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問合せ
( ^ω^)ブーンはフォースを駆るジェダイのようです
SHOT-U
4 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:02:26.34 ID:RREcxnlGO
【登場人物紹介】
( ^ω^)…ナイトウ=ホライゾン(32)
・ジェダイ・ナイト
・柄の両端から翡翠色の光刃を展開するダブルライトセイバーを愛用
( ∵)…ビコーズ
・ドラム型多目的万能ドロイド
・R2-D2みたいなのを想像してくれておk
・ブーンの相棒
ξ゚听)ξ…ツン=E=アシュクロフト(15)
・辺境惑星の住人
・とある森の巫女をしている
・貧乳
イママデ産業
・麻薬捜査中に
・ブーンは
・毒舌少女と出会った
5 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:04:01.73 ID:RREcxnlGO
ξ゚听)ξ「粗茶ですが」
( ^ω^)「あ、これはどうも御丁寧に……」
Episode3:ツン=E=アシュクロフトの憂鬱
〜SHOT-2〜
高床式の木組みで作られた社の本堂。
出会った瞬間に罵倒するという衝撃的なファーストコンタクトを演じた巫女は、顎を動かして戦々恐々とするブーンを自らの仕事場への招いていた。
熱い湯で煎じられた玄米茶は、とても濃厚な香りがする。
( ^ω^)「この辺りは米の栽培が主流なのですかお?」
ξ゚听)ξ「稲と麦が少しね。村で糞まずい粥を進められたでしょ」
(;^ω^)「いや、普通に美味しかったですお」
ξ゚听)ξ「ふーん。あんなベトベトして味気無いスープモドキが好きだなんて……味音痴って人に言われたことない?」
(;^ω^)「…………」
7 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:05:07.59 ID:RREcxnlGO
ツン=E=アシュクロフト。
刺のある銀河共和国指定共通語で巫女は自らをそう名乗った。
歳の頃は15、6ほど。
クールの弟子であるスズキとさほど変わらぬ世代だろう。
黒髪黒眼の近隣の村人とは似ても似つかない蒼い双眼は、小柄な体格の少女を気高くし、同時に威圧感を内包させる事に一役買っている。
揉み上げを肩下まで伸ばした薄い小金色の髪の毛もこの辺りでは珍しい。
先端部分が簡単なロール状になっており、聞けば、くせ毛なのだと返答が寄せられた。
ξ゚听)ξ「本当は背中ぐらいまで伸ばしたいんだけどね。ケアが面倒だし、何より勝手にクルクルと巻いちゃうのよ」
8 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:06:17.16 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「失礼だとは思いますが、容姿からしてこの辺りの方々とは少し違う人種のように見えますお。
共通語を使えるということは、ひょっとして―――」
ξ゚听)ξ「いいえ。私は生まれも育ちもこの星よ。共通語は小さい頃に教わったの。宇宙人じゃないわ」
「ああ、それと」と、ブーンが飲み干した茶を片しながらツンは立ち上がる。
ξ゚听)ξ「敬語は使わなくてはいいわ。堅苦しいのはキライ」
( ^ω^)「お、マジかお。それは助かった」
ξ;゚听)ξ「順応が早いわね」
9 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:08:18.45 ID:RREcxnlGO
巫女と言うわりには、それらしい振る舞いを微塵も見せないツン。
人と対面して言葉を交わす時、ジェダイが相手の顔色を伺うのは常の行為だ。
顔色とは、無論この場合相手の内に廻るフォースのことを指すわけだが、
ジェダイはこのフォースの流れ方を読み取ることで先方の思惑を予測することができるのである。
程度の差こそあれど喜怒哀楽は勿論、虚偽の発言や敵意の有無までも汲み取ることも可能。
条件さえ満たしていれば、相手の思考ベクトルを誘導することもできる。
ジェダイに嘘は通じない、という一般庶民の認識はこの辺りから来ていると言える。
ξ゚听)ξ「あら、茶菓子には手を付けないのね 」
( ^ω^)「出された甘物 手を出し睨むは 薦めた主人。
発展途上惑星下の砂糖は高級品だお」
ξ゚听)ξ「ふーん。共和国の人間は教養があって助かるわ」
