川 ゚ -゚)そして二人は再び出会うようです 後編
おまけつき。
まあ蛇足な内容だけど良かったら。
まあ蛇足な内容だけど良かったら。
1.
モララーたち“エイトボール”が誘拐計画を企むより十数年前。
父親を鉱山の事故で失ったモララーは、より稼ぎの多い仕事に転職していた。
ボロ車の助手席に乗って夜の街を走っていると、運転席の男が話しかけてきた。
(・∀ ・)「まったくお前はすげえ奴だよ。たった二年でここまでのし上がっちまうんて」
( ・∀・)「そりゃどうも。で、俺たちはどこへ向かってんだい?」
(・∀ ・)「ここらの売人の間じゃお前が売上ナンバーワンだそうだ。
クックルさんに一度挨拶しといた方がいいぜ、顔を覚えてもらえよ」
( ・∀・)「お気遣いをどうも」
(・∀ ・)「いいってことよ。お前を使ってる俺も鼻が高いしな」
そして二人は再び出会うようです 後編
2.
車は町はずれにある安っぽい酒場の前で止まった。
中にはビリヤードの台が並び、カウンターでまばらに客が飲んでいる。
先輩の売人はモララーを連れ、ビリヤード台の一つに連れて行った。
( ・∀・)
モララーは途中、空いている台に置かれたままのボールを見下ろした。
そのうちの一つをこっそり手の中に握り込む。
(・∀ ・)「どうも、クックルさん」
( ゚∋゚)「ん?」
玉の並びを見ていた男が顔を上げた。
キューを肩に担ぎ、煙草を咥えている。
台の周囲には他にも男が数人いて、こっちを見ている。クックルの取り巻きのようだ。
3.
(・∀ ・)「こいつが前に話した奴です」
( ・∀・)
( ゚∋゚)「ああ、売上ナンバーワンか。期待してるぜ、まあ奢るから一杯飲んでけよ」
( ・∀・)「どうも」
( ゚∋゚)「マスター、このボウヤに一杯飲ませてやんな」
クックルが視線をカウンターにやった瞬間、モララーはその場から一歩踏み出した。
手の中に握り込んだボールを振り上げ、クックルの後頭部に全力を込めて叩き込む。
( ゚∋゚)「!?」
一撃で頭蓋骨が陥没するのを感じた。
台にうつ伏せに倒れた彼に圧し掛かり、モララーは殴り続けた。
一度振り下ろすごとに湿った破砕音が酒場に響く。
返り血を顔面に浴び、クックルの頭部が完全に変形してなお、手を止めない。
4.
( ・∀・)ゼェゼェ ゼェゼェ
どのくらいそれが続いただろうか。
誰も何も出来なかった。
何一つ理解できないまま、すべてが進行していた。
ただ一人、モララーだけがこの凍り付いた舞台の上で自由に演じていた。
血に飢えた暴君の役を。
( ・∀・)「今日から俺がお前らのリーダーだ。文句があるか?」
(・∀ ・;)
沈黙を肯定と受け取り、モララーは満足げに頷いた。
手の中の血まみれのボールを台に放り出す。
エイト
8の玉だ。後にこれがリーダーを新たにした組織の名となる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
5.
モララーは寝室で鏡を見ていた。
上半身裸で、左肩に刻み付けたエイトボールの刺青を眺めている。
右手でそれに触れる。
( ・∀・)「もう少しだ……」
服を着、外に出る。
流石兄弟に運転させ、町を走らせた。
途中、大きな橋に差し掛かった時、車を停めて歩道に出る。
( ・∀・)「携帯を」
( ´_ゝ`)「ほい」
まったくの第三者名義の携帯電話だ。
モララーはそれを手に取り、ボタンをプッシュした。
呼び出し音が鳴っている間、マイクにボイスチェンジャーを押し当てる。
6.
( ・∀・)「金は用意出来たか?」
ジョルジュ邸では主である彼がその電話を取った。
目配せし、逆探知装置の前に控えている捜査官に合図を送る。
_
(;゚∀゚)「えっ?! あっ、ああ、もう少し待ってくれ!
そんな大金一気には用意出来ない!」
( ・∀・)「あと三日待つ。三日だ。
それを過ぎたら一日ごとにガキの指を切り取ってそっちに送る」
_
(;゚∀゚)「十億なんて金はそうそう現金化出来るものじゃないんだよ!
あと三日じゃせいぜい五千万が限界だ」
( ・∀・)「まあ、せいぜい努力することだ。また連絡する」
その時、横からジョルジュの妻が割り込んできた。
(;、;トソン「待って!! あの子の声を聞かせて頂戴!」
7.
_
(;゚∀゚)「こ、こら、トソン!」
( ・∀・)「ガキが生きてる証拠か? 写真を送った。まあ待ってろ、すぐ届く」
電話を切ると、モララーは携帯を川に放り捨てた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日もクーがツンに絵を教え、ツンはクーに字を教えていた。
川 ゚ -゚)「“わたしの名前はクーです。ニューソク生まれの24歳です。
好きなものはチリソースをふんだんに使ったタコスです。”
どうよ」
クーが自慢げに描き終えた作文を、ツンが採点した。
眉にしわが寄る。
8.
ξ ゚⊿゚)ξ「大体いいけど、これじゃ逆だよ。“タコスを使ったチリソース”になってる」
川 ゚ -゚)「む、そうか」
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしの絵は?」
クーはツンの自画像を受け取り、眺めた。
川 ゚ -゚)「かわいく描けてるじゃないか」
ξ ゚ー゚)ξ「ん。それからね、もう一枚描いてるの……」
川 ゚ -゚)「何だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「ないしょ!」
独房の外で誰かの声がする。
クーは彼女に絵を返し、一端外に出た。
( ・∀・)「なんだ、中に入ってたのか?」
川 ゚ -゚)「ちょっとね。仕事はどう?」
9.
( ・∀・)「順調だ。ちょっと外に出ないか?」
川 ゚ -゚)「いいけど」
クーからもモララーに話したいことがある。
一度房内に戻り、ツンに画帳と鉛筆数本を託した。
川 ゚ -゚)「残りは宿題にしとこう。またな」
ξ ゚⊿゚)ξ「またね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日は聖人の生誕を祝うカーニバルで、町には大勢の人が繰り出していた。
夕方から始まり、夜中に最高潮を迎える。
今はまだ日が暮れ始めたばかりで、盛り上がりはこれからというところだ。
(´<_` )「売人どもは大わらわだろうな。今日はクリスマス商戦みたいなもんだ」
10.
( ´_ゝ`)「綿あめがヘロインで出来てりゃなー」
('A`)「お前吸い過ぎだぞ。そのうち鼻血出すぜ」
いつもの三人が外の車の中で待っていた。
モララーが乗り込もうとすると、クーがそれを引き止めた。
川 ゚ -゚)「どこ行くの?」
( ・∀・)「家だよ。話したいことがある」
川 ゚ -゚)「お祭りを見て行かない? きっと楽しいよ」
( ・∀・)「遊びじゃないんだ」
川 ゚ー゚)「渋滞するからさー。ほら、歩いてこ。きっと楽しいって」
モララーの腕に抱き付き、強引に引っ張っていく。
彼はすぐに抵抗をやめ、言われた通りにした。
(´<_` )「おいおい、どこ行くんだい?」
11.
( ・∀・)「一緒に来いよ。一人残って、連絡したら車を回してくれ」
( ´_ゝ`)「んじゃ俺が」
('A`)「ジャンキーに運転を任せられるかよ、俺が残る」
(´<_` )「へっへっへ、どうせヘロインやる気だったんだろ。諦めな」
( ´_ゝ`)「ちぇっ」
ドクオが残り、流石兄弟がついてきた。
お邪魔にならないよう、少し離れたところを歩く。
それからモララーとクーは恋人同士みたいに祭りを見て回った。
川 ゚ -゚)「ん、あれ買って」
( ・∀・)「はいはい」
屋台の軽食を食べたり、射的をやったりして過ごす。
悪魔の看板にボールを投げ付けるゲームではモララーが満点を出し、周囲の喝采を浴びた。
12.
川*゚ー゚)「すごいな、投擲兵になれるよ!」
( ・∀・)「よせよ」
(*゚ー゚)「おめでとー。はい、これ商品のロザリオ。あんたは悪魔殺しの英雄だよ!」
モララーはクーにロザリオをかけてやった。
川*゚ -゚)「あんまり神様は信じてないんだけどな」
と、言いながらも彼女は嬉しそうだった。
( ・∀・)「いいんじゃないか。似合うぜ」
川*゚ -゚)「ありがとう」
( ・∀・)「いいんだ、このくらい」
久し振りに子供のころに戻ったように思え、二人は楽しい時を過ごした。
あっという間に夜になった。
13.
噴水の縁に腰を下ろした二人は火照った体に瓶ビールを流し込んでいた。
向こうでは夜半を迎えた祭りが大変な賑わいを見せている。
川 ゚ -゚)「あー、うめえ」
( ・∀・)「おっさんくさいな」
このあたりはそれほど人通りもなく、会話が出来るくらいには静かだ。
川 ゚ -゚)「で、話って?」
( ・∀・)「父さんのことだ」
二人の顔の中で表情がうつろい、消える。
( ・∀・)「俺の父さんがどんな死に方したか、おぼえてるだろ」
川 ゚ -゚)「うん」
( ・∀・)「これまで俺を駆り立てていたものは復讐心だった。世の中全部に対するな」
14.
( ・∀・)「俺はがむしゃらに動き回って、それで今はこうして金と地位を手にしてる。
だけど、つい最近のことだけど、不安になったんだ」
川 ゚ -゚)「不安って?」
( ・∀・)「本当にこれで何かが変わったのかって。
俺と、世界。両方とも同じままだ」
モララーはクーの顔を見つめた。
( ・∀・)「どちらかが変わる必要がある。
俺は世界が変わるのを待ち続けたけど、もうそれは諦める」
川 ゚ -゚)「よくわかんないな。わたしにもわかるように言ってよ」
( ・∀・)「金とか、そんなものじゃない何かを手に入れたい。
俺は変わるよ。俺が変われば、世界を変えられる力が手に入ると思う」
クーはドキドキしながら聞いた。
15.
川 ゚ -゚)「ギャングをやめる気?」
( ・∀・)「ああ。この仕事でおしまいだ」
クーは喜びのあまりモララーに抱き付いた。
川*゚ ヮ゚)「嬉しいいいいいいい!!」
(;・∀・)「あっ、おいバカ!?」
二人はもつれあって噴水の中に倒れ込んだ。
派手に水飛沫が上がる。
(;・∀・)「ぶはっ! お前何考えてんだよ、まったく!
あーあ、ケータイもダメだこりゃ」
びしょ濡れになって噴水の中で起き上がると、クーは構わず再びモララーに抱き付いた。
川*;ー;)「わたしはあんたがギャングをやめるって言ってくれるの、ずっと待ってたんだよ」
16.
川*;ー;)「嬉しい。本当に嬉しい……
( ・∀・)「……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーは常に携帯電話を三~四個持ち歩き、数日使うごとに捨てている。
所在地を特定されることを防ぐためだ。
その日も見ず知らずの誰かの名義で登録されている携帯で電話をかけた。
( ・∀・)「俺だ。どうだ?」
(´・ω・`)「保険会社が出せるのは二億二千万だそうだ。まあ、うまく行った方だろう」
( ・∀・)「くそ……予定じゃ三億だった筈だぞ」
(´・ω・`)「安心しろって、あんたの取り分は減らさないよ。
俺の方でジョルジュと話をつけて残りを分配するから」
( ・∀・)「ジョルジュは何か言ってるか?」
17.
(´・ω・`)「あの小心者は企みが漏れないかそればっかり気にしているよ。
まあ、あいつのことは任せておけって」
( ・∀・)「わかった。もうこれから先、連絡は出来ないぞ」
(´・ω・`)「わかってる。じゃあな」
ショボンは電話を切った。
ここはジョルジュの寝室で、目の前には彼がいる。
_
( ゚∀゚)「どうだ」
(´・ω・`)「予定通りですとも」
_
(;゚∀゚)「なあ、本当に大丈夫なのか? あいつらはギャングだぞ、報復されたりしたら……」
(´・ω・`)「二億三千万を三等分したのではとても足りないんだからしょうがない。
あなたの横領の総額は一億八千万でしょう?
わたしだって当然の権利として、働き相応の報酬が欲しい」
_
( ゚∀゚)「……」
18.
・ ・ ・ ・ ・
(´・ω・`)「だから三等分では足りないんですよ。三等分では、ね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
数日後、自宅で目覚めたクーは階下に降りていった。
リビングにはモララーしかおらず、どこかに電話をかけているところだった。
( ・∀・)「百挺か、少し足りないな。倍は欲しいんだが。いや、金なら用意するよ」
川 ゚ -゚)「おはよ」
( ・∀・)「おう。……ああ、いや、何でもない。また連絡する」
川 ゚ -゚)(百挺? 何の事だ?)
モララーは電話を切った。
( ・∀・)「金とガキを交換する日が決まった。明日だ」
川 ゚ -゚)「急だな」
19.
( ・∀・)「俺と流石兄弟で行く。お前はドクオと残れ」
川 ゚ -゚)「ん? あんたも行くの?」
クーはちょっと驚いた。親玉自ら出動とは。
( ・∀・)「ああ。絶対に成功させなきゃなんねえからな」
川 ゚ -゚)「わかった。気を付けて」
( ・∀・)「ああ。ガキに何にも持って行かせるなよ」
食卓に残されているサンドイッチの欠片を食べながら、クーはふと言った。
川 ゚ -゚)「この仕事が終わったらさ……」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ー゚)「一緒にどこかに行こうよ。カリブ海とかさ。お金あるんでしょ?」
( ・∀・)「まあな」
川 ゚ー゚)「約束だからね」
20.
( ・∀・)「ああ」
モララーが何か煮え切らないような態度なのが少し気になった。
普段なら隠し事をしているのだろうと疑うところだが、多分彼も緊張しているのだろうと
クーは思った。
仕事が成功するかどうかの瀬戸際なのだ。
食事を終えるとツンの待つ独房へ向かった。
川 ゚ -゚)「よう」
ξ ゚⊿゚)ξ「お姉ちゃん」
ベッドに腰を下ろし、すっかり打ち解けた彼女とお喋りする。
川 ゚ -゚)「お前の両親が金を払うってさ」
ξ ゚⊿゚)ξ「!」
川 ゚ -゚)「良かったな。家に帰れるぞ」
21.
クーはツンの頭を撫でた。
ツンはもじもじしいている。
ξ ゚⊿゚)ξ「あのね、あのね……」
川 ゚ -゚)「ん?」
ξ ゚⊿゚)ξ「さらわれて、閉じ込められて、すごく怖かったけどね、だけど……」
川 ゚ -゚)「何だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「いいこともあったよ」
川 ゚ -゚)「……」
ξ ゚⊿゚)ξ「絵を教えてもらって、それで……友達ができたの。初めての友達」
川 ゚ -゚)「わたし?」
ツンは頷いた。
ξ ゚⊿゚)ξ「わたし外国人だったから、学校で誰とも友達になれなくって……」
22.
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしの国は嫌われてたから」
川 ゚ -゚)「そうか……」
ξ ゚⊿゚)ξ「お父さんとお母さんは喧嘩ばっかりしてるし」
ツンはかつて誰にも話したことがないであろう、自分が置かれている状況の苦しさを
ゆっくりと吐露した。
多分、これまで相談に乗ってくれるような人が誰もいなかったのだろう。
川 ゚ -゚)(わたしと一緒か……いや、わたしにはモララーがいたもんな)
モララーに昔の彼に戻って欲しかった理由は色々ある。
昔は優しく、誠実で、誰にでも分け隔てせず付き合う気のいい働きものだった。
そして何より、この世でただ一人絵描きになりたいというクーの夢を認めてくれた人でもあった。
川 ゚ -゚)「辛かったな」
ξ ゚⊿゚)ξ「ん……」
23.
