( ^ω^)が歌手になりたいようです-第六部
J(‘ー`)し「ねえブーン、幼稚園は楽しい?」 

( ^ω^)「うん、とっても楽しいお!お友達もいっぱいできたお!」 

J(‘ー`)し「そう、良かったわねえ・・・」 

( ´∀`)「もう、幼稚園で好きな子はできたか?」 

( ^ω^)「うん、できたお!」 

J(‘ー`)し「あら、だあれ?母ちゃんたちに教えてくれると嬉しいな。」 

( ^ω^)「えっと、先生とー、まさふみ君とー、ゆきちゃんとー、 
しゅうとく君とー、なおちゃんとー、それから・・・」 

指折り数えてそう言うブーンを見て、父は笑い出す。 

( ´∀`)「ははは、そんなに好きな子が多いと大変だなー。」 

( ^ω^)「全然大変じゃないお!好きな人がいっぱいで嬉しいお! 
あ、もちろん父ちゃんと母ちゃんも大好きだお!」 

J(‘ー`)し「うふふ、どうもありがとう。母ちゃんもブーンが大好きよ。」 

( ´∀`)「父ちゃんもだぞ!父ちゃんもブーンが大好きだ。」 

( ^ω^)「本当かお!?嬉しいおー。」 

ブーンはぴょんぴょんとジャンプしてはしゃいだ。 
それを両親は微笑んで見つめていた。 

たった一人の人なんて、僕はいらない。 

僕はずっとたくさんの人を好きでいたいんだ。 

だって一人の人を好きになってしまったら、きっと他が見えなくなるでしょう? 

一人の人を好きになってしまったら、他の大切な人をきっと忘れてしまうでしょう? 

そう思う僕は、おかしいのかな。 

誰か一人を「特別」にしたくない僕は、おかしいのかな。 

( ^ω^)「うーん・・・」 

軽く伸びをして、ブーンはベッドから身を起こす。 

( ^ω^)「なんだか、夢をみていたようだお・・・」 

ブーンは軽く目をこする。 

コンコン 

( ^ω^)「はいですお」 

J(‘ー`)し「ブーン起きた?ご飯よ。下りてきなさい。」 

( ^ω^)「分かったおー」 

ひどく懐かしい感じのする夢だったような気がする。 
だけど起きた瞬間に忘れてしまった。 

自分は一体どんな夢を見ていたのだろうか? 

( ^ω^)「まあいいお。お腹すいたお。とりあえずご飯だおww」 

('A`)「お前さー・・・前から思ってたんだけど・・・」 

ドクオがそう話を切り出したのは 
最近出来たブーンの新曲を聴き終えた直後の事であった。 

( ^ω^)「?なんだお?」 

('A`)「ラブソング下手だよな。」 

( ^ω^)「!!!!!マジかお!」 

('A`)「この新曲も、多分ラブソングなんだろ?一応好きだとかなんとか歌ってるし。」 

( ^ω^)「多分も何も正真正銘、丹精込めて作った僕のラブソングだお・・・。」 

ブーンは少しショックを受けたようだ。明らかに声に力がなくなっている。 
ドクオは慌ててフォローした。 

('A`)「い、いや、曲は良いと思うぜ?曲は!うん、曲はな!」 

( ^ω^)「歌詞は・・・?」 

('A`)「・・・・・・・・・スマン・・・」 

( ^ω^)「いいお・・・僕もまだまだ精進すべきという事が分かったお。 
励みになったお。」 

そう言ってブーンはため息をついた。 

('A`)「お前さ、今誰か好きなヤツとかいねーの? 
そしたらその人の事考えて作れば良いんだよ。 
そしたら多分今よりずっとよくなるんじゃねーの?」 

( ^ω^)「好きな人くらいもちろんいるお!」 

('A`)「あ、家族とか友達とか抜かしてな。」 

ドクオの言葉にブーンは一瞬たじろぐ。 

( ^ω^)「そ、そんなの当たり前だお・・・ちゃんと好きな女の子ぐらいいるお・・・」 

('A`)「あ、三次元限定な。」 

( ^ω^)「三次元限定は卑怯だお!!!」 

('A`)「やっぱりギャルゲーかエロゲーのヒロイン言うつもりだったんだな!」 

( ^ω^)「・・・・・・」 

ブーンはさっきよりも落ち込んでしまったようだった。 

('A`)「で、でもさ、今好きな人いなくたって、例えば初恋の人とかさ、 
そんくらいはいるだろ?」 

( ^ω^)「いないお。」 

('A`)「は?」 

( ^ω^)「実は僕、まだ恋というものをした事がないんだお・・・」 

('A`)「・・・・・・」 

( ^ω^)「・・・・・・」 

('A`)「キメェwwwww」 

( ^ω^)「ちょwキモくないおww好きな人できないもんはしょうがないんだおwww」 

そう言ってまた大きなため息をつくブーンの肩をドクオはそっと叩く。 

('A`)「ま、お前ラブソング以外はうまいんだからさ、 
しばらくはラブソング作らないで他の曲作ってりゃ良いじゃん。な?」 

( ^ω^)「でもやっぱり歌手を目指す者としてラブソングを上手に歌いたいお。 
それに昔からオリコンランキングはほとんどラブソングが上位を独占しているお。 
人々はいつになってもラブソングを求めているんだお。」 

('A`)「そんな事言ったって・・・あ、そうだ、お前の好きなミュージシャンのラブソングを 
参考にしたらどうだ?さすがに好きなラブソングはあるだろ?」 

( ^ω^)「レミオメロンの3月メロンとか、粉メロンとか、電話メロンとか好きだお。」 

('A`)「じゃそれ参考にしてさ・・・るるりとかは聴かねえの?」 

( ^ω^)「るるりは痴女な女の子が好きで聴いてるお。」 

('A`)「それラブソングじゃねえwwwほら、ケシの花とか、秋風とかは聴かねえの?」 

( ^ω^)「あー、そういえば聴いた事ないお。」 

('A`)「じゃCD貸してやる。」 

ドクオはそう言って部屋に無造作に置かれているCDをガシャガシャと荒らしだす。 

('A`)「あった。ほら、これ持ってけ。良い曲だぞ。」 

( ^ω^)「ありがとだお。聴いてみるお。」 

そうしてブーンはドクオからCDを借り、ドクオの部屋を後にした。 

家に帰ったブーンは早速ドクオに借りたCDを聴いてみる事にした。 
優しいメロディがブーンの部屋に流れ出す。 

( ^ω^)「・・・・・・綺麗な曲だお・・・」 

ブーンはうっとりと曲に耳を傾ける。 

でも、なぜだろう?共感できない。そうブーンは思った。 

( ^ω^)「レミオメロンも、他の人たちが歌ってるラブソングも、なぜだか共感できないお・・・。 
こんなに綺麗なメロディで、優しい歌詞で・・・ 
でも僕にはこの気持ちが分からないお。何でだお?」 

ラブソングの歌詞には、まるで決まりでもあるのかと疑いたくなるほど 
「会いたい」とか、「触れたい」とか「大切」とか、 
そんな言葉が山のように書かれていた。 

ブーンにはそれがよく分からずにいた。 
会いたいなら会いに行けばいい。触れたいなら触れればいい。 
大切に思うなら相手にそう言えば良いのだ。 
なのに大抵の歌の主人公たちは、そんな事も出来ずに悩んでいた。 
そして言うのだ。「切ない」と。 

( ^ω^)「あああ・・・分からないお・・・」 

その日ブーンは自分の持ってるCDの中からラブソングだけを選んで何度も何度も聴いた。 
歌詞を何度も読み直した。 
しかしやはり良い曲だと思うだけで共感はできなかった。 
歌詞の意味もよく理解できなかった。 
気づいたらブーンはCDをかけたままで眠ってしまった。 

そして次の日の昼・・・ 

( ^ω^)「結局分からなかったお。こういう時はコーヒーでも飲みに行くお。」 

そう言ってブーンは気分転換に近所の喫茶店に行く事にした。 
ブーンは宿題をする時などによく利用している喫茶店へ向かった。 

カランカラン・・・ 

( ^ω^)「こんにちはだお。」 

ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー。」 

( ゚ω゚)「!!!!!」 

ブーンは一瞬にして目線を奪われる。なんて可愛い人だろう。 

ξ゚听)ξ「一名様でよろしいですか?」 

( ^ω^)「ああううあうあうあうあ・・・はははは、はい・・・」 

ξ゚听)ξ「?喫煙席と禁煙席どちらがよろしいですか?」 

( ^ω^)「ききききききききん、きん・・・」 

口が回らない。心臓がバクバクしている。自分は一体どうしたんだろう? 

