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( ^ω^)超!正義の人のようです |
- 1 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:14:17.52 ID:EqcmRCOjO
- 1.僕は正義の人
空は青く白く広がり、黄色い太陽が細々と自分を主張している。乾いた風が乾いた砂を巻き上げ、寒さに拍車をかけている。 そんなありきたりと言えばありきたりで、慣れっこになってしまったと言えばそれまでの、ユビキタス冬の美空の下のとある公園で、僕は体操をしていた。 ( ΩωΩ) 「おっおっお」 体操と言っても、いわゆる太極拳ではなく、屈伸伸脚アキレス腱伸ばしを主とした、言わば準備体操である。 この公園は、住宅地から離れたところにあり、ランニングコースやテニスコート、屋外プールまで存在するそれなりの規模を誇る公園で、今も回りには数人のジャージ着用の大人が僕と同じように思い思いの体操を繰り広げている。 ( ΩωΩ) 「おっおっおっお」 そして、僕ことヒーロー・ホライゾンの日曜日は、午前七時、VIP中央公園から始まる。
- 3 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:17:04.70 ID:EqcmRCOjO
- 全身に密着する真っ赤なスーツで身を包み、目のあたりが黒いいかにもなヒーローを模した仮面で顔を覆う。
腰にはベルト、手には白い手袋。少々アートが過ぎるかとも思われるヒーロースーツももう身体に馴染んでいる。これを着ていると、身体だけでなく心も引き締まる。自分がヒーローである責任が程よく沸き上がるのだ。 从*'ー'从 「あ、おはようございます~」 ( ΩωΩ) 「おはようございますお」 もはや顔馴染みとなった妙齢の女性と並んでランニング。公園パトロールはこのように実施される。最初は10分程度で息切れしていたのに、今では10分と言わず10時間は走れそうだ。ヒーロー的に。
- 5 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:20:28.56 ID:EqcmRCOjO
- 从*'ー'从 「今日もお早いですね~」
( ΩωΩ) 「ヒーローとして、当然だおw」 从*'ー'从 「あははw でも本当にヒーローですよね~ あなたが来る前までは、変質者いましたもん」 ( ΩωΩ) 「でも、今はいなくて安心だお」 从*'ー'从 「追っ払ってくれましたからね~。 その節は本当に……」 ( ΩωΩ) 「いえいえ、ヒーローとして、」 从*'ー'从 「当然だお、ですね!」 ( ΩωΩ) 「セリフ取るなんて酷いおー!」 从*'ー'从 「すいませんw あ、じゃあ今日もお勤め頑張ってくださいね!」 く从*'◇'从 「敬礼!」 渡辺さんは間抜けな敬礼をして、走り去って行った。すぐに靴紐がほどけて転んでいた。
- 7 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:23:45.43 ID:EqcmRCOjO
- 僕はちゃくちゃくと走っていく。
「よ、ヒーロー。おはよう」「おはよう、お互い寒くて大変ねー」「おはよう、頑張れよ、ヒーロー」 ( ΩωΩ)「おはようございますお!」 僕も有名になったもので、あちこちからあいさつが飛んでくる。もちろん僕も笑顔で(マスクで見えないが気持ちが重要なのだ)応える。 太極拳をするおじさん、ダンスの練習をするおばさん、発声練習をする高校生、トランペットを吹くお姉さん。みんなみんな、朝早くからごくろうさまです。頑張って! ( ΩωΩ)「おっおっお~♪」 植え込みに、空き缶を見つけた。その空き缶を拾い、持参した袋に入れる。 残念ながら、ごみをごみ箱に捨てない人がいる。だから、僕はパトロール中に見つけたごみを拾い集めるのだ。 ごみは分別をした後、公園に設置されたごみ箱へと捨てる。 ( ΩωΩ)「きれいな公園は気持ちが良いお~」 2ヶ月程前の変質者事件(朝なのに貧相な男が貧相な下半身を晒すというもの)を解決に導いて以来、特に事件は起こっていない。 なので最近の僕の仕事は、もっぱらこのごみ拾いだ。 ( ΩωΩ)「平和ってすばらしいお!」 仕事がないというのは、ヒーロー冥利に尽きる。みんな、ごみもちゃんとごみ箱へと捨ててくれれば良いのにな。
- 9 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:27:22.47 ID:EqcmRCOjO
- l从・∀・ノ!リ人っグイグイ「おっきい兄者、もっと早く歩くのじゃ!」
グイグイ( う_ゝ`)「妹者あ、眠いよう……」 ちっちゃな女の子が、お兄さんらしい男の人を引っ張っていた。 女の子は、あたりをきょろきょろと見回して鼻息荒く何かを探しているようだった。 男の人は、頭には寝癖をこしらえ服装も黒いスウェットで、どこから見ても寝起きだった。 グイグイ( う_ゝ`)「日曜日に早起きしてヒーローなんか会いたくないよう……」 l从・∀・ノ!リ人っグイグイ「何を言うのじゃ! 妹者が会いたいのじゃ!」 グイグイ( う_ゝ`)「どうせなら、魔法少女・きらりーんキューたんに会いたいよう……」 l从・∀・ノ!リ人っグイグイ「ぐちぐちうるさいのじゃ!」 グイグイ( う_ゝ`)「妹者、ほんとにヒーローなんて見たの……?」 l从・∀・ノ!リ人っグイグイ「ほんとなのじゃ! ほら、早くしないといなくなっちゃ、」 ( ΩωΩ) l从・∀・ノ!リ人っ( う_ゝ`) 目があった。
- 11 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:30:23.44 ID:EqcmRCOjO
- l从・∀・*ノ!リ人「ああああああああっっ!」
( ΩωΩ)・゚。・ゴフッ 女の子はものすごい叫び声を上げ、ものすごい勢いで僕へとタックルした。 ……今一瞬、お兄さん引きずってたけど大丈夫かな。 l从・∀・*ノ!リ人「ほっ、ほ、本物なのじゃ! あ、あの! 写真、写真一緒にお願いしますのじゃ! おっきい兄者、寝てないで起きるのじゃ! 写真撮るのじゃ!」 (; _ゝ )ヨロヨロ「い、いちたす……」 ( ΩωΩ)「だ、大丈夫ですかお……?」 (; _ゝ )ヨロヨロ「よんせんとんでろくは……?」 l从・ヮ・*ノ!リ人「よんせんとんでななー!」 パチリ l从・∀・ノ!リ人「今変な顔しちゃったのじゃ! もう一回!」 ( ´_ゝ`)「妹者はいつでもかわいいから大丈夫だよ」 l从・∀・ノ!リ人「みんなそういうのじゃ! もう自分しか信じないのじゃ!」
- 13 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:35:08.38 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「ごめんお、妹者ちゃん。敵に顔がばれると大変だから、写真は一枚だけだお」
l从・∀・*ノ!リ人「!! 妹者のこと、知ってるのじゃ!」 ( ΩωΩ)「ヒーローだから当然だお!」 l从・∀・*ノ!リ人「えへへ~、のじゃ~」 ( ´_ゝ`)「……すいません、妹がご迷惑を」 ( ΩωΩ)「いえいえ、大丈夫ですお」 l从・∀・*ノ!リ人「ヒーローさんが知られちゃってるのじゃ~、えへへ~」 ( ´_ゝ`)「毎朝、いらっしゃるんですか?」 ( ΩωΩ)「いえ、日曜日だけですお」 l从・∀・*ノ!リ人「うふふふふ~」 ( ´_ゝ`)「それで、敵は何なんです?」 ( ΩωΩ)「今は平和だから、このごみだけですお」 ( ´_ゝ`)「平和が一番ですよね」 ( ΩωΩ)「その通りですお! ごみのポイ捨てもなくなって欲しいお」 ( ´_ゝ`)「ごくろうさまです」
- 15 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:37:12.39 ID:EqcmRCOjO
- ( ´_ゝ`)「ほら妹者、そろそろ帰ろう」
l从・∀・*ノ!リ人「わかったのじゃー」 ( ΩωΩ)「さようなら、妹者ちゃん」 l从・∀・*ノ!リ人「さようならなのじゃ!」 ( ´_ゝ`)「それじゃあ、頑張ってください」 l从・∀・*ノ!リ人「悪に負けたらだめなのじゃ!」 妹者ちゃんとお兄さんは、仲良く手をつないで帰って行った。 妹者ちゃん、明るい良い子だなあ。 このまま正義を忘れないで、良い子のままでいてほしいな。
