( ^ω^)が歌手になりたいようです-第五部-後編
それからさらに三ヶ月の時が流れた。 

夏が終わり秋になっても相変わらずドクオの路上ライブに人は集まらずにいた。 
ブーンもあれから何度か音源を持って行ったがやはり成果は0。 
返品を余儀なくさせられた。 

二人はお互い悩みを抱えている事など知らないままそれぞれが孤独に考え続けた。 

('A`)「(やっぱりインストのみで歌モノじゃないから人が来ないのか? 
・・・いや、歌モノでなくたって支持されてるミュージシャンはたくさんいる・・・)」 

( ^ω^)「(曲が原因かお?でもチューニングだってきっちり合わせてるし 
無理なキーで歌ってもいないから聴き苦しくはないハズだお・・・)」 

('A`)「(演奏力が問題か?だけどもう路上で何回もやってるし人前で弾いても大分緊張しなくなった。 
だからもうぎこちなさはないし、間違えないように細心の注意を払ってる。 
そこまで下手に聞こえてないはずだ。)」 


('A`)( ^ω^)「(一体何がダメなんだ?)」 

どこを間違えている?何がおかしい? 

がむしゃらにやり続ければ良いのか? 
だけどもしかしたらこんなに悩まなくても、 
単純に今よりもっともっと努力をすれば案外どうにかなるんじゃないか? 

・・・いや、原因が掴めないままがむしゃらにやっても状況が良くなる事など絶対にない。 
努力だけでどうにかなるならば、きっと人は背中に翼を生やす事だってできるだろう。 

原因は何だ?何がいけない? 
自分一人の力でその理由を発見する事ができるのか? 

( ^ω^)「(もう僕には無理だおww 
ちょうど今日ギコとショボンのアパートに泊まりに行く約束してるし、その時相談してみるお。 
・・・本当はドクオにも意見を聞きたいけど 
ドクオは今頃きっとストリートでお客さんをガンガン集めているお。 
そんな大事な時に余計な事いって時間を無駄遣いさせたくないお。)」 

ブーンは敢えてドクオに相談する事は止めた。 
自分と同じく音楽の道を志す彼の邪魔をしたくはなかった。 
そしてそれはドクオも同じだった。 

('A`)「(ブーンに泣き言を言ったら 
あいつは多分自分のことそっちのけで俺に時間を裂くに決まってるからな。 
今はあいつに変な心配事をさせたくない・・・。でも俺は他に相談するヤツなんていないし、 
やっぱりもうしばらく自分の力だけで頑張ってみるか・・・。)」 


