5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 19:55:13.50 ID:+QICp6xOO
( ^Д^) 「はいはーいカノジョ~。もしかして暇だったりする? よかったら」
ξ゚⊿゚)ξ 「邪魔」
(;^Д^) 「俺、と……、あー……、失礼、しました……」
にやけながら話し掛けてきた男の表情は一瞬で凍りつき、
悠然と歩いていく女を呆然と見送った。
簡単に言うと、男はナンパに失敗した。それもたったの五秒で。
―――女は美しかった。
小さな顔。整った顔立ち。金色に近い茶髪は
幾重のも螺旋にて構成されている。
これほどにまで美しく、可愛らしい彼女を
男どもがほおっておくはずが無い。
実際に今まで何人もの男たちが彼女を振り向かせようと挑戦した。
だが結果は先程のように、彼女が一睨みして終了する。
取り付く島もないとはまさにこの事だろう。
綺麗なバラにはトゲがある。
彼女から放たれるその威圧感は近寄ってくる男を
突き放すには充分過ぎるようだった。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 19:57:21.53 ID:+QICp6xOO
【Side ( ^ω^)】
( ^ω^) 「~~♪」
さて、先程の女性に変わってこの男。
彼女とはまるで正反対なのかと思うぐらいに
その体から脳天気さをにじみ出している。
鼻歌を歌い、人より少しばかりふくよかな体を
揺らしてリズムを取りながら歩く。
その様子は、
「俺いま最高に充実してるぜっ!」
と語っているみたいだ。
そんな風に歩いていたお気楽男は、
ふと目の前を通り過ぎる女性に視線を向けた。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 19:59:49.46 ID:+QICp6xOO
,,,ξ゚⊿゚)ξ スタスタ
Σ( ^ω^) 「おっ!!」
( ^ω^) (これは……、まさにストライク! 素晴らしい絶好球!
僕の心のバックスクリーンに大!直!撃!!)
( ^ω^) (ここで話し掛けなきゃ男がすたるってぇもんだおコノヤロー!)
頭がお花畑の男は、それが勝率0%の戦いだと気付かずに戦地へと向かう。
⊂二二( ^ω^)二⊃
「ブ―――――ン!!!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:02:06.95 ID:+QICp6xOO
( ^ω^)b 「HEY、ハニー! 毎朝僕のためにミソスープを
作る事が出来るのは君しかいないおっ!!」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
だが彼女はまったく気にもかけずに無視して進む。
それでも男はしつこく後をついていく。
( ^ω^) 「ああっ、待っておハニー!
そして一緒に運命と言う名のワルツを踊ろうおっ!!」
その瞬間、彼女は立ち止まり男の方に振り向く。
( ^ω^) 「おおっ! とうとう僕の気持ちが君に届いたお!
なら善は急げだお。さっそく挙式を……」
ξ゚⊿゚)ξ 「うっとおしい」
そう言うと女はノーモーションで膝蹴りを繰り出す。
彼女の膝は吸い込まれるように男の股間にヒットした。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:04:30.18 ID:+QICp6xOO
( ゚ω゚) 「Noォォッ!!」
見事ジャストミートしたようだ。
男は切なそうな表情でその場に崩れ落ちた。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
そして、彼女は何も言わずに立ち去っていった。
そこに残ったのは股間を両手で抑え、
尻を高く上げたまま倒れている馬鹿一名。
イメージとしてはこんな感じ。→oτ2
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:06:28.18 ID:+QICp6xOO
( ´ω`) 「お、おおお……」
( ´ω`) 「な、何が……」
( ´ω`) 「いったい何がいけなかったんだお……?
会心のトークだったはずなのに……」
( ´ω`) 「それにしてもメチャクチャ気の強い子だったお……」
( ´ω`) 「……」
(*^ω^) 「ますます僕好みだお!!」
股間を蹴られたくせに至福の表情を浮かべる変態一名。
疑いようもなく真性のMである事が読み取れる。
周りを通り過ぎる人たちにクスクス笑われながらも、
男は幸せそうに地に伏せていた。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:08:44.02 ID:+QICp6xOO
【Side ξ゚⊿゚)ξ】
駅の中は大勢の人で埋め尽くされている。
彼女はさっきの出来事を思い出していた。
ξ゚⊿゚)ξ (ふう……)
ξ゚⊿゚)ξ (しかし変なやつだったわね、アレ)
アレ→( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ (大体あれは真面目に口説こうとしてたのかしら?)
ξ゚⊿゚)ξ (……)
ξ゚⊿゚)ξ (………)
ξ゚⊿゚)ξ (いや、どう考えてもふざけてたわね)
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:10:31.36 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ (とすると、あれは何だったのかしら……?)
ξ゚⊿゚)ξ (……)
ξ゚⊿゚)ξ (元気が無い今の日本に喝をいれるために、身を粉にして……!)
ξ゚⊿゚)ξ (……)
ξ゚⊿゚)ξ (疲れてるのかなあ、私)
ξ゚⊿゚)ξ (……そういえば)
ξ゚⊿゚)ξ (アレから何か変な匂いがしてたわね)
ξ゚⊿゚)ξ (あれは……、そう、オイルの匂い)
ξ゚⊿゚)ξ (機械の整備の仕事でもしているのかな?)
