2 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:23:28 ID:XnBB1XXg0
ぶーーーっ(昔の映画館でよくあった放映を知らせるブザー音)

3 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:25:21 ID:XnBB1XXg0
もしも人類を脅かす存在がいるとしたら、それは空の彼方からくるものだと思っていた。
だが彼らは、突如大地に現れた。破壊を振りまくために、はるばると、次元の彼方から。

5 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:26:23 ID:XnBB1XXg0


6 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:28:57 ID:XnBB1XXg0
《Ready...》

眼前の有機モニターに光が宿り、暗い光を発する画面中央に、こう赤い文字で記される。

《イェーガー・システム チェック開始》

続いて女性じみた合成音声が、抑揚のない声で告げた。
高解像度・高輝度のモニターに映し出された年季の入った格納庫は、壁のサビに至るまで鮮明に映し出される。まるでそこに窓があるかのようだ。

《各部異常なし。出撃まであと 30 秒》

その合成音声に重なるかのように、その画面上にインターフェースが展開する。

( ^ω^)「モンスターの進撃度合いはどうなってるお」

そのモニターに向かって座る内藤ホライゾンは、そのインターフェースを確認しつつ、壁のスピーカーに向け訊ねた。

『目標はニューソク、到達予測は18分後だ』

合成音声ではない生身の声がスピーカーから漏れる。

『数は6、カテゴリー1と2の混成部隊…量も質も少ない、楽勝だろう』

( ^ω^)「まあ、僕が主力として出るには順当かお」

《ゲート開きます。ヴァーティカル・タイタン出撃準備完了》

合成音声が聞こえ、彼の眼前に置かれた扉が重々しく開く。

( ^ω^)「おし、じゃあ適当にこなしてきますお」

『本当に適当にするなよ?カテゴリ1でも、一体でも都市に入り込めば被害は甚大なんだからな』

( ^ω^)「はいはい分かってるお、ヴァーティカル・タイタン、出撃!」

7 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:31:24 ID:XnBB1XXg0
猛烈にガスが抜ける音が鳴り響き、角ばった姿のイェーガーがカタパルトに載せられ勢いよく地下格納庫を飛び出していく。

《1番デッキ ヴァーティカル・タイタン 出撃》

《2番デッキ ワイルドキャット 出撃》

機械音声が続けて二度鳴る。
カタパルトの充填音が二重に重なって聞こえ始める。
そしてそのカタパルトの充填が終わらぬうちに、次なるイェーガーが格納庫へと入ってきた。

『1番デッキ、アクセル・ポイズン、入るぞ』

『2番、コールド・ヴァイス、出撃準備』

一人目は気だるそうな男の声、もう一人は、静かな女の声だ。

『エコー・ダブルスも準備は整っているな?』

内藤とわずかばかりの会話を行った、少しばかり嗄れた渋い声がその全体を包み込む。

『問題ない、なあ兄者?』

『んお?お、おお』

それに応えたのはよく似た二人の男の声。ただ、兄者と呼ばれた者はどうやら寝ていたらしく、寝起きらしい鈍い声で返事を返した。

『タイタンとキャットが相手するのは、おそらく斥候だろう…この後に本隊が来る可能性が高い、緊張感を保って、準備しておくように』

渋い声は「緊張感を保って」の部分を特に強調して彼らに伝えた。

『…へーい』

兄者と呼ばれた男が、気だるそうに応える。

8 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:32:51 ID:XnBB1XXg0
《着地まで5秒 ショックアブソーバ起動》

システム音声の直後、強い衝撃がコックピットを襲う。
超強力なカタパルトによって、遠く離れた作戦地域、つまりモンスターの侵攻予測地に飛ばされてきたのだ。
ショックアブソ−バから吹き出した緩衝剤が、蒸気となってヴァーティカル・タイタンを包み込む。
それはまるで、霧の中から現れる神話の巨人のようでもあった。

