February 20, 2011
('A`)( ^ω^) 友への思いのようです (ФωФ )
時代も世界もわからないけれど、たしかに何処かにある小さな村のお話。
少年と、そのお友達のお話をしましょう。
たしかにあった、お話を。
あるところにVIP村と呼ばれる村がありました。
あまり裕福な村ではありませんでしたが、決して貧乏でもないその村。
そこでは人々が幸せそうに暮らしており、毎日笑い合っています。
( ^ω^) 「今日は森に行くおー」
この小太りな少年はブーンと言い、何処にでもいるような元気一杯の子供です。
('A`) 「危ないんじゃない……?」
そしてこの細身の少年はドクオと言う、少し静かな子供。
二人は大の仲良しで、毎日飽きもせず一緒に暮らし、遊んでいました。
彼らは他の子供たちとは少し違い、両親がいません。
昔、魔物に襲われてしまったのです。
( ^ω^) 「おっおっ、ドクオは怖がりだおー」
('A`) 「いや、そう言う訳じゃなくてさ……」
しかし決して彼らはそれを悲観してはいません。
そりゃあたまには寂しくなることもありますが、お互いに親友と呼べる、むしろ兄弟と呼べる存在がいるのですから。
だから彼らは毎日元気に生きているのです。
( ^ω^) 「僕は一人でも行くお! ドクオは震えて待ってていいおー」
(;'A`) 「あ! 待ってよ」
勇気のあるブーンとは対照的に、臆病なドクオ。
('A`) 「一人じゃ、危ないよ」
しかし、彼は臆病者ながらも大変優しい少年でした。
ブーンも優しいことは優しいのですが、少々マイペースな部分があり、いつもドクオがそれに合わせます。
( ^ω^) 「いーざすーすーめーやーキッチーン」
('A`) 「何その歌……」
( ^ω^) 「適当だおー」
村の出口へずんずんとブーンは進んでいき、ちょこちょことドクオは後を追います。
いつも通りのその光景。
いつもと違うと言えば、向かう先が森の中なところでしょうか。
村の大人たちが入ってはいけないと言うその森。
( ^ω^) 「おっおっおっ、涼しいおー」
('A`) 「暗くて不気味だなぁ……」
( ^ω^) 「僕がいるから大丈夫だお!」
('A`)
('∀`) 「はは、頼もしいなぁ……」
( ^ω^) 「お、任せとけお!」
薄暗い森の中、二人はただただ前へと進みます。
普段入ることのない場所だからでしょうか、気分が高揚している様子です。
木の枝を右手に持ち、意気揚々とブーンは歩を進め続けました。
(*'A`) 「見て見てこの枝!」
( ^ω^) 「スゴく……おっきいです……」
大人は鼻で笑い飛ばしてしまいそうですが、木の枝は少年たちにとっては大事な装備。
自分の持っているそれよりも大きい枝を持つドクオを見て、ブーンは少し悔しくなりました。
( ^ω^) 「おー、僕がドクオより珍しい物見つけるおー!」
('A`) 「がんばれー」
その時でした。
ウォォォ―――。
( ^ω^) 「……?」 ('A`)
今までに聞いたこともない音を、彼らの耳は捕捉しました。
('A`) 「何の音……?」
( ^ω^) 「まさか、幽霊とかかお?」
(;゚A゚) 「いやいやいやいやないないないないですないでほしいです!」
(;^ω^) 「焦りすぎだお……」
音の出所は、おそらくは彼らの近く。
一度見に行ってみようとブーンは提案しますが、ドクオは必死に抵抗します。
(;'A`) 「ヤダよヤダヤダ! コワイじゃん!!」
( ^ω^) 「大丈夫だおーブーンがいるおー」
('A`) 「……ブーンは、一人でも行くの…?」
( ^ω^) 「もちろんだお!」
('A`) 「……はぁ」
仕方がないと漏らし、一人でここにいるよりマシ、何よりもブーンが危なくないようにと考えて、ドクオも覚悟を決めます。
( ^ω^) 「おっ、そんなに心配しなくても大丈夫だお」
