mesimarja
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( <●><●>)二週間のようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:12:57.43 ID:ARY3/iPuO
 
 その日、の十四日前。

 心電図のジグザグが無くなって、ピーと音が鳴り続けました。
 私はただ、それを立って見ています。

(*;ω;*)「何で死んだんだっぽ!」

 彼女は泣きながら声を荒げていました。


――( <●><●>)二週間のようです




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:14:10.41 ID:ARY3/iPuO

 その日、の十三日前。

 死、というものは案外近くにあり、私が思っているよりもあっさりしたものでした。
 日付が変わろうとなお、啜り泣く彼女の声は絶えず聞こえて、亡骸に向かって何故死んだと嘆いています。

 私にはその背中がとても気の毒に思えてきて、声をかける事は出来ませんでした。
 ごめんなさい。
 私の声では彼女に届きません。
 今の彼女には聞こえません。

 私は、その現実から目を背ける為に、部屋から出て行きました。
 頭の中にまだ、聞こえないはずの彼女の声が聞こえてきます。

 私はどうしたら良いのでしょうか。



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:15:38.59 ID:ARY3/iPuO

 深夜の病院の受け付け、そこで適当な椅子を見付けて座りました。
 本当に死んだのでしょうか。
 実感が沸きません。

 分からないのです。
 死んだという事が。

 分からない、と常日頃言っていた彼も、いつも生きてる事を当たり前だと思い、こうして死を感じる前はこんな事分からなかったでしょう。

 亡骸を見ると更に死んだとは思えないのです。
 また明日、学校で会って話して笑って、そんな想像が簡単に出来てしまうのです。
 頭が死に追い付いていけないのです。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:17:11.64 ID:ARY3/iPuO

 その日、の九日前。

 既にあれから何日経ったのか、葬式等に行ってからずっと学校には行ってないかもしれません。
 数日経っても実感は沸きませんでした。
 むしろ生きてると思えてきて、それが、余計に悲しさを増すのです。

 無性に、彼に会いたくなって来ました。
 叶う訳が無いなんて、分かってます。
 それでも一目会いたくて、私は外に出てみました。

 しばらく外に出て無いので、太陽に目が眩みます。
 そういえば、もうすぐ夏休みでした。
 あの日もそんな話をしながら、あの場所を歩いていました。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:19:26.70 ID:ARY3/iPuO

 私が当ても無く歩いていると、やがて公園に着きました。
 そこには、小さい三人の子供達が砂場で遊んでいました。
 懐かしさを感じるのは、きっと昔の私達三人と似ているからでしょう。

 ずっと居るのも変なので、帰る事にしました。
 それから適当にそこら辺を歩き回って、町に出たりもしました。
 どこかに彼が居る様な気がしたから。
 学校の近くまで行くと、既に下校時間で生徒が多く、あまり目立たない様にそこから去ろうとしました。

 その中には、彼が居た気がします。

 まだ少し悲しい顔をしながらも、どこか幸せそうに笑っていました。
 良かったと、心からそう思えます。
 貴方にはそうであってほしいのです。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:21:36.41 ID:ARY3/iPuO

 その日、の六日前。

 私はずっと避けて来ました。
 けれど少しずつ現実を見る必要があると思い、思い切って今ここにいます。
 そこは、何ら変わりない普通の道路。

 約一週間前に、交通事故が起きた事以外は。

「犯人ってそのまま逃げて捕まって無いのよ~」

「やあねぇ……」

 近所の主婦が、通りすがる時にぼそりと言いました。
 初耳です。
 まだ花束で埋もれてる電柱やその周りにある事故の跡は、その時の悲惨さを物語っていました。

 それを見ていると、嫌でも考えてしまいます。
 あの日あの時、ここを歩いていなければあんな事にはならなかったかもしれないと。
 過ぎた事を言っても仕方無いなんて、そんな事分かってます。

 それでも、どこかで『別のパターン』を考えては後悔しているのです。
 そんな事も分かってます。
 だけど。

 今私はどうすれば良いのか、それだけは分かりません。
 こんな時に、彼なら何て言うでしょう。
 ねえ、ビロード。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:24:17.71 ID:ARY3/iPuO

