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(´・ω・`)紺色の記憶のようです(3) |
- 2 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:43:45.889 ID:XMXuy1Hy0
- 4月。
どれ程この時を待ち望んでいたか。 ついに、ついに僕たちが一番下でなくなるときが来たのだ。 あの理不尽な先輩たちのお叱りとようやくおさらばできる。 それを考えるだけでもう幸せ過ぎる。 (-_-)「いよいよ僕たちも先輩かぁ」 (´・ω・`)「実感ないなぁ」 (-_-)「だよね......あ、そういえばさ」 (´・ω・`)「ん?」 (-_-)「今年も一人、めちゃくちゃ速いやつが入ったらしいよ」 (´・ω・`)「え、マジで?」 (-_-)「うん、俺たちで言うドクオ君とかモララー君並だって」 (´・ω・`)「うへぇ」
- 3 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:45:53.375 ID:XMXuy1Hy0
- 忘れてた。
新しく入ってくるやつにはそういうやつもいるということ。 僕の方が先輩なのにぼろ負けとか情けなすぎる。 (´・ω・`)「そいつも僕たちが注意したりとかすんの?やだわぁ」 (-_-)「なー」 そう考えると先輩になっても気疲れするのは代わりないのかもしれない。 幸せがどんどんと失われていく。 (´・ω・`)「はぁ」 (-_-)「ま、そろそろ行こうぜ。今日、外部のプールでの練習だしストレッチしとこうぜ」 (´・ω・`)「あー、そういえばそうか」 (-_-)「......」 (´・ω・`)「ん?どうした?」
- 5 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:47:48.731 ID:XMXuy1Hy0
- (-_-)「あ、いや......去年もさ、このくらいの時期に外部のプールでの練習あったじゃん?」
(´・ω・`)「?うん」 (-_-)「そのときはさ、俺たちプールの上から見学だったけどさ。今日はプールで泳ぐんだよな」 (´・ω・`)「うん」 (-_-)「......あのときの、向こう側の先輩たちになれたんだな。俺ら」 (´・ω・`)「......」 あのとき、とは多分ヒッキーと初めて話したあのときのことだろう。 僕もその時のことを思い出す。 ガラスの向こう側で力強く泳ぐ先輩たちの姿を。 遠い世界のように感じたあの世界。 今日、僕はそこで泳ぐんだ。 僕も、あんな風になれたのだろうか。
- 6 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:50:04.666 ID:XMXuy1Hy0
- 一月経って5月に入った。
今年もゴールデンウィークを迎える。 世間では休みだと浮かれる人が多いなか、僕たち水泳部のテンションは最低にまで落ち込んでいた。 当たり前だ。 この休みが開けてしまうとあの極寒のプール開きなのだ。 ゴールデンウィークはまるで、死のカウントダウンのように思える。 そして今日はゴールデンウィーク最終日。 もう気分は最悪だ。 (´・ω・`)「......失礼します」 ( ´∀`)「ん。お、来たね」 そしてそんななか、今日僕は監督から呼び出しをされていた。 何かしでかしてしまったかと内心びくつきながら部屋に入る。
- 8 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:51:49.974 ID:XMXuy1Hy0
- 恐る恐る監督の顔をうかがうとそこにはいつものような、にこやかな監督の顔が見えた。
よかった、説教ではないようだ。 ほんの少し、ホッとする。 ( ´∀`)「いやごめんね。いきなり呼び出して」 (´・ω・`)「あ、いえ」 ( ´∀`)「うん、それでね。話ってのはさ、君のスタイル1※についてなんだけど」 (´・ω・`)「はぁ」 ( ´∀`)「君、全種目泳げるんだよね」 (´・ω・`)「え?ま、まぁ、はい。泳げ、ます」 ( ´∀`)「ん、ならさ、個人メドレー※、やってみない?」 ※スタイル1 その選手のメインで泳ぐ種目のこと。 メインとなる種目の泳種、距離によって効果的な練習方法が異なるためこれを決めるのは結構重要 ※個人メドレー バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールの順に4種目を泳ぐ種目
