上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- --年--月--日 --:-- |
- スポンサー広告
-
-
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:41:07.73 ID:lTdAWPak0 [1/3]
いけるかなどうかな代理
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:43:44.71 ID:xkD7i7nK0 [1/24]
まとめサイト様
くるくる川 ゚ -゚) ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-297.html
オ ム ラ イ ス ttp://vipmain.sakura.ne.jp/688-top.html
あけましておめでとうございます
3 名前: ◆MsdInw62ztuy [] 投稿日:2011/01/01(土) 22:44:25.11 ID:xkD7i7nK0 [2/24]
( ^ω^)ブーンと円のようです
第七話
「にぎやかな山家」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:45:46.66 ID:wLlPA33J0
待ってた支援
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:45:58.35 ID:lTdAWPak0 [2/3]
支援するよ
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:49:04.23 ID:xkD7i7nK0 [3/24]
J( 'ー`)し「あら、この皿まだ汚いわよ」
( ФωФ)「お、本当だ。これは黄身か?落ちにくくて仕方ないな」
J( 'ー`)し「なかなか取れないわよねぇ黄身って」
森にはさわやかな風渡り、日差しも出て、今日は暖かくなりそうだった。
内藤家では老夫婦が二人で仲良く洗い物をしている。
実にほほえましい光景だったが、問題はその妻のほうがすでに死んでいるということだった。
('A`)y-~
内藤家は禁煙だったので、ドクオは外の物干し場で一服していた。
と言っても、ここはだいぶ前から使われていない。
この家は男所帯だから洗濯する物が少なく、洗濯物はすべて乾燥機行きなのだ。
だがほぼ不要となった物干し場には、いまだにポカポカと陽の光が当たっている。
まさに絶好の昼寝日和だった。
ドクオはタバコをもみ消すと、早速置いてあったゴザを引っ張ってきて横になった。
(-A-)(まったく、妙なことになったよな……)
友人は異次元に連れ去られ、死人がよみがえる。
次は何だ?大量のチュパカブラがつちのこを武器に襲ってくるのか?
うとうとしながらのこんな妄想も、さほど荒唐無稽に思えなくなってくる。
そして短いねむりの後、家の中からドクオを呼ぶ声がした。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:52:26.44 ID:xkD7i7nK0 [4/24]
J( 'ー`)し「ドクオくーん、おとーさんが呼んでるわよ~」
('A`)「はーい今いきます」
おとうさん、ロマネスクがそう呼ばれるのを聞くのは何年ぶりだろう?
彼をそう呼ぶのは、ブーンの母であるカーチャンしかいない。
('A`)(いつの正月だったかな)
その正月はブーンは家族で帰省してきて、
そこに居合わせたドクオにはリア充死ねとか思った覚えがあった。
まさか、あんな形で本当になるとは思いもよらなかったが。
お勝手から上がると、ロマネスクとカーチャンは夫婦でテレビを見ていた。
番組の中では男が銀色のスプレーを植木鉢に吹きつけている。
一体、何が楽しくてそんな事をしなくてはならないのか、ドクオには分からない。
( ФωФ)「これに汚れ加工をしてブロンズ風にするんだとさ」
J( 'ー`)し「うちの庭には似合わないわねぇ」
('A`)「園芸かなんかですか?」
J( 'ー`)し「そーそー、NHKの園芸講座よ」
( ФωФ)「今日で見るのは二回目だ」
テーブルにかけると、カーチャンがすかさず保温ポットからお茶を注いでくれた。
ども、と言いかけてドクオははっとした。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:54:32.25 ID:B47P0TkZ0 [1/11]
支援
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:55:33.91 ID:xkD7i7nK0 [5/24]
(;'A`)「触れられるんですか?物に」
J( 'ー`)し「ん?ああ触れるよ?」
カーチャンはこともなげにそう言うと、
テーブルの上に伏せてあった湯のみを両手に持って見せる。
彼女はそれをゆらゆらと左右に振って見せる。
J( 'ー`)し「えっと、ポスター…なんだっけ」
( ФωФ)「ポルターガイスト?」
J( 'ー`)し「ああそうそう」
J( '皿`)し「ポスターガイストだぞ~がおー」
(;'A`)「……」
がおーってなんだよ。
ドクオがそう言いかねていると、カーチャンはやがて黙って湯のみを元に戻した。
そして、深い溜息を吐く。
J( 'ー`)し「滑っちゃった」
( ФωФ)「うん」
J( 'ー`)し「まあ、こうして少しは触ってられるけど、わずかな間しか物に触れてらんないのよ。
せいぜい頑張っても二十秒ちょっとが限界ね~」
(;'A`)「…難儀なもんですね」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:55:36.85 ID:lTdAWPak0 [3/3]
この夫婦すごく微笑ましいよなぁ支援
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:58:59.36 ID:xkD7i7nK0 [6/24]
それから、しばらく三人でTVをみていた。
おおきなプランターに適当にいろんな花の種を蒔くと、
なんか見た目それなりに綺麗だよとか、あまり役に立たない情報ばかりだった。
……ドクオとしても、なにかを期待して見ていたわけでは無かったが。
( ФωФ)「なあ、どうせだし昼飯も食っていかないか?」
そんな時間かと時計を見てみると、もうとうにお昼を過ぎている。
('A`)「あ、じゃあすんません、いただいてきます」
J( 'ー`)し「もうだいたい用意出来てるから。
もうちょっと待ってね?」
('A`)「いやーありがとうございます」
J( 'ー`)し「あいよー」
カーチャンはよっこいせと立ち上がると、
冷蔵庫からなにかの干物を二、三枚出して焼き始める。
汁はもう出来ているようだった。
( ФωФ)「今日は君の好きな大根の味噌汁だそうだよ」
じつはさっきから味噌汁の香りがここまで漂ってきていた。そのせいで腹が減って仕方なかった。
そして魚焼き器からは、つぶつぶと魚の脂が跳ねる音がしている。
多分、秋刀魚だ。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 22:59:35.33 ID:B47P0TkZ0 [2/11]
しえん
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:02:22.90 ID:xkD7i7nK0 [7/24]
(*'A`)…グギュウ
ドクオはその匂いを嗅いでいるだけで、腹の下あたりから幸福感がはい登ってくるのを感じた。
こういうちゃんとした家庭料理を食べるのも久しぶりのことだ。
昨日は酒盛り今朝は芋と味噌汁だったから、ちょうどこういうメニューが恋しかった所だった。
( ФωФ)「えー、もしかして秋刀魚か。
カマスは?冷凍したやつがまだあったよな?」
J( 'ー`)し「年金一人分しか収入ないんだから我慢なさいな」
( ФωФ)「ちぇー」
(*'A`)「さんまの干物とか久しぶりに食うな…」
J( 'ー`)し「あ、寿司もあるよ。サンマの」
(*'A`)「おお…」
さんま寿司は隣県の名物料理で、塩漬けした秋刀魚をネタにした押し寿司だ。
ドクオはこれがやはり好物だった。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:05:21.09 ID:xkD7i7nK0 [8/24]
(#ФωФ)「さっきから我輩の嫌いな物ばかりではないか。
汁だけで食えというのか」
J( 'ー`)し「いつまでたっても口がお子様なんだから…まったく」
カーチャンは漬物の皿をちょっと乱暴にテーブルに置いて料理の方に戻った。
不満げなロマネスクは、その大根の漬物を黙々と口に運ぶ。
(#ФωФ)…ポリポリポリポリ
(*'A`)ポリポリ ア オイシイ…
ほのかな酸味と共に柚子の香りが口いっぱいに広がる。
柚子大根だ。そういえば、おばさんが昔よく出してくれたっけ。
('A`)(おばさんと一緒に柚子もいだのを思い出すな……)
ドクオ達がそうしているうちに、あれよあれよという間にカーチャンは皿を並べていく。
まあ長時間物に触れられないのだから、素早く配膳するしかないのだろう。
漬物しか置いていなかったテーブルは瞬く間に料理で埋め尽くされる。
(;'A`)(昼食ってレベルじゃねえぞ…)
J(*'ー`)し「張り切って作っちゃった」
( ФωФ)「作ったのはほとんど私だがね」
J( 'ー`)し「まあそういう事にしといてあげる」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:06:39.23 ID:B47P0TkZ0 [3/11]
しえんしえん
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:08:39.18 ID:xkD7i7nK0 [9/24]
カーチャンは妙にニコニコしている。
嬉しくてたまらないという様子だ。
ちょっと考えて、その理由に思い当たる
('A`)(…おれか)
おそらく、彼女はドクオと会えたことを喜んでいるのだ。
亡くなってからこのかた、ロマネスクとしか話をしていなかったのだ。
そういえば、とドクオは思う。
なぜ、ブーンは見えるようにしてもらっていないのだ?
J( 'ー`)し「ねえ、はやく食べないと冷めちゃうよ?」
(;'A`)「ああ、すいませんぼーっとしちゃって…」
( ФωФ)「二日酔いはまだ抜けんか、まあ無理も無いな」
そう言うと、ロマネスクは秋刀魚の背のにかぶり付いた。
('A`)「いただきます」
J( 'ー`)し「どうぞめしあがれ」
まあ、話なら後でも出来るだろう。
ドクオもロマネスクに倣い、秋刀魚に背中からかじりついた。
……なつかしい、味がした。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:12:31.64 ID:xkD7i7nK0 [10/24]
―――――――――
―――――
――
…
豪勢な昼食の後、ドクオは久しぶりにゆったりした気分でいた。
だから、もうすこしで気付かないところだったかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと外行ってくんねー」
( ФωФ)「ん」
J( 'ー`)し「きいつけて~」
見知らぬ女の子は、お勝手から庭の方に歩いて行った。
ドクオが質問する前に、ロマネスクが言う。
( ФωФ)「ここにいるのは、母さんだけじゃない」
J( 'ー`)し「あの子もなの」
(;'A`)「あの子も、って」
夫婦は窓の向こうの女の子を目で追いながら言う。
('A`)(ああ、そうか……この辺で死んだ人間なんてごろごろいるわけだし、
見えるようになったらそりゃあ頻繁に見てもおかしくはないか)
小学校に上がる前くらい、そのくらいの子供だった。
彼女は、その年齢にふさわしく元気に庭を走り回っていた。
何をするでもない、ただ走っている。たぶん、それだけで楽しい時期なのだ。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:12:33.50 ID:jvqFb94qO [1/4]
カーチャンが楽しそうな様子が可愛いけれどなんかちょっと切ないな
支援
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:14:09.92 ID:B47P0TkZ0 [4/11]
ふむぅ
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:15:28.84 ID:xkD7i7nK0 [11/24]
('A`)「まさかあの子も亡くなってるんですか?
……どこの子でしたっけ、あの子」
( ФωФ)「あれっ?きみも会ったことあると思うが……。
ああ、そうか君が会ったときはあの子はまだ赤ちゃんだったからな」
(;'A`)「…あー」
そういう年の子で、女の子でドクオが知っている子。
そんな子は知る限り、一人しかいない。
(;'A`)「まさか、デレちゃん?」
( ФωФ)「そうだ」
J( 'ー`)し「まあ分かんないわよね~」
( ФωФ)「それにツンちゃんもここにいる」
(;'A`)「ツンさんまでいるのか……」
ドクオはますます分からなくなってきた。
なぜブーンだけ仲間はずれにされているのだろう。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:18:19.02 ID:9W/2mU7mO
支援
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:18:27.86 ID:xkD7i7nK0 [12/24]
('A`)「ブーンは…あいつは知らないんですか?」
( ФωФ)「ああ」
('A`)「なぜ?」
( ФωФ)「ブーンに用意が出来ていないそうでな」
('A`)「分からないな、一番家族に会いたがってるのはあいつなんじゃ?」
ドクオは胸がむかむかしてきていた。
ブーンが苦しんでいるのをロマネスクも良く知っているはずだ。
会えるのなら、会わせてやればいいじゃないか。
ドクオはつい、詰問口調になる。
('A`)「おじさん、あいつは自殺未遂までしたんですよ?
会わせてやれるなら会わせてあげればいいのに」
( ФωФ)「私もそう思うんだがね」
「私はまだ会わない方がいいと思うんです」
突然どこからか声がしたかと思うと、
寝室につながるドアが開き、よく知る顔が現れる。
ドクオは懐かしいと思うと同時に、なにか肌寒いものを感じた。
ξ゚⊿゚)ξ「どうも、ご無沙汰してました」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:19:22.09 ID:B47P0TkZ0 [5/11]
支援
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:23:03.74 ID:xkD7i7nK0 [13/24]
ツンがドアのところからこちらに小さく会釈をした。
やはり彼女も生きている人間とまったく見分けがつかない。
だが彼女はカーチャンと違い、生前と比べて疲れているように見えた。
こちらのほうが幽霊としては正しいのだが。
(;'A`)「いやこちらこそお久しぶりです」
(;'A`)(やっぱり慣れないな)
死人が目の前に立っている。
でも、生きている人間と見た目は殆ど変わらない。
そんな人にごく普通に挨拶されると、やはりドクオは混乱してしまう。
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、びっくりしてる?」
(;'A`)「それはまあ、びっくりもするよ」
ツンがそれを聞いてニヤッとする。
ξ゚ー゚)ξ「お化けの性ってやつね。
そこまでびっくりしてもらえるなんて嬉しい」
J( 'ー`)し「私の時はもっと驚いてたよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうですか?うーん…」
('A`)(あ、そこで競うんだ)
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:26:02.03 ID:xkD7i7nK0 [14/24]
ツンがテーブルに着くと、ロマネスクが入れ替わるように立ち上がる。
彼は空になった皿を手早く重ねると、流しに持っていく。
しばらくは口を挟まないつもりなのだろう。
( ФωФ)「汚れた皿を前にして話というのもあれだな」
J( 'ー`)し「ありがとうね」
ロマネスクがその太い指で食器を洗っているのを見るのは、なかなか新鮮だった。
洗ってはゆすぎ、布巾で水を拭き取る。
動作にまったく無駄がない。ここ数年の生活で家事にもだいぶ慣れたらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「あの人、いまだに夜たまに泣くんですよ」
(;'A`)「なに?」
ぼーっとロマネスクの手元をみていたドクオにツンがいった。
ξ゚⊿゚)ξ「で、お義父さんを起こすんです。
また、夢をみたんだって言って」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちが死ぬ夢を」
(;'A`)「な」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:28:45.17 ID:B47P0TkZ0 [6/11]
むう
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:29:05.89 ID:xkD7i7nK0 [15/24]
日頃の脳天気な内藤の姿しか見ていないドクオにとって、信じられない事だった。
火事からはもう五年近くが経つ、もうある程度割り切れていると思っていた。
それに、大の大人が親を起こして泣く?
正直なところ、情けないというのがドクオの感想だった。
('A`)「そうか、あいつ……でもそうだったらなおさらツンさんが」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメです」
(;'A`)「なんで?」
ξ゚⊿゚)ξ「いま、私達あの人の前に出てくると、あの人は死ぬでしょうね」
(;'A`)「死ぬって…どういうことですか?」
ツン達が姿を現せばブーンが死ぬ?
嬉しさあまって自殺するとでも言うのか。
ますます訳が分からなくなってくる。
ξ-⊿-)ξ「いままで、あの人を見てきた末の結論です」
28 名前:訂正>>27 十六行目 私達× 私達が○[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:31:51.99 ID:xkD7i7nK0 [16/24]
ツンは固く目を閉じたまま、両手の指を目の前で組んだ。
そして、上手く言えないんですがと前置きしてから続ける。
ξ-⊿-)ξ「私たちがいなくなった直後のあの人は、
私が言うのも何ですけど死んでいるみたいでした。」
ξ-⊿-)ξ「仮住まいの布団の中で夜通し壁を見てるんですよ。
泣くでもなく何かに当たるでもなく、ぼーっと壁を見てるんです。
そんなあの人を見るのなんて初めてでしたよ」
(;'A`)「ちょっと想像できないな」
ξ゚ー゚)ξ「気持ち悪いでしょ?」
そこでツンは自虐的に笑うと、自分でお茶を注いでちょっと口をつけた。
……幽霊でも口は乾くのだろうか。
ξ゚⊿゚)ξ「それから病院通いしたりなんかしてだいぶ良くなったんです。
それでも、私たちの夢を見るんですよ彼は」
ξ゚⊿゚)ξ「それで汗ビッショリで飛び起きるんです。子供の夜驚みたいにね」
('A`)(あいつ)
たまにドクオに会うとき、内藤は非常に明るかった。
それこそ、何事もなかった頃と同じように。
だが本当は内藤の心は危うい均衡を保っているに過ぎないのだ、とドクオは悟った。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:31:52.99 ID:jvqFb94qO [2/4]
辛いなこれ
支援
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:34:19.85 ID:B47P0TkZ0 [7/11]
しえん
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:34:59.21 ID:xkD7i7nK0 [17/24]
夜、豆電球の下ではっと目を覚ます内藤の姿をドクオは想像する。
そしてロマネスクの寝床に彼を起こしに行く内藤の顔を思い浮かべる。
しかし、その顔はドクオの中で上手く像を結ばない。
ξ゚⊿゚)ξ「それを見てると私は感じるんです。
彼の心に何か溝というか、裂け目のような物が出来たみたいな……」
( ФωФ)「私にもなんとなくそれは分かるよ。
たまにそういう顔するんだ、あいつ」
('A`)「……そういう顔?」
( ФωФ)「心ここにあらずというか、放心状態というか。
とにかくぼーっとした顔だよ」
ロマネスクは最後の小鉢を洗い終え、布巾でおざなりに手を拭く。
そしてシンクのところに手をつくと、ふうと息をついた。
( ФωФ)「あーしんどかった。
ちょっと横になってくる」
J( 'ー`)し「あ、布団だけど隅のほうに避けちゃいましたよ?」
( ФωФ)「いいよ座布団並べてその上で寝るから、じゃあ」
そういうとロマネスクはフラフラと寝室の方に消えた。
昼前から食事の支度をしたり、洗いものをしていたのだ。
腰が痛い彼にとって、やはりきつかったのだ。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:37:54.88 ID:jvqFb94qO [3/4]
ドクオも何か片付けるの手伝えよ
支援
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:38:18.32 ID:xkD7i7nK0 [18/24]
J( 'ー`)し「お父さんも嬉しいのよ?ドクオ君が来てくれて」
('A`)「よかったです。
いままであんまりこれなくて申し訳ない」
ドクオは頭を軽く下げる。
ξ゚⊿゚)ξ「いや、でもしょうがないよ。
この家にもいろいろあったし」
('A`)「…うん」
ドクオはダイニングの中を見回してみる。
少し手狭な台所と、年季の入った食卓テーブル。
そして、今は亡き内藤家の面々。
J( 'ー`)し「あとはここにホライゾンがいればねえ」
お茶をすすりながらカーチャンが独りごちる。
よく見ると、二人ともまったくお茶が減っていなかった。
('A`)(ああ……)
やはり、二人はこの世の人ではないのだ。
いまさらのように、ドクオはその事を実感する。
その時、のんびりとお茶を飲んでいたツンが、ハッとして言う。
ξ;゚⊿゚)ξ「あっえーっとなに話してたっけ?」
J( 'ー`)し「あの子の心の闇と少年犯罪率の増加について」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:40:51.36 ID:B47P0TkZ0 [8/11]
しえ
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:41:24.07 ID:xkD7i7nK0 [19/24]
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、そうそうって」
ξ゚ー゚)ξ 「あんまり面白くないですよ?それ」
J( 'ー`)し「……今日はあんまり笑いが取れないね」
('A`)「心の闇かぁ」
闇、という言葉にうなづきながらツンが言った。
ξ゚⊿゚)ξ「あの人の心の闇、裂け目の奥には私たちがいるんです。
私たちがそこから出てきたら、きっとあの人はこわれてしまう」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、こんな経験ない?
