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(´<_` )最前線でワルツを、のようです
1
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 17:49:32 ID:nR.OV5TA0
1レス目に概要を書いておくと何かと便利と思いますので
・ファンタジー
・厨二
・能力バトル
では始めます
2
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 17:50:15 ID:nR.OV5TA0
砂漠を走り続けていた男は、もううんざりだというように立ち止まり、後ろを振り返った。
(´<_`; )「もういいっつーの! 何なんだよおまえら!」
無骨な男たちを乗せた数台のジープが彼を取り囲んで停止する。
一台のジープから一人の軍人が降りてきた。
(゚、゚トソン「兄者! 大量殺人および強盗・強姦・放火・死体遺棄・拉致監禁……。
その他諸々の容疑で逮捕する! お縄につけぇーい!」
男は空を仰いだ。
彼の憂鬱な気分には似合わない、呆れるような快晴だった。
3
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 17:52:32 ID:nR.OV5TA0
最前線でワルツを 一話「兄弟」
4
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 17:58:53 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚トソン「人違い?」
(´<_` )「ああ」
隣にいた軍人と一言、二言言葉を交わし
(゚、゚#トソン「虚偽罪も追加する!」
叫んだ。
男はまた逃げだそうかどうか迷っている。
(´<_`; )「マジなんだって」
(゚、゚#トソン「おまえら油断するなよ!
弱そうに見えるが、こいつはもう数百人は殺してる大量殺人鬼だからな!」
(´<_` )「お姉さん、人の話聞かないタイプだね。そうやっていつも男を逃がしてるんだよ」
(軍;゚∀゚)「ば、馬鹿!」
(゚、゚#トソン「僕は男だ! ば、ばばっ、馬鹿にするなよー!」
(´<_`; )「ちょ、ちょっと待って! タンマ! 話をしようぜ!」
(゚、゚#トソン「貴様とする話など無い!」
(´<_`; )「ほら、最近の流行とか好きなタレントとか」
(゚、゚#トソン「この状況で世間話などするかー!」
5
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:05:15 ID:nR.OV5TA0
(´<_` )「じゃああれ、名前は?」
(゚、゚#トソン「トソンだ! お前を殺したのは都村トソンだ覚えておけ!」
(軍;゚∀゚)「隊長ー!」
腰の剣を引き抜いたトソンは、猛然と男に向かっていった。
部下の叫び声はトソンには届かなかった。
(´<_` )「トソンか! 覚えておく」
直後、トソンの剣が斜めに振り下ろされる。
そこにいた数十人の部下の中にトソンの太刀筋を捉えられた者はいなかった。
それほどまでに凄まじい一撃だった。
男は膝をつき、仰向けにゆっくりと倒れた。
(゚、゚トソン「え?」
(軍゚∀゚)「隊長! しとめたのですか!?」
(軍゚∀゚)「いや待て、生きているぞ!」
(軍゚∀゚)「峰打ちだったのですか?」
(゚、゚トソン「あ……え、うん、そうだ!」
(軍゚∀゚)「流石は隊長! 縛り上げて連行しましょう!」
(゚、゚トソン「あ、ああ。さっさとやれ!」
6
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:12:35 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚;トソン(峰打ちにしたつもりは無いのに……無意識だったのか?)
トソンは男の様子を念入りに確かめたが、完全に気絶していた。
(゚、゚トソン「ジープに積め! とりあえず近くの村まで護送だ」
(軍゚∀゚)「了解です!」
(軍゚∀゚)「いやー意外と早く兄者探しも終わりましたね。
これで俺たちも上級軍隊に昇格できちゃったりして」
(軍゚∀゚)「それにしても噂より弱かったな」
(軍゚∀゚)「馬鹿、隊長が強かったんだよ」
(゚、゚トソン「無駄話している暇があったらさっさと作業をしろ!」
軍人たちは兄者を縄で縛ったあと、ジープの荷台に放り込んだ。
トソンは男を一瞥した後、ジープの助手席に乗り込む。
男を乗せたジープは、、村に向かって発進した。
( <_ )(ラッキー)
◆◇◆◇◆◇
ジープが着いたのは、砂漠のオアシスを囲む人気の少ない村だった。
小さな拘置所があったので、荷台に乗せていた男をそこに放り込む。
7
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:18:32 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚トソン「すみません。帝国軍の者です。ガソリンと食料を分けて頂けないでしょうか」
トソンが村の者に頼み込むと、彼らは快く要求を受け入れた。
(軍゚∀゚)「隊長! 兄者が目を覚ましました!」
(゚、゚トソン「すぐ行く! 五人ほどついてこい。残りは休憩していていい」
急いで拘置所に向かうと、先ほどまで気絶していた男が涼しい顔をしてあぐらをかいていた。
上半身は執拗に縄で縛られていて、指一本動かせない状態だ。
(゚、゚トソン「お前も年貢の納め時だな」
(´<_` )「それはいいとしてトソンさん。ここは何処だい」
(゚、゚トソン「カラスコの村だ」
(´<_` )「帝国まではあとどのくらいあるのかな」
(゚、゚トソン「このままジープで行けば一週間で着くだろう」
(´<_` )「なるほど。ああ、あと食べ物が欲しい。水もな」
男の余裕そうな態度に軍人の一人がかみついた。
(軍゚∀゚)「態度がでかいぞ死刑囚!」
(´<_` )「俺は死刑になるのか?」
8
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:23:22 ID:K/sUCVm20
支援支援
9
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:25:56 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚トソン「当たり前だ。今まで何をやったか忘れた訳ではあるまい」
(´<_` )「覚えてるとも。一つの村を滅ぼし、村人を全員殺した」
(゚、゚トソン「それだけではない。お前を追跡した帝国の兵士たちはもう何百人も犠牲になっている。
お前は悪だ。滅すべき悪。自覚もあるだろう、兄者」
男は薄く笑った。
(´<_` )「自覚があるかどうかは、わからんな」
(軍゚∀゚)「この……クズ野郎が!」
男を閉じこめている鉄格子の隙間から、軍人の一人が警棒を差し込み、男の頭を殴った。
( <_ )「……痛ってえ」
(゚、゚トソン「お前みたいなゲスにも、痛みという感覚はあるのか。
帝国に戻ればもっと痛いことが待っている。覚悟するんだな」
トソンは足早に拘置所から出て行き、追うように部下もついていった。
彼の笑い方が妙に寂しそうで、トソンは少し気になった。
◆◇◆◇◆◇
村の者は帝国の人間を歓迎していた。
特に村長は宴の席を用意し、軍人一人一人に酒を注ぐなどして、彼らをもてなした。
10
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:29:51 ID:KWMrowEEO
期待支援
11
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:31:37 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「ささ、隊長さんも飲んで下さいな」
(゚、゚トソン「すみません。下戸なので。少し席を外しますね」
/ ,' 3「そうですか。あ、トイレならどっかそこら辺の暗がりでいいですじゃ」
(゚、゚;トソン「あ、はぁ……お構いなく」
目の前の料理をいくらか包み、拘置所へ向かった。
昼間と全く同じ体勢で男はあぐらをかいていた。
俯いているために顔はわからない。
(゚、゚トソン「食べ物だ」
(´<_` )「……お、おお。悪いな」
