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ミ,,゚Д゚彡落ちこぼれサンタと少し卑怯な夏の日の奇跡、のようです |
- 5 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:08:07.55 ID:fkGdmU5tO
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【ぷろろーぐ】 のしのしと、土を踏む足がありました。 ミ,,゚Д゚彡「さ、行こうぜシュシュ。子供達が俺を待ってるんだ」 赤い帽子に、赤い服。 口元と顎に白い髭を生やしたその出で立ちは、どこから見ても、サンタ。 彼の名前はフサギコ。 右手に白い大きな袋を持っています。 中は空っぽ。 lw´‐ _‐ノv「……」 サンタの視線の先には、少し小さめの一匹のトナカイ。 首に大きな赤い鈴。 薄茶色の、先が枝分かれした二つの角に、真っ白な毛のとても綺麗な体。 そこから伸びる細く長い四本足は、それはそれは美しいものでした。
- 7 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:09:49.09 ID:fkGdmU5tO
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lw´‐ _‐ノv「……」 眠そうな目をした、このトナカイ。 名前はシュー。 シューをシュシュと呼ぶのは、フサギコだけ。 フサギコとシューは、いつも一緒です。 暗い夜空に星が輝き出した頃、シューは空を翔けます。 星々の光を浴びて輝いて見える白い体は、どの星にも負けないくらい、美しいものでした。 今日も、そんな風に―― ミ,,゚Д゚彡「どうした? 行こうぜ?」 空を翔けるつもりだったのですが―― lw´‐ _‐ノv「今、夏だよ」 ミ,,゚Д゚彡 lw´‐ _‐ノv
- 11 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:11:33.42 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「あっほんとだ暑いなにこれ暑い俺なんでこんな厚着してんの」 フサギコは、とても頭の悪いサンタでした。 どんくさくて、周囲からは落ちこぼれサンタと、呼ばれています。 lw´‐ _‐ノv「おうち、帰ろう」 そう言って、二人は並んで歩きます。 のしのし、のしのし。 とことこ、とことこ。 並んで歩いても、決して足跡の平行線は残りません。 種類が、違うから。 ミ,,゚Д゚彡「暑いね」 lw´‐ _‐ノv「暑いね」 しかし、心は同じです。 さてさて、こんな一人と一匹は、どんな人達にプレゼントを届けるのでしょう。 あんな人? こんな人? それはまだ、誰にもわからないことでした。 なぜなら、やはりフサギコは、どうしようもない落ちこぼれサンタだったから――
- 12 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:13:05.06 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡落ちこぼれサンタと少し卑怯な夏の日の奇跡、のようです
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/02(火) 21:13:25.91 ID:AeuEownJO
- 愉快なと粉雪の人かペースはやいな
- 15 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:14:20.74 ID:fkGdmU5tO
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【第一話】 ミ,,゚Д゚彡「やっとクリスマスだな」 雪の中、肩で風を切って現れたのはフサギコ。 頭の悪いサンタです。 lw´‐ _‐ノv「……」 フサギコの体を見つめ、やはり眠そうな目をするシュー。 とても可愛く、更に美しいトナカイです。 ミ,,゚Д゚彡「やっぱ寒ぃな。サンタでも寒ぃな」 サンタなのに、寒がっています。 lw´‐ _‐ノv「……」 シューはやはり、フサギコの体を見つめます。 ミ,,゚Д゚彡「よし、じゃあソリに乗って、行くか」 lw´‐ _‐ノv「待って」
- 16 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:15:34.74 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「ん? えっなにこれソリがめっちゃ冷たいお尻がキュってなるキュって」 lw´‐ _‐ノv「服、着て」 ミ,,゚Д゚彡「……あっ俺、全裸だった雪の中で全裸だった寒い寒い死ぬシュシュ助けて」 lw´‐ _‐ノv「助けない」 ミ,,゚Д゚彡「えっ」 lw´‐ _‐ノv「雪に埋もれろ。もう雪崩とかに巻き込まれて全身えらい事になれ」 シューの喋り方はとてもゆっくりとしたもので、穏やかな優しい声も相まって、ある人は眠くなると、またある人は落ち着くと、言います。 ミ,,゚Д゚彡「やだこのトナカイこわい」 フサギコは、恐怖しましたが。
- 20 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:17:29.87 ID:fkGdmU5tO
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直後、まるでシューがその未来を引き寄せたかの様に、フサギコの後ろから大量の雪が流れてきました。 lw´‐ _‐ノv「ばいばい」 言って、シューは少しだけ雪に足跡をつけ、徐々に浮いて、そして空を翔けます。 ミ,,゚Д゚彡「えっどこ行くのシュシュっていうかなんか後ろからドドドって聞こえるなにこれジョジョの――」 シューに見放されたフサギコは、あっという間に雪崩に飲まれてしまいます。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/02(火) 21:17:33.01 ID:nWlygfS20
- 全裸は不味いwww
- 23 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:19:05.52 ID:fkGdmU5tO
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頭からドドド。 背中からドドド。 口の中に雪、雪、雪。 雪がのどちんこをつんつん、つんつん、つんつん。 咳き込む暇もなくつんつん、つんつん、つんつん。 さらに、大きすぎてデンジャラスな雪の固まりが、全裸のフサギコの股間にそびえ立つマッチ棒に直撃しました。 「ぷぎゅ」 一瞬あがったそんな悲鳴も、ドドドという音に掻き消されて―― lw´‐ _‐ノv「あ、流れ星さん」 空を翔けるシューは。 lw´‐ _‐ノv「競争しよう。負けないぞ」 流れ星さんと、競争をしています。 lw´‐ _‐ノv「負けた。流れ星さんはやい」 シューは一匹、のんびりと空を翔けていたのでした。 【第一話:サンタが雪に埋もれた日。トナカイは可愛かった】
- 24 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:21:59.32 ID:fkGdmU5tO
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【第二話】 それは静かな静かな夜でした。 冷たい空気の中しんしんと降る雪、足跡一つ無い真っ白な大地、この世界の特徴か、雪を降らせながらも夜空に散りばめられた数多の星々。 その神秘的な空間はまさに、神が作り出した楽園、そう呼ぶに相応しいものでした。 ミ,,゚Д゚彡「どっこらしょおぉぉぉぉ!!」 雪の大地を割って、全裸のフサギコが現れてからは、楽園は地獄になりましたが。 ミ,,゚Д゚彡「シュシュ!」 呼びます。 夜空に向かって、呼びます。 lw´‐ _‐ノv「なぁに?」 いました。 フサギコのすぐ後ろに、シューはいました。
- 25 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:23:25.15 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「俺が雪崩に飲まれた日から何日経った? 三」 lw´‐ _‐ノv「一年」 ミ,,゚Д゚彡「日くらいかな? 四日かな? 五日かもし」 lw´‐ _‐ノv「一年」 ミ,,゚Д゚彡「れないな。六日っていうのもあるな。もしかしたら一週間っていう可能性もあったけどさすがに一年は予想外でした」 lw´‐ _‐ノv「これでもかというほどに埋まってたもんね」 ミ,,゚Д゚彡「何で知ってんの?」 lw´‐ _‐ノv「気のせいだよ」 ミ,,゚Д゚彡「むしろ何で生きてるの俺」 lw´‐ _‐ノv「気のせいだよ」 ミ,,゚Д゚彡「えっ何が?」
- 27 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:25:15.05 ID:fkGdmU5tO
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lw´‐ _‐ノv「生きてる、の部分」 ミ,,゚Д゚彡「えっ俺生きてないの?」 lw´‐ _‐ノv「むしろ生きたことあるの?」 ミ,,゚Д゚彡「」 lw´‐ _‐ノv「死んだ魚の目を見ると、働かないサンタを思い出す」 ミ,,゚Д゚彡「」 lw´‐ _‐ノv「プレゼント、届けろ」 ミ,,゚Д゚彡「今日は調子が悪いから。俺が悪いんじゃない、社会が悪い政治が悪い国が悪い。だから俺は悪くない」 lw´‐ _‐ノv「もう嫌というほどに雪に埋もれろ。次の冬季オリンピックまで出てくるな」 仲が良いのか悪いのか、すらすらすらすら会話が弾みます。
- 28 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:26:24.11 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「シューは一年間なにしてたんだ?」 フサギコはそれが楽しくて。 lw´‐ _‐ノv「お星様食べてた」 ミ,,゚Д゚彡(あらやだこの子とってもメルヘンちゃん) lw´‐ _‐ノv「お月様も少しかじった」 シューも少しだけ、楽しいと感じていました。 lw´‐ _‐ノv「プレゼント、届けよう?」 ミ,,゚Д゚彡「あぁもうシュシュったら甘えた声で、しょうがないなぁもぅっ。仕方ないから届けてやるよ。なんせ俺って奴はシュシュの事が大好――」 言葉が終わる前に、シューはフサギコに体当たりをしました。
- 30 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:28:05.10 ID:fkGdmU5tO
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これでもかといわんばかりに、角でフサギコをつんつん、つんつん、つんつん。 一年前からずっと全裸のフサギコの股間にそびえ立つ、マッチ棒と呼ぶのは実はとんでもない褒め言葉な、どう頭を振り絞って表現しても爪楊枝クラスのそれを、シューは角で一度だけ、つん。 ありったけの力を込めて、つん。 「あふぅん」 聞こえた悲鳴は無視して。 雪の上に倒れピクピクと痙攣するフサギコの近くに lw´‐ _‐ノv「汚い。やめとけばよかった汚い。雪、雪、雪でなんとか洗おう。よいしょよいしょ」 自分の角に雪をかける、シューの姿がありましたとさ。 【第二話:お前はほんとにパソコンが得意だねぇ。社会がお前を選ばないだけ。国が悪いの。お前は引きこもりニートなんかじゃなく、努力の道の途中。母ちゃん馬鹿だから何もわからないけど、カタカタやってるお前の後ろ姿は、母ちゃんの誇りだよ】
- 32 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:30:41.34 ID:fkGdmU5tO
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【第三話】 深夜、聖なる夜に賑わう街。 しかしこちらは、静かな空間。 およそ一般的な一軒家が、そこにありました。 二階の一室、からから、と窓の開く音がして、真っ暗な部屋に、小さく聞こえる寝息の音。 すぅ、すぅ。 ベッドの布団から頭だけを出して、気持ち良く眠る一人の少年。 その側に、影。 壁に掛けられた赤い大きな靴下の中、長細い一つの紙。 取り出すのは、影。 『サンタさん。ぼくはくるまのラジコンがほしいんだ』 紙には、火をつけられたミミズがのたうちまわった様な文字で、そう書かれていました。
- 33 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:31:57.84 ID:fkGdmU5tO
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真っ暗闇の中、どうしてそれを読めたのか、影から鼻で笑う様な音がします。 「ガキはこれだから困ります」 小声で呟いた影は、中身の詰まった大きな袋から一冊の本を取り出し、乱暴に靴下の中に突っ込みました。 風が吹き、靡いたカーテンから、ほんの少しの月明かり。 それが部屋を照らして、影が影ではなくなります。 ( <●><●>)「世の中は学歴が全てです。誰もそれに抗えないのはわかっています」 小柄なギョロ目のサンタが、そこにいました。
- 34 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:33:34.99 ID:fkGdmU5tO
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もう一度部屋を月明かりが照らした時、彼の姿は既に無く、そこに残るのは一人の少年と、大きな靴下に突っ込まれた、分厚い数学の参考書だけでした。 朝、その部屋には泣きわめく一人の少年がいましたとさ。
- 36 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:36:20.42 ID:fkGdmU5tO
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※ しゃんしゃん、しゃんしゃん。 雪の降る夜空を翔ける、一人と一匹。 ( <●><●>)「もっと足を動かしなさい。ビロード」 ソリに乗るのは、ギョロ目のサンタ。 (;><)「も、もうこれ以上はッ!」 雪の降る中、どうしてか額に汗を流す、首に黄色い鈴をつけた体の大きな真っ黒なトナカイ。 ( <●><●>)「……これだから使えないトナカイは。急ぎなさい。じゃないと」 ――捨ててしまいますよ? (;><)「……ッ!」 一度俯いて、ふっと顔を上げた、ビロードと呼ばれたトナカイ。 既にちぎれそうな四本足は、ぷるぷると震えています。
- 37 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:37:26.36 ID:fkGdmU5tO
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( <●><●>)「まったく」 言うと同時、ギョロ目のサンタの耳に残る声。 ――や、やめて。 ( <●><●>)「使えないトナカイばかりです」 かつて、犯した罪。 しかしそれは、彼にとっては些細なもので―― 【第三話:突然のシリアス。このギョロ目は絶対にモテない。絶対ニダ!】
- 38 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:39:13.28 ID:fkGdmU5tO
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【第四話】 やはりこちらも聖なる夜。 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 鈴の鳴る音と共に、空を翔ける一人と一匹。 ミ,,゚Д゚彡「あー、眠ぃ眠ぃ」 今度はちゃんと赤い服を着た、フサギコの姿。 lw´‐ _‐ノv「疲れた。お米食べたい」 そう愚痴る、シューの姿もありました。 ミ,,゚Д゚彡「お、じゃあ帰る? 子供とかほっといてさ、俺と真夜中のオリンピックを開催しよう。ね? 布団の中でにゃんにゃんしよ――」 トナカイに何を言っているのか、頭のおかしいフサギコからは、どうしてもやる気というものが見えません。
- 39 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:40:39.50 ID:fkGdmU5tO
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lw´‐ _‐ノv「……」 シューはちらりと首を動かし、ソリに座るフサギコの姿を見ます。 ミ,,゚Д゚彡 ぽかんと口を開いた、やる気の無さそうな顔。 しかしその手には、まるで宝物を守るかの様に、大事そうに大事そうに抱えられた、大きな袋。 中身は空っぽ。 lw´‐ _‐ノv「……」 シューは何も言わず前を向いて、足を動かします。 ミ,,゚Д゚彡「もっとゆっくりでもいいんじゃね? いや、プレゼント届けるのがめんどくさいとかじゃなくて、ほら、俺って奴はロマンチストだから。シュシュと一緒に夜空の星達を――」
- 40 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:42:09.44 ID:fkGdmU5tO
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軽口を叩くフサギコの頭にシューは、どこから出したのか大量のお米を浴びせます。 それはそれはえげつない量のお米。 お米っていうか、これでもかとばかりに沸き立つ湯気でその美しさをアピールする、炊きたてのご飯です。 ツヤっと輝くふわっふわな純白の粒に、噛めばじんわり口内に広がるその甘み、はふはふ、はふはふ、そう言って食べれば笑顔が生まれる魔法のお米。 それはおそらく、コシヒカリ。 ミ,,゚Д゚彡「えっ、なんか地の文うざ――」 それを顔面で受け止めたフサギコ。
- 42 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:45:50.07 ID:fkGdmU5tO
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ミ※※※彡「ぶぁっはっは! まだまだだなシュシュ! 俺を黙らせるにはもっと大量の――」 顔一面に炊きたてのコシヒカリを貼付けたフサギコ。 口からコシヒカリを飛ばす飛ばす。 コシヒカリ、雪、コシヒカリ、雪。 その光景は、シューのどこかをぷちっといわせます。 直後、やはりシューはどこから出したのかフサギコの頭目掛けて、大量の炊飯器を降らせます。 中にはやっぱりコシヒカリ。 「ぐッ、き、貴様はッ! 金か? 金なら払うだからやめっぐあぁぁぁぁぁ!」 蝶ネクタイをつけた体は子供、頭脳は大人(笑)特技はぶりっ子(笑)な少年が鼻息荒々大喜びで走ってきそうな、サスペンス的な悲鳴が、辺りに響きました。
