6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 22:53:03.57 ID:aGBtGkWZ0
2.
その日の夕方、シューはベンチに座り、自宅の郵便受けを見ていた。
lw´‐ _‐ノv
丘から見える町の彼方へ真っ赤に焼けた日が沈んでゆく。
すべてが静寂の夜へと向かいつつある時間。
lw´‐ _‐ノv「……」
時計を見る。
いつも届け物があるならこの時間に郵便屋さんが来る筈だ。
だけど今日は来ない。
シューは小さい体を更に縮め、頬杖をついてずっと郵便受けを見ていた。
ノパ⊿゚)「シュー、ご飯だぞ! 冷やし中華坦々味!」
家のドアが開いて、ヒートが顔を出す。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 22:55:00.92 ID:aGBtGkWZ0
3.
lw´‐ _‐ノv
ノパ⊿゚)「今日はもう来ないよ。諦めな」
lw´‐ _‐ノv「ん……」
郵便受けを振り返りながら、名残惜しげに家に入る。
リビングではクーが食卓に食器を並べていた。
川 ゚ -゚)「やっぱり来ない?」
ノパ⊿゚)「来ないぞ。おかしいな!」
lw´‐ _‐ノv
父親、兄者から連絡が途絶えて半月が経つ。
前までは頻繁に手紙を寄越していたのに。
土日にこちらから面会に出向いても、看守は「向こうが面会を拒否している」の一点張りだ。
一体何があったんだろう。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 22:56:58.72 ID:aGBtGkWZ0
4.
J( 'ー`)し「まったくどうしようもない人だよ」
川 ゚ -゚)「んー……」
夕食後、クーは妹二人を部屋に呼んだ。
相変わらず様々な堆積物で床の見えない部屋だ。
lw;‐ 皿‐ノv コレハヒドイ
ノパ⊿゚)「あ、WaTの写真集めっけ」
川 ゚ -゚)「コラ、汚い手で触るな」
ヒートから写真集を取り上げ、大事そうに机にしまうと、クーは神妙な面持ちで話を切り出した。
川 ゚ -゚)「父さんのことだけど、どう思う?」
ノパ⊿゚)「んー、もしかしたら重い病気とかじゃないか? 心配だな」
lw´‐ _‐ノv
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 22:59:05.56 ID:aGBtGkWZ0
5.
川 ゚ -゚)「何とか連絡が取れるといいんだけど……」
ノパ⊿゚)「手紙も面会もダメじゃどうしようもないじゃないか。伝書鳩でも飛ばすの?」
姉二人が頭を抱えているのを横に、シューはパソコンの前まで歩いて行った。
モニタに手を置き、クーに振り返る。
川 ゚ -゚)「……そうか、ニューソク刑務所のパソコンに侵入すれば!」
ノパ⊿゚)「あ、『ファック』とかいうやつか!」
川;゚ -゚)「『ハック』だ。その間違いはやめろ」
ノパ⊿゚)「姉ちゃんパソコン得意なんだろ! やってくれ」
川 ゚ -゚)「ネットワーク関係は専門外なんだけど……」
しばらくキーを叩いたりマウスをいじったりしていたが、クーはすぐに両手を上げた。
∩川 ゚ -゚)∩「お手上げだ。厳重すぎる。よく考えたら重罪人とか一杯入ってるとこだからなあ……
私の素人に毛が生えた程度のスキルじゃどうにもならん」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:01:15.69 ID:aGBtGkWZ0
6.
ノパ⊿゚)「父ちゃんのことわからずしまいか……」
lw´‐ _‐ノv ションボリ
川 ゚ -゚)「えーっと……一人、何とか出来そうな知り合いがいる」
ノパ⊿゚)「ほんとか!!」
lw´‐ _‐ノv
川 ゚ -゚)「明日連絡してみる。とにかく今日はもう寝な」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌日。
ここはラウンジ工業高校、通称マッドサイエンティスト養成所。
放課後のPCルームではドクオが狂ったようにキーを叩いていた。
(#゚A゚)「ええいチクショー、核弾頭ってどうやったら手に入るんだ!?
どっかでネット通販してないか?!」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:03:02.22 ID:aGBtGkWZ0
7.
