■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■
大切なものを守るようです- 1 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:45:31 ID:sDFjx8Yo0
- VIPからお引っ越し
- 2 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:46:41 ID:sDFjx8Yo0
- まとめ…ローテクさん
→ttp://lowtechboon.web.fc2.com/taisetsu/taisetsu.html
- 3 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:49:03 ID:sDFjx8Yo0
- 三行であらすじ
・伝説の不良が二人
・拳のハイン
・脚のトソン
- 4 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:49:36 ID:sDFjx8Yo0
-
( ´∀`)「……」
( ´∀`)「……」
( ´∀`)「……」
( ^ω^)「理事長!」
( ´∀`)「……」
ξ゚?゚)ξ「理事長!」
( ´∀`)「……」
.
- 5 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:50:08 ID:sDFjx8Yo0
-
ξ゚?゚)ξ「くそ、聞こえてない」
(^ω^ )「もうイイお歳だからだお」
( ´∀`)「まだ還暦を迎えたばかりですよ、校長先生」
( ;゚ω゚)「あにゃあああああああああッッ!」
ξ゚?゚)ξ「理事長……聞こえているならお返事を。そのうち倒れますよ、校長」
( ´∀`)「ホッホッホッ」
失礼な。私はまだ、老化を心配されるような歳ではない。
むしろ、幼い頃にとうに失ったはずの童心が、蘇りつつある。そんな実感さえ、します。
内藤ブーン校長は、抜けているところがあります。
たまにこうしてからかうと、オモシロい反応がもらえるのです。
津出レイ教頭も。しっかりしていて、校長を支えるのには適役と思われますが、やはり彼女もどこか抜けているようで。
……いや、むしろ何かを隠している。考えすぎかもしれませんが、そんな気がします。
まだ校長と同じ三十台前後と聞いているのですが。
能ある鷹はなんとやら……。
.
- 6 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:50:41 ID:sDFjx8Yo0
-
(;^ω^)「とにかく、理事長!探したんですお!」
( ´∀`)「ほう」
よく考えると、彼らが用もなく私を呼び止めるはずもない。
そのことを、失念しておりましたな。
振り返り、二人を視界にいれる。
両手は後ろで組んだまま。いつものことです。
ξ゚?゚)ξ「理事長、目を離すとすぐにうろちょろするものですから……」
(^ω^ )「放浪癖だお。老化の現象だお」ボソッ
( ´∀`)「校長先生」
(;^ω^)「はっはい!あっれ、聞こえましたお!?」
( ´∀`)「あなたの給料……他の教員たちにおすそ分けしても、よろしいのですよ」ボソッ
(;^ω^)「はは、HAHAHA。そんな、ごジョーダンを……」
情けなくも、校長がオーバーに動揺する。
彼が笑うときはおっ、おっ、なんて声を発するのに。
背筋がそうとうかたくなっているのでしょう。いやはや……
ξ゚?゚)ξ「あ、でしたら校長の二割はワタシに――」
(;^ω^)「つつつ、津出クン!」
.
- 7 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:51:13 ID:sDFjx8Yo0
-
( ´∀`)「ホッホッホッ。なあに、ちょっとしたジョークですよ。大人気ないですね、取り乱して」
(;^ω^)「(理事長はむしろガキすぎるお……」
(´∀` )「さて……」テクテク
( ;゚ω゚)「え、あッうそ、心読んだお!?」
ξ゚?゚)ξ「声に出てました」
≡(;^ω^)「『童心』を褒めただけですお、理事長!待って!」
童心とガキとでは、ウリとナスくらい違う気がしますね。
形は似てるけど、色がぜんぜん違う。
美しい緑と、毒々しい紫と、で。
きびすを返し、意味深なため息を吐いて歩き始めると
私が給与査定にメスをいれることを危惧したのでしょう、校長が私を止めようとします。
そうするつもりなら最初から言わなければよいものを……。
(;^ω^)「あっそーだ、昨日実家からなすびが送られてきたんですお!いかがですかお?
. マーボーナスなんか、酒にグッてきますお!」
( ´∀`)「……」
私は酒は飲まない主義です。
酒は、ヒトを変える。
.
- 8 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:51:44 ID:sDFjx8Yo0
-
ξ゚?゚)ξ「理事長、どちらへ」
( ´∀`)「ホッ。なあに、図書室の様子を見よう、と思いましてね」
(;^ω^)「図書……室……?」
ξ゚?゚)ξ「本でも?」
( ´∀`)「もう期末試験まで10日をきります。学習している生徒がいかほどのものになったか、自習室をまわっているのです」
( ^ω^)「あ、あ……なーる…。僕はてっきり給料が……」ボソボソ
ξ゚?゚)ξ「……いまのところ、何人…?」
訊かれて、私は右手でマルをつくった。
オッケー、とでも言いたげなハンドサインですが、これが現実なのです。
決して、オッケー、と言えない数字。
それを見て、教頭は「ああ……」と、ばつの悪そうな顔を。
まあ、荒らされないだけ、上出来でしょう。
数年前までは自習室が荒らされに荒らされ、警備員を複数人就けないとだめだった、というのと比べると。
……もっとも。
学習にかける比重は、まだまだ薄いようですが。
生徒に、歳が近いことによる親近感を持たせて、授業に対する抵抗を減らそうと、若い教師陣で固めたのですがねえ……。
.
- 9 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:52:15 ID:sDFjx8Yo0
-
エレベーターから降りて、図書室に向かう。
ここ数年、わが校の治安はだいぶ秩序だってきつつある。
その証拠に、廊下を渡っていても、誰もそこであぐらを掻いたりなどしていない。
こうして、気兼ねなく歩けるというのは、いやはや、嬉しいものですね。
そんな感情をいだくのを、情けなく思いますが。
校長も教頭も、私のあとを着いてくる。
ホッホッ、と笑っていると、図書室に着いた。
過去に、イタズラで本が何度も破かれることがありましたが
一度生徒を器物破損で送検させると、以降は他のみんなもまとまっておとなしくなりましたな。
弁償させるときも、五割ほど水増しして請求しましたし。
これが愛と鞭。いくら生徒でも、罰はとびっきり厳しいものを与えないと。
それが私の教育方針なのですから。
( ´∀`)「さて……何人いるのやら」
ξ゚?゚)ξ「もう授業が終わって、一時間は経っていますからね」
(;^ω^)「あ、あの〜……えっと、話が………ボソボソ……」
聞こえませんね。
すぐにおちょぼ口になるのが校長の悪いところでしょう。
大した期待はいだかずに、扉に手をかける。
ゆっくり、扉を開いた。
.
- 10 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:52:46 ID:sDFjx8Yo0
-
( ´∀`)「………」
ξ゚?゚)ξ「やはり、誰も……あっ」
( ´∀`)「ホッ?」
ぱっと見た感じでは、誰もいない。
やはり、か……そう思うと、教頭がなにやら声をあげた。
誰か、いたのでしょうかね。
ξ゚?゚)ξ「理事長……あそこ……」
( ´∀`)「ホッ…ん?」
教頭が指をさすのは、部屋の隅の方。
そこらに陳列されている本は参考書ではなく、確か就職関係の本だったゆえ……
おそらく、恥ずかしいから隅っこで勉強しようと思った、恥ずかしがり屋なのでしょう。
校長も気づいたようで、「あっ」とわりかし大きな声を発した。
大声を出すと勉強のジャマになる……そんな常識すら弁えていないのでしょうか。
しかし、どうやら事情が違うようで。
・ .・
(;^ω^)「りりッ理事長、彼女は……ッ!!」ブルブル
( ´∀`)「ホ?」
.
- 11 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:53:19 ID:sDFjx8Yo0
-
どうしたのでしょう、年甲斐もなく情けない声を出して。
……いや、校長に限ってはこれがふつうでしたな。
目を凝らして、その生徒の顔を見る。
白い、髪……。
特攻隊のような、白く大きな服……。
なるほど……「彼女」、でしたか。
確かに、校長が怯える理由も、わかる。
从 )
( ´∀`)「高岡……ハインリッヒ……」
(;^ω^)「かかかッ帰りましょう理事長!キケンですお!」ブルブル
ξ゚?゚)ξ「……ご存じで?」
( ´∀`)「ええ、そりゃあもう」
( ´∀`)「あんなに暴力事件を起こされては……ねえ」
彼女、高岡さんは、おとなしくなってきた本校での、数少ない「不良」でしたな。
いったい、どうして周りに協調せず暴れることができるのか……。
・ ・ ・ .・ .・ ・ .・
いや……彼女がいたから、周りがおとなしくなった、のか。
無理が通れば道理が引っ込む、とは、実に的を射た言葉のようだ。
.
- 12 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:53:51 ID:sDFjx8Yo0
-
ξ゚?゚)ξ「はあ……。心中お察しします」
( ´∀`)「ホッホッ、気遣いはいりませんよ」
(;^ω^)「はは、HAHAH……」
( ^ω^)
( ;゚ω゚)「!?」
;゚ω゚)≡「ギャッ!!」ザッ
ξ゚?゚)ξ「校長?」
( ´∀`)「………ッ……」
なにが起こったのか。
校長が悲鳴をあげたかと思うと、彼はなにかに引っ張られたかのように、後退した。
何だと思って振り返る。
……いや、合っていた。
「引っ張られたかのよう」ではなく、本当に「引っ張られた」ようだ。
校長の襟首を掴んで引っ張ったその生徒に、目を遣る。
……目を疑いましたな。
金髪を、後頭部で縛っている、長身の女子。
高岡さんとは対照的な、黒い服。大きい学ランのように見受けますが……
いやはや、このご時世にこのような服を、よく用意できたものです。
都村トソン……、第二の問題児は。
.
- 13 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:54:27 ID:sDFjx8Yo0
-
(゚、゚トソン「どけ」
( ;^ω^)「いた、痛たたたたッ……!」
( ´∀`)「(ほう……)」
都村さんは、校長の胸ぐらを掴んでは締め上げる。
校長が爪先立ちせざるを得ないほど、校長を持ち上げている。
身長は彼女のほうが高いが……しかし、あのウエイトのある校長を、こうも軽々と……。
(゚、゚トソン「もう一度言う。どけ」
(;;;^ω^)「きっキミ!!校長に向かって、なにを――」
( ´∀`)「どきなさい、校長先生」
(;;;^ω^)「り、理事長!?」
私が言うと、都村さんは鼻を鳴らして校長をおろした。
解放され、彼はぜえぜえと肩で息をする。
都村さんはと言うと、私たちに一瞥を与え、そのまま中に入っていった。
都村さんが室内に消えたのを確認してから、校長は怒りを見せる。
本人の前ではゼッタイに怒りを見せないのに……面白い人だ。
.
- 14 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:55:15 ID:sDFjx8Yo0
-
ξ゚?゚)ξ「校長、大丈夫でs
(#^ω^)「なんだおアイツ!これはもー退学ですお!」
( ´∀`)「黙りなさい。図書室への入り口を塞いでいたあなたが悪い」
(#^ω^)「・・・・・・・・・・ッ!で、でm
( ´∀`)「それに、です」
( ´∀`)「こうしないと、彼女はあなたに実害を与えていたでしょう」
ξ゚?゚)ξ「肋骨の一本や二本など?」
( ´∀`)「まあ」
(#^ω^)
( ^ω^)
( ^ω^)「……」
( ;ω;)「ギャアアアアアアアアアア!!!怖えェおおおおおおおお!!」
( ´∀`)「静かに。せっかく生徒が学習をしているのです」
ξ゚?゚)ξ「あの二人……ほっといて、いいのでしょうか」
( ´∀`)「過保護に接すると、社会性の欠如に繋がります。……図書室は監督の先生にまかせて、私たちはひきましょう」
ξ゚?゚)ξ「そうです、か」
( ´∀`)「……ところで。私に用、とは?」
ξ゚?゚)ξ「あ、それですが……あの、二人のことです」
( ´∀`)「……」
.
- 15 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:55:47 ID:sDFjx8Yo0
-
「あの二人ですが………」
「……ほう」
「ささ、さすがに、そろそろ手を打たないとダメっぽいですお!」
「………そうですね。……では、今から話し合いましょうか」
( ´∀`)は大切なものを守るようです
.
- 16 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:56:22 ID:sDFjx8Yo0
-
◆
(゚、゚トソン「……」
从∀゚ 从
(゚、゚トソン「………」
从∀゚ 从
(-、-トソン「……………。」
从∀゚ 从
.
- 17 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:56:53 ID:sDFjx8Yo0
-
タカラが、アタシとハインのことを仲がいいなんてよく言うが……
自分でも、一瞬それを信じてしまった。
どうして最近、行く先々でこうもコイツと出くわすのか。
アタシは、ただ、本を借りにきただけだ。
それをミセリに言うと目をまるくされたが……。
借りるのは参考書ではない。就職の本だ。
いくら『脚のトソン』と呼ばれようが、ずっとツッパり続けるつもりなどない。
さすがのアタシでも、その辺の思慮分別くらいはできる。
しかし……だ。
(゚、゚トソン「……」
从∀゚ 从
どうしてハインが、図書室に。
しかも、こんな隅っこに。
照れ隠しなのだろうが、こんな目立つかっこうで隠れるもくそもないだろうに。
それだけならいいのだが、問題は「隅っこ」の意味だ。
この学校では、最近教育に比重を置いているようで、図書室にもそれが表れている。
教養の本や参考書が入り口付近に、就職などの本が奥にあるのだ。
奥、つまり、隅っこ。
そしてハインは、ここにいる。
アタシが就職の本を手に取ろうとすると、必ずハインに存在が知られる。
ハインはなにかの本に夢中なようで、今は気づかれていないが……。
なんだ、コイツもアタシと同じ考えか?
これをあのセンコーが見たら、どこまでも似たもの同士なやつらだ、などとほざくだろう。
面倒だ。知らん顔して、さっさと借りて帰ろう。
.
- 18 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:57:25 ID:sDFjx8Yo0
-
(゚、゚トソン「……」テクテク
从∀゚ 从
从∀゚ 从 ゙
やば。もう気づかれた。
从∀゚;从「なっ―――あああ!?」ガバッ
(゚、゚;トソン「……?」
アタシがいることに気づいたハインは、すぐに机に突っ伏した。
なんだ、なにか見られちゃまずいものが……?
ごそごそと何か動いてはじめて、ハインはクチを動かした。
机に突っ伏し、なにか――読んでた本?――を隠しながら。
从;゚∀从「なッ―――なんで、テメエがここに――はっ!」
なんだコイツは。うるさい。
.
- 19 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:57:56 ID:sDFjx8Yo0
-
从;゚∀从「なんだ、昨日と一昨日のの続きか!?いまはオレ、そんな気分じゃ―――」
(゚、゚トソン「うるさい」バサッ
从; ∀从「痛ッ」
本を手に取って、それでハインの頭をはたいた。
ほこりが舞う。
(゚、゚トソン「人に突っかかってくんなァー言っときながら、自分もじゃねーか。こちとら願い下げよ」
从 ゚∀从「……チッ。じゃあ最初からそう言えよ」
(゚、゚トソン「最初に言う前にそっちがやってきたんじゃねーか」
从 ∀从「あーはいはい!わァーったよ、ッるせえな!」
(゚、゚トソン「……チッ」
ハインが理不尽にもそう喚き立てる。
いまはアタシもヤる気ナシだからよかったが、これがいつもなら早速ハジメてるところだぞ。
まあ、読んでいたのをジャマしたのは悪かった気がしなくもないが――
――アタシはなにもジャマしてねえじゃねーか!!このクソゴリラ!!
.
- 20 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:58:27 ID:sDFjx8Yo0
-
(゚、゚トソン「……」
从 ∀从「あーもう……」
しかし、なんか、違和感を感じる。
なんか、こう……ハインの様子が、変だ。
もう一度、突っ伏したままのハインを見る。
するとその視線に気づいたのか、ハインがこっちに顔を向けた。
从 ゚∀从「……ンだよ。用ねえんじゃねーのかよ」
(゚、゚トソン「……いや、……」
从 ゚∀从「帰れよ。顔も見たくねえ」
(゚、゚トソン「………」
なんだ。
どこか、変だぞコイツ。
………本、か?
.
- 21 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:58:57 ID:sDFjx8Yo0
-
(゚、゚トソン「おい」
从 ゚∀从「あ?」
(゚、゚トソン「……なに読んでたんだ?」
从 ゚∀从「………………マンガ」
(゚、゚トソン「ココにマンガなんざねーよ」
从∀゚ 从「なんだっていいだろー。オレぁベンキョー中なんだ」
(゚、゚トソン「へー」
なんだ、勉強中だったのか。
確かに、隠したくなる気持ちもわかる。
あのハインが、きまじめにベンキョーなんざしてるなんて知られたら、ハインの威厳が堕ちるからな。
別に、ベンキョーくらいしてもおかしくないと思うんだけど。
それに、期末テストまで結構近い。
アタシは別にアタマ悪いわけじゃないから、ミセリにノートをちょろっと見せてもらえたらそれでいいんだけど。
ハインの場合、しぃに借りるのか?
いや……、しぃだとして、アイツ、そもそも授業受けてるのか……?
一年のとき一緒だったけど、気がつけばクッチャネクッチャネで。
……ああ、だからコイツは教科書読んでるのね。
しぃは相変わらずみたい。
.
- 22 :同志名無しさん:2013/02/18(月) 23:59:29 ID:sDFjx8Yo0
-
(゚、゚トソン「数学いけるのか?テスト作んの、タカラらしいけど」
从∀゚ 从「………」
从 ゚∀从「……え?」
こ、コイツ……アタシのことをムシしてたのか?
――なんて思ってたら
从 ゚∀从「え……数学って、なによ」
(゚、゚トソン「………ハ?」
予想外の反応がきた。
え?期末テストの勉強じゃないのか?
(゚、゚トソン「いや、期末……」
从 ゚∀从「………?」
从;゚∀从「…………っ!」
みるみるうちに、顔が青くなってくハイン。
も、もしかして、コイツ……!
.
- 23 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:00:01 ID:VAP5o7ec0
-
从;゚∀从「お、おい!」ドン
(゚、゚;トソン「なによさっきから。うるさい」
出ました「机割り」。
図書室の机は木製じゃないし、ぶ厚いから簡単には割れないだろうけど。
でも、上体は突っ伏したままだし。
なんなの、コイツ。
从;゚∀从「期末って、いつからだ!?」
(゚、゚;トソン「……?来週末から……」
从;゚∀从「―――!ッベ、次落としたら留年確定じゃねーか!」
あらら。
まあ、去年も一昨年もお情けで進級させてもらったほどなんだし、トーゼンか。
(゚、゚トソン「留年なんか気にするくらいなら、せいぜい授業中は起きとくことね」
从∀゚;从「ハン!テメエなんざとしゃべってる時間がもったいねーよ!オレ、帰る!」イソイソ
(゚、゚トソン「あ、ちょ
从;゚∀从「あばよ猿オトコ!」
ハインは持ってた本を隠すように持って、立ち上がった。
呼び止めようとしてもムシして、そのまま出口に走っていった。速い。
司書のセンコーが一瞬ハインを止めようとして、しかし、やめた。
「ああ、どうしよう」なんて言いたげな顔をしてる。
怖がらず止めればいいのに。あれ、あー見えて実は小心者なんだから。
.
- 24 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:00:35 ID:VAP5o7ec0
-
(゚、゚トソン「…と」
とか考えるも、ハインはハインだ。
アイツのことなんか考えても無駄。
すぐにアタマを切り替えて、アタシは本を持ってカウンターに行く。
センコーが、アタシの顔を見て露骨にビビる。
いっつもいっつも思うんだが、アタシがいったいなにをしたってのよ。どいつもこいつも。
よけいなことしなかったらアタシは何もしないってのに。
むしろ、こうして変に反応される方がムカつく。
あんたは黙って貸し出せばいいだけじゃない。
(;゚д゚)「へ、返却は……」
(゚、゚#トソン「あ?」ギロ
(;゚д゚)「ヒッ……て、テスト明けでいいですから!そんだけです!」
(゚、゚#トソン「わかったから、こっち見んな」
(∩д∩;)彡
(゚、゚トソン「ったく………」
ため息を吐いて、アタシも帰ろうとする。
(゚、゚トソン「あ」
そういえば……ハインは期末テストのこと、忘れてたんだよな。
じゃあ……結局、何を読んでたんだ?
.
- 25 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:01:10 ID:VAP5o7ec0
-
◆
(*;ー;)「あっははははははははははハハハハ!!」バンバン
从;゚∀从「なんだってんだよ、笑うこたァねーだろ!」
(*ぅー )「ごめんって……wwww」
从;゚∀从「たけのこ奮発して三つも買ってきたんだぜこっちは!だから、なあ!」
ハインが、情けない顔をして頼んでくる。
ご丁寧に、たけのこの入ったレジ袋を提げて。
いやいや、確かに頼んだけどさ……
(;´・_ゝ・`)「あ、あの……し、しぃちゃん?」
(*゚ー゚)「あっはは、ごめんねw急にこんなのがきてww」
(;´・_ゝ・`)「あ、その……うん…」
从#゚∀从「誰が『こんなの』なんだ?あ゙あ!?」
(;´・_ゝ・`)「ヒッ!」
(*゚ー゚)「ちょっとー、カレなんだから私の」
私がカレんちにいるって聞いたら、わざわざここまで来て。
住所教えただけで来れるとか、実はアタマいいのかな?なんて。
ハインの場合、自分に何かまずいことが起こりそうなときだけホンキだすんだから。
しかも、そのまずいことが……
:(* ー ):「(まさか、期末テストって……ぶぷっ)」プルプル
.
