シリアス

March 02, 2011

('A`)言葉足らずのようです

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 01:29:34.45 ID:AUSAWhkmO






妹を身籠らせた。 






続きを読む

boonkei_honpo at 07:22|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

February 27, 2011

枕物語のようです ―手ぶらの王者のようです―

32 : ◆Zb08y4eL/Y:2011/02/22(火) 00:30:20 ID:gfH7EHsEO



手ぶらの王者のようです



続きを読む

boonkei_honpo at 02:01|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

February 25, 2011

(  ∀ )白痴のエデンなようです

1 :以下、VIPに代わりまして名無しのようです:2011/02/21(月) 20:22:41 ID:l2ej3JVE0
遅刻かしら。申し訳ないですわ。
しかも直しながらの投下なので、スローペースですの。

モチーフ曲は、スコット・ジョプリンの『Maple Leaf Rag』

曲を解釈したというより、ふいーんきだけです。
ほんと、申し訳ないです。

とにかくゲリラ、行きますです。


続きを読む

boonkei_honpo at 02:56|PermalinkComments(3)TrackBack(0)

LAST WORD「  」 のようです

48 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 09:58:19 ID:K2oboKTw0
LAST WORD「  」 のようです  は、
RENTRER EN SOI  というV系バンドの、異なる二曲の『Last word「 」』から構成されています
解散済みのマイナーバンドということで、先に曲だけ告知させていただきますが、
歌詞 原曲は、ネタばらし防止の為最後に載せたいと思います

それではご清聴願います
二曲の異なる 『Last word「 」』
それぞれが 彼らの物語


49 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 09:58:54 ID:K2oboKTw0
⌒*リ´・-・リ「……」


最期の季節を迎えるまで 傍に居てほしい
ずっと 手を握ったまま

鐘は鳴り響く
私は 終わる

冷たい枕と 貴方の指輪
もう明日は来ない この温もりさえ
失くしてしまう 壊れてしまう

もう 明日は 来ない…………



⌒*リ´・-・リRAST WORD「  」 のようです


続きを読む

boonkei_honpo at 02:24|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

February 24, 2011

浮遊追想のようです

31 : ◆zynqho4iRI:2011/02/20(日) 19:31:12 ID:CfVdoC9I0
( <●><●>)「…」

彼は 見つめている

じっと じっと



ベッドの下の、ほんの数センチの闇を


浮遊追想のようです


続きを読む

boonkei_honpo at 19:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

February 20, 2011

( ^ω^)自殺ウサギについての告白のようです

1 :以下、VIPに代わりまして名無しのようです:2011/02/19(土) 20:46:27 ID:hRaAR.KU0
最初に

「ブーン系音楽短編フェス」参加作品です。


モチーフ曲は、

C.ドビュッシー作曲 「前奏曲第一巻 第八曲『亜麻色の髪の乙女』」


です。

本来ならば歌詞、曲にまつわるエピソード、その曲の持つ意味等々を題材とするのがセオリーだと思いますが、
この作品はそういったことを全く考えていません。
ふいんきです。ふいんき。

最初に言っておきますが、この曲の通り、落ちも薄ければ山も薄いです。
それでも宜しければ、僕のオナニーにお付き合いください。


続きを読む

boonkei_honpo at 10:46|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

爪 ゚Ⅳ〉禁じられた契約のようです

3 : ◆zynqho4iRI:2011/02/19(土) 19:37:19 ID:f3XKS80g0
人の欲は尽きない
金を 富を 地位を 権力を
人を 心を 体を 命を

“永遠”という 夢物語すらも
人は欲する
人は手を出す

たとえそれが 禁じられたものだとしても




爪 ゚Ⅳ〉禁じられた契約のようです


禁じられた契約/フレディ波多江とエレハモニカ



続きを読む

boonkei_honpo at 10:29|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

(    )彼らは人間であり、男は人間ではなかったようです

1 :以下、VIPに代わりまして名無しのようです:2011/02/19(土) 02:05:55 ID:AgR8Nz6kO
 
超短編集。9割洋楽。曲順に拘り有り。
 
 
 
 
「ブーン系小説音楽祭をご覧の皆様、初めまして。私、」
 
 
私は。
 
 
 