ツンの肩を抱くと、彼女はこっちに寄り掛かってきた。
ξ ゚⊿゚)ξ「もう会えない?」
川 ゚ -゚)「うん、まあ……無理かな。寂しいけど」
ξ ;⊿;)ξ
川 ゚ -゚)「泣くなって。泣くな。今夜は一緒にいてやるから」
クーはシャツの裾でツンの眼元を拭ってやった。
会話が途切れ、沈黙が落ちる。
ツンはふとベッドの下から画用紙を一枚、取り出した。
ξ ゚⊿゚)ξ「見て」
川 ゚ -゚)「ん。どこの絵だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしが一番好きな風景。まだ描きかけなの」
イチョウの木の並木通りの、描きかけの絵。
24.
ξ ゚⊿゚)ξ「いつかお姉ちゃんとね、いつか……」
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ「一緒に歩きたいな」
川 ゚ -゚)「ん。わかった、約束するよ」
ξ*゚⊿゚)ξ「ほんと?!」
川 ゚ -゚)「ああ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その晩、二人は一緒に眠った。
だがツンは寝付けず、一人起き出した。
川 - )「Zzzz」
ξ ゚⊿゚)ξ
クーは眠っている。
25.
ツンは静かにベッドから降り、画用紙を拡げた。
窓から差し込む月明かりを頼りに、鉛筆を走らせる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝、クーは三つの決意を固めた。
一つは絵描きになる夢を今度こそ叶えること。
二つ目はいつかツンに再び会いに行くこと。
そして最後の一つは……
川 ゚ -゚)(モララーと結婚しよう)
今初めて、自分の中のすべての霧が晴れた。
自分はモララーを愛している。昔からずっと、かけがえのない男だった。
血の繋がりはほとんどないから、一度離縁して兄妹の関係でなくなって、それから……
約束の時間が来た。
26.
独房のあるマンションに、弟者が運転する車がやってきた。
モララーと兄者が玄関にやってくる。
( ・∀・)「クー、連れて来い」
川 ゚ -゚)「じゃあな」
ξ ;⊿;)ξ「うん」
ツンを強く抱き締め、耳元に囁きかける。
川 ゚ -゚)「いつか必ず会いに行く。待ってて、次会うその時は、わたしは絵描きになってるから」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん。約束だよ」
(´<_` )「おーい、まだか? 時間に遅れちまうぞ」
外で弟者がクラクションを鳴らしている。
クーはツンの手を引いて外に連れ出した。
モララーと兄者が迎える。
27.
川 ゚ -゚)「大事に扱えよ。イジメたら許さないぞ」
( ・∀・)「わかってるって。大事な商品だからな」
( ´_ゝ`)「来な、こっちだ」
ξ ゚⊿゚)ξ「あのね、お姉ちゃん……」
川 ゚ -゚)「ん?」
ξ ゚⊿゚)ξ「ううん、何でもない」
ツンは何度も振り返ってクーを見ていたが、やがてワゴン車の中に消えた。
リアシートのウィンドウが開き、モララーが顔を出す。
( ・∀・)「終わったら連絡する。家で待ってろ」
川 ゚ -゚)「ほい。ねえ、帰ってきたら大事な話があるの」
( ・∀・)「何だ?」
今ここで言うなんて、それはちょっとロマンがない。
28.
クーは笑って言葉を濁した。
川*゚ ー゚)「えっと……帰って来てからね」
クーは車を見送り、やがてその姿が見えなくなると、パシリを呼んで車を回させた。
複雑な気分だ。
ツンのことは名残惜しくもあり、しかし今夜結婚の告白が控えていることもあり……
自宅に戻ると、ドクオが一人待っていた。
('A`)「車を盗むのとセックスとどっちが気持ちいいかって?
車を盗みながらするセックスさ! やべ、俺童貞だった」
相変わらず演技の練習に余念がないようだ。
川 ゚ -゚)「またやってんの?」
('∀`)「よう! へへへ、俺、ボーナスが出たらハリウッドに行くんだ」
29.
川 ゚ -゚)「何しに?」
('∀`)「映画のオーディションを受けまくるんだ。ギャングから足を洗うよ」
川 ゚ -゚)「へー。まあ、頑張ってね」
椅子に座ってテレビを眺めながら、ぼんやりと彼のことを考える。
指輪くらい用意しておくべきだっただろうか……いや、それは男女の立場が逆かな?
川 ゚ -゚)「ねえ、女の方からプロポーズするのって変かな?」
('A`)「あ? いいんじゃねえか別に。誰かにする予定でもあんのか?」
川*゚ -゚)「いや、ちょっとね」
('A`)「モララーにする気ならやめとけよ」
川 ゚ -゚)「うーん、確かにいいお父さんって感じじゃないけどね。
でも、あいつもギャングから足を洗うって言ってたよ」
('A`)「俺も聞いたよ。だってあいつはギャングよりも……あっ」
30.
ドクオは「しまった!」という顔になった。
すぐに取り繕い、何事もなかったように練習に戻るが、クーは見逃さなかった。
川 ゚ -゚)「何?」
(;'A`)「あ? 何が?」
川 ゚ -゚)「ドクオ、言わせてもらうけどお前は演技が下手だ。絶望的に」
(゚A゚)「うるせー! ほっとけよ!」
川#゚ -゚)「だから誤魔化しても無駄だ! モララーが何を言ってたんだ?!
ギャングよりも、何?!」
唐突に不安が暗雲となって心を覆い尽くしてゆく。
あの時のモララーの顔だ。やっぱり何か隠していたのか。
クーはドクオに詰め寄った。
(;'A`)「いやあの俺が言ったってわかったら、おしおきされちゃうし」
31.
川#゚ -゚)「いいから言え、何だ、どういうことだ! モララーは何になる気なんだ!」
(;'A`)「勘弁してくれ」
クーは食卓に出しっぱなしの拳銃を手に取った。
銃口をドクオに向け、親指で撃鉄を跳ね上げる。
カチリ。
川 ゚ -゚)「言うんだ」
(;'A`)「おおおおお前に俺が撃てるのかよ?」
川 ゚ -゚)「あんたにレイプされそうになったって言えばモララーは信じるかもね」
両手を上げて降参のポーズを取ったドクオの顔色は次々に変わった。
やがて観念したのか、大きなため息とともに喋り出す。
('A`)「あいつはイカレてるぜ。第二のチェ・ゲバラになる気だぞ」
川 ゚ -゚)「どういうこと? 誰それ?」
32.
('A`)「知らないのか。まあいい。鉱山夫を扇動して暴動を起こすんだとよ」
川;゚ -゚)「何だって……?」
朝のモララーの電話を思い出す。
“百挺”。“倍は欲しい”。相手は武器商人か?
('A`)「一週間後に鉱山の持ち主の会社の社長が視察に来るだとかでな。
そのタイミングに社長を人質に取って鉱山に立てこもるんだとよ。
人民の搾取を断ち切って世界中にこのことを知らせるんだとか何だとか……」
川;゚ -゚)「何だそれ?! いつ聞いた?!」
('A`)「昨日の夜だよ。俺と流石兄弟だけ集めていきなり演説を始めてよ」
川;> -<)(何てこった……何てこった!! 変わるって、そういうことなの?!)
クーは家を飛び出し、自分の車に乗った。
都心を目指してアクセルを踏み込む。
33.
('A`)「あ、おい! 今から行ったって……あーあ、行っちまった」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーは都心に向かう途中、電話ボックスに入った。
その隣で兄者が時間を計る。
逆探知で居場所を特定される一分以内に電話を切る為だ。
( ・∀・)】「ニューソク公園に行って、北の男子トイレの三番目の個室に金を置け。
俺たちが金を回収し安全な場所まで来たら人質を解放する、いいか?
金はみんな旧札で小額紙幣だぞ」
_
( ゚∀゚)】「わ、わかった。娘はどこで解放するんだ?」
( ・∀・)】「解放したら知らせる」
_
( ゚∀゚)】「待ってくれ、娘の声を……」
( ´_ゝ`)(あと二十秒だぜ)
34.
( ・∀・)】「無事だ。安心しろ。いいか、追跡されてるとわかったらすぐガキを殺すからな」
モララーは電話を切り、車に戻った。
公園へ向かう。
休日なので人通りは多く、家族連れやカップルで賑わっている。
そんな中に一般市民を装った警官の姿がちらほらと見て取れた。
(´<_` )(やれやれ、モロバレだぜ。あいつらあれで変装してるつもりか?)
金の受け取り役は弟者に任されていた。
車を降り、刑事たちの視線を感じながらトイレに入る。
三番目のトイレには鍵がかかっていた。
ナイフでロックを解除し、中に入ると、確かにバッグはあった。
( ・∀・)「バッグを変えて中身だけ移せ。発信機がついてる」
35.
事前にモララーはそう言った。
(´<_` )(へへへ、誘拐犯と刑事と被害者がグルだなんて誰も思わないだろうな)
持参したバッグに中の札束を詰めかえる。
これも要求通りすべて旧札で、通し番号も金額もバラバラのものだ。
小額紙幣を多く混ぜることで足を付きにくくする為である。
かなりの重量があるバッグを抱えてトイレを出、車に戻る。
(´<_`;)(ん、追って来ないな。賢明だぜ。……重いな、くそ!)
( ・∀・)「どうだ?」
(´<_` )「あったぜ。ほら、見てみろよ」
( ・∀・)「ん。よし、行こうか。前を見て運転してくれよ」
( ´_ゝ`)「今は吸ってねえって、大丈夫」
36.
頻繁にカーブを曲がったり来た道を戻ったりしながら追跡を警戒しつつ、数度車を変え、
また地下鉄を使ったりして蛇行した後、彼らは安ホテルの一室に入った。
モララーが床に置いたバッグを開こうかという時、ケータイが鳴った。
( ・∀・)「数えとけ」
( ´_ゝ`)「へいへい」
(´<_` )「うひょお、すっげえ!」
( ´_ゝ`)「あれ、半分くらい新聞紙だぜ?」
(´<_` )「バカお前、ウチの取り分だけが入ってるんだろこれは。
残りの取り分はとっくに刑事とガキのオヤジが抜いてんだよ」
( ´_ゝ`)「あ、そっか」
受信ボタンを押した瞬間、クーの金切り声が飛び込んできた。
川#゚ -゚)「モララー!!」
37.
(;・∀・)「何だ何だ、どうしたんだよ?!」
川#゚ -゚)「今すぐ会いたい、今すぐにだ!」
( ・∀・)「酔ってるのか? ふざけるな」
川#゚ -゚)「居場所を教えろ、でなけりゃ今からお前の企みを全部ここでぶちまけるぞ!
通行人の皆様に聞いてもらうからな、お前が暴動を起こそうとしてるって!」
(;‐∀‐)「……クソ、ドクオか! あのバカ!」
川 ゚ -゚)「どこにいるんだよ!?」
( ・∀・)「ちょっと待ってろ、こっちから行くから」
川#゚ -゚)「いいや、一秒だって待たないね! 居場所を! 教えるん! だ!!」
モララーは仕方なくホテルの部屋を教えた。
ちょうど近くだったので、クーはそこへ車を急行させた。
ホテルに入り、部屋に入る。
ここに来るまでには怒りは失せ、代わりに悲しみがクーを支配し始めた。
38.
( ・∀・)「お前何考えてるんだ!?」
川 ゚ -゚)「ツンは?」
( ・∀・)「車だ。お前何考えて……」
涙目でこちらを睨むクーを見ると、モララーは何も言えなくなってしまった。
川 ; -;)「もうやめよう、モララー。
こんなことしてもあんたは救われないよ……!」
( ・∀・)
川 ; -;)「わ、わたし、あんたと結婚したいのに」
モララーはクーに一歩歩み寄った。
手を彼女の頬に添え、顔をそっと持ち上げる。
( ・∀・)「本気か?」
川 ; -;)「うん」
39.
(´<_` )「え、えーと……なあ、モララー」
( ・∀・)「引っ込んでろ!!」
( ´_ゝ`)「いや、そうじゃねえんだ。ヤバイぜ」
( ・∀・)「何だ?!」
横やりを入れられたモララーが苛立ちを露わに振り返ると、兄者が札束を一つ手にしていた。
中身がくり抜かれ、小さな機械が入っていた。
発信機だ。
( ・∀・)
モララーはそれを呆然と見つめ、そしてゆっくりと歩み寄った。
兄者の手から札束を抜き取り、呟く。
(;・∀・)「……ショボンの野郎、裏切りやがったな」
(;´_ゝ`)「何だ何だ!?」
40.
(´<_`;)「どういうことだよ?!」
(´・ω・`)「犯人グループは全員が射殺され、金は永遠にどこかに消える。そう言う事だ」
サイレンサー付きの拳銃を構えたショボンがそこにいた。
彼らを威嚇しながらバッグの方へ向かい、それを抱え上げる。
モララーたちはただそれを見ているしかなかった。
( ・∀・)「金はくれてやる。だがてめえだけは許さねえ」
モララーが人差し指を突き付けて呟くと、ショボンはそれを笑い飛ばした。
ドアの方へ下がってゆく。
(´・ω・`)「ハハハ、そりゃどうも。ああ、そうそう、一つだけ勧告しておこうか。
連中に降伏しても無駄だぞ。賄賂をたんまり約束してあるんでね」
どこかでサイレンの音がする。
41.
(´・ω・`)「では幸運を。アディオス」
彼が消えると流石兄弟が後を追おうとしたが、モララーがそれを押しとどめた。
(;・∀・)「ほっとけ、俺たちも逃げよう!」
( ´_ゝ`)「え!? 金は?」
( ・∀・)「捨ててけ! クソッ、何てことだ。来い、クー、話は後だ」
川;゚ -゚)「う、うん」
ホテル前の駐車場に警官隊を満載したワゴンが乱暴に駐車する。
すぐさま完全武装の隊員が現れ、建物を取り囲んだ。
(,,゚Д゚)「投降しろゴルァ、お前らがここにいるこたわかってんだぞ!」
(;´_ゝ`)「チクショー、さっきの野郎、あらかじめ通報してやがったな!」
四人は裏口から飛び出した。
42.
たった今駆け付けたばかりの隊員が警告もなしにいきなり撃ってくる。
すかさずモララーたちも撃ち返し、たちまち銃撃戦となった。
(,,゚Д゚)「止まれゴルァ、撃つぞ!」
(゚<_゚#)「もう撃ってるじゃねーか大ボケがあああ!!」
飛び交う銃弾を何とかやり過ごし、車の中に転がり込む。
後部座席の足元に縛られたツンが転がされていた。
川 ゚ -゚)「ツン!」
ξ ;⊿;)ξ「お姉ちゃん!」
( ・∀・)「ガキは置いてけ、邪魔になる」
川;゚ -゚)「バカ言え。あいつ言ってただろ、皆殺しにするって!」
銃弾を受けながら、とにもかくにも車を乱暴に出す。
弟者が運転し、助手席が兄者、残りがリアシートだ。
43.
