( ^ω^)十二の運命と十六の年のようです


4 名前: ◆6U8wUGkG1U[sage] 投稿日:2012/05/30(水) 22:12:18.15 ID:yOBKQ/s20
 
(´<_` )「それで、詳しい話とは?」
 
 大人が三人ほど通れる幅の登山道を下りつつ、弟者が問う。
 およそ広いとは言い難い道を、意外にも四班は順に駆けていた。
 それぞれの思惑が、この結果を生んでいる。
 
 先頭を切ったのはブーンの班だ。
 リーダーはショボンの意見で、ドクオが任命されている。
 次に続くのは、ジョルジュの班だった。
 
 個人での先頭はブーンが行き、ショボンは班の最後尾に位置している。
 ジョルジュ班の先頭、ギコに接触を計るためだ。
 次いでミセリ班、モララー班という位置づけで、鬼ごっこは開始された。
 
( ・∀・)「まぁ、詳しい話ってほどでもないんだけど」
 
 と、前置き、
 
( ・∀・)「とにかく、これはリーダーを下山させれば勝ち。どんな手を使ってでもね」
 
(´<_` )「言っていたな。ペニサスが出した条件まんまだが」
 
( ・∀・)「そこでサスガの二人にお願いがあるんだ」
 
(´<_` )「ほう?」
 

5 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:14:26.28 ID:yOBKQ/s20
 
( ・∀・)「この先、ルートが分かれる地点で待ち伏せしてもらいたい」
 
( ´_ゝ`)「待ち伏せ?」
 
(´<_` )「俺と兄者で時間稼ぎをしろってことか」
 
( ・∀・)「ざっつ、その通り」
 
(´<_`;)「しかし、俺たち二人だけというのは……」
 
( ´_ゝ`)「流石の俺たちでも厳しいと思う。ほんとちょっぴりだけな」
 
( ・∀・)「大丈夫。多分クーあたりが同じように足止めするから」
 
(´<_` )「……本当か?」
 
( ・∀・)「ショボンは……やらないと思うけど」
 
 ──あいつは、仲間を囮に使うようなことはできないからね。
 
 サスガ兄弟の手前、その言葉は口に出さなかった。
 出さずとも、弟者は勘付いていたのだったが。
 
( ´_ゝ`)「しかし、ペニサスと必ず接触できる保証はあるのか?」
 
( ・∀・)「大丈夫。100%このルートを辿るはずだよ」
 

7 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:16:56.20 ID:yOBKQ/s20
 
( ´_ゝ`)「ほう。大した自信だな」
 
( ・∀・)「二人なら、少し考えればわかるでしょ」
 
( ´_ゝ`)「まぁいい。引き受けよう」
 
( ・∀・)「すまないね」
 
(´<_` )「いや、リーダーの意見に従うのは筋だ」
 
( ´_ゝ`)「これで負けたら全部モララーの責任だし」
 
(;・∀・)「それはそうだけど、ちょっとは頑張ってね」
 
( ´_ゝ`)「勿論。殺されそうになったら全力で逃げるから」
 
(´<_` )「昼飯は奢れよ」
 
(;・∀・)「……」
 
 兄者も弟者も、口ではこう言っているが全力で取り組んでくれる。そういう二人だ。
 ペニサスの相手は厳しいが、それでもある程度の時間は稼いでくれるはずだ。
 二人がそうしてくれるのだから、自分も応えなければならない。
 
( ・∀・)(なんか昼飯奢ることになってるし……)
 
 今月は財布事情も甚大なのだ。と、決意を固めるのであった。
 

10 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:19:55.97 ID:yOBKQ/s20
 
 駆ける十二名。
 そのうち三名の足が止まったのは、ほぼ同時だった。
 
( ・∀・)「頼んだ!」
 
(゚、゚トソン「お気をつけて」
 
ミセ*゚ー゚)リ「クーちゃん! 頑張って!」
 
 止まったのはサスガ兄弟と、クーだ。
 ペニサスを待ち伏せする為に。
 
(´<_` )(本当にクーも残ったか……流石だな)
 
川 ゚ -゚)(モララー……二人を残したか。まぁ、妥当だろう)
 
 クーからしても、予想通りの展開だった。
 ただ、彼女の予想とモララーの予想とでは、異なる点がある。
 
 モララーは、恐らくクー、或いはトソンが残るだろうと予想した。
 サスガ兄弟がこれに加われば、単純に戦力が上昇する。
 そうすれば稼げる時間も増加するというシナリオだ。
 
 結果、モララーの予想通り、クーは残った。 
 クーは違う。サスガ兄弟が残ろうが自分一人であろうが、どちらでもよかった。
 彼女の意図を知るものは当人と、他にトソン、ミセリの二人だけだ。
 

11 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:21:50.66 ID:yOBKQ/s20
 
(´・ω・`)(やっぱり残ったか。こっちとしてはありがたいけど)
 
 ──あまり好きな手じゃないな。
 
 駆けながら、ショボンはそう思った。
 
(´・ω・`)(さて、こっちも仕掛けないとね)
 
