火星の井戸に潜るようです
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:20:01.66 ID:tRudwQVI0
(´・ω・`)
火星の赤茶けた大地に立ち、呆然と立ちすくむ青年が居た。
彼の四方には無数の井戸。それ以外の建造物は一切見受けられなかった。
彼はおもむろに井戸のひとつに近づき、その中を覗く。
それから体勢を元に戻し、何か考えるふうに手を組んだ。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:22:20.44 ID:tRudwQVI0
その表情からは、殆ど何も読み取ることは出来ない。
私は、興味を抱いた、彼に。
そのため、しばらく彼を観察することにした。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:24:39.89 ID:tRudwQVI0
...
青年の生まれた星の話をする。
以前その星の人々は、火星探索という夢を持っていた。
その為、火星を題材にした映画、漫画、小説は飛ぶように売れた。
八本足の宇宙人が、光線銃が、トライポッドが、マーシャンウォーマシンが。
人類はそれらが、火星に存在すると信じて疑わなかった。
しかし、遂に火星探索を果たした調査隊が彼らにもたらしたその情報は、彼らの想像とは著しく乖離したものであった。
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:27:11.65 ID:tRudwQVI0
――プツ
( ・∀・) 『……火星についての報告をする』
『火星に住まうものは既に滅び、存在しない』
『そこには一切の住居も、ロケットも、トライポッドも、自動販売機さえ存在しない』
『ただそこにあるのは、非常に精巧に造られた、膨大な数の井戸だけである』
『そして井戸に潜った調査隊、及び有志の冒険者の生死は確認できない』
( ・∀・) 『以上である』
――プチン
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:30:18.52 ID:tRudwQVI0
その報告が電波に乗って地表に伝えられたとき、誰もが嘆き、失望し、悲しみにくれた。
<○><○> <○><○> <○><○>
人々はラジオを粉砕し、書物を焼き払い、フィルムを叩き割った。
それから時代は流れた。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:33:26.33 ID:tRudwQVI0
火星は一部の人を除き、興味の対象外へと位置づけられた。
人類の関心の対象は再び地球内に向けられ、誰もが不機嫌に空を睨んだ。
……しかし、誰も井戸の存在について、一抹の疑問さえ抱かなかった。
話は冒頭に戻る。
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:35:57.11 ID:tRudwQVI0
...
(´・ω・`)
ともかく、宇宙をさまよう青年が火星に辿り着いたのである。
それは孤独の中での死を望んでの放浪である。
火星には、既に”人”は存在しない。
その上、どこまでも続くかも分からない井戸の底で死ねるのであれば、それは真の孤独である。
そう青年が考えたかは定かではないが、彼は命綱一つ付けず井戸に潜り込んで行った。
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:41:22.86 ID:tRudwQVI0
……火星の地表に立っていた時、青年の表情は暗かった。
まるで大都市に一羽取り残された、兎のような表情だった。
だが、現在進行形で井戸を下っている青年の顔は非常に晴れやかであった。
火星の母性に包まれたためか、あるいは兎は人になりえたのか。
彼は、臆することなく深みに進んだ。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:44:41.11 ID:tRudwQVI0
...
火星の井戸の穴は、一般的に想像できるそれとは、少し趣が異なっている。
一般的な井戸というものは、ひたすら真っ直ぐに掘り下ろされた物である。
だが、青年が今潜っている穴は、その途中にいくつもの横穴が存在した。
つまり、蟻の巣と似通った構造をしているのだ。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:46:45.73 ID:tRudwQVI0
それに加え、火星の井戸はことごとく、水脈から外されて掘られていた。
その意図は全く分からず、それは実に奇妙な人工物として、その星を巣食っていた。
繰り返すようだが地上の人々はそれらに、いささかの疑念を抱かなかった。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:48:14.06 ID:tRudwQVI0
...
