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(,,゚Д゚)ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです川 ゚ -゚) 最終話

7: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:54:26 ID:4Y/i92JE0



とある幼い兄弟がいた。


その兄弟は、暖かい布団がある家も、笑い合える友人も、通うべき学校も、ある日を境に全て失ってしまった。


そして父と母も、彼ら兄弟の側から引き離されてしまった。


天涯孤独の身となった。
お互いに。
兄を、または弟を除いては。


ならば、手を取り合おう。
誰も助けてくれないのなら、せめて血を分けた兄弟同士で協力して生きていこう。



一般的な感性で“悲劇の兄弟”を語るのであれば、あるいはそんな風に収まるのかもしれない。
8: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:55:00 ID:4Y/i92JE0
だが、二人は違った。
美しい兄弟愛を世間に広めるような物語に、彼等は収束しなかった。


何時からか兄は弟を否定し、弟は兄を拒絶した。


背を向け、別々の方向へと進む二人。
しかし今、そんな二人の道は重なり、兄弟は向かい合うこととなった。


手を取り合うために、ではない。
目の前の障害を排除し先へ進むため、だ。






二人の眼はお互いの眼を見ていない。


.

9: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:55:34 ID:4Y/i92JE0
.









(,,゚Д゚)ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです川 ゚ -゚)










.

10: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:56:07 ID:4Y/i92JE0



(#゚Д゚)「だらあぁああぁぁあああっ!!!」

ミ#゚Д゚彡「かあああああっ!!!」


ギコの右ストレートが、フサギコの顔に向けて撃ち出される。
フサギコの左フックが、ギコの右頬に狙いをつけて繰り出される。



激突。
互いの拳が全く同じタイミングで両方の顔面を捉える。


(,, Д )「ガっ……」

ミ,, Д 彡「ッッ……」


よろけ、体が流れる。
しかし。


(#゚Д゚)「っ、オラァッ!!」

ミ#゚Д゚彡「フッ!!」


即座に回復。
両者、間断なく二の拳を前に出す。

11: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:57:11 ID:4Y/i92JE0
(#゚Д゚)「だぁあああああっっ!!」


連打。


ミ#゚Д゚彡「おおおおおっっ!!」


連打、また、連打。

拳は勿論、掌底、手刀、貫手、一本拳など、多種多様なスタイルで攻め立てる。
また、手だけではなく、肘、膝、脛、足甲、足底、踵、爪先、あるいは体ごと。頭部すらも用いて攻め抜く。


両者一歩も退かぬ怒濤の猛攻。
そして何より、この闘争で際立っているのが。


川メ゚ -゚) (ノーガード……っ!)


二人とも、まったくもって防御をしていない。
避けない。流さない。それでいて退かないのだ。
ただ一心に、相手より一発でも多く打撃を。
その信念のみが、二人の間を支配していた。

12: 名無しさん :2017/05/04(木) 19:58:36 ID:4Y/i92JE0
川メ゚ -゚) (この二人、腰を据えてじっくりやり合おうと考えていない。
     どちらが先に相手の体力を削りきるか。まるでブレーキの無いレース、究極的な短期決戦……!)


余りにも横暴な決着方法。
ただ、彼ら二人の勝負としては、これが実のところ最も合理的であるのだ。



ギコとフサギコ。
彼ら二人が全力を出すと、それは既に“度が過ぎている”のだ。

大岩を拳で砕く筋力。
コンマ数秒で互いの距離を零にする瞬発力。

そして、軽トラックに轢かれたとしても直ぐに起き上がれるほどの回復力。

そんな凶悪な回復力を持つ二人の間に、持久戦などという概念は元より無い。
コツコツとダメージを積み重ねようとしても、賽の河原の鬼よりも素早く台無しにしてしまう。

だから攻める。
相手の回復力を上回る大打撃。
それこそが唯一の、勝利をもぎ取る手段と成り得るのだ。

13: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:00:09 ID:4Y/i92JE0
川メ゚ -゚) (フサギコ……。私と闘っていた時とは段違いの動きだ。やはり私は、まるで相手にされていなかった)


改めてクーは、フサギコとの力量に天と地の差があったことを思い知る。
もしもフサギコが今の力でクーと相対していれば、クーは一分と持たなかっただろう。
フサギコはクーに殺意を向けていたが、実際のところ、クーの生死にはさほどこだわっていなかったと思われる。


川メ゚ -゚) (しかし、そんなフサギコ相手に、ギコは引けを取っていない)


フサギコの恐るべきパワー、驚異的なスピードに、ギコは付いていけている。

これが、ギコの全力。
『銀弾』の本来の実力。


実は、ギコが本気で闘うのを、クーは今初めて目の当たりにしている。
『しぃ』の一件以降、ギコは力を解放することを嫌った為だ。

だが、今は気持ちの整理もついたのだろう。
ギコは全ての力を使ってでも、フサギコに勝とうとしている。



相棒の、自分よりも遥か上を行く力を見せられて、クーは。


川メ゚ -゚)


彼から渡された鎖を、静かに握りしめることしかできなかった。

14: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:01:53 ID:4Y/i92JE0
.


鳴り止まない、肉を打つ音。
もしや終わりが無いのでは、と思われたその激闘にも、変化が産まれ始めた。


ミ,,゚Д゚彡「っ!」


ギコの蹴りを体で受け止めるフサギコ。直撃はしているものの、身体の軸はぶれていない。
そこから一気に距離を詰めると、丸太のような腕を振り上げ、お返しとばかりにギコの腹に拳を突き入れた。


(;゚Д゚)「ぐぅっ……!」


フサギコの渾身の一撃を受け、ギコは苦悶に満ちた顔を浮かべる。
それでも、何とか一発返そうと拳を前に出すが、


ミ,,゚Д゚彡「温い!」

(;゚Д゚)「っ!?」


フサギコはその拳を容易く払い除けた。
ギコの手に力が入っていなかったのだ。

15: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:03:56 ID:4Y/i92JE0
機を逃さずフサギコは、無防備なギコの顔面を殴り付けた。


(,, Д )「がっ……!!」


千切れ飛んだかと錯覚するほど顔を後ろに倒したギコは、それでも瞬時に体勢を建て直して反撃に出る。



また、元の殴り合いに戻る。
しかし今の一連の流れは、情勢をガラリと変えた。


川;゚ -゚) (不味い、明らかにギコの動きが鈍り始めている)


クーから見ても判るほどに、ギコの身体のキレが無くなっている。
間違いない。ダメージを回復しきれていないのだ。

次第に、フサギコの有効打がギコのそれを上回り始める。
フサギコの一打に対し、ギコが返せなくなってきている。



一度蓄積を始めた痛みが、加速度的に増幅していく。

16: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:05:29 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚) (駄目だ、このままでは押し切られる。加勢に───)


目の前でパートナーの危機が迫っている。
自身も浅い怪我では無いが、そうも言っていられない、と。



一歩踏み出そうとして、しかし止まる。


川メ゚ -゚) 「───」


何が、出来る?

クーの頭の中に浮かんだ疑問は、彼女の全身を急激に冷やしていった。


川メ゚ -゚) (私程度の力で、どうやってギコを助けられる?)


考える。方法を。
だがいくら考えても、いや、考えれば考えるほど、彼ら二人と自分との力量差を思い知っていく。


川メ゚ -゚) (でも、だからといって……、私は、このまま見ているだけか?)


もちろん、そんなこと出来るはずがない。それでも動けないのだ。
思いだけが先行しても無駄死にをするだけで、ギコを助けられないことが容易に予測できてしまうからだ。

17: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:07:02 ID:4Y/i92JE0
川メ゚ -゚) (……弱いのだな。私は)


望んでも、叶わない。
それどころか、その挑戦権すら持たない。
何故ならば、弱いから。

自分を強いと思ったことは無い。
が、それでもこの世を渡り歩いていけると、心の何処かで、そう思っていたのに。





恨めしい、と。
自分の弱さが、これほどまでに悔しいと感じたことは、無かった。





川メ゚ -゚) (……強く、在りたい。せめて、護りたい人を、護れる位に)


それは祈りに近く、しかし願いを聞き届ける神はいない。
ただ囁くように、彼女の手の中の鎖が軋るだけであった。

18: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:08:45 ID:4Y/i92JE0
(,, Д )「ごはっ……ッ!」


フサギコの黄金の拳が、ギコの顔を芯で捉える。
衝撃に体が流されかけるが、歯をぐっと食いしばり、


(#゚Д゚)「おおらぁっ!!」


即座に右手を突き返す。
骨と骨がぶつかり合う鈍い音。その拳は、確かにフサギコの下顎にヒットした。

が。
フサギコはまるで動じた素振りも見せずに、二撃、ボクシングのワンツーのように拳を叩き込む。


(;゚Д゚)「うぐっ……!」


閃光のような高速の連撃は、ギコの左肩と右脇腹あたりにそれぞれ命中。
ギコの体は押し出され、2メートルほど後退する。


(;゚Д゚)「フーッ、フーッ……」


ギコは少し空いた間合いを埋めず、その場で深い呼吸を繰り返す。
戦いの始まりから絶え間なく続いていた乱打戦が、ここで途切れた。

19: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:10:17 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「……どうした? まさか、もう音を上げたんじゃないだろうな?」


引いたギコに対し、それを追わなかったフサギコは、代わりに挑発を行った。
見え見えの台詞ではあるのだが、ギコにとっては効果アリのようだ。


(#゚Д゚)「あ? 冗談だろ? まだまだテメエを───」


腰を落とす。
重心を前に傾け、固く拳を握り締め。


(#゚Д゚)「殴り足りてねぇんだよっ!!!」


叫び、猪のように一直線に飛び込んでいった。


(#゚Д゚)「おおおおおっッ!!」


駆け抜けた勢いそのままに、ギコは右拳を撃ち出す。


ミ,,゚Д゚彡「ふっ!」


フサギコもそれに合わせて、右を放った。

20: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:12:20 ID:4Y/i92JE0
衝突する両者の拳。
奇しくもこの戦いの始まりと同じシチュエーションが再現された形となった。

ただし、その時とは結果が異なる。


(;゚Д゚)「くっ……!」


ギコの拳から鮮血が迸った。
打ち負けたのだ。
今、この瞬間に両者の“差”が浮き彫りとなる。


(#゚Д゚)「このっ……!」


その事実を否定するかのごとく、ギコは追撃を掛ける。
しかし。


ミ,,゚Д゚彡「大振りすぎる。雑だ」


無駄の一切無い身体運びでフサギコは間合いを詰め、打突一閃。
前のめりになっていたギコの顔にカウンターで入った。

21: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:13:55 ID:4Y/i92JE0
(;゚Д゚)「ちぃっ!」


たたらを踏んだギコだったが、まだまだとばかりに攻勢に出る。
その眼は変わらず闘志に燃えている。
しかし同時に、焦りの色もわずかに浮かびつつあった。


ミ,,゚Д゚彡「ギコ。分かるか? これが俺とお前との差だ」


継続する激しい打ち合いの中、フサギコが話し始める。


ミ,,゚Д゚彡「お前がのうのうと過ごしている間、俺は常にこの力を扱ってきた。一日も、一秒も途切れることなく」


言葉を続ける。
先程までは何かを語る暇など無かった筈である。
余裕を見せるフサギコ。必死に攻め続けるギコ。
戦況は、フサギコに傾き出している。


ミ,,゚Д゚彡「力の源は同じなのだろうが、質は違う。俺が研がれた刃だとするなら、お前はナマクラだ」

(#゚Д゚)「ベラベラとっ……、うるせえなぁっ……!」

23: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:15:38 ID:4Y/i92JE0
とうとう耐えきれなくなったギコが悪態を吐く。
しかしそちらに気をとられたのか、腹部にフサギコの重い一撃を喰らってしまう。


