January 02, 2011
(・ ∀・) また明日、のようです
(・∀ ・)
|(・ ∀・)|
(・∀ ・)
(・∀ ・)「鏡なんか嫌い」
がしゃん。
大きな音が、鳴りました。
( ・∀・)「何やってんだよ、お前」
(・∀ ・)「……」
ぱりん、ぱりん。
無言で鏡を割り続ける少年に。
こつん、こつん。
青年が、歩み寄ります。
(・∀ ・)
ぱりん、ぱりん。
( ・∀・)
こつん、こつん。
ぱしん。
青年が、少年を叩きました。
少年の手が止まります。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/01(土) 22:55:20.22 ID:4FFrMZYXQ
(・∀ ・)
( ・∀・)
かち、かち。
青年の腕時計の音だけが、辺りに響きます。
(・∀ ・)
少年は青年の顔を見て、へらり、笑いました。
(・∀ ・)「あは」
( ・∀・)
青年が不快そうに眉を顰め、踵を返します。
こつん、こつん。
かちゃり、ぱたん。
(・∀ ・)
/(・ ∀|
割れた鏡の、大きな破片に映る自分。
それを見て、彼は、また鏡を割りたくなりました。
だけれども。
かちゃり。
('、`*川「ちょりっす」
女性が部屋に入ってくると、もう、鏡なんかどうでもよくなってしまいました。
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/01(土) 23:07:15.23 ID:4FFrMZYXQ
('、`*川「また鏡割っちゃっの?」
ぱきん、ぱきん。
破片を踏みながら、女性は部屋の中に入ってきます。
少年の部屋に入るときは、みんな、靴を履きます。
鏡の破片を踏んでは、危ないから。
('、`*川「もう、駄目だってば」
(・∀ ・)「ぺ、ペニ、ペ、ペニサ」
('、`*川「はい」
怯える少年に、女性は、鞄から取り出した何かを渡しました。
綺麗に包装された何か。
(・∀ ・)「あ」
('、`*川「開けて」
(・∀ ・)「……あ……」
('、`*川「ね」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/01(土) 23:13:29.58 ID:4FFrMZYXQ
しゅるしゅる、かさかさ。
きっちり結ばれたリボンをほどき、
丁寧に包装されている紙を広げます。
中にあったのは。
|(・ ∀・)|
少年を映す、鏡。
(・∀ ・)「あ」
(・∀ ・)「ひ」
('、`*川「毎日割るから、毎日買わなきゃいけなくて困っちゃうわ、もう」
(・∀ ・)「ペニ」
('、`*川「今度こそ、もう割っちゃ駄目よ」
(・∀ ・)「あ」
どさり。
部屋の隅、ベッドに2人で倒れ込みます。
正確には、女性が少年を抱えてベッドに飛び込んだのですが。
僅かに抵抗する少年の体を抱きすくめて、
女性は少年の顔の前に鏡を掲げました。
('、`*川「可愛いね。またんき」
(・∀ ・)「やだ、やだ」
('、`*川「この口が好きよ。柔らかい頬も好き」
少年の体が動きを止めます。
女性は満足げに笑って、抱きしめていた方の腕を少年から離しました。
右手に鏡。
左手は、少年の顔をなぞります。
('、`*川「耳も好き」
耳に噛みつかれ、少年は顔を歪めました。
それから女性は、指で、鼻で、唇で、舌で、少年の顔をなぞりました。
時折、体も撫でては、びくりと揺れる少年を見て声を漏らして笑いました。
どれほど経ったか、ようやく女性が少年から離れます。
('、`*川「また明日ね」
こつん、こつん。
かちゃり、ぱたん。
(・∀ ・)
少年は思います。
明日なんかいらない。
(・ ∀・) また明日、のようです
VIP市という場所の、ある一軒家に少年は住んでいました。
少年の名前は斉藤またんき。11歳の小学生です。
両親は居ません。
母は愛人と駆け落ちし、父は母を追ってどこかに行ってしまいました。
だから、またんきの家族は、
( ・∀・)
兄のモララーと、
('、`*川
その妻、ペニサスだけです。
モララーはペニサスの家の婿になったため、「伊藤」という苗字に変わっています。
現在、モララーは21歳、ペニサスは20歳。
2年前に結婚したばかりです。
ペニサスの家はお金持ち。
