mesimarja
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( ´_ゝ`)流石兄弟は悪戯好きのようです(´<_` )
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:43:05.91 ID:ozknFgLz0
リメイクしようとして劣化することなんて良く在ることです



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:43:55.44 ID:ozknFgLz0
=2==

 昔から、彼らはよく兄弟で悪戯をしていた。
 例えば綺麗に生けられた花を奇想天外に飾りなおして見たり、運動場の真ん中に落とし穴を掘ってみたり、教室に入ってくる先生が滑るように入り口に水を撒いてみたり、という、可愛らしくそしてそこはかとなく怒りを煽るような悪戯を。

( ´_ゝ`)『兄者がやったんだ』

(´<_` )『ああ、兄者がやったんだ』

 ご丁寧にスモックについた名札を小さな後ろ手に握り締め、幼稚園の先生に相対する。
 先生は、にこやかな、けれど底冷えする笑顔で彼らを見つめた。ぎゅう、と片方が片方のスモックを握り締める。

从'ー'从『……どっちが兄者くんなのかな?』



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:46:26.18 ID:ozknFgLz0
 その質問にほらきた、と先ほどまでの怯えた顔は何処へやら、彼らはにぃいいと口を曲げて笑った。

( ´_ゝ`)『『どっちだと思う?』』(´<_` )

 ひくひく、と先生の口元がひくついているのに彼らは気付かない。

从'ー'从『どっちかなぁ?』

( ´_ゝ`)『『どっちでもどうでもいいじゃないか』』(´<_` )

从'ー'从『どうでもよくないよー? 悪戯をしたらちゃんと怒られないといけないんだよ? ほら、どっちが兄者くん?』

 先生の出す殺気(のようなもの)にようやっと気付いたのか、彼らはさっと目を合わせてから、今にも泣きそうな顔でこう言った。

( ´_ゝ`)『『じゃあ、どっちも兄者だ』』(´<_` )

===

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:49:02.26 ID:ozknFgLz0
====

    ( ´_ゝ`)流石兄弟は悪戯好きのようです(´<_` )

====

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:52:05.81 ID:ozknFgLz0
=13==

 高岡は不機嫌だった。
 唯でさえ授業で当てられてむしゃくしゃしていたのに、放課後遊んで其れを発散しようとしたところ、誰一人として付き合ってくれなかった。
 むしゃくしゃ度更に倍。今時の女子高校生の見境の無さ見せてやろうか、と思ったが、根が真面目な高岡に一人でそんなはっちゃけた真似が出来る訳が無く、何とも不完全燃焼に夜を迎えてしまった。
 一人カラオケで無性に喉が渇いて、目についたファミレスに入る。序に宿題も済ませてしまおう、だなんて考えている辺り矢張り高岡は真面目な気質なのだろう。

从 ゚∀从「ドリンクバーで」

(´<_` )「かしこまりましたぁ」

 なんとも覇気の感じられない店員の声を聞き流す。深夜バイトなんてこんなものだと言うくらい理解していた。が、何だか遣る瀬無い気分になる。

( ´_ゝ`)「あの、ご注文は」

从 ゚∀从「だから、ドリンクバーだってさっきも言ったろ。寝惚けてんのかよあんた」

( ´_ゝ`)「あれ? すみません、失礼致しました」

 朗々とした声で謝り、店員は困惑したように頭を掻いて立ち去る「あれー、っかしーな」などという独り言が聞こえてきた。
 机に肘を突き、深夜の街を窓越しに眺め、店員の足音に耳を傾けていると、ある違和感に気が付いた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:55:31.88 ID:ozknFgLz0
从 ゚∀从「……」

 ひく、と高岡の頬がひくつく。
 かつん、とリノリウムに制服の革靴が引っかかる音が厭に大きく店に響いた。

从 ;゚∀从「あ、あれ……?!」

 かつん、かつんかつん

从 ;゚∀从「なんで、何で、足音が、二つ……!?」

 店内には一人の店員しか居ない。
 一人しか居ない。

 居ないのに。

 かつかつん、かつかつん、かかつん、かかつん、かかかかつん、
 思考が泡立ちはじめる。
 
 かかかかつん、か、かつん、か、かつん、 

    (さっき来た店員と最初の店員は同じ人間だったか?)

 くるくると文字と単語が脳内で螺旋を描く。

    (分裂? 幻覚? 嘘? 切れた? 偽者? 贋作? 双子?       ド ッ ペ ル ゲ ン ガ ー ?  )

 か つ ん。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 19:59:19.35 ID:ozknFgLz0
从 ;゚∀从「……!!」

ばっと机の横を振り返った。

( ´_ゝ`)「「あのー、お客さん、ドリンクバーは彼方になりますので、」」(´<_` )



从 ∀从「あ、あああぁぁあああ!!!!!」

===



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:02:21.05 ID:ozknFgLz0
=11==

( ´_ゝ`)「よ」

 片方がひらひらと両手を振った。兄弟が共同で使っていた部屋は、片付けられて何処か広々としていた。

(´<_` )「あ、おう。ん? 何か久しぶりか?」

( ´_ゝ`)「ああ、かもなぁ。元気してたか?」

 とすん、と床に腰を落ち着ける。其れを見下ろすようにもう片方は直ぐ近くに所在無さげに立った。不安定にゆらゆらと揺れている。

(´<_` )「いや元気も何もないだろ、こんなんで」

( ´_ゝ`)「それもそうか」

 けらけら、と笑い合い、窓から差し込む夕日に目を細める。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:05:16.50 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「所でお前はどうだった、元気か?」

( ´_ゝ`)「んな訳無いだろ」

(´<_` )「だよな。にしても久しぶりだなぁ、本当に」

( ´_ゝ`)「何か変だなぁ、お前相手に久しぶりを言うなんて思ってなかった」

(´<_` )「俺もだ。一生言わないと思ってたよ」

===



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:07:22.46 ID:ozknFgLz0
=14==

