298 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/22(水) 20:49:26.02 ID:uqsBW3GQ0
( ゚∀゚)「おっおっおっおっ・・・働け!」
工場長ジョルジュの喝が機械の音に打ち勝ち、工場内に響き渡る。
ここはVIP製作所、主に自動車の部品を生産している。
内藤はナットを締める、締める、締めるしめるしめr
突然電源が切れたように内藤の目の前が暗くなる。
気付いた時には医務室のベッドで横たわっていった。
( ^ω^)「うはwwwww休憩ktkr!!!!」
彼は束の間の休息を噛み締める。
しばらくして医務室のドアが開いた。
ξ゚听)ξ「ああ、気が付いた?内藤君。」
( ^ω^)「おお、ツンかお。ってえぇ!?ツンじゃないかお!」
上体を起こすと頭が痛み始める。どうやら倒れた時に頭を打ったようだ。
( ^ω^)「い、痛いお…。」
ξ゚听)ξ「大丈夫!?今見てあげるわ!」
髪の毛を掻き分け、傷が無いか探す看護婦の名はツン。
彼女とは高校が一緒だったが、内藤は頭が悪く大学には行かずに地元の工場に就職。
一方ツンは都市の大学に進み、看護士の資格を取ったと風の噂で聞いていた。
―――まさかこんなところで会えるとは。
高校の頃は二人の中は良く、一緒に遊びに行くこともしばしばあった。
だが、ツンが一緒の大学へ行こうと誘ったのを、断ったあたりから二人の関係は崩れ始める。
きっかけは些細なこと。
高校卒業の頃には、内藤とツンは一言も会話を交わさなくなっていた。
305 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/22(水) 21:07:54.11 ID:uqsBW3GQ0
( ^ω^)「ツンとこんなところで会うとは…まさに奇跡だお。」
ξ゚听)ξ「私は内藤君がここで働いてるって知ってたけどね。」
( ^ω^)「本当かお!?」
内藤が知らないのも無理は無かった。
彼はいつでもバカ元気だったし、彼女は二ヶ月前に雇われたばかりだったから。
ξ゚听)ξ「それにしてもこの工場って労働者を酷使するわね。法律違反だわ!
工場長は修羅よ…。」
(;^ω^)「給料も安いから自分の趣味もロクに出来ないお。」
ξ゚听)ξ「趣味って、あれのこと?高校のときの。」
高校生の時、内藤は自作飛行機を作っていた。
ツンを大空へ連れていく―――そんなことも約束していた。
忘れたくても忘れられない思い出。
あの頃は夢があった。
今はどうだろうか。
内藤は決められた単純な作業をし、家に帰れば酒に頼り、寝るだけ。
( ^ω^)「ツンは…夢を叶えられてよかったお。」
そう言うと内藤は作り笑いをした。
つくづく自分に嫌悪する。
そんな内藤の目の前のツンは何も言わないが、どこか震えているようだった。
突然、内藤の手の甲に一滴の雨。それは暖かく、じんわりと肌ににじむ。
324 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/22(水) 22:58:33.87 ID:uqsBW3GQ0
ξ゚听)ξ「あのね、私ずっと内藤君に謝らなきゃいけないって思ってたの。」
( ^ω^)「何の事だお?」
ξ゚听)ξ「私が一緒の大学行こうって何度も迫ったこと。きっと内藤君はプレッシャーに感じたと思うの。
それから内藤君と疎遠になっちゃって…。後悔してるの。離れるのが不安で…。」
( ^ω^)「僕も悪かったんだお。努力もせずに諦めてたお…。」
ξ゚听)ξ「あのね…私」
ツンが何か言おうとしたその瞬間、医務室のドアが開く。
( ゚∀゚)「具合が良くなったようだな。それじゃあ作業に戻ってもらおう。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
彼の言葉は絶対だ。
工場長が部屋を出た後内藤は作業に戻る準備をした。
ξ゚听)ξ「内藤君、仕事が終わったらここに来て。」
( ^ω^)「わかったお。」
部屋を後にする内藤。
また気の狂うような作業が待っている。
…………。
( ゚∀゚)「今日はこれで終わりだ!諸君!明日のために鋭気を養っておけ!」
344 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/22(水) 23:42:40.06 ID:uqsBW3GQ0
工場長の一声で皆は作業を止め、更衣室へ行くものもあれば、
ノルマが終わらずに未だに作業を続けるものもいる。
内藤は、というと、午後からの頑張りで30分の遅れを取り戻していた。
('A`)「よぉ、暇ならバーボンハウスいかねぇか?」
( ^ω^)「今日はちょっと所用があってむりぽ。」
('A`)「えぇ〜。俺とメンマについて語ろうぜ!」
内藤はなんとか同僚の飲み屋への誘いを断り、医務室へ向かう。
ξ゚听)ξ「内藤君、来てくれたんだ…。えっと、ここじゃあ何だし、バーにでも行きましょうか。」
( ^ω^)「バーボンハウスだけは止めてくれお。」
ξ゚听)ξ「違うわよ。高校のときクーちゃんっていたでしょ、お店始めたらしいから行ってみようかな、って。」
夜の風は冷たい。
街路を歩く二人に容赦なく冷気を浴びせてくる。
だが、心は暖かかった。久しぶりに―――ツンに会えたから。
カランコロン
店のドアに取り付けられたベルが景気良く鳴る。
川 ゚ -゚) 「いらっしゃい。ってツンちゃん、それに内藤君も!」
ξ゚听)ξ「卒業式以来ね。」
( ^ω^)「お久しぶりだお。」
川 ゚ -゚)「…二人とも、相変わらず仲のいい事。」
ξ///)ξ「そ、そんなんじゃないわよ!ね、内藤!」
(;^ω^)「否定するのもなんだか空しいお…。」
とりあえず酒を注文をして、席に着く二人。
363 :( ^ω^)ブーンのモダンタイムス:2006/03/23(木) 00:29:00.47 ID:QGcdd9Hc0
ξ゚听)ξ「あのね…さっき言えなかったことなんだけど…。」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ///)ξ「わ、私を空につ、連れて行って!」
(;^ω^)「え、何て言ったんだお?良く聞き取れな…」
次の瞬間、ツンの鉄拳が内藤の顔にクリーンヒット。
ξ#゚听)ξ「もうっ!恥ずかしいこと二度も言わせないでよね!!!」
(;^ω^)「久しぶりのツンの鉄拳は効くお…。」
ξ゚听)ξ「私はね、内藤の空を飛ぶ夢を諦めて欲しくないの。夢を見続ける内藤のことが好きだったの!」
( ^ω^)「え!?今なんて…。」
ξ///)ξ「やだぁ、私ったら何言ってるのかしら…。」
それっきり、うつむいてしまうツン。耳が真っ赤だ。
内藤は、うれしく思った。
そして暖かい時間は過ぎてゆく、ゆっくりと。
カランコロン
ツンを駅で見送る。
内藤は自分の家ではなく、自宅近くの廃工場へと向かった。
すっかり錆び付いてしまった扉を開けると、中には月の光が差し込み、うっすらと輪郭が浮かぶ。
それは製作途中で放棄した、内藤の飛行機だった。
埃を払い、操縦席を覗く。そこには汚い字で『ブーン号』と記されていた。
( ^ω^)「また、やってみるか…。」
帰り道、ふと歩きを止め月を眺める。
―――近づいてやる、いつかきっと。
そう決意した内藤を、月はずっと見守っていた。
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