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(*‘ω‘ *)は風船になったようです

1 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:37:40 ID:NCqebk9A0
(*‘ω‘ *)「ぽっ」

気がついた時、私は街路樹の上にいた。
見上げると葉と葉の隙間から青い空が、見下げると歩道が見える。
人通りはない。

(*‘ω‘ *)「ここどこだっぽ」

ここがどこなのだろうか。なぜこんなところにいるのだろうか。
思い出せない。

2 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:38:08 ID:NCqebk9A0
とりあえず私はここから降りることにした。
人が今はいないとはいえ、もし誰かに見つかってみろ。
女が街路樹の上にいるなんて危ない、怪しい。ただの不審者だ。
いつまでもここにいるわけにはいかない。

(*‘ω‘ *)「あ、あれ…おかしいっぽ」

しかし体がいうことをきかない。
まるで金縛りに合ったかのように動かないのだ。

3 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:38:44 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「参ったっぽ」

(*‘ω‘ *)「‘早く逃げなくてはいけないのに’」

(*‘ω‘ *)「?」

無意識のうちに発せられた自分のつぶやきにはてな、と思った。
なぜ逃げなくてはならないのだろう。
思い出せない。

4 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:39:37 ID:NCqebk9A0

焦燥感が私を襲う。
しかしやはり体は自分の意思では動かず、どうする事も出来ないでいると、ふと下の方から子供の声が聞こえてきた。

( ><)「あ、からまっちゃってるんです!」

(*‘ω‘ *)「…?」

視線だけを下げると小学生くらいの男の子がこちらを見ていた。
何が絡まっているのだろうか。

5 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:39:57 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「いや、そんなことはどうでもいいっぽ」

それよりも気になることがある。
わたしはこの子供を知っている。
この子を見た瞬間、ほっとするような、しかし悲しいようなそんなえも言われぬ感情がわき上がってきた。
だけれど誰かわからない。
顔見知りとか、そんな浅い関係ではないはずなのに。
思い出せない。

6 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:40:55 ID:NCqebk9A0


先程の声が聞こえてからしばらくして、がさがさと葉が揺れるような音が聞こえてきた。

( ><)「届いたんです!」

子供の声が、今度は真下から聞こえてきた。あの子はどうやらこの木に登ったらしい。
落ちたりしたら危ないのではないか。

( ><)「ちょっと待っててくださいね!」
(*‘ω‘ *)「危ないっぽ!早く降りるっぽ!」

しかし私の声は再び鳴り始めたがさがさという音に掻き消されてしまった。
あの子は何をしているのだろうか。ここからでは見ることができない。

7 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:41:40 ID:NCqebk9A0

私はあの子が滑って落ちないことを祈っていると、突然体が軽くなった。

(*‘ω‘ *)「!!!」

( ><)「とれたんです!」

軽くなるどころではない。
私は、信じられないが、浮いた。
しかし浮いたと思ったら上に昇るのではなく、下に引っ張られた。
木から少し下、あの子のだいぶ上の方で私は止まった。

( ; ><)「えへへ、からまってるのとれてよかったんです」

( ><)「ふうせんさん!」

にこにことしながら私を見て言った。

8 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:42:08 ID:NCqebk9A0


ああ、

そうだ、

私は風船だった。

9 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:42:58 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「忘れてたっぽ…」

風船だから、風か何かに吹き飛ばされて、この木に引っ掛かったのだ。なんでそんなことを忘れていたのだろう。

( ><)「なにをわすれてたんですか?」

(*‘ω‘ *)「えっ」

何気なくつぶやいた言葉に、子供は反応した。

(*‘ω‘ *) 「わ、私の声、聞こえるのかっぽ?」

( ><)「?きこえるんです!」

どうして物である私の声がこの子に聞こえるのだろう。
しかも全く驚いた様子はない。
子供特有のあれなのか?きっとそうだ、そういうことにしておこう。
これ以上疑問を増やしたくはない。

10 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:43:46 ID:NCqebk9A0

( ><)「えへへ」

(*‘ω‘ *)「…」

かわいらしい子だ。
私から垂れ下がる糸をぎゅっと握り、こちらを見てにこにこ笑っている姿は本当に愛らしい。
いつまでもこの子と一緒にいたい。

だが、先程からの焦燥感は消えない。
本能が私にここから去れという。
早くどこかに行かなくては。

(*‘ω‘ *)「助けてくれてありがとうっぽ」

( ><)「どういたしましてなんです!」

(*‘ω‘ *)「っぽ。じゃあその手を…」

放してほしい。そう言わなければ。

11 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:44:10 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「ぽ…」

私は何を躊躇しているのか。
早くどこかに逃げなくては。

いや、なぜ逃げなくてはならない?

―そんなことは決まっている。あいつから逃げなくてはならないからだ。

?あいつって誰?

