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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ 第三部
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2016/06/10(金) 21:01:44 ID:U0jBOVFc0
第二部までのお話はBoon Roman様に収録されています。
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/tender/
(リンク先:boon Roman)
632
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:34:12 ID:RSX8/wbk0
ドクオには強さがある。
隠そうと思っても隠せない、経験値の反映だ。
職務を果たせば、自分に自然注目が集まってしまう。
('A`)「了解です」
シナーは席を立ち、店をあとにした。
ノパ⊿゚)「うわ、あの人何も頼んでない」
憤慨するヒートの声がする。
633
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:34:51 ID:RSX8/wbk0
ドクオはしばらく口元をおさえて考え込んでいた。
日は既に暮れている。
街路のいたるところで電灯がついた。
賑わいの声がする。
街はもうじき、一日の疲れを癒す声に満ちるだろう。
('A`)「ヒート、話がある」
客が来るまであと少し。
ノパ⊿゚)「……どうせろくなことじゃないんでしょ」
厨房から姿を現したヒートは、話が聞えたわけではないだろうに
どことなく、据わった瞳をドクオに向けていた。
☆ ☆ ☆
634
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:35:11 ID:RSX8/wbk0
二年前の冬、テーベは自国内魔人の国外追放を推進させた。
その嚆矢となったのが、国南部を東西に延びるアイトネ山脈への進軍だ。
当時山中に集落を形成していた魔人たちを、
テーベの軍隊が追放のために攻め入った事件である。
ラスティアという故郷が失われ、仕事を探していたドクオは、
テーベの傭兵となり、この追放作戦に傭兵として参加していた。
生活の糧のため。
そしてそれ以上に、魔人を討伐する意義を自分なりに見出していたためだ。
635
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:35:34 ID:RSX8/wbk0
魔人は人の、超えなければならない壁である。
かつて、戦友だったモララーと酌み交わした近いが、ドクオの胸の中で未だ生きていた。
アイトネ山脈での魔人討伐は、当初、容易になされると見込まれていた。
比較的軽い武装ではあったものの、人員は過剰気味。
安定して進軍すれば、被害をおさえて魔人を追放できるはずだった。
しかし、魔人は抵抗した。
自ら棲まう森に火を放ち、テーベ軍を逆に猛火の中に閉じ込めようとしたのだ。
636
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:35:54 ID:RSX8/wbk0
散会した軍は散り散りになりながら、
ゲリラとなった魔人と戦闘を繰り返した。
ドクオもまた、火の手の合間をかいくぐり、
やがて開けた場所に辿り着いた。
相見えた人物は、そのとき仮面を被っていた。
だから彼は気づくよしもなかった。
その仮面の下に、彼がかつて追い求めていた、幼い頃の友人だったのだ。
637
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:36:35 ID:RSX8/wbk0
名前をクー。
ドクオを魔人との戦いに駆り立てる原因となった彼女は、
ドクオのあずかりしらぬところで、魔人に味方をする立場になっていた。
戦うための剣を交わし合った彼女は、ドクオの手により深手を負った。
偶然にも彼らのそばに現われた、かつての仲間に対しドクオは縋った。
彼女を助けてやってほしい。
魔人を憎む感情を一時忘れ、
敵であるはずのクーを、ドクオはついに殺せなかった。
638
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:36:56 ID:RSX8/wbk0
以来、クーとは会っていない。
どこへ行ったのかもわかっていない。
アイトネ山脈での作戦が落ちついてからも、しばらくドクオは放心していた。
クーはドクオにとって、戦う理由でもあった。
彼女が不在であるからこそ、魔人を憎む意識を保つことができた。
その意識が、自らの思い過ごしであるとわかったとき
彼の中で目的は潰えた。
639
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:37:30 ID:RSX8/wbk0
クーの存在そのものを無視することもできた。
