January 08, 2011
(∵)「かゆいところはございませんか?」のようです
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 09:29:38.31 ID:70doq+Xk0
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プロローグ
コックをひねってほどなくすると、シャワーが温まりだした。
もうもうと立ち込める湯気の中に、ぼんやりと女性のシルエットが浮かび上がる。
つややかな明るい色の肌と、腰までを覆う長い黒髪。
彼女の名前はクー。クールな性格だからクー。
川 ゚ -゚)「……」
電球のオレンジに照らされながら、彼女は額から湯を浴びる。
彼女の肉体は、やわらかでありながら、まるで大理石の彫刻のように引き締まっている。
顔にあたった湯が、筋の通った鼻梁から、首筋、鎖骨、さらにふくよかな乳房の間を通りながら、太ももを伝って排水溝に流れていく。 - 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 09:30:23.33 ID:70doq+Xk0
身体の汚れと一緒に、一日の疲れが取り除かれていくようだ。
暖かく湿った空間に、クーは安心しきっていた。
全身のこわばりがほぐれたので、クーはシャンプーのボトルに手を伸ばした。
しかし、押せども押せども、シャンプーが出てこない。
「……ない」
あきらめずに何度かボトルの頭を圧したものの、中身が切れてしまったようだ。
「私としたことが迂闊だったな。……仕方ない取りに行くか」
クーは眉根を寄せて蛇口を閉めた。
季節は冬。
浴室のドアを開けると、一気に冷たい外気が侵入してくる。
冷気に肌をなでられ、クーはぞくりと身を縮めた。
一人暮らしをしているのだから当たり前だが、アパートの中は真っ暗だった。
川 ゚ -゚)「全く、何がいるか分かったものじゃないな。
今度から電気をつけたまま入浴することにしようか……」
そんな気もないくせに、ぼそりとつぶやく。
タオルで体表の水分を軽く拭き取ったクーは、無防備な恰好のまま、洗面所の裏にある収納スペースを探り出した。
浴室から近いので、電気はつけない。
川 ゚ -゚)「んーと、確かこの辺に……」
答える人のいない呟きが、暗い廊下に空々しく溶けていく。
しゃがみこんだ無防備な細い背中が、浴室の淡い明りに暗く浮かんでいる。
だんだんと体が冷え、クーは寒気を覚えた。
川 ゚ -゚)「あった、これだ」
ようやく詰め替え用のパックを見つけて、安堵の声をあげた途端。
ぎしり。
川 - )「ひぁっ!?」
背を向けた玄関の方からきしむ音がした。
まるで誰かがすぐそこにいるかのように。
クーは思わず声をあげ、勢いよく立ちあがる。拍子に、思い切り肘をぶつけた。
川 ゚ -;)「っ……」
肘をかばいながらも、しかしクーはおびえた目で玄関のほうを見続けた。
全身に鳥肌が浮かんでいる。
先ほどまでの温かさはすでにどこかへ行ってしまった。
警戒を解かないで玄関を見つめ続けるものの、何の反応もない。
川 *゚ -゚)「……ビビりすぎだったか」
先ほどなった音から、妙にただならない気配を感じたような気がしていた。
取り落としたシャンプーのパックを拾い上げながら、クーは浴室に向き直った。
川 ゚ -;)「いたた……」
見ると、思い切りぶつけた右の肘の皮が、思い切りめくれてしまっている。
川 ゚ -゚:)「後で消毒しなくちゃな」
苦笑しながら浴室のドアを開けた瞬間。
《 か … ゆ い … … 》
( ∵ )
《 お ね え さ 、 》
そ れ は 、 子 供 。
身 の 丈 1 3 0 セ ン チ も な い 、男 の 子 。
紙 の よ う に 白 い 肌 。
現 実 感 の な い た た ず ま い 。
な に よ り 。
目 の 中 が 空 洞 で 、 舌 を 抜 か れた 。
川 - :)「いやっ……!」
クーは踵を返して、
――暗転
1
(‘A`;)「なあブーン。やっぱり、クー先生見なくねえ?」
VIP高校の昼休み。
幼馴染が、こうして相談にくるのも、今日で三回目だ。