('A`) 「ん、信じてるよ」
一歩、また一歩と、二人はゆっくりと音の発信源へと向かいます。
('A`) 「慎重にだよ……」
( ^ω^) 「ブーンを誰だと思ってるお」
任せとけ。
胸をドンと叩いて、ドクオに微笑んで見せると、それに呆れたような笑顔を返します。
最初に聞こえてからも断続的に鳴っていたその音は、二人が足を伸ばす度に少しずつ近づいていました。
もうすぐだとお互いに真逆の心境で、鼓動が速く強く鳴り出します。
ウォォォ―――。
――――さぁ、もうすぐそこまで来ました。
( ^ω^) 「……鳴き声?」
('A`) 「みたいだね」
何度も耳を通り抜けていた音が、動物か何かの鳴き声だと気づいて二人は安堵しました。
他にも、魔物である可能性もあると言うのに、楽観的なものです。
そうしてついにその発信源へと辿り着きました。
('A`) 「…これは……」
( ФωФ) 「ウォォォォォン!」
( ^ω^) 「竜……の、赤ちゃんだおね」
(*'A`) 「へぇ……初めて見たよ……」
小さくてかわいいね、なんて呑気なことを呟きます。
赤ちゃんと言えども竜、油断をしてはなりません。
( ФωФ) 「ウォォォァァッ!」
( ^ω^) 「え」
('A`) 「え」
かぱりと口を大きく開けて、何もかもを吸い込んでしまいそうなその口からは、不快な熱気が漏れます。
それを肌に感じて顔をしかめた時にはすでに遅く、赤ちゃんの口からは熱気の正体が現れていました。
炎、と呼べる程のものではありませんが、少年たちには十分に驚異的な息。
( ゚ω゚) 「おぉぉぉォォオッ!?」
(゚A゚) 「うわぁぁぁああ!!」
チリチリと鳴る音と共に、何とも言えない異臭が鼻を刺します。
( ゚ω゚) 「髪の毛がァァアアッ!!」
(゚A゚) 「ヘルプ! ヘルプミィィィッ!!」
(´ФωФ) 「……ウォォン」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ仲良し二人。
そんな状態にした張本人は、少し申し訳なさそうな声で鳴き、
( *ФωФ) 「オォン」
楽しそうに眼を細めて、まだ小さな小さな羽と体をばたつかせます。
( ゚ω゚) 「テメェェェ……」
(;'A`) 「待って待って! 赤ちゃんだよ!」
( ФωФ) 「ォン?」
座ったままの姿勢で首を傾げ、先程まで騒いでいた二人をきょとんと見上げます。
今の一件でブーンはすっかり頭に血が上ってしまいましたが、ドクオはこんな状況でも優しさを見せました。
怒ってしまってもいいハズなのになぁと、口には出さないブーンも十分に優しいのですが。
('A`) 「ほら、見てよ」
( ^ω^) 「おーん?」
( ;ФωФ) 「? ?」
指を刺すドクオに、その位置へと顔を近づけるブーン。
そんな二人に囲まれて竜の赤ちゃんは困惑しているのか、キョロキョロと忙しなく顔を動かします。
( ^ω^) 「ありゃー、お前……怪我してんのかお」
その小さな小さな足には、たしかに血が漏れ出ていて、痛々しい色で染まっていました。
('A`) 「ここにいるのも、動けないからなんだろうね」
心配そうに、その小さな体を見つめ、二人してうんうんと呻きます。
さて、それが赤ちゃんにはどう感じたのか、なんてことはわかりません。
( ;ФωФ) 「オォォォンッ!!」
( ^ω^) 「え」
('A`) 「あ」
それが何か自分に危害を加えるものだと、そう勘違いしたことだけは二人にもわかりました。
( ゚ω゚) 「やぁああめろぉぉぉおおおおお!」 (゚A゚)
しばらくの間、二人と一匹は騒いでいましたがそれも収まり、漸く落ち着いて話をしていた頃。
( ^ω^) 「コイツ、僕らの言葉わかんのかお」
そんな至極当然の疑問を、漸くブーンが口にしました。
もしもわかっていないのならば、随分と滑稽な話です。