(=゚д゚)「おい、ドクオ」
('A`)「今忙しい! 後にしろ」
しかしクラスメイトは立ち去らず、ドクオの後頭部に光線銃の銃口を押し当てた。
(=゚д゚)「貴様、マッドサイエンティストの誓いを忘れたのかァーッ!!」
∩(;゚A゚)∩「おおおおい、ななな何だいきなり!? 何事だ!」
両手を上げて慄くドクオに対し、クラスメイトは涙した。
(=;д;)「マッドは色恋沙汰なんかにかまけてる暇はないって言ったじゃないか!!
実験、研究、開発、世界征服のみに邁進するって言ったじゃないですかァーッ!!
三次元で許されるのはフィギアとメイドロボだけなんでしょうがァーッ!!」
('A`)「へ?」
(=゚д゚)「こ、校門に女の子が! すげえ美人が、ドクオいるかって……」
(;'A`)「えええ!? 誰!? そんな知り合いは……」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:04:59.91 ID:aGBtGkWZ0
8.
窓の外の校門を見遣る。
そこに行き交う生徒の視線を一身に浴びて、セーラー服のクーが立っていた。
('A`)「あ、夏服姿もかわいい……」
(=゚д゚)「蒸発しろーッ!!」
クラスメイトが光線銃の安全装置を解除する。
(;゚A゚)「やめろバカ、おちおちおち落ち着け!! これには事情が……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
女の子と一緒に下校し家に招かれるという(ラウンジ工業の歴史において)前人未到の覇業を
達成したドクオは、彼女の部屋で半ば放心しながら正座していた。
(゚A゚)「……えらいことになった」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:06:19.42 ID:aGBtGkWZ0
9.
J( 'ー`)し「珍しいねえ、クーが男の子を連れて来るなんて」
カーチャンがお盆に麦茶を乗せて部屋に入ってきた。
麦茶を置いてから、ドクオに向かってポケットのコルク抜きを見せ付ける。
J( 'ー`)し「いいかい、クーに触ったら引っこ抜いて女にするよ」
(;'A`)「へ、へあっ?!」
川 ゚ -゚)「もう、やめてよカーチャン!」
J( 'ー`)し「はいはい。ごゆっくり」
カーチャンと入れ違いに帰宅したばかりのシューとヒートがやってきた。
ノパ⊿゚)「おー、そいつか! よろしくな!」
lw´‐ o‐ノv ウィース
川 ゚ -゚)「これ、妹。そっちがヒートでちっちゃいのがシュー、よろしくね」
('A`)(いかん、女の子ばっかりで心臓が痛くなってきた)
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:09:04.37 ID:aGBtGkWZ0
10.
クーは事情をかいつまんで説明した。ただし兄者が父親ということは秘密だ。
川 ゚ -゚)「そういうわけなんだけど、できるかな」
('A`)「あー、ま、まあ何とか……」
バッグから自分のノートパソコンを取り出し、ドクオは恐るべき勢いでキーを叩き始めた。
('∀`)(俺の高速タイピングでアピールだっ!)
lw´‐ _‐ノv キモイ
(;'A`)「……」
川#゚ -゚)「シュー!!」
lw´‐ A‐ノv ゴメンネ
('A`)「い、いや、いいんだ、はは……」
ニューソク刑務所のデータベースに侵入したドクオは囚人番号1210、つまり兄者の収監記録を
モニタに表示させた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:11:00.32 ID:aGBtGkWZ0
11.
ノパ⊿゚)「どうだ? 病気とかしてるか?」
('A`)「ここ数年は医療施設の利用はないみたいだけど……」
川 ゚ -゚)「おかしいな。懲罰房に入ってるとか?」
('A`)「懲罰の経歴もまっさらだ。一般房にいるって書いてある」
lw´‐ _‐ノv
川 ゚ -゚)「うーん……わからん」
('A`)「監視カメラの映像、出せるけど……」
ノパ⊿゚)「ほんとか!!」
川 ゚ -゚)「やってくれ」
ドクオがマウスを操作すると、一般房の映像が映し出される。
テーブルと椅子の並んだ広間の周囲に監房がずらりと並んでおり、囚人たちが思い思いに行き来していた。
ノパ⊿゚)「父ちゃんどれだ!?」
('A`)「え!? 父ちゃん?」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:13:04.17 ID:aGBtGkWZ0
12.