ξ゚听)ξ「はい?」 

( ^ω^)「き、禁煙席で!!!」 

ξ゚听)ξ「では、こちらの席へどうぞ。」 

席に案内され、なんとかコーヒーを注文した。 
未だに心臓は静まらない。 

( ^ω^)「(どうしたんだお・・・?僕はただあの女の子を可愛いなって思っただけで・・・ 
それだけなのに何でこんなドキドキするんだお・・・?)」 

しばらくして、あの女の子がコーヒーを運んできた。 

ξ゚听)ξ「お待たせいたしました。アメリカンになります。」 

女の子はそう言ってブーンの前にコーヒーを置く。 
白くて、綺麗な手だ。 

( ^ω^)「あああああああああの!!」 

ξ゚听)ξ「はい。」 

何か、何でも良い。話しかけなきゃ。なぜだかブーンはそう思った。 
だけど何を話せばいいか分からなかった。 

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・チョコレートパフェもお願いしますお・・・・・・。」 

ξ゚听)ξ「かしこまりました。チョコレートパフェを追加、ですね?」 

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・はいですお・・・・・・・・・」 

それからまたしばらくしてまた女の子がチョコレートパフェを持ってきてくれた。 
しかしブーンは何だか胸がつかえてしまってなかなかパフェを食べきれなかった。 

( ^ω^)「(はあ・・・そろそろ帰るお・・・)」 

どうやら今日の店員は店長とあの女の子だけらしい。 
ブーンが席を立つと女の子はレジの方へ移動した。 

ξ゚听)ξ「お会計980円になります。」 

( ^ω^)「あっ、あのっ、最近ここにバイトに来たんですかお!?」 

ξ゚听)ξ「はい?」 

もしかしたらこの女の子は今日だけ何かの都合でバイトに来ていて、もう二度と会えないかもしれない。 
そう思ったら、勝手にブーンの口は動いていた。 

ξ゚听)ξ「・・・・・・はい、最近からですけど・・・」 

女の子は訝しげな瞳でブーンを見る。 

( ^ω^)「しゅっ、週に何回ぐらい来てるんですかおっ!?」 

いよいよ女の子の顔が曇ってきた。 
あからさまにブーンを警戒しているようであった。 

ξ゚听)ξ「失礼ですが、私のシフトがお客様に何か関係でもあるんですか?」 

トゲトゲしく女の子は言う。 

( ^ω^)「あっ、ありますおっ!関係ありますっ!!」 

ξ゚听)ξ「なんですか?納得のいく理由ならばお教えします。」 

( ^ω^)「あなたに会いたいからですお!!」 

ξ////)ξ「はっ!?」 

( //ω//)「はっ!!」 

ブーンの言葉にお互いが赤面した。 

ξ////)ξ「あっ、あんた何言ってるの!?バカじゃない!?」 

女の子は仕事中という事も忘れブーンに乱暴な口調でそう言う。 

( //ω//)「ごごごごごめんですお!!何でもないですお!! 
今の忘れて下さいお!!あ、お金、ハイ!釣りはいりませんお!!!」 

そう言ってブーンは千円札をだして逃げるように喫茶店からでて行った。 

ξ゚听)ξ「・・・・・・」 

女の子はブーンの置いていった千円札を見ながら、呆然としていた。 

ξ////)ξ「変なヤツ・・・」 

でも、悪い気はしなかったな。女の子はそう思った。 

家に帰るとブーンは自分の部屋で転げまわっていた。 

( ^ω^)「あー恥ずかしいおー!!何であんな事言っちゃったんだおー!! 
もうあの店いけないおー!!!」 

何であんな事言ったのか自分でも分からなかった。 
でもまた会いたい。何度だって会いたい、なぜかそう思った。 

( ^ω^)「(・・・・・・明日も、学校終わったら行ってみるお・・・)」 

次の日学校が終わるとブーンはすぐに喫茶店へと向かった。 
またあの子がいるかもしれないと思うと胸が苦しいような、 
くすぐったいような、変な気分がした。 

カランカラーン 

( ^ω^)「こんにちはですお。」 

( V∀V)「いらっしゃいませー。一名様ですか?」 

出てきたのは昨日の子ではなく、いつもいるウエイトレスだった。 

( ^ω^)「あ・・・はい・・・」 

( V∀V)「お客さまは確か禁煙席のほうですよね?それではこちらへどうぞー」 

ブーンは席について辺りを見回すがそこに昨日の女の子はいなかった。 
気がつけばさっきまでの嬉しいような恥ずかしいような 
訳のわからない焦燥感は消え、ただただ虚しさのようなものが残った。 

やがて運ばれてきたコーヒーをブーンは一気に飲み干した。 
舌を火傷したが、別段痛いとも思わなかった。 
あの子がいない。そう思うだけで舌より胸の方が何倍も痛かった。 


そして次の日の夜・・・ 

今日も喫茶店へと足を運んだが彼女はいなかった。 
まだまだバイトの給料日まで日がある中、 
コーヒー代だって馬鹿にならないのに自分は一体何をしてるのだろう? 

( ^ω^)「もう次の給料日まで喫茶店に行くのはやめるお・・・」 

そう決心すると、また胸がズキンと痛んだ。 

コンコン 

J(‘ー`)し「ブーン?ごめんね、ちょっとコンビニで牛乳買ってきてもらって良いかしら?」 

( ^ω^)「あ、母ちゃん・・・分かったお。行ってくるお・・・」 

J(‘ー`)し「お願いね。」 

そしてブーンはコンビニへと出かけた。 

沈んだ気持ちで自動ドアを通った、その時だった。 

ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー」 

( ゚ω゚)「アッー!」 

ξ゚听)ξ「あれ?あんたこの前の喫茶店の・・・」 

思いがけない再開にブーンは嬉しくて飛び上がりそうだった。 
しかも彼女は自分の事を憶えていてくれた。 
なんだか泣きそうになる気持ちをぐっと堪えた。 

( ^ω^)「こ、ここでもバイトしてたんですかお!?」 

ξ゚听)ξ「・・・まあね、深夜だけだけど。」 

( ^ω^)「喫茶店と掛け持ちなんて大変じゃないですかお?」 

ξ゚听)ξ「そうでもないわよ。深夜は人少ないし、 
あそこの喫茶店だってあんまり人来ないしね・・・」 

( ^ω^)「ふーん・・・えらいですお。勤労少女ですお。」 

ξ////)ξ「べっ、別にあんたに褒められたって嬉しくないわよっ!」 

この前より警戒心が解けたのか、まだ言葉に冷たさは残るものの 
女の子は普通にブーンと会話してくれた。 

( ^ω^)「でも、楽とは言っても深夜に女の子一人じゃ危なくないですかお?」 

ξ゚听)ξ「別に・・・。近くに交番だってあるし。それに、深夜のほうが時給良いしね。」 

( ^ω^)「だけど、可愛い女の子がこんな時間に一人で・・・」 

そう言って二人はまた赤面する。 

ξ////)ξ「ああ危なくないって言ってるでしょう!?しつこいわねっ! 
それより何か買いに来たんでしょ!?早く商品だしなさいよ!!」 

( //ω//)「あああ、す、すみませんだお!!じゃ、これ、牛乳お願いしますお!!」 

ブーンは慌てて牛乳を差し出し、女の子もものすごい速さで会計を済ませる。 
ブーンにレシートを渡すと、女の子はぼそっと呟いた。 

ξ////)ξ「月曜・・・」 

( ^ω^)「お?」 

ξ゚听)ξ「月曜から水曜までは夕方喫茶店でやってて、金、土はここで深夜やってるの。」 

( ^ω^)「そうなのかお!?教えてくれてありがとだお!遊びに行くお!」 

ξ゚听)ξ「・・・べっ、別にあんたに来て欲しいから言ってるとかじゃなくて、 
この前聞かれたから今教えてやってるだけなんだからねっ!」 

そう言って女の子は再び赤面する。 

( ^ω^)「ついでに電話番号とか教えてくれるともっと嬉しいお。」 

ξ゚听)ξ「この店の電話番号ならレシートに書いてあります。」 

( ^ω^)「うはwwwじゃあせめて名前だけでも・・・」 

ξ゚听)ξ「・・・・・・ツンよ。」 

( ^ω^)「おお、ツンちゃんよろしくだおwww僕はブーンだおwww」 

それからブーンは暇さえあれば喫茶店とコンビニに足を運んだ。 
その甲斐あってか2ヵ月後には随分ツンと仲良くなる事ができた。 
店にお客さんがいない時を見計らって、二人はいろいろな事を話した。 

