February 25, 2011
LAST WORD「 」 のようです
LAST WORD「 」 のようです は、
RENTRER EN SOI というV系バンドの、異なる二曲の『Last word「 」』から構成されています
解散済みのマイナーバンドということで、先に曲だけ告知させていただきますが、
歌詞 原曲は、ネタばらし防止の為最後に載せたいと思います
それではご清聴願います
二曲の異なる 『Last word「 」』
それぞれが 彼らの物語
⌒*リ´・-・リ「……」
最期の季節を迎えるまで 傍に居てほしい
ずっと 手を握ったまま
鐘は鳴り響く
私は 終わる
冷たい枕と 貴方の指輪
もう明日は来ない この温もりさえ
失くしてしまう 壊れてしまう
もう 明日は 来ない…………
⌒*リ´・-・リRAST WORD「 」 のようです
―――
「…そう」
「うん。…ごめんなさい でも」
「じゃあ」
「…ぇ?」
「ごめん。さよならだね」
「え。でも私達、婚約……」
「余命幾許もない君と過ごすって?
そんなの、僕、耐えられない。だから…」
「待って!!」
「さよなら」
―――
51 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:00:21 ID:K2oboKTw0
病院の一室
白い壁紙
白いシーツ
白い 私
心電図と脈波計の音と、加湿器の音しか聞こえない ちいさな個室
胸に三本 左腕に一本 顔の半分と覆うマスクから一本 布団の中から一本
コードやチューブが伸びている
私は病気で
余命は幾許もなくて
もう一人では立てなくて
ただ窓の外を眺めている 結婚を控えた花嫁 …だったもの
ぴ ぴ ぴ ぴ
脈波計が 私の鼓動を認識してくれている
窓の外を ちいさな雪が、ひらひらと舞っていて
ベッドの隣にある、もう自分では手が届かないサイドテーブルには
たくさんの薬と 枯れた花
毎日見舞いに来る家族はその花を捨てようとするが、私はそれを許さない
あれは最後の 彼からのプレゼント
彼が最後に見舞いに来たのが 三週間程前
彼が結婚指輪と白い花束を手に プロポーズに来たあの日
そして 余命を告げて捨てられた あの日
―――
( ・∀・)「退院したら、結婚しよう
必ず君を、幸せにしてみせる」
そう言って、彼の手で嵌められた銀の指輪
本当に 本当に嬉しかった
⌒*リ´・-・リ「本当?ありがとう …でもね…………」
申し訳なくて 涙が出てくる
(;・∀・)「え?え?なに? なんで泣くんだよ もっと明るい顔してくれよ」
私に喜んで欲しかったのであろう彼は 私の涙を見て狼狽えている
⌒*リ´;-・リ「私…もうここから出られないの
もう あとちょびっとしか生きられない」
( ・∀・)「………え?」
彼は呆けてしまう でもこれは、変えがたい事実
⌒*リ´;-;リ「そんな私でも……いい?」
それでも私は 可能性に縋った
縋ってしまった
( ・∀・)「……」
彼の表情が固まる
⌒*リ´・-;リ「お嫁さんに…してくれる?」
( ・∀・)「……………………」
―――
残されたのは、
密かに身籠ったまま朽ちてゆく身体と 彼への未練
枯れ果てた花束と 一対の銀の指輪だけだった
⌒*リ´・-・リ「…………もららー………」
がりがりに痩せて骨が浮き出た 左手の薬指
そこにはまだ、彼が嵌めた そのままの姿で、銀色の指輪が光っている
彼の指輪は、ケースに仕舞われたまま サイドテーブルに飾られている
瞳を閉じれば思い出せる 鮮やかな彼との思い出
温かな体温と 遠くから聞こえる彼の声
幸せな幸せな 優しい思い出
急速にセピア色に褪せていく 寂しい思い出
⌒*リ´;-;リ「も…ら…………」
涙が一筋 頬を伝う
熱い熱い 一滴の想い
それは枕に吸われて 冷たいシミを作り出す
55 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:04:01 ID:K2oboKTw0
