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俺が安価で( ^ω^)ブーン系小説を書くようです |
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:38:45.07 ID:wiKd/WtG0
- 眠れないんだ
お題をくれ>>4
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:39:48.26 ID:8uFfYJPa0
- 担任教師
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:40:52.09 ID:wiKd/WtG0
- >>4
あいわかった ジャンルと地の文ありなし指定してくれ >>8
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:42:35.56 ID:KpPKJiLV0
- シリアス
なし
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:42:43.14 ID:KpPKJiLV0
- >>7
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 01:43:16.01 ID:wiKd/WtG0
- >>8
あいあい それじゃやるかー
- 13 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 01:53:56.22 ID:wiKd/WtG0
- ― 昼休み ―
( ゚∀゚)「よっしゃ! 今からサッカーやりに行こうぜ!」 (,,゚Д゚)「おう! 俺がセンターフォワードだからな!」 ( ^ω^)「は? クラス一の俊足の僕を差し置いてエースとか有り得ないですしおすし」 ガヤガヤ ( ・∀・)「……」 ( ・∀・)「ふう」 (`・ω・´)「ため息なんか吐いてどうしたんだ、モララー」 ( ・∀・)「……先生」 (`・ω・´)「クラスの男子は皆グラウンドに出て行ったぞ? お前は」 ( ・∀・)「やめてください」
- 16 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 01:57:14.69 ID:wiKd/WtG0
- (`・ω・´)「……」
(`・ω・´)「なあ、モララー」 ( ・∀・)「……なんですか」 (`・ω・´)「転校してきたばかりで周囲と壁があるのは分かる」 (`・ω・´)「しかしだな、もう一月近くが経つのに、自分から馴染もうともしないのは」 ( ・∀・)「やめてください」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「親ですか」 (`・ω・´)「なんだ?」 ( ・∀・)「親から僕の生活態度について探りを入れるよう、そう言われたんですか?」 (`・ω・´)「……」
- 19 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:02:15.19 ID:wiKd/WtG0
- (`・ω・´)「……親御さんは、お前が」
(`・ω・´)「新しい学校に慣れたかどうか気にかけているんだぞ」 ( ・∀・)「うちの親がですか」 (`・ω・´)「そうだ。お前のことを心配して」 ( ・∀・)「やめてください」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「僕、この小学校で七校目です」 (`・ω・´)「それは……聞いている」 ( ・∀・)「どういうことだか察せますか?」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「簡単でしょう。全部親の都合ですよ。仕事上の」
- 22 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:08:56.28 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「自分の都合で何度も振り回しておいて」
( ・∀・)「今更心配だなんて馬鹿げてる話じゃないですか」 (`・ω・´)「自分の都合だからこそ、責任を感じてるんだぞ。お前もその想いを」 ( ・∀・)「やめてくださいよ」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「第一、家での僕は放っておいているくせに、学校での僕は気になるだなんて」 ( ・∀・)「なんなんですかそれって。変じゃないですか」 ( ・∀・)「中での僕より外での僕のほうが重要なんですか」 ( ・∀・)「そういうものなんですか? 親って」 (`・ω・´)「父親は忙しいのか?」 ( ・∀・)「そうですよ。これだけ頻繁に転勤してるんだから、そうに決まってるじゃないですか」
- 26 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:15:55.45 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「たまに早く帰ってきても」
( ・∀・)「ちっとも僕のことなんか相手にしてくれませんよ、父さんは」 ( ・∀・)「シゴトニンゲンってやつですか」 (`・ω・´)「お前の言いたいことはわかるが……けどな」 (`・ω・´)「自分の子供のことを案じない親なんていないんだ。だから」 ( ・∀・)「我慢しろってことですか」 (`・ω・´)「そういうわけでは……」 ( ・∀・)「いつまで我慢すればいいんですか、僕は」 ( ・∀・)「そのくせ家でさえ一人の人間に、学校では一人でいるな、だなんて」 ( ・∀・)「無茶な要求だと思いませんか」
- 28 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:23:07.89 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「先生、だから僕は家の中に家があるんですよ」
(`・ω・´)「……どういうことだ?」 ( ・∀・)「『僕の家』の中に『僕』の『家』があるんです」 ( ・∀・)「一人の空間なんです。僕だけの」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「学校にいる時もそうですから」 ( ・∀・)「この教室はとても広いかもしれないけれど」 ( ・∀・)「僕が過ごしていこうと決めたスペースは、もっと狭くて、遮断されてて」 ( ・∀・)「個人的な場所なんです」 ( ・∀・)「そこが僕にとっての教室です」 (`・ω・´)「……」 ( ・∀・)「だからもう……放っておいてください。僕は先生の教室の中にはいません」 ( ・∀・)「僕は先生にとって無関係で、先生も僕にとっては無関係ですから」
- 30 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:29:59.79 ID:wiKd/WtG0
- ― 保健室 ―
('、`*川「防衛機制ですね、おそらく」 (`・ω・´)「どういったものなんですか? モララーの場合は」 ('、`*川「ううん、私もカウンセリングが専門というわけではありませんし」 ('、`*川「話に聞いただけですから断定はしかねますが」 ('、`*川「抑圧にあたる自我の防衛機制ではないかと」 (`・ω・´)「そうですか……」 ('、`*川「それにしても難しい問題ですね」 ('、`*川「他人に心を開かない生徒でしたっけ」 (`・ω・´)「ええ。いやなんとかしようとは思うのですが」
- 34 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:39:04.60 ID:wiKd/WtG0
- ('、`*川「難儀ですよ。防衛機制というものは誰にでも備わっているものですから」
('、`*川「その生徒の場合は、まさしくそれが壁という形になって現れているわけですが」 (`・ω・´)「壁?」 ('、`*川「はい。ある特定の空間の中に、自分で仕切りを設けて閉じこもっている」 ('、`*川「シャキン先生の話ではそのようでしたが」 (`・ω・´)「ああ……確かにそうです。あの子は壁を作っている」 ('、`*川「防衛機制とは別名、心の壁とも言いますからね」 (`・ω・´)「心の壁、ですか」 ('、`*川「ええ。フロイト派とユング派の違いと言ってしまえばそれまでですが」 ('、`*川「ですが、それがなければ心が壊れてしまいます」 ('、`*川「モララーくんは心を傷つけない手段を自分の中で築いているんでしょうね」
- 36 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:51:04.54 ID:wiKd/WtG0
- ― 夜 ―
ピンポーン ('A`)「はいはい。どなたですか……」 (`・ω・´)「夜分遅く失礼します」 ('A`)「おや、あなたは確か……ああ、息子の担任の?」 ('A`)「なんの用ですかね。うちの息子ならとっくに寝てますが……」 (`・ω・´)「いや……今日はお父さんとお話がしたくて参りました」 ('A`)「私と?」 (`・ω・´)「はい」 ('A`)「はあ……まあ、いいですけど。上がってください」 (`・ω・´)「……失礼します」
- 37 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 02:55:34.12 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「どうぞ、粗茶ですが」
(`・ω・´)「いただきます」 ('A`)「……あの」 (`・ω・´)「いえ、それはこちらから話させていただきます」 (`・ω・´)「お宅の息子さんのことで、少し」 ('A`)「やっぱりまだクラスに馴染めてませんか……」 ('A`)「ああ、今度もか……」 (`・ω・´)「そのことなのですが、お父さん」 ('A`)「はい?」 (`・ω・´)「モララーくんはどうも、自分の世界から出てこないようなのです」
- 39 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:04:10.45 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「……と、言いますと?」
(`・ω・´)「モララーくんは家の中に家があると答えていました」 ('A`)「そりゃあ、どういう……」 (`・ω・´)「家の中でさえ一人だと感じているんです」 (`・ω・´)「父親が少しも構ってくれないから」 ('A`)「……」 (`・ω・´)「あなたとの間に疎外感を覚えているんでしょう」 (`・ω・´)「そう語ってくれました」 (`・ω・´)「そうやって自分から壁を作ることが当たり前になってしまっているから」 (`・ω・´)「学校でも壁の中に自らを閉じ込めてしまっているんだと思います」 (`・ω・´)「きっと……彼は寂しいのでしょう」 (`・ω・´)「孤独に浸りすぎて、それでも耐えるために孤独を無理に抑えつけています」
- 40 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:10:23.36 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「そうですか……」
('A`)「……私は、学校のことは学校で、と思っていました」 ('A`)「それがどこの学校でもうまくいかず……」 ('A`)「……そうか、自分自身が原因だったのか……」 (`・ω・´)「そう自分を責めないでください。お父さんだって精一杯だったはずでしょうから」 ('A`)「……私はどうすればいいのでしょう?」 (`・ω・´)「普通に親子として接してあげてください」 (`・ω・´)「それが一番効果的だと考えています」 ('A`)「父親らしく……ですか」 (`・ω・´)「はい!」 (`・ω・´)「そうすればきっと、モララーくんも心を開くことを知ってくれるはずです」
- 43 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:18:38.34 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「……分かりました」
('A`)「もっと息子とコミュニケーションを図ることにします」 (`・ω・´)「お願いします」 ('A`)「いえ、こちらこそ気づかせてもらいました」 ('A`)「……息子のために、いや、うちの家庭のためなんかに」 ('A`)「わざわざ出向いていただいて申し訳ないです」 ('A`)「ここまでしてくれたのは初めてです」 (`・ω・´)「担任教師として当然のことですから」 (`・ω・´)「僕も校内では、出来る限り息子さんが周りと打ち解けられるよう努めますので……」 ('A`)「頼みます、先生。今日はありがとうございました」 (`・ω・´)「こちらこそ。それでは、失礼します」 (`・ω・´)「おやすみなさい」
