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( ・∀・)と川 ゚ -゚)は進んでいくようです 2008.07.26
( ・∀・)「この世界は、腐っている」
ぎらぎらと自己主張する太陽を遮る物は無く、曝されている地面が熱を反射していた。
ただでさえ今日は暑いというに、それらが熱気を更に高めている。
そんな、何もない荒野を歩きながら、呟いた。
川 ゚ -゚)「またそれか」
そして、僕がそう呟くと、彼女は呆れたようにそれを言う。
このやり取りは、日常の一部だった。
( ・∀・)「何度でも言うよ。この、世界は、どこまでも、腐っている」
川 ゚ -゚)「君のその理論は聞き飽きたよ」
( -∀-)「……つれないなあ」
軽く眉をしかめ、やれやれと肩を竦めてみる。
川 ゚ -゚)「そりゃ、毎日同じ事聞かされてみろ、飽きるぞ?」
( ・∀・)「毎日言ってるけれど、僕は飽きないよ?」
川 ゚ -゚)「脳髄凍らすぞ」
と、他愛のない会話をしながら、僕は笑い、彼女はぼんやりと空を見上げる。
( ・∀・)「それにしても、」
会話が途切れたので、何か話題をふろうと話し掛けてみる。
こちらを向いた彼女が、ん? と無表情に首を傾げた。
( ・∀・)「最近は物騒だね」
ああ、と頷いて、相槌をうたれる。
川 ゚ -゚)「こんな世界だからな」
いつの間にか持っていた氷を額にあてて、けだるげにぽつりと呟いた。
( ・∀・)「そうだね。腐ってるよなあ」
川 ゚ -゚)「今回ばかりは、私も同意だ」
僕たちが住む世界は、数年前、突如として改変された。
誰もが能力を持ち、使える世界。
未知の生物が、闊歩する世界。
それは、今までの平和を破壊するような出来事だった。
( ・∀・)「ああ、めんどくさい」
川 ゚ -゚)「そういうなよ。仕事なんだから」
破壊された平和は一般人に牙を向け、襲い掛かる。
それは、怪物の出現だったり、能力の悪用による事件だったり。
そんな非常事態を防ぐために僕らみたいな能力が強い者が派遣されるのだ。
( ・∀・)「なーんでこんな腐った事しなきゃいけないのさ」
一言ぼやく。
川 ゚ -゚)「仕事だから、な」
返ってくる返事はそれだけ。
ううん、分かってはいるんだけれどね。
( ・∀・)「……ってかさ、その氷一つ頂戴よ。
実は暑かったんだよね」
川 ゚ -゚)「え? 氷?」
すっとんきょうな声を上げて、自らの持っている氷を一瞥。
そしてまじまじと、こちらを見てきた。
(;・∀・)「何、真顔で馬鹿じゃないの? みたいな行動してくるの!?
僕はスーツなんだよ!? このクールビズなご時世にワイシャツまで長袖だよ!?」
川 ゚ -゚)「だって、あげたくないし……」
(;・∀・)「語尾を小さくして、更に器が小さい事言うなよ!」
川 ゚ -゚)「Wでお得……!」
(;・∀・)「得なんて微塵もないわ!」
川 ゚ -゚)「わがままさんめ……」
このままじゃラチがあかないので、突っ込みを止め、軽く言ってみる。
( ・∀・)「いいじゃん。クーならちょちょいのちょいじゃないか」
川 ゚ -゚)「この先どんな化け物が待っているかわからんのに……」
( ・∀・)「……分かったよ。だからいい加減、語尾の三点リーダを止めてくれ」
川 ゚ -゚)「この先どんな化け物が待っているかわからんのに……」
(#・∀・)「台詞を焼き直すな!
この先怪物がいるから三点リーダがどうしたと――」
言うんだ、と言おうとした時、異常な重圧を感じた。
自然には発生しない、この独特の威圧感。
殺気混じりの空気。
( ・∀・)「……敵か」
背中合わせになり、周りの気配を探る。
亡霊というのは、はっきりと認識しないと姿が見えないから厄介だ。
川 ゚ -゚)「モララーが騒ぐからだぞ……」
(#・∀・)「悪うござんしたね!
