37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:36:01.91 ID:vislvk/70
2.
あるとても天気のいい日曜日のこと。
昼食を終えたシューはけだるさに身を任せ、リビングでテレビを見ていた。
水揚げしたての水死体のようにソファに寝転がり、口を開けて画面に見入っている。
lw´‐ o‐ノv「……」
J( 'ー`)し「せっかくの休みにゴロゴロしてるんじゃないよ、ヒー姉ちゃんを見習いな」
次女ヒートは外で狂ったように筋トレをしている。
あの女はゼンマイ仕掛けのオモチャと一緒だ。
多分、動くのを止めたら死ぬんだろう。
シューはそんなことを考えながら、ぼんやりテレビを見続けた。
lw´‐ o‐ノv「……」
番組はこの町に来ているサーカスの特集だ。
38 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:37:32.11 ID:vislvk/70
3.
一輪車に乗った美女が皿回ししながら綱渡りをしている。
綱を渡り切ると会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
lw´‐ _‐ノv「……!」
ソファを飛び降りたシューは家の外に出た。
小高い草原の丘を柵で囲ってあり、その真ん中に我が家がある。
シューは裏手に回り、そこにある物置というかガレージというか、そんなところへ入った。
ノパ⊿゚)「コンセントレーション! コンセントレーション!」
ヒートが薄気味悪いことを呟きながら地面に手刀を打ち下ろしている。
ノパ⊿゚)「んー、地球は割れないなあ。集中力が足りないのかな」
lw´‐ _‐ノv
神々しいまでのバカだ。
41 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:39:01.83 ID:vislvk/70
4.
一息ついたヒートに事情を説明すると、彼女は汗を拭いながら奥を指差した。
ノパ⊿゚)「前に姉ちゃんが作ったやつか? そのへんに埋まってるんじゃないか」
lw´‐ _‐ノv「ん」
奥の方に山積みになっている雑多なものを掘り返す。
埃を巻き上げながらしばらく邪魔なものをどけてゆくと、やがて目的のものにぶつかった。
遠い昔にクーに作ってもらった一輪車だ。
ガラクタの山から油差しを拾い上げ、車輪に注入する。
ノパ⊿゚)「車に気をつけるんだぞ!」
再び人知を超えた試し割りを始めるヒートに手を振り、シューは丘へ出た。
柵に捕まって一輪車にまたがる。
lw´‐ _‐ノv「よっ!」
42 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:40:02.77 ID:vislvk/70
5.
この一輪車はクーのオリジナルで、バランサーが内臓されている。
自動的に傾きを修正するため、非常にコケにくいという仕組みだ。
シューのような運動神経の欠如した少女でも自由に乗り回すことができる。
lw´‐ w‐ノv ♪
両手を広げて草原の道を走り抜ける。
いい気分だ。
目を閉じて自分がサーカスのスターになったところを想像した。
スポットライトを浴び、一身に歓声と拍手を受ける自分の晴れ姿……。
ガタン!
lw´‐ o‐ノv「お?」
脳天へ突き抜ける衝撃が意識を現実に戻す。
44 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:41:31.68 ID:vislvk/70
6.
目を閉じているうちに道を反れ、町へ向かって一直線に下る坂道に入ってしまっていた。
lw´‐ o‐ノv「おー」
ペダルが凄まじい勢いで回転を始め、足で捕まえることが出来ない。
両足を開いたままシューは両手でサドルを掴んだ。
一定以上のスピードを出すと自動的にブレーキがかかる筈だが……
長い間ほったらかしにしといたのが良くなかったか。
lw´‐ o‐ノv「おおおおー」
風圧に押し付けられて顔が平らになりそうだ。
レースゲームみたいに風景が前から後ろへすっ飛んで行く。
丘から町に入った一輪車は更に勢いを増し、車通りの多い道路へと踊り出した。
突然現れたシューを避けようと、ハンドルを切った車同士がぶつかりまくる。
45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:43:01.95 ID:vislvk/70
7.
