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( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです

J( 'ー`)し カーチャンが息子の仇を討つようです

[178] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:40:39.35 ID:fwRB5YMy0
―――東暦799年。
 VIPは首都ニュー速のある家で、一人の女性が玄関の前に立っている。
 年齢は、四十を少し過ぎたほどだろうか。
 震える手で、目の前に立つ軍人の肩を抱き、言う。

「先生……息子は……たけしは、大丈夫なんですか?」

 軍人は暫く押し黙り、沈痛そうな表情を見せた。
 目の前の女性の心配を、痛みを察しているのだろう。
 しかし……いくら黙って考えても、現実は変わらない。

 軍人は低い声で言った。

「残念ながら……お亡くなりになられました」

「そんな……」

 肩に当てていた手を顔に当て、女は泣いた。
 女の慟哭だけが、薄暗い町の中に響き渡った。

「母木(ははのぎ)博士……」

「中尉さん……」

「……たけし君は……勇敢で、優秀な男でした。
    本当に、申し訳ありません……。部隊長である私が、不甲斐ないばかりに……」

 軍人は震える声でそう言い、深く頭を下げる。
[183] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:41:57.88 ID:fwRB5YMy0
「憎きラウンジ軍を倒すため、貴女のご尽力が欠かせないと、司令部からの申し出です」

 そして、頭を下げたまま、続けた。

「たけし君の仇を討つためにも……ご協力を頂けないでしょうか」

 女は泣くのを止め、顔を上げ、そして言う。

「……頭を上げてください、軍曹さん」

 真っ赤になった眼で、軍人を見据える。

「私は息子が生まれてから引退し……もう、技術屋として働くこともあるまいと思っていました。
 けれど、私の力添えで、ラウンジ軍を打ち破ることが出来るなら……。
 そして、それでたけしの仇を討てるというのなら……」

 小さな声で、しかし、はっきり、強く。
 女は言った。

J( 'ー`)し「私の力で宜しければ……いくらでも。この命、VIP軍に捧げましょう」






J( 'ー`)し カーチャンが息子の仇を討つようです


[188] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:43:29.87 ID:fwRB5YMy0
 ―――東暦801年。

 鮫島内に極秘に設置された研究所内。
 母木千夜子”博士”は上司からの呼び出しを受けていた。

(´・_ゝ・`)「母木博士、局長への就任、おめでとうございます」

 小柄な男……盛岡大佐は、目の前に立つ母木にそう告げた。

(´・_ゝ・`)「貴女のご活躍、こちらまで聞き及んでおりますよ。
      なんでも、貴女がいらっしゃってから、件の”試作機”の開発が倍のスピードで進んでいるとか。上の方達もお喜びですよ」

J( 'ー`)し「身に余るお言葉……ありがとうございます」

 母木は少し照れながら頭を下げる。

 今度は不思議そうな表情をしながら、盛岡が尋ねた。

(´・_ゝ・`)「しかし……なぜまた、軍で研究をしようとお思いに?」

 母木は少し黙って考え、答えた。

J( 'ー`)し「……子供を生んでから、人の命を奪う兵器というものを作るのが、どうしてもやりにくくなりました。
      だから、一度は現場から退きました。しかし……」

 そこまで言って、再び黙り込む。
 間を置いて、言葉を続けた。
[191] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:45:15.80 ID:fwRB5YMy0
J( 'ー`)し「憎きラウンジを倒すため、多少の痛みは仕方がないと存じました」

(´・_ゝ・`)「……成る程」

 その表情はどこか暗く、盛岡も彼女の心情を察したのか、それ以上は聞かなかった。

(´・_ゝ・`)「では、今後もVIPのため……ご尽力ください」

J( 'ー`)し「畏まりました。では」

 盛岡に別れを告げ、母木は部屋を出て……そして、呟いた。

J( 'ー`)し「たけし……もう少しだから……カーチャン、頑張るからね」

 自分に言い聞かせ、鼓舞するように。
 母木は今日も、研究室へと向かっていく。

 まるで……そう、それは宛ら、ひたすら働き続ける悲しい運命を背負った、機械のように。



 ―――6月下旬。
 子を失った親の悲しみ、怒りというのは、計り知れないものである。
 母木はその怒りを試作機の開発への情熱に変え、それによって、悲しみを押さえつけていた。

 二年間。
 母木にとっては長く、辛い時間であった。
 だがそれも―――。

J( 'ー`)し「もうすぐ……報われる」
[195] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:48:56.13 ID:fwRB5YMy0
 母木はこの二年、設計図とコンピューターとの睨めっこをひたすらに続けていた。

