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('A`)あしたのようです |
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:18:01.43 ID:RdhBBHAM0
- ('A`)'゚
その日は研究室の机の上で目が覚めた。 折り曲げていた体を伸ばすたびに背中からボキボキ音が鳴る。 欠伸をして傍らに放置されていた冷めたコーヒーを飲み干した。 浮いていた埃がカップの縁に残っていた。 ('A`)「…ンァァー…」 試しに首を回すとさっきより酷い音がする。寝違えたらしき痛みがむしろ心地いい。 椅子の背に掛けたコートを羽織り、外へ向かった。 そこらで少し泣きたくなったのだ。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:23:20.96 ID:0Aahs0cHO
- >>2
これからの時期、卒研が佳境に入る俺を見ているようだ
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:24:46.41 ID:RdhBBHAM0
- (,,゚Д゚) ニャンゴルァ
('A`)「おぉ、お前はよく窓から侵入してくる変な声の猫」 (,,゚Д゚) ニャンゴルァゴルァ ('A`)「朝から公園のゴミバコ漁りとは切ない光景だな。 ほれ、これでも食え。コンビニのカツパン」 (,,゚Д゚) ゴルァゴルァ ('A`)「いらんのか」 (,,゚Д゚) ゴルァルァ ('A`)「そうか…」 口に運ぼうとしたカツの欠片が落ちた。 すかさず猫がそいつを平らげる。 ゴルァゴルァ言いながら、油っぽい鶏肉を大事そうに咀嚼していた。 ('A`)「ほしいのかほしくねぇのかどっちかにしろ」 (,,゚Д゚) ゴルァ
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:34:08.59 ID:RdhBBHAM0
- ('A`)「俺からの施しは受けないってか?」
(,,゚Д゚) ゴルァ ('A`)「お前男らしいな」 そう言いながら次の獲物に向かって目を光らせる猫の眼前でカツパンを食いきる俺は、 多分心底男気が無いのだろう。 猫は目の前でひたすらじっとしていた。 餌の元を見る目にしては随分落ち着いた目をしているように思えた。 コンビニの袋にゴミを突っ込むガサガサという音にも反応しない。 ('A`)「まさか俺を見てるって訳じゃあるまい」 (,,゚Д゚) ナルァ ('A`)「返事すんなよ」 (,,゚Д゚) ルァ 小さく鳴くと、猫は骨っぽい顔を俺の膝に擦りつけて、そのまま背中を向けた。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:37:36.38 ID:RdhBBHAM0
- ('A`)「行っちまうのか」
(,,゚Д゚) ゴルァ 一声返すそれまで、もう猫は耳すら振り返ってはくれなかった。 骨ばった雄猫に引き倒されたポリバケツを起こして、ゴミ袋を入れた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:49:23.57 ID:RdhBBHAM0
- ( ^ω^)「おっ、おはようございますお!」
('A`)「はよーさんす。早いっすね」 ( ^ω^)「おー、今から飛行機ですお」 ('A`)「出張すか?」 ( ^ω^)「残念、普通に旅行だお」 ('A`)「ウラヤマシス...」 ( ^ω^)「サーセンwww」 カートに乗せたさして重たくもなさそうな荷物を撫でて、スーツの男は晴れやかな顔で言う。 ( ^ω^)「随分前に妻と約束したんですお、ハネムーン。 やっと果たせますお」 ('A`)「二人っきりですか?」 ( ^ω^)「やぁ~娘も誘ったんですが、断られちゃいましたお。 たまにはゆっくりして来いとか言われましたけど、 ありゃしみったれた家族旅行が嫌なだけでしょうお」 ('A`)「寂しいっすか?」 ( ^ω^)「そうでもありませんお」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 01:54:34.59 ID:RdhBBHAM0
- ( ^ω^)「ずっと前から、約束してたんですお」
