長岡速報 |
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新しい記事を書く事で広告が消せます。 4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:19:09.97 ID: Owryz0qq0 二〇一〇年。桜咲く四月の始まり。 クー・ルーの過激な霊視ショウからはや一ヶ月が過ぎた。 くだんのショウについては、さいわい新聞社が嗅ぎ付けていないため、 自社の運営を人に任せ、自らはチッペンデールの寝台で横になっている。
( ´ω`)「………」
5 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:22:36.28 ID: Owryz0qq0 ( ´ω`)「ぼくは、ほんとに……」 ぼくは、ほんとに……妻や娘を、殺したのか? 自分の知らぬ間に、彼女らを苦しめてきたのか? この皺がれた指の一本々々が、彼女らの白い首筋に食い込んだとでもいうのか。
老いた両掌を見つめながら、内藤は何度も何度も自問自答した。
7 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:25:13.97 ID: Owryz0qq0 娘達を殺したという記憶は全く無い。 ( ω )「……違うお、違うお、違うお」 しかし、口だけなら何とでも言える。 (; ω )「でも、でも……」 僕は本当に、彼女らを愛していた――それは確信を持って言えた! 思いたい。
9 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:28:43.62 ID: Owryz0qq0 (; ω )「………」 どうなんだ。 だが、一つ確信を持っていた。 内藤が頭を抱え、涙が零れそうになったそのとき、扉がノックされた。
10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:32:12.82 ID: Owryz0qq0 「失礼します」 快活な男の声が飛んでから扉は開かれた。 おおかた、決算や人員整理の報告だろう。 いずれにせよ食傷気味なのは間違いなく、情報なら遮り、 ( ゚∀゚)「ご気分は如何でしょうか? 社長」 ( ´ω`)「……すまないお、まだ、優れないお……」 そう言ってから、内藤は一層目をかたく瞑って、 ( ´ω`)「急用でないなら、すまないが少し……」
12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:34:39.85 ID: Owryz0qq0 長岡の刺すような勢いの言葉が飛んできた。 内藤は肩をピクリと震わすと、唾を飲みこんで幾分落ち着いてから、 ( ^ω^)「……手紙でも来たのかお?」 ( ゚∀゚)「はい。それと、花も一輪添えられて」 ( ^ω^)「花?」 ( ゚∀゚)「はい。白のグラジオラスでした」 長岡は言い終えると同時に、手にしていた紙袋から取り出した。 茶封筒と、包装された一輪のグラジオラスを。 内藤はその二つとも受け取ると、ためつすがめつした。
13 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:37:34.43 ID: Owryz0qq0 「質のよい白を見つけました。デレさんに捧げてください」 とだけ、書かれていた。 ( ^ω^)「……これ以外には、無いのかお?」 ( ゚∀゚)「はい……全く。彼女からは」 ( ^ω^)「……彼女から、は?」 内藤は便箋を元に折りつつ、オウム返しに尋ねた。 ( ゚∀゚)「渡されたのはこれだけです。そして、我々は発展させていかねばなりません」 含んだ言い方をした。
14 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:39:44.29 ID: Owryz0qq0 ( ゚∀゚)「クー・ルーの真意を暴いてやろうってことですよ」 言い終えると同時に長岡は、ふたたび紙袋を弄ったが、ふいに止めて話を続けた。 ( ゚∀゚)「まず……利害についてです」 ( ^ω^)「……このことで、彼女が利益を得るのかお?」 ( ゚∀゚)「……彼女は世界的に著名な能力者ですから、人脈も相当お持ちでしょう。 その可能性については、当然考え尽くしたと、内藤は想起した。 ( ゚∀゚)「ですが……単なる利益の問題ではない気がするのです」 ( ^ω^)「?」 ( ゚∀゚)「グラジオラスです」 長岡はベッドシーツとほぼ同色の、その花を見下ろしながら言った。
17 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:41:16.01 ID: Owryz0qq0 呟くような口ぶりになりながら、尚も勢いは底に流れてい、 ( ゚∀゚)「そして別の意味も含んでいます。"武装完了"です」 抑揚のつけた喋りになって、 ( ゚∀゚)「つまり、その意味で贈ったとしたらどうでしょう? (;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくれお」 内藤は慌てて遮った。 どうにもその話は、内藤にとって信じられるものではなかった。 (;^ω^)「花言葉に真意って……どうも信じられないお……」 ( ゚∀゚)「確かにメルヘンじみた話ですが、相手が相手ですので」
