20 名前:ブーンが宇宙交流の架け橋になるようです :2006/03/19(日) 22:08:37.22 ID:SXO89K1Y0
( ^ω^)「さーて、今日も学校休んでエロゲするお!」
ブーンは現在不登校気味の半引きこもりです。
学校での些細なトラブルが原因で、ここ数日は学校を休んでいるのです。
( ^ω^)「友達なんていらないお。僕はひとりでも生きていけるお」
ブーンがこうして平日の昼間からエロゲに興じていられるのは、
朝早くから働いてブーンを養っているカーチャンの存在があってこそなのですが、
そのことを考えると嫌な気持ちになるので、普段は考えないようにしています。
( ^ω^)「昨日一通りクリアしたから、今日は残ってる分岐を埋めるだけだお!」
と、ブーンが攻略サイトの窓を開こうとしたとき、
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴りました。
( ^ω^)「ちぇ、邪魔するなお」
無視してしまおうとも思ったのですが、今日は酒屋の集金が来ると
カーチャンに言いつけられていたので、ブーンはしぶしぶ玄関に向かいます。
( ^ω^)「はいはい、今開けるお! ──あれ?」
不機嫌な声を隠そうともせず、乱暴にドアを開けたブーンの目の前に立っていたのは、
酒屋のお兄さんでもなく、新聞の勧誘員でもなく、怪しい宗教の親子連れでもなく──
(*゚ー゚)「こ、こんにちわ。あたし、しぃって言います。宇宙人です。お日柄もよくはじめまして」
そう言って、自称『宇宙人』は小さな身体をペコリと折り曲げてお辞儀をしました。
30 名前:ブーンが宇宙交流の架け橋になるようです :2006/03/19(日) 22:24:31.28 ID:SXO89K1Y0
( ^ω^)「う、宇宙人?」
(*゚ー゚)「はい。あたしの母船はここから真上に38万kmほど離れたところで待機しています。
そこから小型艇に乗ってここまで来ました」
( ^ω^)(うわぁ……この子、可愛いけどキ印さんだお……)
ブーンは凍った笑みを顔に貼り付け、二歩ほど後ずさりました。
( ^ω^)「そ、それで……なんの御用だお? 宇宙人サン」
(*゚ー゚)「しぃ、です。あ、それでお願いなんですが、私をこのお家に置いてくれませんか?
決してご迷惑はおかけしません。お願いします」
( ^ω^)「な、なんでだお?」
(*゚ー゚)「あたしの母星は、何万年も前に消滅しちゃってるんです。
それ以来、あたしたちの一族は巨大な艦隊に乗って宇宙をさすらっていました。
新しい住処を、第二の母星となる惑星を探し続けながら。それで、この地球を見つけました」
まるでSFマンガのような話の展開に、ブーンはますます引きました。
( ^ω^)「宇宙人なんかいらないお。帰れだお」
そう言い放って、ブーンはドアをバタンと閉めました。
鍵をロックして、念のためにドアチェーンも掛けます。
( ^ω^)「やれやれ。春先になると変なのが増えるお」
満足げに溜め息をついたブーンは、ドアに背を向けて階段をのぼりかけました。が、
ピー……キュイキュイキュイキュイピーピーピー……
奇怪な音に驚いて後ろを振り向くと、ドアには白く発行するラインで大きな丸が描かれており、
そこがガコンと刳り貫かれたその向こうには、ポワッと光る指をこちらに向けた『宇宙人』が立っていました。
47 名前:ブーンが宇宙交流の架け橋になるようです :2006/03/19(日) 22:50:18.58 ID:SXO89K1Y0
ぽっかり丸く空いた穴の向こう側がわから、宇宙人──しぃがまたペコリと頭を下げました。
(*゚ー゚)「あ、いきなり破壊してすいません。すぐにちゃんと直します。
でも、あたしのお話聞いてください。お話だけでもいいんです」
いきなり目の前で展開された非日常に、ブーンはすっかり怖気づきました。
(;^ω^)「う、宇宙人?」
(*゚ー゚)「はい、宇宙人です。母星はザツニ星という名前でした。これでも軍人なんですよ。
正式にはヴィッパ方面艦隊軍所属、特別交流プログラム作戦室主任大尉です」
(;^ω^)「か、帰れだお! 地球を侵略しにきたんだお!?」
(*゚ー゚)「ち、違います。あたしたちは地球の人たちと友好な関係を」
(;^ω^)「うるさいうるさいうるさいお! 侵略者はみんなそう言うお!」