ξ゚⊿゚)ξ (まあどうでもいいか。どうせもう会う事は無いだろうし)
そうして彼女は考えをまとめ終え、駅の改札口を通り過ぎる。
タイミングが悪かったのか、発車のベルが辺りに鳴り響いていた。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:12:21.47 ID:+QICp6xOO
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【Side ξ゚⊿゚)ξ】
太陽の光に包まれていた街は、次第に人工の光へと塗り潰されていく。
辺りは静まる事も無く、むしろより一層の喧騒に溢れている。
若者は周りの事を微塵も考えずに大きな声で笑う。
中年の男性は上気した顔でふらつきながら歩き、
機嫌良さそうに鼻歌を歌う。
皆それぞれに夜の街を満喫していた。
だが、それは表の話。中央から一歩外れると、そこにあるのは闇。
本来時間的に当然であるはずのその闇は、中央が明るければ
明るいほど、反比例して不気味に思えてくる。
よって、普通なら自ら好んでその不安に
飛び込む者などいないはずなのだが―――
その日は、違っていた。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:14:31.60 ID:+QICp6xOO
街灯はおろか、月の明かりさえもほとんど
届かない裏道を走り抜ける影が複数。
詳しくは一つの影が先行し、残りの影が
その後ろをついていっている、という感じだ。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……」
先頭を行く影は女性―――彼女だった。
長い髪をはためかせて、ただひたすらに走る。
額には少し、汗がにじんでいた。
どうやら彼女は追われているようだ。彼女は常に背後から
襲ってくる影―――男たちを警戒しながら走っている。
逃げるのならば裏通りでは無く、人通りの多い表に出たほうが
良いはずだが、そうしないのは何か理由があるのか。
いずれにせよ、この状況は彼女にとって喜ばしくない事態のようだった。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:16:20.72 ID:+QICp6xOO
【Side ( ^ω^)】
( ^ω^) 「うーん、やっぱりそう簡単に見つからないお……」
男は辺りをキョロキョロしながら、そうつぶやく。
男は、人を―――数日前に自分の股間を蹴ったあの女を捜していた。
( ^ω^) 「あれほどの逸材はそうはいないお」
(*^ω^) 「ぜひとも仲良くなりたいお!」
拳を握りしめた両手を高く上げ、誓いも新たに叫ぶ男。
この有様なのに酒を飲んでいないのだからビックリだ。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:18:23.04 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「さーてそうと決めたら即・実行! 探索を再開するお!!」
( ^ω^) 「ミュージック、スタート!」
( ^ω^) ♪~~♪~~~(前奏)
( ^ω^) さがし人は誰ですか♪
( ^ω^) 見つけにくい人ですか♪
(^ω^ 三 ^ω^) コンビニの中も♪
(^ω^ 三 ^ω^) 路地裏の奥も♪ 三ξ゚⊿゚)ξ
( ^ω^) さがしたけれど♪
( ^ω^) 見つからな……♪
( ^ω^) 「……お?」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:20:28.27 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「今なんか見えたような……」
( ^ω^) 「えーと確か……」
( ^ω^) 『ξξ)゚゚⊿』
( ^ω^) 「こんなパーツだったお」
( ^ω^) 「よっし、レッツトライ!」
( -ω-) 『ξ⊿゚ξ)゚』ムムム……
( -ω-) 『゚ξ⊿ξ゚)』ムムム……
( -ω-) 『ξ゚ ゚⊿)ξ』ムム……チョットチカイ
( -ω-) 『ξ゚⊿゚)ξ』ムム……ム!
( ゚ω゚) テーレッテレー!!
( ^ω^) 「これだお! てゆうか捜し求めていたハニーだお!」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:22:28.19 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「しっかし何でこんな路地裏に……?」
( ^ω^) 「まあいいお。とにかく後をつけて……」
三<ヽ`∀´>ダダダダッ
( ^ω^) 「お?」
三( ∵)( ∵)( ∵) ダダダダッ
(^ω^ 三 ^ω^) 「おっ? おっ?」
( ^ω^) 「あれは……?」
( ^ω^) 「ハニーを追い掛けているのかお?」
( ^ω^) 「……」
( ^ω^) 「何だか面白そうだお!」
( ^ω^) 「さっさと後を追うお!」
⊂二二( ^ω^)二⊃ 「ブ――――――ン!!」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:24:31.87 ID:+QICp6xOO
【Side ξ゚⊿゚)ξ】
ξ;゚⊿゚)ξ 「……!」
今まで休む事無く動かし続けていた足が、止まる。
彼女の視線の先にあるのは灰色の壁。
これが彼女の行き先を阻んだ障害であり―――
<ヽ`∀´>「やれやれ……、やっと捕まえたニダ」
同時に逃げる事の出来ない檻となってしまった。
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:26:19.74 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「……あら、誰かと思ったらシナ組の若頭のニダーさんじゃない。
組内の若手№1の趣味がストーキングだったなんて驚きだわ」
<ヽ`∀´>「……ふん。この後に及んでまだそんな
軽口が叩けるなんてたいした度胸ニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「褒めてくれるの? ありがとね」
<ヽ`∀´>「……無駄口はここまでニダ」
<ヽ`∀´>「簡潔に言うニダ。お前の持っているSDカードを渡してもらうニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……そうする事で生まれる私へのメリットは何かしら?」
<ヽ`∀´>「無傷でお前を解放してやるニダ」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:28:22.70 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「そんなのはメリットだなんて言わないんじゃない?」
<ヽ`∀´>「充分に恩情的だと思うニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう? じゃあもし、渡さなかったらどうなるのかしらね?」
<ヽ`∀´>「そうニダね……」
そう言うとニダーは彼女をじっくりと品定めを
するように見た後、品の無い笑みを浮かべた。
<ヽ`∀´>「顔も良し。スタイルもスレンダーでウリ好みニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
<ヽ`∀´>「ウリが存分に可愛がってやるニダ」
<ヽ`∀´>「……ああ、でもこれだとこっちの方がいいかもしれないニダね」
ニダーはこれは傑作だと笑う。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:30:21.72 ID:+QICp6xOO
その卑しい笑いを見てから、彼女はあからさまに溜息をついてみせた。
その動作が目に入ったニダーのにやけ顔は一瞬にして不快なそれに変わる。