その日の夜 

ピンポーン 

( ^ω^)(゚Д゚)「こんばんはーっ」 

二人がそう言うと、ガチャリと玄関のドアが開く。 

(´・ω・`)「やあ、よく来たね。久しぶり。」 

( ^ω^)「本当に久しぶりだおショボン。」 

(゚Д゚)「しっかしブーン見たときも思ったけどショボンも全然変わってねえな!」 

(´・ω・`)「そう?そんな事言ってギコだって全く変わってないじゃん。」 

3人とも本当に久しぶりの再会であった。 

挨拶もそこそこに部屋に入れてもらい、自分たちの近況を肴に酒を飲み、笑いあう。 

(゚Д゚)「そういやブーン、お前って確か歌手になりたいんだろ? 
今その為に特別な事とか何かしてんのか?」 

ギコがそう言い出したのは時刻が22時を回ろうとしている所だった。 

( ^ω^)「あー・・・、実はちょっと前からCD屋さんに自分の作ったテープを置いて貰ってるんだお。」 

ブーンの言葉に、二人は驚く。 

(゚Д゚)「すげえじゃん!なんだお前ホントに頑張ってんなー!」 

(´・ω・`)「なんだかもうプロみたいだねー!で、どう?売れてる!?」 

( ^ω^)「それが今まで1つも売れなくて返品の嵐だお。 
ちょっと今日はそのテープをいくつか持ってきたんで聴いてほしいお。」 

そう言ってブーンはかばんから持ってきたテープを取り出し、 
ショボンの部屋に置いてあるコンポに入れる。 
全てのカセットを聞き終わった時、ブーンが口を開いた。 

( ^ω^)「二人は、何がいけないと思うかお?僕はいくら考えても分からないんだお。」 

するとギコが少し申し訳なさそうに話し出す。 

(゚Д゚)「いや、普通にスゲーかっこよくて良いと思うよ。ホントに。俺こういうの好きだし。 
ただ・・・なんつーか、その・・・」 

( ^ω^)「なんだお?はっきり言ってもらって全然大丈夫だお。 
二人の意見を参考にしたいんだお。」 

(゚Д゚)「うーん、俺頭わりいから良い例えが見つかんねんだ。えっと・・・なんて言や良いんだ? 
例えるなら・・・例えるなら・・・」 

(´・ω・`)「レストランに行って肉を食べて、 
次はサラダを食べたかったのにまた肉がでてきたみたいな?」 

( ^ω^)「?」 

ブーンにはショボンの言ってる意味が分からなかったが 
ギコには通じたようで彼は「ああ!」と大きく頷く。 

(゚Д゚)「そうそう!そんな感じなんだよ!なんつーか、 
カルピス飲みながら飯は食いたくないっつーか・・・」 

( ^ω^)「そんな例えじゃ僕は分からないお。ちゃんと教えて欲しいお。頼むお。 
舐めろというなら足でも舐めるししろというなら犬の真似でもするお!」 

(´・ω・`)「ちょwそんな事しなくたってちゃんと教えるよ。 
それに基本的に僕はMだからそんな誘いを受けてもちっともそそられないからね。 
・・・つまり、ブーンの曲って一曲一曲はすごく良いんだけど、 
曲順や声の強弱のだしかたにちょっと問題があるんだよね。」 

(゚Д゚)「例えばさ、このカセット。一曲目はすごいハードロックな感じで始まってるのに 
二曲目でいきなりキラキラしたポップになってる。 
そうかと思ったら三曲目で今度はパンクっぽくなってるし・・・ 
多分いろんなジャンルに挑戦したかったんだろうけど、 
聴いてる側としては一貫性がなくて訳わかんねんだよな。 
ちゃんと伝えたい事とかは分かるんだけど 
正直ハイハイ、分かりましたよ。でもだから?って感じであんま共感できねえんだよ。」 

(´・ω・`)「それとこのカセット。バラードなのに声が出すぎている。 
曲調自体は静かで悲しい感じなのに、歌声がやたら元気だから何かおかしいんだよ。 
ちゃんとその曲にあった歌い方をしないと。 
せっかく良い曲なのに世界観がぶち壊れちゃってるんだ。」 

二人は次々とブーンの音源の悪いところを指摘する。 
ブーンは真剣にそれに耳を傾ける。 

( ^ω^)「なるほど、勉強になるお。言われてみれば確かにそうだお。」 

それからも話し合いは続いた。 
ショボンもギコも本当に真剣に考えてくれた。 
一人であれだけ悩んで分からなかった事が友人の手により次々と解決されていく。 
持つべきものは友達だとブーンは思った。 

(゚Д゚)「まあ大体こんなところなんじゃねーの? 
ってもうこんな時間かよ!?太陽昇ってきてるしww」 

(´・ω・`)「本当だ。そろそろ寝ようか。 
ブーン、ギコと二人でいろいろ厳しい事言っちゃってごめんね。」 

( ^ω^)「謝る必要なんて全然ないお。問題点が見つかって俄然やる気が出てきたお。 
むしろこんな時間までつき合わせちゃってこっちこそごめんだお。 
本当に感謝してるお。」 

