7 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 19:54:59.66 ID:
OBEMgf/g0lw´‐ _‐ノv「……機械がたくさんあるな。見たこともないようなものも」
ドクオたちが砂漠の町で傷を癒していた頃。
魔王ワカッテマスに攫われたシュールは、魔王の城にいた。
( <●><●>)「気になりますか?」
lw´‐ _‐ノv「まぁ、少しは」
( <●><●>)「この城にある機械は、ほとんどがラウンジに来てからガラクタを集めて造ったものばかりです。
多少はVIPのものとは形が違ったり、性能が劣ってるものはありますよ。
転送装置なんかも、さすがに小型化は出来ませんでしたしね」
lw´‐ _‐ノv「ここがお前の城じゃなければ、ゆっくり見たいところだったよ」
( <●><●>)「別にゆっくり見ても構いませんよ?」
lw´‐ _‐ノv「いずれお前を倒した後、じっくり見させてもらうさ」
9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 19:56:07.75 ID:
OBEMgf/g0( <●><●>)「……」
lw´‐ _‐ノv「で、用件はなんだ?」
lw#´‐ _‐ノv「みんなを危険な目に遭わせるほど、重大な用件なんだろうな。
……みんなは無事なんだろうな!」
( <●><●>)「―――本気で私を倒すつもりなら、モララーごときに殺されてはいけませんよ。
仮にも『勇者』なら、尚更ね」
lw´‐ _‐ノv「……」
( <●><●>)「あなたに、お聞きしたい事があるんです」
lw´‐ _‐ノv「……何だよ」
( <●><●>)「勇者たちを調べるついでに、あなたの事も少し調べさせてもらいました」
( <●><●>) 「政府直属の、機械開発研究者だったんですね。
私も何十年か前は、あなたと同じ機関に属してましたよ。懐かしいです」
lw´‐ _‐ノv「……で?」
( <●><●>)「おや……どうやらあまり機嫌がよろしくないようですね。
仕方がない、さっさと本題に入りましょうか」
( <●><●>)「―――あなた、何で『勇者側』にいるんですか?」
10 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 19:57:33.96 ID:
OBEMgf/g0lw´‐ _‐ノv「え?」
( <●><●>)「『勇者』の左手の甲の番号……勇者番号、でしたっけ?
あれが無いまま、あなたはラウンジに永久追放」
( <●><●>)「VIPには家族も友人もいたでしょう。でも、もう二度と彼らには会えない。
VIPやモナーを恨むには、充分すぎる程の理由があると思うんですが」
lw´‐ _‐ノv「……」
lw´‐ _‐ノv「回りくどいな。はっきり言ったらどうなんだ? 何が言いたい」
( <●><●>)「……私はモナーを恨み、VIPを襲撃しました」
( <●><●>)「人間に機械細胞や亜人細胞を埋め込んだり、死んだ者を無理矢理甦らせたり、
自分の利になることは積極的にやってきたつもりです」
( <●><●>)「そんなことをしていたら、いつしか魔王とさえ呼ばれるようにもなりました」
( <●><●>)「でも、あなたは違う」
( <●><●>) 「こんな場所に追放されても尚、あなたは勇者法案を考えた自分を呪った。
私を倒す為に『勇者』側として戦うことを選んだ」
( <●><●>)「何故あなたは『勇者』側に着いたのか。その理由が知りたいのです。
どうして『勇者』を助けようとするのですか?
『勇者』を生かしておいても、自分のメリットにはならないでしょう」
13 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 19:58:49.39 ID:
OBEMgf/g0lw´‐ _‐ノv「……」
lw´‐ _‐ノv「まず、一つ訂正しようか」
lw´- _-ノv「一度もモナーを恨まなかったなんて、そんなの誰が言ったんだ?
そんな聖人のような人間だったら、『勇者法案』なんてバカなこと、考えもしなかっただろうよ」
lw´‐ _‐ノv「私だって人間だからな。当然、恨んださ」
lw´- _-ノv「生涯でこんなに人を嫌いになるのは最初で最後だと思うくらいにだ。
……お前の言う通り、もう私はVIPに帰れない」
lw´‐ _‐ノv「VIPにはたくさん思い出があるし、やり残したこともたくさんある」
( <●><●>)「なら
lw´‐ _‐ノv「私が勇者側にいる理由は、」
lw´‐ _‐ノv「―――私の目の前で死んだ『勇者』を見たからだ」
lw´- _-ノv「化け物に身体を八つ裂きにされ、もがき苦しみながら死んだ『勇者』がいた。
手を尽くしたけど、それでももう手遅れだった」
lw´‐ _‐ノv「恥ずかしい話だけど、それを見てやっと目が覚めた。
私が考えたことは、人を殺す方法なんだって」
16 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:00:04.22 ID:
OBEMgf/g0( <●><●>)「……」
lw´‐ _‐ノv「お前なんかには、一生理解できやしないよ。
復讐の為だけに無関係の人を巻き込むお前なんかには、絶対に分からない」
( <●><●>)「……なるほど。あなたが私の思考を理解出来ないように、
私もあなたを到底理解出来そうにない」
( <●><●>)「魔王と勇者が分かり合えない理由が、分かった気がします」
lw´‐ _‐ノv「……お前、結局は何が目的なんだ?
