2 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:28:03.73 ID:
yW3GiEVx0 避けろ
今度こそ、避けろ!!
多分もう一撃喰らったら、終わりだ……!
(;メ'A`)「…………」
『息を殺して、相手を見て』
(;メ'A`)「……」
『殺気を感じ取るのよ。殺気を感じたら、とにかく』
(;メ'A`)「(逃げる!!)」
目の前から轟、と唸り声を上げて向かってくる攻撃を避けようと、
思い切り地面を蹴る。
も、その努力も虚しく―――
3 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:29:50.35 ID:
yW3GiEVx0(#);Aメ)「―――痛っってぇ!!」
楯がわりにしていた机ごと、僕はツンに吹っ飛ばされた。
知ってたか?
本物の鞭って、洒落にならないくらい痛いってこと。
4 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:30:48.14 ID:
yW3GiEVx0('A`)ドクオは勇者になったようです
‐14‐『強』
5 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:31:53.07 ID:
yW3GiEVx0ξ ゚⊿゚)ξ「―――まだ遅いわね。まぁ最初よりは反応もよくなったけど」
(#);Aメ)「そりゃ良かったよ」
廃棄街は杉浦城の片隅。
さっき僕を吹っ飛ばしたツンは、満足そうに頷いた。
その横には、ボロ雑巾のようになったブーンが転がっている。
―――事の発端は、僕の言葉にあった。
('A`)「強くなるには、どうすればいいんだろう」
VIPから転送されて来た死者たちを、その場にいた勇者たちで弔った後。
僕は、誰も明確な答えを知らないであろう事を呟いた。
川 ゚ -゚)「?」
('A`)「僕はなんにも出来ないんだ。
銃も上手く撃てないし、剣を振り回す筋力も無い」
('A`)「モララーみたいに素早く動ける訳でもないし、
クーみたいに冷静でいられる訳でもない」
6 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:32:58.94 ID:
yW3GiEVx0('A`)「思い切り殴られただけで動けなくなる、ただの人間だ。
でも、絶対に勝たなきゃならない理由がある」
('A`)「だから、強くなりたいよ」
魔王どころか、その手下にすら何も太刀打ち出来なかった……
そんなのが『勇者』なんて呼ばれるようになるんだから、
何が起きるか分からない世の中になったもんだ
( ・∀・)「……なんか……こう……タイヤを身体に括りつけて、走り回れば?」
ξ ゚⊿゚)ξ「強制ギプス付けるとか」
川 ゚ -゚)「山に篭って滝に打たれるとか」
('A`)「真面目に」
ξ ゚⊿゚)ξ「一朝一夕に強くなるったって、限度があるでしょ……」
ξ ゚⊿゚)ξ「……そうね、体力が無いなら今は『強さ』を求めるよりも、
敵の攻撃を受けない事に徹した方がいいわよ。
特にアンタみたいな、貧弱な奴はね」
('A`)「攻撃を受けない?」
7 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:34:16.15 ID:
yW3GiEVx0ξ ゚⊿゚)ξ「そう。回避よ。常に狙われてるって緊張感持ってれば、
出来ないことは無いわ」
……簡単に言ってくれるけど、
そうそうたやすく緊張感持ち続けられたら、またんきの攻撃だって避けられたはずだ
簡単なようで、かなり難しいぞ、それ。
ξ ゚⊿゚)ξ「……回避なら協力してあげるわよ。
今から私がアンタを攻撃するから、とりあえず避けてみなさい」
('A`)「え」
ξ ゚⊿゚)ξ「言っておくけど、手加減は一切しないわよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「本気出しちゃうから―――ね!!」
次の瞬間、目にも留まらぬ速さで僕のすぐ脇を鞭が掠めていった。
……あ……あれ、直撃したら死ぬんじゃ……
大丈夫なのかこれ?!