行く手を阻んだ隊員がホースで水をまくみたいにマシンガンで弾丸をバラまいたが、一行が
構わず突っ込んでくると、慌ててその場から飛び退いた。
何とか道路に出、一方通行を逆走して大通りに出る。
(;´_ゝ`)「くそ……やべえな」
(´<_` )「撃たれたのか!?」
(;´_ゝ`)「ツイてねえ」
腹の銃創から血を流しながら、兄者は吸入器を取り出した。
鼻に当てて中身を吸い込もうとするが、すでに空っぽだった。
(;´_ゝ`)「くそっ、とことんツイてねえぜ」
吸入器を投げ捨てる。
(´<_` )「モララー、どうする?」
44.
( ・∀・)「逃げるしかねえ、とにかく根城のスラムあたりに逃げ込め」
川 ゚ -゚)「大丈夫、わたしがついてるぞ」
ξ ;⊿;)ξ「うん……」
当然ながらパトカーが後を追ってくる。
上空には警察と報道のヘリが飛び交い、こちらを見下ろしていた。
(;・∀・)(八方塞がりか、くそっ! とてもスラムまで持たん。どうする?)
(´<_`;)「あっ、やべえ!」
行く手の道路に警察が仕掛けたリベットの絨毯が敷かれている。
スパイクの生えた帯で、軽車両のタイヤを潰して行動不能にするシロモノだ。
彼らを乗せたバンはまともにそれを踏んだ。パン!!
(´<_`;)「うわああああ?!」
45.
激しくスピンしながら交差点の真ん中に放り出された。
そこはパトカーと警官が封鎖しており、十字砲火を浴びせようと待ち構えている。
ミ,,゚Д゚彡「投降しろ、もう逃げられんぞゴルァァ!」
( ´_ゝ`)「な、なあ、ここまでじゃねえか?」
( ・∀・)「いや待て。撃って来ねえって事は……」
あいつらは買収されてない警官に違いない。となれば……
視線がツンの方を向き、それから手の中に握られたままの拳銃に行く。
(;・∀・)(ここまで来て終わってたまるか! 俺は……俺は、こんなところで……)
モララーはクーからツンを引き剥がした。
ξ ;⊿;)ξ「ひっ」
川;゚ -゚)「おい!?」
46.
( ・∀・)「これしかねえんだ、納得してくれ! 兄者、ダッシュボードに発煙筒があるか?」
(;´_ゝ`)「あ? ああ……これかな」
( ・∀・)「合図したらつけろ、そんであそこの路地裏に走るんだ。いいな?」
(;´_ゝ`)「で、出来るかな……」
(´<_` )「俺がやるよ」
( ・∀・)「どっちでもいい。まだだぞ」
モララーはパワーウィンドウを下げ、顔を出した。
ツンの頭に銃を押し付けて怒号を上げる。
ξ ;⊿;)ξ「ひ、ひいっ」
( ・∀・)「こっちに人質がいることを忘れるんじゃねーぞ!!
納税者の皆様がちゃんと見張ってるぜ!」
上空の報道ヘリのことだ。
47.
もし人質がいることを無視して犯人を撃てば、ツンが無事であろうがなかろうが後に警察は
非難の矢面に立たされることになる。
ミ;゚Д゚彡「くそ……」
( ・∀・)「発煙筒をつけろ!」
(´<_` )「おう」
筒の蓋を開くと自動的に発火し、煙が溢れ出す。
その目くらましに乗じて一同は車から飛び出した。
思わず引き金に指をかけた警官を、上司が必死になだめている。
ミ;゚Д゚彡「撃つな、撃つんじゃない! 人質に当たる!」
煙の中の人影は朧だ。これでは犯人だけを狙い撃ちにするのは不可能だ。
モララーたちは混乱に乗じて路地裏に飛び込んだ。
うらぶれた場所で、廃墟の合間にある狭い通路だ。
48.
( ´_ゝ`)ゼェゼェ ゼェゼェ
(´<_` )「おい、こんなところでくたばるなよ」
( ´_ゝ`)「大丈夫だよ……コークかヘロインがありゃあ、こんくらい……」
( ・∀・)「はぐれるなよ、こっちだ」
路地は複雑に入り組んでおり、上空は無計画に拡張された建造物や住人が違法に引いた送電線などに
塞がれている。
警察からもこちらは見えないのだろうが、あちこちで連中の怒号がする。
( ・∀・)(まずいな、囲まれたか? 抜けられるか……)
川;゚ -゚)「ツンを返してよ!」
ξ ;⊿;)ξ
( ・∀・)「ダメだ、こいつが俺らの命綱だ」
( ´_ゝ`)「さ、さみぃ……ざまあねえぜ。コールドターキーか」
49.
もはや自分で歩くことも出来ず、弟者に支えられた兄者は血の気のない顔で力なく笑った。
体中の力が溶け出し、腹の傷から血と共に流れ落ちているようだ。
コ ー ル ト ゙ タ ー キ ー
ひどく寒い。失血のせいか、それともヘロインの禁断症状のせいか?
( ´_ゝ`)「なあ、いつか俺が麻薬を止められる日が来ると思うか?
心の痛みが癒されて、麻薬以外の価値観が持てる日が……」
夢現で兄者は囁いた。だが返事がない。
( <_ )
( ´_ゝ`)「どうした、弟者」
弟者がぐらりと崩れ、倒れた。
ゆっくりと、地面に沈み込むようにして。
流石兄弟は折り重なるようにして倒れた。
50.
( ´_ゝ`)「弟者……?」
弟者の背中には銃創があった。
兄者は呆然としたまま仰向けになり、大きく息をついた。
そして理解した。
( ´_ゝ`)(これはきっと、フラッシュバックだ。
俺は麻薬切れが見せる妄想の中にいるんだ。
だって、弟者が死ぬわけないだろ? 俺だって死ぬわけない)
警官がやってきた。
手にした拳銃から細く硝煙が立ち上っている。
(,,゚Д゚)
( ´_ゝ`)「よう。ヘロイン持ってたらくれないか?」
51.
警官は無言でその顔面に銃口を向けた。
兄者は微笑み、先を続けた。
これは夢だ。
( ´_ゝ`)「金ならあるんだよ。ホテルに置いてきちまったけどさ。
刑事が持ってっちまって……ああ、でも、きっとそのうち取り返すから……」
バン! バン! バン!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クーは路地内で反射を繰り返す銃声を聞き、振り返った。
流石兄弟の姿がない。
川;゚ -゚)「兄者、弟者?」
( ・∀・)「立ち止まるな、クー!」
52.
川 ゚ -゚)「だって流石兄弟がいないよ!」
モララーは振り返った。
現状から抜け出すことに必死で、背後に気が回っていなかった。
(;・∀・)「くそっ、はぐれたか」
しばらく路地の奥を見つめていたが、すぐに視線を正面に戻す。
それから無言で歩き始めた。
川 ゚ -゚)「行っちゃうの?」
クーが引き止めようとしても、一瞬立ち止まっただけだった。
川 ; -;)「あいつら、友達だっただろ?」
( ・∀・)「諦めろ」
53.
一言だけ、そう呟いた。
クーの恨みがましい視線、友の思い出、自らの良心、すべてを振り切って先に進む。
( ・∀・)「俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(・ω・`;)「くそ、逃がしただと」
車の中で警察無線を聞いていたショボンは歯噛みした。
現場は様々な管轄の警官が入り乱れており、やや混乱しているらしい。
路地に連中を追い込んだものの、連携が拙く王手をかけられないでいる。
ショボンは買収した警官の一人に電話をかけた。
(´・ω・`)】「わたしだ。出来る限り他の連中より先に見つけてトドメを刺してくれ!」
(,,゚Д゚)】「わかってる。二人始末した、あと二人だ」
54.
(´・ω・`)】「ガキもだぞ。少しでも疑いを持たれたら困る」
(,,゚Д゚)】「じゃ、あと三人か」
(´・ω・`)】「俺もそろそろ行く。到着するまでにケリをつけといてくれ」
一度電話を切り、車のエンジンを入れて現場に向かう。
(´・ω・`)(後は連中のアジトだ。うまく行ってるといいが)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、ドクオは。
('A`)「銃を向けられる度5セント貰ってたら今頃大金持ちだぜ……」
モララーのマンションの居間で、拳銃片手にアクションスターの真似をしていた。
( ´ー`)「うわードクオさんかっけー」
55.
( ・3・)「まじかっけー」
('∀`)「そうだろうそうだろう。じゃあ次の演技を見せてやるぞ」
(;´ー`)(勘弁してくれ)
(;・3・)(いつまでこの大根演技を見てなきゃなんねえんだよ)
テーブルに置いてあったドクオのケータイが鳴った。
('A`)「ちょっと休憩だ。もしもし」
( ´ー`)(助かった……)
( ・∀・)】「ドクオ、今から言うことをよく聞け! よく聞くんだ!」
('A`)】「何だ、どうしたんだよ? 落ち着け、金は?」
( ・∀・)】「しくじった」
(;'A`)】「何だと!?」
( ・∀・)】「説明してる時間がねえから言う通りにしろ。
そこから逃げ出してニューソク駅の一時預かり所に行け、引き換えタグは……」
56.
突然、リビングの扉が蹴破られた。
顔を覆面で隠した男が二人、銃を構えて入ってくる。
呆気に取られていたエイトボールの手下二人は、たちまちのうちに撃たれた。
( ・3・)「ぐああ!?」
( ´ー`)「おぐっ……」
懐に手を伸ばしかけたが、銃を掴んで戻ってくる前に蜂の巣にされる。
ドクオだけは難を免れた。
(゚A゚)「どわあああ?!」
抜くまでもなく、ちょうど手の中に銃があったからだ。
むちゃくちゃに撃ちまくりながら、転がるようにして部屋を飛び出す。
(:::::::::::)「!!」
57.
刺客はあわてて物陰に飛び込んだ。
('A`;)「なななななんだなんだなんだ、何事だぁぁ!?」
もう片方の手の中でモララーが怒鳴っている。
( ・∀・)】「おい、どうした?!」
('A`;)】「わかんねえ、襲撃だ!」
(;-∀-)(クソッ、アジトもバレてる! 跡を尾けられたのか!?)
( ・∀・)】「俺の部屋に行け、ベッドの枕ん中にタグが縫い込んである!」
('A`)】「何だって?」
( ・∀・)】「そいつを持ってニューソク駅の一時預かり所に行くんだ!
荷物を受け取ったら中のメモ通りにしろ、いいか!? 行け!」
わけもわからないまま二階にあるモララーの寝室に飛び込み、枕を引き破く。
一方、非番の警官である刺客二人は階下で話し合っていた。
58.
(:::::::::::)「撃ち合いは苦手だぜ、どうする?」
(:::::::::::)「へへへ、いいものを持ってきた」
片方はポケットから手榴弾を取り出した。
(:::::::::::)「おお、すげえ」
(:::::::::::)「こいつを投げ込もうぜ」
二人は足音を殺して階段を上がると、寝室の方へ向かった。
そこだけドアが開いている。
60.
(:::::::::::)「あそこだな」
ピンを引き抜き、手榴弾を中に放り込む。
何とか枕を破いて中身を取り出そうとしていたドクオは、足元に転がって来た黒い鉄の球体に
気付いた。
59.
('A`)「……あ?」
しばらくそれを見下ろす。
そして何なのか理解するとほぼ同時に、視線を窓にやった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーの携帯の向こうで何か大きな音がし、すべての音声が遮断された。
( ・∀・)】「ドクオ、おい、ドクオ!?」
川 ゚ -゚)「どうしたの?」
( ・∀・)】「……ドクオもダメだ」
川 ゚ -゚)「何だって……」
これで生き残っているのは二人だけだ。
ドクオが死に、“荷物”が葬られた今、万策尽きた。
60.
モララーはツンを放り出した。
よろよろと先に進み、その場にひざまずく。
( ・∀・)「おしまいだ」
川 ゚ -゚)
( ・∀・)「みんなおしまいだ……」
川 ゚ -゚)「モララー、」
( ・∀・)「よせ」
何か言う前に、モララーは背中を向けたまま彼女を制した。
半ば放心したまま。
( ・∀・)「投降も出来ない。突破も出来ない。もうどうしようもない」
クーは何も言えないでいた。
彼の絶望が痛いほど理解出来たからだ。
61.
川 ゚ -゚)「投降しよう、モララー」
( ・∀・)「ショボンの言ったことを忘れたのか?」
川 ゚ -゚)「買収されてない奴もいる。賭けよう」
( ・∀・)「……」
モララーの耳には届いていないようだった。
彼は不意に銃を持ち上げた。
銃口の先に目の前のツンを捕らえる。
ξ ゚⊿゚)ξ
( ・∀・)「お前たちさえ……」
ξ ゚⊿゚)ξ「……?」
( ・∀・)「お前たちさえ、この国に来なければ……」
絶望が瞳を曇らせ、もはや正常な判断力が保てず狂気が体を動かしている。
62.
( ・∀・)「お前たちさえ……」
親指が銃の安全装置を外しかけた時、隣でカチリという音がした。
撃鉄が持ち上がる音だ。
川 ゚ -゚)「モララー」
( ・∀・)
クーは彼を刺激しないようゆっくり告げた。
握り締めた銃の銃口と同じくらい、震えた声で。
川 ゚ -゚)「やめて、モララー」
彼女は緊張が高まり過ぎて息がつまり、僅かに喘いでいた。
それでも銃口はモララーに向けたままだ。
ξ ゚⊿゚)ξ
63.
( ・∀・)「こいつに罪はないって言いたいのか?」
モララーはクーの方を見た。
( ・∀・)「なら俺の父さんには何の罪があった?
父さんが間違ってて、父さんの上を跨いでった野郎どもが正しかったのか?」
川 ; -;)「モララー、やめて!!」
クーは悲鳴を上げた。
誰が正しい? 誰が間違っている?
子供を撃とうとしている目の前の男か?
愛した人を撃とうとしている自分か?
正しいのは世界のすべてで、間違っているのは自分たちか?
それともその逆か?
( ・∀・)「父さんに何の罪があったんだ……」
64.
川 ; -;)「やめ……!!」
彼の視線が再びツンに向くと同時に、人差し指が用心金に入った。
クーは引き金を引いた。結局何が正しいともわからないまま。
弾層が回転し、撃鉄が薬莢を叩く。
弾丸はモララーの体を貫いた。
( ・∀・)「……」
彼はよろめき、後ずさった。
クーの方を見たが、瞳にあるのは悲しみのように見えた。
( ∀ )
銃を構えたままクーはしばらく硬直し、倒れた彼を見ていたが、すぐに駆け出した。
川 ; -;)「モララー、モララー……ごめん、わたし……」
65.
( ・∀・)「いいんだ」
力なく呟き、モララーは目を閉じた。
川 ; -;)「あんたを止められなかった」
( ‐∀‐)「いや、お前は俺を止めてくれたよ……ありがとう」
最初で最後の口付けを交わす。
( ‐∀‐)「愛してる」
川 ; -;)「うん」
クーは袖で涙を拭い、立ち上がると、ツンを抱き上げた。
川 ゚ -゚)「行こう。お前だけは死んでも守る」
ξ ゚⊿゚)ξ
66.
途中、足が言うことを聞かなくなった。
立ち止まれ、とどまれ、彼のもとに戻れ。
自分の中にいる誰かがそう強制している。
クーは目を閉じて歯を食い縛ると、それを振り払って走った。
二人の姿が消えると、血の海に沈んでゆくモララーの元に警官たちがやってきた。
(,,゚Д゚)「むっ、仲間割れか?!」
( ・∀・)「さあな」
(,,゚Д゚)「銃を捨てろゴルァ、今ならまだ助かるかも知れんぞ」
買収警官ではないようだ。
それでもモララーは鼻で笑い、忠告を拒否した。
( ・∀・)「お断りだね」
倒れたまま渾身の力を込めて上半身を起こし、銃口を向ける。
67.
