('∀`)鬱ナせぇるすまん 『 横恋慕 』 (前)
2010/11/19 Fri 06:22
546 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:29:36 ID:escxUXug0
私の名前は喪鬱毒造、人呼んで鬱ナせぇるすまん
ただのせぇるすまんじゃございません
私が取り扱う品物は“ココロ” 人間のココロでゴザイマス・・・
この世は老いも若きも男も女もココロの寂しい人ばかりそんなみなさんのココロのスキマお埋めします
いえお金は一銭もいただきませんお客様が満足されたら、それがなによりの報酬でゴザイマス・・・
さて今日のお客様は・・・
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6L `∀´) 「かんぱ~い!」
( ・□・) 「ハァ…」
( ・□・) 文田 浩志 19歳 製造業
【横恋慕】
オーホッホッホ・・・・・・
547 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:30:18 ID:escxUXug0
居酒屋『つやま』にて
( ・□・) 「……」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「今日一日御苦労さま、今日は私たちのおごりだからジャンジャン頼んでね」
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6L `∀´) ( `v´)「あざーっす!!」
( ・□・) 「……」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「あらコーシくん?ボーっとしちゃってどうしたの?元気無いじゃない」
(;・□・) 「あっ!いえ、あの、なんでも無いです!」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「あらそう」
(ν・ω・)ν 「別に金のことは遠慮しなくていいんだぞ」
(;・□・) 「いや別にそういうわけじゃ…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ふふ、コーシくんは真面目だからそういうのを気にしちゃうのよね」
(;・□・) 「は、はぁ…」
気にしているわけじゃない、文田はただ上井るみに見とれてただけだった
(;・□・) (でも本人を目の前にしてそんなこと言えるわけないじゃないか…)
548 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:30:43 ID:escxUXug0
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6L `∀´) 「ほらコーシ食えよ、ここの焼き鳥はうめェぞ!」
(ν・ω・)ν 「お前は少し遠慮しろよ」
(;・□・) 「……」
ためしに焼き鳥をひとつ食べてみる、たしかに旨かった、しかし上井るみを前にするとあまり食が進まない
(;・□・) (はぁ、早く帰りたい…)
)ルイ゚ ー゚ノ( 「そういえばコーシくんってまだ未成年だったっけ?」
(;・□・) 「えっ、あ、はいそうです!来週で二十歳なんですけどね」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「じゃあまだお酒呑めないのね、残念」
(;・□・) 「ううう……」
結局文田はこの飲み会をコーラで過ごすしかなかった
549 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:31:12 ID:escxUXug0
( ・□・) チビリチビリ
つ目と
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ここの焼き鳥ホント美味しいわね」モグモグ
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6L `∀´) 「そうでしょ!オレが発掘したんすよこの店!上井さん今度二人だけで来ましょうよ!」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「そうねぇ、考えてといてあげてもいいわ」
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6L `∀´) 「うひょー嬉しいっす!上井さんとデートなんて夢のようっすよ!」
( `v´) 「おいおい社交辞令もわかんねェのかよおまえは」
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6L `∀´) 「オレ冗談通じないほうなんすよ!ハハハ!」
( ・□・) 「……」
同僚のケンイチがうらやましかった、文田も気軽に上井るみに話しかけたいけど
生まれてこのかたまともに女の人と接したことが無い文田は、女性と会話する術を持ってなかった
( ・□・) (上井さん…)
)ルイ゚ ー゚ノ( ハムッ
上井るみが焼き鳥を食べる際に長い髪をかきわける、すると白い首すじが露わとなった
550 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:31:39 ID:escxUXug0
(;・□・) 「……」
その首すじをちろりと汗が這っておちた
(;・□・) 「ゴクリ…」 ドキドキ
)ルイ゚ ー゚ノ(~♪
(;・□・) (上井さん、綺麗だ……)
思わず見とれてしまう、彼女の行動、長い髪、容姿、喋り方すべてに―――
そんなだからケンイチに話しかけられてもすぐには気付かなかった
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6L `∀´) 「おいおいコーシなにボーっとしてんだよ」
(;・□・) 「えっ!いやなんでもないよ!」
(;・□・)(上井さんを見入ってるあいだ僕はどんな顔をしてたんだろうか、多分無防備で情けない顔を晒してたに違いないな…)
そう思うと段々恥ずかしさがこみ上げてきた
551 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:32:14 ID:escxUXug0
(;・□・) 「少し考え事してただけだよ」
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6L `∀´) 「ほんとか?さっきからずっと上井さんのほうを見てたじゃねェかよ」
(;・□・) ギクッ!!
