1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 21:53:07.98 ID:xYINF4CHO
僕が小さい頃……トーチャンは事故で死んだ。
J( 'ー`)し「さぁ、ブーン?選んで?」
カーチャンは女手一つでここまで僕を育ててくれた。
僕とカーチャン……二人だけの家族。
J( 'ー`)し「カーチャンはこういうのは苦手だから……」
高校は卒業したものの、進学もせず、就職先も見付けられなかった僕は、二十歳を過ぎてもブラブラと毎日を無意味に消費していた。
J(;'ー`)し「やっぱり少し……ううん、なんでもないわ!」
そんな僕にカーチャンはいつも「そのうちいい仕事がみつかるよ」と明るく声をかけてくれた。
J( 'ー`)し「これね?――あ、すみません、ちょっといいですか?」
ある日。いつもと変わらない無価値な日。カーチャンは言った。いつもと変わらない笑顔で言った。
J( 'ー`)し「やっぱパソコンくらい扱える様にならなくちゃね」
( *^ω^)「おっおっお。ありがとだお、カーチャン!!」
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 21:54:31.41 ID:xYINF4CHO
夕暮れ。
電機店からの帰り道。
数年ぶりにブーンはカーチャンと帰路を歩んだ。中学を卒業すると、親と並んで歩く機会も中々有り得なくなる。それは、ブーンの気恥ずかしさから来る物だが、一般男児には仕方のない感情だろう。
電車を降り、家までの道を黙々と進む。
やはり少しの気恥ずかしさはあるが、早ければ明日にもパソコンが家に届く。ブーンの心はそんな気恥ずかしさよりも期待の方でいっぱいだった。
J( 'ー`)し「ふふっ。ちゃんと勉強して、いい会社見つけるのよ?」
(*^ω^)「わかってるお」
J( 'ー`)し「25万円かー、こんな大金を使うのは父さんが死んで初めてだね」
そういってカーチャンは笑う。「そうだおね」と小さくこぼすのはブーン。それがカーチャンに聞こえていたかはわからないが小さく、ふふふ、と優しい笑みを返してくれる。
ブーンの家は当然の如く、裕福などではない。むしろ、標準を下回っている方であろう。
カーチャンのパートで食いつなぐ日々。パソコンはローンを組んで買って貰った。
J( 'ー`)し「さぁて、これから頑張らなくっちゃ!カーチャンも、ブーンも、ね?」
( ^ω^)「……」
夕陽を浴びた母親の心強い後ろ姿は、
酷く、
脆く見えた。
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 21:59:33.25 ID:xYINF4CHO
('A`)「ちょwwwなんでブーンが最新型のPCなんか持ってんだよwwねーよww」
あの日から二ヶ月が過ぎた。ブーンは小学生時代からの友人、ドクオを家に呼んでいた。
( ^ω^)「お?よく最新型だとわかったおね?」
家には回線が引かれ、ネットにもパソコン自体にも多少は慣れてきたブーン。
('A`)「俺もパソコンはあるからな。少し古くなってきたし、カタログ漁ってたんだ……よ、っと」
おもむろにドクオはパソコンを立ち上げる。
( ;^ω^)「パソコン持ってるのにパソコンで遊ぶのかお……」
(*'A`)「バーカ、チェックだチェック。ブーンさんはどんなエロゲを入っれてーるのっかなー?」
( ;^ω^)「いやいや、一応就職の為に買ったやつだお。特にゲームも入ってないお」
その言葉に、信じられない!といった顔でドクオが驚く。
事実、ブーンは初めは嬉々として色々ネットやら何やらにハマっていたものの、二ヶ月たった今では次第に興味を失っていた。元より勉強にも就活にも意欲がないブーンにとって、パソコンとはまさに宝の持ち腐れとなっているのが現状だ。
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:00:20.06 ID:xYINF4CHO
( ^ω^)「それに……家はそんなゲームとか買う余裕もないお。ローンと回線維持だけでいっぱいいっぱいだお」
('A`)「働け」
( ^ω^)「だが断るっ!!」
('A`)「ま、金銭面は辛いなぁー」
( ^ω^)「だおだお。まぁ、暇潰しに無料ゲームはやってるお」
('A`)「無料ゲーム、ねぇ……ならよ、オンゲやらね?」
( ^ω^)「オンゲ?音ゲーの一種かお?」
(;'A`)「ちげぇよ、バカ。オンラインゲーム!」
( ^ω^)「おー。オンラインゲームかお……」
どんな物のか、はわかる。が、触った事は全くなかった。感じる不安。
オンラインゲーム……それは対人ゲーム。プレイヤーは自分だけじゃない。
そんなブーンの顔を見て、大丈夫だ、と笑うドクオ。マウスをいじり、とあるウェブサイトを開く。「これこれ」とパソコンの画面をブーンに譲り、ゲームの説明、登録からダウンロード、インストール方法までを教え、操作の補助をしてくれた。
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:03:25.76 ID:xYINF4CHO
時間は流れて深夜、内藤家。当然ドクオは既にいない。
J( 'ー`)し「……ただい、まー……」
静かにカーチャンが帰宅する。暗闇に包まれた我が家を、極力物音立てぬ様自室に向け進む。
J( 'ー`)し「……あら?」
我が子の部屋からうっすらと明かりが着いている事に気付いた。少し扉が空いている様だ。
J( 'ー`)し(まだ起きているのかしら?)
扉に近付き、声をかけるカーチャン。
J( 'ー`)し「ブーン?まだ……ッ!」
ブーンはパソコンに向かっていた。真剣そのものの面持ちで画面を見つめていた。
( ^ω^)「……」
J(*'ー`)し「……」
子を見つめる母。
J(*'ー`)し(パソコン上手になったかな?いい仕事見つかるといいね、ブーン……)
静かに扉を閉め、立ち去るカーチャン。
明日も一日頑張ろう!静かに、力強く、心に灯を燈した。
(*^ω^)「このゲーム……オモシロスwwww」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:06:52.69 ID:xYINF4CHO
不平等の世の中で、ただ一つ平等に与えられるもの……時間。
どれだけ時を有意義に過ごそうと、限られたその刻に意味を見出だせた者は少ないはずだ。
彼もまた、有意義に、無価値無意味に日々を過ごす。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:10:42.46 ID:xYINF4CHO
( ^ω^):どっくん!右だ
('A`):わぁってる
( ^ω^):ツンはそのまま永昌に入って、クーは援護を頼む
ξ゚?゚)ξ:把握
川 ゚-゚):了解した。
ドクオ に 3785 のダメージ
クール は ケアル を唱えた
ドクオ の HP が 100 回復
( ;^ω^):焼石に水だな
川 ゚-゚):MPも減ってきてるぞ。
(メメメ'A`):回復薬切れた
从 ゚∀从:うひゃひゃwww
( ゚∀゚):よぇぇえwwww
(,,゚Д゚):さぁて、もういっちょ喰らわせるぞゴルァ!