(    )彼らは人間であり、男は人間ではなかったようです
 
 
──



続きを読む

boonkei_honpo at 01:00|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

January 31, 2011

(´・ω・`)朝焼けディミヌエンドのようです 第三幕

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 19:01:17.36 ID:A1nm5Cw90
          第三幕



ノハ*゚⊿゚)「今度近所で『相克』のロケがあるそうなんですよっ!
     一緒に見学しにいってくれませんかっ!?」

ヒートが目を輝かせながら訊いてきた。
ヒートもジョルジュのファンなのだろう、とてもうれしそうだ。
『相克のハルカタ』。アラマキくんから送られてきた最初のコンタクトも、
『相克のハルカタ』だったなと、ショボンは思い出していた。

アラマキくんは依然、快復する兆しを見せなかった。むしろ、
症状は悪化の一途をたどっていた。ショボンが一縷の望みをかけて懇願した
あの日以来、返事がくることもなくなった。家の中からも、
生活している痕跡が見当たらなくなった。

消えてしまったわけではない。わずかとはいえ、入れ替わりはいまも続いている。
しかしそれも、時間の問題に思えた。赤色から、生命力が失われていた。
赤色は、もはや赤色と呼ぶこともためらうような、淡い、粒子的な感触へと変質していた。

否が応にも予感させられた。希望とは裏腹に、おそらくは、間違っていない。
きっとこれは、寿命のように、人の手ではどうすることもできない現象なのだろう。
そしてその先に導かれる結果もまた――。

ショボンは曖昧な返事で、ヒートとの会話を打ち切った。



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 19:03:17.24 ID:A1nm5Cw90
家に戻っても落ち着かず、夜になってから外へでた。
息が白くなるのも、そう遠くはないと感じた。
そのときまで、アラマキくんはぼくの中にいてくれるだろうか。自信がなかった。

歩きながらも、アラマキくんのことばかり考えていた。
そうして延々と考え続けて、今更ながらに思い知った。
ショボンは驚くほど、アラマキくんのことを知らなかった。

やむをえないところもある。ショボンが何度質問しても、
アラマキくんは自分の話題を避けた。非協力的な相手から
話を引き出すのは、むつかしい。それでも強引に問い詰めるべきだったのだ。
いまとなっては、それもできない。もっと、知っておくべきだった。

無意識に静かに思考できる場所を求めていたのかもしれない。
ショボンはあの廃屋の前までやってきていた。相変わらずの、
風が吹けば崩れ飛んでいってしまいそうな外観をしている。
だが、不思議と頼もしさを感じた。

廃屋前には、ショボンより先に人が立っていた。暗くてよく見えない。
向こうも気が付いたのか、人影がショボンの方へ振り向いた。街灯が顔を照らした。


続きを読む

boonkei_honpo at 00:54|PermalinkComments(3)TrackBack(0)

January 28, 2011

(´・ω・`)朝焼けディミヌエンドのようです 第二幕

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:06:37.19 ID:ENz7hFCf0
          第二幕



どんなに歌いこんでも、どんなにのどを拡げても、声変わりは止まらなかった。
ゆるやかに、しかし確実に、音域は低くなっていた。
文化祭まで持つのかどうか、ショボンにはわからなかった。

ともすれば肥大化する不安に押し潰されかねない状況だった。
だが、ショボンは平生と変わらぬ毎日を過ごせていた。

(´・ω・`)「ただいま」

返事はない。しかし、聴いている者がいる。

(´・ω・`)「今日は、こんなことがあったよ」

といっても、態々報告する必要などない。
見たことも聴いたことも、すべて共有しているのだから。
気分の問題だった。そして、なによりそれが重要だった。


 
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:08:37.39 ID:ENz7hFCf0
朝焼けのアラマキくん。携帯でそう名乗った、謎の人物。始めのうちは、
ショボンも警戒していた。助けてくれたことは事実だとしても、理由がわからない。
どういう腹積もりなのか判明するまでは、心解くことなどできないと思っていた。

直接訊いてみても、アラマキくんは答えなかった。
他の話題を引っ張り出して、答えたい質問、
話したい内容についてのみ文章を残しているようだった。

アラマキくんとの会話は、一日一回携帯を通じたやりとりのみとなっていた。
正確には一日一回発信するのはアラマキくんの方だけで、
ショボンのしゃべったことはすべて筒抜けになっている。
そして、質問するのはいつもショボンの方だった。