(;・□・)(やばい、見とれてたことがバレてしまったら上井さんに気持ち悪い男と思われてしまう)
(;・□・) (頼むからなにも言わないでくれ!)
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6L `∀´) 「そんな酒呑みたいの?」
(;・□・) 「え、なんで?」
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6L `∀´) 「だって上井さんのほうにある日本酒のビンをジッと見てるからよ」
(;・□・) 「……」
どうやら気づかれてなかったらしい、ホッと胸をなでおろした
(;・□・) (こいつが鈍くて良かった…)
552 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:32:35 ID:escxUXug0
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6L `∀´) 「別にいいんじゃね?酒呑んでも、来週で二十歳なんだからよ」
(ν・ω・)ν 「そうだよ、別にバレなきゃいいんだよ」
(;・□・) 「い、いやちょっとまってくださいよ……」
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6L `∀´) 「いいじゃねェかちょっとぐらいよ、ほらコップ渡せよ」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ダーメ、来週誕生日って言ってもまだ未成年なんだから、なんか問題起こしたら責任取れるの?」
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6L `∀´) 「いやぁ警察のお世話にはなりたくないっすね~」
(;・□・) 「ホッ…」
正直酒なんか呑みたくなかった、酒とか煙草の類は生まれてから1度もやったことがない
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6L `∀´) 「じゃあ来週また飲み会やりましょうよ!こいつに死ぬほど呑ませてやりたいっすよ」
(;・□・) 「え、来週もやるの?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「うん、いいわね、コーシくんの誕生日会も兼ねてまた一杯やりたいわね」
553 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:33:20 ID:escxUXug0
(ν・ω・)ν 「よおし来週はここで文田の誕生日会をしまーす、文田よ、金は全部オレが出すから安心しろ!」
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6L `∀´)( `v´)「ゴチになります!」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「うふふ」
(;・□・) (これはやっかいなことになったぞ……)
出来れば飲み会などの行事には参加したく無かった、仕事が終わったらできれば自分だけの時間を過ごしたい
でも上井さんが来るなら出席したいし―――この葛藤が毎回文田を悩ませた
(ν・ω・)ν━・~「二十歳になったらなんだって出来るぞ、例えば煙草とか、競馬だって出来るぞ」
( ・□・) 「別にタバコとか吸いたいとか思いませんですし、ギャンブルも興味無いですよ…」
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,6L ;`∀´) 「かぁー!そんなんだからお前はダメなんだよ!もっとはっちゃけろよ!だから女が出来ねェんだよ!」
(;・□・) 「か、関係無いだろ!いまはそんなこと!別に彼女とか欲しいとか思わないしさ」
(;`v´)「彼女要らないとか…ありえないだろ普通…」
554 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:33:47 ID:escxUXug0
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6L `∀´) 「なぁコーシよ、俺が女を紹介してやろうか?」
(;・□・) 「だからいらないよ!いまの暮らしで十分満足してるんだよ僕は!」
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6L `∀´) 「おいおい、そんなこと言ってるとお前一生童貞だぜ?いいのかそれで」
(;・□・) 「(そんな話を上井さんの前でしないでくれよ…)いいよ別に…」
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6L `∀´) 「うわぁ、男として情けねェなぁ、キンタマついてるのかよ」
(;・□・) 「うう…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「コーシくんは真面目だから良いのべつに、ケンイチくんが言うからコーシくん困ってるじゃない」
(;・□・) 「……」
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6L `∀´) 「俺はコーシのことを思って言ったんだけどな~……」
555 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:34:36 ID:escxUXug0
( `v´) 「しかし文田よ、俺らの職場は女の人は少ないし冗談抜きでこれじゃ一生独身で終わるぞ」
(;・□・) 「だ、大丈夫ですよ、そのうち運命的な出会いとかあるはずですよ」
