919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:03:33.39 ID:UtFQgmMl0
~四日後、夜~
('A`)(擬古さんが姿を消してから四日)
('A`)(堂内は大騒ぎだ)
('A`)(皆の手本となる維那が蒸発したんだからな……)
('A`)「そして今日……夕食後の座禅と茶礼をキャンセルして」
('A`)「僧全員で会議をすることになった」
('A`)「さすがの荒巻さんも事態を重く見たらしい」
('A`)(そして当事者と噂される譲留さんと)
('A`)(擬古さんの従者である少年僧たちが槍玉に挙げられた)
('A`)(その中の一人に……伊陽がいた)
926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:09:16.53 ID:UtFQgmMl0
( ^ω^)「つまり……夜ごと伊陽の相手をしていたのは擬古和尚だったのかお……」
('A`)「そういや一人称も拙僧だったな……」
('A`)「今思うと形式ばった口調も擬古さんぽかったよな」
('A`)「……擬古さんの個室は禅堂の近くだったか」
( ^ω^)「生々しくなってきたお……」
(*゚ー゚)「なんだか信じられません……」
('A`)「気分が優れないようなら無理するなよ」
(*゚ー゚)「はい……大丈夫です……」
('A`)(椎伊はあの晩以来ひどく不安定だ)
('A`)(当然だろうな……自分が一番支持していた人間が)
('A`)(自分が一番忌み嫌っていた少年愛に手を染めていたんだもんな……)
937 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:13:09.47 ID:UtFQgmMl0
( ゚∀゚)ニヤニヤ
('A`)(譲留さんは裁判にかけられているというのに余裕綽々)
('A`)(というかここんとこ終始上機嫌だ)
('A`)(そこまで擬古さんを憎んでいたんだな……)
( ・∀・)「……」
('A`)(茂羅さんは苦い顔をしている)
('A`)(兄蛇さんと弟蛇さんは……特に変わった様子はない)
/ ,' 3「えー、みんな集まったかのう」
ザワ...
/ ,' 3「どうやらおるようじゃな」
/ ,' 3「これより先日寺内で起きた諍い事の糾弾にかかる」
947 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:19:33.36 ID:UtFQgmMl0
/ ,' 3「譲留和尚」
( ゚∀゚)「はっ」スクッ
/ ,' 3「そなたが禅堂にて擬古和尚と言い争っていたという報告があるが」
( ゚∀゚)「大声で話してましたからね。雑魚寝してた雲水に聞かれるのも当然です」
/ ,' 3「何について対話しておったのかな」
( ゚∀゚)「互いの禅宗観ですよ」
/ ,' 3「それだけではなかろう」
/ ,' 3「たったそれのみであるならば、こうして少年僧を並べたりなどはせぬのだが」
( ゚∀゚)「でしょうね。いやもちろん続きを述べるつもりでしたよ」
( ゚∀゚)「擬古殿が衆道にはまっているということを直接告げてやりました」
950 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:24:09.97 ID:UtFQgmMl0
/ ,' 3「……その告発によって、擬古和尚は混迷に陥ったと?」
( ゚∀゚)「違います。私が話し終えた直後は非常に穏やかでしたよ」
( ゚∀゚)「ただ突然、大悟した、と叫び出しまして」
/ ,' 3「大悟、ですか」
( ゚∀゚)「そうです。それから……おかしくなりました」
/ ,' 3「ふむ……」
('A`)(……まあ、かいつまんで語るとそうなるけど……)
(*゚ー゚)(若干主観的に思えます)
('A`)(でも全部事実なんだよな……捏造している部分がない)
('A`)(問われる前に全部自分から開いてしまおうということか……)
954 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:30:00.56 ID:UtFQgmMl0
( ・∀・)「……」
('A`)(しかし……なんで茂羅さんはあんな憎々しい表情をしてるんだ?)
/ ,' 3「あい分かった。譲留和尚の証言は聴取できた」
/ ,' 3「次は……君たちに訊こうか」
( ^ω^)(ついにそっちにいくかお……)
/ ,' 3「答えにくいこととは思うが、寺のためだ、正直に頼むぞえ」
「わかりました……」
('A`)(少年僧たちの告白はなんとも言えない耽美さを含んでいた)
('A`)(狭い小屋の中で一人ずつ擬古さんの相手を務めさせられたそうだ)
('A`)(具体的に何をした、されたかまでは荒巻さんの心遣いで不問になった)
('A`)(それだけなのにやたらエロチックに聞こえるのは……やはり若さのせいか)
('A`)(そして伊陽の番が来た)
958 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:35:35.53 ID:UtFQgmMl0
/ ,' 3「伊陽くん」
(=゚ω゚)「はっ、はい」
/ ,' 3「君は実は、他の少年僧とは事情が違うみたいだね」
/ ,' 3「君だけは山小屋ではなく僧堂内で、その、年長の雲水に飼われていたとか……」
(=゚ω゚)「……そうです」
/ ,' 3「実はまだ、君だけは擬古和尚と関係があったという確証が取れていないのだ」
/ ,' 3「ただ、君が衆道に引きずり込まれている、という話を聞いて」
/ ,' 3「ついでというわけじゃないが、この場に上がってもらったのだよ」
('A`)(えっ?)
('A`)(どういうことよ)
( ^ω^)(伊陽だけは別件ってことかお)
(*゚ー゚)(みたいですね……)
963 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:40:03.93 ID:UtFQgmMl0
( ・∀・)「……ダメだ、もう聞いていられないよ、こんなの」
( ・∀・)「終わりにしよう。話は十分に聞いた。彼らがかわいそうだ」
/ ,' 3「しかし伊陽くんに訊かぬことには答えは導き出せぬ」
/ ,' 3「ここで擬古和尚の暗部を徹底的に暴いておかねばならない」
/ ,' 3「仮に伊陽くんも抱いていたのだとしたら……そういう男だったということだ」
/ ,' 3「――語ってくれるかの?」
(=゚ω゚)「は……はい」
(=゚ω゚)「私が衆道の相手をしていたのは……」
(=゚ω゚)「擬古和尚……」
(=゚ω゚)「そして……譲留和尚です」
974 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:43:18.99 ID:UtFQgmMl0
('A`)「えっ」
( ^ω^)「えっ」
(*゚ー゚)「えっ」
/ ,' 3「えっ」
(=゚ω゚)「お二人に……飼われておりました」
( ゚∀゚)「――おい、伊陽っ!!」
(=゚ω゚)「申し訳ありません和尚様!」
(=゚ω゚)「しかし……しかし私は、どうしても嘘を貫けなかったのです!」
( ゚∀゚)「どうしてだ、なぜ喋ってしまったんだ……」
(=゚ω゚)「私は……あなたを怨んでおります!」
(=゚ω゚)「擬古和尚を追放したあなたを!」
994 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:48:52.76 ID:UtFQgmMl0
( ^ω^)「相思相愛のカップルだったのかお……」
('A`)「いやその前にだ!」
('A`)「譲留さんもそうだったのか……」
( ゚∀゚)「なぜだ、俺の、俺の計画が……」
(=゚ω゚)「あなたには分からないのです」
(=゚ω゚)「人は……内なる想いを秘めているということが」
/ ,' 3 「……譲留和尚は、君から擬古和尚が若い衆を囲っていると聞いたのかね?」
(=゚ω゚)「そうでございます。あの弁舌で口説かれて……その後は譲留和尚の話術の独壇場でした」
(=゚ω゚)「擬古和尚の従者たちは洗いざらい喋ってしまったようです」
( ・∀・)「もうやめろ、やめてくれ、たくさんだ!」
( ・∀・)「僕はもう……この場にはいたくない!」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 00:56:02.45 ID:UtFQgmMl0
( ゚∀゚)「どうしてだ……うまくいくはずだった……」
('A`)(譲留さんが放心している……)
('A`)(あの人も完全に開き切ってはいなかったんだな……)
('A`)(擬古さんが閉じ切れず、文言すべてを拒絶できなかったように……)
(´<_` )「それでは……両名とも衆道に足を浸からせていたと」
('A`)(あんたもだろ)
( ´_ゝ`)「めんどくさい話になってきたな」
ガララッ
(*゚ー゚)「戸が開いた!?」
(,,゚Д゚)「ふふふ、ふっはっはー! 久々だな皆の者!」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:03:18.38 ID:UtFQgmMl0
( ゚∀゚)「擬古殿!?」
(,,゚Д゚)「譲留和尚か。最早懐かしいな」
(,,゚Д゚)「ふくく、拙僧は鍵を解錠することの快感をしってしまったのだよ」
(,,゚Д゚)「譲留! 貴様に逆襲するためにな!」
( ゚∀゚)「俺に……だと?」
(,,゚Д゚)「貴様は町に女を囲っていると聞かされた……」
(,,゚Д゚)「しかし手篭めにしていたのは女だけではなかった!」
(,,゚Д゚)「こやつは……少年に金銭を手渡して肉体関係を結んでおったのだよ!」
( ゚∀゚)「なっ、くそっ、なんでそれを!」
(,,゚Д゚)「インターネットとやらの掲示板で変態坊主の目撃証言が流れておったわ!」
(,,゚Д゚)「美僧などと名乗っているがただのホモだ、とな!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:08:23.16 ID:UtFQgmMl0
( ^ω^)「ひどいサイトがあったもんだお……」
('A`)「お前が出家する前から2ちゃんはあっただろ」
/ ,' 3「擬古和尚、いったん落ち着きなさい」
(,,゚Д゚)「落ち着いてなどいられませぬ!」
(,,゚Д゚)「どうせ拙僧や関係者の処遇についてでも話し合っておられたのでしょう!」
(,,゚Д゚)「そんなものは最早どうでもよいのです!」
(,,゚Д゚)「譲留和尚もまた、拙僧と同じく衆道狂いだった! これだけを伝えたい!」
(,,゚Д゚)「うふ、外の世界を知ることで……内にある真実を知ることが叶った」
(,,゚Д゚)「それもこれも譲留和尚のご大層な高説のおかげだ」
(,,゚Д゚)「拙僧の思想と彼の思想が融合して、ついに悟りに達したのである!」
( ・∀・)「やめろ……やめろ……!」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:12:28.54 ID:UtFQgmMl0
('A`)「凄まじいカオス空間だ……」
('A`)「擬古さんはご覧のとおり完全にキマってるし」
('A`)「譲留さんは心ここにあらずといった状態だ……」
('A`)「荒巻さんは現状を呑み込みきれずに呆然としている」
('A`)「弟蛇さんは……少し焦っているようにも見えるな」
('A`)「兄蛇さんはじっと指先を見つめている」
('A`)「そして茂羅さんは……ずっと頭を抱えて震えている。この点が謎だ」
( ^ω^)「どう収拾をつけるんだお、これ……」
('A`)「さあ……」
(*゚ー゚)「うう……気分が……」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:16:41.76 ID:UtFQgmMl0
(,,゚Д゚)「どうせ他の者も衆道に狂っておるのだろう!」
(,,゚Д゚)「言わないだけ! 言わないだけ!」
(´<_` )「落ち着け、落ち着くんだ、擬古和尚!」
( ´_ゝ`)「弟蛇の言うとおりだ。ちょいと頭冷やせ」
(,,゚Д゚)「冷静に熱狂しておるのだ!」
( ゚∀゚)「これは……現実なのか……?」
/ ,' 3「おお……わしは何をどうすればよいのじゃ……」
「鎮まりなさい!」
('A`)「いっ、今の声は……!」
(´・ω・`)「一同余すことなく心が乱れておる! 鎮まりなさい!」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:22:00.49 ID:UtFQgmMl0
シィン...
