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('A`)は喰らい、生きるようです

1 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:04:29 ID:C8nvHS4Q0
さあて、こっそりやります。
元ネタはありますが、それをプレイしたことはありません。

2 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:05:03 ID:C8nvHS4Q0

 生きろと言われ、生き始める人間などいない。

 変われと言われ、変わり始める日常などない。

3 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:07:30 ID:C8nvHS4Q0
 某都市、雑踏。某年某月某日。日中、夏の日差しが一層強く感じられる日であった。
 『それ』は空が世の無慈悲さを嘆き、涙を流したかのようにも見えた。間もなく、辺りに響き渡る破裂音と悲鳴――。

('A`)「――は?」

 その時、欝田ドクオもイヤホンから流れだす音楽の背後から、その旋律を聞き、辺りを見渡すと、間もなく上空を見上げた。
 すると、彼の瞳に映るのは上空一帯を散漫とする小さな赤い塊。その情景はまるで空が赤い涙を流しているかのようにも見えた。
 その小さな赤い塊がちりばめられる元――中心は白い。上空に残されたその痕跡からは、何かが上空で破裂し、その破裂がほんの少しだけ前の出来事であったと推測できる。しかし、彼はそんなことは考えなかった。いや、むしろ考えられなかったのだろう。
 ニュースにも予報されていなかった突然の現象。それを彼は恐怖というよりは疑問に近い眼差しで見つめていた。
 何かが起きている。『非日常』が訪れている。
 それだけは周りの人々同様、彼も理解出来るものの、自分が何をすべきなのかまでは思惟は働かない。

 だが、次の瞬間、人々の思惟はことごとく覆された。

 その時、ドクオはまるで赤い流星が目前を過ったかのような錯覚に陥った。それは特になんの音をたてず、静かに消えてゆく――。

4 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:08:45 ID:C8nvHS4Q0
「うわぁあああああああ」

「キャアアアアアアアア」

(;'A`)「――ッ!?」

 ドクオはその時、初めて事の重大さに気付いたようだった。上空を舞っていたはずの赤い塊が地に向かってくることの美しさは、思考をも奪うほど美しいのだろうが、辺りに瞬間的に広がってゆく阿鼻叫喚といった光景は美的なものではないとドクオ自身の理性が啓示する。
 そして、ドクオは自らの考えを訂正した。上空を舞っていた赤い塊は地に向かって落ちているのではない。
 それらはまるで意志を持つかのように、人々に向けて落ちているのだ。

 雑踏の中で押し退け合いながらも逃げ惑う人々。だが、無慈悲にも狂いなく人々に赤い塊が落ちてゆく。
 赤い塊自体は大した大きさではないのだ。柿の種程度の大きさである。
 だが、その赤い塊を受けた人は次々に倒れてゆく。それを頭に受け、または胸に受け、腕に受け。それでも人は皆平等に地に伏してゆく。

 ――避けようがない。

 ドクオはその時、そう悟った。

5 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:10:13 ID:C8nvHS4Q0
 それは諦めに近かったのかも知れない。空を仰ぐ彼の瞳に映ったのは、自らへと一直線に向かってくる赤い塊。
 辺りで倒れてゆく人々と、赤い塊か衝突し崩れてゆくビル群を横目に映しながら、ドクオは走馬灯に似た感覚で想いに耽る。
 その時はあまりに突然のことで何に対する恐怖も無かったのだろう。ああ、という一声で思考を終わらせられたのだ。

('A`)(今日は四人で集まろうって約束してたのにな。高校は皆と別になったから――)

 頭のなかに流れるドクオ自身の声は寂しそうにも聞こえる。

( A )(――ブーン、ツン、クー)

 三人の名を呼んだときには、ドクオの胸には赤い塊が既に埋まりつつあった。徐々に消えゆく意識の中、彼は心の中で小さく呟いた。

( A )(――なんか、嫌だ)


 呟き終わった直後、ぼやけた彼の視界に映るのは、噴水のように吹き出す鮮血。
 それから、地に伏す時の痛みをドクオは記憶してはいない。

 ただ。
 視界に最後に映った光景をドクオは忘れることは無いだろう。
 先に倒れた人々が次々に起き上がる光景を――。


 ――その姿は人と呼ぶのにはあまりにも異形であったから。

6 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:11:36 ID:C8nvHS4Q0
 ――喰ラエ。

 誰がそう命令したのか、俺は知らない。内から聞こえた声なのだから、きっと俺の中に居る何かがそう命令したのだろう。
 苦しくはなかった。冷たくも暖かくもない真っ暗闇の中で、俺は寝転がりながら不思議な映像を見ていた。
 いや、見ているようだった。
 映像には奇妙な怪物が映っていた。なんだろう、質の悪いB級映画なのだろうと自問自答するが、そうでは無いことはあとから分かる。

 手に伝う生々しい感触。
『映像の中の俺』は両手に刃物を持ち、怪物を切り刻んでいた。画面に血が付着する。爽快だ。だが、こんなにも醜い手をしていただろうか。
 そう思っている間に、ふと両手に痺れが走る。どうやら、怪物に弾かれたらしい。
 すると、怪物の魔の手が映像の中の俺に迫る。ああ、死ぬのか。ってか、自分が死ぬってのに、俺って呑気だよな――。

7 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:12:48 ID:C8nvHS4Q0
 ――生キロ。

 今さらながら気付く。
 どうやらこの声は、映像の中の俺の原動力らしい。両手を弾かれ、仰け反ったはずの俺の体は、声に応じるように瞬時に体勢を立て直す。
 なるほど、声の主が映像の中の俺――俺の体を操っているのか。

 俺は歯を出す。
 いつの間にか獣のように尖った鋭利な歯だ。
 両手が使えなければ、これで殺せばいい。それでいい。俺は目の前に居た白黒の怪物の胸に噛み付く。そして、勢いで胸を貫く。視界を覆う血は気にしない。肉は美味い。骨も臓器も美味い。

 その時、俺の歯に堅いものを感じた。骨をも砕く歯に堅いものなど無いと思ったが――。

 俺は構わず、それを飲み込む。
 次の瞬間、高鳴る心臓の鼓動。俺の中で飢えていた何かが、その時満たされる。

 ――汝ハ進化スル。

 その時、俺は目の前が真っ暗になるのを感じた。

8 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:13:35 ID:C8nvHS4Q0

しかし、在れと言われ、在り始める自分は此処にいる。

9 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:14:15 ID:C8nvHS4Q0

プロローグ 終わり

('A`)喰らい、生きるようです

10 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:15:46 ID:C8nvHS4Q0
うわ、はを忘れてるよ。はを。

続けて一話を投下します。

11 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:18:03 ID:C8nvHS4Q0

 あなたはいつ、死んだのですか?

