9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:12:10.96 ID:NHncViL50
ブーンが目覚めると朝だった。カーテンから漏れる朝日の光にブーンの顔が照らされる。
布団も引かずに眠っていたブーンは起き上がると少しボーっとしていた。

( ^ω^)「返事は今日中だお・・・。」

ブーンは悩んでいた。役者自体に興味は持っているのだが果たして自分にできるのか。
もし、失敗したら自分だけの問題ではなくなってしまう。
ショボンは気にするなと言っていたがやはり気にしてしまう。
その時、頭の中にツンの言葉が響いてきた。

「座長、そのブーンって人にほんとにQをやらせるんですか?」

( ^ω^)「うぐ〜。」

ブーンは頭を抱えて床に倒れこんだ。そして、仰向きになって天井を見上げる。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:13:33.21 ID:NHncViL50
( ^ω^)「どうすればいいんだお・・・。」

ブーンは目をつむって考えをまとめていた。しかし、考えはまとまらない。
グー。ブーンのお腹の音が鳴った。

( ^ω^)「朝ごはん食べるかお。」

ブーンは起き上がるとトーストとコーヒーの準備をした。
ブーンはトーストをかじりながらTVのスイッチを入れる。
しかし、TVの画面は真っ黒だった。

( ^ω^)「あっ、チャンネルがビデオになったままだったお。」

ブーンはリモコンを手にとってチャンネルを変えようとしたがそのままビデオを再生させた。
昨日からビデオデッキに入れっぱなしだった『鋼の換金術師』が再び流れ出した。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:15:35.04 ID:NHncViL50
( ^ω^)(やっぱりすごく面白いお。)

ブーンはそれから『鋼の換金術師』をずっと見ていた。
見ているうちにブーンはふと気になることがあった。

( ^ω^)「そういえばこの劇っていつ公演したんだお?」

ブーンはビデオデッキからビデオテープを取り出すとテープのラベルを見た。
ラベルには公演日時が記載されており、今から約1年前の公演ということがわかった。

( ^ω^)「1年前かお・・・ショボン先輩は確か1年に何度か公演やっているって言ってたから、
これが最新の作品ではないはずだお。」

ブーンはその時何かを感じた。

( ^ω^)「あれ?じゃあ、なんでこの作品を僕に貸してくれたんだお?
1番新しいやつのほうがレベルもアップしてるだろうしよさそうだお。」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:18:23.51 ID:NHncViL50
ブーンは自分の中にひっかかった何かを見つけるためにも再び『鋼の換金術師』を見始めた。
そして、見終わったときにブーンはそのひっかかりに気がついた。

( ^ω^)「この作品の主人公は・・・僕だお・・・。」

ツンが演じていた『鋼の換金術師』の主役であるアドワード=ミズモリは、
子供の頃に死に別れた母親を換金術によって生き返らせようとして失敗し、借金地獄に陥ってしまう。
すべてを失ったアドワードは死人のように毎日を過ごす、しかし彼を助けようとする者達に励まされ、
アドワードは再び強く生きることを決意する。
内容は微妙に違えどこの主人公の序盤の境遇はブーンと似ていた。
ただ違うのはブーンは前に進むことができず、今でも毎日死人のように過ごしているところだけだった。

( ^ω^)「・・・前に進まなきゃ・・・。僕だってきっとできるはずなんだお・・・。」

ブーンは再び『鋼の換金術師』のビデオを見始めた。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:18:57.93 ID:NHncViL50
公民館の第2会議室。今日も劇団VIPは夕方から稽古を行っていた。

('A`)「一晩あれば俺は何でもできる。銀行の金庫破りも楽勝。それが天才ジョバンニ様だっ!」

(*゚ー゚)「ジョバンニ、4階の窓から飛び降りて去る。暗転。」

(´・ω・`)「これで4幕までの読みが終わったね。」

(*゚ー゚)「ト書き読み暇だよー。」

( ゚∀゚)「まあ、しぃの役はこの幕はないからな。」

(´・ω・`)「じゃ、ちょっと休憩しよう。」

( ゚∀゚)「座長、そう言えば昨日のブーンって奴だっけ、から連絡来た?」

(´・ω・`)「いや、まだだけど・・・。」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:20:39.37 ID:NHncViL50
(*゚ー゚)「ブンブンならきっと役者やってくれるよ。」

( ゚∀゚)「面白そうな感じはしたけどな。連絡来なけりゃ駄目じゃないのかな。」

('A`)「まあ、とにかく俺達は稽古をするだけだ。あんまり余裕はないぞ。」

ξ゚听)ξ「・・・。」

そのとき、第2会議室のドアをノックする音がした。

( ゚∀゚)「あれ、今頃誰だろ?開いてるぜ。」

ドアを開けて入ってきたのはブーンだった。第2会議場の空気が一瞬張り詰める。
ブーンが返事を言いに来たのが皆わかったからだ。

(;^ω^)「こ、こん、じゃなくておはようですお。」

ブーンの挨拶に皆が応えた。挨拶が終わるとショボンがブーンに言った。

(´・ω・`)「ブーン、どうするか決まったみたいだね。」

ブーンは劇団員が床に座り輪になって休憩している場所までゆっくりと歩いていった。
そして、立ち止まると口を開いた。



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 19:21:55.45 ID:NHncViL50
( ^ω^)「役者やりますお。まだまだ未熟者ですけどよろしくお願いしますですお。」

そう言うとブーンは頭を下げた。静かだった第2会議場が歓喜に溢れた。

(´・ω・`)「ありがとうブーン。一緒にがんばろう。」

(*゚ー゚)「ブンブン、がんばろーね。」

しぃがブーンにウィンクした。

('A`)「わからないことがあったら何でも聞いてくれ。がんばろう。」

( ゚∀゚)「期待の新人ってやつか。よろしくな。」

ξ゚听)ξ「足引っ張らないでね。」

ブーンを中心に集まってくる他の劇団員達。

( ^ω^)(僕はもう逃げないお。前に進んできっとこの役を成功させるんだお。
僕の演技で人を元気づけられるようにがんばるお。)

ブーンは拳を握り締め心の中で強く誓った。


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