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川 ゚ -゚)は薔薇のようです 2008.07.20
かつて、この地には大きな木があった。
気の周りでは小鳥たちが歌い、命を育んでいた。
彼の足元で私達は風に揺られ、太陽の光を体中で受け止める。
それだけで、私達は満足だった。
しかし、時代はそれを許さなかった。
時代は人々に自然を忘れさせ、人々は彼を切り倒した。
切り倒される間際、彼は懐かしそうに呟いた。
/ ,' 3「空が… 青いのぅ…」
その言葉を最後に、数百年生きた彼は地に伏した。
何故彼は悲しまなかったのだろうか?
彼の子供達は声を荒げて泣いた。
私達も彼の死に涙した。
それから時代が過ぎ、私達"姉妹"は土に還った。
それからどれほど時代が過ぎただろうか。
土に還ってからというもの、私は夢を見ていた。
懐かしい夢だ。
昔の私も夢見たものだ。
ありふれた日常を。
ただただ平凡で、幸せな日常を。
ある日、私を呼ぶ声が聞こえた。
今にも泣きそうなその声は、私の耳元から聞こえた。
しかし、私はその声に応えることができない。
私はもう、土に還っているのだから。
次の時代に子供を残すことなく、私は土に還ったのだから。
また悲しい思いをするくらいなら、私は土に還ったままがいい。
次の日、再び声が聞こえた。
泣きそうな、というより、泣きじゃくった声だ。
こりもせずに私を呼び続ける。
【何故泣いているのだ?】
たまらず私は問い掛けた。
しかし、声は届かない。
私は土に還っているから。
その次の日も声が聞こえた。
しゃっくりまじりのその声は、よく聞けばどこか懐かしい声だった。
私は再び問い掛けた。
【何故私を呼ぶのだ?】
しかし、声は出ない。
土に還っているから。
また次の日、私を呼ぶ声が聞こえた。
沈んだ声で私を呼ぶ声は、よく聞けば少女の声だった。
私は問い掛けることを止めた。
土に還っているから。
次の日、少女は私を呼ぶことを止めた。
その日私は考えることにした。
声の主は何故私を呼んでいたのだろうか?
分からない。
土に還っているから?
違う。
見えないから?
違う。
忘れているから?
違…う…
じゃあなんで分からない? 少女は理由もなく私呼ぶのか?
違う。
私に逢いたいから?
分からない。
私は逢いたい?
……
逢いたい。
逢って話をしたい。
次の日、私を呼ぶ声が聞こえた。
憔悴しきっているのだろうか、聞き取るのがやっとだ。
【私はお前に逢いたい。
お前は私に逢いたいか?】
私の問い掛けは届かない。
土に還っているから。
だが諦めない。
届くまで呼び掛ける。
しかしその日、私の声が少女に届くことはなかった。
次の日、声は聞こえない。
否、少女は確かに私を呼んでいる。
私が聞こえないだけだ。
土に還っているから。
どうすればいい?
私は彼女と話したい、逢いたい。
泣いている彼女を慰めたい。
彼女に涙は似合わないから…
え?
今私はなんと言った?
一度も逢ったことも、話したこともない相手に何故、涙が似合わないと言ったのだ?
しかし思い出せない。
土に還っているから。
その日、懐かしい夢を見た。
まだこの地に大きな木があって、鳥達が歌っていた頃の夢を。
ノパ⊿゚)「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
元気な声で呼び掛けているのは妹のヒートだ。
私はそれに優しく応える。
川 ゚ -゚)「どうした?」
ノパ⊿゚)「お姉ちゃんは私のこと好き?」
率直で可愛らしい質問だ。
川 ゚ -゚)「あぁ、好きだぞ」
ノハ*^⊿^)「えへへ~」
赤い顔をよけいに赤らめ、私に寄り添ってくる。
私も寄り添う。
今は遠い、幸せな日々。
次の日、めが少し見えてきた。
そのおかげか、少女の姿と声が分かってきた。
ノハ ⊿ )「……ちゃん」
しかし、まだはっきりとは分からない。
まだ芽が出たばかりの幼子だから。
次の日、少女は私に話し掛けてきた。
以前までの悲しげな声ではなく、少し元気を取り戻した少女の声。
ノハ ⊿ )「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
どうした?
ノハ ⊿ )「後どれくらいで帰ってくるの?」
さぁな、私には分からない。
だけどな…
ノパ⊿゚)「?」
私は必ず帰る。
お前に逢うために。
ノハ*^⊿^)
半年後、人里離れた山奥の、大きな木の下で。
風に吹かれ、寄り添う二輪の薔薇があった。
一輪は太陽のように、恥じらう乙女の頬の色の薔薇。
もう一輪は、空と海の色をした薔薇。
まるで仲の良い姉妹のように寄り添うそれは、幸せな夢を見ているのだろう。
何故なら、見ているこちらが幸せになってしまうほど、微笑ましいのだから。
おしまい
お題
・赤い薔薇青い薔薇
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