mesimarja
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( ゚∀゚)は石を積むようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:18:15.15 ID:RR+fbzIZO
ζ(゚ー゚*ζ「上手ですね」


彼女にそう話しかけられた。
一瞬彼女の発言の目的語は自分かと考えたが、
彼女は自分の手元にある小石で積まれてできた塔に視線を寄せていた。


( ゚∀゚)「まあ、ありがとうございます」


とりあえず、生返事を返す。
河川敷に座るといつもこうだ。
昔の癖でつい、小石を積み上げてしまう。


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:21:40.32 ID:RR+fbzIZO
小石を積む、という行為にいい思い出はない。
しかしその思いに反して、自分の体は無意識に小石を積む。


ζ(゚ー゚*ζ「ほんとに、上手」

( ゚∀゚)「……」


目の前の少女に言われて、自分の積み上げた小石をまじまじと見る。
確かに、大小様々な小石が絶妙なバランスを取り合い、見事な塔を形成している。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:25:34.93 ID:RR+fbzIZO
この塔を誉められたのは久々だ。
僕は、塔を誉めてくれた女性の顔を思い出す。


( ゚∀゚)


まず、しなやかな指。
そして透き通るほど白い肌。
肉付きがよく、しかしスラリとした印象を持たせる足。
彼女がよく着ていたワンピース。


( ゚∀゚)「……」


少し茶色かかった髪。
西日に透ける彼女の髪は、それはもう形容しがたい。
そして、僕の手を見つめる横顔――

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:29:13.33 ID:RR+fbzIZO
僕はそこでようやく、霞がかった彼女の顔を思い出すことができた。
不思議なものだ。昔なら彼女の顔を思い出すのに五秒とかからなかった。


( ゚∀゚)「……」


しかし五秒が十秒になり、十秒は三十秒になった。
今では、どうだろう。一分はかかるだろうか。
まるで夕陽に伸びていく影のように、その時間は伸びていくだろう。
そして、いつかは消え失せてしまうのだ。


ζ(゚ー゚*ζ「――どうかしました?」


ふと顔を見上げると、心配そうな彼女の顔があった。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:32:47.94 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「――いえ、なんでも」

ζ(゚ー゚*ζ「そう。よかった」


そう言って、まともに彼女の顔を見ると――
驚くほど、先ほど思い出した女性にそっくりだった。


( ゚∀゚)「……なんでだろう」


彼女に聞こえない声量で呟く。
昔なら、ハッと気づいた筈なのに。
もう、僕の中の彼女は、夕闇に溶けていってしまっているのだろうか。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:36:00.82 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)


ふと気づくと、辺りはもう闇に包まれていた。
ふと腕時計を確認して――自嘲気味に笑った後、携帯を確認する。
8時35分。


( ゚∀゚)「……」


立ち上がる。
練習をしていた少年野球も、帰ったのだろう。
辺りは結構な闇と川の流れの音に包まれているだけだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:39:01.44 ID:RR+fbzIZO
あの、今日話しかけられた少女とは、何を話したのだろうか。
わからない。口は回っていたような気はするのだが。
僕の目は、話しかけてくれた彼女を見ていなかった。


( ゚∀゚)「……」


僕は話しかけてくれた彼女ではなく彼女を通して、『彼女』を見ていた。
でも、口は回っていた。
彼女は僕の挙動に笑い、一言一句に笑った。
つくづく器用な自分が厭になる。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:43:58.35 ID:RR+fbzIZO
家路に帰る途中、思い出していた。
あの『彼女』との出会い。


( ゚∀゚)「……」


この12年、『彼女』を思い出さない日はない。
でも、僕は確実に『彼女』のいる地点から遠ざかっているのだ。
誰にも抗えない、時間によって。


( ゚∀゚)「……」


足下の小石を拾う。そして、川に投げた。
小石は放物線を描いて、ポチャンと落ちた。
そしてその放物線とともに、僕の意識は『彼女』の地点に落ちていった。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:46:20.68 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「楽しい?」