 そして彼は、ギコに接触する。
 
 一方。
 
( ´_ゝ`)「……」
 
(´<_` )「……」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
 立つ、三人。
 
 言は交えない。
 不意の奇襲もありえるのだ。
 
 ただ、待つ。
 
 
 恐るべき鬼を────待つ。
 

12 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:24:02.14 ID:yOBKQ/s20
 
 
 
 
 
 
 
 
( ^ω^)十二の運命と十六の年のようです
 
 
 
 Episode【α】──始動編──
 
 
 
 Chapter2【Skill】
 
 
 
 
 
 
 

13 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:25:23.75 ID:yOBKQ/s20
 
◇登山道・分岐点◇
 
 
('、`*川「ちょっぴり本気で、いかせてもらうわ」
 
 鬼──ペニサス──と対峙する三人。
 彼女の言葉に、身を固め、腰を落とす。
 膝を曲げ、前後左右どの方向にも動けるよう、備える。
 
(´<_` )「できれば、このまま喋ってた方が都合いいんだけどな」
 
('、`*川「んなアホなー」
 
川 ゚ -゚)「おい、サスガの二人」
 
(*´_ゝ`)「なんだいハニー?」
 
 無視して、
 
川 ゚ -゚)「私は接近戦が苦手だから、行け」
 
(´<_`;)「無茶言うなよ……ペニサス教官だぞ」
 
( ´_ゝ`)「よし、行け、弟者」
 
(´<_` )「兄者が逝け」
 

14 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:29:11.63 ID:yOBKQ/s20
 
川 ゚ -゚)「まぁ、接近させなければ問題ない。難しいと思うがな」
 
(´<_` )「俺たちは時間を稼げればいい。ここは待ちの一手だ」
 
川 ゚ -゚)「……そうだな」
 
(´<_` )「とにかく、避けられるだけ避け────」
 
 言い終えることが、できなかった。
 ペニサスが動いたからだ。
 
川;゚ -゚)「ッ!?」
 
 目では追えた。
 しかし、体が反応できたのは、
 
(;´_ゝ`)「ごっぶっ!」
 
 兄者の腹に、ペニサスの掌底がめり込んだ直後だった。
 
('、`*川「はい、まず一人」
 
 伸びきった腕のまま、言う。
 兄者は後方に吹き飛ばされ、坂道を転がり落ちていった。
 
('、`*川「あれ? 変態の単位って一人? 一匹?」
 
 今のクーと弟者に、冗談をさばく余裕は一切ない。
 
16 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:31:41.52 ID:yOBKQ/s20
 
川;゚ -゚)「ちっ」
 
(´<_`;)「兄者……!」
 
 クーは左方向へ、弟者は後方へ。
 兄者が居た位置は二人の丁度中間地点だった。
 今は入れ替わる形で、ペニサスが立っている。
 
 あの急襲を見て、二人の体は本能で遠ざかっていた。
 だが、決して大きな跳躍をしない。
 追撃があれば、着地点を狙われてしまうからだ。
 
 小さく動き、距離を取る。
 弟者は少しでも兄者に近づこうと、更に後方へ。
 
川 ゚ -゚)「いや、相変わらず化物じみてますね」
 
('、`*川「失礼ね。Z.Cならこれくらい普通よ」
 
川 ゚ -゚)「私には今のような真似はできませんが」
 
('、`*川「まだまだなんじゃないの? あなたたちは」
 
川 ゚ -゚)「まぁ、そうですね」
 
 そこでやっと、ペニサスは佇立に戻る。
 クーが足を止めるまで、彼女は兄者を襲った体勢のままでいた。
 誘っていたのだったが、あの後では二人に反撃の二文字は浮かばなかった。
 
18 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:36:51.66 ID:yOBKQ/s20
 
 しかし。
 
川 ゚ -゚)「弟者! 兄者を叩き起こしてこい!」
 
(´<_`;)「お前一人になるだろ!」
 
川 ゚ -゚)「いいさ。さっさと連れてこい」
 
(´<_`;)「しかし……」
 
川 ゚ -゚)「今度は油断するなと伝えろ。それまでは────」
 
川 ゚ -゚)「────私が時間を、稼いでやろう」
 
('、`*川(……へぇ)
 
 現Z.C十二名の中で、クーの総合評価は高い位置にある。
 運動能力、基礎体力、知力、感性、etc...全てを含めて、だ。
 ただ、欲がない、と教官が所持するデータの補足項目に書かれていた。
 
 評価を維持、或いは更に上へと向かおうとする、向上心が欠如しているということだった。
 
('、`*川(やる気、だしたか)
 