 もともとお喋りな性分であったはずの彼女は、その間ほとんど口を利くこともなく、驚くほど無口になった。
 寝る間も惜しんで開発を続けたため、嘗ての美貌は影を潜め、頬の肉は削ぎ落ち、頭には白いものも混じり始めていた。



 皮肉にも、母木の活躍で試作機の開発は、驚くべきスピードで進んでいた。

 日に日に生気を失っていく母木の姿とは、まるで対照的だった。


 全ては、亡き息子の仇を取るため―――。
 見るも痛々しく、それでもなお健気な彼女の姿は、研究所の者達には、どう映ったのだろうか。



 母木の二年間の血と汗と涙の結晶が―――今まさに、戦線に現れようとしていた。



---7月7日---

 武器を搭載しての調整が行われて数日。
 突然の知らせが、研究所に舞いこんできた。

 偶然鮫島上空を飛び回っていたラウンジ軍の戦闘機を、撃墜したというのである。
[199] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:50:51.68 ID:fwRB5YMy0
 これにより、研究所内は大いに沸いた。
 またひとつ試作機は完成に近づいた。
 実践への進出、そして、VIPの勝利も目の前である、と。

 だがしかし。
 局長である母木の表情は、どうも芳しくなかった。

「……どうかなさいましたか? 局長」

J( 'ー`)し「え……」

 母木の意識は一瞬、別の所に飛んでいた。
 部下に呼びかけられ、ようやく我に返る。

J( 'ー`)し「あ、ああ、いや、なんでも」

「どうしたんですか? また、体調が優れないとか……」

 母木はここ数日の間、どう云う訳か数回にわたって仕事中に意識を失い、医務室に運ばれていた。
 部下も皆、当然それを知っている。だから、心配していた。

J( 'ー`)し「大丈夫。もう、開発も締めだからね……体調には、気を付けてるよ」

 そうは言うものの、兼ねてより母木が無理をしているのは明白であった。
 部下は言った。
[202] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:54:02.32 ID:fwRB5YMy0
「今日はもう、休んだほうがいいでしょう。最近、ロクに寝ておられないようですし」

J( 'ー`)し「ははあ……そうかねえ。じゃあ、そうさせて貰うよ」

 母木は部下に一礼し、お疲れ様と言うと、宿舎に向かっていった。


 睡眠薬の入った瓶を手にしながら、母木は考えていた。
 ここ数日の疲労……特に心労は、かつて無いほどのものであった。

 無論、仕事量を増やしたのもある。
 国の命運がかかっているというプレッシャーも大きい。

 しかし、それ以外の何かが、自分の心労を増大させている。
 そのような感覚を、彼女は覚えていた。

 そうは思っても、結局何が原因かはよくわからなかった。

 やがて、睡眠薬の効果が全身へ回る。
 数分と経たないうちに、彼女は深い眠りの中に落ちていった。



---7月18日---

 この日母木は、睡眠薬を受け取るため、研究所の外へ出ていた。
 しかし、どういうわけかいつまで経っても、いつもの薬を持った男はそこへは現れなかった。

J( 'ー`)し「遅いわねえ……」
[207] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:55:52.97 ID:fwRB5YMy0
 ぶつぶつ呟きながら付近をうろついていると、近くの茂みで、がさがさと物音がした。

J( 'ー`)し「!!」

 慌てて振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。

( ^ω^)「お……」

J( 'ー`)し「だ……誰?」

 戸惑いながら、二人は歩み寄った。

( ^ω^)「あ……あなたは?」

J( 'ー`)し「私は……母木千夜子。ここの局長よ」

 まず自分から、と母木が名乗り、次に少年が名乗る。

( ^ω^)「えっと……僕は、ブーンですお」

J( 'ー`)し「どうしてこんなところにいるの? 早く……」

 言いかけて、母木は思い出す。
 鮫島の民間人は、つい一週間ほど前に退避したはず。
 ここにいるということは、以前耳にした、沈められた船に乗っていたのだろう。

J( 'ー`)し「あなた……大変だったのね」

(;^ω^)「……お?」
[209] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:57:41.07 ID:fwRB5YMy0
J( 'ー`)し「大丈夫、ラウンジは、おばさんがやっつけるから……安心なさい」

(;^ω^)「えっと……あの」

 まったく意味が分からないという表情をする少年……ブーンを見て、母木ははっとした。
 ついつい、お喋りの気が出てしまったようだった。

J(;'ー`)し「あ……なんでもないの。ごめんね」

(;^ω^)「は……はあ」

 母木がとりあえず落ち着きを取り戻すと、今度はブーンが、母木に質問した。

( ^ω^)「えっと……博士って」

J( 'ー`)し「ああ、アレね。ここで、戦闘機を作ってるのよ」

 母木が得意げに言う。
 すると、ブーンはどういうわけか顔をしかめた。

( ^ω^)「……戦闘機、かお?」

J( 'ー`)し「そうよ?」

( ^ω^)「どうしてそんな物を……」

J( 'ー`)し「決まってるじゃない、ラウンジを倒すためよ?」

 母木が話せば話すほど、ブーンの表情は暗くなっていく。
 それにも気付かず、母木は話を続けた。
[212] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/28(火) 23:59:38.58 ID:fwRB5YMy0
J( 'ー`)し「ラウンジを倒してね……息子の仇を取るの。それが、私の願い。
      戦闘機はもう、テストの段階に入ってるわ。VIPの勝利も……」

