824 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 17:20:45.95 ID:wRWb38q90
第10部
ツン看護部長は今日の勤務を終え、女子更衣室に向かっていった
ξ゚⊿゚)ξ(ふう
今日も忙しかったわ・・・)
リ ^ヮ^)「看護部長、お疲れ様ですぅ~」
新人看護婦のルルカが挨拶をしてきた
ξ゚⊿゚)ξ「おつかれ
アナタもあがり?」
リ ^ヮ^)「はい
やっと帰れますよ~」
830 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 17:24:34.17 ID:wRWb38q90
二人は話をしながら、更衣室へ入っていった
ξ゚⊿゚)ξ「どう?
そろそろ仕事は慣れた?」
リ ^ヮ^)「も~、全然ですぅ
看護婦ってほんと大変ですよねー」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、そのうち慣れるわよ
あせらずゆっくり覚えていきなさい」
リ ^ヮ^)「はいです~」
ツン看護部長は白衣を脱ぎ、ロッカーのハンバーにかけ、私服に着替えた
リ ^ヮ^)「看護部長、今日はずいぶんオシャレしてますねー
もしかしてデートですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、そんなものね」
839 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 17:37:41.43 ID:wRWb38q90
ツンはバッグの中から香水を取り出し、首筋と手首に軽く吹きかけた
リ ^ヮ^)「看護部長は大人の女性って感じで凛としててかっこいいですぅ~
ルルカの憧れですよー」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなことないわよ」
ツンは手首を軽くこすり合わせながら、ルルカに返事をした
リ ^ヮ^)「ルルカも看護部長みたいな大人な女になりたいですー」
ξ゚⊿゚)ξ「アナタは今のままでいいと思うけど
・・・じゃあお先」
ツンはバッグを持って、更衣室の扉を開けた
リ ^ヮ^)「お疲れ様ですぅ!」
938 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 22:52:59.68 ID:wRWb38q90
カツカツとミュールのヒールが地面を蹴る音を立てて、ツンは病棟の通路を歩いた
前からマナー看護士長が歩いてきた
( ´∀`)「看護部長、今日あがりですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ
アナタは今から?」
( ´∀`)「そうです
今日は準夜勤なんで」
ξ゚⊿゚)ξ「おつかれ
悪いけどあと頼むわね」
( ´∀`)「任せて下さい」
944 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 22:56:20.44 ID:wRWb38q90
ξ゚⊿゚)ξ「ああ
1病棟の2035室のブーン君だけど、どうも状態があまり思わしくないみたいだから
病室へ行って様子を見てくれる?」
( ´∀`)「わかりました
このまま行って来ます」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、よろしくね」
そう言うとツンは従業員出入り口から外へ出て行った
( ´∀`)(ブーン君だな)
モナー看護士長は階段を上がり、2035室へと向かった
948 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:00:41.76 ID:wRWb38q90
(ヽ^ω^)「カーチャン、悪魔がカーチャンを殺すといってるお」
J( 'ー`)し「大丈夫だよ、ブーン
カーチャンは平気だから」
(ヽ^ω^)「カーチャンが死んだら、もう生きてられないお」
J( 'ー`)し「カーチャンはブーンといつも一緒だよ」
(ヽ^ω^)「カーチャンが死んだら僕も後を追うお
そしたら、カーチャンと一緒だお」
ガチャッ
2035室の扉が開く音がした
( ´∀`)「ブーン君、調子はどうだい?」
949 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:04:31.69 ID:wRWb38q90
(ヽ^ω^)「カーチャン、昨日アヤちゃんが遊びに来たお」
J( 'ー`)し「それはよかったね
アヤちゃんは元気だったかい?」
(ヽ^ω^)「元気だったお
アヤちゃんのランドセルがかわいかったお!」
J( 'ー`)し「ブーンもランドセル持ってるじゃないの」
(ヽ^ω^)「僕のは男子用だお
アヤちゃんのとは違おうお」
マナー看護士長は宙に向かってブツブツと話し続けるブーンの側に寄り、再度声をかけた
( ´∀`)「・・・ブーン君?