- 43 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:48:00.80 ID:fkGdmU5tO
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※ lw´‐ _‐ノv「……」 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 首の鈴を鳴らし空を翔けるシューはまた、ちらりと首を動かして、かつてはフサギコだった物言わぬソレを見つめます。 ミ*゚゚ρ゚゚*彡 何が何やらえらい事になっていて、可愛いシューもさすがに理解に苦しみます。 ほんのり朱を座らせた頬が、フサギコの性癖がえげつないぐらいにおかしい事をばっちりアピールしていましたが。
- 45 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:49:45.57 ID:fkGdmU5tO
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lw´‐ _‐ノv「……ばか」 前を向いたシューは言って、ちょっぴり笑います。 なぜなら、かつてはフサギコだった物言わぬソレは、えらい目に遭いながらもしっかりと袋を抱えていたから。 何も入っていない、大きな袋を。 lw*‐ _‐ノv「あ、お米の形のお星様だ。食べたい」 どうしてか踊ってしまう胸をごまかすように、シューはそう言います。 いつもとは違う、照れ臭そうな表情で。 それはまるで、自分は今幸せだ、そう言っているような―― 【第四話:シューはとっても可愛いねぇ。可愛いねぇ。フサギコが羨ましいねぇ。羨ましいねぇ】
- 48 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:51:40.68 ID:fkGdmU5tO
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【第五話】 少し大きな一軒家の二階。 暗い部屋、ベッドの中で寝息をたてる少年の横で、ぱりんと、何かの割れる音がしました。 ミ,,゚Д゚彡「よし、ここだな」 物言わぬソレから回復した、中身の無い大きな袋を抱えたフサギコが、窓から部屋の中に入ります。 ぱち、ぱち、とガラスを踏む音を鳴らして。 lw´‐ _‐ノv「何で、割ったの?」 フサギコの後ろから、シューが現れ部屋の中に降り立ちます。 同じく、ガラスを踏む音を鳴らして。 ミ,,゚Д゚彡「えっ割るんじゃないの?」 lw´‐ _‐ノv「普通は煙突から入るでしょ」 ミ,,゚Д゚彡「煙突なんか今時ないよ」 lw´‐ _‐ノv「それもそうか」 今さらですが、このトナカイ。 シューもほんのり、頭の悪い子です。
- 49 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:52:59.83 ID:fkGdmU5tO
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ぱちりと、何かを押す音が鳴りました。 途端、明るくなる部屋。 lw´‐ _‐ノv「何で、電気つけたの?」 ミ,,゚Д゚彡「えっ暗くて見えないから」 lw´‐ _‐ノv「目を細めればなんとかなるんじゃないの?」 ミ,,=Д=彡 lw´‐ _‐ノv「あっやめて。その顔生理的に無理」 今さらですが、このトナカイ。 シューはちょっぴり、頭の悪い子です。
- 50 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:55:30.37 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「ていうかさ」 lw´‐ _‐ノv「うん」 ミ,,゚Д゚彡「なんでシュシュが部屋の中に入ってんの?」 lw´‐ _‐ノv「えっ」 シューは部屋の中を見渡します。 サッカーボールがあって、壁には青いユニフォーム。 棚の上に、幾つかのトロフィーが見えます。 良い部屋、シューはそう思いながら首を動かします。
- 53 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:57:41.11 ID:fkGdmU5tO
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ががっ、だか。 ぎぎっ、だか。 ミ,,゚Д゚彡「えっ待ってシュシュ」 えげつない音を鳴らして、あれよあれよという間に壁紙が剥がれます。 犯人は、シュー。 もっと言えば、角。 lw´‐ _‐ノv「あっ」 ミ,,゚Д゚彡「シュシュったら、小さいトナカイだけど人間よりはちょっぴり大きいんだからねっ!」 lw´‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡 間があって。 lw*‐ _‐ノv「ぽっ」 ミ,,゚Д゚彡「あっシュシュが照れた可愛い。ぽって声に出したすごく可愛い」 しつこいようですが、このトナカイ。 シューはかなり、頭の悪い子です。 フサギコのおかげで普段は顔を出しませんが、シューの頭もかなりのものです。
- 54 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 21:58:46.15 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・) そんな騒がしい一人と一匹を見る、少年が一人。 【第五話:まぁ、横でそんなんされてたら起きますわな。うん。寝てても起きますわな】
- 58 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:01:27.13 ID:fkGdmU5tO
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【第六話】 ( ・∀・) ミ,,゚Д゚彡 lw´‐ _‐ノv 少し広めの部屋の中、二人と一匹。 ( ・∀・)「なに?」 青色のパジャマ姿の、高校生くらいの少年、イケメンです。 イケメンですが、彼には右足の膝から下がありません。 ミ,,゚Д゚彡「サンタですこんばんは」 lw´‐ _‐ノv「トナカイですこんばんは」 礼儀正しいサンタとトナカイは、きちんと挨拶をします。 これは、褒めてあげなくてはいけません。 シュー、良い子。 ほら、皆も一緒に。 シュー、良い子。 フサギ……あ、少年が喋る。
- 60 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:05:25.27 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・)「サンタなんだ」 ミ,,゚Д゚彡「うん」 ( ・∀・)「じゃあ、プレゼントくれるの?」 ミ,,゚Д゚彡「……うん」 フサギコはちらりと、少年の右足を見ます。 ミ,,゚Д゚彡(なにこいつ足が無い) 足をくれ、そう言われたらどうしよう。 フサギコはそう考えます。
- 61 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:06:33.19 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡 ぶっちゃけると、足は出せます。 サンタはかなり、凄い生き物です。 すね毛にまみれたあの足も、お姉さんのあの足も。 口癖が、タラちゃんDEATHー、とかいうガキの、走るとピコピコ鳴るあの足も。 なんでも出ます。 フサギコが持つ袋からは、フサギコ以外の誰かが願った物なら、何だって出てきます。 しかし―― ミ,,゚Д゚彡(出せるけど、くっつけらんないよ) それが問題。
- 64 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:08:17.93 ID:fkGdmU5tO
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頭の中だけで悩むフサギコの前。 ( ・∀・)「あのさ」 少年が、口を開きます。 ミ,,゚Д゚彡「うん」 ( ・∀・)「俺、右足が無いんだ。一年前に事故で……さ。もうサッカーできないんだ」 ミ,,゚Д゚彡「うん」 この流れはヤバい。 フサギコはなんとかしようと考えますが、少年は止まりません。 ( ・∀・)「サッカーは何とか諦めがついた。でもな、悔しいのはさ」 ミ,,゚Д゚彡「うん」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/02(火) 22:08:18.62 ID:q/GjPMIL0
- サンタ、すげーけどだめだなwww
- 69 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:10:34.43 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・)「誰にも叱られないんだよ。つまみ食いをしても、女の子のスカートをめくっても、電車の中でお姉さんの胸を揉んでも」 ミ,,゚Д゚彡「うらやま」 lw´‐ _‐ノv「ん?」 ミ,,゚Д゚彡「けしからんワシの頭の中がジュラシックパークだなんたることだこいつはけしからんボーイだぜ。シュシュ、な?」 lw´‐ _‐ノv「うんうん」
- 72 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:11:54.30 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・)「ほんと悔しいんだ。怒るんじゃなくみんな、苦笑いして逃げていく。それは絶対、俺に足が無いから。だから誰も俺を怒らない。それが、悔しいんだ。だから俺を」 ミ,,゚Д゚彡「待って、足は頑張れば出せるけどくっつけるのは――」 焦るフサギコを無視して、少年は言い切ります。 ( ・∀・)「殴って」 ミ,,゚Д゚彡「えっ」
- 74 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:13:37.97 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・)「あ、そこのトロフィーでいいや。それで殴って」 ミ,,゚Д゚彡「えっちょっと待って」 ( ・∀・)「手、わかるでしょ? 指、わかるでしょ? トロフィー、そこにあるでしょ? 手でそれを持って、俺のこめかみ辺りを殴る。わかる?」 ミ,,゚Д゚彡「あっなんかイラッとする」 ( ・∀・)「しこたま」 ミ,,゚Д゚彡「しこたま?」 ( ・∀・)「しこたま殴って」 ミ,,゚Д゚彡「しこたま殴りたくない」
- 76 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:15:24.07 ID:fkGdmU5tO
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( ・∀・)「もしもサンタが賢者なら、俺の頭は今頃えげつない形に歪んでる。血とか吹いてる。しかしまだ俺の雅な絶壁は保たれたまま。つまり、君は愚者だ」 ミ,,゚Д゚彡「やべぇ意味わかんない」 lw´‐ _‐ノv「馬鹿にされてるよ」 ミ,,゚Д゚彡「なんだとわかったもう殴る。トロフィーで10発。拳で20発ぐらい殴る」 ( *・∀・)「ハァ……倍……ンッハァ……その倍ぐらい殴って……ンフゥ……」 ミ,,゚Д゚彡「やべぇ頬が朱色だコイツ」 ( ・∀・)「簡単に言おうか?」 ミ,,゚Д゚彡「えっうん、お願いします」 ( ・∀・)「俺、ドM、超がつくドM」 ミ,,゚Д゚彡「あっもうダメだ殴ろう。しこたま殴ろう。シュシュは見てて」 lw´‐ _‐ノv「……眠い」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/02(火) 22:17:18.26 ID:OXua+TvZ0
- 心もイケメンだと思ったらただの変態だったwwwww
- 82 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:18:51.07 ID:fkGdmU5tO
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※ ごすごす、ごすごす。 部屋に響く沢山の音。 ミ#゚゚ρ゚゚ 彡「オ゙ラ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!」 トリップした様に飛んだ目で、絶叫しながら少年をしこたま殴るサンタがいます。 振り上げては、下ろし。 振り上げては、下ろし。 それはもう、しこたま殴っています。 ( *※∀※)「ビャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙! 楽しいなぁァァァアアア゙ア゙ア゙ア゙!! 気持ち良いナ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」 右向いてア゙ア゙ア゙。 左向いてア゙ア゙ア゙。 なかなかお目にかかれない貴重な、頭がいびつに歪んだキチガイがそこにいます。
- 83 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:20:59.19 ID:fkGdmU5tO
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ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッッ!!!! lw´‐ _‐ノv「うとうと」 眠そうな顔でうとうとする可愛いトナカイもそこにいて、彼女の存在が、この荒れ果てた空間を癒す、一服の清涼剤となっていました。 永遠の様に思えた時間も、いつしか終わる時がきて――
- 85 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:21:59.79 ID:fkGdmU5tO
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※ しゃんしゃん、しゃんしゃん。 ミ,,゚Д゚彡「疲れた」 ほんのり黒が薄くなった夜空を翔ける一人と一匹。 lw´‐ _‐ノv「眠かった」 ありったけの疲れをその身に集めてしまった様に、シューの足は遅く。
- 86 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:23:28.68 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「しかしあれだな」 lw´‐ _‐ノv「ん?」 ミ,,゚Д゚彡「ほんとは諦めれてないんだろ? 殴られて何かを発散したかったんだろ?」 lw´‐ _‐ノv「なんの話?」 ミ,,゚Д゚彡「あの少年さ、足があればまたサッカーを――」 言いかけた言葉を、シューが遮りました。 lw´‐ _‐ノv「それを、卑怯っていうんだよ」 ミ,,゚Д゚彡「なんで?」 lw´‐ _‐ノv「悲しんでいる人みんなに奇跡が起こったら、誰も涙なんて流さない。どんな悲劇も、ハッピーエンドになっちゃうよ」
- 88 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:24:40.27 ID:fkGdmU5tO
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淡々と言って、少しだけ足を速めたシュー。 ミ,,゚Д゚彡「皆が笑うなら、それがなによりなんじゃねぇの?」 lw´‐ _‐ノv「ううん。奇跡を願うのは、そして願った分だけ奇跡が起こるなんてのは、とても卑怯なこと」 ミ,,゚Д゚彡「そういうもんかな」 ――馬鹿だからわかんねぇや。 それを最後に、会話の無くなった一人と一匹。 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 その音を聞くのは、薄くなった夜空に浮かぶ星々だけで。 いつの間にか、そのソリはどこかへと消えて―― 【第六話:奇跡が起これば頭のおかしな彼もまともになるのにね】
- 91 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:27:36.58 ID:fkGdmU5tO
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【第七話】 またある年の聖なる夜。 ミ,,゚Д゚彡「やっぱ寒ぃなぁ」 寒がるフサギコがいます。 フサギコは、サンタです。 さて、ここで少し、サンタのお話を。 そもそも、サンタとはなんなのでしょうか? 聖なる夜に、どこからともなくやってきて、そっとプレゼントを置いて、どこかへと消えて行く。 フサギコは、ずっと昔からサンタのままです。 サンタは、老けません。 サンタは、死にません。 サンタは、とても不思議な生き物です。
- 92 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:29:41.50 ID:fkGdmU5tO
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かつて、フサギコは一人の少女にプレゼントを渡しました。 何年も何年も、渡し続けました。 少女が大人になって、子を産んで老いて、いつしか倒れ、命の灯を消した日が来ても、フサギコはフサギコのままでした。 ミ,,゚Д゚彡「寒ぃ」 姿は人間そのものです。 しかし、あまりにも人間からは掛け離れた存在で。 サンタは人間ではない“生き物”で、いつまでも同じ姿のサンタを、心ない誰かは“化け物”だと罵ります。 フサギコは、そう言われてとても傷付きました。 かつて少女だったあの子が死んだ日も、死ぬ事の意味がわからないフサギコは 「ふぅん」 鼻をそう鳴らすだけでした。
- 94 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:31:31.77 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「シュシュ!」 lw´‐ _‐ノv「なぁに?」 シューも、そう。 フサギコに呼ばれると、その背後にフッと姿を現わします。 何も無い場所に、突然現れるのです。 ミ,,゚Д゚彡「行こうぜ」 lw´‐ _‐ノv「お、やる気出たの?」 ミ,,゚Д゚彡「うーん、何か今日は嫌な奴に会いそうな気がするけど」 lw´‐ _‐ノv「なにそれ」 ミ,,゚Д゚彡「まぁいいや、行こう」
