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( ^ω^)狼少年のようです |
- 4 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:01:45.052 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 昔々、今よりも遥か昔。
未知が溢れていた時代。 機械や化学もない場所でのお話です。 灼熱砂漠のさらに先。 氷結山のずっと向こう。 奈落まで続くという谷を越えたところに、小さな村と大きな森がありました。 鬱蒼と木々が茂る森は手入れがされておらず、日中でも陽の光が差し込みませんでした。 朝も昼も大差のない明るさは、その森が「黒の森」と呼ばれる所以にもなっています。 森の近くには村がありましたが、村の木こりたちは勿論、狩人さえその森に近づこうとはしませんでした。 黒の森には恐ろしい狼がいて、森に入ろうとする者をみんな食べてしまうと言われてたからです。 そんなわけで、大人たちは子供たちに黒の森に入ろうとしてはいけないと教えていました。 森の話を知らない人は、その村には誰もいません。 勿論、このお話の主人公である( ^ω^)も例外ではありませんでした。 .
- 5 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:02:56.896 ID:9ntMRoTY0NIKU
- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( ^ω^)狼少年のようです ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
- 7 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:05:11.549 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) ( ^ω^)は生まれつき体が弱く、いつも本を読んで過ごしていました。 .⊂^ | | | |::.. 学校に知り合いはいますが友達は一人もいませんし、母親はおらず父親は仕事で忙しく家にいませんでした。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 彼は、いつも一人ぼっちでした。
- 8 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:05:51.701 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 本当は( ^ω^)も、みんなと一緒に走り回ったりドッヂボールをして遊びたいと思っていました。 ( | |ノ| | ですが、走れば息切れを起こし、ドッヂボールをすれば必ず心臓を痛めました。 ノ>U U 周りは( ^ω^)が遊びに加わるだけで気を遣うので、いつも彼抜きで遊んでいました。 ..........レレ
- 9 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:07:12.467 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ どうにか体力をつけようと、( ^ω^)は毎日少しずつ運動をしました。 | / ランニングをしたり、ウォーキングをしたり。 ( ヽノ たった一人で、( ^ω^)は頑張りました。 ノ>ノ ..........レレ
- 11 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:08:43.565 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) でも。 .⊂^ | | | |::.. 走り続けることは勿論、歩き続けることでさえ( ^ω^)には難しかったのです。 ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 13 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:10:19.090 ID:9ntMRoTY0NIKU
- ( ^ω^)は思いました。
どうして僕は、こんなに体力がないのだろう。 どうして僕は、こんなに弱いのだろう。 ( ^ω^)は願いました。 どうか僕も、みんなと同じぐらい強くなりたい。 どうか僕も、みんなと一緒に遊びたい。 毎日毎日、( ^ω^)は同じことを思い、そして願いました。 ですが、思って願って努力するだけでは何も変わりませんでした。 何一つ、変わりはしなかったのです。 何よりも耐え難かったのは、孤独でした。 遊べなくとも娯楽はありましたし、走れなくとも移動は出来ました。 でも、相手がいないと話すことは出来ないのです。 ( ^ω^)が体力を欲しがったのは、そんな孤独を少しでも埋めたいという気持ちの裏返しでした。 彼の努力は生まれてから報われたことはありません。 努力は虚しさだけを( ^ω^)に与えてくれました。 そんなある日のことです。 ( ^ω^)はいつものように、学校の図書館で本を読んでいました。 校庭で遊んでいる同級生たちの楽しげな声はいつも彼の胸を突き刺しましたが、本に集中する振りをして文字を目で追いました。 適当に取った適当な本。 特に興味があったわけではなく、特に読みたいと思ったものでもありませんでした。 すると、ある事に気が付きました。
- 15 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:14:18.137 ID:9ntMRoTY0NIKU
- それは、黒の森について書いてある本だったのです。
森に住む野生動物や、野草について事細かに書いてありました。 そしてその中に、気になる記述がありました。 非常に珍しい野草があり、それを煎じて飲めば体力が劇的に付くというものでした。 この辺りでは黒の森でしか確認されておらず、その価値は金貨十枚にも匹敵するものです。 ( ^ω^)はその野草に興味を持ちました。 ( ^ω^)が黒の森に行こうと決心するのに、そう時間はかかりませんでした。 必要だったのは道具と時間と覚悟だけでした。 思いつく限りの道具と食べ物、そして水を鞄に詰め込んで( ^ω^)は朝から学校を休んで森に向かいました。 どうせ誰も、( ^ω^)の欠席を気にする人はいないからです。 同級生も、先生も、父親も。 誰も( ^ω^)のことなど心配しないことを、彼は知っていました。 森の入り口に来て初めて分かりましたが、森はまるで別世界のような姿をしていました。 見たこともない植物や動物の鳴き声が、それ以上足を踏み入れるなと警告しているようでした。 ( ^ω^)は意を決して、森の中に進んでいきました。