 思い、薄く笑う。
 Z.Cの士気を高めてやるのも、教官の務めだ。
 だが、これは今回、ペニサスにとって誤算だったと言える。
 
19 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:37:57.49 ID:yOBKQ/s20
 
 勿論、嬉しい誤算だ。
 結果的に彼女は、クーの本気を見られる機会を得たのだから。
 
(´<_`;)「……気をつけろよ!」
 
 弟者は兄者の元へ駆ける。
 ペニサスが彼を追うことはない。
 彼女の興味は、既にクーへと注がれていた。
 
川 ゚ -゚)「さて……」
 
('、`*川「なかなかいないわよ。さっきので戦意喪失しない子は」
 
川 ゚ -゚)「いえいえ、戦意は喪失したし、あまりに強くて呆れました」
 
('、`*川「あらら」
 
川 ゚ -゚)「だからです」
 
 
川 ゚ -゚)「吹っ切れました」
 
 
 ぷつ、と小さな音がした。
 その音は、ペニサスに届かない。
 クーは自分の髪を一本、引き抜いていた。

21 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:39:55.61 ID:yOBKQ/s20
 
 クーが何をしたのかわからないが、"何かをしようとしている"のは、わかった。
 
('、`*川「実戦で使うのは初めて?」
 
川 ゚ -゚)「意識して使ったのは演習の時、くらいですね」
 
('、`*川「なるほどね。いいわ。試してごらんなさい」
 
 Z.CをZ.Cたらしめる力。
 それは、常人より身体能力が優れているということだけではない。
 
 むしろ、体は土台でしかないのだ。
 Z.Cが持ち得る、強力な能力を放つ砲台としての。
 故に彼らは、常に訓練で身体能力を高めている。
 
 風が吹いた。
 ペニサスが地を蹴った、直後に、だ。
 
 兄者の時と同じく、目では追えるが体が反応し切れぬ速度。
 疾駆はクーの眼前へ届き、
 
('、`*川「ふっ!」
 
 またも掌底を繰り出そうと、脇腹近くへ腕を引く。
 そこでやっと、クーの体が動いた。
 
川 ゚ -゚)「……!」

24 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:44:30.09 ID:yOBKQ/s20
 
 回避の動作ではない。
 "自身の長い黒髪を手に取り、前面へ放り出した"。
 そして、後方へ僅かに体を反らせる。
 
('、`*川「ッ!」
 
 繰り出された、掌底。
 当然のごとく、ペニサスの右手はクーよりも前に出ている髪に当たり、
 
('、`*川「おっ!?」
 
 まるで意思を持っているかのように、黒髪がペニサスの右腕に巻きついた。
 それを確認すると、クーは大きく左へ跳ぶ。
 距離が離れ、たわんだ髪が張る直前にペニサスの右腕を解放した。
 
川 ゚ -゚)「……!」
 
 驚いていたペニサスの横顔目掛け、跳躍したままで右腕を振るう。
 何かを、投げた。
 
('、`*川「っと!」
 
 ペニサスはその何かを、左腕を交差させ、右頬に当たる直前で掴んだ。
 人差し指と中指を鋏のようにして、掴んでいる。
 
 二本の指に挟まれていたのは、先程クーが自ら引き抜いた、髪の毛だった。
 

25 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:50:56.46 ID:yOBKQ/s20
 
 ペニサスの手に落ちた髪は役目を終えたように、毛髪のそれとなる。
 しかし、彼女を襲った時の髪は明らかに硬質化していた。
 
('、`*川「……」
 
川 ゚ -゚)「ふーっ」
 
 また距離を取ると、一息。
 腰まで伸びた黒髪を、うなじに両手をかけて一瞬、ばさりと持ち上げた。
 持ち上げられた髪が元の位置に戻る。見事な艶を浮かばせる黒髪だった。
 
('、`*川「……」
 
 彼女が右腕で味わった感触。
 とても、髪と呼べるものではない。
 
('、`*川(強靭なロープ……じゃない、もっと……鉄線を髪の細さまで細めたような……)
 
('、`*川(普通の人間くらいなら、軽く絞め殺せそうね)
 
 加えて、
 
('、`*川(クー本人を離れた髪でも、硬質化して飛び道具に使うことも可能、か)
 
('、`*川「全く、接近戦が苦手だなんてよく言うわ」
 
川 ゚ -゚)「本当ですよ。髪が引っ張られたら、流石に痛いですから」
 

26 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:55:55.33 ID:yOBKQ/s20
 
 はいはい、と受け流し、
 
('、`*川「面白い能力ね。発現したのはいつ?」
 
川 ゚ -゚)「三ヶ月くらい前、ですかね。寝癖がひどいと思ったら、一瞬で治りました」
 
('、`*川「あぁ……そう……」
 
 仕切り直して、
 
('、`*川「そっか。クーは三月生まれだったわね」
 
川 ゚ -゚)「信じ難かったですが、十五歳で発現するのは本当だったんですね」
 
('、`*川「ほんとよ。アタシもそれまでは信じられなかったけれど」
 
('、`*川「……さて、その能力、どうやら髪を自在に操る、だけじゃないわね?」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
('、`*川「性質自体を変化させる。強度も、伸縮も自在。実に多様性のある能力だわ」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
('、`*川「何か間違ってるかしら?」
 
川 ゚ -゚)「そんなこと言いませんよ。今、ペニサス教官は敵ですから」
 
('、`*川「つれないわねぇ」

27 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 22:56:39.93 ID:yOBKQ/s20
 
