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ハロー・ヘロウィンのようです |
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:11:54.10 ID:A0/6n3fj0
- ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1288447148/all
( ^ω^)ハロウィンの列に集うようです(上記URL)のスレッドからAAを勝手に引用しています。 ttp://sangokusiz.blog130.fc2.com/blog-entry-61.html 爪'ー`)y‐グラスフィッシュ・リリーのようです(上記URL)へのオマージュ・パロディのような気もする。 作中から文章を引用・改変させてもらいました。 この作品は上記二作品から思いついたトリビュートノベルです。 以下本編。
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:15:46.71 ID:A0/6n3fj0
- 0.「Trick or Treat?」
【自宅】 目を覚ますと、俺は自宅の布団の上に寝そべっていた。 頬に冷たさを感じる。口周りの布団がやけに濡れている。 よく覚えていないがきっとよだれや鼻水だろう。 昨日は、なにをしていたっけ。 やがて目の焦点があってくると、畳の上に注射器が転がっているのが見えた。 それがきっかけで昨夜のことを思い出した。 後片付けと、今日の準備しなければ。 倦怠感が体中に纏わりついていたがなんとか動かして、すぐそばにあるテーブルの上に転がっている注射器を置いた。 机の上には袋に詰められた粉があった。純白色、黄土色、灰色、黄色、と様々な色が並んでいる。 身震いがする。 朝早くから禁断症状に襲われたくはなかったので、俺はテーブルの下に置いてあるアルミホイルを取り出して千切る。 粉の入った袋の封を開け、アルミホイルの上へと流し込んだ。量はあまり使わないよう心がけている。 テーブルの上を見たがライターが見当たらない。 苛立ちと焦りが俺を襲い始めたが、ジーンズの右ポケットに入っていたので事なきを得た。 アルミホイルの下から火で炙る。 やがて、粉から煙が立ち上ってきたので鼻を近づけて吸い込んだ。 ああ、気持ちいい。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:18:03.35 ID:A0/6n3fj0
- ある程度粉に熱を加えた後、テーブルの隅へと置いておいた。
これで部屋中に煙が充満するだろう。全てがどうでもよくなる感覚が体の芯から沸いてくる。 しかし日中をこれから過ごさなければいけないため、この朝の作業をサボるわけにはいかなかった。 ポットの脳天を押して、温かい水を少しだけコップに入れる(これらもやはりテーブルの上にある)と、 粉も少しだけコップの中へと入れる。スプーンでぐるぐるかき混ぜたあと、掬って目の高さまであげて眺めてみた。 その一杯を口に運ぶ。 幸福が世界中から押し寄せてきた。もう一杯と体が要求するが、渾身の意思で堪えた。 そして、テーブルの下から救急箱を取り出す。 中には注射器を五本ほど入れていた。今転がっているのを合わせると合計六本になる。 毎日帰ってきたらきちんと直す習慣をつけているためか、薬が回っている間にも習慣は継続されている。 針をコップへと突っ込み、吸い込んだ。 あとはこれを静脈から差し込めば、この世の一番の快楽の何倍も大きな快感を得られることができる。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:24:11.54 ID:A0/6n3fj0
- 俺はヘロイン中毒者だった。
他の麻薬は一切取り扱ったことはなかった。 自分で材料を手に入れて、自分だけで楽しむ。誰にも迷惑をかけちゃいない。 初めて使用したのはいつのことだったが覚えちゃいないが、さほど前じゃなかったのはわかっている。 長い期間使用しているようなヤツは、ほとんど死んでしまっているらしい。 だからきっと、俺がヘロインを覚えたのはそう遠くない過去のはずであった。 天国に一番近い薬。 誰かがそうやってヘロインのことを呼んでいた。 他にもいくつかの呼ばれ方をしていたが、俺はその呼称を気に入っていて、その名称が紛れもなく正しいことを認識していた。 ドラッグにも色々あるらしく、大雑把にはダウナー系だとかアッパー系だとかいう分類があるらしいが、俺の知っている世界はこれだけだった。 窓から差し込む夕陽に気がついたのは、三本目の注射器にヘロインの溶液を吸い上げた後であった。 なんだよ。損をしたじゃあねえか。 俺は一人で呟くと、手早くテーブルの上を片付けた。 三本の注射器をテーブルの中央に転がして、後は明日またすぐに作れるように置いておく。 ヘロイン溶液が入ったコップがあるから、明日は楽だろうな。なんて考えている。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:27:31.49 ID:A0/6n3fj0