- 96 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:33:34.31 ID:fkGdmU5tO
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しゃんしゃん、しゃんしゃん。 空を翔けるサンタとトナカイ。 ソリを引くトナカイも、動物ではない“生き物”です。 急に姿を現わして、どこかへと消えるトナカイは、人間離れしているという意味では、サンタよりも不思議な生き物です。 ですが、空を翔けるトナカイを“化け物”と呼ぶ人はあまりいません。 なぜなら、同じ不思議な“生き物”のサンタとトナカイには、決定的な違いがあって―― 【第七話:どこからが人間? どこまでが人間?】
- 98 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:35:19.06 ID:fkGdmU5tO
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【第八話】 小綺麗なアパートの二階。 201と書かれた扉の前で、フサギコは立ち止まります。 ミ,,゚Д゚彡「どこから入ろう」 その部屋に、フサギコは入るつもりです。 フサギコはいつも、その時の気分でプレゼントを届ける家を決めます。 今年は、アパートの一室。 ミ,,゚Д゚彡「鍵、かかってるかな」 ドアノブに手をかけた時、中から微かに声が聞こえてきました。
- 100 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:37:22.54 ID:fkGdmU5tO
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「……ツン、ツン、僕はもう我慢できないお」 「ダメよブーン。この部屋、大学生の私の為に親が借りてくれた光熱費無料家賃6万の小綺麗なワンルーム、その名もレオパレス21は壁が薄いからダメッ! レオネットのAVで我慢してッ!」 「フヒヒッ、聞かせてやればいいんだお。今日はクリスマスだお。みんなやってる事だお。フヒヒッ」 「ああっ! ダメよっ! 光熱費無料家賃6万の小綺麗なワンルーム、レオパレス21は壁が薄いのよッ! 鼻唄だって聞こえちゃうくらい、光熱費無料家賃6万の小綺麗なワンルーム、レオパレス21は壁が薄いのよッ! アンッ! アンッ!」 ミ,,゚Д゚彡「えっなにこれ」 扉の向こうからアンッ! 少し離れてもアンッ! ミ,,゚Д゚彡「えっ嫌だ聞きたくない」 耳を塞いでもアンッ! 掌を突き抜けてアンッ! ミ,,゚Д゚彡「あっやばい狂うこのままじゃ俺って奴は気が狂う」
- 102 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:39:06.20 ID:fkGdmU5tO
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階段まで逃げてもアンッ! 光熱費無料家賃6万角部屋の201からアンッ! ミ,, Д 彡「ウワァァァァアアアアアアッッッッ!!!!」 フサギコは、壁に頭を打ち付けます。 ごんっ! ごんっ! だけど合間を縫って、アンッ! アンッ! ごんっ! アンッ! ごんっ! アンッ! ミ,,゚Д゚彡「シュシュ、雪とってきて」 頭から血を流し、シューにそう頼むフサギコ。 lw´‐ _‐ノv「はい」 迅速かつ冷静に、雪を拾いに行くシュー。 右の前足で雪をすくって、ぼとり。 左の前足で雪をすくって、ぼとり。
- 104 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:40:27.27 ID:fkGdmU5tO
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lw´‐ _‐ノv「雪持ったら歩けない」 困ったシューは、頭に生えた角の間に雪を乗せて、フサギコの元へ運びます。 落とさないよう、よいしょ、よいしょ。 ゆっくりゆっくり、よいしょ、よいしょ。 その姿は、とても絵になるそれで。 それはそれは可愛いシューでした。 ミ,,゚Д゚彡「雪を耳に詰めよう」 頑張ったシューにお礼も言わないで、フサギコは雪を耳に詰めます。 頑張ったシューにお礼も言わないで。 とても可愛いシューなのに、クソムシみたいなフサギコはお礼すら言えません。 悪い子ですね、フサギコは。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/02(火) 22:41:11.22 ID:nWlygfS20
- 雪は溶けるだろww
- 108 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:43:18.06 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「あ、ちべたい耳がちべたい」 耳に雪を詰めたってアンッ! 雪を貫いてアンッ! その声の精密さはマリナーズの鈴木さんが放つレーザービームの如く。 フサギコの耳の穴ど真ん中へストライク。 lw´‐ _‐ノv「ねぇ」 ミ,,゚Д゚彡「ん? あっダメだシュシュの透き通った可愛い声も普通に聞こえる雪詰めても意味が無い」 lw´‐ _‐ノv「おうち、帰ろう」 間。 間があっても、アンッ! ミ,,゚Д゚彡「……そうだな。帰ろうか」 その場から立ち去る一人と一匹。 そこに残るのは、下品な雌豚が辺りに撒き散らす、アンッ! という喘ぎ声だけでしたとさ。 アンッ! アンッ!
- 111 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:44:54.38 ID:fkGdmU5tO
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※ しゃんしゃん、しゃんしゃん。 聞き慣れた鈴の音。 ミ,,゚Д゚彡「あぁ、戦いを終えた耳が癒される」 lw´‐ _‐ノv「ねぇ」 ミ,,゚Д゚彡「ん?」 lw´‐ _‐ノv「なんで、すぐに帰らなかったの? いつもはやる気ないくせに」 ミ,,゚Д゚彡「なぁーんか嫌な奴に会いそうで、な」 lw´‐ _‐ノv「なんなのそれ」 ミ,,゚Д゚彡「んー、嫌な予感というかなんというか」 lw´‐ _‐ノv「嫌な予感がすると、働く気になるの?」
- 113 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:46:19.16 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「そうだなぁ」 lw´‐ _‐ノv「それってなんかおかしいね」 ミ,,゚Д゚彡「そうだなおかしいな」 話をする二人の背後。 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 そこから、もう一つの鈴の音。 「相変わらずですか? 落ちこぼれサンタ」 ミ,,゚Д゚彡「あ?」 空を翔けるシューの横に、現れたのは
- 116 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:48:35.61 ID:fkGdmU5tO
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(;><)「……」 ぷるぷると震える四本足で翔ける、大きな体の真っ黒なトナカイ。 そして、フサギコの横に ( <●><●>)「邪魔です」 ギョロ目の、サンタ。 ミ,,゚Д゚彡「……テメェは」 フサギコが言う、嫌な奴。 嫌な奴だと言う理由は、一つ。 ( <●><●>)「小さくなっても頭は悪いままですか? 足の遅いシュー」 lw;‐ _‐ノv「……」 ギョロ目のサンタがかつて犯した罪を、知っていたから。
- 119 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:51:55.33 ID:fkGdmU5tO
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( <●><●>)「シュー、本当にアナタは相変わらず頭が悪くて足が遅――」 ――おい、ギョロ目のクソムシ。 遮って、怒気を孕んだ言葉が一つ。 ミ,, Д 彡「降りろ」 そこに、いつも陽気な落ちこぼれサンタの、落ちこぼれだけど陽気じゃない、その姿がありました。 【第八話:またまた突然の、シリアス。このタイミングでアレだけど、ギョロ目のサンタは部屋に忍び込んでプレゼントをそっと置くのが上手いから、そこだけは見習えッ! フサギコッ!】
- 121 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:53:26.97 ID:fkGdmU5tO
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【第九話】 気が遠くなるほど、むかしの話。 ずっとずっと、むかしの話。 ミ,,゚Д゚彡 世界のどこかにある大きな大きな森の中。 そこでフサギコは、目を覚まします。 ずっとむかしから、フサギコはサンタでした。 いつ、どうやって生まれたのかなんて、覚えていません。 一番古い記憶を辿っても、体は大きく、白い髭を生やした自分の姿。 フサギコはいつの間にかサンタで、ずっとずっと、サンタのまま。
- 122 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:54:27.52 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「……あ」 フサギコの目線の先、暗い夜空を翔ける、トナカイの姿。 ミ,,゚Д゚彡「かっこいいなぁ、トナカイ」 サンタのおうちは、大きな大きな森です。 サンタ一人に、森が一つ。 普通、森の中には首輪のついた沢山のトナカイがいて、サンタはその中から好きに一匹を選んで、ソリを引かせます。 しかし、フサギコの住む森には、なぜかトナカイが一匹もいませんでした。 ミ,,゚Д゚彡「んー?」 普通、サンタは一つの鈴を持っています。 トナカイの首輪に鈴をつける事で、それが自分のトナカイだという証になります。 重たい重たい、契約の証として。
- 124 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:56:10.46 ID:fkGdmU5tO
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ですが、フサギコは鈴を持っていません。 持っていたとしても、それをつけるトナカイすらいません。 それが、フサギコが落ちこぼれサンタと呼ばれる原因の一つ。 そしてもう一つ、大きな大きな問題がありました。 ミ,,゚Д゚彡「……空っぽだな」 フサギコの持っている大きな白い袋には、何も入っていないのです。 普通、サンタは中身の詰まった大きな袋を肩に担いで歩きます。 出したい時に、なんだって出せるその袋。 フサギコには、それが無かったのです。
- 125 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:57:56.03 ID:fkGdmU5tO
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その二つがあって、フサギコは周りから、落ちこぼれサンタと呼ばれ続けていました。 ミ,,゚Д゚彡「……しらねぇよそんなの」 確かに元からかなり頭の悪いフサギコですが、そればっかりは、フサギコのせいではありません。 気が付いた時から、そうなのです。 仕方がないのです。 聖なる夜に、他のサンタ達が空を翔ける中、フサギコは一人、雪の地面を踏みます。 のしのしと、のしのしと。 気が遠くなるほどの時間、フサギコはずっと一人で、生きてきました。 何年も何年も。 ずっとずっと。 そんなフサギコの前に、一人のサンタが現れました。
- 128 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 22:59:58.96 ID:fkGdmU5tO
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( <●><●>)「あそこの家なら、歩いて行けますよ」 ミ,,゚Д゚彡「え?」 聖なる夜、フサギコの前に、ギョロ目のサンタ。 黄色い鈴をつけた茶色い体のトナカイが、側にいました。 ( <●><●>)「トナカイ、いないんでしょう? 鈴が無いんでしょう?」 ミ,,゚Д゚彡「うん」 ( <●><●>)「しかも袋は空っぽ」 ミ,,゚Д゚彡「……うん」 こいつも自分を馬鹿にするのかと、フサギコは少し不機嫌になりました。
- 130 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:01:49.11 ID:fkGdmU5tO
-
しかし―― ( <●><●>)「これを持っていきなさい。あそこの家には一人の少女がいます」 ギョロ目のサンタが、大きな袋から可愛らしい熊のぬいぐるみを取り出して、フサギコに渡しました。 ミ,,゚Д゚彡「え? なんで?」 ( <●><●>)「いいから行きなさい。落ちこぼれサンタだって、やれる事があるのはわかっています」 ミ,,゚Д゚彡「……」 フサギコの目線の先、遠くに見える小さな家。 フサギコは足をその家の方向へ向けて歩き出します。 しかし一度立ち止まって―― ミ,,゚Д゚彡「……ありがとよ」 ( <●><●>)「お礼を言ってる暇があるなら、早く行きなさい」
- 131 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:03:29.02 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「お前、名前は?」 ( <●><●>)「え?」 ミ,,゚Д゚彡「名前だよ名前、俺はフサギコ」 ( <●><●>)「……ワカッテマス」 ミ,,゚Д゚彡「えっなんで俺の名前知ってんの? この人エスパー? 伊藤的なエスパー?」 ( <●><●>)「私の名前は、ワカッテマス」 ミ,,゚Д゚彡「お前賢そうに見えるけど、割とアホなんだな。俺だって自分の名前ぐらいわかってます。それを教えろって言ってんだよ」
- 133 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:04:32.75 ID:fkGdmU5tO
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( <●><●>) ミ,,゚Д゚彡 ( #<●><●>) ミ,,゚Д゚彡「えっなんで怒るの?」 ( #<●><●>)「だから私の名前がッ! ワカッテマスっていうんですッ!」 ミ,,゚Д゚彡「やべぇこいつわかってますわかってますって頭おかしいんじゃねぇの」 ( <●><●>)「……いくら言ってもダメなのはわかってます。早く行きなさい。夜が明けてしまいますよ」 ミ,,゚Д゚彡「あ、忘れてた。じゃあ行ってくる。またな、ワカッテマス」 ( <●><●>)「挨拶はいいからさっさと行きなさ……え?」
- 134 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:06:17.89 ID:fkGdmU5tO
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ふんふんとご機嫌な様子で、雪の地面に足跡を伸ばすフサギコ。 そして―― ( *<●><●>)「……まったく」 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 茶色い体のトナカイと夜空を翔けるワカッテマスは、どうしてかどうしてか、その頬を朱に染めていましたとさ。
- 139 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:07:44.59 ID:fkGdmU5tO
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※ ミ,,゚Д゚彡「よいしょよいしょ」 少女の家にたどり着いて、煙突をよじ登って。 ミ,,゚Д゚彡「ありゃ足が滑っうわぁぁぁぁぁぁ!!」 煙突の中に消えて。 どしんっ! と、暖炉の中に突っ込んで。 「……ん?」 音で目覚めた少女に、フサギコは出会いました。 ミ,,゚Д゚彡「やぁ俺、フサギコ。サンタだよ」 「……サンタさん?」
- 141 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:10:20.95 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「これあげる」 ずいっと、少女に熊のぬいぐるみを突き付けるフサギコ。 その不器用さは頭が悪いからではなく、ただ初めてでわからなかったからこその、それでした。 元より、サンタは普通、こっそり家に忍び込んで、こっそりプレゼントを置いて、こっそり帰っていく生き物です。 誰が決めたわけでもないですが、言うなればそれはサンタという生き物の習性で。 それに従わないフサギコは、普通のサンタにはわからない、一つの感情を覚えます。 「わぁぁっ! くまさんだっ! ありがとうサンタさんッ!」 はしゃぐ姿の少女を見て、躍る自分の胸。 ミ,*゚Д゚彡「……なにこれ」 それは他のサンタとは違って、煙突から落ちて子供と出会ってしまう落ちこぼれサンタにしか見つけられない、感情でした。
- 142 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:11:36.02 ID:fkGdmU5tO
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【第九話:気が遠くなるほど昔から、フサギコは頭が悪いままなんだってさ】
- 144 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:13:24.84 ID:fkGdmU5tO
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【第十話】 ( <●><●>)「はい。今年は洋服がいいでしょう」 ミ,,゚Д゚彡「いつも悪いな、ワカッテマス」 ( *<●><●>)「いいから早く行きなさい!」 ミ,,゚Д゚彡「えっなに照れてんのこの人キモい」 聖なる夜には、ワカッテマスから受け取ったプレゼントを、少女に渡すフサギコ。 「ありがとう!」 ミ,*゚Д゚彡「えへへ」 毎度毎度、煙突から落ちるどんくさいフサギコは、少女のお礼を聞いて喜びます。