そう言われたのは、暑い夏の日のことだった。
真っ白なワンピースに麦わら帽子を被った彼女は、汗水垂らして石を積む僕に話しかけた。


( ゚∀゚)「楽しそうに見える?」

ξ゚⊿゚)ξ「いいえ、全然。その行為が楽しいなら、

     この世に楽しくない物はないわ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:50:26.88 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「じゃあ、見た通りさ。楽しくなんかないよ。こんなの」


そう言って、僕は目の前の彼女の頭ぐらいはあろうかという石を持ち上げる。
形を確認し、目の前の塔――ようやく70センチ程になった――のバランスを確認する。
そして、その石を新たに塔の一部として迎え入れた。
最初グラグラとしていた塔は突然の来訪者に戸惑いながらも、平静を取り戻した。


ξ゚⊿゚)ξ「上手」


ぱちぱち、と拍手をする彼女。
その姿はあまりに無垢で、僕は少し見とれてしまった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:54:47.65 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「でも楽しくないのになんで石なんか積んでるの?

     ――M?」


ふう、やれやれ、と僕はため息をつく。
ちょうど一段落終えたところだ。
このワンピースの彼女と少しお喋りに興じるのもいいかもしれない。


( ゚∀゚)「僕は性的趣向に関しては正常――と、思う。多分」

ξ゚⊿゚)ξ「へえ、言われてみればSっぽい顔してるものね」


どんな顔だ、と突っ込みを入れ、カバンから水筒を取り出す。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:58:22.18 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「仕事なんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「仕事だからって全てが楽しくないわけじゃないじゃない」

( ゚∀゚)「楽しい仕事してる人なんて、稀だよ。

    たいていみんなは賃金を得るために、嫌々仕事してる」

ξ゚⊿゚)ξ「損ね」


その言い方に少しムッとした僕は、彼女を突き放すような声を出した。


( ゚∀゚)「君はまだ社会の厳しさを知らないんだ」


彼女はキョトンとした顔を見せ、そして少し俯いた。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:01:26.42 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「――そうね。

     私がしてることと言えば、ただ人生の役に立つとは思えない授業を受けて、

     人生の役に立つとは思えないサークル活動に勤しんでるだけだもの。

     もしあなたの気に障ったなら、謝る。ごめんなさい」


彼女はそこまで一息で言うと、ため息を一つついた。
しかし、僕の関心はそこには向かなかった。


( ゚∀゚)「――サークル?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:04:40.73 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「――君、大学生?」


その質問を受けた彼女は、今度こそキョトンの極致のような顔を見せた。
そして、我慢出来ないようにクスリと笑った。


ξ゚⊿゚)ξ「やだ、あたしをどんな身分だと思ったの?」

( ゚∀゚)「あー……」


正直高校生、下手すれば中学生もあり得ると思っていた。
いつお巡りさんが来て条例違反で捕まるかドキドキだったのだが。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:08:49.46 ID:RR+fbzIZO
そんな僕の返答を聞いた彼女は少し頬を赤らめた。
そして、照れ隠しか、ワンピースから出た足をパタパタとばたつかせた。
その足は、仕事続きで少し女日照りだった僕には少し目に毒だった。


ξ゚⊿゚)ξ「そっかー。まあ、嬉しい、かな?

     今度JRに子供料金で乗ろうかしら」


そうやって無邪気に笑う彼女なら、子供料金もいけるだろうな、と思った。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:14:06.52 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「で、あなたの仕事は石積みなの?」

( ゚∀゚)「どうやって賃金を稼ぐのか、って?」


彼女はなんでわかったの、という顔をしていた。君にとっては初めての質問でも、僕にとっては腐るほど耳にした質問なんだ。


( ゚∀゚)「わからない」

ξ゚⊿゚)ξ「へ?」

( ゚∀゚)「わからないんだよ。

     僕が作るこの塔が、どう廻って対価を得ているのか。

     哀れな中間業務だよ。僕の作業が何を生み出しているのか。それすらわからない」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:18:33.04 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「気にならないの?

