June 19, 2011
( ;゚ω゚)ノ凸スイッチを押すようです ―(´・ω・`)Happy Birthday!父親殺しのようです ―
*説明*
ここは「スイッチ」をテーマにしたオムニバス作品スレです。
これより、数人の異なる作者による投下が始まります。
さて、これからどのようなスイッチが押されるのでしょうか……。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:00:46.66 ID:LhSzlsNz0
「…………」
「――お疲れ」
「……………どう?」
「ああ、無事生まれたよ」
「立派な男の子だ」
「………………そう」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:02:15.98 ID:LhSzlsNz0
(`・ω・´)「ショボン」
深夜帯の番組が始まって間もない頃、家に帰って早々に居間のソファーに座っている父さんに呼ばれた。
父さんは持っていた新聞に目を向けていたので、てっきり聞き間違いかと思ったがそうではないようだ。
(´・ω・`)「……何?」
しぶしぶとソファーの元へ行く。
父さんは新聞を畳み、老眼鏡を外す。
(`・ω・´)「……そこに座りなさい」
その顔は神妙な顔つきで、僕はこの間のTOEICの結果だとか、部屋から酒の缶が見つかったのかとか、そういう事を言われるんじゃないかって思った。
また説教かな、僕は嫌いや思いながらも、父さんとテーブルを挟んだ向かいのソファーに腰を掛ける。
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「……」
下手に用件を聞かない方がいいかもしれない。
自慢ではないが、僕は嘘をつくのが苦手だ。
自分でも口を開けば何を喋るか分かったものじゃない
できれば母さんと爺ちゃんが老人ホームから帰ってくる前に済ませてほしいが。
(`・ω・´)「母さんには内緒にしてくれ」
(´・ω・`)「……え?」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:06:02.29 ID:LhSzlsNz0
何だ、どうやら僕への説教ではないようだ。
緊張していた気持ちがすっと消え肩の力が抜けた。
(´・ω・`)「えっと……それは……何のこと?」
(`・ω・´)「……」
それにしても、父さんが母さんに隠し事なんて……珍しい。
息子の僕にだけってのは何か男だけにしか言えない事なのだろうか。
まさか50を超える父さんからそんな話があるのだろうか。
すると、父さんはポケットから何かを取り出した。
それをテーブルに置き、手を引っ込めた。
(´・ω・`)「……?何これ」
それはボタン……いやスイッチと言った方がいいのだろうか。
四角の箱の上に赤いボタンが乗っていた。
まるでクイズ番組に出てくる早押しボタンみたいだ。
(´・ω・`)「どうしたのこれ。ハンズで買ってきたの?」
(`・ω・´)「……それをお前にやる」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:08:02.18 ID:LhSzlsNz0
僕は思わず笑ってしまった。
思い出した。
そういえば明日は僕の二十歳の誕生日だったな。
これは父さんなりのジョークだろう。
(´・ω・`)「え?何?この……スイッチを?」
(`・ω・´)「そうだ」
父さんにしてはなかなかいいギャグだ。
いつも堅苦しいイメージを良く活かしている。
僕も本当に騙されちゃったよ。
(´・ω・`)「ああ、そう。でもなんなの?このおもちゃ……」
そのスイッチ(と思われる物)を僕は拾い上げ、赤いボタンに触れてみた。
その瞬間、父さんの表情ががらりと変わった。
(#`・ω・´)「触るな!!」
(;´・ω・`)「!!」
僕は寸前で手を離す。
一体、何故父が怒鳴り声を上げたのかさっぱり分からなかった。
もしかして、まだギャグは続いているのか?
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:10:24.73 ID:LhSzlsNz0
(`・ω・´)「…………押すのは自由だ……だが話は最後まで聞きなさい」
(;´・ω・`)「……………」
僕はそのスイッチをテーブルの上に戻した。
何も話していないのに怒られるのはとても理不尽だ。
一体何だって言うんだ。
(`・ω・´)「今から言う説明を良く聞きなさい」
(;´・ω・`)「う……うん」
しかし、父さんの様子はどうもおかしい。
たかだかおもちゃに何を真剣になっているのだろうか。
(`・ω・´)「このスイッチはむやみに押してはならない」
(;´・ω・`)「……何で?」
父さんは一間置いた後、こう続けた。
(`・ω・´)「このスイッチを押すと……父さんは死ぬ」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:11:43.54 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「………………」
(`・ω・´)「………………」
(´・ω・`)「……………え?」
僕は聞き取れなかった風を装ってもう一度聞き返した。
はっきりと耳に入った言葉は一つ。
(`・ω・´)「そのスイッチを押すと、父さんは死ぬんだ」
父さんははっきりと同じ言葉を繰り返した。
(´・ω・`)「……なんで」
返す言葉なんてそれぐらいしか思いつかない。
そのスイッチを押すと自分が死にますなんて、どこから探してきたジョークなんだよ。
この話に乗るべきなのか、そろそろ突っ込むべきなのか大きく悩む。
(`・ω・´)「理屈は父さんも分からない……ただ」
(`・ω・´)「このスイッチを押せば必ず私は死ぬことだけは分かっている」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:13:07.27 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「……父さんが死ぬ?……これを押して?」
(`・ω・´)「ああ。その通りだ」
簡単な事なのに頭が働かない。何故だ。
父さんが真面目な顔を未だに続けていることが原因なのかもしれない。
そして、これは僕の日常に突然入り込んできた非日常だと言うことを、
僕は薄らと感じ取ってしまったのかもしれない。
(´・ω・`)「これ……どうしたの?」
(`・ω・´)「知人に貰ったんだ」
(´・ω・`)「誰?」
(`・ω・´)「それは言えない。広言してはいけない約束なんだ」
ますます、意味が分からない。
僕ははっきりとしない父さんの受け答えに苛立ってしまった。
もう、父さんのドッキリに乗るのに限界が来ている。
(´・ω・`)「あの、父さん。こんな事……」
(`・ω・´)「疑っているのか」
(´・ω・`)「……え?」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:14:53.67 ID:LhSzlsNz0
(`・ω・´)「父さんが本当に死ぬのか疑ってるのか」
(´・ω・`)「…………」
まあ、疑っているかどうかで聞かれれば疑っているんだろう。
しかし、今はその段階まで話が進んでいないんだよ。
(´・ω・`)「だから、僕が言いたいのはこんな下らな」
(`・ω・´)「……じゃあ、試しに父さんが押そう」
(´・ω・`)「い事は……え?」
そう言うと、父さんはそのスイッチを拾い上げると何の躊躇いもなく押した。
僕はその瞬間、動くことができなかった。
死ぬと公言していながらも、軽々とスイッチを押した父に対して理解が追いつけなかった。
(;´・ω・`)「え?ちょっと……は?」
(`・ω・´)「………………」
しかし、父さんは特に苦しむ様子など無く、じっとスイッチを見つめていた。
うろたえる僕を無視するかのようにただじっとスイッチを見つめている。
ネタばらしは……しないのか?
