( ^ω^)僕はぬいぐるみのようです
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 22:54:45 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



( ^ω^)




( ^ω^)

…ん?

( ^ω^)

ここは…

ここは…いったいどこなんだ?
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 22:57:35 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



僕が目覚めたこの世界…部屋は妙に薄暗かった。
僕から見て左側にあるカーテンの隙間から薄らと日の光が射している。
そして目の前の壁にかかっているアナログの壁掛け時計は10:21を指していた。

恐らく今は朝なのだろう。
しかし、この部屋は何故こんなにも暗いんだ?
僕が住んでいたアパートではないことだけは分かった。

僕は視線を床に向ける。
足の踏み場もない程に敷き詰められた生ごみの山。
コンビニ弁当の空や、ペットボトル、食べかけの菓子、噛み終えた後のガム、丸まったティッシュ、黴の生えたパン。
何匹もの蝿が飛び交い、ゴミの上を蛆虫が這う。

唯一、綺麗な場所と言えば、窓際に置かれた棚に配置されているぬいぐるみの数々。
大小様々なサイズのぬいぐるみがあるが、全て綺麗に整理されている。
そのギャップがまた不気味さを引き立たせる。

( ^ω^)


僕はどんな地獄の沙汰で目覚めてしまったんだ。
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 22:58:19 ID:soHcfU9s

( ^ω^)



僕が部屋の隅から隅まで見渡していると、隅っこの布がガバっと隆起し、その布の中から人が現れた。
そのまましばらく動かなくなったかと思うと、突然僕の方を振り向いた。
毛布の中にいたのは女性だった。
明るめの茶色いロングヘアーが際立って見える。

その女性が振り向いたと思ったら、ものすごいスピードでこっちに走り寄ってきた。

o川*゚ー゚)o「ブーン君、おはよー。今日も可愛いねー♪」

その女性の顔が僕の目の前に襲いかってきた。
「襲いかかった」…そう思うくらい彼女の体は大きかった。
肩から頭頂部までがちょうど僕の体の大きさだろう。

( ^ω^)

いや、違う。大きいのは彼女だけじゃない。この部屋もだ。
僕が見る限りでは、この部屋はとても広い空間だが、彼女ほどの体なら快適に住むことができる広さだ。

彼女が大きいんじゃない。僕が小さいんだ。
そして、彼女は僕を見つめて「ブーン君」と言った。


どうやら…僕はぬいぐるみになってしまったようだ。
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 22:58:56 ID:soHcfU9s






【( ^ω^)僕はぬいぐるみのようです】
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 22:59:42 ID:soHcfU9s

( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「ブーン君、調子はどう?」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「私はちょっと風邪気味かも〜…。昨日寒かったよね」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「やっぱりこの部屋にもストーブ欲しいよね…うん」

( ^ω^)


この子は何故ぬいぐるみに話すんだろう…。
そう思った5秒後に彼女がメンヘラなんだと言うことを理解した。
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:00:38 ID:soHcfU9s

( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「そうだ。ブーン君、そろそろ朝ご飯にしよっか」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「そうだね。ブーン君は何がいいと思う?」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「ホントに?それだったらちょうどあるよ〜ありがとね〜」

( ^ω^)


喋ってねぇよ。ってか喋れねぇよ。
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:01:12 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「ブーン君、ちょっとスプーン持ってきて〜?」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「何よー。ケチんぼなぬいぐるみだなー」


動けねぇよ。
コイツはぬいぐるみに何を期待しているんだ。
◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:02:37 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



そう言えばと…僕は自分の体について考える。

o川*゚ー゚)o「あれ〜?どこに置いたっけなー?」

僕の体は全く動かない。

o川*゚ー゚)o「こっちかな〜?」

しかし、聴覚や視覚、触覚はあるようだ。

o川*゚ー゚)o「あっ、あったあった♪」

嗅覚も正常に機能している。
正常に機能し過ぎて、この部屋の異臭に耐えられない。
10  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:04:31 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「ブーン君、今日の朝ご飯ははねー…じゃーん!コーンクリスピーだよー。しかもチョコ味!」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「見てみて〜。こんなにお皿に盛っちゃった♪」

( ^ω^)

めっちゃ零れとる。

o川*゚ー゚)o「これに牛乳をたっぷりかけま〜す♪」

( ^ω^)


めっちゃ零れとる。
11  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:05:08 ID:soHcfU9s

( ^ω^)



もう見てらんない。ゲロだよゲロ。

o川*゚ー゚)o「かんせーい!!やったね☆」

( ^ω^)

勝手にいただきますしてろ。

o川*゚ー゚)o「それじゃあブーン君。あ〜んして♪」

( ^ω^)

( ^ω^)


なん…だと…?
12  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:05:47 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



待て。ちょっと待て。

o川*゚ー゚)o「おっ意外とスプーンに沢山掬えたね〜」

( ^ω^)

僕はぬいぐるみだぞ。自分で食え。

o川*゚ー゚)o「あ〜ん♪」

( ^ω^)

この女、容赦ねぇ。

( ^ω^)

ん?