 ある人は答えて言います。
 最初に生きた時から死んでいます、と。

12 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:19:31 ID:C8nvHS4Q0

 それはまるで朝に目を覚ますような他愛のないことのようであった。彼はある時にふと眼を開く。
 別段、彼は誰に呼び掛けられたわけでもない。ただ自然と起きようと思っただけなのだ。彼は目覚めたついでに体を起こし、立ち上がる。それから、まだはっきりとは覚めていないような眼で呆然と辺りを見つめた。
 すると、間もなく彼の無表情が歪められる。

(;'A`)「どうしてこうなった」

 その起き上がってからのドクオの第一声は、まさに辺りの状況を鮮明に映し出していた。
 彼の忙しく動く瞳には、荒廃した街並みが映し出されている。
 いや、街並みとドクオが認識出来るのは、先程までその街並みを見ていたからであろう。
 ビルに付いている大型液晶モニターは灰色に染まり、亀裂の入った画面は何も映しはしないだろう。加えて、崩れ落ちたビルや亀裂の入った足元のコンクリートなど、まるで災害が此処で起きたかのような光景がそこにあったのだ。
 そんな時、ドクオの脳裏にふと疑問が過る。

 ――何故自分はこんなところに居るのだろうか。
 ――何故自分はこんなところで眠っていたのだろうか。

 すると、ドクオの胸がチクリと痛む。考えれば考えるほど、まるで自分の体がそれを拒絶するように強い痛みを発してゆくのだ。

(;'A`)(……ま、まあいっ――)

 辺りの光景から眼を逸らし、ドクオが無理矢理にも納得しようとしたまさにその時。生々しい感触をドクオの敏感になった感覚が捉える。それは、彼の細い足の裏が感じた。どうやら、ブニョブニョとしたゼラチン質のものを、彼は先程驚きのあまり退いた拍子に踏んでしまったらしい。
 ドクオは、それは何かと思い、足元に眼を映す。
 すると、彼の瞳に映るのは、赤い弾力性のある塊。そこから依然として染み出てゆく、赤い液体を血と認識するのは難しくはなかった――。

13 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:20:55 ID:C8nvHS4Q0
(;'A`)(――肉、片?)

 だが、そう心の中で呟いたとしても、彼は恐怖におののくことは無かった。その時には彼は自分がおかしくなっているとは薄々感じていた。その瞳に映る肉片を認識しても違和感はあるものの、大きく驚くことはなかったのだから。
 それでも、彼は混乱することは無かった。自分が異常とは思えるものの、それを素直に受け入れられるように体がなっていたのだ。だがそうだとしても、移ろいを感じることなく変化した自分を不思議だと思ったのだろう。訝しげに首を傾げる彼だが依然として呆然と立ったままであった――が。

「君も初誕を乗り切ったか」

(;'A`)「――ッ!?」

 ゆくりなく、辺りに響き渡った声にドクオは咄嗟にその声の方へと顔を向ける。
 そういえば、ドクオの辺りには人一人はおろか生き物は一体も居なかった。居たという痕跡を残すように、あちらこちらに血が付着しているだけである。無論、声など聞こえるはずも無かった。
 だが、その時に確かに声が響いたのだ。ドクオが眼を向ける先には、路上にて幾つもの自動車が縦に潰されていた。その奥に、確かに人影が見える。
 それから間もなく、ドクオは眼を見開き、嘘だろと言葉を口にした。
 ドクオの瞳に映る人影。それは確かに人だった。そして、ドクオは確かにその人間に見覚えがあった。いいや、そんなレベルではないほどだろう。

14 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:21:52 ID:C8nvHS4Q0

川 ゚ -゚)「やはり、人とは常に繋がっているものなのだな」

 その時、ゆくりなく吹いた風が彼女の長い黒髪をなびかせる。

(;'A`)「……クー?」

 ドクオの目の見開きようは、まるで幽霊を目前としたかのように大きく開き、それはまるで永劫にも閉じないほどに見える。興味よりはむしろ、恐怖や驚きの感情が彼の瞳に映りだしていたのだ。
 それを感じてか、クーは困ったように微笑む。

川 ゚ -゚)「立った死人を見るような眼で見つめるなよ。正真正銘、生きている私だ」

(;'A`)「mjd?」

川 ゚ -゚)「ああ、久しぶりだな」

 少々呆れ気味の仕草をしながら返事を返すクーだが、一方のドクオは唖然としたように眼をぱちくりとさせる。間もなく、開いたドクオの眼がキラキラと輝くのを見るのは難しくはなかった。

(;A;)「ク、クーたぁああああああああああああああああ――」

川;゚ -゚)「ちょっ、ドクオ!」

 ドクオが叫び出したとほぼ同時に、クーは慌ててドクオに呼び掛ける。間もなく、人差し指を立てて口元に置いたクーをドクオは見てか、口を紡ぐと、駆け出した足をピタリと止めた。

15 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:23:21 ID:C8nvHS4Q0

(;A;)「……ほぇ?」

川;゚ -゚)「再会を喜ぶのは良いが叫ぶな。『ヤツら』が来る」

(うA;)「……ヤツらって?」

 いつの間にか零れだしていた涙を拭い、クーの顔を見つめながら問うドクオ。その時にはユーモラスな雰囲気を滲みだしていたクーも少々深刻な顔持ちでドクオを見つめていた。

川 ゚ -゚)「初誕状態の悪魔化した生物のことだ」

('A`)「……はい?」

川 ゚ -゚)「いや、だから初誕状態の――」

(;'A`)「……いや、そうじゃなくて真ん中らへんの単語」

川 ゚ -゚)「――ん?」

 訝しげなドクオの表情に訝しげな表情で返すクー。
 二人とも互いが何に対して疑問を持っているのか分からない様子だったが、それに最初に気付き口を開いたのはクーの方だった。

