February 24, 2011
夜のガスパールのようです ―スカルボの哄笑のようです―
Scarbo
夜に渡っていく小悪魔の笑い
スカルボの哄笑のようです
最近の僕は、いつも真っ直ぐ帰ることにしている。
愛しい「彼女」との逢瀬が待っているからだ。
だが、僕には妻もいる。
妻にもいい顔をし、彼女も愛さなくてないけない。
これがモテる男のつらいところだ。
(*^ω^)「しぃ~ちゃん、コンビニの猫缶だお~」
(*゚ー゚)「にゃ~ん」
彼女とは、一年前ここにピクニックをしたときに知り合った。
土手下の野原に住み着いているメス猫で、たぶん今は二歳ぐらい。
子どもが生まれやつれている彼女に、このところ毎日猫缶を与えている。
(*^ω^)「…」
大きな目、金色の目。
そしてはっきりした美しい三毛の柄。
非の打ち所のない美猫である。
/ ,' 3「何をされておるんですか?」
Σ(^ω^;)「ふえぇっ!」
いきなり声をかけられて思わず変な声が出た。
…声の主は、いつもこの土手沿いを散歩しているおじいさんだった。
(;^ω^)「あ…ええ、ちょっと猫に餌を」
何らやましいことはないのだが、僕はちょっと気後れしていた。
自分の中でこの猫との戯れを「逢引」などと称しているせいかもしれない。
/ ,' 3「ここにいるのをいつもお見かけするのでな。なるほど、猫か」
( ^ω^)「猫はお好きですかお?」
/ ,' 3「ああ、ちょっと前まで飼ってたよ…妻の後を追うように死んでしまったが」
(;^ω^)「あうあう…」
/ ,' 3「おお…これは失礼、気にしないでください。
…邪魔をして申し訳なかったね」
老人はそう言うと、またのんびりと川上にある住宅地の方へと歩き去っていった。
*―――――――――*
(;^ω^)「は~、やれやれ」
その後は家に直行した。いやはや妙なのに遭遇してしまった。
何か、今日はそのせいで余計に疲れた気がしていた。
こんな日は持ち帰った仕事を片付けたら寝てしまうに限る。
( ^ω^)「ただいまだお~」
ξ#゚⊿゚)ξ「おかえりなさい、…ってまた土手下に行ったでしょ?
も~!ススキだらけじゃない!」
(;^ω^)「す、スマンコ」
ξ#゚⊿゚)ξ「いいから、服をよこしなさい!」
(*^ω^)「アウアウ!…ああっそこはらめぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「すりつぶされたいの?」
(;^ω^)「Oh…」
そうして帰ってくるとすぐ、服をひんむかれて風呂場に押し込められた。
まあ、お湯を沸かしてくれていたのだから、感謝しなくてはならないのだろうが。
やがて一心地ついた僕は湯に浸かりながら、あの老人のことを考えた。
( ^ω^)(あの人ももしかしてしいちゃんのファンかお…?
参ったおね…ライバルの登場は予想GUYです)
その時だった。
風呂場の窓ガラスに どん、と何か重量のあるものがぶつかった。
続いてその何かがその下の砂利の上に落ちる音。
( ^ω^)「…?」
鳥か何かか?この辺りはカラスが多い。
この前もスズメを追いかけてきたカラスが、
寝室のベランダに落ちてきたばかりだった。
(;^ω^)「え…」
だが、その観測が外れたことがすぐに分かった。
すりガラスに、粘着質の何かが広い範囲にへばりついている。
少なくとも、カラスの羽だとかそんなものではない。
色は夕日のせいで定かにはわからないが、
オレンジ色に染まった窓の上では、その液体はかなり不穏な色に見える。
(;^ω^)「ツン!おーい!ツン!」
得体のしれない物が窓に。
ホラー映画だと窓を開けた瞬間、
窓の外に引きずりだされてバラバラにされる。
妻を呼ぶと、こういう場合多少は安全である。
ξ゚⊿゚)ξ「なに?タオルも下着も出してあるでしょ」
(;^ω^)「いや、窓になんかぶつかったんだお」
ξ;゚⊿゚)ξ「…なによこれ」
窓を見てさっと妻の顔色が変わる。
小鳥がぶつかった痕とは明らかに違う。
粘液のようなものは、僕の手の平程の範囲で窓に付着していた。
(;^ω^)「開けてみるかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「待って、二人で外まで見に行こうよ」
(;^ω^)「わかったお」
ざっと体を拭いて服を着ると、僕は妻と二人で外へ出た。
問題の窓は、隣の家との間にある。
( ^ω^)「まず、僕が見に行くお」
ξ;゚⊿゚)ξ「うん」
妻を玄関先に残し、僕は垣根と家の狭い隙間を進んだ。
蜘蛛の巣が幾度も顔にかかる。
巨大なクモが行く手に待っている、という妄想が浮かんできて
身震いがした。僕はクモが苦手なのだ。
そんな時、ふいにニャーと鳴き声がした。
( ^ω^)(猫かお?)
