7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:10:27.30 ID:
s36DJm3MO メイドロボット曰く、普段僕が着ている服は皺が寄っていたりシミがついていたりと、なんか清潔感がない。
だから家にある服全てを洗濯機に一度に押し込んで色々したら、
メイ ゚⊿゚)「こんなことに…」
('A`;)「うわ、洗濯機って使い方次第で凶器になるのな」
ボロ雑巾が出来上がったそうだ。
メイ ゚⊿゚)「申し訳ございません…」
('A`;)「あぁ、うん…。じゃあこの服の処分よろしく…」
メイ ゚⊿゚)「はい…」
ボロ布を腕いっぱいに抱えたメイドロボットを部屋から出し、僕はパソコンに向き直った。
服を注文しなければ、明日着る服がない。
いつも通りにネットに接続し、配達サービスを請け負っている衣料品店のページに飛ぼうとした。
('A`)「あれ?」
いくら待ってもパソコンの画面には、見慣れた検索エンジンのロゴが出て来ない。
何度やり直しても、ネットに繋がらない。
携帯なんて持っていないので、パソコンが使えなくなったら僕はライフラインを断たれる事になる。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:12:03.26 ID:
s36DJm3MO('A`;)「え、何で?」
何度も何度もサーバーの反応を待った。
でも結局、パソコンの画面に、お馴染みのロゴが現れる事はなかった。
サーバーの方で何かトラブルでもあったんだろうか。
('A`;)「………」
('A`)「仕方ない」
服を毎日替えなければ死ぬという訳ではない。
心地は悪いけど、ネットが復旧するまで待とう。
メイ ゚⊿゚)「ドクオ様、御召し物の件でございますが…」
('A`)「あぁ、なんか今ネット使えないみたいだから復旧するまで待つ事にしたよ」
メイ ゚⊿゚)「それまで、その服でいるおつもりですか?」
('A`)「仕方ないだろ」
メイ ゚⊿゚)「………」
メイドロボットの視線が僕の服に移る。
何か物言いたげな表情だ。
メイ ゚⊿゚)「…ドクオ様、服を買いにお外に出てみてはいかがでしょうか?」
('A`;)「外に? 無理無理、外怖い。人怖い」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:13:30.55 ID:
s36DJm3MO 突然何を言い出すかと思えば、このメイドは…。
僕はめちゃくちゃ人が苦手だって、知ってるだろ?
メイ ゚⊿゚)「お外に出てみてはいかがでしょうか」
('A`;)「いや、だからさ…」
メイ ゚⊿゚)「お外に出てみてはいかがでしょうか」
('A`;)
メイ ゚⊿゚)+
**********
**********
メイドの視線に根負けして、僕は渋々出かける用意を始めた。
行き先は、一番家から近い衣料品店。
さっさと買って、さっさと帰るつもりだ。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:15:40.89 ID:
s36DJm3MO('A`;)「うぅ、平日の昼間だってのに何でこんなに沢山人がいるんだよ」
店の中は、親子連れやらカップルやらで溢れていた。
「いらっしゃいませ」という店員の元気すぎる声に迎えられ、僕は早足で店の奥へ急ぐ。
('A`;)「あぁ、やっぱ人は苦手だ。ネット復旧するまで待ってりゃ良かったよ」
店員がいない店の端で、独り言を呟いた。
冷や汗が凄い。
挨拶されただけで冷や汗が出るというのも考えものではあるな。
よし、さっさと買って帰ろう。
こんなリア充だらけの世界にいたら僕の身が持たないよ。
「君は、世間で言う引きこもりニートか?」
('A`;)そ
――周りには誰もいないと、そう思ってた。
「なにも取って喰いやしないよ、私は『明らかに見た目が引きこもりな男が外にいる』という事実に興味があるのであって、
君自体には何の興味もないから安心してほしい」
だけど、僕の伸ばした手の先には女の人がいた。
僕のいる通路とは反対側から、ハンガーに掛かっている服を掻き分けて頭だけ覗かせて。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:17:45.33 ID:
s36DJm3MO(゚A゚;)「っぎゃああああああ!!!」
