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( ^ω^)心のままに、のようです


第17話

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:05:02.60 ID:WnxrwJJP0
第十七話 ハレルヤを歌えたら 祭囃子

いつだったか。
もう遠い昔、いやしかし、最近でもあるような。
父と母も死に、大人は誰も彼もが敵であると、信じきっていたあの時。
僕とツンは誓い合った。強く生きよう、と。
僕達はもう、世界に二人だけ。
そう思い込んでいた。

( ;゚ω゚)「ショボン・・・ドク・・・オ・・・」

震えの止まらぬこと。
それも仕方なし。

( A )「・・・・・」(´ ω `)

ドクオとショボンは、床に転がっている。
刺されたのだ。誰でもない、ツンに。
生きているのだろうか、いや、生きている。そうだ、生きているに決まっている。

( ;゚ω゚)「っ!!」

そう思った途端、体に纏わりついていた不快なモノが、とれたかのように、
体の震えが止まった。それを感じると、すぐさま二人に駆け寄る。

( ;゚ω゚)「おい、起きろお!!何、寝てんだお!!」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:06:15.16 ID:WnxrwJJP0
分かっている。彼等とて、好きで寝ているわけでもなし。
ただ、体が動かないのだろう。
血という名の動力源が、まるで小川を作っている。

「お兄ちゃぁん」

どこからか、声が聞こえる。
遠いようで、近く。それでいて、親しみのあるこの声。
振り向くと、歪な微笑を浮かべたツンが立っている。

ξ゚∀゚)ξ「さぁ、邪魔なモノは無いわぁ。愛し合いましょぉ?」

鈍色の包丁を、持って。

沸いてきたのは、憤怒。
何故だろう、恐れは無い。怖くなど無い。
むしろ、この目の前に居るモノを、殴りたくて仕方が無い。

だが、心は思うも、体は冷めていく。
足は竦む。呼吸が乱れる。手が汗ばむ。眼が乾く。

( ;゚ω゚)「コ・・・ノ・・・!」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:07:18.75 ID:WnxrwJJP0
体よ、何故なんだ。
何故、戸惑い、恐れる。
心はこんなにも馳せているというのに、何故言うことを聞いてはくれないのだ。
足よ、進め。手よ、握れ。眼よ、睨め。
だが、依然として言うことを聞いてはくれない。
まるで、電池を抜かれたオモチャのように。
遊びたいのに、動いてはくれないのだ。その気持ちは、なんとも居た堪れなく、空しい。

どうすればいい。勝てるのか。

( ; ω )(・・・馬鹿な・・・)

何を考えている。目の前に居るのは、妹なのだぞ。
唯一の、肉親だというのに。

( ; ω )(でも!!)

もう、無理だ。心に取り付いていた鎖は、今砕かれた。
そうか、あの、心の中の歪な音は、鎖を除去していた音なのだろう。

柵は無くなった。
既に、人を刺すことすら平然とやってのけているツンなど。

―もう、家族ではない。

―もう、妹ではない。

―もう、僕の知るツンはいない。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:09:01.43 ID:WnxrwJJP0
( ;ω;)「くっ・・・」

まるで、胸を抉られたかのような痛みが、心に走る。
それは何とも言えないほどの不快感で、僕はソレをよしとは思わない。

( ;ω;)(・・・迷うなお、僕・・・)

もう、いいだろう。
何百と悩み続けた。
何百と苦痛を味わった。
泣き、笑い、呻き、裏切り、切望し―

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:10:22.01 ID:WnxrwJJP0
( ;ω;)「がぁああああああ!!!!」

そこで、僕は考えるのを止めた。

( ;ω;)「あああああぁぁああ!!」

右拳が、ツンの右わき腹を狙う。

ξ゚∀゚)ξ「どう」

ツンは、後ろに下がる。

( ;ω;)「うぁああおおお!!」

前のめりになる勢いをそのままに、右足で踏み倒そうとする。

ξ゚∀゚)ξ「した」

ツンが、僕の右足に、腕を下げた。

( ;ω;)「っぐぁあああああ!!!」

右足に、痛覚がある。

ξ゚∀゚)ξ「の?」

ツンが、歪に笑んでいる。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:12:02.38 ID:WnxrwJJP0
( ;ω;)「っぐぅ・・・フーッ・・・!」

