( ^ω^)変わった人達のようです その2の続き
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:09:24.44 ID:CcPdhQurO
それは、幼い彼女を愛した男の話。
それは、男を愛した幼い彼女の話。
それは、ひどく離れた二人の歳の話。
いったい彼は幼い彼女にとの間に何を求めるのでしょうか。
『いつつでたりず。』
始まりは、五つの笑顔。
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:12:35.83 ID:CcPdhQurO
僕は目を開き、首の向きを戻して前を見ました。
ただただ広い白の空間は、彼らの無知を思わせます。
背中にぞくりとした冷たい何かを感じて、少しだけ移動し、5と書かれた扉を開けました。
扉の向こうには、幼い女の子を抱いて部屋を彷徨く男の姿。
僕は友人である彼に声をかけながら、部屋に入って扉を閉めました。
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:15:22.50 ID:CcPdhQurO
( ^ω^)「失礼しますお」
(,,゚Д゚)「ん? おう、内藤じゃねぇか」
( ^ω^)「久しぶりですおーギコさん」
(,,゚Д゚)「敬語とさん付け止めろっつったじゃねぇか、変わんねぇなお前は」
(;^ω^)「お、す、すみませんお」
(,,゚Д゚)「ほら座れよ、俺は立ったままだけど気にすんな」
( ^ω^)「はいですお」
(,,゚Д゚)「しぃがぐずってな、ほらしぃ、泣くなよ」
(*;−;)『うー……』
(,,゚Д゚)「全く、すぐ泣くなぁしぃは」
( ^ω^)「ギコさん」
(,,゚Д゚)「あー?」
( ^ω^)「ええと……もしよろしければ、聞かせて貰えません、かお?」
(,,゚Д゚)「あん?」
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:18:37.01 ID:CcPdhQurO
( ^ω^)「何で、あんな事をしたのか……ですお」
(,,゚Д゚)「……何でこんな事をしているか、か?」
( ^ω^)「……はい、ですお」
(,,゚Д゚)「…………分かった、このままで良いなら、話す」
( ^ω^)「ありがとう、ございますお」
(,,゚Д゚)「非人道的だとか、異常だとか、思って構わねぇからな」
( ^ω^)「思いませんお、そんな事」
(,,゚Д゚)「そ、か……有り難うよ、内藤」
彼は幼い彼女を抱いて、立ったまま少しだけ笑いました。
どこか自嘲的なその笑顔は何だか悲しくて、僕は、思わず目を背けます。
幼い彼女の背中をとんとんと叩きながら、彼は何から言うべきか悩んでいる様でした。
始まりは、五つの彼女の笑顔だった。
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:21:24.58 ID:CcPdhQurO
それは、彼の兄夫婦の娘が生まれた時の事。
まだ少し若かった彼は、共働きで忙しい兄夫婦に娘を預けられる事が少なくありませんでした。
最初は大変だったおしめの交換も、ミルクの作り方も、あやし方も抱き方も、兄より上手くなるのにそう時間はかかりませんでした。
生まれた時から知るその娘を妹の様に可愛がる彼の姿は、兄夫婦から見てとても微笑ましく、とても安心感のある姿でした。
初めて寝返りをうったのも、はいはいをしたのも、立ったのも、歩いたのも、喋ったのも、全て彼が見てしまいましたが。
それでも、その全てを見事にビデオに納めた彼は、親では無いのに親バカだったのでしょう。
(,,゚Д゚)「生まれたばっかのしぃは可愛くってな、俺の指を握って寝たりして、本当の妹みたいだった」
娘が歩いて喋るようになってから、彼に手を引かれて出掛けたり、家の中でおままごとなどをして遊ぶ様になりました。
自分を妻、彼を夫として振る舞わせるおままごとはひどく気に入ったのか、頻繁に、彼に遊ぼう遊ぼうと誘いました。
『ギコおじちゃん、おままごとしよう?』
「おじ……お兄ちゃんな、お兄ちゃん」
『ギコおにいちゃん、あそぼー』
「おう、おままごとだな」
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:26:00.59 ID:CcPdhQurO
『うんっ、ギコおにいちゃんはだんなさまね?』