そのため、会話の取捨選択を主導するのは、
どうしてもアラマキくんの側になってしまう。
目的を探ろうと重ねた質問は、すべて簡単に回避されてしまった。
アラマキくんのことは、ほとんど何もわからずじまいだった。

しかし一緒に生活しているうちに、それらの謎は気にならなくなった。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:10:37.19 ID:ENz7hFCf0
モララーとの一件以来、寝不足で悩まされることはなくなった。
家の中を歩き回っている様子はあったが、外にまでは出かけていない。
深夜徘徊をしていたのは、本当にショボンのためであったらしい。

考えてみれば、体を共有しているのだから、眠気も当然共有しているはずだった。
睡魔に襲われながらも、ショボンを助けるために、夜通し動き回っていたのだ。
静まり返った夜の町で、眠気を堪えるのは至難の業だったろう。

またアラマキくんは、発声に関するアドバイスもよこしてくれた。
体の内部と声帯を一本のホースに見立てて使う方法などは、
試してみるとたしかに声が張りやすくなった。

小手先の技から根本的でいて重要な技術まで、アラマキくんはよく知っていた。
次から次へと教えてくれるので、実践するのが追いつかないほどだった。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:12:37.34 ID:ENz7hFCf0
『表現が上達する秘訣を教えてあげるよ!』

アラマキくんは好んで表現という言葉を使った。
変だとは思わない。むしろ的確だと感じた。
アラマキくんのいうことは、すべて表現するという一点に集約されているように思えた。

『それはね――』

無駄な改行スペースはお茶目心。それくらいぼくにだってわかります。

『自分をすきになることさ』

うぬぼれだって構わない。すきだから表現できる。
すきだから、もっと知りたくなる。

携帯にはそう書かれていた。飲み込めた、とは言い難かった。
ただ、昔のことを少し思い出した。携帯に表示される文章は、無機質な電子文字だ。
それなのに、読んでいるとアラマキくんという人となりが伝わってきた。
もう、疑うことはなかった。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:14:37.54 ID:ENz7hFCf0
家に帰るのがたのしみになった。
その日起こったことを、ちょっとだけ脚色して話すのが習慣化していた。
ひとしきり話し終えてから自主練習を開始するが、身は入らなかった。
九時を回るのが待ち遠しくて仕方なかった。

不気味だった赤い印象も、入れ替わりの合図だと思うと好ましくなった。
そう思って積極的に感じてみると、この赤はけして攻撃的な色では
ないことがわかった。まるで心臓の鼓動のように、生命を感じさせる感触をしていた。

アラマキくんとの共棲生活は、ショボンの生活に今までなかった刺激を与えた。
ただし、困ったこともあった。

(;´・ω・`)「解いたはずの宿題の答が消されてる!」

頭を悩ませ苦労して解いた証明問題が、きれいに消されていた。
ぎりぎり提出直前に解き直すことができたが、あやうく恥をかくところだった。

(;´・ω・`)「徳福屋のふんわりティラミスがなくなってる!」

部活の帰りにデレと徳福屋に寄った、その翌日にはもうなくなっていた。
三個買って、三個残らず食べられてしまった。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/27(木) 19:16:38.15 ID:ENz7hFCf0
アラマキくんはとにかく、いたずらがすきで、食い意地が張っていた。
細かな被害を上げればきりがなかった。被害を受けないよう隠そうとしても、
ショボンの行動は筒抜けになっている。抑止することは不可能だった。

ショボンも当然、不満を漏らした。抗議した。咎めだてた。しかし――。

『おもしろそうだったんだもん♪』

あるいは、

『おいしそうだったんだもん♪』

と開き直るばかりだった。謝るということを知らないに違いなかった。
このように、アラマキくんとの生活は大変なことも多かった。
けれど、けしていなくなってほしいとは思わなかった。

続きを読む

boonkei_honpo at 01:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

January 27, 2011

(´・ω・`)朝焼けディミヌエンドのようです 第一幕

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:13:32.04 ID:JSkOSief0
           ※


 
ありがとうと百辺書いて気持が伝わるなら、どんなに簡単なことだろう。
伝えたいことが多すぎて、何を書けばいいのかわからない。
書きたいことが多すぎて、何から伝えればいいかわからない。