('A`):俺\(^o^)/オワタ
ギコ の攻撃
ツン は イオナズン を唱えた
ξ゚?゚)ξ:ぼぉっと突っ立ってんじゃないわよッ!
ジョルジュ に 6380 のダメージ
ハイン に 280 のダメージ
ギコ に 3650 のダメージ
ギコ の 攻撃 は不発に終わった
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:11:46.21 ID:xYINF4CHO
( ^ω^):ナイスだ、ツン!後は俺に任せろ!!
川 ゚-゚):行ってこい。
クール は バイキルト を唱えた
ブーン の 攻撃力がグーンと上がった
(♯^ω^):うぉぉお!!光になれぇぇえ!!!
ブーン の 花鳥風月 が発動
( ^ω^):花の様に舞い――
(メメ;゚∀゚):プゲラ
ジョルジュ は倒れた
( ^ω^):鳥の様に裂き――
从メメ;゚∀从:ブルァ
ハイン は倒れた
( ^ω^):風の様に突き――
(.;゚Д゚):モルスァ
ギコ は倒れた
( ^ω^):月が如く穿つ――!!
(メメ'A`):ど、どうして俺が……あべしっ
ドクオ は倒れた
ブーン 達はバトルに勝った
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:12:40.53 ID:xYINF4CHO
ノハ#゚?゚):なんとぉ!!!見事ランキング戦を勝ち抜き、王者に輝いたのはァァ――ブーンと愉快な仲間達だぁぁあ!!!
( ・∀・):いやぁ、熱いバトルでしたねぇ。
ノハ ゚?゚):そうですねー。これでブーンさんは晴れて、このゲーム内でのトップランカーの仲間入りですね。
( ・∀・):聞くところによると、ブーンさんはこのゲームを始めてまだ半年とちょっととか……
ノハ#゚?゚):なんとォォ!やはりニートの力は絶大かァァア!!!
( ・∀・):早いとこ職に就くなり、学校に行くなりしてほしい所ですね常考
ノハ ゚?゚):未来ある若者に救いの手を!!
( ・∀・):それではこの辺で。司会は私、モララーと
ノハ#゚?゚):熱血ヒートでした!またな、ヤロー共!!
(;^ω^):余計なお世話だバーロー
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:18:05.51 ID:xYINF4CHO
(*^ω^):とにかく勝ったな!
ξ*゚?゚)ξ:チームランキングじゃ鯖内ベスト3らしいわよ
川 ゚ -゚):ふむ。私はまだまだレベル低いから実感ないがな。
( ^ω^):そんな事……クーの補助があったから最後決まったんだぜ?
ξ゚?゚)ξ:私も頑張ったわよ!
( ^ω^):ん、ツンの一撃で流れが変わったんだな。やっぱこれはチームの力で勝ち取った勝利だよ。
川 ゚ -゚):ま、なんだかんだでブーンの力によるものが大きいが。
ξ゚?゚)ξ:確かにね。少しは見直したわ。
(*^ω^):はははw照れるぜww
(´・ω・`):盛り上がってる所申し訳ない。少しいいかな?王者ブーン。
( ;^ω^):お?いつの間に
川 ゚ -゚):ほう、情報屋ショボンじゃないか。
(´・ω・`):説明乙。少し話したいんだが、いいかい?
ξ゚?゚)ξ:ええ。構わないわよ?
( ^ω^):それで用件は?
(´・ω・`):うん。ありがとう。その前に『あれ』はいいのかい?
( ^ω^):どれ?
( A )←これ
( ;^ω^):あ……
川 ゚ -゚):そういや、殺されてたな(ブーンに
ξ;゚?゚)ξ:忘れてたわ。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:20:55.35 ID:xYINF4CHO
( ^ω^):まぁ、アレはいいとして、話って?
(;´・ω・`):いいのかい。まぁ、いいならいいが……。
(´・ω・`):これは一応、トップランカー皆に持ち掛けてる話だから落ち着いて聞いてほしい。
(´・ω・`):ずばり、ブーン。RMTをや ら な い か
( ^ω^):RMT?
ξ゚?゚)ξ:リアルマネートレード、よ。ブーンのキャラやアイテムなんかをお金と交換するの。ゲームのお金じゃなく、実際の、リアルのお金とね。
(´・ω・`):説明乙。で、どうだい?
( ^ω^):なるほど。把握した。
(´・ω・`):トップランカーなら多少の時間はかかるかもしれないが、結構な金額で取引できるが?
( ^ω^):だが断るッ!