男は寝ていたようだ。
この状況ですやすやと眠れる男の無神経さに、呆れるとともに感心する。
(゚、゚トソン「本当にお前は人を殺したのか」
(´<_` )「どういう意味だ?」
(゚、゚トソン「正直言うと、お前を見てもまるで人殺しとは思えん。それも大量な……」
(´<_` )「ああ……俺もそう思う」
(゚、゚トソン「なに?」
(´<_` )「いや、こっちの話だ」
12
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:38:57 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚トソン「よくわからん奴だな」
トソンは一瞬笑ってしまいそうになり、慌てて顔を取り繕った。
料理を掴み、男の口に運ぶ。男は顔をほころばせ、味わいながらそれを食べた。
(´<_` )「帝国軍は、どう。大変?」
(゚、゚トソン「え?」
急に話を振られたので戸惑う。
昼間、殺す気で襲いかかった相手なのに、まるで殺意も敵意も感じない。
(゚、゚トソン「……大変」
(´<_` )「テロリストとか、いるんだろ。聞いてるよ」
(゚、゚トソン「『クロウ』か。僕の管轄ではないからわからんが、あっちはもう戦争みたいになってるらしい。
おかげで僕のような下っ端がお前の追跡を任せられた。本来ならお前のような
Sクラスの犯罪者は、もっと上の軍が動くんだがな。運が良かったな」
(´<_` )「結局捕まってるんだから一緒だがな」
ところで、と前置きして男は足をもじもじさせ始める。
(´<_`; )「トイレ行きたいんだけど、連れてってくれる?」
(゚、゚;トソン「は、はぁ!?」
13
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:43:35 ID:oRWrT7HE0
期待支援
14
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:43:51 ID:nR.OV5TA0
(´<_` )「昼間から我慢してるんだよ。この縄、解いてくれる気は無いんだろ?」
(゚、゚トソン「当たり前だ!」
(´<_` )「だったら俺の小便も手伝ってくれよ」
(゚、゚;トソン「ぼ、僕が、どうしてそんな……!」
(´<_` )「いいじゃん。男同士なんだろ?」
(゚、゚;トソン「そ……それとこれとは、別問題だ!」
(´<_` )「ズボンとパンツ下ろしてくれりゃ十分だよ」
(゚、゚;トソン「それが大問題なんだよ!」
(´<_` )「どうして?」
(゚、゚;トソン「〜〜〜〜〜〜@;+@k!!」
トソンはかなり悩んでいるようだった。
(゚、゚;トソン「わかった! わかったが、絶対に僕にアレを向けるなよ!」
(´<_` )「お、おお」
トソンは牢屋の鍵を開け、男の背中側に周り、後ろ手に縛った腕を掴んだ。
( 、 ;トソン(どうして僕がこんなことをしなきゃいけないんだ)
15
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:50:24 ID:nR.OV5TA0
(´<_` )「トイレはどっちだ?」
(゚、゚トソン「いいからさっさと歩け。それと言っておくがトイレなんか無いぞ。
そこら辺の暗がりでやれ」
(´<_` )「意外と潔癖症なんだけど」
(゚、゚トソン「村長がそう言ったんだ。嫌がらせではない」
歩いていた男が急に立ち止まった。
(゚、゚トソン「どうした?」
トソンが声をかけても反応が無い。
もう一度を声をかけようとしたとき、拘置所の外から叫び声が聞こえた。
(゚、゚;トソン「え?」
耳をつんざく爆発音と、熱気のようなものが壁を通り抜けてきたのを肌で感じた。
喧噪、それも悲鳴の入り交じったものが聞こえる。
混乱、恐怖、様々な感情が伝わってくるうめき声が断続的に響く。
(゚、゚;トソン「お前はここにいろ……絶対に動くな! 動いたら殺す!」
(´<_` )「トソン、待て!」
16
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 18:57:50 ID:nR.OV5TA0
男を置いたままトソンは駆けだした。
腰に付けた剣を引き抜き、外に飛び出す。
(゚、゚トソン「―――あ」
夜も遅くなったというのに、村は明るかった。
地面で何かが燃えている。よく見ると人の形をしていた。
遠くで爆発を起こしながら燃えているのは、トソンが乗ってきたジープだった。
トソンの部下が一人、こちらに走り込んできたが、すぐに地面に倒れた。
背中には剣が突き刺さっていた。
(゚、゚;トソン「みんな……みんな! どうした! おい! 誰かいないのか! 状況を説明しろ!」
/ ,' 3「死んだぞい。みんな」
死角から現れた村長が、得体の知れない生き物のように見えて、トソンは数歩後ろに後ずさった。
さっきまで優しそうな笑顔だった村長は、炎の光を反射し、今は鬼のように見えた。
(゚、゚;トソン「おまえ……カラスコの村の者ではないのか」
周りの暗闇が人の形を成し、徐々にトソンを取り囲む。
よく見ると、昼間トソンたちを暖かく迎えてくれた村の者だった。
17
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:04:39 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「左様」
老人は袖をまくり、右腕を突き出した。
彼の腕はトカゲのように緑色をしていた。
(゚、゚;トソン「獣人……ならば、クロウの連中か!?」
周りに蠢く人影の闇が嘲笑に揺れた。
/ ,' 3「お前ら帝国軍が近くにいると知ってな。あらかじめ村人とすり替わっておったのさ」
( 、 ;トソン「む、村の」
/ ,' 3「人間はどうしたかってか? 殺した。仕方ないじゃろう。革命には犠牲がつきものじゃ」
(゚、゚#トソン「この……外道がぁー!」
トソンは剣を構え、老人に向かって突進した。
老人はニタニタと笑いながら避けることもせずトソンの剣を受ける。
/ ,' 3「おお、怖い怖い」
しかし深く切り裂かれたはずの老人の体は、トソンの見ている前で瞬く間に再生していった。
(゚、゚;トソン「―――あ」
18
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:10:40 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「お前、『ソルジャー』ではないな?」
(゚、゚;トソン「だからどうした!」
/ ,' 3「つまらん。殺すか」
老人は左腕を突き出すと、真っ直ぐに腕を伸ばしトソンの顔面を叩いた。
全く反応できず棒立ちで喰らったために、半回転して地面に転がる。
嘲笑がまた渦を作った。
/ ,' 3「皆の者。遊びは終わりじゃ。殺せ」
獣の耳が生えている者、尻尾が生えている者、毛に覆われている者、
獣人たちがトソンを取り囲み輪を作った。
( 、 ;トソン(報いだ)
罠に気がつけなかったことで部下たちを死に追いやった。
その責任を取って死ぬのなら、必然の死であるとトソンは考えた。
輪は徐々に小さくなり、爪や牙、ナイフが炎に照らされてチラチラと赤く光った。
トソンは目を瞑った。
19
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:16:20 ID:nR.OV5TA0
(獣゚Д゚)「待て、そこに誰かいるぞ!」
獣人の一人が叫び、指さした方に全員が振り返った。
(´<_` )「おー出る出る」
大柄な体に邪魔されてトソンからは見えなかったが、声であの男だとわかった。
(゚、゚;トソン「お前……!」
(獣゚Д゚)「小便してるぞ」
(獣゚Д゚)「誰だ?」
( 、 ;トソン「お、お前……」
(´<_` )「ふう。一時はもう漏らすしか無いと思ったぜ。間に合った」
(゚、゚#トソン「この非常時に呑気に何やってんだよ!」
周りの獣人たちは同意のつもりか頷いている。
/ ,' 3「まだ生き残りがおったか。殺せ。帝国の人間は残らず殺せ」
(´<_` )「俺は帝国のもんじゃない。無関係だ」
20
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:22:22 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚;トソン(……ていうか、どうやって縄を解いたんだ?)