('A`)「しょ、諸梵和尚」
('A`)(すげえ……一気に堂内が水を打ったみたいになった)
(´・ω・`)「今戻りました……しかし、なんですかこの喧騒は!」
/ ,' 3「お、おお……管主殿」
(´・ω・`)「どうなさったのですか荒巻和尚。これに至るまでの成り行きを」
/ ,' 3「実は……かくかくしかじかでして……」
(´・ω・`)「ふうむ……成程」
(´・ω・`)「そのような痴情のもつれが……」
/ ,' 3「誠につまらないことが端緒の騒動なのです。どうかお許しを……」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 01:26:00.69 ID:UtFQgmMl0
( ^ω^)(さすがの統率力だお)
(*゚ー゚)(一瞬で騒ぎが治まりました)
('A`)(凄い坊さんだな、あの人……)
('A`)(でもなんか……茂羅さんの様子だけまだおかしい……)
/ ,' 3「悪いのは責任を賜った私です。雲水たちには恩赦を……」
(´・ω・`)「いえいえ結構。怒気を撒いたりなどはいたしません」
(´・ω・`)「むしろ、そのような理由なのでしたら、望んでいた結果です」
/ ,' 3「……は?」
(´・ω・`)「機は熟したということですね」
(´・ω・`)「皆の者! こちらに向き直りなさい!」
(´・ω・`)「これより教義を――この寺の解説を始めます」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:05:37.10 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「これより教義を――この寺の解説を始めます」
('A`)(ど、どういうことだよ!?)
( ^ω^)(さっぱりだお。そっちこそ……)
('A`)(新参者の俺が分かるかよ)
('A`)(俺たちどころか……六知事全員が驚いている……)
(*゚ー゚)(何が始まるのでしょう……)
(´・ω・`)「皆心を安らかに、精神を清らかに、そして静聴してくだされ」
(´・ω・`)「さて何から語りましょうか……そうですね、まずは」
(´・ω・`)「昔話でも始めましょう」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:16:03.08 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「私が毘譜寺の管主の座に就いて、二十年少々ですか」
(´・ω・`)「当時より在籍する僧は私を除いて荒巻和尚のみとなりました」
/ ,' 3「そこからの……話か……」
(´・ω・`)「先代が隠居に瀕した際、新たな統領探しに苦心しておりました」
(´・ω・`)「ただ私は荒巻和尚こそが当山の住職を任されると思っていました」
(´・ω・`)「当時から既に、荒巻和尚は座禅の道を極めておりましたので」
(´・ω・`)「しかし先代は私を管主に指名した」
(´・ω・`)「その頃の私は三十にも満たぬ若輩者であったというのに」
/ ,' 3「……諸梵和尚は俊英と呼ばれておった」
/ ,' 3「悟りの境地に若くして達したと……寺内では評判じゃった」
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:21:23.33 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「身に余る言葉でございます、荒巻和尚」
(´・ω・`)「未熟にして拙劣。私はその時代も、そして今もまだ修行中の身であります」
/ ,' 3「だが我ら雲水の中でずば抜けた存在であったのは事実」
/ ,' 3「「ゆえに先代管主は諸梵和尚を後任に据えたのじゃ」
(´・ω・`)「ともあれ、そのような経緯で私はこの寺の管主となりました」
(´・ω・`)「――という設定でしたね」
('A`)「設定?」
/ ,' 3「なんと! 如何なことか!」
(´・ω・`)「騒ぐほどのことではございません」
(´・ω・`)「ただ私が特別に先代から寵愛を受けていただけのことです」
257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:34:45.93 ID:MwD7mMVK0
/ ,' 3「なっ……」
(´・ω・`)「先代が心を痛めていたのは、後任探しの気疲れではありません」
(´・ω・`)「周囲の目との戦いでございます」
(´・ω・`)「私の思想と肉体は甚く先代に気に入られていまして」
(´・ω・`)「早い段階で後任に私を選ぶ予定だったそうです」
(´・ω・`)「ですが、年齢で序列は決まらぬとはいえ、私は若すぎた」
(´・ω・`)「大衆の目がある……悩んでおられました」
(´・ω・`)「そこで私が御言葉添えをした。迷いなされ、と」
(´・ω・`)「迷いに迷った末の決断であると、皆の眼前で訴えなされ、と」
(´・ω・`)「私も演技には苦労しましたよ」
(´・ω・`)「茶礼でその話題が上がるたびに断りと他者の推薦を繰り返しましたからね」
/ ,' 3「馬鹿な……」
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:40:57.44 ID:MwD7mMVK0
/ ,' 3「だが……諸梵和尚が優れた僧であったのは紛れもなき真実!」
/ ,' 3「我ら僧たちの総意であった!」
(´・ω・`)「寺の頂点である管主が私の考えを認めれば、下々の僧もそれに倣うでしょう」
(´・ω・`)「優れているから広まったのではなく、優れていると広めたに過ぎません」
/ ,' 3「おお……なんたることじゃ……」
/ ,' 3「しかしそれでも……わしは、あなたの力量が、真であると信じておる…・…」
/ ,' 3「すべてが虚実とは思えぬ……」
(´・ω・`)「ありがたき褒章にございます」
/ ,' 3「……」
(´・ω・`)「とにかく……こうして寺は私の所有物となった」
(´・ω・`)「後はこちらの一人舞台」
(´・ω・`)「拙僧による寺院殿堂計画の開始です」
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:44:56.47 ID:MwD7mMVK0
('A`)「な、なんだそれは!?」
('A`)「そのいかにも怪しげなネーミングセンスは!」
(´・ω・`)「毒念さん……あなたもまた鍵となっていたのですぞ」
('A`)「俺もだって?」
(´・ω・`)「ええ」
(´・ω・`)「偶然の産物なのか、はたまた必然の理なのか……」
(´・ω・`)「いずれにせよ結果としてそうなったのです」
(´・ω・`)「ゆえに毒念さんも静聴しなさい」
('A`)「……」
('A`)(言い返せない……明らかに非は向こうにあるのに……)
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:51:08.34 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「まず必要だったのは……」
(´・ω・`)「追放……僧の入れ替えでした」
/ ,' 3「……どういうことじゃ」
(´・ω・`)「還暦を迎えた者から金品を握らせ下山させたのです」
(´・ω・`)「年老いた仏僧ばかり密集するのは美しくない」
/ ,' 3「なんたる暴挙……!」
(´・ω・`)「この乱れた世……寺院に駆け込む者は数多おります」
(´・ω・`)「その後留まり続けるか、窮して脱するかは知りませんが、ともあれ」
(´・ω・`)「入ってくる者どもには困りませんでした」
/ ,' 3「ならば、なにゆえわしは残された!」
(´・ω・`)「あなたには理由があった」
(´・ω・`)「……それもまた後々解き明かしましょう」
282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 17:57:47.95 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「若返りには時間を要した」
(´・ω・`)「私の心身が朽ち果てるまでに遂行せねばならぬというのに……」
(´・ω・`)「大儀でしたよ」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「そして、三年前――でしたか」
(´・ω・`)「最後の六十歳過ぎの僧を追い出したのは」
(´<_` )「自分の前の典座か」
(´・ω・`)「そう。しかしこれは少々心苦しかった」
(´・ω・`)「かつて私と関係を持ったこともありましたからね」
('A`)(椎伊を誘ったとかいう奴か!)
