2008年03月21日

('A`)隣の花は赤いようです

435 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:08:47.81 ID:QcNX+Pmi0

手にはピストルを持っていた。
ずっしりと黒くて やたら重量感のある
でも おもちゃみたいにコーティングされたみたいな。
やけにつやのある ピストルだった。

足下には 倒れているひとがいた。
そのひとを誰だか知ってるような気がするけれど
さっぱりとまったく 思い出せない。
でもたしかにどこかで 見たことがあったはずだった。




('A`)「人をなァ、殺した夢をみた」

夢のできごとを簡単にまとめ、口にすると
そこではじめて、あれは夢だったんだなァ、と思ってしまう。

あのかわいた発砲音と、重く響くような衝撃も
そしてゆっくりと、ビデオのスローモーションのように
倒れてしまったひとでさえ。

まるで本当に体験したことみたい
はっきりと鮮明に思い出せるにも関わらず、だ。

 現実はさみしすぎる。



436 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:10:02.49 ID:QcNX+Pmi0

薄っぺらい機械の向こうで、笑う声がきこえた。
笑い話に聞こえたのかと思うと、少しだけ落胆する。
俺は“誰か”を撃ち殺した。
うそじゃない。
作り話なんかでも、ない。

川 ゚ -゚)『サスペンスものでも見て、寝たのか?』

まさか。と俺は笑って言う。
お前じゃあるまいし、誰が好きであんなもの、見るか。
心の中では毒づく。


昨日、遥々他県からショボンがやって来た。
やわらかな雰囲気を纏い、
同い年にも関わらず、誰よりも大人びてみえるひと。
もちろん、東京にいる恋人、クーに逢いに来るのだ。

一ヶ月にいちどだけ、ショボンはこっちに来てクーの家に泊まる。
ほぼ毎日のようにいる俺は、居場所がなくなる。
ひと晩だけ。
その夜こそ、ひたすら逢いたくなってしまう。

ほんとにただ泊まるだけ。
たのしくご飯を食べ、並んでテレビを見る。
俺は漫画を読み、クーは推理小説を読みふける。
カフェオレとコーヒーが微妙に混ざった空気のなかで、
そこに一緒にいるのが、何よりも好きだ。



437 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:11:51.42 ID:QcNX+Pmi0

セックスなんてしない。
どんなに飢えていたとしても、クーには手を出さない。
それは多分、彼女がショボンの恋人だから。
面倒事は極力避けてきた方だ。
嫌いでもない奴をわざわざ敵にするのも、ばからしい。

ショボンと面識はない。
でも、顔と性格はしってる。
なぜならクーが電話を終えたとき、俺に愚痴を言ってくるから。

川 ゚ -゚)「仕事が忙しくて、偶に連絡がきたかと思えば
     明日の天気のことだったり、美味しいものを食べたとか
     そういう下らない報告ばっかりしてくるんだ」

紡ぎ出される言葉は、決して良いものではないけれど、
それを言うクーの表情は、とても幸せに満ち足りたものだ。

俺はそっと笑って、そうなのか、しょうがない奴だな、と頷く。
馬鹿だな、お前は。と心の中で嘲笑う。



438 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:13:07.87 ID:QcNX+Pmi0

でも、きっと本当の理由は。
抱いてしまった途端、
クーが色褪せてしまいそうでこわかったから。

隣の花は赤い。
綺麗なみずみずしい花弁を纏っている。
ひとのものは何だってよく見えるのだろう。




439 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:14:11.44 ID:QcNX+Pmi0

('A`)「声が、聞きたかっただけだ」

ちょっと嘘。
本音は、驚いてこっちへ来てほしかっただけ。
そんな事ぐらいしか思い浮かばなかった。
恋人を放ってまで俺のところへ、飛んできてくれる術は。
犯罪者にでもなれば、クーから逢いにくるだろうと思ったから。
ミステリー好きの、彼女ならきっと。

枕元のめざまし時計をセットする。明日は日直だ。
不意に、携帯から笑い声がちいさくきこえた。

('A`)「どうした?」

かちかちかち。
時計の針を動かしながら言う。
六時半に起きれば余裕で間に合うだろう。

でもきっと出来ない。
目覚めが悪いクーがいないと、起きれない。
細い抱き枕のクーがいないと、まず眠れないし。



440 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:15:25.44 ID:QcNX+Pmi0

川 ゚ -゚)『お前が殺した相手って、私だったりしてな』

('A`)「……さあ、それはどうだろうな」

もしかしたら、ショボンかもしれないぜ。ひっそりと笑って言う。
またわらう声。
そんなに面白いことだろうか。
恋人が、夢の中でころされる、ということは。
時計をセットし、もとの位置にそれを戻した。

携帯を肩と耳のあいだに挟み、
ほんのりと橙色に照らされたひとつの写真を見る。
 クーとショボンのツーショット写真。
彼女の部屋から失敬したもの。
大事そうに飾ってあるからいけないんだ。
それでもまだ、他に色々な写真が飾られてあったけれど。