(獣゚Д゚)「悪いが確かめる術が無い。死んでもらう」
(´<_` )「話し合いとか無し?」
/ ,' 3「無し」
(´<_` )「命乞いは?」
/ ,' 3「してもいいが殺す」
(´<_` )「世間話は?」
/ ,' 3「殺せ」
獣人たちは牙を剥いて男に襲いかかった。
通常の人間よりも身体能力の高い者が多く、その動きはトソンの動体視力を軽く越えていた。
(´<_` )「ごめんな」
トソンは瞬きもせず、獣人たちに襲われる男の様子を見ていた。
けれども、どうして獣人たちが血を吹き出し、地面に倒れていったのか。
突如消えた男は何処に行ったのか、まるで何もわからなかった。
(゚、゚;トソン「何が……起こったの……?」
21
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:27:09 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「気をつけろ! 奴は『ソルジャー』じゃ!」
老人が叫んでいる間も、獣人たちは次々にやられていった。
辺りにはそよ風が吹き、血の臭いを混ぜて髪をなびかせた。
(獣゚Д゚)「後ろだ!」
獣人の一人が叫んだが、その者は直後、首を切られて悶死した。
男の姿は見えなかった。
(゚、゚トソン「兄者……!」
/ ,' 3「む、兄者だと?」
老人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、小さく舌打ちした。
厄介なやつと出会ったと、心の中でぼやく。
ものの数分も経たずに、獣人たちは全滅し、辺りには屍と血の臭いだけが残った。
あまりにも現実味が無く、地面に座り込んだままトソンは放心している。
/ ,' 3「あとはわしだけという訳か」
(´<_` )「そうなるな」
22
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:33:30 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「ただでは死なん。貴様も地獄に連れていく」
(´<_` )「話し合いは無しか?」
/ ,' 3「無しだ」
(´<_` )「命乞いをしてもいいぞ」
/ ,' 3「黙れ」
(´<_` )「世間話は―――」
男の話を遮ったのは、死角から伸びてきた老人の腕だった。
(´<_`; )「お」
男の喉を掴み、紙くずを扱うように軽々と空中に持ち上げる。
細腕からは考えられない怪力だった。
/ ,' 3「伸縮自在の体―――わしの一族の特徴じゃ。
『気力』を使ってさらに『再生』と『剥離』、そして『操作』が行えるよう訓練した」
(゚、゚;トソン「兄者!」
/ ,' 3「兄者さん、初めてお目にかかるが、イメージより弱そうな奴じゃのう。
わしはてっきり化け物みたいな奴を想像しとったわい」
(´<_` )「期待はずれですまんね」
23
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:41:36 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3「さて、無駄話も世間話も無しだ。仲間を殺した罪、地獄で償え」
(´<_` )「断る」
老人が腕に力を込めようとしたとき、男の両腕から赤い霧のようなものが立ち上った。
/ ,' 3「それが、仲間を切ったお前の技か!」
赤い霧はやがて両腕の手首に収束され、一瞬だけ赤い閃光を発した。
老人の左腕は細切れに切断され、地面にぼとぼとと落ちていった。
/ ,' 3「まだだ!」
(´<_` )「無駄だ」
残ったもう一方の腕を男に向かって伸ばすが、今度ははっきりと赤い刃が両手首から出現し
伸びてきた腕を切り刻んだ。
(´<_` )「もうやめないか?」
/ ,' 3(甘いわ小僧! わしの能力には『剥離』と『操作』がある!)
老人は千切れた両腕の破片を操作し、こっそりと男の後ろに回した。
周りの肉を取り込みながら、腕の形を徐々に再生していっている。
24
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:48:37 ID:nR.OV5TA0
/ ,' 3(もう少しじゃ! もう少しで両腕が再生する! 一瞬で首の骨を折ってやるわい!)
(´<_` )「お前らの理想は知っている。
獣人の人権を保証させ、社会的に公平に生きるための権利を得ること」
/ ,' 3「そうじゃ! それが虐げられてきたわしら獣人の望み!」
(´<_` )「お前がただのクソ野郎ならいいんだが、仲間の為に闘ってる奴を殺したくない」
/ ,' 3(あと少し! よし、殺せる!)
