531 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:58:13.81 ID:QGcdd9Hc0
工場の扉を開けると、ブーン号が一昨日のままそこにあった。
一昨日は月明かりだけで良く分からなかったが、ビニルシートの大きさが足りなくて、翼の骨組みの先の部分が傷んでいる。
ただ胴体はそのままで、ここは修理しなくて良いだろう。
翼のリブも状態が良く、あと一週間、本気で頑張れば完成しそうだ。
ただ、問題なのがエンジン。
これをどこから調達するか―――高校時代の最大の悩みだった。
そもそも、そんな高いものを買える余裕なんてなかったし。
ただ今はまじめに貯金していたおかげで、恐らく必要なものを五回は買えるはずだ。
後は入手先をどうするか。
なるべく馬力の高いものがいい。
( ^ω^)「エンジンが手に入らないお…。どうすればいいんだお…。」
ξ゚听)ξ「あら、自分が勤めてる所をお忘れかしら?」
( ^ω^)「そ、そうか!!気付かなかったお。」
ξ゚听)ξ「ジョルジュさんに掛け合ってみるといいわ。」
( ^ω^)「そうするお。それじゃあ今日は痛んでるところの修理から始めるお。」
内藤は作業に取り掛かり、ツンは材料の買出しに行く。
彼は、自分の汗で服がびしょ濡れになっていることすら気付かないほどに集中していた。
廃工場に鳴り響く金属音。内藤は、VIP製作所とはちょっと違うこの音が好きだった。
ξ゚听)ξ「はい、言われてた部品と機械油買ってきたわ。」
( ^ω^)「すまないお。それじゃあお昼にするかお。どっか行く?」
ξ゚听)ξ「…お弁当、作ってきたんだけど。」
( ^ω^)「本当かお!ありがとうだお!!」
ξ///)ξ「べ、別にあんたの為じゃないんだからねっ!私は飛行機に乗りたいからなんだからっ!」
532 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 16:01:04.31 ID:QGcdd9Hc0
工場の木箱に腰を下ろし、内藤はツンから弁当箱を受け取る。
ふたを開けると色とりどりの食材に、タコの形に切ったウィンナーが可愛らしい。
ツンらしいなぁ、なんて心の中で呟いた。
午後、内藤たちはジョルジュ宅へ行くことにした。
大きな門に日本庭園。社長らしい自宅である。
ピンポーン
しばらくすると使用人らしき初老の男が出てきた。
( ,' 3 )「何の御用ですかな?」
( ^ω^)「ジョルジュに会いに来たお。」
( ,' 3 )「失礼ですが、お名前は?」
( ^ω^)「内藤ホライゾンだお。」
ξ゚听)ξ「ツンです。」
( ,' 3 )「私はあらまき、ここにご主人の世話をしております。それでは少々お待ち下さい。」
そう言って戻っていく。恐らく確認に行ったのだろう。
五分後くらいにあらまきは戻ってきて、彼らを招待した。
応接間へと通される二人。
そこは煌びやかな飾りであふれた部屋だった。
533 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 16:06:16.86 ID:QGcdd9Hc0
( ゚∀゚)「さて、何の用だね?賃金上げろ、とかだったら聞かんよ。」
( ^ω^)「そうじゃないお。エンジンが欲しいんだお。金はあるんだお…。」
( ゚∀゚)「ほうほう、何を作っているんだね?」
ξ゚听)ξ「飛行機です。あともう少しで完成なんです。」
( ゚∀゚)「それで君は昨日あんなに元気だったんだね。いいことだ。それで、どんなエンジンが欲しいんだ?」
( ^ω^)「なるべく馬力の高いものがいいお。」
( ゚∀゚)「…バランスは考えた方が良いぞ。設計図を見せてみろ。これでも俺は飛行機の設計をやってたこともあるんだ。」
ξ゚听)ξ「人は見かけn(ry」
( ^ω^)「これだお!」
( ゚∀゚)「なるほど、設計上の問題は無いみたいだ。このくらいの大きさならν速エンジンの12型が適当だろう。」
ξ゚听)ξ「手に入りますか?」
( ゚∀゚)「ああ、その製作会社に知り合いが居る。聞いてみよう。ただし、条件がある。」
(;^ω^)「何だお?」
( ゚∀゚)「来週の競争で一位を取ること。それが出来たら割安で手に入れてやろう。」
( ^ω^)「頑張るお!ありがとうだお!」
534 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 16:08:18.34 ID:QGcdd9Hc0
それからの内藤の頑張りはかなりのものだった。内藤は体をフルに使い、人の三倍は働いていたように思う。
チームも影響を受け、週末の発表では見事に一位に躍り出た。
掲示板の前にジョルジュは内藤のチームを集める。
( ゚∀゚)「クソスレチームがここまで来た。これからは良スレと呼ばせてもらおう。良く頑張った!