(´・ω・`):即答だね。
( ^ω^):当たり前だ。俺にとってこのキャラは俺自身だ。アイテムにだって、皆で苦労して手に入れた思い出がある。それは、なにものにも変えられない価値があるんだ。
ξ゚?゚)ξ:……
(´・ω・`):ふむ。まぁ、当然だね。
( ^ω^):だから、すまないが取引に乗ることは出来ない。
(´・ω・`):わかったよ。だが、とりあえずは、頭に入れて置いてほしい。気が変わったら……いつでもここに連絡をくれ。
ショボン さんから フレンド登録申請 が届きました。
( ^ω^):……
(´・ω・`):それじゃ、最後に。優勝おめでとう、キング。
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:22:29.49 ID:xYINF4CHO
そう言うと、ショボンはログアウトした。ブーンも仲間達と少し話た後にパソコンを落とす。
( ^ω^)(RMT、かお……)
ここ半年以上、毎日が充実している。それは間違いなく、このゲームの影響だろう。
今日はランキング戦で優勝した。今や、ゲームの中では彼はヒーローだ。誰もが羨ましがるプレイヤー……それが箱の中の自分、『ブーン』なのだ。
( ^ω^)(僕は『ブーン』を絶対に手放せないお)
今の彼にとっての生き甲斐。それがオンラインゲームだった。
J( 'ー`)し「ただいま、ブーン」
( ^ω^)「お?お帰りだお、カーチャン」
J( 'ー`)し「こんな時間までお勉強?」
カーチャンに言われて時計を確認する。なるほど、気付けばもう午前3時を軽く過ぎている。
( ^ω^)「……まだやりたりないぐらいだお……」
何を、かはあえて口にしない。
カーチャンは知らない。ブーンがやっているのは勉強なんかじゃない、と。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:23:35.43 ID:xYINF4CHO
J( 'ー`)し「ふふっ、パソコン、上手になった?来年にはいい仕事見つかるといいね」
( ^ω^)「……」
それじゃカーチャンは寝るよ、と部屋を立ち去るカーチャン。ブーンの心にカーチャンの言葉が突き刺さる。
「いい仕事見つかるといいね」
彼がやっているのは勉強なんかじゃない。
彼は仕事なんか探していない。
彼の生き甲斐はオンラインゲーム。
オンラインゲームの中で彼はヒーロー。
彼はやめられない。オンラインゲームを。
彼は気付かない。
いや、気付かないフリをしている。
カーチャンが明け方まで働く理由を。
それからしばらくして、カーチャンは倒れた。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:25:27.75 ID:xYINF4CHO
午前1時過ぎ。
その電話はカーチャンのパート先からだった。
カーチャンがパート先で倒れた。究極病院にいるから至急来てくれ、と。
電話を置いてすぐ、ブーンは愛車にまたがる。ボロボロの自転車だ。
( ;^ω^)(カーチャン……カーチャンカーチャン!!!)
ブーンの家から究極病院までは自転車で1時間はかかる。その間一分一秒、不安と言う名の地獄が彼を蝕む。
なぜ?どうして?
考えれば考えるほど焦ってしまう。
焦れば焦るほど体は前に進まない。
病院に着く頃には2時半を過ぎていて、体中汗だくだった。
自転車に鍵をかける事も忘れ、院内に駆け込む。
一人の看護士と出会った。
( ;^ω^)「な、内藤ですが内藤は?カーチャンは今何処に!?」
从 ゚∀从「はぁ?落ち着いて下さいテメー。内藤さんの息子さんだな?」
( ;^ω^)「は、はいですお」
从 ゚∀从「内藤さんは今病棟に移動なさったから。病室は3階のいっちゃん右端、307号室になります」
口調の悪さと敬語が混ざった奇妙な看護士にお礼を言い、指示された病室へ駆ける。後ろから「院内は走るんじゃねーですよ」と聞こえたが、今の彼はそれには応えられない。
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:26:46.54 ID:xYINF4CHO
( ;^ω^)(カーチャン、カーチャン、カーチャン……)
( ;^ω^)「カーチャン!!!」
扉を開けると同時に叫んだ。
深夜の病院で非常識極まりない行為だが、叫ばずにはいられなかった。
カーチャンは
J( 'ー`)し「こら、静かにしなさい、ブーン」
ベッドに横になり、いつもの顔でそこにいた。
そう――
――いつもの蒼白顔で。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:30:17.64 ID:xYINF4CHO
いつからだろう?……カーチャンを見なくなったのは。
( ;^ω^)「カーチャン、大丈夫かお?」
いつからだろう?……カーチャンがこんなにやつれてきたのは。
J( 'ー`)し「ふふっ、ただの疲労よ」
いつからだろう?……こんな細々としたカーチャンが『いつも』のカーチャンとなったのは。
J( 'ー`)し「ブーンこそ大丈夫?パソコンの勉強は……」
胸が痛い。違う、違うんだよ、カーチャン。僕は……僕はね?
J( 'ー`)し「こんなに汗だくで……自転車できたのね?」
カーチャンがタオルでブーンの汗を拭ってくれる。その手にブーンも手を重ねる。
J( 'ー`)し「パソコン上手になって、いい会社に入れば、自動車も買えるからね」
点滴に繋がられたカーチャンの手は細くて……ブーンが少し力を込めれば折れそうで……とても暖かくて……。
( ;ω;)「カーチャン……カーチャン!」
J( 'ー`)し「あらあら……困った子ね」
カーチャンに本当の事を言ったら、どれだけ悲しむだろうか?言ってしまいたいという懺悔の気持ちと、これ以上心配かけたくないという気持ちがブーンを苦しめる。
ごめん、カーチャン。カーチャン、ごめんなさい。
カーチャンの手を握りしめ、繰り返し、繰り返し、心の中で呟く。
翌日、カーチャンが長くない事を医者から聞かされた。
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:31:48.07 ID:xYINF4CHO
( ゚∀゚)「お母様は……急性白血病です」
( ;^ω^)「そ、それは……治るんですおね!?先生!!カーチャンは……大丈夫ですおね!?」
( ゚∀゚)「……年明けを迎えられるかどうか、です」
( ;^ω^)「そ、そんな……」
( ゚∀゚)「気を確かに、内藤さん。お母様の所へ行ってあげて下さい」
( ω )「は、い。失礼しましたお」
頭を下げ、部屋を出るブーン。
あのカーチャンが後一ヶ月足らずの命。
病名を、余命を聞かされても、信じられない。
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:32:39.40 ID:xYINF4CHO
( ω )(嘘だ嘘だ嘘だ嘘っぱちだお!)
信じられない。
信じたくない。
――でも知ってたんだ。
知らない。
知りたくない。
――カーチャンは言ってた……「さぁて、これから頑張らなくっちゃ!カーチャンも、ブーンも、ね?」って。
何を?
ブーンはパソコンの勉強を。
何を?
カーチャンは何を?