( ^ω^)「こちらヴァーティカル・タイタン、作戦領域に到達」

内藤は両手で操作するレバー型操縦桿を軽く引き、動作を確認した。
着地の衝撃に耐えるための関節ロックが外れ、丸太のような腕を、二度、三度と動かす。

『こちらワイルドキャット、タイタンの後方50m地点に着地』

( ^ω^)「おっ」

内藤は後部を映すサブモニターを見上げた。
後方に、曲面主体で作られた洗練された姿のイェーガーがちょうど着地したところであった。

( ФωФ)「お久であるなホライゾン殿、機体の調子はどうであるか?」

( ^ω^)「上々ですお、ロマネスクさんも元気そうで」

その隣の通信画面に、目つきの鋭い男が映る。
彼の名は杉浦ロマネスク、内藤の先輩であり、5年近くイェーガーに乗り続けるヴィップ連邦でも有数の古株だ。

( ^ω^)「けど…ロマネスクさんが出るほどのランクですかお?来るのはカテゴリ1と2だけだって…」

( ФωФ)「ワイルドキャットを改修したのでな、テストも兼ねて、である」

( ^ω^)「なるほど」

( ФωФ)「それと…おっと、話している場合ではないのであるな」

( ^ω^)「お?」

ロマネスクの機体が身構える。内藤もまた正面に向き直った。
彼らの前方、まるで恐竜のような、しかしこの世界のどんな生物とも似ても似つかない化物がいた。
『モンスター』
ソサク砂漠の中央に突如として現れた、異次元の門をくぐって現れる異界の生物達である。

ズシン…
ヴァーティカル・タイタンが一歩踏み出す。
最重量級のイェーガーの一歩は大地を揺らし、そしてそれが火蓋となった。

「グオオオオオオッ!!」

モンスター達が一斉に雄叫びをあげ、タイタンに突進してくる。
数百メートルはあった距離が、またたく間に縮まる。身長5メートルを越す巨体が暴走トラックのように突っ込んでくるのだ。
タイタンは両手を突き出し、それを受け止める体制に入った。

9 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:34:08 ID:XnBB1XXg0
( `ω´)「ふんっ!!」

「グオオオンッ!!」

3体のモンスターがタイタンにタックルをかます!
しかし、これはその程度で揺らぐイェーガーではない!

( `ω´)「軽すぎんだお!押し倒したきゃカテゴリ3か4でも持って来いお!」

そのまま腕を押し返し、3体ものモンスターを突っぱね返した!

( `ω´)「フォースガンッ!!」

《フォースガン、起動》

タイタンの肩にセットされた筒がせり出し、突っぱねたモンスターに巨大な砲口を向ける。

( `ω´)「ファイア!!」

ボゥン!

シリンダーの衝突音が響き、その砲口から指向性のある衝撃波が打ち出される。
ゾウすら吹き飛ばす強烈な衝撃波による強烈なブローだ!2体のモンスターが吹き飛ばされもんどりうって倒れる!
もう一体はなんとか堪えたが、動きが止まる!

「ガウッ!」

(`ФωФ)「遅い!」

体制を立て直そうとしたときには、既にワイルドキャットが懐に入り込んでいた。
その拳は限界まで引き絞られている!

「ガオオッ!」

モンスターはとっさに身を引くが

(`ФωФ)「甘い!アームパンチ!」

《アームパンチ、射出》

が、その身を引いた分だけ、ワイルドキャットの拳が伸びた!腕部に仕込まれたシリンダーによって拳を加速・射出するアームパンチだ!
素の速度と、アームパンチ機構による加速が足された鋭い拳が違うことなくモンスターの頭部を打ち砕く!

10 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:36:04 ID:XnBB1XXg0
( `ω´)「次!」

頭蓋骨が粉砕したであろうモンスターが倒れるのを待たず、タイタンはフォースガンを食らいもんどりうって倒れた二体を追撃する。
拳を振りかぶり、起き上がろうとする一体に振り下ろす。

「ガ…ォゴッ!」

振り下ろす、振り下ろす、振り下ろす。

「ギ…ギィッ」

振り下ろ

「ガアアオッ!」

そこでもう一体の方が立ち上がりその拳と腕を掴んだ。

( `ω´)「邪魔だお!!テスラフィンガー!!」

《テスラフィンガー、放電開始》

「ギ、ギギギギギアアアアアアァッ!!」

強烈な高圧電流が、掴まれた拳からモンスターの肉体を突き抜ける。
タイタンを掴む腕の力が弱まった。

( `ω´)「ふんっ!」

そのまま丸太のような巨腕を振るい、しがみついたモンスターを引き剥がす。
テスラフィンガーはまだ放電したままだ。可動の悪そうな指先から、バチバチと紫電が漏れる。

( `ω´)「おおおっ!!」

タイタンはその両手を噛み合わせ、足元に転がる瀕死のモンスターに振り下ろした!
強烈な打撃と放電に焼かれ、モンスターは悲鳴を上げる暇すらなく絶命!

