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問合せ
( ^ω^)ブーンはフォースを駆るジェダイのようです
SHOT-U
16 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 22:58:45.42 ID:fQ9bPFCBO
ξ;゚听)ξ「はぁ、はぁ、はぁ」
( 〓仝〓)「いたぞ! 掃討しろ!」
ξ#゚听)ξ「っなろ!!」
(;〓仝〓)「グアッ!」
ξ;゚听)ξ「はぁ、はぁ……死んだ。これで四人殺した……」
Episode4:アーバンフォウドの銀狐 〜SHOT-2〜
砂塵が舞う戦場の中。青白く光る剣を握る少女が走っていた。
泥の壁で作られたのであろう廃墟群の中で金髪のポニーテールを揺らす彼女は見習いジェダイのツン=E=アシュクロフトである。
ξ゚听)ξ「どうなってるのよ。ブーンは何処に行ったの?」
辺りに殺意が無いかどうかフォースを探りながら、ツンは戦場の途中で離れ々れになった師に悪態をつく。
PMC査察の為に辺境惑星に降り立ったまではいいが、敵が無差別に落としたミサイル爆撃のせいで、当初の計画は水泡に帰してしまった。
つまるところ、迷子である。
19 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:03:09.59 ID:fQ9bPFCBO
ξ゚听)ξ「馬鹿ブーン。私ひとりでどうやって任務を遂行すればいいの……!!」
(メ〓仝〓)「うぐッ!」
逃げ込んだ廃墟の中にPMC兵が飛び込み、ツンに銃口を向けた。
引き金が動き、バッテリーに蓄積された閉殻イオンが高圧縮された後、赤い閃光となってツンに襲い掛かる。
が、ツンが展開した光刃は向かって来たビームを偏光すると、攻撃を加えたPMC兵は返り討ちにされてしまった。
ξ゚听)ξ「ブラスターではなく手榴弾を使うべきだったわね」
ジェダイの代名詞とも言えるライトセーバーは、四方八方から飛んでくるビームを弾き返す武器として世間では認知されている。
が、ツンの持つそれは外見こそライトセーバーだが中身は完全な別物だった。
エレキタクトと呼ばれる警備棒の延長線上にあるような防衛武器で、パワーセルからエネルギーを取り出すライトセーバーとは構造からして根本的に違っているのだ。
しかし、出力の調整次第では敵を気絶させたり、今のツンのようにライフル程度のビームなら弾き返す事は可能である為、非殺傷兵器ながらもそれなりの脅威に対抗することが可能である。
20 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:05:42.27 ID:fQ9bPFCBO
ξ゚听)ξ「パダワンになってから一年以内はこのタクトで頑張らなきゃいけないなんて……
理屈は分かるけど、戦場じゃ割に合わないわよ」
ライトセーバーは柄以外に質量が存在しない剣である。
あるいは刀身に重さがないと言い換えてもよいだろう。
慣れない者が振るえば誤って自分の手足を切り落としかねないこの武器。使い熟すには最低でも半年以上はかかる。
ジェダイが持つライトセーバーは全てオリジナルであり、同じ物は一つとしてこの世に存在しない。
ジェダイは自分のライトセーバーを自力で組み立てるが、剣の核とも言えるアデガンクリスタルは一個辺りの生成に途方もない時間を要する為、
一歳以上のパダワン、もしくは何かしらの理由でライトセーバーを破壊されたジェダイは予備の剣を一時的に与えられるシステムとなっている。
無論、零歳パダワンのツンにはまだ与えられていない代物だ。
21 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:09:05.73 ID:fQ9bPFCBO
ξ#゚听)ξ「くっ。こんな事なら量産ライトセーバーを勝手に持ってこれば良かったわね。こんな玩具じゃいつか限界が来るわ」