<ヽ`∀´>「なんだその顔はぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「何? 気に障った? まあ、でもはっきり言っておいた方がいいわね」
ξ゚⊿゚)ξ 「アンタは私に興味津々なようだけど、
私はまったく興味無いわ。タイプじゃないもの」
<ヽ`∀´>「……!」
ニダーの顔がみるみる赤くなっていく。どうやらこの男は
自信過剰な上に挑発にひっかかりやすい性格をしているようだ。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:32:38.92 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「それに可愛がる、ってアンタに
そんな事が出来るの? なんかアンタ短小っぽいし」
<;`∀´>「なっ……!」
ξ゚⊿゚)ξ 「あら、図星?」
<#`∀´>「黙れやゴラァッッ!! ぶっ殺すぞテメエッ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ 「短気な男は嫌われるわよ?」
<#`∀´>「うっせぇ黙ってろっ!! おいお前ら、このクソ女を痛めつけるニダ!」
ξ゚⊿゚)ξ 「そんな事言っていいの? 私まだSDカード持ってるんだけど」
<#`∀´>「関係あるかそんなモン! 後悔しても遅ぇぞオラァッ!!」
ξ゚⊿゚)ξ (やれやれ……、怒りで先の事を考えられないなんて。
若手№1が聞いて呆れるわね)
彼女は再び、盛大な溜息をつく事となった。
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:34:21.10 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ (……はぁ)
彼女は先程のやり取りを思い出す。
ξ゚⊿゚)ξ (この圧倒的に不利な状況で相手を怒らせたのはマズかったわよね)
ξ゚⊿゚)ξ (これじゃ捕まった時何されるかわかったもんじゃないわ)
ξ゚⊿゚)ξ (……)
ξ゚⊿゚)ξ (……だって気持ち悪かったし)
ξ゚⊿゚)ξ (ついつい本音が出ちゃった)
ξ゚⊿゚)ξ (……まあ)
ξ゚⊿゚)ξ (あの呆けた顔が見られただけでも良しとしておきましょう)
ξ゚⊿゚)ξ (さて、そんな事より今は)
ξ゚⊿゚)ξ (この現状を突破する事を考えなきゃ、ね)
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:36:37.93 ID:+QICp6xOO
<#`∀´>「やれ! お前ら!!」
( ∵)( ∵)( ∵) ザザッ
ニダーの号令によって三人の屈強な男たちが無言で前に出た。
ガタイが良いくせに何かやたら顔が小さい。まるでハッサンのようだ。
ξ゚⊿゚)ξ (本格的にやばくなってきたわね……)
彼女にもそこそこ武道の心得があるとはいえ、1対3ではどうしようも無い。
しかもこっちは女で向こうは男。倒すどころか
逃げる事が出来る可能性すら低い。
これほど『袋のネズミ』という言葉がぴったりな状況は無いだろう。
男たちはじりじりと近づいてくる。
ξ゚⊿゚)ξ (……まあじっとしている訳にもいかないし、
何らかのアクションを起こして隙を見つけるしかないか)
彼女がそう決心したと同時に、一人の男が
せきを切ったかのように襲いかかってくる―――!
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:43:05.32 ID:+QICp6xOO
―――その瞬間。
ナナメ45度から―――
物凄いスピードで―――
( ^ω^) 「ブーンダイナマイトクラァッシュ!!!」
なんか変なのが降ってきた。
【Filling up the tank『GASOLINE』】
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:44:21.38 ID:+QICp6xOO
( ∵(^ω^ ) バゴォォォォォン!!
空から飛んできたそれは先頭の男にぶつかり、共に後方へ吹っ飛ぶ。
<;`∀´>「な、な……」
ξ;゚⊿゚)ξ 「何なの……?」
その場にいた誰もが今の状況を理解できない。
しばらくの間、辺りに静寂が訪れる。
すると急に、吹っ飛んできてからずっと地面に倒れていた
未確認飛行物体が勢いよく立ち上がった。
( ^ω^) 「HEYハニー! 何だかお困りのようだねっ!!」
まるっきり周りの空気を読まずに場違いな
発言をぶちかます男。これはこれで凄い行為だ。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:46:20.12 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「あ。アンタ数日前の……」
( ^ω^) 「YEEES!! 僕の事を覚えてくれたんだね!?
これほどに嬉しい事は無いお!」
ξ゚⊿゚)ξ 「え? あ、まあ……」
あまりの男のテンションになかなかついていけない彼女。
イマイチ思考が回っていないようだ。
<ヽ`∀´>「何なんニダお前は!? そこの女の仲間か!?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ん? ああ、いや、違うけど……」
<ヽ`∀´>「仲間なんだな!? クソがっ、邪魔しやがって……!
そいつもろとも始末するニダ!!」
人の話を聞かず、ニダーはアグレッシブに勘違いを続ける。
どう見てもテンパっている事は明らかだ。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:48:21.07 ID:+QICp6xOO
再び男たちが向かってくる。先程体当たりをくらって吹き飛んだ
男も、頭を横に振りながら立ち上がる。ダメージはあまり無いみたいだ。
だが、突如やって来た男を警戒しているようで、
すぐには襲いかからず、こちらの動向をうかがっている。
ξ゚⊿゚)ξ 「だから仲間じゃないって言ってるのに……」
ξ゚⊿゚)ξ 「てゆーかアンタ!!」
( ^ω^) 「お? 何かおハニー?」
ξ゚⊿゚)ξ 「アンタ何しに来たのよ!? 何だか余計にこじれたじゃない!?」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:50:21.36 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「そりゃもちろんもう一度ハニーとお話がしたかったからだお」
ξ゚⊿゚)ξ 「はあ?」
( ^ω^) 「あの時からずっと捜してたんだお。そしてついさっき見つけたんだお」
( ^ω^) 「でも何かあの人たちに追われていたみたいだったから……」
( ^ω^) 「こうして助けに来たんだお!!」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「てゆーかアレって真面目に口説いてたんだ……」
( ^ω^) 「お?」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:52:32.77 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「まあいいわ。それで? どうするの?」
( ^ω^) 「何がだお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「何が、じゃないわよ。この状況に
割り込んで来たんだから何か策があるんでしょ?」
( ^ω^) 「策? そんなモノ無いお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「え!? じゃあどうやってここを切り抜けるのよ!?」
( ^ω^) 「もちろん男なら正々堂々と正面突破だお!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「はあ!? アンタ馬鹿じゃないの!?