- 145 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:14:33.15 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス。あの木の実美味いんだぜ」 聖なる夜以外は、ずっと自分の森の中にいるフサギコですが ( <●><●>)「それが野蛮な行為なのはわかってます」 毎日の様に、ワカッテマスが遊びにきてくれて。 ずっとずっと灰色だったフサギコの周りは、少しだけ色付いたものになっていました。 そして、時は流れて――
- 146 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:16:06.97 ID:fkGdmU5tO
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※ それは、ある年の聖なる夜。 ( <●><●>)「私の前から消えてください」 茶色い体のトナカイが引くソリに乗って―― ミ,,゚Д゚彡「は?」 ワカッテマスは突然、そんな事を言いました。 ( <●><●>)「私はただ、惨めだった落ちこぼれサンタのアナタを助ける事で、優越感に浸りたかっただけです」 ミ,,゚Д゚彡「は? なに言ってんのお前」 ( <●><●>)「しかしもう充分に堪能しました、もう結構です。私に関わらないでください」 何が何だかわからないまま、ワカッテマスはどこかへと消えて。
- 151 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:19:59.44 ID:fkGdmU5tO
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※ ミ,,゚Д゚彡「おい、ワカッテマス」 ( <●><●>) たまに姿を見かけては、声をかけても、返事は無く―― ミ,,゚Д゚彡「あれ、お前トナカイ」 ワカッテマスを見かける度、ソリを引くトナカイの姿は違っていて。 ミ,,゚Д゚彡「んー?」 よくわからない鈍く重たい感情が、フサギコの胸の中に芽生えました。
- 152 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:21:36.16 ID:fkGdmU5tO
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※ ミ,,゚Д゚彡「え?」 また数年が過ぎて、ある年。 ミ,,゚Д゚彡「なんで?」 「この前、亡くなったのよ」 フサギコにとっては少し前まで少女だったはずのあの子が死んで、少女だったあの子の子供達がそうフサギコに伝えます。 ミ,,゚Д゚彡「亡くなるって、なに?」 「え?」 その一言をきっかけにして噂は広まり、フサギコは人々から“化け物”と呼ばれる様になりました。
- 154 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:25:32.12 ID:fkGdmU5tO
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※ 化け物だ化け物だと罵られながら、フサギコを雪の中を歩きます。 普通のサンタなら、そこまでは言われません。 というより、人前に現れません。 それは、フサギコが毎度毎度煙突から落ちる落ちこぼれサンタだったから。 そのせいで、フサギコは沢山の“人間”に、顔を見られていたのです。 ミ,,゚Д゚彡「ふぅん」 フサギコは、知りました。 人はいつか死ぬという事を。 だからと言って、特別な感情が沸くわけではありません。
- 155 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:26:48.35 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「んー?」 ただ、仲の良かったワカッテマスがいなくなって、お礼を言ってくれた少女もいなくなった。 ミ,,゚Д゚彡「なにこれ」 それが、寂しくて。 寂しいと、フサギコにはわからなくて―― 【第十話:楽しい日々はすぐに終わってさ】
- 160 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:44:26.38 ID:fkGdmU5tO
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【第十一話】 聖なる夜に、フサギコは一人。 ミ,,゚Д゚彡「んー」 宛も無く、辺りをさ迷います。 気が遠くなるほどの時間を森の中、一人で過ごしてこれたはずなのに、落ち着かない様な、苛々する様な、そんな感情がフサギコの中にはありました。 そんな時です。 ミ,,゚Д゚彡「ん?」
- 167 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:52:27.82 ID:fkGdmU5tO
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フサギコの目の前、雪の上にどしんっ! と音を経て、真っ白なトナカイが降ってきました。 lw;‐ _‐ノv 首に黄色い鈴をつけた、綺麗なトナカイ。 そして―― ( <●><●>)「酷いものですね、シュー」 ソリに乗るワカッテマスの姿。 ミ,,゚Д゚彡「なにやってんのお前」 ( <●><●>)「アナタですか。使えないトナカイを捨てようとしただけです」
- 169 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:54:56.30 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「捨てる、ってなんだ?」 ( <●><●>)「……やはりアナタは落ちこぼれのクズですね」 ミ,,゚Д゚彡「あ?」 ( <●><●>)「鈴をつけられたトナカイは普通のトナカイではなくなります。呼べばすぐに現れます。それは重い契約です」 ミ,,゚Д゚彡「?」 ( <●><●>)「飼い主に鈴をつけられたトナカイがいます。ある日飼い主にその鈴を外されました。するとそのトナカイはどうなると思います?」 ミ,,゚Д゚彡「知らねぇ」 ( <●><●>)「溶けるんです。雪みたいに。ゆっくりゆっくり、汚い悲鳴をあげながら」
- 172 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:57:12.16 ID:fkGdmU5tO
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ミ,,゚Д゚彡「ふぅん。で、捨てるってなんだよ」 ( <●><●>)「本当に理解力の無いクズですねアナタは。鈴を外して、違うトナカイにつけるんです」 ミ,,゚Д゚彡「は? じゃあこの子は」 ( <●><●>)「頭が悪く足の遅いシューは、処分するのみです」 ようやくフサギコは、ワカッテマスのソリを引くトナカイが次から次に変わっていた理由を知りました。 lw;‐ _‐ノv「や、やめて」 ミ,,゚Д゚彡「嫌がってるぞ。やめてやれよ」 ( <●><●>)「やめませんよ」 白いトナカイの首に手をかけて、ワカッテマスは黄色い鈴を―― ミ,#゚Д゚彡「おい! 待てよ!」 ぷちっと、外したのです。
- 174 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/02(火) 23:58:56.93 ID:fkGdmU5tO
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lw; _ ノv「うぅぅぅぅぅあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」 途端、叫び出すトナカイ。 ミ,#゚Д゚彡「おいテメェ! 鈴つけ直してやれよ!」 ( <●><●>)「嫌です。このゴミにもシューという名前がありました。お墓を建てたいならご自由に。それでは」 フサギコに背を向け、鈴を手に歩き出すワカッテマス。 ミ,#゚Д゚彡「おい待――いや、先にこっちだ」 lw; _ ノv「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」 痛いのか、熱いのか、シューは叫び続けます。 徐々に徐々に、体を小さくしながら。
- 177 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:02:52.37 ID:fkGdmU5tO
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ミ,;゚Д゚彡「なんか無いのか! ちくしょう馬鹿だからわかんねぇ!」 焦り、何も入っていない袋に手を突っ込んで引っ掻き回し、フサギコはそう叫びます。 lw; _ ノv「た……たすけ……て」 悲鳴の間を縫って、振り絞った様に消えそうな声で、シューがそう言ったその時―― ミ,;゚Д゚彡「ん?」 袋の中、フサギコの手、手の中に、鈴。 取り出して確かめた、赤い鈴。 ミ,,゚Д゚彡「これは?……ッ!」 慌てながらも、しっかりと、フサギコはシューの首輪に鈴をつけます。 そして、シューの体は溶けるのを止めて。 lw; _ ノv「ぐ……はぁ……はぁ……」
- 179 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:05:05.73 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「助かった……のか?」 安心したのか、雪の上にあぐらをかいて、ため息を吐くフサギコ。 目の前に、影。 ( <●><●>)「私に嘘を、ついていたのですか?」 なぜか、目の前にはワカッテマスの姿。 ミ,,゚Д゚彡「あ?」 ( <●><●>)「アナタは鈴を持っていないと言いました」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ」 ( <●><●>)「教えてください。どうして鈴を?」 ミ,,゚Д゚彡「なんで聞くんだそんな事」 ( <●><●>)「鈴を増やせるなら、トナカイを数匹纏めて扱えますから」 ミ,,゚Д゚彡「……扱うとか、飼い主とか、やめろよ。サンタはトナカイがいないと俺みたいに何もできないんだろ? サンタよりトナカイの方がよっぽどカッコイイんだぜ?」
- 181 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:07:13.91 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「質問に答えなさい」 ミ,,゚Д゚彡「さぁてね」 軽く言ってフサギコは、隣に倒れて眠るシューの頭を撫でます。 lw´‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡「一回りちっちゃくなったな。誰かさんのせいで可哀相に」 ( <●><●>)「……そんな足の遅いトナカイをなんのため――」 ミ,,゚Д゚彡「もうどうでもいいよお前なんて。消えろよ耳が腐る目が腐る」 ( <●><●>)「……ッ!」 少し悔しそうにしながらも何も言えず、ただ去って行く、ワカッテマス。
- 186 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:10:14.76 ID:wFaCh+DfO
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その背中に向けて―― ミ,,゚Д゚彡「アナタの性格の悪さはもう充分に堪能しました。もう結構です。私に関わらないでください。へっ」 フサギコはそう、皮肉を言いましたとさ。 【第十一話:あんなに良い奴だったワカッテマスがなぜ壊れたのかその時のフサギコにはまだわからなくってさ】
- 187 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:12:02.62 ID:wFaCh+DfO
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【第十二話】 lw´‐ _‐ノv「今日からはあなたがわたしの飼い主ですね。では行きましょう」 ワカッテマスが去って、少しの時間が経ってから目覚めたシューは、そう言いました。 ミ,,゚Д゚彡「えっソリ無いよ」 lw´‐ _‐ノv「わたしが呼べば、ソリは出てきます」 それは、サンタがトナカイを呼ぶのによく似た、不思議な現象。 ミ,,゚Д゚彡「えっすごいトナカイめっちゃカッコイイ」 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 ミ,,゚Д゚彡「わっ鈴の音綺麗」 見渡す限りの、星空。 ミ,,゚Д゚彡「うわめっちゃ星綺麗。触れないかな?」 初めての経験に、はしゃぐフサギコ。
- 190 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:16:25.64 ID:wFaCh+DfO
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lw;‐ _‐ノv「……」 無言で、足を速く動かすシュー。 ミ,,゚Д゚彡「ねぇ」 lw;‐ _‐ノv「……ッ!……はい」 ミ,,゚Д゚彡「どこ行くの?」 lw;‐ _‐ノv「え? プレゼントを届けに」 ミ,,゚Д゚彡「えっ嫌だ帰ろう」 lw;‐ _‐ノv lw´‐ _‐ノv「えっ」 ミ,,゚Д゚彡「プレゼント無いもん」 lw´‐ _‐ノv「えっ袋は?」 ミ,,゚Д゚彡「空っぽ」
- 191 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:19:10.68 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「えぇ!? じゃあこの鈴は?」 ミ,,゚Д゚彡「さぁ?」 lw;‐ _‐ノv「えぇ!?」 ミ,,゚Д゚彡「あとさ、なんでそんな急いでんの?」 lw;‐ _‐ノv「だって速く翔けないとまた――」 ミ,,゚Д゚彡「ゆっくり行こう今気付いたけど空はやたら寒いだからゆっくり行こうほんと寒い」 lw´‐ _‐ノv「えっ」 あえて、なのか。 無意識に、なのか。 陽気なフサギコの性格は、ワカッテマスのソリを引いていたシューにとっては理解しがたいもので。
- 192 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:23:42.56 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「森に帰ったら、一緒に寝よう」 lw´‐ _‐ノv「わたしと?」 ミ,,゚Д゚彡「なんだったら永遠に。結婚しよう」 lw´‐ _‐ノv「えっ嫌だっていうか意味がわからない」 シューの記憶の中微かに残る、ワカッテマスに向けていたきつい喋り方とは違う、フサギコの優しく明るいそれのおかげで、少しずつですが、シューの心には安心感が芽生えてきました。
- 195 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:25:54.96 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「シュー!」 lw´‐ _‐ノv「はい」 ミ,,゚Д゚彡「お、すげぇ後ろに現れた! カッコイイ!」 lw´‐ _‐ノv「そんなにですか?」 ミ,,゚Д゚彡「ていうか」 lw´‐ _‐ノv「?」 ミ,,゚Д゚彡「シューって呼ぶの嫌だギョロ目が頭の中にこんにちはする。シュシュって呼んでいい?」 lw´‐ _‐ノv「まぁ。呼びたいのなら好きに呼んでください」 ミ,,゚Д゚彡「あとその喋り方嫌だ前の男を忘れられてないみたいで嫌だ普通に喋って」 lw´‐ _‐ノv(この人ちょっとめんどくさい) 穏やかに、時は流れて――
- 198 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:28:02.90 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「もぐもぐ」 lw´‐ _‐ノv「もぐもぐ」 ミ,,゚Д゚彡「この木の実美味いだろ?」 lw*‐ _‐ノv「うん、美味しい」 ミ,,゚Д゚彡「あっ白い顔が赤くなってるやべぇ可愛いトナカイなのに超可愛い」 少しずつ、シューは心を開いていって――
- 199 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:29:37.52 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「シュシュ、なんか願ってみて」 lw´‐ _‐ノv「パンが食べたい」 ミ,,゚Д゚彡「おぉ! すげぇ! 袋からパンが出た。はいあげる」 lw´‐ _‐ノv「ありがとう」 ミ,,゚Д゚彡「ようやく使い方がわかった。ねぇシュシュ。俺は肉が食べたい。願って。自分の願いじゃダメなんだ」 lw´‐ _‐ノv「えっ嫌だ」 ミ,,゚Д゚彡「えっ」 lw´‐ _‐ノv「ふふふ」 ミ,,゚Д゚彡「あはは」 lw´‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡「えっなに今の笑い」
- 201 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:32:36.30 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「気のせいだよ」 ミ,,゚Д゚彡「えっなにが? まぁいいやせめてパンをはんぶんこしよ――」 lw´‐ _‐ノv「もぐもぐ」 ミ,,゚Д゚彡「あっ全部食べたやばい俺ちょっと怒るかもしれない」 lw*‐ _‐ノv「ごめんね」 ミ,,゚Д゚彡「あっ可愛い許す」 lw´‐ _‐ノv(割と扱いやすい人) シューは、フサギコの傍にいるのが幸せに感じて――
- 203 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:35:23.54 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「プレゼント、届けよう?」 ミ,,゚Д゚彡「嫌だ」 lw´‐ _‐ノv「どうして?」 ミ,,゚Д゚彡「人間はすぐ死ぬから、喜ばせた分、いなくなった後に俺は、寂しくなる。あと化け物って言われたくない」 lw*‐ _‐ノv「……わたしは、ずっと傍にいるよ?」 ミ,,゚Д゚彡「……ちょっと考えてみる」 lw´‐ _‐ノv(あ、思ったより傷は深いみたい) 同時に、シューはフサギコの心の傷を知って。 そうやって時は流れ。 そして、現在へ―― 【第十二話:こうして二人はとっても仲良しになれたんだってさ】