(;゚A゚)「」
ξ ゚⊿゚)ξ「今みたいな感じでやるわよ。避けなきゃ、かなり痛いと思う」
8 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:35:27.11 ID:OvpouDTo0
きてるううううううううううう
随分長い推敲だったじゃないかww
9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:35:48.27 ID:
yW3GiEVx0(;゚A`)「は、はぁ……」
( ^ω^)「ツン、ドクオのついでに僕も狙ってほしいお」
( ^ω^)「あ、勘違いすんなお? 僕もドクオと一緒だお。
魔王倒すために強くなりたいんだお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「いや、本当に」
( ^ω^)「……本当だってば」
魔王を倒すため。
復讐するため。
VIPに戻るため。
勇者をひとりでも多く返すため。
みんなそれぞれに、戦う理由がある。
いろんな理由はあれど、『魔王を倒す』という目的は一緒だ。
だから、「強くなりたい」と思うのも当たり前。
強くなきゃ、戦えないんだから。
10 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:37:08.14 ID:
yW3GiEVx0ξ ゚⊿゚)ξ「ほら、まだまだやるわよ。立ちなさい」
(;'A`)「は、はい」
(;^ω^)「ちょっと休憩……」
ξ ゚⊿゚)ξ
(;^ω^)「……は、ダメですおね! すいませんでしたお!」
**********
**********
(#)A`)「全ッ然鞭が見えないよな。
攻撃してくるっていうのは、なんとなく分かるようにはなってきたけどさ……」
(#)ω^)「反射神経がどうにもならなきゃ、ずっとこのままだお……」
修行と呼べるかすら怪しい『修行』に数日費やしても、
僕とブーンはツンの鞭に苦戦していた。
あれ、ニートに避けろと言うには難易度高すぎだろ……
常識的に考えて……
11 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:38:09.23 ID:
yW3GiEVx0ξ ゚⊿゚)ξ「だっらしないわね。強くなりたいって言ってたのは、どこの誰?」
(#)A`)「鞭があまりにも速すぎて見えないです。避けれません」
ξ ゚⊿゚)ξ「そりゃあそうでしょ。
遅かったら簡単に避けられちゃうじゃない」
(#)ω^)「すげぇ痛いんだけど」
ξ ゚⊿゚)ξ「そりゃあそうでしょ。痛くなければ覚えないじゃない。
ほら、あんたらの武器は飾りなの?
避けることは出来なくても、防ぐことは出来るでしょ」
ツンの鞭がまた一回、すっかり油断していたブーンの頬を捉えた。
ものの見事に吹っ飛ばされ、杉浦城の床に叩きつけられるブーン。
ああ、痛い……痛いぞあれ……
ξ ゚ー゚)ξ「まぁ、そんなすぐに避けられるようになるなら誰も苦労しないわよ。
魔王の城まで続けていけば、きっと回避だけは鍛えられてるでしょ」
(#)A`)「そうかもしれないけどさ……。僕らは強くなりたいんだよ?
吹っ飛ばされてばかりじゃ……」
ξ ゚⊿゚)ξ「強くなるって言うけど、具体的にどう強くなりたいの?
『強さ』にも種類があるわ」
12 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:39:20.14 ID:
yW3GiEVx0ξ ゚⊿゚)ξ「攻撃が強いとか、耐久が強いとか。
どれも、体力がないと伸ばせないわ。
だけど今のアンタ達は、基本的に体力がない」
ξ ゚⊿゚)ξ「鞭で打たれるのが嫌だから、逃げるでしょ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「知らず知らずのうちに走り回るはめになるから、
体力も筋肉もそこそこ付くはずなのよ。……多分」
ξ ゚⊿゚)ξ「他の強さを伸ばすのは、それからね」
(;'A`)「……まぁ、すぐに強くなれるとは思ってないから、
それは別にいいけどさ……」
(;'A`)「……もしかして、僕らを追いかけ回すの、楽しんでる?」
ξ ゚∀゚)ξ「まっさかぁー。あんたらを容赦なく打ちのめさなきゃならないから、
私はとっても心が痛いわ」
(;'A`)「(めちゃくちゃ楽しんでるじゃねぇか……)」
(;^ω^)「(すっごい楽しんでるお……)」
本当は、修業なんてしてないで一刻も早く魔王の元に行きたい。
でも、今のままじゃ返り討ちどころか、魔王に会う事すらできないだろう。
13 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:39:32.78 ID:OvpouDTo0
なんというスパルタww