川;゚ -゚)「ヒート!」
ノパ⊿゚)「あ……」
慌ててヒートは自分の口を手で塞いだが、もう遅い。
クーは眉根にいっぱいに皺を寄せ、額に手をやった。
川 ゚ -゚)「えっと、騙してごめん。実は私たち、父の安否が知りたくって……」
ノパ⊿゚)「実は父ちゃん、囚人なんだ」
('A`)「へ、へえ……」
意外な事実を知ってしまった。
さっき見た罪状によれば四件の殺人と強盗と書いてあったが……
川 ゚ -゚)「後で説明するよ。とにかく父さんを探してくれないか」
('A`)「う、うん」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:14:57.17 ID:aGBtGkWZ0
13.
カメラを次々と切り替えるうち、図書館の一角に懐かしい顔が見えた。
椅子に座って古い新聞を読んでいる。
ノパ⊿゚)「あ! これ父ちゃんじゃないか、そうだよきっと」
lw´‐ o‐ノv
川 ゚ -゚)「ん、そうだな。元気そうだけど……」
ノパ⊿゚)「何ともないなら何で手紙くれないんだ?」
川 ゚ -゚)「うーん……」
謎は深まるばかりだ。
出来ることならモニタの中にいる彼に話しかけて聞き出したいのだが。
川 ゚ -゚)「ありがとう、ドクオ。とにかく父さんが元気って事がわかっただけでも良かった」
('A`)「あ、うん……じゃあ僕はこれで……」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:17:01.25 ID:aGBtGkWZ0
14.
ノパ⊿゚)「ドクオくんって姉ちゃんの彼氏か?」
(゚A゚)
川 ゚ -゚)「違うよ。ただの友達だ」
ノパー゚)「だよなー! ウエンツには程遠いもんな」
川;゚ -゚)「もう、やめろよ。ドクオ、そこまで送ってくから」
('A`)「えあっ!? う、うん」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
丘のふもとまでドクオについて行く途中、クーが切り出した。
川 ゚ -゚)「うちは父さんがいないんだ。ああいうところにいるから」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「でも、何て言ったらいいか……ほんとは優しいし、家族思いで……
とにかく私たちは父さんが好きなんだ。例え刑務所にいても、家族なんだよ」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:19:05.62 ID:aGBtGkWZ0
15.
ドクオはクーの複雑な胸中を知り、益々彼女に対する感情がこんがらがるのを感じていた。
憎悪と嫉妬と色んなものがゴッチャになって頭がパンクしそうだ。
川 ゚ -゚)「強盗殺人犯が『ほんとは優しい』なんて言っても信じてもらえないと思うけど」
('A`)「いや……」
川 ゚ -゚)「悪いけど、このことは秘密にしといてもらえない? みんなにバレると面倒だし」
('A`)「え? あ、うん、いいけど」
川 ゚ ー゚)「ありがとう、ドクオ。貸しが出来たね」
('A`)「……。ま、また」
川 ゚ ー゚)「またね」
丘を駆け下りながら、ドクオは彼女に対するもっとも強い感情を、もはや自分自身に隠し通すのは
不可能であると知った。
('A`)(俺は、あの娘が好きだ)
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:21:03.83 ID:aGBtGkWZ0
16.
夕食後、部屋に戻ったシューは机の引出しにしまってある父親からの手紙を眺めていた。
どうしても納得が行かない。兄者が元気なのはわかった。
だが突然連絡が途絶えるなんて、絶対に何かがあった筈なんだ。
それを知りたい。どうしても。
lw´‐ A‐ノv
( ^ω^)「モシャモシャ。芋ヨウカンうめえお、緑茶とのコンビネーションは最高だお」
lw´‐ _‐ノv
壷から出た内藤はシューの机の上でヨウカンを丸齧りしている。
( ^ω^)「ん? お嬢さんも食べますかお。あの世の親戚が送ってくれたんですお」
lw´‐ _‐ノv
(;^ω^)「うっ、イヤなヨウカン! もとい予感!」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:23:05.01 ID:aGBtGkWZ0
17.
(;^ω^)「だ、脱獄の手伝いならできませんお。お父さんのことが心配なのはわかるけど……」
lw´‐ _‐ノv フルフル
( ^ω^)「ん? じゃあどうして欲しいんですかお」
lw´‐ _‐ノv ゴニョゴニョ
( ゚ω゚)
内藤は壷の中に逃げ込んだ。
シューが壷を引っくり返して振ると、中から弱々しい声がする。
(;^ω^)「できませんお、そんなの絶対できませんお!! 刑務所に忍び込むなんて……」
lw´‐ _‐ノvつ((壷)) フリフリ
( ^ω^)「刑務所なんか札付きの極悪人しかいないとこですお、わかってんですかお。
お嬢さんにもしものことがあったら荒巻様に申し訳が立ちませんお!!」
lw´‐ _‐ノvつ(((壷))) フリフリフリフリ
(;^ω^)「ずぇええったいダメですおおおお!!」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:25:07.34 ID:aGBtGkWZ0
18.
