長岡速報 |
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2 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:32:00.51 ID:Sk4UYwuR0
16.忘れ去られた少女 長岡と弟者の論争を制止しておきながら、まるで謙遜にみちた様子だった兄者だが、 熱もほとほと冷めたのをしるや、静かな調子でこんな風につづけた。 ( ´_ゝ`)「たとえば長岡君の推理についてだけれど、やはり弟者が 指摘したとおり、肝心要の部分が曖昧で信憑性に欠ける。 かといって弟者の話も、クー・ルーの感情について無視し過ぎている」 (´<_` )「感情だと?」 弟の問いかけに、すらっとした顔で、 ( ´_ゝ`)「あのパーティーには支部長である私も出席したが、そのとのクー・ルーの 表情、仕草は並大抵の怒りではなかったよ。 まあ参加しなかったお前なら、どうせ演技だろうと片付けただろうが……」 (´<_` ;)「だが……」 ( ´_ゝ`)「まあ聞け。たしかにクー・ルーはいくらでもコネを持っているだろう。 内藤様の、ひいてはウチの敵に掴まされていたっておかしくはない。 だが、デレさんと親友だったという彼女が、あれほどの怒りを見せたのだ。 私には演技だのとは思えない。なにかしらの因縁があると確信する。 そもそも、親友だったという情報を抜きにして、他者からの使いだと 想像すること自体、おれには難しいな」 (´<_` ;)「うう……」 そこまでやり込められると、さすがの弟者も閉口するしかなかった。 ( ^ω^)「(たしかにあれは、身近な憎悪だったお……)」 内藤が頷いたのを横目でみると、兄者は一息いれてから、 ( ´_ゝ`)「憮然とした実の弟に、さらに追い討ちのかけるのは悲しいが、 まあしょうがないからと許してくれ。 なぜなら、俺の推理によれば、どちらかといえば 弟者より長岡君のほうがある種で真実に近い、と思われるんだ」 ( ゚∀゚) 「!」 ( ´_ゝ`)「心母少女という小説についてだが、あれの名称々々が 酒や煙草の由来……というのは合っているにしても、 踏み込みが足りなさ過ぎる。どうも弟は勇み足ばかりを怖れているようだ。 ( ´_ゝ`)「少女三人の名前、プルトニー、カレット、ドローレスだな。 これらは確かに酒についてだが、もっと分解してみると、 カレット、ドローレスはカクテルの名称なのに、 プルトニーだけはモルト、または蒸留所の由来なんだよ」 (´<_` )「それぐらいは分かっていたさ」 痛いところを何度も突かれたせいで、気色ばんできた弟者は口調も勢いよく、 (´<_` )「その差別で疎外感を表現しようとしたんだろう? まったく典型的な……」 ( ´_ゝ`)「まァ、最後まで聞け」 4 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:39:25.89 ID:Sk4UYwuR0 どこまでも冷たく返すと、兄者はしみじみしたように、 ( ´_ゝ`)「ともかく、それはそのとおりで、カレットのレシピにも、 ドローレスのレシピにもウイスキーは必要ない。 くわえてプルトニーというのはとても個性の強い類だから、 この三つを並べ立てたとするなら、それはもう仲間はずれもいいとこだな」 ( ´_ゝ`)「まあカレットというカクテルはウォッカベースだが、 これをウイスキーに変更するとゴッドファーザーなる別種へ変わる。 それにくわえ、カレットは別名でゴッドマザーというんだ。 仲間はずれと思い込んだウイスキーが、そこに愛を見出して つけこんだ……といっては表現が悪いが、つまりそうした理由で プルトニー主人公はカレットさんに固執したのさ」 聞いているだけで、アマレットのアーモンドめいた 香りが仄かに漂ってくるような話だが、 内藤にとってみれば興味深いもので、 さしあたってのアルコールの誘惑など乗りようもない。 5 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:41:37.57 ID:Sk4UYwuR0 ( ´_ゝ`)「ドローレスというカクテルはまぁ、甘くてな。チェリーも飾るなんて 極め付きだから、お人好しな性格な設定というのも頷けるものだ。 だがプルトニーはひたすらドライで、そんなところに相性の悪さ、 今後の雲行きの怪しさというものが垣間見えるというものさ」 ( ゚∀゚) 「なるほど……」 ( ´_ゝ`)「そして、わたしは……」 兄者はいきなりおちつくと、ぼそりと、 ( ´_ゝ`)「この小説こそが、この事件での最も重大な鍵と考える」 かしこまった風にいった。