右足を引きずるように、後退した。

ξ゚∀゚)ξ「お兄ちゃん、また、包丁が刺さったわ?」

ツンが、笑いながら話しかけてきた。

足に妙な衝撃があった瞬間、ソレを理解できていた。
見れば、先ほどツンが握っていた包丁は、僕の右足に深々と刺さっている。

ξ゚∀゚)ξ「皆、いなくなればいいのよ」

ツンの左手には、まだ包丁が一本ある。

ξ゚∀゚)ξ「何で?何で、いつも私の、私達の邪魔ばかりするのかしら?」

その包丁を、眼前まで持ってくるツン。

ξ゚∀゚)ξ「幸せにはなってはいけないの?」

まるでそれがオモチャに見えるのか、手で遊ぶツン。

ξ゚∀゚)ξ「私は、私はぁ!!」

突然、ツンが吼える。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:14:03.32 ID:WnxrwJJP0
ξ゚∀゚)ξ「ただ、心のままに!!思うが侭に!!」

眼はまるではめ物のように、飛び出してきそうだ。

ξ;∀゚)ξ「・・・生きてきたのに・・・」

( ;ω;)「ツン・・・」

ξ;∀;)ξ「この、心に宿る、お兄ちゃんへの気持ちだって、本物なのに・・・」

包丁は、何処へ向かう。

ξ;Д;)ξ「なのに!!誰もが否定する!!誰もが認めやしないわ!!」

この悲痛な叫びは、何処へ行く。

ξ;∀;)ξ「お兄ちゃんまでが・・・私を認めやしないわ・・・」

急な、声のトーンの下がり方だった。

ξ;∀;)ξ「こんなにも愛しているのに・・・こんなにも、想っているのに・・・」

本能が察知した。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:15:16.43 ID:WnxrwJJP0
ξ;∀;)ξ「もう、この世界は、お兄ちゃんまでもが、裏切るのね・・・」

警笛が吼える。


ξ゚∀゚)ξ「なら、死んじゃえ」


逃げろ、と。


ツンが足に入れたのを見たのと、視界の端で、何かが動くのを感じたのは同時だった。
そして、その何かが僕の前に唐突に現れたとき、世界に鈍い音が響いた。

( A )「ゴフっ・・・」

ドクオよ、君の背は、こんなにも高かったかい?
ドクオよ、君の体は、動かなかっただろう?
ドクオよ、何故、君は―

( ;ω;)「ドクオおおおおおおおおお!!!!!」

僕なんかを、庇ったんだい?

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:17:02.08 ID:WnxrwJJP0
僕の眼には、ただ、ドクオの背しか見えない。
だが、それで十分。もう、分かるのだ。
ドクオは、僕の代わりに刺されたのだ。
微かに震えているドクオの肩は、益々振るえを増している。

だが―

( A )「っぉぉおお!!」

不意に、ドクオはツンを、そのまま抱きしめた。
自分の体に、なお刺さると分かっていて。
微かに、何かを突き破るような音が、耳に届いた。

( ;ω;)「ばっ―何やってんd」

( A )「逃げろぉ、ブーン・・・」

本当は、立っているのがやっとなのは、素人の僕にだって分かる。
だのに、ドクオの腕の中、必死にもがくツンを見れば、一体どこにそんな力があるのだろうか。

( A )「早くしろよぉ・・・?もう、力ぁ、出ねぇんだよぉ・・・」

ξ# Д )ξ「がぁぁあああああ!!!離せ、離せぇえええ!!」

ドクオの、普段よりも更に低い、まるで死にかけの虫の羽音のような、声に混ざって。
ツンの、まるで獲物を横取りされた猛獣のような叫びが聞こえる。

( ;ω;)「馬鹿言ってんじゃn」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:18:04.37 ID:WnxrwJJP0
(#'A`)「早く行けぇええ!!」