( `v´) 「そのうちか…そんな考えじゃ一生彼女なんか出来ないぜ」
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6L `∀´) 「そうそう!喜多さんのゆうとーり!」
(;・□・) 「くぅ…」
(ν*・ω・)ν━・~「その点俺たちはラッキーだったよな、なぁるみ」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ふふ、そうね」
(;・□・) 「……」
(;・□・) (そうだよな…上井さんはほわっちょさんのものなんだ、
僕と付き合ってくれるはずなんて無いよな…)
556 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/11/19(金) 03:35:02 ID:escxUXug0
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,6L *`∀´) 「そいじゃコーシ、また来週~、ケケケ」
( ・□・) 「うん、またね」
飲み会が終わりみんなと別れそれぞれ家路につく
( ・□・) 「はぁ…」
文田は歩きながら今日の飲み会を振り返る
( ・□・) (今日僕は情けなくなかっただろうか…変な醜態とか晒してなかっただろうか…)
今日の自分は上井るみにどううつっていたのかが気になってしょうがなかった
(;・□・) (うっ、僕は何を考えてるんだ、上井さんにどう思われてるかなんてどうだっていいじゃないか…)
文田は足を止める
(;・□・) 「(だって上井さんはほわっちょさんのものだし、僕はどう考えたところで無駄なんだ)
(;・□・) 「上井さん…」
557 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:35:33 ID:escxUXug0
文田は近くの販売機で罐ジュースを買い、一気に呷る
( ・□・) 「プハァ、ふう…」
さっき何杯もコーラを呑んだのに、喉が渇いてしょうがなかった
( ・□・) 「もうこんな時間か…」
時計を見るともう22時をだいぶ回っていた
呑み終わった罐ジュースをゴミ箱に捨て、その場から去ろうとした、しかし―――
(;・□・) 「うわっ!」
('A`)
知らない男が文田の前に立ちはだかっていた
('A`) 「オーホッホッホ」
558 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:36:06 ID:escxUXug0
(;・□・) 「ど、ど、どなたですか!?」
('A`) 「そんな怯えなくても結構ですよ」
(;・□・) 「……」
男は背が低く小太りで、夜だというのに黒ずくめの格好をしていた
(;・□・) (見るからに怪しいよ…)
('A`) 「実は私こういう者なんです」 サッ
(;・□・) 「ココロのスキマお埋めします、モウツフクゾウ?」
('A`) 「ホッホッホ、ワタシはボランティアで人生のセールスを行なってるのです」
(;・□・) 「人生のセールス?つまりどういうことですか?」
('A`) 「よりよい人生を送れるように、その人が今抱えているココロの障害物を取り除く仕事です」
559 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:36:29 ID:escxUXug0
(;・□・) 「なんか怪しいな…」
('A`) 「なにかお困りになってることはありませんか?あれば話を聞かせてください」
(;・□・) 「いえ大丈夫です、それでは……」
('A`) 「ホントにいいんですかぁ?あなたはいま大きなココロのスキマを抱えてらっしゃるのではないですか?」
(;・□・) 「僕の悩みは誰にも解決できませんよ…」
('A`) 「ひょっとしてさっき呟いてた女の人について悩んでるのですか?」
(;・□・) 「ギクッ!聞いてたんですか!?」
('A`) 「オーホッホッホ、やはり女性関係でしたか、適当に言ったのに当たってしまいましたなぁ」
(;・□・) (あっ、そういえばさっき名字しか呟いてないじゃないか…)
('A`) 「お話聞かせてくださいよ文田さん」
(;・□・) 「……」
560 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:36:51 ID:escxUXug0
BAR バロ巣
('A`) 「ほう、今日は会社の飲み会でしたか」
( ・□・) 「はい、会社の先輩や事務所の女の人、同期のやつといっしょの呑みましたね」
('A`) 「ひょっとして文田さんが気になってる人は、その事務所の人ですね」
( ・□・) 「はい、僕より2つ上なんですけどね、上井るみと言うんですよ」
('A`) 「その上井るみさんにあなたは恋してると」
(;・□・) 「そうなんです、もう一日中上井さんのことを考えてしまうくらい」
('A`) 「典型的な恋の病というやつですな、上井さんに惚れたきっかけはなんですか?」
( ・□・) 「僕が今の会社に入社して今年で2年目なんですが1年目の時はまったく仕事が出来なかったんですよ、
まぁ今も大して仕事は出来ないんですけど、元々僕は要領が悪くて仕事覚えも遅いんですよ」
('A`) 「ほうほう」
( ・□・) 「それで毎日のように上司に怒られましてね、いつも工場の予備品室で泣いてたんです」
('A`) 「ふむ」
( ・□・) 「そこでメソメソしてる僕を慰めてくれたのが上井さんなんです」
('A`) 「ほう!」
( ・□・) 「……」
561 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:37:23 ID:escxUXug0
◇◆◇◆◇◆◇
一年前 POM食品シベリア工場予備品倉庫にて
( ;□;) 「うぐ…うぐ…」