しばらくすると壷の揺れは止まり、シューの気配もしなくなった。
( ^ω^)(諦めてくれたかお……)
そっと顔を出して様子を覗うと、シューは顔を両手で覆って肩を震わせていた。
lw つ _⊂ノv シクシクシク
(;´ω`)「お嬢さん……」
( ^ω^)「わかりましたお、出来る限り協力しますお……」
lw つ _⊂ノv ……
lw´‐ 皿‐ノv( 計 画 通 り )
( ^ω^)「それで一応聞きますけど、プランとかはあるんですかお」
lw´‐ _‐ノvσ
シューは押入れを指差した。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:27:00.20 ID:aGBtGkWZ0
19.
( ^ω^)「あ、なるほど! またんきに協力させれば上手く行きそうですお」
戸を開いて押入れの上の段に這い上がり、その奥に開いた異次元通路へと入る。
真っ暗な道をしばらく歩くと一本の街頭が見えてきた。
明かりの下のコーヒーテーブルにはテレビが置かれ、少年がコントローラーを握っている。
.∧ ∧
(・∀ ・)「ラフィングオクトパスたんとちゅっちゅしたい!」
(;^ω^)「お前何やってんだお……」
lw´‐ _‐ノv
.∧ ∧
(・∀ ・;)「ギャー!! 何だてめーら、ノックもなしでいきなり入って来やがって」
シューが用件を説明する。
.∧ ∧
(・∀ ・)「えー、何で俺がそんなこと……」
∧ ∧
lw´‐ _‐ノvつ□)・∀・) グイグイ
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:29:21.20 ID:aGBtGkWZ0
20.
.∧ ∧
(・∀ ・;)「わかった、やるよ、やるって! 顔に請求書押し付けんな!」
( ^ω^)「ニューソク刑務所まで頼むお」
.∧ ∧
(・∀ ・)「刑務所か……わかった、ついてきな。こっちだ」
カンテラを手にまたんきは暗闇へと歩き出した。
途中看板のあるところを何度か曲がったりするうち、だんだん闇が濃くなってきた。
一行に真っ黒なもやのようなものが絡み付いてくる。
lw´‐ o‐ノv「!!」
(;^ω^)「こりゃ何だお」
.∧ ∧
(・∀ ・)「前にも言ったけどさー、この空間にはやり場のない負の感情が集まってくるんだよ。
刑務所なんかそんなのの巣窟さ。これは囚人の魂が発する瘴気みたいなもんだ。
これ以上は進めないぜ、後は現実世界を徒歩で行くんだな」
( ^ω^)「なんちゅう無責任な!」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:31:18.95 ID:aGBtGkWZ0
21.
.∧ ∧
(・∀ ・)「行けねーもんはしょーがねーんだよ」
( ^ω^)「お嬢さん、どうしますかお」
lw´‐ _‐ノv
(;´ω`)「やっぱり行く気ですかお。うひぃ、おっかないお」
.∧ ∧
(・∀ ・)「まあ気ぃつけるこった。俺はここで待ってるからな」
またんきがカンテラを一振りすると、何もない場所にマンホールが現れた。
それを開いてシューと内藤が中に入る。
しばらくタラップを降りると、どこかの部屋に出た。
シンクが並んでいるところを見ると調理室のようだ。
( ^ω^)「いくら夜でもウロウロしてたらすぐ捕まっちゃいますお。
僕は姿を消せるからともかく、お嬢さんは……」
lwσ‐ _‐ノv「……」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:33:19.04 ID:aGBtGkWZ0
22.
∧∧
(,,゚Д゚)「ん? 誰かいんのか?」
看守だ。
懐中電灯の明かりがこっちに向かってくる。
lw´‐ _‐ノv「!」
(;゚ω゚)「あ、マズイお」
シューは内藤の壷を床に置くと、出しっぱなしになっていた麺棒で彼の体を平らに引き伸ばした。
(;゚ω゚)「ギャー! 何すんですかお!!」
lw´‐ _‐ノv シィー
( ^ω^)「うぶ」
出来上がった「内藤マント」を頭から被る。
内藤が姿を消すとその内側のシューの姿も見えなくなった。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:35:22.52 ID:aGBtGkWZ0
23.