(´<_` )「いいんだな」
/ ,' 3「たわけ! もう、後戻り出来ん場所におるのだ!」
(´<_` )「大変だな、お互い」
再生しきった老人の両腕が、背中から男の首を捕まえた。
男が片腕を真一文字に振ったのは、それと同時だった。
(-、゚;トソン「うっ」
そよ風とは違う、禍々しい風が一瞬起こった。
吹き抜ける風の中で、赤い光が宙を走ったのを、トソンは確認した。
/ ,' 3「……飛ばせるんだ、それ」
25
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:54:33 ID:nR.OV5TA0
老人は毒気の抜けた顔で男を見つめている。
(´<_` )「名前、聞いておく」
/ ,' 3「……すまんのぅ……荒巻……じゃ。トカゲ族に会ったら……わしのことを……」
(´<_` )「約束する」
/ ,' 3「ふ……ふふ、鬼のような……男だと思っとったが……騎士(ソルジャー)なのだな……」
男が両腕の刃を消すのと同時に、荒巻の体中から血が噴き出し、辺りを血みどろの池にした。
崩れ落ちていく荒巻の姿を、無表情に、でもどこか悲しそうに、男は見つめていた。
◆◇◆◇◆◇
(゚、゚トソン「僕を助けてくれたのか」
(´<_` )「ああ……まあ、そうなるかね」
(゚、゚トソン「……ありがとう」
(´<_` )「どういたしまして」
26
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 19:59:46 ID:nR.OV5TA0
(゚、゚トソン「さて、僕をどうするつもりだ」
(´<_` )「どうって?」
(゚、゚トソン「殺すんだろう。やはりお前は殺人鬼なのだな。さっきの能力を見て悟ったよ」
(´<_` )「殺しはしない」
(゚、゚トソン「気まぐれで人の生死を決めるのか」
(´<_` )「俺は兄者ではない」
あまりにも唐突で、突拍子も無かったので、トソンは咳き込んだ。
(゚、゚;トソン「嘘をつけ!」
(´<_` )「本当だ」
(゚、゚;トソン「手配書そっくりだし、噂通りに強いじゃないか!」
(´<_` )「兄者は昔、俺の村の人間を皆殺しにした。俺の友達も、父親も母親も」
(゚、゚トソン「む、村の生き残りなのか……?」
27
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:06:26 ID:nR.OV5TA0
(´<_` )「俺は弟者。お前の探している奴の、弟だ」
(゚Д゚トソン
今まで感じていた違和感の全てが吹き飛び、
驚愕が疲弊と共に現れ、後には空しさと申し訳なさが残った。
(゚Д゚;トソン「ゆ、行方不明になっていた弟者が、お前なのか」
(´<_` )「ああ」
(゚Д゚;トソン「どうして早く言わなかったんだ……」
(´<_` )「俺も兄者を探している。そのためにまず、帝国に行った方がいいかと思ってな。
ちょうどいいと思って、お前らに送ってもらおうと兄者の振りをしていた」
(゚、゚;トソン「お前も兄者を追っているのか!?」
まだ辺りには炎が燃えさかり、血の臭いが濃く漂っている。
それでも空は呆れるほど快晴で、星が美しかった。
(´<_` )「兄者を殺すのは俺だ。八年前そう決めて、そのために俺は生きているんだ」
28
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:17:00 ID:nR.OV5TA0
まだ歳もそう違わない青年が、無表情のまま実の兄を殺すと言い切った。
憎しみも殺意も感じない澄んだ瞳には、ただ決意だけが赤く光っている。
それがトソンには信じがたく、また悲しかった。
(゚、゚トソン「……改めて自己紹介しよう。僕は都村トソン」
(´<_` )「弟者だ」
(゚、゚トソン「ジープは燃やされてしまったが、歩いて帝国に行くつもりだ。お前は?」
(´<_` )「じゃあちょっとした付き合いになりそうだな。よろしくな」
弟者は軽く握り拳を作ってトソンの胸を叩いた。
スポンジよりも柔らかく、沈み込む感触が拳に残る。
(´<_`; )「あれ? 男じゃ……」
(゚、゚;トソン「ぶ、無礼者がー!!」
弟者が平手打ちを喰らって一回転したのと同時に、星が一つ、空を流れた。
一話「兄弟」 終わり
29
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:19:53 ID:nR.OV5TA0
分かりづらい点とかありましたら何なりと質問をどうぞ。
あと一話ずつの投下ではなく、話の途中で投下を区切るときもあるかと思います。
その場合、ネオチとかではなく後日また続きから始めるのだと思って下さい。
どうもありがとうございました。
30
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:23:44 ID:qzJpv4aE0
兄者が悪役なんて珍しいなー。
トソンがショタ(?)役なんて、新しい!!と思ってたら…(´・ω・`)
乙でしたー。
31
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:47:17 ID:iTSCWb7s0
乙!つづきがwktkでござるー!
32
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:49:55 ID:K/sUCVm20
乙。
面白かったから次回にも期待。
33
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/10(火) 20:53:32 ID:KWMrowEEO
乙!
弟者が主人公とは珍しいというか嬉しい
話も面白いから続きがすごく楽しみだ
34
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:23:29 ID:c2L4CAh.0
イリナミヤは平和な村で、退屈な村のはずだった。
彼の家が燃えているのを発見したのは、彼が狩りから戻ってきた夕方頃である。
(,;゚Д゚)「え……え……?」
(村゚∀゚)「消化を手伝ってくれ!」
呆然とする彼の横で、火を消そうとバケツに入れた水をかけている村人が叫んだ。
どうして家が燃えているのだろう。
今日は少し曇りだった。
いつも通りの時間に起きて、ご飯を食べて、狩りに出かけた。
エモノは一匹のイノシシ。今日はイノシシ鍋か?
夕日が綺麗だが、目の前の炎も綺麗といえば綺麗だ。
早く家に帰って風呂に入りたかった。
その間におばあちゃんが夕食の準備をしてくれていて……。
(,,゚Д゚)「お……」
(,;゚Д゚)「おばあちゃん……おばあちゃん!! おばあちゃんは何処!?」
いつもなら――――――――その時から、彼のいつもは消え失せた。
35
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:23:50 ID:c2L4CAh.0
最前線でワルツを 二話「炎」
36
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:32:04 ID:c2L4CAh.0
(,;゚Д゚)「おばあちゃんは何処行ったんだ!?」
答える者はいなかった。
誰もが彼から目をそむけ、そして悲痛な顔で沈んだ。
(,;゚Д゚)「クソ! クソ! クソオオオオオオ!」
(村゚∀゚)「お、おい! 早まるな!」
彼が家に飛び込む気配を察し、数人の村人が取り押さえようとしたが、
気が触れたように暴れ出し、とうとう燃えさかる家の中へ飛び込んでいった。
煙が充満し、熱した空気が肌を焦がす。
目の前がぼやけて、奇妙なほど歪んでいた。
(,, Д )「おばちゃん! おばあ……」
彼のおばあちゃんはすぐに見つかった。
腰の悪い彼女は、逃げる暇も無かったのだろうか。
