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( ^ω^)ブーンは駆逐するようです


第14話

348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:06:42.86 ID:Q20amxjg0
第十四話「疾駆け」


ブーン達の本隊は南地区に集められていた老兵隊200人と合流を果たそうとしていた。
50歳くらいから、60歳くらいまでで編成されている特殊な歩兵部隊だ。
前方から駆けてくるその隊をブーン達の歓声が迎え入れる。

その合流を喜んだのは、ほんの一瞬だった。
次の瞬間その歓声は鋭い警告に変わる。
  _
( ゚∀゚)「蟲だ!!!!!!!」

老兵達はスカラベの群れに追われていた。彼らを追うスカラベの数は約400。
ワームこそ居ないが、先を急ぐブーン達には巨大な壁となる。

まだ姿は見えない、北から侵攻する蟲も南進を開始しているはずだった。
ここで足止めされていてはその蟲に追いつかれることになる。
一刻も早く南へ抜けなければ行けなかった。

( ^ω^)「迎撃するお!!! 全員ライフルを持って構え!!!!」

ジープを降り、ライフルを構えて老兵のやってくる方向の蟲に狙いを定める。
老兵とともにスカラベが近づき、兵士がブーンの号令に意識を集中した時だった。

( ,,゚Д゚)y ̄~「蟲が退いていく……」

それまで一心に逃げる老兵を追っていたスカラベの群れが突如南へ後退を始めたのだ。

350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:07:52.22 ID:Q20amxjg0
( ^ω^) (まずいお……)

おそらく、今蟲が退いて行ったということはその後続の部隊がいるということだろう。
それと合流して殲滅に追い込むためだ。
老兵が次々と合流する。これでジープに乗れない歩兵を連れて歩くことになったが、
どうせスカラベ400体が引き返すほどの増援が待ち伏せていると分かれば最早進行速度の減衰など問題にならない。

( ^ω^)「老兵長はいるかお?」

一人の男が進み出た。50を越えるほどの年齢だが、その表情は精気に溢れている。

( ^ω^)「蟲はアレだけだったかお」

老兵長「いえ、さらにワーム4体が付いていました」

アレだけの距離を走ってきた老兵長の顔には僅かな疲労の様子が伺えたが、その報告はテキパキとしていた。

( ^ω^)「そのワームはどうしたお?」

老兵長「『アレ』で返り討ちにしました」

老兵長は背中に背負っている薄い直方体を顎で指して得意そうな表情を浮かべる。

( ^ω^)「うまくいったかお?」

老兵長「はい。周りのスカラベ十数体も巻き込めます」

353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:09:04.01 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「……すまんお」

老兵長「いえ。どうせ我々はもとは足手まといですから」

( ^ω^)「……すまんお。ちゃんとうまくやるお」

老兵長「そうです。そうでないと我々が報われない。さぁ、早く指示を下さい」

ブーンは頷くと周りで北と南の蟲の様子を伺っていた兵士達に向けて声を張り上げた。

( ^ω^)「聞けお!!!! 蟲が包囲し始めてるお!! 下手をすると全滅しかねないお!!
      今から予定通り最短ルートで南のトンネルを目指すけれど蟲の妨害が予想されるお!!!
      それを強行突破して一人でも多く生き残るお!!」

兵士がおおぉと声を揃えて、歓声を上げる。
それを見ていたギコは思わず軽く笑ってしまった。

( ,,゚Д゚)y ̄~ (まだ生き残る気か?)

何も知らない兵士と違って、幹部はある程度蟲の現状を把握している。
あの400匹の蟲が退き返した瞬間、ギコは完全に生存を諦めていた。
あの数が引き返すということは、最低でも千を越えるスカラベと50体以上のワームが後続としているということだ。

354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:10:57.26 ID:Q20amxjg0
合流した老兵とあわせてもブーン達の数は800。
今まで数が圧倒的に不利でも何とか持ちこたえていたのはジープの機動力があってこそだ。
その機動力があればまずスカラベと戦闘することは避けられるし、ワームだって数は多くないから対処が出来る。
フライは羽を打てば機動力を大きく奪えた。

それが今度はまともにやりあわなければならないのだ。

さらに背後には北から進行する蟲の群れが迫っており、それはエレの出現もあっておそらくさらに数を増しているだろう。
ギコだけではない。ハインやジョルジュだって揃って絶句したのだ。
それを近くにいたブーンが知らないはずが無い。

そんな絶望的な状況の中でも、ブーンはあの笑顔を浮かべたまま冷静に指揮をとっていた。
誰よりもこの絶望的な状況を把握していながら、誰よりもそれに最後まで最大に抵抗しようとしていた。