お陰でいろいろとツンの事を知る事ができた。 
ブーンと一緒の21歳だということ、地方からでてきてこっちの美術大学に通っているという事、 
今は姉と二人でアパートに暮らしているという事、 
それから近所においしいクレープ屋さんがある事・・・ 

ブーンも聞かれれば何だって答えた。 
大学の事、歌手を目指しているという事、そして今その夢に向かって頑張っているという事 
それと自分の大好きな歌手の話・・・ 

どれもこれも他愛のない話ではあるが、二人が笑顔でいるには十分すぎる話題であった。 
ツンと一緒にいるとあっという間に時間が過ぎた。 
ギターを弾くたびにツンの顔が浮かんだ。その度にとても優しい気持ちになれた。 
しかしブーンは未だにこの気持ちはなんなのか分からずにいた。 

そして金曜の深夜・・・ 

( ^ω^)「おいすー。」 

いつものようにブーンはコンビニにやってきた。 

ξ゚听)ξ「いらっしゃい。」 

( ^ω^)「相変わらずすいてる店だお。」 

ξ゚听)ξ「東京と言ってもここは下町の方だしね。しかも深夜だし。 
で?今日は何を買いにきたの?牛乳?飴?」 

( ^ω^)「今日はうまい棒だおww」 

ブーンはお菓子のある棚からうまい棒を2、3本取ってレジへと持っていく。 

ξ゚听)ξ「はい。ありがとうございます。」 

ツンはちゃっちゃと会計を済ます。 

( ^ω^)「ところでツンは美大に通ってるって言ってたけど 
やっぱり将来は画家かなんかになりたいのかお?」 

その言葉にツンはくすくすと笑う。 

ξ゚听)ξ「今時画家なんてよっぽどの才能と財力とコネがなきゃやっていけないわよ。 
しかもあいにく私はその3つのうち財力しか持ってないわ。」 

( ^ω^)「えっ?ツン金持ちだったのかお!?」 

ξ゚听)ξ「お金なきゃ美大なんてバカ高いとこ入れないわよ。」 

( ^ω^)「そうだったのかお・・・僕はてっきり・・・」 

ξ゚听)ξ「てっきり、私の事貧乏だと思ってたの?」 

きっ、とツンが睨む。 

( ^ω^)「ちち違うお!ただツンてすごいバイトしてるしだから金持ちってちょっと意外だと・・・」 

ξ゚听)ξ「つまり、貧乏だと思ってたって事でしょ?」 

( ^ω^)「そ、そうじゃなくて、えっと、なんと言ったら良いのかお・・・」 

あたふたするブーンを見て、ツンはまたくすくすと笑う。 
ずっとこの笑顔を見ていたいとブーンは思った。 

ξ゚听)ξ「でもまあ、私が貧乏ってのは別に間違ってないわよ。 
お金があるのは、親だもの。私はいつも金欠だけどね。」 

( ^ω^)「・・・あんまり仕送りもらえてないのかお?」 

ξ゚听)ξ「そんな事ないわ。私一人だったら、少し節約すれば 
正直バイトなんてしなくても十分やっていける。」 

( ^ω^)「じゃなんでこんなバイトばっかしてるんだお?」 

そう言うと、ツンは少し困ったような顔をして黙り、やがて口を開く。 

ξ゚听)ξ「私、お姉ちゃんと二人暮らしって、前言ったわよね?」 

( ^ω^)「うん。きいたお。」 

ξ゚听)ξ「私のお姉ちゃんね、・・・障害を抱えてるの。」 

( ^ω^)「え!?」 

ξ゚听)ξ「ちょっと長い話になると思うけど・・・聞いてくれる?」 

( ^ω^)「もちろんだお。」 

ブーンがうなずくと、ツンは少し笑って話し始めた。 

ξ゚听)ξ「私とお姉ちゃんは三つ年が離れているんだけど、すごく仲が良かった。 
私、小さいときは痩せっぽちでよく男の子からいじめられてたんだけど、 
そうするといつもお姉ちゃんがすぐに来てくれて私をいじめっ子から守ってくれたの。 
他にも私が悪戯して両親に叱られてる時も庇ってくれたし、勉強が分からないと優しく教えてくれた。 
お姉ちゃんはいつも私の味方だった。」 

( ^ω^)「へえー、ツンのお姉ちゃんはなんだかツンのヒーローみたいだお。」 

ξ゚听)ξ「そうね。お姉ちゃんは私の正義のヒーローだった。 
私はお姉ちゃんが大好きだった。まあ、今も大好きだけどね。」 

( ^ω^)「(うはwwwツンのお姉ちゃんになりたいおwwww)」 

ξ゚听)ξ「でもね、私が16歳の時、お姉ちゃんは交通事故にあってしまったの。 
幸い命に別状はなかったんだけど、その時の後遺症でお姉ちゃんは知能が7歳の時に戻ってしまった。」 

( ^ω^)「え・・・」 

ξ゚听)ξ「まれにこういう事があるらしいの。 
事故の苦痛と、恐怖から逃れるために脳が防御反応を起こして 
自分が一番幸せで安心できた時代へと戻ってしまう、って事が。 
お姉ちゃんにとってその時代は7歳の時だったのね。」 

( ^ω^)「・・・・・・」 

ξ゚听)ξ「事故にあってからずっと面会謝絶で、 
やっと面会の許可がおりた頃お姉ちゃんはもう7歳の女の子になっていた。 
体が19歳という事を除いたら、仕草も、言葉遣いも、何もかもが普通の7歳の女の子だった。」 

なんて切ない話だろう。ブーンは何も言えなかった。かける言葉がみつからなかった。 

ξ゚听)ξ「さっき、うちは金持ちだって言ったわよね?」 

( ^ω^)「う、うん。聞いたお。」 

ξ゚听)ξ「私の実家は、ちょっと名の知れた和菓子屋でね。結構由緒ある家なのよ。 
・・・だからかしらね、両親はとても世間体を大切にしていた。」 

( ^ω^)「うん・・・」 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃんの様子を見て、両親はものすごくショックを受けてた。 
そりゃあ私だって驚きはなかったって言ったら嘘になるけどね。 
両親はお医者さんに、もうずっとお姉ちゃんはあのままなのかって訊ねた。 
お医者さんは辛そうにうなずいた。 
それ以来お姉ちゃんに対する両親の態度は変わってしまった。 
入院中、2度とお姉ちゃんのお見舞いに来る事はなかった。」 

( ^ω^)「(そんな・・・ひどいお・・・)」 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃんが退院して、家に戻ってきても両親の態度は変わらなかった。 
むしろますます酷くなった。お姉ちゃんを、トイレとご飯の時以外部屋から出さないようにしてた。 
それ以外の時にお姉ちゃんが部屋からでてくると両親はすごい剣幕でお姉ちゃんを怒った。 
お姉ちゃんは、何で自分が怒られてるのかよく分かっていない感じだった。 
ただ悲しそうに涙を流してごめんなさいって謝ってるだけだった。」 

( ^ω^)「(・・・ひどいお・・・)」 

ξ゚听)ξ「両親は私にも無意味にお姉ちゃんの部屋に行くなって言った。 
でも私は内緒で何度もお姉ちゃんの部屋に行った。 
その度にお姉ちゃんはすごく喜んでくれた。 
私もそんなお姉ちゃんをみるのが嬉しかった。 
部屋ではいつも折り紙をしたり、絵を描いたりして遊んでた。・・・すごく楽しかった。」 

( ^ω^)「・・・・・・」 

ξ゚听)ξ「そして私が高校3年生になった頃、両親がお姉ちゃんを施設にいれようって言いだした。 
その方が、お互い幸せだろうって。私は大反対した。 
別に施設が悪いとかそういうんじゃなくて、 
単純にお姉ちゃんと離れたくないっていう私のワガママだった。 
だけど両親はお姉ちゃんを施設に入れたがった。 
だから私、言ったの。 
私が東京の美大に受かったら、お姉ちゃんを連れて東京に行く。 
私がお姉ちゃんの面倒を看る。だから施設には入れないでって。」 

ツンはゆっくりと語る。どこか寂しそうに。 

ξ゚听)ξ「もちろん両親は私の意見に反対した。 
犬や猫を育てるんじゃない。人間を、しかも、・・・障害を持っている人間の面倒を看るのが 
どれだけ大変だと思ってるんだって言った。 
でも私も負けなかった。大変な事ぐらい、高校生の自分にだって簡単に想像できたけど、 
だけどそれでも私はお姉ちゃんと一緒にいたかった。お姉ちゃんを守りたかった。 
私が小さい時、お姉ちゃんが私を守ってくれたように。 
今度は、私の番だって思ったの・・・」 

