189 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:42:49.79 ID:w2LlQKwM0
ツンの息吹はどんどん小さくなっていく。
赤に染まった服は最初からその色だったかのように、鮮やかで、すべてが赤かった。
( ^ω^)「ツン、死なないでお! すぐ病院に連れて行くお!」
ξ゚听)ξ「ブ……ン、丘に……あの、丘に……連れてって……」
( ^ω^)「もういいお! しゃべるなお!」
ξ゚听)ξ「ブーン……もう、気付いてるんでしょ……?
自分を誤魔化さないで……あたしのこと、ちゃんと……見て……」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚听)ξ「ねぇ、連れて行って……あの丘に……」
( ^ω^)「…………わ、わかったお……」
病院に向かっていた足を、丘へ向けた。
こんなに走ったのに、まだ全然疲れていない。
それもそのはずだ。
ツンの体は、もうほとんどの重みを無くしていた。
ツンを抱きかかえ走りながら、僕はふと昔を思い返した。
ツンの言うとおり、僕はすべてを思い出していた。
ツンとの出会い。ツンの存在。ツンとの想い出。
あれは僕たちが中学生になりたての頃だった。
191 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:43:46.91 ID:w2LlQKwM0
ある日、ショボンが突然こんなことを言い始めた。
(´・ω・`)「この町に、可哀想な女の子がいるんだ」
('A`)「あ? いきなりどうしたんだ?」
(´・ω・`)「新しい遊びさ。まあ黙って聞きなよ。
女の子には友達がいなくて、いつも一人ぼっちなんだ。
可哀想だろ?」
( ^ω^)「一人ぼっちだお? それは可哀想だお!」
('A`)「まぁ、幸せなわきゃないだろうな……」
(´・ω・`)「うん。僕もそう思う。
だから、僕たちはその子と友達になるんだ。
そしてその子は僕たちと一緒に、ずっとずっと一緒にいるんだ」
('A`)「まぁ、いいんじゃねえかな」
( ^ω^)「うんうん、僕も賛成だお!」
(´・ω・`)「僕たちはこの丘で、永遠の友情を育むことを誓う。
その女の子の名前はツン。
ツンの笑顔は夏の向日葵のようで、見るものを優しい気分にさせる。
でも怒るとちょっと怖い。
個性豊かな可愛い子だよ」
('A`)「ツンか……、で、ツンはどこにいるんだ?」
( ^ω^)「今すぐ会いに行くお! 友達になるお!」
(´・ω・`)「ここにいるよ」
そう言って、ショボンは自分の胸をトントンと親指で示した。
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「バーボン?」
(´・ω・`)「違うよ」
192 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:44:21.72 ID:w2LlQKwM0
ドクオはやれやれとでも言いたそうに、頭を抱えた。
('A`)「ショボン、お前頭いいのに、俺たちと一緒にいるせいでバカになったんだな。
ごめんなショボン。でもまぁそのほうが俺らと付き合うにはふさわしいんだけど」
(´・ω・`)「いやいや。本気だよ。
新しい遊びだって言ったじゃないか。
僕たちはその子と一緒に遊ぶんだ。
他のどこにもいない、たった一人だけの女の子だよ」
( ^ω^)「僕はその遊び、やってみたいお」
('A`)「えー? 何言ってんだよ。これは妄想だぞ?
