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問合せ
( ^ω^)ブーンが剣の道に踏み出すようです
第3話
[8]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:10:39.73 ID:azFi8Las0
この国にかつていた一人の剣客の、
岩を断つ剛力と疾風のごとき神速とを併せ持つ男の、
剣を理解し、剣を知りすぎてしまった賢者の、
三千世界の烏を殺し、無我のその果てを目指した一人の人間の、
名前。
それは、モナ本モ蔵。
[9]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:10:56.18 ID:azFi8Las0
第参話
夕焼けの中で、翁はすぅっと一つ伸びをした。
場所は、山賊・護道山王の名の由来となる一つの道の上である。
よく踏み固められ、均されているのは、それが雑州の中心である美府へと続く一本道であるからか。
美府から出て江戸、武州などに向かう旅人や商人たちが通らぬわけにはいかない道である。
時はすでに夕刻であり、それらも途中の宿場で脚を休めているであろうが、
昼であれば道を通る手車や旅人たちを見ることが出来るであろう。
[10]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:13:03.77 ID:azFi8Las0
それに目をつけたのが護道山王。
武力を以って道の一部を占拠し、偽の関所を建てて「護道料」とやらを
掠め取る。
旅人たちとて山賊と関所の役人の区別くらい付くが、厄介ごとに巻き込まれたくない
一心で「護道料」を支払うわけである。
いい迷惑なのは、雑州に一大勢力を持つ大名、ひろゆきであった。
[11]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:14:40.34 ID:azFi8Las0
( ´∀`)「……さて」
翁は、一つ屈伸をすると、すっくと道の上に立った。
体はすでに解れている。
三日に渡る少年たちとの稽古で、翁の肉体は、完全に往年のソレを取り戻していた。
[12]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:17:10.83 ID:azFi8Las0
( ´∀`)「……殿の意に沿わぬことになるかも知れんが……」
西から差し込む夕日が、翁の前に長く影を作っている。
世界が、赤く染まっていた。
( ´∀`)「仕事の時間じゃ」
[13]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:18:51.92 ID:azFi8Las0
戦国の余波もまた去りきれぬこの時代。
各国の大名たちにとって、剣客たちは目の上の瘤のような存在であった。
何せ何をしだすかまるで分からぬ。
勝手気侭に国々を渡っては、風紀を乱す。かといって自国に取り入れても、
待遇が気に入らなければあっさりと脱藩する。
剣の腕一本あれば、自分はどこででも食っていける、と思っているのであろう。
[17]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:22:56.24 ID:azFi8Las0
その上なにかの取り得があるわけでもない。
どれほど優れた剣客がいたところで、一国と言う単位で見るならば、その剣技など微々たる
物に過ぎないのだ。
武の達人と言う奴らは往々にして学がない。兵法も知らぬ。
何の役にも立ちはしない。
それでも召したてたいのは、各大名の面子と言うものであろうか。
[19]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:24:09.34 ID:azFi8Las0
翁は、山賊のたむろする山門の前に立った。
山門まで、距離にして半町ほど。やっと声の届く距離である。
(注釈 一町は100mほど。つまり半町とは50mほどの距離になる)
( ´∀`)「おおぉい。聞こえるかヌシら! ちょっとこっちに来てくれい」
(・(エ)・)「ああぁん?! なんだおらぁ」
( ´∀`)「ちょっと疲れてのぉ。おんぶしてっとくれ!」
(・(エ)・)「狂ってのかこのジジイ!!」
(
>>18
だな)
[20]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:26:25.97 ID:azFi8Las0
こちらに向かってくる山賊は二人。十字槍を担いだ者と
脇差を帯びた者が一人。
( ´∀`)(まったく、手ごろな数で来おってからに…)
[22]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:27:29.90 ID:azFi8Las0
二人の山賊には、たた翁が後ろを向いただけのように見えた。
むしろ、逃げようと身を翻したようにさえ。
山賊たちは互いを見合わせてにたっと笑い――
すぐに自分たちの判断が間違っていたことを知った。
