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('A`)たちは水の上に生きるようです

第9話

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:07:08.38 ID:HA1d7NKG0
第9話 「荒巻屋前」

海神祭りの日の朝、ドクオは廃ホテルで作業をしていた

ひとり屋上でなにやらひたすら長い銅線を大きな木枠に巻きつけている

('A`)「こんだけ巻けばいいだろ」

作業が終わる頃には銅線でぐるぐるまきにされた箱のようなものが完成していた

('A`)「AMラジオのもこんな感じだし・・・イケル!」

(´・ω・`)「何作ってるの?」

('A`)「お、しょぼくれ遅かったな」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:08:30.37 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「で、なにこのぐるぐる巻き物体」

('A`)「アンテナだよアンテナ、ちょっとした無線機を作っててな」

(´・ω・`)「無線機とはまた・・・まぁ秘密基地にはアンテナだけどね」

('∀`)「だろ?送信機能はついてなくて受信機能だけなんだけど雰囲気は出るだろ?」

(;´・ω・`)「そんなことより昨日とんでもないことがあったんだよ」

('A`)「そんなこと扱いすんなや」

( ^ω^)「おいーす、とんでもないことってなんだお?」

('A`)「お、ブーンも来たか」

(´・ω・`)「・・・いや、やっぱりなんでもないや」

(;'A`)「なんなんだよ、寝ぼけてんのか?」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:09:49.13 ID:HA1d7NKG0
( ^ω^)「意味不明だお」

(´・ω・`) (ここが僕らの土地になったなんてみんなに教えちゃったら、秘密基地の楽しさが減っちゃいそうだからね)

(´・ω・`)「それよりブーン、僕たちも水道の仕上げをやっちゃうよ」

( ^ω^)「了解だお!」

ショボンとブーンが昨日水をためたドラムカンを見に行くと、3つ目のドラムカンまで水が満杯にたまり、床にあふれ出ていた。

(´・ω・`)「うわー、床がびしょびしょだよ」

( ^ω^)「タンク満タンだおショボン、これにどうやって穴を開けるんだお?」

(´・ω・`)「あ・・・」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:12:40.97 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「うっかりしてたよ、じゃあこの水一回捨てないとね」

ショボンたちが昨日作ったドラム缶の貯水タンクは3段にドラム缶が横に並べられていて、1番上のドラム缶に水がたまりきるとあふれた水が2番目に、といった構造になっている

今は3つ目の一番下のタンクまで満水になっていて、ホースをつなぐ穴を開けることができない

( ^ω^)「もったいないお・・・こう、がっと穴あけてグッとホースをすぐに差し込んだらいけないかお?」

(´・ω・`)「・・・まぁ、ブーンがやりたいんならやれば良いんじゃないの・・・」

( ^ω^)「じゃあ早速やってみるお!」

(´・ω・`) (本気だったのか・・・)


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:15:51.29 ID:HA1d7NKG0
ブーンはドラム缶の前にしゃがみ、底の近くの側面に大きな釘で穴を開けようとする

(´・ω・`)「あ、もうちょっと上にしてよ、ゴミが入らないように」

( ^ω^)「把握だお!」

そういうとブーンは釘をハンマーで勢い良く打ちつけた、

重い鐘を鳴らしたような鈍い音を響かせて、釘は無事ドラム缶に突き刺さった

(*^ω^)「ショボンできたお?」

(*´・ω・`)「・・・そうだね、後は抜くだけじゃない、はいこれ」

そういいながらショボンがブーンにバールのようなものを手渡す

(*´・ω・`) (まさか・・・このまま行けば・・・)

( ^ω^)「了解だお!一気に完成させるお!」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:17:25.01 ID:HA1d7NKG0
バールのようなものを釘に引っ掛けると、ブーンは両足の裏でドラム缶を抑えながら勢い良く釘を引き抜く

( ゚ω゚) フンッ!

キン、と音を立てて釘は無事抜ける

それと同時に勢い良く穴から水が噴出して釘が抜けた反動で床に転がるブーンを襲う

ちょうど両足をドラム缶に向けるようにしていたため、水は主にブーンの下半身を攻撃した

(;^ω^)「ぬわあああぁああああ!!!」

(*´・ω・`)「うっわあwwwブーンお漏らししたみたいwwww」

(*´・ω・`)「ドクオー!ドクオー!ブーンが!ブーンがああ!」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:18:52.21 ID:HA1d7NKG0
(;'A`)「なんの騒ぎだ・・・ってあれ?」

(*'A`)「ブーンだっせwww股間水浸しwwwww」

(;^ω^)「ちょwwwマイサンが冷たいおwww」

(*´・ω・`)「あーあーこれは着替えてこないとねー」

(;^ω^)「大丈夫だお、ちょっと絞ってその辺に干しておけば大丈夫だお、夏だし大丈夫だお!」

(;'A`)「お前その間フルチンじゃねーか、良いから一回帰れよ」

(;´・ω・`)「さすがに下半身露出してる人と作業は無理だよ」

(;^ω^)「おー・・・すぐ戻ってくるお」

(;^ω^)「家に帰るまでに人に見られたくないお・・・」

('A`)「もしクラスのヤツラに目撃されたらお前のあだ名がハムっぽい人からムーニーマンにランクアップしちまうな」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:20:07.08 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「そこでどうだろう」