- 16 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:17:28.933 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 森の中は村よりも冷えていて、不気味な雰囲気が漂っています。 ( | |ノ| | ですが、驚いたことに村よりもずっと空気が澄んでいました。 ノ>U U 肺の中が洗い流される心地です。 ..........レレ
- 19 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:19:49.459 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 歩き始めて三十分が経ちましたが、目的の野草は見つかりません。 ( | |ノ| | そう簡単に見つからないことは分かっていたので、( ^ω^)は引き続き地面に目を向けていました。 ノ>U U 地面には落ち葉が積み重なっていて、草はあまり生えていませんでした。 ..........レレ
- 20 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:23:54.970 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 森の空気がいいからなのか、( ^ω^)はあまり辛いと思わずに歩き続けることが出来ました。
こんな経験は、初めての事でした。 調子がいいという言葉の意味を、( ^ω^)は初めて身をもって知りました。 途中に見つけた大きな木の根に座ってお昼ご飯を食べ、再び森の奥へと進んでいきます。 相変わらず野草は見つかりませんでしたが、綺麗な色の羽をした鳥を見つけたり美しい花が足元に咲いているのを見ることが出来ました。 いつしか森の空気が心地よくなり、大人たちが言って聞かせていた言葉を忘れるほどになりました。 だから、( ^ω^)は気付けませんでした。 あっという間に陽が傾き、すでに夜が跫音を立てて背後に迫っていることに。 夜が( ^ω^)の頭上を追い越して森全体を闇に包み込んだ時、彼は一瞬で固まってしまいました。 頼りない星明りでは何も見ることが出来ないし、涼しいと思えた森の空気は氷のように冷たくなっています。 身震いをしたのは寒さからか、あるいは恐怖からか。 幼い( ^ω^)には判断がつきません。 呼吸をするように吹く風が、木々を揺らします。 ざわめきが森全体に広がり、その広大さを雄弁に語ります。 巨大な生物の息吹を思わせるその音は、ですが( ^ω^)には違って聞こえていました。 まるで、海の中にいるように聞こえたのです。 それはとても安心できる音で、恐怖するどころか逆に心を落ち着かせてくれました。 普段聞き慣れているはずの音なのですが、森の中にいると全身にその音が染み渡るようでした。 しかし視界が闇に包まれているのに変わりはありません。 何も見えない中では、( ^ω^)にはなす術もありません。 こんなこともあろうかと持ってきていたランタンを取り出し、火を点けます。
- 21 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:28:37.861 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /i/i、
ミ ゚(叉) 、 とミ ミつ 後ろ足で立ち上がった巨大な狼が目の前にいました。 ヾ~"`ーミ ミ `"""(ノ"ヽ)
- 24 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:31:03.063 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 灰色の毛。
黄金色の瞳。 そして鋭い牙がランタンによって照らし出されます。 ( ^ω^)は悲鳴を上げることが出来ませんでした。 声が出ないのです。 恐怖は声帯を硬直させ、足をその場に固定させました。
- 26 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:36:28.109 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /i/i、
ミ ゚(叉) 、 とミ ミつ 狼は唸り声一つ上げず、( ^ω^)を見ています。 ヾ~"`ーミ ミ `"""(ノ"ヽ)
- 30 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:41:03.713 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) ( ^ω^)はその場にへたり込んでしまいました。 .⊂^ | | | |::.. 無理もありません。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 野生の肉食獣に生身の人間、ましてや子供が武器も持たずに勝てる道理はないのです。
- 32 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:42:53.891 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狼は( ^ω^)の目線に合わせてしゃがみ、顔を近づけてきました。 ミ ミ 鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ中で、何度か湿った鼻先が( ^ω^)の頬に触れました。 としし0フ
- 35 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:45:34.874 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 食前に匂いを嗅ぎ、味を想像する動きです。
食べられるのならば優しくしてほしいと、( ^ω^)は思いました。 同時に、ここで死んでも誰も悲しまないのだろうとも思いました。 ならば狼の餌となった方が役に立った死に方が出来るはず。 一人ぼっちの( ^ω^)には、相応しい死です。
- 37 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:48:09.053 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 ですが。 ミ ミ ですが、その瞬間は訪れませんでした。 としし0フ
- 39 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:50:40.593 ID:9ntMRoTY0NIKU
- .
