590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:40:10.85 ID:bSUS9RiyO
じゃあ投下します
一度投下してみたが纏められずに終わった話
批評希望です
594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:42:05.12 ID:bSUS9RiyO
夢を見てる。 小さな頃の夢。片手で数えられるくらいの、そんな幼い頃の夢。
深々と降り注ぐ雪の絨毯を、僕は一人歩いている。
迷子になった子猫のように。
ほろほろと舞い落ちる雪は僕の頬を伝い、地面に落ちて白く消えた。
僕はこの雪の中で、誰かを探してる。
それが誰だったか、思い出せない。
すごく大切なことだった気がする。
とるに足らない、呆れるくらどうでも良いことだった気もする。
別にどちらでも良い。
ただ、幼い子供は、降りしきる雪の中を、ただ歩いていた。
596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:43:41.29 ID:bSUS9RiyO
( ^ω^)「………」
夢から覚める。
視界は真っ白。
まだ夢の中にいるような錯覚を起こす。
僕は病室のベッドに寝かされていた。
不意に感じた、柔らかな感触。
優しい温もりを手に感じる。
ξ;ー;)ξ「……」
そこに一人の女性がいた。
名前は分からない。会ったこともない、と思う。
名前も知らぬその人は、ただ僕の左手を握り締めていた。
600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:45:37.15 ID:bSUS9RiyO
( ^ω^)「誰……ですかお?」
その言葉を聞いた彼女の顔を、僕は忘れる事が出来ない。
驚愕、悲観、同情、それらとは違う。
はたまた、それら全てが入り交じったものだろうか。
そんな表情があった。
ξ;?;)ξ「……」
それでも、彼女は僕の手を握って離さない。
彼女の暖かな両の手の体温を、心に感じながら、僕は再び短い眠りに就いた。
602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:51:03.68 ID:bSUS9RiyO
再び目覚めると、やはりそこはベッドの上だった。
左手に感じた、あの感触は消えていた。
ξ゚ー゚)ξ「目、覚めたのね」
その代わりに、僕の横で彼女は一人、編み物をしていた。
( ^ω^)「……」
ξ゚ー゚)ξ「お母さんは、今、お医者様にあなたの話を聞いているわ」
( ^ω^)「僕は……」
ちぐはぐになった記憶を、必死で元通りに直そうとした。
そうだ、僕は事故にあったんだ。
603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:57:22.15 ID:bSUS9RiyO
寒い日だった。
いつ雪が降ってきてもおかしくないような。
前日から降り続いていた雨が止み、僕は出掛けたんだ。
そう、そして事故にあった。
鼓膜を破るような強烈なブレーキ音。
響き渡る悲鳴。
( ^ω^)「事故……かお?」
ξ ー )ξ「……そう。貴方は事故にあったの」
彼女の言葉を聞いた途端に、身体中を抉るような痛みが襲った。
( ω )「……」
ξ゚?゚)ξ「骨は折れてなかったわ。でも、強く頭を打ったみたいで」
『貴方は三日間、眠り続けていたわ』
605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:02:14.70 ID:bSUS9RiyO
あの悲鳴は一体誰の物だったんだろう。
駄目だ、記憶が一つになってくれない。
( ^ω^)「君は、ずっといてくれたのかお?」
ξ゚ー゚)ξ「ううん、たまたまよ。貴方が目覚めた時、偶然私がいたのよ」
( ^ω^)「……ありがとうだお。でも、君が誰だか思い出せないんだお」
ξ ー )ξ「いいのよ、それで。私、お母さんと先生を呼んでくるわね。貴方はそこでゆっくりしていて」
それだけ言うと、彼女はスライド式のドアを開き、奥へと消えていった。
それから四日が経った。
そして色んな事が分かった。
607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:06:18.13 ID:bSUS9RiyO
僕は軽度の記憶障害らしい。
医者が言うに、普通の暮らしに関することや、家族のことなどは覚えているとのことだ。
ただ、一つ。一つだけ、僕の脳から、記憶が消えた。
それがなんだかは、お母さんも医者も教えてくれなかった。
ξ゚ー゚)ξ「ブーン、おはよう」
彼女は、僕が意識を取り戻した今でも、毎日病室を訪れてくれている。