(^ω^;)「おっおww そんなに心配なら、さっさと電話でもなんでもするがいいお」
いくら小心者な奴だと分かっていても、友人のそんな態度にはそろそろ愛想が尽きてきたので、
ブーンの返答にもからかうニュアンスが混じってしまう。
(*‘A`)「バカっ。 俺みたいなのがそんなことしたら、先生迷惑に思うだろ……」
ドクオは耳まで真っ赤に染めてうつむいてしまった。
クー先生に淡い恋心を抱いているのだ。
( ^ω^)「そこまで熱くなれたら、ストーブなんていらなさそうだおねww」
そんなドクオの様子をしり目に、ブーンは机をくっつけながら弁当をとりだした。
二人は高校二年生で、家も近所の幼馴染同士だ。
大柄で微ピザの方、ブーンは、本名を内藤ホライズンと言うが、誰もそう呼ばない。
小学生のころからブーンで通っている。飛行機の真似が好きだったせいだ。
将来の夢はパイロットなのだが、偏差値が足りないせいでよく教師をやきもきさせている。
本人は何事にも動じない性格なので、まぁ何とかなるおwwwなどと余裕をこいていたりするのだ。
一方ドクオは、平均よりも少し高いくらいの身長を持ったやせぎすだ。
孤独を好みそうで、毒を吐きそうな男だからドクオ。
つけたのがブーンじゃなかったら、いじめを疑われてもいいくらいのひどいあだ名だ。
成績は中の中だが、数学だけことさらに強い。
ばりばりの理系というイメージそのままの男なのだ。
基本的にスペックは悪くないのだが、あまり容姿に頓着しない性格なのが災いし、女性からは不評を買うことの方が多い。
いつも、高校二年生にしてすでに貫録たっぷりなブーンといるせいで、
実際よりも小柄に見られることが、悩みといえば悩みなのかもしれない。
しばらく、二人で弁当をつつきながら、
(^ω^* )「カーチャンの唐揚げはうまいお」
('A`;)「そろそろダイエットしないと将来泣くぞ」
などと、無駄話に花を咲かせる。
いつもの風景だ。
そこにいきなり、小柄な影が飛び込んできた。
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとちょっと二人とも、のんきにご飯食べてる場合なんかじゃないわよ」
('A`)「なんだツンか。そんなに急いでどうしたんだ?」
( ^ω^)「せっかくのお食事タイムをツンごときに邪魔される道理はないおwww」
ξ#゚⊿゚)ξ「黙れピザ」 ゴゴゴ……
頭のツインテールがふわりと揺れる。
彼女の名前はツン。
いたずらっぽい釣り目に、ふわふわの猫っ毛をもった、まぁまぁかわいい女の子だ。
なぜかいつもツンツンしているからツン。
ブーン、ドクオとは、小学生のころからの付き合い。
ついでに二人とは、同じ吹奏楽部仲間だったりもするのだ。
普段から一緒にいるというわけでもないのだが、しっかり者で面倒見のいい彼女は、
事あるごとに、ぼんやりした二人の面倒を見てくれるのだった。
いつも叱咤されてばかりだが、ブーンもドクオもツンが本当はやさしい事を、ちゃんと分かっている。
ξ゚⊿゚)ξ「クー先生がね、今日は連絡もなしに休んでるみたいなのよ」
('A`;)「やっぱりそうだったのか。ほら見ろブーン、大変だ。クー先生に何かあったかもしれない!」
(^ω^ ;)「僕の方を見て言われても困るお。ツン、携帯に連絡は入れてみたかお?」
ξ ⊿ ;)ξ「それがね、何度かけてもつながらないの。今日の練習予定を見てもらわなきゃいけないのに……」
ちなみに、ツンは三人の所属する吹奏楽部の部長をやっている。
顧問はクー。
若いけれど、学生時代に何度も全国大会に出ていた経歴がある凄腕の先生なのだ。
しかし、ブーンたち生徒には、出来るだけ自分たちで運営させるように指導している。
そういう指導方法の下でも、そこそこの成績を上げて三年生が引退した今、
三人とも何らかの役職に就いており、それなりに大変な日々を過ごしているのだ。
(^ω^ ;)「うーん、あの完璧なクー先生に限って、奇妙だおね。ドクオ、ちょっと携帯貸せお」
('A`)” 「ん?ああ」
ドクオは、何の疑いもなくブーンに携帯を渡す。
真っ黒なスマートフォンを受け取ると、ブーンは自分の携帯と見比べながら、ピポパポとボタンを押した。
(^ω^ *)「よし、ちゃんとかかった。悪いけど、ドクオが出てやってくれおww」