言葉もわからない魔物に、ただただ二人で話し掛けている、そんな光景になるのですから。
('A`) 「わかってるんじゃないかな、頷いたりしてるし」
( ^ω^) 「お前、名前は?」
( ФωФ) 「ウォーォン」
('A`) 「ウォーォン?」
( ^ω^) 「ま、僕らがコイツの言葉わからんからNE!」
魔物、と言うのは本来であれば忌み嫌われる存在。
それに彼らは、その存在に肉親を襲われているのに、楽しそうにそれと交流をしていました。
( ^ω^) 「お前は、悪いヤツじゃないおねー」
( ФωФ) 「ンガァー」
13 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:37:09 ID:bL/ucGHEO
心を開いてくれたのでしょうか、頭を撫でるその手に噛みつくなどと言ったことはせず、ただただ気持ち良さそうに鳴きます。
('A`) 「君のお母さんやお父さんは…?」
( ФωФ) 「ンォォー」
('A`) 「うーん……」
やはり意思の疎通が出来ていないのか、そう思い伸びっぱなしの髪をボリボリと掻くドクオ。
何とかならないものかと悩んでいた、その時です。
( ^ω^) 「ロマネスク」
( ФωФ) 「ウォォォン」
('A`)
('A`) 「は?」
ブーンがその赤ちゃんに呼び掛けると、赤ちゃんも反応を返しました。
('A`) 「何、今の」
( ^ω^) 「コイツの名前だおー」
( *ФωФ) 「ォン」
顎の下を撫でてやりながら、当たり前の様にブーンが答えます。
彼は赤ちゃん――、いえ、ロマネスクの言葉がわかったのでしょうか。
('A`) 「よくわかったね」
( ^ω^) 「わかった?」
('A`) 「うん、この子の言ってることが」
首を傾げて一瞬固まり、どこか納得した様にカラカラとかわいらしくブーンは笑いました。
( ^ω^) 「そーんなことかお!」
('A`) 「そんなことって……」
( ^ω^) 「わかるワケねぇお!」
笑い声と共に勢いよく放たれたその言葉は、ドクオの時を止めるには十分でした。
ちなみに当のロマネスクは、いまだに気持ち良さそうに目を細めています。
次いでドクオが返したのは、大きなため息。
('A`) 「あのねぇ……」
( ^ω^) 「たしかに勝手に名付けたけど、コイツにも名前がなきゃかわいそうだお?」
('A`) 「そうだけど……」
( ^ω^) 「名前を知れば友達って、村長が言ってたおね?」
('A`) 「ん……、たしかにね」
( ФωФ) 「ォォォォン……」
撫でていたその手が止まり、ロマネスクはまだ足りないのか、ブーンへと鳴きます。
( ^ω^) 「おっおっ、スマンおー」
再度その手を動かすと、ゴロゴロと竜とは思えないかわいらしい音を鳴らします。
その気持ち良さそうな顔を見て、ドクオもそれ以上は何も言いませんでした。
森の中が橙色に染め上げられたころ、そろそろ帰ろうかとドクオは提案します。
( ^ω^) 「お、もうそんな時間かお」
('A`) 「暗くなると、出られなくなっちゃうよ」
( ^ω^) 「それもそうだおね、帰るかお」
( ФωФ) 「オーン?」
スクと立ち上がり、じゃあねとロマネスクへ手を振り去ろうとしました。
一人―――いえ、一匹取り残された、ロマネスク。
きょとんと動かなかったのですが、突然何かわかったかのように。
( ;ФωФ) 「ウォォォォォォオオオンッ!!」
( ;^ω^) 「お!?」
(;'A`) 「ヒッ……」
今までよりも、ずっとずっと大きな声。
その小さな体には似合わない、随分と大きな声で、二人へ鳴きました。
( ФωФ) 「ゥゥウ……」
( ^ω^) 「なんだお…?」
('A`) 「……」
森の中でじっと見つめ合い、少しの時間が流れます。
その内に仕方がないと言いたげに笑いながら、ドクオは歩み寄りました。
('ー`) 「ゴメンね、一緒に行こうか」
