182 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:38:42.37 ID:w2LlQKwM0
いつものショボンとは違う、冷静さを欠いた怒声。
それを聞き、僕は思わずすくんでしまった。
ショボンは天井を見た。昔を振り返っているのだろうか。

(´・ω・`)「ある子供たちはその話を聞いて、可哀想に思ったため、
       その子と友達になってあげることにした。
       その子の名前は」

ξ゚听)ξ「ごほっごほっ」

(´・ω・`)「ツン」
( ^ω^)「!」

忘れていた。ツンとの出会い。

あれは僕が転校した年の、中学1年生の初め。

いつものように、僕とドクオ、それにショボンの三人は一緒にいた。
ショボンがあるときこう切り出してきた。

(´・ω・`)「この町のあるところに、可哀想な女の子がいるんだ」

ショボンの話を聞き、ドクオと僕は、その子に会いたいと思った。

そして出会ったのが、ツンだった。


ξ゚听)ξ「ごほごほ……」



183 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:39:07.40 ID:w2LlQKwM0
(´・ω・`)「僕たちは、その子と仲良くなった。
       その子の明るく、でも怒りっぽい性格が、僕たちは大好きだった
       いつも一緒に、この町にある小高い丘で遊んだ」

('A`)「……」

(´・ω・`)「僕たちはずっとその子と、4人で一緒にいたいと願った。
       ……でもその願いは、叶わなかった」

( ^ω^)「僕の、引越し……」

(´・ω・`)「……思い出せないのかい?」
( ^ω^)「な、なにがだお?」
(´・ω・`)「……」

ショボンは僕を一瞥し、また視線を天井に泳がせた。


(´・ω・`)「3人になった僕たちは、それでも仲が良かった。
       いなくなったブーンが帰ってくるとき、
       みんなで、おかえりって言いたかった」

(´・ω・`)「月日が経ち、僕たちは高校生になった。
       受験を控えた僕は、ツンと一緒にいることができなくなった。
       僕たちはもう、自分たちの道を歩み始めていた」

('A`)「……」


184 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:39:39.48 ID:w2LlQKwM0
(´・ω・`)「僕たちは、いや、僕は、
       ツンの存在が疎ましく思えた。
       いつまでもついてまわるツンが、本当に嫌になっていた。
       だから、僕は、ツンを殺すことにした」

( ^ω^)「え……」

ξ゚听)ξ「ごほ……」

(´・ω・`)「ツンを殺した僕たちは、あの丘に、
       ツンといつも遊んでいたあの丘に、ツンの墓を作った。
      『僕たちは、過ちを犯した。人を殺した。大切な人を殺してしまった。
       罪を知った。だから僕たちは、これから先、同じような過ちは犯さないだろう』
       ……そう思っていた」

( ^ω^)「でも、ツンは今こうして生きて……」
(´・ω・`)「本当に、何も思い出さないのかい?」
( ^ω^)「あ、当たり前だお! 思い出すとか出さないとか、そんなの訳分からないお!」

(´・ω・`)「そうか」

ショボンは、どこからともなく、小さなナイフを取り出していた。

( ^ω^)「!?」

ショボンは僕の傍に来た。
右手にナイフを持って。
ナイフは窓から入る日の光に照らされ、艶やかに輝いた。


185 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:40:28.91 ID:w2LlQKwM0
ショボンがナイフを振りかぶり、

( ^ω^)「ショボン、やめるお!」

ツンに突き立てた。

( ^ω^)「うあああああああああああああああああああああああ!」



(´・ω・`)「落ち着けブーン。僕のナイフは、ベッドに刺さっただけだぞ」

そういうショボンの握り締めている小さなナイフは、ベッドに深く突き刺さっていた。

ツンの体を貫通して。

( ^ω^)「ど、どうなってるお……」

あんなに小さなナイフでは、ツンの腹を貫通し、ベッドに埋め込むことなどできるわけがない。

( ^ω^)「あ、あはは、面白い手品だお。今度教えて欲しいお」
(´・ω・`)「ブーン、現実を見るんだ。思い出せ。ツンの存在を」
( ^ω^)「ツンの……存在……?」

ツンの存在……。
中学生のあの時、仲良くなったツン……。
ショボンの話。
友達になった……?
いつ出会った……
僕たちは、いつ……


186 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:41:12.78 ID:w2LlQKwM0
ξ゚听)ξ「がはっ!」

咳ばかりしていたツンが、ベッドに赤いしみを作った。
これは……血……。

( ^ω^)「ツン!」

ツンの服が赤に染まる。艶やかな赤。
もう一回、吐いた。尋常じゃない量だった。これでは命に関わる――!