廊下にうつぶせで突っ伏しており、その背中で燃えている炎は、衣服を消し、皮膚を焦がしていた。
(,,;Д;)「うああ……ああぁあぁぁぁあああぁぁ!」
37
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:38:00 ID:c2L4CAh.0
身よりの無い彼をひきとり、大切に育ててくれた彼女は、黒く炭化し、顔も見えなかった。
(,,;Д;)「何なんだよクソが!」
着ている衣服を脱ぎ、おばあちゃんの背中をはたき、必死に火を消そうとするが、火の勢いは弱まらない。
無駄とはわかっていても、最愛の人を虐め続ける炎が憎くてたまらなかった。
(,,;Д;)「っ……!?」
背後で天井が崩れた音がした。
振り返ると、さっき通ってきた道が炎の壁でふさがれている。
死んでたまるかと思った。
自分の中にここまでエネルギーがあるのを感じたのは彼の人生で初めてだった。
(,,;Д;)「うああああああああああああ!!!」
死にたくないとか、生きたいとかではなく、炎に屈するというのが彼の中で我慢ならなかったのだ。
彼女を殺した炎に屈してしまえば、彼女の死を許してしまうことになる。
彼はそう考えた。
気がつくと体に炎が燃え移っていた。
慌てて消そうとし手で仰いでも、その炎は揺れることさえない。
奇妙だった、その炎からは何の熱も感じないのだ。
38
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:46:24 ID:c2L4CAh.0
試しに手で触れてみた。やはり何も感じない。
頭上から物音がし、反射的に上を見上げた。
燃えた柱が音を立てて崩れ落ちてくる所だった。
(,;゚Д゚)「――――――――」
叫んだはずだが、酸素の薄い室内でそれは声にならなかった。
両腕で自分を庇おうと手を振り上げたそのとき、体から発していた炎が燃えさかり、
火のついた柱を巻き込み、火柱となった。
何が起こっているのか、混乱しきっている頭では理解が追いつかない。
右腕を突き出し、遠くで燃えている柱に向かって意識を集中させた。
すると体から炎が伸び、視線の先まで生き物のようにうなりながら向かっていった。
柱は小さな爆発を起こし、木っ端微塵になる。
( Д )「ばあちゃん……」
彼女に向かってそっと手を伸ばした。
残った衣服を燃やしていた炎は小さな余韻を残して、彼の目の前で音もなく消えた。
◆◇◆◇◆◇
39
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:51:03 ID:c2L4CAh.0
おばあちゃんを背負って家からはい出た瞬間に、彼は気を失った。
顔に酷い火傷を負っていて、手当してまともに食事が出来るようになるのに二週間もかかった。
(村゚∀゚)「本当にそのとき、火が扱えたんだな?」
(//‰ ゚)「ああ……そうだよ。不思議な力だった」
治り始めたといえど、包帯だらけの顔から片目だけを出した、痛々しい顔だ。
火傷の痕は一生消えないだろうと言われた。
(村゚∀゚)「じゃあ、今その火を出せるか?」
(//‰ ゚)「わからない……」
(村゚∀゚)「やってみろ」
せっかく怪我が回復してきた頃なのに、どうして責められるようなことを言われなければならないのだろう。
彼は渋々といった様子で、あの日のことを再現した。
(//‰ ゚)「おお、出来た」
返した手のひらから、小さな火柱が立ち上っている。
(村;゚∀゚)「う……」
(村;゚∀゚)「まさか、こんなことになるなんて」
40
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 17:59:38 ID:c2L4CAh.0
(//‰ ゚)「どうしたんだ?」
(村゚∀゚)「いいか。この村には掟がある。
それは絶対な掟で、それを破ったら村を出て行かなくてはいけない」
(//‰ ゚)「ああ、知ってるよ。殺しと食事のお残しだろ」
(村゚∀゚)「実はもう一つあるんだ」
(村゚∀゚)「こんなことにはならんだろうって、タカをくくっていた。だから話さないようにしていた。
ちゃんと説明していた方が良かったのか……いや、今回に限っては、説明していたところで無駄だったろう」
(//‰ ゚)「な、何だよ。何の話だよ?」
(村゚∀゚)「お前は『ソルジャー』になったんだ。能力が覚醒してしまった」
(//‰ ゚)「『ソルジャー』って何だ?」
(長゚∀゚)「わしから説明しよう……と言いたい所だが、わしもよくしらん」
(//‰ ゚)「何で前に出てきたんだよ……」
(長゚∀゚)「しかしこれだけは言える。『ソルジャー』は村に災いを起こす。即刻、出てもらわねばならん」
(//‰ ゚)「ええ! 何だよそれ!」
村長から突きつけられたことに、思わず声を荒げてしまい、治りかけの火傷がうずいた。
(//‰ ゚)「ぐ……ソルジャーって何だよ! 能力って!?」
(長゚∀゚)「世の中にはな、不思議な力を扱う者たちがいる。その者たちを『ソルジャー』と呼ぶ。
修行をして、その者特有の力を目覚めさせるのが常らしいが、お前はどういう訳か力を身につけてしまったようじゃ」
(//‰ ゚)「はぁ!? 訳わかんねー……全然意味わかんねーよ!」
41
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:05:50 ID:c2L4CAh.0
(村゚∀゚)「すまない……」
(//‰ ゚)「ちょっと……やめろって。マジで意味わかんねーから。
こっちは、お、おばあちゃんが死んじゃって、それだけでもう、訳わかんねーんだよ!!」
(村゚∀゚)「……」
(長゚∀゚)「……次の村に行けるだけの路銀はやろう」
(//‰ ゚)「っ……! マジで言ってんのかよ」
(村゚∀゚)「辛いだろうが……」
(//‰ ゚)「ふざけんなよ……ふざけんじゃねーぞ」
誰も喋らなかった。
冗談ではないというのがよくわかる。
(長゚∀゚)「わしらは……」
凍り付いた空気の中、村長が喋り出そうとしたとき、扉を開く音が聞こえた。
逆光の中、背の高い女の人影が浮かび上がる。
从 ゚∀从「話は聞かせてもらった。そいつはアタシがもらうよ!」
(村゚∀゚)「……」
(長゚∀゚)「わしらは別におまえさんを虐めたい訳ではなく……」
从;゚∀从「無視かよ! 聞こえてただろうが!」
42
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:13:03 ID:c2L4CAh.0
(村゚∀゚)「旅の人かい? 宿を借りたいなら他を当たってくれ」
从 ゚∀从「旅はしてねえ。買い物の途中でこの村に寄っただけだ」
女は遠慮無くずかずかと家に入り込んできた。
かなり大柄で、その場にいる誰よりも背が高かった。
(村゚∀゚)「ゴクリ……」
胸も大きい。
从 ゚∀从「アタシはハイン。そいつはもうソルジャーなんだろ?」
(長゚∀゚)「うむ。ソルジャーを知っているのか?」
从 ゚∀从「ああ。アタシはソルジャーじゃあないけど、まあよく知ってる」
(長゚∀゚)「引き受けてもらえるか?」
从 ゚∀从「おう」
(;/‰ ゚)「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺の意見は!?」
ハインは面倒くさそうに髪をかき上げた。
从 ゚∀从「どうせ行くとこねーんだろ? のたれ死にたくなかったらアタシの所に来いよ」
(//‰ ゚)「嫌だ」
从 ゚∀从「快諾してくれたんで連れてくぞ」
(;/‰ ゚)「してねーぞ! おい、村長!?」
43
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:19:55 ID:c2L4CAh.0
(長゚∀゚)「よろしく頼みますじゃ」
(;/‰ ゚)「っざけんな! 人さらいだー! 助けてくれ!」