ショボンはすらりと背丈があり、
日に焼けた肌が、隣のクーをひどく儚げにみせていた。
クーの肌は、まっさらで白い。

背景はどこかの綺麗な山で、雲が薄く引かれており、
ショボン御自慢の車の前で二人は立っている。
二人ともすごく幸せそうに、ほころび写っていた。



441 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:16:23.68 ID:QcNX+Pmi0

誰も、
俺でさえ。
そんなやわらかな笑顔見たことなんてないのに。


別にクーをショボンから奪おうとか思ったりはしないけれど、
クーがひとのものになるなんて、思ってもみなかった。
それほどクーはひとりで居るのが似合ってたから。
 ひとを拒むような静かな横顔。
彼女に纏わりつく冷気のような雰囲気。

多分、俺はいやなんだと思う。
ショボンであれ、誰であれ。
あの孤高と咲く、美しい花が。摘まれてしまうのは。
いやなんだ。

俺にだって摘めたはずだ。
いとも容易にぷっつりと、茎をへし折って。
なのにショボンは、やさしく大きな手で土ごと根ごと、花を両手にした。



442 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:17:44.22 ID:QcNX+Pmi0

俺はつめたいベッドから降りて机にむかう。
クーと話を続けながら椅子に腰掛け、
スチールで作られた缶のような筆箱に片手を伸ばし、赤いペンを取る。
ひらり。
写真を散らかった机の上におき、ペンのキャップをはずす。

('A`)「なあ、いまショボンは何をしてんだ?」

さらりと訊く。
まさか隣にいて話を聞いてるわけもない。
ドクオはそんな無粋な真似はしないだろうし、
クーもわざわざショボンの前で、俺からの電話を取る事もない。

ペン先をショボンの胸、心臓の位置に押し当てる。
ぽちりと。
それから、じんわりと赤くなった。
まるいペン先が、まるで鋭利なナイフのよう。

川 ゚ -゚)『ショボン? ああ、風呂に入っている』

('A`)「一緒に入ってやらなかったんだな」

そう言うと、クーは黙った。
入ってあげるつもりだったのか。
冗談のつもりでからかうように言ったら
「切るぞ」とおどされた。
見えないけれど見える。
彼女の頬はうっすらと紅に染まっているだろう。



443 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:18:59.42 ID:QcNX+Pmi0

電話をしてると、へんな沈黙が流れる。
俺はそれが嫌い。
次に何を話したらいいのか迷うこともあるけれど、
やっぱり沈黙が訪れてしまうと、じれったくなる。

逢いたいのに、電話でしか話せないもどかしさ。
すぐ隣にいて黙ってしまうときなんか、抱きしめたくなるのに。

('A`)「ンじゃ、今から行ってあげな。俺あした日直だし」

川 ゚ -゚)『……早起き、頑張るんだぞ。おやすみ』

('A`)「はいはーい。おやすみィ」

クーから切られる前に、早々と携帯を切った。
電源ごと。
クー以外と話す気にはならない。
履歴も彼女の名前だけ。
ペンを適当にぐりぐりと蛇が這うように走らせ、侵食させてゆく。

携帯を置いたあと、クーはバスルームへ行くだろう。
ぺたぺたと頬を押さえながら。
そして、いっしょに入るんだ。

前までは、俺もクーと。なんて思い出す。
ふんわりとしたメレンゲみたいな泡風呂だった。
黄色いアヒルと、ぱしゃぱしゃ泳ぐイルカもいっしょに。



450 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:46:20.55 ID:C8HZS3KnO

('A`)「せつねェー……」

痛い。くるしい。逢いたい。
俺も、クーにふれたい。
誰にも、クーにふれさせたくない。
どうして今頃になってから気付いてしまうんだろう。
知らないふりをしていれば、良かったものを。

俺は、クーが好きなんだ。
どうしようもないほどに。
ほんとうに、どうしようもなくってつらい。

ペンをころんと転がし、つめたいハサミを手にする。
真っ赤になったショボンだけを、じょきじょきと切り離し、
さらに細かくきざむ。じょきじょきじょっきん。
耳に心地好い、ハサミがショボンを切り刻む音。

ステンレス製の灰皿にそれを入れ、引出しの中からライターを出し、
いらないプリントを小さく千切って火をつける。
ちろちろと燃える紙を一緒にすると。
くにゃりとゆがんでは踊り、ゆっくりと確かにそれらは燃えていった。



452 :('A`)隣の花は赤いようです:2007/05/09(水) 17:48:22.10 ID:C8HZS3KnO
 窓から灰をさらさらとすて、夜風に飛ばす。
砂漠の砂がまいあがるように。
銀の月へと誘い込まれてゆく。



この灰が、

俺の想いが。

届けばいいのに、とちいさく願った。


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無料テクニック★ニュース『SEXバイブル・・・残りわずか』【風俗へ行かず、無料でやり放題】at 2007年05月16日 21:42
この記事へのコメント
  1. Posted by   at 2007年05月16日 21:47
  2. せつねぇー…
    我侭になれないところがまたせつない