川 ゚ -゚)「……あ、なるほど。君は『何も知らない』ということか」

(;'A`)「どういうことなの……」

川 ゚ -゚)「君も実際に感じたんだろう?『自分が悪魔化した』ことを」

16 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:24:43 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)「……え?」

 ドクオが疑問の声を洩らした、まさにその時であった。
 ゆくりなく、自らの脳へと何かが流れ込んでくるような感覚に彼は陥っていた。
 刹那に終わりを告げる。だからこそ、痛みは無い。
 ドクオの脳がその時覚えた――というよりは思い出した映像は、あの『喰らう』映像だった――。

 ――辺りに血飛沫が舞い、何かが天空へと咆哮する。
 ――狂った瞳は、それでも真っすぐにヤツらを見つめていた。
 ――元は同族を。
 ――俺は、喰らった。
 ――生きる、ために。

(; A )「……ああ、そうか」

川 ゚ -゚)「思い出したか?初誕状態から抜け出したばかりの時は、少々記憶の混乱があるらしいからな」

('A`)「……もう、全部思い出したよ。あれが……俺か」

 ドクオの頭の中を駆け巡るのは非常に醜い映像であった。
 路上に蠢く数多の怪物たちが、互いの命を喰らおうと戦っていたのだ。ノイズがかかり、白黒の映像だが、血も相手も自分が何をしているのかもはっきりと分かる映像だった。
 だが、疑問は残る。
 映像は途中で途切れていた。それは確か、怪物となった彼が堅い何かを飲み込んだ時だった。

17 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:27:24 ID:C8nvHS4Q0

('A`)「――あれから気が付いたら、俺は眠っていたんだよな」

川 ゚ -゚)「ああ、これを喰らった時からだろう?」

 クーはドクオが何を考えているのか分かっているかのように、着ているワンピースのポケットから何かを取り出す。
 それは赤い。血の色に似た何か。
ドクオはそれを幾つも見たことがあった。

「悪魔の種子」

 ドクオの問いよりも先にクーが静かにそう言う。

川 ゚ -゚)「これは空から沢山振ってきたうちの一つだ。
     種のような形をしているから、そう呼ばれている」

('A`)「……これを?」

川 ゚ -゚)「ああ。それに、これは私たちが悪魔化する要因だ」

 クーは飄々とそう言いながら、悪魔の種子を空から僅かに差す光に照らした。血に染まったような赤の中で、何かが静かに蠢いているようにも見える。

('A`)「これが俺たちの体の中に入ったから――」

川 ゚ -゚)「その通り。とにかく、これを手に入れるのは大変なんだぞ?」

('A`)「なんでだ?」

川 ゚ -゚)「悪魔化の媒体となったもの――つまり、悪魔の種子が植え付けられた生物が死んだ時に、この種子は死滅する。
     まあ、死滅したとしても、死体は悪魔の姿のままで居るんだけどな」

18 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:28:38 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)「ん、んじゃ……生き喰いしないと喰えないのか」

川 ゚ -゚)「あながちそうでも無いんだがな。実際、私の持っている種子は死体から採取した。媒体の生命力が強ければ、死滅しない場合もあるのだろう」

(;'A`)「……へぇ」

 その時、ドクオの間の抜けた声にクーはくすりと笑っていた。

川 ゚ -゚)「いつまでも変わらないな。ドクオは」

(;'A`)「――ってか、こんな突然の非日常で戸惑わないヤツが居るかよ」

 不平そうに口を尖らせるドクオだが、そんなドクオを見れば見るほどクーの顔は綻んでゆく。

川 ゚ー゚)「今日は会う約束をしてたから、楽しみにしてたよ」

(;'A`)「随分、変な再会になっちまったけどな。お前と――」

 その時、ドクオは言葉を詰まらせ、ふと顔を曇らせる。それと同時に、クーの笑顔も消えた。

( A )「――アイツら、大丈夫かな……」

川 ゚ -゚)「それなら探せば良い。私たちのように生き残ってるに違いないさ」

 クーが発した言葉は、全く根拠のない言葉だった。そして、無論ドクオもそれを理解していた。だが、信じたかったのだろう。それだけのために、あんな言葉を発したのだ。

('A`)「……ああ、そうだな」

 重い口を開けて、それでもそう強く言葉を発するドクオ。
 ――信じよう。
 その想いを乗せて、強く。

19 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:30:02 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)「――そういえば、さ。お前って、なんでそんなに詳しいんだ?」

川 ゚ -゚)「ああ、言ってなかったな」

 すると、クーは自らの胸に手を当てると、静かに眼を閉じた。

川  - )「こうして眼を閉じてると、私の意識の中にいる悪魔が私に話し掛けてくれるのさ」

(;'A`)「……んじゃ、そうやって悪魔化とかなんやらの情報を得たのか――ってか、俺も出来るのか?」

川 ゚ -゚)「やってみると良いんじゃないか?」

 クーは少々悪戯っぽい笑みを顔に浮かべながら、ドクオを見つめる。
 その笑みには何かしらの意味が込められているのだろうと悟ったドクオだったが、それを熟考するよりも前に、右手のひらを自らの胸に当て、静かに眼を瞑っていた。

( A )(――おい)

 ドクオが話し掛けると同時に、目蓋から漏れだす光も消えて、彼の周りは人為的な完全なる沈黙と暗闇に包まれる。いや、そう感じただけなのかもしれない。
 その時にはドクオは時間の概念すらも忘れようとしていた。永劫に続く闇と時の中で、ドクオの声が静かに染み渡る。だが、なんの反応もなかった。

(;'A`)(――――?)