通りすがりの彼は、終始朗らかな顔を絶やさず去っていった。 初めて会った人間に対する受け答えとは思えなかった。 人間とは育ちによってはなんと友好的になれる生き物だろうか。 俺にはとても出来ない。 行き先を尋ねると、「西まで」と言っていた。 じきに彼の背中も太陽が照らし始める時刻だ。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 02:04:20.22 ID:RdhBBHAM0
- 学舎の入口で自転車の老人が転んで倒れていたので、
散乱していた荷物集めを手伝ってみることにする。 気難しそうな顔を引きつらせながら、それでも老人は俺の行為を止めないでいてくれた。 破けたビニール傘、手提げの紙袋一杯に詰まった布や新聞紙、ダンボール箱。 ボロボロのナイロン袋には毛布が入っていた。 ('A`)「使い込んでますねぇこれ」 ( ノAヽ)「そうかの」 ('A`)「ご旅行ですか?」 ( ノAヽ)「そうしたいところだがの」 こんな体でどこに行けよう。 背中越しにそんな言葉が聞こえた。 見るからに汚らしいその老人からは、不思議と何の臭いもしなかった。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 02:11:54.47 ID:RdhBBHAM0
- ('A`)「自転車、パンクしてますんで、気を付けて」
( ノAヽ)「…」 ちらりと一瞥をくれた老人はきっと、すまんの、等という言葉を飲み込んだのに違いなかった。 代わりに彼は、俺が立ち去る寸前こんなことを聞いた。 ( ノAヽ)「なぁ、西はどっちだろうかの」 黙ってスーツの男が歩いていった方向を指差す。 そうか、と返して、自転車と老人は俺の教えた方と逆の道を進んでいった。 遠くのビルの隙間から音もなく光が差し込む場所へ。 ( ノAヽ)「すまんの」 と、聞こえたような気がした。 老人の背中が見えなくなる前に、構内へ向かう。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 02:23:13.73 ID:RdhBBHAM0
- 一限が始まる前だというのに、講義室には既に教授が待っていた。
黒板にゆっくりとした手つきで何か図を描きこんでいる。 / ,' 3 「おはよう、君か」 ('A`)「はぁ俺です。すんません遅れて」 / ,' 3 「なんのなんの、誰も来ないかと思っていたくらいだよ。 それとも、忘れ物でもしたかい?」 ('A`)「あ"ー、えー、いや。 先生の講義を受けに来ました」 / ,' 3 「なんとまぁ…」 俺に言葉をかけながら、教授は図面を描きつづけていた。 ゆっくりだのにずっと止まらない指先を眺めていると、「お座り」と促される。 / ,' 3 「立ちっぱなしの生徒に見られるのもなんだ」 ('A`)「はぁ、すんません」 手ぶらのまま最後列の真中に座る。
- 17 名前:>>8>>15ぜんぜん気付いてなかった(´・ω・`):2009/12/03(木) 02:35:01.09 ID:RdhBBHAM0
- 黒板が端から線と数式で埋まっていった。
ゆるやかな手つきだというのに、ものの数分で黒板の上下が入れ替わる。 更地の上になお、教授は書き連ねて行く。 / ,' 3 「君、今日家に帰ったかね?」 ('A`) 「いやぁさっきコンビニ飯食ってきました」 / ,' 3 「そうかそうか、道理で昨日と同じ襟の服を着ていると思った」 ('A`) 「すんません」 / ,' 3 「体は大切になさい」 ('A`) 「…すんません」 / ,' 3 「家族に連絡は入れたかね?」 ('A`) 「まだっす。忘れてました」 / ,' 3 「今からでもいいから、かけなさい」 ('A`) 「いいんすか」 / ,' 3 「どうぞどうぞ」 ('A`) 「はぁ…」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 02:50:15.71 ID:RdhBBHAM0
- / ,' 3 「色んなものを無くす前に、何かしておくものだよ」