(;゚Д゚)「があっ!」


思わずその場に膝をつく。
それでも倒れていられないと、すぐにギコは起き上がろうとするが、


(;゚Д゚)「!?」


脚に力が入らない。
まるで下半身の神経が麻痺したかのように、言うことを聞かなくなっている。


(;゚Д゚) (いつの間に、こんなダメージが───)


今になって、ギコは自らの状態を理解した。
回復のスピードが明らかに遅くなっていたのだ。


ミ,,゚Д゚彡「とんだ体たらくだな。スタミナも底をつき始めたか」


そんなギコを、フサギコは見下ろしている。
追撃を行うわけでもなく、ただその場に立ったまま、冷血な金色の眼を向けて。

24: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:17:11 ID:4Y/i92JE0
(;゚Д゚)「……」


危機的状況の中ではあるが、何故かフサギコは攻めてこない。
余裕からか、別の思惑があるのかはよく判らない。
いずれにしても、フサギコに動きがあればすぐに飛び退く心構えをギコはしておく。
その時、脚がちゃんと働けるのかという不安はあるのだが。


ミ,,゚Д゚彡「鍛えれば育つ。逆に怠れば鈍る。当然の話だ。他人よりも優れた力を有していながら、お前は何故力を使ってこなかった?」

(,,゚Д゚)「───知らねぇよ。俺を、テメエみたいな脳筋野郎と一緒にするな」


ギコは言葉を返しておく。
いちいち癇に障る物言いだが、回復までの時間稼ぎだと捉え、甘んじて受け入れる。


ミ,,゚Д゚彡「───あの女が原因か? お前が殺した、あの『しぃ』という」



(,,゚Д゚)



冷静に次の手を考えようとしていたギコであったが、その考えは雲消霧散と消え失せた。
彼女の、『しぃ』の名前を出されてしまっては、もう駄目だった。

26: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:19:14 ID:4Y/i92JE0
(,, Д )「おい……、喋りすぎだぞテメエ。もうその先は───」

ミ,,゚Д゚彡「ふん、的中か。つまらない理由だな」

(,, Д )「!」

ミ,,゚Д゚彡「あの女に浅からぬ想いがあったのかもしれないが、所詮は終わった話。
      過去に引きずられて自分の生き方を狭めるなど───下らないことだ」


フサギコがそういった瞬間。





空気が、
割れたような感覚が、
その場にいた者達に伝わっていった。



川;゚ -゚)


固唾を呑むクー。


ミ,,゚Д゚彡


表情を変えないフサギコ。

そして。

27: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:20:47 ID:4Y/i92JE0
.









(,, Д )「もう、黙れ」






立ち上がり、抑えきれぬ怒りを目の前の男にぶつけるギコの姿が、そこにあった。


.

28: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:22:39 ID:4Y/i92JE0
(,, Д )「『つまらない』だの、『下らない』だの……。テメエに、何が判る?」


激怒している。
聖域で、かつ触れられたくないモノ。
それを、土足で踏みにじられた感覚によって。


(,, Д )「テメエが……、何の関係もないテメエがっ……っ!」


激情が肉体を稼働させる。
先程までまともに動かなかった身体は、彼の意思を尊重するかのように蘇る。


(#゚Д゚)「しぃのことを……、知った風な口で言うんじゃねえっっ!!!」


瞬間、爆動。
踏み抜かれ破壊された床から推進力を得て、渾身の力で圧し固めた拳を、目の前の男に叩きつけた。


ミ,,゚Д゚彡「───っ!」


避けることもできず、顔に直撃。
衝撃でフサギコの身体が後方に飛んでいく。

29: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:24:12 ID:4Y/i92JE0
(#゚Д゚)「おおおおおおっッ!!!」


先刻までの劣勢が嘘だったかのように、怒濤の連撃を繰り出していく。
その動きは鋭く、速く、そこから生まれる攻撃は一つ一つが必殺だ。
フサギコはまるで手が出せておらず、されるがままの状態になっている。


川メ゚ -゚) (……凄い、あのフサギコを圧倒している)


怒りが、本来の実力以上のモノを引き出しているのだろう。
ギコがあそこまで激昂しているのを、クーは初めて見た。
それほどまでに、ギコにとって『彼女』の存在は大きいのだ。


川メ゚ -゚) (……)


少し、心が重くなる。

クーも、直接ギコから話を聞いたわけではないが、彼女に関する一連の出来事はある程度知っている。
色々と本人から聞きたい部分もあるにはある。だが、クーにはそこまで彼の内面に入り込むことは出来なかった。
向こうも触れてほしくないだろうし、なりよりそれによって二人の関係に亀裂が入ることをクーは恐れていた。

ますます、自分が傍観者のような立ち位置にいるような気持ちに、クーはなった。

30: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:26:54 ID:4Y/i92JE0
川メ゚ -゚) (……いや、今はそんなことは考えるな。この戦いの行く末の方が大事だ)


暗い気持ちを押し込めて、クーは戦況を見守る。
未だギコは攻め続け、フサギコは喰らい続けている。
これだけの打撃を受けて倒れないフサギコのタフネスさは恐るべきものだが、それも時間の問題のようにも思える。


川メ゚ -゚) (しかし……、やはり妙だな。いくら何でも、フサギコが無抵抗すぎないか?)


フサギコは強い。
これまでにクーが出会ってきた様々な猛者たちとは一線を画した実力を、フサギコは持っている。
そんな彼であれば、たとえギコが想定以上の力を発揮したとしても、何らかの対策を講じることも出来るのでは無いだろうか?
どうにもクーの眼には、フサギコがあえて攻撃を受け続けているようにも映る。

クーの中に生まれた小さな疑念が、少しずつ膨らみ始めた、その時。


川メ゚ -゚)「!」


とうとう、フサギコの身体がぐらりと歪みだした。
ついに限界を迎えたのか。


(#゚Д゚)「だあっ!!」


これを機と見たギコは、振りかぶって溜めを作り、決着をつけるための一撃を放った。

32: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:28:49 ID:4Y/i92JE0
フサギコの身体は今にも後ろに倒れようとしている。
この状態でギコの拳が当たれば、いくらフサギコでも為す術なく地に伏せるだろう。

そんな一幕、戦いの終焉の直前に、クーは見た。



いや、正確には“見えなかった”。
彼女の眼には、フサギコの右腕が一瞬ぼやけてしまったようにしか見えなかった。



ただ、判ること。
それはギコの止めの一撃は空を切り、


(,, Д )「……っ、は───!」


ギコの顔から真っ赤な血液が弾けていたことだ。

33: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:30:26 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「ギコっ!」


思わずクーは叫ぶ。
まともに貰ってしまった。

しかと確認できた訳ではないから想像も入るが、恐らくフサギコの超高速の拳がカウンターで入ってしまった。
大振りになったところを狙われてしまったのだ。


ミ,,゚Д゚彡「……」


フサギコはフラフラになったギコの腕を掴み、身体を捻って勢いよく投げ飛ばした。


(メ Д )「ぐはっ!」


ギコは一直線に飛ばされ、壁に背中を強打。
堪らずその場に崩れ落ちる。

34: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:32:05 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「……」


フサギコは、うずくまって立ち上がらないギコを見て、ゆっくりと近づいていく。
その歩みに淀みはなく、ダメージはそこまで無いようにも見える。


(メ゚Д゚)「ぐっ……」


フサギコが目の前まで来たときも、ギコはまだ起き上がれなかった。
顔をあげて、フサギコを睨み付けるのが精一杯だ。


ミ,,゚Д゚彡「……ふむ。攻撃は悪くなかった。だがやはりスタミナが難点だ。一撃喰らってこの有り様では、な」

川メ゚ -゚) (っ! やはりフサギコは、わざと受けていた。しかし何故? ギコの実力を測るためか……?)


フサギコが幾度も挑発を行っていたのも、底の底まで力を出し尽くさせるため、と考えれば合点がいく。
いずれにしても、ここまでの流れは全てフサギコの思惑通りということになるのだろう。


ミ,,゚Д゚彡「さて……、ギコ」


フサギコはギコの襟元を掴むと、そのまま片手でギコを持ち上げた。
ギコは抵抗も出来ずに、力無くただぶら下がっている。

35: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:33:38 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「一度しか言わんぞ」


フサギコは極めて事務的に、そして一切の反論を認めないかのように、宣告する。


ミ,,゚Д゚彡「お前は『COLOR's』に戻れ」

川メ゚ -゚)「!」


これが、フサギコがギコと戦った理由だったのかと、クーは理解する。


(メ゚Д゚)「……俺を、テメエの下に、付かせようって、か? 冗談じゃねえ……」


息も絶え絶えといった様子のギコだが、それでも声を絞り出して否定する。


(メ゚Д゚)「俺たちは『COLOR's』を完全に消すために、ここに、来たんだ……。は瀬川の奴を引っ捕らえて、ムショにぶち込む為に、な……」

ミ,,゚Д゚彡「は瀬川はもう死んだ。俺が、殺した」

(メ゚Д゚)「! んだと……?」

ミ,,゚Д゚彡「あんな小物に使われるつもりはない。単に利用価値があったから奴の茶番に付き合っていただけだ。
      だが、もう不要だ。こうしてお前をおびき寄せることが出来たからな」

36: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:35:27 ID:4Y/i92JE0
(メ゚Д゚)「……テメエ、何がしたい? 俺を引き込んで、何をしようとしてんだよ?」

ミ,,゚Д゚彡「別に、なんということもない。俺たちには人を超えた力があるんだ。
      だから人の上に立つんだ。当然の事だろう?」

(メ゚Д゚)「ふん……、あぁそうかい。自分は特別だってか?
     俺はな、そういうことを言う奴が、一番気に食わねえんだよ……!」

ミ,,゚Д゚彡「……まあ、お前が首を縦に振らないことなど、予想していた。
      それでも一応、問うぐらいはしておこうと思った」


フサギコは、ギコを持ち上げていた腕をぐっと高く掲げる。
ギコの頭が天井近くまで吊り上げられた。


ミ,,゚Д゚彡「別に俺はお前の言うことを聞く必要はない。黙らせてでも連れていくさ」


フサギコの腕に、徐々に力が込められていく。
次のフサギコの行動を察したギコが身じろいだ。
しかしその腕を振りほどけるほどの体力が残っていない。

37: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:41:16 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「人の言葉に耳を貸さず、我を通す。それが───」


一気に真下に叩きつける。
部屋全体が揺れる程の破壊エネルギー。
それがすべてギコの身体に集約される。


(メ Д )「っは───!」


ギコは後頭部から床に打ちつけられた。
かろうじて頭骨は原形を留めているが、脳へのダメージは深刻であるだろう。


ミ,,゚Д゚彡「───力を持つ、ということだ。ギコ」


フサギコはギコから手を離す。
ギコは床に大の字に倒れ、もはや1ミリも動かない。





勝負あり、だ。

38: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:42:49 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「気を失ったか。都合がいい。さて、暫くは牢の中で生活してもらうとしよう」


