長岡速報 |
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新しい記事を書く事で広告が消せます。 2 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:30:06.09 ID: 9dZxI4QW0 一九九五年、七月三日。いまだ雲は払われず、薔薇の栄華も極め渡る頃。 ・・ ・・・ まさしく神秘的だった。 デレに、男の子と遊ぶ経験は今までまるで無く、ギコとのひと時は全て新鮮に感じられたし、
しかし、対照的にクーの表情は翳りを増していった。 デレは何度も心配したが、そのたびにクーは弱々しく笑ってみせ、 川 ゚ -゚)「大丈夫だ」 しかしその一言には、何の活力も見出せなかった。
4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:32:50.45 ID: 9dZxI4QW0 そのなかで、ごく稀にこんな言葉を溢した。 川 ゚ -゚)「迷ってたりね。天稟にかけてるんだ。どっちの幸せがいいか、だなんて」 デレが真意を尋ねると、またも「レッドアイとシャンデー・ガフ、どっちを飲むか迷ってる」だの惚けたり、 ζ(゚ー゚*ζ「………」 川 ゚ -゚)「ははは、はは、大丈夫だよ、実は二日酔いだったりして」 気さえ許せば狂笑するに違いない……そんな表情を浮かべながら、 川 ゚ -゚)「交換日記、忘れててごめん。でも、いずれまた毎日渡せるから」 会話が終了すると、クーは去りゆくデレの背中を見つめながら、 川 ゚ -゚)「ギコ、……ギコ、……ギコ、ねぇ」
5 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:35:24.38 ID: 9dZxI4QW0 (,,゚Д゚)「だからァ、これはな、タイミングなんだよ」 勿体ぶって講釈しながら、ギコはクレーンゲームを手際よく操作していく。 ζ(゚ー゚*ζ「あっ!」 ギコの動かすアームが、シッカリとぬいぐるみを掴み終えた。 シューターに落とされ、そのまま取り出し口に現れたぬいぐるみを、デレはいち早く取り上げた。 ζ(゚ー゚*ζ「すごいねっうまい!」 (,,゚Д゚)「へへ」 ギコは、デレのぬいぐるみを抱きしめる仕草を見つめながら、満足そうに唸った。 (,,゚Д゚)「でも、なんでそんなぬいぐるみが欲しかったんだ?」
7 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:38:31.53 ID: 9dZxI4QW0 ζ(゚ー゚*ζ「これね……」 愛しい我が子の面倒を見るように、胸のうちのぬいぐるみを撫でながら、 ζ(゚ー゚*ζ「クーちゃんが言ってた子と似てたから、プレゼントしようかなって」 (,,゚Д゚)「え、ああそうなんか」 そういえば、ギコはクーとは面識がなかったはずだ……デレはそう思い返すと、 ζ(゚ー゚*ζ「えっとね、わたしの親友なの。今度紹介するね!」 (,,゚Д゚)「おー、サンキューサンキュ」
8 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:41:59.60 ID: 9dZxI4QW0 時間を忘れるほど遊び呆け、デレはたといようもない幸福感に満たされた。 空が藍いろに染まり、そうしてゆっくり (,,゚Д゚)「まあまあ、また遊べばいいじゃんね」 ζ(゚ー゚*ζ「うーん、そうだけど……」 (,,゚Д゚)「そうだって、な、な、決まり決まり! 俺が送ってったげるって!」 たとえこの日が終わろうと、また今度遊べばいい。 その理由の一端は、クーによるものであった。
9 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:44:18.77 ID: 9dZxI4QW0 ギコと交流を持ち始めた頃から、クーはデレの誘いに中々応じなくなった。 ギコと付き合っている最中でも、ふいにクーの顔がよぎり、心が痛んだ。 (,,゚Д゚)「どうかした??」 気遣う言葉に、デレは首を振りながら ζ(゚ー゚*ζ「ううん、なんでもない」 そう返答するばかりだった。……
月日は経ち、梅雨は明けた。
10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:48:17.61 ID: 9dZxI4QW0 陽光が照りつける。 街は見渡す限り乱反射し、一条の影さえ見当たらない。 目を細めながら、舗道の上を歩くのだが、サンダルの裏がいやに粘つく気配がする。 ζ(゚ー゚;;ζ「あづい……」 随分まえから、腕時計の辺りにデレは違和感を感じていた。 ボストンバッグに時計を放り込む。