- 26 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:01:43 ID:VAP5o7ec0
-
从#゚∀从「だあああーッッ!」
(;´・_ゝ・`) ビクッ
从#゚∀从「なんだ?アルフォートもいンのか!?」
(*゚ー゚)「明日貰うよ……んふっwwww」
从# ∀从「じゃあとっとと教えてくれってンだよー!!」ドンドン
あのハインが、まさかテストを恐れるなんて。
しかも、次赤点続きだったら留年だからって……。
伝説の不良が留年するのがイヤで地団駄踏むって、なんのジョーダンww
カレはハインにオーバーにビビるし……
カレも一応どっかのガッコでやんちゃしてるって聞くのにね。
さすがにハインにはかたなし、か。
从#゚∀从「お前、授業まるで聞いてないくせに、ヤケに点数はいいじゃねーか!カラクリはなんだ!」
(*゚ー゚)「ああ、それ?」
私は、ついきょとんとする。
確かに授業はほとんど――もはや、サッパリ聞いてない。
授業中は、音楽聴きながら(イヤホンはするよ)トッポくわえて、でスマホいじるか雑誌読んでるかだし。
でも赤点はとってない。それがハインの疑問なんだろう。
カレを前に種明かしは気が引けるけど……まあ、いいか。
.
- 27 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:02:29 ID:VAP5o7ec0
-
从 ゚∀从「あ、カンニングか!?うまいやり方教えてくれよ、オレ前いっぺんそれやったらすぐn
(*゚ー゚)「カンニングなんかすっか。監督のセンセイ、四隅にいるのに」
从 ゚∀从「だよなー……」
ハインは露骨に肩を落とす。
そのくせしてレジ袋は提げたまんまだし、つか、立ったまんまだし。
ちなみにここ、カレんちの玄関ね。情けなさすぎるわ。
从 ゚∀从「じゃーお前はどうしてンだよ」
(*゚ー゚)「んー?」
((;´・_ゝ・`))
.
- 28 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:02:59 ID:VAP5o7ec0
-
チラッと、カレの顔を見る。
ハインにビビりまくって、そわそわしていた。
視線をハインに戻す。
(*゚ー゚)「テスト前に、そのとき付き合ってたカレに聞いたの」
(;´・_ゝ・`)「し、しぃちゃん?」
(゚ー゚*)「だぁーいじょうぶッ。いまはあなたしか好きじゃないから」
(*´・_ゝ・`)「だ、だよね。うんうん」
从#゚∀从「……………切り落とすぞ」ボソッ
(;´・_ゝ・`)「ヒェッ!?」
(*゚ー゚)「ハーイーンー?」
从# ∀从「だあああああああああああああ!!」ドンドン
シッケイな。
カレ、これでもなかなかハゲシいのに。見た目は冴えないけど。
ハインは、地団駄踏んでばかりじゃラチが明かないことに気がつかないみたい。
こうしてる間にでもベンキョーしとけば、なあ……。
.
- 29 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:03:29 ID:VAP5o7ec0
-
从#゚∀从「オレぁどーすりゃ――」
(;´・_ゝ・`)「あ、あの」
从#゚∀从「あ゙ぁん!?」
(;´・_ゝ・`)「いえッその……」ビクッ
从#゚∀从「言いたいことがあンなら、ハ・ッ・キ・リ・言・え」
いやいや、ムチャ言うなよ。
そんな至近距離で睨みつけて「ハッキリ」もないでしょ。
さて、どう追い返そうかなー今から部屋でキャッキャウフフするつもりなんだけどなー
(;´・_ゝ・`)「べ、勉強……ちょっとでよければ、教えr……ます、けど」
(*゚ー゚)
从 ゚∀从「へ?」
(*゚ー゚)「え?」
……え、ちょ、あれ?
今からキャッキャウフフするんじゃなかったの?
ちょっと、え??
.
- 30 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:03:59 ID:VAP5o7ec0
-
◆
(´・_ゝ・`)「――で、この数字を右にやれば……」
从 ゚∀从「あ、解けた」
(´・_ゝ・`)「はい。この手の問題は、文z……アルファベットと数字とで分ければいいんですよ」
从*゚∀从「ホントだな!ウヒャヒャヒャ、解ける!解けるぞ!」
(´・_ゝ・`)「でも、これ中学の範囲なんだけど……」ボソッ
从 ゚∀从「え、なんて?」
(;´・_ゝ・`)「な、なんでもないです」ビクッ
この盛岡デミタスってヤツ、思ってたよりもイイ人だった!
コイツに教科書の問題見せると、解説を見ずともすらすら解いていくんだ。
しぃのオトコだからてっきりオレ以上にバカだって思ってたけど、誤解だったようだ。
今まで「なんだこのバツ」とか思えてたのが一転、
いま改めて問題見たら、これが「モジ」ってのがすぐに理解できた。
数学って、意外と面白い。解けたら。解けたら、な。
でも……ちょっと、まずったかな……。
.
- 31 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:04:30 ID:VAP5o7ec0
-
(´・_ゝ・`)「で、これが……」
从 ゚∀从「あ、あのな、デミやん」
(´・_ゝ・`)「はい?」
从 ゚∀从「その………」
从 ゚∀从「しぃ、ほっといてもいいのか?」
(´・_ゝ・`)「え」
(#゚ー゚)
(;´・_ゝ・`)「……あ!」
おいおい……
まさか、素で忘れてたのかよ……
こりゃーまずいぞ。しぃがキレたら、トッポ程度じゃクチ利いてくんねェくなる。
デミやん(オレが考えたあだ名)が慌ててしぃのとこにいく。
一方のしぃは、ベッドの上で、手と脚両方を組んでる。
デミやんをずっと睨んでたらしい、目が据わってる。
ちょっと、二人のジャマしすぎたかな……?
.
- 32 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:05:25 ID:VAP5o7ec0
-
(;´・_ゝ・`)「しぃちゃん、あn
(#゚−゚)「ばーかばーか!」
<;´・_ゝ・`>「伸びる、ほっぺが伸びる……」
しぃが、デミやんの両頬を思いっきり引っ張る。
ヤらしいオトコは頬がよく伸びるって聞いたことあるけど、デミやんもそうなのか?
それはいいとして、コイツ、頬引っ張られてるのに若干嬉しそうな顔してるぞ……!
(#゚ー゚)「ふんだ!ハインとつきあっちゃえばいいんだ!」
(;´・_ゝ・`)「そんな、ぼくはしぃちゃんしか〜〜」
しぃが露骨に怒りを見せる。
が、このデミやんの反応からして、こんなシチュエーションは日常茶飯事のように見える。
そうだとすれば、しぃは、やっとまともにレンアイするようになったみたいだな。
それはいいことじゃねーか。確かに「サイフ」じゃないっぽいわ。
.
- 33 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:05:58 ID:VAP5o7ec0
-
从 ゚∀从「悪かったよーしぃー」
(#゚ー゚)「思ってないくせに」
从 ゚∀从「ちょっとコンビニ行ってくっけど、なんか菓子買おうか?」
(#゚ー゚)「……!………、………。」
お、悩んでる悩んでる。
やっぱりお菓子のチカラは絶大か。
(#゚ー゚)「………アルフォートを、ふた箱」
≡从*゚∀从「お、買ってくるぜ!ウヒャヒャヒャ!」
オレはそう言い残して、走って買いにいく。
……パシらされてんじゃねーよ、これはほんのお礼のキモチだよボケ。
でも、なんだかんだ言って、やっぱしぃはしぃだ。
随分とまあ、素直なヤツになったもんだ。
………。
.
- 34 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:06:31 ID:VAP5o7ec0
-
◆
なんだよあの店員。
ちょっとチラ見しただけで、露骨に目を逸らしやがって。
気分が悪い。この辺のコンビニは、ろくなのがいないんだろう。
オレの地元……少なくとも顔なじみのコンビニには、礼儀正しいヤツが多い。
オレが入店するだけで深々と挨拶するし。
廃棄処分するつもりだったチキンとかくれるし。
おろすつもりだった弁当をいくつか分けてくれるし。
ソイツらに比べたら、ここのヤツは……
从 ゚∀从「なよなよしすぎなンだよボケどもが……」
从 ゚∀从「……まあ、いいか。よく来るわけでもないし」
独り言を漏らすのは、静かなのが嫌だからだ。
しゃーない、と最後に呟いて、バイクをデミやんちの庭に押し込んだ。
インターホンを押そうとするが……鍵は閉まってないみたいだ。
いちいち向こうが動くのを待つンもめんどうくさい。勝手に入ろう。
階段を上って、通路奥の部屋。そこがデミやんの部屋で、しぃとの愛の巣。
気兼ねなくノブに手をかけ……、……?
愛の……巣……?
.
- 35 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:07:04 ID:VAP5o7ec0
-
从 ゚∀从
(*゚ー゚)
(*´・_ゝ・`)
从 ゚∀从
从 ゚∀从
………しまった。
最高にまずったよ、これ。
でもよ、オレが帰ってくるって知っといて、なのに鍵すらかけようとしねえコイツらが悪いよな?
わかったなら、そうだな、しぃ。お前の握ってるそれを、早く仕舞わせろ。吐くぞ、ゲロ。
………なーんて言っても、聞いてくれないよなあ……。
(#゚ー゚)「〜〜〜ッッ!」
(*´・_ゝ・`)「あ、ちょ」
从∀゚ 从彡
仕方ない。
しぃもああ見えて実はバカなんだ。
今からでも、見てみぬふりをすれば……
(#゚ー゚)「遅いわ!!」
从 ゚∀从「だよなー」
.
- 36 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:07:35 ID:VAP5o7ec0
-
◆
……まあ、あれだ。
しぃにこってりしぼられたけど、結局は許してくれた。
しぃ自身が何も見せていなかったことと、デミやんが気にしてなかったから、だと。
だが、しぃ、たぶんコイツあれだぞ、「イジメられるのが好き」タイプだぞ。
とかなんとか思いつつ、あれから一時間経って。
しぃとデミやんの自宅デートをジャマすることにはなったが、おかげでオレはベンキョーできた。
これで、赤点で留年……は、ないだろう。
从*゚∀从「あ、これはこーだろ!解けた!」
(´・_ゝ・`)「すごいよハインさん、これでやっと中二レベルだ!」
从 ゚∀从「え、なんて?」
『拳のハイン』たるオレが、こんなふうにベンキョーするってのはどうなんだ、としぃに言われたが
ショージキ言ってオレ、そこに変なプライドは持ってないんだ。実は。
それよりも、オレの場合、あっちの方が大切だし。
卒業。
もう、そんな時期なんだなーとしみじみ。
だって、今回の試験終わって、冬休みを明けると、だ。
三年の三学期は、驚くほど、短い。
つまり、あっという間に終わる。
一年、二年とやんちゃをしてきたオレが、まさか三年目にしてテストのためにベンキョーをするとは。
確かに聞いたら情けないけど……ま、笑いたけりゃ笑えってやつ。
笑ったヤツはあとでシメるけど。
.
- 37 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:08:12 ID:VAP5o7ec0
-
(*゚ー゚)「しっかし、ねえ」
从 ゚∀从「ん?」
オレと一緒にベンキョー教わればよかったものを、しぃはなぜかそうしなかった。
教わるときは二人っきりでしたいんだと。
だから、オレが教わっている間、しぃはベッドの上でころころ転がってた。
アルフォートとたけのこを交互に食いながら、スマホいじったり、デミやんのマンガ読んだりで。
そんなしぃが、不意にそう声をかけてきた。
どうやら、マンガも全部読み飽きたみたいだ。
(*゚ー゚)「最初はあんなにハインにビビってたのに」
(´・_ゝ・`)「え?」
あ、なんだ、デミやんに言ってたのね。
でも確かに、気がつけばデミやんはふつうにオレとクチ利いてたな。
最初はあんなになよなよしてたのに。
.
- 38 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:08:43 ID:VAP5o7ec0
-
(*゚ー゚)「実はそんなに怖くないって、わかったでしょ?」
从 ゚∀从「嘗めたら、デミやんでもシメる」
(´・_ゝ・`)「え、いや……」
ん?どーした、急に。
なんかそわそわしだした。
実はまだビビってる、とか?
訊いたら、デミやんは首を横に振った。
そして、興味深いことを言った。
(´・_ゝ・`)「違うんだ、ぼくはてっきり『ダブルビクトリー』の人なのか、って思って」
(*゚ー゚)「ああ、あの?」
从 ゚∀从「……?ダブル…、…なんて?」
なんだ?そのナントカっての。
有名みたいで、しぃは知ってるそぶり見せるし。
.
- 39 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:09:13 ID:VAP5o7ec0
-
(*゚ー゚)「ハイン知らないの?ヴィッ校モってるくせに」
(´・_ゝ・`)「え?意外だなあ」
从#゚∀从「……それは、どっちがだ?デミやんよ」
ヴィッ校ってのは、言うまでもなく、オレやしぃの通う学校のことな。
……まあ、モってるかどうかは、まだ決まっちゃねーよ。
トソンとかいう猿オトコをいっぺんシメねーと、かっこ悪くてそんなこと言えるかってんだ。
それはいいとして。
聞いてる感じ、とにかくワルの連中のことを言ってンのはわかった。
最近、トソンと張り合っちゃいるが、逆にその他の連中とは張り合う気あんまなくなってきてるんだよな、オレ。
トソン以外にオレに突っかかってくるヤツなんて、あのクソセンコー以外、いないし。アイツはタイマン弱そうだし。
(´・_ゝ・`)「はは、前者だよ」
从 ゚∀从「意外でもなんでもいいから教えてくれよ、なんだそのナントカっての」
すると、デミやんは少しもったいぶった。
そういや、コイツもこの見た目でなかなかツッパってるそうだな。しぃが言ってた。
コッチの世界がわかるんだったら、この手の話をするとき真剣な雰囲気に自然となってしまうのもわかる。
.
- 40 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:09:43 ID:VAP5o7ec0
-
(´・_ゝ・`)「十年前にラウンジ校でできた暴走族集団だよ。そうとうカゲキらしい」
从 ゚∀从「ハン!好かねえな、集団でハシんのは」
(*゚ー゚)「ハイン、集会もそんなに開かないしめったにハシんないもんね」
(´・_ゝ・`)「ぼくはしぃちゃんがいたらいいよ」
(*゚ー゚)「ねー」
(*´・_ゝ・`)「ねー」
从#゚∀从「………………」
オレが黙ってデミやんを睨む。
言葉にはしないが、右腕を震わせて、デミやんに向ける。
その真意がわかったんだろう、デミやんは慌てて首を振った。
しぃにデレたりオレにビビったり、忙しいヤツだ。
(;´・_ゝ・`)「で、一回潰れたんだそれ」
从 ゚∀从「ほーん」
(´・_ゝ・`)「でもなんか、いまラウ校モってる男が、ダブルビクトリーの伝説に憧れて、再興させたみたい」
サイコウ?……ああ、最高ね。
.
- 41 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:10:13 ID:VAP5o7ec0
-
从 ゚∀从「伝説って?」
オレは、訊きながらしぃのお菓子に手を伸ばす。即弾かれた。
いいじゃねーか……買ったのオレだぞ……。
(´・_ゝ・`)「『肉体で勝つ。同時に、精神で勝つ』をモットーに、ダブルビクトリーってのはここら一帯を一時期シハイすらしてたらしい」
从 ゚∀从「精…神……?」
(´・_ゝ・`)「あ、ああ。なんでも、あまりにも強すぎるから、誰一人としてフクシュウしようだなんて思えなくなるらしい」
从 ゚∀从っ「カーッ!そりゃー伝説だ、伝説。オレなら一晩でツブすわww」
(#゚ー゚)「だからあげないッ!!」ガバッ
从∀゚ 从「ケチ」ボソッ
(;´・_ゝ・`)「……しぃちゃん、一個くらい、あげなよ。見てて気の毒に思えてきた……」
从*゚∀从「お、そーだろそーだろ!ウヒャヒャヒャヒャ!」
(*゚ -゚)「ん〜〜。」
(*゚ー゚)「……しょーがないなあ。その代わり…」
(*´・_ゝ・`)「ああ、わかってるよ」
从 ゚∀从「ヒャヒャ……ん?」
.
- 42 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:10:44 ID:VAP5o7ec0
-
(*゚ー゚)「よし!ハイン、アルフォートならアゲル」
从;゚∀从「お、おう………え、え?」
な、なんだ?いまの無言の会話……
なにが「その代わり」でなにを「わかっ」たんだ?
(*゚ー゚)「あ、ハイン、急用できたから帰って」
从;゚∀从「ハア!?ちょ、お前r
(*´・_ゝ・`)「今度また勉強教えますから」
从∀゚;从「お前はお前でなんで照れてンだ!?おい!」
(*゚ー゚)「ハインもオンナになればわかるよ」
从;゚∀从「ハ?そりゃどういう意m―――」
从 ゚∀从「………!」
(*゚ー゚) ネー
(*´・_ゝ・`) ネー
こ、コイツら………!
わざと見せつけやがって!
.
- 43 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:11:15 ID:VAP5o7ec0
-
从# ∀从「だあああああああああッ!!帰りゃーいいんだろ、帰りゃー!!だああああああああああああ!!!」ドンドン
((;´・_ゝ・`))「ちょ、揺れてる!家が、家が揺れてるうううううう!!」
((*゚ー゚))「さすがに床に穴が開くよ」
≡从#゚∀从「チクショおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
……くそ。オレはそのまま走って、バイクにまたがってデミやんちを出た。
しぃとデミやんは謝るどころか、ニタニタして見送るだけだったし。
なんだよ、オレだけが惨めじゃねーか。
まさか……オレが二人のジャマをしたの、まだ怒ってたりして。
……ああああああああああああああああああああああああああああ!!クリスマス、しぃを監禁したる!!
………どうでもええわ。
そんなことよりも気になったのが、オレの中を、一つの言葉がぐるぐるまわってるんだ。
そう、デミやんが言ってたヤツよ。
えっと、なんだっけ……?
.
- 44 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:11:45 ID:VAP5o7ec0
-
从 ゚∀从「ダブル……ヒステリー?」
ううん……なんか違う気がする。
从 ゚∀从「まあどーでもいいけど。……帰ろ」ブロロ
………まあ。
結果としては、どうでもよかなかったんだけどな。
そんなことよりも、だ。
このとき、オレはとりあえず、クリスマス、どーやってこの二人を引き離すかだけを考えていた。
惨めじゃない。ゼッタイ。惨めじゃ……惨め……
.
- 45 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:12:15 ID:VAP5o7ec0
-
从#゚Д从「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
. ああああああああああああああッ!!」ブロロロ
「あッあれって『拳のハイン』じゃない!?」
「嘘だろ、どーしてこんなところで!!」
「に、逃げ―――」
≡从#゚Д从「ジャマだテメエらあああああああ!!」
「「ぎゃあああああああああああああああ!!!」」
.
- 46 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 00:13:26 ID:VAP5o7ec0
- ゆるい感じで続けたいです。予定では十話前後で完結の予定
書きためと機会があれば一気に投下していくのでよろしくです
- 47 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 05:15:43 ID:XgXEnBj60
- 乙
ゆるさの中に不穏な気配
- 48 :同志名無しさん:2013/02/19(火) 09:21:23 ID:Kz2f/rpQ0
- 乙
- 49 :同志名無しさん:2013/03/03(日) 02:12:21 ID:uOT9XUOk0
- これは期待
- 50 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:48:40 ID:LPOyqarA0
- もう一ヶ月…
第四話投下します
- 51 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:55:46 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)「……」 カタカタ
( ^ω^)「……」 カタカ…ッターン
( ^ω^)
( ^ω^)「………」
( ^ω^)「……っぶww」
( ^ω^)「うはwww朝からVIPはおもすれーおww」
.
- 52 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:56:17 ID:LPOyqarA0
-
ξ゚?゚)ξ「校長」
(^ω^ )「あ、なんd
Σ(゚ω゚; )「ッ!! いた!?」
ξ゚?゚)ξ「わかってます。黙っていますよ」
( ;^ω^)「あ、ありがとう。それでこそつd……ツンだお」
ξ゚?゚)ξっ
( ^ω^)「えっと……その手は?」
ξ゚?゚)ξっ「おヒル」
( ^ω^)「その……え、えぇ……?」
ξ゚?゚)ξ「あ、そうですか」
( ^ω^)「つ、ツン?」
ξ゚?゚)ξ「……」 ピポパ
( ;゚ω゚)「あ、わかった!おごる、オゴるから、理事長には!」
ξ゚ー゚)ξ「……晩ゴハンもね」
( ;^ω^)「おー……」
.