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:17:01.22 ID:LhSzlsNz0
(`・ω・´)「このスイッチはな……」
長い沈黙の後、父さんがやっと口を開いた。
(`・ω・´)「押した本人の父親が死ぬ」
(;´・ω・`)「……え?え?」
(`・ω・´)「つまり……父さんが押せば、父さんの父親……つまりショボンのお爺ちゃんが死ぬことになる」
(;´・ω・`)「爺ちゃんが……?何で……」
(`-ω-´)「仕組みは……父さんにも分からん」
僕は自分の心臓が高鳴っているのを感じた。
まさかこんな非現実的な……それこそデスノートや山田悠介のような話、信じられるわけがない。
なのに……なぜこんなにも僕は不安なのだろう。
(;´・ω・`)「……」
(`-ω-´)「……」
父は目を閉じたまま動かなくなった。
そうだ。彼のせいだ。
僕の父が……ここまで真剣になっているからこそ、不安なんだ。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:18:29.82 ID:LhSzlsNz0
父さんは厳格な人だった。
どんな時でも感情に流されず、僕に勉学やマナー、道徳を教えてきた。
友達と喧嘩をすれば僕が怒られたし、酒を飲んだのがバレて本気で殴られたりもした。
あまり口数の少ない人で、笑うことも少なかったがそれでも僕に対して十分な愛情を注いでくれたと思う。
中高大と私立の学校に入り、馬鹿にならない学費を出してもらった。
欲しいものはだいたい買ってくれたし、小遣いや門限も他の家庭に比べればゆとりのあるものだったと思う。
そんな父が、たった今、こんな意味不明な事を言いだしているのだ。
今まで地中を掘り続けていたモグラが突然空を飛び始めた時、驚かない人がいるだろうか。
(;´・ω・`)「……」
長い沈黙が続く。
どうやら今度はこの沈黙を壊そうとはしないようだ。
聞きたいことはたくさんある。
しかし、僕も思う様に声が出なかった。
(;´・ω・`)「あ、………あの」
その時、テーブルの上に置いてあった電話の子機が音を発した。
僕は驚いて声を引っ込める。
(`・ω・´)「……出なさい」
父さんは一言だけそう言った。
頭がうまく働かないので僕はただ父さんの言葉に従うしかなかった。
子機を充電機から取り外し、通話ボタンを押す。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:20:29.35 ID:LhSzlsNz0
連続して流れ続けた音が止まる。
僕は受話器を耳にあてた。
(;´・ω・`)「はい……もしもし」
('、`*;川『もしもし?もしもし?ショボン?ショボンなの?』
電話の向こうから、聞きなれた声が聞こえた。
母さんだ。
母さんは息を切らし、泣いているかのような声で僕の名前を尋ねた。
(´・ω・`)「どうしたの。落ち着きなよ」
('、`*;川『た、大変なの!ホントに!』
(´・ω・`)「え?え?だから落ち着いてって。何があったの?」
('、`*;川『お義父さんが……お義父さんが……!!』
その時、僕の中で何かが止まった。
僕はゆっくりと父さんの顔を見る。
(;´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「……」
父さんは何も語らずただ僕の目を見ていた。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:22:04.68 ID:LhSzlsNz0
嫌な予感が体を伝う。
認めたくはない。
こんなこと……あるわけがない。
そんな僕を裏切るように母さんは荒い呼吸で僕にこう言った。
('、`*;川『お義父さんが……急に血を吐いて……!!』
その後、僕は母さんの声を全く聞き取れなかった。
それよりも僕の前にいる人間から意識を離すことができなかったからだ。
(;´・ω・`)「……」
(`-ω-´)「……ちょっと早いがショボン」
何だ?何がどうなっている。
父さん……貴方は一体……。
明日の2月27日、僕は20歳になる。
(`・ω・´)「誕生日おめでとう」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:23:59.62 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)Happy Birthday!父親殺しのようです
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:26:13.38 ID:LhSzlsNz0
爺ちゃんの葬儀はテキパキと進み、ただ淡々と時間が過ぎていった。
婆ちゃんが亡くなった時以来の喪服を着て、ネクタイをきつめに締める。
昨日は散々な誕生日を迎えた。
爺ちゃんは帰宅途中、突然大量の血を吐いたらしい。
元々食道が悪く、吐血なんていつもの事ではあったが、
今回はいつものそれとは明らかに同じとは思えない程の量だったとか。
結局、爺ちゃんは病院に運ばれた時には既に手遅れだった。
僕も知らないような親戚が多数集まり、爺ちゃんの周りに一輪ずつ花を添えた。
出棺も簡単に行われ、ただただ淡々とした人の死が僕に押しつけられたような気分だった。
爺ちゃんが箱の中に仕舞われ、数時間後には粕のような真っ白な塊に姿を変えた。
骨を箸で持ち上げた時でも、爺ちゃんの死に対しての実感がわかなかった。
(`・ω・´)「……」
父さんは相変わらずいつも通りの顔で葬儀に参加していた。
それがまた僕には不気味で、それでいてどこか安心するところもあった。
('、`*川「……ショボン、どこ行くの?」
(´・ω・`)「え、これから何かあるの?」
('、`*川「……特には無いけれど」
片付けを終え、僕は喪服を着替え、コートを羽織る。
玄関で靴を履いている時に母さんに呼び止められた。
母さんの目の下にはくっきりと涙の痕が残っていた。
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:28:48.60 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「ちょっと人と待ち合わせてて。出かけてくる」
('、`*川「そう……早めに帰るのよ」
(´・ω・`)「うん、じゃあ」
僕はブーツを履き、手袋を着けた右手で玄関のドアを開けた。
ガレッジに入り、自転車を包むシルバーのカバーを広げる。
深緑色の僕の自転車が
鍵を外し、スタンドを蹴る。
少しだけタイヤを転がした後、素早くサドルに飛び乗った。
さあ、急ごう。
あまり人を待たせるのは好きじゃない。
(´・ω・`)「……」
街灯が照らす路地は薄暗く、僕を少しだけ心細くさせた。
肌に触れる冷たい風がさらに追い打ちをかけるようだ。
すれ違う人がどれも無機質な個体にしか見えなくて、まるでこの街には僕しかいないようだった。
本当に爺ちゃんが死んだのは父さんがスイッチを押したせいだったのだろうか。
仮にそうだとして……何故父さんは爺ちゃんを死なせてしまったんだ?
僕を信じさせる為にわざわざ人の命を……ましてや実の父親の命を捨てるなんて。
偶然……とは言い難い。
現に父さんの言った通りになってしまった。
本当に……このスイッチには人を……父親を殺すことができるのか?