モナーももう死んだだろ? これ以上、何がしたいんだ?」
( <●><●>)「『世界征服』とでも言えば納得していただけますか?」
lw´‐ _‐ノv「ふざけんな」
( <●><●>)「……ほんの冗談ですよ。世界なんか支配したって、やりたいこともないですし」
( <●><●>)「私の目的……ですか。まぁ、『VIPという国そのものの破滅』ですね。
それが、私の目的です」
( <●><●>)「それも、あの国が虫けらのように蔑んで、捨ててきたものに破壊させる。
その方が面白いじゃないですか」
lw;´‐ _‐ノv「お前……」
19 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:01:25.65 ID:
OBEMgf/g0( <●><●>)「申し訳ないのですが、無関係の人も巻き込む形になりますね。
恨んでくれて大いに結構。魔王とはそういうものでしょう」
( <●><●>)「VIP破滅までのシナリオはもう出来上がっています。
あなた達が過去、ラウンジに捨ててきた犯罪者。大量のゴミ」
( <●><●>) 「そして、私を倒そうと着実にこっちへ来ているであろう『勇者』……」
( <●><●>) 「それらを『教育』して、一気にVIPに送り込めば、
私が直接手を下すまでもなく、彼らが暴れ回ってくれるでしょう」
lw;´‐ _‐ノv「そんな……」
( <●><●>)「創り出すより、壊す方が簡単……とはよく言ったものですね」
( <●><●>) 「『勇者』の一部には、相当恨まれてるでしょうから、大暴れしてくれると期待しています。
そして、あなた達は己のしてきた事を深く後悔するでしょう。
それでも、もう悔いるには遅すぎる」
( <●><●>) 「何事も、気付いた時には手遅れなんですよ」
lw;´‐ _‐ノv「ま、待ってくれよ、……お前もVIPの人間だったなら、
思い出や大切なものの一つやふたつあるだろ?!」
lw;´‐ _‐ノv「それなのに…… ( <●><●>)「言ったはずですよ」
( <●><●>)「思い出も大切なものも、全部あの国に奪われた。
もう何も残っていないんですよ。失うものも、何もない」
20 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:02:37.44 ID:
OBEMgf/g0( <●><●>) 「だから、私は全力でVIPを潰します。
―――もし必要があれば、悪魔に魂でも何でも売り渡してみせますよ」
lw;´‐ _‐ノv「……」
lw;´‐ _‐ノv「で、でも、お前も今は『奪う側』じゃないか。
『勇者』から、家や家族を奪って、クーから主人を奪った。
やってることは、モナーと同じだぞ!」
( <●><●>)「そんなことは分かってますよ」
( <●><●>) 「ですが、私ももう落ちるところまで落ちた。
この手はもう何も生み出さず、血で汚れていくだけ」
( <●><●>) 「だから私は、私の復讐の為に、本気で戦います」
lw;´‐ _‐ノv「……」
( <●><●>)「……少しお喋りが過ぎました。
そろそろまた、次の『勇者』が来る頃合いでしょうかね」
( <●><●>) 「あなたにはもう用はないし、別に殺すつもりもないので、
とりあえずは元の場所に送り返そうとも思ったのですが……」
lw´‐ _‐ノv「……?」
( <●><●>)「『魔王』と『勇者』の本格的な戦いも近そうなので、少々私も忙しいのです。
客人として招いておいて、こういうのも申し訳ないですが、
少しの間地下牢に入っていてはもらえないでしょうか」
23 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:03:47.10 ID:
OBEMgf/g0lw;´‐ _‐ノv「?!」
lw;´‐ _‐ノv「冗談はよせ、何で私が牢なんかに―――」
( <●><●>)「城の外や中には、亜人や化け物共がたくさんいます。
勝手に死なれても困りますし、地下が一番安全なんですよ」
( <●><●>) 「死体を生き返らせるのは非常に面倒で、時間がかかるので、
できればあまりやりたくないですし」
lw;´‐ _‐ノv「……」
( <●><●>)「異論はなさそうですね。……キュート、彼女を丁重に地下へ案内してください。
何があっても、絶対に手荒な真似はしないこと」
o川*゚ー゚)o「はぁーい。んじゃ、行きましょうかぁ」
<くそ、離せ!
<うわぁ、暴れないでよぉ!
