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( ^ω^)は世界最強を目指すようです

1 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:14:37 ID:V8MbAYOQ0
立てますね

2 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:15:20 ID:kJZt71qQ0
ほほう

3 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:16:14 ID:V8MbAYOQ0
道場には深く静かな呼吸音だけが存在した。
紺色の道着を着た青年の目前には老人が一人。青年の左右斜め後ろには若い男がそれぞれ一人。
二人は老人の弟子であり、老人と同じく刀を手に構えている。

対する青年は素手。左半身を前にするスタンダードなファイティングポーズ。
しかしその気迫は、刀を所持する三人に引けをとってはいなかった。

僅かな気の緩みも許されない。
軽はずみに動こうとすれば、即座に首を切り落とされるような緊張。
青年が息を吐き、肩を落とす。

瞬間。老人が動く。

爪#'ー`)「せァァア!」

雄叫びをあげながら右足を踏み出し、低い態勢から刀を振り上げる。

4 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:17:02 ID:V8MbAYOQ0
風を切る音。正中線を真っ二つに分断しようという刄を、青年は右足を引き、体の軸を中心に回転するという最低限の挙動で回避する。
弟子二人はこれを見て、口の端を釣り上げた。


老人の刀撃は、まだ、終わっていない。


柔軟で、かつ鍛え上げた手首をもってすれば、刀での切り返しは可能となる。
即ち、この下段からの切り上げは、振り上がった勢いを用いた振り下ろしに化ける。

『犬牙』。老人の得意とする技である。

5 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:17:39 ID:V8MbAYOQ0
だが―――青年は知っている。

老人が犬牙を最も得意としていることを知っている。
そして、犬牙の一降り目は、切り返しに繋げるため、僅かに威力を抑えていることを知っている。

回避の際に下げた右足で地を蹴る。老人が目を見開く。
しかし遅い。老人の刀がまだ頭上にある中、青年の体が接触する。

背面を用いた体当たり。


( ^ω^)「鉄山靠」


老人は吹き飛び、地に伏せた体が起きあがることはなかった。

弟子たちは師がこうもあっさりと敗れたことに驚愕する。
そしてその驚愕は一秒にも満たない硬直をもたらした。

6 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:18:19 ID:V8MbAYOQ0
だからこそ、弟子たちには青年が次の瞬間に消え去ったように映った。
もちろん消え去ってなどいない。青年は老人を吹き飛ばすと共に次の動作へ移っていただけだ。

彡;l v lミ 「何処へ!?」


―――下へ。


(;l v l)「下だ!」

( ^ω^)「遅い」

狙われた弟子へ、もう一方が指示する。
その時にはもう、青年の水面蹴りが彼の足を払っていた。

浮いた体が墜落する。そして迎え入れるように放たれた掌低が顎にクリーンヒットし、意識は消え去った。

7 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:18:53 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「よい……しょっ!」

意識を失ったその体を、青年は片手で持ち上げ、軽々と放り投げた。
飛来してくる人体。残された一人の思考が驚愕に支配される。

(;l v l)(仲間の体をゾンザイに扱うわけにはいかない…!)

刀を離し、受けとめる。

すると、首筋に冷たい感触。
恐る恐る見れば、刀の切っ先が触れている。

( ^ω^)「打開策は?」

(;l v l)「……ありません」

( ^ω^)「僕の勝ちだお」

青年は持っていた刀を高く掲げると、試合中の表情とは打って変わって、人懐こそうな笑顔を見せた。
青年の名は内藤ブーン。

『世界最強』を目指して鍛練を続ける若者である。


―――( ^ω^)は世界最強を目指すようです

8 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:20:15 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「やれやれ、試合で気絶したのはいつぶりだろう」

そう言いながら、包帯を巻いた頭をさするのは、この道場の師範、フォックス。
ブーンの叔父でもあり、残された唯一の親類でもある。

(;^ω^)「すみません。一応加減はしたんですが」

爪'ー`)「気にしない。それにしても剣道三倍段とはいうが、だとすればいったい私たちとブーンにはどれだけの差があるんだろうね」

フォックスの視線の先には居心地悪そうに俯く弟子二人の姿があった。
これでもこの道場の一番弟子と二番。つまりブーンは一人で上位三人を打ちのめしたことになる。

9 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:20:50 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「まぁ僕はフォックスさんの犬牙を知ってたから」

爪'ー`)「知っていても避けれんよ、少なくともうちの弟子はね。
     それを避けるどころか反撃に移るとは。凄まじい才だ。ますますうちの道場にほしい」


(;^ω^)「いや、僕は……」

ブーンが何かを言おうとしたのを、フォックスは手の平で遮る。

爪'ー`)「分かってる。鍛えるのはあくまで自己流で、だろう?
     まぁ、手合せくらいならいつでも相手になるよ」


彡 l v lミ「そうですよ。ブーンさん。いつでもいらっしゃってください」

( l v l)「ブーンさんとの手合せ、楽しみにしてますから」

爪'ー`)「相手になっているかは、別としてな」

「酷いですね」と弟子は返すものの、その節がないこともないのか、道場に笑いの波が押し寄せる。
ただ、ブーンのそれだけは、何故か苦々しいものであった。

10 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:21:49 ID:V8MbAYOQ0
道場から歩いて十分。村の外れにある小さな家。
家というよりは小屋と呼ぶほうが適切な、素朴な作り。ブーンはここに一人で暮らしている。

母は数年前に病気で死んだ。父は生まれた時にはいなかった。
母が死んだ時、フォックスがブーンを引き取ると申し出た。

こんな村外れの家よりも、村の中心にある道場で暮らしたほうが何かと便利だろう、と。
ブーンは断った。便利であることよりも、母と暮らした思い出のあるこの家の方が、ずっと価値があった。

( ^ω^)「フォックスさんも、諦めてくれたらなぁ……」

その裏庭。ブーンはそう言いながら空に右上段蹴りを放つ。
正確にいうなら、空に舞う葉の下すれすれを、だ。

蹴りによって生じた風圧で葉が舞い上がる。

( ^ω^)「僕には父さんが残してくれたものがあるから十分だっていうのに」

11 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:23:19 ID:V8MbAYOQ0
連鎖するように後ろ回し蹴りを放つ。更に拳圧を浴びせ、今度は掌低。
葉は、空間にひらりひらりと舞いながら佇む。

これを地に落とすことなく、体力が尽きるまで続ける。
まるで空に浮かぶ葉を纏いながら踊るように、ブーンはこれをこなす。

( ^ω^)「はぁ……」

初めは数秒ともたなかったこの修業も、今のブーンには考え事をしながら続けられる余裕があった。
考え事の内容は、フォックスの誘いの件であり、世界のことである。


この国の名前はVIPといい、本土はドーナツ状の形をしている。

そして、ブーンの住む村―――ハジリマは、ドーナツのちょうど真ん中にぽつんと浮かぶ小島にある。
人口が五百人にも満たない、孤立した小さな村だ。

村から本土に行くものは限りなく少ない。いや、いないと言ったほう正しい。
そういう話が無いこともないが、夢物語のような扱いだ。

12 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:24:15 ID:V8MbAYOQ0
なぜなら、島と本土の間にある海には大型の海洋生物が存在する。
浅瀬で漁をする程度ならまだしも、沖に出るだけで自殺志願者だと言われる海を渡ることは出来ない。

空でも飛べればとは思うが、それこそまさにこの村においては夢物語。
つまり、この村は決して出れない檻の中にあるようなものだった。

( ^ω^)「……わかりきったことなんだお」

そう、分かりきったことなのだ。

この村において、武術というものは、趣味や遊びの範疇を出ない。
役に立つと言っても精々、喧嘩で負けなくなるくらいのもの。

もっともフォックスの道場で師範になるというのなら、話は別である。
求められるだろう。武術という遊びの達人として、褒めたたえられるだろう。
鍛えた体を、技を生かすには、フォックスの道場に世話になる以外に道はない。

しかし、ブーンにはこれがどうしても納得できなかった。

夢が、あったから。

13 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:25:03 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「あっ」

気が滅入り、鍛錬を中断しようと手刀で葉を切り裂こうとする。
その間際、思わぬ突風が葉をさらっていってしまった。

( ^ω^)「なーんか、むず痒い感じだお」

修行も考え事も中途半端になり、不貞寝してやろうとブーンは家に戻ろうとする。
しかし妙な視線を感じ、振り仰いだ。

(;^ω^)「……んっ?」

14 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:25:55 ID:jqGzIhuIO
面白い

15 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:26:12 ID:V8MbAYOQ0
家の屋根の上で、真っ赤なチャイナ・ドレスを身にまとった少女がしゃがみ込んでいる。
少女とはいうものの、その幼さを残した容姿に似つかず、妖艶な雰囲気を漂わせていた。

ただ、互いの位置関係を考慮すると、どうしても見えてしまうものがあり、ブーンの目は釘付けだった。


('、`*川「……主、純朴そうな見かけに反して、えろいの」

(;^ω^)「えっ!? いや、僕はその、全然、白い三角形なんか見てませんお!」

16 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:27:04 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「よっと」

少女は屋根から飛び降り、軽々とした様子で着地する。
同時にエメラルドグリーンの長髪がふわりと広がり、収束した。

猿のような身のこなし。そう例えるのも失礼になるような、美しく自然な動作だった。
まるでその背中に大きな羽でも生えているかのような……。

( ^ω^)「……天使?」

('、`*川「は? なんじゃお前、いきなり気持ち悪い」

間違えた。天使はこんなこと言わない。
ほっとするような、残念なような気持で一息ついて、再び尋ねる。

( ^ω^)「えーと、どちらさまですかお?」

('、`*川「人に物を尋ねる時は、まず自分から。それがマナーというやつじゃ」

(;^ω^)「……僕の名前はブーンですお」


('、`*川「うむ、ワシの名前は秘密じゃ」

(;^ω^)「マナーはどこにいったの!?」

17 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:27:56 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「うっさいのぉ……ほれ、まず言うことがあるじゃろ?」

( ^ω^)「えっ、何ですお?」


('、`*川「立話もなんですから、まずは中へお上がり下さい」

( ^ω^)「……立ち話もなんですから、まずは中へお上がり下さい?」

('、`*川「茶と、美味しい菓子でもお出ししますよ」

( ^ω^)「……茶と、美味しい菓子でもお出ししますよ?」


('、`*川「うむ、気が利くのぉ! 案内せよ!」

(;^ω^)「ええー……」

あまりの傍若無人にほとほと呆れながらも、言い知れぬ迫力に押され、結局言われるがままにブーンは客人を迎え入れた。
このブーンという男。武術ばかりに感けていたせいか、女というものには滅法弱いのである。

18 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:28:44 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「どうぞ、粗茶ですが」

('、`*川「うむ。御苦労」

呑気に茶をすすり、口一杯に饅頭を頬張る少女を見て、とりあえず悪い人間ではなさそうだと判断したものの、
やはり得体の知れない人物であることには変わりがない。

なにか少しでも素性の分かる情報が手に入ればいいのだが。

( ^ω^)「ところで、えーと、僕らは初対面で間違いないですお?」

('、`*川「前世では深い仲であったかもしれん」

( ^ω^)「前世て……」


('、`*川「それこそ、一国の美人で名の知れた姫と……」

( ^ω^)「うん」


('、`*川「その姫に憧れ、ファンクラブを作った男……」

(;^ω^)「知りあってもない!」


('、`*川「……に、飼われていたハムスター」

(;^ω^)「人間ですらなかった!」

19 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:29:21 ID:V8MbAYOQ0
この通り、のらりくわりとかわされてしまうのではどうしようもない。
少女が自ら話すのを待つしかなかった。

('、`*川「口の形が特徴的で可愛らしいと評判だったらしいぞ」

( ^ω^)「もうその話は終わりにしてくれていいお」

('、`*川「なんじゃ、つまらん。……んー?」

少女がずいっ、と湯呑を突き出す。

( ^ω^)「ん? あー、おかわりですかお、今すぐお持ちしますお」

('、`*川「至急頼むぞ。万が一があるかもしれんからの」

( ^ω^)「どんな万が一ですお」


('、`*川「饅頭を喉に詰まらせてそのまま……とか」

( ^ω^)「そりゃ、一大事なことですお……」

もはや突っ込む気力さえなくなり、ブーンは台所で茶を入れ直し始める。

20 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:30:12 ID:V8MbAYOQ0

( ^ω^)(にしても……)

一つだけ、確かなことがあった。
それはあの少女が、この村の人間ではないということだ。

村にはけっして少なくない数の人がいるが、それでもこの村で生きていれば全員と知りあう機会があるだろう。
特にブーンは両親がいないことや、家が外れにあるせいか、多くの人に目をかけて貰っている。
だというのに少女とは知りあうどころか、見かけたこともありはしない。もしも見かけていたら、強烈に脳裏に焼き付いていたことだろう。

( ^ω^)(だって、そりゃあ、ねぇ)

少女の外見は……外見『だけ』は、ブーンの好みを的確に射抜いていた。
いくつか年下には思えるが、数年もすれば気にならない程度にはなる。
そのような容姿をもった少女を、一度でも見かけていれば、忘れることなどありはしない。

そして、村の人間でないのならば。

( ^ω^)(大陸からきた……?)