てか、もう見つかっちゃったから! 無駄な三点リーダいらないから!」
川 ゚ -゚)「ちっ」
(#・∀・)「ねぇ、今『ちっ』て言った? 舌打ちしたいのはこっちだよ?」
川 ゚ -゚)「うる――っさい!」
(;・∀・)「うおぉぉぉおお!?」
言うと同時にクーが氷塊を後ろに投げる。
背中合わせだったため、当然、氷は僕に向かって零距離射撃された訳で。
( ;∀;)「この子怖い! 幼なじみの同僚に氷投げてきた!」
川 ゚ -゚)「敵の前だぞ。静かにしろ」
(・∀・ )「え」
首を回されて、強制的に後ろを見せられる。
いたっ、と覇気のない声と、ぐぎり、という不吉な音が聞こえた。
川 ゚ -゚)「ほら、戦闘だ……、?」
( ∀ )「…………む、り」
戦闘の前に僕は瀕死。
足は身体を支える事も叶わなくて、ただクーに持たれているような感覚。
このまま、頭がすっぽ抜けそうな悪寒に襲われています。
川 ゚ -゚)「うわ、よだれ垂らしてるよ……きもっ」
(# ∀ )「そこかよ! いいから頭から手ぇ離せやおんどりゃー!」
川 ゚ -゚)「白目むいたまま怒られると、クーさんちょっと怖いかな」
(# ∀ )「クーさんが怖がってくれるならぼかー一生このままでいてもいいよ! ざまーみろ!」
川;゚ -゚)「分かった! クーさん猛省するから!
今日初めて汗垂らしながら謝るから! いつものモララーに戻ってくれ!」
ぱ、と急に手を離されて、へにゃり、と地面にへたりこんだ。
戦闘の前に殺されると思ったよ、僕。
( ・∀ )「分かった、戻る」
川;゚ -゚)「半端に戻られても余計怖いわ!」
( ´∀`)「こうか!」
川;゚ -゚)「誰だお前!」
久しぶりに僕がクーをからかえるという優越感に浸って遊んでいると、
後ろから「あのー……」と声をかけられた。
( ・∀・)「ん?」
川;゚ -゚)「ギャー! ……よく見たら元のモララーだコレ!」
( ・∀・)「クーさんは後で尻叩き30回ね」
川;゚ -゚)「微妙に堪えそうな回数設定が嫌だ!
てか、セクハラじゃん! いくら幼なじみでもセクハラじゃん!」
( ・∀・)「座るのが地味に痛いくらいに叩いてやる!」
川;゚ -゚)「モララーさんらしく地味な嫌がらせだ!」
('A`)「……すみませーん……」
再び脱線しかけていると、またもや背後から声がする。
しつこいなあ。
( ・∀・)「はいはーい、こんな僻地でどんな誤用ですか」
(;'A`)「誤用!? あ、あの貴方達はどうしてここに?」
おどおどと話しかけてくる男性は、何だか可哀相な雰囲気を漂わせていた。
主に妙に低い態度とか、ひょろっちい体格とか、貧相な頭とか。
( ;∀;)「……生きていればきっといいことありますよ! 早まらないで下さい!」
ああ、きっとこの人はリストラされてここで自殺をするつもりなのだろう。
自分に多額の保険金をかけ、幼い娘と愛する妻に迷惑をかけぬようこんな荒れ地にまで来て……!
( ;∀;)「奥さんと娘さんも、貴方を待ってますよ!」
(;'A`)「貴方、話を聞いてましたか!? あと、私、終生独身でしたから!」
体温を感じさせない手を掴み、強引に引っ張って行こうとすると、
何か、引っ掛かる発言が聞こえた。
( ・∀・)「……過去形?」
川 ゚ -゚)「こいつ、敵だぞ」
(;・∀・)「嘘! このオッサンが!?」
なんか全てにおいて、可哀相なオッサンが!?
川 ゚ -゚)「オッサンってか、亡霊だな」
(;・∀・)「ギャー! 霊と手、繋いじゃった!?」
手を振り回しながら、叫び回る。
教えてよ! ねぇ、教えることを覚えようよ!
川 ゚ -゚)「普通、繋いだ時点で気付くもんだけど」
(;・∀・)「確かに手が冷たかったです!」
川 ゚ -゚)「ま、弱そうだしさっさと倒して帰ろう」
( *・∀・)「わーい! やっちゃえー!」
頑張れクー! 僕のうけた屈辱を百倍にして返すんだ!
自業自得だ、といった感じの視線は気にしないからな!