勝敗は決した。
とすれば、この場に留まる必要はない。
あとはギコを連れて帰り、洗脳するなり何なりして『COLOR's』の一員へと戻すだけだ。

フサギコはギコを運ぶために、再度ギコに手を伸ばした。





ミ,,゚Д゚彡「───おい、何の真似だ?」


が、その腕は食い止められる。
後方から飛んできた、銀色の鎖が巻きついた為に。


川メ゚ -゚)「……」


クーだ。
ギコから預かった鎖を操り、フサギコの腕を止めた。
彼女の眼には、何かを覚悟した意志が映っている───。



――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

39: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:45:57 ID:4Y/i92JE0



同時刻、一階にて。


(´・ω・`)「やあ、ようやく数えられるくらいにまで減ってきたかな?」


ショボン達が対峙していた『No』の大群。その数も、残り50ほどになっていた。
ここまで来れば、全滅まであと10分とかからないだろう。


(*゚∀゚)「うーつかれたー。ちょっと休む!」

(´・ω・`)「おや、つーちゃん。ご苦労さま。でもまだ残ってるんだから、もう一頑張りしてよ」

(*゚∀゚)「さっきからずっとサボっててるショボンにいわれたくないね!」

(´・ω・`)「いやあ、流石に銃が無いと無理かな」


ショボンの隣にやってきたつーは、すとんと腰を下ろした。
彼女も小さい体格に似合わない巨大なチェーンソーを振り回して戦っていたのだが、
次々と襲いくる敵達を前に、限界を迎えてしまったらしい。


(´・ω・`)「まあ、あとはハインとか鳥くんとか元『COLOR's』の少年に任せれば充分か」

(*゚∀゚)「そーそー」

40: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:47:30 ID:4Y/i92JE0
(´・ω・`)「さて、こっちはどうにかなりそうだけど……。ギコたちは大丈夫かなあ?」

(*゚∀゚)「だいじょーぶでしょ。あいつら強いしー」

(´・ω・`)「そうだねぇ……」


気の無い返事をしつつ、ショボンは空目する。


(´・ω・`) (でも、フサギコ……。『COLOR's』の最高戦力。その力は人の身でありながら軍兵器レベルとか何とか。
      状況によれば退却も視野に入れないといけないけど……。ギコの性格からして逃げないだろうしなぁ。彼、脳筋だし)


あの、考えていないようで実は考えている……風だけどやっぱり何も考えていない男の事を思うと、どうにも溜め息をつきたくなる。


(´-ω-`)「まあクーも側にいることだし、問題ないだろう。なんだかんだであのコンビは強力だし、ね」

(*゚∀゚)「あ! そうそう、そういえばさー?」


ショボンが潜入組の安否に思いを馳せていると、つーが何かを思い出したように声を上げた。

41: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:49:30 ID:4Y/i92JE0
(*゚∀゚)「ギコのね、あの鎖についてなんだけどさー?」

(´-ω-`)「んー?」

(*゚∀゚)「あれ、どうして何もいじってないっていったんだ?」

(´・ω・`)「……」


ショボンはつーの問いに、すぐには答えなかった。



この戦いに赴く前、ショボンはクーから仕事を頼まれていた。
その内容は、今まで回収してきた『COLOR's』の武器を使えるようにしてほしい、というものであった。
ここで言う“使える”とは、それぞれが持っている特殊能力を、ということだ。

ショボンはメカニックとしての技量が高いつーに協力を要請。
そして二人で試行錯誤した結果、半分成功で半分失敗に終わった。
一応は使えるようになったが、元の『COLOR's』程の力は出現しなかった。

例えばあの槍───銘は『デイトラント』とか言ったか。
あれも本来ならば、所有者も床に潜れるといったものらしいが、槍本体を潜ませるのみに留まった。
元のトンデモ具合から考えると、これでも充分驚愕に値すると思われるのだが、なにせ比較対象が“天才・荒巻博士”だ。
彼の思想の末端の切れ屑ですら、凡人には理解が遠く及ばない。

ともあれ、連日徹夜を繰り返してクーの要望には答えられた。
問題は、ついでだとギコから渡された鎖の方だった。

42: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:51:04 ID:4Y/i92JE0
気軽に「なんか適当にパワーアップよろしくwwww」みたいな感じで渡してきたギコに対し、
割と本気の怒りを抱きながら、それでも一応解析をしてみたところ───。


(´・ω・`)「アレはね、ビックリしたよ」

(*゚∀゚)「な。ほかの武器とはくらべものにならないくらい、ぐちゃぐちゃだったなー」

(´・ω・`)「うん……複雑すぎた」


その中身は、まるで現代に蘇ったバベルの塔かと空想してしまうほどの、超精密機械の結集体であった。
1つ1つがマイクロメートルにも満たない大きさの装置が、ジグソーパズルのように組み合わさって出来ている。
紛れもなく荒巻博士の作品だ。というか、彼以外が作れる代物ではない。
ギコはあの鎖を『COLOR's』から抜けるときに拝借してきたと言っていたが、あんなものを一体何処から持ち出したというのだろうか?


(*゚∀゚)「まったくもってワケわかんなかったけど、それでもちょっとはイジれたんだよね」

(´・ω・`)「そう、何かスイッチみたいなものをね、offからonに。それによって何が起こるのかは全然判らなかったけど」


そもそもあの複雑怪奇なアイテムが何をするためのものなのかすら判らないのだ。
スイッチは入れたが、それで本当に起動しているのかも確認できていない。

43: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:53:28 ID:4Y/i92JE0
(*゚∀゚)「結局なにもできなかったけど、とりあえずギコに教えてあげればよかったのに。これとんでもないやつだぞーって」

(´・ω・`)「いや、言わない」

(*゚∀゚)「なんで?」

(´・ω・`)「なんでって、ギコをがっかりさせる為」


実際、何も手を加えなかったと言って鎖を返した時のギコの哀しそうな顔を見て、ショボンは溜飲を下げていた。


(´・ω・`)「あのギコは良い顔してたなあ……ふふふ」

(*゚∀゚)「いい歳の大人がなにしてんの……」

(´・ω・`)「ま、それはちょっとした茶目っ気として。本当の理由はね」

(*゚∀゚)「理由はー?」

(´・ω・`)「あれはギコが使えるものじゃない。だから、意味無いと思って何も言わなかったんだ」

(*゚∀゚)「ギコには使えない? じゃ、誰なら使えるのさ?」

(´・ω・`)「そりゃ決まってるよ」

44: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:56:16 ID:4Y/i92JE0
.





(´・ω・`)「あれほど精巧なモノは、いくら荒巻博士でも相当に手間隙をかけたはずさ。
     だからきっと、力になりたいと心の底から思った人に、渡すつもりだったんだろうね───」






――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

45: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:59:11 ID:4Y/i92JE0



ミ,,゚Д゚彡「今すぐ、鎖を外せ」


クーはフサギコの手を止めた。
それは、もう一度フサギコと争う姿勢をとったという事。


ミ,,゚Д゚彡「それとも先程は手加減したから、次もそうするとでも考えているのか?」

川メ゚ -゚)「……流石に、そこまで楽天家ではない」

ミ,,゚Д゚彡「俺は、殺さずに済むのならそれでいいんだ。お前を殺すと余計にギコが反発するからな」


ギコは連れ戻すが、クーはその対象に無い。
フサギコの観点からすれば、クーでは力不足だという認識になる。


ミ,,゚Д゚彡「だが、俺もそこまで気が長い方ではない。もう一度言うぞ。この鎖を外せ。そうしなければ───殺す」

川メ゚ -゚)「……」


当然ながら、クーは鎖を解かなかった。
ここでフサギコを行かせたら、ギコはもう自分の前に現れなくなることが判っていたからだ。


川メ゚ -゚) (しかし、その選択の先にあるのは死───)


このまま対峙すれば、あえなく彼女の命は消えるだろう。
それを知っていながら、それでもこの局面でクーは動かずにはいられなかった。

46: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:01:00 ID:4Y/i92JE0
川メ゚ -゚) (私は、自分の事をもっと冷静な人格だと思っていたんだが、な。
     それでも、私はこの選択を信じよう)


別に自棄になったわけでもない。
ここで前に出るのは、それが最良の結果に繋がっている為だ。
みっともなく足掻いてでも、最後の最後まで生にしがみついてみせる。


ミ,,゚Д゚彡「……そうか。下がれない理由がある、というわけだな。
      それならそれでいい。俺が介錯してやろう」


フサギコの眼がクーを正面に捉える。
戦闘形態に入った。
もはやフサギコも、クーを逃がす考えは棄てる。



金の獣が、大きな口を開いて牙を見せている。

47: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:03:28 ID:4Y/i92JE0
怖さはある。
逃げることが許されるのなら逃げたい。
でもそれは許されない。何より自分が許せない。
許してしまったら、それは自分の過去を否定すること、自分の未来を諦めるということだ。

だから彼女は。


川メ゚ -゚) (だから、私は───!)


クーはフサギコの腕に結び付いた鎖を力強く握り、宣言する。







.

48: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:05:06 ID:4Y/i92JE0
.




「───ふうん? よくわからないけど。でもさー、そうすると、あの鎖がホントの能力を出すためには、どうしたらいいのかな?」





     「どうだろうね? それは僕も判らない。でもまあ、そうだね───」





     「例えば、何かを願うとても強い意志なんてものがあれば、鎖の方が応えてくれたり、とかね───」




.

49: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:07:26 ID:4Y/i92JE0





川メ゚ -゚)「戦おう! 
     私が護りたいと思うものの為に!
     私の全てを懸けて!」







彼女の声を、号令としたかのように。






瞬間、世界が白に染まっていった。




.

50: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:10:24 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「!?」


部屋全体が白い光で覆われ、フサギコの視界も塞がれた。
この強い光はいったい何処から現れたのだろうか。
しかしフサギコの眼には、光が現れる直前のシーンがはっきりと見えていた。


ミ,,゚Д゚彡 (鎖だ。確かに鎖から発光していた)


そして今フサギコの腕を縛っていた鎖は、ほどかれて無くなっている。
いつの間に解かれたのか。少なくともフサギコはそれを知覚していない。
まるで霞となって散ってしまったかのようだった。


ミ,,゚Д゚彡 (しかしこの光は、『黒』が意図的に起こしたものなのか?)


恐らくそれはない、とフサギコは考える。
もしこのようなことが出来るのであれば、ギコがピンチに陥っていたタイミングで使っていたはずだ。
つまり今の状況は、クーにとっても想定外の出来事であると思われる。


ミ,,゚Д゚彡 (あの鎖はもしや、『黒』の専用武器だったのか? だとしたら、この後の戦いは───)


光が、次第に弱まってくる。
少しずつ視界が元に戻り始めた。

51: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:12:19 ID:4Y/i92JE0
そして光は収まり、再び目の前に色が浮かび上がる。


川 ゚ -゚)「……」


光の中心にいたクーは、呆然とした様子で自分の両腕をまじまじと見ていた。
その見た目に何か変化が現れた訳では無いが───。


ミ,,゚Д゚彡 (鎖が、無くなっているな)


発光の元であった鎖が何処にも確認できない。
消滅した、というのは考えられない。
とするなら、次に予想されるのは。


ミ,,゚Д゚彡 (細かく分離し、『黒』の四肢に取り込まれた……?)


この線か。
つまりはあの鎖はクーにとっての追加パーツであり、それはすなわち機体の性能向上を意味することになる。


ミ,,゚Д゚彡 (これらはあくまで予測に過ぎないが……。可能性として考慮すべき、か)

52: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:14:29 ID:4Y/i92JE0
クーもまた、今起こったことを脳内で整理していく。


川 ゚ -゚) (……そう、か。全て理解しました、博士。
     “アップロード”が始まって、その電気信号が脳に伝達された。
     “使い方”は判った。あとは私の技量次第……!)