たとえ旧友であろうとも、自分の決意を鈍らせる存在ならば、無視していないものとする。
そうすれば、また戦いに参加することができる。
だが、ドクオは、クーのことが忘れられなかった。
望み薄だとわかっていながら、テーベの新聞に毎日目を通し、
尋ね人としてクーが出ていないか確認することもあった。
クーは一度も、その名をドクオの前に見せなかった。
640
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:38:10 ID:RSX8/wbk0
もはや戦う意味はない。
いつしか胸のうちでその思いをドクオは抱くようになった。
しかし、彼は今も戦いを続けている。
戦うことに、身体が慣れすぎてしまっているのだ。
たとえば、目の前に剣を構えた男がいて、自分に迫ってきたとする。
ドクオはその振り下ろされる剣に対し、自らの剣を当て、
自然な所作で受け流し、反撃することができた。
641
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:38:40 ID:RSX8/wbk0
意志とは関係がない。
彼の身体は、向けられた闘気を感ずることができる。
そうなったら最後、自らの手が勝手に動く。
自分の中には内なる獣がいる。
ドクオは常々、その思いを抱くことがあった。
魔人を討伐する意欲に燃えていたとき
内なる獣は魔人を見かける度に惹起し、
ふつふつと沸き立ち、戦いへと駆り立てる存在だった。
642
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:39:09 ID:RSX8/wbk0
その意欲がなくなった今も、獣はいる。
何も無くても、むしろ避けても、身体が自然と動いてしまう。
傭兵の身分でありながら、テーベの軍隊に参加し、軍功を重ね、
国軍への入隊を示唆されもする。
実際、ドクオは軍議のたびに話題に上る有望株であるらしかった。
積極的に戦う意志はない。
生活のための資金が得られれば、それで十分である。
そのような言い訳が、はたして幾日通じるのか、ドクオにはわからない。
すでに通じていると考えることすらおこがましいのかもしれない。
643
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:39:52 ID:RSX8/wbk0
('A`)「モララー」
人に言えない悩みが胸のうちに募ったとき、
ドクオはたびたびその名前を口にした。
かつて失った友の名前。
相談など数えるほどしかしたことないのに、
なぜか弱るとその名を口にしたくなる。
夜更け、月光が窓から部屋の中程まで差し込むのを見つめながら
ほこりっぽいベッドの匂いを感じつつ、問いが醸成されていく。
644
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:40:35 ID:RSX8/wbk0
('A`)「俺はいったいどうすればいい」
魔人と敵対することを是としていた彼は
今の俺に何と言ってくれるだろう。
戦えというだろうか。
身をひけというだろうか。
どちらもありうる。
両方とも言いそうで、でも決して曖昧な態度はとらないだろう。
645
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:41:17 ID:RSX8/wbk0
ドクオの問いに、今は答えはどこにも存在しない。
ゆえに、満たされることもない。
唯一わかることといえば
悩み悔やむ俺のことをモララーはきっと、鼻で笑うだろうということくらいだ。
☆ ☆ ☆
646
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:41:51 ID:RSX8/wbk0
コレー山渓は二つの大きな連峰から成り立っている。
ひとつはテーベより北方マルティアへ、エウロパの森の東側をなぞりながら伸びていく山脈。
もうひとつは逆側へ弧を描き、旧ラスティア領へと続く山脈。
いずれの連峰にしても、切り立った岩肌が目立つ。
天を突き刺すような頂付近では、夏を除いて常に雪化粧が施されている。
逆巻く風の立てる音ばかりが隘路に響き渡る。
隘路にも街はある。小さく、人口も疎らな街だ。
コレー山渓から吹き下ろされる風が、
秋から冬のこの時期では痛いほどの冷たさを帯びる。
ひっそりとした街中を枯れ葉が吹き荒ぶ様は見る者の寂しさを掻き立てた。
647
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:42:16 ID:RSX8/wbk0
コレー山渓は、交通の要所として重視されていた時期もあった。
しかし、魔人の扱いについてテーベとマルティアの関係が
悪化すると、交通が減り、人も離れていった。
山渓では国境を監視する兵士が出入りする。
大規模な戦闘や、マルティアとの衝突は今のところ起きていない。
手の空いていることが多いからか、監視係は嫌な顔をせず
口外できない理由でやってきたドクオを面白がりつつ、宿舎に受け容れてくれた。