(*゚ー゚)(……)
287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:04:28.55 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「とにかく計画の序段階は完了した」
(,,゚Д゚)「ここまでで序の口か!」
(´・ω・`)「そう、あくまでも足掛かりでしかありません」
(´・ω・`)「計画は――今の六知事を置くことで本格的に始まりました」
( ゚∀゚)「俺たちを……」
( ´_ゝ`)「置くことで……だと?」
(´・ω・`)「左様」
(´・ω・`)「荒巻和尚、茂羅和尚、譲留和尚、擬古和尚、弟蛇和尚、兄蛇和尚」
(´・ω・`)「この者たちに権力が与えられた瞬間……」
(´・ω・`)「寺に六方陣が張られたのです」
294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:10:54.67 ID:MwD7mMVK0
('A`)「……」
(´・ω・`)「……まずは、弟蛇和尚から説いていきましょうか」
(´<_` )「じ、自分からだと?」
(´・ω・`)「この男は性的倒錯者である」
(´<_` )「なっ、なにを!」
(´・ω・`)「いたいけな少年の姿に甚大な興奮を覚え」
(´・ω・`)「にもかかわらず自分自身への奉仕は望まないという」
(´・ω・`)「少々風変わりな性癖の持ち主なのです」
(´<_` )「いわれのない虚言はやめてもらいたい!」
(´・ω・`)「虚言などでは断じてありませぬ」
(´・ω・`)「あなたが子飼いにしておられるという少年僧……」
(´・ω・`)「あの子の蜜の味は私も知っていましてね」
303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:23:10.58 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「いろいろと楽しい談話を聞くことができました」
(´・ω・`)「自分が三人目だ、などと申しておりましたよ」
(´<_` )「ほ……本当か、おい、そこ!」
(´・ω・`)「やめなされ。震えておる」
(´・ω・`)「そもそも、私も前々から弟蛇和尚が衆道に耽っているという噂は聞いていましてね」
(´・ω・`)「ただ実証することが不可能でした」
(´・ω・`)「そこで、ちょうど空位になった典座の職を与えたのです」
(´・ω・`)「個室と給仕場という二つの閉鎖環境を自由にできる立場を」
(´<_` )「……」
(´・ω・`)「その二カ所に絞ればさすがに察せます」
307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:26:22.54 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「結果として誠に面白いことになりました」
(´・ω・`)「何分その特殊な性癖の詳細まで明らかになったのですよ」
(´・ω・`)「六知事のひとりに奇妙な趣味の僧が就いておられる!」
(´・ω・`)「まさしく望んだ結末です」
(´<_` )「……なんたることだ……」
(´・ω・`)「さて、弟蛇和尚はこの『閉じた』空間で『開こう』とした」
(´・ω・`)「女性と男性の在り方に新しい価値観を、自己の中で大成させたのです」
(´・ω・`)「――こうした性質の者が、一人」
(´・ω・`)「おお、それともうひとつ」
(´・ω・`)「和尚を典座に指名したのにはこれまた趣深い理由があるのですが」
(´・ω・`)「それは追々語るとしましょう」
312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:33:38.59 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「次は……そうですね、擬古和尚」
(,,゚Д゚)「拙僧か。生憎だが拙僧は大悟に至っておる!」
(,,゚Д゚)「何を告げられようと動じぬぞ!」
(,,゚Д゚)「拙僧に無明はあらぬ!」
(´・ω・`)「……和尚は少年僧を数名囲い」
(´・ω・`)「山の小さな廃屋にて同性愛に興じておられるようですが」
(,,゚Д゚)「それがどうした。既に周知の事実となっておる。今更のこと」
(´・ω・`)「そして伊陽さんにだけは格別の愛を注いでいる」
(,,゚Д゚)「いかにも!」
(,,゚Д゚)「あの雲水は拙僧の宝である」
319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:40:46.02 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「まだ数ヶ月ほどの関係と見受けられますが」
(´・ω・`)「なにせ伊陽さんは入山して一年程度の身」
(´・ω・`)「愛を育む期間としてはいささか短くありませんかな」
(,,゚Д゚)「時は長さではなく深さが肝要である」
(,,゚Д゚)「座禅と同じこと!」
(,,゚Д゚)「等しい時間であっても己の集中如何で成果は大いに変化する!」
('A`)(時間より密度か……)
( ^ω^)(無駄にかっこいいお……)
(´・ω・`)「成程……」
(´・ω・`)「分かりました。擬古和尚はやはり今も『閉じて』おられます」
(´・ω・`)「永久に『閉じた』者。こうした性質の者が、一人」
325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:46:27.96 ID:MwD7mMVK0
(,,゚Д゚)「どういう含意であるか! 只今の拙僧は開閉両方備えておる!」
(´・ω・`)「いいえ閉じておられますよ。あなたは盲目です」
(´・ω・`)「外を見ているつもりで、見えてはいないのですから」
(,,゚Д゚)「なにを……」
(´・ω・`)「すぐに分かります。譲留和尚の究明に移りましょう」
(´・ω・`)「譲留和尚、こちらに視線を集束させられますかな?」
( ゚∀゚)「なんとか……」
(´・ω・`)「うむ」
(´・ω・`)「――皆も知っての通り、譲留和尚は他の寺から招かれた僧である」
(´・ω・`)「この方は実に深遠かつ、大胆な思想の保持者です」
331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 18:56:02.46 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「つまり、『開く』という概念を提唱する僧です」
(´・ω・`)「これが非常に面白かった」
(´・ω・`)「私はすぐさま改宗の手続きを踏ませました」
( ゚∀゚)「十年以上前の話だ……」
(´・ω・`)「そうです。いや本当にあれは行幸であった」
(´・ω・`)「私の計画をよりよい形態にするのに最適でしたから」
/ ,' 3「そんなことが……どう繋がるのじゃ?」
(´・ω・`)「『人』は変え易くとも、『風』は変え難し」
(´・ω・`)「旧来の禅僧の風習が残るこの寺の」
(´・ω・`)「ひどく淡白な空気を払うには一筋縄ではいきません」
(´・ω・`)「そこで、正反対の思想家を入れることで、捩じれを生じさせたのです」
(´・ω・`)「もっとも、美僧を手元に置いておきたいという欲望もあったのですが」
336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:02:24.24 ID:MwD7mMVK0
( ^ω^)「譲留和尚とも寝たのかお!?」
(´・ω・`)「いえいえ、違います。眺めているだけで十分でした」
(´・ω・`)「私が触れるとせっかくの高雅が壊れてしまう」
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「さておき、続けましょうか」
(´・ω・`)「そうして案の定と言うべきか、譲留和尚は」
(´・ω・`)「古くからの禅思想の顕著な例ともいえる擬古和尚と反目し合った」
(´・ω・`)「これによりますます亀裂は広がった」
(´・ω・`)「寺に『歪み』が発生した」
( ゚∀゚)「……それも……計算の上か……?」
(´・ω・`)「全ては天運時運地運人運のなすがままにございます」
345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:10:42.70 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「この徐々に肥大化する『歪み』を、更に大きくするため」
(´・ω・`)「私は二人を六知事に置きました」
(´・ω・`)「擬古和尚に維那を、譲留和尚に副寺を」
(´・ω・`)「力があれば、従属する者も出てくる――派閥が組成される」
(´・ω・`)「違う箇所からも『歪み』が生じるようになります」
(,,゚Д゚)「拙僧は……利用されていたのか!」
(´・ω・`)「ところで、理由はお気づきか?」
(´・ω・`)「譲留和尚の位を一段上にしているのは、なぜか」
( ゚∀゚)「知る由もない……少なくとも俺は考えたことがない……」
(´・ω・`)「単純なことです。擬古和尚の嫉妬心を煽るためですよ」
353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:17:01.57 ID:MwD7mMVK0
(,,゚Д゚)「……」
( ゚∀゚)「そっ、そうなのか、擬古殿!」
(,,゚Д゚)「……左様にござる」
('A`)(ダメだ、また)
('A`)(ギコさんはまた、自分を自分に閉じこめてしまった……)
(´・ω・`)「新参者に敗北した……擬古和尚にはそのような想いが渦巻いていたはずです」
(´・ω・`)「悔しかったでしょう」
(´・ω・`)「憎らしかったでしょう」
(´・ω・`)「しかしながら、既に寺院は歪んだ結界が張り巡らされておりました」
(´・ω・`)「その気を狂わせんばかりの瘴気にあてられて」
(´・ω・`)「単なる憎悪が、愛憎入り混じった感情になることは、容易に察せます」
360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:25:43.45 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「擬古和尚が衆道趣味を有していることは、随分昔から既知でした」
(´・ω・`)「維那に任命した内訳のひとつでもあるのですが」
(,,゚Д゚)「待て、どういう意味だ」
(´・ω・`)「順序を追ううちに判明しますよ」
(´・ω・`)「……とまあ、そういう具合でして」
(´・ω・`)「二人を結びつけようとも同時に考えたのですね、私は」
/ ,' 3「なんのためにじゃ! なんおためにそうする必要がある!」
(´・ω・`)「そうなれば愉快だからです」
(´・ω・`)「六知事同士の恋愛模様。面白いではありませんか」
(´・ω・`)「それだけのことです」
('A`)(な、なんなんだこの男は……)
371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:31:07.34 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「ただ、どうもこの案はうまくいきませんでしてね」
(´・ω・`)「中々進展しませんでした」
(´・ω・`)「それでやむなく、違う道筋で殿堂計画を進めることにしました」
(´・ω・`)「ちょうどその頃の話です」
(´・ω・`)「譲留和尚もまた、下山した先で衆道を楽しんでいると知りましてね」
(´・ω・`)「俗世には情報が溢れています」
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「これは使える。即座に私はそう察知し――」
(´・ω・`)「両者の間に刺客を送りました」
(´・ω・`)「それが伊陽です」