- 53 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:56:56 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)「……」
ξ゚?゚)ξ「……」
( ^ω^)「………あのー」
ξ゚?゚)ξ「はい。なんですか」
(;^ω^)「(元に戻った……)えっと、用は?」
ξ゚?゚)ξ「代理監督です」
(;^ω^)「え?あー、え?」
ξ゚?゚)ξ「タカラ先生が午前だけお休みになるので、彼が今日受け持つクラスの授業はみな自習になるのですが」
( ^ω^)「あーそれかお。なんで校長の僕が……」
ξ゚?゚)ξ「ほかに監督を勤めたがる先生がいらっしゃらないので」
( ^ω^)「待てや」
ξ゚?゚)ξ「はい」
( ^ω^)「なんでそこ、挙手制なんだお。空いてる先生に無理やり押しつければいいじゃないかお」
ξ゚?゚)ξ「そこなんですが」
( ^ω^)「というと」
ξ゚?゚)ξ「監督しなければいけないのが、三年のFとGなのですよ」
.
- 54 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:57:36 ID:LPOyqarA0
-
( ^ω^)
( ^ω^)「ちょっと今ばあちゃん死んだから帰るわ」
ξ゚?゚)ξっ「ダメ」 ズリズリ
( ;ω;)))「あああああああやだやだ!やだだお!!あの二つだけは、いやあああああああああああ!!!」 ズリズリ
( ^ω^)とξ゚?゚)ξは大切なものを守るようです
.
- 55 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:58:09 ID:LPOyqarA0
-
◆
(*゚ー゚)「〜〜♪」
今日も朝からヴィッ校は元気だ。
ハインとトソンちゃんがいないココは、活気に満ちあふれるのだ。
一年や二年の、ふだん暴れることのできない男連中が騒ぐ。
それも、まるで祭りでもおっぱじめるかのように。
登校する陰気な男子たちをいびり、可愛い女子にはセクハラ。
登校を見守るセンセイたちもそれを防ごうとするが、数の差で毎回負けてる。
私がわざわざ毎朝遅刻する理由は、こんな景色を朝から見るのが嫌だからってのもあるのだ。実は。
ほんとうは、ただ眠いからっていうのと……、……。
なんでもない。そう、眠いんだ。朝は。
だから遅刻なんて気にしないで、のんびり、空いてる電車に乗ってココに来る。
でも、だ。
そんな私が今日もこんな早くに来れた理由は、単純。
今日もカレの家に泊まって、言わば朝帰りだからだ。
当然私も、お祭り騒ぎの連中の目に、一度は留まる。
でも、私とハインの繋がりを知ってる人はロコツに距離をとってくるし、
知らない人は知らない人で、カレの睨みを見た瞬間露骨にしっぽを巻いて逃げる。
カレも一応ゾクだし。大型バイクの迫力もヤバいし。
前に一度、カレとその祭り連中の一人とが喧嘩したんだけど、
カレがみぞおちにイッパツお見舞いしたら、それでコトが終了した、ってのがあって。
そのせいで、「ハシり屋デミタス」は一部じゃちょっぴり有名らしい。
有名な他校のカレのバイクに揺られて優雅に登校……
ちょっぴりVIPになった気分だ。ヴィップ高校だけに。
.
- 56 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:58:40 ID:LPOyqarA0
-
(*゚ー゚)「あ。アルフォートなくなった」
(*゚ -゚)「………〜〜ッ!」
仕方なく、とっておいたトッポを取り出す。
最近しょっちゅう食べるせいですぐ尽きるから、温存してたんだけど……。
またハインに買ってもらおうかな。
そうだ。ハイン。
ここ最近、毎日のように(昨日は来なかったけど)早朝登校してる私を、はやくあの子に見せたげたいなあ。
しかもあの子、テストに余裕ができてるだろうから、たぶん上機嫌だ。
いつものように笑って、授業を聞いてもあの子は鼻を鳴らすだろう。
「ウヒャヒャヒャ! カンタンすぎだっつーの!」とかなんとか言って。
まあ、文字の絡んだ足し算引き算なんて、高が知れてるし。
テストつくるのタカラセンセイだからどうせ難しくないし。
昨日、私もあのあとベンキョー教わったし、なんとかなるでしょー
(*゚ー゚)「……」
.
- 57 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:59:21 ID:LPOyqarA0
-
◇
(*´・_ゝ・`)「これが、こうで……ボソボソ……」
(*゚ー゚)「え、なんて?」
(*´・_ゝ・`)「だ、だから、これが……ボソボソ…」
(*゚ー゚)「だめだなあ、もっと声を大きくしないと」
(*´・_ゝ・`)「しぃちゃん、ちょ、………!」
(*゚ー゚)「いいから早く教えてよー」
(*´ _ゝ `)「〜〜〜〜ッッ!」
◇
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「ハインに知られちゃダメね」
(*゚ー゚)「……うー」 ジタバタ
どうしても朝早く来ると、この時間の無駄遣いがもどかしく思える。
しゃべれる人なんてほかにいないし、この時間からスマホやウォークマン使ってたら電池すぐ切れるし。
お菓子の在庫なんか、今まさに切れつつあるし。
昨日そんなに寝てないから寝ようかな……。
でも、無防備な姿をハインに見せたら、ゼッタイイタズラされるかお菓子奪われる。
.
- 58 :同志名無しさん:2013/03/16(土) 23:59:59 ID:LPOyqarA0
-
(*゚ー゚)「サンポしよ」
スマホを首から提げて、教室を出る。
……あ、この壁。ハインがこの前砕いたやつ。
まだ直されてないんだなあ。私立高校のくせに、設備悪い。
まあ、私立だから公立よりやんちゃなことできるんだけどね。
しっかし、ハインはそろそろガッコ来るのに。
それか、もしかして、ベンキョーに火が点いて徹夜……?
(* n )「ぶふっ…www」
「あ、あれネコノさんじゃない……?」 ヒソヒソ
「見るな、高岡さんにシメられる!」 ヒソヒソ
「ちげーよ! 噂の『ハシり屋』にやられちまうよ!」 ヒソヒソ
(*ぅー゚)「朝からうるさいなあ」
いや、あのハインがベンキョーのために徹夜とか、ゼッタイにあり得ない。
我ながら変なことを思いつくものだ。
徹夜でベンキョーするハインを思い浮かべたら、つい噴き出してしまった。
こう、おでこに「気合!」って書かれたハチマキ巻いて……
.
- 59 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:00:30 ID:Ms8sK/Pc0
-
(*゚ー゚)「……んー?」
しかし……周りの様子がヘンだなあ。
いつもは廊下に人は少ないのに。登校時間でも。
廊下にいたら、そこを渡ってくる不良に目をつけられやすいから。
平和を求める生徒は、いつもなら、決まってすぐに教室にこもる。
でも……
なんか、その「平和を求める」タイプの人たちが、多く廊下にいるんだ。
ほかの教室のなかからはなにも聞こえないから、なかで喧嘩が〜〜とかはなさそうだし。
グラウンドにゾクが侵入してきた〜〜とかいうわけでもなさそう。
グラウンドは今日もお祭り集団がうろちょろしてるだけだ。
人混み……というほどでもないけど、珍しくもぽつぽつといる人の隙間をぬって前に進む。
前、つまり、人々が向いてる方角に向かって。
前に進めば進むほど、だんだん人口密度は高くなってきた。
(*゚ー゚)「……なにか、あるのかな」
もう、チャイムも鳴るってのに。
私は別にいいんだけど、この人たちはいいのかなあ、遅刻ついても。
まあ気になるから、私はその先を目指す。
すると、その人混みのなか、一カ所だけ、円があったことに気がついた。
大きな円を囲うように、人々がいるのだ。
ははーん、またどこぞの誰かが喧嘩でもするみたいだ。
そんなことしたら、ハインとかトソンちゃんに目ェつけられるのに。
「ザコのくせにイキがってんじゃねえぞ!!」とかなんとか―――
(*゚ー゚)「―――え?」
.
- 60 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:01:03 ID:Ms8sK/Pc0
-
人混みを抜けたところは、階段の踊り場。
のぼってくる人やおりてくる人がそこでつっかえるほどには、そこは人混みであふれている。
結構前に進んだので、私もその円の中心にいる「二人」を見ることができた。
そこまでは、いいんだ。うん。
でも、問題は、その「二人」なわけで………
「やべえって……帰ろうぜはやく……」
「そうだよ、チャイムも鳴るし…」
「でっでも、こんな光景、めったに見られないじゃないか……」
从#゚∀从「………。」
(゚、゚#トソン「…………。」
「タカラ先生は!?」
「いなかったよ! いつもならいるのに!」
「こ、怖ええぇぇ……!! おれ、やっぱ帰るわ…」
「わたしも……ッ」
(*゚ー゚)「………!」
.
- 61 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:01:33 ID:Ms8sK/Pc0
-
え、え?嘘でしょ?
なんで朝っぱらから、この二人が向かい合ってるの!?
しかも両方ともプッツンモード。
ハインは腕を組んで胸を張り、トソンちゃんを見下ろして
トソンちゃんは両手をポケットに入れて、のぞきこむようにハインを見る。
いつもならここにタカラセンセイが仲介したりする。
この二人に喧嘩させないために、だ。
ガッコの頂点を競い合うレベルの二人が喧嘩なんてしたら、サイアク、流血程度じゃ済まなくなる。
それは二人も知ってるみたいで、自然に騒ぎはおさまるんだけど……
今回はそうはいかないな、と思った。だって………
「どっちに賭ける…?」
「高岡さんだろ……ここ、狭いから、『拳』のほうが…」
「でも、都村さんの蹴りで扉がぶっ飛ぶんだろ?『脚』の方が『拳』より強いし……」
「それ言ったら、高岡さんも机を叩き割ったり、壁砕いたりしてんぜ!」
(;゚ー゚)「(見物じゃないんだ!! ヤジウマは帰りなさいよ、バカ!!)」
. ・ ・ ・ ・ .・ ・ .・ .・ ・ .・
ギャラリーがいるから。
.
- 62 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:02:09 ID:Ms8sK/Pc0
-
二人とも、なんだかんだ言ってプライドはある。
それも、互いのことに関しては、それは超一流だ。
普段なら気にしないようなことも、ハインならトソンちゃんが、
トソンちゃんならハインが絡めば、ゼッタイに譲らなくなるほどには。
でも、でも………!!
((;゚ー゚))「……だ………だ、め……」
だめだ。ゼッタイに、この二人がホンキでぶつかり合ったら、だめだ。
ゼッタイに歯は飛ぶし、血はそこらじゅうにつくし、骨は折れるか砕ける。
最終、首を絞めたりとかで、殺しかねない……ような、手に、でちゃうかもしれ……ない。
そんな地獄絵図は、見たくない。
もう、あんな惨劇は、見たくない。
いまも、脳裏に、トラウマとして、はっきり植え付けられている。
.
- 63 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:02:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(*;Д;)「 ッ ! !!」
ドガッ
バキッ ボゴ
从 ∀从 ビチッ…
バン ミチミチ…
グチャア
( 、 トソン ドガッ
ボゴ
(*;Д;)
.
- 64 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:03:25 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(;゚ -゚)「…………ッ!」
鳥肌が、わきたつ。
背筋を冷たいものが走る。
ふわり、と体が浮く感じがする。
だんだんと周りの音が聞こえなくなる。
平衡感覚がずれてきた。
見える景色がモノトーンになる。
从#゚∀从「……最後に訊いてやるわ」
(゚、゚#トソン「………なによ」
从#゚∀从「ワビんのかって話よ」
(゚、゚#トソン「ハア?こっちのセリフよ」
(;゚ー゚)「あ、あ………あっ……」 ソワソワ
从#゚∀从「はい交渉ケツレーツ。もうキた。コロす」
( 、 #トソン「………ゴタゴタと……」
从#゚Д从「あ゙あぁ!?」
(゚Д゚#トソン「 ッ ッ る せ え ん だ よ ! ! ! 」 ザッ
.
- 65 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:03:58 ID:Ms8sK/Pc0
-
((; - ))「ッ!」 ビク
――トソン……ちゃんが、建物が揺れるほどの大声を発したかと思えば
ハインの左わき腹を抉るように、右足を蹴り出した。
この脚で、トソンちゃんはやすやすと扉を蹴り破った……んだよね。
考えるまでもなく、人っこ一人飛ばすより扉を、それも固定されているのを飛ばす方が難しい。
そう考えたら、こんなのを喰らったら、ハインだとしても………
从#゚∀从≡「ッ」 サッ
(゚、゚#トソン「……」 ブン
ハインは冷静に、一歩下がった。
トソンちゃんの大振りのそれのリーチを見切った上での、判断だった。
で、同時に、音が聞こえてきた。
バットを思いっきり振った時にそれは似ていた。
その音を聞いて、私含むヤジウマどものみんなが、震え上がった。
同時に、一歩二歩、と全員が後ずさって、円が大きくなった。
なかには、二人の恐ろしさの片鱗を見て、逃げ出す人もいた。
私は。
私は、目に涙がにじんでいた。
体の芯から、ふるえが襲ってきた。
((; - ))「……や………め……」 ブルブル
.
- 66 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:04:30 ID:Ms8sK/Pc0
-
「ヤッパやべえって!! 帰るぞ!!」
「あんなの喰らったら、骨イくわ!!」
「音ッ! いま、ブン って!!」
从#゚∀从「……」
(゚、゚#トソン「………」
.
- 67 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:05:06 ID:Ms8sK/Pc0
-
徐々に、きれいな円形だったのが歪なものになっていく。
やはり「右にならえ」の精神はもってたみたいで、一人が脱落したら俺も、私もって次々に見物をやめていったのだ。
だが、いくらギャラリーが減ってもいることはいるし、
仮にギャラリーのみんなが消えたとしても、もはや円満に喧嘩が終わることはなくなっただろう。
トソンちゃんが、手を出した。
ただそれがあっただけで、ハインはそれに対する報復、トソンちゃんはそれに対する応戦……
と、果てのないいたちごっこに発展するのだ。
とめ、た……とめたい。
でも、私じゃあ、もう止めることはできない。
こうなってしまったら、私の声でもハインには届かないのだ。
止めようものなら、あのセンセイみたいに、自殺上等で間に割り込まないとだめだ。
警察が集団でおさえにかかっても、数人は必ず被害を受けるだろう。
しかも、流血や骨折は免れないレベルで。
从#゚Д从彡「ドラッッ!!」 ヒュッ
トソンちゃんの右足が放たれた、その隙をつくように
ハインは左腕で弧を描くように殴りかかった。
さっき一歩退いた反動で、二歩詰め寄る。
それを見て、あれは退いたんじゃなく 「引いた」 んだ――そう、わかった。
.
- 68 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:05:42 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「――ッ」
でも、トソンちゃんもそれくらいわかっていたようで。
右腕をたたんで、上体を右に傾ける。
ハインの左フックを右肘で受け止めた。
続けてハインは、「引い」ていた右拳を、まっすぐに放った。
机をまっぷたつに割った、人間凶器を。
でも、動いたのはハインだけじゃなかった。
トソンちゃんも、放った右足を左奥についてそのまま、体躯を低くしてたんだ。
そして体重を右足に載せて―――左の回し蹴り。
ハインの拳の軌道にトソンちゃんの胸があったのが、背中に変わった。
しかも背中に垂直にそれが当たるんじゃない。
カミソリパンチのように、かすれた。
大振りの一撃が、はずれた。
从#゚∀从≡「チッ!」
前のめりになったハインに、トソンちゃんの回し蹴りがきた。
右腕じゃあ間に合わない。
体を落とす時間もない。
左腕を縦にすれば被弾こそまぬがれるが、その腕は………………
折れるだろう。
(*;ー;)「ひッ…!」
.
- 69 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:06:14 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「ッッ!」 パァン
从# ∀从「………!」
トソンちゃんの足が当たったような音が、周囲にこだました。
ギャラリーが思わず顔を手で覆う。
見かねて、なにもなかったかのように逃げ出す人もでた。
続けて、チャイムが鳴る。
が、二人をほって帰ろうだなんて、思えない。
(; - )「…………」
両手で目を覆う。
直後、その場が静かになる。
.
- 70 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:06:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
(; -゚)「………、…?」 チラ
両目を覆ったうち、左手だけを少しおろした。
被弾したわりには、続きが行われる音がしなかったからだ。
いくらトソンちゃんにヒトのココロがあろうと、ハインとの喧嘩の場合、手を休めることはないだろう。
トソンちゃんの左半身と左足を伸ばした姿が見えた。
ハインは、右に大きく傾けた体、右腕は伸ばしたままで、
左腕を縦にしてトソンちゃんの蹴りに迎え撃とうとしていた。
. ・ ・
―――その間に、ヒトがいた。
「遅刻ですよ。高岡、ハインリッヒ」
.
- 71 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:07:16 ID:Ms8sK/Pc0
-
从# ∀从「……………………!」
(゚、゚#トソン「………あ、あんた………!!」
(;゚ー゚)「………ッ!!」
そのヒトの金髪の巻き髪が、揺れた。
左の掌をトソンちゃんの左足のかかとに当て
右の手で、ハインの伸ばした右腕を掴んでいる。
スーツを着てる、華奢な女性だった。
ハインのことを知ってるみたいだが、なじみのない顔だ。
だけど………見覚えは、あった。
.
- 72 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:07:52 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚#トソン「………タカラが、いねえって、思ってたら……」
トソンちゃんが、怒鳴る。
. ・ .・
(゚Д゚#トソン「なんの用だ!! 教頭ッッ!!!」
ξ ? )ξ「あなたも授業があるのでしょう」
ξ゚?゚)ξ「早く教室に戻りなさい。都村、トソン」
………津出レイ、教頭。
若くして教頭にバッテキされた、エリート。
(;゚ー゚)「……………え……?」
でも……なんで。
なんで………教頭センセイなんかが、ここに……?
.
- 73 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:08:23 ID:Ms8sK/Pc0
-
从# ∀从「……………………」 ワナワナ
ξ゚?゚)ξ「高岡さん。それと、そこ」
(;゚ー゚)「………え…、え?」
教頭センセイと目があった。
私を見ながら言ったので、おそるおそる私は自分を指さす。
教頭センセイは、うなずいた。
ξ゚?゚)ξ「そう。猫乃、しぃも。一限目の遅刻は、一日の遅刻です。放課後、指導がありますから」
(;゚ー゚)「え…………???」
だめだ。アタマが回らない。
あまりに急のことで、わからないことはいっぱいあった。
どうして教頭センセイがここにいるのか。
どうして遅刻の話をされるのか。
どうして……二人を止められたの、か。
.
- 74 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:09:00 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξ゚?゚)ξ「今日、タカラ先生がお休みになりました。3−Gの一限目の数学は、自習です」
(゚、゚#トソン「………!」
トソンちゃんが反応を見せた。
ハインは、同じ体勢のまま、ただわなわなと震えていただけだった。
(゚、゚トソン「タカラが……休み?」
ξ゚?゚)ξ「だから3−Fの二限目も、自習。私と校長が監督をしますから」
(*゚ー゚)「こ……校長?」
ふと、教頭センセイの後ろの方を見る。
すると、柱の陰から顔だけをのぞかせる男がいた。
この丸顔、間違いない。
ω^)「………」
(*゚ー゚)「……」
.
- 75 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:09:37 ID:Ms8sK/Pc0
-
だとすると……
タカラセンセイが休みで、数学の授業が自習で、その監督にこの二人が就く……この三つは、確かみたいだ。
トソンちゃんもギャラリーも、それをわかったみたい。
ギャラリーは逃げるように教室に戻っていく。
校長センセイはともかくとして、教頭センセイのカタブツさは有名だから。
あれやこれや、とムダに処分を受けたくないから、顔を見られないうちに――というハラなんだろう。
気がつけば、その場にはトソンちゃんとハイン、私、そして校長センセイと教頭センセイだけになった。
トソンちゃんがぎろりと睨んだだけで校長センセイは陰に完全に隠れたから、実質四人だけど。
(゚、゚トソン「……」
ξ゚?゚)ξ「騒ぎが聞こえたからまさか、とは思ったけど……」
ξ゚?゚)ξ「喧嘩以外、できないの? あなたたちは」
(゚、゚トソン「…………」
.
- 76 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:10:13 ID:Ms8sK/Pc0
-
トソンちゃんが黙る。
いつもならタカラセンセイに止められるのを、今日は違ったからだろう。
それに、またしてもあっさりと止められるとは思いもしなかったからか。
サトすように、教頭センセイが続ける。
ξ゚?゚)ξ「ほんとうなら、とっくに二人とも退学処分を受けているのよ」
ξ゚?゚)ξ「もう卒業も近いんだから、自粛しないと」
ξ゚?゚)ξ「高岡さんも、よ」
傍らで、いまだ顔をあげないハインに、言う。
さっきまでハインはちっとも反応を見せなかったけど、そう言われて我に返ったのか、ゆっくり顔をあげた。
从# ∀从「…………」
从#゚∀从「…………。」
ξ゚?゚)ξ「聞いてるの? 返事は?」
.
- 77 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:10:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
从#゚∀从「…………………テメエ……」
ξ゚?゚)ξ「テメエ?誰に言って――」
从#゚∀从「ジャマすんじゃ………」
从#゚Д从≡⊃「ねーよゴルァ!!!」
ξ ? )ξ「!」 パァン
(;゚ー゚)「あ!」
.
- 78 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:11:17 ID:Ms8sK/Pc0
-
ハインがついにキレたのか、教頭センセイに、殴りかかった。
トソンちゃんとの喧嘩を止められるだけでキレるのに、まして止めたのが自分となじみの薄い教頭センセイ。
そのうえ、説教だ。『拳のハイン』なら、キレてもおかしくないだろう。
でも、相手は教頭センセイなんだ。
さすがのハインでも、この人に暴力をふるったら……!