- 9 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:53:56.965 ID:XMXuy1Hy0
- (´・ω・`)「個人メドレー、ですか?」
( ´∀`)「うん。ほら、個人メドレーがスタイル1だったギコ君が卒業しちゃってさ、個人メドレーがスタイル1の選手がいないのよ」 (´・ω・`)「はぁ」 ( ´∀`)「それで、君なら全種目泳げるし問題ないかなって思うんだけど。どう?やる?」 (´・ω・`)「......えーと」 正直、個人メドレーとか大っ嫌いだ。 なぜ好き好んで全種目をいっぺんに泳がなくてはならないのか。 そもそも僕は全種目泳げるだけで別に得意なわけではない。 むしろバタフライとか苦手なのだ。 あんな疲れる泳ぎ、やりたくない。 絶対に、やりたくない。
- 10 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:56:05.277 ID:XMXuy1Hy0
- (; ´∀`)「このままだとさ、夏の大会の個人メドレーの正選手枠が埋まらないんだよ。やらない?」
(´・ω・`)「え」 ( ´∀`)「ん?」 (´・ω・`)「正選手枠があいてるんですか?」 ( ´∀`)「うん、個人メドレーって長距離種目だし全種目をある程度泳げなきゃいけないから出れる人少ないからね。人がいないんだよ」 (´・ω・`) ( ´∀`)「まあこれからの練習のことも関わってくるし嫌なら別の人に」 (´・ω・`)「やります」 ( ´∀`)「え?」
- 11 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:57:30.197 ID:XMXuy1Hy0
- (´・ω・`)「個人メドレー、やります」
( ´∀`)「あ、本当?」 (´・ω・`)「はい」 ( ´∀`)「ん、それじゃこれからはそれ用の練習になるから。頑張ってね」 (´・ω・`)「はい!」 だがまあ。 空いている正選手枠を逃すのはなんと言うか勿体無い気もするし。 だから、ちょっとくらい、我慢して頑張ろう。
- 12 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:59:23.766 ID:XMXuy1Hy0
- と、思っていたのだが。
すぐさまそれを後悔することになった。 先程のミーティングの次の日。 プール開きの日のことである。 (;´ ω )(死ぬ) 水泳の練習は大きく分けて二つのグループに分けることができる。 短距離を専門とするグループと、長距離を専門とするグループの二つである。 そのうち僕のスタイル1となった個人メドレーは長距離しかないため必然的に後者のグループに入る。 ではグループによって練習がどうことなるか。 単純である。 短距離を専門とするグループは短距離を、長距離を専門とするグループは長距離を泳ぎまくる。 簡単にいってしまえばただ、それだけ。
- 14 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:01:05.056 ID:XMXuy1Hy0
- それではこれの何が問題になるのか。
それは長距離グループの方が一日の練習で泳ぐ量が多くなること。 それも少しではない。 下手すれば倍近くも泳ぐ。 それも苦手な泳法で、だ。 ではそれを続けるとどうなるかというと。 (;´ ω )「うぉえ!」 勿論、こうなる。 また今年も、トイレにお世話になる日々が始まることを意味していた。
- 15 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:03:11.075 ID:XMXuy1Hy0
- それから2ヶ月。
練習をなんとかこなせるようになってくると気がつけば7月を迎えていた。 今年もまた、都高対抗戦記録会が近づいてきた。 皆、正選手になるために一層練習に打ち込んでいた。 (-_-)「正選手になりてぇなぁ」 (´・ω・`)「ヒッキーは何泳ぐの?」 (-_-)「ん?100mか200mのバタフライ」 (´・ω・`)「バッタか、比較的選手少ない枠だし行けるんじゃない?」 (-_-)「だといいんだけど」
- 16 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:04:09.899 ID:XMXuy1Hy0
- (´・ω・`)「ま、今度の選考会、頑張ってね」
(;-_-)「くっそ、この余裕感むかつくわぁ」 (´・ω・`)「悪いね」 まあ僕には関係のないことだけど。 僕の正選手は確約されているから。 ただひとつ問題があるとすれば。 練習の辛さにもう、個人メドレーが大っ嫌いになっており、泳ぎたくないと言うことくらいか。