(;'A`)「ななな、なぜ氷で出来た、く、釘バットを手に持っていらっしゃるのですか!?」
川 ゚ -゚)「力を抜け。痛いぞ」
('A(#)「何がぶぅっ!?」
悪霊退散と、爽やかな汗をきらめかせながら、クーがオッサンを吹っ飛ばす。
オッサンの身体が宙に浮き、四回転半ほどして、地面に転がった。
( ・∀・)「……三塁打!」
川 ゚ -゚)「もう半回転してればなあ……」
釘バットで素振りをしながら、悔しそうに呟くクー。
( ・∀・)「ええと、この前のスコアはなんだっけ?」
川 ゚ -゚)「確か、二塁打で終わってたから一点だな」
( ・∀・)「じゃあ今日のアイスは僕のおごりか」
川 ゚ -゚)「いえー」
(;A(#)「何なんですか!? 貴方達どんな悪魔ですか!?」
そんな和やかムードを楽しんでいた僕たちに、わりと切羽詰まった声が割り込む。
( ・∀・)「……空気、読もうよ……」
川 ゚ -゚)「……これだから、亡霊はさあ……」
('A(#)「え、あ、ごめんなさい……」
( ・∀・)「大体さあ、何でアンタ亡霊なんかやってるわけ?
人は殺すわ、空気読めないわ、僕らをこんな所にまで駆り出させるわの存在だよ!?
まさに害悪! 地球のゴミ!」
('A(#)「人殺し?」
川 ゚ -゚)「てめーの事だよ。カチンカチンに凍らせたバットを氷のバットでカチ割るぞ」
( *・∀・)「微妙な伏せ方がこれまたはれんちな!」
(*'A(#)「は、はれんちな!」
川 ゚ -゚)「人間ノック!」
(;A(##)「ばぐぁ!?」
調子に乗った亡霊にもう一回釘バットを振るう。
今度は綺麗に五回転して、更に二、三回跳ね、急停止する。
自業自得だよね。亡霊だもの。
それを見届けた僕は、雄々しく、高々と右手を天に掲げた。
( ・∀・)「ホーム、ランッ!」
そうして、架空の歓声に浸っていると、クーが首を傾げていた。
( ・∀・)「ん?どうかした?」
川 ゚ -゚)「……これ、本当に力の強い亡霊なのか?」
くるくるとバットを回しながら、足でオッサンを蹴る。
オッサンは乙女な座り方をして泣いていた。気持ち悪い。
(;A(##)「死にたい……」
川 ゚ -゚)「一緒に死んでやろうか?」
(;A(##)「死んでまで私をいたぶるおつもりで!?」
川 ゚ -゚)「この人、痛すぎる被害妄想しちゃってるよ……」
( ・∀・)「その前にあんたもう死んでるから」
しくしく泣くオッサンは、確かに、何の害も無さそうなんだけれど。
( ・∀・)「んー……これでも、亡霊は亡霊だし。そうなんじゃない?」
川 ゚ -゚)「なんか、違和感がなあ。殺す気失せるなあ。貧相過ぎて」
(;・∀・)「酷い言いようだな……仕方ないだろ。仕事なんだから」
川 ゚ -゚)「全てはVIPの為に……か。難儀だね」
( A(##)「VIP……?」
足元にいた霊がかすかに動く。
先程までの悲壮な感じが嘘のように失せていた。
( A )「そうか。ようやく釣れたか」
(;・∀・)「釣れた……?」
この威圧感は、先程までのいろいろと可哀相な亡霊には出せない物だ。
最初に感じたものと同一か、それ以上の殺気が骨張った身体から噴き出している。
川 ゚ -゚)「……正体を表せ。この化け物が」
( A )「化け物とは、ひでぇなあ」
ごき、と骨が外れる音がする。
簡単に吹っ飛ぶほどの貧相なオッサンは、背が高い青年に文字通り、変化した。
_
( ゚∀゚)「初めまして」
笑いながら挨拶をしてくる青年からは、刺すような邪気が漂う。
息が詰まりそうなプレッシャーと、頬を伝う汗が欝陶しい。
川 ゚ -゚)「骨格まで変わるのか……こりゃまた、何でもありだな」
_
( ゚∀゚)「亡霊は何でもありなんだよ。知らなかったか?」
川 ゚ -゚)「知ってたけどな」
改めて見ると目茶苦茶だ、と臨戦体制になる。
_
( ゚∀゚)「で? そこのニーサンは? びびっちゃって声も出ねぇの?」
( ・∀・)「………………」
