February 25, 2011
从 ゚∀从細い糸で繋がっているようです从’ー’从
・ブーン系音楽短編フェス参加作品
・百合注意。嫌いな人は戻るボタンをクリック。
・フェス特設サイト
http://jbbs.livedoor.jp/internet/10981/
・元ネタはスピッツの『夜を駆ける』
真っ暗だった部屋の明かりを付けて、壁に架けられた時計へ視線を移す。
友人から押し付けられた人気のアイドルのポスターの横で、時計の針は午前一時を指していた。
从 ゚∀从「……そろそろ行くか」
クローゼットを開き、パジャマから動きやすい格好へと着替える。
布団に入っていた時には気付かなかったひんやりとした空気が、あたしの肌を撫でた。
今朝に見た天気予報が、今夜は冷えると言っていた事を思い出す。
从 ゚∀从「上着持っていこっと」
パーカーを取り出してシャツの上から被ると、肌寒さは消え失せた。
ジーパンのポケットをまさぐって、鍵と財布を確認する。
从 ゚∀从「よーし、準備完了っ」
もうすぐ愛しい人に会える、そう思うとどうしても気持ちが逸る。
勢いよく駆けだしたくなる衝動を抑え、ゆっくりとドアを開けようとノブに手をかけた。
从 ゚∀从「……いや、待てよ」
嫌な予感が頭をよぎり、再びクローゼットの前まで戻る。
中からカーディガンを一着取り出してから、適当に折りたたんで手に持つ。
从 ゚∀从「今度こそ、準備完了だな」
誰に言うでもなく呟いて、空いている方の手でドアノブを回し、部屋を出ていった。
一歩一歩、物音を立てないように階段を降りていく。
世界に自分しかいないんじゃないか、と錯覚させるほどの静寂が暗い家の中を包んでいた。
そのせいか、小さく軋む音すら騒音のように聞こえてしまう。
从;゚∀从(そーっと……そーっと……焦るな、焦るなあたし!)
慎重に歩を進め、一階の廊下に足が着いたところで耳を澄ます。
相変わらず無音のままだ。パパもママも熟睡してくれているらしい。
从;゚∀从「いつまで経っても緊張するぜ、ったく……」
小さくごちて、そろそろと玄関に向かう。
辿り着いて靴を履き終わると、携帯を開いて時間を確認した。
一時二十分、待ち合わせの二時までは充分すぎる程の余裕があった。
携帯をポケットにしまい、立ち上がってドアの鍵を開ける。
慎重にドアを開けて外に出ると、もう一度鍵を閉め直した。
从;゚∀从「ふいー、嫌な汗かいたー」
ようやく重圧から解放されたあたしは、天を仰いで大きく息を吐いた。
雲ひとつない夜空には、綺麗に半分に割れた月が浮かんでいる。
从 ゚∀从「さて、と」
もう、気持ちを押し殺す必要なんてどこにもない。
あたしはいつものように、硬い歩道を待ち合わせ場所へと駆けていった。
从 ゚∀从繋がっているようです从’―’从
しばらくして、あたしは学校の校門の前で立ち止まった。
ここがいつもの待ち合わせ場所だ。
从 ゚∀从「まだかな……まだだよな」
開いた携帯のディスプレイには、午前一時四十五分と映し出されていた。
まだ待ち合わせの時間には十分以上もあるけど、待ち切れないんだから仕方ない。
从 ゚∀从「さて、今度こそ時間通りに来るって言ってたけど……」
本人は真剣に言っていたが、最初から期待はしていなかった。
どんなに早く見積もっても十五分オーバーがいいところだろう。
あの子の持ち前のトロさは、大きな魅力でもあって、深刻な欠点だ。
从 ‐∀从「ま、のんびり待ちますか」
昼間とは違う顔を見せる校舎を背に、遠くに見える自販機の明かりを見つめる。
校門のそばに植えられた、大きな杉の木のざわめく音がなんとも心地良い。
そして、今回は何分後に来るだろうか、なんて考え始めた時だった。
「ハインちゃ~ん!」
从 ゚∀从「……へ?」
ワタアメのようにふわふわとした甘ったるい声が、あたしの名前を呼んだ。
「ちゃんと来たよぉ~!」
さらに近付いてくる声のする方へ振り向く。
街灯に照らされた人影が、大きく手を振りながらあたしの元へ走って来ていた。
だんだんと、その姿がはっきり見えるようになってくる。
从^ー^从「ねぇ~、ハインちゃんってばぁ~」
満面の笑みを浮かべて、あたしの大事な恋人が走って来た。
从;'д'从「ハインちゃふぇぇっ!?」
と思ったら、何もないところで豪快に顔面から地面に突っ込んだ。
从;゚∀从「渡辺っ!!」
背をもたれていた校門から、慌てて転んだ渡辺の元へ駆け寄る。
あたしが辿り着いた頃に、ようやく渡辺はのろのろと起き上がった。
从;д;从「ふぇぇ……痛いよぉハインちゃあん……」
从;゚∀从「待ち合わせに遅れるどころか、早く来るなんて珍しい事するから……」
半泣きの渡辺を肩を抱いて、道路の端まで連れていく。
そして、ハンカチで丁寧に服に着いた汚れを掃ってやる。
从;д;从「だって、ハインちゃん女の子なのに……いつもわたしの事ひとりで待ってて……」
危ないから、今度こそ早く行こうって思ったんだもん……」
从;‐∀从「ったく……」
あちこちの髪が外側にハネた癖っ毛を、渡辺が落ち着くまでそっと撫でてやる。
気持ちはとても嬉しいけど、あたしのせいで転んで泣かれてはちっとも嬉しくない。
从 ‐∀从「気持ちだけで充分だから、転ばないようにゆっくり来てくれよ」
从つー;从「……うん」
まだ潤んだ目であたしを見つめながら、渡辺は小さく頷いてくれた。
从'ー'从「もう、大丈夫だよ」
从 ゚∀从「そっか、よかったよかった」
ほんの少し名残惜しいけど、渡辺の頭から手を離した。
互いに見つめ合ったまま、沈黙があたし達の間に流れる。
いつの間にか、杉の木のざわめきは止んでいた。
从'ー'从「……」
从 ゚∀从「……」
誰もいない市街地に、ふたりの呼吸の音が溶けて消えていく。
何もしなくても、心は浮き上がる様な心地良さで包まれていた。
从*'ー'从「……ハインちゃん」
从 ゚∀从「……ん」
渡辺がはにかみながら、あたしの手をつまむようにして握ってくる。
応えるように指と指を絡ませて、しっかりと恋人繋ぎで握り返した。
从*'ー'从「……行こ?」
从 ゚∀从「……ああ、どこがいい?」
渡辺の催促にいつも通りの質問で返す。
あたしの質問に、渡辺は視線を宙に泳がせながら少し考えて、
从*^ー^从「ハインちゃんと一緒なら、どこでもいいよぉ~」
やっぱりいつも通りの返答を返してくれた。
从 ゚∀从「じゃあ……いつもの公園でいいか?」
从*'ー'从「うん、それじゃあさっそく行ってみよぉ~」
機嫌がいいのか、公園のある方を指差して、渡辺は小走りで駆け出す。
それに引っ張られる形で、あたしも渡辺の少し後ろを走る。
从 ゚∀从「おいおい、まーた転ぶぞ?」
从*'ー'从「大丈夫だよぉ~、子供じゃないもん」
からかうように語りかけたあたしの方を振り向いて、渡辺が答える。
从*^ー^从「それに、昔みたいに転びそうになったら、ハインちゃんが助けてくれるもん」
从 ‐∀从「……そう、だな」
当たり前のように言ってみせた渡辺の言葉が、昔の思い出を瞼の裏に映しださせた。
