204 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:51:50.58 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「ドクオとショボンのことも、絶対、忘れられない……」

('A`)「ブーン!」
(´・ω・`)「覚えてたんだね、ブーン!」

( ^ω^)「僕は、ツンを……」

ツンを見た。
ツンの体にもう重みはない。
まるで空気のような、いや、空気そのものだった。
体は次第に透け始め、存在感というものが完全に失われようとしている。

( ^ω^)「ツン、死んじゃ嫌だお! 目を覚ますお!
       ツンはまだまだ生きて、僕たちと一緒に仲良くやって行くんだお!」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「……あたしね、ブーンたちに会えて良かったよ……」

( ^ω^)「そ、そんなドラマでありがちな台詞言ったってダメだお!
       絶対僕たちと、ずっと一緒にいるんだお!
       約束したお!」

ξ゚听)ξ「バカね……口約束なんて、簡単に信用しちゃいけないに決まってるでしょ……」



205 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:52:23.81 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「……ごめんね。でももうダメなの。
     こればっかりはどうしようもないの。
     ごめんね、ブーン、ごめんなさい……」

( ^ω^)「謝らないといけないのは、僕のほうだお!
       僕が思い出してしまったから! 僕が思い出さなければ、
       ツンも、死ぬことはなかった!」

ξ゚听)ξ「それは違うわ。
     あたしは、ブーンにずっと、思い出してもらいたかった。
     ……いえ、もしかしたらブーンを独り占めしたくて、
     ずっと一緒にいたのかもしれない……。
     あたしって最低ね……」

自嘲じみた笑いを浮かべるツン。
しかしその微笑は、あまりに弱々しすぎた。
ツンの余命を表すかのような脆く儚い笑みだった。

( ^ω^)「そんなことないお! ツンはいい子だお!
       ずっと僕たちと一緒にいてくれたし、
       こんなになっても、文句一つ言わないお……」

ξ゚听)ξ「当たり前でしょ……?
     だって、あたしたちは大切な友達じゃない……」

( ^ω^)「……」



206 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:53:33.56 ID:w2LlQKwM0
('A`)「ツン……!」

ξ゚听)ξ「ドクオ、あたしが見えるの?」

('A`)「当たり前だろうが! 俺は、お前の言ったとおり、
   大切な友達だろうが! ブーンの部屋じゃ見えなかったけど、今なら見える!
   お前の苦しんでる姿が……」

ξ゚听)ξ「ドクオ……」

('A`)「くそっ、どうしようもねえのかよ! くそっ!」

ξ゚听)ξ「……相変わらずね……」

('A`)「え……?」

ξ゚听)ξ「あたしが前に死んだとき、ドクオは最後まで諦めなかった。
     どうしようもねえのかって、ずっと喚いてた……」

('A`)「なんで……お前、あの時もう意識なかったし、消えかかってたのに……」

ξ゚听)ξ「あたしはあんたたちの想いなのよ……?
     あんたたちがあたしを殺して、ずっと苦しんでたのも、知ってる……」

('A`)「……ツン……くそぅ……」



207 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:54:06.35 ID:w2LlQKwM0

ξ゚听)ξ「ショボンは、あたしを殺すだの、疎ましかっただの言ってたけど、
     本当はずっと泣いてた……。
     ショボンにはもうあたしの声も聞こえないだろうけど、
     ショボンがあんなこと言い出さなければ、あたしはいなかったのよね……。
     ショボンに感謝しなくちゃ……」

(´・ω・`)「……聞こえてる……」

ξ゚听)ξ「え?」

(´・ω・`)「聞こえてるよ……ごめん、ツン、僕が勝手に作り上げて、
       でも僕は、自分の都合が悪くなったら、勝手に殺して……。
       ごめん、ツン、ごめん、ごめんなさい……」

ξ゚听)ξ「ショボン……あたしはあんたのおかげで生まれたんだからね。
     謝らなくていいよ。
     それより、ありがとうね……。
     あんたのおかげで、みんなと出会えた。嬉しかった」

(´・ω・`)「なんで、お礼なんか! 僕が悪いのに……!
       いつもみたいに怒ってよ! お礼なんか言われたら、僕は……!」

ξ゚听)ξ「ショボン、あんたの苦しみ、ずっと見てきたからわかるの。
     あんたにお礼言えて、嬉しいよ。ずっと言えなかったから……」

(´・ω・`)「くそ! くそ! うわああああああああああ!」



208 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:55:34.27 ID:w2LlQKwM0
ショボンは跪き、頭を垂れ、大きな泣き声をあげた。
その声はセミのけたたましい叫びを掻き消し、夏の空に広がった。