- 44 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:22:08.38 ID:wiKd/WtG0
- ガチャン
(`・ω・´)「……」 (`・ω・´)「……ふう、話の分かってくれる親御さんで良かった」 (`・ω・´)「やはり、自分の子供が大事じゃない親なんて、この世にはいないんだな」 (`・ω・´)「きっとこれでモララーの心の壁は取り除かれるだろう」 (`・ω・´)「自分一人だけの教室から出てきてくれるはずだ」 (`・ω・´)「そうなれば、もう無関係なんて言わせられないな」 (`・ω・´)「ようやくあいつも僕の教え子になってくれるってことか」 (`・ω・´)「ハハハ」 (`・ω・´)「……」 (`・ω・´)「今夜は少し飲んで帰るか……」
- 45 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:25:49.45 ID:wiKd/WtG0
- ― 一ヵ月後 ―
ζ(゚ー゚*ζ「出席をとりまーす。ギコくん」 (,,゚Д゚)「はい」 ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュくん、ブーンくん」 ( ゚∀゚)「へーい」 ( ^ω^)「はいだお!」 ζ(゚ー゚*ζ「ええと、モララーくん……」 ζ(゚ー゚*ζ「……」 ζ(゚ー゚*ζ「先生、モララーくんいませーん」
- 46 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:31:29.04 ID:wiKd/WtG0
- ζ(゚ー゚*ζ「今日も休みですか?」
(`・ω・´)「ああ……今朝連絡があった」 ζ(゚ー゚*ζ「わかりましたー。じゃ、次。クーちゃん……」 (`・ω・´)「……」 (`・ω・´)(……これで三週間連続で欠席か) (`・ω・´)(どうしてだ!? 父親は今までの態度を改めたと話していた) (`・ω・´)(なのに、なぜ……) (`・ω・´)(……それにしても……) (`・ω・´)(クラスの誰もが、モララーの不在を気にしていない) (`・ω・´)(いくら親交がないとはいえ、皆冷たいな……)
- 48 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:36:09.37 ID:wiKd/WtG0
- ― 保健室 ―
('、`*川「今日も欠席でしたか」 (`・ω・´)「……先生。教えてください」 (`・ω・´)「何がいけなかったのでしょう?」 (`・ω・´)「モララーは……どうしてし登校を拒否しているんでしょうか」 (`・ω・´)「自分には皆目見当もつきません……」 ('、`*川「……」 ('、`*川「私の推察になりますけれども」 (`・ω・´)「構いません。なにか糸口になるなら、なんでも」 ('、`*川「それでよければですが……」 (`・ω・´)「お願いします!」
- 51 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:45:50.63 ID:wiKd/WtG0
- ('、`*川「心の壁、については以前教えましたよね」
(`・ω・´)「はい。モララーが周囲の人間に対して作っているという」 ('、`*川「あの時は、簡潔にまとめたので説明が不十分でしたけど」 ('、`*川「心の壁とは本来内側に芽生えるものなのです」 (`・ω・´)「内側? 外側じゃなくて?」 ('、`*川「はい。他者との間にある隔たりは、それ自体は己の目の前に存在しているように感じますが」 ('、`*川「しかし実際には通じ合いを拒否するもの……心を覆っているものなんです」 (`・ω・´)「外部にある壁はイメージとしての壁に過ぎない、ということでしょうか?」 ('、`*川「そういった解釈で問題ないと思います」 ('、`*川「そして内にて構築された心の壁とは、文字通り心を守るもの……」 ('、`*川「自分の中にある自分を守るためのものなのです」
- 53 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:54:04.09 ID:wiKd/WtG0
- (`・ω・´)「……若干、意味が捉えにくいのですが」
('、`*川「本質と言い換えてもいいかも知れません」 ('、`*川「いずれにせよ、心の壁はそうした脆弱な部分を保護するためにあります」 ('、`*川「モララーくんの場合、それが突然崩れてしまったから……」 (`・ω・´)「おかしくなってしまったのですか? そんな馬鹿な!」 ('、`*川「不安定になった……と呼んだほうが適切ではないでしょうか」 ('、`*川「壁は外敵から守るためだけではなく」 ('、`*川「中身が流れ出るのをせき止める役目も果たしていますから」 (`・ω・´)「……」 (`・ω・´)「……自分はペニサス先生に相談して、心の壁こそが障害だと考えた」 (`・ω・´)「だから……」
- 54 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 03:59:32.59 ID:wiKd/WtG0
- ('、`*川「その考え自体は間違ってないと思います」
(`・ω・´)「ならどうして!」 ('、`*川「ですが壁は外からじゃなく、内から壊すもの」 ('、`*川「心が定まっていないまま晒してはいけません」 ('、`*川「壁は境界です。まずは境界線上に立たせるべきでした」 ('、`*川「そうすれば壁は見えず、自分と相手の心だけを冷静に眺めることが出来た」 (`・ω・´)「……」 (`・ω・´)「なんてことだ……」 ('、`*川「カウンセリングをしているとふと気づきます」 ('、`*川「子供は大人よりも繊細だと。大人が考えているよりも、ずっと」
- 56 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 04:10:07.56 ID:wiKd/WtG0
- (`・ω・´)「……分からない。分からないんだ」
(`・ω・´)「長年教師をやっているというのに、子供の心というものが……」 (`・ω・´)「本当は何も理解できちゃいなかった……」 ('、`*川「……昔、心の壁を扱った映画で『ザ・ウォール』という作品がありました」 ('、`*川「そのラストは主人公が壊してしまった心の壁の前で」 ('、`*川「火炎瓶を拾った子供が中身の臭いを嗅ぐのですが」 ('、`*川「臭気に顔をしかめて捨ててしまうというシーンで終わります」 (`・ω・´)「……それがどういった関係があるんですか」 ('、`*川「子供の頃は火炎瓶……壁を壊す道具になんか興味がないのに」 ('、`*川「大人になると変わってしまうんです」 ('、`*川「心の壁を取り払おうと考えるのは大人の思考なんです」
- 58 名前:教室の中の教室のようです:2012/01/11(水) 04:17:02.49 ID:wiKd/WtG0
- ('、`*川「子供は壁があることに疑問を持たない」
('、`*川「ですから子供って意外とドライなんでしょうね」 (`・ω・´)「ああ……」 ('、`*川「防衛機制も、主に幼年期から少年期にかけて働くとされます」 (`・ω・´)「……自分は、一人よがりだったというのだろうか……」 (`・ω・´)「……先生、教えてください」 (`・ω・´)「この先、自分はどうすればモララーを立ち戻らせられるでしょうか?」 ('、`*川「今の段階では、なんとも……ただ、一つだけ断言できることがあります」 (`・ω・´)「なんですか!?」 ('、`*川「大人の中の子供と、子供の中の子供は別物です」 (`・ω・´)「……」 ('、`*川「お忘れなきよう」 (終)
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:18:07.25 ID:wiKd/WtG0
- まず一作
こんな感じで5~20レスくらいで書こうと思う お題くれ>>65
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:26:44.81 ID:wiKd/WtG0
- あー>>64で
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:26:56.72 ID:zRKHgc+10
- フットサルかな
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:28:15.06 ID:wiKd/WtG0
- >>64
あいわかった ジャンルと地の文ありなし指定してくれ >>66
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:32:01.10 ID:zRKHgc+10
- ほのぼの地の文ありでお願いします
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 04:33:29.27 ID:wiKd/WtG0
- >>66
はーい やるかー
- 68 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 04:46:22.65 ID:wiKd/WtG0
- 俺の名はドクオ。
中学時代は強豪サッカー部のエースストライカーとして鳴らしたが、 不慮の病からくる持久力の激減によって前半の中盤ほどまでしかプレーできなくなり、 将来を渇望されていながらもやむなくサッカーの道を諦めることになった。 ちなみに本気を出せば今でも華麗な足捌きを披露することが出来るが 無理をすると命に危険性が及ぶため歯噛みするしかない。 という設定で日々を過ごしている普通の高校生である。 ( ´∀`)「というわけで今年のクラスマッチの種目はフットサルに決まったモナ」 (,,゚Д゚)「おいドクオ! お前確か元サッカー部だったよな!」 (´・ω・`)「フットサルは制限時間四十分だから、ハーフだけなら出場できるね!」 ミ,,゚Д゚彡「期待してるぞ!」 ('A`)「えっ」
- 71 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 04:54:19.23 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「というわけで練習することにしました」
( ^ω^)「なんで僕が付き合わなくちゃいけないんだお」 ('A`)「お前しか中学時代からの同級生がいないからだ」 わざわざ大枚はたいて夜の市民グラウンドを借り切ったのだから、むしろ感謝してもらいたい。 説明が遅れたが、この高めに見積もって中の下がいいとこなルックスの男はブーン。 俺の厨二病設定を知る数少ない友人である。 ('A`)「薄幸の天才キャラで売ってるんだから失望させるわけにはいかん」 ( ^ω^)「それを見栄というんだお。いいからボール蹴ってみるお」 持参したボールをブーンがこちらに寄越す。 空気がパンパンである。蹴飛ばせばどこまでもフライハイしていきそうなオーラを放っている。 ('A`)「まあ見てな……!」 これが俺の黄金の左足(設定上)だ。
- 72 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:01:38.42 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「たあぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」」
('A`)ケリッ 飛距離にして四メートルといったところか。 その地点でバウンドして、ボールはどっかに転がっていった。 てんてんという虚しい音だけが夜の闇を切り裂くこともなく俺の耳をいつまでも打っていた。 ( ^ω^)「しょぼ」 ('A`)「これはやばい……ブランクがある設定を追加するか……いやもう遅いか……」 ( ^ω^)「ってかなんで左足で蹴ったんだお。お前思いっきり右利きじゃないかお」 ('A`)「設定の都合上、俺はレフティなんだ」 そこだけは譲れない。 ( ^ω^)「先が思いやられるお……」 ('A`)「ふっ、まあそう頭を抱えるな。俺には秘策がある」 そう、これでも俺は下調べは十分にするタイプなのだ。設定厨のサガである。
- 74 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:08:29.41 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「まずフットサルはサッカーと違ってコートが狭い!
