185 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 21:27:13.32 ID:wkSlDa7WO
お題:ひまわり

まだ暑い夏の日の事だった
僕は学校にも行かずブラブラ街をさまよっていた
―――どうせ行っても馬鹿にされるだけだ

そう思って僕はこの何ヶ月か学校に行っていなかった

『ちょっとそこの君』
低い男の声に呼ばれて僕は振り返った


190 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 21:38:35.86 ID:wkSlDa7WO
( ^ω^)「何だお?」
補導員「君高校生?こんな時間に何してるんだ…って待ちなさい!」
僕は逃げた。数分走った所で上手く撒いたか確認し、近くの公園で休む事にした

( ^ω^)「今日も暑いお」
公園には砂場で遊ぶ小さな子供とその母親達、そして散歩中の老人と―――

ξ゚听)ξ「ふぅ…暑いわね…」

―――可愛い
僕は思わずその台詞を口に出しそうになってしまった
僕と同じ年位だろうか、彼女は車椅子に乗って木陰で凉んでいた

ふいに彼女と目が合った


194 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 21:52:07.28 ID:wkSlDa7WO
彼女はこちらに近付いて僕に話掛けた
ξ゚听)ξ「あんた暇そうね、何してるの?」
話しかけられるとは思ってもみなかった
いつも僕は虐げられ馬鹿にされる人間だったから

( ^ω^)「ひなたぼっこだお、君は何をしていたお?」
ξ゚听)ξ「アタシは…散歩よ、散歩」
ξ゚听)ξ「ちょっとアンタ暇なら付き合いなさいよ」
( ^ω^)「何処に行くんだお?」
ξ゚听)ξ「そうねぇ…VIP病院まで押してくれない?」( ^ω^)「う〜ん…」
僕は考えた。
正直、人と話すのは苦手なのだ
出来る事なら関わり合いになりたくはない
だが、その時の僕は少し積極的だった
( ^ω^)「良いお、連れて行くお」
僕達はVIP病院に向かった


197 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 22:14:09.40 ID:wkSlDa7WO
ξ゚听)ξ「そういえば名前聞いて居なかったわね、アタシはツン。アンタは?」
病院に行く道中、彼女が話掛けた
( ^ω^)「ブーンだお」
ξ゚听)ξ「ブーンね、分かったわ」
ちょうど病院の建物が見えてきた
( ^ω^)「着いたお」
ξ゚听)ξ「ありがとう、ちょっとついてきて」
彼女は自分で車椅子を動かすと、病院の庭に案内してくれた
そこは夏らしくひまわりが一面に咲いている
( ^ω^)「綺麗なひまわりだお」
ξ゚听)ξ「アタシの一番好きな花なの、ここには一杯咲いているから」
ξ゚听)ξ「今日はありがとう、良かったらまたここに来て」
( ^ω^)「わかったお、また来るお」
ここで僕は今日一日思っていた疑問をぶつけてみた
( ^ω^)「そう言えば、何で話掛けたんだお?」
ξ゚听)「それは…暇そうだったし、昔好きな人に似ていただけよ」
( ^ω^)「そうかお、まぁまた来るお」
そう言って僕達は別れた


198 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 22:32:33.61 ID:wkSlDa7WO
次の日も病院の庭にツンは居た
話を聞くとツンは病院に入院してるらしい
昨日は勝手に病院を抜け出して看護婦さんに怒られた。
と話していた
その後も僕は彼女の所へ行った
無駄話をしたり、二人で木陰で涼んだりしていた
僕は次第にツンに惹かれていった
そんな彼女と会って一ヶ月経つ頃今日も彼女に会いに行っていた

ξ゚听)ξ「あのねブーン・・・」
急に話を切り出したツンに僕は応えた
( ^ω^)「何だお?」
ξ゚听)ξ「私はもう永くもたないんだって・・・今日先生に言われたわ」

僕は衝撃を受けた。
まさか、そんな―――
( ^ω^)「・・・」
ξ゚听)「段々と自分でも気が付いていたの『もう駄目なんじゃないか、治らないんじゃないか』って」
( ^ω^)「そんな事ないお!ツンは治るお!」
僕は言葉を荒げて言った
ξ゚听)「ありがとうでも私は・・・」
ツンは言い辛そうに一呼吸置いて言った