( ´_ゝ`)「何か、大成功しちゃったな……」

 怒りのオーラを漂わせた女子高生はずんずんと足音高らかに店の前を通った。帰り際に花壇の植木を蹴散らしてから、その自分の行為に、丸で大罪でも犯したかのように慌てて走り去ってしまう。

(´<_` )「流石だな俺ら」

( ´_ゝ`)「怒られたけどな」

(´<_` )「まぁ兄者は従業員でさえ無いからな」

 唯一だった客に帰られてしまい、暇になったらしい青年達は同時に溜息を吐いた。

 同じようにファミレスの制服を着、同じように俯く様子は鏡合わせのように見える。彼らは一卵性双生児だ。殆ど同一人物と言って間違いない、けれど別人。
 零点零零零零壱パーセント程度の塩素の違いで別人となった、同一人物。
 勿論、ドッペルゲンガーだなんて恐ろしいものではない。

(#´_ゝ`)「なんだよなんだよ!ちょっとした可愛らしいいたずらだろもうぅ!」

(´<_` )「可愛らしいいたずらにしては演技力に問題があったんだろう」

( ´_ゝ`)「最高の演技力だったじゃないか」

(´<_` )「問題が何時でも不足とは限らないだろう、お兄さま」

( ´_ゝ`)「過剰だったか、弟よ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:10:36.67 ID:ozknFgLz0
 ふうむ、と兄と呼ばれた方の青年が顎に手を添えて息を吐く。弟と呼ばれた方はそんな兄弟を一瞥してから、女子高生の残したコップを片付けようと片手にとった。

( ´_ゝ`)「じゃあ、次はどういう趣向で悪戯をしょうか」

(´<_` )「悪戯をする事は決定事項なのか……」

( ´_ゝ`)「客の少ない寂れた弟の職場を明るくしようと尽力するのは兄としておかしい事か?」

(´<_` )「多少遣り過ぎだと思われ」

( ´_ゝ`)「はぅむ」

 にべも無い弟の言葉にまた唸りこむ。

 兄は、唇を尖らせて憎々しげに弟を睨みつけた。「つまんねーつまんねー」と幼稚園児のように駄々を捏ねる。

(´<_` )「大体あんたは客だろう。客なら客らしく喰いもんでも喰っとけ」

 ほらメニュー、と弟はその辺の机から冊子を取り上げて投げた。真剣白羽取りの要領でそれをキャッチする兄。

( ´_ゝ`)「分かった分かった」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:13:16.45 ID:ozknFgLz0
 ひらひら、と片手を振ってみせ、ありもしないコンパクトを開くような仕草をする。「ラミパスかテクマクかどっちだと思う?」「知るか」「テクマクでいいか……」
「何時から兄者は魔法少女になったんだろうな」「魔法少女兄者!」「怒られるぞ」「ごめんなさい!」という会話を経て、へらへらと笑いながら某呪文を呟く。

( ´_ゝ`)「テクマクマヤコンテクマクマヤ……いや、これはちょっとやばいな。結膜マヤコン結膜マヤコン、普段着になーれーいー」

(´<_` )「頭が悪いぞ兄者」

(#´_ゝ`)「な、何だと?!お前は家帰ったらギャグマンガ日和をがっつり読め!」

(´<_`: )「ええー…?そんなアニメ化もしてないようなネタを出されていきなり対応しろと言われても……」

 かなり引き気味な兄弟をみやって、ぶちぶちと不満げに眉をしかめながら、店内に誰も居ないのをいい事に着替え始める。
 適当感漂うティシャツとジーンズに着替えた兄は、制服をその辺に捏ねふわふわとした足取りで手近なボックス席にばっすんと座り込んだ。

===



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:15:55.68 ID:ozknFgLz0
=12==

( ´_ゝ`)「そうだな………。でも待てよ、一生、終わってんじゃん」

(´<_` )「あ、本当だ」

( ´_ゝ`)「なぁ、今度はどんな悪戯しようか?」

(´<_` )「……そうだなぁ」

 ひゅうひゅう、と風が窓に当たった。兄弟の妹が階段を上がる可愛らしい足音がする。

l从・∀・ノ!リ人「あーにじゃー、ごはん出来たのじゃー」

===



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:18:28.63 ID:ozknFgLz0
=5==

 みぃんみぃん、と蝉が窓の外で鳴いている。

( ´_ゝ`)「あっひぃ」

(´<_` )「あっちぃ」

 ティシャツの襟元を引き延ばし、風を送る。「うるっさいんじゃヴォケぇぇえええ!」と兄が叫ぶと一瞬だけ求愛活動を止めた蝉は、しかしてまた直ぐ羽を擦り合わせ始めた。
 弟がつい先日終わったばかりの梅雨のようなじっとりした目で兄を睨む。

(´<_`# )「兄者……、五月蠅い」

( ´_ゝ`)「すまん、我慢出来なんだ」

 すっぱん、と障子が開けられ、兄弟の妹が顔を出した。
 これまたじっとりした目で兄弟を睨む。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:21:03.44 ID:ozknFgLz0
l从・∀・;ノ!リ人「兄者達のが五月蠅いのじゃーあ」

( ´_ゝ`)「おお……こんな時でも突っ込みにくるとは、流石だな妹者」

(´<_`# )「流石だな……ってかうるっさいわヴァカぁぁあああ!!」

( #´_ゝ`)「兄者いい加減五月蠅いわアホぉおお!!!」

l从・∀・#ノ!リ人「どっちも五月蠅いのじゃ、駄目兄者どもめ」

みぃんみぃん、と蝉が鳴いて、ぽろりと落ちた。

===



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:23:18.16 ID:ozknFgLz0
=15==