∧∧
(,,゚Д゚)「……? 気のせいか」
( ^ω^)「危ないとこだったお」
lw´‐ _‐ノv レツゴー
ドクオがハッキングした時のこと思い出す。
一般房の二階にある東側の部屋だ。確か0424号房。
ちょうど踵を返した看守がそちらに向かっている。
内藤を被ったシューは足音を立てないよう、彼の後をつけた。
∧∧
(,,゚Д゚)「俺っの名前はぁ~ゲームぅ犬♪ だけっどコントローラ持てないぜぇ~♪ と来たもんだ」
呑気に歌いながら看守は防弾ガラスに囲まれた看守の詰所までやってきた。
∧∧
(,,゚Д゚)「お疲れ。変わりないか」
ミ,,゚Д゚彡「おう」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:36:58.19 ID:aGBtGkWZ0
24.
二人が雑談している間に通り過ぎようと、シューは足を速めた。
しかし詰所の前にあるメモ板の端っこに、内藤の体の一部が引っかかった。
(;^ω^)「あ、お嬢さん、ちょっとストップ!」
lw;‐ 皿‐ノv「!!」
彼の体が引っ張られ、シューは体がすっぽ抜けて床に転んだ。
ミ,,゚Д゚彡「ん!?」
∧∧
(,,゚Д゚)「どうした」
看守が振り向く。
シューは慌てて内藤を被り直した。
ミ ;゚Д゚彡「い、今なんか見えたぞ!! なんか……小さい女の子みたいなものが、こうフッと……」
∧∧
(,,゚Д゚)「ふん、俺を驚かせたいのか? 無駄だぜ」
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:39:03.31 ID:aGBtGkWZ0
25.
ミ,,゚Д゚彡「確かにいたんだって、ここに!」
詰所を出た看守は、彼らには姿の見えないシューのいるあたりで手を振り回す。
シューはその指先が体をかすめないか、冷や汗が噴き出した。
∧∧
(,,゚Д゚)「よせよ。何で女の子の霊が男囚の刑務所に出るんだ? 小学校ならともかくさ」
ミ,,゚Д゚彡「お、おかしいな……見えたと思ったんだけど」
∧∧
(,,゚Д゚)「次はもっと上手くやるんだな」
二人の注意が反れてから、シューは内藤マントから手を出して引っかかってるところを外した。
続く別のゲートの鍵を内藤が霊能力でこじ開け、寝静まった一般房に入る。
頼りになるのは常夜灯の明かりだけだ。
( ^ω^)「兄者さんの監房はどこですかお」
lw´‐ _‐ノv
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:41:27.24 ID:aGBtGkWZ0
26.
極力足音を立てないように階段を上がり、ドアの横にあるプレートを見てゆく。
確かこのへんなんだが……
lw´‐ _‐ノv「!」
( ^ω^)「1210号、ここだお!」
シューは扉を開けるよう頼んだが、内藤は首を振った。
( ^ω^)「それはマズイですお、同房者がいますお」
確かにもう一つ別の囚人番号を刻んだプレートがかかっている。
シューは扉の横にある鉄格子の方に眼をやった。
扉と壁の間にある幅30cmくらいのやつで、郵便受けみたいなものがある。
そこを開いて中を見た。
lw´‐ _‐ノv「お父さん?」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:42:59.09 ID:aGBtGkWZ0
27.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「?」
家族に会わないと決めてから益々不眠症がひどくなっていた兄者は、その日の夜も一睡もできずにいた。
幻覚もどんどん激しくなる。
.∧_∧
( ´_ゝ`)(シューの声か)
悪くない幻聴だ。
眼を閉じてもう少しだけ楽しもう。
lw´‐ _‐ノv「お父さん」
可能な限り潜めた小さな声。
振り向いてもそこに愛する娘はいないとわかっていても、兄者はその時寝返りを打った。
扉のところに小さな影が張り付いている。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:45:17.48 ID:aGBtGkWZ0
28.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「くそっ」
眼を擦り、目頭を強く揉む。
いよいよ発狂したか?
.∧_∧
( ´_ゝ`)「シュー……?」
lw´‐ _‐ノv「お父さん」
ベッドからそっと抜け出した兄者は、鉄格子の前に跪いた。
郵便受けにかかっている彼女の手に、自分の手を重ねる。
.∧_∧
( ´_ゝ`)「な……何でこんなところに……」
lw´; _;ノv
夢か? だろうな。
自問自答してもまだ、目の前の光景は続いている。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:47:01.77 ID:aGBtGkWZ0
29.
