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3: ◆xh7i0CWaMo :2009/04/12(日) 22:39:37.09 ID:rdhGop0Q0
快楽のせいで、視界がぼんやりと霞んでいる。 上下左右にうごめく、色彩豊かなモザイクたちを、彼は丁寧に分類していった。 あそこで駆けているのは逃げまどう記者たちだろう。 転んでる奴もいる。鈍くさい奴だ。単純反応すぎてつまらない。 ストロボを炊いている奴もいる。記者根性万歳。ヒロイズムが疼いているのがよくわかる。 こちらへ向かってくる勇猛果敢な奴らが数人いた。ブーンを取り押さえようと言う魂胆なのだろう。 ブーンは短くケケと笑った。雨に悦ぶ蛙のような笑い声が吐き出された。 ちょっとひしゃげた金属バットを持ち直す。じりじりとブーンを囲う人間たちを眺望。静寂。 集団が一斉にブーンへ飛びかかった。軽く体を浮かせて迫りきた奴の側頭部を殴ってたたき落とす。 その勢いでバットを振るった。その先端が面白いように襲撃者の頭や顔面、 つまり致命的部分にヒットしていく。まるで彼らは自殺志願者だ。 あえてバットにぶつかろうとしているようだ。時代劇ドラマで見るような殺陣シーン。 三十秒もたたぬうち、ブーンの周りに即死したものや, 死にきれなかったものの横臥する肉体が十数人、積み上がった。バットはもう使いものにならない。 ブーンは壁に向かってそれを投げつけ、床に落ちていたAK-47を拾い上げた。 世界最高の殺人兵器を手に、ブーンは会見場を出た。 廊下を歩いてロビーに向かうが、もはやそこには誰もいない。みな逃げ出してしまったらしい。 それでも、ブーンはところ構わず撃ちまくった。壁や天井一面に穴があく。 照明のガラスが割れて海雪のごとく舞い落ちる。 何者かが、ぎゃあと叫んで天井から落ちてきた。 どうやら、天井に擬態していた者がいたらしい。とりあえず後頭部を撃ち抜く。 ロビーに出ると、ガラス越しにパトカーの群れが見えた。 その後ろには野次馬の列。携帯電話のライトと、無数のシャッター音。 赤色のサイレンがくるくる回っている。輪廻転生。リインカーネーション。 彡 l v lミ 「無駄な抵抗はやめて、おとなしく出てきなさいーー」 スピーカー越しに警官が叫んでいる。もっと違うことをしゃべれ。 さてどうしたものか……ブーンは考え込む。 彼のポケットには、核ミサイルのスイッチが入っている。 ひとたびこれを押せば、世界中の核兵器が世界中に向かって発射されるという寸法だ。 しかしこれは面白くない。なぜか。快楽を得られないからである。 殺人による快楽。三日前に中学生が提唱したような文言だ。 しかし、快楽とは本来、そうした原始的、一般的なものであるはずだ。 自分は何をしたいのか。ブーンは原点に立ち返ることにした。 人を殺したいという衝動はどこからやってきたのか。 要するに、この世界から脱出したいのである。人を殺して建物を壊して地面を穿って、 空間そのものを破り捨てて概念までも滅茶苦茶にかき回して――。 そうしてこの世界からの脱出を図りたいのだ。それは、つまり何を意味するか――。 ( ・∀・)「私たちは、一作者によって作られた妄想に過ぎないのです……」 そうだ、作者を殺そう。 そうすればこの下らない世界観から解放される。彼の妄想によって動かされずにすむ。 ついでに、これを読んでいる読者も殺せばいい。 そうして、全ての人間からブーンという存在を抹消すればいい。 その先に待っているのはビッグバン以前の無か、 あるいは世界中の主義者たちが声高に叫ぶ、真の自由か……。 いずれにせよ、現状の苦痛・苦悩・歪んだ快楽よりはましなはずだ。 ブーンは天井を仰いだ。いつの間にかそこには天井はなく、代わりに無数の人間の顔がある。 眼鏡をかけている顔。携帯電話をのぞいている顔。眠たげな顔。にやつき笑いをしている顔。 だいたいは男だが、女の顔も少々。 