青年は黙々と潜り続けた。
その深部がおよそ一キロに達した頃であろうか。
青年は思いついたかのように、適当な横穴にもぐりこんだ。
そしてまた、ただひたすらに歩き続けた。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:51:02.55 ID:tRudwQVI0
(´・ω・`) 「……」
何時間、あるいは何日間かが経過した。
彼の腕に装着された時計は、既に動くのを止めてしまっていた。
しかし、そんなことを歯牙にもかけない様子で、青年は突き進んでいる。
まるで、不思議な力が彼をそうさせているように見えた。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:53:13.44 ID:tRudwQVI0
ある日、青年は光を感じた。
過去に、嫌気が差すほど浴びていた光を。
そう、いつの間にか彼は地表に近づいていたのだ。
彼は両手でしっかりと井戸の縁を掴み、そしてよじ登った。
そして再び、火星の大地を踏んだのであった。
……彼はぼんやりと火星の空を眺めていた。何かを確かめるように。
36 :227936640:2009/06/08(月) 22:55:10.23 ID:tRudwQVI0
セハメネレツトバツトユニベブマキアid
ルーズレガインアンデツリグリジラ
マドプアテオトラツホケサネアゾテトベチメ
ネルススイアレニフタードニス
オポィガイットラリスッドルリリラフイヤ
ウエルハイーワミルシマエスリスン
チテイタイルポルマメスラナカ
ドid
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:56:19.70 ID:tRudwQVI0
(´・ω゚`)
彼はおもむろに立ち上がり、上空に浮かぶオレンジの塊を指差した。
今まで、殆ど変えなかった表情を歪めながら。
私はそれを興味深く思い、風として彼に話しかけてみることにした。
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 22:58:24.14 ID:tRudwQVI0
『あと250000年で太陽は爆発するよ』
『250000年……たいした時間じゃないね』
青年は、突然聞こえた声に、更にその表情を変えた。
彼は私の正体を知りたい様子であった。
その為、私は好きに呼べばいいと彼に提案した。
(´・ω゚`) 「なぜ風が喋っているのだ」
この期に及んで、彼は本質的な勘違いをしている。
しかし、それも仕方のないことなのかもしれない。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:01:59.22 ID:tRudwQVI0
『私は喋ってなど居ないさ』
『喋っているのは君で、私はただ……示唆しているだけだよ』
ますます彼は狼狽した。
(´・ω゚`) 「太陽、どうなってしまった」
(´゚ω゚`) 「なんだというのだあのオレンジの塊は」
青年の理性が、崩壊寸前であることは誰の目にも明らかだった。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:03:20.83 ID:tRudwQVI0
『年老いたのさ』
『死にかけているんだ』
私は、静かに告げた。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:05:49.54 ID:tRudwQVI0
青年は、尚も私に質問を投げかけた。
あの不変の象徴たる太陽が、滅びかけているという事実に、強い猜疑心を抱いているようであった。
『君。君が一体どのくらい井戸の中に潜っていたか、自分で把握しているかい』
青年は腕時計を眺めた。
しばらくそれを睨み続けた後、彼は考えるのを放棄したかのように私を見た。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:07:46.81 ID:tRudwQVI0
『1500000000年さ』
『光陰矢のごとし、という諺を知っているね』
再び私は、静かに告げた。
『あの井戸は、時の歪みに沿って掘られている』
『つまり我々は、時の間に居るわけだ」
青年の顔色が、限りなく白くなる。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:09:01.22 ID:tRudwQVI0
『時の間をさまよっている我々には、生と死という概念はない』
『つまりは風さ、我々は』
……青年の顔が、ニュートラルになった。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:11:24.82 ID:tRudwQVI0
(´・ω・`) 「ひとつ質問してもいいかい?」
『喜んで』
私は答えた。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:12:55.03 ID:tRudwQVI0
「君は何を学んだ?」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:14:45.54 ID:tRudwQVI0
私は、息吹を彼に向けて吐いた。
歌うかのように。
そして、話す事を止めた。
やがて火星を、恒久の静けさが包んだ。
そして、それを青年が破った。
ポケットに持っていた、ピストルを使って、カート・コバーンのように。
55 : ◆loGsdX/zMQ :2009/06/08(月) 23:18:41.61 ID:tRudwQVI0
以上です。
井戸、イド、いど、id。
井戸って、奥が深いですね。
ご支援ありがとうございました。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:19:36.82 ID:qXyjjWGPO
乙でした!
>>36 は何?
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:23:49.48 ID:tRudwQVI0
>>56
とある意味があります。
それでは、おやすみなさい。
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:31:06.01 ID:ExyuchhB0
乙
ドードーさんのシリアス短編は独特の雰囲気があって好き
百万年ピクニックとかもすごくよかった
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:32:03.96 ID:6acoKwVMO
ハートフィールド?
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:37:08.74 ID:+xTkYMRl0
目欄の数字の順に読むと…
でも最後の0が余る。
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:39:57.18 ID:QOv7XOzN0
>>64
123456789
セハメネレツトバツトユニベブマキアid
って事か?
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:42:45.93 ID:+xTkYMRl0
そうそう
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/08(月) 23:46:09.73 ID:ExyuchhB0
最後の0は、何も読まないってことでいいんじゃないか?
元ネタ的にも>>62っぽい
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ふと思ったんだが…もし、はだしのゲンに足コキされたらそれはそれは快感だろうな…ゴクリ
米1
黙りゃクソ森
しごうしたるけんのう
ただの劣化版ハルキじゃん。
回線吊って死ね!
※3
劣化も何も丸パクリだ
こいつはひでぇ
微妙
火星の井戸でググったら、そのまんまで吹いた
人のフンドシで相撲を取るのは卑怯だよ
下衆が。
ただ不快なだけ。
確かにハルキにも登場した話だな
まあそれも引用だから 原作の方の丸パクなんだろうが
原作なんてないよ。ハートフィールドは村上春樹の作った架空の作家。
ハルキは好きだが別にパクりでもいいじゃん面白いし金取って書いてるるわけじゃねーんだし