長岡速報 |
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74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/11(金) 23:57:48.53 ID:aUalDh0W0
「死後の世界」が存在するか。 一に何かを足せば何になるかを考えるようなものであり、一に一を足して五にするようなものでもある。 全くの不明。 それでも僕は、それに興味を持った。 誰もが一度は通る道だろう。僕はまだ、その道の途中にいる。 生きる事への興味を失ったいつか、真っ先に浮かんだのは当然の様に自殺だった。 そして、僕を思いとどまらせたのは「無知」だ。 僕はまだ「生きる」事を学び終わっていない。 その状態で、仮に「死後の世界」とやらに行けたとしても、一抹の不安は残る。 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/11(金) 23:58:18.83 ID:aUalDh0W0 ――と、言うのは全て嘘かも知れない。 僕はただ、死ぬのが怖いだけなのかも知れない。 あるいは、本当なのかも知れない。 確実なのは、僕が余りに「無知」だという事だけだった。 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/11(金) 23:58:49.76 ID:aUalDh0W0 五話 さめのはじまり 「取り敢えず今日も、三時に公園で」。 あれから――「殺し屋」と対峙した夜から三日の時が流れ、最早夜のブランコは恒例となっていた。 まだ浅い付き合いの中で唯一僕が確信したのは、「彼女は変だ」という事。 僕を惹きつけたのも、それに違いない。 詰る所、僕の「計画」というのは、「変な人を集める」というだけのものだった。 現実に飽いてしまった僕は、ただただ退屈を凌ぐの為だけに空想の世界の住人を思わせる彼女に接触した。 ただそれだけの事だ。 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:00:24.41 ID:iwmczN020 ただそれだけの事で何が変わるでもない事は、流石の僕でも知っている。 「そんな事をして、何になるんだい?」 ( ・∀・)「……今日は”あの女”か」 頭の中に響く声を意識しないように、僕は家を出た。 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:01:10.34 ID:iwmczN020 僕の家から公園までの距離は比較的、というより奇跡的に近く、ゆっくり歩いても一分とかからない。 その公園と隣接している「眠らない街」までの距離も一様に近く、目的の場所に到着するまでには三分とかからなかった。 今日の標的は「占い師」。 偶然知っただけの存在に関わらず、軽く調べただけでかなりの情報に行き当たった。 僕が知らないだけで、随分と話題になっているようだった。 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:01:42.93 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「こんばんは」 ('、`*川「こんばんは……あぁ、ちゃんと生きてたんですね」 簡単な作りの椅子に腰掛け、軽い挨拶を交わすと、彼女は余り関心のないように言った。 対面に座る事で、昨日は見えなかった顔も、微かではあるがうかがい知れる。 噂に違わず随分と若いようで、唯一露出している両目は活気に満ちているように思えた。 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:02:13.18 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「今日はちゃんと占って欲しくて来ました。勿論、お金も払います」 ('、`*川「えぇ、喜んで。……何を視ましょう?」 ローブの奥の二つの瞳が、昨日と同じ、妖しい光を宿した。気がした。 ( ・∀・)「あー、良かったら色々聞いてみたい事もあるんですけど……」 ('、`*川「へぇ……構いませんよ?」 了承を得て、探りを入れる。 まずは世間話が出来る程度の雰囲気を作らなければならない。 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:02:47.47 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「じゃあ、お名前は?」 ('、`*川「”占い師に名前を聞くと死ぬ”って昔から言いますけど、良いんですか?」 ( ・∀・)「へぇ、それは怖い」 ('、`*川「……嘘ですけど。私は”ペニサス”って呼ばれてます」 世間話どころか、軽い冗談なら許されるようだった。 些か拍子抜けではあるが、変に警戒されるよりはいくらか良い。 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:03:17.89 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「へぇ、変わったお名前ですね。どんな字を書くんですか?」 ('、`*;川「あだ名ですよ」 僕が笑って「冗談ですよ」と返すと、彼女も笑った。 会話は軽快に進む。 僕の中の「占い師」像からはかけ離れては行くものの、ハリボテの「計画」は順調だ。 ( ・∀・)「ペニサスさんには未来が見えるんですか?」 核心に迫る僕の問いに、彼女は「まさか」と答えた。 ('、`*川「そんな事が出来るなら、占い何かしなくても億万長者でしょう?」 彼女の言う事はもっともだった。 ただ、「占い師」らしからぬ返答ではあるが。 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:05:29.28 ID:iwmczN020 ('、`*川「私に見えるのは……そう、”式”です」 ( ・∀・)「ほう……」 会話が、どうやら可笑しな方に向かっている。 「占い」と「式」では随分と違うように思うが、一般人の僕には理解できないような何かがあるのかも知れない。 そしてそれは、 ( ・∀・)「詳しく聞かせて貰えます?」 否応なしに僕の興味を惹くのだった。 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:05:59.59 ID:iwmczN020 ('、`*川「”式”っていうのは、比喩ですけど……例えば、」 ペニサスが手元の水晶玉を指して言う。 ('、`*川「”これ”は何の為にあると思いますか?」 ( ・∀・)「……分かりません」 「正直に」と答を要求するペニサスに、渋々ながら「雰囲気作り」と返す。 