(; - )「…………っ」
パアン、と乾いた音が鳴ったと同時に、とっさに目をつむってしまった。
その音の後、さっきみたいに、またその場が静かになった。
ハインが怒鳴ることも、教頭センセイが悲鳴をあげることもない。
その静けさが、逆に、とても怖かった。
.
- 79 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:11:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
(; -゚)「…………、」
(゚、゚;トソン「……っ」
静かに、ゆっくりと、私は目をひらいた。
なにがあったのか、わからなかったからだ。
ハインが追撃をすることもなく、教頭センセイが泣くこともなく。
目を開くと、まず最初に目に入ったのは、驚きを露わにしているトソンちゃんだった。
動揺が、顔一面に表れている。
視線は……ハインと教頭センセイに向かっていた。
その視線を、私も追う。
(;゚ -゚)「……!」
.
- 80 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:12:20 ID:Ms8sK/Pc0
-
从;゚∀从「………て、テメエ……?」
ハインも、なにやら動揺している。
左腕を伸ばしたまま、教頭センセイを見て、固まっていた。
さっきまで見せていた怒りも、いまのハインからじゃつかみ取れない。
そして、その向こうにいる教頭センセイを見て、私も動揺した。
だって………
ξメ ? )ξ「………」
从;゚∀从「……なんで、避けねーんだよ……!」
.
- 81 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:12:54 ID:Ms8sK/Pc0
-
教頭センセイが、あの『拳のハイン』の左ストレートを、真正面から受け止めたからだ。
しかも、顔面で。
教頭センセイはその衝撃に耐えかねたのか、左足が一歩後ろに下がっている。
上半身は少しのけぞってるし。
でも……それが、おかしいのだ。
どうして……ハインの拳を、避けようとせず、真正面から受け止めた?
いや、そもそもどうして受け止められた?
常人だったら、その拳をくらえば頬骨くらいなら砕けるだろうに。
でも、そんな様子をまったく思わせないそぶりしか、教頭センセイは見せなかった。
悲鳴はあげないし、怒鳴りもしないし、やり返しもしないし、逃げようともしない。
ただ、放心状態に近い感じだった。
だから、ハインも動揺したのだ。
ξメ ? )ξ「……」
ω^)「つ……ツン!」
.
- 82 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:13:28 ID:Ms8sK/Pc0
-
音とハインの言葉を聞いて状況を把握できたのか、隠れていた校長センセイが出てきた。
教頭センセイの隣にきては、身を案じる。
教頭センセイは殴られたまま、 つまり、顔を左に向けたままだ。
殴られた右頬に、手を添えようともしない。
校長センセイが、教頭センセイが無事なのを確認してから、彼女を介抱したままハインの方を向いた。
ふだんはなよなよしてるだけのデブなのに、このときだけは、顔が、まじめだった。
(#^ω^)「……今までは黙ってたけど……もう、許さんお!」
从 ゚∀从「………」
(# ω )「数々の暴力事件を引き起こして!あげく、先生にまで暴力!!」
.
- 83 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:14:02 ID:Ms8sK/Pc0
-
(#;ω;)「退学だ!! 高岡ハインリッヒ、あんたは今日をもって退学だお!!」
.
- 84 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:14:37 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
(;‘_L’)「ロマネスク氏!」 バッ
( ΦωΦ)「わっ! ……な、なんであるか」
(;‘_L’)「つ、都村さんと高岡さんが、ハジメた!」
( ゚∋゚) ゙
( ;ΦωΦ)「な…な……、マコトであるか!? 確か、タカラ先生は休みであるぞ!」
(;‘_L’)「やばいよ!! 都村さんが蹴っただけでバットみたいな音が鳴ったもん!」
( ;ΦωΦ)「まさか、さっきの揺れは……!」
(;‘_L’)「………都村さんの、怒鳴り声」
( ;+ω+)「…………帰りたい」
.
- 85 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:15:16 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚∈゚ )
(;‘_L’)「ど、どうした? クックル氏」
( ;ΦωΦ)「見にいくつもり……であるか!?」
(;‘_L’)「バカ! 巻き添えくらったら、いくらクックル氏でも――」
(( ゚∋゚)) フルフル
(‘_L’)「あ……気になっただけ?」
( ΦωΦ)「よかった……けど、クックル氏ならとばっちりくらってもけろっとしてそうであるな」
(‘_L’)「そういや、クックル氏って、」
( ゚∋゚)
(‘_L’)「去年まではずっと都村さんや高岡さんと一緒だったよね、クラス」
( ΦωΦ)「Gであるな。しかし、それが?」
(‘_L’)「いやあ……なんか、ごついのが揃ってたのに、今年は違うなあって」
.
- 86 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:15:50 ID:Ms8sK/Pc0
-
((( ΦωΦ))) ブルッ
( ;ΦωΦ)「ええ、エンギの悪いことは言うな!」
(;‘_L’)「……クックル氏?」
( ゚∋゚)
( ΦωΦ)「首傾げてるである」
(‘_L’)「だよねー」
( ΦωΦ)「このアルファベットって、アタマの良さで決まってるとの噂であるし。他意はなかろう」
(‘_L’)「そっか……。そうだよね」
.
- 87 :いやああああああああああああ:2013/03/17(日) 00:17:04 ID:Ms8sK/Pc0
-
( ゚д゚)「そこ、うるさいぞ」
( ;ΦωΦ)「授業中だったの、忘れてたである」
(‘_L’)「……? なんだ、このプリント」
( ゚д゚)「では、小テストはじめ!」
( ;ΦωΦ)「! しまった、勉強してなかったである!」
(;‘_L’)「喧嘩騒動のせいですっかり忘れてた!!」
( ゚д゚)「そこの二人、減点」
( ;ΦωΦ)(;‘_L’)「「あああああ!!」」
.
- 88 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:17:36 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
ハインは、まあ日頃の行いを見てわかるように、「不良」だ。
クラスメートや他校の連中にはもちろん、センセイにまで暴力を振るう。
そして、そんなことを普段からしでかしてる以上、「こうなること」も覚悟しているのだ――
ほんとうは。
停学はもちろんのこと、退学すら視野に入れてハインは暴れているのだろう。
ハインが退学になったら、たぶんガッコは荒れに荒れまくるけど……
でも、こうして実害を出された場合、ガッコとしては退学処分を下すのが一番合理的だ。
親友……にこんなこと言いたくはないけど、その……
ハインは…… 「言われてわかるタイプ」ではない。
自分に実害が起こって、はじめてわかるタイプなのだ。
つまり、暴力事件を起こそうと、退学になったり逮捕されたりしないかぎりは、その事の重大さに気づけない。
ハインは、そういったことをわかった上で、暴れているはずなのだ。ほんとうは。
でも………どうして……
从;゚∀从
あなたは……そんなに、驚くの。
顔面いっぱいに、焦りを散りばめて。
.
- 89 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:18:10 ID:Ms8sK/Pc0
-
後ろにいたトソンちゃんも、同じような顔をする。
いままで自分と同じくらい暴れていたハインが、退学処分を、それも校長本人から言い下されたからだ。
場が、もう一度静かになる。
その空気をつぶしたのは、
ξメ ? )ξ「…………ねえ」
なぜか、教頭センセイだった。
.
- 90 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:18:46 ID:Ms8sK/Pc0
-
从;゚∀从「………………オレ、か?」
ξメ ? )ξ「ほかに、誰が?」
(#;ω;)「ツン、もういいお! へたなことを言ったら、また殴られるお!」
ξメ ? )ξ「……」
(#;ω;)「コイツは退学させるお!! だから―――」
ξメ ? )ξ「いいわよ、別に」
( ;ω;)「え……」
从;゚∀从「……!」
(;゚ー゚)「!」
(゚、゚トソン「!」
ξメ゚?゚)ξ「喧嘩を止めるのに、この程度の傷はついてトーゼン、だし」
( ;ω;)「………ッ! で、でも――」
ξメ゚?゚)ξ「それよりも、高岡さん」
从;゚∀从「な……なんだよ」
.
- 91 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:19:17 ID:Ms8sK/Pc0
-
予想外の言葉に驚きを隠せない、校長センセイとハイン。
教頭センセイは、暴力をなんとも思ってない様子で、ハインに訊いた。
ξメ゚?゚)ξ「あなたは、どうして、拳を振るうの?」
从;゚∀从「……え…………」
ξメ゚?゚)ξ「誰かを、救うため? 喧嘩が、したいから? それとも………」
・ ・ .・ .・ .・
ξメ゚?゚)ξ「弱い自分を、守りたいから?」
.
- 92 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:19:47 ID:Ms8sK/Pc0
-
从 ゚∀从「ッ」
( ;ω;)「ツン、よけいなことは言うなお! こんなのほっといて、早くいくお!」
从 ゚∀从「………」
ξメ゚?゚)ξ「一応、こっちは殴られてるの。黙秘権はないわ」
从 ゚∀从「…………、」
校長センセイをムシして、訊く。
予想外な質問で、しかもその内容も予想外なものだ。
ハインが戸惑うのも、しかたないことだろう。
少し、静かになる。
ハインがクチを開くまで、誰も(校長センセイのぞく)なにもしゃべらなかった。
从 ゚∀从「………あ」
ξメ゚?゚)ξ「あ?」
从∀゚ 从「相手が……うぜえから、だよ」
(゚、゚トソン「…!」
ξメ゚?゚)ξ「……………。」
.
- 93 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:20:18 ID:Ms8sK/Pc0
-
教頭センセイが、黙る。
じっと、そっぽを向いたハインを見つめて。
从 ゚∀从「もういいか?」
ξメ゚?゚)ξ「!」
从 ゚∀从「オレ、退学?なんだろ?」
从 ゚∀从「じゃ、帰るジュンビしてくっから」
.
- 94 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:20:49 ID:Ms8sK/Pc0
-
(゚、゚トソン「!」
(;゚ー゚)「!! は、ハイン……っ!!」
从∀゚ 从「んあ? あ、いたの」
(;゚ー゚)「……………最初、から……」 ボソ
从 ゚∀从「じゃ、そーゆーことだから。今までサンキュな」
(;゚ー゚)「…………、……ゃ」
从 ゚∀从「ん? なんだよ」
(;゚ー゚)「………イ、ヤ…」
从 ゚∀从「…」
(*;ー;)「い………イヤ………、……ハイン……退学…っ!」
从 ゚∀从「……………」
.
- 95 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:21:22 ID:Ms8sK/Pc0
-
思わず、涙が流れる。
声がかすれて、今の声でさえ、届いたかわからない。
でも、膝のチカラが抜けて。
その場に、へなへなって、しゃがみこんでしまった。
あふれる涙をおさえるために、目を両手で覆って、がしがしとこする。
でも、止まらない。
涙が、止まらない。
(*;ー;)「ひぐッ………ぇ……っ…」
从 ゚∀从「………」
(゚、゚トソン「……しぃ……」
ξメ゚?゚)ξ「……」
( ;ω;)「ツン、ここはアブナ――」
ξメ゚?゚)ξ「……いいから」
校長センセイを制して、彼女は一歩前に出る。
私の方を向いたハインの肩に、ぽんと手を置いた……らしい。
涙がにじむせいで、前が見えないのだ。
.
- 96 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:21:55 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚?゚)ξ「私はね、高岡さん」
从 ゚∀从「…?」
ξメ゚?゚)ξ「 『大切なもの』 を守るためなら、暴力はしてもいいって思うの」
从 ゚∀从「……ッ」
(゚、゚トソン「!」
.
- 97 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:22:38 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚?゚)ξ「むしろ、手段は選ばなくていい――そう言った方がいいかも」
从 ゚∀从「………だ、だからなんだよ」
ξメ゚?゚)ξ「私が教師を始めてできた 『守りたいもの』 は、あなたたちよ、高岡さん」
从 ゚∀从「!」
ξメ ? )ξ「生徒。たとえ非行に走っても事件を起こしても、私は生徒を見捨てたいとは、ゼッタイに思えない」 スタスタ
从 ゚∀从「あ、ちょ――」
そう言って、彼女はハインやトソンの横を通り過ぎ、教室に向かって歩き始めた。
校長センセイが慌ててあとを追う。
ハインとトソンちゃんが、やっぱり動揺を隠せていないまま、教頭センセイを見つめる。
すると彼女は振り返って、ハインに――いや、ハインとトソンちゃんに向かって、言った。
.
- 98 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:23:10 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚?゚)ξ「だから、退学処分はナシよ」
从 ゚∀从「!! な、なんd――」
( ;ω;)「バカ言うなお!あんなの、退学にしt
ξメ゚?゚)ξ「その代わり。」
从 ゚∀从「ッ」
ξメ゚?゚)ξ「その拳は、大切なものを守るときにだけ、使いなさい」
.
- 99 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:23:50 ID:Ms8sK/Pc0
-
从 ゚∀从「な、なんだよ、『大切なもの』 って………」
ハインが、訊く。
若干、ほんとうに微々たるものだけど、その声がどこか、震えているように聞こえた。
教頭センセイはそれに気づいたのだろうか。
それに答えるとき、彼女は、ほほえみを見せた。
ξメ゚?゚)ξ「そのうち」
从 ゚∀从「…?」
ξメ゚ー゚)ξ「……そのうち。 きっと、わかると思う」
从 ゚∀从「……っ」
(゚、゚トソン「…。」
.
- 100 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:24:23 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚?゚)ξ「……早く、教室に戻りなさい。欠課時数がムダに増えるだけよ」
(゚、゚トソン「……フン」
言われて、トソンちゃんは鼻を鳴らす。
そしてうつむきながら、教室に向かって歩き始めた。
すっかり、喧嘩する気持ちもなくなったのだろう。
それは、私にとっては、実にうれしいことだ。
うれしいこと、なんだけど……
(*;ー;)「………ヒっ……、」
ξメ゚?゚)ξ「………猫乃さn――」
从 ゚∀从「……しぃ、たてるか」
(*;ー;)「………ん」
.
- 101 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:24:56 ID:Ms8sK/Pc0
-
ξメ゚?゚)ξ「……」
( ^ω^)「………なんで」
ξメ゚?゚)ξ「?」
( ^ω^)「なんで……笑って許せるんだお」
( ^ω^)「きみは……ツンは、殴られたんだお? 骨も、折ったかもしれない」
( ω )「なのに……」
ξメ゚?゚)ξ「……それ」
( ^ω^)「?」
ξメ゚?゚)ξ「タカラ先生に、私も訊いたんです。そしたら……」
.
- 102 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:25:28 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
( ^Д^)「え?」
ξ゚?゚)ξ「ですから、どうしてそんなに二人を止めようと……?」
( ^Д^)「ああ、みました? アザ」
ξ゚?゚)ξ「服を脱がれては、嫌でも目に入ります。いくら湿布を貼るとはいえ……」
( ;^Д^)「あっはは……」
( ^Д^)「まあ…、訊かれてもですねえ」
ξ゚?゚)ξ「へ?」
( ^Д^)「そりゃーあれだからですよ」
( ^Д^)「センセーだから、ボク」
ξ゚?゚)ξ「……っ」
.
- 103 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:26:00 ID:Ms8sK/Pc0
-
( ^Д^)「きれいごとって言われちゃったけど、でも本心だしなーって」
( ^Д^)「そこで、逆に考えたんですよ! 本心できれいごとなら、ココロがきれいってことだよな!?ってww」
ξ゚?゚)ξ「……」
( ^Д^)「ww……。あ、教頭センセー……?」
ξ゚?゚)ξ「…」
ξ゚ー゚)ξ「……確かに、そうですね」
◇
( ;^ω^)「…た、確かにタカラ先生らしいけど……」
ξメ゚?゚)ξ「ムカシを思い出しちゃって」
( ^ω^)「お? ムカシ?」
ξメ゚?゚)ξ「なんでもないわ。さ、早く行きましょ」 スタスタ
( ;^ω^)「あ、待って!」
.
- 104 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:26:36 ID:Ms8sK/Pc0
-
◆
从 ゚∀从「……落ち着いたか?」
(*゚ー゚)「……なんとか」
自習と言いつつ監督のセンセイすらいなかった間は、まあ、荒れに荒れていた。
ハインもいないのをいいことに、教室で野球をはじめる男子もいたそうだ。
でも、ハインと校長・教頭が同時に入室したのを見た瞬間、その男連中はすぐに席についた。
やっぱり、ハインに目を付けられるのが怖いんだろう。
そのまま私とハインは席について、教頭センセイが事の成り行き
(タカラセンセイの欠席とか、なぜ自分たちが遅れたか、など)を話してからは、自習になった。
自習する生徒なんていなかったけど。
私は、まあなんとか立ち直れた。
ハインが心配そうな目で見つめる。
……最近、こんなのばっかだなあ。
私は、穏やかな日々を求めてるってのに……
.
- 105 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:27:09 ID:Ms8sK/Pc0
-
………でも。
どうして、あの二人は今朝になっていきなりあんな大喧嘩をはじめようと思ったのだろう。
そんな疑問が浮かび、また自習時間でもあったので、私は何気なくそれを聞いた。
从 ゚∀从「へ?」
(*゚ー゚)「だから、なんでまた喧嘩?」
从 ゚∀从「………」
(*゚ー゚)「?」
从 ゚∀从「今朝、バイクで登校しようとしたら、変なのに絡まれてよ。五、六人」
从 ゚∀从「まあ……ものの一分足らずで全員ノしたけど。一人を締め上げて問いつめたら、吐いたんだ。呆気なかったな」
(*゚ー゚)「……なんて?」
从 ゚∀从「『トソンさんに、高岡を襲え、と命令された』んだとよ」
.
- 106 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:27:40 ID:Ms8sK/Pc0
-
(;゚ー゚)「えっ!」
从 ゚∀从「で、だ」
◇
从#゚∀从「(あの糞……どこだ!)」
( 、 #トソン「………ス……、…ロ……」 ボソボソ
从#゚∀从「……! いた! おい、テメエ!」
(゚、゚#トソン「!」
(゚、゚#トソン「あんた……! 今朝はよくもしてくれたな!!」
从#゚∀从「ハア!? そらこっちのセリフじゃボケ!!」
.
- 107 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:28:18 ID:Ms8sK/Pc0
-
◇
(*゚ー゚)「……え?」
从 -∀从「いま思えば………話がかみあってなかったんだよな」
从 ゚∀从「アイツがオレにほんとうにしかけたんだったら、変にとぼけたりなんか、しねーし」
(*゚ー゚)「………」
……それを聞いて。
私は、特に根拠があるわけじゃないけど、
なんか、私の求めてる平穏が、だんだんと遠ざかっていってるような……
そんな、予感がした。
.
- 108 :同志名無しさん:2013/03/17(日) 00:30:23 ID:Ms8sK/Pc0
-
【第四話】 ( ^ω^)とξ゚?゚)ξは大切なものを守るようです >>51-107
このクサい感じは、これからのアツい展開で盛り返していきたいと思います
- 109 :同志名無しさん:2013/03/21(木) 22:11:56 ID:hsYflXCU0
- 乙
期待
- 110 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:12:25 ID:q/yBrCxQ0
-
この学校のトイレは、意外にも、荒らされてない。
理由の一つとしては、警備員が二人、常に入り口前で待機しているからだろう。
加えて、監視カメラが搭載されている。
トーゼン、個室が覗かれる心配はないけど。
警備員の耳と存在、監視カメラの目の三つを前にして、ワルいことをしようなんて思う人は少ないらしい。
ワルさ、つまり、いじめとかね。
それに、かーなーりー火の気にビンカンな火災報知器まであるのだから、ここでタバコは吸えないし。
さすが底辺の私立高校。やることが情けない。
そんなおカネがあったら、ミセリにくれたらいいのに。
せっかく……
( ゚д゚)「やっぱり、きみだけは成績がいいな。満点だ」
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとー」
ミセリは、学年で一番の秀才なんだから。
.
- 111 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:14:00 ID:q/yBrCxQ0
-
文字式の四則計算とか、ナメてるの?って思える。
一応有名私大を公募制推薦で受かっちゃったんだし。
……有名私大といっても、偏差値は60ないくらいだけど。
ま、こんなクズが集うトコにしちゃ、珍しいことでしょーね。
英語の小テストを返されたけど、満点。
なんで時制なんかの問題を高3で……w
yesterdayがあるので動詞はseeじゃなくてsawですよーとか、中学生レベルww
まあ、首席をとることを理由にココにくるって親に約束しちゃったし。
明日から全てのテストで0点を取り続けても確実に卒業できるんだけど、でもこうしてベンキョーはするよ。
ヴィッ校は部活が強いのかって?
聞いたことがないよ。
不良生徒が野球やバスケを通じて成長する……なんて、ムカシの話でしょ。ないない。
私立だけに、就職に有利なところがあるとか?
まっさか。あ、でも土木工事に就く人は多いらしいね。タイヘンねー。
……じゃあ、どーしてこんなトコに入っちゃったのかって?
それは……、時が来たら話すよ。
それよりも、問題はトソン、あの子よ。
ミセリがせっかく朝一できてベンキョーを教えてあげよっかなーって思ってたのに。
朝から、ハインさんとプッツン対決。
ミセリみたいなか弱い女の子に、止められるわけないし。
「二限目が英語なのにー」と思ったけど、困るのはミセリじゃなくってトソンよ。
これに懲りたら、喧嘩もほどほどにねってこと。
.