つまり長距離を全力疾走することもなければドリブルで運ぶこともない! おまけにロングキックをすることもないのだ!」 要はごまかしが効くのだ。ある程度は。 ('A`)「更にはラフプレーもサッカーより厳しく取り締まられる。 これでフィジカル的な問題は概ね解決される!」 ( ^ω^)「知識は」 ('A`)「そんな初歩段階は完璧だ。俺はルールブックと睨めっこするのは得意でな」 設定ノート二百ページ分を書き上げるために、参考資料はその百倍のページ数を要している。 ルールブックごとき何ら苦痛ではない。 ( ^ω^)「……つまりあとは技術だけってことかお」 ('A`)「そうだ」 ( ^ω^)「一番駄目そうなのが残ってんじゃ意味なくね? なにあのキック。あれでどうすんだお」
- 75 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:14:37.89 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「うーむ、確かに」
('A`)ケリッ ('A`)「今の時点ではこれが限界だ」 三メートルしか飛ばなかったのでむしろ閾値が下がっている。 ( ^ω^)「クラスマッチまでもうあと一ヶ月ないお。来月の頭だお。 人間そんな急速に成長しないお。諦めて無様な姿晒して来いお」 ('A`)「いやだ! 俺は翼を奪われた天使キャラでいきたいんだ!」 ( ^ω^)「くっさ」 ('A`)「だから毎日練習に付き合え。このグラウンド今月いっぱいまで押さえてるから」 ( ^ω^)「えー……」 露骨に嫌そうな顔をされると流石の俺も心が痛い。 ( ^ω^)「というかお前はどんだけ金を使ったんだお……」
- 77 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:20:33.08 ID:wiKd/WtG0
- その日から俺とブーンの猛特訓が始まった。
('A`)「俺の左足でゴールに虹を掛けてやるぜ!」 ( ^ω^)「届いてないお」 ('A`)「ならば目にも止まらぬ高速ドリブル!」 ( ^ω^)「目どころか蝿が止まるお」 ('A`)「あーもう疲れた。休もう。自販機行くぞ自販機」 ( ^ω^)「スタミナ不足の設定だけは真実なのがイラつく……」 ('A`)「マッチおごるわ」 ( ^ω^)「わーい」 特訓は過酷を極めた。 ('A`)「あーこれビタミン吸収してる。俺の体ビタミンで満たされてる」 翌朝のおしっこは黄色かった。
- 79 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:27:20.16 ID:wiKd/WtG0
- そしてクラスマッチ当日。
('A`)「左足が疼いてきたな……」 朝からそんなことばかり呟いている。 (,,゚Д゚)「頼りにしてるからな、ドクオ!」 ('A`)「任せときな。この命尽きても、お前らを優勝に導いてやるぜ」 o川*゚ー゚)o「きゃードックンかっこいいー!」 ξ゚⊿゚)ξ「抱いて! 夜通し抱いて!」 先程の黄色い声援は俺の脳の内部に住んでいる空想上の女ファンだ。 平たく言ってしまうと脳内彼女である。 ぶっちゃけオナペットである。 ついでに俺はベンチスタートで、チームが窮地に陥ったら後半から投入されることになった。 救世主キャラも悪くない。
- 80 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:36:52.48 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「しっかし……」
うちのクラスが思った以上に強い。 基本フットサルは交代自由なのだが俺だけ出番が必要ないほどに強い。 ('A`)「暇だこれ」 こうなるとクラスメイトたちに設定を用意したくなるのが、そう、俺だ。 (,,゚Д゚)「いくぞショボン! 上がれ上がれ!」 まずはギコ。こいつは小学校時代は弱小クラブで下積みしていた叩き上げ。 努力が実り名門中学に進むが周りのレベルに挫折を経験し、今に至る。 特技は正確無比なパスワーク。泥臭い風貌とは裏腹に、精密機械の異名を持つ。 (´・ω・`)「任せて!」 そのギコからパスを受けたのがショボン。 神童と呼ばれユースでプロ候補としてプレーしていたが、妹の入院を契機にサッカーを断念。 今は毎朝の新聞配達で妹の治療費を稼ぎながら平凡な高校生活を送っている。 しかし妹からは「お兄ちゃん、サッカー続けて。ピッチの上にいるお兄ちゃんが見たい」 と懇願され葛藤している。他を寄せ付けぬ快足の持ち主である。
- 82 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:45:48.92 ID:wiKd/WtG0
- ミ,,゚Д゚彡「ゴールは俺に預けろ! お前らはガン攻めしな!」
そして我がチームの守護神フサ。恵まれた体躯を活かしたキーパーだ。 サッカー経験は限りなくゼロに近いが、偶然遊びでプレーしていたところプロのスカウトの目に止まる。 だが本人はあくまでも「サッカーは遊び」と割り切っているためにそちらには興味はなし。 有している才能はトップクラスであるだけに、そのスタンスを惜しむ声が多い。 そしてこの個性的なメンバーを束ねるのが、この夭折の天才、ドクオ"ザ・ワンダーメイカー"。 ('A`)(やべぇ妄想止まらん……) 夭折が死者に対して使う言葉であると知るのはこれより後の話。 そんなわけで一度も試合に出ることなく決勝にまで到達してしまった。 不運キャラなのに実情は幸運だった。 (,,゚Д゚)「なあ、ちょっと思ったんだけど……」 (´・ω・`)「なに?」 (,,゚Д゚)「ドクオいらなくね? 俺ら十分強くねーか?」 身内に不穏分子現る。
- 83 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:54:10.53 ID:wiKd/WtG0
- ('A`)「えっ、ちょ、おま」
(,,゚Д゚)「ピンチすらないし……」 それは本来なら歓迎すべき展開なのだが、しかし。 ('A`)「いやいやいや。精神的支柱となってる部分もあるんだぜ? 俺がいるからのびのびプレーできるみたいな」 ( ^ω^)「自分で言うかね……」 万年ベンチキャラが何かほざいているが気にしない。 とにかく大口叩いている以上、活躍しないまま終わるというのも切ない。 一瞬でもいいから羨望の眼差しで見られたい。 颯爽とピッチに入場する俺。 そこに浴びせられる万雷の拍手。 自然に沸き起こる歓声。ファンタジスタの登場に大地が揺れる。天が鳴く。 ('A`)(はっ、いかん。軽くイキそうになった) とにかく経験してみたいのだ。そういうアレ的な感覚を。
- 85 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 05:59:13.25 ID:wiKd/WtG0
- (´・ω・`)「まあ、次は決勝。強い相手だろうからドクオに頼ることになりそうだ」
ミ,,゚Д゚彡「俺らとしちゃあ、持病持ちのお前に無理はさせたくないんだが……」 (,,゚Д゚)「確かにな……出来ることなら俺たちでなんとかしたいって気持ちもあるんだ」 ('A`)「お前ら……」 仲間たちの言葉に、胸に熱いものがこみ上げてくる。 そうだ。こいつらは俺をこんなにも心の拠り所にしてくれている。全幅の信頼を置いている。 俺が皆の中心にいる。 なぜなら俺は天才だから。 俺は――誰よりも強いから。 ('A`)(ハァ……ハァ……気持ちが良すぎる) ( ^ω^)「あーダメだこれ。現実と妄想の区別がついてないお」 永遠の補欠キャラが冷めた面をしているが視界に入れることすら拒絶させていただく。
- 86 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 06:06:45.11 ID:wiKd/WtG0
- そして試合が始まった。
事前の予想通り我が軍が劣勢。サッカー部員が空気を読まずに無双している。 結果、後半を二点リードされた状況で望むことになった。 (;,゚Д゚)「まずいな……押されてる」 ミ,,゚Д゚彡「時間も残り半分しかないし……」 (´・ω・`)「これは、いよいよ」 皆の注目が一斉にこちらに向く。 ('A`)「俺の……出番か」 ゆっくりと俺はベンチから立ち上がった。 ついにかつての麒麟児がベールを脱ぐことになった。 クラスの興奮は最高潮。 俺の熱気も最高潮。 脳内のオナペットたちは例外なくアヘ顔で潮を吹いている。
- 88 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 06:10:40.57 ID:wiKd/WtG0
- ミ,,゚Д゚彡「無茶はするなよ。あまり長くプレーできないんだから……」
('A`)「大丈夫だ。二十分なら大丈夫。そう」 ここで俺は親指を立ててみせる。 ('A`)「二十分で片付けてやるよ」 決まった。 決まりすぎた。 格好いいにも程があった。 今の俺は人生で最良の時間を迎えている。 ライフズ・ベスト・デイ。 ライフズ・ベスト・タイム。 ライフズ・ベスト・パートナーと共に。 ライフズ・ベスト・ゲームへ。 ( ^ω^)「魔法瓶に入れてきたほうじ茶うめぇな……」
- 89 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 06:18:45.36 ID:wiKd/WtG0
- センターサークルに足を踏み入れる。
傍らには相方のショボン。 俺とこいつのツートップが実現するのはこれが初めてだ。 (´・ω・`)「……足は引っ張らないよう頑張るから」 心なしか緊張の色が見て取れる。 俺はそんなショボンの肩を。ぽん、と優しく叩いてやった。 震えを堪えているのは何もショボンだけじゃない。 ( "ゞ)「こ、こいつが噂の秘密兵器か……」 敵選手の足が竦んでいる。試合が始まる前から精神的に俺が勝っている。 そう、これが俺。 天才ストライカー、ドクオ"ザ・レインボーアーティスト"。 最早設定などではない。俺は今間違いなく、この場にいる誰よりも輝きを放っている。 負ける気がしない。 負ける気配がない。 俺は今―― ('A`)「設定を……超えるッ!!」
- 91 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 06:21:25.20 ID:wiKd/WtG0
-
('A`)スカッ
- 92 名前:二十分なら大丈夫、のようです:2012/01/11(水) 06:22:16.65 ID:wiKd/WtG0
- (´・ω・`)「……」
(,,゚Д゚)「……」 ミ,,゚Д゚彡「……」 ( "ゞ)「……」 ( ^ω^)ズズー ('A`)「……」 (,,゚Д゚)「……えっ?」 あ。 やばいこれ。 現実って思ったより嘘吐かなかった。 世界一長い二十分が始まった。 fin.