モララーは、そのお金を目当てにペニサスと結婚しました。
彼ら3人が住む家はペニサスの親がくれたものだし、
彼らの生活費も、やはりペニサスの親が出してくれています。
モララーはお金が目当て。
ペニサスは、またんきとモララーが目当てでした。
('、`*川「はい」
ことん。
テーブルに、ペニサスはお皿を置きました。
朝ご飯の時間なのです。
目玉焼きに、ウインナー、白いご飯、お味噌汁。
普通のメニュー。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 00:11:42.83 ID:WQgxp6BrQ
('、`*川「ん」
( ・∀-)「ん」
ぱくん。
ペニサスが、口移しでモララーに食事をさせています。
モララーも慣れたもので、その唇を受けながら、目は新聞を眺めていました。
(・∀ ・)
ぱくぱく。
彼らの隣で、またんきは急いでご飯を食べています。
モララーが全て食べ終えたら、きっと、
ペニサスはまたんきにも同じようにするからです。
ごくり。
お茶で無理矢理流し込んで、またんきは立ち上がります。
床に置いていたランドセルを背負い、リビングを出ました。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 00:25:50.39 ID:WQgxp6BrQ
ばたばた。
家を飛び出し、またんきは走りました。
学校に向かいます。
でも、本当は学校になんか行きたくありません。
学校に行っても友達はいないし、意地悪されてしまうから。
(・∀ ・)
ばたばた。
だけど、家に居るよりはマシな気もするのです。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 00:40:30.29 ID:WQgxp6BrQ
(゚、゚トソン「またんき君、また宿題を忘れたんですか」
(・∀ ・)
こつん。
担任の先生が、教壇をチョークで叩きます。
彼女が苛立っているときの仕草です。
こつん。
(゚、゚トソン「どうして毎日毎日忘れるんです。いつも言ってるのに」
こつん。
(・∀ ・)「あ」
くすくす。
またんきが答えようとすると、教室のあちこちから笑い声が上がりました。
口を閉じ、またんきは俯いてしまいます。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 00:50:40.37 ID:WQgxp6BrQ
こつん。
くすくす。
(・∀ ・)
(゚、゚トソン「またんき君」
先生の声が僅かに鋭さを増します。
笑い声が一瞬収まって、また、あちこちから小さく沸き上がります。
こつ。ぽきん。
チョークが、二つに割れました。
(゚、゚トソン「もういいです。座りなさい」
またんきから視線を外し、先生が言います。
またんきは頷いて、先生から離れました。
とん。
誰かに背中を押され、またんきは転んでしまいました。
大きな笑い声。
先生は面倒臭そうな目を向けて、でも、またんきに声をかけることはしませんでした。
*****
夕方。
家に帰ったまたんきは、自室に入り、眉を寄せました。
|(・ ∀・)|
部屋に入ったまたんきを真っ正面から映すように、
わざとらしく机の上に置かれた鏡。
ペニサスの仕業に違いありません。
がしゃん。
またんきは、鏡を叩き割りました。
ひとまず鏡を粉々にし終えたまたんきは、ちょっとだけ、笑いました。
( ・∀・)「……」
開きっぱなしのドア。
そこからまたんきを眺めていたモララーが、舌打ちをします。
鏡を割る音がする度、モララーはまたんきの部屋に訪れます。
もしまたんきが大怪我をしたら。
もしも万が一、死んでしまうようなことになったら。
ペニサスが、モララーを捨ててしまうかもしれないからです。
(・∀ ・)
モララーの隣を通って、またんきはお風呂場に行きました。
放課後、クラスメート達に泥だらけにされてしまったのです。
ばさり。からから。
服を脱ぎ捨て、またんきは、浴室に入りました。
|(・ ∀・)|
浴室の鏡がまたんきを映します。
鏡を割りたくなって、またんきは辺りを見渡しました。
そして洗面器を拾い上げ、振りかぶります。
「またんき」
ペニサスの声。またんきの手が止まりました。
「お風呂入るの?