lw´‐ _‐ノv「……」
まあ、こっちにぶつからないならいいか。と思った。
そんなわけでシューは後方で山のような事故車を築き、爆音や炎やサイレンやらを聞いていた。
だが運のいい人間はいても、幸運が永遠に持続する人間はない。
从'ー'从「ふんふふんふ~ん♪」
lw;‐ _‐ノv「!」
角のところからひょいと女の子が姿を現した。
クラスメイトの渡辺だ。
从'ー'从「あ、シューちゃんだ~、おーい」
自分に向かって突っ込んでくるシューに対して渡辺は手を振った。
その顔面に一輪車のサドルの先端が直撃する。
47 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:44:31.45 ID:vislvk/70
8.
从*从「モヘア!!!」
lw;‐ 皿‐ノv「~~~!!」
一輪車だけは渡辺と激突して停止したが、シューはそうは行かなかった。
ニュートンとかいう暇人が定義した法則通り、勢いそのままに車上から前方へと投げ出される。
ボールのように宙を舞い、真っ直ぐ交差点の噴水へと着水した。
しばし沈黙。
lw;‐ _‐ノv「ぷはっ!!」
やがて浮上したシューは頭の上に鯉、肩の上に亀を乗せて噴水の縁へ這い上がった。
頭をプルプル振って顔の水を振り払い、耳の水を出す。
lw;‐ _‐ノv トホホ
濡れネズミになって噴水から出る。
49 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:46:01.78 ID:vislvk/70
9.
( `八´)「ふふん、無様アル!」
lw´‐ _‐ノv「?」
男の声がどこかでする。
あたりを見回したが誰もいない。
( `八´)「こっち、こっち。上を見てみるアルヨ」
lw´‐ o‐ノv「……」
やたら高い一輪車に乗ったおっさんが、太陽を背に逆光の中でこっちを見下ろしている。
( `八´)「見ちゃおれんアルな、まったく。
このシナー様の前で見苦しい一輪車の使い方をしないで欲しいアル、フハハ」
lw#‐ _‐ノv
シューは靴を片方脱ぎ、つま先の部分をおっさんの一輪車のスポークに突っ込んだ。
50 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:47:32.14 ID:vislvk/70
10.
靴がストッパーとなって車輪の回転を止め、おっさんは正面に向かって派手に倒れた。
アスファルトと強烈なキスを交わす。
(;`八´)「ぶべっ!!」
lw´‐ _‐ノvb
( `八´)「な、なかなかやるアル……このワタシに鼻血を出させるとは!」
鼻血を出しながらおっさんは起き上がった。
( `八´)つ□「まあ聞くアル。ワタシはこう言う者アルヨ」
lw´‐ _‐ノv「?」
おっさんが差し出した名刺には「VIP雑技団・団長シナー」と書かれていた。
( `八´)「君の一輪車テクはまだまだ素人同然、しかしあの車を片っ端から避けて回った技は
なかなかのものアル。見込みがないでもないアル」
51 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:49:01.48 ID:vislvk/70
11.
あれはフラフラしてたら偶然避けていただけなんだけど、まあいいか。
( `八´)「興味があるならうちのテントに遊びに来るアル。警備員にその名刺を見せるアルヨ」
lw´‐ _‐ノv「!」
( `八´)「ワタシのテストに合格したら団員に迎え入れてあげてもいいアル。
今月いっぱいはこの町にいるから、いつでも来るアル。フハハハ、再見!」
一輪車に乗って去って行くシナーを見送る。
靴を履き直したシューは改めて名刺を覗き込んだ。
lw´‐ w‐ノv
突如訪れた幸運。
目を閉じればそこにサーカスの花形として活躍する未来の自分が見えた。
名刺を大事にポケットにしまい、顔面に一輪車のサドルが突き刺さったままの渡辺のところへ行く。
52 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:50:32.43 ID:vislvk/70
12.
