809 名前:( ^ω^)ブーンが高校に入学するようです :2006/03/19(日) 15:47:45.87 ID:uOS+ULQ+0
桜は往々にして健気に、そして儚く散るもので――。
春。それは無限の桜に彩られた季節。
県内有数の進学校へと向かうタイル張りの坂道。
これからの高校生活に胸を躍らせる新入生。
桜並木の通学路を、短いスカートの女子高生達が嬉しそうに駆け上がって行く。
若さと健気さ。まだ僅かに残る中学生の香りと、大人になりかけた容姿。
楚々とした少女もいれば、じゃじゃ馬娘もいる。
そんな並木道を一人の少年が歩いていた。
( ^ω^)「みんな平和な顔をしてるお」
ちょっぴりマヌケな顔をした少年だ。
だが顔は満面の笑みを讃えている。
( ^ω^)「おはようだお! みんな、元気に登校するんだお!」
だがその声に反応する者はいない。
誰一人として。
814 名前:( ^ω^)ブーンが高校に入学するようです :2006/03/19(日) 15:55:38.52 ID:uOS+ULQ+0
( ^ω^)「ふふ、みんな嬉しそうだお。これからの将来が楽しみだお!」
ゆっくりと少年は歩みを止めた。
生徒達は目もくれず、少年の横を通り過ぎて行く。
まるで目に入っていないかのように。
目線が桜の花びらに注がれる。
ひらり、ひらりと桜が舞い散っていく。
少年は笑いながら、ゆっくりと振り返った。
そこには。
( ^ω^)「懐かしいお……何もかもが」
少年の目線の先には、三人の生徒が歩いていた。
('A`)「き、緊張するぜ。先輩とか、怖いんだろ?」
( ´・ω・`)「何を心配しているんだ。まったく。案ずるな、僕が付いている」
少年は熱くなった目頭を親指と人差し指で押さえる。
心の底から、忘れ去られた記憶が蘇ってくる。
そして、少年は。
( ^ω^)「あれは――ツン」
817 名前:( ^ω^)ブーンが高校に入学するようです :2006/03/19(日) 16:03:57.41 ID:uOS+ULQ+0
不意に少女が背筋を反った。風になびく金髪がかわいらしい。
きょろきょろと辺りを見回す。
ξ゚听)ξ「今誰か、私の名前を――」
('A`)「おいおい……、冗談は止してくれよ」
気弱な少年の発言に、泰然と構えた少年が応じた。
( ´・ω・`)「おい、覚えているか? 君の親父さんから聞いた話を」
('A`)「桜の坂の――幽霊?」
桜の坂の幽霊。
三十年前、仲の良い四人組がいた。
いつもいつも一緒に遊んでいて、高校も同じ学校に進学した。
だけど。
('A`)「ブーンって云う人だけが、暴走車に撥ねられた……」
( ´・ω・`)「ああ、だからそのブーンさんの霊は未だにこの坂道を彷徨いているという――」
( ^ω^)「――――」
ブーンは何も言わなかった。
何も言わずに足元を見た。
両足がなかった。
突然、少女がブーンの元に詰め寄ってきた。
見えていないはずの、ブーンの元に。
822 名前:( ^ω^)ブーンが高校に入学するようです :2006/03/19(日) 16:13:20.65 ID:uOS+ULQ+0
そして少女は、そっとブーンの頬を撫でた。
母親と同じ、柔らかくて、暖かな手だった。
ξ゚听)ξ「ありがとう、ブーンさん」
ブーンは返事をしなかった。
ξ゚听)ξ「あなたが母を助けてくれた御陰で、私は今こうしてこの坂に立つことが出来ます」
( ^ω^)「本当に君は――ツンにそっくりだお」
聞こえてか聞こえずか、少女はにっこりと微笑んだ。ブーンが好きだったえくぼがよく似ている。
ブーンの心は、満たされていった。桜が舞い散る。ひらひらと。
少年二人はツンの背中を見ていた。
('A`)「ツン――」
( ´・ω・`)「君の親父のドクオさんに訊いた話なんだが――」
二人は黙って、桜の木を眺めた。
( ´・ω・`)「今ツンが撫でているこの桜こそが、ブーンさんの生まれ変わりらしい」
('A`)「そうか――、今でもこうして俺達を――」
三人は、もう何も言わなかった。ただ黙って肩を組み、仲良く校舎に消えていった。
( ^ω^)「また来年までのお楽しみだお!」
そうしてブーンは姿を消した。
――これは、一年に一度現れる、ちょっとマヌケな少年の伝説。
桜が、綺麗に散っていた。
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