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5 :◆TARUuxI8bk:2008/07/14(月) 22:28:30.29 ID:xUr1GQYG0
一歩。 二歩。 肉を求めるように。血を求めるように。 地響きに似た唸り声が弱者を内側から戦かせる。 歯茎に並んだ黄色い歯が、それを奏でる器のように震える。 唸り声をより低くし、一頭が踏み出した。 前足の爪と床とが擦れて鋭い音を鳴らす。 一頭に続いて、後ろに控えていたものたちが続々と足を踏み出した。 他のどれより巨大で、赤い毛並みが艶やかなその一頭は、見るものをそれらすべての王者であると確信させる。 そして今一度、更に幅を大きくして踏み出すと、頭を斜め上にもたげ。 音高く、吼えた。 7 :◆TARUuxI8bk:2008/07/14(月) 22:32:17.51 ID:xUr1GQYG0 第六話 ― 五十二年の火蓋、命の差を天秤にかける ( ´_ゝ`)「お!」 上階から響いて来た咆哮に兄者が反応し、階段の方へ顔を向ける。 いびつに膨らんだ袖を弄っていた弟者が、少し遅れて同じ方へ目をやった。 今度は咆哮ではなく、情けない悲鳴が次々聞こえて来る。 それが聞こえると、兄者は同意を求めるかのように弟者へ笑い掛けた。 阿呆らしいと言わんばかりに、弟者はわざと表情を変えないまま兄者と目を合わせる。 暫くすると背を向け、また袖を弄くり始めた。
3 :◆TARUuxI8bk:2008/06/22(日) 22:39:40.24 ID:M9saCVUi0
あの弦月の夜と同じように、城内は静まり返っている。 狭い視界だけに集中していたブーンは、不意に耳に届いたふくろうの声で、久しく聴覚を意識した。 あの夜、この城に訪れたときからまだ一日しか経っていないのに、今ではその鳴き声も恐ろしくない。 寧ろ今は、動物の声と人の声とを聞き分けるのに必死だ。 未だ耳に届かない後者を、ブーンは鉄扉の間からじっと外を覗き見て、ひたすらに待っていた。 一見、広間にはブーン以外誰もいない。 しかしブーン自身は、背後に”彼”が佇んでいる事を知っている。 ”彼”は姿を消しているが、五感を研ぎ澄ましたブーンにはいつしかそれが判るようになった。 4 :◆TARUuxI8bk:2008/06/22(日) 22:43:42.32 ID:M9saCVUi0 その感覚を察知する度、薄ら寒い気配に生唾を飲んでしまう。 とても不自然で、不穏で、そこに存在しているという事が異様なその気配は、どうしても慣れる事が難しい。 情けない、ブーンは自らを叱る。 それでもやはり、また皮膚の奥の血流が”彼”を感じ取れば、ブーンは本能的に恐怖を覚えた。 静寂に乗じて絡みつく、冷えた空気。 ブーンはその一連に、もしくは自分に苛立っていた。 月は城の真後ろに位置しているため、ブーンからは見えないが、その明かりは扉の外の白い石畳を煌々と照らしている。 石畳の脇に咲いた花が音を立て、吹き抜ける風に揺れた。 夜は更けていく。 遠い草原がざわめいた。遅れて鳥の喚くような鳴き声が、次々に折り重なって聞こえて来る。 羽ばたきと共に小さな点が、幾つも幾つも黒い空へと舞い上がった。 5 :◆TARUuxI8bk:2008/06/22(日) 22:47:32.87 ID:M9saCVUi0 ( ^ω^)(……) ブーンが目を凝らす。 突如、城の天辺の鐘が、重く澄んだ音を丘中に響き渡らせる。 その音は城中のあらゆる場所から反響し、音の高さを歪ませながら消えて行く。 時は来た。 あるいは笑みを濃く深くしながら、あるいは意気込みながら、あるいは茶飯事のような感覚に背伸びをしながら。 城の内側に存在するすべてのものたちが、長いような短いようなその鐘の音を聞いていた。 第五話 ― 訪れた討伐隊、塔より高いその意志を笑え無人の城主
4 :◆TARUuxI8bk:2008/06/08(日) 22:20:03.74 ID:LX8RAdDh0
第四話 ― 作戦会議後編、宴に酔歌の光あれ ( ^ω^)(もしかすると、僕が考えてるよりフクザツな事になっちゃったのかもしれないお) 柔らかな光が差し込む廊下、響く足音は二つ。 かたや擬音で表現するならば「にこにこ」と、しかし決して穏やかではない笑み。 かたやその後ろ、慣れない手触りの服を着慣らして、相も変わらず周囲を見回しながら歩く青年。 時折何かを考え込むようにしては、ふいに顔を上げてまた辺りを見回しての繰り返しだった。 6 :◆TARUuxI8bk:2008/06/08(日) 22:24:36.43 ID:LX8RAdDh0 ( ^ω^)(っと、だめだめお、またやってるお。……もしかしてこれ、癖付いて来ちゃったお?) 周囲を見回すという一番簡単な状況確認を、青年―――ブーンは昨夜目を覚ましてから何度も行っていた。 それぞれの部屋に特徴がある建物、例えるなら記憶喪失で迷い込んだ見知らぬ城。 そんな場所と条件でなら状況確認の回数も増えて当然なのだが、ブーンがそれを行うとどこか間抜けなものがある。 彼自身鏡で見た自分の顔をどこかでそう自覚しているので、尚更だ。 ブーンの数歩先を行く黒いマント。 その高い襟が、ゆったりとした歩みと共に右へ左へ揺れている。 襟ですら楽しそうな動きをするものだ、ブーンはいつしかその襟に視線を集中させながら考えていた。 ( ^ω^)(城主さんで吸血鬼さんで、なんだか不思議な人で、ノリがよく掴みきれないけど。 けどきっとこの人は、僕が考えているより、だいぶ遠い所にいるんだろうお) ブーンがそう確信したのは、つい先ほど連れて行かれた応接室での事である。 |
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