18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:44:42.58 ID: Owryz0qq0 (;^ω^)「……クー・ルー……」 ( ゚∀゚)「そうです、相手は人外のような、あの妖女なんです」 「それと」と、付け加え、 ( ゚∀゚)「……社長、件のステージで、彼女が何か呟いた、と仰いましたよね」 (;^ω^)「そうだお……"しんぼ"とか……」 「しんぼ」……それだけでは、どの漢字を使用した日本語なのか判明つかない。 該当した言葉の意味をいくつか聞いたのだが、どれもシックリいかなかった。 ( ゚∀゚)「"しんぼ"……私はもしかしたら、これかも、と考えています」 長岡は紙袋から何かを取り出し、内藤の前に掲げて見せた。 CDケースだった。
19 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:47:51.88 ID: Owryz0qq0 ( ゚∀゚)「こちらは、ピンクフロイドというロックバンドの一枚です。 そう説明されても、内藤は理解できなかった。 そのジャケット――白みがかった蒼穹の下、一頭の牛が草むらの上で振り返っているというその図は、 だが、それでもやはり長岡の真意は分からない。 プログレッシブ・ロックといえば、ザ・ビートルズの実質的ラストアルバム「アビィ・ロード」を しかも、その変則的な曲調がどうにも敷居の高さを感じさせ、いままで (;^ω^)「だけど、意味がサッパリ……」 ( ゚∀゚)「これの邦題は、"原子心母"というのです」
20 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:51:04.39 ID: Owryz0qq0 ( ゚∀゚)「そうです。Atom Heart Motherの単語を一つ一つ邦訳しただけのものですが…… グラジオラスの裏の言葉より、はるかに納得し難い説だった。 ( ゚∀゚)「たしかに、これだけなら空中楼閣もいいとこです。 ( ^ω^)「表題曲……」 アルバムタイトルど同名の曲、という意味は察せられた。 ( ゚∀゚)「20分以上の大曲でして、六つの章に分かれているのですが。 (;^ω^)「真のメッセージ!?」
25 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:53:21.77 ID: Owryz0qq0 b.ミルクたっぷりの乳房 c.マザー・フォア d.むかつくばかりのこやし e.喉に気をつけて f.再現 ・・ ・・・ ( ゚∀゚)「……と、このように分かれているのです。 (;^ω^)「父の……どういうことだお? kwsk教えてくれお」 内藤は、熱心に耳を傾けている自分に納得しつつも驚いた。 ( ゚∀゚)「さきほどの手紙で、"デレさんに"とあったでしょう? クー・ルーは、
30 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:55:38.11 ID: Owryz0qq0 デレとクー・ルーに、なんらかの関係があったということか? ( ゚∀゚)「件の霊視ショウ。あれは"父の叫び"を再現しようとしたのではないでしょうか? (;^ω^)「………」 ( ゚∀゚)「意味深なタイトルばかりが並んでいると思いませんか。 (;^ω^)「………」 確かに、もし、長岡の言う通りに、クー・ルーが原子心母のパート毎の そもそも、件の霊視ショウのショックの時点で、内藤の心身は確かな死に迫った。
35 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:57:34.56 ID: Owryz0qq0 (;^ω^)「………」 しかし、長岡の忠告は内藤の頭には入り込まなかった。 内藤の脳裏では、しんぼ=心母の式のみ煌々と照り光っていた。
心母、心母、心母、心母…………。
口ずさもうとしたところで、ようやく、一つの事柄を思い出した。 (;^ω^)「心母……少女……」
39 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/09(水) 00:59:54.95 ID: Owryz0qq0 (;^ω^)「長岡、すまないけど……すぐに行かねばならんとこがあるお」 (;゚∀゚)「ど、どちらへ!?」 (;^ω^)「ツン……妻の、実家だお」 長岡が訝しげに目を見開くと、内藤は弱弱しく微笑んで、 (;^ω^)「思い出したんだお……ずっと昔、 愛しむようにグラジオラスを労わりながら、内藤は懐かしげに呟いた。 思い出したのは、それだけじゃないお。 感慨のあまり、この文章は口に出せなかった。 (アンチ・スリップアウェイ終)
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