585 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:07:06.82 ID:LAkCw24W0
向こうにいるとき、ずっとショボン、ドクオ、ツンのことを考えていた。
特にツンにはいっとう会いたかった。
会って、話して、怒られて、おかえりって言って欲しいとずっと思っていた。
ツンと会いたい。
ツン……。

( ^ω^)「そういえば、ツンはどうしてるお?」

ツンに会いたくて言ったこの一言。
この言葉を聞いたショボンとドクオの顔はさっと青ざめ、俯いた。

('A`)「ツン、か……」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「ん? みんなどうしたお?」

どうして二人がこんな顔をするのか分からなかった。
僕から避けるように顔を伏せ、何も言わない。

('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「どうしたお? ツンはどこだお?」

(´・ω・`)「……最近会ってなかったな。ブーンも帰ってきたことだし、あの丘に行こうか」

僕たちはショボンの家を出て、この村にある小さな丘を目指した。
僕は嬉しかった。
ツンに会える。夢にまで見た、あのツンに、もう一度会える。
気分は高揚し、胸の鼓動は早くなった。
喉の辺りが熱を持ち、顔は自然と笑顔になる。
もうすぐ、もうすぐでツンに……。


586 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:08:41.00 ID:LAkCw24W0
しかし、僕が見たのは、丘の先端にぽつんとおいてある、小さな石だった。

(´・ω・`)「今まで来なくて済まなかった」
('A`)「……」
( ^ω^)「?」

ドクオは黙々とその石の周りに生えた雑草を抜き、
ショボンは傍に咲いている小さな花をちぎって石の前に置いた。

(´・ω・`)「ずっと来なかったのは、忙しかったからじゃない。
       もう一度君に会うのが怖かったからだ。
       でも、謝って許してもらおうとも思っていない」
( ^ω^)「なんだお、これ?」

誰かの墓だろうか。
ツンに会う前に、この墓にお供えをしておこうと言うのだろうか。

('A`)「ブーン……」
(´・ω・`)「ブーン、落ち着いて聞いて欲しい」
( ^ω^)「な、なんだお、二人とも。改まっちゃって、なんか怖いお」



(´・ω・`)「ツンは、僕たちが殺してしまったんだ」

突然のショボンの言葉。
耳には入ってくるが、理解はできなかった。
ツンは、僕たちが、殺した……。

( ^ω^)「ツンが、死んだ……」


587 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:10:56.36 ID:LAkCw24W0
息が詰まった。
動悸はますます早まり、今にも口から飛び出そうだ。
耳鳴りがする。
足が震える。
お腹が痛くなり、声にならない呻きが漏れる。

( ^ω^)「ツンが、死んだ……」

改めて口に出す。
ツンが、死んだ。

(´・ω・`)「僕たちが、殺したんだ」

ショボンのいつも以上に冷静で、しかし震えた声。

('A`)「……すまん」

ドクオの呟く声。

( ^ω^)「……嘘だお」

信じたくなかった。
あれだけ会いたかったツンが、帰ってきたら、もう二度と会えなくなっていただなんて……。

(´・ω・`)「嘘じゃないんだよ」
('A`)「すまん、ブーン、俺たちが勝手に……」
( ^ω^)「嘘だお! ツンは死んでなんかいないお!」


588 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:11:29.07 ID:LAkCw24W0
信じられない。
嘘だ。
たちの悪い冗談だ。

僕は石に駆け寄り、掴み、放り投げた。

('A`)「ブーン、やめろ!」
(´・ω・`)「ブーン……」

石があった場所を手で掻き分けた。
無我夢中で掘り返した。
二人は痛ましいものを見る目で僕の行動を見ていた。
地面は固く、手からは血が溢れた。
痛みはなかった。
ただただ一心不乱に、ひたすらに、砂を掻き分けた。




何もなかった。

( ^ω^)「……何もないお」
('A`)「ブーン……?」
(´・ω・`)「もう気が済んだかい? いい加減僕たちは大人になるべきなんだ」
( ^ω^)「何もなかったお! ツンは生きてるお! どこにいるんだお!」
(´・ω・`)「え?」

いつも冷静なショボンの、呆気に取られた顔。
白々しい。
僕はショボンの胸倉を掴み、叫んだ。


590 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:12:35.64 ID:LAkCw24W0
( ^ω^)「ツンはどこだお! どこに隠してるんだお!」
('A`)「ブ、ブーン、やめろ、ブーン!」

ドクオが仲裁に入る。
ショボンを僕から必死に引き離そうとするが、僕は離さなかった。

('A`)「落ち着けブーン! やめろ! ブーン!」
( ^ω^)「ツンを返せお! ツンに会わせるんだお!」
(´・ω・`)「ブーン……落、ち着、け……」

僕は掴んでいたショボンを放り投げた。
ショボンは強く地面に叩きつけられ、「ツンの墓」の横に転がった。

( ^ω^)「ツン、どこにいるんだお……」

こうしてはいられない。
一刻も早くツンに会いたい。
ツンを探さなければ……。

僕は振り返り、走り始めた。
ショボンを抱き起こしていたドクオは、小さく何か呟いたが、向かい風に掻き消され、その声は届かなか
った。



591 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:13:13.74 ID:LAkCw24W0
( ^ω^)「はぁ……はぁ……」

どれくらい走っただろうか。
変わらない町を、子供の頃のように走り回ったが、ツンはどこにも見当たらない。
照りつける夏の太陽が、僕を焦がす。
汗が噴出す。
なのに、暑いと感じなかった。
ただ息苦しく、喉から心臓が飛び出そうなほど動悸は激しくなっている。
どこだ……ツン……。

( ^ω^)「ツン……」






「何よ?」



592 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/13(月) 19:13:39.92 ID:LAkCw24W0
聴き覚えがある女の子の声が後ろから聞こえた。
嬉しいはずなのに、体はびくりと跳ね上がった。
息が詰まった。
体が震える。
振り向くのが怖い。
後ろに、いるのだろうか……。
もしこれが幻聴だったら……。
僕は、もう……。

「ブーンっ!」

ばっと振り返った。
そこには、

( ^ω^)「ツン……?」

会いたくて、

( ^ω^)「ツン?」

恋焦がれた人が、

ξ゚听)ξ「なによ」

いた。


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