- とりあえず、腕を出して静脈へと注射した。
とてつもない幸福感に包まれた俺はただぼんやりとしていた。外はオレンジになっていきはじめている。 街の色の移り変わりはまるでスライドショーのようだと前々から考えていた。 明け方は紫色で、昼は白色で、夕方が橙色、そして夜が黒色。一日中窓から街を眺めていた日に思ったことだった。 街へでも繰り出すか。 そうすれば知り合いの一人にでも出会うだろうし、一人でぶらついてそのうちにバーへと向かい、近くの席の女を誘ってホテルにでも行けばいい。 よしと考えを纏めて、俺は注射器を持って立ち上がった。 ジーンズこそきちんと履いてはいたが、上半身は薄汚れて破れたタンクトップを着ていた。 そうして体に切り傷や擦り傷があることに気がついた。顔を触ってはみたが、腫れてはいないようだった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:35:59.06 ID:A0/6n3fj0
- 季節は秋も終わりかけてきているっていうのに、一体なんでこんな服装を。
なんとか思い出そうとしたけれども、不可能だということはわかっていたので俺は何か羽織るものはないかと部屋中を見回した。 すると部屋の隅に放り捨てられていた布を見つけて拾い上げる。 薄い茶色のミリタリーコートだった。悪くないなと袖を通すと俺のサイズよりもやや大きかった。 俺のものではないことは明白で、きっと誰かから奪ったものだろう。 もちろん、誰かなんて覚えちゃいない。ポケットに残った二本の注射器を突っ込んだ。 準備が出来たので部屋に背を向けて玄関を開けようとしたときだった。 誰かの気配を感じて振り返る。誰もいない。おかしいぞ。 こんな一部屋しかなく、家具もほとんどない場所に隠れられるはずがない。気のせいか。 ドアノブを握ろうと手を伸ばすと、 「Trick or Treat?」 どこからともなく、声がした。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:41:38.34 ID:A0/6n3fj0
- 1.「ニヤついたジャック・オー・ランタン」
俺が振り向くとそこには、手に鎌を持ち、黒い三角帽子を被り、黒い衣装を身に纏った、頭がカボチャの男がいた。 /ゝ /⌒/" 、⌒ヽ | ::::::::○::;;;::○::;| /ー- 、 ヽ ,,:::、WWW;//==ヽ i /,~( ^ω^)./. |/ / ::: ..::::つO "''-;,,i ::::,,/ ヽ "''---''''/"''~ ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,, .';;;;;;;;;;;;;;;;;;;'' ( ^ω^)「Trick or Treat?」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:47:20.61 ID:A0/6n3fj0
- 浮遊しているソイツは流暢な英語を話している。
俺に向かって言っているのかと思い、そうとしかありえないと結論は既に出ていたが、口からはただあん? と呆気に取られた声しかでなかった。 ( ^ω^)「お菓子をくれるか、イタズラされるか。選べっていってるんだお」 薬を使い始めてからまだ十五分程度しか経過していないはずなので、幻覚症状はありえない。 こんな未知の存在に出会っても平静を保てていることがまだ効果が持続していることの証明でもあった。 どうでもいい。俺は街へと繰り出したかったのでそのままドアを開けて外へと出て行った。 (;^ω^)「ちょ、ちょっと待てお!」 【アパート前】 俺の住んでいるボロボロのアパートは繁華街から遥かに外れた場所にあり、 大通りから脇道へと入り裏道を抜けて路地裏を抜けたような場所にあった。 この国は巨大な都市国家なので貧富の差は凄まじい。 富裕層は眠らない街で遊び、俺たちみたいなヤツらは薄暗い場所で踊っている。 誰も彼もがうだうだとくだを巻いて過ごしていて、悪くない場所だと俺は気に入っていた。 (;^ω^)「無視すんなお! 僕はジャック・オー・ランタンだお!」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:53:03.46 ID:A0/6n3fj0
