長岡速報 |
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新しい記事を書く事で広告が消せます。 4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:36:48.34 ID: 1dbFQ8gj0 ドードーナの森に身を寄せて。
「今日はここで死のうかしら」 プルトニーは川辺にたつと、ほほんでつぶやいた。 たとえば、そびえたつ教会の鐘を見上げては、そこから飛び降りたらしねるだろうと空想にひたり、 たとえば、この川辺から身をなげうったら、海にかえるまでもなく息絶えられるかも、などと 死に場所をもとめて旅にでたのに、さしあたって生きながらえているのはこれによる。 けれども、心の傷はいえていない。 とおくない将来のうち、自分は確実にしぬだろうという自覚は、
※今回は劇中劇なのでAAキャラはお休み 6 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:39:23.10 ID: 1dbFQ8gj0 屈みこむのをやめて、そらした視線のさきに、 「森のすだまに誘われるのも、いいものね」 プルトニーの独り言はたやすく深遠に誘い込まれた。 森に足を踏み入れたとたん、空気が冷ややかなものに移りかわった。 しかし、空気は澄んでいるといえばいえた。 生き物の気配はする。 「いいじゃないの」 冷笑を浮かべて森の住民にいって聞かせた。
8 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:40:48.51 ID: 1dbFQ8gj0 歩いているうち、足元が硬い地面に変化したことに気がついた。 しかし、それはあまり信じられることではない。 怪訝におもいながら進みつづけていたプルトニーは、そのとき、 「あれは……」 足取りもはやくなる。何があるのだろう。
10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:42:54.44 ID: 1dbFQ8gj0 ――ここは、お伽話の世界なのか知ら。 沈んだ曇り空には似つかわしくない、メルヘンチックな小屋であった。 「こんな……とこって」 そのワンダランドの唐突な出現に戸惑っているうち、 声をかけるまもなく、少女はゆっくり立ち上がると、ほほえんで彼女に近づいてきた。 「まあ、お客様なんて久しぶりね」 「え……」 へどもどするプルトニーへ更に近寄ると、少女は小首をかしげながら、 「わたし、ドローレスっていうの。アナタの名前はなぁに?」
11 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:45:00.87 ID: 1dbFQ8gj0 「あなた、どこから来たの? もしかしてエコの街から?」 ――わたしたち? プルトニーが訊くまでもなく、その疑問は氷解した。 「あら、カレット。もう行くの?」 少女は振り向くと、たちまち大人びた声でいった。 「うん。……そちらは?」 プルトニーがなおもへどもどするのに、ドローレスはようやく気がついたように、 「あら! そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね!」
12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:48:07.05 ID: 1dbFQ8gj0 「……プルトニー、よ。ただの、旅人なの」 さっそく食いついてくるドローレスに頷き返しながら、カレットのほうへ目を向けた。 「ええ、ただの旅人……。行く先も帰る場所も決めてない、愚かな旅人なの」 感嘆するドローレスに、プルトニーはいぶかしげに、 「それより、この小屋は一体どうしたことなのかしら? ドローレスはあどけない口調で、 「この河で取れるアユの美味しさったら、他にないのよ? ねえ? カレット。
13 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:49:26.20 ID: 1dbFQ8gj0 人恋しさが、とつぜん胸に押し寄せてくる。 普段の自分ならばかばかしいと一笑にふするような考えが、ぽっかりと浮かび上がってきた。 「あの……なら、でしたら……」 行儀よく応えるドローレスに、安心しつつ、しかし緊張をたたえたまま、 「その……ご自慢のマイセン河のほとりを、しばらく堪能さしていただけないかしら?」 言い切ると、プルトニーはどっと疲れをかんじた。 しばらく、沈黙がなだれはじめた。 駄目なのか……。 「まあ、すてき!」
14 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:52:07.47 ID: 1dbFQ8gj0 「旅人さんですもの。休息は必要でございましょう? いいながらドローレスは小屋のほうを振り返った。 ほっと一息つくプルトニーを、さっそくドローレスは手をひいて小屋の中へ案内した。 カレットが立ちどまる玄関を潜りぬけ、木造りの床の上をあるきだす。 粗末なつくりはプルトニーの想像どおりだった。 本能が警戒しつつも小躍りしていた。 プルトニーは、たしかにとまどった。……