文田は誰も居ない倉庫の隅で涙にくれていた
( ;□;) 「くそお、どうせ僕はなにやったってダメなんだよ…クズだしさ…うぐ…」
( ;□;) 「もう辞めたい…この仕事辞めたいよ…ううう…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「コーシくん」
Σ( ;□;) 「う、上井さん!?ど、どぼじでここに?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「こそこそと倉庫に入っていったからどうしたのかなーって思って」
( ;□;) 「ううう…」
562 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:37:43 ID:escxUXug0
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ほら涙を拭いて」
( う□;) 「は、はい…」ゴシゴシ
(;・□・) 「ふぅ…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「涙止まった?これ呑んで落ち着きなさい」
上井は文田に罐ジュースを手渡した
(;・□・) 「ど、どうも」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「へぇいつもこういうところで泣いてたんだ」
(;・□・) 「うう…」
563 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:37:57 ID:escxUXug0
)ルイ゚ ー゚ノ( 「そういえばさっきすごい怒鳴られてたわね」
(;・□・) 「はい、今日も仕事でミスをしまして……」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「また失敗しっちゃったんだ」
(;-□-) 「ええ、溶接の際に強くやり過ぎて設備に穴を開けてしまったんです
そのせいで1時間で終わる仕事が4時間掛かってしまい…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ふーん」
(;・□・) 「いつになったら仕事覚えるんだって怒られましてね…」
( ;□;) 「うぐ…思い出したら…また涙が」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ほら泣かないで、泣いたってしょうがないでしょ」
( う□;) 「ずびばぜん…うぐ…」
564 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:38:14 ID:escxUXug0
◇◆◇◆◇◆◇
( ・□・) 「……」
('A`) 「どうしましたか文田さん?」
(;・□・) 「はっ!すいませんボーっとしてました!」
('A`) 「ひょっとして上井さんのことを考えてたのですかぁ?」
(;・□・) 「お恥ずかしい…」
('A`) 「思い切って文田さんの思いを打ち明けてみたらどうです?」
(;・□・) 「それが無理なんですよ」
('A`) 「何故です?行動しなければなにも変わりませんよ」
(;・□・) 「ダメなんです…だって上井さんは恋人がいますから」
('A`) 「ほう」
565 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:38:32 ID:escxUXug0
( ´W`)
つ□と キュッキュッ
('A`) 「上井さんには付き合ってる方がいるのですか」
( ・□・) 「ええ、僕の職場の先輩と付き合ってるんです、僕が入社する前から」
('A`) 「なるほど、それは辛いですなぁ、恋人がいる人を好きになるのは」
(;・□・) 「どうしようも無いのと先輩に対する申し訳なさでもう…」
('A`) 「でも恋仲になりたいのでしょう、だったら思いを伝えるべきですよ」
(;・□・) 「でも先輩と付き合ってるんですよ!無理ですよ…」
('A`) 「奪ってしまえばいいのです、他人の恋人を奪ってはいけないという決まりは無いはずですよ」
(;・□・) 「なに言ってるんですか!?そんなの常識的に考えてダメに決まってるでしょ!」
566 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:38:51 ID:escxUXug0
('A`) 「いいえ文田さん、恋愛というのは弱肉強食なのです、強い者が最後に笑うのです」
(;・□・) 「それでも僕には出来ませんよ!それに…」
('A`) 「それに?」
(;・□・) 「僕は見てるだけでいいんです、それだけで幸せなんです」
('A`) 「それでいいんですか?」
(;・□・) 「ええ、それに僕が告白したところで成功するわけないでしょう
こんなグズなダメ人間と付き合おうと思う人なんていませんよ」
('A`) 「もっとご自身に自信を持ったほうがいいですよ文田さん」
(;・□・) 「無理ですよ…」
('A`) 「まぁいいでしょう、もし気が変わったら連絡をください、いつでも相談に乗りますので」
(;・□・) 「……」
567 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:39:08 ID:escxUXug0
数日後 POM食品シベリア工場にて
(‐○□○) サクサクサク
文田は旋盤を使って機械部品を加工していた
本来旋盤を使った作業は危険なので細心の注意を払わなければならないのだが、その日の文田は作業に集中出来なかった
(‐○□○)(ああ、上井さん…)
仕事中もついつい上井のことを考えてしまい、なかなか作業に身が入らない
(‐○□○)ぽー…
Σ(;○□○)(ハッ!やばい!)