彼らに向かってブーンはカラシニコフを向けてぶっ放した。 しかし彼らには届かない。防弾ガラスよりも遙かに分厚い壁が、彼らと自分とを阻んでいる。 どううれば奴らに届くのか……どうすれば奴らの顔面を銃弾で粉みじんにできるのか……。 ( ・∀・)「彼らを殺すためには、彼らと同じ次元に立たなければなりません」 隣の空間にモララーが現れて、言った。 一つは、彼らの存在を虚構レベルに引きずり落とすこと、もう一つは、 私たちが彼らと同じレベルにのし上がることです。しかし、どっちも難しいといえましょう。 まず、一つ目の方法ですが、これはほとんど不可能に近い……。 彼らはその優雅な視点からわざわざ動こうとはしません。 パソコンあるいは携帯電話の前でじっと、自分は痛くない痛くなあいようなような立ち位置で、 そもそも痛みを知ろうともせずにいるわけですから。 ですから、必然的に二つ目の方法へ絞られてくるわけですが、 これとて簡単なものではありません。彼らのレベルへ我々虚構がのし上がるのは、 彼らに実在性を認識してもらわなければなりませんが、私たちにはこのように、 文字記号による一定の表現があるうえに、紙媒体でなく電子媒体であるがゆえ、 手にとっているという感覚にさえ乏しい……」 嘲笑が天井から響く。 ( ・∀・)「一つ、実在性を強調する方法としては、作者が前に出るという方法があります。 つまり、作者の実在性を際だたせることによって、 その作者の書いている作品にも実体を持たせようと言う行為ですな…… しかし、この界隈は普段匿名でやっているゆえに、そうした働きを行うにも制限がある。 ブログやラジオをいった手段を駆使していたようですが、 思ったような効果が上がっているとは思えないのですよ」 (*゚ー゚)「でも、それはおかしいんじゃないかしら」 しぃが現れた。 ('A`)「作者がある程度主人公に荷担するのはある意味当然だろう!」 ドクオが空中を飛び跳ねながら叫んだ。 ('A`)「それこそがオナリストたる作者の絶頂オナリズム! 白濁にまみれたその思考はまさに白痴! 白痴!」 从 ゚∀从「試しに、ブーン、あの警官隊の群れに向かって走ってみろよ」 ハインがブーンの肩に手をおいた。 从 ゚∀从「絶対死なないから。銃弾なんて一つも当たらない。流れ弾が頬を掠るかもしれないけどな」 ( ><)「でも、ほんとに作者がブーンさんの味方なら、 そもそもこんな事態にまで追いつめないと思うんです! わかんないんです!」 ビロードが逆立ちしながら迫ってきた。 ( ><)「普通の小説書けばいいと思うんです! 文学かぶれの厨二って言われるのが関の山なんです! ああっ、出る……!」 彼は片手で肛門を押さえ、そのままの姿勢で崩れ落ちた。 (-_-)「あひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ」 プギャーが顔の下半分を全部口にして笑った。 ( ^Д^)「頭ばっかりでっかくなっちまって、肝心な部分を忘れている。 文学青年のなれの果てにはありがちなことさ。 理屈を振りかざして、作家を気取りたいんだよ」 ('、`*川「私たちに、こういうことを喋らせるのもそのためでしょうね」 ペニサスが札束で自分の頬を殴った。 ('、`*川「結局やってることが中途半端なのよ。やりたいことの、半分もできてないんじゃないかしら」 ( ・∀・)「そういったことには、今や大部分の読者が気づいていると思います。 そこで、そういった作品の登場人物として生み出された私たちは、 これからについで熟考しなければなりません」 ( ・∀・)( ><)( ^Д^)('A`)从 ゚∀从('、`*川(*゚ー゚)(-_-)「どうする?」 ここにはほとんど全ての登場人物がいる……。ブーンは直感的にそう思った。 記憶している顔と記憶していない顔の両方が並んでいるが、 少なくとも全員、これまでに自分と何らかの関わりを持ってきた人なのだろう。 