575 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:53:14.29 ID:LAkCw24W0
( ^ω^)「みんな、また会おうお」
('A`)「ブーンッ!」
(´・ω・`)「泣くなよドクオ」
('A`)「な、泣いてなんかねえよ……」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「お前はすぐ忘れ物するんだからな。しっかり忘れ物がないか、確認するんだぞ」
(´・ω・`)「僕たちのこともね」
( ^ω^)「僕はすぐ忘れ物しちゃうけど、ツンのことは絶対忘れないお。
ドクオもショボンも、絶対忘れないお。
また、いつか、絶対戻ってくるお。
それまで、ずっと待っててほしいお」
('A`)「ブーン……」
(´・ω・`)「ああ、またこの4人で」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「ありがとうだお。
……そろそろ時間だお。
みんな、行ってきますお」
('A`)「うぅ……」
(´・ω・`)「行ってらっしゃい」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「また、この丘で会うお。
何年掛かってでも、絶対、絶対会うお」
576 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:53:58.17 ID:LAkCw24W0
木々の緑は一段と濃さを増し、夏の太陽は僕たちを焼き殺さんとばかりに照りつける、この季節。
中学生だった僕たちは、初めての別れをした。
悲しかった。
ただただ涙が溢れた。
ドクオが一番に泣き始めたのは意外だった。
ショボンはずっと冷静だったが、最後の最後で顔をぐしぐしにした。
ツンは……。
僕は必ず帰ってくる――そう誓った。
親の都合で、このまま一生会えないなんて、そんなのは嫌だった。
絶対、絶対、帰ってくる。
みんなに誓った。僕の心にも、誓った。
577 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:55:20.22 ID:LAkCw24W0
( ^ω^)「……ん……あ、思わず寝ちゃってたお……」
懐かしい夢を見た。
遠い遠い、昔の夢。
列車の規則的なリズムの揺れのせいで、いつの間にか眠っていたらしい。
( ^ω^)「あれから4年……」
あの夢の出来事から4年。
数字にして見れば短く、だが僕にとっては生まれて過ごしてきたこの17年の月日と同じくらい
長かった。
(,,゚Д゚)「丹生速ー丹生速にー着きます」
車掌の声が列車内に響く。
こんな片田舎の駅で降りるのは、僕くらいなものだ。
荷物をまとめ、列車を降りた。
僕がこの町を出て行ったあの時と同じような、夏の日。
セミは嘶き、木々が擦れ、暑く、たまに吹く風が涼しい季節。
高校生になった僕はまたこの地を踏むことになった。
長いようで、短いようで、だけどやっぱり長かった4年間という月日は、僕を少し不安にさせた。
みんな僕のことを忘れているのではないだろうか。
姿を見つけ、目が合い、でも僕のことなんか覚えてなくて、あっさりと目を逸らし、
どこかに行ってしまうんじゃないだろうか。
578 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:56:21.81 ID:LAkCw24W0
そんなことを思いながら帰ってきた町の相変わらずの田舎っぷりは僕の心を穏やかにさせた。
昔と変わらないこの町、いやむしろ村というべきなのだろうか……この地の砂を踏みしめるだけで、
あの頃の記憶が蘇ってくる。
ドクオと川に釣りに出かけ、山から下りてきた熊に追いかけられた。
ショボンはあの頃からバイだった。
ツンは……ツンは……あの頃……。
('A`)「ぶ、ブーンか……?」
ふと、懐かしい友人の声がした。
はっと振り向く。
背が高くなっただけで、あの頃とまるっきり変わっていない友人の姿がそこにあった。
( ^ω^)「ドクオ……」
名を呼んだ。
それだけで、僕の目頭は熱くなり、次第に景色はぼやけていった。
('A`)「ブーン……」
ドクオが一歩、また一歩と近づいてくる。
手に持っていた荷物が、するりと手から離れ地に落ちる。
どさっというその音を合図に、ドクオは僕のところへ駆けてきた。
('A`)「ブーン、帰ってきたんだな、ブーン!」
( ^ω^)「帰ってきたお。約束したお。必ず帰ってくるって」
昔は僕より高いところにあったドクオの頭は、今では僕の下にあった。
その頭が何度も何度も頷く。
579 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:58:16.81 ID:LAkCw24W0
('A`)「……今からちょうどショボンの家に行くとこだったんだ。
一緒に行ってびっくりさせてやろうぜ!」
( ^ω^)「うん、行くお!」
ドクオについてショボンの家に向かった。
あぜ道を通り、長い垣根を横切り、木々のアーチをくぐった。
あの頃と、何も変わっていない。
ショボンの家に遊びに行くときは、いつもこの道を通っていた。
次の道を右に曲がり、坂を上り、Y字路を左に行く。
そこにあるのが、やはり何も変わっていない、ショボンの家だ。
('A`)「おいすー、ショボン」
チャイムを鳴らしながらドクオは叫んだ。
家の中から、トントンと木の床を叩く音が聞こえ、ドアが開いた。
出てきたのは、少し太って、でも相変わらずの無表情の……。
(´・ω・`)「やあ、ようこそ、バーボンハウスへ……え?」
( ^ω^)「久しぶりだお」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「バーボン?」
( ^ω^)「ち、違うお! 本物だお!」
('A`)「そうだぜ、ショボン、こいつぁ本物のブーンだぞ!」
(´・ω・`)「ブーン……」
580 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 18:58:46.38 ID:LAkCw24W0
ショボンは僕の顔をじっと見た。
何のリアクションがないので、まさか忘れてしまったんだろうか、と冷や冷やした。
だがショボンはドアを全開にし、僕たちを招き入れた。
(´・ω・`)「おかえり、ブーン」
( ^ω^)「……ただいまだお!」
ショボンが自分の部屋へ案内するとき、誰かが鼻をすする音が聞こえた。
(´・ω・`)「ブーン、向こうはどうだったんだい?」
( ^ω^)「外人がいっぱいいたお」
('A`)「そりゃ外国だしな……」
(´・ω・`)「イジめられなかったかい?」
( ^ω^)「そ、そんなことなかったお。みんないい人たちばっかだったお!」
('A`)「ブーンにかかれば、大概の人間がいい人だろ」
(´・ω・`)「違いないな」
( ^ω^)「は、ははは」
嘘だった。
友達なんていなかった。
イジめられてすらなかった。
誰も僕のことなんて見向きもしなかった。
僕がこっちに帰ってくるときだって、
誰一人泣いてくれなかった。誰一人見送りにこなかった。
もしかしたら、誰も僕がいなくなったことすら知らないのかもしれない。
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