寂しい幻想。現実じゃないんだぞ」
( ^ω^)「現実じゃなくても、たとえ妄想でも、
その子がいる限り、僕たちはずっと一緒な気がするんだお。
僕たちが大人になって離れ離れになっても、
その子が僕たちの中に居続ける限り、ずっと仲良くやっていける気がするんだお!」
(´・ω・`)「よしよし、特別にブーンには『ツンに好かれている』という設定をあげよう」
( ^ω^)「え?! 本当だお?! 嬉しいお!」
('A`)「お前、これは……」
(´・ω・`)「ドクオ、君はどうするんだい?」
('A`)「正直気が乗らねえなぁ……」
( ^ω^)「ドクオ……」
('A`)「でも、気は乗らねえが、さっきショボンが言った、
『ツンが居続ける限り、俺たちはずっと一緒にいれる気がする』……。
これにはちと賛成だな。
だから、俺も一応乗ってやってもいいぜ」
(´・ω・`)「さすがドクオ」
('A`)「けなしてんのかそれ」
(´・ω・`)「褒めてるんだよ。
じゃあツンに自己紹介しよう。
僕の名前はショボン、趣味は――」
193 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:45:00.54 ID:w2LlQKwM0
こうして、僕たちとツンは出会った。
ツンは確かに僕たちの空想の世界の女の子だった。
だがそれと同時に、僕たちの大事な友達になった。
この自己紹介で、僕たちは新たに互いのことを知った。
ショボンは自分がバイだと暴露した。
ドクオはフィギュア製作が趣味だということを告白した。
そして僕は、小学6年生までおねしょをしていたことを話した。
ツンは、出会ったその瞬間から、僕たちの絆を深めてくれた。
それからは、僕たちはいつも4人で遊ぶようになった。
('A`)「今日は山に登ろうぜ。あそこの頂上から見える景色がホント絶景でさ」
(´・ω・`)「おいおい、ツンは女の子だぞ。僕たちでさえきついのに、
女の子のツンに山登りなんかさせるつもりか?」
( ^ω^)「そうだお、ひどいおドクオ!」
('A`)「そ、そうだったな……悪かったな」
(´・ω・`)「謝るべきは、僕らじゃないだろ。
ツンに謝るんだ」
('A`)「ああ、ツン、ごめんな」
( ^ω^)「それじゃあ川に行くお! 今日は暑くなるらしいから、きっと気持ちいいお!」
(´・ω・`)「ああ、賛成だ」
('A`)「俺もー。……ツンもそれでいいか?」
――「まあいいけど。変なこと考えないでよね!」
194 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:45:22.56 ID:w2LlQKwM0
('A`)「テスト15点……」
( ^ω^)「ドクオはバカだお」
('A`)「うっせー。そういうショボンは何点なんだよ」
( ^ω^)「僕は0点だお」
('A`)「お前のほうがバカじゃん」
( ^ω^)「そうでもないお。○の数はドクオより多いお。
ただ名前書き忘れちゃっただけだお」
('A`)「名前書き忘れるのはバカを超えてるんだと思うけど……」
( ^ω^)「ショボンは何点だったお?」
(´・ω・`)「僕は100点だったよ」
('A`)「……なんで俺らとつるんでるんだろうな……」
( ^ω^)「ツンは何点だったお? もしかして、僕たちと同じくらいだお?」
――「あたしをあんたたちと一緒にしないでよね! 85点よ、文句ある?」
( ^ω^)「すごいお! ツン頭いいお!」
――「ば、バカ! あんたに褒められても、ちっとも嬉しくないんだからね!」
195 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:46:06.46 ID:w2LlQKwM0
('A`)「おいツン」
――「なによ」
('A`)「今日はバレンタインだぜ」
――「そ、それがどうしたのよ!」
('A`)「チョコくれ」
――「だ、誰があんたなんかに!」
( ^ω^)「僕も欲しいお!」
(´・ω・`)「同じく欲しいな」
('A`)「ブーンはともかく、ショボンは何個かもらってたじゃねえか!
クールで知的って女子から人気があるくせによ!」
(´・ω・`)「あんなやつらのチョコなんかいらないよ」
( ^ω^)「余裕のある発言だお……」
(´・ω・`)「あげるのが女の子だけってのが納得いかないよね。
おいドクオ、ブーン。僕にチョコくれよ。本命」
('A`)「……おいその本気そうな目で見るのやめろ」
(´・ω・`)「冗談だよ冗談」
( ^ω^)「ショボン、目が本気だお……」
('A`)「ああ……」
(´・ω・`)「ふふ……」
196 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:46:34.29 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「で、ツン、チョコくれお!」
ξ゚听)ξ「な、ないわよそんなもの!
第一チョコレートなんて、お菓子会社が売り上げ上げるために宣言してるだけじゃない!
そんなに踊らされちゃ、ダメね」
( ^ω^)「でも欲しいお! ツンのチョコ欲しいお!」
ξ゚听)ξ「そ、そんなにせがまれても……。
い、いつかプレゼントあげるから、ね? それで我慢してよ」
( ^ω^)「プレゼント? なんだお! 気になるお!
わかったお! ずっと待ってるお!」
ξ゚听)ξ「……」
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