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3 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:02:36.45 ID:rSqzoIsa0
文化祭まであと2週間。 悲劇はすぐそこまでその足音を響かせながら 謎を解き、闇を追う彼らに迫り来る。 一歩、一歩確実に。 そして、今にも喉笛に齧り付かんと… ~七不思議 其の五怪~ 週の初めの月曜日。 文化祭が2週間後に近づいた学園はさらに明るさを増し、 生徒達も心なしか浮き足立っている。 しかし、その陽気とは間逆に空には厚い雲がかかっている。 その下を歩くショボンの足取りは重い。 (´・ω・`)「はぁ…。七不思議かぁ…」 ショボンは、ここ最近心霊研究会にばかり行っていたので、 演劇部の方が多少なおざりになっていた。 (´・ω・`)「正直演劇よりも気になるって言えば気になるんだよな…」 ショボンの部活はあくまで演劇部だ。 だからこそ最初の『役』であったわけだが、 七不思議を追うとなると多少の不便さはある。 (´・ω・`)「内藤先輩、落ち込んでるしなぁ…」 なんとも心の靄が晴れない。 鬱屈とした気分でショボンが呟いた、そのとき ( ^ω^)「誰が落ち込んでるんだお?」 内藤がいつの間にか後ろにいた。 7 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:10:06.57 ID:rSqzoIsa0 (;´・ω・`)「うわぁっ!びっくりしたぁ…おはようございます」 ( ^ω^)「おっおっwそんなに驚いたかお?」 自分の悩みの種ともいえる人物に、後ろからいきなり声をかけられたのだから 驚くのは至極当然なのだが、ショボンはまさかそんなことを言える筈もない。 (´・ω・`)「そ、そういえば、金曜日は何か情報とか集まったんですか?」 ( ^ω^)「そうだお!元心霊研究会の先輩が来て色々聞けたんだお! とりあえずちょっとこのノートを見てくれお!」 そう言って、内藤は自分のバックから一冊の白いノートを取り出し、ショボンに渡す。 ショボンはパラパラとそのノートを不思議そうにめくる。 (´・ω・`)「これは…?」 ( ^ω^)「僕らの3つ上の学年の先輩達が作ったノートだお」 ショボンは1ページ目からじっくりと読んでみて、内容に気付く。 そして、驚愕の声をあげる。 (;´・ω・`)「これは…今回の七不思議とそっくりですね…」 ( ^ω^)「そうだお。恐らく今回のは、それを真似したんじゃないかと思うんだお」 (;´・ω・`)「でも、なんでこのノートを内藤先輩が持ってるんですか?」 8 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:14:37.83 ID:rSqzoIsa0 内藤は少し考えた後、思い出したように ( ^ω^)「話を聞いたときに先輩からもらったんだお」 (;´・ω・`)「そ…そうですか…」 ショボンはあえてその間に突っこまなかった。 違和感を感じたがその違和感が何か分からない。 厚く、暗い雲がかかった今日の空のごとく、言いようのない不安が心を責める。 (´・ω・`)「そういえば、兄者さんに関する情報とかは…」 ショボンの問いに内藤は残念そうに首を横に振って答える。 ( ^ω^)「なしのつぶてだお。家を知ってる人すらいないお」 (´・ω・`)「そうですか…」 2人並んで校門をくぐり、また後で、と言い合って各々の教室へ。 また平和な授業の一日が始まるのだ…。 しかし、この日はいつもの日常ではない一日となるのであった 9 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:20:23.51 ID:rSqzoIsa0 ――6時間目後の休み時間 (´・ω・`)「ふぅ。疲れた」 今日はなかなかに難しい授業が多かった。 おかげで考え事をする暇も無いくらいの忙しさだ。 (´・ω・`)「部活…どうしよう…」 ショボンは迷っていた。 このまま七不思議を追うのであれば、いっそ心霊研究会へ入るべきだろう。 しかし、演劇部で時期部長とも言われているショボンは、 顧問や先輩から心霊研究会に入ることはやめた方がいい、と忠告を受けている。 (´・ω・`)(まぁ今の心霊研究会を見れば普通反対するだろうな) そんな考え事をしているとチャイムの音が鳴る。 (´・ω・`)「教科書ロッカーに入れっぱなしだ…」 取りに行こうとしたまさにその時。 教師がせかせかと教室に入ってきた。 しまった、と思ったときにはもはや手遅れだった。 