欲しい欲しいと思っていたものが、苦労の末にようやく手に入ったとき、
急に楽しくなくなる。ゲームをクリアした途端に燃え尽きたみたいになる」
ξ゚⊿゚)ξ「私は思うんです。
私たちが今出ていったら、
あの人の心に同じようなことが起こるんじゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「生きるのを諦めちゃうんじゃないかって」
(;'A`)「そう、かもね」
内藤の中に渦巻くもの、誰しもが抱える闇。
繰り返す悪夢、そのただ中で内藤には何が起こっているのか。
ドクオには想像だにできない。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:43:23.68 ID:B47P0TkZ0 [9/11]
sien
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:45:14.33 ID:xkD7i7nK0 [20/24]
('A`)(俺だったら気が狂うかもな)
ドクオは思う。
内藤は普通に生活し、仕事をして生きている。
案外、内藤はタフなのかもしれない。
('A`)「いつか会える時が来るといいね」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
J( 'ー`)し「そうねぇ」
ドクオが外を見ると、相変わらず静かな光景が広がっていた。
さんさんと降り注ぐ日差し、風にそよぐ蜜柑畑。
まるで、光と風しかそこにないかのような静寂が内藤家の庭を覆っている。
J( 'ー`)し「それにしてもいいお天気ねぇ」
ξ-⊿-)ξ「ほんとに」
……そこで音をたてているのは、死者だけだった。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:48:05.29 ID:xkD7i7nK0 [21/24]
―――――――――
―――――
――
…
('A`)「じゃあ、そろそろ俺帰ります」
J( 'ー`)し「もう一晩、って訳にも行かないか。
もう社会人だものね……じゃあ気をつけて」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?七輪、昨日から出しっぱだけどいいの?」
(;'A`)「あっやべ、忘れてた。
ごめんなさい今かたします」
帰り際、ツンが出しっ放しになっている七輪を見つけてくれた。
危うく忘れていくところだ。
ドクオは慌てて庭に出て、網も洗わずに助手席の上に放りだした。
('A`)「ふーっあぶないあぶない」
これがあるといろいろ重宝する。磯で取った貝をそのまま焼いてみたり、
冬に釣りに出かけたときには暖を取ったり、ドクオは多彩な用途にこの七輪を使っている。
誰も載せる人がいないので、いつも助手席がこの七輪の定位置だ。
__
{ー_-‐.'} 「……」
('A`)(エンジンかけとくか)
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:50:36.44 ID:jvqFb94qO [4/4]
支援
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:51:29.67 ID:xkD7i7nK0 [22/24]
ドアのポケットから鍵を取り出すとエンジンを掛ける。
こんな田舎だと、盗難の心配はほぼ無い。
いや、全くないとさえ言っていい。
次にダッシュボードの携帯のことを思い出したドクオは、
そこから携帯を取り出すとろくすっぽ確認もせずにポケットに突っ込んだ。
どうせ、スパムか広告メールくらいしか来てないからだ。
('A`)「うー」
しばらくエンジンが暖まるまで暫く待つ。
田舎ベンツといえど粗略な扱いはしない。
ドクオは変なところで真面目な男だった。
('A`)(あ、そういやロマネスクさんに挨拶すんの忘れてたな。
でもまだ寝てたりして……まあやめとこう)
十分に時間をかけてから、車を出した。
ここから街に出るまでかなり急な下り坂が続く。
二日酔いの余韻と満腹感から来る眠気に苛まれながらも、ドクオは気を引き締める。
そしてすぐさま、庭から出たところの物陰から飛び出してきた何かをはねた。
((;゚A゚))「うひぇえええ!」キキーッ!
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:52:44.89 ID:B47P0TkZ0 [10/11]
シエナ
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:54:24.87 ID:xkD7i7nK0 [23/24]
なにか白いものが飛び出してきたとしか分からなかったドクオは、ブレーキを思い切り踏み込む。
鹿にしては小さい、猪にしては大きく白いその何か。
そのくらいのものにぶつかればえらいことになるが、なぜだか衝撃はこない。
せいぜい七輪が急ブレーキのせいでひっくり返ったくらいだ。
ζ(゚ー゚*ζ
混乱しているドクオの目が次に捉えたのは、
車の前から悠然と歩き去っていく女の子の後ろ姿だった。
(;'A`)「なんだよ…」
間違いなくさっき外に出て行くのを見た女の子、デレだった。
彼女が無事なのにほっと安堵すると同時に、怒りが湧いてくる。
('A`)「しつけがなってねえな、ったく」
死んでいようが死んでいまいが関係ない。
叱ってやる、子供は地域で育てるものだ。
と、ドクオは怒りに任せてお題目を心のなかで振り回す。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:56:36.74 ID:xkD7i7nK0 [24/24]
('A`)「ねえ!内藤デレちゃん!」
ζ(゚ー゚*ζ
(#'A`)「すみませーん、デレさん?
あぶないでしょ!?」
ζ(゚ー゚*ζ
('A`)…ムシカヨコノヤロウ
デレはドクオのことがみえていないような様子で、
山の急な斜面に向かって歩いて行く。
よくみると彼女はうっすら笑っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「~♪」
(;'A`)「おいおい…」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/01(土) 23:57:32.44 ID:B47P0TkZ0 [11/11]
しえしえ
45 名前: ◆MsdInw62ztuy [] 投稿日:2011/01/02(日) 00:01:00.57 ID:rlt7WuYZ0 [1/18]
なにやら鼻歌を歌いながら少女はどんどん山に入っていく。
どうも様子が変だった。声が聞こえないわけではないはずなのだが。
(;'A`)「こらっもう戻ってきなさい!それ以上は危ないから!」
ドクオは急いで後を追って手を掴もうとするが、あえなくすり抜ける。
ああ、でもよく考えたら幽霊にあぶねえも糞もないか。
(;'A`)(なんつーか俺の存在ごと無視されてるみたいで、すごくむかつくなこれ)
落ち葉で滑る足場だったが、何とかデレの前に出ることが出来た。
ドクオは試しに進路に立ちふさがってみたが、デレはドクオの体をすり抜けて先に進んでいく。
('A`)… ...ζ*゚)~♪
('A`)「……」
('A`)「いま一瞬俺の下半身を女の子が通過しました。
つまり、彼女の体内におれのち~中略~これは脱童貞とは言えないだろうか」
やけくそになって最低なシモネタを飛ばしてみるが、反応は全くない。
しかし、放っておくことも出来ない。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:02:38.63 ID:+FjYI8sA0 [1/8]
支援
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:04:24.13 ID:rlt7WuYZ0 [2/20]
('A`)(しゃあねえ、ちょっと後に着いてってみるか…その前に)
ドクオは携帯を取り出すと内藤家の電話にかける。
とりあえず誰かに応援に来てもらわないとどうしようも無い。
二回のコールで、ロマネスクが出てくれた。
( ФωФ)『はいもしもし、内藤ですが』
('A`)「あ、おじさん?いま帰るところなんだけど、
なんかデレちゃんが山の方に行っちゃって…」
(;ФωФ)『なに!?山に?どのへんだ?』
山という単語を聞き、ロマネスクの声がにわかに緊張を帯びる。
(;'A`)「道路に出るところの脇です。
でも、結構来ちゃったな…20メートルくらい奥にいます」
(;ФωФ)『マズイな…デレのようすは?』
('A`)「……俺のことは完全無視です」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:07:35.93 ID:rlt7WuYZ0 [3/20]
(;ФωФ)『分かったすぐ行く!
すまんがなるべく大きな声で声を掛け続けてくれ!
とりあえず遅らせられるだろう…』
('A`)「え…?」
(;ФωФ)『なんでもない!
ドクオくん!とにかく大声でしゃべり続けるんだ』
('A`)「わかりましたけど、なに(ry
そこで電話が切られた。ロマネスクはかなり焦っている。
もしかして相当やばいのか、これは?
――――ドクオは次第に不安になったきた。
とにかく、言われるままデレに声を掛け続ける。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:10:03.39 ID:rlt7WuYZ0 [4/18]
(;'A`)「で、デレちゃん可愛いね!」
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)「おうちに帰らないとお母さんが心配するよ!」
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)「ちんこちんこ!おまんちーん!」
. _, ,_
ζ(゚ー゚*ζ
(;'A`)(お!)
デレの足取りが少し重くなる。
子供はシモネタが好きというドクオのアイデアは、見事に功を奏した。
彼女の反応は予想とは違ったが。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:13:13.47 ID:dhj0Y420O [1/4]
おいwww
支援
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:13:59.78 ID:+FjYI8sA0 [2/8]
うむ
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:16:03.18 ID:rlt7WuYZ0 [5/20]
('A`)(だが、止まっちゃくれねえか……じゃあもっとどぎついのを)
秘蔵のシモを解き放とうとしたドクオだったが、結局何も言えなかった。
ふと気がつくと、目の前に白い壁のようなものが立ちはだかっている。
('A`)「なんだあれ?」
古い漆喰のような質感の壁だった。
その壁の前で、デレはピタリと動きを止める。
よくみると、周囲には古い生活用品が散らばっている。
('A`)「家かなんかの跡かな?」
ζ(゚ー゚*ζ
デレに質問してみるが、答えは帰ってこない。
その場を、木々がざわめく音が支配する。
あれ、こんなに風吹いてたっけか?
ドクオは上を見て、風の強さを確認しようとした。
('A`)「…あ」
そこに木々などなかった。あったのは、顔、顔、顔。
何かの模様のような、舌の表面の突起を思わせる、無数の顔だった。
いつの間にか、その顔の群れがドクオ達の周りをドーム状に取り囲んでいる。
(;゚A゚)「――うわ」
ぞくり、全身に鳥肌がたつのを感じる。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:18:19.83 ID:dhj0Y420O [2/4]
うわ、こえぇ…
支援
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:19:54.06 ID:rlt7WuYZ0 [6/18]
(;゚A゚)「な……なんだよこれは」
木々のさざめきは、聞いたことのない音に取って変わられ、
頬に生暖かい吐息が吹きつけてくる。
それを感じた瞬間、全身の毛という毛が逆だった。
状況はよくわからなかったが、恐怖がドクオの全身を支配した。
顔の一つに目がいく。
その顔は口を半開きにし歯を周期的に鳴らしていた。
カツン、カツン、カツン……と。
(;'A`)「!」
さっきからしている妙な音の正体に気が付き、ドクオは無意識に耳を塞ぐ。
(;'A`)(……デレちゃん!)
デレの方を見る。
さっきと変わらず、壁の前に立って微動だにしない。
何かを待っているみたいにじっと壁の一点を見つめている。
(;'A`)「やべ、詰んだ」
逃げようにも周りは隙間なく顔に覆われている。
攻撃を仕掛けるという考えがちらりと頭をかすめるが、それらに触れることを想像してやめた。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:22:11.41 ID:jmnDQ5uv0 [1/2]
しえん
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:23:13.22 ID:rlt7WuYZ0 [7/20]
(;'A`)「くそ…どうすりゃいいんだ」
いくら考えても脱出するすべはないように思えた。
360度上下左右はすべて、人間の顔に覆われている。
じゃあ、穴でも掘るか。
ともおもったが地面の中にもあいつらがいないとも限らない。
……ロマネスクはすでにこちらに向かっているから、なんとかなるかもしれない。
携帯を取り出して時間を確認する。
14:56。ロマネスクに連絡してから五分ほど経っていた。
いつもの休日なら家でけだるくミヤネ屋でも見ている時間だ。
(;'A`)「なんでこんなとこ来たんだお前は……」
ζ(゚ー゚*ζ
デレはドクオの足元で、いまだ壁を見つめ続けている。
まったく、なんだっていうんだ。
ドクオは彼女の横顔を見て小さく溜息をつく。
可愛い幼女といっしょだけど全然嬉しくない。
(;'A`)「……そうだ」
ドクオはまた携帯をひらくとカメラを起動した。
顔の群れに向かって、撮影ボタンを押すとその写真のプレビューを見る。
案の定、何も写っていない。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:24:14.74 ID:+FjYI8sA0 [3/7]
支援だ
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:25:28.25 ID:rlt7WuYZ0 [8/18]
('A`)「……おお」
目の前の光景は、携帯には普通の山に見えるらしい。
だからといって、目の前で蠢いているものを突破して帰る勇気はなかった。
('A`)「……とりあえずvipでも見てるか」
すこし精神の安定を取り戻したドクオは、ネットに繋いでみる。
画面にグロ画像が広がるとか、画面から貞子が飛び出してくるとかいうこともない。
ごくごく穏便に行きつけの掲示板が表示された。
ざまあ見ろ、これが文明の利器ってやつだ。
そう思って一番に近くにあった顔の一つに笑いかけてやる。
( ゚д゚ )
('A`)「やっぱこっちみんなキメエ」
若い男の顔だった。目がカッと見開かれているのを見てまた気分が悪くなる。
精悍な顔立ちとも言えなくはないが、
上下を老女の顔に、横を子どもの顔にはさまれたその顔は不気味でしか無い。
( ゚д゚ )ぐごぎぎ
('A`)「……なんだ?」
急に男の顔が歯ぎしりを始める。
それに反応して、男の顔を中心に歯ぎしりが群れ全体に広がる。
ギリギリギリギリギリギリ、とまるで大量のセミが鳴いているような轟音だった。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:27:38.62 ID:+FjYI8sA0 [4/7]
ふむ…
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:28:45.03 ID:rlt7WuYZ0 [9/18]
(;'A`)「……う」
驟雨のように歯をこすり合わせる音があらゆる方向から降り注ぐ。
ドクオは男の顔から目を離さず、ゆっくりと後ずさった。
これはなにかよくないことの兆候としか思えない。
( ゚д゚ )ぎぎごぎぎ
(;'A`)「ちくしょー!いいかげんにしろ!
もう俺はちびるぞ!頼むからやめろ!」
( ゚/ /д゚ )ギッ!
(;'A`)「うおっ!」
ドクオの声に反応するように、目の前で男の顔がまっぷたつに裂けそこから腕が一本突き出される。
分断された男の頭だったものがドームの内側に叩き落されると、そこに開いた穴からしゃがれた男の声がした。
「おい!ドクオくん!無事か!?」
(;'A`)「おじさん!」
声の主はロマネスクだった。
さっきまで男の顔があった位置から彼の顔が覗いている。
( ФωФ)「おそくなってすまん!」
そういった彼は、見覚えのあるナイフを手近にあった顔に叩きつけた。
刃渡り5センチほどのナイフだったが、刃が触れた途端にその顔は唐竹割りにされる。
たぶん、さっき仏間で見せられたロマネスクが「マヨイガ」で手に入れた品だろう。
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:31:32.96 ID:dhj0Y420O [3/4]
おお、ロマがいるだけでこの安心感
支援
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:31:48.13 ID:rlt7WuYZ0 [10/20]
(#ФωФ)「邪魔だ!どかんか!」
そうして隙間を作ったロマネスクはものの30秒ほどでドームの中に入ってきた。
ロマネスクをここまで頼もしく感じるのは久しぶりだった。
ドクオは安心感でめまいを起こしながらも、ロマネスクの元に歩み寄る。
(;'A`)「おじさん……これは一体なんなんです?」
( ФωФ)「デレは?」
(;'A`)「え?あの壁のところに」
( ФωФ)「分かった!そこにいてくれ」
ロマネスクはデレのもとに駆け寄ると、様子を調べ始めた。
デレの頭のところに触れると、ロマネスクはぎょっとして手を引っ込めた。
(;'A`)「大丈夫ですか!?」
( ФωФ)「……いや大したことはない」
短くそう言うとロマネスクはデレの頭に手を伸ばし、
髪の毛を一本つまんで引っ張った。
デレのクセッ毛とは似ても似つかないまっすぐで太い毛。
大量の顔に隙間なく囲まれたために生まれた薄闇の中、
それがぼんやりと光を帯びているのが分かる。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:33:59.69 ID:rlt7WuYZ0 [11/18]
( ФωФ)「ふっ!」
気合をこめロマネスクがその毛を断ち切ると、
デレが糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
だが、そのデレをロマネスクは見もしない。
( ФωФ)「!」
右手に持った髪の毛を軽く引っ張ると、どこかに向かって歩き出す。
どこかにその一筋の髪の毛が繋がっているようなふうだった。
(;'A`)「なにしてるんです?もう切ったでしょ?」
( ФωФ)「これはデレから生えてたんじゃない」
(;'A`)「じゃあなにから……」
( ФωФ)「そこか!」
ロマネスクが思い切り右手を引くと、
地面に放置されていた味噌桶か何かがひっくり返り、なにかが飛び出してくる。
いや、正確にはロマネスクに引っ張られているのだ。
( ФωФ)「うむ…」
(;'A`)「なんだよこれ…」
ロマネスクの足元に、こぶし大くらいの黒い毛の塊のようなものが転がり出てくる。
一瞬、ゴミか何かかとも思ったが、キイキイと猿のような鳴き声を発している。
そしてよくみると、生えている毛の全てがうぞうぞと蠢いていた。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:35:14.65 ID:+FjYI8sA0 [5/8]
ぞくっとした
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:36:46.11 ID:jmnDQ5uv0 [2/2]
支援
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:37:03.77 ID:dhj0Y420O [4/4]
ぎょえぇ…
支援
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:38:02.08 ID:rlt7WuYZ0 [12/20]
( ФωФ)「狸めが…うちの孫を化かしおって」
(;'A`)「……」
ドクオはまじまじとその謎の物体を観察した。
毛の隙間から見える、茶色がかった光沢のある黒い目。
それがいくつも丸い体に不規則に並び、ぎょろぎょろと周りを見渡していた。
突然、その何かは一点を凝視する。
そして……。
(#ФωФ)「消えろ!」
「―――――――――!!!!!」
ロマネスクは何のためらいもなく、思い切り足で黒い何かを踏みつけた。
女とも、男とも、子供ともつかないけたたましい悲鳴が響き渡る。
ドクオが次に感じたのは猛烈な悪臭、動物の死体が腐ったような甘ったるい匂いだった。
――黒いものの死に呼応するように、ドクオたちを取り囲んでいる顔という顔があんぐりと口を開けた。
そして顔たちはグルグルと回転しながら浮かび上がり、渦をまいてどこへともなく飛んでいく。
ドクオはその様子を呆けたように見ていた。
(;'A`)「…」
( ФωФ)「……ふう」
しばらく、誰も何も言わなかった。
三人の真上で鳶が鳴く。
それを聞いたドクオはようやく現実に帰ってきたと実感する。
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:38:08.56 ID:kz9XyVQJO
けうけげんか?
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/02(日) 00:39:55.78 ID:+FjYI8sA0 [6/8]
私怨じゃ
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:41:21.55 ID:rlt7WuYZ0 [13/20]
ζ(--*ζ
( ФωФ)「……さ、帰ろう」
('A`)「……はい」
潰れた何かに枯葉を被せたあとで、
ロマネスクはデレを抱き抱えてどっこいしょと立ち上がる。
なんでおじさんはすり抜けないのか、麻痺したようなドクオの頭に疑問が浮かぶ。
( ФωФ)「その前に、これに触ってくれ」
ロマネスクは手を出すといままで握っていたものを出した。
家でドクオが見た、錆びた一本の釘だった。
もう、なぜそうするのべきなのか聞く余裕はドクオにない。
人差し指の先で軽く釘の頭に触れた。
ζ(--*ζ
ζ(--:;.:...