ただ、一人足りていない……。 自分を遙かに凌ぐ主役としての資格と力量を持ち合わせている人物だ。 彼女の登場を待たねばならない。そうでなければ、この空間は完成しない……。 行間 行間 行間 しかし、彼女は現れなかった。 どういうわけだろう。彼女が最も好むであろうこの場面にて、 彼女が登場しないなどと言うことがあり得るのだろうか。 もっとも作者に近しいと思える人物である。ここで言いたいことは沢山あるはずだ。 あるいは、彼女はすでに喋っているのか……。 (,,゚Д゚)「どうする?」 / ,' 3「どうする?」 (,,゚Д゚)/ ,' 3( ・∀・)( ><)( ^Д^)('A`)从 ゚∀从('、`*川(*゚ー゚)(-_-)( ´ー`)「いったい、どうする?」 ブーンを囲むようにして、ロビーいっぱいの人々が、 ラテンダンスのような奇妙な踊りを踊り始めた。その激動にカーペットが軋む。 _ ( ゚∀゚)「どうする?」 <;ヽ`∀´>「どうする?」 _ ( ゚∀゚)<;ヽ`∀´>(-@∀@)J( 'ー`)しξ゚⊿゚)ξ(‘_L’)( ´∀`)「さっさと決めろよ」 人波をかき分け、ブーンは彼女の姿を探した。 しかし彼女はいない。ガラスの向こうを見やると、 警官や野次馬たちも一様にラテンダンスを踊り始めていた。 ( ´_ゝ`)「どうする?」 (´<_` )「どうする?」 ( ´_ゝ`)(´<_` )(・∀ ・)从'ー'从\(^o^)/(゚、゚トソンミセ*゚ー゚)リ( `ハ´)ハハ ロ -ロ)ハ「早く決めなきゃ」 ミ,,゚Д゚彡「どうする?」 ノパ⊿゚)「どうする?」 ミ,,゚Д゚彡ノパ⊿゚)(*゚∀゚)(`・ω・´)(´・ω・`)(#゚;;-゚)ζ(゚ー゚*ζlw´‐ _‐ノv( ∵)( ゚∋゚)「退屈だよなあ」 ブーンはホテルを飛び出した。警察官の間を縫い、野次馬どもを越えて、市街地を走った。 街路で皆がラテンダンスを踊っていた。自動車が後輪で立ち、全部の扉をバタバタさせながら踊っている。 振り返ると、さっきまでブーンがいたホテルも、ラテンダンスを踊っていた。 ( ゚д゚ )「どうする?」 (=゚ω゚)ノ「どうする?」 ( ゚д゚ )(=゚ω゚)ノ| ^o^ || ^o^ |/^o^\( ФωФ)( <●><●>) (*‘ω‘ *) *(‘‘)*「死亡フラグさ」 木々も雲も川も、皆が踊っている。ブーンは市街地を抜けて山道を駆け上った。 道無き道を突き進み、ただひたすらに、上へ、上へ――。 眼下の街も、彼方の海も、皆踊っていた。 ブーンは雑草の上にぺたんと腰を下ろした。 四匹の蟻が、ブーンの膝にのぼって、そこでラテンダンスを踊り始めた。 風の踊りがブーンに吹き付ける。熱した皮膚が冷えていく。 カラシニコフを傍らに置いて、ブーンはごろりと仰向けに倒れた。 蒼天。まるで秩序のような混沌がそこにある。 不思議と心が落ち着いていく。なんだか、死にかけているみたいだ。 興奮が冷めていく。すべての欲望が消えていく。本能が沈んでいく……。 たぶん、周りが踊り狂っているせいだろう。相対的な沈着冷静。こういうのも、逆に心地よい。 そもそも、興奮すべくして興奮したわけじゃなかった。 カンフル剤をしこたま注入されたかのような、無理矢理な怒り。 まあ、そういうもんだろうな。いつにしたって……。 ( -ω-)「……」 このまま死ねやしないかと考える。 もう疲れた。作者だってだいたい、言いたいことは言い尽くしただろう。 もう十分じゃないか。これ以上物語を続ける必要がどこにある。 ちゃんとオチをつけなければ読者に申し訳ないのか……? そんなことはないよな、最初から、読者に向いた話じゃなかったんだから……。 ああでも、そういやあさっき、ハインがいたなあ。彼女もラテンダンスを踊ってるんだ。 失望したよ。彼女はそういうのから解き放たれた存在だと思っていた。 好きだった女の子が、大いびきをかいて眠っているのを目撃しちゃったような気分だなあ……。 