倒したPMC兵から使えそうな道具を奪ったツンは潜んでいた家から移動を開始する。
任務があるので戦線を離脱するわけにはいかないが、フォースの痕跡を追ってブーンの居場所を捜すことなら出来るかもしれない。
ジェダイオーダーを絵に描いたようなあの男はツンがいなくとも任務にせっせと勤しんでいることだろう。
こちらから捜さなければ当面ブーンと合流することは叶わない。
ξ゚听)ξ「(一対一……いえ、一対三までなら勝てる自信はあるけど、それ以上の数を相手にしたらまず助からないわ)」
ξ--)ξ「(ここは慎重に行動しないと)」
22 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:12:00.91 ID:fQ9bPFCBO
ジェダイの任務は査察・仲介・護衛の三役に分かれることが多い。
PMCを始めとする銀河各国の企業が法を犯していないか監視し、惑星間でいざこざが起きれば和解の場を設けてその進行を担い、要人が命の危機に晒されれば陰から見えぬ盾となる。
もはや警察や軍隊とさほど変わらぬサービス業だ。
新生ジェダイオーダーは良く言えば銀河共和国の守人。悪く言えば体の良い何でも屋成り下がっていた。
それが果たして良いことなのか悪いことなのか、新米のツンにはまだよく分からない。
ξ゚听)ξ】「コール。聞こえる? こちらツン=E=アシュクロフト。ナイトウと連絡が取りたい。応答せよ」
ξ#゚听)ξ「……ファッキン。まだ電波妨害が機能しているの? 役立たずめ!」
衛星軌道で待機しているであろう味方艦にすら連絡が取れないまま、ツンは袋小路の中へと侵入した。
大通りは周囲を制圧したPMCが徘徊しているので、こういった入り組んだ通路を進むことが単独任務では吉とされているのだ。
23 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:15:36.35 ID:fQ9bPFCBO
訂正:
新生ジェダイオーダーは良く言えば銀河共和国の守人。悪く言えば体の良い何でも屋に成り下がっていた。
ξ゚听)ξ「(国と大型宗教団体にそれぞれ雇われたマイナーPMC同士の戦い……ジェダイとはいえ、戦場を歩き回って殺されたのなら文句は言えないわ)」
戦場における負の部分を見る為にジェダイの戦場査察は極秘に行われる。
法人・民間に関係なく抜き打ちで戦場に訪れるので、PMCはジェダイと一般兵との区別をつけることが出来ない。
正式な手続きに基づいて発生した戦場における殺人は違法にならない為、
査察を行うジェダイは自身の命を守り、かつ、与えられた任務を遂行するだけの実力を持たなくてはならないのである。
ξ゚听)ξ「今回は捕虜の扱いと非人道兵器の使用の有無についてだったわね。とりあえず奴らの野営地まで向かってみよう」
太陽は既に真上を通過して山向こうに呑まれかかっていた。
ただでさえ光が当たり難い裏道は益々暗くなるわけだが、隠密行動を行いたいツンにとってはむしろ好都合であった。
もっとも、暗視装置や動体感知システムが普及しているこのご時世で、暗闇に紛れての行動に大したアドバンテージなど得られないかもしれない。
26 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:19:37.31 ID:fQ9bPFCBO
しかし、多額の免税権を持つ法人PMCや大手PMCでもない軍事企業が、末端の兵にまでそのような贅沢品を与えているとも思えない。
羽を持たない軍艦が宙を飛び、目にも止まらぬ光の弾丸が撃ち乱れるこの時代においても戦闘補助武装や衛生兵は貴重品なのだ。
[ 〓益〓]「識別不明のアンノウン発見。貴様、そこでトマレ」
ξ;゚听)ξ「ぐっ。しまった。見つかった」
目的とする基地まであと少しという時、黒銀色のドロイドがツンの前に立ちはだかった。
