(´・ω・`)笑ゥ喪黒ショボ造のようです
- 2 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:22:50.07 ID:SNecqzXU0
- 私の名は喪黒ショボ造。人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません
私の取り扱う品物は「心」。人間の心でございます
この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり、そんな皆さんの心のスキマをお埋め致します
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます
さて、今日のお客様は……
( ・∀・)モララー 30歳
- 6 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:31:01.69 ID:SNecqzXU0
- BAR バーボーン・ハウス
( ・∀・)「ついにオレも今日で30歳、かぁ……」
オレはいつのもバーのカウンター席で、バーボンの喉を焼く感覚に身を任せ嫌な現実を忘れようとする
酒を飲むたびに、もう戻れない輝かしいあの頃のオレへと思いをはせる。あの頃、おれは塾の教師をやっていた
子供からも大人からも信頼を得ていた昔のオレは輝いていた
だがその信頼や期待こそがオレを壊したのだ
対人恐怖症
子供に嫌われてはいけない。保護者や同僚に嫌われてはいけない。子供を志望校に合格させなくてはいけない
――そのプレッシャーがオレを壊したのだ
- 7 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:34:21.70 ID:SNecqzXU0
- ( ∀)「はぁ……。」
(´・ω・`)「どうなさったんです?さっきからため息ばかりついて。」
(;・∀・)「はゎゎ!?」
いつのまにか、となりの席にずんぐりとした黒ずくめの男が座っていた。まったく気づかなかった
( ・∀・)「み……み、見慣れない顔…だな。いぃ、いつからいたんらよ」
どもった上に噛んだ。声を出すのは久しぶりだ。
(´・ω・`)「おとなりに座ってもよろしいか、一度お尋ねしたんですが…。見慣れない、ということは常連さんでしたか
いえね、行きつけのバーが今日は改装工事をするらしくて、たまには違う店にでもと。
ところで、ため息ばかりついてらっしゃいますが、お悩みでもあるんですか?」
( ∀ )「た、た、他人に話すことでも、ない。」
(´・ω・`)「他人だから話せることもありますよ。ホッホッホ……。」
( ∀ )「……。」
そして1時間。オレは見知らぬ男に自分の過去を話していることに驚いていた
- 9 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:38:27.95 ID:SNecqzXU0
- (´・ω・`)「あなた、しばらく人と話をしていないでしょう?」
人の過去を聞いていきなり失礼な男だ。…まったくもってその通りだが。
( ・∀・)「なにが言いたい?」
(´・ω・`)「失礼しました。私、こういうものです。」
男の差し出したシンプルな名詞を受け取った
( ・∀・)「喪黒…ショボ造、心のスキマお埋めします……?笑ゥせぇるすまん??」
(´・ω・`)「ええ、ちょうどあなたにぴったりのお話があるのですが」
( ・∀・)「金目当てでオレの話を聞いたのか」
(´・ω・`)「いえいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。」
そう言うなり男、喪黒はおおきなスーツケースを足元に引き寄せた。そしてスーツケースを開いたそこには……
(;・∀・)「ひ、ひぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっぃ!?」
- 12 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:44:11.96 ID:SNecqzXU0
- オレは悲鳴を上げて椅子から転げ落ちそうになってしまった
そこにはぐにゃぐにゃに折りたたまれた少女が押し込められていた
自分の目を疑ったが、脳裏に焼きついたありえない角度で押し込まれた腕や頭は紛れも無く少女のそれだった。
(´・ω・`)「おやおや、驚かせてしまったようですね。大丈夫。人形ですよこれは。持ち運びしやすいように折りたたんでいたんですが、驚かせてしまったようですねぇ。ホーッホッホッホ……」
(;・∀・)「ににに、にんぎょお……!?」
