54 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 01:58:40 ID:a4mOl5pAO [2/28]
***
第三話 「歴史は何も裏切らない」
***
( ^ω^)「尾付の出麗?」
(´・ω・`)「ああ、その琴爪にはそう書いてある。当人に会えば元の時代へ戻る方法がわかるかもな」
( ^ω^)「なるほど…ちなみにこの人はどこにいるんですかお?」
(´・ω・`)「尾付家は代々、二茶根瑠一族の近習を務めている。根十城にいるはずだ」
( ^ω^)「あ、聞いたことあるかも二茶根瑠」
二子厨の庄から離れ、山道を上っている二人。
渚本介が昨晩見つけた琴爪の名前の話をすると、ブーン水を得た魚のようにその話に飛びついてきた。
しかし。
(;^ω^)「渚本介さん、嫌な予感がするんですけど」
(´・ω・`)「なんだ」
(;^ω^)「根十城って…めちゃくちゃ遠くないですかお…」
55 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 01:59:34 ID:a4mOl5pAO [3/28]
これでも日本史は得意だったので、何となく頭の中には入っている。
根十城は、現在の静岡県と愛知県の間あたりにある大きな城だ。
現代でもその形は残されており、指定文化財として観光名所となっている。
(´・ω・`)「そうだな。かなり時間はかかるぞ」
( ´ω`)「こりゃ無いお…」
(´・ω・`)「ははは、元気出せ。ほら、二子堂城が見えてきたぞ」
( ^ω^)「おっ?」
山道の先に見えてきたのは、復興修理がなされた現代の城とは違い、かなり威圧感のあるものだった。
歴史があるものなのに歴史を感じない。
言葉でどう表現すればいいのかわからないほど、その城は威風堂々としていた。
56 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:00:36 ID:a4mOl5pAO [4/28]
( ^ω^)「すげえお…」
(´・ω・`)「さ、行くぞ」
( ^ω^)「はいお。てゆうか渚本介さんはこの城に何の用があるんですかお?」
(´・ω・`)「ん、ちょっとした小用だ。すぐに終わるさ」
( ^ω^)「なるへそ…」
城の目の前まで歩くと、城を囲むように流れる川と大きな架け橋が目に止まった。
簡単に攻め入られないように、城の周りには堀を作ることが多い。
この戦術的な建築アイディアは意外と世界共通で、外国の城にもこういった堀のあるものは数多く存在している。
57 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:01:08 ID:a4mOl5pAO [5/28]
教科書の中身だけであった「歴史」が目の前にあることに感動し、ブーンは暫し見とれていた。
(´・ω・`)「おい、いつまで見とれてるんだ。未来の日本に城はないのか?」
( ^ω^)「いやあるっちゃありますけど、今やただの見せ物ですお」
(´・ω・`)「そうなのか…悲しいもんだな」
目に見えるもの全てにいちいち感動するブーンと、何食わぬ顔で歩く渚本介。
架け橋を渡り、さらに城へ近付くと、立派な門の前に歩き着いた。
途端、門番らしき二人の男が、ブーンと渚本介に近づいてきた。
("`Д´)「止まれ。何だお前、南蛮人か?」
(`∞´/)「入城許可証を見せろ」
( ^ω^)(どう見ても日本人だろjk…)
(´・ω・`)「ほら、確認してくれ」
58 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:02:16 ID:a4mOl5pAO [6/28]
渚本介は懐から綺麗に畳まれた文書を出し、門番に見せた。
直後、門番の二人は驚いた顔で文書と渚本介を交互に見始めた。
(";`Д´)「太田渚本介…!?」
(`∞´;/)「お前、死んだはずじゃ…」
(´・ω・`)「もういいだろ?長話はしたくない」
(;^ω^)「……」
死んだはず、なんて言葉が聞こえた気がしないでもないが、とりあえずブーンは黙っておくことにした。
渚本介は門番から文書を取り上げると、ブーンに声をかけて門をくぐった。
慌ててブーンも渚本介の後に続く。
(";`Д´)「なんてこった…奴は生きてたのか」
(`∞´;/)「野郎、まさかこの城を…」
(";`Д´)「そんなはずが無いだろう!…一応、隊長に言っておくか」