図体の大きい二足歩行型の強化型バトルドロイドだ。
腕部に固定されたブラスターを構えながら、ドロイドは舌打ちをするツンに近付いていく。
27 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:23:31.73 ID:fQ9bPFCBO
[ 〓益〓]「この近辺はプレイン・マンティス社の制圧圏内ダ。貴様、所属部隊の名前を言エ」
ξ゚听)ξ「ある人物を探している途中なの。あなた、私の先生を知らないかしら」
[ 〓益〓]「センセイ? センセイという固有名詞は私のデータに存在しなイ。あ、貴様、我が社の兵ではないナ? 貴様を逮捕すル」
ξ#゚听)ξ「断固拒否する!!」
ツンの言動に不信を感じたドロイドはツンを捕縛しようと腕を伸ばす。
剥き出しの金属骨格を回避したツンはエレキタクトを起動させると、そのままドロイドの胸に突き刺した。
[ 〓益〓]「ムダな抵抗はやめロ」
ξ;゚听)ξ「ぐっ。やっぱりダメか」
本来ならばドロイドの心臓であるジュネレーターを貫いていたであろう光刃は、頑丈な装甲板の表面で停止していた。
エレキタクトとライトセーバーでは保有する熱量が天と地ほどの差がある。
タクト程度のエネルギーではドロイドの鎧を断ち切ることは不可能だ。
例え見た目が同じでも、中身が違うのだから同じ戦法が通じるわけがない。
29 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:27:16.89 ID:fQ9bPFCBO
[ 〓益〓]「抵抗するなら射殺すル」
ξ゚听)ξ「(落ち着きなさいツン。奴の撃つビームを利用するのよ。心眼を開けば死線は読める!)」
赤い閃光が炸裂する。
狭い通路で器用に剣を動かしながら、ツンはそれを弾き返す。
光速に近いビームを細い刀身で受け止めることは至難の技である。
飛び道具を持たないジェダイはライトセーバーの偏光性を利用しなければ複数の敵を一度に相手にすることは出来ない。
プロ野球選手の投げる球をバットで弾いて空き缶に当てるようなものだ。
一見して最強の攻守一体兵器にも見えるライトセーバーも、扱う者が未来視と高反射神経を持つ超人であるが故の物だということを忘れてはいけない。
[ 〓益〓]「ムダだ。我が鎧は耐ビーム装甲で作られている」
ξ゚听)ξ「シールド張ってなきゃいつかは壊れるわよ!」
30 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:29:58.53 ID:fQ9bPFCBO
ツンはドロイドの演算装置から導き出される思考ルーチンを読み取りながら、必死にビームを偏光し続ける。
が、どこにどういう攻撃が飛来するかという未来視を行うのが今のツンには手一杯の芸当で、ビームを弾くことは出来てもそれをドロイドに当てることが叶わないでいた。
普段の戦闘ならばツンは自分の身を守っているだけで、ブーンが全ての敵を片してくれていた。
しかし、今回は頼りになる師が不在である。
立ちはだかる敵は己の手で排除しなくてはならない。
ξ#゚皿゚)ξ「こんにゃろ!」
一気に敵の懐へと飛び込む。
ブラスターでは対処しきれないと感じたドロイドは格闘形態へとモードを切り替え、ツンを叩き潰そうと拳を振り上げる。
32 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:35:13.68 ID:fQ9bPFCBO
ξ#゚皿゚)ξ「こんにゃろ!」
一気に敵の懐へと飛び込む。
ブラスターでは対処しきれないと感じたドロイドは格闘形態へとモードを切り替え、ツンを叩き潰そうと拳を振り上げる。
当たれば骨折では済まされない破壊的暴力を紙一重で避けたツンは、自分の全体重をかけてドロイドを蹴飛ばした。
[ 〓益〓]「ウゴッ!」
ξ゚听)ξ「ビームが駄目ならこいつはどうかしら」
[;〓益〓]そ「手榴弾。しマっ―――――」
