January 21, 2011
( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第三話
ミセリが城に住み始めてから数日が経った。
三食食べられ、布団の中で寝られるここは、彼女にとって紛れもない天国だった。
ミセ*゚ー゚)リ「おーいたいた」
( ゚∋゚)「何かご用でしょうか」
巨体を小さくして昼食の準備をしていたクックルに、ミセリが声をかける。
ミセ*゚ー゚)リ「いやぁー、なんていうか私って居候じゃん?
だからさぁ、何にもしないのはちょっと駄目かなと思って、何か手伝いでもっと」
( ゚∋゚)「魔王様はなにもしなくていいと仰いましたよ」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃあ言ったけどさ、こちとらそこまで無神経じゃないっつーか……」
( ゚∋゚)「ええ、よい心がけです。ではお言葉に甘えて、料理の手伝いをしてもらいましょうか」
ミセ*^ー^)リ「オッケー! 曲がりなりにも女だかんね。料理くらい楽勝!」
ミセ*゚-゚)リ「ぎゃあああああ指切った!」
ミセ;゚-゚)リ「ひっ! お皿割っちゃった!」
ミセ*>-<)リ「しょっぱ! 塩の分量間違えた!」
ミセ*;ー;)リ「ひぃぃぃぃ形容しがたい物体Xが誕生した!」
( ゚∋゚)「ミセリ様。その、申し上げにくいのですが……」
ミセ*゚-゚)リ「うん、わかってる。みなまで言わないで」
##### ガラクタ魔王のようです #####
第三話「有能執事と夢見がちな魔神」
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( ゚∀゚)「クックル。その、そこの形容しがたい料理はなんていう名前の料理だ?」
( ゚∋゚)「物体Xでございます」
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( ゚∀゚)「そうか。なにが入っているのかな」
( ゚∋゚)「物体Xでございます」
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( ゚∀゚)「謎が多い料理だな」
昼食に出たミセリの料理は悲惨なものだった。
見た目もさることながら、食欲を妨げる異臭も放っているのだ。
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( ゚∀゚)「う、ぐっ、こ、この料理、毒抜きされていない!?」
ミセ;゚-゚)リ「元から入ってねえよ! もう食べんな!」
昼食のあと、ミセリはもう一度クックルの所へ行った。
( ゚∋゚)「料理の本?」
ミセ*゚ー゚)リ「そ。これくらい大きい城なんだからさ、図書室とかあるでしょ。
料理本見て料理の勉強しようかと思って。花嫁修業みたいな?」
( ゚∋゚)「図書室というか、図書館がございます。お目当ての本も、そこならあるでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「案内してくれる?」
( ゚∋゚)「もちろんです」
クックルが案内してくれた図書館は、ミセリが想像していたものよりもずっと大きく、三階建ての建物だ。
しかし中の様子は悲惨なものであった。
床や机の上に、整理されていない本が乱雑に置きっぱなしになっていた。
ミセ;゚ー゚)リ「うわっ、掃除してないの?」
( ゚∋゚)「ここ数年間は立ち入っていませんでしたからね。これは掃除しなくては」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、手伝うよ!」
( ゚∋゚)「大変嬉しゅうございます。私の手は、本の片付けには向かないのです」
ミセリの何倍もの大きさがあるクックルの手には、鋭いかぎ爪がついている。
これで本を持ったら、もしかして本が傷んでしまうかもしれない。
それからミセリは、彼の爪が自分の肉に食い込むことを想像して、生唾を飲んだ。
物腰の柔らかさで忘れてしまいそうになるが、クックルの姿は一目見ればもう忘れられないほど恐ろしいものだ。
( ゚∋゚)「私はホコリを取って、ぞうきんをかけます。ミセリ様は本を所定の本棚に戻してください」
ミセ*゚ー゚)リ「ん、おっけ!」
作業が始まるとお互い無言になった。
丁寧にほこりを取るクックルの姿を、作業をしながらミセリは横目で盗み見る。
ミセ*゚ー゚)リ「あのさ」
( ゚∋゚)「なんでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「他の魔族はみんな、冥界? ってとこに帰ったんだよね」
( ゚∋゚)「そうです」
ミセ*゚ー゚)リ「クックルはどうして帰らないの?」
クックルの作業の手が一瞬だけ止まった。
( ゚∋゚)「私は帰る場所がないのですよ」
