スポンサーサイト --.--.--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
( ФωФ)は雨を止めるようです 2008.07.14
( ФωФ)「今日も今日とて、凄まじい雨だな」
鳴り響く爆音の中。
黒い外套とシルクハットに身を包んだ男が、後ろ手に携えた自らの獲物にそう語り掛ける。
( ∵)「……」
てるてる坊主のような形状をしている男の武器は、男の言葉に返答をする訳も無く、ただ黙ってたずなを握られていた。
恐怖に怯える人間を、自身の身体から突き出た無数の刃で切り刻み、持ち主に啓示された任務を黙々と遂行している。
男は元々返事に期待していないのか、ふ、と一笑し、そのまま歩き続けた。
( ФωФ)は雨を止めるようです
( ФωФ)「………」
男の歩みに合わせて、断末魔と共に血が地面を叩き、激しい弾の雨が移動する。
大勢の人間はそれを見て逃げ出すが、男の武器が繰り出す無数の刃に襲われ何も出来ずに死んでいった。
血飛沫が顔に張り付き、弾雨が外套を破る。
しかし、男は外套の破れを少し気にした位で、それ以外は何事も無かったかの様に、不自然に切り開かれた人の道を歩いて行った。
「あ、あいつは何なんだ!!」
「たった今撤退命令が…… ギャアアァア!!!」
「化け物だ!化け物だアアアァァ!」
「うがああぁあ!!!!」
「死にたくない!死にたくないよぉおお!」
前からは、常人だったら思わず耳を塞ぐであろう、凄惨な言葉の嵐が。
後ろには、常人だったら思わず目を塞ぐであろう、恐怖の表情を顔に張り付けた兵士達の死体の山が。
( ФωФ)「全く、情けないモノよ」
男は、周囲にいるそれらに侮蔑の目を向け、再び道を作り出した。
命乞いを断ち、悲鳴を上げる喉仏を掻き切り、逃げる者の脚を切り刻む。
狂ったように機銃掃射をしている兵も、男にダメージを与える事が出来ずに死んでいった。
数多の悲鳴が響き渡るそこは、所謂地獄絵図と呼ばれるものに限りなく近かった。
男はそんな中眉一つ動かさず、自らの武器に兵士の運命を任せた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どれだけの時が経ったのだろうか。無差別に降り注がれた弾幕のせいで、時を告げる物も無くなった。
全てを切り刻んでしまった自らの武器のせいで、人も物も滅茶苦茶に崩れ、原型を留めているものはすでに無い。
男と、男の持っている武器のみが、唯一その形を保っていた。
( ФωФ)「ビコーズ。任務終了だ。」
男がそう呟くと、ビコーズと呼ばれたそれは、何も言わずに身体から出していた無数の刃を収納する。
それを確認した後、男は深く息を付き、一人話し出した。
( ФωФ)「忘れてしまったよ。ビコーズ。ここはどこの戦場だったかな?」
( ∵)「……」
返事は相変わらず無かったが、男は気にせず話を進める。
( ФωФ)「……ここの『雨』も、なかなかの醜さだった」
顔に出る軽蔑の表情を隠そうとせずそう言った後、男は自らを落ち着ける為に目を瞑る。
その仕草は、どこか黙祷を捧げているようにも見えた。
男以外に話す者はおらず、再び訪れる静寂。
男はやがて目を開き、おもむろに立ち上がった。
( ФωФ)「…さて、次はどこの『雨』を止めようか?」
ニヤリと怪しく笑い、今もどこかで降っている『雨』を止めるため、男は愛機ビコーズと共に再び歩きだした。
彼等の去った後は、まるで雨上がりの道の様に静まり返っていた。
COMMENT
トラックバック
トラックバックURL:
(copyボタンはIEのみ有効です)