本腰を入れて、彼女の素性を調べるてみるか。

ブーンが決心するのと、茶が沸くのは同じタイミングだった。

21 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:30:48 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「饅頭、お前の分も食ったが構わんよな?」

茶の間で待ち構えていたのは、そんな言葉と空になった二つのお皿だった。

( ^ω^)「ああ、それくらいは想像の範囲内だお」

('、`*川「ほほう、つまり?」

( ^ω^)「茶を沸かすついでに、饅頭のおかわりをお持ちしました」

('、`*川「やるのぉ! 主、やるのぉ!」

これでもかと言わんばかりの笑みである。
とりあえず満腹にさせておけば口を滑らすんではないか、という些細な作戦ではあったのだが。

('、`*川「まんじゅうこわい! 美味過ぎてまんじゅうこわい!」

以外にもあっさり功を奏してくれそうなので、ちょろいもんだと舌を出す。

22 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:31:17 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「じゃあ本題なんだけど……」

('、`*川「そうか、ついに話さねばならんか」

( ^ω^)「うん、それじゃあ頼みますお」

なにしろ家の中の饅頭を全て献上したのだ。
これからしばらく、ブーンはおやつなしでの生活を余儀なくされている。
失ったものは大きいが、それだけの価値がある情報が手に入るに違いない。

('、`*川「実はワシは……」

(;^ω^)「ごくり」

('、`*川「つぶあんより……」

( ^ω^)「…………」


\('∀`*川ノ「こしあんの方が好きなのだ!」

23 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:31:45 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「……うん、で?」

('、`*;川「え? あれ、突っ込みは?」

( ^ω^)「いや、もうそういうノリ、いいから……」

('Д`*川「まだまだボケ足りんというのに……」

ぶつくさ文句を言っていた少女も、流石に観念したようだった。
だらしなく座っていたのを正し、改めて二人は対面する。


('、`*川「むぅ、どこから話せばいいもんかの」

( ^ω^)「そうですお……じゃあ、まずは自己紹介からお願いしますお」

('、`*川「ん? 言ってなかったかの?」

( ^ω^)「その機会はあったけど、どこかのボケたがりに潰されましたお」

('、`*川「酷い話もあったもんだのぉ……」

と言いつつも、視線は宙を泳いでいるから自覚はあるようである。


('、`*川「まぁいい、ワシの名前は……」

24 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:32:38 ID:V8MbAYOQ0
その時、家の扉が勢いよく開かれた。

爪;'ー`)「た、大変だ、ブーン君!」

騒々しく家に駆け込んできたのはフォックスだった。
いつもの落ち着いた雰囲気などどこへやら、すっかり取り乱した様子である。
随分あたりを駆け回ったのか、その額には多量の汗が浮かんでいた。

(;^ω^)「ど、どうかしたんですお?」

爪;'ー`)「とにかく、大変で、それはもう大変なんだ……!」

(;^ω^)「とりあえず、これでも飲んで落ち着いてくださいお」

爪;'ー`)「おお、これは済まないね……」

フォックスはお茶を飲んだせいか、一先ずの冷静さを取り戻したようで、
呼吸を整えれば、すっかりいつもの調子に戻っていた。

爪'ー`)「ふぅ……いや、すまない、なにぶん緊急事態なものでね」

( ^ω^)「何があったんですお?」

25 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:33:21 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「森の奥にある石碑、ブーンも知っているだろう」

知っているも何も、それはブーンが月に一度、手入れに出かけている場所だった。
この家から村とは反対側に少し歩くと森に入るのだが、そこのかなり奥地には小さな神殿のようなものがある。
その中にあるのが件の石碑である。ブーンは森に狩りに出かけるついでに、ここの掃除や管理を任されていた。

( ^ω^)「もちろんですお」

爪'ー`)「じゃあ、あれがどういったものなのかは知っているかい?」

( ^ω^)「それは……」

その質問には、首を縦に振ることは出来なかった。
平和なこの村にそぐわない神秘的なものだから、もしかしたら何かがここにはあるかもしれない。
そう思って、先代の管理者から石碑の管理を受け継いだのだが、そもそも本来はどういう場所なのかは全く知らなかった。

( ^ω^)「あそこは、何なんですかお?」

爪'ー`)「うん、実はね、あそこには千年前の魔物が封印されていたんだ」

( ^ω^)「魔物……!」

26 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:34:31 ID:V8MbAYOQ0
魔物。噂には聞いたことがあった。

動物よりも強く、人間よりも賢く、昆虫よりも繁殖する生き物らしい。
千年前の争いで有力な魔物は滅ぼされたが、大陸の方ではまだまだ見かける機会は多いと聞いたことがあった。
もちろん、ハジリマで生まれ、ハジリマで暮らしているブーンには噂の中の代物でしかなかったのだが。

( ^ω^)「石碑は今、どうなっているんですお?」

爪'ー`)「……粉々だよ。一体何をすればあんな風に壊れるのか見当もつかない」

( ^ω^)「粉々……」

爪'ー`)「村人が壊したなんてのは考えられない。そもそも物理的に無理だ。出来るとした私か、ブーンくらいのものだが」

(;^ω^)「いやいや、そんな滅相もない!」

爪'ー`)「だろうね、だとすれば……」

( ^ω^)「魔物の封印が解けた、と?」

爪'ー`)「そう考えるのが一番自然だろう」

この村は平和であることが長所で、同時に短所だと思っていたブーンだが、
実際こうしてイレギュラーが舞い込むと、なにかぞわぞわとしたものが背筋を這うような感覚がした。

27 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:35:41 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「村は、大丈夫なんですかお?」

爪'ー`)「うちの門下生に捜索してもらっているよ。ブーンにもその協力を願いに来たんだ。頼まれてくれるね?」

( ^ω^)「それはもう、勿論! 当然ですお!」

爪'ー`)「ふふっ、心強いことだ……」


フォックスの微笑は、心の底から安堵出来たような安らぎに満ちていた。
その真意は定かではないが、ブーンは助けになれることに一先ずの喜びを感じていた。

しかし微笑から一転、フォックスの眼が見開いた。
ようやく一人の少女がぶすっとした表情で、部屋の隅に体育座りしていることに気付いたようである。


爪;'ー`)「……ん!? 君は一体誰だい!?」

('、`*川「やっと気付いたのか、このお茶泥棒」

爪;'ー`)「いつの間にここに入ってきたんだ!?」

('、`*川「最初からいたわ。このお茶泥棒」


(;^ω^)(根に持ってやがる……)

28 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:36:16 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「見ない顔だね……見ない顔……?」

フォックスは自分で言って、ふと気付く。
この村に見知らぬ人物などいない。いてはならないということ。
そして、今自分が門下生と共に探しているものが何かということに。

爪'ー`)「ブーン、一つ言っていなかったことがあったね」

( ^ω^)「えっ、なんですお?」

爪'ー`)「石碑に封印された魔物の特徴だよ」

( ^ω^)「ああ、そういえば……どんな魔物なんですお?」

爪'ー`)「魔物の名前は『神竜ペニサス』。緑色の外皮に、赤い爪と牙。琥珀色の瞳をした巨大な竜だ。
     一息で山を吹き飛ばし、一息で村を焼きつくし、一息で大地を凍らしたという伝説が残っている」

( ^ω^)「そりゃあ、桁違いの化物ですお」

爪'ー`)「ああ……そして何より恐ろしいのは、その魔物は、一見無垢な少女に化けられるという……」

(;^ω^)「……えっ?」

29 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:36:55 ID:V8MbAYOQ0
緑色の外皮―――エメラルドグリーンの髪の毛。
赤い爪と牙―――真っ赤なチャイナドレス。


琥珀色の瞳をした一見無垢なその少女は立ちあがり、言う。


('、`*川「自己紹介がまだじゃったな。ペニサス、だ。よろしく頼むぞ、人間共」


そして、にやりと、口の端を釣り上げた。

30 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:37:17 ID:bqF0154kO
支援
面白い。刀語を思い出す。

31 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:37:33 ID:V8MbAYOQ0
(;^ω^)「え、え? この子が、竜で、魔物で、え?」


爪;'ー`)「やれやれ、この老体に伝説の化物を相手にさせようとは無理を言う……」

('、`*川「はっはっ。無理をする必要はない。じじぃはすっこんどれ」

爪;'ー`)「とはいえ、少なくとも貴女よりは若いのでね……ロリババァ」

('Д`*川「カッチーン」


瞬間、ペニサスの背後に、なにか大きなものが現れた。
それは勢いよく広がると、轟音を上げて部屋の壁をぶち抜き、風を生みながらその形態を露わにする。

32 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:38:49 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「これは……」

(;^ω^)「僕の家っ! 僕の家がッ!」

('、`*川「竜なのだから、これくらいは当然じゃろう?」

それは翼であった。
しかしブーンが出会った時に想像したような神々しいものではなく、それこそ悪魔の持つような禍々しいものである。
緑色の鱗は猛々しい妖気を放っていた。


('、`*川「それっ、吹き飛べ!」

翼が障害物の存在を無視して、大きく前後する。
そのたった一つの動作で、巻き起こる破壊の波動はフォックスやブーンが立ち続けていられるようなものではなかった。

爪;'ー`)「ぐ……うぅっ!」

(; ゚ω゚)「家、いえぇえええええええ!!」

残された支柱に必死でつかまりながら、飛んでいく屋根を見ながらブーンは必至で叫んだ。
しかし叫びも空しく、屋根は空高く舞いあがり、しゃぼんたまのように壊れて消えた。

33 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:40:27 ID:V8MbAYOQ0
爪;'ー`)「ま、まさかこれ程の力を持っているとは……」

('、`*川「力もなにも、ちょっと窮屈だったから翼を動かしただけなんだがのぉ。
      まぁ人間には十分過ぎたという話か」

( ;ω;)「うぐぅ……僕の家……カーチャンとの思ひでぽろぽろ……」


ペニサスがうなだれるブーンへと歩みよる。

('、`*川「ほれっ、泣くな男の子。行くぞ」

そして、ぼろぼろと泣くばかりのブーンに、手を差し伸べた。

( ;ω;)「行くって、どこへ……?」

('、`*川「二人きりで話がしたい。ここじゃ邪魔がはいり過ぎるからの」

恐る恐る手をさし返すと、二つの手がぎゅっと掴みあった。
ペニサスの一つの微笑みの後、再び翼が大きな躍動を始める。
しかし今度は風を生むための動きではない。飛翔への準備だった。

34 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:40:55 ID:V8MbAYOQ0

爪'ー`)「待て、魔物!」

('、`*川「名前で呼んでくれないなら待たん」

爪;'ー`)「ぐっ……待て、ペニサス」






('Д`*川「貴様如きに呼び捨てされるほど安い女ではないわ!」


散々な言葉を残しながら、ペニサスはブーンを連れ、その場から飛び去って行った。

35 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:42:44 ID:V8MbAYOQ0

ブーンが目を覚ますと、広大な青空が一面に広がっていた。
いつも通りの綺麗な空。まるで今までのあれこれが全て夢だったかのような……。

('、`*川「小僧、目が覚めたか」

琥珀色の瞳が視界に映り込んだ。綺麗な顔立ちをした少女だった。
どうやら夢ではなかったらしいことに、説明し難い複雑な感情を抱きながら、体を起こす。

( ^ω^)「ここは?」

('、`*川「村の外れの外れ、といったところかの。島のはじっこの方じゃ」

( ^ω^)「僕はどれくらい寝てたお?」

('、`*川「十分くらいかの? もしやこのまま目を覚まさないのかと思って、ちょっと焦ったわ」


( ^ω^)「ということは、この後頭部の痛みはお前のせいだとみて間違いないお?」

('、`*川「ワシとしては普通に降ろしたつもりだったんだがの。ちょっと高度が高過ぎたみたいで……」

地面から遠く離れた空中から降ろされた、もとい、落されたブーンはその際に頭をぶつけて気絶したのだった。
五点着地という技術を用いたため、それ以外の外傷はないが、並の人間なら運が悪ければ即死である。

36 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:43:26 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「まぁいいお、それより……」

改めてペニサスを見ると、やはり翼が放つ異様さが目立っていた。
片翼だけで、少女の外見をすっぽりと覆える大きさを擁している。

( ^ω^)「本当に魔物だったのかお」

('、`*川「まぁの。もっと取り乱してくれても構わんぞ?」

( ^ω^)「食われるー! ……って?」

('、`*川「食べたちゃいたいブヒー! とかでもいいが」

( ^ω^)「それはないから」

絶対にとは言えないけど、とは口には出さなかった。


( ^ω^)「で、どうして僕を連れ出したんだお?」

('、`*川「捕食」


(;^ω^)「……性的な意味で?」

('、`*川「食欲的な意味で」

(;^ω^)「…………」

37 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:44:27 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「冗談はさておき、じゃ」