11 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:38:45 ID:XnBB1XXg0
( ФωФ)「相変わらず戦闘になると性格変わるのであるな…」

ロマネスクはタイタンの荒削りで暴力的な戦闘を横目に見ながら、今回現れた6体のうちの残る3体と相向かっていた。
3体のモンスターはワイルドキャットを取り囲むように周囲を回る。その姿はさながら獲物を捕らえようとする狼の群れだ。
ワイルドキャットは動かない、タイタンのような被弾前提の戦い方はできないからだ。
そのぶん、彼には長いあいだ戦って培った観察眼がある。
いかな怪物といえど、必ず隙は作るものだ。

「ウゴォッ!」

この集団のリーダー格らしい、頭頂部の長いモンスターが一歩踏み出す。

( ФωФ)「む」

来るか?しかし、ロマネスクの注意は別の方向へ向いた。

(`ФωФ)「そこか!」

「ギャオオオッ!」

後方から迫っていたモンスターに、強烈な裏拳が叩き込まれる!
モンスターの行動で、リーダー格がいきなり出てくることはそうそうないのだ。先程の短い叫びは、配下への命令、一歩踏み出したのは単なるフェイント。
外見からは判断しにくいが、彼らは優秀な知能を持ち合わせているのである。

「ガオッ!グオオオオッ!」

強烈な裏拳を叩きこまれ怯んだモンスターに、さらに追撃のアームパンチが繰り出される。
柔軟な動きを実現したワイルドキャットだからこそできる、体を捻りながらの回転ジャブだ!
さらにアームパンチによる加速も相まって、その威力は絶大!

(`ФωФ)「っ! ジャンプブースター!」

《ジャンプブースター、噴射》

その後方から残る一体のモンスターが襲いかかってきたのを、素早く察知。
背中のブースターコアが蒼炎を噴き、ワイルドキャットの巨大な体躯が空へと舞う!

(`ФωФ)「喰らえィ!!」

そしてそのまま、二発の拳撃を受けて瀕死のモンスターへとストンピング!
イェーガーの中では軽い部類だとは言え、ワイルドキャットの重量は41トン!それほどの重量からくるストンピングはアームパンチ以上に凶悪だ!

「ッカ…」

モンスターは肺に残った息を一瞬だけ吐き出し、そしてピクリとも動かなくなる。

12 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:39:55 ID:XnBB1XXg0
「グオオオッ!」

しかし、ワイルドキャットを後方から襲ったもう一体が、ストンピング後の隙をつけ入り飛びかかる!

(;ФωФ)「っぬうう!」

素早く腕でガードするが、モンスターはワイルドキャットをグイグイと押す。これほどの重量を押しやるとはなんたる怪力!
しかしロマネスクは、一瞬は焦ったものの、小さな深呼吸を一つして冷静に呟く。

( ФωФ)「…そろそろ新装備を試してやるか」

(`ФωФ)「ブレイズフィスト!起動!」

《ブレイズフィスト、加熱開始》

ズリズリとモンスターはワイルドキャットを押し続ける、その先にあるのは沼だ!水に落とそうというのか!
しかし、見よ!モンスターの攻撃を耐えるワイルドキャットの腕!その拳が、徐々に赤熱していく!

「ガオッ!ガオッ!」

それに気付いたのか、後方でそれを見つめていたリーダー格が、命令らしい叫びを放つ。
それを聞いたモンスターは、素早く飛び離れ

《ブレイズフィスト、加熱完了》

(`ФωФ)「気付くのが遅いわ!」

真っ赤に赤熱した拳が、モンスターの腹を穿つ!ジュウッ!という肉が焼ける音と、黒煙が立ち込めた。

「アガアアアアアアアアッ!!」

モンスターの悲痛な叫びが響く!