「はいよ、しぃは嫁さんか?」
『えへへ、ギコおにいちゃんのおよめさーん』
「可愛い嫁貰ったなぁおい俺」
娘は彼によくなつき、遊び、勉強をし、めきめきと賢くなって行きました。
彼が遊びを交えて文字や数字を教え、簡単な足し算等を教えてみせれば、娘は一つ二つ上の年齢の子供が習う様な事を覚えて見せました。
それには兄夫婦も驚き、喜ぶ反面、少し寂しそうでもあります。
本来、両親が見て、聞いて、感じて、教える筈の事。
それらを全て奪っている事に気付いた彼は、娘に何かを教える事を止めました。
(,,゚Д゚)「しぃは俺や兄貴達が思っていたよりもずっと頭が良くて、何でも吸収しちまうんだ。
俺が冗談で教えた文字も、数字も、アルファベットまでも覚えちまった。
しぃが賢くなればなるほど嬉しかった、でも、申し訳なかった」
四つになった娘は歳のわりにひどく落ち着いていて、余り子供らしいとは言えませんでした。
勿論子供らしく遊び、笑い、泣くのですが、どこか大人びた顔をする時があり、思考も早熟と言えるほど冷静でした。
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:29:36.97 ID:CcPdhQurO
兄夫婦が喧嘩をすれば、自然に間に割って入って仲裁し。
娘に聞かせづらい話をしたそうであれば、察して部屋を出て行く。
包丁こそ握らないけれど、進んで台所に立ち、手伝う。
部屋を散らかす事無く、読んだ本や遊んだ玩具は全て元の位置に戻す。
言葉も多少は辿々しくはありましたが、程無くしてしっかりとした言葉遣いになりました。
そんな四歳児とは思えない娘の姿に、兄夫婦は少しだけ、不安になります。
(,,゚Д゚)「しぃは普通の子なんだろうか、って……妙な不安があったんだ。みんなに。
俺は少し後悔した、冗談半分でいろんな事、教えるんじゃなかったって。
……怖くなったよ、しぃの異常な成長速度が……」
全員が抱いた漠然とした不安を知ってか知らずか、娘の成長は衰える事はありませんでした。
悪戯をする事も無く、自分の事を自分で殆んど出来るようになり。
娘はすくすくと、元気に、妙なくらいに賢く育つばかり。
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:32:24.26 ID:CcPdhQurO
そしてある日、娘が言いました。
『ギコおにいちゃん』
「何だ? しぃ」
『わたしが、きもちわるい?』
「何、を」
『わたしがなにかすれば、いえば、おとうさんもおかあさんも、ギコおにいちゃんも、こまったかおをするよ』
「あ、……しぃ、」
『わたしは、そんなに、へんなのかな』
「そんな、事、」
『そんなに、きもちわるいのかな』
「違う、違う、しぃ」
『……わたしは……おかしいの、かな……』
「し、ぃ」
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:35:03.57 ID:CcPdhQurO
(,,゚Д゚)「はっきり、そんな事ねぇって言ってやれなくて、悔しかった。
俺は、何でしぃを傷付けてんだって、腹が立った」
娘に言われた事を兄夫婦に言うかどうするか二晩悩み、彼は打ち明ける事にしました。
(,,゚Д゚)「その事を兄貴達に言って、余計な事してきた事を謝ったんだ。
兄貴達は泣いて、俺は悪くない、
悪いのはろくに構わなかった自分達だって泣いて、謝って。
余計に、悔しくなった」
兄夫婦は娘を腫れ物の様に扱う事を止め、普通の子供と同じ扱う様になりました。
彼もまた、構いすぎず、けれど突き放す訳でもなく、叔父としての立場を崩さない様になりました。
それ以来、娘はああいった大人びた発言をする事は無くなり、子供らしく振る舞うようになったのです。
(,,゚Д゚)「普通の筈だった、ワガママ言ったり誰かを困らせるのが普通の筈だった。
なのに、違和感を感じるんだ……無理に子供っぽくしてるみてぇでさ…
…何か、悲しくてよ」
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:38:15.74 ID:CcPdhQurO
そして、娘は五つの誕生日を迎えました。
相変わらず、子供らしく振る舞ったまま。
『ねぇギコおにいちゃん、いっしょにおふろいこー?』
「え゙、あ、や、あ、うん、まあ」
『……いや?』
「や、ぁ、嫌じゃねぇよ、うん、パパやママとじゃなくて良いのか? 本来はパパやママと入るもんだぞ?」