クモの巣をくぐり抜けると、問題の窓の下に猫が転がっていた。
その毛色と鳴き声には見覚えがあった。
(;^ω^)「しぃちゃん…」
何がなにだか分からないうちに、僕は猫の前に立っていた。
(#;;--)
猫は体半分が血まみれで、窓の下に横たわっていた。
両目から血が流れ、腹に大きな傷がある。
そこから、呼吸に合わせてドロリと黒い血が溢れ出ていた。
周囲の砂利には飛び散った血が点々とこびり付いている。
もう助からないだろう。根拠はないが僕はそう思った。
(;^ω^)「…」
猫は僕の気配を感じ取ったのか、ジリジリと僕から離れていく。
きっと自分を襲った人間と区別がついていないのだ。
そして、しばらくするとそのままの姿勢で微動だにしなくなった。
僕が動けたのはさらにそのしばらく後だった。
(;^ω^)「ツン、タオルを取ってきてくれお」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?なにが…」
(;^ω^)「猫だお、しぃちゃんが…誰かに…いじめられたみたいで」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ!うそっ!しぃちゃんが?」
(;^ω^)「わるいけど動物病院に連れて行ってやってくれお」
ξ;゚⊿゚)ξ「いいけどブーンはどうするのよ?」
(;^ω^)「ぼくは残って警察に電話するお…頼んだお」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった、じゃあタオル取ってくるわ」
二人で行ったピクニックの途中、猫の鳴き声を辿っていくと
そこにいたのがしぃだった。
あの人懐っこくて愛らしかったしぃが…こんなことになるなんて。
僕が通報を終えた直後、妻は窓のところから
綺麗なままのタオルを持って帰ってきた。
僕は瞑目した。
*―――――――――*
そのあと来た警察官の姿をみて心底ほっとした。
だがいくつかの質問に答えると、
猫の死骸を回収して警官はさっさと帰っていった。
帰り際に彼はこの辺りのパトロール回数を増やしますと言った。
それで終わり。
( 'ω`)「参ったおね」
ξ;-⊿-)ξ「まったくね…」
なんやかんやでもう深夜だった。
適当に食事を済ませると、さっさと寝室へと入った。
何も考えずに早く寝てしまいたかったのである。
( ^ω^)「ツン、そういえば戸締まりは?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫、全部閉めて…うん、閉めた」
妻の目が不安気に震えている。
無理もない、ここに越してきてこんな事は初めてだった。
( ^ω^)「それじゃ……おやすみだお」
ξ-⊿-)ξ「うーん」
妻は、よほど疲れていたのか
布団に入るとすぐに寝息を立て始める。
僕も、早いとこ寝てしまいたいところだ。
でも、疲れすぎて逆に眠れそうにない。
神経がかなり過敏になってしまっている。
( ^ω^)「……」
まんじりともせず布団の中にいるというのは、
結構つらいものがある。
僕はいままで快眠派だったから、余計にそれを感じた。
……どのくらいそうしていただろうか。
二回目のトイレの後、家の横を自転車が通った。
夜の静寂に、緩んだチェーンがカチャカチャいう音がそれを知らせる。
ん…?
( ^ω^)(止まった?)