 すると、ドクオはふとその空間に恐怖を覚えた。
 何故なのかは分からない。ただ、彼の背筋に通る冷たい何かは、この空間に彼以外の存在がいることを証明しているようだった。

20 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:30:51 ID:KYo78Sr20
アヴァタール・チューナー

21 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:31:08 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)「……な、なんだったんだ……」

川 ゚ -゚)「ん?話せたのか?」

 微笑みながら聞くクーに対して、ドクオは怪訝そうな顔つきで首を横に振る

それから間もなく、ドクオは自分の体験を話した。するとクーは、やっぱりか、と軽く言い放ったのだった。

川 ゚ -゚)「道理で君と会った時、私がおかしいと思ったわけだ」

(;'A`)「……はい?」

川 ゚ -゚)「悪魔と媒体となる人間とは二心同体。悪魔が君に悪魔化等について話すのは、決して悪魔に対しても君に対しても不利益なことではないはずだ」

(;'A`)「まあ、確かにな……」

川 ゚ -゚)「勿論、さっきのような数秒間でそんなことを語ってくれるとは思わないが、ある程度の意志疎通が出来無いと双方共々不便なはずなんだ」

('A`)「……だよな」

川 ゚ -゚)「まあ、君の悪魔はクールガイなのかも知れないな――いや、案外君に似てシャイな性格なのかもな」

 楽しそうにそう言うクーにドクオは、皮肉だなと笑いながら返事をする。すると、自らの胸元を再度見つめようとしたドクオの眼が、訝しげに歪められる。その視線は自らの右手へと。
 彼の瞳には不思議な紋章のようなものが映りだしていた。

22 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:31:57 ID:C8nvHS4Q0

('A`)「なんだこれ?」

 右手のひらにくっきりと浮かび上がった紋章は、赤い光を僅かに帯びているように見える。怪訝そうに首を傾げるドクオを見てか、クーは口を挟む。

川 ゚ -゚)「それは悪魔の種子が体内にあるって証拠だ。特に意味は無――」

 クーはそう言いかけると、伸ばした語尾の先でああと何か気付いたように声を上げた。

川 ゚ -゚)「――忘れてた。その紋章を他人の紋章と合わせることで『ユニオン』を組むことが出来るんだ」

('A`)「ユニオン?」

川 ゚ -゚)「ああ。悪魔化した時は体の構造も変化するから、言葉を上手く発せれない場合もあるんだ。その時のためにユニオンを組むことで、悪魔化中でも意識の中で言葉を交わすことが出来る」

(;'A`)「そりゃ……すげぇな。 んで、肝心のお前の紋章は何処にあるんだよ」

23 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:32:42 ID:KYo78Sr20
やってないとか糞もったいないよ。本当の意味で神ゲーだからやってからまたお越しください

24 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:32:53 ID:C8nvHS4Q0

川 ゚ -゚)

 その時、クーの表情が氷のように固まる。いけないことを聞いてしまったのかと、ドクオは思ったのだがドクオが言葉を発するよりも前にクーが口を開いた。

川  - )「――わ、私の紋章の場所は……な」

 それから、気まずそうにクーが自らの胸に手を当てるのを見て、ドクオが悟るのは間もないことだった。

(;'A`)「……あっ、『そこ』なの……ね」

川  - )

 顔を俯かせ、表情を見られないようにするように、前髪をだらんとさせるクー。だが、それでも紅潮した表情は隠しきれないようだった。

(;'A`)「……あの?クーさん?」

川 ////)「……や、優っ――」

 無理に口を開こうとすれば酷く紅潮した表情が見え、言葉が詰まる様子のクー。そんな中でもクーのことを少しだけ可愛いと思ってしまうドクオであった。それでも、あからさまに表情は変えないドクオだ。

(;'A`)「……え?」

川 ////)「――や、優しく――」

「――優しく……頼む」

(; A )

25 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:34:14 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)

川  - )

 あれからどれほどの時が経っただろうか。遠方にて背を向け、俯きながら佇むクーを心配そうに見つめながら、ドクオはふと思いに耽る。
 実のところ、大して時間は経っていないのかも知れない。まさに、息を吐くのにも戸惑うほどの雰囲気では、異様なまでに時間が長く感じるのだった。

(;'A`)「あのー?クーさん?」

川  - )「――君は良いよ。到底一生かけてでも果たせないだろうことを、たった今成し遂げたのだから。
     それに比べて私は、初めてを君に奪われ――」

(;'A`)「変な解釈しちゃうと思うんで止めてください」

 すると、ドクオの言葉への返事の代わりに、陰欝なため息がクーの口から吐かれた。
 こっちがため息吐きたいよ、と思うドクオだったが、あながち悪い気分では無いためか、堪えるドクオである。無論、ドクオが先程の出来事が嬉しかったと思ったことは秘密である。

川 ゚ -゚)「……まあ、いつまでもくよくよしてられないか」

('A`)「……まあ、な」

 そんなドクオでも、振り返ったクーの笑顔を見ると不意に笑みが零れるのだった。

26 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:35:16 ID:C8nvHS4Q0

('A`)「んで、アイツらを探しに行くんだろ?」

 遠方から戻ってきたクーに笑いかけながら、ドクオは雰囲気を切り替えようと話を切り出す。

川 ゚ -゚)「……ああ、多分駅前に居ると思われ――」

 その時だった。
 ゆくりなく、クーは言葉を詰まらせ、視線をドクオから明後日の方向へと移す。その動作に反応してか、ドクオもやおらにクーの見つめる方へと視線を移すが、彼はただ首を傾げるだけだ。詰まるところ、そこには周りと大差なく崩壊した街並みがあっただけだったのだから。

('A`)「どうした?」

川  - )「……なるほど」

 暫しの間、眼を瞑った後、何故か納得したように頷くクーは、ふと声に出して笑った。

川 ゚ -゚)「まあ、共闘の腕馴らしってことで良いか」

('A`)「……え?」

 クーの発した突拍子もない言葉のその意味を、ドクオが理解するのには少しだけ時間がかかったようだった。しかし、彼がその意味をようやく理解した時には、彼は自身の体に伝う何かを感じていた。
 背筋が凍るとはこのことだろうか。
 それらは彼と彼女が感じた直後、なんの前触れもなく現われた。
 刹那、直感的な何かがドクオとクーの体を動かし、数メートル先へと跳ばせさせる。間もなく、彼らが居た場所へと三つほど影が降り立った。