『おとうさんとはおとといはいったし、おかあさんとはきのうはいったもん』
「あ、そ、そうか……じゃあパパとママに俺と入るって言ってきな?」
『はーいっ』
ぱたぱたぱた、軽く駆けて行く白いワンピース。
小さな背中は、間違いなく幼い、幼女と言える歳の物。
『いってきたよー』
「おう、はえーなおい。パパとママは何か言ってたか?か」
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:41:17.90 ID:CcPdhQurO
『えっとね、かたまでつかりなさいって』
「うんうん」
『あとね、のぼせないようにしなさいって』
「うんうん」
『でね、おとうさんが「しぃに手ぇ出したらブチ殺すって言っといてねー」って』
「出すかァッ!!」
『あははっ、ねぇギコおにいちゃん、おふろいこっ』
「お、おう!」
彼の手を引いて脱衣所に走る娘、引っ張られながらよたよたと小走りをする彼。
その姿は、ひどく微笑ましい物でした。
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:44:03.59 ID:CcPdhQurO
脱衣所で先に服を脱ぎ、風呂場へと駆け込む娘。
彼はその後ろ姿を見ながら、肩を竦めて小さく苦笑い。
彼は少し遅れて服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて風呂場へと足を踏み入れました。
そして、目を見張りました。
(,,゚Д゚)「久し振りに一緒に風呂入って、分かった。
しぃは、ただ子供っぽく装ってただけなんだって」
シャワーを浴びる、そのしなりとした腰のラインが。
濡れた長い髪が張り付く背中が、肩胛骨が、細く頼り無い手足が。
言い様の無い、色気を放っていました。
(,,゚Д゚)「あいつは五歳児の雰囲気じゃなかった、いや、
寧ろ、人間なのかすら分からなくなるくらいで。
陳腐な言い方だと思うけどよ、こう、人間離れした美しさだったんだ」
彼が入ってきた事に気付き、視線だけでそちらを見る目付きは、最早幼女の物とは思えませんでした。
流れるようなその目付きに息が止まった彼を見て、娘はしんなりと笑って手招きをします。
『ギコおにいちゃん、あびないの?』
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:47:21.15 ID:CcPdhQurO
こちらを向いた身体。
平らな胸に、ふっくらとした丸みのある腹部。
狭い肩幅、するりとした肩、大した括れの無い腰。
それらは全て、幼女特有の物。
なのに、それなのに、娘が醸し出す雰囲気は、明らかに異様で。
(,,゚Д゚)「何て言うんだろうなぁ……小せぇ身体なのに、雰囲気だけ大人の女みてぇでよ。
不似合いな筈なのに、アンバランスな筈なのに、
やたらと相性が良い、みてぇな感じで」
彼はぎこちなく頷いて、娘を座らせてから自分もシャワーを浴びました。
ちらりと足元を見れば、彼を見上げる娘と目が合い、慌てて顔を背ける。
シャワーを浴び終えた彼は、恐る恐る娘の身体を洗い、頭を洗ってから湯船に浸からせました。
『ギコおにいちゃん、せなか、ながそっか?』
「い、や……大丈夫だ、有り難うよ」
『……そっか』
娘を見ないように、出来るだけ触れないように、何も考えないように、乱暴に自分の身体と頭を洗う彼の心臓は、いやと言うほどに喧しくて。
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:50:27.62 ID:CcPdhQurO
ざぷ、と湯船に浸かった彼は娘から出来るだけ離れる様にと身を縮めていました。
そんな彼を見た娘が、笑って彼を見上げます。
『ギコおにいちゃん』
「お、おう?」
『わたしね、ギコおにいちゃんのおよめさんになりたい』
「じゃあ、また、おままごとでもするか?」
『そうじゃないの』
「あ、……?」
『そうじゃないの、わたしは、ギコおにいちゃんのおよめさんになりたい』
「…………し、ぃ?」
『わたしが、きらい? こわい? きもちわるい?』
「そんな、事、ねぇよ」
『……じゃあ、どうしてはなれるの? わたしをみないの? めをそらすの?』
「それ、は、その」
『…………わたしは、ギコおにいちゃんがすきだよ』
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:53:11.30 ID:CcPdhQurO