クーは、荒巻の顔を思い浮かべる。
一瞬泣きそうになってしまったが、今は涙を流している場合ではない。


川 ゚ -゚) (有難うございます、博士。
     この力で、私はギコを護ってみせる───!)


全身に力がみなぎっていく感覚。
荒巻が背中を見守ってくれている、そんな思い。



クーは腰をゆっくり落としていき、そして一気に前方へと跳ねた。

53: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:17:16 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「来たか」


一直線に向かってくるクーを、フサギコは慎重に待ち受ける。


ミ,,゚Д゚彡 (眼が変わったな。
      先程までは博打を仕掛けてくるような窮鼠の眼だったが……。
      今は活力に満ちた眼をしている)


修正が必要だと確信した。
今から拳を合わせる相手は未知の敵であると考えるべきだ。

クーは二メートルの位置まで接近すると、一転ブレーキをかけるかのように左でベタ足を踏んだ。
瞬間、破裂音。
床に亀裂が入り、クーの身体は猛スピードで上空へ駆け昇った。

       プレス
ミ,,゚Д゚彡 (『圧空』───!)


クーの特性の一つ。圧縮した空気を一気に放出することで高速移動を可能にする機能。
しかしこれは既に見たものだ。真新しい技ではない。
フサギコはすぐさま視線を上に向ける。

54: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:19:39 ID:4Y/i92JE0
再びフサギコの視界に収まったクーは、天井に右脚をかけ、再度『圧空』。
今度はフサギコの頭上へ高速で飛来する。
常人の動体視力では捉えきれない速さだが、フサギコの眼にはクーの次の行動が見えている。


ミ,,゚Д゚彡 (右の拳───!)


左腕を上げて頭を守る体勢をとる。
フサギコの動作からワンテンポ遅れてクーの拳が伸びてきて───。



カン、と、軽く渇いた音が鳴った。


ミ,,゚Д゚彡「!」


クーはフサギコを力強く殴るのではなく、手のひらを貼りつけるようにして、フサギコの左腕を叩いたのだ。


川 ゚ -゚)「ここっ!」


そのタイミングで右腕の『圧空』を発動。
フサギコの身体がその衝撃で右に流れる。

55: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:21:52 ID:4Y/i92JE0
と同時に、反動でクーは横に一回転。


川 ゚ -゚)「おおっ!!」


フサギコの右側頭部を、左脚で蹴り上げた。
無論、タイミングを合わせて『圧空』を出すのも忘れずに、だ。


ミ,,゚Д゚彡「っ───!」


190cmはある男の身体が吹き飛ばされる。
頭に鉄球を打ち込まれたような打撃を受けたフサギコは、それでも焦らず落ち着いて思慮を巡らせた。


ミ,,゚Д゚彡 (『圧空』の威力上昇───だけではない。
      発動後、しばらくその部位が動かせないデメリットが無くなっている。
      しかも一ヶ所の連続使用のインターバルもかなり短くなっているらしいな)


クーが機を逃すまいと、更に『圧空』をかけてフサギコを追尾する。
体勢が大きく崩れたフサギコ目掛けて、拳を打ち出す。

56: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:23:37 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡 (が、しかし───)


追いつかれ、クーの拳が伸び切る寸前に。
フサギコが放った、暴風のような裏拳がクーを捉えた。


川;゚ -゚)「くっ!」


地に足がついていない打撃とは思えない威力のそれは、クーの身体を難なく弾き飛ばした。
彼女は部屋の隅まで飛ばされ、床に激突。砂煙が身を隠すほどに舞い上がった。


ミ,,゚Д゚彡「その程度の強化なら、充分に予測できる」


フサギコは首をゴキゴキと鳴らしながら、ゆっくりとクーの元へ歩を進める。
頭には出血が見られたが、既に止まっていた。


ミ,,゚Д゚彡「まさかこれで終わりという訳でもないだろう? かかってこい」


フサギコはクーが倒れている方に向かって話しかける。
そして、彼女の身を隠していた砂煙が徐々に晴れてきた。

57: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:25:41 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「!」


そこで気づく。
クーの姿が消えている。


ミ,,゚Д゚彡 (いつの間に……?)


フサギコは部屋中をくまなく見回すも、何処にもクーがいない。
この部屋の唯一の出口は彼女が飛ばされた方とは逆側にある。そこまでフサギコに気づかれずに一瞬で移動したとは考えにくい。


ミ,,゚Д゚彡 (ガレキの中に隠れた?)


この戦いの前にフサギコが一掃した、机や椅子などが積み上がった場所に眼を向ける。
しかし、どう頑張ってもこの隙間に人一人が入り込むのは無理があるだろう。


ミ,,゚Д゚彡 (別の場所か)


ここではないと決断づけたフサギコが、ガレキに背を向ける。





その、誰も存在できないはずの場所。
そこから突如、刃が突き出される───。

58: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:28:36 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「!」


強靭な反射神経でもって、フサギコはこれに対応。迫る“槍”を右腕で振り払った。
腕から流れ落ちた血が床に斑点をつける。傷の程度は深くはないようだ。

しかし、フサギコはそんな怪我に見向きもしない。
彼の視点は前方へ固定された。
常に仮面を被ったように無表情な男の表情が、驚きの色を示す。


ミ,,゚Д゚彡「お前……、その姿!」


フサギコが見つめる先にはクーがいた。
そして、そこにいた彼女の姿は───。





川 ゚ -゚)





───その髪と瞳を、鮮やかな『青』色に染め上げていた。

59: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:30:45 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「馬鹿な……」


フサギコには目の前の光景が信じられないでいた。
彼女はかつての『青』、フィレンクトの槍を持ち、そして彼と同じくその身を青色に変えている。
その事実は、つまり───。

波のように押し寄せてくる疑念によって、フサギコの脳が支配される。
その間に、クーが再び動き始めた。

彼女は突然、背中側から地面に倒れていく。
当然本来なら彼女の身体は床にぶつかるだろう。
だがそうはならず、その身体は“まるで水中に沈んでいくように”、床の中へと消えていった。


ミ,,゚Д゚彡 (っ! 間違いない。奴は、『青』の能力を使いこなしている!)


クーとの一戦目の時にも、あの槍は使用されていた。
だがそのときは、槍自体は“潜らせる”ことはできても、フィレンクトのように身体ごとは出来なかったはずだ。
そもそも『COLOR's』の能力は、その色を与えられた者にしか扱うことができない。
『青』の能力を使えるのはフィレンクトただ一人。そのはず、だった。

だがその例外が今、フサギコの前にいる。

60: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:33:13 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡 (『青』の能力は物質に潜り込むこと。それだけでなく、気配も消せるようだ。
      どこに潜んでいるのかが、掴めない)


フサギコは感覚を研ぎ澄まし、クーがいつ出てくるのか、そのタイミングを待った。
少しでも予兆があれば、すぐに動けるように心構えをしておく。


ミ,,゚Д゚彡 (……)


物音一つしないまま、時間だけが過ぎていく。
クーはまだ動かない。焦らすことでフサギコの集中を途切れさせることが目的か。
フサギコは辛抱強く、その時を待つ。


ミ,,゚Д゚彡 (……………………………………………………
      ……………………………………………………
      ……………………………………………………っ!)


動いた。
見逃さなかった。
7時の方向。
身体を半回転。
ここまでコンマ1秒と経っていない。
ほぼ完璧な反応。
フサギコの眼に映ったのは。





カラカラと、音を立てて倒れる槍だけが───。

61: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:35:00 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡 (槍だけ? 陽動?
      だが奴自身は現れていない───)


クーの狙いが判らない。
その不可解さが、フサギコの判断を遅らせた。


ミ,,-Д゚彡 (……?)


違和感。
視界が緩やかにあやふやになってくる。
それに、妙な浮遊感も───。


ミ,,-Д゚彡「しまっ───!」


上だ。
フサギコが天井を見上げると、先程までは無かったものが刺さってある。
ナイフだ。しかも、ただのナイフではない。


ミ,,-Д゚彡 (あれは───『紫』のナイフ!)

62: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:37:14 ID:4Y/i92JE0
『COLOR's』の『紫』、ガナー。
その彼女が所持していたナイフ、『ヴァスキ』には猛毒が塗られている。
しかしそれはオマケにすぎない。本来の能力は“幻覚操作”。
要は、相手が見ている幻覚を好きなように操れるというもの。

ナイフには刃の毒とは別に、無色透明で無臭の幻覚作用ガスが仕込まれている。
クーは、槍を囮にしてフサギコの注意を逸らし、ナイフの毒ガスを室内に拡散させていたのだ。

今、フサギコが見る光景とは。



川 ゚ -゚)            (゚- ゚ 川
        ミ,,-Д゚彡
川 ゚ -゚)            (゚- ゚ 川



ミ,,-Д゚彡「『紫』の力も、使えるのか……!」


紫色の髪と瞳に姿を変えた“四人”のクーに囲まれている状況であった。

63: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:40:01 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「「「「行くぞ!」」」」


重なる同一の声。
四方から同時にクーが飛び込んできた。
もちろん実際に彼女が四人に分裂したわけではない。
本物は一人。他三人は幻覚に過ぎない。

ならば、とフサギコは眼を閉じた。
そして。


ミ,,-Д-彡「“喝”っ!!!!!」


部屋中に響き渡る大声を出す。
するとフサギコはすぐさま眼を開き、とある方向を見る。


川 ゚ -゚)「!」

ミ,,゚Д゚彡「っ、そこだ!」


フサギコが向いた方には四人の内の一人がいた。
そして、接近していた彼女を跳ね返すような蹴りを放った。

64: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:42:14 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「ちっ!」


このクーこそが本体だった。
蹴りはとっさにガードできたものの、策を講じた一手は不発に終わることとなった。


川 ゚ -゚) (今のは…………そうか! “エコロケーション”!)


