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二人だけの秘密のようです 2008.09.21
夕方。
住宅街の中程に、滑り台やブランコ、
それと木組みのシンプルなベンチが置かれている小さな公園があった。
子供達は帰った後なのかあちこちにおもちゃが放置され、
公園には滑るように夜の空気が流れ込み始めている。
どこかから、カラスの鳴き声が聞こえて来ていた。
そんな物悲しい雰囲気の中、ベンチの上に二人の男が座っていた。
鼻が高く、背が高く、糸目で、まるで鏡あわせのよう。
二人の男は、これまたまったく同じ格好で地面に視線を落とし、
お互いに相手の顔を見る訳でもなく、ぼそぼそと話し合っていた。
(´く_` )「こんにちは」
( ´_>` )「あぁ。今晩は……の時間じゃないか?」
(´く_` )「まぁいいじゃないか。細かい事は気にするな」
旧知の仲のような、でもまるっきりの初対面のような。
表現しがたい雰囲気が二人を包み、その何とも言えない雰囲気のおかげで、
二人はおのずと小声になってしまっているらしい。
( ´_>` )「お互いになんでも知っているのに、出会うのはこれが初めてか」
(´く_` )「元々外に出てくる回数が少ないからな。なかなかチャンスも無いし」
( ´_>` )「不思議なもんだ。あいつらは毎日顔を合わしているのに、俺たちは一度も二人っきりで話し合った事が無かった」
(´く_` )「そうだな。そう考えると、今日ここでお前と出会えたのも何かの運命かもしれないな」
さっきまでは目を合わす事も無かったが、少し慣れて来たようだ。
適当な距離を取って座り、何かを思い出すように一方が語り始める。
( ´_>` )「いや、俺は随分前に、ここでお前と出会った事があるぞ」
(´く_` )「そうだったっけか? 細かい事は覚えていないんだ」
( ´_>` )「あぁ、じゃああれは多分お前じゃないな。兄者の方だったのかな」
(´く_` )「俺が覚えていないという事は……あいつ、完璧に忘れてんだな」
(´く_` )「で、その時あいつはどんな反応をしていた? それは気になるな」
( ´_>` )「多分幼稚園児ぐらいのときだ。そこのブランコで一人で遊んでいる兄者に出会った」
( ´_>` )「あっちは普通にあいつだと思ったんだろうな」
( ´_>` )「でもその時のあいつは、おたふく熱で幼稚園を休んで家で寝ていたはずだ」
(´く_` )「そんな前の事なのか。お前よく覚えてるな」
関心したような顔をして、続きを促す。
もう一方は、随分昔の事なので思い出すのに時間がかかっているようだったが、
細い目をさらに細めて、どこか遠くを見つめながら懐かしそうに呟いた。
( ´_>` )「俺にとって、初めてあいつから独立して動いた日だったし」
( ´_>` )「それになにより、兄者と滑り台を逆走して遊んだのが楽しかった思い出がある」
(´く_`;)「妙な記憶だな。こんなに変な記憶なのに、なんであいつは覚えてないんだ?」
( ´_>` )「兄者にとっては、普通にあいつと遊んで楽しかった日としか認識されていないんだろう」
話に一段落ついたのか、会話がぴたりと止まる。
その間になにか気まずさを感じたのか、
聞きに回っていたもう一方の男がぽつりと話し始めた。
(´く_` )「そうか、言われてみれば、俺もお前と会うのは初めてじゃない気がして来た」
(´く_` )「きっと、俺が会ったのも弟者の方だろう」
( ´_>` )「ほう。気になるな。聞かせてくれないか」
(´く_` )「多分小学生くらいのときだ」
(´く_` )「あいつがインフルエンザで休んでた時、俺もふらふら寝床から抜け出して遊びに言った事があるんだ」
(´く_` )「ちょうどお昼頃に、学校を覗いたら同級生何人かに目撃された」
( ´_>` )「昼休みの時に行ったのか。見られて当たり前だろう」
(´く_` )「それでそのままドッジボールに混ぜられて、しこたまぶつけられた後顔面に当てられた」
( ´_>` )「兄者に似て運動神経は鈍いな」
(´く_` )「基本は同じだからな。その後五時間目があるとか言って、同級生はみんな校舎に引っ込んでしまった」
( ´_>` )「む……まて、思い出して来たぞ」
(´く_` )「それでそのまま商店街をふらふらした後、家に帰る途中に下校中の弟者に出会った」
( ´_>` )「あぁ。思い出した。兄者がインフルエンザで休んでるはずなのに、
ランドセルも背負わずにふらふらしているのを見かけた事があったんだ」
( ´_>` )「あの後家に帰って兄者の部屋を見たら、相変わらず高熱を出してうんうんうなっていた気がする」
(´く_` )「インフルエンザにかかるなんてめったにないからな。だから弟者も覚えていたんだろう」