自転車のスタンドを立てる音がして、
それから、
だん、だん、だん。
(;゚ω゚)
僕の頭の上にある窓に衝撃が走った。
夕方感じた恐怖が、一瞬のうちに僕の中に蘇る。
眠っている妻を残し、僕はベランダに走り出て道路をみた。
自転車に乗った小さな人影が、すごい勢いで走り去っていく。
闇の中に、長い髪だけが浮かんで見えた。
川 )
やられた。
僕は電気をつけ、ベッドの側にある問題の窓のカーテンを引いた。
(;^ω^)「くそっ…」
そこには夕方、風呂の窓に見たのと同じ跡が。
ξ-⊿-)ξ「んもーブーンどうしたのよ~。
トイレくらい電気つけないで行けないの?」
妻が起きたのもかまわず、僕は階段を駆け下りる。
玄関を、靴も履かずに飛び出し、例の窓の下へと。
(;゚ω゚)
僕達の寝室の電気が、薄くそこを照らしていた。
そこにあったのは、ちいさな三つの体と、三つの……。
(;^ω^)「うっ…」
僕はなるべくその塊を見ないようにして部屋へと戻った。
3……悪魔の好む数。
そしてその数は、僕が好きだった猫に生まれた子猫の数でもあった。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン?大丈夫なの?」
(;^ω^)「ツン、こっちを見ちゃダメだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
いつの間にか、夜着にカーディガンを羽織った妻がやって来ていた。
僕は妻を制止すると、なんとかなだめすかして部屋へと戻した。
結局、その日は僕が寝ずの番をすることになった。
……もちろん通報した上で。
*―――――――――*
次の日、警察が再びやってきた。
だが、今回は制服警官ではなく、私服の男が二人。
美府署の刑事を名乗った二人は、妻が淹れた煎茶を美味そうに啜りながらこう言った。
(,,゚Д゚)「いやあ、ひどい目に会われましたな」
(‘_L’)「この辺でそういう話はあまり聞かないんですけどね」
まったく、他人ごとみたいな言い方だった。
僕は内心の不信感を顔に出さないようにするのに苦労した。
(;^ω^)「えっと、それで対応というのは……」
(‘_L’)「……今回、かなりの悪質性が認められますので、
それなりの対応をしなければいけないでしょう」
(,,゚Д゚)「この辺りで被害に合われたのが、内藤さんのお宅だけですからね。
あなた方を狙って……ぶつけたんでしょうな」
(;^ω^)「まったく困りますおね……それでどういう……。
どなたか人を回してくれるとか……」
(‘_L’)「すみません、そこまではお約束できませんが……。
恐らくパトロールをさらに増やしたりですとか」
(;^ω^)「はあ」
(,,゚Д゚)「まあ、こちらとしても万全の対応をします。
内藤さん、ご心配には及びませんよ」
そう言い残すと、彼らはすっと帰ってしまった。
あっけに取られた僕は、しばらくリビングのソファーの上でぼおっとしていた。
ξ゚⊿゚)ξ「それで、どうしてくれるんだって?」
(;^ω^)「パトロール増やすって」
ξ゚⊿゚)ξ「え?前といっしょじゃない?」
(;^ω^)「そうなんだおね……」
ξ゚⊿゚)ξ「あなた、なにか言ったの?
もっと何とかしてくれとか……」
(;^ω^)「あー…」
僕は、たしかにもう少し強気にいっても良かったかもしれない。
被害が出ているのに、彼らがしてくれたのは口約束ぐらいなものだった。
ξ#゚⊿゚)ξ「え、ちょっともしかして何も言えなかったの?」
妻の声が怒気を帯びる。
( ^ω^)「まあ、僕だって言いたいことくらいあったけどさ。
あの人達の機嫌損ねたらそれこそなにも……」
ξ#゚⊿゚)ξ「機嫌とか、そういう問題じゃないでしょ!」
妻が、手に持っていた手ぬぐいを思い切り床に叩きつける。
水を含ませて絞ってもいない手ぬぐいは、
床の上にピンク色のナメクジのようにへちゃあと広がっていた。
ξ#゚⊿゚)ξ「あなたはいつもそう!