('A`) 「んー…」 とはいえコートのポケットに収まっていた携帯電話の電池はとっくに切れかけだ。 一人暮らしのアパート住まい、実家からは金だけ貰って二年も連絡をとっていない。 距離だって遠くもないが近くもない。 自分自身と親兄弟との関係性は、今の状態にぴたりと当てはまるような気がする。 いつ切れるかもわからない。心細いが会いに行くのも面倒だ。 ('A`) 「…」 しかし目の前の教授の背中が俺にやめることを許さない。 しょうがないから一言だけ送っておいた。アドレスは母親と父親の両方に。 / ,' 3 「おいおい、メールかね。こういう時は電話になさい」 ('A`) 「電池切れそうなんすよ。今時間かかるかどうかもわかんねぇですし。 まぁ、メールだってあの人ら見るかどうかわかんねぇですけど」 / ,' 3 「見るさ」 ('A`) 「そうすかね」 / ,' 3 「あぁ、必ず見る」 カツ、とチョークを置く音が耳に届いた。 黒板はほとんど真っ白になっていた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 03:15:48.31 ID:RdhBBHAM0
- 教授は図形のひとつを指差した。
/ ,' 3 「反粒子が時空を逆行する理論を私なりに考えてみると、こんな風になった。 ほとんどはディラック方程式の応用だがね」 ('A`) 「へぇ」 / ,' 3 「こんな事ばかり考えていたら何時の間にやらこの年だ」 ('A`) 「俺は悪くないと思いますけど」 / ,' 3 「今まで私の講義にずっと出てくれて、ありがとう。 皆勤賞は君だけだな」 ('A`) 「先生の授業、楽しかったっすよ」 / ,' 3 「そうかね」 一見ピカソの絵画のようになった緑色の板は、とてもちっぽけなものだ。 だが俺は二年間、教授は六十年以上もそこに宇宙を見てきた。 壮年の既婚者よりも、孤独に負けなかったホームレスよりも、 教授の背中は真っ直ぐに伸びていた。 / ,' 3 「もう帰りなさい。授業は終わりだよ」 暫く座って待った。 だが、教授も俺の方を振り返ってくれることは無かった。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 03:37:14.64 ID:RdhBBHAM0
- <ヽ`∀´> 「ニダー」
('A`) 「あれっ、お前来てたの」 <ヽ`∀´> 「一緒にすんな、ちょっくら忘れ物ニダ。 これから家帰るんニダ」 ('A`) 「なんだよ、講義出りゃ良かったんに」 <ヽ`∀´> 「んな神経持てるかニダ」 ('A`) 「面白かったぜ?」 <ヽ`∀´> 「変態が…」 久しぶりに会ったというのに、相変らず人聞きの悪い事を言う奴だ。 はすっぱな物言いは特に嫌いではなかったが。 <ヽ`∀´> 「お前のご同類がまだ上にいるニダ」 ('A`) 「mjd?」 <ヽ`∀´> 「mjd。ウリ今日はさっさと帰って親戚連中とまったり過ごすニダ。 てめーも少しはいつもと違うことしとけニダ」 ('A`) 「もうしたよ」 ポケットの中の携帯電話を軽く握り締める。 残った生徒の居場所を聞いて、奴とは分かれた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 03:58:27.73 ID:RdhBBHAM0
- (*゚∀゚) 「あー!居残り発見ー!」
ミ,;゚Д゚彡 「うっそ!まだ人残ってたのか!?」 ('A`) 「へぇへぇ、どうせレポート終わらなかったんですよー」 講堂の戸口で見知らぬ生徒と擦れ違う。 これでからっぽになったかと思いきや、まだもう一人真中辺りに立っていた。 ζ(゚ー゚*ζ
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 04:14:06.33 ID:RdhBBHAM0
- ('A`) 「うす」
ζ(゚ー゚*ζ 「あれぇ?ドックンだぁ」 隣に来るまで気付かなかったらしい。 よれた白衣を着ていて、ふたつ結わえた髪は少し乱れている。 成る程見るからに「ご同類」だ。 ('A`) 「帰っちゃったよあいつら」 ζ(゚ー゚*ζ 「いいのいいの、私が頼んだんだから。 ここ、だーれも居ないって事なかなか無かったじゃない? 一回がらーんとしたところが見たかったんだ」 ('A`) 「フーン。 レポート終わったのか」 ζ(゚ー゚*ζ 「さっきね。 でも、結局提出しそこねちゃった」 ('A`) 「惜しかったな」 ζ(゚ヽ゚*ζ 「ほーんと。こんなに書いたのよ、見て」 腕に抱えたファイルの中に、分厚い紙の束が入っていた。 400枚くらいはある。 ('A`) 「おぉ、俺以上の変態がここに」 ζ(゚ヽ゚*ζ 「変態じゃないですー、好きなだけです」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 04:24:41.14 ID:RdhBBHAM0
- ついでだから読ませてほしいと言うと、ファイルごと手渡された。
