176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/20(金) 23:50:28.40 ID:Gpvvevlw0
翌日の四時限目。ブーンは自分の机に伏せていた。
以前の様に寝たふりをしているわけではない。
ブレザーの内ポケットに隠れたショボンと会話をするために姿勢を低くしているのだ。
( ^ω^)「だからおね? “前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。結論:A=Cで
ある”つまり、論理的にこうなるんだお」
(´・ω・`)「んー、わからないよ」
( ^ω^)「論理的に考えたら間違いなくこうなるお」
(´・ω・`)「なんで間違いなく言えるの? 僕もそんなに馬鹿じゃない。A=Bはわかった。
B=Cもわかった。でも、A=B、B=CだったらどうしてA=Cになるの? 何の必然性も
ないじゃない。ちゃんと説明してよ」
( ^ω^)「だから、A=B、B=Cが正しければ、A=Cが成り立つんだってばお!」
(´・ω・`)「そんなこと言ってないじゃないか。そんな前提があるんなら、それをちゃんと追
加してよ」
(;^ω^)「わかったお。仕方ないおね。“前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。前提3:
前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ。結論:A=Cである”どうだお? これでわ
かったお?」
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/20(金) 23:52:21.26 ID:Gpvvevlw0
(´・ω・`)「んー、やっぱりさっきと同じだよ。前提1,2,3はそれぞれ理解したよ。でも、
それでなんでA=Cになるのかわからないよ。どうして?」
(#^ω^)「だ・か・ら! 論理的に考えればそうなるお?」
(´・ω・`)「どうして? 論理的だからとかそんなお題目はいいからさ、ちゃんと説明してよ」
(#^ω^)「よく聞けお! “前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ”って、前提3で
言っているだろ!」
(´・ω・`)「なるほどね。前提1と前提2が正しいという条件が付けば、A=Cになるんだね」
( ^ω^)「そうだお」
(´・ω・`)「じゃあそうするとさ、前提1と2と3の全部が正しく成り立つときに、初めてA=Cに
なるって言えるんじゃないの?」
(;^ω^)「う……。ま、まあその通りだお」
(´・ω・`)「さっきと同じだね。そんなこと言ってないじゃないか。ちゃんと厳密にやってよ。そ
れが論理的ということじゃないの?」
そこまで話して――
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/20(金) 23:54:48.59 ID:Gpvvevlw0
キーンコーンカーンコーン。
――四時限目の終了を告げる鐘が鳴り響く。それは同時に昼休みの始まりを報せる
鐘でもあった。
起立、礼! と学級委員が号令をかけて、昼休みに突入する。
さて、また屋上で弁当を食べるか。今日は天気がいいから気持ち良さそうだ、とブー
ンが伸びをした時。
_
( ゚∀゚)「おー、いたいた! ブーン!」
聞き覚えのある声。声のした方に振り向いてみると、ドアの所にジョルジュが立っていた。
( ^ω^)「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「弁当一緒に食おうぜ。ドクオとビコーズもいるからよ」
ブーンは頷くと席を立った。
机の間を縫うようにして歩いていると、クラスメイトからの視線を感じた。昨日まで友達もい
なくて机に伏せてた奴が、何でいきなりジョルジュたちと仲良くなってるんだ? とでも言いた
げな視線だった。
ブーンはその視線が気まずくてジョルジュの元へと急ぐ。
廊下に出ると、ジョルジュたちが弁当を持って待っていてくれた。
181 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/20(金) 23:58:24.72 ID:Gpvvevlw0