ξ゚听)ξ「そして結局最後は両親も折れてくれたの。条件つきだけどね。 
その条件は、私の分の仕送りはするけど、お姉ちゃんの分の仕送りは一切しないというものだった。 
お姉ちゃんの生活費は、全部自分でバイトして稼げって言われた。 
もしそれで私が留年したり、お金が足りなくなって仕送りの値上げを頼んだりしたら、 
すぐお姉ちゃんを実家に連れ戻して施設に連れて行くって言われた。」 

( ^ω^)「うん・・・」 

ξ゚听)ξ「上京してバイトが見つかるまでは結構大変だったけど、 
私の生活費を削っていけばなんとかやっていけた。 
少し苦しかったけど、お姉ちゃんの事を思えば耐えられた。 
で、そのうち運良くバイトが決まって、今ここにいるって訳。」 

( ^ω^)「つまり、今ツンがバイトしてるのはお姉ちゃんの為って事かお?」 

ξ゚听)ξ「そんなんじゃないわ。・・・確かに生活費を稼ぐためではあるけど、 
欲しい服とか、画材とかいっぱいあるしね。だからよ。」 

( ^ω^)「・・・ツンはお姉ちゃんが大好きって事がよく分かったお。 
僕は一人っ子だからそういうの羨ましいお。」 

ブーンは素直にそういう。姉妹愛の深さを、ツンの話に感じていた。 

ξ゚听)ξ「うん。私はお姉ちゃんが大好き。 
最初は本当に大変だったけど、お姉ちゃんがいたから何とか頑張ってこれたの。 
だけど・・・」 

( ^ω^)「?」 

ξ゚听)ξ「!」 

だけど、何? 

自分はその言葉の後に何を続けようとしてる? 

だけど・・・本当は・・・何? 

ξ゚听)ξ「・・・・・・」 

( ^ω^)「ツン?」 

ξ゚听)ξ「・・・ごめん、何でもないわ。それよりもう0時過ぎてるわよ。 
そろそろ戻らないとご両親が心配するわよ。」 

そう言ってツンは店の時計を指さした。 

( ^ω^)「あっ、本当だお!じゃ僕はそろそろ帰るお。 
気をつけるんだお、ツン。」 

ξ゚听)ξ「あんたに言われなくたって分かってるわよ。ほら、早く帰りなさい。」 

( ^ω^)ノシ「あいよ。ばいばいおー。」 

ξ゚听)ξノシ「はいはい、またね。」 


ブーンは店からでて家に帰る道を歩いている間、ずっとツンの事を考えていた。 
昔の話をしてくれたのは、とても嬉しかった。しかし気になる事もあった。 

彼女は、「だけど・・・」そう言った後、本当は何と言いたかったのだろう? 
あの時、言葉に詰まった彼女を、ブーンは抱きしめたいと思った。 
触れたいと思った。あの頬に、あの髪に触れたいと思った。 
でも出来なかった。そんな事をしたらツンはそのまま壊れてしまいそうだった。 

たった今別れたばかりなのに、もうツンに会いたくなった。 
触れたくなった。もう頭がおかしくなりそうだった。 

( ^ω^)「(僕は・・・僕は本当にどうしてしまったんだお?)」 

J(‘ー`)し「ブーン。お帰りなさい。」 

( ^ω^)「母ちゃん・・・ただいまだお。」 

J(‘ー`)し「今日も友達のバイト先にいってたの?」 

( ^ω^)「そうだお。」 

J(‘ー`)し「そう・・・いくら夜中ですいてると言っても 
友達バイト中なんだからあんまり迷惑かけちゃダメよ。 
それと、今は物騒だから知らない人に声かけられてもついて行っちゃダメよ。」 

( ^ω^)「ちょww母ちゃんwww僕もう21だお?それぐらい分かってるおwww」 

J(‘ー`)し「21でも31でも、親はいつだって子供の事が心配なのよ。」 

母の目は真剣だった。本気で帰りの遅いブーンを心配しているようだった。 

( ^ω^)「・・・どうもありがとうだお、母ちゃん。じゃ、部屋に戻るお。」 

J(‘ー`)し「ええ。あ、お風呂沸いてるからね。」 

( ^ω^)「・・・・・・はあ。」 

バタンとドアを閉め、ブーンは大きなため息をつく。 

( ^ω^)「(なんだか元気がでないお。こういう時はCDでも聴くお。)」 

ブーンは元気が出ないときは大抵明るいロック調の曲を聴くのだが、 
今日はどういう訳か明るい音楽を聴く気になれなかった。 

( ^ω^)「(・・・なんだか無性にるるりを聴きたいお・・・)」 

そう思いブーンはドクオから借りてきたCDを入れた。 
ほんのちょっと前までこの曲はブーンにとってただの耳障りの良い曲でしかなかったのに、 
今はメロディの一音一音が、歌詞の一つ一つがブーンの胸に深く沁みこんでいく。 

「僕らお互い弱虫過ぎて 踏み込めないまま朝を迎える」 

この歌詞はまるで自分とツンの事のようだと思って、ブーンは笑った。 

( ^ω^)「(今まではどうしても理解できなかったけど、 
今は何となくこの歌が何を言いたいのかわかるお・・・)」 

それは、どうして? 
どうして分かるようになった? 
この感情の、名前はなに? 
この気持ちを支配している人は、だあれ? 

( ^ω^)「・・・・・・ドクオ、いるかお・・・?」 

ブーンは思いついたように携帯電話を手に取る。 

トルルルルル トルルルルル・・・・・・ 

ガチャ 

'A`)「ハーイもしも新橋?」 

何回目かのコールでドクオが出る。 

( ^ω^)「ドクオ・・・ちょっと聞いてくれお・・・」 

('A`)「あ、なんだ?」 

ブーンは今までの経緯をドクオに話した。 

('A`)「ほう・・・」 

( ^ω^)「一体僕はどうしてしまったのかお?」 

ブーンのその言葉に、ドクオは笑った。 

('A`)「どうしたも何も・・・お前その子の事が好きなんじゃん」 

( ^ω^)「え!!!?」 

('A`)「初恋おめでとう。アレだな、お前にもようやく歌詞に君は特別な人とかなんとか 
歯の浮くような台詞をかけるような時代が来たんだな。」 

ドクオは冗談ぽくブーンに言う。 

( ^ω^)「ち、違うお!!僕は別に好きじゃないお!!! 
いや、好きだけどそういう好きじゃなくて・・・」 

('A`)「照れるなよ。安心しろ。俺友達いねえから言いふらす人なんていないし。」 

( ^ω^)「ほ、本当だお!!一番好きなのはツンだけじゃなくて、 
僕はみんなが一番好きなんだお!!だからツンが特別とかそんなんじゃ・・・」 

慌てふためくブーンにドクオは面倒くさそうな声をだす。 

('A`)ノシ「あー、うん、分かった。そうだな、うん。じゃ俺もう寝るから。 
お休ミミガー」 

( ^ω^)「ちょ、ドクオ本当に分かってるのかお!?僕は・・・」 

ブーンが言い終わらない内に、ドクオは電話を切ってしまった。 

( ^ω^)「違うんだお・・・」 

ブーンは別に照れている訳でも何でもなかった。 
単純に思っていることを言っただけだった。 
確かにツンが一番好きだった。でも家族や友達や、他のみんなも一番好きだった。 
ツン一人を特別だとは思いたくなかった。 
そう思うことが怖かった。 

( ^ω^)「(もし僕がツンだけを大好きになってしまったら、そうなったら僕は今まで 
みんなを大切に思っていた気持ちを失くしてしまうかもしれないお・・・それは嫌だお・・・)」 

ブーンは昔から誰か一人だけ「特別」な人を作ったりなどしなかった。 
そんな人ができたら今まで自分を好きでいてくれた人達を 
裏切る事になってしまうと本気で思った。 
自分を愛してくれた両親を、自分を大切に思ってくれている友達を置いて、 
他の誰かを一番にするなんてしたくなかった。 
人に順位をつけたくなどなかった。 