381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:37:31.44 ID:MwD7mMVK0
('A`)(……)
('A`)(……圧倒されて……動けん……)
('A`)(他の奴らもそうだ……異論を差し挟めない……)
('A`)(六知事の人たちは、かろうじて立ち向かえているが……)
('A`)(茂羅さんだけは……唇を噛んでいる)
(´・ω・`)「伊陽は元々私の夜の世話役である」
(´・ω・`)「若く、みずみずしいその肌と肢体は狂おしいほどに甘露でした」
(,,゚Д゚)「真か、伊陽!」
(=゚ω゚)「……管主様の……おっしゃる通りです……」
(´・ω・`)「私はまず、擬古和尚に彼を差し向けた」
384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:45:24.64 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「擬古和尚の少年趣味は知っていましたからね」
(´・ω・`)「少し微笑みかけるだけで寝室に呼ばれたと、伊陽は報告してきました」
(´・ω・`)「そしてしばらく擬古和尚と素肌を重ねさせた後で」
(´・ω・`)「譲留和尚にも向かわせました」
(´・ω・`)「どちらも伊陽の風味に惚れこんだようです」
('A`)(じゃあ譲留さんが擬古さんを寺から弾き出そうとしていたのは……)
('A`)(独占……したかったからか……)
(´・ω・`)「求め合うのではなく、奪い合わさせたかったのですよ、私は」
(´・ω・`)「これはこれで、別の『歪み』を起こし……」
(´・ω・`)「計画の礎となったでしょうから」
390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:52:44.05 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「ですが、ひとつばかり失敗が起こりました」
(´・ω・`)「伊陽がどうも、本気で擬古和尚に心寄せてしまったのです」
(=゚ω゚)「……」
(´・ω・`)「皆の者も、幼少期に友人たちと虫取りをなさったでしょう?」
(´・ω・`)「どちらが多く採集できるか。実に稚気に満ちた趣ある遊びです」
(´・ω・`)「しかしながら獲物である昆虫が」
(´・ω・`)「片方の籠にだけ自分から入っていったのでは、競争は成り立ちませぬ」
(´・ω・`)「大変に困りました」
(´・ω・`)「……ところが、違う側面から悦の種が訪れてきました」
(´・ω・`)「私は本当に運が良かった」
(´・ω・`)「まさしく仏の導き!」
395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 19:57:54.14 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「譲留和尚」
( ゚∀゚)「は、はあ……」
(´・ω・`)「予感はしていることでしょう」
( ゚∀゚)「まさか……」
(´・ω・`)「伊陽から、あなたの性行為における、とある妙な特徴を聞きました」
( ゚∀゚)「やめろっ……それは……!」
(´・ω・`)「覚悟はしておられなかったみたいですね」
(´・ω・`)「譲留和尚、あなたは」
( ゚∀゚)「やめてくれ……!」
(´・ω・`)「自分に『擬古和尚の姿を投影して』伊陽を抱いていた――そうですね?」
424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:06:04.28 ID:MwD7mMVK0
(´<_` )「ど……どういうことだ!?」
/ ,' 3「おお御仏よ……救いを……」
(´・ω・`)「……この話を聞いたのは、数週間ほど前のことです」
(´・ω・`)「おそらくですが、譲留和尚が」
(´・ω・`)「伊陽から他の雲水との関係の有無を聞き出したのがこの期間」
(´・ω・`)「そうですね?」
( ゚∀゚)「……そう……だ……」
(´・ω・`)「譲留和尚は自分を開くこと、そして他人を開くことに長けております」
(´・ω・`)「言葉巧みに返答を誘導し、そして」
(´・ω・`)「擬古和尚と伊陽の肉体関係を知った」
447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:15:31.57 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「その際、伊陽は」
(´・ω・`)「『どちらに気があるか』と詰問されたそうです」
(,,゚Д゚)「貴様……そのような行いを……」
(´・ω・`)「伊陽は正直に、擬古和尚だと答えました」
(´・ω・`)「その宣告が譲留和尚を煩悶させたようですな」
(´・ω・`)「けれど『開く』を主義とする譲留和尚……閉じこもるはずがありません」
(´・ω・`)「なんとかして伊陽の気を引こうとした」
(´・ω・`)「いや、『伊陽を満足させようと』した」
(´・ω・`)「そのために、伊陽が愛する者の影をお借りなさったのです」
(´・ω・`)「擬古和尚の影を」
(´・ω・`)「……違いますか、譲留和尚?」
458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:19:54.44 ID:MwD7mMVK0
( ゚∀゚)「……」
('A`)(譲留さんは俯いたままだ)
('A`)(ってことは……図星なんだろうな……)
(´・ω・`)「伊陽に振り向いて欲しいがために、自分ではなく、擬古和尚になった」
(´・ω・`)「譲留和尚もまた、倒錯していたのですよ」
(´・ω・`)「日頃の擬古和尚の態度と言葉遣いを模倣して」
(´・ω・`)「伊陽の身体に触れていた」
(´・ω・`)「実に健気で、また、痛いほどに哀切です」
(´・ω・`)「自分を開き、極限まで開き――やがて放棄した」
(´・ω・`)「伊陽の本心を聞いてしまったがために、そこまでしなさった」
(´・ω・`)「『開く』を信条とした者の……末路です」
467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:24:43.13 ID:MwD7mMVK0
( ゚∀゚)「……禅堂で……」
( ゚∀゚)「……禅堂で、していたんだ。俺は……」
( ゚∀゚)「擬古殿の残り香が漂った禅堂なら……伊陽は許してくれると思って……」
( ゚∀゚)「ほとんど入ったことのない……禅堂に……」
('A`)(それじゃあ俺が夜中聞いていたあの声は……)
('A`)(伊陽と……譲留さんだったのか……)
('A`)(そういや、伊陽は拒むような口ぶりだったな……)
('A`)(それでもダメだったから……)
('A`)(諸梵和尚がいない隙に、擬古さんを追い出そうとしたのか……)
( ^ω^)「譲留和尚……」
( ゚∀゚)「俺はもう……抜け殻だ……」
485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:34:24.57 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「譲留和尚はただひたすらに『開こう』としていた」
(´・ω・`)「――こうした性質の者が、一人」
(´・ω・`)「ここまで『閉じる』が一人、『開く』が二人ですか」
/ ,' 3「待て、先程から感情している、その目的はなんだ? 意義は?」
(´・ω・`)「いずれ分かります」
(,,゚Д゚)「譲留和尚は……開きすぎて自己を見失ってしまったか……」
(´・ω・`)「ですが閉じすぎれば自己を埋葬させてしまう」
(´・ω・`)「そう――まさしく、兄蛇和尚のことでございます」
(´<_` )「な、なんだと!?」
(´・ω・`)「皆の者、よく聞け!」
(´・ω・`)「この男こそが、寺内でもっとも『閉じた』雲水である!」
496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:39:04.62 ID:MwD7mMVK0
( ´_ゝ`)「……」
(´・ω・`)「狼狽いたしませんね?」
( ´_ゝ`)「……俺にも御鉢が回ってくると分かってからな」
(´・ω・`)「さすがでございまする」
(´<_` )「どういうことだ、説明してくれっ!」
(´・ω・`)「お静かに、弟蛇和尚」
(´・ω・`)「あなたにも深い関係がある話なのですよ」
(´<_` )「自分にもだと?」
(´・ω・`)「左様」
(´・ω・`)「兄蛇和尚は……あなたを密かに愛していたのです」
521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:47:08.70 ID:MwD7mMVK0
(´<_` )「自分を……ですと! 世迷言を!」
(´・ω・`)「天のみぞ知る真相が、私の口を借りて下界に降りているのですよ」
(´・ω・`)「虚などありませぬ」
(´<_` )「……」
(´・ω・`)「……兄蛇和尚が」
(´・ω・`)「給仕場に繋がる廊下の補修ばかり専念している訳をご存知ですか?」
(´<_` )「そんなこと……知ったことではない」
(´・ω・`)「そうですか。それは……至極無念。仕方のないことではありますが」
(´<_` )「どういうことだ! 早く話せ!」
(´・ω・`)「弟蛇和尚は兄蛇和尚の想念を知らない……」
(´・ω・`)「兄蛇和尚は、あなたの胸の裡を知ってしまっているというのに」
533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 20:55:28.92 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「兄蛇和尚は、弟蛇和尚の性癖を把握しておいでになられます」
(´・ω・`)「おそらくは寺で暮らす中で気づいたか……」
(´・ω・`)「あるいは、出家前の生活の時点で疾うに分かっていた」
(´・ω・`)「相違ありませんか?」
( ´_ゝ`)「あんたの言うとおりだ」
( ´_ゝ`)「俺は弟蛇和尚の……弟の歪な趣向を知っている」
(´・ω・`)「でしょうな。そうでなければ、あそこまで廊下に執着しない」
(´<_` )「なんということだ……」
(´・ω・`)「いつ頃になりますか?」
( ´_ゝ`)「一年前だ。一年前」
( ´_ゝ`)「あいつも典座の仕事が板に着いてきた頃の話だ」
539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:02:03.61 ID:MwD7mMVK0
( ´_ゝ`)「俺は夜、たぶん十一時頃か、厠に向かう途中で」
( ´_ゝ`)「弟が少年僧を手なずけているところを聴いてしまった」
(´・ω・`)「聴いた? 見たというわけではないのですか」
(´・ω・`)「ですが聴覚は油断ならぬ感覚……信用しすぎてはなりません」
( ´_ゝ`)「確信したぞ俺は。弟の声なんだから分かる」
( ´_ゝ`)「他人とは違うんだ。聴き分けられるに決まってる」
(´・ω・`)「左様ですか」
(´・ω・`)「そのようなことも、きっとあるのでしょうな」
(´・ω・`)「して……給仕場への廊下の修繕を始めたと」
( ´_ゝ`)「ああ」
549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:09:35.41 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「弟蛇和尚に話したりは……」
( ´_ゝ`)「するわけないだろ」
(´・ω・`)「成程。自分の中にすべて秘匿したと?」
( ´_ゝ`)「そうさ」
(´・ω・`)「……見事、見事な純愛であることよ!」
/ ,' 3「説明せい! 話がまるで見えんぞ!」
/ ,' 3「なぜ廊下が関係する!」
(´・ω・`)「荒巻和尚。あなたは老いすぎた。あなたには決して察することは叶いません」
