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( ^ω^)ブーンはフォースを駆るジェダイのようです

SHOT-U

5 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:09:12.50 ID:UqEWRWsEO
【登場人物】

( ^ω^)…ナイトウ=ホライゾン(32)
・正統派ジェダイナイト
・柄の両端から光刃を展開する翡翠色のダブルライトセイバーを愛用

( ∵)…ビコーズ
・ドラム型多目的万能ドロイド
・R2-D2みたいなのを想像してくれておk
・ブーンの相棒

  _
( ゚∀゚)…ジョルジュ=ランダビート(25)
・正統派ジェダイナイト
・緑色のライトセイバーを使う
・重度の変態

6 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:10:41.00 ID:UqEWRWsEO
Episde2:カーシェスバイト視察
  _
( ゚∀゚)「…………」

( ^ω^)「…………」

  _
( ゚∀゚)「なあブーン」

( ^ω^)「なんだお」

  _
( ゚∀゚)「この作戦。不毛じゃね?」

( ^ω^)「何事も忍耐だお」

〜SHOT-2〜

8 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:11:48.32 ID:UqEWRWsEO
カーシェスバイトの役人、マエストの独白は意外なものだった。
資源衛星強奪の犯人探しというジェダイへの依頼は完全なブラフ。
その真の狙いは、何者かに衛星を非合法に提供する貿易担当大臣の暴走を止めることだったのだ。

  _
( ゚∀゚)「でもさ、いいのかよ」

デブリ帯に浮かぶ衛星の採掘粕を眺めつつ、ジョルジュが通信先のブーンへ呟く。

( ^ω^)「なにおだお」

  _
( ゚∀゚)「評議会への報告さ。カーシェスが非正規ルートでレアメタルを輸出していた事を報せなくて良かったのか?」

10 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:13:42.01 ID:UqEWRWsEO
マエストからの依頼を一通り聞いた後、ブーン達は評議会に任務の途中経過を報告している。
その際、ブーンは衛星を横流しする大臣の件には触れず、当たり障りのない内容を伝えるに留めていた。
ジョルジュが疑問に思うのも当然だ。

( ^ω^)「評議会からは、”衛星を持っていく奴”を捕らえろと言われたお。”衛星を横流しする奴”を捕らえろとは言われていないお」

  _
( ゚∀゚)「屁理屈じゃん」

( ^ω^)「何れは露顕することだお。別に今報告する必要はないお」

相変わらずの男だな、とジョルジュは思う。
周囲からブーンと呼ばれているこのジェダイナイトは、普段は規律を誰よりも重んじている癖に、今回のような事情が絡むと何故か奇妙な行動を取ることが多々あった。

12 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:15:54.08 ID:UqEWRWsEO
ブーンの師は厳格なことで有名だったが、その気質を完全に受け継いでいるというわけでもないらしい。
かと言って、彼がジョルジュのように勝手気ままな日々を過ごしているわけでもなかった。
要するに、天の邪鬼なのだ。

  _
( ゚∀゚)「(いや、どちらにせよイレギュラーな男だわ)」

ブーンはナイトの称号を得て十年近く立つ今でも、弟子の類いを取ったことがない。
一度たりとも、である。
その理由をジョルジュはブーンに何度か尋ねたことがあるが、当の本人はのらりくらりと返事をするだけで、明確な答えを返したことは無かった。

  _
( ゚∀゚)「(ショボンの話じゃ、ブーンが独立したのは自分の師匠が死んだ時だったらしいけど……)」

14 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:19:28.25 ID:UqEWRWsEO
ジェダイとしては比較的遅咲きの部類だったブーンは、己の師が病に侵された事を契機にナイトへの昇格試験を受けている。
厳しい試練を突破して免許皆伝を経たブーンは、その旨を真っ先に師へ報告した。
傷だらけの身体を引きずって病室にやって来た弟子を見届けた老師は、そのまま静かに旅立ったという。

師を見送って以来、ブーンは変わったと彼を古くから知る者達は口を揃えて言った。

危険な任務に進んで志願し、弟子も取らずに戦場をひたすら駆け巡る日々を彼は過ごす。
トリッキーな動きを生み出すことで有名な、ダブルライトセイバー専用型『独楽』を完成させたのもこの時期だそうだ。