lw;´‐ _‐ノv「うわぁ驚いた、なにも叫ばなくていいじゃないか。ちょっとしたインパクトを与えただけだろう」
彼女は些か焦ったように首を引っ込め、通路の向こう側からこちらへやって来た。
『ちょっとしたインパクトを』、と言っていたけど、あれは『ちょっと』じゃないよな。
lw´‐ _‐ノv「で、答えは?」
('A`;)「え、あ、え…?」
歳の頃は僕と同じ20くらいだろうか。
女の人にしては細めの瞳を、彼女は僕に真っ直ぐ向けている。
lw´‐ _‐ノv「『え、あ、え…?』……随分と難しい返答だね、私にはちょっと難解過ぎて分からないな。
是非とも、もう少しかみ砕いた表現をしていただきたい」
lw´‐ _‐ノv「今の言葉の『間』と、意味深な3文字の中に、『私は引きこもりニートである』と証明する要素があると考えていいだろうか?」
('A`;)「ええええっと、あ、あなたは、あなたは何なんですか、いきなり、ショッキング、な、登場、して」
lw#´‐ _‐ノv「質問を質問で返すなと、ママや先生に言われなかったか!?」
('A`;)「ひっ! ごごごごめんなさいすいません!」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:20:19.91 ID:
s36DJm3MO 名も知らない女の人に謝るのに精一杯で気がつかなかったけど、僕らの周りには沢山の人だかりが出来ていた。
さっきの絶叫で何事かと見に来た野次馬達だ。
lw´‐ _‐ノv「で('A`;)「ひひ引きこもりニートですすいません! 人が苦手なんです! 人が苦手なんです!」
とにかく、頭の中はパニックだった。
どうしたらこの人だかりの中から抜け出せるか、どうしたらこの変な女の人から逃げられるか、そればかりを考えていたと思う。
何しろ頭の中は真っ白で、気がついたら僕は沢山の人の視線に押し潰されてしゃがみ込んでいた。
lw´‐ _‐ノv「そうか、君は人が苦手なのか」
女の人がぽつりと呟いたのが、頭上から聞こえた。
僕は何度も頷く。
lw´‐ _‐ノv「だそうだ。悪いけど、君たちどこかへ行ってくれないか」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:22:21.95 ID:
s36DJm3MO 正直、あなたもどこかへ行って欲しい。
彼女が人払いしてくれたお陰で、僕はようやく顔を上げられた。
人払いしてくれた事に関しては感謝する。
lw´‐ _‐ノv「む、凄い汗だな」
立ち上がった僕の顔を見て、女の人は少し驚いたように目を丸くさせた。
lw´‐ _‐ノv「ほれ、使うといい」
彼女が差し出したのは、真っ白なハンカチ。
僕はそれを大人しく受け取った。
lw´‐ _‐ノv「悪いことをしたな。人が苦手だというのに、注目を集めるような事になってしまった」
('A`;)「も、もういいですよ」
lw´‐ _‐ノv「…君はニートだと言っていたが、やっぱり働いていないのか?」
('A`;)「は、働いてないです」
lw´‐ _‐ノv「……」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:25:26.39 ID:
s36DJm3MO('A`;)「こ、このハンカチ、洗って返します、んで、よろしければ、れ、連絡先、を、教えて、ください」
無職であるとカミングアウトした途端に黙り込んでしまった女の人は、連絡先を尋ねた途端、突然僕の方に向き直る。
その表情は厳しく、焦っているようにも見えた。
lw´‐ _‐ノv「君、勇者法案を知ってるよな?」
まさか、連絡先を聞いたはずのこの流れで『勇者法案』についての話が来るとは思わなかった。
僕は少し面食らい、それでも頷く。
女の人は依然として厳しい表情のまま、話を続けた。
lw´‐ _‐ノv「何でもいいから、勇者の称号を貰う前に働け。自宅警備員なんかじゃ『仕事』として認められないぞ」
('A`;)「な、な、何でそんなこと…」
lw´‐ _‐ノv「実はだな、私は政府関係者だ。だから勇者法案についての政府の本当の狙いも知っている。
今は詳しくは言えないが、とにかく一刻も早く働くんだ」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:27:54.19 ID:
s36DJm3MO('A`;)「な、な、」
冗談を言っているのだろうか?