- 16 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:40:18.11 ID:EqcmRCOjO
- 息を吐く。僕の体温が流れ出たかのように、白く濁っていた。
冬の朝は冷たく尖った空気で満たされていた。 広場の芝生の合間からは霜柱が立ち上り、背比べをしている。 ボクの方がボクの方が。オレの方がオレの方が。 小さな子どもが仲睦まじく地面でじゃれているようだ。 寒い、寒いなあ。だけど、人から正義がなくなることが一番寒い。 人から正義がなくなってしまったら、きっと子どもたちは夢を見なくなるだろう。 正義に守られて、子どもたちは夢を見る。それは、僕自身の経験でもあり、きっと誰しもの幼少時代でもある。 夢を見た子どもは、自分の子どもにも夢を見せようとし、正義を守る。 幼児向けの絵本やテレビ番組が勧善懲悪であるのもそのためだろう。 僕自身も、それに影響されたクチだ。 この小さな郊外の町、さらにその中の公園だけでも、僕が正義を守ってやろう。 ( ΩωΩ)「それが、それこそがヒーロー・ホライゾン!」
- 17 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:43:16.33 ID:EqcmRCOjO
- (;'A`)「あ、あのっ!」
( ΩωΩ)「おっ? おはようございますお!」 貧相な少年に声をかけられた。 その少年は、黒いダッフルコートに、市松模様のマフラー、茶色の手袋と重装備だった。 朝の公園にやってくる人は、たいていが運動になることをする。だから防寒装備は邪魔でしかなくなるのだ。 なのにこの少年は重装備だ。珍しい。 (;'A`)「あ、あの、えっと、」 ( ΩωΩ)「どうしたんだお?」 (;'A`)「えっと、そのー、あー」 ( ΩωΩ)「落ち着くお、ゆっくりでいいお」 (;'A`)「……せ、」 ( ΩωΩ)「せ?」 (;'A`)「正義のヒーロー、ですよ、ね……?」 ( ΩωΩ)「まあ、その通りだお」
- 18 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:45:16.86 ID:EqcmRCOjO
- (;'A`)「あ、の……」
( ΩωΩ)「うん」 (;'A`)「オレ、ドクオっていいます」 ( ΩωΩ)「なるほど、ドクオ君。僕はヒーロー・ホライゾンだお!」 (;'A`)「し、知ってます。……で、オレを、」 ( ΩωΩ)「うん」 (;'A`)「で、弟子にしてください!」 ――話を要約すると、こういうことだった。 ドクオ君は昔からヒーローが好きだった。 だけど、勇気も度胸もなく人が苦手だった。 ある日、僕のうわさを聞いた。 「VIP中央公園にヒーローが現れた」と。 半信半疑だったが、パトロールやごみ拾い、変質者退治などのうわさを聞くにうちにだんだん信じるようになった。 とりあえず見てみようと思い、ここまできた。そして、見ているうちに居ても立ってもいられず僕に声をかけた。 ( ΩωΩ)「君も正義のヒーローになりたいってことかお?」 (;'A`)「はいっ! で、弟子にしてください!」
- 19 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:48:06.67 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「お断りするお」
(;'A`)「え」 ( ΩωΩ)「僕には僕の正義があって、君には君の正義がある。当然のことだお 僕が君を弟子にしてしまったら、きっと僕は君の正義を蔑ろにして、僕の正義を通してしまうお。 君の正義は失われてしまうお。そんなのは正義じゃない。 だから、僕は君を弟子にはしないお」 ('A`)「…………」 ( ΩωΩ)「でも、君がどうしたらいいかわからないなら、一人で始めるのが怖いのなら、一緒にやるお。 「一人の市民として」僕を手伝ってほしいお。 それから、君の正義で立ち上がればいいと思うお」 (*'A`)「それって!」 ( ΩωΩ)「どうするかは君が決めるお」 (*'A`)「よ、よろしくお願いします!」
- 21 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:50:40.06 ID:EqcmRCOjO
- 空は青く白く広がり、黄色い太陽が細々と自分を主張している。乾いた風が乾いた砂を巻き上げ、寒さに拍車をかけている。
そんなありきたりと言えばありきたりで、慣れっこになってしまったと言えばそれまでの、ユビキタス冬の美空の下で、僕は正義に勤しむ。 ( ΩωΩ)~♪ ♪~('A`*) 一人だった正義は、仲間を得た。 僕はこの町が好きだ。この公園が好きだ。 正義の息づくこの世界が大好きだ! 僕は、僕みたいな正義のヒーローが必要なくなる日を願っている。 第一話『ヒーロー・ホライゾン』 了 2.僕は高校生 へ続く
- 23 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:52:39.20 ID:EqcmRCOjO
- 2.僕は高校生
今日も朝から寒かった。 澄んだ空気とやらはそのまま冷気として肌に噛みつくし、なんだか色素の薄い冬の空は寒さを助長している。 ( ^ω^)「…………」 どんな泣き言をぶつけても寒さは和らぐ訳ではないし、どんなに嫌がっても高校生は高校へと向かわなければならない。当たり前のことだ。 それはわかっている。折り合いもつけたはずだ。だけど、今はこの寒さが無性に気になる。 ( ^ω^)(うぜえ……) 寒い。寒い。 ξ゚⊿゚)ξ「でねー、ヒートが窓に突っ込んじゃってーw」 ζ(゚ー゚*ζ「えーなにそれやばくない?w」 ξ゚⊿゚)ξ「ガラスも飛び散っちゃってー、ヒートは泣き叫んじゃってー」 ζ(゚ー-*ζ「うあー、いたーい」 その上、道をふさいで歩くバカ女どもがじゃれあっている。
- 25 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:55:29.68 ID:EqcmRCOjO
- ζ(゚ー゚*ζ「あー、ツンちゃんのセーターにてんとう虫ついてるー。かわいいー」
ξ゚⊿゚)ξ「いいでしょー、このピン。見てソッコー買っちゃったw」 ζ(゚ー゚*ζ「いいなー、どこで買ったの?」 ξ゚⊿゚)ξ「あそこ、ほらなんだっけ?」 ζ(゚ー゚*ζ「あそこでしょー? なんて言ったっけー?」 ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、今日の英語の小テストってどこ?」 ζ(゚ー゚*ζ「んっと、リスニングじゃない?」 ξ゚⊿゚)ξ「良かったーw あたし予習してないw」 ζ(゚ー゚*ζ「なんか今日寒くない?」 ξ゚⊿゚)ξ「うんうん、今日超寒い」 あなたがたがこの狭い道を塞いでなければ、きっと僕は寒くないんですけどね。そうに違いない。
- 26 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 20:58:12.87 ID:EqcmRCOjO
- その後もてれてれ歩くバカ女どもに続いて、ようやく僕は駅へとたどり着く。
郊外にある町の駅なので、この駅はあまり大きくない。だが、それなりに人が集まり、そこそこの混み具合を見せる。 ( ^ω^)(……いつもより並ぶ位置が後ろだ) 電車の扉の前に、2列になって並ぶ人たち。 列というものは不思議だ。 ささやかな秩序が守られているようで、なんだか楽しくなってくる。 なのに、 ミセ*゚ー゚)リ ( ^ω^)(あれ、三列目?) 電車がきた。 ミセ*゚ー゚)リ ( ^ω^)(割り込みやがった!) ξ゚⊿゚)ξζ(゚ー゚*ζ ミセ*゚ー゚)リ ( ^ω^)(しかも続いた!?) ささやかな秩序は一人の女によって、脆くも崩れ去った。 ささやかな僕の喜びは、失われた。
- 28 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:01:35.14 ID:EqcmRCOjO
- 順番は秩序だ。秩序は正義だ。
ゆえに順番は正義だ。 正義はいつだって容易く乱される。 ノパ⊿゚)~♪ ヘッドホン音漏れしてるぞ、うるさい。 ワイワイ(・∀ ・)( ^Д^)ガヤガヤ 黙れ、ここは公共の場だ。 カチカチ('、`*川 優先席に座るな。しかも携帯までいじるな。 (‘_L’)ペラッ 新聞を広げて読むな。たため。邪魔だ。 lw´‐ _‐ノv どいつも。 (´・_ゝ・`) こいつも。 ( ω )(マナーを守れええぇぇっ!!)