(`ФωФ)「ぬううん!」

更に逆の手でもう一発!イェーガーに乗るロマネスクにはわからないが、辺りには腐った生肉が焼けるような、恐ろしく饐えた異臭が漂う。
モンスターは腹を抑えてのたうちまわる。後方に待機していたリーダー格が素早く救出に向かおうとするが

13 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:41:15 ID:XnBB1XXg0
( `ω´)「おおおおおっ!!」

「ガァァァッ!!?」

側面から別のモンスターが吹っ飛んできて、リーダー格にぶつかった!
タイタンである!残ったもう一体を、力任せにブン投げたのだ!

(`ФωФ)「ジャンプブースター!」

《ジャンプブースター、噴射》

その間に、ワイルドキャットは強烈なストンピングをモンスターに打ち付けていた。
残るはリーダー格ともう一体のみ!

「グルルルル…」

リーダー格は既に立ち上がり、タイタンとワイルドキャットを見比べるようにしながら、油断なく後ずさりした。

(`ФωФ)「逃がさ…!……ぬ?」

ワイルドキャットは追撃しようと一歩踏み出し、そして足を止めた。
レーダーに複数反応、多い…!

( ФωФ)「これは…!」

14 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:43:04 ID:XnBB1XXg0
同時刻、イェーガー基地。

『ヴァーティカル・タイタンとワイルドキャットの作戦領域近辺に、多数のモンスター反応を検知。数19…いえ、20。まだ増えます!』

『カテゴリ4を複数確認!繰り返す、カテゴリ4を複数だ!出撃準備の完了しているイェーガーは即座に出撃!迎撃に当たれ!』

('A`)「カテゴリ4が複数、ね…」

欝田ドクオは通信を聞いて、少しばかり体をこわばらせた。

川 ゚ -゚)「カテゴリ5がこなかっただけマシだな」

(´<_` )「まだ影も形もないカテゴリ5がこんなとこで出てたまるかよ」

通信画面に映る二人も、口調はこんな様子だが、少し落ち着きがない

('A`)「タイタンもキャットも、旧式のイェーガーだ。カテゴリ4複数を含む20体以上のモンスターに囲まれたらおしまいだ」

川 ゚ -゚)「分かってるさ…」

(´<_` )「よし、先に出るぞ!エコー・ダブルス、出撃!」

《3番デッキ エコー・ダブルス 出撃》

カタパルトが起動し、二つのキャノピーを持つイェーガーが出撃する。
そこに一瞬遅れて、ドクオの機体…アクセル・ポイズンの前にあるランプが青く点灯した。

《アクセル・ポイズン、コールド・ヴァイス、出撃準備完了》

『頼むぞ』

少しばかり嗄れた渋い声が、二人にそれだけ言う。

川 ゚ -゚)「コールド・ヴァイス、出撃」

('A`)「大丈夫です。ブーンは俺の親友っすから…アクセル・ポイズン、出撃する!」

15 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:45:18 ID:XnBB1XXg0
グン!と体に荷重がかかる。
カタパルトの急加速によって、遠くに見えていた出撃口が瞬く間に近づき、そして目も眩むような明るさを抜けると、既にそこは空高く。
重い場合は100トン近くにも達するイェーガーを発射し、遠く離れた作戦領域まで飛ばすカタパルト。元は宇宙開発用のマスドライバーとして開発していた代物だ。

('A`)「おお…雲一つないいい天気だな」

川 ゚ -゚)「こんな日に出撃とは運が悪い、まあ、地下にこもっていては外の様子もわかったものではないがな」

高速で飛翔するアクセル・ポイズン。流線型を描く胴体が非常に美しい。
そしてその隣に並ぶコールド・ヴァイス。こちらも曲面主体の美しい造りだ。
イェーガーはモンスターと戦うために作られている、そしてモンスターとの戦闘は肉弾戦だ。
曲面や斜面で構成された装甲の方が、打撃を受け流しやすいのは至極当然のことである、そのため、現在運用されているイェーガーはそのほとんどが曲面主体で構成されているのだ。

『こちらエコー・ダブルス、作戦領域に到達』

('A`)「タイタンとキャットは?」

『まだ大丈夫だ。とりあえず俺が前に出て引きつけておく、早く来てくれよ』

川 ゚ -゚)「お前達が行ったすぐあとに出撃準備が完了した。まもなく到達だ」

『ありがたいね』

すでに、二機は下降を開始している。雲一つない空から見下ろす大地、左手には遠方に街が、そして右手には…どす黒い森が

('A`)(悪魔の森…)

モンスターたちの体液や血液はこの世界の生き物にとっては猛毒だ。だが、彼らの世界では貴重な栄養源らしい、あのどす黒い森を構成する禍々しい植物たちは、全て彼らの世界からやってきたものだった。
そしてその森の判図は、年々広がっている。

('A`)「っち…」

こうまでして戦っても、結局はジリ貧なのだ。あの森の中ではどんな生物も生きられない。

川 ゚ -゚)「余計なことを考えるな、着くぞ」

('A`)「!」

16 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:46:40 ID:XnBB1XXg0
ドォン!ドォン!

