( ( )ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです 第四話
特にコメントもなし。
1.
モララーが団地で目覚めてどのくらいの時間が過ぎただろう。
乾いた川にかかる橋を渡るとき、ふたりはとうとう間近にまで迫った王の城を見上げた。
( ・∀・)「すげえなあ」
川 ゚ -゚)「こんな近くで見るのは初めてだな」
天を突くその建造物は、城と言うより塔と呼ぶほうがしっくり来る。
( <●><●>( <●><●>)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
第四話 狂信者の町
2.
橋を過ぎ、町に入った。
元はオフィス街で、城の周囲にはビルが寄り添うにように林立している。
いずれも高層なものばかりだが、それですら城の足下にも及ばない。
ビルの峡谷に入ると、壁や地面の落書きが目に付き始めた。
( ・∀・)「何だろう、これ」
以前見た王の物語もあったが、大半は意味のわからない文字に絵を組み合わせたものだった。
いずれも曲がりくねり、象形文字じみていて、もはやモララーたちの知る言語ではなくなっている。
ねじくれた絵はブージャム・ドールを描いたものらしい。
川 ゚ -゚)「!」
それを見ていたクーが、ふと立ち止まった。
頭がふたつある人形の絵が壁に書かれている。
腕が四本あり、両足はヤギに似た蹄になっていた。
3.
( ・∀・)「これが君の言ってた……?」
川 ゚ -゚)「こいつだ」
ドクオがそちらを一瞥した。
(U'A`)「そいつは〝ジグザグ〟と呼ばれていたやつだ。
王が作り出した最強のブージャム・ドールで、人々にもっとも恐れられていた」
( ・∀・)「何のために人間をさらっていくんだ?」
ドクオはその質問には答えなかった。
( ・∀・)「大丈夫。きっと君の弟は生きてるよ」
川 ゚ -゚)「うん。そうだね、きっと……」
モララーが肩に手を置いて笑いかけると、クーは不安げに微笑み返した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4.
倒壊したビルを迂回し、城に向かう。
ヴォイドは姿を見せなかったが、代わりに奇妙なオブジェが目に付きはじめた。
( ・∀・)「うわっ……!」
切り落としたヴォイドの頭部が、葉の落ちた街路樹の枝にいくつも突き刺してあった。
悪趣味なクリスマスツリーのようになっている。
( ・∀・)「何だこれ? ヴォイドがやったのかな」
川 ゚ -゚)「狂信者たちだ」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「父さんに聞いたことある。頭のおかしくなった奴らが徒党を組んでるって」
( ・∀・)「ゾンビもののお約束か」
川 ゚ -゚)「どういう意味?」
担いでいた剣に巻いておいた布を取り払い、刃を親指で撫でながらモララーはつぶやいた。
5.
( ・∀・)「結局、人間の敵は人間ってこと」
再び歩き出す。
( ・∀・)「クーは弟を助けた後はどうする?」
川 ゚ -゚)「元いたアジトに帰るよ。そこで畑を作るんだ。ジャガイモとかソバとかさ」
( ・∀・)「ソバ? 好きなの?」
川 ゚ -゚)「収穫が早いし、痩せた土地や日当たりが悪いところでも育つんだって。救荒食って言ってね。
モララーはどうするの?」
( ・∀・)「どうしようかな……箱に頼んで、何か願いを……」
(U'A`)「あー、言ってなかったんだが」
ドクオが口を挟んだ。
(U'A`)「叶えられる願いはひとつだけだ」
6.
モララーは思わず立ち止まった。
( ・∀・)「何で? だってどんな願いでも、いくらでも叶うって……」
(U'A`)「詳しい説明は省くが、とにかくひとつしか出来ない。実際に見ればわかるが」
(;・∀・)「何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!?」
(U'A`)「言い忘れてた。何とかなるって、心配するな」
(;・∀・)「バカ言うなよ! 根拠は何だよそれ!」
ドクオは真っ直ぐにモララーを見た。
(U'A`)「ここに俺がお前を選んだ理由があるんだ。
玉座の間にまでたどり着いた時、お前はすべてを知ることになるだろう。
たどり着ければだが」
(#・∀・)「まったく、大事なことは何にも教えてくれないんだからな。
うーん、ひとつだけ……ひとつだけかあ……」
7.
