52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:15:12.66 ID:cOVZD7dEO [24/38]
J( 'ー`)し「ブーン、どこへ行くの?」
( ^ω^)「友達と会うんだお。行ってきます」
J( 'ー`)し「……」
あまりとやかく言われたくなくて、急いで家を後にした。
外に出るのは、数日振りだ。あの変な男に追いかけ回されて以来。
僕は、基本的に外出しないのだ。
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:17:37.00 ID:cOVZD7dEO [25/38]
( ^ω^)「……ふぅ」
パカリと携帯を開き、メール画面を呼び出す。
何度も読んだ文面を再度確認した。
『今日、VIP駅前で待ち合わせしよう。
いいな? 絶対来いよ。別に来ないと困る訳じゃないが……
……来いよ?
いやごめん来て下さい』
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:21:33.88 ID:cOVZD7dEO [26/38]
( ;^ω^)「なんなんだお、コイツは……」
そう独りごち、携帯をしまう。
強気なのか弱気なのかサッパリわからない。
これからの事を話すつもりだが……正直不安だらけだった。
( ^ω^)「……ふー」
溜め息ばかりが口を出るのも、なんだかなれてきてしまった。
重い足取りのままVIP駅へと向かう事にする。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:24:21.57 ID:cOVZD7dEO [27/38]
別に間に合わなくても構わなかったのだが、指定された時間に指定された場所にちゃんと着いた。が……
( ^ω^)「いないお」
散々来いとか言っておいてすっぽかしとは。
帰ろう、と思いかけて昨夜したメールの内容が頭をよぎった。
『いいか。俺達能力者は他の能力者の場所を把握出来る――』
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:27:24.27 ID:cOVZD7dEO [28/38]
( ^ω^)「……」
目を、瞑った。
周りの喧騒が、遠退いていく。自分の周りが、自分だけの空間として切り取られる。
自分でも驚くぐらいに、心が落ち着いた。
サアッと頭の中に近辺の地図が広がり、その中の一部分が、何とも言えない、言葉で表せない神々しい光を帯びて見えた。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:29:49.00 ID:cOVZD7dEO [29/38]
( ^ω^)「……あっちだお! って、あれ?」
目を開いて、いざ行こうとして正気に戻る。
さっき感じた場所は目の前にある石像の、すぐ裏手なのだ。
僕はつかつかと真っ直ぐ石像へと歩き、後ろに回り込んだ。
そこには――
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:32:06.73 ID:cOVZD7dEO [30/38]
('∀`*)「うふふ……」
は、犯罪者だ。
僕の脳裏にはその言葉しか浮かんでこなかった。
いや実際犯罪者だし。
僕を呼び出した張本人は、近くの幼女を眺めてニヤニヤしていた。
……ニヤニヤしていたっ……!
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:37:46.72 ID:cOVZD7dEO [31/38]
( ;゚ω゚)「ひぃ」
声にならない声が口から漏れた。
そういえばドクオは未来戦士☆クルクルの未来空留海が大好きで、妹とまで言っていた。
――つまり、ロリコン。
僕の体は恐怖に震え、気付いたら幼女を庇うようにドクオの前に立ちふさがっていた。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:39:49.97 ID:cOVZD7dEO [32/38]
( ;゚ω゚)「こんにちワンっ!!」
('A`;)「え、あ、あぁ……なんだお前」
幼女は急に大声を出して現れた僕に驚いたのか、パタパタと走ってどこかに行ってしまった。
本当に良かった。
('A`)「あぁ、そうだ。わざとわかりづらい場所に立ってみたんだけどさ、俺がどこに居るかわかったろ?」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:43:43.34 ID:cOVZD7dEO [33/38]
( ^ω^)「それでこんな所に居たのかお……
わかったお。目を瞑って、ゆっくり深呼吸して……気配を感じ取る……」
('A`)「はぁ?んな事しなくても普通にわかるよ。近くにいれば自然とな」
僕は全く無駄な行為をしていたようだ。
そういえば目の前に居るドクオから、何か普通と違うオーラみたいな物を感じる。
それならそうと、早く言って欲しかった……
急に目を瞑ったりして、僕はただの変人じゃないか。
地味にへこんでいると、ドクオがひょいと歩き出す。
('A`)「よし、行こう。付いて来いよ」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:50:21.12 ID:cOVZD7dEO [35/38]
人通りの少ない道を、ドクオは進んでいく。
('A`)「作戦なんだけど。作戦って言う程でもないけどな。
1対1に持ち込んで戦うんだ。お前は相手をいなすだけでいい。
それで、俺が早めにケリつけてからお前と一緒に残りを倒す。これでいこう」
( ^ω^)「ほぉほぉ」
('A`)「お前は無効化だ、倒されるって事はまずないだろ。期待してるぜ」
( ^ω^)「任せておけお!」
そうこう話している間にも、どんどん道を進んでいき。
やがて、ぷっつりと人通りは途絶えた。