更に二つの衝突音が響く。
緩衝剤の霧の中から現れたのは、内藤もよく知るシルエット

(;^ω^)「ドクオ!」

('A`)「スマン、遅れた」

アクセル・ポイズンの四つのカメラアイが鋭く光る。
先に出撃していたエコー・ダブルスは、既に大部隊の尖兵と戦っている。ワイルドキャットも一緒だ。

(#´_ゝ`)「テスラフィールドッ!」

《テスラフィールド、放電開始》

囲まれつつあるエコー・ダブルスの周囲に強烈な雷が走る。両肩に装備されたテスラコイルから一気に放電するテスラフィールドだ。雷に当たったモンスターは感電し、麻痺して動きを止める。

川 ゚ -゚)「行くぞドクオ、ダッシュブースター!」

('A`)「ダッシュブースター!」

《ダッシュブースター、起動》

コールド・ヴァイスとアクセル・ポイズンの背中が展開し、ロケットブースターが顕になる。
そのまま両者は、滑るように突き進み、エコー・ダブルスの周囲を取り囲むモンスターにタックルをかます!

川 ゚ -゚)「フラッシュコールド!」

《フラッシュコールド、起動》

そのままコールド・ヴァイスは飛び退き、腕に展開したホース状の武器を振るう。
その先から吹き出すのは液体窒素だ!-196℃の液体は、異界の生物たるモンスター達にとっても恐ろしい凶器となる!

「ギイイッ!ギイイイッ!」

あまりの冷たさに、モンスター達は液体窒素の射程から離れようとする。
だが何体かは逃げ遅れ、凍てついた足にまともに歩くこともできずに転んだ。

(`ФωФ)「ぬんっ!」

転び、無防備になったモンスターへ、ワイルドキャットのストンピングが襲いかかる!
一撃必殺!40トンを越す重量に押し潰されれば、いかな高カテゴリのモンスターと言えどひとたまりもない!

17 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:48:41 ID:XnBB1XXg0
('A`)「おっと!」

数体を相手取るアクセル・ポイズン、この機体の特性は名前のとおり『高機動』だ。
特徴的な関節の足は、あえて重心バランスを崩すことで、前方への移動能力を高めるためにある。
それだけではない、肩の部分にはサイドブースターが装備され、前方と左右に高い機動力を誇るのがアクセル・ポイズンの特徴だ。

(#'A`)「おらァ!」

サイドステップによって素早く横に避けた後、横になぎ払うように拳を繰り出す。
そしてその衝撃を利用して右後方へバックステップ!一撃離脱の戦い方が主軸なのだ!

(´<_` )「兄者!」

( ´_ゝ`)「おう!」

バックステップによって下がったポイズンを遮るように、エコー・ダブルスが割り込む。
エコー・ダブルス、現行のイェーガーの中で最も新しく、最も総合能力の高い機体だ。
そしてイェーガー初の二人乗りの機体でもある。上下に並んだ特徴的なキャノピーに乗るのは、双子の兄弟。流石兄者と流石弟者。

(#´_ゝ`)「アークプラズマ!」

(´<_`#)「ブレードッ!」

《アークプラズマブレード、起動》

イェーガーとしては細身のその両腕から、白熱する炎が噴き出す。
アーク放電を安定化させてブレードの形態をとった、アークプラズマブレードだ!これもイェーガー初の武装である!

(#´_ゝ`)「おおおっ!」

(´<_`#)「りゃあああっ!」

両腕のブレードが襲いかかるモンスターを焼き切っていく。
切断面は高温によって焼き潰され、猛毒の血液は大地に流れることはない!