仰向けに派手に転倒したドロイド。
その胸に放り込まれた丸い物体はツンが先程倒したPMC兵から奪った物理手榴弾である。
ξ゚∀゚)ξ「ホーッホッホ! ジェダイが剣以外の武器を使っちゃいけない掟は(たぶん)ないもの。文明万歳!」
爆発。
ほぼ零距離で炸裂した手榴弾は、高い圧力と鋭利な破片を撒き散らしてドロイドの装甲板を大きくえぐった。
煙を上げたジュネレーターが機械人形の胸に露出する。
決定打を与えるチャンスだ。
33 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:38:28.32 ID:fQ9bPFCBO
[ 〓益〓]「貴様を処刑する」
ξ゚听)ξ「断固拒否する……ってさっきも言わなかったかしら?」
[メ〓益〓]「ガッ! ォオオオオオオオオ!?」
敵に次の手を与えず。ツンは最高出力状態のエレキタクトをドロイドの露出したジュネレーターに突き刺した。
刀身に流れていた電子群が抵抗の少ないドロイドの配線を縦横無尽に走り回り、次々と機械の生命線を侵していく。
トーンがズレた電子音を鳴らしたドロイドは、暫く痙攣した後、黒い煙を四肢から漏らしたまま静かになった。
ξ;゚听)ξ「よし……勝った……」
汗だくになったツンはドロイドが機能を停止したことを確認すると、壁にもたれてぐったりと座り込んでしまう。
ほんの十数秒の戦いで相当量のスタミナを消費してしまった。
体力とフォースの使い方が適切でない証拠だ。
35 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:41:30.03 ID:fQ9bPFCBO
ブーンと出会う以前。一撃必殺を信条に掲げて森の中を生きてきたツンはらフォースの出力や配分などろくに考えず、気が向くままに使ってきた。
一撃辺りの火力は大型の肉食動物から身を守るのに十分なものだったし、実際、それで上手く生き延びることができていた。
だが、それを連発できるかと問われれば応えはNOである。
戦場は決闘場ではない。
対峙する敵ひとりを倒せばそれで終わりというわけではない。
ジェダイが戦場で生き残るには、いかに自分のフォースを最小限に抑えて戦うかに尽きるのである。
零か百かの戦いをしてきたツンにとって、生の戦場での振る舞いは酷な条件だった。
ξ;--)ξ「ちょっと休憩しよう。乱れた精神じゃフォースの運用に支障をきたしてしまうわ」
ξ゚听)ξ「早くライトセーバーが欲しいなあ……そうしたら、こんな面倒な戦いなんてしなくて済むのに」
36 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:44:49.37 ID:fQ9bPFCBO
気付けば日はすっかり暮れている。
悪意としか考えられない不味さの携帯食料を口に詰め込みながら、ツンはぼんやりと夜空を見上げた。
今日中にブーンと合流することは無理だろう。
最悪の場合、戦線を離脱して味方艦に拾ってもらうしかない。
ξ゚听)ξ「(でも、そんなことをしたらブーンに怒られるだろうなあ)」
ブーン。
ナイトウ=ホライゾン。
あの男がダークサイドを異様なほどに嫌悪していることは未熟者のツンでもよく分かった。
また、ツンは自分がブーンと出会う以前に使っていたフォースが暗黒面に通じていることも知っていた。
勿論、それはジェダイとして修業する合間に誰に言われるでもなく気付いたことだが、ツンが少しでも力んだフォースを使おうものなら、ブーンは煮油をひっくり返したような叱咤を彼女にしたものである。
ブーンはツンに厳しくも優しく接してくれていたが、あの人懐っこい細目の奥に弟子への愛情が一片たりとも無いことをツンは見抜いていた。
37 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:50:16.86 ID:fQ9bPFCBO