27 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:36:47 ID:C8nvHS4Q0

( *W*)

 それらは、人の大きさだった。だが、それらを元々人だったと認識させるのには酷く時間がかかることだろう。
 直立しながらも獣の四肢を持ち、爪を立て、牙をむき出しにし、充血した眼を一心にドクオとクーに向ける異形の姿は、まさに『怪物』というべきだろう。

(;'A`)「……悪、魔」

 初めて、人の状態ではっきりと認識する悪魔は、新鮮であっても臆するものではないと、ドクオの中で何者かが語り掛けているようだった。その証拠か、ドクオの心臓は恐怖とは異なる旋律を刻んでいる。

川 ゚ -゚)「これは飢えてるな。私たちを前から狙っていたように見えるが――どのみち理性を失った初誕状態などには負けるわけがない」

(;'A`)「ど、どうするんだよ?」

 冷静に悪魔たちを見つめるクーに対して、ドクオは焦燥感を抱いていた。それは、目前とした悪魔が怖いのではなく、自分が何をすべきなのか分からないためであった。

28 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:37:29 ID:C8nvHS4Q0

川 ゚ -゚)「なに、簡単なことだ。君は『その力』を持ちうる上で、ただ戦う決心をすればいい」

(;'A`)「……決心?」

 クーは間の抜けたドクオの声にフッとほくそ笑む。それから、ドクオを一瞥するとやおらに口を開いた。

「さあ、再誕(リバース)だ」

(;'A`)「――――!」

 その時、ドクオは自らの右手のひらにあった紋章がまばゆい限りの赤い光を放っていることに気が付く。それから慌てて、クーの方へと視線を移せば、クーは既に胸にある紋章より溢れていた青い光に完全に包まれていた――。

「慌てるな。全て、君だ」

(;'A`)「クー……?」

 その時に響いた声が、少しだけくぐもっていたのに気付いたと同時に、ドクオは自身の狼狽した声もくぐもっていることにも気付いていた。
 だが、彼がその意味を考える前に、彼の意識は消えてゆく――。

29 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:38:47 ID:C8nvHS4Q0

川  - )(――自分で言ってみたは良いが……考えさせられるな)

 外部の光に対して、一抹の光もなく、ただ闇が広がる空間の中でクーの声が静かに響き渡る。他よりの音が少しも響かないこの空間がクー自身の意識の中だと認識するのは難しくないだろう。

川  - )(全て、君だ……か)

「あら?クーはまた考え事?」

 その時、クーの呟き以外の声が空間に響き渡る。無論、外部よりの声ではない。今だにあどけなさを残したその女の子の声は、クーとは正反対に明るい調子だった。

川 ゚ -゚)(いや、大したことでは無いよ、『アリス』)

「ふーん。とにかく、結局あの冴えない男の子には伝えたのね」

川 ゚ -゚)(ああ、君が教えてくれたことをな)

 自然な会話を交わすクーとアリスと呼ばれた声の主。アリスの姿はクーには見えないが、その存在が確かにあることをクーは知っていた。

「そういえば、あの男の子は大丈夫なのかしら?一見、弱そうに見えるんだけど……」

川 ゚ -゚)(ハハッ、君に言われるほどドクオは弱く見えるのか)

 クーは薄笑いを顔に浮かべながら、アリスに向かってそう呟く。すると、アリスは依然として訝しげに問い掛けた。

30 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:39:21 ID:C8nvHS4Q0

「クーはドクオって男の子とどういう関係なの?」

川 ゚ -゚)(いや、別段特別な関係じゃないさ。彼は大切な人だよ)

「恋人とかじゃないの?」

川 ゚ -゚)(――恋人、か)

 アリスの言葉にふと顔を曇らせるクー。それに何らかの憂いが含まれていることにアリスは気付いてはいなかった。

川 ゚ -゚)(……そんなんじゃないさ)

「そうなの?まあ、私には関係ないことなんだけどね」

川 ゚ -゚)(だろうな)

「とにかく、目の前の悪魔たちを倒さなきゃね。お腹も減ってきたし……」

川 ゚ -゚)(ああ、頼むぞアリス)

 それから、間もなく深く眼を瞑るクー。そうして意識を集中させると、体の奥底から何かが沸き上がってくるような気がするのだ。

 彼女の意識は再度、消えた。そしてまた、目覚めるだろう。

 それでも、その顔からは憂いは最後まで消えることは無かったのだった。

31 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:40:54 ID:C8nvHS4Q0

 何も見えはしない。何も聞こえはしない。
 そんな状態のほうが彼は良かったと思えたのかもしれない。中途半端に、闇に浮かび上がる自分の四肢を見つめ、彼は気怠な溜め息を吐く。

( A )(――――)

 彼は沈黙していた。現在では彼の沈黙は、この世界の沈黙を意味する。
 一人だけ闇に浮き彫りになり、まるで特別な存在になってしまったような自分が彼は嫌いだったのだろう。俯き、拳を強く握りしめながら佇む彼の唇は不平さに歪む。

( A )(――おい)

 彼は声を上げる。つれて、彼に向けられていた何かが静かに揺らいだ。
 彼は以前から感じていたのだ。自らに向けられた視線を。ただ、自分を傍観するような冷酷な視線を。
 その視線が何を示唆していても彼にその意味を読み取るのは容易ではない。
 だからこそ、彼はおもむろに眼を瞑り、全身でこの世界に内在する『もう一つ』の存在を感じ取る。

( A )(――聞こえてんだろ。俺の意識の中に居るお前は誰だ)

 その時に耳を澄ませば、確かに聞こえたのだ。
 深き陰欝な息吹を。

32 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:43:26 ID:C8nvHS4Q0

「――我ハ汝」

 ただ吐かれただけの吐息に似た声を聞いたとしても、彼の想いは揺らぐことはない。瞳以外に宿る、鋭い視線を向けながら、彼はただ佇み、聞く。

「――真ナル我。汝ノ真ナル姿コソガ我――」

( A )(違うな)

 彼はことごとく、何者かの言葉を否定した。すると、畏怖に似た鋭利な感情が彼の肌を振動させる。闇でさえが、その時だけその存在を見失っていた。

( A )(俺は俺、お前はお前だ)

「――汝ハ己ノ内ナル形相ヲ否定スルノカ? ナラバ、今コソ我ガ汝ヲ喰ラオウ」

( A )(俺を支配するってか?)