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 06:23:29.60 ID:wiKd/WtG0
- お題おくれ>>95
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 06:24:24.58 ID:zRKHgc+10
- 大学受験を今度こそ
俺以外なら↓
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 06:27:45.85 ID:wiKd/WtG0
- >>95
はーく たまにはジャンル自分で決めてやってみる 恋愛 地の文あり これで
- 98 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 06:40:27.17 ID:wiKd/WtG0
- 他人との付き合い方で一番重要なのは距離感だと聞いたことがある。
ある程度の距離までは不快に思わないけれど、 個人によって異なる『ある一線』を越えると途端に気持ちが悪く感じてしまうらしい。 だからあまり深く踏み入れないようにするのが円滑な人間関係のコツらしい。 私にはよくわからない。 そんなに近くまで寄っていきたいとは、生まれてこの方考えたことがないから。 ミセ*゚ー゚)リ「今から部活?」 放課のチャイムが鳴ると共に、隣席の友人が訊いてきた。 (゚、゚トソン「うん、そうだけど」 当然のことのように返す。現に当然のことなのだが。 ミセ*゚ー゚)リ「だけど今日も二人だけなんでしょ? 別に毎日出なくてもいいのに」 (゚、゚トソン「人数は関係ないよ」 友人の発言に私は唇を尖らせる。
- 99 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 06:47:01.17 ID:wiKd/WtG0
- ミセ*゚ー゚)リ「ふうん、変なの。私だったら一人残して遊びに行っちゃうけどなー」
お気楽なものだと思う。 だけどこれが普通の女子高校生の思考なのだろうとも、同時に思う。 (゚、゚トソン「部長を置き去りにするのはあまりにも可哀想だから」 ミセ*゚ー゚)リ「ははあ、世話焼き女房ってやつですか」 (゚、゚トソン「違います」 私は軽口をぴしゃりと咎めて、荷物の整理を始めた。 ミセ*゚ー゚)リ「あーあ、照れちゃってもうかわいいなートソンは。 でもさ、来年新入部員が来なかったらトソン一人だけになるでしょ? それでも行くの? 今年は誰も入部してこなかったらしいじゃん」 (゚、゚トソン「行くよ。だから、人数は関係ないって言ったじゃない。 活動内容が好きだから行くの。それじゃ」 それだけ言い置いて、私は速やかに教室を後にした。 廊下に充満していた冷たい空気が、秋の終わりと冬の始まりを予感させていた。
- 101 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:00:16.47 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「やあ」
文芸部の部室のドアを開けるや否や、意味もなく爽やかな挨拶が向けられた。 説明するまでもなく部長のモララー先輩によるものだ。 鈴が鳴るように静かで穏やかな、先輩の声。毎回のことだから飽きるほどに聴いている。 (゚、゚トソン「……早いですね。相変わらず」 私は半ば呆れながらドアを閉めて、馴染みの席に腰を下ろす。 部屋中央にある向かい合わせの長机。 先輩はその一番右端。私はそのちょうど対角線上が指定席。 いつ決めたかも覚えていないけれど、自然とそういう次第になっていた。 ( ・∀・)「これで着席レースは僕の三百十九連勝だね」 (゚、゚トソン「私は競ってませんし数えてもいません」 視線を交わすこともなく、私は鞄から筆記用具と書きかけの原稿用紙の束を取り出す。 それから立ち上がって、棚から辞書を数冊下ろして席に運ぶ。 そしてそれらを広げれば、見慣れきったいつものスタイル。 なぜだかほっとする、そんな眺め。
- 102 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:12:07.93 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「頑張るねぇ、トソンくんは。
文化祭が終わったばかりなのにもう新作に取りかかっているのかい? 来年の部誌には気が早いよ」 茶々を入れられて、つい先程まで沸いていた意欲がふっと冷める。 先輩は何かの作業をこなすでもなく、文庫本片手に楽な姿勢でのんびりくつろいでいる。 (゚、゚トソン「これは個人的なものです。部誌に掲載するつもりはありません」 シャープペンシルを握り締めて、原稿用紙に再び向かいながら答える。 ( ・∀・)「だけどさ、来年は僕がいないわけだからページが余っちゃうよ。 ちゃんと余白は埋めなきゃ」 (゚、゚トソン「新人に努力させます。来年は必然的に私が部長になるんですから」 ( ・∀・)「新人、入ってくるかな。望み薄だと思うけど」 (゚、゚トソン「先輩まで言いますか。別に一人だったとしてもやっていきますんで」 シャープペンシルの芯が、ぽき、と軽やかな音を立てて折れた。 どうにも力が加わりすぎていたらしい。私は虚脱感を覚えながらも、ノックして芯を出し直した。
- 104 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:22:53.09 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「今時、四百字詰めの原稿に手書き、というのも珍しいと思うよ。
僕なんかもう、駄目だね。うん。 一度パソコンでの執筆に慣れちゃうと、そっちでしか書けなくなっちゃった」 部屋の片隅に鎮座する旧式のパソコンを指差して、先輩はしみじみと言った。 ワード機能しか入っていないような本当に古くてオンボロのパソコンで、 それでも夏季合宿を二度経験した私にとっては、先輩の絶対的愛機、という印象が強く残っている。 この丸みを帯びたディスプレイと昼夜睨めっこしている先輩の後姿を見たら、 いやでもそんなイメージが焼きつくというものだ。 (゚、゚トソン「いいんです。こうして筆を走らせることが楽しいんですから」 ( ・∀・)「タイピングも中々に面白いものだよ」 (゚、゚トソン「すみませんね、アナログな人間で」 ( ・∀・)「うん、そうだなあ、トソンくんにはやっぱりそっちのほうが合っているんだろう。 字が綺麗だからパソコン上に書き起こす時もスムーズにいくしね」 (゚、゚トソン「それはどうも。褒めても何も出ませんが」 私の素っ気ない返事に、先輩は「はは」と小さく笑った。
- 106 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:32:13.77 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……」
いつもそうだ。 私がどんなにつれない対応をしても、先輩は大抵楽しげな微笑を浮かべている。 何がそんなに面白いのかは分からないけれど、 こんな二人っきりで、それでも妙に寒々しい空間の中で、 そうした愛想のいい反応を見せられると多少なりとも好感を持ってしまう。 (゚、゚トソン「訂正します。お茶くらいは出せます」 腰を上げて給湯場――ポットと食器棚と、申し訳程度の台所があるだけだが――へと向かう。 (゚、゚トソン「いつもの紅茶で構いませんか」 ( ・∀・)「うん。ストレートでね」 私が紅茶を淹れるところを観察している時の先輩は、いつも子供のような表情をしている。 母親からおやつを渡されるのを待つような気持ちなのかも知れない。 当の私がしている動作といえば、そんな母性に満ちた手さばきをするわけでもなく、 カップの中でティーバッグを適当に泳がせているだけなんだけども。
- 108 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:38:36.08 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「どうぞ」
( ・∀・)「ありがとう。ううん、出来立てはやっぱり香りがいいね」 (゚、゚トソン「別に葉っぱから淹れたんじゃないんですから、同じです。 偶然です。気のせいです。プラシーボ効果です」 即座に席へと戻り、執筆作業に復帰する。 ( ・∀・)「気のせい……うん、君の言うように気のせいなんだろうね。 でもそれでいいんだよ。僕自身がいい香りだと感じてるんだから」 (゚、゚トソン「そうですか」 しかし紅茶特有の芳醇な香気を何よりも愛する先輩が言うのだから、それで万事オーケイなのだろう。 そのために何も加えずストレートティーしか飲まないのだから。 (゚、゚トソン(……何も足さない、か) 何とも混ざらなければ濁らない。ずっと綺麗に澄んだままでいられる。 おそらくそれは、先輩に似た存在だと私は思う。
- 111 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:50:11.94 ID:wiKd/WtG0
- 私は先輩の人間関係というものを一切知らない。
そういった点を匂わせることすらないし、性格上気にするような人物でもないだろうから、 たぶん他者との交流に興味がないのだろう。 私も校舎内以外で先輩と会ったことは一度もない。 携帯電話のメールアドレスさえ知らない。 必要に感じたことはないから困らなかったけど、それにしたって希薄な付き合いだ。 (゚、゚トソン(そういえば、気に掛けたこともなかったっけ) 放課後は毎日この部室でマイペースに活動している。 毎日その様子を目撃している私が立証しているのだから間違いない。 だから私にとっての先輩とは酸素みたいなものなのだろう。 いるのが普通。そこに座っていて当然。存在が大きすぎると劇薬になるところもまさに。 (゚、゚トソン「ああでも、なくなったら生きていけないという部分には当てはまらない……。 むしろなくても特に困らない……」 ( ・∀・)「なんの話だい?」 (゚、゚トソン「いえ、別に」 こほんと私は咳払いをして取り繕った。
- 112 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 07:57:25.95 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「そんなことよりですね」
私はペンを置いて先輩に視線を合わせた。 ( ・∀・)「なにかな。お説教はやめてよ。耳にタコができるくらい聞いたんだから」 (-、-トソン「違います。相も変わらずのんきですね。 先輩、もうすぐセンター試験じゃないですか。二ヶ月ほどですか、あと。 忠言になりますが、もう少しですね、受験生としての自覚を持って」 ( ・∀・)「勉強しろ、って言うのかい」 (゚、゚トソン「その通りです」 ( ・∀・)「やっぱりお説教じゃないか」 先輩は苦笑してみせる。 ( ・∀・)「僕自身は、それほど不安には思ってないんだけどさ」 (゚、゚トソン「先輩は楽観視しすぎなんです」 流石の私もため息が出る。心配して損したような気持ちにさせられるから厭だ。
- 116 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:06:27.02 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「いいですか。人生における分岐点は三つです。