( ´_ゝ`)「よーし、じゃあメニューのこっからここまで弟者の奢りで」

(´<_` )「奢るか」

 兄の広げたメニューをばしんと叩き落とす。「にょわ!」と言う珍妙な悲鳴があがった。

( #´_ゝ`)「おま、仮にも客にその態度は、」

( ´∀`)「兄者くーん」

 いきり立って拳を振上げた時、厨房から遠い声が飛んできた。
 ぴたり、と双子の動きが凍ったように固まる。

(´<_` )「……呼ばれてるな」

( ´_ゝ`)「ああ」

 弟はくるりと方向転換し、厨房に入った。
 チーフが不機嫌そうに皿を拭いていた。指紋がつかないように両手にもった布巾をばさばさと振っている。
「生来のんびりした顔をしています」という顔つきの彼がそんな表情をしているというのが可笑しくて、薄ら笑いを堪えながら弟は軽く会釈をした。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:26:16.86 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「何すかチーフ」

(#´∀`)「さっきからホールでふざけてるようだけど、何やってるモナ。ちゃんと仕事してくれないと困るモナよ!」

(´<_` )「あ、すみません。でもはしゃいでるのは俺の双子の兄弟であって俺ではないので……」

(#´∀`)「そんな子供みたいな言い訳は良いモナ! ったく、この時間帯は誰も働きたくないって言ってるからシフト入れてるものの……人手さえあれば辞めてもらってもいいモナよ?」

(´<_` )「え、それは勘弁して下さい……困ります」

(#´∀`)「じゃあちゃんと仕事するモナ!」

(´<_` )「はい……、すみません……、今は反省しています」

(#´∀`)「聞いてるモナ?!」

 適当にチーフの言い分をあしらい、店内掃除してきまーす、とそそくさと厨房を離れる。

(#´∀`)「全く。初めの頃は真面目な良い子だったのに、先月くらいに復帰してから急に様子がおかしくなって……人が変わったようとはよく言うモナ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:28:38.29 ID:ozknFgLz0
 チーフの独り言を背中に聞きながら、モップを片手に弟はホールに戻った。猫のような笑みをした兄がそんな弟を迎える。

(´<_` )「怒られたぞ」

( ´_ゝ`)「そーかそーか」

 兄はサービスのお冷やをくぴくぴと飲み干した。たぁん、と軽やかにプラスチックのコップが机に叩きつけられる。

( ´_ゝ`)「真面目に働かないと給料落とされるぞ、愚弟よ」

(´<_`# )「誰の所為だと思っている、誰の所為だと」

( ´_ゝ`)「思うに、お前は親しく無い人と喋るときはちょっと気が抜けすぎなんだよ。お前はそうは思ってないだろうが。ってか何それ、普通逆じゃね? って感じだが」

(´<_` )「何をいきなり変な講釈を垂れ初めて居るんだ、兄者きもいぞ」

( ´_ゝ`)「俺が折角『変わって』やったんだから、もう少し人間関係やらを大切にせよと言いたいんだよ。ってかきもいってお前……」

 尤もらしくしたり顔をする兄の後頭部を叩き、弟は大きく溜息を吐く。

(´<_` )「何で上から目線なんだお前は……うちの墓に入ってる骨が誰のだと思っている」

( ´_ゝ`)「はて、誰だったかね」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:31:19.70 ID:ozknFgLz0
 兄はに、と笑って見せた。重力に負けたような気の抜ける笑み。
 釣られて弟も口の端をシニカルに吊り上げる。

(´<_` )「爺者の存在を忘れるとは何たる孫だ」

( ´_ゝ`)「ああ、そうだったな」

===



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:34:46.31 ID:ozknFgLz0
=10==

 あれ、と彼は思考する。
 丸で俺が死んだみたいじゃないか。

( ^ω^)「流石、どうしたお?」

(´<_` )「ああいや、なんか、あいつが死んでて俺が生きてるっていうのが不思議でなぁ」

 なんで俺が生きてるんだ?

 墓参りに付き合ってくれた友人は痛々しい表情で花を手向ける。

(  ω )「お前が生き残ったのだって幸運だったんだから、そんな事言わないで欲しいお」

 彼は首から吊り下げられた右腕を見つめた。白い包帯が網膜に焼き付く。
 友人は泣きそうな顔をしていた。

(´<_` )「……そうだな」

 ところで俺って兄者だっけ弟者だっけ?

 そんな事を言ったら今度こそ本当に友人が泣いてしまいそうで、その言葉は口に出されないまま舌に溶けた。

===

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:36:40.17 ID:ozknFgLz0
=16==

 二人してからからと笑うと、数瞬沈黙が流れた。「所でこの前妹者が、」と兄が話を振ろうとしたところで貸切状態だったファミレスに客が入る。
 てぃうんてぃうん、とコンビニのような電子音が静かな店内に響き、客の来訪を告げた。弟は即座に反応し、営業スマイルで扉を確認する。

(´<_` )「いらっしゃいまっせー、二名様ですか……ってあれ、ブーンじゃないか」

 入ってきたのは、顔にデフォルトとして笑顔を乗せているような青年と、その後ろにしがみつくようにして店内を伺っている少女だった。
 見覚えの在る、所か殆ど恒例のように会っていた友人の顔に眉を跳ね上げ、接客用の笑顔を崩した弟は気の抜けた声を出した。

( ^ω^)「おっお、流石じゃないかお。バイトかお? 怪我はもういいのかお?」

(´<_` )「おう、先月から勤めててな。久しぶり。こんな時間に何の用だ? ってか怪我? 俺のことを馬鹿にしてるのか。火の鳥と呼ばれた男だぞ」

( ^ω^)「ファミレスに着たんだから飯喰いに来たに決まってんお。火の鳥に謝れお。漫画の神様に謝れお」

(´<_` )「ああ、それもそうか。……ところで、その後ろにくっつけてんのは悪霊かなんかか?」

( ^ω^)「ツンだお。怖い事言うなお……お前、このファミレスの怪談知ってんのかお?」

 青年の言葉に弟はかくりと首を傾げて右上を眺める。後ろにくっついた少女は「ひっ」と声を上げて更に縮こまった。
 面白いなぁおい、と遠くから其の様子を見ていた兄はお冷を入れなおす。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:39:05.93 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「怪談?聞いたことないな」