もっとも、そういったかつての奇行が、今回のブーンの気まぐれと直結するかどうかは定かではない。

16 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:20:55.44 ID:UqEWRWsEO
  _
( ゚∀゚)「R1。周辺宙域に機影はあるか?」

ジョルジュ達が今いる場所は、カーシェスバイトから数パーセク(銀が共和国が定めた距離の単位)離れた位置にあるデブリ帯だ。
電波が撹乱され易いこのゴミ溜まり、隠れ簔としはうってつけの場所である。

彼等が潜伏を始めてから既に五時間。
戦闘機にプラグインしたアストロメクドロイドが、主の問い掛けに本日四度目の否定音を鳴らした。

( ^ω^)「ジョルジュ、まだ始まったばかりなんだから……」

  _
( ゚∀゚)「さっきも言ったけど、この作戦は効率が悪すぎるぜブーン。いつ来るかも分からない誰かさんを待ち続けるなんてよ」

19 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:23:06.74 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「マエスト卿は有力議員の圧力で表立った行動ができないお。だったら、僕たちが取引の現場を待ち伏せしてぶっ潰すしか手はないお?」

マエストの情報によれば、今までの衛星の横流しは言わばお試し期間のようなものらしい。
貿易大臣と衛星の買い手であるミスターX(ジョルジュ命名)に、ある程度の信頼関係が出来上がったところで、大規模な取引きを行うとのことだった。

そして様々な角度から検証した結果、今より三日以内にブーン達が待ち伏せしているこの宙域で、それが行われる可能性が高いことが判明している。

21 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:25:28.15 ID:UqEWRWsEO
  _
( ゚∀゚)「敵船をぶっつぶすだけなら楽なんだけどなあ」

( ^ω^)「こら。ちゃんと作戦の内容を覚えてるかお?」

  _
( ゚∀゚)「あたぼうよ。
   1.ミスターXが取引場所に現れたら暫く様子を見る。
   2.非合法のやり取りを確認した後、俺達が戦闘機でその取引をぶっ潰す。
   3.あわよくばミスターXを逮捕」

( ^ω^)「百点満点だお。今回の僕たちの目的は、あくまで取引そのものを破綻させること。それがマエスト卿との約束だお」

  _
( ゚∀゚)「約束、ねぇ。信用できるのかな。あのオッサンは」

国会の受諾なしでジェダイを秘密裏に招いたマエストは、とある約束をブーン達と交わしていた。

24 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:27:51.09 ID:UqEWRWsEO
共和国の認可外で希少資源を輸出入することは重罪だ。
当然、それが明るみに出れば、元老院から大規模な経済制裁が発令されることとなる。

第一次生産惑星からの脱出を目指し、それが手の届く場所にまで上り詰めているカーシェスバイトにとって、経済制裁は痛手以上のものだ。
そうなれば、今まで築き上げてきた宇宙各国からの信用も失ってしまうだろう。

(メ" -" )『それだけはなんとしても避けたい。今までに流出した希少資源の量はさしたるものではない。
   傷口がまだ小さいうちに、我々自身でこ件に決着をつけたいのだ』

つまり、ブーン達が今回の大規模な横流しを未然に防いでくれれば、違法取引の事実を自主的に世間へ公表するとマエストは言うのである。

28 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:31:12.94 ID:UqEWRWsEO
ジェダイは常に中立だ。
一部の組織に肩入れをすることは絶対に許されない。
が、これから起こるであろう犯罪を、阻止してはいけないという決まりも無い。

( ^ω^)「だから、この行動がジェダイオーダーの精神に反することは何一つ無いお。
    立派な治安維持活動だお」

  _
( ゚∀゚)「まあ……今回の件は、一部権力者の暴走のようだから良いんだけどさ」

( ^ω^)「マエスト卿は稀に見る真の愛国者だと思うお。僕は彼の言葉を信じたい」

  _
( ゚∀゚)「そういやあ、この機体の名前も愛国者って意味らしいな」

ブーン達が乗る『ガゼル・ダゼル』と名付けられた戦闘機は、マエスト卿によって提供された物だった。
ジェダイ達が有事の際に好んで使う、速力重視の全天候対応型戦闘機『ラブラドール』と似通った性質を持つ一人乗りの宇宙兵器だ。
銀河中に普及しているサポートドロイド・プラグインシステムを採用していた為、ブーンに限ってはビコーズも彼の機体に乗り合わせている。

