728 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 05:55:55.30 ID:tW9KLcLlO
〜ある嵐の夜、山間の小さな寺にて〜


( ^ω^)「住職、掃除終わりましたお。」
(´・ω・`)「ああ、撫云か。ご苦労様。
      少し飲まんか?
      こんな嵐の日は、風の音で良く眠れんだろうし。」

住職の処梵はそう言うと、
指で輪を作り、酒を呑む仕種をした。


ビュオオー、ザザー…

(´・ω・`)「ひどい嵐だな…
      あの子が死んだ日を思い出す…」
( ^ω^)「独男の事ですかお…
      かわいそうな子だったお。」


730 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 05:57:37.70 ID:tW9KLcLlO
身寄りの無い独男を処梵が引き取ったのは、一年ほど前の事。
しかしすぐに病にかかり、今夜のような嵐の日に、
あっけなく命を落としたのだった。

( ^ω^)「死に場所が寺か…
      皮肉なものだお。」
(´・ω・`)「…あの子に謝らねばならないな。」
( ^ω^)「ご住職のせいじゃないお。」
(´・ω・`)「いや、私は罪深い。
      あの阿弥陀如来様の像の前ではいてもたってもいられないくらい、
      罪深い人間なのだ…」


731 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 06:02:21.73 ID:tW9KLcLlO
チリチリ…
蝋燭の炎が揺らめき、阿弥陀如来を照らす。

(´・ω・`)「一つ、打ち上け話を聞いてくれるか?」
( ^ω^)「なんですかお?」

(´・ω・`)「独男を殺したのは、私だ。」


ザザー…
嵐はますます強くなり、例え今が昼であっても、
一寸先も見えないであろう程…

( ^ω^)「ご住職、何を言って…」
(´・ω・`)「雨月物語を知っているかね?」

唐突に、処梵は言った。


733 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 06:04:32.09 ID:tW9KLcLlO
( ^ω^)「知ってるお…
      確か、子供が死んだ親が、哀しみの余りその子の肉を食べて、
      それ以来その味が忘れられず殺人を繰り返す…
      でも、それが何だお?」

(´・ω・`)「私も同じなんだよ。
      とは言っても、私の場合は『匂い』だがね…」

ガラガラ、ドーン!
轟いた雷鳴に、撫云は身を堅くする。

(´・ω・`)「坊主になって数十年、私は多くの死体が焼ける匂いを嗅いできた。      そして、いつしかその匂いに魅せられてしまったのだよ…」


735 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 06:07:01.32 ID:tW9KLcLlO
処梵の話は続く。

(´・ω・`)「魚、獣…いくら焼いても駄目だ。
      やはり人間の肉が焼ける匂いでなければ…」
( ^ω^)「まさか…住職」
(´・ω・`)「独男が病にかかったのは幸運だったよ。      毒を使って死期を早めても、誰も疑わない…」

ニヤリと笑い、処梵は酒をあおった。

(´・ω・`)「しかし、だ。
      独男をそのまま焼いても、匂いを嗅げるのは一度だけ。
      私とて、何度も人を殺したいとは思わん…」


736 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 06:09:16.55 ID:tW9KLcLlO
( ^ω^)「それで…?」

先を聞かないのもまた恐ろしく、
撫云は促す。

(´・ω・`)「蝋燭に、脂肪が含まれている事は知っているかね?」
( ^ω^)「…」
(´・ω・`)「独男の死体から、脂肪を抜き出すのには苦労したよ。
      苦労したかいあって、蝋燭は最高の出来だった。
      なんとも芳しい香り…」

陶然と、
処梵は息を吸い込む

(´・ω・`)「これで、いつでも香りを嗅げる。
      夜明かりが欲しい時、阿弥陀様に経をあげる時…」


737 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/08(水) 06:12:37.88 ID:tW9KLcLlO
(´・ω・`)「だが、毎日使っているうちに、数も少なくなってくる…
      私は不安だったよ。蝋燭が無くなってしまえば、また香りは嗅げなくなる…」
( ^ω^)「まさか…その蝋燭って…」

処梵は阿弥陀像に目をやり、言う。

(´・ω・`)「そこで燃えているのが、最後の一本だ…
      撫云、一つ頼みがあるのだがね…」

やおら処梵は立ち上がり、
ぎらりと光る物を取り出した。

(´・ω・`)「また私に、あの香りを嗅がせてくれんか?」


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