574 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:02:50.23 ID:+Xz9ydR30
J( 'ー`)し「ゴフッゴフ!」
看護婦「内藤さん!
大丈夫ですか?」
看護婦が苦しそうに咳をしている母を見つけ、駆け寄り背中をさする
J( 'ー`)し「はあはあ・・・
すいません、おかげ様で楽になりました」
母の呼吸音にはヒューヒューといった音がまじっている
看護婦「・・・水を飲まれますか?」
看護婦はコップに水を注ぎ、母に手渡した
J( 'ー`)し「・・・ありがとう」
看護婦(なんて細い手をしているんだろう・・・)
看護婦はコップを取る母の手を見て、驚いた
576 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:06:48.01 ID:+Xz9ydR30
母は水をゆっくりと飲んだ
J( 'ー`)し「すいません
落ち着きました」
看護婦「それは良かったです」
しばらく病室に沈黙が続く
看護婦「そういえば、お見舞いの方などあまりお見かけ致しませんが、ご家族の方は
どうされてるんでしょうか?」
J( 'ー`)し「・・・主人は昔、交通事故で亡くなりました
息子は今、精神病で病院に入院しています」
看護婦「そうですか・・・
すいません、何か悪いことを聞いてしまいまして・・・」
看護婦はばつが悪そうに謝った
J( 'ー`)し「いえ、いいんですよ
気を使って頂かなくても・・・」
母は微笑みながら、看護婦をなだめた
577 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:12:12.69 ID:+Xz9ydR30
看護婦「内藤さんもご苦労されてきたのですね・・・」
J( 'ー`)し「主人が亡くなってからは、息子と二人で暮らしましたが、なんだかんだ言っても
幸せでした」
看護婦「・・・」
J( 'ー`)し「思えば息子と二人で暮らした時期が一番幸せだったような気がします
大変だったけど、充実していました・・・」
看護婦「・・・良ければ、少し当時のことを聞かせてもらってもかまいませんか?」
J( 'ー`)し「いいですよ
まるで昨日の事のように覚えてますから」
母は深く呼吸をし、一呼吸置いて、当時のことをゆっくりと語りだした
J( 'ー`)し「・・・あれは息子が高校生だった時でした」
594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/28(火) 09:26:49.58 ID:+Xz9ydR30
ブーンは受験を控えた高校3年に進級した
相変わらずいじめなどもあったが、母が一生懸命働いている姿を見て、耐え続け
学校も休まずに登校した
( ^ω^)(いよいよ勝負の年だお)
ブーンの家庭の経済力ではとても浪人などできない
また、学費の高い私立への進学もほぼ不可能と言えるだろう
ブーンはなんとしても国公立大学に一発合格をしなければならないと考えていた
( ^ω^)(カーチャンの為にも受験頑張るお!)
597 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:30:49.17 ID:+Xz9ydR30
「おい、ルンペン、ちょっと購買でパン買ってきてくれや」
ブーンは「ルンペン」というあだ名で呼ばれていた
もちろん浮浪者のようなといった意味合いを含んでいた
(;^ω^)「ちょ、僕勉強しないといけないお」
「ああ!?
いいから言ってこい!
くせーくせに反抗すんのか?」
(;^ω^)「わかったお
いってくるお」
「最初からそういやいいんだよ」
610 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:41:23.55 ID:+Xz9ydR30
休憩時間、友人のいないブーンは机に向かって黙々と勉強をした
この方が気が楽だからである
( ^ω^)(カーチャンも今頑張って働いているんだお
僕も頑張るお)
教室はクラスメート達の笑い声などが響き渡っていたが、ブーンは机の上のテキストに集中した
( ^ω^)(・・・僕にはカーチャンがいるお)
昼休みは校舎の庭で母が作った弁当を食べ、そして図書室へ行って、勉強するのが
高校に入ってからの日課となっていた
( ^ω^)「こんにちはですお」
(´ー`)「ああ、こんにちは
今日も勉強かい?