10 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:21:35.40 ID:rSqzoIsa0 (;´・ω・`)「あー。やっちゃった…」 しかし教師は苦々しげに、 今日は自習だ。 と一言だけ言うと、生徒にプリントを配って、足早に教室から出て行った。 (´・ω・`)「何か…あったのかな…」 ショボンの頭はすでに、教科書よりもそちらの方へ興味を移していた。 12 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:23:40.10 ID:rSqzoIsa0 ――6時間目後の休み時間 side:内藤 ( ´ω`)「眠いお…でも次は絶対眠れないお…」 この日最後の7時間目は渋沢の授業だ。 前回のテストで赤点を取っていることもあって、内藤はよくイジられている。 一瞬でも眠ろうものなら、恐らくチョークが飛んでくるぐらいではすまないだろう。、 そんなことを考えていると、ドアが開き渋沢が入ってくる。 _、_ ( ,_ノ` )y━・~ 「おい今日は自習だ。このプリントやっておけ、後で集める」 それだけ言うと教室を出てく渋沢。 ( ^ω^)「…お?」 内藤は明らかに急いでいる渋沢を見て、瞬時になにかある、と悟る。 13 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:24:06.82 ID:rSqzoIsa0 そうでなければ、課題プリントと言って、 白紙のB4用紙を渋沢が置いていくことなど無いはずだ。 ( ^ω^)「…また、始まったかお…」 クラスは、課題をどうするべきかで騒然となっている。 しかし内藤はもはや、課題――白紙の紙をどうすればいいか、など頭にない。 ( ^ω^)「どこまで出来るんだか…」 内藤は1人呟いて、机の上に突っ伏した。 14 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:26:07.67 ID:rSqzoIsa0 ―放課後 結局七時間目に先生が帰ってくることは無く、 ホームルームで担任から今日は部活は全て休み、と告げられた。 部活の事もあり、釈然としない気持ちのままだが、気になるものは気になる。 (´・ω・`)「…とりあえず職員室でも行くか…。渋沢先生なら事情を話してくれそうだし…」 しかし、その前に放送が鳴る。 『2年3組、ショボン。すぐにおr…渋沢のところまで来い』 どう聞いても渋沢の声です。本当に(ry (;´・ω・`)「なんでわざわざ放送まで使って…」 よっぽど緊急なのかな。と呟いて、職員室の渋沢の下へと急ぐ。 (´・ω・`)「失礼します」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「おぉ、来たか。まぁ座れって」 渋沢はそう言って自分の机の隣の席を指差す。 他の先生の席だが、気にしない。 その席の先生が困っていても気にしない。 17 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:35:28.18 ID:rSqzoIsa0 (´・ω・`)「どうも。…で、なにがあったんですか?」 と、渋沢は急に真面目な顔になり、多少の苛立ちを込めた声で話し始める。 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「一連の七不思議の『自称』黒幕が出てきた」 (;´・ω・`)「…自称、ですか」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「あぁ。ジョルジュが刺したのも自分の仕業といってるから ただの騙りだとは思うが…」 (´・ω・`)「で、その方は今どちらに?」 そこだ、と言われショボンが多少の期待を込めて後ろを振り返る。 すると顔が触れそうなくらい近くに、血走った目が2つ。 川д川「…こんにちは…貞子です。バーボンハウスへようこそ…」 (´゚ω゚`)「うわああばばばばばっばば」 _、_ (;,_ノ` )y━・~「落ち着け!ショボン、台詞とられてるぞ!」 突然のことに混乱し、暴れるショボンを渋沢が押さえつける。 貞子は予想外の結果に右往左往している。 19 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:40:35.13 ID:rSqzoIsa0 ―数分後 (;´・ω・`)「いやぁ、ちょっとビックリしましたよ」 川д川「ごめんなさい。あれが私の普通なんで…」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「あれが普通なのか…?」 