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:30:52.54 ID:LhSzlsNz0
僕は怖かった。
一刻も早く誰かに相談したかった。
母さんは駄目だ。
父さんに言うなと告げられていたから。
特に制約など無いが、何を考えているのか全く分からない父さんの言いつけを守らないと何かが起こってしまう、そんな気がした。
そして何より、爺ちゃんが死んだ原因の中に自分がいるという事実が何よりも恐ろしかった。
あれこれ考えている間に、目的地が見えた。
町の外れにある小さなお好み焼屋。
あそこに人を一人待たせている。
ハンドルを握り、ペダルを踏んだ。
アイツはもう来ているようだ。
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:32:48.95 ID:LhSzlsNz0
外装は民家となんら変わりは無い。
ただ暖簾と看板が立てかけてあるだけ。
このお好み焼屋は、俺達が高校のころから通い詰めた思い入れのある店だ。
僕は入り口の脇に自転車を止め、鍵をかけた。
店の引き戸はカラカラと音を立てながら滑って行く。
小さな店なので、入れば奴が何処にいるのかは直ぐに分かった。
(´・ω・`)「ごめん。遅くなった」
その男は吸殻が山のように積まれた灰皿と半分くらいのビールが入ったジョッキを前にして座っていた。
鉄板から昇る蜃気楼が、奴の体を歪ませた。
爪'ー`)y-「いいや、気にすんな。都合の悪い日だってあるさ」
アッシュに染めた長い髪、垂れた目、シックにきめたハット。
フォックス。
僕の親友であり、小学校からの幼馴染でもある。
彼は彼の伯父が経営している塗装業で勤め、割と自由に暮らしているようだ。
彼は高校時代、羽目をはずしていて……いわゆる暴走族に所属しており、いろいろと遊んでいたらしい。
注意するはずのフォックスの両親は、彼が小学校に入りたての頃に他界した。
危険な事に手を伸ばすことに全くと言っていいほど躊躇いが無いので、彼自身、高校時代を堪能できたのではないだろうか。
フォックス曰く、「花の咲いているうちに死にたい」がモットーで、彼自身文句の無い毎日を過ごしているようだ。
僕らの出会いは本当にシンプルだ。
虐められていたフォックスを僕が助けた。
ただそれだけ。
知らない人にこれを話すと疑われる。
そりゃあそうだろう。
今ではフォックスの方が見た目も体格も強そうだ。
しかし、小学校の頃は僕が必死に彼を守り続けた。
学年が上がり、クラスが離れても僕は彼を守り続けた。
時には虐めている奴と喧嘩だってしたことだってある。
もちろん集団相手では勝ちはしなかったが。
そんな訳で今に至る。
中学からは離れてしまったが、気付けばコイツはこんな恰好をし始めた。
まあ、本人がいいならそれでいい。
(´・ω・`)「お前、まだ20歳じゃねえだろ」
爪'ー`)y-「気にすんな。心は二十歳さ」
(´・ω・`)「死ねよ」
爪'ー`)y-「それで?葬式の方はもういいのかい?」
(´・ω・`)「ああ。後は父さんと母さんだけで何とかやってくれるよ」
爪'ー`)y-「今年は年賀状は送れそうにないみたいだな」
今までに一度でも年賀状が僕の元に来た事があっただろうか。
こんなにもタイプの違う僕らだが、小学校からの長い時間と物理的に短い距離が僕らをここまで繋いでいたのだろう。
こんな奴でも、心の底から信用している。
(´・ω・`)「そういや、フォックス」
爪'ー`)y-「あん?」
(´・ω・`)「彼女はどうしたんだ?まだ付き合ってんの?」
爪'ー`)y-「あ、ああアイツ?別れた」
(´・ω・`)「またかよ……何人目だ?」
爪'ー`)y-「まあ、いいじゃないか俺の心配は」
(´・ω・`)「お前の事じゃねーよ。元カノの方が可哀想だわ」
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:38:33.77 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)y-「この店に来るのも1年ぶりか……」
(´・ω・`)「そうだね……」
爪'ー`)y-「で?話ってのは何だ?」
(´・ω・`)「え?」
爪'ー`)y-「豚玉でも食べながら聞こうじゃないか」
(´・ω・`)「あ、ああ。うん」
爪'ー`)y-「遺産相続にでも巻き込まれたか?」
それならば、どんなに楽だろうか。
(´・ω・`)「実はね……」
僕はゆっくりとポケットの中からスイッチを取り出す。
それはフォックスが胸ポケットから煙草の箱を取り出すのと全くの同時だった。
爪'ー`)y-「……?なんだこりゃ」
まあ、そういう反応だろうな。
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:39:59.36 ID:LhSzlsNz0
僕だって最初はそうだった。
しかし、今ではそんな反応も不安の種となっていた。
(´・ω・`)「まあ、聞いてほしいんだ」
僕はフォックスに話した。
3日前、父と話した全ての事を。
最初は灰皿にしか興味がなさそうな様子で聞いていたフォックスだが、祖父の死に繋がったあたりから、真面目に聞いてくれた。
爪'ー`)y-「にわかには信じ難いな……」
(´・ω・`)「ああ、そうだろうねでも……」
僕は見たんだ。
父がスイッチを押して、祖父が死んだその瞬間を……。
爪'ー`)y-「じゃあ、相談することは無いだろ」
(´・ω・`)「え?」
爪'ー`)y-「そいつはホンモノだよ。人を殺せるんだ」
豚玉がゆっくりと焦げていく。
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:41:31.00 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「いや、そんな簡単に……」
爪'ー`)y-「じゃあ試してみるか?」
(´・ω・`)「え?」
爪'ー`)y-「誰かに押してもらうんだ。それで、そいつの親が死ねば確認できるだろ?」
(´・ω・`)「……………は?」
爪'ー`)y-「よし、決まりだな。とりあえず手ごろなガキでも見つけて渡せばいいか……」
(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと待って」
爪'ー`)y-「なんだよ」
僕は異様にノリノリなフォックスを口で制す。
一体こいつは何を考えてるんだ。
(;´・ω・`)「なんでそんなに不服そうなんだよ。……じゃなくて、何の話だ?」
爪'ー`)y-「お前はこれがホンモノかどうかを知りたいんだろ?」
(;´・ω・`)「いや、まあそうだけど……」
爪'ー`)y-「なら簡単だ。誰かで実験すればいい」
(;´・ω・`)「何言ってんだよ。そんなことをしたら……」
爪'ー`)y-「気にすんなよ。たかだかお前の知らない誰かが死ぬだけだ」
コイツに相談したのが馬鹿だったのか……。
何故そこでそんな発想に行きつくんだ。
爪'ー`)y-「もし、嘘だとしたら気に悩む必要は無い。結局そのボタンには何の効力もないって事だろ」
爪'ー`)y-「でもまあ、もし本当だったらそれはそれでいいじゃないか」
(´・ω・`)「お前……ただ確かめたいだけだろ」
コイツのそういう下らないところが無性に腹が立つ。
面白半分で人の悩みを扱うような所。
信用はしているが、頼りにはしていない。
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:46:40.39 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)y-「何だ?無関係の人間が死ぬのは苦しいか?」
(;´・ω・`)「……当たり前だろ?俺のせいで死ぬなんて」
爪'ー`)y-「何言ってんだよ。お前はそのスイッチを子供に渡すだけで済むんだ。それ以外は何もしない」
(;´・ω・`)「お前……」
フォックスは、半分以下になった煙草を灰皿に押し付ける。
爪'ー`)「何だったら俺がやってやるよ。そうすればお前は何も責任を負わなくて済む」
(´・ω・`)「!!」
爪'ー`)「発案は俺。渡すのも俺……なんだったら確認も俺がやって良いぜ」
(´・ω・`)「や……それは僕がやる。それは」
爪'ー`)「じゃあ決まりだな」
(´・ω・`)「……………」
僕らの計画はあっさりと決まってしまった。
とてつもない下種のような計画が。
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:49:14.19 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「でも……どうするんだ?」
爪'ー`)「明日、遊園地にでも行こう。そこで親子連れを探すんだ」
(´・ω・`)「……なるほど」
僕は卑怯者だ。
心の奥で、「俺がやる」という一言を引き出す為にフォックスに相談したのかもしれない。
じんわりと安堵感が全身に染み渡るのを感じた。
爪'ー`)y-「さあ、ひとまずこの話は終わりだ。早く喰わねえと焦げるぜ」
(´・ω・`)「ひっくり返すのは僕がやるよ」
爪'ー`)y-「ああ?俺じゃ不満ですか?」
(´・ω・`)「変にプライド持つんじゃねーよ。下手くそ」
結局、僕らはいつも通りの集まりで、いつも通りのお好み焼きを食べた。
こんなに小さな非日常では、僕らの日常を壊すことはできなかった。
父さん……。あなたは何を考えているんだ?