――――――
渡辺と初めて出会ったのがいつだったか、よく覚えていない。
だけど、小さい頃の思い出の中にはいつも渡辺の姿があった。
从 ゚∀从『おいてっちゃうぞー』
从;'ー'从『まってよぉ~』
多少の違いはあっても、小さい頃のあたし達は同じことばかりしていた。
いつも家で遊びたがる渡辺の手を引いて、半ば無理矢理にあたしが外に連れ出す。
引っ張られる形で、渡辺はあたしの後ろを必死で追いかけてくる。
从;'д'从『ふぇぇっ!?』
从 >∀从『あだっ!?』
渡辺はこの頃からよく転んでいた。
そして、繋いだ手を離さないから、あたしまで巻き添えを食らって転ぶのがお決まりだった。
从;д;从『ふぇぇ……いたいよぉハインちゃあん……』
从 ;∀从『あたしだっていたいよ……ぐすっ』
大泣きする渡辺を半泣きのあたしがあやし、起こして汚れを掃ってやる。
ここまでが1セットで、一日に何回も同じ事があった。
今思うと、あたしはかなりひどい友達だった。
毎日のように連れ出しては泣かせる、この繰り返し。
ふたりして泥んこになって帰ってきて、こっぴどく怒られた事も一度や二度じゃない。
从 ゚∀从『はい、きれいになった』
从;ー'从『ありがとう、ハインちゃん』
从 ゚∀从『ごめんね、わたなべ』
从'ー'从『いいよぉ、こんどはもっとゆっくりあるいてね……はい、て』
从 ゚∀从『よし、ちゃんとにぎったからな! わたなべもちゃんとにぎるんだぞ』
从'ー'从「うん!」
それでも、渡辺はあたしに全て委ねるように、手を差し出してきてくれた。
あたしも、差し出された手を離そうと思った事はなかった。
~~~~~~
何年経っても変わる事のなかったあたし達に、転機が訪れたのは一年前のことだった。
从;゚∀从『マジで!? ちょっちょちょ、え!?』
从;'ー'从『ほんとだってばぁ~』
夕日で赤く染まった帰り道で、近所迷惑も考えずに叫んでしまう。
普通の14歳の女の子より、少し男っ気が強いあたしには刺激が強かった。
从;゚∀从『だって告白だぜ!? 渡辺にフォーリンラブなんだぜ!?』
从;'ー'从『ハインちゃんってば、声おっきくて恥ずかしいよぉ~』
昨日、珍しく用事があると言っていた渡辺はあたしと一緒に帰らなかった。
問いただしてみたところ、とある男子から呼び出されて告白されたらしい。
从;'ー'从『どうしたらいいかなぁ……』
そんな事を聞かれても、あたしだって告白された事はない。
女子の何人かで集まって恋愛の話をする時は、適当にはぐらかしてばかりだ。
ただ、告白された時にどうしたかという話だけは聞いた事がある。
そんな程度でも、渡辺には参考までに聞いた話を教えてやればいいだろう。
なんて風に短絡的に決めつけて、あたしは渡辺に返事をしてしまった。
从 ゚∀从『渡辺はさ、相手の事どう思ってんの?』
从;'ー'从『優しい人で話も合うし、嫌いな訳じゃないけど……』
从 ゚∀从『んじゃ、とりあえず付き合ってみたら?』
从;'ー'从『えっ……?』
思い出した話をなぞるのに、この時のあたしは頭がいっぱいだった。
普段なら見落とさないような、渡辺の本当に戸惑った顔すら目に入っていなかった。
从 ゚∀从『気が合うなら、もっとお互いの事を知れば好きになるかもしれないだろ?』
从'ー'从『……うん』
从 ゚∀从『相手がそれでいいなら、お試しって事で付き合ってみれば?』
从 ー 从『……うん』
从 ゚∀从『ん? おーい、どうしたー?』
ようやく気付いた頃には、渡辺は上の空で返事をするだけで。
まずいんじゃないか、という思考がよぎった瞬間、渡辺は口を開いた。
从 ‐ 从『ハインちゃんは、いいの?』
从;゚∀从『……渡辺?』
その口調は今まで聞いた事もないくらい真剣で、はっきりしていた。
一生を左右する問題を問いただすような剣幕に、思わずたじろいでしまう。
从 ‐ 从『わたし、他の人のものになっちゃうんだよ? ハインちゃんはそれでも、いいの?』
黙り込んで、質問の答えを頭の中から探し出す。
もし、そうなる事で渡辺が幸せになるのなら構わない。
第一に渡辺の事を考えて辿り着いた本音を、あたしはそのままに伝えた。
从;゚∀从『あ、あたしは、もし渡辺が相手を好きになって、幸せになってくれれば全然構わn』
从# д 从『そうじゃなくて!』
だけど、正直に話した心の内は、初めて聞いた渡辺の怒鳴り声でかき消された。
从;д;从『そうじゃ……ないもん……』
髪の隙間から見えた泣き顔に、頭の中が真っ白になる。
あたしが呆然と立ち尽くしてしまった隙に、渡辺の姿は遠ざかっていった。
从;゚∀从『渡辺っ!!』
はっとして、曲がり角の向こうに消えようとしていた渡辺を追いかける。
あたしと反対で、運動オンチの渡辺にはすぐに追いつけるはずだった。
从;゚∀从『あっ……』
はずだったけど、曲がったあたしの視界には今しがた赤に変わったばかりの歩行者信号と。
行き交う車の先で、狭い路地に消えていく渡辺が飛び込んできた。
从;゚∀从『何で、だよ……』
体も心も、世界から切り離されたような浮遊感に包まれる。
ただ、弾む息と自分の鼓動だけがやけに大きく響いていた。
~~~~~~
17 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 01:52:32 ID:mLPj393c0
渡辺がいなくなった先、学校のそば、友達の家、他にも行きそうな場所。
手当たり次第に駆け回って探しても、渡辺は見つからなかった。
日はすでに暮れて、夜の街並みは昼とは違う顔をのぞかせている。
从; ∀从『はっ……はあ……』
胸の辺りがずきずきと痛んで、歩くのさえ辛くなっていた。
今日だけで何回見たかも分からない、渡辺が入っていった路地の中ほどで立ち止まる。
途端に、意図が切れたように足の力が抜けて、その場にしゃがみこんでしまった。
从; ∀从『どこ行ったんだよぉ……渡辺ぇ……』
呟いた声は、自分でびっくりするくらい泣き出しそうで弱弱しかった。
从; ∀从『謝りたいんだよぉ……』
渡辺に会って、泣かせてしまった事を謝りたかった。
そして、出来れば泣いた理由も聞いて、それからもう一度謝りたかった。
从 ;∀从『会いたいんだよぉ……』
だけど、会えなければそれすら出来ない。
从 ;∀从『うっ、ぐすっ……』
震える膝をきつく抱えても、声を殺しても、涙が止まらなかった。
今まで一緒にいるのが当たり前だった渡辺が、いない。
たったそれだけの事が、こんなに辛いなんてあたしは知らなかった。
从 ;∀从『ひっ……う……?』
自分の泣き声だけ聞こえていた耳に、別の音が入ってきた。
背後からゆっくりと、静かな足音が聞こえる。
そして、あたしのすぐそばまで来て、足音の主は立ち止まった。
从 ;∀从『すいません、大丈夫なんで……』
きっと、通りすがった人が心配してくれているんだろう。
迷惑だろうし、すぐに退いてどこかへ行こう。
そう思って、足に力を込めようとした時だった。
『ハイン、ちゃん……?』