( ^ω^)

( ^ω^)


この牛乳腐ってやがる。
13  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:06:24 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「どう?おいしい?」

( ^ω^)

まず口は糸で縫われているので中に入って無いです。ってか入れたくないです。

o川*゚ー゚)o「だよね。ブーンこれ大好きだもんね♪」

( ^ω^)

だから喋ってねぇ。そしてその牛乳腐ってんだよ。

o川*゚ー゚)o「沢山あるからね。全部ブーン君に食べさせてあげる♪」

( ^ω^)

何の罰ゲームだよ。
14  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:07:25 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「うん、ちゃんと全部食べられたねー。ブーンは良い子だね♪」

だから口に(ry

o川*゚ー゚)o「あーブーン君、口の周りすっごいベチャベチャじゃーん」

誰のせいだよ。

o川*゚ー゚)o「ちょっと待ってね。雑巾持ってくるから」

雑巾!既に汚れもの扱い!!

o川*゚ー゚)o「あったあった。…こんなに床が汚れちゃったね〜」

( ^ω^)


先に口拭け。
15  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:08:16 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「ん?なんかブーン君……」

( ^ω^)

o川;*゚ー゚)o「口くっさいよ?」

おせーよ。
皿に装う前から気付け馬鹿。

o川;*゚ー゚)o「この臭いはやっぱ駄目だよ〜…」

純粋にお前のせいだ。

o川*゚ー゚)o「これはもう…リセッシュだな」


( ^ω^)

待て。その霧吹きを置け。
いいから早く。おい、馬鹿、止めろ。ふざけんn
16  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:08:52 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「うん!これで綺麗になったね♪」

顔面に消臭剤を掛けられたのは初めての経験です。

o川*゚ー゚)o「ん…臭いもおっけー!綺麗になったね」

おっけー!…かどうかは僕に判断させてくれ。

o川*゚ー゚)o「それじゃあ…何かして遊ぼっか〜」

( ^ω^)

もう僕を巻き込むのはやめて下さい。

o川*゚ー゚)o「あっそうだ!ジェンガがあったんだ!ねっ、それで遊ぼ♪」

( ^ω^)

ちょっとは考えてくれよ。
17  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:09:23 ID:soHcfU9s
( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「…………」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「……………………」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「…………………………………」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「ねぇ、やる気あんの?」

( ^ω^)

そんなこと言われても。
18  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:09:57 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「なんで?私と遊ぶのが嫌なの?」

嫌とかって以前の問題なんだよ。動けないんだよ。

o川*゚ー゚)o「私はそんなこと言ってないじゃん。ただ私はジェンガをしようって言っただけじゃん」

僕もそんなこと言ってねーよ。誰と話してんだ。

o川*゚ー゚)o「もう良いよ。ブーン君とは遊ばないから」

そうしてくれるとありがたいのですが。

o川*゚ー゚)o「ごめんって…謝ってもらっても嬉しくないよ!」

( ^ω^)

だから謝ってねーよ。ってか顔近い近い近い近い。
こうして間近に彼女と向き合うと僕の小ささがよくわかる。
僕の体は彼女の肩から頭頂部と同じくらいの高さだ。
19  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:10:34 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「!!……」

その時、ドン、ドン、ドン、ドンとドアの叩く音が部屋に響く。
それと同時に、弱々しい女性の声が聞こえてきた。

「キュート!いい加減出てきてちょうだい…お願い…」

「あなたは自分で努力して手に入れたものを全て無駄にするつもりなの?」

「あなたがこんなことになってるなんて…お母さん近所の人にどう説明すればいいの…?」


( ^ω^)


おっと。
この子はメンヘラの上に引きこもりなのか。
20  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:11:14 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



言葉から察するに、ドアの向こうにいるのは恐らく彼女の母親だろう。
流石に自分の娘がこんなことになっていたら心配するだろう。
少なくとも僕が親だったらそうする。

o川*゚ー゚)o「………何?」

メンヘラっ子は形相を変え、鋭く睨みながら、ドアへ近づく。

「だから…せめて部屋の外に…」

o川#゚ー゚)o「うるさい!!」

母親の言葉を遮る様にドアを強く叩いた。
人の話は聞けよ…。

o川#゚ー゚)o「私の気持ちなんか分からないくせに!!保護者ぶるのもいい加減にしてよ!!」

バンバンバンバン。彼女は母親に言葉を返す間を与える事無くドアを強く叩く。
22  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:11:45 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「私は…あなたの事を思って…」

それでもドアの向こうにいる母親は必死に説こうとする。

o川*゚ー゚)o「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」

それに連なって彼女のボルテージも上がってきているようだ。
まったくもって僕には関係のないことだが。

「ねぇ…とにかくここを開けてちょうだい。そうしないと…」

o川 ー )o「ああああああああああああああああああ!!!」

彼女は奇声を上げ、ドアを一心不乱に叩き続けた。
バンバンバンバン。コイツはもしかしたら…壊れるんじゃないか?

