長岡速報

 
 
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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです12 

15 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/06/03(火) 23:19:34.83 ID: +Jfu9JOd0

12.「心母少女 3」


           そこに愛がありますように。


 


 その日は快晴であった。陽光の金色がまぶしい。

木漏れ日が森の中を漂い、空には熱気をはらんだ雲が浮かんだ。


 そよ風が涼しげであった。絶好の散歩びよりであった。

立ちつくすだけで、暖かみと清々しさが味わえる。


 けれども、プルトニーは立ち尽くしても、空気の穏やかな

味わいを知りえなかった。


冷や汗がとめどもなく溢れ、彼女の背中をぬらすし、

からだは完全に硬直してしまっている。


手がおののいて、細かに汗がとびちった。


それでも、目の前の光景から逃げようとは思いもしなかった。


 


 
※劇中劇
続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです11 

5 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/06/03(火) 23:04:46.76 ID: +Jfu9JOd0

11.「心母少女 2」

           木漏れ日のピエロの独白。


 


「あらいやだ。砂糖が固まってるじゃないの」


 ドローレスが頓狂な声をあげながら、砂糖がつまった皮袋を取りだした。

手で袋の感触をたしかめてから、寝ぼけ眼のプルトニーの方を振りかえって、


「ごめんなさいね、朝のコーヒーはもうちょっと時間がかかりそう」


 というので、プルトニーは慌てて、


「あ、いえお構いなく」


 昨日の興奮がまるでさめやまない。

いまでもあの喘ぎ声が、頭のそこから響いてくる。

ドローレスの顔を直視するのは、つらい。


 狩猟にむかったというカレットさえ居れば、

まず、プルトニーは声さえだせなかったろう。


                      


 


 
 
※劇中劇
 
続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです10 

4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:36:48.34 ID: 1dbFQ8gj0

10.「心母少女 1」(第三章)


           ドードーナの森に身を寄せて。


 


「今日はここで死のうかしら」


 プルトニーは川辺にたつと、ほほんでつぶやいた。

といっても、じっさい毎日毎日死んでいるわけではない。

死に場所をもとめてさまよっているうち、ついつい口ぐせとなってしまったのである。


 たとえば、そびえたつ教会の鐘を見上げては、そこから飛び降りたらしねるだろうと空想にひたり、

たとえば、巨大なかまどを見つけては、そこに入れば骨まで灰になるかしらんと考えたり、


たとえば、この川辺から身をなげうったら、海にかえるまでもなく息絶えられるかも、などと

かんがえを巡らすうち、本当に自分がそういった自殺をとってしまったような錯覚に、

プルトニーは陥ってしまうのである。


 死に場所をもとめて旅にでたのに、さしあたって生きながらえているのはこれによる。

いつのまにか、旅が、妄想をして回るためにあるような気さえするのであった。


けれども、心の傷はいえていない。


 とおくない将来のうち、自分は確実にしぬだろうという自覚は、

たしかにプルトニーの胸のうちに潜んでいた。


 


 
 
 
※今回は劇中劇なのでAAキャラはお休み
 
続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです9 

2 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:30:06.09 ID: 9dZxI4QW0

9.過剰の美学


一九九五年、七月三日。いまだ雲は払われず、薔薇の栄華も極め渡る頃。

ことにヨーク・アンド・ランカスターが女学校の校庭に咲き誇っているのは、なにかの不吉を伝えたいのだろうか。


・・ ・・・


まさしく神秘的だった。

ギコは優しいし、なにより逞しい。

喫茶店で会話をしたあの日から、デレとギコは二人きりで遊びだした。


デレに、男の子と遊ぶ経験は今までまるで無く、ギコとのひと時は全て新鮮に感じられたし、

強引なその腕の引き具合や笑顔の力強さは、デレを興奮させた。


 


しかし、対照的にクーの表情は翳りを増していった。

交換日記も、学校へ持って行くことを何度も「忘れてしまった」り、出すのを躊躇ったりしている。


デレは何度も心配したが、そのたびにクーは弱々しく笑ってみせ、


川 ゚ -゚)「大丈夫だ」


しかしその一言には、何の活力も見出せなかった。


 


続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです8 

2 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/24(木) 23:44:20.20 ID: kC4jDalT0

8.万華鏡の日々


一九九五年、六月二十日。華やかにアジサイが全盛期を誇り、空には厚く雲が覆う頃。


それまで翳っていたデレの日常は、たちまち色彩が帯びだしたように思われた。


陰険でいながらどこか弱々しい、しぃ達の生臭い苛めも、ある日を境に

スッカリ無くなったとなれば、そう思うのも無理はない。


クーと交換日記をはじめたあの日……

白のグラジオラスが、無残にも生々しい手で花弁を千切られたあの日……

見ず知らずの青年とぶつかって転がったあの日……

ペニサスが珍しく、帰宅したデレの様子を見入っていたあの日から、いきなり変化したのだった。


川 ゚ -゚)「表情が明るくなった」


ζ(゚ー゚*ζ「え、そう?」


照れくさそうに笑ってみせるも、否定はしない。

逆にどこか顔つきに陰が見え出したクーの様子にも、ほとんど気がつかないという体たらくであった。

     