──
59 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:03:43 ID:a4mOl5pAO [7/28]
──
(*^ω^)「おお…!」
初めて体感する、"本物"の城。
ブーンは興奮のあまり鼻息が荒くなった。ちょっと鼻水が出た。
(;´・ω・`)「落ち着けブーン。奇妙な顔になってるぞ」
(;^ω^)「あ、すいませんお…」
何度も折り返されている階段を上り、二人は最上階に着いた。
最上階は、階段から少し廊下が続き、その先に大きな襖の扉が一つあるだけだった。
運動が続いたせいで呼吸が整わないブーン。その目の前で、涼しい顔の渚本介が扉へと進んでいく。
ブーンはまたも慌ててその後を追った。
60 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:03:59 ID:a4mOl5pAO [8/28]
(´・ω・`)「失礼致す」
(;^ω^)「あっ…僕も失礼しまーす…」
一声かけて、渚本介は少し乱暴に扉を開けた。
扉の向こうには、大きな和室が広がっていた。
その奥に、何やら筆で字を書いている初老の男が一人。
ミ,,゚Д゚彡「…来たか」
男は筆を止め、紙の傍に丁寧に置きながら、顔を上げた。
威厳のある顔が、二人を向く。
ミ,,゚Д゚彡「いつかは来ると思っていた。久しいな、太田渚本介……して、その南蛮人は?」
( ^ω^)(もういいや南蛮人で…)
(´・ω・`)「こいつは俺の相棒だ。俺が何の用で此処まで来たのか、わかっているのか?」
61 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:05:12 ID:a4mOl5pAO [9/28]
ミ,,゚Д゚彡「わかっておる。しかし、貴様の目的は儂ではない」
(´・ω・`)「なんだと?」
ミ,,゚Д゚彡「全ては儂の弟、天野擬古成(ぎこなり)の仕業だ」
(´・ω・`)「"剛拳の擬古"…」
(;^ω^)(え?何?何の話?)
(´・ω・`)「奴は今何処に?」
ミ,,゚Д゚彡「丹生捉城だ。しかし先日、妙な情報が届いた」
(´・ω・`)「妙な情報?」
ミ,,゚Д゚彡「擬古成の奴が、根十城攻めを企んでおる」
(´・ω・`)(;^ω^)「!!」
ミ,,゚Д゚彡「あの根十城が落とされては二子厨の庄の安全も危ない。奴はここら一帯を統治する気だ」
一旦言葉を切ると、男は小姓を呼び、茶の用意を命じた。
小姓が茶の用意に部屋を出ると、座ったらどうだ、と自ら座布団を用意してくれた。
62 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:06:33 ID:a4mOl5pAO [10/28]
(´・ω・`)「お人好しは相変わらずか」
ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そう言いなさんな」
(´・ω・`)「では言葉に甘えて」
( ^ω^)「失礼しますお」
ミ,,゚Д゚彡「ん?南蛮人なのに言葉が通じるのか」
( ^ω^)「はい、話す程度ならできますお(はっ倒すぞジジイ)」
( ∵)「房擬古様、茶を持って参りました」
ミ,,゚Д゚彡「うむ、儂とこの二人の分を頼む」
( ∵)「はっ」
( ^ω^)(すげえ…本当に"はっ"て言うんだ)
小姓が慣れた手つきで茶を淹れると、わざわざ小さな膳を用意し、三人の前に置いた。
その上に茶を置くと、小姓はそそくさと退いていった。
63 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:07:27 ID:a4mOl5pAO [11/28]
房擬古は少し茶をすすると、話を続けた。
ミ,,゚Д゚彡「して、渚本介。貴様はやはり擬古成を追うのか」
(´・ω・`)「当然」
ミ,,゚Д゚彡「…なれば、儂が力を貸そう」
渚本介が少し驚いたような目で房擬古を見た。
しかし、房擬古の表情は至って真剣だ。
(´・ω・`)「…何故に?」
ミ,,゚Д゚彡「奴は強引なまでに天下統一を進めておる。もはや奴は只の暴将、手に負えん」
ミ,,゚Д゚彡「奴を止めて欲しいのだ渚本介。これからの平和の為にも」
ミ,,゚Д゚彡「これはお前にしか頼めん事だ。お前の旅にもちょうど都合がいいだろう。どうか聞き入れてくれ、"戦魔"よ」
( ^ω^)(せんま?)