ミセ*゚-゚)リ「どういうこと?」
( ゚∋゚)「私の種族は、私を残して戦争で滅びました」
ミセ*゚-゚)リ「あ……昔の人間との大戦で」
( ゚∋゚)「違います。それよりも以前に起こった、魔族同士の戦争です」
ミセ*゚-゚)リ「魔族同士で殺し合いとかすんの!?」
( ゚∋゚)「人もそうでしょう」
ミセ*゚-゚)リ「そ、そっか」
( ゚∋゚)「その戦争は、魔王を決める、つまり魔族の首領を決めるための戦争でした。
ご存じの通り、その戦争に勝ったのはジョルジュ様のお父様でございます」
ミセ*゚-゚)リ「クックルってガーゴイルって種族でしょ。強いのに、みんな死んじゃったの?」
( ゚∋゚)「強いから死んだのですよ」
クックルの言葉の真意がわからず、ミセリの眉間にいくつもの皺が寄った。
彼女の様子を見て、ふっとクックルは笑った。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:58:06.23 ID:vP6KENfE0
( ゚∋゚)「強いものは前線で闘わなくてはいけない。
どれだけ不利な状況でも、強いものは逃げ出すことができない。
戦争にかり出されたガーゴイルは、みんな死ぬことを前提に、戦いに身を投じました」
淡々と喋っているが、内容は軽くはなかった。
彼の家族もそうやって死んでいったかと思うと、ミセリはやりきれない気持ちになる。
( ゚∋゚)「私が戦争に参加した頃は、もう戦争も終わり際になっていて、厳しい戦いなどはありませんでした。
そうやって運良く私は生き延びました」
ミセ*゚-゚)リ「拒否とか出来ないの?」
( ゚∋゚)「戦争に出ることをですか?」
ミセ*゚-゚)リ「そう」
( ゚∋゚)「出来ないのです。眷属という制度がありますから」
ミセ*゚-゚)リ「けんぞく?」
( ゚∋゚)「魔族の社会は基本的に上下関係の上に成り立っています。
そこで下になった者を眷属といって、上の者からの命令は何でも聞かなくてはなりません。
上下を決めるのは単純な力。私の魔族は、ほとんどがジョルジュ様のお父様の眷属でした。
眷属になった者は絶対服従の契約を結び、そうなればもう逆らうことは出来ません」
ミセ*゚-゚)リ「そう……」
( ゚∋゚)「ただしその契約は戦争のときだけで、戦争が終われば解放されます」
ミセ*゚ー゚)リ「へーそうなんだ。じゃあ今は自由?」
( ゚∋゚)「ええ」
ミセ*゚-゚)リ「そういえば、人間と闘ったときは、戦争に参加したの?」
( ゚∋゚)「したといえば、しましたかね」
クックルは懐かしそうに目を細めた。
( ゚∋゚)「戦争が始まったとき、私一人が住んでいたガーゴイルの里に、魔族の少年がやってきました」
ミセ*゚-゚)リ「少年?」
( ゚∋゚)「今も昨日のように思い出せます」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:13:10.14 ID:vP6KENfE0
『あれが私とジョルジュ様の、初めての出会いでした。』
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( ゚∀゚)「ガーゴイルさん、初めまして」
( ゚∋゚)「誰だてめえ?」
『まだ子供といっても差し支えないくらいのジョルジュ様は、たった一人で、魔境と呼ばれる私の里にやってきました。
幼いながらも、当時から絶大な魔力を有していた彼だから出来た芸当でしょう』
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( ゚∀゚)「僕のお父さんが、人間達たちと戦争しているんだ」
( ゚∋゚)「お父さん?」
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( ゚∀゚)「魔王だよ」
( ;゚∋゚)「魔王!? じゃあおまえは、そいつの子供ってことか。
あの野郎、結婚しやがったのか。クソ、異様に腹が立つぜ」
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( ゚∀゚)「だから君に手伝って欲しいんだ」
『私はすぐにピンと来ました。
つまりこの少年は、私を眷属として迎え入れ、戦争に参加させたいのだと。
そして自分の息子を寄こしたのは、私を眷属にするというのを息子の修行代わりに考えているのだと』
( ゚∋゚)「眷属にするための手順はわかってんだろうな」
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( ゚∀゚)「うん! 闘って勝つ」
『へー。魔王様はまだ子供だったのに、勝てたの?』
『まさか』
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(##∀;)「うわぁん!」
『ボッコボコにしました』
『えええええええええええええ』