/ ,' 3「なんじゃと……」
(´・ω・`)「廊下を直すことこそが、兄蛇和尚の恋慕を伝える恋文だったのです」
(´・ω・`)「弟蛇和尚の足に、ささくれが刺さってはならないという……」
(´・ω・`)「なんともいじらしい心遣いにございます」
565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:17:00.26 ID:MwD7mMVK0
(,,゚Д゚)「意味が……少々分からぬが……」
(´・ω・`)「擬古和尚こそ身に沁みて理解しているでしょう」
(´・ω・`)「衆道は隠れて行うもの」
(´・ω・`)「足音を立てぬよう、廊下は必ずすり足で歩かねばなりません」
(´・ω・`)「そのようにして歩行すれば」
(´・ω・`)「仮に床板に傷があったならば、ささくれは皮膚を裂き肉にまで深く突き刺さります」
( ´_ゝ`)「……」
(´・ω・`)「兄蛇和尚は、弟蛇和尚に自分の恋心を伝えらずにいた」
(´・ω・`)「その代わり、少年僧を伴い給仕場に向かう弟蛇和尚の足を気遣って」
(´・ω・`)「廊下の修理をひたむきに行っていたのです」
(´・ω・`)「乙女のような純なる愛情でございます」
589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:26:07.71 ID:MwD7mMVK0
(,,゚Д゚)「しかし……病的だ」
(´・ω・`)「周囲の者にはそう映るでしょう」
(´・ω・`)「倒錯した愛の形です」
(´・ω・`)「しかし兄蛇和尚は誰の理解も求めなかった」
(´・ω・`)「弟蛇和尚にも見返りを期待しなかった。そうですね」
( ´_ゝ`)「……それでいいんだよ」
( ´_ゝ`)「俺の中じゃあ、それで……」
/ ,' 3「兄蛇……和尚…・…おお……」
(´・ω・`)「人の内なる想いなど……完璧に明かすことなどできません」
(´・ω・`)「今日まで秘密を守り続けた兄蛇和尚は、自己の中で何もかも完結していたのです」
(´・ω・`)「兄蛇和尚は――『閉じて』いる」
607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:37:43.98 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「『閉じた』世界に、更に己を『閉じこめた』」
(´・ω・`)「こうした性質の者が、一人」
(´<_` )「……おい、ふざけるなよ」
(´・ω・`)「いかがなさったか」
(´<_` )「なにが歪な愛だ。全部お前が元凶ではないか!」
(´<_` )「衆道者であることも、俺を典座に指名した理由のひとつと言っただろう!」
(´・ω・`)「いかにも」
(´<_` )「お前は……お前はこうなる未来を予想していたに違いない!」
(´<_` )「俺はこうなる、兄貴はこうなると……すべて計算づくだったんだろ! お前は!」
(´<_` )「お前がそう仕向けたのだ!」
617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:46:33.45 ID:MwD7mMVK0
(,,゚Д゚)「思い返せば……拙僧も同様であった」
(,,゚Д゚)「衆道がひとつの昇格理由であると」
(,,゚Д゚)「拙僧と譲留和尚がここに至ることも……予見済みか!」
(´<_` )「そして、いくら管主だからといえ、個々人の秘密を好き放題暴露するとは」
(´<_` )「いったいどういう了見だ!」
(´・ω・`)「すべては殿堂計画のため」
(´<_` )「計画とはなんだ!」
(´・ω・`)「邪魔をするでない! 退けい!」
(´<_` )「……っ!」
(´・ω・`)「……もうじき分かります。既に半数を超えました」
(´・ω・`)「あと崩壊させねばならない柱は……二本」
625 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 21:55:54.11 ID:MwD7mMVK0
/ ,' 3「もしや……わしもか!?」
(´・ω・`)「そう、荒巻和尚もです」
/ ,' 3「わ、わしは衆道に足を踏み入れてはおらぬぞ」
(´・ω・`)「存じております。あなたは何の穢れもない老人」
(´・ω・`)「花を愛し蝶と戯れる温厚篤実な僧です」
/ ,' 3「……わしに秘密などない」
(´・ω・`)「荒巻和尚の場合は『あなた自身が知らない』秘密なのです」
/ ,' 3「な、なにを……」
(´・ω・`)「あなたを雲水で最高権限者である都寺に任じたこと」
(´・ω・`)「私があなた以外の老人を寺から追放していったこと」
(´・ω・`)「その道理が、分かりますかな?」
634 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:04:52.58 ID:MwD7mMVK0
/ ,' 3「……知る由もなかろう」
(´・ω・`)「都寺は老人でなくてはならなかった」
(´・ω・`)「唯一の老人が都寺に就いている、という舞台が必要だったのです」
/ ,' 3「なんのためにじゃ?」
(´・ω・`)「老人出なければ、この寺の雲水衆をまとめることは不可能なのです」
/ ,' 3「わしが老いておることの、何が肝心なんじゃ!」
(´・ω・`)「それは……必要以上に僧たちの性事情に介入できぬがゆえでございます」
/ ,' 3「なんじゃて!? 今なんと申した!」
(´・ω・`)「稲麻竹葦」
( ・∀・)「!」
(´・ω・`)「六知事の者どもですら、ご覧の様相なのですよ」
(´・ω・`)「この寺に衆道者は――幾多ございます」
639 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:12:38.02 ID:MwD7mMVK0
/ ,' 3「ばっ、馬鹿を言え!」
(´・ω・`)「全否定できますでしょうか? 証明の手段もございませぬぞ」
(´・ω・`)「その上に私は」
(´・ω・`)「同性愛者が誕生しやすい環境を作り上げているのですよ」
('A`)「なっ、なんじゃそりゃ!?」
( ^ω^)「久々のセリフが驚いただけかお……」
('A`)「俺主人公だよな?」
/ ,' 3「そんな戯けた念力ができるものか!」
(´・ω・`)「できるのですよ。いや、できたのです」
(´・ω・`)「私が展開した、六方陣の効果、とでも解説しましょうか」
/ ,' 3「ふざけておる! それは仏道ではなく魔道だ!」
651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:21:40.80 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「ひとまず心を安寧にして聞いていただきたい」
/ ,' 3「痴れ者が……! さっさと話してみい!」
(´・ω・`)「この寺は古くから『閉じた』空間である」
(´・ω・`)「そこに譲留和尚という『開く』ための要因を導入した――」
(´・ω・`)「しかしながらそれだけでは不十分でした」
(´・ω・`)「積み上げられてきた歴史の重みは、そう簡単には覆りはしません」
(´・ω・`)「そこで私は……自らも新しい要素を持ち込んだのです」
(´・ω・`)「それが、六方陣」
/ ,' 3「だからそれはなんなのじゃ! いかにして作った!」
(´・ω・`)「自然界の万物は、陰と陽の二極から生ずる……」
(´・ω・`)「陰陽道の応用にて開発いたしました」
656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:27:59.62 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「『閉じた』者と、『開いた』者」
(´・ω・`)「それら六名を権力者の立場に配し、概念上の陣を形成したのです」
/ ,' 3「そんなものが効果あるはずないわい」
(´・ω・`)「承知しております、荒巻和尚」
(´・ω・`)「実際に効力を発揮するかはどうでもよいのです」
(´・ω・`)「これはあくまで、先刻語った『歪み』を作るための一手段なのございますよ」
/ ,' 3「な、なんじゃと」
(´・ω・`)「『歪み』が『歪み』を生み、『歪み』が『歪み』を増大させる」
(´・ω・`)「『歪み』は精神の不安定を煽る。秩序が欠落する。自我を忘却する」
(´・ω・`)「それを補填するのが愛と肉欲でございます」
(´・ω・`)「そこに至るべき環境を、私はここに完成させたのです」
663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:34:36.15 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「私が張った六方陣も、様々な『歪み』を生じさせました」
(´・ω・`)「擬古和尚と譲留和尚の確執」
(´・ω・`)「それに伴う派閥闘争」
(´・ω・`)「少年僧の争奪戦、少年僧への求愛」
(´・ω・`)「倒錯した性愛、倒錯した純愛」
(´・ω・`)「私が彼らを六知事に任命したことで、湧き起こりました」
/ ,' 3「わ、わしが残されたのは……」」
(´・ω・`)「私は愛欲に満ちた空間を望んだ」
(´・ω・`)「ですが、都寺まで堕落しては寺院自体が機能しなくなります。それはいけません」
(´・ω・`)「だから性欲が枯れ果てたあなたを都寺に置いたのですよ」
(´・ω・`)「その役目は一人で十分。だから候補者内で最も優秀だった、あなただけを残した」
/ ,' 3「おお……」
675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:45:46.21 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「……あなたは『開こう』とした」
(´・ω・`)「そして、座禅をやめたのですね?」
/ ,' 3「まさしく……」
(´・ω・`)「あなたは座禅を極めたのではなく、座禅の限界を悟ったのでしょう」
/ ,' 3「その通りじゃ。単に向かい続けることは自己の拡大を狭めるだけであった」
(´・ω・`)「譲留和尚とは違い、過程を踏んでの結果です。それは既に大悟と申してもよい」
(´・ω・`)「老師の域にまで肉薄する禅僧は、しかし現れなかった」
(´・ω・`)「あろうことか、閉じ続けた擬古和尚が、大悟に最も近い僧などと称賛された」
(´・ω・`)「複雑な気分だったでしょう」
/ ,' 3「そう。だから……」
/ ,' 3「開けた世界の自然だけが……愛おしかった」
683 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 22:59:12.70 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「『閉じ』に『閉じ』て、そして『開いた』」
(´・ω・`)「けれど開いた先には誰もいなかった。孤独の世界に閉じこめられた」
(´・ω・`)「それでもまだ……自己を外に開いていた」
(´・ω・`)「――こうした性質の者が、一人」
('A`)(残る柱は、あと一本……)
('A`)(茂羅さんか……ここまでの話から推理すると、あの人は閉じている)
('A`)(一体何を……)
(´・ω・`)「茂羅和尚」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「あなたを最後にしたのには多大な理由があるのです」
(´・ω・`)「いや、あなたが最後でなくてはならなかった」
689 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:02:11.86 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「なぜならば、あなたの性質だけが、転換することができるからです」
('A`)(へ……?)