不思議だった。ギコはまるで本当に生き残れるような気さえしていた。
他の人間も同じなのだろう。
誰もが根拠はなくともその絶望を感じ取っていた。

けれども、そこに一人だけ生きろという者が居た。
たった一人の人間がそこにいる人間達の意識を変えていた。
それが幻想であろうともかまわない。

どうせ他に信じるべきものなんかない。
ならば幻想でも、それを信じてみる価値はあるではないか。

355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:11:43.12 ID:Q20amxjg0
そう思わせる不可思議な何かをブーンは持っていた。
最早ギコはこれからのことなんかまるで分からなくなっていた。

だから歩兵の進行速度にあわせて南へ1km進んだ時、目の前に対峙する蟲の群れを見ても何も思わなかった。
その数は約1500。ワームは70、スカラベは1400程度、その距離は約500m。
状況は絶望的だった。しかし兵士の中に怯えを見せる者はいない。
誰もがそのたった一人の人間に付いて行こうと決めていた。
後方から僅かに地響きが聞こえ、蟲が迫っていることを知らしめていた。

( ^ω^)「歩兵部隊50名、先行して切り開けお!!!!!!!!!」

ブーンが大声で指示を飛ばす。

( ,,゚Д゚)y ̄~ (歩兵部隊だけ突っ込ませるのか……!!)

老兵部隊が突撃を開始し、それにあわせて蟲も進行を開始した。
両者はすぐに近接し、老兵達は必死にライフルを放ってその進行を阻止しようとした。

しかしたかだかライフルごときの装備でワーム70体の進行を止められるはずも無く、
せいぜい3体ほどを戦闘不能にした後、老兵達は為す術無くワームの餌食になろうとしていた。

二匹のワームが先行していた一人の老兵に同時に襲い掛かりその体を引き裂いた。
瞬間、爆炎と轟音が生まれ出た。

老兵の背負っていたあの長方形の物体が炸裂したのだった。
襲い掛かったワームは粉々に吹き飛び、それに注意をそらされて一瞬立ち止まったワームは容赦ない銃撃で蜂の巣にされた。

359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:13:21.11 ID:Q20amxjg0
ブーンが特殊編成した老歩兵部隊は、その背に通常ワームが踏んでも爆発しない対大型戦車地雷を改良したものを背負う特攻部隊だった。
流動的な状況で地雷を設置することがあまり有効ではなかったために、ブーンが思いついた苦肉の策がここにきて功を奏していた。
迷うことなく突撃をかけていたワームが戸惑ったのを見てすかさずブーンは無線を取った。

( ^ω^)「突撃するお!!!!!!!!! 突っ込めお!!!!!!」

それまで停止していたジープが一斉に走り出した。
勢いを失ったワームの群れは瞬く間に撃墜されていく。
しかしワームは近くに居る人間に喰らいつき、その人間とともに爆死していった。

僅か1分ほど攻防で歩兵50人、ワーム70体が消えてなくなった。
残るはスカラベ1400。
ワームの進行が早すぎるために追いつけず、ブーン達のようには支援が出来ないアドバンテージの差は大きい。

しかしその数はブーン達の約2倍で、行く手を黒く染め上げていた。
ブーンたちは突撃の速度を一旦落とし、歩兵が突っ込ませる。

爆炎で開いたスカラベの群れの穴に次々と攻撃を加えていくが、戦車を失ったその火力では思うようにスカラベの数は減らなかった。

兵士「後方から蟲です!」

ブーン達が足止めくらっている間に後方からワームとフライの混合部隊が迫っていた。
もうすぐスカラベの群れも到達するだろう。

( ^ω^)「歩兵部隊後方を固めるお!!!!!!!!」


360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:14:13.11 ID:Q20amxjg0
スカラベに囲まれかけた部隊が二つが分かれる。
  _
( ゚∀゚)「前へ進めえええええええ!!!!!!!! 追いつかれた死ぬぞ!!!!!」

完全にブーン達の部隊はスカラベの部隊に囲まれていた。
時折歩兵が前に肉を引き千切られながら前へと進み、爆炎が新たな道をこじ開ける。
味方のジープに数十体のスカラベが張り付き、酸を吐きかけている。

援護に回ることは迫り来るスカラベが許さない。
個々の部隊がそれぞれ群がるスカラベの掃討で手一杯なのだ。
後方で爆音が響いた。
北から侵攻してきた蟲達と先にブーン達の後方へ抜け出た歩兵部隊がぶつかったのだ。