18 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:49:54 ID:XnBB1XXg0
《注意、カテゴリ4を検知》

('A`)「!」

川 ゚ -゚)「来たか!」

レーダー性能に優れ、モンスターのカテゴリを判別できるアクセル・ポイズンとコールド・ヴァイスに、注意を促すシステム音声が流れる。

(´<_` )「カテゴリ3以下は俺とロマネスクさんに任せろ!お前らはカテゴリ4をやれ!」

('A`)「頼むぞ!」

「オオオオオオオオオオッ!!」

ひときわ巨大な、ひときわ異形の姿をしたモンスターが雄叫びを上げる。

( `ω´)「この先には行かせねえお!」

(;'A`)「ブーン、無理するな!」

既にカテゴリ4の前には、ヴァーティカル・タイタンが陣取っていた。
巨大なカテゴリ4相手に、全く怖気付いた様子を見せない。

「ウオオオオオッ!!」

カテゴリ4のモンスターが腕を振りかぶる!目標はもちろんタイタン!

( `ω´)「おおっ!」

タイタンは両腕を頭上に構え、防御の体制を取る。
ゴオオォン!

(;`ω´)「ぐうううっ!」

強烈な衝撃!タイタンの足元の土が跳ね上がる!

19 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:51:16 ID:XnBB1XXg0
(;`ω´)「軽い…んだお!!」

「ガァッ!?」

だが、タイタンはそれすら跳ね除けた!
モンスターの巨体が揺らぐ!

川 ゚ -゚)「フラッシュコールド!」

その隙をついて、コールド・ヴァイスがその足元へ液体窒素を飛ばす!土と足が凍てつき、張り付く!

(#'A`)「エルボーロケットォ!!!」

《エルボーロケット、起動》

足が動かなくなったことに困惑するカテゴリ4へ、アクセル・ポイズンが懐に潜り込んだ!その腕、その肘に、強烈な噴射炎が光る!

(#'A`)「スマァッシュ!!」

限界まで引き絞られた拳が、ジェット噴射によって猛烈に加速する。その拳はアッパーカットめいて頭部を的確に捉え、その顎を砕き、カテゴリ4のモンスターは綺麗な放物線を描いて飛び、そして大地に倒れ伏した。

20 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:52:50 ID:XnBB1XXg0
「オオオオオオオッ!!」

しかし、カテゴリ4はそれだけではない!次なるモンスターが猛然とこちらへ突進してくる!

( `ω´)「受け止めてやるお!」

川 ゚ -゚)「その必要はない」

タイタンは再び防御の構えを取るが、その横にコールド・ヴァイスがついた。

川 ゚ -゚)「クライオショット」

《クライオショット、起動》

構える腕はフラッシュコールドと同じ、ホースのような武器だ。

川 ゚ -゚)「ファイア」

バシュウッ!!

しかし吹き出したのは液体窒素ではない、内部のタンクで気化された、極冷の窒素ガスだ!

「アギィッ!?」

窒素ガスをまともに浴びて、突進してきたモンスターが怯む!

(#'A`)「どりゃあっ!」

しかし勢いの止まらぬモンスターに、アクセル・ポイズンがその腹へ的確に拳を叩き込んだ。
拳の速度と、モンスター自らの勢いによって、その拳は深くめり込む。

「オゴオオッ!」

猛烈なボディブローによって、モンスターは口から体液を吐く。

( ^ω^)「うへっ」

それがタイタンへとかかる。シュウウウ…と音を立てて蒸発する体液。血液ほどではないが、これも有毒な物質だ。

川 ゚ -゚)「ドクオ、ボディブローはやめろと何度言ったらわかる」

('A`)「や、あの状態じゃ頭狙えねえよ…」

21 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:53:37 ID:XnBB1XXg0
「ガッ…ガァッ!」

(`ФωФ)「ぬんっ!」

窒素ガスとボディブローを食らって苦しげに呻くモンスターに、後ろから強烈な一撃!ワイルドキャットだ!