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:06:31.78 ID:iwmczN020 ('、`*川「正解です」 ( ・∀・)「いやいや、それは内緒にしとこうよ」 ('、`*川「隠したら駄目なんです。同時に”隠されて”しまうから」 言いながらペニサスは水晶玉を手に取る。 どこかふわふわとした手つきで、彼女はやはり妖艶な笑みをその目に浮かべ、言葉を繋ぐ。 ('、`*川「あなたは”これ”を”水晶玉”だと思いました。違いますか?」 ( ・∀・)「……正解です」 ('、`*川「ほら、私の占いが一つ当たりました」 彼女の言わんとしている事が、朧気ながら掴めて来た。 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:07:03.36 ID:iwmczN020 つまり、 ( ・∀・)「情報交換と、そのデータに基づいた予測」 と、言う事だ。 ペニサスはさっきまでとは違う幼い笑顔を作り、「正解です」と満足気に言った。 彼女の「占い」の種は本人により明かされた。 僕の期待を大いに裏切る結果だったと言える。 それでも、彼女に対する興味が失せる事はなかった。 理由は知れない。 ただ、「”占い師”という要素を除いても、彼女は十分に”変”だった」というだけの事だろう。 得体の知れないモヤモヤは残るが、無理矢理にそう解釈する事にした。 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:07:34.79 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「へぇ……、あれ?」 あれこれと思案する僕を置き去りに、彼女はせっせと帰り支度を始めていた。 店じまい、という事だろうか。 ('、`*川「種を明かした以上、もうここにはいられません」 ( ・∀・)「……嘘でしょう?」 ('、`*川「正解です。でも、今日の所はもうおしまいです」 当たり前の様に占い師の衣装たるローブを脱ぎ捨てると、丁寧にそれを畳んで鞄に仕舞う。 勿論、下には普段着着用。 最早、妖艶なる占い師の影はどこにもなかった。 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:08:04.88 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「あのー、もし良かったら今度お茶でも」 ('、`*川「ええ、良いですよ」 荷物をテキパキと積み上げながら、ペニサスは言った。 割と投げやりな誘いであったにも関わらず、偉く簡単に了承を得られたようだ。 ('、`*川「断ったら、あなたはまたここに来るでしょう?」 ( ・∀・)「あー……、正解です。多分」 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:08:40.27 ID:iwmczN020 当たり障りのない会話を済ませ、僕の足は公園へと向かった。 時刻は、まだ午前二時過ぎ。 もう少し会話を引き伸ばすなりして、暇を潰しておくべきだったかと考えたところで、公園に到着した。 ( ・∀・)「……あれ?」 从 ゚∀从「おー」 公園の隅、象を模した滑り台に寄りかかったまま、ハインは無邪気な声を上げた。 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:09:38.11 ID:iwmczN020 約束は午前三時だった筈だ。 いや、もしかしたら二時だったかも知れない。 それなら大して待たせてはいない筈だが、最悪一時だった可能性も――。 徐々に自信をなくしていく僕に、ハインは歩みより、 从 ゚∀从「意外と早かった」 と、言った。 「早かった」という事は待たせていないという事、つまり約束は三時で間違っていなかったという事だ。 ( ・∀・)「意外と早かったのはそっちだよ。仕事は?」 瞬時にそれを理解し言葉を返す僕に、ハインは俯き気味に小さく「さぼった」といった。 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:10:08.33 ID:iwmczN020 ( ・∀・)「はぁ……はいはい、ブランコブランコ」 ハインは一瞬で笑顔を取り戻し、ブランコの方へと駆けていく。 僕は少しだけ「父親っていうのはこういう気分なんだろうか」と、思った。 ( ・∀・)「……はぁ」 静かな公園に、ブランコを漕ぐ音だけが響く。 その音に混じって、どこか投げやりな掛け声が聞こえた。 ブランコの方向へ目を向けると、ハインが靴を飛ばした際の掛け声のようだ。 ( ・∀・)「……明日は雨かな」 視界の隅でそれを捉え、僕はゆっくりとブランコに向かう。 こうして、曖昧な今日は、愉快に終わった。 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:10:45.21 ID:iwmczN020 以下、後日談。 翌日、「占い師」、もとい「気象予報士」の予言を裏切った快晴の日。 僕は再び「占い師」と対峙していた。 昨日と違うのは、まだ日中であるという事と、場所が小洒落た喫茶店だという事。 次いで、今日は「占い師」たる彼女も普段着だ、という点だ。 ('、`*川「昨日の今日で強引ですね」 ( ・∀・)「予想外ですか?」 ペニサスは幼く笑って、「不正解です」と言った。 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:11:38.97 ID:iwmczN020 そして、僕は本題を切り出す。 今日、こうして彼女を呼んだのはたったひとつの疑問をぶつける為だった。 邂逅の日。 「自殺でもお考えですか?」と、「占い師」は僕に言った。 「僕を殺してくれ」と、僕は「殺し屋」に言った。 彼女は僕の未来を予言していたのだ。 結果として、予言は外れた訳だが――あの時、僕は彼女との「情報交換」を行っていない。 僕がそれを告げると、ペニサスはやはり笑って、さらりと言った。 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:12:09.29 ID:iwmczN020 ('、`*川「あれはただの勘ですよ。でも――」 続く言葉に、僕は笑みを隠せなかった。 「私の勘が外れた事はありません」 こうして、僕は一人の「占い師」と出会い、二度目の対談を終え、三人目の「友達」を得た。 全てが虚構であろうとも、今はそれで良い気がした。 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00:12:39.67 ID:iwmczN020 五話 さめのはじまり おわり コメント
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