_
( ゚∀゚)「おー、来たか。じゃあ食いに行こうぜ」
( ^ω^)「どこで食べるお?」
_
( ゚∀゚)「いつもは俺らのクラスで食ってたんだが、それも微妙だしなぁ」
食べる場所はまだ決めあぐねているらしい。
( ^ω^)「じゃあ僕がいい場所を教えるお」
そう言ってブーンは彼らを“食堂”に案内することにした。
(‘A`)「おい、ここって立ち入り禁止じゃないのか?」
屋上への扉を前に、ドクオが言った。
(∵)「鍵もかかってる」
( ^ω^)「大丈夫なんだお。ちょっと待ってて欲しいお」
184 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 00:00:59.65 ID:tyseMyVc0
くるりと身を翻し、ドアの前に立つ。3人には見えないように、
( ^ω^)「ショボン、みんなからは見えないように鍵を開けて欲しいお」
そう懇願する。
(´・ω・`)「えー? しょうがないなぁ」
しぶしぶ、といった体でショボンは了承する。ブーンが自分の体でショボンを覆って
やる。こうすれば3人にはショボンが見えないはずだ。
カチャリ。
ブーンにとっては聞きなれたその音――開錠の音がした。
得意げに鉄の扉を開く。眼前に広々とした青空が広がっている。
_
( ゚∀゚)「おぉ! いいじゃねぇか!」
( ^ω^)「これからはみんなここで弁当を食べようお」
(‘A`)「でも大丈夫なのか? 先生とか」
( ^ω^)「おっおっお。僕は今まで誰にも見つかったことがないお。安心するお」
185 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 00:02:38.10 ID:tyseMyVc0
じゃあこれからはここで食べるか、と言いながらジョルジュは床に座り、ドクオと
ビコーズもそれに倣う。4人での昼餐だ。ブーンの顔にも笑みが絶えない。
昼食をとっていると、ドクオがぼんやりと景色を眺めていた。
( ^ω^)「ドクオ、何を見ているお?」
(‘A`)「あ? あぁ、ここからだと俺らの小学校が見えるな、と思ってさ」
なるほど、確かに小学校らしきものが見える。やや高台にあるが、この中学校の
屋上のほうが高さがあるので良く見える。
( ^ω^)「3人共同じ小学校なのかお?」
(∵)「僕は違う」
口数の少ないビコーズが短く答える。
(∵)「ドクオとジョルジュは同じ小学校。初対面で喧嘩したらしい」
( ^ω^)「え? 何で喧嘩したんだお?」
ブーンも二人の出会いに興味が沸く。
318 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 20:53:09.20 ID:tyseMyVc0
_
( ゚∀゚)「くだらねぇ事だよ」
('A`)「コイツが俺に喧嘩を売ってきたんだよ」
ドクオが忌々しげに口を開いた。
_
( ゚∀゚)「喧嘩なんて売ってねぇよ」
('A`)「初対面で『おぉ、不細工な面だな』って言うのは喧嘩売ってんのと同義なんだよ」
(;^ω^)「初対面でそんなこと言うのも凄いお」
_
( ゚∀゚)「そしたらこの馬鹿いきなり殴ってきやがってさ」
('A`)「当たり前だろ。突然そんな事を言われてみろ。殴り合いになるのも当然だ」
( ^ω^)「それで、結局どうなったんだお?」
ジョルジュがフフン、と鼻を鳴らし口の端を持ち上げる。
_
( ゚∀゚)「勝った」
('A`)「悪口は言われるわぼこぼこにされるわで、もう俺涙目ですわ」
_
( ゚∀゚)「不細工の癖に俺に勝とうなんてデボン紀から白亜紀の間ぐらい早ぇ」
(‘A`)「おい、待て。……今なんて言った? 昨日の“不細工協定”を忘れたのか? もう俺の不細工のことは言わない約束だっただろ?」
320 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 20:54:30.72 ID:tyseMyVc0
_
( ゚∀゚)「んなもんは忘れたわ」
('A`)「あぁ? なんだとこら、ちょっと屋上来いや」
_
( ゚∀゚)「もう屋上だわボケが」
('A`)「屁理屈とか聞きたくないわ。あの時のケリ着けてやるからかかって来いや」
_
( ゚∀゚)「もうとっくに着いてるわ」