エコロケーション。
反響定位とも言われるそれは、自ら発した音が物に当たって跳ね返り、また自分のところに返ってくるその振動を感じ取ることで、
周りの障害物を目で見ることなく把握できるというものだ。
コウモリや鯨、また視覚障害者などが扱えるそれを、フサギコは瞬時にやってのけたのだ。


ミ,,゚Д゚彡 (……よし。復調した)


幻覚からも早々に立ち直った。
毒に対する抵抗もついたことだろう。
もう同じ毒は彼に通用しない。

65: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:08:56 ID:4Y/i92JE0
後ろに弾かれたクーは、近くに放置された槍を手に取った。
すると彼女の髪が、『紫』から『青』へと徐々に変化していく。


ミ,,゚Д゚彡 (……自由自在、か)


髪が全て染まり、瞬く間に瞳も青くなる。
クーはその場で小さく飛び上がった。
つま先は床に着地せず、再度地面に潜っていく。


川 ゚ -゚)「はあっ!」


直後、フサギコの背後から浮かんできたクーは、槍を振り上げる。
フサギコはそれを薄皮一枚の差で躱した。

クーは攻撃の手を休めない。
槍を両手で持ち、高速の刺突を連打する。
それでもフサギコには当たらない。
足の動きだけで完璧に避け続ける。

槍を大きく横に薙ぐ。
フサギコは大きくバックステップ。これも見切っている。

66: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:12:10 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「ならばっ!」


ここでクーが突如、その場で槍を放り投げる。
槍は空中を縦方向にくるくると回転する。


川 ゚ -゚)「これはどうだ!」


クーは小さく踏み込み、それに向かって蹴りを繰り出した。
そして足裏が槍の石突に触れたそのタイミングを見計らって『圧空』発動。

唸りをあげて槍が飛翔していく。
刃先は無論、フサギコに向いていた。


ミ,,゚Д゚彡「っ!」


フサギコもこれには顔色を変えた。
素早く身を翻して回避を試みる。


ミ,,゚Д゚彡「む……」


しかし、躱しきれなかった。
右の上腕二頭筋付近を掠り、出血する。

68: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:16:36 ID:4Y/i92JE0
そのまま後方へ飛んだ槍は、刺さることなく壁に沈んでいった。
代わりにクーは懐から二つのトンファーを出し、構える。
彼女の髪が黄色に変化し始めた。

『COLOR's』の『黄』、トラギコの武器である『ミール&ニール』。能力は“高電圧放電”。
普段は強めのスタンガン程度でしかないが、能力解放の際にはトンファーの周りに常時放電が視認できるほどの高電圧状態となる。


ミ,,゚Д゚彡「まったく……この眼で見てもなお、信じられんな。
     “全ての色を使いこなせる”というのがお前の真の能力か?」


どこか感嘆したかのようなフサギコの台詞。
それにクーは、その黄色く輝く瞳で睨みながら答える。


川 ゚ -゚)「……そうだ。といっても、私も今の今まで知らなかったのだがな。
     あの鎖がコネクタとなることで、あらゆる『COLOR's』の力を過不足なく引き出すことができる……ようだ」


武器を持つと、機械の腕から鎖の一部がアクセスを行い、その電波が脳に伝わり彼女の姿を変えさせる。
それぞれ性質の異なる武器を、あの鎖は一つのバグも許さず完璧に自動調整することができる。
『COLOR's』の全武器を手掛けた荒巻博士の、集大成といえる一品だ。

69: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:19:11 ID:4BTqcVx.0
川 ゚ -゚)「全ての色を混ぜ合わせると、それは『黒』になる。
     “混沌の黒”(カオス・ブラック)───これが私の能力だ」


まさしく、完成形。
何故彼女が“フィフス”ではなく“ラスト・チルドレン”と名付けられたのか。
その答えが、今の彼女の姿なのだろう。


ミ,,゚Д゚彡 (確かに、驚くべきシステムであるが……、それを使いこなす為には、あらゆる色に順応できなくてはいけない。
      一つのみの色に変化できただけでも『COLOR's』という精鋭になれるのに、だ。
      複数の色に次々と変われる者など、存在しないと言ってもいい)


だが、いた。
今フサギコの目の前に、その非現実的とも言える人間が。


ミ,,゚Д゚彡 (クール=ブラックラック。まさに“機械の申し子”ともいえるべき存在か)


そんな彼女を見て。
ふと、フサギコは思い出す。
とある日の、会話を。




それは、肩を並べる科学者は二度と現れないだろうと言われた、ある男との、会話───。


.

70: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:21:53 ID:4BTqcVx.0
――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――



『ああ、フサギコ君。ようこそ。ちょうど今、紅茶を淹れたところでね。一杯飲んでいきなさい』


ミ,,゚Д゚彡『要らん』


『そう言わないでくれ。年寄りの勧めは受けておくものだ』


ミ,,゚Д゚彡『……噂に聞いていたのとは違うな』


『うん?』


ミ,,゚Д゚彡『俺が聞いていたのは研究結果以外に興味のない、人として欠落した、科学への執着者だというものだったが』


『……間違ってはおらんよ。今でも、そう変わりはない』


『でも、もし君が、私をそういう風に見えなかったと言うのなら……。
 それはきっと、あの子達のお陰だろう』


.

74: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:24:39 ID:4BTqcVx.0
ミ,,゚Д゚彡『あの子達とは、お前のモルモット達のことか?』


『モルモット……。確かに、始めはそれ以上の感情は無かった』


『でも、あの子達と───純粋に生を楽しむあの子達と共に過ごすことで、私の中に変化が現れた』


『私は少しずつ穏やかな生活を求めるようになり……、過去の非人道的な自らの行いを悔いるようになってきた』


ミ,,゚Д゚彡『……』


『でも、それでも私は、研究の手を止めることはしていない。
 心苦しく思いながらも、しかし真理を追い求め続けようとする私も同時に居て、結局やってることは以前と変わりがない。
 駄目だと理解したのなら、しなければいいのに。私は、弱い人間さ』


『でも、そんな私に、あの子達は笑いかけてくれる。
 私は数えきれない程の回数、あの子達に救われているんだ』


『……ははは。済まないね、年寄りの愚痴など聞かせてしまって。つまらないだろう?』


ミ,,゚Д゚彡『そうだな。俺には関係ない話だ』


『あっはっは! 違いない。でも、何故かな? 君には、色々と話したくなるんだ』


『良ければ、時間が有るときにまた、私の話を聞いてくれないか?』


ミ,,゚Д゚彡『……どの道、腕のことでここにしばらく通うことになる。それくらいは、我慢しよう』


『くっくっくっ! 君は正直者だから、話しがいがあるよ。じゃあ───』

75: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:29:04 ID:4BTqcVx.0
.










/ ,' 3『次はもっと美味しい紅茶を淹れて君を待つことにするよ、フサギコ君───』










――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

76: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:30:55 ID:4BTqcVx.0
.




ミ,,゚Д゚彡 (……お前は)



フサギコは思い出す。
自分が訪れる度に紅茶を用意し、一方的に話しかけてきた老人を。



ミ,,゚Д゚彡 (人の心を取り戻してくれた彼女が、自分の研究において、この上ないほどの素材であったことに気付いた時)



思い出す。
皺だらけの顔をもっとくしゃくしゃにして、笑う老人の顔を。



ミ,,゚Д゚彡 (荒巻、お前はそのとき、何を思ったんだ───?)




こちらに向かってくる彼女の背後に。

もう今はこの世を去ってしまった、小さな老人の姿を、フサギコは見た。



.

77: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:33:16 ID:4BTqcVx.0



クーとフサギコの攻防は続いている。
戦局は僅かだがクーが優勢。フサギコは思うように手が出せていない。
その原因は、クーが使用しているトンファーにある。


川 ゚ -゚)「はっ!」


クーが左手に持つトンファーを振り上げる。
空気を切り裂くような鋭さで襲い来るそれを、フサギコは見極め、躱す。
その流れでフサギコは反撃を試みる。


ミ,,゚Д゚彡「!」


だが、その手が止まる。
クーの右のトンファーが待ち受けている為だ。

トンファーは常に強力な電気を纏っている。
出した手がそのトンファーに触れてしまえば、全身を電流が駆け巡ることになるだろう。
そうなればさしものフサギコとて動きが数秒止まってしまう。
その隙に致命的な一打が入れば、それで決着だ。

おいそれと甘い攻撃を、フサギコは打てなくなっていた。

78: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:36:03 ID:4BTqcVx.0
川;゚ -゚) (いける……! このまま反撃の手立てを与えない!)


クーは自分の攻めに手応えを感じている。
今は上手くフサギコも躱せているが、何十何百と攻撃を重ねれば一つは当たるだろう、と。


ミ,,゚Д゚彡「……」


しかし、フサギコは見抜いていた。
クー本人も気付いていない、彼女の身体の変化を。





攻める。
攻める攻める攻める。
もうフサギコは手を出そうともしない。
ひたすらにクーがトンファーを振り回し、フサギコはそれを躱し続けた。


川;゚ -゚)「……?」


クーは疑問を持った。
いくらなんでもフサギコが消極的すぎる、と。
一発逆転の手を狙っているのか。

それとも───何かを“待って”いるのか。

79: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:38:39 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚) (“待つ”……? 待つことで、何が変わる?)


ここでクーは一旦後ろに引いた。
フサギコは追ってこない。
何かを確認するかのように、じっとクーを見ている。


川;゚ -゚) (…………!!)


そしてクーは気付いた。
自分が尋常ではないほどの汗をかいていたことを。


川;゚ -゚) (これは……? 私は、疲労しているのか? まだ動き出して10分と経っていないのに……!)


体力に特別自信があるという訳でも無いが、それでもこの消耗具合は早すぎた。
『COLOR's』の能力を使うと、これほどまで負担が大きいものだということを、クーは初めて知った。


ミ,,゚Д゚彡「……失策だったな。初めて使う力、どんな落とし穴があるかは判らない。だったら、強引にでも短期決戦を狙うべきだった」

80: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:41:16 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「っ、まだだ!」


前に飛び出す。
フサギコの言う通り、あとどれだけ能力が保てるか判らない。
残る力を振り絞ってケリを着けなければ───。


ミ,,゚Д゚彡「焦ったな。……それも、失策だ」


すべてフサギコは読んでいた。
迂闊に間合いに入ったクーに対し、狙い澄ました蹴りを彼女の腹部に叩き込む。


川;゚ -゚)「がっ!」


弾き飛ばされ、地面を滑る。
トンファーで受けることもできずに、まともにもらってしまった。


川;゚ -゚) (しまった……! このダメージは、危険……っ!)


身体に鞭を打ってなんとか起き上がる。
しかし、脚に力が入らない。
いつの間にか、髪も黒色に戻ってしまっている。

81: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:43:25 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「悪くない力だったが……、所詮は付け焼き刃だ。俺には届かない」


ここが決め時だと判断したフサギコは、素早く距離を詰めてくる。
クーはその場を動けずにいる。


ミ,,゚Д゚彡「終わりだ!」


フサギコの黄金の左腕が、クーの顔に目掛けて放たれる。
クーにはもうそれを防ぐ余力は無い。


川;゚ -゚)「───!」


死を覚悟した。
同時に、ギコを護れなかったことを申し訳なく思った。



拳が、クーの顔に到達する───

82: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:45:33 ID:4Y/i92JE0
.











───その直前に。



フサギコの拳は止められた。





(,, Д )





銀色の髪を輝かせた、血濡れの男の手によって───。



.

83: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:47:56 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「ギコ!」

ミ,,゚Д゚彡「……!」


間に割り込むようにして現れたギコに、二人はどちらも驚きの表情を見せた。
なにしろ、先程まで完全に沈黙していた男が、いきなりすぐ側に立っていたからだ。


(,, Д )「……………………ぅ」



(,, Д )「おおおおおッ!!!」


咆哮。
同時に左の拳をフサギコの鼻先に叩き込む。


ミ,,゚Д゚彡「っ!!」


堪らずフサギコは飛び退く。
ギコの打撃は充分に生きている。

84: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:50:25 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「ギコ! 動いて大丈夫なのか!?」

(,, Д )「……」

川;゚ -゚)「ギコ……?」


ギコはクーの問いかけに答えず、前方へ動き出す。


川;゚ -゚)「あ! ちょっ……!」


制止も聞かず走り出す。
向かう先は当然、フサギコの方へ。



フサギコは猛然と駆け寄ってくるギコを、じっくりと観察しながら待ち構えている。


ミ,,゚Д゚彡 (もう回復した? ……いや、虫の息であることには変わりないはずだ。
      限界など既に迎えているのに、それを厭わず無謀にも暴れているだけ───)


正面から来るのなら、正面から叩き潰せばいい。
一対一で真っ向からの殴り合いならば自分に勝てる者はいないという自負が、フサギコにはある。

85: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:52:32 ID:4Y/i92JE0
目前までギコが迫る。
極端な前傾姿勢をとっているので、フサギコの方からは表情が読み取れない。

フサギコは、低い位置にある頭に狙いをつけて右脚で蹴り上げる。
まともに当たれば頭がサッカーボールのように飛んでいきそうな威力のそれを、
ギコは瞬間的に身体全体をスライドさせることで躱してみせた。


ミ,,゚Д゚彡 (速い。動きに劣化は見られないな)


蹴りを避けて懐に入り込めたギコは、右の拳を構える。
体勢が悪く、フサギコはこれを避けられない。
ならば、と左腕を畳んで防御に徹する。


(,, Д )「おらあっ!!!」


ギコの拳がフサギコの腕に叩き込まれる。


ミ,,゚Д゚彡「!?」


フサギコの身体が宙に浮いた。
腕で防御したにも関わらず、その衝撃を逃がすことができなかった。

86: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:54:39 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡 (パワーが、上がった?)