ξ゚听)「癌なの」


200 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 22:45:05.14 ID:wkSlDa7WO
僕は足元が崩れていくかのような衝撃を受けた

( ^ω^)「そんな・・・」
ξ゚听)ξ「もう末期なんだって・・・」
彼女が何かの病気を患っているのは分かっていた、でも、癌だなんて・・・

ξ;;)ξ「ごめんね・・・」
泣き出した彼女はそう言った
( ;ω;)「僕はずっと側にいるお!ツンとずっと居るお!」
ξ;凵G)ξ「ありがとう・・・ブーン」
僕達は抱き合って泣いた
僕はその後もあの庭で彼女と話した
段々と彼女の体調が悪くなっていくのは解っていたが、気付かない振りをした

そして半月経ったある日・・・


202 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 23:05:30.12 ID:wkSlDa7WO
その日病院の庭には彼女が居なかった
心配になったブーンは病院の中へ入った

僕は受付の女の人に話し掛けた
( ^ω^)「すいません、ツンの病室は何処ですかお?」
受付「ツンさんですか?少々お待ち下さい」
受付の女はそう言うとパソコンのディスプレイに向かった
受付「2階の2016号室です」
( ^ω^)「ありがとうだお」
僕は病室に向かった
彼女の病室に入るとベットの上で窓の外を見ている彼女がいた
( ^ω^)「おはようだお」
ξ゚听)ξ「ブーン!?来てくれたの?」
彼女は嬉しそうに言った
( ^ω^)「庭に居なかったから心配して来ちゃったお」
ξ゚听)ξ「ありがとう…アタシもう外には出られなくて…」
( ^ω^)「気にするなお、毎日来るお」
ξ゚听)ξ「ありがとう…」
それから僕は毎日彼女の病室に行った
一ヶ月位経った頃だろうか

夜僕の家に連絡が来た


205 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 23:31:33.93 ID:wkSlDa7WO
『もしもし、夜分遅くにすいません、ブーンさんのお宅でしょうか』
( ^ω^)「そうですお、どちら様かお?」
『ツンの母ですが…』
( ^ω^)「ツンの?どうかしましたかお?」
『ツンの容態が急変して・・・』
( ^ω^)「本当かお!?今から行くお!」

僕は走った、力の限り走った

数分後病院に着いた僕はそのまま病室に向かった

( ^ω^)「ツン!」
病室を開けた僕は叫んだ
ξ川゚听)ξ「ブー…ン?」
( ^ω^)「ツンしっかりするお!負けるなお!」
ξ川゚听)ξ「ありがとう…でもアタシ…もう…」
( ^ω^)「なに言ってるんだお!僕一緒に居るお!」
ξ川゚听)ξ「ありがとう…ブーン…楽しかったよ…」
ξ川゚听)ξ「ひまわり…また一緒に見たかったな…」
気付けば僕の視界は涙で歪んでいた
( ;ω;)「ひまわりを一緒に見るお!だから生きるお!」
泣いている僕を見て彼女はそっと微笑んだ

ξ川゚听)ξ「泣かないで…ブーン…ありがとう…大好きだったよ…」
( ;ω;)「僕も大好きだお!だから!」
ξ川゚听)ξ「嬉しいよ…あり…が…」
( ;ω;)「ツン!起きるお!目を開けてくれお!ツーーーーン!!」
彼女はそのまま息を引き取った




206 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/09(木) 23:43:22.97 ID:wkSlDa7WO
・・・あれから5年が経つ

僕は何とか高校を卒業し、普通に働いていた
夏の日差しが厳しく、僕は少し汗を書いていた
( ^ω^)「もうすぐだお」
僕は彼女の墓がある霊園に居た
( ^ω^)「見つけたお、ツンの墓だお」
僕は持ってきた線香に火を着け、線香立てにそれを置いた
( ^ω^)「ツン…待たせてすまないお、大好きなひまわりの花を持ってきたお」
僕はひまわりの花束を墓前に置いて礼拝した
( ^ω^)「ツン…あれから僕は大人になれたかお?」
( ^ω^)「僕は…まだ分からないお」
( ^ω^)「また来るお」
僕はツンの墓前に向かって言った
セミの鳴き声が聞こえる、夏がやってきたのがわかる

また次の夏が来たら思い出すだろう
太陽に向かって咲くひまわりの様な、彼女の笑顔を




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