ひときわ強い風が森全体を揺らし、木々の間から差し込んできた月光が狼を照らし出します。 改めて見るとその狼の大きさと毛並みの良さが分かります。 .
- 41 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:53:07.200 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狼はしばし( ^ω^)を観察した後。 ミ ミ としし0フ
- 43 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:53:58.015 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 半獣人へと、その姿を変えたのです。 く(V (iノ ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)""′
- 46 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 22:56:15.467 ID:9ntMRoTY0NIKU
- ピンと立った耳と尻尾はそのままに、両手足には鋭い爪が光ります。
全身から無駄な毛は消え去り、全身は健康的な筋肉がついていながらもほっそりとしており、かと言って痩せすぎているというわけでもありません。 健康的な肉付きをしていて、鋭い眼光を湛えたアーモンド形の目はどこか優しい色を秘めています。 母性を感じさせる豊かな胸は、狼が牝である証です。 一糸纏わぬ姿なのに感じさせるのは神々しさで、堂々と胸を張って佇む姿は美術品じみていました。
- 48 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:00:55.556 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 狼から半獣人へと姿を変えた女性は( ^ω^)を見下ろし、薄らと慈母のような笑顔を浮かべます。 く(V (iノ その笑顔は( ^ω^)の心と体から恐怖心を取り除きました。 ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)""′
- 50 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:02:34.388 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i やや低めの声で、その女性は( ^ω^)にここで何をしているのかと問いかけました。 く(V (iノ 姿を変えたことも驚きですが、喋ったことも驚きです。 ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)""′
- 53 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:04:31.938 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 悲恋を悲観し自殺に来たり、我が子を捨てに来る馬鹿と同じならば、今ここで食い殺すと表情一つ変えずに言いました。 く(V (iノ ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)"
- 56 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:06:18.708 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 答えるべき言葉を用意していなかった( ^ω^)は、ただただ口をパクパクとさせるだけです。
獣から人へ姿を変えるお伽噺を、( ^ω^)は知っています。 ですがそれはお伽噺のはず。 返答できない( ^ω^)を睨み付ける訳でも憐れむわけでもなく、静かに見下ろすだけです。
- 58 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:07:08.322 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 女性はここに子供が来るべきではない、と短く言い放ちます。 く(V (iノ それは強い口調ではありませんでしたが、有無を言わせぬ力がありました。 ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)""′
- 60 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:08:26.282 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 声帯の緊張が解けた( ^ω^)は、やっと答えることが出来ました。
自分は体力を身につけるための野草を探しに来たのだ、と。 誰かを助けるためか、と尋ねられたので( ^ω^)は首を横に振ります。 野草は自分のためだ、と正直に答えました。 すると女性は理由を尋ねてきたので、それもまた正直に答えました。 ややあって、女性は溜息を吐きます。 くだらない、と女性は断じました。 草一つで命が救われることがあっても、人が変わることはない、と。 そう言われて、( ^ω^)は自分の状況も忘れて言い返します。 これまでに自分が行ってきた努力と、その結果。 努力は結果に結びつかず、無力さへと帰着したこと。 周囲は努力を認めることもなく、誰も関心を持ってくれないという事を。 それはこれまでに生きていた十年にも満たない人生で感じたつたない言葉でしたが、女性はそれを黙って聞いていてくれました。 ( ^ω^)は続けます。 努力が無意味なのであれば、より確実な事をした方がいいと。 他の人がこうあるべきだと決めた型に当てはまるためにも、どのような方法を使ってでも合わせるべきなのだと。 人は人として生きる以上、周囲に合わせなければ孤独でしか生きられない。 周囲と違う生き方が辛くて耐え難いからこそ、変えに来たのだと言いました。 本を読んでも孤独は薄れず、友達は増えず、仕事一筋の父親は関心を持ってくれません。 誰にも認められない少年の心の叫びは、独白となって女性に届きました。 ( ^ω^)は、気が付けば涙を流していました。
- 62 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:09:55.176 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 欲しかったのは強さではなく、評価でした。
誰でもいい。 誰でもいいから、認めてほしかったのです。 努力を、存在を。
- 65 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:11:34.777 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i しばらく黙って聞いていた女性は、大きな欠伸をしました。 く(V (iノ 心底くだらない、と。 ノ__ゝ"~フ 周囲を見渡してみろと、女性は気だるげに言います。 (_ノ ヽ_)"