あぁ? あんだ? コラ。と睨み合うジョルジュとドクオ。それを見てビコーズがポツリ。
( ∵)「まるでチンピラ」
(;^ω^)「止めなくていいのかお?」
( ∵)「放っておけばいい。それより」
ビコーズはブーンの方を向く。
321 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 20:56:08.35 ID:tyseMyVc0
( ∵)「君の語尾はかなり特殊。なんでそんな語尾になる?」
(;^ω^)「お? なんだお突然。気がついたらこうなってたお」
( ∵)「普通は『お』は付けない。なんでそうなる?」
(;^ω^)「いや、何でって言われても……。『〜じゃん』って言うのと同じなんじゃないかお?」
( ∵)「よくわからない。変」
変なのはお前だろ、とブーンは苦笑いをする。ドクオとジョルジュは相変わらず睨み合っていた。
そこで昼休み終了のチャイムが鳴る。
どうやらジョルジュとドクオは放課後に野球で決着をつける、と言う事で話がまとまったようだ。
_
(#゚∀゚)「てめー首洗って待ってろよ!」
(#'A`)「てめーこそ味噌汁用意しとけコラァ!」
口々にそんな事を言いながら教室に戻って行った。ブーンはやれやれ、と嘆息した。
ビコーズは……やはり無表情だった。
323 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 20:58:05.25 ID:tyseMyVc0
そして放課後、昨日の空き地で――。
(#'A`)「おい、準備はいいか!? ちゃんとケツ拭いたか!?」
_
(#゚∀゚)「いつでもいいわ! さっさとかかってこい!」
ジョルジュとドクオが真っ向から向き合っていた。龍虎相打つ、というやつだ。
ピッチャーはもちろんドクオ。振りかぶり、そして投げる。
ブオン。
空振るジョルジュ。
( ∵)「ストライク」
静かに響き渡るビコーズのジャッジ。
('A`)「へっへっへ。だからおまえじゃ打てないって。いい加減わかれよ」
_
(#゚∀゚)「うっせー! 今のはフェイントだ!」
どうやら今の空振りはフェイントらしい。
しかし次球も見事な空振り。続け様にカウントをとられ早くもツーストライク。
325 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:00:17.76 ID:tyseMyVc0
('A`)「おい、手加減してやろうか?」
_
(#゚∀゚)「余計なお世話だ! 今からが本番の世界なんだよ!」
なるほど、どうやらジョルジュは本気だ――そう判断し、ドクオの顔も引き締まる。
ギリリ、と歯を食い縛る音が聞こえてきそうな緊迫感の中、ドクオが最後の球を放る。
ジョルジュが足と腕でリズムを取る。地面を強く蹴り、完璧なタイミングでバットを振り抜く――。
――ジョルジュがバットから手を離し、右腕を高く突き上げる――。
( ∵)「ストライク。バッターアウト」
そして響くゲームセットの声。
ジョルジュは三振した。
_
(#゚∀゚)「クソがっ!」
地団駄を踏みながら悔しがるジョルジュ。
('A`)「うへっへ。わかったろ? これでもう俺の不細工を悪く言うなよ?」
_
(#゚∀゚)「待て! 待ってくれ! 最後に一勝負!」
('A`)「まだ無駄だって分からないかね。代打を立てても俺は別に構わんよ」
_
(#゚∀゚)「よし! 代打だ! いけ、ブーン!」
327 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:01:41.58 ID:tyseMyVc0
え? 僕? 突然の指名に困惑するブーン。
_
(#゚∀゚)「昨日やったみたいにあの不細工の面を更に歪ませてやれ!」
(;^ω^)「いやいや、無理だお。昨日は本当にたまたまなんだお。ドクオの球なんて
速すぎて打てないお」
そう、昨日の快打はショボンのアドバイスがあってのこと。それですらも打てたのは
奇跡のようなものだったのだ。もう一度再現しろと言われても困る。
_
(#゚∀゚)「何で!? できるでしょ!? っていうか、やれよ!」
ダメだ。ジョルジュは興奮している。ブーンは一縷の望みを掛けてドクオをちらと見る。
“そんな代打は認められない”と言って欲しいのだ。だが。