10 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:09:30.13 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「……銀河共和国を知ってるのかお?」
ξ゚听)ξ「あら、本当にそうだったのね。宇宙人を見たのはこれで二度目よ」
(;^ω^)「…………」
ところが、である。
例に倣って先程からツンの心の内を探っているにも関わらず、ブーンはその片鱗すら掴めないでいた。
読めない。
彼女の真意が分からない。
今のやり取りもそうだ。
共和国の人間であるとことを言い当てられ、本当に見抜いていたのかと問うブーンに対して、ツンは明確な答えを出さなかった。
本来ならば、ブーンは直ぐさまツンの発言が嘘か否かを感知できる筈なのに、彼にはまるで真偽の検討がつかないのである。
( ^ω^)「(何なんだおこの娘は。挙動とフォースの動きがまるで連動していないお。
僕のリーディングが通用しないなんて……)」
11 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:11:18.31 ID:RREcxnlGO
まるで、心の周りに分厚い壁を張られたような感触にブーンは少し戸惑った。
武芸に、或いは禅や心術に深く通じている人間は、少なからずフォースを操作する能力を持つ者が多い。
武具の達人は相手の殺陣を読み取り。
偉大な指導者は瞑想の末に未来を感じ。
天然要害の修行僧は己の存在を世界から完全に封殺する。
意識・無意識に関わらず、ある種の到達点に達した生物はフォースの恩恵に預かるものだ。
ジェダイと彼等の違いはフォースに対する知識の深さ如何程度のもので、特に明確な差があるわけではない。
( ^ω^)「(彼女も、つまりツンもそういう部類ということかお)」
13 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:13:39.08 ID:RREcxnlGO
なにしろ巫女として村人に奉られている存在だ。
多少なりの神通力を有していても不思議ではないだろう。
ブーンはツン=E=アシュクロフトがフォースの資質を有していることを瞬時に見抜いていた。
それも、かなりの高次元だ。
リーディングに対す唯一の対抗手段―――ツンが意図して使っているかは分からないが―――
である『閉心術』を心得ているのは、ジェダイ以外ではいつぞやに出会った魔女くらいだろう。
( ^ω^)「(銀狐の時は本当に酷かった。ツンもあの魔女殿のようにならなきゃいいけど)」
ξ゚听)ξ「魔女が何ですって?」
何時の間にか衣を変えていたツンがブーンの独り言に突っ込みを入れてきた。
適当に茶を濁したブーンは、先程の立派な神事衣装とは百八十度違うツンの姿に目を丸くする。
( ^ω^)「麻の生地とは。何処ぞの狩人みたいだおね」
ξ゚听)ξ「みたい、じゃなくてそうなのよ。これから晩御飯を調達しに行くわ。あんたも手伝いなさい」
14 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:15:18.15 ID:RREcxnlGO
雑な扱いに強い麻で作られた衣服を翻し、ツンは社の扉を開けて階下に向かう。
半袖・半ズボンというラフな格好。
腰に短剣を挿した少年のような姿に連れて、ブーンも腰を上げて後に続いた。
|∵)「…………」ドキドキ
ξ゚听)ξ「そこの丸太君。隠れてなくていいから出ていらっしゃいな」
(;∵)そ「ウップス」
ツンを刺激しないようにと茂みに隠れていたビコーズが、怖ず怖ずと彼女の前に現れた。
好奇心を擽られたのだろう。
流石に人は入ってないわよね、と言いながらツンはビコーズの金属ボディをしげしげと眺めた。
ξ゚听)ξ「へぇ。ビコーズって言うんだ」
( ∵)「プーン」
( ^ω^)「ドロイドを見るのは初めてかお?」
ξ゚听)ξ「ええ。これは金属で出来ているのかしら。青銅じゃないのね」
15 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:17:47.90 ID:RREcxnlGO
>>13
ミス
>それも、かなりの高次元な部類だ。
ビコーズに限らず、現在のドロイドは軽くて丈夫な炭素複合板が用いられている。
製鉄技術すら持っていないツンの惑星でこの物質を作り上げるには、あと三千年ほど待たねばならないだろう。