誰としゃべってるんだい?」
951 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:07:07.60 ID:wRWb38q90
(ヽ^ω^)「あ、トーチャンが帰ってきたお
おかえりだお」
( )「ただいま
今日も忙しかったよ」
(ヽ^ω^)「トーチャンは毎日働いて偉いお」
( )「これも家族の為だからなー」
モナー看護士長は再びブーンに声をかけた
( ´∀`)「ブーン君
僕が分かるかい?」
953 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:12:54.00 ID:wRWb38q90
しかし、モナーの声にブーンは反応しない
( ´∀`)(完全に妄想の世界に入ってしまっているのか・・・)
モナーはしばらくブーンの様子を見ていた
( ´∀`)(これは薬を飲ませた方がいいんじゃないか?)
モナーは診療部長に報告したほうがいいと思い、ブーンの病室を出て、第1診察室へ向かった
第1診察室では、診療部長が外来の患者の診察をしていた
( ´∀`)「診療部長」
(・∀・)「はい
何ですか?」
( ´∀`)「ブーン君のことで少しお話が・・・」
(・∀・)「わかりました
あとで伺うので、ちょっと待ってて下さい」
955 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:16:24.53 ID:wRWb38q90
( =゚ω゚)ノ「失礼します」
第1診察室にモニュ研修医が入ってきた
( =゚ω゚)ノ「看護士長、どうかされたのですか?」
( ´∀`)「いや、ブーン君のことで診療部長に相談に来たんですよ」
( =゚ω゚)ノ「彼がどうかしたのですか?」
( ´∀`)「うん
さっき部屋に様子を見に行ったんだけど、独語がひどいんですよ
こっちが話しかけても全く反応しないし・・・」
( =゚ω゚)ノ「へえ・・・」
966 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:25:07.16 ID:wRWb38q90
( ´∀`)「で、何か薬を飲ませたほうがいいんじゃないと思って
診療部長に相談に来たんだ」
( =゚ω゚)ノ「そうですねー・・・」
モニュ研修医は看護士長の話を聞いて、何やら考え始めた
( =゚ω゚)ノ「・・・この際、ECTをかけるのも手かもしれませんね」
( ´∀`)「ECT・・・
通電療法か・・・」
( =゚ω゚)ノ「はい
アメリカの治験報告によると通電療法は重度のうつ病患者や昏迷状態の患者に
劇的な効果をもたらしたとあります」
( ´∀`)「うーん・・・」
看護士長は眉をひそめながら、モニュの話を聞いていた
977 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:39:15.19 ID:wRWb38q90
モナー看護士長はECTに対しては割りと懐疑的な方だった
というのも、彼が精神医療の場で働くきっかけになったのが、通電療法との出会いだからだ
モナーは看護学校時代、実習である精神科病院に行った
そこでは、30畳位の部屋に患者十数人を並べて仰向けに寝かせ、麻酔も何もせずに片っ端から
電極を患者の頭に当てていた
患者は、その瞬間、大きくのけぞって、全身をぶるぶる震わせ、気を失う人もいる
おまけに、この治療とは到底思えぬ行為が、「純ナマ」と生ビールの銘柄をもじって呼ばれている
のを知り、看護学校生だったモナーは
( ´∀`)(こんなことが行われていていいのだろうか
これは変えなきゃいけない)
と痛感したのだった
984 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/09(木) 23:45:42.13 ID:wRWb38q90
( =゚ω゚)ノ「ここだけの話ですが、私はどうも診療部長のやり方がいまいちのような気がしていました
もし、私が彼の主治医なら、今頃もっと回復していたと考えています」
モニュ研修医は声を潜めて看護士長に語った
( ´∀`)「うーん、僕からは何とも言えないなあ・・・」
モナー看護士長は苦い表情をして腕を組んでいる
( =゚ω゚)ノ「この病院で働いて1年以上になりますが、全体的にここの医師達は患者の治療に対して
慎重すぎる傾向があるように思います
それが、結果として患者の回復を遅らせている
私ならもっと短期間で患者を治す手段を採る」