(´・ω・`)「…くだらん名を……わかった、助力を頼む」
64 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:08:37 ID:a4mOl5pAO [12/28]
房擬古は口の端で笑い、また茶をすすった。
しかし、房擬古の穏やかな雰囲気とは違い、渚本介は張り詰めた顔で房擬古を見ている。
ブーンはただ二人のやりとりを見ているしかなかった。
ミ,,゚Д゚彡「城の守衛以外の兵を全員出そう。と言っても、数にして二百ほどしかおらぬが…」
(´・ω・`)「兵は結構だ。俺は兵力戦がしたいわけではない」
(´・ω・`)「俺が力添え願いたいのは二つ。旅の間にも腐れぬ食料と…」
渚本介はブーンの方をちらりと見て、小さく笑った。
(´・ω・`)「こいつのぎたーが収まる荷袋がほしい」
ミ,,゚Д゚彡「ぎたー?」
──
65 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:09:45 ID:a4mOl5pAO [13/28]
──
(*^ω^)「ハフッ、ハフッ」
ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、ブーンは胃が大きいようだの」
(*^ω^)「だってすごく美味しいですお!城の料理わぅふぐっつ」
(;´・ω・`)「だからあまり無理に食うな」
ミ,,^Д^彡「ハッハッハ!」
夜。
大勢の小姓達が周りを囲むなか、三人は接客用の高級料理を食していた。
擬古成の根十城攻めまではまだ時間がある。一晩泊まっていけという房擬古の好意に、二人は甘えることにした。
66 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:10:21 ID:a4mOl5pAO [14/28]
( ∵)「房擬古様。お二人方の旅の食料と、ぎ…ぎたー…?の荷袋の用意が済みました」
ミ,,゚Д゚彡「そうか、ご苦労だったな」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
ミ,,゚Д゚彡「なーに、儂には何でも気軽に申してよい」
( ^ω^)「房擬古様は本当にお人好しなんですおね」
(´・ω・`)「一城の主がそんなんで大丈夫なのか」
ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、儂はこれくらいしか取り柄の無い人間での」
( ^ω^)「いやそんなことないですおマジで!」
ミ,,゚Д゚彡「マジ?なんだそれは」
(;^ω^)「あっ…僕の国の言葉ですお。すみませんお」
ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そうかそうか」
──
67 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:11:31 ID:a4mOl5pAO [15/28]
──
("`Д´)「あー…交代はまだかよチクショウ」
(`∞´/)「さっさと戻って晩酌でもしたいもんだぜ」
("`Д´)「まったくだ」
ブーン達が料理を食べ終えた頃。
門番の二人は、きちんと持ち場に立ったまま雑談をしていた。
二人の立つ門を、月明かりが強く照らしている。
門の前には架け橋、その向こうには暗い森。
突然、その暗い森の中から、まるで浮き出てくるように一人の男が歩いてきた。
("`Д´)「おい…」
(`∞´/)「ああ。橋には近づけずにな」
二人はそれぞれ槍を手にし、架け橋の向こうまで歩いた。
歩いてくる男は動じる様子もなく、淡々と進んでくる。
68 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:12:40 ID:a4mOl5pAO [16/28]
二人が橋を渡りきったとき、ちょうど男が二人の目の前で止まった。
("`Д´)「おい、こんな夜分に何の用だ」
(`∞´/)「入城許可証を見せろ」
( ゚ ゚)「……」
暗くてわからなかったが、よく見ると、男は顔を布で隠していた。
返答も無い怪しい男に、二人は槍を向ける。
("`Д´)「入城許可証はどうした!さっさと出さないと引っ立てるぞ」
( ゚ ゚)「………だ」
(`∞´/)「あ?」
顔を隠していた布を取り、冷たい目で二人を睨む。
(,,゚Д゚)「邪魔だっつってんだよ」