从 ;∀从『……え?』
ずっと聞きたかった声に驚き、とっさに振り返った。
从;'ー'从『どうしたの……』
从 ;∀从『渡辺ぇ……!』
心配そうにあたしの顔を覗きこむ、いつもの渡辺の姿を見つけて。
また滲みだした視界を頼りに、あたしは飛びかかるように渡辺に抱きついた。
从;'ー'从『……ずっと、探してくれてたの?』
从 ;∀从『当たり前だろうがぁ……』
きつく回した腕から伝わる体温が、氷柱のように心に刺さった不安や、悲しみを溶かしていく。
安堵感のせいなのか、さっきよりもたくさんの涙が瞬きする度にこぼれた。
从;'ー'从『ごめんね、心配かけて……』
从 ;∀从『あたしもっ、ごめん……渡辺が泣いた理由がっ、よく、分からなくてっ、ごめん』
从;'ー'从『気にしないで、ハインちゃんは悪くないもん……』
从 ;∀从『出来れば話し、て……欲しい……そ、それでっ、聞いたら、もう一回……謝るっ』
从;'ー'从『わかった……でも、ここじゃなくて、他のとこ行こう? それでハインちゃんが落ち着いたら、話すね』
从 ;∀从『……うん、ありがとう渡辺……』
ゆっくりと回していた腕の力を緩めて、渡辺との間に少しの距離が出来る。
行き場を失って不安げに宙をさまようあたしの手を、そっと渡辺の手が包み込んだ。
从'ー'从『大丈夫だよ、ハインちゃん』
いつもとは逆で、渡辺があたしの手を引いて歩き出す。
なんだか不思議な感じだったけれど、ふかふかの毛布にくるまっているように安心した。
この景色と感情の中に、渡辺はいつもいたのかもしれない。
~~~~~~
从 ゚∀从『こんなとこ、あったんだな……見つからない訳だ』
从;'ー'从『なんかごめんね……分かりにくいところで』
渡辺に連れられて来たのは、入っていった路地の先のさらに奥。
複雑に入り組んだ市街地の中にある小さな公園だった。
でたらめに走っていた渡辺は偶然ここを見つけて、さっきまでずっといたらしい。
从 ゚∀从『ブランコにでも座って話すか?』
从'ー'从『それより、あっちの方がいいかなぁ』
渡辺が指差した先には、コンクリート製の遊具があった。
よく見るとあちこちに穴が空いていて、中に入って遊べるみたいだった。
从'ー'从『あんまり人に見られたくないし……』
从 ゚∀从『ん、分かった』
手をつないだまま、腰をかがめて入り口をくぐる。
中は案外広くて、ふたりで入っても狭くは感じなかった。
从'ー'从『よいしょっと』
从 ゚∀从『よっと』
壁際の適当な場所にふたり並んで腰を下ろす。
見上げると、空いた穴から電灯の光が差し込んで来ていた。
右側に座る渡辺へ視線を移すと、ちょうどこっちを見ていたようで、目が合った。
从;゚∀从『……』
从'ー'从『……』
いざ話を切り出そうとしても、見つめ合ったまま言いだせない。
最初の一音さえ出てしまえばすらすら話せるはずなのに、喉元で引っかかる。
なんとかしなくちゃ、という気持ちがさらに拍車をかけて、頭がぐちゃぐちゃになってきた。
从^ー^从『……ぷぷっ、ハインちゃん変な顔になってるよぉ~』
从;゚∀从『ふぇぇっ!?』
急に吹き出した渡辺に唖然として、思わず変な声が出てしまった。
変な声というか、渡辺が驚いた時に出る声というか。
从^ー^从『口がぱくぱくしてて金魚さんみたいだったよぉ~』
从;゚∀从『そ、そうだったか?』
頬を両手で叩いたり、こねてみたりして確かめてみるも、分かる訳がなかった。
その様子がおかしいのか、渡辺は笑い声はますます大きくなっていく。
从 ゚∀从『……ぶふっww』
从;ー;从『こっち見ないでよぉ~wwww』
何気なく渡辺の方を向くと、また目が合って、今度はあたしもおかしくなって吹き出してしまった。
渡辺は目に涙を浮かべながら、息を切らしてしまっている。
从 ;∀从『はーっ、何やってんだあたし達ww』
从;―;从『お腹とほっぺが痛いよぉ~ww』
笑い疲れてお互いに寄りかかり合う格好になる。
宙を仰ぎながら、電灯が滲んで見えるほど溜まった涙を拭った。
いつの間にか喉に突っかかっていた何かは取れていた。
再び無言の時間が訪れる。
でも大丈夫、今度はきちんと声が出せる。
名前を呼ぼうとして、息を少し深く吸い込んだ時だった。
从'ー'从『ハインちゃん』
あたしの体に寄りかかったままの渡辺に、名前を呼ばれた。
从 ゚∀从『……何だ?』
呼びかけた名前を飲み込んで、静かに問いかける。
声にならなかった分の吐息が、音も立てずに漏れていった。
从'ー'从『ちゃんと聞いててね、わたしが泣いちゃった理由』
あたしの肩に頭を乗せて、渡辺がそう告げる。
体がさらに寄せられてきて、年の割に大きな胸が腕に当たった。
そこでようやく、渡辺の体が小さく震えている事に気付いた。
从 ー 从『一度しか言わないから、ね?』
すがるように袖をつまむ感触がした。
だけど、覚悟を決めたのか、声は震えていない。
从 ‐∀从『……ああ』
袖をつまむ渡辺の手を、そっと取って握ってやる。
渡辺が震えるほどの理由を、聞きたいと言ったのはあたしだ。
だったら、どんな理由でも受け止めてあげる責任がある。
从 ー 从『……ありがとう』
渡辺の手が力を込めて握り返してきて、体の震えが止まる。
代わりに、お礼を言う声はほんの少しだけ涙声だった。
今日何度目か分からない無言の時間が数瞬流れて。
渡辺がぽつりと、一言だけ口にした。
从 ー 从『……好きだよ』
从 ゚∀从『……はい?』
何を言っているのか分からなくて、反射的に聞き返してしまう。
ぽかんとしているあたしを尻目に、渡辺は急にもじもじし始めた。
電灯の光に照らされる髪の間から見える耳が、一気に赤く染まる。
从///从『一度しか言わないって言ったのに……』
从;゚∀从『ほんとごめん、頼むからもう一回だけ。出来ればもっと分かりやすく』
从///从『うぅ……』
渡辺は小さく唸って完全に俯いてしまう。
繋がれた手と、触れ合っている体がみるみる熱くなっていった。
从///从『じ、じゃあほんとにこれで最後だからね……?』
从;゚∀从『はいっ』
さっきのはどこか聞き逃していた可能性も捨てきれない。
今度は耳に全神経を集中させて、渡辺の言葉を待った。
从///从『ハインちゃんの、事、が……好き、です』
从;゚∀从『あ、はい……』
恥ずかしさが限界に達したのか、渡辺の体があたしから離れる。
そして、あたしに背を向けると、変な声を出しながら顔を手で覆ってしまった。
从;゚∀从(えっと、渡辺はあたしの事が好きで……)
从;゚∀从(だから……あたしが付き合えって言った事が悲しくて)
从; ∀从(だから……あんなに……)
全て悟った途端に、全身の力が抜けていった。
あたしの無神経で渡辺が傷ついて、自分を責めている。
从; ∀从(それに……聞いたところでどうすればいいんだよ……こんなの)
別に気持ち悪いだとか、そういう感情はない。
ただ、あたしは渡辺にどう答えてやればいいのか分からなかった。
从; ∀从(好きだけど、好きだけどさあ!)