ショボンが落ち着くのを待って、話を整理する。 (´・ω・`)「で、貞子さんは本当に七不思議の首謀、黒幕なんですか?」 静かな声で、ショボンが問う。 周りの会話の五月蝿さに負けない、静かだが強い声で。 川д川「…というよりは、私がその人に何か起こるって聞いたら、 その人がどんどん怪我したり、いなくなったりしてるんです」 20 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:45:54.80 ID:rSqzoIsa0 (´・ω・`)「…というと?」 川д川「私が、知り合いから『2年のジョルジュって面白いよね』 って聞いた翌日にジョルジュ君が刺された、とか 『兄者さん最近学校ちゃんと来てるね』って聞いたら、兄者さんが突然また不登校になったり」 (;´・ω・`)「分かりました。ちょっと待って下さい」 ショボンは渋沢を連れて貞子からちょっと離れる。 (;´・ω・`)「(ただの厨二入った痛い子じゃないですか…真面目にやって損…)」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「(だから『自称』って言っただろ。俺だって微塵も疑ってないよ)」 (´・ω・`)「(でもジョルジュが刺された事は公表してないはずですよね?)」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「(あぁ。教職員と関係者以外、誰にも言ってないはずだ)」 一般生徒に余計な不安を与えないように、と刺された事については伏せている。 加害者と被害者のほうで和解したこともあり、穏便に済まそうという事になったのだ。 21 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 22:50:31.77 ID:rSqzoIsa0 川д川「あのー…」 小声で話していると、いつの間にかさっきと同じような近さで貞子が接近していた。 川д川「なんかこの事について詳しいようですけど…一つ聞いてもいいですか…?」 (´・ω・`)「あ、はい。どうぞ、答えられる範囲でよろしいなら」 川д川「『役』ってなんなんですか?」 あまりにも突然の質問に虚をつかれたショボンは答えに詰まる。 そもそも『役』の事なんて聞かれるとはまったく思っていなかった。 (;´・ω・`)「……えーっと。『役』ですか…?」 川д川「『役』です。先輩からやれって言われたんですけど、よくわからなくて」 (;´・ω・`)「先輩から『役』を?」 川д川「はい。時期部長だからって3年生の先輩から」 その後聞いた、貞子の話を整理すると 貞子の所属する部活(魔術愛好会)だと何年か前から部長が 『役』という役職にも同時に就くということ。 そして、『役』は何か不思議なことすること。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/23(日) 23:01:43.78 ID:rSqzoIsa0 川д川「それだけ言われて、何をすればいいのか分からなかったんですけど、 周りで不思議な事件をが起き始めて、それを利用して、預言者貞子ちゃんみたいな事を…」 (´・ω・`)「やろうと思ったら、詳細を知る僕に会って聞こうと思った、と?」 川д川「はい…」 _、_ ( ,_ノ` )y━・~「おいおい、そういう話ならここではやめてくれよ?」 (´・ω・`)「そうですね。貞子さん、ちょっと2の3の教室まで行きましょうか?」 貞子は不安そうに首肯すると、ショボンについて教室へと歩く。 24 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:06:50.21 ID:rSqzoIsa0 ―2の3教室 (´・ω・`)「ところで、そのジョルジュが~とか兄者が~とかって誰から聞いたんですか?」 川д川「はい。同じ人の気はするんですが…この髪で顔が見えにくくて…」 (;^ω^)(切ればいいっていうのはつっこまないべきかお…) 渋沢に職員室を追い出された2人は、内藤も呼んで2の3の教室に来ていた (´・ω・`)「でも、ちょっとまずい事になったかもしれないね、これは」 川д川「え?もしかして、私何か悪いことしたんですか!?」 ( ^ω^)「ショボンが狙われる理由が『役』なのにこっちに味方しているからっぱいんだお だから、下手したら貞子ちゃんも狙われる可能性があるお…」 川;д川「えぇ!?じゃあ私も屋上から…ええぇ!?」 (´・ω・`)「まぁとりあえず僕らに関わってることさえ気づかれなきゃいいんだから」 泣きそうな顔で取り乱す貞子をショボンが宥める。 