そう言ってブーンは二人にお辞儀する。 

(゚Д゚)「良いって。そう言ってくれて俺らも嬉しいよ。 
・・・とにかくもう寝ようぜ。俺もう目が開かねえ・・・」 

( ^ω^)「そうするお。僕ももう意識なくしそうだお・・・」 

( ^ω^)(´・ω・`)(゚Д゚)「お休みー・・・」 

そして、しばらく眠った後にショボンの家を後にした。 

(´・ω・`)「じゃブーン頑張ってね。ギコもいろいろ頑張って。」 

(゚Д゚)ノシ「おう!じゃあなショボン。ブーン、行くか。」 

( ^ω^)ノシ「うん、行くお。ショボンもギコもありがとだお。 
じゃショボン、ばいばいおー。」 

(´・ω・`)ノシ「うん。また3人で飲もうね。」 

家に帰ったブーンは早速デモテープを作り直した。 
自分の納得のいくものが出来るまでに一ヶ月ほどかかった。 
そして無事デモテープは出来上がった。 

( ^ω^)「・・・できたお。今度こそきっと大丈夫だお」 

ちゃんと曲順を考えた。歌い方も曲に合わせて変えた。 
全6曲の世界にきちんと統一感を持たせた。 
今まで作ってきたデモテープの中では最高の出来だと思えた。 

しかしテープが完成した喜びと同時に不安がブーンを襲った。 
こんなに自信があるものができたのにまた売れなかったらどうしよう? 
もしまた返品されてしまったら、自分は立ち直れるだろうか? 
悪い考えばかり思い浮かんだ。 

( ^ω^)「(ちょっと落ち着くお。 
・・・あんなに3人で話し合ったんだから、売れないはずがないお。 
ショボンとギコ、それから自分を信じるんだお・・・)」 

そして水曜日・・・ 

( ^ω^)「(よし・・・)」 

ここへ来たのはもう何度目だろうか?そんな事を考えながらブーンは店に入る。 

(・∀・)「いらっしゃいま・・・あ、ブーン君!久しぶり。 
最近来なかったから気になってたんだよ。」 

一時期は週に2、3度程ここに足を運んでいたので 
いつの間にかブーンはすっかりここの店員と知り合いになっていた。 

(・∀・)「また、持ち込みかい?」 

( ^ω^)「そうですお。今までこれを作っててこれなかったんですお。 
じゃ、コレお願いしますお。」 

ブーンは店員にデモテープを差し出す。 

(・∀・)「へ〜。これはまた随分と時間をかけたようだね。 
今までは商品を返品した次の日にもう新しいテープ持ってきてたのに。 
で、今回のテープの出来のほうはどうだい?」 

店員は気さくにブーンに話しかける。 

( ^ω^)「正直これまでのどんなテープより自信ありますお。 
今度こそ絶対売って見せますお。・・・一つくらいは・・・」 

(・∀・)「おっ、すごい意気込みだね。 
いやあ、それにしてもまた来てくれて嬉しいよ。僕、実はひそかに君のファンでね。 
テープ持ってきてくれる度に毎回一番に視聴してたくらいなんだよ。」 

( ^ω^)「ちょwじゃあ買って下さいおwww」 

(・∀・)「はは、それはそれさ。とにかく、今回のテープも僕は期待してるよ。 
じゃ、いつもみたいに納品書かいてねー。」 

ブーンはすっかり慣れた手つきで納品書に必要事項を記入し、 
それから同意書にサインし店を出た。 

( ^ω^)「(神様・・・今度のは本当の本当に自信作なんですお。 
だから・・・だからお願いしますお。)」 

ブーンはこのデモテープに全力を尽くした。 
後はもう、神に祈るしかなかった。 


その頃のドクオドクオは・・・ 

('A`)「(今日もお客はゼロ、か。)」 

ドクオはもう誰も立ち止まらない事にすっかり慣れっこになってしまっていた。 
何がいけないのかずっとずっと考えているが 
やはり自分一人の力ではさっぱり分からず、途方に暮れていた。 

('A`)「(さて、もう帰るか・・・)」 

「あ、あのっ!ちょっと待ってください!」 

突如ドクオは呼び止められる。 

('A`)「はい?」 

(´゚∀゚`)「ああ、あのっ、毎週ここで路上やってる人ですよね!?」 

声の主は、高校生ぐらいの青年だった。初めて会うはずなのだが、 
なぜかその姿を見た事があるような気がする。 

('A`)「はあ・・・そうっすけど。」 

(´゚∀゚`)「きょ、今日はまだやらないんすか!?路上ライブ!」 

('A`)「ああ、さっきまで弾いてたけど全然お客さんいないからちょっと早いけどもう帰る所なんです。」 

ドクオがそう言うと、少年は心底がっかりしたような様子を見せた。 

(´゚∀゚`)「えええええええそうなんスか!? 
・・・なんだよもう・・・せっかく今日はバイトも塾も休みだってのに・・・」 

('A`)「?」 

いまいちこの状況が飲み込めていないドクオに気づき、少年ははっとする。 

(´゚∀゚`)「あっ、すみません!俺この近くの高校に通ってる・・・ 
ってそんな事はどうだって良いや。 
実は、俺、いきなりなんすけどお兄さんの大ファンなんです!!」 