何も主張できない!すぐヘコヘコする!」
(;^ω^)「おい…落ち着けお」
僕は急いで立ち上がって興奮した妻の方に手を伸ばすが、
そのてはすげなく払いのけられてしまう。
ξ#゚⊿゚)ξ「もういい!あたしちょっと帰ってるから!」
帰る。それはつまり実家に帰るということで……。
(#^ω^)「ちょっと待てお!こんな時に何言って……」
ξ゚⊿゚)ξ「こんな時だからこそよ」
妻は、ようやく少し落ち着いたようだったが、
どうも様子が変だった。
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず、あたしだけ避難する」
(;^ω^)「え、ちょ…あ、でもそうか」
そうすればとりあえず、妻の安全は確保できる。
いやしかしだからといってそんな事したら。
(;^ω^)「……もしかして僕一人でこの家に?」
ξ゚⊿゚)ξ「そういう事になるわね」
じっとりと脇に汗をかく僕を尻目に、
妻は、大真面目にそう言った。
*―――――――――*
( ^ω^)「よいしょっと」
僕は、研ぎ終わった米をジャーに入れるとぽんとスイッチをいれた。
その瞬間、閉めたばかりの蓋がパカンと開く。
なんかのギャグか。
( ^ω^)「はは…」
そう思ってニヤニヤしていると虚しさに襲われた。
家で一人、いい年こいた大人が何やってんだか。
( ^ω^)……
妻が実家に帰って二日目。
僕は、日曜日の昼を穏やかに過ごしていた。
正直言ってかなり寂しい。
……嫌がらせの犯人が来るかもしれないという緊張感はあった。
だが、待たされると緊張感もだんだん薄れていく。
人間というのは、そういうふうに出来ている。
( ^ω^)「うめえ」
炊き上がったご飯で、チャーハンを作る。
有り合わせの材料でスープまでつくる。
さらに、暇に任せて餡まで作り、餡掛けチャーハンに。
( ^ω^)「ふう」
食べ終わったら、皿を下げて洗って洗いカゴに入れる。
それから、タバコを買いにコンビニに出かけた。
最初の緊張感など、もうどこかに消えている。
そんな時に、僕はとうとう奴に出くわしてしまった。
川д川「……」
僕の家を、道路から自転車に乗って眺めている女。
自転車のチェーンを見ると、緩んで大きくたわんでいた。
(;^ω^)
まさか、真昼間に出くわすとは。
コンビニの袋をぶら下げて、僕はその女の後方4メートルのあたりに立ち尽くしていた。
抑えこみに行くのは危険だ。刃物を持っている可能性もある。
だから、僕は……。
( ^ω^)「あのう」
川;д川「…え?」
思い切って声を掛けることにした。
111 : ◆hfKn5LG2r6:2011/02/21(月) 21:42:20 ID:mG7KrPCE0
*―――――――――*
川;д川「ほんとうに申し訳ありませんでした!」
( ^ω^)「……うん」
女は、驚くほど素直に僕に従った。
というか、声を掛けた瞬間に洗いざらい勝手にしゃべりだした。
( ^ω^)「……でなんだけど、君は頼まれて僕の家に悪戯を?」
川;д川「はい!すみませんでした!」
彼女はもう何回目か分からないほど土下座をしている。
きっと僕の家のフローリングをおでこで削りとる気なのだ。
それもまた、彼女なりの嫌がらせなのだろう。
( ^ω^)「……なに?大学のバツゲームか何かなのかお?」
川;д川「それは……」
ただ一つ、彼女が素直ではなかったのは、
誰に頼まれてこんな事をしたのか言わないことだった。
そのことだけは、固く口を閉ざしている。
(#^ω^)「ふざっけんじゃねえお!!!」
僕はテーブルに拳を叩きつけ、その上にあったものを床にたたき落とした。
怒りの先にある呆れを、さらに通り越して怒りにもどってきてしまっていた。
(#^ω^)「テメーらの馬鹿みたいな遊びのために、
しぃちゃんをあんなにして!
そのうえ俺までコケにしてんのかお!」
川;д川「うう…」
(#^ω^)「……でももうどうでもいいお。
いまから警察呼ぶから」
川;д川「えっ!」
(#^ω^)「え、じゃねえお!