どうせタオルと着替え、用意してないんでしょう。
持ってきてあげたわよ」
ドアの向こうで、ペニサスが言います。
それから――当然のように、彼女は浴室へ入ってくるのです。
('、`*川「……泥だらけ。どうしたの」
(・∀ ・)「あ、あ」
立ち尽くすまたんきの前にペニサスが跪きます。
何も着ていないまたんきと違って、
きっちり、ブラウスと長めのスカートを身に着けたペニサス。
いつも以上の不安と羞恥がまたんきを襲いました。
ペニサスは手を伸ばし、またんきのすぐ後ろにあるシャワーのコックを捻ります。
温かいお湯が、壁に掛けられたままのシャワーから流れ始めました。
お湯は、またんきとペニサスを一緒に濡らします。
ペニサスの黒いセミロングの髪が、彼女の白い頬に、首筋に張り付きます。
ブラウスが僅かに透けて、その下の肌や下着の色をうっすら浮かばせました。
しゃあしゃあ。
ぴしゃん。
お湯が、シャワーから吹き出す音。
お湯が、2人の体から滴り落ちる音。
耳をお湯に、目をペニサスに侵され、
またんきは無意識に笑っていました。
喜んではいないし、嬉しくもありません。
それでもまたんきは、笑っていました。
ペニサスが、またんきの脇腹に歯を立てます。
ゆるりと食い込む歯がくすぐったくて仕方がありません。
(・∀ ・)「は、は、あは、は」
きっと、そのせいで笑っているんだ。
そう思いながら、またんきは笑っていました。
笑っていました。
顎を伝って零れ落ちたお湯。
そこに涙が混じっていたか。
それは誰にも、分かりませんでした。
また明日、一緒にお風呂に入ろうね。
耳元に囁かれて、またんきは、へらりと笑いました。
またんきは、自分の顔が嫌いでした。
正確に言うなら、2年前、ペニサスのせいで嫌いになりました。
ペニサスはモララーの顔が大好きです。
他はどうでもいい。顔だけが、とても好きでした。
そのせいか、またんきの、モララーに似た顔も大好きでした。
こんな顔じゃなければ良かったのに。
またんきは、鏡を見る度そう思います。
だから、大嫌いな顔を映す鏡も大嫌いでした。
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 02:07:44.34 ID:WQgxp6BrQ
それなのに、ペニサスはまたんきに鏡を見せたがります。
自分の愛している顔を、またんき自身にも愛してほしいのです。
('、`*川「この口が好き。この耳も」
鏡に映した愛しい顔。
その顔の素晴らしさを、またんきに語ります。
(・∀ ・)
その度に、またんきは、自分の顔が嫌で嫌で仕方がなくなります。
こんな顔なんか。鏡なんか。大嫌い。
('、`*川「――また明日ね」
この言葉も。
がちゃん。鏡を割ります。
こつん。モララーがやって来ます。
ぱしん。またんきを叩きます。
かち。腕時計が鳴ります。
ぱきん。ペニサスがやって来ます。
しゅる。リボンをほどきます。
かさ。包装紙を広げます。
どさり。ペニサスとまたんきがベッドに倒れます。
また明日。
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 02:22:28.74 ID:WQgxp6BrQ
ことん。朝ごはんが用意されます。
ぱくん。ペニサスがモララーに口移しをします。
ぱくぱく。またんきが急いでご飯を食べます。
ばたばた。学校に走ります。
こつん。先生がチョークで教壇を叩きます。
くすくす。みんなが笑います。
がしゃん。家で鏡を割ります。
ばさり。服を脱いで浴室に入ります。
ぴしゃん。後から入ってきたペニサスと一緒にお湯を浴びます。
また明日。
また明日。
また明日。
多少の違いはあれど、毎日毎日、同じことばかり。
明日なんかいらない。
今日と同じなら、明日なんかいらない。
がしゃん。
こつん、こつん。
ぱしん。
かち、かち。
ぱきん、ぱきん。
しゅる。
かさかさ。
どさり。
ことん。
ぱくん。
ぱくぱく。
ばたばた。
こつん。
くすくす。
がしゃん。
ばさり。
ぴしゃん。
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 02:33:32.42 ID:WQgxp6BrQ
がしゃん。こつん、こつん。ぱしん。かち、かち。
ぱきん、ぱきん。しゅる。かさかさ。どさり。
ことん。ぱくん。ぱくぱく。ばたばた。
こつん。くすくす。がしゃん。ばさり。ぴしゃん。
がしゃん。こつん、こつん。ぱしん。かち、かち。
ぱきん、ぱきん。しゅる。かさかさ。どさり。
ことん。ぱくん。ぱくぱく。ばたばた。
こつん。くすくす。がしゃん。ばさり。ぴしゃん。
がしゃん。こつん、こつん。ぱしん。かち、かち。ぱきん、ぱきん。しゅる。かさかさ。どさり。