―――――ブーンはツンを利用してシスをおびき寄せようとしている―――――
弟子を取ることをあれほど嫌っていたジェダイが、暗黒面に方足を突っ込んでいた人間を進んで引き取ったのである。
どのジェダイも口にこそ出さなかったが、ブーンとツンの関係に師と弟子の絆があるとは思えていないに違いない。
ブーンがツンを鯛を釣るための小海老にしようとしていることを誰も咎めないし、その確証もなかった。
ξ゚听)ξ「……暗黒面……か……」
適当に見つけたボロ家に腰を落ち着けたツンは、胸元にしまった銀鎖を取り出した。
鎖の先にはダイヤモンド状に加工された親指ほどの黒い宝石が取り付けられている。
38 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:52:52.65 ID:fQ9bPFCBO
ξ゚听)ξ「母さんが私に残してくれた物。ブーンに内緒で持ってきた奴だけど……」
今や何処にいるとも知れない、或いは死んでいるかも分からない母親がツンに唯一残していった物がこの宝石だった。
名をアデガンクリスタル。
ライトセーバーに搭載されたパワーセルを制御し、ジェダイに光の宝剣を授ける希少な鉱物だ。
ξ゚听)ξ「(ジェダイはアデガンクリスタルを自力で生成しなければいけない。ライトセーバーはクリスタル一つでも機能するけど、私の思い描く剣に必要なクリスタルは三つ)」
ツンにフォースの技術を最初に教えたのはツンの母である。
ならば、母が残したアデガンクリスタルをライトセーバーに組み込むことは果たして悪なのだろうか。
ブーンに聞いたところで返ってくる応えは分かりきっている。
師に相談するつもりはツンにも毛頭なかったが、ブーンに見離されてジェダイの道から外れることだけは避けたかった。
40 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/22(土) 23:56:51.51 ID:fQ9bPFCBO
ξ゚听)ξ「まあ。クリスタルが完成するまであと半年以上はかかるし、気にする必要は――――――!?」
弾けた。
ツンの白い腕が。
高温の閉殻イオンが体内に侵入することで血液・細胞中の水分が一斉に気化。肉体の一部が水蒸気爆発を起こしたのだ。
この現象は、つまりビームに被弾したということになる。
ξ; )ξ「ア゙ッ!? ガァアアアア!?」
バタバタと腕から落ちる血液。
無くなった左手を押さえながら、ツンは激痛で錯綜する神経を襲撃犯の検索へと必死に傾ける。
再び爆発。
今度は右脚の腿をやられた。
立て膝をつきながらエレキタクトを起動したツンは、歯を食いしばって窓から外へ飛び出す。
着地の瞬間に身体の何処かで何かが折れる音が聞こえたが、それに構わず走り続ける。
今はこれ以上攻撃を許さないことが先決だ。
42 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:01:10.59 ID:Ls5tWoMIO
ξメ# )ξ「(息っ……が出来ない……これは致死のダメージ量……逃げ…なきゃ!)」
上へ下へと振れる視界の中で本能だけで飛来するビームを弾き返す。
赤く染まった骨の一片が脚から飛び出し、上手く進むことが出来ない。
と、背後から複数の気配を感じた。
タクトを振り切る前に背中を蹴潰され、硬い地面にツンは頭を打ち付けた。
見れば暗闇の中に何人かのPMC兵がツンの周りを囲んでいる。
(1〓仝〓)「やっと見つけたぞこの糞餓鬼」
(2〓仝〓)「俺達の仲間をさんざん殺ってくれたな。どう償ってもらおうか……」
ξ#-听)ξ「舐めんじゃないわよ。この程度の傷で……グっ!?」
立ち上がりかけたツン。
今度は頭を踏み付けられ、地面に接吻させられる。
そのまま鳩尾に数度の蹴りを入れられると、胃袋に詰め込んでいた物が全て口から飛び出てきた。
耳障りな吐瀉音を漏らすツンの額に容赦なくブラスターが向けられる。