- 208 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:39:18.64 ID:wFaCh+DfO
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【第十三話】 聖なる夜に、しんしんと降る雪。 星々が照らす雪の大地に、影が四つ。 ( <●><●>)「なんですか? 私はプレゼントを届けないといけないのです」 冷たいギョロ目のサンタ、ワカッテマス。 ミ,,゚Д゚彡「少し腹割って話そうぜ。あと、トナカイを休ませてやれよ」 頭は悪いが、陽気な落ちこぼれサンタ、フサギコ。 lw´‐ _‐ノv「大丈夫?」 怖いものがあるのか、フサギコの後ろに隠れて頭だけを出す、赤い鈴を首につけた体の小さな真っ白なトナカイ、シュー。 (;><)「だ、大丈夫なんです!」 長い四本足をぷるぷると震わせながらもワカッテマスの隣に立つ、黄色い鈴をつけた体の大きな真っ黒なトナカイ、ビロード。
- 210 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:43:08.95 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「聞かせろよ、お前の腹の中に溜め込んでるそれを」 ( <●><●>)「なにが、ですか?」 ミ,,゚Д゚彡「わかってんだろ本当は。いつもわかってますわかってますって言ってたお前なんだから」 ( <●><●>)「……」 長い、長い沈黙があって。 何かが倒れる音が、それを破りました。 (;><)「ぐッ……」 ( <●><●>)「ビロード? やはりアナタも使えないトナカ――」
- 211 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:45:38.32 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「また捨てる気か?」 ( <●><●>)「そうです。トナカイはただの道具です。使えなくなったらただのゴミでしかないです」 ミ,,゚Д゚彡「シューの後、何匹のトナカイを捨てた?」 ( <●><●>)「数えていませんね、そんなの」 淡々と、無表情で語るワカッテマス。 ミ,,゚Д゚彡「そこにいるトナカイ! ビロードって言ったか? 大丈夫か?」 (;><)「う……うぅ」 ビロードは返事をしません。 ビクビクと体が痙攣しています。 ずっと前から限界を超えていたのです。
- 214 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:48:21.86 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「あ、そうだ。ビロードにも鈴をつければいいよ」 ( <●><●>)「ん?」 lw´‐ _‐ノv「きっとビロード、嫌なはずだよ。こんな人の傍にいて。願えばいいよ。助けてって。なんでも出る袋があるから。頭はわるいし落ちこぼれだけど、こっちは楽しいよ。何も怖くなくて、幸せだよ」 少しだけ普段とは違う、暗さを孕んだ声で、シューは言いました。 ミ,,゚Д゚彡「幸せとか言われたやべぇ可愛い」 空気を読まず、褒め言葉だけを抜き取って喜ぶフサギコがいます。 ( <●><●>)「なんでも出る袋? 空っぽのそれが?」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ。俺以外の誰かが願えばなんでも出るんだ。めんどくさい袋だよ。中身の詰まった袋が羨ましい」
- 216 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:51:18.27 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「願えば鈴も? なんでも出る?」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ。人間の足だって出るぜ。くっつけらんないけど。まぁお前が鈴を願ったって、出してはやらないがな」 ( <●><●>)「いや、それはどうもいいです。……人間の足、ですって?」 少し、間があって。 ( <●><●>)「なぜ、アナタだけなのでしょうね」 ミ,,゚Д゚彡「あ?」 ( <●><●>)「この大きな袋。普通のサンタが持っている中身の詰まったこの袋は、お金で買えるものしか出てきませんよ? プレゼントですから、当然です」 ミ,,゚Д゚彡「は?」 ( <●><●>)「そんな夢の様な力は、ありません。人間の足が出る? そんなのは」 ――奇跡じゃないですか。
- 218 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:54:09.54 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「……」 lw´‐ _‐ノv「……」 一人と一匹は、黙ります。 フサギコは、ただ驚いて。 シューは、自分を救ったのは奇跡の力だと気付いて。 あれはいつだったか自分が言った、とても卑怯な、奇跡の力。 ミ,,゚Д゚彡「凄い袋をずっと持ってたんだな俺。まだまだ知らない事だらけだ」 ( <●><●>)「そうですね。私も初めて知りました。アナタは落ちこぼれというより、特別なのですね。頭はアレですがね」 その会話は、二人のもの。 気が遠くなるほどの長い長い時間を生きてきた、二人のサンタだけのものです。
- 219 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:56:25.17 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「ねぇ、助けてって願えばいいよ。助けてもらえるよ」 フサギコの後ろから、シューはビロードに声をかけます。 ( <●><●>)「好きにすればいいですよビロード。私はもうアナタなんていりません」 冷たい言葉を吐くワカッテマス。 (;><)「う……うぅぅ……」 体が痙攣して、返事が出来ないビロードですが、その胸の中には、一つの思いしかありませんでした。 ミ,,゚Д゚彡「いや、そいつは願わないよ。絶対」 lw´‐ _‐ノv「え?」 ( <●><●>)「え?」 なぜかフサギコが、ビロードの思いを語ります。
- 222 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 00:59:25.73 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁシュー?」 lw´‐ _‐ノv「ん?」 ミ,,゚Д゚彡「俺がお前に鈴をつけたあの日、お前は何で空から落ちてきた?」 lw´‐ _‐ノv「足を動かすのに疲れて、もう嫌だって思って。止まったから」 ミ,,゚Д゚彡「じゃあなんでこいつ、ビロードはここに降りてから倒れたと思う?。痙攣するまで足を動かしてさ。俺達の前に現れた頃から、いやおそらくずっと前から、足が震えてんのにさ」 lw´‐ _‐ノv「なんでって……わからない」 ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス?」 ( <●><●>)「なんですか?」
- 224 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:03:43.08 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「お前がシューを捨てて、俺が鈴をつけたあの日から、何年経った?」 ( <●><●>)「覚えていません」 ミ,,゚Д゚彡「そうだよな、俺も覚えてない。数えるのもめんどくさいぐらい長い時間を俺はシューと過ごしたから。じゃあもう一度聞くが、シューの後、何匹のトナカイを捨てた?」 ( <●><●>)「だから数えていないと――」 ミ,,゚Д゚彡「シューを捨ててからも、長い長い時間を生きた。数え切れない程のトナカイを捨てた。それがお前だワカッテマス」 ( <●><●>)「なにが、言いたいのですか? はっきり言ってください」 ミ,,゚Д゚彡「そんなお前はなんで、今になってもシューの名前をしっかり覚えてんだよ」 ( <●><●>)「……ッ!」
- 225 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:06:11.38 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス。俺の住む森にはトナカイがいないし、俺は頭悪いけどさ、一つだけ知ってる事があるんだ」 ( <●><●>)「……なんですか?」 ミ,,゚Д゚彡「森にいるトナカイ達に――」 ――名前なんて、無いんだってな? 【第十三話:会話が長いからひとやすみひとやすみ。フサギコがまともだとボケる人がいなくなるんだねぇ】
- 227 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:08:19.72 ID:wFaCh+DfO
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【第十四話】 ミ,,゚Д゚彡「お前、今までに捨ててきたトナカイの名前、全て覚えてるだろ?」 雪の中、陽気なフサギコは、そこにはいません。 ( <●><●>)「……そんなことは」 問い詰められて、戸惑うワカッテマス。 ミ,,゚Д゚彡「茶色い体のトナカイと何年も一緒にいたお前が、突然トナカイを捨てるなんておかしいんだ」 ( <●><●>)「それは……」 ミ,,゚Д゚彡「俺はな、早くお前の存在を忘れて欲しいから、シューにシュシュって名前をつけたんだ。安直だけどさ。最初の頃のシューは怯えて怯えて、大変だったんだぞ」 lw´‐ _‐ノv「……」 ミ,,゚Д゚彡「なのになんでお前はまた現れて、捨てたはずのシューの名前を呼んでんだよ。馬鹿だろお前。ねちっこいよくそったれが」 どこか悔しそうにそう言うフサギコは、ギュッと拳を握りしめています。
- 228 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:11:34.42 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「ビロードからはな、なんとなく俺と同じ匂いがするんだ」 ( <●><●>)「匂い?」 ミ,,゚Д゚彡「馬鹿なんだ。きっと」 ( <●><●>)「え?」 ミ,,゚Д゚彡「なぁワカッテマス。お前が俺に熊のぬいぐるみを渡してくれたあの日、俺は救われたんだ、お前に。お前がどんな気持ちであれ、俺は救われたんだ」 思い出すのは、あの日の感情。 プレゼントを持って、雪の地面に足跡を伸ばす、胸が躍るあの感情。
- 232 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:17:08.86 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「ビロードもきっと同じだったんだ。名前をつけてもらえて、お前に救われたんだよ。お前にわかるか? 救われる事の嬉しさが。簡単に言えばなワカッテマス、俺もビロードも、お前に依存したんだよ」 一度だけ言葉を止めて、フサギコはシューを見ます。 ミ,,゚Д゚彡「シューは可愛くて俺よりは賢いから、依存しなかったんだ。恐怖の方が大きかったんだ」 lw*‐ _‐ノv「賢いって言われた」 照れるシューを今だけは無視して、フサギコは言葉を続けます。 ミ,,゚Д゚彡「だからこそ、あんなになるまで足を動かしたんだ。シューとは違って、ワカッテマス、お前を落とさない様にな。なぁ、そうだろ? ビロード」 (;><)「は……はい……なんです!」 苦しそうに、それでも力強く、ビロードは返事をしました。
- 235 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:22:09.18 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「だとさ。サンタは落ちても死なないのにな。なぁワカッテマス、お前はどんな顔をして、トナカイに名前をつけていたんだ?」 ( <●><●>)「そんなの、自分ではわかりません」 ミ,,゚Д゚彡「何を期待してる? 本当は助けて欲しいんだろう? なぁワカッテマス。どうしてお前はそうなった? 落ちこぼれサンタにもやれる事はあるってお前が言ったんだ。今俺にできるのは、お前の話を聞くことだ。話せよ、ワカッテマス」 そこまで言って、ようやくフサギコは黙ります。 あとはワカッテマスの言葉を待つように、ただ、ワカッテマスの目を見つめて。 【第十四話:長い、フサギコ、長いよ。ボケたいよ、フサギコ】
- 236 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:24:43.65 ID:wFaCh+DfO
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【第十五話】 どれだけの沈黙があったでしょう。 音もなく降る雪が、四つの影に舞い降ります。 長い長い、沈黙。 そしてようやく、開かれた口。 ( <●><●>)「……夏の日に、外を歩いた事がありますか?」 ミ,,゚Д゚彡「ある。冬と間違えて何回か。あと俺はしょっちゅう人前に出てる」 ( <●><●>)「えっ」 ミ,,゚Д゚彡「いや、いい。続けて」 ( <●><●>)「……ずっと同じ姿のサンタを、人々はなんと呼ぶか知っていますか?」 ミ,,゚Д゚彡「化け物、だろ?」 ( <●><●>)「はい。なぜですか?」 ミ,,゚Д゚彡「えっなにが?」
- 237 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:26:32.54 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「あなたはいつからフサギコですか? その名前は誰がつけましたか? いつからその姿ですか? いつまでサンタをやればいいのですか?」 ミ,,゚Д゚彡「知らん」 ( <●><●>)「……何もわからない。死なない。老いない。そんなの、ただの化け物です」 ミ,,゚Д゚彡「……そうだな」 ( <●><●>)「なのになぜ、私達には感情があるのですか? 美味しい物を美味しいと、痛い事を痛いと、なぜ言うのですか?」 ミ,,゚Д゚彡(こいつ)
- 250 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 01:58:22.01 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「人と同じ姿なのに、人からは掛け離れた存在。どうしてですか?」 ミ,,゚Д゚彡(こいつ、そこで悩んだのか) ( <●><●>)「機械じゃダメなのですか? 私はクリスマスだけに現れて、プレゼントを運ぶ機械になりたいと願いました。だけどそれは叶わない。いつも化け物と罵られ、わかってます、それが口癖だった私なのに、何もわからなくなりました」 ここに、気が遠くなるほどの時間を過ごし、気が狂うほどの長い長い時間を生きてきたサンタがいます。 このサンタはその重圧と、罵声という暴力に耐え切れず、本当に気が狂ってしまったのです。 ( <●><●>)「私にはわかりません。私がなぜプレゼントを運ぶのかすらも。でも、サンタというと子供達は喜びます。それだけでいいじゃないですか。わざわざ化け物なんて、呼ばなくたって――」
- 253 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:05:45.63 ID:wFaCh+DfO
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どれだけの間、苦しんできたのでしょう。 悲痛なその叫びは、胸を掻きむしるようで。 ( <●><●>)「私は昔、自分の心臓にナイフを突き刺しました。自分の首をギロチンで落とした事もあります」 ミ,,゚Д゚彡「えっ嫌だいきなり話がグロい」 ( <●><●>)「ダメなのです。死ねないのです。傷が再生するのはまだしも、首の無い体が、落とした頭を拾って、体にくっつけるのです。そんな時だけは、まるで機械の様に」 ミ,,゚Д゚彡「こわいグロいこわいグロい。ちくびちくびちくび」 ( <●><●>)「それから、私の中で何かが壊れました」 ミ,,゚Д゚彡「がらがらーっとね」 ( <●><●>)「何も考えないよう、何も感じないよう、アナタを避けて、トナカイを捨てて、自分で自分の心を、切り刻みました」
- 255 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:08:32.46 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「それじゃダメですか? 私は間違っていますか? 生きたいと願うと、まともには生きれない化け物だという現実があります。死にたいと願っても、サンタは死ねません。だったら心を壊さないと……壊さないと」 ――そんなの、つらすぎるじゃないですか……。 表情は変えず、声だけを震わせて。 ワカッテマスは言葉を止めました。 ミ,,゚Д゚彡「……」 それを聞いたフサギコは、考えるのです。 ワカッテマスは賢いから、きっとそこで悩むんだ。 馬鹿な自分が陽気なフリをして、ずっとずっと放置してきたその問題に、賢いこいつは正面からぶつかるんだ。 だから悩むんだ。 そう、考えました。
- 258 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:14:15.86 ID:wFaCh+DfO
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馬鹿な子ほど可愛い。 そんな言葉があります。 フサギコは馬鹿だから、素直なのです。 わからない事はわからない。 苦しい時に苦しい。 フサギコはそう言えます。 しかし、ワカッテマスは違いました。 賢いせいで、とても不器用なのです。 助けてと言えない。 苦しいと言えない。 自分は強いから大丈夫だと、無意識の内に自分の心に言い聞かせて。 ずっと一人、賢い頭で、答えの無い大きな大きな問題を、たった一人で解こうとして。 ワカッテマスは、どんどんどんどん、壊れて行きました。
- 261 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:18:35.00 ID:wFaCh+DfO