1対3でどうにか出来る訳無いでしょうが!!」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:54:53.95 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「まあまあ。僕に任せるお。はい、これ」
そう言うと男はゴソゴソしだすと半球体の白い物体を取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ 「これは……、ヘルメット?」
( ^ω^) 「そうだお。はい、これをつけるお」
ξ゚⊿゚)ξ 「え、何でこんなのつけなくちゃならないのよ?」
( ^ω^) 「まあまあ、いいからいいから」
ξ゚⊿゚)ξ 「あ! ちょっと!!」
男はささっと手際よく彼女の頭にヘルメットを装着させる。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:56:36.17 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「何勝手にやってんのよ! ちゃんと説明しなさい!!」
( ^ω^) 「何で、って危ないからに決まってるお。
理由は……、まあ実際にその目で確かめるお」
男は笑顔を彼女に向けながら、胸ポケットから何かを取り出す。
それは試験官を半分にした程度の大きさをした円柱型の容器であり、
材質はプラスチックで出来ているようだ。内部には透明の液体が入っている。
片方の端にはペットボトルのキャップを少し小さくしたようなのがついている。
男は爪で弾くようにしてそのキャップを開ける。
その瞬間、辺りにオイルのような匂いが広がった。
ξ゚⊿゚)ξ 「何、それ……?」
( ^ω^) 「これ? これはね……」
彼女のもっともな疑問に男は親指を立てて自信満々に答える。
( ^ω^)b 「僕がヒーローになるためのスペシャルドリンクだお!!」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 20:58:28.45 ID:+QICp6xOO
男は容器の中の液体を一気に飲み干した。
すると、数秒と経たないうちに変化が訪れる。
( -ω-) 「お……」
( -ω-) 「おお……お………」
( ゚ω゚) 「OOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHH!!!」
男の目から、鼻から、口から、耳から、
そして体中から白い煙が吹き出している。
そう、それは体の中で暴れ回るエネルギーが漏れ出しているかのように。
男が右腕を天に突き上げる。そして―――
( ゚ω゚) 「YYEEEEEEEEEAAAAAAHHHHHHHHHH!!!!!」
叫びと共に、爆発したかのような煙が男の体から吹き荒れた。
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:00:25.92 ID:+QICp6xOO
ξ;゚⊿゚)ξ 「な、何なのよ、一体……」
彼女には今の事態が飲み込めない。
それは呆然としているニダーたちも同じ事だ。
そして徐々に、大量の煙で隠されていた彼の体が現れてくる。
( ^ω^) 「……」
あれほど派手な事をしでかした割には彼の体に特に違いは見られない。
体からわずかに煙が上がっているものの、他はいたって普通の姿だ。
ξ;゚⊿゚)ξ 「アンタ……」
( ^ω^) 「さ、準備も済んだし僕に乗るお」
彼女の困惑した顔を気にした様子も無しに、
膝をついて背中を彼女に向ける。
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:02:25.34 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「乗る?」
( ^ω^) 「おんぶって事だお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「は!? いやよ! 何で見ず知らずのおんぶ
されなきゃいけないの! そろそろちゃんと説明してよ!」
( ^ω^) 「いーからいーから」
ξ;゚⊿゚)ξ 「あ、ちょ……、きゃっ!」
男は強引に彼女を背負う。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ちょ、ちょっと!!」
( ^ω^) 「口で説明してもどうせ信じられないお。そんな事より……」
男はグッと腰を降ろして前傾姿勢をとり、一度だけ深く呼吸をつく。
( ^ω^) 「落ちないようにしっかり捕まっているんだお」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:04:19.33 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「え……?」
それはどういう事か、彼女が尋ねようとした、その時。
前方から苛立った叫び声が鳴り響いた。
<#`∀´>「何ぼーっと突っ立ってんだお前らァ!!