もう立てない
もう話せない
もう笑えない
もう 彼の指輪にも届かない
窓の外を ちいさな雪が、ひらひらと舞っている
病院の近くの教会の鐘が 鳴る
私も彼と二人で鳴らすはずだった 鐘が鳴る
悲しみの涙が 枯れることはない
最期を迎えるまで 傍に居てほしかった
嘘でもいい 偽りでもいい
愛してると 言ってほしかった
手を握って 二人でお揃いの 銀色の指輪を眺めて
最期まで 愛してほしかった
視界が涙で滲む
ぼやけた景色が 色彩を鮮やかに変えて眩みだす
曇り空が眩しい
空に吸い寄せられるような 急な浮遊感
純白に染まる視界を 目に焼き付ける
きっとこれが 最期だ
私は 終わる
冷たい枕と
貴方の指輪
もう 明日は来ない
この 温もりさえ
失くしてしまう
壊れてしまう
もう 明日は来ない
⌒*リ´・-・リLAST WORD「 」 のようです 終
Last word「 」 リリ視点
巡りゆく太陽と月の葬に抱かれて
銀色の日差し揺れている
白日の回廊「声」遠くに聞こゆる
暖かくて優しくて
最後の季節を迎えるまでそばにいて欲しい
ずっと手を握ったまま
消えゆく景色
眼に焼き付け
最後の季節迎えるまでそばにいて欲しい
ずっと手を握ったまま
―鐘は鳴り響く―
私は終わる
冷たい枕とあなたの指輪
もう明日は来ない・・・
このぬくもりさえなくしてしまうこわれてしまう
もう明日は来ない
58 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:08:01 ID:K2oboKTw0
*
59 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:08:37 ID:K2oboKTw0
( ・∀・)「…………」
心が痛い 離れてしまうから
もう二度と会えない 募る悲しさ
何故だろうこんなに 貴方の笑顔が浮かんで
何時しか涙が溢れてくる
時は無情に 終わりを告げていた
心が痛い
孤独に沈む
生きる意味さえ見失ってゆく
信じることさえ見失ってゆく
もう明日は来ない
( ・∀・) LAST WORD「 」 のようです
60 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:10:08 ID:K2oboKTw0
―――
病院の一室
白い壁紙
白いシーツ
白い 彼女
心電図と脈波計の音と、加湿器の音しか聞こえない ちいさな個室
胸に三本 左腕に一本 顔の半分と覆うマスクから一本 布団の中から一本
彼女 から、コードやチューブが伸びている
日に日に痩せ衰えていく彼女が恐ろしくて
現実から目を逸らした
仕事に打ち込み、貯蓄を切り崩し、彼女の為に 婚約指輪を買った
これを見せれば彼女は喜ぶ
これをあげれば彼女の病気は良くなる
何故か そう盲信して
何故か その子供じみた発想を本気にしていて
「退院したら、結婚しよう 必ず君を、幸せにしてみせる」
「本当?ありがとう …でもね…………」
「え?なに? なんで泣くんだよ もっと明るい顔してくれよ」
「私…もうここから出られないの …もう あとちょびっとしか生きられない」
彼女は、泣きじゃくりながら言った
もう助からないと 何度も、何度も
もう自分なんかでは助けてなんてあげられない
全てが、遅かったのだ
祈りは、無力だったのだ
視界が、暗転した
62 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:11:20 ID:K2oboKTw0
結果、俺は逃げ出した
恐くなって 逃げ出した
リリをお嫁さんにするって リリを幸せにするんだって 誓ったのに
純白の薔薇の花束と、婚約指輪まで用意したのに
( ・∀・)「……最低だな 俺って」
全てを投げ出して、全てを置き去りにして
自分の後悔さえ、置き去りにしてきてしまった
自分は去り際、彼女にとても酷いことを言ってしまった