(;^ω^)「お前が言うと冗談に聞こえねぇお!」


('、`*川「最初に食うの犯すの言いだしたのは主じゃろうが!」

(;^ω^)「そうだけど! ていうか犯すは言ってねぇお!」


('、`*川「なんじゃ、竜にはボケる権限も与えられないっていうんか! 差別じゃ!」

( ^ω^)「お前のボケに対する執着なんなんだお!?」

これまでの魔物に対するイメージががらがらと崩れていく音を、耳の隅っこの方で聞きながら、改めて尋ねる。


( ^ω^)「で、用件はなんだお?」

('、`*川「ふむ、実はワシ、まだまだ本調子ではないんじゃ」

( ^ω^)「へぇ?」

('、`*川「ワシを封じていた封印は五箇封印といってな。五つの地点にそれぞれの封印術を施すというものなんじゃが……。
      結論から言えば、大陸の方にあと四つ封印を解かなければいけない場所があるから、主にそれを手伝ってもらいたい」

38 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:46:24 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「なんで、僕が魔物の手伝いをしなくちゃいけないんだお」

('、`*川「……主、大陸に行きたいんじゃろ?」

(;^ω^)「なんでそれを知って……!」

('、`*川「石碑を掃除していた時にいつも愚痴っていたじゃろうに。生憎、声は届いていたのでな」

(;^ω^)「むぅ……」

('、`*川「一生に一度のチャンスだと思うがの。かと言って、よく考えろなんて言わんぞ。即断せよ」

一生に一度のチャンス。言われなくてもそのようなことは分かりきっていた。

ペニサスと共に空を飛んだ時、芽生えた感情の中に恐怖はなく、むしろ満ち溢れていたのは希望だった。
日頃から願っていたことがようやく神に届いたとさえ思った。
悪魔にしか見えない魔物が、今度こそ天使のように見えたのだ。

だがやはり、魔物は魔物。信用していいのか、悪いのかが分からない。
この契約こそ、それこそ悪魔との契約のように思える。いや、悪魔との契約にもすがる必死さも必要なのかもしれない……。

様々な葛藤の末、ブーンは契約に一つの条件を持ちかけることにした。

39 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:47:08 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「一つ聞きたいお」

('、`*川「なんじゃ?」

( ^ω^)「お前、力を取り戻したらどうするつもりだお?」

('、`*川「どうもせんよ。失くしたものを取り戻しに行く。それだけじゃ」

この返事はブーンにとって想定内だった。
むしろ、例え悪事を働く気があったとしても、素直に答えるとは思えないので、この答えしか想像出来ないとも言える。

( ^ω^)「……僕は、強くなるお?」

('、`*川「む?」

( ^ω^)「今はお前より全然弱いかもしれないけど……世界を知れば、多分今よりずっとずっと強くなるお。
      その時は、きっと全力全開のお前よりも強いはずだお」

('、`*川「ほぉ」

( ^ω^)「そして、お前がなにか悪事をしようというのなら、僕がお前を退治する。それが同行の条件だお」

40 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:48:24 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「言うことがでかい。いや、それほどでないと一緒に来いという意味がないとも言えるが……」

笑みを堪え切れずといった様子でペニサスは呟いた。
ブーンをこの場で引き裂いてもおかしくない、生意気な発言をされたにしては、妙な態度である。
これまでのことも踏まえると、やはり噂で聞く魔物とはイメージがかけ離れているとブーンは思った。


('、`*川「ともあれ小僧、ワシを「お前」「お前」と呼ぶのは好かん。気を付けろ」

( ^ω^)「それはすまんお。でも、それを言うなら僕のことを小僧って言うなお」

('、`*川「小さいことを気にするな、小僧」

( ^ω^)「お前、わざと言ってるお……?」

二人はむむむと睨みあう。


('、`*川「やれやれ……まぁ、ともかくだ、一緒について来る気はあるんじゃな?」

( ^ω^)「そういうことになるお」

('、`*川「それなら、最終試験といこうか」

( ^ω^)「試験?」

41 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:49:27 ID:V8MbAYOQ0
('、`*川「ワシはこれでもお前の才能を買っておる。が、しかし、千年も眠っていたからの、目利きも錆びておるやも知れぬ」

ペニサスは実のところ、ブーンがこの小さな島で収まる器ではないと感じていた。

普段の身のこなし、服の上からでもわかる逞しい体つき、家の前で見たことから察する日頃の鍛錬。
今はまだ未完成でも、この先、ペニサスが力を取り戻すまでの大きな力になるのは間違いない。
それを自ら宣言するまでの野心もある。だからこそ、ただの人間を同行させようと目論んだのだ。

が、しかし、だ。

('、`*川「連れて行っただけ無駄でした。なんてことはワシのプライドが許さん。だから今、ここで試すことにする」

( ^ω^)「何言ってるんだお……?」

('、`*川「鈍いのぉ。さっそく減点するかの?」

( ^ω^)「だから、何を……」

そこまで言って、ようやく気付く。

辺りを取り囲んでいる異様な気配。
狩りで獲物を仕留めるか、否かの時に似ている緊張感。

茂みの中から影が一つ、現れる。

42 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:50:17 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「ブーン」

( ^ω^)「フォックス、さん?」

爪'ー`)「魔物と親しげに会話する事情、聞かせてもらおうか?」

(;^ω^)「ぼ、僕は……」

どう説明をつけることも出来ない、とブーンは思った。

フォックスは道場の師範であるが、信頼されるが故に、この村の村長のような役割を担っている。
それはつまり賢く、頼れる人物だということ。話せばペニサスが害のない存在だということを分かってくれるに違いない。

しかし、個人がそれを許しても、村長としての立場が許さない。
ブーンが想像した通り、害がないとはいっても、いずれ害になる可能性が零であるとはいない。
何か起きてから後悔するのでは遅い。何かが起きる前に未然にそれを防ぐのが村長としての責務。

フォックスの立場は魔物を討伐せざるを得ない位置なのだ。

爪'ー`)「…………」

(;^ω^)「僕は、その……」

言葉が見つからず、しどろもどろになるばかりのブーン。

フォックスはこれまで実の親のようにブーンに接してきてくれた。
そして、それに恩を感じるのならば、フォックスの望むように、道場に入り、いずれは道場を継ぐべきなのだろう。

そうした方がいいのは分かっている。しかし、どうしても諦めきれない夢があるのもまた、事実なのである。

43 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:51:10 ID:V8MbAYOQ0
『はーっ、はっはっはっはっ!!』




ブーンが何かを言いかけた時、それを掻き消す高笑いが場に響いた。






('、`*;川「……はっ、ゲフッ、ゲホゲホッ……ちょっ、むせた……ゲフッ」

無論、ペニサスのものである。

44 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:52:02 ID:V8MbAYOQ0
理解出来ない行動に、思わず小声で尋ねる。

(;^ω^)(な、なんだお、お前!)

('、`*川(いいから、合わせろ。これが最終試験じゃ)

(;^ω^)(何言って……)

しっかりとした疎通もないまま、ペニサスは再び、安い芝居の悪役のような真似を続ける。


爪'ー`)「何をしているんだい……?」

('、`*川「くくく! 聞け、人間! この小僧はワシが洗脳した!」

爪'ー`)「……!」

(;^ω^)「……え」

('、`*川「我を捕まえたくば、この我が従順たるしもべを倒すほかあるまい!
      もっとも? 優しい優しい人間共は仲間のことをぶちのめすなんてことは出来ないやもしれんがの……!」

45 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:52:56 ID:V8MbAYOQ0
なんとも無茶な設定であるのだが、ペニサスは強引に押し通す気満々のようである。
そして、ブーンも覚悟を決めた。ある種のやけくそというやつだった。

( ^ω^)「そっ、そのとーり! 我が主には指一本も触れさせないお!」

爪;'ー`)「くっ……魔物め……よくもブーンを!」


案外、フォックスには三文芝居も通じたようで。

(;^ω^)(僕、心が痛い)

('、`*川(うるさいっ! もっと煽れ、煽れ!)

などとアイコンタクトを送りつつ。


( ^ω^)「……く、くはははは! ジジィは道場の雨漏り手入れでもするべきではないんじゃないですかおぉ!?」

爪;'ー`)「うう……操られているにしては的確に痛い所を……!」

('、`*川「ふははは! もはやこの小僧は身も心もワシの虜よ! ぶちのめすしか洗脳を解く方法はあるまい!」


爪'ー`)「むぅ……それならば、しかたないか……」

フォックスは大きく手を広げ、そして一拍した。

46 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:54:34 ID:V8MbAYOQ0
場を引き締めるような音とともに、茂みから一斉に門下生たちが飛び出す。
さながら仮面ラ○ダーのショッ○ーのようにわらわらと湧いてくる始末。
これには流石のブーンも苦笑い。それにひきかえこのペニサス、ノリノリである。

(;^ω^)「ちょっ、多すぎじゃないですかお……?」

爪'ー`)「ウチの門下生全部で一〇七人。私も入れれば一〇八人だ」

('、`*川「ふははは! 我がしもべにはこれくらいの相手が相応しい!」

フォックスの道場は、村の若い男はほぼ全員通っている。
もちろん、ブーンも殆どと組み手を交わした仲であるが、だからこそ、相手にし辛いということもある。

しかし、だ。

( ^ω^)「……なんにせよ、今回は手を抜く訳にはいかんのだお」

爪'ー`)「むっ?」

( ^ω^)「いいか人間ども! 僕はフルパワー中のフルパワーでいくお!
      道場の組み手中とは違う、僕の本気の一撃が飛んでくると考えるんだお!
      それでもいいっていう奴だけ、僕の前に立ち塞がれお!」

魔物であるペニサスからすれば小僧と呼ぶに相応しい頼りなさのブーンであるが、腐ってもこの村、最強。
この道場の上位三人を瞬殺出来るほどの実力を持つ持ち主である。

47 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:55:20 ID:V8MbAYOQ0
門下生一人一人とは天と地ほどの実力差があるといってもいい。
その本人が手を抜くことはないとこれだけ仰々しく言ってのけたのだ。

( ^ω^)「……半分、かお」

このように戦意喪失する人間たちが出るのも無理はない。

魔物を捕獲する為に集まったのだから、これくらいで意気消沈するのもおかしな話だが、
人間とは得体の知れない恐怖より、見知った恐怖の方が恐ろしく感じてしまうものだ。

実力不明の化け物を相手にするより、実力を知っているからこそ、ブーンを相手にするのを拒む人間は多かった。

爪'ー`)「やれやれ、情けないことだ」

( ^ω^)「半分いるだけ、マシだお。どうせ僕には敵いっこないお」

爪'ー`)「おや、舐められたもんだね、うちの門下生も」

( ^ω^)「……いや、道場の皆の実力は僕が一番知ってるお」

初めは全く敵わなかった。悔しかった。負けたくなかった。
だから死ぬほど鍛えた。強くある為に、ただ、強くある為に。
そうして積み重ねの果てに、今のブーンは立っている。
だからこそ、昔は勝てなかった道場の人たちの前で、これだけの大口を叩くことが出来る。

48 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:56:19 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「みなの実力を知っていて尚、負ける気がしないんだから、しょうがないお?」

爪'ー`)「ふふふ、ならば今一度その実力、確かめさせて貰おうか」

門下生たちがブーンに向かって一歩詰めよる。
五十を超える屈強な男たちが、一斉に自分を叩きのめそうと動く時の重圧。
並大抵の人間ならそれだけで縮みあがってしまいそうになる。

ブーンもまた、震える。
しかし、それは恐怖や畏怖によるものではなかった。

その身に訪れたのは武者震い。
自分の今の実力を確かめられるこの機会に、心が滾る。

( ^ω^)「すー……はー……」

ブーンは息を深く吸って吐く動作で、精神を鎮めた。
同時に両手を交差させて前に突き出し、敵に向ける。
足はやや開いた状態で、膝を少し曲げる。基本の型である。

父が残した書物から学び、少しずつ独自に完成させていった流派。

49 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:57:10 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「我が流派……背負いしは四つの神の気高さ」


小さく呟いた後、今度は思い切り息を吸い込み、吠える。







(#^ω^)「その名も四神拳! さぁ、どこからでもかかってきやがれお!」


言い終わるや否や、門下生たちが一斉にブーンに向かって飛びかかった。

50 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:58:08 ID:V8MbAYOQ0
一対五十。数字だけで見れば、数の圧力に押されて終いに見えるが、そうではない。
一に対し、致命的な攻撃を同時に放つのは、四人が限度。
その四人の攻撃を捌けるのならば、一が即座に敗北するということはあり得ない。

彡#l v lミ 「うらぁっ!」

( ^ω^)「ふっ!」

ブーンもまた、その定石に則り、四人ずつを相手にしていた。
右からの正拳。左からの手刀。攻撃は背後からも容赦なく飛んでくる。
その四方八方からの攻撃を、一つずつ、的確に防いでいく。

しかし、守りだけでは敵の数を減らすことが出来ない。

……いや、それは誤解。
的確な防御というものは、ただダメージを防ぐだけに終わらない。

51 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 19:59:12 ID:V8MbAYOQ0
彡#l v lミ 「はっ!」

( ^ω^)(放たれた攻撃に、より堅固な部位での防御を)


      ボウケン
( ^ω^)「防堅」

鈍い音が戦場の中で小さくも、響く。


敵の突きを、ブーンは肘鉄で対処し、その拳を破壊した。
拳を破壊された男は、何が起きたのかも分からないまま、離脱を余儀なくされる。

当分は日常生活に支障をきたす怪我かもしれないが、ブーンはそれを気にも留めない。
それが逆に失礼であると知っているからだ。あちらもこちらも本気であるというのはつまり、そういうこと。

