June 19, 2011

( ;゚ω゚)ノ凸スイッチを押すようです ―「伝えるようです」 ―

278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:22:29.21 ID:o3lJBkPh0


貴女はこの広い深い空の
いったい何処に
在るのでしょうか?


「伝えるようです」


今日も今日とて丘を行く僕





281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:24:58.55 ID:o3lJBkPh0
*

チカチカと光る。ブルブルと揺する。ギリギリと唸る。
ライト、枕、スピィカー。
うん、全自動目覚ましベッド(3世)は一週間しても好調みたいだ。

( ^ω^)「おっおっおっ、このまま永く持ってほしいもんだお」

作ったモノの調子が良ければ、その日一日が楽しくなる。
目覚ましベッド、ガスコンロ。
トースタ、ハムエッグ、フライ返し、ライ麦パン、オレンジジュース。
どれもこれも僕が作った、僕の分身、僕の魂。
今日も今日とてブリキを拾い、新しいナニカを作っていこう。

嗚呼、なんてステキでシアワセな生活だろなんうか。


284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:27:09.36 ID:o3lJBkPh0
**

天気はイイし、川水はウマいし、風が心地よくて。
さて、今日も整備と回収に向かうとしようか。

( ^ω^)「きしーんだそーのこーころ~ウォゥ♪ウォゥ♪」

それあーんだすたん。
この前掘り出した円形の記録メディア(CD、と呼ぶらしい)から抜き取った詩

を口ずさみ、おべんとひっさげてウキウキ歩く。
ブリキ我が家から草原を突っ切って歩けば、海を臨み、ゴミに囲まれる小高

い丘。
その、てっぺんにあたりに立っている。
古いふるーい電波塔。
いつから立っているのかわからないけど、きっと僕よりも何倍何倍と長生きな

んだろう。

( ^ω^)「2日来ないだけで塩がまぁ溜まーる溜まる」

( ^ω^)「まずは掃除するかお」

制御室は吹きっさらしである。
干し草で作ったホウキで何も嵌っていない窓枠から塩をちゃっちゃと落として

いく。
あれ、これ結構しつこくね?



288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:29:32.83 ID:o3lJBkPh0
***

(;^ω^)「グギギギギギ、なんでこんな固まってるんだお……」

ガシガシガリガリゴリゴリ、ブリキ片に持ち替えて削る削る。

(;^ω^)「おーこりゃ肩いたくなるお」

窓枠、操作台、パネル周りと塩やらホコリやらをキレイにし、

( ^ω^)「さーて、今日は着てるかお?」

どこのだれがいつ作ったのかなんてわからない。
僕がここに流れてきたときには既におんぼろとして在ったし、それでも少し手

を加えてやれば機能を取り戻してくれた。
オカシナなカタチ、継ぎ接ぎだらけの丘の上たった電波塔。
僕は日毎ここに通い、送られてくるナニカを受信している。



292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:32:02.61 ID:o3lJBkPh0
****

塔での作業を終え、その周辺に点在するブリキの山へ向かう。
うず高く積み上げられた鉄片鉄くず作られた何か。
ここから僕は、新しいナニカを作るモノを頂いている。

(*‘ω‘*)ポッポッポー

( ^ω^)「おーちんぽっぽ、こんにちはだお」

(*‘ω‘*)チンポー

(;^ω^)「……」

ブリキ山の周辺には、なぜだか猫たちが住み着いている。
その中の何匹かはよく懐いてくれて、友達になった。
このコは猫らしからぬ鳴き声から、ちんぽっぽと名づけて。

……正直、後悔している。

( ^ω^)「よしよし、後で一緒にお昼食べるお?」

(*>ω<*)ッポー!

( ^ω^)「愛いやつめ」

桃色がかった白くてふさふさもふもふな頭を撫で繰り回してやる。
ああ心地いい、程よい手触りと弾力。
さて、お昼までには片付けばいいのだけれど。



296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:34:43.52 ID:o3lJBkPh0
*****

螺子だったり、鉄線だったり、針金、鉄片、パラボラアンテナ。
そんなモノたちをゴソゴソ掘り出し掘り出し、気づけばお日様はてっぺんを通り過ぎている。

(♯‘ω‘♯)ポー!ポッポッポー!

(;^ω^)「ちょっごめ痛いちょっ爪は爪はやめちょjdsjふぉいがs

<アッー!