数日後、彼は娘を独り暮らしの家に連れてきました。
あの、どうしようもない程に艶のある目が、言葉が、雰囲気が。
彼の脳裏に焼き付いて、離れないのです。
いやと言う程に脳内で再生される娘の言葉は彼を揺さぶり、理性を、ゆっくり、ゆっくり、へし折る様に。
(,,゚Д゚)「俺はおかしくなったのか、最初っからおかしかったのか分からねぇ。
でも、しぃに好きだって言われて、確信した」
彼は、あの娘に一目惚れをしました。
五つやそこらでも埋まらない歳の差。
けれど、あの早熟な娘の精神年齢と言う物は、もう、子供と言える歳では無くなりつつあるのかも知れません。
『ギコおにいちゃん、きょうはおとまりだね』
「……ああ、そうだな、しぃ」
『いっしょにおふろにはいろうね、ギコおにいちゃん』
「ああ、…………今日だけでなく、ずっと泊まってけよ、しぃ……?」
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:56:12.94 ID:CcPdhQurO
どこか濁った目をして笑う彼に、娘は微笑みを返しました。
喜んでいるのか、哀れんでいるのか、その微笑みは、何だかひどく悲しく見えたのです。
「しぃ、そろそろ風呂に入ろうか」
『うんっ、まっててー、いまおもちゃだすからっ』
「平仮名のオモチャか、好きだなぁそれ」
『うん、だいすき』
ぞくり。
娘は家から持ってきた、あいうえおの形をしたお湯に浮かぶ玩具を胸に抱いて、狭い脱衣所へと向かいました。
台所で何かを手にした後、ゆっくりと脱衣所に入った彼は、もう先に入ったらしい娘の姿を思いながら、服を着たまま風呂場へと。
娘は白い裸体を晒しながら、バスタブに張られた水に平仮名を浮かべ、こちらを向きます。
また、艶のある笑顔で。
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 23:59:09.16 ID:CcPdhQurO
「……しぃ」
『ギコおにいちゃん、……わたしのこと、すき、?』
「ああ、愛してるともさ、しぃ」
『…………あはぁ……うれしいな、ギコおにいちゃん』
「でもな、しぃ、しぃ」
『……ギコおにいちゃん』
「俺は、もう、駄目なんだ」
『ん……』
「しぃの身体が大人になるまで、我慢は出来ない」
『うん、』
「けど、しぃを傷付けたくはない」
『うん』
「苦しいの……我慢、出来るか?」
『うん、ギコおにいちゃん』
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:02:10.84 ID:CcPdhQurO
ばしゃん。
幼い裸体を水に押し込み、顔を上げられないように、首を押さえつけて。
ぱくぱく。
水の中で口の開閉を繰り返す娘は、空気を吐き出しながら真っ直ぐに彼を見つめていました。
こぽん。
暫くして、一際大きな泡を吐き出した娘は動かなくなりました。
それでももう暫く水の中に娘を浸け続けてから、ざばりと引き上げました。
ぐったりとして重くなった娘は、青い顔をしているにも拘わらず、微笑んでいて。
彼は濡れる事を気にもせず、娘を抱き締めて顔に掛かる髪を払い、優しく優しく、唇を重ねました。
冷たくて少し固くなった小さな唇が悲しくて、彼はふと水に浮かぶ平仮名を見ました。
そこには、五つのひらがな。
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:04:24.84 ID:vLZM/8dRO
『およめさん』
ゆらゆらと浮かぶその文字を見ると、彼は涙を溢して娘を片手で抱き。
台所で持ってきた物を、己の腹部に向けて─────
(,,゚Д゚)「俺の話は、これでおしまいだ」
( ^ω^)「どうして、そんな、」
(,,゚Д゚)「しぃを無理矢理犯すなんざ出来なかった、でも、我慢も出来なかった」
( ^ω^)「だから……」
(,,゚Д゚)「だから、沈めた。
しぃを水に沈めて、俺の腹に包丁の刃を沈めて、
これ以上は傷付けないようにしたかった」
( ^ω^)「……」
(,,゚Д゚)「一目惚れなんざ初めてだった、あんな目を見たのは、初めてだった。
俺は…………ああ、悪ぃ、下らねぇ事ベラベラと」
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:06:58.52 ID:vLZM/8dRO