川 ゚ -゚)「何を叶えるの?」
( ・∀・)「わかんない。どうしよう」
モララーが首をひねっていると、クーがおずおずと口にした。
川 ゚ -゚)「ねえ、良かったらさ……その願いを叶えたあとにさ……」
ここで一息入れる。
川*゚ -゚)「わ……わたしと一緒に、アジトに来ない? 畑を作るのに男手がいるし」
( ・∀・)「えっ?」
顔を赤らめているクーを見ていると、モララーも急に気恥ずかしくなってきた。
(*・∀・)「あ……う、うん。もちろん。いいよ!」
(U'A`)「今度は堂々と下着が拝めるな。下着の中身もか」
(#・∀・)「鍋にして食っちまうぞてめー!!」
8.
そのとき、わずかに空気が震える音がした。
その瞬間、モララーは振り返りざまに剣を振るい、飛来した矢を切り落とした。
ギィン!!
川 ゚ -゚)「!」
( ・∀・)「誰だ!」
ビルの上のほうの階に複数の人影が見えた。
弓を構えていて、新たな矢をつがえるところだった。
( ・∀・)「くそっ」
降り注ぐ矢をかわし、ふたりと一匹はビルに向かって走り出した。
角を曲がって物陰に飛び込もうとした時、みっつの人影が雄叫びをあげて飛びかかってきた。
( ∵) ギィィエエァァア―――!!!
9.
モララーがふたりを切り伏せ、クーのショットガンが残りのひとりを吹っ飛ばす。
( ・∀・)「狂信者って奴らか」
ぼろ布も同然の服を身にまとい、CDや金属部品などを紐に連ねて腰から垂らしている。
複雑な幾何学模様のペイントを顔に塗っていた。
川 ゚ -゚)「モララー、あっちからも!」
手作りの槍や斧を持った男たちがこちらに駆けつけて来た。
口々に獣じみた絶叫をあげている。
( ∵)キェェァァア!!
( ∵)ウギイイイイ!!
(;・∀・)「獣に退化してやがる」
ぶら下げた飾りがじゃらじゃらと不気味な音を上げている。
10.
クーが時々振り返って散弾を浴びせたが、彼らはものともしなかった。
仲間の屍を踏み越え、死に物狂いで追ってくる。
川 ゚ -゚)「弾が……!」
( ・∀・)「僕に任せろ」
彼女の銃は装填の際、キャップを開いて弾丸を詰め直し、撃針を交換するという手順を踏むため、時間がかかる。
彼女がガンベルトに常に六丁も差しているのはそのためだ。
モララーたちは路地を抜けて大通りの交差点に出た。
( ・∀・)「あっ」
川 ゚ -゚)「!!」
ふたりは追い込まれたことに気付いた。
奥と左右の通路は車やバスで塞がれ、更に槍襖が築かれている。
11.
( ∵)( ∵)( ∵)
狂信者たちは来た道を埋め尽くし、周囲のビルでは射手が鏃をこちらに向けて構えている。
口々にわめき声を上げているが、それ以上は近づいて来ようとしなかった。
( ・∀・)「襲って来ない……?」
その時初めて、モララーはこの広場の異質さに築いた。
地面にタールで何やら文様が書かれ、ところどころに血の跡がある。
川 ゚ -゚)「祭壇……?」
その時、あのぜぇー、ぜぇーという苦しげな息づかいが聞こえた。
かちかちという金属がアスファルトを踏む足音がし、だんだんこっちに近づいて来る。
( ・∀・)「!」
( <●><●>( <●><●>)
12.
そのブージャム・ドールが姿を現したとき、狂信者たちは地面にひざまずいた。
祈るようなうめき声を上げ、顔を伏せる。
( ∵) オオー、オオー……!!
川 ゚ -゚)「あいつ……!」
頭がふたつ、腕が四本あり、足が蹄になっている。
他と比べるとやや小柄で、背の高さはモララーより少し高いくらいしかない。
ジグザグは立っていたバスの上から飛び降りた。
と、同時にその背後に引き連れていた無数のブージャム・ドールもそれに続いた。
( <●><●>)ゼエゼエ
( <●><●>)
(U'A`)「お前らは生け贄ってことだな」
他人事のようにドクオがつぶやいた。
13.
