52 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:42:42.26 ID:znSZ6LJD0
この夜が訪れたのは何時からだったか?
ドクオがロマネスクを倒した時から?
銀行を占拠したテロリストを殲滅した時から?
ドクオが素直中隊に入隊した時から?
ニューソクが敗北した時から?
ニューソク国解体戦争が始まった時から?
ニューソクが建国された時から?
夜が訪れ、戦いの火蓋が落とされた時は何時だったのか。
それとも未だ戦いの最中であるのか。夜中であるのか。
この争いは予想されていた物だ。
オオカミの陰謀。ニューソクの崩壊。疲弊する五大国。
全ての歯車が噛み合ったその時に、これは起こると。
その予兆が何時にあったのかは、知る術はない。
しかし、ただ一つ明言出来ることがある。
夜は明ける。
54 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:44:30.16 ID:znSZ6LJD0
('A`) ドクオは亡国の兵士のようです
最終話 夜明け―――The Dawn―――
55 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:45:14.91 ID:znSZ6LJD0
******
ニーソクの首都、ビーの西方面から東へと抜けていく影がある。
中央に位置するニーソク軍の基地へと向かっていく、
装甲服を纏ったニューソクの兵士達は、それを見た。
俊敏な動きで駆け抜けていく影は、人の物だ。
黒い強化骨格スーツを身に纏い、あちこちに傷を拵え、
隻腕となった右腕に赤熱化した方刃の剣を持つのは人影だ。
強化骨格の兵士の影。
影は、装甲服の兵士達へと向かって突き進んでいき、
対する兵士達は背後から迫る影へ銃を向ける。
照準の十字線が、影を捉えた。
顔中に傷があり、黒の強化骨格スーツに焦げ目を作ったその影が、
視界にはっきりと映る。
が、引き金を倒して銃弾で撃ち抜くよりも速く、影は懐へと飛び込んできていた。
身を振り、足を一歩後ろへと下げようとしたその時には、
既に男は意識を失っていた。袈裟切りで左肩を断たれ、
身体を失い、倒れていく。
58 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:46:08.90 ID:znSZ6LJD0
兵士の傍にいた別の兵士は、返す刃を首に食らってしまい、切り裂かれる。
影は、そのまま身を落としていき、しゃがみこむ。
すると、先程まで影の体の場所を銃弾が通過していった。
身を捻り、銃弾を放った兵士へと振り向く。
その動きと同時に、腕を振って一閃を放つ。
赤く煌めいた刃は、装甲服の防護繊維を断ち切って行き、
赤い飛沫を兵士の身体から舞わせた。
刃は血を纏うが、刃が持つカコログ粒子による高熱により、蒸発していく。
影は、装甲服の兵士達の裏切り者である、
鬱田ドクオは、息も吐かずに奥へと進む。
ニューソクの兵士達が目指す中央基地。
そのさらに奥に位置する東方面のエリアへと。
血を蒸発させた刃から煙が立ち、異臭を放つが気にも留めず、
ドクオはカコログ粒子の活性化の恩恵を受けた人工筋肉を用いて、進んでいく。
全力を以って。己の全力を超える、全力を以って。
59 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:47:18.44 ID:znSZ6LJD0
【強化骨格】
――――Over Drive....―――
外部干渉による規格外稼働を容認
――――Warning!――――
過重負荷による人工筋肉の損傷を黙認
――――Limit Break!――――
人工筋肉稼働率200%を突破240...275...尚も上昇中
...人工筋肉..復旧...問題...無し..稼働限界...撤去..
―――Release to Save capacity...Over―――
許容可能範囲外に置ける行使により制御プログラムの凍結を開始
.....本プログラムの全権を使用者に委ねます
“強 化 骨 格 の 無 限 稼 働 を 開 始”
60 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:48:22.80 ID:znSZ6LJD0
(メ'A`) 「これはすごい」
ドクオは、カコログ粒子が滞留する機械剣No,10“ライジングサン”から、
自分を覆っていくカコログ光により、活性化していく自分の体に感嘆する。
……さっきまでは動くのもままならなかったのに。
身が軽くなり、倦怠感も消え去ってしまっている。
それどころか以前よりも遥かに強化された人工筋肉に対し、
ドクオは、カコログ粒子の効力を身を以って実感する。
しかし、彼は原理をよく知らない。
自分を機械に作り変え、この剣を作った張本人である、
あの白髪の科学者なら分かっているかもしれない。
と、漠然としたことを思いながらドクオは駆け抜けていく。
61 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:49:15.08 ID:znSZ6LJD0
隻腕となった満身創痍の身で、しかし、
以前よりも身体能力の高まった身で、戦場を東へと疾走していく。
活性化した人工筋肉は、ドクオに弾丸の如き速さを与えた。
そして、その速さで駆けて行く彼の身体は、風を引き裂いて進む。
(メ'A`) 「待っていろ」
……俺の仲間。と仲間を想い、
……俺の敵。と敵を想う。
ライジングサンは、かつての戦友の愛刀は、
ドクオに力を与えて、彼は思い切り進んでいく。
心の内に響く絶叫から耳を背けずに、敵が叫び上げる絶叫から耳を背けずに、
兵士であるから敵から逃げずに、機械であると自分から逃げずに、
ドクオは、全てに立ち向かって進んでいく。
絶叫の響く戦場を、自らも絶叫を上げて切り抜けていく。
62 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:50:09.79 ID:znSZ6LJD0
******
中央基地へと向かうAAやニューソクの兵士達を蹴散らしながら、
ドクオは東方面のエリアへと辿り着いた。
そこへと到着するまでに築き上げた残骸と死体は、裕に100を超える。
中央基地へ向かう東の敵達も倒そうと身構え、
進んでいくが、兵士達の姿は見当たらなかった。
装甲服の姿は無い。
ニーソクの兵士達の姿も無い。
敵の姿も、味方の姿も、そこには無かった。
だが、確実に戦闘の爪後がそこには残っている。
中央から折れてしまった高層ビルに、
焼き尽くされた民家。巨大な穴が穿たれ、
燃え尽きようとしているスーパー。
首都ビーの東側は、西側よりも悲惨なことになっていた。
63 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:50:58.45 ID:znSZ6LJD0
それでいて、
……静かだ、とドクオは思う。
……これじゃあまるで、廃墟だ。とも。
戦場と言うには、無人過ぎる。
戦場と呼ぶには音が無さ過ぎる。
しかし、彼はどうして?とは思わなかった。
疑問を浮かべる前に、答えが目の前から出てきたからだ。
ダイビングスーツのようなゴム質の繊維を身に纏い、