自分が渡辺に抱いている「好き」という気持ちが、友情なのか愛情なのか。
それすらも分からないのに、どうやって結論を出せばいいんだろう。
『ねぇ……』
様々な思考が渦巻いていた頭の中に、渡辺の声が響く。
振り向くも、相変わらずあたしに背を向けたままだった。
『ごめんね、やっぱり、こんな事言われたら困るよね……』
从;゚∀从『……』
言い返せない自分に、行き場のない怒りがこみ上げてくる。
返事を待たずに、渡辺は独りで話し続ける。
『変だもんね……ハインちゃんも、わたしも、女の子なのに』
『気持ち悪いって思われてるかもしれないけど……本気なんだよ?』
『だから、さっきだってすごい恥ずかしかったし、すご……』
从 ゚∀从『……渡辺?』
突然、渡辺の言葉が途切れる。
問いかけてみても返事はない。
やがて、鼻をすする音が耳に入ってきた。
『す、ごいっ……今、怖い……よ……』
『言ったら、嫌われっ、ちゃうんじゃ……ないかって、ずっと、思っててっ』
『でも……言いたくてっ、でも、やっぱり怖くて……』
『嫌われるのもっ……振られちゃうのも、嫌だけど……困らせたく、ないし……っ』
渡辺の口から紡がれる支離滅裂な言葉が、鼻の奥を刺激する。
心臓は、何度も紙の端で切られたように痛くて、絞めつけられるように苦しい。
それでも、まだあたしは渡辺にかける言葉を見つけられなかった。
从;゚∀从『……!?』
しゃくりあげた息遣いのまま、渡辺が鞄を片手に立ち上がった。
入り口にふらふらと向かっていく歩き方は、さながらホラー映画のゾンビのようだ。
『ハインちゃん……』
入り口の直前で立ち止まって、渡辺が消えそうな声であたしの名前を呼ぶ。
『ばいばい』
振り返らずに投げかけられた別れの挨拶が、胸の中の不安を膨れ上がらせる。
本当に渡辺がいなくなってしまいそうな気がして、慌てて呼び止めようとした。
だけど、こんな時になっても頭は無駄に冷静で、胸の辺りで言葉が詰まる。
呼び止めてその後どうするのか、と自分が自分に問いかけてくる。
从;゚∀从(呼び止めないと……でも……!!)
そうこうしてる間に、渡辺の右足が前へと踏み出される。
時間の進み方が遅くなったみたいに、ゆっくりとした動きだった。
从;゚∀从(その場の勢いで……答えを出していいのか?)
真剣な渡辺の気持ちに、ちゃんと応えてやりたかった。
だから、勢いに任せるなんて無責任な事はしたくなかった。
しかし、今結論を出さないと、また渡辺と離れ離れになってしまう。
从; ∀从(嫌だ……嫌だ!! 渡辺がいないなんて……)
脳裏に蘇ってくるのは、渡辺を探し歩いて彷徨った時の不安、寂しさ、心細さ。
自分が渡辺と一緒にいる事をどれだけ喜んでいるのか、今のあたしは知っている。
改めてその事を認識した途端、
从;゚∀从『渡辺っ! 行くなっ!! 渡辺ぇぇぇ!!!』
从;ー;从『ふぇ?』
驚くほど体が速く動いて、あたしは渡辺を抱きしめるように止めていた。
从;゚∀从『あたし、渡辺の事……好きだよ!』
从;ー;从『えっ……?』
振り返った渡辺と見つめ合う格好になる。
期待が込められた視線が痛くて、目を逸らしたい衝動に襲われる。
それでも、思いつくままに口が動いて、止まろうとはしなかった。
从;゚∀从『でも、よく分からなくて……好きだけど、好きなんだけど』
从;゚∀从『渡辺が思ってる好きと同じなのか、違うのかも分からなくて』
从;゚∀从『だから、ちゃんと応えられないけど、絶対あたしは渡辺の事……好きだから!』
从 ;∀从『気持ち悪いとか、嫌いとか、少しも思ってないし、一緒にいたいから!』
喋っているうちに、どんどん涙が溢れてくる。
渡辺に関してなら、どんなにたくさん泣いても泣き足りないような気がした。
从 ;∀从『頼むから、どっか行ったりするなよ……』
目いっぱい力を込めて、渡辺の体を抱き寄せる。
隙間なく体と体が触れ合うと、渡辺の跳ねた髪が顔をくすぐった。
从;'ー'从『苦しい……よぉ』
从;゚∀从『ごっ、ごめん!!』
絞り出すような声にはっとして、急いで腕の力を緩める。
渡辺は軽くせき込んではいるけど、その場から離れる様子はなかった。
从;'ー'从『……泣かないでよぉ、ハインちゃん』
渡辺は自分の目を拭うと、そのままあたしの頬に手を伸ばす。
そして、頬をつたう涙を撫でるように拭ってくれた。
从 つ∀从『やっと見つけたのに、またいなくなったら泣くに決まってんだろ……』
从;'ー'从『ごしごししちゃダメだよぉ~』
まだ涙が止まらないから自分で目を拭うと、渡辺があたしの手を掴んで制してきた。
从;'ー'从『ごめんね……もうあんな事言わないから、ね?』
引き止めて慰めるつもりだったのに、いつの間にか立場が逆転している。
迷惑をかけっぱなしで、こっちが謝りたいくらいだ。
从 ∀从『ごめん、迷惑かけてばっかで……』
从;'ー'从『そんな事ないってば……それにね』
从 ゚∀从『ん?』
掴んだあたしの手を、渡辺は自分の顔へと持っていく。
そして、頬にそっとあてがうとあたしの目を見つめて言った。
从'ー'从『すごい、嬉しかったよ。好きって言ってもらえて』
从;゚∀从『だけど……』
从'ー'从『分からないんでしょ?』
あたしが言おうとする事を見透かしたみたいに、痛いところを突かれてしまう。
口をつぐんだあたしを見つめたまま、渡辺は話を続ける。
从'ー'从『きっと、どっちだとしてもハインちゃんは本気だと思うんだ』
大きく何度も首を縦に振って肯定する。
渡辺は小さくよかった、と呟いて、ほっとしたように笑った。
从'ー'从『分からないなら、まだ望みだってあるしね』
从;゚∀从『でも、こんな答えじゃ……渡辺に申し訳ない』
結局、渡辺の解釈次第で、あたし自身は白黒すら付ける事が出来ていない。
それは、はっきりとした渡辺の想いに対する答えとして、とても物足りなく感じた。
从'ー'从『あっ』
从;゚∀从『へ?』
いきなり、渡辺が何か思いついたように握りこぶしで手のひらを叩く。
頭の上に大きな電球でも出てきそうなリアクションだ。
从;'ー'从『あっ、でも……う~ん』