喪黒は手早くぐにゃぐにゃだった『人形』を人の形に組みなおした。まるで魔法でも見ているようだった。……そして、その『人形』はとても美しい女の姿をしていた
(´・ω・`)「ええ。しかもただの人形ではございません。生きて動く人形でございます。」
(;・∀・)「それ、人形って言わないんじゃ…・・・」
(´・ω・`)「いえいえ、これはさみしい心をお持ちの方のための『人形』です。一人暮らしのご老人や親を亡くしたお子様など、お寂しい人の喋り相手となるための人形です。」
( ・∀・)「しゃ、しゃべるのか!?」
(´・ω・`)「えぇ、もちろん。それどころか食べる、歩く、寝る……一通りのことはできますよ。ホッホッホ……」
驚いた。そんな人形があるものか。いや、さっきのスーツケースに入っていた様子を思い出す限り生きた人間であるはずもない。
(´・ω・`)「ですが、これはまだ未完成でして……」
( ・∀・)「未完成?」
- 14 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:48:25.28 ID:SNecqzXU0
- (´・ω・`)「はい、私どもにも作れないものがありまして……。それは知能でございます。ちょうどあなたは先生をしていたとおっしゃる
どうかこの人形に常識や知性というものを教えていただきたいのです
報酬もお支払い致します。軽いアルバイトだと思ってください。ホッホッホッ」
( ・∀・)「オレが…教える?」
(´・ω・`)「ええ。一緒に生活をしながらということになりますが、よろしいですか?」
人と接することに飢えていたオレは、その誘いに乗ってしまった
(´・ω・`)「あぁ、一つご注意が。彼女に肉だけは与えないで下さい」
( ・∀・)「に、肉?なんで」
(´・ω・`)「はい、太ってしまうと商品価値が下がってしまいますので!ホォーホッホッホッ……」
趣味の悪い冗談と気味の悪い高笑いと、そして謎の『人形』を残してショボ造と名乗る男は去っていった
- 16 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:54:17.77 ID:SNecqzXU0
- そして、オレと「人形」の奇妙な生活が始まった
名前は無かったらしく、オレは人形を「デレ」と名づけた。それは昔の教え子の名だった
はじめ、デレは本当になにも知らなかった
ζ(゚ー゚*ζ「これはなに?」
( ・∀・)「僕らの住む家さ。」
ζ(゚ー゚*ζ「どうして臭いの?」
( ;∀;)「ごめんね、男の一人暮らし長くてさ、ごめんね!」
ζ(゚ー゚*ζ「これはなに?」
( ・∀・)「包丁。お肉や野菜を切る道具だよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「これ食べれる?」
(;・∀・)「 食べられないよ!?」
- 17 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 20:59:47.97 ID:SNecqzXU0
- はじめ無知だったルルも一ヶ月も経つ頃にはひとりでなんでもできるようになった
そしていつしかオレはデレに教えることに楽しくなっていた。塾の教師を挫折したことに未練があったからなのかも知れない
今では、デレが生活の中心であり全てだった。
そしてものを食べれると聞いてはいたが、本当に人間が食べるものをエネルギー源にするらしい
理屈はよくわからないが、デレの腹を割って中を調べるわけにもいかないしわかろうとも思わない
デレの知能の成長は目覚しく、ある時からデレはもう一人で外を出歩くようにすらなった
はじめは心配でこっそり様子を見ていたが今ではなんの心配もない
むしろオレはその間にバイトをしてデレの食費を稼いだ
味覚は人並みにあるらしい。デレはステーキをおいしいと言った
ショボ造の注意を忘れ、オレはデレの喜ぶ顔が見たくてひたすらうまい肉を食べさせた
だが不思議と、デレが太るようなことは一切なかったのだ
いつものようにデレの食費を稼ぐためバイトをしていると、あの喪ショボ造という男と偶然再会した
- 19 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:03:13.97 ID:SNecqzXU0
- (´・ω・`)「おや、モララーさん!どうしたんです?こんなところでアルバイトだなんて」
(;・∀・)「え、えぇ、デレの食費を稼いでいるんです。どうしてもうまいものを食わせてやりたくて…。」
(´・ω・`)「デレ?……モララーさん。一応念のため言っておきますが…あなたにお任せしたあれは、あくまで人形です。そしてただの商品です。どうか変な気を起こさないようにお願いしますよ?