パニックに陥って保身に走ったとはいえ 許されない言葉だったと、今なら考えられる
彼女の所へ戻って謝ることも考えたが、それは許されないことだろう
きっと彼女は、俺の顔すら見たくないはずだ
いっそ、忘れてしまった方がいいのかもしれない
俺は彼女には相応しくない男だった それだけの話だ
忘れてしまおう
俺には まだ生きなければいけない人生がある
忘れてしまおう
忘れてしまおう……
しばらく、女を作る気にはなれなかった
リリを、思い出すから
女で遊ぶ気もなかった
全てが罪悪感となって自分を苛むから
友達の長岡が連れていた リリとは似ても似つかないギャルのような女すら
リリに重ねてしまうくらいだった
そのうち 街もまともに歩けなくなった
そこらじゅうにいるカップルが、全て在りし頃の自分達に重なって見えてしまうようになった
並んで歩いたり、手を繋いだり
隣にリリを乗せてドライブに行ったり、笑いあいながら食事をしたり
街を歩くだけで、涙がとまらなかった
リア充が羨ましいわけでは、決してない
リリに 会いたいのだ
カップルを見るのが恐くて、俯いて歩くことが増えた
そのうち、街へ出ていくことすらなくなった
そして全てに耐えられなくなり、引きこもりになるのに時間はかからなかった
リリに会いたい
リリに謝りたい
それで許してもらおうとは思ってないし、自分を許すつもりもない
それすらも自己満足であると知っていたから、行動にすら起こせないでいた
リリの情報は、母親から時々入ってくる
川 ゚ –゚)「リリちゃん、あなたの名前を呼んで泣いているんですってよ。
会いに行ってあげなくていいの?」
川 ゚ –゚)「ずっとあなたからもらった指輪を付けているんですって。
だから、リリちゃんはあなたのことを怒ってたりはしていない。
会いに行って、それでちゃんと、謝ってきてあげなさい」
耳を 塞ぎたかった
もう 黙れ
65 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:13:20 ID:K2oboKTw0
久しぶりに、携帯が鳴る
最近電源を落としていたのもあるが、そもそも電話をかけてくる奴はあまりいない
基本メールで済ましているからだ
ディスプレイに載っている名の人物も、基本はメール派だったはずだ
電話がかかってくるということは、火急の話なのだろう
通話ボタンを押して、耳に押し付ける
最初に聞こえてきたのは 罵声だった
( ゚∀゚)『やっと出やがった!!てめぇ今何処に居る!?』
_,
( ‐∀・)「うーっさいなぁ。家だよ」
_
( ゚∀゚)『今すぐ出てこい!!』
( ・∀・)「なんでだよ」
_
( ゚∀゚)『リリちゃんが!!』
( ‐∀‐)「いかね」
( ∀)『っざけんな!!いいから出てこい…いや、すぐに病院へ行け……
……リリちゃん……今日が、峠なんだよ…………』
( ・∀・)「…………」
66 : ◆zynqho4iRI:2011/02/21(月) 10:14:09 ID:K2oboKTw0
もっと早く 気付くべきだったのだ
リリの為に会いにいかないなんて
会うのが恐い自分への、都合のいい甘えなのだと
それでいて会いに行きたい衝動を抑えているかわいそうな主人公を 演じていたのだと
長岡の言葉で、自分の中の何かが破裂した
リリに会いたい
リリと話がしたい
今更だってわかってる
でも 今を逃したらもう二度と話せないかもしれない
それすらもいいと思っていた
それすらも罰だと思っていた
とんだ自己満足だ
罰などという言葉にすら溺れていた
電源ボタン長押し
通話を強制的に切り、電源も落とした
軽く身支度を整え、少し伸びた髭もそのままに家を飛び出した
病院に駆け込み、受付も通らずに階段を駆け上がる
以前俺が通っていたことを知らない看護師は狼狽していたようだが、気にしない
階段を二段跳びで駆け上がる
彼女の病室は四階だ
このくらいなら、エレベーターを使うより少し早いと知っていた
しかし、半月ほど引きこもって鈍った体は悲鳴を上げていた