頑張ってるね」
ブーンは図書室へ行くと、管理している司書の先生に挨拶をかかさず行っていた
いつしか、司書の先生とは顔見知りになっていた
614 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:46:15.94 ID:+Xz9ydR30
( ^ω^)「今年は受験生なんで、今まで以上に頑張らないといけないんですお」
(´ー`)「そうか、君のもう3年か・・・
君のところは母子家庭だったね」
( ^ω^)「そうですお」
(´ー`)「そうか、お母さんの為にも頑張って合格するといいね」
( ^ω^)「はい
頑張って合格しますお」
話す相手のいないブーンにとって司書の先生との会話だけが、
ブーンが学校で話す唯一の会話だった
616 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:49:38.21 ID:+Xz9ydR30
(´ー`)「ところで、進学先はどうするんだい?
やっぱり4年制大学を希望するのかい?」
( ^ω^)「はい
僕のトーチャンは公認会計士でしたお
僕はトーチャンの後をついで、公認会計士になるのが夢なんですお」
(´ー`)「公認会計士か
お父さんは立派な方だったんだね」
( ^ω^)「はいですお
僕はトーチャンを誇りに思ってますお」
ブーンは満面の笑顔でそう答えた
618 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 09:54:19.14 ID:+Xz9ydR30
(´ー`)「そうか、でも学費の方は大丈夫なのかい?
大学の授業料や入学費はけっこうするからねえ
実際、家の事情で進学を断念する子も多いんだよ」
( ^ω^)「それは僕も気になってるんですお
カーチャンは虚弱体質で体があまり強くないんですお・・・
なんで、今の生活をするだけで精一杯なんですお」
ブーンの表情は暗くなった
(´ー`)「ふむ、そうだろうねえ・・・」
先生はそう言うと、考え込んだ
( ^ω^)「どうかしたんですかお?」
619 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:00:55.64 ID:+Xz9ydR30
(´ー`)「君は奨学金制度を知ってるかい?」
( ^ω^)「ある程度は知ってますお
無利子や安い金利でお金を貸してくれるってやつですかお?」
(´ー`)「そうだよ
でも、それだけじゃないんだ
大学が優秀な成績で試験を合格できた生徒に対して学費を免除するのもあるんだよ」
( ^ω^)「え!?
免除ですかお?」
(´ー`)「そうなんだ
奨学金といっても、お金を借りるわけだから、何らかの理由がない限りは返さないと
いけない借金なんだけど、免除ならお金を支払わなくてもすむんだよ」
( ^ω^)「それは知りませんでしたお」
(´ー`)「それこそトップぐらいの成績で受からないといけないから大変だけど
それを目指して頑張るのもいいんじゃないかな?」
( ^ω^)「はいですお!」
625 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:08:06.04 ID:+Xz9ydR30
昼休みが終わり、教室に戻って、自分の席に着くと、鞄が地面に落ちていた
( ^ω^)(あれ?)
