January 12, 2011
('A`)荒地のようです 第二キビ
第ニキビ 「A rolling stone gathers no moss」
( ・∀・)「おいどうすんだよへたれ」
('A`)「全力で走り抜けました。悔いはありません」
( ・∀・)「まったく冗談は顔だけにしてくれよ」
('A`)「・・・」
こいつ。今僕が喋ってる相手はニキビだ。別に僕の頭がいかれたとか中二病が発祥したとかじゃなく、本当に僕のニキビがしゃべっているのだ
原因はわからないしこいつがなんの目的をもっているのかもわかっていない
( ・∀・)「俺?いや、特に生まれてきた理由なんてないんじゃないかな。」
( ・∀・)「そうだな。強いていえば」
('A`)「うん」
( ・∀・)「そこにニキビがあったから」
だ、そうだ
寂れた校門をくぐり下駄箱にたどり着いた僕はシューズケースから上履きを取り出した
自分で上履きを持ち帰り保管しないと大体数日で上履きがなくなるからだ
上履きの中にカブトムシの頭が入っていたこともある
('A`)「・・・」ガラリ
特に挨拶することなく教室からまっすぐ自分の席へと移る。そうだ。別に僕ははぶられているわけじゃなく、一匹狼なだけなんだ
_
( ゚∀゚)「おうww荒地じゃんwww今日もテカテカしてるねwww」
('A`)「ドウモ」
_
( ゚∀゚)「ちゃんと休み時間ごとに顔洗いにいけよ。汚いから」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと辞めなよwww気を悪くしちゃうじゃないww」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、欝田君私の机には触らないでね。もし触っちゃったらきちんと綺麗な雑巾で乾拭きすること」
('A`)「ハァ。サイデスカ」
( ^ω^)「朝の会はじめんぞー。席につけー」
('A`)(ニキビなんかよりよっぽど役に立つ救世主現る)
( ゚∀゚)「へーいwww」
( ^ω^)「明後日の学活の時間は委員会決めをするからドクオと素直は司会進行を頼むぞ」
('A`)(こいつはニキビよりひどい疫病神だ)
川 ゚ -゚)「はい」
('A`)(ついにきたか・・・)
( ^ω^)「それじゃあ数学の授業始めますよ。教科書57ページ開いて。今日は平方根から」
( ^ω^)「平方とは二乗の意味を表し、根とは根っこのこと」
( ^ω^)「つまり平方根とは二乗する前の数を指し示す言葉であり√とは英語のroot(根)からきています」
( ^ω^)「したがってこの・・・」
まず乗り越えなければならない壁が一つ。明後日の学活の時間に開かれる役員決めまでに今の状況を打破せねばならない
いや、やはりこのまま逃げるか?しかし母親もニキビも見逃してはくれないだろう
ふと視線を感じる。またなにか嫌がらせでもされているのかとちらりと横目で確認すると
川 ゚ -゚)「・・・」
ばっちり目が合ってしまった。彼女の黒い瞳に僕が映っているのだろう。
素直さんは普段は無口な方だ。といっても僕の無口とはタイプが異なり、誰にでも平等だし友人も多い
肌はこのこげてしまいそうな夏の日差しの中でも白さを保ち続けている。あれは日焼け止めかなんかをつかっているんだろうか
おそらく結構な長さであろう髪の毛を学校の規則からポニーテールで縛っているのだが、彼女が頭を動かすたびにぴょこぴょこと動く様を見ているのが僕は好きだった