- 振り向いてみると、そう見えなくもなかった。
鎌を持ったままてをぶんぶんとばたつかせているこのカボチャ頭は、確かにジャック・オー・ランタンの格好をしていた。 だからなんだよ。 そうやって言い捨てて、俺は吹いた秋風に身を縮こまらせる。 ポケットに手を突っ込んで歩く薄暗い道。街灯なんてないし、傾いた太陽の光なんて当たらない。 そういった光の側は、ヤツらが高い建物を立てて占領してるんだ。 ジャック・オー・ランタンは俺と平行して移動している。 顔をじっと眺められているのがわかった。俺は前しか見えない目玉をつけているため、見ることはしなかった。 すると相手も意地なのか立ちふさがるように目の前へと姿を現した。 反射的に脚を止めてしまい姿をじっと見てしまうことになる。なんだよ、と言った。 ( ^ω^)「ジャック・オー・ランタンだお!」 それはわかっている。だからなんなんだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 17:56:43.29 ID:A0/6n3fj0
- (;^ω^)「お、驚かないのかお?」
揺れている声色。威厳なんてまったくありはしない。 頭がカボチャのため表情の変化なんて窺えなかったが、頭上にエモーションが浮かんでいるかのように、コイツの感情はわかりやすかった。 大体、と俺は言葉を切る。 ( ^ω^)「なんだお?」 そんなニヤついたジャック・オー・ランタンがいるものか。 笑ったような細い山なりの曲線に、丸みを帯びて釣りあがった口。マスコットキャラクターのようだった。 体をよけて街を目指して進んでいく。 もう追ってはこなかった。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:02:13.88 ID:A0/6n3fj0
- 2.「人間に好意を持っているディアボロスとウィッチィ」
【汚れた路地裏】 一つ角を曲がり、路地裏に脚を踏み入れる。 とてつもなく入り組んでいるここは外部のものが着たら確実に迷う。 そんな道はこの国にはたくさんあり、俺が知らない道もたくさんある。 表通りで犯罪を起こした人物は大体裏路地へと逃げ込むことがあり、この場所もたまに騒がしくなることがあった。 そうなった場合、俺たちは基本的に放置することにしている。 犯罪を犯したソイツが気前のいいヤツなら周りへとある程度分配するので、(それで豪遊したりすることから 足がつくことが最も多いので、そうするものたちは頭の弱いヤツと言える)ハッピーにその日は過ごせることとなる。 しかし問題は表の連中が本腰あげて捜索に踏み切ったときだ。 仰々しい鎧に身を包んだ騎士団を動かしてここへと進入しようとした態度を見せた瞬間(といってもある程度の見極めはある、 威嚇にも関わらず容易に屈してはいられない)に俺たちはその犯人をとっ捕まえて表側に送還する。 不可侵とまでとはいかないが。 お互いが極力関わりにならないよう住み分けがされていることも都市国家らしいと言えた。 「なぁなぁそこのアンタ!」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:07:29.12 ID:A0/6n3fj0
- 三叉の路地に差し掛かったときに声がした。
この道は真っ直ぐ進まなければいけない。右へ行くと行き止まりで、左へ行くとまた別の道へと続いている。 遊ぶだけなら右の道へ行ってもいいかもしれない。 俺と同じようなヤツらが群れて薬を使ったりしているかもしれない。 そう思って視線を右の道の方へと向けると、 _......_ ,.´, ヘ ,ヘヽ ノ^Yノノノハ).)ヘ ´i`ィ|.ノパ⊿゚)i`´ ノ`ノ_,´》,个》)つ `´ .(ン,∨∨ヽ ´¨.i.フi.フ¨´ 短い髪をした真っ赤な髪の毛をした悪魔が立っていた。 側頭部から小さな蝙蝠みたいな黒く鋭い羽らしきものが飛び出ており、背中にはそれの大きなものがついているようだった。 女のためかさほど大きな体躯ではなかったので悪魔というよりは小悪魔という感じであった。 俺の視線に気がついたソイツはゆっくりと俺のほうへと歩いてくる。 そして三メートルほど離れた場所で立ち止まった。 ノパ⊿゚)「アタシたちと遊んでくれないかい!?」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:14:48.21 ID:A0/6n3fj0
- アタシたち?