14 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:40:35.71 ID:
yW3GiEVx0だから、少しでも体力を付けようと、
毎日まいにち身体中に傷を作ってツンの鞭から逃げる。
それが『強さ』に結び付いてくれるかどうかは、分からないけど
……思えば、身近にこんなにも強い奴らがいたんだから、
最初から色々教えて貰えば良かったんだよな
( ^ω^)「そういえば、シュー達は?」
ξ ゚⊿゚)ξ「違う部屋で別メニュー。
強くなりたいのは、みんな一緒だもんね」
(;'A`)「別メニュー……?」
ξ ゚⊿゚)ξ「シューは飛び道具持ってるから、アンタらとは違う修業してるの。
クーとモララーが付きっきりで指導してるみたいよ」
そういえば最近、クーとモララーとシューさんの姿がないとは思ってた。
飛び道具……銃か。
……そういえば、僕も弟者にもらった銃があったな
15 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:41:47.30 ID:
yW3GiEVx0川 ゚ -゚)「あれ……お前、銃なんて持ってたのか?」
('A`)「うん。廃棄街に来る前に貰ったんだ。
良かったら、撃ち方とか狙いの付け方とか教えて欲しいんだけど」
銃の撃ち方はクー。
( ・∀・)「……またんきの攻撃すら避けられなかった俺が言うのもなんだけど、
相手の動きとかはよく見てた方がいいと思うよ」
('A`)「?」
( ・∀・)「例えば―――接近しなきゃ攻撃出来ないような敵とかは、
こっちから攻撃しなくてもたいていは近付いて来るだろ?」
( ・∀・)「カウンターって訳じゃないけど、
その瞬間って恰好のチャンスだと思うんだよね」
攻撃の基本はモララー。
ξ ゚⊿゚)ξ「ほら、油断しない!!」
回避はツンが、教えてくれる。
こんなに色々教えてくれる仲間がいるんだ。
少しずつでも、強くならなきゃ申し訳が立たない。
それもこれも全て、魔王を倒すため。
いくら鞭でぶっ叩かれても、苦じゃない。
いや、それでも痛いものは痛いけど。
16 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:41:59.69 ID:zvh1eRWUO
マジかよ!支援!
17 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:42:20.74 ID:OvpouDTo0
見えるぞ……銃を使おうにも全然上手くいかないドクオが……
18 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:42:55.75 ID:
yW3GiEVx0 **********
**********
(メメ)ω(#)「ツンに引っ叩かれすぎて前が見えねぇ」
(#)A`)「同じく」
―――『修行』は、廃棄街を離れた後も続いていた。
ξ ゚⊿゚)ξ「大袈裟ねぇ」
(メメ)ω(#)「全然大袈裟じゃないお……」
ξ ゚⊿゚)ξ「ほら、まだまだやるわよ」
(#)A`)「はい……」
( ・∀・)「大変そうだなぁ。ツンもドクオもブーンも、頑張れ」
ξ ゚⊿゚)ξ「アンタもやってみる? 回避」
(;・∀・)「そんな趣味はないから、遠慮しとくよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「あら残n……遠慮なんてしなくていいのに」
(;'A`)(残念って言いかけたぞ今……)
19 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:44:01.67 ID:OvpouDTo0
前が見えねえってしんちゃんかよww
20 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:44:48.99 ID:
yW3GiEVx0(;・∀・)「か、回避はまぁツンに任せとけば大丈夫だよな?
じゃあ、そろそろ『攻撃』の練習、してみるか?」
( ^ω^)「してみるお!」
('A`)「モララーが教えてくれるのか?」
( ・∀・)「俺で良ければね」
( ^ω^)「お! お願いするお!!」
( ・∀・)「魔王の城まではまだ遠いし、焦らずにやっていこう」
('A`)「分かった。……で、まず何をすればいい?」
( ・∀・)「ドクオ、これ」
モララーが、地面から何かを拾い上げた。
……何だこれ。木の棒?
こんなもので何しろっていうんだ?
( ・∀・)「それ、君の武器ね」
(;'A`)「へ?」
( ・∀・)「ブーンは剣とか銃じゃないのか。なら、そのままでいいや」
( ^ω^)「お?」
21 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:45:34.57 ID:
yW3GiEVx0( ・∀・)「今から、お互いに戦ってもらうよ」
は?