     その、この塔がどうやって対価を得ているのか」

( ゚∀゚)「気にならない、と言えば答えはNOだ。

     でも必死になってそれを確かめたいか、と言われると微妙だな」


この話は少し長くなりそうだったので、僕はタバコを取り出し火をつける。
それをしてからしまった、と思い彼女の顔色を伺った。
特に彼女の顔は変わらなかった。どうでもいいらしい。
しかし、僕の答えた回答に対しては、どうでもよくなかったらしい。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:28:22.15 ID:RR+fbzIZO
この次にでる質問はわかっていた。
普通の人間ならば、気になるだろう。
自分の訳の分からない行動が、賃金となって帰ってくるのだ。
気にならない方がどうかしている。だから、彼女の質問はこうだ。


ξ゚⊿゚)ξ「どうして?」

( ゚∀゚)「一つ、特に疑問を持たないでいれば賃金が支払われるから。

     二つ、週休0日で働いていて休みがないから。

     三つ、面倒だから。

     これでいいかな?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:33:28.00 ID:RR+fbzIZO
彼女はしばらくうむむと難しい顔をしていたが、すぐに元の可愛らしい顔に戻った。


ξ゚⊿゚)ξ「まあ気になるけど、首を突っ込むのもよくなさそうね」

( ゚∀゚)「そういうこと。聞き分けがよくて助かる」


正直、この手の質問にはうんざりしていたのだ。
お節介焼きがこの金の流れを調べてやると言ったまま行方不明になった時。
僕は特に恐怖を抱かなかった。だから、僕はちょっとした変人なのだろう。
ひょっとして、彼女の言うとおり、Mかもしれない。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:36:30.15 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「今何時?」


僕が石積みに復帰し、隣から彼女が茶々を入れる。
そんな感じで時間は過ぎていった。
その時間は僕にとって、恐らく彼女にとっても楽しかったのだと思う。
辺りが西日に包まれてから、彼女はそんな質問をした。


( ゚∀゚)「携帯でも見ればいいじゃないか」

ξ゚⊿゚)ξ「持ってないのよ。あなた腕時計してるじゃない。教えてよ」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:40:44.84 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「……」


左腕についた腕時計をチラリと見る。
針が3つと文字盤だけの、シンプルな腕時計だ。
しかしその時計は――動いていなかった。
正確に言うと、動かす気もなかった。


ξ゚⊿゚)ξ「あら、動いてないじゃない」

( ゚∀゚)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「直さないの?」

( ゚∀゚)「……」


この時計は、父の形見だった。
なにぶん高価な時計らしいが、父が死んでそれを譲り受けた時にはもう止まっていた。
しかし、それを直せば父の魂までもが飛んでいく気がして、直せなかった。
そして、それを外すこともなんだかためらわれた。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 21:45:11.50 ID:RR+fbzIZO
彼女の質問には答えず、カバンから携帯を取り出す。
夕方の五時を少し過ぎていた。


( ゚∀゚)「五時だ。仕事上がりだな」


積んだ石――今はもう僕の胸辺りまで来ている――に悪戯防止の特珠な檻を被せる。
そして、カバンを持ち彼女に告げた。


( ゚∀゚)「帰るよ」

ξ゚⊿゚)ξ「明日も、ここに?」

( ゚∀゚)「ああ。しばらくは、8時5時にここだ」

ξ゚⊿゚)ξ「明日も来ていい?」

( ゚∀゚)「……」


僕は、右手をふりふりしながら言った。


( ゚∀゚)「楽しみにしとくよ」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:09:01.01 ID:RR+fbzIZO
その次の日。
僕が仕事を始めようと現場に行くと、既に彼女がいた。


ξ゚⊿゚)ξ「おはよう」

( ゚∀゚)「おはよう。まだ七時半だ」


そう言いながら持ってきたカバンを地面に置く。
カギを取り出し、檻を開ける。
そこには昨日と変わらず石の塔が微妙なバランスで存在していた。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:11:29.29 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「相変わらずね。すごい綺麗よ。この塔」