 激しく波打つ闇の中で、彼はふと笑う。嘲笑に似た笑いに、闇がさらに荒らげられる。だが、彼はそれでも確かにそこに佇んでいた。

( A )(お前を否定してねえよ。俺の中にお前が居るってことは自覚してんだ)

 ただ、と彼は続ける。

( A )(俺はお前だけじゃねえ)

 その時、荒らいでいた闇が僅かに静寂へと帰す。返事にも似たその変化に、彼はゆっくりと眼を開けた。

33 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:44:04 ID:C8nvHS4Q0

('A`)(だから、今は力を貸せ。今だけは俺はお前だ)

「――人ノ子ヨ。我ノ力ヲ使役出来ルノカ?」

('A`)(出来るかじゃねえ。やるんだよ。それが決意ってヤツなんだろ?)

「――人トハ面白イ者ヨ」

 すると、闇が完全に沈黙し、再びこの世界に平穏が訪れる。その中で、彼ともう一人の彼が笑っていた――。

('A`)(んで、お前は何者だ)

「――我ガ名ハ災星ヨリ出デシ者『マルス』ナリ。我ガ諸手ニハ抗争ヲ、我ガ諸眼ニハ殺戮ヲ。全テヲ破壊シ、喰ライ尽クセ。人ノ子ヨ」

('A`)(俺を支配出来たらな。今、この力は俺のものだ)

「――好キニシロ」

('A`)(んじゃ、有り難く――)

 彼は伸ばした声の先で、深く眼を瞑る。その時、彼の胸に秘めていた力が外へと解放されてゆくのを、彼は確かに感じた――。

( A )(――この力、使わせてもらうぜ)

 間もなく、彼は体をも貫かんとする光に包まれた。その時に失った意識が即座に戻ることを彼は知っていた。だからこそ、彼は笑う。
 もう一人の己と共に。

34 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:44:41 ID:C8nvHS4Q0

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 それはドクオが最後に眼を瞑った後から、大して時間は経っていないことだったのかも知れない。
 刹那に響き始めた、異形な者の咆哮は、光に包まれるドクオの元より発せられていた。
 その咆哮をドクオは客観的な感覚で聞き、また、自らの口元が細かく振動するのを主観的な感覚で感じていた。
 それは奇妙な感覚だった。だが、その感覚もやがて終わることをドクオは知っていた。

( ゚A゚)「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 感覚は統合されてゆくのだ。
 もはや、ドクオはその咆哮を客観的な感覚で感じることなど出来ないだろう。口元の振動だけがただ全身に伝わりゆく。だが、その口元も徐々に変化してゆく。

( ゚W゚)「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 鋭利に尖りゆく口元の変化に伴い、彼の体が生々しい音を立てて全体的な変化をする。骨格が筋肉が完全に破壊され、新しく構築されてゆく。髪が異常な早さで伸びてゆく。
 ――だが、痛みは無かった。
 すると、徐々に彼にまとわり付いていた光が彼自身の内に戻るかのように消え失せる。その時には、ドクオの咆哮はピタリと止んでいた。

35 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:45:19 ID:KYo78Sr20
題材はいいのにテンポとセンスが壊滅的に悪い。とりあえずゲームやってこいって

36 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:45:37 ID:C8nvHS4Q0

( 川Ш川)

 だが、光の中から現われたのはもはやドクオでは無かった。

 尖った歯や、強固な肉体を覆い隠すように、元ドクオの体には炎のように赤い鎧が着せられていた。彼の体の一部から生まれたとは考えられないため、恐らく彼の着ていた服が変化をしたのだろう。
 また、ダラリと垂れた前髪は彼の顔全体をも覆い隠し、鋭く尖っただろう眼をも隠す。
 それでも、彼は目の前に佇む悪魔の姿を一心に見つめていた。
 悪魔たちは臆しているようにも彼には見えた。だからこそか、両手にいつの間にか握られていた細身の剣を地の構えに構える。

 その時、悪魔たちが咆哮した。
 けたたましい叫び声と共に宙を舞う三つの四肢。立てられた爪は、悪魔化したドクオに突き刺さらんと向けられる――。

(――なにをボーッとしている)

(;'A`)(――――ッ!)

 その時、脳に直接浴びせかけられた声にドクオは正気を取り戻した感覚に陥る。間もなくドクオの目前で一線の弧が鋭く描かれた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 耐えることの無い悲痛な叫び声が、ドクオの脳髄にまで響く。
 声を発する元三つが、宙で踊り地に叩きつけられるのがやけにスローに見えていた。

37 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:46:58 ID:C8nvHS4Q0

(;'A`)(――これは?)

川 ゚ -゚)(意識は保てるか)

 その時、遠方より散漫と響く声とは異質な声を、ドクオは聴覚以外の何かで聞いた。聞くよりはテレパシー的なものに近い感覚である。
 これがユニオンというものか、とすぐに考えるのは容易い。
 だが、振り向いた先に存在した異形の姿にドクオは心の中で狼狽していたのだが。

川 i _i)

 それをクーと判断するのには、大して時間はかからなかった。
 長い黒髪は金に染まり、彼女の着ていた鮮やかなワンピースは装飾を変えた他に、淡い青や黄や緑に染まっていた。
 一見、まさに童話に出てくるような少女にも見えようが、その顔に目元から引かれた線が悪魔らしさを醸し出す。特に、彼女が背中越しに握る、大きな黒い鎌は悪魔よりも死神と呼ぶべきであるようにも思える。
 彼女は鎌を軽く振り、赤い津液を落とすと、ドクオの前に一つ歩みを進めた。

川 ゚ -゚)(死に――いや、喰われたくないのならば、戦うべきだ)

( A )(――――)

 頭に叩きつけられたリアリティー溢れる言葉に、ドクオは自らの身体を見つめた。
 身体の駆動にはなんら変わりはない。動こうと思えば動ける。切り裂けと思えば切り裂ける。
 ただならぬ自負が、無意識の中に確かに存在していた。意識自体の変化が無いと計ったのは間違いだったのかもしれない。

 だが、ドクオにはそんなことはどうでも良かった。
 ――力はあるのだ。
 喰らい、生き残る力が。

38 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:47:45 ID:C8nvHS4Q0

川 ゚ -゚)(決心、したんだろう?)