各所に機械が埋め込まれた、白い変わったスーツ。
ドクオは、それに見覚えがあった。
何かに似ている、とすぐに分かった。
……ギコの強化骨格か。
が、脳裏を過ぎった答えは、すぐに打ち消す。
これは違う、と、気付いたからだ。
細部が異なる。
強化骨格スーツよりも、どこかゴツゴツとしており、
どちらかといえば装甲服が強化骨格スーツに近づいた物のような印象を受ける。
機械の部品のような物が埋め込まれているが、装甲服のように装甲は埋められていない。
64 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:52:14.25 ID:znSZ6LJD0
では、とドクオは答えを導き出す。
次いで、まさか、という疑いを浮かべ、
……≪強化外骨格≫か?と、内心に呟いた。
……完成していたのか、とも。
強化外骨格を纏った人影が、近づいてくる。
徐々にその姿が露わとなって行き、ドクオは彼女を視界に捉えた。
外に跳ねた白髪のショートカットで、
赤い鋭い目を左だけ隠した、どこかガサツそうな雰囲気を持つ女性。
強化外骨格の白と彼女の白髪が相まり、目に眩しい程真っ白だ。
何物にも染まらぬ、染められぬ、強い白。
片目からは、鋭い赤色が発せられている。
ドクオは、一目で気が付いた。
この存在感。この白さを、彼は忘れたことがなかった。
白衣を纏い白く輝いていた彼女を、ニューソクの勝利の為に自分を、
大勢の兵士達を機械に作り変えた彼女を、忘れるはずもない。
ドクオは彼女の名を口にする。
66 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:53:00.29 ID:znSZ6LJD0
(メ'A`) 「ハインリッヒ博士……」
そして、ハインリッヒへと声を投げる。強い口調で、
(メ#'A`) 「ハインリッヒ―――『最強』ッ!!」
从 ゚∀从 「よく来た、よく来やがった。亡国の鬼。アタシらに立ちはだかる幽鬼よ」
(メ'A`) 「こんなことをしても、無駄だ」
从 ゚∀从 「無駄なことなど1つもねーよ」
从 ゚∀从 「アタシらは、アタシは、お前は、全てのニューソク人が問われることになった」
从 ゚∀从 「終戦後、国を失ったアタシらは、それに答えなければならなかった」
从 ゚∀从 「……答えは出た。滅びる者、保護を受ける者、
抗う者、国を取り戻そうと、新たな国を作り出そうとする者」
そして、とハインリッヒは付け加えて、
从 ゚∀从σ 「敵であった者に身を売り、戦い続ける者」
(メ'A`) 「………」
ドクオを指で差して言う。
言葉を受けた彼は、黙って、静かにハインリッヒを見る。
68 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:54:23.72 ID:znSZ6LJD0
从 ゚∀从 「アタシらはロマネスクの奴らとともに、
新たな軍事国家を、新しき、ニューソクを復興させようとした」
从 ゚∀从 「昼と夜を統べる、戦争と平和に拮抗をもたらし、革新的な進化を続けていく国を作ろう、と」
(メ'A`) 「それには、人が死ぬ。ここに、ニーソクに住む人達が死ぬ」
(メ'A`) 「ハイン、俺達に必要なのは国なんかじゃない」
(メ'A`) 「他人と、他国の人間と隣り合わせて生きていくことだ。俺は……」
从 ゚∀从 「そのために戦っている……だろ?」
ドクオの言葉を遮ってハインリッヒが確認の問いを投げた。
从 ゚∀从 「アタシはアタシの、奴らは奴らの、お前はお前の答えを出した。
ならば、自分の答えを、自分の道を突っ走って行くだけだ」
そう言った彼女は、両手で拳銃を構える。
正確には、拳銃のようなものを。
それは、拳銃と呼べる形を成していなかった。
安全装置も無く、照門も無ければ撃鉄も付いていない。
黒の長方形を描いた銃身には赤い線が走っていて、輝いている。
69 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:55:29.07 ID:znSZ6LJD0
この長方形は、拳銃などでは無い。
もっと、もっと強力な兵器だ。
それも、ロケットランチャーなどよりも、重機関銃よりも、
ミサイルをも超える威力を持つ、強力で小型の兵器。
ブラックテクノロジーで作られたとしか言いようのない、
ニューソクが作り出したモンスターの内の一つ。
熱線射出装置“レーヴァテイン”
ハインリッヒは、その銃口をドクオへと向けて、言葉を続ける。
从 ゚∀从 「戦え、戦いぬけ。その先に、
その果てにこそ答えの正否がある。言葉ではもはや何も答えは出ない」
宣戦布告の言葉を。
从 ゚∀从 「行くぞッ!」
引き金にかけた指が、引き倒される。
ハインリッヒの指を注視していたドクオは、その動きを捉えていた。
真正面を捉えている銃口から、ドクオは大きく斜め右へと足を踏み込む。
直後、レーヴァテインの銃口から、指向性を持った超高熱の線が高速を以って延びていった。
71 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:56:25.43 ID:znSZ6LJD0
それは、前へと空間を貫いて進んでいき、ほんの一瞬前までドクオがいた場所を通過した。
その先にある崩壊したビルに命中し、
高熱が集まって行き、赤く光り、膨れ上がり、
一点に収束していった熱が、爆ぜていく。
爆発。
炎の尾を引いて廃ビルの破片が散っていった。
音速を超えて放たれた熱線に、遅れて音が響く。
ガラスの割れたような、耳に残る甲高い銃声。
そして、爆発音。
赤の熱線が通った後には炎が残り、空間は湾曲していた。
銃口からは、白い粒子が幾つか流出している。
この白い粒こそが、カコログ粒子である。
カコログ粒子を銃内に滞留させ、
熱線と共に放つことでカコログ光を放ち、
強化された熱線を対象物に命中させる。
直撃すれば、無事で済むはずもない。
しかし、ドクオは恐れを一切見せずにハインリッヒへと突っ切っていった。
対し、ハインリッヒはレーヴァテインの引き金を起こし、
もう一度倒してカコログ光を纏った熱線を放って行く。
73 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:57:19.54 ID:znSZ6LJD0
何度も引き金を倒すことで、その動作は連射となる。
幾数もの赤い線がドクオへと向かっていく。
そのどれもが必殺の一撃であり、どれもが音速を超えていた。
ドクオは身を低くして、曲線を描く動きでハインリッヒへと接近。
ドクオの身から熱線は逸れていき、遅れて轟音を3つ掻き鳴らした。
肩を1発が掠めていき、強化骨格スーツの防護繊維から火花が散り、焼けていく。
そして、4発目の熱戦が放たれるその直前に、
ドクオはハインリッヒの懐に飛び込んだ。
一歩を踏みこんで、ライジングサンを一閃する。
レーヴァテイン目掛けて振るわれた刃は、
しかし、ハインリッヒの身を後ろへと逸らす動きによって避けられてしまう。
彼女は狙われていたレーヴァテインをドクオへと再び向ける。
銃口が彼を覗き、充填されていた高熱とカコログ粒子が、放たれていく。
ドクオは、咄嗟に身をしゃがませる。両の足を腰と共に落として、首を曲げる。
彼の背の上を熱が走って行き、振るった刃を返して、右腕を跳ね上げる。