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:51:28.22 ID:LhSzlsNz0
「おっ……目を開けたぞ!」
「綺麗な瞳だな」
「父親似だろ」
「可愛いから母親似でしょ」
「……………」
「重いね」
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:53:48.99 ID:LhSzlsNz0
翌日、僕らは都内の遊園地に来た。
平日と言うこともあったが、わりかし客は多くいるようだ。
目的である親子連れも多く、視界から消すことが難しいくらいだ。
(´・ω・`)「なあ……どうするんだよ……」
僕らは入園後、ずっと自動販売機横のベンチに座り込んでいた。
晴れ日とは言え冬だ。
外でじっとするには寒すぎる。
爪'ー`)y-「まあ、待てよ。俺に黙って従え傍観者」
(´・ω・`)「ぼ……」
確かにそう言われても仕方が無い。
僕は今日、決して罪を犯さない、最低な人間になるのだ。
いや、まだこれで死ぬと決まったわけでは無いが。
爪'ー`)y-「よし、あの子にしよう」
すると突然、フォックスが立ち上がり、歩き始めた。
僕もつられてフォックスの後に続く。
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:55:40.47 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「おい、誰だよ……ターゲットは」
爪'ー`)y-「ターゲットなんて……ショボンさんも随分とノリノリじゃないすか」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
そのうち、俺らの進行方向の先に一人の女の子が見えた。
近くに親がいる気配は無い。
(*゚ー゚)「……」
純粋。
その子を一目見た印象だ。
ポニーテイルの黒髪を華奢な体が精いっぱいに振りながらはしゃいでいる。
小学1,2年生くらいだろうか。
とても小さな体だ。
彼女の眼の先には巨大なアトラクションがあった。
大きなケーキセットのようなアトラクション。
その周りには、ロープで吊るされた椅子が何台もある。
(´・ω・`)「何だこれ……空中ブランコ?」
爪'ー`)y-「まああれだよ。遠心力でブンブン回る奴だな」
なるほど、それは面白そうだ。
しかし、これくらいの巨大なアトラクションでは身長制限がかかるんじゃないか?
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:00:05.80 ID:LhSzlsNz0
彼女の視線の先には一人の男がいた。
(,,゚Д゚)「しぃ~!!」
ブランコに体を固定され、キャッキャと手を振る中年男性の姿。
おそらくこの子の父親だろう。
どうやら父親だけでこのアトラクションに乗るようだ。
(´・ω・`)「ん……?お母さんはいないのかな?」
爪'ー`)y-「さあな。いないなら好都合だ」
その時、大きなブザー音が鳴り響いた。
アトラクションが動き始める。
男性の体は宙に浮き、ゆっくりと上昇していく。
爪'ー`)y-「さあ、ショボン始めるぜ」
そう言うと、フォックスは煙草を地面に捨て、靴で踏みつけた。
ただゆっくりと女の子の傍へと近付く。
そういうことか、と僕は関心せざるを得なかった。
(*゚ー゚)「パパー!」
小さな体で目いっぱいの手を振る女の子。
これから何が起きるかも知らずに。
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:01:30.28 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)お嬢ちゃん、ちょっと良いかな?」
フォックスが女の子にコンタクトを取った。
女の子は振り返り、フォックスを見る。
(*゚ー゚)「何?」
爪'ー`)「これ、見てくれる?」
そう言うと、フォックスはあのスイッチを女の子に差し出した。
女の子は恐る恐るスイッチを受け取る。
(*゚ー゚)「何これ」
爪'ー`)「さあ、なんでしょう?」
女の子は手にとってじろじろとスイッチを眺める。
それこそ父親のことなんかほっぽって。
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:03:21.45 ID:LhSzlsNz0
フォックスは押せとも、これはスイッチだとも言わなかった。
ただ少女にそのスイッチを渡した。
おそらくそれだけでいいのだろう。
それだけで、この少女は……。
(*゚ー゚)「ん?何これ。つまんない」
(;´・ω・`)「!!」
爪'ー`)「……ありがとう」
押した。
彼女は確かにスイッチを押し、そのスイッチをフォックスに返した。
僕はそれをしっかりと目に焼き付けた。
それとほぼ同時の出来事だった。
アトラクションの反対側で、大きな音が聞こえた。
僕とフォックス、そして女の子が同時にその方向を見た。
(;´・ω・`)「……………まさか」
爪;'ー`)「…………おいおいマジかよ……」
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:05:31.31 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「父さん」
(`・ω・´)「……ん」
(´・ω・`)「今、いいかな」
その日の夜、僕は父さんの部屋に行った。
父は机に向かって何かを書いていたが、僕が入ってきたことで手を止めた。
僕は握っていたスイッチを前に差し出す。
(`・ω・´)「なんだ」
(´・ω・`)「父さん……あのスイッチの事なんだけど」
(`・ω・´)「………なんだ?」
この時ホッとした事だけはしっかりと覚えている。
もしかして、スイッチの事は僕の夢だったのかも知れなかったから。
しかし、父さんがちゃんと対応してくれたことでこれは現実なんだと判断することが出来たからだ。
(´・ω・`)「やっぱ……これは返すよ」
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:06:38.42 ID:LhSzlsNz0
(`・ω・´)「……駄目だ」
(´・ω・`)「いや……僕は絶対に押さないし、それに持ってるだけでプレッシャーになる」
(`・ω・´)「持っていなさい」
(´・ω・`)「でも……!」
(`・ω・´)「ショボン!!」
父が強く怒鳴る。
それはスイッチを渡されたあの日を思い出させた。
(`・ω・´)「押す押さないはお前の自由だ。好きにすればいい」
(#´・ω・`)「なっ…」
父のその一言が無性に腹立たしく感じた。
なぜ僕はこんなことを強要されなければならないのか。
(#´・ω・`)「ちょっと待ってよ。なんで僕はこんな物を持ってなきゃいけないの?」
今まで聞くに聞けなかったが、もう限界だ。
何故僕が父さんを殺すスイッチを持っていなきゃならない?
納得のいく理由なんか何処をどう探したって存在しない。
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:08:37.72 ID:LhSzlsNz0
(#´・ω・`)「なんで父さんは僕にこれを渡したのさ?意味が分からないよ」
(`・ω・´)「……いらないなら捨てればいい」
(#´・ω・`)「何言ってるんだよ!そんな事したら無駄な犠牲を出すじゃないか!」
死ぬ側も殺す側も原因が分からないままの殺人。
その結末がまさか実の子供だなんて知る予知もない。
(´・ω・`)「何?父さんは死にたいの?死にたいから僕に押してほしいの?」
(`・ω・´)「どう考えるのもお前の自由だ」
(#´・ω・`)「何だよ自由って……だったら父さんだって自由に死んでくれよ……それを僕になんか押し付けないでくれ!」
僕はドアを乱暴に開け、部屋を出た。
ホントならスイッチを父さんに投げ付けて去りたかったが、
その衝撃でスイッチが誤作動を起こしかねないと思い、そのままポケットにしまった。
結局、父さんには何も伝えられなかった。
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:09:41.08 ID:LhSzlsNz0
('、`*川「ショボン……?」
その時、ドアの前に母が立っていた。
どうやら僕と父さんの声を聞いて来たようだ。
(´・ω・`)「……ごめん。うるさかった?」
('、`*川「……お父さんと、何か話してたの?」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「ちょっとね……」
そう言うと、僕は自分の部屋へと戻った。
母にはまだ言うべきではない。
でも、このままではいけない。
(´・ω・`)「父さん………」
(´ ω `)「何なんだよ一体……」
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:10:52.67 ID:LhSzlsNz0
「………重い」
「それが命の重さだよ」
「分かったような口ぶりですね」
「そりゃあ私が産んだもん」
「……本当にありがとう」
「気にしなくていいよ」
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:12:43.22 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)y-「あー寒いなー」
(´・ω・`)「……」
爪'ー`)y-「さっき缶コーヒーでも買ってくりゃ良かったな……」
数日後、僕はまたフォックスと会っていた。
公園のベンチ。
寒空の下、男2人で座り込んでいる。
コイツとは暇な時は毎日会うことにしている。
例え相談事なんか無かったとしても、お好み焼き屋が休みだったとしてもだ。
爪'ー`)y-「お前……大学の方はどんな感じよ」
(´・ω・`)「もう授業は終わったよ」
爪'ー`)y-「そうじゃねえよ。友達とかさ?なんかそういう奴とかいねえの?」
(´・ω・`)「いるよ」
爪'ー`)y-「彼女は?」
(´・ω・`)「いる」
爪'ー`)y-「マジかよ……」
143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:14:16.63 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「この前話しただろうが」
コイツは定期的に僕の近況を聞きたがる。
何故かは分からないが。
そんなに僕の事が気になるのか?