ドクオは唇をかみ締めながら、握り拳を作っていた。
頬には何かが伝った跡があった。

ξ゚听)ξ「そろそろ、行くね……」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「プレゼントのこと、覚えてる?」

( ^ω^)「覚えてるお……いつかくれるって言ってたお。ずっと待ってるって言ったお!」

ξ゚听)ξ「そのことなんだけど、さ……。
     あげられなくなって、ごめんね……」

( ^ω^)「……もうもらってるお……」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「ツンがいてくれたこと――ショボンがいて、ドクオがいて、ツンがいてくれたこと。
       僕にとっては大切な想い出で、とても大きな宝物だお」

ξ゚听)ξ「……うん……そうだね……ありがとうね……」

( ^ω^)「……また会うお。
       いつか、この丘で、会おうお」


209 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:55:56.18 ID:w2LlQKwM0
ξ゚听)ξ「ええ、いつかね……じゃあ、そろそろ行くね。
     ……ブーン、最後まで泣かなかったね。
     あたしがいなくなっても、泣かないでね。
     じゃあね……バイバイ……」

('A`)「じゃあな……ツン」
(´・ω・`)「くぅ……うう……」

ツンはそういい残すと、夏の穏やかな風に乗り、空のかなたへと消えていった。
抱きかかえていた腕には、もう何も残っていなかった。

( ^ω^)「……ツン、ごめんお」

彼女は泣かないで、と言っていた。
だが――。

( ^ω^)「今だけは、泣かせて欲しいお……」

( ^ω^)「明日には、ちゃんと元気になるから」

今まで堪えていた涙が、眼窩から溢れ、流れ落ちた。

僕たち3人は、あのショボンの母の葬式の時のように、一緒に泣いた。
彼女が紡いだ僕たちの絆は、永遠にほどけることはないだろう。
それが彼女の望んだことであり、僕たちの望むことなのだから。



210 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:56:32.67 ID:w2LlQKwM0
〜それから〜


('A`)「よう、待ったぞ」
(´・ω・`)「約束の2時間前じゃないか。早すぎるよドクオ」
('A`)「そりゃお互い様だろ」
(´・ω・`)「まあね」

(´・ω・`)「そういえばドクオは、今ニートなんだっけ?」
('A`)「ニートっていうか、フリーターだな。バイト生活だよ」
(´・ω・`)「専門学校にでも行くんだと思ったけど」
('A`)「俺に勉強はあわねえからな。勉強が似合うのはお前くらいなもんだよ」
(´・ω・`)「そうでもないさ」
('A`)「お前、今T大に行ってるんだよな」
(´・ω・`)「うん、主席合格だったよ」
('A`)「天下のT大に主席合格とは……なんでそんな奴と俺たちに親交があるんだろうな」
(´・ω・`)「頭の良し悪しなんか関係ないさ。
       それに、もし理由があるとしたら……」
('A`)「ツン、か」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「あれからもう2年経ったのか」
(´・ω・`)「早いもんだ」
('A`)「でも、振り返ってみたら、存外長かったな」
(´・ω・`)「……確かに」
('A`)「……ったくそれにしてもブーンのやつ。まだこねえのかな」
(´・ω・`)「まだ約束の2時間前だよ」


211 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:56:52.10 ID:w2LlQKwM0
('A`)「そ、そういえばそうだったな。
   仕方がない。これを先に供えとくか」
(´・ω・`)「なんだい、それ」
('A`)「そこの山の頂上からの景色。丹生速が一望できるんだ。
   ブーンとツンと俺の3人で行ったとき、お前も連れてまた来ようって言ってたんだけどな。
   それが叶わなくなっちまった。
   だから、せめて写真だけでもってな」
(´・ω・`)「……」
('A`)「ブーンが来たら、一緒に行くか?」
(´・ω・`)「……うん!」

 ――おーいだおー!

('A`)「あ、ようやくきやがった。おせーぞー、ブーン!」
(´・ω・`)「だからまだ約束の2時間前だってば」

夏の暑さは風に溶け、そのまま空の彼方へ運ばれていく。
その風はツンのところまで届いているのだろうか。
飛行機雲が横切っている。
あの雲を、ツンも一緒に見ているだろうか。

ツンが紡いでくれた絆、僕たちはずっと離したりしないお――。



 終


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