52 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:00:15 ID:V8MbAYOQ0
(#l v l)「くらえっ!」

門下生の一人が右上段蹴りを放つ。

( ^ω^)(敵の攻撃の勢いを殺すことなかれ)

      センリュウ
( ^ω^)「川流」

それをかわし、その勢いを平手打ちで過分に加速させる。結果、蹴りを放った男は、背後の仲間にそれをお見舞いした。
誘導させたのはブーンであるが、仲間内での自滅に変わりはない。同士討ちというものは、なによりも戦意を喪失させるに適している。

休むことなく浴びせられる殴打。そのどれもに必殺の勢いが込められていたが、ブーンはそれらをいともたやすく回避した。
ただ一つの傷を負うこともない。むしろ楽しんでいる気配さえあった。

対して、門下生たちは一人、また一人とその数を減らしていく。
恐るべきは、ブーン自身が攻撃に転じたことは一つもなかったということだ。
仲間内での自滅。攻撃に対する防御(カウンター)。それだけで、多くの男たちが戦闘不能になってゆく。

防御とは最大の攻撃である。その言葉に相応しく、守りだけで敵を壊滅に追い込もうとしているのだ。
その技術はまさに神懸かり的。神のごとき動きを体現するのが四神拳という流派。

まさしく玄武の如き堅さを為すのが、四神拳。

53 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:01:18 ID:V8MbAYOQ0
彡#l 口 lミ「くっ、硬い!」

(#l 口 l)「一気に押しつぶせ!」

しかし敵も馬鹿ではない。
一対四では勝ち目がないのならば、今度こそ正真正銘の一対五十である。

最前線の味方が巻き添えになろうとも、一丸で壁となって押しつぶせば、いかなる相手でも数には敵わない。
本気の精鋭とはこういった戦法がとれるこからこそ、恐ろしい。

そして、守りでは防ぎきれないのならば、ブーンが次にやることは決まっている。


(#^ω^)「攻撃は、最大の防御だお!」


ブーンは固く拳を握り、前方の一人に向って襲いかかった。
「ひっ」と小さな悲鳴を上げたその男は、次の瞬間にはその恐怖から解放されていた。

何故か―――意識を失ったからである。

頭上から乱暴に振り落とされたその拳は、一瞬で意識を奪い取った。
地に伏せたその男には、何が起きたのか全く理解出来なかったことだろう。

54 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:02:27 ID:V8MbAYOQ0
もちろん、これまでとは違い、全ての攻撃を捌ききることは出来ない。
そもそも防御を捨てて攻撃に走っているのが今のブーンである。

だが、防御に徹していればジリ貧で消耗していくだけに終わってしまう。
それを我武者羅にただ攻撃することにより、結果、最低限のダメージに抑える。


(#^ω^)(一撃をもってして殴打と呼び、一撃でなければ殴打と呼ばず)

       リンリンオウ
(#^ω^)「鈴々殴」

その拳を受けた男は、数メートル先まで吹っ飛ばされた。


思いっきり振りかぶり、思いっきりぶん殴るだけの、一見すればお粗末な技である。
しかし、体が生み出す全ての力を、そのまま拳に乗せた時、ただのパンチが一つの技になる。
事実、ブーンの拳は、相手の防御の腕をへし折り、その上から顔面をぶち抜くほどの威力を擁していた。

その攻撃はまさに神懸かり的。神の如き動きを体現するのが四神拳。

まさしく白狐の如き強さを為すのが、四神拳。

55 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:03:29 ID:V8MbAYOQ0
―――その時、破裂音のような音が場を引き裂いた。

聞き覚えのあるその音は、この戦いの始まりを告げたフォックスの一拍である。
しかし、道場でよく聞いたそれ、先刻のそれよりもずっと、迫力のある一拍だった。

爪'ー`)「もういい。これ以上、うちの門下生が傷つけられるのは見てられそうにない」

言うと、門下生たちが一斉に引き、フォックスの背後へと回った。
その構図はさながら、一人の大人が多くの子供たちを守るようだった。

( ^ω^)「…………」

爪'ー`)「まさか、本当にこれ程の実力を持っていたとはね。普段の組手の時とは段違いだ」

( ^ω^)「どうもですお」

爪'ー`)「しかし私もまた、ブーンの前では本気を出したことはない」

門下生の一人が、細長い包みをフォックスに手渡した。
瞬間、フォックスが漂わせる気配のようなものが、爆発的に増大したようにブーンは感じた。

フォックスが中から取り出したものは―――刀。
鞘から抜いたその刀身は銀色に妖しく光、その鋭さを誇示しているかのように思えた。

56 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:04:06 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「四神拳か。君が本気で使うのを初めて見るが、いい武術だ。うちの道場に入らなかったのも頷ける」

( ^ω^)「面目ないですお」

爪'ー`)「だが、力の使い方を間違えちゃ駄目だ。それこそ魔物の為に使うような、そんな使い方は」

( ^ω^)「…………」

爪'ー`)「私はね、切れるよ。例え愛すべき人間であっても、自分が正しいと思っているならば、容赦なく切れる」

( ^ω^)「僕を切るのかお?」

爪'ー`)「……私は私を正しいと思っているからね。ブーンの方は、どうだい?」

( ^ω^)「お……」

今の自分が正しいのかどうなのか、ブーンには分からなかった。
むしろ冷静に考えてみれば、魔物に唆され、無責任に島を飛び出そうとしている希代の馬鹿ものだ。
正しいかどうかでいえば、間違っているんじゃないかという可能性の方が限りなく高い。

それでも。

57 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:04:45 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)「フォックスさん、僕は強くなりますお」

爪'ー`)「ほぉ?」

( ^ω^)「強くなって強くなって強くなり続けて……過去の過ちすらも吹き飛ばせるような強さを手に入れますお」

爪'ー`)「何事も結果が良ければ全て良しにするつもりかい?」

( ^ω^)「世界最強の強さは、それくらいの図々しさがあってもいいと思うんですお」

爪'ー`)「……なるほど。君は強さに貪欲なんだね」

( ^ω^)「褒め言葉ですお。青龍の如き純潔な信念、ですお」

爪'ー`)「なんだい、それは」

( ^ω^)「四神拳の心得ってとこですお」


決着の前とは思えぬ和やかな談笑を終え、二人は構えに移った。

58 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:06:02 ID:V8MbAYOQ0
フォックスは刀身を鞘に戻していた。それを腰に構え、低い体勢でじっとブーンを睨みつける。

( ^ω^)(居合……)

鞘から抜き出したその動作で一撃を与える必殺剣。
フォックスが居合を得意としているという話は聞いたことがなかった。

彼が得意としているのは、振り上げや振り下ろしから即座に切り返す『犬牙』。
一の太刀でそのまま敵を仕留める居合とは全く違ったタイプの技である。

もちろん、居合にも二の太刀はあるが、フォックスは明らかに一太刀で全てを終わらす殺気を放っていた。

更にこれ程の殺気を放っているのにも関わらず、構えに至る動作に硬さはなく、至って緩やかなものだった。
つまり、これこそがフォックスが隠し持っていた最大の牙であるに違いない。

( ^ω^)(その歳で能ある鷹を演じるなんて、フォックスさんも人が悪いお)

居合とは、その性質故、自ら斬りかかるというのが難しく、後の太刀というカウンター気味の一撃が主である。
動きをつけにくいというのが弱点であるのは明白。
フォックスがその弱点を克服している可能性もないとはいえないが、それを踏まえても、遠距離からの攻撃が望ましいだろう。

四神拳には遠距離からの攻撃方法というのも存在している。
勝ちにこだわるのなら、ブーンの取る方法は決まっていた。

59 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:07:03 ID:V8MbAYOQ0
しかし、ブーンはあえて、それをしない。理屈なんてものはどうだってよかった。
世界最強の男なら、全てを正面から打破すると思った。それだけだった。


( ^ω^)「いきますお。フォックスさん。」

爪'ー`)「ああ、いつでも」

( ^ω^)「……いざ」

爪'ー`)「……尋常に」


ブーンが駆ける。

零から百へ。一歩目から最高速度で、フォックスの元へと走る。
その爆発的な加速に、門下生たちの目は置いて行かれた。

爪'ー`)(スピードで勝負する気か……? 甘いな)

しかし、フォックスはたしかにそれを目視している。
フォックスもまた、一瞬の内の勝負を生業としている者。
その目は、轟々とうねる波飛沫の一滴でさえ捉えることが出来る。

60 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:07:51 ID:V8MbAYOQ0
( ^ω^)(この程度のスピードでかく乱出来ないことくらい分かってるお!)

居合の射程距離に入った後、かわすことは不可能だとブーンには分かっていた。
ましてや、その必殺の一撃を防ぐことなんて出来るはずもない。
居合の届くその半径の中は、それ即ち、ブーンにとって死への入口と同義なのだ。

爪'ー`)「さぁ、どうする?」

( ^ω^)「どうもしないお!」

何も考えず、ただブーンは駆ける。
ある種の愚策。ある種の無の境地。
何も考えず、ただ自分が思うように走った。

思考はいらない。

今ここにある自分の肉体。積み重ねた鍛練。
それらに身を任されば、体はきっと、最善の方法でこの戦いに決着をつける。

心は……幸福を感じていた。一流の相手との、全力をかけた勝負の最中にいられることが、幸せだった。
夢が膨らむ。漠然としていたものが、たしかな一つの形になっていく。大きな翼が背に生えたように。

そして、高く高く、天にある最強目指して飛びたった。

61 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:08:18 ID:V8MbAYOQ0
そして、とうとう居合の射程距離に踏み込む―――フォックスが動いたのはその刹那。



爪'ー`)「―――神速の一太刀」




刀が音もなく鞘から抜かれる。


一拍置いて、大気が切り裂かれた。

62 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:10:30 ID:V8MbAYOQ0
その光景を、門下生は把握出来なかった。

まず第一にフォックスが刀を抜くのを見きれなかった。
門下生が見たのは、フォックスが居合を構えている次の瞬間には刀を抜き終わり、何もない空間を切り終えているところだった。

そして第二に、何もない空間を切り裂いていたというのが理解出来なかった。
そこにいたはずのブーンがいない。
フォックスに向かって走っていた筈のブーンが、突如として消えうせたのだ。

最後に、その消えた筈のブーンが、空から降ってきた。
悠々と着地し、まるで何事もなかったかのように佇んでいる。
瞬間的に消え去り、時を越えてこの場に舞い戻って来たような……そんな非現実的なことが起きたように、場の人間は思った。

―――当事者の二人と、遠巻きに眺めているペニサスを除いては。

フォックスが口を開く。

爪'ー`)「見切られた……どころの話ではないな」

( ^ω^)「…………」

63 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:11:15 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「まさか刀を足場にするとは……いやはや、これほど格の差を思い知らされることもあるまい」

そう、ブーンは抜刀最中の刀を足場に、天高く跳んだのだ。

四神流の技の一つに、足場の不安定な場所を移動するという技がある。
水面の葉の上、崩れかけた岩場などを跳びながら走るというものだ。

しかし、居合中の刀を足場にしたというのは、過去にも例のない話だろう。
朱雀の如く、天地を駆ける動きを体現する四神拳の真髄を、その手に掴めたということにもなる。

爪'ー`)「敗北は認めよう。しかし、無傷のまま終わるのも釈然としないものだな」

( ^ω^)「世界最強ですお? 相手を傷つけないまま勝つことが出来るんですお」

爪'ー`)「便利な言葉だね。世界最強」

( ^ω^)「だからこそ、目指すっていうもんですお」

爪'ー`)「なるほどね……」

フォックスは空を仰ぎ見る。これでもかという快晴。
旅立ちの日にはぴったりだった。

64 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:11:44 ID:V8MbAYOQ0
爪'ー`)「すまないね。魔物に連れ去られる君を救うことが出来なくて」

( ^ω^)「おっ?」

爪'ー`)「君は洗脳させられているんだろう?」

(;^ω^)(やべ、そんな設定だったっけ)


慌てて自分のキャラを取り繕うも、もはや手遅れというレベルではない。
ただし、この場に限っては……そうならない。


( ^ω^)「ふはは! 我一人に殲滅させられるとは軟弱な人間どもめ! 恥を知るが良い!」

爪'ー`)「ははは、すまない」

( ^ω^)「弱い弱い、弱すぎて反吐が出る……だから」

一度俯き、すぐ顔を上げる。
世界最強は、この程度のことで悲しんだりはしない。

65 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:12:30 ID:V8MbAYOQ0
そして、精一杯の悪役面で言ってやるのだ。
まったく似合わない、下手糞な演技だが。


( ^ω^)「僕が世界最強になったら、ここに戻って、稽古をつけてやるお! 
      その時を楽しみにまってやがれお! 軟弱な人間ども!」


これは永遠の別れなどではないのだから、多くを語る必要ない。
ブーンは踵を返し、ペニサスの元へ走っていく。




爪'ー`)「……いってらっしゃい」

背中にそんな言葉を投げかけられていることを、知る由もなく。

66 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:13:07 ID:V8MbAYOQ0

( ^ω^)「ん、終わったお」

ブーンはペニサスに言う。

('、`*川「おつかれ。試験は合格じゃ」

( ^ω^)「それはどうも。……にしても随分、大人しくしてたじゃないかお」

('、`*川「そりゃあ、男の子の一世一代の大勝負。茶化すような無粋な真似はせんよ」

( ^ω^)「ああ、そういう気遣いは出来るのかお」


('、`*川「ただし、空気になっていたこの鬱憤が溜まっていないかと言えば、嘘になる」

( ^ω^)「前言撤回」

('、`*川「これからボケ百連発で帳尻合わせといこうかと」

( ^ω^)「止めて」

('、`*川「ケチ臭いのぉ……新連載はキャラのイメージを定着させる為に、そういうのが大事だというのに」

( ^ω^)「そういうメタ発言も止めて」

67 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:13:34 ID:V8MbAYOQ0
ぶつくさ言うペニサスに呆れながら、問いかける。

( ^ω^)「で、どうやって大陸に行くんだお?」

('、`*川「そりゃあ、こいつに決まっておろう?」

ちょいちょいと翼に指を指している。
ブーンも、もしかしたらとは思っていたが、それだけは勘弁してもらいたかった。

(;^ω^)「いや、そんなにずっと手にぶら下がっているのはちょっと……」

('、`*川「鍛錬になるかもしれんぞ?」

(;^ω^)「それはどちらかというと拷問だお」

('、`*川「やれやれ。しょうがない。ちょっと離れておれ」

( ^ω^)「なんだお?」

68 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:14:36 ID:V8MbAYOQ0
ペニサスは目を閉じ、胸に手を当て、精神を統一させ始めた。

( ^ω^)(……お?)

