March 01, 2011
( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第九話
しんと静まりかえった城内を彼女は我が物顔で闊歩していた。
元々他人となれ合うのは苦手だった。
母親が死んでからはそれがいっそう顕著になり、今では“嫌い”になっていた。
彼女は夜中眠らなかった。
かといって昼間に寝ている訳ではなく、数日に数時間ほど、目を瞑って休息を取るだけである。
眠ると必ず悪夢を見る。
全てが奪われてゆく日々を思い出す悪夢を見てしまう。
眠れるはずがなかった。
「困ったわねえ」
('、`*川「そうなの。このままじゃ計画もおじゃん」
「おまえの力で何とか出来るんじゃねえの?」
('、`*川「私は魔法使いだけど、神様じゃないの。出来ることと出来ないことがある」
「お姫様がもっと積極的だったらいいのかしら」
「そういう問題じゃねえ気がするが」
真夜中の図書館では、窓から差し込む月明かりだけが拙い光源だ。
青白く浮かび上がった人影は、ひそひそと談笑を続ける。
相談というほど深刻な雰囲気は無く、それはあくまで談笑であった。
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( ゚∀゚)「何をしているんだい?」
('、`*川「―――あら」
暗闇から現れた魔王に対し、魔女は表情を変えずにじっと見つめ返した。
彼女の瞳に人間らしい暖かみは感じず、空に張り付いた月のように、静かに青く揺れていた。
##### ガラクタ魔王のようです #####
第九話「パルプノンフィクションと闇夜の来訪者」
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( ゚∀゚)「勉強かい?」
('、`*川「いつから監視していた?」
二人の視線は鋭角に交差した。
ジョルジュはふっと表情を柔らかくし、ペニサスを穏やかに見返した。
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( ゚∀゚)「城内を散歩していただけだ。そしたら図書館に入っていく君を見つけてね。
興味本位で後をつけていただけだよ。監視なんてとんでもない」
('、`*川「そう。私に興味があるんだ?」
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( ゚∀゚)「ああ。君は普通の魔女とは違う」
―――穢れた血め!
('、`*川「……ええ。違うよぉ? 色々と」
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( ;゚∀゚)「ご、ごめん! 気を悪くしたかな。そんなつもりじゃなくて……」
('ー`*川「ひひひ。魔王様ぁ、私もあんたのことに興味がおありなのでございますですよ?」
甘ったるい声で喋るのはペニサスの癖だった。
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( ゚∀゚)「僕に?」
('、`*川「その防護に防護を重ねた精神の裏側に隠してある、おぞましいほどに強力なパワー、とか」
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( ゚∀゚)「僕は非力だ」
('ー`*川「とんでもない!」
ペニサスは一冊の本を手に取っていた。
彼女がいたのは、Gの番号札が付けられている棚だ。
('、`*川「この本によると、歴代最強の魔王は杉浦ロマネスクだと書かれている。
数百万年に一人、生まれるか生まれないかの天才。豪傑。暴君。魔王の中の魔王。ロマネスク」
('ー`*川「ひひひひ。そしてこの本が書かれたあと、ロマネスクはまだ少年だった魔族に殺された」
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( ゚∀゚)「よく知っているね」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/02/28(月) 00:11:23.40 ID:qkwDQx6b0
ジョルジュは無表情に近かったが、静かに殺気を放っていた。
彼の様子を見て、ペニサスは嬉しそうに口元をゆるめる。
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( ゚∀゚)「誰から聞いた。ミセリさんか?」
('ー`*川「いいえ?」
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( ゚∀゚)「……いや、違う。まさか、この城に来る前から、知っていた?」
('ー`*川
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( ゚∀゚)「おまえ、一体……」
('ー`*川「女の子は謎が多い方がミステリアスで可愛いんだぜ」