「キュート!落ち着い…!!」

o川# ー )o「黙れ!黙れ!黙れ!ああああああああああああああああああああ!」

そう叫んだ瞬間、彼女はスカートのポケットから何かを取り出し、ドアに強く叩きつけた。
23  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:12:26 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「きゃあああ!!!」

ドアの向こうから悲痛な叫び声が聞こえた。
ここからでは2人がなにをしているのかさっぱり分からない。

o川* ー )o「黙れ…黙れ…黙れ…」

メンヘラ女はメンヘラらしくブツブツと何かを呟いている。
しばらくして、彼女はドアから離れていった。
その右手に握られているのは…どうやら鋭利な刃物のようだ。

それで母親をドア越しに刺したと言うのか。
いろんな意味で驚かされた。

「お願い…キュート…目を覚まして…お願い…お願い…」

それから、ドアの向こうにいる女性の声は次第に小さくなり、どこかへ行ってしまった。
母親もついに諦めてしまったようだ。
24  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:13:00 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川* ー )o「ハァ…ハァ…ハァ…」

握られた刃物先端から赤黒い液体がポタポタとゴミの上に落ちていく。
怖い。マジ怖い。誰か助けて。

o川* ー )o「ハァ……………」

ようやく落ち着いたのか、あれほど荒かった息も、静かになった。

o川* ー )o「…………………………」

( ^ω^)

o川* ー )o「………………………な」

( ^ω^)

o川* ー )o「何でなのよ!!!」

何でなんだよ。
25  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:13:36 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川#゚ー゚)o「私だって好きでんなことやってるんじゃないのに…!!」

静かになったかと思えばこれだよ。メンヘラは収まるところをしらないようです。

o川#゚ー゚)o「なんで?何で誰も理解してくれないの!!?」

お前が怖いからだ。

o川# ー )o「もう…いいかげんにして!!!!」

お前の方がいい加減に…

( ^ω^)

( ^ω^)

コイツ…

自分の腕を刺しやがった。
26  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:14:12 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



彼女が思いっきり切りつけた自らの左腕から血が止めどなく噴き出す…

…事は無く、ただゆっくりダラーっと床に垂れていった。
ゴミがどんどんどんどん赤く染まっていく。

o川# ー )o「だったら…私なの!?私がいけないの!?ねぇ!!」

知らねーけど、ザクザクと自分の腕にナイフを刺すのはやめて下さい。
見てるこっちが痛いわ。

o川# ー )o「私が!!…私なんか…死ねばいいんだ!!!」

どっか別の場所にしてくれ。

o川 ー )o「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

( ^ω^)

メンヘラ発狂TIME 第2回戦スタート☆
27  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:14:49 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川 ー )o「わっわわわわわわ私はあああああああああああああああっあっあっあああああああああああ!!!!」

やだこれ。
目の前にいる狂人をずっと見続けなければならないとか地獄なんですけど。

o川 ー )o「いやああああああああああああああっあああっあああああああああああっ!!!!」

彼女はその場で立ち上がり、一目散に転げ回った。
ゴミを投げつけ、叩き、踏みつけ。
棚に置いてある、本を破り、叩きつけ、本棚ごとひっくり返した。

部屋にあるあらゆるものを全て床にぶちまけては投げ、ぶちまけては投げを繰り返す。
怖えーよ。誰か彼女を止めて。マジで。

o川*゚ー゚)o「!!………………………」

( ^ω^)

その時、彼女の動きが止まる。
え?

( ^ω^)


何でこっち見てん……えっ?
28  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:15:26 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「ブーン君は……信じてくれるよね♪私の事」

彼女はフラフラとよろめきながら、僕の方へ近づいてきた。
頼むから来ないでくれ。当店はメンヘラお断りです。

o川*゚ー゚)o「ねっ?私はなーんにも悪くないんだよね」

真っ赤に染まった彼女の両手が、僕の体に今触れようとして…あっもう触られた。

o川*゚ー゚)o「私はここにずっといても良いんだよね?ね?」

( ^ω^)

o川*゚ー゚)o「………………………」

( ^ω^)

o川* ー )o「……………なんとか……」


o川#゚ー゚)o「言えよボケ!!!」



地面に強く叩きつけられた。
29  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:16:11 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