- 67 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:13:13.623 ID:9ntMRoTY0NIKU
- ランタンが照らす夜の森。
他には何もありません。
- 71 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:15:23.448 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 女性は、今( ^ω^)は何を見た、と聞きました。 く(V (iノ 認めてほしがって頑張っている奴はいたか、と付け加えます。 ノ__ゝ"~フ 個を認識してほしいと考えているのに、他に合わせて個を変える奴がいたか、と。 (_ノ ヽ_)"
- 74 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:18:39.622 ID:9ntMRoTY0NIKU
- ( ^ω^)は首を横に振ります。
森は森です。 そんな事をする存在はいません。
- 75 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:19:29.126 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i そして、森を見た時に( ^ω^)は足元で動く虫を、木に巣食う鳥を、地中で蠢く微生物を認識したのかと聞きます。 く(V (iノ その質問に対して、( ^ω^)は何も対応できませんでした。 ノ__ゝ"~フ 森という大きな枠組みでしか認識していなかった( ^ω^)は、他の存在を認めることが出来なかったのです。 (_ノ ヽ_)"
- 78 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:20:59.957 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i 半ば呆然とする( ^ω^)に対して、女性は改めて問いかけました。 く(V (iノ 本当に欲しいのは、評価なのか、と。 ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)"
- 80 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:22:29.942 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 答えは否、です。
体力を身につけた先にある物こそが、( ^ω^)が本当に欲している物なのです。 本当は、精神的な強さが欲しかったのです。 孤独に耐えうる強さが。 自分自身を変えていく強さが。 誰かに認めてもらうための強さが、欲しかったのです。 普通であるための強さではなく、個として認識されるための強さが。
- 82 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:24:06.090 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 、rー―、_
ヌノハリイヌ リ、゚ー゚イ^i ならば自然から学べ、と女性は言いました。 く(V (iノ ありのままで生き続ける自然の強さを学び、強くなればいいと。 ノ__ゝ"~フ (_ノ ヽ_)"
- 83 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:24:32.651 ID:9ntMRoTY0NIKU
- .
そうして女性は、再び狼の姿へと戻りました。 .
- 84 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:26:11.944 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 背中に乗るようにと促され、( ^ω^)は大人しく狼の背に乗りました。 ミ ミ 毛は固く艶やかですが、まるでクッションのようにふわりとしています。 としし0フ 紛れもない獣の毛でした。
- 86 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:27:25.255 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 闇に目が慣れてきた( ^ω^)は、次第に夜の森の姿が見えるようになってきました。
昼間とは違う、静かな森の姿です。 どこかに何かが潜んでいるのでは、と思わせるほどの暗さでしたが、月明りと星の光がほんのわずかではありますが照らしてくれています。 だからこそ分かったことがあります。 潜んでいるのではなく、見えていないだけなのです。 見えていないからこそ認識が出来ていないだけで、狼の足が木の枝を、枯葉を踏みしめる度にその存在は認識されます。 風が吹き、木々がざわめきます。 認識できてしまえば、もう恐くはありません。 優しげな森が、そこにはありました。 狼の背に揺られる内、( ^ω^)は眠くなってきました。 背中越しに感じる狼の体温は温かく、まるで布団のようです。 何度か起きていようとしましたが、遂に( ^ω^)は眠りに落ちてしまいました。
- 87 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:29:33.188 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 背中で眠る( ^ω^)に気付いた狼は何も言いませんでした。 ミ ミ 森の中から感じる視線に対して、首を横に振ります。 としし0フ
- 89 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:32:40.153 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 この少年は家に帰してやろう、と狼は静かに言ってそれ以上は何も言いませんでした。 ミ ミ としし0フ
- 91 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:34:06.064 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 次に目を覚ました時、( ^ω^)はベッドの上にいました。