すると、ほのかにペニサスの体から淡い青の光が漏れ始める。
綺麗な光だ。じっと見ていると、吸い込まれそうになるような、美しく神秘的な光。
発光はどんどん眩さを増していく。瞬きをするのも勿体ないほどの光景なのに、耐えられない―――

ブーンがあまりの眩さに目を閉じた。
そして、その一瞬の間に、目の前に山が生まれた……ように最初は思った。

「どうじゃ、惚れぼれするじゃろう」

頭に直接響いてくるような声。
その声の主は、恐らくペニサスなのだが、本人がどこにいるのか分からない。

( ^ω^)「……いや、ん? まさか」

その、まさかである。
山の正体を確かめる為、恐る恐る触れてみる。

69 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:15:49 ID:V8MbAYOQ0
「どこを触っておるんじゃ、この助平」

(;^ω^)(いや、僕はどこを触ったんだお……)

山の正体は、竜の巨体だった。

深緑の色合いの鱗を持つ、ゴツゴツとした外皮は、刃物も通さないような強固さだと見て取れた。
人間の姿の時でも大きかった翼は、この状態だと更に数倍の大きさを誇っている。直径は立派な大木程の長さはあろうかというほどだ。
爪はブーンの頭よりも大きく、しかも切っ先は触れただけで切れてしまいそうに鋭い。口から見え隠れする牙もまた同じように。
数人の大人が軽々乗れそうな巨躯に、それらのパーツがそろえば、なるほど、伝説の化物と呼ばれるのは納得だった。

( ^ω^)「本当に竜だったのかお……」

「何度も言っておろうに」

( ^ω^)「やっぱ実際見るのとでは違うもんだお」

「怖気付いたか?」

巨大な眼が、ぎょろりとブーンに視線に送る。
しかし、不思議と恐ろしいといった感情は芽生えなかった。

70 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:16:13 ID:V8MbAYOQ0

( ^ω^)「これをいつの日か、ボコボコに出来ると思うとむしろわくわくするお」

「……ワシが悪だった場合は退治するとかそんな話だった気もするが……まぁよい」

背中に乗れと促され、ブーンは飛び乗る。


「乗り心地がどうじゃ?」

( ^ω^)「思ったより悪くないお」

「―――ブーンに乗られたまま空を飛ぶなんて」

( ^ω^)「頭がフットーしちゃう!」

「……先に言わんでくれんかの?」

( ^ω^)「いいから、さっさと飛べお」

翼が大きく羽ばたく。巨体が浮き上がり、羽ばたきを重ねるごとに高度を増していく。
あっという間に雲の間近、島の全貌が見渡せる高さにまで上り詰めた。

71 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:16:36 ID:V8MbAYOQ0

「主のいた島なんて、この程度の大きさなんじゃ」

ペニサスが言う。

「それに比べ、見よ。この海の広さを」

( ^ω^)「…………」

水平線の先には無限があるように見える。
井の中の蛙だったことを改めて思い知るようだった。

「しかも、この海は世界の内でもほぼ最少の大きさじゃ。どこまでも世間を知らぬのよ、主は」

( ^ω^)「ペニサスは知ってるのかお、世界を?」

「もちろ……いや、どうじゃろうな。ワシの知ってるのは千年前じゃし」

( ^ω^)「そうかお……」

72 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:17:02 ID:V8MbAYOQ0
きっと、この先に待ち受けているものは、挫折や困難の方が多いだろう。
ずっと村にいれば良かったと後悔する日がくるかもしれない。

それでも、今ここにいるブーンは、飛び立つことを選んだ。
その選択を否定できるのは未来の自分だけ。
つまり、誰にも邪魔は出来ないのだ。

「……そういえば」

( ^ω^)「なんだお?」

「主、初めてワシのことを名前で呼んだのう」

( ^ω^)「……そうだったかお?」

「そうじゃよ」


竜の背に乗って、ブーンは飛び立った。

大陸へ。

世界最強への道へ。

73 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:18:23 ID:V8MbAYOQ0
ここまで一話です。普通に読めるレベルなのか心配。次も出来るだけ早く……。
ありがとうございました。

74 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:37:21 ID:kJZt71qQ0
乙 期待の新作がまた増えた

75 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 20:38:19 ID:h/.dCxKQO
乙である!

76 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 21:06:19 ID:bqF0154kO
乙。なんてボリュームのある1話だったんだ…。素晴らしい

77 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/27(日) 21:15:47 ID:4zVbp/nEO
素晴らしい。期待してるよ。

78 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 02:57:30 ID:SVrXeAvY0
二話目投下します。

79 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 02:59:27 ID:SVrXeAvY0
ハジリマを飛び立ってから幾らかの時間が過ぎた。
ゆっくりとした飛行ではあったが、その緩いスピードでさえ、普通の人間が全速力で駆けるのと変わらない速度でブーンたちは飛んでいた。

( ^ω^)「そういえば、ペニサスはなんで封印されたんだお?」

「……千年前の大戦については知っておるか?」

( ^ω^)「詳しくは知らないけど、そういうことがあったっていうことは知ってるお」

「人間と魔族の戦争だったんじゃが……ワシは当然、魔族側で参戦しておっての」

( ^ω^)「へぇ」

「魔王の幹部の内の一人……まぁ、部下の中じゃトップクラスだったという感じかの」

フォックスが、ペニサスを伝説の化物と呼んでいたことを思い出す。
それならば、この話は疑う余地はないだろう。

( ^ω^)「それなら、やっぱり人も多く殺したのかお?」

ペニサスが、一拍置いて答える。

「ああ。それこそ、十や百ではきかん数を殺した」

( ^ω^)「そう、かお」

80 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:00:39 ID:SVrXeAvY0
「ワシを恐ろしいと思うか?」

ペニサスの質問には、ブーンも思案の時間を必要とした。
人間を大量に殺した魔物。常人ならば畏怖の対象であり、憎悪の対象にもなり得るだろう。

( ^ω^)「そうは思わないお」

しかし、ブーンは否定した。

「ほぉ。何故じゃ?」

( ^ω^)「まず僕は、ついて行くことを決めた時点で、ある程度の信頼は置いているお。
      その信頼を自らが語った過去の話で崩すほど、僕は流されやすい人間でもない」

「ふむ」

( ^ω^)「それに僕は偏った現実主義みたいなもんなんだお。今起きたこと、今あることしか信じない。
      だから、今ここにいるお前は人を殺そうとはしない。だったら畏怖は抱かない……上手く言えないけど、そんな感じだお」

「なるほど、のぉ」

数えきれない人間を殺し、それで恨まれていることもあるだろうが、自分が恨むに値しないと思ったなら、他者の意見は他者の意見と割り切る。
ブーンとはそういう考えの男であった。ある種、利己的の過ぎる人間であるとも言える。

81 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:01:30 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「まぁ、だからといって、全ての過去を水に流そうって言ってる訳じゃないお。
      そういう過去を持っているなら、もちろんこの先、何かを起こす可能性がないとは断言できなくなった。
      だから、その時は僕が必ず止める。その時、情にほだされて動けなくなるようなことがない程度の警戒心は解かないつもりだお」

「それでいい。それくらいの方が、ワシとしてもやりやすい」

( ^ω^)「なら、そうさせてもらうお」

満足気な表情を見せるブーンに対し、ペニサスはふんと鼻を鳴らした。

「……っと、話が逸れたな。といっても結論しか残されてないんじゃが……」

( ^ω^)「ああ、大戦が原因で封印されたのかお?」

「そういう訳じゃな。つまりは、魔族側は負けたってことじゃ」

( ^ω^)「ペニサス以外の魔物はどうなったんだお? 例えば魔王とか」

「多くは滅ぼされるに終わったよ。魔王は……知らんな。何をしておることやら」

ペニサスはそれきり押し黙ってしまった。なにか語りたくないことでもあるようだった。
しかしブーンはいくつかのことが気にかかった。

82 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:02:38 ID:SVrXeAvY0
一つ目は魔王のこと。ペニサスは「何をしておることやら」と言った。
これはつまり、現在も滅ぼされずに、どこかで生存している可能性が高い。
人と魔物との戦争ならば、どちらかのトップの死は避けられないものだと思っていたが、現実は果たしてどうだったのか。

二つ目はペニサス自身のこと。
多くの魔物が滅ぼされたというのに、どうして彼女自身は滅ぼされることなく、封印されるという結果になったのか。
恐らく彼女の性質が、魔物の中では特殊であろうことが起因するのではないかとは推測出来るが、しかし結論を導くには至らない。

ブーンはハジリマという、言ってみれば超がつくド田舎で育ったので、大戦や魔物に関する情報をほぼ持ち合わせていない。
「何があったのか」はペニサスが語らない限り、知る由もなかった。

( ^ω^)(好奇心で根掘り葉掘り聞いてみてもいいけども)

そこで問題となるのが、ペニサスの性別が雌であることだ。

女性の過去を暴くような真似をしてもいいのか。しかもあまり語りたくはない過去の話だろう。
それを聞き出すのは、男として、むしろ人間としてやってはいけないことなのではないだろうか。
そもそも、魔物の雌と、人間の雌を同じように扱うべきなのか、いやいや、だって見た目は人間だし……あ、今は違うけども。

などといった、無駄な葛藤にブーンは悩まされていた。
彼は、基本的に脳筋だった。

それを裏付けるように。

83 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:03:11 ID:SVrXeAvY0
「……それ、やめてくれんかの?」

( ^ω^)「え、何をだお?」

「腕立て伏せ」

カウントは現在、七百二十五、七百二十六である。

( ^ω^)「何か問題でも?」

「気分的に。うざい」

(;^ω^)「ひでぇ……」

ブーンは長時間じっとしていられない性質だった。
言われて渋々座り直すが、しばらくすれば両手で体を浮かし、足をピンとのばして腹筋を鍛え始める。

こうしてペニサスの脳裏にも、ブーン=脳筋という公式が焼きつくことになったのだった。

84 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:04:36 ID:SVrXeAvY0
ブーンの腹筋がいい具合に悲鳴を上げ始めた頃、ペニサスが言う。

「ほれ、見えてきたぞ」

( ^ω^)「何が? って、おおおお!」

水平線の向こうから、身を覗かせ始めた大地。
その全貌は計り知れない。視界の果てから視界の果てまで広がっている。
夢にまで見た、大陸である。

( ^ω^)「でけぇお……」

書物の中でしか見たことのないものが、眼前にたしかに存在している。
ブーンは思わず息をのんだ。心臓がいつになく元気に跳ねている。

「さて、一先ずは『スレッド』に向かうかの」

( ^ω^)「スレッド?」

「国の中央にある街じゃ。と言っても今もあるかは分からんが……まぁ千年前は国の中心じゃった。
少なくとも、そこに街のようなものがあるのは変わらんじゃろう」

( ^ω^)「そういや腹減ったお」

「ワシもじゃ。たらふく食うぞ!」

(;^ω^)(その姿で言われると、笑えねぇ量を食いそうで怖い)

じゅるりと涎をしたらすペニサスをよそに、ブーンは背筋が冷え冷えとした。

85 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:05:05 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「にしても、大陸の人間ってどんな感じなんだろう」

( ゚∀゚)「んぁ? おめぇーと大して変わらねぇよ」

( ^ω^)「そうなのかお。ちょっと安心」

( ゚∀゚)「はっはっはっ。俺は違い過ぎるくらいの方がおもしれぇと思うけどなぁ」

(;^ω^)「……ん?」

ブーンはペニサスと話していると思っていた。
だが良く考えれば……というより、良く考えても全然違う。
それは頭に直接響いてくるような重低音の声でなく、もっと普通の、言うなれば人間の声だった。