( ^ω^)「(僕は・・・僕は・・・)」 

胸が苦しくなった。 
そう思いながらもただツンの顔が頭に浮かんできてどうしようもなくなってしまった。 

ξ゚听)ξ「そうだ。あんた金曜私の家来る?」 

( ^ω^)「は!!!!!!?」 

水曜日いつものようにブーンはツンの喫茶店に遊びに行き、 
ちょうど他にお客もいないという事でまた二人で話をしていた時だった。 

( ^ω^)「えええ!しょしょ、しょれはもすかすてあのそのえええええ」 

ツンの突然の誘いにブーンはあたふたする。 

ξ゚听)ξ「ちょっと何勘違いしてんのよ。あんた前私の絵がみたいって言ってたでしょ? 
それで金曜バイト休みになったから見にきたらどうかって言ってんのよ。」 

( //ω//)「ああああのでもでもでもそのその・・・・」 

ブーンは赤面する。 

ξ゚听)ξ「別に嫌だったら無理しなくていいわよ。 
私だって暇じゃないんだし。」 

( ^ω^)「いえ!行かせてもらいますお!」 

ξ゚听)ξ「そ?じゃあ金曜の17時、ドギマギ駅で待ってるから。」 

( ^ω^)「わわ分かったお!!」 

ξ゚听)ξ「あ、常識として手土産くらい持ってきなさいよ。 
手ぶらで来たら帰ってもらうからね。」 

( ^ω^)「うはwwwww」 

その日ブーンは金曜日が待ち遠しくてたまらなかった。 
そしてあっという間に金曜がやってきた。 


( ^ω^)「着いたお。」 

金曜日、ブーンがドギマギ駅に着いたのは16:30。待ち合わせ時間より30分も早く着いてしまった。 

( ^ω^)「(ツンはまだ・・・来る訳がないおww仕方ない、待つお。)」 

そう思いながらブーンは土産に持ってきたケーキを見る。 
確かツンはショートケーキが好きだと言っていたので、 
ショートケーキと、それからお姉さんの分のケーキを買った。 
彼女は喜んでくれるだろうか・・・ 
そんな事を思っていた時だった。 

ξ゚听)ξ「あれ!?ブーン!?」 

思いのほか早くツンがやってきた。 

( ^ω^)「えっ!?ツンどうしたんだお!?まだ全然時間より早いお!?」 

ξ゚听)ξ「あ、あら、そうだったかしら!?」 

( //ω//)「ツン、まさか早く僕に会いたくて・・・」 

ブーンの言葉にツンは顔を真っ赤にして怒る。 

ξ////)ξ「そそそそそそんな訳ないでしょ!バッカじゃない!? 
た、たまたま用事があったから早く来ただけよ!!」 

( ^ω^)「用事ってなんだお?」 

ξ゚听)ξ「あ、あんたが変な事言うから忘れたわよっ!どうしてくれんのよ!!」 

そう言ってツンはブーンを殴る。 

( ;ω;)「痛いお・・・」 

ξ゚听)ξ「ふっ、ふんっ!!あんたが悪いんだからね!! 
ほらっ、とっとと行くわよ!!」 

ツンはブーンの腕を引っ張ってずんずんと歩いて行った。 

( ^ω^)「(うはwwwwどさくさで手つないじゃったおwwww)」 

ξ゚听)ξ「ほら、ここが私のアパート。」 

ツンがそう言って指をさした場所は清潔感の漂う綺麗な建物だった。 

( ^ω^)「ちょwwwこれアパートじゃないおwwwこういうのはマンションて言うんだおwww」 

ξ゚听)ξ「そうなの?ずっとアパートだと思ってたわ。あ、私の部屋ここの8階ね。」 

二人はエレベーターを上り、8階に着いた。 

ξ゚听)ξ「はい、ここが私の家。」 

( ^ω^)「(緊張するお・・・)」 

ξ゚听)ξ「最初に言っておくけど、変な事したらすぐ警察に突き出すからね。」 

( ^ω^)「うはww把握したwwww」 

ツンはブーンを軽く小突いた後インターフォンを鳴らした。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん?私。友達連れてきた。」 

「あー、ツンちゃん!ちょっと待っててね!」 

そしてガチャリと鍵を開ける音がしてドアが開く。 

J゚-゚)「ツンちゃん!おかえりなさい!」 

中からはツンによく似た綺麗な女の人が出てきた。 

ξ゚听)ξ「ただいま。」 

( ^ω^)「初めまして。ツンさんの友人の内藤というものですお。」 

J゚-゚)「初めまして!ユリです!ツンちゃんのお姉ちゃんです!ないとうさんと言うんですか?」 

ξ゚听)ξ「ブーンで良いわよ。」 

J゚-゚)「え、でも・・・良いんですか?」 

( ^ω^)「なんと呼んでもらっても構わないですお。 
あとお姉さんの方が年上ですんで敬語も別に良いですお。」 

J゚-゚)「本当?じゃあブーン君、よろしくね!」 

( ^ω^)「よろしくですお。あ、これお土産のケーキですお。二人で食べて下さいお。」 

ブーンがユリにケーキを渡すとユリは手を叩いて喜んだ。 
その姿は本当に7歳の少女のようであった。 

ξ゚听)ξ「適当に座って。今お茶出すから。」 

( ^ω^)「別に大丈夫だお。気にしないお。」 

ξ゚听)ξ「私が気になるのよ。」 

そう言ってツンは台所にむかった。 
ブーンは座って部屋を見渡す。掃除が隅々まで行き届いてとても綺麗な部屋だ。 
ただ、壁やソファー等の所々に小さな引っ掻き傷のようなものがあった。 

( ^ω^)「(外観は新しかったけど、中は結構古いのかお?) 

そんな事を考えていると今まで興味深そうにブーンを見ていたユリが話しかけてきた。 

J゚-゚)「あのう・・・」 

( ^ω^)「なんですかお?」 

J゚-゚)「今日はツンちゃんの絵を見にきたんだよね?」 

( ^ω^)「そうですお。」 

J゚-゚)「あっ、あのね、ツンちゃんとっても絵が上手なんだよ! 
ユリ、ツンちゃんの絵大好きなんだ!」 

嬉しそうにユリは話す。 

( ^ω^)「そうですかお。楽しみですお。」 

J゚-゚)「今描いてるのはコンクールに応募するのなんだって!とっても可愛い絵なんだよ!」 

( ^ω^)「おお、それはすごいですお。」 

こうやって話していると、言葉使いこそ幼いものの本当に普通の人だとブーンは思った。 
しばらくしてツンがお茶を持ってやってくる。 

ξ゚听)ξ「はい。お待たせ。紅茶でいいでしょ?」 

J゚-゚)「やったー!紅茶大好き!」 

そしてお茶を飲みながらしばし3人で談笑をする。 

( ^ω^)「そろそろツンの絵がみたいお。」 

ξ゚听)ξ「ああ、そうだったわね。ちょっと待って。」 

ツンは奥の部屋からカバーのかかったキャンバスを持ってきた。 

ξ゚听)ξ「今はこれを描いてるの。」 

そう言ってツンは持ってきたキャンバスのカバーを外す。 

( ^ω^)「おおお!すごい可愛い絵だお!」 

キャンバスには異国風のお城や街並みが油絵で描かれていた。 

J゚-゚)「これがさっき言ってたコンテスト用の絵だよ!ねっ、ツンちゃん。」 

ユリがまるで自分の事のように得意気に言う。 

( ^ω^)「これはどこかの風景画かお?」 

ξ゚听)ξ「ううん。私の想像の世界。こういう所にすめたら良いなって思って。」 

( ^ω^)「えっ、想像でここまで描けるなんてすごいお! 
これはもしかしなくともイイ線行くんじゃないかお?」 

ξ゚听)ξ「それは無理よ。というか私は賞なんて狙ってないわ。 
この絵は単に私が今まで描いてきた絵の中で一番気に入ってるから 
思い出作りに出品してみようと思ってるだけ。」 

( ^ω^)「でも、僕は絵の事なんて全く分からないけど、 
ツンの絵はとっても上手だと思うお。もっと自信もって良いんじゃないかお?」 

J゚-゚)「うん!ツンちゃん上手だもん!絶対優勝しちゃうよ!」 

二人の言葉にツンは苦笑する。 

ξ゚听)ξ「上手な人なんて美大にはいっぱいいるわ。賞が取れない事くらい分かってるのよ。 
ありきたりな構図にありきたりな発想にありきたりな色使い・・・。 
コンクールに出品するような人たちはもっと斬新な発想や色使いをしてくるわ。 
私なんかが敵うわけない。」 

( ^ω^)「じゃあもうちょっと絵に時間を裂けば良い考えが浮かぶんじゃないかお?」 

ξ゚听)ξ「そうしたいけどバイトがあるしね。学校行って帰ってきて課題やったりしてたら 
もうあっという間に一日が終わっちゃうの。全然絵に時間をかけられないのよね。」 