――カーチャンは……パソコンのローンのせいで夜中まで働いていたんだ。
何をしてたんだ僕は。
何をしてるんだ僕は。
( ω )「僕は……僕は……!!」
気付けばブーンは走っていた。
カーチャンの病気は過労からくる物じゃないかもしれない。けれど、カーチャンに負担をかけていたのは絶対の事実だ。
( ;ω;)「僕はぁぁっ!うおぉぉ!!」
自転車にまたがり、走りつづける。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:33:27.14 ID:xYINF4CHO
ブーンは家に帰ってきていた。
家に着くなりパソコンを立ち上げ、メールを送る。しばらく時間がかかると思ったが、意外にも返事はすぐにきた。
( ^ω^)(……)
メールを確認し、適当に準備をして再び家を出る。
( ^ω^)「行ってきますお……」
勿論、返事は無い。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:34:36.78 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「やぁ、ようこそバーボンハウスへ」
そこは薄暗いバーだった。
普通にバーは薄暗いものだが、店内に客はおらず、それが尚の事、雰囲気を醸し出している。
バーテンがショットを誰も座っていないカウンターに出す。
( ^ω^)「貴方が……ショボンさんかお?」
(´・ω・`)「ショボン、でいいよブーン。同じゲームの仲間じゃないか」
ショボンは自分のグラスに酒を注ぎ
(´・ω・`)「まぁ、座りなよ。そのテキーラはサービスだから落ち着いてほしい」
グラスを傾け、ブーンを促した。
( ^ω^)「……」
無言で席につき、グラスをショボンの持つグラスと合わせる。心地よい音の響きにあわせ、テキーラに口をつけた。
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:35:42.05 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「いやはや、君からのメールを見た時は目を疑ったよ」
( ^ω^)「すみませんですお……」
(´・ω・`)「ハハ、謝る事はないさ。元より僕から言い出した事だしね。それにしても、ネットとじゃ結構イメージが変わるねぇ」
( ^ω^)「……」
ブーンは黙ってグラスを傾ける。
(´・ω・`)「……ふむ。重症だね。よかったら話てもらえないかい?」
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「言いたくなければムリには聞かないよ。職業病……とでも言うかな。ただの好奇心だ。気を悪くしないでくれ」
( ^ω^)「……いえ、よければ聞いて下さいお。僕も誰かに聞いてほしい……のだと思いますお」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:37:51.83 ID:xYINF4CHO
ブーンは語った。
片親で、父を早くに亡くした事。
就職もせず、ぶらぶらと無意味に日々を過ごしていた事。
母にパソコンを買ってもらった事。
そのおかげで母親は働き詰め、なのに自分はゲームで遊んでいた事。
……母親が倒れ、もう長くない事。
(´・ω・`)「ふむ。なるほど」
( ω )「僕はどうしたらいいんだお?」
(´・ω・`)「それは今後の生活の事かい?」
( ω )「違うお……」
(´・ω・`)「……母親の事かい?」
( ω )「……こんな事しか出来ないんだお。僕には思いつかないんだお……」
(´・ω・`)「いいじゃないか、それでも。ブーン、今のその気持ち、思いのままに行動しなよ」
(´・ω・`)「僕にはそれしか言えない。それ以外の言葉は要らないはずだから」
( ;ω;)「だけど!せめて!せめて、カーチャンの気持ちを裏切っていなければ!」
後悔の一言では言い表せられぬこの感情。これは自身に向けられた憎悪か。
( ;ω;)「今僕は、カーチャンを心配する気持ちより懺悔の気持ちの方が強いんだお!強過ぎるんだお!!」
机を叩き、顔を伏せるブーン。
憎い。自分が憎い。この醜悪な男が憎くて憎くて堪らない。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:38:46.06 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「やれやれ。ブーン、今君はお母さんの気持ちに応えているじゃないか」
そんな彼を、多少の呆れ顔で見詰めるバーテンダーショボン。
( ;ω;)「お?何を言って……どういう……」
伏せていた顔をあげ、前に立つ男を見上げる。中身が半分程になったグラスに口をつけて、男は言う。
(´・ω・`)「お母さんの願いはなんだった?パソコンを学ぶ事だったね。方向はかなり違うし、意味も違うが……」
(´・ω・`)「ブーン、君はパソコンで学んだじゃないか」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:39:24.77 ID:xYINF4CHO
一瞬、思考が停止した。予想だにしていなかったショボンの一言。ショボンは言葉を続ける。
(´・ω・`)「パソコンを上手に使う事より、パソコンを学ぶより大切な事を学んだじゃないか」
( ;ω;)「そんなの、言い訳にもならないお!!」
(´・ω・`)「確かに。これは言い訳以下かもしれない。だけど、事実だよ」
でも、でも、と言葉に詰まる。
誰かが言っていた。
罪は罰を受けても消えはしない、と。
(´・ω・`)「お母さんを大切に思う気持ち、お母さんの為に心を痛める君の気持ち……君は今、少しだけ成長した」
だけど男は言う。
罪から意味を見出だせない事が罪なのだ、と。
(´・ω・`)「お母さんはきっとそっちの方が嬉しいんじゃないかな、と僕は思うけどね」
まぁ、と付け加えショボンは「同じくゲームにはまってる僕が言うのも変だけどね」とクスクス笑い、グラスを空ける。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:40:38.78 ID:xYINF4CHO
( ;ω;)「うぅぅ……」
言葉が出ない。
救われた。地獄から救われた。
赤の他人であるはずの二人なのに。今日まで顔も声もわからなかった二人なのに。
カーチャンを裏切った。
けれど、じゃなければショボンと会うことはなかった。
皮肉な話だと思う。
どっちが正しかったのかわからない。いや、間違いなくブーンの選んだ道は間違いであろう。
けれど、ショボンはそれでいいんだ、と笑ってくれた。
今この瞬間
無価値な日々は価値有るものに
無意味な日々には意味が宿った。
(´・ω・`)「さて、そろそろいいだろブーン――」
ショボンは空のグラスを置き、両手を広げカウンターに乗せ一言だけ口にした。
「――じゃあ注文を聞こうか」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:41:51.67 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「やれやれ」
慌ただしい客が帰った後、グラスを口にし、考える。
(´・ω・`)「僕の悪い癖だね」
きっと本人は無意識に発しているのだろう。誰もいないバーでバーテンは電話機を手にする。
「お電話ありがとござ……珍しいわね」
数回のコールの後、受話器から女性の声が聞こえてきた。
(´・ω・`)「やぁ、お久しぶり」
「お店の方はどう?」
(´・ω・`)「おかげさまで。順調だよ」
「なら融資の件じゃないわね」
(´・ω・`)「はは、君らしいね」
受話器の向こうから、何よ?と聞こえてくる。
(´・ω・`)「忙しいみたいだし、率直に言うよ。実は……」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:43:41.57 ID:xYINF4CHO
(;^ω^)「はぁ……はぁ……ぶ、無事かお、カーチャン!」
けたたましく病室のドアが開かれる。
J('ー`)し「ブーン!病院では静かにしなさいっ!」
(;^ω^)「お……ごめんだお……」
慌ただしいブーンを静かに叱るカーチャン。
しゅん、と小さくなり俯くブーンは、どんなに身体が大きくなろうとカーチャンの子供であった。
俯く顔をあげたブーンの目に、ふふふ、と小さく笑うカーチャンが映る。それを確認してブーンもやっと笑みをみせた。
( ^ω^)「そうだ。 カーチャン、これ」
J('ー`)し「なーに?……あら、これは……」
ブーンの手には小さな紙袋があった。それを受け取ったカーチャンが中を確認すると……そこには苺のショートケーキが3つ。
( ^ω^)「1つはブーンのだお。残りの2つはカーチャンのだから一緒に食べるお!」
本当は今はあまり食べ物を口にしたくなかった。だがカーチャンの分だけを買うと、カーチャンはブーンに食べなさい、と口にしないだろう。
ブーンなりの配慮だった。
( ^ω^)(……プレゼント、かお)
思うと今までにカーチャンに何かを買ってあげた事があっただろうか?
