303 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 15:36:52.93 ID:AaVqIqO70
一時間ほど歩き続けて、ようやくブーンと少年は少年の家に辿り着いた。
元々ブーンが寝ていた橋は少年の家から遠かったとはいえ、
ブーンが5分間全力で走った距離は相当遠かったらしい。

( ^ω^)「すまんお、あんな遠くまで逃げてしまって」
少年「気にしないでよブーン、こっちこそあそこまで追い詰めたわけだし」

最初のエンカウントからは想像できないくらい丸くなったなあ、とブーンは思ったが口にするのは止めておいた。
少年の家はよくある一般的な広さの一戸建てで、食費の全くかからないエンゲル係数の低いブーンであったが
少年の家庭が中流階級以上であることを察して少し安心した。

少年「ただいま、ママ」
J( 'ー`)し「お帰りなさい、タケシ」
( ^ω^)「!!!!!?か、カーチャン!」


304 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 15:45:10.54 ID:AaVqIqO70
ドアの開く音で玄関まで来た少年の母親を見て驚いたブーンだが、
少年のその驚いたブーンの声に驚かされた。
ブーンの姿は母親には見えず、声は聞こえないようであったが
もちろん少年には聞こえているので少年は母親の前で
『ただいま』『お帰り』の挨拶をした刹那足が地面から浮きそうなくらいに
ピンとなるハメになったので母親の頭からは『?』が見えていた。
『はは・・・」と少年は苦笑いもそこそこにそそくさと自分の部屋へブーンと退散したのだった。

タケシ「ブーン、いきなり大声出さないでよ、ビックリするじゃないか」
( ^ω^)「ご、ごめんお、でも・・・(カーチャンにソックリだお、それに・・・タケシ?)
 き、君、タケシっていう名前なのかお?」
タケシ「うん、・・・あー、ごめんね、自己紹介してなかったね。
 僕の名前は荒巻タケシだよ、よろしくねブーン」
( ^ω^)「(もうこの人、一生僕のこと内藤とかホライゾンとか呼んでくれない気がするお)
 荒巻タケシ・・・」
タケシ「どうしたのブーン、友達に同じ名前の人がいるの?」
( ^ω^)「苗字と名前で別々に、違う友達がいるお。どっちも腐れ縁だけど、大事な故郷の仲間だお」
タケシ「フーン・・・じゃあママはブーンのお母さんに似てたの?」
( ^ω^)「・・・」
タケシ「・・・」
ベジータ「・・・」

近くを通る高速道路に流れる車の音が、妙にうるさかった。


306 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 15:54:02.77 ID:AaVqIqO70
J( 'ー`)し「タケシ、ゴハンよー。おりてらっしゃい」

ブーンが自分の居たVIP板がどんな所だった、だの友達には誰誰が居た、だの
そういったブーンの身の回りについての話を始めてから時間は結構経っていたらしく、
気付いたら窓の外から遠くに見えるブーンとタケシが出会った川の向こうに夕日が沈もうとしていた。
ブーンはタケシにトリの付け方とどんな時にトリをつけるか、というところまで説明したところだった。

( ^ω^)「タケシ、夕食みたいだお。話も一段落したし、行ってくるといいお」
タケシ「そうだね。僕、今日一日でずいぶんVIPに詳しくなった気がするよ。
 ブーンは食べなくていいんだよね?じゃあ、ここで待っててね」
( ^ω^)「分かったお」

タケシが夕食から戻ってきた後は、タケシがたまに遊ぶゲームの話で盛り上がった。
タケシ「それにしてもブーンは、今日初めて外に出てきたんでしょう?」
( ^ω^)「そうだお?」
タケシ「それなのにどうしてずいぶん昔のゲームのことを知ってたりするの?」
( ^ω^)「・・・実は、僕が生まれたのはまだ2日前のことなんだお」