29 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:32:19.03 ID:UqEWRWsEO
  _
( ゚∀゚)「俺も自分のアストロメクドロイドを持とうかなあ。ちょうど最新型が出てるしさ」

( ^ω^)「高級品は所有欲の始まりだお。買うぐらいなら評議会から支給される物を使えお」

  _
( ゚∀゚)「ビコーズは買ったんじゃないのかよ」

( ^ω^)「貰ったんだお」

( ∵)「プーン」

  _
( ゚∀゚)「へえ。誰から」

( ^ω^)「秘密」

  _,
( ゚3゚)「フン。けちん坊め……お?」

33 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:35:17.58 ID:UqEWRWsEO
レーダーに光点が灯った。
随分と大きい。
ジョルジュから命令を受けたR1が、直ぐさま目標方向へと光学カメラを向ける。

司法が及ばぬ排他的経済宙域外であるその場所に、二隻の大型船が集まっていた。
片や、宇宙旅行用に普及しているクルーザー型。
片や、大型コンテナを満載した貨物型。
どうやら、予め決めた時間にハイパースペース経由で待ち合わせをしていたらしい。

  _
( ゚∀゚)「ビンゴ! こいつはツイてるぜ! イャア!」

( ^ω^)「落ち着け眉毛。まだ動くなお」

  _
( ゚∀゚)「あの貨物船にレアメタルがあるのかな。満載されていたとしても言うほどの量じゃなさそうだぜ」

( ^ω^)「あれは手土産みたいなもんだお。たぶん、今回の接触で取引の最終調整をする筈だお」

36 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:36:40.54 ID:UqEWRWsEO
まさか張り込んだ初日に遭遇できるとは。
今回の依頼に備えて、マエストは相当な調査を独自にしていたらしい。
その甲があってか、彼の提供した情報は今のところ全て正確だ。

幸運と同時に緊張を感じるブーン。
ここで下手を打てば、今回の犯罪が有耶無耶にされる可能性がある。
慎重に、確実に、事を進めなくてはならない。

  _
( ゚∀゚)「探索ボットを出すぜ」

( ^ω^)「了解」

38 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:39:47.50 ID:UqEWRWsEO
ジョルジュの機体から頭一つ分の大きさのスパイドロイドが射出された。
隠密性に富む小型情報収集兵器だ。
熱探知に掛かり易いガゼル・ダゼルに代わって、この機械を二隻の船へぎりぎりの位置まで接近させる。
ブーン達は動かずして相手の詳細が分かるという案配だ。

  _
( ゚∀゚)「どう攻める?」

( ^ω^)「本件に絡む船であることを確認次第、襲撃をかけるお。
    この取引が第三者に露見していることが分かれば、ミスターXは商談を先送りにする筈だお」

  _
( ゚∀゚)「んで、連中が再接触しようとした時には既にスキャンダルが公表されているって寸法か」

( ^ω^)「奴らがハイパースペースへ逃げるまでが勝負。できれば両方を捕らえたいところだお」

  _
( ゚∀゚)「たった二機のファイターでそんな芸当ができるかねぇ……ボットから通信」

42 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:42:54.63 ID:UqEWRWsEO
スクリーンに密会の鮮明な現場が映し出される。
貨物船のコンテナが展開されているようだ。
中にはワイヤーで固定されたいびつな巨石がいくつも詰め込まれている。
次いで、宇宙服に身を包む複数人影が外界へと出てきた。
資源衛星を指しながら会話をしている。

  _
( ゚∀゚)「品定めをしているようだな」

( ^ω^)「ビコーズ。しっかり録画しておくお」

( ∵)「ププ!」

資源衛星の存在を確認し、ブーンがアクセルを踏み込んだ。
ジョルジュが直ぐさまその後へと続く。

作戦開始。
密船とブーン達との距離はそれほど遠くない。
先方が気付いた時には、完全に取り囲むことができるだろう。

46 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:45:49.95 ID:UqEWRWsEO
>>42 訂正>スクリーンに密会の鮮明な様子が映し出される。