:;....::;.:. :::;.. .....
('A`)「……おお」
目の前でデレの姿が消えていく。
その姿は次第に薄くなり、数秒で完全に見えなくなる。
なるほど、『見える』状態を解除するにはもう一回触ればいいわけか。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:44:17.35 ID:rlt7WuYZ0 [14/20]
( ФωФ)「どうだ?」
(;'A`)「もう見えなくなりました」
( ФωФ)「よし、じゃあ行こうか」
透明なデレを抱え、二人は山を降りていく。
ロマネスクは足腰が弱っている割に、
かなりの勢いで歩くのでドクオはついていくのがやっとだった。
(;'A`)「おじさん、あれは何だったんです?」
( ФωФ)「あれとは?」
(;'A`)「あれ全部ですよ!顔とか!黒い毛の塊みたいなのとか!」
落ち着いた様子のロマネスクに苛立ったドクオは声を荒げる。
ドクオには、なぜ彼がそんなに落ち着いていられるのか理解できなかった。
( ФωФ)「……君にはそう見えたのか?」
('A`)「え?」
ロマネスクの言葉に、肌が粟立つのを感じた。
じゃあ他の何に見えたっていうんだ。
凍りつくドクオをよそに、ロマネスクは続ける。
( ФωФ)「あれは悪いものだ。それもかなりたちが悪い。」
( ФωФ)「狸とか狐みたいなもんだよ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:47:11.71 ID:rlt7WuYZ0 [15/20]
('A`)「狐って……獣っぽい要素ほとんど無かったですけど」
狐というと狐娘とか、不純なものしかドクオには思い浮かばない。
( ФωФ)「そうだな、あえて言うなら妖怪だな。あいつらは」
そう言うとロマネスクはデレを抱え直す。
と言っても、ドクオにはパントマイムのようにしか見えないが。
( ФωФ)「いつもあいつらは山にいる。
人間の霊魂を吸いとってどんどんでかくなるんだ。
近くに来た人間を取り殺したり、浮遊霊を取り込んだりして」
( ФωФ)「まあしかし山からは出てこれないようだがね」
とりあえず、今日の夜あらためて襲われる心配はなさそうだ。
ドクオはとにかくほっとした。
( ФωФ)「取り込まれたら最後、あれの仲間になる。
もう不幸はたくさんだ、この子にもツンちゃんにも」
( ФωФ)「それから私にもな」
内藤もひどい目に会ってきたが、ロマネスクもまた辛かったはずだ。
初孫と嫁に先立たれ、そのすぐ後に妻を亡くしたのだ。
彼らの存在を身近に感じられるだけ彼は幸運なのかもしれない。
('A`)(でも、目の前の人たちは死んでるんだって感じるたびに……)
ドクオはロマネスクを見る。前を歩く彼の表情を伺うことはできない。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:49:45.02 ID:rlt7WuYZ0 [16/20]
その時、さっと視界が開ける。
さっきデレが登っていた斜面の上に出たようだった。
眼下にはドクオの軽トラが降りたときそのままになっているのが見える。
( ФωФ)「じゃあ、気をつけてな。
迷惑を掛けてすまなかった」
('A`)「いえ……じゃあまた今度」
( ФωФ)「うむ」
それだけ言うと、ロマネスクは母屋に向かって歩いて行く。
その姿を、ドクオはトラックの荷台に寄りかかって見ていた。
('A`)「……」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:50:13.55 ID:ratMdnQ6O
シエンヌ
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:51:14.58 ID:rlt7WuYZ0 [17/20]
庭の中ほどまできたロマネスクが、腕の中を見て微笑むのが見える。
たぶん、デレが起きたのだろう。
……それを見届けたドクオは、運転席に座ってエンジンをかけ直す。
(*ФωФ)
彼は、きっと幸せなのだ。
家族に囲まれて。
('A`)(ちくしょう…車の中が灰だらけだ)
ひっくり返った七輪を元に戻すと、小さく溜息をつく。
解決すべき問題はあるが、とにかく今は日常に帰ろう。
ドクオはそっとアクセルを踏むと、街に向かって車を走らせた。
……今度は何も飛び出してはこない。
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:51:34.40 ID:+FjYI8sA0 [7/8]
しえーん
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:51:55.86 ID:rlt7WuYZ0 [18/20]
第七話 おわり
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:56:31.13 ID:+FjYI8sA0 [8/8]
乙!
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 00:57:56.32 ID:rlt7WuYZ0 [19/20]
支援ありがとうございました。
なにかあればお寄せいただければ幸いです。
>>68
山の中にいる狐狸の一種ですね。
ていうかけうけげんでググった画像が怖かった…。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 01:01:18.01 ID:TFgQ3flmO
おつんつん
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 01:01:18.92 ID:iZGnWLJr0
おつ!
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 01:03:26.10 ID:UP/NoWuXO
おつですゆ
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/02(日) 01:09:17.37 ID:rlt7WuYZ0 [20/20]
あ、そうだ。
876 名前: 【吉】 [] 投稿日:2011/01/01(土) 00:47:02.36 ID:xkD7i7nK0 [2/9]
よーし俺も便乗
吉以上なら今日現行投下
これで約束は果たしたぜ!
それでは皆様おやすみなさい…
スポンサーサイト
- 2011年01月02日 01:12 |
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
365 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 00:58:50.19 ID:tJS9rtk90 [2/24]
夕立が去ったあとの森は、しっとりと湿っている。
私はその森の木の上に座し、雨の香りを残す空気を味わうのを日課としていた。
やはり、ここから見る風景はいつ見ても飽きない。
( ゚∋゚)チュンチュン
( ^ω^)「天狗様、またここにいらっしゃったのですかお」
( ゚∋゚)チュン?
森に住む猿が、いつの間にか梢までやってきていた。
( ^ω^)「また、面倒事にございますお」
( ゚∋゚)チュチュン?
( ^ω^)「はい…ばあ猪と来たばかりのムジナの若造が」
( ゚∋゚)チュン…
( ^ω^)「お願いしますお…このままでは死者が…」
( ゚∋゚)…
なにやら、また住人同士の争いが始まったらしい。
……今年に入ってから一体何度こんな事があっただろうか。
バッサバッサw( ゚∋゚)wクルポッポー!
とにかく、いそいでムジナの巣へと向かう。間に合えばいいのだが。
366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:01:28.08 ID:BFZecXgMO [3/21]
支援
367 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:03:19.26 ID:tJS9rtk90 [3/24]
巣の上空まで来ると、ある臭いが下から濃厚に放たれていた。
それに混じって、猪の血の匂いも。
J(; ー )し「く…」
('A`)「ババアめが、おれに牙を剥いたのが運の尽きであったな」
( ゚∋゚)…チュン
(;'A`)「ぬ…天狗殿、何用かな?
見ての通り、今は取り込んでいるのだが」
ムジナが、穴に落ちた猪を見下ろしている。
巣穴として掘っていたものを、即席の落とし穴に仕立てたのだろう。
猪の足からは尖った木の根か何かで傷つけたのか、勢い良く血が流れていた。
( ゚∋゚)…チュン?
('A`)「はて、何のことやら私はそんなものは…」
あくまでシラを切るムジナだったが、この臭いが現の証拠である。
こやつめは――――――。
( ゚∋゚)「……下手な嘘はつかぬほうがよいぞムジナよ。
この臭いは一里の先から嗅ぎとっておった」
('A`)「……」
( ゚∋゚)「貴様、人間をさらってきたな?」
368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:04:13.79 ID:BFZecXgMO [4/21]
おぉ、喋った
369 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:06:38.60 ID:tJS9rtk90 [4/24]
( ゚∋゚)「はじめは子どもが迷い込んだのかと探してみたが、
森の境に履物が落ちていたきり。
てっきりそこで帰ったかと思うていたが……」
私は、言いながら扇を取り出し、臭いの元ににじり寄った。
( ゚∋゚)「まさか、我らの懐まで来ていたとはな」
扇を一振り。
ふわり、とそよ風がその場に吹いた。
まだ若いムジナの術などこの程度で消し飛ぶ。
(;'A`)「あっ!」
お粗末な幻術は色水が吹き流されるようにして掻き消え、
その場に隠されていたものが露になった。
lw´ _ ノv
(;'A`)「な、ばかな!」
( ゚∋゚)「人間や並の獣に通じても私には効かん。
……さて、新参者の分際で面倒事を起こした罪は重いぞ」
(#'A`) 「貴様ぁ…おれの獲物を……鳥風情が横取りする気か!?」
(#゚∋゚)ヂュン?
(;'A`) 「…ひ」
370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:08:14.72 ID:BFZecXgMO [5/21]
ドックンそれ死亡フラグや
371 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:11:03.01 ID:tJS9rtk90 [5/24]
(#゚∋゚)「もう我慢ならん……貴様のような愚かな獣がこの山でどうなるか。
とくと……思い知るがいい」
(;'A`) 「…なにをs)ry
(#゚∋゚)コッケコッコー!!!!!!!
腰に差した大団扇を、下から上にぶうんと振り上げる。
瞬間的に凄まじい風が吹き、ムジナのちいさな体を空高くに打ち上げる。
(;゚A゚)「き、きいっ」
私は瞬時に、落ちゆくムジナのところに飛ぶ。
無論、助けるためではない。
(;'A`)「た…たすけ」
(#゚∋゚)「そおい!」
(゚A゚)「ぎいっ!?」
今度は奴の横っ腹を直接団扇でぶん殴ってやる。
その一撃で再び起きた強風で、なすすべなくムジナはどこかに吹き飛ばされていった。
―――――――きいいいいいいいいいいいいっ。
……飛ばされていくムジナの声は次第にちいさくなり、やがてふっつりと途絶えた。
372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:14:34.10 ID:T5dAEWX4O [3/4]
クックル△支援
373 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:16:11.00 ID:tJS9rtk90 [6/24]
( ゚∋゚)シュタ
私が着地した一瞬あと、風で吹き上げられた雨露が遅れてその場に降り注いだ。
そして暮れかけの夕日の下、つかの間の虹が森を七色に彩る。
……やはり無礼な獣は、こうするに限る。
J(; ー )し「うー、天狗殿…余韻に浸ってないで助けてくだされい」
( ゚∋゚)「おう、すまぬなババ殿」
私は老いた猪の巨体をどうにかこうにか穴から引き上げると、
その重みに思わずほう、と息を吐いた。
(*゚∋゚)(お…今のはフクロウのようだったな。
……鳥の鳴きまねがまたひとつ増えた)
J(; ー )し「うう…」
(;゚∋゚)(おっと、いかんいかん)
いそいで足に腰から下げた手製の膏薬を塗ってやると、
猪の顔から苦悶が徐々に抜けていった。
仕上げに傷口を布で拭きとってやると、もう傷は跡形もなく消えている。
J(;'ー`)し「へえ…へえ…危うくあの若ムジナに殺されるところだったわい」
猪は流石ににまだ動けないらしく、土の上で荒い息をしている。
猪が先程までいた穴を覗くと、そこにはかなりの量の血が溜まっていた。
374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:18:32.38 ID:BFZecXgMO [6/21]
支援ぬ
375 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:20:12.33 ID:tJS9rtk90 [7/24]
( ゚∋゚)「足は折れていないか?」
J(;'ー`)し「大丈夫…ですがしばらく動けそうにありませぬ」
( ゚∋゚)「そうか……とにかく私はこの子を里まで送って行く。
猿!そこにいるのだろう?」
私が呼ぶと、草つきの中から猿が音もなく現れる。
( ^ω^)「……なんでございましょうかお」
( ゚∋゚)「熊には私から手を出さぬように言っておいてあるのだが…。
念のためだ、ババ殿が歩けるようになるまで見張っておけ。
あやつは最近、食うものに困っているようだからな」
( ^ω^)「承知しましたお」
J(;'ー`)し「……猿に守られるほど衰えてはおらぬ!
と、言いたいところだがそういう訳にもいかぬのう」
( ^ω^)「おっお、僕のつぶての腕は山一番だお。
安心して横になっててくれお~」
( ゚∋゚)「よし頼んだぞ、猿」
やおら立ち上がった私が背を向けたとき、ぼやくように猪が呟く。
J( 'ー`)し「しかし……いつまでこんな事を続けるのですか?
かつては、我らの土地に入った人間は勝手に喰う。
……というのが流儀であったはず」
376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:21:02.46 ID:BFZecXgMO [7/21]
こえぇ
377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:24:51.50 ID:tJS9rtk90 [8/24]
J( 'ー`)し「人間の匂いがしたときは久方ぶりにあなたの目の届かぬところで、
人間を思う存分喰えると浮かれておったのですが…。
まったく骨折り損のくたびれ儲けですわ」
そういうと猪は溜息のつもりなのかフゴフゴと鼻を鳴らして見せた。
その様子が滑稽で、思わず吹き出しそうになる。
( ゚∋゚)「時代は変わったのだよババ殿。
見境なく人を襲えば鉄砲で撃たれる」
( ゚∋゚) 「子どもがいなくなればすぐさま山狩りが始まる。
そして犬が放たれ、うりぼうたちがその爪に引き裂かれる」
J(;'ー`)し「それはそうなのですが…」
( ゚∋゚)「穏便に事を済ますのが、我々にとっては一番なのだよ」
J( 'ー`)し「……そうですかなあ」
猪が不満げに鼻を鳴らす音を背後に聞きながら、
私は女の子を抱えて山と里の境まで歩き出した。
378 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:29:41.05 ID:tJS9rtk90 [9/24]
―――――――――
―――――
――
…
目を覚ますと、赤茶けた天井が目の前にある。
周りには見覚えがあった、お寺の庫裡だ。
妙にグラグラする頭を振ると、余計に気分が悪くなった。
( ゚д゚ )「おお、気がついたか?」
lw´‐ _‐ノv「だれ?このハゲ」
( ゚д゚ ) 「誰って…この寺の住職じゃ。
見れば分かるじゃろ?」
lw´‐ _‐ノv「…でどうして私はここに?
誘拐して写真とってネット上に流すの?」
(;゚д゚ ) 「はあ?なんじゃそれは?
奇っ怪なことを言う子じゃのう」
老人をからかうのは楽しいものだ。
lw´‐ _‐ノv「じょうだんだよ…で私はどうしてここに?」
( ゚д゚ )「お前さんは石段のところで倒れておったんじゃ。
あそこで一体何をしていたんじゃ?」
lw´;‐ _‐ノv「え…石段のところ?」
379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:32:22.62 ID:BFZecXgMO [8/21]
見知らぬ人をハゲ呼ばわりwwwwさすがシュー
380 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:32:31.74 ID:tJS9rtk90 [10/24]
わたしはさっきまで家の裏で遊んでいて、それから。
……それから?
そういえば、よく覚えていない。
lw´‐ _‐ノv「家の裏で遊んでたら、森のほうから優しい声がしたの。
それで、そっちの方を見たら気が遠くなって」
( ゚д゚ )「おお、狢か何かに化かされたのかの?
しかし、この辺じゃあもう何十年もそんな事は起きとらんが」
lw´‐ _‐ノv「非科学的だね」
( ゚д゚ )「そういうもので割り切れんものもある」
カッカと笑うと、お坊さんは袂からいくつか飴を出して私の手に乗せた。
( ゚д゚ )「この飴もそういうものの一つじゃ、なめてみな」
lw´‐ _‐ノv「飴常備とかおばあちゃんかよ。
それともロリコン?」
そう言いつつも、わたしはその飴を口の中に放り込んだ。
見かけはべっこう飴のようだったが、
口に入れると果物のような匂いがふんわりと口の中に広がる。
lw´*‐ _‐ノv「うまいな」
でも、なんだろうこの不思議な味は。
私はこんなにいい匂いのする果物を、私は知らない。
381 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:35:28.34 ID:tJS9rtk90 [11/24]
( ゚д゚ )「そうじゃろう?気分もだいぶ良くなってきたんじゃないか?」
lw´*‐ _‐ノv「確かに」
そういえば頭痛が消えている。
さっきまで吐き気まで催していたのに。
さらになめていると手足にも力が戻ってきた。
( ゚д゚ )「そういう飴なんじゃよ。
さ、もうお帰り、気をつけてな」
lw´‐ _‐ノv「うん」
立ち上がって、庫裡の戸を開けるともう日は落ちかけていた。
早く帰らないと、お母さんに叱られちゃう。
もう一度、お坊さんの方を振り返る。
お礼を言おうと思ったのだ。
lw´;‐ _‐ノv「あれ?」
お坊さんはいつの間にかいなくなっている。
明かりもいつの間にか消えていた。
ただ奥に下がったにしては早すぎる。
lw´‐ _‐ノv「……へんなの」
とにかく、わたしは急いで家に帰ることにした。
またムジナに化かされるのも嫌だった。
382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:38:20.14 ID:BFZecXgMO [9/21]
天狗様カッコいい
383 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:38:40.87 ID:tJS9rtk90 [12/24]
その時、遠くの方に見える山からぽおんと躍り上がったのがのが目に入った。
そのなにかは人の形をしていて、さらに向こうの山のほうへと飛んでいった。
おばあちゃんから聞かされた、天狗の話を思い出す。
lw´‐ _‐ノv「あ…」
迷った人を里まで送り届け、森を荒らすものをやっつける。
そんな山に住む、心優しい天狗さまのおはなし。
lw´*‐ _‐ノv「…天狗様か」
夕立の残していった水たまりを避けながら私は走った。
おねえちゃん達に自慢してやるのだ。
……天狗様を見たんだと。
388 名前:(;゚∋゚)「猿っ貴様ぁ!」(^ω^;)「その猿とはちがいますお!」[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:55:18.23 ID:tJS9rtk90 [13/24]
―――――――――
―――――
――
…
(メ゚∋゚)…チュン
木の上から子どもが走り去っていくのを見届けた私は、
ぶるりと体を震わせて羽についた水滴を落とす。
山から山へ飛んだ時、着地に失敗したのだ。
(メ゚∋゚)(…天狗も頭から木に突っ込む)
懐から紙を取り出すと短くそう書き付けた。
そこに、猿がやってくる。
(;^ω^)「天狗様、猪は無事に帰りましたお」
ってずぶ濡れでいらっしゃるのはどうしてですか?」
(メ゚∋゚)「……気にしてくれるな」
ほう、とさっき習得したフクロウの鳴きまねをしてみるが、
あまり上手くはなかった。
ふと猿が、木の上からの眺めを見て驚いたように言う。
(*^ω^)「おお…ここからだと人里が良く見えますおね。
なかなか美しいものですお」
( ゚∋゚)…チュン
392 名前:黄昏の天狗のようです[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:58:18.48 ID:tJS9rtk90 [14/24]
人里にかかっていた最後の夕日が山に遮られ消えるまで、
我々はじっとその様子を見ていた。
( ゚∋゚)「私は昔、人間だったことがあってな」
(;^ω^)「へ?」
( ゚∋゚)「夕方、こうして里の様子を見ていると思い出すんだ。
あたたかな夕餉、そこに集まる家族。
何もかもが懐かしい……。
人間でなくなって百年近くになるのにな」
明かりが灯りはじめた里から、団欒の音が風に乗って聞こえてくる。
……この気持ちはなんというのだろうか。
郷愁、哀惜、孤独――うまい言葉は見つからない。
( ゚∋゚)「ご苦労だった。
お前はもう帰れ」
( ^ω^)「天狗様は……?」
( ゚∋゚)「私はもう少しここにいる」
( ^ω^)「……はい、では失礼いたしますお」
( ゚∋゚)チュン
猿がと木から降りて行くと、
木の上には僅かな虫たちと私だけになる。
395 名前:>>389いこうか[] 投稿日:2010/12/14(火) 02:03:56.16 ID:tJS9rtk90 [15/24]
そうすると、里の音がより鮮明に耳に入ってくる。
……どうやらあの妙な子供は、無事に家に帰りついたらしい。
興奮した様子で、私のことを家の者に話している。
( ゚∋゚)…
家族のうちほとんどが子供の言う事を信じていなかったが、
一人だけ信じたものがいた。子供の祖母だった。
「……わたしも会ったんですよ、その昔にね」
「……山で迷った私を助けてくれて、お土産までくれたのよ。
ふしぎな味のする飴で……」
( ゚∋゚)チュン
今日は、風が体に染み込むようだ。
黄昏に吹く風の中、私は静かに目を閉じると少し眠ることにした。
幸せな夢が見れるといい、そう願いながら。
396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/14(火) 02:05:39.31 ID:tJS9rtk90 [16/24]
おわり
珍しく楽しくさらさら書けた作品。
……現行で詰まっている時ほど書けちゃう不思議。
- 2010年12月30日 04:15 |
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[代理] 投稿日:2010/12/10(金) 22:50:49.76 ID:KOPlorEUO
今回の投下には、一部グロテスクな表現が含まれています。
3 名前: ◆MsdInw62ztuy [] 投稿日:2010/12/10(金) 22:53:47.42 ID:uFP+vrDb0 [1/22]
まとめサイト様
くるくる川 ゚ -゚) ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-297.html(更新停止中?)