ミセ;゚ー゚)リ「容赦ないな!」
( ゚∋゚)「子供相手にあそこまでする必要は無かったのですが、私は腹が立っていたのです。
自分の子供の修行に、戦争という状況を利用した当時の魔王に対してね。
まるでゲーム感覚だと感じました。だから私は、早々に諦めるようにとも考え、たたきのめしました」
『しかし彼は諦めませんでした』
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( ゚∀゚)「勝負だ!」
( ;゚∋゚)「またかよ! いい加減諦めろって!」
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( ゚∀゚)「ふふふ。今日のために新技を編み出したからね。これまでのようにはいかないよ。
名付けてローリングファイヤーヘッドアタックだ!」
( ;゚∋゚)「おまえそれ絶対燃えながら回って頭突きするだけだろ!」
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( ;゚∀゚)「何故ばれた!?」
『いつか私は、魔王がやってくると思っていました。
正直な話、魔王の子供といえどまだ未熟、私に勝つというのは到底無理な話です。
親が出てくれば諦めて、そのときは素直に眷属になろうと考えていました』
『当時の魔王は、来なかった?』
『そうです。里にやってきたのは、いつもジョルジュ様、一人でした』
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(メ;∀;)「クソ! アイスドラフトヘッドロケットがこうも当たらないなんて」
( ゚∋゚)「どうしておまえはほぼ全ての必殺技が頭突きなんだよ」
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( ゚∀゚)「だって頭突きされたら痛いじゃないか」
( ゚∋゚)「そりゃ痛いけどよ、主力技にするもんじゃねえだろ」
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( ゚∀゚)「そうなの?」
( ゚∋゚)「そうだよ。父ちゃんに魔力の使い方を教わらなかったのか?」
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( ゚∀゚)「父さんは、基本的なことしか教えてくれなかったから」
( ゚∋゚)「ふうん。おまえ見放されてんじゃねえの?」
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( ゚∀゚)「忙しいんだよ。魔王はいつも闘っていないといけないって。
父さんは戦いが好きで、だから、僕みたいなのに構う暇が無いんだよ」
( ゚∋゚)「せっかく魔力はつえぇのにもったいないな。試しに指先に集中させてみろよ」
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( ゚∀゚)「指先?」
( ゚∋゚)「収束させた方が貫通力もついて強くなるぞ。これも基本だ」
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( ゚∀゚)「やってみる!」
『いつの間にか私は彼のコーチのような存在になっていました。
私は戦争を憎み、そしてジョルジュ様のお父様も、同じように憎んでおりました。
けれども彼は、そのような戦いに不釣り合いな、純粋な目をしていた。私はそこに惹かれた』
『彼と私が出会ってから、数年が経ちました』
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( ゚∀゚)
『彼は天才でした。力の使い方を知らなかっただけでした。
教えたことは全て吸収し、失敗を恐れずに積極的に学ぶ姿勢があり、恐ろしい速度で上達しました』
( ゚∋゚)「ふ……まいった」
『緊張感が欠けていたとか、若干体調が悪かったとか、小さな要因はあります。
けれどもその日、私は初めて負けました。一度でも負ければ、眷属とすることができます』
『あれ、ちょっと待って。それまでに何度も負けてたんでしょ。
じゃあとっくにクックルの眷属だったんじゃないの?』
( ゚∋゚)「私は誰かを従えるのも、従うのも嫌だったのです。
それに彼を眷属としたところで、彼の父親が私を眷属とするだけでしょうからね」
ミセ*゚-゚)リ「そっか……。じゃあそれで、クックルは魔王様の眷属に?」
『なると思いました』
( ゚∋゚)「まさか、おまえに敗れるとは思っていなかった。契約を結ぼう」
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( ゚∀゚)「眷属になるってこと?」
( ゚∋゚)「そうだ。父親から聞いているだろう?」