文田は旋盤を止めると加工していた部品を取り外す
(;・□・) 「危ない、ボーっとしてたな…」
気づくのがもう少し遅れていたら旋盤を故障させるところだった
(;・□・) 「早く持って行かなきゃ…」
加工した部品を上司に届けに行く
568 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:39:29 ID:escxUXug0
(`c_,´ ) 「……」
(;・□・) 「どうです」
上司のロスキーは加工部品を寸法を調べている
(;・□・) (うう…またどやされる…)
怒鳴られるところ想像し体をビクつかせる
(`c_,´ ) 「文田よ」
(;・□・) 「は、はい!」
(`c_,´ ) 「なかなか良く出来てるじゃねェか」
(;・□・) 「えっホントですか!?」
(`c_,´ ) 「おう、お前もやれば出来るじゃんかよ」
(;・□・) 「あ、ありがとうございます」
どうやら寸法が完璧だったらしい、入社して1年半、仕事で褒められたのは初めてだった
(`c_,´ ) 「ちょっと事務所に行って報告書取ってきてくれないか」
(;・□・) 「わ、わかりました!」
事務所へ書類へ取りに行く足はいつもより軽やかな感じがした
569 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:39:44 ID:escxUXug0
事務所にて
( ・□・) 「すいませ~ん…」
事務所には誰も居なかった
( ・□・) 「(誰もいないのかな?)誰かいませんか~」
すると―――
)ルイ゚ ー゚ノ( 「あらコーシくんじゃない、どうしたの?」
奥の給湯室から上井るみが出てきた
(;・□・) 「う、上井さん!ほ、報告書を取りに来たんですけど」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ちょっと待ってね~」
引き出しから一枚の紙を取り出し文田に渡す
570 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:40:03 ID:escxUXug0
(;・□・) 「どうも、あの他のみなさんはどこに居るんですか?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「他の人はみんな会議中よ」
(;・□・) 「そうですか…」
文田が事務所を出ようとした、しかし
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ねぇもう休憩の時間だしお茶にしない?誰もいないから暇なのよね~」
(;・□・) 「えっ」
時計を見るとたしかに3時を過ぎ、休憩の時間に入っていた
(;・□・) 「でも早く報告書持って行かないと…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「大丈夫よ20分ぐらい別に重要な書類でも無いし、なにか言われたら上井さんに捕まってましたって言えばいいわよ」
(;・□・) 「そうですか…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ほら入った入った」
(;・□・) 「うう…」
文田は促されままに事務所に足を踏み入れた
571 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:40:23 ID:escxUXug0
文田は事務所の休憩所に通された、この部屋に入るのは初めてだった
(;・□・) (ううう、上井さんと二人っきり…)
これから上井るみと二人きりになると思うとひどく緊張してきた
(;・□・) (何を話せばいいんだ、もし会話に失敗してつまらない男と思われたらどうしよう…)
不安がどんどん膨れてくる、肩に力が入り喉もカラカラだった
)ルイ゚ ー゚ノ( 「おまたせ」
上井るみが給湯室からグラスや軽食等をトレイに乗せて持ってきた
(;・□・) 「あ、ありがとうございます」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ちょっと待っててね」
上井は持ってきた罐ジュースをグラスに注ぎ文田に渡す
572 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:40:46 ID:escxUXug0
(;・□・) 「どうも」
事務所の休憩所は二人掛けのソファーに小さなテーブルひとつという簡素なモノだった
文田と上井るみは向かい合って座っていた
)ルイ゚ ー゚ノ( 「私この休憩時間が好きなのよねぇなんか」ポリポリ
(;・□・) 「(プリッツ食べる上井さんも綺麗だな)そうなんですか…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「こういう場でする何気ない会話とが好きなのよ」
つ□とゴクリ
(;・□・) (ああ、僕には無理そうだ…)
文田は下を向いてしまった、上井るみを直視することが出来ない
('A`) 《奪ってしまえばいいのですよ》
(;・□・) (やっぱ無理ですよ喪鬱さん、僕にはそんな意気地ないです…)
)ルイ゚ ー゚ノ( ~♪
つ□と
(;・□・) (略奪愛とかそういうのは映画の中だけの話だよ、実際は失敗するに決まってるんだ)
573 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:41:07 ID:escxUXug0
( ・□・) (でも実際付き合えたらな…)
文田はもし上井るみと恋人関係になったときのことを想像してみる
( ・□・) (なにをすればいいんだろうなぁ、やっぱデートとかするんだろうな…)