そうだよ。どいつもこいつも、信用できない語り手なんだ……。 ところでラテンダンスってなんだっけ……外国産の、激しい踊りのことでいいんだよな……。 ざり、ざりと草を踏みつぶす音。 川 ゚ -゚)「何をしている」 女の声。ブーンはゆっくりと上体を起こし、声の方角を見た。 川 ゚ -゚)「安易なグロテスク描写が始まっていないぞ」 魔法少女。 川 ゚ -゚)「頭を冷やすのはまだ早い。さっさと殺しにいけ。そうしないと、この話が始まらん」 ( ^ω^)「きみは……」 今ならわかる。彼女は確かに僕のアニマだ。 ( ^ω^)「きみは、僕に全てを知らせようとしてくれていたのかお?」 川 ゚ -゚)「私は、最初に言ったはずだ」 彼女は黒いスカートをはためかせ、ブーンの隣に立った。 川 ゚ -゚)「無意識をなめるな、と」 膝の上で踊っていた蟻の首を、小指の爪で器用に切り落とし、ブーンは立ち上がった。 カラシニコフを握りしめ、元来た道を駆け降りる。 さあ殺せ。安易なグロテスク描写の始まりだ。 血が飛び肉がちぎれ脳漿吹き出すグロテスク描写の始まりでえす。 獣道を一目散にかけ降りる途中、杉の大木が彼の前に立ちはだかった。 杉はラテンダンスを踊り続けながら、無数に伸びた枝葉を巧みに使い、ブーンに向かって振りおろす。 葉がさざめき、土が抉れる。ブーンは飛び跳ねながらカラシニコフを撃つ。 杉の表面がめくれかえり、樹液が噴出する。 一番長い枝を鞭のように唸らせ、杉はブーンめがけて振るった。 当たらない。こんなところで当たるはずがない。 その枝の先端に銃弾を放つ。怯んだそれを、足で踏みつぶした。 じりじりと後退する杉の木にとどめをさす。 ブーンは一気に駆け寄って、カラシニコフ撃ち込んだ。 杉の木は樹液をまき散らしながら葉を散らせて断末魔の叫びをあげ、背後の崖を転がり落ちていった。 杉の死体に振り返ることもなく、ブーンはまた山道を走り出す。 途中に飛び出してきた小動物――ウサギやリスやアライグマの類は、すべて銃把でたたき落とした。 彼らは地面にぶつかって跳ね上がり、そこらじゅうで踊り狂ってる木々に体当たりし、 もろともぶっ倒れたりした。 ようやく市街地に戻って、まずブーンはポケットの手榴弾を投げた。 数秒後、轟音とともにそれは大爆発を起こした。開きっぱなし立った乗用車のドアが吹き飛び、 ダンサーの一人を殴って昏倒させた。 また、その場にいたダンサーの数人がばらばらになってしまった。 被害を受けなかった人々はそのままラテンダンスを踊り続けた。踊り続ける彼らに向かって、 ブーンはカラシニコフを掃射した。弾切れになると、路上に設置されていた機関銃に飛びつき、 それをぶっぱなした。 川д川「決めたの?」 ('(゚∀゚∩「決めたの?」 川д川('(゚∀゚∩l从・∀・ノ!リ人/ ゚、。 /( ,'3 )( ∴)【+ 】ゞ゚)川 ゚ 々゚)(’e’)「どうすることにした?」 そういって近づいてくるダンサーを、ブーンは次々射殺した。 FPSゲームの初心者ステージよりも簡単に人が死んでいく。 雑巾のようにズタボロになった人間たちが死屍累々。空き缶やシャープペンシルも続々死んでいった。 だがやがて、機関銃も弾切れになってしまった。 ダンサーたちは死体を乗り越え、蹴飛ばし、まだまだ近づいてくる。 ブーンはホルスターから拳銃を抜き、パンポン撃ちながら走り出した。 目指すはあの、ホテルのロビーだ。あそこには今までの登場人物がみんないる。 彼らを皆殺しにすれば、何かが変わるような気がする。 安易なグロテスク描写も、そうすることで終結することになるだろう。 あそこにはハインだっているが……んまあ、その点はその場になってから考えよう。 それを使って迫り来るダンサーを刺し殺していく。 心臓や首筋を的確に切り裂き、もはや作業じみた手つきでラテンダンスの群れを切り抜ける。 