あれは夢だったのかと思いましたが、指先で感じた狼の毛並みや匂いは紛れもなく現実の物でした。 自分の服を見ると、確かにそこには灰色の毛が付いていました。 夢ではなかったのです。 狼が家まで送ってくれたのです。 送り狼という言葉を聞いたことがありますが、その言葉は必ずしも正しいわけではなさそうでした。 いつものように学校に行くと、クラスの様子がいつもと違っていました。 ( ^ω^)の姿を見てひそひそ話をし始めたのです。 それは初めての事でしたが、いい気持ちはしませんでした。 やがて、クラスのリーダーである男の子が( ^ω^)の席にやってきて乱暴に尋ねました。 ( ^ω^)の家から大きな狼が出てくるのを見たのだが、それは本当か、と。 クラスがどよめきます。 ( ^ω^)は正直に頷きました。 黒の森に行って、狼に送ってもらったのだと。 その瞬間、男の子が( ^ω^)は村に狼を連れてきた悪魔の手先だと叫びました。 クラス中が悲鳴を上げました。 物が飛んできました。 最初、( ^ω^)は何故このような仕打ちを受けるのか分かりませんでした。 思い出したのは、黒の森が皆に恐れられているという事です。 ですがそれは間違いなのだと( ^ω^)は知りました。 森に悪魔はおらず、狼は心優しかったのだと知っています。
- 93 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:37:02.118 ID:9ntMRoTY0NIKU
- 勇気を振り絞って言い返した( ^ω^)に対して返ってきたのは、心無い言葉ばかりでした。
その内、騒ぎを聞きつけた先生がやってきて( ^ω^)を別の教室に連れていきました。 連れていかれたのは、( ^ω^)だけでした。 先生は事実を確認するために、( ^ω^)と狼の話を聞きました。 実は先生も、その話を村の大人たちから聞いていたのです。 言い逃れも隠し立ても出来ないと悟った( ^ω^)は、本に載っていた野草を探しに黒の森に行ったこと、そこで狼にあったことを話しました。 青ざめた表情で先生は席を立ち、( ^ω^)を置いて職員室に向かいました。 職員会議はやがて村の会議へと発展し、狼狩りの話へと至りました。 村中の狩人を黒の森へ向かわせ、巨大な人食い狼を退治してもらうのです。 ( ^ω^)の父親もそれに同意しました。 村人は皆、その退治に賛成しました。 ( ^ω^)だけが、泣いて反対しました。 それでも、大人たちは( ^ω^)が狼に騙されているのだと信じ、より一層強い決意をもって狩りを決行することにしました。 狼との出会いから二日後の事です。 よその村からも腕っこきの狩人が集まり、狩人は百人近くも揃いました。 皆、化け物退治に向かう勇者の心地で陶酔し、己の得物である猟銃を自慢しあいました。 南の森の主を殺した狩人、東の山の主から剥いだ皮で作ったジャケットを着る者まで、皆が笑顔で殺した獣の話をしています。 狩りに参加する( ^ω^)の父親も銃を手にその話の中に入り、腕と逸話で話に花を咲かせました。 狩りが決行されるその日、( ^ω^)はまだ夜が明ける前に人目を盗んで森の中に入っていきました。 自然と走っていた( ^ω^)は、あの日出会った狼にこの危険を伝えたかったのです。 自分のせいで傷ついてしまわないように、森が荒らされないようにと。
- 95 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:39:11.612 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狼は川辺で静かに佇んでいました。 ミ ミ 跫音が聞こえていたのか、顔は( ^ω^)の方を向いています。 としし0フ
- 96 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:39:46.616 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) その姿を見て、( ^ω^)は思わず倒れ込んでしまいました。 .⊂^ | | | |::.. 息が上手くできません。 ⊂_ U_ノ|__つ:. いつの間にか、( ^ω^)は走っていたからです。
- 98 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:40:57.307 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狼は( ^ω^)が呼吸を整えるまで待ってくれました。 ミ ミ そして( ^ω^)から何が起こっているのか話を聞いて、静かに瞼を降ろしました。 としし0フ
- 101 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:42:59.958 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) ごめんなさい、と( ^ω^)は謝ります。 .⊂^ | | | |::.. 謝ってどうにかなる問題でないことは重々承知していましたが、それでも謝りました。 ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 103 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:44:15.603 ID:9ntMRoTY0NIKU
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 分かっていたことだと狼は言い、立ち上がります。 ミ ミ としし0フ
- 107 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:45:37.541 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /i/i、
ミ ゚(叉) 、 とミ ミつ だから気にする必要はないとだけ伝え、狼は( ^ω^)が来た方向。 ヾ~"`ーミ ミ つまり、森の入り口に向かいます。 `"""(ノ"ヽ)
- 108 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:47:52.824 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) どうするつもりなのかと問う( ^ω^)ですが、狼は答えません。 .⊂^ | | | |::.. 遠ざかる背中が物語るのは、紛れもない別れです。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 狼がいくら大きかろうと、猟銃の威力には敵わないことを知っているはずです。
- 110 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:49:30.131 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 狼は全て分かっていたのです。 .⊂^ | | | |::.. ブーンを生かして帰せばいつかこうなることを知っていて、狼は帰してくれたのです。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 問題が起こった際、自分が矢面に立って森が荒らされないようにすることを覚悟していたのです。