他にも誰かいるのか、と首を回すと、左へと続く道を塞ぐように女が立っていた。 ≦゚;;;;ヽ 彡ミ ヽ;;;;;彡; ≦゚;;;ヽ 彡ミ;;;;;;彡ミ ^ ^ __ _ , ' ヽ i Lノノハノ」_〉 |l |i川 ゚ -゚)i| /;;;;゚≧ !γリi.ハiリ,i 彡ミ ヽ;;;;;彡; |,( ll」i l i_|」 └'i,_ィ_ァ┘ 俺が視認したことを感じたのか、女の周りを飛び回るカラスが鳴き始めた。 コンクリートや反対側に入り口のある店の壁に挟まれたここでは、反響し何重にも響いて伝わる。 右側の女からは弾むような声と動作から活発な印象を受けたが、こちらの女は不気味だった。 女が動き始めた。カラスと同じ色をした長い髪を揺らしながら、女は表情を変えずに俺を見ていた。 右側から来た女の横に並ぶと、左側から来た女は口を開いた。 川 ゚ -゚)「遊んでくれないか?」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:27:22.99 ID:A0/6n3fj0
- まったく今日はどういうことだろうか。
幻覚症状なんてまだまだ現れるはずがないのに、妙なものを見てしまう。 指先でポケットの中に注射器が二本入っていることを確認する。 今朝の記憶を反芻する。きちんといつもと変わらない方法で摂取している。 ノパ⊿゚)「なぁなぁ……いいだろ?」 川 ゚ -゚)「別に減るもんじゃないじゃないか……増えるものはあるけどな」 いつの間にか両腕に絡みつかれていたので二人の顔をじっくりと見た。 とんでもない上玉であったため俺の心は簡単に傾いて、女たちの誘いへと乗ってしまう。 年下かと思わせる活発な女と、年上かを思わせる落ち着いた女。 二人は俺の腕へと体をすり寄せて下から覗き込んでくる。俺は二人を思い切り抱きしめてやった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:41:52.61 ID:A0/6n3fj0
- そしてキスをしようとすると、女たちは腕の中からいなくなっていた。
二人は俺の目の前へと移動していて非常に満足したといった表情を浮かべていた。 悪魔は両手を後頭部へとやって気持ちのいい笑みを浮かべており、魔女は緩やかに微笑んでいる。 ノパ⊿゚)「ありがとなっ! アタシたちと遊んでくれて!」 川 ゚ ー゚)「少ないがお礼を受け取ってくれ。キミのポケットに入っているぞ」 二人は身を翻してそれぞれの道へと戻っていった。 おいおい待ってくれよと呟いていた。俺はまだ何も満足してないじゃないか。 もしかすると一通りの行為を終えたのだが、ぼんやりとした意識のためか記憶から抜け落ちているのか? 服装を確かめてみるが乱れた部分などなかったので、その線は薄いと思われた。 あの女たちの遊びとは、抱きしめるだけのことでよかったのだろうか。 系統は違ったが、あれほどにまで整った顔立ちの女は見たことがなかった。 これはやはり俺の理想が投影された幻覚なのかもしれないなと思った。 再び足を動かしたとき、違和感を覚えて立ち止まった。 ミリタリーコートに何か重みを感じ、胸元になにかが当たっている感覚がある。 手をあててみると内ポケットがあり、その中に何か角ばったものが入っていた。 取り出して見ると、結構な厚みのある札束が俺の目に飛び込んできた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:51:39.89 ID:A0/6n3fj0
- 3.「礼儀正しいヴァンパイア」
寒空の下、依然変わらない汚れた路地裏を歩いているにも関わらず、心には高揚を感じていた。 わけのわからないものに出会っても対して感情は動かなかったが、それらから貰った札束には心を豊かにしていた。 生来持ったこともない大金を入れた胸元だけが温かい熱を発している。 その温度差からか、自分がいるここの雰囲気をいつもよりも感じられた。 狭く暗い裏通りの世界には鬱々とした、澱んだにおいが充満している。 人生を楽しく明るく笑って生きるには、不必要なにおいかと思われるそのにおいは、案外居心地のいいものだった。 表通りの連中はここを悪徳と罪悪に塗れているなんて言うが、実際はそんなことはない。 ただそれでも、表のほうがはるかにマシだろうけど。 地面には壊れた機械や割れた置物などのゴミが転がっていて、壁には真っ黒なパイプ管が蜘蛛の巣のように広がっている。 どこまで繋がっているのかどこに何が流れているのか、ここの住民は誰も知らない。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:08:57.63 ID:A0/6n3fj0