後ろを振り返ってみても人っ子一人もいやしない。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:52:44.04 ID:cOVZD7dEO [36/38]
( ^ω^)「ドクオ、どこに向かってるんだお?」
('A`)「いや……まぁ見てなって」
頭に疑問符を浮かべた僕を一瞥し、ドクオは笑ってみせた。
なんだって言うんだ……
またしばらく歩くだけの作業が続き、疲れてきて弱音を吐き出す。
( ;^ω^)「一体どこまで……」
('A`)「しっ!」
ドクオは人差し指を立てて僕を一喝する。
しばしの静寂が辺りを包んだ後、言った。
('A`)「ようやくか……お出ましだ!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:55:23.25 ID:cOVZD7dEO [37/38]
( ^ω^)「えっ?」
('A`)「来たぞ。能力者二人組だ。わざわざ人気のない所を歩いたかいがあったな」
その言葉を受けてから僕も辺りに集中してみたが、何も感じ取れない。
( ;^ω^)「え、何。どこだお?」
('A`)「バカ、もう来るぞ。
――あっちだ!」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/26(土) 23:57:48.11 ID:cOVZD7dEO [38/38]
指先を見ると、女の子が二人こちらに走ってきていた。
ドクオも迎え撃つように走り出す。僕だけがついていけない。
ζ(゚ー゚*ζ「えーい!」
ふんわりとした巻き毛を揺らして、彼女は手を横に振った。
たちまち軌道からは火が燃え上がり、ドクオに向かって突き進む。
それを見るやいなやドクオは軽くステップを踏み、進行方向を変える。
燃え盛る炎はドクオの横に逸れて消えていった。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:02:09.12 ID:Ghs0jPJFO [1/17]
('A`)「そんな大技、当たるかよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あら、じゃこれはどうかな?」
巻き毛の彼女が手を上げると、握り拳ぐらいの大きさをした火の玉が周りに幾つも出現した。
彼女がまた手を横に凪ぐ。
火の玉は同時にふらふらと進みドクオを襲うが、速度が遅いために彼には一つたりとも当たらなかった。
('A`)「遅い遅い」
ζ(゚ー゚*ζ「あーもう、ちょこまかと!」
彼女は悔しさからかブンブンと両腕を振り回している。
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:04:28.24 ID:Ghs0jPJFO [2/17]
微笑ましい気分になりかけて、もう一人の存在を思い出した。
从'ー'从「んしょ、んしょ……」
跳ねた髪をしたもう一人の子は、一生懸命に杖で魔法陣と思わしき物を地面へ絵描いていた。
あまりに非現実的な光景に、あっけにとられていると。
从'ー'*从「で……出来た!」
額を腕で拭い満足そうな笑みを浮かべた彼女に、つい御祝いの言葉を述べた。
( ^ω^)「おめでとうお」
从'ー'*从「ありがとう。
という訳で、喰らえ! アイスニードル!」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:07:14.75 ID:Ghs0jPJFO [3/17]
魔法陣から青白い光が漏れ、冷気が溢れ出したのがわかった。
怖さに一瞬逃げようかと思う。
――大丈夫。僕は無効化だ、喰らわない。
腰を落とし、両手を構え。
僕は魔法陣を睨んだ。
次第に姿を作り出す氷塊。だが想像していた物よりもずっと小ぶりだ。
霰のような氷の粒に、知らず知らず安心する。
小手調べには丁度いい。
さぁ、こい!
从'ー'从「いっけぇ!」
彼女の叫び声と共に、氷は冷気をまとって飛ぶ。
結構速い。焦りながらも手を前に突き出した。
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:10:01.24 ID:Ghs0jPJFO [4/17]
手に氷が当たる。
勢いが弱まりきらずに、次いで僕の顔にパコンと当たった。
( #^ω^)「ぐぅえっ」
痛い。え、何?
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:12:30.54 ID:Ghs0jPJFO [5/17]
('A`;)「ぶ、ブーン? どうした?」
ドクオが駆け寄って来た。
肩に手をかけ揺すられるが、まともに返答出来る状況じゃない。
( #^ω^)「わ、わかんな……いたい……」
('A`;)「え、え……お前、当たったの……? え?」
お互いに困惑した表情で意味のない事を言い合う。
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:15:14.43 ID:Ghs0jPJFO [6/17]
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと! まだ私の攻撃は終わらないよ!」
巻き毛の彼女が肩を怒らせ、ドクオを追いこっちに来る。
それに合わせるかのように、跳ね髪の彼女も杖を構えなおした。
('A`)「ちっ……」
舌打ちをしてドクオは僕から離れる。
僕も跳ね髪の彼女に向き直った。
从'ー'从「まだまだ! アイスニードル!」
高らかに叫ぶと、魔法陣が待ってましたとばかりに輝く。
もう正面から向かう気力など微塵もない。
飛んでくる氷を後ろへ後ろへと下がって避けた。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:19:26.45 ID:Ghs0jPJFO [7/17]
('A`;)「へ? おいブーン、邪魔……!」
気付くと右にドクオ、左に巻き毛の彼女。
しまった、バトルの最中に割り込んだ……!