从*从「聞こえてたよシューちゃん、スカウトされるなんてすご~い」
一輪車に手をかけ、彼女の胸に足をあてがって引っこ抜く。
スポン!
从*从「ふええ~ん、一輪車は抜けたけど顔が凹んじゃったままだよぉ~」
シューは渡辺の背後に回り込み、後頭部を叩いた。
lw´‐ _‐ノvつ#)ー从 ' ' バシッ
从'ー'从「ありがとー、治ったよぉ」
lw´‐ _‐ノvb
从'ー'从「入団テスト受かるといいね~、頑張ってね~」
lw´‐ w‐ノv
まあ、この一輪車さえあれば頑張る必要なんかないんだけど。
53 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:52:01.97 ID:vislvk/70
13.
渡辺と別れ、一輪車に乗って帰ろうとまたがった次の瞬間。
lw;‐ _‐ノv「!」
シューはさっきのシナーみたいに正面から転んだ。
lw;‐ _‐ノv「……?」
起き上がり、サドルの下部を調べる。
機関部の隙間から黒い煙が噴き出していた。
lw´‐ _‐ノv「……」
こりゃあ、さっきの衝撃で壊れたな。帰ってクーに直してもらわないと。
シューは一輪車を引っ張り、家に戻った。
54 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:53:32.69 ID:vislvk/70
14.
lw´‐ _‐ノv
J( 'ー`)し「おや、シューかい。
帰ってきてすぐで悪いけど、カーチャン忙しいからちょっと買い物行って来て」
lw´‐ _‐ノvb
J( 'ー`)し「牛肉三人前だよ、間違えるんじゃないよ」
lw´‐ _‐ノv「?」
J( 'ー`)し「クーは企業の人と打ち合わせがあるから、今夜は帰らないよ」
lw;‐ 皿‐ノv
J( 'ー`)し「さあ、ケンプファーを完成させないと。忙しい忙しい」
カーチャンはニッパーと接着剤を手に奥へ引っ込んだ。
……まあ、あのおっさんは今月一杯いると言っていたから、明日でなくてもいいか。
55 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:56:25.83 ID:vislvk/70
15.
翌日学校に行くと、クラスメイトに取り囲まれた。
从'ー'从「あ、シューちゃんおはよ~」
(*゚∀゚)「聞いたよ、すごいじゃん! サーカスのスカウト受けたんだって!?」
*リ´・-・リ「実は運動神経良かったんだね」
( ><)「尊敬しちゃうんです!」
lw;‐ _‐ノv
渡辺のお喋りめ。
もう後に引けなくなってしまった。
ξ ゚⊿゚)ξ「ちょっとシュー。あのVIP雑技団にスカウトされたってホントなのかしら?」
lw´‐ _‐ノv コクリ
ξ ゚ー゚)ξ「フフン、あんたみたいな運痴がねぇ? 何かの間違いじゃないのかしら」
lw#‐ _‐ノv
57 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:58:00.99 ID:vislvk/70
16.
(´・ω・`)「でももしも本当に入団できたとしたら、テレビとかにも出ちゃうんだよね」
ξ////)ξ「ハッ!? ショボンくん!」
lw´////ノv
(´・ω・`)「入団できたら教えてね、見に行くから」
ξ ゚⊿゚)ξ「そ……そうよ。もしもテストに受かったんなら教えなさいよ。
あんたのこと見に行ってやるから。ま、ムリだろうけど!」
lw;‐ _‐ノv
ますます後に引けなくなった。
ことあの憎きツンと愛しのショボンくんが関わって来たとあらば。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
家に帰ってリビングで待つことしばらく。
ヒートとテレビゲームで遊んでいると、クーが高校から帰ってきた。
58 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 21:59:31.31 ID:vislvk/70
17.