 その日、の十二日前。

 皆真っ黒、それでいて花が飾られている中央に遺影。
 葬式です。
 彼女はまた泣いていました。

 いえ、泣いているのは彼女だけではありません。
 他にもちらほらとそんな人が見えます。

 彼は、今来てるでしょうか。
 来てるなら、これを見てどう思うのでしょう。

 私は思うのです。
 葬式をして、死者に涙して、それに何の意味があるのかと。
 涙を流せば死者は楽に逝けるのでしょうか。

 最近の私には、分からない事ばかりだと思います。
 けれどそれは何もかも、死が影響してるのは分かってます。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:26:54.67 ID:ARY3/iPuO

 彼女の弱々しい背中が目に入ります。
 私にはそれを支えてやる事が出来ないのです。
 ごめんなさいとしか、言えないのです。
 けれどその声さえも、届きません。

 こうしていると、私が実に無力なのだと実感します。
 いつも『分かっている』と言いながら、大切な事はまるで分かってない、ただの頭でっかちなのです、私は。
 分からなくても良い様な事しか、分かりません。
 近頃何度もそう思うのです。

 また、彼の姿が見えました。
 彼は泣いていません、ですが、今にも泣きそうでした。
 彼は今、何を思っているのでしょう。

 ふと見た空は、あの日の様に青かった、そんな気がします。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:28:34.32 ID:ARY3/iPuO

 その日、の五日前。

 久しぶりの学校です。
 昨日に引き続き、逃げずに行った結果がこれです。
 そこでは既に、居ない非日常が、日常になっていました。
 それくらいは薄々分かっていました。

 いつまでもたった一人の死に執着してはいられないのです。
 そんな事では生きていけないのです。
 それでも、これは私にとって、悲しい事でしか無いのかもしれません。

 やはり人の死とはあっさりしたものなのです。
 複雑な気持ちです。

 そんな中で、花瓶の水を変えたり、毎日電柱にお供えに行く人がいるのは分かってます。
 彼女は相当、いやきっと誰よりも、死を悲しんでいるのだと思います。
 早く立ち直ってほしいです。
 けれど私に出来る事はありません。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:31:32.17 ID:ARY3/iPuO

 その中、の十一日前。

 眠っている彼に声をかけてみました。
 勿論返事はありません。
 名前を呼んでも何を言っても無駄です。
 彼は今私の声が届かない場所にいます。

 けれど、彼がもし目を覚ましたところで私にはどうしようも無い事です。
 会わせる顔もありません。

 けれどそれなのに声が届かないのが悲しくて、私は部屋にぽつんと一人立ち尽くしていました。

 酷く安らかな寝顔でした。
 私はやはり、起こしてはいけないと思い部屋を後にしました。

 彼とお別れするにはまだ早いです。



15 名前:>>14訂正×その中○その日 :2008/08/11(月) 00:35:03.82 ID:ARY3/iPuO

 その日、の二日前。

 今日は大雨です。
 雷も鳴ってます。
 そんな日は部屋で物思いに耽るのが一番です。

 人は死んだらどこへ行くのか、なんて事考えてみたりします。
 今更過ぎて笑えてきました。

 そろそろ時間がありません。
 明確に指定されている訳でも無いのに、何となくそんな気がしてならないのです。
 あと少ししたら、彼に二度と会えない、そう思いました。

『もうアイツは死んだんだっぽ!
 私だって信じたくなんか無いっぽ!
 だけど……お前までそんな事言ってたらもう……』

 昨日の彼女の姿が頭を過ぎりました。
 声を大にして、今にも泣きそうになって叫ぶ彼女が。
 耳が痛くて、その姿も痛々しくて、そんな彼女に私は現実を突き付けられました。

 でも、安心して下さい。
 あと少しだけですから。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:38:08.30 ID:ARY3/iPuO

 その日、の十日前。

 棺に納められた身体は、思っていたより弱々しかったです。
 しかしこれも葬式同様、きっと死者にとっては意味を持たないのでしょう。
 人を焼いて骨にする事など。

 綺麗な花の中に埋もれた顔はやっぱり、安らかな顔でした。
 彼女は、泣きはしませんが、今にも溢れ出しそうな涙を必死に堪えています。
 棺も運ばれていきます。

 今の私には、どちらも見ていられませんでした。
 支えられない辛さと、胸を焼かれそうな苦しさで。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:42:29.32 ID:ARY3/iPuO