(;^ω^)「……え? 今から? ドクオと?」
( ・∀・)「そうそう」
(;'A`)「何で?」
( ・∀・)「『人』と戦うことに対して、慣れる為だよ。
人の形してるものに対しては、本人も気づかないうちに手加減してしまうらしい」
( ・∀・)「敵や魔王に手加減したら、こっちが殺られるからね」
( ・∀・)「ま、大丈夫だとは思うけど、万が一危なそうになったら、
全員で止めるから大丈夫。全力でやっちゃって」
……いきなりそんな事言われても……
そうそう簡単に仲間に攻撃なんか出来ないって……
ほら、ブーンだって戸惑ってるみた―――
(;^ω^)「ごめんお、ドクオ!!」
(;'A`)「ッ?!」
22 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:46:16.30 ID:
yW3GiEVx0 謝罪の言葉を叫ぶブーンの右手には、
僕の身長程もある長い鉄棒が握られていた。
ぶぅん
鈍い音と共に、鉄棒は僕の目と鼻の先を掠める。
(;'A`)「ちょ……いきなり本気かよ!」
(;^ω^)「きっと、本気じゃないと、この修業の意味はないんだと思うんだお!」
(;'A`)「そんなの分かってるけど……!」
長い鉄棒と、剣くらいの長さの木の棒。
武器からしても、体格からしても、こっちが不利すぎる……!
(;'A`)「っくそ!」
絶え間なく降り注ぐ、ブーンの鉄棒。
ツンのスパルタ訓練のお陰か、幸いまだ攻撃は浴びてない。
でも、多分逃げてるだけじゃダメなんだろうな!
23 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:46:27.58 ID:OvpouDTo0
ブーンの武器ってなんだ
24 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:47:15.51 ID:
yW3GiEVx0(;^ω^)「おっと!」
やっとの思いで振った棒は、鉄棒に難無く防がれた。
身体中に冷や汗が流れる。
(;'A`)「っ」
……思えば、ブーンも僕と一緒にツンの回避訓練を受けてたんだ
攻撃がお互いに当たらないのも、無理はない
(;^ω^)「うぉおぉおおー!!」
(;'A`)「わああああああ!!」
鉄棒と木の棒による、鍔ぜり合い状態。
武器の耐久性を考えたら、絶対にこっちの方が脆いはず……
(;^ω^)「っ」
(;'A`)「く……」
ミシミシと音を立てる、木の棒。
……これヤバいんじゃないの、折れるんじゃ?!
25 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:48:21.82 ID:OvpouDTo0
やばいってww
26 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:48:41.30 ID:
yW3GiEVx0( ゚ω゚)「おおおぉぉ!!」
咆哮を上げて武器に渾身の力を込めたブーンが、
こっちの木の棒をへし折った。
あ、ダメだこれは負けた―――
(;^ω^)「あ、ごめn (;#)A`)「ぁぐっっ!!」
―――顔面に、鉄棒をフルスイングされた事はあるだろうか。
痛いを通り越した領域が、そこにはある。
恨むよ、モララー。
**********
**********
(□'A`)「……」
―――目が覚めたのは、ヒロユキ街の宿だった。
……誰かが運んでくれたのか。
とりあえず、ブーンにフルスイングされた頬が痛い。
骨折とかしてたらどうするんだ。
ただでさえ整った顔じゃないと言われてきたのに……
27 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:49:31.34 ID:
yW3GiEVx0(□'A`;)「痛って……」
( -∀-)ZzzZz
( ‐ω‐)ZzzZz
隣には、物凄い体勢で寝てるモララーとブーンがいる。
あぁもう何なんだよこいつら
何でもっと静かにおとなしく寝れないの?
相変わらずモララーは寝相が最悪だし、ブーンはなんかもう……。
(□'A`;)「……」
あぁ、今何時だろう
外は暗いし、通りは静かだから、夜中かな。
何時間気絶してたんだ?
昼過ぎくらいにフルスイングされたんだから……大体10時間くらいか。
ありえねぇ。
28 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:50:21.37 ID:
yW3GiEVx0(□'A`)
……とにかく、完璧に目が覚めてしまった
気分転換に、また兄者にでも電話しようか
それとも、街をふらりと歩いて来ようか
(□'A`)「……」
……よし。
少しヒロユキ街を歩いて来よう。
(□'A`)
いつの間にか貼られていたガーゼを外して、そっと宿を出る。
街中には静かな音量で、緩やかなピアノの曲が流れていた。
石畳を適当に歩いていくと、やがて、噴水のある広場に出る。
あぁ、ここは見覚えがあるな。
シューさんから、勇者法案についての話を聞かされた場所だ。
最近の話なのに、なんだかもう懐かしい。
29 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:50:22.71 ID:OvpouDTo0
普通骨折するってww
30 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:51:45.98 ID:
yW3GiEVx0そのあと、メイドロボットの死を目の当たりにしたり……
モララーが本当はVIPの人間だと知ったり……短期間で、……いろいろあった。
('A`)「なんか、重大な話ばかり聞かされてきたからな……。
ちっとやそっとじゃ、驚かなくなってきた」
('A`)「……ん?」
―――噴水の縁に、誰かいる。
街灯でぼんやり浮かぶ後ろ姿、なんか見覚えが……
あれは……
('A`)「シューさん?」
……何してるんだ、あの人。
まだ見知らぬ勇者を待ってるのか?