…… 7 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:44:58.93 ID:Sk4UYwuR0 (´<_` ;)「正気か兄者!? いくらなんでも……」 ( ´_ゝ`)「落ち着け弟者、落ち着け」 いまにも腰を上げそうな弟者をなだめると、兄者は気を取り戻したように再開した。 ( ´_ゝ`)「なにもこの小説だけから、そんなことを思ったわけではないさ。 私が思ったのは、それ以外の部分で推測し、考えをまとめ上げ、 そうした中でふいに心母少女という小説とを照らし合わせたのさ」 ( ゚∀゚) 「照らし合わせた……?」 ( ´_ゝ`)「そう」 ( ´_ゝ`)「さきほど長岡君は心母少女を読んでクー・ルーが狂気に陥ったと 話したが、私の真相では直接的な関係はないはずなんだ。 そもそもこの小説というのは、十五年も前にコピーなんかされているはずないし、 内藤さんですら読めなかったという荒巻邸の品なんだから、デレ様も読めなかったことだろう」 ( ^ω^)「(十五年前の、荒巻邸……でデレが……?)」 なにかを内藤は思い当たったようで、ふいに考え込んだが、 他の三人はそれに気付かなく、そのまま推論は進行された。 ( ´_ゝ`)「しかし、関係ない……というには、あまりにも出来すぎている。 そこなんだ。そこに私は恐怖さえ感じたのだ。 荒巻家の女の悲しさが……その呪い、といえばいいのか……」 (´<_` ;)「どういうことだ? もうすこし順序立てて話してくれ」 9 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:48:58.02 ID:Sk4UYwuR0 ( ´_ゝ`)「うむ、しかし順序立てるとなると結構きびしいものがあってな。 つまりだ。この心母少女というのは、荒巻家に昔起こったとされる、 因縁……今後の女たちの呪いの発端の事件、それをベースに作られたものだろう。 プルトニー、カレット、ドローレスの三人の少女らのモデルは、実際過去に居たということらしいが……。 ( ´_ゝ`)「それを踏まえると、おそろしいほど自分の推理内容と符合している部分が多いのだ。 今回のデレ様が関与なさった、十五年前の事件とな……。 ああ、十五年前にも三人の少女の仲で一つの事件が起こったのさ。 歴史は繰り返されるというが、その虚しさ、怨念深さには眉をしかめてしまう」 ( ;゚∀゚) 「そんな……」 ( ´_ゝ`)「たしかに滑稽無糖だ。しかし、そうとしか考えられないのだ。 直接的な部分では超常現象めいたものは関係されていない。 そこが件の事件を複雑にさせている要因なのかもな」 (´<_` ;)「そんな馬鹿な話を信じられるか!」 いきなり弟者は叫んで制した。それはむろん当然なことで、 長岡ですら半信半疑なのであった。 (´<_` ;)「兄者らしくないな。スタイルが違うぞ、推理、考えの……。 ……兄者、あなたがその話を聞いて恐れを為しただけじゃないのか」 ( ´_ゝ`)「違う。だから、推理を確固たるものにした上での感情なのだ。 私は惑わされていないはずだ……悪意は傍観者には降り注がない」 10 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:52:07.25 ID:Sk4UYwuR0 暗雲がたちこめる雰囲気のさなか、ふいに長岡が疑問を口にした。 ( ;゚∀゚) 「……話の腰を折るようですみませんが、一つ。 クー・ルーは心母少女を知らないはずだ、と仰いましたよね?」 ( ´_ゝ`)「……そうだが」 ( ゚∀゚) 「だとしたら……あの会場でのクー・ルーの呟きは何なんでしょう。 そこがどうしても腑に落ちません」 ( ´_ゝ`)「そこ……だな」 兄者は、その点についても色々考えていたようで、ふっと溜息をついた。 ( ´_ゝ`)「おれの想像するところでは、その点こそが現代と昔とを メビウスの輪めいた捩じれで繋がらせている原因なはずなんだ。 長岡君の推理もそうだが、ここさえシッカリとしていれば、 きっと真実は見えてくるはずだ」 ( ゚∀゚) 「というと、クー・ルーの呟きは他の意味なんですね?」 ( ´_ゝ`)「ああ」 弟者は、「だから聞き間違えだろう」とでも言いたげな表情だったが、 長岡はそしらぬ顔で、 ( ゚∀゚) 「ぼくの考えの発端、Pink Floydの原子心母というのは……」 12 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:55:12.59 ID:Sk4UYwuR0 ( ´_ゝ`)「ううむ、たしかに十五年前の一九九五年といえば、 ブリットポップも真っ盛りで、洋楽がやたらに持ち上げられたものだが……」 しみじみした口調で続けたが、やはり、 ( ´_ゝ`)「それをあの場でいうとは考えにくいな……」 ( ゚∀゚) 「そうです、ね……」 落胆した長岡に、兄者は申し訳なさそうな口ぶりで、 ( ´_ゝ`)「ついでにいうと、ツンさんが例の小説を書いた時期と 原子心母が発表された頃とはズレがあるし、あまりPink Floydは関係ないだろう」 そこまで言ってから、兄者はしかし「ただ、」と付け加えた。 ( ´_ゝ`)「捩じれの発端の一因、としては考えられるな。 心母少女……はたしてこれはどういった意味だろう。 さしずめ母の心を持った、あるいは母性本能の旺盛な少女といった感じだろうが、 真相はツンさんの心の中だ。我々には知りようもない。 ( ´_ゝ`)「似たようなことを、十五年前の少女達……デレ様、いや、クーが考えたのかもしれない。 デレ様は優しいお嬢さんで、母なる大地の心をもった少女、といっても言い過ぎではなかったからな」 ( ^ω^)「心母……かお」 13 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/26(土) 23:59:17.37 ID:Sk4UYwuR0 ( ´_ゝ`)「たとえば先日、内藤様……正確にはデレ様に、クー・ルーから 真っ白なグラジオラスが届けられた」 ( ^ω^)「そのとおりだお」 ( ´_ゝ`)「しかし、そこには"武装完了"だとか、そんな卑しい意味はなかった。 なぜなら、グラジオラスとは…… ( ^ω^)「デレの、誕生花なんだお」 とつぜんに兄者の言葉をひきとった内藤は、顔の汗を拭き取りながら部屋の皆を見回した。 ( ^ω^)「そこも、気掛かりだったお。それに行き着いたとき、もしやと 思ったんだお。クー・ルーはもしかしたらって……」 ( ゚∀゚) 「……なにかお考えがあるのですね」 ( ^ω^)「そうだお。だから、すこし手紙を宛てなくちゃならないお。 いますぐ、ことを急がないと……兄者君の話はちゃんと聞いているから、 ここで執筆する無礼を許してくれお」 (´<_` )「手紙……? 誰にでしょう?」 ( ^ω^)「全部で三通。パーティーのとき話があるといっていた、しぃちゃん。 それに荒巻義兄さん、最後にクー・ルーさんへ……」 (;゚∀゚) 「ク、クー・ルーへ!?」 14 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/27(日) 00:03:21.83 ID:zuSZAyt50 ( ^ω^)「ウン、その手紙こそもっとも重要だお。 だから、読まれる前に破棄されることだけは、なんとしてもあってはならない……」 ( ´_ゝ`)「……そうですね、難儀なことでしょう」 ことを理解しているらしい兄者は、心配そうな声でいった。 (;^ω^)「たしかに大変だと思うお、でも、こればっかりは頑張らないと……!」 ( ´_ゝ`)「はい……」 ( ゚∀゚) 「……そろそろ、その過去の事件というのを話してくれませんでしょうか?」 困惑の表情を浮かばせながら、長岡は言いたいことを切り出した。 いかにもそのとおりで、このままでは納得のしようもない。 弟者も同感らしく、しきりに兄者へ目を向けている。 ( ´_ゝ`)「いいだろう、いまから、十五年前の事件というのを教えよう」 もはやその言葉には推理という概念はうせ、完全な事実だと物語っていた。 16 名前: ◆tOPTGOuTpU :2008/07/27(日) 00:08:27.57 ID:zuSZAyt50 ( ´_ゝ`)「……我々は見落としていたのさ。クー・ルーにデレ様、 そうしてもう一人の、忘れ去られた少女を」 "忘れ去られた少女" そのフレーズに帯びる禍々しさには、長岡も弟者も肩をすぼめるよりなく、 語り手の兄者までも尖った鼻梁を緊張でふるわしたものだった。 ( ´_ゝ`)「その三人が主、そうして他の人間らが花添えをした事件。 これが荒巻家の呪いというのなら、なんと恐ろしいものだろうか! デレ様の、人生を歪ませていく、そうして……」 とうとう兄者は十五年前の事件について触れだした。 そして驚くべきことに、その推理の内容というのは 真実にあまりにも近づいてい、あっという間に十五年という溝は埋め立てられたのだった。 (忘れ去られた少女 終) コメント
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