にたにたと笑いながら、僕を品定めするように見る。
川 ゚ -゚)「……モララー?」
(#・∀・)「この亡霊なんかムカつく! 笑いが生理的に無理!」
川;゚ -゚)「落ち着け! お前も似たような笑い方だから!」
(#・∀・)「それってキャラ被ってるんじゃん! こいつ、敵! 認定!」
川 ゚ -゚)「……まあ、今更言わなくても最初からそんな雰囲気全開だったけど」
クーはそうぼやいてバットを持ち直し、腰を落とした。
俗にいう居合抜きの構えだ。
_
( ゚∀゚)「あ、ようやく戦闘っぽい? んじゃ、ジョルジュ、いっきまーす!」
ナイフを取り出し、一直線にクーに突っ込んでいく。
川 ゚ -゚)「甘い」
クーは一歩踏み出し、ナイフを払い、得物を亡霊――ジョルジュというらしい――の腹へ向けた。
_
(;゚∀゚)「そんなバット怖くね――うぉお!?」
構わずに突っ込もうとしていたジョルジュは、咄嗟に半転し、それを避ける。
川 ゚ -゚)「……惜しいな」
クーの持っていたバットは、氷で出来た刀へと姿を変えていた。
それを見、嬉しそうな表情をする。
_
( ゚∀゚)「氷使いか。あー、でも、ネーサンはそんな感じ」
けらけらと、笑いながら分析していた。
ああ、何だろう。やっぱりこいつは、すっごく気に喰わない。
(#・∀・)「何でそっち行くんだよ! こっち来いよ!」
_
( ゚∀゚)「俺は女好きなんだ! そっちよりこっちのネーサンがいい!」
(#・∀・)「確かに、巨乳で美人だけどさあ!
これは暴力女だから! ついでに馬鹿だから!」
_
( ゚∀゚)「乳さえありゃ、それでいいんだよ!」
(#・∀・)「ばっか! 貧乳こそが正義だろ!」
川 ゚ -゚)「てめぇら覚えてろよ?」
その不吉な一言を聞きつつも、真っすぐに突っ込んで来るジョルジュ。
それを飛んで躱し、瓦割りのように拳を振り落とした。
(#・∀・)「う、お、らぁぁああああ!」
_
( ゚∀゚)「は! そんな一撃――」
(#・∀・)「能力者を――嘗めるな!」
そのまま、拳を思い切り叩き込んだ。
ジョルジュは力に逆らう事なく、地に落ちる。
_
( ∀ )「ガ……ッ!」
空気が詰まる音を聞き、一旦飛びのく。
その時、不可がかかるように大きく背を蹴った。
( ・∀・)「クー。あいつ、どう思う?」
クーの隣に着地し、警戒を解かずに話し掛ける。
川 ゚ -゚)「それなりに力はあるようだが、能力者との戦闘を分かっていないな。
おそらく、ここ最近で力を付けた若い霊だろう」
( ・∀・)「僕も同意。しかし、あの殺気――」
川 ゚ -゚)「ああ、危険な芽は摘んでおくに限るな」
( ・∀・)「あのオッサンは天国にも地獄にも逝けずに迷っていた所を利用された、か!」
会話をしている所にナイフ一閃。
僕の頬を掠めない程度に躱す。
川 ゚ -゚)「モララー!」
( ・∀・)「大丈夫! ……お早い復活で」
_
(#゚∀゚)「てめぇ、さっき、何した……?」
先程までのどこか余裕があった態度を改め、怒りに目をぎらつかせながら憎々しげに歯軋りする。
手には片手に四本ずつ、計八本のナイフが握られていた。
( ・∀・)「……敵にそう易々と、能力を知られてたまるか」
_
(#゚∀゚)「なら、力付く、で!?」
またしても突進しようとしたのだろうが、それは敵わなかった。
足元には氷。
強固な氷がジョルジュと地面を繋げている。
_
(#゚∀゚)「何だ、これ……!」
( ・∀・)「逆上した馬鹿は足元の氷にすら気付かない……脳が腐ってるんじゃないか?」
_
(#゚∀゚)「あぁ!? こんな氷くらい切り裂いてやるよ!」
ジョルジュは自らの足に向かい、ナイフを振るった。
が、ナイフも呆気なく氷に飲み込まれてしまう。
川 ゚ -゚)「普通の氷と一緒にされりと困るな。
私の精神力をたっぷりと練り込んだ特別製だぞ?」
( ・∀・)「んじゃ、冥途の土産に僕の能力を教えてあげましょうか」