さっさと捕まえるニダ!!!」
その怒声に押されたように、三人の男たちが一気に押し寄せてくる。
その様子を見て、男は待ちわびたかのように言葉を発した。
( ^ω^) 「『It's all OK.』 さあ、行くお――!」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:06:24.37 ID:+QICp6xOO
瞬間、彼女は何かに激突した。
ξ;゚⊿゚)ξ 「――っ!?」
思わず頭が後ろにのけぞる。
だが、一体何にぶつかったのか。
彼女はそれを確かめるため、反射的に閉じられた目を開く。
すると―――
ξ゚⊿゚)ξ 「え……?」
ξ;゚⊿゚)ξ 「えええええええええ!!!??」
彼女は、空中を落下していた。
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:08:20.25 ID:+QICp6xOO
ξ;゚⊿゚)ξ 「きゃあああああああ!!!」
軽く見積もっても10mはゆうにある高さに投げ出されては、
いくら気の強い彼女でも恐怖するしかなかったようだ。
この絶望的な状況では、彼女は暴れ回るしかなかった。
そうする事でどうにか出来る訳では無いが、
それでも体は今の事態を拒否しているのだ。
だが、その行為をする事によって返ってきたものがあった。
(;^ω^) 「おっおっ!? あ、あんまり暴れると危ないお! バランスが……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……あ」
ここでようやく彼女は自分が背負われている状態だというのを思い出した。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:10:20.11 ID:+QICp6xOO
(;^ω^) 「よっ……とお!!」
男は少し体が傾いた格好から、強引にビルの壁を蹴りつける。
ξ;゚⊿゚)ξ 「!!」
再び、顔に衝撃。
同時に自分がいた高さからさらに上昇している事に気付く。
ここで彼女は、自分が何にぶつかっていたのかを理解する。
それは、空気。
とてつもない加速度によって高速で動く自分と、その場に置き去りに
された空気とが鉢合わせた結果が、あの衝撃を生んでいたのだった。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:13:24.06 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「ふう……。何とか持ち直したお」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ねえ」
( ^ω^) 「お?」
ξ゚⊿゚)ξ 「貴方……、本当に人間?」
( ^ω^) 「もちろん人間だお。100%じゃないけど」
ξ゚⊿゚)ξ 「100%じゃないって……、どういう事?」
( ^ω^) 「ん~、足を見てみれば判るお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「足? 足っ……て!?」
彼女が男の足を見る。すると風でめくれたジーンズの下に確かに見えた。
―――暗闇の中でなお光る、赤銅色の金属が。
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:14:25.82 ID:+QICp6xOO
ξ;゚⊿゚)ξ 「……これって」
( ^ω^) 「まあ要するに僕は改造人間なんだお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「かい……!?」
改造人間?
まさか。この世にそんなモノが存在する訳が無い。
それでも、彼女は見てしまった。というより現に体験している。
生身の人間には決して真似できないこの離れ技を。
彼女があれこれと考えている間にも、男はビルの上を次々と飛んでいく。
速度はバイクと同程度。80km、といったところか。
ξ゚⊿゚)ξ 「……じゃあ何? アンタは改造されてるから
こんな馬鹿げた脚力をしてるの?」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:16:21.00 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「いや、普段の僕じゃここまでのパワーは出せないお。
この状態になるには燃料が必要だお」
ξ゚⊿゚)ξ 「燃料?」
( ^ω^) 「さっき僕が飲んでたやつだお」
ξ゚⊿゚)ξ 「ああ。あの煙出してた」
( ^ω^) 「そう。あれは『GASOLINE』って呼ばれてるお」
ξ゚⊿゚)ξ 「『GASOLINE』……、って何?」
( ^ω^) 「う~ん、実は僕もオイルっぽいモノ、としか理解してないお……。
僕を作り出した研究員の人たちなら詳しく知ってるだろうけど……」
ξ゚⊿゚)ξ 「だろうけど?」
( ^ω^) 「……僕はそこから逃げ出したんだお」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:18:20.77 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
( ^ω^) 「理由、聞かないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……よしておく。こんなのを人知れず作っているんだもの。
絶対カタギじゃ無いわ、その組織」
ξ゚⊿゚)ξ 「それにアンタも色々と理由があっての事でしょ?
そんな込み入ったトコまで聞けないわよ」
( ^ω^) 「おっ? そんなにたいした理由じゃないけど……」
ξ゚⊿゚)ξ 「いいのよ。……ところで、今どこに向かってるの?
中央から離れているみたいだけど……」
街の明かりは既に後方にあり、目の前は真っ暗だ。
( ^ω^) 「ふっふっふー。良いトコに連れて行ってあげるおー」
ξ゚⊿゚)ξ 「……いかがわしいところじゃ無いわよね?」
( ^ω^) 「そこんとこは大丈夫だお。ちゃんと空気は読むお」
男はとても純粋に、嬉しそうに足を進めていった。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:25:26.87 ID:+QICp6xOO
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃。
<ヽ`∀´>「……」
ボケっと立ち尽くすニダー。その視線の先は、
もう見えなくなった二人の方を向いていた。
<ヽ`∀´>「何なんニダ、あの男……」
理解できない。確かに自分はあまり頭の良い方ではないかもしれない。
だが、こればっかりは頭がどうとかいう問題では無い。
有り得ない事なのだ。
人間が何の道具も使わず、予備動作も無く、10数mもジャンプできるなどと。
しかし、それも実際に見てしまってはしょうがない。
それよりも今は逃げられたという事実をどうするか。
このまま手ぶらで帰れるはずも無い。
かと言って二人がどこへ向かったのかが判らない。
まさに八方塞がりの状況の中、唐突にニダーの携帯の着信音が鳴り響いた。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:28:20.49 ID:+QICp6xOO
( ^ω^) 「おっおー。到着したおー」
男はスピードをゆっくり落としながら地面へとついた。
ξ゚⊿゚)ξ 「ここは……、海?」
そう、海。辺りに倉庫が立ち並んでいる港に二人はいた。
( ^ω^) 「That's rightだお! やっぱりデートといったら夜の海!
街の明かりが水面に反射してそれはもう……」
ξ゚⊿゚)ξ 「ん? この辺って……」
( ^ω^) (微妙にスルーされたお……)
ξ゚⊿゚)ξ 「ちょっと待った。私の記憶によるとここは……」
彼女が自分の疑念を口にし終わるその前に。
突如、二人の体が光に包まれた。
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:30:19.50 ID:+QICp6xOO
二人を照らしたのは車のヘッドライト。
その明かりも次から次へと増えていく。
あっという間に二人は黒塗りの車に囲まれてしまった。
( ^ω^) 「何か物凄く囲まれてるお……」
ξ゚⊿゚)ξ 「やっぱり……。この辺一帯はさっきのヤクザたち、シナ組の管轄地なのよ」
「そういう事ニダ」
また新たに増えた車から一人の男が出てくる。
ξ゚⊿゚)ξ 「……あら。割とお早いお着きね、ニダーさん?」
<ヽ`∀´>「簡単に逃がす訳にはいかないニダ」
余裕の笑みを浮かべて、男―――ニダーは二人の前に現れた。
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:32:19.21 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ (ねえ、ちょっと)
彼女は男にだけ聞こえるように小さく声を出す。
( ^ω^) (おっ?)
