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スイーツ・オブ・ザ・デッド9

ヨーコ「こいつらが振り向きませんように……NOスイーツNOライフ様、お守りくだしあ!」


 すり足で彼らを通り過ぎ、ヨーコはケータイ売り場にたどり付いた。

急がないと。

 ヨーコはお気に入りの機種であるA-YOUを必死に探したが見つからない。

他のメーカーのはアプリとかがショボイから使いたくないしそもそも自分の持ってるメモリーカードでデータが移せないからマジNG。

 やっと見付けたそれをポケットに押し込む。

だが今度は腐海かじり蟲のストラップがない。

NOスイーツNOライフの特集されるくらい、あれが今一番流行ってるのに!


ヨーコ「なんにもいない、なんにもいないったら!!」


ストラップのコーナーを可能な限り迅速にそして静かに漁る。


ヨーコ「あ、あった……」


 だが問題はまだあった。

着信するとビカビカ無闇やたらに光るアンテナのやつがどうしても見つからない。

急いでるのに! マジ急いでるのに! あいつらに見つかっちゃう!


???「ああ」


 後ろで声がした。

いや、それは声というよりも肺から押し出された空気が声帯を震わせただけの無気力な音声だった。

 ヨーコの心臓が跳ね上がる。

関節の錆び付いた人形のようにヨーコは振り返った。

あのビカビカ光るやつを装着したケータイを右手に、そして人間の「何か」を左手に持った店員がこっちを見ている。

その後ろにももう一人。


ヨーコ「ひっ!?」


 心臓が痛いくらい鼓動している。

ヨーコは一歩ずつ後ずさりした。

 彼女が下がった分だけ二人は前に進んだ。まるで糸がいくつか切れた操り人形みたいな、がくがくした歩き方で。

距離は少しも広がらず、むしろ縮みつつある。

もうすぐ後ろは壁だ。

 絶体絶命かと思われたその時、ヨーコの脳内にあの音楽が聞こえてきた!


ドォ―――ン……ド! ド!


ヨーコ「ホワァ!!」


 手にしたWiiリモコンとヌンチャクが稲妻のごとき勢いで閃き、先頭に立つゾンビの顎を打ち抜いた。

更にもう一度。考えるんじゃない、感じるんだ。


ドォ―――ン……ド! ド!


ヨーコ「ホワ、ホワァア!!」


 更にヌンチャクがもう一閃。


チャーンチャーンチャーン♪ チャチャチャーン♪ チャッチャッチャチャー。


 当然だがゾンビにヨーコの攻撃はまったく通じていない。当たり前だ。

おまけに脳内音楽が途切れてしまった。

 恐怖に麻痺した思考の中で、ただヨーコは悲鳴をあげながらムチャクチャにリモコンとヌンチャクを振り回す。

その時、リモコンとヌンチャクを繋ぐコードが切れて彼女の手の中からすっぽ抜けた。


ゾンビ「モヘア!」


 グチュリという湿った衝撃音と共に、腐臭を放つ血液と肉片が飛び散る。

ヨーコは悲鳴を上げて両手で顔を覆った。

恐る恐る指の隙間から相手を見ると、ゾンビの顔面にリモコンが突き刺さっている。

 しばらく何が起きたかわからないまま、彼女は「GK乙」とつぶやくのだった。

もしも手に取ったのがPS3のコントローラーなら死んでいたかも……

そのゾンビはしばらく立ち止まってふらふら上半身を振っていたが、すぐに彼女にのしかかる形で倒れた。

ぎゃあぎゃあ悲鳴を上げながらそれを間一髪で横に逃れてかわす。



続く……


スイーツ・オブ・ザ・デッド8

 レイカはヨーコを引き寄せて腕に食らいつこうとしたが、彼女は寸でのところで振り払った。

 家から転がるようにして逃げ出したヨーコは涙を流しながら顔を押さえた。

 レイカとママがあんなことになってしまうなんて。

明日から誰が掃除と洗濯とご飯を作るの?

妹に貸したコーダクミのCDは?

 でも妹に借りた3万円を返さなくてよくなったようだ。やったね!

 頭の中を色々なことがぐるぐる回る。

これからどうしよう。これからどうすればいい?