ξメ゚听)ξ「…………」
(3〓仝〓)「ジェダイだか何だか知らんが、ここは戦場だ。国も人も関係ない。死ね」
(1〓仝〓)「まあまあ。落ち着け。この女は俺達の仇なんだ。直ぐに殺してしまっては―――――」
ξ;メ )ξ「アッ゙! ギャアァアァァアアアァアアア!!」
(1〓仝〓)「――――つまらんだろう?」
44 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:03:41.42 ID:Ls5tWoMIO
左手の右脚を潰され、まともに動けなくなったツンの腹に銃剣が突き刺さった。
引き締まった柔らかい腹を突破した銀剣はそのまま幾つかの内臓を貫き、背中越しの地面へ到達する。
ξ;メ )ξ「ヤ゙、ヤめ゙ッ……てッ゙!」
(2〓仝〓)「黙れ。このまま少しずつ剣をずらして心臓を斬り刻んでやる」
興奮状態の脳が分泌するアドレナリンですら、この激痛をごまかすことは出来なかった。
チェンソーを身体の中に入れられたような感覚に泣き叫ぶツンを、兵達は容赦なく切り刻んでいく。
戦闘行為において過度の暴力や拷問は元老院が定めた戦争法によって禁じられている。
当然、PMC兵達がツンに行っている”攻撃”は完全な違法行為だが、それを取り締まる肝心のジェダイがこの状態では形無しだ。
法は執行する者がいるからこそ機能する。
45 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:06:20.93 ID:Ls5tWoMIO
ξ;メ )ξ「アッ……が……」
(2〓仝〓)「泣き叫ぶ気力も無いってか。そろそろ楽にしてやろう」
ξ;メ )ξ「…………」
(1〓仝〓)「汚いな。内臓が飛び出てるぞ」
(3〓仝〓)「明日になれば烏が綺麗にするだろう。おい、お前撃てよ」
(2〓仝〓)「ああ」
ガチャリ、とブラスターのビームカートリッジが再装填される。
大量失血によるブラックアウトの中で、ツンはぼんやりと自分の目玉に向けられた黒い穴を見つめた。
ξ;メ )ξ「…………」
嗚呼、こんな所で自分は死ぬのか。
なんて短い生涯だったのだろう。
なんて下らない人生だったのだろう。
46 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:08:03.46 ID:Ls5tWoMIO
ξメ )ξ「…………」
やりたいこともあった。
一人前のジェダイにもなりたかった。
初めての友人もできた。
(2〓仝〓)「死ね」
そして、なにより。
母との約束を―――――――――――
(((3;〓仝〓)))「うぎゃああああああ!!」」
女の最期を見下ろしていたPMC兵の一人が、突然腹を押さえながら地面の上をのたうちまわった。
何がおきたのかと慌てる傍らの仲間も瞬時に自分の異変に気付く。
(1;〓仝〓)「(なんだ? し、心臓が……)」
脈打つ心臓がまるで何かに掴まれているような感覚だ。
巨人の掌の中に分の心臓がすっぽりと入ってしまったような恐怖が身体を襲う。
少しずつ近付く圧迫感。
やがて、
(1;〓仝〓)そ「ウっ……グ……」
バン。という音と共に心臓が破裂した。
48 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:12:31.37 ID:Ls5tWoMIO
(2;〓仝〓)「おい! どうした。何が起きた!?」
仲間二人が悶絶しながら地に崩れる様を見た最後の兵士は直ぐに気付いた。
確実なのは、これは第三者による攻撃ではないこと。
何故ならこれは”夢”であり、夢の中には自分達とこの死に損ないの女ひとりしかいないからである。
(3〓仝〓)「まさかこいつ……う!!」
ξξ#゚∀)「ハーハッハァ!! 死ねェ!」
瀕死の少女が俯せになったまま血まみれの人差し指をPMC兵に向ける。
再び、バン、という破裂音。