15 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:55:56.22 ID: 1dbFQ8gj0 「ええ。いわば自分探しの旅……といったとこですの」 とはいえ、とうぜんだが自殺の旅だのという物騒な理由はいっさい匂わせない。 「でしたら、さまざまな国をまわっていらして?」 言いさして、ふとプルトニーはカレットが部屋からきえていることに気がついた。 「あら、カレットさんは?」 うっとりするドローレスに頷いたが、このとき、プルトニーはにわかに落胆してしまっていた。 ――カレットさんが居ないだなんて……。 そう落胆すると、たちまち、ドローレスの質問はたいくつなものへ変わり果ててしまった。
16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:59:05.35 ID: 1dbFQ8gj0 「プルトニーさん、あなた、いつまでここに居られるのかしら」 カレットについて考えごとをしていたプルトニーは、いっしゅん答えることにとまどった。 「いくらでも、よ。もしあなたがたがイヤになったら、いつでもわたくしを追い出してちょうだいね」 ・・ ・・・ 宵闇もすぎると、その小屋にはランプによる薄明るい光が満ちはじめた。 じっさい、味も素朴な食材ならではの美味しさで、ドローレスの料理の腕前も、 プルトニーは、食事中でも勢いのおとろえないドローレスの話を聞きながしておいて、 カレットはドローレスとは対照的に、かもくな方らしい。
17 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:00:50.11 ID: vUon2G+G0 あいかわらずドローレスの話のたねはつきることがない。 しかし、カレットはいやな顔ひとつせず、ときおり同意するので、 「そういえば、前々から疑問だったんですけれども」 いきなりドローレスが食いついてきた。 「この家のことなんですけれども……まず、いつごろからあなた方は住んでいらして?」
18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:04:58.57 ID: vUon2G+G0 プルトニーは、小さなショックを受けた。 「まあ、そんなに経つんですの……」 頷いてから、いよいよプルトニーはいちばん聞きたかった質問を切り出した。 「それで……どうして、この、マイセン河のほとりなんかに住もうと?」 「それは……」 じょうぜつだったドローレスは、そのとき、いきなり口ごもってしまった。 プルトニーはその状況を見、いたく痛感した。
19 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:07:16.67 ID: vUon2G+G0 「あ、いや、難しいのなら構わなくってよ?」 しかしそれでも空気が取り払われないことを知ると、 「それでは、すこしお手洗いを借りますわね」 といって、慌てて逃げ出してしまったのであった。…… 逃げるように離れのお手洗いへ向かうあいだ、プルトニーは どうしようもない恐れ、たといようもない疎外感。 刺々しいのに、どこか甘美なさわりで、 ――もっと、あの二人のことを知りたい。 口のはしをゆがめながら、そう、なんども反復した。
20 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:10:41.87 ID: vUon2G+G0 プルトニーには来客用の個室が割り当てられた。 二人は、ふだん通り自室で寝るという。 ――気になる。 その言葉をドローレスに告げられたとき、プルトニーはすぐさまそう考えた。 そう願ったせいであろう、満月のうつくしいこの深夜、 ――あの二人が、深く眠り込むまで…………。 森の中だというのに、おそろしく外は静まり返っていた。
22 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:12:26.83 ID: vUon2G+G0 出てすぐ向かいの部屋が、彼女らの寝床であった。 底冷えのする廊下でプルトニーは立ち止まった。 なにやら、くぐもったような、興奮をかりたてるような、本能的な、声……。 いやな予感がする。 ――むしろ、わたしの存在を忘れているに決まっているわ。 大きく息を吸いこんでから、プルトニーは扉の前まで詰め寄った。
24 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:14:37.40 ID: vUon2G+G0 「………ぁア…」 そのとき、カレットが愛らしい声をあげたので、 興奮をおさえ、息を押し殺して、ゆっくりした動作で 顔の皮ふが真鍮と触れあった。 ――見たい、見たい……。 はやる気持ちをおさえ、プルトニーはかぎ穴ごしの世界を 小さなベッドが一つ、中央に置かれていた。
25 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:17:13.33 ID: vUon2G+G0 なにを、しているのかも。 「………」 プルトニーはつばを飲み込んだ。 ときおり飛んでくる喘ぎ声が、 もっと聞きたくもなったし、もうやめてと泣き叫びたいような気もする。 胸が苦しい。熱っぽくて目眩もする。 それでも見るのをやめられないのは、愛に他ならないだろう。
26 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:19:21.33 ID: vUon2G+G0 過呼吸になりそうであった。身体がこきざみに篩え、吐き気に似た
もし、かりに二人が永遠にまぐわい続けたら、
プルトニーはあせばむ掌をぬぐいながら、つよく確信した。 「心母少女 1」 終
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