( ・∀・)(クソ、多すぎる! 僕はともかくクーを守り切れないぞ)
(U'A`)「噂が本当なら、連中はお前らを生け捕りにして連れ帰るはずだ」
( ・∀・)「クー、降参しよう」
川#゚ -゚)「うわああああ!」
クーはいきなりジグザグに向かってショットガンをぶっ放した。
激しい金属音を上げ、外骨格が散弾を弾き返す。
もう一丁を抜こうとした時、隣に回り込んだブージャム・ドールがクーを抱え上げた。
( <●><●>)ゼエゼエ
川;゚ -゚)「離せ、この野郎!!」
(;・∀・)「クー! ちっくしょう」
もはやヤケクソで剣を振るうが、数が多すぎた。
相手を寄せ付けないのに精一杯で、クーを担いで引き上げるブージャム・ドールに近づくこともできない。
14.
(;・∀・)「待ちやがれ、クソ……ぐっ!?」
( <●><●>( <●><●>) ヒュッ!!
そちらに気を取られた時、ジグザグが投げた剣がドクオの胴体を貫いた。
ひざまずき、剣を取り落とす。
( ∀ )「がはっ……」
川 ; -;)「モララ―――!!!」
ジグザグはモララーを一瞥し、部下たちと来た道を引き返していった。
その際、ブージャム・ドールの一体が彼の胴体から剣を引き抜き、回収してゆく。
( ・∀・)「くっ……」
傷が塞がるころにはもう、広場には誰もいなくなっていた。
狂信者たちも姿を消している。
15.
モララーは腹を抱えながら、地面に落ちていたクーのガンベルトを拾い上げた。
(;・∀・)「ちっくしょう、クー!! ちっくしょう……」
絶叫する彼にドクオが歩み寄ってきた。
いつも通り、他人事のような態度で言った。
(U'A`)「喚いてる場合か?」
( ・∀・)「ああ、そうだ……このままで済ますもんか、あの野郎!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
城の入り口にまでたどり着いた。
中は鬱蒼として暗く、壁にかけられたほのかな灯りが点々と奥へ続いている。
(U'A`)「覚悟はいいか? ここから先はブージャム・ドールの巣だぞ」
( ・∀・)「ああ、やってやる! 王の野郎もついでにぶっ飛ばしてやるぞ」
16.
剣をしっかりと握り締め、ごくりと唾を飲み込む。
モララーは意を決し、中へと入っていった。
( ・∀・)(待ってろ、クー)
入ってすぐはエントランスホールになっていた。
二重螺旋を描く壮麗な階段が中央にあり、上へと伸びている。
いずれも真っ白で、金で縁取りがしてあった。
( ・∀・)「う、うわ……」
そこらじゅうにブージャム・ドールの亡骸が転がっていた。
切断され、あるいは壁に串刺しにされている。
( ・∀・)「王が暇つぶしに自分を襲わせてたって言う……」
(U'A`)「そうだ。人間を相手するのに飽きてからはな」
17.
階段を上がってゆく。
天井が見えないくらい高い。モララーはそれをひたすら上がり続けた。
ふつうのビルならもう30階分は上がっただろうか?
(;・∀・)「王はずいぶん足腰が強かったみたいだな」
(U'A`)「昔はこれがエスカレーターみたいに動いてたんだよ」
( ・∀・)「お前、何でそんなことに詳しいんだ?」
(U'A`)「王のそばにずっといたからだ。正確には箱のそばにだが」
モララーは足を止めた。
( ・∀・)「そろそろ話してくれ。お前は誰なんだ?」
(U'A`)「俺は箱の一部だ。管理者とか護衛とか言うのとはちょっと違うが」
( ・∀・)「どういう意味だ?」
(U'A`)「話してる暇はなさそうだな。ほら、来たぞ」
18.
あの苦しげな息づかいがした。
( <●><●>)ゼエ、ゼエ
風を切る音とともに、翼を持つブージャム・ドールが舞い降りてきた。
ムカデのように長い胴体にトンボのような羽根が連なっている。
(;・∀・)「あれは……?!」
(U'A`)「〝ドラゴンフライ〟か」
同時に上から飛び降りてきた二体のブージャム・ドールが、モララーを挟み撃ちにした。
( <●><●>)ゼエゼエ
( <●><●>)ゴボォッ
手にしたねじくれた槍で同時に突いてきた。
モララーは身をよじってかわし、片方の胴体を剣で突いた。
19.
( <●><●>)ゴボ……
( ・∀・)「オラア!」
同時に後ろのもう一体に蹴りを食らわせ、階段から叩き落とす。
すぐに剣を振るい、串刺しにしていた方も投げ捨てた。
( <●><●>)ゼエッ
新手が群れを成し、階上から雪崩れ込んで来た。
(;・∀・)「うわっ、くそ!」
剣で蹴散らすが、数に押されて徐々に後退してゆく。
その時、周囲を回遊していた羽根を持つブージャム・ドール、ドラゴンフライが突っ込んできた。
(;・∀・)「!!」
( <●><●>)
20.