オ ム ラ イ ス ttp://vipmain.sakura.ne.jp/688-top.html
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 22:54:28.88 ID:uFP+vrDb0 [2/22]
ブーンと円のようです
第六話
「あいのこ」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 22:54:52.18 ID:JfcrapKAO
待ってた!
支援するよ
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 22:56:43.81 ID:uFP+vrDb0 [3/22]
女の子と夕暮れの海を眺める。
残念なことにロマンチックな雰囲気ではない。
目の前には濁りきった海、そしてこの上なく生臭い潮風。
僕はいい加減正常な世界に戻りたくなってきていた。
(;^ω^)(それにしても嫌な匂いだお。
生臭いというか獣臭いというか、なんの匂いなんだお…?)
ノパ⊿゚)「あなたはこの匂いを知っているはずだよ」
(;^ω^)「…やっと口を聞いてくれたおね」
っていうか待てお、まだ僕はなにも言ってないお?」
ノパ⊿゚)「あなたの考えていることは私にも分かる。
ここで、私に隠し事はできないよ」
(;^ω^)「ああそうかお…じゃあ」
ノパ⊿゚)「あなたが何をしに来たかも、もちろん知ってる。
私を…私の記憶を紡ぐ…貴方には意味はわかってないみたいだけど」
(; ^ω^)「君には分かるのかお?」
ノパ⊿゚)「分かる、でもまだ教えられない」
そう言うと彼女は、僕がここに来て初めてこちらを向いた。
そして僕の薄汚れた姿を見ると、ふっと薄く笑う。
さすがにここまでボロボロだと、僕としても気恥ずかしいものがある。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 22:58:37.20 ID:uFP+vrDb0
ノパ⊿゚)「あちこち引きずり回して悪かったね…おじさん、生傷だらけだ。
でも、おじさんがあそこまでとろいとは思わなかったよ。
こんなに強引に誘導しないといけないなんてね……」
(;^ω^)「なんなんだお、誘導ってどういう事だお」
ノパ⊿゚)「…おじさんがここに来て初めて感じた地震、そして大きな水の塊…。
あれはすべて私が作ったものだよ、おじさんをここまで首尾よく連れてくるためにね」
(;^ω^)「君があれを?」
それまで僕はなるべく落ち着いたトーンで話そうと努めていたが、とうとう声が裏返った。
僕がさっきから味わっている天災尽くしはこの子が起こしていたのか?
ノパ⊿゚)「そう、すべては私の手のひらの上というわけね」
女の子はそういうと水面を見つめ、
何か思いついたように右手の人差し指をすっ、と上げる。
すると、女の子が見つめていた所から球状になった水が浮かび上がってきた。
(;^ω^)「おおお…」
最初、糸で吊られたガラス玉のようにふわふわと浮かんでいたが
女の子が人差し指を戻すとパシャッと音をたてて元の水面に戻った。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 22:59:20.89 ID:uFP+vrDb0
ノパ⊿゚)「……さらに言えば、さっきまであなたが会っていた『私』は、
過去の私のレプリカ、私という記憶の核はいまここにいる【私】」
どこか得意げに話す女の子を見ていると、突然脱力感が僕を襲った。
要は、いままで僕はこの子のお人形さんごっこに付き合わされていたのだ。
そのために駆けずり回ったり、玄関をこじ開けるために体を傷だらけにしたりした。
……僕は、分類としては『動けるデブ』だが無駄な運動は嫌いだ。
( ^ω^)「君は…さっきから僕を弄んでいたんだおね…」
ノパ⊿゚)「そうじゃないよ、私は助けて欲しかっただけ」
( ^ω^)「助ける?」
ノパ⊿゚)「ここは円の内側……この深淵の世界から私は一人では逃れられない。
だから、あなたの助けが必要なの。
私をこの場所から連れ出して欲しいのよ」
(;^ω^)「悪いけど、何を言ってるのかサッパリだお」
助けてほしいというのは分かったが、円の内側?深淵の世界?
最近、破滅的に意味不明な事ばかり言う人間にしか会わない。
だれか、一人でもまともな神経の通った人に出会いたい。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:00:15.21 ID:uFP+vrDb0
ノパ⊿゚)「大丈夫、まあ分からなくても成りゆきでなんとかなる。
ここに来る前に、彼女にもそんなことを言われたでしょ?」
( ^ω^)「…そうだったおね」
そうは言ったが、成り行きに任せるつもりなど毛頭ない。
あのログハウスに近寄ってから今にいたるまで、ずっと成り行きまかせだった。
そろそろ自分の意見も何か一つ通してみたいというものだ。
( ^ω^)「じゃあ、僕は何をすればいいんだお?」
ノパ⊿゚)「…あなたに私が求めてるのはそういうことじゃない。
ただ、私の話を聞いて欲しいだけ。私を知ってほしいのよ」
(; ^ω^)「じゃあ他には…?」
ノパ⊿゚)「何も無い、強いて言えば余計な茶々を入れてほしくない。
ここで重要なのはあなたの意志や意見ではなくて、あなたが私を知ることなの」
では、僕はただの傍観者だというのか。
そう思うと、本当に僕は自分があの荒巻とか言うエキセントリックな老人や、
この女の子にいいように使われる孫の手にでもなったような気がした。
僕は彼らにとって、都合のいい形をした木片ほどの存在でしかないのだろう。
だからこそ僕を拘束までしたくせに、
大したことを要求しないし肝心なところを話してくれないのだ。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:00:54.92 ID:YYsnhnPj0
いつもまとめばっかだから支援
楽しみにしてたよ
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:06:08.77 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「じゃあ、せめて教えてくれお。
いったいここは何なんだお」
ノパ⊿゚)「終点だよ、私の物語の。
私は1946年、私の誕生日の三日前に発生した津波に飲まれて死んだ。
死体は発見されなかった。
私の姉が津波の直前に縫っていたこのワンピースが出てきただけだった」
あらためて僕は彼女の着ているワンピースをまじまじと見た。
黄色の地に、華やかに白い花が咲いている。
しかしよく見ると、襟がまだ半分しか付いていない。
ヒートは、僕の視線を気にも留めず話し続ける。
ノパ⊿゚)「…その生涯を端的に表したのが、この風景というわけ。
全ては泥水の下に覆い隠され、忘れ去られた」
ノパ⊿゚)「姉の死によって完全に」
彼女の声は震えても、涙でふやけてもいない――完全に乾いていた。
言い終わると彼女はふたたび正確に5°視線を上げ、僕を視界の外に追いやる。
そうすると、彼女はどこか遠くを見ている風になる。
でも、僕には分かる。
彼女の瞳はもう何も映してはいない。
燃えるような夕日も、夕日に照らされた海も。
彼女の目からは、もう生気が感じられないのだ。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:07:15.84 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「きみは…本当にヒートちゃんなのかお?」
ノパ⊿゚)「そうだなぁ、六十年とちょっと前まではね」
( ^ω^)「…生きていれば僕の父の一回り上かお」
ノパ⊿゚)「そうだね」
( ^ω^)「『中にいる人はみんな死んでいる』というのはやはりこういう事かお」
ノパ⊿゚)「よく知らないけどたぶん、そうだね」
気まずい沈黙が屋根の上に流れる。僕は脳内で自嘲した。
たとえ相手がどんな姿でも、女性に年を聞いたりするべきじゃない。
しばらくして、僕は静かに聞いた。
( ^ω^)「僕が…君を助けようとしたのはすべて無駄だったのかお?」
ノパ⊿゚)「そうね、でもそれを知ってて助けてくれようとしたんじゃないの?」
( ^ω^)「いや完全には無駄だと思ってなかったけど…まあ、そうだおね」
ノパー゚)「うれしいよ、本当にありがとう」
( ^ω^)「…そういうのは偽善じゃないかお?」
ノパー゚)「…実はつぶさにあなたの様子をみてたんだけど、
あれ、走ってる前後とかなんか考えてたの?」
(;^ω^)(見てたのかお……)
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:09:46.51 ID:uFP+vrDb0
僕は自分の考えていたことを思い返してみる。
ワンピースのこと、彼女を助けて意味があるのか…。
(;^ω^)「いや、まとまったことは何も考えてないお。
何もかも走ったあとで罪悪感みたいな…」
ノパ⊿゚)「なら、偽善とかそんなんじゃないよ、だって何も考えてなかったんだから」
( ^ω^)「…すまないお」
ノパ⊿゚)「あやまる必要なんかない。
すべては巻き込んだ私に責任があるの」
( ^ω^)「…難しい言い回しを知ってるおね」
彼女の言葉は、彼女の見かけとは合っていなかった。
少なくとも、小学生の話し言葉ではない。
ノパ⊿゚)「…ときどきこの屋根の上に本が流れ着くの、あれを見てみて」
女の子が指さした先に本の山があった。
ひどく汚れていて、一見すると盛り上がった泥の塊のようにしか見えない。
ノパ⊿゚)「ここでの長い時間を私は本を読んで過ごしてきた。
私と同じ、寄る辺のない物語たち…」
僕は彼女がこの屋根の上で本を読んでいる風景を想像した。
永遠に暮れない夕日の下で、ゴミ同然になった本を抱えるようにして読んでいる彼女…。
黙示録的だな、と僕は思った。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:13:44.91 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「君がもう死んでるなんて…いまでも信じられないお」
ノパ⊿゚)「でも、実際に肉体も、魂も、すべて腐って消えてしまった……。
記憶だけを置き去りにしてね。
今の私はかつて存在していた私の影でしかない」
( ^ω^)「…」
ふたたび静寂が訪れる。
仕方なく、僕は海の遥か彼方に目を凝らす。
幻想的に感じられたこの光景も慣れてきたせいか、
僕にはひどく歪んで見えはじめていた。
広大な海の上に浮かぶ屋根、そこに佇む二人。
まるで、子供の描いた絵をそのまま現実に持ってきたような。
( ^ω^)「お…?」
ぼおっと水平線の辺りを見ていると、そこで何かがきらめくのが見える。
僕の見ている前で、緩慢に海の上を進んでいく。
遠目の利く僕には、その形がちいさな船に見えた。
ノパ⊿゚)「私の父はその船に乗ってやってきたの」
( ^ω^)「…え?」
ノパ⊿゚)「その船は朝鮮からの貨物船なの、私は海で船を見るたびに、
きっとあの船が父の乗ってきた船なんだと思って大声で叫んでた。
お父さんのお父さん…おじいちゃんによろしくねって」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:17:35.09 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「きみは…」
ノパ⊿゚)「私は朝鮮人と日本人の混血なんだ。
姉は母の連れ子だったから純日本人なんだけどね」
彼女ははじめて、屋根の斜面に腰を下ろした。
僕はその後ろに立って、遠くに浮かぶ白く輝く点を見つめる。
( ^ω^)
僕は女の子の背に目を落とした。
小さく、痩せた背中だった。
デレのほうがもっと小さかったはずなのに、
なんで彼女の背中がこんなにも小さく感じるのだろうか?
ノパ⊿゚)「私はこの生まれのせいでどちらのコミュニティにも…。
日本人のコミュニティにも、
朝鮮人を含む部落民のコミュニティにも受け入れられなかった」
ノパ⊿゚)「父が南方で戦死して…そのすぐ後に戦争が終わって…。
それからあいつらは私を裏切り者の朝鮮人として迫害した。
部落の人達は、部落の中でも殊更いじめられていた私を避けた」
( ^ω^)「…」
羅宇字集落、そこは僕達の中でエッタと呼ばれていた人たちと、
朝鮮からやってきた労働者たちが住んでいた地域だと聞いたことがある。
そういえば近所に住んでいた、ありとあらゆる偏見に満ちた男がよく言っていた。
「あの辺で四(よつ)とかいうなよ、一斉に人が集まってきてどこかに連れていかれるぞ」と。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:19:27.65 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「…ひどい話だお」
ノパ⊿゚)「そう、ひどい話。
しかも結末は…この有様だよ」
そういうと、彼女は手近にあった小石を海に放った。
小石は波紋を立てることなく、水音さえ立てずに海に消えていった。
ノパ⊿゚)「さて、話題も尽きたし次に移ろうか」
(;^ω^)「なんだお、次って」
ノパ⊿゚)「…私の事をさらに知ってもらうのよ。
じゃないと、私を紡げないからね」
そう言うと、彼女は立ち上がって足元の屋根瓦を何枚か引き剥がした。
そして剥がした瓦を無造作に海に投げ込むと、そこの土と埃を払う。
僕が彼女の前に回りこむと、そこに小さな落とし戸がついているのが見えた。
( ^ω^)(おお…そんなところに隠し戸かお)
ノパ⊿゚)「今作ったのよ、いいからあとについてきて」
僕の脳内を一瞥してそう言うと、彼女はさっさと梯子を降りていった。
なんだかさっきから梯子を登ったり下ったりしてばかりだ。
僕はわざとらしく溜息をついたが、ヒートには聞こえなかったらしく反応はなかった。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:21:54.51 ID:uFP+vrDb0
幼女に指図されるのは実に複雑な気分だったが、しょうがない。
僕は女の子のあとを追って、屋根に開いた入り口を覗き込む。
穴の辺縁が夕日を受けているだけで、それより先は真の闇だった。
どうもかなりの深さがあるようだ。
( ^ω^)「今更、嫌だなんていってもしょうがないかお」
恐る恐る穴の中に全身を入れ、一段一段確かめるように降りる。
一段、二段、三段…十段…三十七段…百三段。
そこから先は数えなかった。
(;^ω^)(いい加減にしてくれお…これどこまで続いてるんだお)
そこからさらに三分ほど降りると、予想に反して乾いた地面に足がついた。
周りは鼻をつままれても分からないくらいの暗闇だ。
(;^ω^)「なにも見えないお…」
僕は何かあっても引き返せるように、木梯子に手をかけたままでいた。
これならとりあえず安全だ、そう思っていた。
(;^ω^)「!」
だが、僕の見通しは極めて甘かった。
地面に足をつけて三十秒と経たないうちに急に梯子が倒れた。
闇の中、手探りで地面に倒れた梯子を調べてみると、
そこにあったのは1メートル半ほどの長さしか無い、ごく普通の木梯子だった。
僕は手掛かりを失い、一人で闇の中に取り残される。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:24:59.79 ID:uFP+vrDb0
( ^ω^)「ヒートちゃん!どこにいるんだお?」
彼女を呼んだが、返事は帰ってこなかった。
が、代わりに声が暗闇に吸い込まれるのと同時にパッと視界が明るくなる。
目の前には小さなカマドと、生活雑貨がきれいに整頓されて置いてあった。
そこはどこかの家の土間だった。
柱には小さな時計が紐で吊られており、三時くらいを指していた。
午後の三時だ―――障子から、陽の光がふんわりと入ってきていた。
目の前のカマドには、まだ昼の残り火が小さくくすぶっている。
背後からの物音に振り返ると、戸が薄く開いているのが見えた。
そこにはヒートちゃんと夫婦らしき二人、
そしてヒートちゃんより年上の女の子が一人。
間違いなく、ヒートちゃんの家族だった。
<ヽ`∀´>『とうとう…とうとう来たニカ…』
川д川『…はい』
('、`*川『…』
ノハ*゚⊿゚)『お父さん…』
中年の女性…おそらく女の子の母親が、
卓のうえに置かれた淡い桃色の紙を手に取って父親に渡した。
歴史の教科書でよく見る紙――赤紙、召集令状。
しかし、それからの父親の反応は僕にとって意外なものだった。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:28:51.24 ID:uFP+vrDb0
<ヽ`∀´>『これでお国にようやく奉公出来ると言うものニダ。
喜べ!お前たち!これでウリも本当の日本人になれるニダ!』
父親の日本語にはかなり強い訛りがある。
しかもこの地方には珍しく、極めて標準語に近い形だった。
川д川『あなた…』
('、`*川『…』
ノハ*゚⊿゚)『お父さん!頑張ってきてね!』
女の子が「頑張って」と言った瞬間、母親が女の子をはたと睨みつけた。
前に垂れた黒髪の奥で、母親の瞳が細かく震えている。
川#д川『ヒート、お前分かってるのかい?
お父さんはしんじまうかもしれないんだよ?』
川#д川『それでも、お前は頑張って言ってこいなんて言えるの?
だとしたらお前は大馬鹿もんだよ!』
<ヽ#`∀´>『貞子ォ!』
父親が、農夫らしく盛り上がった肩を怒らせて母親を怒鳴りつける。
しかしそれに怯むことなく、彼女は怒りの形相もそのままに夫を睨み返す。
彼女の顔は小さな頃に見た般若の面によく似ていた。
川#д川『あなた、私はあなたがそんなに馬鹿だとは知りませんでした』
<ヽ#`∀´>『どういう事ニカ?』
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:31:06.13 ID:uFP+vrDb0
川#д川『本当にあなたは出征すれば、よその人に私達家族が認めてもらえると思ってるの?
…そんな事は絶対に有り得ない、生きて帰れたとしても…きっと』
<ヽ`∀´>『…』
父親は黙りこむと、卓の上に置いた赤紙をじっと睨んだ。
<ヽ`∀´>『それでも、ウリは行かねばならんニダ』
川#д川『当然です。あなたが逃げればあとに残るかぞ…』
<ヽ#`∀´>『そういう事じゃない!なぜ分からんのだ!
ウリは…この国のために血を流して働きたいニダ!』
父親は歯を食いしばり、一文字一文字を搾り出すように言った。
<ヽ#`∀´>『生まれた国は朝鮮でも!ウリの祖国は日本ニダ!
