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( ^ω^)ブーンは駆逐するようです


第2話

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 06:55:22.31 ID:Q20amxjg0
第二話「道酔い」


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( ゚∀゚)「司令、無事でしたか? さっき銃声が」

( ^ω^)「大丈夫だお。それよりスカラベの斥候を発見したお」
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( ゚∀゚)「それでは先ほどのは……」

( ^ω^)「僕のだお。敵本体が来るかも知れないから、すまんが警戒していて欲しいお」
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( ゚∀゚)「了解しました。適当なのを充たらせます」

街の北に位置する防壁入り口付近で帰り待っていたジョルジュに指示を出し、先ほど女の子に向き直った。
彼女は走って息を上げている。流石に女の子の体にあの距離は辛かったらしい。

先は十分に観察する余裕はなかったが、改めて見ると顔立ちの整った綺麗な子だった。
まだどこか子供っぽい様子が伺えるのは成熟しきっていない女性らしさと華奢な体つきのせいだろう。
服装が乱れているのは先に蟲に襲われたからだろうか。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 06:56:13.43 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「大丈夫かお?」

ξ゚听)ξ「はい、一応……」

( ^ω^)「それは良かったお、避難民キャンプに案内するお。そこで親類や知り合いの人を探すんだお」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚听)ξ「あの、もうそういう人はみんな……」

( ^ω^)「……」

ξ )ξ「さっきのでよくしてくださったおばさんも……」

彼女の言葉から推測するに、両親はもういないのだろう。

ξ )ξ「怖いんです……」

( ^ω^)「それは大丈夫だおwここは蟲の心配は――」

ξ )ξ「そうじゃなくて!」

( ^ω^)「?」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 06:57:16.25 ID:Q20amxjg0
ξ )ξ「その……怖いのは、人……です。」

一瞬、彼女が何を言っているのかわからなかった。

ξ )ξ「実はさっきもあなた達の銃撃が終わった後に、知らない男に突然……」

( ^ω^)「……」

ξ )ξ「結局その人は何もする前に後ろから蟲にやられちゃったけど……」

この子ほどくらい綺麗ならこんな世の中いつ襲われても不思議ではない。
まして誰もが逃げるのに必死で、敵が撤退するその時なら、人が一人いなくなっても気付かない。
後で気付いたにしても、死んだと思われるのが自然だ。

なるほど、頭がいいというか――底抜けに馬鹿な人間がいたようだ。

彼女が落ち着くのを待って僕は再び質問を開始する。

( ^ω^)「歳はいくつだお?」

ξ゚听)ξ「18歳。一応、アメリカで大学を卒業してます」

(;;゜ω゜)「アメリカの大学!?」

ξ゚听)ξ「ええ。馬鹿みたいに勉強ばかりしてたから……」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 06:58:54.25 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「そうなのかお。……とりあえずうちで働かないかお? 身の安全は保障するお」

ξ゚听)ξ「えっと……働くって?」

( ^ω^)「僕はこの町の防衛関係の仕事をやってるんだお。だから事務のことでもやってもらえばいいと思ったんだお」

ξ゚听)ξ「いいんですか!?」

( ^ω^)「ちょうど人手が足りなかったお。遠慮はいらないし、歓迎するお」

ξ゚听)ξ「……ほんとに助かります」

彼女の声がはっきりしてきた。どうやら大分落ち着いてきたようだ。

( ^ω^)「名前はなんて言うんだお?」

ξ゚听)ξ「ツンです。あなたは?」

( ^ω^)「ブーンだお。まだ28歳だけどこの街の防衛総責任者だお。ブーンと呼んでくれれば良いお。よろしくツン」

ξ゚听)ξ「あ、はい。よろしくお願いします」

彼女は礼儀正しくお辞儀をする。
長くて綺麗なウェーブのかかった金髪が、今の淀んだ世界には不釣合いなほど輝いて揺れた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 06:59:24.13 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「ところで大学では何を専攻してたんだお?」

ξ゚听)ξ「生命工学です」

一瞬固まってしまう。

ξ゚听)ξ「?」

不思議そうに見つめ返す彼女をみて、すぐに僕はいつも通りの笑顔を作る。

( ^ω^)「いや、何でもないお。女の子だったからちょっと意外と思っただけだお」

実際、そこにも少し驚いてはいるのだが。

( ^ω^)「とりあえず、今から本部に戻って皆に紹介するお」

ξ゚听)ξ「今からですか?」

( ^ω^)「早い方がいいお。ジープだから乗り心地はよくないかも知れないけど、これからは慣れて欲しいお」

彼女をジープに乗せると僕は街の中心地へ車を走らせた。

( ^ω^) (生命工学科専攻ですかお……)