(´・ω・`)「そういうお前こそ……なんで別れたんだよ」
爪'ー`)y-「はあ?」
(´・ω・`)「前の彼女。結構可愛かったのに」
爪'ー`)y-「ああ……あいつな」
そういうとフォックスはまた煙に目を逸らす。
こいつの癖だ。
話したくない事があれば煙草を見る。
まあコイツが自分の話をすることなど滅多に無いのだが。
爪'ー`)y-「まあな……アイツには悪いと思ってるよ……」
お?
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:15:44.07 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「……何かしたのか?」
珍しい。まさかコイツから喋るとは。
爪'ー`)y-「いやあ、な……別れる前にアイツと喧嘩してよ。マジ喧嘩だったなありゃ」
(´・ω・`)「何で?」
爪'ー`)y-「まあ、最近ずっとセックスしかしなかったもんだから……それに辟易としたんじゃねえの?」
爪'ー`)y-「最後の言葉も”私は肉便器か?“だったし」
(´・ω・`)「完全にお前が悪いな」
爪'ー`)y-「そのあと、めんどくさくなったからアイツが失神するまで犯して、アイツの携帯から俺のアドレス消して逃げてきた」
(´・ω・`)「おま……死ねよ」
気付けば、俺の親友はクズに成り下がっていた。
聞けばそれも1ヶ月以上も前の事らしい。
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:17:44.97 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)y-「まあそれっきり連絡も無いしな……」
(´・ω・`)「いつからそんなに糞人間になったんだよフォックス……」
爪'ー`)y-「まあ……俺のことだ。気にすんな」
(´・ω・`)「……」
フォックスはそういうと煙草を足元の溝口に捨てた。
その時、スッと俺の顔をまじまじと見出した。
爪'ー`)「あれは……どうした?」
(´・ω・`)「……?あれ?」
爪'ー`)「スイッチ」
(´・ω・`)「あ、ああ……」
爪'ー`)「親父さんに返せたのか?」
(´・ω・`)「いや……まだ」
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:19:01.17 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)「そうか……」
(´・ω・`)「……うん」
爪'ー`)「あれ……なんなら俺が預かってやろうか?」
(;´・ω・`)「……………………は?」
僕は思わず立ち上がった。
さっきからフォックスの言葉の一つ一つが飛躍していて、脳が追いついていない。
(;´・ω・`)「な、何言ってんだ?」
爪'ー`)「いや単純にな?お前の精神的な負担を和らげようと思ってな」
(;´・ω・`)「いや、でも何でお前が……」
爪'ー`)「“大学のお友達”に渡すよりかはマシだろ?」
(;´・ω・`)「……分かってたのか」
爪'ー`)「バーカ。俺と会う頻度考えりゃりゃ分かるわそのくらい」
157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:20:02.20 ID:LhSzlsNz0
どうやらバレていたようだ。
僕は大学の雰囲気に飲み込まれて、まるで友達ができない。
おそらく、クラスと言うコミュニティーにいないと、僕は手も足も出ないようだ。
コイツには恥ずかしいから黙っていたが、結局は気付かれてしまった。
爪'ー`)「まあ俺に任せてくれよ。俺でよければ協力させて貰うぜ」
(;´・ω・`)「…………」
困った。
コイツに任せていいものか。
しかし、僕が感じている以上にコイツの負担はでかい。
机の引き出しに入れているのですらプレッシャーに感じるほどだ。
ここ数日は夢にまで出て来る始末だ。
爪'ー`)「どうする?まあ……どうするかはお前の自由だけどな」
(´・ω・`)「……」
「お前の自由」 。
父にも言われたその言葉。
なんて暴力的な言葉なんだろう。
20歳という線を越えて、僕は自由という言葉に恐怖を抱いてしまう。
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:21:11.96 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「……」
爪'ー`)「どうする?」
(´・ω・`)「……じゃあ……任せるよ」
僕はポケットからスイッチを取り出し、フォックスに手渡した。
爪'ー`)「ああ。安心しな」
確かに、フォックスに渡した瞬間、俺の中で何かが溶け落ちた気がした。
少なくとも、俺が父親を殺すという事は無くなりそうだ。
(´・ω・`)「ありがとう。助かるよ」
爪'ー`)「気にすんなよ……………」
爪'ー`)「……」
爪'ー`)「なあショボン」
(´・ω・`)「……?なんだよ」
爪'ー`)「このスイッチ……押すとそいつの父親が死ぬんだよな」
(´・ω・`)「……?その通りだろ?」
爪'ー`)「んでさ」
それがどうした、と尋ねる前にフォックスは口を挟んだ。
爪'ー`)「仕組みがわからんから何とも言えないが、押したその瞬間に一番起こり得る原因で死ぬみたいだな」
爪'ー`)「肺が悪かったら肺が、遊園地にいたならアトラクションが……ってな」
(´・ω・`)「……?」
(´・ω・`)「それがどう…………」
僕は言い終える前に気が付いた。
まさかコイツが……。
フォックスが言おうとしているのは……。
(;´・ω・`)「………何に使うつもりだよ」
爪'ー`)「気にすんな。お前には関係ない」
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:23:34.71 ID:LhSzlsNz0
(;´・ω・`)「!!何考えてんだ!!馬鹿な真似は止めろ!」
爪'ー`)「何言ってんだよ。お前は海外の震災で死んだ人間で悲しむってのか?」
(;´・ω・`)「そういう話じゃないだろ!俺が何でお前に渡したと……」
爪'ー`)「罪の意識から逃げたかったんだろ」
(;´・ω・`)「!!」
爪'ー`)「このスイッチは罪だ。存在するだけで危険な物だ。核と一緒だな」
爪'ー`)「誰かを殺せる兵器を持つのはいい気分じゃないだろ。辛かっただろ」
(;´ ω `)「おい……黙れよ…!!」
爪'ー`)「お前はただ逃げたかっただけだよ。人の命に向き合えない臆病者だ」
(;´ ω `)「それの何が悪いんだよ…!」
爪'ー`)「悪いなんて言ってないさ。ただ断言しよう」
爪'ー`)「人の命から解放されたお前は、絶対にこのスイッチを俺から取り返そうとはしない」
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:26:03.75 ID:LhSzlsNz0
まさかの事態だ。
いや、きっと僕はコイツにスイッチを渡すときにこうなるだろうと予想していたに違いない。
それにも拘らず、あえて止めなかった。
理由は……全てフォックスが教えてくれた。
(;´・ω・`)「…………誰を殺すつもりなんだ」
爪'ー`)「……長岡って奴を覚えているか?」
(;´・ω・`)「な、長岡……?」
聞いたことがあるような……。
ああ、駄目だ。何も思い出せない。
爪'ー`)「ほら忘れたのか?小学校の5、6年の時の担任の……」
(;´・ω・`)「!!……お前、まだそんな……」
爪'ー`)「俺がいじめられていたのは全てアイツが元凶だ。長岡はゴミだ。クズだ」
爪;'ー`)「課題を忘れただけで教科書を破り捨てる教師がどこにいる?」
爪;'ー`)「クラス全員にゲロと呼ばせる教師が、丸々1ヶ月、机無しで授業させる教師がどこにいる!?」
爪;'ー`)「アイツが……全てあいつが悪いんだよ……アイツのせいで……俺は人に対しての愛が分からなくなった……」
僕は唖然とした。
フォックスがまだあの虐めに捕らわれていた事では無く、
そんなことで人を実に下らないように扱う事が出来たことにだ。
元カノも、遊園地の親子も。
結局、僕はフォックスを守ることが出来ていなかったのか。
(;´・ω・`)「お前……だってそんなの昔の事じゃないか……!」
爪;'ー`)「当たり前だろ?俺はずっと過去しか見ていなかったんだよ」
爪;'ー`)「遊園地で人が死んだ時、俺は思ったよ……。奇跡が舞い降りたってね」
爪;'ー`)「このスイッチさえあれば、一番屈辱的な方法で人を殺すことができるからな」
爪;'ー`)「お前が何と言おうと……俺はアイツを殺す」
(;´・ω・`)「フォックス……!!」
僕はそれ以上前に進む事が出来なかった。
彼の言う通りだ。
僕はまた、人の命から逃げようとしている。
爪'-`)「……じゃあな。また今度」
フォックスは振り返り歩き始めた。