ガードした左腕が痺れている。
その力は最初の時より、怒りが頂点に達していた時よりも、更に増加しているように感じられた。


(,, Д )「ふうっ!!」


ギコはなおも突撃する。
しかし猪突猛進という訳でもない。
左右にフェイントを織り交ぜて的を絞らせないように近付いてきている。

フサギコの牽制のジャブも掻い潜り、ギコは左のフックを繰り出す。


ミ,,゚Д゚彡 (後手に回っても押されるだけ。ならば……迎え撃つ!)


フサギコはその拳に対し、右の肘を合わせた。
固い肘にギコの拳が弾かれ、その痛みで動きが一瞬止まる。

その隙を見て、フサギコが左拳を振り抜いた。
それはギコの顔面を捉え、骨が軋むような歪な音を鳴らす。

87: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:56:22 ID:4Y/i92JE0
(,, Д )「っ……!!」


だが倒れない。
ギコの両脚はしっかりと床を踏みしめている。


(#゚Д゚)「う、おらああああっ!!!」


雄叫びを上げ、闘志の籠った一撃をフサギコに返した。


ミ,,゚Д゚彡「がはっ!」


殴り飛ばされるフサギコ。
体勢を戻して倒れはしなかったものの、その口端からは血を流している。
ダメージは確実に通っていた。


ミ,,゚Д゚彡「……ギコ。何だそれは。お前───何をした?」


フサギコは確信した。
今のギコは、もはや別人なほどに強くなっている。
一体、ギコの身体に何が起こっているのか。

88: 名無しさん :2017/05/04(木) 22:58:12 ID:4Y/i92JE0
(,,゚Д゚)「へ、へへへ……。なんだ、随分と余裕が無くなった顔をしてきたじゃねえか?」


ギコが散々やられたお返しとばかりに、フサギコを挑発する。
その声色からダメージが未だ残っていることが読み取れるが、それでも充分に回復してきている。


ミ,,゚Д゚彡「お前……」


フサギコにはそれが不可解だった。
力など、先程すべて出し尽くしていた。それを5分10分のインターバルで取り戻すことができるのだろうか。


(,,゚Д゚)「テメエがボカスカ殴って血が出ていったお陰で頭が冷えた。んで、ちょーっと力を使ってみただけさ」

ミ,,゚Д゚彡「出力は、お前が怒りを見せたときが最大だった筈では……?」


疑問は回復の速度だけではない。
パワーも上がっている。
フサギコには解せないことばかりだ。


(,,゚Д゚)「テメエみてえな脳筋には理解できねえだろうさ。お前は馬鹿みたいに力を垂れ流しまくってただけだからな」


フサギコは四六時中『金』を解放し、ギコはひたすら『銀』を使わなかった。
違いはまさにここにある、とギコは言った。

89: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:00:13 ID:4Y/i92JE0
(,,゚Д゚)「俺は、この力をずっと押さえつけてきたんだ。外に漏れないように。表に出ないように。
    そうやってコイツを常にコントロールしてきた俺にとって、
    力を身体の何処かに集中させるかなんてのは、楽勝で出来るんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「力の、集中だと?」


フサギコにとって想定外のところから答えは飛び出してきた。
集中。一点に集める。津波のような面の力ではなく、針のような点の力を。
それが、今のギコの力なのかと、フサギコは考える。


(,,゚Д゚)「馬鹿は発想力が無いから馬鹿なんだよ。だからそんな簡単なことも気付かねえ。
    力は上手く使いこなしてこそだ。例えば、下っ腹あたりで力をぐるぐる回すことですぐに動けるようになったりな」

ミ,,゚Д゚彡 (下っ腹……“丹田”か。そこで高エネルギーを循環させることで自然治癒力を飛躍的に高めることが出来た……?)


パワーが上がったように見えたのは、拳に力を集めたということなのだろう。
必要な場所に集中させることで、最大限の力を効率よく発揮することができる。
ごく単純なことではあるが、間違いなく効果的だ。


ミ,,゚Д゚彡 (しかし原理は単純だとしても、実際にそれを行えるとは。
      思い付きでできるものではない。少なくとも、今の俺には出来ない。
      奴は奴なりに、力とずっと向き合っていたということか)

90: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:03:54 ID:4Y/i92JE0
(,,゚Д゚)「さあ、そろそろテメエの顔も飽きてきたんでな。いい加減ブッ倒れてもらうぜ!」


ギコがそう言ってフサギコへ突撃を仕掛ける。
フサギコはそれに応対し、重心を低く保った。
ギコがフサギコの顔を殴り付ければ、フサギコがギコの顔を殴り返す。
争いは再び、殴り合いの消耗戦へともつれ込んでいく。

しかし、激闘を続けつつも、フサギコは思考する。


ミ,,゚Д゚彡 (先程は俺が上回ったが、今度は状況が異なっている。
      今のギコの回復スピードを凌駕する、効果的な打撃は───)


フサギコは様々なパターンを考え、一つ一つ結果をシミュレートしていく。
その中で最も有効と思われる選択肢は。


ミ,,゚Д゚彡 (───コレだ。が、しかし)


一瞬、フサギコの打撃の勢いが弱まる。


(,,゚Д゚)「! うらあああっ!!!」


それに眼をつけたギコが、渾身の力を込めた連打をフサギコに浴びせかけた。

91: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:06:02 ID:4Y/i92JE0
ミ,,゚Д゚彡「ぐ……!」


ギコの連打をまともに貰ったフサギコは、それでも右拳を前に突き出す。
しかしそれは相手を殴り付けるようなものではなかった。
拳はギコの胸に軽く触れるだけに終わる。


(,,゚Д゚)「お?」

ミ,,゚Д゚彡 (ギコ……)


フサギコは拳を押し付けたまま、


ミ,,゚Д゚彡「死ぬなよ───!」


足首から膝、腰、脊椎、肩、肘、そして手首を順に連動、その各所の“捻れ”を右拳に集約し、ギコの体内へと衝撃を通した。


(,,゚Д゚)「───」


衝撃はギコの内部を縦横無尽に暴れ回る。
その結果、


(,, Д )「がは───!!」


ギコの口からバケツをひっくり返したような量の血液が吐き出された。

92: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:08:20 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「っっ!!!」


宙に舞った大量の血液を見て、クーは青ざめた。
内臓に甚大な被害を負ったかもしれないと思ったからだ。

いや、それ以前に血を出しすぎている。
これまででもかなりの血を流してきたのだ。その上であの量となると、もはや生命維持も怪しくなる。

まさしく、フサギコの狙いはそれだった。
いくら体力を回復させようが、血はどうにもならない。
だからこそ、多少の被弾は受けてでもギコの中身を壊しにかかったのだ。





しかし、



ギコはまだ、勝利を諦めない。

94: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:10:31 ID:4Y/i92JE0
(,, Д )「ま───」


ピタリ、と。
辺りに飛び散った血が。
空中で静止した。


(,, Д゚)「───だまだぁぁぁぁぁああ!!!」


止まった鮮血は一本の筋となり、弧を描く。
ギコがそれに向かって左腕を差し出すと、血は蛇のように手首に噛みつき、
そこからギコの血管内へ侵入していった。


ミ,,゚Д゚彡「な……!?」


そして血はすべてギコに還る。
唖然とした表情のフサギコの元へ、ギコは一歩踏み出し、


(#゚Д゚)「どらああああっ!!!」

ミメ゚Д゚彡「が───!」


力を一点集中させた、フルパワーの右拳でフサギコを殴り飛ばした。

95: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:12:49 ID:4Y/i92JE0
(;゚Д゚)「くっ、う……」

川;゚ -゚)「ギコ!」


殴った後、その場で片膝をついたギコに、クーが駆け寄る。


(;゚Д゚)「き、気持ち悪りぃ……。身体の中の異物感が半端ないなコレ……」

川;゚ -゚)「ギコ、何て無茶を! 一度空気に触れた血を無理やり体内に戻すって……! お前馬鹿か!?」

(;゚Д゚)「へへ……。でもまあ、ああするしか無かったさ。してなきゃそのままダウンだ」

川;゚ -゚)「お前は本当に……」


口の端を上げて、ギコが笑う。
それがやせ我慢から来た笑顔であると判っている。
それでも、こんな状況であっても、何気ない会話がクーには少し嬉しく思えた。


(,,゚Д゚)「んー、とは言え、流石に限界が近いな……。なあ、クー」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

(,,゚Д゚)「まだ、いけるか?」

96: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:15:02 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「───!」


それは、まだ戦えるか、ということ。
共に戦おうと、ギコは言ってくれたのだ。

この戦いが始まってからずっと彼女が感じていた一種の疎外感は、その言葉で跡形もなく消えていった。
疲労からきていた身体の重みが、スッと軽くなったような気がした。



だから、彼女は答える。


川 ゚ -゚)「ああ、勿論だ」

(,,゚Д゚)「うっし、じゃあ───」


ギコが前を見る。
そこには。


ミメ゚Д゚彡「ギ───コォォォっっ!!!」


幾度もの打撃をその身に受けていても、未だ立っている男───フサギコがいる。

97: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:18:20 ID:4Y/i92JE0
(,,゚Д゚)「行くぜ、クー! 二人がかりで一気に潰す!」

川 ゚ -゚)「了解!」


二人が同時に飛ぶ。
ギコは右側から、クーは左側からフサギコへ近づく。

フサギコの目線はクーに向けられていた。先にクーを落とそうと考えているのだろう。
それを確認したギコが速度を上げクーの前に出て、先に攻撃を開始する。


(,,゚Д゚)「おらあっ!」


走ってきた勢いをそのまま乗せて拳を突き出した。
流石にこれを無視はできない。フサギコはクーから目線を外しギコを見て、側面から叩くことで拳の軌道を逸らし、攻撃を回避する。


ミメ゚Д゚彡「!」


ふと、フサギコが何かを察知し、その場から真上に飛び上がる。
一瞬遅れて地面から槍が突き上げられた。いつの間にかクーが『青』に変化して潜っていたのだ。


(,,゚Д゚)「いただきっ!」

ミメ゚Д゚彡「っ!」


しかし空中には、フサギコよりも僅かに速く飛び上がっていたギコがいた。
待ってましたとばかりのギコの蹴りが、フサギコの胸部へ強く叩き込まれる。

100: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:20:12 ID:4Y/i92JE0
ミメ゚Д゚彡「ちっ……」