彼女曰く、自分は僕と同じクラスの友達、らしい。
彼女は学校が終わるとすぐに、僕のところに来てくれた。
大抵は彼女が一生懸命その日、学校でなにがあったかを話し、僕が相槌をうつだけ。
僕が眠っている時は、一人赤いマフラーを編みながら、ずっと隣にいてくれた。
608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:07:21.87 ID:bSUS9RiyO
僕は嬉しい反面、どこか不安だった。
彼女の生活は、どう考えても僕を中心に回っていた。
そんな彼女の優しさに付け込んでいるような自分が、堪らなく嫌だった。
そんな優しい彼女の名前を思い出せない腑甲斐ない自分が、堪らなく情けなかった。
ξ*゚?゚)ξ「それでねっ、ドクオったらねっ」
( ^ω^)「もう、良いお」
耐えきれなかった。そんな自分が。
こんな自分に付き合ってくれている彼女を見るのが。
ξ;゚?゚)ξ「あっ、ごめんね。学校の話なんて不謹慎だったよね。それじゃ」
( ^ω^)「そうじゃないお」
そんなことじゃない。
609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:07:52.21 ID:bSUS9RiyO
こうして、彼女が隣に居てくれることがどれだけ僕にとっての救いになっているだろうか。
彼女のけらけらと笑う声を聞くだけで、僕の心はどれだけ癒されているだろう。
こんな素敵な女性が、これ程までに僕に尽くしてくれている。
その事実に、どれ程僕の心は満たされただろうか。
―――でも
―――だからこそ
( ω )「もう、僕に付き合ってくれなくても良いお。そんなに無理しなくても良いんだお」
俯きながら、そう告げた。
病室に沈黙が訪れる。
設置された時計の秒針が動く音だけが、規則正しく響いた。
610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:08:39.57 ID:bSUS9RiyO
俯いた顔を上げた時
僕は二度目の
ξ;?;)ξ
彼女の涙を見た。
そんな彼女に、僕は
( ω )「出ていってくれお。一人にしてくれお」
尖った刃を突き付けた。
次の日から、彼女は来なくなった。
僕の病室には、編みかけの赤いマフラーと、赤色の毛糸だけが残された。
611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:10:21.49 ID:bSUS9RiyO
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夢を見てる。 小さな頃の夢。片手で数えられるくらいの、そんな幼い頃の夢。
深々と降り注ぐ雪を頭に受け、私はどうしようもない絶望に打ち拉がれ、ただそこに立っていた。
行き場を失った子猫のように。
ほろほろと舞い落ちる雪は私の頬を伝い、地面に落ちて白く消えた。
私はこの雪の中で、貴方と出会った。
ブーン、私はここで貴方と出会った。
私の大切な思い出。なににも替えがたい、ただ一つの、私の記憶。
貴方が忘れてしまっても、私は絶対忘れない。
幼い私は、降りしきる雪の中に、ただ立っている。
612 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:11:36.64 ID:bSUS9RiyO
両親の散歩に付いてきた私は、迷子になった。
降りしきる雪。
積もりゆく雪。
白く染まっていく景色。
その全てが私を昂揚させてくれていた。
気付いた時にはもう遅かったわ。
母の姿も、父の姿もどこにも無かった。
一面の銀世界、私の気分を昂ぶらせていたものが一変、白の監獄のように思われた。
私は泣いたわ。ほつほつと、父と母の名を呼びながら、嗚咽混じりの声を必死で張り上げ呼んだ。
そんな時、一台の三輪車が私の前に止まった。
『……どうしたんだお?』
『……ヒック、グッ……グスッ……』
614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:13:05.60 ID:bSUS9RiyO
『泣いてるのかお?』
『……ヒック、見ないでグスッよお……』
『元気出すお!』
『……ふんっ、放っといてよ……』
『あれ?元気でないかお?』
『出ないわよ!!バカじゃないの』
『あれっ?おかしいお……幼稚園の先生は僕の笑顔は人を元気にするって言ってくれたんだお?』
『知らないわよ!!』
『………』
『………』
笑った。声を出して笑った。
619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:16:49.72 ID:bSUS9RiyO
ブーンは私を笑わせようとしてくれた。