ドクオが、叫んだ。

(#'A`)「構うんじゃぁねぇよ!!手前、人が言ってんだ!!早く逃げちまえ!!」

ふと、やはりこれはドクオだと、思ってしまった。
ドクオは、口下手で、言ってることが変なことが多々ある。
こんな状況で、そんなことを考えてしまった僕は、果たしてどうするのか、と言えば。

( ;ω;)「っ!!う、うぁぉぉおおぁああああああ!!」

涙を流しながら、逃げることだった。
靴などはもう関係ない。ドクオが、最後の力を振り絞って、僕を逃がしてくれたんだ。
無駄にはしない。すまない、ドクオ。生きていてくれ―

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:20:02.07 ID:WnxrwJJP0
 
 
( A )「ははっ・・・流石はブーン・・・逃げ足だけは速いなぁ・・・?」

ブーンの消えたソコは。

ザクッ ザクッ ザクッ

( A )「嗚呼、ちくグフッ!!・・・畜生・・・めぇ・・ガッ・・・」

ザクッ ザクッ ザクッ

( A )「タバコ、吸いてぇな・・・ぁ・・・」

ザクッ ザクッ ズポッ

ξ゚∀゚)ξ「・・・バーカ」

ただ、一人の死体と、状態不明の一人が残された。

(´ ω `)「・・・・・」

ドクン。
 
 

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:21:35.36 ID:WnxrwJJP0
( ;ω;)「はぁっ、はぁっ、うぅっ・・・っ!はぁっ・・・」

痛む右足を引きずりながら、何とかマンションを出る。
途中、誰か居ないか、と願ったが、希望は打ち砕かれた。
仕方なしにマンションを出ると、今度は、ただ当てもなく逃げる。

( ;ω;)「うぅっ・・・ドクオ・・・ショボン・・・!・・・」

ドクオは、ショボンは、無事だろうか。
嫌な考えが頭に浮かぶ。もしかしたら、死んでいるかもしれない―

( ;ω;)「!!嫌だお!!そんなわけないお!!」

即座に頭を振るう。
あの二人が、死ぬわけが無いじゃないか。
だって、僕の友達なんだ。死んでたまるか。

( ;ω;)「っぅぉあ!」

突然、右足に何かが当たり、躓く。
転んだ拍子に少し頭を打ったが、気にしている時間など無い。
何とか、逃げなければ。ドクオが折角時間を稼いでくれたのだから。

「・・・ブーン?」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:24:06.46 ID:WnxrwJJP0
頭を上げて、まずビックリしたのは。

川;゚ -゚)「おい!どうした!」

何故か、愛する者が、そこに居たからだ。

川;゚ -゚)「っ・・・その足・・・!」

嗚呼、クー、言おうとしていることは、分かっている。
だが、クー、すまない。僕の心は、またも警笛を打つのだ。

「あ、先生ぇー」

心の中、一人。
ただ、もう、絶望なのだと。

ξ゚∀゚)ξ「コンバンハァ」

思った。

ツン、君は、どうするんだい。
今、この場は、僕と、ツン、そして、クーがいる。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:25:37.21 ID:WnxrwJJP0
( ;ω;)「・・・やめてくれお・・・」

もしもし、神様、世界へ。

川  - )「・・・そうか・・・お前か・・・」

状況は絶望。後、死がたずれるかもしれない。

川#゚ -゚)「お前か、お前がぁぁああ・・・!!」

それでも、神様、世界へ。

川#゚ -゚)「ああああああああ!!!」

僕のためを思うのなら。

ξ゚∀゚)ξ「――♪」

川 ゚ -゚)「――ぁ?」

ハレルヤを、歌ってくれないか。


クーが、倒れた。

血の池を作って。


第十七話 終

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:27:02.06 ID:WnxrwJJP0

欝な展開って読んでると面白いけど、読み終わると考えさせられるよね。

何が言いたいかって、十八話ですだよ。


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