鼻くそみたいなこそ泥だったウリに…。
ウリにこの国はお前たち家族、田畑、
そして日本人であるという誇りを与えてくれたニダ!』
<ヽ#`∀´>『その国に恩を返すためならば!そしてお前たちを守るためなら!
ウリは喜んで命を捧げる!死んで護国の鬼になるニダ!』
母親はそこまで聞くと、気分が悪くなったのか畳に手をついた。
川;д川『あなた…もう…もうやめて私、気分が…』
<ヽ;`∀´>『どうしたニカ?』
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:33:21.28 ID:uFP+vrDb0
母親のようすがおかしい。
気がついた父親があわてて母親の隣に座り肩を抱いた。
母親は、そのまま夫の腕の中でぐったりとする。
川;д川『う……』
<ヽ;`∀´>『大丈夫ニカ?貞子…おい!
ペニサス!誰か人を呼んでくるニダ!』
('、`;川『う、うん!』
ペニサスと呼ばれた女の子は立ち上がると、
僕のいる戸の方へ真っ直ぐ歩いてきた。
(;^ω^)(やばい!)
僕は咄嗟に逃げ出そうと、勝手口の戸に手をかける。
でも僕は反射的に手を引っ込めてしまった。
障子の向こうで突然、大勢の歓声が爆発したのだ。
(;^ω^)(何の騒ぎだお!?)
障子紙がビリビリと震え、気のせいか戸までも揺れた。
歓声の大きさに、僕は思わずその場で固まってしまう。
「「バンザーイ…バンザーイ…バンザーイ」」
(;^ω^)「…?」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:36:51.61 ID:uFP+vrDb0
よくよく聞いてみると、歓声は万歳三唱の声だった。
おそるおそる障子を開けると、庭先にはかなりの人だかりが出来ている。
そこでは、さきほどの父親と見たことのない初老の男性が、
軍服を着こみあつまった人達に挨拶をしているところだった。
(;^ω^)(…いつの間に?)
さっきまで薄く開いていたはずの居間の戸は、ぴったりと閉じられている。
目を庭に戻してみると、ペニサスと母親が父親の後ろに控えているのが見えた。
最初、これが何を意味するのか分からなかったが、
壁に掛かっている時計が目に入ってようやく分かった。
時計は十一時を指していた。考えるまでもなく昼の十一時だろう。
いつの間にか、ヒートが見せたい場面まで早送りしたらしい。
( ^ω^)(それにしても、なんか妙な感じだおね)
目の前の集会の様子はなんとも言えない奇天烈なものだった。
ヒートの家の狭い庭は、溢れんばかりの人でごった返していた。
おそらく、50人は集まっている。
(;^ω^)( 出征前の見送り……?それにしては人が多いお)
しばらく様子を見ていると、やがて先程まで喋っていた初老の男性が、
父親に『お金』『食べ物』『千人針』などと大書きされた麻袋を手渡す。
……妙に黒ぐろとした筆跡が、なんとなく引っかかった。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:38:41.72 ID:uFP+vrDb0
(;^ω^)(そんな学芸会の小道具みたいなもので、
出征する父親を送り出すのかお…)
とにかく袋を厳かに受け取った彼は振り返った瞬間には、
ヒートの父はすでに集まった人々に対して声を張り上げていた。
<ヽ#`∀´>『この金田ニダー!生還は期せず!
全力で御国に奉公してまいります!』
(#‘_L’)『よくいった金田君!
では金田ニダー君の武運長久を願って…バンザァァァーイ!!』
それを合図に集まった人々から再び万歳三唱が起こった。
まるで、終戦記念日が近づいた頃にやるスペシャルドラマのようだった。
そして歓声が止むと、父親はすぐそこにあった駅舎に走りこんだ。
(;^ω^)「…えっ?」
それから数秒で列車が出発し、町の方へ走っていった。
そこのたんぼのど真ん中に……駅舎?
(;^ω^)(いったいなんなんだお…?)
そのとき、後ろの戸からそっとヒートが出てきた。
そしてそのまま、僕の方へと歩いてくる。
ノパ⊿゚)『…』
(;^ω^)「あ…ヒートちゃん…」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:49:17.27 ID:uFP+vrDb0
なんと声をかけていいか分からなかった。
父親が出征していく家族にかける言葉など、僕が知っているはずもなかった。
ノパ⊿゚)『…』
ヒートは僕を無視して開けっぱなし戸の前に来ると、
父の乗った列車の向かった方向をじっと見つめる。
ノパ⊿゚)『おとうさん…』
僕はそこで初めて気がついた。
この子は、最初にあった時のようなモンペを着ている。
( ^ω^)(まさか…)
僕は試しに彼女の前で手を二、三度振ってみたが、
予想どおり反応はなかった。
彼女は相変わらず、駅舎の方を見たままだ。
ノハ ;⊿;)「…おとうさん」
( ^ω^)(君は、本体じゃないのかお)
どうやら、彼女は僕が見せられている「過去」の一部であるらしい。
おそらく、いま僕は彼女は何一つ干渉できないのだろう。
(;^ω^)(多分触ろうとしてもすり抜けるんだろうけど……)
僕がヒートに触れようとしてもう一歩前に足を踏み出すと、突然足が地面に深々とめり込んだ。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:50:36.00 ID:uFP+vrDb0
(;^ω^)「!??」
続いて、下半身が何か生暖かい物に包まれているのを感じた。
ベトベトした液体の感触と猛烈な臭い。
僕はこの感触と臭いを知っていた。
(;^ω^) (糞溜めだお!)
いつのまにか僕は外にいて、肥溜めに太ももまで浸かっていた。
継ぎ足されたばかりなのか足元の泥濘には無数の蝿がたかり、うまそうに汁をすすっていた。
未消化の何かをそこに見たような気がして、僕はそこから目を逸らす。
( ゚ω゚)(くせええええええ!!)
肌に太陽の焼けつくような日差しを感じる。
季節は夏なのだろう。
温められた人糞の発する重く、まとわりつくような臭い。
刺激臭とまではいかなかったが、今にも息が詰まりそうだった。
いったい僕に何の恨みがあって、彼女は僕を肥溜めなんかに放り込むのだろう。
(;^ω^)(とにかくひでえ臭いだお…)
とにかく、ここから這い出さなくては。
そう思って、なにか掴まるものがないかと辺りを見渡した時だった。
僕のすぐ後ろに、頭から肥えをかぶった小さな女の子が立っていた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:54:37.50 ID:LHKMa9LS0
しえ
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/10(金) 23:54:43.89 ID:uFP+vrDb0
ノハ ⊿ )『…』
(;^ω^)(な…)
彼女に声を掛けようとした僕の目前を、こぶし大の何かがかすめた。
その何かはヒートの頭に当たって砕け散り、彼女は大きくのけぞる。
(;^ω^)(え!?)
飛んできた方向を見ると、
そこには三人の子供が土の塊を手に立っていた。
一人は、こちらを指さしてげらげらと笑っている。
命中! とでも言わんばかりに、ばたばたと手を振り回しながら。
(#^ω^)「………!………!」
(;^ω^)「?……!?」
何をしてるんだお!
そう叫んだつもりだったが、なぜだか声が出なかった。
というよりも、僕の周囲の音が完全に消えていた。
(;^ω^)
子供たちは笑っているような、怒っているような妙な表情を浮かべていた。
こちらを見ながら、盛んに口を動かしているのを見ると、ヒートに何事か言っているらしい。
ヒートの方はといえば、黙ってされるがままになっている。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:00:42.05 ID:ZgRwdVDo0
子供たちの口の動きを見ていた僕は、
彼らがひとつの単語を繰り返していることに気がついた。
( ^ω^)(あ、い、の、こ…?)
一瞬、何のことだか分からなかった。
この言葉も死語になって久しい。
あいのこ。混血児。
(;^ω^)(そういう事かお…)
おそらくヒートの受けたいじめの様子なのだろう。
なぜヒートは抵抗しないんだ?
なぜ、急に音が聞こえず声も出せないようになったんだ?
僕は訳がわからないまま、その場を動けずにいた。
(;^ω^)(さっきからむちゃくちゃだお………。
妙な集会に肥溜め、それと消えた音。
ヒートちゃんは一体僕に何を見せたいんだお?)
反応を期待して彼女を見たものの、彼女はなにも言わなかった。
相変わらず、足元に広がる人糞の成れの果てをじっと見つめるばかりだ。
ノパ⊿゚)『!』
ヒートが何かに気がついたように突然顔を上げる。
29 名前: ◆MsdInw62ztuy [] 投稿日:2010/12/11(土) 00:01:58.47 ID:ZgRwdVDo0
彼女に土を投げていた子供たちが、遠くの方を見て身を固くするのが分かった。
そちらには先端に大きな刃物がついた、長い棒状の物を手に近づいてくる人物がいる。
ヒートの姉、ペニサスだった。
('、`#川『くそがきどもがぁぁあああああ!!!』
彼女の叫び声とともに、音が戻ってくる。
さっきまでにやついていた子供たちは、一転して真っ青になった。
その内のひとりが怯えた声を上げる。
『うわっ!ペニサスだ!』
『おい…なんでマサカリなんか…』
『いいから逃げろ!なにされるか分かんねえぞ!』
『うわああああ!』
子供たちの姿が消えるのを確認すると、ペニサスは小走りにこちらにやってきた。
彼女は肥溜めの端まで降りてくると、農具の柄をヒートに向かって突き出しながら言った。
('、`;川『ほら、ひーちゃん掴まって』
ノハ*゚⊿゚)『おねえちゃん!』
('、`*川『いいから早く!』
ヒートがやっとのことで人糞の沼から這い出すと、ペニサスは間髪無く彼女に平手打ちを食らわせる。
鈍い音が、離れたところにいる僕のところにまで響いた。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:03:37.71 ID:ZgRwdVDo0
('、`#川『なんで一人で帰ろうとしたの!
学校帰りは危ないから一緒に帰ろうって言ったでしょ!』
ノハ;゚⊿゚)『ごめんなさい…でも私と一緒にいるとおねえちゃんも…』
('、`#川『そんなの関係ない!』
ヒートのそばにかがむと、ペニサスは小さな体を抱き寄せる。
そして、静かな口調で言った。
('、`*川『私は何されようが、何を言われようが平気。
でも、ひーちゃんがあんなことされるのは耐えられないの』
ノハ;゚⊿゚)『…うん』
('、`*川『二度とお姉ちゃんの言うことを無視しないで。
約束しなさい。』
ノパ⊿゚)『…わかりました』
('、`*川『よし!じゃあ、帰りましょうか。服、洗ったげるからね』
ノハ;゚⊿゚) 『…』
('、`*川 『なによ』
ノパ⊿゚) 「あ…ありがとう、ねえちゃん」
('、`*川 『…いいのよ、ほら行くよ』
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:08:49.10 ID:ZgRwdVDo0
ペニサスは服が汚れるのもかまわずにヒートをおぶると、ゆっくりと羅宇字のほうへ歩いて行く。
僕は肥溜めにはまった状態で、彼女たちの後ろ姿を見送った。
( ^ω^)「…」
仲の良い姉妹だ。
だが彼女たちもあと少しで引き離されることになる。
そう思うと、どうにもやりきれなかった。
( ^ω^)(……これを全部黙って見てろっていうのかお)
紡げだとか癒せだとか、よく分からないことを言われてここにやってきた。
でもそのやり方が分からないし、癒すべき本人にさえ「何もするな」と言われてしまった。
僕は、仕方なく部屋の隅に行って背中を壁に預けた。
こういう時は新しい展開があるまで大人しくしているのが……。
(;^ω^)「って、いつの間にまた…」
今度はどこかの部屋にいる。
今もその前も、僕は場面が変わった事にまったく気がつかなかった。
慌てて周囲を確認すると、僕がいるのはどうも物置部屋らしかった。
布団やら、行李などが部屋の隅に雑多に積み上げられている。
(;^ω^)(自分の感覚があやふやになるって言うのは、
なんとも不気味なもんだお…む?)
不意に部屋の戸が開き、ペニサスとヒートが雪崩れ込んできた。
彼女たちは急いで戸を閉めると、ひそひそと何事かを話し始める。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:11:28.89 ID:ZgRwdVDo0
('、`;川 『ふー、母さんに見られなかった?』
ノハ*゚⊿゚)『だいじょぶだと思う、庭に出てたから』
('、`*川 『よし…じゃあ出して』
ノハ*゚⊿゚)『うん!』
ペニサスが服の中から布を、そしてヒートがマッチ箱を取り出す。
ペニサスの持ってきた布を見ると、ヒートは嬉しそうに大きく目を見開いた。
( ^ω^)(あれは…)
布の柄に、見覚えがあった。
ノハ*゚⊿゚)『うわあ…すごくいい色…』
('、`*川『渡辺さんとこのおばあちゃんが余ったのをくれたのよ。
新宮で服屋をやってる親戚が、急にたくさん送ってきたとかでね』
ノハ*゚⊿゚)『きれいね~本当につくってくれるの?』
('、`;川『あんた何回その質問すんのよ…やったげるって言ってるでしょ』
ただし、と彼女は付け加える。
('、`*川『やり方は教えてあげるから手伝って。
お手玉はもう作れるわね?』
ノハ*゚⊿゚)『うん…たぶんね!』
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:14:28.38 ID:ZgRwdVDo0
('、`;川『自信ありげに多分とか言わないでよ…まあいいか。
まずはお裁縫道具みせて』
ノハ*゚⊿゚)『うん!』
ヒートがマッチ箱を開けてみせると、その中には糸と数本の針が入っていた。
大方、母親の裁縫箱からくすねてきたのだろう。
古ぼけた針には、薄く錆が浮いている。
ノハ*゚⊿゚)『お母さんが使ってない方のお裁縫道具から借りてきた!』
('、`*川『どれどれ……針は、これとこれがあればなんとか。
ハサミは私のがあるし、当面はこれだけでも大丈夫ね』
ノハ*゚⊿゚)『ちゃんと出来るかな…』
('、`*川 『あ、そうだ。
服って言っても何がいいの?』
ノハ*゚⊿゚)『え?』
('、`;川『え?ってまさかあんた、なんにも考えてなかったの?
あのね~…あんたのお誕生日のプレゼントなんだよ?』
ノハ*゚⊿゚)『じ、じゃあワンピースがいい!』
('、`;川『じゃあって…もう適当なんだから』
呆れたように首を傾げるペニサスだったが、
やがてケラケラ笑っているヒートを見てつられるように微笑んだ。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:14:30.35 ID:JRnLmQ01O
支援!
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:16:11.78 ID:ZgRwdVDo0
('ー`*川 『でも、悪くないよ。
ワンピースなら比較的簡単だし、
きっと誕生日にも間に合うわね』
ノハ*゚⊿゚)『うおおおおおぉおおおおお!!!
お姉ちゃんありがとおおおおおおお!!!』
('、`;川『こらっ!声が大きい!』
ヒートが叫ぶと、近くから床が大きく軋む音がした。
……誰かが来る。
ノハ*゚⊿゚) 『あ…』
('、`;川 『やば…持ってるの隠して!』
ノハ;゚⊿゚)『うん!』
二人が積まれていた座布団の間に持ち物を隠すと同時に、
部屋の襖が開き、そこからぬっと母親の首が突き出された。
川д川『ふたりとも…なにしてるの?』
('、`;川『あー。
二人で話してたの、今日の学校でセントジョーンズ君がバギm』
川д川『そんな事はいいから、ペニサスは勉強しなくていいの?』
('、`*川『あ…うん』
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:20:07.11 ID:ZgRwdVDo0
川д川『…』
ノハ;゚⊿゚)『…』
母親はヒートに冷たく一瞥をくれると、そのまま黙って襖を閉めた。
彼女が歩き去っていくのを待ってから、ペニサスがヒートの額を指で軽く弾く。
ノハ>⊿<)『いたっ』
('、`*川『もう…なにやってんのよ。
もう少しで取り上げられるところだったじゃない』
ノハ;゚⊿゚) 『…ごめんなさい』
('、`*川『じゃあ、明日から始めるから。
母さんが野良仕事してる間にやりましょ』
ノハ*゚⊿゚) 『わかった!ところでさ…』
('、`*川 『うん?』
ノハ*゚⊿゚) 『ワンピースってどんな服なの?』
('、`*川 『…え?』
(;^ω^)「え…?」
思わず、声が出た。
そりゃないよ、ヒートちゃん。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:22:37.42 ID:E5AooQImO
支援
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:27:17.85 ID:ZgRwdVDo0
( ^ω^)(でもまあ、こんな山奥でしかも戦後間もなくだから…。
知らなくても不思議じゃないおね)
きっと、どこかで聞いてきた名前の響きだけで、
「ワンピース」と言ったのだろう。
それに思わず吹き出しそうになった僕のかかとの辺りに、何かがコツンと当たった。
水面から拾い上げるとそれは小さな木の表札で、表に楷書で「山村貞子」と書かれている。
貞子、姉妹の母親がそう呼ばれていた気がする。
(;^ω^)「……あれ?」
今度は僕は海の上に、しかも水面に立っていた。
ヌルヌルした砂の上に立っているような感触が靴越しに伝わってくる。
(;^ω^)「おお…またいきなりなんて所に……」
周囲にはばらばらになった何かの破片や木の葉が、
下品なモザイク画みたいにして浮かんでいた。
そのまんなかには自分と…何か、白い塊が浮いている。
( ゚ω゚)(あれは……?)
――僕はなぜだか、それがヒートだとおもった。
ノハ )
ヒートの面影は、ほとんど残されていなかった。
着衣はほとんど脱げ、腹が妊婦のように大きく盛り上がっている。
というよりも、全身が元の何倍にも膨れ上がって……。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:33:18.45 ID:ZgRwdVDo0
(;゚ω゚)(……!)
かなり前だが、浜に水死体が打ち上げられたことがある。
目の前の彼女はそのときの死体によく似ている。
(;゚ω゚)「ヒートちゃん…」
ノハ )
多分これは、津波のあと流されて行ったヒートの体。
こんな物をなぜ彼女は僕に……。
その時だった。
水の中に沈んでいた彼女の頭のあたりから、
ごぼり、と泡がたった。
(;゚ω゚)「!?」
生きているのか?
――記憶でも、幻覚でも、もう何でもいい。
とにかく、彼女を助けなくては。
途中、ちいさな波に足を取られながらも、
僕はヒートの所へと向かった。
そうだ、こういう時はまずどうするんだったか。
声を掛けて意識の有無を確認して、それから。
―――かつて受けた講習の記憶ははひどくぼんやりしている。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:36:08.78 ID:ZgRwdVDo0
( ゚ω゚)「おい!だいじょぶかお!?」
ノハ )
彼女の腰と、頭を支点にして水面上に持ち上げる。
( ゚ω゚)「なんだ…?」
左腕に抱いたヒートの頭は、妙にぬめっていた。
見ると、彼女の頭皮は僕の触れたところでズルリと剥けている。
ノハ ⊿ )
側頭部には何かに激しくぶつかった痕があり、
あるべき皮膚と、耳のほとんどが失われていた。
赤みを失った腐りかけの肉のかけらのみが、そこにぶら下がっている。
(;^ω^)(いや、でもさっき息が…)
そうだ、さっき泡が水面に上がってきたじゃないか。
僕は、彼女の手首を掴んで脈を取る。
だが緊張しているせいで自分の脈なのか、彼女の脈なのか判然としない。
(;^ω^)(分かんねーお…どうしたら…)
(;^ω^)(!……じゃあ呼吸のほうは!?)