( *ФωФ) 「ォン!」
ドクオに抱き抱えられながら、竜は満足そうに鳴きます。
さぁ、帰りましょうか―――。
17 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:41:38 ID:bL/ucGHEO
('A`)( ^ω^) 友への思いのようです(ФωФ )
18 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:42:35 ID:bL/ucGHEO
あれから三人は、ずっと一緒です。
毎日毎日村の者が起きるよりも早くから外で遊び回り、日が暮れて村の者が家に帰ったころに帰る。
友達が一人増えたことで、全てが新鮮でした。
あの日に家へ帰ってからすぐに足の治療をしたおかげもあってか、今ではロマネスクも一人で動き回ることが出来ます。
('A`) 「じゃあ、勉強しようか」
( ;ФωФ) 「オーン……」
( ;^ω^) 「おーん……」
('A`) 「はいはい、鳴いてもやめないよ。ロマも言葉を覚えたら、僕らともっと仲良くなれるよ」
( *ФωФ) 「オー!」
( ^ω^) 「しゃあない……やるかお、オー!」
('A`) 「オー! それじゃあ、始めるよ」
遊んでばかりではなく、ドクオがブーンに勉強を教え、ロマネスクに言葉を教え。
そんな日もありました。
と言ってもロマネスクは喋れませんし、お互いに意思の疎通も出来てきていたのですが。
19 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:43:29 ID:bL/ucGHEO
そうそう、先程の"オー"と言う掛け声は、三人の合言葉。
特に何らかの意味があるワケではなく、ロマネスクの鳴き声を真似た結果、それが三人の絆を表したものとなったのです。
もちろん買い物の量が増えたりと、生活もいろいろ変化します。
从 ゚∀从 「おう、最近見なかったがァ、何買いに来やがったよ」
( ^ω^) 「肉だお」
从 ゚∀从 「おう、どんくらいよ」
( ^ω^) 「たっぷりと」
从;゚∀从 「……それってどんくらい?」
( ^ω^) 「たっぷり……そう、まるで肉の海……! 溢れんばかりの肉、肉だ……ッ!」
( ^ω^) 「ククク……」
从 ;∀从 「なんで買いに来たのがドクオじゃなくコイツなんだよぉ……」
( ^ω^) 「さぁ出せ……! 貴様の店ごと喰らい尽くしてくれるわッ!」
从 ゚∀从 「で、結局なんぼほしいのよ」
( ^ω^) 「たっぷり」
从;-∀从 「あ゛ー……」
20 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:44:24 ID:bL/ucGHEO
時には些細なことでケンカがあったりもしました。
(;'A`) 「なんでこんなに肉買ってくるの!?」
( ^ω^) 「ククク……」
(;'A`) 「いや、答えてよ!」
( *ФωФ) 「ウォォォン!」
( ^ω^) 「ロマもよろこんでるし、勘弁するお」
( A ) 「次に村長さんがお金をくれるまで、まだしばらくあるのに……」
( ФωФ) 「ォン?」
(#'A`) 「どうしてそんなに無計画なのさッ!」
( #^ω^) 「お、ブーンはドクオたちのことを考えて……」
(#'A`) 「どう考えたらこうなるの( ФωФ) 「オォォォォォォン!」
(#'A`) 「ッ……」
( ^ω^) 「……スマンお」
('A`) 「いや、僕も……ゴメンね……」
それをロマが止めたりと、なかなかいい組み合わせなのかも知れませんね。
ある日のことでした。
いつもと同じように朝早くから遊ぼうと、三人は起きて外へ出ます。
目覚めたばかりのその世界は、朝露と太陽の光でキラキラ輝き、村中が光でいっぱいです。