( ω )(無かったおね……)
そう。無かった。そんなの当たり前だ。言わばこれが初めて自分で工面したお金なのだから。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:44:50.20 ID:xYINF4CHO
親孝行。
もしかしたらこれが、ブーンにとって初めての親孝行なのかもしれない。
もちろん、お金をかけたプレゼントが初めてだからというわけじゃない。
小さい頃だって親孝行と言われる行為はしてきた。
皿洗いや洗濯の手伝い。
でもそれは……自分が褒められたくてやってきた事だった。
大きくなってからは半ば嫌々だ。
純粋にカーチャンを想っての行動。
――親孝行。
( ω )(その意味を今になって知るなんて……皮肉なもんだお)
本当の意味を理解しても……カーチャンは後一ヶ月もしない内に……。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:45:49.32 ID:xYINF4CHO
J(;'ー`)し「……ーン?ブーン?」
( ^ω^)「お、ごめんお。ちょっと考え事してたお……。どうしたお?」
J(;'ー`)し「これ……お金はどうしたの?」
これ、とカーチャンが指したのはもちろんケーキだ。
先にも言った通り、ブーンは今までお金を工面した事などない。
チクリ、とする。
( ^ω^)「おっおっおっ。バイト代だお!」
チクリ。
J(*'ー`)し「ば、バイトって……ブーン、貴方!」
チクリ。
( ^ω^)「だおだお!ぱ、パソコンのバイトで稼いだお金だお!!」
チクリ。
J(*'ー`)し「ブーン……良かったわね」
ブーン、良かったわね。本当に良かったわね。って。
仕事見付かって良かったわね。いい仕事見付かったのね。って。
チクリ。チクリチクリチクリ。ズキズキズキ。
カーチャンと食べる苺のショートケーキ。
甘い甘いショートケーキは胸の中の苦味と合わさり、なんだか良くわからない味になっていた。
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:46:52.70 ID:xYINF4CHO
それからすぐだった。
カーチャンの容態は悪化する一方で。
ブーンの入社祝い、とケーキを食べたあの日から程なくしてカーチャンは……。
('A`)「ブーン……」
( ω )「……ドクオかお」
なんだか広く感じる狭い家。
何も変わらないのに、全てが違って見える。
カーチャンが逝ってから、ここ連日ドクオは家に来てくれている。
仕事もあるだろうに。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:47:41.83 ID:xYINF4CHO
('A`) 「飯は食ったか?」
( ^ω^) 「……」
('A`) 「うし、どっかに食いに行こうぜ? ちょっと外出た方がいいだろ」
優しい親友の心遣い。
嬉しかった。
純粋に嬉しかった。
( ^ω^)「……やめとくお」
――同じくらい、独りにしてほしかった。
ごめんだお、ドクオ。
僕は最低な男だおね。
謝るお。罵ってもいいお。殴ってもいいお。
だから――
('A`)「……そっか。わりぃ」
――君がそんな悲しそうな顔するなお。謝るなお。
思っても口に出来ないでいた。
行動に移せないでいた。
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:49:05.60 ID:xYINF4CHO
沈黙が場を制する。
半年前の談笑が嘘の様だ。
('A`)「……そろそろ帰るな。腹減ったらコレ……」
テーブルの上にオニギリをいくつか置いて、ドクオは帰る。
今日に限った事ではなかった。
ドクオは本当にブーンを心配してくれている。
何処まで最低なんだ僕は……。
そう考えずにはいられなかった。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:50:29.62 ID:xYINF4CHO
シン――と静まり返った室内。
世界が凍りついたように感じる。
……時計の針は動いている。どんなに願っても、針は進む。止まらないし、戻らない。
( ^ω^)(…………)
時計から視線を逸らすと、次に目に入ったのは……パソコンだった。
カーチャンが倒れたあの日から、一度も起動させていない。させる気も起きない。
――パソコンで学んだじゃないか――。
……なのに、何で電源入れてるんだろう?
