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( ^ω^)愛に関する調査のようです 3スレ目



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 18:21:24.61 ID:/P8+hpvQ0 [2/63]
やがてドアが静かに閉じられた。

それは日本の家庭ではもっともありふれた風景だったし、
彼らは三人でもう百年そういう微笑ましい儀式を繰り返しているようにも見えた。


俺は車のそばで、煙草が一本灰になるまで待ち、
女の名前を確かめるためにアパートの入口のほうへと歩き出した。

歩きながら自分がいまの光景に心を動かされたことに気付いた。


俺は彼らを羨望していた。

いや、もしかしたら嫉妬していた。

なぜか怒りは湧かず、
都村兎尊への同情心を感じることもなかった。

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( ^ω^)愛に関する調査のようです 2スレ目




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 23:28:42.05 ID:NEycG7MM0
 ※


溜池の交差点から不規則な方形に切り取られた空が見えた。
空が少しずつ色を変えていくのがはっきりわかった。
黄昏の空は美しかった。しかしそれは十分しか続かなかった。
俺はその間にハイライトを三本吸った。

紙袋を抱えた男たちと小さなショルダーバッグを肩にかけた女たちが、師団編成で俺の前を通り過ぎた。
彼らはみな駅の方へ歩いていった。
終業後の約束のありそうなもの、まるであてのなさそうなのもとりまぜてだったが、
少なくとも朝の電車の中よりも生気が見える。
俺もこんなふうになりたいと痛切に望んだことがあった。もう昔のことだ。
九時から五時までの時間を売り、その代償としていくらかの金と、夕方から夜にかけての短い放恣な時間を得る。
首のまわりに硬い布を巻きつけることに慣れさえすれば、それは悪いことではないように思えた。
単調の中に安定があり、安定は心の平穏をたやすく育て、時々少量の不運とか不満とか野心とかの顆粒状の肥料をやれば、
適度に枝ぶりを歪めた幸福、または満足という名前の木が育つ。
あの枝を伐ろう、この枝のねじれを直そうと心を配ることに多忙なら、
いっそのこと木そのものを伐り倒してしまおうなどという大それた衝動に駆られるこもないから、
長期的に見れば、適度な不幸はむしろ木の健康には有益なのだ。

だが、俺はそういう生活を手に入れることができなかった。
いちおう人並みには望んでみたのだが、先方から拒否された。
おれは大した恨みも感じることなく結果を受け入れた。
何度も似たようなことがあったので無感動になっていたのだろうか。
よく理由はわからないが、いまでも勤め人の群を見ると心がうずく。
朝は嫌悪で。夕方はほんのわずかだが、憧れで。そして七月と十二月には嫉妬心で。

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( ^ω^)愛に関する調査のようです 1スレ目


1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/11(土) 17:56:40.94 ID:/ovzGq2+0 [1/21]
秋は鮮やかにやってきた。
床に紙質の硬い雑誌をずりおとし、かわりに一枚の毛布を顎まで引っ張りげ、
一九四五年の秋にゴミ捨場で死んだパルチザンのように背をまるめ、
両膝を腹に引き寄せていつものようにけじめなく眠りについた。

俺の眠りはいつもそうだ。たとえばこんな不吉なファンタジーをよく経験する。
カシミールの山の中をさまよっているとつゆ知らずにいつの間にか中国国境を越えている。
本人には越境の意志などまるでない。しかし、自分の凍る息の輪からふと視線をあげると、
山稜には狙撃兵たちが送電線の雀のように並んでいるのが見える。なにが起こったのか理解できないままに佇む。
きびしい声調の中国語の警戒が体に突き刺さる。それでも俺は動かない。動けないのだ。
数秒か数十秒後には結氷した顔面を一種の清涼感をともなって貫いていくライフル弾の予感がし、
予感はやがて確信に変わる。確信は少しずつ恐怖に形を変え、恐怖はわずかの熱を呼び、凍った眉を溶かす。
水滴が流れ、眼に入りこみ視界がにじむ。俺は、なぜか自分の部屋の窓辺にかけたままの洗濯物を思い出す。
折り畳み、鼻を押し当て、それから引き出しにしまわなければ。こう寒くては凍って繊維がばらばらになってしまう。
俺はどこか知らない国の言葉で、山稜の雀たちに叫ぶ。待て、撃つな。洗濯物を取り込むまで待ってくれ。

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川 ゚ -゚)天気は彼女に左右されるようです ‐1‐『雨天』



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/27(金) 21:24:13.74 ID:7BM7OEF9O [2/20]
 「―――あぁ、今日もお天道さまはご機嫌ななめだな……」

 「そっか……。毎日まいにち雨じゃあ、こっちの気も滅入っちまうってもんだよ」

 「……そうだな」

 「……死ぬ前に……お天道様の光を、めいっぱい浴びたかったなぁ」

 「…………」

 「『空女』サマは…今日も泣いてンだねぇ……」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/27(金) 21:25:09.46 ID:7BM7OEF9O [3/20]
川 ゚ -゚)天気は彼女に左右されるようです

‐1‐『雨天』

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('A`)の悪意は、勇者も魔王も巻き込んで巡るようです 序幕 トイレから出て、はじまりの契約を。



2 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 03:08:42 ID:Ycs1b4N30 [2/57]
むかしむかしの、あるところ。
そんな枕詞ではじめられる世界に、ひとりの若者がおりました。



名前はブーン。
当時の2ch大陸を治めていた3大国のひとつ、ユトリ王国で生まれた青年です。

東の果ての島で、慎ましく暮らす農家の息子として生まれた彼。
本当なら、両親から農地を譲り受けて、やはり農民として生きるはずだった彼。
しかし彼には、特別な勇気がありました。

ブーンは16歳になった日の朝、旅に出ました。
20年の眠りから目覚めた魔王を倒すために。

――世界を救う、勇者となるために――。

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