顎が階段を削り取る。
モララーは寸前で壁を蹴り、相手の上に飛び乗っていた。
( ・∀・)「うらああああ!!」
眉間に剣を突き立てる。
相手はすさまじい悲鳴を上げ、身をくねらせて彼を振り落とそうとした。
モララーはその節くれ立った背の上を走って勢いをつけると、尻尾の先端を蹴って再び階段に舞い戻った。
( <●><●>)ブギャアアアア……
(;・∀・)「うおっと、あっぶねえ」
手すりに捕まり、はるか下へ落ちてゆく相手を見下ろす。
(U'A`)「まだ終わってないぞ」
階段の上から降りてきたドクオが言った。
21.
雑魚のブージャム・ドールたちが駆け降りて来ると、ドクオをよけてモララーに殺到した。
(#・∀・)「うおおおおお!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
数時間後、モララーは階段の一番上の段に手をかけた。
ふたつの階段は大きな丸盆に到達して終わっている。
(;・∀×)「ぜえ、ぜえ」
何とか体をそこまで持ち上げ、ごろりと仰向けになった。
体には何本もの槍やブージャム・ドールの腕が突き刺さり、全身を返り血で真っ黒にしている。
左目はえぐり出されてなくなっていた。
肘から先のない腕を呆然と見上げた。
(;・∀×)「ぜえ、ぜえ……ちっくしょう、腕どっかに落っことしてきちゃった……」
22.
(U'A`)「すぐに生えてくるさ。じっとしてろ」
言われた通りにした。
城はまだまだ続き、天井はかすんで見えない。
( ・∀×)(何だろう、昔もこんな目に遭ったような……?)
荒く呼吸をしていると、またキュートのことを思い出した。
右手で自分の頬に触れる。
彼女の手がそこに触れた瞬間の感覚が、今もまだはっきりとそこに残っている。
( ・∀×)(君は誰なんだ? なぜ僕の心に焼き付いているんだ?)
丸盆から周囲八方向に渡り廊下が伸び、それぞれ壁に開いた通路に続いている。
白い床に横たわっていたモララーは、かすかにその震動を感知した。
( ・∀×)(なんか来る)
23.
バランスを崩しながらも何とか立ち上がると、奥の通路のひとつに人影が現れた。
頭がふたつ、腕が四本、ヤギの足を持ち、背に四本の剣剣を背負っている。
( <●><●>( <●><●>)
( ・∀×)「ジグザグ! あの野郎……」
たちまち左腕の傷がうずき、肉が盛り上がってまっさらな腕が生えた。
同じく再生された左の眼球で相手を見据える。
( ・∀・)「クーをどこにやった!」
( <●><●>( <●><●>)
相手は無言で剣を抜き、モララーと相対した。
たちまち剣戟が火を噴く。
(;・∀・)(クソッ、強い!!)
24.
ただ力任せに振り回しているだけではない。
綿密なシミュレーションに裏打ちされた、れっきとした剣術だ。
( ・∀・)「ハァッ、ハァッ」
( <●><●>( <●><●>) シィィイッ
モララーは自分の体に刺さっていたブージャム・ドールの腕を引き抜き、それを相手に投げつけた。
ジグザグが剣で叩き落とした瞬間の隙を突き、腕の一本を切り落とす。
( <●><●>( <●><●>)「!!」
返す刀を浴びせようとした時、相手はくるりと背を向けた。
足が跳ね上がり、モララーは蹄の後ろ蹴りをみぞおちに受けた。
自分の内側で肋骨が粉々になり、内臓が破裂する音がした。
ボギボギ( ∀ )「ごほっ……」
25.
柵まで吹っ飛ばされ、叩き付けられる。
すかさず間合いを詰めた相手の三本の剣が心臓を貫いた。
( ・∀・)「がはっ」
( <●><●>( <●><●>) グワッ
間髪入れずふたつの頭が噛みついて来る。
( ・∀・)「うおおおおお!!」
モララーはガンベルトからショットガンを抜いた。
ズドン!!
ジグザグの頭の片方が吹っ飛ぶ。
( <●><●>(*';";;"';)「!!」
相手は悲鳴を上げ、モララーを投げ捨てた。
26.