12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:52:12.03 ID: 9dZxI4QW0 こうも陽光が強烈だと、日焼け止めがまともに効いているのか不安になってしまう。 パイルパーカーにタンクトップという出で立ちに、後悔し始めてきた。 どうせ誰も気に留めないだろう、ええい脱いでしまえ。と振り切ろうとしたのに、 もう、どれほど歩いただろうか。 ζ(゚ー゚;;ζ「ふぅ……」 蒸留するとアルコール分が約三倍になるという話は有名だが、
14 名前: 訂正 ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:56:13.22 ID: 9dZxI4QW0 こうも陽光が強烈だと、日焼け止めがまともに効いているのか不安になってしまう。 パイルパーカーにタンクトップという出で立ちに、後悔し始めてきた。 どうせ誰も気に留めないだろう、ええい脱いでしまえ。と振り切ろうとしたのに、 もう、どれほど歩いただろうか。 ζ(゚ー゚;;ζ「ふぅ……」 蒸留するとアルコール分が約三倍になるという話は有名だが、
15 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:57:19.81 ID: 9dZxI4QW0 いままさに蒸留させられている自分は何に変わるのか――呆れつつもデレは だが、自分が何か、今までとは違っていることは、随分前から自覚していた。 "ホワイト・ラブ"へ足を向けるこのひとときの間で自分は変わってしまうのか。 首筋の滴をハンカチで拭き取っているうちに、目的地の看板が目に入った。 あの店であの人と待ち合わせするのは、今日が初めてだった。 なにか、特別な時間が起きそうな予感がする。 デレは一息ついてから、焼杉造りのドアを押し開けた。
16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:00:35.53 ID: 9dZxI4QW0 一歩々々すすむ度に、嘆声したくなるほどの涼しさが訪れる。 ζ(゚ー゚*ζ「あっ」 さっそく待ち合わせの相手を発見した。 白い円卓の上に白薔薇を一本さした、風変わりながらも高貴な趣き デレが待たせた相手は、文庫本を読みつつ片手を上げる。 同性のデレですら心臓が跳ね上がりそうになるのだから、男からしてみれば
18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:03:56.28 ID: 9dZxI4QW0 デレが席に着くのと同時に口を尖らすと、笑窪を作りながら、 川 ゚ー゚)「このままどうなるのかと不安になったよ」 ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん! でもクーちゃんってほんと大げさだねっ」 川 ゚ー゚)「いやいや、野垂れ死ぬかと思ったさ」 プッと吹き出すのを堪えながら、デレはシッカリした口調で、 ζ(゚ー゚*ζ「喫茶店で野垂れ死なないでよォ」 川 ゚ー゚)「あー、さみしかった」 組んでいた足を放り出すように解くと、己の髪を手櫛しながらボヤいた。 駄々ッ子のようなクーは、最近では珍しい。
川 ゚ -゚)「そうだ」 円卓の中央の白い薔薇を摘み上げると、デレの髪に 造花ではないらしい。そのかすかな衝撃で今まで孕んでいたものが 戸惑うデレに、クーはさながら白馬の王子らしい顔つきになって、 川 ゚ -゚)「とても……よく似合っている」 ずけずけと言ってから、デレの癖ッ毛を丁寧に撫ではじめる。 ζ(゚ー゚*ζ「え、え」 クーの感情の変化に、ここまで驚かされたことはない……デレのそういった だが、徐々に安堵に似た喜びが押し寄せてくる。
24 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:16:34.80 ID: 9dZxI4QW0 ζ(゚ー゚*ζ「あ、そんなことない! ほんと嬉しいよ。ほんと」 嬉しそうに小首を傾げて、キョトンとしながら、 ζ(゚ー゚*ζ「うん、だけど、急にどうしたの?」 川 ゚ -゚)「えっ?」 ζ(゚ー゚*ζ「だって、今日はただの遊ぶ日じゃない」 川 ゚ -゚)「ああ……」 木製の椅子をギィギィ鳴らし、ふてぶてしいような顔になって、 川 ゚ -゚)「久しぶりじゃない。二人だけで会うのって」 ζ(゚ー゚*ζ「あ、、、」 重たげにクーが言いきったそのとき、水を打ったように静まり返った。
