197 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:47:12.79 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「みんな、さよならだお……」
('A`)「……くそっ、ブーンの親父、今までずっと仕事とか言って家空けてたのに……
   なんで海外に転勤するからって、ブーンまで連れてっちまうんだよ!」
(´・ω・`)「仕方ないだろ。家族なんだから」
('A`)「家族だからってよ、全く、酷すぎる……」
( ^ω^)「ドクオ……」
('A`)「ブーン、絶対帰ってこいよ。
   何年経とうが、ずっとお前のこと待ってるからな」
(´・ω・`)「僕もね」
( ^ω^)「ありがとうだお。絶対戻ってくるお……。
       みんな、また会おうお」
('A`)「ブーンッ!」
(´・ω・`)「泣くなよドクオ」
('A`)「な、泣いてなんかねえよ……」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「ブーン……」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「お前はすぐ忘れ物するんだからな。しっかり忘れ物がないか、確認するんだぞ」
(´・ω・`)「僕たちのこともね」
( ^ω^)「僕はすぐ忘れ物しちゃうけど、ツンのことは絶対忘れないお。
       ドクオもショボンも、絶対忘れないお。
       また、いつか、絶対戻ってくるお。
       それまで、ずっと待っててほしいお」


198 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:47:39.58 ID:w2LlQKwM0
('A`)「ブーン……」
(´・ω・`)「ああ、またこの4人で」

ξ゚听)ξ「体に気をつけなさいよ。怪我とかしたら、ただじゃおかないんだからね……」

( ^ω^)「ありがとうだお。
       ……そろそろ時間だお。
       みんな、行ってきますお」
('A`)「うぅ……」
(´・ω・`)「行ってらっしゃい」
ξ゚听)ξ「あんた、まだプレゼント渡してないんだからね……。
     絶対、帰ってきなさいよね……」

( ^ω^)「また、この丘で会うお。
       何年掛かってでも、絶対、絶対会うお」



199 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:47:59.18 ID:w2LlQKwM0
ああ、そうだった。
なんで忘れてたんだろう。
ツンとの1年ぽっきりの想い出。
ツンの存在。

僕は向こうで、空気のように扱われた。いるのもいないのも同じだった。
だからだろうか。
次第に、同じく空気のように扱われているツンと、一緒になりたいと強く思ってしまったのだろうか。
一緒に居たいがために、僕はツンの存在を全否定し、一人の女の子として見てしまった。

僕が思い出すごとに、ツンの存在が弱々しく、希薄なものになっていく。
僕が現実を見つめ始め、空想のツンのことが見えなくなっているのだろう。

今やツンの息も絶え絶えだ。
このままだと、確実に死んでしまう。
僕がすべて思い出してしまったから。

でも。僕は……。
ツンのためなら、この記憶すら失ってもいい。



200 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:48:22.72 ID:w2LlQKwM0
('A`)「……いた! ブーン!」
(´・ω・`)「……」

ドクオとショボンが丘にたどり着いたとき、ブーンはツンの墓の前にいた。
地にへたり込み、力なくうなだれていた。

(´・ω・`)「……ブーン、ツンは……」
('A`)「……ブーン、大丈夫か?」

二人がブーンに声を掛けると、ブーンは驚いたように振り向いた。

( ^ω^)「……」
('A`)「おい、ブーン?」
(´・ω・`)「どうしたんだい?」




( ^ω^)「君たちは誰だお?」

('A`)(´・ω・`)「え」

予想外の返答に、二人は語るべき言葉を失った。
背筋が凍りついた。
夏の陽光も感じなかった。


201 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:48:55.61 ID:w2LlQKwM0
( ^ω^)「どこかで会ったのかお?」
('A`)「え……ブーン?」
(´・ω・`)「何、言ってるんだよ……笑えない冗談はやめなよ……」

( ^ω^)「えっと……いつ会ったのかお?」

('A`)「ちょ、おま……え」
(´・ω・`)「わ、笑えないバーボンはやめなよ、ねぇ」

( ^ω^)「なんなんだお、君たち。
       ……あ、ツン、大丈夫かお?
       いきなり倒れるからびっくりしたお。
       もう大丈夫かお?」

ブーンは、何もない空間に語りかけた。
ドクオとショボンは呆けたようにその様子を見守ることしかできなかった。

( ^ω^)「まだ顔色が悪いお。
       僕が抱っこして帰るから」

そう言ってブーンは空虚な空間に手を伸ばし、抱き起こすジェスチャーをした。
いや、ブーンの中では、それはツンを抱き起こしていることに他ならなかった。

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと待ってよ……ねえブーン、本当に覚えてないの?
       僕だよ、ショボンだよ、ねえ」
( ^ω^)「ショボン……」
(´・ω・`)「そうだよ、ショボンだよ。ねえそんな冗談やめてよ。
       面白くないよ。バーボンにもなってないよ。
       ねえブーン、目を覚ましてよ、ねえ!」
('A`)「ショボン……」


202 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:49:41.92 ID:w2LlQKwM0
ショボンは明らかにいつもの氷のような冷静さを欠いていた。
うろたえ、クールな面影はなかった。

( ^ω^)「バーボンってなんだお? 訳が分からないお。
       ツン、僕の家に帰ろう」
(´・ω・`)「う、嘘だよね? そうだよね?
       ブーン、嘘だと言ってよ! ブーン!
       ツンはもう死んでるんだ! 
       あんな状態で、生きていられるわけがないんだ!」
( ^ω^)「何縁起の悪いこと言ってるお。
       ツンはここにいるお。ちょっと顔色は悪いけど、眠ればすぐ治るお。
       そこをどくお。僕はツンと一緒に帰るんだお」
(´・ω・`)「嫌だ! ブーン! 思い出してよ!
       大切な人が死んだことから逃げないって言ったじゃない!
       ねえブーン! 思い出して……」
( ^ω^)「大切の人が死んだことから、逃げない……」
('A`)「ああ、お前は、確かに言った。
   『大切な人の死から逃げることを、死んだ人は望んじゃいない。
    だから僕は、悲しいけど強く生きるんだ』ってな。
   あの言葉は嘘だったのかよ……おい!」
(´・ω・`)「思い出してよ……ブーン……思い出してよおおおおおおお!」
('A`)「ブーン……!」
( ^ω^)「……」





( ^ω^)「……ダメだお」


203 名前:( ^ω^)ブーンのとある夏のようです。 ◆girrWWEMk6 :2006/02/17(金) 19:51:05.25 ID:w2LlQKwM0
(´・ω・`)「……え?」

( ^ω^)「ダメなんだお。
       いくら忘れようと思っても、忘れられないお……」

('A`)「ブーン!」

   □□□

――僕は。

( ^ω^)「ツンのためなら、記憶すら無くしても構わない。
       そう思ったはずなのに……」

忘れたフリをしていれば、本当に忘れられるんじゃないかと思った。

( ^ω^)「ツンを見たら、どうしてもドクオとショボンのことを思い出してしまうお……」

見まいと思って瞳を閉じても、まぶたの裏で思い出される記憶。

( ^ω^)「ツンのことが大切なのに……。
       本当に大好きなのに……」

どうしても忘れられない僕は、ツンを殺してしまうこと以外に、道はない。

( ^ω^)「僕は、ツンを……愛してるのに……」

何故僕の大事な人は、みんないなくなってしまうのだろう。


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