11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 16:22:31.24 ID:kXlAg+eLQ
川д川「……」
( ・∀・)「それじゃあ、失礼しまーす」
川д川「あ、はい……」
引っ越し業者の人が、ぺこりと頭を下げて出ていった。
彼を玄関先まで見送って、私は部屋の中へ振り返る。
ちょっと古いアパートの一室、1DK。
今日から私が住む部屋だ。
川д川「……」
川д川「なんだか、妙な感じ……」
ねっとりした空気。
湿気かな。
川д川「とりあえず、荷物片付けなきゃ……」
*****
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 16:27:00.70 ID:kXlAg+eLQ
いたい いたい
川д川おばけやしきのようです
やめて ねえ
あ
ぬちり
ごとん
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 16:36:35.37 ID:kXlAg+eLQ
川д川
ぴちち。窓の外で、鳥が鳴いていた。
まだ片付いていない段ボールが、部屋の隅に積んである。
ぼうっとしたまま、思考。
そうだ、昨日、ここに越してきたんだ。
川д川
川д川「……やな夢」
初日から、嫌な夢を見た。
子供の「やめて」と泣き叫ぶ声が、ひたすら聞こえてくるのだ。
視界は真っ暗で。
……なんだか、とても、不快な夢だった。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 16:48:21.19 ID:kXlAg+eLQ
顔を洗って、気分を変えよう。
そう思い、ベッドから下りる。
川д川「……?」
この部屋とキッチンは、木製の枠に型板ガラスが嵌め込まれた引き戸で
遮られている。
そのガラスの向こうを、何か、黒いものが過ぎった気がした。
川д川(見間違いかな)
引き戸を開けてみるが、何の変哲もないキッチンしかない。
気のせいということにして、洗面所へ向かった。
*****
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 16:59:11.14 ID:kXlAg+eLQ
(゚、゚トソン「それは、幽霊ですね」
川д川「トソちゃん、またそれ?」
――お昼。大学の、とある一室。
部屋の四隅には、大量に積み上げられた本。その大半が漫画。
中央に置かれたテーブルと、8つの椅子。
そこに向かい合うように座っているのは、
私、山村貞子と、
(゚、゚トソン「間違いなく幽霊でしょう!」
どんと机を叩いて声を荒げる女の子、都村トソン。
私はトソちゃんと呼んでいる。
(゚、゚*トソン「殺された子供の怨念! 部屋に住み着いた悪霊!
これはもう確定的に明らかうっひょーwwwwwwwwww」
川д川「あ、うん」
テンションが気持ち悪い。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 17:17:48.09 ID:kXlAg+eLQ
――ここは「オカルト研究会」の部室。
オカルト研究会とはいっても、主な活動はメンバーが集まってぐだぐだするぐらい。
一応言っておくと、私はそういったものには興味が無い。
(゚、゚*トソン「フヒッwwwこれはいかんwwwwwこれはいかんぞえwwwwwwwwww
今度貞子の家に行かねばwwwwwwwwww」
このオカルトマニアな友人に、道連れにされただけだ。
テンション気持ち悪っ。
――トソちゃんは、出会いからして変だった。
今年の春、入学式の日。
―― (゚、゚トソン『もしや……本物の幽霊の方ですか』 ――
何でも、長い前髪をだらんと垂らし、
周囲の人々から離れた場所に佇んでいる私の姿が、
本物の幽霊に見えて仕方がなかったらしい。
この髪型は昔からのものだし、人と話すのが苦手だから離れていただけなのに。
ていうか失礼すぎる。それで仲良くなった私も私だけど。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 17:30:20.51 ID:kXlAg+eLQ
川д川「はあ……」
(´・ω・`)「どうしたんだい、貞子ちゃん」
川д川「あ。こんにちは、ショボン先輩」
(゚、゚トソン「こんにちは! ちょっと聞いて下さい、貞子の新居がですね」
(´・ω・`)「あ、そういえば引っ越したんだっけ。どうだった?」
部室のドアを開けて現れた男の人。
私達の一つ上の先輩、ショボン先輩だ。
この研究会の一員でもある。
(゚、゚*トソン「それがwwwww幽霊がwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「ほう、幽霊」
ショボン先輩の目がきらりと光った、ように見えた。
(´・ω・`)「詳しく聞かせてもらおうか」
トソちゃんの隣、私の左斜め向かいの椅子に、腰掛け、ショボン先輩は腕を組んだ。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 17:50:17.00 ID:kXlAg+eLQ
