590 :('、`*川短篇 :2006/04/13(木) 20:30:05.72 ID:l0OvVtfdO
私のあだ名は、幽霊。
ただ、そこにいるだけの幽霊。
私にふさわしいあだ名だと思う。
それに、ペニスなどと呼ばれるよりは、よっぽどいい。
不愉快な事には変わりないけれど。

幽霊、幽霊。
今日もまた私の周りでそんな罵り声が聞こえる。
その事に異議を唱えるつもりは毛頭無いが、どうしても私は考えてしまう。
どうして、この人達は。



591 :('、`*川短篇 :2006/04/13(木) 20:32:18.86 ID:l0OvVtfdO
「やめるお!
生きている人間に幽霊なんて言うなお!」

……驚いた。
私の考えを先読みされたみたいだ。
この人たしか、内藤君だっけ。
いつも四人でいて、みんなで笑ってて……。
私は、この人が羨ましかった。
私だって、笑ってみたかったんだ。
思いにふける私に、内藤君が意外な声を掛けてくれた。

「あの、伊藤さん。
僕達と一緒にご飯食べないかお?」

すぐには声が出なかった。


592 :('、`*川短篇 :2006/04/13(木) 20:33:16.17 ID:l0OvVtfdO
嬉しいのに、声が喉に詰まってしまったみたいだ。

「ダメかお?」

ダメなんかじゃない。
嬉しい。
でも…恐い。
私なんかが内藤君達のグループに入ったら、輪を乱してしまう。

「わかったお……」

違う。
違うのだ。
ああ、内藤君が行ってしまう。

('、`;川「…待って、下さいっ!」

体を震わして内藤君が振り向いた。
かなり大きい声が出ちゃったみたい。
人前で声を出すなんて久しぶりだった。



593 :('、`*川短篇 :2006/04/13(木) 20:34:26.96 ID:l0OvVtfdO
('、`*川「あの…。
ご飯に、御一緒させて下さいませんか?」

「っ!もちろんだお!」

内藤君は満面の笑みで両手を広げて走りだした。
喜びの表現だろうか。
それを見て、私の口にも笑みが浮かぶ。
私もいつか一緒に、両手を広げて走り廻りたい。
今は無理だけれど、必ず。

終わり


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