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3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:14:04.93 ID:4uOdyUdu0
(;'A`)ふぅ、ふぅ……。 もう何度目の休憩だろうか。 腰が痛い。杖を持つ手も握力がなくなってきていた。 ( A )―――でも、もう少しなんだ。 休憩を終えると、荒涼とした山のあぜ道を歩き続ける。 高い山でも、有名な山でもない。 知る人ぞ知る、というやつだろうか。 ―――山の中腹にある湖が、とても綺麗なんだ――― 学生時代に初めて出会ったクー。 その言葉が今更になって蘇る。 俺は、病に蝕まれた体を引きずって、その場所を目指していた。 最期に、死に場所を求めていた。 _ (;゚∀゚)原因は不明です。恐らく世界でも初の症例でしょう。 (;'A`)すみません、もう一度お願いします。 あっけに取られて途中から聞いていなかった。 _ (;゚∀゚)ええとですね。最初から順を追ってお話しますと……。 どうやら俺は、還暦に差し掛かってようやく一番に成れたらしい。 原因不明の奇病。徐々に身体を蝕む病魔。 アルツハイマーの全身バージョンみたいなものらしい。 全身の細胞が、時間の経過と共に死んでいく。 厨二病ktkr!!! 薄幸の美少年うめぇ。 中高時代の俺なら、そんなことを考えたかもしれない。 この歳になってからでは、当然のように呆然としかできなかったけれど。 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:23:13.76 ID:4uOdyUdu0 川 ゚ -゚)なぁドクオ。私に何を言っても無駄だぞ。 帰り道。付き添ってくれたクーがそう言った。 (;'A`)いきなり何を――― 俺の言葉は途中でクーの言葉に掻き消された。 川 ゚ -゚)私の足手まといになるからとか、そういう言葉は言って欲しくないんだ。 川 ゚ ー゚)私たちは夫婦だろう? それも、もうお互いにお爺ちゃんお婆ちゃんと言われる歳を迎えようとしている。 川 ゚ -゚)「死」も見えてくる歳だ。その土壇場で、私を突き放さないでくれ。 (;'A`)クー……。 正直、クーの口からこんなことを言われるなんて思ってもみなかった。 俺の方から何か宣言するなら、分かる話だ。 「不治の病だからって別れるなんて許さない」などだろうか。 その場合、酷く傲慢で、自分勝手で、哀れな姿に見えるだろうが。 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:26:45.87 ID:4uOdyUdu0 俺の思っていることなど知る由もなく、クーは続ける。 川 ゚ -゚)私は子供も生めず、良い妻ではなかったかもしれない。 いつかの輝きを失った、それでも、だからこそ美しいと思える髪を風に流さないように押さえながら。 川 ;-;)だが、私は君と居たい。この先も、全てを共有したいんだ。 川 つ-;)だから、ドクオの苦しみを私にも背負わせて欲しい。 ( ;A;)クー……。 この歳になって、二人して号泣するとは。 俺は、2度目の結婚式のような気持ちで以て、クーを抱きしめた。 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:28:53.87 ID:4uOdyUdu0 一ヵ月後、左膝が動かなくなった。 (;'A`)ごめんな、クー。 川 ゚ -゚)なぁに。私のセンスで買ってきた杖だ、気に入ってくれ。 ( 'A`)あぁ、どんな杖より俺に合うと思うよ。 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:31:55.01 ID:4uOdyUdu0 二ヵ月後、左腕が動かなくなった。 川 ゚ -゚)そろそろトイレに行っておこうか。 ( 'A`)あぁ、頼む。 川 ゚ー゚)ふふ、一人で出来ないことはないと突っぱねていたドクオもかわいくなったもんだ。 ( 'A`)一回すっ転んだ人間は何も言い返せません。 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:35:49.79 ID:4uOdyUdu0 半年後、俺の宝物が動かなくなった。 ( ´ω`)ドクオ……。いい加減何か食べるお。 ( 'A`)いや、お腹空いてないんだ。 ( ´ω`)そうかお、でもここにいなりずし置いとくお。 ( 'A`)ああ、ありがとう。ほんと、お腹空いたら食べるから。 ( ´ω`)また来るお。1週間分の日持ちする食べ物、ここにあるから食べるんだお。 ( 'A`)悪いな、ブーン。 (;^ω^)このブーン様も最近はさすがにプーンくらいだお。寄る年波には勝てんお。 ( 'A`)それでもお前はブーンさ。……クーが最期までそうだったように。 ( ´ω`)……ありがとう、だお。 16 :最初の人も今の人も支援ありがとうございますです。:2008/10/24(金) 02:41:07.62 ID:4uOdyUdu0 クーは過労がたたり、風邪からの合併症で肺炎を起こして、あっさりと。 別れの言葉を交わす暇もなかった。 ( 'A`)クーの遺品、整理しないとな。 悲しい気持ちと自身の症状が俺をじっとさせていることを許さなかった。 室内でも杖を突き、荷物を整理し始める。 思ったよりテキパキと事が進んでいく。 思い出の小物を見つけたりしても、極めて事務的に整理していった。 ( '∀`)はは、一人でもいろいろ出来るじゃないか。 ( '∀`)なんてことはない。クーに甘えすぎていた。それだけだ。 ( '∀`)はは、ハハハハハハハ。 ( '∀;)ハハハ、うん……? クーの字で「ドクオへ」と書かれたノートがタンスの中から見つかった。 ぺらっとめくるとそこには何と白紙が!! (;'A`)ん? あぁ、1ページ目にだけ書いてあるのか。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:44:08.72 ID:4uOdyUdu0 表紙をめくった1ページ目。紛れもなくクーの、文字が、言葉が、意思が綴られていた。 川 ゚ -゚)ドクオへ。 川 ゚ -゚)私は倒れてしまったようだな。すまない。 川 ゚ -゚)確かに私は最近疲れている。車に轢かれてしまうかもしれない。 川 ゚ -゚)だから、ドクオと声を交わすこともなく私だけが不躾に消えたときのためにこれを記す。 川 ゚ -゚)伝えたいことは単純だ。 川 ゚ -゚)ドクオ、私は幸せだ。勿論、今この瞬間も。 川 ゚ -゚)一般的な物差しなど何の役にも立たないことを今更知ったよ。 川 ゚ -゚)だから、私に何か言うことがあれば「ごめんなさい」より「ありがとう」にしてくれ。 川 ゚ -゚)ちなみにドクオは旦那様としては90点だ。 川 ゚ -゚)低くてすまんな。加点方式だから、まだ満点を付けるわけにはいかないんだ。 川 ゚ -゚)あとの10点は今年まだ行っていない「あの場所」に連れて行ってくれたらあげるよ。 川 ゚ -゚)そういうわけだから。んじゃ。 ( ;A;)ありがとう、ありがとう……ありがとう! 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:46:17.18 ID:4uOdyUdu0 「あの場所」には、クーと付き合い始めた大学時代に行ったのが最初だった。 川 ゚ -゚)なぁドクオ。今度行きたいところがあるのだが。 ( 'A`)コミケ? 川 ゚ -゚)夏にふもとでお祭をやっている山があるだろう。 (;#)A`)すみませんでした。 川 ゚ -゚)あの山、標高は数百メートルで禿山なんて言われているが 川 ゚ー゚)山の中腹にある湖が、とても綺麗なんだ ( 'A`)mjd、週末に行ってみよう。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:50:16.90 ID:4uOdyUdu0 (;'A`)すっげ……うはぁ。 クーに道案内され、大した距離でも険しさでもないのに汗を掻きながらたどりついたその場所。 夕日が差しているからだろうか、円周200mほどのちっぽけな湖が凄く綺麗だった。 夕日を受けて水面が光り、昨日の雨で濡れそぼっている草むらもきらきらと光る。 朱色と緑で構成されたその1シーンは、時代から取り残されているような錯覚さえ感じた。 川 ゚ -゚)やはり、夕方は別格だな。 ('A`)うん、聞きしに勝るとはこのことか。 ほとりでブルーシートを敷いてクーの作ったサンドウィッチを二人で食べた。 