从 ゚∀从「暴れんなよ」
ハインは軽々と片手で男を持ち上げた。
まだ体の傷が癒えておらず、一人で歩くことも出来ない彼に、抵抗する術は無い。
(;/‰ ゚)「助けてくれよお!」
(村゚∀゚)「頑張ってこいよ!」
(村゚∀゚)「俺たちのこと忘れんなよ!」
(村゚∀゚)「正直ちょっと羨ましいぞ!」
(;/‰ ゚)「てめえら纏めて全員死ね!」
ずっと泣きわめいていたが、担がれたまま村を連れ出されてしまってからは、
ぐったりとしたまま一言も喋らなかった。
从 ゚∀从「まあ、悪いようにはしねえよ」
(//‰ ゚)(最低だ……最低の日だ。あんなに村の奴らを信頼してたのに。
結局自分さえ良ければ人のことはどうだっていいってことだ。クソが。クソ)
从 ゚∀从「そうそう、お前名前は?」
44
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:25:33 ID:c2L4CAh.0
(//‰ ゚)「……横堀」
从 ゚∀从「これからよろしくな、横堀」
そういえばせめて路銀をもらっておけば良かったと、村が地平線の彼方へ消えてから思った。
◆◇◆◇◆◇
ハインは薬の知識に長けていて、火傷によく効く薬を作ってくれた。
彼女の家(小屋)に着いてから一ヶ月ほどで体は全快した。
しかし顔の火傷の痕は、彼女の薬をもってしても治ることは無かった。
从 ゚∀从「さて、傷も治ったようだし、ぼちぼち始めるか」
(//‰ ゚)「何をだよ」
从 ゚∀从「もちろん一人前のソルジャーになる特訓だ」
(//‰ ゚)「いいよ、別に」
从 ゚∀从「よくねえよ」
(//‰ ゚)「ソルジャーって、闘うやつのことなんだろ? 俺はこの能力で闘おうなんて思わない。
マキに火をつけるのが簡単になっただけでスゲー嬉しいんだから」
45
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:33:08 ID:c2L4CAh.0
从 ゚∀从「駄目だ。ソルジャーってだけで狙われる時代だからな」
(//‰ ゚)「ど、どういうこと?」
从 ゚∀从「『クロウ』っていうテロリストの名前くらいは知っているだろう?」
(//‰ ゚)「ああ。確か獣人で構成されてる、革命軍だろ」
从 ゚∀从「あいつらはソルジャーを集めて蜂起を企んでいる。
お前に闘う意志がなくても、無理矢理クロウに入らされて、能力を悪用される、なんてことがあるかもしれん。
そうでなくとも、ソルジャーと腕試ししたいっていう奴らは世の中に山ほどいる。
ソルジャーってのはそれだけ貴重で、興味の対象となり、それから危険でもあるんだ」
(//‰ ゚)「げぇー、マジかよ」
从 ゚∀从「それにな、能力が覚醒したってことは、もうお前は闘う運命の中にあるんだよ」
(//‰ ゚)「そんな、取って付けたような……」
从 ゚∀从「大体どうやって能力を覚醒させたんだ?」
横堀はあの日のことを詳細に話した。
从 ゚∀从「なるほどな。偶然覚醒させたケースは少なくない」
(//‰ ゚)「俺は別に、こんな能力欲しくなかった。おばあちゃんが……」
おばあちゃんが傍にいてくれる方が、万倍は嬉しい。
言いかけて、あまりにも空しく、悲しくなるから止めた。
46
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:44:42 ID:c2L4CAh.0
从 ゚∀从「……まあ、いいよ。いつかその能力が肌身はなせない時が来る」
(//‰ ゚)「いつ来るのかねえ」
从 ゚∀从「さあ外に出ろ。言っておくがアタシの特訓は、かなりぬるいぞ」
(//‰ ゚)「最初は厳しいって脅せよ」
愚痴りながらも横堀はハインに従い、小屋の外へ出て行った。
◆◇◆◇◆◇
特訓はまず知識を身につける所から始まった。
从 ゚∀从「能力を扱うには『気力』を消費させなきゃいけない。
気力ってのは生命力みたいなもので、これが無くなると動けなくなっちまう」
(;/‰ ゚)「無くなると死んだりするのか?」
从 ゚∀从「それは無い。まあ『破裂(バースト)』って言って、全気力を使える状態になったら、大体が死ぬ」
(//‰ ゚)「バーストしたら死ぬ。メモしておこう」
从 ゚∀从「気力は能力を使うときだけじゃなくて、防御にも、全ての行動に付加して使える。
例えば足に気力を使えば通常より早く走れるし、殴るとき拳に気力を溜めれば破壊力も増える」
(//‰ ゚)「気力は大体いっつも使う、と」
从 ゚∀从「じゃあ実戦だ」
(;/‰ ゚)「え、これだけ!? もっと覚えなきゃいけないことがあるんじゃないのか!」
47
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 18:55:05 ID:c2L4CAh.0
ハインは口を曲げて頭を掻いた。
面倒くさいと思ったときこの仕草をするのは彼女の癖らしい。
从 ゚∀从「覚えることは……無い! 以上だ!」
(//‰ ゚)「嘘だろおい!」
从 ゚∀从「口で伝えても無駄だ。理解するには実戦経験。
それも命の取り合いをして身につけなきゃいけないことが多い」
命の取り合いと聞いて、改めて頭が重くなった。
狩りだけして生きていた村の生活が、今はもう遠い昔のようだ。
从 ゚∀从「戦わないといけない時はいつか必ず来るんだよ」
(//‰ ゚)「……わかってるけど」
从 ゚∀从「昔な、ある男が私の所に訪ねてきたんだ。強くなりたい。修行させて欲しいってな。
そいつはソルジャーじゃなかったけど、死にものぐるいで能力を身につけて、あっという間に強くなった。
元々筋が良かったってのもあるけど、あそこまで強くなれたのはあいつの執念と、アタシの教育センスだね」
(//‰ ゚)「はあ……」
从 ゚∀从「そいつの強くなりたい理由、何だったと思う?」
人はどういう時に強くなりたいと思うのだろう。
横堀はぼんやりとその男の想像をし、
(//‰ ゚)「復讐……か?」
48
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 19:03:11 ID:c2L4CAh.0
从 ゚∀从「惜しい。少し違うな」
(//‰ ゚)「うーん? じゃあわかんね」
从 ゚∀从「答えは『生きるために』だ。お前も強くなれ。お前を追い出した卑しい村人よりも。
アタシよりもな」
気力の操作から始まった修行は、ぬるいと聞いていた期待を裏切るほど壮絶なものだった。
何度も土を噛み、気力が尽きて気絶し、水をかけられ目を覚まし、また気絶し、それを一日何回も繰り返した。
毎日ご飯が美味しかった。
(//‰ ゚)「何作ってるんだ?」
从 ゚∀从「アタシは鍛冶もやってるんだ。お前にいいもの作ってやろうと思ってな。期待して待ってな」
(//‰ ゚)「期待しないで待っとくわ」
炎の操作は格段に上手くなった。
気力を使っての防御、攻撃、回避、そして必殺の炎を実戦で使えるレベルにまで昇華させること。
気絶しても一秒も経たずに起き上がれるようになった。
その頃になると修行はさらに厳しくなり、一日に百回近く気絶することもあった。
朝も夜も無い、疲れたら寝る、起きたら修行する。
腹が減れば喰う。一人が寂しいときは寄り添う。
時々酒を飲む。酒を飲んだらハインはよく絡んできた。
49
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 19:11:03 ID:c2L4CAh.0
◆◇◆◇◆◇
修行が始まって丸二年が経った。もう修行中に気絶することは無くなっていた。
(//‰ ゚)「何だよ、それ」
从 ゚∀从「最後の授業だ。受け取れ」
その日渡されたのは、妙な形をした籠手だった。
甲の位置に龍が描かれており、試しに両手に付けてみると、背筋が冷たくなるほどの一体感を覚えた。
まるで籠手が生きていて、自分が付けるのを待っていたような気さえする。
从 ゚∀从「『神器』と呼ばれるものだ。ソルジャー専用の武器。
