白い閃光』っ!『白猫』……」

                  「『”牙猫”』っ!!」

クールの隣で、運転手が目を見開いて叫び、

(;゚A゚) 「ギコかっ!」

同じくして、その者の名をドクオが呼んだ。

               ∧∧                   
    ,-‐────┐(,,゚Д゚)                       
   <<二二No.10二[OOlノ;;)                         
     `ー────┘ (;;ヽ;;;;;>
            (_,ノ゙ヽ_,)         

川;゚ -゚) 「悪ふざけが過ぎる!」       


87 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:21:57.27 ID:Fx4WFZ1Y0
以下、何事も無かったかのようにおまけ

******

('A`) 「あー、筋肉痛だ。いてえ……」

川 ゚ -゚) 「クエン酸をとると筋肉の疲労が抜けるらしい」

('A`) 「mjsk」

川 ゚ -゚) 「mjds」

('A`) 「じゃあ、薬局行ってくるわー」

川 ゚ -゚) 「何なら私のを試しにあげるよ。いるか?」

('A`) 「おぉ、ありがとう。貰うよ。水に溶かすの?」

川 ゚ -゚) 「いや、水にはなかなか溶けなくてね」

('A`) 「じゃあどうしてるの?」

川 ゚ -゚) 「瓶からスプーンで取り出したりして、直接飲み込むんだ」


88 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/06/24(水) 00:22:44.81 ID:Fx4WFZ1Y0
('A`) 「ふーん、薬みたいだな」

川 ゚ -゚)つⅡ「というわけだ。口を開けろ」

(;'A`) 「うぉ、持ってたんだ。常備かよ!?」

川 ゚ -゚)つ― 「あーん」

(*'о`) 「あ、あーん」

Σ(;゚A゚) 「ん!? ぐおぉぉっ、しょっぱ! 辛っ!! すっぱっ!!」

川 ゚ -゚)つ三 「舌にねじ込むように! えぐるように!」

(;゚A゚) 「じょ、冗談じゃ……」

川 ゚ -゚)つ三「助けるつもりなど元より無い!」

( A ) 「………」

川 ゚ -゚) 「そんなに都合の良い展開など、ありえないだろう」

※薬局などにクエン酸の結晶が売っています。非常に刺激の強い物なので、
 お食事の際は舌につけないように注意してください。(水に溶かせば良いけど、溶けにくいからめんどい)


川 ゚ -゚) 「あぁ、結晶で無くとも、梅干しもいいぞ。後、レモンのハチミツ漬けとかもな」

('A`) 「先に言えよ」


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  1. 2011/10/06(木) 13:10:39|
  2. 自作品まとめ
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