( ^ω^)「ショボン、お願いだお! ツンを助けてお!
       このままじゃツンが、ツンが……!」
(´・ω・`)「ブーン、僕の話はまだ」
( ^ω^)「うるさい! そんな話、もう聞きたくない!
       ツンを助けるお! 今すぐ病院に連れて行くお!」
(´・ω・`)「……仕方ない。やっぱり僕が決着をつけなくちゃ」
('A`)「ショボン、もう寄せ! やめろ!」
(´・ω・`)「ドクオ、君はまだ……」

ドクオがショボンの顔を思い切り殴りつけた。
ショボンは僕の机にぶつかり、倒れこんだ。

('A`)「ブーン! 今のうちにツンを連れ出すんだ!」
( ^ω^)「ドクオ……ありがとう!」

僕は血を吐くツンを抱いて、部屋の外に飛び出した。
ツンの体は異様に軽かった。空気のような軽さだった。
ツンはぐったりとして、吐く息は浅い。

( ^ω^)「ツン、死なないでお!」


187 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:41:37.47 ID:w2LlQKwM0
(´・ω・`)「……ドクオ……」
('A`)「俺はな! もう二度と、ツンが死ぬところを見たくねえんだ!
   それに、ブーンに、俺と同じような目に遭って……欲しく……」
(´・ω・`)「……」
('A`)「ショボン、お前だってそうだろう?
   ツンのこと一番好きだったのは、お前だったはずだ」
(´・ω・`)「仕方ないんだ……僕だって、好きで殺すわけないじゃないか。
       でも、俺たちはいい加減大人になるべきなんだ。
       ちゃんと現実を見て生きるべきなんだ。
       違うか? 違うか!?」
('A`)「ショボン……それは違う」
(´・ω・`)「違わない!」
('A`)「違う!
   現実を見ることが大人になること?
   そうじゃないッ!
   大人の中にも現実見れねえやつがいっぱいいること、お前が一番よく知ってるじゃねえか!
   現実を見ることだけが大人になることじゃない。
   俺たちみたいに、すぐ殺すだの何だの、
   そんなこと言ってる奴が、本当に大人になんてなれるわけねえじゃねえか!
   俺たちは無残に、無慈悲に、ツンを殺した。
   でもあいつはツンを助けようとしてる。
   ブーンはツンを助けるために一生懸命だ。
   大好きな人を助けるために一生懸命になること、
   それが大人ってもんに一番大事なもんじゃねえのか!?」


188 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:42:00.95 ID:w2LlQKwM0
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「でもな……
   俺も、ブーンが架空の存在に一生懸命になること、応援してるわけじゃない。
   ツンは死んでしまうかもしれない。
   だけど、俺はブーンが、あいつが自分自身と向き合って、
   ツンの存在を理解して、安らかに眠らせてやることができるって、信じたい」
(´・ω・`)「……」
('A`)「俺にはもうツンの姿は見えないけど、あいつの苦しんでる姿は目に見える。
   ツンが死んだとき、ブーンは全て思い出してくれるだろう。
   そして、悲しむだろう。
   あいつのことだから、泣くかもしれない。
   涙が枯れて、喉がつぶれてもわめき続けるかもしれない。
   だから俺たちは、あいつの傍についていてやろうや。
   ツンの罪滅ぼしなんかにはならないけど、
   でも、俺たちの大切な人を支えてやろう……」
(´・ω・`)「……うん」
('A`)「急ごう。多分あいつは、あの丘に向かうはずだ。
   ツンなら、そう言うはずだ」
(´・ω・`)「ああ、そうだな」
('A`)「それとな、ショボン」
(´・ω・`)「なんだい?」
('A`)「殴って、ごめん」
(´・ω・`)「……そんなこと言ってる暇はないだろ」
('A`)「……ああ」


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