(*・□・) (はぁ上井さんとのデート楽しいだろうな…映画とか遊園地とか)
(*・□・) (海に行きたいな、水着姿の上井さん綺麗だろうな…)
(*・□・) (でももうすぐ冬だしスキーも良いな、滑ったことないから教えてもらいたい)
(*・□・) (夜景が綺麗なホテルで食事もしたいな、上井さんはどんなのが好物なんだろ、そしてそのあとは―――)
)ルイ゚ ー゚ノ(つ□ カラン
(;・□・) 「ハッ!」
グラスのカランと鳴る音で我に返る、どうやらしばらくの間ボーっとしてたらしい
(;・□・) 「……」
窓を見るとだいぶ日が暮れ、グラスはすっかり汗をかいていた
574 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:41:26 ID:escxUXug0
(;・□・) (妄想に熱中してしまった…)
背中はじっとりと汗をかいている、今日は11月にしては蒸し暑い日だった
)ルイ゚ ー゚ノ( 「どうしたのさっきから、なんかまるで上の空だったわ」
(;・□・)「す、すいません!ちょっと考え事をしてまして」
そういうと文田は上井るみが注いでくれたジュースを一気に呷る
喉が渇いてしょうがなかった
(;・□・)「ハァハァ…」
)ルイ゚ -゚ノ( 「コーシくんちょっといい?」
上井るみは文田をジッと見つめていた、思わず目をそらしてしまう
(;・□・)「な、なんですか」
)ルイ゚ -゚ノ( 「コーシくんに前から言おうと思ってたんだけどさ」
(;・□・)「う…」
文田は罵倒されると思い身を固くした
575 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:41:42 ID:escxUXug0
)ルイ゚ ー゚ノ( 「コーシくんはもっと自分に自信を持ったほうがいいわ」
(;・□・)「は?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「だっていつも自信なさげにしてるじゃない、そんなじゃ毎日生きててつまんなくない?」
(;・□・)「そうですか?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ええ、もっとハツラツとしたほうがいいわね、コーシくんは自分が思っている以上に出来る子よ」
(;・□・)「そんな…」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「もっと肩の力を抜いて気楽に明るく生きたほうがいいんじゃないかしら」
(;・□・)「はぁ」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「そんな暗い顔してたらせっかくの可愛い顔がもったいないじゃない」
(;・□・)「かっ!」
可愛い顔ってどう言うことですかと聞き返そうとしたとき、部屋にほわっちょが入ってきた
(ν・ω・)ν 「おお文田も居るのか」
576 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:42:04 ID:escxUXug0
(;・□・)「あ、ほわっちょさん」
(ν・ω・)ν 「なんだなんだ、俺の知らないところでなにしてんだい?おいおい?」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「なに妬いんてのぉ?」
(ν・ω・)ν 「昼下がりの情事ってか」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「もう夕方よ」
ほわっちょが上井るみの隣に腰を下ろす
文田はホッとしたような残念なような複雑な気分だった
( ・□・) 「……」
ふと文田は上井るみのほうへ視線を向けてみる
)ルイ゚ -゚ノ( 「……」
文田は上井るみが悲しい表情をしたのを見逃さなかった
577 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:42:20 ID:escxUXug0
(;・□・) (なんでそんな悲しげな顔をしてるんだ)
(ν・ω・)ν━・~ 「今日から工場のほうは禁煙になってよ、ここでしか吸えないんだよ」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「あらだったら、これを機会にほわっちょくんも禁煙してみたら?」
ほわっちょに話しかけられ、上井るみはいつもの明るい表情に戻った
(;・□・) (さっきの悲しい顔はなんだったんだ…)
(ν・ω・)ν━・~ 「そういえば文田、明日で二十歳だったよな、一日早いけど一本吸うか?」
(;・□・) 「いえ!大丈夫です!」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「ふふふ」
(ν・ω・)ν━・~ 「ふぁ~、喫煙者には厳しい世の中になったなぁ」
( ・□・) 「……」チラ
)ルイ゚ ー゚ノ(
上井るみと目が合う
(;・□・) (う…)
文田は直ぐに目を反らせた
578 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:42:36 ID:escxUXug0
(;・□・) (なんで上井さんは僕のほうを見てるんだ?顔になんかついてるのかな…)
それからしばらく他愛のない会話が続いた、仕事のこと、趣味のこと、将来のこと、恋愛のことその他諸々
しかし文田は会話の内容がほとんど頭に入らなかった
(;・□・) (なんか上井さんがちらちらこっちを見てる気がする…)
この会話の間、上井るみと目が合う回数が多かった
(;・□・) (もしかして僕のことが好きなのか?)