川 ゚ -゚)「それじゃあ、教官の能力を教えてくだされば」
 
('、`*川「ひ・み・つ☆」
 
川 ゚ -゚)「交渉決裂ですね」
 
('、`*川「ま、アタシは能力使うまでもないしね」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
 ざわ、と、ストレートの黒髪が、僅かに逆扇を象った。
 
('、`*川「へぇ、クーでもこういうのは腹が立つの?」
 
川 ゚ -゚)「実は、負けず嫌いです」
 
('、`*川「それはアタシもよ」
 
 さて、と言い、
 
('、`*川「時間もないし、そろそろ通してもらうわ」
 
川 ゚ -゚)「気が変わりました。意地でもペニサス教官の能力を見せてもらいます」
 
('、`*川「やってごらんなさい」
 
 再び、両者が交える。

30 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:00:33.79 ID:yOBKQ/s20
 
 クーがペニサスの掌底を躱した時、一方では。
 
(´<_`;)「兄者!」
 
 弟者が兄者に駆け寄り、声をかけた所だった。
 
(  _ゝ )「……」
 
(´<_`;)「おい! 兄者! 大丈夫か!?」
 
(  _ゝ )「おと……じゃ……?」
 
(´<_`;)「ああ俺だ! しっかりしろ!」
 
(  _ゝ )「やられたよ……」
 
(´<_`;)「知ってるから! 立てるか?」
 
(  _ゝ )「……あいつめ……」
 
(´<_`;)「ああ、二人でリベンジしよう、兄者」
 
( ;_ゝ;)「クーのやつ! スパッツ履いてやがった!」
 
(´<_` )「よし立て。小さい方じゃない。足だ。自分の足で立ち上がれ」
 
( ´_ゝ`)「ひどくね!?」
 

31 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:04:33.98 ID:yOBKQ/s20
 
 ペニサスが兄者を攻撃した時だ。
 兄者をここまで吹き飛ばす掌底を生む、踏み込み。
 その衝撃は風を起こし、八方に舞った。
 
 兄者は吹き飛ばされながらもクーのスカートが捲られることを見逃さなかった。
 そして、見たのだ。
 真っ黒の、スパッツを。
 
(´<_` )「というかうちの女子どもは皆スパッツ履いてるじゃないか」
 
( ´_ゝ`)「それでも期待するのが男ってもんだろぉがよぉ!?」
 
(´<_`;)「あの状況にもかかわらずパンツへの執着を忘れなかったのは流石と言わざるをえない……」
 
(´<_` )「だが、今はそのクーがピンチだぞ」
 
( ´_ゝ`)「何!?」
 
(´<_` )「俺がここにいることで察してくれ。あいつは今、一人で戦ってる」
 
( ´_ゝ`)「俺が不甲斐ないばかりに……!」
 
(´<_` )「本当にそう思う」
 
( ´_ゝ`)「よし! 行くぞ弟者!」
 
(´<_` )「む。腹は大丈夫か?」

33 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:06:47.19 ID:yOBKQ/s20
 
(;´_ゝ`)「痛い……」
 
(´<_` )「無理するなよ……」
 
( ´_ゝ`)「しかぁ──し! 俺が、俺たちがいかんでどうする!」
 
(´<_` )「ああ、そうだ。その意気だ」
 
( ´_ゝ`)「行くぜ! 弟者!」
 
(´<_` )「了解だ、兄者」
 
 こうして変態と弟者は、クーの元へと駆けていった。
 
 場は戻り、
 
川;゚ -゚)「くっ……」
 
 クーは苦戦を強いられていた。
 
('、`*川「ほら、どうしたのよ?」
 
 矢継早に繰り出される、ペニサスの手拳。
 足技は一切使用していない。
 もし足を髪に巻き取られれば、甚大な窮地に陥るからだ。
 
 クーはそれを狙っていたが、ペニサスが足技を使用することはないだろう。
 

34 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:09:31.99 ID:yOBKQ/s20
 
 しかし、彼女の猛攻を一応、防げてはいる。
 打突は髪を障壁にして、柔軟性を持たせ衝撃を吸収し、受け流す。
 自力で躱せるものは、そのまま躱す。
 
 ただ、躱したところでクーの範疇にない変化を持たせ、更なる追撃が発生するのだ。
 例えば、躱したと思った突きは、躱したことをクーが理解する瞬間に、引かれる。
 常人、いや、現Z.Cですら、突きを放てば躱されたとしても腕は伸びきるはずだった。
 
 ペニサスにはそれがない。
 クーが動いた瞬間から躱された、或いは防がれることを瞬時に察知して、攻撃の手を引き戻す。
 寸止めが前提の徒手拳であれば、それは可能であると言えるのだが。
 
川;゚ -゚)(くそ……わかっていたつもりだったが……)
 
 ペニサスは寸止めを考えて攻撃を繰り出しているわけではない。
 瞬時に打ち切るか、引くかを判断して、手を出している。
 その、判断の速度が、クーの理解を超えているのだ。
 
 攻撃に転じることはおろか、このままではいつか対処が追いつかなくなる。
 
川;゚ -゚)(……ここまでとは……)
 
('、`*川「クー、反省会よ」
 
 打突は止まない。クーが離れようとしても、一足でペニサスは食らいつく。
 
('、`*川「Z.Cの能力がいくら強力とは言っても、あなたはまだ未熟」
 

36 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:11:37.11 ID:yOBKQ/s20
 
('、`*川「その能力、あまり派手ではないけれど、アタシは評価するわ」
 
('、`*川「ただ、経験が少なすぎる。能力の基本的なことすら把握していない」
 
('、`*川「まぁ、現時点じゃそれも仕方ない、けどね」
 
川;゚ -゚)(言いたい放題……言ってくれるな……!)
 
