621 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:20:25.03 ID:4cj+10080
( ^ω^)「ふぅ、全く酷い目にあったお」
('A`)「それにしちゃあ嬉しそうだな、ブーン」
( ^ω^)「そりゃそうだお。この箱の中にツーンの徹夜チョコが入ってるかと思うとにやけが止まらないお」

午前中の授業が終わり、ブーンとドクオは屋上で弁当を広げていた。
ブーンは弁当を食べながらも、地味に包装された小さな箱を大事そうに抱えている。

('A`)「……それ、ここで開けるなよ。俺が空しくなるだけだからな」
( ^ω^)「ふんふんふーん、だお」

('A`)「……。俺の話聞いてねぇな、こいつ」


 ガチャ


扉の開く音。

('A`)「ん? ツンか、遅かったじゃ――」

ドクオはそこで言葉を止めた。
ここ一年のあいだ、屋上にやってくるのはドクオ、ブーン、そしてツンくらいのものだった。
しかし、そこに居たのはツンではなかったのだ。

('A`;)(……誰?)

ドクオは、その人物が女子だということだけは理解できた。


622 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:21:23.84 ID:4cj+10080
( ^ω^)「あ、ナナちゃんだお。こんな所で奇遇だおwww」
「あはは……、うん、奇遇だね」

ドクオは突然の出来事にぽかんとしている。

「えーと、ドクオ君」
('A`)「ひゃ、ふぁぃ、な、何だ!?」

ドクオは動転している。

「これ、読んでおいてくれる?」
('A`)「へ? あ、ああ」

ドクオは言われるがまま封筒を受け取った。

「じゃあね」
('A`)「あ、うん」

ドクオは屋上の扉が開いて閉じるのを、ぼうぜんと見つめることしかできなかった。


('A`;)(――何なんだ、一体?)


623 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:22:57.95 ID:4cj+10080
屋上には再びブーンとドクオが残された。
ドクオは渡された封筒の裏を見る。すると、そこには「伊架 ナナシ」と書かれていた。

('A`)「……ブーン、この『伊架 ナナシ』って誰だ?」
( ^ω^)「さっきのナナちゃんのフルネームだお。」

ドクオは頭を巡らせる。

('A`)(つまり、さっきの女子=ナナちゃん=伊架ナナシ、ってことでFAか?)
('A`)(ていうかそもそもあいつ誰だよ。ブーンとは知り合いみたいだけど……)

( ^ω^)「そーいえばナナちゃん、好きな人にチョコ渡すとか言ってたお。誰に渡すのか気になるおwww」
('A`)「え゛」

今のブーンの発言と、封筒とを見比べるドクオ。

('A`)「……あのさブーン。それ、いつ言ってた?」
( ^ω^)「先週の掃除の時間だお。ブーンとナナちゃんは同じ班だから、一緒に掃除してたんだお」


624 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:25:30.39 ID:4cj+10080
('A`)「あ゛ー……素性は分かったけど……もう何が何だかワカンネ」

ブーンが居なくなった屋上で、ドクオはぶつぶつ独り言を言っている。
封筒を開けると、そこには一枚の便箋が入っていた。

('A`)「ったく、手紙なんて読むの久々だな。えーっと」


『こんにちは。
 ドクオ君って甘いもの好き?
 渡したいものがあるの。
 今日の放課後屋上……』


('A`;)「こんなもん読んでられっかあああああああああああああああああああ!!!」

ドクオは赤面しきっていた。
ドクオの脳内と心臓がどろめくように疼く。

('A`)(おいおい、有り得ねえ、俺は天涯孤独で唯我独尊で一世一代。)
('A`)(なのに、こんなの貰うって、ねーよwwww)

('A`)(……ねーよ。何かの、間違いだ)


625 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:27:18.51 ID:4cj+10080
――そして、時はあっというまに流れて、放課後。

ξ゚听)ξ「バカ……死ねこの変態アメリカかぶれー!!」
( ^ω^)「だおー♪」

教室ではブーンとツンの追いかけっこが繰り広げられている。
平凡な、しかし今となっては貴重な日常。
ドクオは頬杖をついてその光景を眺め、ふぅ、とため息を漏らす。

('A`)「……さて、どーすっかなぁ」

封筒を取り出して意味も無く太陽にかざす。封筒が透けて、便箋の花模様が写る。

('A`)(まあ、行くしかない、か……。)
('A`)(そして……断ろう)

