169 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:29:01.37 ID:w2LlQKwM0
ツンは本当にうろたえていた。
どうすればいいのか分からないといった様子で、慌てふためいている。

('A`)「今日はもういいだろ、ブーン。帰ろうぜ」
( ^ω^)「嫌だお! ツンの家行きたいお!
       そうだ、いいこと考えたお! ツンの家、どこにあるか言えばいいお!
       僕たちが先に歩いて見つけるお!」
('A`)「おい、ブーンっ」
ξ゚听)ξ「あたしんちは、丹生速○○の○○番地の……」

ツンが口頭で説明する。
長年住んでいた丹生速の町だ。
これくらい、住所だけで分かる。

僕たちが先行して、その場所を目指した。
その場所は僕たちがいたこの場所から案外近く、10分もすれば着ける。

はずだった。

2時間歩いた。

( ^ω^)「なんでだお! なんで着けないお!」
('A`)「何処も工事してたりで……」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「大丈夫かお? 前よりもっと顔色が……」
ξ゚听)ξ「う、うるさいわね! 大丈夫に決まってるでしょ!」


170 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:30:13.58 ID:w2LlQKwM0
明らかに、それは嘘だった。
顔は紅潮していて、息は荒かった。
これ以上連れまわすのはよくない。
それは分かっているのだが、どうやってもツンの家にたどり着くことができないので、
どうしようもない。

('A`)「おい、ブーン」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「俺たちはもう帰ろうぜ」
( ^ω^)「何言ってるんだお! ツンがこんなに調子悪そうなのに、
       ほったらかしで帰れるわけないお!」
('A`)「いや、いいんだ。帰ろう。ほら。ツンもそれでいいよな?」

( ^ω^)「どこ向いて言ってるお、ドクオ」

('A`)「あ、あれ、おかしいな、頭惚けてんのかな。それでいいよな? ブーン、ツン」

( ^ω^)「……ツンがそれでいいって言うなら……仕方がないけど、それでいいお……」
ξ゚听)ξ「……ごめんね、あたしの家に連れて行ってあげられなくて……」
( ^ω^)「あ、あやまるなんて、ツンらしくないお!
       ツンはいつもどおりツンツンしてればいいお!」
ξ゚听)ξ「ふふっ、そうね……またね、ブーン……さよなら……」

そう言って、一人で歩み始めるツン。
その後ろ姿が、なんだか寂しくて、このままもう会えないんじゃないかと思えた。



171 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:30:45.78 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「ツン!」

ツンがゆっくりと振り返った。
僕は大声で、叫んだ。

( ^ω^)「また明日お! また会うお!」

ツンが小さく頷くのが見えた。
それからツンはまた歩き始めた。

('A`)「じゃあな……」

ツンが小さくなり消えるまで、僕たちはずっとツンの後姿を見守っていた。



「……」
「どうした? やけに煙草の量が増えたな」
「……」
「……まあ、大体分かるけど」
「なら、何も言わないでくれ……」
「……罪だよな、本当に」
「……ああ」


172 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:31:25.53 ID:w2LlQKwM0
次の日、ドクオから電話があった。

('A`)「すまん、俺もツンの風邪がうつったみたいだ。
   やけに調子が悪い。だから今日は遊べない。悪いな」
( ^ω^)「そっかお。じゃあお大事にだお。ちゃんとゆっくり休むお!」
('A`)「ああ」

今年の夏風邪はたちが悪いというが、ツンも大丈夫だろうか……。
今ツンはどうしてるんだろうか。
心配だ。
どうしてあんなに調子が悪そうだったのに、「また明日」なんて言ってしまったのだろう。
今もまだ調子が悪いのなら、今すぐ電話して、今日は遊ばず家にいるように伝えたい。
でも僕はツンの電話番号を知らない。