下段から振り上げられた刃が作る攻撃は、逆袈裟切り。
手首を返すだけで、それは避けられてしまう。
ハインリッヒは、身を捻ってドクオへと一撃を放つ。
レーヴァテインの銃底がドクオの胴へと叩き込まれた。
74 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:58:15.08 ID:znSZ6LJD0
強化骨格スーツの防護繊維越しにでも、その一撃は強烈であった。
(メ;゚A`) 「ぐッ……お……ッ!」
激痛が胴から脳天を突きぬけていき、
衝撃にドクオの身がくの字に折れて行く。
口からは嗚咽と白い血液が吐き出されていった。
身が折れることで、自分に近づいてきたドクオの右腕を、
ハインリッヒは掴み、彼を背負い込むように引っ張って行く。
すると、引き寄せられた彼は宙へと浮き上がって行き、重力に従って落下する。
アスファルトの地面に叩きつけられ、ドクオは背に感じた衝撃に眉を歪めた。
嗚咽と共に、白の血液を吐き出す。
(メ;'A`) 「ちくしょう……」
ハインリッヒを見て彼は毒づき、金属音と地面の揺れを感じた。
音の鳴る方向へと振り向いた彼は、舌打ちをする。
同じく、それを確認したハインリッヒは、こう呟いた。
从 ゚∀从 「増援か」
その呟きを聞く前にドクオは起き上がり、高く跳んでその場を離脱していく。
ハインリッヒの増援としてやってきた、3機のAAがドクオを追う。
76 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/08(土) 23:59:27.33 ID:znSZ6LJD0
六角状の胴に設置された機関砲が連射され、彼の体に食らいついていく。
強化骨格スーツごと撃ち抜かれ、白い血液と火花が飛沫く。
顔を歪めて歯を食いしばり、鋭い眼光をAA達へ向ける。
地面に着地し、いや、落下し、立ちあがろうとするが、
鋭い痛みが撃ち抜かれた場所を襲う。
こめかみに青筋が浮かぶまでに力強く歯を噛み締め、自分を奮い立たせていく。
しかし、身体の動きは痛みによって少々遅れてしまう。
立ちあがり、地面を後方へ蹴って跳躍を行おうとするが、
それよりも早く背後から迫る巨体があった。
くの字に折れ曲がった両の足で素早く接近してくるそれは、AAだ。
ドクオは、遅れて気付き、
(メ;゚A`) 「まずい―――ッ!」
咄嗟に横転して避けようとするが、既にAAの足は彼を踏みつぶそうとしていた。
ドクオをAAの足が踏み潰した、かのように思われたほんの一瞬に、
AAの胴へと弾頭が叩き込まれて爆発が起こる。
衝撃にバランスを崩し、AAは殴りつけられたように倒れていく。
次いで、4機のAAへとロケットランチャーの弾頭と、
アサルトライフルの弾丸が浴びせられていった。
77 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:00:13.99 ID:Bj3ZqGDy0
AA達は急に現れてきた敵の増援に対応できず、そのうちの一機が倒れた。
同時、ドクオの傍に建つ廃ビルの陰から、
ニーソクの兵士が飛び出してきた。
彼はドクオの隻腕を己の肩に掛けて走る。
「大丈夫か!? 急いでここを離れるぞ!!」
兵士はドクオにそう声を掛けた。
(メ; A ) 「あぁ……」
力無く彼は応えた。
ビルの陰に到着すると、そこには一個小隊が控えていた。
兵士達はドクオに壁へと背を預けさせる。
しかし、彼に構う暇などは無いようで、兵士達は各々の武器をAAへと向ける。
兵士達はここだけではなく、向かい側の廃屋にも隠れているようであった。
あちこちから弾雨がAAへと攻め寄せていき、もう一体が倒れていった。
が、しかし、奇襲という予想外の事態から立ち直ったAA達は、
向かいの廃屋に隠れる兵士達へと向かっていく。
既に、ロケットランチャーの弾薬は尽きてしまったようで、
彼等はアサルトライフルでAAに発砲していく。
こちら側の兵士達も同じようで、アサルトライフルでAAに攻撃していた。
78 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:01:36.84 ID:Bj3ZqGDy0
その光景を見て、ドクオは叫ぶ。
(メ#'A`) 「何をしてるんだ! やめろ!! そんな武器でどうにかできる相手じゃない!!」
しかし、迫りくる巨体へと向かって、彼等は抵抗を続ける。
兵士達の声が、ドクオの叫びに対して返ってきた。
「アンタは俺達の国を守る為に戦ってくれた。いや、戦っている」
別の兵士の声が、続いて返ってくる。
「アンタは俺達を守る為に戦ってくれた!」
「だから、今度がアンタを守る為に俺達が戦う番だ!!」
戦場に張り上がった声に、ドクオは目を丸くする。
(メ;゚A`) 「やめろ!! お前達の役割は、もっと別なモノだろ!! 無駄死にするだけだぞ!?」
AAが片足を振り上げ、廃屋に隠れる兵士へと回し蹴りを放とうとする。
ドクオは居ても立ってもいられずに、廃ビルから飛び出した。
AAへとライジングサンの切っ先を向けて、ドクオは身を捻る。
そして、逆手に構えたライジングサンを身を振るうと共に放った。
赤熱化し、カコログ光を纏った刃は、空を裂いて突き進み、
AAの胴を貫いていった。地面にライジングサンが突き刺さり、
次いで金属音が響き渡っていった。
79 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:02:31.16 ID:Bj3ZqGDy0
AAが、機関部を貫かれて倒れていく。
が、ドクオはカコログの活性化の力を失った為に、その場に倒れてしまう。
再び、倦怠感と全身を襲う苦痛が襲いかかってきた。
ドクオは、よろよろと残ったAAへと向かっていく。
地面を踏みしめていくごとに、力を増していき、
もはや気力のみで身体を動かす彼は、跳躍を行う。
AAは彼の動きを捉えて機関砲を放つ。
銃声を掻き鳴らして放たれる弾丸の群は、
ドクオの左足と腰に血の花を咲かせた。
が、それでも彼はAAへと取り付いてみせる。
片腕でAAの胴に手を掛け、懸垂の要領でその上に昇って行き、
足を着けると、隻腕で腰のホルスターから銃を抜く。
大口径を超えた、超大口径のリボルバー。
35mm弾を取り扱うスティレットだ。
その大きく無骨な銃身には、雑な字で、しかしはっきりと名前が刻まれている。
エクスト・プラズマン
Ecst・Plazman
銃身には、戦友の名が確かに己の存在を主張していた。
81 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:03:37.91 ID:Bj3ZqGDy0
銃口はAAの赤いカメラアイを覗いている。
引き金を引くと、35mm弾が吐き出され、
遅れて、怪鳥の鳴き声が如き銃声が発されて、
カメラアイを撃ち抜いた。
カメラアイを失ったことで、
制御装置が稼働したAAは力を失って倒れていく。
ドクオは、地面にAAが激突するよりも早く、AAを足場にして跳躍した。
着地するが、機能しない人工筋肉によって体勢を崩してしまう。
遅れて、AAが倒れたことで地面が揺れた。
片手を突いて何とか体勢を持ち直すが、
その時には既に、ハインリッヒが迫ってきていた。
白髪が揺れ、唇が動きを作る。
从 ゚∀从 「随分と慕われているな」