('A`)「うおっ!」

前につんのめって倒れるモンスター。それを避ける三者

( ФωФ)「余裕綽々といった様子であるなお三方…数は減ったとはいえ、まだモンスターは残っているのだぞ?」

川 ゚ -゚)「そうだな、すまない」

( ^ω^)「カテゴリ4はあと何体だお?」

('A`)「…あと一体だな」

( ФωФ)「カテゴリ3以下は概ね片付いた。エコー・ダブルスのおかげである」

(*´_ゝ`)「いやぁそれほどでも」

(´<_`;)「兄者!前!前!」

(;´_ゝ`)「ぬおお!」

22 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:56:04 ID:XnBB1XXg0
―――――――――――――――……

《ヴァーティカル・タイタン、ワイルドキャット、エコー・ダブルス、アクセル・ポイズン、コールド・ヴァイス 帰投しました》

《整備チームは第 3 から 8 番ドックに向かい、イェーガーの整備に入ってください》

('A`)「…ふう」

ドクオがアクセル・ポイズンのコックピットから、深く息をついて出てくる。
今回の襲撃はなかなか骨のあるものだったが、第5世代含むイェーガー5機による迎撃ならば、この程度は容易い。

『帰投したレンジャーは、至急フォックスのところまで来てくれ。任務報告提出もそこで行う』

と、そこへあの少し嗄れた渋い声が聞こえてくる。
「レンジャー」というのはイェーガー乗りの事だ。ある程度の適性がないと、イェーガーを乗りこなすことはできない

( ^ω^)「フォックス司令官の呼び出しかお?珍しいお」

隣で、ヴァーティカル・タイタンから降りてきたブーンが上を見上げながらつぶやく。
見上げているのは高く吹き抜けになった整備ドック兼格納庫、その天井から吊り下がるようにある司令室。
ここ、ヴィップ連邦ニューソク基地は、合計で30機ものイェーガーを保管・運用できる巨大施設だ。
まだその半分程度はがら空きだが、ヴィップ国内でも最大規模のイェーガー基地なのは変わらない。

爪'ー`)y‐「皆集まったか?」

(#゚;;-゚)「……そのようです」

それを全て見下ろせるこの司令室に集まったのは、先程出撃したレンジャー全員と鏑木フォックス司令、そしてオペレーターの東雲でい。

( ´_ゝ`)「で、話ってのは何なんすかね?」

爪'ー`)y‐「まあそれはおいおいとして、とりあえずは今回の任務に関してだ…まず内藤!」

23 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 20:57:19 ID:XnBB1XXg0
(;^ω^)「は、はい!」

爪'ー`)y‐「さすがに今日のは無理があったぞ?見ろお前の機体」

フォックスは足元に見えるタイタンをあごでしゃくる。
その腕はべっこりと凹んでおり、カテゴリ4の怪力さを物語っていた。

(;^ω^)「す…すみませんお…」

爪'ー`)y‐「最近は高カテゴリのモンスターも多く現れてる。お前の重装甲も、さすがに限界が来はじめてるんじゃないか?
      あの機体も、前任者からのお下がりで、かれこれもう10年は稼働してる」

(#゚;;-゚)「9年です」

爪'ー`)y‐「うん、そう、9年…ワイルドキャットみたく、そろそろ大規模改修が必要だろうな」

( ^ω^)「改修…ですかお。でも、ついこの間」

爪'ー`)y‐「フォースガン据え付けただけじゃねーか。俺が言ってんのは装甲の増強だよ。さすがに今のままじゃなあ…えーっと、ランクはいくつだ?」

(#゚;;-゚)「装甲:A 機動:E 攻撃:Bです」

爪'ー`)y‐「ありがとう。そうだな、機動:Eの現状だったら装甲をSにしたいところだな」

( ^ω^)「いいんですかお?」

爪'ー`)y‐「お前は優秀なレンジャーだからな、失うのは惜しい…本当はお前のために新造してやりてえんだけどな」

( ´_ゝ`)「エコー・ダブルスの開発が終わってから、新造イェーガーの計画の目処は立ってないと」

爪'ー`)y‐「そういう事だ…ま、エコーが生まれたのもまだ半年前だし、これからどうにかなってくさ、多分な」

24 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 21:01:51 ID:XnBB1XXg0
爪'ー`)y‐「さて続いては、ドクオ」

('A`)「え、俺っすか?」

爪'ー`)y‐「ボディブローはやめようか」

フォックスは再びタイタンをあごでしゃくる、いや、正確にはそれを整備している整備士たちをだ。
皆防護服に身を包み、モンスターの体液で汚染されたタイタンを入念に洗っている。