虚空を舞い、丸盆が遠退いてゆくのを、モララーはどこか意識の遠くで感じていた。
( ∀ )(登り直しかよ、ちくしょう……)
つづく……
モララーが団地で目覚めてどのくらいの時間が過ぎただろう。
乾いた川にかかる橋を渡るとき、ふたりはとうとう間近にまで迫った王の城を見上げた。
( ・∀・)「すげえなあ」
川 ゚ -゚)「こんな近くで見るのは初めてだな」
天を突くその建造物は、城と言うより塔と呼ぶほうがしっくり来る。
( <●><●>( <●><●>)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
第四話 狂信者の町
2.
橋を過ぎ、町に入った。
元はオフィス街で、城の周囲にはビルが寄り添うにように林立している。
いずれも高層なものばかりだが、それですら城の足下にも及ばない。
ビルの峡谷に入ると、壁や地面の落書きが目に付き始めた。
( ・∀・)「何だろう、これ」
以前見た王の物語もあったが、大半は意味のわからない文字に絵を組み合わせたものだった。
いずれも曲がりくねり、象形文字じみていて、もはやモララーたちの知る言語ではなくなっている。
ねじくれた絵はブージャム・ドールを描いたものらしい。
川 ゚ -゚)「!」
それを見ていたクーが、ふと立ち止まった。
頭がふたつある人形の絵が壁に書かれている。
腕が四本あり、両足はヤギに似た蹄になっていた。
3.
( ・∀・)「これが君の言ってた……?」
川 ゚ -゚)「こいつだ」
ドクオがそちらを一瞥した。
(U'A`)「そいつは〝ジグザグ〟と呼ばれていたやつだ。
王が作り出した最強のブージャム・ドールで、人々にもっとも恐れられていた」
( ・∀・)「何のために人間をさらっていくんだ?」
ドクオはその質問には答えなかった。
( ・∀・)「大丈夫。きっと君の弟は生きてるよ」
川 ゚ -゚)「うん。そうだね、きっと……」
モララーが肩に手を置いて笑いかけると、クーは不安げに微笑み返した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4.
倒壊したビルを迂回し、城に向かう。
ヴォイドは姿を見せなかったが、代わりに奇妙なオブジェが目に付きはじめた。
( ・∀・)「うわっ……!」
切り落としたヴォイドの頭部が、葉の落ちた街路樹の枝にいくつも突き刺してあった。
悪趣味なクリスマスツリーのようになっている。
( ・∀・)「何だこれ? ヴォイドがやったのかな」
川 ゚ -゚)「狂信者たちだ」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「父さんに聞いたことある。頭のおかしくなった奴らが徒党を組んでるって」
( ・∀・)「ゾンビもののお約束か」
川 ゚ -゚)「どういう意味?」
担いでいた剣に巻いておいた布を取り払い、刃を親指で撫でながらモララーはつぶやいた。
5.
( ・∀・)「結局、人間の敵は人間ってこと」
再び歩き出す。
( ・∀・)「クーは弟を助けた後はどうする?」
川 ゚ -゚)「元いたアジトに帰るよ。そこで畑を作るんだ。ジャガイモとかソバとかさ」
( ・∀・)「ソバ? 好きなの?」
川 ゚ -゚)「収穫が早いし、痩せた土地や日当たりが悪いところでも育つんだって。救荒食って言ってね。
モララーはどうするの?」
( ・∀・)「どうしようかな……箱に頼んで、何か願いを……」
(U'A`)「あー、言ってなかったんだが」
ドクオが口を挟んだ。
(U'A`)「叶えられる願いはひとつだけだ」
6.
モララーは思わず立ち止まった。
( ・∀・)「何で? だってどんな願いでも、いくらでも叶うって……」
(U'A`)「詳しい説明は省くが、とにかくひとつしか出来ない。実際に見ればわかるが」
(;・∀・)「何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!?」
(U'A`)「言い忘れてた。何とかなるって、心配するな」
(;・∀・)「バカ言うなよ! 根拠は何だよそれ!」
ドクオは真っ直ぐにモララーを見た。
(U'A`)「ここに俺がお前を選んだ理由があるんだ。
玉座の間にまでたどり着いた時、お前はすべてを知ることになるだろう。
たどり着ければだが」
(#・∀・)「まったく、大事なことは何にも教えてくれないんだからな。
うーん、ひとつだけ……ひとつだけかあ……」
7.