すぐさま警官たちが一斉射撃した。
( ∀ )
銃弾によって引き裂かれた死体の元へ、注意深く忍び寄る。
手の中から銃を蹴飛ばして離すと、警官は心音を確かめた。
(,,゚Д゚)「死んだ。行け、あと一人いる筈だ!」
残りの警官は皆、モララーの死体の上をまたいで行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クーたちはとうとう袋小路に追い詰められていた。
コンクリートの壁が行く手を遮り、後ろからは警官たちの足音がどんどん近付いて来る。
クーは壁際に置いてある大きな鉄のゴミ集積コンテナの影に、ツンと共に隠れた。
68.
川 ; -;)(モララー、みんな、くそ……なんで、なんでこんなことに。
わたしが彼を止められなかったから、苦しみを理解出来なかったから……)
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「大丈夫、お前だけは何とかして逃がすからな」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん」
警官たちが集まって来た。
強化プラスチックの盾を並べ、少し離れたところに陣取る。
(,,゚Д゚)「追い詰めたぞゴルァ、投降して出て来い!」
物影から様子を窺う。
袋小路のあたりは天井が開けており、報道ヘリがちょうどこちらの様子を捕らえたところだった。
監視があるのなら例え買収野郎でも無茶は出来ない筈だ。
川 ゚ -゚)「行きな、ツン」
69.
ξ ゚⊿゚)ξ「えっ?」
川 ゚ -゚)「お前は行くんだ。わたしは残る」
ξ ゚⊿゚)ξ「残るって?」
クーは彼女の小さな体を抱き締めた。
警官隊の後ろに駆け付けたツンの母親の金切り声が聞こえた。
(;、;トソン「ツン、ツーン! 無事なの!? 誰かツンを助けて!」
現場へ飛び出そうとするのを後尾の警官達が必死になだめている。
ツンはその声を聞き付け、弾かれたように振り返った。
ξ ゚⊿゚)ξ「お母さん!」
川 ゚ -゚)「ほら、パパとママのところへ戻れよ」
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「きっと医者になれよ。さよなら」
70.
ツンは迷っていた。
泣きながらクーを見下ろし、別のことを言ってくれないか待っていた。
川 ゚ -゚)
だがクーが決意を曲げる気がない事を理解すると、ゆっくりとその場を離れた。
彼女がゴミ箱の影から出てゆくのを見届けると、クーは拳銃のシリンダーをずらした。
弾丸一発を残して他はすべて地面に落とす。
川 > -<)
シリンダーを戻し、撃鉄を上げて銃口をこめかみに押し当てる。
歯を思い切り食い縛る。
そうしないと悲鳴ごと心臓を吐き出してしまいそうだった。
川 > -<)ゼェゼェ ゼェゼェ ゼェゼェ
71.
親指が安全装置を跳ね上げた。
人差し指を用心金に入れ、引き金にかける。
ぎゅっと閉じた瞼の合間から涙が溢れ出した。
川 ; -;)「許して……許して、モララー。許して、ツン。わたし、わ、わたしは……
耐えられない、もう耐えられないよ……いつまでこんな事が……」
死の恐怖に暴走する脳を静めるため、アドレナリンが過剰に分泌されている。
世界のすべてが遠退き、静かになった。
……いや、本当に物音がしない? 何かがおかしい。
クーは物陰から身を乗り出した。
ξ ゚⊿゚)ξ
ツンの背が見えた。
ちょうど警官隊の方へ歩いてゆくところだ。
72.
長い時間が過ぎたと思っていたが、まだあんな場所に……
いや、彼女はわざとゆっくり歩いているのだ。
(,,゚Д゚)「早くこっちへ!」
警官が手を差し伸べる。だが彼女はその場で立ち止まった。
そして無言で両手を開いた。
自分の体を盾にしていた。
ξ ;⊿;)ξ「やめて……許してあげて……」
恐怖に震え、卒倒しかねないほど脅えながら、それでもツンはその場から動かなかった。
震える声でなおも続ける。
ξ ;⊿;)ξ「お姉ちゃんを、許してあげて」
誰もがその見えない力に気押され、身じろきすら出来なかった。
73.
川;゚ -゚)「バカ、何やってるんだ!!」
ξ ;⊿;)ξ「約束したもん!」
彼女はか細い体の底から声を張り上げた。
振り返り、ポケットから画用紙を取り出して拡げる。
イチョウの並木通りを歩く二人の人影の絵だ。
一つはツンで、彼女と手を繋いで笑い合っているもう一人は……
川 ゚ -゚)「わたし……?」
ξ ;⊿;)ξ「約束したもん、一緒にここ歩くって約束したもん!!」
川 ゚ -゚)
ξ ;⊿;)ξ「絵描きさんになるんでしょ?! 死んじゃやだよ!」
クーは物陰に戻った。
もしも投降してここを出て、それでどうする?
74.
これから先、あらゆる非難と恥辱、長きに渡る苦痛が待っている。
死ぬまで永遠にモララーを救えなかった事に苦しみ続ける。
でも、それでも。
川 - )
たった一人だけ、この世界に自分の夢を信じてくれる人がいる。
長い時間が過ぎた。
クーは拳銃を置き、両手を上げて物陰から出た。
地面に跪く。
(,,゚Д゚)「人質を保護して奴を拘束しろゴルァ!」
警官たちがツンを連れ去り、それから拳銃を構えた奴らがクーを取り囲んだ。
地面に伏せさせ、後ろ手に手錠をかける。
75.
(・ω・`;)(何てことだ、くそっ! 金を持って高跳びしないと)
その場にいたショボンはそそくさと逃げ出そうとした。
だがすぐに誰かに後ろから取り押さえられる。あっという間に腕に手錠がかけられた。
(´゚ω゚`)「ぐえっ!?」
(,,゚Д゚)「悪ィな、旦那」
彼が雇った汚職警官だ。
(・ω・`;)「貴様、何のつもりだ?!」
( ´∀`)「あーこりゃどうもですモナ、警部補さん」
保険会社の調査員だ。
(・ω・`;)「何がどうなってるんだ、説明してくれよ!」
( ´∀`)「あんたを保険金詐欺の容疑で逮捕したいそうですモナ」
76.
(´・ω・`)「何を根拠に言ってるんだ、あのチンピラ連中の言う事を信じるとでも……」
調査員はモバイルを取り出し、インターネットに繋いだ。
動画投稿サイトのある動画を再生する。
音声のみで映像はない。
( ´∀`)「エイトボールは保険をかけておいたんですモナ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
街中のとあるネットカフェに、通報を受けた警官二人が駆け付けた。
店員が奥のブースを指差す。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お巡りさん! あれよ、あそこの中の人!」
(,,゚Д゚)「わかった。そこにいてくれ」
拳銃を抜き、ブースの中に飛び込む。
77.
男が一人、キーボードの上に突っ伏していた。
背中に細かいガラスや木屑の破片が刺さり、血まみれになっている。
( A )
(,,゚Д゚)
警官は首筋に触れた。
もう一人が聞く。
ミ,,゚Д゚彡「生きてるか?」
(,,゚Д゚)「一応救急車を呼んどけ。まあ、手遅れだと思うが」
モニタには動画共有サイトが開かれ、PC本体にUSBメモリが繋がっている。
傍らにあるメモには「この情報をネットに流せ」と書かれていた。
彼が投稿した動画がリピート再生されている。
78.
“俺だ。どうだ?”
“保険会社が出せるのは二億二千万だそうだ。まあ、うまく行った方だろう”
“くそ……予定じゃ三億だった筈だぞ”
“安心しろって、あんたの取り分は減らさないよ。
俺の方でジョルジュと話をつけて残りを……”
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(´゚ω゚`)(あの野郎、録音してやがったな!?)
(・ω・`;)「待ってくれ、これはデッチ上げだ!!」
( ´∀`)「金はどこモナ?」
(´・ω・`)「金なんか知らん!」
(,,゚Д゚)「あー、警部補が車に積んでるの見たぜ」
(´゚ω゚`)「き、貴様……!!」
79.
買収警官はショボンの耳元で囁いた。
(,,゚Д゚)「誰もがみんな、我が身が大事さ。そうだろ?」
( ´∀`)「ジョルジュと留置所で仲良くしてくるモナ」
(・ω・`;)「待ってくれ、頼む! か、金ならくれてやる、だから……!!」
(,,゚Д゚)「元警官は刑務所で地獄を見るそうだ。まあ、楽しんで来いよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
警官がツンをトソンのところへ連れて行く。
(;、;トソン「ああ、ツン!」
ξ ;⊿;)ξ「お母さん! 内藤さんも……」
( ^ω^)「防弾ベストのおかげで九死に一生ですお」
母子が抱き合うのを、パトカーに押し込まれたクーは窓越しに見ていた。
80.
ツンが視線に気付き、こちらを向く。
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚皿゚) ムヒッ
ξ ;ー;)ξ
二人は見つめあっていたが、やがてパトカーが走り出した。
クーは目を閉じ、モララーの顔を思い浮かべた。
川 - )(ごめん、モララー。わたしやっぱり、生きてくよ。
後悔してるけど、痛くてたまらないけど、やっぱり生きていたいんだ)
胸に下げたロザリオを握り締める。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
81.
数ヶ月後、秋の訪れたあるよく晴れた日のこと。
ツンの家にほど近い路上で、二人は再び出会った。
川 ゚ ー゚)「ほら、見ろよ」
クーはポケットから紙切れを取り出し、広げて見せた。
自分で書いたらしい文章だ。
ξ ゚ー゚)ξ「わ、すごーい。自分で書いたの?」
川 ゚ -゚)「そうだ。上達したもんだろ? 時間だけはいっぱいあったからな」
ξ ゚⊿゚)ξ「でもここんとこ違うよ」
川 ゚ー゚)「相変わらずキビシイな」
二人は笑い合い、そして溜め息をついた。
川 ゚ -゚)「わたしね、別人になるんだって」
82.
ξ ゚⊿゚)ξ「?」
川 ゚ -゚)「えっと……これまでエイトボールがやってきた悪いこと、全部話す代わりに
許してもらったの。司法取引って言うんだけど」
ツンにわかるように説明するのは難しかった。
顔を上げて向こうを見、遠くで自分を見張っている車を見る。
背広の男が二人、外に出て待っていた。
警察関係者だ。
川 ゚ -゚)「だけどそうするとほら、わたしは裏切り者になっちゃうわけじゃない。
逃亡中の他のメンバーに復讐されるかも知んないから」
ξ ゚⊿゚)ξ「また会える?」
川 ゚ -゚)「……いや、多分無理かな。過去の繋がりを全部捨てないと」
ξ ゚⊿゚)ξ「そっか」
83.
クーは首を振った。
そうじゃない、こんなことが言いたいんじゃない。
クーはひざまずき、ツンと視線の高さを合わせて彼女の顔を覗き込んだ。
川 ゚ -゚)「いつか国を出て、絵描きになるよ。いや、順番が逆になるかも知れないけど。
とにかく絵描きになるから」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん」
川 ゚ -゚)「絵を描いて、発表するよ。あんたのくれたあの絵」
ξ ゚⊿゚)ξ「……うん!」
二人は強く抱き合った。
ずっとそうしていたかったが、車に乗った男がクラクションを鳴らした。
そろそろ時間だ、という合図だ。
クーは立ち上がり、振り返って手を振った。
84.
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ
ツンが手を伸ばした。
クーがそれをそっと握る。
二人は黄色く染まったイチョウ並木の下を、並んで歩いた。
ゆっくりと、いつまでも。
すぐに向こう側に辿り付いてしまわないように。
いつか夢を叶え、クーがこの時思い描いた絵を完成させた時、そして二人は再び出会う。
おしまい
~ここからおまけ~
1.
(タイトルコール、スタジオの映像。キャスターを映し出す)
(#゚;;-゚)「N.N.F(ニューソクニュース速報)の時間です。
みなさんこんにちは。滝川クリスでぃルです。
今日は市内の刑務所のニュースをお送りします」
(後ろの画面にVTR、刑務所の外観)
(#゚;;-゚)「主に長期刑から終身刑、死刑囚が服役しているこの刑務所では、数年前からある
ユニークな構成プログラムが実施されています。
このプログラムを始めたのは、ある一人の囚人でした。
今日はその模様をお送りします。現場のワカッテマスさん?」
(画面がクローズアップ、現場のキャスターへ。刑務所の面会室)
( <●><●>)「こちらが現場なのはワカッテマス。
まずはこちらをご覧下さい」
(画面が再び切り替わり、小粒ながら良質な出来で少し話題になった刑務所映画の映像が流れる)
( <●><●>)「先日公開された映画『バイアス・アンド・バイス』。
この映画はここニューソク刑務所に服役している囚人たちによって撮影・制作が
行われました。
そしてこちらがその監督・主演を務めた……」
('∀`)「ドクオだ! よろしくな!」
( <●><●>)「こんにちはドクオさん。
バイアス・アンド・バイスは罪人の内面に対する高度な描写が話題になりましたね」
('A`)「俺は元ギャングだったからな。そのへんの気持ちはよくわかるんだ」
( <●><●>)「ほとんど外部に頼らず制作されたそうですが?」
('A`)「いや、大変な苦労だったぜ。
俺はちょっとした事件に巻き込まれてブチ込まれたんだが、ケガを治すのに一年かかった。
更に模範囚として二年過ごして、仲間集めと撮影機材の申請にもう二年かかった」
( <●><●>)「仲間と言われますと?」
('A`)「制作スタッフと俳優さ。所内の演劇グループから引き抜いたんだ」
( <●><●>)「なるほど」
('∀`)「それからも壁の連続さ。看守を説得しなくちゃなんないし、スポンサーも必要だった。
交渉に随分手間取ったよ。何にせよ公開出来て嬉しい限りだね!
この辺の苦労の詳しいとこはDVDの特典に入れるつもりだ。買ってくれよな」
( <●><●>)「最後に視聴者に向けて一言」
('A`)「俺は犯罪を正当化するつもりは一切ねえ。
だが、こんな生き方しか出来ない男がいたって事をわかって欲しいんだ」
( <●><●>)「ありがとうございました。では映画の予告編をどうぞ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2000人が生活する巨大な石棺の町、ニューソク刑務所。
罪を引きずり、この町にある男がやって来た。
(足に付けられた鎖を引きずり、看守を伴ったドクオが刑務所の廊下を歩く。
やがて房が並ぶデイルームに入ると、獲物を窺うかのような囚人たちの視線に晒される)
訪れる過去との接点、失われた時間の再来、そして男はその時―――
バイアス・アンド・バイス
ただいま公開中!
―――死んで行った仲間たちと、今どこかにいるある女に捧ぐ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
遠く離れたどこか異郷の地で、ある女が足を止めていた。
街頭のテレビが映し出すその予告編が目に入った時、思わず呆気に取られ、両手に抱えた画材を
落としそうになった。
川;゚ -゚)「……あいつ、生きてたのか」
嬉しいような、変な気分だった。
すぐに一人笑い、歩き出す。
川 ゚ー゚)(まさか先を越されるとはな)
急いで帰って、絵を完成させなければ。
バイトの合間を縫って描いたコンクール用の絵だ。
前回は佳作だったが、今度こそ……
もう少しだ。夢まであと、もう少し。
モララーたち“エイトボール”が誘拐計画を企むより十数年前。
父親を鉱山の事故で失ったモララーは、より稼ぎの多い仕事に転職していた。
ボロ車の助手席に乗って夜の街を走っていると、運転席の男が話しかけてきた。
(・∀ ・)「まったくお前はすげえ奴だよ。たった二年でここまでのし上がっちまうんて」
( ・∀・)「そりゃどうも。で、俺たちはどこへ向かってんだい?」
(・∀ ・)「ここらの売人の間じゃお前が売上ナンバーワンだそうだ。
クックルさんに一度挨拶しといた方がいいぜ、顔を覚えてもらえよ」
( ・∀・)「お気遣いをどうも」
(・∀ ・)「いいってことよ。お前を使ってる俺も鼻が高いしな」
そして二人は再び出会うようです 後編
2.
