44 名前:1/5 :2006/01/13(金) 03:45:58.07 ID:sA77AHVL0
まだ冬の寒さが若干残る、3月のある日のこと。
小さな田舎村の、でこぼこな砂利道を1人の少女が歩いています。
彼女…ツンはこの村の住民で、隣町での買い物を終え家に戻るところでした。
ツンは、生まれつき足腰が弱く、普段は家に閉じこもりがちな少女でした。
ξ゚听)ξ「あれ。誰か倒れてる…?」
ツンは、びっくりしました。
ξ゚听)ξ「もしもし。しっかりしてください!」
不安に狩られながら倒れている男を揺り動かすと意識はあるようで、間の抜けた声でこう言いました。
( ^ω^)「お、お腹空いたお…」
( ^ω^)「ハムッ、ハフハフッ、ハフッ!!うめぇwwwww」
ξ///)ξ「お、お世辞なんていらないんだからっ」
この男…ブーンは、ツンの家で食事をご馳走になっていました。
キメェwwwwwと思いながらも、「おいしい」と言ってもらえてツンは少し上機嫌でした。
ξ゚听)ξ「で…お腹が空いていたにしてもなんであんなところで倒れてたの?」
( ^ω^)「うーん…」
ブーンはしばらく考えましたが…
( ^ω^)「お、思い出せないお。うぅ…頭が痛いお」
ξ゚听)ξ「だ、大丈夫? …行くアテないなら、家にいてもいいわよ。べ、別に私の希望じゃないからね!」
ツンは1人暮らしなので、退屈しなくなるかな、と思い提案しました。
( ^ω^)「お願いするお」
ご飯がおいしかったので、ブーンは即答しました。
その夜。ブーンが眠りにつこうとすると、頭に一瞬、鋭い痛みが走りました。
( ^ω^)「うっ」
痛みはすぐに消えましたが、ブーンは何か考えているようです。
( ^ω^)「…今年は、降るお」
45 名前:2/5 :2006/01/13(金) 03:46:29.13 ID:sA77AHVL0
やがて、春が来ました。
ブーンはただ居候させてもらうのも、ということでしょうか。村の田んぼを借りて地均しをしていました。
ブーンは、働き者でした。朝は早くから、夜は遅くまで、1日も休まず、頑張っていました。
ツンは、そんなブーンを応援する反面、どこか寂しいと感じていました。
ある日、いつものようにブーンが遅くに帰ってくると、いつもこの時間には寝ているツンが起きていました。
ξ゚听)ξ「ブーン…たまにはゆっくり休まない?」
( ^ω^)「ごめんお、でも1日たりとも休めないんだお」
ξ゚听)ξ「でも…おかげで全然話もできないし、退屈よ」
( ^ω^)「冬まで…冬まで待ってほしいお」
夏になりました。
ブーンは、田植えを始めました。相変わらず、毎日、朝早くから夜遅くまで。
親切な村人の何人かは、手伝おうとしましたが、ブーンは頑なに拒否していました。
ツンは、ブーンに特別な感情を持っていました。ツンはブーンを好きになってしまいました。
そして、それにブーンが気づいてくれないことが、ツンを少し苛立たせました。
ツンは、自分から気持ちを伝えることができなかったのです…
ツンは月に何度か、ブーンに春にしたようなお願いをしました。しかし、返ってくる答えはいつも同じでした。
46 名前:3/5 :2006/01/13(金) 03:47:30.63 ID:sA77AHVL0
秋になりました。
ブーンは、稲刈りを始めました。秋になっても、ブーンは休む事を知りません。
ある日、ブーンがツンの家に戻ると、ツンは、静かに泣いていました。
(;^ω^)「どうしたお」
ξ;-;)ξ「…」
同じ家に住んでいながら、ツンとブーンが一緒にいる時間はごくわずかでした。
ツンは寂しさの限界を超えていました。
ξ;-;)ξ「あなたがどうしてあんなに頑張ってるのかわからないけど」
ξ;-;)ξ「少しは…私の事も大事にしてよ…」
(;^ω^)「…」
その晩、ブーンは悩みました。初めて、ブーンはツンの気持ちに気づいたような気がしました。
自分にはやらなければいけないことがある。しかし…ツンの涙には勝てませんでした。
そして、翌日から3日間、ブーンはツンと旅行に出かけました。
そこで、ツンはブーンに自分の気持ちを伝えることができました。
ブーンは、嬉しそうにしていましたが、少し顔が曇った事をツンは気づきませんでした。
そして、冬を迎えました。
静けさの漂う真夜中、ブーンは村の家々を回り、こっそりと自分の作ったお米を置いていきました。
最後に、ツンの家の前に来ると、ブーンは何か書き始めました。
( ^ω^)(…やっぱり、あとちょっと時間が足りなかったお…)
米俵に手紙を沿えると、ブーンは両手を水平に広げ、走り去っていきました。
この地域には珍しく、大雪が降る夜でした。
47 名前:4/5 :2006/01/13(金) 03:48:24.41 ID:sA77AHVL0
翌朝。雪は、相変わらず凄い勢いで降り続いていました。
ツンは、玄関の戸のガラス越しに何かがあるのを見つけました。
それは、昨夜のブーンの贈り物でした。ツンは手紙に気づきました。
『ツンへ
このお米は、3月の中旬まで大事に食べてほしいお。
少なくてごめんお。他の村の人達は大丈夫だお。』
ξ゚听)ξ「…?」
ツンは、理解できませんでした。特に最後の文章が。
とりあえず、ぐうぐう眠っているだろうブーンに聞いてみようと、ブーンの部屋にいきました。
そこには、誰もいませんでした。
1月になりました。
村全体が異常な積雪に見舞われ、誰も家から外に出る事ができない状況が続いていました。
ξ゚听)ξ「冬には…一緒にいてくれるって言ったじゃない…」
ブーンが姿を消してから1ヶ月。この雪では、探す事もできないし、向こうから来る事もなさそうです。
ξ;凵G)ξ「…バカ…」
2月になりました。
ツンはあることに気がつきました。ブーンからもらったお米が、残りわずかになっていました。
隣町へ買いに行くにも、相変わらずの雪で外には出れません。
そこで初めて、ツンはあの手紙の最後の文章の意味に気づきました。
ξ゚听)ξ「ブーンがあれだけ頑張っていたのは、私達…村を守るため…?」
ツンはブーンの事を思い出し、そしてまた泣いてしまいました。
48 名前:5/5 :2006/01/13(金) 03:49:10.58 ID:sA77AHVL0
そして3月。
ようやく雪が溶け、家から出れるようになりました。
しかしこの冬の間に、ツンの心の傷は、ツンの生きる気力をじわじわと奪っていました。
ツンはただ何もせず、ぼーっと過ごす毎日を送っていました。
そしてある晴れた昼下がり。ツンは、なんとなくカレンダーに目をやり、そして気づきました。
今日は、1年前、ブーンと出会った日。
ツンは、なんだか無性にあの場所に行きたくなり、外に出ました。
ξ゚听)ξ(いるわけないわ。でも…)
小さな田舎村の、でこぼこな砂利道を1人の少女が歩いています。
ξ゚听)ξ「…!うそ…」
そこには、見覚えのある光景。1人の男が、倒れていました。
ξ゚听)ξ「ブーン!?ブーンなの!?」
ツンは、何度も何度も呼びかけました。
すると…男は、とても懐かしい、去年と変わらない間の抜けた声でこう言いました。
( ^ω^)「お、お腹空いたお…」
おわり
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