全身に激痛が走る。
痛すぎて死ぬんじゃないかってくらい痛い。
そりゃそうだ。人間にすればマンションの2階から突き落とされたようなものだ。

o川#゚ー゚)o「何でよ!!アンタまで私を裏切るの!?」

そういいながら彼女は僕の顔面を何度も何度も殴りつける。
腹いせでぬいぐるみを殴る奴がいるか………いや、僕もたまにするけども。
こんなに痛いとは思わなかった。ごめんよ過去に殴ってきたぬいぐるみ達よ。

o川#゚ー゚)o「黙れ!!黙れ!!黙れ!!」

はい。最初から黙ってますが。
それよりも、もう止めてくれ。何も抵抗することができないのに…。
痛い。痛い。痛い。

o川#゚ー゚)o「うるさああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

彼女の最後の鉄拳を喰らった瞬間、口を結んでいた糸が千切れ、中から綿が出てきた。
30  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:16:53 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



綿はとても真っ赤な色をしていた。
恐らくこの女の血に染まっているのだろう。
それを機に、彼女が僕を殴るのはバッタリと止まった。

( ^ω^)

o川 ー )o「ハァ…ハァ…ハァ…」

( ^ω^)

o川 ー )o「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

( ^ω^)

o川# ー )o「な…………何笑ってんだよ!!!!!」

そんな理不尽な。

o川#゚ー゚)o「笑ってんじゃんぇよ!!!!」

今度は何度も蹴られた。
サッカーボールの気持ちもわかる様になった。
31  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:17:38 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



僕はされるがままに、何度も彼女に踏みつけられ蹴られ壁に叩きこまれた。
もう痛覚すら麻痺し、意識が朦朧としてきた。
ふと時計を見ると、殴られてから既に1時間以上も経っている。

あっもう死ぬな。って12回ぐらい考えた。
それでも僕は何も抵抗することができないのだ。

o川*゚ー゚)o「アンタなんて…………」


死んじゃえばいいのに。


彼女は笑いながらそう言った。
その手には先程のナイフが握られていた。

( ^ω^)

ああ、僕は刺されるんだ。
彼女の右手が僕の腹に振り下ろされるその瞬間に、僕は気絶した。
32  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:18:24 ID:soHcfU9s
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





(  _ゝ ) は?こんなものが欲しいのか?

o川* ー )o うん。だってとってもかわいいんだもん♪

(  _ゝ ) うーん…まぁ確かにかわいいかもしれないな…。

o川* ー )o でしょー。ぬいぐるみ愛好家のの私が認めるんだからとってもかわいいよ。ねぇ買ってー?お願い〜。

(  _ゝ ) 別に構わないけどさ、でもな…せっかくの誕生日なのに、そんな物でいいのか?

o川* ー )o これがいいの!これじゃないと絶対に嫌だからね!

(  _ゝ ) わかったわかった…。じゃあこれにしよう。

o川* ー )o わーい!流石君ありがと!!
33  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:19:05 ID:soHcfU9s
(  _ゝ ) でもこいつは一体なんなんだ…?

o川* ー )o この子はブーンって言うの!

(  _ゝ ) ブーン?それがコイツの名前なのか?

o川* ー )o そうだよー今ね2ちゃんねるで流行ってるマスコット的なキャラクターなんだから♪

(  _ゝ ) ふーん…あっそ。

o川* ー )o あっ、ちょっとねぇ聞いてんの?

(  _ゝ ) はいはい。聞いてますよ。聞いてるからとっととレジに持っていこうぜ

o川* ー )o こら!逃げるな流石君!!






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
34  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:19:47 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



僕が目覚めたのは、それから6時間後のことだった。
室内は僕が気絶する前と全く変わらず、当然のように荒れていた。
本棚は横になり、中に入っていた本はグシャグシャに。

蛍光灯は天井を破り、落下してゴミ山に埋もれているようだ。
部屋中のいたるところに置かれていたぬいぐるみも、腕がもげ、首がほつれそこら中に散らばっていた。

僕は…うん。どうやら5体満足のようだ。
ズキズキと体が痛む。
特に足が痛い。彼女の最後の一振りは僕の足に向かったようだ。

それに…とてつもなく眠気が僕を襲う。
だるい…。とてもだるい。二日酔いの比じゃない。
まあそうだよな。あれだけリンチをされればそうなるだろう。

( ^ω^)

そういえば…彼女は?
彼女はどこへ行ったのだろう。
35  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:20:28 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川* ー )o

