101 名前:( ^ω^)ブーンがクジラと出逢ったようです :2006/02/17(金) 15:54:06.60 ID:XV5My01Z0
――海の家

『今朝未明、VIP海域での捕鯨の容疑で逮捕された男が脱走した模様です。
 警察からの情報によりますと、男は取り調べ中に……――』

ξ゚听)ξ「ふ〜ん、捕鯨なんて今でもやってるのね。犯罪なのに。
      それよりもブーン遅すぎ。また寝坊ね」

/ ,' 3 「はい、ご注文の烏龍茶。最近よく来るね、お嬢ちゃん。彼氏と一緒に」

ξ////)ξ「な、ななな何言ってるのよ! おじさん!!
      あたしはただ、この綺麗な海で遊びたいだけなんだから!
      一人だと寂しいから誘ってるだけよ」

ξ;゚听)ξ「……そ、それにしても平和な海ね。みんな楽しそう」

/ ,' 3 「海を甘く見てはいかんぞ、お嬢ちゃん。
     わしら人間の知っておる事など所詮は陸の上と、海の僅かな部分にすぎんよ。
     この底知れぬ海が懐に何を隠しているのか、わしらには知りようもないのだぞ」

ξ゚听)ξ「はいはい危険危険」

/ ,゚ 3 (この糞餓鬼……)


102 名前:( ^ω^)ブーンがクジラと出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:00:17.28 ID:XV5My01Z0


⊂二二二(;^ω^)二二⊃  ブーン


(;^ω^)「フヒーフヒー……お、お待たせだお」

ξ゚听)ξ「遅いし、キモい。罰として焼きそば奢りなさいよ。
     まぁそれは後にして、早速だけど海へGO! あんたボート漕いでよね」

(;^ω^)(……カーチャン、僕はもうダメかもわからんね)


/ ,' 3 「そういえば、昨日この沖で鯨が発見されたんだ。運が良ければ拝めるはずだよ」

( ^ω^)「鯨かお? 生で見たいお〜」

ξ゚听)ξ「期待は程々にね」


103 名前:( ^ω^)ブーンがクジラと出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:03:33.21 ID:XV5My01Z0
――海の上

ξ゚听)ξ「は〜、極楽極楽……」

(;^ω^)「はぁはぁ、オールが無いとは之如何に」

ξ゚听)ξ「文句言わない! ほら、ちゃんと脚動かして」


(; ω )「……(ブクブク)」


ξ゚听)ξ「おっとと!! ……波が高くなってきたわね。ブーン、戻るわよ!」

ξ;゚听)ξ「あれ……ブーン?」


104 名前:( ^ω^)ブーンがクジラと出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:06:17.79 ID:XV5My01Z0
――嗚呼、体が沈んでいくお……このまま死ぬのかお

――……? 息が出来るお?

――そうか、僕は海の一部になったのかお

「気がついたか、人間よ」

――目の前に巨大な潜水艦……?

「こんなヤツ放っておこうよ」

――こっちは馬場より遥かに大きい鯨……ク ジ ラ ?


106 名前:( ^ω^)ブーンがクジラと出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:11:42.96 ID:XV5My01Z0
 子鯨「この海を汚す人間めっ! 海の……、僕等の痛みを思い知れ!!」

(;^ω^)「うわっ! 痛い、痛いお!」

(#^ω^)「何するんだお!?」
 
 子鯨「海に代わってお仕置きさ!」

(#^ω^)「…………」

(;^ω^)「……鯨が喋ってるお!?」

 親鯨「お前達の言葉ではテレパスィーと言うやつだ」

( ^ω^)「へぇ〜。……まぁどうでもいいお」

(;^ω^)「それより何を、どうして怒っているんだお? 鯨さん」

 子鯨「何もどうしても無いさ!!」

(;^ω^)「……??」


108 名前:( ^ω^)ブーンがクジラに出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:19:12.00 ID:XV5My01Z0
 子鯨「おまえ達人間は、この星を一体どうするつもりだ!?
    陸では、後先のことを考えずに次々と木を切り倒し
    森を焼き、街を大きくしているらしいじゃないか」
 