彼女は昨日からしきりにこの塔を誉めてくれていた。
自分の作ったものが誉められるのは悪い気はしない。
しかしこの塔がたどる運命を知らせることは、彼女に悪い気がして言い出せなかった。


( ゚∀゚)「ありがとう」


そんな返事だけをして、作業に入る。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:15:32.03 ID:RR+fbzIZO
それから僕は一心不乱に石を積んだ。
最大集中――多分この状態でスポーツをしたらすごい――で石を積んでいく。
いつもより早く積まれていく塔。


ξ゚⊿゚)ξ「わあ」


だの、


ξ゚⊿゚)ξ「すごい」


だの言われながら作業するのは初めてだった。
塔は僕の身長を超え、僕は脚立で作業を続けた。
そして、日がやや西に沈む気配を見せる午後三時、目標であった2mに塔が達した。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:16:46.03 ID:RR+fbzIZO








――そして、その時がやって来た。












48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:18:56.99 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「すごいよ」


彼女は何かに憑かれたかのように塔を誉めていた。
彼女は何か石の集合体に心惹かれるものを感じたのだろうか。
とにかく彼女のはしゃぎ方は、少しばかり異常だった。


( ゚∀゚)「あ」


そんな彼女を適当に相手にしていると、向こうから見知った顔がやってきた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:23:13.21 ID:RR+fbzIZO
( ・∀・)「やあ」

( ゚∀゚)「お疲れ様です」


それは、僕の上司――有り体に言うなら、雇い主だった。
上等そうなスーツを着込み、いかにもな感じで歩いてくる。
彼女は突然の来訪者に戸惑いを隠せないようだった。


ξ゚⊿゚)ξ「……」

( ・∀・)「出来たの?」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:26:18.49 ID:RR+fbzIZO
雇い主は後ろの石の塔をチラリと見ながら問いかけた。
そんなもの、見ればわかるだろうに。


( ゚∀゚)「完成しました」

( ・∀・)「そ。ご苦労さん」


それを聞けば十分だとばかりに後ろを振り返る雇い主。
よく見ると、雇い主の後ろにみすぼらしい男が立っていた。
身長は150もないだろうか。
髪もボサボサで肌も汚く、浮浪者と言われても納得しそうだ。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:29:45.25 ID:RR+fbzIZO
( ・∀・)「さ、どうぞ」


雇い主はどこから取り出したのか、大きなハンマーをその男に渡した。
汚らしい笑顔を浮かべそれを受け取る男。
表情を崩さない雇い主はさすがだと思う。


ξ゚⊿゚)ξ「……ねえ、何するの?」

( ゚∀゚)「……」


彼女が、小声で聞いてくる。
僕は、その問いには答えない。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:32:59.59 ID:RR+fbzIZO
('A`)「ふ、ひひ、ひ」


ハンマー片手に、石の塔をペタペタとさする。
少しぐらつくが、そんなぐらいで崩れる作り方はしていない。
男はニヤリ、と笑うとハンマーを思い切り塔に振り下ろした。


ξ゚⊿゚)ξ「ひっ」


飛び散る石たち。
彼女の小さな悲鳴が少し、響いた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:37:44.12 ID:RR+fbzIZO
('A`)「あは、はは、はは」


恍惚とした笑みを浮かべ、勃起しながら石の塔を破壊しまくる男。
僕の仕事はこれだった。


塔を作る。
塔を壊される。
塔を作る。
塔を壊される。
塔を作る。
塔を壊される。


僕は、その繰り返しで家賃光熱費を捻出しているのだ。
需要と供給のバランスがあるのかはわからない。
どんな料金体系があるのかも知らない。
僕の仕事は、最高の塔を作って、最低に壊される。

ただ、それだけだった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:42:44.14 ID:RR+fbzIZO
男はどう見ても異常性癖者だった。
塔を壊しながら、彼の陰茎は明らかに射精していた。
男はそれに気づかない。僕達もそれに気づいてはいけないのだ。