ことん。ぱくん。ぱくぱく。ばたばた。こつん。くすくす。がしゃん。ばさり。ぴしゃん。
がしゃん。こつん、こつん。ぱしん。かち、かち。ぱきん、ぱきん。しゅる。かさかさ。どさり。
ことん。ぱくん。ぱくぱく。ばたばた。こつん。くすくす。がしゃん。ばさり。ぴしゃん。
がしゃん。こつん、こつん。ぱしん。かち、かち。ぱきん、ぱきん。しゅる。かさかさ。どさり。
ことん。ぱくん。ぱくぱく。ばたばた。こつん。くすくす。がしゃん。ばさり。ぴしゃん。
|(・ ∀・)|
(・∀ ・)
がしゃん。
からから。
からん。
さくり。
ぷぢゅ。
モララーとペニサスが外出していた日のことでした。
鏡を割ったまたんきは、ひどく尖った破片を手に取って、
自分の顔に突き刺しました。
突き刺しました。
突き刺しました。
「また明日」の、明日から、逃げたかったのです。
*****
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 02:59:07.77 ID:WQgxp6BrQ
(/////・)
VIP市の中央にある、大きな自然公園。
その中を歩く青年がいました。
彼は、顔の半分以上が包帯に覆われています。
すれ違う人々は、皆、奇異の目を向けてきます。
それでも、青年は背筋をぴんと伸ばし、どこか誇らしげに歩いていました。
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 03:11:01.81 ID:WQgxp6BrQ
噴水の脇を過ぎた辺りのベンチに、1人の女性が座っていました。
ζ(゚ー゚*ζ
女性は、青年を見付けるとぶんぶんと手を振りました。
片手を挙げて応え、青年は彼女の隣に腰掛けます。
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは」
(/////・)「こんにちは」
くぐもった声で、青年は挨拶を返しました。
ζ(゚ー゚*ζ「あなた毎日公園に来ますけど、もしや自宅警備員ですか」
(/////・)「失礼な」
ζ(゚ー゚*ζ「だって」
(/////・)「……生活費を出してくれる奇特な女がいるんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「ヒモですね!」
(/////・)「それは否定できない」
(/////・)「――仕事もね、なかなか……見付からないんだ、この顔じゃ」
ζ(゚ー゚*ζ「ふむう」
(/////・)「作家なら何とかなるかと思って、今、書いてる。まだまだ未熟だけど。
僕が自分で金を稼げるようになるまでは援助する、って、
その女の人が言い張るんだ」
(/////・)「ありがたいとは思うけど、何か余計に焦っちゃうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「頑張ってください、応援してます!」
(/////・)「うん、ありがとう」
しばらく、2人は雑談を続けました。
最近知り合ったばかりなのですが、馬が合うようで、
まるで昔からの友人のような親しみを互いに感じていました。
(/////・)「そういう君こそ毎日ここに居るよね」
ζ(゚ー゚*ζ「大学が休みに入ったんですー」
(/////・)「ああ、そう」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 03:30:25.48 ID:WQgxp6BrQ
青年は、視線を下に落としました。
(・/////)
地面に敷かれたタイルが、青年の顔を映します。
青年はタイルをじっと見つめました。
これといった感想は抱きません。
ζ(゚ー゚*ζ「――……で、こういうことだったんですよ!」
(/////・)「はは、そうなんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「そしたら、――あ」
1時間か、それ以上経った頃。
一生懸命話していた女性は、時計を見ると慌てて立ち上がりました。
ζ(゚、゚*ζ「ごめんなさい、友達と約束があって……」
(/////・)「ん、分かった」
ζ(゚、゚*ζ「……明日も、ここに来ます?」
(/////・)「散歩がてらに、多分」
ζ(゚、゚*ζ「そうですか。……じゃあ」
ζ(゚ー゚*ζ「また明日」
(/////・)「……うん、また明日」
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/02(日) 03:40:11.67 ID:WQgxp6BrQ
青年は、昔、「また明日」という言葉が大嫌いでした。
だけど、今はもう、嫌いではありません。
毎日、毎日。
違う「明日」が、来るからです。
(/////・) また明日、のようです
おわり