いた。
ゴミ山の中で、擬態していた。
水色のワンピースと真っ黒なレギンスの粗大ごみが横たわっている。

もしや寝ているのだろうか…?
腕の血は止まったようで、どす黒い瘡蓋の数々が腕を彩っていた。
お前はアシタカか。

しかし、僕の脅威が眠っているのかと思うと、ほっと胸を撫で下ろさずにはいられない。
あんな拷問、2度と受けたくない。
恐怖が体に染み込み、脳裏に焼きついた。

もし、僕の体がずっとこのままだとしたら…?
そう考えるだけで、また気絶をするかもしれない。
気絶程度なら良いのだが、僕まであの女のようになってしまうのかもしれない。


それだけは…それだけは。
36  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:23:21 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「ブーン」と言うのはもちろん僕の名前ではない。
今、巷で流行っている2ちゃんねるキャラクターの名前だ。
アザラシのような顔つき、不気味なほどに細い眼。

彼女は僕の事をずっと「ブーン君」と呼び続けた。
それはもちろん僕がブーンのぬいぐるみになってしまったからだ。

何故、僕はぬいぐるみになってしまったのか。
それは分からない。

だが、その原因はハッキリしている。


( ^ω^)

僕は…。
37  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:24:27 ID:soHcfU9s
( ^ω^)







僕は死んだのだ。
38  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:25:10 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



死んだ事はハッキリしている。
僕が思い出せる最後の記憶が全てを物語っているからだ。

交通量の多い、交差点。
僕はその時、酷く酔っていた。
フラついた千鳥足をヨタヨタと動かしながら、僕は信号の色さえ判別できない程の朧気な目を頼りに横断歩道前に立っていた。
歩道のどの辺りに立っていたのか、どのくらい酒を飲んだのか、他の事は一切思い出せない。

そして最後に覚えているのは、目の前に飛び込んできた大型トラックのライトだった。
人生で一度しか味わうことのできない死の体験。
僕の死は、曖昧模糊なまま終わりを遂げた。

その後、僕の意識は静かに遠退き、やがて深い眠りについた。
グラグラと歪んでいく僕の意識は暗闇に溶け、そしてどこかへと流れ落ちてしまった。

そして、再び意識が再び蘇り、形を成した時に、僕はこの部屋に座っていたというわけだ。
恐らく俗に言う「輪廻」だろう。
…しかし、転生した媒体がぬいぐるみとは…幾分悲しすぎる。

だが、僕は初めて死んだので、そういうことがあり得るのかどうか判別できない。
39  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:25:48 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川* ー )o

そして…彼女、キュート。
何を隠そう、彼女は僕の恋人なのだ。
…ああ、もう死んでるから「元」なのか。

彼女…キュートはとても朗らかな性格の女性だった。
エリート家系に生まれ幼いころから医者を目指し、その夢をかなえる為にひたすら努力に励む。
そんな絵に描いたような、人間を模範とするような人物だった。

いつも若々しく、子供らしい発想や発言をする元気な子。
一緒にいる時は必ず僕に甘え、後ろをついて歩く。

僕にリードを求めるくせに、自分の要求が通らないと駄々をこねる。
思い込みが激しく、一度そうだと思ったら簡単に曲げたりなんかしない。
その鬱陶しさが嫌になるが、それも含めて僕は彼女を愛していた。

しかし、今、目の前にいる彼女はどうだ?
彼女は酷くやつれており、その目は虚ろ気にどこかを見ていた。

僕は何度もここに来た事があるので分かる。ここは彼女の部屋だ。
しかし、今この部屋は僕が思い出す光景とは全く異なった別空間になっていた。
床には服やゴミが散乱しており、そこら中に無数のハエが飛び交っている。

目の前にある棚や机の上には大小様々なぬいぐるみが置かれていた。
ぬいぐるみ愛好家を自負している彼女の部屋ならではの模様だ。
40  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:26:34 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



とにかく、僕はぬいぐるみとして彼女の元へ生まれ変わった。
端的に話を聞けば、僕の使命は彼女を見守ることにあるだろう。
しかし、彼女は俺の死後、変わってしまった。

精神的に歪んでおり、退廃的な思想と現実逃避の繰り返し。
こんな女の元へいては命がいくつあっても持たない。

せめて精神を安定する事ができればいいのだが…僕には無理だ。
誰かが彼女の心を癒してくれるのを願うしかない。

( ^ω^)

もしかして、僕は一生このままなのだろうか。
生まれ変わったのだからその可能性も考えられる。
それとも、これは夢なんじゃないか?
多々リアルな夢ではあるが無いとも言い切れない。

だってこんな非現実的な世界…受け入れられるわけがない。
夢である可能性の方が断然高いのだ。

…しかし、僕にはそれを確かめる術など持っていなかった。
41  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:27:23 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー )o「ん…おはよーブーン君。起きてたんだー」

のそのそとゴミ山から眠り姫が起きてきた。

( ^ω^)