( <●><●>)「……」
24 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:04:52.78 ID:
OBEMgf/g0 その部屋からシュールがいなくなった後、
( <●><●>)=3
魔王はゆっくりと息を吐いた。
( <●><●>)「……」
椅子から立ち上がると、部屋の隅へと向かう。
( <●><●>)「『彼ら』がここまで来られたとしたら―――。
あなたと引き合わせるのが、一番良さそうですね」
壁に立て掛けられた古めかしい棺桶を撫で、魔王は笑った。
26 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:05:57.73 ID:
OBEMgf/g0 * * * * *
* * * * *
lw;´‐ _‐ノv「はぁ、はぁ……」
o川;*>д<)o
地下へ案内するのが、この女で良かった。
そうでなきゃ、階段から突き落として逃げ出すなんて出来なかっただろうから……
あー……疲れた……。
こんなに走ったのって何年振りだったっけ
まぁ、そんなのどうでもいい
ドクオたちの事も心配だけど、とにかく今はどこか隠れる場所を探さないと。
lw;´‐ _‐ノv「えーと……とりあえず、ここ、どこ?」
どこだここは。
適当に走り回ったせいで、現在地がさっぱり分からん。
地図なんてものもないし……困ったな。
27 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:07:19.89 ID:
OBEMgf/g0魔王を倒すのに、何か有利になりそうなものはないか捜す為に逃げてみたけど、
lw;´‐ _‐ノv「あれ……。ここ、さっきも通ったな……」
それを捜すよりも先に、私が見つかりそう。
lw;´‐ _‐ノv「(……このまま同じところをうろついてても、危険なだけか……)」
……よし、とりあえず、城の最上階に行こう。
魔王は私に危害を加えるつもりは無いと言っていた。
なら、捕まらなければ城の中をある程度自由に動けると考えてもいいだろう。
いずれ戦う事になるかもしれないし、
城の外や中にいる敵の大体の数も知っておきたいしね。
lw´‐ _‐ノv
足音をなるべく立てないよう、階段を昇る。
時折、遠くの廊下から誰かの声が聞こえたりもしたけど、まだ誰にも見付かっていない。と思う。
今は忙しいって言ってたし、
私一人を捜すのにそんな多くの人員は割かないと思うんだ。
28 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:08:26.84 ID:
OBEMgf/g0とりあえず、なるべく音を立てないよう、階段を駆けあがって、
いかにも屋上へ繋がっていそうな細い螺旋階段へ。
その先にあった建て付けの悪いドアを、半ば無理やりこじ開けた。
さすがに、ここまで来れば、しばらくは大丈夫だろ……
lw´‐ _‐ノv「―――ん、何これ?」
金属製の……電柱?
いや、電柱にしてはいくらなんでも長すぎるし、太すぎるか。
それに、こんなたくさんコードは繋がってない……と思う。
じゃあ……何だこれ?
lw´‐ _‐ノv「?」
何に使うものなんだろう。
屋上のど真ん中に一本だけこれがあるって事は、何かには使ってるんだろうけど……
というより、これ、そもそも機械か?
……触ってみても、大丈夫かな
29 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:09:38.75 ID:
OBEMgf/g0lw´‐ _‐ノvつ
「触るなよ」
lw´‐ _‐ノvそ
lw;´‐ _‐ノv「誰だ?!」
「あれあれ、たしかお前……あのどうしようもない『勇者』んとこにいた……」
lw´‐ _‐ノv「……え?」
( ・∀・)「あ、そうそう。勇者法案なんてもん作って、色んな人を殺した奴だっけ」
lw;´‐ _‐ノv「も、モララー?!」
( ・∀・)「あっれー、何だ、あんたまだ生きてたの?」
lw;´‐ _‐ノv「お前……何、してるんだ? こんなところで……」
( ・∀・)「見張りだよ。魔王に言われたんだ。『この機械を見張ってろ』ってね」
lw;´‐ _‐ノv「これ、やっぱり機械なんだ……。
それにしても、何でこんな物を見張る必要があるんだ?」
( ・∀・)「殺人犯には教えてあげない」
lw;´‐ _‐ノv「……」
30 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:10:41.67 ID:
OBEMgf/g0 あぁ、お前の言う通りだよ。
今さら悔やんだって遅すぎるけど、確かに、あまりにも考えが浅すぎた。
殺人犯だと言われても、殺されたとしても、私には何も言えやしない。
何度死刑にされても足りないくらい、たくさんの人間を間接的に殺したんだから当然の報いだ。
殺した命や恨みを背負う覚悟すらない癖に、
無責任な事を言ったツケが今になって来てる。
それでも、『怒られれば許してもらえる』と思うなんて、
本当に私はどうしようもない程のバカだ。
これだけの事を仕出かして、許してもらえる訳がないじゃないか。
ひたすら謝っていれば許してもらえるのは、未成年まで。
そんなのもう、よく分かってるよ。
だから、殺人鬼と言われようと石を投げられようと、構わない。
地獄に連れて行きたければ、連れて行けばいい。
でも、
( ・∀・)「んで、何か用?」
lw;´‐ _‐ノv「お前、みんなを殺した……のか?」
それでも、聞きたいんだ。
腹に穴開けられても、殴られても、手を伸ばしてくれた人たちの事。
32 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:12:33.25 ID:
OBEMgf/g0( ・∀・)「あー……どうだろうなぁ。死んだのかね、あれ。
つーか、どうでもいいよ。あんな弱い奴ら」
lw#´‐ _‐ノv「……! 何でだよ! ずっと一緒に旅してきたんだろ?!」
( ・∀・)「おいおい、勘違いすんな。一緒に来てやってただけだよ。
あいつらには特に何の思い入れも無いね」
lw#´- _-ノv「ふざけんなよ!!」
( ・∀・)「うわー怖い怖い。また人を殺すのか?