程よく腹が満たされ、魔法瓶詰めの紅茶を渡しながらクーが言う。 川 ゚ー゚)私のお気に入りの場所だ。また連れて来てくれ。 ( 'A`)あぁ……。 ( '∀`)何度でも、一緒に行こう。 その日、宇宙で3番目くらいに内気だった俺は、やっとクーと初めて手を繋いだ。 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:54:01.38 ID:4uOdyUdu0 今までの俺ではとても想像できなかったが、それからずーっとクーと寄り添っていた。 大学の卒業。就職。 就職してから3年経って同棲を始めた。 同棲してから2年経ち、結婚した。 そして三十幾年が経過した。 その間、月に一度は必ずあの湖で、夕方にデートをした。 悩める時も、健やかなる時も、死が二人を別つまで、あの湖に通い続けた。 今月あったこと、来月あること、次の予定、くだらない話、喧嘩話、大切な話。全てあの湖は聞いている。 二人とも、あの湖の前だと素直になれた。 この世のどんな場所より、あの湖は俺たちの情報に溢れていた。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 02:57:46.17 ID:4uOdyUdu0 そして今に至るわけだ。 そして、次に至るわけだ。 ( 'A`)すまんな、ブーン。いきなり呼び付けて。 ( ^ω^)いいおいいお。宅飲みでも、ドクオが回復したってことだお。嬉しいお。 ( ^ω^)でも、どうしたんだお。大事な話、とか言っていたけれど。 ( 'A`)あぁ改めてこのマイホームを自慢しようと思ってな。 ( ^ω^)うぜぇ ( 'A`)20代でエロゲも止めた俺とクーの貯金コンビに勝てるわけないだろ? (;^ω^)ブーンもツンも30代までゴーイングマイウェイだったお……未だにマンション暮らしは厳しいお。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:01:10.39 ID:4uOdyUdu0 タイミングを伺っていたつもりだったが、結局唐突に近い形で口を開いてしまった。 ( 'A`)―――この家やるよ。 ( ^ω^)日本語でおk ( 'A`)いや、真面目な話だ。 ( ^ω^)……ドクオは死ぬ気かお? ( 'A`)まぁ放って置かなくても死ぬ身体だからな。 ( ^ω^)ドクオ ( 'A`)悪い。その通りだ、というかもう俺には延命を選ぶ気力がない。 ( ^ω^)……この家、もらうお。 ( 'A`)ありがとう。 ( ^ω^)勘違いすんなお。ドクオもここに住み続けるんだお。 ( ^ω^)僕とツンと3人で住むんだお。家族だお。 ( 'A`)ブーン……。 ( ^ω^)ドクオのことは僕らがフォローするお。 ( ^ω^)確かにドクオは長くないお。でも、だからって――― ( ;ω;)勝手に終わられたら、僕らが悲しいお……! 33 :>28 青春ラジオ(馬場俊英) 聞いています。:2008/10/24(金) 03:05:16.62 ID:4uOdyUdu0 ( 'A`)……。 ( 'A`)すまん。俺は変わってしまった。大学時代とはもう違うんだ。 ( 'A`)例えば、お前らを殺せばクーが助かっていたなら、俺はそれを厭わない。 ( 'A`)酷い話だろう? 愛想を尽かされたって、仕方ない人間になってしまったんだ。 ( ^ω^)……ドクオは嘘が下手だお。 (;'A`)ッ!! ( ^ω^)まぁ糾弾はやめておくお。それより暫くドクオを軟禁するお。 ( 'A`)……。 ( ^ω^)これは僕のエゴだお。ドクオの意思を尊重する気はないお。 ( 'A`)優しすぎてうぜえ。 ( -ω^)おっおっお。……? ( 'A`)まぁ、でも無理だけどな。 (;-ω^)眠いお。 ( 'A`)おやすみ、親友。内藤ホライゾン。 (;-ωと)ドクオ――― 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:08:06.53 ID:4uOdyUdu0 目尻に涙を溜めてイビキを掻く親友を尻目に、携帯電話を取り出した。 弁護士に電話をする。家の贈与については話を進めておいてもらう。 他の資産は現金化して、こっそりブーンの口座に入れておいた。 税務署krkr。 もう、カーチャンもトーチャンもいない。クーもだ。 