車は町はずれにある安っぽい酒場の前で止まった。
中にはビリヤードの台が並び、カウンターでまばらに客が飲んでいる。
先輩の売人はモララーを連れ、ビリヤード台の一つに連れて行った。
( ・∀・)
モララーは途中、空いている台に置かれたままのボールを見下ろした。
そのうちの一つをこっそり手の中に握り込む。
(・∀ ・)「どうも、クックルさん」
( ゚∋゚)「ん?」
玉の並びを見ていた男が顔を上げた。
キューを肩に担ぎ、煙草を咥えている。
台の周囲には他にも男が数人いて、こっちを見ている。クックルの取り巻きのようだ。
3.
(・∀ ・)「こいつが前に話した奴です」
( ・∀・)
( ゚∋゚)「ああ、売上ナンバーワンか。期待してるぜ、まあ奢るから一杯飲んでけよ」
( ・∀・)「どうも」
( ゚∋゚)「マスター、このボウヤに一杯飲ませてやんな」
クックルが視線をカウンターにやった瞬間、モララーはその場から一歩踏み出した。
手の中に握り込んだボールを振り上げ、クックルの後頭部に全力を込めて叩き込む。
( ゚∋゚)「!?」
一撃で頭蓋骨が陥没するのを感じた。
台にうつ伏せに倒れた彼に圧し掛かり、モララーは殴り続けた。
一度振り下ろすごとに湿った破砕音が酒場に響く。
返り血を顔面に浴び、クックルの頭部が完全に変形してなお、手を止めない。
4.
( ・∀・)ゼェゼェ ゼェゼェ
どのくらいそれが続いただろうか。
誰も何も出来なかった。
何一つ理解できないまま、すべてが進行していた。
ただ一人、モララーだけがこの凍り付いた舞台の上で自由に演じていた。
血に飢えた暴君の役を。
( ・∀・)「今日から俺がお前らのリーダーだ。文句があるか?」
(・∀ ・;)
沈黙を肯定と受け取り、モララーは満足げに頷いた。
手の中の血まみれのボールを台に放り出す。
エイト
8の玉だ。後にこれがリーダーを新たにした組織の名となる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
5.
モララーは寝室で鏡を見ていた。
上半身裸で、左肩に刻み付けたエイトボールの刺青を眺めている。
右手でそれに触れる。
( ・∀・)「もう少しだ……」
服を着、外に出る。
流石兄弟に運転させ、町を走らせた。
途中、大きな橋に差し掛かった時、車を停めて歩道に出る。
( ・∀・)「携帯を」
( ´_ゝ`)「ほい」
まったくの第三者名義の携帯電話だ。
モララーはそれを手に取り、ボタンをプッシュした。
呼び出し音が鳴っている間、マイクにボイスチェンジャーを押し当てる。
6.
( ・∀・)「金は用意出来たか?」
ジョルジュ邸では主である彼がその電話を取った。
目配せし、逆探知装置の前に控えている捜査官に合図を送る。
_
(;゚∀゚)「えっ?! あっ、ああ、もう少し待ってくれ!
そんな大金一気には用意出来ない!」
( ・∀・)「あと三日待つ。三日だ。
それを過ぎたら一日ごとにガキの指を切り取ってそっちに送る」
_
(;゚∀゚)「十億なんて金はそうそう現金化出来るものじゃないんだよ!
あと三日じゃせいぜい五千万が限界だ」
( ・∀・)「まあ、せいぜい努力することだ。また連絡する」
その時、横からジョルジュの妻が割り込んできた。
(;、;トソン「待って!! あの子の声を聞かせて頂戴!」
7.
_
(;゚∀゚)「こ、こら、トソン!」
( ・∀・)「ガキが生きてる証拠か? 写真を送った。まあ待ってろ、すぐ届く」
電話を切ると、モララーは携帯を川に放り捨てた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日もクーがツンに絵を教え、ツンはクーに字を教えていた。
川 ゚ -゚)「“わたしの名前はクーです。ニューソク生まれの24歳です。
好きなものはチリソースをふんだんに使ったタコスです。”
どうよ」
クーが自慢げに描き終えた作文を、ツンが採点した。
眉にしわが寄る。
8.
ξ ゚⊿゚)ξ「大体いいけど、これじゃ逆だよ。“タコスを使ったチリソース”になってる」
川 ゚ -゚)「む、そうか」
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしの絵は?」
クーはツンの自画像を受け取り、眺めた。
川 ゚ -゚)「かわいく描けてるじゃないか」
ξ ゚ー゚)ξ「ん。それからね、もう一枚描いてるの……」
川 ゚ -゚)「何だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「ないしょ!」
独房の外で誰かの声がする。
クーは彼女に絵を返し、一端外に出た。
( ・∀・)「なんだ、中に入ってたのか?」
川 ゚ -゚)「ちょっとね。仕事はどう?」
9.
( ・∀・)「順調だ。ちょっと外に出ないか?」
川 ゚ -゚)「いいけど」
クーからもモララーに話したいことがある。
一度房内に戻り、ツンに画帳と鉛筆数本を託した。
川 ゚ -゚)「残りは宿題にしとこう。またな」
ξ ゚⊿゚)ξ「またね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日は聖人の生誕を祝うカーニバルで、町には大勢の人が繰り出していた。
夕方から始まり、夜中に最高潮を迎える。
今はまだ日が暮れ始めたばかりで、盛り上がりはこれからというところだ。
(´<_` )「売人どもは大わらわだろうな。今日はクリスマス商戦みたいなもんだ」
10.
( ´_ゝ`)「綿あめがヘロインで出来てりゃなー」
('A`)「お前吸い過ぎだぞ。そのうち鼻血出すぜ」
いつもの三人が外の車の中で待っていた。
モララーが乗り込もうとすると、クーがそれを引き止めた。
川 ゚ -゚)「どこ行くの?」
( ・∀・)「家だよ。話したいことがある」
川 ゚ -゚)「お祭りを見て行かない? きっと楽しいよ」
( ・∀・)「遊びじゃないんだ」
川 ゚ー゚)「渋滞するからさー。ほら、歩いてこ。きっと楽しいって」
モララーの腕に抱き付き、強引に引っ張っていく。
彼はすぐに抵抗をやめ、言われた通りにした。
(´<_` )「おいおい、どこ行くんだい?」
11.
( ・∀・)「一緒に来いよ。一人残って、連絡したら車を回してくれ」
( ´_ゝ`)「んじゃ俺が」
('A`)「ジャンキーに運転を任せられるかよ、俺が残る」
(´<_` )「へっへっへ、どうせヘロインやる気だったんだろ。諦めな」
( ´_ゝ`)「ちぇっ」
ドクオが残り、流石兄弟がついてきた。
お邪魔にならないよう、少し離れたところを歩く。
それからモララーとクーは恋人同士みたいに祭りを見て回った。
川 ゚ -゚)「ん、あれ買って」
( ・∀・)「はいはい」
屋台の軽食を食べたり、射的をやったりして過ごす。
悪魔の看板にボールを投げ付けるゲームではモララーが満点を出し、周囲の喝采を浴びた。
12.
川*゚ー゚)「すごいな、投擲兵になれるよ!」
( ・∀・)「よせよ」
(*゚ー゚)「おめでとー。はい、これ商品のロザリオ。あんたは悪魔殺しの英雄だよ!」
モララーはクーにロザリオをかけてやった。
川*゚ -゚)「あんまり神様は信じてないんだけどな」
と、言いながらも彼女は嬉しそうだった。
( ・∀・)「いいんじゃないか。似合うぜ」
川*゚ -゚)「ありがとう」
( ・∀・)「いいんだ、このくらい」
久し振りに子供のころに戻ったように思え、二人は楽しい時を過ごした。
あっという間に夜になった。
13.
噴水の縁に腰を下ろした二人は火照った体に瓶ビールを流し込んでいた。
向こうでは夜半を迎えた祭りが大変な賑わいを見せている。
川 ゚ -゚)「あー、うめえ」
( ・∀・)「おっさんくさいな」
このあたりはそれほど人通りもなく、会話が出来るくらいには静かだ。
川 ゚ -゚)「で、話って?」
( ・∀・)「父さんのことだ」
二人の顔の中で表情がうつろい、消える。
( ・∀・)「俺の父さんがどんな死に方したか、おぼえてるだろ」
川 ゚ -゚)「うん」
( ・∀・)「これまで俺を駆り立てていたものは復讐心だった。世の中全部に対するな」
14.
( ・∀・)「俺はがむしゃらに動き回って、それで今はこうして金と地位を手にしてる。
だけど、つい最近のことだけど、不安になったんだ」
川 ゚ -゚)「不安って?」
( ・∀・)「本当にこれで何かが変わったのかって。
俺と、世界。両方とも同じままだ」
モララーはクーの顔を見つめた。
( ・∀・)「どちらかが変わる必要がある。
俺は世界が変わるのを待ち続けたけど、もうそれは諦める」
川 ゚ -゚)「よくわかんないな。わたしにもわかるように言ってよ」
( ・∀・)「金とか、そんなものじゃない何かを手に入れたい。
俺は変わるよ。俺が変われば、世界を変えられる力が手に入ると思う」
クーはドキドキしながら聞いた。
15.
川 ゚ -゚)「ギャングをやめる気?」
( ・∀・)「ああ。この仕事でおしまいだ」
クーは喜びのあまりモララーに抱き付いた。
川*゚ ヮ゚)「嬉しいいいいいいい!!」
(;・∀・)「あっ、おいバカ!?」
二人はもつれあって噴水の中に倒れ込んだ。
派手に水飛沫が上がる。
(;・∀・)「ぶはっ! お前何考えてんだよ、まったく!
あーあ、ケータイもダメだこりゃ」
びしょ濡れになって噴水の中で起き上がると、クーは構わず再びモララーに抱き付いた。
川*;ー;)「わたしはあんたがギャングをやめるって言ってくれるの、ずっと待ってたんだよ」
16.
川*;ー;)「嬉しい。本当に嬉しい……
( ・∀・)「……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーは常に携帯電話を三~四個持ち歩き、数日使うごとに捨てている。
所在地を特定されることを防ぐためだ。
その日も見ず知らずの誰かの名義で登録されている携帯で電話をかけた。
( ・∀・)「俺だ。どうだ?」
(´・ω・`)「保険会社が出せるのは二億二千万だそうだ。まあ、うまく行った方だろう」
( ・∀・)「くそ……予定じゃ三億だった筈だぞ」
(´・ω・`)「安心しろって、あんたの取り分は減らさないよ。
俺の方でジョルジュと話をつけて残りを分配するから」
( ・∀・)「ジョルジュは何か言ってるか?」
17.
(´・ω・`)「あの小心者は企みが漏れないかそればっかり気にしているよ。
まあ、あいつのことは任せておけって」
( ・∀・)「わかった。もうこれから先、連絡は出来ないぞ」
(´・ω・`)「わかってる。じゃあな」
ショボンは電話を切った。
ここはジョルジュの寝室で、目の前には彼がいる。
_
( ゚∀゚)「どうだ」
(´・ω・`)「予定通りですとも」
_
(;゚∀゚)「なあ、本当に大丈夫なのか? あいつらはギャングだぞ、報復されたりしたら……」
(´・ω・`)「二億三千万を三等分したのではとても足りないんだからしょうがない。
あなたの横領の総額は一億八千万でしょう?
わたしだって当然の権利として、働き相応の報酬が欲しい」
_
( ゚∀゚)「……」
18.
・ ・ ・ ・ ・
(´・ω・`)「だから三等分では足りないんですよ。三等分では、ね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
数日後、自宅で目覚めたクーは階下に降りていった。
リビングにはモララーしかおらず、どこかに電話をかけているところだった。
( ・∀・)「百挺か、少し足りないな。倍は欲しいんだが。いや、金なら用意するよ」
川 ゚ -゚)「おはよ」
( ・∀・)「おう。……ああ、いや、何でもない。また連絡する」
川 ゚ -゚)(百挺? 何の事だ?)
モララーは電話を切った。
( ・∀・)「金とガキを交換する日が決まった。明日だ」
川 ゚ -゚)「急だな」
19.
( ・∀・)「俺と流石兄弟で行く。お前はドクオと残れ」
川 ゚ -゚)「ん? あんたも行くの?」
クーはちょっと驚いた。親玉自ら出動とは。
( ・∀・)「ああ。絶対に成功させなきゃなんねえからな」
川 ゚ -゚)「わかった。気を付けて」
( ・∀・)「ああ。ガキに何にも持って行かせるなよ」
食卓に残されているサンドイッチの欠片を食べながら、クーはふと言った。
川 ゚ -゚)「この仕事が終わったらさ……」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ー゚)「一緒にどこかに行こうよ。カリブ海とかさ。お金あるんでしょ?」
( ・∀・)「まあな」
川 ゚ー゚)「約束だからね」
20.
( ・∀・)「ああ」
モララーが何か煮え切らないような態度なのが少し気になった。
普段なら隠し事をしているのだろうと疑うところだが、多分彼も緊張しているのだろうと
クーは思った。
仕事が成功するかどうかの瀬戸際なのだ。
食事を終えるとツンの待つ独房へ向かった。
川 ゚ -゚)「よう」
ξ ゚⊿゚)ξ「お姉ちゃん」
ベッドに腰を下ろし、すっかり打ち解けた彼女とお喋りする。
川 ゚ -゚)「お前の両親が金を払うってさ」
ξ ゚⊿゚)ξ「!」
川 ゚ -゚)「良かったな。家に帰れるぞ」
21.
クーはツンの頭を撫でた。
ツンはもじもじしいている。
ξ ゚⊿゚)ξ「あのね、あのね……」
川 ゚ -゚)「ん?」
ξ ゚⊿゚)ξ「さらわれて、閉じ込められて、すごく怖かったけどね、だけど……」
川 ゚ -゚)「何だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「いいこともあったよ」
川 ゚ -゚)「……」
ξ ゚⊿゚)ξ「絵を教えてもらって、それで……友達ができたの。初めての友達」
川 ゚ -゚)「わたし?」
ツンは頷いた。
ξ ゚⊿゚)ξ「わたし外国人だったから、学校で誰とも友達になれなくって……」
22.
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしの国は嫌われてたから」
川 ゚ -゚)「そうか……」
ξ ゚⊿゚)ξ「お父さんとお母さんは喧嘩ばっかりしてるし」
ツンはかつて誰にも話したことがないであろう、自分が置かれている状況の苦しさを
ゆっくりと吐露した。
多分、これまで相談に乗ってくれるような人が誰もいなかったのだろう。
川 ゚ -゚)(わたしと一緒か……いや、わたしにはモララーがいたもんな)
モララーに昔の彼に戻って欲しかった理由は色々ある。
昔は優しく、誠実で、誰にでも分け隔てせず付き合う気のいい働きものだった。
そして何より、この世でただ一人絵描きになりたいというクーの夢を認めてくれた人でもあった。
川 ゚ -゚)「辛かったな」
ξ ゚⊿゚)ξ「ん……」
23.
