January 23, 2011
( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第四話
西棟に入ったのは初めてだった。
ミセ; -゚)リ「ケホッ!」
ホコリの舞う部屋には、乱雑にものが置かれ、視界がおそろしく狭い。
ここは物置だった。
一階から二階に上がるにははしごを使う必要があった。
質素な木のはしごを一段上る度に、ぎしぎしと不安な音が鳴った。
二階に上がるとものは無くなり、ただ上に続く螺旋階段だけが見える。
石段をぐるぐると上っていく内に心がときめいていくのを感じた。
例えばそれは大人の踏み込まない場所に秘密基地を作った、子供のような。
螺旋階段の終わりは、真っ赤な光で溢れていた。
ミセ*゚ー゚)リ「わぁ――――」
見晴らしのいい景色の中で、広大な自然が赤く、壮大な光に照らされ、目を奪われるほど美しかった。
展望台に一人佇むジョルジュの横顔を、夕陽が赤く染めている。
彼の横顔があまりにも寂しそうに見えて、ミセリは息を呑んだ。
##### ガラクタ魔王のようです #####
第四話「鮮血シアターと二人ぼっち」
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( ゚∀゚)「ミセリさん、どうしてここに?」
クックルに教えてもらったと伝えると、ジョルジュは少しだけ眉をひそめた。
ミセ*゚-゚)リ「なによ。私が来ちゃいけなかった?」
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( ゚∀゚)「いや、そうじゃないけど……」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあいいじゃん。横座ってもいい?」
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( ゚∀゚)「もちろん」
展望台には木のベンチが一つだけ用意されていた。
ジョルジュの隣に、一人分の隙間を空けて腰を下ろす。
ミセ*゚ー゚)リ「綺麗だね。よくここに来るらしいけど、これを見るために?」
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( ゚∀゚)「ああ」
ミセ*゚ー゚)リ「へー。意外とロマンチストなのかい?」
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( ゚∀゚)「よくわからないが、好きなんだ。一瞬しか見られないから、とても綺麗に見える」
ジョルジュの表情は、夕陽を見て楽しんでいるというよりは、辛そうな方に見えた。
数日前に城にやってきた男の言葉を思い出す。
彼の言葉を信じると、ジョルジュは「魔族から見捨てられた」のだろうが、それを思い出しているのだろうか。
いつも飄々としている彼とは違った真剣な雰囲気に、ミセリは話のきっかけを見つけられないでいた。
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( ゚∀゚)「家族はどうしてる?」
その内、ジョルジュの方から話題を振ってきた。
ただしそれは答えたくない部類に入るものだ。
ミセ*゚-゚)リ「知らない。死んでるかも。生きてるかも」
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( ゚∀゚)「知らないのか」
ミセ*゚ー゚)リ「ずっと前に捨てられたもんで。なんていうか、子供を養う余裕が無かったんだろうね」
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( ゚∀゚)「すまない」
ミセ*゚ー゚)リ「いーえ。親がいないのはお互い様じゃ?」
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( ゚∀゚)「そうだね」
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( ゚∀゚)「僕は時々会いたくなる」
ミセ*゚-゚)リ「ふうん」
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( ゚∀゚)「僕は父さんのことが好きだったし、父さんも僕のことが好きだった」
ミセ*゚ー゚)リ「そう………」
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( ゚∀゚)「でも会いたいより、会いたくない方が大きいんだ」
ミセ*゚-゚)リ「えー、フクザツ。好きなんじゃないの?」
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( ゚∀゚)「僕は今でも好きだよ。母さんは僕を生んですぐに亡くなった。父さんが唯一の家族だった」
ミセ*゚-゚)リ「でも、会いたくない?」
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( ゚∀゚)「ああ。会いたくない。わかるかな」
ミセ*゚ー゚)リ「わからん!」
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( ゚∀゚)「そうだろうね」
ミセ*´ー`)リ「私は親なんてもういいや。今が最高だからどうでもいい」
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( ゚∀゚)「城の生活には慣れたかい?」
ミセ*゚ー゚)リ「快適すぎて逆に慣れない」
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( ゚∀゚)「そうか……じゃあ城内に川を作って、橋をかけてそこに住居を作った方がいいかな?」
ミセ;゚-゚)リ「真に受けんな! 悪かったな家無しで!」
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( ゚∀゚)「とにかく喜んでもらえてよかったよ」
ミセ*゚-゚)リ「魔王様ってばさ、どうして私にそこまでしてくれるの?」
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( ゚∀゚)「ああ、それは」
ミセ*゚ー゚)リ「もしかして惚れちゃった!?」
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( ゚∀゚)「似てるって思ったから」
ミセ*゚-゚)リ「誰に?」
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( ゚∀゚)「誰だろう。僕のよく知ってる誰かだよ」
ミセ;゚ー゚)リ「もー! さっきから曖昧すぎてよくわからん!」
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( ゚∀゚)「そういうのを草食系っていうんだよね」
ミセ*゚ー゚)リ「どこで仕入れた知識なんだよ………」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 00:39:28.67 ID:c45wiDMj0
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( ゚∀゚)「なあ、ミセリさん」
ミセ*゚ー゚)リ「んー?」
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( ゚∀゚)「僕が怖くないかい?」
ジョルジュは笑っていたが、消えてしまいそうなほど虚ろな笑顔だった。
ミセ*゚ー゚)リ「怖くないよ。ただの天然なアホとしか思ってないから」
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( ゚∀゚)「そうか。良かった……よくはないけど良かった」
ミセ*゚ー゚)リ「沈んだよ。夕陽」
沈みきった夕陽の余韻が空をまだ赤く染めている。
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( ゚∀゚)「周りが山だから、夕陽は本当に一瞬だ。だから時々怖くなる。。
もしかしたら明日はもう見えないんじゃないかって、思ってしまうから」
ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ。見えるに決まってんじゃん」
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( ゚∀゚)「ミセリさん」
ジョルジュがベンチから立ち上がる。
夕陽の余韻が彼の全身に影を落とし、深い青色の瞳は、今は赤く見えた。
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( ゚∀゚)「父さんを殺したのは僕だ」
言葉を失ったミセリを残して、ジョルジュは一人で螺旋階段を下りていった。
階段を下りる音に混じって、虫の鳴き声が聞こえた。
夜の気配がした。
続き( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第五話