[23]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:28:46.72 ID:azFi8Las0
翁と山賊の距離が一丈まで縮まったとき、
翁は後ろを振り返るようにしながら背に隠していた剣に手をかけ
山賊たちの視界から消えた。
(一丈は3mほど)
(・(エ)・)「……え?」
翁の後ろ脚を受けた土が爆せる。
[24]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:30:23.06 ID:azFi8Las0
発射、
としか表現のしようのない勢いで、翁の体が宙を駆けた。
上体は殆ど水平に寝たようにさえなり、その体の影から神速の技を乗せた剣が放たれる。
必ず殺す剣と書いて必殺剣であるなれば。
それはまさしく、ここにあり。
[25]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:32:50.16 ID:azFi8Las0
前方にいた槍の山賊の体が、腰から真二つになって飛ぶ。
鮮やか過ぎる切り口故か、死した山賊の体から血が撒き散らされるにはいくらかの猶予があり、
それのわずかな猶予の間に、翁は脇差のほうの山賊の零距離に迫っていた。
驚きの余り開かれた口の合間に入り込んだ柄が、前歯と口蓋を破壊し、脳髄に致命的な
ほどの衝撃を叩き込む。
二人の山賊たちは、一瞬の後にはすでに絶命していた。
[27]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:34:47.45 ID:azFi8Las0
すべてが動きを止めた。
翁は自身の手で頭蓋を砕いた脇差の山賊の体を抱えるようにして動かない。
山賊たちは、一瞬の間に何が起こったのがまったく理解できないまま、翁の方を呆然と眺めていた。
肩に凭れたニモツを捨てて、翁は、悠然と山門に向かって歩み行く。
( ´∀`)「……」
血風が、吹くであろう。
[28]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:36:52.24 ID:azFi8Las0
翁は、自分以上の剣士というものをついぞ認めぬ。
今まで生き残ってきたということ、それが、何よりの証拠。
しかし今、翁は死なねばならぬ。それが主の望み。
大きくなりすぎた自身の名声と、モナ本モ蔵を慕う者たちの命の代価。
三十対一。本来ならば戦いにすらならない数字。しかしこの剣聖ならどうか。
主による、残酷なる遊戯。
[29]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:38:42.35 ID:azFi8Las0
( ´∀`)(文句等言わせぬよ、殿よ。主命は守ろう。ただ、ワシ死なぬと言うこと…)
( ´∀`)(ただ、すべてを切り伏せるということ。無双であり続けると言うこと)
翁は、山賊たちの一団の目の前に立った。
正気に返った山賊たちがそれぞれ得物を振り上げ、
乱戦になった。
[31]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:40:13.34 ID:azFi8Las0
戦い始まると、翁は迷うことなく、前に出ていた一人に太刀を浴びせかけた。
先ほど二人の命を絶ったその剣を、山賊は受けることさえ出来ず袈裟に切り下ろされる。
(・(エ)・)「ごふっ…!!」
翁は、血の混じった息を吐き出したその体に密着すると、一息にそれを突き飛ばした。
雪崩れ込もうとした先頭の男たちの集団がそれに絡まり、団子のように丸まった形となる。
翁は八双に構えると、その団子の向かって左側に駆け抜けながら薙いでいく。
重い手ごたえを残して、二人の山賊が地に伏した。
[33]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:41:52.24 ID:azFi8Las0
追いすがる山賊たちに押され、翁は後退した。
しかしその合間にも差し込まれた小手を切り落としていく手際は、
見事としか言いようがないだろう。
幾たび手を切り落とされ勢いの死んだ集団に飛び込み、さらに三人を切った。
跳ぶようにして棍棒を繰り出してくる者を蹴り落とし、高く構え、わあっと殺到してくる者の
胴を切り刻む。
(
>>30
まぁ下手だから仕方がない。精進するさ)
[35]
◆PFllNJFe5s
: 2008/03/08(土) 22:43:30.69 ID:azFi8Las0
進んで二人ほどの顔面を叩き割ったところで、刀が駄目になった。
すぐさま脇差を抜き、懐からさらに守り刀を一つ。
歪な二刀流を構えると、翁はさらに戦いへと没頭していった。
( ´∀`)(さてこっちはいいとして……あの小童たちはどうなったか……)
どうなったかと言えば、翁の戦いっぷりも知らず、森の中を進んでいたわけである。
第参話 了 第四話に続く
(今日はここまでにしよう…支援無しに書くのは本当につらいな…)
(
>>34
ありがとう。できれば次も見てくれよ)
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