夢の内容と「見間違い」について説明すると、
ショボン先輩は、ふうん、と呟いた。
(´・ω・`)「夢は夢だし、引き戸の向こうのものだって、錯覚かもしれないよね」
(゚、゚トソン「先輩つまんないです」
(´・ω・`)「……貞子ちゃんは君と違うんだから。
引っ越し早々不安になるようなことを言わないの」
(゚、゚トソン「でも、」
溜め息をついて、ショボン先輩は後方に体を捻った。
そこには、小さめの冷蔵庫がある。
扉を開け、何かの箱を取り出す。
(゚、゚トソン「やっぱりそういうのは幽rむぐ」
その箱からシュークリームを出して、ショボン先輩はトソちゃんの口に突っ込んだ。
(゚、゚トソン「こんなもので私が黙るとモグモグお思いですかモグモグ」
(´・ω・`)「黙っていられるなら、もう一つあげよう」
(゚、゚トソン モグモグ
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 18:04:14.78 ID:kXlAg+eLQ
(´・ω・`)「貞子ちゃんもどうぞ。朝に買ってきて、ここで冷やしてたんだ」
川д川「あ、ありがとうございます」
(*^ω^)「みーんなー! 明日からはー?」
ξ*゚?゚)ξ「ふーゆやーすみー!! イェイイェイ!!」
そこへ現れる、やかましい2人組。
ショボン先輩と同学年で、男の人が内藤先輩、女の人がツン先輩という。
(*^ω^)「試験はどうだったかなー?」
ξ*゚?゚)ξ「さーんざーん! イェイイェイ!!」
(*^ω^)「冬休みの予定はあるかなー?」
ξ*゚?゚)ξ「ぜーんぜーん! イェイイェイ!!」
(*^ω^)「今年はもう恋人作るの諦めたかなー?」
ξ゚?゚)ξ「おいそれは言うな殺すぞ」
( ^ω^)「ごめん」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 18:17:45.87 ID:kXlAg+eLQ
ツン先輩はとても綺麗な人だけど、何だかノリがおかしいせいで
あまり男の人が寄ってこないらしい。
( ^ω^)「おっおー、いざってときは、僕がツンを嫁にしてあげるおー」
ξ*///)ξ「ばっ、馬鹿! あ、あんたに嫁ぐぐらいなら死んだ方がマシなんだからっ!!」
(*//ω//)「ぼ、僕の方こそお断りなんだからっ!!」
( ^ω^)人ξ゚?゚)ξ「ダブルツンデレめんどくさーい! はぁいっ!!」
(´・ω・`)「お前らさっさと口を閉じてシュークリーム貪ってろ」
(゚、゚トソン「口閉じたら食べられないじゃないですか」
(*^ω^)「おーん! シュークリームだお!」
ξ*゚?゚)ξ「べ、別に嬉しくなんかないんだからっ!」
(*^ω^)「ぼ、僕だって!」
(*^ω^)人ξ*゚?゚)ξ「ダブルツンデr(´・ω・`)「黙れ」
……元気な人達だなあ。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 18:30:17.51 ID:kXlAg+eLQ
ξ゚?゚)ξ「へえ、さっちゃん引っ越したの」
川д川「はい……」
( ^ω^)「結構中途半端な時期に引っ越したおねー」
川д川「……色々あって」
シュークリームを食べながら、引っ越しのことを話す。
これ、クリームがあまり甘くなくて美味しい。
ξ゚?゚)ξ「色々?」
川д川「……」
――引っ越しの理由は、あまり、話して気持ちのいいものではない。
思わず口を噤んでしまう。
(´・ω・`)「ほーら巻き毛、このシュークリームにはチョコクリームが入ってるぞ」
ξ*゚?゚)ξ「よこせ!」
何かを察してくれたようで、ショボン先輩がツン先輩の意識を私から逸らしてくれた。
ありがたい。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 18:44:22.55 ID:kXlAg+eLQ
――それから、話は休みの間の活動についてへと変わった。
研究会の会長である3年生の先輩は、この時期忙しいようで
ショボン先輩が代役を務めている。
研究会メンバーは、この場に居る私達5人と、不在の会長の、計6人だ。
(´・ω・`)「まあ、活動っていっても……これといって、ねえ」
( ^ω^)「わざわざ決めるようなこともないおー」
(´・ω・`)「とりあえず来たいときに来て、漫画読むなり、ぼーっとするなり、
各自ご自由にって感じで」
ξ゚?゚)ξ「適当! イェイイェイ!」
(´・ω・`)「巻き毛、口の周りがクリームだらけだぞ」
ξ゚?゚)ξ「マジか。トソちゃん、いやらしく舐め取って」
(゚、゚トソン「ゴクリ……」
(´・ω・`)「見苦しいからやめろ」
( ^ω^)「見苦しいってwwwあなたwwwwwwwwww」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 18:59:59.48 ID:kXlAg+eLQ
(´・ω・`)「っつーことで、話し合いおしまい!