(;'A`)「あ、はい…」

爪'ー`)y‐「以上。で、本題なわけだが」

('A`)(そんだけかい…)

爪'ー`)y‐「昨今、モンスターの動きは活発化し、高カテゴリのモンスターも増えつつある。今回もそうだな、カテゴリ4の3体同時出現。
      モンスター研究チームは、未だ見ぬカテゴリ5の出現を近いうちにあると予測している。お前らも噂あたりで聞いたことはあるんじゃないか?」

( ´_ゝ`)「まあな…それに備えた訓練とかもあるとか…」

爪'ー`)y‐「変なところで鋭いなお前。
      そう、近いうちに、ラウンジ連邦共和国とのカテゴリ5を仮想敵とした共同戦闘演習を行うことになったんだ。向こうからの提案だ」

( ^ω^)「ラ連の連中と?」

(´<_` )「マジか」

フォックスの言葉に、一同がざわめく。
ラウンジ連邦共和国、通称ラ連は、ヴィップ連邦と相対するもうひとつの超大国だ。
モンスター襲撃以前までは、核戦争直前にまで張り詰めていたという間柄である。
モンスターの出現位置がまさしくヴィップとラウンジの中間に位置するソサク砂漠であった事から、モンスター出現によってうやむやにはなったものの、仲良くなったわけではない。
そんな国と、いきなり共同戦闘演習だと言われれば、誰だって困惑する。

25 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 21:03:08 ID:XnBB1XXg0
( ´_ゝ`)「事故と偽ってこっちを殺しにかかってくるんじゃねえだろうな」

爪'ー`)y‐「奴らもそこまで馬鹿じゃないだろう…ま、おそらくはこっちのイェーガーの性能や質を見極める。向こうのを見せびらかすくらいの目的だと思うぞ」

( ^ω^)「ラ連ならなんか仕込んできそうだけどお…」

川 ゚ -゚)「日程は決まっていないのか?」

(#゚;;-゚)「それも向こうからの提案があるそうですが、未だ音沙汰はありません」

(´<_` )「ますます怪しいな…」

爪;'ー`)y‐「勘ぐり深いなお前ら…この非常時だ、ラ連と手を取り合うのも重要だというのが政治家達の言い分だ。
       これを機に、ヴィップとラ連の関係向上に繋がるよう努めて欲しい。俺からの伝達は以上だ」

その言葉を持ってこの場は解散となり、イェーガー基地は襲撃後に得られるしばしの休息を得る。
しかしその時間も、最近は短くなりつつある。モンスターの出現頻度は年々短くなってきているのだ。
フォックス司令の言うとおり、今は昔からの確執に拘って人類同士で争い合っている場合ではなかった。



                                                               第一話終

26 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 21:06:00 ID:XnBB1XXg0
イェーガー図鑑#0 イェーガーとは

身長5〜8メートル程度の、対モンスター兵器として開発された人型兵器。
分厚いコンクリート壁すら易々と破壊する恐ろしい怪力を持ったモンスターに対抗するため、巨大で重い腕と拳を装備しているのが特徴。
製造年によって第一世代から第五世代にまで分類される。

27 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 21:14:00 ID:XnBB1XXg0
イェーガー図鑑#1 ヴァーティカル・タイタン
登場者 ( ^ω^)[内藤ホライゾン]
分類 第一世代
性能 装甲:A 攻撃:B 機動:E 電子戦:D
装備 テスラフィンガー
   フォースガンx2

第一世代型イェーガー。角ばった形状の旧式イェーガーだが、その分厚い装甲はカテゴリ3までのモンスター相手ならば何一つ問題はないほど頑強。
一ヶ月ほど前に肩部分にフォースガンを据え付け、火力の増強が施された。

28 名前: ◆Dl8RDFPb.U :2013/09/23(月) 21:17:14 ID:XnBB1XXg0
イェーガー図鑑#2 アクセル・ポイズン
搭乗者 ('A`)[欝田ドクオ]
分類 第四世代
性能 装甲:D 攻撃:C 機動:S 電子戦:B
装備 ダッシュブースター
   エルボーロケット

第四世代型イェーガー。機体前面の流線型のコックピットに寝るように乗り込む。
三角形の肩パーツにはサイドブースターが装備されており、高い機動性を誇るが、その分装甲を犠牲にしており非常に打たれ弱い。


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