January 09, 2011
('A`)荒地のようです 第一キビ
中学生の頃からか、僕の顔は荒れていた
そう、思春期に荒れたのは僕の心ではなく顔だったのだ
にきびででこぼこの顔
いつも顔は赤く、油ぎっていた
ξ゚⊿゚)ξ「うわーあいつの顔きもくない?」
_
( ゚∀゚)「荒地だ荒地wwww」
_
( ゚∀゚)「おい荒地、今日の給食のデザートよこせよ」
('A`)「え・・・いやだよ」
_
( ゚∀゚)「荒地のくせに生意気だなwwwクリーニングしちゃうぞwww」
ξ゚⊿゚)ξ「やめなよwwwかわいそうじゃないwwww」
今思えば軽く虐められていたのだろう。鈍い僕はそういう扱いに慣れてしまっていた
( ゚∀゚)「おい・・・断ったら殴るぞ」
僕のそばでぼそりとジョルジュがささやく
('A`)「や、やります・・・」
( ^ω^)「おお。他に立候補はいないな?」
( ^ω^)「男の学級委員はドクオで決まりだな」
_
( ゚∀゚)「さすが荒地!荒野の一匹狼だなwww」
('A`)(困ったなぁ。人前に立って話せないぞ僕)
( ^ω^)「女の子は素直さんに決まりました。二人に拍手!」
パチパチと気の無い拍手。中にはクスクス笑いが混じっていた
川 ゚ -゚)「よろしくな」
('A`)「ん」
「ん」ってなんだ「ん」って
気の利いた言葉の一つも出ない自分が少しもどかしい
( ^ω^)「さっそくだが、今度の学年会は二人で今度やる運動会についての司会進行やってもらうからな」
川 ゚ -゚)「はい」
('A`)(無理無理無理無理無理!!)
_
( ゚∀゚)「ぎゃはははwwwwがんばれよ荒地www」
( ^ω^)「それじゃあ今日のホームルームは終わり、各自気をつけて帰るように」
('A`)「はあーどうすんだよ。100人以上の前で醜態さらすのか」
帰り道一人ごちりながら黙々と歩く。僕の歩幅は小さいらしく、途中で何人かの生徒に抜かされたがそれでも急いで帰る気にはなれなかった
('A`)「あー学校滅びないかな」
('A`)「くっそジョルジュが余計なこと言わなければ」
('A`)「せめてにきびなくならないかな」
( ・∀・)「そいつぁ困るな」
('A`)「誰が困るんだよ・・・」
('A`)「は?」
( ・∀・)「だから、俺が困るんだって」
('A`)「ど、どちら様で?」
( ・∀・)「にきび」
('A`)荒地のようです
第一キビ 「決戦の朝」
確かに声が聞こえるのは顔の付近だが、にきび?
('A`)「冗談きついよ」
( ・∀・)「いや、手鏡出してみ?百聞は一見にしかずってね」
なんとこのにきび、ことわざまで喋れるらしい
('A`)「手鏡なんて持ってないよ」
( ・∀・)「じゃあちんたら歩いてないでさっさと帰ろうぜ」
('A`)「・・・」
僕は予定を変えて走って帰ることにした
夏の刺すような日差しに際限なく汗がにじみ出るのもかまわず、家に着いた僕はぜーぜーと息をきらしながら洗面所へと向かう
('A`)「ほんとだ」
家の鏡に映る僕。まさに都会っ子といわれるような華奢な体にけして見目麗しいとはいえない顔
その顔に群生するにきびの中でもひときわ大きなにきび
そこに、やつがいた
('A`)「・・・」
('A`)「いつからいたんすか?」
( ・∀・)「いや、さっき気づいたら生まれた」
( ・∀・)「良かったな。お前俺のお母さんだぞ、光栄に思え」
('A`)「光栄に思うの逆じゃない?」
( ・∀・)「ママー」
('A`)「僕まだ中学生なのに」
( ・∀・)「まぁ冗談は置いといてだ、なんに悩んでるんだよ?」
('A`)「今はこの謎の寄生体に悩んでるよ」
( ・∀・)「俺のことはいいんだよ。お前さっき言ってたじゃん。困ったって」
('A`)「あぁ・・・いいよ別に。大したことじゃない」
( ・∀・)「しゃべらないと体中に俺が分裂するぞこのやろう」
('A`)「今すげー相談したくなった。いや、ていうか聞いてくれない?お願いします」
( ・∀・)「苦しゅうない」
どうやらにきびは分裂して増えれるらしい