ζ(゚ー゚*ζ 「ドックン先生ね。はい、これで私進級確定ー」 ('A`)「はーいおめでとう」 ζ(>ー<*ζ 「ぱちぱちぱちー」 同い年の人間でこうして打ち解け合えるのは、幼馴染の彼女だけになってしまった。 家族とは会わない。 友人と呼べる相手も多くない。 目を開けて辺りを見回せば知らない人間ばかりなのが普通で、 だからこうして何も考えず言葉を交わせる事こそ、奇妙に思えてくる。 彼女には友人がいる。恋人だっている。 だから、俺の気持ちはきっと分からないだろう。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 04:35:24.33 ID:RdhBBHAM0
- 帰らないのか尋ねると、帰る、という答えがある。
だのに、彼女は動かない。 無人の校舎の、がらんどうの部屋の中心で、天井ばかり見つめている。 ('A`) 「レポート、読むよ」 ζ(゚ー゚*ζ 「感想おねがいね」 ('A`) 「もう行こうぜ」 ζ(゚ー゚*ζ 「ドックン先に出て」 ('A`) 「心細いだろうが」 ζ(^ー^*ζ 「あはっ。 でもダメ、ごめんね。私一人がいいんだ」 ('A`) 「そうなのか」 ζ(゚ー゚*ζ 「うん」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 04:53:03.38 ID:RdhBBHAM0
- それから黙って、暫く無言の格闘が続いたが、結局俺一人で学舎を出ることになった。
彼女とは立ち去る前にこんな会話をした。 ζ(゚ー゚*ζ 「お父さんに一緒に来ないかって言われたけど、断っちゃった。 今ごろお母さんのお骨持って、飛行機乗って、遠くに飛んでいってる」 ('A`)「フーン(あれってこいつの親父さんだったのか?)」 ζ(゚ー゚*ζ 「我ながら薄情モンだとは思うけど、お父さんは単に寂しかっただけなのよ。 一人は寂しいから、私を誘って二人になろうとしただけ」 ('A`) 「普通じゃね?(そういえばこいつの家族ともあんまり会ってないもんな)」 ζ(^ー^*ζ 「うん、普通普通。 でも、私思っちゃったんだ。 あぁ、一人でいよう、って
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 04:55:27.73 ID:RdhBBHAM0
- こうしてるのはきっと私だけじゃないよ。
私の彼もきっと一人。 ドックンだってそうでしょ? でも、さっきの二人はきっと、これからも二人でいると思う。 他の人はどうだか知れないけど、あの二人に限ってはね、 寂しいからじゃないと、思うんだ。」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:07:27.71 ID:RdhBBHAM0
- ('A`) 「そうかな」
(知ってるのか?) ζ(゚ー゚*ζ 「きっとね」 (言わないで) ('A`) 「彼氏寂しがってるかもよ」 (俺はさみしいよ) ζ(゚ー゚*ζ 「電話、するよ」 (それは理由にならない) ('A`) 「俺、さっき親にメールした」 ζ(゚ー゚*ζ 「そか」 ('A`) 「多分、返ってこないよ」 別段、足がもつれる事も無かった。 体の向きを変えて踵をつけ、爪先を上げさえすれば、自然と歩いたことになる。 何度か繰り返すうちに彼女から離れ、講堂の扉をくぐった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:08:53.29 ID:RdhBBHAM0
- ζ(ー *ζ 「ドックン!」
('A`) 「ん?」 ζ(ー *ζ 「感想、よろしくね」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:21:37.44 ID:RdhBBHAM0
- 公園を抜け川へ辿り着く。
橋の上からは川と線路と枯れ木しか今は見えないが、 真下を通り抜けていく電車や、 春になると満開に開く桜が水に浮かんで流れて行くさまなんかが好きだった。 ('A`)'゚ ンァァー 川面が揺れて光っている。 魚はいない。 誰も居ない。 車も通っていないし、遠くから踏み切りの音が響いてくることもない。 不思議な形をした街だけが、音も無く残っていた。 曲がりくねった道が、ねじくれた人々が、 形ばかりの建物が模っていた、残酷な精神異常者のような街だけど、 俺は大好きだった。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:25:44.65 ID:RdhBBHAM0