奪った腕を返せと言わんばかりにツンから放たれたフォースがPMC兵の細胞を侵食し、爆発する。
51 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:16:00.63 ID:Ls5tWoMIO
(3;〓仝〓)「ぐぅ。腕が……(これはフォースショック? しかし、これ程までの火力は……)」
ξメ )ξ「貴様。よくも私の聖杯を傷付けたな。打ち殺してやる!」
(3;〓仝〓)「小癪な。貴様、何者だ!」
ξメ゚ )ξ「万物の理力の前に血泥へ沈め!」
(3;〓エ∴';・.,「ガッ。ギャ!?」
三度、バン、という破裂音。
今度はプラスチールのヘルメットごとPMC兵の側頭部が爆発した。
糸の切れたマリオットのように地べたにへたり込む敵を見て、そこでやっとツンは意識を取り戻した。
ξメ゚听)ξ「……?……?」
三人の敵を抹殺した過程景をツンはよく覚えている。
だが、先程までこの瀕死の身体を動かしていたのは自分ではなかった。
ツンはフォースを集中させるだけで敵の腎臓や心臓を潰したり、ましてや頭部を破裂させるような術など心得ていない。
どうやったのかも何をしたのかも分からない。
誰かに操られたかのような、そんな感触だけが肢体に残る。
52 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:19:07.51 ID:Ls5tWoMIO
ξ; )ξ「ウェッ。ゲェ……ヴ……」
途端、吐き気を催した。
身体が麻痺し、あれ程までに熱かった身体が今度は氷海に沈んだかのように寒くなる。
血を流し過ぎたのか?
肉体が再起不可能な程度に達したのか?
敵は駆逐したが、この怪我ではまともな治療をしたとしても助からないだろう。
(3〓エ∴';・.,「やれやれ。肉体が拒否反応を起こしたようじゃの。実力に見合わない力を使うからそうなる」
死体が喋った。
いよいよ意識が遠退き始めたツンの前で、頭を砕かれたPMC兵がゆっくりと立ち上がる。
タチの悪いB級ホラー映画でよく見るような光景だ。
(3〓エ∴';・.,゚ノi「いや。しかし驚いた」
(3〓エ∴'・ー゚ノi「まさか、わっちの夢がこうまで干渉されるとわのう」
(3エ・,゚ ー゚ノi「小娘のくせにやりおるわ。ここまで抵抗したジェダイは……」
イ从゚ ー゚ノi「ギコ坊や以来じゃな」
54 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:20:46.48 ID:Ls5tWoMIO
立ち上がった骸がぐにゃぐにゃと気持ち悪い動きを見せたかと思うと、あっという間に一人の人間が模られた。
現れた人間は豪華絢爛な十二単をだらし無く着崩し、手には銀色のキセルをぶら下げている。
ツンやブーンと同じヒトガタの体型だが、頭から生えた狐のような耳と、これでもかと言うほどに開けられた大きな胸の谷間は見る者の目を嫌でも引くだろう。
賢人。妖狐。魔女。遊女。
銀髪。赤眼。白い肌。
白とも黒ともつかないイメージが女の周囲に纏わり付いている。
イ从゚ ー゚ノi「じゃじゃーん☆ 薄汚い死体からとびっきりの美女に変身じゃ。驚いたかえ?」
ξ )ξ「…………」
イ从゚ ー゚ノi「あれ?」
从´ヮ`从ト「ギン様。ツン様にかけた幻影を解いてやりませんと」
イ从゚ ー゚ノi「おおタツキ。そうじゃそうじゃ。ほれ、小娘よ。朝だぞう」
56 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:22:59.80 ID:Ls5tWoMIO
ギンと呼ばれた着物女は、いつの間にか自分の傍らに立っている中年女性の助言に手をポンと打ち、
白目を剥いたまま動かなくなったツンの頬を軽く突いた。
ξ゚听)ξ「……え?」
イ从゚ ー゚ノi「やあ。気が付いたか」
ξ゚听)ξ「ここは? 私は死んだ筈じゃ……」
イ从゚ ー゚ノi「死んだとな! 何を言うておる。お主はこのように元気に立ってておるではないか」