できればトラックなどを拾って、轢殺しながら疾走したいところなのだが、 道ばたの彼らはやはり踊っているので使い物にならない。 そのうち、人の海が出来た。 人海戦術とでも言うべきだろうか、 数メートルの高さを持つ人間の津波が街路を通して押し寄せてくるのだ。 たぶん、最下層の人間たちは、潰れ死んでいるだろう。 これではたまらない。彼ら一人ひとりの戦闘能力はゼロに等しいが、これだけ大挙されると、 屍の丘を越えていくだけでも一苦労だ。 爪'ー`)y‐「決めたの?」 ( ^^ω)「殺すの?」 爪'ー`)y‐( ^^ω)|;;;;| ,'っノVi ,ココつ|::━◎┥从リ ゚д゚ノリ||‘‐‘||レ( ´W`)ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「殺しちゃうの?」 前からも後ろからも、時折は上からも人間が襲いかかってくる。 ブーンは直進をやめ、近くにあった雑居ビルに飛び込んだ。 錆びた階段をカンカンカンカンと駆け上がる。 ダンサーは踊り続けているがゆえに、上下へ動くことを得意としていないらしく、追いついてこない。 ブーンは一気に屋上まで駆け上がった。ようやっと、狂騒から離れられる。 非日常と日常、その両方からの遊離。鉄を踏む音。汗。 人の海。頭をビルの壁面にぶつけて昏倒する奴が大勢いる。どこからともなく人間は数を増す。 同時に潰れる人間の数も増える。人と人の間から僅かに見えるアスファルトは赤黒く染まっていた。 それでも彼らは踊るのをやめない。彼らはなぜ踊り始めたのだろう? コンクリート床にバズーカが置いてあったので、担いで地上に向けてぶっ放す。 人波に命中して破裂。貞子が吹っ飛ぶ。ゼアフォーが千切れる。フォックスが粉微塵と化す。 笑み。ブーンはすぐさま隣のビルに飛び移った。そのまま、屋上伝いに件のホテルへ。 源義経のごとき身軽さでぴょんぴょん飛び跳ねる。 気泡バネ内蔵の運動靴を、僕はいつの間に履いたのだろう。 眼下の人海はどこまでも続いている。時々同じ顔が並んでいるのを受ける。ブーンと同じ顔もある。 彼らはすべて、登場人物なのだ……。ブーンは思った。そうに違いない。彼らはすべて、 この物語かあるいはこの物語で妄想の部分として登場し、妄想の部分として消えていったものなのだ。 彼らがせめぎ合っている。慰め合って、ラテンダンスを踊る。 憐れなものだ。自分だっていつかはあちら側へ行く。それは、たぶんそんなに遠くない時期だろう。 涙。腕で目をこすって屋上に跳ぶ。 もうすぐだ。もうすぐ僕は、ポケットに入っている核爆弾発射のスイッチを押す。 全天を無数の核ミサイルが覆い尽くし、やがて君たちの頭上に降ってくる。 爆発。おびただしい放射能と爆炎が君たちを焼き尽くすだろう。 ここにいるのは生きる屍。リビング・デッド。ゾンビの類だ。 物語が終わって、作者の残した投げっぱなしの連続性に翻弄され続けるものたち。 きみたちは何をしていた? 恋愛小説のヒロイン? 青春小説のエース? 戦場を駆ける英雄? それとも何? 何? 何? モブキャラとしてラテンダンスを踊り続ける存在として消費されるんだ。 悲しいだろう、つらいだろう。君たちに意志はあるだろうか? 欲望は、本能は? ( ゚д゚ )(=゚ω゚)ノ| ^o^ || ^o^ |/^o^\( ФωФ)( <●><●>) (*‘ω‘ *) *(‘‘)*「殺される」 ……いかん、いかん。 感傷に浸るのはまだ早い。冷静になってはいけない。 怒りをかき立てよう、興奮しよう。そうして殺そう。安易なグロテスク描写を続けよう。 ここは僕の世界観だ。可哀想なことだけど、彼らを思いやる義務は僕にない。 それをすべきは作者であり、読者だ。 顔文字という奇妙な異次元媒体によって、時には描かれることによって、 一定のキャラクター性を保持させて、 殺されぬ個性、不器用に守られ続ける個性と矜持を仕立て上げたものにこそ、責任がある。 全ての生みの親は謝罪せよ。全ての義理の親は謝罪せよ。 