床へと落とされるフサギコ。
手をついて着地をした先には、


川 ゚ -゚)「そこだ!」


『紫』のクーがナイフを持ち、フサギコ目掛けて刺突する。


ミメ゚Д゚彡「くっ……」


フサギコは間一髪のところでこれを避ける。
毒が塗られたナイフだ。かすり傷も許されない。

クーが連続でナイフを繰り出す。
フサギコはすべて躱しきっていたが、不意にクーがそのナイフを投擲した。



101: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:22:21 ID:4Y/i92JE0
ミメ゚Д゚彡「なっ!?」


予想外の行動。
それでもフサギコは即座に反応した。
首を動かしてナイフの軌道から外れる。


(,,゚Д゚)「キャーッチ!」


だがフサギコの背後にはギコが距離を詰めていた。
ギコは飛ぶナイフの柄を掴み取り、そのまま横薙ぎに振るった。


ミメ゚Д゚彡「───っ!」


それでもフサギコは超人的な反応速度を見せた。
全身の筋肉をフル稼働し、無理やり身体を前に放り出してそれを避ける。


川 ゚ -゚)「───『圧空』」


しかしこれも布石だった。
フサギコが逃げた先にはクーが待ち構えており、彼の額に右拳を叩き込んだ。

102: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:24:23 ID:4Y/i92JE0
ミメ゚Д゚彡「ぐお───!」


息もつかせぬ波状攻撃。
相手の動きを完璧に把握した連携。

ギコとクーは、『解決屋』を始めてからずっと二人で戦ってきた。
様々な困難も二人で乗り越えてきた。

モララー、そしてヒートと新たな仲間も増えた。
それでもやはり、この二人の関係は特別だった。



互いが互いを、最良の相棒だと、思っている。




川 ゚ -゚)「喰らえっ!」


『黄』に変化したクーがフサギコに向けて片方のトンファーを投げる。
触れたら感電してしまうそれを、フサギコは躱すしかない。

だが、高電磁気を帯びたトンファーは空中で軌道を変え、ブーメランのようにクーのところへ戻ろうとする。
同時にクーは残ったもう一つのトンファーを構えて飛び出し、前後で挟み撃ちの形に持ち込んだ。

103: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:26:36 ID:4Y/i92JE0
フサギコはそれを躱すために横方向へ動こうとする。
しかしそれを引き止めにかかったのがギコだ。


(#゚Д゚)「逃すか!」


行く手を阻むようにフサギコの前に出たギコ。

フサギコは瞬時に思考する。
後ろに飛ぶか。それでもトンファーは躱せるだろう。
しかしそうするとギコの追撃が来ることになる。
ならばここは───。

フサギコは敢えて前に出て、ギコの横っ面を殴り付けた。


(メ゚Д゚)「ぐお……っ!」

ミメ゚Д゚彡「っ!」


だがその拳と同時に、ギコのローキックがフサギコの左脚に命中していた。


ミメ゚Д゚彡 (しまった───! 初めから脚を止めることが目的───!)


ローキックを喰らったフサギコの脚は一瞬止まる。
そのほんの一瞬が、フサギコにとってはとても長く感じた。

105: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:28:36 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「もらった!」

ミメ Д 彡「がっ───!」


その場を動けないフサギコに、正面と背中から同時にトンファーが叩き込まれた。
非常に強い電流が全身を駆け巡り、フサギコは完全に無防備な状態となる。


(,,゚Д゚)「クー、合わせろ!」

川 ゚ -゚)「応!」


ギコとクーはフサギコの前まで肉薄する。
ギコは右の拳を、クーは左の拳を振りかぶり、




(#゚Д゚)
    「「これで終わりだっ!!!」」
川 ゚ -゚)




フサギコの顔を打ち抜いた。
その衝撃でフサギコは何度も床にぶつかりながら転げ回り、そして大の字になって倒れていった。

106: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:31:19 ID:4Y/i92JE0
.






それは、勝負を決める一打だった。






.

107: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:34:05 ID:4Y/i92JE0



川 ゚ -゚)「……」(゚Д゚,,)


パラパラと瓦礫の破片が落ちていく音だけが、部屋に響いている。
二人は注意深くフサギコの様子を伺うが、フサギコは倒れたまま動かない。


(,,゚Д゚)「……やったか?」

川 ゚ -゚)「まだ、『金』は解除されていない。油断はできないぞ」


フサギコの髪は金色のままである。
もしかしたらまだ意識を保っているかもしれない。


(,,゚Д゚)「いや、あそこまで殴ったんだし、大丈夫だろ。俺ちょっと近付いて見てきて───」

川 ゚ -゚)「っ! 待て、ギコ! フサギコが───!」


クーが声を荒げる。
ギコが注視すると、フサギコの腕が動いているのが見えた。
そしてゆっくりとした動作で立ち上がるフサギコの姿がそこにあった。

108: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:36:18 ID:4Y/i92JE0
ミメ Д 彡


立った。
立ちはしたが、しかしその場を動かない。
顔は伏せたままで、彼が今何を考えているのか、まるで読み取ることができない。


川 ゚ -゚)「……なんだ? 動かないな。もしかして、意識が朦朧としている?」

(,,゚Д゚)「へっ、じゃあ今度は完全に眠ってもらうか」


そう言って、ギコが一歩前に踏み出した、その瞬間。





ミメ Д゚彡





川;゚ -゚)「!」(゚Д゚;)


フサギコの

身体から

殺気が

身の毛もよだつ程の殺気が───



二人を、打ちつけた。

109: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:38:43 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚) (こ、れは……。そんな、馬鹿な……)


フサギコから放たれる威圧感。
それは個人が持つエネルギーとは思えないほど強大なモノ。
クーは、目の前の怪物がまだ本来の実力の一部分しか見せていなかったことに気づかされてしまった。


(;゚Д゚)「……上等!」


ギコは、いつフサギコが襲いかかってきてもいいように構える。
次元を越えた力を見せられたところで、ギコの心は決して折れることはなかった。


ミメ Д゚彡


場の空気がどんどん捻れ曲がっていくような錯覚を二人が感じていたとき。





ミメ゚Д゚彡


フッ、と。





川 ゚ -゚)「え?」(゚Д゚,,)


フサギコの闘気が一切合切消し飛び、


ミメ゚Д゚彡「俺の敗けだ」


まさかの敗北宣言が、彼の口から発せられた。

110: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:41:13 ID:4Y/i92JE0
川;゚ -゚)「……」(゚Д゚;)


二人は何も言えないでいた。
化け物じみたプレッシャーをかけられたかと思ったら、急に降参されてしまったのだ。
思考が全然追いついていかない。


ミメ゚Д゚彡「では、俺は戻る」


呆然としている二人を尻目に、フサギコは部屋の出入り口とは反対の方向へと振り向いた。


(#゚Д゚)「お! ちょ、おいコラ待てやゴルァ!!」


ハッと我に返ったギコは、去ろうとするフサギコを捕まえようとした。


川 ゚ -゚)「……ん?」


ふと、クーが何かに反応する。
何らかの“熱量”が急上昇しているような───。


川;゚ -゚)「───っ!? ギコ! 前に出るな!!」

(,,゚Д゚)「はあ?」


フサギコに近寄ろうとしたギコを、クーが引き留めた次の瞬間。



耳をつんざく、豪雷のような音が地下全体を駆け巡った。

111: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:43:11 ID:4Y/i92JE0
(;-Д゚)「んなっ……」

川;゚ -゚)「……」


突然の爆音と、舞い上がる砂煙。
そして二人の視線の先に広がる光景。
それは、



こちらに背を向けたフサギコが、左腕を前方に伸ばしている姿と、



部屋の一角に開いた、10メートル級の大穴であった。




川 ゚ -゚)「左腕の……。まさか、まだそんな機能を隠していたとはな」

ミメ゚Д゚彡「コイツがただの模型だというなら、わざわざ取り替える必要など、ない」


考えてみれば迂闊だった、とクーは思う。
クーの『圧空』、ブーンの『GASOLINE』と同様に、何らかの仕掛けがあって然るべきだったのだ。


川 ゚ -゚) (そしてこの威力……。ヒートの『フルドライブ』以上、か)


よく見ると穴はかなり深くまで広がっている。
これが人に当たれば、ミンチどころでは済まされない。

112: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:45:29 ID:4Y/i92JE0
(,,゚Д゚)「あれ? つーかあの腕って、クーのと同じやつなの? えー?」

川 ゚ -゚)「今のタイミングでそれ聞くのか……?
     お前との戦闘中も、ずっとあの金色が見えてただろうが」

(,,゚Д゚)「いや、てっきり俺は、なんか趣味の悪いタトゥー的なもんだと」

川 ゚ -゚)「殴り合い中の感触で判れよ」


いまいち話についてこれないギコはさておいて、フサギコはその穴の前に立つ。


ミメ゚Д゚彡「ギコ」

(#゚Д゚)「お? なんだファッキンクソ黄金虫野郎」

ミメ゚Д゚彡「今日は敗けたが、諦めた訳ではないぞ。お前はいつか連れて帰る」

(#゚Д゚)「うるせぇよ死ね。散歩中に地割れに飲み込まれて早急に死ね」

ミメ゚Д゚彡「じゃあな」


フサギコはそう言い、ちらとクーの方に目をやり、


川 ゚ -゚)「……」


何も語らぬまま穴の中へと降りていき、二人の前から姿を消した。

113: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:48:50 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「……行かせて良かったのか?」

(,,゚Д゚)「あー、まあ、捕まえて警察に持っていったところで、アイツ閉じ込められる檻なんて無いしなぁ。
    脱獄の時に刑務官が何人か殺されるのがオチだ。
    だったらまだ放っておいた方がいいだろ」

川 ゚ -゚)「ふむ、そうだな。それにフサギコも、一般人に手をかけるほど節度を持たない人間でもあるまいし、な」


あの男が再び表に出ることがあれば、それは二人の前であるだろう。
もともと新生『COLOR's』で危険な思想を持っていたのは恐らく、は瀬川一人だけだ。
そのは瀬川亡き後、躍起になってフサギコを追いかける必要はあまりない。


(,,゚Д゚)「さて……、これで終わりってところかな。どうする? 上に戻るか?」

川 ゚ -゚)「いや、待て。ここにはまだ、は瀬川の研究結果などがあるはずだ。
     部外者に悪用されないよう、見つけ出して処分しておこう」

(,,゚Д゚)「なるほど。じゃあちょっと行くとするか」


『No』の量産方法などのデータをこの世に残しておくわけにはいかない。
ギコとクーは後処理のために、内部をもう少し探索することにした。



――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

114: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:51:03 ID:4Y/i92JE0



ギコとクー、そしてフサギコの戦いが終わる、少し前。


(;‐∀・)「っ! ハッ!?」


何処からか鳴り響いた轟音に反応して、モララーは眼を覚ます。


( ・∀・)「あ、あれ……、僕は……。いつの間にか、眠っていた?」


戦いの後で、疲労が溜まっていたのだろうか。
座った体勢のまま、気付かぬ内に意識を失っていたらしい。


( ・∀・)「ヒートは……。うん、大丈夫そうかな」


モララーの太ももを枕にして、ヒートは未だ眠っている。
寝息は規則正しく繰り返されている。特に身体の異常は感じられない。


(゚、゚トソン「ようやく起きましたか?」

(;・∀・)「っ! うわっ!!」


急に投げかけられた言葉。
モララーは慌てて前を見る。
そこには、つい先ほどまで死闘を繰り広げていた彼らの敵、『COLOR's』の『白』───トソン=ホワイトルシアンが立っていた。

115: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:53:39 ID:4Y/i92JE0
(゚、゚トソン「大声はダメですよ。彼女、眠っているんですから」