ブーンは慌てて振り返る。
すると、目と鼻の先に人の顔があった。

(;^ω^)「うおっ!?」

( ゚∀゚)「どうした? 俺の顔になにかついてるか?」

(;^ω^)「え、いや、その……」

男は自分の顔をぺたぺたと確かめるように触る。
随分と整った顔立ちをしていた。しかし、きりっとした太い眉毛が男らしさの演出を忘れていない。
思わず見とれそうになりながらも、いやいやと首を振る。

86 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:05:34 ID:SVrXeAvY0

(;^ω^)「だ、誰だお、お前!」

( ゚∀゚)「誰だって、お前こそ誰だよ」

(;^ω^)「えっ? えと、僕はブーン、ですお」

( ゚∀゚)「そうか。俺はジョルジュだ。よろしくな」

にかっと白い歯を剥き出しにした笑顔を見せて、握手を求めてくるジョルジュ。
ブーンはその手を振り払う。

( ゚∀゚)「いってー。酷くねぇ?」

(;^ω^)「だって、ここは空、えっ?」

( ゚∀゚)「そうそう、空なんだよな。ていうか、これドラゴン? まじアリエンティ」

(;^ω^)「あっ、ありえ!?」

( ゚∀゚)「んー……てことは、お前も魔物の類な訳?」


( ^ω^)「っ!」

87 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:07:59 ID:SVrXeAvY0
ブーンは即座に立ちあがり、ジョルジュと距離を置いた。

言われてみれば、自分の立場は、竜に乗って街へ飛来しようという得体の知れない人物。
この男が何者なのかは知らないが―――そもそもどうやってここへ辿り着いたのかも分からないが―――友好的な立ち位置にいるとは考えにくい。
ブーンがとるべき対処は警戒だった。行動へ移ったのはその為である。

( ^ω^)「お前、何者だお」

( ゚∀゚)「だからジョルジュだっつってんじゃん」

( ^ω^)「そうじゃない。僕が言いたいのは」

ジョルジュがブーンの言葉を手で遮る。

( ゚∀゚)「わーってる。要は俺がどんな目的でここに来たかって言いたいんだろ?」

( ^ω^)「……そうだお」

( ゚∀゚)「ふーん……」

ジョルジュは目を細くしてブーンを見る。
にやにやとした表情ではあるが、その中にはなにか言いようのない不気味さが秘められているようにブーンは感じた。
全身をくまなく見透かされているような気味の悪さだった。

88 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:09:30 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「俺はよー、スレッドの人間なんだ」

( ^ω^)(スレッド……! 健在してるのかお)

( ゚∀゚)「で、なんとなーく空を見てたらよ、なんかでっけーもんが飛んで来るじゃん? 俺ってば視力はんぱねーもんでさ。 
     なんだろーなって見てたら竜だったからよ。こりゃ、一大事と思って飛んできたんだ」

(;^ω^)「と、飛んで……?」

( ゚∀゚)「ともかく、街に竜を近付ける訳にゃーいかねぇんだ。つーわけで……」

ジョルジュは「んあー……」と間抜けな声を上げながら、ぽりぽりと頭をかいた。
何かを考えている様子である。ブーンが動きを待っていると、ようやく言葉を紡いだ。

89 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:10:00 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「おめーをふん縛るしかなさそうだ、しょうがねぇ」

( ^ω^)「おおっ、展開が速い……」

( ゚∀゚)「まあ、分かりやすい方がいいだろ? おめーも武道家の端くれならよ」

( ^ω^)「……! なんでそれを!」

( ゚∀゚)「いや、その服」

(;^ω^)「あっ」

ブーンは紺色の道着を着ていた。
彼にとって道着とは、戦闘服であり、普段着でもある。

90 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:10:54 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「まぁ、そういうことなら……」

ブーンは肩の力を抜いた。だらりと腕が下がり、やや猫背になる。
一見、隙だらけに見えるこの体勢は、ブーンにとって、次の瞬間にはどんな行動にでも移れる、構えと同じだった。

それは一種のリラックス。リラックスとは怠けているこのように思えて、実は集中への入り口に適している。
良い集中はリラックスした状態から生まれる。そのリラックスに、ブーンは瞬時に入り込める。

つまり、一瞬で超集中出来ることと同義。


( ^ω^)「先手必勝!」

( ゚∀゚)「おっ」

                               ナンバ
右足で踏み込み、同時に右拳を繰り出す。四神拳『難波』
その踏み込みは、たったの一歩で、ジョルジュとの間にあった大股五歩の距離を零にした。

しかし、驚くべきはジョルジュである。

不意打ちとも呼べるその一撃を、平手で受け止めて見せたのだ。
ブーンは感心し、ジョルジュを讃える。

( ^ω^)「やるじゃねぇかお」

( ゚∀゚)「ありがとさん」

91 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:11:26 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「それじゃ、こいつはどうだお」

ブーンは回転しつつ身をかがめ、ジョルジュへと足払いを放つ。その蹴りは鎌のように鋭い。
ここは飛行中の竜の背中。不安定な足場ならば、足元を狙うは定石。

( ゚∀゚)「よっと」

しかし、ジョルジュはこれも小さくとび跳ね、回避する。
この程度ならば綽々といった表情。しかしブーンとて、それくらいは想像の範囲内である。


( ^ω^)「本命はこっちだお!」

足払いをしかけた体勢から、腕の力だけで回転し、二度目の足払いへ移る。     
四神拳『旋風』。二枚目の刃がジョルジュの着地を駆ろうと襲いかかった。

92 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:12:40 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「甘いんだなぁ、これが」

(;^ω^)「!?」

回転したのはブーンだけでなく、ジョルジュもだった。

着地よりも早く、上半身を思い切り前方へ倒し、無理やりに前宙に移行する。
着地を逃れ、浮き上がる下半身。何もない空間を切り裂くブーンの蹴り。

そして目前に現れる、ジョルジュの踵。

(; ω )「へぶっ」

踵落としが綺麗にブーンの顔面へと落され、潰されたカエルのような悲鳴をブーンは上げた。
対して、ジョルジュは蹴りの反動で浮き上がって何食わぬ顔をし、指をちょいちょいと動かす挑発をしてみせる。

( ゚∀゚)「どうしたい。もう終いか?」

(; ω^)「うっ、くそう、まだまだっ!」

93 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:13:23 ID:SVrXeAvY0
ブーンは全力でジョルジュに襲いかかった。

一撃目や二撃目は、手を抜くとは言わないが、少なからずの加減はあった。
相手を悪だと断定できない限り、不必要な深手を負わせるわけにもいかない為である。

その先は一切の加減を止めた。全力の拳を、全速で当てにいった。

しかし、一歩も当たらない。かすりもしない。全ての拳が、全ての蹴りが、空振り、受け止められる。
それだけならまだしも、反撃を喰らってダメージがかさんでいく。
更に疲労も蓄積していく。一方でジョルジュは涼しい顔である。

(; ω )(こいつ……つえーお)

ブーンにとって、これは懐かしい感触だった。
全力を出しても敵わない。戦っている相手に赤子のようにあしらわれる。
子供の頃、そうだったことを思い出す。戦いの最中、ブーンは過去を思い返し始めた。

94 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:14:39 ID:SVrXeAvY0
まだ文字を読めない頃から、何度も読んでいた本があった。
読めないのに本を読むというのもおかしな話だが、その本にブーンは強烈に引きこまれていた。
人には説明できなかったが、生まれる前からそれを読むことが決まっていたような、そんな気がしていた。

いつの日か、母が教えてくれた。
その本は、父が残したものだと。そして「やっぱりあなた達は親子なのね」と笑っていた。
そして、本のタイトルは『四神拳』だということも教えてくれた。

ブーンは本を読み続けた。本には図がのっていたので、それの通りに体を動かした。
ブーンが初めて武術を行った瞬間でもある。
武術と呼ぶにはあまりにお粗末な動きであったが、それは、子供ながらに真剣なものだった。

文字が読めるようになってからも、本を読み続けた。
今度は字を読みながら、正確に体を動かした。
時には、本の通りに上手く体を動かせない時もあった。
その時は鍛えに鍛えた。本のままに、自分のイメージのままに、体が動かせるようになるまで。

日々鍛錬を続けていたある日、フォックスの道場からの誘いが来た。
ブーンは悩んだ。恐らく道場に通うようになれば、自己流で開発を進めたこの四神拳を自由に使えなくなってしまうかもしれない。
しかし、鍛えたこの力を試してみたい……。悩んだ挙句に、ブーンは道場へ赴き、思い切りドアを開け放って叫んだ。

「この道場の看板を貰いにきたお!」

……十も満たない子供の発言に、道場の人間は皆、口をぽかんと開けるばかりだった。

95 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:16:00 ID:SVrXeAvY0
その日以来、ブーンは道場に通うようになった。
とはいえ、他の子たちと同じ扱いではなく、大人たちと試合をするようになったのである。

実際、ブーンの実力は同世代の中では飛びぬけていたので、子供達に混ざるのは不可能だった。
もちろん道場の師範は叔父のフォックスだった為、ブーンがそうしたいと言ったなら、そうさせてもらえる環境だったということもある。

そして、道場で大人たちと戦う日々が始まった。

同世代からずば抜けていようと、所詮、子供は子供。
鍛えている大人たちに混じれば赤子同然。

だが、ブーンは楽しかった。

鍛えた技で人と戦うことが。
そして、人と戦うことで、自分が成長していく感覚を、しっかりと感じることが出来るからだった。

96 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:17:16 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)(懐かしいお……)

長い回想の旅を終え、ブーンは、這いつくばっている状態からむくりと起きあがる。
すでに体はぼろぼろである。あちらこちらは痛むし、体が鉛のように重く感じる。

ただ今は、この感覚が無性に気持ちが良かった。
我武者羅に鍛え続けている今。しかしそれよりもずっと純粋に鍛えていたあの頃と気持ちが重なる。

( ^ω^)「……お前、すっごい強いお」

ジョルジュが鼻を鳴らす。

( ゚∀゚)「まぁなぁ。はっきり言うが、俺はお前よりずっと強いぜ?」

( ^ω^)「ぬかすなお」

( ゚∀゚)「あぁん?」

( ^ω^)「お前が強いからって、僕より強いかどうかは、また別問題だお」

言って、ブーンはにかっと笑ってみせた。ところどころが腫れあがったり切れたりで、不細工になった面構えである。
しかしその表情は、そのマイナスを差し引いても、とても爽やかで晴れやかなものだった。

97 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:17:58 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「いくお!」

( ゚∀゚)「よしこい!」

ブーンはジョルジュへと駆け寄り、左右のワンツージャブを放つ。
これを上半身の動きだけで避けられた。しかし、こんなものは序の口である。

右のジャブの際に踏み込んだ足を軸に、左の回し蹴り。
当たれば必殺という、最大の威力を持った一撃が、うなるような音を上げてジョルジュに襲いかかる。

( ゚∀゚)「っとぉ!」

これすらもスウェーバックの最低限の動作でかわすジョルジュ。
よっぽど戦い慣れしているのか、判断は的確。その判断を実行する体も持ち合わせている。

だがしかし。

(;^ω^)「まっだ……まだぁー!!」

(;゚∀゚)「うそん」

ブーンの追撃は止まない。回し蹴りを終えると同時に、スウェーバックしているジョルジュの頭部に狙いを定めて襲いかかる。

とにかく早く、速く、ハヤク。ブーンは全ての隙を、その自己暗示だけで無きものにしようとしていた。
もちろん、そんなことは実際には無理である。ある程度の加速は出来るかも知れないが、それにも限界は存在する。

ならば、何故ジョルジュが反撃に移れないのか。

98 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:19:52 ID:SVrXeAvY0
無意識的にではあるが、ブーンは技と技との隙間を減らそうとしていた。
Aという技を終えた体勢が、Bという技の予備動作に繋がるような技の選択をしているのである。
これにより、技と技との間の硬直時間が限りなく減少。結果、反撃を受けずに攻撃をする事が出来た。

日頃から戦うイメージと、鍛錬を続けているブーンだからこそ、体はそうして動いてくれる。

ただし、一つだけ問題があるとするならば。


(;^ω^)(め、めっちゃきつい……)


文字通り、めっちゃきついのである。

常に攻撃態勢にあるというのは、無酸素運動を持続しているということ。
通常の人間が最大の無酸素運動を行える持続時間は、十秒にも満たない程度。
今のブーンはすでに三十秒以上の無酸素運動を持続している。

これは鍛錬を続けたブーンでも、言ってしまえば限界を超えた境地にある。

それでも攻撃を止めないのは、勝ちへの執念故か、勝負の楽しさ故か。

99 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:20:51 ID:SVrXeAvY0
(;゚∀゚)(この野郎……)

一方で、ジョルジュには苛立ちが募り始めていた。

ここまでの攻撃は全て捌ききっているとはいえ、後手後手。
こちらから攻めに転じることはなく、今は守りに徹するしかない状況。

ブーンの攻めが、特攻じみた無茶なものだというのは分かっているし、放っておけば自滅するというのも分かっている。
だがしかし、このままそれを待つというのも、癪に障る。

(;゚∀゚)(『この状態』の奴に、俺が一時的にでも押されてるだと……?)