ハインリッヒが言葉と共にレーヴァテインを構える。
銃口がドクオを捉えており、彼は避けようとするが身体は動かない。
「ドクオ!!」
背後からドクオの名を呼ぶ声が張り上がり、彼の背へと迫る物があった。
鉛色の方刃の剣が、廃屋から飛んでくる。
82 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:04:33.74 ID:Bj3ZqGDy0
だが、切っ先はドクオの背を貫こうとしていた。
彼はそれに反応せず、ただ、ハインリッヒへ視線を送っている。
「早く取れ!!」
危険なのだが、ドクオは振り返ろうとしない。
ライジングサンを取ろうとはしない。
ハインリッヒは、引き金に指を掛け、倒していく。
背後では、ライジングサンがドクオの背を貫こうとしている。
ハインリッヒが引き金を倒すよりも速く、ライジングサンはドクオの背に襲いかかった。
身を捻り、ドクオは刃をかわす。
スティレットをホルスターに収め、
脇を逸れていく剣の柄を掴み取り、跳躍を行う。
直後、熱線が放たれた。
熱線は、ドクオが跳躍を行ったことで照準がずれ、
直撃はせずに、顔の右側へと逸れていった。
しかし、熱線は彼の右目を掠めてしまう。
84 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:05:48.69 ID:Bj3ZqGDy0
(メ"A゚) 「おぉ――――ッ!」
咆哮を上げ、ドクオは右目を焼かれたことに構いもせずに剣を振り上げる。
刃は、ハインリッヒの構えるレーヴァテインを切り裂いた。
赤熱化した刃は銃身を溶断し、銃内に籠もっていたカコログ粒子が飛散した。
だが、カウンターに放たれたハインリッヒの拳に、ドクオは吹き飛ばされた。
地面へと激突しそうになるが、ドクオは空中で身を捻り、
片手を突いてそれをストッパーとする。
アスファルトから火花が走って行き、減速していった。
足を踏ん張らせ、完全に停止したドクオはハインリッヒと再び対峙する。
彼女はドクオの懐に飛び込み、拳を放っていた。
打撃音が響く。
次いで、破砕音が鳴る。
ライジングサンが砕かれ、ドクオの手元から弾き飛ばされていった。
ドクオは身を仰け反らされ、ハインリッヒの追撃の拳が迫る。
右頬に拳を食らったドクオは、大きく仰け反り、
ハインリッヒが蹴りを放つ。脇腹に足が激突し、
倒れて行きそうになるドクオ。
だが、それを許さずにハインリッヒはドクオの足を払う。
85 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:06:38.87 ID:Bj3ZqGDy0
宙へと浮き上がって行く彼を、彼女は追撃。
身を跳ね上げるように起き上がり、
それによって生まれる慣性力を以って膝蹴りを背へと喰らわせる。
打撃音。
いや、強化骨格と肉体が砕けていく異音が鳴る。
(メ"A ) 「がぁ―――ッ」
嗚咽と血液が、吐き出されていく。
ハインリッヒは更に打撃をドクオへと浴びせていき、
止めどない連撃に、彼は為す術も無い。
ただ力無く打撃を受けていくばかりだ。
そして、ハインリッヒの止めの一撃が入る。
上空へと浮き上がったドクオへと、ハインリッヒは長い足によって踵落としを見舞わせた。
アスファルトの地面に沈み込んでいき、蜘蛛の巣のようなひび割れが出来ていく。
その中心に横たわるドクオの表情に、力は無い。
(メ"A ) 「………」
87 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:08:07.08 ID:Bj3ZqGDy0
******
从 ゚∀从 「おい、もう死んじまったのか? えぇ? ダラしねーなおい」
ハインリッヒが、俺の顎を掴んできた。
そうして俺の身体を持ち上げて、自分の正面へと持って行く。
力任せに身体を動かされ、全身が痛む。
激痛だ。
打撃の痕に、銃で撃ち抜かれた痕に、切り裂かれた痕に、
焼き付けられた痕に、人工筋肉を埋め込まれた身体が痛みを得る。
それは、もう限界だ、と、俺に訴えてくる身体の絶叫だ。
……ちくしょう、痛てーな。
ハインリッヒは俺の顔を見ると、笑みを浮かべた。
口の端を釣り上げて、目にだけは変化をつけない、笑み。
从 ゚∀从 「へっ、まだ生きているようだな」
从 ゚∀从 「白い血、か」
ハインリッヒは、俺の体に滴る人工血液を見て、呟く。
笑みを強くしたこいつは牙を剥き出しにして、大口を開けた
俺の首筋に噛みついてきた。
90 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:10:36.44 ID:Bj3ZqGDy0
首に鋭い痛みが走る。
(メ"A ) 「う………」
だが、もう俺には叫び声を上げる体力も残ってはいない。
噛みついてきたハインリッヒは、血を啜り始める。
奴の喉が、音を立てるのを確かに聞いた。
……こいつ、飲んでやがる。
身体から人工血液が抜けて行く、変な感覚を得ながら、
新たな痛みに眉を歪めた。ハインリッヒは、いまだに俺の血を啜り続ける。
一頻り血を吸ったハインリッヒは牙を放し、俺の首を片手で掴んで、
口元に垂れた白い血液をもう片方の手で拭った。
从 ゚∀从 「こんな粗悪品を使わねーと生きていけないような、
哀れな境遇にあっても戦う。不憫だな。無様だぜ」
从 ゚∀从 「今終わらせてやるよ」
そう言うと、俺の首を掴む右手に更に力を込めてきた。
酸素が失われていき、思考が停止していく。
やがて、身体の力も失われていった。
俺の意識は、全て失われた。
身体の感覚も、心も、全てがまっさらになる。
心が、悲鳴を上げる。絶叫をぶつけてくる。
91 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:11:47.41 ID:Bj3ZqGDy0
……あぁ、後悔しか残ってねーな。
俺は、自分の人生から、逃げ過ぎたと思う。
自分から目を背け過ぎたのだと思う。
機械であると言いわけをして、自分のことを裏切ってきたのだと、そう思う。
今更になって、泣きたくなるなんてな……。
……都合のいい奴だな、お前は。
何も見えず、何も感じなくなってきた心は、叫び続ける。
……自分に負けた、か。
心の奥底には自分の悲鳴しか聞こえてこない。
見っとも無い、情けの無い、貧弱な男の悲鳴しか。
俺は何も変わってなどいなかったんだと、思い知らされる。
ある声が聞こえてきた。
聞き慣れた、凛とした女性の声。
騒々しい絶叫の中でも、それは、静かな声ではあるが、
俺の心の中に確かに響いていた。記憶が、揺り動かされる
しかし、俺の身体からは酸素が無くなって行き……
97 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:42:18.10 ID:LXTyxnUYO
さるった。スマン
100 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:45:01.99 ID:Bj3ZqGDy0
******
ビロードが、エクストが、多くの仲間達の亡骸が転がる地下坑道に、
ついにニーソクの兵士が侵入してきた。
仲間達の人工血液を輸血してまで生き延びてきたというのに、
俺はもう、ここで終わりなのかもしれない。
……いや、やっと終わるのか。
