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問合せ
ドクオが生きるという事について考えるようです
第11話
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2006/11/23(木) 23:00:09.35 ID:tJnLi/7X0
季節は巡る。
俺達が身を寄せ合い始めてから秋は冬へと移り変わった。
ある時にはツンの影を求めて、ある時には寂しさを埋める為に
俺はクーに甘え続けた。
それでもクーは何も言わずに、受け止めてくれて
俺は、この曖昧な無責任さと自由さが確かに存在する距離感に
心地良さを感じていた。
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2006/11/23(木) 23:01:30.97 ID:tJnLi/7X0
吹きすさぶ冬の風が街を撫でる。
風に震える樹が窓越しに見えた。
外とは打って変わって暖かいホテルの一室。
すぐ傍にはクーがいて、俺の指にはツンを想起させる煙草があった。
クーの腰に手を回すとクーは何も言わずに
身体を寄せて俺の肩に顔を乗せる。
だけど、分かっている。
これは暫定的なものに過ぎないのだと。
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2006/11/23(木) 23:02:23.68 ID:tJnLi/7X0
暫定とは仮定。
臨時の措置に過ぎないのだ。
そろそろ、見出さないといけないと思う。
ツンと、ブーンの…二人の為に。
そして何より、俺の為にも。
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2006/11/23(木) 23:06:00.97 ID:tJnLi/7X0
「あいつさ………」
クーは俺の肩から顔を離して俺の目を見る。
「家庭を持った事を後悔してたよ。」
「知っている。」
静かに答えてぐっと残ったビールを飲み干し
缶を弄びながらクーは言葉を紡いだ。
「ツンから相談されたよ。
ブーンに酷いこといわれたって。」
グシャリと缶を潰してゴミ箱に缶を投げ捨てる。
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2006/11/23(木) 23:08:23.87 ID:tJnLi/7X0
「お前なんかと結婚しなきゃよかったと言われた事や
振るわれた暴力の内容を事細かに話されたりな………。
あとはツンが娘さんに手をあげてしまった事とか
いろんなことを聞いた。」
クーはそこまで言ってため息を一つ漏らして
冷蔵庫からもう一本、ビールを取り出す。
「君も飲むか?」
俺の答えを聞くよりも先にクーはビールをもう一本冷蔵庫から
取り出して俺に向かって放り投げてきた。
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2006/11/23(木) 23:10:53.64 ID:tJnLi/7X0
「今夜は、少し酔った方が良さそうだな。」
いつものクーのやり方だ。
ブーンとツンの、俺が知りたいと思う事を問いかけようとする時に
使ういつもの手。
酔わせ、忘れさせるやり口だ。
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2006/11/23(木) 23:12:29.38 ID:tJnLi/7X0
「今日は、止めとくよ。」
「ビールは嫌か?
仕方のない人だな、君は。
じゃあブランデーでどうだろう?
私の奢りでいいぞ?」
そう言ったクーの口調も表情も穏やかなものだったが
クーは明らかにこの話題を拒んでいた。
”もう少し後回しにしてもいいんじゃないか?”
そんなクーの心の声が聞こえたような気がした。
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2006/11/23(木) 23:15:03.16 ID:tJnLi/7X0
ベッドから立ち上がる。
途端にクーはとても真剣な表情になって、
またため息を一つ漏らした。
「今夜は、冷えるな。」
やけに小さな窓をどこか物寂しそうに見つめて、
クーは背を向けて俺の問いかけを待った。
暫定的な赦しに甘えて保留にしていた問題を紐解く。
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2006/11/23(木) 23:17:17.08 ID:tJnLi/7X0
「なぁ、クー。
ツンは、どうして死のうと思ったんだ?」
クーは手にしていたままだったビールのプルタブを開けて飲む。
ふぅ、と一息ついて口を開いた。
「自ら、ブーンと君と板ばさみになって考える事が嫌になったんだろう。
デレちゃんの事、ブーンとのこれからの事、君への罪悪感………
少なくとも、ツンはそれに真っ向から向き合う事に疲れたから死ぬと…
そう言っていた。」
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2006/11/23(木) 23:20:01.36 ID:tJnLi/7X0
「本当に、それだけなのか?
たしかに山積みの問題だけど、
一つ一つ解いていけばいつかは解決したかも知れな………」
途中でクーが遮る。
「”本当の事”なんて分からないよ。
そもそも、分かるわけが無い。
私はクーだ。
ツンではない。」
その鋭い言葉には、俺への敵意が隠されているように思えた。
”君、途中でツンの名前を呼んでいたぞ”
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2006/11/23(木) 23:22:50.94 ID:tJnLi/7X0
「すまん。」
クーは無言を守ったままだった。
ビールの缶を備え付けの冷蔵庫の上に置いて
ゆっくりと俺を通り過ぎて、俺の後ろにあるベッドに腰掛けた。
「逆に聞かせてもらってもいいかな?」
頷く。
「ブーンはどうして死んだ?」
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2006/11/23(木) 23:24:08.59 ID:tJnLi/7X0
”ブーンがツンを殺してしまったんだお。
だから、責任を果たそうと思うんだお。”
まるでその時を待っていたかのように、ブーンが死ぬ前に残した言葉が
次々と頭の中に流れてくる。
”ツンの後を追うお。”
”居なくなってやっと分かったんだお。
ブーンはツンを本当に愛していた。
本当に本当に、本当に、愛していた!”
”最初は子供が出来たから、何となくで結婚をしたお。
だけど…あぁ、だけど今になって分かったんだお!!
ツンは、ブーンの人生に居なくてはならない…
何よりも、何者よりも大切な存在だったんだお!!”