- 111 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:52:10.493 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 理由は分かりません。 .⊂^ | | | |::.. 出会って間もなく、話もろくにしていない間柄です。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 分かるはずがありません。
- 114 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:55:36.362 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) ―――でも。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 115 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:56:04.569 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 分かることがあります。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 116 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/29(日) 23:57:10.955 ID:9ntMRoTY0NIKU
- /⌒ヽ
/( ´ω`) このままでは、いけないという事です。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 118 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:00:35.261 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) ここで倒れて息を整えている場合ではありません。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 119 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:01:00.288 ID:NjlyHmtI0
- しえ
- 120 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:01:04.113 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 今動かなければ、( ^ω^)は一生後悔することになります。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 121 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:02:40.483 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 動くのは、今しかありません。 .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:.
- 123 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:03:19.660 ID:Ansm+kSr0
- .
/⌒ヽ /( ´ω`) …… .⊂^ | | | |::.. ⊂_ U_ノ|__つ:. .
- 125 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:04:59.913 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | ( ^ω^)は震える足で立ち上がります。 ( | |ノ| | ノ>U U レレ
- 128 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:07:44.257 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 一歩を踏み出します。 ( | |ノ| | ノ>U U ..........レレ
- 130 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:08:49.091 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 二歩目。 ( | |ノ| | ノ>U U ..........レレ
- 132 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:09:36.908 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) | | | | | 三歩目。 ( | |ノ| | ノ>U U ..........レレ
- 133 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:10:46.559 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ 四歩目。 | / ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 135 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:12:51.461 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ 五歩目を踏み出した時、( ^ω^)は走っていました。 | / ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 136 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:15:13.892 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ 六歩、七歩―― | / 喉が痛みます。 ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 138 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:17:04.303 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ 七十三歩、七十四歩―― | / 心臓が破裂しそうです。 ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 140 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:18:10.060 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ 四百二十一歩―― | / 喉から血の味がしました。 ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 142 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:19:21.542 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 木の根に躓いて倒れてしまいました。 .⊂^ | | | |::.. 脚は震えて、口の中が酸っぱくなり、吐き気を覚えます。 ⊂_ U_ノ|__つ:. 息をすることが困難になり、酸素を求めて心臓と肺が痛みます。