('A`)「学校で学級委員やらされてさ、僕こんな顔だし人前で喋るのも苦手なんだ」
そもそも人とコミュニケーション取るのもあまり好きではなかった
( ・∀・)「ほほう。で?」
('A`)「で?って・・・終わりだけど」
( ・∀・)「んーようは顔キモイし喋れないから恥をさらしたくないと」
('A`)「もうちょっとやわらかく言ってくれればいいのに」
( ・∀・)「事実だろ。まずは認めるところから弱点克服への道は始まるんだぜ?」
('A`)「え?手伝ってくれるの?」
( ・∀・)「俺のできる範囲でな。一応お前には世話かけてるみたいだし」
('A`)「別にニキビのことを責めてるわけじゃないよ」
( ・∀・)「あはは。ありがと。でもぶっちゃけあまり気にしてないよ兄弟」
('A`)「親子じゃなかったのか」
( ・∀・)「うるせぇお前はママのおっぱいでも吸ってやがれ」
どうやらニキビは口が悪いらしい
( ・∀・)「でもお前俺となら普通に喋れてるじゃん。けっこう返しもキレあるよ」
('A`)「凄い上から目線のニキビだなぁ」
( ・∀・)「手伝わないぞこの顔面凶器」
('A`)「ダメなんだ」
( ・∀・)「はへ?」
('A`)「いざ人と面すると、萎縮しちゃうんだよ。女の子ならなおさらぶっきらぼうになってしまう」
( ・∀・)「ふむ」
('A`)「かといって学校休んだら同じ学級委員の素直さんに迷惑をかけてしまう」
( ・∀・)「人間ってめんどくさいよな。協力だの責任だのって」
( ・∀・)「わかった。こうしよう」
ふむ、と呟くニキビは話を続ける
( ・∀・)「その素直さん?ってのに協力を頼め。女の子なんだろ?」
('A`)「え、無理だよ」
( ・∀・)「なんで?一番難解な女の子と喋れるようになれば解決だろ?」
('A`)「いや、無理だって!素直さんだって嫌がるに決まってるよ!」
( ・∀・)「じゃあどうすんだよ。逃げるのか?」
('A`)「僕はひとりぼっちなんだ・・・無理だよ」
( ・∀・)「大丈夫。俺も一人ぼっちだったから」
( ・∀・)「一人ぼっちと一人ぼっちが二人いたら、それはもう一人ぼっちじゃないだろ?」
('A`)「・・・」
( ・∀・)「お前は一人じゃない」
そんな慰めを聞きたいわけじゃなかった
そんな簡単なっことで僕がいじめから脱出できるとも思わなかった
お前に僕のなにがわかる?
お前はなにを見てきたんだ
('A`)「はぁ」
('A`)「考えさせてくれ」
( ・∀・)「そうか。俺しばらく寝るから良く考えろよ」
どうやらニキビも睡眠を取るらしい
( ・∀・)「あのさ、さんざんぼろくそ言ったけど」
( ・∀・)「お前は最後にはやる男だよ」
なんたって俺の親だからな
なんていったきりニキビは喋らなくなった
('A`)「ふぅ・・・」
僕は再び洗面台の前に立ち、自分の顔を見つめる
どうやら眠るとニキビの顔もいなくなるらしい
鏡には卑屈そうな顔をしたニキビだらけの頼りない自分が写っていた
夜
生ぬるい空気を送る扇風機を前にして寝転がった僕は宙を見つめる
夕食を食べた後は特にやることもなかったので、明日からどうやって学校をズル休みするかの言い訳を黙々と考えていた
しかしそんなうまい理由が生まれてくるわけでもなく、やはりただゴロゴロしながら無気力に時だけが過ぎていく
('A`)(偉そうに好き勝手言いやがって。俺にそんな勇気あったらとっくにいじめから脱出してるっつーの)
先ほどのにきびとのやりとりを思い返すと無性に腹が立ったのでオロナインを顔中に塗りたくってから寝ることにした
快眠を妨げる程のうだるような暑さに目覚めるとどうやらニキビは僕より先に起きていた
( ・∀・)「よう、決まったか兄弟」
('A`)「いや、無理。ていうか今日学校休むわ。36.9℃の微熱があるんだ」
( ・∀・)「嘘つけ。今のお前は36.5℃。極めて健康体だ」
どうやらニキビは細かな体温まで把握しているらしい。気持ち悪いことこのうえない
('A`)「まだ決心つかないよ」
( ・∀・)「んー」