( ^ω^)「……ここのファミレス、店員の足音が増えるらしいんだお」

 にやり、と笑みの上に更に笑顔をかさねて青年は言う。むしろ今日はそれ目当てできたんだお、と口元をゆがめた。
 うわー、こいつ性悪っぽい笑顔にーあーわーねー、と弟は内心で思った。本人はちょっと楽しそうで、後ろの少女はぷるぷる震えていた。

( ^ω^)「先月くらいから、『マジ』だってこの辺で噂になってるんだお。深夜にこのファミレスに来ると、一人しか居ないはずの店員の足音が増える……って言う」

(´<_` )「それで、確かめに来たのか?」

( ^ω^)「うんだお」

(´<_` )「ツンひっさげて?」

( ^ω^)「怖いなら別に来なくても良いって言ったけど、聞かなくって」

 ぷ、と弟は笑う。

(´<_` )「それお前、悪戯だよ」

( ^ω^)「は?」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

 ブーンも、その後ろにしがみついていたツンも初めて口を開き、ぽかん、となった。
 まん丸く広げられた目と口が六つの大穴を作る。弟だけがにやにやと得意げに笑っていた。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:41:42.16 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「ちょっとした悪戯でな、怪談作るのも案外簡単なもんだ」

( ^ω^)「も、もしや……お前が仕掛け人かお?!」

(´<_` )「あーまー広義的に言えばな」

( ´_ゝ`)「俺が主犯ー」

 何処から現れたのか、兄が弟の肩口からひょいと顔を出す。その片手にはお冷。

ξ;゚⊿゚)ξ「ど、道理で嘘臭い話だと思ったわ! どうせこんなのだろうと思ってたのよ! もう! 楽しみにして損したわ!」

( ^ω^)「いやツンまじでさっきまでぷるぷる震えてtせgふじktrひでぶ」

ξ;゚⊿゚)ξ「はっ早く席に案内しなさいよ! 仕事でしょ!」

(´<_`; )「あ、ああ、すまん……えっと、ブーン、大丈夫か?」

(#)ω/(#)「だいじょばない……」

===



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:44:53.74 ID:ozknFgLz0
=4==

 ブーンが掃除当番だと言うので、それをぼんやり待つのも癪に思い図書室へ向かう途中、ツンは不意に足を止めた。

ξ゚⊿゚)ξ「ん?こんな所でどしたの、兄者」

 図書室へと続く廊下の途中で、所在無さげに立っている少年にツンは声をかける。
 ゆらゆらと微動しながら虚空を見上げていた少年は、確かにクラスメイトの友人だった。
 少年は数瞬間を開けてから「あ、おう」と返事を返し、

(´<_` )「すまん、俺弟者だ」

 気まずそうに頭を掻いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あー、ごめん。間違えたわ。小学校の頃は私服だったから何とか見分け着いたんだけどねー。制服になってからどっと分かんないわ、あんたら」

(´<_` )「どうもすまんな、ややこしくて。最近親兄妹にまで間違えられるようになったし、もう駄目かも分からんね」

ξ゚⊿゚)ξ「あはは、洒落になんないわ、それ。っていうか何、どうしたの? こんな所でぼーっと」

(´<_` )「あーうん」

 ちょいちょい、と校舎と図書室をつなぐ渡り廊下に出る為のガラス戸を指さす。
 ツンもそこを注視した。
 直立している積もりなのだろうゆらゆら揺れる学ランの姿が見える。次いでに先輩らしい女子生徒のセーラー服の姿も。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:48:31.66 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「兄者が何か呼び出されてな。それ待ちだ。図書館に行くならちょっと待ってやってくれ。雑談くらいなら付き合うから」

ξ゚⊿゚)ξ「ん、いいわよ」

 ツンは頷いて、もう一度ガラス戸のほうを伺う。

ξ*゚⊿゚)ξ「うわ、あれって美和先輩じゃない……美人って有名な。なかなかやるわね、兄者。兄者の癖に」

(´<_` )「全く知らん先輩から呼び出された殺される! って俺に泣きついてきたがな」

ξ;゚⊿゚)ξ「駄目野郎ね……もしくはブラコン?」

(´<_` )「あいつにとって告白イベントって二次元の産物だからじゃないか。全く告白って発想してなかったし、今もかなりびびってるぞ、あれ。恐怖的な意味で」

ξ;゚⊿゚)ξ「うっわぁ……。ってか、あんたのがこういう事向いてる感じよね。向いてるっていうか、端的に言うともててそう」

(´<_` )「はっ……有り難い言葉どーも。まぁもてはせんが、経験ならあれよりはあるだろうな」

 ひらひらとガラス戸のほうを指さす。

ξ゚⊿゚)ξ「先輩間違えて無いでしょーね、あんたと」

(´<_` )「名指しじゃ無かったみたいだから、その可能性も無きにし」

ξ゚⊿゚)ξ「まじで? やばいじゃない、それ」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:51:23.12 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「これで兄者が俺の名を騙って付き合い始めたりしたら、もうドラマだよな」