内藤は、何かを考えるように顔をしかめ、頭を抑えている。 ( ^ω^)「とりあえず、様子を見るお。もし危なくなったらショボンにでも言うお」 川д川「はい…」 貞子は不安そうな顔で頷き、教室を出て行く。 25 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:13:14.35 ID:rSqzoIsa0 ( ^ω^)「ショボン?ちょっと聞いていいかお?」 (´・ω・`)「なんですか?」 ( ^ω^)「ショボンが襲われた事って貞子ちゃんに話した、もしくは本人が知ってたかお?」 (´・ω・`)「話してた記憶は無いですね。僕も言ってないですし」 ( ^ω^)「じゃあなんで『狙われた』としか言ってないのに屋上って単語が出たんだお?」 (;´・ω・`)「!」 確かに釈然としない。なぜ屋上に関連していると思ったのか。 職員室で聞いた話ではショボンの話はしていなかったのにも関わらず。 (´・ω・`)「でも、疑う要素としては弱い感じがしますね」 ( ^ω^)「確かに。でも引っかかったから言ってみただけだお」 確かに内藤の言うことは正しい。 だけどなにか違う。ドクオがいなくなってからショボンは違和感を感じるようになった。 しかしまさか、と思う気持ちの方が大きい。 でも拭いきれない ――内藤に対しての疑いを。 27 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:19:47.53 ID:rSqzoIsa0 *********************************** ( ゝ ) 暗い部屋に1人膝を抱えて座る男。 室内には留守電のメッセージが再生される。 从 从〔お前が、いけないんだぜ?『解く側』にいったんだから。〕 女の声が、響く。 ( ゝ ) 男は首を振って耳を塞ぐ。 搾り出すような声をあげる。 しかし、メッセージは流れ続ける。 从 从〔償いは、必要だよなぁ?お前の弟はもう償ったんだから〕 ( ゝ )「…」 弟、という言葉に男はほんの小さな反応を示す。 28 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:25:28.09 ID:rSqzoIsa0 从 从〔償えよ、お前のやり方で。こっちが納得するかは分からないがな〕 ( ゝ )「…」 男が、無言で立ち上がる。 かつて学校でおちゃらけていた面影は無い。 从 从〔償えよ〕 念を押すような一言で、メッセージは終わった。 男の頭には、もはや一つの言葉しか、無い。 ( ´_ゝ`)「弟者、頑張ってくれよ」 ふと呟くは、病院の白いベッドに眠る自らの半身。 ( ´_ゝ`)「俺も、頑張る」 自らの机の上に封筒を置く。 それは、半身へのメッセージ。 30 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:29:05.77 ID:rSqzoIsa0 ( ´_ゝ`)「『償う』ために」 男は硬い決意と共に、家を出る。 ――VIP学園へと。 32 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:32:53.94 ID:rSqzoIsa0 *********************************** ―2の3教室 (´・ω・`)「また厄介なことになりそうですねぇ」 (;^ω^)「だおね…。すっかり忘れてたけど兄者とかも気になるお…」 (;´・ω・`)「音信不通の上に所在不明。最悪の状況ですね」 手詰まり。 そのことばが頭に浮かぶ。 兄者は無事なのだろうか、弟者の容態は? 疑問と焦燥感だけがショボンを苛む。 33 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:33:50.50 ID:rSqzoIsa0 ( ^ω^)「で、も貞子ちゃんが『役』だってことはあと2人『役』がいるのかお?」 (´・ω・`)「え?僕と素直姉妹さん、流石兄弟さん、貞子さんだから… あと3人もしくは3組、じゃないですか?」 (;^ω^)「あ。そうか。数え間違ったお」 そして、次の言葉を内藤の口が紡ごうとした時。 「いーや。全然数え間違えてなんか無い。内藤のが合ってるぞ」 教室の入り口から、凛とした声が聞こえた。 内藤とショボンはそちらを見やる。 ( ´_ゝ`)「久しぶりだなお2人さん。」 ――そこには、いなくなったはずの兄者が立っていた。 