 吐かれた言葉に反論する余裕はない。
 心で虚勢を放つだけで精一杯だ。
 
 そして、刹那の反論をも許さぬ一撃が、繰り出される。
 
川;゚ -゚)「ッ!?」
 
 はら、と、力なく風にそよぐのは数十本の毛髪。
 クーから決別し、死した髪が、地に落ちた。
 
('、`*川「こういうことへの対処は、思いつくかしら?」
 
 ペニサスの右手。
 "毛針"をはさみ取った時のように、人差し指と中指を立て、残り三本の指は閉じられていた。
 仮にそれを呼ぶとすれば、"指剣"、とでも言うだろうか。
 
('、`*川「さぁ、どんな髪型がいい? あなた好みの髪型にしてあげるわよ」
 

38 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:12:44.51 ID:yOBKQ/s20
 
川;゚ -゚)(見えなかった……髪を切られた動きが……)
 
('、`*川「ま、その能力ならどんだけでも髪伸びるか」
 
川;゚ -゚)「!!」
 
 ペニサスがまた、右手を振り上げた。
 
川;゚ -゚)(……避けるしか……ない!)
 
 しかし、その速度。
 素手で毛髪を切断せしめるというのだ。
 払い抜く速度は、もはやクーの目では追うことすらできない。
 
川;゚ -゚)(ちっ……落ち着け……!)
 
 ──見えなくなっただけだ。体が反応しないことと然程変わりはない!
 
 動けばいい。攻撃を繰り出される前に。
 ペニサスが振り上げているのは右手だ。
 先端の動きは見えないが、肩の動きを見れば軌道は予測できる。
 
 真横に、跳ぶ。
 
 同時、繰り出された、右手。
 

39 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:14:47.31 ID:yOBKQ/s20
 
('、`*川「はい、捕まえた」
 
 クーは真横に跳んだ。
 当然、長い髪は彼女に置いて行かれる。
 体が髪の長さを移動して、やっと髪はついてくる。
 
 その、まだ回避行動を取っていない髪を、掴まれた。
 既にペニサスは左手を脇に引き、打突の体勢に入っている。
 
川;゚ -゚)「ッ……!?」
 
 指剣がくる。
 そうとしか考えていなかったクーは、思考が追いつかない。
 髪を伸ばせば、不恰好ながらも状況は打開できた。
 しかし、そんなことすらも思いつかない。
 