ξ゚⊿゚)ξ (どう? この包囲から抜けられそう?)
( ^ω^) (おっおっ、任せるお。これぐらいひとっ飛びだお)
ξ゚⊿゚)ξ (よし。じゃあタイミングを見計らって逃げ出すわよ)
( ^ω^) (了解だお)
二人はお互いに確認しあうと、再びニダーの方を見る。
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:35:08.92 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「……さて、話し合いは終わったニカ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ええ、おかげさまで」
<ヽ`∀´>「じゃあもう一回聞くニダ。SDカードを返す気は無いニカ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「さっき関係ないって言ってなかった?」
<ヽ`∀´>「ああ……、それを言われると耳が痛いニダ。
まあ言葉のアヤだと思ってくれニダ。
それが我々にとって重要なモノだという事は変わり無いニダ」
ニダーは薄く微笑む。その余裕から何か自信を持っているようだが、
その自信がどこから来るのかが彼女には判らなかった。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:36:24.72 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「……ま、聞かなくても大体予想はついてるでしょ」
<ヽ`∀´>「返す気は無い、と?」
ξ゚⊿゚)ξ 「その通り。……て言いたいんだけどね」
<ヽ`∀´>「?」
ξ゚⊿゚)ξ 「流石にここまで囲まれるとどうしようもないわ」
そう言って彼女はポケットに手をやり―――
ξ゚⊿゚)ξ 「だから、返すわね」
掴んだそれをニダーの方にほうり投げた。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:38:18.26 ID:+QICp6xOO
<;`∀´>「!」
ニダーを始め、その場にいた者は皆、宙に投げられた物体を注視する。
ただ、二人の人物を除いて。
ξ゚⊿゚)ξ 「いくわよ!」
( ^ω^) 「ラジャー!!」
彼女は素早く男の背中に乗り、男は跳躍の動作に移る。
ニダーたちが二人の動きに気付いた時には、
もう全ての準備が終わっていた。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:40:23.43 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「……! 撃てっ!!」
ニダーからそのような言葉が発せられる。
ξ゚⊿゚)ξ 「!?」
ξ゚⊿゚)ξ (『撃て』? もしかして拳銃?)
ξ゚⊿゚)ξ (……でも大丈夫。こっちはもう動き出す寸前。
そんなモノ、当たらない――!)
そして勢いよく飛び出す二人。それに少し遅れて発砲音。
よし避けた。問題無い。彼女は確信した。
そう、確信したのに―――
どうして目の前に影が現れるのか―――
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:42:17.27 ID:+QICp6xOO
(;^ω^) 「……!」
地面に落下する二人。
男は彼女が怪我しないよう、体を反転させ
抱え込むようにして背中から落ちた。
( ^ω^) 「っと……、大丈夫かお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ええ私は。貴方こそ、背中から落ちてたけど……」
( ^ω^) 「おっおっ。頑丈なのが取り柄なんだお。でも……」
二人は体にまとわりついている物体に目を落とす。
網。
漁船に置いてありそうな巨大な網が二人を閉じ込めていた。
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:44:17.56 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「どうニカ? 我々の秘密兵器は」
ニダーは足元に落ちてある―――彼女が投げた
携帯を蹴り飛ばしながら近づいてきた。
ξ゚⊿゚)ξ 「悪趣味」
<ヽ`∀´>「喜んでもらえてるみたいニダね」
ξ゚⊿゚)ξ 「何でこんなもん持ってんのよ?」
<ヽ`∀´>「うちの頭がハンティングが大好きだから大型獣を
捕まえるのに使う、という理由じゃ駄目ニダ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「却下ね」
<ヽ`∀´>「それは残念ニダ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:46:19.80 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「さあ、出してもらおうか」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
<ヽ`∀´>「まだ抵抗するニカ? まあいいニダ。
散々ウリを馬鹿にしてくれたんだから、少しぐらい遊ぶニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「?」
ニダーは後ろにいる男たちに合図を送る。
すると遠くから鈍い、機械音のような音が聞こえる。
暗闇の中から徐々に姿を表してきたそれは―――
ξ゚⊿゚)ξ 「……ホント、悪趣味」
一つの巨大なクレーン車だった。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:48:19.21 ID:+QICp6xOO
月にも届きそうなほど高くそびえたつ一本の鉄塔。
その頂上からはワイヤーが伸びており、そこには大型トラックの
後ろについていそうなコンテナがぶら下がっていた。
それはゆっくりと二人の手前まで移動してきた。
ξ゚⊿゚)ξ 「理解に苦しむわね……」
網で身動きの取れない二人の上にコンテナが設置される。
もし、今この瞬間にワイヤーが切れたら
二人とも即座にペチャンコになるだろう。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:50:25.44 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「これが最後ニダ。SDカードを返すニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「アンタさっきから言ってる事メチャクチャよ。
こんな事したらSDが壊れるでしょうが」
<ヽ`∀´>「だけどお前は確実に死ぬニダ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
<ヽ`∀´>「お前は助かる。ウリたちもSDが
手に入って助かる。どこに問題があるニカ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……少し考えさせて」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:52:17.82 ID:+QICp6xOO
彼女はそう切り出し、思案しだす。
ニダーは何も言わない。だが、何もしない。承諾したようだ。
ξ゚⊿゚)ξ (さあ、どうしよう?)