 何も頼るものがなくなってただ泣くばかりだった彼女はふと、ヒカルのことを思い出した。


ヨーコ「そうだ、ヒカルがいたんだ! 彼のところへ行こう」


 ヒカルは繁華街のホストクラブ『みなぎる性欲×飛び出す精液』でNo.1のホストをしている。

彼なら必ず自分を助けてくれるだろう。

 だって恋人だし私のことを愛していてくれるし、何より顔がいいから信じて間違いない筈。

 ヨーコは自転車に乗って繁華街へ急いだ。

 セレブなヨーコにママチャリのペダルはあまりにも重過ぎる。

ヘトヘトになって繁華街につくころにはすでに昼を過ぎていた。

 『みなぎる性欲×飛び出す精液』には何度か足を運んだことがある。一年前の話だけど。

ヨーコはそこで彼、ヒカルに出会ったのだ。

 彼と出会う前にそこのホスト全員とコックと清掃員とチラシ配りとその他出入りしている男とほぼ全員に ヤラれていたのであそこのことはある意味オーナーよりも詳しい。

ガバマンとか言われても諦めずに愛されてて良かった♪ 堕胎にすごくお金かかったけど。


ヨーコ「腰~に~光る~は、俺の相棒~♪ 38口径コルトガバマンコ~♪」


 ヨーコはあらゆる不安を吹き飛ばそうと自作のラブソング「コカンで愛して」を歌った。

 レイジとかヒカルとか、それから思い出せないけどとにかく自分の体を乗りこなしていった

夜のロデオマスターたちに捧げたとっても大事な歌。

 正直コーダクミなんかとっても越えてると思う。


 電器店の店先に置かれた展示品のテレビがノイズまじりのニュースをひっきりなしに流している。

ヨーコは自転車を止めてそれに見入った。


TV「死者が復活するという事件……各地で多発……極めて大規模……中央政府は自衛隊の出動を……一方これは憲法に反すると……○○党の○○氏……猛烈に反発……出動は遅れて……」


 すべてはこの街だけで起きてることじゃあなかったらしい。

まるで世界の終わりだ。

 自分さえ生き残ってりゃ世界がどうなろうともヨーコはあんまり関係ないが、自分で働いて生活費を稼ぐのなんて問題外だからちょっと困るとも思う。

せめて自分が年収3000万円くらいの人と結婚してからこんなことになれば良かったのに。

あるいは世界中の女がゾンビになりゃ自分だけがマトモな女なわけだから……

 そんな妄想にふとある考えが割り込んできた。

ここは電器店だ。

店の奥に壊れてないケータイが一つか二つはあるんじゃないか?