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( ゚∀゚)「そう、なんだけど」
( ゚∋゚)「どうした。契約の仕方がわからないのなら教えてやるぞ。まず魔法陣を……」
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( ゚∀゚)「違うんだ」
( ゚∋゚)「なにが?」
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( ゚∀゚)「眷属はいらないんだ」
『まだ少年と思っていた彼の目に、強固な意志を感じました』
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( ゚∀゚)「君は見た目より頭がいいから、もうわかってると思うけど」
( ;゚∋゚)「ほっとけ!」
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( ゚∀゚)「これは父さんから言われた修行なんだ。君を眷属に出来れば修行は終わり。
そしたら僕は君を引き連れて、戦争に参加しなくちゃいけない」
( ゚∋゚)「そうだろうと思ってたよ。覚悟はしてる」
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( ゚∀゚)「僕は闘いたくない」
( ;゚∋゚)「あ?」
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( ゚∀゚)「出来れば誰も殺したくない」
『日常的に殺戮を繰り返す魔王の子供とは思えぬ言葉でした』
( ゚∋゚)「なにを言ってる。殺すのが戦争だ。殺さなければ、殺されるだけだ。
馬鹿なことを言ってないで、早く儀式を始めろ」
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( ゚∀゚)「僕はジョルジュ長岡。君の名前を聞きたい」
『いまさら!?』
『はい。この数年間、技の指導はしましたが、それ以上の会話は全く。
だから私たちは、お互いの名前すら知りませんでした』
( ゚∋゚)「……クックルドゥードゥードゥーだ。クックルでいい」
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( ゚∀゚)「僕たちは、きっといい友達になれるよ」
『かつての戦争で、モノのように扱われ、死んでいった同胞たちのことが頭を巡りました。
私が誰かの前で泣いたのは、きっとそれが初めてでしょう』
ミセ*゚ー゚)リ「それからずっと一緒にいるの?」
( ゚∋゚)「ええ」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん男同士の友情って感じね! そういうのが好きな知り合いいるわ」
( ゚∋゚)「おっと、少し話し込んでしまいましたね。空が赤い」
∑ミセ*゚-゚)リ「げ! マジだ」
窓から斜めに差し込むのは、紛れもなく夕陽で、話に夢中になりすぎてしまったようだ。
( ゚∋゚)「私は夕食の準備に取りかかります。ミセリ様は?」
ミセ*゚ー゚)リ「魔王様でもいじってくるかな」
( ゚∋゚)「今の時間帯ですと、おそらく西棟の展望台におられます」
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう!」
( ゚∋゚)「それではまた」
ミセ*゚-゚)リ「あー、そういえば」
( ゚∋゚)「はい?」
図書館から出ようとしていたミセリは、立ち止まってクックルを振り返った。
ミセ*゚-゚)リ「魔王様って、結局戦争に参加しちゃったの? 虫も殺せなさそうだけど」
( ゚∋゚)「いいえ。当時の魔王様がお亡くなりになられ、魔族が冥界に撤退したので、人を殺してはおりませんよ」
ミセ*゚ー゚)リ「そう。よかった。あいつが人殺しとか、あんまし考えたくなかったし」
ミセ*゚-゚)リ「ていうか魔王って、どうして死んじゃったの?
学校行ってなかったからあんまり歴史とか詳しくないけど、確か原因が謎だったんだっけ」
クックルはミセリに背を向けていたので、彼がそのとき、見せたことのない険しい表情をしていたのを、ミセリは知らない。
( ゚∋゚)「例え戦争に参加していても、きっとジョルジュ様は誰も殺せなかったでしょう。
彼はあまりにも、優しすぎますから」
ミセ*゚-゚)リ「そ、そうね……」
何となくはぐらかされた気がしたが、あまり気にも留めずミセリは図書館を出て行った。
空は血のように真っ赤に染まっていた。
しばらく空に目を奪われていたが、はっと我に返り、西棟を目指してミセリはまた走り出した。
続き( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第四話