525 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:30:15.98 ID:QGcdd9Hc0
朝、内藤は機械的に朝食を食べ、歯を磨き、顔を洗う。

ここは工場の寮。
実家から工場は近い。
だが内藤は父親と進学の事で大喧嘩し、勢い余って家を飛び出していた。
家にはあれから一度しか行っていない。
その一度ですらも大喧嘩で終わったのだから、帰る気など全く無かった。
―――昨日までは。

飛行機製作のための工具を取りに行かなくてはならない。

そう考えながら工場へ向かう。
内藤は、突然後ろから背中を叩かれた。

('A`)「ういーっす、気分最悪の目覚めだぜ。うぇえぇ〜ゲホッゲホ」

いきなり胃の中のものを戻すドクオ。
どうやら昨日飲みすぎてしまったようだ。

( ^ω^)「無茶飲みは良くないお。」
('A`)「ウルセー、お前が来なかったからだ!ウウッ、太陽が目にしみる…。」
( ^ω^)「ほら、行くお。」

そう言って内藤はドクオに肩を貸す。
二人はgdgdとした足取りで工場に向かった。


526 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:30:57.68 ID:QGcdd9Hc0
キンコーンカーンコーン

鐘が六時を伝える。
朝はまずチームごとにラジオ体操。
『まずは大きく腕を伸ばし背伸びの運動からー!』
ラジオから聞こえる無駄に明るい声。
内藤は大きく息を吸い込んで吐き出す。見上げると空は曇り。だが内藤は晴れやかな気持ちだった。

( ゚∀゚)「作業開始!!全員持ち場に着け!」

ジョルジュの声がスピーカーから聞こえてくる。
内藤たちは持ち場へと向かっていった。

………。

今日もナットを締める、締める、締める。
希望があると仕事にもやりがいがでてくるもので、内藤はいつもより作業のスピードを上げていた。
そして同じチームの人から驚かれた。何があったんだ、と。
確かに内藤の変わりようは目を見張るものがあった。
今まではいつもチームのメンバーの足かせで、チームは工場内の競争では25週連続最下位を更新中。
工場長からも『クソスレ』のレッテルを貼られていた。

( ゚∀゚)「おぉ!チームVIP、今日はご機嫌だな!」

気付くと内藤の作業するベルトの前に、ジョルジュが立っていた。

( ^ω^)「働く目的が出来たんだお!」
( ゚∀゚)「そうか、内藤くんもやっとそのことに気付いたか。
     わしなんかはおっぱ…、いやなんでもない。作業を続けたまえ。」

そう言い残してジョルジュは去っていった。


527 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:37:39.02 ID:QGcdd9Hc0
昼、内藤は食堂でカツ丼を掻き込む。
量だけが自慢のはずのメニューがすぐに丼から消え、内藤の胃に収納される。

( ^ω^)「く、食ったお。」

食べすぎと急いだこともあって苦しそうな内藤は、おぼつかない足取りで医務室へと向かう。
ドアを開けると、かわいらしいお弁当を食べているツンがいた。

( ^ω^)「ツン、昨日の事なんだけど…。」
ξ゚听)ξ「あら、内藤君。」
( ^ω^)「僕きっとツンを空に連れてくお。だから待っててくれお!」
ξ///)ξ「うん…。ありがと。」
( ^ω^)「それで、明日暇があったら付き合って欲しいお。」
ξ///)ξ「いきなりそんなこと言うなんて…不意打ちだわ!」

どう脳内変換されたかは良く分からないが、勘違いしているらしい。
何とか誤解を解き(この間にポカポカと頭を叩かれた)、明日の約束をする。

午後からも内藤のペースは衰えず、チーム内も燃えたこともあり、
今週は最下位を取らなくても良さそうな感じになった。
更衣室からドクオと出る。
二人はバーボンハウスへと吸い込まれていった。

(´・ω・`)「ようこそバーボンハウスへ テキーラはサービスじゃないよ。」
( ^ω^)「ういーっす。」
('A`)「今日も来ちまったぜ。」
(´・ω・`)「注文を聞こうか。」
('A`)「ウィスキー」
( ^ω^)「オレンジジュースにするお。」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ。」