ジョルジュの中の自尊心は我慢の限界に達していた。
そもそも守ってばかりというのは性に合わない。

得意なのは攻め。好きなのも攻め。今やりたいものは―――攻め。

そうくれば、もはや迷っている時間など、一秒ぽっちもなかった。

100 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:23:27 ID:SVrXeAvY0
(;^ω^)(ま、まだまだぁ……)

無酸素運動開始からもうじき一分。
ブーンの体力も限界に近づいた時、ジョルジュの右腕が動く。

(;^ω^)「!」

ブーンが限りなく零に近づけた技と技との合い間、その極僅かの隙へ、強引にねじ込もうかという右ストレート。
ブーンの顔を狙い定めて剛腕が、唸る。

このタイミング。予期していなければ確実にヒットしていたであろうこのタイミング。
強引に手を進めなかったジョルジュが、ここで業を煮やすことなど絶対にあり得ない。

喰らってしまうのが当然、必然。


(;^ω^)「この瞬間を待ってたんだお!」

(;゚∀゚)「んなっ!」


―――予期していなければ、である。

101 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:23:53 ID:SVrXeAvY0
ブーンは読んでいた。連撃の隙間を強引にジョルジュが狙ってくることを。
だからこそ避けられる。こうやって避けることは事前に決めてあった。
 
      センリュウ
(;^ω^)「川流!」

拳が頬に触れる。その流れに逆らわず、同じ速度で首を回転させる。
触れているのに、ダメージにはならない。当たっているのに、それは攻撃にならない。


(;゚∀゚)「このやろっ……!」

(;^ω^)「だから、『まだまだ』って言ってんだお!」


回転していたのは首だけではない。
同じように体が回転していた。

102 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:24:07 ID:SVrXeAvY0

川の流れを攻撃に変換する。

ただし清らかな流れを、荒れ狂う龍へと変えて。




      ゲ゙キリュウ
(#^ω^)「激龍!」



回転した勢いを利用した裏拳が、ジョルジュの顔面を打ち砕いた。

103 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:24:43 ID:SVrXeAvY0
のけぞりながら数歩後退するジョルジュ。
顔面を手で押さえているが、その隙間から血がぽたぽたと垂れ落ちる。

(; ∀ )「くぁ……いいの喰らっちまったな」

声色から余裕は消え去ったものの、まだまだ力を削り取ったとは言い難い。
それもそのはず。例えどれだけ良い一撃を浴びせようとも、一発は一発。
それ一発で逆転というほど、このジョルジュということは甘くない。

( ^ω^)(それでも一発当てたんだお)

だが、これまで一撃もダメージを与えられなかった相手に、とうとう喰らわしたというのも、また事実。
ブーンは拳に、心に、確かな手ごたえというものを感じていた。

不意に、ジョルジュが訊く。

(; ∀ )「一つ、聞いて良いか?」

( ^ω^)「なんだお」

(; ∀ )「お前、どうして俺の攻撃を避けられた?」

ジョルジュが言うのは、どうして右ストレートを予想できたのか、ということだ。
あれは完全に、事前に来ると分かっていなかったら避けられない代物だった。

ブーンが答える。

104 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:25:20 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「……僕も、攻める方が好きなんだお」

(; ∀ )「あん?」

( ^ω^)「それと、僕と君はどこか似ているような気がした。それだけだお」

(; ∀ )「……つまり、自分だったらこうすると思った。だからそうしたって言いたいのか?」

( ^ω^)「そういうことだお」

(; ∀ )「それはそれは……またまた……」

ジョルジュは顔を手で覆ったまま、体を丸めるようにして俯いた。
反対の手は、どこか痛むのだろうか、腹を押さえている。

意図の掴めない行動に、ブーンが何かと尋ねようかとすると、ジョルジュがぱっと顔を上げた。




( ゚∀゚)「おもしれぇ!」

(;^ω^)「……は?」

105 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:27:06 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「ブーン。おめぇーはおもしれぇー! 俺が今まで会った奴の中でトップクラスにおもしれぇー!」

(;^ω^)「は、はぁ、そりゃどうもですお」

( ゚∀゚)「気にいった。すげぇ気に入った。こういう奴を俺は求めてたんだよ!」

(;^ω^)「……えーと……」

急なハイテンションにブーンは全くついていけなかった。
反してジョルジュは、垂れる鼻血もなんのその、豪快な高笑いを続けている。

アグレッシブなマゾヒストなのだろうか。それならばダメージがダメージにならない?
ちょっとした混乱に陥っていると、ジョルジュが言う。

( ゚∀゚)「そんなブーンには俺のとっておきを見せてやろう。本来なら、ブーンレベルの奴には絶対使わないけどよ、特別だぜ?」

( ^ω^)「とっておき……?」

( ゚∀゚)「ははっ。目ん玉かっぽじってよぉーく見とけよ」

(;^ω^)「目はかっぽじれないお……」

ジョルジュが天高く右手を上げると、白い光が彼を中心に漏れ出す。
それは奇妙な光景だった。なにしろ発光するはずのない人体が、急激に輝き始めるのだから。

―――そして。

106 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:27:41 ID:SVrXeAvY0
「―――やめんかぁ!!」

大地を揺るがすような大音量の叱咤の声が場に轟いた。
ジョルジュも驚きのあまり、目を丸くしていた。発光は勢いを失くした炎のように、急激に収束して消えた。

(;゚∀゚)「な、なんの声だぁ!?」

「人の上で暴れおって……その上、とっておきじゃと!? 調子に乗るのも大概にせんか!」

(;゚∀゚)「ひ、人の上!? もしかしてこの声って……」

ジョルジュが救いを求めるような目を向けるので、ブーンは冷や汗を垂らしながらこくりと頷いた。


( ^ω^)「ごめんペニサス。そういえばここ、お前の上だったお……」

「忘れとったな!? というかワシの存在自体を忘れとったな!?」

( ^ω^)「正直、よく揺れる足場くらいの印象だったお……」

「貴様……! 今ここでカットバック・ドロップターンを決めてやってもええんじゃぞ!?」

(;^ω^)「よく分かんないけど止めて! すごく危険な臭いがする!」

107 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:28:13 ID:SVrXeAvY0
そのやりとりを見て、ジョルジュの頭の上に浮かんでいたクエスチョンマークの数は更に増えた。

ジョルジュにとってブーンは、竜を従えた男という計り知れない存在だった。
しかし今、その地位からブーンは竜と漫才をする男に格下げされた。

……そもそも漫才をする竜とは何だ……? 

とても理解の出来る範囲にない光景に、ジョルジュは混乱するばかりである。
途方に暮れているそんな男に、ペニサスが訊く。


「おい眉毛」

(;゚∀゚)「眉毛!? ひょっとして俺のこと!?」

「主以外に誰がいるんじゃ……ああ、違う方はハゲじゃ」

(;^ω^)「ハゲ!?」

「ともあれ、街の方に行かなけりゃええんじゃろ?」

( ゚∀゚)「え……あ、まぁ、そう……なのかな?」

108 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:28:57 ID:SVrXeAvY0
「よし、ならば着陸じゃ」



(;゚∀゚)「え」

(;^ω^)「え」



ジョルジュとブーンが驚愕の声を上げる。

次の瞬間には、巨大なGが二人の体を蝕むのだった。

109 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:29:29 ID:SVrXeAvY0
スレッドからかなり南に行った所にある森の中。
人の姿に戻ったペニサスは、ひざまずく二人の男の前で偉そうにふんぞり返っていた。

('、`*川「こんなこともあろうかと、予め軌道修正しておいたんじゃ」

(; ω )「あ、そう、かお……」

(;゚∀゚)「きゃんたまがキュンってした。きゃんたまが……」


('、`*川「情けないのぅ。それでも金玉ついてるのか、お主ら」

(; ω )「ついてっからこんな状態なんだお!」

(; ∀ )「いや、これ男女関係ないような……ていうかお前、さっきの竜かよ……」

('、`*川「プリチーじゃろ?」

(; ∀ )「ざけんな……」

二人の男が回復するにはしばらくの時間を要した。
もちろんその間、ペニサスが罵詈雑言を浴びせ続けたのは言うまでもない。

110 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:30:43 ID:SVrXeAvY0
街までジョルジュが先導することになった。

かなりの距離があるが、この辺りは何度か訪れたことがあるので、迷う心配はないらしい。
ほっとしたのはペニサスである。空から確認してたので、街までのおおよその方角は分かるものの、その正確な道筋は分からなかった。
まぁなんとかなるだろうという、行き当たりばったりで考えていたのだから、幸運を拾ったのはむしろブーンであるが。

木々が生い茂る道なき道を行きながら、ペニサスはふと思い、口にする。

('、`*川「そういえば主、ワシのことを何も言わんのう」

( ゚∀゚)「言わないって……何を?」

とぼけてている様子はない。
どうやら、本気で何を尋ねられているのか分からないようだ。

('、`*川「決まっておるじゃろう。ワシは魔物じゃぞ?」

( ゚∀゚)「ああ、そういうことね。うーん、なんつったらいいのかなぁ……」

( ^ω^)「ここらへんじゃ、魔物はそんなに恐れられてないのかお?」

ブーンが口を挟むが、ジョルジュはいやいやと首を振る。

( ゚∀゚)「んなこたーねぇぜ。この前、魔物が街に入り込んだ時なんか、そりゃもう街中が大騒ぎって感じでよ。
     結局、俺が駆り出されて、退治する羽目になったしな」

( ^ω^)「ふぅん……」

111 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:31:30 ID:SVrXeAvY0
('、`*川「ということは、主自体はあんまり魔物退治には乗り気じゃないのか?」

( ゚∀゚)「そうかもなー……。ま、俺の場合は力があるからな。魔物がいようと、怖がる必要は無い訳よ。
     でも力がない奴はそうはいかないだろ? 問答無用で人間を襲ってくる魔物はやっぱり多いしな。
     そういう奴らの為に動くのが、力を持ってる奴の使命だって思ってる」

('、`*川「でも、ワシを退治しようとはしない」

( ゚∀゚)「まーな、とりあえず悪い奴じゃなさそうだし……ま、それについては後々話すよ」

('、`*川「なるほどな……惚れたか」

( ゚∀゚)「今、小声でなんか妙なこと言わなかったか?」

('、`*川「別に」

(;^ω^)「…………」

なにはともあれ、このジョルジュという男は初期の印象とは裏腹に、よく出来た人間であるとブーンは思った。

口調は軽いが、年齢は見ためから察するに二十代半ばといったところだろうか。しかし考え方はしっかりしている。
改めて見直すと、背丈よりも大きく見えるような、そういった不思議なオーラのようなものをまとっているようにも思えた。
ブーンはこのような印象をフォックスにも抱いたことがある。だからこそ、彼に対しても、信用が生まれていくのを感じた。

112 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:31:50 ID:SVrXeAvY0
その後も三人は黙々と歩いた。

時折、ペニサスが「まだか」「腹減った」などと愚痴をこぼしていたが、ジョルジュとブーンのスルースキルは見事なものだった。
ジョルジュもこの短い時間で、ペニサスとの付き合い方を学び終えたようである。

「街に着いたら、たらふく食わしてやるから黙っとけ」と言うと、あっという間にペニサスは沈黙した。

やはりこの男はしっかりしている。ブーンは一人、感心した。

113 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:32:43 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「おし、到着っと」

森を抜け、ようやくスレッドに辿り着いた。
人々が絶えず行き交い、群集するように建物が並んでいる。

スレッドは千年を経てなお、VIPの中心として健在していた。
定住している人間が最も多い街であり、ここを経由して西から東へ渡る者もいる為、昼夜問わず賑わっている。

( ^ω^)「今日はお祭りかなにかかお?」

( ゚∀゚)「いや、そんな予定はないはずだけど、なんでだ?」

( ^ω^)「だって、こんなに人が……」

('、`*川「やれやれ、これだから田舎者は」

(;^ω^)「う、うっせぇお!」

ブーンは動揺を隠すことが出来なかった。

これが特別でないのなら、日頃からこの数の人間が当たり前のように犇めいていることになる。
「世の中は広いものだなぁ」と心地よいカルチャーショクを受けながら、腕を組んで頷いた。

114 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:33:18 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「街の中心の方に俺の家があるからよ。ちょっとそこまで来てくんねぇか?」

('、`*川「飯はあるのか?」

( ゚∀゚)「おう。肉から魚からなんでもござれ、だ」

('、`*川「よし、ならば行こう。すぐ行こう。さぁ行こう」

(;^ω^)「おっ、ちょっと、引っ張るんじゃねぇお」

ぐいぐいとブーンの腕を引っ張るペニサス。
微笑ましそうに眺めるジョルジュに、ブーンは小声で尋ねる。

(;^ω^)「い、いいのかお? こいつ多分めちゃくちゃ食うと思うお」

( ゚∀゚)「心配いらねって、まぁ家にくりゃあ分かるよ」

( ^ω^)「そうかお?」

( ゚∀゚)「おうともよ。食いつくせるもんなら食いつくしてみろってんだ」

そう言って、けらけらと笑う。よっぽどの金持ちなのだろうか。
ブーンは豪邸を妄想してみるが、どうもイメージが湧きにくく、靄のかかったような映像になってしまう。

115 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:34:06 ID:SVrXeAvY0
この街の建物の構造が、ハジリマのものとは異なっているせいもあるが、
なによりジョルジュの格好が、とても金持ちのそれとは思えないからだ。

ジーンズに白シャツ。そこら辺にいそうな若者と変わらない……いや、それよりも質素な服装。
すらっと伸びた手足と、鍛えられた体。甘いマスクがなければモブキャラと化すような手抜き感に溢れている。

このような男が、豪邸に住んでいるとは考えにくい。
精々、猟師の息子とかそんなところだろうとブーンは結論付けた。

('、`*川「それにしても、平和じゃのう」

街の人間を眺めながら、ペニサスがぽつりと呟いた。

('、`*川「みんな笑っておる。子供も大人も。幸せそうな顔をしとるのぉ……」

( ^ω^)「良いことじゃないかお」

('、`*川「まぁな。これなら奴らも浮かばれるじゃろうて」

( ^ω^)(奴ら?)