('A`)(……ああ)

 ドクオは自らの身体から眼を離し、遠方にいる悪魔たちに睨み付けるような視線を向けた。
 悪魔たちは皆既に立ち上がっていた。傷から漏れ続ける血は、僅かなものとなっている。早々に決めなければいけない。

('A`)(……戦うぞ)

川 ゚ -゚)(ああ)

 その時、二人は一斉に駆け出していた。同時に、敵の悪魔たちも牙や爪を立て、迎撃せんと構えだす。
 しかし、ドクオたちには臆することなど毛頭にもなかった。
 その刹那、ドクオの両手にビリビリと振動が走る。それからも、彼の両手にかかり続けた重みは、敵の悪魔だと思うのは見ずとも理解できた。ドクオは防御しようなどとは思ってはいない。熱いものに手が触れた時の如く、反射的に両手が動いたのだ。
 一体の悪魔の爪は、ドクオの双手に握られた剣により容易く遮られている。だが、それでも悪魔は空中から依然として身体の重みをドクオに乗せてくる。
 それは意地が悪いのか、単に知能がないのか。だが、どちらにしろドクオには関係のないことだった。
 彼の隣でクーの大鎌の一線が放たれた時、ドクオは鋭い眼光を悪魔に向けていた。漆黒の髪に包み隠された紅の瞳でさえ、その時ははっきりとその存在を現わす。
 そして、ドクオの視覚が聴覚が悪魔の吹聴に似た笑いを感じる。

 ――うるさい。

 ただ純粋にそう思った時には、ドクオは息を大きく吸っていた。

39 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:47:57 ID:KYo78Sr20
AAが酷すぎる。ぶちきれた市松人形ですらミロのヴィーナスに見えるレベル

40 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:48:26 ID:C8nvHS4Q0

( 川Ш川)「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 刹那、それは日常的な呼吸のような感覚で、ドクオの唇から多量の吐息が滑りだす。
 それが咆哮だった。
 刹那のうちに、その咆哮は前方にある全てのものを等しく震わせるのだ。
 大気、そして、目前の悪魔でさえ例外ではない。
 その時に、ドクオの瞳には悪魔の臆する様が映り込む。その様は瞳孔が僅かに揺らいだだけだったが、怯えていると確かに認識できた。

 そう認識した時にはドクオは悪魔の身体を弾いていた。
 行き場を失った悪魔の身体は、泳ぐ視線と共に宙を舞う。
 だが、間もなくその臆する様は悪魔の顔から消え失せる。克服したとは、違う意味で。

「ギャァアアアアアア!!」

 苦悶を訴える凄まじい叫び声が辺りに響き渡る。無論、その元はあの悪魔の唇からだ。
 辺りに散漫と撒き散らされた血の背後で、苦痛に歪んだ悪魔の顔が浮かぶ。その傍で、宙を綺麗に回転しながら舞う、二つの腕。
 本体から分離した二つの腕は重量に従い、地に落ちようとする。本体である悪魔も例外ではない。

 しかし、それを易々見逃すドクオではなかった。
 二つの剣に付着する血を振り払おうともせず、彼は無言で剣を構える。腕をクロスさせ、僅かに落とす。若干前屈みの姿勢から、次に繰り出す一撃は相手の悪魔にも理解できていた。
 一寸の間も許すことなく、金属が軋むような音がドクオのアキレス腱から響き始める。だが、それを聞く者は少ないであろう。
 ドクオの全身に張り詰めていた強靱な何かは、細い糸が切れるかのように容易く抜けたのだ。応じてか、空間に紅い一つの大きな脈動が走る。

 それを感じたのは、ドクオ自身だけではないだろう。

41 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:49:31 ID:C8nvHS4Q0

( A )(……『双牙――)

 一つの脈動が終わりを告げる間に、ドクオは闇に問い掛けるよう強く言い放つ。

('A`)(――『双牙孤絶』!)

 ドクオの言葉の尾が闇に溶け込むのと時を同じくして、彼が見つめる先では無音が生まれていた。
 背後。ドクオは見なくても分かっているだろう。左右上空にそれぞれ突き出されている両刃に付着していた多量の津液は、もう見る影もない。空間にたゆたう数多の赤い雫は、刹那のうちは美しかったのだろうが、ドクオが僅かに振り向く頃には単なる血溜まりに帰していた。
 その血溜まりの中に、体を埋める影。それを先ほどの悪魔だと認識するのは、至極難しい。体の中心より、バツ型に切り裂かれた胴体含め四肢は、最早形を成してすらいないのだから。

川 ゚ -゚)(ドクオ!)

('A`)(――――!)

 ドクオが何かの思惟を致す前にそれを遮るかのように声が響く。
 それに応じて彼が目前へと顔を移せば、狂気に染まった表情が彼の視界を支配する。
 牙を剥き、鋭利な爪を立て襲い来る様は悪魔でしかない。
 だが、それらがドクオの首を突き刺す前に、彼の目前にて轟と音が生まれ、空間が切り裂かれた。間もなく、応じてなびくドクオの髪より垣間見えるのは二つの悪魔の腕。胴より断絶された四肢の一部は宙を舞い、その動作は間抜けな回転へと帰す。
 ドクオは横を見なくともその因果を理解することが出来ていた。だからこそ、その時には躊躇なく双剣を構えていたのだ。

42 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:50:13 ID:C8nvHS4Q0

('A`)(――クー)

川 ゚ -゚)(ん?)