( ^ω^)「いえ……聞かせてくれて、有り難うございましたお」
(,,゚Д゚)「悪いな、こんな話で……いっそ蔑めよな、この変態がってよ」
( ^ω^)「そんな事言いませんお、言えませんお……じゃあ、僕は失礼しますお」
(,,゚Д゚)「ったく、逆につれぇよ……ああ、またな内藤」
( ^ω^)「はいですお」
(,,゚Д゚)「……なあ、内藤……もしかしたら俺は─────」
ある意味、弄ばれてたのかもな。
彼は己の腹の傷跡を撫でながら、僕に背を向けて言いました。
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:08:43.69 ID:vLZM/8dRO
言葉の途中でぱたん、とドアを閉めた僕は、閉じたドアに額を押し付けて項垂れます。
彼は、ひどくひどく、純粋だったのかもしれない。
それでも幸せそうに部屋の中をうろつく彼の姿を思い出して、僕は息を吐いて肩を落としました。
『いつつでたりず。』
おしまい。
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:11:38.66 ID:vLZM/8dRO
それは、獣が愛した彼女の話。
それは、獣を愛した彼女の話。
それは、金の目を持つ獣の話。
その獣を抱く不思議な彼女は、いったい何を求めるのでしょうか。
『むっつのめだま。』
始まりは、六つの頃に。
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:13:34.23 ID:vLZM/8dRO
僕はそっと顔を上げて扉から離れ、幼い彼女を思い浮かべました。
ふう、と小さなため息をひっそり。
かちゃ、ぱたん。
少しの移動、6と書かれたドアを開けて、僕は室内へするりと入り込みました。
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:15:18.53 ID:vLZM/8dRO
部屋に入り、その部屋の主人を探してきょろきょろした僕の目に入ったのは、地べたに足を投げ出して座る少女でした。
猫らしき大きなぬいぐるみを抱き締める少女は、ちらりと僕を見て、
lw´‐ _‐ノv「ね……ぇ」
( ^ω^)「お? 何だお、シューちゃん?」
lw´‐ _‐ノv「ぁ…………あ、……あーもろーにさーた……わてぃそーろか、がーたなー……」
( ^ω^)「お、?」
口許をぬいぐるみの頭で隠したまま、少女は僕を見ながら言葉にすらなっていない歌を歌い始めました。
平仮名の繋がり、よく分からないその歌は細かく上下し、細く高い声音に合わせて震える様に、僕の脳髄へと入り込むみたいに。
lw´‐ _‐ノv「あーもりーいあー……わかーてぃーそろーかー…………がーたーなー……」
( ^ω^)「シュー、ちゃ……」
lw´‐ _‐ノv「あー……たなあてぃーそろー、こーわもーろにーさーた……うぇーえーん」
lw´‐ _‐ノv「えーてぃせーあけーてぃせー……あけーてぃせーあこわーも……ろーにさーたうぉーわーも…………」
lw´‐ _‐ノv「れーてぃせーあ…………こーわーもれーてぃーせ……あーけてぃーせあーかあー……」
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:18:02.16 ID:vLZM/8dRO
( ^ω^)「シュー……ちゃん、」
lw´‐ _‐ノv「……ようこそ、ブーン」
( ^ω^)「お邪魔、しますお……」
lw´‐ _‐ノv「あい、」
彼女は地べたに座ったまま椅子を指差して、僕に座る様に促しました。
かたん、と椅子に座った僕は彼女を見下ろして目を細めます。
茶と黄を混ぜた様な色のぬいぐるみは継ぎ接ぎで、大きな縫い跡が幾つもあります。
目らしい金色のボタンは左側がこぼれ落ちて糸にぶら下がり、右手がほつれてぶら下がっているぬいぐるみのあちらこちらにボタンが縫い付けられています。
愛らしいとは決して言えない、大きな口のぬいぐるみ。
それをいとおしそうに抱く彼女は、僕をちらりと見上げました。
lw´‐ _‐ノv「ご用、は?」
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:20:30.18 ID:vLZM/8dRO
( ^ω^)「お……お話を聞かせて貰いたくて来たんだお」