- 112 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:14:39 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「トソーン」
( 、 トソン
あ、いまはホームルームね。
今のおめめの先生が担任なんだけど、ホームルームついでに今朝の小テストを返してるって状況。
この学校で定期テストの点をじゅうぶんにとる人なんて、ほっとんどいない。
だから、本来の規定でいえば学年の七割以上が留年ってなっちゃう。
それを防ぐために、こんな小テストとか提出物で点を稼いでもらうんだとか。
ちなみにみんなと同じ方法で成績を計算すると、ミセリの成績はカンストした。
ミセ*゚ー゚)リ「実力でどーでしたかー?」
( 、 トソン「……」
あらら。どうやら、トソン様は点数がよろしくなかったようだ。
トーゼンよね、普段ノート見せたりミセリが教えてやってはじめて点をとってたわけなんだから。
ミセ*゚ー゚)リ「トソーン?」
( 、 トソン「………イヤミか、あんた」
ミセ*゚ー゚)リ「んー?」
.
- 113 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:15:14 ID:q/yBrCxQ0
-
トソンがくしゃくしゃに丸めた答案用紙を、奪い取る。
「あっ」と言ったけど、気にしない気にしない。
で、なかを見た。目を疑ったね。
なんでやねん。なんでseeの過去形がsedやねん。なあ。
ミセ*゚ー゚)リ「これは……キレーなマルだこと」
(゚、゚トソン「それ、捨てといて」
ミセ*゚ー゚)リ「フザケンナ。この小テストから、10点でるんだから。期末に」
(゚、゚トソン「あんたのがあるでしょ」
ミセ*゚ー゚)リ「どう間違えたかを知るのがダイジなんですぅー」
わざと語尾を伸ばす。
トソンはトソンで、ミセリの手助けがなかったら底辺まで真っ逆さまになるわけだから、従わざるを得ないようで。
(゚、゚トソン「フン。わかったわよ」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃ――」
.
- 114 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:15:46 ID:q/yBrCxQ0
-
(;゚д゚)「あ、あの、都村……さん……?」
(゚、゚#トソン「あ゙あ!?」 ギロ
(∩д∩;)彡「ヒッ!」
ミセ*゚ー゚)リ「また威嚇するー」
ミセリが続けようとすると、それをおめめさんが止めた。
どうやら、トソンに用があるみたいで。
でも、今のトソンに通じる話なんてそんなにないよ。
ミセ*゚ー゚)リ「しょーがないなあ」
こんなことは、日常茶飯事だ。
先生がなにか言いたくても、トソンが不機嫌だったら
(おめめさんの場合はそうでなくてもだけど)用件を伝えることができない。
そんなときは、ミセリが一枚脱ぐのよね。
……服は脱ぎませーん! 期待するんじゃないよーだ!
.
- 115 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:16:26 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「なんですかー」
(∩д∩;)「あ、きみか……」
先生の代わりに、ミセリがトソンに用件を伝えるのです。
怒ってるトソンに用件を伝えられるのって、ぶっちゃけミセリくらいだろうし。
(;゚д゚)「都村さんに、これ渡しといて」
ミセ*゚ー゚)リ「どれ?」
訊くと、先生はなにやらカゴから一枚、紙をとった。
生徒に用件を通達する紙だ。
一度先生が、それに目を通す。
これ、先生の一つの心遣いなのだ。
パソコンのミスで、生徒が読めなさそうな漢字があれば読みがなを振る、という。
なかなかの達筆で、すらすらと読みを書いていく。
なるほど……この紙、中身が多いみたい。こりゃたいへんだぞ。
.
- 116 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:17:22 ID:q/yBrCxQ0
-
(;゚д゚)っ「これ」
ミセ*゚ー゚)リ「はいはーい」
(;゚д゚)「いつもすまんね」
ミセ*゚ー゚)リ「ミセリはイイ子ですから」
(;゚д゚)「はは。ありがt
(゚、゚#トソン「こっち見んな!」
(∩д∩;)彡 サッ
ミセ;゚ー゚)リ「いや、見てなかったよ!?」
(゚、゚#トソン フーフー
ミセ*゚ー゚)リ「ったく……、……ん?」
トソンに呆れながら、ふとその紙に目を留める。
なるほど、必要なことを箇条書きで書いてるのね。
それにしても先生、さすがにトソンでも「補習」くらいは読めるでしょ。ほしゅう。
ほしゅう、ほしゅう……
.
- 117 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:19:02 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
『補習のお知らせ』
ミセ*゚ー゚)リは大切なものを守るようです
.
- 118 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:19:57 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
(゚、゚#トソン「補習!?」
ミセ*゚ー゚)リ「補習」
トソンは大声を出した。
この子、体が大きい(胸囲はミセリ以下)からか、声も大きいのよ。
軽く、地震きたんじゃね?って思える程度には。
クラスのみんなも、先生も、びくっとする。
間近にいるミセリ以外、反応を見せた。
ミセリ?耳がキーンときた以外に問題はないよ。
(゚、゚#トソン「英語の?」
ミセ*゚ー゚)リ「ううん。数学」
(゚、゚#トソン「………す……ッ!」
(゚、゚トソン「……数学?」
ミセ*゚ー゚)リ「そう書いてるけど」
(゚、゚トソン「???」
.
- 119 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:20:28 ID:q/yBrCxQ0
-
今の怒声はどこ行ったんや。
トソンは急にきょとんとした。
まあ、今の流れからしたら、数学って聞いていまいちピンとこない理由もわかるよ。
英語の小テストが返されました、0点でした、補習のお知らせがきました。
フツーなら、まあ、英語だと思うでしょうね。それなのに、数学だもん。
しかも、
(゚、゚トソン「タカラ、休みじゃなかったのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「ほかの先生が担当するんじゃない?」
三限目の数学をみてもわかるように、タカラ先生は休んでたんだもの。
トソンの話を聞いてると、一年からずーっと、数学はタカラ先生に教わってるみたいだし。
そりゃ、不思議に思うわ。
ミセリは成績がいいから、数学のかわりに特進数学なんて科目をとらされてる。
だから、わかんないけど。
(゚、゚トソン「他に数学のセンコーいるのか?」
ミセ;゚ー゚)リ「おるわ! 学校ナメんな!」
(゚、゚トソン「どんな」
ミセ*゚ー゚)リ「えっと、前髪が1メートルある人とk
(゚、゚トソン「帰るわ」
ミセ;゚ー゚)リ「待て!」
.
- 120 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:21:38 ID:q/yBrCxQ0
-
小テスト返却も終わって、ホームルーム。
先生がトソンをほったらかして先に進めようとしてるけど、こんなの、むしろいつも通りだ。
クラスメートのみんなも、トソンが気づかないうちにさっさと帰りたがってるんだし。
あ、終わった。はや。
期末テストについての留意点も既に話し終えてるし、ホームルームで触れることがないって考えたらトーゼンだけど。
みんなが、トソンに絡まれないうちに、と逃げるように下校する。
ミセリも帰りたいなー。
(゚、゚トソン「ミセリ、アタシたちも帰るぞ」
ミセ;゚ー゚)リ「だからだめだっての!」
慌ててトソンの腰に抱きつく。
いや、抱きついてるんじゃない。引きとめてるんだ。
でも、ミセリみたいな軽い体重だと、この馬鹿力のトソンを止められるわけなくて。
ずりずりと引きずられる。やだ、なんか恥ずかしい。
(゚、゚トソン「そのうちこけるぞ」 ピタ
ミセ;゚ー゚)リ「そう思うんなら止ま――やああッ!」 ビタッ
トソンがなんか言ったかと思ったら、いきなり止まった。
後ろに倒れるように全体重をかけてたから、勢い余って後ろにしりもちついた。
しかもミセリだけ。うっわ、ハズかし………
.
- 121 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:22:11 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚トソン「ほら」
ミセ*;ー;)リ「『ほら』ちゃうわ! あーん痛いー!」
(゚、゚トソン「泣くな泣くな。化粧が落ちる」サッ
ミセ*;ー;)リ「落ちるほど化粧してn……、……?」
そう言うと同時に、トソンはスマホを取り出した。
画面が真っ黒で、鏡代わりに使うことができる。
その鏡で、ミセリを映してきた。
なによ今更……ミセリが可愛いってのは既に知ってるよ……
とか思いつつもその鏡を見たら
(゚、゚トソン「落ちてるぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「」
ぴたりと、涙が止まった。
.
- 122 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:22:48 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ;゚ー゚)リ「わわ、わああああああッ!」
(゚、゚トソン≡「今のうち」 スタスタ
ミセ;゚ー゚)リ「あ、逃がすか!」
ミセ;゚ー゚)リ「あ、でもでもお化粧なおさないと!」
ミセ;゚ー゚)リ「うーあー!!」 ジタバタ
トソンがスタスタと帰路に従って歩いていく。
止めたい、いや、ミセリの燃ゆる正義の心が止めたがってる。
でも、化粧が崩れた顔で廊下なんか歩けるわけがない。
このかわゆいミセリあっての、正義だ。
トソンを見逃すのは悔やまれるけど、二兎追う者は一兎も獲ず、だ。
そうと決まれば。
≡ミセ;゚ー゚)リ「トイレにダッシュ!」
「見たか、いまのしりもち!」
「あっバカ、シメられても知らんぞ!」
「つい写メとっちゃたんだけど……」
「あ、一応ちょーだい。パンツ見えてるかも……」
いらんモン撮ってんじゃないよおおおお!!
あと配らないでえええええ!
.
- 123 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:23:24 ID:q/yBrCxQ0
-
でも、今はお化粧直しが最優先だ。
いくら今から下校ってなってても。
撮られたセクスィーな写真が悪用されてたら、そうだな、トソンを盾にしてシメる。
虎の威を借る狐? なんとでもいえ。
厚化粧ちゃう。ブリっこちゃう。性悪オンナちゃう。
ミセリはミセリ。かわゆいかわゆい華の女子高生だ。異論は認めない。
ミセ*゚ー゚)リ「トイレ……よし、誰もいなさそう!」
廊下の曲がり角から中に人がいるか? わかるわけない。
ここはオンナのカンの語るがままにすればよろしい。
化粧道具は日頃から持ち歩いてるけど……どうかなあ。直るかなあ。
朝起きたらメイクにその大半を費やしてるほどだし。
トイレはさっき言ったみたいに、人が意外にも少ない。
特に個室に入れば、そこは至福の空間だ。お化粧直しにはもってこい。
間違えても、水は流さない。こんな底辺学校のトイレを利用するくらいなら、公園いくわ。
やっぱイヤ。公園よりはこっちの方がいい。
.
- 124 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:23:55 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「奥……」
トイレの扉を開ける。
奥の、ちょっぴり広い個室。ここが、ミセリの特等席なのだ。
障害者、それも車いすの人用だから、広い。端っこだから窓もあるし。
さて、誰もいませんよう……に……、……?
ミセ*゚ー゚)リ「(だれかいる)」
扉、それも奥の個室の扉が動く音が聞こえた。
しまったなあ。ミセリの特等席に汚いもの流さないでよー
トイレはそんなふうに使う場所じゃ……いや、そんな場所か。もともと。
息を殺して、陰から顔だけを出す。
どんな顔か拝んでから、次の日からあうたびにイヤな視線を送ってやる。
さて、どんなオンナなのかn
(*゚ー゚)「………」
.
- 125 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:24:31 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「ッ!」
――顔を見た瞬間、どうしてかミセリは、顔を引っ込めた。
壁に背をぴたりとつけて、つい、深呼吸をする。
……あれ? なんで?
なんでミセリは、隠れた?
(*゚ー゚)「……はぁ」
ミセ*゚ー゚)リ「よっす!」 ヒョコ
(*゚ー゚)「っ!」
そう思ったミセリは、何気ない様子で声をかけた。
直後、彼女は、露骨に驚く。
はぁ……。やっぱり。
.
- 126 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:25:02 ID:q/yBrCxQ0
-
(;゚ー゚)「………………………。」
ミセ*゚ー゚)リ「なーにー、辛気くさい顔してw」
すごい長く黙りますね。
毎度毎度こうじゃ、ミセリの方が息が詰まるよ。
彼女は固まって、ミセリを凝視する目が点になってる。
あふれてきた汗が、頬を伝っていった。
しかたない。
ミセリだけが一方的にしゃべるのはイヤなんだけど……
ミセ*゚ー゚)リ「もう、やめてよーそのノリーw」
ミセ*゚ー゚)リ「……おねえ、ちゃん」
(;゚ー゚)「……………。」
.
- 127 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:25:40 ID:q/yBrCxQ0
-
姉の猫乃しぃは、まだクチを開こうとしない。
いっつもいっつも、どうして。どうしてなんだ。
家にいてもミセリはおろかお母さんとクチを利きすらしないし。
ミセリが朝起きて登校するまでの時間、おねえちゃんは起きてこないし。
ミセリは普段は時間ぎりぎりに間に合うように登校する。
つまり、おねえちゃんは、ほぼ毎日遅刻。
それどころか、たまにカレシとやらの家によく泊まる。
今まででさえぽつぽつと泊まってたのが、最近さらにひどい。
それほど、ミセリやお母さんと一緒にいたくないみたいだ。
理由は言ってくれない。
気がつけば、こうなっていた。
そして、ミセリがこんなド底辺にきた理由は、そのおねえちゃん、だ。
おねえちゃんは中学の、しかも最初の頃はフツーにミセリより頭がよかったのに。
どうしてか、いつの間にか学年最下位を争うほどになってた。
「非行に走りたがる年頃だから」ってミセリは考えてた。
つまり、目を離してたらなにされるかわからない、と。
タバコとかお酒、ならまだいい。
もっとひどい、どうしようもないことに手を出してしまったら、だめだ。
だから、ミセリはこの学校に急遽くることに決めた。
お母さんは賛成半分、反対半分、みたいな感じだったけど。
まあ、そこそこな進学校に合格できる能力でこんなトコに行かせるものか、って思ってたんでしょう。
結局、「首席を取り続けるから!」って力説したことで、ミセリはココにくることになった。
.
- 128 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:26:21 ID:q/yBrCxQ0
-
昔から、おねえちゃんは「期待される姉」だった。
まじめにベンキョーして高い成績を維持してたミセリよりも、ノー勉のおねえちゃんの方が上だったし。
幼い頃からしっかりしてた人だったから。
でも、どーして……
(*゚ー゚)「……。」
こーなっちゃったんでしょうねえ。
髪は染めるし(ミセリも染めてるけど)、化粧もするし(ミセリもしてるけど)。
聞いた話じゃ、授業中もお菓子食べて音楽聴いてスマホいじって、みたいに、もはや不良のカガミとなってるらしい。
これを、昔のおねえちゃんだけを知ってる親戚が聞いたら、心臓発作で死ぬわ。ハインさんとつるむし。
……ミセリとトソンはそんなんと違うわ。
ミセ*゚ー゚)リ「……おねえちゃん?」
≡(* - )「……」 スッ
ミセ*゚ー゚)リ「おねえち――」
おねえちゃんは、ミセリの横をくぐり抜けた。
ミセリよりちっちゃいからか、あっさりとトイレから出られてしまった。
おねえちゃんがトイレでミセリが廊下。
言ったら、おねえちゃんが閉じこめられている状態だ。
つまり、おねえちゃんとしても接触を避けることができない状態。
そんなんだったから、今日は、今日こそは話せる。
そう思ったんだけど、ただの思い過ごしだったようだ。
.
- 129 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:26:53 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ;゚ー゚)リ「おねえちゃん!」
≡(* - ) スタスタ
ミセリの隙……というか、油断を衝いて、そそくさと歩いていく。
早歩きで、顔もうつむけている。露骨にミセリとの距離をとろうとしているのがわかる。
どうして……こうなるんだろう。
これじゃあヴィッ校にきた意味が……
……いや。
学校にもミセリが、家族がいるってことで、それが牽制になってるとは思うけど。
いなかったら、やっぱ、タバコとかしてたのかなあ。
.
- 130 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:28:21 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ;゚ー゚)リ「おねえ――」
(*゚ -゚) ピタ
ミセ*゚ー゚)リ「――へ?」
また、逃げられる―――!
そう思って、ミセリも化粧のことなんか忘れて、追いかけた。
すると、ミセリが追いかけてくるのを足音で察したのか、おねえちゃんも走り出した。
足は、おねえちゃんの方が速い。
足はというより、運動神経――いや。
持ってる才能のどれも、おねえちゃんの方が上だ。
だから、今日も逃げ切られる。
そう懸念して、ああ、今日もだめだった、って思ったとき。
おねえちゃんが、不意に止まった。
階段の踊り場だ。
おねえちゃんの一歩手前で、ミセリも思わず止まる。
.
- 131 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:29:09 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「……あ」
だが、このとき、おねえちゃんに接触を試みることはできなかった。
だって、そりゃあそうでしょ。
(゚、゚#トソン
从#゚∀从
この人ら……どんだけぶつかりあうんだ!!
.
- 132 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:29:42 ID:q/yBrCxQ0
-
(;゚ー゚)「ちょ、ちょ! ハイン!」
从#゚∀从「……」
階段の踊り場で、ハインさんとトソンがにらみ合っていた。
服や髪の色とかが対照的な二人だけど、共通点があった。
手に、くしゃくしゃにまるめた紙を握っていたのだ。
あれ、この紙……。
そうとは知らず、おねえちゃんがハインさんの腕を握る。
今朝が今朝だったから、ハジマらないうちに、と止めに入ったのだろう。
確かに、この状況を見たら、またハジマる――って思うよ。
でも
从#゚∀从「……?」
从 ゚∀从「お、おう。しぃじゃねーか」
(;゚ー゚)「朝も教頭センセイに言われたでしょ! あなた、まだ……、……?」
(*゚ー゚)「………え?」
あれ?怒ってないのか?
おねえちゃんも、そう思ったんだろう。ハインさんの反応を見て、きょとんとした。
.
- 133 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:30:38 ID:q/yBrCxQ0
-
(*゚ー゚)「あ、えっと」
从 ゚∀从「んあ?」
(*゚ー゚)「……二人そろって、なにしてんの……?」
从 ゚∀从「なにって……」
(゚、゚トソン「帰るトコ、だけど」
ミセ*゚ー゚)リ「嘘つけ。思いっきりにらみ合ってたジャン」
(゚、゚トソン「あ、いたの」
ミセ;゚ー゚)リ「オ・モ・い・っ・き・り、目ェあってたでしょーが!!」
……あれ?トソンも怒ってないのか?
すっごく、いつも通りなんだけど。
从 ゚∀从「このままフツーに階段下りたら、なんか二人一緒に帰るように見られんじゃん」
(*゚ー゚)「……!」
(;゚ー゚)「………まさか、それでどっちが先に帰ろうとするかを張り合ってた……とか、言わないでしょーね」
从;゚∀从「な、なんだその目は! しゃーねーだろ! コイツが帰ろうとしねーんだからよ!」
(;゚ー゚)「」
.
- 134 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:31:57 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚トソン「なんでアタシが先に行かなくちゃだめなのよ。そっちが先に行ってトーゼン」
わあ、互いに譲りあって、エラい!
じゃない!
これは、譲り合いなんて聞こえのよいものじゃない。
「相手に背を向ける」……つまり、それは自分の方が格が低いということ。
この二人がそんな状況におちいったら、まあ、意地でも先に下りようとはしないわな。
……
ミセ*゚ー゚)リ「……あ」
ミセ;゚ー゚)リ「………あほらし……」
(゚、゚#トソン「アホ? 退いたら負けってモンでしょーが!!」
.
- 135 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:32:54 ID:q/yBrCxQ0
-
(*゚ー゚)「ほらハイン、北口から下りるよ」
从#゚∀从「ザケんじゃねえ!!」
(゚、゚#トソン「こーなったらチカラづくででも先に行かせてやるわ」
从#゚∀从「ハァ? ヌかしとけ猿」
そう互いに言いあって、じりじりと歩み寄る。
このフンイキは、今から喧嘩がハジマるという合図か。
はは、階段が原因で喧嘩か。
なんちゅー低レベルな争いや。
(*゚ー゚)「じゃんけんで決めたら?」
从#゚∀从「お、パーでびんたして鼓膜ツブすんか。いいな!」
ミセ;゚ー゚)リ「(発想がトソンと同レベル!!)」
(*゚ー゚)「あのねえ」
(゚、゚#トソン「へえ、パー。ならアタシの勝ちね」
从#゚∀从「ハァ?」
待てや。
なに、まさかのじゃんけん対決!?
.
- 136 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:33:46 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚#トソン「なぜなら―――」
(゚ー゚#トソン≡「目潰しの方が速いッ!!」 ビッ
うわ、かっこわりィ!
てかまだそのネタ引きずってたのね!
トソンが飛び出し、チョキにした手をハインさんの目に突きつける。
しかしハインさんが、後ろにステップをとりながら、拳をかまえて言った。
从#゚∀从≡「知ってっか? じゃんけんってのは―――」
从#゚∀从≡⊃「後・手・必・勝ッッ!!」 ビッ
(゚、゚#トソン彡「チッ!」 ヒュッ
ノリノリでやってんじゃねーよおおおおおおおおおおおお!
しかも、なに律儀にグーでチョキに後出ししてんのよハインさんも!