ξ゚ー゚)ξ「そのうち発覚してさ、好きになったのは弟者、でも愛を育んできたのは兄者、私はどうすれば……?! みたいになんのね」

(´<_` )「俺が横恋慕すれば完璧か。ありえねー」

ξ゚⊿゚)ξ「でもどうする?そうなったら」

(´<_` )「簡単」

 へらっ、と少年は笑う。やはり双子だ、とツンは思った。
 兄と同じように笑うんだなぁ。

(´<_` )「入れ替わったまま付き合えば良いんだよ、ばれないように」

ξ゚ー゚)ξ「あはは、なにそれ、さいっあく」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:53:45.28 ID:ozknFgLz0
( ´_ゝ`)「そうだそうだー、最悪だぞー」

(´<_` )「あ、兄者」

ξ;゚⊿゚)ξ「うわっ何分裂してんの怖っ!」

( ;´_ゝ`)「「分裂?!」」(´<_`; )

 少年の肩口からその片割れが現れる。唐突な登場に思わず大声をあげてしまった。

ξ;゚⊿゚)ξ「び、吃驚したぁ……行き成り出てこないでよ」

(´<_`; )「確かに母親の腹ん中で分裂はしたが……怖って、怖って」

( ;´_ゝ`)「まさかそんな率直におま、昔の事じゃん……許してえな……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ご、ごめんって!ちょっと吃驚しちゃって」

 ずぅうん、と予想以上に凹む兄弟をなだめ、不意に左手に巻いた腕時計を見る。

ξ゚⊿゚)ξ「っと、そろそろ掃除終わるわね。図書室行けなかった……」

(´<_` )「ん? 邪魔してたか? すまんな」

ξ゚⊿゚)ξ「んー、まぁ別段用があった訳じゃないし、暇が潰せれば良かったのよ」

( ´_ゝ`)「「あー」」(´<_` )

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 20:57:09.30 ID:ozknFgLz0
兄弟で顔を見合わせ、頷き、にやにやと笑う。あれだ、今日ブーン掃除当番だったから……。ああ、ほうほう。

ξ゚⊿゚)ξ「な」

( ´_ゝ`)「ほら早く行け、チャイム鳴るぞ」

(´<_` )「ブーンが待ってるぞー」

ξ*゚⊿゚)ξ「なっ、そんなんじゃなっ! ブーンが一緒に帰ろうって五月蠅いからっ、仕方なく、仕方なくなのよ?!」

( ´_ゝ`)「はーいはい、はよ行けぃ」

 勘違いしないでよね! と捨て台詞を吐きながら走っていくツンの後ろ姿を兄弟はぼんやり見る。

( ´_ゝ`)「あの先輩、弟者のことが好きなんだってさ。俺から言ってくれって言われたから『俺が弟者ですよ』って言っちゃった。ごめん」

(´<_` )「お前なぁ……俺が横恋慕しなけりゃならないフラグを立てるなよ」

( ´_ゝ`)「いや、すまんって。何のフラグか知らんけど。んでさ、取り敢えず保留にしといたんだけど、どうする?」

(´<_` )「さあ? 流石に色恋沙汰で悪戯はしたら殺されそうだしな。お前が考えといてくれ」

( ´_ゝ`)「あー、はいはい分かったよ、了解。三択王と呼ばれた俺の神技を見るが良い」

(´<_` )「サンタ喰おう?」

( ;´_ゝ`)「怖っ!」

===

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:01:50.99 ID:ozknFgLz0
=17==

 襤褸切れのようになったブーンを引きずるツンを先ほどまで兄と談笑(?)していた席まで連れていく。
 机の上には空になったプラスチックのコップが置いてあった。

(´<_` )「こちらの席に、……と、すまん、水片づけて無かったな」

( ^ω^)「店員が店の水勝手に飲むなおwww」

(´<_` )「いや俺が飲んだ訳じゃないし」

( ´_ゝ`)「というか回復早いなお前」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私ドリアで」

( ^ω^)「おっお、ドクオも呼ぶからオーダーは待つお、ツン」

 何時の間にか席にちょこんと座り、メニューを広げているツンをブーンが押しとどめる。はええなコイツ……と兄弟の思考は珍しく一致した。
 首をかしげて兄がブーンに問いかける。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:05:22.31 ID:ozknFgLz0
( ´_ゝ`)「へ? ドクオも居るのか?」

(´<_` )「何で入ってきて無いんだ?」

( ^ω^)「怖いからって外で待ってんだお」

(´<_` )「外で待ってる方が怖くないか……? 治安的な意味で」

( ^ω^)「そう言う所がドックンらしいお」

( ´_ゝ`)「まぁ、らしいっちゃらしいな」

 真っ青な携帯を取り出し、ぴろぴろと何やら操作する。程なくしてまたてぃうんてぃうんと電子音が鳴った。

('A`)「なんだよ……、お前らの悪戯だったのかよ」

 顔色の悪い青年が顔をしかめて入ってくる。
 少女がひらひらと手を振るのに返事をして、三人が固まっている机に幽鬼のような足取りで寄ってきた。
 何処かお体悪いんですかと聞きたくなるような歩き方だが、これが彼の素だと知っている四人は全く意に介さない。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:08:42.34 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「いや、悪いな」

('A`)「まぁ本物とかじゃなくて安心したけどさ」

( ^ω^)「ドクオ、幽霊とか信じちゃってる人なのかお? ふひひwwww」

('A`)「うっせー、俺はただ単にびびりなだけだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「何で胸張って言うのよ……」

===



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:12:32.95 ID:ozknFgLz0
=1==

从'ー'从「ねぇねぇブーン君、どうやれば兄者君と弟者君がわかるの?」

( ^ω^)「お? せんせいわからないのかお? かんたんだお? ねー」

('A`)「ん」

 ふっくらとした幼児が、傍らで砂の山を叩く幼児に首を傾げる。子供らしい乳臭い仕草でもう一方も頷いた。

( ^ω^)「よくいたずらするほうがあにじゃだお!」

('A`)「え? ぎゃくだろ? よくいたずらするほうがおとじゃ」

( ^ω^)「えー! ちがうお! あにじゃだおー!」

('A`)「おーとーじゃ!」

 む、むむむ、と睨み合う。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:16:05.77 ID:ozknFgLz0
从;'ー'从「け、喧嘩しないの。ほらほら、落ち着いてー」

