2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:11:23.45 ID:
bNe15Rm10飯食ったばかりの人は一応閲覧注意
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:12:39.18 ID:
bNe15Rm10ζ(゚д゚;ζ「勇者さん、もう行っちゃうの?」
('A`)「う、うん。もう、デレちゃんが襲われないように、魔王を倒して、きっとまた会いに来るよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんと!?」
ζ(^ー^*ζ「…えへへ、約束だよ! 勇者さん!」
('∀`)「う、うん。約束…。約束だ!」
嬉しそうな顔のデレちゃんが、左手の小指を立ててこっちに突き出す。
その行動の意味は、いくら文明が進んでも消えることなく語り継がれて来た『約束』のおまじない。
僕も知ってる、『絶対』のおまじないだ。
ラウンジでもこのおまじないは知られてるのか。
VIPとラウンジの間にある溝が、少しは埋まるといいな。
♪指切りげんまん、嘘付いたら―――――
デレちゃんの高い歌声が、村中に響き渡る。
上手くはないけど、それでも綺麗に伸びる声。
絡ませた指を軽く揺らし、デレちゃんは―――
bζ(^ー^*ζ「青酸カリ飲ーます!」
b('A`;)そ「えっ?!」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:14:32.24 ID:
bNe15Rm10('A`)ドクオは勇者になったようです
‐6‐『0034、0035』
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:18:22.38 ID:
bNe15Rm10『ドクオが勇者っぽいことした祝杯』と称したただの飲み会に一日中付き合い、その翌日の朝。
結局昨日は老若男女を問わずほとんどの人が酔い潰れ、見送ってくれる人たちの間にもどこか元気がない。
それでいいのか、したらば村。
二日酔いで見送りされたことなんて、今まで一度もないぞ。
ζ(゚ー゚*ζ「勇者さん、頑張ってね!」
(´・ω・`)「またこの村にお越しください。村を挙げて、お迎えいたします」
それでも、僕らが村を出る頃には、村人全員が揃って応援の声をかけてくれていた。
空は雲ひとつなく、気持ちいい青空。
出かけるには、最高の天気だ。
ζ(゚ー゚*ζノシ
(´・ω・`)ノシ
ζ ゚Д゚)ノシ
名残惜しそうに手を振るデレちゃんやショボンさん達と別れ、僕たちは魔王を倒す旅を再開する。
目的は北にあるという、魔王の城。
そしてその前に、廃棄街を通って『ヒロユキ街』へと。
僕に話がある、と言ったあの人(lw´- _-ノv)に会う為だ。
( ・∀・)
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:20:07.89 ID:
bNe15Rm10 まっすぐな道をひたすら歩く僕の真っ正面には、謎多き亜人のモララー。
人とは明らかに違う場所から生える蒼い三角耳はぴん、と立ち、周囲の音に気を配っているかのように動く。
だけど、
(;・∀・)「…ドクオ」
('A`)「え?」
(!i!∀ )「き…気持ち悪i…ぉえっ」
したらば村を出て数分後。
トイレも何もない一本道の途中で、モララーは突然体調不良を訴え出した。
(;'A`)「な、何でしたらば村で言わなかったんだよ?」
(;・∀・)「お…女の子たちの前で、かっこ悪い姿見られたくないじゃないか…。
ぷ、プライドが…」
(i!i∀;)「うぉえっ…」
(;'A`)「……」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:21:25.97 ID:
bNe15Rm10 何がプライドだよ…。
二日酔いするような奴にプライドもへったくれもないだろ…。
というより、道で吐くかもしれない状況をお前のプライドは許したのか。
昨日あんなに止めたのに、浴びるように酒を飲んだ報いだ。