川 ´ -`)「ただいま……」
ヘトヘトに疲れ切っている顔だ。
鞄も制服もそのままに、クーはソファーに倒れ込んだ。
川 ´ -`)「ウウウ……」
lw´‐ _‐ノv「?」
ノパ⊿゚)「どうした、姉ちゃん。なんかあったのか」
川 ´ -`)「んー、『自動バナナ皮剥きマシーン』てあったじゃん。私が前に作ったやつ」
クーは電子工作が得意で、発明品のいくつかは企業が商品化している。
その特許使用料が事実上この家庭の財政を支えていた。
川 ´ -`)「それ買ったどっかのバカがケガしてさあ、訴訟になりそうなんだよ」
ノパ⊿゚)「『そしょー』って裁判のことか? うちが治療費とか払うのか?」
川 ´ -`)「いや、賠償金はウチが払うわけじゃないけど、商品が売れなくなったら困るなあ……」
59 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:01:02.34 ID:vislvk/70
18.
ノパ⊿゚)「それで最近会社の人と話し合ってばっかいたってわけか」
川 ´ -`)「問題点を改良しないと……ウウウ、胃が痛い」
ノパ⊿゚)「ん? でもあんなもんをどう使ったらケガするんだ?
バナナの皮剥くだけのキカイだろ?」
川 ´ -`)「大方ロクでもないことに使ったんだよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
件の被害者・ドクオは病院のベッドに横たわっていた。
股間の一部分だけ包帯がぐるぐる巻きになっている。
('A`)「チクショー! 仮性人を卒業できると思ったのに……訴えてやる!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
川 ´ -`)「開発部の人とまた打ち合わせだ……カーチャン、今日もご飯いらないから」
60 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:02:31.54 ID:vislvk/70
19.
シューは二階へ上がって行こうとするクーに慌てて一輪車を見せた。
lw;‐ _‐ノvつ[一輪車]
川 ´ -`)「ん? ……あ、前に私が作ったやつか。なんだ、壊れたのか?」
lw´‐ _‐ノv コクコク
川 ´ -`)「そのうち直してやるよ。今月中にはこっちの問題も片付くと思うから……」
lw;‐ 皿‐ノv
クーは着替え、すぐに家を出て行った。
これはまずい。非常にまずい。
部屋に戻ったシューは頭を抱えた。
さあ、どうする?
ツンのざまあみろって顔が目に浮かぶ。
ショボン君やクラスメイトの失望した顔も。
61 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:04:01.40 ID:vislvk/70
20.
机に突っ伏していたシューの目に壷が目に入ってきた。
lw´‐ _‐ノvつ壷
手に取る。
そうだ、この壷の存在をすっかり忘れていた。
拳で表面をノックすると、中から気もそぞろな声がした。
( ^ω^)「あーお嬢さんですかお。今ちょっと手が離せないんですお」
lw´‐ _‐ノv
蓋を少しだけ開いて覗いてみる。
内藤は壷の中の自分の部屋でWiiリモコンを振り回していた。
( ^ω^)つ=「うおおお! ファイトだウェスカー、ゾンビなんかに負けるなお!」
lw#‐ 皿‐ノv
62 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:05:31.64 ID:vislvk/70
21.
シューは台所に降りてヤカンをコンロにかけた。
十分に熱してから部屋に戻り、壷の口に煮えたぎる熱湯を注ぎ込む。
(#゚ω゚)「うぉぁぢぃいいいいいいいい!!!」
すぐに壷から煙がもくもく沸き出し、少年の姿となる。
lw´‐ _‐ノvb
(;^ω^)「メチャクチャしないで下さいお! 幽霊でも熱いもんは熱いんですお!」
lw´‐ _‐ノvつ[一輪車]
( ^ω^)「まったく、カップラーメンじゃないんだから……ん? 何ですかお、これ」
シューは事情を説明した。
lw´‐ _‐ノv
( ^ω^)「なるほど。つまり一輪車に乗れるようになればいいんですかお」
63 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:07:00.04 ID:vislvk/70
22.