(´<_` )「ん? どうしたんだ? ぶーんにどくお、けんかか?」

 ひょこ、と兄弟の片割れが先生の後ろから顔を出す。其れに向かって二人がびしりと人差し指を突き立てた。

( ^ω^)「「あっあにじゃ!」」('A`)

(´<_` )「ん? なんだ?」

从;'ー'从「何でわかるのかな……?」

( ^ω^)「「わかるもんねー」」('A`)

(´<_` )「え? なに? なに?」

===

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:20:04.19 ID:ozknFgLz0
=18==

(´<_` )「で、オーダーは?」

('A`)「あ、おおう、じゃあ俺コーヒーで」

( ^ω^)「僕はコーラお願いしますお」

ξ゚⊿゚)ξ「え? 何? 飲み物頼む雰囲気なの? じゃあ、アイスミルクティにするわ」

(´<_` )「畏まりましたーっと」

( ´_ゝ`)「あ、待てこら、俺も行くー」

===



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:24:57.19 ID:ozknFgLz0
=19==

 かつかつと足音を鳴らせて立ち去る後ろ姿を見、ブーンは少しだけ声を潜めた。

( ^ω^)「……元気そうで良かったおね」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

('A`)「……」

 ツンは笑顔を気まずげな表情に代え、そうね、と消え入りそうな声で呟いた。ドクオは忌々しげな表情で右中空を眺めへの字に口を噤んだ。

===



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:29:06.80 ID:ozknFgLz0
=20==

(´<_` )「はい、大変お待たせいたしました、コーラにコーヒーにアイスミルクティになります」

( ^ω^)「おっお」

('A`;)「うーい……ってホットかよ、この暑いのに……」

(´<_` )「だってお前アイスって言わなかったし」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁいいじゃない、此処クーラー効いてるし」

( ´_ゝ`)「チームマイナス六パーセントに真っ向から喧嘩売ってるもんな」

('A`;)「そうか……そりゃそうだけど……まぁいいか」

 ドクオががっくりと頭を垂れ、胡乱な雰囲気がBGMに混じった時、


( ゜ω゜)「アッー!!」


 がたたん、と唐突にブーンが立ち上がった。
 四人分の視線が彼に集中する。

( ゜ω゜)「DVDの返却期日明日の七時だったお!」

ξ゚⊿゚)ξ「「はぁ?」」('A`)

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:32:56.23 ID:ozknFgLz0
( ゜ω゜)「まだ一本も見てねぇお!! 帰るお!! ドクオ勘定宜しく!」

 一口も飲んでないコーラを放って、ぱしんと代金を机に叩きつけ「ラーゼフォン! フリクリ! カーボーイヴィバップ!」とか叫びつつだばだばと走り出す。

ξ゚⊿゚)ξ「なっ、ちょ、待ってよブーン!!」

 少女も急いでミルクティを飲み干し「ごめん、私も行くわ、お金お願い」と代金を慌てて机に置いた。これまた「待ちなさいよ、こらっ!」などと騒がしく走り去っていった。


('A`;)「お、おう……」

(´<_`; )「あざーしたー…」

(;´_ゝ`)「慌ただしい奴らだな……」

 弟と同じように立っていた兄が青年の残したコーラの前によっこいしょと座る。

(´<_` )「そういやお前等、何で来たんだ?」

('A`)「歩きだ」

(´<_` )「ふーん……」

( ´_ゝ`)「お前等の下宿って此処から近かったっけ?」

('A`)「あー、うん、まぁ、散歩がてらだな」

( ´_ゝ`)「そうかー」

 静かなBGMが空間にのたりと寝そべる。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:36:21.63 ID:ozknFgLz0
('A`)「昔からさ、お前等ってよく入れ替わって遊んでたよな」

 唐突に昔話を始めたドクオを、かくんと双子は同時に首を傾げてさも不思議なものをみるように眺める。

(´<_` )「……そうだけど、どうした?」

('A`)「いや、俺もさ、ブーン程じゃないけど、お前等を見分ける自信あんだよ」

( ´_ゝ`)「でも今日はブーン見分けれんかったっぽいけどな。名字呼びだったし」

 兄が愉快そうに笑いながら言う。そうか、と青年は頷き二人から目を逸らした。

('A`)「確かにお前等、顔格好は全然見分けつかんけど、表情とか言葉遣いとか全然違うから結構分かりやすいのな」

(´<_` )「そうだったのか……今度から悪戯の参考にする」

('A`)「黙って無表情にしてりゃわかんないぞ」

( ´_ゝ`)「へー」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:39:03.69 ID:ozknFgLz0
('A`)「まー、でも、動いたら仕草とかで分かるがな、俺は。多分、ブーンも」

 頷く双子。すごいなと兄が呟くと、青年は少しだけ誇らしげにすげーだろと口元を緩めた、がすぐに視線を落とす。

('A`)「でもさ、今俺、お前等がどっちがどっちか、わかんねぇ」

 かた、と静かに机に伏せる。からりとコーラの中の氷が鳴った。






('A`)「お前等、どっちが死んでんの?」

===



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:41:33.71 ID:ozknFgLz0
=9==

 こう言う場面で、ドクオは何と言えば良いのか、知らなかった。
 
 割と一般的な十九歳男子よりも葬式に出席した回数は多い筈なのだが、母から教わったお悔やみの言葉は何をどうやっても喉に引っかかるばかりで苦い味を舌に残していた。
 喪服も、今一しっくりこない。