ツンの肩を抱くと、彼女はこっちに寄り掛かってきた。
ξ ゚⊿゚)ξ「もう会えない?」
川 ゚ -゚)「うん、まあ……無理かな。寂しいけど」
ξ ;⊿;)ξ
川 ゚ -゚)「泣くなって。泣くな。今夜は一緒にいてやるから」
クーはシャツの裾でツンの眼元を拭ってやった。
会話が途切れ、沈黙が落ちる。
ツンはふとベッドの下から画用紙を一枚、取り出した。
ξ ゚⊿゚)ξ「見て」
川 ゚ -゚)「ん。どこの絵だ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「わたしが一番好きな風景。まだ描きかけなの」
イチョウの木の並木通りの、描きかけの絵。
24.
ξ ゚⊿゚)ξ「いつかお姉ちゃんとね、いつか……」
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ「一緒に歩きたいな」
川 ゚ -゚)「ん。わかった、約束するよ」
ξ*゚⊿゚)ξ「ほんと?!」
川 ゚ -゚)「ああ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その晩、二人は一緒に眠った。
だがツンは寝付けず、一人起き出した。
川 - )「Zzzz」
ξ ゚⊿゚)ξ
クーは眠っている。
25.
ツンは静かにベッドから降り、画用紙を拡げた。
窓から差し込む月明かりを頼りに、鉛筆を走らせる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝、クーは三つの決意を固めた。
一つは絵描きになる夢を今度こそ叶えること。
二つ目はいつかツンに再び会いに行くこと。
そして最後の一つは……
川 ゚ -゚)(モララーと結婚しよう)
今初めて、自分の中のすべての霧が晴れた。
自分はモララーを愛している。昔からずっと、かけがえのない男だった。
血の繋がりはほとんどないから、一度離縁して兄妹の関係でなくなって、それから……
約束の時間が来た。
26.
独房のあるマンションに、弟者が運転する車がやってきた。
モララーと兄者が玄関にやってくる。
( ・∀・)「クー、連れて来い」
川 ゚ -゚)「じゃあな」
ξ ;⊿;)ξ「うん」
ツンを強く抱き締め、耳元に囁きかける。
川 ゚ -゚)「いつか必ず会いに行く。待ってて、次会うその時は、わたしは絵描きになってるから」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん。約束だよ」
(´<_` )「おーい、まだか? 時間に遅れちまうぞ」
外で弟者がクラクションを鳴らしている。
クーはツンの手を引いて外に連れ出した。
モララーと兄者が迎える。
27.
川 ゚ -゚)「大事に扱えよ。イジメたら許さないぞ」
( ・∀・)「わかってるって。大事な商品だからな」
( ´_ゝ`)「来な、こっちだ」
ξ ゚⊿゚)ξ「あのね、お姉ちゃん……」
川 ゚ -゚)「ん?」
ξ ゚⊿゚)ξ「ううん、何でもない」
ツンは何度も振り返ってクーを見ていたが、やがてワゴン車の中に消えた。
リアシートのウィンドウが開き、モララーが顔を出す。
( ・∀・)「終わったら連絡する。家で待ってろ」
川 ゚ -゚)「ほい。ねえ、帰ってきたら大事な話があるの」
( ・∀・)「何だ?」
今ここで言うなんて、それはちょっとロマンがない。
28.
クーは笑って言葉を濁した。
川*゚ ー゚)「えっと……帰って来てからね」
クーは車を見送り、やがてその姿が見えなくなると、パシリを呼んで車を回させた。
複雑な気分だ。
ツンのことは名残惜しくもあり、しかし今夜結婚の告白が控えていることもあり……
自宅に戻ると、ドクオが一人待っていた。
('A`)「車を盗むのとセックスとどっちが気持ちいいかって?
車を盗みながらするセックスさ! やべ、俺童貞だった」
相変わらず演技の練習に余念がないようだ。
川 ゚ -゚)「またやってんの?」
('∀`)「よう! へへへ、俺、ボーナスが出たらハリウッドに行くんだ」
29.
川 ゚ -゚)「何しに?」
('∀`)「映画のオーディションを受けまくるんだ。ギャングから足を洗うよ」
川 ゚ -゚)「へー。まあ、頑張ってね」
椅子に座ってテレビを眺めながら、ぼんやりと彼のことを考える。
指輪くらい用意しておくべきだっただろうか……いや、それは男女の立場が逆かな?
川 ゚ -゚)「ねえ、女の方からプロポーズするのって変かな?」
('A`)「あ? いいんじゃねえか別に。誰かにする予定でもあんのか?」
川*゚ -゚)「いや、ちょっとね」
('A`)「モララーにする気ならやめとけよ」
川 ゚ -゚)「うーん、確かにいいお父さんって感じじゃないけどね。
でも、あいつもギャングから足を洗うって言ってたよ」
('A`)「俺も聞いたよ。だってあいつはギャングよりも……あっ」
30.
ドクオは「しまった!」という顔になった。
すぐに取り繕い、何事もなかったように練習に戻るが、クーは見逃さなかった。
川 ゚ -゚)「何?」
(;'A`)「あ? 何が?」
川 ゚ -゚)「ドクオ、言わせてもらうけどお前は演技が下手だ。絶望的に」
(゚A゚)「うるせー! ほっとけよ!」
川#゚ -゚)「だから誤魔化しても無駄だ! モララーが何を言ってたんだ?!
ギャングよりも、何?!」
唐突に不安が暗雲となって心を覆い尽くしてゆく。
あの時のモララーの顔だ。やっぱり何か隠していたのか。
クーはドクオに詰め寄った。
(;'A`)「いやあの俺が言ったってわかったら、おしおきされちゃうし」
31.
川#゚ -゚)「いいから言え、何だ、どういうことだ! モララーは何になる気なんだ!」
(;'A`)「勘弁してくれ」
クーは食卓に出しっぱなしの拳銃を手に取った。
銃口をドクオに向け、親指で撃鉄を跳ね上げる。
カチリ。
川 ゚ -゚)「言うんだ」
(;'A`)「おおおおお前に俺が撃てるのかよ?」
川 ゚ -゚)「あんたにレイプされそうになったって言えばモララーは信じるかもね」
両手を上げて降参のポーズを取ったドクオの顔色は次々に変わった。
やがて観念したのか、大きなため息とともに喋り出す。
('A`)「あいつはイカレてるぜ。第二のチェ・ゲバラになる気だぞ」
川 ゚ -゚)「どういうこと? 誰それ?」
32.
('A`)「知らないのか。まあいい。鉱山夫を扇動して暴動を起こすんだとよ」
川;゚ -゚)「何だって……?」
朝のモララーの電話を思い出す。
“百挺”。“倍は欲しい”。相手は武器商人か?
('A`)「一週間後に鉱山の持ち主の会社の社長が視察に来るだとかでな。
そのタイミングに社長を人質に取って鉱山に立てこもるんだとよ。
人民の搾取を断ち切って世界中にこのことを知らせるんだとか何だとか……」
川;゚ -゚)「何だそれ?! いつ聞いた?!」
('A`)「昨日の夜だよ。俺と流石兄弟だけ集めていきなり演説を始めてよ」
川;> -<)(何てこった……何てこった!! 変わるって、そういうことなの?!)
クーは家を飛び出し、自分の車に乗った。
都心を目指してアクセルを踏み込む。
33.
('A`)「あ、おい! 今から行ったって……あーあ、行っちまった」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーは都心に向かう途中、電話ボックスに入った。
その隣で兄者が時間を計る。
逆探知で居場所を特定される一分以内に電話を切る為だ。
( ・∀・)】「ニューソク公園に行って、北の男子トイレの三番目の個室に金を置け。
俺たちが金を回収し安全な場所まで来たら人質を解放する、いいか?
金はみんな旧札で小額紙幣だぞ」
_
( ゚∀゚)】「わ、わかった。娘はどこで解放するんだ?」
( ・∀・)】「解放したら知らせる」
_
( ゚∀゚)】「待ってくれ、娘の声を……」
( ´_ゝ`)(あと二十秒だぜ)
34.
( ・∀・)】「無事だ。安心しろ。いいか、追跡されてるとわかったらすぐガキを殺すからな」
モララーは電話を切り、車に戻った。
公園へ向かう。
休日なので人通りは多く、家族連れやカップルで賑わっている。
そんな中に一般市民を装った警官の姿がちらほらと見て取れた。
(´<_` )(やれやれ、モロバレだぜ。あいつらあれで変装してるつもりか?)
金の受け取り役は弟者に任されていた。
車を降り、刑事たちの視線を感じながらトイレに入る。
三番目のトイレには鍵がかかっていた。
ナイフでロックを解除し、中に入ると、確かにバッグはあった。
( ・∀・)「バッグを変えて中身だけ移せ。発信機がついてる」
35.
事前にモララーはそう言った。
(´<_` )(へへへ、誘拐犯と刑事と被害者がグルだなんて誰も思わないだろうな)
持参したバッグに中の札束を詰めかえる。
これも要求通りすべて旧札で、通し番号も金額もバラバラのものだ。
小額紙幣を多く混ぜることで足を付きにくくする為である。
かなりの重量があるバッグを抱えてトイレを出、車に戻る。
(´<_`;)(ん、追って来ないな。賢明だぜ。……重いな、くそ!)
( ・∀・)「どうだ?」
(´<_` )「あったぜ。ほら、見てみろよ」
( ・∀・)「ん。よし、行こうか。前を見て運転してくれよ」
( ´_ゝ`)「今は吸ってねえって、大丈夫」
36.
頻繁にカーブを曲がったり来た道を戻ったりしながら追跡を警戒しつつ、数度車を変え、
また地下鉄を使ったりして蛇行した後、彼らは安ホテルの一室に入った。
モララーが床に置いたバッグを開こうかという時、ケータイが鳴った。
( ・∀・)「数えとけ」
( ´_ゝ`)「へいへい」
(´<_` )「うひょお、すっげえ!」
( ´_ゝ`)「あれ、半分くらい新聞紙だぜ?」
(´<_` )「バカお前、ウチの取り分だけが入ってるんだろこれは。
残りの取り分はとっくに刑事とガキのオヤジが抜いてんだよ」
( ´_ゝ`)「あ、そっか」
受信ボタンを押した瞬間、クーの金切り声が飛び込んできた。
川#゚ -゚)「モララー!!」
37.
(;・∀・)「何だ何だ、どうしたんだよ?!」
川#゚ -゚)「今すぐ会いたい、今すぐにだ!」
( ・∀・)「酔ってるのか? ふざけるな」
川#゚ -゚)「居場所を教えろ、でなけりゃ今からお前の企みを全部ここでぶちまけるぞ!
通行人の皆様に聞いてもらうからな、お前が暴動を起こそうとしてるって!」
(;‐∀‐)「……クソ、ドクオか! あのバカ!」
川 ゚ -゚)「どこにいるんだよ!?」
( ・∀・)「ちょっと待ってろ、こっちから行くから」
川#゚ -゚)「いいや、一秒だって待たないね! 居場所を! 教えるん! だ!!」
モララーは仕方なくホテルの部屋を教えた。
ちょうど近くだったので、クーはそこへ車を急行させた。
ホテルに入り、部屋に入る。
ここに来るまでには怒りは失せ、代わりに悲しみがクーを支配し始めた。
38.
( ・∀・)「お前何考えてるんだ!?」
川 ゚ -゚)「ツンは?」
( ・∀・)「車だ。お前何考えて……」
涙目でこちらを睨むクーを見ると、モララーは何も言えなくなってしまった。
川 ; -;)「もうやめよう、モララー。
こんなことしてもあんたは救われないよ……!」
( ・∀・)
川 ; -;)「わ、わたし、あんたと結婚したいのに」
モララーはクーに一歩歩み寄った。
手を彼女の頬に添え、顔をそっと持ち上げる。
( ・∀・)「本気か?」
川 ; -;)「うん」
39.
(´<_` )「え、えーと……なあ、モララー」
( ・∀・)「引っ込んでろ!!」
( ´_ゝ`)「いや、そうじゃねえんだ。ヤバイぜ」
( ・∀・)「何だ?!」
横やりを入れられたモララーが苛立ちを露わに振り返ると、兄者が札束を一つ手にしていた。
中身がくり抜かれ、小さな機械が入っていた。
発信機だ。
( ・∀・)
モララーはそれを呆然と見つめ、そしてゆっくりと歩み寄った。
兄者の手から札束を抜き取り、呟く。
(;・∀・)「……ショボンの野郎、裏切りやがったな」
(;´_ゝ`)「何だ何だ!?」
40.
(´<_`;)「どういうことだよ?!」
(´・ω・`)「犯人グループは全員が射殺され、金は永遠にどこかに消える。そう言う事だ」
サイレンサー付きの拳銃を構えたショボンがそこにいた。
彼らを威嚇しながらバッグの方へ向かい、それを抱え上げる。
モララーたちはただそれを見ているしかなかった。
( ・∀・)「金はくれてやる。だがてめえだけは許さねえ」
モララーが人差し指を突き付けて呟くと、ショボンはそれを笑い飛ばした。
ドアの方へ下がってゆく。
(´・ω・`)「ハハハ、そりゃどうも。ああ、そうそう、一つだけ勧告しておこうか。
連中に降伏しても無駄だぞ。賄賂をたんまり約束してあるんでね」
どこかでサイレンの音がする。
41.
(´・ω・`)「では幸運を。アディオス」
彼が消えると流石兄弟が後を追おうとしたが、モララーがそれを押しとどめた。
(;・∀・)「ほっとけ、俺たちも逃げよう!」
( ´_ゝ`)「え!? 金は?」
( ・∀・)「捨ててけ! クソッ、何てことだ。来い、クー、話は後だ」
川;゚ -゚)「う、うん」
ホテル前の駐車場に警官隊を満載したワゴンが乱暴に駐車する。
すぐさま完全武装の隊員が現れ、建物を取り囲んだ。
(,,゚Д゚)「投降しろゴルァ、お前らがここにいるこたわかってんだぞ!」
(;´_ゝ`)「チクショー、さっきの野郎、あらかじめ通報してやがったな!」
四人は裏口から飛び出した。
42.
たった今駆け付けたばかりの隊員が警告もなしにいきなり撃ってくる。
すかさずモララーたちも撃ち返し、たちまち銃撃戦となった。
(,,゚Д゚)「止まれゴルァ、撃つぞ!」
(゚<_゚#)「もう撃ってるじゃねーか大ボケがあああ!!」
飛び交う銃弾を何とかやり過ごし、車の中に転がり込む。
後部座席の足元に縛られたツンが転がされていた。
川 ゚ -゚)「ツン!」
ξ ;⊿;)ξ「お姉ちゃん!」
( ・∀・)「ガキは置いてけ、邪魔になる」
川;゚ -゚)「バカ言え。あいつ言ってただろ、皆殺しにするって!」
銃弾を受けながら、とにもかくにも車を乱暴に出す。
弟者が運転し、助手席が兄者、残りがリアシートだ。
43.
行く手を阻んだ隊員がホースで水をまくみたいにマシンガンで弾丸をバラまいたが、一行が
構わず突っ込んでくると、慌ててその場から飛び退いた。
何とか道路に出、一方通行を逆走して大通りに出る。
(;´_ゝ`)「くそ……やべえな」
(´<_` )「撃たれたのか!?」
(;´_ゝ`)「ツイてねえ」
腹の銃創から血を流しながら、兄者は吸入器を取り出した。
鼻に当てて中身を吸い込もうとするが、すでに空っぽだった。
(;´_ゝ`)「くそっ、とことんツイてねえぜ」
吸入器を投げ捨てる。
(´<_` )「モララー、どうする?」
44.