しばらくの間彼女の視線が逸れることなく僕を見続けるので僕のほうが臆して逸らしてしまった
('A`)(やはり朝の奇行のせいだよな・・・畜生)
( ^ω^)「なのでx^2の解には+と-どちらもつき・・・」
('A`)(あー直下型地震が起きてこの学校潰れないかな)
( ^ω^)「つまり――」
('A`)(あートイレ行きたくなってきた)
川 ゚ -゚)「・・・」
今日も一日が過ぎていく
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:22:58.56 ID:fMUUgPoT0
ドクオ宅
( ・∀・)「で、どうすんだよ明後日だろ。学活の時間の役員決め」
('A`)「・・・」
('A`)「たぶん、明後日には腹痛が起こるんじゃないかな」
( ・∀・)「お前に本当の恐怖というものを味あわせてやろうか」
('A`)「やれるもんならやってみろよ」
( ・∀・)「体中ニキビまみれとかどうよ」
('A`)「すいませんでした」
明後日の学活のなにが問題かというとクラスのおよそ半数は敵であり、それでなくとも人前で話すこと自体が僕にとってハードモードなのだ
僕の人生自体はベリーハードだが
ジョルジュしかりあえて邪魔をするような奴もいるかもしれない
とてもじゃないが僕には人前で仕切るような勇気もスキルもなかった
( ・∀・)「だから素直さんに助けてもらえって言ったんだよ」
('A`)「いやぁなんかかっこ悪いじゃん」
( ・∀・)「WHAT?」
なんとこのニキビ、英語を知ってるらしい
('A`)「だから、人前で上手く喋れないから助けてくれだなんてかっこ悪いし男として恥ずかしいだろ?」
( ・∀・)「大勢の前で喋れない方がかっこわるいだろ」
('A`)「それは・・・まぁ」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:42:21.85 ID:fMUUgPoT0
('A`)「元々僕がやるような係りじゃなかったんだ」
('A`)「全部ジョルジュのせいで・・・」
( ・∀・)「気持ちはわかるけどさ。お前そうやっていつも言い逃れる理由ばっかり考えてていつ前向くのよ」
('A`)「別に言い訳なんかじゃ!」
( ・∀・)「俺本当は知ってるんだからな。俺はお前でもあるんだから。小さい頃からずっと見てきたんだ」
( ・∀・)「今までそうやって責任から逃げ、人とのコミュニケーションから逃げ、日陰にいることを好んでさ」
( ・∀・)「与えられることだけを求め続けその結果なにがあった?」
( ・∀・)「いつでも勝ち残るのは先を見通すことができるやつだ」
( ・∀・)「お前は 今から 変わる」
( ・∀・)「な?」
なにしろ俺がついてるんだから。
なんてけらけらと笑いながら付け足すニキビの声を聞いていると沸々と胸の奥から熱いものがこみ上げてきた
それはたぶん
悔しさと喜び
羞恥と開放
憎悪と友情
('A`)「顔が気持ち悪いってだけでいじめられてきたんだぞ」
('A`)「席替えで隣になった女の子があからさまに嫌な顔する」
('A`)「お前のせいで汚い雑巾を顔に投げつけられるんだぞ!!」
(;A;)「畜生!!お前に顔汚いから雑巾で拭けっていわれる気持ちわかるのか!!」
(;A;)「偉そうに説教垂れやがって・・・この・・・馬鹿野郎!!