- 29 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:03:20.90 ID:EqcmRCOjO
- 口に出せたらどれだけいいか。
行動に移せたらどれだけ楽か。 ( ω )(お前らには良心はないのか!? お前らには常識はないのか!) 僕はいつだって、心の中で叫ぶだけだ。 ……口に出す勇気も、行動に移す正義感も、あの日以来、全部全部なくなってしまったから。 ( ^ω^)(あと7日……) 日曜日が遠い。 あそこには正義がある。守るべき正義がある。 ( ^ω^)(早く、ヒーローになりたい……)
- 30 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:06:07.27 ID:EqcmRCOjO
- 電車が止まった。学校最寄りの駅だ。
僕は人の流れに従い、電車を降りる。 ドンッ( ^ω^) その時、背中に感じる衝撃。 衝撃に抗えず、僕は前に倒れる。 ( ω )「痛っ」 バランスを崩した僕の目の前、人がさっと空間を作った。 手にスクールバックを持っていて、さらに捕まるものも何もなく、僕は倒れた。 ( ω )「ッッ!!」 僕の上を通過する足。 ( ´ー`) 何食わぬ顔で去る足。 ( ω )(あと、7日の辛抱だ……)
- 31 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:09:02.27 ID:EqcmRCOjO
- 学校に着いてからも、悲惨なものだ。
ケラケラξ゚⊿゚)ξ(#;゚;;-゚)ζ(゚ー゚*ζクスクシ 相手が嫌がってるのがわからないのか。冗談じゃ済まないぞ。 ワイワイ(・∀ ・)( ^Д^)ガヤガヤ 授業中だ。邪魔しないでくれ。授業を受けたい人もいるんだ。 从 ゚∀从y-~ ここは学校だ。お前は未成年だ。たばこを吸うな。 ( ω )「…………」 どこを見ても、非正義だらけだ。 どこにも正義はない。 ……何もできない僕にも、正義はない。 未来を担う若者がこれでどうする。
- 32 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:12:13.70 ID:EqcmRCOjO
- もう、何も見たくない。
僕は目蓋を閉じた。 正義のない人間なんて。 正義のない世界なんて。 みんなみんな、全部全部。 ( ω )(――大っ嫌いだ!) なくなってしまえ。 第二話『憤怒』 了 3.僕は社会人 へ続く
- 33 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:15:12.00 ID:EqcmRCOjO
- 3.僕は社会人
ジリリリリリ。 一回。 ピリリリピリリリピリリリ。 二回。 lalalalalalalala 三回。 …………。 ( ´ωと)「起きねば……」 目覚まし時計のジェットストリームアタックをくらい、僕は目覚める。
- 34 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:18:12.09 ID:EqcmRCOjO
- 僕は朝が苦手だ。ついでにコーヒーも嫌いだ。
( ^ω^)「牛乳うめー」 コップ一杯の牛乳を飲み干し、朝ごはん(どんぶり2杯)を平らげ、身支度をととのえる。 ( ^ω^)「時刻は朝6時52分……」 ボーダーラインの電車は7時4分発車。 自宅から駅まで、およそ1キロメートル。 ( ^ω^)「出発!」 愛車ブーン丸(ママチャリ)を漕ぎ出した。
- 36 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:21:07.55 ID:EqcmRCOjO
- ( ゚ω゚)「ふぉぉぉおおお!!」
全力疾走。 川沿いの遊歩道の景色があっという間に流れていく。 ( ゚ω゚)「とぁぁぁあああ!!」 歩く人。走る人。談笑する子ども。自転車。 みんなみんな追い越して行く。 浅い川。枯れた雑草。茶色い樹。石碑。 みんなみんな追い越して行く。 前方25メートルに道を塞ぐ学生発見。 右手親指に力を米、警報器作動。ちりんちりん。 学生が振り返りわずかな隙間を形成。 機体をねじ込むっ! ( ゚ω゚)「ちりんちりんちりぃぃぃん!!」 突入成功! そのまま駅の駐輪場に向かう。 タイムリミットまであと1分強、急げっ!
- 37 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:24:10.72 ID:EqcmRCOjO
- 改札をダッシュで通過!
持っててよかったウォーターメロン。 階段を全力で下る。 ( ゚ω゚)「――――ッ! ――――ッ!」 目的の電車を視認。走れ! 走れ! ドアが閉まります。 待ってください。 黄色い線の内側に。 外に出ます。 お下がりください。 ( ゚ω゚)「セェェェェエエフッ!」 ぷしゅー。 ミッションコンプリートッ!