(;・∀・)「え? あ、ハイ。すみません……?」


一瞬身構えたモララーであったが、今のトソンからは“危険”を感じない。
髪の色も黒に戻っている。


(;・∀・)「あのー……」

(゚、゚トソン「……不思議ですか? 私が何故、無防備な貴方たちに攻撃を仕掛けなかったのか」


モララーの疑問に、トソンは何でもないかのように無表情で答える。


(゚、゚トソン「私の敗けで、この戦いは決着がついたのです。その後に虚をついて相手を陥れるなど、悪辣の極みです」

( ・∀・)「はあ……」


なんというか、騎士みたいな人だなとモララーは思った。


(゚、゚トソン「それに、私に下された命は貴殿方の足止めですから。その足止めも、もう不要でしょう。
     あちらの戦いも終結したようですので」

(;・∀・)「……!」


あちら、とはギコ達のことだろう。
戦いは既に終わったとトソンは言った。
ギコとクーは無事だろうか。モララーは二人の身を案じる。

116: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:55:42 ID:4Y/i92JE0
(゚、゚トソン「さて、それでは私は失礼させていただきます。ヒートさんにも宜しくお伝えください」

( ・∀・)「え? あ、はあ……」


何を宜しく伝えればいいのだろうか。
モララーはどうにもペースを崩されっぱなしな感覚になる。
彼女は、もうモララー達のことを敵だとは思っていないのだろうか。


(゚、゚トソン「あ、最後に一つ」

( ・∀・)「はい?」

(゚、゚トソン「次に会うときは必ずお二人を始末できるよう精進いたしますので、お二人も鍛練を怠らぬよう。では」

( ・∀・) (あ、この人なにがなんでもリベンジするつもりだ)


トソンはそう言って、部屋を後にした。


( ・∀・)「……僕らも帰ろうか」


モララーは眠るヒートをおぶって、トソンが去った方とは逆、すなわち地上に向かって歩いていった。

地上で、二人の帰りを待つ為に。



――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

117: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:57:43 ID:4Y/i92JE0



ギコとクーは、大小さまざまなコンピューターで敷き詰められた部屋にたどり着いていた。


(,,゚Д゚)「ここっぽいな。さて、一つ残らず叩き割っていくかー」

川 ゚ -゚)「お前も大概……、まあいい。私は紙媒体の方を処分しておく」


ぱきん、ぱきんと拳で軽快にコンピューターを割っていくギコをよそに、クーは本棚に目を通す。
めぼしい資料を片っ端から取り分けていく内に、とあるモノが目を引いたので、それを手に取った。


川 ゚ -゚)「これは……」

(,,゚Д゚)「どうした? ん、それって外付けのハードディスクか?」

川 ゚ -゚)「これ……。もしかしたら、博士が使っていたものかもしれない」

(,,゚Д゚)「ジジイの?」


クーはそのハードディスクに見覚えがある。
それは、荒巻博士が愛用していた型であった。

118: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:59:45 ID:4Y/i92JE0
川 ゚ -゚)「ギコ、これ持って帰ってもいいか?」

(,,゚Д゚)「そりゃまあいいよ。しかし、ジジイはここ出るときに大体のモン処分してた筈なんだけどな。
    でもそれが残ってたってことは、きっと何か意味があるんだろ」


クーはそのハードディスクをじっと眺めた。
はたしてこの中には、何が入っているのだろうか。


川 ゚ -゚) (帰ったら確認してみよう)


そう思いながら、クーは書類の処分を再開した。



――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

119: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:01:40 ID:8hgFt.vw0



建物内の地下深くの一室。
一人の男が扉を開け、中に入ってきた。


ミメ゚Д゚彡


部屋の中はテーブルやソファー、食器棚などが設置されており、一つの居住空間となっている。
男は、ここを住み家としていた。


ミメ-Д゚彡「……くっ」


男───フサギコは、痛みで顔を歪めた。
ギコたちの前から姿を消すときは隠していたが、肉体は既に限界を迎えていたのだ。

やがて立つこともままらなくなったのか、グラリとフサギコの身体が傾いていき───。


(゚、゚トソン「───フサ、只今戻りました」


倒れそうになる寸前のところで、いつの間にか現れたトソンが、彼を支えた。

120: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:03:39 ID:8hgFt.vw0
(゚、゚トソン「フサ、こちらに」


フサギコはトソンの肩を借りて、ソファーに横になる。
トソンはフサギコの正面に座った。


(゚、゚トソン「申し訳ございません、フサ。私は元『赤』、そしてモララー君に敗れてしまいました」

ミメ゚Д゚彡「……そうか」

(゚、゚トソン「処分はなんなりと」

ミメ゚Д゚彡「いや、いい……。俺も……、敗けたからな」

(゚、゚トソン「……そうですか」


しばしの沈黙。
トソンはじっとフサギコの眼を見つめている。
フサギコの次の言葉を、待っている。


ミメ゚Д゚彡「……トソン」

(゚、゚トソン「はい、なんでしょうか?」

ミメ゚Д゚彡「俺は、まだ強くならなければならない。
      今のままでは、まだ事をなし得ないことが判った」

(゚、゚トソン「……」

121: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:05:41 ID:8hgFt.vw0
ミメ゚Д゚彡「だからトソン、お前も強くなれ」

(゚、゚トソン「……ええ、畏まりました。
     貴方の希望に沿えるように、私も強さを求めましょう」

ミメ-Д゚彡「頼んだ。それでは、俺は少し休む……」

(゚、゚トソン「判りました。私がそばで待機しておりますので、ゆっくりと」

ミメ-Д-彡「ああ……。あとは、任せた……」


フサギコは眼を閉じると、すぐに微かな寝息を立て始めた。
もう意識を保つのも限界であったのだろう。

トソンは眠りに落ちてもなお輝くフサギコの金色の髪を、まるで大切な宝物に触れるかのように撫でた。
そして、そっと呟く。


(゚、゚トソン「大丈夫です、フサ。私が、貴方を護り続けますから───」


眠るフサギコの顔を愛おしげに眺めながら、彼女は静かに微笑んでいた。



――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――

122: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:07:38 ID:8hgFt.vw0



(*゚∀゚)「───あ! ギコとクー、帰ってきたよー!」


『No』も殲滅したのち、二人の帰還を心待ちにしていた面々は、その元気そうな姿を見て一様に顔を綻ばせた。


(,,゚Д゚)「おーおー皆の衆、ギコさんが帰ってきたぞー」

川 ゚ -゚)「皆も無事そうだな。良かったよ」


仲間と再び会うことができた。
その喜びを分かち合うかのように、談笑が交わされる。


从 ゚∀从「ふーむ、ギコ。どうやらかなりの血を流したみたいね。帰り、ウチで輸血しとく?」

(,,゚Д゚)「血以外の色んなモン入れられそうだからヤダ」



(´・ω・`)「クー。あの鎖、上手く発動できたようだね。後でどんな感じだったか聞かせてくれよ?」

川 ゚ -゚)「そうか……。ショボンが鍵を開けていてくれたんだな。
     あれが無かったら、私はここにいなかったかもしれない。ありがとう、ショボン」

(*゚∀゚)「つーちゃんもてつだったんだよー! ほめてー」

川 ゚ -゚)「ああ勿論だ。つーもありがとう」

(*゚∀゚)「にひひー」

123: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:10:21 ID:8hgFt.vw0
(,,゚Д゚)「流石兄弟も来てたのか?」

( ´_ゝ`)「逃亡生活もずっとは出来ないからなー。アンタらがここに潰そうとしてるって知って、こりゃ相乗りさせてもらおうとね」

(´<_` )「それにクックルの戦闘データも大量に取れたしな。一石二鳥だ」

( ゚∋゚)「……」

(,,゚Д゚)「クックルはまだ強くなりそうなのか。リベンジはいつでもいいぜー」



川 ゚ -゚)「ブーン、それにツンも。来てくれたんだな」

( ^ω^)「おっおっ。やっぱり、ちゃんと僕なりのケジメは取りたかったし……。
      それにクー姉の為でもあるなら、僕はどんなときでも駆けつけてくるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンのお姉さんが困ってるんなら、私も力になりたいですしね。まあ、私は役に立ちませんでしたけど……」

川 ゚ -゚)「いや、その気持ちが嬉しい。二人とも、ありがとう」

124: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:12:32 ID:8hgFt.vw0
( ・∀・)「ギコさん、クーさん。また無事に会えて、良かったです!」

(,,゚Д゚)「モララー! あの女と戦ったのか? アイツ、かなりの実力者だったと思ったが」

( ・∀・)「トソンさんですね。ええ、とても強くて、正直ダメだと思ったんですけど……。ヒートが頑張ってくれました」

川 ゚ -゚)「そういえば、さっきからヒートをおぶってるけど……。まだ眼が覚めないのか?
     というか、おぶったまま私たちの帰りを待ってたのか?」

ノハ-⊿-)「ぐー、ぐー」

(,,゚Д゚)「なんだそのワザとらしい寝言」

(;・∀・)「いや、何度か降ろそうとしたんですが───」

ノハ;-⊿-)「ぐー! ぐー!」

(;・∀・)「脚でがっちりロックしてくるので降ろせませんでした」

川 ゚ -゚)「モララーの背中が寝心地いいんだろ。しばらくそのままにしておけ」

(;・∀・)「ええー……。僕も結構疲れてるんですけど。それに、ずっとおぶり続けるのは流石に重───」

ノハ#-⊿-)「ぐー!!!」

(;・∀・)「痛い! 背中をつねらないで!」

(,,゚Д゚)「モララー……。もっと強くなれよ……」

(;・∀・)「いつか、勝てる日が来るといいですね……」

125: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:14:40 ID:8hgFt.vw0
来たときよりも数が増えた一行は建物の外に出る。
西日が彼らを赤く照らしつけてくる。じきに空は星が輝きだすことだろう。


(,,゚Д゚)「よーし。そしたら……、ショボン!」

(´・ω・`)「はいはい」

(,,゚Д゚)「今日は『バーボンハウス』は!?」

(´・ω・`)「当然、予約なんて入れていないよ」

川 ゚ -゚)「よし。ブーン達もこの後大丈夫か?」

( ^ω^)「オッケーだお!」

( ・∀・)「流石さん達も?」

( ´_ゝ`)「いぇーい行く行く」



(,,゚Д゚)「よっし、じゃあ今日は『バーボンハウス』は貸し切りで───」



.

126: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:17:24 ID:8hgFt.vw0
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「みんなで、朝まで大宴会だっ!!!」










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127: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:20:31 ID:8hgFt.vw0
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(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)


                                 終










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129: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:27:53 ID:8hgFt.vw0
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【“地界”・某所にて】










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130: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:30:58 ID:8hgFt.vw0
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「いやぁ、終わっちゃったね~」









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131: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:34:01 ID:8hgFt.vw0
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「まさか、フサギコくんが敗けるとは思ってなかったなぁ」




「意外と甘いところもあるんだね~」




「ん~でも、それを差し引いても、やっぱり彼等はいいチームだよね~」




「……うん、決めた!」




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132: 名無しさん :2017/05/05(金) 00:37:18 ID:8hgFt.vw0
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从'ー'从「ギコくん達には、この世界の“英雄”になってもらいましょ~」










(,,゚Д゚) ここは解決屋『シルバー&ブラック』本社のようです 川 ゚ -゚)


第一部 『COLOR's』編 終わり


   →第二部 『Zoo』編に 続く……?




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