それと内藤君、おめでとう。これは俺からの贈り物だ。」
ジョルジュは自分の後ろにある木箱を開ける。
―――工場長のオススメ、ν速エンジンの12型が発泡スチロールに包まれていた。
( ^ω^)「ほんとに良いのかお!?」
( ゚∀゚)「ああ、これからも頑張ってくれたまえ、内藤君。」
( ^ω^)「頑張るお!感謝感激雨あられだお!!」
内藤は夜空を飛ぶような気分で家に帰った。寮ではなく、実家に。
先週家に帰った時、母親に一週間に一回は実家に戻ると約束した。
もう二度と悲しい思いをさせないために…。
( ^ω^)「ただいまだお!」
J('ー`)し「おかえり、ホライゾン。」
それから内藤はカーチャンに今までのことを聞かせてあげた。
口から溢れ出る言葉は留まることを知らず、話が出尽くした頃には時計の短針が12を指していた。
( ^ω^)「もうこんな時間かお。」
J('ー`)し「そうね、久しぶりにホライゾンの話を聞けて嬉しかったよ。」
( ^ω^)「それじゃあおやすみだお。」
J('ー`)し「おやすみ。」
明日こそは完成させる―――そんな事を考えつつ眠りについた。
535 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 16:10:56.32 ID:QGcdd9Hc0
J('ー`)し「ホライゾン。起きなさい、ツンちゃんがお迎えよ。」
( ^ω^)「っうぇwwwww」
眠け眼をこすり、ベッドから降りる。普段着に着替えて玄関へ行くと、ツンが待っていた。
ξ゚听)ξ「ほら、さっさと用意して行くわよ!」
( ^ω^)「い、今行くお!」
J('ー`)し「なんだか小学校の時を思い出すわね…。」
今日は晴れ。もし完成したら今日テスト飛行が出来る。
工具箱を抱えて、内藤はツンと廃工場へと向かう。
道端にはふきのとうが白い花を咲かせ、春の訪れを知らせる。
( ^ω^)「今日こそ完成させるお!」
ξ゚听)ξ「出来ると良いわね!」
廃工場に着くと早速作業を開始する。
ジョルジュから貰ったエンジンを取り付けて、塗料で機体をカバリングすれば物体としては完成。
テスト飛行はその後に行う。
ようやく日が沈み始めた頃に、仕上げが終わった。
廃工場の扉を大きく開け、機体を前の道路に押し出す。
車通りが少ないことを利用して、滑走路に使うつもりだ。
(;^ω^)「ぐぬぬぬぬ」
ξ゚听)ξ「んー!」
機体の移動完了。―――いよいよ、テスト飛行。
内藤は操縦席に体をねじ込み、エンジンキーを入れる。
『ブーン』という軽快な音と共にプロペラが回り始める。車輪も動き始め、機体が少しずつ前へと進んでいく。
537 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 16:19:02.78 ID:QGcdd9Hc0
ふわっ
本当にそんな音が聞こえてきそうだった。
―――飛んだ。飛んだ!
内藤はツンに向かって親指を立てる。
ツンは手を振る、空に向かっていく内藤を見ながら。
しばらく空中を旋回した後、内藤は道路に下りてきた。
(*^ω^)「やったおー!」
ξ*゚听)ξ「やったね!!」
ツンは内藤を両腕で抱きしめた。
なんだか内藤は気恥ずかしそう。
しばらくしてツンは自分のしていることに気付き、恥ずかしくなって内藤から手を離す。
ξ///)ξ「今度は私も乗せて…。」
( ^ω^)「いいお、じゃあツンは後ろに乗るお。」
さっき切ったエンジンキーを入れなおすと、ブーン号は動き出す。
そして空へ。
ツンはさっきから嬉しさのあまり、はしゃぎまくっている。
( ^ω^)「ツンを空に連れてきたお!夢は叶ったお!」
ξ///)ξ「ありがとね。これはお礼よ!」
内藤の頬にはツンの唇のやわらかい感触。
夕日が、いつまでも二人を照らしていた。
―終―
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