何にしても、このまま放っといて宿に戻るのも気が引ける。
……話し掛けてみるか
31 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:52:42.17 ID:
yW3GiEVx0('A`)「―――シューさん」
lw;´‐ _‐ノv「え? あれ? ドクオじゃないか。
……何でこんな所にいるんだ?」
(;'A`)「それはこっちのセリフだろ……。
シューさん、こんな時間に何してたの?」
lw´‐ _‐ノv「…………」
lw´‐ _‐ノv「……祈ってた」
ぼそりと返ってきた答えは、……なんというか……
シューさんらしくない、答えだった。
('A`)「祈……?」
lw´‐ _‐ノv「今、この瞬間にも、傷付いて苦しんでる勇者がいると思うんだよ。
それなのに……私は安全な場所で、こうして生きてる」
lw´‐ _‐ノv「祈りなんてただの気休めなのは分かってるよ。
何でも願いを叶えてくれる神なんてものはいないし、
いくら念じても、思いが届かない事だって沢山ある」
lw´ _ ノv「……でも、何かしてないと、罪悪感で潰れそうになる。
今潰れてしまったら、多分もう二度と立ち上がれない」
32 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:53:17.99 ID:
yW3GiEVx0(;'A`)「……そんなに気にしない方がいい。
勇者をひとりでも多く助けたいから、魔王と戦うって決めたんだろ?
あまり気に病むと、それこそ本当に潰れるよ」
lw´ _ ノv「…………分かってる……」
(;'A`)「もう夜も遅いみたいだし、
そろそろ休まないと体力も回復しないから、宿場に戻ろう」
lw´ _ ノv「……」
lw´ _ ノv「……あの、」
('A`)「ん?」
lw;´ _ ノv「勇者法案を考えたのは、私だ」
('A`)「ああ、うん。……この前聞いたよ」
lw;´ _ ノv「ずっと気になってた……。
どうして……君は何も言わないんだ?」
(;'A`)「へ?」
33 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:53:47.05 ID:OvpouDTo0
シュー……
34 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:54:13.69 ID:
yW3GiEVx0lw;´ _ ノv「私のせいで君はここに来た。
それなのに、君は私に文句のひとつも言ってないだろう」
lw;´ _ ノv「それどころか、一緒に魔王を倒しに行こうとさえ言ってくれた」
(;'A`)「あぁ、うん、まぁ……」
lw;´ _ ノv「何も言ってくれないのが……怖くて仕方ないんだ。
どんな形でも、口に出して言ってくれた方が、楽で……」
lw;´ _ ノv「そんな訳はないんだけど、罵倒される度に、
なんか許された気がしてたから……」
lw;´ _ ノv「もちろん、そんな錯覚はしちゃいけないのは分かってる。
……けど……」
(;'A`)「……」
この追い詰められ様からして、
あの時、シューさんに何も言わなかったのは、どうやら間違いだったみたいだ。
『他の人に酷いことを言われただろうから、僕は何も言わない』
なんて、本当にただの同情だった。
35 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:55:22.38 ID:
yW3GiEVx0シューさんを苦しめているなんて考えもしなかった。
人の気持ちは難しいな……
僕は、本当に、ダメなままだ。
('A`)「ごめん」
lw´‐ _‐ノv「……いや、私こそご ('A`)「僕も最初は、勇者法案なんてものを考えた人に会ったら……」
('A`)「文句言ってやろうと思ってた。
たかがニートの為なんかにここまでする必要なんて無いだろうと思ったしさ」
('A`)「でも、シューさん言ってたろ? 『VIPの為』って。
人のことを考えて、それで決めた話なら、やっぱり僕なんかは何も言えないよ」
('A`)「それに、服屋で会った時シューさん、警告してくれてたじゃないか。
『働け』って」
lw´‐ _‐ノv「……」
('A`)「モララーとクーが代わりに色々言ってくれたし、
もう気にしてないよ。それに、」
('A`)「……ラウンジは地獄なんかじゃなかったって知れた。
脅威でしか無かった亜人の中にも、ツンみたいな奴がいると知れた」
('A`)「ここに来てから、辛いことばかり起きてると思ってたけど、
案外そんなことは無かったよ」
36 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:56:09.82 ID:
yW3GiEVx0('A`)「VIPでは殆ど人と関わらない生活を送ってたけど、
ここに来てからは色んな人と話したりするようになった。
そうしなきゃ、生きられないしさ」
('A`)「うん。だから、悪いことばかりじゃない」
悪い事といえば、……メイドロボットが壊れたこと。
そればかりはきっと、納得しきるには、かなりの時間がかかりそうだ。
勇者法案が存在しなかったとしたら、もしかしたらVIPの街も人もメイドロボットも、
壊れなくて済んだかもしれない。
過ぎたことは仕方ないと言えるほど、僕は出来た人間じゃないけど、