川 ゚ -゚)「何を叶えるの?」
( ・∀・)「わかんない。どうしよう」
モララーが首をひねっていると、クーがおずおずと口にした。
川 ゚ -゚)「ねえ、良かったらさ……その願いを叶えたあとにさ……」
ここで一息入れる。
川*゚ -゚)「わ……わたしと一緒に、アジトに来ない? 畑を作るのに男手がいるし」
( ・∀・)「えっ?」
顔を赤らめているクーを見ていると、モララーも急に気恥ずかしくなってきた。
(*・∀・)「あ……う、うん。もちろん。いいよ!」
(U'A`)「今度は堂々と下着が拝めるな。下着の中身もか」
(#・∀・)「鍋にして食っちまうぞてめー!!」
8.
そのとき、わずかに空気が震える音がした。
その瞬間、モララーは振り返りざまに剣を振るい、飛来した矢を切り落とした。
ギィン!!
川 ゚ -゚)「!」
( ・∀・)「誰だ!」
ビルの上のほうの階に複数の人影が見えた。
弓を構えていて、新たな矢をつがえるところだった。
( ・∀・)「くそっ」
降り注ぐ矢をかわし、ふたりと一匹はビルに向かって走り出した。
角を曲がって物陰に飛び込もうとした時、みっつの人影が雄叫びをあげて飛びかかってきた。
( ∵) ギィィエエァァア―――!!!
9.
モララーがふたりを切り伏せ、クーのショットガンが残りのひとりを吹っ飛ばす。
( ・∀・)「狂信者って奴らか」
ぼろ布も同然の服を身にまとい、CDや金属部品などを紐に連ねて腰から垂らしている。
複雑な幾何学模様のペイントを顔に塗っていた。
川 ゚ -゚)「モララー、あっちからも!」
手作りの槍や斧を持った男たちがこちらに駆けつけて来た。
口々に獣じみた絶叫をあげている。
( ∵)キェェァァア!!
( ∵)ウギイイイイ!!
(;・∀・)「獣に退化してやがる」
ぶら下げた飾りがじゃらじゃらと不気味な音を上げている。
10.
クーが時々振り返って散弾を浴びせたが、彼らはものともしなかった。
仲間の屍を踏み越え、死に物狂いで追ってくる。
川 ゚ -゚)「弾が……!」
( ・∀・)「僕に任せろ」
彼女の銃は装填の際、キャップを開いて弾丸を詰め直し、撃針を交換するという手順を踏むため、時間がかかる。
彼女がガンベルトに常に六丁も差しているのはそのためだ。
モララーたちは路地を抜けて大通りの交差点に出た。
( ・∀・)「あっ」
川 ゚ -゚)「!!」
ふたりは追い込まれたことに気付いた。
奥と左右の通路は車やバスで塞がれ、更に槍襖が築かれている。
11.
( ∵)( ∵)( ∵)
狂信者たちは来た道を埋め尽くし、周囲のビルでは射手が鏃をこちらに向けて構えている。
口々にわめき声を上げているが、それ以上は近づいて来ようとしなかった。
( ・∀・)「襲って来ない……?」
その時初めて、モララーはこの広場の異質さに築いた。
地面にタールで何やら文様が書かれ、ところどころに血の跡がある。
川 ゚ -゚)「祭壇……?」
その時、あのぜぇー、ぜぇーという苦しげな息づかいが聞こえた。
かちかちという金属がアスファルトを踏む足音がし、だんだんこっちに近づいて来る。
( ・∀・)「!」
( <●><●>( <●><●>)
12.
そのブージャム・ドールが姿を現したとき、狂信者たちは地面にひざまずいた。
祈るようなうめき声を上げ、顔を伏せる。
( ∵) オオー、オオー……!!
川 ゚ -゚)「あいつ……!」
頭がふたつ、腕が四本あり、足が蹄になっている。
他と比べるとやや小柄で、背の高さはモララーより少し高いくらいしかない。
ジグザグは立っていたバスの上から飛び降りた。
と、同時にその背後に引き連れていた無数のブージャム・ドールもそれに続いた。
( <●><●>)ゼエゼエ
( <●><●>)
(U'A`)「お前らは生け贄ってことだな」
他人事のようにドクオがつぶやいた。
13.
( ・∀・)(クソ、多すぎる! 僕はともかくクーを守り切れないぞ)
(U'A`)「噂が本当なら、連中はお前らを生け捕りにして連れ帰るはずだ」
( ・∀・)「クー、降参しよう」
川#゚ -゚)「うわああああ!」
クーはいきなりジグザグに向かってショットガンをぶっ放した。
激しい金属音を上げ、外骨格が散弾を弾き返す。
もう一丁を抜こうとした時、隣に回り込んだブージャム・ドールがクーを抱え上げた。
( <●><●>)ゼエゼエ
川;゚ -゚)「離せ、この野郎!!」
(;・∀・)「クー! ちっくしょう」
もはやヤケクソで剣を振るうが、数が多すぎた。
相手を寄せ付けないのに精一杯で、クーを担いで引き上げるブージャム・ドールに近づくこともできない。
14.