309 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 16:05:31.73 ID:AaVqIqO70
まだ11歳とはいえ、タケシより二回りも大きく、
長身なブーンをタケシは20歳以上は確実だと思っていた。
だからこそ、ブーンを『オジさん』と呼んでいたのだから。

タケシ「ちょ、え・・・ブーン、そんなに若いっていうか、えーと」
( ^ω^)「僕たちに年齢なんて意味ないんだお。
 ・・・僕が生まれたのは、2日前の晩にVIP板に立ったあるスレなんだお」

笑いながら話していたゲームの話の延長線上で、
何の気無しに聞いたブーンの年齢のことだったが、意外にも重く、
どこかうつむいたブーンの口調にタケシは驚いた。

( ^ω^)「・・・僕、内藤ホライゾンは僕の他にもたくさんいるんだお。
 それこそ、何十人も何百人も。そんなたくさんの仲間の中のただ一人、それが僕なんだお。」
タケシ「・・・それで、ブーンはどんなスレで生まれたの?」

11歳の思慮の浅さだからなのか本人に自覚も無いし、ブーンにも察しはつかないが、
聞いてはいけない、聞いてしまったらどうにかなってしまうようなことを
ためらわずに聞いてしまうことがタケシにはあった。


310 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 16:14:33.18 ID:AaVqIqO70
タケシの部屋のベッドと勉強机の間に位置する、大人のすねくらいまでの高さの
プラスチック製の机をタケシはガツンと叩いた。

J( 'ー`)し「タケシ、どうしたの!?」

普段息子の部屋から聞こえてくるはずのない異常な音を聞いた母親は驚き、
ゆっくり夕食の片付けをしていた台所からすぐさま駆けつけた。

タケシ「なんでもないから・・・ごめん、お腹が膨れて気持ちよくなったから
 布団をかぶらず眠っていたんだ、そしたら寝ぼけてベッドから落ちたんだよ」
J( 'ー`)し「そう・・・それならいいんだけど・・・」

ドアノブをまだ握り締めていた母親は、そのままの手でドアを閉めて一階へと戻っていった。
タケシはドアを背にして、母親と目を合わさずに窓の方へと向いていた。
フローリングの床には、4つの水滴が落ちて弾けた跡があったのだが、母親はそれに気付かなかった。

( ^ω^)「ごめんお・・・タケシ」

ブーンの声は母親には聞こえないが、自分の話し掛けにタケシが動揺するのは
かわいそうだとブーンは思ったので、母親が一階へ下り切るのを待ってタケシに話し掛けた。


313 名前:どうにかなるようです(タイトル未定) ◆tHHHpZL76g :2006/02/03(金) 16:49:45.53 ID:AaVqIqO70
『ブーン関係スレがVIP内に存在していること』
それが、このブーンが現実世界に存在できる条件だった。

タケシ「そんなの、今にもなくなっちゃうかもしれないじゃないか・・・!」

逆を返せばブーン関係スレが『一つでも』残っていればこのブーンは消えずに済むのだが、
その希望を楽観的に拡大して心の中に留めておけるほど、タケシの心は強くなかった。
2ch内でも書き込みの多いVIP板は、板が落ちるのも早い。
ブーンが夕食前に教えてくれたことだ。
それゆえに、ブーンが現実世界に存在できる時間も少ない。

タケシ「いやだ、いやだよ・・・、たった1日だけの友達なんて、いやだよ!」
( ^ω^)「ごめんお、ごめんお・・・」
タケシ「・・・どうして?」

4つの涙の跡のうち、2つの跡の主であるタケシがもう2つの主のブーンに尋ねる。

タケシ「こんなに早く友達になれて、こんなに早くお別れしなくちゃいけないのなら、
 どうして僕の前に現れたの?」

タケシは自分の頭で考えていることと口で言うことが真逆になってしまうことがもどかしかった。
ブーンが近い内にいなくなってしまうなら、どうしてその間をもっと楽しく過ごすようにできないのか?
タケシはブーンへの言及を止められなかった。

タケシ「友達に裏切られるの、もういやだよ・・・」


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