107 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:35:47.23 ID:Q3DR1+zlO
暗く、狭い部屋で一人、彼は眠る様にたたずんでいた。
たたずんでいた、と言うより余りの狭さと、
どんどん彼の体を蝕む冷気のせいで体が動かせないという表現の方がふさわしいかもしれない。
だから、彼は今の彼に唯一出来る事、即ち思考を巡らしていく事に集中していた。
――此所に来たいきさつはよく覚えていない。分かるのは漠然と体中を支配している『死』の予感だけだ。
――何故私は死ななくてはならないのだろうか?
彼が脳髄の奥で感じたのは、ある意味歓喜とも取れる純粋な何者かの悪意だった。
108 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:36:30.75 ID:Q3DR1+zlO
ピーンポーン
08:41分,内藤の家のチャイムが響く
(^ω^)「はいはーい、今行くお」
内藤は右手に持っていた程よく泡だったスポンジを投げ出して慌ただしく風呂場から出る
ガチャ
(^ω^)「はい内藤ですお。あんた誰だお?」
ドアの外に立っていたのは老けた男、大きな発泡スチロールの箱を抱えている。
男「どうも、vipクール急便です。ホライゾン県にお住まいのカーチャン様からお荷物を預かっております」
(^ω^)「はいはい、宅配屋さんね。今ハンコ持って来ますお」
内藤はまたドタドタと部屋の中に入り、すぐに安っぽいハンコを片手に戻って来た。
(^ω^)「カーチャンが確か電話でプレゼントくれるって言ってたっけだお」
男「どうやらなかなかの高級品みたいですよ、あ、ハンコこっちです」
(^ω^)「高級品wktk」
男「はい、はーい有り難う御座います。では、今後もよろしくお願いします。」
男は小さく一礼すると、去って行った。
だが内藤にとってはそんな初老の男の背中より贈り物の中身の方が気になる物なのだ。
(^ω^)「そういや風呂洗ってたからゴム長履いたままだったお」
109 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:37:04.73 ID:Q3DR1+zlO
08:46分、内藤、『贈り物』を部屋の真ん中に移す
(^ω^)「さて、早速開封しちゃうんだお」
内藤は床から拾い上げたカッターで手早くガムテープを切った。
(^ω^)「よし…せーの!」
08:47分、内藤、『贈り物』を開封
(^ω^)「……!!ハンパ無くデカい海老だお!こりゃ食いでがあるお!カーチャンサンクスだお!」
箱の脇で小躍りする内藤、と、内藤の足に鋭い痛みが走った。
(^ω^)「!?……あれ?血が出てるお?」
腿は何か刃物で裂かれた様になっており、だらだらと血が垂れ流れている。
(^ω^)「あ!海老もいなくなってる!」
(^ω^)「まさか……スタンド攻撃かお?」
不思議がる内藤の視界の隅で何かが動く、素早くその方向を振り向くと、
そこにはハサミを振り立てて飛び掛かって来る巨大な海老がいた。
(^ω^)「おおおおお!!!」
内藤は不意を突かれて焦るも、転がりながら海老の強襲をかわす。
既に内藤は悟っていた。
(^ω^)「カーチャン…あんたって人は…」
(^ω^)「活海老送ってきやがった!!」
着地した海老は直ぐに振り向いて第2激を繰り出して来る、それを内藤はガンプラで受け止める。
(^ω^)「ビグザムがバラバラだお…」
110 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:38:03.18 ID:Q3DR1+zlO
08:50分、ビグザムがバラバラになり、食うか食われるかの戦いが始まる
(^ω^)「おおっ!」
内藤はドクオから貰った二本のナイフを両手に持って構える。
(^ω^)「海老なんかに負けてたまるかだお!」
内藤は気合いを込めて右のナイフを振り下ろした。
しかし海老は造作も無くかわす、その動作の余裕っぷりに内藤は一種の恐怖を感じていた。
(^ω^)「しかああし!!避けた直後は動けないハズだお!」
すぐさま渾身の力を込めた左のナイフが海老と同じ高さの空を横に切り裂いた。
ガチィィン!!
(;^ω^)「…そんな…馬鹿な…」
渾身の力を込めたナイフは確かに海老に当たった。
しかしその刃は海老の外殻を破壊するに至らない、
ただ衝撃が内藤の左腕を貫いただけだった。
(;^ω^)「う…うおおおお!!!!」
内藤はがむしゃらに両手のナイフを何度も何度も海老に突き立てる。
ガチィィン!!ガチィィン!!