本棚に本を戻すと、ジョルジュの横を通ってペニサスは出口へ向かった。
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( ゚∀゚)「待て。最後に一つだけ訊きたい」
('、`*川「あン?」
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( ゚∀゚)「僕がここに来る前に、誰と喋っていたんだ」
ペニサスがジョルジュを振り返ったとき、ちょうど月が雲に隠れてしまった。
暗闇に満ちた図書館で、彼女の顔は見えない。
( ー *川「ひとりごと」
鼻歌を歌いながら、軽やかな足取りでペニサスは図書館を出て行った。
しばらくの間、月は雲にさらわれたままであった。
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ミセ;゚-゚)リ「んもー! ぜんっぜん終わりの兆しが見えないんだけど!」
本の山に埋もれそうになっているミセリが叫んだ。
図書館の蔵書の整理はあまりにも量が多く、毎日作業をしても一向にはかどっている気がしなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「気長にやるしかないですわ」
ミセ*゚ー゚)リ「いっそさあ、捨てちゃうって発想は無い?」
( ゚∋゚)「駄目です!」
ζ(゚、゚*ζ「駄目よ!」
ミセ;゚ー゚)リ「わぁごめんなさい!」
( ゚∋゚)「知識というのは目には見えませんが、価値のある財産なのです。
それを後世に残すというのは今を生きる我々の義務であり、また……」
ミセ*゚-゚)リ「はい! はい! ええ! うん! その通り! サーイエッサー!」
ζ(゚ー゚*ζ「一段落したら美味しいプディングを作って、三時のティータイムにしましょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「うわー姫ナイスアイディア! 流石中身も外見も太っ腹だね!」
ζ(^ー^#ζ「外見は太いつもりはありませんわ」
ミセ*゚ー゚)リ「こんなさわり心地のいいお腹しといてなに言ってんのよ!」
ぽよん
ζ(゚、゚;ζ「キャー! ひ、人のお腹を許可無く触るなんて、ぶ、無礼ですよ!」
ミセ*゚-゚)リ「ケチー! クックルだったらいつでも触らせてくれるよ! ほら」
もふもふもふもふ
( ゚∋゚)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あら、それなら私も触らせていただいても?」
( ゚∋゚)「え、ええ。構いませんが」
ζ(゚ー゚;ζ「で、で、では遠慮なく……」
もふもふ
ζ(’ー’*ζ「キャー! もふもふですわ! もふもふですわー!」
ミセ*´ー`)リ「姫もわかりますかな。このもふもふの良さが」
ζ(’ー’*ζ「初めて男の人のお腹触りましたわー! 思った以上にもふもふですわー!」
( ゚∋゚)「……」
( ゚∋゚)「ティータイムはいいとして、まだ三時まで時間があります。作業は続けましょう」
ミセ*゚ー゚)リ「あいよー!」
ζ(゚ー゚*ζ「了解ですわ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ!」
( ゚∋゚)「どうされましたか?」
ミセ*゚ー゚)リ「れ、恋愛指南書だってさ!」
( ゚∋゚)「ああ、それは一応、教則本に入るのでRの棚に……」
ζ(゚ー゚*ζ「恋愛指南書!?」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなのよー! ちょっと読んでみない?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょ、ちょっとだけなら……」
ミセ*゚ー゚)リ キャッキャウフフ ζ(゚ー゚*ζ
( ゚∋゚)
ミセリに同年代の友達が出来たのは嬉しいが、同時に妙な疎外感に襲われてもいた。
クックルは一人で作業をすることに決めた。
ミセ*゚ー゚)リ「姫様はさー、今まで恋愛とかしたことある?」
ζ(゚ー゚*ζ「えー! ミセリちゃんは?」
ミセ*゚ー゚)リ「ないんだなーこれが。
まあその、一夜限りの恋人とか、月一の恋人とか、不定期の恋人はいっぱいいたけどね」
ζ(゚、゚*ζ「そうなの!? じゃあ私より経験豊富ね」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/02/28(月) 00:44:36.35 ID:qkwDQx6b0
ミセ*´ー`)リ「師匠と呼んでくれてもいいのよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「師匠! 相談があるんですけど、よろしいですか?」
ミセ*´ー`)リ「なにかね」
ζ( ー *ζ「師匠は魔王様のこと、好きなの?」
突然の質問に、ぎょっとしたままミセリは動かなくなった。
ミセ;゚Д゚)リ