- 19 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:05:41.272 ID:XMXuy1Hy0
- 7月下旬。
都高対抗戦記録会に参加する選手を決めるために選考会が行われることになった。 正選手になれる三人を決めるための部員同士の戦いが、始まろうとしていた。 (-_-)「......」 (´・ω・`)「よ」 (-_-)「ん」 (´・ω・`)「どうよ」 (-_-)「いい感じ」 (´・ω・`)「そか、頑張れよ」 (-_-)「うん」 (´・ω・`)「負けんなよ」 (-_-)「......うん」
- 20 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:07:12.641 ID:XMXuy1Hy0
- そして、これから100mバタフライの選考会が始まろうとしていた。
ヒッキーがプールに向かっていく。 今年の100mバタフライでの出場希望者は5人。 高校から水泳を始めたヒッキーが、正選手になるのは少し厳しいかもしれない。 ヒッキーもそれは分かっていた。 だが、しかしヒッキーはやる気を失っていなかった。 むしろ、燃えていた。 ( ^ω^)「......」 (-_-)「......」 その選考の相手に、ブーンがいたからだ。
- 22 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:08:52.189 ID:XMXuy1Hy0
- ( ´∀`)「えーではこれより、100mバタフライの選考を始めます」
( ´∀`)「選手は、準備してね」 (-_-)「......」 ( ^ω^)「......」 選手たちが、スタート台に着く。 それと同時にプールがシンと静まる。 ピッ! そして短い笛の音が、都心の屋上から響いた。 それに続くように水の跳ねる音が響く。 25mの狭い世界の、小さな戦いが始まった。
- 23 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:11:55.861 ID:XMXuy1Hy0
- バタフライというのは4つの泳法のなかで最も疲れる泳法である。
一度波になれればかなり早い泳ぎではある。 しかし腕にかかる負担などが半端なく大きいため慣れないと後半になるとバテてしまうことが多い。 そしてバテてしまえばもう、波に乗ることは出来ない。 ただ、もがくことしかできなくなってしまう。 それゆえ、一度リズムを崩すと巻き返すのが難しい。 一度崩れてしまえば、あとはおちていくのみ。 (-_-)(......マイペース、マイペースだ) だから無理に飛ばしはしない。 短距離とはいえ100mもあるのだ。 無理に飛ばして後半バテてしまえばもう終わりである。 いかに最後まで保てるか。 それが、経験の少ないヒッキーにとって、勝負の分かれ目である。
- 24 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:13:25.520 ID:XMXuy1Hy0
- (-_-)(......っ!)
一瞬、隣のコースの選手が目に入る。 速い。 自分とジリジリと差がつけられているのが分かる。 でも、ここでペースを狂わせるわけにはいかない。 それは自殺行為だ。 自分の力量は自分が一番よくわかっている。 これ以上、ペースを上げることは無理だと言うことは分かっている。 分かっては、いるが。 (-_-)(ブーン!) その相手が、絶対に負けたくない相手なら別だ。
- 25 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:14:57.374 ID:XMXuy1Hy0
- 死んでも、勝ちたい相手。
ここで勝負しないで、いつ勝負すると言うのだ。 腕を回すペースを上げ、キックを強く打つ。 重い水をかき分け、進んでいく。 (;-_-)(腰いてぇならちょっとは遅くなりやがれや!) だが、差は縮まらない。 離されることはなくなったがそれでも追い付けない。 (;-_-)(もっと、もっとだ!) ならばもっと、スピードを上げるしかない。 (;-_-)(......) だが、上がらない。 もう、これがトップスピード。 無理をしても、ここが限界だった。
- 26 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:16:12.677 ID:XMXuy1Hy0
- (;-_-)(ぐっ......)