J゚-゚)「じゃあ、バイトなんて辞めちゃえばいいのに!」 

ユリの発した無邪気な言葉に、ツンの顔が一瞬凍りつく。 
しかしすぐ笑顔に戻り、ユリに言う。 

ξ゚听)ξ「・・・お姉ちゃん?あんまり無責任な事いうと、夕飯作らないわよ?」 

J゚-゚)「ええ!やだよ〜!」 

ξ゚听)ξ「もう怒った。決めた。今日はカップラーメンでも食べて下さい。」 

J゚-゚)「やだ〜!ツンちゃんのご飯がいい〜!」 

笑顔でじゃれあう二人を見て、本当に仲がいいなとブーンは思った。 
まるでそこに悲しみや苦しみなどないようであった。 

( ^ω^)「あ、じゃあもうこんな時間だし僕はそろそろ帰るお。」 

ブーンがそう言った時、時刻はもう19時を回っていた。 

ξ゚听)ξ「あら、そう?じゃあ送っていくわ。」 

J゚-゚)「もう帰っちゃうの?ブーン君もうちでご飯食べて行けばいいのに。」 

( ^ω^)「いえいえそういう訳にもいきませんお。」 

J゚-゚)「そっかあ・・・ざんねん。」 

ユリは本当にがっかりした様子だった。 

ξ゚听)ξ「ほら、行くわよ。じゃお姉ちゃん、私駅まで送っていくから 
お留守番お願いね。」 

J゚-゚)ノシ「うん・・・。ブーン君バイバイ!また来てね!」 

( ^ω^)ノシ「何度だって来ますお。じゃあさよならですお。」 

そう言ってツンとブーンはユリを残し部屋から出た。 

ξ゚听)ξ「そんなに何度も来なくていいわよ。」 

( ^ω^)「うは・・・・・・ツン冷たいお・・・・・・」 

二人は駅に着くまでの間ほとんど無言であった。 
ブーンは途中何度も何か話そうと思ったが気持ちばかりが空回って話す事などできなかった。 
やがて駅に着き、ツンが口を開いた。 

ξ゚听)ξ「・・・今日はありがとう。」 

( ^ω^)「へ?何がだお?」 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃんと普通に喋ってくれたの、あんたが初めてなのよ。 
今までうちに友達連れてきても、みんなお姉ちゃんには素っ気無かったり 
ぎこちなかったりして、ちゃんと話してくれる人いなかったの。」 

( ^ω^)「そうなのかお?不思議だお。僕はお姉さんは普通の人だと思うお。」 

ξ゚听)ξ「うん・・・そう。お姉ちゃんは普通なのよ。私ともブーンともどこも違いなんてないのよ・・・」 

( ^ω^)「ツン?」 

ξ゚听)ξ「・・・そろそろ電車が来るわ。じゃあね。気をつけて帰ってね。」 

( ^ω^)ノシ「うん!今日は楽しかったお。じゃバイバイだお!!」 

電車に乗り、つり革に掴まりながらブーンは今日の事を思い返していた。 

( ^ω^)「(今日は楽しかったお。ツンのお姉さんにも会えたし・・・ 
できればあのままずっといたかったお。)」 

あのまま、ずっといたかった。 

( ^ω^)「(え・・・?)」 

何でそう思うんだろう? 
何でそんな事考えるんだろう? 

( ^ω^)「(それは、僕が・・・)」 

そこから先は深く考えないようにしながらブーンは家に向かった。 


それから2週間後・・・ 

ツンは相変わらずバイトに追われていた。 
ブーンは風邪をひいたらしく最近ツンのバイト先に来れなくなっていた。 
ツンは寂しかったがまさかそんな事も言えるはずもなくただ淡々と日々を過ごしていた。 

ξ゚听)ξ「はあ・・・疲れた。」 

学校帰り、一人ツンはそう呟く。 
ここの所大学の課題提出が重なり、ツンは心身共に疲れていた。 

ξ゚听)ξ「(今日はバイト休んじゃおうかな・・・でも、そんな訳にはいかないわね。 
それに今日はブーンが来るかもしれないし・・・全くあのバカいつまで風邪ひいてるのよ。)」 

何度もツンはブーンのお見舞いに行こうと思ったが、 
いつも照れが先行してしまい行くことが出来なかった。 

ξ゚听)ξ「(ブーンが元気になったら、お祝いに羊羹でも買ってあげようかしら。 
たしか和菓子好きだったわよね・・・)」 

そんな事を考えながら家に向かう。 
ブーンの事を考えているときは、嫌な事があっても忘れられた。 

ξ゚听)ξ「ただいまー。お姉ちゃん、鍵あけて?」 

部屋のインターフォンを押しそう言うとすぐに鍵があいてユリが出てくる。 

J゚-゚)「ツンちゃんお帰り!」 

ξ゚听)ξ「ただいま。」 

J゚-゚)「ツンちゃん見て!今日はこんなに出来たのよ!」 

そう言ってユリは部屋に置かれた資料のようなものを見せる。 

ξ゚听)ξ「わあ、すごいじゃないお姉ちゃん。」 

ユリは最近内職を始めていた。 
会社の資料の袋詰めをする仕事で、一袋2円というものであったが 
それでもユリは自分でも働けるという事に喜びを感じていた。 

J゚-゚)「ねっ?すごいでしょ?あ、ねえツンちゃん、今日はずっとお家にいる?」 

ξ゚听)ξ「今日は喫茶店のバイトよ。月曜から水曜はいつもそうじゃない。」 

J゚-゚)「ええ〜。ツンちゃん最近忙しすぎるよー! 
いつもバイト行ったり学校に行ったりしてて全然ユリと遊んでくれないんだもん!」 

ξ゚听)ξ「ごめんね?今度遊びましょう。」 

J゚-゚)「あ、でも明日は木曜だからバイトお休みだよね?明日遊ぼう!」 

ξ゚听)ξ「・・・ごめんね・・・明日は、絵の続き描かなきゃ・・・」 

ツンが申し訳なさそうに言うと、ユリは首を振って怒る。 

J゚-゚)「やだやだ!!明日遊びたいの!!遊ぼうよ!!」 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん、お願い、我が儘言わないで。今度遊びましょう?」 

J゚-゚)「やだー!!やだー!!」 

ユリは叫ぶように言い、ソファーや壁をバリバリと引っ掻き始める。 
前にブーンの見た無数の傷は全てユリがつけたものだった。 
あの事故以来、ユリは思い通りに行かない事があると壁や床を血がでるまで引っ掻くようになったのだ。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん・・・止めて・・・」 

ツンの言葉が聞えないのか、ユリは喚きながら壁を引っ掻き続ける。 

ξ゚听)ξ「(・・・・・・)」 

ツンの精神状態はもう限界に来ていた。 

ξ゚听)ξ「止めてって言ってるでしょう!?」 

J゚-゚)「!」 

ツンは大声で怒鳴った。ユリはそれに驚いて壁を引っ掻くのを止める。 
怒鳴った事により、ツンが今まで気づかないフリをしていた 
ドロドロした感情が一気に込み上げてきた。そしてそれを抑える事などツンにはできなかった。 

ξ゚听)ξ「誰の為にバイトしてると思ってるのよ!お姉ちゃんの為じゃない! 
私だってバイトなんかしたくないわよ!もっと絵を描いていたいし、 
友達と遊びたいし、好きな人とも一緒にいたい!!」 

J゚-゚)「・・・・・・」 

ユリは悲しそうにじっと下を向いている。 

ξ゚听)ξ「なんでそれを分かってくれないの!?なんでありがとうって言ってくれないの!? 
私お姉ちゃんの為にどれだけいろんな事を我慢してきたと思ってる!? 
お姉ちゃんのせいで、私やりたい事だってちゃんと出来ない! 
疲れてたって、誰にも助けてもらえない!!」 

J゚-゚)「ツンちゃん・・・」 

ξ゚听)ξ「私一人なら仕送りだけで十分やっていけるのに!! 
お姉ちゃんがいるから、私は・・・お姉ちゃんなんか!!」 

オ姉チャンナンカ、死ンジャエバイイノニ 

ξ゚听)ξ「!」 

やっとツンは正気に戻る。自分は今なんて残酷な言葉を言おうとしたのだろう。 
なんて残酷な言葉で傷つけたのだろう。 

J;-;)「ツンちゃん・・・ごめんね・・・ごめんなさい・・・ユリの事、もう嫌いになっちゃった・・・?」 

ユリは泣きながらツンに謝る。しかしツンはそんなユリを直視できなかった。 

ξ゚听)ξ「私・・・もうバイト行くね・・・」 

そう言ってツンは部屋から出て行った。 

J;-;)「ツンちゃん・・・ツンちゃん・・・」 



ツンはどうしようもなく重たい気持ちでバイト先へと向かった。 
疲れてたとはいえ、よくもあんな酷い事が言えたものだと思った。 

本当はユリだって施設に入ったほうが良かったのかもしれない。 
そうすればこんな苦労などさせなかった。 
きっともっと幸せでいられたのかもしれない。 
それを自分が無理やり右も左も分からない東京にいきなり連れて来たのだ。 
一緒にいたい、それだけの理由で。 
もしかしたらユリは、自分の事を恨んでいるかもしれない。 
なのに自分はあんなにも酷い事を言ってしまった。そして言ってしまった事はもう取り返せない。 