( ・∀・)「……やめてくれ……」
(´・ω・`)「あなたの秘密は、私と共有している」
( ・∀・)「黙れ、悪魔め……!」
(´・ω・`)「閉じた茂羅和尚の開放が可能なのは、当人と私しかおりませぬ」
(´・ω・`)「裏を返せば、私ならば茂羅和尚を開くことができる」
( ・∀・)「黙れと言っているんだ」
(´・ω・`)「往々に古老先徳、あるいは西天に往還し、あるいは人天を化導する」
(´・ω・`)「漢より宋朝に至るまで、稲麻竹葦の如くなる!」
( ・∀・)「やめろっ!!」
696 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:07:09.84 ID:MwD7mMVK0
シィン……
( ・∀・)「はあ……はあ……」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「どうなされますか」
( ・∀・)「……あんたの口からは言わなくていい」
( ・∀・)「僕が自分で開く! 口出しは無用!」
( ・∀・)「あんたに無理やりに暴かれるぐらいなら、そっちのほうがマシだ!」
('A`)「も、茂羅さん」
( ・∀・)「みんな聞け! 僕はな――」
( ・∀・)「諸梵和尚の寵児だったんだ!」
713 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:15:05.76 ID:MwD7mMVK0
( ^ω^)「茂羅さんまで……かお!?」
('A`)「もうだめだ……俺に安心は永遠に来ないわこれ……」
( ・∀・)「僕は十五歳でこの寺に来た。そして」
( ・∀・)「入山して一ヶ月も経たぬうちに諸梵和尚の部屋に呼ばれたんだよ」
(´・ω・`)「私がこれまでに目にしてきた僧の中で……」
(´・ω・`)「茂羅和尚は群を抜いて美しかった」
(´・ω・`)「濡れた瞳、艶のある唇、ほのかに紅がさした頬」
(´・ω・`)「そして肌は滑らかでいて、それでいて張りがある……」
(´・ω・`)「造形美を極めておりました」
( ・∀・)「黙れ、気色が悪い!」
( ・∀・)「僕は昔からずっと、お前のことが大嫌いだった! お前は悪魔だ!」
721 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:23:07.74 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「分かっておりましたよ」
(´・ω・`)「しかしそれもまた、私を燃え上がらせるひとつまみの山椒でした」
('A`)(ど、どこまでもホモだ……)
(´・ω・`)「私は茂羅和尚を心より愛しました」
(´・ω・`)「けれども、成人を迎えると同時に関係を断ちました。そうですね、茂羅和尚」
( ・∀・)「ふん! どうせ飽きたんだろう!」
( ・∀・)「二十歳になった男には興味なしか、この真性め!」
(´・ω・`)「私は五歳から五十歳まで男性機能を働かせることができる……」
(´・ω・`)「そのような情熱が甚だ欠けた因果ではございませぬ」
( ・∀・)「じゃあ何だっていうんだ!」
(´・ω・`)「――あなたという存在を閉じこめるためにですよ」
735 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:31:50.60 ID:MwD7mMVK0
( ・∀・)「閉じこめる、だって?」
(´・ω・`)「封印、という呼称が最も適切でしょうか」
(´・ω・`)「私は新しい快楽の形を追求するのが趣味なのです」
('A`)(下衆すぎて笑えてきた)
(´・ω・`)「私が茂羅和尚と最後の契りを交わした夜……」
(´・ω・`)「なんと申したか、覚えておられますかな?」
( ・∀・)「忘れるわけがない……稲麻竹葦だ」
(´・ω・`)「その通り!」
(´・ω・`)「私はその言葉をもって、あなたに鍵をかけた」
(´・ω・`)「心の傷が消えぬよう……完璧にあなたの胸に閉じこめたのだ」
743 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:38:36.96 ID:MwD7mMVK0
(*゚ー゚)「ちょ、ちょっと待ってください!」
(*゚ー゚)「先程から申されている、稲麻竹葦とは……どういう意味なのでしょうか?」
(´・ω・`)「茂羅和尚、真意はつかめていますかね」
( ・∀・)「当たり前だ」
( ・∀・)「稲麻竹葦とはな、稲と麻と竹と葦がたくさんあるってことだ」
('A`)「そのまんまじゃないですか」
( ・∀・)「そこから転じて、欲しい物がたくさんあって嬉しいという意味が生まれた」
('A`)「えっ、じゃあいい意味の言葉なんじゃ……」
( ・∀・)「それだけじゃない! 裏の意味もある!」
( ・∀・)「要らない物が大量に溢れていて、息苦しい――これがもうひとつの解釈だ」
752 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:45:18.16 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「いかにも」
('A`)「そ、そういうことなのか……」
( ・∀・)「ある側面からは喜ばしい物事であっても」
( ・∀・)「別の側面からは忌むべき対象になるってことだよ」
(´・ω・`)「そう。善悪・巧拙・優劣は表裏一体」
(´・ω・`)「捉え方によって容貌は異なる」
(´・ω・`)「そこで変わるのは見ている物ではない。見る私たちの目線だ」
('A`)「それじゃ、この場面では」
(´・ω・`)「衆道に狂った僧が充満したこの寺院は」
(´・ω・`)「私のような道に則った者には天国であっても……」
( ・∀・)「僕にとっては地獄、ということさ」
758 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/07(月) 23:54:09.06 ID:MwD7mMVK0
(´・ω・`)「この言葉を用いて茂羅に施錠をしたのです」
(´・ω・`)「私の他にも衆道に深入りしておる人間がいるぞ――と」
(´・ω・`)「そのことを忘れてはならないように」
(´・ω・`)「そして心の傷を誰にも知られぬよう、閉じこめることに成功しました」
(´・ω・`)「この状況下で口外などできるはずがありませんからね」
(´・ω・`)「それでも自己の中では、過去の記憶が反芻する。大層苦しかったでしょう」
( ・∀・)「こいつは救いようのないクズだ……」
( ・∀・)「お前のせいで、僕がどれだけ恐怖に怯える日々を送ってきたと思っている!」
(´・ω・`)「それがたまらなかった」
( ・∀・)「何を言うんだ!」
(´・ω・`)「震えるあなたを遠目に眺めていることが……強烈な興奮を呼び覚ました」
769 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:00:36.97 ID:6G4GE/Vb0
('A`)(狂ってる……)
( ^ω^)(薄ら寒くて仕方がないお……)
( ・∀・)「……糞虫め!」
( ・∀・)「閉じるしかなかった僕を、弄んでいたのか! 変態狸!」
(´・ω・`)「罵声を浴びせなさっても、私には被虐的な悦びにしかなりませぬぞ」
(´・ω・`)「ただ逃げるという手段を残しておりましたので」
(´・ω・`)「監寺の位を与え寺に縛りつけました」
( ・∀・)「やっぱりか。ふん、想像通りだ」
('A`)(ああ、そんなことも言っていたな……)
('A`)(だけどその時、俺の前で稲麻竹葦の言葉を漏らしていたし……)
('A`)(茂羅さんなりに……開こうともしてたのかな……)
772 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:05:08.13 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「『閉じる』運命を背負わされた」
(´・ω・`)「こうした性質の者が、一人」
(´・ω・`)「……もっとも、今しがた開いてしまいましたが」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「最後に……毒念さん」
('A`)「なっ、なんだよ」
(´・ω・`)「見方によっては、あなたが最大の功労者である」
('A`)「は? 俺が?」
(´・ω・`)「うむ。あなたが持ち運んできた『歪み』……」
(´・ω・`)「いや、あなたがここで誕生させた大いなる『歪み』」
(´・ω・`)「これが最大の決め手となったのです」
780 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:10:17.80 ID:6G4GE/Vb0
('A`)「俺が『歪み』の種だって?」
('A`)「ふざけんなよ。俺なんて何もしてねーよ」
(´・ω・`)「毒念さんは偶然の事象でした」
(´・ω・`)「本来、計画に関与するような人材ではございませぬ」
(´・ω・`)「いいや、そもそも全部が……運によって成り立ったのかも知れませんが……」
('A`)「早く言えよ、気になるだろ!」
(´・ω・`)「そう焦る必要もありません。誠に明快な話なのですから」
(´・ω・`)「あなたの隣に、椎伊が座っておるでしょう」
('A`)「それがどうしたんだよ。いっつもいるぞ」
(´・ω・`)「まさにそれである。それこそが『歪み』」
(´・ω・`)「毒念さまによってもたらされた事件なのです」
798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:19:02.51 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「椎伊が一人の男性にすり寄ることなど」
(´・ω・`)「これまでに一度たりともなかったことでございます」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「それもそのはずで、椎伊には過去の傷があるのですよ」
(´・ω・`)「ゆえに心根から気を許さない」
('A`)「なっ、お前……椎伊のことをなぜ知っている!」
(´・ω・`)「弟蛇和尚の前の典座と、私はかつて性的関係を結んでおりました」