クーから氷塊を受け取り、能力を通す。
そして、それを振りかぶり、投げ付けた。
_
(;゚∀゚)「っ動けなくても、それくらい――」
背を反らし、避けようとした亡霊に急に方向転換した塊がぶちあたる。
_
(# ∀ )「ぐ、あ……!?」
( ・∀・)「僕の能力は、全てを討ち、堕とす」
僕の能力は、重さの操作。
豆粒を象並に重く出来るし、
車を紙くらいに軽くも出来る。
( ・∀・)「で、これが応用編。
クー、ハンマーお願い」
川 ゚ -゚)「把握した」
クーがハンマーを生成する。
密度を上げ、硬く、重く。
川 ゚ -゚)「ん、出来たぞ」
もはや、彼女に持てる重さではではなくなったそれを、僕は軽々と持ち上げる。
( ・∀・)「オッケー。いい出来」
川 ゚ -゚)「私の氷だぞ。当たり前だろう」
偉そうな彼女をはいはい、と適当にあしらい、ジョルジュまで警戒しつつ歩く。
( ・∀・)「せー、の――!」
そして、軽くなっているハンマーを大きく振りかぶり、一直線に振り下ろした。
勿論、振りかぶったそれが頂点に昇った瞬間に、重くして。
_
( ∀゚)「う、がぁぁああああ!?」
やけにグロテスクな音を立てて頭蓋がひしゃげる。
インパクトの衝撃で地面は凹み、氷は砕け、反動で僕の身体は宙に浮く。
(;・∀・)「げ」
浮いた、ということは身動きが取れないということだ。
そんな僕の胴体を目掛け、拳が飛んできた。
(; ∀ )「が……っは……!」
川;゚ -゚)「モララー!?」
(;・∀・)「大丈夫! ……けど、しつこいね」
まさか、頭半分潰されて生きているなんて。
_
( ∀゚)「っざけるなよ……! 俺は、最強だ! 能力者ごときに――!」
( ・∀・)「やられるんだよ」
今度は横薙ぎにハンマーを振るう。
振り回せるくらいに軽くして、半転。
遠心力で重さに関係なく回せるようになってから、重くして、更に半転。
先の一撃で氷が砕けてしまって、完璧には入らなかったけれど、
それでも相手が吹っ飛ぶくらいの一撃だ。
( ・∀・)「クー!」
川 ゚ -゚)「分かってる」
そして、吹っ飛んだ所にクーがいる。
最初に見せていた、居合抜きの体制で。
_
( ∀゚)「――――」
今度はまともに受け、上半身と下半身が半分に斬られていた。
斬られた箇所から、段々と氷が敵を包んでゆく。
( ・∀・)「んじゃあ、最後の仕上げ――!」
氷が完全に相手を包んだのを確認し、ハンマーを上へ放り投げた。
軽くなっているそれは高く高く上がっていく。
そして、上昇を止めた瞬間に、重さを最大に。
(;・∀・)「……っ」
極端な重量変化に、耐え切れなかった僕の口から血が垂れる。
血が黒いスーツに滲むのと同時に、ハンマーが地面に堕ちた。
川 ゚ -゚)「やったか」
( ・∀・)「……ぽいね」
ビリビリと、身体を討つ衝撃。
いくら亡霊とて、上半身を丸々と潰されては生きていけない。
衝撃に飛び散った氷の破片が、僕たちの勝利を告げているように思えた。
( -∀-)「あー、無駄に疲れた」
こんな腐れ仕事、早く帰って忘れよう。
先ずはこのスーツの洗濯からだな。
意識して見ると、土がズボン裾に付いているし、黒いとはいえ、血が見える。
あー……、本当に腐った仕事だ。
こりゃクリーニング出さなきゃ駄目かな。ああ、面倒臭い。
川 ゚ -゚)「ちょっと待て。一つ、忘れてはいないか?」
( ・∀・)「ん?」
振り向くと、クーが真後ろに立っていた。
少し近い。近いよクーさん。
川 ゚ -゚)「この下半身の処理だ」
と、僕が少し戸惑っていると頭からすっぱりと抜けていた亡霊の半身を指差した。
(;・∀・)「あ、ああ。別に放置でよくない? 自然消滅するでしょ」
一歩後ずさりながら応える。
いくら実体化してるとはいっても、亡霊は霊だ。
怨霊の塊が自我を持った異端の徒。
その自我が失せれば自然と消える。
川 ゚ -゚)「そうはいかん。これだけ保存状態がいいんだぞ?
