第24章
2 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:14:06.22 ID:I0I4mDUY0
( ´∀`) 「あーるこーあーるこーわたーしはーげーんきー」

ζ(゚ー゚*ζ 「うるさい。黙って」

( ´∀`) 「ちぇっ」


喪名(No29)と本意ではないものの合流した出玲(No18)。
2人は市街地をいったん抜け、森林地帯を歩いていた。
彼女は後悔していた。どうして自分はこんな男と合流したのだろうと。
この男は目を離すと大声で歌うし、すぐ脇道に逸れるし、一緒にいてもいいことなんて一つもない。
何度も離れることを提案しようとしたが、自分から同行を許可した手前、それはプライドが許さなかった。


( ´∀`) 「疲れたモナ。ちょっと休もうモナ」


またこの男は。
こいつにつきあっていると自分のペースまでもが危うくなってくる。
出玲はこの何度目かもわからない提案に、何度目かもわからない答えで返した。

3 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:17:19.19 ID:I0I4mDUY0
ζ(゚ー゚*ζ 「何度も言ってるでしょ。私は女子を殺すために歩いているの。

       そんなに休みたいなら一人で休んでなさい」

( ´∀`) 「ちぇっ。……あーるこー」

ζ(゚ー゚*ζ 「うるさい」

( ´∀`) 「ふんふーん。モナモーナー」


……少し頭痛がしてきた。
これでは女子を殺す前にストレスで死んでしまうかもしれない。
それに追い打ちをかけるように喪名は言う。


( ´∀`) 「ちょっとおトイレだモナ」

ζ(゚ー゚*ζ 「……はぁ?」

( ´∀`) 「覗いちゃメッ、だモナ」

ζ(゚ー゚*ζ 「……」


頭が痛い。いや、律儀に草陰に消えていった喪名を待つ必要などないのだが。
なんの義理があるのか、自分の体は歩き出そうとはしなかった。

4 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:20:33.77 ID:I0I4mDUY0
ζ(゚ー゚*ζ 「……遅せえ」


かれこれ10分は経った。
まだ喪名は帰ってこない。あいつはどこまで小便をしに行ったのか。
もう、知らんふりして行ってしまってもいいかもしれない。
そう思い、溜息をつきながらくるりと足を方向転換したその時。


*(#‘‘)* 「死ねえええええええええええええええええ!!」

ζ(゚ー゚;ζ 「!!」


そばにあった草陰から人間が飛び出してきた。
出玲はとっさのことに判断が遅れた。
喪名のことで頭がいっぱいになった影響で、周りへの警戒が薄れていたのだ。
6 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:23:54.09 ID:I0I4mDUY0
*(#‘‘)* 「あああああああああああああああああ!!」

ζ(゚ー゚;ζ 「うぅ……」


飛び出してきた人影――沢近(No7)はどこにそんな力があるのか、渾身の力で首を絞めてくる。
今の自分は完全に押し倒されている。身体を捻って沢近の手から抜けようとするが、彼女の力はそれを許さない。
次第に、視界の端の方に星のようなものがチラチラとし始めた。


*(#‘‘)* 「死ね! 死ね死ね死ね死ね早く死ね!!」

ζ(゚ー゚;ζ 「うぁ……かっ……ぁぁ……」(まず、い、よ、こりゃあ……)


こんなところで油断していて絞殺されたではまったく話にならない。
しかし、今の出玲には希望がただひとつだけあった。


ζ(゚ー゚;ζ 「ぐう……ぅ、ぅう……」(喪名、早く、帰って、きなさいよ……!)


トイレに行くと言って姿を消した喪名の存在だった。
希望と言うにはあまりに脆くて信用のならない存在だが。
10 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:27:12.02 ID:I0I4mDUY0
*(#‘‘)* 「しぶといなコラ!! は、や、く、死ねよ!!」

ζ(゚ー゚;ζ 「ぁ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」


言葉を言うたびに力を増す沢近の力は確実に出玲の肺から空気を奪い取っていく。
もう、ダメかもしれない……そんなことを思った、その時。


( ´∀`) 「ふう、いい厠タイムだった……ってあれ? 沢近さん?」

*(#‘‘)* 「!」

ζ(゚ー゚;ζ 「……ぅ……」(や、っと……!)


助かった。出玲はそう思った。
きっと喪名は沢近を蹴りあげるか何かして自分を助けてくれるに違いない。
12 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:30:29.64 ID:I0I4mDUY0
*(#‘‘)* 「……」


沢近は警戒を強めているようだ。
自分を絞める手の力は変わっていないが。


( ´∀`) 「……ふうん」

ζ(゚ー゚;ζ 「ぅく……も、な……!!」

( ´∀`) 「……」


しかしいつまでたっても喪名は行動を起こさない。
はやく、はやくしないと、しんでしまう――!!
出玲はそんな思いで喪名を見上げる。


ζ(゚ー゚;ζ 「あ……くぅ、う……も、な……! は、ゃ、く……!!」

( ´∀`) 「1つ言っておくと」

*(#‘‘)* 「……」

ζ(゚ー゚;ζ 「……」
16 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:34:04.50 ID:I0I4mDUY0
*(#‘‘)* 「……」

ζ(゚ー゚;ζ 「……」

( ´∀`) 「僕は、どっちの味方でもないモナ

ζ(゚ー゚;ζ 「……っ!」


何を。何を言っているんだ。こいつは。
目の前で仮にも行動を共にしている者が死にかかっている。
それなら、それを助けるのは当たり前だ。
出玲は合流する前に喪名が言っていた言葉を、ふと思い出す。