( ^ω^)「お?何か解決策があるのかお?」

ブーンがショボンの方を振り返ると、そこには水の入ったブリキのバケツを抱えたショボンの不敵な笑みがあった

(;^ω^)「まさか・・・」

('∀`)「そりゃあ名案だwwww」

( ^ω^)「・・・こうなったらもうヤケだお、バケツをよこすお」

( ゚ω゚)「修行だおおおおおおおおおおおおお!!!」

そう叫びながらブーンは渡されたバケツの水を一気に頭からかぶった

(*'A`)「ちょwwww」

(´・ω・`)「うっわあ」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:21:31.65 ID:HA1d7NKG0
バケツいっぱいの水をかぶったブーンは全身びしょぬれになり、着ていた白いTシャツは肌にぺったり張り付いている。

(;;;^ω^;)「・・・これならもらしたとは思われないお・・・?」

('A`)「まぁそうだけど・・・」

(´・ω・`)「あやしさ満点だね」

(;;;^ω^;)「じゃあブーンは一旦帰宅するお・・・」

そういってブーンは水跡を残しながら階段を下っていった

(´・ω・`)「普通わかるだろ・・・水がかかることくらい」

('A`)「まぁ、ブーンだからな」

(´・ω・`)「まさか本当にかぶるとは思わなかったよ」

('A`)「まぁ、ブーンだからな」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:24:05.38 ID:HA1d7NKG0
残された二人の間に奇妙な沈黙が流れる

(´・ω・`)「ちょうどお昼だし荒巻屋にパン買いに行こうよ」

('A`)「おう」

二人は海岸まで延々と続く一本坂を並んで下っていく、足元には濃い影が作り出されていた

('A`)「今日もクソあちーな・・・」

(´・ω・`)「もうすぐ8月だしね」

('A`)「あ、逃げ水が見える・・・」

('A`)「逃げ水とか嫌がらせ以外の何もんでもねぇよな」

('A`)「砂漠で迷ってるときに 水ダー!って近づくと消えるんだぜ」

(´・ω・`)「蜃気楼に文句言われてもね」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:26:57.02 ID:HA1d7NKG0
('A`)「あと蝉どももうるさい」

(´・ω・`)「蝉だって泣きたいときもあるさ」

('A`)「なぁしょぼくれ」

(´・ω・`)「なんだいナナフシ人間」

('A`)「付き合うってなんなんだ?」

(;´・ω・`)

(´・ω・`)「なんだい藪から棒に」

(;'A`)「いやこないだ弟者とつーさんが手をつないで歩いてるのを見かけてな、まぁどうでもいいんだけど」

(´・ω・`) (どうでもいいんなら聞くなよ・・・)


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:28:51.47 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`) (っていうかドクオにそういう事を聞かれるとはね)

(´・ω・`)「そんなこと僕もわからないよ」

('A`)「じゃあさ、なんでみんな付き合いたがるのかね」

(´・ω・`)「さあ、わかんないねぇ」

('A`)「皆で駄弁ってる方が楽しいのにな」

(´・ω・`) (・・・・・・・・)

ショボンはドクオのその一言を聞いて自分の中でのもやもやの原因も理解できた気がした

僕たちの今の関係は恵まれすぎているんだ、今の関係が心地よすぎるから


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:30:44.88 ID:HA1d7NKG0
('A`)「おい、なにボーっとしてんだよ 荒巻屋着いたぞ」

(´・ω・`)「え、ああ」

2人は荒巻屋の薄暗い店内で昼食を物色する、所々塗装のはげたスチール棚の上には菓子パンが並べられ

店の置くのくすんだガラスの棚の向こうでは店主の荒巻爺さんが寝転びながらぼんやりテレビを眺めている

('A`)「おまえまたメロンパンかよ」

(´・ω・`)「ドクオこそまたコロッケパンじゃないか」

二人がすみませーんと呼ぶと、はいはいと言いながらのそりと荒巻爺さんが起き上がり古びたレジスターの前に立つ

/ ,' 3 「メロンパンとコロッケパン、両方とも100円じゃ」

支払いを終えて店の前に出ると岬のほうからかすかに祭囃子が聞こえてきた

('A`)「もう始まってるみたいだな」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:33:46.60 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「今12時だからまだ練習じゃない?」