猛抗議を受けた。


(*‘ω‘*)ンポンポンポポー

(メ^ω^)「食い意地張りすぎマジパネェ」

用意したぽっぽの分はおろか、僕の分の弁当も半分以上平らげてしまった。
このちんまいもふもふのどこにこんな量が詰め込まれるのか。

(*>ω<*)ポポポポーン♪


297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:36:48.85 ID:o3lJBkPh0
******

( ^ω^)「さて、そろそろ終わらせないと」

夕暮れ朱い日が差し込む塔の制御室の中。
さっき掘り出したブリキたちを組み込んで、欠けたチカラを取り戻させる。

(*‘ω‘*)ポー…

今日は珍しく、ぽっぽも塔まで付いてきた。

( ^ω^)「お前も、もうすぐだってわかるのかお?」

もうすぐ届けられる、僕の声を。


300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:39:02.59 ID:o3lJBkPh0
******

( ^ω^)「さて、そろそろ終わらせないと」

夕暮れ朱い日が差し込む塔の制御室の中。
さっき掘り出したブリキたちを組み込んで、欠けたチカラを取り戻させる。

(*‘ω‘*)ポー…

今日は珍しく、ぽっぽも塔まで付いてきた。

( ^ω^)「お前も、もうすぐだってわかるのかお?」

もうすぐ届けられる、僕の声を。



301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:41:26.64 ID:o3lJBkPh0
*******

それは1年ほど前に届いた、微弱な微弱な電波。


ξ.゚⊿;*ι

わ…し………ま……30…ねに……す……。

僕が直している最中に、塔が受信した幽かなメッセージ。
そしてそこに添付されていた、不鮮明なホログラム。
ほとんどぼやけてかすれてしまった彼女の声と形。
僕は、それに応えたくて。



304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:43:53.55 ID:o3lJBkPh0
********

それから1年かけて新たなチカラを作っていった。
彼女からの声を受け取ることしかできないこの塔に。
線を繋ぎ、板を合わせ、アンテナを増やし、お弁当を食べて。

受信したものを(パネルが勝手に)解析した結果、彼女は空の向こう、
星たちを通り過ぎたところにいる。らしい。
そこまで僕の声を届けるには、とてもとても大きな力が要る。

とてもとても、大きな電波が。

だから、試すことも練習することもできない、たった一度きり。
きっと一度作動させてしまえば、壊れてしまうだろう。
そうすれば、僕はもう二度と声を届けられない。



307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:46:33.37 ID:o3lJBkPh0
*********

(*-ω-*)zzzZZポZ

( ^ω^)「…………」

今日は家に帰っていない。
空はどこまでも遠く黒く、星たちは静かに光っている。
このもっとずっと先の先に、彼女はいるのだろうか。
どんな顔をしているのだろう。
どんな声をしているのだろう。
どんな風に笑うのだろう。
ブリキは、好きだろうか。
そんなこと、僕がわかることはないけれど。

( ^ω^)「伝えるお。僕の、この声だけは。」

手のひらには、赤くて丸い、スイッチが。



310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:48:57.18 ID:o3lJBkPh0
**********

このスイッチを作るのには苦労した。
掘り出した設計図から作り方はわかったものの、いかんせん部品がみつからない。
細々した回路なんかもそうだけど、決め手はこの赤いボタン。
一目設計図を見たときに、この形にしようと決めていた。
最後だから、最期おを決めるから、妥協はしたくなかった。

(;^ω^)「青、黒、黄、緑。なんで赤が出てこないんだお?」

(;‘ω‘*)ポッポッポー

(;^ω^)「ちんぽっぽ、そこは崩れかけてるから危ないって」

ぽっぽにも手伝ってもらってブリキの山を掘り進む。
体が小さい彼女の助けはありがたかった。

(;‘ω‘*)ポーポー

(;^ω^)「この山にはないのかお……別の山に移るk」

(;;>ω<*)ポッンギュライイイイイイイイイイ!!!!!!!!!

∑(;^ω^)「お!?危ないお!!」



313 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:51:00.24 ID:o3lJBkPh0
***********

どんがらがっしゃんがらがらごろごろ。
降ってくる螺子やら板やらにしこたま身体を打たれる。
ヘルメット被ってて良かったなぁとかどうでもいいことが頭によぎりつつも、ぽっぽを掘り出す。

(;^ω^メ)「おいちんぽ!!、じゃねえやちんぽっぽ!大丈夫かお?!」

<チンポー!

(;^ω^メ)「あ、大丈夫なのね」

(*>ω<*)ポッポコポー!

(メ^ω^)「お、無事でよかったおー」

よかった、彼女のもふもふもさらさらも無事のようだ。
あれがないと僕の日常の疲れは癒されない。
いや彼女自身の無事もちゃんと心配し

( ^ω^)「お……」

(*‘ω‘*)ポッポッポー!

彼女の足元に転がるそれは、赤くて丸い。



316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:53:29.75 ID:o3lJBkPh0
************

(*^ω^)「やったおちんぽっぽ!みつけたお!!」

(*‘ω‘*)チンポッポボイン!

(*^ω^)「えらいお!えらいお!」

ぽっぽをこれでも撫で捏ね回し、高い高いをして振り回す。

(*>ω<*)ワカンナインデス!!

これで、これで、伝えられる!彼女に伝えることができる!