(;・∀・)「待ちやがれ、クソ……ぐっ!?」
( <●><●>( <●><●>) ヒュッ!!
そちらに気を取られた時、ジグザグが投げた剣がドクオの胴体を貫いた。
ひざまずき、剣を取り落とす。
( ∀ )「がはっ……」
川 ; -;)「モララ―――!!!」
ジグザグはモララーを一瞥し、部下たちと来た道を引き返していった。
その際、ブージャム・ドールの一体が彼の胴体から剣を引き抜き、回収してゆく。
( ・∀・)「くっ……」
傷が塞がるころにはもう、広場には誰もいなくなっていた。
狂信者たちも姿を消している。
15.
モララーは腹を抱えながら、地面に落ちていたクーのガンベルトを拾い上げた。
(;・∀・)「ちっくしょう、クー!! ちっくしょう……」
絶叫する彼にドクオが歩み寄ってきた。
いつも通り、他人事のような態度で言った。
(U'A`)「喚いてる場合か?」
( ・∀・)「ああ、そうだ……このままで済ますもんか、あの野郎!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
城の入り口にまでたどり着いた。
中は鬱蒼として暗く、壁にかけられたほのかな灯りが点々と奥へ続いている。
(U'A`)「覚悟はいいか? ここから先はブージャム・ドールの巣だぞ」
( ・∀・)「ああ、やってやる! 王の野郎もついでにぶっ飛ばしてやるぞ」
16.
剣をしっかりと握り締め、ごくりと唾を飲み込む。
モララーは意を決し、中へと入っていった。
( ・∀・)(待ってろ、クー)
入ってすぐはエントランスホールになっていた。
二重螺旋を描く壮麗な階段が中央にあり、上へと伸びている。
いずれも真っ白で、金で縁取りがしてあった。
( ・∀・)「う、うわ……」
そこらじゅうにブージャム・ドールの亡骸が転がっていた。
切断され、あるいは壁に串刺しにされている。
( ・∀・)「王が暇つぶしに自分を襲わせてたって言う……」
(U'A`)「そうだ。人間を相手するのに飽きてからはな」
17.
階段を上がってゆく。
天井が見えないくらい高い。モララーはそれをひたすら上がり続けた。
ふつうのビルならもう30階分は上がっただろうか?
(;・∀・)「王はずいぶん足腰が強かったみたいだな」
(U'A`)「昔はこれがエスカレーターみたいに動いてたんだよ」
( ・∀・)「お前、何でそんなことに詳しいんだ?」
(U'A`)「王のそばにずっといたからだ。正確には箱のそばにだが」
モララーは足を止めた。
( ・∀・)「そろそろ話してくれ。お前は誰なんだ?」
(U'A`)「俺は箱の一部だ。管理者とか護衛とか言うのとはちょっと違うが」
( ・∀・)「どういう意味だ?」
(U'A`)「話してる暇はなさそうだな。ほら、来たぞ」
18.
あの苦しげな息づかいがした。
( <●><●>)ゼエ、ゼエ
風を切る音とともに、翼を持つブージャム・ドールが舞い降りてきた。
ムカデのように長い胴体にトンボのような羽根が連なっている。
(;・∀・)「あれは……?!」
(U'A`)「〝ドラゴンフライ〟か」
同時に上から飛び降りてきた二体のブージャム・ドールが、モララーを挟み撃ちにした。
( <●><●>)ゼエゼエ
( <●><●>)ゴボォッ
手にしたねじくれた槍で同時に突いてきた。
モララーは身をよじってかわし、片方の胴体を剣で突いた。
19.
( <●><●>)ゴボ……
( ・∀・)「オラア!」
同時に後ろのもう一体に蹴りを食らわせ、階段から叩き落とす。
すぐに剣を振るい、串刺しにしていた方も投げ捨てた。
( <●><●>)ゼエッ
新手が群れを成し、階上から雪崩れ込んで来た。
(;・∀・)「うわっ、くそ!」
剣で蹴散らすが、数に押されて徐々に後退してゆく。
その時、周囲を回遊していた羽根を持つブージャム・ドール、ドラゴンフライが突っ込んできた。
(;・∀・)「!!」
( <●><●>)
20.