何度も何度も見ているのですが、その光景は三人を清々しい気持ちへさせました。
('A`) 「今日は、何しよっか」
( ^ω^) 「とりあえず秘密基地へ行くお!」
( *ФωФ) 「ウォン!」
ワイワイと本日の予定を話しながら、村の外へと歩いて行きます。
从 ゚∀从 「あらま、久しぶりだなぁ」
先日、ブーンが迷惑をかけた店員さんがこちらへ歩いてきました。
肩まで伸びた黒い髪に整った顔立ち、スラッとした、村の中でも特に二人をかわいがってくれている女性。
('A`) 「あ、ハインさん」
( ^ω^) 「ブーンは久しぶりでもないおー」
从 ^∀从 「おうおう、わかってんぞー糞ガキがァ」
笑いながらグシャグシャと両手で二人の頭を撫でると、恥ずかしそうに笑いました。
それを見ていたロマネスクは自分もしてほしいのか、ハインの足へ頭をグリグリと。
( *ФωФ) 「オォォン、オォォォン」
从 ゚∀从 「んあ? 足に何か……」
从 ゚∀从 「何……か、え……?」
視線を足元へ落とすと、そのまま固まるハイン。
一瞬にして、さぁっと血の気が引いていくのが、自分でもわかりました。
('A`) 「……あ」
( ^ω^) 「お、森で仲良くなったロマネスクだお! きっと撫でてほしいんだお」
( *ФωФ) 「ウォォォン」
从;゚∀从 「あ、え、あ、おう……そうかそうか。おー、よしよし」
(ノA`) 「……」
ぎこちない様子のハインと、額を押さえ何ともばつの悪そうな顔をするドクオ。
撫でられて嬉しいのか、気持ち良さそうに鳴くロマネスクと満足そうなブーン。
('A`) 「あのね、ハインさん」
从 ゚∀从 「……わぁってるよ、悪いアレじゃねぇってのはさ」
何の話をしているのだろうか。
頭にハテナを浮かべたロマネスクとブーンは顔を合わせますが、大したことではないかと笑いました。
('A`) 「ゴメン……」
从 ゚∀从 「謝るこたぁねぇよ、お前らは悪気があったワケじゃあねぇ」
( ^ω^) 「何の話かわからんけど、その通りだお!」
( *ФωФ) 「オーン」
話が終わる前に、早く遊びに行こうとブーンが催促をして、そのまま三人はハインと別れます。
村の入口の近くに、一人ポツンと残されたハインは、ため息を吐いて頭を掻きます。
从 -∀从 「悪気があったワケじゃあねぇ、悪いアレでもねぇのもわかってらぁ」
空を仰ぎ、鳴らした乾いた笑い声が一つ。
大きく大きく息を吸い込み、吐き出しながら考えるのは先の三人と村、そして小さな小さなロマネスクのこと。
从 ゚∀从 「だから、最近会わなかったんだな……ブーンは知らなさそうだったが」
どうすっかなぁなんて漏らしながら伸びをして、村の中の方へと歩き始めます。
从 ゚∀从 「……ゴメンな」
誰かに向けた謝罪を一つ、その場に残して――。
('A`) 「暗くなったし、そろそろ帰ろうか」
( ^ω^) 「今日もたっぷり遊んだおー」
( ФωФ) 「ウォン!」
日が沈み、空には太陽の代わりに月が上げられ、もうすっかりと暗くなった世界。
いつも通りの時間に本日も、家路をなぞります。
ブーンとロマネスクが走り回りながら、その後ろをドクオがテトテトと歩いて追いかけます。
いつもならドクオも参加しているのですが、どうしたのでしょうか。
('A`) (……見られちゃったなぁ…)
('A`) 「まさかあの時間に出る人がいるなんて……」
( ^ω^) 「ドクオー、置いてくおー?」
(;'A`) 「あ、え? 待ってー!」
不安そうな理由は、今朝のこと。
ロマネスクをハイン――いえ、村の者に見られた。
それだけがグルグルと回り、ドクオを不安にさせていました。
( ^ω^) 「おっおー! 一番だお!」
(;'A`) 「ハァ…ハァ、早いよ……」
( ;ФωФ) 「ォン……」
かけっこに自信のあるブーンは、ケロリとして息を切らす二人を笑います。