後悔してるって言ってたけど、あれは嘘?」
うるさい、うるさい、黙れ!
ほら、素直シュール!
後は引き金を倒すだけだ!
やれよ、さぁ!
『人殺し』なんて、今まで数え切れないくらい言われてきたじゃないか!
ほら、撃てよ、ドクオたちを殺した男だぞ!
今さら殺した人数がひとり増えたところで大して変わりゃしないんだ、撃て!!
33 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:13:36.37 ID:
OBEMgf/g0lw;´‐ _‐ノv「……っ」
lw;´ _ ノv「……」
( ・∀・)「まぁまぁ、銃なんてそんな物騒なもん下ろしてさ、城の下見てみなよ。
化け物共がうようよしてる」
lw;´‐ _‐ノv
……撃てなかった……
こいつなんかにドクオたちは殺されたってのに、
私はまた『人殺し』と言われるのが怖くて、嫌で……
撃てなかった!
( ・∀・)「ほら、見てみろって」
ああ、本当。化け物がいっぱいだ。
一、二、三……数えるのがバカらしくなるくらいたくさん。
なんだこれ、こんなのもう……
私たちに勝ち目なんか、もうどこにもないじゃないか……
34 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:14:43.92 ID:
OBEMgf/g0( ・∀・)「あれだけじゃないよ。先々代の魔王も量産されてる。
あれ見たら『勇者』……尻尾巻いて逃げ出すだろうなぁ」
lw´‐ _‐ノv「……先々代魔王?」
( ・∀・)「あー、知らないのか。じゃあ特別に見せてやるよ。着いてきな」
はは、これ以上悪いニュースがあるのか。
神様って奴は、とことん私の事が嫌いなんだな。
私、あなたに嫌われるようなこと何かしましたっけ?
どうせなら、私を殺してくれればいいのに
<早く来いってー
そうすれば、みんな幸せになれるんじゃないかな、多分
lw´ _ ノv「……」
頼むよ。
もう、殺してくれよ
35 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:15:49.09 ID:
OBEMgf/g0 * * * * *
* * * * *
階段を下りて、入り組んだ廊下を進む。
やがて見えてきた大きな扉の前で、やっとモララーは立ち止まった。
( ・∀・)「ここだよ」
( ・∀・)「ここに先々代が収容されてるんだ」
lw´‐ _‐ノv「……」
( ・∀・)「誰よりも先に、紹介してやるよ。先々代魔王、通称―――『歯車王』」
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37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:17:26.01 ID:
OBEMgf/g0 世の中には、知らない方がいい事ってものがある。
今回なんか、特にそうだ。
隙間なく並べられ、部屋を埋め尽くすロボットども。
ドラム缶みたいな図体に、細い手足。
凄くバランス悪そうだけど、多分ちゃんと戦えるようにはなってるんだろうな。
そんなロボットが、少なく見積もっても約500。
最悪すぎて、もう涙も出てこない。
元々ほとんど無かった勝機が、こいつらの存在で完璧に消え去った。
( ・∀・)「まだ他の部屋にも収容されてるよ」
lw´‐ _‐ノv「……聞きたくなかった」
lw´‐ _‐ノv「これ、一体何なんだ?」
( ・∀・)「歯車王。ラウンジを統治する為に数十年前、シベリアの街で造られた、
血も涙もない形だけの王様だ」
( ・∀・)「プログラムされた以外の事が出来ないから、不評だった挙げ句に暴走して、
結局は勇者を名乗る男にブッ壊されたけどね」
40 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:18:48.31 ID:
OBEMgf/g0( ・∀・)「で、そこにあるのは、全て魔王がカスタマイズし直した兵器。
言っておくけど、けっこう頑丈だよ?」
( ・∀・)「『勇者』なんか、一瞬で殺されるだろうね」
lw;´‐ _‐ノv「こんなものを造ってまで、VIPを壊したいのか……あいつ……」
魔王の気持ちは、理解こそ出来ないけど、痛いほど分かる。
その技術も知識も、全部搾り取られて、後はゴミのように捨てられたんだ。
悔しいし、悲しいし、怒り狂ってVIPを恨むのも分かるよ。
でも、もう全ての元凶はこの世にいないんだぞ?