思い出せない。

12 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:44:55 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「ぽっ…、ぽっ…」

思い出せ、思い出すんだ。

―そんなことをしている時間はない。思い出さなくていい。思い出したくない。


( ><)「ふうせんさん?」

(*‘ω‘ *)「ぽっ?」

( ><)「どうしたんですか?具合でもわるいんですか?」

心配そうな顔で私を覗き込む。なんて優しい子なのだろうか。
優しくて、かわいらしくて。

13 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:45:37 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「!」

そうだ、この子と一緒に逃げればいいのだ。そうすればこの子と離れ離れにならなくて済む。この子も守れる。

―いや、最初からそうするつもりだった。だけど状況がそれを許さなくて、私は一人で…。

なぜ守る?どんな状況?
思い出せない。

だけどそんなことはもうどうでもいい。

14 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:46:01 ID:NCqebk9A0

(*‘ω‘ *)「とにかく、ぼく、一緒に行くっぽ」

早く

( ><)「?どこに行くんですか?」

早く

(*‘ω‘ *)「どこって…、遠くの方だっぽ!」

早く

( ><)「ぼうけんですか!」

早く

(*‘ω‘ *)「そうだっぽ!さあいこうっぽ!」

早く

( ><)「はいなんです!ぼうけん…」

「ビロード、こんなところにいたのですか」

15 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:46:26 ID:NCqebk9A0

低く、暗い男の声が、ビロードが話しているのを遮った。
その声の主の方を見る。
見なくたって誰だかわかる。

(*‘ω‘ *)「あ…」

思い出してしまう


( ><)「あ、おとうさん!」
( <●><●>)「おや、いいものをもっていますね」

来るな

( ><)「そこの木にからまってたんです!」

嫌だ

( <●><●>)「取ってあげたのですか、ビロードは優しい子ですね」

触るな

( ><)「ほうっておけなかったんです!だって」



( ><)「おかあさんにそっくりなんです!」

うわあああああああああああああああああああああああああああああああ

16 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:46:49 ID:NCqebk9A0
薄暗い部屋の中で、私は拘束されていた。ぐちゃ、ぐちゃという音が部屋の中に響く。
朦朧とした意識の中、私はただひたすら助けを請う。

『い゛だ…い゛』

『ぐる、じ、い…』

『た、たず…け…』

『大丈夫です』

返ってきた声はあまりにも優しいものだった。
だけれどぐちゃぐちゃという音は消えない。

『ほら』

『あなたの中の悪いものはすべて取り除かれました』

『ええ、あなたはもう大丈夫です』

『もう、あなたは空っぽです』

そうだ、私は、もとは、人間で、この子は、私の、子供で、この男は、私の、夫で、私は、この、男に、風船に、されたのだ。
思い、出した。

17 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:47:17 ID:NCqebk9A0

(* ω *)「…」

かろうじて、意識は、保たれて、
男が、何か、話しているのが、聞こえてくる。

( <●><●>)「ええ、ええ、必ず戻ってきてくれるというのはわかってました、ええ、逃げようなんてそもそもおかしいのですよ、わかりますね?あなたは私の妻なのだから」

( <●><●>)「風船というのは手を放せばどこまでも遠くに飛んで行ってしまうものだと思いますでしょうが、ね、そういうわけでもないのですよ、ええ」

( <●><●>)「ですがね、やはり持ち主のもとにもどってくるのは稀です。しかしあなたと私は運命で結ばれているのですよ、ええ、私は何を言っているのでしょうね、ええ、私は嬉しいのですよ、ただあなたが戻ってきてくれて」

18 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:48:00 ID:NCqebk9A0

( ><)「おとうさん?」

( <●><●>)「おや、ビロード、失礼しました。そろそろ帰りましょう。風船の紐、放しちゃいけませんよ」

( ><)「はいなんです!」

小さな手で、ぎゅっと、握り締められた。
私は、もう、逃げられない。

19 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:49:44 ID:NCqebk9A0
以上です。
オムニバス形式でやっていきたいと思います。

20 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/03(日) 00:51:57 ID:bP8bdIooO
GWラノベ?

21 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/04(月) 02:24:17 ID:fdtFYBX.0

いいねいいね
こういうのもっと読みたい

22 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/05(火) 13:52:18 ID:DmhFP0bQ0
>>20 GWラノベ用に書いていたんだが間に合わなかった上、一話完結にできなかったのでたてさせてもらった

23 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 14:04:46 ID:O2wFDnGw0
(雅´ωメ)

24 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/07/09(土) 15:28:35 ID:.z.XO9nY0
   *      . .,、.;.,,,、  *
    i     ,;;;''    ゙;.  i  *
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  *  i  '';,.    :,'  * たんぽっぽ
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      .∧ ∧ ii
   * .(*‘ω‘ *)ii  *   *
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