少しは苦しむがいい。
そんでもって人気落ちろ。
<オエェッ
(;'A`)「……」
<ッウェ…
(;'A`)「……」
<ウボァー
(;'A`)「……」
<ウエー
(;'A`)「……」
(;'A`)「だ、…大丈夫?」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:22:39.77 ID:
bNe15Rm10 …………。
えずく声にたまり兼ねて、少しはモララーを気遣ってやることにした。
声を聞いてて、こっちも気持ち悪くなってきたなんてことはない。
決してない。
仕方ないんだ。
モララーがいなければ、ここまでは来れなかったんだ。…うん。
これからもお世話になるんだ。……うん。
だから、対人関係とかそういうのを円滑にするにも…ちょっとは気遣いが必要なんだ…。
うん…。
<…大丈bオ゛エェッ
(;'A`)「(全然大丈夫じゃなさそうだな)」
まぁ、そこまで急ぐ旅ではない。
モララーの体調が回復するまで、のんびり待つのも悪くはないよな。
一面の爽やかな景色に、えずく声のBGM。
あぁ素敵素敵。
誰もが羨ましがること請け合いだ。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:24:17.71 ID:
bNe15Rm10 地平線の向こうにまで真っ直ぐ伸びる土の道。
その脇には背丈ほどのの高さの草が生い茂り、モララーは草原の中に頭を突っ込んで未だに苦しんでいる。
彼の回復を待って、どれくらい経っただろうか。
デレちゃんから受け取った携帯を何の気なしに見ると、液晶画面に何やら文字が流れていた。
どうやらラウンジやVIPの最新ニュースを勝手に受信して、スクロールする機能が付いているらしい。
必要最低限のことしか書かれていないけど、これはこれで便利だな。
時間は、もうすぐでお昼。
腹は全く減ってない。
素敵なBGMを嫌でも耳にしているこの状況で腹が減る猛者は、流石にいないと思う。
('A`)「モララー、大丈夫?」
<オエエ ウエ ウエエ
('A`)「……」
<オボロロロロ
(;'A`)「……」
…正直モララーがかわいそうになってきた。
頑張れモララー。
君の人気は現在進行形でガタ落ちだ。
人気AA投票があれば、きっと君はアサピーの次くらい。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:25:28.11 ID:
bNe15Rm10<オボロロロロロロ
<アニジャー! アニジャー!
<シッカリシロ アニジャー!
<ゲロゲロゲロ
(;'A`)「ん?」
……聞き間違いだろうか?
モララーが苦しむ声に混じって、なんか変な声が聞こえるような…。
<ロロロロロ
<アニジャー!
<ウ… オトジャ、オマエダケデモイイカラ サキヘススメ…
<アニジャァアアァッァァ!!
<ロロロロ
(;'A`)「……」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:28:47.25 ID:
bNe15Rm10 …うん、聞き間違いじゃなかった。
妙な声が聞こえるのは一本道から外れた、草原の奥。
好奇心が、声が聞こえる方へ行けと囁く。
(;'A`)「……」
<ウエー
モララーはまだ動けそうにない…か。
苦しんでいるモララーの後姿を確認して、僕はなるべく音を立てないようにそっと声が聞こえる方へ向かった。
行く手を阻む草を掻き分け、奥から聞こえる声だけを頼りにして進む。
足元はぬかるんでいて、油断すると転びそうだ。
なんとか気をつけながら進んで行くにつれ、声はどんどん近くなっていった。
<オトジャ、オレハモウダメダ…
<ソンナコトヲイウナ、マダノゾミハアル
聞こえてくる声から状況を推理すると、『アニジャ』と呼ばれる人が身動き出来なくなっているようだ。
モンスターに襲われて、動けなくなってしまってるのか。
それとも、何か他の事情があるのか…。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:30:05.68 ID:
bNe15Rm10('A`)「っと」