何度も、何度も。
私も一杯笑った。
何度も、何度も。
そこからは矢のようなスピードで過ぎていったわ。
両親が私を見つける頃には、もうブーンと私は立派な友達だったよね。
最後に私たちは、雪だるまを作った。
小さな小さな、可愛らしい雪だるま。
620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:17:30.96 ID:bSUS9RiyO
地面の雪を転がして
コロコロ
コロコロ
どんどん
どんどん
二人で一緒に
一つの玉を転がした。
631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:37:59.71 ID:bSUS9RiyO
次の日、私はまたあの場所に向かったの。
貴方に会いたかったから。また、あの場所に行けば会えると思ったから。
でも、そこに貴方の姿はなかった。
あったのは、雪だるま。私たちが作った小さな雪だるま。
そして、小さな一台の三輪車だった。
ねぇ、ブーン。私、貴方に言えなかった。
あの時、私はすごく怖かった。
怖くて、淋しくて、悲しくて、途方に暮れていた。
そこにさっそうと現れた貴方は私にとって、どんな尊い使命を背負ったヒーローよりも格好良かったわ。
『……ちゃん。ツンちゃん?』
ξーーー)ξ「……zzz」
632 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:38:59.40 ID:bSUS9RiyO
J( 'ー`)し「ツンちゃん?大丈夫?」
ξつーー)ξ「んんっ……」
J( 'ー`)し「大丈夫?ずっと寝てないんでしょ?」
ξ;゚?゚)ξ「あっ!?ごめんなさい!!私、うとうとしちゃってて……」
J( 'ー`)し「いいのよ。私こそごめんね、三日も学校を休ませちゃって」
ξ;゚?゚)ξ「いいえ、そんな」
J( 'ー`)し「きっとね、ツンちゃんが傍にいてあげてくれれば、あの子の目が覚めるんじゃないかって」
ξ ― )ξ「………」
J( 'ー`)し「でも、こんな事になっちゃって……」
ξ゚ー゚)ξ「いいんです、おばさん」
『私が、悪いんです』
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:42:11.71 ID:bSUS9RiyO
ξ ? )ξ「私が、あの時飛び出してなければ……ブーンは」
J( 'ー`)し「ツンちゃん……」
ξ ? )ξ「私を庇ってさえいなければ、ブーンは大怪我することもなかった……」
J( 'ー`)し「ツンちゃん、相手の人は過失を認めてるのよ。貴方の所為じゃないわ」
ξ ? )ξ「私が……私さえいなければ……」
大切な人を傷付ける事もなかったのに
J(#'ー`)し「ツンちゃん!!」
乾いた音が病院内に響いた。
それから少しして、自分の頬が熱を帯びていることに気付く。
635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:43:56.47 ID:bSUS9RiyO
J( 'ー`)し「ツンちゃんは、悪くない。悪くないから」
ξ ? )ξ「………」
J( 'ー`)し「ブーンの意識が戻るまで、学校を休んでまで、ずっと寝ずに手を握っていてくれた子が、悪いわけないわ」
ξ ? )ξ「でも、でも……」
J( 'ー`)し「大丈夫、きっとブーンも思い出すわ」
ξ ? )ξ「……私、きっと怖いんです」
J( 'ー`)し「なにが怖いの?」
ξ ? )ξ「ブーンに記憶が戻って、呆れられたら、絶望されたら。私、どうしたら良いか……それならいっそ、このままブーンから離れたほうが」
J( 'ー`)し「貴方……貴方の言葉が本心なら、私はもう一度貴方をぶつわ」
ξ ? )ξ「えっ……」
J( 'ー`)し「貴方が信じなくてどうするのっ!?」
ξ ? )ξ「………」
637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:47:34.63 ID:bSUS9RiyO
J( 'ー`)し「お医者様もいってたでしょ!?あの子の記憶は一番大切なところが抜けてるって」
ξ ? )ξ「………」
J( 'ー`)し「あの子が“大切に握り締めて逆に壊した”って、先生が言ってたじゃない」
ξ ? )ξ「………」
J( 'ー`)し「そしてあの子がなくしたのは、貴方の記憶なのよ」
『 し ゃ ん と し な さ い ! ! 』
ξ ? )ξ「……おばさん、私……」
638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:48:00.38 ID:bSUS9RiyO
ξ;?;)ξ「……私はブーンの傍にいて良いんですか?