- 38 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:27:12.36 ID:EqcmRCOjO
- (;^ω^)「おっおー」
今日も電車に間に合って一安心。 僕は鞄からヘッドホンを取りだし、装着した。 ( ^ω^)~♪ 軽やかなイントロが流れ始める。 一発屋だってみんな言うけど、そんなことないよ! この人たち大好きだよ! 今度は鞄から新聞を取りだし、読み始める。 器用にたたみながら読むのが一人前の社会人にとっては必須スキルみたいなものだが、まだまだ半人前の新社会人の僕には厳しいものがある。 ( ^ω^)(お、この写真すごい顔してる) 新聞をざっと眺めたら、お腹が空いてきた。 やっぱ運動した分は食べるに限る。 大丈夫! 僕ぽっちゃり系だし! 丸い方が人気出るし! お弁当(朝用)のカラアゲ・イン・オニギリにかぶりつく。 ( ^ω^)クチャクチャ(米うめー) 肉うめー。
- 40 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:30:31.27 ID:EqcmRCOjO
- そうこうしている間に電車が目的地に到着した。
( ^ω^)(おっおー) それなりな繁華街の駅なので、それなりに人が降りる。 人の波に乗っている時、僕は何かにぶつかった。 ( ^ω^)(ん?) 高校生らしい少年が転んでいた。 あれ、僕のせい? (;^ω^)「君! ごめ、」 人の波は、僕の逆走を許さなかった。 少年はその場に残され、僕は先に進む。 ( ^ω^)「ん、ね…………」 少年は人の波にかき消されていった。 ( ^ω^)(…………まあいいか、やっちゃったことは仕方ないし)
- 41 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:33:17.54 ID:EqcmRCOjO
- 今日も朝から概ね良好。
あれは事故だ。ごめーんね? ここ最近の気圧配置は西高東低。 絶好の冬日和。冬晴れだ。 さあて、今日も1日頑張るぞーっ! 第三話『なりたくなかった大人』 了 4.僕は小学生 へ続く
- 42 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:36:06.46 ID:EqcmRCOjO
- 4.僕は小学生
( ^ω^)「いってきまーす!」 はい、いってらっしゃい、と後ろでかーちゃんの声がした。 家を一歩出ると、向かいの家の1年生を6年生が迎えにきていた。 1年生は緊張していて、名残惜しいのか、時々家を振り返って歩き出した。 僕も去年まであんなだったなー、と思うと少し背が高くなった気分だ。 ( ^ω^)「おっおっお~♪」 もう4月だというのに、まだ少し肌寒い。 けっこう見栄えのしてきた桜並木を通るのにも、薄い上着が欲しくなる。 ( ^ω^)(もう一しゅうかん早くさいたら、入学式にまにあったのに) 桜って、なんだかいつも空気が読めない気がする。 入学式には間に合わないし、お花見に行くともう葉桜だったりする。 桜の花びらを踏んづけて歩いていると、ジョルジュを見つけた。
- 45 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:39:38.27 ID:EqcmRCOjO
- ( ^ω^)ノシ「おーい、ジョルジュくーん!」
_ ( ゚∀゚)「あ、えっと、……ブーンだ!」 ( ^ω^)「ブーンだよー。おはよう! _ ( ゚∀゚)「おはよう!」 ジョルジュは眉毛の凛々しい、(憎らしいことに)僕よりも背が高い男の子だ。 それから転入生で、しかもハーフらしい。 お父さんがナントカ人で、お母さんが日本人だそうだ。 ま、とりあえず日本語が通じるので、大した問題ではないのだが。 ( ^ω^)「おっお~♪ ……あ!」 _ ( ゚∀゚)「そうそう、じゃーん」 ( ^ω^)「レッドのエンブレム!」 _ ( ゚∀゚)「いいだろー、きのうあたったんだー」 僕らの間では『VIPPERS.20』というヒーローが流行っていて、そのVIPPERと呼ばれるヒーローのエンブレムのガチャガチャも流行っているのだ。 みんなが狙うのはレッドだが、まだ僕らでは持っている人はいなかった。スーパーレアだな、ととーちゃんは言っていた。 僕とジョルジュを仲良くさせたのも、このヒーローとガチャガチャだ。
- 48 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:42:35.83 ID:EqcmRCOjO
- ( ^ω^)「いいなーいいなー」
_ ( ゚∀゚)「おれが一番だな!」 _,、_ ( ^ω^)「くやしいです」 _ ( ゚∀゚)「ざまーみろー」 とかなんとか言ってる間に学校に着き、僕たちは教室に向かった。 僕たちの2年3組は2階にある。 階段を上るというだけで、やっぱり大人になった気がする。 _ ( ゚∀゚)「あ、」 *(‘‘)*「あー!」 教室に入って、ジョルジュが僕の後ろに隠れた。 僕よりも大きいくせに、僕に隠れるなんて少しおかしい。 けれど、今声をあげた沢近さんを見て、僕はだいたいのことを理解した。
- 50 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:45:24.84 ID:EqcmRCOjO
- *(‘‘)*「まゆげだ! まゆげがきた!」
_ ( ∀ ) *(‘‘)*「まーゆげっ! まーゆげっ!」 _ (( ∀ )) *(‘‘)*「ねえねえ、なんでそんなにまゆげこいの? ねえねえ」 ジョルジュは僕の後ろでうつ向いていた。 目をかっと見開き、下唇を噛み締めて。 一生懸命、涙をこぼさないようにしていた。 沢近さんは意地悪く笑っている。 周りのみんなは、一緒に笑っているか、全然違うおしゃべりをしているか、どっちかだ。 *(‘‘)*「へんなまゆげーっ」 _ (( ∀ )) *(‘‘)*「ねえ、まゆげ。なんで教室入んないの? 邪魔だよ、まゆげ」
- 52 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:48:06.20 ID:EqcmRCOjO
- *(‘‘)*「ねえねえ、なんでむしするの? 人のことむししちゃいけな、」
( ^ω^)「やめなよ!」 *(‘‘)*「なあにー、ブーン?」 ( ^ω^)「ジョルジュ、いやがってるじゃん! さわちかさんだって、へんなみつあみって言われたらいやでしょ! ちびだって言われたらいやでしょ! ぼくだってにやにやしてるって言われたらいやだもん! 人が嫌がってることをしちゃだめなんだよ! そういう人はさいていだって、かーちゃんもすず木先生も言ってたもん!」 *(‘‘)*「…………」 ( ^ω^)「あやまんなよ! ジョルジュにあやまんなよ!」 *(‘;)*「うっ、」 ( ^ω^)「あやまれよ!」 *(;;)*「うわああああん」 ( ;ω;)「あやばれよお!」 *(;;)*「ああああああん」 ( ;ω;)「わああああああん」
- 55 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:53:09.60 ID:EqcmRCOjO
- その後、僕と沢近さんとジョルジュは、鈴木先生に呼び出された。
それから、僕も沢近さんも鈴木先生に怒られた。僕は間違ってなかったのに。 でも、こういう時は「喧嘩両成敗」なんだって。 僕は沢近さんに謝ったし、沢近さんはジョルジュと僕に謝った。 そして、僕は鈴木先生に褒められた。友達を守ってあげられて良い子だね、って言われた。 僕は、当たり前のことをしただけだったのに、なんで褒められたんだろう? 第四話『蜘蛛の糸』 了 5.僕は中学生 へ続く