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:00:08.08 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「……というわけで、これからここで働くようになったツンちゃんだお。」

一通りの説明をして後に待っていたのは盛大な歓声だった、主に男性側の。
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( ゚∀゚)「可愛ぃこちゃんだあぁぁ!」

男性兵士「しゃああぁぁぁ!!」

( ,,゚Д゚)y ̄~「いい大人が落ち着けよ」
  _
( ゚∀゚)「戦場の華だあぁぁぁ!」

男性兵士「しゃああぁぁぁ!!」

( ,,゚Д゚)y ̄~「戦場へは出ないだろ」
  _
( ゚∀゚)「ようやくここにも麗しの御仁が」

男性兵士「ギコ隊長のむさ苦しさもこれで何のその」

( ,,゚Д゚)y ̄~「やかましいわ!」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:00:43.25 ID:Q20amxjg0
ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「まぁ、彼らなりの歓迎なんだおw」

ξ゚听)ξ「あ、いえ。ちょっと、驚いてただけです。すごい活気だなぁって」

( ^ω^)「君みたいな可愛い子がいると自然と士気が高まるんだおw」

ξ///)ξ「そ、そうなんですか?」

( ^ω^)「本当だおw」

ξ///)ξ「は、はぁ」

(;^ω^)「ま、まぁ。そうだお、上司を紹介するお。ハイン」

从 ゚∀从「はっ!」

ハインリッヒ高岡は元から自衛隊に所属していた女傑だ。
さばさばした男勝りな性格できっちり部下の面倒を見ることができる優秀な部下。
数少ない女性上官で、男女問わず部下からの信頼が厚い。

( ^ω^)「さっきの紹介したツンだお。しばらく見てやって欲しいお」

从 ゚∀从「了解中佐。よろしくね」

ξ゚听)ξ「はい。こちらこそよろしくお願いします」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:01:32.21 ID:Q20amxjg0
从 ゚∀从「はい、よろしくね。ここはバカばっかだから一人落ち着いた子がいてくれると助かるよ」

ξ゚听)ξ「あ、ありがとうございます」

从 ゚∀从「ん、じゃあ適当に仕事、って言っても雑務だけど、内容を説明するわ。まず――」

ハインに連れられ、ツンは部屋を出て行った。


( ^ω^)「さて……。ジョルジュ、外の様子はどうだお?」

『外』というのは防壁に囲まれているこの街の区画以外の場所のことだ。
先ほどまではしゃいでいたジョルジュも急に真面目な顔つきになる。

彼も自衛隊所属の人間で、僕の直属の部下だった。
今はもう政府が機能しておらず、自衛隊も全く司令部が麻痺、

というよりほぼ壊滅させられているので惰性的に今の関係になっているだけだが。
彼らが元のまま僕のことを「中佐」と呼ぶのは元の地位がそれに相当するからだ。
  _
( ゚∀゚)「はい、今のところ何も報告はありません。どうやら単なる”はぐれ”だったようですね。」

( ^ω^)「わかったお。引き続き警戒するよう頼むお」
  _
( ゚∀゚)「はっ」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:02:17.71 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「ギコはあの報告書――」

( ,,゚Д゚)y ̄~「提出しておきました。あの襲撃で大分人数が減ったようですね」

( ^ω^)「……」

( ,,゚Д゚)y ̄~「男女比率はほぼ五分五分。平均年齢は大分若いですね。
        というより年配の方はアレでは生き延びれないでしょう」

( ^ω^)「分かったお。新たな武器調達はどうなってるかお?」

( ,,゚Д゚)y ̄~「順調と言うには程遠いです。この時勢ではどこも武器は欲しがってますからね。
        食物の自給自足で手いっぱいの現段階では入手は困難かと。」

( ^ω^)「それでも集めて欲しいお。近々嫌なことになりそうだお」

( ,,゚Д゚)y ̄~「本当に嫌な話ですね、たださえあなたの勘は当たるのに」

( ^ω^)「なんとかならんかお?」

( ,,゚Д゚)y ̄~「出来る限りのことはやってみます。一つ二つ心当たりがあります」

( ^ω^)「頼んだお。じゃあ今後ことについて詳しく――」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:02:56.33 ID:Q20amxjg0
防衛関係の議論は多くの時間を使う、いつからかハインからの説明を終えたツンが
所在無さ気にこちらの様子を伺っていた。