侵入してきた黒髪の女が、俺に近づいてきた。
目の前に立って、女は俺に問う。
川 ゚ -゚) 「何故戦う?」
(メ A ) 「それしか出来ないから」
疲れ切っている俺は、素っ気なく答えを返した。
女は、もう一度問いかけてくる。
川 ゚ -゚) 「国を失ったにも関わらずに?」
(メ A ) 「それでも銃を握ることしか出来ない」
……俺には、銃を握ることしか出来ない。
だけども、今はたった一つの俺の長所であるそれも、
気力の失い掛けた俺にはする気になれない。
102 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:46:27.70 ID:Bj3ZqGDy0
右手に握る、エクストが使っていたスティレットを見て、俺は苦笑する。
川 ゚ -゚) 「何故私達に銃を向ける?」
女は、また問いを投げてきた。
俺の返す答えは、単純な物だ。
……敵に相対する理由なんて、守る為でしかないだろうに。
(メ A ) 「ニューソクの敵だったから」
川 ゚ -゚) 「もう戦いは終わった」
川 ゚ -゚) 「ニューソクは敗れた。もはや残るのは敵も味方も無い、人間と人間だけだ」
川 ゚ -゚) 「敵には銃を向ける必要があるが、
敵も味方も無い物に銃をやたらと向けるものではない」
女の言葉は、俺の耳には届かなかった。
いや、聞こえてはいるが、心には響かなかった。
耳に入っては行くが、頭には入らずそのまま抜けていく、そんな感じだ。
俺には、自分の心の内に響く絶叫の方がよく聞こえていた。
(メ A ) 「俺は、銃を向けることしかできない。銃を持つ必要がなかったら、生きる必要も無い」
自分の心の叫びを、この誰とも知らない、
敵であることだけは確かな女にぶつける。
104 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:47:55.65 ID:Bj3ZqGDy0
そして、懇願するように女に尋ねた。
(メ'A`) 「俺の、最後の敵になってくれるか?」
右手で握ったエクストのスティレットを、女へと向ける。
軍服を纏い、腰のベルトには軍刀を差した女に、戦意は見られない。
切れ長の瞳は豪く透明で、何も写していないように思えた。
何も感じず、冷静、冷徹に物事にこなす才女。
この女のことは何も知らないが、強いのだろう、と俺は感じていた。
いや、強くあってくれ、とどこかで望んでいた。
……俺の最後を飾るのに相応しい、立派な兵士であってくれ、と。
(メ'A`) 「手間は取らせない」
透明に思われた瞳には、俺が映っていた。
俺は、酷い恰好をしているようだ。
顔は血塗れ、手も血塗れ、身体は血が滴り、表情には力がない。
それでも、俺の目には、戦意が宿っていた。自分の目にもそう映った。
……自分の最後の戦いを目の当たりにして、戦意が高揚しているのか。
内心に苦笑して、戦争狂め、と自虐する。
105 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:49:18.60 ID:Bj3ZqGDy0
瞳に俺を映した女は、ふっ、と微笑を浮かべた。
川 ゚ ー゚) 「敵になることは容易い。実に分かり易い」
しかしだ、と女は続けて、
川 ゚ -゚) 「私達は敵になることも出来ると言うならば、味方になることも出来るのではないか?
敵と味方に分かれることが出来る。その線引き以前に、私は聞きたいことがある」
川 ゚ -゚) 「お前は何を望む?」
川 ゚ -゚) 「お前は何がしたい?」
川 ゚ -゚) 「お前はどうしたい?」
問いに、俺は銃を女に突き付けたまま答える。
心の内に響く絶叫を、そのまま聞かせてやる。
(メ'A`) 「俺は、終わらせたい。この人生を。
敵も味方も死んでいく人生を終わらせたい。この頭に響く絶叫を止めたい」
(メ'A`) 「ニューソクを守りたかった。ニューソクで普通に生きていきたかった。
ニューソクに住む人に普通に暮らしていて欲しかった」
(メ A ) 「ビロードに、エクストに、戦友達に死んで貰いたくはなかった」
でも、と続けようとしたら、自然と声に力が籠もる。
そして、瞳の奥が熱くなって、胸の奥に何かが突っかかったような苦しさを感じた。
呼吸が苦しい。言葉にするのが、苦しい。
107 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:50:11.15 ID:Bj3ZqGDy0
……辛い
頬を冷たい物が伝っていった。
(メ;A;) 「俺は負けた! 俺達は負けた!!
一つの戦争が終わったことでッ! 俺の、俺の人生も終わった!!」
右手に握ったスティレットの引き金を引く。
女の足元に命中し、砂が爆ぜていった。
遅れて、轟音が坑道内に木霊する。
(メ;A;) 「終わらせてくれ……ここで、本当に終わらせてくれ……後はもう、死ぬだけだ」
川 ゚ -゚) 「まだ終わっていないさ。
銃を握ることしか出来ぬと嘆くのならば、私について来い」
女の、静かだが凛とした声が俺の耳に、心に響いた。
川 ゚ -゚) 「ついて来い。私が新しい戦場を与えてやろう。新しい標的を与えてやろう。
ここで無暗にニーソクと戦い続けるよりも、ずっと効率的な方法を教えてやろう」
川 ゚ -゚) 「ただし、私の力となれ」
川 ゚ -゚) 「立てよ、ニューソク軍人よ、強化兵士よ、亡国の兵士よ。
立てよ、ニューソクに住んでいた者達が、ニーソクと、オオカミと、
テンゴクと、パーソクと、シベリアと手を組んで生きていくために」
109 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:51:40.17 ID:Bj3ZqGDy0
川 ゚ -゚) 「そして力を振るえ。
ニューソク人として多くの者に認められていくために、多くの者を守れ」
川 ゚ -゚) 「私が手を差し伸べてやろう。さぁ、立て、立って戦え。
生きていくために、生かしていくために、共に歩んでいくために。立ち上がれ」
女は、銃を突きつける俺に近づいて、右の手を差し出す。
俺は彼女の目を見て、躊躇した。躊躇った。
でも、彼女の瞳を見ていると、全身に籠もった力や、心に響く絶叫が、
全て無くなって行くように思えた。
そして、あの戦いは既に過去の物であると、そう気付かされた。
――――全てが過ぎ去ったことであるのだと、思い知らされた。
気付けば、俺は右手に握ったスティレットを落としていた。
右手は、そのまま女の右手へと延びていく。
銃の固い感触に慣れた手には、彼女の、クーの右手はあまりにも柔らかすぎた。
111 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:53:26.63 ID:Bj3ZqGDy0
******
川 - ) 「さぁ、立て。立って戦え」
クーに、そう言われた気がした。
いや、頭が記憶していた言葉を、彼女の声で俺に語りかけてきたのだ。
……戦わなきゃなぁ。
瞼を開いて俺の首を締め付ける敵を見る。
从 ゚∀从
俺の身体を作り変えた、科学者が目の前に立っている。
強化外骨格を身に纏って、片手で俺の首を折らん勢いで締め付けてくる。
骨が、強化骨格が軋む音が聞こえてきた。
息が苦しく、残った右手はだらりと垂れ下がっている。
が、
……まだやれる。立って、立って戦える!