呼気を確かめようと、彼女の顔に手を伸ばした。
しかし、その顔を再び見た僕の手は途中でピタリと止まった。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:38:33.87 ID:ZgRwdVDo0
ノハ ⊿ )
死人の口の端からくぴくぴと耳慣れない音と共に、
黄色く濁った体液のようなものが流れだしていた。
(;^ω^)(あ…)
僕がすこし体を動かすたび、その量は増えていくようだった。
とても、嫌な臭いがした。ほかに類えようのない、死者の匂い。
たしかにヒートの言ったとおり、この匂いを僕は知っていた。
(; ω )(こんな事って…こんな…こんな事が…)
もはや、疑う余地はなかった。
自分の腕の中にあるのは、遺骸でしかない。
そう感じると同時に、腕に込めていた力が抜け落ちていった。
また、救うことができなかった。
( ω )「…」
ヒートから手を放すと、彼女は水面下に沈んでいった。
彼女がいなくなると、僕は見知らぬ海の上でひとりになる。
( ω )「…これでいいのかお?」
立っている気力さえ、もう僕には残されていなかった。
その場で横になると、揺れる波間に体を預けた。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:43:35.84 ID:ZgRwdVDo0
( ω )「君の見せたいものはこれだけかお?
じゃあ、君を紡げるわけだおね?どうやるか知らないけど」
意味もなく、右腕を水面に叩きつける。
( ω )「さあ、もおいいんじゃないかお?」
場面は、もういくら待っても切り替わらなかった。
まあ当然だ。主人公の死のシーンの後に、何が残っているというのだろうか。
( ^ω^)「…空が綺麗だお」
空だけは、きれいに晴れ上がっている。
死ぬんだったらこんな天気の日がいいな。
ふと、僕はそう思った。
( ω )「眠いおね」
突然の眠気に目を閉じるその刹那。
僕は遠くから、霧笛のような音を聞いたような気がした。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:51:00.91 ID:E5AooQImO
④
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:51:29.91 ID:ZgRwdVDo0
―――――――――
―――――
――
…
内藤は頭に感じる冷たい感触で目を覚ました。
手に握りしめたままのワンピースを目にすると、
自分の周りに現実が戻ってくるのを感じた。
( ^ω^)「…生きてるのかお」
ぼやくようにしてそう言うと、内藤は体をゆっくりと起こした。
周囲を見渡すと、相変わらずスチールの筐体が果てしなく列を作り、
蛍光灯は切れ間なくその間の通路を素っ気なく照らしている。
とりあえず、帰って来れたようだ。
内藤はほっと胸をなでおろした。
( ^ω^)(だけど…)
安心感とともに胸に押し寄せてきたのは、無力感だった。
自分はまたしても見ているだけしかできなかった。
内藤はそれが悔しくて仕方なかった。
( ω )「くそぉ…」
なぜ、姉思いの女の子があんな無残な死に方をしなくてないけなかったのか。
自分の誕生日を目前に控え、姉からのプレゼントを心待ちにしていた小さな女の子が。
そして自分はまた……。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:54:46.90 ID:JRnLmQ01O
支援
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:55:32.10 ID:ZgRwdVDo0
( ^ω^)「いや……」
しかし、まだだと内藤は思い直す。
自分の仕事はまだ終っていない。
( ^ω^)「巡りあわせる……かお」
ツナギの女はそう言っていた。
巡りあわせるべき人がヒートにはいるのだ。
そして内藤は、それが誰か知っている。
ヒートの事を常に気に掛け、暖かく包みこんであげていた人。
その人の事を思い浮かべた内藤は、
手にしていたワンピースが強く熱を持つのを感じて思わず手を離す。
(;^ω^)「!」
突然、ワンピースが透明な誰かが着たみたいにして内側から膨らんだ。
そして床から少し離れた高さに浮かび、その場でくるくると回る。
まるで踊っているようにくるくる、くるくる。
内藤は、その動きに強い既視感を覚える。
(;^ω^)「まさか…?」
内藤が洩らした疑問に答えるように、回転が止まる。
すると次の瞬間、出し抜けにワンピースがどこかへ向かって走り去っていく。
内藤はふらつきながら、その後を追った。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 00:59:37.01 ID:ZgRwdVDo0
(;^ω^)「待ってくれお!」
十メートルほど走っただろうか。
彼女は箱の一つの前に立っていた。
内藤が箱の中から取り出したときは泥まみれだったが、
不思議なことに今の彼女にはシミひとつ付いていなかった。
( ^ω^)「ここにいるのかお?」
言葉少ない質問に、彼女は箱についている引き出しの三段目を叩くことで答える。
内藤がそこを開くと内藤と、彼女の目当てのものがあった。
( ^ω^)「…」
大きな引き出しの中には、薄汚れた小さな布が入っている。
元は白かっただろうそれを、内藤は静かに取り出した。
そして、手のひらに乗せて彼女に差し出してみせる。
内藤は、彼女が笑っているのが見えた気がした。
( ^ω^)「…当ててみせてくれないかお?」
見えない手が、内藤の手から布を受け取った。
そして、長らく自分に欠けていたその布を仮にあてがって見せる。
ワンピースの襟のもう片方。
半世紀を超えて出会ったにもかかわらず、
首もとにしっくりとなじんでいるのを見て、内藤は微笑んでみせた。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:01:11.26 ID:ZgRwdVDo0
( ^ω^)「よく似合ってるお」
ノハ*゚ー゚)「…ありがとう」
ワンピースの持ち主が、ふっと現れる。
あたかも初めからそこにいたかのように。
そしてヒートはふんわりと笑うと、内藤にくるりと一回転してみせた。
夏の太陽の光のような明るい黄色が、その笑顔に実際よく似合っていた。
ノハ*゚ー゚)「じゃあ、いこっか!」
(;^ω^)「はい?」
どこに?と内藤が聞く前に、
ヒートは内藤の手を引いて駆け出していた。
まったく、強引な子だ。
そう思った内藤だったが、抵抗することはしなかった。
ノハ*゚⊿゚)「ぬおおおおおおおおおおお!」
(;^ω^)「ちょ、全力ダッシュはやめるお!
まじ転ぶっておっさんの衰えた平衡感覚なめんま!!!」
それからわずか数メートルで、内藤は無様に転んだ。
だが、頬に当たったのは冷たいタイルではなく、
燃えるように熱い石の塊のようなものだった。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:03:35.73 ID:ZgRwdVDo0
冷たいのか熱いのか、
どちらか分からない僕は混乱しながらひょいと飛び上がる。
(;゚ω゚)「あqsうぇdfrtgyふじこlp;@:」
(;゚ω゚)「って…あれ?」
慣れたつもりだったが、
突然の周囲の風景の変化にやはり戸惑ってしまう。
……僕達は、美府町の街中にいた。
頬をなでると、めり込んだアスファルトの一部がパラパラと落ちていく。
ノハ*゚⊿゚)「ほら!立ち止まってる暇ないぞぉ!
走れ内藤!いざ…」
ノハ*゚⊿゚)「お姉ちゃんのところへ!」
どこまでも広がる夏空の下。
果たしてどこまで連れまわされるのだろうか。
そんな事を思っている間もなく、僕はヒートに引きずられていく。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:06:21.57 ID:E5AooQImO
よかった、幸せそうだ
最後の支援
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:07:08.72 ID:ZgRwdVDo0
―――――――――
―――――
――
…
ヒートに手を引かれて付いた先は、どこにでもありそうな民家の庭先だった。
庭先と行っても、そこには手入れの行き届かない庭木くらいしかない。
表札には、「伊藤」とだけ書かれている。
( ^ω^)「お姉ちゃんはここかお?」
ノハ*゚⊿゚)「そうだぞ、間違いない」
「じゃあ、おばあちゃん。あたしそろそろ行くね~」
(;^ω^)ノハ;゚⊿゚)「!」
家の中から明るい女の声が聞こえて、僕とヒートは思わず塀の後ろに隠れた。
ミセ*゚益゚)リ「~♪」
(;^ω^)(うわ、えれえブサイクだお…)
出てきたのは、妙に醜悪な顔をした女だった。
鼻フックした山田花子。それが一番近い。
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:10:25.99 ID:ZgRwdVDo0
ノハ*^⊿^)「wwwwwなんだあいつwww豚みたいな顔してたなwwwww」
(;^ω^)「ほら、いいから行くお!」
女の後ろ姿を指さして笑うヒートを引きずって、僕は玄関の呼び鈴を鳴らした。
しかし、反応は無い。さっきの女の様子では、少なくともおばあちゃんはいるはずなのだが。
ノハ*゚⊿゚)「いいから入っちゃおうよ!」
( ^ω^)「いや、でもさすがに…」
ノハ#゚⊿゚)「うるせぇ!さっきみたく…ぶちやぶれぇええええええぇ!」
(;゚ω゚)「こらこらこらこらこら!」
玄関ドアのガラスに飛び蹴りを食らわそうと構えたヒートを、
何とか押しとどめて試しにドアを開けてみることにした。
幸運にも、さっきのブサイクは鍵をかけ忘れていってくれたらしい。
ドアを開けると線香の香りがむわっと顔にかかった。
ノハ*゚⊿゚)「おお!あいてたかぁ!」
(;^ω^)「頼むからいきなし飛び蹴りはやめるお…」
ノハ*゚⊿゚)「しょうがないな…わかったよ」
( ^ω^)「うん…で、お姉ちゃんは?」
ノハ*゚⊿゚)「ああ、臭いからすると…奥にいるみたいだな」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:13:00.39 ID:JRnLmQ01O
あれってミセリ?
支援
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:14:56.18 ID:ZgRwdVDo0
(;^ω^)「臭いって…」
ノハ*゚⊿゚)「…おじさんは自分の家族の臭いも分からないの?」
(;^ω^)「いや…」
ヒートは履いていたサンダルを乱暴に脱ぎ捨てると、
近くにあった窓に駆け寄って外の様子を眺め始める。
ノハ*゚⊿゚)「おー!スゲー!!!建物がすごく増えてる!」
(;^ω^)「…ふー」
僕はいきなり炎天下に晒されて、どろどろに汗をかいていた。
ひとまず、僕も框に腰を掛けて一息いれることにする。
ややあって汗も引いた頃に、僕は彼女に声を掛けた。
( ^ω^)「これで良かったのかお?」
「なにが?」
( ^ω^)「君をこうしてお姉さんの所に連れてきて、
僕の仕事はそれで終わりなのかお?」
「…まだ、やることはあるよ」
顔を窓の外に出しているために、彼女の表情は分からない。
しかし声の調子は、屋根の上にいたヒートより弾んでいる。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:18:14.64 ID:ZgRwdVDo0
僕は思い切ってさっきのことを聞いてみることにした。
(;^ω^)「さっきの…海の上で」
「やめて」
さっきまでの明るい声はどこかへ消し飛び、
代わりに凍るように冷たい拒絶が返ってくる。
―――僕は、彼女が「何それ?」と言ってくれるのをどこかで期待していた。
だが、やはり彼女は彼女だったようだ。
あの、屋根の上にいた表情のない少女。
( ^ω^)「…いい天気だおね」
「そうね」
( ^ω^)「…」
そうしてしばらく彼女は外を見ていたが、やがてこちらを振り返った。
その顔は、先程までみせていた屈託の無い子供の顔だった。
ノハ*゚⊿゚)「じゃあ、そろそろいこうか!」
( ^ω^)「お」
ゆっくり立ち上がると、ヒートの後についていく。
彼女は一枚のドアの前に立つと、急に立ち止まって僕を見る。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:19:31.11 ID:JRnLmQ01O
支援!
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:19:49.73 ID:ZgRwdVDo0
ノハ;゚⊿゚)「おじさん」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
ノハ;゚⊿゚)「こういう時ってどう言えばいいんだ?
ごめんなさい?それともひさしぶり?」
(;^ω^)「えっと」
どう言えばいいかなんて僕にも分からない。
でも……。
( ^ω^)「そばにいてやるだけでいいと思うお」
ノハ;゚⊿゚) 「うん…」
それが短い時間だったとはいえ、彼女たちは姉妹として暮らしてきたのだ。
だから言葉を連ねるより、そっと寄り添ってあげるのがいいだろう。
ノハ*゚⊿゚)「じゃあ……」
( ^ω^)「さあ、いってあげるお」
ノハ*゚⊿゚)「うん!」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:21:23.21 ID:ZgRwdVDo0
ヒートがドアの向こうに消えると、僕は玄関まで戻った。
途中、ヒートがそこから外を覗いていた窓が目に入る。
見えるのは、僕にとっては馴染み深い美府町の風景だ。
遠くに見えるパチンコ屋の看板を見た僕は、
だいたいここは99年前後だろうと当たりをつけた。
あの店は、確かそのくらいまで残っていたはずだ。
( ^ω^)「……」
津波など無かったかのように町はそこにある。
ヒートは、この光景を見て何を思っただろう。
自分を置き去りにして生き続ける町。
かつて彼女を迫害し、無視した人間の子供達の住む街。
彼女は彼らを許したのだろうか―――それとも。
それから窓の外を眺めるのに飽きた僕は家の内装を観察したり、
靴箱の上に置いてあった小物をいじくったりして時間を潰していた。
しかし、待てど暮らせどヒートがここに戻ってくる気配はない。
(;^ω^)(遅いおね)
三十分、一時間、と待ち続けたがまだ来ない。
僕はそっとドアのところへ行って様子を伺うことにした。
(;^ω^)(まあ、心配はいらないんだろうけど……念のためだお)
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:23:23.97 ID:JRnLmQ01O
しうぇん
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:23:43.08 ID:ZgRwdVDo0
静かにドアに耳をつけてみるが、中では物音ひとつしない。
僕はそのままなにか聞こえるまで待っていたが、何も聞こえないまま時間が過ぎていく。
( ^ω^)(ほんとに大丈夫かお?)
ドアノブに手をかけようとしたその時、小さな音が僕の耳朶を打った。
その音は、僕がさっきから聞かされ続けて飽き飽きしていた音だった。
( ^ω^)(……波の音?)
ここは海から近いとは言え、流石にここまで聞こえてくる筈がない。
僕は思い切ってドアを開け、中に入った。
(;^ω^)(なんで誰もいないんだお?)
部屋の中はもぬけの殻だった。
そこには介護用のリクライニングベッドがあり、その脇のカラーボックスには、
老人用おむつやタオルなどが綺麗に整頓され収まっている。
部屋に一つしかない窓のカーテンが、
風に吹かれている以外に動くものは無い。
――波の音もそこから聞こえているようだった。
( ^ω^)(なんなんだお……?)
窓の外を覗いてみると、そこには砂浜が広がっていた。
ここから浜までは少なくとも十分は歩くはずなのだが。
……ともあれ僕はそこに寄り添うようにして立つ、女の子たちの姿を見つけた。
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:25:00.16 ID:JRnLmQ01O
おぉ……!
支援
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:27:28.88 ID:ZgRwdVDo0
( ^ω^)「……会えたんだね」
窓枠を乗り越えて砂浜の上に着地する。
夏の日差しに晒された砂が、靴下しか履いていない僕の足裏を焼いた。
(;゚ω゚)「熱っつう!なにこれあっつうううううう!!!」
('、`*川「?」
ノハ*゚⊿゚)「あっおじさん!」
('、`*川「あらひーちゃんも知ってるの?」
(;^ω^)「ええ、僕がこの子をここまで……って熱い!熱い!!!」
僕は二人のところまで走っていき、
靴下をその場に放り捨てて波に足をつける。
足の裏から冷たい砂がしゅるしゅると熱を奪っていく。
(*^ω^)「ふおぉぉぉぉ…」
('、`*川「あらあら…」
ノハ*^⊿^)「wwwwおじさんもしかしてバカ?wwwww」
(;^ω^)「その笑い方かなりむかつくからやめるお!」
何とか落ち着いた僕は、二人に向き直った。
彼女たちはなんとも言えない顔でこちらを見ている。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:31:59.51 ID:JRnLmQ01O
寝る前最後の支援
明日読む
作者頑張ってくれ
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:34:30.34 ID:I+vRBftL0
sien
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 01:52:25.49 ID:WoYTpRqF0
支援
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 01:56:22.02 ID:iQhR+7mzO
寝落ちか?
全力で保守
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[猿なんて初めて食らった…] 投稿日:2010/12/11(土) 02:00:27.88 ID:ZgRwdVDo0
('、`*川「…面白い子ね」
ノハ*゚⊿゚)「それにやさしいんだぞ!」
( ^ω^)「それはどうもだお」
('、`*川「ヒートがお世話になったみたいですね
…どうもすみませんでした」
( ^ω^)「いやまあ、気にしなくてもいいお。
ところで…」
これで僕は二人を巡りあわせてあげたことになる。
ここで僕の役目は終わりのはずだ。
しかしとりあえず本人たちに確認を取りたかったし、
なにより僕は元いたところへ帰る方法を知らなかった。
('、`*川「分かっています。
あなたのおかげで、こうしてまた私もヒートに会うことが出来ました。
本当にありがとうございました」
そういうとペニサスは深々と頭を下げた。
('、`*川「ところで…気が付きませんか?」
( ^ω^)「なににだお?」
('、`*川「まあ、覚えてないのも仕方ないけど…。
小学校の頃の校長先生はおぼえてる?」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:02:08.47 ID:D7JvivNPO
嬉しいわ
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 02:04:04.73 ID:dBgtDPje0
さるってたのか
支援
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:05:39.83 ID:ZgRwdVDo0
( ^ω^)「もちろんだお」
小学校の校長だったのは伊藤先生だ。
そこで僕ははっと気がついた。
(;^ω^)「もしかして、伊藤先生のご家族かお?」
('、`*川「…いえ、私が伊藤です」
(;^ω^)「はい?」
目の前にいる女の子は、十代前半にしか見えない。
この子が伊藤先生?
幼い頃の思い出の中にいる伊藤先生と、彼女が上手く結びつかない。
('、`*川「まあ、分からなくてもしょうがないね。
もうあの頃わたしはもうおばあちゃんだったから」
それを聞いた僕は、
さっきの部屋にあった介護用のベッドとオムツのことを思い出す。
まさかあの部屋の主は。
('、`*川「そうよ、あの部屋にいたのは私。
死ぬ何年か前に卒中で倒れて寝たきり生活になっちゃった」
(;^ω^)「そうだったんですかお…」
全然知らなかった。
まさか、そんな事になっていたとは。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:09:41.31 ID:ZgRwdVDo0
('、`*川「バカな孫にはほっとかれるし、もう散々だったわよ。
死ねたときは本当にせいせいしたわ」
(;^ω^)「おお…」
('、`*川「で、唯一の心残りがこれよ」
伊藤先生は横にいるヒートの襟元を指さす。
('、`*川「ひーちゃんにこれを縫ってあげられなかった…。
それだけがくやしくてねえ…」
(;^ω^)「…はあ」
('ー`*川「そうそう内藤くん、気楽に話してちょうだい。
私もその方が楽だから」
(;^ω^)「すみませんお」
…いつのまにか敬語になっている自分が恥ずかしかった。
ノハ*゚⊿゚)「じゃあお姉ちゃん、先生になれたんだ」
('、`*川「まあね、でもやろうと思ってたことは何もできなかった」
('、`*川「…ヒートみたいな子を救いたいと思ったのに。
教員になっても教頭になっても、校長になっても…。
校内で差別は無くならなかったし、見えないところでいじめが起きてた」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:11:19.84 ID:ZgRwdVDo0
('、`*川「努力したつもりだったんだけどね…」
ノハ*゚⊿゚)「でも、お姉ちゃんはいじめられてる子を助けてあげたんでしょ?」
('、`*川「助けられたのはほんの一握りよ。
あとの子は…」
ノハ#゚⊿゚)「だあああああああああああああああああ!