今スッと、水を撫でた。 先程までの水をかき分けていた手の感触とは異なるもの。 みるみる、泳ぎのスピードが落ちていくのが分かる。 腕が、限界を迎えた。 (;゚_゚)(く......そっ!) 一度落としてしまったスピードを取り戻せる体力などどこにも残されていない。 あとはもう、落ちるだけ。 だが、ブーンは変わらない。 どんどんと、進んでいく。 離され、そして見えなくなる。 そして終わってみれば、結果は惨敗。 誰がどうみても、圧倒的なまでに差がついていた。
- 27 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:18:12.153 ID:XMXuy1Hy0
- (;゚_゚)「ぜぇ......ぜぇ......」
(´・ω・`)「ヒッキー」 (;゚_゚) (´・ω・`)「その」 (;゚_゚)「......悪い」 (´・ω・`)「あ」 レースが終わり、声をかけるとヒッキーは逃げるようにシャワー室へと向かっていった。 何て声をかければよかったのだろうか。 もしかしたら声をかけるのはそもそも間違いだったかもしれない。
- 28 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:19:37.408 ID:XMXuy1Hy0
- ( ´∀`)「次、100m背泳ぎ」
選考会は何事もなかったかのように続いていく。 ヒッキーが負けたことなど、なかったかのように次のレースが開始されていく。 (´・ω・`)「......くっそ」 分かっていた結果だった。 あいつが速いことなんて、分かりきったことだった。 でも、ヒッキーは必死にやって来ていたんだ。 この一年と少しを、サボらずやりきったのだ。 例え分かっていたとしても。 この苛立ちだけは、抑えられなかった。
- 29 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:21:05.884 ID:XMXuy1Hy0
- 夏休みに入り、大会が近づいてくると我が高校では一年生に応援の練習をさせる。
行うのは午前練習と午後練習の間の昼休憩。 練習に付いてこれるかどうかというラインの一年が多いのに休憩を潰して行われるそれはまさに地獄である。 勿論、去年僕たちもこれをやった。 あれは地獄としか言いようがない。 夏の日差しが照りつける屋上で、声を枯れるまでだし、そして先輩たちにダメ出しを食らう。 理不尽なことこの上ない。 さらにただでさえ意味のないと思っていることを強制されるのだ。 やる気など起きるはずもない。
- 31 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:22:45.602 ID:XMXuy1Hy0
- しかし、それも去年の話。
今年は逆の立場にいるのだ。 「「「いけいけ!おせおせ!」」」 (´・ω・`)「頑張ってんなぁ」 直射日光を浴び、汗を流し、必死に叫んでいる。 そんな一年の様子を眺めながら昼食を食べる。 あんなに頑張っているやつらがいるなかこうのんびりと食べているのなんか申し訳ない気分になるのはなぜなんだろうか。 応援してるのに気が滅入るとか本末転倒過ぎる。 やっぱり応援って、無駄だよなぁと思いつつ箸を進めていく。
- 32 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:24:16.805 ID:XMXuy1Hy0
- (-_-)「よっ」
(´・ω・`)「ん」 (-_-)「隣いい?」 (´・ω・`)「もち。お前が来なきゃボッチだもん」 (-_-)「おいおい」 (´・ω・`)「にしても遅かったね。何かしてたの?」 (-_-)「ん、えー、まぁ。ほら、俺、その、正選手のさ、その、選考落ちたじゃん?」 (´・ω・`)「......うん」 (-_-)「それでさ、監督にまだ空いてる正選手枠無いか聞いててさ」 (´・ω・`)「そっか」
- 33 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:26:02.323 ID:XMXuy1Hy0
- (-_-)「ま、ダメだったけどさ」
(´・ω・`)「......」 (-_-)「......」 (-_-)「ま、来年もまだあるし。これからこれから!」 (´・ω・`)「......」 (-_-)「あー腹減った!さっ、飯食おうぜ飯!」 (´・ω・`)「......うん」 やっぱり、何て声をかけていいのか分からない。 一番辛かったのはヒッキーのはずだ。 そしてその辛さは僕も知ってる。 でも、だからこそ何て声をかけていいか分からない。 プールにはまだ、誰に向けられるわけでもない、一年の応援する声が聞こえる。 その声は誰も元気付けられず、目の前で落ち込んでる人すら助けられない。 ああ、やっぱり応援なんて無駄じゃないか。
- 34 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:27:58.955 ID:XMXuy1Hy0
- .........