ξ゚⊿゚)ξ (仮に私がSDを渡したところで無事に帰れる可能性は低いわね)
( ^ω^) 「おーい」
ξ゚⊿゚)ξ (かといってこのままじゃ真っ平らになっちゃうし……)
( ^ω^) 「もしもーし」
ξ゚⊿゚)ξ (うーん……)
( ^ω^) 「……無視?」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:54:17.35 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「ん、何か言った?」
( ^ω^) 「そりゃあもう」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう? で、どうかした?」
( ^ω^) 「いやあ、そろそろ逃げ出してもいいかな、と」
ξ゚⊿゚)ξ 「ああ、うん、そうね……」
ξ;゚⊿゚)ξ 「って、逃げ出せるの!?」
( ^ω^) 「そりゃあもう」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 21:57:47.96 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「逃げ出す? お前この状況が判らないニカ?」
ニダーは蔑むように男を見る。
( ^ω^) 「……」
男はニダーの言葉に答えず、胸ポケットから
また例の液体―――『GASOLINE』を取り出す。
<ヽ`∀´>「ふん。確かにお前は普通の人間じゃないんだろうが……」
<ヽ`∀´>「今更何が出来るニカ?」
( ^ω^) 「出来るお」
男はニダーに向けて笑い、
( ^ω^) 「余裕そうにベラベラ喋るアンタに
恐怖の叫びを上げさせる事ぐらい――!」
手に持った『GASOLINE』を飲み下した。
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:00:18.83 ID:+QICp6xOO
男の体から白い煙が立ち上がる。
そして男は網に手を掛け、左右に引っ張りだした。
<ヽ`∀´>「ハ……ハハハハハハハッ!! 何ニダそれは!
まさか引きちぎろうとしているニカ!?」
ニダーは高笑いをする。
<ヽ`∀´>「お前がまさかそこまで馬鹿だとは思わなかったニダ!
それはお前たちの上のコンテナを吊しているワイヤーで作られているニダよ!
例えゴリラが引っ張ってもビクともしないニダ!」
それでも男は引っ張り続ける。
網はギチギチと音を立てる。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:02:20.73 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「第一お前が凄いのはその何かよく判らない機械の足のおかげだろうニダ!
腕の方は何の変哲も無いんだから意味が無いニダ!
どうせやるなら足でやるんじゃないニカ!?」
ニダーは罵倒するような、嘲るような声を発する。
( ^ω^) 「……それは違うお」
( ^ω^) 「僕はピョンピョン飛び回る事しか出来ない訳じゃ無いし」
( ^ω^) 「そして何より」
( ^ω^) 「ヒーローはどんなに追い詰められても屈さず、
そして必ず悪を倒すんだお!!」
男が力強くそう言い切ると同時に、場に破裂音のような音が響き渡った。
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:04:20.28 ID:+QICp6xOO
ニダーは自分の耳を疑った。
どうして聞こえるはずの無い音が聞こえたのか。
ニダーは自分の目も疑った。
どうしてさっきまで這いつくばっていたヤツが立ち上がっているのか。
そしてニダーは自分の中の常識すら疑った。
どうして人間には逃れる術が無いこの網を
引き裂けるヤツが存在しているのか―――!
( ^ω^) 「さあ、どうするお?」
<;`∀´>「ぎっ……、落、とせぇ……!
コンテナを、落とせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「はっ……、しかし……」
ニダーの指示に組員は戸惑うが、
<#`∀´>「いいから落とせって言ってるニダァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
「!!」
ニダーの悲鳴にも似た怒号に反応して、
コンテナが轟音と共に地面に落下した。
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:06:16.82 ID:+QICp6xOO
<ヽ`∀´>「はっ、はっ、はっ……は、はは、ハハハハハハハハハ!!!
潰れた、潰れたぞ! なんだ、散々余裕面見せやがったくせに、
呆気ない、呆気ないニダァァァアハハハハハハハ!!!」
「……!!」
「ニダーさん! 生きてます! 後ろの包囲を突破されました!!」
<ヽ`∀´>「ニダァッ!?」
ξ゚⊿゚)ξ 「はーっ……。間一髪だったわねぇ」
男は彼女を、所謂お姫様だっこしてニダーたちから離れていた。
だが男は急に減速し、そして止まった。
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:08:21.62 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「え、あれ? 何で止まるの? 早く逃げないと追い付かれるわよ?」
男は彼女を降ろして、笑いかけながら言った。
( ^ω^) 「どうせこのまま逃げてもまた追い掛けてくるお。だから」
男は彼女に背を向き、ニダーたちの方を見た。
( ^ω^) 「ちょっと懲らしめてくるお」
ξ゚⊿゚)ξ 「え……?」
( ^ω^) 「だからここで待ってるお」
そう言い残し、男は一直線に駆け出した。
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:10:28.05 ID:+QICp6xOO
<#`∀´>「くそっ、くそっ!! 何してるニダお前ら!!
さっさと後を追うニダ!!」
「に、ニダーさん! 先程の男がこっちへ向かって来ています!」
<;`∀´>「なっ……!」
慌てて二人が逃げた方を見ると、確かに男が
信じられないスピードで向かって来ている。
<;`∀´>「ひっ……! お、お前ら! 撃つニダ!