- (大丈夫だよ)と、最後に彼女から言われたような気がしていた。
気がしただけかもしれないが、信じたかった。 誰にも振り返ってもらえなかったことが寂しくて寂しくて仕方が無い。 でも、俺だって一人でいようと決めていたから、 橋の上で唇を噛んで、少し泣いた。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:27:20.66 ID:RdhBBHAM0
-
赤い空の下、地面が一度、大きく揺れた。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:35:11.13 ID:RdhBBHAM0
- あしたの夢を見た。
目が覚める前に。 冷え込んだ街、赤過ぎる夕焼け。 東から西へ、ゆっくりと地面が落ちて、何もかもが崩れて行くことを、 誰もが皆、夢に見た。 おわりのあしたを、知っていたのだ。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 05:49:52.37 ID:RdhBBHAM0
- ぐらぐら揺れる橋の上に蹲ってしがみつく。
眼下で線路が真っ二つに裂け、横倒しに川の中へ投げ出されていった。 風もないのに音が響く。 ごぉぉ、と、地の底から止む事無く響いてくる。 地割れの向こうに川の水が吸い込まれ、 土とコンクリートがボロボロの砂のようになって、淵に流れ落ちていく。 地鳴りに合わせて橋がしなる。 縄跳びの縄に似たバウンドの仕方をするたびに、骨組みがメキ、メキ、と悲鳴をあげた。 怖いとか、落ちるとか、考えている暇もない程激しくあっけなく、崩壊が起こる。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 06:01:07.28 ID:RdhBBHAM0
- 抱えていたファイルが滑って、落ちた。
(;'A`) 「あっ…」 ファイルに詰まった紙が宙を舞う。 思わず伸ばした手が地面から離れて、続いて起きた橋の揺れに容赦なく体が投げ出される。 何時の間に転がり出ていたのか、 橋の上に携帯電話が取り残されているのが視界の隅に映った。 ディスプレイの上部が光って、メールの受信を告げている。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 06:10:30.93 ID:RdhBBHAM0
- 舞い散る紙と共に落下する直前、携帯電話の甲高い音が鳴り響くのが聞こえた。
地面の唸りも、倒壊する橋の悲鳴も裂いて、ただはっきりと耳に届いた電池切れの音に、 何故か少し笑えた。 了
- 43 名前: ◆953BOunJPk :2009/12/03(木) 06:15:49.92 ID:RdhBBHAM0
- 明日の神話的な話をいっぱい書きたいと思って現行ネタ考えてみたんだ。
でも現行のプロット全然出来ないから、ながらしてみたんだ。 三時か四時あたりで終わるんじゃないかと考えていた自分の甘さを呪いたい。 支援ありがとうございました。 皆の情熱が暖かいっていうか、熱かったです。
- 44 名前: ◆953BOunJPk :2009/12/03(木) 06:24:34.90 ID:RdhBBHAM0
- >>5を見てドクオを教授から生徒に格下げしました。
卒研頑張れ超頑張れ。 あとうっかり手が滑って 流石兄弟を出さないように気をつけたくらいでしょうか。話、こじれるわ。 これも本筋から大分離れてしまったように感じるけど。 それではおやすみなさい。 付き合ってくれて本当にありがとう。
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コメント |
テラセツナス
[2009/12/08 12:40]
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うわーうわー。これすごくいいな。
[2009/12/10 23:09]
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すごく雰囲気がいいな。
衝撃的なのに淡々としたラストが良い。秀逸。
[2009/12/13 14:42]
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