力が失われていく身体に、そう鞭を打つ。
垂れ下がった右手を腰のバックパックに伸ばし、ナイフを取りだす。
113 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:55:54.30 ID:Bj3ZqGDy0
右手で握り、折り畳まれた刃を展開させ、
同時にハインリッヒの右手へと叩き込んでいく。
从 ゚∀从 「―――――ッ!」
俺の首を締めあげていた、右手が宙を舞った。
地面へと足を着け、一歩を踏みこんでいく。
ハインリッヒの脇を抜けていく、擦れ違いざまの一瞬に、
持てる全力を以って最速の斬撃を食らわせた。
胴に、脇に、首に、両の腕に、両の足に、赤い線が走る。
直後、四方八方からの銃撃がハインリッヒを襲った。
弾雨を浴び、衝撃を食らって身を仰け反らせていく。
味方の支援射撃のようだ。
だが、俺はこのまま終わらせるつもりはない。
このままハインリッヒが終わるはずもないのだから。
ナイフを放り捨て、俺はスティレットを構える。
……残弾数5発。
115 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:57:04.73 ID:Bj3ZqGDy0
俺は、銃撃を受けるハインリッヒの懐へと、飛び込んでいった。
右手に握ったスティレットの巨大な銃身をハインリッヒの胴へとぶち当てていき、
そのまま、連射する。
从 ∀从 「がぁ……ッ!!」
怪鳥の鳴き声の如く銃声が五つ轟き、
強化外骨格に零距離を以って弾丸が叩き込まれていく。
衝撃に吹き飛ばされ、赤い血を撒き散らしながら地面に激突するハインリッヒ。
俺は、その姿を黙って見据えていた。
倒れた奴の胴には、巨大な銃創が五つ出来ていた。
沈黙が、周囲を支配していく。
俺は、生死を確認しようと、ハインリッヒにゆっくりと近づいていく。
一歩一歩、慎重に。油断なく。
117 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 00:57:58.59 ID:Bj3ZqGDy0
从 ゚∀从 「ハーハッハッハ!ハインリーッヒッ!」
後6歩ほどの距離まで近づくと、ハインリッヒは目を覚まし、
楽しそうに大声を上げて笑いだした。
スティレットの弾丸を5発撃ちこまれた身体で立ち上がり、
从 ゚∀从 「大した威力じゃねーか!! これがお前の答えか!! 絶叫か!! 素晴らしい!!」
徐々に身体に穿たれた穴が塞がって行った。
ちっ、と舌打ちをして、ハインリッヒへとスティレットの銃口を向ける。
(メ"A`) 「強化兵士計画最強の化物め。まだやるか」
从 ゚∀从 「その化物にお前は身体を作り変えられたんだろうが」
从 ゚∀从 「化物に作られたお前は、何だって言うんだ? 化物の子か? 違うだろ?
アタシはただの人間さ。変位臨界遺伝子により進化した、最強の人間」
120 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:02:49.08 ID:LXTyxnUYO
またもやさるった
スマン
121 名前:VIPがお送りします[]:2009/08/09(日) 01:02:54.40 ID:rL2OCki9P
またさるさんかな?
ttp://pk2ch.saneda.com/ 使うと携帯経由で書けるよ!
122 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:07:09.88 ID:LXTyxnUYO
从 ゚∀从 「もっともアタシは人造人間だがね」
(メ"A`) 「………」
从 ゚∀从 「お前は、たかが一兵士に過ぎないお前は、そのアタシに一つの答えを見せた。
国を失った兵士達は数多くの答えを出した。
ギコも、アタシも、お前も、そして、フォックスも。答えを出した」
从 ゚∀从 「いきつく先は、もしかしたら同じなのかもしれないな。お前の答え、見届けてやるよ」
(メ"A`) 「……どうしてだ?」
从 ゚∀从 「フォックスとお前、どちらが勝つか、見届けてやる。
別にお前を高く買ってるわけじゃない。
フォックスとお前の答え、そのどちらかを見届けてやるだけさ」
从 ゚∀从 「アタシらは単なる陽動にしか過ぎない。
行け。早く行け。この戦いが終結する前に」
ハインリッヒはそう言うと共に、中央基地とは正反対の方向へと駆けていった。
瞬きの間に、奴の姿は見えなくなってしまう。
……行くか。そう思い、一歩前へと踏み出す。
124 名前: ◆K8iifs2jk6 [>>121thx!]:2009/08/09(日) 01:09:25.35 ID:LXTyxnUYO
が、
(メ;"A`)「……ッ!」
足に力が入らず、俺はそのまま倒れてしまった。
今、手元にはライジングサンも無く、カコログ粒子の活性化の恩恵は無い。
人工筋肉は、これで元通りの死にかけの状態へ戻ってしまった。
足どころではなく、全身に力が入らない。
……だらしないな。
まだ、戦わなければならないというのに、
戦えなくなってしまった自分に呆れてしまう。
よくここまでやった、とは思わない。
……それは、他人が言ってくれることだ。
俺はまだ、戦わないといけない。
自分の導き出した答えを、果たす為に。
(メ;"A`)「ぐっ……」
苦い声と共に手を伸ばし、
地面に手を突いて立ち上がろうとするが、出来ない。
おまけに、全身に激痛が走って行く。
126 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:11:13.69 ID:LXTyxnUYO
突如、地面が震えた。続いて、金属音が響く。
まさか、と思って周囲を見渡せば、
10機ものAAが増援にやってきていた。
その内の一機が、俺へとゆっくり近づいてくる。
……まずい!