( ^ω^)「操縦手を残して全員ジープを降りるお!!!!!! 僕が切り開く!!!!!!!!!」

無線で怒鳴るとブーンはジープから飛び出て群がるスカラベの群れに銃撃を放つ。
数瞬遅れて他の兵も慌てて飛び出しそれに続く。
当初800人いたその数は既に500人ほどまで減っていた。

( ^ω^)「固まれおおおおおおお!!!!!!!! このまま一気に突っ切るお!!!!」

味方が一つに小さく固まるの確認してブーンがスカラベ数百の群れに単身で突っ込む。
その背中を見たジョルジュを始めとする兵士は刹那の時にその光景に見とれた。

361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:14:52.17 ID:Q20amxjg0
ドクオのような特別の技術があるわけではない。

ブーンはそれ自体はただの人間である以上、そのまま行けば必ず死ぬ。
囲むスカラベはさらに数を増すが手に持つライフルで手当たり次第にそれを撃ち払う。

( ^ω^)「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」

ブーンが咆哮が大気を大きく振動させる。
ほとんど距離のないスカラベに射撃し、ライフルで突き刺し、脚で蹴り飛ばす。

いつ死んでもおかしくない。いや、今そこで生きているのが不思議なくらいな目茶苦茶な戦い方。
それでも少しでも前へと進もうしている。
  _
( ゚∀゚)「司令を死なせるなあああああ!!!!!!!!!! 突っ込むぞ!!!!!」

ジョルジュが叫び、後続の兵がすかさずその突撃に加わる。


363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:15:41.08 ID:Q20amxjg0


一人の人間が確かにそこにいる人間達の意識を一つに変えていく。
死に最も近いところで、恐怖は勇気に、絶望は希望に姿を変える。

とっくに諦めていたはずのことを、何故かその人間を見ているだけでもう一度信じたくなる。

ブーンに特別な戦闘技術はない。
ただ先陣を切って一心に進むべき未来を指し示した。
戦場を征くその姿は美しかった。

特にそれは生死が何の覆いもなく晒される戦場という特殊な環境では「ある呼称」が付いた。
たった一人の無力な人間が、一心に進む姿を大昔の人々は敬意を込めたその呼称で呼んだ

――英雄――と。



364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:16:21.42 ID:Q20amxjg0
ブーンを囲むスカラベがジョルジュを先頭にする部隊に突撃され吹き飛んだ。
その突撃は勢いを落とすことなく、さらに南へとスカラベの群れを切り裂いて進行する。

後方では歩兵部隊の爆発が徐々に近づいている。
圧倒的な数の北からの蟲に、徐々にその数を減らしながら戦線を下げざるを得ないのだ。

一点突破を試みたブーンの部隊が左右から挟まれたら即全滅する。
生死を賭けた突撃はいよいよ敗けの色が濃くなっていた。

ブーン率いる数は約400。スカラベは600ほどまで減ったが、このままでは後続の蟲に追いつかれ殲滅される。

一瞬見据えた蟲の彼方に爆発の刹那の輝き、続いて爆音がこだまする。
南から現れた数台のジープ、そこからからでた人影が対戦車砲でスカラベの群れを切り崩していく。

('A`)「出し惜しむなよ!! なんとしてもここを突破させろ!!!」

大声で怒鳴るように指揮するドクオがライフルに持ち替えてさらにスカラベを殺す。

( ^ω^)「増援だお!! 一気に突っ切るおおおおお!!!!」

増援に勢いづいた味方は瞬く間にスカラベを蹴散らし蟲の包囲網を突破した。
その瞬間、100メートル以上後方で一際大きな爆音が響き渡り、巨大な爆炎に蟲が焼かれていく。

( ^ω^)「速やかにジープに乗り込めお!! 一刻も早くトンネルへ向かうお!!」


365 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 12:17:04.35 ID:Q20amxjg0
死地を出した兵は、もとの千数百人から三百人前後まで減っていた。
乗り込んだジープの中でブーンはいつものあの穏やかな微笑のまま、誰もしゃべらない車内を見渡した。

老歩兵部隊、戦車兵部隊、ともに全滅。
加えて主力部隊、半壊。都市民救済率約20%

( ^ω^) (だいたい計算通り、になってしまったお……)

その微笑をただツンだけが厳しい表情で密かに見返していた。

ブーンはその視線に気が付かないようにまっすぐ目の前を見つめ、

( ^ω^) (そしてこのまま計算通りだと約2時間後、僕達主力部隊が――)

そして疲れたようにゆっくり瞼を閉じた。





            ――全滅するお






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