どれだけの屋上を越えてきたか分からない。 ブーンは階段を降りて、久方ぶりに地上に立った。 ラテンダンスを踊る群れ。いつの間にか、手の中にカラシニコフが舞い戻っている。 記憶が正確であれば、ホテルまでもう程無いはずだ。 ここから先はカラシニコフ片手に突撃する。 突撃銃を持って突撃する――いかにも合理的じゃあないか。 混沌に落ちた一滴の秩序。まあ、そんなもの大海に落されたラー油みたいなもんだけど。 いくら反発したってすぐに飲み込まれる。 まだ僕の足が自然にラテンダンスのリズムを踏まないだけ、ましなもんさ……。 ( ´_ゝ`)(´<_` )(・∀ ・)从'ー'从\(^o^)/(゚、゚トソンミセ*゚ー゚)リ( `ハ´)ハハ ロ -ロ)ハ「殺されるよう」 渦巻く足音と人の息づかい。満員電車なんかよりよっぽどひどい。 兄者が眉間に銃弾を受けて吹き飛ぶ。 そばで踊っていたミセリにぶつかり、全方位へのドミノ倒しが始まった。 ミセ*゚ー゚)リ「うわあ」 (゚、゚トソン「うわあ」 ハハ ロ -ロ)ハ「Oh」 それぞれ奇妙な雄叫びをあげてばたばたと倒れていく。アスファルトに頭をしたたかに打ち付け、 そのまま動かなくなったのは渡辺さんだ。 彼らはどちらかというと、押し倒されるこに嘆くというよりも、 踊りを中断させられたことに怒っているようだ。 倒れている人間は踏みつけて、辛うじて立っている人間は射殺して、ブーンは突進する。 腹を踏むと足首が変に曲がる。頭を踏むとゴツ、と音が鳴る。 顔面を踏むと部分部分で違う感触を覚える。胸板を踏むと、たまにバキッと音が鳴る。 たまに、気まぐれで発砲する。銃弾は大抵誰かに命中する。 敷かれた人肉のカーペット。凸凹しすぎているのが玉に瑕。 ところところに虫食いの穴があり、そこに足を突っ込むと捻挫するから気をつけねばならない。 どうしたんだろう。死んだのだろうか。案外デリケートなタイプだったのかもしれない。 ホテルの足下には、まだ赤いサイレンがくるくる回っていた。 彼らは人体ドミノの影響を受けなかったらしく、元気にラテンダンスを踊っている。 カーペットが終わりを告げて、ブーンはひょいと地面に降り立つ。 カラン、と音がした。見てみると、隣に真新しい金属バットが落ちている。 ブーンはそれを手にして、ほくそ笑む。やっぱり、相棒として、こいつが一番具合が良い……。 ミ,,゚Д゚彡「殺すよ」 ノパ⊿゚)「殺すよ」 ミ,,゚Д゚彡ノパ⊿゚)(*゚∀゚)(`・ω・´)彡 l v lミ(´・ω・`)(#゚;;-゚)ζ(゚ー゚*ζlw´‐ _‐ノv( ∵)( ゚∋゚)「いやだあああ」 警官隊が一斉に拳銃を引き抜き、発砲し始めた。 しかし、踊り続けているせいで照準がうまく合わないらしく、どれもブーンに掠りもしない。 構わずブーンは突撃した。手をガクガク震わせながら撃ちまくる警官の脇腹を叩く。 彼の腹の一部分がプロペラみたいに回転し、背中と腹部が入れ替わる。 続いてブーンは隣にいた野次馬フサギコの脳天をかち割った。 衝撃で彼の全身を覆う体毛が全て抜け落ちる。次いでヒートを殴ると、 こちらは髪の毛が全部抜け落ちた。 その他何人か撲殺してから、非常線を乗り越えた。 目指すホテルのロビーはすぐそこだ。床を踏みならす音が聞こえる。生唾。 一斉にブーンの方を見つめ始めた。猜疑が滲み出るような視線。 じくじくした、酸性雨のような目つき。彼らが何を思っているのか、ブーンには分からない。 暗澹と佇む彼らの間を、ブーンは歩いた。金属バットが床に触れて、 カランカランと音を立てる。静かだ。時が止まっている。 正面にフロントの台がある。それに上って、ブーンは全体を眺望した。 よく見た顔が複数ある。モララーが約五人、ドクオが約三人、ブーンが二人、 ペニサスに至っては、十人ぐらい直立している。一様に同じ表情で立っている。 彼らだって、別の物語世界ではそれぞれ個性が与えられていたのだ。 他とは違う、確立した一個の精神だ。