草原を無理矢理突き進んで行くと、不意に視界が開けた。
足元には水たまりといっても差支えないくらい狭い沼があり、
(;´_ゝ`)「元気でな、弟者…」
(´<_`;)「兄者ァアアアァアァ!」
その沼には、腰に剣を差した男がすっかりはまりこんで、抜け出せないでいるようだった。
(;'A`)「……」
(;´_ゝ`)「あ! そこの人! 頼む、助けてくれ!」
(´<_`;)「この通りだ!」
あぁ、声が聞こえても無視しとけばよかった…。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:31:18.46 ID:
bNe15Rm10**********
**********
(*´_ゝ`)「いやー、助かった助かった! ありがとう、君は命の恩人だ!」
( ´_ゝ`)「ウサギっぽいモンスター追い掛けてたら、足滑らせて沼に落ちちゃったんだ」
( ´_ゝ`)「一人じゃ岸にも上がれないし、どんどん沈んでくし、
弟者だけじゃ俺を引き上げられなかったし、本当助かったよ」
沼に沈んでいた男は、兄者。
傍らにいた男は双子の弟で、弟者と名乗った。
出身はVIP。
彼らもニートで、勇者としてラウンジへやって来た。
剣道をやっていた自分と、射撃をやっていた弟のお陰で、今までなんとか生きてこれた。
と、兄者は聞いてもいない事をご機嫌な様子で話してくれる。
腰から下が泥まみれでなければ、まともな人に見えるんだろうけどな。
つくづく残念な人だ。
(´<_` )「そうだ。君、一昨日したらば村にいたよな?」
兄者の長話が自販機の中の人のバイト時代にまで遡った辺りで、弟者がぼそりと話しかけてきた。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:33:11.72 ID:
bNe15Rm10(;'A`)「あ、う、うん。何で、知ってんの?」
(´<_` )「俺らも、したらば村にいたんだ。君があのモンスターに体当たりしたのも見てた」
(´<_` )「武器持ってるのに体当たりなんて、バカだなぁと思った」
(;'A`)「そ、そうですか…」
(´<_` )「でも、俺らは見てるだけで何もしなかった。
よく考えてみれば、バカは俺らだな。さっきの醜態も、ほんと恥ずかしい」
(´<_` )「うちのバカを助けてくれて、ありがとう。俺からもお礼を言うよ」
(;'A`)「あ、い、いえ、こちらこそ…。すいません」
( ´_ゝ`)「ほんと、自販機の中のバイトは夏場やらない方がいいぜ!」
僕は、今まで双子というのは言動も仕草も似通るものだと思ってた。
世の中には、顔は似てるのに性格は全く違う双子もいるんだな。
…この人たちみたいに。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:34:20.47 ID:
bNe15Rm10 ∩∩
( ・x・ )
( ´_ゝ`)「あ! お前さっきのウサギみたいなモンスター!」
<マテー!! サッキハヨクモ バカニシテクレヤガッタナ!!
ツルッ バシャーン
<ギャアアアアアア オトジャタスケテー!!!!
(´<_` )
(;'A`)
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:35:58.92 ID:
bNe15Rm10**********
**********
(;・∀・)「あ、ドクオ! どこ行ってたんだ? 捜したんだぞ!」
二度目の救出を完遂させ、僕は兄者たち一緒に、モララーを置いて来た場所まで戻った。
モララーの気分も幾分かよくなったようで、さっきまで真っ青だった顔にも血の気が戻っている。
(;'A`)「ご、ごめん。ちょっと、そこで沼にはまってた人を助けてたんだ」
( ・∀・)「沼?」
モララーの緑色の瞳が、僕の後ろにいる兄者達に移る。
(#)_ゝ`)「あぁ、そちらの勇者さまに危ない所を助けてもらったんだ。俺は兄者。こっちは弟者だ。よろしく」
(´<_` )「感謝してるよ」
_,
( ・∀・)「なるほど、…どおりで、みんな泥だらけだと思った」
兄者はもちろん、弟者も僕も泥まみれだった。
…仕方ないだろ?