何その軽いノリ。

o川*゚ー゚)o「今ねー…昔付き合ってた彼の夢を見てた…」

昔付き合っていた彼。
それはもちろん僕の事だろう。
彼女は大学に入るまでずっと勉学に励んでいた為、色恋沙汰に縁がなかったと彼女は言っていた。
もっとも、そうでなかったしても今となってはどうでもいいのだが。

o川*゚ー゚)o「流石君はねー…ブーン君のパパなんだよー」

o川*゚ー゚)o「2年前にね〜流石君が君を買ってくれたんだ…」

そういえばそうだ。
このぬいぐるみは僕が買ったんだ。
42  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:27:56 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



彼女がこのぬいぐるみを特別扱いしている理由が分かった。
これは僕からのプレゼントだからだ。
形見とでもいうべきか…。

o川*゚ー゚)o「彼はすっごいカッコ良かったんだよー?クールで頭もよくて、話が面白くて」

o川*゚ー゚)o「…でも、死んじゃった」

そうか…。僕は本当に死んでしまったのか。
もしかしたら夢であるという可能性に掛けてみたのだが…それも違うらしい。

o川*゚ー゚)o「でもいいんだ。私は彼の事なんてもう気にしてないから」

…?何を言ってるんだこの子は…。
だったら引きこもってなんかいないで外に出ればいいじゃないか。

o川*゚ー゚)o「私…彼が死んじゃった日に…すっごい喧嘩したんだ」

喧嘩…?何の事だ一体?

o川*゚ー゚)o「だって悪いのは彼なんだよ?彼が悪いのに…あの人は私に全てを押し付けたの」

ちょっと待て。全く分からない。
僕と彼女はなんの喧嘩をしたんだ?

………駄目だ。全く思い出せない。
43  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:28:35 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川*゚ー゚)o「私は怒ったよ?なんでそんな簡単に押し付けられるのって」

o川*゚ー゚)o「でも、彼は私を殴ったの…」

o川*゚ー゚)o「そして言ったわ…。捨てれば?って」

o川*゚ー゚)o「そこで…やっと気付いたんだ。」

o川*゚ー゚)o「彼の愛なんてそんなものなんだってね」

( ^ω^)

彼女がなにを言っているのかわからない。
捨てる…?何を…?

もしかすると…僕がぬいぐるみになったのはその罰なのか?
まさか…。それに僕は彼女を殴った記憶など無い。

僕が持っている記憶は、トラックに轢かれるあの1シーンの事だけだ。


o川*゚ー゚)o「だから…だから、もう…気になんかして無いんだから」
44  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:29:10 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



コン、コン、コンとドアが鳴る。
誰かがドアの前に来たようだ。

キュートの家族は母親しかいない。
一人っ子で父親は死んだと聞かされていたので、恐らく今もそうだろう。
とすると、今ドアの目の前に立っているのは母親と言うことになる。

「キュート…?今…大丈夫かしら…」

o川*゚−゚)o「ん…何…?」

彼女もその音に反応し、ゆっくりと立ち上がり、ドアに向かう。
ドアの前で立ち止まり、彼女はもう一度、何?と聞き返した。

( ^ω^)

それにしても…眠い。だるい。
体に力がうまく入らない。何故だろうか。
45  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:29:46 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「キュート…!!あの…さっきはあんな事を言ってごめんなさい」

o川*゚ー゚)o「…………」

「お母さん…あなたの事分かろうともせずにただ…自分の感情を投げつけていただけだった…」

o川*゚ー゚)o「…お母さん……」

「もう、私は何も言わないわ…。 キュートがしたいように生きればいい。お母さんはその生き方を応援するわ」

o川* ー )o「何で…?」

「お母さん…あなたに何もかも押し付けて…」

o川* ー )o「押しつけてるのは今も同じじゃん!!」

彼女の叫び声に圧倒され、ドアの奥の声が静かになった。

o川* ー )o「お母さんは勝手だよ!!私には医者になれ、医者になれって何度も言っておいて…」

o川* ー )o「私が他に夢中になる事があっても全て辞めさせられて…」

o川* ー )o「それでこうなった時だけ好きにすればいいって…ふざけないでよ!!」
46  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:30:41 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川* ー )o「私の家族はお母さんしかいないのに…それなのに…何で私の事を考えてくれないの…?」

o川* ー )o「それに…流石君のことだって…」

( ^ω^)

久しぶりに呼ばれた僕の名前。
顔にも態度にも表れないが、僕はひどく驚いた。

o川* ー )o「私が初めて好きになれた人…なのに最後まで付き合っている事に反対して…」

「キュートそれは違うわ。あの男はあなたの為にならない。いつかあなたを不幸に…」

o川* ー )o「私を不幸にしたのはお母さんだよ!!」

o川* ー )o「それに…もうあの人は…流石君は死んじゃったんだよ…」

ぽろぽろと彼女は涙を流した。
どういうことだ?君は…もう俺なんか良いんじゃなかったのか?