しかし、すぐに両腕を組んで、眉をしかめて考え込んでしまう。
从;゚∀从『なんだなんだ? どうした?』
从;'ー'从『どうしても、だよ? どうしてもハインちゃんが納得できないなら……』
从;゚∀从『……おお』
随分と念入りな前置きをしてから、渡辺があたしに問いかけてくる。
思わず息を飲んで、次の言葉を待った。
从;'ー'从『お試しでいいから、付き合って欲しいな、なんて……』
お試し、という言葉で思い出すのは、帰り道の自分の発言。
嫌いじゃないなら付き合ってみれば、とあたしは渡辺に言った。
あたしの考えじゃなかったけど、別にそれはそれでありなんじゃないかと思っている。
从;'ー'从『や、やっぱり図々しいよね! うん、ごめん、今言ったのはナシにして!』
何より、あたしはどうしても自分に納得できない。
从 ゚∀从『……分かった、いいよ』
从;'ー'从『だよね、こんな事断られて当たりま……ふぇ?』
从 ゚∀从『よろしくお願いします』
从;'ー'从『ふ、ふぇぇ!?』
ひとりで慌てふためいていたからか、渡辺は状況が飲み込めていないようだった。
せわしなく瞬きをする渡辺の目をしっかりと見つめて、ゆっくりを口を開く。
从 ゚∀从『ごめんな。たくさん迷惑かけて、気も使わせて』
从 ゚∀从『自分が何を考えているかも分からないくらいバカで』
从'ー'从『……』
我に帰った渡辺は口をはさむ事なく、ただ黙ってあたしの言葉を聞いている。
手持ち無沙汰になっていた渡辺の手を取り、ゆっくりと近づく。
从 ゚∀从『もし、これで渡辺の事をどう思っているのか分かるなら』
从 ゚∀从『これで、少しでもちゃんと応えてやれるなら』
从 ゚∀从『お試しで申し訳ないけど、あたしは渡辺と付き合いたい』
あたしが話し終わっても、渡辺は黙ったままだった。
不安になり始めるくらい時間が経った頃、渡辺の瞳がじんわりと濡れてくる。
从;ー;从『……はい』
そして、渡辺が今までで一番の笑顔を見せて返事をした時。
電灯の光に照らされて綺羅綺羅と輝きながら、一筋の涙が渡辺の頬をつたった。
38 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 02:00:33 ID:mLPj393c0
从;゚∀从『なんで!? なんで泣くの!?』
从つー;从『嬉し涙だよぉ~』
すっかり泣き顔に敏感になったあたしは、涙を拭いながらも笑顔の渡辺になだめられる。
心配が取り越し苦労だと悟ると、自然と大きなため息が漏れた。
从;゚∀从『ふいー、今日だけで一年分は渡辺の心配したぜ……』
从;'ー'从『……今日はもう心配かけないようにします』
渡辺はすぐに、深々と頭を下げてくる。
それが引き金だったかのように、お腹の鳴る音が聞こえてきた。
从///从『……』
从 ゚∀从『……帰るか、もう夕飯の時間だしな』
恥ずかしくて顔を上げられないのか、おじぎしたままの渡辺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
はい、という蚊の鳴くような声の渡辺の返事を聞いてから、自分の鞄を取りに行った。
鞄を取ってから、入り口にいる渡辺の方へ振り向く。
すると、何故か妙にそわそわしながら渡辺はあたしを見ていた。
不思議に思いながら、とりあえず話しかけてみる。
从 ゚∀从『どした?』
从*'ー'从『あの、もしよかったら……』
頬を紅くした渡辺が、恐る恐る左手を差し出してくる。
少し考えてその意味を理解すると、自分の右手で渡辺の左手をそっと包み込んだ。
いつもと変わらないはずなのに、今はなんだか触れる手を感触がむずがゆい。
从*゚∀从『な、なんか恥ずかしいな』
从*'ー'从『いつもハインちゃんばっかり平気そうで、ちょっと悔しかったんだよ?』
不機嫌そうに口を尖らせて渡辺はそう言うけれど、目元は下がりっぱなしだった。
それはあたしも同じで、どうしても普通の顔に戻らない。
从*゚∀从『とりあえず、家まででいいか?』
从*'ー'从『えっへへ~、うん!』
いつものように、ふたりで帰り道を歩き始める。
ただ、いつもと違うのはがっちりと繋がれたお互いの手と、揃った歩幅だった。
――――――
从 ‐∀从(あれから一年なんて、あっという間だったな)
いつしか「お試し」なんて気は消え失せて、あたしは本気で渡辺の事が好きになっていた。
態度で察してくれたのか、渡辺も「お試し」の件については触れてこない。
从 ゚∀从(でも、ちゃんと言ってやるべきなのかな)
大っぴらに出来ない関係だし、デートだって深夜の散歩くらいだ。
せめて、あたしに出来る事くらいは全部してやりたい。
从*'ー'从「着いたぁ~、思い出の公園~」
思案にふけっているうちに、いつの間にか公園に着いていた。
やっぱり人の影はなく、電灯だけが寂しく佇んでいる。
从 ゚∀从「んじゃま、とりあえず例の場所へ……」
从>д<从「っくしゅ!」
冷えた空気の中を走っていたからか、渡辺がくしゃみをした。
格好をよく見てみると薄手の長袖一枚で、こっちまで寒くなってくる。
从;゚∀从「ほら、これ着なって」
从;'ー'从「ありがと……うぅ」
予感はしていたけれど、転んだ事に完全に気を取られていた。
慌てて持ってきていたカーディガンを手渡す。
渡辺は羽織ってみるものの、まだ寒そうに自分の腕をさすっている。
从;゚∀从「ったく、なんで上着着てこなかったんだよ」
从;'ー'从「だってぇ……早く行こうと思ったんだけど」
渡辺は少し迷ってから、気まずそうに口を開く。
从;'ー'从「何着ていこうか迷ってたら、出る時間になっちゃって……」
从;‐∀从「そう言われたら、怒るに怒れねえじゃんか……」
たしなめる気もすっかり失せてしまって、ふらふらと視線が泳ぐ。
すると、遠くに自販機の明かりが見えた。
从 ゚∀从「お、自販機」
帰る方向と正反対で今まで気付かなかったけれど、このタイミングはありがたい。
温かい飲み物でも飲めば、少しは渡辺の体も温まるだろう。
从 ゚∀从「なんか飲み物でも飲もうぜ、あったか~いの」