(*'A`)「……」


彼が恍惚の表情で――履いていて気持ち悪そうなズボンと共に――ハンマーを返却して、
仕事が終わった。


( ゚∀゚)「……」


僕の仕事は、その壊される所を見るところまでだ。
ふと見ると、彼女は肩を揺らし、泣いていた。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:46:57.99 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「……」


雇い主は帰った。
射精男もズボンをあのままに帰った。
今ここにあるのは粉々――正に粉――となった塔。
そして僕と、涙の跡が見える彼女だった。


ξ゚⊿゚)ξ「……」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:55:29.76 ID:RR+fbzIZO
ξ゚⊿゚)ξ「知ってたの?」

( ゚∀゚)「仕事だからね」

ξ゚⊿゚)ξ「私はあの塔を気に入ってたわ。すごく」

( ゚∀゚)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんで、教えてくれなかったの?」

( ゚∀゚)「……」


僕はその問いに対する明確な答えを持ち合わせていなかった。
だから、黙った。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 22:58:05.30 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「……」


僕は、塔に愛着を持ったことはなかった。
全ての作られた塔は壊されるために存在すると思っていたからだ。
まさか、この塔を気に入る人がいるなんて思いもしなかった。


( ゚∀゚)「……」


それに、あの時感じた、虚無感。
僕も、愛着を持っていたのかもしれない。
2人で楽しみながら積み上げた、あの塔に。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 23:05:25.92 ID:RR+fbzIZO
( ゚∀゚)「……」


僕は、彼女の肩に手を置いた。
彼女は少し肩を震わせたけれど、力強い瞳で僕を見た。


( ゚∀゚)「わからないんだ。この虚無感が。

     僕はあの塔に何かしらの感情を持ったことはなかった。

     でも今は違う。何かが僕の心を揺さぶって、離れないんだ」


彼女は僕の独白を聞いていた。
そして、こう返した。


ξ゚⊿゚)ξ「あなたはそれを無視してきたのよ。

     ずっとそれを感じてきたはず。それって、自殺願望って言うのよ」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 23:10:03.71 ID:RR+fbzIZO
――その夜、僕は彼女と寝た。
それが良かったのか悪かったのかはわからない。
でも、きっと悪かったのだと思う。
僕と彼女の間にはそういうものを割り込ませるべきではなかったのだと思う。


ξ゚⊿゚)ξ


唇を合わせ、彼女の歯をこじ開け、舌を絡ませたとき。
彼女はキスの時目を閉じなかった。
僕は薄目で彼女の目を見た。


( ゚∀゚)


それはがらんどうだった。
その目は僕を映していたけれど、瞳には何も映していなかった。
ただ、彼女の漆黒の目が広がっているだけだった。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 23:13:32.70 ID:RR+fbzIZO
僕は、行為中にふと、腕時計が気になった。
なんだかそれが、再び動き出したような気がしたのだ。
彼女の中はおおよそ期待した通りで、僕は何の感想も抱かなかった。


( ゚∀゚)


僕はそれでも中学生よろしく二回の射精をして、床に入った。
彼女の目はがらんどうのままで、ついぞ塔に向けていた輝きを僕に見せることはなかった。


ξ゚⊿゚)ξ

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 23:19:07.18 ID:RR+fbzIZO
朝、目が覚めた時、彼女はいなかった。
多分、もう会うことは無いだろうとも思った。
彼女の目には塔があったのかもしれない。
下卑た笑みを浮かべて、ハンマーでそれを壊したのは、多分僕だ。


( ゚∀゚)


顔を洗う。
歯を磨く。
服を着る。



僕は外に出た。
射精男が壊した塔の跡地に向かった。
そこにはやはり何も、何も無かった。
ふと、腕時計を見た。
何回見ても、それが時を刻むことはなかった。
多分、塔といっしょにどこかに溶けてしまったのだ。


――了――

67 名前: ◆5Ws6J0OZQE :2009/10/19(月) 23:22:39.40 ID:RR+fbzIZO
抽象から抽象へのアプローチ。
満足できる出来ではないけど、リハビリにはなったかと思う。
ここまで読んだ方、ありがとう。またいつか。

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