いやまあ、メンヘラのことなんか理解できないんだけども。
47  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:31:56 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



そして、相変わらず僕の体はぐわんぐわんと揺れている。
とても眠い…。彼女達の声に耳を傾けるので精いっぱいだ。
というか、それしかできないのだが。

「聞いたわ…。交通事故だって…」

o川* ー )o「全てお母さんのせいなんだよ…」

o川* ー )o「私達の交際だって認めてくれなかった…」

o川* ー )o「彼から貰ったものだって全部捨てて…」

o川* ー )o「酷いよ…」

たしかにそうだった。
彼女の母親は厳格な人間で、彼女を絶対に医者にさせようとしていた。
毎日毎日勉強だけをさせ、近寄る誘惑は全て、彼女の母親が取っ払ってきた。
その教育姿勢は時に不気味であり狂気を感じる。

僕が彼女と付き合えたのも、同じゼミで出会わなければ起こらなかった。
ほとんどまぐれに近いと言えるだろう。
48  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:32:53 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「ええ…私が悪いのね…。悪かったのね」

o川;*゚ー゚)o「!!」

ドアの向こうからすすり泣く声が聞こえてきた。
どうやら彼女の母親は本当に参っていたようだ。
あの人は自分の思った事なら意地でも貫き通そうと考える人だ。
そんな主義を持った人が折れるとは…よっぽど引きこもった事が堪えたのだろう。

「本当にお母さん…間違ってたわ。もう謝っても無駄かもしれないけど…それでも聞いてほしいの」

「お母さんは…あなたの事を愛しているの。私があなたの為にやっていたことは全部あなたを苦しませただけだった…」

o川;*゚ー゚)o「そ…そんな事無い!!お母さんは…」

「私…目が覚めたわ…もうあなたの事を悲しませたりしないから…」

o川;*゚ー゚)o「お母さん…」

「だから…ここを開けてちょうだい?」



( ^ω^)

お母さん、テラ策士。
49  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:35:56 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川;*゚ー゚)o「お母さんごめんね…迷惑ばっかり掛けて…」

「ううん…私も悪いの…」

お母さんこの扉を開ける為に…汚ぇ。
まぁ…この子が落ち着くのならそれでも構わないんだけども。
彼女の手がドアノブに伸びる。
この塹壕戦もどうやら決着がついたようだ。

「それに…彼の事も謝らないとね…」

o川*゚ー゚)o「ううん。いいんだよ…彼はもう死んじゃったんだから」

( ^ω^)

ここで眠気をこらえながら話を聞いてますが。

「違うの…。私が謝らなければならないのは…その事なのよ…」

o川*゚ー゚)o「………?どういうこと?」

( ^ω^)

………?どういうことだ?
50  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:37:38 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



「キュート、だからあの事よ…」

o川*゚ー゚)o「…………?」

その後、彼女の母親は静かに事を話し始めた。

「あの日、あなたが彼と喧嘩していたのは私知っていたの」

「だから…あなたにあの計画を持ち込もうと思って…それであなたと決めたじゃない」

o川;*゚ー゚)o「お母さん?…何を言っているの?」

「何をって…あの事よ」





「私とキュートで、彼を道路に付き飛ばした事よ」
51  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:38:12 ID:soHcfU9s
( ^ω^)

一体何を言っているんだ?ドアの向こうにいる女は。

「2人で計画したじゃない…彼を交通事故にして殺そうって」

( ^ω^)

待て。待てと言っているだろう。あの事故は…僕の死は…。

o川;*゚ー゚)o「何を言ってるのお母さん…」

「ああ、キュート…あなたは記憶が混乱しているのね…ショックだったもの…無理はないわ」

( ^ω^)

まさか…僕を殺したのは…






「彼を死なせたのは私達なの」
52  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:38:43 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川;*゚ー゚)o「お…お母さん…その話…」

「本当よ。あなたが誰も来ないように見張って、タイミングを見計らって私が彼の背中を押したの」

嘘だろ。嘘だと言ってくれ。
僕は…コイツらに殺されたというのか?