('A`)「えええ!?」 

突然の少年の告白にドクオは驚く。 

(´゚∀゚`)「あのっ、俺も趣味でギターやってんすけど、 
初めてお兄さんの路上ライブ見かけた時すげえカッコイイって思って、 
それ以来ま、毎週俺ずっと見に来てたんすよ!気づいてました!?」 

そう言われて初めてドクオはなぜこの少年に見覚えがあったのか気づいた。 
確かにこの少年は、ほんの数分ではあるが毎週必ず立ち止まって 
ドクオのギターを真剣に聴いてくれていた。 

(´゚∀゚`)「でも俺、この曜日のこの時間帯って塾終わったらそのままバイトだから 
いつも5分ぐらいしかお兄さんの演奏聴けないんですよね。 
だけど今日はたまたま両方休みで、今日こそ最後まで聴けるって思って来たんすけど・・・ 
そっかー、もう終わってたんすね・・・」 

少年は改めてがっかりしてため息をついた。 

('A`)「あ、あの・・・」 

(´゚∀゚`)「はいっ!?」 

('A`)「そんな事言ってもらえるなんて、すげー嬉しいっす・・・。 
だから、そのお礼っつったらアレなんすけど・・・ 
よければもう一回やるんで聴いてってもらえませんか?」 

ドクオの言葉を聞き、少年は顔をぱあっと明るくした。 

(´゚∀゚`)「え!?マジで良いんスか!?じゃ、じゃあお願いします!!」 

ドクオは再び腰を下ろし、ギターを弾き始めた。 

('A`)「(よーし・・・良いトコ見せろよ、俺・・・ここで間違えたら恥だぞ)」 

自分にしっかりと言い聞かせながら、ドクオはかっちりした正確な演奏をしてみせる。 
やはり立ち止まってくれる人なんてほとんどいなかったが、 
少年はずっと嬉しそうに聴いてくれていた。 

('A`)「じゃ、今日はこんなところで・・・ほんと、ありがとうございます。」 

(´゚∀゚`)「そんな、お礼を言うのは俺のほうっす!ありがとうございます!! 
あの、これからも頑張って下さい!俺、応援しますから!!」 

そう言って帰ろうとする少年を、今度はドクオが引き止めた。 

('A`)「あっ、ちょ・・・すんません。」 

(´゚∀゚`)「え、はい!なんすか!?」 

('A`)「俺の演奏の悪いところってわかります!?」 

(´゚∀゚`)「え!?」 

急にドクオにそう言われ、少年は戸惑っているようだった。 
ドクオ自身もなんでこんな事を言ったのか分からなかった。 

('A`)「俺の演奏を好きになってくれて、それはすげえ嬉しいんですけど、 
絶対良いとこばっかじゃなくて問題あるとこもたくさんありますよね!? 
俺、何でお客さんこないのか前からずっと考えてるんすけど、 
自分じゃどうにも分からなくて・・・よければ、教えてもらえないっすか!?」 

(´゚∀゚`)「で、でも俺なんかが、そんな・・・」 

('A`)「お願いします!教えてください!」 

それからしばしの沈黙が流れた後、少年は口が開いた。 

(´゚∀゚`)「・・・じゃ、問題っつーか、ちょっと気になってたところを言っていいっすか?」 

('A`)「お願いします。」 

(´゚∀゚`)「お兄さんの演奏、すげーカッコよくって、 
ミスだって全くっていって良いほどなくって正直技術の面ではそこらのプロよりよっぽどだと俺は思うんです。 
だけど、聴いてていつも思うのは、なんかお兄さん苦しそうなんです。」 