(  ω )「……息子さんは……」

 母木の言葉を、ブーンが遮った。

(  ω )「息子さんは……そんなこと、望んでないと思いますお」

J( 'ー`)し「なっ……」

 母木が一瞬、怯む。ブーンは続けた。

(  ω )「ラウンジの空爆で、僕の乗っていた船は沈められてしまったお……。
      僕はたまたま生き残ったけど、きっと、多くの人は溺れたり、吹き飛ばされたりして、死んでいったと思うお」

J(;'ー`)し「それは……」

 反論、できなかった。
 何故か。
 それはきっと、心の奥底で自分が思っていたことを、ずばり言い当てられたからだろう。

(  ω )「ラウンジは憎いし、罪の無い人を殺しましたお。
      だけど、それと同じことをしたら……あなたも、人殺しですお」

 それだけ言って、ブーンも、母木も黙り込んだ。

 先ほどまでは無かった沈黙が、闇の深い森を支配する。
[214] J( 'ー`)し ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:00:01.91 ID:T4wa73SK0
(  ω )「……言葉が過ぎましたお。僕は、もう行きますお」

 そう言って、ブーンは深い闇の中へと消えていった。



J( 'ー`)し「……たけし……」

 間違っていたのか。自分の胸に問いかけた。
 間違っていたのだ。答えは、そう時間を置かずに返ってきた。



 母木はふと思った。

J( 'ー`)し「あの、ブーンって子……たけしによく似てた……」

 月光の下。
 母木が小さく泣く声が響いた。
[217] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:03:48.40 ID:GuOK5EKy0
それからというもの、毎日が辛く、生きた心地がしない。
自分のしてきた事が、間違いだと諭された。
たけしの為ではなく、自己満足だったと自覚をした。

何をすればいいかがわからない。
どう償えばいいか。
いや、償うことなんかしないほうがいい、また間違ったことをするだけだ。

ただ、たけしにだけは許されたい。

J( ー )し「……ごめんね……たけし……」

その場にいる誰に言うわけでもなく、天にいるであろうたけしに呟く。
許されたくても、許されるわけがない、それほどのことをしたのだ。
たけしだけでなく、鮫島から避難しようとしてた民間人、そして利用されたパイロット。

試作機に関係した全ての人に。
許されなくてもいいから謝りたい。
[219] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:05:03.17 ID:GuOK5EKy0
そう考え出してからというもの、後悔が止まらなくなった。
それは次第に、絶望に変わり、自殺願望となった。

どうやって死のうか、気がつけばそればかり考えている。

誰かに殺してくれと頼む―――これは駄目だ、自分は仮にも局長なのだ。
そんなことをしたら、間違いなく止められてしまう。
厳重な監視下に置かれるかもしれない、それだけは避けたい。

やはり薬を飲むか、銃で頭を打ち抜くしかない。
今身近にあるのは銃だ。
では、それを手に入れよう、話はそれからだ。

J( 'ー`)し「さて……どこにあるのかしらね……、人を殺める悲しい道具は」

そう呟きながら研究室に入った。
自分が自分を殺すのに、何故銃の所為にしているのだろう。
もう自分はおかしくなってしまったのか。いや、確実におかしい。

しかし、一度自殺を決めたら止まらない。
自分の体は銃を探し、自分の頭を打ち抜く為だけに動いている。
それほど無心に探した。
[220] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:06:44.54 ID:GuOK5EKy0
J( 'ー`)し「確か……ここら辺に…………あった」

ようやくお目当てのものを見つけた。
薄暗い研究室では、中々黒光りする鉄の塊を見つけられなかった。
これで……辛かった日々ともお別れだ。

そう思っていると部屋の外、結構遠くから怒号が聞こえる。

きっとあれは渡辺博士であろう、悪魔のような女だ。
普段は天然を装っていて、一人になるとやたら意味不明なことで喚き散らす。
最近はその天然を装っているのもバレてきているらしく、更に苛立っているらしい。

