287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 04:06:12.51 ID:wLqwRmrL0
( ^ω^)ブーンがバス停で出会ったようです。
ある日のこと。
突然降り出した雨を体で受けながら、内藤は一人、雨空の下を駆けていた。
背負う鞄が大きく揺れる。
揺れる度に内藤の背中を軽く、たまに強く打つ。
( ^ω^)「どこかに雨宿りするところはないかお……」
しかし、そこには家はおろか、小屋すら見当たらない。
内藤が走ってきた車一台半ほどのひらけた道は、ここ2時間車も人も見かけなかった。
それほどの田舎。
まったく舗装されていないこの道は、今では雨でぐしゃぐしゃになっていた。
轍はぬかるんだ大地に掻き消され、今では内藤の道程を表すだけの道となった。
足がつく度、内藤の足は土色に変わり、地の触感を失くしていく。
( ^ω^)「結構ひどい雨だお……」
そろそろ疲れてきた。足も冷たくなり、感覚があまりない。
出来れば屋内で雨宿りがしたいところだが、
仕方ないのでその辺の木の陰にでも駆け込もうかと悩んでいた時、
遠くに、小さなバス停小屋らしきものが見えた。
( ^ω^)「助かったおー」
内藤は全力で走った。
鞄の中の物がこれ以上濡れることを恐れたのもあるが、
それ以前に、何よりこの雨の責め苦から逃れられることが嬉しかった。
288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 04:07:13.27 ID:wLqwRmrL0
バス停小屋の中を覗く。
もちろん電気などあるわけがなく、中は暗く、誰もいなかった。
外よりも薄暗い小屋の左右の壁に固定されたベンチがある。
内藤はそのベンチの一番奥に座った。
( ^ω^)「……一人、かお」
一人では広すぎる小屋。
雨から逃れることが出来てほっとしたのも束の間、内藤は誰も居ないこの小屋に
一人でいるということを実感すると、何故だか少し寂しくなった。
( ^ω^)「別に今までだって一人だったじゃないか……」
そうだ。
僕は今まで一人で生きてきた。
この目に見える囲いの中で、誰も居ないことに寂しさを感じるなんて、
もう捨ててきたことじゃないか。
今更後悔なんて、あるはず――
「……あーもう髪がぐっしゃじゃない! 雨のバカ!」
遠くから女の小さな声が小屋の外から聞こえてきた。
次第に泥をはねる力強い足音も大きくなってきた。
その足音が一番大きくなったとき、小屋の外に女の姿が見えた。
ξ゚听)ξ「あ、人がいる。お邪魔していいわよね、入るわよ」
内藤の答えも聞かず、女は遠慮なしに上がりこんできた。
髪が、荷物がと小さく愚痴をこぼしながら向かいのベンチに座る女。
291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/12(日) 04:08:29.51 ID:wLqwRmrL0
ξ゚听)ξ「あんたも、雨宿りのくち?」
突然声を掛けられ、内藤は焦った。
人と口を利くのは久しぶりのことで、何と返せばいいのか分からなくなった。
ξ゚听)ξ「ん、あんた話せないの?」
( ^ω^)「い、いや、話せるお」
ξ゚听)ξ「なんだ、あたしが聞いてんのにさ、何も言わないから、口が利けないんじゃないかと思ったわよ」
( ^ω^)「ご、ごめんお。人と話すの久しぶりで……」
ξ゚听)ξ「人と話すのが久しぶり? あんた、もしかしてヒキコモリ?」
( ^ω^)「ち、違うお! ヒキコモリがこんな何もない田舎のバス停にいるわけないお!」
ξ゚听)ξ「じゃあ何なのよ」
( ^ω^)「むしろ、逆だお。ヒキコモリじゃなくて、旅してるんだお」
ξ゚听)ξ「旅?」
女は驚いたような顔をし、内藤の顔や風体、荷物などを見回す。
内藤はその女の視線から逃れるように俯き、身を小さくした。
ξ゚听)ξ「……なんで旅なんかしてんのよ」
訝しげに聞いてくる女。
女には遠慮というものが無いようだ。
僕とは正反対の生き物……内藤はそう思った。
( ^ω^)「……僕は、一人なんだお」
ξ゚听)ξ「え……?」
( ^ω^)「僕には親も、友人もいないんだお。気付いたら一人だったんだお」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「家もない。帰るところもない。僕のことを覚えている人間も、いないかもしれないお」
ξ゚听)ξ「……」
その2へ
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