お前にフィットするように作ったから、きっと使いやすいはずだ。やるよ」
(//‰ ゚)「いいのか?」
从 ゚∀从「前にここで修行していた奴は、神器を渡す前に勝手に出て行きやがったからな。
お前はちゃんと受け取れよ」
(//‰ ゚)「……悪い」
从 ゚∀从「二年間、よく頑張ったな」
その日飲んだ酒は格別に上手く、生涯この味は忘れないだろうと思った。
50
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 19:16:42 ID:c2L4CAh.0
从 ゚∀从「何処に向かうつもりだ?」
旅立ちの朝、あの日と同じ曇りなのが、俺らしいなと横堀は自嘲した。
(//‰ ゚)「帝国に行ってみようと思う」
从 ゚∀从「へえ。なんでまた?」
(//‰ ゚)「帝国軍に入って、クロウと戦うつもりだ」
从 ゚∀从「戦うのが嫌だったんじゃなかったっけか」
(//‰ ゚)「生きるのも戦いだしな」
二人はけらけらと笑い合った。
その日、両手に龍の籠手を付け、顔中に包帯を巻いたソルジャーが一人、戦いの場へと旅立った。
弟者とトソンが出会う、一ヶ月前の話である。
(//‰ ゚)(やべ……ハインから路銀くすねときゃ良かった)
二話「炎」 終わり
51
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/11(水) 19:22:17 ID:c2L4CAh.0
二話終わりです。もっとレスを分割した方が見やすいでしょうか?
明日も投下するかもしれませんが、明後日から少し忙しいので、明後日以降の投下は
来週の月曜以降になります。どうもありがとうございました
52
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:12:57 ID:QN0SUkJk0
ダイニングバーでサラダを頼んだのはトソンだった。
弟者はさっきから酒ばかりあおっている。
カラスコ村で死んだトソンたちの部下、そして獣人たちは彼ら二人で丁寧に埋葬した。
民家からシャベルを無断で借り、地面を掘っているとき、
元々カラスコ村の住民だったであろう者たちの死体がごろごろ出てきたときは、二人そろってため息をついた。
一日歩き通して砂漠を抜け出した後、イナミという村にたどり着いた。
宿屋で部屋を借り、夕食を取るためにこの賑やかなダイニングバーにやってきた。
(゚、゚トソン(結局何も聞けていないな)
兄者がどうして家族もろとも村中の人間を殺したのか、
どうして弟者は殺さなかったのか、
行方不明の間何をしていたか、
獣人たちをいとも簡単に切り刻んだ能力はどうやって得たのか。
聞きたいことは山ほどあったが、黙秘権だと言い張って弟者は何も話さなかった。
話す義理は無いし、命を助けてもらった恩人でもある弟者に、トソンは強く出られなかった。
53
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:13:48 ID:QN0SUkJk0
(゚、゚トソン「帝国に着いたらどうする?」
(´<_` )「兄者を探す」
(゚、゚トソン「どうやって?」
(´<_` )「ソレっぽい奴から無理矢理、情報を聞き出す」
(゚、゚トソン「呆れたな。帝国がどれだけ広いかわかっていない」
(´<_` )「どういう方法にしろ一人じゃ限界がある。地道にやるさ」
(゚、゚トソン「帝国軍に入らないか?」
(´<_` )「あ、お姉さんソーセージお願い」
(女゚∀゚)「はーい。ちょっと待っていらして」
(゚、゚;トソン「聞いているのか!」
(´<_` )「またそれか。あんたも懲りないな」
この数日間、トソンは度々弟者を帝国軍に勧誘していた。
戦いの力を役立てられるのは帝国軍だけだというのが彼女の信条だからだ。
(゚、゚トソン「帝国軍に興味が無いってことか?」
(´<_` )「上の方はどんだけ強いんだろうなーとか思うと興味はあるけど。四龍(シリュウ)とかさ」
54
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:14:22 ID:QN0SUkJk0
(゚、゚;トソン「お、恐れ多いにも程があるなお前……。
四龍といえば帝国軍の最高幹部、さらに王直属の特選部隊でもあるんだぞ」
(´<_` )「強いんだな」
(゚、゚トソン「世間知らずってのは恐ろしいよ」
(女゚∀゚)「ソーセージでーす」
(´<_` )「どうも。あと酒おかわり」
(女゚∀゚)「はーいお待ちをー」
トソンは水の入ったグラスを傾け、横目でそっと弟者の表情を見た。
見れば見るほど、手配書の兄者とそっくりな顔立ちをしている。
双子であるという情報は、確認するまでもなくそうなのだろうと思えた。
(´<_` )「あんた、いつから帝国軍に入ったんだ」
(゚、゚トソン「十五のときだ」
(´<_` )「若いな」
(゚、゚トソン「そのときから女は捨てた」
(´<_` )「あー、なるほど、だから……」
(゚、゚トソン「お前今馬鹿らしいって思っただろ」
(´<_`; )「え?」
55
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:16:11 ID:QN0SUkJk0
(゚、゚;トソン「あーやっぱり思ったんだな! 人の覚悟を侮辱する気か!」
(女゚∀゚)「おかわりです、どうぞー」
(´<_` )「どうもー」
(゚、゚;トソン「おい!」
トソンは真っ直ぐで考えもしっかりしているが、
落ち着いていないところが子供らしく、アンバランスだが魅力があった。
(゚、゚トソン「もしもお前が兄者を殺したら、正当防衛でない限りお前も犯罪者だ」
(´<_` )「そうなるな」
(゚、゚トソン「だが帝国軍に入るのであればそんな心配もいらん。そのときは私の推薦もやろう」
(´<_` )「ありがとさん」
自分が正義を振るう立場になれることは一生無いだろうという自覚が弟者にはあった。
生返事でトソンを苛つかせたくはないが、その有り難い申し出を受け入れるような器など無いと、弟者は考える。
トソンがテーブルに肘をつき、ため息を漏らしたそのとき、酒場のドアを蹴破り、粗暴な声を上げる男たちがやってきた。
(賊゚∀゚)「おい、全員動くな!」
(賊゚∀゚)「我ら盗賊団ブラッディベア! 有り金全部出しやがれ! 女は服を脱げ! 男は死ね!」
56
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:16:44 ID:QN0SUkJk0
最前線でワルツを 三話「鬼」
57
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:17:10 ID:QN0SUkJk0
(゚、゚トソン「お前には色々と訊きたいことがある」
剣を引き抜きながらトソンは席を立った。
(´<_` )「話すことは何も無い」
酒を一気に飲み干してから、弟者はむくりと立ち上がった。
(女;゚∀゚)「キャー!」
(賊゚∀゚)「金を出せ! 従わなければ殺すのみだ!」
(゚、゚トソン「その女性を離せ」
(賊゚∀゚)「なんだぁ? こら女! 騎士ごっこならよそでやれ!」
(賊゚∀゚)「そいつも捕まえろ!」
数人の賊がトソンに向かって駆け寄った。
周りを取り囲んだ後、サーベルのような武器を振り上げながら背後からトソンを襲撃する。
58
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:17:33 ID:QN0SUkJk0
(賊゚∀゚)「ぐわっ!」
トソンは賊たちの大振りな攻撃を体を翻すことで避け、反動で一撃を与えた。
流れるような動きで、すぐさま次の攻撃に移ったトソンは、下から振り上げる斬撃で賊の一人を斬りつけた。
(´<_` )(殺しはしないのか。それが普通か?)