 
 後は、ペニサスの左手が腹にめり込み、クーの意識は途絶える────
 
 
('、`*川「!!」
 
(´<_`#)「兄者!」
 
(#´_ゝ`)「ふおおぉぉぉぉ!!」
 

40 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:16:33.07 ID:yOBKQ/s20
 
 弟者は髪を掴んだ右腕を。
 兄者は放たんとしている左腕を。
 
 両の手で、しっかりと掴んだ。
 同時に、
 
(#´_ゝ`)「ぬん!」
 
(´<_`#)「せい!」
 
 蹴りを繰り出した。
 ペニサスの両腕は固定されている。
 
 当たる。確信を持って、二人の足が弧を描こうと。
 
 
('、`*川「ッ!」
 
 地を蹴った。
 やや前方、上方にだ。
 
(´<_`;)「なっ!?」
 
川;゚ -゚)「……!?」
 
 そして、二人の足は空を切った。
 

41 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:19:29.27 ID:yOBKQ/s20
 
(;´_ゝ`)「うおっ!?」
 
(´<_`;)「ちぃっ!」
 
 宙に浮いたペニサスを、二人は引き戻そうとする。
 だが、強引に腕を引っ張られ、掴み続けることはできなかった。
 
 ペニサスが跳んだ時点でクーの髪は解放されている。
 バランスを崩しながら、クーは三人からやや離れた位置に着地した。
 
(#´_ゝ`)「せいっ!」
 
 ペニサスは、まだ着地していない。
 後方宙返りを終えて、足が地面に向いたあたりだ。
 サスガ兄弟は、着地点を狙う。
 
 またも蹴り。
 着地前、空中を捉える上段回し蹴りを二人同時に繰り出した。
 双子だからこそか、不意の行動にも狼狽せず、一糸乱れぬ動きだった。
 
('、`*川「ていっ」
 
(;´_ゝ`)「あ!?」
 
(´<_`;)「うん!?」
 

42 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:22:56.37 ID:yOBKQ/s20
 
 高く上げた足に衝撃が走る。
 ペニサスを直撃した、からではない。
 彼女は両足を少し広げ、"サスガ兄弟の足を蹴った"のだ。
 
 空中で二人の蹴りと土台にし、更に後方へ跳躍する。
 当のサスガ兄弟ですら、何をされたのかその一瞬ではわからなかった。
 
 地に、鬼の足が着く。
 
 三人に追撃という選択肢は、やはり浮かばなかった。
 
('、`*川「惜しいわね〜」
 
(;´_ゝ`)「えっ。えっ。何されたの!?」
 
(´<_`;)「落ち着け兄者……俺にもよくわからん!」
 
川;゚ -゚)「……」
 
('、`*川「器械体操よ。今もストレッチでやるでしょ?」
 
 平然と言ってのける。
 呆気にとられている三人をよそに、
 
('、`*川「伸身後方宙返りからアンタたちの足を土台にした後方宙返り、よ」
 
( ´_ゝ`)「えーと………………………………………なるほど!」
 
(;´_ゝ`)「なるほどじゃねぇ! まったくわからん!」

43 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:25:25.15 ID:yOBKQ/s20
 
('、`*川「まぁ、クーと弟者は理解できたようだから、説明は省くわよ」
 
 理屈では理解できても、再現は不可能だ、と思わされることは世にいくらでもある。
 理屈を理解した弟者とクーは、今まさにそれに直面し、硬直していた。
 
 クーは再び思い知り、弟者はこの一連で悟った。
 
(´<_`;)(……時間稼ぎとか無理だろ……)
 
川;゚ -゚)(私たち十二人が揃っても、この人を倒すとか無理だ……)
 
('、`*川「さーて、今度は三対一かしら? まとめてきなさい」
 
 鬼が一歩踏み出し、二人は一歩下がる。
 兄者だけは、一歩引かなかった。
 
( ´_ゝ`)「まぁ、どうせ勝てないことはわかってたし、やるしかないな、弟者」
 
(´<_`;)「兄者……」
 
( ´_ゝ`)「クーちゃん。隙があったらサポートを頼む」
 
川;゚ -゚)「兄者……」
 
( ´_ゝ`)(きまった……)
 
('、`*川「へー。現Z.Cの変態代表が、言うじゃない」
 

44 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:26:34.34 ID:yOBKQ/s20
 
( ´_ゝ`)「モララーと約束したんだ。あんたは俺たちが止めるってな」
 
('、`*川「ま、時間稼ぎ役としては充分じゃない? ほぼクーのおかげだけれど」
 
( ´_ゝ`)「クーは何分稼げたんだ?」
 
('、`*川「五分、ってところかしら」
 
( ´_ゝ`)「じゃあ、俺たちは十分稼いでみようじゃないか」
 
('、`*川「あらあら。慢心は動きを鈍くするわよ?」
 
( ´_ゝ`)「慢心じゃないさ。これは確信だ」
 
('、`*川「……」
 
( ´_ゝ`)(……きまった……これに惚れない女はいない……)
 
 既視感。
 クーが感じたのは、それ。
 
川;゚ -゚)「馬鹿っ!」
 
 叫んだ時には、既にペニサスが兄者の眼前に迫り、掌底を放つ構えに入っている。
 最初と全く同じ状況だった。
 

46 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:28:52.96 ID:yOBKQ/s20
 
 そのまま掌底は兄者の腹を捉え、
 
(;´_ゝ`)「ごっぶっ!」
 
 と鈍い声を上げて後方へ大きく吹き飛ばされた。
 
川;゚ -゚)「……!?」
 
 のは、過去のヴィジョンだ。
 
 今、クーの目に映るヴィジョンは、ペニサスの掌底を見事に躱した兄者がいた。
 
( ´_ゝ`)「同じ轍は踏まんさ」
 
('、`*川「お」
 
 繰り出す、左ストレート。
 ペニサスは掌底と逆の手で、これを受け止めた。
 
('、`*川「!?」
 
 そのまま、大きく後方に飛ばされる。
 油断はあった。しかし、あまりにも打突の威力が高すぎた。
 
('、`*川「……そういえば、昨日が誕生日だったわね」
 

47 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:29:54.46 ID:yOBKQ/s20
 
( ´_ゝ`)「ああ。六月一日。俺と弟者の誕生日だ」
 
('、`*川「発現したか。なんかおかしいと思ってたんだけど」
 
( ´_ゝ`)「ほほう。そうなのか?」
 
('、`*川「アンタら二人、いつもはドクオ並に息切れるのに、今日は余裕だったじゃない」
 
('、`*川「なんかあるって思うわよ、普通」
 
(´<_` )「……」
 
('、`*川(ま、確認の為に兄者を先に攻撃したら、あのザマだったんだけれど)
 
 しかし、
 
('、`*川(今度は……何かが違うようね)
 
( ´_ゝ`)「弟者、いくぞ!」
 
(´<_` )「了解だ!」
 
 声の後、疾駆するサスガ兄弟。
 最初に驚いたのは、クーだった。
 
川;゚ -゚)(なんだあいつら……あの疾さは!)
 