帰るなりぐだぐだするなり、好きにしたまえ諸君」
ξ゚?゚)ξ「そういやジョジョ読み掛けだったわ。ないとー! 41巻取って!」
( ^ω^)「だが断る」
(゚、゚トソン「――あれ、貞子、帰るんですか」
立ち上がった私に、トソちゃんが声をかけた。
頷いて返事をする。
川д川「荷物の整理、終わってないから」
(゚、゚トソン「手伝いましょうか」
川д川「大丈夫大丈夫」
(´・ω・`)「じゃあ、これ。まだ2個くらい残ってるよ」
( ^ω^)「買いすぎwwwww」
ショボン先輩が、シュークリーム入りの箱を渡してくる。
結構ですと断ろうとしたけれど、引っ越し祝いだと微笑んでくれた。
ありがたく貰っておく。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 19:16:04.37 ID:kXlAg+eLQ
*****
川д川「ただいま……」
アパートの階段を上り、2階へ。
一番奥、201号室が私の部屋だ。
鍵を開けて中に入る。
ただいま、と言っても、返事をしてくれる人はいない。
玄関から真っ直ぐ伸びる廊下。
廊下の左側にトイレ、右側にお風呂と洗面・脱衣所。
そして廊下の先にはダイニングキッチンがあり、その奥に普通の部屋がある。
廊下を進み、ダイニングキッチンに置かれた冷蔵庫にシュークリームの箱を入れた。
荷物を片付け終えたら、ゆっくり食べよう。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 19:21:23.10 ID:kXlAg+eLQ
ちょ、ちょっとシャワー浴びてくるね……///
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 20:01:22.98 ID:kXlAg+eLQ
ただいま
1レス1レスにかかる時間がいつにも増して長いな、ごめん
いつも書くの遅いけど
今日中に終わらせたいからさっさと展開進めていく
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 20:08:22.86 ID:kXlAg+eLQ
*****
川д川「ふう……」
とりあえず、大体のところは終わった。
こんなもんでいっか。
外はすっかり暗くなっている。
川*д川「シュークリームー」
シュークリームの前に、手を洗おう。
引き戸を開けて、キッチンへ――
川д川「……あれ」
――冷蔵庫の扉が、開いていた。
さっき閉め忘れちゃったのかな。
川д川「電気代が……」
何てこったい。
引っ越したばっかりで、ちょっとボケてるのかもしれない。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 20:23:52.54 ID:kXlAg+eLQ
川д川「……あれー……」
――冷蔵庫の扉だけではない。
シュークリームの箱まで開いていた。
厚紙で出来た、ケーキ屋さんでよく見るタイプの箱だ。
きちんと閉めていなかったのだろう。
きっとそうだ。……多分。
川д川「……」
箱を出す。
中を覗き込んで――どくん、心臓が跳ねた。
『2個くらい残ってるよ』
箱の中のシュークリームは、1個だけ。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 20:33:58.70 ID:kXlAg+eLQ
ショボン先輩の勘違い。
そういうことにしておこう。
念のため家中を見て回ったけれど、侵入者はいなかった。
いられても困る。
川д川「……トソちゃんの馬鹿」
トソちゃんの「幽霊」という言葉が、頭に過ぎる。
ちょっと、恐い。
残ったシュークリームは食べる気になれなくて、
申し訳ないけれど、ごみ箱に捨てた。
*****
川*д川「ふんふーん」
お風呂。
湯舟はあまり広くないけれど、あったかいお湯が気持ちいい。
川*д川「はあ……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 20:45:19.08 ID:kXlAg+eLQ
こんなに伸び伸びとした気分でお風呂に入るのは久しぶりだ。
前の家じゃ、
川д川「……」
……。
――前の家じゃ、覗かれているのではないかという不安で一杯だったから。
私は、トソちゃんの言うように幽霊みたいな見た目をしている。
他人に自分の瞳をさらけ出すのがどうにも苦手で、いつも前髪で隠しているのだ。