( ^ω^)「それならお安いご用ですお。それ、ぱぱらぱー!」
( ^ω^)つ`・+。*・ ゚☆(((一輪車)))
lw´‐ o‐ノv「!」
( ^ω^)「これでオッケーですお。んじゃ、領収書を……」
lw´‐ _‐ノv「……」
(;^ω^)「効果を見てからって? いいけど、お願いだから\1は止めて下さいお」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日の放課後、シューは一輪車を持ってサーカスのテントへ赴いた。
団員の練習を監督しているシナーところへ行く。
( `八´)「む、来たアルな。じゃ、さっそく腕のほどを見せてもらうアル」
lw´‐ _‐ノv「ん」
64 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:08:30.48 ID:vislvk/70
23.
( `八´)「じゃ、まずはこの大玉に乗ってみるアル」
lw´‐ _‐ノvb
内藤の霊力がかかった一輪車にまたがったまま、シューは玉に飛び乗った。
ペダルを逆回転してテント内をスイスイ走り回って見せる。
(;`八´)「むむ! なかなかやるアル」
更にジャグリングの練習をしている男から棍棒を奪い取ると、それをお手玉みたいにしながら
玉から台へと飛び乗る。綱渡りの練習用の低い台だ。
シューは華麗に綱を渡り、真ん中あたりでくるくる回って見せた。
ぴたりと止まり、人差し指一本ですべての棍棒をキャッチする。
川
θ
θ
θ
lw´‐ w‐ノvσ
67 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:10:00.23 ID:vislvk/70
24.
シナーは夢中で拍手しながらシューに駆け寄って来た。
( `八´)「ハラショー! ワタシの目に狂いはなかったアル!
前は実力を隠してたアルか? 人が悪いアル!」
lw;‐ _‐ノv(ハラショー……?)
何人だこいつは。
( `八´)「君ほどの腕前なら大歓迎アル! 是非次の公演に出て欲しいアル!」
lw´‐ w‐ノvb
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして翌日、学校にて。
从'ー'从「ねえみんな~、シューちゃんサーカスのテスト受かったんだって~」
lw´‐ _‐ノvb
68 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:11:31.17 ID:vislvk/70
25.
ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そんなバカな……あのシューがまさか……」
从'ー'从「それでね~、次の日曜日の公演に出ちゃうんだって~」
キャーエーホントー ∩lw´‐ _‐ノv∩ シューチャンスゴーイ
友人の声援を一身に受けるシュー。
こりゃあ内藤に領収書の金額を弾んでやらないとな。
(´・ω・`)「すごいねえ、シューちゃん。カッコイイよ!」
lw´‐ 皿‐ノv
ξ#゚ー゚)ξ(あの女、明らかに私に当て付けてやがるわ! こっち見んな!)
*リ´・-・リ「ねえ、次の日曜日、みんなで見に行こうよ」
( ><)「それがいいんです!」
ξ ゚⊿゚)ξ「いいわ、私も行ってあげる。せいぜい恥かかないようにすることね!」
lw´‐ _‐ノvb
70 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:13:02.26 ID:vislvk/70
26.
そしていよいよ日曜日。
綺麗な舞台衣装に着替えたシューは、舞台裏で待機していた。
( `八´)「今やってる人体切断マジックが済んだら出番アル。シュー、頼んだアル!」
lw´‐ _‐ノvb
ノパ⊿゚)「シュー、コンセントレーションだぞ! 集中力がありゃあ何でも出来る!」
付き添いに来てくれたヒートに礼を言い、舞台袖から観客席を見る。
級友の顔がちらほらとあった。
マジックが済むと舞台は一度閉じ、綱渡りの準備に入った。
舞台袖の二階のせり出した部分から登場、反対側の袖に続く綱を渡るという段取りだ。
シューは綱の前に行ってみた。
lw´‐ _‐ノv「?」
綱の下に何かプールのようなものが設置されている。あれは何だ?