しかし結果は変わらない、そして内藤の連打の手が緩んだその瞬間。
ザクッ
赤黒いフォルムが内藤の視界の中で舞ったかと思うと、内藤の右肩はバックリ裂けていた。
(;^ω^)「…………ッ!!」
111 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:38:45.40 ID:Q3DR1+zlO
08:52分、内藤の肩が裂ける
(;^ω^)「こいつ…予想以上に手強いお…」
内藤はナイフを捨てながら呟いた。
(;^ω^)「鋭いハサミと堅牢な殻…こりゃもうだめかもわからんね」
海老はゆっくり振り返って止どめを刺そうとしてくる、
赤黒い殻は内藤の血に濡れてさらに毒々しくなった様だ。
(;^ω^)「来るな…海老…」
ジリジリと距離が詰まる
(;^ω^)「えーと…あ、フリスクあげますから…」
海老は止まらない
(;^ω^)「もう駄目だお…」
海老がハサミを振り立てたその瞬間。
ガコオン!
内藤は後ろ手に隠していたフライパンで海老を強打していた、
それも渾身の力で、妥協なく、強打。
(^ω^)「『斬激』が防げる硬い殻も『衝撃』は防げないお!
確実に重たい衝撃がお前の内臓を駆け巡ったハズだお!」
確かに、海老はフライパンの下で動かなくなっている。
(^ω^)「さあ…鍋の準備をするお…」
内藤は鍋いっぱいに水を入れた。
ガタガタ…ベキッ!
(^ω^)「!!」
内藤は異音に気付いて振り向く。
もう海老は始末した筈だ…そう言い聞かせる。
しかし内藤の眼の前には穴の開いたフライパンと殺意に満ちた海老の姿があった。
112 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:39:25.30 ID:Q3DR1+zlO
08:55分、海老はフライパンを破壊して内藤と対峙する
(;^ω^)「鉄も切れるハサミ…フライパンで叩いても壊れない殻…」
(;^ω^)「駄目だ、死んだお。カーチャン恨むお」
海老はハサミを引きずりながら近寄って来る。
(^ω^)「!そうだ!煮え湯を食らえ!」
内藤は鍋の中で沸いた水をぶちまけた。
しかし厚い殻にそんな小細工が効く筈がない。
海老は平気で寄ってくる。
(;^ω^)「ですよね―」
(;^ω^)「すいません海老さん…今では反省してます…」
(;^ω^)「フリスクに99%カカオもつけますから…」
ヒュッ!
海老のストレートが飛んで来る。
(;^ω^)「駄目だ!話の分かる相手じゃない」
海老のハサミは壁に穴を開ける。
(;^ω^)「もう手はないお…打撃も熱も駄目………………!」
(^ω^)「そうだ!まだこれがあったお!」
内藤はカッターを拾った。
(^ω^)「海老さんごめんなさい、おとなしく食われますお」
海老は寄ってくる。
(^ω^)「でも最後に聞いて欲しいお」
海老は先ほどできた水溜まりの中に入る。
(^ω^)「…………死ね!!」
内藤は切ったコードを水溜まりに投げ込んだ
113 名前:ブーンの家に贈り物が来た様です :2006/05/07(日) 02:39:57.46 ID:Q3DR1+zlO
バチイッ!!
閃光が走る
内藤は眼を背ける
海老は閃光の中心で大きく跳ねた
(^ω^)「すごいお…!」
内藤は慌ててコンセントを抜いた。
閃光が収まり、水溜まりの上には痙攣する海老だけが残っていた。
(;^ω^)「…やった!」
〜その夜〜
(^ω^)「カーチャン?海老有り難うだお」
(^ω^)「うん、おいしかったお。痛かったけど」
(^ω^)「え?いやいや遠慮しとくお」
(^ω^)「え?いや…大丈夫だおカーチャンが食べてくれお」
(^ω^)「そんな…もう送っちゃったのかお!?」
内藤は力無く電話を切った。
明日、海老5匹が入った箱を持って来るだろう宅配屋をどう追い返すか考えながら。
(^ω^)「…カーチャンは僕を殺したいのかお?」
〜完〜
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