- 144 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:20:38.648 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
/( ´ω`) 脚が妥協を要求します。 | | | | | でも、立ち上がります。 ( | |ノ| | ノ>U U レレ
- 146 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:22:23.854 ID:Ansm+kSr0
- /⌒ヽ
⊂二二二( ´ω`)二⊃ そして走り出すのです。 | / ( ヽノ ノ>ノ ..........レレ
- 147 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:25:37.910 ID:Ansm+kSr0
- 強さとは。
強さとは何なのでしょうか。 ( ^ω^)が求めた強さとは、狩人のように狼を殺すことなのでしょうか。 いいえ。 それは違います。 ( ^ω^)は狼の強さが欲しいのです。 あるがままを受け入れ、受け止め、その上で成長していく。 自然と共に生き、自然の一部と化す強さが欲しいのです。 誰かに傷つけられることのない強さ、誰かを傷つけることのない強さ、誰かを諭す強さを持ち合わせたあの狼になりたいのです。 銃声が聞こえました。 沢山の銃声です。 木霊して正確な数は分かりませんが、少なくとも十以上の銃声が連続して響きました。 音の方に急ぎます。 そこには、血塗れの狩人たちが転がっていました。 鋭い爪で引き裂かれた狩人たちは息をしていません。 そこに狼はいませんでした。 再び銃声が響き渡ります。 今度は人の声も聞こえました。 そして、( ^ω^)はやっと追いつくことが出来ました。 狼は死体の山の上に座っていました。
- 149 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:27:34.662 ID:Ansm+kSr0
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狼の呼吸は荒く、苦しそうです。 ミ ミ 鋼の様だった毛皮に赤黒い染みが出来ています。 としし0フ 現れた( ^ω^)に目を向けることもありません。 (:::::::::::::::::::::::::)
- 150 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:31:07.619 ID:Ansm+kSr0
- 狼の傍に駆け寄ります。
鋭い牙に血が付いていました。 歯の隙間には布が挟まっていました。 人を噛み殺したのでしょう。 恐さよりも申し訳なさが( ^ω^)の心にあふれました。 自分のせいでたくさんの人が死に、狼を傷つけてしまったことが情けなく感じました。 言葉をかけようにも( ^ω^)は酸素を肺に送り込むだけで精一杯です。 咳をするたびに血の匂いがします。 脚から力が抜け落ちて、今にも倒れそうになります。 でも、倒れません。 倒れたらもう起き上がれない自信がありました。
- 152 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:32:15.591 ID:Ansm+kSr0
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 出口はこの先にある、と狼は優しい口調で言いました。 ミ ミ あれだけの傷を人間に負わされ、あれだけの人間を殺した後でも( ^ω^)に対する態度は変わりません。 としし0フ (:::::::::::::::::::::::::)
- 153 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:32:51.293 ID:Ansm+kSr0
- 銃を構えた狩人たちが仲間の名前を呼びながら近づいてきます。
反射的に( ^ω^)は狼の体に抱き付きます。
- 155 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:33:49.505 ID:Ansm+kSr0
- |ヽ|ヽ
(叉)- 彡 どうしてそんなことをしたのでしょうか。 ( ´ω)ミ 狼を失いたくないからでしょうか。 ヽ つ それとも、狼に対して親愛の情を抱いたからでしょうか。 としし0フ それとも、その小さな体を精いっぱい使って狩人から狼を守ろうとしたのでしょうか。 (:::::::::::::::::::::::::)
- 156 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:36:29.919 ID:Ansm+kSr0
- 狩人たちが銃を構え、( ^ω^)に狼から離れるよう声をかけます。
( ^ω^)は声を出そうとしましたが、出せません。 だから首を横に振るだけです。 涙を流し、嗚咽し、むせび泣くだけなのです。 もうこれが精いっぱい。 これで精いっぱいなのです。 元々体力がないのに森を走り回ったせいで、息をするだけで死にそうなほど苦しいのです。 喉が裂けて血が溢れそうな心地です。
- 157 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:38:16.000 ID:Ansm+kSr0
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 離れるなど、できません。 ( ;ω)ミ 唯一自分に興味を持ち、自分を強くしてくれたこの狼を殺させることなど、できません。 ヽ つ それだけは嫌なのです。 としし0フ (:::::::::::::::::::::::::)
- 158 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:41:07.378 ID:Ansm+kSr0
- その光景を見て、誰からともなく狩人たちの中から狼に魅せられた悪魔の子だと声が上がります。