吹き荒ぶ強風や強い寒気にもすぐに慣れた。
変化の少ない街の岩山の合間から、ひたすらマルティアの国境を見続けた。
648
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:42:50 ID:RSX8/wbk0
双眼鏡を東にずらせば、旧ラスティア領の北端が見える。
土地だけを見れば、そこがかつて他国であったことも、
今はマルティアに属していることも、わかりはしない。
マルティアの北。
そこにあるスィオネという街に、ドクオは聞き覚えがあった。
彼の友、モララーは、その街の孤児院で育っていた。
モララー自身、スィオネの街を訪れたことはない。
他国とあっては、行き来も困難だ。
649
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:43:18 ID:RSX8/wbk0
岩山の向こう側にある、モララーの故郷。
モララーの育った環境について、興味は湧いた。
身寄りはすでに亡くなったと聞いてはいたが
漠然とした興味は、漠然としているがために簡単には消え去らない。
監視の合間、たびたび旧ラスティア領へ
視線を向けてしまうことに気づき、ひとり静かに恥じた。
同行したタカラは、たわいない雑談をひっきりなしに続けていた。
五月蠅くはあったが、街の静けさも尋常ではない。
その音さえなかったら、さぞ寂しさが募ったことだろう。
650
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:43:53 ID:RSX8/wbk0
タカラはラスティア出身でありながら、
感傷的な表情は一切見せなかった。
過去は顧みない質なのかもしれない。
そのタカラも、変わり映えのしない監視に飽き始めた、五日目の午後。
('A`)「いた」
小さな影が双眼鏡の端に映ったのにドクオは気づいた。
山の合間を隠れつつ進む。
夕陽の陰が濃くなるにつれ、視線を気にせず、移動しやすくなった。
651
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:44:15 ID:RSX8/wbk0
空は晴れている。
月夜になってもある程度は尾行が続けられると見越し
ドクオはタカラを自らのそばにつけた。
シナーが寄越した仲間を街に残して置いた。
もしもドクオからの連絡が七日目の朝までになかった場合
テーベ城下町にいるシナーに即時連絡が入る手筈となっている。
ドクオに何事かがおきた場合、
シナーは堂々とマルティア国内を捜索するというわけだ。
ぬかりのない男に操られていることは重々承知。
それでもドクオは、山を進む。
652
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:45:06 ID:RSX8/wbk0
目標もまた進んでいる。
影は複数人分。隘路に慣れているらしく、速度は出ている。
だがおいつけない速度ではなかった。
人数は六人ほど。
フードを深く被っているが、脚絆代わりの装甲から兵士であることは察せられた。
馬型の魔人を二頭連れ、その後ろには馬車が繋がれている。
幌の中には、金属質の箱のようなものが見えた。
何かを運んでいる。
視認できる距離になると、俄然興味が湧いた。
653
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:45:39 ID:RSX8/wbk0
相手はもうじきマルティアの領土を南下する。
テーベの領土に入ったときに監視役として駆け寄り、詰め所へと連行する。
国際法上は何の問題もない。連れているものへの監査も可能である。
マルティアの武器か、機密情報。
あたりをつけつつ、後を追う。
(;,,^Д^)「うう、なんか寒くなってきましたね」
道中、タカラが呻いた。
寒さが強まっている。
空はまだ明るい。しかし、光り始めた明星がどことなく翳って見える。
654
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:46:10 ID:RSX8/wbk0
('A`)「……これは」
気温が急に冷えたからだろうか。
あたりにうっすら白い靄が見えつつあった。
ドクオの胸中で警鐘が鳴る。
見通しの悪い場所での尾行は危険だ。
慣れない道ならば尚更。
今は特殊な任務についているため、
遭難した場合、救助はシナー頼りとなる。
655
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:46:40 ID:RSX8/wbk0
シナーを信頼していないわけではない。
問題はコレー山渓での冬がどれほど厳しいかだ。
この五日間、天気は安定していた。
しかし急な雪が降り積もらないとも限らない。
サバイバルの知識はあるが、大した武装もないなか、無理は禁物だろう。
対抗するは好奇心。そしてタイムリミット。
七日目の朝は、あと三十五時間後。
このときまでに成果がなければ、何も発見できない。