二階を通過したくらいから息が切れ始め、三階に到達するときにはもう足が重かった
四階に向かっている手摺にしがみ付き、脇腹を押さえる
(;・∀・)「畜生……ッ」
こんなところで止まっているわけにはいかないのに
上を見上げる
屈折した階段の曲がり角 小さな踊り場にある小さな窓
その向こう側で 小さな花びら……否、綿雪が舞っていた
雪はちらりと姿を見せ、すぐに白い空へと融けて見えなくなってしまった
それはとても儚くて まるで
まるで………… ―――
(#・∀・)「っざっけんな!!」
その先の思考を打ち消すように叫び声をあげ、また階段を駆け上がった
踊り場を曲がり、目の前の四階目掛けて踏み出した時、鐘が聞こえた
近くにある教会の鐘だろう
今日は結婚でも式あるのだろうか
そんなことはどうでもいい むしろ少し、神経を逆撫でられた気分だった
リリが病気にならなければ、先に自分たちが鳴らしていたであろう鐘だ
舌打ちをし、最後の段を蹴る
ここからリリの病室まで、あと少しだ
駆ける
鐘の余韻がまだ響いている
反響を繰り返し、徐々に小さく 聞こえなくなっていく鐘
駆ける
リリの病室が見えた
引き戸に嵌められた硝子窓の向こう側に
親族や医者の背中と、リリに取り付けられた脈波計が見える
脈波計はまだ、しっかりリリの脈を知らせてくれていた
……波は途切れ途切れだったが
体当たりするように戸に辿り着き、縋るように引き戸の取っ手を弄る
焦れた手が取っ手を見つけ、そこにかけた指に力を込める
リリがいる
戸の向こうに 硝子の向こうに
瞑られた瞼から、光るものがぽろりと 頬の上を転がる
はやく、あれを拭ってやらなければ
はやく、離れててごめんなって言ってやらなければ
はやく、はやく、はやく…………
引き戸を掻き毟るように抉じ開ける
今一瞬、リリが微笑んだ気がした
( ・∀・)「リ……―――」
ピ――――――――――――――――
( ・∀・)「…………」
( ∀)「……………………」
なんだこれ
なんだよこれ
間に合ったのか?
いや、どう見ても間に合ってないだろ
なんなんだよ
ふざけんなよ 畜生
リリ
リリ
リリ
リリ……
俺がうじうじしてるから
あんなところで立ち止まってたから
リリは一人でずっと、ずっと頑張ってたっていうのに
俺が、俺が、俺が、俺が…………
( ;∀;)「うわあああああああああああああああっ」
( ・∀・) LAST WORD「 」 のようです 終
Last word「 」 モララー視点
巡りゆく太陽と月の葬に抱かれて
銀色の日差し揺れている
白日の祈りは儚さを抱いて
言葉にできない寂しさが・・・
心が痛い
離れてしまうから
もう二度と会えない
触れる事さえ
二人重ねた想い出は消せない
心が痛い
離れてしまうから
もう二度と会えない
募る悲しさ
何故だろう こんなに
あなたの笑顔が浮かんで
いつしか 涙が溢れてくる
時は無情に
終わりを告げていた
心が痛い
孤独に沈む
生きる意味さえ
見失ってゆく
信じる事さえ
見失ってゆく
もう明日は来ない
おわったあぁぁぁぁ!!
ルール的にグレーまっしぐらだったので、あえて二作に分けてみました
リリ視点は入院中に病院で仕上げたとか不謹慎ですね
モララー視点は直前に仕上げました
リリ視点
モララー視点
おまけ
イヤホン推奨
左がリリ視点 右がモララー視点で流れるようです
おまけを聴くとわかるように
↓リリ
―鐘は鳴り響く―
私は終わる
冷たい枕とあなたの指輪 ↓モララー
もう明日は来ない・・・ 何故だろう こんなに
このぬくもりさえ あなたの笑顔が浮かんで
なくしてしまう こわれてしまう いつしか 涙が溢れてくる
もう明日は来ない (END) 時は無情に終わりを告げていた
同じ曲なのに、リリ視点側の曲の方が先に終わります
音楽フェス用に用意した作品は以上です。
あと何時間かで奇跡的に何かが浮いてこない限り、これで終了です
長々つらつらと楽しませていただきました
これからは読む側に回りたいと思います
ありがとうございました