...... ... 朝八時。 大会が始まる一時間前。 また今年も決戦の地にやって来た。 (-_-)「ショボン、調子どう?」 (´・ω・`)「んー、まあまあかな」 (-_-)「そっか。あ、ストレッチとかマッサージ、必要なら手伝うよ」 (´・ω・`)「ん、助かる」 ヒッキーの手を借り、体を動かしていく。 軽く動かして、分かった。 今日は調子がいいようで体が軽い。 だがこれならもしかすると、などとは考えない。 そんなもの、去年で懲りている。 変な期待はしない。 正選手だろうとオープンだろうと。 ただ、泳ぐだけである。
- 35 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:30:03.825 ID:XMXuy1Hy0
- (-_-)「......あれ?」
(´・ω・`)「ん?」 (-_-)「あそこ、ギコ先輩じゃね?」 (´・ω・`)「へ?」 (,,゚Д゚)「ん。お!いたいた!」 (´・ω・`)「あ、先輩」 (,,゚Д゚)「よ、ショボン。久しぶりだな」 (´・ω・`)「っす」
- 36 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:31:19.212 ID:XMXuy1Hy0
- 先輩はこっちを見つけると、すぐにこちらに近づいてきた。
一応の礼儀として軽く頭を下げ、挨拶をする。 先輩は悪い人じゃないのは分かってる。 けどやっぱり、こんな風に上下関係を気にしなきゃいけないのは苦痛だ。 正直、早く帰ってほしい。 (,,゚Д゚)「お前、個人メドレーをスタ1にしたんだって?ガンばれよー」 (´・ω・`)「あ、うっす」 (,,゚Д゚)「とりあえず......」 (´・ω・`)「?」
- 37 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:33:12.158 ID:XMXuy1Hy0
- (,,゚Д゚)「ほれ、肩の力抜いて」
(´・ω・`)「へ?なに......」 (,,゚Д゚)「ほい」 (;´・ω・`)「あいででででで!!?」 いきなり背後に回ったかと思うと、すぐに肩に激痛が走った。 あまりの痛さに思わず声が出てしまう。 (,,゚Д゚)「んー、やっぱ肩が硬いのか。バッタ、あんまり飛ばしすぎるなよ?この肩じゃすぐ疲れちまう」 (;´・ω・`)「いつつ......」 (,,゚Д゚)「どうだ?」 (;´・ω・`)「どうだって......」
- 38 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:34:26.533 ID:XMXuy1Hy0
- (,,゚Д゚)「肩、少しは動かしやすくなったんじゃないか?」
(;´・ω・`)「へ?......あ」 軽く肩を回すと先程より回しやすくなったような気がする。 さらにさっき感じた激痛は嘘のようになくなっていた。 (´・ω・`)「これ......」 (,,゚Д゚)「最近あんまやってねーって聞いたからな。ま、可動域広げるためのストレッチ?みたいなもんだ」 (´・ω・`)「え、あ」 (,,゚Д゚)b「頑張れよ、応援してっからな!点、稼いでこい!」 (´・ω・`)「......す」 やっぱり悪い人じゃない。 むしろ、いい人だ。
- 40 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:36:13.329 ID:XMXuy1Hy0
- まあ分かっている。
分かってはいるのだが。 この真っ直ぐした視線と期待感と先輩という威圧感。 どうにも慣れない。 (;´・ω・`)(はぁ) ひとつ、心の中でため息をつき時計を確認する。 まだ会場まで時間があるようだ。 すると先輩がまだストレッチに付き合ってくれるという。 断るわけにもいかず、先輩とストレッチをすることになった。 なってしまった。 ああ、落ち着かない。 なんというか、精神的に疲れてしまった。
- 42 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:37:39.060 ID:XMXuy1Hy0
- 精神がすり減り、ボロボロになった頃にようやく大会が開始した。
今年も場内は蒸し暑く、とても居心地が悪い。 先程までの精神的疲労も相まってか、体の調子はいいはずなのにクタクタだった。 (;´・ω・`)「はぁ」 (-_-)「お疲れだね」 (´・ω・`)「ん、まぁ」 (-_-)「気持ちは分かんなくはないけどね。どうする?もうサブプールいく?」 (´・ω・`)「んー......いや、もう少ししてからいくよ」 (-_-)「ん、じゃ、先いってるわ」 (´・ω・`)「おー、いてら」
- 43 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:41:40.091 ID:XMXuy1Hy0
- ヒッキーを見送り、手元のプログラムで自分の番を確認する。
今年の200m個人メドレーの参加人数は62人。 去年の1500m自由形とは桁違いの参加人数。 こんなの、勝てるわけがない。 期待しなくて、正解だった。 (´・ω・`)「......ん」 ふとプログラムから目をあげるとブーンがサブプールに向かう姿が見えた。 (´・ω・`)(......) ブーンの姿にふと、去年のことを思い出す。 去年、僕はここであいつに負けた。 ぼろ負けだった。 思い出すだけで、胸の奥から嫌な感情が沸き上がってくるのを感じる。 だが今年は泳ぐ種目が違う。 あいつと僕が戦うことはない。 気にする必要なんてない。 あいつはあいつ、僕は僕なのだ。