顎が階段を削り取る。
モララーは寸前で壁を蹴り、相手の上に飛び乗っていた。
( ・∀・)「うらああああ!!」
眉間に剣を突き立てる。
相手はすさまじい悲鳴を上げ、身をくねらせて彼を振り落とそうとした。
モララーはその節くれ立った背の上を走って勢いをつけると、尻尾の先端を蹴って再び階段に舞い戻った。
( <●><●>)ブギャアアアア……
(;・∀・)「うおっと、あっぶねえ」
手すりに捕まり、はるか下へ落ちてゆく相手を見下ろす。
(U'A`)「まだ終わってないぞ」
階段の上から降りてきたドクオが言った。
21.
雑魚のブージャム・ドールたちが駆け降りて来ると、ドクオをよけてモララーに殺到した。
(#・∀・)「うおおおおお!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
数時間後、モララーは階段の一番上の段に手をかけた。
ふたつの階段は大きな丸盆に到達して終わっている。
(;・∀×)「ぜえ、ぜえ」
何とか体をそこまで持ち上げ、ごろりと仰向けになった。
体には何本もの槍やブージャム・ドールの腕が突き刺さり、全身を返り血で真っ黒にしている。
左目はえぐり出されてなくなっていた。
肘から先のない腕を呆然と見上げた。
(;・∀×)「ぜえ、ぜえ……ちっくしょう、腕どっかに落っことしてきちゃった……」
22.
(U'A`)「すぐに生えてくるさ。じっとしてろ」
言われた通りにした。
城はまだまだ続き、天井はかすんで見えない。
( ・∀×)(何だろう、昔もこんな目に遭ったような……?)
荒く呼吸をしていると、またキュートのことを思い出した。
右手で自分の頬に触れる。
彼女の手がそこに触れた瞬間の感覚が、今もまだはっきりとそこに残っている。
( ・∀×)(君は誰なんだ? なぜ僕の心に焼き付いているんだ?)
丸盆から周囲八方向に渡り廊下が伸び、それぞれ壁に開いた通路に続いている。
白い床に横たわっていたモララーは、かすかにその震動を感知した。
( ・∀×)(なんか来る)
23.
バランスを崩しながらも何とか立ち上がると、奥の通路のひとつに人影が現れた。
頭がふたつ、腕が四本、ヤギの足を持ち、背に四本の剣剣を背負っている。
( <●><●>( <●><●>)
( ・∀×)「ジグザグ! あの野郎……」
たちまち左腕の傷がうずき、肉が盛り上がってまっさらな腕が生えた。
同じく再生された左の眼球で相手を見据える。
( ・∀・)「クーをどこにやった!」
( <●><●>( <●><●>)
相手は無言で剣を抜き、モララーと相対した。
たちまち剣戟が火を噴く。
(;・∀・)(クソッ、強い!!)
24.
ただ力任せに振り回しているだけではない。
綿密なシミュレーションに裏打ちされた、れっきとした剣術だ。
( ・∀・)「ハァッ、ハァッ」
( <●><●>( <●><●>) シィィイッ
モララーは自分の体に刺さっていたブージャム・ドールの腕を引き抜き、それを相手に投げつけた。
ジグザグが剣で叩き落とした瞬間の隙を突き、腕の一本を切り落とす。
( <●><●>( <●><●>)「!!」
返す刀を浴びせようとした時、相手はくるりと背を向けた。
足が跳ね上がり、モララーは蹄の後ろ蹴りをみぞおちに受けた。
自分の内側で肋骨が粉々になり、内臓が破裂する音がした。
ボギボギ( ∀ )「ごほっ……」
25.
柵まで吹っ飛ばされ、叩き付けられる。
すかさず間合いを詰めた相手の三本の剣が心臓を貫いた。
( ・∀・)「がはっ」
( <●><●>( <●><●>) グワッ
間髪入れずふたつの頭が噛みついて来る。
( ・∀・)「うおおおおお!!」
モララーはガンベルトからショットガンを抜いた。
ズドン!!
ジグザグの頭の片方が吹っ飛ぶ。
( <●><●>(*';";;"';)「!!」
相手は悲鳴を上げ、モララーを投げ捨てた。
26.
虚空を舞い、丸盆が遠退いてゆくのを、モララーはどこか意識の遠くで感じていた。
( ∀ )(登り直しかよ、ちくしょう……)
つづく……
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