ξ゚⊿゚;)ξ「人の携帯で勝手に電話する?普通」
('A`)「かけちゃったもんは仕方ないよな……で、誰にかけたの?」
( ^ω^)「クー先生に決まってるおwwwww」
ドクオの顔が一瞬で朱に染まった。
(//A//)「ブーン! おまえ!!」
(^ω^//)「フヒヒww大丈夫だお。ツンと違ってクー先生はやさしいから、たとえ非通知のドクオが相手でも受話器を取ってくれるおwwwww」
ξ゚⊿゚)ξ「誰がやさしくないって!?」
(#`A')「あまりにも俺を貶めすぎだろ!」
('A`)「っていうかなんでお前、クー先生のアドレスを知ってるんだ」
( ^ω^)「パートリーダー的に相談することがあったんだおwww」
そんなやり取りをしている間も、コール音は続く。
……。
('A`;)「なぁ……これ、あまりにも長くないか?」
ξ゚⊿゚;)ξ「そうなのよ……とっくに、留守番サービスなんかにつながっていいころよね」
( ^ω^)「おっ? まだコールしてるのかお? これは、ドクオから変な電波でも出てるのもしれんお」
そう言ってブーンは茶化すのだが。
ブッ、と。
ドクオが耳につけた携帯の向こうで、誰かが受話器を取る音がした。
(///A//;)” 「(で、ででででで出たぁ!)
く、くくくくくっ、ククール先生ですかぁッ↑!」
ξ‐⊿‐;)ξ「いや、それじゃ違う人になってるから」
(^ω^ ;)「声も裏返ってるおww」
受話器の向こうは、ノイズがひどい。
チューニングの合わないラジオのように、おかしな音が混じる。
潮騒のようなざわめきの向こうで、ドクオはクーのかすかな声を聞いた気がした。
「 ……」
( A ;)「クー、 先 生 ……?」
「 …… ィ 」
( A )「ク ー 先生、 なんで す、か?」
「 …… ュ ァ ? 」
( A ;)「せ ん 、 せい …… ?」
川 - )「 た け て 」
(;A;)" 「せ…… 先 生! 答えて!」
クーのただ事でないような声に、ドクオは焦燥した。
息が詰まる。うまく呼吸ができない。
視野が、せまくなる。
もう一度、かすかな声がした。
しかしドクオは、背筋をびりびりとした何かが這い上がってくるのを感じた。
ちがう。これはクーじゃない。
真後ろに。真後ろに、誰か……。
(∵(‘A`;)「《かゆいところは、ございませんか?》」
. ―声が。
('A`)「……ッ!」
ドクオは背後を振り返った。
普段通りの教室の風景が、そこにある。
('A`)「……?」
ドクオは知らず知らずのうちに胸を押さえていた。
呼吸が荒い。
真冬だというのに、全身が冷たい汗をかいている。
( ω ;)「ドクオ……なにか、なにかあったのかお?」
ξ ⊿ ;)ξ「あんた変よ。真っ青じゃない……」
前を向くと、二人の幼馴染が心配そうにこちらを覗きこんでいた。
('A`)「い、今、俺の後ろに誰かいたか……?」
( ^ω^) 「? いや。 なんもいなかったお?」
( A ;)「……そうか」
怪訝な顔をするブーンに、ドクオは黙り込んだ。
確かに、子供のような、冷たい声がした。
ような気がしていたのに……。
ξ゚⊿゚;)ξ「ねぇ、いったい何があったっていうの? クー先生は? まだ通話中なんじゃないの?」
ツンに言われて、ようやく携帯を覗きこむ。
しかし、すでに、通話が切られていたらしく、真っ黒なスマートフォンの画面には、
【通話時間 2分12秒】
【通話料金 90円】
などといった無機質な文字が並ぶだけだった。
('A`||)「白昼夢でも見たのかなぁ、俺」
ドクオはひとりごちた。
( ^ω^)「クー先生はなんて言ったお? ちゃんとつながったんだおね」
( A ;)「それが……変なノイズばかりで、うまく聞き取れなかったんだよな」
ξ゚⊿゚)ξ「ノイズ?」
('A`)「変な、壊れかけのラジオみたいなの。ピーとかガガガとか。それに混じって一瞬、クー先生の声が聞こえた気がしたんだけど……」
(^ω^ *)「ラ・ヨダソウ・スティアーナ(La jodaso stiana.)?」
(#`A')ノ 「違うわっ!」
ξ#`⊿')ξノ 「ブーンはふざけないでよっ」
('A`)「俺は……」
ブーンのおかげで随分くだけた雰囲気になってしまった。