( ^ω^)「あ〜」
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( ゚∀゚)「ん?」

( ^ω^)「今日はここまでだお」

( ,,゚Д゚)y ̄~「まだ有事の各防衛線の最終ラインが決まっていませんが」

( ^ω^)「ハインに一任するお。現場に近い方が適切な判断が出来るお」

( ,,゚Д゚)y ̄~「分かりました。伝えておきます」

( ^ω^)「たのんだお。ちょっと新人さんと話があるんで失礼するお」
  _
( ゚∀゚)「例の可愛い子ですか?司令まさか手篭めに……w」

( ^ω^)「ねーおw」
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( ゚∀゚)「本当ですか〜?w早速噂になってますよw」

( ^ω^)「まぁなかなか美人さんなのは確かだお。最初はみんな騒ぐもんだお」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:03:34.02 ID:Q20amxjg0
( ,,゚Д゚)y ̄~「そいやハインも入隊当初は男どもからわいわい言われてましたからねw」
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( ゚∀゚)「まぁ、昔からの付き合いで本性を知ってた俺らは幸いだったなwwwwww」

( ,,゚Д゚)y ̄~「全くだ。ふたを開けたらど根性親父よろしくの鉄血女だからなwwwwwwww」

( ^ω^)「ん?」

ツンがなにやら慌てたような表情でこちらを見ている。

(;^ω^)「……!!!」
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( ゚∀゚)「何人かの馬鹿は奴の素性を見抜けずに撃沈したしなwwwwwwwwwww」

( ,,゚Д゚)y ̄~「撃沈した?違うな……撃墜されたんだwwwwwwwwwwwwww」
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( ゚∀゚)「違いないwwwwwwwwww」

(;;^ω^)「し……失礼するお。ツン、行こう」

ξ;゚听)ξ「えっと……はい。そのほうが良さそうですね」
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( ゚∀゚)「あれ?司令もう行くんですか?今から奴の武勇伝のオンパレードですよwwwww」

( ,,゚Д゚)y ̄~「そうだ、せっかくだからツンちゃんも聞いておけよww」

ξ;゚听)ξ「あ、いえ。遠慮しておきます」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:04:33.63 ID:Q20amxjg0
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( ゚∀゚)「ええ〜!!そんなこと言わずにさぁ。ほら聞く人がいた方が俺達も楽しいし」

从 ゚∀从「……そうか。では私がきいてやろう。」

手にはライフル、顔には氷の笑顔。

(;^ω^)「じゃあ僕らは外出だお、さいならw」

ξ;゚听)ξ「お疲れ様でした」
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(;゚∀゚)「ちょwwwwwwwおまえらwwwwwwwwwwww仲間を見捨てる気か?wwwwwwwwwww」

( ;;゚Д゚)y ̄~「司令、見損なったぞ!!!!」

从 ゚∀从「そんなことよりぜひ先ほどの話の続きを伺いたい」
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(;゚∀゚)「OKハイン。まずは落ち着いてその構えたライフルを下ろすことから始めよう」

从 ゚∀从「あはは、安心しろ。ゴム弾だ。先ほど取り替えてきた」

( ,,゚Д゚)y ̄~ (わざわざ撃つために入れ替えてきたのか……)
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(;゚∀゚)「いや、アレだぞ俺達はハインが綺麗だなってことを話してたわけでなwwwwwwwwww」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:05:01.82 ID:Q20amxjg0
从 ゚∀从「そうか。武勇伝と聞こえたが」
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(;゚∀゚)「いや、聞き違いだ。きっと歴代美人列伝2035かなんかの聞き間違いだ」

从 ゚∀从「ふむ、なるほど私の武勇伝ではなかったのか」
  _
(;゚∀゚)「あ、当たり前じゃないか!!そんなハインの――」

从 ゚∀从「ならば私自ら聞かせてやろう。その身で私の武勇とやらを味わうと良い」

彼女は最早清清しさすら感じる笑顔をたたえる。

(;^ω^)「ギコ、ジョルジュ……長い間世話になったお……。お前らのことはあと2週間くらい忘れない……」
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(;゚∀゚)「短っ――!!!」

それから先の言葉は銃声で聞こえなくなった。



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