117 名前:三題噺・あるショボンの独白 :2006/04/30(日) 00:10:46.22 ID:5nz8dFJY0
何不自由なくここまで育ってきた
そんな人間、五万といると言われたら、それまでだ
だが、こういう話をしたら、どうだろう?
誰にも降りかかる苦難、受験
僕は、そこで苦しんだ覚えがまったくない
中高と、推薦ではなく入試を受けたのだが、そこで何か躓いたような感触はなかった
誰にも降りかかる苦悩、恋愛
僕は、そこでも苦しんだ覚えがない
小中高と、恋愛に興味を持てずに、ただただ怠惰に日々をすごしていた
誰にも降りかかる難題、金銭
僕は、そこで苦しみようがなかった
親はある企業の取締役で、小遣いは言うまでもなく、必要ならそれだけの金をくれた
人は自分を見て、こう言うだろう、幸運な人だ、と
それはある意味正しいのかもしれない
だが、それは所詮、ここに立っていない人間の言うセリフだ
誰からも羨まれ、誰にも劣らぬ人生だという自負はある
ただそれは、空虚で、空ろな、がらんどうのブリキに鍍金を施した、見せかけだけの人生
僕は、だから嫉妬した
石ころのような外見に、価値があろうが無かろうが、何でもかんでも詰め込んで、
いつもいつも腹がいっぱいになって、それでも笑っている彼に
彼の名前は―――内藤、ホライゾン
地平の名にふさわしい、どこまでもまっ平らな、人間だった
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