('A`)「苦しそう?俺が?」 

(´゚∀゚`)「はい。えっと、うまく言えないけど、 
どうしても落とせないテストがあって、一生懸命勉強して、 
でもまだこんなんじゃ全然足りないっつってもう泣きながら勉強してるっていうか・・・」 

('A`)「それはつまり、焦ってる感じがするって事ですか?」 

(´゚∀゚`)「焦ってる・・・とはまた少し違うんすよね。 
ほんと、うまく言えなくて申し訳ないです。 
あ・・・、ストイック過ぎるって言うんすかね?こういうの。 
・・・うん、そうだ絶対そう。ストイック過ぎるんす。お兄さん。」 

少年は勝手に納得をする。 

(´゚∀゚`)「俺、お兄さんの完璧と言ってもいいくらいの演奏すごい好きっす。 
めっちゃ憧れてます。でも多分それは俺も音楽をやってるからだと思うんです。 
だから普通の、楽器を弾いてない人達にとっては 
お兄さんの演奏はちょっと窮屈っていうか、必死すぎるっていうか・・・」 

('A`)「・・・・・・」 

(´゚∀゚`)「・・・すみません、なんかエラそうに・・・」 

少年はまるで叱られた子供のように、ばつの悪そうな顔をした。 

('A`)「いや、そんな事ないですよ、全然。 
大分参考になりました。ありがとうございます。」 

(´゚∀゚`)「そう言ってもらえると嬉しいっす。 
あ!そうだ握手してもらえませんか?」 

('A`)「え?ああ、俺なんかでよければ・・・」 

ドクオはどこかすまなさそうに右手を差し出す。 
少年はその手を両手でがしっと握った。 

(´゚∀゚`)「ありがとうございます!来週もまた来ます。頑張って下さい。・・・それじゃ」 

('A`)「こっちこそありがとうございます。じゃ・・・」 


その夜、ドクオはアパートに戻って今日の少年の言葉を思い出していた。 

('A`)「(ストイック?窮屈?・・・俺の演奏が・・・?)」 

参考になった。そう言ったのは嘘ではないが、 
それがどういう意味なのかドクオはさっぱり分からなかった。 

ストイック過ぎる? 
間違えないよう、完璧を目指して演奏する事のどこが問題なんだ? 
どうしてそれが窮屈に聴こえるんだ? 

('A`)「わかんねーなあ、もう・・・」 

ジリリリリリン ジリリリリン 

ドクオの考え事は、電話のベル音に邪魔をされる。 

('A`)「(携帯じゃなくて家の電話がなるなんて珍しいな・・・)もしもし?」 

(-@∀@)「もしもし?・・・私だ。」 

電話は、父からであった。 

(-@∀@)「いや別に用はないんだが・・・お前が元気かと思ってな。」 

父は少し照れくさそうに言う。 

('A`)「父ちゃん・・・ちょっと聞いてくれないか?」 

(-@∀@)「?なんだ?」 

ドクオは今までのいきさつを父に話してみた。 
音楽嫌いの父にこんな事を話しても仕方ないとは思ったが 
それでもこのまま一人で悩むよりはよっぽど良いと思った。 

('A`)「俺、ちゃんと理論だって勉強してるし、いつも完璧に演奏できるように頑張ってる。 
でも別にそんな事全然平気なんだ。苦しくなんてない。 
なのに何で苦しそうに聞こえんだろ?」 

(-@∀@)「そうか・・・。」 

('A`)「もう全然分かんねんだ。 
その高校生にも言われたけどさ、俺必死すぎんのかな?」 

(-@∀@)「・・・お前、音楽って漢字書けるか?」 

('A`)「へ?何、急に。そりゃ書けるけど・・・音に、楽しいだろ?」 

突然の訳の分からない父の質問にドクオは少しイラつく。 

(-@∀@)「そうだ。音に楽しいと書いて音楽。この意味分かるか? 
今のお前の音楽は、楽しんでいるのではなくて学ぶ事に必死になっているんじゃないのか?」 

('A`)「え?」 

(-@∀@)「間違えないように弾く、これは確かに大事な事だ。 
でもお前はその事に囚われすぎなんじゃないのか? 
ちゃんと、自分の出す音を楽しめているのか? 
今のお前は勉強ばかりして遊び方を忘れてしまった子供のように思える。 
私は音楽の事はよく知らないがもうちょっと楽しんではいけないのか? 
そんなに音楽は完璧を目指さなければいけないものなのか?」 