( ^ω^)「…………」
無意識にボタンを押していた。
部屋に響く、低い駆動音。
真っ黒な画面にロゴが浮かび、数秒かけて見慣れた画面が映る。
ポーン。
立ち上がると同時に、短く弾むような音が鳴る。メール受信の音だった。
( ^ω^)「……ツンかお」
差出人はツン。受信日は数日前。
それも何通か送られて来ている。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:51:16.88 ID:xYINF4CHO
( ^ω^)(そういえば……誰にも何も言わずに売ったんだっけ……)
そう。
ブーンは『ブーン』を手放した。
あれだけ生き甲斐に感じていた箱の中の自分をお金に変えた。
「急ぎだろう?多くは出せないが……僕が買い取ってもいいかい?」
「……はは、気にする事はない。本当に安くでしか買い取れないからね」
あの日のショボンの言葉が浮かぶ。
始めて手にしたお金は、あの日のショートケーキと幾つかのお見舞い品で使い切った。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:52:39.12 ID:xYINF4CHO
( ω )(カーチャン……)
結局、カーチャンはショートケーキ以外は口にしなかったけど。
お見舞い品を持っていくたびに「そんな物にお金を使わないでもいいよ」と言ってたけど。
どこか……嬉しそうな顔をしていたのは確かだ。
( うω`)「そうだ……ショボンにメールしなくちゃだお……」
カーチャンの最後の嬉しそうな顔を作ってくれたのは、間違いなくショボンのおかげだ。
御礼のメールと……カーチャンの報告を……。
数分後、ショボンから返事が届いた。
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:53:30.52 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`):やぁ、久しぶりだねブーン。
( ^ω^):……久しぶり。話って……何かな。しかもわざわざゲーム内で。あまりインしたくないんだが。
(´・ω・`):つれないねえwちょっとまってね。
( ^ω^):……わかった。
(´・ω・`):(にしても……リアルとゲーム内のギャップ萌えwww)
( ^ω^):発言にすんなwww
(´・ω・`):この二人、ノリノリである。
( ^ω^):もう帰る。
(´・ω・`):正直すまんかった。まぁ、もう来たみたいだよ。
( ^ω^):来たって……え?
ξ#゚?゚)ξ:……
( °ω°):ッ!!!
ξ#゚?゚)ξ:黙って消えるなんて……どーいう事よ?
(;^ω^):いや……その……実は……
ξ#゚?゚)ξ:知ってるわよ、バカ。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:54:11.25 ID:xYINF4CHO
(;^ω^):知ってるって……え?
ξ ? )ξ:ショボンから全部聞いたわ。でも……一言くらい相談しなさいよ……。友達でしょ?
( ^ω^):ツン……。
( ^ω^):悪かった。
ξ゚?゚)ξ:許さん!
(;^ω^):うぇwwww
ξ゚?゚)ξ:まぁ……その話は後から『じっくり』するとして……。
(;^ω^):嫌な強調すんな
ξ゚?゚)ξ:あんた、ショボンに感謝しなさいよ?
( ^ω^)……え?
叫び:ブーン、お帰り。そしてお疲れ様。 From (´・ω・`)
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:55:07.02 ID:xYINF4CHO
(;^ω^):ちょ、これは……
ξ゚?゚)ξ:叫びアイテム。鯖内の皆に聞こえる課金アイテム。一個50円。リアルマネー。
(;^ω^):説明乙。って、何やってるんだショボン?!
叫び:お帰りブーン。話は聞いたぞ。泣きたかったら胸を貸してやる From 川 ゚-゚)
(;^ω^):ちょ、クーまでww何して……って、なんでクーまで知ってるんだよwww
叫び:ブーン、帰って来たか。もう大丈夫なのか?力になれなくてすまん。 From ('A`)
( ω ):ド……クオ
ξ゚?゚)ξ:……ショボンがね、皆に声かけたの。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:58:05.83 ID:xYINF4CHO
叫び:元気出せよブーンwまた戦ろうぜww From ( ゚∀゚)
叫び:俺様に勝った奴がいつまでもメソメソしてんな! From 从 ゚∀从
叫び:↑関係ねーだろwwwまぁ、お帰りwww From (,,゚Д゚)
叫び:ぶぅぅぅううううん!!!元気出せぇぇえええ!!! From ノパ?゚)
叫び:僕達……皆がついていますよ。 From ( ・∀・)
叫び:マザコン乙(笑)……ちょっと親孝行してくるわ。ノシ From (^Д^)
叫び:ブーンさ?ん!元気出してぇ下さいね? From 从'ー'从
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:58:51.28 ID:xYINF4CHO
( ω ):みんな……。
ξ゚?゚)ξ:ショボンの情報屋も廃業かもね。
( ω ):え……?
ξ゚?゚)ξ:こんな個人情報を皆に広めたもの。情報屋としての信頼はガタ落ちよ。
( ω ):そ、そんな……。
(;^ω^):ショボンは!?
ξ゚?゚)ξ:……とっくに落ちてるみたいね。
(;^ω^):……。ツン、すまん。
ξ゚?゚)ξ:えぇ。いってらっしゃい。
ξ゚ー゚)ξ:ここで行かない様な人なら縁切ってるわw
( ^ω^):ツン……。ありがと!ちょっと行ってくる!また連絡するお!!
ξ//?//)ξ:べ、別にあんたからの連絡なんて待ってないんだからね!!
( ^ω^):皆によろしく頼むよ。
ξ゚?゚)ξ:しょーがないわね。アンタは早く行ってきなさい。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:08:12.12 ID:xYINF4CHO
知っている人がいた。
知らない人もいた。
仲のいい人、悪い人。
何だろう……この気持ち。
顔も知らない、名前も知らない。
声も知らない、そんな人達。
――パソコンで学んだじゃないか――。
僕は間違った事をしていたんじゃないのか?