(´・ω・`)「話しましたよね」
(´・ω・`)「互いに歳を重ねたある晩、その雲水が私の元に参上しなさった」
(´・ω・`)「久々にどうだ、と」
(´・ω・`)「無論還暦寸前の仏僧など興味がないので断りましたが」
(´・ω・`)「なぜ唐突にと聞くと、椎伊に拒まれたからだ、と答えたのですよ」
813 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:29:15.23 ID:6G4GE/Vb0
('A`)「そんなふうに……繋がるのか……」
( ^ω^)「えっ、でも最近は僕ともよく一緒にいるお?」
(´・ω・`)「それは単に蓬莱和尚が毒念さまのそばにいるというだけでしょう」
( ^ω^)ショボーン
('A`)「でも椎伊は擬古さん派だぞ? 擬古さんには」
(´・ω・`)「あれは子どもじみた憧憬に過ぎません。接点は見受けられない」
(´・ω・`)「その椎伊が毒念さまにだけ心を開いた」
(´・ω・`)「これは一大事でございます」
('A`)「どういうこった……」
(´・ω・`)「ご覧の通り椎伊は甚だしく可憐。しかしまだ誰にも穢されていない」
(´・ω・`)「初夜を狙う雲水が非常に多いのです」
821 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:32:31.63 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「寺院はあなたたちの見知らぬところで緊張状態を呈していました」
(´・ω・`)「ある意味では、派閥間の争いや痴情の交錯よりも激しく」
(´・ω・`)「凄まじき『歪み』が生じておったのですよ」
('A`)「お、俺が……歪みの原因になってた……?」
('A`)「し、椎伊」
('A`)「お前は気づいてたのか?」
(*゚ー゚)「わ、私にもよく分かりません!」
(*゚ー゚)「ただ……毒念様の近くだけは、いても嫌なことが連想させられなかったんです」
(*゚ー゚)「だから研修を終えた後もお供していた……」
(*゚ー゚)「それだけなのでございます」
(´・ω・`)「どこから見るか次第なのです」
(´・ω・`)「当事者の間では正常であっても、傍からは異常に映るのですぞ」
837 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:38:39.83 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「何よりも……私が留守の合間に」
(´・ω・`)「擬古和尚と譲留和尚の伊陽を巡る争いが、衆前に発覚していたことが」
(´・ω・`)「本当に幸運でした」
(´・ω・`)「ここが計画の最終章に移行する最大の好機だと、悟りました」
(´・ω・`)「裂け目は既に走っていた」
(´・ω・`)「後は少し力を入れるだけでした」
('A`)「……」
/ ,' 3「……」
(´・ω・`)「以上にて……寺院殿堂計画の全段階が完了しました」
(´・ω・`)「ようやく、ようやくです!」
(´・ω・`)「私の計画が、具現化するのです!」
854 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:46:56.48 ID:6G4GE/Vb0
/ ,' 3「……一貫して皆が気にかけておるが……」
/ ,' 3「その計画とはなんなのじゃ? 全貌がまったく見えてこんぞ!」
(´・ω・`)「その前によろしいですか」
(´・ω・`)「まずは私にとって、禅とは如何なる思想かを述べましょう」
(´・ω・`)「私は中道――『開く』ことも『閉じる』ことも重要視しております」
(,,゚Д゚)「……」
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「開かねば閉じれず、閉じていなければ開けれず」
(´・ω・`)「そもそも自己とは外部との境界を含めて定まってはいないのです」
(´・ω・`)「見方次第で万華鏡のように姿形を変える」
(´・ω・`)「ですがそれは、我々が視点を移動させただけで、自己そのものは不変でございます」
( ・∀・)「……」
861 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:51:04.24 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「自己は変容する、しかしながら根底は、そう易々と揺るがない」
(´・ω・`)「その自己を探索する長くそして短い旅」
(´・ω・`)「それが悟りへの道なのです」
(´・ω・`)「……さて、『開く』、『閉じる』と申し上げましたが」
(´・ω・`)「私はこれに、あるひとつの解釈を加えましてな」
(´・ω・`)「開くということは広げるということ」
(´・ω・`)「閉じるということは埋めるということ」
(´・ω・`)「二つの行動が交わるというのは、どのような瞬間か。これを考えました」
('A`)「まさかとは思うが……」
(´・ω・`)「そう」
(´・ω・`)「挿入行為ですね」
879 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 00:56:08.25 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「禅の神髄とは性交にあり!」
(´・ω・`)「だが寺院は女人禁制」
(´・ω・`)「これすなわち衆道こそが大悟への常道」
('A`)「頭おかしいだろお前」
(´・ω・`)「私はここに終着したのです」
/ ,' 3「本当にお前は大うつけじゃ…・…」
(´・ω・`)「そこで私は、すべての僧侶を悟りを得られるよう」
(´・ω・`)「全員が揃って衆道に耽れる空間を用意することにしたのです」
(´・ω・`)「まさしく肉欲の殿堂……」
(´・ω・`)「寺院殿堂計画」
905 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:02:58.50 ID:6G4GE/Vb0
('A`)「……くだらないけど……」
( ^ω^)「めちゃくちゃ……恐ろしいお……」
('A`)「この坊主は……本気も本気だからな……」
( ´_ゝ`)「では、俺たち六知事の秘密を暴露した理由はなんだ?」
(,,゚Д゚)「そうだ、説明がつかぬぞ」
(´・ω・`)「語ったであろう。『柱を崩壊させる』と」
(´・ω・`)「六知事という柱によって保たれていた、六方陣の魔力を解いたのです」
( ・∀・)「僕を一番後ろに回したのは……」
(´・ω・`)「茂羅和尚の秘密は、私の秘密でもある」
(´・ω・`)「つまり、茂羅和尚の柱を壊すということは、私の柱も壊すことと同義」
(´・ω・`)「結界の中心に陣取る私という主柱も、最終的に破壊したのです」
913 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:10:05.95 ID:6G4GE/Vb0
( ゚∀゚)「それを解いて……どうする……?」
(´・ω・`)「空間を――また閉ざすのです」
(´・ω・`)「『歪み』を消し去り、計画を始める元の状態に戻すのですよ」
('A`)「じゃあなんだ、この計画は!」
(´・ω・`)「ふふふ……そう!」
(´・ω・`)「破壊と、そして再生によって完成するのです!」
('A`)「なんでだ、なんのためにわざわざ」
('A`)「第一衆道に戦根するための施設じゃなかったのか!」
(´・ω・`)「少々違います。愛欲の殿堂には衆道に携わらない者は不要なのです」
(´・ω・`)「そのためには贋物を取り除き、本物を見分ける必要がございます」
(´・ω・`)「同性愛推奨環境は失われた」
(´・ω・`)「それでもまだ衆道を捨てれぬ者を、私はこの寺に残したいのです」
922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:15:09.70 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「今宵より毘譜寺は再誕いたしました」
(´・ω・`)「賛同できぬ者は去りなさい」
(´・ω・`)「私は止めません。当面の生活資金も口座に振り込んでおきます」
('A`)「おいなんかさらっと流したけど、なんで口座番号を知っている」
( ^ω^)「千里眼……」
(´・ω・`)「ですが、残留すれば僧を抱き続けることが出来ます」
(´・ω・`)「寺の外ではそうそう経験できることではありませぬ」
(´・ω・`)「ちょうど今宵は満月……よい夜になりますよ」
('A`)「馬鹿か、ほとんどが出ていくよ」
(´・ω・`)「果たしてそうであろうか?」
935 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:21:45.71 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「擬古和尚、譲留和尚」
(´・ω・`)「あなたたちはまだ、伊陽を愛しておられますか?」
(,,゚Д゚)「……」
( ゚∀゚)「……」
('A`)「この流れだと、それ無言の肯定じゃないですか!」
(´・ω・`)「そして弟蛇和尚」
(´・ω・`)「あなたは辱められた兄蛇和尚のために憤ることが出来た」
(´・ω・`)「そんなあなたならば、兄蛇和尚の気持ちに応えられるのではありませんか?」
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
('A`)「見つめ合わないでください!」
949 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:27:06.96 ID:6G4GE/Vb0
(´・ω・`)「他の者もそうです」
(´・ω・`)「好きにしなされ。強制はいたしませぬ」
(´・ω・`)「自己を見つめ直すいい機会です」
(´・ω・`)「そして答えを出しなさい」
ザワ……ザワ……
('A`)「空気が不穏なんですが……」
( ^ω^)「ド、ドクオ、今のうちに逃走経路を探しておいたほうがいいお」
(*゚ー゚)「始まりそうです!」