いくら暴れ回っても、最も恨みをぶつけたい奴はいない。
そんなこと、私にだって分かるんだから、魔王も分かってるはずなんだよ。
それでも復讐の為に、人はここまで出来るのか
VIPでは《天才》と呼ばれた人が、《魔王》になるまで壊れてしまうなんて、ひどい話だ。
42 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:19:51.41 ID:
OBEMgf/g0( ・∀・)「その為に魔王になったんだ、それもそうだろうよ」
lw´‐ _‐ノv「……本気なんだな……」
o川*゚3゚)o「―――あっ! もう! こんな所にいたの?!
いきなり階段から突き落とすなんて、ひどいよ!」
あぁなんだ、もう目を覚ましたのか。
もっと階段の下で伸びてて良かったんだぞ?
まぁ……ここまで勝機を踏みにじられちゃ、もう逃げても意味はないか……。
何をどう考えたって、『勇者』たちが歯車王と化け物に勝てる訳がないし、
後は、なぶり殺しにされるのを待つだけって訳だ。
運命、なんて今まで笑って否定してきたし、信じなかったけど、
これが運命ってやつなのかもしれない。
それなら、もういいよ。
抵抗ももうしないから、連れていくなら、どこへでも連れて行け。
もう、疲れた。
43 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:21:05.42 ID:
OBEMgf/g0 * * * * *
* * * * *
―――医療都市から来たという医者に、旅を再開してもいいと許可を貰った頃。
僕らは、魔王討伐の旅を再開した。
あぁ、そうそう、
(゚、゚トソン「とりあえずの目的地は、ツンの故郷の集落って事でいいんですよね?」
砂漠の町で世話になったトソンも、一緒に行く事になったんだ。
一気にパーティから二人もいなくなって心細かったから、
トソンが一緒に来てくれるって話になった時は、正直ほっとした。
44 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:22:10.77 ID:
OBEMgf/g0('A`)「うん、そこで魔王討伐の協力をお願いするって事になってる」
(゚、゚トソン 「協力してもらえれば、少しは楽になりそうですよね」
ξ ゚⊿゚)ξ「ま、協力してもらえるかどうかは、説得するアンタたち次第よ」
ξ ゚⊿゚)ξ「この道をずっと行けば『シベリア』に着くわ。まだ遠いけどね」
( ^ω^)「シベリア?」
川 ゚ -゚)「最北の街だ。機械都市・シベリア」
川 ゚ -゚)「大きくて広いし、色んな店が集まってるから、そこで戦いの準備は整うと思う」
ξ ゚⊿゚)ξ「そのシベリアの先が、魔王の城よ」
なるほど、いよいよ魔王の城って訳だ。
……ここまで、長かったな……
ξ ゚⊿゚)ξ「―――それで、私たちが今向かってるのが、外れ者ばかりが集う村。
名前はないし、長の本当の名前も知らないわ」
ξ ゚⊿゚)ξ「自称、『勇者王』って言ってるけど、誰も信じてないしね」
('A`)「(勇者王……)」
45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:23:15.25 ID:
OBEMgf/g0 なんか強そうな名前だな。これは期待出来そう。
勇者だけならまだしも『王』を付けるくらいなんだから、それはもう凄い人に決まってる。
剣の一振りで雑魚なんか消し飛ぶくらい強くて、
なんかもう……みんなが想像するような勇者らしい勇者に違いない。
きっと身体には歴戦の傷が残ってるな。
で、FFの主人公ばりにイケメンなはず。
……そんな人が協力してくれるなら、凄く助かるな
ξ ゚⊿゚)ξ「じゃあ、一度道を外れるわよ」
……それにしても、勇者王か……
筋骨隆々で、剣や盾が似合って……
きっと、家には自分の肖像画みたいなのも飾ってあるな。
あぁそもそもよく考えてみれば、本物の勇者に会うのも初めてだ。
……緊張してきた
ξ;゚⊿゚)ξ「……ち、ちょっと! あんまり期待しない方がいいわよ?!
アンタが考えてるのとは、かなり違うだろうから!」
('A`)「でも、『勇者王』って名乗ってるくらいなんだろ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まぁそうだけど……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……期待しない方がいいからね?」
48 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:24:29.85 ID:
OBEMgf/g0 * * * * *
* * * * *
ξ ゚⊿゚)ξ「―――着いたわ。ここが、私の故郷よ」
シベリアへ行く道を外れ、歩くこと数十分。
僕らは、質素な家が並ぶ集落にたどり着いた。
川 ゚ -゚)「へぇ……。ラウンジにこんな所があるなんて、今まで知らなかったな」
ξ ゚⊿゚)ξ「場所が場所だし、皆ひっそり暮らしてるからね。
ここは、種族も家族も関係なし。外れ者同士、協力して生きてくのよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「勇者王の家は、もっと奥ね」
('A`)「……」
こんなとこにイケメン勇者が住んでるのか。
あーそうか、意外に質素な暮らしを送ってるのかもしれない。
基本、魔王を倒した後の勇者って隠居する傾向があるし。
51 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:25:43.54 ID:
OBEMgf/g0ξ ゚⊿゚)ξ「ここよ。ちょっと待っててね、まずは私が話して来るから」
('A`)「分かった」
僕らが見てる前でツンは、何の挨拶もなしに勇者王の家の扉を開けた。
ノックとかしない辺り、ツンらしいと言えばツンらしい。
ξ( ξ<『勇者王』、いる?! 私よ! ちょっと頼みたいことがあるんだけど!
<くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
<つ、ツンちゃん?! いつ帰って来たんだい?!
<というか、『人の家に入る時はノックしなさい』っていつも―――
ξ( ξ<ええいうるさい、今日は客がいるの! VIPから来た、『勇者』よ!
<……『勇者』?
<なるほど、この僕の力を借りに来たって訳か
<じゃ、入ってもr ξ ゚⊿゚)ξノシ「みんな、入って入って!」
<…………
……なんか今、この家の中にいるらしい勇者王の立ち位置が見えた気がするんだけど……
……まぁ、どんな人でも、贅沢も言ってらんないか
53 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:26:50.17 ID:
OBEMgf/g0(;'A`)
(;'A`)「お、お邪魔します……」
ξ ゚⊿゚)ξ「挨拶なんかいいから、ほら、ここに座って」
ツンに促され、僕はブーンとトソンの間に座った。
目の前には、
( ・□・)「やぁ、初めまして。僕が勇者王だよ。よろしく」
……『勇者王』のイメージを真っ正面からブチ壊すような、
威厳の欠片もない男がいた。
……えーと、聞き間違いだったかな?
( ・□・)
この人、『勇者王』って言った気がするんだけど。
いや、聞き間違いだよ
だってこれ普通のオッサンじゃないですか。
肖像画とかないし、そうだよ、本物はきっと奥にいr
( ・□・)「この勇者王の力を借りたいって?」
あ、やっぱりこの人が本物の勇者王なんだ……
55 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:27:53.61 ID:
OBEMgf/g0いや、確かにさ、「期待するな」ってツンも言ってたよ。
言ってたけど、でもほら、『勇者王』っていう位だしさ、
もっと凛々しくてカッコイイ人だと……思うだろ?
この人、剣とか振り回してるイメージが湧かないんだけど。
何だったら、どこかの村で鍬とか振り回してる方が似合いそうな……
(゚、゚トソン 「はい。―――初めまして、勇者さん。VIPから来た、トソンと申します」
( ^ω^)「ブーンです。今日は、勇者さんにお願いしたい事があって、ここに来ましたお」
( ・□・)「あ、勇者『王』ね、勇者『王』」
(;'A`)「ど、ドクオです……」
( ・□・)「トソンちゃん、ブーンくん、ドクオくん、だね。みんなよろしく」
( ・□・)「それじゃ、いきなりだけど、
こんな場所に来た理由を聞かせてもらおうかな?」
これ、普通に話進むのか……
(;'A`)「は、はい。……僕たち、ある事情があって、魔王を倒さなきゃならないんです」
( ・□・)「ある事情?」
(;'A`)「……」
56 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/19(火) 20:28:56.59 ID:
OBEMgf/g0 勇者法案のこと。
ラウンジに転送されてきたこと。
魔王を倒さなきゃ、VIPに帰れないこと。
人質がいること。
『勇者』側の戦力があまりにも弱すぎること。
だから、魔王討伐に協力してほしいってこと。
時々ブーンとトソンに補ってもらいながら、ここまでのいきさつは全部説明した。
ずっと黙って聞いててくれたし、案外勇者王はいい人なのかもしれない。
威厳は全く無いけど。
( ・□・)「―――なるほど。魔王を倒す戦力がない。
だから僕らに、魔王討伐を手伝ってほしいって事だね?」
(;'A`)「は、はい」
_,
( ・□・)「だが、断る」
(;'A`)そ
(;'A`)「あの、勇者……さん、なんですよね?」
( ・□・)「勇者『王』ね」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:30:16.47 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
(;'A`)「勇者って……魔王倒したりするから、勇者なんじゃ」
( ・□・)「それは君らにも言えることだろ?
それと、僕勇者『王』ね、勇者『王』」
(;^ω^)「いや、だから……僕らだけじゃ魔王を倒せないので、
勇者さんに協力してほしいんですけど……」
_,
( ・□・)「やだよ」
(゚、゚;トソン 「な、何でですか?」
_,
( ・□・)「僕が勇者になるのに何年かかったと思ってるんだ?