 自転車を降りた彼女は恐る恐る店の中を覗き込んだ。

蛍光灯がついているがその光はぞっとするほど無機質で冷たいもののように感じられる。

有線放送でコーダクミの曲が垂れ流しになっていた。

 動くものの気配はない。

ヨーコは足音を立てないように慎重に奥のケータイ売り場を目指す。

 白いタイル張りの床を進んでいると、赤黒いラインが奥へ向かって伸びていた。

筆で引いたような、あやふやだが一直線に伸びたライン。

血だ。

それにあの臭いがする。自宅で嗅いだのと同じ腐臭が。

 あたりを見回すとWiiのリモコンとヌンチャクがあったのでそれを武器代わりに手に取り、血のラインを追う。

 ラインはCD-Rの乗ったラックを曲がっていて、その先で音がした。

歯が柔らかい肉を噛み潰し、筋を切る音が。

 エプロンをつけた男が二人、死体の前にしゃがみ込んで手と頭をのろのろと動かしている。

ヨーコに背を向けているので見えないが、何をしているのかは吐き気をもよおすほどはっきり想像できた。



続く……

スイーツ・オブ・ザ・デッド7

 そのまま振り返らずに走り出す。

背後からレイジの悲鳴とオヤジの肛門からコーラが噴き出す音だけがいつまでも追って来た。


ヨーコ「誰か、誰かー!!」


 声を枯らして叫んでも答える者は誰もいない。

灰色の街に彼女の声は砂漠に垂らした水滴のように染み込んで消えていった。

いつも登校途中に前を通りかかるコンビニも交番も空っぽだ。

 だが彼女は新たな気配を感じていた。

暗がりだ。暗がりに、かすかに動く人影が群れている。

 彼らはヨーコの声に昆虫のように反応はするが、木陰から、裏路地から、車の下から出てこようとはしない。

理由はわからない。

活ける死者たちはただ暗い場所からヨーコを眺めていた。

あのおぞましいうなり声を上げながら。

 家に帰りたい。だが電車に乗るのはためらわれた。


ヨーコ「どうしよう、どうしよう、どうしよう。こんな時NOスイーツNOライフなら何て……」


 雑誌を広げるが人を食う死体が現れた場合のことは何も書かれていない。

 ページをめくりながら混乱して走っていると、何かにつまずいた。

自転車が歩道の真ん中に倒れている。鍵はついたままだった。

持ち主がどうなったかはわからない。わかりたくもないけど。

 ヨーコはそれに乗り二駅分を過ぎて自宅へ向かった。

両親や妹が無事か、それを考えると息が詰まりそうになる。

自宅のドアを開け、恐る恐る声を上げた。


ヨーコ「ママ? レイカ?」


 腐臭はますますひどくなっている。

ヨーコは恐る恐る部屋の奥へ入ってゆく。

 静かだ。耳が痛くなるくらいの静寂が満ちている。

二人を呼びながらヨーコは自分の部屋の向かいにあるレイカの部屋を覗いた。

 ベッドの毛布が不自然に膨らんでいる。


ヨーコ「レイカ? 寝てるの?」


 まるで足音を悪魔か何かに聞かれまいとするかのように、静かに一歩ずつベッドへ近付いてゆく。

その道のりは恐ろしく長く感じられたが、すぐにたどりついた。

 毛布を剥ぎ取ろうと震える指先を伸ばす。

その腕を突然毛布の中から伸びてきた冷たい手が掴んだ。

悲鳴が凍り付いて出てこない。

だが毛布のふちが少しだけめくり上がり、ぼんやりした顔のレイカがこちらを見ていた。

 ヨーコはほっとして胸に手を当てた。


ヨーコ「バカ、脅かさないでよ!!」


 レイカは何も答えない。ずっとヨーコの手首を握ったままだ。

 どこかで女の声がする。

レイカの声じゃあない。彼女の唇はぴくりとも動いていない。


???「スイーツぅう……スイーツぅぅう……」


 それと一緒に、何かをじゅるじゅると吸い込むような音。

ヨーコは何かに操られるかのようにもう片方の手で毛布を剥ぎ取った。

 レイカには下半身がなかった。

千切れた胴体から溢れ出す内臓を、四つんばいになった母親がすするようにして口へ運んでいる。

今度こそヨーコは悲鳴を上げた。


ママ「スイーツぅぅ……スイーツぅうう……」

ヨーコ「ママ、それスイーツやない! レイカやないか!」


続く……

スイーツ・オブ・ザ・デッド6

 オヤジは想像を超える苦痛と快感に絶頂を迎えつつあった。

もうこんな自分になってしまったことがヒカルに申し訳なくって彼女は泣いた。

ヒカルにはもう会えない。

こんな自分になってしまってどんな顔で彼の愛に応えればいいのだろう。

 オヤジは狂ったようにアヘアヘ言いながら地面をのたうち回っている。


オヤジ「アッフゥ――ン! アッフゥ――ン!!」


 ヨーコは殺されると思って本当に怖くなり、バッグから取り出したコーラのペットボトルをパンパンになるまでよく
振り、蓋を限界まで緩めてオヤジの肛門に突っ込んだ。

 直腸に冷たいコーラが激流する感覚にオヤジの脳天は痺れ、かつてない快楽に全身を串刺しにされる。


オヤジ「らめえええええええええええええええ!!!」


 ヨーコは泣いた。

オヤジの痴態をケータイで撮りながら泣いた(カメラはまだ壊れてなくて動いた)。

 泣きながら公園を飛び出そうとするとレイジに腕を捕まれた。


レイジ「待てよ。早過ぎるだろ、時間分は仕事しろ」

ヨーコ「もうイヤ……もうイヤなの……」

レイジ「行けよ!」


 オヤジはみなぎる醜い肉棒を持て余したまま、肛門から噴水のようにコーラを噴き出している。

ヨーコは「逆マーライオン」とつぶやいて振り払おうとしたが、レイジはものすごい力で彼女を捕まえている。


