53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:02:09.74 ID:3eLSmH320
ブーンは自分の住んでいるワンルームマンションに帰ってくるや否や、
途中で買ってきたコンビニ弁当と鞄を床に放りだして寝転んだ。黙って天井を見上げているブーン。

大学4年の時、自分は何か特別な存在できっとすごい何かができると思っていた。
そのすごいものを見つけることができれば楽しい生活が待っていると信じていた。
だから就職活動をしなかった。
そして、卒業してだらだらと過ごしているうちにあっという間に1年が経ってしまった。
結局、自分は特別な存在でもなく、すごい何かができるわけでもなかった。

( ^ω^)「僕は何がしたいんだろう・・・。」

ブーンは天井を見ながら呟いた。

( ^ω^)「お芝居やって何か得られるものってあるのかお・・・。」



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:06:20.91 ID:3eLSmH320
ブーンは体勢を横にしようと体を捻った。そのとき鞄に足がぶつかった。
鞄の中の硬い何かに足がぶつかる。

( ^ω^)「あ、そうだ。ショボンさんから劇団VIPの昔の公演のビデオ借りたんだ。」

ブーンは起き上がると鞄の中からビデオを取り出した。
ビデオテープには『鋼の換金術師』というラベルが貼ってあった。

( ^ω^)「これまた胡散臭いタイトルだお。」

ブーンはビデオテープをビデオデッキにセットし、TVから離れて体育座りの姿勢になった。
しかし、画面は真っ暗のままだった。

( ^ω^)「あれ?壊れてるのかお?」

ブーンがビデオデッキに近づこうとすると画面が一気に明るくなった。
暗いのは単に照明が付いていない暗転状態だったのだ。
そして、照明が付いたため画面が明るくなった。
照明に映し出された舞台中央には怪しい魔法陣が書き込まれていた。
そして、その魔方陣のまわりに立っている女性が1人いた。それはツンだった。



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:10:31.32 ID:3eLSmH320
ξ゚听)ξ「・・・母さん。今助けてあげるからね。」

TVの中のツンは魔方陣の中央に札束を置くと何やら呪文を唱え始めた。
照明が段々と薄暗くなり、音楽も次第に怖い雰囲気に変わっていった。
舞台が暗転になるかと思われたとき、一筋の光の柱が魔方陣中央に落ちる。
そして、魔方陣の中央から手が出てきてお金を掴むと魔方陣の中に消えていった。

ξ゚听)ξ「魔神ナウシズよ!人体換金術の法に基づき、我に母親を与えたまえっ!」

舞台上にマイクで声が聞こえてくる。

「そ・れ・は・で・き・ぬ」

その言葉を聞いたツンの表情が強張った。

ξ゚听)ξ「なぜだっ!換金術の法は絶対だ!僕の母親は帰ってくるはずだ!」

しかし、そんなツンの気持ちとはおかまいなしにマイクの声は淡々と話す。

「か・ね・が・た・り・ぬ」

ξ゚听)ξ「な、なんだとっ!」

舞台上のツンは姿見えぬナウシズに向かった大きな声で言った。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:14:29.73 ID:3eLSmH320
それからブーンは手に汗握りながらビデオに集中していた。
途中でドクオ、しぃ、ジョルジュや知らない役者が舞台上で大冒険を繰り広げていた。
役者達は飛行船に乗り、海を泳ぎ、崖を落ちた。時には笑い、時には悲しみ、そして泣いていた。
あんなに狭い舞台の上にブーンは海や山や森、そして乗り物などがはっきりと見えた。
そして、芝居は母親を蘇生できなかったツンが新たな人生を生きていくというエンディングで終わった。
カーテンコールで鳴り止まぬ拍手。その中に座長のショボンも登場して観客に挨拶をしていた。
ビデオを見終わったブーンは涙を流して泣いていた。
芝居自体の面白さもさることながら役者達の持っている何かに感動していた。

( ^ω^)「同じ人間なのに何でこんなことができるんだお・・・。」

ブーンは涙を拭いながら考えていた。

( ^ω^)「こんなに人を感動させて力づけることができるのなら僕も役者をやってみたいお・・・。」

俯きながらブーンは呟いた。

( ^ω^)「でも、僕にできるんだろうか・・・。もし駄目だったら・・・。
大恥をかくことになるだけじゃなくて劇団のみんなにも迷惑がかかるお。」

そこにショボンから電話がかかってきた。



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:17:24.74 ID:3eLSmH320
(´・ω・`)「やあ、ブーン。ビデオ観たかい?」

( ^ω^)「あ、今見終わったところですお。」

(´・ω・`)「どうだった?」

( ^ω^)「すごく感動しましたお!」

ブーンは少し興奮気味に話し出した。

(´・ω・`)「じゃあ、役者やる気になったかい?」

( ^ω^)「あ、いや、それは・・・。」

(´・ω・`)「ん?どうかした?」



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 02:26:20.91 ID:3eLSmH320
( ^ω^)「あの・・・僕がうまく演技できなくて公演失敗したら迷惑かなと思っていますお。」

(´・ω・`)「なんだそんなことか。いちおうまだ時間はある。なんとかなるよ。
それよりも問題なのは役者自身のやる気だよ。」

( ^ω^)「・・・。」

(´・ω・`)「ブーンにさえやる気があるならきっとVIPNOTEは成功する。」

( ^ω^)「も、もうちょっと考えさせてくださいですお。」

(´・ω・`)「うん、わかったよ。明日まではじっくりと考えてみてね。」

ショボンはそう言うと電話を切った。
ブーンは床に放りっぱなしだったコンビニ弁当を食べ始めた。
ビデオを見たあとにショボンと話をしていたので弁当はすっかり冷めていた。
電子レンジで温めなおすのすら忘れて黙々と冷たい弁当を口に放り込むブーン。

( ^ω^)「このまま劇団に入らなかったら僕は何をするんだお。
ここで動かないとまたあっという間に1年経っちゃうお・・・。」

コンビニ弁当を食べた終えたブーンは考えがまとまらないまま寝ってしまった。


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