もういいよお姉ちゃん!」
('、`;川「……ひーちゃん?」
ノハ#゚⊿゚)「お姉ちゃんは出来る限りいじめをなくそうとしたんでしょ?
もう、それだけで十分だよ!」
('、`*川「でも…」
ノハ#゚⊿゚)「でももかかしもあるかあああああああぁあああああああああああ!」
頬がびりびりするほどの咆哮だった。
僕が彼女にあって以来、もっとも大きな叫び声だろう。
そのままの調子で彼女は続ける。
ノハ#゚⊿゚)「たとえ、当人たちを救えなくても!
お姉ちゃんがいじめを止める姿を見て!
周りの人達がいじめはやっぱり良くないって感じれば!
絶対に少しずつ良くなってくんだよ!」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 02:15:24.73 ID:dBgtDPje0
しえん
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:21:45.80 ID:ZgRwdVDo0
ノハ#゚⊿゚)「あなたの行為は決してその場限りのものじゃない!
あなたの意志や善意は共感した誰かに必ず受け継がれていく!」
ノハ#゚⊿゚)「先生なのになんでそんな事もわかんねえんだよおおおおおぉおおおおおおお!!!」
(;^ω^)(……うおっ!)
烈帛の気合を込めて放たれた言葉は、凄まじい風を巻き起こした。
巻き上がった砂が目に入りそうになって、僕は思わず目を覆った。
風が収まる。
それと同時に、肩にぺたぺたと何かが当たるのを感じた。
目をおそるおそる開けると、空から無数の何かがひらひらと落ちてきているのが見えた。
( ^ω^)「これは……花?」
ヒートのワンピースに描かれているのと似た、透き通るように白い花びら。
それが、時期はずれの雪のように砂浜に降り注いでいる。
すぐに浜も、海さえも白く塗りつぶされた。
('、`*川「…そうね。
なんでいままで分かんなかったのかしらね」
ノハ*゚⊿゚)「そうだよ!お姉ちゃんらしくもない!」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:23:46.34 ID:ZgRwdVDo0
('、`*川「でも私の意志なんて…受け継いでくれた人なんて本当にいるのかしら」
ノハ*゚⊿゚)「きっといるぞ!何人かは分からないけど必ず!」
('ー`*川「…そうだといいわね」
伊藤先生はそう言うと、また小さくおじぎをする。
('、`*川「内藤くん、いろいろありがとうね。
あなたのおかげでやっと私たちも帰れるわ」
( ^ω^)「……どこにだお?」
('、`*川「どこって、私たちの故郷によ」
(;^ω^)「それはどういう…」
('、`*川「これで私たちはあなたに紡がれたのよ。
あなたという一本の糸にね。
私たちは、あなたの記憶の一部になる」
ノハ*゚⊿゚)「おじさんの一部になれば、私たちは美府町に帰れるだろ?」
(;^ω^)「なにを…」
ノハ*゚⊿゚)「ほら、荒巻が言ってたでしょう?
私たちはあなたを介して、大きな循環に戻っていくんだよ!」
(;^ω^)「ちょっと待てお!じゃあ、もう」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:27:58.54 ID:ZgRwdVDo0
ノハ*゚⊿゚)「安心しな!私たちにはいつでもまた会える!」
('、`*川「私たちの事をあなたがおぼえているかぎりね」
ノハ*゚⊿゚)「じゃあ、またね!おじさん!」
(;^ω^)「……何が何だか、ちょ、待ってくれお!」
ヒートがこちらに手を振った瞬間、二人の体は花びらに変じる。
二人の体だった花びらは風に吹かれると、その形を一瞬で崩した。
まるで砂山が、波に飲み込まれて消えるみたいに。
( ^ω^)「……ヒートちゃん、伊藤先生」
あっけに取られていると、さっきヒートが叫んだ時とおなじか、
それよりも強い風が僕に向かって吹きつけてくる。
花びらが吹雪のように、僕の体のあらゆるところを打った。
顔一面に細い花びらを吹きつけられ、息ができない。
(; ω )「………!」
そしてその数秒後には僕を体ごと吹き飛ばしてしまいそうな風が吹き、
僕は飛ばされまいとして足を踏ん張った。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:29:51.61 ID:ZgRwdVDo0
―――――――――
―――――
――
…
(; ω )「むぐっ!」
風が、通りすぎていく。
顔をかばっていた腕をどけ、
目を開けると内藤はもといたあの広い部屋に立っている。
砂浜も、夏の太陽も、そして花びらもいつの間にかかき消えていた。
帰ってきた。
内藤は思わずその場に膝から崩折れる。
「仕事」は終わったのだ。
(;^ω^)「………お」
いままで体験していたことが嘘のように、
部屋の中は静まり返っていた。
足元に落ちている古ぼけたワンピースと内藤だけが、
先程までの出来事を覚えていた。
( ^ω^)(よくわかんないけど……)
あの二人が自分の中にいる。
内藤は、なぜだか強くそう感じていた。
そして無言のまま、ワンピースを拾い上げる。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 02:30:33.85 ID:xp8iI9fz0
支援!
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:31:46.04 ID:ZgRwdVDo0
突然熱を持つことも、浮かび上がることもなかった。
もうただの、未完成な一枚のワンピースに過ぎない。
それを証明するように、襟のところからはらりと一枚、布が落ちた。
( ^ω^)「……」
落ちた布をポケットにしまうと、内藤は入ってきたドアに向かって歩き出した。
二人の姉妹の別れと邂逅。
それを見届けた内藤は心にうすい霧がかかっているような、奇妙な無感動状態にあった。
今までの自分なら、涙くらい出てもおかしくないはずなのに……と、内藤は思う。
( ^ω^)「覚えている限り、また会える……かお。
もう忘れられるわけ、ないじゃないかお」
手にしているワンピースに目を落とす。
さて、このワンピースはどうしたものかな。
内藤はぼおっとそう思った。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/11(土) 02:32:26.89 ID:ZgRwdVDo0
六話 おわり
- 2010年12月10日 03:29 |
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:57:34.63 ID:zexpahjL0
ぼっ ぼ、ぼ、僕は、ミ、ミートソーススパゲッティが、す、好きなんだな
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:58:57.63 ID:hp57LGnDO
これは続きかな
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:25:46.75 ID:hp57LGnDO
,,..,, ,,_,,
/ ,' | |3 | |`ヽーっ
l | |⊃ | | ⌒_つ
`'ー┘ └ ┘ └'''''"
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:42:05.25 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ 釣りスレだったんだって。
犬玉まじぶっころ。ぶっころがす。
ξ゚⊿゚)ξとりあえず乗っ取ろう。うん。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:43:22.23 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξの料理講座のようです
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:48:11.97 ID:hp57LGnDO
_,,..,,,,_
/ ,' 3 `ヽーっ
,.-'''`.,l ⊃ ⌒_つ'''-,,
( ,i'。'゙ `'ー---‐'''''" ゙゙'' )
.| ゙-..;;_'' ο ''''',, ''_,,...-'゙|
l,  ̄ ̄ ̄ ̄ .|
'l, ,/
\ /
゙l'-、..,,,,,,,,,,,,..,、-'l゙
゙'-、..,,,,,,,,,,,..、-'゙
l三三三三三三三三三三三三三三三三三|
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:58:38.74 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ どうも、通りすがりのツンよ。
これから初心者向けのお料理講座始めっぞ。
ξ゚⊿゚)ξ とにかく、料理をしたかったらまず道具を揃えること。
それも一定以上の物をそろえると快適に調理ができるわね。
ξ゚⊿゚)ξ 包丁なら貝印ブランド(カミソリとか刃物を扱う会社)
の¥2000~の価格帯の三徳包丁が一本あれば十分でしょう。
定期的にメンテするとベターなんだけど、
砥石で研ぐのなんて習得が面倒だし、研ぎ器を買うのが楽ね。
ξ゚⊿゚)ξ これまた貝印からロールシャープナーってのが¥1500で出てるから、
amazonあたりで探しなさい。
ξ゚⊿゚)ξ あと>>9は全然悪くない。
ξ゚⊿゚)ξ 私も釣られてるし
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 21:59:53.73 ID:4M//xTJf0
やべぇガチだ
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:03:44.85 ID:zexpahjL0
割と本気の料理講座になりそうで期待せざるをえない
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:07:14.33 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ 包丁は、魚を頻繁にさばくとかしない限り、
これで十分よ。
ξ゚⊿゚)ξ 次は鍋ね。
ホームセンターで適当なのを買ってちょうだい。
これはamazonで探すよりホムセンの方が安かったりするわ。
ξ゚⊿゚)ξ 一人暮らしを始める予定の人とかは
ミルクパン、フライパン、2Lくらい入る大鍋辺りを揃えておけば、
料理の幅がドカーンと広がるわ。
ξ*>⊿<)ξ …ドカーン!
ξ゚⊿゚)ξ ちなみにマーブルコートフライパンは地味に地雷だったりする。
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:09:32.39 ID:LfgOKzoC0
ドカーンとかツンさんあざとい可愛い。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:15:24.51 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ ちなみに私が今使ってる鍋は
親からもらったamwayのふるーいやつ。
ξ゚⊿゚)ξ そういえばなんで親はそんなの持ってたんだろう?
信者でもないのに
ξ゚⊿゚)ξ どうでもいいけど。
ξ゚⊿゚)ξ まあ菜箸とか、フライ返しとか、ピーラーとか、
このあたりは100均でそろえてもいいでしょう。
ξ゚⊿゚)ξ ぶっちゃけこの辺の違いは分からないわ。
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:24:18.64 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ 次は調味料よ。
ξ゚⊿゚)ξ その辺のやる気のない主婦とかは、
インスタントダシさえ買ってない人がいるみたい。
ξ゚⊿゚)ξ 嘆かわしいわね。
ξ゚⊿゚)ξ まず、さしすせそ
酒、塩、お酢、醤油、ソイソース
これは絶対に揃って…
( ^ω^) そ、は味噌じゃないですかお?
ξ゚⊿゚)ξ …まず、さしすせそ
酒、塩、お酢、醤油、味噌
これは絶対に必要になるわね。
(;^ω^) (この女…普通に続けやがった…)
ξ゚⊿゚)ξ あと、洋食好きなら赤白ワインと
パセリ、バジル、オリーブオイル。
これがあるとソース作りにも困らないわ。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:25:37.96 ID:hp57LGnDO
そぉい
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:31:37.95 ID:QLG7GTxQO
砂糖醤油
醤油
酢醤油
せうゆ
ソイソース
だろ?
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:32:56.59 ID:KmGKaa/q0
>>30
どこかで見たようなネタをw
あとツンなら「ちょうゆ」って言うはずw
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:24:20.05 ID:puG2blDS0
レシピ通りに作るのに絶対かかせないアイテム
それは計量カップと計量スプーン!
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:35:18.64 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ >>26確かに…これもないと困るわね。
この前、適当に計量してグラタン作ったらえらい目にあったわ。
洋食で目分量はほんとに信頼できん。
ξ゚⊿゚)ξ ワインの話が出たところでちょっと脱線。
ξ゚⊿゚)ξ この時期にピッタリ飲み物の紹介よ。ホットワイン。
サガフロ2にちょろっと出てたわね。
ξ゚⊿゚)ξ 赤ワイン 150ml
水 50ml
グラニュー糖 大さじ1杯
クローヴ 2粒
シナモンスティック 1本
オレンジかミカンの皮 少々
ξ゚⊿゚)ξ これを全部混ぜてレンジでチン。
六十度ぐらいに温めるのがベストね。
芋料理にとても合うし、体も暖まるわ。
ξ゚⊿゚)ξ ハア!?シナモンスチックなんてねえよって?
ξ゚⊿゚)ξ ぶっちゃけなくていいわ。
砂糖もグラニュー糖じゃなくていいし。
オレンジの皮もオレンジジュースで代用可能よ。
ξ゚⊿゚)ξ ただ、クローブだけはあったほうがいいわね。
これがないと締りがない味になるわ。
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:44:33.85 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ 中華素材はまあ、なんとかジャンとかいろいろあるけど、
使う場面が来たら買うくらいでいいと思うわ。
ξ゚⊿゚)ξ 私なんかあまりに使わないもんで
この前豆板醤が冷蔵庫の中でカビてたくらいよ。
ξ゚⊿゚)ξ 鶏がらスープの元、中華だしはあると便利。
紹興酒は日本酒でも代用できるわ。
ξ゚⊿゚)ξ 知らない人はいないかもしれないけど、
味覇はちょーぱないから買え。
めっちくそ便利よ。
ξ゚⊿゚)ξ 正直、去年の冬は味覇と白菜で乗り切った。
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:53:06.34 ID:oiDZgaP30
ああ、ヴェスパーね
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:54:01.02 ID:ObgumgFRO
ありゃあとにかく美味いな
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:46:19.42 ID:KmGKaa/q0
オイスターソースは…?
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:55:06.38 ID:D5Ru7Tcc0
ξ;゚⊿゚)ξ >>37実は私、オイスターソースの匂いがだめなのよ。
でも、炒め物に入れるとすごく旨みが出ていいから
みんなは買うといいわね。
ξ゚⊿゚)ξ 味覇は豚とか鳥のエキスと、
うまみ調味料の塊の固形スープの元よ。
ξ゚⊿゚)ξ チャーハンに入れるもよし、炒め物に入れるもよし。
スープにベースとして使うもよし。
強力な一人暮らしの味方になってくれるわ。
ξ;゚⊿゚)ξ 高いな…と思ったらクックドゥが出してるパチモンを買うといいわね。
値段は半額くらいよ…私なんかも最近はオリジナルの方は買ってないの…金欠だからね。
ξ゚⊿゚)ξ これも味はあまり本家と変わらないというか…
こっちの方が好きって人もいるくらいよ。
本家と比べると、すこし溶けが悪いのが難点ね。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:57:38.23 ID:7vks9tXV0
ウェイバー高いけど量も多いよな
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:57:49.61 ID:hp57LGnDO
それでも俺は安いほうを選ぶぜ!
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 22:59:20.43 ID:puG2blDS0
ウェイパー使って作って野菜炒め作ると
超ラーメンに合う
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:12:49.43 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ ウェイパァーを紹介してからの伸び…。
やはりウェイパァーは神の調味料ということなのかしら
でも>>47のいうように、実は使い過ぎると味覚が破壊されるの。
中毒と言ってもいいわね。
ξ゚⊿゚)ξ この前の話よ、私は素うどんを作っていて、
「なんかスープが味気ないなあ…」と思ったの。
で、ここから記憶が飛ぶんだけど、
気がついたらスープにウェイパァーを入れてたのよ。
ξ゚⊿゚)ξ あれは恐ろしかった…美味しかったけど。
ξ゚⊿゚)ξ …これまで挙げたものは日持ちするものばかりよ。
家に無いものがあった人は少しづつ買い揃えていくと、
とっても食生活が豊かになるとおもうわ。
ξ゚⊿゚)ξ あとごめん、みりんが抜けてた。
煮物とか、タレとか、そういう料理をするときに必須ね。
ξ゚⊿゚)ξ 具体的な包丁さばきとか、そういうのが知りたい人は
下の動画シリーズを見るといいわね。
ξ゚⊿゚)ξ ああ、先に謝っとくわ。ニコニコよ。
ごめんね。
ξ゚⊿゚)ξつhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm2534395
ξ゚⊿゚)ξ 絶望的につまらないけど…案外ためになったから、興味のある人はどうぞ。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:17:38.92 ID:MzTR6DE+0
本みりんと、みりん風調味料の違いの解説はないのかー
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:28:40.20 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ >>54
このまえ、ウスターソースとオイスターソースを
間違えて買った私にその資格はないわ。
ξ゚⊿゚)ξ これから和・洋・中の代表的な料理を取り上げようと思ったんだけど…。
ξ゚⊿゚)ξ 正直もう体力がないです、ごめんね。
ξ゚⊿゚)ξ 偶発的な乗っ取りでノープランだったからネタ切れしたってのもあるし。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:51:29.25 ID:D5Ru7Tcc0
ξ゚⊿゚)ξ さて…じゃあ最後に、これだけ貼っとこうかしら。
ξ゚⊿゚)ξつ(´・ω・`) ショボンは風の料理人のようです
ttp://vipmain.sakura.ne.jp/end/381-top.html
ξ゚⊿゚)ξ もう三年も前の作品だけど
ちっとも色褪せないいい作品よ。読んでない人はぜひ。
ξ゚⊿゚)ξ じゃあ、そういう事でまたどこかで会いましょう。
ξ*゚⊿゚)ξノシ じゃあの~
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:57:10.84 ID:KmGKaa/q0
乙
風のは名作だな
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:08:37.49 ID:IJyEVVv9O
乙
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:09:19.15 ID:Eg6Z62JM0
じゃあの
乗っ取り作品第二弾。
- 2010年11月24日 03:33 |
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
824 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:00:58.87 ID:UmUH74zO0 [1/31]
朝の食事の支度をしていた私は、相変わらず血色の悪いドクオの顔を見て、
その背後に忍び寄り、後頭部めがけて包丁を突き出した。
もちろん極めてソフトに、ではあるが。
川 ゚ 々゚)「ねえドックン~」
川 ゚ 々゚)っ━lニニフ(;'A`)ツンツン
(;'A`)「おい!包丁で人の事をつつくな!」
川*゚ 々゚)「え~大丈夫だよ~先っちょは刃を落としてあるから…」
(;'A`)「そういう問題じゃないのよ…それでなんだよ?」
川 ゚ 々゚)「うん…どこかであそばない?