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だからこそ―― ミ,,゚Д゚彡「お前アレだろ? 夜中にこっそりプレゼント置いていくだろ?」 ( <●><●>)「え? 当然です」 馬鹿だけど素直なフサギコは―― ミ,,゚Д゚彡「俺もそうなんだ。サンタの習性なのかなんなのか、そうするのが当たり前だって、思ってしまうんだ」 ( <●><●>)「それがサンタの在るべき姿です」 飾らずに、ワカッテマスに手を差し延べます。 ミ,,゚Д゚彡「だけど俺は落ちこぼれサンタだから、いつも失敗するんだ」 ( <●><●>)「失敗?」 自分を救ってくれたから。 その、恩返しをする様に。
- 263 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:20:24.36 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「煙突から落ちる」 ( <●><●>)「えっテンプレートですね」 ミ,,゚Д゚彡「ガラスを割る」 ( <●><●>)「えっ破片が大変です」 ミ,,゚Д゚彡「電気をつける」 ( <●><●>)「えっぴかってなってバレちゃいます」
- 264 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:21:16.98 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「部屋の中に入る」 ( <●><●>)「えっ人よりちょっぴり大きいのに」 lw´‐ _‐ノv「角で壁紙を剥がす」 ( <●><●>)「えっ立ち退き時に敷金じゃ賄えなくなります。レオパレス21ならえげつない金額になります」 ( ><)「こっそり雪食べちゃう」 ( <●><●>)「えっそんなことしてたんですか? ていうか元気になったんですか?」 ( ><)「実は痙攣はフェイクでした」 ( <●><●>)「えっさっきまでの空気台無しじゃないですか。もうやだトナカイ不信になります」
- 267 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:23:32.50 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡(あれ?) lw´‐ _‐ノv(この人) ( ><)(面白いんです) ミ,,゚Д゚彡「はい戻ろうね、二匹とも」 lw´‐ _‐ノv(ギョロ目こわいこわい隠れよう隠れようでも頭だけ出してビロード励まそう) (;><)「う……うぅ……ぴくぴく……ぴくぴく」 ミ,,゚Д゚彡「こんな感じだよ、ワカッテマス。っていうか初めて気付いたけどお前ノリ良いな」 ( <●><●>)「えっなにがですか?」
- 270 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:27:15.50 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「力を抜けよ。軽いノリで適当に生きればいい。化け物だなんて言葉はいちいち聞いてないで、好きに言わしておけばいいんだ」 ( <●><●>)「どうしてそんな風に割り切れるのですか?」 ミ,,゚Д゚彡「シューのおかげかな」 ( <●><●>)「シュー?」 lw´‐ _‐ノv「はい」 フサギコの後ろから頭だけを出して、しかしもう怯えてはいないのか、ワカッテマスのギョロ目をしっかりと見つめて、シューは一言、返事をしました。 ミ,,゚Д゚彡「楽しいんだよ。森の中でシューと昼寝して、木の実を食べて、やんややんやと騒ぎながら散歩するんだ」 lw´‐ _‐ノv「わたし凄く愛されてる」 ( <●><●>)「羨ましいですね」
- 272 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:29:38.61 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「できるだろ? シューの名前をずっと覚えてる、愛情表現が下手くそなねちっこいお前なら」 一度、口だけでフッと笑って、ねちっこいは余計です、と一言。 ( <●><●>)「鈴をつけたトナカイは、離れた場所にいても名前を呼べば現れます。私がトナカイを必要として、トナカイも私を必要とします。それが、壊れたいと願う私の心を掻き乱すのです」
- 274 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:33:14.01 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「好きなんだろ? トナカイが。俺がシューを好きなのと同じ様に、いや、それ以上に」 lw´‐ _‐ノv「えっそれはちょっと聞き捨てならない」 ワカッテマスはそのギョロ目で、ビロードを見ます。 ( ><) ( ><)(あ) (;><)「う……ぴくぴく……うぅ」 必死に演じる優しいビロードの姿。 頭が悪いなんて、とんでもない。 ビロードはずっと、なんとかしてワカッテマスを助けようとしていたのです。 名前をくれた、恩返しとして。 また、ワカッテマスは口だけで笑います。 ( <●><●>)「トナカイに嫌われようとして、こんなに可愛いビロードにも。今まで傍にいた沢山のトナカイにも、私は酷い事をしてきました。その罪はあまりに重――」 lw´‐ _‐ノv「願えばいいんじゃない?」
- 276 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:35:14.88 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「あ、そうだな。多分出せるぜ、この奇跡の袋から。溶けたトナカイ達」 ( <●><●>)「……」 少し、ワカッテマスは考えます。 ( <●><●>)「……結構です。それが卑怯であることは、わかってます」 ミ,,゚Д゚彡「お、久しぶりの口癖。シューと同じ事言ってら。そういうもん?」 ( <●><●>)「はい」 ミ,,゚Д゚彡「……そっか。じゃあ後悔しろ、存分に。どうせ俺達死なないんだからさ。気が済むまで悔やめばいい」 ( <●><●>)「そうします」
- 277 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:38:05.63 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「また森に遊びに来いよ。ビロードとさ。二人と二匹で昼寝をしよう」 lw;‐ _‐ノv「えっ嫌だ二人きりがい――」 ( <●><●>)「それもいいですね。色々学ばせてもらいます」 lw;‐ _‐ノv「来ないで二人の仲を邪魔しない――」 ミ,,゚Д゚彡「おう、お前案外馬鹿だからな」 lw;‐ _‐ノv「あっ誰も聞いてない。わたしだって時々は本気で怒る」 ミ,,゚Д゚彡「……なんでそんなに焦ってんの? 時間は山ほどあるんだから少しくらい」 lw;‐ _‐ノv「だって、だって」 シューの頭を撫でて、不思議そうな顔をフサギコ。
- 280 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:42:20.69 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「では、そろそろ」 そんな二人を、ワカッテマスは見ない振りをして―― ミ,,゚Д゚彡「あぁ、またな。ワカッテマス。ビロード」 ( <●><●>)「はい。ではまた」 ( ><)「また、なんです!」 ソリに乗って、去って行きました。 ミ,,゚Д゚彡「さ、帰ろうか、シュー」 lw´‐ _‐ノv「シュシュでいいよ。シュシュがいいよ」 ミ,,゚Д゚彡「そうだな。帰ろう、シュシュ」 lw*‐ _‐ノv「うん、おうち、帰ろう」 シューとフサギコも空を翔け、どこかへと消えて行きました。
- 282 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:47:36.58 ID:wFaCh+DfO
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※ しゃんしゃん、しゃんしゃん。 夜空を翔ける中、星を見るのはワカッテマス。 ( <●><●>)「ビロード」 (;><)「……はッ! はいなんです!」 ぷるぷると四本足を震わせて、怯えながら返事をしたビロード。 ( <●><●>)「いつまで……いや逆にいつから演技をしているのですか? アナタが賢く、更に強いトナカイだという事はもうわかってます。もう少し、ゆっくりでいいですよ。私は少し、星が見た――」 ( ><)「嫌なんです」 ( <●><●>)「えっ」 ( ><)「本気を出すんです!」 ( <●><●>)「えっちょっと待ってなにそれ速――」 おりゃあ! っと声をあげて、しかし楽しそうに、ビロードは足を動かします。
- 284 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:50:05.76 ID:wFaCh+DfO
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その後ろに―― ( *<●><●>)「……まったく、これだから使えないトナカイは」 愚痴るも、頬は朱く。 不器用ながらも胸を踊らせる、ワカッテマスの姿がありましたとさ。 【第十五話:ワカッテマスはほんの少し嬉しくて、これから罪を悔やみます。微かに漂う、不穏な匂いを振り払う様に】
- 285 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:52:20.99 ID:wFaCh+DfO
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【第十六話】 世界のどこかに、大きな大きな森がありました。 季節は、夏。 咲き乱れる花が風に揺れて、木漏れ日が降り注ぐ広場に、フサギコとシューの姿。 ミ,,゚Д゚彡「暑いなぁ」 赤い帽子に、赤い服。 蒸し暑い中、これでもかといわんばかりの、厚着。 フサギコは広場の端に立つ大きな木の根元にもたれて座り足を伸ばし、澄み渡る青空を見上げて、暑いと、愚痴ります。 lw´‐ _‐ノv「暑いねぇ」 フサギコの隣に座って、しかし頭だけはフサギコの肩に預ける、シューがいます。 ミ,,゚Д゚彡「重い、そして暑い。あとほっぺたが角でつんつんされてる」 lw*‐ _‐ノv「気のせいだよ」
- 288 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:55:17.27 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なにこの子照れてる可愛い」 フサギコは照れるシューの頭を、ごしごしっと撫でます。 ミ,,゚Д゚彡「水浴び行こうか」 lw´‐ _‐ノv「そうだね」 フサギコが歩いて、その後ろをシュー。 ミ,,゚Д゚彡「えっ待ってなんかお尻をつんつんされてる内臓がキュッてなる痛みがある」 lw*‐ _‐ノv「気のせいだよ」 やはりシューは照れています。 つんつん、つんつん、つんつん。 ゆっくり歩く、二人の姿がありました。
- 290 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:00:08.35 ID:wFaCh+DfO
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※ ぱしゃぱしゃ、ぱしゃぱしゃ。 森の中にある小さな湖、大きな水溜まり。 そこではしゃぐ、一人と一匹。 ミ,,゚Д゚彡「気持ち良いなぁ」 全裸のフサギコから、腰から下が水の中。 lw´ _ ノv「ぎもぢびぃね゙ぇ」 そのすぐ隣、水に沈むシューの姿。 ミ,,゚Д゚彡「えっ沈んでる。ていうかなんで入ってんの? いつもは水辺でぱしゃぱしゃ遊んでるのに。角だけ出ててシュノーケルみたいになってる」 lw*‐ _‐ノv「えへへ」 ミ,,゚Д゚彡「シュシュったら、おちゃめな子っ」
- 291 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:02:47.12 ID:wFaCh+DfO
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フサギコはシューを水から出して、水辺に座らせます。 ミ,,゚Д゚彡「あー気持ち良い」 泳ぐフサギコに lw´‐ _‐ノv「ねぇ」 声をかけるシュー。 lw´‐ _‐ノv「こっちに……来て……」 ミ,,゚Д゚彡「うわなにその甘えた声可愛い。来たよ」 lw´‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡 lw´‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡「この間は、なに?」 lw*‐ _‐ノv「えいっ!」
- 292 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:05:23.44 ID:wFaCh+DfO
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ぱしゃっと音がして、シューはフサギコの顔に水をかけます。 ミ,,゚Д゚彡「うわっなにこのカップルみたいなやりとり。やったなぁ! えいっ!」 ぱしゃ。 えいっ。 ぱしゃ。 えいっ。 ぱしゃ。 lw*‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡 lw*‐ _‐ノv ミ,,゚Д゚彡 lw* > _ <ノv「えいっ!」
- 295 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:08:12.69 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なにその顔凄く可愛いあれシュシュが近――」 ばっしゃーんっ! と音がして。 フサギコは水の中、四本足に踏まれて、顔を角でつんつん、つつかれて。 シューの左の後ろ足が、フサギコの股間のモンジャラから顔を出すマサラタウンの下、奇跡の袋に守られたハイパーボールを踏み潰していましたとさ。 ゴポポポポッ! またもや物言わぬソレとなったフサギコは水の中、声にならない悲鳴をあげて――
- 297 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:10:39.13 ID:wFaCh+DfO
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※ ミ,,゚Д゚彡 のしのし、のしのし。 物言わぬソレから回復したフサギコは、森の中を歩きます。 lw*‐ _‐ノv とことこ、とことこ。 後ろにはシューが。 やはり妙に距離は近く、シューの角がフサギコのお尻をつんつん、つんつん、つんつん。 ミ,,゚Д゚彡「んー?」 最近のシューは、少し変でした。 ワカッテマスとの一件以来、離れない離れない。 常に、フサギコの傍にいます。 昔なら、一人で空を散歩したりもしてました。 それが、今ではありません。
- 298 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:14:21.99 ID:wFaCh+DfO
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lw*‐ _‐ノv 照れながらフサギコのお尻をつんつんするシューの姿。 特に最近は、表情がコロコロ変わります。 眠そうな目をさせながら、甘えたり、はしゃいだり。 忙しい子になりました。 ミ,,゚Д゚彡 フサギコはぴたりと足を止めます。 lw´‐ _‐ノv「どうしたの?」 ミ,,゚Д゚彡「隣、歩いて」 lw´‐ _‐ノv「え、うん」 のしのし、のしのし。 とことこ、とことこ。 並んで歩く二人ですが、フサギコはちらりと地面を見て、思います。
- 299 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:17:27.42 ID:wFaCh+DfO
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歩幅の狭い小さな足跡と、歩幅の広い大きな足跡。 これが、綺麗に並ぶ事はないんだな、と。 その足跡は、フサギコとシューが一人と一匹である事を証明しているかのようで――
- 301 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:19:54.53 ID:wFaCh+DfO
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※ それは、冬が近付いてきたある日の事です。 ミ,,゚Д゚彡 やはり広場の端に立つ大きな木の根元にもたれて座り足を伸ばす、フサギコの姿がありました。 lw´‐ _‐ノv 隣に座って、やはり頭だけをフサギコの肩に預けるシューの姿もあります。 ミ,,゚Д゚彡「木の実、食べようか」 立ち上がるフサギコ。 フサギコの袋は、シューが望めばなんだって出てきます。 でも、それがあってもフサギコは、木の実を食べるのです。 それはただ、シューと一緒に木の実を探して、一緒に食べる。 その時間が好きだったから。 もしもこの時、フサギコが木の実探しをめんどくさいと感じて、袋から食べ物を出していたら。 木の実を探しに、立ち上がる事がなかったら。 きっとフサギコは――
- 302 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:21:38.54 ID:wFaCh+DfO
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lw´‐ _‐ノv「……眠い」 そう呟いて妙にゆっくりとした動作で立ち上がる、シューの姿を知らないままでした。 ミ,,゚Д゚彡「また、眠いのか?」 lw´‐ _‐ノv「……うん」 ミ,,゚Д゚彡「そっ……か。眠り姫だなシュシュはほんと可愛い」 そのシューの姿は、精一杯軽口を叩くフサギコの胸を、ほんの少しざわめかせて……。
- 304 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:24:46.28 ID:wFaCh+DfO
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【第十六話:穏やかな、時間。穏やかだった、時間】
- 312 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:44:16.59 ID:wFaCh+DfO