僕の従妹であり友人である少女は、ぎちりとぬいぐるみを強く抱き締めて俯き、右目をぬいぐるみの影から覗かせて、頷きました。
( ^ω^)「何で、あんな事をしたのか」
lw´‐ _‐ノv「どうして……こんな事、するのか」
( ^ω^)「聞かせて、貰えるかお?」
lw´‐ _‐ノv「……うん、良いよ……」
( ^ω^)「有り難うだお、シューちゃん」
lw´‐ _‐ノv「悪い子だって、思われても、しょうがない」
( ^ω^)「思わないお、そんな事」
lw´‐ _‐ノv「……ふ、うふ、ふふ……そぉ、……そぉなの…………」
始まりは、彼がやって来た六つの時。
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:22:21.10 ID:vLZM/8dRO
彼女は昔から少し変わっていて、動物と少し意思の疎通が出来る事がありました。
何を思っているのか、何をしたいのか、何を言いたいのか。
それらが少しだけ分かる、子供特有の第六感に似たものを持っていた彼女。
それでも何を考えているのか、全てが分かる訳ではありません。
会話が出来る訳でも無いので、ちゃんとした意思の疎通が出来ませんでした。
ただ、何を食べたいか、何が嫌か、何を伝えたいか。
それらが少しだけ分かる、それだけ。
けれどある日、父親が彼女の元に一匹の猫を連れて帰ってみせれば、彼女はある事でひどく驚きました。
lw´‐ _‐ノv「あの子は……賢くって、他の猫や犬よりも賢くって、私の言う事も……ちゃんと理解した……」
茶色の様な黄色の様な、光の加減で金色にも見える変わった毛色の猫。
両目を上下から挟む様に、縦の黒いラインが入った猫。
緑がかった金色の目を爛々とさせて、その猫は彼女の膝に乗りました。
彼女が慣れた手付きで猫の顎を撫でてやれば、猫はぐるぐる喉を鳴らします。
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:24:10.65 ID:vLZM/8dRO
『おい、娘』
「……ぇ」
『ほう、我輩の言う事が分かるか、妙な人間め』
「あなた、が……みょう」
『失敬な小娘である……まあ良い、今日から貴様が我輩の主人と言う事なのだな』
「う、ん」
『ふん、精々我輩の主人として恥じん様に振る舞う事だ』
子猫と言うほど小さくは無かった猫は、彼女と初めて会話が出来た猫でした。
今まで猫の言葉が分かると言うほどでも無かった彼女は、目を真ん丸にしてその金の猫を見つめます。
尻尾でぱたん、と彼女の膝を叩いた猫は複雑そうな顔で、再び彼女に話しかけました。
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:26:45.35 ID:vLZM/8dRO
『おい、小娘』
「シュー……」
『……シュー、我輩の名前を決めんか』
「お名、前……」
『……』
「ロマネスク、」
『ほう、悪くは無い』
「杉浦、ロマネスク」
『その杉浦はどこから来た……』
どこか呆れた顔の猫は、にゃあんと鳴いて彼女の頬を嘗めました。
lw´‐ _‐ノv「ロマは……自分が、他の猫より賢いの……気付いて、なかった……。
金色で、きらきらで、柔らかくて、暖かい……
私はロマ以外の猫と、お話しできなかったけど……
……ロマとだけは、何でか、お話しできた……」
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:28:19.65 ID:vLZM/8dRO
外交的とは言えない性格の彼女に友達は少なく、たまに来る従兄と遊ぶ程度。
そんな彼女の元にやって来た、彼女と話せる猫。
彼女はいつでも側に居てくれる猫が大好きになり、猫もまた、少し変わった主人をいつの間にか好きになっていました。
「ロマ……」
『何だ、シュー』
「お腹……ふかふかぁ」
『止めんか! 撫でん、こら、あ、うぉわわわ』
「……うふふ」
『この、小、娘め……!』
最初こそツンツンしていた猫は少しずつ、自分をよく構う彼女に警戒心を解く様になり、いつの間にやら腹を向けて眠るようにまでなりました。
その白く柔らかい腹部をふさふさと撫でる彼女は、以前に比べれば数段明るくなりました。
猫が彼女の側に寄り添う様になってから、あっという間に時は流れて行きます。
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:31:14.25 ID:vLZM/8dRO