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2006/11/23(木) 23:26:37.84 ID:tJnLi/7X0
”ブーンは誰よりも………娘よりもツンを愛しているお。”
291
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2006/11/23(木) 23:29:12.12 ID:tJnLi/7X0
「ツンを愛していると分かったから。
最愛の人を死なせてしまった責任を取るから、って言ってた。」
それを聞いてクーは僅かに驚きを見せた。
だけど、きちんと把握したという旨を小さく頷いて俺に伝えた。
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2006/11/23(木) 23:31:54.40 ID:tJnLi/7X0
”正直に言うと、これはもう半分、意地みたいなもんなんだお。”
”死後の世界があろうと無かろうと、関係ないんだお。
ブーンは、ブーンの意地を通してやるんだお。”
”ブーンは、ブーンだお。
ドクオ如きに心を突き動かされたりはしないお。
ブーンは自分の意志で、決めたんだお。”
「あとは意地。
自分の意志に従って、我を通すって言ってた。」
そして、改めて理解する。
295
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2006/11/23(木) 23:34:20.96 ID:tJnLi/7X0
「………ツンもブーンも自分なりのケジメをつける為に、
自分を通す為に………自ら、選んだんだな。
何の迷いもなく、自分に従って。」
例え、第三者からは”逃げた”としか見られなくても
二人は、自分を貫いたという事を。
大丈夫。
そう思えるなら、俺は、これを掲げられる。
”答え”を確信する。
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2006/11/23(木) 23:44:38.55 ID:tJnLi/7X0
クーはベッドから立ち上がり、
俺の目を見つめながら、
「君はどうしたいんだ?」
あの日、先送りにした問いを投げかけてきた。
―――死ぬのか?
―――それとも、生きるのか?
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2006/11/23(木) 23:47:03.29 ID:tJnLi/7X0
「私は何も勧めない。
生きるのも死ぬのも、君自身が選ばなければ意味がないんだ。
死にたければ、自分に嘘のない納得のいく答えを自分自身に示せ。
そして、死ね。」
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2006/11/23(木) 23:49:57.42 ID:tJnLi/7X0
「君がそれを納得した上で踏み切れたのなら、
例え、世界中の誰が認めなくても私は認める。」
―――――だから
「選び取るんだ。
君が、自分の意志で。」
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2006/11/23(木) 23:52:14.02 ID:tJnLi/7X0
-------------
覚悟はしていたつもりだったけれど、やはりいざそれを前にすると怖い。
あの日、ドクオ君が仕舞い込んだ”答え探し”は願わくば
二度と紐解かれなければいいとすら思った。
だけど、この疑問は一度目に付けば、忘れきるまで頭を離れないのだろう。
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2006/11/23(木) 23:53:42.30 ID:tJnLi/7X0
如何ともし難い命題だ。
”生きる”
それは別に解き明かさなくても生きていけるどうでもいいもので、
大抵の人はその疑問から目を逸らして生きている。
だが、誰しもが当然のように甘受している出来事だけどその本質は実に深く果てしない。
そこに答えはないというが、私はこの答えを持っている。
自己中心的と言われるのかも知れないが、私という世界像の中で
たった一つの真実として存在しているのだ。
だから、私は揺れ動かずに居られた。
自分という物差しで推し量ればいいのだと分かっていたから。
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2006/11/23(木) 23:55:13.85 ID:tJnLi/7X0
だけど、彼は違った。
それを持ち得なかったのだ。
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2006/11/23(木) 23:56:50.77 ID:tJnLi/7X0
それでも………
時間はかかるとおもう。
だけどこのまま放っておけば忘れる事は出来たはずなのに、
敢えて紐解こうとしたのには彼なりに考えがあったからだろう。
私はその言葉を聴き収める義務がある。
だから、真っ向から君の見出した解を聴こう。
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2006/11/23(木) 23:57:28.77 ID:tJnLi/7X0
ブーンとツンを礎に、君は君の答えを導き出したのであろう、
これからまだまだ続くであろう人生の道標を。
あるいは
続いていく事を拒む その理由を。
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2006/11/23(木) 23:58:50.18 ID:tJnLi/7X0
ドクオ君は真っ直ぐ、目を逸らす事なく私を見ていた。
その瞳の奥にはブーンに似た鋭さがあった。
その浮かべた表情にツンに似た決意があった。
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2006/11/23(木) 23:59:21.39 ID:tJnLi/7X0
「なぁ、クー。
お前に甘えてから今まで俺なりに考えた事があるんだ。
どうか、それを、聞いてくれ。」
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2006/11/24(金) 00:00:30.29 ID:Qh8E0x6j0
私達の絆に悲しみが拡がったその”季節”。
ブーンは死に、ツンは居なくなった。
けれど、彼は確かに生きていた。
生きては、いた………
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2006/11/24(金) 00:35:07.56 ID:Qh8E0x6j0
('A`)ドクオが生きるという事について考えるようです
最終回
ξ(*゚听)ξ (^ω^ )
川 ゚ _゚) 。'。Уハ _ノヽУl_」 ヽ
ノ__コo=※ 。ニ| ゚ヽ'*' ゚̄ ̄〈_゚〈 〈 (A` )
ヽ__》 ゜ 。 ゜。U ´,* *、` (_(__) ,⊂,‐‐ι~)
(_)_) ゜ ゚ ´'゚ヾ (_(__)ヽl
俺の手にはたくさんのものがあった。
…………
相変わらず、クーのコーヒーは苦い。
だが、その苦さがまた格別だった。
…………
欲張りな俺は、
ブーンのような孤高を貫けた強さに憧れたりもするし、
ツンのような柔らかな笑顔に憧れたりもするし、
クーのような凛とした格好良さに憧れたりもする。
………
二人は確かに”生きていた”
それを証明する為に、俺は認めよう。
………
「約束だ。絶対に、また逢おう!」
「必ず、逢おう!!」
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