从'ー'从「大賛成だよぉ~」
自販機の前に辿り着いて、何があるのかぐるりと見渡す。
とりあえず、種類なんて分からないけれどコーヒーに決めた。
渡辺も決めたようで、財布から小銭を取り出そうとしている。
从 ゚∀从「先に買っていいぞ」
从'ー'从「分かった~」
お金を入れた渡辺は、ココアのボタンを押した。
落ちてきた缶を取り出すと、頬に当てて満面の笑みを浮かべる。
从^ー^从「はう~、生き返るよぉ~」
从 ゚∀从「ザオリク、ってか」
その様子を横目に見ながら、コーヒーのボタンを押す。
缶に触れると熱すぎるくらいに感じて、そこで初めて自分の体の冷え込みに気付いた。
プルタブを起こして口を付けると、強い苦味で目が冴えてくる。
从'ー'从「ハインちゃんコーヒー飲めるんだね、すご~い」
从 ゚∀从「はは、おこちゃまとは違うんだよ」
从;'ー'从「あっ、言ったなぁ~」
他愛ない会話をしつつ、歩いてきた道を戻っていく。
再び公園に着いて遊具の中に入る頃には、体はすっかり温まっていた。
从'ー'从「よいしょ」
从 ゚∀从「よっこらせっと」
先に渡辺と並んで座って、まだ中身の残る缶を少し離れた場所に置いた。
しばらくの間、お互いに何も喋らず、心地の良い沈黙が続く。
从*^ー^从「……えへへ」
从 ゚∀从「どーした?」
あたしに寄りかかる様な形で、渡辺が体をくっつけてきた。
そして、照れくさそうに笑いながら、頭を肩に置いてくる。
从*^ー^从「なんでもないよぉ~」
なんて言いつつも、あたしの手をいじってくる。
その手つきは、まるで子犬でも撫でているかのように繊細だ。
从 ゚∀从「いつもは自分から寄ってこないだろ? なんか変な物食ったか?」
从;'ー'从「ひど~い、ちゃんとしてるってばぁ~」
口では不満そうだけど、体はますます密着してくる。
いよいよ、拾い食いでもした説が有力になってきた。
そんな事をするような子に育てた覚えはないはずだけど。
从 ゚∀从「まー、これはこれでいいかもな」
从*'ー'从「えっへへ~」
一言呟いて、肩に置かれた渡辺の頭に頬を寄せた。
同時に空いている右手で、頭のあちこちで跳ねている髪をそっと撫でる。
从 ゚∀从「何やったらこんなにアホ毛だらけになるんだろうな」
从;'ー'从「アホ毛って言われたら、わたしがすごいアホの子みたいだよぉ……」
从 ゚∀从「ん? そうじゃないの?」
从;'ー'从「違うよぉ、ハインちゃんといっしょで跳ねてるだけ」
渡辺は必死で弁解しながら、首のあたりで外に跳ねたあたしの髪をつつく。
よほどアホの子と言われる事が屈辱らしい。
从 ゚∀从「これは外ハネ、渡辺のはアホ毛。はい論破」
从;'ー'从「ふぇ……」
あたしの反論に、渡辺はすごすごと引き下がった。
自分の髪が外ハネだけで済んでいない事は分かっているらしい。
从 ゚∀从「んんー、スネてる渡辺も可愛いぞー」
从#'ー'从「……スネてないもん」
ちゃかすように渡辺を抱き寄せ、髪の中に顔をうずめる。
聞こえてきた渡辺の声からして、今度は本当にご不満のようだ。
一応、これ以上怒らせないように話題を逸らす。
从 ‐∀从「あ~、渡辺のいい匂いがするよぉ~」
从;'ー'从「えっ、ちょ!? やだぁ!!」
恥ずかしがった渡辺は、あたしを引き離そうと手を伸ばしてきた。
しかし、抱き寄せた時に両腕はしっかりと渡辺の体を捕らえておいてある。
更には、体の反対側でがっちりと手を繋いでおくおまけ付きだ。
从 ‐∀从「癒されるぅ~、マジいい匂いだわぁ~」
从;'ー'从「そんなのしないってばぁ!」
从 ゚∀从「するってば、めっちゃするってば♪」
从///从「恥ずかしいからやめてよぉ……」
渡辺の顔がどんどん熱くなっていくのを、頬で感じる。
体をよじって腕の中から抜け出そうとするも、あたしと渡辺の力じゃ勝負にすらならない。
ついには抵抗を諦めて、抱きしめられたまま大人しくなってしまった。
从 ゚∀从「はいはいやめるやめるー♪」
从///从「うぅ……」
渡辺から離れて、元の位置に戻る。
顔を真っ赤にした渡辺が、恨めしそうにあたしを見ていた。
恥ずかしさのあまりか、どこかのCMのチワワのように瞳が潤んでいる。
从 ゚∀从「はっはっは、ういやつよのぉ」
从///从「何か、すごい悔しい……」
まだ中身の残っている缶に手を伸ばす。
緩んだままの頬を少し引き締め直して、残りを飲み干した。
从 ゚∀从「いやー、渡辺をからかった後の一杯は最高に美味いなー!
从///从「う、うううぅ……」
一際悔しそうな唸り声をあげた渡辺が、あたしから視線を離した。
そして、もうひとつの缶を拾い上げると、一気に飲み始める。
从;'ー'从「ぷあっ!」
やがて、乾いた金属音が響いて、缶が地面に乱暴に置かれる。
ココアを飲み終わった渡辺は、再びあたしの目をまっすぐに見つめた。
そのまま、ゆっくりと四つん這いで近付いて来る。
从;゚∀从「んなっ、どうしたどうした!?」
从>д<从「ていっ!!」
从;゚∀从「おわっ!?」
呆気にとられるあたしをよそに、渡辺が目と鼻の先まで迫ってきた。
そして、突然飛びかかるようにして、体重を一気にかけてくる。
為す術もなく、あたしは後ろに倒れこんでしまった。
あたしの顔の横に手をついて、馬乗りになった渡辺の髪で、周りに何も見えなくなる。
背中に感じるコンクリートの冷たさと、あたしをじっと見つめてくる渡辺。
まるで、それだけが存在する世界に飛ばされたような錯覚を覚えた。
从'ー'从「やられてばっかじゃないもん……」
从;゚∀从「はい?」
少しずつ渡辺の顔が近付いて来る。
渡辺らしからぬ態度に呆然としていると、互いの胸が触れあった。
悲しいかな、質量の差であたしの胸は渡辺の胸に飲み込まれていく。
从;゚∀从「わ、わー……渡辺の胸また大きくなったなー……」
見た事のない渡辺の様子に寒気を覚えて、逃げ出そうと試みる。
とりあえず、横から渡辺の胸をつついてからかってみた。
从*'ー'从「ありがと。でも……やめてあげないからね?」
从;゚∀从(あたしの知ってる渡辺はどこ行ったのー!?)