ブーンは思わず手近にあった靴べらを投げ、それはしぃの顔面に当たって地面に落ちました。
(;^ω^)「あ……」
(*゚ー゚)「……」
しぃは起こったそぶりも見せず、落ちた靴べらを拾い上げるとブーンに差し出しました。
(*゚ー゚)「お気持ちは分かります。でも、あたし、いえ、あたしたち、他にいくところがないんです。
寂しい気持ちで宇宙をふらふらするのに疲れているんです」
ブーンは黙って靴べらを受け取り、しばらく黙って、そしてどもりながらもこう呟きました。
( ^ω^)「投げて……ご……ごめんなさいだお」
(*゚ー゚)「いいえ、気にしてませんよ」
( ^ω^)「……さっさとドアを直して欲しいお。今からコーヒー淹れるからそれまでに頼むお」
(*゚ー゚)「は、はい! そりゃもうすぐですよ。ザツニ星の科学は宇宙一ィィィ、なんちゃって。あはは」
65 名前:ブーンが宇宙交流の架け橋になるようです :2006/03/19(日) 23:20:54.36 ID:SXO89K1Y0
こうして、なんかなし崩し的に、ブーンとしぃの共同生活が始まりました。
J( 'ー`)し「なんか最近、冷蔵庫の減りが早いけど……隠れて猫でも飼ってるんじゃないでしょうね」
( ^ω^)「ね、猫なんか飼ってないお」
( ^ω^)(危なかったお。これからは自腹で食料調達……エロゲ買うの控えるお)
( ^ω^)「しぃ。ご飯食べるお。今日は悪いけどカップラーメンで我慢して欲しいお」
(*゚ー゚)「あ、カップラーメン食べるの初めてですー。食べてみたいって思ってたんですよ」
しぃはブーンにとって、実に不思議な女の子でした。
宇宙人の癖に、コアなヲタネタにもついてくるし、90年代ロボットアニメが大好きだし。
難しい知識をたくさん蓄えてるかと思えば、子供でもしないような失敗を──
( ^ω^)「あー! なにしてるお?」
(*゚ー゚)「え? え?」
( ^ω^)「カップラーメンのフタは全部はがしたらダメだお!」
(*゚ー゚)「あ、そうなんですか。なるほど」
( ^ω^)「ところでしぃは、母船でどういう生活をしていたんだお?」
(*゚ー゚)「……一人ぼっちでした。天涯孤独で、いつも除け者でした。だからでしょうか。
こんな僻地での単独任務を押し付けられたのは。みんな嫌がってましたし、あたしも嫌でした」
(;^ω^)「…………」
(*゚ー゚)「あ、でも。今は楽しいですよ。ほら、お陰でカップラーメンも食べることができました。
小型艇で地球に向かってる間に見たテレビで、ずっと気になってたんです。
それに」
( ^ω^)「それに?」
(*゚ー゚)「ブーンさんと友達になれました」
83 名前:ブーンが宇宙交流の架け橋になるようです :2006/03/19(日) 23:39:37.42 ID:SXO89K1Y0
二人は生活の大部分を部屋でダラダラ過ごすことに使い、
外に出掛けたりすることはほとんどありませんでした。
ごろごろしながらマンガ読んだり、気が向いたら対戦ゲームしたり、
時にはネットサーフィンをするしぃにネット用語を教えてあげたり。
(*゚ー゚)「ブーンさん」
( ^ω^)「なんだお?」
(*゚ー゚)「蒼星石の日記ってなんですか?」
( ^ω^)「……素直クールとエロスの坩堝だお」
一度だけ、しぃが乗ってきたという小型艇の隠し場所にまで連れて行ってもらったことがありました。
ですが、そこにはなにもなく、ただ視界の開けた小高い丘が広がっているだけでした。
( ^ω^)「ここに隠してるのかお? なんにもないお」
(*゚ー゚)「目に見えるものだけが、この世のすべてではないんですよ」
そう言ってしぃは、ふふ、と笑いました。
それからさらに数日が過ぎました。
ブーンは押入れから埃の被った画材道具を引っ張り出し、しぃの肖像画を描き始めました。
( ^ω^)「宇宙人の肖像画を描くなんて、きっと僕が史上初だお」
(*゚ー゚)「完成したら、見せてくださいね」
( ^ω^)「しぃにプレゼントするお」
(*゚ー゚)「え、ホントですか?」
ブーンは描きかけの絵が学校に置いたままであることを思い出し、
あれもいつかは仕上げてみたいな、とちょっと思いました。
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