ドクオは立ち上がった。


626 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:29:15.21 ID:4cj+10080
ギィィ……

ドクオが屋上の扉を開けると、そこでは制服の少女が風に揺られていた。

「来てくれたんだね、ドクオ君」
('A`)「ナナシ、もう来てたのか」
「……」
('A`)「どうした?」
「私今ちょっと感動してる」
('A`)「へ?」
「ドクオ君、はじめて私の名前呼んでくれたから」
('A`)「……ああ……。」


「……好きだよ、ドクオ君。2年間、ずっとすきだった」


ドクオは目を逸らす。

('A`)「……やめてくれ。」
「……え?」
('A`)「俺は……そんなことを言われるような人間じゃない」
('A`)「俺は、人に愛される資格とかそーいうのとは……無縁なんだ」
「……」


627 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:31:39.18 ID:4cj+10080
「……あのね、ドクオ君。入学式の日のこと、覚えてる?」
('A`)「え?」

「入学式の日、ドクオ君はブーン君と一緒に、廊下に立たされてた。」
「そのときのドクオ君は、すっごく怖い目をしてた。」
「授業がはじまっても、昼休みも、すごく怖い目をしてて……」

「……怖くて、わたしは近づけなかった。」
('A`)「怖い、か…… ま、そりゃあ天涯孤独の俺様だもんな、怖がられて当然か」

「でも」

('A`)「?」


「わらうようになったの」
「ブーン君と一緒にいるうちに、ドクオ君はわらうようになったの」
「私は、その笑顔を好きになったんだよ」


ナナシはそれだけ言って、手提げからリボンで包装された箱を取り出した。


628 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:33:18.06 ID:4cj+10080
――はい、チョコレート。
――知らないかもしれないけど、私、ドクオ君と一緒の専門学校行くんだよ。
――これからもよろしくね、ドクオ君。

('A`)「……。」

ドクオは家へと帰るその途中、さっきのナナシのセリフをずっと思い返していた。

('A`)(ずっとひとりで、ずっと孤独で、それでも生きていくのが俺の運命。)
('A`)(俺の両親が死んだあの日、そう運命が決められた……はずだったのに)

と、その時。

( ^ω^)「ぶーーーーーーーーーーーーーーーんだおーーーーーーーーっ!!!」
('A`;)「!!?」


どっかーん!


('A`)「っつ……な、なにしやが……」
( ^ω^)「いててだお……まったく、置いてくなんて酷いお。先に行っちゃわないでほしいお」


629 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/15(水) 12:37:23.62 ID:4cj+10080
('A`)「先に行ったのは悪かった……けどよ、だからってあの突進はねーよ」
( ^ω^)「まあ気にしないお。それに」
('A`)「それに?」
( ^ω^)「雪が溶けてあったかくなったこの風の中だと、どーしてもブーンしたくなるお」
('A`)「……そっか」
( ^ω^)「だお」

('A`)「ふぅ……。……あーあ、こいつのおかげで」


――変わっちまったな。運命も、そして……俺も


ドクオは空を見上げ、目をこすった。それにブーンが気付く。

( ^ω^)「……ん? ちょ、なんで泣いてるんだお! 目にゴミでも入ったのかお!?」
('A`)「あー、いや……。別れの季節だな、と思ってな。」
( ^ω^)「?」

('A`)「大切な親友と当分会えなくなるのか、って思うと、僅かに涙が出ちまった」

( ^ω^)「……。」
('A`)「……。」

( ^ω^)「あ、あいかわらずドクオの台詞は恥ずかしいおwwwブーンまで泣けてきたおwwww」
('A`)「うはwwwwアメリカでも頑張れよwwww期待してるぜwwwww」


630 名前:【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 :2006/03/15(水) 12:38:21.54 ID:4cj+10080
――少し離れた場所で、二人の少女が少年たちを見ている。

ξ゚听)ξ「あーあ、男二人して泣いちゃって。」
「ドクオ君が泣いてるのはじめて見たよ……。」
ξ゚听)ξ「私だって、ブーンがあんなに泣いてるの見たの初めてよ。」

春の風が吹いた。

ξ゚听)ξ「……なんかちょっとうらやましいな」
「……そうだね。」


【ブーン達が別れの季節を迎えたようです】 おわり


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