なんとか沼から引きずり出そうと奮闘してるのに、兄者が暴れるんだからさ。
弟者と協力して、兄者をそのまま沈めさせようなんて思わなかったよ。
うん。
*********
*********
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:37:10.25 ID:
bNe15Rm10伏線にすらならないような他愛のない話をしつつ、僕らはのんびりと北へ歩を進めて行く。
途中、兄者がウサギのモンスターに襲われた事を除けば、至極順調に旅は進んでいた。
話したり笑ったりすれば、足の疲れも気にならない。
こんな状況だからこそ、知れたことだと思う。
('A`)「――あ」
太陽が真上へ昇った頃、それは見えた。
ひたすら真っ直ぐ伸びていた道の先が、数メートル先で二股に別れている。
左右に別れた道の先は、やはり地平線の向こうに吸い込まれていた。
したらば村を出る前にショボンさんが教えてくれた。
この道を左へ進むと『廃棄街』。
右へ進めば、『医療都市』。
もちろん、僕とモララーの目的は廃棄街だ。
('A`)「ぼ、僕とモララーは廃棄街に行くんだけど、兄者たちは?」
( ´_ゝ`)「俺らは医療都市に進むよ。…ということは、ここでお別れだな」
(´<_` )「残念だが、仕方ない。もしかしたら、ヒロユキ街でまた会えるかもな」
二股の手前で、僕たちは立ち止まった。
兄者が鞄からメモ帳を取り出し、それに何かを殴り書きする。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:38:09.81 ID:
bNe15Rm10( ´_ゝ`)「これ、俺の携帯の番号だ。いつでもいいから、連絡くれよ」
( ´_ゝ`)「…と言ってもこの携帯、『電波状況』とかいうのによっちゃ全然役に立たないことがあるみたいだから、
出れるかどうかは分からんけどな」
(;'A`)「あ、うん、分かった」
(´<_` )「そうだ、それからこれ」
兄者に続き、弟者も鞄から何かを取り出して僕に差し出す。
金色の鎖に、豪奢な装飾がされた金色のペンダント。
素人目から見ても、かなり値が張るものだというのが分かった。
('A`)「これは?」
(´<_` )「したらば村の子供が廃棄街に肝試ししに行った時に、ゴミの山から拾ったものらしい」
(´<_` )「割と高級そうだろ? 高値で売れるかもしれないから、路銀の足しにでもしてくれって貰ったんだ」
('A`)「そ、それは、兄者たちが貰ったものだろ? 僕は、貰えないよ」
( ´_ゝ`)「お前は命の恩人なんだ。それでも安いくらいだぞ。な? 頼むよ、受け取ってくれ」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:39:25.66 ID:
bNe15Rm10 命の恩人とは言っても、沼から引きずり出すのを手伝っただけなんだけどな…。
あまり気は進まないけど、これ以上押し問答しても仕方がない。
(;'A`)「う、うん…。分かった…」
結局僕は、押し切られるかたちで金色のペンダントを貰ってしまった。
太陽の光を受けて、更に輝きを増す金色が目に眩しい。
(´<_` )「それから、こいつも一挺持ってるといい」
続いて弟者が差し出したのは、黒光りする『武器』だった。
その武器の種類までは知らずとも、その名だけは僕だって知ってる。
(;'A`)「銃…」
(´<_` )「弾は6発だ。使い所を誤るなよ。扱い方は知ってるよな? 映画とかで、見たことあるだろ?」
(;'A`)「…あ、あるけど…」
(´<_` )「ちゃんと掃除して、動作確かめれば動かないということはないはずだ。
政府支給のものだから、初心者にも簡単に扱えるようになってる」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:40:13.11 ID:
bNe15Rm10(;'A`)「で、でも弟者が」
(´<_` )「安心しろ。もう一挺持ってるから」
(;'A`)「……」
銃を受け取ろうとしない僕の手に、弟者は銃を握らせた。
政府から支給される武器は、ひとりにつき一つ。
弟者が銃を二挺持っているということは、やっぱり他の勇者の遺体から拾って来たのだろう。
(;'A`)「……」
『3112番目の勇者』から受け継いだ剣と、
『誰かの遺体から拾ってきた』と思われる、右手の銃。
……重さが、増えた。
**********
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:40:57.15 ID:
bNe15Rm10**********
ドクオが兄者たちと別れを惜しんでいた頃―――
北の最果ての地にある古城の一室では、『魔王』が、とある機械を操作していた。
その機械はラウンジにあるものではなく、また、ラウンジの機械技術では到底追い付かない程に繊細で複雑なものだ。
ぶぅう。
低い稼動音を響かせ、機械が動き出した。
魔王の前に、ぼんやりと光るパネルが現れる。
( )「勇者…」
パネルを見て、ぽつりと漏らしたその言葉。
―――『勇者』とは、本来は魔王である自分と対局的な存在だ。
『悪の化身』である魔王と、悪を断つ勇者の立場は、いつの時代も平行のまま。
交わることは、絶対にない。
あってはいけない。
それを思うと、先代の魔王は酷いものだった。
『生きとし生けるものは皆平等』などと、魔王の片隅にすらおけない事を抜かして。