しかしすぐにその考えを打ち消す
(;・□・) (馬鹿な!ありえない!僕みたいなぼんくらのことを好きになるわけないだろ!)
(ν・ω・)ν 「おっともうこんな時間か、行こうぜ文田」
(;・□・) 「あ、はい」
)ルイ゚ ー゚ノ( 「じゃあね、コーシくん」
(;・□・) 「はい…」
(;・□・) 「……」
579 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:42:54 ID:escxUXug0
BAR バロ巣
('A`) 「ほう、上井さんが文田さんに好意を寄せているのではないかと思ってるんですね」
(;・□・) 「もしかしたらですよ!もしかしたら!どうせ僕の思いすごしでしょうけど」
('A`) 「いいえ文田さん、あながち考えられない話でも無いですよ」
(;・□・) 「え、ホントですか?」
('A`) 「もしかしたら上井さんはほわっちょさんとの関係に飽きてきてるのかもしれませんねぇ
文田さんこれはチャンスです、上井さんを奪い取るチャンスですよ」
(;・□・) 「無理ですってだから!こんな僕のことを好きになる人なんていませんよ…」
('A`) 「文田さん、あまりにご自身を卑下するのは良くないですよぉ、もっと自信を持ったほうがいいですよ」
(;・□・) 「でも…」
('A`) 「そんなんではあなた、これからも負け犬の人生を歩むことになりますよ」
(;・□・) 「うう…」
580 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:43:11 ID:escxUXug0
('A`) 「あなた上井るみさんのことが好きなんでしょう?」
(;・□・) 「もちろんです、もう日に日に彼女の存在が僕の中で大きくなっていくんです
仕事中も食事中も寝てるときも彼女が頭から離れません…」
('A`) 「だったらアタックすべきです文田さん」
(;・□・) 「でも人の恋人に手を出すなんていけませんよ…」
('A`) 「あなたは真面目すぎですなぁ、社会のルールにとらわれ過ぎです」
(;・□・) 「だけど…」
('A`) 「マスター、文田さんにウォッカを一杯」
( ´W`)つ□ タンッ
(;・□・) 「え?」
581 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:43:24 ID:escxUXug0
(;・□・) 「喪鬱さんこれは?」
('A`) 「文田さん、あなたはまだまだおしりの青い子供です、そのウォッカを呑んで大人に一歩近づくのです」
(;・□・) 「……」
('A`) 「たしかに他人の恋人を奪うというのは社会的にはあまり良いことではありません
もしかしたら奪う行為によって自分の人生を台無しにしてしまうこともあるかもしれません」
(;・□・) 「うう…」
('A`) 「もし上井さんを奪う覚悟があるのならばそのウォッカを一気に呑んでください、もし無いのならば呑まなくて結構です」
(;・□・) 「……」
('A`) 「常識や規範を打ち破るのです、彼女のこと愛してるのでしょう?」
(#・□・)つ□ 「クッ…!」
文田はウォッカを勢いよく呷る、喉が焼けるように熱かった
582 :横恋慕:2010/11/19(金) 03:43:42 ID:escxUXug0
(;×□×) 「かはっ!なんだこれは…!頭がクラクラする…」
('A`) 「オーホッホッ、文田さん、あなたは今、大人への階段を一歩踏み出しましたよ」
(;×□×) 「ほ、ほんとですか!?」
('A`) 「ええ、さっきより男らしく見えますよ、ねぇマスター」
( ´W`)彡 コクリ
(;×□×) 「やった…明日は絶対上井さんに告白…するぞぉ!」
('A`) 「その意気です文田さん、愛を打ち明けるチャンスは明日しかないですよ」
(;×□×) 「明日だけ?な、なんでですかぁ~」
('A`) 「それは明日の飲み会でわかりますよ」
(;×□×) 「ううぅ~…そうで……す…」バタ
言い終わる前に文田は気を失った
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