わかってると思うけど、後出しは反則負けだかんね。
じゃんけん対決なら、ハインさんの負け決定よコレ。どーせ聞いてないよね。はいはい。
.
- 137 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:35:20 ID:q/yBrCxQ0
-
トソンがハインさんの右拳(グー)を、上体を左下にうつむけるようにして避けた。
そして
(゚、゚#トソン「…ッ。ご丁寧にじゃんけんなんかしてられるか!!」 ザッ
ミセ;゚ー゚)リ「(そりゃそうだけど! いや、カッコワル!)」
そう言って、伸びていた右脚を前に蹴り出した。
ハインさんは右腕を伸ばしきっているものの、左手はフリーだ。
蹴りの勢いを流そうと、左手も構えた。
そしてそれによって、トソンの脚のえがく軌道が上にずらされた。
しかしここで、両者の体勢が崩れた。
トソンの蹴りの勢いが速すぎて、ハインさんはそれを完全に流すことができなかったようだ。
少し距離をとる。
後ろから足音が聞こえてきた。
よかった、じゃんけん対決は見られなかったみたいだ。
それはそうと、早く止めないと。
きっかけがショボいとはいえ、もういつものようなマジな喧嘩に戻っているからだ。
これじゃあ今朝の喧嘩と変わらない。
なんてことを思っているうちに、トソンが動いた。
右足を地につけて、余った勢いを左脚に移すことでムダに体制を整える必要を削ったようだ。
そのまま、左の回し蹴りを―――
.
- 138 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:35:51 ID:q/yBrCxQ0
-
「わぁーったったったッ!!」 ダッ
(゚、゚#トソン「!…、……ッ!?」
从#゚∀从「ッ!!」
トソンの回し蹴りが軌道に乗ろうとしたとき。
後ろからミセリの横を通り過ぎて、トソンの後ろに飛びついた人がいた。
その人物の登場に、ハインさんがびっくりする。
トソンは人物にではなく、後ろからトツゼン人が現れたことにびっくりしたようだ。
そのせいで蹴りの勢いが薄れてしまい、ハインさんが左腕でパシッと足を止める。
そのときの顔も、どこか抜けたものだった。
アゼンとしていた、というべきか。
.
- 139 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:37:04 ID:q/yBrCxQ0
-
(*゚ー゚)「……?」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
おねえちゃんがその人を見た。
続けてミセリも。
ああ、この人か。ナットク。
毎度毎度、お疲れさまです。ほんとうに。
……え、…え!?
( ;^Д^)「止まれッ!」
(゚、゚;トソン「……ッ!? ハァ!?」
从;゚∀从「て、テメエ…………ッ!」
.
- 140 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:37:36 ID:q/yBrCxQ0
-
トソンも先生に気づき、ハインさんと同じような顔をした。
体勢は同じまま、服を引っ張って自分を止めた先生を横目で見る。
( ;^Д^)「あっ先に言っとくけど、ボクは意地でも止めるからね、こればっかしは!」
从;゚∀从「い、いや……そうじゃなくて……」
また毎度のように二人からギャーギャー言われると思ったようで、先に先生がわーわーと言った。
だけど、ハインさんはそこを言おうとしたわけじゃないのだ。
いや、ハインさんだけじゃない。
おねえちゃんも、トソンも、あとミセリも。
もっと別のことで、言いたいことがあったのだ。
.
- 141 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:38:31 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚;トソン「な、なんで……ココにいンだよ……」
( ^Д^)「あ、君たち捜してたらグーゼン…」
从;゚∀从「ちげェ! タカラ、テメエぁ――」
(゚、゚;トソン「休みじゃなかったの!?」
从#゚∀从 …イラ
ハインさんのセリフを奪って言うと、先生は一瞬きょとんとした。
そして「あ、それ」と言ってから、続けた。
……ってか、いつまで服引っ張ってんのよこの人は。
トソンが気づいてないならいいんだけどさ。
.
- 142 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:39:06 ID:q/yBrCxQ0
-
( ^Д^)「なに言ってんの。休むのは午前中だけ、だったけど」
从 ゚∀从「……え?」
( ^Д^)「あれー、聞いてない?おっかしいな、ちゃんと連絡したんだけど」
(゚、゚トソン「……誰に?」
( ^Д^)「校長」
このとき、四人みんながみんな同じことを思っただろう。
「あ…ナットク」と。
なんで頼りない校長先生に伝えたんだ。あれだけはだめでしょ、アレだけは……と。
( ^Д^)「それはそうと……」
(゚、゚#トソン「――じゃねえ!おい、なにまた止めて……」
( ^Д^)「いや、だって」
(゚、゚#トソン「もうタカラだろうと許さねえ。カクg――」
( ^Д^)「いくらロングでも、スカートで回し蹴りはだめだよ。女子高生的に」
(゚、゚#トソン「ハァ? それがどうし……、」
(゚、゚トソン「……っ!」
ミセ*゚ー゚)リ「(やっと気づいた)」
.
- 143 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:39:57 ID:q/yBrCxQ0
-
そう言われて、トソンははッとしていま自分が置かれている立場をハアクしようとする。
左足はハインにぶつけたまま。
右足の一本立ちだけど、先生が服を引っ張ってるからバランスを崩さないで済んでる。
そして、「服」というが、引っ張ってるのはロングスカートだ。
足はハインさんの肩くらいの高さにあがってる。
つまり
从 ゚∀从 …ア、シマシマ…。
(゚、゚トソン「」
トソンが黙って、真顔に戻って、体勢を元に戻す。
そして、ゆっくり、先生の方を見る。
無表情で、だ。
.
- 144 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:40:50 ID:q/yBrCxQ0
-
( ;^Д^)「あ、ボク見てないし触ってもないからセクハラじゃないよ!
. ただ、蹴るんだったらこーゆーリスクがあるんだよってことをだな――」
⊂≡( 、 #トソン サッ
( ; Д )「っギ!!」 ズボッ
从*゚∀从「(ウヒャヒャヒャヒャ! あ、あのトソン様が! ウヒャヒャヒャ!」
(゚、゚;#トソン「――――、――〜〜ッ!!」
< あ゙あ゙あ゙あ゙ああああッ!痛ッてええええええええッ!!
从*゚∀从「ヒーwwwwwwヒーwwwww」
(゚、゚;#トソン「あんたもよ!!」
从∀゚*从≡「ウヒャヒャwwwwwゲホッwwwwwww」 ダッ
(゚Д゚#トソン≡「あ、待てッ!! キサマああああああああ!!」 ダッ
.
- 145 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:41:39 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ
< どーせ…ほ、補習…ッ、サ、ボるだろうから……捕まえにき…た、だけなのに……ィィ!
みぞおちをトソンの怒りの拳でおもいっきり殴られたせいか、普段あんなに頑丈な高村先生がもがいてた。
廊下に転がって、じたばたと足を動かす。
さすがにみぞおちにめり込んだら、痛そうだわ。
ハインさんは笑いすぎてせき込むし。
トソンは逃げたハインさんを追いかけにいくし。
高村先生はこんなんだし。
……帰ろう。トソンは知らん、ほっとく。
.
- 146 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:42:22 ID:q/yBrCxQ0
-
≡(* - )「……」 スッ
ミセ*゚ー゚)リ「あ!」
しまった! おねえちゃんを忘れてた!
< ア……厚化粧の君……、保健室からセンセーを……うッ…
≡ミセ;゚ー゚)リ「おねえちゃん!待って!」 ダッ
< あ………あガ……、………g
.
- 147 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:42:53 ID:q/yBrCxQ0
-
出口に向かって、おねえちゃんは走ってく。
速い……けど、どこか、足取りが覚束ない。
やっぱり……おねえちゃんは、嫌いみたいだ。
「家族」が。
階段を下りて、一階、廊下に躍り出る。
ここから一番近い門――出口は、右だ。
右にまっすぐ伸びる廊下を渡っていけば、右手にそのうち門が見えるんだ。通用門ってやつ。
ほかに職員用と裏門とがあるけど、おねえちゃんが逃げる方角にはない。
しかし……右、か。
しまった。直線勝負じゃ、勝ち目がない。
ミセ;゚ー゚)リ「――えちゃ―――おね――……ッ」
≡(* - )
.
- 148 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:43:26 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ;゚ー゚)リ
みるみるうちに、距離を離されていく。
さっきトイレからダッシュした分が、どっとふりかかってきた。
もうちょっと持ちこたえてほしかった……。持ちこたえても、どのみち追いつかないんだけど……
それほどには、おねえちゃんは足が速いんだ。
でも、それもトーゼンだ。
おねえちゃんだもん。猫乃しぃ、だもん。
ミセ;゚ー゚)リ「………」
ミセ*゚ー゚)リ「……、」
ミセ*;ー;)リ「…………。」
.
- 149 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:43:59 ID:q/yBrCxQ0
-
走るのをあきらめ、その場で座り込みそうになるのをこらえる。
もう曲がり角手前まできたが、間に合わない。
今日も……おねえちゃんと話をすることは、できなかった。
ミセ*;ー;)リ
とぼとぼと歩いて、目を右の手のひらで一気に覆う。
歯を食いしばって、うつむいて、肩をふるわせた。
ふだんは、おねえちゃんと話せないことで泣いたりはしない。
向こうが話したがらないし、話す機会をことごとく削ってくるから、トーゼンなんだけど。
でも、今日は事情が違った。
おねえちゃんは一度、この手の内にとらえたのだ。
トイレで追いつめたとき。
あのとき、ミセリはおそらく、こわい顔をしていたのだろう。
優しい顔をしていれば、警戒心を解くことだってできただろうに。
それに、階段の踊り場で二人とも止まったとき。
あのときにでも、はずれに連れ出したり教室に連れ込んだりすれば、チャンスはあったんだ。
なのに、今日も逃げられた。
露骨に拒絶反応を見せられて。
実姉にそんな態度をとられて、傷つかないわけがないでしょう。
.
- 150 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:44:32 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*ぅ -t)リ ゴシゴシ
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「……」
おねえちゃんは、どうしてるだろう。
ミセリが追ってこないのを見て、走るのをやめただろうか。
それとも、警戒して、ずっと走ってるだろうか。
今のミセリにできること。
前者の可能性を信じて、ただ走ることだ。
靴を履き替えなかったら、もしかしたらその差し引き分、距離を詰めれるかもしれない。
そうと決まれば。
目をこすって、涙をごまかす。
化粧、だいぶ崩れてるだろうけど……
逆にこの崩れた化粧で、おねえちゃんをセットクできるかもしれない。
恥じらいよりも、おねえちゃんだ。
おねえちゃんは、ミセリが守らなければいけない。
.
- 151 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:45:03 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
(゚、゚#トソン「追い詰めたぞ!ゴリラ!」
从 ゚∀从「……チッ」
袋小路となる倉庫手前で、オレはトソンと向かい合っていた。
ずいぶんと追いかけっこをしてしまったモンだ。
一旦北口に向かったかと思えば、階段を下りつつUターン。
ブンキ点っつーブンキ点で曲がってったら、そりゃーもうすごいことになった。
センコーとか生徒はほとんど見かけなかった。ココじゃアタリマエなんだけど。
でも、生徒が人っ子一人いなかったっつったら違うみたいで、道の途中で
◇
(‘_L’)「でさあ、そこで……、」
(;;;‘_L’)「ッッ!! ぎゃああああああああああ!!」
( ゚∋゚) ゙
(ΦωΦ )彡「ん? どうしたd
.
- 152 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:46:03 ID:q/yBrCxQ0
-
从∀゚#从≡≡≡ ドドドド
(゚、゚#トソン≡≡ ダダダ
( ΦωΦ)
(;;;ΦωΦ)「ぎゃあああああああああああああああ!!」
从#゚∀从「ジャマだッ! どけッッ!」
≡\(;‘_L’)/「ごめんなああああああさい!」 ダッ
≡\(;ΦωΦ)/「おゆるしいいいいいいいい!」 ダッ
≡\( ゚∋゚)/
◇
……ま、まあ、思えばかわいそうだったけど。
カンゼンなとばっちりだし。
………ん? そういや、クックルらしき男が見えたような……
あんななよなよした連中とツルんでるたァー思えんし、まあ別人かな。
2メートル超えの転入生。やべェわソレ。
.
- 153 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:46:44 ID:q/yBrCxQ0
-
从 ゚∀从「……あー」
(゚、゚#トソン「もう、動くんじゃねーぞ」
トソンのヤローは、もうカンゼンにイッてやがった。
別にパンツの一枚や二枚、見られても気にするこたァないのに。
でも、まあ……、………www
あ、あの、トソン様ともあろうおかたが……wwwwwwwww
(゚、゚#トソン「……?」
从 ゚∀从「………ャヒャ…」
(゚、゚トソン「?」
从*゚∀从「ウッヒャヒャヒャヒャヒャwwwwwwwちょwwwヒャヒャwwwww」
(゚、゚トソン「」
.
- 154 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:47:28 ID:q/yBrCxQ0
-
やっべ。思い出し笑いしちまった。
こうなっちまったら、もう抑えることは……www
:; ( 、 #トソン ;: 「あ……アンタ……ってやつァ………!」
从*゚∀从「ま、…ッ待てよ、ww……わ、ワルギがあるわけじゃ……ッヒャヒャ!!」
( 、 #トソン「」
从*゚∀从「wwヒャwww……、……」
( 、 #トソン
从 ゚∀从「………」
:; ( 、 #トソン ;:
从 ゚∀从
从 ゚∀从「いっけね」
(゚Д゚#トソン「 ブ ッ 殺 す ! ! 」
.
- 155 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:47:59 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
「あ、痛てて……」
「………うーん」
「やっぱ、痛いな。うん。またシップ買わないと」
「あー……」
「あの二人、もういっちゃったかなぁー…?」
「よい、しょ……っ」
.
- 156 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:48:31 ID:q/yBrCxQ0
-
( ^Д^)「ア……やっぱ、立ったらクるな、これ……」
( ;^Д^)「ったく、あいつら、テカゲンってもんをまるで知らないから……」
( ;^Д^)「『カラダを張って熱血指導』なんて風潮がムカシあったけど、いまはもう近未来だっての!」
( ;^Д^)「現職のセンセーが、わざわざカラダ壊してまで指導すんのかっての」
( ^Д^)「とか言いつつ、指導すんのがセンセーなんだけどね」
( ^Д^)「……ふぅ」
( ^Д^)
( ^Д^)「…」
( ^Д^)「……補習はムリだった、か」
( ^Д^)「しゃーない。もともと、ダメモトってやつだったし」
( ^Д^)「二人しか呼び出してなかったわけだしな」
( ^Д^)「その二人が、逃亡……」
( ^Д^)「……ボクも、帰るか」
.
- 157 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:49:05 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
「……」
「首尾はどうだ」
「一時間張ってるけど、まだ出てこないな」
「みんな、か?」
「ああ」
「学校で殺人事件でもあったのか?」
「……悪い。ふつうの生徒は、ほとんど帰っている。目測、九割は」
「ああ、そういう意味か。ほらよ、ニゲチキ」
「このタイミングで出すとは、流石だな」
「それはそうと……みんなってことは、例の四人か?」
「ああ。おおかた、センコーに捕まってるんだと思われる」
「あーヤダヤダ。俺だったら十秒で殴っちまう」
「俺だったら八秒だ」
「流石だな、あんたも」
「あんたほどじゃないさ」
.
- 158 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:49:45 ID:q/yBrCxQ0
-
「それはいいとして、冷めてるぞ、ニゲチキ。どういうことだ」
「おかしいな。買ってすぐに来たつもりだったのに」
「白状しろ。どこで道草くってた」
「……」
「答えろ。カネ払わんぞ」
「ウンコ」
「よーし、いい子だ。カネは諦めるんだな」
「抜いてた」
「OK、わかった」
「払えよ」
「ん?」
「いやいや、払えよ。120円」
「ブツ握った手で持たれたコレを食う俺の身にもなるんだな」
「こりゃ一本とられた」
「…! おい、出てきたぞ」
「お」
.
- 159 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:50:17 ID:q/yBrCxQ0
-
( ^Д^) 〜♪
「……」
「なんだ。センコーか」
「もう少し待つしかないみたいだな」
「でも、おかしくないか」
「なにが」
「言い換えると、だ」
「もう、センコーですら帰る時間だってことだぞ」
「…」
「ひょっとすると、俺らの知らないルートで帰ったんじゃないのか?」
「だったらほかのやつが見つけてるはずだぞ」
「それはそうだが……」
.
- 160 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:50:53 ID:q/yBrCxQ0
-
「ん? 誰かがきた」
「……? どこだ?」
「違う、裏門のほうからだ。右」
「…どれ」
≡( ´・_ゝ)
「冴えない顔だな。あいつがどうしたんだ」
「……あの、バイク」
「ん?」
(<_・` ≡ ´・_ゝ・)
「……ハヤブサじゃねーか。ってことは、アイツ、もしかして……」
「ああ。噂の『走り屋』だろうな」
.
- 161 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:51:25 ID:q/yBrCxQ0
-
「もうどーせあいつら帰ったし、ちょっとパッシングかけるか?」
「やめとけ。すぐに置いてかれるのがオチだ」
「……にしても、なにをしてるんだ、アイツは」
「誰かを探してるみたいだな」
「おお。俺のファンか?」
「身の程を知るんだな」
「ジョークはいいとして、だ。……あいつがいると、面倒だぞ」
「別にヤる分にはかまわんのだが……一度逃げられると、ややこしいことになりかねん」
「さっさとどっか行ってほしいぜ」
「まったくだ」
(´・_ゝ・`) ……。
.
- 162 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:52:28 ID:q/yBrCxQ0
-
「……一度、あいつらに連絡とるか?」
「どいつだ」
「裏門で張ってるやつ」
「あんたも小心者だな」
「それを言うなら心配性だ」
「どっちでも一緒さ」
「はやくしねえと、俺のチャカが火を噴くぞ」
「さっさとヌいてくれ。あっちでな」
「OK。さーて、どっかにいいオンナは……」
「……! おい、待て、戻れ」
「なんだ? 俺のチャカは待ってくr……!」
(* - )
.
- 163 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:53:07 ID:q/yBrCxQ0
-
「おでましだぜ」
「くそ。なんてタイミングだ」
「諦めろ。さっさとするぞ」
「『走り屋』に気取られないようにな」
「おう――」
( ´_ゝ`)「今日も流石に決めるぞ」
(´<_` )「流石に、か。悪くない」
.
- 164 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:53:40 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
ミセ* - )リ トボトボ
ミセ* - )リ「………はぁ」
ミセ*゚−゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「……明日があるさ」
おねえちゃんを追うのを諦めて、もう一分は経っただろうか。
いつもならあっという間に去る一分だけど、いまはそうでもなかった。
一秒一秒が、心をキシキシと痛めつけてくる
そんな表現が、いまの自分にぴったり合った。
いつまでも悲しむのはガラじゃあない。
あとはこの角を曲がれば、そのまままっすぐ帰る――
.
- 165 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:54:32 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ*゚ー゚)リ「…?」
( ;´・_ゝ・)
(;*゚−゚)
( ´_ゝ`)
(´<_` )
ミセ*゚ー゚)リ
なんだ、あれ。
.
- 166 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:55:11 ID:q/yBrCxQ0
-
( ´_ゝ`)「どうしたのよ、デミちゃん」
(´<_` )「まさか、あんたともあろうお方が、ハシるのを断るなんてな」
(´・_ゝ・`)「……」
ミセ*゚ー゚)リ ???
そのとき、私は目の前でなにが起こっているのか、よくわからなかった。
まず第一の驚きが、まだおねえちゃんが帰ってなかった――そこにとどまっていたこと。
第二に、見慣れない恰好の男二人が、門の前にいること。
第三に――
(´<_` )「サツが多いトコがあんだ。どうよ、俺とサシでハシらね?」
(´・_ゝ・`)「あいにく、今日はルートが決まっていてね」
(´<_` )「じゃあそのルートでいいから、さ」
ミセ;゚ー゚)リ「………」
なにやら、いい雰囲気ではなさそうだった、ということ。
.
- 167 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:55:55 ID:q/yBrCxQ0
-
『走り屋デミタス』、彼のことはミセリでも知っている。
おねえちゃんのカレで、また不良の間じゃちょっとした有名人だ。
というのも、顔は冴えないのに、ひとたびバイクに跨れば、彼に追いつく人はいない、とか。
乗るバイクがハヤブサ、とかいうとにかく速いやつだからってのもあるんだろうけど
どうも、コーナーリングといい障害物を避ける様といい、とにかく垢抜けてるんだそうだ。
で、そんな彼の伝説を崩そうと、いまみたいに、ハシりに誘ってくる暴走族も多いんだと。
………でも。
( ´_ゝ`)】「おーおー、俺俺。正門だ。集まれ」
(´<_` )「あんたとハシるのが楽しみでしかたがなかったんだよ」
(´・_ゝ・`)「……もう、ハシるのはやめたんだよ、コッチは」
ミセ;゚−゚)リ
……どうも、この人たちは、そんな暴走族ではないみたいだけど。
.
