828 名前:( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです :2006/03/19(日) 16:20:45.94 ID:pLUMfvqF0
春。
甘い香りと淡いピンク。
君との思い出。
楽しく辛い記憶。
君のいないこの世界には今。
あの頃と同じ。
桜が咲いています。
――( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです――
今年もまた、春が来た。4月5日。僕は毎年決まってこの日、堤防の桜並木に一人。
周りは花見客で賑わい、とてもにぎやかだ。だけど、僕は一人。
誰とも話さずに、ただ一人。喧騒から逃げるように、一本の桜を眺めていた。
(*゚ー゚) 「綺麗だね〜」
突然。隣で声がした。見ると、小さな女の子が桜を見上げていた。
(*゚ー゚) 「こんなに綺麗なのに、お兄さん、なんだか寂しそう」
僕を見上げて彼女は言った。
829 名前:( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです :2006/03/19(日) 16:21:03.49 ID:pLUMfvqF0
( ^ω^)「寂しい、のかな……。分からないお」
(*゚ー゚) 「何それ、変なの」
少女がくすっと笑った。そのふとした仕草が、僕を過去へ引き戻す。
ξ゚听)ξ「もう、馬鹿ぁ」
微笑む彼女。あの頃と変わらぬままで。
二人じゃれあう、桜の下。
眩しい記憶。
(*゚ー゚) 「おーい。生きてますかー?」
少女の声で現実に帰った。
( ^ω^)「君は、何してるんだお?」
(*゚ー゚) 「私? 私は、お花見。お兄さんは?」
( ^ω^)「僕は……」
僕はそこで一息ついた。僕はここに何をしに来ているのか。
答えは明白だ。多分。
( ^ω^)「僕は多分、自分の馬鹿さ加減を思い出しに来てるんだお……」
830 名前:( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです :2006/03/19(日) 16:21:40.28 ID:pLUMfvqF0
少女はきょとんとする。それから、首をかしげて何か考えているようだった。
(*゚ー゚) 「なんだかよく分からないけど、お兄さん。こんな綺麗な桜の前で、そんな後ろ向きに考えて虚しくない? もっと、楽しもうよ」
( ^ω^)「無理だお。僕にとってこの桜は――」
僕は先の言葉を続けることができなかった。吹き抜けた風に、懐かしいにおいを感じたから。
舞い散る桜に混じって、春の香り。ツンの、暖かい匂い。
僕は少女を見た。彼女は不思議そうに僕を見ている。
( ^ω^)「この桜には、辛い思い出ばかりだお」
そう、この桜には思い出しかない。思い出そうと思っても思い出せないくらい、一杯の。
僕にとって宝物のような木。だけど。
(*゚ー゚) 「思い出っていいものよね。ステキで、輝いていて。だけど、それだけじゃない?」
( ^ω^)「分かってる。分かってるんだお……」
(*゚ー゚) 「過去は戻ってこないわ。後戻りのできる道なんて無いの。生きてる限り、先へ進まなきゃ」
( ^ω^)「僕は、僕は……」
(*゚ー゚) 「過去を消すことはできない。でも戻ってもこない。人は皆、過去を背負って生きていくの」
( ^ω^)「ツン……」
(*゚ー゚) 「残酷よね。人間って、そう言う生き物なのよ。今のお兄さんを見たら、思い出たちはがなんて言うと思う?」
831 名前:( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです :2006/03/19(日) 16:22:00.31 ID:pLUMfvqF0
僕の脳裏には、桜の下の二人が。
ツンが怒って、僕が謝る。僕が泣いて、ツンが慌てて。
最後には、二人で笑っていた。
(*゚ー゚) 「お兄さんは、辛い過去から逃げてるだけじゃない?」
図星、だった。
こんな小さな少女に説教されている自分が情けなかった。
こんな小さな少女に言われるまで気づかなかった自分が情けなかった。
そして何より。
この期に及んでこんな小さな少女とツンを重ねてみてしまっている、自分が情けなかった。
気が付くと涙が出ていて。
止めようとしても止まらなくて。
少女がそれをぬぐってくれた時。
やっぱり彼女は、ツンに似ていると思った。
そう思うと余計に涙が止まらなくて。
泣きじゃくる僕に少女は何も言わず、ただそこにいてくれた。
( ;ω;)「僕、僕……もう二度とここには来ないお……がんばって、生きるお……」
少女が微笑んだ。
(*゚ー゚) 「それでいいの。がんばってね。あなたは、一人じゃないから。それだけ忘れないで」
( ;ω;)「ありがとう……ありがとう……」
幾らお礼を言っても足りなかった。何度も何度も繰り返して。最後のほうはもう、言葉になってなかったけれど。
しばらくして、少女は去っていった。僕はその背中を見つめながら、最後にもういちどありがとうと呟いた。
832 名前:( ^ω^)ブーンがツンを思い出しているようです :2006/03/19(日) 16:22:18.94 ID:pLUMfvqF0
空は雲ひとつ無い青空で、太陽がまぶしくて。
見上げた桜はひらひらと。
世界が輝いて見えた。
春。
甘い香りと淡いピンク。
君との思い出。
楽しく辛い記憶。
君のいないこの世界には今。
あの頃と同じ。
桜が咲いています。
完
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