( ・∀・)「そっか」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 18:56:50.36 ID:EJf6YvSH0
やけにあっさりと引き下がったニキビ。しばらく沈黙が広がった
僕はこの会話と会話の間に訪れる沈黙がひどく苦手だった。なにか自分が悪いことをしたような、もしくは得たいの知れない何かに責められている気がするからだ
( ・∀・)「ところでさ、なんか肌がやけにしっとりしてるんだけどなんかした?」
('A`)「いや、知らない。寝起きだし僕のよだれ垂れたんじゃないかな」
頬から聞こえるうげぇとかいう声を尻目に僕は朝食を摂りに一階へと降りていった
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:00:58.11 ID:EJf6YvSH0
無事朝食を食べ終え(当然ニキビは黙っていた)
一人で登校中の僕はニキビと喋りながらのろのろと歩を進めた
( ・∀・)「で、どうすんのよ」
('A`)「え?なにが?」
( ・∀・)「いや、お前学級委員ってやつになったんだろ」
('A`)「あぁ。なんとかなるんじゃないの」
いざとなったら不登校になってやる
( ・∀・)「嘘だな。お前絶対に逃げるんだろ」
('A`)「うるっさいな。ほっといてくれよ」
('A`)「僕のことは僕が決めるよ」
( ・∀・)「ははっよくその顔でそんなこと言えるな。今までも逃げてきたのに」
('A`)「・・・」
('A`)「あ、素直さん」
曲り角から見えた白い顔と一つに縛った艶やかな髪。間違いようがない
( ・∀・)「ほう。あれが素直さんか」
( ・∀・)「よし。行くぞ」
('A`)「え・・・はぶぅ!」
ほっぺが重力を完全に無視して素直さんの方へと向かう。なんてニキビなんだ。力ありすぎだろ
('A`)「ふ、ふざけんな!なにしようっていうんだ!」
さすがにほっぺがちぎれるのは嫌なので顔だけを不自然に傾け、珍妙な格好のまま僕は走り出す
( ・∀・)「え?素直さんに協力を仰ぐんだよ。昨日言っただろ?」
('A`)「了承してないよ!」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:11:41.35 ID:EJf6YvSH0
( ・∀・)「もう手遅れだ。この場合顔遅れかな?出した顔はもう引っ込まない。賽は投げられたのだ」
そう。着実に素直さんに近づいているのだ。
( ・∀・)「あと25m!」
('A`)(ち、畜生!)
やけに今朝おとなしかったのはこのせいか。ニキビごときにはかられるとは
もう素直さんとの距離は数十歩分もない。彼女の暑さでほんのりと朱に染まった頬の色が確認できるほどだ
熱い。ヤバイ。それでもニキビは止まらない
( ・∀・)「素直さん!!」
ニキビが大きな声で叫ぶ
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:15:03.40 ID:EJf6YvSH0
川 ゚ -゚)「ん?」
( ・∀・)(後は任せたぞ兄弟!!)
('A`)(このやろう丸投げか!)
どうやら僕は腹をくくらねばならぬようだ。なんて心臓に悪い朝。どうせならもっときちんと準備をしておけばよかった
それでも走る足を緩めることなく僕は息を吸い込む
肺に酸素が入り込み、胸が膨らむ。
開く口。飛び出す言葉は・・・
('A`)「おはよおおおおお!!」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 19:17:29.72 ID:EJf6YvSH0
ターザンよろしく大きな声を出して挨拶をした僕は
川 :゚ -゚)「お、おはよう」
('A`)(やっぱむり!!)
素直さんの返事を確認した後、足が回転する速度をさらに上げ僕はその場を後にした
つまり、その場を駆け抜けたわけだ。
後になって思う
あの瞬間 僕は誰よりも風に近づいた人間の内の一人だった
第一キビ 「決戦の朝」
終わり