- 168 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:57:04 ID:q/yBrCxQ0
-
(;*゚−゚)
( ´_ゝ`)「……あ。ひょっとしてあんた、そのオンナの連れ?」
(´<_` )「なーるほど。オンナの前だから、カッコワルイ自分を見せるのが嫌……ってところか」
(´・_ゝ・`)「もう一度、言う。そこをどけ」
( ´_ゝ`)「ごめん、俺ツンボだから(笑)」
(´<_` )「流石だな兄者。プライドのカケラもない男」
(´・_ゝ・`)「……」
あきらかに、男二人はデミタスさんを挑発にかかっている。
二人のバイクに道を塞がれているので、彼は帰るに帰れない状況だったようだ。
ミセリは、ブーツを履くのも忘れて、ただぽかんと、そこに立ちつくしていた。
( ´_ゝ`)「……ん?」
あっ
.
- 169 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:57:35 ID:q/yBrCxQ0
-
(´<_` )「どうした?」
( ´_ゝ`)「こいつは運がいい。弟者、見てみろよ」
(´<_` )「ん?」
あっ―――
(´<_` )「――これはこれは。ほんとうに俺らは運がいいみたいだ」
( ´_ゝ`)「こうなったら作戦変更。強行突破にでるぞ」
(´<_` )「逃げられないのか?」
( ´_ゝ`)「安心しろ。 “囲ませた”」
ミセ;゚−゚)リ「………?」
.
- 170 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:58:08 ID:q/yBrCxQ0
-
「囲ませた」
その言葉がひっかかった次の瞬間、ミセリの耳に、ある音が聞こえてきた。
やんややんやと騒ぐ音、人ごみを感じさせる雑音、そして――
バイクの、音。
(´<_` )「ぬかりはなかったか。流石だな」
(´・_ゝ・`)「……なんだこれは……」
( ´_ゝ`)「悪いな。恨むなら “あのオンナたち” を恨んでくれ」
(;*゚−゚)「……?」
(´・_ゝ・`)「ちょっと待て。こっちが何かしたのか?」
(´<_` )「……なにか……ねえ」
(´<_` )「別に?」
.
- 171 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:58:44 ID:q/yBrCxQ0
-
(´・_ゝ・`)「!」
(;*゚−゚)「!」
鼻が低いほうの男がそう言ったかと思うと、彼は二人のもとに飛び掛った。
それを見て、思わず背筋が冷たくなる。
限りなく、嫌な予感がしたのだ。
( ´_ゝ`)「こっちは任せろ」 ダッ
ミセ;゚−゚)リ「!?」
――なにがあった。
.
- 172 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 22:59:15 ID:q/yBrCxQ0
-
ミセ;゚三゚)リ「ッ!! ―――ッ!」
( ´_ゝ`)「悪いな。あんたに恨みはないんだ」
(;*゚ー゚)「! ミセ――」
(´<_` )「おっと」
(;* -゚)「ッ!」
鼻が高いほうの男が飛び出してきたかと思うと、
ミセリはそのまま両手を相手の左手で掴まれ、空いたほうの手でクチを塞がれた。
思わず、おねえちゃんがこちらに注意を向けるが
その瞬間、デミタスさんのわきを潜り抜け、鼻の低いほうの男がおねえちゃんの首を捉えた。
( ;´・_ゝ・)「! おまえ――」
(´<_` )「甘い」
( ;´・_ゝ )「――ッ!!」 ドガッ
.
- 173 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:00:12 ID:q/yBrCxQ0
-
デミタスさんが、連れ去られそうになったおねえちゃんを助けようとすると
その男は、空いたほうの手、つまり右手でデミタスさんのみぞおちを殴った。
瞬間、デミタスさんは、目を見開いた。
( #´・_ゝ・)「くっ…!」
おねえちゃんが引っ張り出されたため、デミタスさんは男に殴りかかった。
だが。
(´<_` )「俺もな」 パン
( #´・_ゝ・)「!」
(´<_` )「できることならイッパツ、相手してやりてえところだが――」
(;*゚−゚)「あ―――」
(´<_` )「それはまた今度になりそうだ」
.
- 174 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:00:44 ID:q/yBrCxQ0
-
男がそう言って退いたかと思うと、後ろのほうで待機し、「囲んでいた」男たちが代わりに前にでてきた。
おねえちゃんを連れ去ろうとした男を追おうとすると、それはその不良たちに阻まれる。
―――このときになって、彼らがなにをしようとしていたのか、がわかった。
( ´_ゝ`)「じゃあデートとしゃれこみますか」
ミセ;゚三゚)リ「ん゙ん゙ーーーーーーー!!!」 ジタバタ
( ´_ゝ`)「おうおう。チャカをなめさせたことはあるが、掌ははじめてだな。
これもなかなかいいもんだ」
(´<_` )「はやくずらかるぞ」
( ´_ゝ`)「OK」
―――拉致。
.
- 175 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:01:49 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
(゚、゚#トソン「………。」 ジリジリ
从#゚∀从「……。」 ジリジリ
オレとトソンは、互いの腕を押さえあい、いわゆるコーチャク状態にあった。
互いに睨み始めて、もうどれくらい経ったかがわかんねえ。
だが、退いたらダメだ。
そう思うと、ブスイなケンカだとは思いつつも、やめるわけにはいかなかった。
(゚、゚#トソン「………」
从#゚∀从「……痛ェぞ、テメエ」
(゚、゚#トソン「……爪先にまで気を払わないほど、オンナを捨ててるつもりはないんでね」
从#゚∀从「知ってっか? そーゆーのを、中途半端って言うんだぜ」
(゚、゚#トソン「あんたが漢字を使うなんて、珍しいコト」 ダダダ…
从#゚∀从「ごたごた抜かしてっと……」 ドダダ…ダダ……
バン
(゚、゚#トソン「……」 ダダダ…
ダダ…
从#゚∀从「……」
ガシャーン
(゚、゚#トソン「………なんの、音?」
从#゚∀从「知るか」
いたぞ! >
.
- 176 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:02:40 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚#トソン「……」
(゚、゚トソン「…! いま、なんか言った?」
从#゚∀从「ハア? テメ、なに寝言を――」
(・∀ ・)「いたぞテメーらあああッ!」
「「「 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!! 」」」
从 ゚∀从「―――ッ!」
.
- 177 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:04:17 ID:q/yBrCxQ0
-
(・∀ ・)「ハインとトソン!」
(・∀ ・)「今からおれがお前らを―――」
从#゚∀从≡⊃「ッせえ!!!」
. , , ゚
( )))ヹ) 。;゚,∵'・
从#゚∀从「おい! 何事だ!」
(゚、゚#トソン「……とにかく、出るぞ!」
バキッ
「待て! いまからてめーらをボkぎゃああああああああああああああああ!!!
.
- 178 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:04:49 ID:q/yBrCxQ0
-
◆
オレは、妙な胸騒ぎがした。
理屈は……わからない。
ただ、非日常にしては、タチの悪いジョーダンだ。
トソンと一緒に、オレは一心不乱に学校から一度出よう、と思った。
なにかをハアクするには、中から、よりも外から、のほうが早い。
……で、だ。
道中、見事にヤローどもが群がってきたわけよ。
服装からして、校内を荒らしたり、最初にオレたちに食いついてきたのと同じ連中だ。
目の前にそいつらがくるたびに、オレとトソンはお構いなく、殴り飛ばして蹴り飛ばした。
もともと走り回ってたから体力は減ってたけど、だからといってやり込められるほど相手が強いわけでもなかった。
相手がどんなやつか、は…わからない。
……が、ひとつだけ、わかったことがある。
(゚、゚;トソン「こいつら……アタシたちを狙ってるのか?」
从;゚∀从「さーな…」
オレも、そう思ってたところだ。
.
- 179 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:05:30 ID:q/yBrCxQ0
-
オレとトソンを見つけるたびに、ヤローどもは声をあげる。
「いたぞ」……と。
そしてオレたちめがけて、ヤツらが飛び掛ってくる。
これは、どう考えても、オレたちに敵意があるってことだ。
確かに、敵襲は未経験ってわけじゃあない。
一応ケンカ上等な二人だから、過去に何度もそういうのにあってきたことは、ある。
どこぞのガッコーの番長とか、ゾクとか、なんか知らんがボクサーとか。
タイマンだったり集団戦だったりするが、一応言うと、オレは無敗だ。
まともにケッチャクがついてないのがトソンだけで、それ以外の連中とのケンカは全部勝ってきた。
だからこそ余計に目をつけられたりはするし、ケンカの回数は増えてばっかだ。
……でも。
今回は、規模が段違いだった。
だって、そりゃそうだろ。
校内を、トコトン荒らしまわっているのだから、コイツらは。
オレたちの、母校を。
.
- 180 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:06:14 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚;トソン「! 門にもいるぞ!」
从;゚∀从「構うか。全員ブッコロす」
あとは、この角を曲がって下足室を横切れば、外だ。
なにがあったのか知らんが、いつまでもここにいちゃあ、さすがのオレでもバテる。
それに、なにがあったのかをハアクしないことには、どうしようもない。
下足室で釘バットとかイスとかを振り回してた連中のタマを、次々蹴りつぶしていく。
あとは、この、開放されてる扉をくぐれば――
从 ゚∀从「………?」
从∀゚ 从「…?」
从∀゚ 从
≡从∀゚;从「!!?」
(゚、゚トソン「どうした!」
.
- 181 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:07:17 ID:q/yBrCxQ0
-
倒したヤローどもを踏み越えたオレは、ふと視界の端に映るものが気になって、そっちを見た。
誰かが、ふらふらになりながらも、例のヤローどもとハッていたのだ。
で、オレが思わず仰け反ったのは、ソイツが、アレだ。
知り合いだったわけよ。
(´;#)_ゝ".,)「……」
デミやん。
走り屋、デミタスだ。
.
- 182 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:07:52 ID:q/yBrCxQ0
-
从;゚∀从「で、デミやん!!」
(゚、゚;トソン「お前!」
オレがそれに気づくと、トソンもヤツの存在は知ってたのか、すぐにオレと一緒に駆けつけた。
オレたちの顔を見てびびったのか、いまデミやんに殴りかかろうとしてたヤツはしっぽ巻いて逃げた。
……が、いまはそんなのはどうでもいい。
とにかく、デミやんの介抱が第一だ。
从;゚∀从「デミやん、どーした! 大丈夫か!」
(´;#)_ゝ".,)「………ば…インs…ん……。」
(゚、゚;トソン「お前、走り屋だろ! どうしたんだ!」
デミやんは、ボロボロだった。
顔面は打ち身だらけで、とにかく腫れてやがる。
服も掴まれた衝動で破けちまったのか、ずたずただ。
周囲に、ノビてるヤローが五、六人いる。
一人で、一度にコイツらを相手したっていうのか。
でも、右脚の腿がヘンな方向に曲がってるのを見ると、おそらくここは折れたんだろう。
オレたちを見て安心でもしたのか、フラッとして、オレたちのほうに向かって倒れた。
すかさず、トソンがそれを受け止める。
.
- 183 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:08:26 ID:q/yBrCxQ0
-
从;゚∀从「さっきの連中にやられたのか!」
(´;#)_ゝ".,)「……」 コク
トソンに両肩をささえられて、デミやんはゆっくりうなずいた。
それを見て、トソンは不思議がった。
(゚、゚;トソン「……狙いは、アタシたちじゃなかったのか…?」
(´;#)_ゝ".,)「……。」
(゚、゚;トソン「そもそも、アイツらはいったい……?」
(´;#)_ゝ".,)「…… 、… ……。」
デミやんがなにかを言おうとするが、クチまでヤられたみたいで、まるで声になってなかった。
トソンが耳を近づけた頃には、デミやんはしゃべるのをやめていた。
.
- 184 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:09:07 ID:q/yBrCxQ0
-
从 ゚∀从「いったい、なにが……」
从 ゚∀从「………、……あ」
(゚、゚トソン「…?」
――そこで、そもそもなんで、ここにデミやんがいるのかを考えてみた。
言うまでもなく、デミやんはヴィッ校の生徒じゃない。
コイツがヴィッ校に来る理由と言えば…………、………!
从;゚∀从「ちょ、ちょっと待て。おい、デミやん!」
(´;#)_ゝ".,)「 …… 。」
从;゚∀从「アイツは……」
(゚、゚トソン「アイツ?」
从;゚∀从「しぃは! しぃはどうしたんだ!」
.
- 185 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:09:38 ID:q/yBrCxQ0
-
(゚、゚トソン「!」
(´;#)_ゝ".,)「 … …… 、…。」
トソンが、それに反応する。
そしてすぐさま、トソンは下足室、つまりはロッカーのほうに引き返した。
支えを失ったデミやんが倒れようとするが、それをオレが受け止める。
どうした、急に……
そう思ったのも束の間。
トソンはとあるロッカーを開けて、「あっ」と言った。
(゚、゚;トソン「…!」
从 ゚∀从「な、なんだよ…」
(゚、゚;トソン「………リ…。」
从 ゚∀从「り?」
(゚、゚;トソン「ミセリの……ブーツ……っ!」
.
- 186 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:10:25 ID:q/yBrCxQ0
-
从 ゚∀从「ミセリ……」
猫乃ミセリ。トーゼン、知ってる。
しぃの妹で、トソンの相棒。
ケバくてブリッコ、とオレはあまり好きになれないが。
……待て。
“ブーツ” ……?
(゚、゚;トソン「……アイツ、もう校内にいなかったよな?」
从 ゚∀从「お、オレの見てた限りじゃあ……、……!」
从;゚∀从「ま、待て! ってことは、アイツも―――」
从;゚∀从「ミセリも消えちまったっていうのか!?」
.
- 187 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:11:26 ID:q/yBrCxQ0
-
「 ……… ……、……リー……。」
从;゚∀从「…? デミやん?」
(´;#)_ゝ".,)「………ル……トリ………。」
从;゚∀从「なにトリって?」
デミやんは、歯が何本か抜けたクチをなんとか動かして、言った。
.
- 188 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:11:58 ID:q/yBrCxQ0
-
(´;#)_ゝ".,)「ダブル………ビクトリー……」
(´;#)_ゝ".,)「二人とも……、………連れ去ら……、…れた」
.
- 189 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:12:42 ID:q/yBrCxQ0
-
戦争のはじまる音が、頭のなかで弾けた。
.
- 190 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:13:27 ID:q/yBrCxQ0
- 今回投下分
>>110-189
- 191 :同志名無しさん:2013/03/31(日) 23:36:10 ID:AJdk2ucw0
- 超絶乙っ乙
面白い
- 192 :同志名無しさん:2013/04/04(木) 02:29:10 ID:zjZjSHpUO
- 今回は長かったな
- 193 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:08:16 ID:.vou25f20
-
( ФωФ)「めがねこそ至高」
(‘_L’)「目を覚ませ。クーにゃんは狐コスこそが」
( ФωФ)「めがねとは本来、その人の知的属性を向上させるためのアイテム」
( ФωФ)「しかしクーにゃんの場合、どうしたことか、ドジっ娘成分とギャップが生まれるのだ」
( ФωФ)「考えてみろ、ドジなクーにゃんがにゃんにゃんしている……その姿を!」
(‘_L’)「狐コスには勝てないな」
(‘_L’)「狐コスには、圧倒的、圧倒的すぎる、破壊力が備わっている」
(‘_L’)「そんな小手先では到底通じないような……そう、まさにチャンピオン。それが、狐コスなのだ」
(‘_L’)「クーにゃんの艶やかな髪から伸びる、尖った耳」
(‘_L’)「頬ずりしたくなるほどちいさくて丸みをおびたおしりから生える、ふさふさな尻尾」
(‘_L’)「おまけに、それがぱたぱた動く、なんていうオプションつきだ」
(#‘_L’)「しかも、無表情で、だぞ!!!」
( ;ФωФ)「ぐおッ!!!」
.
- 194 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:08:48 ID:.vou25f20
-
(‘_L’)「ファン投票でも狐コスが一位を占めている。……勝ったな」
( ;ФωФ)「ふ…フン! まわりに流されるなど、にわかのすることよ」
( ФωФ)「ワガハイは、クーにゃんのデビュー当時からのめがね写真を、欠かさず撮ってきている」
( #ФωФ)「ナマ写真で、だ!」
(;‘_L’)「な―――ナマッ!!?」
( ФωФ)「撮り損ねた写真は、ヤフオクで落とす。5桁などデフォルトよ」
(;‘_L’)「………!」
( ФωФ)「当然、ピンボケで誰なのかがわからないなんてものを掴まされたこともある」
( #ФωФ)「―――しかしッ!!」
( #ФωФ)「そんな賊の小手先で、ワガハイのクーにゃん道が閉ざされることは、」
( #ФωФ)「全く、決して、万が一にも、ないッッ!!!」
(:‘_L’)「―――ッッッ!」
.
- 195 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:09:18 ID:.vou25f20
-
( ФωФ)「……勝った、な」
(;‘_L’)「ふ、ふん。歌詞を間違えるような輩に勝ったといわれるとは、な」
( ;ФωФ)「そッそれは―――!!」
( ゚∋゚) ゙
( ФωФ)「――……?」
(‘_L’)「どうした、クックル氏」
( ゚∋゚)
(゚∈゚ ) 彡
(ФωФ )「? 校庭?」
(‘_L’)「??」
.
- 196 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:09:53 ID:.vou25f20
-
( ФωФ)「――――、」
( ;ФωФ)「!!! なッ――――」
(;‘_L’)「なんだあの集団は!」
( ゚∋゚)
( ;ФωФ)「ま、まずい! 今すぐ逃げ―――」
( ゚∋゚)っ サッ
( ;ФωФ)「ど、どうして止めるクック――、」
「おい、まだヤローがいたぞ!!」
「やっちまえ!!」
「ヒャッハー!」
.
- 197 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:10:26 ID:.vou25f20
-
( ФωФ)「―――」
(;;;‘_L’)「………え、…えっと」
( ゚∋゚)
( ゚∋゚)「………。」
( ´_ゝ`)と(´<_` )は大切なものを守るようです
.
- 198 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:11:06 ID:.vou25f20
-
◆
从 ∀从
(゚、゚;トソン「ダブルビクトリーって……」
(´;#)_ゝ".,)「………、」
(゚、゚;トソン「……わかった。」
デミタスがなにか言おうとしたのだが、もう体力は尽きに尽きているようだ。
クチが思うように動いていない。
これ以上しゃべらせると、よけいにコイツに負担がかかるだけだ。
救急車を、呼ぶべきだろうか。
さすがにこれは、やられすぎで、しばらくは動けないだろうから。
でも、救急車を呼ぶと、面倒なことに巻き込まれかねない。
目の前でデミタスが倒れているのをほうっておくことはできないが、
かといってしぃとミセリ、連れ去られた二人のほうがいまは重大だ。
いますぐ、アイツらを助けにいかないといけない。
でも、どうやって―――
.
- 199 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:11:38 ID:.vou25f20
-
(´;#)_ゝ".,)「 ……、…。」
(゚、゚トソン「ど、どうした。無理しなくていいぞ」
(´;#)_ゝ".,)「………ィ…」
(゚、゚トソン「?」
デミタスは、クチを開こうとするのを止めない。
頼んでもないのに、デミタスは続きを言おうとしている。
だが、ここで無理に制止しても、おそらくはムダだろう。
そう思って、アタシは、コイツのちいさな声に意識を集中させた。
ゆっくりと、唇が動く。
歯も何本か飛ばされているため、見てて痛々しい光景だ。
しかしそんなことにもお構いなしで、デミタスは、続けた。
.
- 200 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:12:21 ID:.vou25f20
-
(´;#)_ゝ".,)「はうんい……あいあ…ン…………はい……ほ…、こ……ひょう。」
(゚、゚トソン「…?」
(´;#)_ゝ".,)「あいはん……はひ…、…… 」
(゚、゚トソン「……もう一度、言っ――」
从 ∀从「ラウンジ第三廃工場だ」
(゚、゚トソン「!」
ハインが、おもむろに立ち上がる。
前髪が長いということもあるのだろうが、しかし、それだけではないだろう。
コイツの顔に、影がはえている理由は。
.
- 201 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:13:13 ID:.vou25f20
-
从 ∀从「………行くぞ」
(゚、゚トソン「待て。コイツはどうすんだ」
从 ∀从「あとで、オレのツレに運ばせてやる」
从 ∀从「デミやんはそれまで、ワリぃがここで待っててくれ」
(゚、゚トソン「……、……」
(´;#)_ゝ".,)「………」
从 ∀从「走るぞ。あそこは、そう遠くない」
(゚、゚トソン「………」
( 、 トソン「……ああ。」
.
- 202 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:13:43 ID:.vou25f20
-
◆
「やぁ〜〜〜。気分はどうだ?」
「 」
「 」
「おいおい、誰がクチ塞いでこいっつったんだよ」
( ´_ゝ`)「オンナのヒステリックな叫び声は好かないのでな」
(´<_` )「――叫ばれると、面倒だ」
「……まあ、別にいいけど、さ」
「 」
「 」
.
- 203 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:14:14 ID:.vou25f20
-
( ´_ゝ`)「しっかし、あんたも好きだな」
「なにがだ」
( ´_ゝ`)「『拳のハイン』と『脚のトソン』つったら、ほら、あれじゃないか」
(´<_` )「まあ少なくとも……ここらへんで一番相手にしたくない連中だな」
「それが、なにか?」
( ´_ゝ`)「勝てる勝てないは別として、だ」
( ´_ゝ`)「こっちも、タダじゃあ済まないぜ。むろん、あんたも、だ」
( ´_ゝ`)「もっとも、あんたは直接手を下さず、全部俺たちに任せるってなら別だが――」
「ナメんじゃねえ」
( ´_ゝ`)「………ごめんなさい」
(´<_` )「流石だな。ほんとうにプライドのカケラもない男」
.