('A`)「ブーンか。いいぜ。昨日のはまぐれだって事をきっちり教えてやるよ」
ドクオはやる気満々だ。仕方無しにブーンは代打を受ける。バッターボックスに立ち、
ジョルジュに、
(;^ω^)「打てなくても責めないで欲しいお」
と保険をかけておく。
329 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:04:03.62 ID:tyseMyVc0
_
( ゚∀゚)「大丈夫、お前はカブレラだ。カブレラになるんだ!」
(;^ω^)「何でカブレラ……」
まぁ、いいだろう。所詮お遊びみたいなものだ。それに、またショボンのアドバイス
を受ければ、ひょっとしたら打てるかもしれない。
ブーンはショボンにアドバイスを求めようと内ポケットに目をやり……。
(´‐ω‐`)「ぐぅ……ぐぅ……」
寝てる。ダメだこりゃ。
('A`)「ブーン知ってるか? 奇跡は二度と起きないから奇跡って言うんだぜ?」
マウンド上のドクオが何だかかっこいい、しかしよく考えてみると意味の分からない
ことを口走っている。
そしてもうお馴染み、ドクオは大きく振りかぶるとその腕を目いっぱいしならせて球
を投げる。
キン。
と小気味良い音。
白球は昨日よりも高い孤を描きながら青空に吸い込まれていった。
331 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:06:32.86 ID:tyseMyVc0
(;^ω^)「あらら……」
( ∵)「ホームラン」
なんと適当に振り回したはずのバットは、奇跡の所業と思われた昨日のそれよりも大きな弧を
描きながら遥か彼方へと飛んでいった。しかもビコーズからのホームラン宣告のお墨付きだ。
(;'A`)「な、何で……」
_
(*゚∀゚)「うはははは! バーカバーカ! 何が『奇跡は二度と起きないから奇跡』だ、クズが!
キモいキモい! ほれ、ブーン! お前も言ってやれ、不細工って!」
ジョルジュはドクオに一泡吹かせたことが余程嬉しかったのか、テンションをヒートアップさせ、
ドクオを罵倒する。あまつさえブーンにもドクオへの暴言を勧めてきた。
(;'A`)「お、お前に負けたわけじゃないんだからね!」
そう苦し紛れに反論するドクオに対し、ジョルジュは眉を思い切り上げ、目を見開き、あごを
しゃくれさせそして右手を右耳にあて屈みえぐり込むように、
_
( ゚∀゚)「はぁ?」
そう言った。憎たらしさ100倍だった。
(;'A`)「ム、ムカつく……」
げはげはと笑うジョルジュを尻目に、ブーンは自分の掌を見つめていた。
332 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:08:06.84 ID:tyseMyVc0
( ^ω^)「僕があの球を打った……」
信じられない、という様子で掌を見つめるブーンにビコーズが駆け寄る。
( ∵)「ブーン、凄かった。君はもっと練習するべき。才能が、ある」
それからのブーンは幸せだった。
大好きな友達が出来ただけではなく、自分が打ち込めるものを見つけた。
野球。
ジョルジュの野球ブームがいつまで続くかは分からないが、しばらくは付き合ってもらおう。
そう決めた。
それだけではない。家に帰ってもショボンがいてくれる。自分を理解し、助けてくれる小さな
友人がいる。
およそ数ヶ月前までは想像すら出来なかった満ち足りた日々。それがすぐそばまで来ている
ことを、ブーンは実感していた。
333 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:09:59.51 ID:tyseMyVc0
――放課後に。
_
( ゚∀゚)「おーい、ブーン! 野球やろうぜ!」
( ^ω^)「うん、やるお! 行こう行こう!」
――授業中に。
( ^ω^)「だからね、“多世界解釈”というのがあってだお? この世界は唯一ではなく、絶えず色々な
可能性を秘めた沢山の世界へと分岐していてだお」
(;´・ω・`)「もう、君の話はわけわかんないよ」
ジョルジュたちと遊ぶようになって、昔の明るさを取り戻したブーンはクラスにも友人が出来て――。
l;:;:;:;:l:;:;:;:;:;:;:、;:;l
/;:;___l____:;:;:;:;.ヽ!