それなのに君たちは何もせず、一週間やそこらで『勇者』を名乗れるなんて不公平だよ!」
(゚、゚;トソン 「え、えぇ……?」
( ・□・)「まぁ冗談はさておき、…………」
( ・□・)「逆に、聞いていいかな?」
(;'A`)「?」
( ・□・)「君たちは、勇者って何だと思う?」
( ・□・)「どういう人間が勇者と呼ばれるんだと思う?」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:31:21.76 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
(;'A`)「……え?」
( ^ω^)「魔王を倒して、世界を平和にするのが『勇者』だと思いますお!
RPGだとそんな感じだお!」
(゚、゚トソン 「勇気を持った人間を、『勇者』って呼ぶんじゃないんですか?
たしかWikipediaにはそう書いてありましたけど」
(;・□・)「うーん……。いや、まぁ確かに、魔王を倒して世界を平和にしたり、
勇気を持った人間が『勇者』と呼ばれるのは間違いじゃない」
(;・□・)「……間違ってないんだけど、聞きたかった答えとは違うなぁ」
(;^ω^)「?」
( ・□・)「ま、でも、その答えを聞いて分かったよ。
……やっぱり、君たちには、勇者と名乗る資格はない」
( ・□・)「偽物の『勇者』だってことがね!」
(;'A`)「……」
( ・□・)「―――勇者っていうのは、その本当の意味を知っても尚、
名乗る覚悟がある者だけが背負える肩書だ」
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:32:44.26 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
( ・□・)「本物の勇者じゃない者が魔王と対峙するなんて、魔王に失礼だよ。
いつの時代の魔王も本気。全力なんだ」
( ・□・)「魔王が全力なのに、勇者が手を抜く訳にはいかない。
だからこそ、僕らは魔王を理解した上で、本気で戦うことができるんだよ」
( ・□・)「魔王の考えや思いを理解してないのに戦うのは、勇者じゃない。
そんなのただの殺人鬼と一緒だ」
(;'A`)「さ……殺人鬼……」
( ・□・)「勇者の意味も知らないのに勇者を名乗るなんて、おこがましい。
正直僕は、君たちには勇者を名乗ってほしくないな」
( ・□・)「勇者っていうのはね、『誇り』なんだよ。
勇者になるのに、血筋や肉体的な強さは関係ない」
( ・□・)「その背中に負ったものの重さ、敵をも理解しようっていう気構え。
それが、君たちには見られない」
( ・□・)「勇者を名乗るのは簡単さ。
でも、そんな気持ちで勇者になれると思ったら、大間違いだよ」
(;'A`)「……」
( ・□・)「どっちにしろ、今の君たちじゃ魔王は倒せないよ。
そして、確実に負けると分かってる戦いに僕が参加しなきゃならない理由もない」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:33:59.00 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
('A`)「……」
( ・□・)「……ここからシベリアまでは少し離れてるから、今日は休んでいくといい」
( ・□・)「でも悪いけど、僕は今の君たちに力は貸せない」
(;^ω^)「そんな!」
(゚、゚;トソン 「ち、ちょっと待ってください! 何で私たちじゃ魔王に勝てないんですか?
力が弱い以外に、何か理由があるって事?!」
( ・□・)「そういう事じゃないよ。
その気になれば、君たちだけでも魔王を倒すことは出来る」
( ・□・)「問題は、もっと根本。
もっと深い所にある部分を、君たちは全く理解してないんだ」
(;^ω^)「? どういう意味ですかお?」
( ・□・)「君たちは、勇者が一体何なのかを分かってないって事さ」
(;^ω^)「……」
( ・□・)「……他の『勇者』は? 今、どこにいるんだい?」
(;'A`)「え? えーと……」
( ・□・)「他の『勇者』が、今どこにいるかも分からない。
そんなバラバラな状態で、魔王を倒せるなんて本気で思ったのか?」
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:35:01.22 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
( ・□・)「何度も言うけど、君たちは、今のままじゃ魔王には勝てない。
むしろ、今のままで魔王に立ち向かうくらいなら、『勇者』なんてやめた方がいいよ」
……なんだそれ……
『勇者』の本当の意味?
そんなの、今重要な話じゃないだろ?
魔王を倒した奴が勇者って呼ばれる、それはずっと昔からそうだった。
だから、これからもそれでいいんだよ。
それに、今の僕たちから『勇者』を取ったら、ただの『ニート』しか残らない……
( ・□・)「……何で今の君たちが魔王に勝てないか。
それは、勇者というものの本当の意味が分かったら見えてくるはず。
そして、逆もまた然りだ」
……協力、してもらえるものだと思った。
詰んでる状態で、それでも断られるって……
ξ;゚⊿゚)ξ「つ、つべこべ言わずに、協力してよ。
こっちには時間がないのよ」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:36:18.77 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
見るに見兼ねたんだか何だか、成り行きを見守っていたツンも味方してくれた。
それでも、勇者王は首を横に振るだけだ。
( ・□・)「ツンちゃん、これは大事なことだよ。
大切な仲間が魔王に攫われたから助けたいっていうのはよく分かる。
でも、今の君たちは焦りすぎて、忘れちゃいけないことを忘れてるんだ」
( ・□・)「ドクオくん、ブーンくん、トソンちゃん。よく考えてごらん」
( ・□・)「『何で、今の君たちじゃ絶対に魔王を倒せないのか』。
答えが分かったら、その時は僕らも全力で協力する。
答えが分からないはずはないから、頑張って」
分からない
……分からないよ。
小卒の頭では、今の話を理解するので精一杯だ
勇者王の謎掛けは、さっぱり分からない。
勇者の本当の意味?