- 204 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:14:47 ID:.vou25f20
-
「復興した、ダブルビクトリー」
「心と身体の双方から圧勝する」
「……俺が手を下さないで勝ったところで、あの二人の心は折れないじゃねーか」
( ´_ゝ`)「こだわるねぇ」
「徹底的に……そう、徹底的に、だ」
「とことんいたぶって……あの二人に、認めさせる」
「最強なのは、そう……」
「俺たちだって、な」
.
- 205 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:15:19 ID:.vou25f20
-
( ´_ゝ`)「ただ、パイプ使った程度じゃ心なんざ折れないだろうよ」
(´<_` )「心より先に命が折れるな」
( ´_ゝ`)「流石の俺もコロシまではしたくないものだ」
「……。」
(´<_` )「心を折るといえば……」
( ´_ゝ`)「……あ」
(´<_` )「なにかあったか?」
( ´_ゝ`)「まわそうぜ」
(´<_` )「なにを」
( ´_ゝ`)「『拳』と『脚』を」
(´<_` )「俺は断固として拒否する」
( ´_ゝ`)「なぜだ」
(´<_` )「なんであんなゴツいのをまわさねばいかんのだ」
( ´_ゝ`)「穴のカタさは変わらないぜ」
「………。」
.
- 206 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:15:51 ID:.vou25f20
-
( ´_ゝ`)「まだ俺のチャカには弾丸が残っている」
( ´_ゝ`)「それに、ゴツいのは筋肉だけであって、やつらはわりといいカラダしてやがる」
( ´_ゝ`)「加え、ボコボコにされた状態でまわされたら、だ」
( ´_ゝ`)「プライドの高いやつらのこと。すぐに自殺を選ぶだろうよ」
(´<_` )「……、……」
( ´_ゝ`)「はい論破(笑)」
(´<_` )「あくまで心を折るってハラなら、」
( ´_ゝ`)「なに?」
(´<_` )「この二人を、やつらの目の前でまわすほうがいいだろうよ」
(* ≡ )
ミセ* ≡ )リ
.
- 207 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:16:22 ID:.vou25f20
-
( ´_ゝ`)
(´<_` )「そうすれば一石二鳥……いや、三鳥か」
(´<_` )「なにか、反論はあるか?」
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「はい論破(笑)」
( ´_ゝ`)「氏ね」
.
- 208 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:17:03 ID:.vou25f20
-
「相変わらず、だな」
( ´_ゝ`)「褒めてもらえるとは、な」
(´<_` )「たぶん違うと思う」
「そんなことはどうでもいい」
「それより……あいつらは、まだこないのか」
(´<_` )「案ずるな。見せしめにタコらせたやつに、ここのことを伝えさせた」
(´<_` )「あとは……向こうがそれにかかって、ノコノコ来るのを待つだけだ」
( ´_ゝ`)「なるほど。釣りのようなものだな。奥が深い」
(´<_` )「釣り、か……そうだな。確かに、釣りのようなものだ」
(´<_` )「餌は……っと」 ガシッ
(´<_` )「ここに、ある」
っ( ≡ *)
.
- 209 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:17:45 ID:.vou25f20
-
「さすがに、この人数で憂慮すべきことじゃねーとは思うが」
「あの二人は、ツレ呼んできそうだったか?」
( ´_ゝ`)「うんにゃ……その心配はないだろうよ」
( ´_ゝ`)「二人とも、ヴィッ校じゃあ最上位の、生ける伝説だ」
( ´_ゝ`)「そんな二人が、いちいち群れないとケンカできないってなことになったら、今後の威厳にかかわる」
(´<_` )「プライドの高い二人のことだ、それもそうだろう」
( ´_ゝ`)「プライドにしがみつく……その愚かさを、ここで知らしめてやろうではないか」
(´<_` )「なぜだろう。説得力がある」
( ´_ゝ`)「フッ……」
「………。」
.
- 210 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:19:29 ID:.vou25f20
-
「……ま、まあ」
「オモシロくなってきたじゃねーか」
「ここらをモッてる二人に、」
「かつての伝説が復活して、勝負を挑む」
「そして、勝つのは、」
「ラウンジの伝説。」
( ・∀・)「――― ダブルビクトリーだ。」
.
- 211 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:20:30 ID:.vou25f20
-
◆
( ^ω^) カタカタ…ッターン
( ^ω^)
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「うはwwwwやっぱVIPはおもすれーおwww」
( ^ω^)「wwwww」
( ^ω^)「ww」
( ^ω^)
( ^ω^) ?
( ^ω^)「………??」
( ^ω^)「……なんか、騒がしいお…?」
.
- 212 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:21:22 ID:.vou25f20
-
バタン
ξ;゚?゚)ξ「ぶ、ブーン!!」
(^ω^ )「お、つd……ツン。どうしたん――」
ξ;゚?゚)ξ「いいから、外を見て!」
( ^ω^)「???」
ツンが、僕の挨拶にも応じず、ただ一方的にうながしてくる。
いや、むしろ、これは「急かしてくる」だ。
これにはさすがの僕も、「異常事態」を察知せざるを得なくなる。
ツンの焦燥といい
なにやら感じ取れる騒がしさといい
どこか、「いつもと違う」なにかが、僕の胸中にひょっこりと顔を出していた。
校長室に備えられた、僕専用の椅子。
そこからじゃあ、角度の関係から、外を見ることはできない。
「異常事態」の実態が未だ呑みこめていないものの、渋々立ち上がって、言われるがまま外を見た。
見なければ、よかった。
.
- 213 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:21:53 ID:.vou25f20
-
( ゚ω゚)
見渡す限りの、惨劇。
校庭には十人はくだらないと思われる、妙な服を着た男たち。
釘バットや大型バイクの進入を見る限り、とてもではないが、穏やかな連中だ、とは思えない。
校舎の壁が砕かれたり、花壇が荒らされたり、
倉庫のシャッターなんか、もうシャッターとしての役割を果たさなくなっている。
窓も、この窓から見える限りで言えば、八割以上のものが割られている。
そして、僕がそれらの音を「騒がしい」と感じた理由。
なにも、破壊活動の音だけが騒がしかったわけではない。
その、破壊活動に従事している連中の放つ声の数々が、破壊そのもののそれよりも、騒がしかったのだ。
「異常事態」と「騒がしい」の二つがわかった途端。
僕は、呼吸困難と称しても間違いではないようなほどの息苦しさを感じた。
眼圧が強まっていく。両腕に力が徐々に籠められていく。
気がつけば僕は、仰け反っていた。
しかし、そこで後方に背面から倒れこみそうだったのを、ツンが支えてくれた。
.
- 214 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:22:29 ID:.vou25f20
-
ξ;゚?゚)ξ「ブーン!」
( ゚ω゚)「………」
ξ;゚?゚)ξ「けッ、けーさ、ケーサツ……っ!」
ツンの声が、いまいち耳に入ってこない。
外耳道がこの上なく絞られているような錯覚に見舞われている。
絞られた状態で聞こえてくるのは、ツンの、日頃の冷静さを欠いた声色だけだった。
ξ;゚?゚)ξ「ね、ねえ、どうしたいいの!? ねえ!」
( ゚ω゚)
ξ;゚?゚)ξ「ブーンっ!」
( ゚ω゚)
いま、ツンが、呼んだ。
それだけははっきりとわかった。
この、聞きなれた、しかし学校では聞きなれていない呼び名。
聞き違えるはずもない。
ここでツンが僕を呼んだ、ということは、僕の意見を仰ごうとしているに他ならない。
ならば僕は、ブーンではなく、校長として、ツンではなく、教頭である彼女に的確な指示を与えないといけない。
的確な―――
.
- 215 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:23:06 ID:.vou25f20
-
ξ;゚?゚)ξ「――と、とにかく、まずケーサツに……」
( ゚ω゚)
( ゚ω゚)「―――だめだお」
ξ;゚?゚)ξ「!」
僕を床に寝かせて、僕のデスクにある電話を使おうとした彼女を、そう言って制する。
彼女は、その言葉か、それとも声そのものか――に驚いて、ぴたり、と動きを止めた。
「え?」と声を漏らしながら、彼女は顔だけを、こちらに向けてきた。
( ゚ω゚)「……ケーサツは、まだ、だめだ」
ξ;゚?゚)ξ「――な、……なんで…?」
( ゚ω゚)「ここは……理事長のご意見を仰ぐべきだお」
ξ;゚?゚)ξ「で、でも、理事長はどこに……」
「呼びましたか?」
.
- 216 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:23:44 ID:.vou25f20
-
ξ゚?゚)ξ「!」
( ゚ω゚)「……」
声のした方向――出入り口のほうに、ツンはがばっと躯を向けた。
僕も、のっそりと、上体を起こし、そのまま立ち上がる。
まだ、貧血に近い倦怠感は消えていない。
だが、立つことくらいなら、できた。
( ´∀`)「……大変なことに、なってしまいましたねぇ……」
ξ゚?゚)ξ「理事長! ご無事で――」
( ´∀`)「そんな社交辞令はよろしい」
ξ゚?゚)ξ「!」
( ´∀`)「……校長先生」
( ゚ω゚)
( ^ω^)「……はい?」
.
- 217 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:24:44 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「この度の、事態」
( ´∀`)「なにか、心当たりはありませんか?」
理事長の、決して平生を欠かしていない声。
いつもは丁寧ながらもちょっとした畏怖を兼ね備えている、そんな声にしか聞こえなかったのだが
このときに限っては、むしろ畏怖しか感じ取れなかった。
( ^ω^)「……いいえ。まったくの見当もつかないですお」
( ´∀`)「ならば、原因――事の発端に関しては?」
( ^ω^)「それに関しても、僕は……」
( ´∀`)「わからないはずがない。むしろ、一つしかありえないでしょう」
( ^ω^)「え?」
ξ゚?゚)ξ「………!」
ξ゚?゚)ξ「理事長、まさか……」
.
- 218 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:25:23 ID:.vou25f20
-
ツンが一歩、前に乗り出す。
僕だけが置いていかれているような感じがした。
( ´∀`)「そうです。まさか、またしてもやらかしてくれるとは思わなかったものです」
( ´∀`)「……高岡ハインリッヒに、都村トソン」
( ´∀`)「今度は、このような騒ぎを持ってくるとは………」
( ;^ω^)「! あの二人が、まァーたなんかしでかしたんですかお!?」
( ´∀`)「二人がなにかしたか、までは知り得ません」
( ^ω^)「…え?」
( ´∀`)「耳を澄ませば、聞こえるではありませんか」
( ´∀`)「……連中は、事ある毎に彼女たちの名を発しているのです」
.
- 219 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:26:50 ID:.vou25f20
-
( ^ω^)「……なんだって…?」
言われて僕はすぐに、耳を澄まして、聴覚に意識を集中させた。
それを見て、ツンと理事長は閉口した。
聞こえてくるのは、破壊活動に走り回る音、バイクの空吹かしの音に、叫び声。
叫び声は、何を意味するのかがわからないようなものから、快感をあらわにしているようなものが大半だ。
その他の声は、この校長室からでは、いまいち把握できない。
聞こえてこないのを察してか、理事長は足早に、閉じた口を開いた。
悠長に、その声が聞こえてくるのを待っている余裕など、ないのだ。
( ´∀`)「……彼女たちが喧嘩を売ったのか、まったくの事実無根なのかはさて置いて」
( ´∀`)「『彼女たちが存在するから』、この度の事態が生まれたと見るべきでしょう」
( ´∀`)「異論はありますか?」
ξ;゚?゚)ξ「……異論、ではないですが、」
( ´∀`)「はい」
ξ;゚?゚)ξ「つまり、その……どういう意味、ですか?」
( ´∀`)「言うまでもないでしょう」
.
- 220 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:27:34 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「早急に彼女たちを追い出すほかありません」
.
- 221 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:28:06 ID:.vou25f20
-
ξ;゚?゚)ξ「…! し、しかし――」
( ^ω^)「しかし、いま、彼女たちはどこに?」
( ´∀`)「おそらく……ここには、いないでしょう」
( ´∀`)「これだけの人数が、この学校を襲っているのです。
もしここにいたら、今頃、彼らに見つかっているでしょう。
彼女たちは、なにかに隠れるような性格ではないはずです」
( ;^ω^)「な、なら、どうやってこの事態を収拾するのですかお!
. ケーサツ……でも、この規模では――」
( ´∀`)「警察? 呼べるわけがありまして?」
ξ;゚?゚)ξ「!」
( ;^ω^)「ど、どうして…?」
( ´∀`)「考えてもみなさい、校長先生」
( ´∀`)「今言ったように、この度の事態は、例の二人によって引き起こされたも同義です」
( ´∀`)「もしこれが明るみに出てしまっては……元凶の二人の退学処分だけでは、済まされません」
( ´∀`)「この学校が……責任を持たなければなくなる」
.
- 222 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:28:43 ID:.vou25f20
-
ξ゚?゚)ξ「!」
( ;^ω^)「どッどういう意味ですかお!?」
( ´∀`)「いままで、彼女たちが悪さをしでかしても、警察には突き出してこなかった。なぜか」
( ´∀`)「そうすることで、この学校の威厳と信頼が崩れ去ってしまうからです」
( ´∀`)「我々は、受験戦争に乗り遅れたような生徒を、より高い階級へと戻すために教育業務に従事する身」
( ´∀`)「となると当然、俗に不良と呼ばれる生徒が集うのもまた自然の摂理」
( ´∀`)「……そして、警察沙汰が引き起こされるのも、仕方のないこと」
( ´∀`)「もし、そのたびに逐一通報していたら、どうなるか」
( ´∀`)「この学校は、存在できなくなる」
.
- 223 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:29:15 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「しかし、いまの論理展開を見ればわかるように、言わば、これは『仕方のないこと』なのです」
( ´∀`)「多少の悪さには目をつぶって、それを悔い改めさせるような教育が、我々には求められる」
( ´∀`)「そして……今回の騒ぎも、それに該当する」
ξ ? )ξ「……」
( ;^ω^)「だ、だからといって、このまま連中を野放しにしては――」
( ´∀`)「さすがの彼らも、この場に標的がいないとなれば、諦めて帰るでしょう」
( ´∀`)「熱は、持続しない。私の教育理念の、ひとつです」
( ;^ω^)「……」
ξ゚?゚)ξ「……」
( ´∀`)
( ´∀`)「……」
( ´∀`)「どうしました、教頭先生」
ξ゚?゚)ξ「…え?」
.
- 224 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:29:46 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「なにか、言いたいことがあると見受けましたが」
ξ゚?゚)ξ「え、あ、その……。」
( ´∀`)「……」
ξ゚?゚)ξ「……」
( ^ω^)「……もし」
( ´∀`)「?」
( ^ω^)「もし、連中の狙いが、例の二人じゃなくて」
( ^ω^)「『この学校にある』、と……したら?」
.
- 225 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:30:20 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「……なんですって?」
( ^ω^)「例の二人は、理事長がおっしゃったように、隠れるようなタチじゃあありません」
( ^ω^)「つまり、最初に騒ぎの音を聞きつけた時点で、二人は、出てくるはずですお」
( ^ω^)「そしてそれは、連中も、理解しているはず」
( ^ω^)「……なのに」
( ^ω^)「例の二人は出てこないのに、この騒ぎは、依然続いています」
( ´∀`)「…!」
( ^ω^)「もし、これが高岡と都村両氏への直接的な攻撃ではなく……」
( ^ω^)「その両氏の学びやを破壊する、という、間接的な攻撃だったら……?」
( ^ω^)「この騒ぎは、収まることはない」
( ^ω^)「もし、収まるとしたら、それは―――」
( ^ω^)「この学校が、つぶれたときです」
.
- 226 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:30:53 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「!」
ξ゚?゚)ξ「だ、だったらケーサツに通報する以外、ありませんよ、理事長!」
( ´∀`)「………。」
ξ;゚?゚)ξ「理事長! どうして躊躇うのです!」
ξ;゚?゚)ξ「どのみちつぶれてしまうのであれば、通報が優先――」
( ´∀`)「………やはり」
ξ;゚?゚)ξ「?」
( ´∀`)「やはり……物事を鎮圧するのは、最終的には、暴力になってしまうのですね」
( ;^ω^)「り、理事長……?」
( ´∀`)「そもそも。」
( ´∀`)「私が、この事態のなか、無傷でここまでやってくることのできた、」
( ´∀`)「そのことに関して、疑問はないのですか?」
ξ;゚?゚)ξ「…? ……た、確かにないことはないですが……」
( ;^ω^)「ッ! まさか、理事長は、実はつよ―――」
.
- 227 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:31:23 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「覚えていますか? 去年に起こった、あの事件を」
ξ;゚?゚)ξ「あの…?」
( ´∀`)「……まだ、高岡さんと都村さんが、同じクラスにいた頃です」
ξ;゚?゚)ξ「両氏とも、2−G、でした……ね。今思うと、この上なく危なっかしいクラスです」
( ´∀`)「年度も終わる頃。あのクラスでは、問題が起こった」
( ´∀`)「覚えておいででしょうかね」
ξ;゚?゚)ξ「二人の喧嘩、ではなく……?」
( ´∀`)「なにをばかな。もっと、大規模なものです」
ξ゚?゚)ξ「大規模……」
ξ゚?゚)ξ「………、」
ξ;゚?゚)ξ「……! オオカミ高校の生徒との、乱闘騒ぎ……!」
( ´∀`)「ええ。それです」
( ;´ω`)「(……あれぇ…?)」
.
- 228 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:32:03 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「そもそも、あの乱闘が起こったのは、なぜか?」
ξ;゚?゚)ξ「2−Gの伝説を聞きつけた他校の不良たちが、その伝説に挑戦する、と――」
( ´∀`)「で、その事件の一番の問題点は」
ξ;゚?゚)ξ「………………、」
( ´∀`)「覚えておいででしょう。言ってみなさい」
ξ;゚?゚)ξ「……」
ξ;゚?゚)ξ「………『半殺し』。」
.
- 229 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:32:56 ID:.vou25f20
-
( ;^ω^)「……あ!」
( ´∀`)「そうです。この乱闘で、我が校の生徒は、全治六ヶ月の大怪我を、負わせてしまった」
( ´∀`)「その結果、2−Gの伝説を散らそうと、『彼ら』の所属するクラスを分散したのです」
( ;^ω^)「(確かに、そんな事件もあったお……)」
( ;^ω^)「………」
( ^ω^)「……?」
( ^ω^)「え、『彼ら』?」
.
- 230 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:33:40 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「私は、その大怪我を負わせた生徒を、当然、退学処分に処そうと思いました」
( ´∀`)「………しかし。『ある条件』を元に、一度だけ、チャンスを与えたのです」
( ´∀`)「そして、『彼』は今日びにおいて、その『条件』を守っている」
ξ゚?゚)ξ「しかし、その話が、いったいどう本筋に噛んでくるのでしょうか」
( ´∀`)「……いいでしょう。もう、前置きは済みましたからね」 ガラガラ
( ^ω^)「(……ん?)」
理事長がそう言うと、扉の向こうから、なにやら物音が聞こえた。
それを聞きつけたのはツンも一緒で、僕と同じような顔で扉に目を向けた。
視界の傍らに理事長。視界の中央に、扉。
まるで実況でもするかのように、理事長が続けざまに、言葉を放った。
それにあわせて、扉が、ゆっくり、開かれる。
.
- 231 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:34:16 ID:.vou25f20
-
( ´∀`)「分散された伝説は、全部で、三つ。」
( ´∀`)「3−Gの、高岡ハインリッヒ」
( ´∀`)「3−Fの、都村トソン」
( ´∀`)「そして―――」
.
- 232 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:35:01 ID:.vou25f20
-
そこで現れたのは、
『腰をかがめないと室内に入れないほどの巨躯』を持つ、『男子』生徒。
その圧倒的な威圧感をものともせず、
理事長は、その名を、言った。
.
- 233 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:35:35 ID:.vou25f20
-
( ゚∋゚)
( ´∀`)「3−Eの、三階堂」
( ´∀`)「またの名を……… 『躯のクックル』。」
.
- 234 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:36:20 ID:.vou25f20
-
( ∀ )「結論からいいましょう」
理事長は、いつも通りの表情といつも通りの声色で、言った。
そして、その「いつも通り」こそが、「異常」だった。
( ∀ )「連中は、この男が始末する」
.
- 235 :同志名無しさん:2013/04/29(月) 13:37:47 ID:.vou25f20
- 今回投下分
>>193-234
- 236 :同志名無しさん:2013/04/30(火) 01:34:09 ID:Mc49BokwO
- ここで鳥さんか、おもしろくなってきた!
- 237 :同志名無しさん:2013/05/30(木) 10:24:06 ID:Rvhdg6v.0
- 今月はお休みください。。。
- 238 :同志名無しさん:2013/06/17(月) 20:15:56 ID:UGcyZgmo0
- マーケティングから飛んで来たが
なんと面白い
頑張ってくれ
- 239 :同志名無しさん:2013/06/27(木) 23:30:41 ID:8gMcwh6A0
- しばらくお休みください。。。
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■