27 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:18:29.52 ID: 9dZxI4QW0 さきに口を開いたのはクーだった。 川 ゚ -゚)「だから嬉しくって、つい。……ね?」 そういってクーが笑みを浮かべると、空気が一瞬にして打ち解けたものへ移り変わった。 ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにありがと。すごく、うれしいよ」 川 ゚ -゚)「感謝したいのはこっちの方だ。ほんとに」 クーは姿勢を崩して頬杖をつくと、いたずらっぽい目つきになって、 川 ゚ -゚)「ところで、お願いがあるんだが」 ζ(゚ー゚*ζ「え、なァに?」 川 ゚ -゚)「予定を取りやめにして、今日いちにちここで過ごさないか?」 弱々しく微笑んでいうと、視線を下に落とした。
31 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:22:52.45 ID: 9dZxI4QW0 デレは小さく頷くと、飲み物の注文をした。 ここで本を読んだり、クラブサンドでも頬張って こうして二人の少女は読書をして、貴重な一日を過ごそうと取り決めた。 フランツ・カフカ「変身」……奇妙な出だしから始まる、現実的なのか クーの説明によれば、たいそう有名な作品らしいが、読み進めても読み進めても混乱が収まらないし、 浮遊感のさなかで発せられるグレーゴル・ザムザの悲痛が、デレの胸をいちいち突き刺す。 八方美人なデレにとって、心が不安定になってしまうようなキャラクターばかりであった。
32 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:24:34.89 ID: 9dZxI4QW0 川 ゚ -゚)「どうだった」 半ば放心気味のデレに、やさしく問いかけた。 ζ(゚ー゚*ζ「えっと……」 小首をかしげながら、デレはあどけない口調になって、 ζ(゚ー゚*ζ「主人公がかわいそ過ぎるなぁって……」 川 ゚ー゚)「あぁ……」 読んでいた自分の小説にしおりを挟みこむと、 川 ゚ー゚)「あの最後の妹のシーンからは、涙なしには読めないな」 ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにね……」 読了したばかりの本について語るのは、なんと気持ちのいいことだろう。
36 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:26:16.54 ID: 9dZxI4QW0 デレが「四つの署名」を読み終えた辺りで、クーはそろそろ帰ろうかと提案した。 読んでいるうちはストーリーの面白さでその事実を忘れていたけれども、 そのことをクーにいうと、彼女は微笑んでから、肩をすくめて、 川 ゚ー゚)「まあ、あれは意外だよね」 ζ(゚ー゚*ζ「意外なんてもんじゃないよー、ほんとイメージと違う。。。」 川 ゚ー゚)「でもまあ、あれはあれでクールじゃないか」 そういって立ち上がって清算に向かうクーを、デレは慌てて追いかけた。……
40 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:28:22.57 ID: 9dZxI4QW0 ・・ ・・・ ζ(゚ー゚*ζ「ええ、もう帰るのぉ?」 内藤には帰宅が遅くなるかも、と伝えていたし、 川 ゚ -゚)「うーん、、、遅すぎると危ないだろう? さいきん物騒じゃないか」 ζ(゚ー゚*ζ「でもまだ七時だよ」 川 ゚ -゚)「そういう半端な時間だからこそ危ないんだよ」 にべもなくいうと、デレの肩に手を乗せながら、 川 ゚ー゚)「送ってってあげるから」
41 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:31:09.61 ID: 9dZxI4QW0 空の藍色が闇色に移ろいでいく下、二人の少女はひた歩いた。 ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ」 川 ゚ー゚)「ん……?」 ζ(゚ー゚*ζ「まるで……わたしたち恋人どうしみたいだね」 躊躇いがちにデレは呟いた。 川 ゚ー゚)「そう……そうか、そっか」 言い切らぬうちにクーは下を向いてしまった。 そんな様子を見つめながら、デレはギコの勇ましい顔立ちを、無骨な声色を思い出した。 恋人……なんと甘美な響きだろう。