大学受験、就職、結婚。この三つを蔑ろにしていては碌な将来が待っていません。 そしてこの三つはほぼ均等な感覚で連続的にやってきます。 先輩はそれらに直面しなくてはいけない時期を迎えているというのに心構えが」 ( ・∀・)「わかった、わかったってば。重々承知致しました。 ふう、トソンくんは本当に小姑みたいなんだから……」 (゚、゚トソン「ひどい表現ですね」 ( ・∀・)「賞賛しているんだよ。年下なのに、僕なんかより余程しっかりしてる」 (゚、゚トソン「確実に嘘です」 ( ・∀・)「嘘に聞こえるかな?」 (゚、゚トソン「私が嘘だと感じるから嘘なんです」 ( ・∀・)「こりゃ参ったな。はは」 結局、先輩はこの日も午後七時過ぎまで読書に耽っているだけで、 一度たりとも試験間近の学生らしい姿を見せることはなかった。
- 117 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:14:56.84 ID:wiKd/WtG0
-
寒々しい風の中に色づいた木の葉が紛れることもめっきり減り、 いよいよ冬が到来したと身に沁みて実感し始めた頃。 ( ・∀・)「やあ」 (゚、゚トソン「……今日も私の負けがカウントされるんですか」 ( ・∀・)「もちろん。三百三十三連勝だ。キリがいいよね」 (゚、゚トソン「どうでもいいです」 何一つ変わった様子もなく、先輩は文芸部の部室でくつろいでいた。 「最近冷え込んできたね」と、珍しく世間話をしてきたのだけども、 その後「温かいものが恋しい季節だよ」と続けたので、 それとなく紅茶が飲みたいと伝えているのだと察し、渋々私は淹れてあげることにした。 いつもと同じ、ストレートティー。 ( ・∀・)「気が利くね」 無言の圧力ですよ、と私は心の中でつっこんだ。
- 120 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:22:07.71 ID:wiKd/WtG0
- その日も先輩は文庫本を読み進めていて、
勉強をするような気配はちっとも見受けられなかった。 (゚、゚トソン「もしかして余裕ということなんですか」 ( ・∀・)「あれ、そう見える?」 (゚、゚トソン「見えるというより、そういう解釈をしないと納得が出来ないと言いますか」 でなければただ頭が残念な人だ。 こちらの可能性のほうが高いということを告げるのはやめておいたけれど。 ( ・∀・)「これでもいっぱいいっぱいなんだけどね」 (゚、゚トソン「そうですか」 しばし沈黙が流れて、それから先輩がおもむろに口を開いた。 ( ・∀・)「明日からはここに来ないよ」
- 121 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:29:37.26 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「えっ……?」
突然のことだった。予期せぬ言葉だったので、面食らってしまった。 ( ・∀・)「いい加減、親もうるさくなってきたからね。 今までは放課後教室に残って勉強してるって説き伏せてたけど、 さすがに追い込みかけろってことで、明日から自室に缶詰めさ。はは」 そう話す先輩の語調には、感情らしきものが少しもこもっていなかった。 ( ・∀・)「だから今日が僕にとって最後の部活動になるよ」 まるで他人事のようで。 当然のことを、当然のように言っただけで。 なのにどうして、私に見せる表情はかすかに笑っているのだろう。 なんだかとても――息苦しい。 喉の奥が熱い。 これまで感じたことがなかった。 いつも近くにいた人がいなくなることに対して、こんなにも私は脆かったのだろうか
- 122 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:39:28.85 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……そう、ですか」
( ・∀・)「ごめんね。明日から一人になっちゃうけど、うん、でも大丈夫だろうな。 トソンくんは自分の目標に没頭できるだけの意志の強さがあるから」 そんなのは過大評価だ。 私の集中力なんて、居慣れた空間以外でも発揮できるとは限らない。 (゚、゚トソン「でしょうね。先輩がいないほうがむしろ邪魔されず能率が上がりそうです」 それでも私は強がりを言う。 普段通りの接し方をするしかないのだ。 それが今までの私たちで、決して一定の距離を越えて交わることはなかったのだから。 ( ・∀・)「はは、酷いなあ。否定しきれないのが悔しいよ」 (゚、゚トソン「……あの」 ( ・∀・)「なんだい?」 先輩の顔つきは依然として柔和なままだ。鈴のような声も、いつもと同じ高さ。
- 124 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:47:28.53 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「念のためにですが、いや本当に一応なのですが、
個人での活動における心構えというものをご教授いただきたく」 ( ・∀・)「どういうことかな」 (゚、゚トソン「先輩も一年時の今頃は私と同じような立場だったんでしょう?」 ( ・∀・)「ああ、そうだね、僕のひとつ上の学年にば文芸部員はいなかったから。 なにせ不人気クラブだからねうちって」 (゚、゚トソン「ずばりと言いますね。事実ですが」 ( ・∀・)「そうだなあ、あの時はつまらなくはなかったけど、面白くもなかった。 そんな感じだったかな」 (゚、゚トソン「どちらでもない、ですか」 ( ・∀・)「そうだね。誰かと喋ることは好きだけど、でも会話がないのが嫌いなわけじゃない。 むしろなくたって全然困らない。だから、つまらなくも面白くもない、かな」 先輩はこともなげに話す。 やっぱり他人との関係にそれほど執着心がないのだろう。
- 125 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 08:58:19.49 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「僕でさえこうなんだからトソンくんも一緒さ。
君は僕に似ているところがあるしね」 (゚、゚トソン「先輩と一緒にしないでください」 言い慣れた反発の台詞。だけど意味合いは、少し異なっている。 ( ・∀・)「とにかく、僕は今日で事実上の引退。 これからはトソンくんが部長として文芸部を引っ張っていくように。 それが去る僕からの部員に贈る最後の挨拶ということで」 (゚、゚トソン「格好つけてますけど、一人相手ですよ」 ( ・∀・)「ちょっとくらい部長らしいことを言ってもいいじゃないか」 ほんのわずかに照れの混じった口調。 だけどそれを除けば平素と変わらない、耳に馴染んだ先輩の台詞。 (゚、゚トソン「……」 先輩は私に「似ている」と言っていた。 違う。表面上だけだ。私は先輩ほど冷静に物事を見たり考えたりはできない。似てなんかいない。 先輩の心は澄み切っているけれど私は濁っている。
- 126 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:08:24.82 ID:wiKd/WtG0
- 壁に掛けられた時計に目がいく。午後六時ちょうど。
先輩も同じように時計の針を見つめている。 ( ・∀・)「もうこんな時間か。少し早いけど、僕は帰るよ。 前日からやる気をアピールしておかないと、親がうるさそうだし」 (゚、゚トソン「帰るんですか」 ( ・∀・)「そうだよ。どうかしたの?」 (゚、゚トソン「いえ……」 本当は何か言おうと思った。何か伝えることがあったはずだった。 けれどそれは許されない。 そんなに急に奥深くまで踏み込むような勇気もないし、怖い。怖いのだ。 先輩には一点の曇りもないストレートティーのような、 そんな綺麗な心のままでいてほしい。 自分なんかが必要以上に関与してはいけないのだ。 元々そういう関係だった。部長と部員。ただそれだけだ。それ以上でも以下でもない。 なのに私の胸は喪失感でいっぱいになってる。 別れがこんなにも寂しいだなんて今まで気づきもしなかった。
- 127 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:20:47.07 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「それじゃあ、元気でね」
(゚、゚トソン「三年間お疲れ様でした。二年間お世話になりました。 正確を期すなら一年と八ヶ月ほどですが」 ( ・∀・)「細かいなあまったく……そうだ」 半分開いたドアの前で、先輩はふと立ち止まりこちらに振り返った。 ( ・∀・)「さっきのは部長としてのメッセージで、それとは別にさ。 個人的にトソンくんに伝えておくこともあったんだ。 同時に、単なる情けない負け惜しみでもあるんだけど」 すっかり陽も落ちて窓の向こうは黒一色。 夜の静けさに消え入りそうな、小さな声で先輩は言った。 ( ・∀・)「僕は君のことが心から好きだったよ」
- 129 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:24:55.02 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「ほえっ……?」
私は、今確かに。 保たれていた距離が一気になくなったことを、電撃のような苛烈さをもって感じた。 どんな顔をしていたかはわからない。 たぶん口はだらしなく開いていたと思う。 だけどそんなことはどうでもよくて、頭の中の整理のほうが先だった。 ( ・∀・)「それじゃあね。さようなら」 けれど整理が済む前に、先輩は私の視界から消えていった。 扉が閉まり、しんとした密室の中に、私は呆然としたまま一人取り残された。 何も聴こえず、何も見えず、ただただ立ち尽くした状態。 意識がはっきりしないで、白く霞んでいた。 ( 、 トソン「……酷い。酷すぎます。ルール違反です。 私のラインはそんなに簡単に跨いでいいものじゃないです」 そんな言葉が延々と唇から漏れていた。
- 130 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:31:28.99 ID:wiKd/WtG0
-
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと、大丈夫?」 (゚、゚トソン「……へっ? 何がれふか?」 友人の声に、私は間の抜けた返事をしてしまった。 ミセ*゚ー゚)リ「もう六間目も終わりだよ。 一日中ぼーっとしてたけど……昨日何かあったの?」 (゚、゚トソン「もうそんな時間? 昨日……昨日……いたた」 考えようとすると頭痛に襲われてしまい、それより先に進めない。 ミセ*゚ー゚)リ「……本当に大丈夫? 熱でもあるんじゃ?」 (゚、゚トソン「平気平気……とにかく部活に行かないと……いつものように、部活に……」 私は転びそうになりながらも、なんとか部室へと向かい、ドアに手を掛ける。 (゚、゚トソン「……あれ?」 開かない。力を入れても、押しても引いても開かない。
- 131 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:40:12.36 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「ああ、そうか……そうだった」
私はようやく平静を取り戻して、ブレザーのポケットから鍵を取り出す。 部員二人に与えられていたものだけど、私が使うのはもっぱら下校時だけで、 開けるためにしようしたことはない。 いつも私より先にモララー部長が来ていたから。 (゚、゚トソン「……」 誰もいない部室は随分広く感じて、そして寒い。室内が凍りついてほぐれていない。 人一人いなくなっただけで広々しているように見えるだなんておかしな話だ。 だけど考えてみれば、私はこれまで先輩と二人でこの部屋を共有していたのだから、 自分のスペースが突然倍になってしまったかのように感じてしまうのだろう。 (゚、゚トソン「……感傷に浸るのはやめ。続き仕上げないと……」 いつもの席に腰を下ろして、卓上に原稿用紙を広げる。 辞書と資料を取ってこようと起立すると、不意に対角線上の席に目がいってしまった。 何もない空間。 昨日までは埋まっていた隙間。 本当にがらんとしている。 私がここにいるのかどうかさえ、区別がつかなくなるほどに。