 子鯨「海も徐々に汚れ、問答無用に多くの命が奪われている。
    僕達も住処から遠いこの海域に追い込まれたんだ」

(;^ω^)「僕達も必死で生きているんだお! 仕方のない事もあるお」

 子鯨「この星で生きているのは自分達だけだとでも思っているのか!?
    自分以外の生命の営みなど知ったことではないとでも……」

( ^ω^)「…………」

 子鯨「おまえ達人間のせいで僕たちの海が、大勢の仲間達が犠牲になったんだ!!
    なぜ人間は自然と共に暮らそうとしないの? なぜそんな行為ばかりするの?
    その選択で何が変わるか、先のことを考えたことはないのか! どうして、どうして……」

( ^ω^)「……鯨さんの気持ちも分かるお。でも、みんながみんな悪い人ばかりじゃないと思うお。
       海を愛し、小さな生命にも優しくしてくれる人間だって、きっと大勢いるはずだお」

( ^ω^)「僕は、そう信じたいお」


110 名前:( ^ω^)ブーンがクジラに出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:25:05.01 ID:XV5My01Z0

 子鯨「……ふん、口では何とでも言えるさ!」

 親鯨「だが、多くの命を奪ったのは事実……それは紛れもない歴史、真実。
    人間もその罪を背負い、一生を賭けて償うことだ。……。
    過ぎ去った時間は戻らぬ、我らも過去に囚われ苦しむだけでは前に進めない」

( ^ω^)「一緒に頑張るお」


――ーン……ブーン!!


( ^ω^)「!? 今、ツンの声が聞こえたような……」

 親鯨「……どうやら迎えが来たようだな。……。
    今日はお前のような人間と話せて嬉しかったぞ。
    我らは今一度あの海へ帰ろう。さらばだ、人の子よ」


111 名前:( ^ω^)ブーンがクジラに出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:28:39.47 ID:XV5My01Z0

――またさっきと同じ感覚だお

――優しくて、温かくて……それでいて……


ξ;凵G)ξ「ブーン! 大丈夫!? ……良かった。医者を呼んだほうがいい?」

( ^ω^)「ツン……大丈夫だお。て、ツンの髪型ww焼きそばみたいでテラワロスwwww」

ξ#゚听)ξ「……そう、本当に良かったわ」



――そのまま しばらくお待ちください――




112 名前:( ^ω^)ブーンがクジラに出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:32:34.12 ID:XV5My01Z0
(メ´ω゚)「医者を、医者を呼んでくれお〜!!」


/ ,' 3 「ふぅ、それだけの元気があれば大丈夫だろ」

ξ゚听)ξ「あんた、このおじさんにお礼言っときなさいよね」

ξ゚听)ξ「溺れてるあんたを助けてくれたんだから」

( ^ω^)「おじさんありがとうだお。……!? 鯨さんは?」

ξ゚听)ξ「鯨〜? 夢でも見てたんじゃないの」

ξ゚听)ξ「はぁ、今日は疲れたわ。もう帰りましょう」

( ^ω^)「……うんだお。(……夢? ほんとに?)」


113 名前:( ^ω^)ブーンがクジラに出逢ったようです :2006/02/17(金) 16:36:05.08 ID:XV5My01Z0
この日から数日後、報道されていた脱獄犯が再逮捕された。
性懲りもなく、また捕鯨をしていたのだと言う。
何頭か捕獲された鯨がいるらしいが、僕が出逢った鯨かどうかは分からない。
けど僕はただ思う、あの時約束した事を守ろうと。



――お前達は母なる海と共に歩むのか……

     それとも海と別の路を往くのか?

        それもまた、運命か……――

〜fin〜


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