ξ;゚听)ξ「?」
从´ヮ`从ト「ギン様は人が悪うございます。ちゃんと説明してやらねばツン様も分かりますまいて」
ギンの側に立つ着物姿の中年女性がクスクスと笑い、ツンはそれに苛立つ。
何せ状況がよく分からない。
あれほどまでに痛めつけられた体が今では何もなかったかのようにピンピンしている。
これは治癒だとか修復だとかいう部類の現象ではないようだ。
もちろん怪我や傷痕なども見当たらない。
57 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:25:55.17 ID:Ls5tWoMIO
ξ゚听)ξ「何がどうなっているの? 私はブーンとPMCの査察に行った筈じゃ……」
イ从゚ ー゚ノi「ナイトウは”隣”で待たせておるよ。単刀直入に言うがの。お主が今まで見てきたものは全てわっちが造り出した幻よ。
あの怪我も敵兵もわっちの頭の中で築いたファンタジーさね。死が与えられない痛みは苦痛じゃったろうない」
从´ヮ`从ト「よく思い出して下さい。ツン様が最期に乗った船の名前はなんでしたでしょうか? ツン様はどういった目的でブーン様と宇宙へ出られたのでしょうか?」
ξ゚听)ξ「…………」
ξ゚听)ξそ「あ! そうか、私はブーンに呼ばれてエニグマに乗ったんだ。何処に行くかは教えて貰えなくて……疲れたから少し眠って……」
イ从゚ ー゚ノi「お主の記憶の改ざんはその辺りから起きたようじゃのう。っていうか改ざんしたのわっちじゃけど」
ξ;゚听)ξ「じゃあ今までの戦いは全部、夢?」
从´ヮ`从ト「ごめんなさい。幻とはいえ、痛い思いをさせてしまいました」
59 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:29:41.40 ID:Ls5tWoMIO
ぐにゃりと空間が歪み、荒れ地の戦場が木組みの和室へと変貌した。
五十畳近くある豪華な広間だ。
そのど真ん中に立つツンは目まぐるしい環境の変化に酷く狼狽する。
痛みだけではなく、自分が走り回っていた地ですら幻だとは思わなかった。
では、今この瞬間もまだ夢の中なのだろうか?
イ从゚ ー゚ノi「安心せえ。これは現実じゃ。マナの扱いを心得れば水溜まりを大海原に見せることも、巨人を蟻と錯覚させることも可能なんじゃな。よう覚えておくんじゃ」
ξ゚听)ξ「マナ?」
イ从゚ ー゚ノi「お主らがフォースと呼んでおる力のことじゃよ」
从´ヮ`从ト「念のため申しておきますと、ここは辺境惑星ではなくA級惑星アーバンフォウドにございます。ツン=E=アシュクロフト様。マナ・テンプルは貴女の来院を歓迎します」
60 :
◆909zxcTVWc
:2009/08/23(日) 00:31:12.60 ID:Ls5tWoMIO
ξ゚听)ξ「マナ・テンプル……聞いたことがあるわ。太古の時代にジェダイと別離した寺院の最大勢力ね」
イ从゚ ー゚ノi「左様。ジェダイと決別してから数万年。わっちらは独自にマナの真理を目指してきた」
イ从゚ー゚ノi「そして巫術という素晴らしい……おっと、自慢話の前に紹介が先じゃったな。わっちはマナ・テンプル十代目導師アーバンフォウドじゃ。ギン、と呼んどくれ」
从´ヮ`从ト「私のことはタツキとお呼び下さい。ギン様の世話役を任せられております」
ξ゚听)ξ「……ジェダイパダワン・ツン=E=アシュクロフトよ。次に幻を魅せる時はもう少し景気が良いものにしてもらいたいわね」
むっつりした表情を見せる少女に、ギンとタツキは顔を見合わせてクスクスと笑った。
そうじゃの。次に夢へ誘う時は木馬の一つでも回してみようかの。
ジェダイの卵が差し出した左手に応じ、ギンはそう言いながら握手を交わした。
to be continued...
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