( ・∀・)「逃げるしかねえ、とにかく根城のスラムあたりに逃げ込め」
川 ゚ -゚)「大丈夫、わたしがついてるぞ」
ξ ;⊿;)ξ「うん……」
当然ながらパトカーが後を追ってくる。
上空には警察と報道のヘリが飛び交い、こちらを見下ろしていた。
(;・∀・)(八方塞がりか、くそっ! とてもスラムまで持たん。どうする?)
(´<_`;)「あっ、やべえ!」
行く手の道路に警察が仕掛けたリベットの絨毯が敷かれている。
スパイクの生えた帯で、軽車両のタイヤを潰して行動不能にするシロモノだ。
彼らを乗せたバンはまともにそれを踏んだ。パン!!
(´<_`;)「うわああああ?!」
45.
激しくスピンしながら交差点の真ん中に放り出された。
そこはパトカーと警官が封鎖しており、十字砲火を浴びせようと待ち構えている。
ミ,,゚Д゚彡「投降しろ、もう逃げられんぞゴルァァ!」
( ´_ゝ`)「な、なあ、ここまでじゃねえか?」
( ・∀・)「いや待て。撃って来ねえって事は……」
あいつらは買収されてない警官に違いない。となれば……
視線がツンの方を向き、それから手の中に握られたままの拳銃に行く。
(;・∀・)(ここまで来て終わってたまるか! 俺は……俺は、こんなところで……)
モララーはクーからツンを引き剥がした。
ξ ;⊿;)ξ「ひっ」
川;゚ -゚)「おい!?」
46.
( ・∀・)「これしかねえんだ、納得してくれ! 兄者、ダッシュボードに発煙筒があるか?」
(;´_ゝ`)「あ? ああ……これかな」
( ・∀・)「合図したらつけろ、そんであそこの路地裏に走るんだ。いいな?」
(;´_ゝ`)「で、出来るかな……」
(´<_` )「俺がやるよ」
( ・∀・)「どっちでもいい。まだだぞ」
モララーはパワーウィンドウを下げ、顔を出した。
ツンの頭に銃を押し付けて怒号を上げる。
ξ ;⊿;)ξ「ひ、ひいっ」
( ・∀・)「こっちに人質がいることを忘れるんじゃねーぞ!!
納税者の皆様がちゃんと見張ってるぜ!」
上空の報道ヘリのことだ。
47.
もし人質がいることを無視して犯人を撃てば、ツンが無事であろうがなかろうが後に警察は
非難の矢面に立たされることになる。
ミ;゚Д゚彡「くそ……」
( ・∀・)「発煙筒をつけろ!」
(´<_` )「おう」
筒の蓋を開くと自動的に発火し、煙が溢れ出す。
その目くらましに乗じて一同は車から飛び出した。
思わず引き金に指をかけた警官を、上司が必死になだめている。
ミ;゚Д゚彡「撃つな、撃つんじゃない! 人質に当たる!」
煙の中の人影は朧だ。これでは犯人だけを狙い撃ちにするのは不可能だ。
モララーたちは混乱に乗じて路地裏に飛び込んだ。
うらぶれた場所で、廃墟の合間にある狭い通路だ。
48.
( ´_ゝ`)ゼェゼェ ゼェゼェ
(´<_` )「おい、こんなところでくたばるなよ」
( ´_ゝ`)「大丈夫だよ……コークかヘロインがありゃあ、こんくらい……」
( ・∀・)「はぐれるなよ、こっちだ」
路地は複雑に入り組んでおり、上空は無計画に拡張された建造物や住人が違法に引いた送電線などに
塞がれている。
警察からもこちらは見えないのだろうが、あちこちで連中の怒号がする。
( ・∀・)(まずいな、囲まれたか? 抜けられるか……)
川;゚ -゚)「ツンを返してよ!」
ξ ;⊿;)ξ
( ・∀・)「ダメだ、こいつが俺らの命綱だ」
( ´_ゝ`)「さ、さみぃ……ざまあねえぜ。コールドターキーか」
49.
もはや自分で歩くことも出来ず、弟者に支えられた兄者は血の気のない顔で力なく笑った。
体中の力が溶け出し、腹の傷から血と共に流れ落ちているようだ。
コ ー ル ト ゙ タ ー キ ー
ひどく寒い。失血のせいか、それともヘロインの禁断症状のせいか?
( ´_ゝ`)「なあ、いつか俺が麻薬を止められる日が来ると思うか?
心の痛みが癒されて、麻薬以外の価値観が持てる日が……」
夢現で兄者は囁いた。だが返事がない。
( <_ )
( ´_ゝ`)「どうした、弟者」
弟者がぐらりと崩れ、倒れた。
ゆっくりと、地面に沈み込むようにして。
流石兄弟は折り重なるようにして倒れた。
50.
( ´_ゝ`)「弟者……?」
弟者の背中には銃創があった。
兄者は呆然としたまま仰向けになり、大きく息をついた。
そして理解した。
( ´_ゝ`)(これはきっと、フラッシュバックだ。
俺は麻薬切れが見せる妄想の中にいるんだ。
だって、弟者が死ぬわけないだろ? 俺だって死ぬわけない)
警官がやってきた。
手にした拳銃から細く硝煙が立ち上っている。
(,,゚Д゚)
( ´_ゝ`)「よう。ヘロイン持ってたらくれないか?」
51.
警官は無言でその顔面に銃口を向けた。
兄者は微笑み、先を続けた。
これは夢だ。
( ´_ゝ`)「金ならあるんだよ。ホテルに置いてきちまったけどさ。
刑事が持ってっちまって……ああ、でも、きっとそのうち取り返すから……」
バン! バン! バン!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クーは路地内で反射を繰り返す銃声を聞き、振り返った。
流石兄弟の姿がない。
川;゚ -゚)「兄者、弟者?」
( ・∀・)「立ち止まるな、クー!」
52.
川 ゚ -゚)「だって流石兄弟がいないよ!」
モララーは振り返った。
現状から抜け出すことに必死で、背後に気が回っていなかった。
(;・∀・)「くそっ、はぐれたか」
しばらく路地の奥を見つめていたが、すぐに視線を正面に戻す。
それから無言で歩き始めた。
川 ゚ -゚)「行っちゃうの?」
クーが引き止めようとしても、一瞬立ち止まっただけだった。
川 ; -;)「あいつら、友達だっただろ?」
( ・∀・)「諦めろ」
53.
一言だけ、そう呟いた。
クーの恨みがましい視線、友の思い出、自らの良心、すべてを振り切って先に進む。
( ・∀・)「俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(・ω・`;)「くそ、逃がしただと」
車の中で警察無線を聞いていたショボンは歯噛みした。
現場は様々な管轄の警官が入り乱れており、やや混乱しているらしい。
路地に連中を追い込んだものの、連携が拙く王手をかけられないでいる。
ショボンは買収した警官の一人に電話をかけた。
(´・ω・`)】「わたしだ。出来る限り他の連中より先に見つけてトドメを刺してくれ!」
(,,゚Д゚)】「わかってる。二人始末した、あと二人だ」
54.
(´・ω・`)】「ガキもだぞ。少しでも疑いを持たれたら困る」
(,,゚Д゚)】「じゃ、あと三人か」
(´・ω・`)】「俺もそろそろ行く。到着するまでにケリをつけといてくれ」
一度電話を切り、車のエンジンを入れて現場に向かう。
(´・ω・`)(後は連中のアジトだ。うまく行ってるといいが)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、ドクオは。
('A`)「銃を向けられる度5セント貰ってたら今頃大金持ちだぜ……」
モララーのマンションの居間で、拳銃片手にアクションスターの真似をしていた。
( ´ー`)「うわードクオさんかっけー」
55.
( ・3・)「まじかっけー」
('∀`)「そうだろうそうだろう。じゃあ次の演技を見せてやるぞ」
(;´ー`)(勘弁してくれ)
(;・3・)(いつまでこの大根演技を見てなきゃなんねえんだよ)
テーブルに置いてあったドクオのケータイが鳴った。
('A`)「ちょっと休憩だ。もしもし」
( ´ー`)(助かった……)
( ・∀・)】「ドクオ、今から言うことをよく聞け! よく聞くんだ!」
('A`)】「何だ、どうしたんだよ? 落ち着け、金は?」
( ・∀・)】「しくじった」
(;'A`)】「何だと!?」
( ・∀・)】「説明してる時間がねえから言う通りにしろ。
そこから逃げ出してニューソク駅の一時預かり所に行け、引き換えタグは……」
56.
突然、リビングの扉が蹴破られた。
顔を覆面で隠した男が二人、銃を構えて入ってくる。
呆気に取られていたエイトボールの手下二人は、たちまちのうちに撃たれた。
( ・3・)「ぐああ!?」
( ´ー`)「おぐっ……」
懐に手を伸ばしかけたが、銃を掴んで戻ってくる前に蜂の巣にされる。
ドクオだけは難を免れた。
(゚A゚)「どわあああ?!」
抜くまでもなく、ちょうど手の中に銃があったからだ。
むちゃくちゃに撃ちまくりながら、転がるようにして部屋を飛び出す。
(:::::::::::)「!!」
57.
刺客はあわてて物陰に飛び込んだ。
('A`;)「なななななんだなんだなんだ、何事だぁぁ!?」
もう片方の手の中でモララーが怒鳴っている。
( ・∀・)】「おい、どうした?!」
('A`;)】「わかんねえ、襲撃だ!」
(;-∀-)(クソッ、アジトもバレてる! 跡を尾けられたのか!?)
( ・∀・)】「俺の部屋に行け、ベッドの枕ん中にタグが縫い込んである!」
('A`)】「何だって?」
( ・∀・)】「そいつを持ってニューソク駅の一時預かり所に行くんだ!
荷物を受け取ったら中のメモ通りにしろ、いいか!? 行け!」
わけもわからないまま二階にあるモララーの寝室に飛び込み、枕を引き破く。
一方、非番の警官である刺客二人は階下で話し合っていた。
58.
(:::::::::::)「撃ち合いは苦手だぜ、どうする?」
(:::::::::::)「へへへ、いいものを持ってきた」
片方はポケットから手榴弾を取り出した。
(:::::::::::)「おお、すげえ」
(:::::::::::)「こいつを投げ込もうぜ」
二人は足音を殺して階段を上がると、寝室の方へ向かった。
そこだけドアが開いている。
60.
(:::::::::::)「あそこだな」
ピンを引き抜き、手榴弾を中に放り込む。
何とか枕を破いて中身を取り出そうとしていたドクオは、足元に転がって来た黒い鉄の球体に
気付いた。
59.
('A`)「……あ?」
しばらくそれを見下ろす。
そして何なのか理解するとほぼ同時に、視線を窓にやった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モララーの携帯の向こうで何か大きな音がし、すべての音声が遮断された。
( ・∀・)】「ドクオ、おい、ドクオ!?」
川 ゚ -゚)「どうしたの?」
( ・∀・)】「……ドクオもダメだ」
川 ゚ -゚)「何だって……」
これで生き残っているのは二人だけだ。
ドクオが死に、“荷物”が葬られた今、万策尽きた。
60.
モララーはツンを放り出した。
よろよろと先に進み、その場にひざまずく。
( ・∀・)「おしまいだ」
川 ゚ -゚)
( ・∀・)「みんなおしまいだ……」
川 ゚ -゚)「モララー、」
( ・∀・)「よせ」
何か言う前に、モララーは背中を向けたまま彼女を制した。
半ば放心したまま。
( ・∀・)「投降も出来ない。突破も出来ない。もうどうしようもない」
クーは何も言えないでいた。
彼の絶望が痛いほど理解出来たからだ。
61.
川 ゚ -゚)「投降しよう、モララー」
( ・∀・)「ショボンの言ったことを忘れたのか?」
川 ゚ -゚)「買収されてない奴もいる。賭けよう」
( ・∀・)「……」
モララーの耳には届いていないようだった。
彼は不意に銃を持ち上げた。
銃口の先に目の前のツンを捕らえる。
ξ ゚⊿゚)ξ
( ・∀・)「お前たちさえ……」
ξ ゚⊿゚)ξ「……?」
( ・∀・)「お前たちさえ、この国に来なければ……」
絶望が瞳を曇らせ、もはや正常な判断力が保てず狂気が体を動かしている。
62.
( ・∀・)「お前たちさえ……」
親指が銃の安全装置を外しかけた時、隣でカチリという音がした。
撃鉄が持ち上がる音だ。
川 ゚ -゚)「モララー」
( ・∀・)
クーは彼を刺激しないようゆっくり告げた。
握り締めた銃の銃口と同じくらい、震えた声で。
川 ゚ -゚)「やめて、モララー」
彼女は緊張が高まり過ぎて息がつまり、僅かに喘いでいた。
それでも銃口はモララーに向けたままだ。
ξ ゚⊿゚)ξ
63.
( ・∀・)「こいつに罪はないって言いたいのか?」
モララーはクーの方を見た。
( ・∀・)「なら俺の父さんには何の罪があった?
父さんが間違ってて、父さんの上を跨いでった野郎どもが正しかったのか?」
川 ; -;)「モララー、やめて!!」
クーは悲鳴を上げた。
誰が正しい? 誰が間違っている?
子供を撃とうとしている目の前の男か?
愛した人を撃とうとしている自分か?
正しいのは世界のすべてで、間違っているのは自分たちか?
それともその逆か?
( ・∀・)「父さんに何の罪があったんだ……」
64.
川 ; -;)「やめ……!!」
彼の視線が再びツンに向くと同時に、人差し指が用心金に入った。
クーは引き金を引いた。結局何が正しいともわからないまま。
弾層が回転し、撃鉄が薬莢を叩く。
弾丸はモララーの体を貫いた。
( ・∀・)「……」
彼はよろめき、後ずさった。
クーの方を見たが、瞳にあるのは悲しみのように見えた。
( ∀ )
銃を構えたままクーはしばらく硬直し、倒れた彼を見ていたが、すぐに駆け出した。
川 ; -;)「モララー、モララー……ごめん、わたし……」
65.
( ・∀・)「いいんだ」
力なく呟き、モララーは目を閉じた。
川 ; -;)「あんたを止められなかった」
( ‐∀‐)「いや、お前は俺を止めてくれたよ……ありがとう」
最初で最後の口付けを交わす。
( ‐∀‐)「愛してる」
川 ; -;)「うん」
クーは袖で涙を拭い、立ち上がると、ツンを抱き上げた。
川 ゚ -゚)「行こう。お前だけは死んでも守る」
ξ ゚⊿゚)ξ
66.
途中、足が言うことを聞かなくなった。
立ち止まれ、とどまれ、彼のもとに戻れ。
自分の中にいる誰かがそう強制している。
クーは目を閉じて歯を食い縛ると、それを振り払って走った。
二人の姿が消えると、血の海に沈んでゆくモララーの元に警官たちがやってきた。
(,,゚Д゚)「むっ、仲間割れか?!」
( ・∀・)「さあな」
(,,゚Д゚)「銃を捨てろゴルァ、今ならまだ助かるかも知れんぞ」
買収警官ではないようだ。
それでもモララーは鼻で笑い、忠告を拒否した。
( ・∀・)「お断りだね」
倒れたまま渾身の力を込めて上半身を起こし、銃口を向ける。
67.
すぐさま警官たちが一斉射撃した。
( ∀ )
銃弾によって引き裂かれた死体の元へ、注意深く忍び寄る。
手の中から銃を蹴飛ばして離すと、警官は心音を確かめた。
(,,゚Д゚)「死んだ。行け、あと一人いる筈だ!」
残りの警官は皆、モララーの死体の上をまたいで行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クーたちはとうとう袋小路に追い詰められていた。
コンクリートの壁が行く手を遮り、後ろからは警官たちの足音がどんどん近付いて来る。
クーは壁際に置いてある大きな鉄のゴミ集積コンテナの影に、ツンと共に隠れた。
68.