そう思って、慌てて立ち上がろうとするが、身体が言う事を聞かない。
AAは、片足を振り上げて、俺を踏みつけた。
(メ;"A゚)「がぁぁッ!!」
7tもの重量によって圧迫されて、強化骨格が軋みを上げる。
体内を守る防護骨格が破壊されていき、肩から火花が上がった。
次に、脇から火花が上がり、次々と強化骨格から火花が上がって行く。
今の俺に、この足を押し退けるだけの力は残っていない。
128 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:13:06.31 ID:LXTyxnUYO
踏みつけられ、その場から逃れることはできず、
俺に出来ることはただ耐えることだけだった。
しかし、強化骨格が異音を上げていき、俺の骨が砕けていく音が聞こえてきた。
(メ;"A`)「ごめん……」
右手に握る、スティレットを見て、俺は呟いた。
銃弾を食らい、脆くなった左足が爆ぜてしまう。
意識が、徐々に薄れていく。
……ごめん、エクスト。
クー。俺は……
頭の中に思いを浮かべていると、金属が潰れる破砕音が耳朶を打った。
今まで感じたことのない痛みが身体を襲う。
130 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:16:32.09 ID:LXTyxnUYO
******
ドクオを踏みつけていたAAが、破片をばら撒いて倒れていった。
彼は、自分を踏みつけていたものが無くなったのを把握し、
身を転げさせて空を見る。すると、見覚えのある巨体が視界に映った。
それは、巨大な両の腕に、巨大な両の足を持っており、
頭があり、人の形をしていた。
右の腕には鋭い杭が付いており、杭は現在虚空を貫いている。
人型のそれは、こちらを上体を傾けるだけで見た。
「ドクオさん! 大丈夫ですかお!!」
聞き覚えのある青年の声が、外部スピーカー越しに響く。
声を返そうとするが、そんな間もなく人型はドクオに背を向けた。
直後、人型へ向けてAAが飛びかかってくる。
人型は、杭を打ち付けてAAを破壊した。
金属の拉げる、耳障りな音が戦場に響く。
次いで、慌ただしいエンジン音が聞こえてきた。
装甲車が猛スピードでドクオへと迫ってきていたのだ。
見覚えのある装甲車は、彼の目前で停車し、ハッチを開く。
すると、過去にドクオへ手を差し伸べた者が、再び手を差し伸べてきた。
132 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:18:41.36 ID:LXTyxnUYO
川 ゚ -゚) 「乗れ!」
車内から身を乗り出し、クールは彼に短い言葉で言った。
(メ"A`) 「あぁ……」
ドクオは弱々しく手を差し出し、彼女はその手を引っ張る。
車内へと引き寄せられ、ドクオは空いた席に座らされた。
彼が車内に搭乗した途端に装甲車は発車していく。
ぐったりと背もたれに背中を預け、ドクオは溜息を吐き、
(メ"A`) 「ありがとう……で、あれはなんなんだ?」
川 ゚ -゚) 「ブーンだ。以前より制作していた駆動機甲服が完成してな。急遽配備させた」
(メ"A`) 「あいつ……やればできる子だったんだなぁ……」
川 ゚ -゚) 「それよりな……」
呟いたドクオに、彼女は右頬へと平手打ちを食らわせた。
過去の負傷で人工皮膚となった頬は、張りのある小気味の良い音を鳴らした。
川 ゚ -゚) 「勝手に出撃するな。お前に命令を下すのは私だ。
その体で生き残っているなど、奇跡に等しいことなのだぞ」
134 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:19:49.58 ID:Bj3ZqGDy0
(メ"A`) 「命令は下ったよ」
川 ゚ -゚) 「私以外の命令に従うな。お前に階級など、無いのだから。
私の武器として、お前はここに置かれているのだから。
強化骨格よ、違ったか? 兵器として私に付き従うと決めたのはお前だったろう」
(メ"A`) 「悪いな。それはもう終わりだ。俺は、どうしても守りたくなったんだよ。
ここにいる人達を。ここに住む人達を。ここで戦う仲間達を。死なせたくなかった」
川 ゚ ー゚) 「………そうか」
ドクオの言葉を聞き、クールは微笑を浮かべた。
が、
川 ゚ -゚) 「だが、身の程を弁えておけ。無駄死にするところだったぞ」
微笑を消して、クールはドクオを咎める。
(メ"A`) 「でも、俺が出ていなかったら……」
_、_
( ,_ノ` ) 「お前は俺達を舐めすぎだ。ニーソクはニューソク国解体戦争で、
奴らの相手を散々してきたんだ。お前なんぞいなくても、
援軍が来るまでの時間ぐらい稼ぐだろうさ」
136 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:20:39.63 ID:Bj3ZqGDy0
_、_
( ,_ノ` ) 「まっ、お前が仲間を守ってくれたことには変わりないがね」
ドクオの言葉を、渋澤が遮ってそう言った。
次いで、クールが口を開く。
川 ゚ -゚) 「約束したはずだ、ニューソク人が生きていく為に、人並みの生活をする為に共に戦おうと。
その為に、ニーソクを守ると。ニーソクの人々に認められるために戦う、と」
川 ゚ -゚) 「望んだのはお前だ。提案したのは私だ。
先にリタイアされては困る。何より、お前が死ねば私は悲しい」
(メ"A`) 「ゴメン……俺は、まだ戦うよ」
謝り、ドクオは言葉を放つが、咳きこんでしまい、血を吐きだした。
渋澤とクールがドクオに近寄るが、ドクオは大丈夫だ、と手で制して、
(メ"A`) 「中央基地に向かってくれ、こいつらは陽動の筈だ。
基地内に敵が紛れ込んでいるかもしれない」
138 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:21:30.22 ID:Bj3ZqGDy0
******
ニーソク軍の基地内を駆けていく。
私が目指すは、モララー・マタリがいるはずである司令室だ。
両腕でXM8を抱えながら、全力で走る。
強化外骨格のパワーアシストを得たことで、
生身の時とは比べものにならない速度を出している。
基地に侵入してから、数分と立たずに司令室の扉の前へと辿り着いた。
私がその扉の前に立つと、左右に分かれて開いていった。
司令室に侵入すると、私の真っ正面にモララーは立っていた。
濃緑色の軍用コートを羽織り、私と正反対の方向を見る奴は、隙だらけだ。
爪'ー`) 「ニューソクの復活の為、世界のパワーバランスを戻す為、死んで貰う」
XM8を構えて、私はモララーへと発砲する。
不意に、奴がこちらへと振り返る。
……遅い!
そう思うが、次に浮かぶ思いは、
139 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:22:12.81 ID:Bj3ZqGDy0
……違うッ!? 貴様は!!