34 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:35:49.89 ID:rSqzoIsa0 (;´・ω・`)「なんで、あなたが?」 (;^ω^)「……」 内藤とショボンはそれぞれの驚きに言葉を失う。 2人とも動揺を隠せない。 ( ´_ゝ`)「ははは。無理もないよな。音信不通の引きこもりだもんな」 乾いた笑いをしつつ、疲れたような顔をして兄者は力なく喋る。 ( ´_ゝ`)「話があってきたんだ。ちょっと付き合え」 そう言ってふらふらと教室を出ようとする。 放心状態で残された2人に兄者が真面目な顔で ( ´_ゝ`)「安心しろ、取って食いはしないさ」 そう言って廊下を歩く。 (;^ω^)「行くか…お」 (;´・ω・`)「そう…ですね」 2人はゆっくりと、兄者の後をついていく。 36 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:41:48.66 ID:rSqzoIsa0 3人は無言で歩く。 というよりかは、何も喋れない空気だった。 何か言葉を発すれば、兄者が辛うじて保っている均衡が壊れそうで。 そして歩くは、この数週間何回も歩いた道順。 ( ^ω^)(屋上かお…最近屋上に縁が深くなった気がするお) (;´・ω・`)(屋上にはあんまりいい思い出無いんだけどなぁ…) 放課後、文化祭の準備の生徒でごった返す階段を上り 兄者はゆっくりと屋上へのドアを開く。 途端、冷えた空気が3人の頬を撫でる。 壊れた金網はまだ直っていないようだ。 曇り空で、さらに日が落ちた外は、気持ちの悪いほどの暗さを湛えている。 ( ´_ゝ`)「さて。話をしようじゃないか」 異様な空気のなか、兄者が口を開く。 その声は明るい口調を装ってはいたが、どこか無理をしているような そんな口調だった。 37 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:44:57.77 ID:rSqzoIsa0 ( ´_ゝ`)「まず、『役』の事から始めようか」 内藤とショボンは顔を見合わせる。 『役』の事なんてほとんど知っているのだ。今更何があるのだろう? しかし、口を挟むのさえも躊躇うような張り詰めた空気が、屋上には流れていた。 ( ´_ゝ`)「俺と、弟者は2人で1つの『役』じゃなくて、1人1人別の『役』だ。 それを、どうせ同じだからいいだろう、というのもあって一緒にな」 まぁ、それが間違いだったのかもな、と呟き一旦黙り込む。 ( ´_ゝ`)「…俺らは、前言った女に目をつけられた。…ってのは正しくないな。 『役』になった時点で目をつけられてたんだろう、恐らくは」 ( ´_ゝ`)「女は言ったよ。『ショボンを殺す、もしくは再起不能な怪我をさせろ』とな」 (;^ω^)「!!」(´・ω・`;) ショボンは衝撃を受ける。 殺される、というのが今一つ現実として受け止めにくい。 しかし、屋上から落ちたときの事を思い出し、背筋に寒いものが走る。 そこには確かに『死』の恐怖があった。 内藤は怒りを覚える。 ならばなんでドクオが、と。 確かに関係が無い、とは言えなかったものの ドクオが酷い目にあう道理は無い。 沸々と、黒く、ドロリとした怒りが湧き上がる。 38 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:47:54.84 ID:rSqzoIsa0 ( ´_ゝ`)「何度も言うが、ドクオの事は本当に悪かったと思っている。 その気持ちだけは本当だ。俺のミスなんだよあれは」 (#^ω^)「ふざけんなお!!」 食堂のときと同じように、内藤がいきり立つ。 今にも殴りかからんばかりの気迫で怒鳴る。 ( ´_ゝ`)「お前が怒るのも当然だ。当たり前だ だが、もうちょっと待ってくれ。俺は『償い』に来たんだ」 (´・ω・`)「『償い』とは?」 ショボンがやっとの思いで口を挟む。 さっきよりは空気が変わったものの、以前張り詰めた空気が続く。 ( ´_ゝ`)「まぁまぁ。焦るなお2人さん」 空は曇りから雨模様へと変わろうとしていた。 湿気を帯びた風が、3人に絡みつくように吹き始める。 ( ´_ゝ`)「さて、女の件だが。当然俺らはショボンを殺すのに失敗したんだから 制裁が来るわけだ。弟者は実際奴にやられた、俺の失敗のせいで」 39 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:50:50.48 ID:rSqzoIsa0 ふと、兄者の目に暗い色が覗くが、すぐに無気力な目に戻り、 はは、と自嘲気味に笑う。その眼は淀んではいたが、決意を秘めた眼。 ( ´_ゝ`)「あぁ。あと、その女の名前を教えてやるよ。高岡ハインだ。