ξ゚听)ξ「(ブーン・・・)」 

ツンは携帯電話をバッグから取り出しブーンに電話する。 
無性に彼の声が聞きたかった。しかしブーンが出る事はなかった。 

ξ゚听)ξ「(バカ・・・)」 

ξ;凵G)ξ「なんで出てくれないのよ・・・?」 

バイト中もブーンは来なかった。 
バイトが終わり携帯を見ても彼からは何の連絡もなかった。 

ξ゚听)ξ「(・・・帰るか・・・)」 

店長「あ、ツンちゃんお疲れ様。今日はケーキがたくさん余ったんだけど 
何か持っていくかい?」 

店長はそう言ってケーキの棚を見せる。 

ξ゚听)ξ「・・・じゃあ、ショートケーキとチョコレートケーキ下さい・・・」 

チョコレートケーキはユリの一番好きなケーキだった。 

今日帰ったら、ユリにちゃんと謝って許してもらおうとツンは思った。 

ξ゚听)ξ「あれ・・・?」 

家に帰りインターフォンを鳴らしてもユリから応答はなかった。 

ξ゚听)ξ「(もう10時だし、先に寝ちゃったのかな?)」 

ツンは鍵を使って家に入る。人の気配は、なかった。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん?」 

ツンは姉を呼んだ。しかし返事はない。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん?お姉ちゃん!」 

ふとツンがテーブルに目をやるとそこには「ごめんなさい」と書かれた手紙が置いてあった。 

ξ゚听)ξ「(お姉ちゃん!?まさか・・・)」 

ツンに嫌な予感が走る。その時・・・ 

ピンポーン 

突如インターフォンがなり、ツンは確認もせずドアを開けた。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん!?」 

( ^ω^)「あ、ツン久しぶりだお。さっきは電話出れなくてごめんだお。」 

そこには久しぶりに見るブーンがいた。 

ξ゚听)ξ「・・・・・・」 

( ^ω^)「や、やっぱり突然、しかもこんな時間に来てまずかったかお!? 
でもなんだかツンが気になって・・・って、えっ!?」 

ツンはブーンを抱きしめた。 
会いたくて、声が聞きたくてたまらなかった。 

( ^ω^)「ツツツツツツツン!?どどどどどうしたんだお!?」 

ξ゚听)ξ「・・・お姉ちゃんが、いなくなったの・・・私の・・・せいで・・・」 

( ^ω^)「えっ!?」 

ツンはブーンを部屋に招き、今までの事を話した。 

( ^ω^)「それは大変だお!!早速探しにいかないと!!」 

ξ゚听)ξ「うん・・・ねえ、ブーン、今の話聞いて、どう思った?」 

( ^ω^)「へ?」 

ξ゚听)ξ「今の話聞いて、私の事どう思った!?」 

そう言うと、ブーンは少し黙り込む。 
答えを聞くのがツンはとても怖かったがでも聞かずにはいられなかった。 

ξ゚听)ξ「私、自分の我が儘でお姉ちゃんを無理やり連れてきたのに、 
自分が疲れたってだけであんなに酷い事言えちゃうなんて、最低でしょう!? 
すごく汚い人間でしょう!?」 

( ^ω^)「ツン・・・そんな事、そんな事ないお・・・」 

ξ;凵G)ξ「う、嘘言わないでよ! 
それに私、今だってこのままお姉ちゃんが見つからなければなんて思ってしまったの。 
そうすれば、もっとブーンといられる、好きな事もできるって・・・思って・・・ 
ねえ私、最悪でしょう!?死んじゃえばいいのは、私の方なのよ!!」 

泣きじゃくるツンを、ブーンはそっと抱きしめた。 
抱きしめられた時、「ああ、私はこの人が好きなんだ。」と、無性にツンは思った。 

( ^ω^)「ツンはお姉さんが大好きなんだお。 
でも、やっぱり綺麗な事ばかり言ってられないんだお。だって二人とも人間なんだから。 
それに気づけたツンはえらいお。頑張ったお。」 

ξ;凵G)ξ「・・・私、自分がお姉ちゃんにやっている事で見返りなんて求めてないって思ってた。 
なのに私は、無意識のうちに見返りを・・・ありがとうって、 
頑張ってくれてありがとうって言葉を期待してたの・・・」 

( ^ω^)「ツン・・・」 

ピンポーン 

不意にインターフォンがなった。 

ξ゚听)ξ「はい・・・」 

「あ、すみませんニュー速警察署の者ですが・・・」 

ξ゚听)ξ「え!?」 

( ^ω^)「どうしたんだお?」 

ツンが急いでドアを開けるとそこには警察官と、ばつが悪そうに俯いているユリがいた。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん!!」 

( ’_’)「妹の、ツンさんですか?」 

ξ゚听)ξ「はい・・・」 

( ’_’)「いやあ良かった。いえね、先ほどユリさんがうちの署の方に来て 
「帰り道が分からない」というものですから、お宅の住所をお聞きして、 
ここまでお送りしたんです。」 

J゚-゚)「ツンちゃん・・・ごめんね・・・」 

ユリは申し訳なさそうにツンに言う。 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん・・・良かった・・・」 

( ’_’)「では本官はここで。これからは気をつけてあげて下さいね。」 

ξ゚听)ξ「はい。すみません・・・ありがとうございます・・・」 

ユリは部屋に戻るとぽつりぽつりと喋りだした。 

J゚-゚)「あのね・・・さっきツンちゃんに怒られて・・・ユリはもうツンちゃんに嫌われたんだと思ったの・・・」 

ξ゚听)ξ「お姉ちゃん・・・」 

J゚-゚)「だから、出て行こうと思ったの。お父さんとお母さんの所に帰ろうと思ったの。 
だけど泣きながら歩いてたら駅までの道が分からなくなっちゃって・・・」 

( ^ω^)「・・・」 

J;-;)「そうしたら、どんどん心細くなってきて、お腹もすいてきて、 
ツンちゃんの、ご、ご飯がっ、食べたくなって・・・」 

ユリは泣きながら話す。ツンもそんな様子のユリを見て泣いていた。 

J;-;)「でっ、でも帰り道が・・・分からなくって・・・怖くって・・・」 

ξ;凵G)ξ「お姉ちゃん・・・ごめんね・・・。」 

J;-;)「・・・」 

ξ;凵G)ξ「私の我が儘でお姉ちゃんを勝手に東京に連れてきて、 
苦労させて・・・本当にごめんね・・・」 

J゚-゚)「そんなっ、ツンちゃんは悪くないよっ!」 

涙を拭いてユリが言う。 

J゚-゚)「ユリが悪いんだよ!ユリがわがまま言ったから・・・ツンちゃん、ごめんね・・・ごめんなさい・・・」 

そしてユリはツンをしっかりと抱きしめた。 

J゚-゚)「これからはユリ、もっとツンちゃんの事手伝うから・・・ 
難しい事はできないかもしれないけど、でも頑張るから!! 
だから・・・嫌いに、ならないで・・・?」 