ブーンの顔を見て、また笑っても良いんですか?」
J( 'ー`)し「もちろんよ、だって……」
―――貴方は
―――私が認めた
―――ただ一人の
―――あの子の恋人
ξ;?;)ξ「……うん」
J( 'ー`)し「いい子ね、じゃあ今日はもう帰りなさい。雪、だいぶ積もってるわよ」
639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:49:55.50 ID:bSUS9RiyO
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
やけに外が明るい。
カーテンを開くとすぐに何故か分かった。
( ^ω^)「雪だお!!」
カレンダーを見ればもう師走だ。雪が降ってもおかしい季節じゃない。
―――不意に
眠っていた時、見ていた夢が蘇った。
( ^ω^)「あの時も、雪が降ってたお」
外に出てみよう。何故かそう思えた。
外出は医者から強く禁じられていた。
身体の痛みは未だ残っている。
どう考えても本調子ではない。
でも、外に出たかった。
誰かが僕のことを待っている気がしたから。
642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:55:35.42 ID:bSUS9RiyO
( ^ω^)「寒いお……」
ダウンジャケットを着てきたが、やはり外は寒かった。
足を踏み出すたびに、ズボッと、雪が音を立てる。
ズボッ
ズボッ
シュッ
シュッ
それはまるで雪が織り成すオーケストラ。
僕の足が指揮棒だ。
どんな音でも、僕の意のまま、思いのままだ。
(*^ω^)「おっ♪おっ♪」
どんどん気分が盛り上がる。
やっぱり雪は良いなぁ。
素直にそう思えた。
643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:56:50.46 ID:bSUS9RiyO
(*^ω^)「んおー!雪最高ッ!!」
久しぶりの外、そして一面の白銀。
僕にとってそれは最高の環境だった。
( ^ω^)「雪だるまでも、つくかお」
しかし、雪の中で一人で出来ることといってもたかが知れてる。
もう一人がいなきゃ、誰かがいてくれなきゃ、雪を投げ合うことも、かまくらを作ることも出来ない。
( ^ω^)「………」
僕は地面の雪を掻き集め、転がした。
コロコロと、どんどんと雪の固まりは大きくなっていく。
僕の心の波紋と共に。
雪だるまは一人じゃ出来ない。頭があって、身体があって、それで初めて雪だるま。
( ω )「一人じゃ出来ないんだお……」
644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:57:50.24 ID:bSUS9RiyO
どれだけ転がしただろう。不意に、見たことのある風景が見えた。
それは、自分にとってとても大切な場所、のような気がする。
( ^ω^)「ここって……」
思い出せない。あの角を曲がれば公園がある。それは分かってる。
でも、何故そこが大切なのか。それが思い出せない。
( ω )「……クソッ」
あの場所が何故大切なのか分からない、ただそれだけのことで。
ちゃんと生活出来ているのに。
ちゃんとかーちゃんを覚えているのに。
友達のことだって覚えているのに。
大切な事は全部覚えているはずなのに。
ξ;ー;)ξ
あの子の名前が思い出せないだけで
( ω )「どうしてこんなに苦しくなるんだお……」
647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:07:48.42 ID:bSUS9RiyO
病院を出て、あてもなく歩いていたけど、この場所って―――
ξ゚ー゚)ξ「よぉーっし」
地面の雪を掻き集める。
どんどんそれを転がしていく。
あの場所まで。
あの角を曲がった公園まで。
私はどんどん雪玉を転がす。
大きくなーれ
大きくなーれ
私とブーンの思い出を詰めて、どんどん、それは大きくなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