ζ(゚ー゚*ζ「ふふふ」
ミセ;゚ー゚)リ「な、なんで!?」
ζ(゚ー゚*ζ「ん、なんでって?」
ミセ;゚ー゚)リ「私、別に、そんな風に見てる訳じゃないし……。
どうしてそんな風に思ったのかなって、思って、って感じで」
ζ(^ー^;ζ(今のあなたの焦りようが一番の理由になると思うけど)
( ゚∋゚) ← 作業をするふりをする執事
ζ(゚ー゚*ζ「私は、好きです。魔王様のことが」
ミセ*゚-゚)リ「うん……知ってる」
ζ(゚ー゚*ζ「最初は一目惚れでしたけど」
ミセ*゚ー゚)リ「一目惚れってどんな感じ?」
ζ(゚、゚*ζ「んと……イメージが沸きましたわ」
ミセ*゚ー゚)リ「イメージ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。ずっと二人で、同じ家に住んで、同じ食卓を過ごして。
二人で同じ景色を見て、二人で同じ夜を過ごして……そんなイメージです」
ミセ*゚-゚)リ「ふぅん」
ζ(^ー^*ζ「わかんない?」
ミセ*゚ー゚)リ「わかんない!」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたなら、わかると思ったんだけどなあ」
デレは悪戯っぽく笑った。
彼女の仕草に王家の気品はなく、むしろ年頃の女の子という感じがして、ミセリはそれが嬉しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「本当に、好きじゃないの?」
ミセ;゚-゚)リ「えっと……」
ζ(゚ー゚*ζ「まだ、わからない?」
ミセ; - )リ「うーん、私は、特にそういうイメージとか、わかんなかったし……。
たぶん、好きとは、違うんじゃないかなぁ……」
ζ(^ー^*ζ「可愛いー!」
ミセ;゚Д゚)リ「のわー!」
デレは突然ミセリを抱きしめた。
自身の豊満な胸の中にミセリの顔が押し込まれる。
ミセ;゚Д゚)リ「ゼェ、ハァ、ハァ、なにすんのよー!」
ζ(^ー^*ζ「可愛すぎてつい……」
ミセ;゚Д゚)リ「ついちゃうわー!」
窒息しそうになったミセリが、肩で息をしながらデレを睨み付ける。
しかしまるで悪びれていないデレが屈託無く笑うと、つられてミセリも笑ってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「でも」
ミセ;゚ー゚)リ「ん?」
ζ(゚ー゚*ζ「もしも、好きって気持ちを見つけたら、すぐに教えてね」
ミセ*゚-゚)リ「う、うん……」
ζ(゚ー゚*ζ「抜け駆けは、したくもされたくもないんですの」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/02/28(月) 01:04:32.48 ID:qkwDQx6b0
譲る気もありませんから、とでも言いそうな不敵な笑みを浮かべていた。
ミセリは少し困ったように、しかし笑いながら彼女を見つめ返した。
( ゚∋゚)「三時になりました。休憩にいたしましょう」
ζ(゚ー゚*ζ「はーい。お台所かりますわね」
( ゚∋゚)「ええ。どうぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「プディングの作り方教えて!」
ζ(^ー^*ζ「いいよ。一緒にいこ」
うち解けたあとの二人は、まるで姉妹のように仲がいい。
クックルはそれが喜ばしくもあり、また寂しくもあった。
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かつてこの世界に冥界の魔族たちが攻め込んできた。
人間たちの住むこの世界を上界と呼び、冥界と上界を繋ぐ出入り口を鬼門と呼ぶ。
この鬼門は今、ジョルジュによって封印されている。
彼の強大な魔力によって、鬼門から魔族が上界にやってくることはなかった。
しかし彼は、この結界をかいくぐり、上界を目指している魔族がいることを知らなかった。
あらゆる結界破りの策を弄し、ジョルジュの結界を破ったのは、戦争終結から数百年が過ぎた、ある夜のことだった。
「やった! やった! 上界に出られたッス!」
「落ち着けクソ馬鹿野郎」
「自分女ッス!」
「落ち着けクソ馬鹿女」
「魔力を抑えろよ。ジョルジュに感付かれたら奇襲できなくなる」
「僕の能力で気配を隠せるんです!」
「よぉし上等だ。そんじゃあ、始めるぞ」
爪'ー`)y‐「これは復讐でもあり、聖戦でもある」
長髪の男が煙草を吹かすと、近くの木々がざわつき、草花が一斉に倒れた。
強大な魔力をその身に宿し、ジョルジュのいる城の方角を見つめて、うすら笑いを浮かべている。
ノハ*゚⊿゚)「自分ら四天王の、戦争デビューでもあるッス!」
<_プー゚)フ「いや、俺の上界デビューだな」
( ;><)「えっと、えっと、僕の、僕の、ピクニックデビュー?」
爪'ー`)y‐「黙ってろクソ馬鹿共」
彼らが地上に降り立ったのを見ていたのは、欠けた月だけだった。
続き( ゚∀゚)ガラクタ魔王のようです 第十話