48 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:32:19.69 ID:yOBKQ/s20
 
('、`*川(へぇ……)
 
 感嘆し、迎え撃たんと。
 弟者が下段、兄者が中段へ回し蹴りを放つ。
 ペニサスはこれを後方に少しだけ動くことで、回避した。
 
 次に二人は腰を落とし、そのまま突進。
 強く踏み込み、正拳突きを放った。
 
 ペニサスは避けず、そのまま両の手で受け止めた。
 激しい、乾いた音が岩山に反響し、こだまする。
 今度は、吹き飛ばされはしなかった。
 
('、`*川「明らかに動きが違うわねぇ」
 
( ´_ゝ`)「昨日までの俺たちじゃないのさ!」
 
 掴まれた二人の手は、引き離すことができない。
 強く握られている。
 だが、ペニサスは両手に対し、サスガ兄弟はまだ片腕が自由だ。
 
 掴まれた腕を曲げ、身を前方に押す。
 空いた手で、二人は同時にペニサスの脇腹を狙った。
 
('、`*川「ほっ!」
 
 今度は掴んだ腕を支えにして、前方宙返りをしてみせた。
 二人は前につんのめり、ペニサスは二人の後方に着地する。

50 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:33:52.82 ID:yOBKQ/s20
 
( ´_ゝ`)「せいっ!」(´<_` )
 
 一糸乱れず、後方を確認せずに後ろ回し蹴り。
 またも今度は兄者が下段、弟者が中段へ繰り出した。
 ペニサスも振り向かず、更に前方へ、つまり二人と反対方向へ軽く跳躍し、これを回避した。
 
('、`*川「……息ぴったりじゃない」
 
( ´_ゝ`)「双子だからな」
 
('、`*川「それだけじゃ、ちょっと理由にならないわよね」
 
('、`*川「能力、ね?」
 
( ´_ゝ`)「ふっ。その通りだ」
 
(´<_`;)「おい兄者……」
        サ ス ガ
( ´_ゝ`)「"以心伝心"────俺も弟者も、今何を考えていることがわかる。
      相手のどこを攻めるかも、何を繰り出すかも、全てな」
 
( ´_ゝ`)「ちなみに弟者は今、仮にも今敵であるペニサス教官にぺらぺらと能力をばらすなと思っている」
 
(´<_`;)「わかってるなら言うなよ……」
 
('、`*川「でも、それだけじゃないでしょ? 身体能力も明らかに向上してるじゃない」
 
('、`*川「これも能力なんでしょ? どっちかの」

51 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:35:12.76 ID:yOBKQ/s20
 
( ´_ゝ`)「ふははは! 弟者! 言ってやれ!」
 
('、`*川「そっちか」
 
(´<_`;)「馬鹿野郎」
 
川;゚ -゚)(アホか……だが……)
 
川 ゚ -゚)(ペニサス教官は……私たちの能力を調べているのか……)
 
川 ゚ -゚)(発現しても申告義務はなかったが……しかし、なぜこんな回りくどいことを……?)
 
(´<_` )「まぁ、いずれはどこかでばれるだろうし、別に親の敵でもないしな」
 
( ´_ゝ`)「そうだ! 言ってやれ!」
 
(´<_` )「……俺の能力は察しの通りだ。俺と、兄者の身体能力をいくらか向上させる」
 
('、`*川「それだけ?」
 
(´<_` )「それだけだ。もっとも、昨日発現したんだ。詳しくはまだわからん」
 
('、`*川「ふぅん」
                サ ス ガ        ブラザーズ
(*´_ゝ`)「どうだ! 俺の"以心伝心"と弟者の"一蓮托生"が合わされば、俺たちに隙はない!」
 
('、`*川(ネーミングは兄者か……)
 

52 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:36:27.87 ID:yOBKQ/s20
 
('、`*川「親切に教えてくれてありがとう」
 
('、`*川「それじゃそろそろ、三人ともバイバイね」
 
( ´_ゝ`)「いやいや、もう俺たちが勝つフラグ立ってるから」
 
(´<_` )「俺は勝てるとは思っていないが、もう少し善戦したい」
 
( ´_ゝ`)(どさくさで乳揉めないかな……)
 
(´<_`;)(聞こえてるぞ……)
 
川 ゚ -゚)「……」
 
(´<_` )「クー、大丈夫なのか?」
 
川 ゚ -゚)「あぁ。少し驚いていただけで、元々ダメージはない」
 
 三人が横に並び、ペニサスを見据える。
 ペニサスは佇立のまま、視線を受け止めた。
 また、薄く笑みを浮かべて。
 
('、`*川「後一回、チャンスをあげる。それでだめだったら、お昼寝の時間。OK?」
 
( ´_ゝ`)「おk。丁度昼寝したかったし」
 
(´<_` )「それじゃ負けてるだろ……」
 

54 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:37:37.75 ID:yOBKQ/s20
 
川 ゚ -゚)「弟者」
 
(´<_` )「なんだ?」
 
川 ゚ -゚)「私に策がある。耳を貸せ」
 
(´<_` )「ふむ……」
 
 ここまでで、三名がペニサスと接触し、十二分四十三秒が経過していた。
 時間稼ぎの役割は充分に果たされている。
 ここからはクー、兄者、弟者の意地だ。
 
 鬼を止めることができるか、はたまた────
 
 
 