- 56 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:56:08.87 ID:EqcmRCOjO
- 5.僕は中学生
( ・∀・)ニヤニヤ (´・ω・`)「…………」 ( ・∀・)ノ~゚ ~゚(´・ω・`)「…………」 ( ・∀・)ケタケタ ( ^ω^)「…………」 まただ。 またモララーとその取り巻きがショボンをいじめている。 モララーは嫌なやつだった。 猫被りで成績は良いから、先生受けは良い。カリスマ性もある。2年連続で学級代表委員の委員長もやっている。 だけど性格が最低だ。常に人を見下し、食い物にしている。 ショボンの上履きを池に投げたり、体育着をごみ捨て場に捨てるのも、あいつとその取り巻きに違いない。 なのに、あいつはいじめに心を痛めている優等生の振りをするのだ。 あいつは、許しておけない。
- 58 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:58:02.20 ID:EqcmRCOjO
- ( ^ω^)「……もう、やめなよ」
( ・∀・)「何が?」 ( ^ω^)「見てられない」 ( ・∀・)「ふうん。じゃあやめようか」 ( ^ω^)「うん」 ( ・∀・)「うん」
- 60 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 21:59:50.86 ID:EqcmRCOjO
- 次の日。僕の席はなかった。
席があるはずだった場所には、花束が供えられていた。 座席表から僕の名前が切り取られていた。 ロッカーの中の教科書と体育着は生ゴミと相席していた。 教科書の一部は池で泳がされていた。 僕に覚えのない悪行がコピーされ、クラス全員に配られていた。 僕の顔とあられもない姿の人の写真が合成されて張り出されていた。 僕の携帯メールアドレスで出会い系サイトに登録された。 自宅の電話番号が晒された。 誰も僕を直視しなかった。 みんな僕を避けて歩いた。
- 62 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:02:05.61 ID:EqcmRCOjO
- (´・ω・`)「ねえ、内藤。ちょっと来て」
ショボンに声をかけられ、僕はショボンと滅多に人が訪れない北校舎3階のトイレに行った。 (#´゚ω゚`)「うらぁ!」 そこで、顔を殴られた。 僕は倒れた。 (#´゚ω゚`)「あんなこと言って正義のヒーローのつもりか!?」 腹を蹴られた。 (#´゚ω゚`)「調子こいてんじゃねーよ!」 顔を蹴られた。 (#´゚ω゚`)「うぜーんだよお前!」 踏みつけられた。 (#´゚ω゚`)「良い子ぶってんじゃねーよ!」 頭を踏まれた。
- 64 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:04:41.28 ID:EqcmRCOjO
- (;#´゚ω゚`)「散々見てみぬ振りしたくせに!」
何度も蹴られた。 (;#´゚ω゚`)「今更になって助けたつもりか!?」 何度も踏まれた。 (;#´゚ω;`)「おとなしくしてりゃ良いんだよ!!」 (#;;(#)´ω(#)「………………」 (#´゚ω゚`)「はあ、ハァ、……」 (´゚ω゚`)「…………」 (´・ω;`)「こ、これに懲りたら、もう余計なことはすんなよ……」 ショボンはかえっていった。 僕に暴力をふるったのは、ショボンだった。 (#;;(#);ω(#)
- 65 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:06:07.90 ID:EqcmRCOjO
- 次の日から、僕は学校に行かなかった。
1ヶ月後に、僕たち家族は引っ越しをした。 第五話『切れた糸』 了 6.僕は胎児 へ続く
- 66 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:09:20.25 ID:EqcmRCOjO
- 6.僕は胎児
とくん、とくん。 心臓の音が聞こえる。 ざあ、ざあ、ざあ。 血の流れる音が聞こえる。 すり、すり。 パパがママのお腹をさする音が聞こえる。 ぶうん。 車が走る音が聞こえる。 ざわざわ、ざわざわ。 風で木が揺れる音が聞こえる。 それでね―― ママの話す声が聞こえる。
- 67 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:12:59.13 ID:EqcmRCOjO
- (*゚ー゚)「この子がね、私のお腹を蹴っ飛ばすの」
(,,^Д^)「はは、元気で良いじゃねーか」 (*゚ー゚)「元気過ぎて困っちゃう」 (,,゚Д゚)「ま、元気が一番だ」 (*゚ー゚)「でも、人の気持ちがわかる繊細な子にもなってほしいな」 (,,゚Д゚)「他人も自分もひっくるめて大切にできる子に育ってほしいなあ」 (*゚ー゚)「それってきっと、正義ってことだよね」 (,,゚Д゚)「なんだそりゃ」 (*゚ー゚)「自分も他人も蔑ろにしない理念は、愛をも越えた正義なんじゃないかなって思って」 (,,゚Д゚)「しぃが言うなら、そうなんだろうな」
- 70 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:16:12.86 ID:EqcmRCOjO
- (*゚ー゚)「正義を忘れない子になってほしいな」
(,,゚Д゚)「そうだな、正義を忘れない子に育ってほしいな」 (*゚ー゚)「ふふ、さっきから私たち願望ばっかり。この子を育てるのは、私たちなのにね」 (,,゚Д゚)「あーあ、親になるって大変だなあ」 (*゚ー゚)「そうよ、頑張ってね、お父さん」 (,,゚Д゚)「しぃこそ、これから大変だぞー」 (*゚ー゚)「あたしのことはお母さんって呼んでくれないの?」 (,,゚Д゚)「……子供が生まれたら、名前じゃあ呼べないだろ」 (*^ー^)「あたしも、ギコ君のこと大好きだよ」 (,,*゚Д゚)「こ、この子の名前、さ」 (*゚ー゚)「うん?」
- 72 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:18:40.81 ID:EqcmRCOjO
-
「――、ってのはどうだ?」 「――、――。うん、良い、すっごく良い!」 「よろしくな、――」 「よろしくね、――」 第六話『expected』 了 幕間 へ続く
- 73 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:21:22.67 ID:EqcmRCOjO
- 幕間
いつの間にか眠っていたようだ。 僕は頭を上げる。 なんだか、たくさん夢を見た気がする。 未来の夢、過去の夢、転機の夢、知るはずもない夢。 人間は、みんな汚い。純粋な願いを背負っているというのに、汚い。正義がない。 自分のことしか考えない。他人ことなど考えない。 人は生まれた時には正義を持っているんだ。 幼い子どもは正義を知っている。 なのに、大人になるにつれ喪ってしまう。 正義は、正義は。
- 75 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:24:28.89 ID:EqcmRCOjO
-
正義はどこへ消えた?