  _
( ゚∀゚)「俺はクルーザーを殺る! 貨物船は頼むぜブーン!」

( ^ω^)「殺してどうする。あんまり僕に突っ込みを期待すんなお」

二手に別れたブーンは、機体を加速させながら貨物船の様子を探った。
外観からは武装を施していないように見えるが、油断はできない。

実はコンテナの中に800mmプラズマキャノンを載せていました。などというオチもざらにある世界だ。
何れにせよ、相手側の有効射程内に入れば分かることだろう。

ファイターに搭載された武器は、ビームバルカン二門と魚雷発射管一門という標準的な武装。
相手が戦艦でも無い限り、これだけあれば十分に戦える。

47 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:47:35.69 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「む!」

  _
( ゚∀゚)「おおっと。やっぱそうきたか」

貨物船から五つの機影が飛び出した。
観測ライブラリが直ぐさま相手の情報を弾き出す。
対海賊用の無人戦闘機だ。

  _
( ゚∀゚)「こいつらは落としてもいいよな」

( ^ω^)「そっちの二機は任せるお」

無人戦闘機は貨物船とクルーザーを守るようにして周囲を旋回している。
凶悪な戦闘能力を誇る『シェパード』や『ボルゾイ』ならまだしも、相手はこちらとさして変わらぬ武装機だ。
おまけに無人。てこずるような相手ではない。

両翼の放熱板を開放し、ブーンは機体を戦闘モードへ切り替えた。
トリガーに指を軽く添え、交戦時の衝撃に備える。

49 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:49:58.35 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「よっと」

先手を打ったのは相手方だった。
散発的に発射された緑色のビームがブーンを襲う。
スピードを殺すことなくそれを避けたブーンは、三次元空間を自由に泳ぎ回る敵の一つへと狙いを定めた。

レーダーが目標を補足。
『LOCK ON』の表記と共に赤いボタンを押し込む。

( ^ω^)「敵機撃墜……やべっ、回り込まれた」

爆散した相手を確認する暇も与えず、ブーンの背後に新たな敵が回り込んできた。
自機へのレーザー照射を感知したビコーズが警笛を甲高く鳴らす。

( ^ω^)「追尾魚雷だお! ビコーズ、チャフの射出と同時にスラスター全開。回転して奴の尻を掴むお!」

( ∵)「ピピ!」

52 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:52:57.28 ID:UqEWRWsEO
警告音がコックピットに鳴り響く。
レーダー画面に映った小さな光点がブーンの機体へと進んでいた。
相手が魚雷を発射したのだ。
ブーンは命の警告に動じることなく、冷静にそれを引き付けた。

こういった兵器をやり過ごす王道の一つは急速回避である。
相手がAI搭載の視認ミサイルを使っていた場合は、チャフやフレアといった撹乱兵器は役に立たない。
魚雷の方向転換能力を計算に入れ、最適なタイミングで機体を回避させる必要がある。

( ^ω^)「三、二、一……今!」

バーニアが火を噴いた。
真っ赤な炎を吐き出すブーンの機体はミシミシと鳴る不快音と襲い掛かるGに耐えつつ、一気に魚雷との距離を離した。
上昇旋回による脚部の圧迫に歯を食いしばりながら、ブーンは鉛直下方に進む敵を視認する。

53 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:54:01.43 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「そこっ!」

ビームの連射。
エンジンを撃ち抜かれた敵機は煙を吐きながら無音の爆発を起こした。

  _
( ゚∀゚)「遅いぜブーン! 俺はもう撃墜2、だ!」

( ^ω^)「速けりゃ良いってわけじゃねーお」

残り一機。
二隻の隠し玉に備えるようジョルジュに命令を出したブーンは、最後の獲物へ取り掛かる。
爆弾を喰ったサンドワームの如く、変則的な軌道を描く敵ファイター。
背中を奪うことには成功したが、ロックサイトに中々相手を納めることができない。
こちらの動きを学習しているのだろうか。

56 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:57:06.65 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「ええい。こんな物に頼っているから……!」

唸りながらスコープ機能を停止させるブーン。
無謀な行動だ。
これでは機械の補助なしでバルカン砲を使わなくてはならない。
高速戦闘において、自動補整装置なしで相手にビームを当てることは至難の技だ。
何を考えているのだろう。

( ^ω^)「死線を読め。雑念を捨てろ。フォースを感じるんだお、ホライゾン」

途端、エンジンの音が遠くなっていく。
宇宙空間に漂うフォースに身を委ねたブーンは、落ち着いた眼差しで数百メートル手前の存在に全神経を集中させる。

心の中に白い羽が浮かび上がった。
ブーンはそれを掴まなくてはならない。
羽は脆く、そして軽い。
ゆっくりと、焦らずに、掴まなければ五指の隙間から羽は擦り抜けしまう。