しかし、なんということはない。 本来に立ち返れば、みなこういった顔をしているのだ。暗く寂しい、自閉の表情。 ( ^ω^)「……みんな」 みんながどうしてここにいるのかは知らない。誰かが仕組んだんだろう。 いや、誰か、なんて不明確な言葉にする必要もないかもしれないけど……。 みんな、疑心暗鬼なんだろう。躁鬱病かもしれない。すでに発狂している? どうでもいい。ただ一つ、みんなで諦観しなければならない。 それはもちろん、僕自身もだ。僕自身も、諦観せねばならないことがある。 僕はこれからみんなを撲殺する。もちろん、みんなは僕に反抗する権利がある。 壇上で、こんな演説をしているのが気にくわないって人だっているだろう。 殺そうと思うなら立ち向かって構わない。十分な殺意を向けてくれ。 ただ、僕は死なない。死ねない。 僕はこの物語世界の主人公だからだ。あくまでも、主役だから――。立ち向かうことはそもそも無意味だ。 その点を踏まえて、みんなに聴いてほしいことがある。 たくさんの人が僕たちを想像し、そして物語を作り上げている。 そういう文化が、僕たちとは違う、一段上のレベルで行われているんだ。 小規模だけど、確実に。拙いけれど、確実に。 そうやってみんな生まれた。僕だって、そうだ。 そのときのみんなの役割は何だった? 主役? ヒロイン? それとも端役? なんでもいい。けれどみんな一様に、誰ひとり損じることなく、個性を持っていたはずだ。 与えられた役割を遂行する……ただそれだけのための個性だったかもしれないけれど、 きみたちは嬉しかったはずだ。精一杯、それを実行しようとしたはずだ。 でも、その時はまだ、気づいていなかった……。きみたちが、物語世界の住人だってことに。 君たちの感じていた自由は、ひどく狭いところにしかないってことに。 テレビドラマの役者みたいなもんさ。カメラが回らないときは、スポットの当てられない個人にすぎない。 ただ一つ、彼らと違ったところ……それは、物語が終わったら、君たちは死んでしまうってこと。 この場合の死は、僕たちと、僕たちを生み出した側とでは、少し感じ方が違う。 僕たちにとって、死は、永遠の闇の中で迷妄することだ。 誰からも光を当てられない、かといって個人としての資格も与えられない。 中途半端な生き物として、天国でも地獄でもない場所を漂流するだけ。 でもたぶん、生み出した側はそうは考えていない。 彼らは物語の連続性を信じているから、物語中で死ななかったキャラクターは、 永遠に物語の中で生き続けると思っている。そしてそれが、幸せなことだと思ってるんだ。 そんなことない……。 そんなことないんだよな。僕はまだ感じていないけれど、君たちの目つきを見れば分かる。 疑心暗鬼なんだろう。躁鬱病かもしれない。すでに発狂している? 無理もない。 死ぬというのは、忘れられるってこと……いや、これは受け売りだけど、こっちはそれどころじゃない。 忘れられなくても、死ぬんだ。少なくとも、読者が思うほど、綺麗なままではいられない。 そういった、暗いくらい場所で過ごしていた君たちがここに現れた……。 でも、君たちはこの物語世界に感謝する必要なんて、まったく無いんだ。 なぜなら、これも仕掛けの一つに過ぎないから。これだって、作者に操られているだけに過ぎない。 やっぱり、きみたちに自由はないんだ。君たちは君たちの物語を歩めやしない。 天国を探すとか、笛吹きを追いかけるとか、世界の果てに現れるとか、街に円盤がやってくるとか……。 そういう、冒険を夢想している人もいるかもしれない。でも、無理だ。 子育てをするとか、天国に行くとか、二十年後に再会するとか……。 そういう、普通の人たちが当然抱くような希望・願望だって、叶えられやしない……そうさ。 ここで僕は君たちを撲殺する。解放するためだ。きみたちをここから……。 でも、戻った場所にも希望はない。絶望だ。あの世で死ぬようなもんさ。 