('A`)「・・・」 

(-@∀@)「・・・すまないが、私はこんな事ぐらいしか言えん。」 

('A`)「いや、全然謝る事なんてないよ。どうもありがとう。 
・・・何か俺、目が覚めた。」 

(-@∀@)「そうか。なら、良かった。じゃあそろそろ切るぞ。 
たまには電話してきなさい。」 

('A`)「うん分かった。お休み。」 

父に言われ、初めて気づいた。 
自分が今までやっていたのは音楽ではない。音学だったのだ。 

父の言う通りだ。自分は完璧を目指すあまり余裕をなくしてしまった。 
初めて公園でやった時からずっとそうだった。 
間違えないように、恥をかかないように、その事ばかりに囚われていた。 

('A`)「そっか・・・だから俺、苦しそうだったんだ。」 

何で今までそんな事が分からなかったのだろう。 
あの少年に出会わなければ、父との電話がなければ、 
きっと自分はこれからも分からなかった。気づけないでいた。 
ドクオは二人に心から感謝した。 

('A`)「(そうだよな。別にまだ俺はプロじゃない。 
そんなに頑張らなくたって良いんだ。 
家で一人で弾いてた時みたいに、ただ楽しくやれば良いんだ・・・)」 

長い間胸の中でつかえていたものがやっと取れた気がした。 
来週は今までで一番良いライブにしてやる。そう思った。 

そして一週間後・・・ 

('A`)「(・・・・・・ふうー・・・・・・)」 

ドクオはいつもの時間にいつものようにイマキタの商店街にやってきた。 

('A`)「(もう完璧にやろうなんて思うな・・・間違えたって、構うな。 
その結果がどんなにクソなものになったとしても、とにかく今日は楽しむんだ。)」 

いつものように腰を下ろし、ギターを取り出す。 

(´゚∀゚`)「お兄さん!」 

この前の少年が駆け足でやってきた。 

(´゚∀゚`)「今日はこれから、ですか?」 

('A`)「あ、はい、そうです・・・」 

ドクオの言葉に少年は小さくガッツポーズをする。 

(´゚∀゚`)「俺、この前お兄さんと話せた事がすっげー嬉しくて、 
今日はもう絶対最初から最後までいようと決意したんす! 
だから塾さぼってバイトも無理言って代わってもらったんす! 
間に合って嬉しいっす!感激っす!」 

('A`)「え・・・それ大丈夫なんすか・・・?」 

(´゚∀゚`)「大丈夫っす!なんとかなるっす!」 

少年は自信満々に答えた。 

('A`)「はあ・・・あ、じゃあ始めます。」 

そう言ってドクオはチューニングを合わせる。 

さあ、音を奏でよう。 
今日はこの少年も、自分もとことん楽しくなるような空間を作ろう。 
音楽で、この空間を包みこもう。 

(´゚∀゚`)「わあ・・・」 

ドクオがギターを弾き始めると、少年は感嘆の声をもらす。 
以前までと音が違う。あの苦しそうな、張り詰めた緊張感が全くなくなっていた。 
今日のドクオは本当に楽しそうに嬉しそうに音を紡いでいっている。 