- 44 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:43:20.441 ID:XMXuy1Hy0
- 会場にアナウンスが鳴り響く。
そのアナウンスに釣られ、一度プールに目を向ける。 どうやら第一種目が開始するようだ。 うちの高校から選手が出るのか、皆が立ち上がり始め、応援の準備を始める。 ちらりと、ブーンがいた方を見てみる。 だがそこには、もうブーンの姿はなかった。 そして先ほどみたプログラムの内容を思い出し、ひとつため息をつく。 今年もあいつは、変わらないようだ。
- 45 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:44:51.145 ID:XMXuy1Hy0
- プログラムは順調に進んでいき、気がつけば僕の出番がもうそこまで迫ってきていた。
軽くサブプールで体を動かし、体を水にならす。 緊張はしていなかったつもりだったけど、それでも何となく落ち着かない。 少し泳ぐ度に、メインプールに目を向けてしまう。 (-_-)「お、やっぱりショボンか」 (´・ω・`)「あ、ヒッキー」 (-_-)「これから?」 (´・ω・`)「うん、ヒッキーはダウン?」 (-_-)「そ、まぁもう上がるけど」 (´・ω・`)「あ、そなの。お疲れ」 (-_-)「ん、お疲れ。頑張れよ」 (´・ω・`)「おう」
- 46 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:46:10.277 ID:XMXuy1Hy0
- 短い会話を交わし、ヒッキーを見送り、再びメインプールに目を向ける。
するとどうやら個人メドレーの選手の召集が始まったようで人が集まり始めているのが見えた。 レースの順番的にまだ行くには速い、がここにいても落ち着かない。 先ほどからそわそわしすぎているのが自分でも分かる。 少し気持ちを落ち着けなければと思うがそのためのいいアイディアが浮かばない。 (´・ω・`)「ま、なるようになれ、だな」 まあそんなときは投げ出すに限る。 単に自暴自棄になっているだけだが。 それでも幾分かは気持ちが楽になるのだから不思議なものだ。
- 48 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:48:01.466 ID:XMXuy1Hy0
- とりあえず、召集場所へと向かうことにしよう。
そう考え、サブプールから上がり体をミニタオルで拭きながら歩く。 ふと周りをみれば僕と同じ、個人メドレーに出るであろう選手が何人もいた。 (´・ω・`)「......」 人が多い。 去年とは比べ物にならない。 倍以上、参加者がいるのだから当たり前ではあるのだが。 実際に目の当たりにするとさらにその多さを実感させられる。 この中からたった16名。 勝者は16名だけなのだ。 去年のあの1500mのときですら、上位にカスリもしなかった僕に可能性なんてなにもない。
- 49 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:49:41.803 ID:XMXuy1Hy0
- 分かりきった負け試合。
泳いでも、泳がなくても結局は変わらない。 (´・ω・`)「......」 それでも僕は今日、ここで泳ぐ。 正選手として、この大会で。 それは部活に入ってしまい、強制的に泳がされているから。 本音で言えば、個人メドレーなんて泳ぎたくないわけだし。 何度も辞めたいって思っていたし、今だって思うことがある。 でも、僕はここにいる理由はそれだけなんだろうか。 それだけじゃ、何となく納得できない。 それにこの落ち着かない感覚。 心の奥にあるこの感覚。 それがなんなのかはよく、分からないけれど。 不思議と嫌な感じはしなかった。
- 50 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:51:26.255 ID:XMXuy1Hy0
- 今日はおしまい
もっと書いたつもりだったんだけど投下してみたら予想以上に短い 読んでくれた人ありがとうございます 覚えてる人がいたことに涙が出そうだよ
- 4 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 22:46:49.751 ID:Aa/pWNwdd
- ブーンよりドクオモラのが速いんか
- 30 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:21:32.346 ID:hG+JTrUG0
- トンコツ
- 52 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/05/20(金) 23:56:43.936 ID:XMXuy1Hy0
- >>4
ですね ドクオモララーが上位の大会で普通に泳げるレベル ブーンは普通の高校の部活のなかだと速いってレベルくらいのイメージです >>30 塩
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