銀河共和国の存在は知っているのに、アストロメクドロイドの存在は知らない。
少女のちぐはぐな知識にブーンの推理は益々麻痺してしまう。
( ^ω^)「さっきの話しだけど、外来……宇宙人と会うのはこれで二度目と言っていたおね」
ξ゚听)ξ「半年ぐらい前から村にちょくちょくと顔を出す連中がいるのよ。
直接顔を合わせたわけじゃないけど、森の中を歩いているのを何度も見掛けたわ」
ビコーズに留守を任せたブーンは、ツンを案内役に森の中を進んで行く。
本来ならば、直ぐにでもマフィア達の情報を手に入れたいところだが、下手に急かしてツンの機嫌を損ねなくはなかった。
フォースを用いた誘導尋問がツンに通じる確信をブーンは持てなかったのだ。
16 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:19:51.11 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「けっこう歩くおね」
ξ゚听)ξ「そうかしら」
ツンが軽装をしているところを見ると、狩猟と言うより果実類の収拾が目当てのようだ。
本来、虫や木々から身体を守る為に、森の散策においては長袖と長下履きが必須とされるが、
先にも記したようにツンはいたってシンプルな服を着込んでいた。
理由を聞けば「動き易いから」という返答が返ってくることは明らかなので、ブーンはあえてそれを口にしようとは思わない。
( ^ω^)「話を戻すけど、なんで森で見掛けた人達が僕と同じだって分かったんだお?」
ξ゚听)ξ「綺麗過ぎるのよ、あんた達は」
めぼしい果実がないか辺りを見渡しながらツンは言う。
17 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:21:26.96 ID:RREcxnlGO
ξ゚听)ξ「あのね。私達の村にも月に数回は旅人が来るわ。
そういう連中って基本的に汚らしい格好をしてるものなのよ」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「髪も髭も伸び放題。身につけている服は垢塗れで、凄く汗臭いの。
でも、私が森で見掛けた連中もあんたも随分と小綺麗な服を着ていたわ」
ξ゚听)ξ「荷物らしい荷物も持たずに旅人と言われて信じる人がいると思う?
みんな適当に合わせてるだけなのよ、暇潰しになるから」
( ^ω^)「これは参ったお。では、村長さんは僕の嘘もお見通しだったのかお」
ξ゚听)ξ「流石に宇宙から来たとは思ってないでしょうけど、あんたみたいな『小綺麗な人達』は、
気前がよくて珍しい小物を沢山置いていくから、歓迎していることには変わりないわ」
18 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:22:41.79 ID:RREcxnlGO
決定的な違いはあの下手くそな土着言語だけどね。
と、皮肉を付けた後、ツンは木の上に成った果実を棒で突つき始めた。
夕食候補は随分と高い場所に鎮座しているようだ。
背が低いツンが悪戦苦闘している様を見兼ねて、ブーンがひょいと足元に落ちていた石を枝に投げ付けた。
狙い通り、枝木に接触した石ころの衝撃で美味そうな青果が地に墜ちる。
ξ゚听)ξ「……ありがと」
仕事を奪われたツンは憎々し気にブーンを見ながら、麻袋に果実を放り込んだ。
一応の礼を言う辺り、彼女は意外と正直者なのかもしれないな、とブーンは内心で微笑む。
なんにせよ、頬を膨らませながらズカズカと先に進み始めるその姿は可愛らしい。
( ^ω^)「袋、持とうかお?」
ξ--)ξ「ケッコウです」
21 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:26:33.55 ID:RREcxnlGO
ブーンの投石で沢山の果実が袋に貯まった。
正確無比な肩を見せ付けるたび、悔しそうな視線を背後から感じるブーン。
そんな状況に何故か悦に浸る自分がいることにブーンは気付かない。
( ^ω^)「共通語に随分と堪能しているようだけど、教えてくれた人って誰なんだお?」
ξ゚听)ξ「誰だっていいでしょ。それより、社で話していたことをもう少し詳しく教えなさいよ」
( ^ω^)「……半年程前から来たという宇宙人達の居場所を教えて欲しいんだお」
ξ゚听)ξ「そいつらって、あんたのお友達? それとも何かの仇かしら?」
( ^ω^)「強いて言えば後者だお。僕はある人からの依頼で奴らを捜しているんだお。