今の僕らじゃ魔王を倒せない理由?
そんなの、知る必要があるのか?
僕らは魔王を倒せればいいんであって、その過程に意味は求めてないんだよ。
そんなことよりも、早くモララーとシューさんを取り戻さなきゃならない
急がなきゃ、魔王はVIPを完全に破壊するかも……
本当は寄り道する時間だって惜しいんだ!
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:37:25.72 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
川;゚ -゚)「勇者王さん、あなたの言い分も分かります。
でも私たちも、相当焦っているんです」
川;゚ -゚)「今の私たちは、あなただけが頼りなんです。
お願いします、協力していただけないでしょうか」
( ・□・)「ごめんね。これは、『勇者』の問題なんだ。
彼らが答えを導き出せないようなら、僕は彼らに協力する意味がない」
( ・□・)「これだけは、譲れないよ」
何をどう言っても、勇者王は頑として首を縦には振ってくれなかった。
くそ、そんな余計なことを考えてる時間なんて無いぞ……!
(゚、゚;トソン 「……どうします?」
(;^ω^)「今の僕たちじゃ魔王を倒せない理由……?
そんなの、力が無いから、が答えなんじゃないのかお?」
(;'A`)「力が無いのは分かってるから、協力してほしいって言いに来たのにな」
川 ゚ -゚)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「わ、私、もう一回説得しに行ってくる」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:38:36.30 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
力もないし、人数も少ないから、魔王を倒せないんじゃ?
だからここに来たのに、力を借りられないなんて……
何なんだよ、訳が分からない
(゚、゚トソン 「……ここで考えても、きっと分からない問題かもしれません。
一度シベリアに向かってみませんか?」
(゚、゚トソン 「もしかしたら、何かいい答えが見つかるかも」
(;^ω^)「シベリアになら、魔王を前に尻込みした『勇者』たちが、
たくさんいるかもしれないおね」
(;'A`)「あ……そうか、もう魔王と戦った人達がいるかもしれないんだ」
……誰かが魔王を倒してくれさえすれば、
こんな難しいことを考えずに済むんだけど……
ξ#゚⊿゚)ξ「―――ったく、あの分からず屋!!」
勇者王の家から、大層機嫌を損ねたツンが出てきた。
あの様子じゃ、勇者王は意見を変えなかったんだろう
そこまで力を貸したくないのか、それとも他の理由があるのか……
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:40:01.76 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
ξ ゚⊿゚)ξ「なんか考えついた?」
('A`)「全然……」
(;^ω^)「全く分からないお。だから、とりあえずシベリアに行って、
他の勇者たちと会って話をしてみないかって」
ξ ゚⊿゚)ξ「そうね。時間を置けばもしかしたら、あいつの気も変わって協力してくれるかもしれないわ。
それでいいわ、行きましょう」
川 ゚ -゚)「ここからなら、早足で数時間歩けばシベリアだ」
川 ゚ -゚)「夜になる前に急ごう」
ツンの知り合いらしき人に泊まって行けと言われたけど、
先を急いでいるからと、丁重に断った。
まだ日が完全に落ちるまでには、時間がある。
あまり時間もかけらんないし、とにかくシベリアへ急ぐ事にしたんだ。
ξ ゚⊿゚)ξ「こっちよ」
シベリアまでの道を知ってるツンの後を追いながら、
もう一度勇者王の言葉を思い出してみる。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:41:02.31 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
( ・□・)『何で、今の君たちじゃ絶対に魔王を倒せないのか。
答えが分かったら、その時は僕らも全力で協力する』
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:42:44.26 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
勇者王は、何を言いたいんだろう?
負け戦がしたくないなら、正直にそう言ってくれればいい。
そしたら、こんな訳の分からない謎掛けに頭を悩ませることはなかったんだから。
( ^ω^)「……」
(゚、゚トソン 「……」
ξ ゚⊿゚)ξ「……」
川 ゚ -゚)「……」
多分、それぞれが、勇者王の謎掛けを考えてるんだろう
いつもは適当でくだらない話で盛り上がる道中が今は、やけに静かだった。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/04/19(火) 20:44:23.03 ID:
OBEMgf/g0 (51 回発言)
('A`)ドクオは勇者になったようです
‐17‐『Q.』
終
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