長岡速報 |
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新しい記事を書く事で広告が消せます。 3 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:09:49.87 ID: 3XiCbO1A0 二〇一〇年。薔薇が咲き誇るには僅かに早い、春の月。 N県の山間に建てられたその一軒家は、見たところ白亜の賽といった風情で、 その建造物の周りには桜が生い茂っていて、季節の見合ったこの頃は薄ピンクに飾られている。 裏手には見栄えするローゼン・ガルデンがあるという、 家主の名は荒巻スカルチノフといい、内藤の義兄に当たる人物だった。 ツンの実の兄である。
4 名前: ◆tOPTGOuTpU 投稿日: 2008/04/16(水) 23:12:27.35 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「お~、いらっしゃいいらっしゃい」 ( ^ω^)「どうも義兄さん、ご無沙汰してますお」 ( ゚∀゚)「はじめまして、付き添いの長岡といいます」 サントリーフラワーズを去年に退職し、独り身でノンビリと余生を花と 廊下を渡り、居間に通される。 ( ^ω^)「花季はまだなんですかお」 / ,' 3「ウン。もうちょい時間が経てば、すごいモンが見れるかもしれんぞ」 そういう荒巻の顔には誇らしげな笑みが張り付いていた。
5 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:14:52.29 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「ウム、あれはほら、扇の形をしていよう? ( ゚∀゚)「それはすごい」 / ,' 3「まあ、多分……だがね。 ホッホと笑いながら、来訪者の二人をソファに腰掛けさせると、台所へフラリと入った。 内藤は花に詳しくは無いが、娘のデレが好きというので、それなりに / ,' 3「デレちゃんなァ……懐かしいのう。ペニサスちゃんも、愛らしくって……」 ( ^ω^)「………」 / ,' 3「デレちゃんは、わたしのくだらない話に目をランラン輝かして、もうほんとに……
6 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:17:41.33 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「デレちゃんはペニサスちゃんのことを本当に思ってたねぇ…… ( ^ω^)「……二人とも、自慢の娘でしたお」 / ,' 3「しょうじき、わたしはアンタが羨ましかったぐらいでねw」 そういって朗笑すると、視線をテレビの上部へ向ける。 白色のワンピースを着、無邪気にピースをするデレ、 ( ゚∀゚)「………」 ( ^ω^)「………」
しばらく見つめるうち、荒巻の表情に物寂しさが加わった。
8 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:20:39.13 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「ツンも逝ってしまった……デレちゃんも、そして……ペニサスちゃんも」 ( ^ω^)「……。はい……」 ふいに荒巻は顔を上げた。 場が沈黙につつまれたそのとき、荒巻は沈んだ声で、 / ,' 3「……このことは言っていなかったね。……ツンが、口止めしてよと言ってたから……。 荒巻の血を持つ女の、悲しい運命。 ( ゚∀゚)「!?」 (;^ω^)「……!」 その語感の持つ、恐ろしい硬質加減は、一気に二人の身体を強張らせる。
10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:23:37.02 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「空恐ろしいだろう? ……だが意味は簡単だ、"荒巻家の女は早死にする"。 しみじみ語る、荒巻の口の端は俄かに下がった。 / ,' 3「ツンが交通事故に遭ったとき……私はそれの強さに驚かされた。 ( ^ω^)「……大丈夫ですお」 / ,' 3「デレちゃんも行方をくらまし、ペニサスちゃんが自害したときも、 荒巻は頭を下げ、内藤に詫びた。 / ,' 3「すまない……。"呪われた運命"だなんて、冗談に聞こえるかもしれない。 ( ^ω^)「信じますお」 / ,' 3「すまない……」 依然、荒巻は頭を上げようとしない。
11 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:26:35.14 ID: 3XiCbO1A0 視線も無意識のうちに下へ向かってしまい、姿勢もかたくなり、 これでは、尋ねた理由……ツンの書いたという小説、 荒巻の心情に共感し、目的をウッスラ忘れている内藤はともかくとして、 ややあって、荒巻が口を開いた。 / ,' 3「ツンも……自身の運命を危ぶんでいて、自分で自分を守ろうとした……。 ( ゚∀゚)(;^ω^)「!!」 まさか。 / ,' 3「……それが功を為したか、今となっては定かではないが……」