44 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:32:53.42 ID: 9dZxI4QW0 こうして二人は、お互いを見つめることもなく、 デレの自宅にそろそろ近づいた。 四角錘のようなその建物の前に来ると、二人は足を止めた。 川 ゚ -゚)「じゃあ……今日はありがとう」 ζ(゚ー゚*ζ「ううん、こっちこそありがとう」 そう返しながらもデレは、クーの表情に疑問を抱いていた。 そこまで思いつめたような表情をどうして取るのだろう。 川 ゚ -゚)「うん……」 もう一度デレの髪に手をやって、最後の確認とばかりに白薔薇の花片に触れる。
48 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:34:34.87 ID: 9dZxI4QW0 川 ゚ -゚)「わたしもだ、こんどはデレから誘ってよ」 それからとりとめもない会話をなんどか交じわせ、 川 ゚ -゚)「じゃあ、そろそろ帰るね」 クーがそう言いながら、背を向けだしたので、デレも、 ζ(゚ー゚*ζノシ「うん! じゃーねー! また遊ぼ!」 と送ってから、正門のベルの方へ詰め寄った。 ピン、ポーン 軽快なチャイムを鳴らしてから、デレは立ち止まった。
50 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:36:07.42 ID: 9dZxI4QW0 ζ(゚ー゚*ζ「……!?」 慌てて振り返った。 しかし、その近づいてきた人間は強盗などではなかった。 川 ゚ -゚)「デレ……」 ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの、わすれも――」 クーだった。帰ろうと背を向けていたはずのクーであった。 クーは、やおら唇に己の唇を押し付けた。
54 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:38:26.34 ID: 9dZxI4QW0 それはあまりに軽やかな動作で、近づかれてもまったく不安にさせない。 柔らかい唇が柔らかい唇の感触を確かめる。 その色に似た、たしかな熱っぽさが唇を通してデレの全身に行き渡る。 弾みで白薔薇は髪から抜け、軽やかに地面へ落ちてしまった。 その力強さに、デレは惚れこんでしまったのか、
57 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:40:06.22 ID: 9dZxI4QW0 そうした間に、クーはデレの背へと長い腕を回した。 デレは事態を飲みきれていず、ただ、「家族からこの光景を見られたらやだなぁ」だのと 何拍ほどか経った。 ζ(゚ー゚;ζ「……え……」 クーの後姿を見て、ようやくデレは異様だったそのひと時に戸惑った。 ζ(゚ー゚;ζ「クーちゃ……待っ……」 しかし、声をかけてもクーは振り返らないばかりか、駆け足で立ち去ってしまい、
60 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:42:05.50 ID: 9dZxI4QW0 覚束ない足取りでデレは帰宅した。 ζ(゚ー゚;ζ「ただいま……」 玄関は暖色ライトで照らされているが、人の気配はまったくしない。 ζ(゚ー゚;ζ「(……父さんにはバレてない……)」 わずかばかりホっとした。 いそいそと自分の部屋へと、デレは階段を上った。 ζ(゚ー゚;ζ「ペニサス……」
62 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:43:05.66 ID: 9dZxI4QW0 冷ややかに姉を見下ろしながら、階段を下りていった。 ('、`*川「ブスのクセに、さぁ」 擦れ違いざまにそう罵ると、そのまま一階に足をつけて、 ζ( ー *ζ「………」 たちまち、浮遊感は失せた。 二階の自分の部屋に辿り着くまで、常態の何倍ほども時間がかかった。 自分のハンドバッグに見慣れないハンカチが納まっていることに ・・ ・・・
65 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:44:42.43 ID: 9dZxI4QW0 ギコはそういうと、顎でしゃくってデレを促した。 (,,゚Д゚)「そのクーって娘、レズなんかじゃねえのか?」 ζ(゚ー゚;ζ「えぇ~!?」 慌てふためくデレに、ギコは調子づいたような勢いで、 (,,゚Д゚)「だってありえねぇだろ! 帰り際にキスってアメリカ人かっつうの!」 ζ(゚ー゚;ζ「ぅう~ん」 デレも反論する気になれない。 (,,゚Д゚)「ああ、暑い? 悪ィな、エアコンついてねんだわ。窓、あけっからよ」 ……一九九五年、八月三日。猛暑も全盛を極めるこの頃。