- 徐々に人の姿も見え始めてきた。
覚束ない足取りで俯いている、瓶を片手に持ち前から歩いてくる浮浪者を見つけたときまたわけのわからないものかと思ったが違うようだった。 浮浪者は壁へと吸い寄せられるように移動し、壁にぶつかって倒れこんだ。 俺に声をかけることはなく、反応を求める行動(上記の行動はここの住民にとっては日常茶飯事だ)を起こすこともない。 いつもの、どこにでもいる浮浪者の一人であると俺は認識してそのまま道を歩く。 ここでジャック・オー・ランタンなどと普通の人間との分類ができるようになった。 少ない情報しかないが、とりあえずは仕方がない。 俺に干渉してくるかどうか。 判断の基準はこれで間違えていないようであった。 立ち話している若者二人の横を通り過ぎて、通路で座り込んで薬を使いキマっている女を一瞥して進んでいると、うおおおおおと叫び声がした。 またかと思い振り向いてみると、どこにでもいるゴロツキがいた。 青色のコートを大切そうに抱えてナイフを構えたゴロツキが、およそ浮浪者とは思えない身なりをした男を刺したようだった。 面倒なことになった場合を想定して、俺はゴロツキの顔を覚えておくことにする。 ビニールシートの上で寝転がる爺さんの傍から離れない猫がたくさんいた。 爺さんはあれで暖をとっているのだろう。そして腹が空けば殺して食べるはずだ。 どうやって手なずけているのか気になり秘訣を聞こうかと思ったが、寝ているようなのでやめておいた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:24:48.10 ID:A0/6n3fj0
- そういえば、起きてから何も食べちゃいない。
もう少し歩くと行き着けのバーがあるので、そこで何を食べるか頭の中で考え始めた。 バーの名前はバーボンハウスと言って、バーなのか喫茶店なのか、はたまた雑貨屋なのか骨董屋なのか判断に困る外装をしていた。 扉をくぐった内装も統一感がまったくなかった。 並んだ本と酒。洒落た古着に宝飾品、地球儀、食器。 離れ小島のように並べられたテーブル、イス、食器棚、そして暖炉。 思い出したように絨毯が引かれ、その上には硝子細工のビー玉や銀製のランプが並べられている。 無秩序なのか、計算通りなのかわからないが、妙に調和したような感覚を受けるのだから不思議だった。 混沌としている裏通りに立てられている店に相応しい店だ、とここの住民には親しまれている。 店主の名前はショボンと言った。 気弱そうな表情をしているが、彼の持った落ち着いた空気と冷静な態度とふざけた言葉が俺は気に入っていた。 決して治安が良くないこの辺りに堂々と店を建てる度胸があることや、強盗を容赦なく殴り飛ばしたことも好意を持った要因だった。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:27:01.05 ID:A0/6n3fj0
- バーボンハウスへと近づくにつれて、いつもは喧騒が大きくなってくるのだが、今日はやけに静かだった。
磨き抜かれた木製のドアに、長年使い込まれた鈍い光を放つドアノブを見ると、この店はいつから建てられていたっけ、と記憶が問いかけてくる。 店名が書かれた頭上のネオンサインがぼんやりと光っている。 OPENと文字が並んだ看板を見てドアを開けようとすると、背後から音がした。 腹の底へと響く、低く鈍い音だった。 急に空中から降り立ったものが今目の前へといる。 着地時に地面が少し凹み、周囲が尖って飛び出したことから、人間であるとは考えられなかった。 ___ |::::l †:::|ゞ゚) |::::|┃([:::::〉 |::::|:::::::|::イ |::::|:::::::|:::| ィLトル'!rヘ_z_トvュ 【+ 】ゞ゚)「もし、そこのお兄さん」 見上げるほど大きな身長に、身の丈ほどの棺桶を背負った男が声をかけてきた。 血の色に充血した瞳。口元から覗く尖った牙。 ネオンに少しだけ照らされた男の外見はおおよそ人間とは思えず、ジャック・オー・ランタンや悪魔や魔女の仲間であると断定した。 【+ 】ゞ゚)「よかったら少し、私とお話してくれませんか?」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:17:44.14 ID:A0/6n3fj0