 


続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです7 

3 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:09:49.87 ID: 3XiCbO1A0

7.惑る妾とその運命


二〇一〇年。薔薇が咲き誇るには僅かに早い、春の月。


N県の山間に建てられたその一軒家は、見たところ白亜の賽といった風情で、

窓らしい窓も、一角に一つあるかないか程度のもので、はたから見れば人が住んでいるとは思えない。


その建造物の周りには桜が生い茂っていて、季節の見合ったこの頃は薄ピンクに飾られている。

しかし、咲き誇りから日が経っているためか、地面には桜の花弁が散っているし、枝にもまばらに緑が見受けられた。

風にそよぎ、あるいは雀が梢を飛び立ってかすかにたわんだとき、桜の一片々々は数枚空気に乗ってしまう。


裏手には見栄えするローゼン・ガルデンがあるという、

この一軒家の前で、内藤は長岡を連れ添って、呼び鈴を鳴らした。


家主の名は荒巻スカルチノフといい、内藤の義兄に当たる人物だった。


ツンの実の兄である。


 


続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです6 

4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:19:09.97 ID: Owryz0qq0

6.アンチ・スリップアウェイ(第二章)


二〇一〇年。桜咲く四月の始まり。


クー・ルーの過激な霊視ショウからはや一ヶ月が過ぎた。

内藤は突きつけられた「真実」のショックから冷めておらず、いまだ寝床に伏している。


くだんのショウについては、さいわい新聞社が嗅ぎ付けていないため、

さしあたって世間に知られていないが、いずれ暴露されるのは時間の問題だろうと思われた。


自社の運営を人に任せ、自らはチッペンデールの寝台で横になっている。

この状況に内藤は申し訳なさを感じつつも、これからどうすればいいのか分からないでいた。

使用人を部屋から出し、自分一人だけとなった部屋の中で、ひたすら潜心していた。


 


( ´ω`)「………」


 


   


続き →

( ^ω^)ブーンと心母少女のようです5 

3 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/03(木) 23:07:38.28 ID: rd3nStmX0

5.剣百合


一九九五年、六月十五日。月曜日の朝。


週明けの朝は鬱陶しい。

加えて誕生日の翌日というので、デレは陰鬱な面持ちだったが、

雲ひとつない快晴の中で朝早くに登校し、静かな教室でクーを見つけると、たちまち気分が晴れた。


ζ(゚ー゚*ζ「おはよっ!」


川 ゚ー゚)「おはよう」


クーは教壇の上に花瓶を置こうとしていた。

白いグラジオラスがいくつか差さってい、水もそこそこに満たされている。

朝の陽光に照らされ、ガラスの花瓶はキラキラと金いろに充ちた。


ζ(゚ー゚*ζ「これは?」


川 ゚ー゚)「今日持ってきたんだ。グラジオラスをね」


愛しむように眺めつつクーは返答した。


鞄を自分の机に置いてから、デレはパタパタと教卓の方へ向かった。


 


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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです4 

3 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 08/03/24(月) 23:37:12 ID: dkjtdKi50


4.少女の朝


一九九五年、六月十四日。日曜日の朝九時。


梅雨に入り、連日のように雨粒が地上に押し寄せていた。

この日も朝から憂鬱な曇り空で、いまだ降ってはいないが、昼頃には小雨になるらしい。


内藤家の一室にて、思い悩んでいる少女が椅子に座っていた。

鏡台を前にして、しきりに髪の毛をセットしている。


ζ(゚ー゚*ζ「う~ん……」


三十分ちかく掛けてようやく髪型を作り上げているのだが、まるで顔は晴れていなかった。

雨が降り湿気が増せば、このゆるいウェーブも途端に強くうねくってしまうだろう。

せっかくのセットが、瞬時にして台無しになってしまうかもしれない。

そう思うと、少女は心を沈ませた。


……これで髪の毛が変になったら、私の顔ももっと変に見えるだろうなぁ……。


ハァーっと溜息をついた辺りで、「コンコン」とドアの叩く音が聞こえたので、少女は振り返った。


 


 


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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです3 

30 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:44:54.43 ID: JAO+O/oE0

3.霊視ショウ


・・


・・・


( ^ω^)「……というわけでして、とにかく、えー……皆様の発展も、これからを祈ってですお……

      とにかく、乾杯!!」


その掛け声の後に、騒ぎ立てるようにして「乾杯!」という異口同音の声が響いた。


若干へどもどしてしまったが、無事に挨拶を終わらせることが出来、ホっとしながらで内藤は壇上から降りた。

席につくと、フゥと声を漏らす。

秘書が素早く「大丈夫ですか」と声を掛けると、内藤は「いや平気だお」と呟いた。


(;^ω^)「緊張するんだお……」


「あの、霊視ショウですか?」


(;^ω^)「そうだお」


内藤はコクリと頷いた。


 


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