 その日、のずっと先。

 よく晴れた空の下、とある電柱の側に二人の男女が居た。

「あの日、お別れを言いに来たから、もう伝わるか分からないっぽ。 だけど、
 もう安心してほしいっぽ」

 少女がそう言って少年の方を見ると、少年は無言で頷いた。

「私達は結婚することになったっぽ」

 数年経った今でも置かれ続けている花束に、新しい花束が加わった。

「昔はアンタの事が好きだったっぽ、だから死んだ時には、どうしたら良いのか分からなかったっぽ。
 だけどこいつが居たから頑張れたっぽ」

 少女は少年に微笑みかけて、少年もまた笑顔で返した。
 空は雲がゆっくりと流れていた。

「あの日、君に任されてから、結構苦労しました」

 少年が苦笑混じりに言うと、少女は顔を歪ませて少しだけ少年を睨み付けた。
 一瞬、風が吹いて花束の花と二人の髪を揺らした。

「……ありがとうっぽ」

 少女は誰に言う訳でも無く呟いた。
 一度だけ二人は手を合わせて、そこから去ろうとした。
 しかし一度、少年が電柱を見つめて言った。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:45:05.70 ID:ARY3/iPuO



「ありがとう……



 ワカッテマスくん」


 

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:49:18.48 ID:ARY3/iPuO

 その日、の十五日前。

( ><)「もうすぐ夏休みなんです!」

(*‘ω‘ *)「ビロードは補習あるっぽ」

 暑さと蝉の声の中で、今私達は学校から帰っています。
 あと二週間程経てば夏休みです。
 そんな二人の会話を聞きながら、今年もビロードの課題の世話をするのかと、しみじみ思いました。

(;><)「そ、そうですけど……」

( <●><●>)「今年もまたビロードの課題手伝いですか……」

(;><)「ワカッテマスくんまで!」

( <●><●>)「いい加減早めに手を付けるな
り何なりしなさい」

(*‘ω‘ *)「いつまでもこいつが居る訳じゃ無いっぽ」

 二重の攻撃でうなだれるビロード、いつもの光景です。
 いつまでも、少しでも長く、この関係が続けば良いと、一番思ってるのは私でしょう。

( ><)「じゃあ二人共さよならなんです、また後で!」

( <●><●>)「はい、また後で」

 私達も手を振替えして、歩き出します。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:52:35.91 ID:ARY3/iPuO

(*‘ω‘ *)「ワカッテマス、今度八月に花火大会があるんだっぽ」

( <●><●>)「そうなんですか」

(*‘ω‘ *)「だから、良かったら」

( <●><●>)「ええ、勿論行きますよ。
       ビロードも楽しみにしてるでしょうね」

 私だって馬鹿じゃないです。
 彼女の言いたい事は分かってます。
 それに三人で行きたいならもっと前に言うでしょう。

(*‘ω‘ *)「あ、そ、そうだっぽ!
       きっと、ビロードも楽しみにしてるっぽ!」

( <●><●>)「楽しみですね」

 けれど、彼女の願いは叶えてあげられないのです。
 ビロードは彼女が好きで、けれど彼女が好きなのは私で。
 私だけはいつまでも三人友達でいたいと願っています。

 だから彼女からの願いを聞き入れる事は出来ません。

( <●><●>)「じゃあ、また後で」

 気まずい雰囲気のまま、私は家の前に着いたのでさっさと家に入りました。
 とは言え、また後で三人で会うのであまり意味はありませんが。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:55:59.87 ID:ARY3/iPuO

( ><)「花火大会行きたいんです!」

( <●><●>)「じゃあ決定ですね」

 放課後、どこへ行く訳でも無く私達三人は歩いていました。
 ビロードも花火大会へ行く事になり、夏休みへの楽しみが一つ増えました。

( ><)「暑いんです! コンビニに行ってアイス買いましょう!」

(*‘ω‘ *)「ピノでも食べるっぽ」

 そう言ってビロードは、人も車も通らない横断歩道の中央まで駆けて行きます。
 そこでくるりと振り返ります。

( ><)「じゃあコンビニまで競争するんです!」

( <●><●>)「良いですよ」

 そう言って走り出した時に、急に彼女が叫びました。

(;*‘ω‘ *)「ビロード早くそっから逃げるっぽ!」

 彼女がそう叫ぶと同時に私も気付きました。
 一、二メートル先のビロードの居る部分にトラックが突っ込んで来そうになるのを。

(;><)「!」

 トラックはビロードと少ししか離れていないのにもかかわらず、とても速く止まる気配を見せません。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 00:57:57.89 ID:ARY3/iPuO