あいつらは凄く悪い奴で、宇宙の秩序を乱しているんだお」
ξ゚听)ξ「秩序、ねぇ。そこまでの大物には見えなかったけど……良くて盗賊よね。面構えからして」
22 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:28:18.79 ID:RREcxnlGO
大正解。
件のマフィアどもは小心者で姑息な連中だ。
銀河をどうこうする力など毛ほども持ち合わせてはいない。
( ^ω^)「場所、分かるかお? 少しぐらいならお礼は出せるお」
ξ゚听)ξ「私がそんなガメつい女に見える? でもいいわ。協力してあげる。私もあいつらには腹が立っていたしね」
意外や意外。
毒舌少女はブーンの要請をあっさりと承諾した。
本来はあい分かったとそこで済ませるべきなのに、興味を惹かれたブーンはそのココロを尋ねてみる。
23 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:30:49.19 ID:RREcxnlGO
ξ#゚听)ξ「ふん。あの糞野郎共、森の主達を片っ端から殺しまくってるのよ。村長への貢ぎ物としてね」
( ^ω^)「ああ。あの大きい牛みたいな奴かお」
ξ゚听)ξ「カウマムという森の暴れん坊よ。草食だけど、凄く気が荒いの」
ツンの話しによればマフィア達が来て以来、カウマムの頭数が異様なペースで減少し、森の秩序が乱れ始めているという。
暴れん坊と言うからには人間にも害が及んでいる筈で、
数が減った方が有り難いようにも思えるが、ツンに言わせれば話はそう簡単には落ち着かないらしい。
ξ゚听)ξ「確かに私達にとってもかなり危険な存在よ。弓を撃とうが剣で刺そうがおかいまなしに突撃してくるもの」
ξ゚听)ξ「でもね、カウマムがそうやって暴れることで森の中にいる中堅の肉食獣達は必要以上に動かなくなるの。
カウマムは動く物全てに攻撃しようとするから」
24 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:32:03.09 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「成る程。つまり、そのカウマムが減ったことで他の害獣達が台頭してきていると」
ξ゚听)ξ「御明察の通りよ。今まで森の奥深くにいた狐や狼達が、最近になって村や私の社にまで姿を現し始めている」
ξ--)ξ「森の猛牛は身を守る為に暴れるけど、肉食動物は積極的に人や他の獣に襲い掛かる。
このままだと、近いうちに犠牲者が出るわ」
では、そこまで分かっていて何故マフィア達の行為を止めさせないのか。
そう聞かれたツンは益々険しい顔を示し、語気を荒くした。
ξ#゚听)ξ「村の連中はカウマムが森に対して担っている役割を理解していないのよ。
私がどれだけ丁寧に説明しても、あの馬鹿爺はちっとも耳を貸そうとしないわ」
25 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:34:35.11 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「(まあ、滅多に手に入らない肉が安定して供給される旨味を知ってしまった、というのもあるかもね)」
ξ゚听)ξ「だから大きな被害が出る前にあの宇宙人どもを追い払いたいのよ」
ということは、ブーンとツンの利害は一致しているということになる。
ツンはマフィアの狩猟を止めさせたい。
ブーンはマフィアの工場を破壊したい。
目的は違えど、向かう方向は一緒のようだ。
( ^ω^)「ツンは優しいんだおね。村の人達を思って敵に立ち向かおうとしているお」
ξ゚听)ξ「別に……。彼らの為じゃないわ。ただ私が住んでいる社にも狼やら何やらが来るから迷惑なのよ」
ふと、何かの気配を感じて立ち止まるツン。
同時にブーンも第三者からの強い視線を感じ、懐へと手を伸ばす。
26 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:35:55.08 ID:RREcxnlGO
ξ#゚听)ξ「ほら、言ってる側から出てきたわ。昼過ぎだってのに狩りをするだなんて!」
( ^ω^)「ツン、危ないお」
ξ#゚听)ξ「黙ってて。以前、あいつらに私の食糧庫が荒らされたのよ!」
薮の奥で眼光を鋭くするのは、二匹の狐。
( ^ω^)「…………」
狐。あれは狐なのか?