しかし、自分よりも遥かに小さいロマネスクとあまり変わらないドクオは、少し鍛えた方がいいかも知れませんね。
そんな時でした。
从 ゚∀从 「よっ」
三人の前に、ハインが現れました。
( ^ω^) 「おっ、また会ったおー」
('A`) 「……どうしました?」
( *ФωФ) 「オーン」
从 ゚ー从 「ん、あのな」
また会ったと、楽しそうなブーン。
どうしたのかと、不安そうなドクオ。
撫でてほしいと、頭を擦り寄せるロマネスク。
言いたいことがあると、申し訳なさそうなハイン。
从 ゚ー从 「……知ってんだろ、ドクオ」
('A`) 「まぁ、はい……」
从 ゚ー从 「だから、誰も外にいない時間帯に出て、帰ってきてた……お前は優しい子だよ」
('A`) 「……」
( ^ω^) 「? どうしたんだお?」
(´ФωФ) 「オーン……」
何の話かと、事情のわからない二人は今朝と同じくハテナを浮かべ、話している二人は浮かない表情。
それが何の話か、わかってもわからなくても――。
从 ‐从 「……ゴメンな」
('A`) 「…え?」
突然の、謝罪。
まさか――、そうドクオが思った時に、すぐ近くの民家から見慣れた人が出てきました。
(´・_ゝ・`) 「……ドクオ、ブーン」
( ^ω^) 「おー、村長ー」
(;'A`) 「え、村ちょ……ハインさん!?」
从 ‐从 「ゴメン、やっぱり、私も、この村の人間なんだよな……」
ギリギリと握る拳は、何かを堪えている様な。
動揺を隠しきれないドクオと、のんびりとしたブーンは、大の仲良しなのに真逆の様子です。
(´・_ゝ・`) 「村の掟は、掟なんだ」
更に増える村の大人たち。
流石のブーンもこれはおかしいと焦り始め、突然知らない人に囲まれたロマネスクはキョロキョロと辺りを見回しました。
ただ一人、ドクオは下を向きながらカタカタと震えています。
(´・_ゝ・`) 「大丈夫、傷つけたりはしないから」
从 ‐从 「……」
( A ) 「あ……」
( ;^ω^) 「ちょ……なんだお! みんな! どうしてロマを……」
( ;ФωФ) 「オ、オン!? ウォォォッ!」
村の者たちの手が伸び、ロマネスクを捕まえます。
決して力一杯ではないけれど、優しくはない、冷たいその手。
(´・_ゝ・`) 「……向こうの、遠くの山へ」
( ;^ω^) 「何してるんだお! はな、離せお! ロマを、ロマ!」
( ;ФωФ) 「オォォォォン! ウォォォオオンッ!!」
ドクオはハインに肩を捕まれ、ブーンは二人がかりで捕まえられ、ロマネスクは数人の手で運ばれ。
みんな暗い顔で、静かに。
その中でブーンだけは、離せ離せと、叫び続け、それに応えるようにロマネスクも鳴き続けます。
顔を涙でグシャグシャにして、三人は二人と一匹になりました。
29 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:57:06 ID:bL/ucGHEO
―――――――――――――――――――――
( ω ) 「……ドクオ…」
( A ) 「ん、何……」
( ^ω^) 「知ってて、どうして教えてくれなかったお…?」
('A`) 「……僕にも、わかんないよ……」
きっと臆病だったから。
暗い部屋で呟くようにそう返し、また沈黙が流れます。
何故、ロマネスクが連れていかれたのか。
ドクオは知っていて、ブーンは知らなかった村の掟が、彼らを引き裂きました。
この村では邪悪な生き物として、竜は忌み嫌われていたのです。
だからこそドクオは必死に隠そうとていました、一緒にいることを内緒にしていなければ、こうなることがわかっていたから。
( ^ω^) 「ドクオ、ブーンは…ブーンはロマの為に賢くなるお……」
('A`) 「ブーン……」
( ;ω^) 「そうして竜が無害だって証明すれば、また一緒になれるお!」
( ;ω;) 「だから、だから……!