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【第十七話】 聖なる夜に、洋風な造りをした二階建ての一軒家の二階から、ぱりんと、音。 ピンクを主とした可愛い飾り付けのされた、一人の少女の部屋。 忍び込む影が二つ。 ぱちりと、何かを押す音がして、影が薄オレンジの光に照らされます。 ミ,,゚Д゚彡「また窓ガラス割っちゃった。電気つけちゃった」 そこに、ガラスを踏む音を鳴らす、フサギコがいます。 lw´‐ _‐ノv「そうだね」 がりがりと壁紙を剥ぎながら、首を動かすシューもいます。 ミ,,゚Д゚彡「えっなんでまた入ってんの?」 lw´‐ _‐ノv「だって――」
- 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 03:44:33.47 ID:YSBpRRIA0
- 壁紙wwww
- 315 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:49:28.34 ID:wFaCh+DfO
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シューが言わなかったのか、フサギコが聞かなかったのか、その言葉の先はありませんでした。 そしてその傍に―― 「何してるの?」 ベッドから体を起こす、ピンク色のパジャマ姿の少女が一人。 ミ,,゚Д゚彡「サンタですこんばんは」 lw´‐ _‐ノv「トナカイですこんばんは」 きちんと挨拶をするフサギコとシュー。 そして少女は 「サンタさん? トナカイさん? プレゼントくれるの!?」 嬉しそうな声をあげて。
- 318 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:52:53.50 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「うん、あげるよ」 「本当に? じゃあ私、ヒマワリの花が欲しい! 沢山! ヒマワリの花を、冬に見たい!」 ミ,,゚Д゚彡「えっ」 lw´‐ _‐ノv「えっ」 「え、やっぱり無理なのかな?」 ミ,,゚Д゚彡「いや、そうじゃなくてね。ちょっと待ってね」 実は、初めてだったのです。 長い間生きてきたフサギコは、ある日シューに出会って、袋の使い方を知って、プレゼントを配ろうとしてきました。 しかし忘れてはいけません。 フサギコは落ちこぼれサンタ。 いつも失敗ばかり。 プレゼントを届けた相手が、右足の無い誰かの様に、変な人ばかりだったのも原因ですが。 シュー以外の誰かに、その袋からプレゼントを出したのは、それが初めてでした。
- 321 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:55:19.14 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「はい」 「わぁぁ! 凄い!」 ヒマワリの花束を受け取った少女は、大喜び。 ミ,*゚Д゚彡 フサギコはそれが嬉しかったのか ミ,*゚Д゚彡「もっとあげる」 袋からヒマワリの花束を、ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん。 あっという間に、ピンクだった部屋は黄色に染まりました。 少女はわぁっ! と声をあげて 「ありがとう! サンタさん! トナカイさん!」
- 323 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 03:58:32.71 ID:wFaCh+DfO
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とびきりの笑顔と一緒に、お礼を言います。 ミ,,゚Д゚彡 lw´‐ _‐ノv フサギコは ミ,*゚Д゚彡 照れて―― シューは lw´ _ ノv なぜか俯いて――
- 325 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:02:53.64 ID:wFaCh+DfO
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※ しゃんしゃん、しゃんしゃん。 夜空を翔ける一人と一匹。 ミ,*゚Д゚彡「嬉しいもんだな」 lw´‐ _‐ノv「……そうだね」 フサギコは、胸の奥が熱くなるのを感じていて。 ミ,*゚Д゚彡「嬉しいな」 lw´‐ _‐ノv「……そうだね」 何度も、そう言います。 しかし、返事するシューの足は遅く、声も心なしか暗く。 ミ,,゚Д゚彡「あれ、なんか機嫌悪い?」 lw´‐ _‐ノv「……気のせいだよ」
- 329 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:05:56.65 ID:wFaCh+DfO
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やはり、暗い声。 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 ミ,,゚Д゚彡「んー?」 それから少しの沈黙があって lw´‐ _‐ノv「嬉しいよ、嬉しいけど、さ」 シューが口を開きました。 首だけで、ちらりとフサギコを見るシュー。 ミ,,゚Д゚彡「ん?」 赤い帽子に、赤い服。 大きな体に、白い髭。 だけどシューが見ているのは、お腹の前で宝物を守るかの様に大事そうに大事そうに抱えられた、大きな袋。 中身は空っぽ。 lw´‐ _‐ノv「その姿、すき」 ミ,,゚Д゚彡「えっ」 lw´‐ _‐ノv「その袋は、いつもわたしだけの願いを聞いてくれた」
- 330 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:08:35.99 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「うん」 lw´‐ _‐ノv「いままではずっと、わたしだけの袋だった。わたしにとっても、宝物だった。わたしだけの、失敗ばかりする落ちこぼれサンタだった」 ミ,,゚Д゚彡「うん」 lw´‐ _‐ノv「なのに今日初めて、わたし以外の、願いを聞いて」 ――わたしだけのものじゃ……なくなって。 最後は俯いて、少しだけ肩を震わせたシューの姿。 シューが言ったそれは、とても、とても子供地味たヤキモチで。
- 332 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:11:01.69 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「シュシュ」 頭の悪いフサギコでも、なんとなくは理解ができて―― lw´ _ ノv「ん?」 ミ,,゚Д゚彡「なんか欲しいものある?」 袋の中に手を入れて、聞きました。 lw´‐ _‐ノv「落ちこぼれサンタ」 ミ,,゚Д゚彡「……あれ、出ない」 lw´‐ _‐ノv「何でも出るんじゃないの? 嘘つきサンタ」 じゃあ、と言って lw*‐ _‐ノv「ヒマワリの、花束。あの子にあげたより、もっと沢山の」 シューは照れ顔で、子供地味た願いを言います。 ミ,*゚Д゚彡「シュシュはめんどくさいトナカイだなぁ」 言いながらもフサギコは、ソリに乗りながらヒマワリの花束を出します。 ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん。 沢山沢山、出しました。
- 334 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:14:51.69 ID:wFaCh+DfO
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lw*‐ _‐ノv シューは少しだけ、満足そうな顔をします。 しかしその顔に乗せた朱は、フッと、消え去りました。 ミ,,゚Д゚彡「ん? あれ? シュシュ! なんか低――」 フサギコが叫んだと同時。 lw;‐ _‐ノv「あれ、あしがうごかな――」 ゆっくりゆっくり、シューとフサギコは、真っ白な雪の地面に向かって、落ちて行きました。 どしんっ! と音がして、遅れて、沢山のヒマワリの花が、その場に倒れた一人と一匹の上からゆっくりと落ちてきて――
- 336 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:19:51.13 ID:wFaCh+DfO
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※ 聖なる夜に、しんしんと降る雪がありました。 ミ,;゚Д゚彡「シュシュ!!! シュシュ!!!」 大声を出すサンタが一人。 lw´ _ ノv「……ぐ……う」 倒れたまま動かなくなった、ほんの僅かに苦しそうな息をするだけの真っ白なトナカイを、抱いています。 ミ,, Д 彡「ちくしょう、ちくしょう。なんで俺だけ――」 どうして、サンタは無傷なのでしょう? トナカイは動かないのに、サンタは無傷。 それは、同じ不思議な生き物である、サンタとトナカイの、決定的な違いを示しているようで――
- 338 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:22:50.09 ID:wFaCh+DfO
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サンタは、ありったけの力を込めてトナカイを背負い、歩きます。 ミ,, Д 彡「ほらシュシュ、おうちへ、帰ろう。一緒にお昼寝しよう。なぁ? シュシュ」 小さな声をその場に残して、のしのし、のしのし。 ゆっくりゆっくり、響く足音。 後ろを追う、音は無く。 歩幅の広かった大きな足跡は、今は狭く―― しんしんと降る雪だけが、その背をずっと、見送っていました。
- 341 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:24:29.96 ID:wFaCh+DfO
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【第十七話:大好きなキミを背負って歩くその足跡は狭く】
- 344 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:28:43.14 ID:wFaCh+DfO
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【第十八話】 世界のどこかに、大きな大きな森がありました。 季節は、夏。 咲き乱れる花が風に揺れて、木漏れ日が降り注ぐ広場に、フサギコとシューの姿。 ミ,,゚Д゚彡「暑いなぁ」 赤い帽子に、赤い服。 蒸し暑い中、これでもかといわんばかりの、厚着。 フサギコは広場の端に立つ大きな木の根元にもたれて座り足を伸ばし、澄み渡る青空を見上げて、暑いと、愚痴ります。 lw´‐ _‐ノv「……うん」 フサギコの隣に力無く座って、しかし頭だけはフサギコの肩に預ける、シューがいます。 角は、フサギコの頬をつつきません。 あの日からずっと、シューは座ったままです。 数日経って意識を取り戻した時、シューは、歩けなくなっていました。
- 346 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:30:30.71 ID:wFaCh+DfO
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春が過ぎて、夏になった大きな大きな森の中、シューはずっと、フサギコの隣に、座ったまま。 ミ,,゚Д゚彡「木の実、食べるか?」 フサギコがそう聞いても lw´‐ _‐ノv「……いらない」 うん、という回数は徐々に減って。 ミ,,゚Д゚彡「そっか……眠たくないか?」 lw´‐ _‐ノv「眠い。でも……今日は……起きてる」
- 349 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:34:26.51 ID:wFaCh+DfO
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その言葉が、頭の悪い落ちこぼれサンタがいつしか言った、山ほどある時間が、もう残り少ない事を伝えていて。 ミ,,゚Д゚彡「……そっか」 本当に頭の悪い落ちこぼれサンタは、そう言う事しかできなくて。 ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 lw´‐ _‐ノv「ん?」 フサギコの隣、元より眠そうなその目は、いつもより更に細く。 ミ,,゚Д゚彡「やたら甘えてきてたのは、なんとなくわかっていたから?」 lw´‐ _‐ノv「うん?」
- 352 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:36:30.04 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 lw´‐ _‐ノv「ん?」 ミ,,゚Д゚彡「明日も一緒に、木の実食べような? お昼寝しような? 夜には空を散歩しような? しゃんしゃんて鈴を鳴らして、流れ星と競争しような? お月様、かじりに行こうな?」 言える内に、言えるだけ―― 早口で喋るフサギコの顔。 シューは少しだけ首を動かして lw´‐ _‐ノv「……うん」 そのフサギコの目を見てそう、言いました。 ミ,,゚Д゚彡「絶対だぞ?」 lw´‐ _‐ノv「うん」 それが果たされない約束である事は、本当に本当に頭の悪い落ちこぼれサンタにも、わかっていました。
- 356 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:41:31.78 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「シュシュ、なんか欲しいものある?」 袋に手を入れて、聞きます。 lw*‐ _‐ノv「……落ちこぼれサンタ」 ミ,,゚Д゚彡「俺はここにいるよ」 シューの頭を撫でるフサギコ。 lw*‐ _‐ノv「……じゃあ、この森いっぱいの……ヒマワリ」 ミ,,゚Д゚彡「……まだヤキモチ焼いてんの?」 lw´‐ _‐ノv「まだ……足りないくらい、だってもう――」 ――わたしには、見れないから。 ミ,,゚Д゚彡「ッ! このやろういつものお返しだっ! このめんどくさいトナカイめっ!」 声を聞かないフリをして、フサギコはシューの頬を指でつつきます。 つんつん、つんつん、つんつん。
- 359 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:44:38.62 ID:wFaCh+DfO
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lw*‐ _‐ノv「……いたい」 言うも、シューは照れ顔で。 ミ,,゚Д゚彡「よし、じゃあ沢山のヒマワリを――」 ごそごそと袋をあさって喋るフサギコの言葉を止めて lw´‐ _‐ノv「ねぇ」 ミ,,゚Д゚彡「ん?」 シューは、消えそうなほどに小さな声で lw´‐ _‐ノv「わたしの……願いは」 lw´‐ _‐ノv「ずっとずっと……落ちこぼれサンタの……傍に……」 lw´‐ _‐ノv「……ねぇ?」 ミ,,゚Д゚彡「ん?」 lw´‐ _‐ノv「わたしは……わたしは――」 フサギコが、だいす――
- 361 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:47:07.45 ID:wFaCh+DfO
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フッと、フサギコの肩に乗せられたシューの頭が軽くなった気がして、しかしそれでもフサギコは、澄み渡る青空を見上げたまま、ヒマワリを出して。 ミ,,゚Д゚彡「ほら、ヒマワリだぜ? 綺麗だろ? シュシュ」 言って手はまた、袋の中。 ミ,,゚Д゚彡「……なんも出ねぇや」 呟いて。 ミ,,゚Д゚彡「最後の最後で、初めて俺の名前を呼びやがって」 ミ,,゚Д゚彡「最後ぐらい、ちゃんと言い切れよ」 ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 ミ,,゚Д゚彡「お前は、どうなるんだ?」 ミ,,゚Д゚彡「溶けるのか? 腐るのか?」 ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 ミ,,゚Д゚彡「お前の最後の願い、なんも出ないんだ」 ミ,,゚Д゚彡「俺は、ずっとお前の傍にはいれないみたいだ」
- 363 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:49:46.60 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 ミ,, Д 彡「俺は、本当にどうしようもない落ちこぼれサンタだから」 ミ,, Д 彡「肝心なところで、お前の願いを聞けなかった」 ミ,, Д 彡「落ちこぼれの嘘つきサンタって、怒るだろ? ヤキモチ妬きのお前なら、怒るんだろ?」 ミ,, Д 彡「怒れよ、ほら。なぁッ!」 自分の頬を、もう軽くなったシューの角に押し付けて。 ぐりぐり、ぐりぐり、押し付けて。 ミ,,;Д;彡「怒れって。なぁシュシュ? なぁ、なぁ――」 フサギコの涙を見る者は誰もいなくて、そこにはただ、咲き乱れる花を揺らす風だけが吹いていまして。 ――なぁ、なぁ。シュシュ。シュシュ。 本当に本当に本当に頭の悪い、落ちこぼれサンタのその声を、まるで空へと運ぶように――
- 365 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:51:15.88 ID:wFaCh+DfO
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【第十八話:優しい顔で眠るキミの角が軽くてボクは泣いた】
- 367 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:55:37.80 ID:wFaCh+DfO
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【最後話】 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 ミ,, Д 彡「……」 大きな大きな森の広場の真ん中で、フサギコは一人、土を掘ります。 lw´ _ ノv ミ,, Д 彡「……ここがいいよな? 広いし、ずっと一緒だったし」 もう二度と動かないトナカイを、埋めるために。 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 そこに舞い降りる、二つの影。 ( <●><●>)「こんにちは。遊びに来まし――」 ( ><)「……え?」 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 ミ,, Д 彡「……よう」