- バーボンハウスの周りには人が誰もいなかった。
店内に入れば少なくともショボンがいるはずなので、コイツが俺だけに見えるものなのかどうか判断できる。 【+ 】ゞ゚)「おっと、店の中にはまだ入らないで下さいね」 そんな心境を読まれきっている。 仕方なく俺は会話の内容はなんだと問いかけた。 【+ 】ゞ゚)「今日は何の日かご存知ですか?」 知らねえよ。大体、今日が何月何日かもわかっちゃいない。 都市国家で扱われている年号が今何であるのか、現在何年であるのか。 毎日朦朧とした意識と圧倒的な快楽の中で倦怠感を包んで生きているため、日付の観念なんてとうに吹っ飛んでいる。 【+ 】ゞ゚)「ははぁ、なるほど。そうですか」 話はそれだけか? 腹が減ったんだけどな。 頷く棺桶男にそれだけ言うと俺は後ろ手にドアノブを握った。 【+ 】ゞ゚)「今日は十月三十日です。三十、ここが重要ですよ」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:20:15.30 ID:A0/6n3fj0
- はあ、と溜め息が漏れる。全てがどうでもいい感覚が全身を支配し始める。
家からまだ一時間程度しか経っていないはずで、効果はまだ切れちゃいなかったが体が薬を欲し始めていた。 過剰摂取は死に繋がる。 そうやって誰かが言っていた。 退屈に溺れて生きるくらいなら、快楽に溺れて死ぬほうがいい。そんな言葉が口癖の男だったと思う。 口からよだれが垂れて、鼻水も流れてきた。 【+ 】ゞ゚)「ところで、血を吸わせてもらってもよろしいでしょうか?」 何もかもが面倒で、ああとうわごとのように呟いていた。 男が俺の首筋に噛み付いて血を吸い終わったとき、ようやく俺は自分が上の空であったことに気がついた。 【+ 】ゞ゚)「どうも。助かりました」 そうか。そりゃよかった。 俺は身を反してドアノブを握った。ドアを引くと店内が見える。 「ヘロインが回っている血を吸ってしまったら、吸った生物ってどうなるんでしょうね?」 知るかよ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:21:23.12 ID:A0/6n3fj0
- 4.「続・ニヤついたジャック・オー・ランタン」
【バーボンハウス】 調理器具の並ぶ小さな厨房と、そこに直結したカウンターテーブル。 店主の背後には酒瓶が棚にずらりと並んでいる。 内装は何も変わっておらず、テーブル席には誰もいなかった。 ドアベルが鳴ったことに気がついたショボンがこちらを見ている。 カウンター席に俺は腰を下ろした。 (´・ω・`)「や、昨日は大丈夫だったかい?」 何がだよ。 そう言うとショボンは眉を寄せた。 (´・ω・`)「また打ったのかい?」 毎日打ってるよ。 ポケットの中に手を突っ込み、注射器が二本あることを確認する。 無性に打ちたかったことを思い出し、一本取り出した。 (´・ω・`)「ちょっと、ここで打つ気かい? また昨日みたいなことはやめてくれよ?」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:22:46.14 ID:A0/6n3fj0
- 昨日バーボンハウスでなにをしたかなんて、覚えていなかったので、返事をせずに静脈目掛けて針を刺す。注入。
何物にも代えがたい強烈な快感がやってくる。オーガズムの数万倍の快感を伴う射精を全身の隅々の細胞で行っているような状態。 人間の経験しうるあらゆる状態の中で、ほかの如何なるものをもってしても得られない最高の状態が体中に満ち溢れた。 天国に一番近い薬を摂取することは、約束された安堵だった。 注射器をポケットにしまいこみ、最高の陶酔にまみれる。 (´・ω・`)「やれやれ……まあ、いいけどさ」 (´・ω・`)「で、何飲むの?」 なんでもいいよ。 ショボンは困ったような顔をしたが、やがて背後の酒瓶を掴み取り氷を入れたグラスに注いだ。 この場所では純粋な酒なんてほとんど手に入らない。純度の高い薬も手に入り辛い。 それなのにショボンはそういった高価なものを色々と持っていた。内装からそれはもう窺い知れる。 どうして表の住民にならないんだ、と昔に聞いたような気がする。 ショボンがなんて返答したか、覚えちゃいない。返事をしたのかどうかすら覚えていなかった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:23:43.57 ID:A0/6n3fj0