こんな姿だから男の子と仲良くなったことはないし、
寧ろ嫌われながら生きてきた。
それなのに。
今年になって、私に、ストーカーなんてものが出来た。
そのストーカーは、前に住んでいたアパートの管理人さんの息子。
立場を利用し、何度か私の部屋に忍び込まれたこともある。
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 21:11:40.44 ID:kXlAg+eLQ
警察に言っても、証拠が無いだの何だのということで結局捕まえてもらえなかった。
私は、たしかに私の部屋から出てくる彼の姿を見ていたのに。
――誰も助けてくれなかった。
だから、引っ越した。
前のアパートとはだいぶ離れた、この場所に。
ここの管理人さんは女性だし、住んでいる人も、大体が女の人らしい。
……そうだ。
川д川「ご近所さんに挨拶しなきゃ」
一応、挨拶回りのために洗剤を用意している。
明日にでも行こう。
川д川「ふんふんふー……」
10数えて、湯舟から出た。
体が冷えない内に、部屋に――
川д川
ぎくりとする。
お風呂場のドア、磨りガラスの向こうに、一瞬だけ黒い影を見た。
本当に一瞬。
人間ぐらいの大きさの。
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 21:22:01.40 ID:kXlAg+eLQ
川;д川「……!?」
慌ててドアを開ける。
誰もいない。
川;д川「……誰かいますかあ……」
間抜けな声で問うも、返事は無い。
――錯覚。
錯覚だ。
今のは。
おざなりに体を拭い、手早く服を着る。
錯覚。気のせい。
|><●>)
一瞬ちらりと見えた、壁から覗く子供らしき姿も。
気のせい。
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 21:40:31.09 ID:kXlAg+eLQ
川;д川「気のせい、気のせい、気のせい!」
部屋に駆け込み、頭を抱える。
トソちゃんがあんなこと言うから、気にしちゃうから、
だから、変な風に考えちゃうんだ。
そうでしょう。
また、冷蔵庫が開いているのも。
おかしなことじゃない。
閉めたと思い込んでただけ。
ずっと開きっぱなしだったんだ。
何もおかしくない。
ごみ箱が倒れていて、
中からこぼれたシュークリームに、
半分くらい、食べられたような跡があるのも。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 21:48:48.05 ID:kXlAg+eLQ
川;д川「何で、何で、何で……何でなの、やだ、やだ……」
そうだ。
鼠でもいるんだ。
鼠。
川;д川「あ、あはは……」
何をこんなに怯えてるんだろう。
また、何か変なことが起きたら、警察に行こう。
それでいい。大丈夫、大丈夫。
川;д川「……トソちゃん……」
携帯電話を持ち、トソちゃんにメールを送った。
『何してる?』
いつもは、用事がない限り私からメールを送ることはない。
でも、今はどうしても誰かと関わりたかった。
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 21:57:22.33 ID:kXlAg+eLQ
『テレビを見てましたよ』
案外速く、返事が来た。
体から力が抜ける。
川д川「……ふふ」
トソちゃんの、その優しい感じのする文章が私を安心させてくれた。
『面白い?』
『面白いです』
『どんなの?』
『心霊映像の特集をやってますね』
『話変えよう』
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:10:41.54 ID:kXlAg+eLQ
しばらくトソちゃんとメールでやり取りして、
眠気を感じてきた頃に切り上げた。
すっかり恐怖は薄れていた。
きっと、引っ越しで疲れているのだろう。
川д川「おやすみなさい」
でも、一応、念のため。
電気をつけたまま、ベッドに潜り込んだ。
*****
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:18:04.74 ID:kXlAg+eLQ
――……り
ずり ずず
ず
川д川「……」
暗い。
まだ夜か。
目を覚ましちゃった。
もう一回、寝よう。
川д川「……」
川д川(――え?)
あれ?