こうして彼女とともに掘り出したものを、二日かけて弄繰り回し形にすることが

できた。
赤くて丸いこのボタン。
お日さまの形に似たボタン。
いつか何かで読んだ、魂の形。
僕のすべてを籠める、この形。
あとはこいつをパネルに嵌め込めば、準備は万端だ。
明日の夜が待ち遠しい。



320 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:55:30.82 ID:o3lJBkPh0
*************

その日一日は、穏やかに過ぎて行った。
今まで作ったものに調整を施して回り
ぽっぽと僕、二人でも食べきれないほどのお弁当を作り
草原で彼女たちを追いかけ回し撫でまわし
普段は寄ってこない猫たちにまで昼飯をたかられ
それでもぽっぽと二人、おなか一杯に食べ
丘でゆったりと昼寝する。
穏やかに過ぎて行った。


322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:57:49.94 ID:o3lJBkPh0
**************

満点の星空。
ああ、この声が必ず彼女に届きますように。

( ^ω^)「ふぅ」

コントロルパネルのくぼみに、ボタンを嵌め込む。
回路がつながり、ボタンはスイッチに成った。
銀板の上に浮かぶ、赤くて丸いスイッチ。
これを押せば、声が届く。
これを押せば、この場所を伝えられる。
これを押せば、全てが。
全てが。



327 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:59:52.07 ID:o3lJBkPh0
***************

指で、撫でる。
少し力を籠めれば押せてしまう。
少し、怖い。
でも、伝えなくては。
でも、示さなくては。
この空の彼方で迷っている彼女のために。
この空の彼方に声を届けたい僕のために。
押さなくては。
大丈夫。
ちんぽっぽたちは明日も元気に走り回るだろう。
僕のブリキたちは明日も動き出すだろう。
塔は明日も明後日も明々後日も変わらずあるだろう。
大丈夫。
なにも怖くはない。



330 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:02:09.79 ID:tKwBUfyk0
****************

( ^ω^)「おっおっおっ」

ステキでシアワセな生活だった。
彼女の声と形はこの生活に彩りを与えてくれた。
少しでいい、報えるのなら。示せるなら。

( ^ω^)「押すお」






スイッチ、オン。



334 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:04:49.74 ID:tKwBUfyk0
*****************





ξ゚⊿゚)ξ「わたしたちは、300年さまよい続けてきました」







337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:07:08.84 ID:tKwBUfyk0
******************





ξ゚⊿゚)ξ「この船は、もうまもなく止まってしまいます」







338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:09:14.75 ID:tKwBUfyk0
*******************





ξ゚⊿゚)ξ「きっとこのメッセージを誰かが受け取るころには、わたしたちは終

わっているでしょう。」








339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:11:21.09 ID:tKwBUfyk0
********************





ξ゚⊿゚)ξ「でも、怖くはありません。寂しくはありません。」








341 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:13:30.04 ID:tKwBUfyk0
*********************





ξ゚⊿゚)ξ「たといこの後も、果てない星の海を漂うことになったとしても、この声を、この姿を誰かが受け取ってくれたのならそれは……







343 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:15:33.33 ID:tKwBUfyk0
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ξ*゚ー゚)ξ「それは、誰かが私を覚えていてくれるということですから」







346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:17:35.45 ID:tKwBUfyk0
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( ;ω;)「届けえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
      えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
      えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」







348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:19:40.27 ID:tKwBUfyk0
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351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:21:58.25 ID:tKwBUfyk0
スイッチを、強く強く押し込んだ。
塔が、低い音を立てながら動きだす。
多くの光が、電波が、塔を渦巻いて空へと向かってゆくはずだ。
そおうして、僕の身体の中の、もう、古く直すこともできない小さな小さなブリキが。
カチリ、音を立てて、動くのを、止めた。

嗚呼、この声が彼女に届きましたでしょうか。
僕の魂たちは、ここに。
ここに、在ります。


fin


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353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:24:03.02 ID:tKwBUfyk0

以上、
「伝えるようです」でした。
なんとも後味の悪い終わりになってしまいました。すみません。
そして、こんな文章素人童貞の拙い物語を読んでいただき、誠にありがとうございます。
タイトルに反して私が書きたかったことは3割も伝えられていないので、きっと読みにくかったことでしょう。
というか描写不足な部分がありすぎてもう・・・ホントすんませんでした。

余談ですが私が一番好きな塔の話は、石田衣良の「ブルータワー」も捨てがたいですがオカルト板発祥SS、師匠シリーズの 「どうして幽霊は鉄塔にのぼるのか」ですね。
ただの怖い話ではなく、独特のオカルト考察を伴って語られるこのシリーズは、とても引き込まれます。
読んでない方も、読んだ方も是非一読をオススメします。

なにはともあれ、私のブーン系処女開通式にご協力いただきありがとうございました。
それでは、続いての作品をお楽しみください。

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boonkei_honpo at 05:54│Comments(1)TrackBack(0)感動 | 短編

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この記事へのコメント

1. Posted by カップリングパーティー!!!   November 29, 2011 01:58
かわいいです♪体調に気をつけてください!
かわいいです♪体調に気をつけてください!
はじめまして。お元気ですか? ブログ復帰されるのを期待しておきます(>_<)
ありがとうございます!私服めっちゃ可愛い\(^o^)/

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