これは最後のご注意です。どうか、教師と生徒の一線だけは越えないように。お願いしますよ?ホーッホッホッホ…。」
そう言い残しショボ造は去った。オレは、ショボ造が『人形』と言ったことに底知れぬ怒りを覚えていた
- 22 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:06:37.46 ID:SNecqzXU0
- さらにデレは成長した。質問も多彩になり、オレの困るような質問もでてきた
道路工事のバイトでセメントを運びながら、作業の退屈さから気を逸らすため昨夜のやりとりを思い出してみる
ζ(゚ー゚*ζ「お化粧ってどうやるの?」
(;・∀・)「え、ごめんな、俺やったことないからなぁ。それはわかんないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「なーんだ。センセーにもわかんないことあるんだ。じゃ、ケッコンて何?」
( ・∀・)「結婚?んー、男の人と女の人が一緒に暮らすこと、かな?」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃぁ、私たちって結婚してるの?」
(;・∀・)「そ、それとこれとは違うよ!強いて言うなら住み込みの家庭教師って感じかな?なにか逆だけど」
ζ(゚ー゚*ζ「そう。それじゃ、子供ってどうやって産まれるの?」
子供?はたしてデレは…… この先はなんだか考えたくなかった。思考を変えようと頭を振った
最近デレが質問をしてくる度に、なにか大きな違和感を感じていたことをオレは思い出していた
急に、耐え難い胸騒ぎがした。オレはバイトを早退し家へと走った
- 24 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:10:28.21 ID:SNecqzXU0
- 見てしまった。オレの家で、デレがオレの知らない男と仲良さげに話している
ルルは一人で出歩くうちに彼氏をつくっていた。呆然とするオレと、ルルの目が合った
( ,,^Д^)「ん?おい、なんだお前は?」
ζ(゚ー゚;ζ「あッ……!?先生!?バイトで6時まで帰らないんじゃ……!!?」
デレの驚き慌てふためく様に、オレの頭の奥の何かが切れた
デレがオレにかくしごとをしていた隠れて男とあっていた俺の家で
( ∀ )「殺シテヤル、殺シテヤル、あぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁあぁぁぁぁぁあっぁあぁぁぁぁっっっ!?」
気が付くとオレは、そばにあったカッターナイフで男をめった刺しにしていた。そしてあろうことかオレは、デレを押し倒していた
服を引き裂くと肌の白さが目に飛び込んだ。もう、ダムが決壊するかのように、頭の中から体全体にまで何かがあふれ出していた
約束を破りましたねぇ…?
ドォーーーーーーン!
どこかでそんな声が聞こえた気がした
- 26 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:13:22.54 ID:SNecqzXU0
- デレは妊娠した
わずか3日でデレのお腹はスイカのように丸くなっていた。だが引き換えに、デレはお腹が大きくなるほど痩せていった
頬はこけ目は落ち窪みギョロギョロとし、腕もへし折れそうなほど細い
……きっと妊娠しているせいだ。そうだ、子供さえ産んでしまえばまたルルは笑ってくれる
病院には連れて行けない。ここで産むしかない。医学書、カッター、裁縫道具。かき集めた知識と道具でオレはルルを出産させることにした
子供さえ、子供さえ取りあげればデレはまたしゃべってくれるに違いない!笑ってくれるに違いない!
オレは口利かぬ人形のようになったデレの腹を開き子供を取り出した
――子供ではなかった。 そこには皮だけが残ったデレだったものと、グニャグニャとのたうちまわる触手の生えた何かがいた
……いや、それこそが本当のデレだったのだ。デレは妊娠なんかじゃなかった。ただ中身が腹に集まっていただけだったのだ
( :∀:)「ひぃぃぃいぃぃぃぃぃぃい!!? ひぃぃっぃいぃぃぃぃいっぃ!!?」
オレは最期にデレの振りかざした触手が包丁のように鋭くなるのを見た
(´・ω・`)「人でなしと本当に人でないものじゃぁ、人並みの幸せなんてなれませんよねぇ……
ホーッホッホッホッホッホッホッホ、ホーッホッホッホッホッホッホッホ……」
- 35 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:53:34.60 ID:SNecqzXU0
- 『永遠の発明王』
私の名は喪黒ショボ造。人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません。
私の取り扱う品物は「心」。人間の心でございます。
この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり、そんな皆さんの心のスキマをお埋め致します。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は…