結果、信じたものに『殺された』。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:43:49.51 ID:
bNe15Rm10( )「勇者、か…」
部下の報告で知った事がある。
最近、『勇者』が一万人以上VIPからラウンジへやって来たのだそうだ。
もちろん奴らの目的は、『魔王討伐』。
だが、今回の勇者は全員が全員、普通に生きる人間以下の、ゴミにも劣るような者ばかりらしい。
( )「私は馬鹿にされているのか」
呟く魔王の声に、憎悪の色が混じる。
( )「……」
( )「…まぁ、いい」
( )「ラウンジは焦らずとも直ぐに制圧出来る。
VIPの虫けら共よ、残り短い『薄っぺらい平和』を楽しむがいい」
魔王の目の前に広がるパネルには、様々なモンスターや亜人、機械類の情報が並んでいた。
これらは全て、先代の魔王が掲げた志の為に集めた情報だ。
―――あいつは、モンスターも亜人も人間も、
全ての生きるものが平等に楽しく生きられる世界を作りたいと最期の瞬間まで言っていた―――
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:45:03.86 ID:
bNe15Rm10本当に、最期まで、馬鹿な男だった。
嘲るような笑みを口元に浮かべ、慣れた手つきでパネルを操作し、魔王は昏い瞳でVIPがある方角を睨んだ。
遠い昔に忘れ去っていたと思っていた、全身を灼き尽くすような怒りや憎しみが魔王の中に沸々と再燃する。
( )「―――魔王様、お呼びでしょうか」
だが、そんな彼の苛立ちは、部屋の中から現れた突然の声によって掻き消された。
モニター以外に光源のない、薄暗い部屋の中心に、人影がひとつ。
それは跪づき、魔王の指示をただ黙って待っていた。
( )「…またんきか」
またんきと呼ばれた人影は、返事の代わりに立ちあがる。
細身でひょろりと長い影が部屋の中に生まれた。
( )「貴様が喜びそうな仕事をくれてやる」
(・∀ ・)「……」
( )「勇者共を、この城へ連れて来い。 抵抗する者は殺せ!」
(・∀ ・)「は、了解致しました」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:45:48.32 ID:
bNe15Rm10 またんきは楽しそうに、嬉しそうに頷く。
次の瞬間、その姿は嘘のように消えていた。
( )「……」
またんきが消えたのを背中で感じ取った魔王は、またもパネルに手を伸ばす。
色んな化け物のデータが所狭しと並んでいたパネルには、今は沢山の『勇者達』の姿が映っていた。
( ´_ゝ`)
(´<_` )
(゚、゚トソン
从 ゚∀从
(,,゚Д゚)
ミセ*゚ー゚)リ
('A`)
( ^ω^)
_
( ゚∀゚)
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:47:47.54 ID:
bNe15Rm10 忌ま忌ましい。
こんな貧弱な虫けら共を、ここへ送り込んで来たVIPが。
綺麗事だけを並べ、笑いながら『死んだ』先代の最期の笑みが、
憎たらしい。
( )「笑っていられるのも今のうちだ。VIPよ、私は貴様らを許しはしない」
( )「私が貴様らの為に『勇者』共を、使ってやる。後悔してももう遅い。
その身をもって、力の差を痛感するがいい!」
( )「ふ――ふははははははは!!!!!」
魔王の哄笑が、古城中に響き渡る。
哄笑は古城を抜け、周りの鬱蒼とした森を揺らし、世界中を駆け抜けた。
亜人やモンスターの狂気を掻き立てる、嗤い声が―――
**********
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:48:59.10 ID:
bNe15Rm10**********
('A`)「――ん?」
( ・∀・)「どうした?」
('A`)「あ、なんか今、笑い声が聞こえた気がしたんだけど…。気のせいかな」
―――この時、まだ僕は何も知らなかった。
( ・∀・)「何も聞こえなかったと思うけど…。それよりほら、」
現魔王の恐ろしさも、大切なものが壊れる悲しさも、
( ・∀・)「廃棄街が、見えて来た!」
―――これから魔王が何をしでかすつもりかも。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:49:53.54 ID:
bNe15Rm10('A`)ドクオは勇者になったようです
‐6‐『0034、0035』終わり
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:50:58.69 ID:
bNe15Rm10やる夫の盛り上がりは異常。
支援ありがとうございました。
何かあったらどうぞ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 22:53:21.94 ID:AiDu+/5R0
来た! と思ったら終わってた
乙おつ
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[:2010/04/30(金) 23:17:39.74 ID:oAT6at5L0
乙
やっぱ短いな
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