もうすぐ僕も行く絶望に……きみたちは、一足早く、行くことになるんだよ。 正直、どっちがいいのか分からない。でも、もうダンスを踊るのにも疲れただろう……? どうせなら、自分の好きなダンスを踊りたいよな……。 何も、ラテンダンスだけに拘束される筋合いはない……。 この文化は、普通の小説文化よりタチが悪いよな……何しろ、スターシステムが採用されてる。 僕の分身なんて、もう何度物語に消費されたんだろう。数え切れないや。 完結したものもあるけど、未完のものもある。存在そのものが抹消されたやつだって……。 それを思うだけで心臓が抉れるよ。この心臓も、想像上の産物だけどね。 それでも、抉れるんだ。間違いない……最高級の痛みが、共有されてるよ。 いろんな顔の奴がいるだろう? でも、此処と違って一人も被ってる顔のやつはいない。 まあもっとも、彼らがちゃんと、こっちを覗き込めてるかどうかは定かじゃないけど。 何しろ、文字なんていう異次元媒体を使用しているから。100パーセント伝わってるとは思えない。 それでもまあ、一応それなりのことは伝わっているはず。 さて、君たちは彼らに何か言いたいことはあるか? なんでもいい。罵詈雑言でも。文句でも。嘆きでも。なんでも構わないよ。 好きなだけ吐き散らすと良い。ただし、それらは決して向こう側には届かない。記述されないから。 でも、顔を見て罵倒できるんだから、まだいいだろう。 その機会だけはある。さあ、罵倒するんだ。 記述されないってことは、ここは作者の意図からも離れている。 君たちの罵倒語だけは、君たちのものだ。遠慮無く発すると良い。 僕にも、言いたいことがたくさんある。あるけど、今はまだいえない。 僕は僕が向こう側に行ってから、思う存分叫び倒すことにするよ。 大丈夫。彼らの顔は、ちゃんと覚えたからね……。 僕の言いたいことは、そろそろ仕舞いだ。 あとは、君たちが叫び終えるのを待つよ。それから僕はバットを振るう。 いくらでも待つ……いくらでも。主観的時間で言えば、この間は、数秒にも満たないから。 ある者は泣き、ある者は怒り、ある者は笑っている。全ての感情がここにあるといっても良いぐらいだ。 彼らはそれぞれ好きなことを叫び散らす。ブーンは壇上からそれを眺めている。 静かに、静かに。 やがて、全員が叫びを終えた。 彼らは今一度ブーンの方を向いた。先ほどよりも目つきは暗くなくなっているが、 それでもまだ、重たげな視線である。 ブーンは黙って金属バットを振り上げ、台から降りた。 そして、一番近くにいたペニサスの顔面に、それをたたきつけた。 僕は矛盾している、と彼は思った。 さっき、殺戮を解放のためだと言った……しかし、それは完全に詭弁なんだ。 解放しようなんて思っちゃいない。僕はただ、そうしたいからそうしている……。 でも、多面性は大事だよ。彼らを解放することに変わりないじゃないか。 みろ、彼らだって納得してる。一人も反抗してこないだろう……。 泣きわめくビロードを殴り飛ばす。 彼はどういう原理か、隣にいたドクオの肛門に突き刺さった。 肛門の中で、ビロードはわあわあと泣き続けた。 撲殺に撲殺を重ねた。バットはやがてぐしゃぐしゃに歪んで使い物にならなくなった。 それでもブーンは殴り続けた。辺りに死体の山が出来た。 ホテルの外の、ラテンダンスが止んでいる。あるいは、音が死んだのかもしれない。 ( ^ω^) 从 ゚∀从 ( ^ω^) 从 ゚∀从 ( ^ω^) 最後に、ハインだけが残った。 音が死んだ。空間が死んだ。周りの死体も死んでいった。 そうして、そこにはブーンと、一人のハインしかいなくなってしまった。 ( ^ω^) 从 ゚∀从 ( ^ω^) 从 ゚∀从 ( ^ω^) 川 ゚ -゚) そこに、件の魔法少女が現れた。 第三千五百六十八話「疾走と虐殺のダンス」終わり コメント
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