358 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:49:19.23 ID:dVbU6mg/O
僕はショボン。
今となっちゃクラスとかはもういらないよね?

この部屋を取り巻く嫌な気配に気付いているかい?
もう、遅いのかな…。
僕らみんな消えるのかな?

いや、恐くない訳ないじゃないか。
もちろん怖いよ。
恐くてどうにかなってしまいそうだよ。

しいていうなら恐いモノ見たさ、かな。
このまま、話を続けていったらどうなってしまうのか…。
僕は気になってしょうがないんだよ。
で、これから話すのは、そんな話さ。



359 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:50:19.78 ID:dVbU6mg/O
内藤君、君は肝試しをした事があるかい?

それはあんまり感心しないなぁ。
まぁ、今日みたいな事があっちゃもう肝試しをする事なんてないよね。
…おや、内藤君。様子がおかしいよ?
トイレに行きたいんじゃないのかい?

そう?
我慢は体の毒だよ?
ま、いいや。

昔、この学校に肝試しをしに忍び込んだ生徒が居るんだ。
彼らは俗に言うオカルトマニアでね。

『学校の七不思議を解明する』

なんてスローガンを掲げていたみたい。

さぁ、何で夜中なんだろうね?
彼らも恐いモノ見たさに取り憑かれていたんじゃないかな?



360 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:51:23.69 ID:dVbU6mg/O
彼らが今回扱っていたテーマは…なんだと思う?

そう、七不思議の代表格、【トイレの花子さん】さ。

『旧校舎二階北女子トイレの奥から二番目。
中から三回のノックで花子さん、と呼び掛ける。』

それが七不思議の内容さ。
確かに不思議だよね?
ここには、花子さんに出会う事が含まれていないんだよ。
その事の解明の為に彼らは学校に忍び込んだ。

旧校舎の廊下は老朽化の為にギシ…ギシ…と夜中の学校に響くんだよ。
そんな中を歩くなんて、想像するだけでゾクゾクしないかい?

程なく彼らはトイレに着いた。
でも、トイレの中には、誰も入ろうとはしなかったんだ。
さすがに恐かったんだろうね。
そんな時、勇者が名乗り出たのさ。
責任もあったのかな?
なにしろ彼は今夜の提案者だったんだ。


362 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:53:19.57 ID:dVbU6mg/O
トイレの中に入り、鍵を閉めると、外界から遮断されるのがよく分かるね。
誰も何も喋らなかったよ。中から、ノックのを三回。

コン、コン、コン。

『は〜なこさ〜ん』

震えた彼の声は自分の声とは思えなかった。

…何も起きない。

軽い失望と、大きな安堵感と共に、彼はトイレから出た。

そこで待っていたのは、誰も居ないという現実さ。


364 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:54:31.20 ID:dVbU6mg/O
彼は慌ててトイレの外に出た。
もしかすると仲間達が笑いながら迎えてくれるかもしれない。そんな事を考えながらね。
そんな彼の期待はあっさり裏切られたんだけれど。
彼は半狂乱になって学校中を捜し回ったんだ。
その時さ、彼を嘲笑うように、女の子の笑い声が聞こえたのはね。

恐る恐る振り返った彼の視線の先に居たのは…花子さん、だった。
おかっぱ頭、赤いスカートに白いブラウス。
ただ一つ違うのは、顔に仮面を被っていた事。

そこから彼の記憶は途切れている。
目覚めた時は、…病室の中さ。
旧校舎でケタケタ笑っている所を発見されて、保護されたらしい。
これで僕の話は終わり。

ところで内藤君、トイレに行きたくはないかい?
僕はさっきから我慢しっぱなしなんだけど。



365 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:56:59.29 ID:dVbU6mg/O
「ショボンさん、もしかしてあなたは…」

僕は気になっていた事をショボンさんにぶつけようとしたが、それは叶わなかった。

「そんな事は後、後。
さぁ、早くトイレに行こうじゃないか」

まぁ、僕もトイレには行きたかったとこだし、いいだろう。

「わ、私も行くっ」

慌てて女子生徒も立ち上がった。

「こ、恐い訳じゃないんだからねっ」

聞いてもいないのに理由をまくしたてる彼女に僕は思わず笑みを浮かべる。
ずいぶん久しぶりに笑ったような気がするな…。




366 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 20:58:31.68 ID:dVbU6mg/O
「内藤君、早くー」

ショボンさんが巨体を揺らしながら僕達を急かしてくる。

「さぁ、行くお」

僕と女子生徒はごく自然に手を繋いだ。

彼女の手は、汗でびっしょりだ。

「あ、暑いだけよ!」

「何も言ってないお…」

ショボンさんを先導に僕らは連れ立って夜の校舎を進んでいった。
いつのまにか雲は晴れ、満月が大きく辺りを照らしている。

…おかしい。
トイレに行くのに、これほど長く歩かなくてもいいはずだ。
女子生徒も異変に気付いたのか、繋いだ手に力を込めている。




367 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 21:02:17.15 ID:dVbU6mg/O
「ショボンさん…一体何処に行こうとしてるんですかお?」

僕は意を決してショボンさんに尋ねた。

「トイレさ」

ああ、ショボンさんは、あのトイレに行こうとしているんだ…。




368 :五人目(´・ω・`):2006/04/04(火) 21:03:27.78 ID:dVbU6mg/O
僕とショボンさんは今、トイレの前にいる。
女子生徒―ツン―は外で待機している。

「それじゃ、僕が入るよ」
ショボンさんは中に入り、鍵を掛けた。

ノックが三回。
そして。
…何も言ってこない。

「どうしたんですかお!ショボンさん!」

僕は扉を叩こうとしたが、その前にカチャリと鍵が開く音がした。

ゆっくり扉は開いたが、そこにショボンさんの姿はなく、代わりに…。

僕は自分が確認する前にツンと逃げ出してしまった。
白い仮面が脳裏に焼き付いている。

五人目終了。
空席は六つ。

六人目ξ゚听)ξ


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