l从・∀・ノ!リ人「ドクオさんなの、じゃ」

 暗く沈んだ可愛らしい声に振り返ると、夏服のブレザーに身を包んだ少女がしんなりとした顔つきで立っていた。

l从・∀・ノ!リ人「あの、どうぞ兄の顔、見て遣って来て下さいなのじゃ」

('A`)「あ、いや、さっき見てきた。有り難う」

l从・∀・ノ!リ人「そうですか……。あ、どうぞ上がっていってお茶でも飲んでいってほしいのじゃ。裏……、はちょっとばたばたしてるから、二階に上がって貰えれば……」

('A`)「いや、そろそろ火葬場行くんだろ?流石にそこまでは着いて行けないし」

l从・∀・ノ!リ人「ドクオさんなら多分納骨だってさせてもらえるのじゃ。おっきい兄者も居ないし、代わりに、」

('A`)「そんな訳には行かない」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:44:16.24 ID:ozknFgLz0
 少女は俯いて「ごめんなさい」と呟いた。

l从・∀・ノ!リ人「それにしても、ちっさい兄者は幸せ者なのじゃ。わざわざ街からたくさんの友達が見送りに来てくれてたのじゃ」

('A`)「うん……だな」

 ドクオは何とも言えない気持ちで少女から目をそらす。
 田舎の葬式は、斎場で行われない事がままある。流石家もそうらしく、障子の外された仏間と北座、南座に参列者が集まっていた。
 見慣れた顔から、見慣れない顔まで。
 ざわざわとした小さな喧噪と嫌になるような陽気に泣きそうになる。

@#_、_@
 (  ノ`)「妹者、お茶を運んでくれないかい」

l从・∀・ノ!リ人「あ、はーいなのじゃ」

 名前を呼ばれた少女は「じゃあ、ちょっと失礼するのじゃ」とふわふわとした足取りで立ち去ってしまう。兄と似た、その歩き方。
 何処か萎えたような印象を受けたが、泣き腫らした痕は見えなかった。
 ドクオは、其の状態を知っている。
 母が死んだ時の自分と一緒だ、と。

===



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:47:39.19 ID:ozknFgLz0
=21==

 真夏にも関わらず、ひんやりした声が世界を凍らせた。
 BGMが相も代わらず呑気に垂れ流れている。

( ´_ゝ`)「どっちだろうなー」

 沈黙を破ったのは、兄と呼ばれる青年の呑気な声だった。


(´<_` )「どっちも何も、お前は葬式に来てたんだろ」

('A`)「行ったよ……弟者の葬式」

(´<_` )「だったら生きてるのは兄者に決まってんだろ」

('A`)「でも、お前は、弟者だろ?」

 ファミレスの制服を来た青年を指さす。弟者と呼ばれた青年はにこりと笑った。

(´<_` )「どうだろうな?」

 兄のように、自分らしく、無邪気に、シニカルに。

(´<_` )「兄者が弟者みたいに振る舞ってるだけかもしれないぜ?」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:50:05.96 ID:ozknFgLz0
 がしがしと頭を掻き回す青年を微笑ましげに見て、双子は口元を緩めた。悪戯成功、とでも言うように視線を交差させる。

( ´_ゝ`)「んー、そうだな、選択肢をやろう」

 にっこりと私服の青年が笑みを作る。制服の青年と同じように、弟のように、自分らしく、シニカルに、無邪気に。

( ´_ゝ`)「一つ、弟者が死んでる。二つ、兄者が死んで、弟者が兄者になりすましている」

(´<_` )「さぁ、どっちだ?」

 鏡合わせに立ち、両手を広げてみせる。

('A`)「わかんねぇよ……」

( ´_ゝ`)「まぁ、俺らもわかんないんだけどな」

 私服姿の方が無表情に戻って口元だけを曲げた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:53:38.58 ID:ozknFgLz0
(´<_` )「お前の言った通りさ、昔から入れ替わりゲームとかばっかしてたから、どっちが本当の兄者なのか、どっちが本当の弟者なのか、わかんないんだよなぁ」

 制服姿の方は目を細め、猫のように笑む。

( ´_ゝ`)「「でもさ、どっちかが死んでも、こうやってまた新しい悪戯出来てんだから、いいんじゃね?」」(´<_` )


 同時に言い放つ双子を見、厭そうに顔を歪める。


('A`)「お前等、最悪だよ」



( ´_ゝ`)「「知ってるよ」」(´<_` )

===



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 21:56:30.12 ID:ozknFgLz0
=6==

(´<_` )「兄者のバイト先は何時来ても人が居ないな」

( ´_ゝ`)「ん? ああ、まぁ深夜だしな」

(´<_` )「ここは一つ人の集まりそうな噂のたつような悪戯でもしてみるか」

( ´_ゝ`)「減俸されたら嫌だから止めてくれ」

(´<_` )「大丈夫だ、兄者は意味もなく外面が良いから、言いくるめを使うんだ」

( ´_ゝ`)「俺そんなスキル持ってる自信無いよ」

 兄が疲れたようにシャツの首元のボタンをいじる。弟は兄の発言を完全に聞いていないらしく、顎に手をやりスモッグで曇った夜空を見上げてあーでもないこーでもないと思椎に暮れ始めていた。
 そんな弟を見て、溜息を吐く。

(´<_` )「ターゲットはやはり客だよな。今此処にわしが通らなかったか? ばかもーん、それが兄者だ! とか」

( ´_ゝ`)「それ何て三世? それなら寧ろ……」

 弟が提案し、兄が意見を深める。街灯に照らされた二人は心底から楽しそうに次の悪戯を考えていた。
 だから、信号を無視して突っ込んでくる乗用車に気付かなかった。

 衝撃は一瞬。

===

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:00:21.41 ID:ozknFgLz0
=7==

 横並びになっていた二人を跳ね上げ、赤い車体は黒いブレーキ痕を残して止まった。上滑りするような薄っぺらいブレーキ音に伊藤は顔を顰めた。
 べしゃりと生々しい肉の落ちる音が開いていた窓から車内に入り、伊藤の心臓を握る。

 これだから夜勤なんて嫌だったのよ、嫌だって言ったのに!