逆に無理をすれば、自分達はだめでも、シナーが調査を継続させられる。
656
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:47:05 ID:RSX8/wbk0
どちらを選ぶべきか。
それはすなわち、自分が何をするべきかという問いに繋がる。
思いつつ、ドクオは自嘲する。
それは自分の大きな悩みだ。
答えは未だ見つかっていない。
たとえ今でも、平時でも。
('A`)「む」
ふと、違和感を憶えた。
霧はさらに深まっている。色も濃く、相手の影を見つけるのがやっとだ。
657
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:47:46 ID:RSX8/wbk0
('A`)「……」
記憶の底で、引っ掛かるものがあった。
このような霧を、以前見たことがある。
最も思い出したくない記憶とともに、その光景は思い浮かばれた。
(;'A`)「まさか」
呟きのうちに、霧はますます濃くなる。
(;'A`)「タカラ!」
658
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:48:06 ID:RSX8/wbk0
( ,,^Д^)「はい? なんです」
('A`)「俺から離れるな。嫌な予感がする」
相手の影は見えなくなった。
これで追跡は断念せざるを得ない。
(;,,^Д^)「見失っちゃいますよ」
('A`)「命の方が大事だ」
命という大きな言葉に、タカラが息をのんだ。
大袈裟だとでも思っているのだろう。
だがドクオからしてみれば、警戒するに越したことはない。
659
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:48:54 ID:RSX8/wbk0
視界不明瞭の中、凶刃の振るわれた記憶が蘇る。
鳥肌が立ったのと、ほぼ同時に、衝撃があった。
地震。
(;,,^Д^)「地面が!」
地震のような揺れ。
足下に亀裂が走る。
660
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:49:15 ID:RSX8/wbk0
(;'A`)「タカラ! 身体を丸めろ。どこかが潰れたらしゃれにならん」
(;,,^Д^)「ひい!」
地響きが起きると、足下が傾いだ。
崩れ落ちる音。
それが地面のしたで起きていると、察した恐怖はすぐに実感を伴った。
激しい揺れが全身を襲い、重力が掛かる。
足下は砕けた。
なだれ落ちる土砂とともに、身体が滑り、落ちていく。
661
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:49:51 ID:RSX8/wbk0
(;,,^Д^)「ドクオさん!」
地面が二つに裂けた。
タカラとドクオの合間から。
(;'A`)「静かに! 助けは来る! 今はじっとしてるんだ」
それ以外にいうことはない。
できることはない、という方が正しい。
この地震は、敵の手によるものにしては激しすぎる。
おそらくは自然現象だ。
そうだと信じた方がまだマシである。
662
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:50:21 ID:RSX8/wbk0
身体が落ちていく。
白い霧に黒い影が紛れ、岩肌が途切れ途切れに見えた。
タカラの姿は見えなくなった。
暗転した視界の端で、また岩肌。
それは一部ではない。眼前いっぱいに広がっている。
ドクオは身体を丸め込んだ。
肩に痛みが走る。打ち身はひとつ、ふたつでは済まない。
頭だけは必死に護りつつ、落下の衝撃に備え、意識を集中させた。
やがて、ひときわ強い痛みが背中を打った。
☆ ☆ ☆
663
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:50:51 ID:RSX8/wbk0
寒い。
意識が戻ってまず、ドクオはそう口にした。
地面が青白く光っているようだ。
雪が降り積もり、広がって、月明かりに照らされている。
吐息が白む。
かじかんだ手を無理矢理地について身を起こした。
664
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:51:24 ID:RSX8/wbk0
細い道が正面に延び、左右には背丈の倍ほどの岩壁が続いている。
見上げれば壁の隙間から星々が天に広がるのが見えた。
裂け目の合間に落ちたらしい。
頭を打たなかったのは幸いだ。
('A`)「タカラ」
呼びかけるも、返事はない。
吹降りる風が代わりにあった。
矢の刺さるような寒さが身体を襲う。
665
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:51:48 ID:RSX8/wbk0
装備の中には防寒着が挟まれている。
しかし顔は生身。風が沁みるのはどうやっても防げない。
懐には簡易な栄養食が四日分入っていた。
空腹にはなるだろうが、しばらくは生きられる。