鞄は上履きで踏まれたような後の埃で汚れていた
誰かがブーンの鞄を何度も踏みつけたのだった
( ^ω^)「・・・」
ブーンは鞄を拾い、埃を手で丁寧に取って、机の横にひっかけた
この鞄がブーンの高校進学の祝いとして母が買ってくれたものだった
ブーンはこの鞄を今日までずっと大切に使い続けてきたのだ
631 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:11:48.12 ID:+Xz9ydR30
キャンバス地でできた鞄は踏みつけられたせいであちこちがほつれていた
( ^ω^)(・・・なんか入ってるお)
鞄の中に白い紙が入っていた
ブーンが取り出してみると大きな文字でなにやら書かれていた
読むと紙には『臭いから学校辞めて下さい』と書かれてあった
( ^ω^)「・・・」
ブーンは紙を丸めて、ゴミ箱に捨てた
周りからはクスクスといった笑い声がした
( ^ω^)(・・・泣かないお)
ブーンはぐっとこらえた
639 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:19:27.79 ID:+Xz9ydR30
5時間目の授業終了のチャイムがなり、ホームルームを終え、ブーンは鞄に教科書を詰め、
教室を出て下駄箱へ向かった
これからクラブに向かう学生達が元気にしゃべりながら、グランドやクラブハウスに向かっていく
ブーンはそういった生徒達とは逆方向に向かい、自転車置き場から自分の自転車を取り出し
裏門から校舎を出て行った
( ^ω^)(やっと学校が終わったお)
ブーンは門を出ると、気が楽になった
642 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:23:47.50 ID:+Xz9ydR30
学校から家までは自転車で30分ほどかかる
ブーンの自転車は古く、あちこち錆がでており漕ぐとギイギイ音をたてた
( ^ω^)(帰りに本屋に寄っていくお)
ブーンは本が好きだった
お金がないので、立ち読みをしに通学路の途中にある本屋によっていくことが多かった
( ^ω^)(ついたお)
ブーンは自転車を路地に止め、本屋の中に入っていった
644 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:26:25.51 ID:+Xz9ydR30
ブーンは動物が好きだった
( ^ω^)(今日は確か愛犬の友の発売日だお)
ブーンは雑誌のコーナーに行き、目当ての雑誌を探した
( ^ω^)(あったお)
ブーンは『愛犬の友』と書かれた雑誌を棚から取り、パラパラとめくった
( ^ω^)(うわー、かわいいお)
雑誌には様々な犬のスナップ写真が掲載されていた
649 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:29:55.84 ID:+Xz9ydR30
ブーンは本の隅に小さく写っていた雑種の犬に目が止まった
( ^ω^)(この犬、ポチによく似てるお・・・)
その犬は以前ブーンが飼っていたポチに似ていたのだ
( ^ω^)(ポチ、今生きていたらこの犬と同じぐらいの年だお)
ブーンはポチがいた頃のことを思い出していた
( ^ω^)(ポチ・・・
早くまためぐり合いたいお)
ブーンはいつかポチの生まれ変わりとめぐり合えることを夢見ていた
653 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:34:39.68 ID:+Xz9ydR30
雑誌を一通り目を通すと、時刻は4時半になっていた
( ^ω^)(カーチャンがもうすぐ帰ってくるお)
ブーンは雑誌を棚に戻し、本屋から出て自転車に乗り家へと急いだ
(;^ω^)「ふー、ついたお」
ドアノブに手をかけると鍵が閉まっている
まだ母は帰ってきていないようだった
ブーンは鞄から鍵を取り出し、ドアを開けた
部屋は電気がついていないので薄暗かった
ブーンは電気をつけ、鞄を部屋の隅に置き、壁にかけてある折りたたみ机を広げた
662 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:39:39.11 ID:+Xz9ydR30
しばらくするとドアを開ける音がした
J( 'ー`)し「ただいま」
母が帰ってきたのである
( ^ω^)「おかえりだお」
J( 'ー`)し「ちょっと待っててね
内職が終わったら、夕ご飯作るから・・・
ゴホッゴホ!」
( ^ω^)「お腹すいてないから、別にゆっくりでいいお」
J( 'ー`)し「そうかい
今日はお給料が入ったから、ご馳走作るね」
( ^ω^)「うれしいお
でも、あんまり無理しなくてもいいお
普段でも十分おいしいお」
671 : ◆OwJQwsENTI :2006/02/28(火) 10:43:49.46 ID:+Xz9ydR30
母は台所で水を飲み、内職用の素材を床に広げて座った
J( 'ー`)し「ブーン、勉強は順調かい?」
( ^ω^)「順調だお」
J( 'ー`)し「今年は受験生だもんね
夏休みに入ったらカーチャンもブーンの勉強を手伝うよ」
( ^ω^)「一人でも大丈夫だお
カーチャン、この頃体の具合があんまりよくないんだから無理しないほうがいいお」
J( 'ー`)し「勉強みるくらいは大丈夫だよ
手伝えることがあったら手伝うよ」
( ^ω^)「ありがとうだお」
(ヽ゚ω゚)ブーンが精神病になったようです 第七部 第四十五話
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