自分からすれば、別に大したことは無い。
関わらなければいいだけだからだ。

死ぬ前なのに、何故このようなことを気にしているのだろう。
その余裕さに少し笑えて来た。

机の上をチラッと見る、紙が無造作に置いてある。
これは試作機関連の資料、これも無くさなければ。




――――――――そう思ったとき、不意に扉が開いた
[223] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:09:21.98 ID:GuOK5EKy0
突然の事で少し驚きはしたが、今から死ぬ身だ。
特に問題はない。
そう思い、部屋に入ってきた人物に尋ねた。

J( 'ー`)し「……どちらさまですか? 乱暴ですね」

首だけを後ろに向ける。
相手は男で銃を構えている、どうやらラウンジの兵らしい。
その確認も兼ねて、とっさに思い浮かんだ、興味の無い疑問を投げかける。

J( 'ー`)し「あぁ、ラウンジの兵士ですか。もうこんな所まで、ラウンジは攻め込んできているのですか?」

彼は、こちらの様子を不審に思ったのか、返す言葉を捜していた。
だがすぐ見つかったようで、口を開く。

( ゚∀゚)「……だったら、どうする?」

J( 'ー`)し「別に、どうもしませんよ。最早、私には関係のない事です」

彼は何も口にしない、予想外の返答に言葉も出ないようだ。

そうだ、死ぬ前に出会ったのも何かの縁だろう。
少し、過去について話してみたくなった。

J( 'ー`)し「そうだ。少し、お話しませんか? 心配しなくても、ただの兵卒は、ここに入る事を許可されていませんよ」 

ついに彼は顔に驚きの様子を見せた。
普通なら手を上げて命乞いをしている状況だろう。
[226] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:12:07.25 ID:GuOK5EKy0
彼は戸惑いながら、一度扉を確認する。
誰も来る気配が無いことを確認して、こちらに寄ってきた。
だがまだ困惑している、仕方ないだろう。

狂った壮年が、血迷ったような行動を見せているのだから。

J( 'ー`)し「さて、何からお話しましょうか……。あぁ、私のくだらないお話、アナタは聞いてくれますか?
      まずは、そこから聞くべきでしたね」

そういえば、まだ聞いてくれるかもわからない。
寄ってきたということは、興味はあるのだろう。
確認の意味をこめて問いかける、すると、

( ゚∀゚)「……話してくれ」

やはり、聞いてくれるのか。
そう思うと少し嬉しくて、笑みが毀れた。

話そうと思い口を開こうとしたときに、あることを思い出した。
資料だ、話す前に無くしてしまおう。

J( 'ー`)し「……あぁ、その前に、やっておくべき事がありましたね」

彼と合わせていた目線を外し、ポケットの中を探る。
安物のライターを、すぐ掴み出した。
そして、火をつける。

J( 'ー`)し「もう、こんな物は用済みですからね」

先程確認した試作機の書類、それに火をつけた。
[230] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:14:22.90 ID:GuOK5EKy0
( ゚∀゚)「一体、何を……」

彼はまだ何かわかっていない、だから疑問視でしかない。
次の一言で、彼の疑問は驚きに変わるだろう。

J( 'ー`)し「新型のジェットエンジン搭載戦闘機、通称T-46の設計図、理論、それら全ての書類ですが何か?」

平然と言いのけた。
彼の顔は予想通り、見る見る驚きの色に染まっていく。

(;゚∀゚)「なっ……! まさか、もう完成してたのか?」

叫び声といっても言いぐらいの大声で、彼は尋ねる。
確かに、完成していてから燃やすのであったら筋が通る。
しかし、違うのだ。

J( 'ー`)し「いいえ、まだ試作段階でしたよ。その試作機も、おそらく今頃は海の底でしょう。
      この島から本土へ逃げるには、少々燃料が足りなかった筈ですから」

自分が否定したことで、彼の驚きは困惑に戻ったらしい。
それが言動にも表れたのか、情けない声を上げて、聞き返してきた。
[233] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:15:49.20 ID:GuOK5EKy0
( ゚∀゚)「え……? じゃ、じゃぁ何で……」

確かに意味のわからない行動だ、そのような声を上げる理由もわかる。
もう何も隠すことなど無い、正直に答えた。

J( 'ー`)し「言った通りですよ。私にはもう、こんなもの必要ありません。……もう、死んでいくだけの私にはね」

そう呟き、銃を取り出した。
彼を脅すように頭部に押し付ける。
今更何をしたいんだろう、生きたい訳でもないのに。

ただ、自分の本能の赴くままに行動していた。

少し経って、彼はやっと何か勘違いに気づいたような顔をした。

( ゚∀゚)「どうして、そんな真似を?」

このまま死ぬつもり。
いや、止めて欲しかったんだろう。
最期と決めたのになぁ……何やってんだろう。

しかし本能に従いたい。

J( 'ー`)し「……そうですね。私も、もう少しお話がしたい気分です」

そういって彼に語り始める。
[235] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:17:58.99 ID:GuOK5EKy0
自分の息子、たけしのこと。
試作機を作り始めた理由は、その復讐からだということ。
先程、といっても何時会ったか忘れた男の子に、人殺しだと言われたこと。