殺しても構わないから、ウリに近づけさせるな!!」
ニダーは青ざめた表情で部下に撃つように指示する。
もっとも今度はさっきの網では無く、実弾の拳銃だ。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:13:25.87 ID:+QICp6xOO
ニダーの部下たちはそれぞれの拳銃で向かって来る男に発砲する。
しかし当たらない。かすりもしない。
当たり前だ。100mを2~3秒で走る男を捉らえきれる訳が無い。
男は彼女を乗せていないため、充分に速度を上げる事が出来たのだ。
男はどんどんニダーに近づいてくる。
<;`∀´>「ひぃぃっ!!」
ニダーは目の前の男に完全に恐怖していた。
ニダーは知らなかったのだ。
自分が仕掛けた完璧な策を安々と抜けられる人間を。
ニダーは知らなかったのだ。
自分の二本の足のみで車よりも、電車よりも速く走る人間を。
もう既に男はニダーと目と鼻の先まで来ていた。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:16:20.29 ID:+QICp6xOO
<;`∀´>「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
駄目だ、ぶつかる。
ニダーはそう思って本能的に身をかがめた。
……だが、一向に衝撃が訪れない。
「あれ?」と思い体を起こす。
目の前には、先程まで目前に迫ってきていた男はいない。
どうしたんだとニダーが今だに呆けていたその時。
金属と金属が激突したような甲高い音が響く。
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:18:18.88 ID:+QICp6xOO
狙いはただ一つ。
( ^ω^) 「――――――」
それに向かってただ愚直に進む。
( ^ω^) 「――――――」
弾丸をくぐり抜け、
障害を飛び越し、遥か上空へ。
( ^ω^) 「――――――」
そう、狙いはただ一つ。
( ^ω^) 「―――rrrrrr」
このクレーン車のアームを蹴り抜ける―――!
( ^ω^) 「RRRRRRRRRRRRRAH!!!!!」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:20:19.09 ID:+QICp6xOO
ニダーはその音が鳴った方向を見る。
そこには空を飛ぶ男と、斜めに傾くクレーン車のアーム。
<ヽ`∀´>「え……?」
アームはゆっくりと縦に円運動を行い、
ちょうど半回転したところで一旦停止する。
そしてニダーの方に落下してきた。
<;`∀´>「え、うわ、ちょ、に、ニダァァァァァァァァ!!!!!」
辺りに再び甲高い、しかし先程よりもより大きな音がこだました。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:22:17.66 ID:+QICp6xOO
彼女は遠くからその一部始終を見ていた。
ξ゚⊿゚)ξ 「うっわー……。ド派手な事するわねぇ……。普通に
事故じゃないの。アレね。発想の源が狂ってるわ」
( ^ω^) 「おっおっ。あれぐらいで事故って言うなら
僕はいつだって事故ってる事になるお」
ξ゚⊿゚)ξ 「うわっ。いつの間に」
( ^ω^) 「さあ、戻るお」
彼女は男の背中に乗り、二人は夜の街に戻る事にした。
( ^ω^) 「それにしても何であの人たちに追われていたんだお?
SDカードがどうとか言ってたけど……」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:24:26.52 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「ああ、それはね」
そう言うと彼女は懐から黒い、手のひらサイズの
ケースを取り出し、男に見せた。
ξ゚⊿゚)ξ 「この中にSDカードが入っているんだけど、これには
ある企業のトップシークレットが書かれた書類をデジカメで
撮ったものがデータとして入っているわ」
( ^ω^) 「トップシークレット……」
ξ゚⊿゚)ξ 「もちろん法に触れるような内容よ」
( ^ω^) 「そんなものどこで手に入れたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「手に入れたっていうか盗んだの」
(;^ω^) 「ぬすっ……!?」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう。私は泥棒さんなの」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:26:18.75 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「あ、でも悪い事してるとこだけ
狙ってるんだから勘違いしないでよね」
( ^ω^) 「……」
ξ;゚⊿゚)ξ 「な、何よ……。何か文句あんの!?」
( ^ω^) 「いや、無いお」
( ^ω^) (女泥棒……。まるで不○子ちゃんみたいだお)
(*^ω^) (ますます僕好みだお!)
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:28:25.65 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「それで、逃げ出す時にミスっちゃってあいつらに
追われていたのよ。あいつらシナ組はそこの会社と繋がっていたの」
( ^ω^) 「なーるほど」
彼女は一旦言葉を区切り、男に笑顔を向けた。
ξ゚ー゚)ξ 「という訳でありがとう。
貴方がいなかったらどうなっていたか判らないわ」
( ^ω^) 「おっおっ。お安い御用だお」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「ねえ貴方。私と組む気は無い?」
( ^ω^) 「お?」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:30:24.28 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「貴方の馬鹿げた能力があれば、警備が固くて私だけじゃ
進入できなかった場所にも行けるようになるわ」
ξ゚⊿゚)ξ 「当然報酬も山分けするわ。どう? 悪い話じゃ無いと思うけど……」
( ^ω^) 「なるほどおー。面白そうだし全然OK.だお」
ξ゚⊿゚)ξ 「え、いいの?」
( ^ω^) 「むしろこっちから願い出ようと思っていたお」
ξ゚⊿゚)ξ 「あら、そうなの?」
( ^ω^) 「そうだお。なぜなら……」
( ^ω^)b 「君の笑顔をいつも近くで見ていたいからだお!」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ξ゚⊿゚)ξ (そういや忘れてたけどコイツ私にナンパしてきたんだっけ……)
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 22:32:22.40 ID:+QICp6xOO
ξ゚⊿゚)ξ 「まあともかく決定ね。私たちはこれからチームよ」
( ^ω^) 「おっ、よろしくお」
ξ゚⊿゚)ξ 「そういえばまだお互いの名前を
言ってなかったね。私の名前はツンよ」
( ^ω^) 「ブーンだお!」
ξ゚ー゚)ξ 「これからもよろしくねブーン。頼りにしてるわ」
( ^ω^) 「任せるお!」
( ^ω^) 「それじゃ帰るお!」
( ^ω^) 「BooooooooooooN!!!」
街を見下ろし、闇を駆け抜ける二人。
今ここに最強のチームが誕生した。
( ^ω^) 「Oh,Yeah!」
( ^ω^)GASOLINE! のようです おわり
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