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:29:00.55 ID:LhSzlsNz0
(;´・ω・`)「まっ……」
言葉が出ない。
足が出ない。
手も出ない。
爪'ー`)「……だろうと思ったよ」
(;´ ω `)「う…………あ……」
爪'ー`)「お前とはまだ友達でいたい。だから……」
爪'ー`)「今回の事だけは……見逃してくれ」
(;´ ω `)「……………」
爪'ー`)「明日までに……終わらせるよ」
そう言った彼の姿は、もう見えないほど遠くなっていた。
僕は……結局誰も救えなかった。
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:30:09.89 ID:LhSzlsNz0
その日、どうやって帰ったのか覚えてない。
全く我ながらおかしい人間だと思う。
一体、誰かもわからない人間の不幸で一喜一憂しているのだ。
自分が気をつければいいだけのスイッチに恐怖しているのだ。
傍から見れば慌てることではないと宥めるだろう。
しかし、僕自身、どういった決断を出せばいいのかすらわからないのだ。
(´・ω・`)「ただいま」
家の中はとても暗かった。
僕は靴を脱ぎ、リビングへと向かう。
('、`*川「……おかえり」
リビングには母さんが一人静かにテーブルに座っている。
何か本を読んでいるようだ。
(´・ω・`)「……なにそれ」
('、`*川「ああ、お爺ちゃんの写真を整理していて……」
(´・ω・`)「ああ、そうなんだ」
よくみるとその本には沢山の写真が貼られていた。
そこに写っているのは僕ら家族だった。
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:31:17.74 ID:LhSzlsNz0
何故か僕はそのアルバムに興味がわき、母さんの隣に座った。
アルバムには様々な年を過ごした僕ら家族の笑顔が何枚も写っていた。
('、`*川「ほら、これショボンが2歳の頃よ」
(´・ω・`)「そんなの覚えてないよ」
('、`*川「ショボンったらお爺ちゃんが抱っこしようとしたら泣き出しちゃって……」
(´・ω・`)「へえ、そうなんだ」
('、`*川「それで、困ったお爺ちゃんまで泣き出しちゃって……散々だったんだから」
(´・ω・`)「それはそれは……申し訳ないことを」
僕はフォックスの事など忘れるようにアルバムを見た。
家族のアルバムではあるが、大半は一人っ子である僕の写真が写っていた。
一枚一枚に懐かしみ、そしてその時に恋しくなった。
しばらく眺めているうちに僕はある事に気が付いた……。
(´・ω・`)「なんか……父さんとの2ショットが多いね」
僕の写っている写真のほとんどが僕と父さんの写真だ。
その数は全体の3割以上を占めている。
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:32:32.10 ID:LhSzlsNz0
('、`*川「それは私が撮るのが好きだからよ」
(´・ω・`)「ああ、そう言えばそうか」
('、`*川「お爺ちゃんは写真撮られるの好きじゃ無いからねえ……」
(´・ω・`)「……」
そうだ。
僕はずっと父さんの横にいたんだ。
父さんに従い父さんに褒められ父さんに叱られ……。
そうやって育って来たんだ。
その時、僕の記憶が蘇って来た。
僕の幼少の頃の記憶、思春期の頃の記憶。
フォックスと喧嘩した時。
父さんと旅行に行った時。
爺ちゃんと釣りに言った時。
母さんと買い物に行った時。
全てがこの本の中に詰まっていた。
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:35:11.00 ID:LhSzlsNz0
('、`*川「……ショボン?」
(´;ω;`)「!!」
気付けば、僕は涙を流していた。
慌てて手で目を擦る。
何故涙が出たんだろう。
僕にはさっぱり分からない。
僕は照れ隠しにもう1ページ、アルバムをめくった。
その時、1枚の写真に目が行った。
(´・ω・`)「……ん?母さん、これ誰?」
('、`*川「どれ……?」
そこに僕は写っていなかった。
写っていたのは父さんと母さんと知らない男性だった。
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:36:16.67 ID:LhSzlsNz0
('、`*川「ああ、それ……私の友達のデミタスさん」
(´・ω・`)「デミタスさん?」
('、`*川「その写真ね結婚する前に撮ったの」
(´・ω・`)「ふ~ん……」
('、`*川「そろそろ……ご飯にしようか」
母さんがアルバムを整頓し始めた。
その時、何故かある疑問が込み上がってきた。
僕はその質問を母さんにぶつけずには居られなかった。
(´・ω・`)「あ、母さん……」
('、`*川「……?どうしたの?」
(´・ω・`)「あのさあ……」
(´・ω・`)「どうして、母さんは父さんと結婚したの?」
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:37:37.92 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)「……さて、行くか」
爪'ー`)「…………」
爪'ー`)「悪いな……ショボン」
爪'ー`)「俺は……もうダメ人間なんだよ……」
ガチャ
爪'ー`)「!!」
「何だ……どこかに出かける予定だったか?」
爪;'ー`)「な、何でお前が……」
川 ゚ -゚)「なんだ。元カノはこんなところに来ちゃいけないって言うのか?」
爪;'ー`)「何だよ今さら……」
川 ゚ -゚)「いやあな、久しぶりに会おうと思って」
爪;'ー`)「はっ……あんな別れ方してよく会えるな」
川 ゚ -゚)「ああ、その事だ」
爪;'ー`)「あ?……」
川 ゚ -゚)「実はだな……」
川 ゚ -゚)「妊娠……したんだ」
196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:40:28.85 ID:LhSzlsNz0
爪;'ー`)「…………は?」
川 ゚ -゚)「言った通りだ。もう1ヶ月を超えてる」
爪;'ー`)「嘘……だろ?」
川 ゚ -゚)「嘘じゃない。病院にも行った。何だったら明日にでも行くか?」
爪;'ー`)「何で……そんな……」
川 ゚ -゚)「あんなに盛大に中出しをした奴が良くそんなことを言えるな……」
爪;'ー`)「嘘だ……嘘だと言ってくれよ……」
川 ゚ -゚)「何だ、そんなに怯えなくてもいいじゃないか」
川 ゚ -゚)「パパ」
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:42:39.60 ID:LhSzlsNz0
('、`*川「……何よ急に」
(´・ω・`)「いや、ちょっと気になって」
確かに興味はあった。
どうしたらこんな温厚な母と厳格な父が結婚したのか。
薄らと覚えているのは、父からプロポーズしたと言う事だけだ。
('、`*川「別に話すことでもないわよー」
(´・ω・`)「いいじゃない。話しても減るもんじゃないんだし」
('、`*川「いやよー。恥ずかしいもの」
(´・ω・`)「なんでよ。いいじゃん、僕ももう20歳だよ?」
('、`*川「…………」
僕がしつこくねだり続けた結果、母さんは話してくれた。
('、`*川「実はね……母さんその時2人の男の人に結婚申し込まれてて」
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:44:00.71 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「え?それは……なんというかすごいね」
('、`*川「でしょ?まあその時の一人がお父さんだったんだけど……」
(´・ω・`)「へえ……じゃあなんでお父さんを選んだの?」
('、`*川「お父さん……けっこう頑張ってて、結構強引なところあって」
(´・ω・`)「それは意外だね」
('、`*川「まあ、その男らしいところに惹かれちゃったって言うか……そんな感じよ」
(´・ω・`)「へぇ~……それはそれは……御馳走さまだね」
('、`*川「もう!だから言いたくなかったのよ!」
そう言うと、母さんはキッチンに行ってしまった。
何か母さんと父さんの意外な一面を見たような気分だ。
204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:45:13.94 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「そうか……そんな事が………」
なんかますます分からなくなった気分だ。
じゃあ、なんで父さんは死のうとなんかしているのだろうか。
むしろ母さんと絶対に離れたくないんじゃないのか?
