長岡速報 |
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873 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:25:29.19 ID:Sn07T7qtO
俺の人生最大の過ちは、彼女なんか作っちまったことだ。 どうせ半年も保たないだろうと油断していた。それがこうしてずるずる続き、気付けば来月は俺の誕生日だ。 ガキの頃から知っていた。 俺は、二十五歳までしか生きられない。 正確には、二十五年間しか『人間』でいられない。 それが、『深き者』の宿命なのだから。 *** ('A`)ドクオは『深き者』のようです川 ゚ -゚) *** ('A`)「他に女できたから、別れよう」 川 ゚ -゚)「嘘だな。お前に二股かけられるような甲斐性はない」 ('A`)「…お前のこと好きじゃなくなったから、別れよう」 川 ゚ -゚)「嘘だな。私みたいな魅力的な女に、お前が愛想を尽かす訳がない」 (;'A`)「どんだけ自信家なのお前…」 俺は頭を抱えた。 クーは勘が鋭い。そしてそれ以上に、俺は嘘が下手だ。 ('A`)「あーはいはい判りましたよ。言いたくなかったけど、本当のこと話すわ」 俺は煙草に火を点け、深い溜め息と共に煙を吐き出す。 ('A`)「俺、半魚人なんだ」 川 ゚ -゚)「…はんぎょどん?」 ('A`)「懐かしいキャラクターだなおい。は・ん・ぎ・ょ・じ・ん・だっつの」 川 ゚ -゚)「中二病乙」 (;'A`)「それならもっとカッコいい血族名乗るわ、バンパイアとか人狼とか!」 実際そうなら、どれだけ良かったことだろう。 ('A`)「…正確にはハーフなんだけどな。『深き者共』って知ってるか?」 川 ゚ -゚)「漁師町の伝説だろう。蛸の神様を崇めてるとかいう怪物だ」 ('A`)「俺の親父がそれだった訳よ」 奴は海女だったお袋を犯し、すぐ姿を消してしまった。そして産まれたのが俺だ。 『深き者の子を殺すと祟りがある』と昔から言われている為、お袋は俺を堕胎することもできなかったそうだ。 親父が純血種だったのか、それとも成熟した混血だったのかは知らない。知る術もない。魚のような、両生類のような怪物『深き者共』。奴等は時折、人間と交わる。 そうして生を受けた子供は、最初は人間と変わりない。しかし成長するにつれて、肉体と精神に変化を来たす。 ('A`)「見ろよ」 俺は、シャツをまくって腹を出した。 875 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:28:46.48 ID:Sn07T7qtO 川 ;゚ -゚)「…!」 クーが絶句する。 無理もない。そこには、暗い青緑色の鱗がまばらに生え始めているのだ。 ('A`)「最近、目玉が飛び出してきたと思わないか」 川 ;゚ -゚)「…」 クーの沈黙を、俺は肯定と受け止める。 ('A`)「『深き者』のハーフは、二十五歳になると完全に化け物になっちまうんだ。…俺は今月一杯で、人間じゃなくなる」 だから、お別れだ。 クーは何も言わないままだった。 *** ('A`)「何でこんな夜中にドライブなんだよ…」 川 ゚ -゚)「もう少しでお別れなんだ、付き合ってくれてもいいだろう」 俺は助手席で、今にも落ちそうな瞼を擦る。 ハンドルを握るクーの横顔は、いつも通りだった。 三年間見てきた、綺麗な横顔。 もうじき見られなくなると思うと、流石に胸が痛くなった。 諦め切ったつもりだったのに。 やっぱり、彼女なんか作るんじゃなかった。俺は小さく唇を噛む。 ('A`)「…で、どこ行くんだ?」 川 ゚ -゚)「何、もうすぐだ」 街灯やネオンに照らされたクーの頬は、気のせいか上気しているようだった。 ('A`)「…ん…?」 潮の香りが鼻を突いた。 876 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:30:45.06 ID:Sn07T7qtO (;'A`)「ぅへあっ!?」 変な声が出た。 車が急加速して、体がシートに思い切り押しつけられたせいだ。 (;'A`)「く、クー…!?」 川 - )「………」 クーは無表情に、アクセルを踏み付けている。 車はタイヤを軋ませ、疾走を続けた。 『進入禁止』のプレートを撥ね飛ばし、突っ込んだ先は。 ('A`)「…埠頭…」 眼前に広がる真っ黒な海。僅かな光を拾い、ちかちかと瞬いている。 美しかった。 海は、こんなに美しいものだったのか。 俺が見とれている間に。 車はスピードを緩めぬまま、海へと飛び込んだ。 *** 心地良い冷たさの水。それが優しく俺を包み込む。 (゚A゚)「………」 不思議と、息は苦しくなかった。ああ。もうこんなにも、俺の体は海に順応していたのか。 頭の奥に染み渡る潮騒、柔らかく抱き締めるようなさざ波。 母なる海。その意味が、ようやく判った気がした。 がぼっ。 異質な音に、俺は横を向いた。 川; - )「がっ…ごぼっ……」 口から気泡を吐き出して、悶え苦しむ女。 878 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:34:43.20 ID:Sn07T7qtO 何でだろう、俺はこんなに安らいでいるのに。彼女は何故、苦しんでいるのだろう。 彼女は、人間だから? にんげん… (;゚A゚)「………クーーー!!」 俺は絶叫した、水中にも関わらず。 もがくクーの体を引き寄せ、片手でドアに手をかける。 (;'A`)「クソッ!」 開かない。水圧のせいだろうか。 川; - )「………」 クーがぐったりとし始めた。 (;'A`)「死ぬな! 