- 133 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:49:53.46 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……」
落ち着かない。 呼吸もままならない。 寒い。この部屋には何もない。だから寒い。静かで、ひたすらに冷たい。 窓が風でがたがたと揺れる。 そんな些細な音ですら響いてしまうほど、ここには活気がない。 思えば、部員が少ないからといって、 大した設備もない物置のような部屋を部室として与えられたのだった。 ポットにしても書棚にしても持参物。パソコンも廃棄処分寸前だったのをもらっただけの品物。 ( 、 トソン「うっ……」 気分が悪い。なんなのだこの場所は。こんなに居心地が悪かったというのか。 どうしてこんなところで当たり前のように過ごせていたのだろう。 私はとてもじゃないけどいられなくなって、 急いで部室から飛び出した。 そしてそのまま、部活動にも行かなくなってしまった。
- 135 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 09:58:16.87 ID:wiKd/WtG0
-
年が明けると見える世界が変わるかといえばそんなことはなくて、 ただ例年と変わらない日常が待っているだけだった。 (-、-トソン「あー、眠いー」 ミセ*゚ー゚)リ「だらけすぎだよ。冬休みもとっくに終わってるんだから」 (-、-トソン「休み……毎日休みならいいのに……」 ミセ;゚ー゚)リ「駄目だこりゃ」 執筆という遣り甲斐を失った私は自堕落になっていた。 八割がた完成していたはずの短編は放り出したまま、鞄の中で肥やしになっている。 捨ててしまおうかとも思ったが、寸でのところで踏み止まって今に至っている。 まだ未練があるのだろう。 本当にみっともないと思う。笑われても仕方のない惨めな有様だ。
- 137 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:07:07.51 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「ねぇミセリ。私、部活やめようと思うんだけど」
ミセ*゚ー゚)リ「ええっ? なんで?」 (゚、゚トソン「だって一人でやっても面白いわけないし……」 ミセ*゚ー゚)リ「つい最近まで一人でも続けるって言ってたじゃん! 意志が弱いなぁ……そんなだったっけ?」 (゚、゚トソン「私はこんなものよ……本来は……」 強くなんてない。 平気なふりをしていただけで、心の拠り所をなくしたら、私なんてこの程度の人間だ。 ミセ*゚ー゚)リ「じゃ、じゃあさ、せめて今手がけてる作品を仕上げてからにしたら?」 (゚、゚トソン「え?」 ミセ*゚ー゚)リ「それからでも遅くないでしょ? やめるにしても、けじめはつけようよ」 (゚、゚トソン「ううん……」 結局その提案に乗せられてしまい、半端なところで投げ出していた作品を完結させることに決めた。 幸いにも三学期は中間考査がないので時間は十分に取れる。 これが文芸部員として私の最後になるだろう。
- 139 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:13:29.29 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……とは決意してみたものの……」
やはり文芸部室に一歩足を踏み入れると息が詰まりそうになる。 けれども置いてある辞書なり資料なりを持ち帰るというのも骨が折れるので、 やむを得ずここで執筆作業に入ることにした。 (゚、゚トソン「あそこが目に入るからいけないのかな」 先輩の指定席を見やりながら、ふとそんなことを考えた。 ならばあそこに座ってみてはどうだろう。 恐る恐る座席に尻をつけてみる。 (゚、゚トソン「……はあ」 無論、それだけで胸がすくなんてことはありえるわけがない。 しかし発見したこともいくつかある。 (゚、゚トソン「先輩が見ていた光景って、こんなふうだったんだ……」 見え方が違うというだけでやけに新鮮に感じてしまうのだから、不思議なものだ。
- 140 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:24:04.82 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「あれ?」
何気なく隣席に視線を落としてみると、椅子の上に文庫本が積まれていた。 (゚、゚トソン「あ、これ、先輩がいつも読んでたやつかな」 一冊一冊、丁寧にブックカバーが掛けられている。 (゚、゚トソン「忘れていっちゃったんだ……どうしよう、これ」 三年生は既にセンター対策で自主通学になっている。 部屋にこもって勉強すると宣言していたから、きっと先輩は学校に来はしないだろう。 (゚、゚トソン「うーん、うーん」 連絡先もわからなければ住所もわからない。 担任の先生に渡してもらうよう頼むのが一番いいだろうか。 (゚、゚トソン「というより、それ以外の方法が……あら?」 なんとなく手に取ってみた、文庫本の山の一番上。 頂点に置いていたということは最後に読んでいたのだと思うが、しかしどうにもこれは変だ。 製本が荒いような気がする。
- 142 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:36:30.67 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……ごめんなさい、先輩」
誘惑に負けて中身を開いてしまった。 (゚、゚トソン「……あれ、これって……」 見覚えがある。強烈な既視感を覚える。 それもそのはずで、これは私が書いた話ではないか。 自由に作れる部誌と違って文庫本サイズで製本するのは素人には難しい。 A6という規格だったと思うが、そんな用紙を印刷できる機械がこの学校にあるとは思えない おまけに、この本はよく目にする明朝体やゴシック体の印刷ではない。 私の字だ。 (゚、゚トソン「ど、どういうこと?」 私は錯乱してしまう。 どうやってこの本を作ったのか。 どうやって私の文字をそのまま写したのか。 それに何より、どうして先輩は最後に私の作品なんかを読んでいたのだろう。
- 144 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:45:14.50 ID:wiKd/WtG0
- まったく理解できなかった。
他の商品となっている本と並べて、私の未熟な小説を読んでどうするというのだろう。 (゚、゚トソン「先輩は何を考えて……?」 するりとブックカバーを外した時。 (゚、゚トソン「……」 (゚、;トソン「……うっ」 私は我が目を疑った。 『お気に入り』 露になった手作りの表紙には、ただその五文字だけが大きく書かれていたのだ。 私はその文字を見た瞬間、 嬉しいやら、悲しいやら、もどかしいやら、恥ずかしいやら、 いろんな感情が幾重にも織り交ざって、 しまいには、どっと溢れて 涙で視界が埋まってしまった。
- 146 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 10:53:44.47 ID:wiKd/WtG0
- (う、゚トソン「……私は……」
私はこの本を先輩に返さなくてはいけない。 部長を気遣う文芸部員としての義務感からではない。 そうしなければ私の気が済まないのだ。 これは私の問題であって、他の要素なんて一つも差し挟める余地がない。 それも直接渡さなければ駄目だ。 誰か他者の手を間に介したのでは、私は絶対に納得しない。 (゚、゚トソン「でもどうすれば……」 人に住所や連絡先を聞くのは先輩が望まないだろう。 『あの女子は誰だ』などと関係が疑われたのでは、これまでの先輩の行為を反故にすることになる。 それは避けたい。ならば、どうするか――。 (゚、゚トソン「……あ」 そうだ。 ひとつだけ、絶対にわかる場所があるではないか。
- 147 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:01:49.75 ID:wiKd/WtG0
-
太陽は疾うに沈み、あたりには夜の帳が下りていた。 行き交う人々の足は寒気もあって早く、一人として印象に残らぬまま暗闇の中へ消えていく。 私はその中で、モララー部長だけを探していた。 見慣れた顔。 毎日欠かさず目にしていた顔。 だから見紛うなんてことは私に限ってはまずないだろう。 (゚、゚トソン「はあ……」 吐いたそばから息が白くなって闇に溶け出していく。 大寒も間近だから仕方のないことだが、特に今日は朝からひどく冷え込んでいた。 光のない夜になるとそれはピークを迎えて、凍てつくような気温になっている。 手袋、マフラー、ニット帽をフル装備していても、やはり寒いものは寒い。 それが冬で、それが夜だ。 当たり前のことは受け入れられる。
- 149 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:11:56.37 ID:wiKd/WtG0
- でも、白だと思っていたものが突然黒に変色したりだとか、
自分の手の平の中で弄んでいた玩具がいきなり巨大化したりだとか、 極端な例えだけど、そんな時は必ず不安な気分になる。 現実に私がそうだった。 当たり前だと認識していたものがそうじゃなくなった時、 私が見ていた世界はがらりと姿を変えて、戸惑いを隠せず、うろたえてしまった だけど逃げていたのではなんの解決にもならない。 きちんと向き合わなければいけない。 違和感に満ちた世界が、自然に映るよう。 ラインの内側にいてくれることが、居心地よく感じられるように。 (゚、゚トソン「……あっ」 いた。間違いない。 先輩だ。 直感に近いのに、確信できるだけの経験を私は今までにしてきている。 私は走り出した。 夜の寒風を切って。
- 150 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:18:29.31 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「せん……ハァ、先輩っ!」
走りながら大声で呼び止める。 ( ・∀・)「トソンくん?」 私の声に先輩は、少しだけ驚いたのか眉山をぴくりと動かした。 けれどすぐに眉は下りて、馴染みのある温順としか表しようのない顔になった。 今の私にはまだそちらのほうが落ち着く。 ( ・∀・)「どうしてこんなところにいるんだい? 何かの用事かな」 (゚、゚トソン「ハァ……違います、忘れ物を届けに……」 ( ・∀・)「忘れ物?」 (゚、゚トソン「ここなら……絶対に会えますから」 私は目の前にそびえ立つコンクリートの城を指差した。 国立VIP大学。今年私たちの県でセンター試験会場に選ばれた場所。
- 152 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:25:39.78 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「それで、わざわざここまで?」
(゚、゚トソン「……」 私は無言でバッグの中から遺失物を突き出す。 ( ・∀・)「これは……僕の本だ。これを届けにきてくれたんだ?」 (゚、゚トソン「……はい。まったくもって世話が焼けます」 ( ・∀・)「はは、相変わらず手厳しいね」 (゚、゚トソン「世話を焼かせるほうが悪いんです」 こうして会話を交わすのはひと月ぶりだ。 たった一ヶ月なのに、物凄く久しぶりに感じてしまう。 ( ・∀・)「ごめんごめん。でも、ありがとう。僕の宝物なんだ」 (゚、゚トソン「それがですか」 ( ・∀・)「そうだよ。世界に一冊しかないんだからね」