そういって僕は家を勢い良く飛び出した。真夏のジリジリと焼ける日差しを背にしてただただ走る
人の目なんて気にするもんか。
とにかく胸の中にこみ上げてくるよくわからないドロドロとした感情を吐き出してしまいたかった
しかしそのすべは見つからず、八つ当たりさえもできないような僕にはひたすら走ることしか出来なかった
走ることで責任という僕の首に繋がれた縄からも逃げれるような気がした
自分がまるで首輪を繋がれた子犬かなんかの気がしてしょうがなかった
小さく力もない。歩き回れる範囲でさえもが縄の半径分だけ
しかし僕には子犬のようなかわいらしさはなく、醜かった
もし僕の顔がもう少し良かったら女の子は嫌な顔をしなかった
もし僕の顔がもう少し良かったらいじめられることはなかった
もし僕の顔がもう少し良かったら・・・
身体が徐々に熱をおび、ほんのり汗をかく
はっはっと小さく息を乱しながらも反対に体は酸素を求めた
しかしピッチは緩めない
どのくらい走っただろうか
僕はちっぽけな草むらが広がる公園にたどり着いていた
( ・∀・)「お疲れ様」
('A`)「はぁ・・・」
('A`)「アホだ僕は」
ニキビから逃げたくて走りだしたのに、本人はずっとすぐそばにいたのだ
眼鏡をかけたまま眼鏡を探すような、ここまで古典的なボケをかます自分にがっくりと脱力してしまった
('A`)「疲れたよ」
( ・∀・)「さっきは悪かった。言い過ぎた」
('A`)「いや、事実だしいいよ」
('A`)「わかってたんだ。今までずっと逃げてきたことも」
('A`)「夏休みの宿題と同じなんだ。まだいいや、まだいいやってずっとため続けてさ」
('A`)「溜まりに溜まったツケで僕はもう身動きが出来ないんだ」
('A`)「タイムリミットはあと二日。もう僕には逃げることしか出来ない」
('A`)「最初から行き止まりだってわかってたけど、考えることが怖かったんだよ」
( ・∀・)「あのな」
( ・∀・)「転がる石にコケは生えないんだ」
('A`)「うん?」
( ・∀・)「お前は曲がりなりにもここまで進んできたんだろ?」
( ・∀・)「走り続けろ」
( ・∀・)「お前には足がある。手がある。走れるんだ」
( ・∀・)「さっきみたいにとにかく走ればいい。転がり続ければいい。コケが生える暇がないくらいに」
( ・∀・)「ただ、転がる方向は後ろじゃなくて前だけどな」
( ・∀・)「後は俺も手伝うからさ」
( ・∀・)「まぁ細かいことはとにかく。だ」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:05:10.02 ID:fMUUgPoT0
( ・∀・)「まずは仲直りしようぜ」
草むらに寝転び空を見上げる
雲ひとつ無い青空は、部屋の蛍光灯に慣れている僕にとってとてもとてもまぶしかった
('A`)「そうだな・・・」
('A`)「僕も怒鳴ったりして悪かったよ」
( ・∀・)「やれやれだぜ」
僕はプロアクティブを買うことを固く決意した
再びドクオ宅
( ・∀・)「やっぱり素直さんに話そうぜ」
('A`)「無理」
( ・∀・)「お前強情だな」
('A`)「いやいやいや・・・」
( ・∀・)「発想を変えよう」
('A`)「というと?」
( ・∀・)「素直さんに協力を仰ぐ→仲良くなる→交尾」
('A`)「うわぁ・・・」
( ・∀・)「いや、俺ニキビだし人間の感情の機微なんてわからんのよ」
('A`)「ニキビだけに?」
( ・∀・)「ニキビだけに」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:14:09.94 ID:fMUUgPoT0
('A`)「・・・」
('A`)「そうだな。やるよ」
( ・∀・)(なんだかんだいってやっぱり中学生だなぁ)
( ・∀・)「半分は俺が手伝ってやるからさ、後半分頑張れよ」
('A`)「僕にどうしろと?」
( ・∀・)「リベンジだ」
('A`)「え・・・また走り抜けるの?」
( ・∀・)「ちがうよ!今度は立ち止まってくれよ!」
('A`)「大丈夫かなぁ」
( ・∀・)「大丈夫。なんとかなるし、なんとかする」
('A`)「その自信はどこから来るのさ」
( ・∀・)「若いうちは自分の力を過信するくらいでいいんだよ」
('A`)「そんなものかな」
( ・∀・)「だから大丈夫だって。なんせお前は俺の産みの親だからな」
( ・∀・)「あ、今のは産みと膿をかけてたんだぜ?」
('A`)「山田君、座布団一枚持っていって」
( ・∀・)「けっこう自信あったのに」
どうやらいよいよ決意しなければいけないようだ
正直不安しか残らないのだが、今はニキビの自信を信じてみようと思った
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:21:02.02 ID:fMUUgPoT0
ニキビと出会ってから二日目の朝
それは素直さんに向かって大きな挨拶をした次の日
つまり相変わらずけだるい気温の今日
僕は素直さんを待つために例の曲り角の前で待機していた
('A`)「どうしよう。中学生でもうストーカーじみたことしてない?」
( ・∀・)「将来有望じゃないか」
('A`)「もうちょっと普通に生きたかった・・・」
( ・∀・)「そうするために今頑張ってんだろ」
('A`)「はぁ不安だ」
( ・∀・)「あ」
('A`)「どうし・・・ぶほぉ!」
ほっぺが重力を完全に無視して前へ進もうとする。あれ?デジャブ?