猶予はない。こうして手を拱いている間にも、
刻々と残り時間は磨り減っている。とにかくゆびを動かそう。

格好つける必要はない。支離滅裂でも構わない。
ミスしたって、みっともなくたっていいじゃないか。
それも含めて、自分なんだ。

様々な記憶が甦ってくる。思い出したくない記憶も多い。
けれど、それを手放しちゃいけない。人生の実は、明るいことだけにあるのではない。
辛いことも悲しいことも、すべてひっくるめて私なのだ。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:15:31.94 ID:JSkOSief0
視界が滲んだ。舞台上から聴こえてくる合唱の響きが、鼻の奥をつついた。
ずっと不安だった。重ねて見ていたのではないかと。
ただ、代理の役割を押し付けていただけなのではないかと。

いまなら断言できる。それは違う。
どちらもどちらの代わりにはならない。
どちら共に、私にとっての唯一無二だ。

もう時間がない。自分の意思とは関係なしに、そのときは訪れる。
結びを書こう。正真正銘、最後の最後だ。

少しくらいわがままをいっても、許してくれるかな。

きっと、許してくれるよね――


 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:17:32.09 ID:JSkOSief0
          序幕


 
走っていると視界がぼやけてくる。
ショボンは力を込めて目をつむり、息を吐くと同時にまた開いた。
毎朝走り続けていても、気道が収縮するようなこの感覚には慣れない。

寒くなり始めましたとテレビは言っていたが、
こうして汗を流していると大した違いは感じられない。

ジャージの下で蒸れた熱気が、襟元から漏れ出して顔にかかる。
涼気を求めて首を反らすと、のどの奥がたちまち乾ききって、余計苦しくなってしまう。

聴こえるものは自らの呼吸音と、頭の中心で鳴り響く加速した鼓動だけだった。
空はまだ薄暗い。住居にも明かりはなく、耳をそばだてれば寝息が届いてきそうだった。

無論、ショボンにそんな余裕はなかった。
アスファルトの硬い感触を、一歩一歩蹴り進める。

住宅街を抜け、坂を登り、下った。他の店がシャッターを下ろしている中、
二十四時間営業のコンビニだけが、煌々と光を放っていた。



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:19:32.10 ID:JSkOSief0
踏み切りの前でショボンは立ち止まった。遮断機が下りている。
甲高い警報の音に合わせて、ふたつのランプが交互に点滅している。

ホームにはスーツ姿の男性が、電車が来るのを待っていた。
数えられる程度の人数しかいない。それでも、人々が目覚めるより前に
働きへ出る人が、たしかにいる。錆びたブレーキ音を響かせて、電車が止まった。
ホーム上から男性がいなくなると、電車はゆっくりと動き出した。

汗をぬぐい、また走り出した。

杣矢川を横断する杣矢川橋を渡る。橋の向こう側、他県へと渡ったらゴール。
また折り返す。ショボンは足下に視線を向けながら、石畳の歩道を踏み出した。

杣矢川橋は長い。入り口からでは向こう岸が見えないので、
前を向いていると気が遠くなる。次に歩を置くべき箇所だけを見つめた。

整然と並んだ石畳の、溝に足を取られないようただ走る。
街中とは違い、川から昇った風がたしかに肌を冷やした。

内から発する熱が皮膚面で冷やされていく感触は、心地よい気もしたが、
同時に身震いを起こす悪寒のようにも思われた。
ショボンがどっちつかずの感触に抗しかねていると、突如、石畳に影が差した。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:21:32.35 ID:JSkOSief0
(;´・ω・`)「わっ」

目の前に女性が立っていた。女性は橋の下を眺めたまま、
じっとその場に佇んでいた。ショボンは避けようとして無理に体をずらした。
結果、足がもつれて転びそうになった。何とか倒れずにはすんだものの、
呼吸が乱れてのどがつかえ、変な声で咳き込んでしまった。

ばつが悪くなって、ショボンは体調が回復するのも待たずにその場を去った。

呼吸を整えてから、気づかれないよう静かに振り返ってみた。
女性はいまだ、橋の下を眺め続けていた。

セーラー服を着ている。長い髪に隠れて顔は見えなかったが、
自分よりみっつ、よっつは年上だろう。おそらく高校生なのだと思う。
飾り気のないバッグから、何かのキャラクターが垂れ下がっていた。