鉄格子の間隔は狭く、手を突っ込むことはできない。
触れ合えるのは郵便受けを通してお互いの手だけだ。
.∧_∧
( ´_ゝ`)「本当にシューなのか?」
lw´; _;ノv「うん」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「どうやって……?」
( ^ω^)「久しぶりだお」
.∧_∧
(;´_ゝ`)「ん? お前、内藤か!? 確か、でもガキの頃に流感で……」
lw´‐ _‐ノv
何と、知り合いだったとは。
( ^ω^)「詳しい説明はアレだけど、とにかく今はお嬢さんの下僕なんだお」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そ、そうか……」
( ^ω^)「それよりも何で面会を拒否するんだお。そのことを聞きに来たんだお」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:49:14.80 ID:aGBtGkWZ0
30.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「詳しくは話せないんだが、家族に手を出すと脅されてるんだ。
とりあえずのところは大丈夫だと思うが……」
lw´‐ _‐ノv
.∧_∧
( ´_ゝ`)「お前たちのことを嫌いになったわけじゃない。そんなことあるわけないだろ?
許してくれ、シュー。俺も寂しかった」
兄者はシューの手を強く握った。
lw´‐ _‐ノv ウン
( ^ω^)「お嬢さん、そろそろ行かないと」
lw´‐ _‐ノv「……」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「嬉しかったが、こんなこともうしないでくれ。お前が危険な目に会うのは耐えられない」
lw´‐ _‐ノv
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:51:11.21 ID:aGBtGkWZ0
31.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「内藤、もし何かあったらシューと俺の家族を頼む」
( ^ω^)「あのカーチャンがいるならどうってことないお」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「シュー」
兄者は郵便受けから手を伸ばし、シューの髪に触れた。
lw´‐ _‐ノv
前は少し怖かったけれど、今は暖かい父親の手。
.∧_∧
( ´_ゝ`)「愛してる」
lw´‐ _‐ノv
( ^ω^)「お嬢さん、行きましょうお」
シューは何度も振り返りながら、内藤を被り直してその場を去った。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:53:03.56 ID:aGBtGkWZ0
32.
兄者がベッドに戻ると、上のニダーが寝惚けた声を出した。
<ヽ`∀´>「誰と話してたニカ? あんた、とうとうおかしくなったニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「かもな」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝、シューは姉二人にこのことを話した。
川#゚ -゚)「バカ!」
真っ先に返って来たのはクーのビンタだった。
川 ゚ -゚)「メチャクチャなことして! どんだけ危ない橋を渡ったかわかってるのか?!」
lw´; _;ノv ゴメン
川 ゚ -゚)「もう、あんまり心配させるな。寿命が縮んだ」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:55:05.84 ID:aGBtGkWZ0
33.
クーは溜め息をついて床に膝を突き、シューの肩に手を置いた。
川 ゚ -゚)「二度とやるなよ。今度からは必ず私かヒートに相談すること。わかった?」
lw´‐ _‐ノvb
ノパ⊿゚)「でも私たちがどうたらってどういうことだ?」
川 ゚ -゚)「わからない。何かトラブルに巻き込まれたんだと思う。ウチはまあ大丈夫だろうけど……」
一階からはさかんに男の悲鳴が聞こえてくる。
(;-@∀@)「二度とこの家には勧誘に来ません二度とこの家には勧誘に来ません二度と……」
J( 'ー`)し「はい、時間切れ。1分以内に五千回言えなかったから最初からだよ」
縛り上げたアカヒ新聞勧誘員のケツに熱したアイロンを押し付ける。
ジュッ!
(;-@∀@)「ギャ――――!!!」
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/05(土) 23:57:33.90 ID:aGBtGkWZ0
34.
クーは階段の上から階下に声を張り上げた。
川 ゚ -゚)「もう、カーチャン! あんまりやると死ぬよ!」
J( 'ー`)し「はいはい、わかったよ」
ノパ⊿゚)「心配だなあ、父ちゃん大丈夫かなあ」
川 ゚ -゚)「だといいけど……」
lw´‐ _‐ノv
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一方その頃、ドクオは町の美容院にいた。
('A`)「ウエンツ瑛士にしてくれ」
( ´ー`)「……えっと……現実的、物理的、倫理的、科学的、生理的、あと精神的に無理」
#8はこれでおしまい。
#9へ続く。
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