( <●><●>)「……」

(;*‘ω‘ *)「ワカッテマス!?」

 私は走りました。
 止めに入る彼女の腕を振り切って。
 ビロードとトラックの距離は、どんどん縮まっていきます。


「ビロード!」


 ぐい、とビロードの腕を引っ張ります。
 反動で私はトラックの方へ行ってしまいます。
 どん、と鈍い音がして、私に何かが……恐らくトラックが激突しました。

 その瞬間、ぶちん、とテレビを切る様に視界が真っ暗になりました。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:00:40.04 ID:ARY3/iPuO

 目を開けると、そこは病院の一室、医者と見慣れた二人がそこにいました。
 その中央にベッドがあり、そこには私が痛々しい姿で眠っていました。

 ああ、そういう事ですか。
 私は瞬時に状況を理解し、ただそこに立っていました。
 どうやら二人には私が見えないらしく、何も言わずに眠る私を見つめていました。

 両親は昔事故で死んだので、私もやっとそちらに行けるのでしょう。
 ただ気掛かりなのは、この二人です。
 特にビロードは自分のせいで私が死んだと思っているでしょう。
 泣くのを我慢しているのはその表れかもしれません。

 心電図は未だ辛うじて動いていますが、いずれ止まるでしょう。
 そう思った時に。

(*;ω;*)「!」

( ><)「……」


 心電図のジグザグが無くなって、ピーと音が鳴り続けました。
 私はただ、それを立って見ています。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:04:00.59 ID:ARY3/iPuO

 その日、の四日前。

 学校ではすっかり忘れられ、どうでもいい存在になった私はそこらを歩いていました。

( ><)「ワカッテマスくん?」

( <●><●>)「……ビロード」

 何故、ビロードには私が見えるのでしょうか。
 きょろきょろと辺りを見回したビロードは、私に着いて来るように言いました。

( ><)「ただいまなんです」

( <●><●>)「お邪魔します」

 行った先はビロードの家でした。
 聞こえる訳ではありませんが、一応言います。
 そのままビロードの部屋に行きました。

( ><)「本当にワカッテマスくんなんですか?」

( <●><●>)「生きてはいませんが」

( ><)「そうですか……」

 ビロードは無言になります。
 それもそうでしょう。
 いきなり死んだはずの友人に会うなんて普通ではありません。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:06:34.41 ID:ARY3/iPuO

( ><)「あの……一つだけ、謝りたい事があるんです」

( <●><●>)「何ですか?」

( ><)「ワカッテマスくんは、僕のせいで……」

( <●><●>)「違いますよ、ビロードのせいでは無いです」

(;><)「なら、あれは何が悪かったんですか?」

( <●><●>)「あれは、何もかも運が悪かっただけです。
       ビロードは何も悪くありません」

( ><)「……」

 私がそう言うと、ビロードはまた黙ってしまいました。

( <●><●>)「では、私から一つお願いがあります」

( ><)「?」

( <●><●>)「彼女を支えてあげて下さい……これが私の最後の望みです」

( ><)「分かったんです」

( <●><●>)「……さて、帰りますか」

 あまり人の家に邪魔するのも気が引けるので、私は帰ろうと立ち上がりました。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:09:42.87 ID:ARY3/iPuO

( ><)「もう帰るんですか?」

( <●><●>)「はい」

( ><)「また、会えますか?」

( <●><●>)「それは分かりません」

( ><)「そうですか……」

( <●><●>)「では、さようなら」

( ><)「さよならなんです」

 私はビロードの家を後にしました。
 どこかで彼女の事を任せたい私が居た、そんな気がしてなりませんでした。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:13:11.61 ID:ARY3/iPuO
 その日、の八日前。

 先日、ビロードに会った……というよりも見た私は、今度は彼女がどうしているのか気になり、彼女の家へ向かいました。

(*‘ω‘ *)「これは夢かっぽ?」

( <●><●>)「そうです夢です」

 家に着けば案の定家には彼女が一人だけいました。
 やはりこの前と違い私が見えています。

(*‘ω‘ *)「夢かっぽ、なら良いっぽ。
       お前の事が好きだったっぽ」

( <●><●>)「そうですか、過去形ですがどうしてでしょう」

(*‘ω‘ *)「そりゃあ死んだのにグダグダ想い続けていられないっぽ」

( <●><●>)「そうですか」

 そうは言っても彼女の顔には泣いた跡が残っています。
 けれど私は頷くだけです。

(*‘ω‘ *)「ワカッテマス、もしこれが夢なら一つお願いがあるっぽ」

( <●><●>)「何でしょう」

(*‘ω‘ *)「ちょっと外行きたいっぽ」

( <●><●>)「良いですよ」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:16:21.64 ID:ARY3/iPuO
( <●><●>)「どこ行きますか?」