それとも、彼女は本当に政府関係者なのだろうか。
それにしては随分と…
('A`)「変な人だ…」
lw´‐ _‐ノv「何か言ったか?」
('A`;)「い、いいえ。あ、ぼ、僕そろそろ帰らないと! ば、バイトとか探さなきゃならないし!」
lw´‐ _‐ノv「…そうか、では私も帰る事にしよう。と、その前に、君の名前を聞いてもいいか?」
('A`;)「う、鬱之宮ドクオです」
lw´‐ _‐ノv「ドクオ、だな。ではドクオ、また縁があったら会おう」
ひらひらと手を振り、女の人は店から去って行った。
不思議な人だったな。
できる事ならあまり会いたくはないけどさ。
**********
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:31:57.85 ID:
s36DJm3MO**********
――――『勇者法案についての政府の本当の狙い』とは、一体何だろう。
ニート勇者を沢山作ってラウンジに特攻させる事で政府に得があるとすれば、金喰い虫の減少?
そもそも、ラウンジの『魔王』を僕は一度も見たことがない。
テレビで映った事も、記憶の限りでは一度もないように思う。
('A`)「勇者法案…」
何の考えもなしに思い付きで可決されたものだと思っていたけど、もしかしたら深い深い考えがあるのかもしれない。
もしかしたら、僕はとんでもない事に巻き込まれようとしているのかもしれない。
( ^ω^)「君も、ニートですかお?」
家に帰る途中、信号待ちの為に立ち止まっていたら、不意に隣から声を掛けられた。
今日はよく声を掛けられる日だな。
恐る恐る視線を横に移してみれば、そこにいたのはガタイのいい背の高い男。
彼の隣にいるのは彼女だろうか?
金髪を二つに結っている、気の強そうな女の人もいた。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:36:51.87 ID:
s36DJm3MO('A`;)「は、はい」
( ^ω^)「仕事、してますかお?」
('A`;)「し、してないですすいません! 生きててすいません!」
( ^ω^)「じゃあ…」
これ以上誰かに何か言われる前に、僕は信号が青に変わると同時に走り出した。
目指すは、自分の家だ。
**********
**********
メイ ゚⊿゚)「お帰りなさいませ、ドクオ様」
家のドアを開けると目の前にはメイドロボットがいた。
恭しくお辞儀し、彼女は僕の両手を見る。
メイ ゚⊿゚)「…ドクオ様、御召し物の方は」
('A`;)「あっ!!」
色々ありすぎて、外に出た当初の理由をすっかり忘れていた。
メイドロボットは呆れた表情を浮かべ、玄関に倒れ込んだ僕の身体を引きずってリビングまで運ぶ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:39:28.62 ID:
s36DJm3MOメイ ゚⊿゚)「メイド服でよろしければ、私の…」
('A`;)「あ、うん、大丈夫だから、そんな気を遣わなくていい。それより、メイドさん」
メイ ゚⊿゚)「何でしょうか」
('A`)「ラウンジ国について、君の知ってる事を教えてくれないかな」
僕の言葉に、メイドロボットはにっこり微笑んだ。
これだけ表情豊かでも人間じゃないなんて、一昔前までは信じられなかっただろうな。
メイ ゚⊿゚)「ドクオ様、この国VIPは、強力な妨害装置によって外敵から護られているというのはご存知ですか?」
('A`)「あぁ、なんか昔聞いた事があるな。機械文明やらが伸びきった辺りに、この国を包むようにしてバリアが張られたって」
メイ ゚⊿゚)「そうです。そして、この国の他にも同じような国家が幾つもあり、それらは独立した進化を遂げているみたいです」
メイ ゚⊿゚)「例えば、VIPは機械文明が発達しているけれど、東にある2ch国は芸術が発達している、
というように、それぞれの国にはそれぞれの特色があります」
メイ ゚⊿゚)「ラウンジというのは、国の外にある世界。つまり、このVIPという繭の外は全てラウンジの領域」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:42:28.32 ID:
s36DJm3MOメイ ゚⊿゚)「ラウンジには『魔王』が住まう王国があり、方々は亜人が常に徘徊しているそうです」
メイ ゚⊿゚)「ラウンジとVIPは特に仲が悪く、時折亜人がVIPに侵入しては悪さをするとか、機械技術を盗んで行くとか、
良くないことばかりをしていくようです」
メイ ゚⊿゚)「以上が、VIP政府が配信しているラウンジの情報です」
メイドロボットの話が終わった。
話を聞いたはいいが、さっぱり意味が分からない。
('A`)「簡単に言うと?」
メイ ゚⊿゚)「繭に護られているVIPの周りには、ラウンジから送られる怖いものが沢山いる、という事です」
メイ ゚⊿゚)「勇者になった人は、ラウンジから送られる怖いものを倒して、ラウンジのボスを倒すのが役目なのだと思います」
('A`)「よく分かりました。じゃあ、その話が嘘だとしても本当だとしても、僕は形だけでも仕事をした方がいいんだな、きっと」
メイ ゚⊿゚)「そうですね」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:44:24.49 ID:
s36DJm3MO メイドロボットを家事に戻らせ、僕はとりあえずパソコンで仕事を捜すことにした。
いつの間にか、サーバーの不調は直っていたらしい。
今度は順調にネットに接続出来た。
('A`;)「え、マジかよ…」
だけど、僕は些か行動するのが遅すぎたらしい。
仕事を紹介するサイト、こんにちはワークはもう役に立たなかった。
どこにも求人がない。
『勇者法案』についてのニュースが流れた途端に、世界中の純粋な心を持ったニート達が一斉に仕事を探したんだろう。
どこにも求人がないどころか、そこら辺のコンビニのアルバイトすらも募集していない状況だった。
('A`;)「マジかよ……。これじゃどうしようもないじゃないか」
不意に、服屋で会ったあの女の人が言っていた『自宅警備員じゃ政府は認めてくれない』という言葉を思い出した。
これ、相当ヤバい状況じゃないのか?