- 153 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:32:30.69 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……私が書いた話じゃないですか」
( ・∀・)「あちゃ、中身見ちゃった」 (゚、゚トソン「この目でばっちりと。表紙も拝見させていただきました」 ( ・∀・)「こりゃ弱ったな……」 ちっとも弱ってなさそうな顔でそんなことを言う。 (゚、゚トソン「……正直、私は嬉しかったです。それ見た時」 ( ・∀・)「いやいや、引くでしょ。普通さ」 (゚、゚トソン「引きませんよ。部長に認められたってことなんですから名誉です」 ( ・∀・)「そりゃどうも」 (゚、゚トソン「……先輩は知らないと思いますが、私、中三の時に高校の文化祭見に行って、 そこでたまたま文芸部の部誌を読んだんです。で、引き込まれました。先輩の書いた物語に」 私は平坦な口調で告白した。
- 154 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:38:46.93 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「不覚にも憧れさえ抱きました」
( ・∀・)「不覚って。まあそれはいいんだけど、もしかして」 (゚、゚トソン「はい。文芸部に入部を決めたきっかけはそれです。 だからそんな先輩に評価されたというのが、その、なんですか。アレです」 ( ・∀・)「アレって?」 (゚、゚トソン「アレと言ったらアレなんです! 既存の単語で言い表せないアレです」 ( ・∀・)「ああ……そうだな、わかるよ。なんとなくだけどさ。 人間の感情って複雑だから、用意された言葉だけじゃ不十分だよね」 (゚、゚トソン「だからそのですね、ここまでの話を総合しまして、ええと」 ( ・∀・)「うん」 私は一旦深呼吸して気持ちを静めようとした。 でも無理だった。頬が紅潮してしまっていて、熱っぽさだけはどうしても消えないから。 (゚、゚*トソン「ですから私の場合は……先輩の作品が好き……ということで」
- 155 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:43:45.75 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「……ぷっ」
(゚、゚トソン「何がおかしいんですか! 相当に真剣でしたよ私は、これでも!」 ( ・∀・)「ごめん、ごめんってば。 それにしても、トソンくんって意外とさ、情熱的なんだね」 (゚、゚トソン「情熱的?」 私の性格からは縁遠いと自覚している言葉だ。 (゚、゚トソン「どういうことですか」 ( ・∀・)「そのままの意味だよ。僕の忘れ物のためにここまでしてくれるだなんて。 おまけにこれだけ本音をぶつけてきてくれるんだから」 (゚、゚トソン「それは……そうですが」 ( ・∀・)「やっぱり僕はそんな君のことが好きだよ」 (゚、゚トソン「……あまり街中でそういった発言をするのは慎んだほうがよいかと」 私が照れくさいではないか。
- 156 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:50:18.28 ID:wiKd/WtG0
- ( ・∀・)「僕は君の顔が好きだ。声が好きだ。仕草が好きだ。
丁寧に書かれた字が好きだ。君が紡ぎ出した物語が好きだ。 全部好きなんだよ。どうしようもないだろ? 僕って」 (゚、゚トソン「ちょっ、恥ずかしいんでやめてください。率直すぎます。 先輩には羞恥心というものが備わっていないんですか……」 とても歯痒い。むずむずとした感覚が全身を駆け巡って、その場で足踏みしてしまう。 (゚、゚トソン「……それより、ひとつ質問していいですか」 ( ・∀・)「なんだい?」 (゚、゚トソン「その本、どうやって作成したんですか? 型が文庫本サイズですし、私の字そのままじゃないですか」 ( ・∀・)「ああ、これ? 簡単なことだよ」 先輩はくすくすと無邪気に笑い、ページをぱらぱらとめくってみせた。 ( ・∀・)「これは一枚一枚が写真なんだ」
- 157 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 11:57:11.41 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「写真?」
( ・∀・)「そう。一般的サイズの写真と文庫本ってさ、ほぼ同寸なんだよ。 どちらも郵便はがき大だからね」 (゚、゚トソン「じゃあ、これって……ただ単に私の原稿をカメラで撮ったものをまとめただけなんですか?」 ( ・∀・)「そうだよ。文庫本と同じ大きさだから持ち運びやすいし、 トソンくんの綺麗な字も鑑賞できる。一石二鳥さ」 先輩は得意満面の笑みを浮かべている。 (゚、゚トソン「……はあ」 ( ・∀・)「どうかしたかい?」 (゚、゚トソン「先輩って、案外知恵が回るというか……俗っぽいというか……」 なんだか私は脱力してしまった。 先輩はもっと、まっすぐでひたむきで、 こんな小賢しさと遊び心に満ちた仕掛けを思いつくような人じゃないと思っていた。
- 160 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 12:07:22.78 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「割と計算してるんですね先輩って。
もっと純粋な人だと思ってました」 ( ・∀・)「君がどう捉えてたのかは知らないけど、僕はそんな清い人間じゃないよ」 根はなんの変哲もない普通の男さ。失望したかな?」 (゚、゚トソン「いえ、それほどは」 ( ・∀・)「僕から言わせるとトソンくんのほうがずっと純粋だけどね。 僕はその綺麗な心も好きなんだ」 (゚、゚トソン「やめてくださいよ。そんないいものじゃないです」 ( ・∀・)「いいものだよ。誰よりも温かくて、透き通ってる。 ちょうど僕が大好きな、ホットのストレートティーのようにね」 先輩がそう口にした瞬間、 あの部室で嗅ぎ慣れた紅茶の香りが鼻腔をくすぐったような気がした。 ( ・∀・)「ああ、だから僕は、君に惹かれたのかもしれないな」 うんうんと頷く先輩。私はその隣で、叫び出したくなる気持ちを必死に堪えていた。
- 161 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 12:16:40.46 ID:wiKd/WtG0
- (゚、゚トソン「……むしろ、それ、私が先輩に対して抱いてたイメージなんですが」
( ・∀・)「そうなの? でも残念ながら、それは間違いだよ。 僕はトソンくんみたいに情熱的には振る舞えない。 トソンくんほど澄んだ心は持ってない。 去り際に不意打ちするような、そんな卑怯な告白しか出来なかったくらいなんだから」 (゚、゚トソン「あれは酷かったですよ。本当に……ああ、それと」 私は渡すタイミングを見計らっていた原稿用紙を、間隙を縫ってバッグから取り出した。 (゚、゚トソン「これ、完成したんです。もしよければ……」 ( ・∀・)「おお、これは嬉しいな。君の新作が読めるだなんて」 (゚、゚トソン「また厳しくチェックもしてください。私が入部してばかりの時のように」 ( ・∀・)「もちろんだよ」 (゚、゚トソン「ああでも、二次試験が終わってからにしてください。 まだセンターの自己採点すら終わってないんですから序盤もいいところですし」 ( ・∀・)「わかってるってば」 先輩が苦笑する。それを見て、私の口元も自然と綻んでいた。
- 162 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 12:25:20.73 ID:wiKd/WtG0
- 先輩は私のことを温かくて澄んだストレートティーだと言った。
自分ではそんなつもりはなかったのだけれど、 先輩がわざわざそう評してくれたからには、 きっと我知らずそんな人間に育ってしまっていたのだろう。 一方で先輩は自分はそうではないと言った。 冷たく濁っているのだとしたら、それはアイスミルクだろうか。 私はそんなイメージは先輩になく、むしろ自分自身にふさわしいのでは、と思うけれども。 ただ、そんなことはどうでもよくて、 どちらが紅茶だろうとアイスミルクだろうと、結局は同じことだ。 ひとつに混じってしまえば、答えは同じものしか出てこない。 (゚、゚トソン(混じる、かあ) 紅茶とアイスミルクが混ざるとどうなってしまうだろう。 先輩の好きな香りは多少失われるかも知れない。 美しい琥珀色もいささか白濁してしまう。 だけどもそれは、ほんのりと甘い。 加減を見誤らなければ紅茶はより味わい深くなる。
- 163 名前:紅茶とアイスミルクの割合のようです:2012/01/11(水) 12:31:08.07 ID:wiKd/WtG0
- (>、<トソン「へくちっ」
思わずくしゃみをしてしまった。 ( ・∀・)「寒い?」 (゚、-トソン「ええ、少しですが」 振り返れば随分と長時間外で待っていたものだ。 情熱的。言われてみれば、やはり私は本質的にはそんな人間なのかもしれない。 ( ・∀・)「そうだなあ。それじゃ、宝物を届けに来てくれた代わりに」 心の距離は近い。 だけどそんなに、悪くないかな。 ( ・∀・)「温かいミルクティーでもおごるよ」 先輩は月を見上げながら、嬉しそうな口ぶりで私に言った。 /終
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:32:32.46 ID:wiKd/WtG0
- お題おくれ>>166
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:35:26.88 ID:lG8e44vr0
- 監獄
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:37:35.16 ID:wiKd/WtG0
- >>166
あい 地の文は疲れたからなしだ! ジャンル >>170
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:38:15.01 ID:lG8e44vr0
- コメディ
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:38:57.02 ID:V0/817d00
- ↑
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 12:39:34.25 ID:wiKd/WtG0
- >>170
おk やるかー
- 173 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 12:46:14.70 ID:wiKd/WtG0
- (,,゚Д゚)「オラッ! とっとと牢に入れオラッ!」
( ゚∀゚)「いって……蹴ってんじゃねぇよ糞看守……」 ( ゚∀゚)「大体なんなんだよあのAV男優みたいな語尾は……」 (´^ω^`)「おや新人さん。どこから参られたのですかな」 (;゚∀゚)「な、なんすか。自分別に特定の場所に留まってたわけじゃないっすけど」 ('A`)「はっはっは、紳士の社交場へようこそ」 ( ゚∀゚)「監獄じゃねーか」 ( ФωФ)「手短に刑期を話すのであぁぁぁる!!」 ( ゚∀゚)「は?」 ( ФωФ)「……」 ( ФωФ)「手短に刑期を話すのであぁぁぁる!!」 ( ゚∀゚)「なんだこいつら……」
- 175 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 12:50:32.41 ID:wiKd/WtG0