どうやらニキビは素直さんを見つけたらしい。それにしても急すぎる。一声かけてくれ、僕に心の準備を
以前と同じように奇妙に頭を傾けながら走る僕
やや登校時間には早く生徒が素直さん以外に見られないのが幸いといえば幸いか
('A`)(わかった!わかったから離してくれ!怪しまれるよ!!)
( ・∀・)(しょうがない。言って来い!!!)
力強い言葉が頭に響き、ほっぺから力が抜ける
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:27:07.27 ID:fMUUgPoT0
しかし、僕は転がる石のように走り続けた。ぐっと素直さんとの距離が近づく。高鳴る心臓、顔に血が上り、手が震える
でも、やらねば。いつまでも逃げることは許されず、僕は自分を変えたかった
そしてニキビがきっかけをくれた。誰かの後押しがなければ走りだせないなんて情けないけれど、僕は今すがりつかねばいけなかった
だって
( ・∀・)「お前は最後にはやる男だよ」
信頼されたことなんか なかったから
('A`)「すす、素直さん!!」
川 ゚ -゚)「ん?あぁ欝田君かおはよう。今日はランニング中じゃないのかな?」
ふわりと彼女が振り返った
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:31:11.75 ID:fMUUgPoT0
('A`)「あにょ!」
川 ゚ -゚)「にょ?」
頭が真っ白になる。ダメだダメだダメだ。僕なにをしてるんだ?
周りからクスクス笑いが聞こえる気がする。やっぱり馬鹿にされているのか
そうか。そうだもんな、こんなこと馬鹿げてる。素直さんだって気持ち悪がるに決まっている
やっぱり無理だったんだ最初から。分不相応なことをしようとした罪なんだこれは
頭が沸騰しそうだ。あれ?どうやって喋るんだっけ?言葉ってなんだ?
ソモソモナニヲシャベレバ?
体中から汗が噴出し背中では汗が伝うのを感じる。心臓さえも止まり、呼吸だってできやしない
ダメだ、僕は――
( ・∀・)(落ち着け。お前はなにもおかしくないぞ。周りを見渡して、大きく息を吸ってみろ)
響く声
大きく息を吸い込み、周りを見渡す。大丈夫、誰も笑ってない。
クリアになる頭。色を取り戻す世界。始まる心臓
いつまでもこんなところにとどまってなんかいられない。僕は転がる石なんだ
そして僕はもう一度深く息を吸い込んだ
('A`)「すいません、噛みました!お願いがあるんです!!」
川 ゚ -゚)「うん?」
('A`)( ・∀・)「僕人前で話すことが苦手で今度の学年会もみんなに、素直さんに迷惑をかけてしまうと思うんです」
('A`)( ・∀・)「だから、人前でうまく話す練習に付き合ってくれませんか?」
シン――と静まりかえる世界。いつもはうるさい蝉さえも今は鳴くことを辞めてしまったのか
しかし音をなくしたかのような場は、彼女の声で一瞬にして命を吹き返す
川 ゚ ー゚)「喜んで」
きっとその日の僕は無敵で、だけどMVPはニキビに譲ろうと思った
第ニキビ 「A rolling stone gathers no moss」
終わり
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この記事へのコメント
1. Posted by
January 15, 2011 11:07
おもしろい
2. Posted by January 23, 2011 11:11
これ面白い
完結してほしいな
完結してほしいな