そして、今湧き出る自殺願望についてを話した。

J( 'ー`)し「すいませんね。私の話ばかりしてしまって」

これで、話すことはなくなった。
もうこれ以上なにをやっても意味がない。

そう思い、銃口を再び頭に当てた。


しかし、

( ゚∀゚)「……待てよ」

また止められる。
結局、銃弾が自分の頭の中を突き抜けることはなかった。
[236] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:19:40.79 ID:GuOK5EKy0
( ゚∀゚)「自分ばかりが喋ってたって分かってるんだろ? だったら、俺にも話をさせてくれたって、いいんじゃないか?」

そういえば、そうだ。
折角聞いてくれたのに、自分は何もできない。
死ぬ前だから、それくらいはいいだろう。

そう思って、聞く姿勢を見せた。

自分の反応を見て、満足したのか、
なんどか頷き、話し始めた。

神父だったこと、教会が爆破されたこと
復讐の為、戦場に立ったこと、
そして、自分の仕事である試作機開発、それを食い止める為にここまで来たということ。

最初はただただ、聞いた事を脳内で映像化して感覚を分かち合った。

しかし聞いていくうちに、彼が何を狙っているかがわかった。

( ゚∀゚)「気づいたか? アンタと俺はな、行動の原点が同じなんだよ。大事な物を奪われて、戦争と関わる事を余儀なくされた」

自分に何かを気づかせようとしている、しかし今自分にはそれがわからない。

J( 'ー`)し「……そうですね。ですが、あなたは目的を果たし、あたしはもう死ぬしかない。……一体、何が違ったんでしょう?」

自嘲するような、それでいてか細い声で、彼に答えた。
何が違うか、わかるわけがない。

……そう思っていたが、
[239] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:22:09.81 ID:GuOK5EKy0
( ゚∀゚)「……アンタは、死んでいった息子の事を、考えられなかったんだろ。
     だから、感情に任せた復讐に走っちまった」

彼にはっきりと答えられた。

そんなこと、自分でもわかっている。
しかし、わかったのはいつだろう。
この前の男の子、彼が気づかせてくれたのだ。

青年は、だんだん話に身が入っているのがわかる。
自分に一歩詰め寄って、続けた。

( ゚∀゚)「アンタの息子は、復讐なんか望んじゃいなかった筈だ。優しい母親であるアンタが好きだった筈なんだ。
     それをアンタは蔑ろにしたんだ」

またきっぱり、彼は言い切った。

確かに……そうだ。
たけしが……こんなことを望むはずがないことを、なぜ自分はわかってなかったんだろう。
自分でさえ、この前の少年にあって始めて諭されたことを。
何故先程会って、こんな経歴を話しただけの青年がわかるのだろう?

自分はそれほどおかしくなってしまっていた。
一人息子の「死」のせいで、何も見えなくなっていた。


( ゚∀゚)「……そしてアンタの息子は、アンタの死を望んだ事なんて、一度たりとも無かった。これは間違いないだろ。
     それまでもを、蔑ろにするつもりか?」
[244] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:24:27.50 ID:GuOK5EKy0
彼の言葉を聞いた瞬間、思わずはっとした。
そうだ、たけしは、自分が死んで喜ぶわけがない。
そんなこともわからずに……自分は………………。

彼の言葉に、無意識に大きく頷いてしまった。

そのとき、彼との距離が先程より縮まっているのがわかった。
しかし、もう遅い。

J( 'ー`)し「……っ!?」

彼の手が、銃をつかむ私の手を捉えた。
捻り上げられ、私の手の中に会った鉄の塊は地面に落ちる。

してやられた、そう思ったときには、

( ゚∀゚)「死に逃げるな。生きて償え。科学者なんだろ? ……なにより、息子にもう一度会いたければ、自殺だけはするんじゃねぇ。
     それは何よりも重い罪、地獄行きの大罪だ」

―――――――――彼の言葉と共に、拳が迫っていた。
[245] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:26:27.28 ID:GuOK5EKy0










目が覚めると、冷たい床に倒れていた。
記憶を探る、どうやらあのラウンジ兵に気絶させられたらしい。

ふと辺りを見渡すと、拳銃が落ちていた。
そして、自分は自殺しようとしていたのも思い出した。
[249] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:28:48.57 ID:GuOK5EKy0
J( 'ー`)し「たけし……ごめんね……馬鹿なカーチャンで……」