持って帰らねば、解剖班に殴られる」
( ・∀・)「……あー……」
そういや、最近亡霊の発生が多いからうまく倒して破片でも持ってこい、と頼まれてたっけ。
ハインの見立てじゃ異変があるんらしいけど……対峙した感じではそうは思えなかったが。
( ・∀・)「てか、解剖班って一人じゃん。班じゃないじゃん」
川 ゚ -゚)「あいつは好かん」
( -∀-)「なんでかねぇ」
基本、人に対して無関心な彼女がここまでムキになる相手も珍しい。
ハインの方は嫌っているというか――懐いてる、と言ってもいいくらいなのに。
( ・∀・)「いい奴なのにな。……ま、いいや。これどうやって持っていこうか」
川 ゚ -゚)「……お前が持てばいいだろう」
( ・∀・)「はい?」
未だ亡霊に差していた指を僕につきつける。
あまりにも堂々とした物言いに素っ頓狂な声を上げてしまった。
川 ゚ -゚)「お前の能力は?」
( ・∀・)「物の重さを自由に変える事です!」
川 ゚ -゚)「よろしい。ならば持て」
(;・∀・)「は!?」
あまりのプレッシャーについ、答えてしまったけれど!
それは理不尽だ! 横暴だ!
(;・∀・)「ま、待った! 軽くするのにもかなり精神力削るんだぞ!?」
川 ゚ -゚)「か弱い女にそんな物持たせるのか?」
(;・∀・)「か弱くねーだろ! 見ろ、あの見事な切り口!」
そう言って、僕も亡霊を指差す。
下半身も氷に包まれていたけれど、切断面からは平らにされた内蔵が見える。
亡霊であった彼には必要無かっただろうに、それには今にも活動を再開しそうな現実感があった。
川 ゚ -゚)「まあ、いいだろう。よろしく」
亡霊を覆っていた氷がびきびき、と水を急に入れたときのような音を立てて、形を変える。
背負えるように造られた氷からは彼女の中の良心なのではなかろうか。
ううん、一応は感謝しておこう。気にくわないけど。
( ・∀・)「よーし、帰ろうかー」
背負うと同時に、氷が僕の肩にフィットするように変形する。
これは大分運びやすい。対した苦労も無く持ち帰れそうだ。
( ・∀・)「………………、あれ」
何か背中に冷たいものを感じだ。
いや、元々氷だから部位とは関係なく冷たいんだけど、それとは別種の。
( ・∀・)「もしかして」
つつ、と何かが伝う感覚。
これは、間違いなく。
(;・∀・)そ「溶けてるー!?」
どういう事だ、とクーを見るとくつくつと笑っている。
くそ! これは謀略か! 悪魔の手か!
(;・∀・)「ああああああ! 氷が剥がれない!」
砕いてもすぐ再生するし!
そもそもクーの氷は溶かさない事も可能なんじゃなかったのか!
(;・∀・)「間違いなくわざとだろ! 過ぎた悪戯は止めなさい!」
川 ゚ -゚)「俺に命令するなー」
ぎり、と肩に張り付いている氷が僕を締め付ける。
(;・∀・)「あいたたたたたた! ごめんなさい! ごめんなさい!
しかし、今気付いたけど凍傷になるよねこれ!」
川 ゚ -゚)「分かればよろしい」
( ・∀・)「……悪魔め……」
ようやくいじめから解放され、忌ま忌ましげに呟く。
川 ゚ -゚)「……お前のせいだろ」
( ・∀・)「え? 何が?」
問うと知らん、と綺麗な髪を翻し、先を歩き出した。
(;・∀・)「ちょ、置いてくなよ!」
と、最後まで阿呆な会話をしながら荒野を去る僕たち。
しかし、ここで気付いておくべきだったのだ。
あの若い亡霊がVIPを知り、それをおびき寄せるような真似をしていた意図に。
ここで気付いておけば――僕はクーを自らの手で討ち堕とすような事にはならなかったんだ。
終
お題
・荒野
・恋人を射ち堕とした日
・「一緒に死んでやろうか?」
・亡霊
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