- 酒を呷る。
味なんてわかっちゃいなかったが、とりあえず飲めればそれでよかった。 ショボンも自分用のグラスを用意して飲んでいた。 たびたび、今日は客が少ないからと言って飲むところも、俺は気に入っていた。 ( ^ω^)「それ、そんなに美味しいかお? お菓子のほうが美味しいのに。勿体ないお」 いつの間にか俺の隣の席にジャック・オー・ランタンが座っていた。 浮いているコイツに座るという表現が正しいかどうかわからなかったが、鎌を持ってじっと俺を眺めている。 (´・ω・`)「どうかした?」 別に。ただジャック・オー・ランタンが見えるだけだ。 (´・ω・`)「それは面白いね。でも、ハロウィンは明日だよ?」 ハロウィンは明日らしいぞ。だからもう帰れ。 ( ^ω^)「そこなんだお! そこに問題があるんだお。聞いてくれないかお?」 店の表で吸血鬼にも同じようなことを言われた。勝手に話せよ。 ショボンは誰と話してるんだ、と聞くこともなく、ジャック・オー・ランタンに反応することもなかった。 ヘロイン中毒者が幻覚をみてなにかを呟いているとしか認知されていないことがわかったし、それが正しい反応だとも思った。 ( ^ω^)「ハロウィンは明日だお。でも、ここのみんなはそんなことを知らないお」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:24:53.65 ID:A0/6n3fj0
- そりゃ興味ないからな。表通りにいけよ。きっと賑わってるぞ。
アイツらはことあるごとに騒ぎたがるからな。外国の文化を取り入れてみたり、会社の策略に乗ってみたりしてさ。 記念日ってのもあったっけ。いちいちよく覚えてられるよな。こっちは誕生日すらわかんないっての。 ( ^ω^)「そうなんだお! やはりそこに問題があるんだお!」 ( ^ω^)「ハロウィンで賑わってもらうのは僕らは嬉しいお。だって美味しいお菓子がもらえるんだお!」 ( ^ω^)「ここは大きな国で、そりゃあもうすごい数のお菓子を期待したお」 ( ^ω^)「ところが、三分の一近くはハロウィンになんてまったく興味がないんだお」 ( ^ω^)「そう、ここ路地裏の人たちだお」 まくしたてるジャック・オー・ランタン。 俺は相槌もなにも打たず、ただじっと聞いていた。ショボンはグラスに酒を注いでいる。 ( ^ω^)「明日に備えていた僕らはふてくされたお。もっと騒いで欲しいんだお。だってお化けだお? イタズラされちゃうんだお?」 ( ^ω^)「でも、そんなことはどうでもいい連中ばかり。というか、気にかけてすらいなかったお」 ( ^ω^)「イタズラしたらこっちが殺されそうだったり、お化けなんかよりももっとヤバイもの見てる連中だらけだお」 違いない。思わず笑ってしまう。 ( ^ω^)「すると明日へのやる気なんて全部吹き飛んで、街中にみんなどこか行っちまったお」 そうかい。それは大変だな。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:25:41.01 ID:A0/6n3fj0
- ( ^ω^)「何人かは連絡がとれるんだお。それはいいお」
( ^ω^)「けど、あまりにも人数が少ないおこのままじゃ明日にみんなからお菓子をもらえないお!」 ( ^ω^)「この国は大きいから、少ない人数じゃイタズラだって仕掛けるのが大変なんだお!」 お菓子をくれなきゃイタズラするぞ。それは恐喝じゃないのかと思ったが何も言わない。 お金をくれなきゃ殴り飛ばすぞ。毎日みんながやっていることで、それで生活しているものもいる。 ( ^ω^)「で! 聞くお!?」 ( ^ω^)「Trick or Treat? Please help me!」 Let's Trip. そう言って俺はポケットから残り一本の注射器を手渡した。 緊張も不安も全て吹き飛ぶ最高の薬だぜ。 しかし、天国にも地獄にもいけないジャック・オー・ランタンはどこに行くんだろうか。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:26:23.81 ID:A0/6n3fj0
- 5.「続・礼儀正しいヴァンパイア」