 理不尽な怒りが一瞬脳味噌を涌かせて、其れから瞬時に冷却された。交通事故だ、と他人事のように考える。バックミラーを除くと、口紅の塗られた唇がわなわなと震えているのに気付いた。

('、`;川「あ、……あ、ああああぁ」

 伊藤はシートベルトを外すのももどかしく車から弾き出る。やってしまった、と言う言葉が頭の中をくるくると舞った。
 きゅうきゅうしゃ、と舌足らずな言葉が口の中で暴れ回る。
 同じくらいの背丈、同じような顔つきをした二人の青年が道路にだらりと横たわっていた。混乱した頭は一瞬分裂してしまったのだと警報を鳴らす。

 片方の青年は頭から血を流している。その量はそう多くは無いが半開きになった目はおぞましく、口からこぼれる赤い泡は気持ちが悪かった。意識は無い。少なくとも、人としての意識は無い。

 もう片方の青年は、混乱したように瞬きを繰り返し、尋常では無い方向に折れ曲がった腕を自分の片割れに向かって伸ばしている。
 その足のフォルムも何だか異常だ。呻きともとれる声とともに漏れる呼吸音は、まるで機械のようだった。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:03:23.68 ID:ozknFgLz0
( <_ )「……ぉ、」

 ひゅうひゅう。

( <_ )「……とじゃ、どうし、……?」

 ひゅうひゅう。ひゅうひゅう。ひゅうひゅう。ひゅー、ひゅ。
 青年は這いずるようにして片割れに手を伸ばす。あらぬ方向を向いた腕は片割れに向かっていない。それでも、求めるように。

('、`;川「あ……、だ、大丈夫?」

 大丈夫な訳が無い。聞かなくとも素人目にさえ分かる。伊藤はは、青年達に向かって伸ばした手をスーツのポケットに引っ込めた。おぞましくて、触れられなかった。
 頭がくらくらと螺旋を描く。

 ひゅうひゅう、ひゅうひゅう。

 やけに大きい呼吸音が伊藤の脳に響き、感情を置いて行け堀にして涙腺が塩水を分泌した。

( <_ )「……おまえが死んだら、どうやって悪戯すればいいんだよ」

 震える手で携帯電話の1と1と9を押す伊藤の耳に、やけに明瞭なその言葉がこびり付いた。

===



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:06:43.98 ID:ozknFgLz0
=22==

 がた、とドクオが席を立つ。

(´<_` )「お、帰るのか?」

('A`)「……用事思い出した」

( ´_ゝ`)「また来いよー」

 ちゃらん、と代金を机に落とし、憎憎しげに、さりとて楽しそうに顔を歪めた。
 視線の先の双子は、鏡のように微笑んでいる。

('A`)「もう絶対来ない」

( ´_ゝ`)「「んな事言うなって」」(´<_` )

 てぃうんてぃうん、と電子音と共にゆらゆらと店を出ていく背中を見つめ、くすくすと子供のように笑い合う。
 その姿は、丸で鏡のように。さりとて、全く逆反対に。

===

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:09:35.52 ID:ozknFgLz0
=23==

( ´_ゝ`)「俺ら、どっちがどっちだったっけな」

(´<_` )「忘れちゃったよな」

( ´_ゝ`)「「どっちが死んだかなんて忘れたよな」」(´<_` )

( ´_ゝ`)「どっちが兄者だっけな、愚兄」

(´<_` )「どっちが弟者だっけな、愚弟」

( ´_ゝ`)「昔入れ替わってそのままかもしれないしなぁ」

(´<_` )「我らながら分かんないよなぁ」

( ´_ゝ`)「まぁ、生きてるのはお前だしな」

(´<_` )「死んでるのはお前だもんな」

( ´_ゝ`)「こうやって悪戯も出来てるし、どっちがどっちかなんて」

(´<_` )「どうでもいいよな」


 言い合って、にっこりと笑う。

===



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:12:25.85 ID:ozknFgLz0
=3==

( ´_ゝ`)「わたなべせんせいめっちゃこわかったな」

(´<_` )「いつもはしずかなひとがひょうへんするとはこのことだな」

( ´_ゝ`)「ねんのためなふだをこうかんしておこう、あにじゃ」

(´<_` )「うん」

( ´_ゝ`)「じゃあきょうからおれがあにじゃだ。わかったか、おとじゃ」

(´<_` )「ん……わかった」

( ´_ゝ`)「ぜったいだれにもいっちゃだめだからな」

(´<_` )「あにじゃこそ、いったらだめだぞ。にいちゃんなんだから、しっかりしろよ」

( ´_ゝ`)「……それはじしんないけど」

(´<_` )「おま……」

===

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:15:47.55 ID:ozknFgLz0




=24==

( ´_ゝ`)「「流石だよな、俺ら」」(´<_` )

===





80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:19:05.32 ID:ozknFgLz0
と、言うわけで、お気づきの方もいらっしゃるでしょうが何時だか総合に投下したもののリメイクです。

あとがき色々考えてたんですが終ったら全部ぶっ飛びました。
どうしてくれるんですかこれ。

居ないとは思いますが質問等ありましたら出来る限りでは答えさせていただきます。
因みに流石兄弟のAAのミスはありません。

支援をしてくれた方、有難う御座いました。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/03(金) 22:34:11.61 ID:ozknFgLz0
>>81-85
有難う御座います。涙ちょちょ切れそうです。

それでは、いい加減風呂に入れと親が竜巻旋風脚を放ってきそうなので退散いたします。
改めて、最後まで付き合ってくださった方、有難う御座いました。
皆様方が明日美味しい物が食べられるよう祈ってます。


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