空間を圧迫する体積がいやに大きい。
訝しがるブーンに反して、怒りを微塵にも隠さないツンは腰のナイフを抜いて食糧庫の仇に襲い掛かった。
27 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:37:11.16 ID:RREcxnlGO
『ガルルルル!!』
(;^ω^)「でかッ!?」
ξ#゚听)ξ「こんなもん、まだ青二才よ。喰らいなさい!」
稲穂色の体毛を着こなし、ツンの威嚇に迎撃するのは全長が三メートルはある巨大生物だ。
腹を空かしているのだろうか。
細長い口から粘性の涎を垂らし、小柄な少女を平らげようと咆哮する。
(;^ω^)「ツン下がって!ここは僕が……」
ξ#゚听)ξ「黙ってて、と言ったでしょう!? 私はこいつらを四匹まとめて相手にしたこともあるのよ!」
28 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:38:37.64 ID:RREcxnlGO
化け狐の犬歯にも満たないナイフは心細い。
それを左手に持ち替えたツンは、飛び掛かってきた狐の片割れに対して低く構えを取る。
そして、―――――
『ギャルルルルル!!』
ξ# )ξ「悪いけど、死んでもらうわよ」
(;^ω^)そ「!?」
ξ#゚听)ξ「破ァ!!」
獣に対して突き出された右の掌。
何かを片手で押すかのようなモーションで、少女のか細い腕から目に見えぬ濁流が森を疾駆する。
『ギャウウウウウ!?』
(;゚ω゚)「…………」
29 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:41:35.60 ID:RREcxnlGO
その流れに巻き込まれ。
百キロ近い体重を誇る巨大狐は回転を交えて吹き飛んだ。
内臓が破裂し。心臓が麻痺し。脳細胞がスパークする。
フォースの力積を喰らったソレは、空中を舞う間に絶命した。
(;゚ω゚)「フォース……ショック……?」
フォース。
たった今、ブーンの目の前で放たれた不可視の攻撃はジェダイの使うフォースショック意外の何物でもない。
恐るべきは、異常なまでのその威力。
あんな出鱈目な火力を持つフォースショックは、生物に対して使うような代物ではない。
いや、そもそも一般のジェダイでもあれほどのフォースを果たして放出できるのだろうか。
30 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:43:31.10 ID:RREcxnlGO
『キュウ……キャン!キャン!』
ξ゚听)ξ「あんたの連れはもう死んだわ。同じ道を歩みたくなければ、元いた場所に帰りなさい」
『クゥ〜ン……』
:(;゚ω゚):「…………」
ブーンの全力ですら遠く及ばぬ破壊の剣。
それを、汗一つ流さずに繰り出したツン=E=アシュクロフト。
未開の惑星に住まう二十歳にも満たぬ少女が、三十年以上の経験者を持つフォースの玄人をた易く凌駕した。
(;゚ω゚)「(なんというフォースだお。単純な力ならマスター・ギコと……
いや、マスター・ロマネスクに匹敵するかもしれないお)」
31 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:44:42.11 ID:RREcxnlGO
才能とは、まさに彼女の為に存在するようなものである。
ブーンがツンの潜在能力に驚愕し、また畏怖すら感じた理由は他にもある。
が、兎にも角にも真っ先に生じた疑問の一つを、ブーンは当の本人にぶつけられずにはいられない。
(;^ω^)「ツン! 君、その技を何処で知ったお!? 誰に習ったお!?」
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと触らないでよ! 気付いたら使えるようになっていたのよ!」
鼻息を荒くして迫り来る中年親父に、顔が近いと足蹴を入れながらツンはそっぽを向いてしまう。
細い肩から慌てて手を離し、ブーンは一呼吸入れた後に改めてツンに向き直る。
だが、心拍数は依然として高いままだ。
33 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:48:14.14 ID:RREcxnlGO
(;^ω^)「す、すまんかったお……ツンは……今自分が使った力がどういうものか分かっているのかお?」
ξ;゚听)ξ「えー……気とかそんなんじゃないの?