( ^ω^)「なんで友達なのに、知らなかったんだお」

そういえば、ツンの家にも行ったことがなかった。
中学生の頃、あんなに仲がよかったのに。

( ^ω^)「とりあえず、いつもの場所に行ってみるお」

もしかしたらもう、待っているかもしれない。
ツンが待っていて、調子が悪そうなら、すぐさま帰らせよう。
二人っきりで会えるというのは嬉しいけど、ツンの苦しそうな姿を見るのは、嫌だった。


( ^ω^)「ツン!」


173 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:32:04.25 ID:w2LlQKwM0
ツンはいた。
いつもと同じところに、いつもと同じようなツンがいた。

ξ゚听)ξ「おっそいわね! 待ったじゃないの!」

( ^ω^)「大丈夫お? もう風邪は治ったお?」
ξ゚听)ξ「あんなのどうってことないわよ」
( ^ω^)「よかったお、ホントよかったお」

昨日見たツンの後姿は、そのまま消え去ってしまうんじゃないかと思えるほど
儚く、寂しいものだった。
でもここにいるツンはそんなことをまるっきり感じさせない。
いつもどおりのツンだった。

ξ゚听)ξ「ところで、ドクオは?」
( ^ω^)「ドクオはツンの風邪がうつっちゃって、今寝てるみたいだお」
ξ゚听)ξ「そう……」
( ^ω^)「というわけで、今日は二人っきりだお」
ξ゚听)ξ「ふ、二人っきり……!」

ツンは顔を赤らめながら後ずさった。

( ^ω^)「ど、どうしたお?」
ξ゚听)ξ「ふ、二人っきりということは……で……が……なわけで……」
( ^ω^)「な、何言ってるお?」
ξ゚听)ξ「う、うるさいわね! あんたには関係ないわよ!
     あ、いや、関係あるんだけど、ないわよ!」


174 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:32:34.39 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「よく分からないお」
ξ゚听)ξ「……フンッ!」

二人っきりというのがそんなに嫌なのだろうか。
僕は少しばかり、いやかなりショックだった。
傍から見れば、本当にがっかりした顔だったのだろうか。
ツンは大きく慌てながら、僕に声をかけた。

ξ゚听)ξ「あ、い、いや、ブーン、違うの!」
( ^ω^)「一体どういうことなんだお……」
ξ゚听)ξ「そ、そりゃぁ、こう、ブーンが帰ってきたとき、抱きしめてくれたじゃない……?
     それから二人っきりってことがなかったら、もしかしたら、もしかするのかと……」
( ^ω^)「それ以上のこと?」
ξ゚听)ξ「あーもう! だから、……キス……とか、…………ス……とかよ!」
( ^ω^)「!」

僕は心臓が肋骨を突き破り外に飛び出してくるかと思うほど驚いた。
そりゃ健全な若者が抱きしめあったりしちゃったあとに、二人っきりで一日を過ごすといえば……。

( ^ω^)「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
ξ゚听)ξ「ど、どうしたのよブーン」
( ^ω^)「ぼぼぼ、僕の家に、こ、来ないか、お?」
ξ゚听)ξ「!」






ξ゚听)ξ「うん……」


175 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:33:31.42 ID:w2LlQKwM0
自然と、手を繋いだ。
どうも手を繋ぐなんてことは、山を登ったとき以来のことで、耳たぶが熱くなるような感覚があった。
むず痒かった。

ツンと二人っきり。
僕の家で、部屋で、密室で二人っきり。
ベッドがある部屋で二人っきり。
これはもう……。

( ^ω^)「ブーン」

ξ゚听)ξ「ちょ、どうしたのよ!」

( ^ω^)「あ、ごめんお。思わずショートしちゃったお」

失敗した。
せっかくいい雰囲気だったのに、台無しだ。
僕はバカだ。
下半身もバカになって歩くのがつらい。
バカばっかだ。

……と、僕の家に向かう途中、携帯電話が鳴った。
ドクオからだった。

( ^ω^)「もしもしお」
('A`)『お、ブーンか。今どこだ?』
( ^ω^)「今、ツンと一緒に僕の家に向かう途中だお」
('A`)『……』
( ^ω^)「(しまった! 言うべきじゃなかったお!)」


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