僕は、いつも荒らしていた掲示板を覗いてみた。
やはり、『職がない』というスレッドが至る所に立っている。
中には友人知人のコネで仕事を貰えた、という書き込みがちらほらとあった。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:45:31.62 ID:
s36DJm3MO 僕も両親に仕事がないか頼んでみるか…?
でも、本当にそこまでしなければいけないのか?
そもそも、本当にニート達を集めてラウンジに放り出すなんて大がかりな事を政府がやるだろうか?
『国というものが何だかよく分からなくなってしまった』なんて言うような頼りない政府が、たかがニートの為にそこまでやるだろうか?
パソコンの電源を消し、今日出会った人を思い出してみた。
自称、政府関係者だという服屋で会った女の人。
結局連絡先どころか、名前すらも知らないままだ。
そして、帰って来るときに声をかけてきた男の人。
『勇者法案』という単語に反応したみたいだから、あの人もニートなのだろうか?
リア充に見えたけど。
('A`)「はぁ、どうすればいいんだ…」
少なくとも、明日の午後1時までには何かしらの職についていなければならない。
さもないと、僕は『勇者』となってラウンジに放り出される羽目に…。
('A`;)「それは嫌だ、もう少し探さなきゃ!」
パソコンを起動させ、僕はその日ずっと職を探して過ごした。
メイドロボットが持ってきてくれた紅茶に手をつけることなく、ずっとずっとキーボードを叩いて仕事を探す。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:46:36.24 ID:
s36DJm3MOでも、
結果は散々だった。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:48:44.51 ID:
s36DJm3MO 時計の針はいつの間にか12を大きく過ぎ、外からはスズメの涼やかな声が聞こえて来る。
掲示板の書き込みにも、すっかり余裕がなくなっていた。
『何でもいいから仕事をくれ』、『どこにも求人がないんだが』、『ラウンジに放り出されるまであと10時間を切ったわけだが』…。
それらのスレッドの勢いは、明け方だというのにも関わらず、かなりの速さを保っていた。
みんな余裕なんて初めから無かったのかもしれないな。
僕もだけど。
メイ ゚⊿゚)「ドクオ様、少しお休みになられてはいかがでしょう…」
('A`)「そんな暇はないんだよ。あと少ししか時間がないんだ」
心配そうにパソコンの画面を覗いて来るメイドロボット。
時折、励ましの言葉をかけてくれる。
('A`)「……ダメだ、もうどこにもない」
メイ ゚⊿゚)「ドクオ様、あきらめないでください」
('A`)「でももう1時間しか…」
時間の流れと比例するように余裕がなくなっていく掲示板の書き込み。
10時間やってもダメだったんだ、あと1時間で仕事が見つかるわけがない。
ラウンジに放り出され、亜人に殺される未来がいとも簡単に想像できる。
自分の事だけど、不思議と何故か今も現実感は全くない。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:50:37.93 ID:
s36DJm3MOメイ ゚⊿゚)「ドクオ様…」
('A`)「家事、色々やってくれて本当にありがとう。時々ドジやらかしてたけど、助かってたよ」
メイ ゚⊿゚)「そんな、私なんて」
('A`)「母さん達に電話するよ。メイドさん、君に最後の命令だ。お茶を煎れて来てほしい」
メイ ゚⊿゚)「…分かりました」
今にも泣き出しそうな顔のメイドロボットを台所へ追い出し、僕は電話を手にした。
実家の電話番号を頭の中で復唱し、ボタンを押す。
プルルルル、プルルルル
何度かの呼び出し音の後、聞こえて来た声。
何かを言われる前に、先に名乗った。
('A`;)「あ、もしもし、僕、ドクオだけど…『おかけになった電話番号ば、現在使われてry』」
…………。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:52:42.51 ID:
s36DJm3MO どうやら、本当に僕は母さん達の汚点だったらしい。
家の電話番号なんて変えるの面倒くさいのに、わざわざ変えさせるほどに。
('A`;)
メイ ゚⊿゚)「ドクオ様、お茶が入りました」
電話の子機を持ったまま立ち尽くす僕に、メイドロボットが近付いた。
メイ ゚⊿゚)「どうぞ、おめしあがりください」
振り返ると、そこには湯気の立つカップ。
今回ばかりはドジしなかったのか、メイドさん。