生まれた時から不思議な現象はよく起きてたし。
あれはその延長線上みたいなものなのよ。あんた達宇宙人なら誰だって使えるんでしょ?」
そんなわけがあるか。
ジェダイの資質は一千万に一人が出るかどうか。
ましてや、蛋白質を複雑に結集させた生物を分子レベルで破壊できる芸当を持つ者など、億単位の統計では話にすらならない。
自力で習得した技術とツンは言い張るが、ブーンはそんな供述は絶対に信用できなかった。
ダイヤモンドとて、磨かねばただの透明な石である。
ツン=E=アシュクロフトという百万カラットの原石を磨き上げた人物は、必ずや存在する筈だ。
34 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:51:22.12 ID:RREcxnlGO
だが、ツンの前に立ちはだかるフォースの壁のせいでブーンは尋問どころか、彼女の感情すら読めない始末。
ツンが自分の意思で口を割らない限り、あらゆる謎を白日に晒すことはできないのだ。
ξ゚听)ξ「さあ、もういいでしょ。食糧は十分に集まったし、帰るわよ。あ、その狐も持ってくから」
(;^ω^)「え゙っ! これ、百キロぐらいありそうだお!?」
ξ--)ξ「バカ。解体してからよ。害獣とは言え、森の糧を無駄にはしないわ。
毛皮は冬服に使えるし、骨も装飾に使える。肉は……不味いけど、食べられなくはない」
そう言って、ツンは小振りのナイフを馴れた手つきで狐の屍に突き立てた。
首の動脈から簡単な血抜きを行い、背中から尾にかけて一気に皮を切り開く。
脂で切れ味が落ちれば、鞣革で拭ってまた作業を再開する。
腕を血だらけにしながら一心不乱に動物の内臓を取り出す少女の絵面は、
見ていて複雑な気分にさせられるが、これも偉大なフォースの営みの一つなのだと認識すれば、どうと言うこともない。
37 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 19:55:39.60 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「その解体術も独学なのかお?」
ξ゚听)ξ「まさか。教えてもらったのよ」
( ^ω^)「怖くなかったかお?」
ξ゚听)ξ「そりゃあ最初は怖くてしかたなかったわ。でも、これは生きていく上で必要不可欠なことだし、
死は哀しみや畏れを抱くのモノではなく、見据えるものだと教えられたから……」
( ^ω^)「ほお。ツンの先生はとても立派な見識の持ち主だおね」
ξ*゚听)ξ「そ、そうかしら……わっ!」
内臓の奥深くで圧迫されていた血の塊がツンの顔を汚した。
既に両手を血塗れにしているツンは顔を拭えない。
ブーンは懐からハンカチを取り出すと、そっと彼女の頬を撫でてやった。
38 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:02:16.34 ID:RREcxnlGO
ξ゚听)ξ「……ありがと」
感謝の言葉はこれで二度目。
相変わらずのぶっきらぼうな口調だが、少しだけ言の葉の端が軟らかくなっているようにブーンは感じた。
※※ ※※ ※※
( ^ω^)「ああ、腹減ったお」
ξ゚听)ξ「悪かったわね。重い荷物を運ばせちゃって」
( ^ω^)「(ん?)いやあ、御馳走になるんだからこれぐらいは余裕だお」
ξ゚听)ξ「じゃあ、ちょっと待ってて」
40 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:03:10.78 ID:RREcxnlGO
二人が出会ってから半日。
夕食で必要とする分の肉だけ持ち、ブーンとツンは森を後にした。
毛皮と幾つかの丈夫な骨は頂戴したが、残りは森の獣達に帰すのがツンのルールだ。
幼い頃から、必要以上に物品を貯め込むことはナンセンスだと教えられていた。
独り立ちをしてからも彼女はその教えを忠実に守っている。
( ^ω^)「何処に行くんだお? ご飯食べないのかお?」
ξ゚听)ξ「…………」
デリカシーが無いのね、と無言で語りながらツンは自分の身体をブーンに広げて見せた。
麻の服には件の獣の血が多量に染み込み。それが乾燥してガサガサになっている。
41 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:06:43.69 ID:RREcxnlGO
(;^ω^)「あうあう。これは失礼しましたお、マダム」
ξ#゚听)ξ「ふん。どうせ私はガサツな男女よ。簡単に水浴びだけしてくるわ」
( ^ω^)ノシ「行ってらっしゃ〜い」
ξ゚听)ξ「…………」
( ^ω^)ノ「?」
ξ゚听)ξ「覗いたら。コロスから」