話し聞いたらそのまま帰すとでも思ったのかお!」
女が一向に態度を変えないので、
僕はもうとっととこいつを警察に突き出すことにした。
そのときだった。
川;д川「わかりました!言います!言いますからそれだけは勘弁して下さい!」
電話に触れかけた手を、寸前で止める。
( ^ω^)「……」
僕は黙って元の場所に戻った。
奇しくもそこは、僕と刑事が話した応接セットだった。
( ^ω^)「まあ、わかったお。
……その前にお前の住所と名前、電話番号を寄越せお」
川;д川「え、どうしてそんな」
( ^ω^)「次、俺たちに近づいたときに直ちに警察に突き出せるようにだお」
川;д川「う…はい」
俺が渡したペンとコピー用紙に、彼女は恐る恐る触れ、
震える手で自分の名前を書きだした。
山村貞子
ん?
(;^ω^)「ちょっと待てお」
川д川「はい?」
(;^ω^)「……そこ動くんじゃねえお」
俺は二階に駆け上がると、手紙を入れておく引き出しを引っ掻き回し、
今年の年賀状を引っ張り出した。
ツンが五十音順にわざわざ整理しておいてくれたから、探すのには苦労しなかった。
(;^ω^)
山村貞子、やはりどこかで見たことがあると思った。
市内にある、自動車販売店。
貞子は、ツンが車を買ったその店の従業員だった。
僕はその年賀状を持って、貞子のもとに駆け戻った。
(;^ω^)「あんた!何考えてるんだお!」
川;д川「あ…」
僕が机に年賀状を放り出すと、彼女はがっくりと項垂れる。
川;д川「はあ…」
(;^ω^)「信じられんお……。
こんな事する馬鹿が勤め人で、
さらにその馬鹿は犯行現所に年賀状まで送ってたなんて」
川д川「すみません……」
項垂れたまま、とうとう彼女は泣き出してしまった。
面倒ではあったが、僕はティッシュを一箱持ってきてやる。
川;д;川「ごめんなさい……ごめんなさいい……」
( ^ω^)「もういいよ…」
もう、僕もどうしていいか分からなくなってきていた。
とりあえず、首謀者の名前だけ聞き出して帰ってもらおう。
そうおもって、単刀直入に聞いた。
( ^ω^)「で、結局誰なんだお。
こんな馬鹿なこと頼んだの」
川;д;川「ひっぐ…その…お…」
( ^ω^)「お?」
川;д;川「奥様に、頼まれて」
( ^ω^)「…え?」
その答えを聞いた瞬間、僕は全てに合点がいった。
事件のとき、案外落ち着いて動いた妻。
事件当夜にも関わらずさっさと寝た妻。
なんだかよく分からない理由で実家に帰った妻。
……僕に隠れて、最近どこかへ出かけているらしい、妻。
目の前で貞子がなにか言っていたが、ほとんど何も聞こえていなかった。
別れさせる、車を買ってくれる。他の男と奥様が自由に遊べる。
そんな断片的なフレーズだけが、僕の耳に入ってきた。
( ω )「ちょっと電話するお」
僕はそう言うと席を立った。
貞子を、警察に引きとってもらうためではない。
妻の実家に電話するために。
*―――――――――*
川д川「ふふふ…」
こうして、哀れな夫婦がまた破局を迎えた。
私は夕暮れの住宅地を、自転車を引いて去っていった。
実にいい気分だ。
川д川「ただいまぁ」
帰ってきた私は、彼ら夫婦の写真をスクラップしてあるコルクボードを外した。
彼らのことは入念に調べ上げてあった。
あの美人の妻が、隠れて派手に遊んでいる情報を掴んだときは小躍りして喜んだものだ。
川д川「……」
床に下ろしたコルクボードを眺めていると、
幸福感が下腹部から這い登ってくるのを感じた。
新車を買っていった幸せそうな夫婦。
だが、彼らも今は修羅場の渦中であろう。
川д川「はぁぁ…サイッコウよぉ」
多少の小細工は必要になったが、満足したから吉としよう。
服を脱がないまま、ベッドに足を投げ出して、
店の購入記録を広げる。
さて、次はどこのどいつを狙おうか。
そんな事を考えながら、今日も私の夜は更けていく………。
Scarbo
夜のガスパールより「スカルボ」(原題「Scarbo」)
3曲の中でも複雑なメロディが特徴の曲。
原詩の内容は
夜、地面から這い出してきたスカルボ(小悪魔)が
人間たちに悪戯をしていくというもの