これが、音楽なんだ。少年はそう思った。 

ドクオの演奏中、一人、また一人と足を止め、彼の演奏に聴き入った。 
ほんの数人ではあるが、とても楽しそうにドクオの演奏に耳を傾けてくれていた。 

('A`)「・・・今日はもう、これで終わりです・・・。」 

演奏を終え、ドクオがそう言うと、拍手の音が辺りを包み込んだ。 

(´゚∀゚`)「お兄さんすごいっす!いや、いつもすごかったけど今日は特別すごかったっす! 
俺、途中泣きそうになっちゃったす!!」 

少年はとても興奮した様子でドクオに話しかける。 

('A`)「ありがとう・・・。他の皆さんも、聴いてくれて本当にありがとうございます。」 

そう言ってドクオがお辞儀をすると再び拍手が起こる。 

客1「兄ちゃん、頑張れよ!」 

客2「また聴きにきます!頑張って下さい。」 

そんな風に優しい声をかけてくれた。 

('A`)「はい、頑張ります・・・あの、こんなに(・・つっても3人だけど) 
お客さんいた事初めてなんで、すっごい嬉しいです・・・ 
俺、毎週この時間にここでやってるんで・・・良かったらまたお願いします。」 

気持ちを変えただけでこんなにうまくいくものなのかとドクオは驚いた。 
しかしとても嬉しかった。これからもきっとやって行けるとドクオは思った。 

それから1ヵ月後・・・ 

ピンポンピンポンピンポンピンポン 

( ^ω^)「ドクオー!!!開けるお!!!ドクオー!!!!」 

('A`)「な、なんだよお前、しばらく音信不通になったと思ったらいきなりきやがって・・・」 

ブーンがドクオのアパートに3ヶ月ぶりにやって来た。 

( ^ω^)「・・・・・・だお・・・・・・」 

('A`)「あ?何?」 

( ^ω^)「完売したんだお!!!僕のデモテープが!!!一瞬にして!!!」 

ブーンは嬉しさのあまりにドクオを抱きしめる。 

('A`)「ちょ、苦し・・・キモい・・・それに一瞬にしてって言い過ぎだろ・・・」 

( ^ω^)「確かに一瞬にしてって言うのは言い過ぎだけどでも売れたんだお!! 
しかも完売だお!?今まで返品の嵐だったこの僕のテープが!!」 

('A`)「分かった・・・分かったから離せ!」 

余程苦しかったのだろう。ドクオはブーンを突き飛ばす。 

( ^ω^)「嬉しい!!嬉しいおおおおおおおお!!」 

('A`)「そっか、良かったじゃん。 
・・・実は俺も最近やっと客が来るようになったんだよ。 
て言ってもいつも3人くらいしかいないけど。」 

( ^ω^)「そうなのかお?でも3人だってすごいお! 
僕だって完売って言ってもテープ5つだお。だから人数なんて気にしないで良いんだお! 
とにかく今はこの嬉しさを共有するべきだお!今日は飲むお!! 
でも僕いまお金ないからドクオ、ビール買ってくるお!」 

('A`)「ずうずうしい事言うなよw水で我慢しろ。」 

( ^ω^)「この際水でいいお!ありがとだお!」 

そしてブーンはドクオの部屋に入れてもらい水を一気に飲み干す。 

少し前まではもうダメかと思った。 
自分はこれ以上前に進めないのかと思った。 
でも友達が助けてくれた。自分の夢を応援してくれた。 
テープが売れたのは自分一人の力じゃない。 
支えてくれた人がいるからこそ、こんなに嬉しい結果がでた。 
自分の為にも、応援してくれてる人達の為にも、もっともっと頑張らなければとブーンは思った。 

そしてそう思っているのはドクオも同じであった。 
音楽というものは自分一人の世界だけで成り立っているものではない。 
聴いてくれる人がいるから頑張れる。 
楽しい事ばかりではないが、辛くても必ずその先には喜びが待っている。 
音楽に出会って、音楽を愛せて幸せだ。そう思っていた。 

( ^ω^)「ふう、よし!今日は朝まで語るお!ドクオ!」 

('A`)「よし。じゃまずは俺の成功ヒストリーを6時間ほど語らせろ。」 

( ^ω^)「僕のヒストリーが先だお!!」 

('A`)「俺だ。」 

( ^ω^)「むう・・・こうなったら野球拳で勝負だお! 
先に全裸になったほうが相手の話を聞くんだお!!」 

('A`)「望むところだ。俺は野球拳にはめっぽう強い事をお前は知らないようだな。」 

そんな事をしている内に、あっという間に日は落ちていった。 
今日もまた、幸せな一日が終わろうとしていた。