71 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:14:31.15 ID:vislvk/70
27.
lw´‐ _‐ノvσ
( `八´)「ん? 大丈夫アル、あれは大人しい種類アル」
どういう意味だ?
よーく眼を凝らすと、水中で何か動いている。
从'ー'从「シューちゃ~ん」
背後から渡辺がやってきた。
从'ー'从「シューちゃんの友達ですって言ったら特別に入れてもらえちゃった~。
頑張ってね~、緊張してない~?」
lw/_\ノv
从'ー'从「あれれ~、にらめっこするの~? いいよ~」
从/ー\从「にーらめっこしーましょ、わーらうと負っけよ、」
72 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:16:00.81 ID:vislvk/70
28.
渡辺が手で眼を覆っている間にシューは彼女の背後に回り込んだ。
从/ー\从「あっぷっ」
lw´‐ _‐ノvつ))) \从'ー'从/「ぷー」
思い切り両手で押してプールへ突き落とす。
从'ー'从「あれれれれれ~」
水面に落ちる寸前、プールから飛び出した巨大なシュモクザメが渡辺を顎に捕えた。
獲物を口にし、再び水中へと落下する。
バシャーン!
lw;‐ 皿‐ノv「!!!」
すぐにサメは水面から顔を出し、「ペッ!」と渡辺を吐き出した。
よほど味が気に食わなかったらしい。
73 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:17:32.08 ID:vislvk/70
29.
从'-'从「ふえええ~、体中にミシン目が出来ちゃったよ~」
全身に出来たサメの歯型を撫でている渡辺はさておき、シナーはシューから視線を反らした。
( `八´)「……まあ、落ちなきゃ何の問題もないアル。君ほどの腕前ならきっと大丈夫アルヨ!」
lw;‐ _‐ノv
……そうだ、内藤の霊力が込められている一輪車なら問題はない。
落ち着け、落ち着くんだ。
舞台が整い、いよいよシューの出番が近付いてきた。
司会者が表に立ってマイクを取る。
( ^Д^)「レディース・エーン・ジェントルメェーン!
これから登場するのは稀代の一輪車乗り、団長自らがその才能に惚れ込みスカウトした
妙技をどうぞご堪能下さい!」
74 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:19:01.54 ID:vislvk/70
30.
( `八´)「よし、行くアル!」
lw´‐ _‐ノv ドキドキ
lw;‐ _‐ノv「……?」
自分の一輪車がない。
キョロキョロしているとシナーが装飾された別の一輪車を取り出した。
( `八´)「今日はこっちを使うアル。舞台用の特別製アルヨ、ピッカピカアル」
lw´∵ノv
75 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:20:30.56 ID:vislvk/70
31.
lw;‐ o‐ノv「~~~!!!」
( `八´)「君が前に使ってたやつならちゃんと奥にしまってあるアル。
……コラコラ、どこ行くアルか。もう出番アル! どーんと行ってくるアルヨ!」
取りに行こうとしてもシナーが離してくれない。
シューは舞台袖から表に放り出された。
lw;‐ _‐ノv
観客席からは割れんばかりの拍手と声援。
( ><)(*゚∀゚)*リ´・-・リ(´・ω・`)「シューちゃん、頑張れ~」
ξ ゚⊿゚)ξ「フンだ。落っこちちゃえ」
暇人どもが! 律儀に見に来てるんじゃあないッ!!
76 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:22:03.84 ID:vislvk/70
32.
シューは必死に内藤の姿を探した。
チケットをあげたから人間に化けて来ている筈だ。
彼に何とかサインを送って、改めて霊力をかけてもらえば……
( ´ω`)
いた!