( ^ω^)「はぁはぁ……」
意識が曖昧になってきた。
長時間外に出すぎたからか。
だが、もう少し。もう少しできっと手に届く。
651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:10:17.12 ID:bSUS9RiyO
あと五歩。
僕の手をずっと握っていてくれた彼女。
あと四歩。
僕の隣で、優しげにほほ笑みながらマフラーを編んでいた彼女。
あと三歩。
僕にずっと、面白い話を聞かせてくれた彼女。
あと二歩。
記憶を失って、驚愕の表情を見せた彼女。
あと一歩。
それでも手を握ってくれた彼女。
ξ゚ー゚)ξ
―――そう目の前にいる、君の名を―――
654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:11:43.96 ID:bSUS9RiyO
彼女は少し驚いたみたいだった。
でも、彼女は言った。
真っ白な物を持ち上げて、僕に言った。
ξ*゚ー゚)ξ「はい、出来上がり」
意識が途絶えた。
最後に見えたのは、大きな大きな、あの時とは比べものにならないほどの、でっかい雪だるまだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夢を見てる。 小さな頃の夢。片手で数えられるくらいの、そんな幼い頃の夢。
深々と降り注ぐ雪の絨毯を、僕は一人歩いている。
迷子になった子猫のように。
ほろほろと舞い落ちる雪は僕の頬を伝い、地面に落ちて白く消えた。
僕はこの雪の中で、誰かを探してる。
658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:12:56.70 ID:bSUS9RiyO
足元を見る。
ふと気が付いた。
二つある。
足跡が二つあるのだ。
隣を見た。
ξ*゚ー゚)ξ
彼女は笑っていた。
僕が失った記憶は、とるに足らない物でも、呆れるくらどうでも良い物でもなかった。
大切な、本当に大切な“ツン”との思い出。
662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:15:03.20 ID:bSUS9RiyO
ξ*゚ー゚)ξ「おかえり、ブーン」
『ただいま、ツン』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めた。
また真っ白な天井が映ってる。
横を見ると
ξ*ーーー)ξ
彼女は静かに寝息を立てていた。
目は赤く腫れ、彼女の両手は強く僕の左手を握っていた。
( ^ω^)「おっ、僕もまだ眠いお!」
もう一眠りしたい。
ふと、彼女の足元にある赤い毛糸が目に入った。
663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:16:09.67 ID:bSUS9RiyO
(*^ω^)「ふんふん♪」
それを、僕の左手の小指と、彼女の左手の小指に巻き付けた。
『おやすみだお』
今度目が覚めたら、真っ先に呼ぼう。
君の名前を。
―――僕の、愛しい、君の名を
雪が降る。深々と、冷たくて、暖かな雪が。
公園には、あの日と同じように、錆びた三輪車と、大きな雪だるまが、仲良く並んでいた。
fin
665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 02:19:39.18 ID:bSUS9RiyO
お題【錆びた三輪車】【雪だるま】【糸】
禁止ワード【クリスマス】
タイトルはちょっと浮かばないので募集しますwwww
支援ありがとうございました、サル二回食らいましたが無事投下できました
批評絶賛募集です
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- 2009/01/02(金) 02:53:07|
- ブーン系小説(総合)
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