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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:20:05.10 ID:+pTf0d/w0
世界。
大切なことは多くはないけれど、守るべきものは確かにある。
雲は流れる。樹は生い茂り、光が降り注ぐ。
しかし大切なものは少ない。ひどく少ないんだ。
('A`)「僕には夢があった」
彼には夢があった。
雨が降り、埃が舞う。骨だけになった、哀しげな傘の残骸。
どうすればいい?
('A`)「死ぬわけにもいかないし、このままでいいとも思わない。そうだろう?」
視界にノイズが走る。顔が歪み、風景は不安定だ。
信じることができるか?
馬鹿だと思われるかもしれない。
でも真実なんだ。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:22:03.49 ID:+pTf0d/w0
湿った土の上を、蟻たちが歩く。自然なことだ。
葉の一枚も、虫の一匹も無駄にはしない。
死体に群がり、手足をもぎ取る。
人間の話だ。
('A`)「君だって」
なぜ暗い?明かりがないからだ。
夜道の街灯は、その存在感を一層強くし、私たちを暴きだす。
逃げきることなんかできやしない。
('A`)「母は死んだよ。知っていた?」
知らない。私たちが知っていることなど、実にちっぽけなんだ。
自覚するべきだ。そんなものは死んだことにならないと。
神はいない。悪魔はいる。
西の悪魔だ。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:23:46.87 ID:+pTf0d/w0
『ただ引き金を引くだけさ』
('A`)「本当に?」
『さあ・・・』
('A`)「・・・痛い」
『しっかりしろ』
('A`)「頭が痛い。僕にどうしろと?」
『死ねばいい』
彼は走った。目的地は決まっている。
生まれたときから。抗えない。
『思い違いをしている。なぜそれに気づかない。愚かで、惨めだ』
('A`)「黙れ」
『死ね』
('A`)「・・・僕なのか?」
『違うさ。思い違いをしている』
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:26:26.09 ID:+pTf0d/w0
空へ。
彼はそう願った。破裂した命は、どこへ向かう?
私たちは追い続ける。世界じゅう。
西の悪魔が笑った。酷く引き攣った、大きな口。
私たちよりはマシに思えるさ。
('A`)「弾丸が」
('A`)「ない・・・探すわけにもいかない。僕は自由になるんだから」
『ハーブのせい?』
('A`)「違う」
窓の外に、何かがいる。私たちのほうを覗き込んでいた。
目は赤く、肌は黒かった。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:29:14.16 ID:+pTf0d/w0
('A`)「例え話をしようと思う。聞いてくれる?」
『ああ』
東に何があるというのだ。
愚かしく、細々とした人間たち。
骨と皮ばかりの、餓鬼共だ。
引き裂く価値もない。
そんな呟きが、どこかから聞こえてくる。
耳を貸す必要などないんだ。
('A`)「ここに・・・赤い箱があるとする。赤い箱だ。分かるだろう?」
『さあね』
('A`)「熟れたトマトより赤い。死んでしまうほどかもしれない」
彼らは私たちを嘲る。
信じることができるか?
いいや、できやしない。誰にも。
君にだって。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:31:54.53 ID:+pTf0d/w0
('A`)「何が入っている?そんなことは誰にも分からない。キミはそれを持って、縦に振るんだ。
横に振るんじゃない」
('A`)「何をしている?」
『なにも』
('A`)「音は聞こえない。キミは箱の中に、何が入っていると思う?」
『頭』
('A`)「なんだって?」
『頭さ。音が聞こえないのは、中が血液で満たされているから』
『それが染み出して、赤くなっているのさ。そろそろ・・・』
金属の、小さな筒。
それは光って、笑っていた。
声すら。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:39:55.98 ID:+pTf0d/w0
覚えがあるはずだ。
私たちは笑い、泣き、憂い、歓喜した。
錆びた自転車のシャフトにも、剥がれおちたペンキのひと塗りにも。
流れる雲の行き先にも、窓ガラスに映った夜の街にも。
誰もいない交差点、野良猫の居座る路地裏。
どこにだって、悪魔がいた。
そうさ。
理解している。
認めようとしない。
少年は包丁に憧れ、少女は言葉に涙する。
殺されるべきは、一握りだ。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:48:43.12 ID:+pTf0d/w0
「キミは泣くことがある?」
オレンジ色の空が落ちてこないように、彼らが支えているのだと。
音楽は何のために流れているのだろうと、なぜ誰も声を張り上げない?
「僕は泣く。キミのために」
必要だからだ。窓の向こう、山の麓。
声が聞こえる。
火薬を背負った子供。そのうつろな瞳は、何を見ている?
答えられる大人は、もうどこにもいやしない。
空へ向かう風船のように。
魂は私たちを見下しているのだろう。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:51:14.75 ID:+pTf0d/w0
焦げくさい。
彼女は確かにそう言った。
焦げくさい。
('A`)「父は・・・僕を呪っていた」
『そう?』
('A`)「お休み・・・」
一滴の雫。星の外からは、何も見えない。
地面を濡らした彼の悲しみなど、どこにも。
『知っていたよ』
手に握る鉄の塊は、何のために生まれてきた?
傷付けるためなのだろうか。それだけのために・・・
『お休み』
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 20:57:18.39 ID:+pTf0d/w0
空は澄み渡り、どこまでも広がっている。
空気を震わす音が、届いただろうか。
どんな人間の死だろうと。
いつだって、悼むべきなのだ。
人殺しだろうと、盗人だろうと。
偽善者だろうと、科学者だろうと。
喜ばれる死を、両手を拡げて受け入れてしまうのか?
彼は死んだというのに。
少女は涙する。そうしなければならないんだ。
少年は刺す。憎しみを、恐怖を、悲しみを振り切って。
君だって。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 21:00:00.31 ID:+pTf0d/w0
彼には夢があった。
あったのだろう。
『・・・お休み』
窓の向こう。
西の悪魔は、笑っていた。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 21:01:12.27 ID:+pTf0d/w0
終わりです。フヒッ
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- 2009/02/15(日) 00:40:59|
- ブーン系小説(短編)
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