(´・ω・`)「結婚……スイッチ……別れ」
(´・ω・`)「………………」
(;´・ω・`)「………………まさか」
その時、何かが繋がった。
もしかすると………これは……。
(;´・ω・`)「もしかして……父さんは……」
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:46:34.44 ID:LhSzlsNz0
「……ちっちゃい」
「当たり前だろ……赤ちゃんだもん」
「本当に君の子?とても可愛いよ」
「うるせえよ」
「名前……」
「え?」
「名前……どうしようか」
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:47:56.70 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「父さん、入るよ」
僕はもう一度父さんの部屋へ向かった。
今度こそ、真相を聞きだすんだ。
真相と言っても、このスイッチの入手経路や仕組みなんかじゃない。
父さんが……僕にスイッチを渡した理由だ。
(`・ω・´)「……なんだ?」
(´・ω・`)「今日こそ教えてもらうよ。何故こんなものを僕に渡したのか」
(`・ω・´)「それは……お前の中で好きにイメージしろと言っただろう」
(´・ω・`)「デミタスさん」
(;`・ω・´)「!!」
(´・ω・`)「その人が、大きくかかわってるんでしょ?お父さん」
214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:49:35.31 ID:LhSzlsNz0
(;`・ω・´)「誰から……聞いた?」
(´・ω・`)「母さん。僕が強くねだったら教えてくれた」
(;`・ω・´)「……母さんは全部話したのか?」
(´・ω・`)「いや、僕が聞いたのは、父さんがプロポーズした時もう一人母さんに求婚していた人がいるってことだけだよ」
(´・ω・`)「その人が……デミタスさん」
(;`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「父さん……これは僕の勝手な推測だけどさ」
(´・ω・`)「もしかして、デミタスさんと母さんは……交際していたんじゃないの?」
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:51:20.40 ID:LhSzlsNz0
母さんのあの時の口ぶりはどう考えても嘘をついていた。
たかが結婚当初の話をにあそこまで燻ぶるだろうか。
それに、デミタスさんの写真を見つけた時、母さんは冷静を装っていたが、
父さんと母さんと一緒に写っているのに私の友達と紹介したり、
見終えた後、直ぐにキッチンに逃げたりと、完全に動揺していた。
そして、父さんが死のうとしている事。
何故死のうとしているのか僕にはさっぱり分からない。
つまり、僕が生きている間に生まれた理由ではないんだ。
僕が生まれる1ページ前……きっと何かがあったんだ。
(´・ω・`)「きっと、父さんは母さんの事が好きだったんだろうね」
(;`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「でも、母さんには恋人がいた」
(´・ω・`)「父さんは、その壁に苦しんだんじゃないのかな」
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:52:31.11 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「母さんも母さんで、父さんから言い寄られているのは満更でもなかったんだろうな」
(´・ω・`)「どっちにしようか迷っててとか言ってたし」
(´・ω・`)「だから、父さんは強行的に母さんを奪ったんだよ」
(´・ω・`)「それは例えば…そう、強姦とかね」
(;`・ω・´)「!!」
その結果、母さんは妊娠してしまった。
そして、生まれたのが僕だったというわけだ。
(´・ω・`)「父さんは……人の彼女を奪ったんだ」
この結論に至ったのはフォックスのせいでもある。
彼が彼女と最低な別れ方をしていなければこんなことは思いつかなかっただろう。
昔の父さんが強引だったと聞いた時、フォックスの顔が浮かんだからだ。
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:54:11.55 ID:LhSzlsNz0
(;`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「出来れば、もっと反論してほしかった。もっと怒鳴ってほしかった」
(´・ω・`)「違うと否定してほしかった」
(´・ω・`)「それが……僕の父さんだから」
(;`・ω・´)「……間違っていない事を反論するのは好きじゃない」
(;´・ω・`)「じゃあやっぱり……」
父さんは……父さんが僕にスイッチを渡したのは……。
(`-ω-´)「子供は……自分の親を選べない……」
(`-ω-´)「このスイッチは……その親で良かったのかどうかの結果発表の道具かも知れない」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:55:12.84 ID:LhSzlsNz0
つまり、父さんは死ぬのならば僕の手で死にたい。
そう思ってこのスイッチを渡したようだ。
ただ、その背景にはあまりにも複雑な事情があったようだ。
(`・ω・´)「すまない。この20年間、ずっと気がかりだった」
(`・ω・´)「こんな最低な方法で……ショボンを産んですまなかった……」
(´・ω・`)「……なんで言ってくれなかったの?」
(`・ω・´)「……怖かったからだ」
(`・ω・´)「もし、ショボンにこの事を話して、自殺でもされたら……と考えていた」
(`・ω・´)「だから、父さんが死んだ後にでも……知ってくれればよかった、そう考えていた」
ああ、その通りだ。
父さんも、僕も……人の命から逃げて来たんだ……。
僕は……この人の息子なんだ。
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:56:39.15 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「悪いけど……僕はスイッチを押すことはできないよ」
それに今はフォックスに渡している。
……とは流石に父さんには言えなかった。
(´・ω・`)「でも、父さんを許すことはできない。命をバカにしすぎだろ」
(;`・ω・´)「返す言葉もない……」
(´・ω・`)「だったら……その命で……」
(´・ω・`)「母さんを大切にしてよ」
(;`・ω・´)「!!」
そう言って僕は部屋を出た。
何か……心は晴れないけど……確かに感じた物はあった。
それが何だかはわからない。
明日、父さんの泣き声が消えたら……聞いてみよう。
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:58:18.87 ID:LhSzlsNz0
1年後
(´・ω・`)「おっす」
爪'ー`)「おお、早いな」
僕らはいつものようにお好み焼屋に集まった。
フォックスが来る前にある程度注文し、既に焼き始めている。
爪'ー`)「いやあ……めんどくさかったわ……婚姻届」
(´・ω・`)「おお、出したんだ。おめでとう」
爪'ー`)「ああ、サンキュー」
フォックスは1年前に彼女と復縁し、結婚することになった。
理由は彼女の妊娠。
まあバカにはいい薬だろう。
そのままあの子をちゃんと幸せにしろ。
233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:59:53.48 ID:LhSzlsNz0
(´・ω・`)「あれ、煙草……やめたのか?」
爪'ー`)「いやあ流石に子供の前では吸えないだろ……」
つい3ヶ月前に、フォックスの子供が生まれた。
立派な男の子だそうだ。
爪'ー`)「まあ……なんだろうな……父親になると……やっぱ世界が変わるわ」
(´・ω・`)「1年前のお前に聞かせてやりたいよその言葉」
まあ奴がパパだろうと、何だろうと僕らの友情にはなんの変りもないだろう。
(´・ω・`)「そう言えば……相談って何よ」
爪'ー`)「あ、ああそれか」
(´・ω・`)「育児についてなら辞めろよ」
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:01:33.59 ID:LhSzlsNz0
その時、フォックスはポケットから何か小さな箱のようなものを取り出した。
最初は婚約指輪かと思ったがそうではなさそうだ。
それはとても見覚えのあるものだった。
(´・ω・`)「これ………」