 心の中で呟くドクオは、クーの間の抜けた声を聞き、一人でに小さく笑う。
 それは自嘲的な笑いか。だが、真意を問う間は既に無かった。

('A`)(――ありがとう)

 そんな呟きと共に、再度空間を高速で動く彼の体。
 それはまさに、一刀両断。
 いや、二刀両断か。
 背後で地に落ちる誰かの体を、ドクオは『その体』で見ることは無かったのだった。

43 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:50:52 ID:KYo78Sr20
技名があんまりだ・・・

44 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:51:22 ID:C8nvHS4Q0

「――やっぱり、なんか変なんだよな」

 そんな気怠な声が響く中、ガムを噛むような音が空間一体に染み渡るように響く。
 しかし、音を発する赤い色をした物体は、その形を見る間もなく噛みちぎられ、生々しい音と共に飲み込まれた。
 ――彼らの体の中へと。

('A`)「いや、カニバリズム?的なものだと思っちゃいないんだけどさ」

 そう呟くドクオの手には、先程と同じ握りこぶしほどの大きさの赤い塊が。そして、真っ赤に染まる彼の手は異常なまでに普通の――人間の手だった。
 その様を見てか、彼の隣に座るクーは小さくため息を吐く。

川 ゚ -゚)「あながち、カニバリズムは間違っちゃいないな。
生物学的には『共食い』はカニバリズムと言う」

 そんなことよりも、とクーは続けると、口元に付着した赤色を手で拭い、立ち上がる。

川 ゚ -゚)「そろそろ行くぞ。腹がすけば、初誕状態になってしまうらしいが、もう十分だろう」

('A`)「はいはいっと」

 ドクオは立ち上がるのと同時に手に持つ赤い塊を口に入れ、頬張る前に少しだけ噛み砕くと、それをすぐに飲み込んだ。

45 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:52:24 ID:C8nvHS4Q0

川 ゚ -゚)「勿論、行き先は分かるだろう?」

('A`)「あいつら二人か?居るんなら二人揃って、駅前から此処までの道だろうな」

 ドクオはそう言うと何を思ったのか、ニヤリと笑う。その口元には笑いと不釣り合いに、赤色が付着していたのだが。

('∀`)「――今日はみんなで集まる日だったしな」

川 ゚ -゚)「……笑う前に、口元くらい拭いておけよ」

 ドクオの調子の良い声とは反対に、何処か冷たい様子でそう言い放つクー。
 その表情に浮かぶのは、何かへの不平さか。だが、それを誰かが目にする前に、彼女は明後日の方向を向いていたのだった。

川 ゚ -゚)「駅前とはこっちだな。行くぞ、ドクオ」

(つ`)「了解」

 ドクオが口元を拭うのも待たず走りだす二人。それらの眼差しは極めて狂いなく、前を見つめていた。

「んでさ、クー。さっきの続きだけどさ」

「――なんだ?」

「――俺たちって、こんな感じだったっけ?」

46 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:52:50 ID:C8nvHS4Q0


「俺、血肉見ると、なんか嬉しくなるんだけどさ――」

47 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:53:47 ID:C8nvHS4Q0

 ある人は答えて言う。

 ――えっ、私は死んでいるのですか? と。

48 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:54:20 ID:jYgQNQ8s0

 ヽ('A`)ノ (――『双牙孤絶』!)
  ( )
  / \

49 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:55:14 ID:KYo78Sr20
―を使わないと間と雰囲気が出せない典型的ラノベ厨

50 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:55:22 ID:C8nvHS4Q0

第一話 産まれ落ちれた本能

51 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:56:27 ID:C8nvHS4Q0

 その一方。
 ドクオたちからは少し離れた場所にある、とある路上。

ξ;*△ー)ξ「――ハァハァッ」

 そこでは疲労を表わす荒い吐息が空間を舞っていた。
 それは決して比喩ではない。
 駆け、跳ね、立ち、一寸の間を置くことなく、また駆ける。
 そんな悪魔の影は、か弱さを表わすように小さく、魔女の姿を彷彿とさせた。
 木の杖を握り、悪魔の見つめる先には一つの影があった。
 そう、それこそが、悪魔の疲労の全てだった。

ξ ⊿ )ξ(――お願い、お願いだから――)

 悪魔が人の心で呟く先では、影がゆらりゆらりと揺らめく。
 影はその腕を地に垂らし、赤の滴る爪を揺らし、瞳は真っすぐに女の悪魔を見つめていた。その様に、人の面影はほとんど無い。
 ――まさに、獣の悪魔。

ξ ⊿;)ξ(――止めて!お願いだから――!)

 そんな少女の言葉はその悪魔に届いていただろうか。
 断言するのは無情にも容易い。
 否、と。

(#*W*)

(――ブーン!)

 その殺意は、少女の心へと。

 To be continued...

52 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:57:10 ID:KYo78Sr20
とりあえずゲームやってこい、な?

53 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:57:14 ID:C8nvHS4Q0

よし、これから返レスします。

54 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 01:57:47 ID:KYo78Sr20
そういう馴れ合いいいから

55 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 02:05:30 ID:C8nvHS4Q0

はい、アバチュです。
一応プレイ動画は見てきたんですけど、やらないといけないのなら出直してきます。
私自身近々やりたいなと思っていたので。

あと、文章の稚拙さやAAの崩壊、技名の酷さは申し訳ないとしか言いようがないです。
元は携帯で打ち込みをした作品をpcでコピーしたので、その分おかしい部分もあったかと思いますが言い訳にはなりませんよね。
いろいろ勉強しなおしてきます。
ありがとうございました。

56 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 02:08:42 ID:C8nvHS4Q0

ちなみに二話は未定です。
半年前に書いたのをちょっと修正したのがこれなので、現在はプロットも何もありません。

57 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 02:17:59 ID:C8nvHS4Q0

最後に、アバチュからは悪魔化の設定を取っただけのつもりですが、元ネタが好きな人がもしも不愉快な思いをされたのなら申し訳ないです。

58 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 03:24:01 ID:mW04fJKMO
もろアバチュだな

59 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/23(土) 05:25:26 ID:jYgQNQ8s0


語彙豊富だけど駆け足杉じゃね?
原作知らんとむつかしいぞ

61 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2016/02/26(金) 21:31:14 ID:GurR2exs0



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