いつもなら恥ずかしがって逃げ出すはずが、軽くあしらわれてしまう。
ほんのり紅く染まる頬が妙に色っぽく見えて、襲われる予感すらしてきた。
力づくで逃げようとしても、馬乗りからではさすがに無理がある。
从*'ー'从「ハインちゃんすごいドキドキしてるねぇ~」
あたしの顔にかかる自分の髪をどけながら、渡辺は楽しそうに呟く。
ついに吐息を肌で感じる距離になって、ココアの匂いが鼻をくすぐる。
从;゚∀从「おっ落ち着け渡辺! あたし達まだ15なんだぞ!?」
从*'ー'从「違うよぉ~……『もう』15だよ」
何を言っても切り返され続けて、説得は無理だと悟った。
目を閉じて、まな板の上の鯉となってその時を待つ。
「あ~、だめだよぉ~」
从;゚∀从「うおっ!」
はずだったけど、渡辺に瞼を摘ままれて、無理矢理に目を開かされる。
そして、眼前には小悪魔のような笑みを浮かべた渡辺の顔。
51 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 02:04:57 ID:mLPj393c0
从*^ー^从「ちゃんと見てなくちゃ……だ・め・だ・よ?」
从//∀从「んん……っ」
从*'ー'从「ふふんっ♪」
何も言えずに、ただ半開きになっていた口をキスで塞がれた。
すぐに離したかと思えば、また軽く触れるだけのキス。
餌をついばむ小鳥のように、何度も何度もそれを繰り返される。
从//∀从「っ……は」
呼吸が勝手に荒くなってきて、合間に口で大きく息を吸っても足りなく感じる。
体が中の方から熱くなり、頭がぼーっとして上手く回らない。
从*'ー'从「ハインちゃんすっごい可愛い顔してるよぉ~」
从//∀从「やっ……あんま、見な……んむっ」
いったんキスを中断した渡辺に耳元で囁かれて、顔がさらに熱くなる。
反射的に顔を隠そうとして、動かした手も掴まれてしまう。
とどめと言わんばかりに、懇願しようとした口も再び塞がれてしまった。
从//∀从「ふああっ……!」
いきなり唇を舐められて、思わず声が漏れる。
その反応のせいか、渡辺がさらに入念に舌を這わせてきた。
声を押し殺そうとしても、息を吐く度に勝手に出てしまう。
从///从「は……んん……ん、むぅ……っ」
渡辺もさっきまでの余裕は無くなっていて、息が荒くなっていた。
力が抜けた体は、あたしに全ての体重が預けられている。
从///从「は、いんちゃ……」
从//∀从「な……に……?」
唇が離されて、熱にうかされたような顔の渡辺に呼びかけられた。
息も絶え絶えのまま、声を絞り出して答える。
渡辺は数瞬の沈黙の後、
从///从「……べー、ってして?」
舌の先を覗かせながら、そう促した。
从//∀从「……べ」
从///从「んむっ……」
促されるままに舌を出すと、渡辺が少し大きく口を開けた。
そして、あたしの舌を含むようにしてキスをする。
从///从「ん、んんっ……っは……」
从//∀从「うん、ふっ……あ、はっ、ああっ」
時は優しく触れられて、時には激しく絡みつかれて、時には軽く吸い上げられて。
頭がどんどん真っ白になっていって、背中が断続的にぞくぞくした感覚に襲われる。
从///从「はふ、んっ、んんっ……あ、ふぁっ」
いつの間にか、渡辺の右手があたしの肩の辺りを掴んでいた。
その上から手を重ねると、まるで待ちかねていたみたいに強く握ってくる。
指と指を絡ませ合って、決して離れないように恋人繋ぎで握り返す。
从//∀从「あ、わ、……はぅ、んっ……た、なべぇっ……」
空いている右手を渡辺の頭へと伸ばすけど、力が入らない。
なんとか届いた耳の辺りを、ありったけの愛情を込めて撫でた。
从///从「ふあぁんっ!!」
撫でた途端に渡辺が一際大きい声を出して、体が小さく跳ねる。
そのまま、糸の切れた人形みたいに、ぐったりとしてしまった。
从//∀从「……へ?」
从///从「はあっ……ん、はっ……」
从//∀从「……どした?」
肩を軽く叩いて、呼びかけてみる。
ぴくん、と体が動くと、途切れ途切れに渡辺が言う。
从///从「みみ……だめぇ……」
うっかり渡辺の弱いところを触ってしまったらしい。
从*‐∀从「言ってくれれば気を付けたのに……」
从///从「だってぇ……言ったら、絶対ハインちゃん、触ってくるもん」
さすが、長年の付き合いなだけあって、あたしの事をよく分かっている。
渡辺の予想通り、今度はしっかり耳を狙って撫でる。
从///从「や、ぁ……っ」
从*‐∀从「いくら悔しかったからって、こんなになるまでするからだよ♪」
ようやくいつも通りに戻って、渡辺をからかう余裕も出てくる。
とはいえ、相変わらず顔を熱を持ったままで、下がる気配がない。
从///从「……って……にか、」
渡辺の口が小さく動いて、耳を澄ましてやっと聞こえる程度の声がする。
从*゚∀从「聞こえないぞ?」
从///从「えっと、その……」
言いづらそうに目を伏せた渡辺は、あたしの胸に顔を埋めてしまう。
そして、早く言い終わってしまいたいのか、普段より早口で理由を喋り始めた。
从///从「最初はすぐやめるつもりだったけど、途中で頭真っ白になっちゃって……あと……」
何故かまだ続きがありそうなところで途切れて、違和感を覚えた。
渡辺の体が節操なく左右に揺れる。
从 ゚∀从「あと?」
从///从「なんか、甘苦くて……やめたくなくなっちゃって」
从*‐∀从「……コーヒーとココアか」
渡辺がずっと味わっていたのかと思うと、何とも言えない恥ずかしさがこみ上げてきた。
たまらず、紛らわすように熱を帯びてきた顔を地面に押し付けた。
コンクリートが熱を火照った顔を冷やしてくれて、とても心地良い。
从*'ー'从「やっと落ち着いてきたよぉ……」
从 ゚∀从「じゃあ、もう一回耳触ってやろっと」
从;'ー'从「……やったら帰るもん」
両手で耳を隠しながら、渡辺は少しだけ後ろへ下がる
捕まえようと手を伸ばすけど、目付きが真剣なのに気付いて引っ込める事にした。
从;゚∀从「やらないって、だから戻ってきてよ。渡辺がいなくて寂しい」
从;'ー'从「う~ん……そう言われると」
まだ少し警戒しつつも、渡辺は元の位置に戻ってきてくれた。
そして、胸に顔を寄せると、さっきまで繋がれていたあたしの左手を見つめる。
从'ー'从「こうしてたんだよね、さっき」
ぽつりと呟いて右手を伸ばし、指を絡ませて握ってくる。
軽く握り返すと、ぬるいお湯の中に浮いてるような感覚に包まれた。
まるで、ママに抱かれる赤ちゃんみたいに、安心感で心がいっぱいになる。
从'ー'从「ハインちゃんと、繋がってた」
从 ゚∀从「手だけじゃなかったけどな」
右手の指で渡辺の髪を、背中の方へ梳かしていく。
絡む事なく指の間をすり抜けていく髪の感触が、少しむずがゆい。