間違えるなよ」 そしてゆっくりと歩き出す。 ( ´_ゝ`)「俺のミスで、弟者を危ない目にあわせたんだ。『償う』覚悟は出来てる」 そう言って、ズボンのポケットからバタフライナイフを取り出し、刃を出す。 その行動は突然だったが、とっさにショボンと内藤は身構える。 (;´・ω・`)「僕を…殺すんですか?」 混乱しつつ、ショボンは問う。 頭が回らない。ここで死ぬのか? 怖い怖い怖い怖い怖い そんな感情がショボンの脳内を占める。 ( ´_ゝ`)「ははっ、まさか。」 兄者は笑う。 乾いた笑い。感情の無い声。迫る恐怖。 ショボンは恐怖でますます動けない。 41 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:54:26.41 ID:rSqzoIsa0 ( ´_ゝ`)「じゃあな、ショボン。…内藤」 それだけ言うとショボンの方へ向かう。 (;^ω^)「させないお!」 内藤がショボンの方へ走る。 しかし、どんどんショボンと兄者の距離は縮まっていく。 (; ω )(――間に―あわな―) ――小雨の降り始めた屋上に、悲鳴が木霊する。 42 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/23(日) 23:58:55.94 ID:rSqzoIsa0 兄者は思考する。 一瞬のなかの一瞬、まさに刹那の時。 ( ゝ )(なぁ。弟者?これでよかったのか?) ( ゝ )(俺は、分からなくなっちまったよ…) ( ゝ )(愛するものの為に人を殺す、これは正しいのか?) ( ゝ )(いや、俺が言えた義理じゃないな) ( ´_ゝ`)「大事な家族から、唯一無二の存在を奪おうってんだからな」 43 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/24(月) 00:01:29.39 ID:92FH0mg00 ショボンは一瞬の中、兄者が呟くのを聞いた。 次の瞬間ショボンに向けられたナイフの凶刃は 持ち主の胸へと刺さっていた。 (;´・ω・`)「え…な…んで…?」 ショボンは目を見開き、兄者の顔とその胸に刺さったナイフを見る ( ´_ゝ゚)「これ…で、いいん…」 (;^ω^)「兄者!」 内藤も駆け寄る。 その顔はとてつもない驚愕と、信じられないといった感じだ。 ( ;_ゝ゚)「弟者を人質にされたようなもんだ。…俺が『償って』死ねば、 高岡も満足。…オールハッピー、だろ?」 胸からは真っ赤な血が、心臓の動きに対応し、溢れる。 その眼からは、涙が、溢れる。 45 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/24(月) 00:04:31.53 ID:92FH0mg00 ( ;ω;)「ふざけんなお!弟者は、弟者は!」 ( ´_ゝ゚)「はは。大丈夫、アイツは…俺とち…ってつよ…か…」 その通った鼻筋に、涙と、血がかかる。 ( ´_ゝ゚)「じゃ…な。2人…も」 兄者はフェンスを支えに立ち上がる。 ( ´_ゝ゚)「お前らは、今日こごになんか来て…いし、俺とも会ってない… 俺…、自殺した引きこもりあがりの生徒…」 それでいいんだ。 兄者の最後の言葉だけが、ショボンと内藤の耳にしっかりと届いた。 次の瞬間兄者の姿は、命は、言葉は。 フェンスの向こうへ消えていった。 屋上には、本降りになり始めた雨に打たれて ただ佇むだけの2人の少年が立っていた。 片方は心にぽっかりと穴が開いた感覚に襲われ 片方は怒りと、ほんの少しの微笑を湛えて。 46 : ◆j0VQcv9RTo :2008/11/24(月) 00:08:30.11 ID:92FH0mg00 弟者へ もし、この手紙を弟者が読んでいるのならば 俺はもうこの世の人でないだろう。 俺は1人で『償い』に行く。お前に迷惑はかけないさ。 いままで散々迷惑かけたからな。 もし、心細かったら内藤を頼れ、信用できる奴だ。 なかなか楽しい人生だったと自分で思うぜ。 お前と兄弟で居られて楽しかったよ。本当だぜ? 母者のプリン勝手に食って家が半壊しそうになったり 妹者のフリーズドライ梅干クッキーとか 父者のズラを盗んだりとかな。 本当に駄目な兄貴だったな俺は。 いつもお前を厄介ごとに巻き込んで、それでも一緒に 怒られてくれてさ…。 なんか改めてこういうのって書くこと思い浮かばないな。 でも、俺は弟者が大好きだったぜ。 もしもっかい生まれ変われたらまた一緒に馬鹿やろうな。 最愛の弟へ。 兄者 ~了~ 其の六怪へ続く コメント
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