- 76 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:27:29.14 ID:EqcmRCOjO
- ( ^ω^)
僕は……。 ( ^ω( ΩωΩ) 僕は。 ( ( ΩωΩ) 僕は! (( ΩωΩ) 僕は!! ( ΩωΩ)「――僕は、正義」 僕は、正義の人。ヒーロー・ホライゾン。 幕間 了 7.僕は正義の人 へ続く
- 77 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:30:17.34 ID:EqcmRCOjO
- 7.僕は正義の人
( ΩωΩ)「今日もパトロールに行くお!」 天気の良い朝、日差しが気持ち良い。 ただ、冬だから仕方ないが、寒いのはいただけないな。 冬は寒い。だからこそ、人は自身の心を強く明るく照らさなくてはならない。 心を照らすもの。それすなわち正義ッ! 正義に仕える者として、人の心の正義を守らなくてはっ! ( ΩωΩ)~♪ さあて、パトロールの準備をしよう。
- 79 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:33:12.76 ID:EqcmRCOjO
- 朝、人が集まる場所と言ったら、それはもちろん駅だろう。
勤めると謹むは似ている。勤めることは謹むことなんだ。 謹みの心は人と人を円滑に繋ぐ、正義だ! ξ゚⊿゚)ξζ(゚ー゚*ζ 女子高生が二人、道をふさいでいた。 道をふさぐのはいただけない。 道は、土地と土地、人と人を繋ぐものだ。 道をふさぐというのは、人と人を引き離すことと同意義だ。 つまり、正義じゃない! 悪! ( ΩωΩ)「とあっ」 女子高生Aにドロップキック。 ( ΩωΩ)「せいっ」 女子高生Bにローリングソバット。 悪は倒れた。ジャスティス(笑)
- 81 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:36:36.41 ID:EqcmRCOjO
- 駅に到着する。
人がたくさんいる。今ここで悪の組織が行動を起こそうものなら、甚大な被害は必至だ。 電車がきたその時。 ミセ*゚ー゚)リ 見つけた。 女が列に割り込もうとしている。 あいつは悪だ。被害を未然に防がなければ! 体当たりで車体に押し付ける。 少しぎょっとした顔で何人か僕の方を見たが、そのまま電車に乗っていった。 そう、それで良い。悪には関わらない方が良い。 ( ΩωΩ)「あ」 僕は閃いてしまった。 電車に乗ろうとした悪がいるということは、電車は悪に狙われている? こうしちゃいられない! 僕も電車に乗り込んだ。
- 83 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:40:35.08 ID:EqcmRCOjO
- 電車の中を見て、僕は愕然とした。
車内には、たくさん人がいる。 その中に多くの悪が潜んでいたのだ。 いや、潜んでいない。堂々とそこに立つあるいは座っていた。 ノパ⊿゚)~♪ 音漏れするような音量で音楽を聴く者。 ワイワイ(・∀ ・)( ^Д^)ガヤガヤ 傍若無人に朝にはふさわしくない話題で騒ぐ者。 カチカチ('、`*川 優先席に座り、あろうことか携帯を操作する者。 (‘_L’)ペラッ 狭い車内で人に当たりながらも新聞を読む者。 lw´‐ _‐ノv(´・_ゝ・`) 他にも、ありとあらゆる悪が存在していた。
- 84 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:42:32.92 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)(どうするんだお、ヒーロー)
答えは決まっている。 悪は排除だ! 正義を守れ! そのための力だ! ( ΩωΩ)「おのれ、悪に堕ちし駄人どもめ! 貴様らにこの星の、人間の正義を奪わせはしないお! 貴様らの相手は、正義の人ヒーロー・ホライゾンがうけてたつお! 出てくるお! ヒーローズウェポン・ウッドソード!」 腰に下げていたウッドソードを握る。 そして、 ノパ⊿゚)「ぐえ」 斬る! 「うが」(・∀ ・)( ^Д^)「ぐお」 斬る!! 「ぎゃ」('、`*川「ぬわ」(‘_L’)lw´‐ _‐ノv「いやん」(´・_ゝ・`)「わあ」 斬る!!!! 悪は断末魔の悲鳴と汚ならしい悪の血をぶちまけ、すべて消えた。正義の勝利だ! ( ΩωΩ)「みんな! また正義が必要になったら正義の人ヒーロー・ホライゾンを呼ぶんだお!」 僕は電車の窓を開け、颯爽と飛び降りた。
- 86 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:45:27.11 ID:EqcmRCOjO
- 次はどこへ向かおう。
悪が電車に乗っていたとすれば、やはり向かうのは職場か学校だろうか。 ( ΩωΩ)「ここからは……学校が近そうだお」 僕は学校に向かって走り出した。 冬の空気がヒーロースーツ越しに僕の肌をえぐる。 けれど、僕は何ともない。寒いのはわかるが、震えはしない。 僕の身体で、正義を愛し悪を憎む心が熱く燃え上がっているのだ。 ヒーローでなかった僕は走るのが苦手だった。 だが、今はきっと10時間走っても大丈夫だ。 僕の身体に、正義を原動力とし悪を滅するエネルギーが沸き上がっているのだ。 こうして走っている間にも、悪はそこら中に転がっていた。 かつあげしている若者、蟻の巣に水を流し入れる子ども、若い女とホテルに入る中年男性、やたらめったら文句を言い無料化を要求するおばさん。 万引きする少年、玄関先に居座るセールス、振り込め詐欺グループ、鴨に矢を刺す青年。 ワニガメを捨てる男性、駐輪場の自転車のかごにごみを捨てる女性、バイク三人乗りの中学生、信号を無視する爺さん。 不法投棄する男、順番を無視する婆さん、たばこを道に捨てるおっさん、花壇を踏みつける小学生。 ( ΩωΩ)「なんでだお」 人は正義を知っているはずなのに、なぜいとも簡単に忘れてしまうのか。 人は悪を悪だと知っているはずなのに、悪に走るのか。 なんでだ。なんでだ。 ( ΩωΩ)「悪め、覚悟するお! お前たちは全員、この正義の人ヒーロー・ホライゾンが消してやるお!」
- 87 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:48:04.84 ID:EqcmRCOjO
- 学校に着いた。ここにも悪が根付いていた。
子どもたちは未来だ。未来に伸びる芽だ。 だが、その芽が腐っていたら、その芽が病んでいたら、成長は望めない。 ( ΩωΩ)「未成年がたばこを吸うなお!」 从 ゚∀从「げえ」 ( ΩωΩ)「授業中は黙れお!」 ξ゚⊿(#)ξ「「うへ」」ζ(#)ー゚*ζ ( ΩωΩ)「悪に騙されるなお!」 _ ( ゚∀゚)「あひ」*(‘‘)*「めぎょ」(´・ω・`)「ぐは」( ・∀・)「うあ」 なぜこんなに悪は強い。 なぜこんなに正義は弱い。 なぜこんなに悪は多い。 なぜこんなに正義は少ない。 なぜこんなに悪は容易い。 なぜこんなに正義は辛い。 なぜこんなに。 なぜこんなに。 なぜ?
- 91 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:51:16.94 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「ああああああああうるさいうるさい! 黙れ黙れ黙れお! 僕は正義のヒーローだお!
僕は正義の代行者だお! 僕は正義を守るんだお! だから悪は滅ぼすんだお! 悪は病気だお! 空気感染する毒性の強い病気だお! 1人が30人になるお!30人が900人になるお! 悪は皆殺しにしないとだめなんだお! まとめて滅ぼさないとだめなんだお! だから皆殺すお! みんなみんな悪は殺さないとだめなんだお! 殺すのが僕の役目なんだお! みんなまとめて十把一絡げ根こそぎまるまる殺さないといけないんだお! 病原菌を焼き尽くすんだお! もう僕は負けないお! あの時みたいに悪になんか屈しないお! 悪に屈した人間なんて気にしないお! 悪は悪だ! 正義は善だ! なんでそれがわからないんだお! 正義は守らなくてはならないんだお! ああああああああもういいもういい! 悪は殺すお! 正義は生かすお! みんなみんな首を洗って待ってるお! 悪を滅ぼしたら正義だけが残るお!正義だけで構成された理想の国を作ってやるお! 選ばれた正義だけで正義的に正義を守って正義を道しるべに正義を抱いて正義と共に正義を信じ正義を崇め生きていくんだお! 僕はこの世で唯一の正義の人、ヒーロー・ホライゾンだお!」 第七話『立ち上がる正義』 了 7.僕は超正義の人 に続く
- 92 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:54:41.54 ID:EqcmRCOjO
- 8.僕は超正義の人
湿気をまとった風が、うららかな日差しと共に、穏やかな春を演出していた。 寒くて長い冬は過ぎ去り、のどかで優しい春が訪れている。 道端の草も青々と繁り、ささやかな花を咲かせている。 動物も植物も、全てを祝福する春があたりを包んでいる。 ( ΩωΩ)「おはようございますお!」 僕が挨拶をすれば、みんなが返してくれる。 コミュニケーションの初歩、挨拶はとても気持ちが良い。 その気持ち良さをみんな知っているのだろう。 街にはごみ1つ落ちていない。理不尽な落書きや余計な汚れもない。 当然だ。この街には正義が根付いているのだから。 正義が充満した、美しい街。 僕はこの街が大好きだ。愛している。正義と同じくらい愛している。 だから、この街を守るんだ。 ( ΩωΩ)「Booooooooooon!!」 僕は飛んだ。 行こう、悪を滅ぼしに!
- 95 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:57:48.07 ID:EqcmRCOjO
- (゚、゚トソン「そうです、私の言うことが聞けないんですか?