◇登山道・正規ルート◇
 
 つい数十分前に登った道を、一行はひたすら下りてゆく。
 ショボンたちは別ルートを選ばず、正規ルートを辿っていた。
 ブーンが聞けば、
 
(´・ω・`)「ペニサス教官が本気を出せば、どのルートでも追いつかれるさ。
      それなら僕らも、行き慣れた道を進んだ方がいい」
 
 とのことだ。
 

55 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:39:07.37 ID:yOBKQ/s20
 
 そして、駆け行くはショボン、ドクオ、ブーンの班以外に、
  _
(;゚∀゚)「お、おい! そろそろ追いつかれるんじゃ!?」
 
( ・∀・)「大丈夫。サスガ兄弟とクーが時間を稼いでくれるよ」
 
(,,゚Д゚)「でも、相手はあのペニサス教官だぜ?」
 
ミセ#゚Д゚)リ「ちょっとギコ! クーが信じられないの!?」
 
(゚、゚トソン「ペニサス教官が相手じゃ、不安になるのもわかりますけどね」
 
(*;゚ー゚)「ま、まぁまぁ……今は皆で協力しようよ……」
 
 以外、というか全員が揃っていた。
 九人は喧騒と共に、急斜面が続く道を行く。
 
(,,゚Д゚)「シィ、大丈夫か?」
 
(*゚ー゚)「うんっ。へいき」
  _
( ゚∀゚)「いちゃつくのは後にしろよ……」
 
(,,;゚Д゚)「お、俺はただシィが心配になっただけだ!」
  _
( ゚∀゚)「はいはい。言ってろ言ってろ逝ってよし」
 
(*゚ー゚)「ギコくん。ありがと」
 
56 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:41:10.64 ID:yOBKQ/s20
 
 シィと呼ばれた茶色の髪をした少女。
 肩まで伸びた髪を風に揺らせ、屈託のない笑顔でギコを見た。
 ギコの顔が赤くなったのは、ジョルジュにからかわられた所為だろうか。
 
('A`)「……なぁ、ブーン」
 
( ^ω^)「お?」
 
('A`)「本当にクーたちはペニサス教官と接触できたと思うか?」
 
( ^ω^)「ショボンが言ってたお。ペニサス教官が本気を出せば、簡単に追いつかれる。
      別ルートからわざわ先回りする必要はないはずだ、って」
 
('A`)「あぁ……時間稼ぎ、できてればいいんだけどな……」
 
( ^ω^)「大丈夫だお! クーは僕らの中でもすごいし、サスガの二人も能力発現したし!」
 
('A`)「だな。兄者のはしゃぎっぷりったら……」
 _、_
( ,_ノ` )「なるほど。君たちは発現しているのか?」
 
( ´ω`)「ブーンはまだなんだお……」
 
('A`)「俺も……」
 _、_
( ,_ノ` )「そうか。まぁ、誕生日を迎えれば発現するさ。そう肩を落とすな」
 
( ´ω`)「おーん……」
 
58 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:42:46.61 ID:yOBKQ/s20
 
( ´ω`)「……」
 
('A`)「……」
 
(;^ω^)「だ、誰だお!?」
 
 いつの間にか、黒いトレンチコートを纏った男が、ブーンと並走していた。
 シブサワだ。
 _、_
( ,_ノ` )「なかなか良い間だったぞ。及第点だ」
 
(;^ω^)「誰!? この人誰なの!?」
 
(;'A`)「え? うぇえええ?」
 
(;´・ω・`)「な!? え、誰!?」
 
 誰だコールが後続に伝染していく。
 最後尾のトソンまで伝わって、シブサワは満足したように、
 _、_
( ,_ノ` )「君たちの反応、実に期待通りだ。ありがとう」
 
(;´・ω・`)「いや、あなた誰ですか? ここは立入禁止ですよ」
 
(;・∀・)(なんだこのおっさん……気配もまるで感じなかったぞ)
 
(゚、゚;トソン(私たちに涼しい顔でついてきてるなんて……まさか、Z.C?)
 

59 名前: ◆6U8wUGkG1U 投稿日:2012/05/30(水) 23:44:49.81 ID:yOBKQ/s20
 _、_
( ,_ノ` )「俺は見ての通り、通りすがりのおじさんだ」
  _
(;゚∀゚)「こんなとこ通りすがるかよ!」
 _、_
( ,_ノ` )「そして、ついさっき君たちの臨時コーチに任命された」
 
(´・ω・`)「!!」
 
(;・∀・)「ブーン! ドクオ! 気をつけろ!」
 
 
 _、_
( ,_ノ` )「それでは、鬼ごっこを始めよう」
 
 
 
 
 
 
 
                            ────to be continued


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