トソンの一撃は鋭いが、致命傷には及ばない程度のダメージを敵に与えていた。
動きからして手加減しているように見える。それが弟者には理解できない。
(賊゚∀゚)「テメーも仲間か!?」
(´<_` )「どうだろうね?」
弟者に斬りかかった賊は、剣を振り下ろす前に掌底をあごに喰らい、悶絶しながら床に転がった。
舌が切れたのか、口から大量に血を流している。
(゚、゚トソン「まだやる?」
(賊;゚∀゚)「か、勘弁してくれ!」
(賊;゚∀゚)「逃げるぞ!」
賊の内、半分が戦闘不能になったことで、賊たちは逃げ帰っていった。
動けない賊を抱えて帰っていく姿は、入ってきた威勢のいい姿とは違い、情けない背中だった。
59
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:17:53 ID:QN0SUkJk0
静まりかえった酒場で、トソンが言った。
(゚、゚トソン「お勘定」
お代はいりませんとマスターが言うと、トソンと弟者は短い礼を述べた後、酒場を後にした。
◆◇◆◇◆◇
月が空高く昇っていた。
トソンが宿屋で寝入った後、弟者は一人、夜の森をうろついていた。
血の騒ぎが収まらなかった。
八年前のあの日から、自分の中に恐ろしい顔をした鬼が眠っているのを感じていた。
そいつはいつも暴力的で、残虐で、力と血を欲している。
数十分ほど森を歩き回ると、向こうに小さなたき火の明かりが見えた。
周りに集まっている男たちは、酒場を襲撃したあの賊たちだった。
(賊゚∀゚)「ん……誰かいるのか!?」
弟者の気配を察した賊の一人が、剣を引き抜いて戦闘態勢に入る。
60
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:18:17 ID:QN0SUkJk0
(´<_` )「殺しに来た。だから死ぬ気で殺しに来い」
酒場で子供のようにあしらわれたのが相当頭に来ているのか、賊たちはうなり声を上げて弟者に襲いかかった。
一番最初にやってきた賊の猪突猛進な一撃を紙一重でかわし、首に手刀をねじ込み、血管を手づかみにして引き抜いた。
おびただしい量の鮮血が霧になって辺りに舞い散る。
血の海の中で弟者は笑っていた。
後ろから襲いかかってきた者には回し蹴りを打ち込み、悶絶し腹を抱えたところに踵落としを打ち込んだ。
頭がへこみ、泥人形のように地面に崩れ落ち、二度と動くことは無かった。
(賊;゚∀゚)「化け物……!」
賊たちの動きが止まった。
弟者は右腕に『気力』を溜め、赤い霧のような煙を発した。
(賊;゚∀゚)「こいつ、ソルジャーだ! 逃げろ!」
賊たちが踵を返し逃げだそうとした瞬間、赤い霧は鋭利な刃となり、弟者が腕を振るうと
カマイタチとなって彼らに向かっていった。
ある者は首が吹き飛び、ある者は胴体が断裂し、ある者は手足を切り落とされた。
ほぼ全員が即死だった。
61
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:18:39 ID:QN0SUkJk0
(´<_` )「お、運がいいな」
(賊;゚∀゚)「ひぃ……ひぃ……」
両足が無くなった者で、まだ這って逃げようとしている者がいる。
(賊;゚∀゚)「助けてくれぇ……助けてくれよぉ……」
(´<_` )「普通ならどうするんだろう?」
(賊;゚∀゚)「え……?」
(´<_` )「俺はこういうとき、相手を見逃したことが無い。でも奴は違った。
確実に殺せたはずの俺を、わざと逃がしたんだ。正解はどっちなんだ?」
(賊;゚∀゚)「な、何言って……?」
(´<_` )「トソンだってそうだ。殺せたはずのおまえらを誰一人殺さなかった。
殺す必要が無かった? いや……殺さないことに理由があったんだ」
(賊;゚∀゚)「い、命乞いする相手を殺さないのは……普通だ!」
(´<_` )「普通か……それが」
(賊;゚∀゚)「そ、そうだよ。それが普通だ……」
(´<_` )「なら俺は、異常でいい」
62
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:19:06 ID:QN0SUkJk0
弟者の右腕から人一人ほどの大きさの巨大な赤い刃が出現した。
ただ赤いだけではなく、血のように濁った、禍々しい色をしている。
生き残った賊は涙を流しながら懇願した。
助けてくれと叫んだ。
生きたいと泣いた。
何の躊躇も無く、弟者は地面に転がった彼の頭から股間までを、その血の刃で両断した。
血しぶきと土埃がはじけ飛び、男は真っ二つになった。
(´<_` )「やっぱり殺すなら、お前らみたいなクズがいい」
俺もクズだからな、と散り散りになった死体の山の中で、弟者は一人、低く笑っていた。
三話「鬼」 終わり
63
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/14(土) 17:20:15 ID:QN0SUkJk0
書きため尽きたのでせこせこと書きためます。どうもありがとうございました
64
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/15(日) 19:08:47 ID:etzoUK.IO
乙!!
65
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/16(月) 05:42:42 ID:VExnjGbEO
来てたのか乙!
66
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/26(木) 19:47:29 ID:Ueo.arj.0
面白いな。age
67
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/26(木) 23:19:40 ID:lBm0pjDsO
乙
68
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/05/27(金) 21:46:32 ID:TdU/4BWQO
前立腺に見えた
乙!
69
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2011/07/03(日) 02:03:26 ID:oWG2Hfq60
続きまだー?
70
:
以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
:2014/09/27(土) 08:08:23 ID:gqfZtXx.0
+ ;
* ☆_+
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く '´::::::::::::::::ヽ
/0:::::::::::::::::::::::', 爆破オチ逝きまーす
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し"~(__)
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