その結果が今ならば――間違った選択をしていなければ――僕はこの気持ちを知る事はなかったかも知れない。
時計の針は戻らないけど。
カーチャンはもう……いないけど。
僕は進んでいるから。
バタン、と扉が閉まる音が室内に響く。
誰もいなくなった室内の机に。
小さな小さな水溜まりが一つ。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:11:41.10 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「若さっていいねぇ」
バーボンハウス。
寂れた店内。
カウンターの奥、小さな従業員部屋に置かれたノート型PC。
ログアウトを済ませ、PCを閉じる。
lw´‐_‐ノv「またゲームかい?」
(´・ω・`)「はは、すいませんね、シューさん」
lw´‐_‐ノv「別に私は客じゃないし、ホールは流石兄弟がまわしてるし。それに副業としてるならそれも仕方ない」
(´・ω・`)「ほとんど趣味ですがね」
力無く笑うショボン。
lw´‐_‐ノv「何かあったのか?」
彼女……シューの問い掛けに何もないですよ、と答え、本題に入る事にする。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:12:22.62 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「それで、今日は?」
lw´‐_‐ノv「姉さんが何やら手を離せないらしく、代わりに私がきた。こないだの電話の件だ」
(´・ω・`)「あぁ……そうでしたね。さて、どうしたものか」
lw´‐_‐ノv「……私はてっきり流石兄弟の事かと思ったのだがね。あの兄弟は素晴らしい。実にセンスがある」
(´・ω・`)「はは。それはどうも。ですがあの二人じゃなくて……」
二人が話し込んでる時、ホールの方からショボンを呼ぶ声が聞こえた。
( ´_ゝ`)「店長ー」
(´<_` )「お客様です」
(´・ω・`)「……まさかね。今行く」
lw´‐_‐ノv「くっくっくっ」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:13:06.56 ID:xYINF4CHO
まさかとは思ったが。
ショボンの素直な気持ちだった。
(;^ω^)「しょ、ショボン!!」
汗だくで入口に立っていたのはブーンだった。
(´・ω・`)「やぁ、ブーン。さっきぶり、とでも言うかな?……どうしたの?」
後ろではシューがクククと笑い、何やら頷いている。
(;^ω^)「つ、ツンから話を聞いて……あの、あの……僕の為にすみませんでしたお!!」
(´・ω・`)「ブーン、まず落ち着いてほしい。何を聞いたんだい?」
何がどうなっているのやら。
とりあえず、客の目を引く為、店の奥へと移動する事にした。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:14:00.13 ID:xYINF4CHO
ブーンがツンから聞いた事をそのまま伝えると
(´・ω・`)「ふむ……」
と、何かを考え込むようにショボンはそのまま黙ってしまった。
( ^ω^)「ホントに、すみませんでしたお……」
頭を下げ、謝る。
(´・ω・`)「いや、それは別にいいんだ。僕は間違った事をした気はしないし」
ちょっと気恥ずかしいけどね、と付け加え、笑うショボン。
すると、今まで黙っていたシューが口を開いた。
lw´‐_‐ノv「この子が……?」
無表情に少しの含み笑い。
ちょっと怖いとブーンは思った。変人的な意味で。
(´・ω・`)「えぇ。……そうだな、ブーン。ちょっといいかな?」
( ^ω^)「え、あ、はいですお?」
(´・ω・`)「君、『ブーン』を使ったね?」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:17:48.05 ID:xYINF4CHO
(;^ω^)「……お?」
(´・ω・`)「僕に売った、ゲームのキャラ。『ブーン』を使ったね?」
(;^ω^)「う……いや、でも、ショボンが呼び出したんじゃないかお……」
(´・ω・`)「そうだね……でも新しいキャラを作って入れば良かったんじゃないかな?」
……何を言ってるんだこの男は。
困惑する。契約違反だ、とショボンは言っているのだ。
ショボン……君はこんな男だったのか……。
ショボンの後ろでは、無表情に笑うシュー。
……怖い。
(; ω )「た、確かにそうだお……。謝るお……」
(´・ω・`)「契約違反は契約違反だよ」
はっきり「契約違反」と告げられた。
( ω )「……返すお。お金」
(´・ω・`)「ん?……持ってるのかい?」
( ω )「カーチャンが……死んで……その……少しなら……あるから。返す余裕は十分にあるお。だから……」
(´・ω・`)「……ダメだ」
断られた。
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:20:16.29 ID:xYINF4CHO
もう今日はワケがわからない。
なのにショボンはもっとワケがわからない事を言い出した。
(´・ω・`)「ブーン。僕は君の凄さを知っている。半年で鯖内トップランカー……並の集中力じゃ出来ない事だよ」
チラっと後ろを振り返るショボン。目線の先にはシューが笑っていた。
( ω )「何の話だお……」
(´・ω・`)「君は僕の『ブーン』を使用した。これは立派な契約違反だ。だからお金は返してもらう」
( ω )「くどいおっ!返すって言ってるお!!」
(´・ω・`)「君のお金で、だ」
僕の……お金?
(´・ω・`)「僕は僕が働いたお金で『ブーン』を買った。だから君も君のお金で返してくれ」
(; ω )「で、でもブーンは……働いてもないお……僕のお金なんて持ってないお!」
lw´‐_‐ノv「なら……」
二人の会話に割り込み
lw´‐_‐ノv「うちの会社に来るがいい」
シューが静かにいいのけるのだった。
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:21:31.83 ID:xYINF4CHO
-------------------------
lw´‐_‐ノv「クサイったらありゃしない」
(;´・ω・`)「照れるからよしてくれ……」
お先に失礼します、と帰る従業員に手で挨拶する。
ショボンとシュー。2人きりになった店内。
lw´‐_‐ノv「僕は僕が働いたお金で『ブーン』を買った!……ガチホモ乙」
(;´・ω・`)「ウホッ……じゃなくて、やめてくれよホントに」
空になったグラスに、新しい氷とテキーラを注ぐ。
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:23:32.98 ID:xYINF4CHO
(´・ω・`)「全く……全部ばらされるとは思わなかったよ」
lw´‐_‐ノv「他にあの場が収まる方法があるなら。それでも良かったが?」
『なら……うちの会社に来るがいい』
ブーンは何を言われているのかわからなかった。
うちの会社?
lw´‐_‐ノv「私はデレ・グループの……偉い人だ」
(;^ω^)「は、はぁ……って、デレ・グループ!?あの有名なデレ・グループかお!?」
デレ・グループは企業の中でも超一流の企業だ。子供でも知っている……もちろん、世間に疎いブーンでも知っているような企業。
lw´‐_‐ノv「で、どうする?」
何故こんな事に?
自称、その超一流企業の偉い人が何故自分を?