先ほど、真後ろで聞こえた声を思い出し、ドクオはブルリと背を震わせて、口をつぐんだ。
まさか、クーの声で助けてと聞こえたなんて。
言えるものか。
(('A`))「そ、それにしても、この部屋、寒くないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってるの。さっきと変わらないわ。暖房もちゃんと付いてるんだし」
ツンが、教室の前後に設置された大型のファンヒーターを示す。
(('A`;)「・・・・・・そうかなぁ」
(^ω^ *)「クー先生に脅かされたかお? ドクオはしょうがない奴だお。 僕がついてってあげるから、一緒に温まるんだお」
抜け目なく弁当を食べ終えたブーンが、ドクオの肩を抱いて立ち上がる。
( A ||)「ん……」
半分以上手をつけていなかったが、ドクオはもう弁当を口にする気になれなかった。
ξ#゚⊿゚)ξ「ブーンはあったかいスポットを占領したいだけでしょーが」
ツンが、ブーンの頭に軽くチョップをお見舞いした。
ガスッ。
ξ゚⊿゚)ξつ☆
..........................(;ω;)「あでっ」
( A )「・・・・・・」
( ∀ *)
(*'∀`*)「ふひひww変なことばっかり言ってくるからだwww
それにしても、俺の携帯、買ったばかりなのにもう壊れたのかもしれないな」
(^ω^ *)「もう機種変かお?」
ξ*゚⊿゚)ξ「かわいそうな携帯よねー、こいつも」
ブーンとツンが笑いながら覗きこんでくる。
そんな中、つけっぱなしだった通話画面を閉めようと、ドクオが携帯の画面を操作した。
ξ ⊿||;)ξ「 …… ひ っ… …!! 」
びっしりと。
時間でいえば一秒にも満たない間だったが、《それら》は確かに表示された。
スマートフォンの画面いっぱいに……。
点 々 が 。
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵の∵ろ∵∵.|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵ う∵∵∵.|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵よ∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
|∵∵∵∵∵∵∵∵|
細かな点々の中に、読み取れるひらがなが四つ。
のろうよ。
表示されたのはたったの一瞬だったが、三人は確かにそれを目撃した。
その言葉が、何を言わんとしているかは一目瞭然だった。
( A ;)「そうみたいだな、ブーン。おれは機種変しなきゃいけないらしいよ。
でも、携帯屋に行く前に、もう一つ行かなきゃいけないところが、……出来たみたいだ」
ドクオはその日、部活をさぼった。
真剣な面持ちで、クー先生のお見舞いに行くと言ってきかないのだ。
渋るツンに懇願し、クーの住処を聞き出すと、真っ先に教室を飛び出ようとする。
そして。
('A`*)ノシ「クー先生の住所教えてくれてサンキュ。じゃあ、また明日学校でな」
ξ゚⊿゚;)ξ「本当に一人で大丈夫?」
( ∀ )「うん。 ただのお見舞いだし、問題ないだろ。 それに、二人がいなくちゃ部活にならないだろ?」
そうやって手を振ったドクオ。
( ^ω^)「悪いお。せめて楽しんでくるんだお?」
(//A//)「そんなんじゃねーよ」
ブーンが、以前のままのドクオと話すことができたのは、この日が最後となった。
第一章 完
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この記事へのコメント
1. Posted by は January 09, 2011 16:16
一行AAくらいちゃんと使って欲しかった感が半端じゃないよね
2. Posted by \(^O^)/ January 09, 2011 19:21
全然引き込まれないなぁ…
3. Posted by かとうあい January 10, 2011 02:58

4. Posted by (´,,・ω・,,`) January 16, 2011 16:40
