43 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:15:15.70 ID:L93qvZPVO
物事を素直に言う事。
みんながそれを難しいという。
私にはそれが理解ができない。
なぜ言えないのだろう。

自分の気持ちだろうに。

嫌な事は嫌。
何故その程度の事が言えないのか。

そう、思っていた。今までは、だが。

ブーンの前では思った事が口に出せない。
ブーンの前では、素直になれない。

こんなのは、私じゃない。


44 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:20:19.16 ID:L93qvZPVO
だから、別れを告げた。
最後のブーンの顔は、とても悲しそうだった。

そして、いつも通りの私と引き替えに、私は脱け殻になった。

「クー、内藤と別れたんでしょ?
合コンしようよ!」

川 ゚-゚)「すまない、そんな気になれなくてな」

いつも通りの断り文句。
私が合コンとやらをする気になるのはいつだろうか。


46 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:21:30.24 ID:L93qvZPVO
思い出すのはブーンの笑顔ばかり。
悲しい顔を見たのは、別れを告げた時が、初めてだったかもしれない。

ブーンと別れたかった訳じゃない。
ブーンを悲しませるつもりもなかった。

川 ;-;)「……ブーン」

真っ暗な部屋で呟いてみてもブーンは帰ってこない。
帰ってくる筈が無い。
何故ならば私が拒絶してしまったから。

泣きながら私は考える。

失った人の大きさ、優しさ、笑顔を。


48 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:22:19.47 ID:L93qvZPVO
こんなにもつまらない私を、ブーンは優しく受け止めてくれた。

でも、私は私じゃなくなったから、自分から別れた。
――それが哀しい。

いつから私は、素直じゃ無くなったのだろう。
いつから愛しい人に、愛しい、と言えなくなったのだろう。

考えたって結論は出ない事は分かっている。
それでも、私は正しい選択肢を探し続ける。



49 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:23:11.36 ID:L93qvZPVO
あの時、私はどうすればよかったのか。
自分の変化を素直に受け止めていればよかったのか。
私が私じゃ無くなる事を寛容すればよかったのか。

こうして、また夜が明けてしまう。
私の感傷などとは関係なく、日は巡る。

もう、学校にも行く気が起きない。
ずっとブーンの思い出に浸っていたい。
ブーンからの携帯メールを見ながら、私は再び眠りについた。



50 名前:川 ゚-゚)短篇 :2006/04/20(木) 23:24:05.23 ID:L93qvZPVO
――クー、僕と付き合ってほしいお!
――クーは僕といて楽しいかお?
――クーの笑顔はとても綺麗だお!
――クーと、離れたくないんだお!

私も……離れたくないよ、ブーン。

目を覚ませしてブーンが居れば、ブーンに真実を言ってやろうか。

もう、別れようなんて言わない。
だからお願いだ、ブーン。
――私と一緒に居てくれ。
素直じゃ無くなった私と、一緒に居てくれ。

私は、祈るようにゆっくりと目を開ける。

そこには、いつもの笑顔ではなく、涙でくしゃくしゃになったブーンの笑顔があった。

終わり


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