死ぬなよ、畜生!」 俺は必死に、拳を窓に叩き付けた。 火事場の馬鹿力か、それとも肉体の変異のせいか。手を血塗れにしながらも、俺は窓をぶち破ることに成功する。 (゚A゚)「うおぉぉおおッ!!」 クーを両手で抱き抱え、脚の力だけで泳ぐ。 車から脱出するとき、硝子片がお互いの体に掻き傷を作ったが、構ってなぞいられない。 自分でも驚くようなスピードで、俺は水面めがけて泳ぎ続けた。 *** (#'A`)「…この馬鹿野郎!!」 見様見真似で水を吐かせ、人口呼吸を施したクーが息を吹き返すなり、俺は怒鳴った。 (#'A`)「どういうつもりだ! 俺が普通の人間だったら、二人共死んでたぞ!?」 879 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:37:49.72 ID:Sn07T7qtO 川 ; -;)「………」 死にたかったんだ。 (#゚A゚)「ばっ…」 再び馬鹿野郎、と怒鳴ろうとした俺の声は、悲痛な叫びに遮られた。 川 ; -;)「お前が私からこんな形で離れていくんなら、せめて隣で死にたかったんだ!」 ('A`)「………」 川 ; -;)「お前が化け物になったって構わない。その程度で心変わりすると思う程、お前は私を信じてくれてないのか!?」 ( A )「…姿が変わるだけじゃない。人間だった頃の記憶も、ほとんどなくなっちまうんだよ」 身も心も、『深き者共』の一員に。 川 ; -;)「それでも良い…私はお前の側に居たい…」 泣くな。泣くなよ、クー。 俺まで泣きたくなるじゃねえか。 クーが目を見開いた。 川 ;゚ -゚)「ドクオ……顔が…」 ( A )「…え」 俺は自分の顔に触れてみる。 (%゚A`)「………」 その右半分には、硬い鱗が広がっていた。 *** (%゚A`)「…ぐギ…」 川 ゚ -゚)「美味いか。天然物のハマチだぞ」 (%゚A`)「うマい…」 俺は塩水を満たした浴槽に漬かり、生の魚を頭から貪り食う。 (%゚A`)「…く、ー」 川 ゚ -゚)「何だ?」 (%゚A`)「アリが、トう」 川 ; -;)「………」 ああ、だから泣くなって。 880 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:39:22.46 ID:Sn07T7qtO 二人で決めたことだろう? 俺は、お前に全てを任せる。 俺だって、お前の側に居たいんだ。 人間じゃなくなったとしても。 (%゚A`)「ガグ…ご…」 だが今の俺にはもう、それを伝えるだけの語彙が失われている。 だから黙って、クーの頭を撫でた。 クーは、もっと泣いてしまった。 (%゚A`)「あ…ギ…ぎげ…」 川 ; -;)「…?」 (%゚A`)「あイ、ギげ、る」 愛してる。 川 ; -;)「…私もだ。私も愛してるよ、ドクオ」 服が濡れるのにも構わず、クーは俺を抱き締めた。 881 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:40:12.52 ID:Sn07T7qtO *** 川 ゚ -゚)「ドクオ。湯加減…じゃない、塩加減はどうだ?」 答えが帰ってくる筈もない。そう知りながら、私は浴槽の恋人に声をかけた。 (%A%)「…アグ」 鎖でがんじがらめに縛られた彼は、喉を鳴らして私を見上げる。 ドクオが完全な『深き者』になって、半年近く。 最初は随分と暴れたものだが、ここのところは大人しい。 私に対して『餌をくれる人』程度の認識を持ってくれているのだろうか。 川 ゚ -゚)「今日はサンマだぞ。今が旬だ」 (%A%)「ゴ、ゲゲ」 私が差し出した生魚に、彼はかぶりつく。食欲旺盛だ。 川 ゚ -゚)「…私に危害を加えるような素振りを見せたら、すぐ殺してくれ。お前はそう言ったな」 でも。 私には、できそうにもないよ。 川 ; -;)「…私はやっぱり、まだお前が好きなんだ」 異形の恋人を前に、私は泣いた。 882 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 08:41:32.03 ID:Sn07T7qtO *** (%A%)「…グゥ…」 川 ; -;) またこのひとはないている。 なんでだろう。 それにしてもここはせまいなあ。 うみにいきたい。 ひろいひろいうみに、かえりたい。 でもそうしたら、このおんなひとは、ひとりになってしまうだろう。 そうおもうと、なんだかとてもかなしかった。 (%A%)「…ギゲ…」 おれはいっしょうけんめい、にんげんのことばをはなそうとした。 たったひとつだけしっている、あのことばを。 892 : ◆hMOgNccocU :2009/08/01(土) 09:00:21.83 ID:Sn07T7qtO (%A%)「アギ、ギゲ、グ」 ああ、やっぱりうまくいえないなあ。 おんなのひとは、もっとないてしまった。 こまったなあ。 でもおんなのひとは、なみだをながしながら、うろこでざらざらのおれのあたまをなでてくれた。 川 ; ー;)「私も愛してるよ、ドクオ」 そう、それがいいたかったんだ。 おんなのひとは、まだないていたけれど、わらってくれた。 おれは、うれしかった。 こんなせまいみずのなかでも。 しあわせだと、おもった。 ('A`)ドクオは『深き者』のようです川 ゚ -゚) 完 ( ・∀・)ブーン系小説練習&イラスト総合案内所のようです ttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1248837822/ コメント
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