- (´^ω^`)「ちなみに私は終身刑二十回で計二千年です」
('A`)「私は終身刑十七回と懲役三十年の計が六回で千八百八十年です」 (´^ω^`)「はっはっは」 ('A`)「はっはっは」 (;゚∀゚)「桁が違う!?」 (´^ω^`)「ちなみに私は少年少女への性的暴行です」 ('A`)「私は集団自殺詐欺による大量殺人です」 (´^ω^`)「はっはっは」 ('A`)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「聞いてないっすよ」 ( ゚∀゚)「あといちいち笑うな気持ち悪い」
- 176 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 12:55:11.35 ID:wiKd/WtG0
- ( ФωФ)「アメリカの懲役はインフレが激しいのであぁぁぁる!!」
( ゚∀゚)「うおっ!? びびるから突然叫ぶな」 ( ФωФ)「ちなみに我輩は窃盗七千件で一万四千年なのである!」 (´^ω^`)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「お前特にキモいわ」 ( ゚∀゚)「つーか七千件目で逮捕とか警察が無能すぎるだろ!」 ('A`)「私は一度に二十三件分の犯罪を達成した」 (´^ω^`)「はっはっは」 ('A`)「はっはっは」 ('A`)「そんなわけでここは紳士の社交場」 ( ゚∀゚)「繋がらねぇよ」
- 178 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 12:58:43.45 ID:wiKd/WtG0
- (´^ω^`)「ここは己の懲役の長さを大いに語り合う場所」
('A`)「お互いの刑を尊重しあうのは紳士の楽しみ」 ( ФωФ)「うむっ! いかにもっ!」 (´^ω^`)「さあ!」 ('A`)「あなたも!」 ( ゚∀゚)「いや……俺軽犯罪だから一年でここ出ていくっすよ」 (´^ω^`)「……」 ('A`)「……」 ( ФωФ)「負け組であるか……」 ('A`)「哀れなり……」 ( ゚∀゚)「いやいやいや待て」
- 180 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:03:25.06 ID:wiKd/WtG0
- ( ゚∀゚)「負け組はお前らだろバーカ!」
( ゚∀゚)「懲役千年とか二千年とか一生監獄暮らし確定じゃねーか!」 ( ゚∀゚)「特にそこの! そこのお前! 盗みで一万四千年とかふざけとんか!」 (´^ω^`)「はっはっは」 ('A`)「ここは紳士の社交場」 (;゚∀゚)「こいつらの煽り耐性やべぇ……何も効かねぇ……」 (´^ω^`)「皆聞きたまえ」 (´^ω^`)「外に出られるということは刑期を増やすチャンスがあるということ」 (´^ω^`)「彼は数年後には素晴らしい数字を引っ提げてここに現れる可能性がある」 ('A`)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「二度と入るかこんなとこ。お前ら見てたら真面目に生きようと考えさせられたわ」
- 182 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:09:22.21 ID:wiKd/WtG0
- (´^ω^`)「はっはっは」
('A`)「我々は紳士といえどまだまだ子爵クラス」 ( ФωФ)「一万年超えの我輩は公爵クラスであるが」 (´^ω^`)「奥にはさらなる紳士たちが控えておりますぞ」 ('A`)「みな集まりたまえ。これより今宵のパーティーを行う」 (,,゚Д゚)「はっはっは」 \(^o^)/「愉快ですな」 【+ 】ゞ゚)「いやまったく。はっはっは」 (´^_ゝ^`)「はっはっは」 (;゚∀゚)「うわ、なんかぞろぞろ来た」 ( ゚∀゚)「つーか最後のやつキモすぎんだろ! その目と鼻と眉の組み合わせはやめろ!」
- 184 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:14:19.72 ID:wiKd/WtG0
- (´^_ゝ^`)「はっはっは、私は終身刑五十回で懲役五千年ですぞ」
(,,゚Д゚)「私は禁固刑のみで三千六百年ですぞ」 \(^o^)/「私は二百件分の婦女暴行を犯して懲役二万年ですぞ」 【+ 】ゞ゚)「私は万引き六万回で四万二千年ですぞ」 ( ゚∀゚)「最後のやつスケールでかいのか小さいのかわかんねーよ!」 ('A`)「本日より我らに列席するこの若者……」 (´^ω^`)「彼はわずかに一年でございます」 (,,゚Д゚)「一年……紳士の風上にも置けませぬな」 \(^o^)/「はっはっは」 【+ 】ゞ゚)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「早く出たい……」
- 188 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:18:45.58 ID:wiKd/WtG0
- (´^_ゝ^`)「はっはっは。しかし我ら死ぬ時は同じ」
( ゚∀゚)「俺は違うけどな。確実にな」 ('A`)「そう、爪弾きにするのは紳士の行いにあらず」 \(^o^)/「我らは仲間! 我らこそ心の同盟!」 ( ФωФ)「刑期に貧富の差はないのであぁぁぁる!!」 【+ 】ゞ゚)「はっはっは」 (´^ω^`)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「もう精神壊れてるのかこいつら……」 (´^ω^`)「ちなみに少年のほうがケツが丸かったのです」 (,,゚Д゚)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「やめろ」
- 189 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:23:01.66 ID:wiKd/WtG0
- ( ゚∀゚)「つーかもう刑期長すぎて」
( ゚∀゚)「罪人が刑務所で役目与えられてるんじゃん」 ('A`)「そうですぞ」 【+ 】ゞ゚)「我らはスタンフォード監獄実験のサンプルにちょうどいいのですぞ」 \(^o^)/「一生分のデータが取れますからな」 (,,゚Д゚)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「看守役は看守らしく、囚人役は囚人らしくってやつか……」 (,,゚Д゚)「それではそろそろ我々は看守に戻るのですぞ」 \(^o^)/「好きなときに飯を取りにくるとよいぞ」 (´^_ゝ^`)「はっはっは。オナニーは一日七回までだぞ」 ( ゚∀゚)「風紀も糞もねぇな」
- 191 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:26:48.16 ID:wiKd/WtG0
- (´^ω^`)「これが紳士の社交場です」
('A`)「はっはっは」 ( ФωФ)「おわかりいただけたか?」 ( ゚∀゚)「永遠に理解できねーよ」 (´^ω^`)「はっはっは」 【+ 】ゞ゚)「オラ、囚人ショボン! お前の無罪が逆転で証明されたぞオラ!」 ( ゚∀゚)「えっ?」 (´・ω・`)「えっ?」 (´・ω・`)「……」 (´・ω・`)「はーくっさ。何このゴミ箱。くさすぎわろすわろす。俺は出るからお前ら一生壁に渦巻き書いてろ」 ( ゚∀゚)「おい」
- 192 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:29:59.99 ID:wiKd/WtG0
- ~一年後~
( ゚∀゚)「しゃあああああああお勤め完了うううううう!!」 ('A`)「はっはっは」 (´^_ゝ^`)「刑期の短い者の末路ですな」 (,,゚Д゚)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「もうお前らみたいなイカレた連中を相手にしないで済むかと思うと」 ( ゚∀゚)「あれですわ、天にも昇る心地ですわ」 【+ 】ゞ゚)「はっはっは」 \(^o^)/「これもまた愉快ですな」 ( ゚∀゚)「うっせバーカ死ね死ね死ね!」 ( ゚∀゚)「じゃあなクズども! 二度と会うことはないけどな!」 ( ゚∀゚)「うおおおおおおお俺は自由だあああああああ!!」
- 194 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:34:01.25 ID:wiKd/WtG0
- ( ゚∀゚)「ふー出所してますはネットですよネット」
( ゚∀゚)「なになに、社畜は繋がれている鎖を自慢する奴隷だって?」 ( ゚∀゚)「仕事の忙しさを誇ってるのか!」 ( ゚∀゚)「シャバもなかなか狂ってるな! ハッハー!」 ( ゚∀゚)「……いや待てよ、刑務所の連中もこれと同じようなもんなんじゃ」 ( ゚∀゚)「刑期とかまんま鎖だし……」 ( ゚∀゚)「……」 ( ゚∀゚)「いやいやあれは異常だからな。異常異常」 ( ゚∀゚)「そんなことよりオナニーだ!」 ( ゚∀゚)「ここ数年日本に行けてないからオカズはもっぱらネットだぜ」
- 195 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:38:33.28 ID:wiKd/WtG0
- ( ゚∀゚)「さーて適当に探すか」
( ゚∀゚)「……ん? なんか変なページが引っかかったな」 ( ゚∀゚)「『日本の成年向け漫画所有の罪で懲役六ヶ月』……」 ( ゚∀゚)「ちょ、ひどいなこれ。所持でだめかよ」 ( ゚∀゚)「ってか俺……日本からエロ漫画二万冊持ち込んでるんだけど……」 ( ^ω^)「協調性のない奴だったから盗聴器をつけておいて正解だったお」 (;゚∀゚)「ぐお、ポリスメン!?」 ( ^ω^)「あ、自分ら怪しい人間は出所後しばらくマークしてますんで」 ( ゚∀゚)「まさかとは思いますが……」 ( ^ω^)「再タイーホ」
- 196 名前:自慢できるものが鎖の重さだけなようです:2012/01/11(水) 13:43:19.59 ID:wiKd/WtG0
- ~数ヵ月後~
( ФωФ)「手短に刑期を話すのであぁぁぁる!!」 ( ゚∀゚)「私はヘンタイコミック所持二万件で懲役一万年です」 ( ゚∀゚)「はっはっは」 ('A`)「はっはっは」 ( ゚∀゚)「ところであなたは?」 (´^ω^`)「外に出たその日に老若男女満遍なくレイプで終身刑六十回上乗せされて八千年です」 ('A`)「はっはっは」 (´^ω^`)「無罪とかドッキリでした」 ( ゚∀゚)「はっはっは」 おわり
- 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 13:44:40.03 ID:wiKd/WtG0
- お題おくれ>>200
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 13:53:13.30 ID:OyuQseLP0
- 進まない就活
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/11(水) 13:54:55.77 ID:wiKd/WtG0
- >>200
あいわか…… あ ダメだこれ眠い もっとやりたいけどおやすみ
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最後の奴糞ワロタ
[2013/05/29 03:14]
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[ 編集 ]
最後の奴糞ワロタ
懲役四万二千年とか藍染よりなげーじゃねーかwww
[2013/06/17 21:54]
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