ジャック・オー・ランタンはヘロイン溶液の入った注射器を受け取らず、ただぼうっと見ていた。 どうしたのかと声をかけると、 ( ^ω^)「僕、血管とかないからどこから注射したらいいのかわかんないお」 カボチャにでも刺せばいいんじゃないか? 手をあげて突き刺そうとするとジャック・オー・ランタンは慌てた様子でどこかへと消えていった。 (´・ω・`)「おいおい、こぼさないでくれよ」 そんなもったいないことするかよ。 ポケットの中にしまいこむ。 (´・ω・`)「ヘロインじゃなくて、酒だよ。さっきから手振り回してさ、グラスが落ちそうなんだよね」 すまんと謝って酒を口に運んだ。 酒を飲み干してそのまま氷も含む。 じゃあ行って来る。 (´・ω・`)「どこに?」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:28:54.11 ID:A0/6n3fj0
- 助けてって言われちまったからなあ。
呆気にとられているショボンを無視して、内ポケットから札を一枚引き抜いてカウンターに置く。 何かを言う前に釣りはとっとけと言い捨てて、氷を噛み砕いて俺は店を出た。 店の前には吸血鬼が立っていた。 待ち伏せかよ。じっと待ってたのか? 【+ 】ゞ゚)「いえ、ジャック・オー・ランタンに何か言われませんでした?」 助けてと言われた。 【+ 】ゞ゚)「助けるつもりですか?」 つもり。 【+ 】ゞ゚)「相手の外見はわかっていますか?」 俺に絡んでくる生物。 【+ 】ゞ゚)「それでは少し大雑把すぎます。ただの人間を捕まえても意味がありません」 これを、と吸血鬼は棺桶の中から緑色の火の玉を取り出した。 ウィル・オ・ウィスプだった。これも幻覚だろうか。持っても熱くないのだろうか。 【+ 】ゞ゚)「ウィル・オ・ウィスプです」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:29:50.26 ID:A0/6n3fj0
- なんて考えていたにも関わらず、俺は自ら手を伸ばして受け取った。
熱さは感じない。手のひらの上に置かれた火の玉をじっと眺めていた。 【+ 】ゞ゚)「宙に投げてください。貴方のまわりをぐるぐる回って、それがハロウィン参加者を集めます」 【+ 】ゞ゚)「ただし、みんなが従順なわけではないので、気をつけてくださいね」 どうして、お前たちが自分で集めないんだ? 【+ 】ゞ゚)「構って欲しい人間に探されているほうが、嬉しいに決まってます」 なるほどなあ、なるほど。 小悪魔と魔女のことが脳裏に思い浮かぶ。 今度こそ、俺が満足する出来であってほしいものだ。 あれほどの女を二人も抱けるのだったら、金は返してもいい。 【+ 】ゞ゚)「みんなはきっと、表通りにはいないと思います」 【+ 】ゞ゚)「それじゃあ、お達者で」 ウィル・オ・ウィスプを軽く放り投げると、俺の体の回りをぐるぐると飛び回り始めた。 目の前には、緑色の人魂の軌跡が残る。 レッツ・トリップ。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:31:33.24 ID:A0/6n3fj0
- 6.「自己中心的なゴーストとビースト」
「何よ! 私は幽霊の女王なのよ!?」 ヒステリックな叫び声が聞こえたのはバーボンハウスを出て街へと歩きはじめて数分のことであった。 表通りや街にはハロウィン参加者はいないと言われたが、まだまだ街へは距離がある。 様々な方向へと枝を広げた路地裏から抜け出すのは容易ではない。 まるで人生だ。暗いところへ落ちれば落ちるほど、上がってこれなくなる。誰の言葉だったか。 人生は道とよく例えられるので、大して上手くもない二番煎じだなとややガッカリした。 俺は叫び声の方向へと歩いていく。 壁と壁の細い隙間から声は聞こえたようだった。 人間がギリギリ通れるぐらいのスペースしかないそこに、幽霊がいた。 /⌒ヽ /ξ゚⊿゚)ξ | J J ∠__ノ 俺は壁に手をついて隙間へと目を押し当てる。 ウィル・オ・ウィスプが隙間へと入っていくと、ほとんど真っ暗な隙間が緑色の炎に照らされた。 ξ゚⊿゚)ξ「あ! アンタどうしてウィル・オ・ウィスプを持ってるの!?」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 07:15:41.02 ID:v15nb2/t0
- ごめんなさい、ちょっと投下の時間が取れそうもないです
このスレは落としちゃってください また後日立て直して投下しますので
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