次第にその声は大きくなり、悪魔を殺すべきだという言葉に変わりました。 そこには、( ^ω^)の父親も混ざっていました。 でも( ^ω^)は分かっていました。 父親が自分の事を嫌っていることを。 苦しくて寂しくても、いつも仕事を優先していたのは、( ^ω^)と会いたくなかったからなのです。 理由は分かりません。 知りようもありません。 でも分かるのです。 子供は感情に敏感な生き物です。 負の感情が向けられていれば、嫌でも分かってしまうのです。
- 159 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:41:42.754 ID:Ansm+kSr0
- |ヽ|ヽ
(叉)゚ 彡 狩人たちは戸惑います。 ( ;ω)ミ 果たして、子供ごと撃ち殺していいものだろうか、と。 ヽ つ 悪魔と言ったものの、人間の姿をしている子供を殺すのには躊躇が生まれてしまいました。 としし0フ (:::::::::::::::::::::::::)
- 160 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:43:56.297 ID:Ansm+kSr0
- 人間らしい感情をあざ笑うようにして狼は( ^ω^)を引き離すことなく立ち上がり、狩人を睨んだままゆっくりと後退ります。
そして、弾丸のような速さで森の奥へと駆けていきました。 遅れて銃声が響きますが、木々に阻まれて狼には届きません。 そのまま一人と一匹の姿は消えてゆき、狩人たちはその後を追いました。 追う内に日が暮れ、夜の森が狩人たちを迎え入れます。 そしてもちろん、迎え入れるのは夜だけではありません。
- 161 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:47:26.106 ID:Ansm+kSr0
- ,、
(ゞ~キ ヽ 彡=゚-゚ミ. 例えば、獰猛な虎。 /= =| ~(゙_)UU) ∧ヘ 从ミ ‘`プ 例えば、人を一飲みに出来る巨大な狐。 (∧)/`"i´ ゞ'、__゙)_b /i/i、 ミ ゚(叉) そして、報復を誓った巨大な狼たちが彼らを迎えました。 、 とミ ミつ ヾ~"`ーミ ミ `"""(ノ"ヽ)
- 164 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:49:33.503 ID:Ansm+kSr0
- 一夜が明け、狩人の死体が森の入り口に積み重ねられているのを村人が発見したことにより、黒の森は人が近付いてはならない場所として恐れられました。
そして。 村の言い伝えに一つ、新たな物が加わりました。 森の狼に騙され、狼に連れ去られた少年の物語です。 力を求めるあまり悪魔に頼った少年の愚かなお話として語り継がれるのですが、それが事実と異なるのを知っている人間はいません。 言い伝えは所詮言い伝え。 狼と共に生き、狼のように強く育った少年のことなど誰も知らないのです。
- 166 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:52:47.820 ID:Ansm+kSr0
- /i/i、
ミ ゚(叉) /⌒ヽ 、 とミ ミつ ∩ ^ω^) 少年が幸せな日々を送ったことも。 ヾ~"`ーミ ミ | ⊂ノ `"""(ノ"ヽ) U ⌒U /⌒ヽ |ヽ|ヽ ( ^ω^) (叉)゚ 彡 少年と狼の間に奇妙な愛情が芽生えたことも。 / ⌒ヽ ミ ミ (人___つ_つ としし0フ
- 167 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:55:47.051 ID:Ansm+kSr0
- 物語のそれからを知っているのは、この物語の主人公だけなのです。
ですが。 彼らがこの先どうなったのか。 それだけは分かります。 これはお伽噺。 お伽噺の最初と最後はいつも同じなのです。 つまり―――
- 168 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:57:05.102 ID:Ansm+kSr0
- ┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __  ̄ ̄ ̄二二ニ=- 一人と一匹は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。 '''''""" ̄ ̄ -=ニニニニ=- 狼少年のようです /i/i、 ミ ゚(叉) _,,-''" _ ,(^ω^ ),-''"; ;, / ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;,' (.゙ー'''", ;,; ' ; ;; ': ,' _,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' ┼ヽ -|r‐、. レ | _,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' d⌒) ./| _ノ __ノ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻
- 169 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:57:46.033 ID:Ansm+kSr0
- 夜遅くまで支援ありがとうございました。
これでおしまいです。 質問などあれば起きている限りでお答えします。
- 171 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 00:58:42.630 ID:KMchQkRta
- 乙
他にも作品ある?
- 176 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 01:01:38.661 ID:Ansm+kSr0
- 感想をいただけて感無量です。
これだからブーン系は止められませんね。 >>171 ( ^ω^)ぼくのおねーちゃんはすごいようですζ(゚ー゚*ζ (´・ω・`)残雪は春風に吹かれて……のようです 从´ヮ`从トスティール・マイハートのようです (´・ω・`)やはり嫁入り前には雨が降るようです となっております。
- 177 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 01:01:42.205 ID:oxK6v/ab0
- 乙
狼のおっぱいの大きさはどれくらいですか
- 180 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/30(月) 01:03:48.670 ID:Ansm+kSr0
- >>177
デリケートな話をすると松屋の牛丼小のどんぶりぐらいの質量です
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