お気に入りのクッションの上で丸くなる猫。
その背中を撫でて頬擦りをする彼女。
尻尾を彼女の手首に巻き付けて喉を鳴らす猫を抱き上げ。
ちょん、と口付け。
『何をするのだ、貴様は』
「……可愛い、ロマ」
『……』
「照れ屋さん……ふふっ」
『このバカ娘めが』
「それでも、嫌がらない……」
『うっさい』
「ロマ、可愛いロマ」
『何だ……』
「……うふふ、ふふ」
『変な主人を持った物である……』
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:33:11.75 ID:vLZM/8dRO
彼女は彼女と同じくらいの大きさをした、猫によく似たぬいぐるみを母に作って貰い、よく猫とぬいぐるみを一緒に抱き締めて眠っていました。
猫は一緒に眠る事を嫌がりましたが、何度も彼女が寝ている猫をベッドに引きずり込んでいれば、渋々一緒に眠る様になりました。
一人と一匹は、まるで人間同士の様に仲良し。
lw´‐ _‐ノv「言葉はきついのに、優しくて……寝る時も、ご飯の時も、お風呂の時も、遊ぶ時も……ずうっと……一緒」
けれど猫がやって来て数年が経ったある夏の日
猫が居なくなりました。
彼女は猫が好きな玩具を揺らしたり鳴らしたりしながら、ゴミ箱の中やベッドの下、本棚の上、物置の中、家中を探し回りました。
今まで黙って居なくなる様な事はありませんでした、なのに突然居なくなって、少女は混乱して涙声で猫の名前をを呼びながら家の中を走り回ります。
「ロマぁっ、ロマぁああっ! どこ……っ、ロマぁっ!!」
熱帯夜、彼女は家を飛び出して泣き叫ぶ様に猫を呼び、町の至るところを探しました。
それでも見つからない猫に、ワンピースを翻して走り、猫を呼び続ける彼女。
そして見るに見かねた父親に連れて帰られた彼女は、翌日、ある事件を知ります。
ここ数日、何匹もの猫が惨殺されている事を。
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:35:27.23 ID:vLZM/8dRO
地元のニュースでそれを知った彼女は、背負いかけていたランドセルを投げ捨てて、靴も履かずに外へと。
毎日、毎日、昼夜問わず一日中、暑い中を走り続けて、猫を叫び続けて。
喉がかれても、裸足の爪先から血が出ても、彼女は猫を探す事を止めませんでした。
けれどそんな日々が一週間以上過ぎたある日、空き地の片隅に落ちていたビニール袋。
何となくそれを蹴飛ばした彼女が目にした物は、猫の、顔。
lw´‐ _‐ノv「ロマは……小さい袋に詰め込まれて……苦しそうにしてて…………だから、出してあげた、の」
ぶわり、溢れる腐敗臭。
そっと袋から猫を地面に出してやり、震える両手で抱き上げると
ぼとり。
ぐずぐずの猫の右前足が、千切れて落ちました。
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:37:53.00 ID:vLZM/8dRO
金色だった目はひどくくすみ、左目は潰れ、ウジがぼたりと。
何とか残っていた右目は、必死で彼女を見ようとする様に原型を保っています。
彼女はわいたウジをぷちりぷちりと潰して、みんな綺麗に居なくなった頃、ぐちゃりとした猫を抱いて帰宅しました。
lw´‐ _‐ノv「お家には誰も居なかったから……ロマを綺麗にして、新しい袋に入れて……リボンをつけて、大事に……大事に…………」
やっと猫を見つけた彼女は、複雑な気持ちでした。
猫は戻ってきた、なのに、目が、足が、声が、無い。
lw´‐ _‐ノv「ロマが居ない……居なくなった……? ううん、居る…
…でも足りない、ロマが欠落した…………。
そうだ、ロマを探そう……ロマと同じ…………金色の、猫……」
鞄にビニールの袋を忍ばせて町を歩く彼女が目で追う物は、猫に似た毛色の猫。
あの日以来喋らなくなってしまった猫。
きっと欠落したから喋らない。
ならば欠落した部分に合う物を探して、渡そう。
そうすれば、猫はきっと喋ってくれる。
また、呆れたみたいに、笑って。
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:40:07.16 ID:vLZM/8dRO
似た毛色、似た目の色、似た声音の猫を見つければ、彼女は巧みに呼び寄せます。
そして少し気を許したその瞬間、声も上げられない位に強く、首を絞めました。