あまりその事に関して落ち込んでほしくはないんだ
落ち込まれる度に、あの恭順だった彼女を思い出すから。
悲しくて、いても立ってもいられなくなるから。
lw´ _ ノv「…………ごめん……ありがとう」
37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:56:54.81 ID:
yW3GiEVx0lw´ _ ノv「……君は、少し変わったよな」
(;'A`)「……変わった? どこが?」
lw´‐ _‐ノv「初めて会った時、君は、……こう言うのもなんだけど、酷かったよ。
ちょっと脅かしただけなのに、震えてしゃがみ込んで」
(;'A`)「あー……。うん、確かにまぁ……酷かった……」
lw´‐ _‐ノv「でも今は、違う。変わったよ。
そりゃあ今も頼りないけど、確かに変わった」
('A`)「……」
('A`)「そうかな」
lw´‐ _‐ノv「あぁ。前の君は、魔王に立ち向かえる可能性なんか万に一つもなかったけど……」
(;'A`)「(断言するのか)」
lw´‐ _‐ノv「……なんて言うんだろう。
顔はひっどいけど、姿勢的な意味で堂々としてきたというかな」
( 'A`)
(;'A`)「はぁ……」
lw´‐ _‐ノv「まぁ、いい方角に変わったとは思うよ」
38 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:57:36.06 ID:OvpouDTo0
メイドはロボ以上の存在だったんだな……
39 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:57:58.50 ID:
yW3GiEVx0 ようやく顔を上げたシューさんは、ぎこちなく笑っていた。
……うん、なんか……関係ない所でけなされた気もするけど……
まぁ……笑ってくれるならそれでいいか……
それに、自覚はないけど良い方に変われてるなら、
それに越したことはないんだし
('A`)「―――そういえば、シューさんの知り合いは廃棄街にいた?」
lw´‐ _‐ノv「いや、知ってる人はモナーくらいだった。
妹の遺体がないのだけが、救いだったな」
('A`)「妹さんがいるのか。なんか意外だな」
lw´‐ _‐ノv「あぁ。兵器開発の研究者だよ。素直な、自慢の妹だ」
安心したような表情で、シューさんは色々な話をしていく。
楽しそうだ。
こっちも安心した。
40 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:58:57.08 ID:
yW3GiEVx0「宿に戻ろう」というタイミングを逃したけど、
もう少しこのままでもいいか、なんて、ぼんやりと思った。
―――その選択は、決して間違ってなかったはず。
41 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:59:09.76 ID:OvpouDTo0
妹は誰だろう
42 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 15:59:30.50 ID:
yW3GiEVx0('A`)ドクオは勇者になったようです
‐14‐『強』
終了
43 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:00:55.75 ID:
yW3GiEVx0これ以上推敲しても無駄だと諦めたwwwwwwwww
こんな訳わかんねぇ時間に支援とかありがとうございました!!
また多分夜来ますwwwww
何かあったらどうぞwww
44 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:01:01.87 ID:OvpouDTo0
乙であった
短いと言いながらもそれなりにあるじゃないかww
45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:01:18.62 ID:cTrIF82sO
支援が間に合わなかったあああ
乙!
46 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:02:12.04 ID:OvpouDTo0
夜も来る……だと……?
試験勉強してる場合じゃないな
47 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:03:41.75 ID:zvh1eRWUO
また投下するだと…?乙
48 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:03:51.13 ID:
yW3GiEVx0>>44
31レスしかないから…
>>45
ありがとうありがとう
>>46
試験勉強優先しろwwwwww
49 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:28:08.91 ID:cfpQFkQwO
乙
50 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/25(日) 16:43:22.51 ID:c+TtmlGp0
おつ
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