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問合せ
( ^ω^)心のままに、のようです
第9話
[172]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:04:14.53 ID:A6wrdSda0
第九話 部屋の隅、少年の涙
トクン、と。
心臓の鼓動が聞こえて、眼が覚めた。
まず、最初に飛び込んできたのは、真っ白な世界。
( ^ω^)「―っ」
次いで、足への痛覚だ。
身を起こそうとしたら、下半身に痛みの波が走る。
( ^ω^)「・・・ここは・・・」
―病院、だろうか。
ゆっくりと、上半身を起こす。
よくよく見ると、左足が吊るされている。
左側を見ると窓があり、どうやら自分のベッドは一番端にあるのだと、憶測できた。
右側にはカーテンがとおされ、様子を窺うことはできない。
前方にはしかれてはいないが、どうやらそこには人が存在しないことを知る。
( ^ω^)「こういう時は―」
ナースコールを、入れるべきなのだろうか。
枕元にあるスイッチを手に取りながら、そんなことを思う。
悩んでいても何も起きないだろう。構わず、僕はボタンを押した。
[174]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:05:07.88 ID:A6wrdSda0
( ・∀・)「やぁ、調子はどうだい?」
押してから少しで、看護婦は駆けつけてくれた。
適当にやり過ごし、少なからずの情報は手に入れた。
僕のいるこの病室は相部屋なのだが、今はこの部屋に入れられているのは僕だけらしい。
さて、何故僕はここにいるのだろうか、と考えていると、開かれたカーテンから、入り口から入ってきた
白衣姿の男を視認できた。
見たところ、真面目そうに見える人で、彼は僕の主治医だそうだ。
名は、喪羅モララーというらしい。
( ・∀・)「―で、この傷は、料理をやっているときに、間違って刺してしまったらしいね」
僕の足を指差しながら、彼は言った。
( ^ω^)「―」
―そうか、そうだったな。
僕は、ツンに、刺されたんだ。
( ^ω^)「そう、ですお」
しかし、事実は話さなかった。
( ・∀・)「・・・こんな刺し傷、普通はできないんだけどなぁ・・・」
[175]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:05:59.69 ID:A6wrdSda0
しかし、相手だって医者だ。
経験などから、勘付いている、というよりは、分かっているのだろう。
この傷は、刺された傷なのだ、ということに。
( ^ω^)「ははっ、僕、おっちょこちょいなんですお」
だが、それでも僕は、事実を隠した。
何故、と思われるだろう。
例え、あんなことをされても。
家族は、守りたかった。
もしも、事実を喋ってみろ。ツンは、殺人未遂で逮捕だ。
そんなこと、させるものか。ツンを失うぐらいなら、いくらでも刺されてやる。
もう、失いたくはないのだ。家族を、ツンを。
( ・∀・)「・・・ふふっ、料理の際には、気をつけることだ」
じゃないと、下手したら―死んでしまうからね。
彼、モララーは、そう言った。
[177]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:07:04.08 ID:A6wrdSda0
( ・∀・)「では、大丈夫そうだから、私は行くよ」
モララーは言うと、部屋から出て行こうとする。
( ・∀・)「あ、それと。一応、君が目覚めたことは、ご家族の方に連絡しておいた」
直ぐに来るだろう、というと、最後に、彼は小さな声で、呟いた。
( ・∀・)「・・・本当に、気をつけるんだよ」
そう言い、彼は出て行った。
[179]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:07:47.98 ID:A6wrdSda0
ξ゚ー゚)ξ「元気そうで、なによりね、お兄ちゃん」
モララーが出て行ってから、数分。直ぐにツンが駆けつけた。
最初、この顔を見た瞬間に、殴り飛ばしたくなる衝動に駆られた。
だが、今この場では不味い。それ以前に、やはり、僕の説得が甘かったのだと思い直し、
手の力を抜いた。
( ^ω^)「―おかげさまで、お」
少し、皮肉を吐いてみた。少しだけ表情を曇らせたが、直ぐに笑みに戻す。
―何故、そんあ顔をしているんだ。
その顔は、ツンじゃない。止めてくれ。
ξ゚ー゚)ξ「・・・そう。まぁ、いいわ。もう、あんなことを言わなければ、ね」
ツンが、顔を近づける。
(^ω^ )「・・・止めろお」
ぷいっ、と、顔を背けた。あと少しで、唇と唇があたるところだった。
ξ゚ー゚)ξ「つれないのね」
そう言うと、ツンは僕の股間に手を伸ばす。
―何なんだ、一体・・・。
[181]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:08:47.84 ID:A6wrdSda0
( #^ω^)「・・・・・」
触れる寸前に、腕を掴んだ。