66 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:46:24.88 ID: 9dZxI4QW0 ζ(゚ー゚;ζ「あぁありがとう。ちょっと、暑いの苦手で……」 華やかな黄のパーカーを脱いで、楽な軽装になったデレはそう感謝すると、 ζ(゚ー゚;ζ「ギコくんは暑いの平気なの?」 (,,゚Д゚)「ん? ああ……」 財布を探っていたギコは生返事すると、デレに目を合わせて、 (,,゚Д゚)「エアコンない部屋で寝たり起きたりしてっからな」 ζ(゚ー゚;ζ「そっか……」 (,,゚Д゚)「まあ窓は北側だから太陽が来ないんだわwそれがちょっとだけマシかw」 ζ(゚ー゚*ζ「じゃあコレ北枕じゃないw」 ベッドのほうに目をうつしたデレが、かろやかに笑ってみせた。
70 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:47:41.31 ID: 9dZxI4QW0 とたんに低くなった男の声を聞き、デレは、いま目の前にある ……ベッド……。 空はクーと別れた頃とまったく同じ色をしてい、その宵闇は、なんらかの予兆を感じさせた。 父には「友達の家に遊びに行く」とだけ伝えてある。 しかしこの状況では、いずれ父に連絡をせねばならないような気がする。
73 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:48:44.97 ID: 9dZxI4QW0 ……ああ、デートの帰りのこの誘い、乗ってしまわなかったらどんなに気楽だったことか。 ……でも、その気楽さは、幾度となく味わってきたじゃない。 ……たまの冒険心だって、発揮させたって……いいじゃない。 ……ねェ? (,,゚Д゚)「……そんな緊張すんなよ」 ζ(゚ー゚;ζ「エッ」 がちがちに身体が固まったデレを見やりながら、ギコはふっと優しい眼になって、 (,,゚Д゚)「おれを信じてくれればいいんだからさ」 ζ(゚ー゚*ζ「……ギコくん」 そのとき、ふたたび訪れたしじまは、たしかにお互いを意識しあった、
77 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:50:13.27 ID: 9dZxI4QW0 「今日は親が帰ってこん」というギコの言葉は、この沈黙の中で、とつぜん輝いてみせる。 ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ギコくん……」 (,,゚Д゚)「ン?」 ζ(゚ー゚*ζ「隣に座っていいかなぁ」 返事を待たずに腰を浮かせたデレを、ギコは笑顔で受け入れた。 俯いてはにかむデレをギコは横目で見やりながら、そっと肩へ腕を回した。 ぐっと力を込めてギコは己の肩に彼女を寄らせた。
80 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:52:00.75 ID: 9dZxI4QW0 ギコの厚い胸板は心臓の脈打ちで時折たかく篩え、それがまた、 女をたやすく抱き寄せた男の身体は、ゆるい動作でベッドに横たわった。 ζ(゚ー゚*ζ「あったかい……」 (,,゚Д゚)「そう」 ζ(- -*ζ「ウン……」 デレの背中を擦っていたギコは、突然デレを抱えて半身を起こした。 (,,゚Д゚)「もっと、、、あったかくしてやる」 吐息交じりに強く言うと、着衣のままのデレに激しく求愛した。
83 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:53:41.45 ID: 9dZxI4QW0 デレが受け身になってギコにしがみ付いていたときに、彼は行動を起こしたらしく、 三日月や一等星の輝きこそが、密室を灯す光となった。 やがて二人は一旦落ち着くと、服を脱がせ合いにかかった。 ようやく裸体になりあったそのとき、デレの瞳が三日月を捉えた。 やがてはその月でさえ、ギコの身体が迫ったために見えなくなってしまう。 裸と裸との抱きしめの素晴らしい感触に、デレは鳥肌の立つ思いであった。 抱き締め合うという行為は、続けているうちに肌身を寄せ合いたくなってしまう。
84 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:55:13.69 ID: 9dZxI4QW0 ζ(- -*ζ「………」 こうしていつまでも、発情していたい。戯れていたい。 世界が融解していくような感覚の中、突き上げられながら、 デレは神秘の夜の果てまで、そう願ってい続けた。 後掃除も、眠ることも、朝を迎えることも、頭の中にはない。 そんな余裕は、全て性欲で充ちた。 (過剰の美学/または神秘の夜の果てへ 終)
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