16 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:00:59.98 ID:DfwZNmtt0
【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】



幼い頃、バラの咲く庭で出会ったあの子。
今はどこで何をしているのだろうか。
まだ美しいままなのだろうか。

   「・・・た…・・・」

(-A-)「うーん・・・むにゃむにゃ・・・」

それは辺り一面に咲くバラに勝るとも劣らない美しさを持つ少女だった。
思えばあれが俺の初恋だったのだろう。

   「・・・た・・・・・・なた・・・」

(-A-)「うーん・・・もっと遊ぼうよ・・・むにゃ・・・」


17 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:01:48.48 ID:DfwZNmtt0
ξ^ω^)ξ「あーた!!」

(;'A`)「は、はいっ!!」

ξ^ω^)ξ「宝石屋が大きなダイヤの指輪を持ってきたから買うお」

(;'A`)「え?この前ネックレス買ったばっかりじゃ・・・」

ξ^ω^)ξ「チ○コかじるお?」

(;'A`)「どうぞ買って下さい」

ξ^ω^)ξ「ふふーん♪」

俺を楽しい夢から厳しい現実の世界へ呼び戻したのは妻のブーン姫。
隣の国の13番目の姫だったので、花嫁候補にはあがっていなかったのだが
5年前、嵐のようにやって来て俺に結婚を迫り

ξ^ω^)ξ「結婚しないとこの国にミサイル落とすお?」

そう言ってそのまま居座ってしまった。


18 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:02:37.51 ID:DfwZNmtt0

どうやらそのワガママぶりには、隣の国の国王も手を焼いていたらしく
俺が結婚を拒否したら、本当にミサイルを撃つ覚悟もあったらしい。

そんなことを聞いてしまっては、俺も、もちろん父である国王も国の安全のために
ブーン姫を受け入れるしかなかった。

ブーン姫が来てからこの国は、その贅沢のせいで財政難に陥り
そのワガママのせいで小間使いが300人うつ病になり
その大声のせいで衛兵が400人難聴になり
精神的疲労から国王はツルッパゲになってしまった。

ブーン姫が出て行った隣の国はというと、膿が出た傷口のようにみるみる景気は回復し
長年悩まされてきたゴミ問題が解消され、二酸化炭素放出量が大幅に減り
就職率は100%を越え、ニートがいなくなり
オリンピックに出れば全競技で金メダルを獲得し
国民が海外旅行に行けば、行った先の国でアイドルのようにもてはやされ
女性はみな美人になり、男性はみな強くたくましいイケメンになり
国連'S NON-NOでは『移り住みたい国NO.1』に連続で選ばれるようになった。


19 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:03:03.87 ID:DfwZNmtt0

ξ^ω^)ξ「あーた?なにボケッとしてるお?肩でも揉んでお」

('A`)「あっはい・・・…(なんで俺がこんな目に)」

こういう時、俺はいつもあのバラ園の少女を想い出すのだった。


20 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:03:32.89 ID:DfwZNmtt0

ξ´・ω・)ξ「あら?そちらにいらっしゃるのはどなた?」

バラの陰に上手く隠れたつもりだったのに、俺はすぐに見つかってしまった。
慌てて逃げようとした俺の腕を少女は掴み、とても懐っこい笑顔と可愛らしい声で

ξ´・ω・)ξ「一緒にボール遊びしましょ?」

俺を誘ってきた。
そして俺は至福のひと時を過ごした。

──名前くらい聞いときゃ良かった

それでも、きれいなドレスを着ていたし、王宮の庭に入って遊べるくらいだから
それなりに身分のある姫だったに違いない。
あの日、広間で開かれていたパーティーに出席していた誰かの娘だったのだろうか。
今となってはもう確かめる術もない。


21 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:04:42.93 ID:DfwZNmtt0

ξ^ω^)ξ「あーた?力が弱くなってるお?」

(;'A`)「あっすみません」

あの少女は今どこにいるのだろうか・・・
会いたい。
この現実を捨てて、あの想い出の瞬間に戻りたい。
今すぐにでもここを飛び出して、あの少女を探す旅に出たい。

でも王子であるがゆえにそれも叶わない。
そしてそれは、ついに決定的になってしまった。

ξ^ω^)ξ「うぇぇぇっ ゲロゲロゲー」

Σ(;'A`)「どうしたっ?」

ξ^ω^)ξ「つわりだお、気にしなくていいお」

Σ(;'A`)「ガーン」


22 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:05:17.86 ID:DfwZNmtt0
ブーン姫の懐妊は、たちまち大ニュースになり国中に知れ渡った。
そんなに国民から好かれていたわけではないブーン姫ではあったが
久々のロイヤルベイビーということで国をあげてのお祭り騒ぎになってしまった。

(;'A`)「もう・・・逃げれないよな・・・」

ξ^ω^)ξ「あーた、生まれるお」

  スポーン

Σ(;'A`)「早ぇぇぇぇぇ」

そして俺に娘ができた。


23 名前:【ξ^ω^)ξ姫と('A`)王子】 :2006/03/26(日) 11:06:24.25 ID:DfwZNmtt0

('A`)「こっちにおいでー、ショボ姫」

ξ´・ω・)ξ「ああー、待ってぇ、パパー」

('A`)「はっはっは、ショボ姫は足が遅いなぁ」

可愛いわが娘を抱きしめる。
その体は腕に余りすぎるくらいに小さい。

ξ´・ω・)ξ「パパ大好きー」

その小さい体全体で表現してくれる愛情は、俺にとってかけがえのない宝だ。

('A`)「そして、どこか懐かしい感じで・・・」

俺はもう、あのバラ園の少女を想い出すことはなくなっていた。
過去に縛られなくとも、今が1番幸せなのだろう。

ただ時々、娘の笑顔の奥に、何かノスタルジーを感じる。






ξ^ω^)ξ「ふっふっふ。私にとってもあーたが初恋だったのよ」

遠くでブーン姫が笑っていた。
                      おわり


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