爪'ー`)「悪いな……返すよこれ」
それは僕が散々苦悩したあのスイッチだった。
これを押すと、押した人間の父親が死ぬ。
そういや、コイツに預けたままだったな。
あれからコイツの復縁やら妊娠発覚やら忙しかったもんですっかり忘れていた。
(´・ω・`)「結局……これは使ったのか」
爪'ー`)「使えるわけねえだろ。そんな暇なんざねえよ」
(´・ω・`)「だろうね」
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:02:56.00 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)「やっぱ……子供に殺されるって……辛いもんだね。想像しただけで泣けるわ」
(´・ω・`)「……」
ああ、こいつも立派になったなあと思わずには居られなかった。
たった1年で急成長したような感じだ。
(´・ω・`)「でもお前……遊園地で……」
爪'ー`)「ああ、分かってるよ……」
爪'ー`)「それは……仕方ない。俺達で償おう」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
クズの本質的な部分は変わってないようだ。
死ねばいいのに。
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:04:32.98 ID:LhSzlsNz0
爪'ー`)「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ」
そう言うと、フォックスはすくっと立ち上がり二〇〇〇円をテーブルに置いた。
(´・ω・`)「ん?何かあんのか?」
爪'ー`)「ああ、アイツだけに育児を任せてらんねーからな」
(´・ω・`)「お前とこうやって集まるのも減るのかな」
爪'ー`)「さあな……。でも」
爪'ー`)「何か困ったことがあれば俺は真っ先にお前に相談するぜ」
爪'ー`)「じゃあな。明日はいい酒持っておまえんちに行くわ」
そう言うと、フォックスは店を出て行った。
その背中はとてもたくましくそして頼れるように感じられた。
(´・ω・`)「……頑張れよー」
僕は小さい声でその背中に向けて声をかけた。
242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:06:14.95 ID:LhSzlsNz0
一人残ったお好み焼屋。
アイツ……頼むだけ頼んで帰りやがって……。
これ以上どうやって食べればいいと言うのか。
「ここ……いいかな」
その時、目の前に一人の男が座り込んだ。
あまりに突然のことで僕は驚かずには居られなかった。
(;´・ω・`)「え?………え?」
困ります、と言おうとしたが出来なかった。
何故ならそれは僕の知っている顔だったからだ。
(´・_ゝ・`)「……初めまして。ショボンくん」
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:08:03.17 ID:LhSzlsNz0
(;´・ω・`)「デミタスさん……」
(´・_ゝ・`)「おや?知っていてくれたのか……ありがたいね」
デミタスさん……母さんの元恋人。
父に母を取られた男でもある。
(´・_ゝ・`)「この豚玉……もらってもいいかな?」
(;´・ω・`)「あの……何の用ですか?」
何故この人は僕に会いに来たんだろう。
さっぱりわからない。
(´・_ゝ・`)「いいじゃないか。こうやって食事するのが夢だったんだよ」
(;´・ω・`)「ゆ……夢?」
(´・_ゝ・`)「ああ」
(´・_ゝ・`)「自分の息子と……ね」
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:10:09.72 ID:LhSzlsNz0
(;´・ω・`)「え?………は?」
(´・_ゝ・`)「あれ、知らなかったのかい?てっきり君の母さんが話してると思ったが」
何だ?この男は何を言っている?
(´・_ゝ・`)「君は僕の精子から生まれた正真正銘の僕の息子だよ」
(;´・ω・`)「う……嘘だ……!!」
(´・_ゝ・`)「いいや、本当だよ。君は僕の息子だ……まあシャキンの奴は知らないだろうな」
僕が……僕がこの男の……息子?
バカな……。
(´・_ゝ・`)「奴が、ペニサスを押し倒した次の日、彼女は俺に相談してきた」
(´・_ゝ・`)「経過はどうであれ、一度他の男に喰われた女などいらない。僕はその日付けで別れたよ」
(´・_ゝ・`)「でも、それだけでは癪だから、少しだけいたずらを加えてみた」
253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:11:42.60 ID:LhSzlsNz0
(;´ ω `)「い……いたずら?」
(´・_ゝ・`)「ペニサスにアフターピルを飲ませた。これで奴の子供は生まれない」
(´・_ゝ・`)「その後、俺は念入りに彼女を犯したよ。それはもう確実にできるほどに」
頭が………頭がくらくらする。
(;´ ω `)「……」
(´・_ゝ・`)「そして、彼は自分の子供だと思い、ペニサスと結婚、そして出産した」
(´・_ゝ・`)「いい気味だろう?奴は結局僕には勝てなかったんだ」
(´・_ゝ・`)「これから奴は一生俺の子を育てるんだ。ざまあみろだ」
(´・_ゝ・`)「そして……これで後は月日が経てば舞台は整うまでとなった」
(;´ ω `)「どういう……ことだ?」
そう言うと、デミタスはテーブルの上のスイッチを掴んだ。
(´・_ゝ・`)「このスイッチ……シャキンに渡したのは俺なんだ」
256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:13:13.71 ID:LhSzlsNz0
なるほど……これで合点が行った。
何故、今更になって父さんがあのような行動に出たのかが。
(´・_ゝ・`)「俺が渡せば奴は素直に聞いたよ」
(´・_ゝ・`)「やっぱり人の女を襲ったことを悔やんでいたからな」
(´・_ゝ・`)「これで、君が押せば丸く収まるはずだった……」
(´・_ゝ・`)「でも、君は押さなかった。流石は我が息子だ」
(;´ ω `)「だって……僕が、僕が押したら……」
(´・_ゝ・`)「ああ、僕は死ぬ。そして奴は気付くのさ」
(´・_ゝ・`)「ショボンは自分の息子では無いと」
(´・_ゝ・`)「しかし、その時既に俺は死んでいる。復讐すらすることもできない」
(´・_ゝ・`)「完璧な作戦だったんだけどな……何処で間違えたんだろうか」
259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:14:28.38 ID:LhSzlsNz0
(´・_ゝ・`)「まあ仕方ないからね。君に八つ当たりすることで解消することにしたよ」
(´・_ゝ・`)「これだけ真実を言えば、僕もまあまあ満足だ」
(;´ ω `)「そんな……」
(´・_ゝ・`)「とにかく、何が言いたいのかって言うと、早くこのスイッチで僕を殺してくれってことだ」
(´・_ゝ・`)「君に殺されるなら本望だね。気持ちよく死ねるよ」
(;´ ω `)「う………………あ…………」
訳が分からない。
でも、でも、でも
僕は……スイッチを手に取った。
取るしかなかった。
だって……だってこれは……。
(´・_ゝ・`)「ああ、そうだ。これだけは言ってから死のう」
(´・_ゝ・`)「まだ早いけどね」
明日の2月27日、僕は21歳になる。
264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:16:31.84 ID:LhSzlsNz0
(´・_ゝ・`)「誕生日おめでとう」
268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:17:46.01 ID:LhSzlsNz0
以上です!
よく中二設定で使われる押すと死ぬスイッチ。
これに「家族」というテーマを加えてみました。
目指すところは、「近い人間でも価値観までは理解できない」です。
場面転換に入れていた会話はクーとフォックスの会話です。
もちろんスイッチについては何の説明もありません。
ただ押すと親父が死ぬ、それだけです。
沢山の支援ありがとうございました。
それでは続いての作品をお楽しみください。
(´・ω・`)Happy Birthday!父親殺しのようです
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この記事へのコメント
デミタスの説明はブラフ、本当にショボンはシャキンの子で、デミタスはプライドを満たすために(狂気もあるが)ショボンにスイッチを押させシャキンを殺させて一生ショボンに罪悪感を背負わせるENDにするな俺なら
お前誰だよ