川 ; -;)(モララー、みんな、くそ……なんで、なんでこんなことに。
わたしが彼を止められなかったから、苦しみを理解出来なかったから……)
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「大丈夫、お前だけは何とかして逃がすからな」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん」
警官たちが集まって来た。
強化プラスチックの盾を並べ、少し離れたところに陣取る。
(,,゚Д゚)「追い詰めたぞゴルァ、投降して出て来い!」
物影から様子を窺う。
袋小路のあたりは天井が開けており、報道ヘリがちょうどこちらの様子を捕らえたところだった。
監視があるのなら例え買収野郎でも無茶は出来ない筈だ。
川 ゚ -゚)「行きな、ツン」
69.
ξ ゚⊿゚)ξ「えっ?」
川 ゚ -゚)「お前は行くんだ。わたしは残る」
ξ ゚⊿゚)ξ「残るって?」
クーは彼女の小さな体を抱き締めた。
警官隊の後ろに駆け付けたツンの母親の金切り声が聞こえた。
(;、;トソン「ツン、ツーン! 無事なの!? 誰かツンを助けて!」
現場へ飛び出そうとするのを後尾の警官達が必死になだめている。
ツンはその声を聞き付け、弾かれたように振り返った。
ξ ゚⊿゚)ξ「お母さん!」
川 ゚ -゚)「ほら、パパとママのところへ戻れよ」
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「きっと医者になれよ。さよなら」
70.
ツンは迷っていた。
泣きながらクーを見下ろし、別のことを言ってくれないか待っていた。
川 ゚ -゚)
だがクーが決意を曲げる気がない事を理解すると、ゆっくりとその場を離れた。
彼女がゴミ箱の影から出てゆくのを見届けると、クーは拳銃のシリンダーをずらした。
弾丸一発を残して他はすべて地面に落とす。
川 > -<)
シリンダーを戻し、撃鉄を上げて銃口をこめかみに押し当てる。
歯を思い切り食い縛る。
そうしないと悲鳴ごと心臓を吐き出してしまいそうだった。
川 > -<)ゼェゼェ ゼェゼェ ゼェゼェ
71.
親指が安全装置を跳ね上げた。
人差し指を用心金に入れ、引き金にかける。
ぎゅっと閉じた瞼の合間から涙が溢れ出した。
川 ; -;)「許して……許して、モララー。許して、ツン。わたし、わ、わたしは……
耐えられない、もう耐えられないよ……いつまでこんな事が……」
死の恐怖に暴走する脳を静めるため、アドレナリンが過剰に分泌されている。
世界のすべてが遠退き、静かになった。
……いや、本当に物音がしない? 何かがおかしい。
クーは物陰から身を乗り出した。
ξ ゚⊿゚)ξ
ツンの背が見えた。
ちょうど警官隊の方へ歩いてゆくところだ。
72.
長い時間が過ぎたと思っていたが、まだあんな場所に……
いや、彼女はわざとゆっくり歩いているのだ。
(,,゚Д゚)「早くこっちへ!」
警官が手を差し伸べる。だが彼女はその場で立ち止まった。
そして無言で両手を開いた。
自分の体を盾にしていた。
ξ ;⊿;)ξ「やめて……許してあげて……」
恐怖に震え、卒倒しかねないほど脅えながら、それでもツンはその場から動かなかった。
震える声でなおも続ける。
ξ ;⊿;)ξ「お姉ちゃんを、許してあげて」
誰もがその見えない力に気押され、身じろきすら出来なかった。
73.
川;゚ -゚)「バカ、何やってるんだ!!」
ξ ;⊿;)ξ「約束したもん!」
彼女はか細い体の底から声を張り上げた。
振り返り、ポケットから画用紙を取り出して拡げる。
イチョウの並木通りを歩く二人の人影の絵だ。
一つはツンで、彼女と手を繋いで笑い合っているもう一人は……
川 ゚ -゚)「わたし……?」
ξ ;⊿;)ξ「約束したもん、一緒にここ歩くって約束したもん!!」
川 ゚ -゚)
ξ ;⊿;)ξ「絵描きさんになるんでしょ?! 死んじゃやだよ!」
クーは物陰に戻った。
もしも投降してここを出て、それでどうする?
74.
これから先、あらゆる非難と恥辱、長きに渡る苦痛が待っている。
死ぬまで永遠にモララーを救えなかった事に苦しみ続ける。
でも、それでも。
川 - )
たった一人だけ、この世界に自分の夢を信じてくれる人がいる。
長い時間が過ぎた。
クーは拳銃を置き、両手を上げて物陰から出た。
地面に跪く。
(,,゚Д゚)「人質を保護して奴を拘束しろゴルァ!」
警官たちがツンを連れ去り、それから拳銃を構えた奴らがクーを取り囲んだ。
地面に伏せさせ、後ろ手に手錠をかける。
75.
(・ω・`;)(何てことだ、くそっ! 金を持って高跳びしないと)
その場にいたショボンはそそくさと逃げ出そうとした。
だがすぐに誰かに後ろから取り押さえられる。あっという間に腕に手錠がかけられた。
(´゚ω゚`)「ぐえっ!?」
(,,゚Д゚)「悪ィな、旦那」
彼が雇った汚職警官だ。
(・ω・`;)「貴様、何のつもりだ?!」
( ´∀`)「あーこりゃどうもですモナ、警部補さん」
保険会社の調査員だ。
(・ω・`;)「何がどうなってるんだ、説明してくれよ!」
( ´∀`)「あんたを保険金詐欺の容疑で逮捕したいそうですモナ」
76.
(´・ω・`)「何を根拠に言ってるんだ、あのチンピラ連中の言う事を信じるとでも……」
調査員はモバイルを取り出し、インターネットに繋いだ。
動画投稿サイトのある動画を再生する。
音声のみで映像はない。
( ´∀`)「エイトボールは保険をかけておいたんですモナ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
街中のとあるネットカフェに、通報を受けた警官二人が駆け付けた。
店員が奥のブースを指差す。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お巡りさん! あれよ、あそこの中の人!」
(,,゚Д゚)「わかった。そこにいてくれ」
拳銃を抜き、ブースの中に飛び込む。
77.
男が一人、キーボードの上に突っ伏していた。
背中に細かいガラスや木屑の破片が刺さり、血まみれになっている。
( A )
(,,゚Д゚)
警官は首筋に触れた。
もう一人が聞く。
ミ,,゚Д゚彡「生きてるか?」
(,,゚Д゚)「一応救急車を呼んどけ。まあ、手遅れだと思うが」
モニタには動画共有サイトが開かれ、PC本体にUSBメモリが繋がっている。
傍らにあるメモには「この情報をネットに流せ」と書かれていた。
彼が投稿した動画がリピート再生されている。
78.
“俺だ。どうだ?”
“保険会社が出せるのは二億二千万だそうだ。まあ、うまく行った方だろう”
“くそ……予定じゃ三億だった筈だぞ”
“安心しろって、あんたの取り分は減らさないよ。
俺の方でジョルジュと話をつけて残りを……”
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(´゚ω゚`)(あの野郎、録音してやがったな!?)
(・ω・`;)「待ってくれ、これはデッチ上げだ!!」
( ´∀`)「金はどこモナ?」
(´・ω・`)「金なんか知らん!」
(,,゚Д゚)「あー、警部補が車に積んでるの見たぜ」
(´゚ω゚`)「き、貴様……!!」
79.
買収警官はショボンの耳元で囁いた。
(,,゚Д゚)「誰もがみんな、我が身が大事さ。そうだろ?」
( ´∀`)「ジョルジュと留置所で仲良くしてくるモナ」
(・ω・`;)「待ってくれ、頼む! か、金ならくれてやる、だから……!!」
(,,゚Д゚)「元警官は刑務所で地獄を見るそうだ。まあ、楽しんで来いよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
警官がツンをトソンのところへ連れて行く。
(;、;トソン「ああ、ツン!」
ξ ;⊿;)ξ「お母さん! 内藤さんも……」
( ^ω^)「防弾ベストのおかげで九死に一生ですお」
母子が抱き合うのを、パトカーに押し込まれたクーは窓越しに見ていた。
80.
ツンが視線に気付き、こちらを向く。
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ
川 ゚皿゚) ムヒッ
ξ ;ー;)ξ
二人は見つめあっていたが、やがてパトカーが走り出した。
クーは目を閉じ、モララーの顔を思い浮かべた。
川 - )(ごめん、モララー。わたしやっぱり、生きてくよ。
後悔してるけど、痛くてたまらないけど、やっぱり生きていたいんだ)
胸に下げたロザリオを握り締める。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
81.
数ヶ月後、秋の訪れたあるよく晴れた日のこと。
ツンの家にほど近い路上で、二人は再び出会った。
川 ゚ ー゚)「ほら、見ろよ」
クーはポケットから紙切れを取り出し、広げて見せた。
自分で書いたらしい文章だ。
ξ ゚ー゚)ξ「わ、すごーい。自分で書いたの?」
川 ゚ -゚)「そうだ。上達したもんだろ? 時間だけはいっぱいあったからな」
ξ ゚⊿゚)ξ「でもここんとこ違うよ」
川 ゚ー゚)「相変わらずキビシイな」
二人は笑い合い、そして溜め息をついた。
川 ゚ -゚)「わたしね、別人になるんだって」
82.
ξ ゚⊿゚)ξ「?」
川 ゚ -゚)「えっと……これまでエイトボールがやってきた悪いこと、全部話す代わりに
許してもらったの。司法取引って言うんだけど」
ツンにわかるように説明するのは難しかった。
顔を上げて向こうを見、遠くで自分を見張っている車を見る。
背広の男が二人、外に出て待っていた。
警察関係者だ。
川 ゚ -゚)「だけどそうするとほら、わたしは裏切り者になっちゃうわけじゃない。
逃亡中の他のメンバーに復讐されるかも知んないから」
ξ ゚⊿゚)ξ「また会える?」
川 ゚ -゚)「……いや、多分無理かな。過去の繋がりを全部捨てないと」
ξ ゚⊿゚)ξ「そっか」
83.
クーは首を振った。
そうじゃない、こんなことが言いたいんじゃない。
クーはひざまずき、ツンと視線の高さを合わせて彼女の顔を覗き込んだ。
川 ゚ -゚)「いつか国を出て、絵描きになるよ。いや、順番が逆になるかも知れないけど。
とにかく絵描きになるから」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん」
川 ゚ -゚)「絵を描いて、発表するよ。あんたのくれたあの絵」
ξ ゚⊿゚)ξ「……うん!」
二人は強く抱き合った。
ずっとそうしていたかったが、車に乗った男がクラクションを鳴らした。
そろそろ時間だ、という合図だ。
クーは立ち上がり、振り返って手を振った。
84.
川 ゚ -゚)
ξ ゚⊿゚)ξ
ツンが手を伸ばした。
クーがそれをそっと握る。
二人は黄色く染まったイチョウ並木の下を、並んで歩いた。
ゆっくりと、いつまでも。
すぐに向こう側に辿り付いてしまわないように。
いつか夢を叶え、クーがこの時思い描いた絵を完成させた時、そして二人は再び出会う。
おしまい
~ここからおまけ~
1.
(タイトルコール、スタジオの映像。キャスターを映し出す)
(#゚;;-゚)「N.N.F(ニューソクニュース速報)の時間です。
みなさんこんにちは。滝川クリスでぃルです。
今日は市内の刑務所のニュースをお送りします」
(後ろの画面にVTR、刑務所の外観)
(#゚;;-゚)「主に長期刑から終身刑、死刑囚が服役しているこの刑務所では、数年前からある
ユニークな構成プログラムが実施されています。
このプログラムを始めたのは、ある一人の囚人でした。
今日はその模様をお送りします。現場のワカッテマスさん?」
(画面がクローズアップ、現場のキャスターへ。刑務所の面会室)
( <●><●>)「こちらが現場なのはワカッテマス。
まずはこちらをご覧下さい」
(画面が再び切り替わり、小粒ながら良質な出来で少し話題になった刑務所映画の映像が流れる)
( <●><●>)「先日公開された映画『バイアス・アンド・バイス』。
この映画はここニューソク刑務所に服役している囚人たちによって撮影・制作が
行われました。
そしてこちらがその監督・主演を務めた……」
('∀`)「ドクオだ! よろしくな!」
( <●><●>)「こんにちはドクオさん。
バイアス・アンド・バイスは罪人の内面に対する高度な描写が話題になりましたね」
('A`)「俺は元ギャングだったからな。そのへんの気持ちはよくわかるんだ」
( <●><●>)「ほとんど外部に頼らず制作されたそうですが?」
('A`)「いや、大変な苦労だったぜ。
俺はちょっとした事件に巻き込まれてブチ込まれたんだが、ケガを治すのに一年かかった。
更に模範囚として二年過ごして、仲間集めと撮影機材の申請にもう二年かかった」
( <●><●>)「仲間と言われますと?」
('A`)「制作スタッフと俳優さ。所内の演劇グループから引き抜いたんだ」
( <●><●>)「なるほど」
('∀`)「それからも壁の連続さ。看守を説得しなくちゃなんないし、スポンサーも必要だった。
交渉に随分手間取ったよ。何にせよ公開出来て嬉しい限りだね!
この辺の苦労の詳しいとこはDVDの特典に入れるつもりだ。買ってくれよな」
( <●><●>)「最後に視聴者に向けて一言」
('A`)「俺は犯罪を正当化するつもりは一切ねえ。
だが、こんな生き方しか出来ない男がいたって事をわかって欲しいんだ」
( <●><●>)「ありがとうございました。では映画の予告編をどうぞ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2000人が生活する巨大な石棺の町、ニューソク刑務所。
罪を引きずり、この町にある男がやって来た。
(足に付けられた鎖を引きずり、看守を伴ったドクオが刑務所の廊下を歩く。
やがて房が並ぶデイルームに入ると、獲物を窺うかのような囚人たちの視線に晒される)
訪れる過去との接点、失われた時間の再来、そして男はその時―――
バイアス・アンド・バイス
ただいま公開中!
―――死んで行った仲間たちと、今どこかにいるある女に捧ぐ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
遠く離れたどこか異郷の地で、ある女が足を止めていた。
街頭のテレビが映し出すその予告編が目に入った時、思わず呆気に取られ、両手に抱えた画材を
落としそうになった。
川;゚ -゚)「……あいつ、生きてたのか」
嬉しいような、変な気分だった。
すぐに一人笑い、歩き出す。
川 ゚ー゚)(まさか先を越されるとはな)
急いで帰って、絵を完成させなければ。
バイトの合間を縫って描いたコンクール用の絵だ。
前回は佳作だったが、今度こそ……
もう少しだ。夢まであと、もう少し。
スポンサーサイト

コメントの投稿
No title
蛇足だと思ってたとこが好評で何より
蛇足じゃねぇ!
いいじゃねぇか…
ドクオよくやった
いいじゃねぇか…
ドクオよくやった
No title
蛇足だとわかっていながら
この下りをわざわざ書いてくれたことが、なんか嬉しいぜ
ありがとうぅぅ
この下りをわざわざ書いてくれたことが、なんか嬉しいぜ
ありがとうぅぅ
No title
やばい、生きてるの知ってなんか泣いた。
これはいい。マジで乙
これはいい。マジで乙
うおおおおおおおおっ!!!!!
おまけ乙!
なんというハッピーエンド まさか生きていたとは… ええよええよー 書いてくれてありがとうね
おまけ乙!
なんというハッピーエンド まさか生きていたとは… ええよええよー 書いてくれてありがとうね