『( ´∀`) 「幸い、君の狙いは女子のみ。僕は君のあとをついていくだけ。

       君に関しては口も出さないし手も出さない。それでどうだモナ?」』


ζ( ー ;ζ (ああ、そ、っか……期待した、あ、たしが、ばかだった、んだ)
18 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:41:03.09 ID:I0I4mDUY0
喪名は、最初からそう言っていた。
それを考えないで、勝手にすがりついたのは自分だ。
なら、しょうがない。


*(#‘‘)* 「……そうかよ。じゃあ、好きにさせてもらうよ」


そう言って沢近の手の力がさらに強くなる。
空気が搾り取られる。喪名はそれをいつもと変わらないにやけた顔で見ている。
出玲は死を覚悟した。ああ、これで、おしまいだ、と。
22 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:44:16.11 ID:I0I4mDUY0
『アッーアッーアッー! 午後6時です! 定時放送の時間です!』


( ´∀`) 「……」

*(#‘‘)* 「!」


沢近がその突如として響いた大音量にぴくり、と反応する。
そしてそれは、沢近の手の力がほんの少しだけ、ゆるんだ証でもあった。


ζ(゚ー゚;ζ 「う、ああああああああああああああああああ!!」


渾身の、自らに残っている力と空気を全部使って沢近に蹴りを入れる。
その蹴りは沢近を気絶させるには至らなかったが、首にかかっていた手は離れていった。


*(#‘‘)* 「あっ! ち、ちくしょう!」

ζ(゚ー゚*ζ 「う……」


急に酸素が入ってきたせいか、頭がぱあっと白くなっていく。
ダメ。ぼやぼやしてたらまた攻撃される。
まだ、沢近の武器がなんなのかもわかっていない。
そう思っても、体は一向に言うことを聞かない。
25 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:47:34.75 ID:I0I4mDUY0
*(#‘‘)* 「殺してやる……殺してやる殺してやる」


沢近は鞄の中から手榴弾を取り出した。
なるほど、あれがあいつの武器か――出玲はぼんやりした頭で理解する。
手榴弾のピンが抜かれる。それを出玲はぼんやりと見て、把握する。
その、前に――無意識に、自分はマシンガンの引き金を引いていた。


*(;‘‘)* 「あ、ああああああああああああああああああああああああ!!」

ζ(゚ー゚*ζ 「え?」

( ´∀`) 「……ふうん。案外、やるモナ」


なんだ。なぜ、自分の目の前にいる人間は、手から血を噴き出させて悶絶しているのだ。
一瞬、出玲は理解ができなかった。
理解をしたのは、自分の右手に携えられているマシンガンから煙が出ているのを見た時だった。
27 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:50:54.83 ID:I0I4mDUY0
ζ(゚ー゚*ζ (ああ、なんだ。あたし、撃っちゃったんだ)


予想していたほど、罪の意識は無かった。
口では大きなことを言っても、実際撃つとなると少し戸惑ってしまうかもと危惧していたのだが。
そんな心配は全くと言っていいほど必要なかった。


ζ(゚ー゚*ζ 「じゃあ。バイバイ」

*(;;)* 「あっ……ちょ、待……」


そう言ってその場から離れる。
沢近の足もとには先ほどピンが抜かれた手榴弾が落ちている。
恐らく、手を撃たれた衝撃で取り落としてしまったのだろう。馬鹿な奴だ。
32 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:54:20.11 ID:I0I4mDUY0
( ´∀`) 「すごいモナー」

ζ(゚ー゚*ζ 「……何が」


そう言った矢先、ドン、という音が大きな衝撃と共に聞こえてきた。
音のした方を一瞥する。
そこには何か人ほどの大きさの黒焦げた物体があった。


( ´∀`) 「銃を撃った瞬間、顔つきが全く変わったもの」

ζ(゚ー゚*ζ 「……そんなことないわよ、同じでしょ」

( ´∀`) 「まあともかく。あの状況で手だけを狙い撃ちするなんてえぐいことするモナ」

ζ(゚ー゚*ζ 「別に」


そう言ってリストの沢近の欄にバツ印をつける。
殺した女子生徒を確認するためだ。――まだ、1人だけ。
もっと、もっと殺さなければ。……そういえば。
35 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 20:57:32.26 ID:I0I4mDUY0
ζ(゚ー゚*ζ 「あんた、さっきの放送聴いてた?」


返事は、わかりきっているが。
一応喪名に確認をしてみる。


( ´∀`) 「聞いてるわけないモナ。目の前であんなに面白いことしてたのに」

ζ(゚ー゚*ζ 「……あんた、性格悪いわよ」

( ´∀`) 「ふんふーん。モナモーナー」


まあいい。どうせ全員殺せばいいのだ。
リストをかばんに詰め、マシンガンの残り弾数を確認する。
30発のマガジンの中にはまだ20発ほど残っている。まだ取り換えの必要はなさそうだ。


ζ(゚ー゚*ζ 「さ、行くわよ」

( ´∀`) 「え、まだ休憩したいモナ」

ζ(゚ー゚*ζ 「勝手にしとけば。あたしは行くから」

( ´∀`) 「……ちぇ」
37 :第24章 「Throw Away」:2009/02/11(水) 21:00:38.73 ID:I0I4mDUY0
出玲の歩いたあとを喪名は追おうとする。
一歩を踏み出したとき、はたと何かに気づいた喪名。
黒焦げの物体に手を合わせる。


( ´∀`) 「くわばらくわばら」


そして、今度こそ歩き始める。
辺りには、焦げくさい臭いがいつまでも漂っていた。

【No18 出玲 武器:H&KMP5A3(マシンガン) 現在位置:B-7】
【No29 喪名 武器:なし 現在位置:B-7】
【No9 沢近 × 残り30名】
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