- 370 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 04:58:19.41 ID:wFaCh+DfO
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土を掘るフサギコの姿を見て、声を失う一人と一匹。 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 ただその音が響くだけ。 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 何度も何度もそれを繰り返した頃。 ようやく―― ( <●><●>)「私の……せいですね」 ミ,, Д 彡「……あ?」 ワカッテマスが口を開きます。 ( <●><●>)「私があの時、シューの鈴を外さなければ」 ミ,, Д 彡「……どうしてそう思う?」 ( <●><●>)「確かにトナカイはサンタと違って寿命があり、いつか死にます。しかしそれは長いもので、歳を数えてもシューはまだ寿命の半分にも――」 はっ、と笑って、言葉を遮るフサギコ。
- 373 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:00:41.75 ID:wFaCh+DfO
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ミ,, Д 彡「しっかり年数記憶してんじゃねぇか。ほんとねちっこいよお前」 ( <●><●>)「……」 ミ,, Д 彡「そうだとしたら、俺はお前を許さない。俺がこの世界からいなくなるまで許さない。ずっと死なないなら、ずっとずっと許さない」 ( <●><●>)「……」 だけど、な。と一言。 ミ,, Д 彡「あの時のお前がいなければ、俺はシュシュと出会ってない。沢山のトナカイの命を犠牲に、俺とシュシュは出会ったんだ」 ( ><)「……」 ビロードはちらりと、ワカッテマスの顔を見ます。 ミ,, Д 彡「だから、俺の勝手なエゴだけど、俺はお前に感謝してる。許さないけど、感謝してる」 ( <●><●>)「……ちぐはぐですね」
- 378 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:04:45.54 ID:wFaCh+DfO
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ミ,, Д 彡「俺は落ちこぼれサンタ、だからな。何でもありだ」 ( <●><●>)「アナタは、どうして私の知らない感情ばかりを……。本当は、馬鹿じゃないんですか?」 ミ,, Д 彡「長く生きてりゃ自然とわかるさ。わからないお前がおかしいんだよ」 ( <●><●>)「……もしも今、アナタが袋に手を入れて、もしも今、私が「シューが生き返って欲しい」と願ったら? どうなりますか?」 ミ,, Д 彡「さぁてね」 ( <●><●>)「だったらやってみ――」 ダメだっ! と、強い声。 フサギコはやっと、やっとシューやワカッテマスが言った言葉の意味が理解できたのです。 ミ,, Д 彡「失って、やっとわかった。そんな奇跡は、卑怯なんだよな」
- 381 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:07:30.14 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「……だったら私も手伝いま――」 ミ,, Д 彡「いい。帰ってくれ。今すぐ、帰ってくれ」 ( <●><●>)「え?」 ミ,, Д 彡「憎いとかじゃない。今はただ、シュシュと二人でいたいから――」 ( <●><●>)「……ッ!」 ワカッテマスはやっと気づきました。 自分と会話をしている時、フサギコは土を掘る手を止めていた、と。 それはまるで、邪魔するな、と言うかのように。
- 391 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:14:26.02 ID:wFaCh+DfO
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( <●><●>)「配慮が足らず、すみません」 ミ,, Д 彡「悪いな。また、な?」 ( <●><●>)「はい、ではまた」 ( ><)「……また、なんです」 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 そんな音を聞きもせず、ただ黙ってフサギコは、土を掘るばかりでした。 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。 ざくっ。ばしゃ。
- 396 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:18:36.18 ID:wFaCh+DfO
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※ ミ,,゚Д゚彡「ふーっ」 汗を拭くフサギコ。 目線の先には、他より少し色の変わった土。 土の中に、真っ白な小さな体のトナカイがいます。 ミ,,゚Д゚彡「さて、と」 スコップを置いて、フサギコは色の変わった土の上。
- 398 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:19:55.93 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「シュシュを踏めるなんて最初で最後だ、堪能しないとな」 ぱんぱんと、足で踏んで。 ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 ミ,,゚Д゚彡「お前はどこから雪崩を呼んだんだ?」 ミ,,゚Д゚彡「お前はどこから米や炊飯器を出したんだ?」 ミ,,゚Д゚彡「一緒に食べた木の実、美味かったぜ」 ミ,,゚Д゚彡「昼寝は、気持ち良かったし」 ミ,,゚Д゚彡「空の散歩は、楽しかった」 ミ,,゚Д゚彡「流れ星に勝てたらよかったのにな」 ミ,,゚Д゚彡「ほんとに星を食べたのか? 月をかじったのか?」 ミ,,゚Д゚彡「……聞きたい事が、いっぱいあるな」
- 402 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:22:02.16 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「なぁシュシュ?」 ミ,,゚Д゚彡「俺はこれから、どうなるんだろうな。一人で、どうやって生きるんだろうな」 ミ,,゚Д゚彡「いつになったら俺は、俺はシュシュのところに行けるかな」 ミ,,゚Д゚彡「なんも、なんもわからねぇ」 ミ,, Д 彡「あ、やべぇ。せっかく固めたのに」 ミ,, Д 彡「ほんとに俺は、落ちこぼれのサンタだから、一滴だけ、許してくれ。な?」 ミ,, Д 彡「なぁシュシュ?」 ミ,, Д 彡「なんでもう、過去にしかお前はいないんだろうな?」 ミ,, Д 彡「もっと、もっと、俺はお前と――」 ぴちょん、と一滴。 土に降りた、涙がありました。
- 404 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:23:45.83 ID:wFaCh+DfO
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【最終話:いつもわたしの隣には落ちこぼれサンタの姿があって、だからわたしは幸せだったよ】
- 409 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:26:53.61 ID:wFaCh+DfO
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【えぴろーぐ】 それから、長い長い時間が流れ―― 世界のどこかに、大きな大きな森がありました。 季節は、夏。 木漏れ日が降り注ぐ広場一面に広がる、ヒマワリの花。 その真ん中、真っ白なトナカイが眠るその上に―― ミ,,゚Д゚彡「デカすぎるだろ」 大きな大きな木が、立っていました。 まるで、広場の端にある大きな木に対抗する様に、自分の根元を背もたれにして、そう言うように、それは、そこに立っていました。 ミ,,゚Д゚彡「もういいよシュシュ。これ以上デカくなったら森がヤバい。お前のデカさで森がヤバい」 それは、真っ白なトナカイが願った、奇跡でしょうか? 神様のいたずらでしょうか? それとも、落ちこぼれサンタの袋の力でしょうか? それは、誰にもわかりません。 落ちこぼれサンタは、ずっと一人です。 新しいトナカイは、いません。
- 415 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:30:38.28 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡「やべぇシュシュの奴、マジで森一面をヒマワリだらけにする気だ。死ぬ。森が広すぎてさすがのサンタも精神面がえげつないことになって死ぬ」 袋に手を入れる度、出てくるヒマワリがあったから。 落ちこぼれサンタは、どこにも行けません。 ずっとずっと、大きな大きな木の傍にいて。 とある少女に対抗するそれは、あまりにも多過ぎて。 ミ,,゚Д゚彡「久しぶりに空の風を感じたい。ワカッテマスに頼んでトナカイ一匹――」 疲れた落ちこぼれサンタがそう言うと ミ,,゚Д゚彡「えっごめん嘘行かない行かないどこにも行かない俺はシュシュが大好きだからぎゃああああああ!!」 米とか、米とか、炊飯器とか。 色々、降ってくるのです。 ミ,,゜Д゜彡「……まだヤキモチ妬いてんの?」
- 420 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:35:07.38 ID:wFaCh+DfO
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ざぁっと、大きな大きな木の枝が揺れます。 ミ,,゚Д゚彡「まぁいいや」 そう言って、その木の根元に腰を下ろして ミ,,゚Д゚彡「今日も木の実が美味いよシュシュ」 木の実を食べる、落ちこぼれサンタの姿。 その頭上に―― ミ,,゚Д゚彡「しかしお前これ以上デカくなったら体重的なアレがヤバいだろ前に背負った時の重さといったらもう大変なえっあれ痛い痛いごめんやめシュシュごめ――」 炊きたての米や炊飯器を降らす、ヤキモチ妬きの大きな大きな木の姿がありました。 どこかの誰かが起こしたその奇跡は、悲劇を悲劇で終わらせない、ほんの少しだけ、卑怯なもので――
- 425 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:39:35.97 ID:wFaCh+DfO
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かつて、世界のどこかの大きな大きな森に、体の小さな真っ白なトナカイがいました。 首に大きな赤い鈴。 薄茶色の、先が枝分かれした二つの角に、真っ白な毛のとても綺麗な体。 そこから伸びる細く長い四本足は、それはそれは美しいものでした。 lw´‐ _‐ノv しゃんしゃん、しゃんしゃん。 首の鈴を鳴らし、空を翔けた真っ白なトナカイ。 いつも眠そうな目をした、真っ白なトナカイ。 そのトナカイは―― お米が好きで。 お星様が好きで。 お月様も好きで。 流れ星と競争をするのが好きな、ほんのり、ちょっぴり、かなり頭の悪い可愛い可愛いトナカイでした。
- 426 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:41:10.77 ID:wFaCh+DfO
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いつもそのトナカイの隣には、体の大きな落ちこぼれサンタがいて。 一緒に食べる木の実が好きで。 一緒にお昼寝するのが好きで。 一緒に空を散歩するのが好きで。 少しだけ素直じゃなかったそのトナカイは、やけに眠たくなってからやっと、隣にいる落ちこぼれサンタに甘え出しました。 そして、自分の終わりを知った時、初めて落ちこぼれサンタの名を、呼びました。 少しだけ素直じゃない、ヤキモチ妬きのそのトナカイ。 その想いはきっと、落ちこぼれサンタに届いていて――
- 428 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:44:48.60 ID:wFaCh+DfO
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のしのし、のしのし。 とことこ、とことこ。 もう二度と響かない、二つの足音。 そんな懐かしい音達は―― 少し卑怯な奇跡が生んだ、ヤキモチ妬きの大きな大きな木の根元、ぐっすり眠る落ちこぼれサンタが見る夢の中で―― のしのし、とことこ。 のしのし、とことこ。 ようやく一つに重なって―― 綺麗に並んだ、二つの足跡。 夢の中、その重なる音を生む場所に―― ミ,,゚Д゚彡「もぐもぐ」 lw´‐ _‐ノv「もぐもぐ」 仲良く木の実を食べる、一人と一匹の姿がありましたとさ――
- 430 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:46:01.23 ID:wFaCh+DfO
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ミ,,゚Д゚彡落ちこぼれサンタはずっとずっと、真っ白なトナカイの傍にいるようです 【おしまい】
- 437 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 05:55:04.96 ID:wFaCh+DfO
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【あとがき】 長かった、非常に長かった。 晩飯食ってないしこの後仕事で、目と頭がフラフラしますが、とても有意義でとても楽しかったです。 今回はシューが主役みたいなもので、少し多めにした「えっ」等の表現や頭のおかしな人達は全部、それで何かを伝えたいわけではなく、シューの性格をがっちり固める為の当て馬にしました。 あとはまぁ、物語において【奇跡】とはとても卑怯なものです。 奇跡の力があれば小さな女の子が、巨大な怪獣を倒す事だってできます。 だから【少し卑怯な奇跡】が起こって、シューと会えるのは夢の中でだけ。 という感じです。 個人的には満足です。 ではでは、長時間、支援、感想などありがとうございました。 質問などあれば、書いておいてください。 長時間追ってくれた方々、ちゃんと寝てくださいね。 それではまたどこかで。 ありがとうございました。
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 01:48:38.69 ID:FnQRmabXO
- しえん
 http://imepita.jp/20101103/063860
- 251 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 02:02:07.47 ID:wFaCh+DfO
- なんで、あ、って書いた時に限って書き込めるんだ恥ずかしいorz
お目汚しすみません。 さるではなく、なんか規制くらってました。 >>246 絵、ありがとうございます。この絵の年賀状が欲しい! 時間が空いて本当にすみません。 支援などありがとうございます。 では、ゆっくり再開します。
- 317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 03:51:24.89 ID:YSBpRRIA0
- しかし、1日にしては本当にかなりの量かいてるよなぁ…それとも結構前から懐で温めてたり?
- 438 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 05:58:12.46 ID:YSBpRRIA0
- 深夜に起きた俺に隙は無かった
現行書いてくるか…
- 439 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 06:26:19.60 ID:wFaCh+DfO
- あれちょっと待って>>415の最後のフサギコの顔がデカイ。なんで。
これは表現ではなく間違いです。 誤字脱字等、諸々含めて失礼しました。 >>438 そのID暗唱できるぐらい見た。 本当にありがとうございます。 ちなみに>>317ですが、ネタは常に山ほどあります。が、パズルのピースみたいに、小さなネタを組み合わせる様な感じで話を作るので、オムニバス形式が多くなっちゃいますが。 あと、絵描いてくださった方、本当にありがとうございます。しこたま保存しました可愛いです。 粉雪、愉快な、どちらもまとめてくださったまとめサイト様も、ありがとうございます。
- 447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:18:08.62 ID:SNK/yuyZO
- 投下小分けにすることも考えてみたらどうだろうか
長時間の投下続いてるから大丈夫かなと 乙でした
- 453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:18:21.49 ID:idiVsmfg0
- 愛する者が弱っていく話はきついな…
最後炊飯器降ってたのは夢の中?フサ廃人エンド?
- 459 名前: ◆DUPgl7ajSA :2010/11/03(水) 16:48:07.43 ID:wFaCh+DfO
- >>447
例えば「〇話は真面目で〇話はアホなテンションで」みたいに、メリハリの付け方が“完結まで一気読みをした時に”という体で書いていますので、考えてませんでした。 個人的に連続モノのドラマや漫画を追うのが苦手なので意地でも投下しちゃいますが、ここまで長時間だとどこかで妥協しないとダメですね。 お気遣いありがとうございます。 >>453 炊飯器や米は「この木はシューだよ」と表現するためのもので、炊飯器や米というアイテム自体はだのネタですね。 どうせ潰されてもフサギコは死にませんから。 フサギコは廃人にはなりませんが、夢の中でしかシューに会えないので現実では寂しさはあるでしょう。 ただ、シューはずっと幸せです。願いが叶いましたから。 フサギコはその願いに巻き込まれた形ですが、フサギコも同じく、シューが幸せならそれでいいやと思うのです。 乙や感想などありがとうございます。
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