混乱する頭では考えがまとまらない。
(;^ω^)「どうするって……ちょっと考えさせてほしいお」
lw´‐_‐ノv「3分間だけ待ってやろう」
(;^ω^)「バルス!!って、ちょ、話が急過ぎて何がなんだか……」
lw´‐_‐ノv「ショボンの好意をムダにしたければ断ればいい」
(;^ω^)「ショボンの……好意……」
(;´・ω・`)「ちょ、シューさん……!!」
慌てたショボンがシューの口を塞ごうとする。だが、シューの口は塞がらない。
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:24:31.34 ID:xYINF4CHO
lw´‐_‐ノv「何も今だけの話じゃない。先日、私の姉に一本の電話が入った。優秀な人材がいるから雇ってくれないか?とな」
(;^ω^)「え……それって」
lw´‐_‐ノv「今日はたまたまその話をしに電話をかけてきた男の所へ来たわけだ」
( ^ω^)「ショボン……」
ショボンを見る。
参ったな、等と口にし頭をかいていた。
その後、面談の日取りや企業の説明をし、今に至る。
答えを出し難っていたブーンも最終的には、はっきりとYesと答え帰宅。
(´・ω・`)「……はぁ。でも……ありがとう」
lw´‐_‐ノv「会社の利益の為。他意はない」
(´・ω・`)「ははは」
笑い、共にグラスを傾ける。
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:24:58.86 ID:xYINF4CHO
lw´‐_‐ノv「……似ていたから?」
(´・ω・`)「……何がだい?」
lw´‐_‐ノv「あの子に肩入れするのは似ていたから?」
(´・ω・`)「……そうだね。どことなく、ね」
lw´‐_‐ノv「……そうか。シャキンさんの容態は?」
変わらずだよ、小さく呟く。
シューは納得したのか、何も言わなかった。
(´・ω・`)「あー……ちなみに」
lw´‐_‐ノv「ん?」
(´・ω・`)「あの子って言ってるけど……ブーンは君より年上だよ」
バーボンハウス。
寂れた店内。
閉店したその店に、二人分の笑い声が響いた。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:26:07.26 ID:xYINF4CHO
-------------------
あれからどれだけの月日がたっただろう。
(,,゚Д゚)「内藤!今日は会長が来るからしっかり頼むぞ?!」
( ^ω^)「任せて下さいお!」
ノパ?゚)「お茶いるかぁあ?」
( ・∀・)「私は貰おうかな」
( ^ω^)「あ、僕にも下さいお」
(,,゚Д゚)「俺にもくれ」
ノハ#゚?゚)「まーかせとけぇぇえ!!」
僕はデレ・グループの下でしっかり働いている。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:26:54.78 ID:xYINF4CHO
まだまだ下っ端だけど、仕事を任せてもらえるようにもなった。
ξ゚?゚)ξ「シュー。今日の会議は?」
lw´‐_‐ノv「13時からプレゼンが一件と18時からのが一件」
ξ゚?゚)ξ「結構空きがあるわね……」
lw´‐_‐ノv「13時からのは『あの子』のプレゼン」
ξ゚?゚)ξ「……ブーンの、か」
結構大変な仕事だけど……凄く充実した毎日だと思う。
職場に不満なんてないし。
ξ゚?゚)ξ「ねぇ、どこか変なとこないかな?」
lw´‐_‐ノv「……頭」
ξ;゚?゚)ξ「え、うそ!?」
lw´‐_‐ノv「……の中」
ξ#゚?゚)ξ「……」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:27:31.99 ID:xYINF4CHO
今ならカーチャンに少しは胸をはれるかな?
……不安にさせる事はないと思う。
(`・ω・´)「あ、ツンちゃんに……シューちゃん?」
ξ゚?゚)ξ「え?」
lw´‐_‐ノv「シャキン……さん?」
(`・ω・´)「心配かけて……ごめんね?」
ξう?;)ξ「シャキン……さん」
ゲームは……実は今もしている。
でも、昔は後ろめたさみたいな物があったが……うん。今はそういう事はない。
(´ ω `)「兄はもう……」
( ゚∀゚)「えぇ……もう……大丈夫です」
(´;ω;`)「そうですか……そうですか!」
从 ゚∀从「だいたい、大丈夫だから外出してるんだろうに」
(;゚∀゚)「ハイン君!!」
从 ゚∀从「はいはい、すみませんねぇ」
パソコンを使って……色んな事を学んだ。色んな人と出会った。
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:29:28.00 ID:xYINF4CHO
それは知識じゃない。学校じゃ教えてくれない事。
人を通して。また直接人から言われて。
( ´_ゝ`)「おーい、厨房は弟者に任せてホール出てくれー」
('A`)「うぃーっす」
(´<_` )「ちょっと待て。俺一人じゃ捌ききれんぞ」
(#´_ゝ`)「可愛い子ちゃんのご指名だコンチキショ」
(´<_`#)「なん……だと……?」
('A`)「へ?」
川 ゚ -゚)「よう、『ドクオ』」
('A`)「……」
(゚A゚)「あばばばばばば」
時計はいつも進んでく。
どんなに願っても止まらないし、戻らない。
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:30:30.62 ID:xYINF4CHO
いつも何かを選択しなければならない人生の中で。
それはとても厳しく辛い事だけど。
( ^ω^):今日はあのミッションに挑むぞ!
ξ゚?゚)ξ:えー……
('A`):競争率高いぜ?マンドクセ
川 ゚-゚):ドクオがなんとかしてくれると信じてる。
(*'A`):ままま、任せとけ!
川 ゚-゚):b
(;^ω^):何コイツら
ξ#゚?゚)ξ:うぜぇ
(´・ω・`):ブーン達も挑戦かい?
( ゚∀゚):ま た お ま え ら かwww
从 ゚∀从:今回ばっかは負けらんねぇぜwww
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 23:31:22.54 ID:xYINF4CHO
……大丈夫。
間違った選択肢なんてないから。
悲しい事があったら、一つ学んで大きくなって。
楽しい事があったら、おおいに笑おう。
後悔だけはしないように。
笑って、笑って生きていこう。
「ちょっと、遅いわよ!?遅刻しちゃうじゃない!!」
「お……すまないお」
「パパー、早くー」
「今行くおー」
笑って、笑って逝けるように。
( ^ω^)「……行ってきますお」
――行ってらっしゃい。
( ^ω^)がパソコンで学ぶようです。
おわり
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2008/12/23(火) 23:57:27 |
ブーン系小説(短編)
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