( ^ω(●=「貧相な胸ほど萎える物はなiぎゃぁあ!!」
結局、何処ぞの漫画のような桃色展開など露にも起きず。
太陽が森の向こうへと沈みかける頃に、中年ジェダイと麗若き巫女の夕食は始まった。
食事の内容はいたってシンプルだ。
果実は皮を剥いて適当に切り分け、唯一の蛋白源である狐肉には十分な火を通す。
希少品の塩など内陸の地にある筈もなく、肉食動物特有の臭みのある塊をブーンは鼻を殺して口に放り込んだ。
42 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:08:32.35 ID:RREcxnlGO
( ^ω^)「食事はいつもこんな感じなのかお?」
ξ゚听)ξ「季節によって内容は変わるけど、あまり凝った料理はしないわ。
一応、神に使える身としてこの社に住んでいるから、自然の物はなるべく自然のままで食べるのよ。
パンとか干し肉はたまに村から届くけどね」
美味そうに果実を口に運ぶブーンをツンは蒼い目でじっと見つめる。
村にやって来る旅人達は総じて好奇心が強い。
そんな彼らは森の巫女の存在を知ると、決まってツンの元へ訪ねて来た。
科学技術など無いに等しい惑星だ。
理由はどうあれ、旅人達は明日の我が身も分からぬ危険な橋を渡り続けている。
道中の縁担ぎや祓いを申し込む彼等に、ツンは適当な呪いとフォースを使った簡単な奇跡を行った。
それが、村長に任された彼女の仕事だったからだ。
旅人達の口コミも手伝い、村はちょっとした有名処となった。
43 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:10:23.62 ID:RREcxnlGO
( )^ω^)「あ、お肉にはフルーツソースをかければ良かったかも」
ξ゚听)ξ「何か意味があるの?」
( ^ω^)「肉質が柔らかくなるお」
ξ゚听)ξ「へぇ」
そんな命知らずの旅人の、三人に一人は身を弁えぬ阿呆がいる。
ツンの美しさに惹かれた好色家は、彼女の住まいで上手いこと一晩世話になろうとするのだ。
だが、ツンの身に牙が降り懸かったことは今まで一度たりとも無い。
彼女はもう六年以上も危険な森の中に住み続けている身である。
若いとは言え世間知らずの部類ではないし、危機管理能力は人並み以上だ。
46 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:12:38.79 ID:RREcxnlGO
何より、彼女はフォースの恩恵を授かっている。
あの手この手で白い子羊の肉体を犯そうと考える男達の思惑など、出会った瞬間に彼女は見抜いていた。
そういった先見の約束もあり、ツンは今まで上手く生き残ることが出来たのだ。
( ^ω^)「気付いたんだけど。神様を奉っている社で食事なんかして良かったのかお?」
ξ゚听)ξ「別にいいんじゃない。私の寝床は一人分のスペースしかないもの。それに何より……」
ξ゚听)ξ「加齢臭がするオッサンの臭いを自分の部屋に付けたくないしね」
( ;ω;)「そのカレー臭はきっとスパイスの香りがする筈なんだおぉ……」
47 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:16:03.65 ID:RREcxnlGO
だから、食指を伸ばす狼に対して、子羊は鋼鉄の刻蹄で脳天を陥没させてやった。
逆上してさらに襲い来る命知らずには、強力なフォースの力積で脳を掻き回してやった。
殺しこそしなかったが、そうなった輩はたいがいが森の中で自滅した。
森は何時でもツンの味方だった。
( ´ω`)「じゃあ、オッサンはこの社で一晩明かさせて頂きますお。
マフィア……宇宙人狩りは明日、打ち合わせしましょうお」
ξ゚听)ξ「…………」
そんな生活を続けるツンの目の前に、ひょっこりと表れたのがブーンである。
ツンは、生まれて初めて他人を床の上に案内した。
48 :
◆909zxcTVWc
:2009/04/12(日) 20:18:24.79 ID:RREcxnlGO
ξ゚听)ξ「ねぇ。あんた名前は何て言うんだっけ?」
( ´ω`)「……仲間内からは……ブーンと」
ξ゚听)ξ「ブーン、聞いて。昼間の約束通り私はあんたに協力してあげる。
その代わり、全てが終わったら私の頼みを聞いてくれるかしら?」
( ´ω`)「頼み?」
ξ゚听)ξ「うん。あのね――――――」
今宵。
夜は老け。
銀河の端に在る原始惑星は夢を見る。
小さな小さな森の中。
小さな小さな社の中。
憂鬱に浸る巫女と虚無に嘆く騎士との間に、小さな小さな約束が交わされた。
to be continued...
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