どうして暗いの? 電気をつけたままにしていたのに。
それに、
ずり ずり ずず ず
この音は何?
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:26:42.43 ID:kXlAg+eLQ
川;д川「……っ」
私は壁を向いている。
その音は私の後ろから聞こえた。
音の発生源は、部屋の中に居る。
ずず ずり
引きずるような音。
鼠。
いや、もっと大きな何か。
川;д川
どくどく、心臓がうるさい。
音は、近付いたり離れたりを繰り返している。
部屋の中を、回っている?
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:35:11.33 ID:kXlAg+eLQ
川;д川
息が、荒くなる。
気になる。
見たい。
見たくない。
怖い。
何?
何がいるの?
振り返りたい。
振り返りたたくない。
ずり ずり
ずずずず ず
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:43:52.89 ID:kXlAg+eLQ
川;д川「――……っ!!」
勢いよく、振り返った。
暗い部屋。目をこらす。
――何もいない。
音は、止んでいた。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 22:52:56.63 ID:kXlAg+eLQ
肘をついて、僅かに身を起こす。
改めて確認したけれど、やはり、音の原因らしきものは見付からなかった。
川;д川「はあ……」
ほっとしたような、余計不安になったような。
長い長い溜め息をついて、下を向く。
ベッドの下から顔の上半分だけを覗かせている女性と、目が合った。
*****
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:06:13.93 ID:kXlAg+eLQ
川;д川
気付くと、朝になっていた。
――夢だった?
*****
夢――かどうかは分からないけど――が気になるものの、
とにかく挨拶に行かなければならない。
洗剤を持って201号室を出る。
まずは隣、202号室。
ぴんぽん、チャイムを鳴らす。
川д川「……?」
もう一度。
しばらく待ってみるけど、誰も出ない。
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:15:13.53 ID:kXlAg+eLQ
川д川「まだ寝てるのかな……」
もう11時になりそうだけど。まあ、生活サイクルは人それぞれだし。
あるいは留守なのかもしれない。
その隣、203号室に行く。
ぴんぽん。
「――はあい」
川д川(良かった、いた)
从'ー'从「どうしました~」
ドアを開けて、若い女性が出てきた。
20代前半、くらいかな。
川д川「あ、私、201号室に越してきた者で……ご挨拶に、これ」
从'ー'从「あ~、ありがとうございます~」
にっこり笑う顔が、とても可愛らしい人だ。
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:26:29.49 ID:kXlAg+eLQ
川д川「あの、お隣りにも行ったんですけど、留守みたいで」
从'ー'从「202~? あそこ、誰も住んでないよ~」
川д川「え……」
从'ー'从「私も最近越してきたけど、そのときから誰も住んでなかったな~」
川д川「あ、そ、そうなんですか……。えと、ありがとうございます」
从'ー'从「こっちこそありがとうねえ、洗剤切らしてたの~。
これからよろしく~」
川д川「はい、よろしくお願いします!」
……そっか、人が住んでないのか。
それなら誰も出ないわけだ。
――さて、1階と2階はそれぞれ3部屋ずつ。
次は下の部屋へ挨拶に行こう。
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:35:57.36 ID:kXlAg+eLQ
階段を下りて、1階。
103号室のチャイムを鳴らす。
('、`*川「はいよー」
若い女性。
203号室の人と同じくらいか、少し上くらい。
同様に挨拶を済ませて、次の部屋へ。
102号室は管理人さんの部屋。
ここには既に挨拶をしているから、その先、101号室に向かう。
私の下の部屋だ。
迷惑をかけることになるかもしれないし、しっかり挨拶しなきゃ。
ぴんぽん。
……沈黙。
川д川「……まさかね」
ここも空いてるなんてこと、ないよね。
……。
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:44:50.43 ID:kXlAg+eLQ
从'ー'从「ああ、101も、誰も住んでないみたいだよ~」
203号室をもう一度訪ねて、101号室について訊いてみた。
やはり、あそこも空いているらしかった。
从'ー'从「私より少し先に越してきてたみたいだけど~。
すぐに出ていっちゃったみたい~」
川д川「……そうですか……」
管理人さんを除き、このアパートには3人しか住んでいないのか。
そして、私の部屋の周りは空室。
――どうして?