君の成長が感じられるよ。
('A`)「熱いけど、美味しいよ」
メイ ゚⊿゚)「ありがとうございます」
時計の針は、もうすぐでVIP中のニートの運命を変える1時を指すだろう。
そして僕は、恐らく政府の役人に連れて行かれてこの家を後にする。
その後にラウンジに追放され、亜人に殺される…。
どう転んでも最悪のシナリオだ。
ハッピーエンド意外の終わり方は好かれないよ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:54:20.29 ID:
s36DJm3MOメイ ゚⊿゚)「ドクオ様…」
沈んだ声で、メイドが僕の名を呼んだ。
時計を見上げると、時間は12時55分。
あと5分で一体何が出来ようか。
メイ ゚⊿゚)「私は、ドクオ様のご武運を祈っております」
('A`)「はは、無理無理。今までずっと怠けて来てたんだ、少し走っただけでも疲れるこんな身体で、魔王なんて倒せる訳がないよ」
4分
メイ ゚⊿゚)「そんな事はございません。VIP中の『勇者』様と一緒に立ち向かえば、倒せないはずがありませんよ」
('A`)「無理だって、ニートってのは総じて対人スキルが皆無なんだから、協力なんて出来る訳がない」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:55:19.44 ID:
s36DJm3MO3分
メイ ゚⊿゚)「出来ないやれないと言っているうちは、出来ませんよ。絶対に上手くいきます。私が保証いたします」
('A`)「どうせすぐに殺されるよ…」
2分
メイ ゚⊿゚)「私は、ドクオ様の帰りをここで待っています。必ず、お戻りください」
('A`)「……努力はするよ」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:56:02.05 ID:
s36DJm3MO1分
メイ ゚⊿゚)「どうか、ご無事で」
('A`)「ありがとう」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:56:45.74 ID:
s36DJm3MO ―――1時
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:58:43.46 ID:
s36DJm3MO 今日ほど緊迫した1時を迎えた事が今まであっただろうか。
(;'A`)
家に異常はない。
パソコンをちらりと見た。
掲示板の向こうの奴らの身にも、異変はないらしい。
まだ1時になったばかりだというのに、勇者法案はやっぱりハッタリだったん だという書き込みも見受けられた。
メイ ゚⊿゚)
('A`)
小首を傾げていたメイドと目が合う。
そして、それと同時に、
('A`)「あれ?」
ぐにゃり、
視界が大きく歪んで、目の前が真っ暗になった。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 20:59:31.16 ID:
s36DJm3MO('A`)ドクオは勇者になったようです
‐2‐『人が苦手な勇者候補』終わり
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:01:08.48 ID:
s36DJm3MO支援ありがとうございます。
最初の方、さるさんに引っ掛かったらどうしようかと思った
何かありましたらどうぞ
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:02:04.93 ID:bRftKGFqP
乙、期待してる
2日に一度ペースで投下よろ
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:03:03.33 ID:
s36DJm3MO>>45
出来るだけ頑張りますwww
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:08:54.06 ID:ru2avJSnO
乙です
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:14:32.64 ID:OF981eGE0
乙
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/12(月) 21:16:39.66 ID:bixCT/yT0
乙
久々に期待できる新人
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