疑問に思い、ブーンが尋ねようとしたところ、下腹部あたりに衝撃が走った。
なにかがぶつかったようである。視線を下に向ける。

116 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:34:54 ID:SVrXeAvY0
*(‘‘)*「……ぶつかった!」

(;^ω^)「お、おお、そうかお」

幼女だった。しかもなかなか可愛い。

*(‘‘)*「……誰?」

( ^ω^)「僕は、ブ」

*(‘‘)*「あっ、ジョルジュの兄ちゃん!」

ブーンが自分の名前を言い終わるよりも早く、幼女はジョルジュに駆けより、飛びついた。
幼女はジョルジュの腕の中で幸せそうな顔をする。一抹の寂しさと嫉妬が、ブーンの胸の内で燃え上がった。

( ゚∀゚)「ようヘリカル。今日も元気そうだな」

*(‘‘)*「お嫁さんにして!」

( ゚∀゚)「はっはっはっ。もうちょっとおっぱいおっきくなったら考えてやるよ」

*(‘‘)*「セクシャルハラスメントだ!」

(;゚∀゚)「お、おお……嫌な言葉覚えやがったな」

117 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:36:43 ID:SVrXeAvY0
幼女は一通り話すと、満足したのか、大きく手を振りながら去って行った。
元気が有り余っているのか、道路を全速力で駆け抜けて行く様子は、なんとも微笑ましいものだった。

( ^ω^)「ふむ」

('、`*川「なんじゃ、嫉妬か?」

(;^ω^)「ちげーお! それもあるけど、ちげーお!」

('、`*川「なんなら代わりにワシが飛びついてやろうか」

( ^ω^)「お前に飛び付かれると、あばらの二、三本が犠牲になりそうだから遠慮しとくお」

('、`*川「軟弱じゃのぅ」

( ゚∀゚)(どういう関係なんだこいつら)

その後も、このような用件がいくつか起きた。
世代も性別も関係なく、老若男女がジョルジュを見かけると一声かけていく。

「よう、ジョルジュ。またうちの店に来てくれよ」とか、
「おっ、ジョルジュ君じゃないの。この前はありがとうな」だとか、
「キャー! ジョルジュ様ー! 抱いてー!」などである。

どうやら、この街でジョルジュは、かなりの有名人らしい。

118 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:38:23 ID:SVrXeAvY0
( ^ω^)「随分、人望があるみたいだお」

( ゚∀゚)「まぁな。おまけにもてるぜ」

( ^ω^)「冗談じゃなさそうだろうからむかつく。冗談じゃなさそうだろうからむかつく」

大事なことは二回繰り返すのは一般常識である。

( ゚∀゚)「でもよ、ブーンだってもてると思うぜ」

(*^ω^)「そ、そうかお!?」

( ゚∀゚)「おう。虫も殺せないような顔して、脱げばダイナマイトマッスル。女なんてイチコロよ」

( ^ω^)「おおー……良いこと聞いたお」

('、`*川「ダイナマイトどころか、ポークビッツじゃろうに」

( ^ω^)「そこの女。聞こえてるお」

119 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:39:06 ID:SVrXeAvY0

( ゚∀゚)「かっかっ。まぁもてる云々より大事なことがあるだろ」

( ^ω^)「大事なこと?」

( ゚∀゚)「それは中で話そうぜ。ほれ、ここが俺の家だ」

(; ゚ω゚)「家って……ええええええええ!?」

ブーンは目玉が飛び出そうになった。
先ほどから一応視界に入っていた巨大な城のような建物。
外壁は果てが見えないくらいに伸びていて、一目で全貌が見渡せない巨大な庭を擁している。

ジョルジュは、それを自分の家だと言っているのだ。


(;^ω^)「こ、これかお? 冗談とかじゃなく?」

( ゚∀゚)「冗談言ってどうすんだよ。ほれ、入んぞ」

(;^ω^)「……どんだけの金持ちならこんな家に住めるんだお」

自分の背丈の数倍ある門を、ブーンはそろそろと潜り抜けた。

120 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:39:41 ID:SVrXeAvY0
(;゚∀゚)「食ったなぁ……おい」

('、`*川「だからワシは食うって言ったじゃろう」

一度に百人は座れそうな長机に、所狭しと並べられた料理の数々を、ペニサスはぺろりとたいらげた。
あの小さな体のどこにあれが入ったというのか。明らかに質量保存の法則を無視した所業に、ブーンもジョルジュも首をかしげるばかりである。

( ゚∀゚)「にしても、千年前の竜ねぇ。話は聞いたことあるけどよ」

( ^ω^)「知ってるのかお?」

食事の最中に、一つでも多くの情報をと、これまでの経緯を話したところ、そのような返答が返ってきた。

( ゚∀゚)「まぁな。お前の故郷はしらねぇが、こっちじゃ千年前の大戦は教科書にだって載ってるぜ」

('、`*川「ワシのこともか?」

( ゚∀゚)「魔龍ペニサスだろ? 一吹きで村を焼いたり、山を吹き飛ばしたっつー伝説もんだよ」

( ^ω^)(フォックスさんが言ってたのと同じだお……)

121 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:40:22 ID:SVrXeAvY0
 ゚∀゚)「ただ、そんなもんだな。教科書に載ってるっていっても、詳しいとこまでは載ってねぇ。
     どこぞの昔話が好きな奴なら、知ってるかもしれねぇけど……」

('、`*川「別に良い。ワシの過去がどう伝わっていようと、大した興味もない」

( ゚∀゚)「そうか」

('、`*川「それより、何故ワシらをここに招待したのかを聞きたい」

そうだった、とジョルジュは膝を叩く。

( ゚∀゚)「俺の一族はさぁ、代々玩具を作ってるんだよ」

( ^ω^)「おもちゃ?」

( ゚∀゚)「そうそう。なんでも創始者がそれはもうっていうくらいの子供好きでよ。
     子供たちに夢を与えるのが自分の生甲斐だっつって、玩具会社を作ったらしいんだ」

創始者は一代で爆発的に会社を大きくさせ、その頃から既に玩具の製作会社として不動の地位を手にしていたらしい。
その会社を受け継ぎ、更に発展させていく内に、ジョルジュ家は莫大な資産を持つようになったという。

( ゚∀゚)「だから、こんな家に住んでる訳だ」

( ^ω^)「把握したお」

122 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:41:49 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「今は親父が社長やってて、いずれは俺に継がせるつもりらしいんだが……俺、玩具作りのセンスがなくてな。
     まず不器用だし、玩具ってーより、トレーニング器具みたいなの作っちまうしで、この先が不安な訳よ」

( ^ω^)「社長はそういうこと以外の仕事がメインじゃないのかお?」

( ゚∀゚)「うちの家系は現場主義でよ。社長だろうとなんだろうと、会社一丸で、っつーのがモットーなんだ」

( ^ω^)「ふぅん……」

( ゚∀゚)「で、そこで俺は考えたんだが……なぁブーン、世界一の強さって興味ないか?」

(;^ω^)「は?」

突拍子もない発言に、ブーンは率直に言えば「何言ってんだこいつ」という感想を覚えた。
しかしジョルジュの目は爛々としている。異様な本気さがそこには秘められていた。

( ゚∀゚)「いやな、子供に夢をっていうのが創始者の理念だった訳だろ?
     だったら、世界一強くなるっていう夢を抱かせるってのも良いと思うんだよ
     幸い、俺は闘いの才能だけは一流だったみたいだし、その才能を生かすにはこれしかないと思ったんだ」

(;^ω^)「……これって、なんだお?」

( ゚∀゚)「俺は、世界一強い男を決める大会を開催する!」

ジョルジュは堂々と言ってのけた。
椅子の上に立ち上がり、片足を机に乗せる不作法な振る舞いまでする始末である。

123 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:42:21 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「その大会でスポンサーをすれば、会社の宣伝にもなる!
     子供たちが強さに憧れれば、俺が作るトレーニング器具も売れるようになる!
     そして何より、俺が世界一強いっていう称号が得られる! 一石三鳥!!」

('、`*川「どう考えても最後のが本音じゃろ」

( ゚∀゚)「ソンナコトナイ。ジョルジュ。コドモタチノタメ、ガンバル」

(;^ω^)「超片言!」

「まぁいいじゃねぇか」と言ってジョルジュは椅子に座り直す。

( ゚∀゚)「今俺は大会の参加者を募ってる最中だ。ここまで来れば話は分かるよな?」

( ^ω^)「僕にも参加しろと?」

( ゚∀゚)「ブーンだけじゃねぇ、ペニサスの嬢ちゃんもだ」

その一言に、ペニサスの眉がぴくりと動く。

('、`*川「よいのか? ワシは魔物じゃぞ?」

( ゚∀゚)「関係ねぇよ。ていうか、アンタが出てくれると非常に助かる」

('、`*川「どういう意味じゃ?」

124 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:45:36 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「建前は、魔物が暴れまわるだけの凶暴な存在ばかりとは限らないと知らしめるため、かな」

('、`*川「……本音は?」

( ゚∀゚)「千年前よろしく、魔物よりも人間の方がつえぇともう一度分からせてやるため」

あまりに悪びれもなくジョルジュが言うので、ペニサスは吹き出してしまった。

('、`*川「はっはっはっ。言うのぉ、お主!」

( ゚∀゚)「実際、負ける気がしねぇからな」

('、`*川「ほほう?」

そして、ペニサスは思い出す。

ジョルジュが初めて現れた時、この男はペニサスに気付かれることなく、その背中に飛び乗っていた。
たしかに竜の姿になっている時は、人間の姿でいる時より、感覚は鈍い。
それでも、全く知らぬ間に、というのは考えにくかった。

超高速で、しかも気配を消しながらの移動を為したというのなら考えられるが……それはつまり、こういうことになってしまう
目の前のにやけ面の男が、本当に世界一を自称する資格を持った実力の持ち主、などということに。

そこまで考えて、ペニサスは鼻で笑った。そんなものは杞憂だろう。

125 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:46:19 ID:SVrXeAvY0
('、`*川「ワシは後、四回の変身を残しておるぞ」

( ゚∀゚)「なんだそりゃ?」

( ^ω^)「変身はともかく、ペニサスはあと四つ封印を解きにいくつもりなんだお」

ブーンが付け足した。

( ゚∀゚)「ああ、さっきもそんなこと言ってたな。なんにせよ、お前も世界を回るつもりなんだろ?」

( ^ω^)「え? まぁそりゃ僕も一緒にいくけど……」

( ゚∀゚)「ブーン。世界を回って強くなってこい。お前はまだまだ強くなれるよ。
     それこそ十倍、百倍……いやもっとかもしれねぇ」

(;^ω^)「そ、それは言い過ぎじゃ……」

分不相応にすら感じる讃辞に、ブーンの頬が赤みを帯びた。

( ゚∀゚)「お前だってそう思うだろ?」

('、`*川「まぁの。じゃないと同行を許しとらんわ」

( ^ω^)「ま、マジで?」

今の百倍以上の力。ブーンには現段階では想像すら出来ない。
しかし、ここまで言われると、希望や興奮が体中に満ち溢れていくのを、留めることは出来なかった。

126 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:47:24 ID:SVrXeAvY0
( ゚∀゚)「大会は一年後に開催する予定だ。今から席は予約しておくが、問題はないな?」

ジョルジュが言って。

( ^ω^)「おおっ! ただし世界一は僕がいただいていくけど、悪く思うなお!」

ブーンが応えた。


二人の間に火花が散る。
良きライバルの存在とは、人の成長のなによりの促進剤になるものだ。

そして、漠然とした目標だった世界一の称号が、確かな現実のものとして目の前に現れた。
ブーンはこれまで以上に、最強を目指すことを強く決心し、これから世界を回る旅に出る。

127 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:47:35 ID:SVrXeAvY0

('、`*川「……ところで、ちょっと小腹が空いて……」





(;^ω^)「嘘っ!?」


(;゚∀゚)「嘘っ!?」





一人、もしくは一匹の少女と共に。

128 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:48:20 ID:SVrXeAvY0
ここまで二話です。
余計な部分で盛り上がり、重要な部分がおろそかになるのはよくないですね。
頑張ります。ありがとうございました。

129 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/04(金) 03:48:55 ID:rh2luCgs0
俺の玄武の如き乙を食らえ・・・!

130 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:21:09 ID:M48noiUw0
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131 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:21:19 ID:M48noiUw0
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132 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:21:30 ID:M48noiUw0
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133 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:21:40 ID:M48noiUw0
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134 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/13(日) 18:23:55 ID:M48noiUw0
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