しかも、ドクオは右腕を振り下ろす所だ。
( #゚ω゚)「うぐっ」
避ける余裕もなく、右頬に走る衝撃。
僕はその場にどたっと倒れた。
('A`;)「ブーン! 大丈夫か……ってあれ? 今お前俺の能力無効化してない?」
確かに右頬は痛むが、歯が折れてるとかはない。
バランスを崩して倒れてしまっただけだった。
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:21:56.95 ID:Ghs0jPJFO [8/17]
('A`)「えっなんで? なんで俺の能力は無効化すんの?
ってか……本当にお前、無効化なの?」
( ;^ω^)「知らないお……! 大体ドクオが僕の能力は無効化って言ったんじゃないかお!」
喧嘩をおっぱじめた僕達を、唖然とした様子で彼女達は眺めている。
すると、ドクオは彼女達に話しかけた。
('A`)「なぁ。こいつに一発軽い魔法うってくんね?」
从'ー';从「い、いいけど」
うろたえながらも跳ね髪の彼女が呪文を唱え、僕はとっさに顔を手で庇う。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:23:59.05 ID:Ghs0jPJFO [9/17]
氷が飛んできて……結果、僕の腕には青あざが出来てしまった。
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
('A`#)「なんだよ! 無効化出来てねーじゃん!」
( #^ω^)「だから知らねーお!!」
从'ー';从「えぇ……何これー」
ζ(゚ー゚;ζ「やだ、もう行こうよ。訳わかんない」
彼女達は顔を見合わせるとチラチラこちらを見ながら行ってしまった。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:27:40.56 ID:Ghs0jPJFO [10/17]
('A`)「……よし。ちょっと、状況を整理しよう……」
ドクオは自販機で飲み物を二本買ってきた。
その内の一本を僕に向けてぶん投げる。
( ;^ω^)「うおっ」
心地良い音を立てて、飲み物は手の中に収まった。
('A`)「……やっぱり無効化してるな。今俺全力使って投げたんだよ」
なんて恐ろしい事をするんだ、コイツは。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:29:47.39 ID:Ghs0jPJFO [11/17]
('A`)「……今、さっきのアイツら……能力者の居場所わかるか?」
唐突に聞かれて首を傾げた。
辺りに気を配ってもそういう力は感じられない。
( ^ω^)「いや、わかんないお」
('A`)「……マジか? 俺にはわかるんだけどな」
忘れてたけど、さっきもそうだった。
彼女達の気配は完璧に掴めなかった。
('A`)「もしかして、さぁ……お前」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:32:21.74 ID:Ghs0jPJFO [12/17]
('A`)「俺の能力だけ無効化するとか、ないよな?」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:34:36.60 ID:Ghs0jPJFO [13/17]
辺りは、静寂にみちていた。
もちろん僕は否定したかったが、否定出来るような根拠がまるでない。
むしろ肯定は出来てしまうという、笑える事実がここにあった。
('∀`)「はは…はははは!!」
彼は急に大声で笑い出した。
なんだか僕も釣られて、笑う。
('∀`)「ははははは!」
( ^ω^)「ひひひひひ!」
('∀`)「ひははははあ!!」
( ^ω^)「うわははははあ!!」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:37:36.95 ID:Ghs0jPJFO [14/17]
ひとしきり笑うと、また静寂が戻ってきた。
('A`)「ブーン。やっぱ組むの止めよう」
( ;^ω^)「ちょ! ドクオから誘ったんだお!」
('A`)「いや、だってなぁ……?」
彼は困ったようにこちらに視線をやった。
役立たずと目で言われて、腹が立つ。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:40:24.28 ID:Ghs0jPJFO [15/17]
( ^ω^)「いいのかお? 僕が他の人と組んだら『相性の悪い』ドクオに勝ち目はないお?」
何も考えずに口に出した事だったが、よく考えたら確かに的をえている。
ドクオは組む人がいないと言っていた。
つまりこれからも一人な訳だ。
僕が他の人と組んだら、何がどうなろうがドクオに勝ち目はないだろう。
僕が無効化している間にもう一人が倒せばいいのだから。
( ^ω^)「今ここでペアを止めるなら、他の人と組んでドクオを倒すお。
よくも私を捨てたわねこの浮気者!って叫んで追いかけ回してやるお」
('A`)「は、はは……」
もうつっこむ気力もないらしい。
彼はがっくりとうなだれて、乾いた笑いを漏らしていた。
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/27(日) 00:43:43.46 ID:Ghs0jPJFO [16/17]
( ^ω^)「いないよりは役に立つハズだお、僕だって。まだ無効化が誰にも効かないとは決まってないし」
後押しすると、ゆっくりと顔を上げてこっちを見た。
('A`)「……そうだな……よろしくな……」
消え入りそうな声で呟いたドクオの手を握り、僕は応える。
( *^ω^)「よろしくだお!!」
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