もっと早くに色々気づくべきだった。

―――もし、あの男の子がいなかったら。

自分は「人殺し」という事実を知らないで、試作機開発を続けていただろう。
それを、「子供」という純粋さのおかげで、図らずしも気づかせてくれた。

―――もし、あのラウンジ兵が此処に来てくれなかったら。

きっと自分で頭を打ち抜いていただろう。

只でさえ、復讐という愚かな行為をしてきて
天にいるであろう、たけしを悲しませてきたのに。
もっと悲しませることに、なっていたかもしれないのだ。

今の自分の頭では、自殺など考えてもいない。
そんな醜い行為をしようとしていた、自分が恥ずかしい。


しかし、自分の精神状態で、時間を食っている暇はない。
一刻も早く、この戦争の被害者を減らさねば。

自分のような人間を出さないようにせねば。
[251] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:31:19.43 ID:GuOK5EKy0
しかし、動こうにも立てない。
気絶させられたときに、足のどこかを悪くしてしまったのだろう。

J( 'ー`)し(肝心なときに役に立たないね……)

悔しくて涙が出そうになった。
そのとき、足音が聞こえてきた。

まさか、ラウンジ兵が来たのではないか。
聞いたところによると、VIPは勝ち目が薄いらしい。
もう此処まで来てもおかしくない。

J( 'ー`)し「……やっぱりここで死んじゃうのかねぇ……」

そう呟いた、その間にも足音はどんどん迫ってきている。


研究室のドアが開いた。

出てきたのは




VIPの兵だ。
よかった、助かった。


そう思った瞬間、銃を突きつけられた。
[253] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:34:22.14 ID:GuOK5EKy0
( ^o^)「母木博士ですね、死んでもらいます」

何故だ、自分が何をしたというのだ。
試作機関連の情報か? まさかこんなすぐ伝わるはずは…………

J(;'ー`)し「何故です!? 私が何かしましたか?」

必死に問い掛ける。
やっと掴んだ生への希望。
それが今、音を立てて崩れようとしている。

( ^o^)「いいえ、渡辺博士からです。彼女にとってはあなたが邪魔みたいですよ?
     同じ博士なのに、なぜ母木博士が自分より優遇されているのだ、ってね」

流石に、声も出なかった。呆れたからだ。
そこまでだとは思っていなかった。

確かに、試作機の研究は自分が入ってから、倍のスピードで進むようになったとも言われた。
それからだろう、部下達が渡辺博士より自分のほうが「できる」人間だと認識したのは。
動機、場面共に今自分を殺すには最適である。

絶望して、涙が出てきた。

J( ;ー;)し「うっ……うっ……」
[258] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:37:04.98 ID:GuOK5EKy0
悔しい、たかだか一人の感情で自分が死ぬことになるなんて。
いや、戦争なんて、みなそんなものか。
そう思うと、諦めがついてきた。

たけし、もうすぐ逢えるね。
そう、心の中で呟いた。

( ^o^)「では、死んでもらいます」

引き金が引かれる、怖くて見てられないから、顔を地に伏せた。


そのとき、遠くから足音が一つ聞こえてきた。
そして研究室のドアが開く。

「何をやっている!」

途端に銃声が響き渡った。
顔を上げてみると、そこにはVIPの軍服に身を包んだ男性がいた。
私に銃を向けていた者の銃を撃ち、それを手から抜けさせてくれた。

(;^o^)「ぐっ…………何者です?」

〔#´_y`〕「貴様渡辺の手先だな……? 兄者中佐の命により、貴様を殺す」



ただ呆然としていた、その間に事は終わっていた。
[261] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:39:27.59 ID:GuOK5EKy0
ただ呆然としていた、その間に事は終わっていた。

乱入してきた男が、一言喋った後にまた発砲。
私に銃を向けていた男は、先に弾丸の餌食となった。

〔´_y`〕「……大丈夫ですか?」

生き残っている彼は、私に優しく問い掛けてきた。

J( 'ー`)し「……はい…………ありがとうございます……」

話を聞いてみると、兄者中佐という男が、驚くほど細かいことに気を配れることに驚くこととなる。

まず、研究所内のある一人を懐柔し、兄者派の人間に仕立て上げた。
その仕立て上げられた者が、局長を補佐する立場であった為に、様々な情報を兄者は手に入れていた。

その中で、彼が気になったのが渡辺の存在。
母木博士に嫉妬しているというのを、人一倍気にしていたという。

何故かと言うと、最近の渡辺の奇行の所為だ。
[265] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:41:43.44 ID:GuOK5EKy0
まず、独り言で「……VIPは負けるだろうし、どうしようか」と呟いていたこと。
次に、試作機関連の書類が少しずつ減っていたこと。