69 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:12:57 ID:a4mOl5pAO [17/28]
途端、男は向けられた二つの槍を、片手で一本ずつ掴んだ。
(`∞´;/)「!?…な、動かん…?」
(";`Д´)「クソ、離せ!」
(,,゚Д゚)「……」
屈強な門番の持つ槍が、片手で封じられている。
掴まれた槍は、いくら動かそうとしても微動だにしない。
(";`Д´)「貴様…まさか…!」
(`∞´;/)「"剛拳"…!?」
(,,゚Д゚)「ご名答だ」
バキン、という鈍い音が辺りに響いた。
男が掴んでいた槍の柄が折れてしまったのだ。
男は折れた刃先を素早く指の間に挟み、門番の二人の喉を貫いた。
70 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:14:46 ID:a4mOl5pAO [18/28]
血を吹かせながら、静かに崩れ落ちる門番の二人。
(,,゚Д゚)「一城の門番がその程度とはな」
(,,゚Д゚)「全隊用意!!」
"剛拳"が背後の暗い森に向かって声を上げた。
直後、森からぞろぞろと兵が現れた。
架け橋の前に並ぶ、鎧を纏った男達。
その数、五百強。
(,,゚Д゚)「城内の兵は三百程度だ!すぐに終わらせる!」
(,,゚Д゚)「行くぞォォ!!!」
地鳴りのような掛け声。
五百強の兵は、雄叫びをあげながら城内へと突入した。
──
71 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:15:22 ID:a4mOl5pAO [19/28]
──
強く鐘を突く音が、城内に何度も鳴り響いた。
途端、誰か大勢の怒号と悲鳴があがった。
(;^ω^)「え、何!?」
(;´・ω・`)「まさか…」
(;∵)「敵襲です房擬古様!敵兵は五百程!」
ミ,,;゚Д゚彡「こんな時に敵襲だと!?どこの手の軍だ!!」
(;∵)「旗印から見るに、天野の軍のようです!大将自ら率いているもよう!」
ミ,,;゚Д゚彡「なっ…擬古成自ら此処まで来たというのか!?一体何のつもりだ!」
(;´・ω・`)「そんなことより、あんた達は早く此処から逃げた方がいい!体制も整ってない状態で攻められたら此方は…」
(,,゚Д゚)「いや、もう遅せェ」
72 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:16:35 ID:a4mOl5pAO [20/28]
ミ,,;゚Д゚彡(;´・ω・`)(;^ω^)「──!?」
( ∵)「え」
男の声が三人の耳に入った直後、今度は肉を綺麗に断つような音が聞こえた。
見ると、房擬古の小姓は既に首を無くし、頭はブーンの足下を転がっていた。
( ^ω^)「あ…?」
人が死んだ。自分の目の前で、人が首をはねられて死んだ。
人が死ぬなんて、テレビの世界でしか存在しなかった。
ましてや殺人なんて、恐らく一生体験しないものだと思っていた。
なのに、これは何だ?
人間の頭が、床を転がっている?
(;゚ω゚)「あ…あ…?」
(,,゚Д゚)「へっ、生首見んのは初めてかよ南蛮人」
73 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:18:08 ID:a4mOl5pAO [21/28]
体が固まったまま狼狽するブーンの横で、渚本介が前に出た。
いつの間にか刀は鞘から抜かれ、右手に握られている。
(,,゚Д゚)「しかし驚いたぜ…まさかこんなチンケな城に、貴様がいるとは」
(,,゚Д゚)「まだ復讐の炎は貴様に残っていたのか。"戦魔"、太田渚本介よ」
(#´・ω・`)「……」
冷たい目で真っ直ぐに擬古成を睨み、刀を抜いたまま動かない渚本介。
その少し後ろで、今度は房擬古が声を上げた。
ミ,,;゚Д゚彡「擬古成…貴様一体どういうつもりだ」
(,,゚Д゚)「愚問。二子厨一族が滅びれば、根十城攻めが楽になる。武力は無くとも親しい交易のある二子厨は、先に潰すべきと判断した」
ミ,,;゚Д゚彡「貴様、生みの一族を裏切るつもりか!」
(,,゚Д゚)「裏切る?戯れ言を、天下統一に血の縛りは邪魔なものだ」
74 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:19:12 ID:a4mOl5pAO [22/28]
(,,゚Д゚)「んなことより、さっさと逃げたらどうだ?さもなくば、俺は城と貴様の首を頂いてしまうぞ」
ミ,,;゚Д゚彡「下衆が…」
(#´・ω・`)「待て」