(´・ω・`)「決断の時です。それでは――いざ」
(´・ω・`)「開眼!」
954 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:30:27.45 ID:6G4GE/Vb0
(`・ω・´)「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」
( ФωФ)「ぬおおおおっほっほおおおおおおお!!!!」
('A`)「早すぎだろあいつら!」
( ^ω^)「僕らも早いとこ逃げるお!」
( ^ω^)「相手が見つからなかった奴に強引に引きずりこまれかねないお!」
('A`)「それは恐ろしすぎる……」
( ・∀・)「こっちだ、二人とも!」
/ ,' 3「急いで来い!」
('A`)「茂羅和尚! 荒巻和尚!」
( ・∀・)「もう和尚じゃない! 僕らも寺を出るんだ!」
974 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:35:00.70 ID:6G4GE/Vb0
( ・∀・)「こんなこともあろうかと」
( ・∀・)「僧堂の管理を任されている監寺という立場を利用して」
( ・∀・)「こっそり専門業者を呼んで隠し通路を作っておいたのさ!」
('A`)「さすがは茂羅さん! できる男!」
/ ,' 3「しかし破門するのは……わしらだけみたいじゃ」
( ^ω^)「こんなに多くの僧が残るのかお……」
/ ,' 3「わしは……このような乱れた寺に身を置いておったのか……」
( ・∀・)「行こう、こんな場所に長居なんてしてられない」
('A`)「いや、ちょっと待ってください! まだ一人!」
('A`)「椎伊! お前も早くこっちにこい!」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:42:40.64 ID:6G4GE/Vb0
(*゚ー゚)「毒念様!?」
('A`)「急げ! 聞いただろ! お前は競争率高いんだよ!」
('A`)「危ないからさっさと走ってこい!」
(*゚ー゚)「ですが……私には、寺を出たところで行く当てがございません……」
(*゚ー゚)「戸籍もないのですよ……?」
/ ,' 3「わしのところに来い」
( ^ω^)「荒巻おしょ……さん」
/ ,' 3「養子として迎え入れちゃる」
/ ,' 3「長い修行生活で妻もせがれも持てんかったんだ」
/ ,' 3「孫の一人ぐらいくれてもいいじゃろう?」
('A`)「そういうことだ! さあ、こっちへ!」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:47:10.24 ID:6G4GE/Vb0
(*゚ー゚)「はっ……はい!」
('A`)「おら! お前ら通路の前空けろ! 俺たちは出ていくんだ!」
( ^ω^)「まずいお! 三十人ぐらいが椎伊の後を追ってきてるお!」
/ ,' 3「年寄りには壮絶すぎる光景じゃ……」
( ・∀・)「急ぐんだ!」
(*゚ー゚)「足が……もつれそうです……!」
(*゚ー゚)「あっ!」
( ^ω^)「前のめりになっちゃったお!」
('A`)「その勢いのまま飛べ! てかもうやるっきゃねぇ!」
(*゚ー゚)「はっ、はい!」タンッ!
('A`)パシッ!
('A`)「よし……行くぞ!」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:51:18.66 ID:6G4GE/Vb0
( ・∀・)「決して後ろを振り返っちゃダメだよ!」
( ^ω^)「言われなくてもそんなアホなことしないお!」
('A`)「もしついてきてたらと思うと怖すぎる……」
(*゚ー゚)「あ、あの皆さん」
('A`)「どうした?」
(*゚ー゚)「ありがとうございます……その」
( ^ω^)「感謝されるようなことなんて何もしてないお!」
( ・∀・)「君はあんな空間にいちゃいけないんだ」
/ ,' 3「あそこはもう禅寺なんかじゃない……我欲の吹き溜まりだわい」
('A`)「つまんねーこと言ってる暇があったら、走るぞ! 割と真面目に!」
(*゚ー゚)「はい!」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 01:56:44.64 ID:6G4GE/Vb0
~山林~
('A`)「ど、どっちに向かって走ったらいいんだ……」
(*゚ー゚)「夜道だから分かりづらいです……」
( ・∀・)「ここは僕の庭だ、どこに行けば出口かぐらい全部頭の中に入ってる」
( ^ω^)「さすが茂羅さん!」
( ・∀・)「もう茂羅じゃない。僧名は捨てた。僕はモララーだ」
('A`)「さすがモララーさん!」
/ ,' 3「わ、わし、老体に鞭打ってごまかしてきたが、さすがに疲れたんじゃが……」
( ^ω^)「おぶるお。僕は鍛えてあるんだお。よいしょっと」
/ ,' 3「すまんのう」
( ^ω^)「大豆パワーとくとご覧あれ」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:02:06.68 ID:6G4GE/Vb0
( ・∀・)「麓が見えてきたぞ!」
( ^ω^)「つ、ついに……僕たちは……」
(*゚ー゚)「逃げ切った……んですね……」
/ ,' 3「みたいじゃな」
('A`)「俺たちは……俺たちは自由だ! ひゃほほーい!」
(*゚ー゚)「寺院の外の世界を……初めて見ました……」
/ ,' 3「開けた世界はいかがかな?」
(*゚ー゚)「私は今まで……閉じていただけでしたから……」
(*゚ー゚)「とても鮮烈に感じます」
/ ,' 3「そうじゃ。自己というのは、自分自身しか感じられるもの」
/ ,' 3「他人の受け売りで自己を俯瞰することはできんのだ」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:07:00.61 ID:6G4GE/Vb0
/ ,' 3「これからは自分の好きなように生きなさい」
(*゚ー゚)「うん! おじいちゃん!」
/ ,' 3「お、おじいちゃん……」
( ・∀・)「ははは。荒巻さん、念願の家族ができたんですよ」
/ ,' 3「照れ臭いのう」
('A`)「……」
( ^ω^)「どうしたんだお、ボケっとして」
('A`)「一ヶ月にも満たない期間だったというのに……」
('A`)「俺のこれまでの人生全部より長く感じた……濃密すぎた……」
( ^ω^)「寺の外と中じゃ、時間の流れが全然違うお」
('A`)「ああ……やっぱり普通の世間が一番安心するよ」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:11:52.25 ID:6G4GE/Vb0
('A`)「……これから皆さん、どうするんですか」
( ・∀・)「そうだな、僕は……」
( ・∀・)「これまでは『閉じて』いたからね、『開いて』いこうと思う」
( ・∀・)「しばらく全国を行脚していろんな人や自然、文化と触れ合ってみるよ」
( ・∀・)「まだ僕は若いんだ」
/ ,' 3「わしは……ううん」
/ ,' 3「寺では随分と長く、一人で『開いて』きたんじゃが……」
/ ,' 3「外でもまあ、大して変わらぬだろう」
/ ,' 3「……しかし、この先の残り少ない人生は……平穏に『閉じて』暮らしていこうかの」
/ ,' 3「かわいい孫もできたことだし」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:17:19.23 ID:6G4GE/Vb0
(*゚ー゚)「私は……この世界を何も知りません」
(*゚ー゚)「『閉じて』いたから必然的に『開かないと』いけませんね……」
(*゚ー゚)「だけど、ちょっと楽しみです」
(*゚ー゚)「何をやっても初めて尽くしですからね」
(*゚ー゚)「……学校とかも、行ってみたいかな、なんて」
('A`)「そりゃいいな。で、ブーンは?」
( ^ω^)「僕は就職先を探すことからスタートだお」
('A`)「おい……それ俺もやらなきゃダメなことじゃねぇか……」
('A`)「せっかく明るい希望に満ち溢れてたのに現実つきつけるなよ……」
( ^ω^)「だったら、一番に何をする予定だったんだお」
('A`)「俺か……俺は……」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:19:45.67 ID:6G4GE/Vb0
('A`)「普通にオナニーがしたいです」
( ^ω^)「死ぬべき」
~('A`)が入山したら案の定衆道だらけだったようです~
~完~
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/08(火) 02:22:48.21 ID:6G4GE/Vb0
長時間いや長日間ありがとうございました
疲れましたマジ疲れました疲れたっていうか死ぬ
こんなにかかるとは思わなかった
正直、スレタイで落ちて、一番最初に(´・ω・`)←こいつが出てきた時点でまた落ちて
もう完全に出オチが成立してたんですけど
そこから広げに広げてこうなりました
ながらで300レス近く(たぶん)も全部書き上げるのは大変だ
おつかれさまでした
180 名前: ◆zS3MCsRvy2 [] 投稿日:2011/02/08(火) 02:31:32.29 ID:6G4GE/Vb0
下敷きにした作品がヤマジュン、京極、薔薇の名前と
早い段階でバレましたがその通りです
あと寺での生活で参照したのは「しあわせの書」とかです
最後のほうのネタはゼオライマーです
詳しいところでは禅について書かれた各種サイトが役に立ちましたね
それとお坊さんのブログ
お坊さんブログ面白いですよ
「今日のおやつは桃缶でしたo(^-^)o」とか書いてあってかわいいです
それとここで出てきた禅寺知識や仏教観や衆道観は大半がハッタリです
信じないほうが身のため
ナムナム
190 名前: ◆zS3MCsRvy2 [] 投稿日:2011/02/08(火) 02:41:12.96 ID:6G4GE/Vb0
まあ結局何が言いたいかっていうとオナニーこそニルヴァーナってことですよ
僕はもう五日間ずっとしてませんよ
こんなひどい作品を書いてて気分が乗るわけないじゃないですか
やめてくださいよ本当に
そんなこんなであとがきは以上です
おやすみなさい
スポンサーサイト