……などなど、怪しい行動が多々あったからだ。
それを知った兄者は、裏切るのではないか? と仮定した。

そこで見張りとして、このガシュー少佐を見張りにつけていたらしい。
兄者を補佐する、中心の4人の一人だ。
正直、印象は地味、の一言だけである。

〔´_y`〕「では、行きましょうか」

J(;'ー`)し「ど、どこへですか?」

〔;´_y`〕「そんな警戒なさらなくても……まあ無理もないですね。
       兄者中佐の部屋にでも避難しましょう。安全でしょうし」

J(;'ー`)し「そんな簡単に決めていいものなんですか? 仮にも上官ですし」

〔´_y`〕「いいんです、あの人ですし」

J(;'ー`)し(なんだかなぁ……)


そうして、私たちは研究所を抜け、基地を目指す。

移動している間、一つ気になったことを少佐に尋ねた。
[266] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:43:54.12 ID:GuOK5EKy0
J( 'ー`)し「そういえば……戦いはいいんですか?」

〔´_y`〕「ええ、大丈夫です。戦いに優れている二人の少佐に任せてあります。自分は中佐の側近という命を全うしておりますので」

J( 'ー`)し「そうですか……」

正直、もう戦に負けようがどうなろうがどうでもいい。
ただ、自分のような人を増やさないこと、これが大事だった。

一刻も早く、この戦争が終わって欲しい、そう願った。






基地には案外早くついた、そしてやることがなかった。
兄者中佐が来るまで待機、外には出るなとのこと。
きっと戦闘が終わる夜まで来ないんだろうな、そう思って、備え付けの布団を敷いて寝た。
[272] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:47:02.02 ID:GuOK5EKy0



二日ぐらい経っただろうか、それまで疲れていたため寝て過ごしていた。
今日も寝て、今目が覚めたばっかりだ。

辺りは真っ暗。深夜なのだろう。
兄者中佐は…………というと、机に突っ伏して寝ていた。
何で起こしてくれなかったんだろう、少し苛立った。

苛立ちから、少し突いて見た。

( ´_ゝ`)「むにゃむにゃ……そこは駄目よ! ボブ! ひゃうううううん!!!
       ………………………………………………………………………………はっ!」

意味不明な寝言を呟き、起きた。

( ´_ゝ`)「おや、起きてたんですか、母木博士。
       御体の方はどのような調子で?」

やけに丁寧な口調、しかし掴み所のない雰囲気。
少し、嫌な人だと感じた。

J( 'ー`)し「…………ええ、すっかり大丈夫です」

素っ気無い返事を返す。
[275] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:49:18.33 ID:GuOK5EKy0
すると中佐は、すぐ返答してきた。
とは言っても、話が変わったのだが。

( ´_ゝ`)「面白いことをお教えしましょうか、私がLです」





( ´_ゝ`)「間違えた、私はラウンジのスパイです」

どうやったらそう間違えるんだろう。
…………いや待て、今なんと言った?

J(;'ー`)し「ラウンジの……スパイ?」

( ´_ゝ`)「はい、そうです。二年ほど前に潜り込みました」

信じられない。
研究員からも、献身的という事を何度も聞いてきた。
そんな中佐が何故……
[280] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:52:43.23 ID:GuOK5EKy0
( ´_ゝ`)「自分の最初の目的は、石油輸出禁止措置によるVIPの反応の監視。
       それと、情報を得て、それをラウンジに流すことでしたね」

一瞬、殴りたくなった。
この男が戦争をここまで大きくした原因なのか。

しかし、次の一言を言われる前に、冷静になった。
戦争は、必要だから起るものなのだ。事の大きさも小ささも関係ない。
そんな当たり前の事で中佐に当たってどうする、少し自己嫌悪に陥った。

( ´_ゝ`)「しかし、途中で一つある事実を知りました。
       二年前の空戦、あれはVIP陸軍大将伊要の命令だったそうですね」

一息ついて、続ける。

( ´_ゝ`)「彼とは幼馴染でした、昔は平和をこよなく愛する奴でした。
       それが、自分から戦闘を仕掛けました。最終的にはこの戦争の原因となるようなことです。
       自分は許せませんでした、その事実を。だから奴を殺します。それが自分の新たな目的です」

戦争の原因など知らなかった。
彼の話を聞くと、VIPの自業自得なのだと。
その自業自得で、たけしは死んだのか。

VIP軍への不信感が、ますます募った。

J( 'ー`)し「……なぜこの話を私に?」
[281] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:54:23.59 ID:GuOK5EKy0
思いついた疑問を投げかける、気を紛らわす為でもある。

中佐は、それに気づいているだろうか。
普通に答えてくれた。

( ´_ゝ`)「あなたなら大丈夫だと思ったからです。すでにガシューらには伝えてあります。
       この鮫島戦が終われば、自分はラウンジへ戻りますが、ついてきますか?
       命の保障は勿論、戦争が終わればVIP国へ無事お返しします」