気づけば声は震え、涙は流れ、随分と情けない状態、しかしその堅いその決意を表明しました。
ぐすぐすと鼻を鳴らしていたドクオも立ち上がり、叫ぶように強く言います。
(;A;) 「僕も、僕も強くなる! 勇気を持つんだ! そして、ロマを迎えに行って、守って……!」
そのまま二人はへたり込み、わんわんと大きな声で泣き合いました。
こうして二人は、自らの行く道を決めたのです。
31 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 00:59:01 ID:bL/ucGHEO
それからの二人は、あまりたくさん遊ばなくなりました。
ドクオはブーンへ勉強を教え、ブーンはドクオの訓練相手となって。
お互いに助け合いながら、その日々は続いて行きます。
ロマの為と思ってそうし始めてから、どのくらいが経ったでしょうか。
ブーンは魔物の研究者、ドクオは屈強な兵士と、目標としていたものへとなることができました。
それも、なんと村ではなく都市にある城に、二人とも仕えることに。
全ては短い時を共に過ごした、家族の為の行動でしたが、あの少年二人だったと考えると立派になったものです。
今では勇敢なドクオ、聡明なブーン、などと呼ばれているのですから。
そんなお互いに目標としていた姿となり、しばらく経ったある日のことでした。
('A`) 「やっぱり、安定してるし国に仕えるってのはいいね」
( ^ω^) 「だおー、研究費用が国持なのはデケェお」
臆病者だったドクオはその影さえ見せず、アレほど自由であったブーンはすっかりと落ち着いてしまっています。
( ^ω^) 「んじゃ、まただお」
('A`) 「ん、次は酒でも飲もうか」
( ^ω^) 「おっお、下戸のくせに調子乗んなおー」
小さなころよりも少し肥えた体を、たぷんたぷんと揺らしながらブーンは去っていきました。
たまぁに、ドクオは疑問に思います。
('A`) (なんで、強くなろうと思ったんだっけ……)
それはもうずっとずっと前のこと。
埃にまみれてしまったけど、大切な思い出なのに。
あまりにもガムシャラになりすぎた為に、その箱を記憶の何処へ仕舞ったのか、わからなくなっていました。
('A`) 「ま、いっか。ずっと引っかかってるけど、今は今だし」
そうしてクァと漏れる欠伸。
その緩んだ気は、城中に響き渡る金の音で無理矢理張られました。
(;'A`) 「ッんっだよ! あ゛ー、いきなり鳴ると耳がよぉ……」
まるで巨大な動物が、高笑いをしているようなそれは、街へと魔物が現れたこと告げているのです。
ブツブツと口が吐き出す文句と共に、駆け足で武器庫へと急ぎました。
そうして辿り着いた石造りの扉を開くと、そこにはすでに数名の仲間が。
( ;・∀・) 「おー! ドクちゃん! ヤッベーぜ今回は……」
(;'A`) 「モララー! な、何が現れたんだ……?」
先に中に入っていた青年と、互いに焦りながら話を始めます。
( ;・∀・) 「竜だってよ! いまだ大した研究が進んじゃあいねぇ、あの伝説の魔物だってよー」
(;'A`) 「り、竜!? なんだってんなもんが……」
( ;・∀・) 「知るかっ! とりあえずオレは行くから、お互いに生きてたら酒な!」
コツンと一度、拳を合わせると鎧を着たモララーは走って行きました。
こうしちゃいられないとドクオも後を追う為に、いそいそと着替え始めます。
そうして聞こえる、覚えのある声。
( ;^ω^) 「ドクオ! 聞いたかお!? 竜だってお!」
(;'A`) 「聞いたよ! 今から用意して、行くところだ」
( ;^ω^) 「そ、そうかお……気をつけてくれお」