57 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 22:58:42.86 ID:UqEWRWsEO
( ‐ω‐)「…………」

指先に、感触が走る。

( ^ω^)「もらった!」

引き金を弾いた回数は一度きり。
真っ直ぐに飛んでいく二本の光線が、黒い影を撃ち抜いた。

  _
( ゚∀゚)「ナイスキル!」

( ^ω^)「ナイスショットと言えお」

歓声を上げるジョルジュ。
敵影は零。
どうやら相手の攻撃手段はこれで最後らしい。
思わぬ反撃を喰らわぬよう、慎重に巨船へとブーン達は再接近した。

  _
( ゚∀゚)「雑魚は落とした。取り付くぜ」

( ^ω^)「くれぐれも無茶はするなお」

60 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:00:32.35 ID:UqEWRWsEO
任せとけって、と叫びながらジョルジュはクルーザーへ突っ込んでいく。
軽薄な返事に不安を感じるが、ジョルジュとて一端のジェダイナイトだ。上手くやってのけるだろう。
一方のブーンも、後輩に負けじと貨物船へのアプローチを開始する。

( ^ω^)「う〜む。流石にでかいお」

いざ近付いてみると、目標の船は相当な規模であることがよく分かった。
断片とはいえ、流石に衛星を格納できるだけのことはある。
小尾から先端まで全力疾走しても、完走するのにたっぷり数十秒は掛かるだろう。

外部からの制圧は無理だと判断したブーンは、内部に侵入する為のシールドロックはないかと視線を走らせた。

64 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:03:00.15 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「あったお」

灰色の壁面の横を飛んでいると、長方形に切り取られた空洞が目に入った。
小型船の発着場だ。
四角い入口の全面に光る半透明の淡い壁は、宇宙空間と生命維持空間とを隔てるスペシフィック・フィールドだ。
本来は適切なやり口ではないことを十分に理解した上で、ブーンは機体ごとそのフィールドへ突入する。

( ^ω^)「ビコーズ! 気圧調整を開始しろお!」

整備をしていたドロイドを吹き飛ばしながら、ブーンのファイターは火花を散らして貨物船のドックに胴体着陸を果たす。

ドック内は赤い警報灯がくるくると回っている。
早くこの場を後にしなければ、警備ドロイドに取り囲まれてしまうだろう。
しかし、半密室この場所でバルカン砲を撃つわけにもいかなかった。

67 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:05:09.11 ID:UqEWRWsEO
( ∵)「パピ!」

ビコーズがゴーサインを出した。
コックピット内の気圧調整が完了したのだ。

(;^ω^)「はあ……本当は、こんなに急激な圧力調整すると身体に毒なのに……」

若かりし頃。
機内と外界との気圧差を調べないまま外へ出たが為に危うく絶命しかけた経験を持つブーンは、
ドックとコックピット内の数値をしっかりと確認した上でハッチを開放した。
冷たい空気が肌を打つ。
空気が薄い。

( ^ω^)「ビコーズ。そこで僕の連絡を待つお」

ファイターの翼に納まるビコーズを残し、ブーンは迅速な動きで近くの扉へ手をかけた。

予定としては、このまま操縦席に向かって責任者を捕らえるのがベストだ。
この件にジェダイが絡んでいることを知らしめれば、大概の相手は大人しくなるだろう。
『どギツイ交渉』が始まらないことを祈りつつ、ブーンは本能に従って無人の通路を進んで行く。

70 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:06:47.54 ID:UqEWRWsEO
『うわ! な、なんだお前!』

( ^ω^)「ジェダイだ! 大人しくし……うぉおお!?」

ブーンと出くわしたクルーらしき男が、台詞を言い終わらぬうちに発砲してきた。
相手の殺意をいち早く感知したブーンは、ビームを避けるのと同時に男の鳩尾へ渾身の一撃を見舞う。
くぐもった声が響き、男は静かになった。

(;^ω^)「ふう。危うく殺すところだったお」

床に落ちた銃を遠くに蹴飛ばしながらブーンは安堵の息をつく。
泡を吹いて倒れる男の身なりは、お世辞にも小綺麗と言えるようなものではない。
良くてゴロツキ。酷ければ海賊のそれだった。