( ´∀`)モナー 56歳
- 36 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:55:23.39 ID:SNecqzXU0
- もう6時間。机の前にずっと座っているがアイデアひとつ浮かばない。だがそんなものは今日に限ったことではない。
私がこの大学に教授としてやってきたのはもう20年以上も前のことだ
20年前の私は世界中の科学者が目を見張るような発明を立て続けに世に打ち出しこの世界へと迎えられた。
だが私の栄光は長くは続かなかった。絞りきった雑巾がカラカラに干乾びるかの如く、私にアイデアは浮かばなくなった
いまでは私は大学の金喰い虫だ
家族も無い私は金の使い道もなく私はいつものようにパチンコ屋へいく
目の前の筐体は玉を吸い込むだけ吸い込んで、少しも吐き出さないまま時間は過ぎていく。
いつものことだ。20年前、私はアイデアと共に運も使い果たしたらしい
手持ちの玉も無くなり帰ろうかもう千円ほど玉を追加しようか考えていると、不意にとなりの男が一箱ほどの玉を私の台へと移してきた
これが私と喪黒との出会いだった
- 37 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 21:57:16.82 ID:SNecqzXU0
- ( ´∀`)「?……えぇと、下さるということですか?どうも、すいませんモナー」
(´・ω・`)「いえいえ、いまいち不慣れなもので、あふれた玉をどうしようか困ってしまいましてねぇ。
ホーッホッホッホッホッ……。」
見ると、男のイスの横には玉のギッシリ詰まった箱が20箱ほども積まれていた。嫌味か。玉をもらってる以上文句は言わないが
そうこう考えていると私にも当りが来た。運も分けてもらったらしい。
ショボ造「ホッホッホッ。……あなた、何かお悩みがありますねぇ?」
( ´∀`)「……なんでわかるんです?」
(´・ω・`)「お顔をみればわかりますよ。どうでしょう?お聞かせ願えませんか?……その当りの代価ということで」
そう言われては断れない。どうせ減るものでもないし、私は自分の栄華と没落を男に語った
(´・ω・`)「それはそれは……。どうでしょう?また昔の栄光を取り戻したいとは思いませんか?」
( ´∀`)「どういうことだね?」
(´・ω・`)「こんな所で話すのもなんですし、もう少し静かなところへ場所を移しませんか?私いきつけのバーがあるんです。」
久々の当りは惜しかったが、私は男についていくことにした
- 38 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:03:56.46 ID:SNecqzXU0
- 〜BAR 魔の巣〜
(´・ω・`)「いやはや、やっぱり商談には静かな所が一番だ。」
( ´∀`)「商談?」
(´・ω・`)「自己紹介がまだでしたね。改めまして、私こういうものです」
『喪黒福蔵 心のスキマ、お埋めします。』
男の差し出した名刺にはそう書かれていた。
( ´∀`)「笑ゥせぇるすまん?……なにかの販売かい?」
(´・ω・`)「はい。ですがお金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。」
そう言うなり喪黒は私に一冊の白いノートを差し出した。表紙はおろか、掛け線すらも無い奇妙なノートだった
- 39 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:07:42.59 ID:SNecqzXU0
- ( ´∀`)「これは……?」
(´・ω・`)「このノートはあなたの想像力や独創性を最大限に引き出すノートでございます。」
( ´∀`)「そんな、都合のいい話が……」
(´・ω・`)「疑うのはまず使ってからにしてくださいよ。なに、先ほど言ったようにお代はいりません。差し上げます。」
( ´∀`)「この白いだけの紙がねぇ……。」
だがたしかに真っ白な紙を見ると、なにか書きたいという衝動に襲われはする
( ´∀`)「ま、もし何かアイデアが浮かびでもしたらメモにでもつかわせていただくよ。」
(´・ω・`)「ええ、楽しみにしておりますよ。ただし、このノートに書けるものはあなたの頭の中にあるものだけでございます。
これはあなた頭脳に眠るものを引き出すノートでございます。この注意をどうぞあなたの頭に、お忘れないようお願いしますよ。ホーッホッホッホッホッ…」
( ´∀`)「?」
意味深な言葉を残し喪黒ショボ造という男は去った。私はどうするか迷ったが再び大学へ戻ることにした
- 40 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:10:58.25 ID:SNecqzXU0
- 変化は帰り道にすでに起きていた。目に映るもの全てが気になって仕方が無い
なぜあれはあんな素材を使うのか。もっと良い素材があるではないか
今の私なら街にあるもの全てを改良できる。それどころかいくらでも新しいものを作り出せる
早く大学に戻りたくて私は年甲斐にもなく走った
私は自分の研究室でペンを走らせた。6時間もの間、ずっと!
