621 名前:爆発した+生物兵器 :2006/05/05(金) 03:32:50.18 ID:/v+fId3W0
( ^ω^)「……ツン、ごめんお。やっぱり僕には無理だお」
ξ゚听)ξ「……そう」
( ^ω^)「さよならだお」
ξ゚听)ξ「……」



時は遡ること半年程前。
ブーンとツンが遊園地でデートをしていた時である。

ξ゚听)ξ「ブーン、その……ちょっと先に行ってて」
( ^ω^)「お? どうしたんだお?」
ξ゚听)ξ「いいから!」

ブーンの手を離しどこかへと駆けて行くツンを、ブーンは何事かと追おうとしたが一歩踏み出し
たところで用を足しに行ったのだろうと気付いて追うのをやめた。

(;^ω^)「これ以上叩かれたらきっと若年性アルツ……アルツなんとかになっちゃうお」

かと言って本当に先に行くわけにもいかないので、ブーンはその場で適当に携帯なんかをいじり
ながら時間を潰した。しかし待てど暮らせどツンは全く帰ってこない。
日が暮れて誰も居なくなった遊園地を追い出され、がら空きのツンのアパートに上がり思いつく
場所すべてに電話しても彼女は見つからなかった。



623 名前:爆発した+生物兵器 :2006/05/05(金) 03:33:21.61 ID:/v+fId3W0


翌日、結局そのままツンの部屋で一夜を過ごしたブーンの隣に彼女が居た。
寝息が聞こえるかどうかもわからないほどに繊細に感じられたツンを見て、ブーンは少し涙した。
よかった、なんてことは無い日常だったんだ。後はツンが起きて、少し照れながら僕に事情を説明
してくれるんだ。ブーンはそう胸を撫で下ろし朝食の準備に取り掛かった。

しばらくして食卓に食べ物が並び始めた頃、ツンが小さく唸りながら目を覚ました。
ブーンはそれを確認すると食パンをトースターにセットしてツンの元へと向かった。

( ^ω^)「ツン、朝だお。ご飯が冷める前に起きるお」
ξ゚听)ξ「ん……ブーン? ……私ちょっとトイレ」
( ^ω^)「お」

そういえば家ではトイレに行く、と言うのにデートをしてる時は聞いたことが無い。
そんなことを考えながら食パンの勢いよく飛び上がった音を聞いて、ブーンはキッチンに戻った。

そして彼女は、また居なくなった。



624 名前:爆発した+生物兵器 :2006/05/05(金) 03:34:03.20 ID:/v+fId3W0

それから半年が過ぎた。
冷蔵庫に取っておいた朝食も、とっくに駄目になって捨ててしまった。
出来る限りの事はした。足が棒になるまで町中を探した。警察にも届けた。勿論今だって
どこかへ探しに行こうとしている。
でも、同時にこの部屋から離れられないでいるのもまた事実であった。中途半端に掛け布団が
めくれ上がった布団を見るたびにツンを意識する。この前も夜が明ければ隣に彼女がいた。
きっと明日の朝になれば彼女はまた帰ってくる。そしたらもう僕は彼女を離さない。
そう思い続けて何回目の朝だろうか。
きっともうすぐあのドアを開けてツンが帰ってくる。そう考えると、どうしてもこの部屋を出ることが
出来ないのだ。

うとうととし始めた午後10時頃、不意に玄関の扉の音が聞こえた気がしてブーンはとび上がった。
駆けつけてみるとそこには間違いなくツンが居た。
ほら見ろ、やっぱり僕の思ったとおりだ。そうブーンは一人頷いた。
そして溢れんばかりの笑顔でツンの手を取ろうと近寄ったのだが、ツンはそれを咄嗟に拒否した。

ξ゚听)ξ「やめて……近寄らないで、ブーン」
( ^ω^)「お? 大丈夫だお、さっきトイレから出た後ちゃんと手を洗ったお」
ξ゚听)ξ「違うの……お願いだから近づかないで」
( ^ω^)「大丈夫だお、僕は怒ってないお。僕はツンが帰ってきてくれれば――」
ξ゚听)ξ「お願い……やめて……」

そしてツンはその場に泣き崩れてしまった。
――そう、文字通りに泣き、崩れてしまった。


625 名前:爆発した+生物兵器 :2006/05/05(金) 03:34:39.05 ID:/v+fId3W0
(;^ω^)「ッ!」

寝不足の所為で幻覚でも見ているのか、これが幻覚ならば僕の頭はむしろ酷くクリエイティブだ。
あんなもの、この世のどこでも見たことが無い。気体が液体になっているような、酷く曖昧な白い
何かが僕の足元を漂っているのだ。

何か「ブーン、あのね、私爆弾になったんだって。生物兵器って言うらしいんだけど」

何かが僕に話かけてきた。爆弾は危ない。僕は逃げればいいのだろうか。
目の前の何かはゆっくりと凝縮し始め、ツンの顔を成し始めた。

ξ゚听)ξ「馬鹿みたいな話だけど、こんな馬鹿みたいな体見たなら信じられるんじゃない?」
(;^ω^)「……」

コイツはツンなんだろうか。僕のツンは、華奢だけどやわらかい腕があって、小さいけれど魅力的な
胸があって、暴力的だけどしなやかな足があって、素直じゃないけれど優しい心があって……。

ξ゚听)ξ「だから、どこかに行って。……出来る限り遠くに。こんな話信じられないならそれでもいい。
      逃げて。ここに気持ち悪いものがあるんだもん、早く逃げなさい」
(;^ω^)「おっおっおっ……」

僕のツンは、僕は、僕には――

ξ゚听)ξ「けっこう爆発まで時間無いけど大丈夫。私、爆発よりも細菌がメインだしあなたが飛行機
      に乗るくらいまでなら我慢できるわ。でも、もし……これは私のわがままなんだけど――」
( ^ω^)「……ツン、ごめんお。やっぱり僕には無理だお」


626 名前:爆発した+生物兵器 :2006/05/05(金) 03:35:32.57 ID:/v+fId3W0
僕は話を遮ってそう言った。何を言おうとしたかは勿論わかる。
全く無理な話だ。僕には出来ない。怖すぎるんだ。足はガクガク震えて、胸は苦しいんだ。
全然理解できないんだ。僕だって一人の人間なんだ。自分勝手だと言われたって構わない。

ξ゚听)ξ「……そう」
( ^ω^)「さよならだお」
ξ゚听)ξ「……」

だから、そんなものからはさよならしてしまえ。
僕は震える声をなんとかおさえて、ゆっくりと言った。

( ^ω^)「怖すぎるんだお……ツンが居ない世界なんて……だから、さよならするお。」

そして僕は彼女を、今にも泣き出しそうに震えるツンを抱きしめた。

ξ゚听)ξ「……なんで?」
( ^ω^)「もう離さないお……次逃げ出したらさすがの僕も怒るお」
ξ;;)ξ「やめてよ……ひどいよ、ブーン。……ごめんね」

たしかに肌を伝わって全身にツンが感じられた。そうだ、僕が間違えるはずが無い。
もう絶対に離さない、爆発したって僕の腕からは逃がさない。他の奴がツンに触れるなんて絶対に
許すものか、一粒もツンを逃がすものか。もう離さないって、決めたんだ。

そして僕たちは抱き合った。爆発なんかよりももっと情熱的に、その時が来るまで、ずっと、ずっと――


−終−


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