ξ;凵G)ξ「お姉ちゃん・・・」 

ユリの胸の中でツンは言う。 

ξ;凵G)ξ「あのね、ケーキ貰ってきたの・・・ 
お姉ちゃんの好きなチョコケーキもあるんだよ。・・・一緒に、食べよう?」 

その言葉を聞いてユリはまた堪えていた涙が溢れ出した。 

J;-;)「うんっ・・・!うん、食べよう!ユリ、お腹すいた・・・」 

( ;ω;)「・・・・・・」 

ξ゚听)ξ「・・・なんであんたまで泣いてんのよ。」 

ツンにそう言われて初めてブーンは泣いている事に気づいた。 

( ;ω;)「こっ、これはうっかり・・・」 

ξ゚听)ξ「うっかり、じゃないわよ。」 

そう言ってツンは笑った。 
ユリも楽しそうに笑っていた。二人が仲直りして本当に良かったとブーンは思った。 


ξ゚听)ξ「悪かったわね。姉妹のゴタゴタにつき合わせちゃって。」 

ブーンを駅まで送っている途中、ツンが呟く。 

( ^ω^)「全然悪くないお。仲直りできて良かったお。」 

ξ゚听)ξ「ありがとう・・・本当に。感謝してる。」 

ツンはブーンに微笑みかける。 

唐突にブーンは思った。 
自分はツンが好きだ。と。 
頭の中に優しいメロディが流れ出す。 
綺麗な歌。この人を思ったから、流れ出した歌。 

( ^ω^)「ツン、僕は今急に歌ができたお。」 

ξ゚听)ξ「は?何急に。」 

( ^ω^)「家に帰ったら早速制作開始だお! 
できたらツンに一番に聞かせるお!ああ、急がないと! 
ツン、見送りはここまでで良いお!じゃバイバイだお!!」 

ξ゚听)ξ「え?ちょ、ちょっと・・・」 

そしてブーンは全力疾走で帰っていった。 

5日後・・・ 

ξ゚听)ξ「ん?」 

ツンが郵便受けを覗くと小さな小包が入っていた。 

ξ゚听)ξ「なにコレ・・・あれ?ブーンからだ」 

小包には住所も書いてなく切っても張られていなかったが 
隅のほうに小さく「内藤」と書かれてあった。 

ツンが小包を開けるとカセットテープと手紙が入っていた。 

ξ゚听)ξ「(手紙・・・?なんて書いてあるんだろ・・・)」 

ξ゚听)ξ<以下手紙の内容よ。 

ツンへ 

昨日やっと歌が完成したのだけど、やっぱり直接ツンの前で歌うのは恥ずかしいので 
この手紙と一緒に郵便受けに入れる事にしました。 
ツンを思って作った歌です。 
聴いてくれると嬉しいです。 
明日、またツンのいる喫茶店行きます。 それでは、また明日だお。 ブーン 

ξ゚听)ξ「ブーン・・・。」 

J゚-゚)「ツンちゃんどうしたの?」 

ユリがひょいっと手紙を覗こうとしたが、ツンはとっさに隠した。 

ξ゚听)ξ「なっ、なんでもない!なんでもないのっ!」 

J゚-゚)「?ふーん」 

そして夜中、ユリが眠った頃にツンはヘッドフォンをしてブーンのテープをコンポに入れた。 

ξ゚听)ξ「(再生っと・・・)」 

再生ボタンを押し、曲が流れ始める。 

ξ゚听)ξ「・・・・・・」 

優しくてとても静かなメロディに、ブーンの歌声が乗る。 
ツンは一言も歌詞を聞き漏らさないように耳をそばだたせて聴いた。 
真っ直ぐで、優しい歌詞だった。 

ξ;凵G)ξ「ブーン・・・」 

ツンは涙が溢れてとまらなくなった。 
自分はこの人にきっととても愛されているんだろう、そう思った。 
嬉しくて嬉しくて堪らなかった。 


「電話なってたって別に気にしないんだからねっ! 
誰からとかそんな事気にしないんだからっ!電話・・・」 

( ^ω^)「ん?電話だお。」 

ガチャ 

( ^ω^)「もしもしブーンだお。」 

ξ゚听)ξ「もしもし。」 

( ^ω^)「つっ、ツン!?どどどどうしたんだお!!?こんな時間に!!」 

ξ゚听)ξ「あんたねえわざわざ家の郵便受けに入れに来るんだったら直接渡しなさいよ。」 

( //ω//)「だ、だって恥ずかしかったんだお・・・」 

ξ゚听)ξ「・・・良かったわよ。あんたの歌・・・」 

( ^ω^)「え?」 

ξ゚听)ξ「なんか、感動した。ブーンに感動させられるとは思ってもみなかったわ。」 

ツンの言葉は素直に嬉しかった。 
そして思った。ちゃんと言わなくては、と。 

( ^ω^)「・・・ツン、僕はツンに言いたい事があるお・・・」 

ξ゚听)ξ「な、なによ急に・・・」 

( ^ω^)「あ、でも電話だとアレでアレだから・・・明日直接会っていうお。」 

ξ゚听)ξ「・・・分かった。・・・楽しみに、してるから。」 

そう言ってツンは携帯を切った。 
何だかとても幸せな気分だった。 

次の日ツンがバイト先の喫茶店に行こうとしてると、ブーンがドギマギ駅に立っていた。 

ξ゚听)ξ「あ、ブーン・・・」 

( ^ω^)「ツン・・・昨日も言ったけど、僕はツンに言いたい事があるんだお。」 

余程緊張しているのか、ブーンの手は微かに震えていた。 

ξ゚听)ξ「な、なあに?私これからバイトなんだから手短にね。」 

( ^ω^)「僕は、ツンが好きだお。」 

ξ゚听)ξ「・・・!」 

あまりにストレートなブーンの言葉にツンは少したじろいだ。 

( ^ω^)「僕は、僕は今まで誰かを「一番」好きになる事なんてなかったんだお。 
「一番」の人を作ったら、他の自分の大切な人たちへの気持ちが薄れてしまう、 
そう思ってたんだお。でもそれは間違いだったんだお・・・」 

ξ゚听)ξ「・・・・・・」 

( ^ω^)「ツンが一番大切になったからって、他の人たちへの気持ちが薄れる事なんてなかった。 
いや、むしろ前よりもっといろんな人たちを大切にしたいって、改めて思ったんだお。」 

ブーンは真っ直ぐにツンを見つめて言う。 

( ^ω^)「ツンを好きになってから毎日楽しくて、人に優しくしたくて仕方なくって、 
何もかもが大事に思えたんだお。それはツンのお陰だお。」 

ξ゚听)ξ「・・・そう・・・」 

( ^ω^)「ちょっと前まで僕はラブソングの意味なんて分からなかったけど、 
ツンに会ってなんでこんなに世界にラブソングがあるのかも分かったような気がするんだお。」 

( ^ω^)「好きって、すごいんだお。言葉だけじゃ足りないんだお。 
だからみんな自分の思いに曲をつけるんだお。 
言葉じゃ少なすぎるから、音楽の力を借りて伝えたいんだお。 
だから世界にはこんなにもラブソングがあるんだお。」 

ξ゚听)ξ「・・・ブーン・・・」 

( ^ω^)「ん?」 

ツンはそっとブーンの手を取り、言った。 

ξ゚听)ξ「私も好き。ブーンの事がすごく好き。」 

( ^ω^)「ほ、本当かお!?」 

ξ゚听)ξ「ブーンの歌を聴いて思った。この人はきっと私の事が好きなんだって。 
勘違いかもしれないけど、すごく強くそう思った。・・・とても嬉しかった。」 

( ^ω^)「ツン・・・」 

ξ゚听)ξ「私と付き合うとすごく大変だと思う。本当に、いろいろと・・・ 
それでも、良いの?」 

( ^ω^)「いっ、良いに決まってるお!!僕がどんだけツンの事好きだと思ってるんだお!? 
ツンが同性愛にでも走らない限りどんな事だって何とかしてみせるお!!」 

ξ゚听)ξ「・・・じゃあ、これから、よろしくね?」 

ツンの言葉にブーンは飛び跳ねて喜んだ。 

( ^ω^)「マジかお!!やったお!!ツン、どうもありがとうだお!!!」 

ξ゚听)ξ「私の事泣かしたら許さないわよ。」 

( ^ω^)「泣かす訳ないお!!これからよろしくだお!ツン!!」 

ξ゚听)ξ「うん、よろしくね。・・・あ」 

( ^ω^)「え?」 

ツンが時計を見ると、時刻はあと2分で17時を迎えようとしていた。 

ξ゚听)ξ「どっ、どうしてくれんのよ!!バイト17時からなのに!! 
あんたの話聞いてたせいで遅刻決定じゃない!!」 

( ^ω^)「えええええええ!?ご、ごめんだお!」 

ξ゚听)ξ「たった今私を泣かさないって言ってたくせに、もう私は泣きそうよ! 
責任取りなさい!!」 

( ^ω^)「そんな事言われても・・・ごめんだお・・・」 

ξ゚听)ξ「謝ってる場合じゃないわよ!ほら、電車来てる!ダッシュで乗り込むわよ!!」 

ブーンはツンに手を引かれ電車に乗り込む。 

これからはずっとこんな風に慌しくて、でも幸せな毎日がやってくるのだろう。 
一生大切にしよう。一生側にいてくれるように頑張ろう。 
ブーンだけでなく、ツンも実はそう思っていた事を、ブーンは知らなかった。 

ξ゚听)ξ「(私がこんな事思ってるなんて、ブーンには内緒にしとかなきゃね。)」 

そんな事を考え一人にやけるツンであった。