( ^ω^)「警告もなしに撃ってきた辺り、カタギの部類ではなさそうだお。
    この船はカーシェスの貨物船じゃないのかお?」

73 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:08:50.08 ID:UqEWRWsEO
黒幕の一人である貿易担当大臣が乗っている可能性をブーンは最初から期待していない。
そういう手合いは、現場から離れた安全な場所で高みの見物を決めるものである。

ただ、一国の重役が何処の馬の骨とも知れないゴロツキを雇うというのも疑問だ。
てっきり、小数精鋭の腹心を使っているだろうと踏んでいたブーンに疑念が浮かぶ。
よくよく見てみれば、ブーンが倒した男はカーシェスの人間ではなかった。
ますます怪しい。

( ^ω^)「ふむ。ちょいと問い質してみるかお」

気絶した男を背中に担いだブーンは、手頃な空き部屋を見つけると中に入って内側から鍵をかけた。
男をベッドに横たえさせると、右手をその額の上へ軽く載せる。
そして、フォースを右手に集約させつつ男に向かって囁いた。

74 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:10:15.74 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「起きるお」

驚いたことに、気絶していた男がブーンの声に反応を示した。

『う、う〜ん? あれ……俺は何を……』

( ^ω^)「過労で倒れたんだお。暫く休んでいるといいお」

フォースによって疑念という感情を抑止された男は、見知らぬブーンに向かって親しげに笑いかけた。

『そうか……じゃあ、そうさせてもらうよ』

夢見心地な声を出しつつ、そのまま目を閉じようとする男にブーンは待ったの声をかける。

( ^ω^)「その前にちょっと聞かせて欲しいお。君達は何者で、何の為にここへ来たんだお?」

77 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:13:33.97 ID:UqEWRWsEO
『俺達? あんたは変なことを聞くなあ。海賊に決まってるじゃないか。
 天下に名を轟かすレッド・ジャーミスとは、俺達のことさあ……』

( ^ω^)「そのレッド・ジャーミスは、なんだってカーシェスバイトにいるんだお?」

『仕事だからさ。お頭が儲け話しを拾ってきたんだ。
 指定されたブツを奴らに届けるだけで大金が入るなんて、ちょろいもんだぜ。
 あんたもそう思うだろ』

( ^ω^)「お頭に儲け話しを持ち込んだのはカーシェスバイトの人間かお?」

『さあ? 俺は見習いだけど、ガニアやキップ達でも知らねえんじゃねぇかなあ。依頼人はお頭としか会おうとしなかったし……』

( ^ω^)「では、接触したクルーザーの中にいる人物は何者だお?」

『知らないよ。でも、お頭は知っているような口ぶりだったな……聞いてみたら、お前達が知る必要はねぇって言われたけど』

( ^ω^)「そうかお。話してくれて有り難う。ゆっくり眠るといいお」

80 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:15:52.05 ID:UqEWRWsEO
フォースを操作して再び男を深い眠りへと誘導したブーンは、気難しい顔をしながら顎に手を当てる。
どうやら、カーシェスバイトの大臣は海賊達に現場の仕事を託していたようだ。

できることなら、今回の事件の犯人が大臣であるという確たる証拠を掴みたい。
正体を知るであろう海賊の頭に聞いてみるか、とブーンが思ったその時だった。

(;^ω^)「お!?」

突然、船が揺れた。
ブーンは必死にバランスを保ちながら理不尽に襲ってくるGに耐える。

この感覚にブーンは覚えがあった。
まさかと思いながら、彼は宇宙空間が見える部屋の窓を覗き込む。

82 : ◆909zxcTVWc :2009/03/05(木) 23:18:09.51 ID:UqEWRWsEO
( ^ω^)「うわあ……やりおった」

黒のキャンパスに描かれた光は、点ではなく線。
この現象は貨物船がハイパースペースへ突入した何よりの証である。

( ^ω^)「…………」

つまり、ジョルジュもカーシェスバイトも宇宙の彼方。
ブーンを載せた船は光の何千倍もの速さで、彼の窺い知らぬ星へと飛び立ってしまったのである。

( ^ω^)「…………」

ちなみにブーンが突入に使った戦闘機には、ハイパースペースに移行する為のエンジンは積まれていない。

( ^ω^)「…………」

( ^ω^)「…………」

( ^ω^ )「……オワタ」


to be continued...


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