久しぶりにテーマパークとかドライブとか…」
('A`)「そうだな…最近羽を伸ばす時間もなかったし…よしいこうか」
川*゚ 々゚)「で…どこ行こうか!寄生虫博物館?蝋人形館?」
(;'A`)「選択肢がおかしすぎるだろ…うーん」
めんどくさがりながらも、ドクオは中空を睨んで何か考えてくれている。
私は、こういう彼の真面目なところに惹かれて…結婚したのだ。
ドクオと結婚。もう二ヶ月も前のことだけど、未だにその事を考えるとニヤニヤが止まらない。
川*゚ 々゚)「どぅふふ…」
(;'A`)(なんか今日のクルウ特に気持ち悪いな…)
826 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:03:49.21 ID:UmUH74zO0 [2/31]
('A`)「じゃあ、夢ネズミ王国は?平日だし空いてるだろ」
ネズミ王国…最近の不況でもうすぐ潰れると話題のテーマパークだ。
きっとドクオは、私が人ごみを極度に嫌うの知っていてこのチョイスをしてくれたのだろう。
ドクオの優しさが心にしみる。
川*゚ 々゚)「いいね~じゃあネズミ王国で…何時に出る?」
('A`)「あ~じゃあ十時には出ようか、昼前に着きたいし」
川*゚ 々゚)「分かった…嬉しいよ…ドックン」
(;'∀`)「…ああ、ていうかそのドックンってのやめて恥ずかしい」
久しぶりのお出かけだ、私は足取りも軽やかに台所に戻った。
さっさと朝ごはんを作ったら、急いで準備しなければ。
川*゚ 々゚)「~♪~♪~~♪」
(;'A`)(なぜ鼻歌が暗い日曜日なんだ…)
私は手早く料理を作り、テーブルまで運ぶと自分は寝室に向かった。
828 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:06:36.31 ID:UmUH74zO0 [3/31]
('A`)「おい、食べないのか?」
川*゚ 々゚)「もう食べたから大丈夫、それより支度しなくちゃね!」
('A`)「あと二時間はあるぞ?それより一緒に食おうよ~まだ新婚だしさ~」
…ゴメーンキコエナーイ …バタン
('A`)「…」
('A`)「ドックン寂しい…」
831 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:09:08.40 ID:UmUH74zO0 [4/31]
*――――数時間後――――*
(;'A`)「ふ~、ようやく着いた…俺ちょっとトイレ行ってくるわ」
川;゚ 々゚)「うん行ってらっしゃい…うわ…すごい人…」
(;'A`)「…どこが?閑散としてるけど…やば…漏れそう」
ゲートをくぐると、ドクオはいままで我慢していたのか小走りにトイレを探しに行った。
驚いたことに、ネズミ王国は平日だというのにカップルや家族連れでごった返している。
本当に経営難なのか?見渡しただけでも6人も人がいる。その中にはカップルの姿もちらほら…。
川*゚ 々゚)「ふふっ…」
だが、私たち夫婦より幸せそうなカップルはいない。
まあ、当然ではあるが。
835 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:14:19.17 ID:UmUH74zO0 [5/31]
川 ゚ 々゚)「…ん?」
視界の端に、なにやら不穏な動きを感じた。
そこに目を移すと…ドクオが男に絡まれているのが見えた。
(;'A`)(゚Д゚#)
川 ゚ 々゚)(なんだ…?)
私は二の腕に鳥肌がたつのを抑えきれなかった。
ドクオが、男に、絡まれている。
その事をいま一度認識した途端、顔がちょっと引き攣るのを感じた。
川#゚゚ 益゚゚ )ギギギギギ
839 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:17:39.95 ID:UmUH74zO0 [6/31]
少し離れていたので、会話の内容などは分からなかったが、
見ているとどうやらドクオがぶつかったらしい。
頻りにドクオは頭をさげ、男に謝っている。
……若い男だった。子供と言ってもいい年齢だろう。
(,,゚Д゚)つ('A`;)
さらに傍若無人留まるところを知らない男は、
ドクオの胸ぐらを掴むと前後に体を揺すった。
川#゚゚ 益゚゚ )(私のドックンに…私のドックンに…なんてことしやがる…)
川#゚゚ 益゚゚ )(私だってまだソフトSMくらいしかやってないのに…!
あのガキ…あのガキ…!!)
川*゚ 々゚)(はぁ~でもドックンのあの怯えた顔…可愛すぎる…。
いじめたい!いぢめたい!包丁で!ノコギリで!
ドックンの色白ボディを蹂躙したい!!!)
川;゚ 々゚)(いやいやいや、妄想に浸っている場合じゃ…)
私は、ドクオにつけた傷を優しく舐めるところで妄想を一時ストップした。
危うく、人ごみに紛れたドクオとクソガキを見失うところだ。
840 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:22:50.83 ID:UmUH74zO0 [7/31]
そこに一人の女が慌てた様子で、二人の間に割り込んでいった。
どうやら若い男の彼女らしい。
彼女は男をドクオから引き離すと、ドクオに頭を下げた。
(;゚ー゚)(゚Д゚,,) ('A`;)
(゚ー゚*)(゚Д゚,,).... ('A`;)
女は男の手を引くと、足早にどこかへ去っていった。
…どこかへ去る?いやいやいやいや。
この私が?ドクオを傷つけた人間を?…逃がす?
川# 々 )(に が さ な い !!!)
私は鞄を脇に強く挟みこむと、彼らのあとを猛然と追った。
こんな時に備えて、私は家で支度を整えてきてあった。
どれも番手の細かい砥石で、丁寧に研ぎ上げたものばかりだ。
川 ゚ 々゚)(生まれてきたことを後悔させてやる…)
チャラチャラと、金属が触れ合う音が鞄から漏れる。
……待ってろよ。クソガキ。
841 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:24:34.49 ID:UmUH74zO0 [8/31]
(;'A`)「ふい~まったくひどい目に…あれ…くるう?」
(;'A`)
('A`;)
(;'A`)「え……ドコニイッタノ?」
844 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:26:50.04 ID:UmUH74zO0 [9/31]
(,,゚Д゚)「ごめ、ちょっとションベン行ってくる。待っててな」
(*゚ー゚)「うんなんか買っとく?」
(,,゚Д゚)「ああ…ポップコーンとか頼むわ」
(*゚ー゚)「は~い」
川 ゚ 々゚)「…」
トイレに入ったのを確認すると、私は入り口の前に立った。
いまや男はその無防備な背中を、こちらに惜しげもなく晒している。
(,,゚Д゚)「…」チョロチョロチョロ…
川#゚ 々゚)「…」イライライライラ
やるときに小便をかけられても困るので、終わるまでじっと待つ。
男がぶるっと身震いして、ジッパーを閉める。
そして下を向いて数歩こちらに歩いたあと、ようやく奴は顔を上げた。
845 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:29:21.28 ID:UmUH74zO0 [10/31]
(;゚Д゚)そ「うおっ…びっくりした…」
川 ゚ 々゚)「…なにに?」
(;゚Д゚)「なににって…ここ男子トイレだぞゴルア」
驚いたようなかおしても許さない。
ドクオを怖がらせやがって。
気の弱い彼のことだ…死ぬほどビビっただろうに。
川 ゚ 々゚)「知ってるよそんなの…それはいいからさ…」
私は、背中に隠していたナイフをおもむろに取り出してみせる。
トイレの貧弱な照明でも、このガキを威圧するのには十分だ。
男は最初、私の脇を抜けて逃げようとしたがそう簡単には逃がさない。
じりじりと角まで追い詰めてから、私は個室を顎でしゃくった。
川 ゚ 々゚)っ━lニフ「そこに入れ」
(;゚Д゚)「……え、えっと」
川 ゚ 々゚)「あ?聞こえなかった?早く入れよ個室に」
(;゚Д゚)「あ、はい……すみませんちょっと待って」
男は何を勘違いしたのか、
ヒップポケットに差していた長財布を、こちらにつきだしてきた。
ブランド物の低劣なコピー品。センスまでゴミクズなのか?お前は?
848 名前:デートはいつもこうなようです[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:33:34.72 ID:UmUH74zO0 [11/31]
(;゚Д゚)「すみません…いま五しかないんですけど…」
川 ゚ 々゚)「…ああ、そういう事?買収?」
川 ゚ 々゚)「…なめてんのかおまえ」
私は腰からスローイングナイフを引き抜くと、
思い切り勢いをつけて男の太ももに突き立てた。
(,, Д )「っ…ああああああああああ!」
川 ゚ 々゚)「…あーうるせえなー…」
(,, Д )「てめえぇ!何しやがる!」
川 ゚ 々゚)「だからうるさいって言ってるでしょ?」
痛みに前かがみになった男の髪を掴み、無理やりこちらを向かせると、
持っていたナイフを喉元にグイと押しこんでやった。
(,, Д )「があっ!」
喉の軟骨をぶちぶちと引き裂く感触、実に久しぶりだ。
なにか言おうとした男の口からは、言葉の代わりに血混じりの泡が醜く噴き出る。
(; Д )「ヒュ…グ……ブブダズゲ…」
私に喉を刺された男は、助けを求めるようにこちらに手を伸ばす。
毎回思うのだが、なぜ刺した本人に助けてもらおうとするのか?
まあ、どうでもいいテーマか。
853 名前:デートはいつもこうなようです 申し訳ない閲覧注意抜けとった…[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:36:43.91 ID:UmUH74zO0 [12/31]
とりあえず、ワックスでテカテカの男の髪を撫でながら、
やさしい私は彼に気休めを言ってやることにする。
こうすると捕虜は命令に忠実になる場合が多い。
川 ゚ 々゚)「ダイジョブだよ…それだけじゃすぐには死なないから…」
気管に入った血で溺れるまではな。
そう思うと、クッと勝手に私の喉が鳴った。
川 ゚ 々゚)っ━lニフ「個室に入ればそれ…抜いてあげるから…ほら」
(; Д )「ヒーグ…ワカ…ゲホッ…」
予備用のナイフを新たに取り出し、先で開いている個室を指すと、
男はようやくおとなしく個室に入る。
私はその後を追って、後ろ手に扉を閉めた。
川 ゚ 々゚)「…」
(; Д )
…
857 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:39:37.75 ID:UmUH74zO0 [13/31]
*―――――――――*
(*゚ー゚)(ギコくん遅いな…)
ギコくんがトイレに行ってからしばらく経った。
彼が初めての給料で私を連れてきてくれた、
念願のユメネズ(夢のネズミ王国の略称)だったが、私は早くも後悔し始めていた。
(;゚ー゚)(来て早々に男の人に絡むし、公衆の面前でギコハハハって笑うし…もう)
遊園地デートはこうした相手の欠点を浮き彫りにする。
いつか、そんな事を雑誌で読んだような気がする。
(*゚ー゚)(…まあでもはしゃいでるからこそ、彼もあんな風なのよね)
初めてのユメネズ。
ちょっとくらいはしゃいで、人に迷惑を掛けても…仕方ないことなのかもしれない。
なんといっても私たちは若いのだ、きっと周りも許してくれる。
そうしてベンチでギコくんを待っていると、突然女の人が私の隣に掛ける。
彼女の長い黒髪が、風に煽られて私の頬をくすぐった。
(*゚ー゚)「っ…」
川 ゚ 々゚)「…あら、ごめんなさい」
858 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:41:56.55 ID:UmUH74zO0 [14/31]
女の人はそう言うと、少し私から距離を取った。
気まずいな…と思ったけど、私は構わず声を掛けた。
こういう空気の時は、こうするのが一番だ。
よくよく彼女を見てみると、妙なことに気がつく。
こんなにキレイな人なのに、なんで上下ともに黒ずくめなんだろう?
(;゚ー゚)「さ、寒いですね~」
川 ゚ 々゚)「ええ、もう11月だもんね…誰か待ってるの?」
(*゚ー゚)「…はい、彼トイレに行ってて」
川 ゚ 々゚)「そう…」
女の人がふと顔を上げる。
私がその方向に目を向けると、
さっきギコくんにぶつかった男の人が、こっちに走ってくる。
一瞬身構えたが、隣の女の人は彼に向かって小さく手を振っている。
なるほど、あの人が彼氏なのか。
861 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:43:42.18 ID:UmUH74zO0 [15/31]
(;'A`)ハアハア「やっと…見つけた…どこ行ってたんだよ…くるう…」
川*゚ 々゚)「ゴメ~ン!ドックン!私もトイレに…」
(;'A`)「そうじゃなくて…携帯の電源切ってどっかいっちゃダメでしょ!」
川*>々<)「…てへっ☆」
(#'A`)プンスカ「そんなんじゃごまかされないから…ほら行くぞ。
イリタトリカルパレードがそろそろ始まる頃だ」
川*゚ 々゚)「わー!それわたし見たことないの!」
男の人はこちらに目もくれず、女の人を引っ張っていく。
さっきまでクールだった女の人が恋人の前では(それともダンナさん?)
ぶりっ子に変身…やっぱり女って怖い。
(*゚ー゚)「ふう…」
二人が去っていくと、私の周りには誰もいなくなってしまう。
私は、なんだか寂しくなって携帯をポケットから取り出して時間を見た。
ギコくんがトイレに行ってから、もう三十分になろうとしていた。
さっきまで熱々だったポップコーンは、もう冷め切っている。
863 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:46:20.92 ID:UmUH74zO0 [16/31]
(*゚ー゚)「ん…?」
私は、トートバッグの端に赤いものがついているのに気がついた。
指で拭うととりあえずきれいにはなったが、指にねっとりとした嫌な感触が残った。
(*゚ー゚)(ケチャップかなんかかな…?)
ギコくんが、ここにきてからすぐ買ったフランクフルトに、
べったりとケチャップを塗っていたのを思い出した。
確か、その時ティッシュを出して拭いてあげたっけか。
(;゚ー゚)(その時ついたのかな…。
まったく、ギコくんはホントに子どもなんだから…。)
たまに彼のそういうところを見ると、かなり幻滅する。
でも母性本能を刺激されるからなのか、どうしても嫌いになれない。
(*゚ー゚)(まあ、そういうとこもチャームポイント…なのかな?)
まだ時間はある。もうちょっと彼を待とう。
きっと、すこし迷っているだけなのだ。
肩の力を抜けば、すぐ彼は来てくれるはずだ。
私はふーっと体に残っていた息を吐くと、ベンチに身を預けて目を閉じた。
865 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:49:33.73 ID:UmUH74zO0 [17/31]
*―――――――――*
川*゚ 々゚)( *'A`)
二人で恋人つなぎ。
本当に久しぶりだった。
パレードを見たあと、私たちは近くのレストランに入った。
やっぱり、そこも多くのカップルで溢れかえっている。
(*'A`)
川*゚ 々゚)
ドクオとおんなじものを頼んで、おんなじものを飲む。
そこにあるものは何でも良かった。
彼がいれば、私は満足。
人生でいまが一番幸せな時なんだろうな…きっとそうだ。
だからこそ邪魔は絶対に許せなかった。
866 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:50:26.45 ID:UmUH74zO0 [18/31]
ミセ*。д。)リ
ドクオに近づきすぎたウエイトレス。
事務所で休憩していたところに行って、喉を掻っ切ってやった。
死体は側にあったロッカーに押し込んだ。
若くてちょっと可哀想だったけど、
ドクオが彼女の胸を覗き込もうとしていた気がする。
申し訳ないけど、生かしておくわけにはいかない。
868 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:54:16.06 ID:UmUH74zO0 [19/31]
ξ ⊿ )ξ
ポップコーンスタンドの売り子。
ドクオに楽しげな笑みを振りまいた。
なんていうことをするのだろうか…。
ドクオが、もしクラクラっときちゃったらどうするの?
近くのトイレに誘いこんで後ろから心臓を一突きにした。
狙いが若干外れたせいで、申し訳ないことにそれで死ぬことはなかった。
ブーン、ブーンと耳障りな断末魔をあげているのを見かねて、首の骨をへし折った。
870 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 00:58:02.76 ID:UmUH74zO0 [20/31]
l从∀ノ!リ人
私たちにまとわりついてきたガキ。
迷子?中学生にもなって?嘘つき。
ドクオが迷子センターに連れていこうとしていた。
危ないところだ…私以外の女と二人きりにさせるなんて絶対無理。
代わりに私が彼女の手を引いて、案内してやることにした。
脳天にナイフを突き立てると眼を丸くして死んでいった。
死体は、その辺の茂みに押し込んでおいた。
親に見つかるまでそこで腐ってろよ。
874 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 01:01:40.82 ID:UmUH74zO0 [21/31]
(*'A`)「…いやー久々にあそんだな」
川*゚ 々゚)「たのしかったね~」
帰り道、ぼんやりと夢の中にいるような気分でいた。
幸福感で全身が麻痺する感覚。ドクオとの初デート以来だ。
暖かな春の陽だまりにいるような幸せを、私とドクオは噛み締めていた。
…あの不愉快な放送の前までは。
「(-@∀@)『速報が入ってきました』」
カーナビの小さな画面から、
夕方のニュース担当のアナウンサーが若干興奮したような口調で、
ある取るに足らない男の死を伝え始めた。
「(-@∀@)『先程、午後四時頃、ビップ市にあるテーマパーク、夢のネズミ王国で、
男性が顔などを鋭い刃物のようなもので、めった刺しにされているのが見つかりました』」
(;'A`)「え…」
ドクオの視線は、テレビに釘付けになる。
ドックン…そんなのはどうでもいいでしょ?
どうせどこかの汚い学生が死んだだけでしょ?
「(-@∀@)『被害者は都内に住む男子高校生で、病院に運ばれましたがザッががが、…ザッ死亡が死亡が確認されました。
高校生は両目ともにザザッ―――えぐりえぐり取られており、このことから警察は殺人事件とみて、捜査を…』」
(;'A`)「まじかよ…ついさっきじゃんこれ」
875 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 01:04:39.60 ID:UmUH74zO0 [22/31]
ああああああああ!
どうでもいいでしょうがそんなの!
それよりも私をみて!私を!
川 々 ) 「…」
私はナビに手を伸ばすと、テレビをOFFにした。
突然のことにドクオは私を睨んだ。
(#'A`)「ちょっと!なにすんだよ!いま…」
何か言いかけたドクオの口を、唇で塞ぐ。
彼の口の中は緊張しているのか、ひどく乾いている。
(; A )「いきなりなにすんだよ…あぶないだろ…運転中に」
川* 々 )「…なんか私…したくなっちゃった」
( A )「こんなとこで…」
878 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 01:08:29.43 ID:UmUH74zO0 [23/31]
私は、構わず彼のジッパーに手をかける。
そのままするりと布地をくぐり抜けて、私の指が彼に届く。
川* 々 )「いいでしょ…」
私は、シートベルトを外して彼の膝にしなだれかかった。
ここから、上目づかいすれば…いつもドクオは簡単にオチる。
( A )「…うん」
困ったような彼の茶色い目が、まっすぐ私を捉える。
そういえば、と私はいまさらのように思った。
川*゚ 々゚)(あの子…トートに…入れてあげたの気づいたかな…)
私とドクオを乗せた車は夕さりの高速を滑るように走っていく。
見えるものすべてがオレンジ色に染まり、まるで古いトンネルの中にでもいるようだ。
ドクオと二人だけで走る、どこかの山の中にあるトンネル。
そこはどこにも辿りつかない、私達夫婦の二人だけの特別な場所。
ああ、このまま永遠に家に着かなければいいのに。
なんとなく、私はそう思っていた。
880 名前:デートはいつもこうなようです 閲覧注意[] 投稿日:2010/11/15(月) 01:09:28.37 ID:UmUH74zO0 [24/31]
\ヽ, ,、
`''|/ノ
.|
_ |
\`ヽ、|
\, V
`L,,_
|ヽ、)
.|
/ ,、
/ ヽYノ
.| r''ヽ、.|
| `ー-ヽ|ヮ
| `|
ヽ, .|
ヽ , -― 、 ノ
/ 丶
/ ヽ
. i _,,_ル,,rョュ 、 i
| ィ rっフ , 弋ミア |r,
_| "''"~ ハ ハ .i;{
} ; / " ' ヽ |j
λヽ r―''"入 |
`"i 廷廾ニツ j
i、  ̄ .ノ おわり
` ー ,,___,,. ノ
885 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 01:13:50.52 ID:UmUH74zO0 [25/31]
以上、シリアルママを見ながら思いついた川 ゚ 々゚)総合記念作品でした。
はいおれー第二弾
自分でもなんでヴォルデュモールAA貼ったのか上手く思い出せない。
閲覧注意の件も含めて、いろいろな意味で本当に申し訳ない。
川 ゚ 々゚)をもっと使って欲しいとくるうで総合を立てても、
誰もくるう主人公で書かなかったので腹いせでやった。
この件については、反省していない。
- 2010年11月24日 03:10 |
- 自作品まとめ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0