162 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:21:56.04 ID:w2LlQKwM0
数日経ったある日、今度は山へ行った。

( ^ω^)「頂上は見晴らしがいいからって……はぁはぁ……
       何もこんな暑い日に……登らなくても……」
('A`)「ま、まったくだ……しくじった……」
ξ゚听)ξ「何よあんたたち! 男なんだからもっとしゃきっとしなさいよ!」

最初からずっと駆け足で先を行っていたツンが、僕たちを叱咤した。
ツンはまだ、この頂上からの景色を見たことがないのだという。
僕もまだ見たことがなかった。
ドクオは見たことがあり、すごい綺麗で、一度は見ておいたほうがいいというので、
ドクオの案内で行くことになった。
まあこの暑い日に山なんかに登りたくないと、当のドクオは嫌がっていたのだが。

('A`)「ツ、ツンは……ホント元気だな……」
( ^ω^)「ま、まったく疲れてないように、見えるお……」

事実、ツンは全く息切れもしておらず、あせもかいていなかった。
どれだけ元気なんだろうと、僕は呆れを通り越して感心してしまった。

ξ゚听)ξ「なにぶつくさ言ってんのよ。早く行くわよ!」
('A`)「鬼か……」
( ^ω^)「邪悪……」

こうして僕らは、何度もツンに叱られながらも、ドクオの言う頂上にたどり着くことが出来た。

( ^ω^)「綺麗だお……」
ξ゚听)ξ「綺麗……」
('A`)「だろ」



163 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:22:36.28 ID:w2LlQKwM0
そこから見える丹生速の景色は、なんと言うか、壮大で、荘厳で、でも温かいものに包まれているような

……

( ^ω^)「言葉にできないお……」
ξ゚听)ξ「うん……」

力なく垂れた指先が、ツンの指に触れた。
ドクオには悪いと思ったが、躊躇いがちに、僕はツンの手を握った。
ツンは一瞬びくりと体を反らしたが、しだいに、繋いだ僕の手を強く握ってくれた。

('A`)「……」

ふとドクオの顔を横目で見ると、ドクオと目が合った。
しまった、と思い、繋いだ手を離そうとしたが、
ドクオは小さく微笑み、首を横に振った。

( ^ω^)「ありがとう……」

ドクオは顔を赤らめながら、照れ笑いをした。

( ^ω^)「僕、ここから見たこの景色、絶対忘れないお。
       また来ようお。今度はショボンも一緒に」
('A`)「ああ、もちろんだ」
ξ゚听)ξ「うん」

結局夕日が山々の隙間から登ってくるまで、僕らはそこにいた。


165 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:24:25.80 ID:w2LlQKwM0
「……いいのか君は? それで、本当にいいのか?」
「……いいとは思わんさ。でもな、このほうが、あいつのためにもなるかもしれないし」
「君のためでもあるかもしれない、か」
「……そうだ、悪かったな」
「本当にいいのか?」
「何がだ」
「これが俺なりの決別だって、煙草吸い始めたんだろ」
「……」
「……ずっと、子供のままで入れたらな……」
「……ああ」
「……換気、悪いぞ。扇風機で追い出せよ」
「ああ」
「……諦めない。ずっと子供のままで居られるわけがないんだ……」



166 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:25:15.54 ID:w2LlQKwM0
それから幾日か経った。
相変わらず僕たちは、毎日のように一緒に遊んだ。
変わらない毎日が楽しかった。
ツンと居られることが嬉しかった。
この毎日をもう二度と失くしたくない。
失くすことの怖さは、もう知ってしまったから。

あるとき、僕の家のポストに手紙が届いた。
送り主はどこにも書いてなかった。
消印もなかったので、直接ポストに投函したものらしい。
中の手紙を読んでみた。

『僕たちの町に、可哀想な女の子がいた。
 誰も友達がおらず、いつも一人ぼっちだった。
 僕たちはその子と友達になってあげることにした。
 明るく、でも時々憂いの翳りを見せるその子が、僕たちは大好きだった。
 その子の名前は』

( ^ω^)「なんなんだお、この手紙は」

童話か何かだろうか……。
重要なところで、何故か唐突に途切れているが、しかしこの話、どこかで聞いたことがある……。

( ^ω^)「いつ聞いたんだっけお」



167 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:27:23.32 ID:w2LlQKwM0
しかし思い出せない。
記憶の根底にあるような気はする。
でもそれは、本当は知っていた漢字が突然思い出せなくなるような感覚に似ていた。
こういうときは無理に思い出さなくても、後々気付けば思い出していることを、僕は感覚的に知っていた

なので今は無視しておくことにした。

( ^ω^)「それにしても、誰からの手紙だお」

僕には、まだ分からない。


いつものように、僕たちはまた一緒にいた。

ξ゚听)ξ「ごほっごほっ」
( ^ω^)「ツン、大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「変ね、夏風邪かしら……」
( ^ω^)「夏風邪はたちが悪いお。大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「あ、あんたに心配なんかしてもらわなくても、だ、大丈夫よ!」

僕は少し考え、そして言った。

( ^ω^)「……今日は、ツンの家に行くお」
ξ゚听)ξ「え、あ、あたしんち!?」
('A`)「お、おいおい、いきなりはまずいだろ。それに女の子んちに行くのは、なぁ?」
( ^ω^)「行ってみたいお。見てみたいお。
       それにツン調子悪いお。あんまり連れまわすのはいくないお」
('A`)「お、おいブーン」
ξ゚听)ξ「い、いいわよ……」
('A`)「え!?」


168 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:28:10.62 ID:w2LlQKwM0
ξ゚听)ξ「こっちよ」
( ^ω^)「やったお、ツンの家だお」
('A`)「……」

ツンの家。どんな家なのだろう。どこにあるのだろう。
この丹生速にあるのは間違いないだろう。
案外丹生速は狭い。
だから、もしかしたら、今まで僕が通ったことがある道にあるのかもしれない。

僕は一歩、また一歩ツンの家に近づいていることに、ドキドキした。


しばらく歩いた。

( ^ω^)「ま、まだかお……」
('A`)「……疲れた」
ξ゚听)ξ「本当は近いんだけど、その道、なんか工事してるから」
( ^ω^)「工事の馬鹿野郎……」

またしばらく歩いた。

( ^ω^)「喉渇いたお……」
('A`)「山なんかより、ずっとハードだぜ……」
ξ゚听)ξ「あれ、おかしいわ……迷ったのかしら……」
( ^ω^)「えっ!?」
('A`)「……」
( ^ω^)「この狭い町で自分ち帰るのに迷うってどういう了見だお!」
ξ゚听)ξ「なんでだろ……おかしい……」


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