焦りであった。
私の視界の端で何かが煌めき、両腕に亀裂が走った。
遅れて鋭い痛みを感じて血飛沫が舞う。
XM8は両断されてしまい、私は何が起きたか気付く。
軍刀を構えた女が、飛び出してきたのだった。
……貴様もか!!
彼女が私の視界を横切ると、奴がこちらにスティレットを向けてきていた。
隻腕の身でスティレットを構える奴は、
(メ"A`) 「もういい加減、俺達の負けを認めないか? フォックス大佐」
私を撃ち抜いた。
141 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:23:00.55 ID:Bj3ZqGDy0
*******
司令室の床へと、フォックスが倒れる。
胴に巨大な銃創の出来たフォックスに、
クールは喉元へ軍刀“空海”の刃を突き付けた。
爪'ー`) 「貴様のような一兵卒にこうも邪魔されるとはな。
貴様さえいなければ我々がここを奪い取っていた物を」
フォックスは、スティレットを放ったドクオを見て言う。
爪'ー`) 「貴様が如きたった一人の裏切り者が、貴様如きが私の手に噛みついてくるとは、
いや、首を食い破りに来るとは。開戦当初は全く予想できなかったものだ」
爪'ー`) 「あの戦争は終わった、しかし、ニューソクはまだ失われてはいない。
ニューソク軍人全ての心にニューソクが消えぬ限り、ニューソクは滅びない。
抗戦を続ける、抗い続けて行く。己が滅びぬ限りな」
(メ"A`) 「もう、銃を手に取る必要はないんだ。ニューソクは、
それしか知らなかった。別の戦いを知らずにニューソクは滅んだ。
だからこそ滅んでいったんだ」
爪'ー`) 「何をだ!?」
(メ"A`) 「普通に生きていくことだよ」
フォックスは、己の心中を言い当てられたような気がして、驚いた。
自分が望んでいた物を、言い当てられて。
そして、己の敵が、裏切り者が自分の望んでいた物を戦いと呼んだことに。
142 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:23:41.43 ID:Bj3ZqGDy0
川 ゚ -゚) 「生きていくと言うことは、戦いの連鎖だ。
戦うべき敵は、たくさんある。時には、己とも」
フォックスは、クールとドクオの、子供のような戯言に、
くく、と忍び笑いをした。
小学生に言い聞かせるような道徳を自分に聞かせる、
彼等が可笑しくて、
爪゚ー`) 「ハハッ! ハハハハハ!!」
大声を上げて笑いだした。
腕を伸ばして、自分の喉元を捉えている空海の刃を掴み取り、
自らの喉元へと突き刺していった。
血が飛沫を上げるが、フォックスはドクオを見据える。
爪゚ー`) 「―――――」
言葉にならない声を吐き出して、フォックスはドクオに顔を向けたまま死んでいった。
(メ"A`) 「………」
ドクオは、フォックスへと無言で近づいていき、
目尻を下げて、悲しげな瞳でフォックスを見下ろす。
(メ"A`) 「戦いを始めるのも俺達の義務なら、戦いを終えるのも俺達の義務だ……」
フォックスの亡骸に向かって呟くと、彼は崩れ落ちて行くかのように倒れていった。
危うく床にぶつかりそうになるが、即座にクールがドクオを抱えて、彼を助ける。
144 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:24:55.15 ID:Bj3ZqGDy0
片膝を突いて彼女は座り込み、自分に背を預けさせる。
(メ"A`) 「ゴメン」
川 ゚ -゚) 「大丈夫か?」
(メ"A`) 「ここまでかもしれないな」
クールはドクオの言葉に身を強張らせ、
何かを言い掛けるが、それよりも早くドクオは言葉を繋げる。
荒い息で、弱々しい声で。
(メ"A`) 「君は俺に、国と人を守る大切な仕事を与えてくれた。
ニューソクの人たちは俺を憎むかもしれないけど、
俺の働きはきっと五大国連合に認められるはずだ」
(メ"A`) 「ニーソクを守る為に戦った亡国の兵士、と。多少ではあるかもしれないけど、
ニューソク人に対するイメージは変わるかもしれない。
ニューソク人達の待遇が少しは変わるかもしれない。
ニューソク人全てが戦争を望むのでは無いのだと、偏見は無くなるかもしれない」
(メ"ー`) 「君は、俺に大切な役割を果たさせてくれた。
俺に人として生きるチャンスを与えてくれた。ありがとう」
微笑を浮かべてドクオが言う。
無表情ではあるが、どこか心配そうな瞳をしているクールに。
川 ゚ -゚) 「まだまだお前には働いてもらうさ。感謝などしなくてもいい」
146 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:26:21.48 ID:Bj3ZqGDy0
川 ゚ -゚) 「これは私の、一方的な約束事だったのだから。
私はお前に何もしてやれてない。私がお前に何をしたというんだ」
ふっ、とドクオは笑みの混じった吐息をして、
(メ"A`) 「クーは俺をここに連れてきてくれた。ニーソクを見せてくれた。
俺が唯一人の役に立てる新しい戦場に連れてきてくれた。それだけで充分」
(メ"A`) 「それに、こうして抱きしめられるのが、すごく気持ち良いんだ……良い匂いがするな、君は」
川 ゚ -゚) 「汗と血の臭いが混じっているんだ。良い匂いの筈がないだろう。
私よりもいい女など沢山いる。お前はそいつの下で死ね。そいつに看取られて死ね。
こんなところで死ぬな。お前にはまだ、多くの幸福が待っている」
(メ"A`) 「充分だ。充分過ぎるほど今は幸せだ……」
ドクオは目を瞑っていき、
(メ"A-) 「疲れたよ……クー」
そう呟いた。
クールは眉尻を下げて、静かに言う。
川 - ) 「寝るな。ドクオ」
しかし、彼はそれには応えず、誰ともなく呟く。
147 名前: ◆K8iifs2jk6 []:2009/08/09(日) 01:27:18.27 ID:Bj3ZqGDy0
(メ"A-) 「故郷のオカが見える。懐かしい……」
(メ"A-) 「エクスト……お前もいたのか。ビロードも、ギコも、みんな、ここにいたのか……」
ドクオは、ふっ、と笑って、
(メ"∀ ) 「近いようで……遠かったな……」
呟いた。
彼の身体から力が抜けていくのを、クールは感じた。
顔には大きな火傷が右目を覆っており、胴は穿たれ、切られ、
左腕は既に無くなり、左の足は砕かれている。
傷から流れ出た血液は既に固まってしまっているが、
未だに出血が止まることは無い。
切り刻まれ、全身を撃ち抜かれたドクオが、動かなくなった。
しかし、ドクオの顔は、クールが今までに見たことも無いような、
素晴らしい、人間らしい柔らかい笑みを浮かべていた。
川 - ) 「………」
ドクオの笑顔を見たクールの拳は、わなわなと振るえていた。
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- 2011/10/06(木) 14:38:23|
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