そうそう、それで良いのですよ。最初からそうしておけば良かったのに」 (゚ー゚トソン「では、この献金はありがたく頂戴いたしますね」 市民を守り、導くための政治家が何をやっているんだ! 正義の御名のもと、お前を斬る! ジャッジメント ( ΩωΩ)「悪は死ねおっ!」 ( <●><●>)「良いの良いの? 押しちゃうよ? 本当に押しちゃうけど良いの? 核だよ、核。世界中にバラまいちゃうけど良いの? 全部お前の責任になるよ? 核兵器を使った愚か者に仕立てあげちゃうよ? 良いの? 本当に良いの? 押しちゃうよ? はいさーんにいいーち、 あははは、泣かなくても良いじゃん、地面に頭こすりつけて謝れば良いって。ね? それじゃあ僕の言うこときいてくれるよね? ね?」 ( <○><○>)「きいてくれるのは、ワカッテマス」 自分のわがままのために多くの市民を人質にするなんて言語道断! 正義の御名のもと、お前を斬る! ジャッジメント ( ΩωΩ)「悪は殺すおっ!」 (-@∀@)「……退屈だから戦争しよう」 お前の気まぐれ暇潰しに何人を犠牲にするつもりだ! それでも国家の頂点か! 正義の御名のもと、お前を斬る! ジャッジメント ( ΩωΩ)「死ね、悪めっ!」
- 98 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 22:59:15.58 ID:EqcmRCOjO
- 悪を滅ぼした僕は、また飛び上がった。
青が遠くまで広がり、空気自体の厚みを感じさせる。ぽっかりと浮かぶ雲は、常に形を変え二度と同じものは存在しない。 空は、見晴らしがよく、とても美しい。 まるで、人の心の中の正義みたいだ。 僕がこの美しさを守っているんだ。いや、僕はこの美しさを守らなければならないんだ。 僕は、電波塔の頂点に立った。 ( ΩωΩ)「みんな! 悪はまた少し姿を消したお!」 おい、あれ見ろ。え、ヒーロー? ヒーロがいらっしゃった! また、悪をやっつけたんだ! あちこちから声が聞こえる。 ( ΩωΩ)「悪はこの国の、この国だけでなく、他の国の頂点まで巣食っているお! もしかしたら、みんなの隣人も悪かもしれないお! だけど、安心するお! 自分の正義を信じていれば、悪に堕ちても帰ってこれるお! 諸悪の根源は僕が必ず倒してみせるお! だから、みんな正義を忘れちゃだめなんだお!」 あたりは、歓声でいっぱいだった。 「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」
- 99 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:02:14.51 ID:EqcmRCOjO
- 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」
「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」 ( ΩωΩ) 「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」「ホライゾン!」 第八話『英雄』 了 9.僕は超!正義の人 へ続く
- 103 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:04:53.88 ID:EqcmRCOjO
- 9.僕は超!正義の人
( ΩωΩ)「…………」 目を開けると、冷たいコンクリートの壁があった。 ただコンクリートが打たれただけの壁は非常に冷酷であり、今の季節、冬の気温で冷やされ、体温を奪っていった。 手の届かないくらい高いところにある小窓には鉄格子がはめられていた。 壁の一面は鉄格子しかなかった。鉄格子の一部が、長方形に囲われており、扉のように開くのだ。 今いる部屋の壁と床はコンクリートがむき出しである。部屋の中には、水の溜まらない水道と簡易トイレしかなく、残酷なまでに殺風景だった。 僕の両腕は、服に固定されていた。いわゆる、拘束服というやつなのだろうか。 ( ΩωΩ)「……ああ」 そういえば、僕は捕まったんだっけ。 ただ、ただ正義を貫いていただけだったのに、悪を滅ぼしただけだったのに。 僕は悪くない。僕は正義だ。
- 104 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:07:04.67 ID:EqcmRCOjO
- ( ´_ゝ`)「お、いるなー」
鉄格子の前に人が現れた。 なんだか荘厳な服を来ている。 暑そうだと思ったけれど、冷えたコンクリートの中だと、あれでも寒いかもしれないと思い直した。 手にはなんだか分厚い本を持っていた。 表紙を見ると、『魔法少女きらりーんキュート』の文字が。何だこいつは。 ( ΩωΩ)「誰だお」 ( ´_ゝ`)「いやね、俺様神父様な訳なんだって! いや別に彼女いないし結婚してないのはできないからじゃないよ? しないだけだよ? 神父的に」 ( ΩωΩ)「……結婚しちゃいけないのは牧師だお」 (;´_ゝ`)「まじでっ? 間違えたっ!」 ( ΩωΩ)「嘘だお」 ( ´_ゝ`)「うそつき! ……まあ、良かったか」 ( ΩωΩ)「なにがだお」 ( ´_ゝ`)「いやあ、こんな嫌なトコに幽閉されてるもんだからさ、心が死んでるかと思った訳さ。 けど、嘘つく元気もユーモアもあるんだろ?」 ( ΩωΩ)「…………」
- 105 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:09:08.91 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「その本は何なんだお」
( #´_ゝ`)「お前キューたんをバカにする気か!」 ( ΩωΩ)「しないお」 ( ´_ゝ`)「なら良し。聖書だよ、俺にとっての」 ( ΩωΩ)「魔法少女が聖書?」 ( #´_ゝ`)「お前キューたんをバカにする気か!」 ( ΩωΩ)「もうそれはいいお」 ( *´_ゝ`)「うへへキューたんかわいいよキューたん」 ( ΩωΩ)「……それで、神父様がなんの用だお」 ( ´_ゝ`)「なんかさ、凶悪犯がいるから救ってやってほしいって頼まれちゃって」 ( ΩωΩ)「凶『悪』犯?」 ( ´_ゝ`)「うん、お前だよ。 だって何人殺したの? たった一本の木刀でさ。 二桁後半? やべくねやべくね、そんな奴に1人であってる俺やべくね」
- 108 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:12:02.45 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「僕は悪くないお」
( ´_ゝ`)「大抵みんなそういうぜ」 ( ΩωΩ)「僕は正義だお。悪を滅ぼしただけだお」 ( ´_ゝ`)「お前のやったことはただの殺人だ」 ( ΩωΩ)「違うお! 悪は人間じゃないお!」 ( ´_ゝ`)「俺にはお前の方が人間じゃなく見えるがな」 ( ΩωΩ)「正義をバカにすんなお! 僕は正義だお! 正義のヒーローだお」 ( ´_ゝ`)「ああ、そうだな。お前は『超』正義だ」 ( ΩωΩ)「そうだお! だから僕は、」 ( ´_ゝ`)「だからお前は正義じゃない」
- 109 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:15:07.31 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「……人をバカにするのもいい加減にするお……!」
( ´_ゝ`)「バカになんかしちゃいないさ」 ( ΩωΩ)「じゃあなんだって言うんだお!」 ( ´_ゝ`)「…………なあ、『超』正義ってのは、正義を越えるって書くんだぜ」 ( ΩωΩ)「そんな話関係な、」 ( ´_ゝ`)「話は最後まで聞け。 お前はな、正義を越えたんだ。」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「正義を越えたら、それは何なんだ? 正義を越えたものは、少なくとも正義ではないだろう。だからお前は正義じゃあないんだ」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「お前は、正義を越えたら、何があると思う?」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「わかんないよな。俺にもわからん」
- 112 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:18:16.16 ID:EqcmRCOjO
- ( ´_ゝ`)「……渡辺って女性を覚えているか?」
( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「あの人、今でも訴えてるぜ。 『ホライゾンくんは悪くない! 何かの間違いだ!』ってな」 ( ΩωΩ)「…………渡、辺」 ( ´_ゝ`)「妹者って女の子を覚えているか?」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「あの子、今でも泣いてるぜ! 『ヒーローがいないのじゃー!』ってな」 ( ΩωΩ)「……妹者、ちゃん」 ( ´_ゝ`)「……ドクオって少年を覚えているか?」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「あいつ、今でも毎週日曜日にごみ拾いしてるんだぜ。 『路上のごみが減りました』って喜んでたぞ」 ( ΩωΩ)「ドクオ……」
- 113 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:21:21.00 ID:EqcmRCOjO
- ( ´_ゝ`)「ドクオに言ってただろ、お前。
『正義の押し売りはしたくない』って。 お前の『超』正義は、正義の押し売りなんじゃないか?」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「悪を定めたのはだれだ? お前だ。 悪だと判断するのはだれだ? お前だ。 悪を裁くのはだれだ? やっぱりお前だ」 ( ΩωΩ)「…………」 ( ´_ゝ`)「なあ、ヒーロー・ホライゾン」 ( ΩωΩ)「……なんだお」 ( ´_ゝ`)「俺は、お前のこと、嫌いじゃなかったぜ」 ( ΩωΩ)「…………」
- 115 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:23:28.84 ID:EqcmRCOjO
- ( ´_ゝ`)「…………そろそろ、俺は帰るわ。悪かったな、説教して」
( ´_ゝ`)「…………じゃあな」 「ナイトウ、マサヨシ――――」
- 116 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:24:29.77 ID:EqcmRCOjO
- ( ΩωΩ)「…………」
カツカツカツ。 「おい、内藤。神父様がきてくださったぞ」 「せいぜい自分の罪でも悔い改めろ」 「内藤くん、でしたね。こんな、刑務所より酷いところに閉じ込められて大変だったでしょう」 「あなたのお話、きかせてくれませんか?」 ( ΩωΩ)「……僕は、」 ( ^ω^)「…………僕は、正義――」 最終話A 了
- 123 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:50:44.38 ID:EqcmRCOjO
- 10.僕は人
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。雀の声がする。 ( ^ω^)「おっお~♪」 なんだか懐かしいような、悲しいようなな夢を見た気もするが、僕は朝ごはんで全てリセットできる。……それは良いことなのか悪いことなのかわからないけど。 サニーサイドアップを平らげ、窓の外を見遣ると、確かに雀がいた。 雀は冬のようなもこもこではなく、少し細身になっている。 春にあわせて生えかわったのだろうか。それとも、少し痩せただけ? ( ^ω^)「どっち?」 知らない、と言われてしまった。
- 124 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/06(土) 23:53:26.11 ID:EqcmRCOjO
- ( ^ω^)「いってきますお」
僕は自転車に跨がり、春の道へ走りだす。 冬の風とは違う丸い風を感じながら、自転車は進む。 たった2、3ヶ月の違いがこうも大きいなんて。 「あ、おはよーございます」「おはようございます!」「おはようっ」 子どもたちを追い抜かすたび、明るい声があがる。 うんうん、みんな元気だ! 背中へ消えていく子どもたちに、もっと元気に返事をしよう。 ( ^ω^)「おはようだおーっ!」
- 128 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:04:22.70 ID:18PJc8GNO
- 目的地に到着。ナビゲートを終了します。
カーナビの真似をしながら、僕は靴を脱ぐ。 从'ー'从「あ、おはようございます~」 僕の上司? 先輩? まあそんな感じの、渡辺さんだ。 ( ^ω^)「おはようございますお!」 从'ー'从「ふふ、今日も頑張りましょうねえ~」 渡辺さんは、間延びした声がすごく頼りなさそうだが、みんなから人気もある。 しかも、時には優しく時には厳しく、みんなのお母さんみたいな人だ。 ( ^ω^)「渡辺さんも、頑張ってくださいお!」 从'ー'从「誰の心配をしてるの~?」 くすり、と笑う渡辺さんを残して、僕は階段を上がる。 後ろで「あれれ~、私の上靴がないよ~?」という声が上がった気がするが、気のせいだろう。
- 129 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:09:52.06 ID:18PJc8GNO
- 荷物を置いた僕が向かうのは、教室だ。
VIP第3小学校2年2組。それが僕の教室。 ( ^ω^)「おはようだお!」 「ないとう先生、おはよう!」「先生おはよー」「おはよう」 子どもたちは無邪気な遊びを中断して、僕に挨拶をしてくれた。 子どもたちの顔は、笑顔で溢れている。 それは、今の喜びであり、未来への希望なのだろう。 子どもたちは無邪気で、残酷だ。 だけど、その残酷さの中でも彼らなりの秩序を、彼らなりの正義を持っている。 その彼らの正義を守るのが、僕の仕事だ。 「先生、中休みで丸ふみしようよ!」「えー、今日はドッヂが良い!」「えー」「えー」 ( ^ω^)「めんどくさいことは後で考えればいいお! 今は先生にもこれ、教えて!」
- 130 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:12:52.14 ID:18PJc8GNO
- 僕が彼らに教えてあげよう。
正義のいかに素晴らしいかを。 僕が彼らを助けてあげよう。 正義と正義がぶつかった時には。 僕が彼らを守ってあげよう。 正義が失われそうになってしまったら。 それが、僕の仕事だ。 僕は、正義のヒーローになれなかったただの人、内藤正義―― 最終話B 了 ( ^ω^)超!正義の人のようです 終
- 134 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:16:25.76 ID:18PJc8GNO
- 以上です。
間いろいろありましたが、支援ありがとうございました。 質問等あれば、お願いします。
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 23:29:04.01 ID:qfoTRw/MO
- 乙ー
電波塔に登って云々は妄想だったのか?
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/07(日) 00:15:01.29 ID:Ufhug9DuO
- 乙!
Aはブーンの妄想なの? それとも現実の出来事?
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/07(日) 00:17:15.20 ID:FtnTRdBqO
- よくわからんんんんん乙
神父って結局何者?
- 137 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:24:41.38 ID:18PJc8GNO
- >>120>>132
えっと、時系列でまとめると、 (6→4→5→)1→2→(→3) ※()内は、夢、妄想等の非現実 ただし、4・5は経験が基 となりまして、その後が分岐します。 →幕間→7→(8→)9 →【紆余曲折】→10 となります。 要するに、電波塔云々は夢・妄想、A・Bはパラレルワールドの関係で、 一言で済む話をなんでこんなにわかりづらく説明してるんだろうってことです。
- 138 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:27:48.09 ID:18PJc8GNO
- >>136
兄者は、特に名乗る程でもない偽物です わざわざブーンと話しにきました セリフのみの人は、本物です 仕事できました
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/07(日) 00:27:51.28 ID:9ZiaNTiLO
- ドクオどうなったの?
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/07(日) 00:30:53.91 ID:18PJc8GNO
- >>139
ドクオはきっと正義を胸にどこかで元気にやっているでしょう
- 142 名前: ◆DlrnbwY1Kc :2009/06/07(日) 00:54:22.48 ID:18PJc8GNO
- ああ、言い忘れた
タイトルの『超!正義の人のようです』は、大垣ヤスシさん作の戯曲『超 正義の人』より拝借していますが、内容は全く関係ありません。
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