528 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:42:12.14 ID:QGcdd9Hc0
相変わらず謎なテンションのショボン。
二人は10時まで飲み続けた。(内藤はオレンジジュースだけだが。)

( ^ω^)「今日は実家に帰るお。だからこの辺でお開きにするお。」
('A`)「なーに言ってやがんだぁー!まだこれからだぞ!ウ、ウワアアァァン」

だいぶ酔っ払っているドクオを無視し、先に勘定を済ませて店を出る。
今日は風がなく、そんなに肌寒さは感じない。
曇りで月は見えないが、きっと分厚い雲の上にいて、輝いているのだろう。

( ^ω^)「ただいまだお。」
J('ー`)し「…え?ホライゾンかい?良く帰ってきてくれたね。」
( ^ω^)「ちょっと工具を取りに…。それにカーチャンの顔も見たかったお。」
J('ー`)し「そうかい…四年ぶりだねぇ。元気にしてたかい?」
( ^ω^)「あったりまえだお!ところでトーチャンは?」

急にカーチャンの顔が曇った。
何かまずいことでもあったのだろう。
―――だが母の口から発せられる言葉は、予想の範囲外だった。

J('ー`)し「トーチャンは…死んじゃったよ。お前が家を飛び出したすぐ後に、交通事故で…。」
( ^ω^)「そんな…。」

言葉が詰まる。
少なくとも内藤は、父と仲直りしたいと思いつつこの家に帰ってきた。
だが、その対象はこの世にはもういないのだ。
無常。その二文字が内藤の頭の中を支配する。
内藤の目から自然と涙がこぼれてくる。


529 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:50:18.41 ID:QGcdd9Hc0
( ;ω;)「喧嘩したまま…仲直りしてないよお…。」

カーチャンは泣き崩れる内藤を優しく抱いた。
そっと、暖かく。この感触は何年ぶりだろう。
トーチャンが死んでからは母も大変だっただろうし、息子に少しは恨み言でも言っておかしくない。
だけど、カーチャンは何も言わずに抱きしめてくれた。

J('ー`)し「トーチャンはきっとあんたのこと許してるよ。おまえがいなくなってからも飛行機はどんな具合だろう、
     あいつ元気かな、なんて聞いてきてたんだから。―――我が家におかえり、ホライゾン。」

しばらくそのままでいて、僕は自分の部屋に戻る。
部屋は、ちゃんと掃除されていて、いつでも帰って来られるようになっていた。

( ;ω;)「ヌ、ヌクモリティー…。」

久しぶりに自分のベッドで寝る。
なんだかいつもより暖かく、懐かしい匂いがした。


朝。工場での朝が早いため、内藤はいつものように5時に起きた。
まだ外は薄暗い。

( ^ω^)「暇だし、ジョギングでもするかお。」

内藤は両腕を肩の高さまで上げて走る。
彼のスタイルだった。

( ^ω^)「ブーン」


530 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 15:51:47.90 ID:QGcdd9Hc0
朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。

きっと飛んでやる!
もう一度、そう決意した。

朝風呂に入り、朝食を食べ、庭の物置を探る。
―――あった。だいぶ埃を被っているが、中はそのままだった。

それから内藤はカーチャンに行ってくると挨拶をして、
約束の時間に間に合うように駅へと向かった。

ξ゚听)ξ「レディーを待たせるなんて最低ね。」
( ^ω^)「時間は間に合ってるお。」
ξ゚听)ξ「そうね、今日はどこに行くの?」
( ^ω^)「あの廃工場だお。高校の頃によく連れて行ってた。」
ξ゚听)ξ「あぁ、あそこね。」

二人で国道の端を歩く。
もう遠くの山の雪も消え、新しい生命たちが今か今かと芽吹く時期を待っていた。

( ^ω^)「もう冬も終わりだお。」
ξ゚听)ξ「そうね。」


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