出せる限り、全力で力を込める。ツンの表情は、変わっていない。
ξ゚ー゚)ξ「・・・痛いよ、お兄ちゃん。離して」
言われ、僕は腕を離す。ツンも手を引っ込めた。
( ・∀・)「―っと、間が悪かったかな?」
ふいに、入り口から声が聞こえた。
見ると、そこにはモララーが佇んでいる。手には、書類―カルテだろうか―を持っていた。
( ^ω^)「っ・・・御見苦しいところを、見せてしまいましたお」
いや、いいさ、と彼は言うと、ツンに顔を向けた。
( ・∀・)「えーっと・・・あなたは、ホライゾン君の、妹さんのツンさんですね?」
ペンを口に当てながら、彼は言う。
ξ゚ー゚)ξ「えぇ、そうです。兄が、お世話になってます」
( ・∀・)「いえいえ。早速出悪いのですが、怪我の説明をさせていただきたいのですが―」
いいですかね?と彼は言う。
構いませんよ、とツンは言う。
[187]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:19:49.19 ID:A6wrdSda0
僕を目の前にして、二人は話を進めている。
入院費がどうだの、治療費がどうだの、そんな事が聞こえる。
答えるツンは、ほとんど、大丈夫です、構いません。そればかりだ。
―当然といえば、当然か。金なんて、腐るほどある。
父と母の事故死により、莫大な遺産と、保健がおりた。
そのお金は、僕達の手元にある。
金とは、恐ろしいものである。
人を狂わせるソレは、悪魔である。
僕達は、ソレのせいで、散々傷ついてきた。
( ・∀・)「―と、言うわけで、以上で終わりですね。質問はありますか?」
耳に、終わりの合図が届いた。
窓から、目線をモララーに戻すと、ツンは、いえ、ありません、とだけ言った。
( ・∀・)「そうですか。―あ、そうそう」
去り際に、モララーが思い出したかのように、言を発した。
( ・∀・)「・・・ホライゾン君の傷―どう見ても、刺されたように見えるんですよ」
ツンが、眼を鋭くさせた。
僕は、動けない。
モララーは、続ける。
[189]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:21:02.28 ID:A6wrdSda0
( ・∀・)「―しかし、本人が、違うと仰られるので・・・ツンさん、何か、知りませんか?」
最後の言葉が、妙に、圧のかかった声に聞こえた。
だが、ツンは、努めて冷静に答えた。
ξ゚听)ξ「―いえ、分かりません。しかし、兄は、実際にキッチンで倒れていましたし、
本人がそういっている以上、何とも・・・ねぇ、お兄ちゃん?」
( ^ω^)「・・・僕、おっちょこちょいなんですお」
先ほどと、同じ言葉を使った。
それ以上にいい提案が、思い浮かばなかったからだ。
( ・∀・)「・・・うん、分かったよ。んじゃ、お大事に―」
それだけ言うと、彼は去っていった。
[190]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:22:02.67 ID:A6wrdSda0
ξ゚听)ξ「何で、本当のことを、言わないの?」
モララーが去ってから、数秒。僕に顔を向けないで、そう問うた。
だが、すぐに顔を僕に向けると、ううん、と首を振り、こう言った。
ξ゚ー゚)ξ「・・・私を守ろうとしたのよね。分かってる、言わなくても」
ゆっくりと、ツンが、また、近づいてくる。
ξ゚ー゚)ξ「・・・やっぱり、お兄ちゃんは、私を愛しているんだわ」
―もしも、僕が、ツンを助けてあげれるとしたら、どうすることだろう。
それは、言わずとも分かっている。
ツンに愛を囁き、身をもって愛を感じさせることだろう。
だが、無理だ。
僕は、ツンを愛してなどいない。
無性に、涙が零れてきた。
もう、どうしたらいいのか。説得も無理だった。
残る手段は、逃走?それとも、闘争?
( ;ω;)「・・・・・」
声も出ず。ただ、頬に熱が走る。
[192]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:23:32.06 ID:A6wrdSda0
ξ゚ー゚)ξ「・・・泣かないで」
目元に、ツンの指が近づき、涙を拭った。
ツンは、僕の涙を、舐めた。
ξ゚ー゚)ξ「―美味しい」
お兄ちゃんの味がする。そう言った。
( ;ω;)「クー・・・」
僕は、助けが欲しくなり、愛する者の名を、呼んだ。
意識的に、ポケットの中をまさぐるが、そこにはダンヒルは無かった。
クーが、まるで、遠くに行ってしまったような感覚に陥る。
ξ゚ -゚)ξ「・・・私の前で、その女の名前を呼ばないで」
[194]
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
: 2008/03/16(日) 18:24:33.32 ID:A6wrdSda0
言い、ツンは、僕にキスをした。
避ける間もなく、ただ僕は、涙を零す。
嫌だ。もう、嫌だ。
( ;ξ* )ξ
クー・・・。
第九話 終
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