彼女は微動だにしなかった。ときおり風が髪をさらうだけで、
動的なものがそこから抜け落ちていた。

ぶつかりそうになったときも、その後も、彼女は何の反応も示さなかった。
組んだ両腕を手すりについて、川に視線を落としていた。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:23:33.03 ID:JSkOSief0
ショボンは振り返るのをやめ、足を早めた。
橋を渡りきった。ここはもう、普段住んでいる街とは異なる地域ということになる。

大きく何かが異なるわけではない。
だがショボンにとって、ここから先は未知の土地であった。

もと来た道を戻ろうとして、ショボンは足を止めた。
考えた末に、行きとは逆の歩道を使うことに決めた。

ここまでで半分。ここから先も半分。

辛かろうと苦しかろうと、同じ距離を走らなければ帰れない。
肺いっぱいに溜め込んで、熱を持った膝に活を入れた。

やることは変わらない。足下に眼を向けながら、一歩ずつ着実に進んでいく。
いつもと同じことを繰り返す。毎日、毎朝、変わらず行なってきたことだった。
なるべく何も考えず、気づけば家に着いている形が望ましい。

だがいまは、思考に雑念が紛れ込んでいた。視線を足下から、
ついつい横へ滑らせようとしてしまう。先ほどの女性が気になる。

なぜ制服を着た高校生が、こんな早朝に川を眺めているのか。
このようなわかりやすい理由もある。

けれどそれ以上に、彼女の放つ得体の知れない雰囲気自体が無視できなかった。
心のどこかで、あれは見てはいけないものだと警告しているようにも感じた。
しかしその禁忌感が、なおさら好奇心を刺激した。結局ショボンは、誘惑に負けて顔を上げた。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:25:33.04 ID:JSkOSief0
彼女は歩道にいなかった。ゆっくりとした歩調で、車道を横切っていた。

一歩進むのに何秒かかっているのか。乱れた髪の隙間に朝陽が差し込んでいた。
地肌がそうなのか光の関係なのか、赤みがかったほほは、倒錯的にも見えた。

陽を直視しているはずなのにまぶしがる様子もなく、
眼は異様に見開かれたまま動かなかった。見つめているようにも、
何も視界に入れていないようにも見えた。眼が、顔の印象を決定付けていた。
平常な人間の喜怒哀楽からかけ離れた表情をしていた。

そしてショボンは見た。彼女と、彼女へ向かって直進するトラックを。

トラックはかなりのスピードを出していた。人がいるなど考えてもいない速度だ。
ゴムの擦り切れる音が、何度も鳴らされるクラクションと共に響き渡った。

それでも彼女は反応しなかった。
彼女の世界では、トラックも、鼓膜を破る刺激も存在していないのかもしれない。

虚空を見上げ、意識ごと別の場所に飛んでいた。
このまま何もしなければ、悲惨なことになるのは目に見えていた。

呼吸が詰まりそうになった。走っていたからではない。
胸の中心が押し潰されそうで、目と鼻の奥が痛くなった。
彼女は動かない。トラックは進む。距離は狭まり、衝突のときは近づく。

ショボンの視界に、そのときの光景が幻視された。
それは、許されるものではなかった。
ダメだ、ダメだ、ダ――


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 19:27:32.88 ID:JSkOSief0
(;´・ω・`)「ダメだぁ!」

彼女に向かって一直線に駆け出した。全速力で、つんのめりそうになりながら。
ふれてもいないトラックの圧力に、側面から押し返されそうだった。

トラックは彼女の間近に迫っていた。それはショボンのすぐそばまで
来ているということでもあり、ショボンと彼女との距離がほとんど
なくなっているということでもあった。

間に合わない。そう思うよりも先に、熱を持った膝がくの字に曲がった。
重い。重力に飲み込まれる。

だがしかし、ショボンは、体重のすべてをつまさきで支えた。
重力に反発し、曲がった膝を一文字に伸ばした。勢いそのままに、彼女目掛けて跳躍した。
不恰好に突進し、ショボンは、彼女と衝突した。彼女の体は綿のように、流れのままに浮いた。

その瞬間、彼女と目が合った。彼女の目が、ショボンを見ていた。

だが。

突然、トラックの向きが変わった。
それは、ショボンと彼女が飛んだのと、同じ方向だった。
バンパーが、目の前の視界を覆った。

最後に見た景色は、赤。


 
続きを読む

boonkei_honpo at 00:33|PermalinkComments(1)TrackBack(0)