シナーの捜索隊が来るとすれば、三日目だ。長く見積もって一週間。
岩山にも植物や獣の類いはある。最悪の場合はそれらで食いつなぐ。
666
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:52:23 ID:RSX8/wbk0
マルティア軍の追跡は残念ながら諦めよう。
体力を考慮しつつ、タカラと合流しなければ。
顔を引きつらせながら、ドクオは道を進んだ。
('A`)「……む」
白い雪に影は色濃く浮かぶ。
岩壁に沿う形で何かが横たわっていた。
月明かりに照らされた姿は、筒型をしている。
マルティア軍が運んでいた物体だ。
667
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:52:49 ID:RSX8/wbk0
ドクオは逸る気持ちを抑え、駆け寄った。
筒は意外にも木製だった。
大きさにして、長い辺は二メートルほど。
丸形のハッチがあり、把手もついている。
逡巡はあった。
むやみに動かして本当にいいものだろうか。
結局は好奇心だ。
ドクオは把手に手を掛けた。
668
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:53:35 ID:RSX8/wbk0
('A`)「!?」
ハッチの隙間から蒸気が噴き出した。
急ぎ、ドクオは手を引っ込める。
まだドクオは力を込めていない。
小さく軋んで、ハッチは開いた。
暗い内部から、月明かりのもとにまず、手が見えた。
人が入っていたのだ。
指、腕、それに続いて頭が見えた。
煌めいた髪はゆるく、豊かに波打っている。
669
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:53:57 ID:RSX8/wbk0
('A`)
(;'A`)「嘘だろ」
目を見張った。
その途端、相手の顔がドクオを見据えた。
双眸に驚きが浮かぶ。
670
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:54:21 ID:RSX8/wbk0
「……あなたは」
澄んだ声が耳に通る。
実感がある。確かにその人は目の前にいた。
671
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:55:09 ID:RSX8/wbk0
ζ( 、 *ζ
ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶりです」
.
672
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:55:44 ID:RSX8/wbk0
(;'A`)「デレ……様」
彼女は亡国の姫君だ。
ラスティアの元王女。
そして、モララーがその生涯の最期に、護ろうとした人だった。
☆ ☆ ☆
673
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:56:28 ID:RSX8/wbk0
.
第二十二話 優秀なる雇われ部隊(雪邂永訣編①) 終わり
第二十三話 邂逅するは雪渓にて(雪邂永訣編②)へ続く
.
674
:
◆MgfCBKfMmo
:2017/12/16(土) 00:57:36 ID:RSX8/wbk0
>>673
ミス
.
第二十三話 優秀なる雇われ部隊(雪邂永訣編①) 終わり
第二十四話 邂逅するは雪渓にて(雪邂永訣編②)へ続く
.
675
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 09:10:23 ID:PY4kISDcO
久しぶりだな
面白かった乙乙
676
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 09:30:20 ID:MTDuGXEY0
待ってたよ!乙
いろいろ気になるからまたまとめ読みしなきゃ
677
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 12:07:44 ID:DdYHSYYU0
ムカデ
678
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 12:08:32 ID:DdYHSYYU0
ムカデ作品を参考にして勉強した方が良い
679
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 12:08:56 ID:YTd7wZnA0
乙乙
待ってたぜ
680
:
同志名無しさん
:2017/12/16(土) 20:10:23 ID:E0YBgCI20
まとめ死んでるから誰か今までのスレ一覧を・・・
681
:
同志名無しさん
:2017/12/17(日) 06:13:00 ID:ysmOoMkA0
また謎が増えるな
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