( ´_>` )「そうだろうな」
(´く_` )「俺もお前も、あいつらとは会った事はあったんだな」
( ´_>` )「だからこれといって何だという訳でもないがな」
自分の話を終え、一息つくと男は空を見上げた。
少し雲がかかったそらに、ぼんやりと月が浮かんでいる。
結構話し込んでいたようで、いつのまにか太陽は沈み、カラスの声も聞こえなくなっていた。
(´く_` )「…よく、俺のような存在と本物が出会うと寿命が縮むというじゃないか」
( ´_>` )「いうな。本当か知らんが、俺は未だあいつとばったり対面した事は無い」
(´く_` )「あいつの寿命は縮めたくないが、一度くらいは会ってみたいと思ってな」
( ´_>` )「どんな反応をするだろうな。案外、俺なんかと間違えるかもしれん」
(´く_` )「どうだろうな。一度やってみたいが、どう考えても無理だな」
( ´_>` )「そうだな……」
(´く_` )「む、そろそろ目が覚める頃だ」
( ´_>` )「そうか。じゃあ、またいつか」
(´く_` )「またいつか外に出た時、出会えたらいいな」
( ´_>` )「なかなかこういう機会はないからな。兄者によろしく言っといてくれ」
(´く_` )「言えたらの話だけどな」
(´く_` )「あぁ。それと、俺の方こそあいつと仲良くしてやってくれよ」
一人の男が、ベンチから立ち上がり公園の出口へ向かう。
そのまま車止めを越えた辺りで、その姿は暗闇に紛れるようにして消えてしまった。
( ´_>` )「……俺もそろそろ帰るか」
∬´_ゝ`)「あの馬鹿が風邪引くならわかるけど、弟者も一緒に引くなんてねー」
一人の女性が、自転車のかごにスーパーの袋を入れて走ってくる。
ぶつぶつと何か呟きながら、女性はペダルを踏む力を強め、速度を上げた。
∬´_ゝ`)「……? 弟者?」
知り合いを見つけたのか、少し速度を落として前方を歩く男に近づく。
ベルをけたたましくならし、男を呼び止めようとした時だ。
∬´_ゝ`)「おーい。いつのまに風邪治ったのよ…… !?」
街頭の下、白い光の中に入った途端、その姿は透明になり、そのまま姿を消してしまった。
落とした速度をまたあげて、街頭に近づいて辺りを見回してみる。
誰もいない。何も無い。
∬´_ゝ`)「何よ今の……。……幽霊?」
身震いし、対して寒くもないのに顔が白くなっていく。
弟の幽霊らしきものを見たおかげで、嫌な予感で頭がいっぱいになったのだろう。
険しい顔つきで自転車を走らせ、誰もいない住宅街の真ん中を突っ切っていった。
∬;´_ゝ`)「弟者弟者弟者!」
( ´_ゝ`)「なんだ騒々しいな。俺という病人がいるんだから静かにしてくれ」
∬;´_ゝ`)「あんたなんかどうでもいいのよ! 弟者は!?」
(;´_ゝ`)「ひどっ。弟者なら今起きて来て……」
(´<_` )「俺ならここにいるぞ。頭が痛いんだから静かにしてくれよ」
∬;´_ゝ`)「……はぁー よかった。死んでないみたいね」
(´<_` )「縁起でもない事言うな姉者は。あんな風邪じゃ死なないだろ」
∬;´_ゝ`)「さっきあんたの幽霊見たからもしかしたら死んじゃって天国に行く前にあたしに会いに来たのかとkmんhb」
(´<_`;)「取りあえず落ち着いてくれ。俺はずっと布団にくるまって寝てたし、兄者もおかゆを食べていた」
(´<_` )「幽霊なんていないだろ。見間違いじゃないか?」
∬´_ゝ`)「……見間違い? あたしも風邪引いたのかしら……。ちょっと体温計持って来て」
そう言うと、女性はおでこに手を当てて、ふらふらと自室に引っ込んでしまった。
女性をなだめていた男はぶつくさと文句を言いながらも、体温計を探す。
寒いのか、毛布を羽織りながら動く男が何かを思い出したかのように、
近くで女性が買って来たプリンを食べている男に話しかけた。
(´<_` )「なぁ兄者。そういえば、俺一度兄者がいるはずが無い時間に兄者を見た事があるんだ」
( ´_ゝ`)「それは奇遇だな。俺も幼稚園の頃にあり得ないはずの弟者を見た事があるぞ」
(´<_` )「幼稚園の時の事を覚えているのか。兄者の記憶はそんなによかったっけ?」
( ´_ゝ`)「いや、さっき夢見てた時に思い出した」
(´<_` )「夢の記憶なんて当てになんない物を信用するな」
( ´_ゝ`)「結構リアリティ溢れる夢だったんだぞ。弟者も出て来てたし……」
(´<_` )「他人の夢の話程つまらない物も無い。それより体温計が見つからないんだが……」
絶対に二人が知るはずが無い、二人だけの秘密の話。
終わり
タイトルがなかったのでそれっぽいのをこちらでつけました
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