( ´ω`)「ZZzzz……ムニャムニャ、大福うめえお……」
lw;‐ 皿‐ノv「!!!」
でも寝てやがる。
( `八´)「何やってるアル! 早く行くアル!」
舞台袖からお叱りを受ける。
シューは仕方なく一輪車にまたがった。
77 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:23:30.26 ID:vislvk/70
33.
lw;‐ _‐ノv(コンセントレーション……コンセントレーション……)
ヒートのセリフを思い出す。
集中力さえありゃあ何でもできる筈だ。
全身全霊全神経を込めてシューはペダルを踏み込んだ。
lw;‐ _‐ノv「よっ」
台からロープへ。
フラフラではあるが少しずつ前へ進んで行く。
油汗が額から頬へ流れ、垂れて下のプールに落ちた。
lw;‐ o‐ノv「うわっ」
途中、バランスを後ろにかけすぎて倒れそうになった。
何とか腕を振って体勢を立て直す。
78 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:25:01.18 ID:vislvk/70
34.
舞台袖では司会者プギャーとシナーが成り行きを見守っていた。
( ^Д^)「本当にあの子、才能あるんですか? 私にはドヘタに見えるんですが……」
( `八´)「君はまだまだ若いアル。あれはわざと下手に見せているアル」
( ^Д^)「?」
( `八´)「そうすることで観客を故意にハラハラさせてるアルヨ。あの子、想像以上にやるアル」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
観客が固唾を飲む中、シューはゴールまであと僅かのところまで来ていた。
あと、1m……あと、80cm……もうちょっと、もうちょっと……
lw;‐ o‐ノv「おりゃああああ!!」
最後の数センチを気合いと共に乗り切る。
シューはゴールの台の上に一輪車ごと倒れ込んだ。
79 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:26:30.07 ID:vislvk/70
35.
念願の喝采をシューはうつ伏せにへばったまま聞いていた。
夢は叶ったが、内心に渦巻くのは「もうコリゴリ」ってヤツだ。
lw´‐ _‐ノv ゼェゼェ
lw´‐ w‐ノvb
それでも何とか上半身を起こして親指を立て、スタンディングオベーションの観客に応える。
( ><)(*゚∀゚)*リ´・-・リ(´・ω・`)「シューちゃん、カッコイイ~」
ξ ゚⊿゚)ξ「ちぇっ。つまんないの」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
公演が終わり日が暮れた頃、シューとシナーはテント裏にいた。
( `八´)「辞めるってどういうことアル! 君ならきっと世界中でスターになれるアル!」
lw´‐ _‐ノv「……」
80 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:28:00.84 ID:vislvk/70
36.
シューが振り向くと、向こうでクラスメイトとヒートが彼女を待っていた。
( `八´)「そうアルか……友達や家族と別れたくないアルか。残念アル」
lw´‐ _‐ノv ペコリ
( `八´)「別に謝る必要はないアル。ま、おかげで今日の公演も大盛況だったし、いいアル」
lw´‐ _‐ノv
向こうから人間に変身した内藤が走ってきた。
壷だけは消せないので手に抱えている。
( ^ω^)「お嬢さーん!」
lw´‐ _‐ノv「!」
( ^ω^)「いやーカッコ良かったですお! 泣けましたお!
特にあの……えーと……綱渡りしながら金魚を飲み込むとことか!」
涎の跡を擦りながら、内藤はさもずっと起きて見ていたかのような口調で言った。
81 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/03(土) 22:29:30.79 ID:vislvk/70
37.
lw#‐ 皿‐ノv
(;^ω^)「え?! 寝てた? そんなワケないですお、お嬢さんの晴れ舞台で僕が寝てるなんて」
lw###ノv
シューは内藤が片手に抱えている壷を、自分の一輪車でぶん殴った。
壷と体が繋がっている内藤は引っ張られ、一緒にどこかへ飛んでゆく。
(;゚ω゚)「あーーー!!!」
壷は奥にあるプールに落ちた。
シュモクザメが何かを噛み砕く音がする。
#1はこれでおしまい。
#2に続く。
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