川д川「……」
*****
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/30(木) 23:57:48.39 ID:kXlAg+eLQ
川д川「……」
部屋に戻り、ぼーっとする。
何なんだろう。
偶然とは思うけど、気になる。
川д川(……)
時計を見る。
お昼になったばかり。
川д川「……外、行こう」
あまり部屋に居たくない。
そうだ、大学に行こう。
*****
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 00:06:49.60 ID:gJLkrR1iQ
部室の鍵は開いていた。
誰か、居るみたいだ。
川д川「失礼します……」
ショボン先輩か、内藤先輩か、ツン先輩かトソちゃんか。
ドアを開けると、こちらを向くように座る男の人が居た。
('A`)
川д川「……あ……」
会長――鬱田先輩。
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 00:19:38.12 ID:gJLkrR1iQ
漫画に目を落としていた鬱田先輩は、私に気付くと顔を上げた。
細く、ぼんやりした垂れ気味の目が特徴的な人だ。
('A`)「ええっと」
川д川「や、山村です。山村貞子」
('A`)「山村さん」
鬱田先輩の目が、私の腰辺りを見た。
数秒そのままでいたかと思うと、再び漫画を読み始める。
('A`)「ガキ」
川д川「はい?」
('A`)「ガキが」
川д川「……子供ですか?」
む、と小さく唸って、鬱田先輩は頭を揺らした。
頷いた、のだろうか。
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 00:36:35.70 ID:gJLkrR1iQ
川д川「子供がどうかしましたか……?」
('A`)「何か、ガキと因縁とかある?」
川;д川「い、因縁?」
('A`)「何でもいいけど」
川;д川「……無い、と思いますけど……」
親戚に小さい子はいない。
せいぜい従兄弟が私より年下なぐらいだけれど、その子も、一歳か二歳しか違わない。
私の答えに、鬱田先輩は片眉を上げて「そう」と返した。
納得のいってなさそうな顔。
('A`)「じゃあ、周囲の環境で大きく変わったことは?」
川д川「……えっと、引っ越し、とか」
('A`)「はあ。そう。ふうん」
川;д川「?」
何なんだろう。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 00:45:59.52 ID:gJLkrR1iQ
('A`)「じゃあ、それかなあ」
川;д川「何がですか」
('A`)「そこで、やらかしちゃったのかもなあ。怒ってるし」
漫画を眺めながら、もそもそ呟いている。
彼は何事かを理解しているのかもしれないが、私は全く分からない。
ちょっと、苛々してきた。
('A`)「うーん」
ぱらり。漫画のページをめくる。
漫画か私か、どっちかに集中してほしい。
('A`)「食べ物」
川д川「え?」
('A`)「食べ物、粗末にしなかった?」
川д川「……」
した。
昨日、シュークリームを捨てた。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 00:56:09.57 ID:gJLkrR1iQ
('A`)「あ、ちょっと残したとか、そういうんじゃなくて」
川д川「しました。シュークリーム、捨てました」
('A`)「……ほーん」
鬱田先輩は、かりかり、頭を掻いた。
呆れたって感じの表情。
('A`)「多分、その部屋、お化け屋敷状態かもね」
川д川「……」
この人、何を言ってるの。
('A`)「どこ?」
川д川「……え……」
('A`)「その引っ越し先。どこら辺にあるの」
川д川「――……ごめんなさい、言えません……」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 01:10:55.19 ID:gJLkrR1iQ
鬱田先輩の口が、への字に歪む。
川;д川「……あ、や、違……教えないようにって、警察の人が……」
('A`)「え……俺、警察にマークされてんの?」
川;д川「そうじゃなくてそうじゃなくてっ」
ストーカーを捕まえてこそくれなかったものの、
警察は、いくつかアドバイスをしてくれた。
――引っ越したら、しばらくの間は誰にも引っ越し先を教えないように。
どこから情報が流れるか分からないから。
川д川「だ、誰にも言っちゃいけないことになってて」
('A`)「……」
溜め息。
機嫌を損ねちゃった?
