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奇妙な三角関係のようです 2008.08.24
辺り一面鈍色の世界。
土色の蜘蛛は何も言わずその長い脚で枯れ枝にしがみつくように佇み、じっと彼女の食事の終わりを待っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「待っていてくれたのは嬉しいけど、どうせ私はあんたに捕食される側なんだから、お礼を言うのも癪に障るわね」
蜘蛛が背に感じていた微かな重みがすっと消える。毒々しいまでに鮮やかな羽根をひらひらと揺らし、彼女――蝶は蜘蛛の目の前に止まった。
ξ゚⊿゚)ξ「さあ、どうぞ」
蝶は最期まで誇りを捨てまいと気丈に、凛とした無表情で目を閉じるが、しかし予想した感覚は襲ってこない。
(´・ω・`)「どこまでも灰に染まった視界が、貴女の羽色までをも失ってしまったなら、僕には生きる意味なんてないのではないでしょうか」
その言葉に蝶は一瞬だけ目を見開くが、すぐに侮蔑の眼差しを蜘蛛に向ける。
ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿ね。あんたは私を食べないとすぐにでも息絶えそうなほどに飢えているんでしょう?
私はあんたに寄生している花がないと死ぬんだから、どんな選択肢にしても変わらないわ。だからせめて痛くしないで頂戴」
蝶の棘のある口調ときつい目つきは、彼女が今の状況に心底うんざりしていることを如実に示していて、ますます蜘蛛の気を滅入らせる。
(´・ω・`)「……そうです。僕から養分を吸わねば花は死に、花から養分を吸わねば貴女が死に、貴女から養分を吸わねば僕は死ぬ。
どう足掻こうともいずれにせよ皆死ぬだなんて、あまりに不条理だと思いませんか。
ああ、今の状況では僕に決定権があるから、それが羨ましいと仰るならば立場を変わっていただきたいくらいです。
僕は誰が最初に死ぬのかを選ばなくてはならない」
蝶は面倒くさそうに溜め息をついて、その場で羽を畳むと、触角の手入れを始めた。蜘蛛が空腹と孤独との葛藤に悶えていようとも自分の知るところではない、とでも言いたげに。
(´・ω・`)「僕は、僕は貴女を失いたくないのです……。鮮やかな色の美しい貴女に生きていて欲しいのです。
なのにどうして僕たちを見捨てた鈍色の季節はこんなにも残酷なんでしょう。僕の空腹が僕の理性を凌駕する時はすぐそこまで迫っている。
何の彩りもない世界で生きる苦痛は餓死よりもひどいかもしれないというのに!」
へえ、と蝶がやる気のない相槌を打つ。蜘蛛はその反応にがっくりと肩を落とした。
すると、今まで己の触角を撫でつけるばかりで蜘蛛を見もしなかった蝶が真っ直ぐ相手に向き直り、驚くほど優しく微笑んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「なら、私を食べなさい」
(´・ω・`)「それでは何の解決にもならないではないですか」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ。私を食べた滋養であんたはもうすぐ来る黒と銀の季節を眠りについて越えればいいの。そうすればまた、緑の季節に出会えるわ」
(´・ω・`)「嫌です。貴女がそうすればいいのです。しばらく貴女が逃げていてくださったなら、逃がさない……いえ、僕は貴女を殺しませんから、屍に咲いた花の蜜を啜り、生きてください」
ξ゚ー゚)ξ「あのね、無理なのよ。私は黒と銀の季節を越えられないの」
先ほどとは打って変わって幼子に諭すような柔和な蝶の言葉に、蜘蛛は泣きそうな顔で首を振る。
(´・ω・`)「僕は貴女を食べたく、喰い殺してやろうかと、食べたくないのです!あああっ……獰猛でありたくなんて、体液を残さず搾り取ってやる、違う!!逃げて!」
がたがたと全身を震わす蜘蛛は、理性を保つべく必死に蝶を見まいとするが、彼の本能はそれを許さなかった。
蝶は微動だにせず、依然として彼の目の前にいる。
ξ゚⊿゚)ξ「限界みたいね」
(´ ω。`)「ああああああああああああ」
ξ゚ー゚)ξ「最期に教えてあげる。
心配しなくてもね、彩りはあるわ。あんたの背中に咲いてる花は、とても優しい色を……」
冷たい風が、吹き抜けた。
終わり
作品の元になった絵
http://imepita.jp/20080805/514760
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