12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:28:53.73 ID: 3XiCbO1A0 こらえきれず、内藤は口を入れた。 / ,' 3「ん?」 (;^ω^)「その書いたっていう小説のタイトルは……」 / ,' 3「……ああ。心母少女、というが」 (;゚∀゚)(;^ω^)「……!」 思わぬところから辿り着いた。 (;^ω^)「……僕達がきた理由が、その小説なんですお」 / ,' 3「?」 ( ゚∀゚)「その小説に、手掛かりが残されているのかもしれません。
13 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:31:49.99 ID: 3XiCbO1A0 ( ゚∀゚)「ともかく、その小説には何かが秘めているように思われます。 実際、その小説――「心母少女」に、重要な手掛かりが残されているのか。 ただ、クー・ルーの言葉にその単語が含まれていた可能性や、 クー・ルーの真意を知ることは、デレの行方を追うことになる……。 霊視ショウでのあの激情の先に、追い求めている何かの影を見出したような気がして…………。
14 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:34:28.17 ID: 3XiCbO1A0 内藤は感慨深げに頷いた。 ツンは内藤に自作小説を、決して見せようとはしなかった。 ( ^ω^)「……すべて承知の上ですお、その上で、見てみたいんですお」 その呪われた運命もまた、デレの行方を知らす一つの羅針盤となろう。 ( ^ω^)「おねがいしますお」 / ,' 3「……まあ、状況が状況だな。それに、もう時効じゃろw そう言い捨てると、立ち上がって居間を後にした。
16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:36:40.94 ID: 3XiCbO1A0 荒巻から手渡されたそれは、黄ばんだ古い大学ノートだった。 興味深いとばかりに、ジッとそのノートを見つめる二人へ、荒巻は丁重に、 / ,' 3「見て分かるが、かなり古いからページを捲るのも慎重にな」 ( ゚∀゚)「この形式のノートですと、横書きなんでしょうか」 出し抜けに長岡の質問が飛ぶ。 / ,' 3「そう。改行も適度に施してて、ひらがなが多用されてるから読めんことはない」 ( ^ω^)「………」 内藤は懐かしい目でそれを見つめていた。 丸っこい飛礫文字で書かれた「心母少女」という字面には、一種のカタルシスさえ感じられた。
17 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:38:30.11 ID: 3XiCbO1A0 内藤としてはどちらでもよかったが、長岡が「是非」と言ったので、そのまま聞くことにした。 / ,' 3「ウム、まあ簡単にいうと、三人の少女の物語だな。 ( ゚∀゚)「不消化感?」 / ,' 3「なんというか、解決しきっておらんのだよ。 「やはり」、と付け加え、 / ,' 3「それこそが、"呪われた運命"に関係しているのかもしれん。
18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:42:13.82 ID: 3XiCbO1A0 / ,' 3「……しかし、全ての真意は謎のまま。しょせんは憶測だがねぇ……」 ( ^ω^)「………」 ならば、この古ぼけたノートから、ツンの心を汲み取ってやろうじゃないか。 / ,' 3「もちろん、貸し出そう」 ( ゚∀゚)「ありがとうございます」 なぜか長岡が返答し、その場は落ち着いた。……
19 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:44:45.96 ID: 3XiCbO1A0 ( ゚∀゚)「はたして本当に、その小説の中に手掛かりが残されているんでしょうか?」 ( ^ω^)「まだ開いてない以上、なんともいえないが……」 流れる景色に目をやりながら、内藤は話を続ける。 ( ^ω^)「必ず、この小説の、ツンの真意というのを理解してやりたいお。 ( ゚∀゚)「その、早死にする、という運命についてなんですが……」 ハンドル操作を怠ることなく、長岡は流暢な口ぶりでいう。
20 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:47:00.45 ID: 3XiCbO1A0 真剣な表情と口ぶりで、運転を続け、話を続ける。 ( ゚∀゚)「目的を整理しましょう。デレさんの行方、クー・ルーの裏、この二つですよね? 内藤には挟む口もない。 ( ゚∀゚)「……ともかく、指針をシッカリさせましょうってだけです。
21 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/04/16(水) 23:51:19.10 ID: 3XiCbO1A0 弱々しく返してから、内藤は考えにフケった。 はたして、荒巻の女が早死にするという運命は、本当にデレの行方を報せるものになるのだろうか。 デレの行方を知ってこそ、ついに運命のからくりを理解出来るのかもしれない。 デレの行方、クー・ルーの真意、呪われた運命。 ことごとく全てが一本道で、けっきょくデレの行き先が全く分からず、 内藤は自分の寿命を考えると、いてもたっても居られない気分になった。 自宅に戻り、「心母少女」のページを開くと、 (惑る妾とその運命 終)
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