抵抗する猫の爪で手や頬が傷だらけになっても気にする事は無く、彼女はぷちりと片目を潰したその死骸を部屋へと持ち帰りました。
腐敗の進んだ猫の死骸と新しい猫の死骸、針と糸で繋ぎ合わせて、袋へと。
それでも、猫は喋らない。
lw´‐ _‐ノv「まだ足りない…………だから、ロマを探したよ……ロマを思い出させる猫を…………探して……持ってかえって、ロマにあげた……」
猫の首を絞めていると、時々人に見つかりかけました。
それでも何とか猫を持って帰る彼女の手は目も当てられない程にずたぼろで。
足りない前足と、足りない目玉。
新しい死骸は前足が一本しか無く、目も片方が潰れています。
両方あっては邪魔になる、足りないのは右足と左目。
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:42:08.71 ID:vLZM/8dRO
『シュー』
「ロ、マ……?」
『何だ、シュー』
「ぁ、あ……ロマ……っ」
『泣くな、泣くなよシュー』
「ロマ……ロマ、私の、ロマ……」
『シュー、』
「ロマと、お話……嬉しい、な……」
『……シュー』
「ロマ、……ロマぁ…………」
猫はもう、喋らないのに。
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:44:15.84 ID:vLZM/8dRO
くちゃくちゃに繋ぎ合わされた猫に話し掛ける彼女は、ほんのりとだけ笑って、猫に口付けます。
濁って落ち窪んだ猫の右目はもうどろどろで、それでも、何かを訴える様に、彼女を見つめています。
我輩はもう死んでるんだよ、シュー
伝えたいのに伝えられない猫の言葉に気付く事は無く、気付きたく無くて。
彼女はただ幸せそうに、継ぎ接ぎの猫を抱き締めました。
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:46:18.92 ID:vLZM/8dRO
lw´‐ _‐ノv「おし、まい……」
( ^ω^)「どうして、そんな、」
lw´‐ _‐ノv「それを……あなたが、聞く、の?」
( ^ω^)「ぇ、あ、」
lw´‐ _‐ノv「…………ロマは、私を、愛してくれた……私も、ロマを愛してた…………それ、だけ」
( ^ω^)「だから……」
lw´‐ _‐ノv「……だから、猫の身体を集めたの……
……ロマが欠落してるのは、嫌だった、から……。
悪い子、でしょ…………ねぇ、悪い、人」
( ^ω^)「お……」
lw´‐ _‐ノv「…………」
彼女は虚ろな目で僕を見上げながら立ち上がり、ぬいぐるみに回していた腕を、するりと下げて。
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:48:41.07 ID:vLZM/8dRO
「あーもろーにさーた、わてぃそーろか、がーたなー」
彼女が一歩、こちらへ。
「あーもりーいあー、わかーてぃーそろーかー、がーたーなー」
じとりとした眼差しで。
「あーたなあてぃーそろー、こーわもーろにーさーたうぇーえーん」
僕を、見上げて。
「えーてぃせーあけーてぃせー、あけーてぃせーあこわーも、ろーにさーたうぉーわーも」
ぬいぐるみで口許を隠しながら。
「れーてぃせーあ、こーわーもれーてぃーせ、あーけてぃーせあーかあー……ねぇ─────」
入ってきた時よりもしっかりとした声音で歌う彼女が、六つの金色のボタンが縫い付けられた大きなぬいぐるみ
その腹部につけられたジッパーを、下ろして。
どちゃり。
「ぁ……あああああっ! ああああああああっ!!」
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/25(木) 00:50:49.99 ID:vLZM/8dRO
こちらに向かって歩いてきていた彼女から離れたくて、何かを見たくなくて。
僕は椅子から立ち上がり、慌てて部屋から飛び出して行きました。
最後にぽつりとだけ聞こえた彼女の囁きが、僕の耳にこびりついて、離れない。
力一杯に閉めたドアにすがる様に崩れ落ちて、嗚咽を堪える事も出来ずに、泣いて。
一人は嫌だったのに
ああ、あああああ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
僕は譫言の様に呟いて、泣き続けました。
君の猫を殺したのは僕なんだ。
『むっつのめだま。』
おしまい。
( ^ω^)変わった人達のようです その4に続く