それでもわたしのアイデアは尽きる気配すらない。それどころか新しいアイデアがつぎつぎに湧き出してくる
あぁ、なぜこんな発見に20年も気づかなかったのだろう。
私は次々に発明を打ち出していく。私を知るものはあまりの変貌に驚いていたが、20年間のうちに少しづつアイデアを溜めていたということで一応は納得したようだ
そして白いノートとの出会いから数週間が過ぎる頃、私は再び発明王と呼ばれていた
- 41 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:17:45.90 ID:SNecqzXU0
- いままで私一人だった研究室に研究生が戻ってきた。寂れていた部屋に活気が戻ってきた。私の思い描いた景色が目の前にある。それだけで満足だった
ある日、一人の研究生が私にレポートを持ってきた。自分のアイデアをまとめたものらしい
本当なら自分の研究をまとめることに一分一秒でもおしいのだが、いちおうざっと目を通すことにした
私は驚愕した。手の震えを隠すのに精一杯で、私はなんとか「あずかる」とだけ言い研究生は出て行った。
このアイデアは学会の常識をくつがえすほどのものだった。まさに研究の盲点を突く発見。だが穴がある。私ならこれを完璧な物に出来る
私は学生のアイデアを書き換え、自分の研究として学会に発表してしまった。そして、その発明で私はノーベル賞を受賞した
すでに私に罪の意識はなかった
それから何日か経ったある日、私はあの喪黒という男と再会した
- 42 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:20:04.56 ID:SNecqzXU0
- ( ´∀`)「喪黒さん!すごいですよあのノート!!いくらでも発明のアイデアが溢れてくる!」
(´・ω・`)「いえいえ、あのノートは使う人の潜在能力を引き出すだけですよ。すごいのはあなたです。
……ですがあなた、他の人のアイデアを盗みましたねぇ?」
なぜだ、なぜこの男はそれを知っている?
(;´∀`)「ば、馬鹿なことを」
(´・ω・`)「なぜです!学者にとって自分の研究がどんなに大切なものかあなたが一番よくおわかりのはずでしょう?」
(#´∀`)「あ……あ、あの研究は学生には扱いきれないものだ……
そうだ!あの破天荒な研究は無名の学生が発表したところで誰も見向きもしないッ!すばらしい発見が危うく泥に帰るところだったッ!
私は正しいこt」
(´・ω・`)9m「ドォーーーーーン!」
男が私に指を向け何かを叫んだ。視界が歪む、足がふらつく
だが歪む世界のなかで私はまた新たな発明を思いついた。世界が正常に戻ったとき、喪黒はすでにそこにはいなかった
今思いついた研究はそれまでのものと一線を画すものだ。震える足を引きずり、私は大学へと戻った
- 43 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:23:02.45 ID:SNecqzXU0
- この発明が完成すればそれは、あの学生の研究とは比較にならないほど素晴らしい発明になる
私は一ヶ月間研究室にこもり研究を重ねた。今までとは比較にならないほどのスケールの研究。そしてそれは完成した
私は新聞・専門誌の記者や世界中の研究者を呼び集め、その発明のお披露目と初起動をすることにした
体内ナノマシン
それは人体に目に見えないほどの大きさのロボットを注入し、体の組織を調整するというものだった
骨格の調整から美容整形、さらには末期ガンや未知の病まで治すことすらできる。この発明は人類を進化させることができる
――そして一番最初に進化するのはこの私だ
- 45 名前: ◆eZobC80nBA 投稿日:2010/07/19(月) 22:25:15.83 ID:SNecqzXU0
- 大勢の人々が見守る中、私は3m四方の装置へと入っていった。なに、私ならすぐに小型化できる。
私は装置に命令を下した。
「私に永遠の命を、私に死なない体を、この私を永遠の発明王にしろ! 」
すぐに装置は起動した。激しい重低音と共に私の中にナノマシンが流れ込んでくる。体内に異物が流れ込んでくる感覚に私は獣のような叫び声をあげていた
ありとあらゆる全て音が頭の中で大音量で鳴り響き、目の前で極彩色が激しく回るミラーボールや万華鏡のように暴れだす
処置は終わった。数十秒の処置がまるで、数十年のことのように感じられた。いや本当に数年経ってしまったのか。ゆっくりとドアを開きワタシは外へと踏み出した
「うわぁあぁぁあぁぁッぁあぁぁぁっっ!?」
期待のまなざしで見ていたはずの人々が悲鳴をあげ信じられないという目でワタシを見た。
ある者は逃げ、ある者は呆然としある者は腰が抜け動けなくなっていた
間接を動かすたびにギヤーが動く音がする
ワタシの体は、機械になっていた。ソウダ、機械なら死ヌこともナイ。合理的。
|::━◎┥「ワタシハ発明王……。永遠の発明王」
(´・ω・`)「いやはや、自分を発明してしまうとは研究熱心も過ぎると毒ですねぇ。
ホーホッホッホッホッホッホッホッホッ……」
完
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