从;'ー'从「もう言わないでよぉ……思い出すと恥ずかしくなってくるのに」
从 ゚∀从「ははは、わりぃわりぃ」
頭が真っ白だったとはいえ、自分が何をしていたのかは覚えているらしい。
また熱くなってきた渡辺の頭を、ぽんぽんと叩いて形だけ謝っておく。
从'ー'从「ねぇ、ハインちゃん。最近ね、よく考えることがあるんだ」
从 ゚∀从「ん?」
視線を手からあたしの顔に戻し、渡辺が話を切り出した。
頭に置いた手の動きを止め、耳を傾けて次の言葉を待つ。
あたしが話を聞く態勢になったのを機に、渡辺は続きを話し始める。
从'ー'从「わたしたち、全然似てないなって」
从 ゚∀从「真逆って言ってもいいくらいだよな」
外見、性格、趣味、志向、運動神経、頭の良さ。
どれもふたりを足して2で割れば、ちょうど真ん中になるくらい対極だ。
从'ー'从「だからね、付き合ってることも、友達でいたことも、実はすごい奇跡なんじゃないかな」
接点なんて近所に住んでいる事くらいのあたし達が、密接に関わり合っている。
きっと他人から見れば、渡辺の言うように奇跡的な事なんだろう。
从 ー 从「だから、怖いの」
声のトーンが落ちて、繋がれた渡辺の手に力がこもる。
空いていたはずの渡辺の左手も、気付くとあたしのパーカーを掴んでいた。
从 ー 从「奇跡が終わっちゃったら、いっしょにいれなくなっちゃうのかな、って」
60 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 02:07:52 ID:mLPj393c0
从 ー 从「もしかして、別々の高校に行くのが奇跡の終わる瞬間なのかな、って」
从;゚∀从「……渡辺」
あたし達は別々の高校を受験する予定になっていた。
最初は渡辺があたしに合わせると言っていたけど、猛反対して諦めさせた。
優等生の渡辺が、良くて中の下のあたしに合わせる必要なんてないと思ったからだ。
从 ー 从「ずっと、ずっとハインちゃんといっしょだったから……」
あたしは一年前から変わらずにバカのままだった。
この瞬間まで渡辺の心の内に気付けなかった事を、激しく後悔する。
――――――
从 ー 从『……好きだよ』
――――――
前例なんて、一年前にとっくにあったのに。
从 ー 从「離れた時に何が起こるのか、全然分からなくて……それが、怖い」
物分かりのいい渡辺にだって、頭では分かってても消せない想いはある、という事を知っていたのに。
大きく一回、深呼吸をして心を落ち着かせる。
普段の自分がどんな人間だったか、出来るだけ鮮明に思い返す。
頭の中に浮かんできた自分を、なぞるように口を開いた。
从 ゚∀从「……なあ、渡辺」
从'ー'从「なぁに?」
名前を呼ばれた渡辺が、ゆっくり顔を上げる。
泣いてはいないけど、影が落とされた表情は悲しげだ。
思わず、胸の奥を握りつぶされそうな痛みが走る。
从 ゚∀从「奇跡っていうのはさ、起こらないから奇跡なんだとよ」
从'ー'从「そうなの?」
从 ゚∀从「あたしも聞いただけなんだけどさ、実際そういうもんだと思う」
出来るだけ気丈に振る舞いながら、口を動かすのはやめない。
今、渡辺の不安を取り除いてやれるのは、やらなければならないのは。
不安の種を植え付けた張本人の、あたしだけなのだから。
62 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 02:08:36 ID:mLPj393c0
从 ゚∀从「でもさ、奇跡なら起こらないはずなのに、現にこうして起こってる」
自分でも、都合のいい考えだとは分かっている。
从 ゚∀从「だから、あたし達が一緒にいるのは奇跡なんかじゃないんだよ」
所詮は全部、『こうだったらいいな』という理想だ。
从 ゚∀从「なるべくしてなったっていうか……運命?」
あたしが今、渡辺に言って聞かせているのは。
从 ゚∀从「んで、運命の相手ってのがあってな」
理想を詰め込み、でたらめに描いたバラ色の想像図だ。
从 ゚∀从「なんでも、例え何があっても結ばれるらしいぜ」
例えそれが、すぐに訪れる未来で全て否定されてしまうとしても。
从 ゚∀从「つまり、運命で結ばれてるあたし達は、運命の相手ってわけ」
どうせ、朝が来ればただの幼馴染に戻らなければいけないのだから。
せめて今だけでも、渡辺には理想だけを見ていて欲しかった。
最初に少し質問したっきり、渡辺は最後まで静かに聞いていた。
ただ、耳を傾けながら頷いたりしていたから、話はちゃんと理解してくれたらしい。
表情に落ちていた影は、遊具が作り出した影だけになっていた。
从'ー'从「もし、わたしたちが運命の相手だったら――」
小指を立てた左手を、自分の顔の前でまじまじと眺めながら渡辺が呟く。
それから、視線があたしの右手へと流れるように移っていった。
从'ー'从「運命の赤い糸で繋がってるのかなぁ?」
まるで本当に糸が見えているように、渡辺は何もない空間を見つめる。
从 ゚∀从「そもそも、女同士でも赤い糸ってあるのか?」
从;'ー'从「えぇ~、赤い糸がないと運命の相手じゃないよぉ~」
ふと思いついた疑問を口にした途端、渡辺が慌てだした。
慌てふためく姿を眺めて思案にふけっているうちに、天啓をひらめく。
とりあえず渡辺をなだめるために、頭をくしゃくしゃと撫でまわす。
从 ゚∀从「大丈夫だろ、そもそも赤いなんて誰が決めた?」
从;'ー'从「えぇ~、でも……」
戸惑う渡辺に、自信満々に言ってやる。
自然と、自分の口角が上がるのを感じた。
64 : ◆5.MxWNPUWQ:2011/02/21(月) 02:09:15 ID:mLPj393c0
「赤いやつじゃないかもしれないけど、確かにあるよ」
「ふぇ?」
「似てないあたし達が離れないように繋いでる糸、ってのはさ」
「……えへへ、そうだねぇ」
~~~~~~
从 ‐∀从「あー、ねみー」
結局、渡辺を家まで送ってから帰ってきたのは、いつもより遅い明け方頃だった。
家族がもう起きてるんじゃないか、とビクビクしたけど幸い熟睡中だった。
从 ‐∀从「いってきまーす」
睡魔に耐えながらローファーを履くと、脇に置いた鞄を持ってドアを開ける。
从 >∀从「ぐっは!」
飛び込んできた朝日が沁みて、思わず目を細める。
その狭まった視界の中に、誰かが立っているのがぼんやりと見えた。
徐々に目が慣れてきて、くっきりと見えてきたのは、
从'ー'从「ハインちゃん大丈夫~?」
眠たげな顔をした、ただの幼馴染の渡辺の姿。
从 ゚∀从「おはよ、渡辺」
从'ー'从「うん、おはよ~」
いつものように短い挨拶を交わして手を軽く繋ぐと、並んで学校へと歩き出した。
指と指を絡める事は、なかった。
从 ゚∀从細い糸で繋がっているようです从’ー’从
終わり