必然的に、消去法で、一番大切なブーンとツンの幸せを願う。 彼の友人に幸多からんことを。 42 :>38 規制解除記念。日曜に書き終ってもう我慢できなかった。反省はしていない。:2008/10/24(金) 03:11:52.15 ID:4uOdyUdu0 予感はあった。 俺の体が終わる日。それは月に一度の湖デートの日。 人間の体ってのは不思議なものだ。 精神が、肉体を凌駕することがある。 意志が、現実を嘲笑うこともある。 だから、俺が俺を持ちこたえておけるのはその日まで。 その日居なければならない人間が居ない。 崩壊するには十分すぎる理由だった。 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:16:52.57 ID:4uOdyUdu0 それがブーンに睡眠薬を盛った日。弁護士に電話した日。 その足で、その場所へ向かっている、今日この時だ。 (;'A`)ふぅ、ふぅ……。 もう何度目の休憩だろうか。 腰が痛い。杖を持つ手も握力がなくなってきていた。 ( A )―――でも、もう少しなんだ。 歩いている途中、背骨の上半分が動かなくなった。 腰に尋常じゃない負担がかかっている。 若き学生時代の俺ですら、いや、その時代の俺だからこそ、耐えれなかっただろう。 だが、もうすぐだ。数十m先に、それがある。 先ほどから左眼が見えなくなっていた。 あぁ、良いさ。構わない。脳と心臓以外は好きに止まってくれて、構わない。 這ってでも、たどりついてやる。 俺は猫だ。最期に死に場所を求める、猫だ。死に体なのがちょうど良いくらいなのだ。 48 :初投稿で勝手が分からんサーセン(>ヮ<):2008/10/24(金) 03:19:08.88 ID:4uOdyUdu0 ( 'A )お待たせ。クー。 杖を抱きかかえながら、湖のほとりに腰を下ろす。 正確には、腰を下ろす途中で体の力が抜けて崩れ落ちた。 もう、立てないだろう。 ( 'A )これで、10点加点で、満点だよな? 喋ると歯がカチカチと鳴りだした。 勝手に鳴るんじゃねえよボケが。 もう見える右目も色をなくし、夕焼けが映えている筈の湖は白黒の世界だった。 だが、それでも美しい。だからこそ、美しい。 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:22:35.27 ID:4uOdyUdu0 ( 'A )なんちゃってな。ここに来たのは、俺の自己満足なんだ。 ( 'A )俺は死期を悟った猫のように、最期はここで――― 頭の中に一陣の風が吹いた。 死期を悟った猫は、死に場所を探す? ふざけるな。猫に誰か聞いてみたのか? そんなわけ、ないじゃないか。 猫みたいな気ままに生きている生物が、そんな後ろ向きなこと考えるわけがない。 死期を悟った猫は、きっと――― 56 :51 おk:2008/10/24(金) 03:24:01.18 ID:4uOdyUdu0 ( 'A )クー。聞いてくれ。 ( 'A )俺は、ここで死にたいわけじゃないんだ。 ( 'A )ここで、最期に生きていたかったんだ。 重さに負けてまぶたを閉じた。今日は、久しぶりに良く眠れそうだ。 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:25:32.86 ID:4uOdyUdu0 閉じたまぶた。 それでも視界の白みを感じたと思えば、目の前にクーが現れた。 でも、何も喋らない。 ( 'A )クー。 川 ゚ -゚) 声を掛けるがクーは何も喋らない。何かを、待っている様に見えた。 俺は蛇足の多い男だった。なのに肝心なことだけはなかなか言わない。 最後くらいは、決めよう。 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 03:27:04.14 ID:4uOdyUdu0 ( 'A )クー。 ( '∀`)おれはしあわせでした。 川 ゚ー゚)わたしもしあわせでした。 Fin ('A`)は猫のように生きるようです ttp://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1224781884/ コメント
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