川д川「ごめんなさい……」
('A`)「別にいいけど」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 01:20:45.15 ID:gJLkrR1iQ
('A`)「まあ、頑張って」
川д川「……はあ……?」
漫画を閉じて、鬱田先輩は腕時計を見た。
「帰らなきゃ」と呟き、立ち上がる。
('A`)「それじゃあ」
川д川「あ、さようなら……」
鬱田先輩が部室を出ていった。
残ったのは、私1人だけ。
川д川「……」
多分。
ここで、私は間違ったのだ。
*****
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 01:33:14.74 ID:gJLkrR1iQ
夕方。
大学を出て、帰路につく。
アパートのすぐ近くにある『VIPマート』で色々買い込んだ。
明日のご飯に使う材料とか、好きなお菓子とか。
帰ったら、すぐにお菓子を食べるつもりだ。
少し気分が重い。好きなものを食べて元気を出そう。
川д川「ただいま……」
――おかえりなさい。
そう聞こえた気がして振り返ったけれど、誰もいなかった。
……空耳、空耳。
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 01:44:31.33 ID:gJLkrR1iQ
部屋に上がって、ダイニングキッチンへ。
『VIPマート』の袋を床に置き、中身を冷蔵庫に移そうとして。
川д川「……」
冷蔵庫が開きっぱなしなのに気付いた。
川д川「……壊れてるのかな」
多分、そうだ。
開きやすくなっているのかもしれない。
まず、袋からお豆腐を出して――
川д川
手が、止まった。
開きっぱなしの冷蔵庫。
その中、入れておいた食料と飲み物。
全てが開封され、ぐちゃぐちゃになっていた。
まるで。
食い荒らしたような。
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 01:51:12.92 ID:gJLkrR1iQ
力任せに扉を閉め、キッチンを出た。
引き戸を開けて部屋に飛び込む。
冷蔵庫を見たくなくて、キッチンと部屋を仕切る戸を、
目一杯、全力で、叩きつけるように閉めた。
何。
あれは何。
鼠に出来ることじゃない。
あんなの。
人間がすることだ。
川;д川「嘘、嘘、嘘、嘘!!」
何で何で何で何で何で。
後ろから。
キッチンから。
袋を漁るような音が、するの。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>173 眠いなら寝た方がいい] 投稿日:2010/12/31(金) 01:58:39.94 ID:gJLkrR1iQ
がさがさ。
ぴりぴり。
ぐち、ち。
あれは?
お豆腐のパックを開けて、食べている音かな?
ぐちゃぐちゃ、必死に食べてるみたい。
あはは。
がさがさ。ばり。ぱりぱり。
びりびり。ぱきん。こりこり。
お菓子を食べてる音もする。
複数の音。
あはは。そう。
何人もいるんだね。
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:08:44.18 ID:gJLkrR1iQ
物を食べる音に混じって、あの音がする。
ずりずりずり ずず ずり ず
何かを引きずる音。
勝手に、首が引き戸へ向いてしまう。
川д川「ひ、あ」
曇っているガラス。
へばりつくような、真っ黒な影。
人の形をしている、ように見える。
赤ちゃんぐらいの身長かと思ったけど、
どうやら違うみたいだ。
太腿から上しか、体がないんだ。
ずりずり。あの音は、そういうこと。
186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:15:06.37 ID:gJLkrR1iQ
川;д;川「何で、何で」
ストーカーへの恐怖が限界に来たから、ここに逃げたのに。
何で、また、怖い目に遭うの。
窓の外、上から垂れている長髪。
視界の隅でゆっくり開いていくクローゼット。
きしきし、引き戸が引かれる音。
盛り上がる、ベッドの上の布団。
川;д;川「助けて……」
警察は助けてくれなかった。
また、誰も助けてくれないの?
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:18:07.01 ID:gJLkrR1iQ
ぴりりりり。
川;д;川
携帯電話の着信音。
ポケットから、そっと携帯電話を取り出す。
『都村トソン』
液晶に映る名前。
川;д;川「トソ、ちゃん」
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:23:37.16 ID:gJLkrR1iQ
震える指で、通話ボタンを押す。
川;д;川「……トソちゃん……」
『――もしもし、貞子ですか』
川;д;川「トソちゃん、助けて、助けて」
『あのう、鬱田会長から、貞子への伝言を頼まれまして』
川;д;川「トソちゃん」
『貞子?』
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:27:53.60 ID:gJLkrR1iQ
『何か、騒がしいですね、そっち。私の声聞こえてますか?