(*‘ω‘ *)「コンビニ行ってアイス買って……公園でも行って食べるっぽ」

( <●><●>)「そうですか」

(*‘ω‘ *)「アイス食べるかっぽ?」

( <●><●>)「いえ、いりません」

 みんみん、と蝉が鳴くなかで、歩いていきます。
 そこには私と彼女、いえ本来なら彼女だけしかいません。
 もしここに人がいたら、きっと彼女は独り言を呟いているようにしか見えないのでしょう。


(*‘ω‘ *)「暑いっぽ……」

( <●><●>)「そうですか」

 昼の公園、コンビニでアイスを買ってから来ると、そこには昨日同様三人の子供達が遊んでいました。

(*‘ω‘ *)「懐かしいっぽ……そうだ、ワカッテマス」

( <●><●>)「何でしょう?」

(*‘ω‘ *)「返事聞かせろっぽ」

( <●><●>)「……何の?」

(*‘ω‘ *)「そりゃあさっきの告白の返事っぽ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:18:34.37 ID:ARY3/iPuO

 やはりそう来ましたか。
 出来ればこの話題は、一番避けたいものでした。
 はい、と答えてしまえば彼女は私を追うかもしれませんし、いいえ、と答えればそれはそれで問題があります。

( <●><●>)「……ちんぽっぽ」

(*‘ω‘ *)「?」

( <●><●>)「もう、私の事など忘れて、幸せに暮らして下さい」

(*‘ω‘ *)「……それは」

 言い掛けたところで、彼女は黙ります。
 言葉の意味を理解したのでしょう。
 彼女は少し俯いて、そしてまた顔を上げました。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:21:27.72 ID:ARY3/iPuO
(*‘ω‘ *)「分かったっぽ」

( <●><●>)「それは良かったです」

(*‘ω‘ *)「アイスでも食うかっぽ」

 そう言って袋から取り出したアイスは、半分ほど溶けていました。

( <●><●>)「ちんぽっぽ」

(*‘ω‘ *)「何だっぽ? アイスはやらないっぽ」

( <●><●>)「いえ違います、その……」

(*‘ω‘ *)「ごめんなさい、っぽ?」

 彼女に見事言いたい事を当てられて、私は少し焦りました。

(*‘ω‘ *)「謝るくらいなら最初っから死ぬなっぽ、断るなっぽ」

( <●><●>)「……そうですか」

(*‘ω‘ *)「……そろそろ夢が覚めても良い頃だっぽ」

( <●><●>)「そうですね、では」

 そう言って私は公園から立ち去ります。
 彼女の啜り泣く声が聞こえました。
 ごめん、なさい。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:25:06.58 ID:ARY3/iPuO
 その日、の三日前。

 今日はどんよりとした雲が漂っていました。
 嵐の前の静けさでしょうか。
 その日、私の家では遺品整理が行われ、二人も来ていました。

 今日の二人には私が見えません。
 そこで気付いたのですが、私が見られたく無い時は彼らに見えず、どこかで会う事を望んでいる時は見えるようです。
 とんだご都合主義です。

( ><)「あの、ちんぽっぽちゃん」

(*‘ω‘ *)「なんだっぽ?」

( ><)「信じられない、かもしれないんです……けど僕は昨日、ワカッテマスくんと会いました」

(*‘ω‘ *)「!」

 ビロードがそう言うと、彼女の手がぴたりと止まりました。

(*‘ω‘ *)「……ビロード、アイツはもう死んだっぽ」

( ><)「そ、そうなんです……でも」

(#*‘ω‘ *)「アイツはもう死んだんだっぽ!
       私だって信じたくなんか無いっぽ!
       だけど……お前までそんな事言ってたらもう……」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:27:01.52 ID:ARY3/iPuO

 ずきん、と心が傷みました。
 今までも、こうして今も存在しているのに、二人と私の間にはもう生死の境界線が出来ているのです。

 私は耐えられずにその場から離れます。
 空を見るとぽつりぽつりと雨が降り出していました。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:29:21.72 ID:ARY3/iPuO

