153 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 00:43:55.11 ID:rnKDCepKO
【時計屋ブーン】

ここはザツニと言う国にあるVIP市…

この街のVIP商店街の一角にその店はある。
その店の名は『ブーン時計店』

そこの店主はぐうたらでやる気が無く、いつも店には閑古鳥が鳴いていた。

( ^ω^)「今日も暇だお…ふぁ〜あ」

大きな欠伸をした店主―――いや、ブーンはカウンターに肘をついて外の風景を見ていた。
外は冬の間積もっていた雪は消え、春が近付いて来るのを感じる。
店中から鳴る『チクタク』と言う音を子守り歌に、ブーンはまどろみの中に入り込んでいった。


157 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 01:07:16.00 ID:rnKDCepKO
ブーンが夢の中にいる間に誰かがブーンの時計屋に入ってきた。
『…せん』
ブーンは誰かの声が聞こえた様な気がしたが、寝惚けていたのでよく分からなかった。

『すいません!』
(;´ω^)「は、ハヒッ!」
ブーンは予想外の大きな声にビックリし、思わず声が裏返ってしまった。
声のした方を見ると、カウンター越しに綺麗な栗色の髪をした少女が立っていた。
ξ゚听)ξ「やっと起きた…あの…この時計直して欲しいんですけど」
( ^ω^)「はいだお、とりあえず見せてくれだお」
ブーンがそういうと彼女はポケットから時計を取り出した。
古ぼけた懐中時計、開くと細かい装飾の百合の花の装飾が刻まれていた。
時計の針は動いておらず、沈黙を保ったままである

( ^ω^)「中を見てチェックしますお、預からせて貰ってもよろしいですかお?」
ξ゚听)ξ「わかりました、直ったら連絡下さい」
彼女は連絡先の書かれたメモをブーンに渡し帰っていった。
( ^ω^)「さ…やるかお」
時計が刻まれる音しかしない店の中で、ブーンはそう呟いた。


158 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 01:20:36.12 ID:rnKDCepKO
ブーンは時計の中を開け、中をチェックし始める。

壊れた部分が見当たらず、歯車の中に汚れが溜っているだけだった。

( ^ω^)「これなら余裕だお」
ブーンは手際良く汚れを取り除き、その時計を直した。
時計はロボットが作ったように繊細な調整がされており、ブーンは思わず息を飲んだ。
( ^ω^)「これは凄いお…
かなりの時計職人の作品だお」
ブーンは中を閉じ、女の連絡先に電話した。
Prrrrr…
何回目かのコールの後、彼女はでた。
『もしもし?』
( ^ω^)「もしもし、ブーン時計店ですお。
時計が直りましたので来て下さいお」
『えっ?もう直ったんですか?
…わかりました、今から向かいますので』
30分位経ったころ、彼女はやってきた。


159 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 01:32:07.34 ID:rnKDCepKO
( ^ω^)「いらっしゃいませですお」
ξ゚听)ξ「すいません、時計を取りにきたんですが…」
( ^ω^)「はい、こちらですお」
ブーンはその時計を彼女に渡した。
ξ゚听)ξ「ありがとうございます…
お代は…」

彼女は修理代金を払い、店を出ようとした時ブーンが声を掛けた。
( ^ω^)「ちょっと聞いても言いかお?」
彼女は戸惑ったが、彼の提案を受け入れた。
ξ゚听)ξ「は、はい…」


161 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 01:57:54.61 ID:rnKDCepKO
( ^ω^)「この時計は誰の作品だお?
随分緻密に作られた良品だお、もし知っていたら教えてくれだお」
ツンは一呼吸置いて話し始めた。
ξ゚听)ξ「これは死んだ祖父が死んだ祖母に作った時計なんです」
ξ゚听)ξ「そして母に受け継がれた時計なんです、でも…」
ξ゚听)ξ「その母もこの間亡くなって、母が死んだ翌日にこの時計も止まってしまったんです」
( ^ω^)「そうだったのかお…」
ξ゚听)ξ「ごめんなさい、こんな話してしまって」
( ^ω^)「良いんだお、全然」
ξ゚听)ξ「ありがとう…
でもまだ私には母が死んだって事が…」
( ^ω^)「認められないかお?」
ξ゚听)ξ「ええ…だからかも知れませんね、この時計を直したのは」
( ^ω^)「そうかお…
あ〜、一つ僕の無駄話を聞いて貰えないかお」
そう言うとブーンは静かに話し出した。


162 : ◆zSmq2c3xe. :2006/03/17(金) 02:15:21.94 ID:rnKDCepKO
( ^ω^)「僕達は嫌でも明日を迎えるお、そしていつかは昨日を忘れてしまうお」
( ^ω^)「だから、君はお母さんの事を忘れないようにこの時計を使っていて欲しいお」
( ^ω^)「この時計から聞こえる音は君と君のお母さんとの絆の音なんだお」
ξ゚听)ξ「絆…ですか」
( ^ω^)「そうだお、絆だお」
彼女は言葉を刻みつけるようにその思いを胸に込める。
ξ゚听)ξ「そうですよね…
ありがとう、何かスッキリしました。」
晴れやかな笑みを浮かべ彼女は言葉を続ける。
ξ゚听)ξ「そう言えば自己紹介が遅れましたね、私はツン
貴方は…ブーンさんですよね?」
( ^ω^)「そうだお」
ξ゚听)ξ「何かありましたらまた来ます、今日は本当にありがとうございました」
そう言うとツンは帰って行った。

ブーンは又カウンターに肘を突き、外の景色を見ていた。

―――今日も平和だなぁ

まどろむ意識の中で、ブーンはぼんやりそんな事を考えていた。

【時計屋ブーン・完】


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