('A`) 「任せろ、こんなとこで死ぬかよ」
さて、着替えも終わって武装したドクオは城の外へと出たワケですが、その光景を見て唖然としました。
目の前には巨大な、とてつもなく大きな竜が一匹と、比べて虫けらの様に小さな人間たち。
(;'A`) 「え、卑怯じゃね?」
( ;・∀・) 「クッソー……歯が立たん……」
モララーもその中に混じって剣を掲げてはいるものの、全く相手にならなかった為か額に冷や汗を浮かべています。
その時。
(;'A`) 「う……!」
グルンと首を回転させて、ギョロリとその目で竜がドクオの姿を捉えました。
そして―――
『ヴォォォォォォォォッ!』
その目を細く細く歪ませて、体に合った大きな声で唸ります。
ビリビリと大気と共に、人間たちを震わせました。
それが攻撃の合図かと思った数名が竜へと攻撃を仕掛けると、少しだけ苦しそうな表情を浮かべてまた鳴きます。
何度も何度も、オーオーと。
(;'A`) 「クッソ、俺がやる!」
一度大きく声を上げて回りの人へ知らせると道が出来、その竜への直線をただただ走りました。
心なしか、竜が嬉しそうに笑った様に見えます。
『オォォォォォォッ!』
('A`) 「……え?」
頭の中に引っかかっていた、昔の記憶。
それが手元に落ちてきて開いた時には、何もかもが遅かった。
そう―――、何もかもが、遅かったのです。
帰り血でその身を紅くさせて呆然と立つドクオと、ノドから剣を生やして横たわる竜。
いえ、かつてロマネスクと呼ばれた、大切な友達。
気づくのが遅すぎた後悔と、忘れてしまっていた申し訳なさで、ドクオの頭の中は真っ白になります。
ただただ、その大きな体にしがみついて、子供の様にわんわんと大きな声で、泣くのでした。
そんなドクオ見て一言、気づいてくれて嬉しかったよと、ロマネスクは鳴きます。
( ФωФ) 「……オー…ォ……」
小さく小さく、体と合わない声で、鳴きます。
あれからすぐにドクオとブーンは丘へとロマネスクを連れていき、幾日も掛けて穴を掘り、お墓を立てました。
ちなみにあの後に来たブーンはドクオから話を聞いて、彼も子供の様に泣きじゃくりました。
何人もの人が手伝ってくれて、一心不乱に掘って掘って。
そうして出来た、ロマネスクの大きなお墓です。
穴へとロマネスクを埋めたあと、またも二人はわんわんと泣きました。
幾日も幾日も、二人でわんわんと。
あの日から数年が経った、夏のある日のこと。
ロマネスクのお墓詣りの為に、二人は丘へと訪れましたが、その様子を見て驚きます。
そしてじっくりと眺めた後に膝から崩れ、また大きな声でわんわんと。
( ;ω;) 「ロマ、ロマ……ッ! ゴメンおぉ、ありがとうおぉ……」
(;A;) 「こんな僕らなのに……ヒドイことをしたのにロマは、ロマはそう呼んでくれるんだね……」
二人が見たのは、丘一杯に咲く赤・白・黄色の花の姿。
三種類の色のその花の名前はジニア、百日草と呼ばれる花です。
花言葉は―――――
('A`)( ^ω^) "友への思い"のようです (ФωФ )
39 : ◆6cn5tJyQdU:2011/02/19(土) 01:11:55 ID:bWUPV59Y0
あ、あれ……こんなに短かったっけ……?
とか思ってたら行数分けミスってた(^p^)
普段行数規制で修正しつつ……なんで、規制がないから判別できなかったよロマネスク……。
そしてモチーフ曲はこちらです
OVER ARM THROWと言うバンドよりzinniaです。
リンク先は動画に歌詞・和訳共に付いています、良心的!
とりあえず主催者だし先陣を切っとこうと投下しましたが、何か質問などございましたらどうぞー