. 'y'‐_ _ィ‐ヾ=ミ、_〉
. lfィ。ッ rf。ッ〈:::::ミ|
l! ´7_,! ´ ,.;!:::ミ,!
| ィrュ,ヽ ' {::7〃 「ブーン、麻呂と班を組まぬでおじゃるか?」
ヽ  ̄ _,..ノソv′
,ハ三 =彡'く
,∠ニ ⊥ ニニム、_
. ,. -‐'7 / / ̄`ヽ
( ^ω^)「うん、麻呂、組むお」
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 21:11:14.58 ID:AGW9KR0J0
麻呂が中学生とな
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 21:11:25.20 ID:bxIPqKuDO
麻呂wwなんでwwwww
338 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:11:59.46 ID:tyseMyVc0
自宅でも――。
J( ‘-`)し「ブーン、ご飯のときぐらいぬいぐるみを取りなさい」
(;^ω^)「べ、別にいいお!」
(´・ω・`)「……」
またある日の放課後――。
_
( ゚∀゚)「ブーン、カラオケ行こうぜ!」
(;^ω^)「え? 今日は野球じゃないのかお?」
('A`)「コイツ今はカラオケにはまってるんだと。しばらくしたら飽きるだろうから、
そしたらまた野球やろうぜ」
( ∵)「僕はカラオケは……苦手」
340 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:13:41.11 ID:tyseMyVc0
ブーンの表情からは笑顔が絶えなかった。
全てがうまくいっているように思えたし、実際そうだった。世の中が自分を
祝福してくれているように感じられた。
ショボンの暖かさに勇気付けられたし、ジョルジュの豪快さに救われた。
ドクオが作り出す空気は居心地が良かったし、ビコーズの無表情に安心できた。
クラスにももうブーンを拒絶するものはいない。みな、ブーンが転校生だった
ことなど忘れてしまったかのように、友情を与えてくれた。特に麻呂のZIPには
何度もお世話になった。
ブーンの表情からは、笑顔が絶えない。まるで、悲しいことなど世界には存在
しないと錯覚してしまうかのように――。
344 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:16:00.10 ID:tyseMyVc0
ある、朝だった。
その日のブーンは中々起きる事が出来ずに、寝坊してしまった。前日にまた新たなブームを
見つけてしまったジョルジュに付き合わされていたのだ。今度はボーリングだった。
さすがに6ゲームもやると腕もパンパンになり、最早頭を掻くことさえ苦痛を伴うほどだった。
なのに、夜に素振りをしてしまった。いや、本心を言うとボーリングではなく野球がしたかった。
なにしろブーンが今一番打ち込んでいることが野球なのだ。
だが、わがままを言うのは自分の役割ではない。ブーンはその熱意をぐっとしまいこんだ。まぁ、
すぐにまた野球が始まるさ、と楽観的だったし、野球好きのドクオがいる以上その読みもあながち
外れているとは思えない。
しかし、どうにもむずむずしてしまう。バットを振りたくなってしまう。だから、振った。夜に500本。
しかし、どうもそれはやりすぎたらしい。既に動かすことさえ億劫だった両腕は更なる倦怠感を纏い、
結果として寝坊してしまうという結果になってしまった。
時計に目をやると、それまでまどろんでいたブーンの脳が急激に目覚めた。
(;^ω^)「もうこんな時間なのかお!?」
慌てて布団をはがし、飛び起きる。朝の空気は凍りつくような冷たさだったが、そんなことは瑣末な
ことだった。なにしろ遅刻をしてしまうかどうかの瀬戸際なのだ。
顔を洗う時間さえもったいない、急いで制服に着替えるためにクローゼットに向かう。
――そこで、違和感に気付いた。
347 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/02/21(土) 21:17:58.31 ID:tyseMyVc0
( ^ω^)「……ショボン?」
ショボンが、いない。
( ^ω^)「ショボン?」
もう一度呼び掛けてみる。
しかしやはり返事はなかった。
ブーンは混乱した。なぜショボンはいないのだ?
いつも自分の布団の上で丸くなって寝ていたじゃないか。自分が布団を勢い良くはがすとコロコロと
下に転げ落ちてそれでも寝ていたじゃないか。
そのショボンが、なぜいない?
ブーンは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
慌ててショボンを探す。
布団をめくり、クローゼットを開け、カーテンの陰に目をやる。
机の下を覗き、本棚の上を見て、タンスを開けてみる。
しかし、どこにもショボンはいなかった。
( ^ω^)の涙のようですその4へ続く