「凄かったのよ…目の前で…グチャって…まるでハンバーグ見たいだったわ…」

o川;* ー )o「嘘…嘘………嘘よ!」

「嘘じゃないわ…全て本当の事なのよ…私達が殺しちゃったの」

o川;* ー )o「嘘よ!!嘘!!やめて!!」

嘘だ。嘘だろ?やめろ。



「ねぇキュート…。二人で、償いましょ?」

その瞬間、彼女の手がドアノブを掴んだ。
53  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:39:11 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



('、`*;川「あっ…キュート…」

彼女の母親と彼女が対面した。
母親の腕には包帯が巻かれていた。
恐らくさっきの時の傷だろう。

o川;* ー )o「嘘…嘘…嘘よ…信じないわ…」

('、`*川「……キュート。これは事実なの受け入れてちょうだい」

o川;* ー )o「嘘…嘘…嘘…」

('、`*川「でも…あなたは悪くは無いわ。だって実際に押したのは私だもの」

('、`*川「そして…あの事件からもう8ヶ月が経ったわ…」

('、`*川「警察はもう捜査を止めた。あれは事故だとみなされた。…だから」

o川* ー )o「もうやめて!!!」


彼女は右手を強く母親の胸に乗せた。
その手にはさっきのナイフが握られている。
54  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:40:12 ID:soHcfU9s
( ^ω^)




('、`*;川「キュ…キュート?」

o川* ー )o「やめてやめてやめてやめてやめてやめて」

彼女はブツブツとつぶやきながら、ナイフを母親の胸から出し入れを繰り返す。
母親はじわっと血を服に染み込ませながらその場に倒れ、動かなくなった。

ズブッ、ザクッ、ズブッ、ザクッ

o川* ー )o「やめてやめてやめてやめてやめてやめて」

ズブッ、ザクッ、ズブッ、ザクッ

o川* ー )o「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて」

ズブッ、ザクッ、ズブッ、ザクッ

o川* ー )o「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて」

ズブッ、ザクッ、ズブッ、ザクッ

o川* ー )o「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめ」
56  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:41:33 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



o川* ー )o「フッ…フフッフフフ…アハハハハハハハハハハハハハハ」

o川* ー )o「みてよ…ブーン君…死んじゃった♪死んじゃった♪」

真っ赤になった彼女の服と顔とナイフ。
僕はただ見つめるしかできない。
だってそうだろう?僕はぬいぐるみなんだから。

o川* ー )o「流石君を殺したの…お母さんなんだって」

そのようですね。そして、そのお母さんを殺したのは君だ。

o川* ー )o「うん!そうだよ!!私が殺したの!!」

( ^ω^)

おっと、初めて会話が成立したな。

o川* ー )o「酷いよ●ー。流石●を殺しちゃうな●て」

…?ところどころ何を言っているのかわからない。

o川* ー )o「●って私が●娠しただけ●、彼●事を殺●なんて…」

ああ、もう何もかもどうでもいい。
僕は今、眠くて仕方がないんだ。
57  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:42:10 ID:soHcfU9s
( ^ω^)



僕を殺した人間は、殺した人間が大事に思っている人間に殺される。
滑稽だ。これはジョークのほかにならない。

僕を殺した人間は体中に傷を作り、血を流し、グチョグチョになって死んでいった。
きっと僕と同じくらいグロテスクに死んでいるはずだ。

只一つ残念なことと言えば、僕の位置からでは、彼女の死体が見えない事だ。
だって僕はぬいぐるみ。

体を動かす事なんてできないんだから。


さて…僕の意識はもうどこかへ行ってしまいそうだ。
眠い…。ならば寝ればいいじゃないか。
結局、僕がなんでぬいぐるみになったのか。
それと僕と彼女が最後に喧嘩した内容は思い出せなかった。

まあいいや。明日調べればいいさ。


と…かく。僕は…、とて…眠…んだ…。
体と…識はだん……だ…だん離…てい……
58  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:43:14 ID:soHcfU9s












59  ◆QZHpnRAgVU 2010/07/18(日) 23:44:01 ID:soHcfU9s
東京都目黒区にある、住宅で5月、バラバラに切断された女性と新生児の遺体が見つかった事件で、
警視庁捜査本部は今月の14日、死体損壊の他、4つの罪状の疑いで、
東京都目黒区在住のの女子大学生(21)を逮捕したと発表した。
遺体は容疑者の母親(47)と子供とみられる。被害者宅には容疑者と容疑者の母親の2人しか住んでいないことから、逮捕するにあたった。

捜査本部の調べでは、容疑者の女子大生は5月23日夕、自宅で新生児の頭部や胴体に殴る蹴るなどの暴行を加えた上、足に刃物を射し、失血より死なせた。
そしてその後容疑者の母親の体に数十ヶ所も小型の刃物で刺し、その後別の刃物により切断。
25日午前2時ごろ、切断した体を10日間にわたって自宅内に放置し、「肉の腐った臭いがする」という地域住民が通報したことにより事件が明るみになった。

なおこの新生児は、8ヶ月前に交通事故で亡くなった男子大学生(享年21)と容疑者との間に生まれた子供であり、出産はその住宅内でされたと考えられる。
その事故との関連性もつけて警視庁は捜査を進めるようだ。

( ´_ゝ`)



僕の彼女は思い込みが激しい子なんだ。

とってもね。



【( ^ω^)僕はぬいぐるみのようです】



終わり。
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