右手を伸ばし、房擬古がこれ以上熱くなるのを止める渚本介。
そして、渚本介はようやく刀を両手で握った。
対する擬古成も、右肩の後ろから左膝の裏あたりまで伸びる巨大な鞘から、分厚い刀を抜いた。
渚本介の構える日本刀、虎恍丸とは比べものにならない大きさだ。
それを両手で持ち、ずっしりと構える。
(#´・ω・`)「"剛拳"の名は相変わらずか」
(,,゚Д゚)「この斬馬刀は一薙ぎで人間を甲冑ごと真っ二つにしちまう威力だ。貴様の復讐の魂ごと、この刃で潰してやる」
(#´・ω・`)「来い。貴様の野望は此処で潰えることとなろう」
(,,゚Д゚)「ハッ、威勢だけは強いもんだな」
75 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:20:05 ID:a4mOl5pAO [23/28]
次の瞬間。
数十歩と離れていた互いの距離が、一瞬にして詰められた。
虎恍丸は上から、斬馬刀は横から、それぞれの刃の軌道が重なる。
途端、とても刀同士がぶつかったとは思えない轟音が辺りに響いた。
(;´・ω・`)「くっ……!」
(,,#゚Д゚)「ゴルァッ!!」
斬馬刀の攻撃の重さに、体ごと弾かれた渚本介。
その隙だらけの首に、斬馬刀の返すような横払いの攻撃が迫る。
それを低い姿勢でかわすも、今度は突然、遠く離れた壁まで吹き飛ばされた。
擬古成が渚本介の腹に拳を突き出したのだ。
ミ,,;゚Д゚彡「渚本介!」
(;´・ω・`)「かはッ…!」
(;゚ω゚)「あ…あう…」
"剛拳"の拳をまともに喰らい、なかなか起き上がれない渚本介。
その渚本介を横目に、擬古成がゆっくりと歩き出した。
実兄、房擬古の元へと。
76 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:20:53 ID:a4mOl5pAO [24/28]
ミ,,;゚Д゚彡「くっ…」
(,,゚Д゚)「悲しいもんだな、二子厨房擬古。まさかこの手で兄を殺める日が来るとは」
(;゚ω゚)「……」
(;´・ω・`)「や…やめ……」
とうとう房擬古の目の前まで着いた擬古成。
逃げも反撃もしようとしない相手に、斬馬刀を振り上げる。
(;´・ω・`)「やめ……」
(,,゚Д゚)「言い残す事は?」
最後の情けをかけられる房擬古。
その場にあぐらで座り、動けない渚本介と固まっているブーンを見据える。
ミ,,゚Д゚彡「…野心も夢も、魂を荒ぶらせる手の欠片に過ぎぬ」
(,,゚Д゚)「……」
ミ,,゚Д゚彡「強く生きろ。渚本介、ブーン」
(,,゚Д゚)「…さらばだ」
77 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:22:14 ID:a4mOl5pAO [25/28]
鈍い音が鳴り、赤黒い何かが飛び散った。
二子堂城城主、二子厨房擬古。城を攻めてきた実の弟に斬られ、その生涯は幕を閉じた。
(#´・ω・`)「き…貴様ァァ!!」
(;゚ω゚)「うわ、ああああああああああ!!」
恐怖と衝撃でただ叫び続けブーン。
その横を、虎恍丸を持った渚本介が、物凄い速さで駆け抜けた。
(,,゚Д゚)「ムッ…!」
(#´・ω・`)「うおおおお!!!」
渚本介が全体重をかけて振り下ろした虎恍丸の刃は、擬古成の斬馬刀に軽くあしらわれた。
途端、今の一合だけで、大きく距離を取った渚本介。
二人の重い睨み合いが、その場の空気を凍らせていく。
78 名前: ◆vVv3HGufzo[] 投稿日:2011/02/23(水) 02:22:58 ID:a4mOl5pAO [26/28]
しかし、その均衡はすぐに終わった。
渚本介が虎恍丸を鞘に戻したのだ。
(,,゚Д゚)「腰抜けが、逃げるつもりか」
(#´・ω・`)「何とでも言え。覚えていろ。貴様の首は、必ずこの太田渚本介が取って見せる」
(,,゚Д゚)「ふん」
ブーンの手を無理やり引き、小姓が用意してくれた荷物を取り、渚本介は走り出した。
すぐに見えなくなった二人の背中に、口の端を歪める擬古成。
月明かり以上に辺りを強く照らす、二子堂城から上がる炎。
すぐ下の二子厨の庄を焼き討ちで沈めるのには、何の時間もかからなかった。
明応五年。
二子堂城、二子厨の庄が、天野勢の手により陥落した。
第三話 終
( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです 4
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