 その日、の前日。

 昨日の雨のせいか、今日は綺麗な晴れ空でした。
 二日前に喧嘩していた二人も、今日は家へ来ています。

 やはり最近思うのです。
 私はいつまでもここに止どまっていられないのだと。
 私の意思に関係無く、ある日急に消えてしまう気がします。

 それも遠くない未来、明日にはもうあっておかしくないとも思うのです。

 一昨日の事と、昨日の事。
 ずっと私はそれで悩んでいました。
 今から二人にお別れを告げるなら、間に合うのです。
 けれど、それを言ってしまったら、何もかも終わってしまう気がして、それが辛くて。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:32:07.42 ID:ARY3/iPuO

 結局それに決心が付いたのはもう日付が変わる少し前でした。
 二人はまだ家にいます。

( ><)「そろそろ帰りましょう」

(*‘ω‘ *)「そうだっぽね」

( <●><●>)「……二人共」

 二人が玄関にいる時、私は意を決して、声を掛けました。
 二人共聞こえたようで、こちらを振り返ります。

( ><)「ワカッテマスくん……」

(*‘ω‘ *)「……」

( <●><●>)「少し、着いて来て下さい」

( ><)「分かったんです」

 彼女も無言で頷きました。

 今まで私は二人に一回ずつ会いました。
 それでも言い残した事がありました。
 謝るだけで、言えて無い事が。



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:34:51.89 ID:ARY3/iPuO
 深夜の公園は静かでした。
 皆暗闇に溶けていきそうなくらいに、視界が効かなくなりそうで。
 何故公園なんでしょう。
 大して思い入れなどありませんが、私は無意識にそこに向かって歩いていました。

(*‘ω‘ *)「話って、何だっぽ?」

( <●><●>)「……それは、挨拶です」

( ><)「挨拶……?」

( <●><●>)「お別れの挨拶です」

 二人が一瞬、反応しました。

( <●><●>)「よく分かりませんが、私はもうすぐ消えてしまいます」

( ><)「そんな……」

( <●><●>)「私は、ずっとこちらにいる事が出来れば良いと思っていました。
       けれど、それでは駄目なのです。
       いつまでも自分の死から目を背けている訳にはいかないのです」

 そこで一度私は黙りました。
 次に言ってしまえばそれでもう、終わる気がしたのです。

( <●><●>)「でも、二人に言い忘れてた事があります、ただ一言」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:36:12.44 ID:ARY3/iPuO



「ありがとう、と……」





54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:38:41.19 ID:ARY3/iPuO

 その、日。

 言った時、時計を見たらちょうど十二時になっていて。
 私の少し薄ぼんやりした身体は、キラキラと光を放ちながら薄くなっていきました。

(;><)「ワカッテマスくん!」

(;*‘ω‘ *)「ワカッテマス!」

( <●><●>)「……時間なのでしょうか」

 おかしいです、こんなの。
 今から私は消えてしまうというのに、全く悲しくないのです。
 むしろ清々しくて、今なら笑えそうな気がします。

(;><)「そんなの嫌なんです……本当に居なくなってしまうなんて……」

(;*‘ω‘ *)「そうだっぽ……まだやり残した事が沢山あるのに……」

( <●><●>)「……二人共」

 私は今にも消えてしまいそうです。
 二人は必死で私を止めようとします。

( <●><●>)「せめて笑顔で見送ってくれませんか?」

 私がそう言うと、二人は一度黙って、意を決したように言いました。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:39:38.92 ID:ARY3/iPuO

( ><)「……そうなんです、分かったんです!」

(*‘ω‘ *)「分かったっぽ!」

 二人共、涙を流しながら笑っています。
 けれど、それが心から笑ってくれているのは分かってます。
 つられて私も笑います。

( ><)「行ってらっしゃいなんです」

(*‘ω‘ *)「行ってらっしゃいっぽ」

( <●><●>)「ええ……



       行って来ます」


 すう、と身体が消えていくのを感じて、私は目を閉じました。
 瞼の裏には、笑いながら手を振っている二人がいました。

 ありがとう、行って来ます、……さようなら。


――( <●><●>)二週間のようです 終わり
 

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/11(月) 01:41:08.73 ID:ARY3/iPuO
あとがき

なんぞこれ。


ともかく支援ありがとうございました。

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うわ…目から鼻水出てきた…
[2010/05/03 21:51] URL | #- [ 編集 ]


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