('A`)「おい、あれギコ先輩じゃねーか?」

二人の視線の先には沈鬱した顔で歩くギコの姿と、それを心配そうにしている女の人の姿があった。

(,, Д ) 「・・・・・・」

(;*゚ー゚)「ギコくん大丈夫?」

(´・ω・`)「ギコ先輩、こんにちわー」

('A`)「こんちわー」

(,,゚Д゚)「おう・・・おまえらか・・・」

(´・ω・`)「なんか顔色が悪いですね」

(,,゚Д゚)「今日は海礼の日だからな・・・」

(,,゚Д゚)「あの断崖から海に飛び込まなきゃなんねえなんて考えるだけで、ちょっとな・・・」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:35:24.08 ID:HA1d7NKG0
(*゚ー゚)「ギコ君なら大丈夫だよ!」

('A`)「あの、先輩、こちらの方は?」

(,,゚Д゚)「ああ、しぃって言ってな、俺の彼女だ」

(´・ω・`)「そうなんですか、はじめまして、僕ショボンっていいます」

('A`)「俺はドクオっていいます」

二人はしぃにペコリと頭をさげる

(*゚ー゚)「はじめまして、ギコ君の彼女のしぃです」

(´・ω・`)「先輩彼女とかいたんですね」

(,,゚Д゚)「おう!まぁ一応な!」

('A`)「今日の海礼、みんなで見に行きますよ」

ドクオの言葉を聴いた瞬間、またギコはうなだれてしまう

(,, Д) 「・・・・・・」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:36:42.18 ID:HA1d7NKG0
(;*゚ー゚)「ごめんね、ギコ君実は高所恐怖症なの・・・」

(;´・ω・`)「え〜・・・大丈夫なんですか?」

(*゚ー゚)「大丈夫!・・・だと思うわ!・・・多分!」

(,, Д) 「・・・多分って・・・」

(;*゚ー゚)「あっ、ギコ君なら大丈夫だよ!ギコ君ならできるって!」

(;*゚ー゚)「ギコ君のかっこいいところがみたいなぁ〜」

(*゚ー゚)「あ、じゃあ二人とも後でね〜」

そんな感じでしいはギコを励ましつつドクオとショボンを残して海神神社のほうに歩いていった。


('A`)「あのギコ先輩があんなになってしまうとは・・・」


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:38:44.55 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「まぁ誰だって崖から飛びおりたくは無いだろうし」

('A`)「いや、そうじゃなくてさ」

(´・ω・`)「何が?」

('A`)「あの伝説のギコ先輩も、彼女に励まされたりするんだと思って」

(´・ω・`)「あー・・・」

('A`)「付き合うってあんな感じか」

(´・ω・`)「あんな感じかぁ」

('A`)「へー・・・」

(´・ω・`)「・・・さっさと戻って仕事を終わらせちゃおうよ」

('A`)「ああそうだな あ、その前に自販機でジュース買って来るわ」

(´・ω・`) (どっくんもお年頃だもんね)


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:48:38.33 ID:HA1d7NKG0
ドクオとショボンは秘密基地に戻り昼食を済ませると作業を再開した

作業といってもブーンが穴を開けたドラム缶にホースをつないで4階まで引いていき、濾過器につなげるだけだった

なので器用な二人はあっという間に作業を終わらせてしまった

濾過器の下部にはショボン手製の簡単なコックが取り付けられていて、蛇口の役割を果たしている

しかし濾過器の上部には絶えず屋上から水が送り込まれてくるので濾過器の上部からは常に水があふれている

溢れる水の処理を考えていたドクオはあることを思いついた

('A`)「おいショボン、この水トイレに使おうぜ」

(´・ω・`)「水洗トイレって事?」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:50:32.33 ID:HA1d7NKG0
('A`)「和式にして足の間を常に水が流れるようにすればいいんじゃね?」

('A`)「その前にワンクッション置いてバケツかなんかに一旦貯めておけば水量も増やせるし」

(´・ω・`)「なんか社会の教科書に乗ってた平安時代のトイレみたいだね」

(´・ω・`)「じゃあぱぱっと作ろうか」

二人が50分ほとで作り上げたトイレは濾過器から溢れる水を集めてさらに2階まで落とし、

半分に切った換気ダクトの便器の上に常に流し続けるといったものだった

ちなみに便器に流れる前に水は一旦バケツを経由しており、バケツを使えば一気に大水量を得ることもできる

トイレの排水はホテルの裏手に掘った穴に流れ込むようになっていて、穴は臭気防止のために汚水流入部分以外は板でふさいである。

('A`)「これは・・・なんだろう、なんか気分がいいな」

ドクオが絶えず水の流れる便器をまたいで仁王立ちしながら言う


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31(火) 00:52:18.86 ID:HA1d7NKG0
(´・ω・`)「ダイナミックだね」

('A`)「全て流されるがいい!みたいな」

(´・ω・`)「アホなことやってないでもう4階に行こうよ・・・そろそろ3時だしみんな来るよ?」

('A`)「うぃー」

ドクオは工具をしまうとショボンに続いて階段を登っていった、4階まで登ると海風のせいか此処でも微かに祭囃子が聞こえてくる。

笛や太鼓の楽しげな拍子はドクオたちは気持ちをはやらせる、眼下に広がるVIP島も今日はどこか生き生きしているように見えた。

第9話 「荒巻屋前」 おわり



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