レイジ「俺が死んでもいいのか、あぁ?!」


 怒りに任せてレイジが拳を振り上げる。

殴られるかと思ったヨーコはとっさに彼に捕まれていない方の手で身を守り、目をつぶった。

だが次の瞬間、喉の奥から絶叫をしぼり出したのは、レイジの方だった。

ヨーコの顔を熱い鮮血が叩く。

 ヨーコがまぶたを持ち上げると、レイジが右手を抱えて地面をのたうち回っていた。

彼女は彼のそのシルエットがどこか欠けていることに気付いた。

血塗れの手首の先がない。

そしてそれは何時の間にか二人の横でぼんやり突っ立っている男の口元にあった。

背広を着た中年の男だ。

 ぼんやりとして視点は定まらず、顔色は生気のないコンクリートのような灰色をしている。

男は手に持ったレイジの手首をぼりぼりと美味そうにむさぼり食った。

まるでそれがリンゴか何かであるように。


ヨーコ「きゃあああああ!」


 今度こそ悲鳴はヨーコの口から溢れ出した。尻餅をつく。

すぐに悲鳴は底をつき、変わって朝食のよっちゃんイカとジンギスカンが逆流する。

 彼女がすっかり胃の中身をぶちまける頃には男を食事を終え、ちらりとヨーコを見た。

心臓が冷たい恐怖の手で鷲掴みにされる。

だが男は興味なさげに一瞥しただけで、すぐに目標をレイジに合わせた。

 口元から彼の血をしたたらせながら、まるで喉の奥に地獄があるんじゃないかって言うような、かつてない不気味なうめき声を上げて彼ににじり寄って行く。

レイジは立ち上がり逃げようとした。

だがそれを別の人影が阻止した。今度は女だがやはり顔色はコンクリートのようで、焦点はどこにも定まっていない。

 彼女はレイジを捕まえて首筋にかじり付いた。

狂ったように悲鳴をあげて暴れる彼の足を、背広の男が押さえつけて同じように「食事」を始めた。

 ヨーコは地面を尻餅状態のまま後退した。

立ち上がれない。どうやっても立ち上がれない。

二本の足で地面を踏みしめることが、今や空を飛ぶのと同じくらい難しくなっていた。

近くにベンチがある。

ヨーコはそれを掴み、ありったけの力を振り絞って体を縦に真っ直ぐ立てることに努力した。


続く……

スイーツ・オブ・ザ・デッド5

 バッグからNOスイーツNOライフを取り出して記事を探す。

こんなときはどうすれば……デキるスイーツ(笑)ならこんなときどうすれば……

 突然後ろから声をかけられ、ヨーコの肩が跳ね上がった。


ヨーコ「ひいっ!!」

レイジ「おい、俺だよ」


 振り向くとレイジがいた。


ヨーコ「脅かさないでよ!」

レイジ「悪ぃ悪ぃ。なあ、カネ作ってきたか?」

ヨーコ「無理。ケータイ壊れちゃったもん」

レイジ「あぁ!? てめえナメてんのか?」

ヨーコ「しょうがないでしょ!」


 レイジは苛立たしげに首を振って「しょうがねえ」って顔をした。


レイジ「来てくれ。こっち来いよ」

ヨーコ「どこへ?」

レイジ「いいから来いって。カネになる話があるんだ」

ヨーコ「じゃあ行く」


 レイジに導かれるままにヨーコは高校のすぐ隣にある公園へ行った。

するとベンチに座っていたオヤジが物凄い勢いでこっちへ来た。

鼻息を荒くし、よだれを垂らさんばかりにヨーコのカラダを上から下まで眺めている。


オヤジ「これで二万は高くないかね? ん?」

レイジ「俺も暴利だと思うけどナマでやらせるんだから納得しろ」

オヤジ「負けてくれ」

レイジ「じゃあ2000円でいいよ」

オヤジ「ウヒョー」

ヨーコ「ちょっと待って! どういうこと!?」


 ヨーコは頭がクラクラしてきた

ダイスキだったレイジに騙されたってことより、まさかこんなオヤジにたった2000円で売られたなんてことに。

2000円なんて安すぎる。せめて2500円なら納得できたのに。


レイジ「じゃ、後はお好きに。フヒヒ、これでお姉チャンプル2が買えるぜ」

オヤジ「ブヒーブヒー、さあ、怖くないよ……こっちにおいで」


オヤジは暴走状態の初号機みたいな格好でヨーコに迫ってきた。


ヨーコ「ひっ……や、やめてー!」

オヤジ「いいじゃないか、さあ、さあ!」


 オヤジはヨーコの目の前で服を脱ぎ捨て、レザースーツ姿になった。

仰向けに転がってよだれを垂らしながらよがり狂う。


オヤジ「さあ、踏んでくれ! 強く踏んでくれ!」

ヨーコ「ひっく、ひっく……やめて、やめてよぉ……」


 怖くなったヨーコは靴底でオヤジの顔面をグリグリと踏みつけ、つま先でその中年男の醜い脂肪に包まれたぶよぶよの肉体をくすぐるように、しかしあくまで戦慄的な冷酷さをこめてなぞった。

 つま先が股間に近付くに連れてオヤジの肉体は期待と興奮にびくびくと痙攣する。


オヤジ「ああっ! あああああっ! もっと、もっと踏んでくれ!」

ヨーコ「もういやぁ! やめてー!」


 汚れちゃった。私はもう汚れちゃったんだ。

 ヨーコは自分自身がどうしようもなく汚いものになった気がして、オヤジの両乳首に安全ピンを突き刺し、更にピンに縛り付けたワイヤーを思い切り引っ張った。


オヤジ「ら、らめええ! 乳首取れちゃううう! らめえええええええええええ!!」



続く……


プロフィール

(゚q 。川カンザイ

Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

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