すいません。後でまた、かけ直しますね――』
ぷつん。
川;д;川
川;д;川「あ」
川;д;川「ああ、あ、あああ」
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:31:50.35 ID:gJLkrR1iQ
からから
ずり ずりずりずり
ずず ずり
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:36:52.51 ID:gJLkrR1iQ
*****
(´・ω・`)「あ、みんな揃ってるんだ。珍しい」
( ^ω^)「なんと、会長も居るんだおー」
('A`)「うぃ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、さっちゃんが来てないのよー。
せっかくだから全員揃いたいのに」
(゚、゚トソン「この間から、電話が繋がらないんですよね……」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:48:00.10 ID:gJLkrR1iQ
(´・ω・`)「何なら、みんなで貞子ちゃんの家に押しかけちゃおうか」
(゚、゚トソン「そうしたいんですが……貞子の新居、知らないんですよ」
( ^ω^)「おー、そうなのかお?」
(゚、゚トソン「何だか、しばらくは誰にも教えられないそうです。
冬休みが明けるまでは大学にも知らせないらしいですし」
ξ*///)ξ「べっ、別に残念がってなんかないんだからっ」
(*//ω//)「ぼっ、僕も、心配なんかしてないんだからっ」
( ^ω^)人ξ゚⊿゚)ξ「ダb(´・ω・`)「次そのウザったいのやったら殴る」
('A`)「……そういや、ガキを見た」
(´・ω・`)「? ガキ?」
ξ゚⊿゚)ξ「子供って意味の? それとも、」
('A`)「子供って意味でもあるし、餓鬼って意味もある」
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 02:53:50.68 ID:gJLkrR1iQ
(゚、゚トソン「つまり、お腹を空かせた子供ってことですか?」
('A`)「んむ」
('A`)「餓鬼っつーか……餓鬼みたいに、飢えに苦しんでる子供。
足が、付け根あたりから無くなってた」
( ^ω^)「……おばけ?」
(´・ω・`)「そっか、会長、『見える人』でしたっけ」
ξ゚⊿゚)ξ「寺生まれ!」
(゚、゚*トソン「え、お寺の人なんですか。寺生まれのDさんですか」
('A`)「そのガキが、くっついてた」
(´・ω・`)「誰に――」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ!」
( ^ω^)「何だお?」
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 03:03:29.28 ID:gJLkrR1iQ
ξ゚⊿゚)ξ「会長の話で思い出した。この前、ネットで見たんだけど――」
――二十年ぐらい前、あるアパートで、子供の死体が見付かったんだって。
がりがりに痩せ細った子供。
その子は、両足が無かったの。
それを見付けたのはアパートの管理人さん。
ある部屋から異臭がするって苦情が来たんで、鍵を使って無理矢理入ったんだけど……、
……子供の親? そうそう、ここからが本題ね。
その部屋に住んでたのは、子供と母親の2人だけ。
母親は病気で働けなくって、食べるものにも困ってたらしいの。
ん? ――もう、先にオチ言わないでよ!
その通り。母親が、子供の足を食べてたんですって。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>214 すげええええ!!] 投稿日:2010/12/31(金) 03:12:21.16 ID:gJLkrR1iQ
ξ゚⊿゚)ξ「それ以来、その部屋、色んな幽霊が出るようになったらしいわ。
足を食べられた子供の霊は勿論、クローゼットに隠れてる男とか、
隅で佇む女、他にもたくさん」
('A`)「……霊が、他の霊を引き寄せたって感じかな」
(´・ω・`)「なるほど。……ま、よくある怪談じゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「で! 実は、これって結構近所の話なのよ」
(゚、゚トソン「あ、何か聞いたことあるかも」
( ^ω^)「トソンちゃんも知ってるのかお?」
(゚、゚トソン「あれですよね。
『VIPマート』の近くの――」
ξ゚⊿゚)ξ「正解っ!」
('A`)「……ふうん」
(゚、゚トソン「……そういえば、会長」
('A`)「ん?」
224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 03:19:33.32 ID:gJLkrR1iQ
(゚、゚トソン「あの伝言、どういう意味だったんですか?
『捨てたシュークリーム、可能なら皿に盛りつけ直して謝れ』、
……でしたっけ」
('A`)「あー……」
('A`)「……気にしなくていい。多分、もう遅いし……、
――あのとき、すぐに思いつかなかった俺が悪いんだ」
(゚、゚トソン「?」
*****
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/31(金) 03:23:13.62 ID:gJLkrR1iQ
川д川おばけやしきのようです
終
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