( ´∀`)「・・・」
10 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/10(金) 00:03:25.29 ID:oQFCEq3m0
( =゚ω゚)ノ「さっきも院長にこのことを申し上げてきました
そして、私にも患者の主治医を担当させるようにと」
( ´∀`)「院長は何て?」
( =゚ω゚)ノ「考えておくと言っていました」
( ´∀`)「そうですか
とりあえずブーン君の主治医は診療部長なので、ECTの使用も含めて
診療部長に相談してみます」
( =゚ω゚)ノ「ええ
ぜひECTを薦めて下さい」
( ´∀`)「そういえば、何かの用事だったんじゃあ?」
( =゚ω゚)ノ「いえ、大した用じゃないないので構いません」
そう言うと、モニュはその場を立ち去った
155 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/10(金) 16:38:34.30 ID:oQFCEq3m0
しばらくして診療部長が第1診察室から出てきた
(・∀・)「お待たせしました
で、用件はなんでしょうか?」
( ´∀`)「はい
さっきブーン君の病室に行ったのですが、かなり独語がひどく
私が話しかけても全く反応しませんでした
見た感じだとどうも幻覚妄想がひどくなってるのではと・・・」
(・∀・)「ああ、確かに私もブーン君の幻覚妄想は悪化しているように感じます
もし、このまま更に悪化する兆候が見られるようでしたらリスパダールの処方量を
増やすことを考えています」
( ´∀`)「リスパダールですか」
(・∀・)「はい
幻視、幻聴などの幻覚作用を抑えるのに最も効果があるのはやはりリスペリドンだと
私は思います」
( ´∀`)「しかし、量を増やして副作用は大丈夫なのでしょうか?」
看護士長は心配そうに診療部長に尋ねた
158 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/10(金) 16:44:21.62 ID:oQFCEq3m0
(・∀・)「確かに今の量でもかなりの副作用がすでに出ています
私が見たところ、血圧低下、不安、興奮、不整脈などが今のブーン君に見られます
もし、量を増やすことで悪性症候群が出てしまった場合、直ちに処方を中止しないと
命にかかわります」
( ´∀`)「・・・そんな危険な薬を沢山与えて大丈夫なのでしょうか?」
モナー看護士長は依然として不安な表情を浮かべたままだった
(・∀・)「私もできることなら、量は増やしたくありません
しかし、これ以上効果が見込める薬は他にないのです
もちろん副作用を抑える薬を同時に処方するようにはしますが・・・」
( ´∀`)「副作用を抑える薬ですか・・・」
162 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/10(金) 16:47:34.25 ID:oQFCEq3m0
(・∀・)「トウシツの治療はやはり投薬治療が基本になります」
( ´∀`)「そうですね・・・
あの・・・」
(・∀・)「なんでしょうか?」
( ´∀`)「ECTをかけるというのはどうなのでしょうか?」
(・∀・)「ECTですか
そうですね・・・」
診療部長は考え込んだ
(・∀・)「・・・もしECTをブーン君にかけるとなると一度院長に相談してみないといけないですね
ただ、ECTはファーストチョイスではなくラストチョイスだと私は思います」
165 : ◆OwJQwsENTI :2006/03/10(金) 16:51:28.51 ID:oQFCEq3m0
( ´∀`)「はあ・・・」
(・∀・)「つまり最初の選択としてECTか薬かといった選択をするのではなく、できる限りの方法を
用いても改善が見られない、つまり他に選択肢がなくなった場合の最後の手段がECTだと
私は考えています」
( ´∀`)「なるほど」
(・∀・)「いくら通電療法が昔と比べて安全になったとはいえ、やはり患者の脳に電気を流すわけですから
やらなくても済むならそれにこしたことはないですよ」
( ´∀`)「わかりました」
モナー看護士長はもやが取れたような晴れやかな表情になって、第1診察室前の廊下を去っていった
(ヽ^ω^)ブーンが精神病になったようです 第十部 第五十七話
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