何故、こんな破格の条件をつけてくれるのだろう。
凄い不自然だった。
というか、疑わない者はまずいないであろう条件だ。

当たり前の疑問、それを兄者に尋ねた。

J( 'ー`)し「……何故そこまでしてくれるのですか?」

( ´_ゝ`)「……難しいですね、でも簡単に言えば『自分は平和を望んでいるから』ですかね。
       無駄な血は流しません、ですが……今回の原因の人物は許しません。
       それ以外の人は関係ありません、こちらへ来たければ拒む事はしませんから」

少し疑っていたが、殺されることはないだろう。
「平和を望む」というからには、無意味に人を殺すわけがない。
ただ、少し返事を渋った。

J( 'ー`)し「……………………」
[284] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:56:55.72 ID:GuOK5EKy0
( ´_ゝ`)「但し、鮫島戦が終わるまで此処から出ないこと、わかりましたか?
とは言っても流れ弾さえ来なければ死にはしません。
       もうすぐ、ラウンジ軍がここを制圧しに来ますが、話はつけてありますので安心を」

曖昧な考えを振り払い、決心した。
付いて行く、そう決めた。

J( 'ー`)し「……………………わかりました」

( ´_ゝ`)「では、自分は少し寝させてもらいます。明日も見かけだけの司令に行かないといけないので」

そういって机に突っ伏し、すぐ寝てしまった。
これほど忙しいのに、様々なことに気を配れる。
上にいる人材としてはこれ以上の人はいるのか、と思った。
[288] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 00:59:26.48 ID:GuOK5EKy0



それから、数日。部屋で大人しく過ごしていた。
食事もきちんと喉を通るし、睡眠だって薬無しで取れるようになった。
中佐や、ガシュー少佐、フィル少佐という人やドラル少佐も、忙しいながら話し相手になってくれた。

J( 'ー`)し(……色んなことがあったなぁ……)

ここ数日の事を思い出した。
たけしの事、試作機の事。
後悔ばかりしていた。

そんなことを考えていると、いきなり部屋にノック音が響き渡った。
[289] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:00:54.01 ID:GuOK5EKy0
J( 'ー`)し「どうぞー」

部屋に入ってきたのは、一人の少年。
あの時の、ブーン君だ。

(;^ω^)「おっ…………こんにちはだお」

J( 'ー`)し「……こんにちは、この前はありがとうね」

(;^ω^)「おっ? ブーンが何かしましたかお?」

J( 'ー`)し「……一人の壮年に、当たり前の事を気づかせてくれただけだよ」

(;^ω^)「素麺? 美味しいのかお?」

J( 'ー`)し「ふふっ、そうね。美味しいわよ」

(*^ω^)「おっおっおっ、それは楽しみだお!」

途中話がそれてしまったがいいだろう。
ブーン君と再会した喜びで、もう胸はいっぱいだ。
[293] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:03:58.30 ID:GuOK5EKy0
それから私達は何時間も話し合った。
下らない冗談から、肉親の話まで様々な事を長時間語り合っていた。

話を聞いていると、若干12歳の子供なのにかなりタフだ。
自分の脆さが情けなくなって来たが、それでもブーン君は励ましてくれた。

その心遣いが嬉しかった。
でも本当は助ける側なはずだから、少し悔しい思いをした。



それからまた数日程経った頃、
鮫島が陥落したとの報せが入った。

少し、安心したような気持ちになる。
しかし、まだ戦争は終わってないのだ。
[294] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:05:30.82 ID:GuOK5EKy0
( ´_ゝ`)「我々はラウンジ側に戻ることに致します、貴方は如何なさいますか?
       それとブーン君は勿論、連れて行きますので」

(;^ω^)「お……まじかお……」

( ´_ゝ`)「此処に残るか?」

(;^ω^)「それは死んでしまうおwwww」

( ´_ゝ`)「では来い。じゃあ母木博士、どうします? 今からでもVIP本土に行きますか?」

中佐が尋ねてきた、自分の答えは勿論決まっている。

J( 'ー`)し「……連れて行ってください……戦争の悲惨さだけでも、後世に伝えます」

自分にできる事はそれしかない、それしかできない。それをやらないでどうする。
その思いを、言葉に籠めたつもりだ。

( ´_ゝ`)「わかりました、では本土を攻撃している間は、ラウンジの自分の部屋でおとなしくしていて下さい」

中佐がそう言った後、辺りが少し騒がしくなる。
何か、来たようだ。
窓の外を見てみる。
[298] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:08:08.92 ID:GuOK5EKy0
すると、そこには黒い巨大な塊があった。
飛行機でも、戦闘機でもない。
実物を見るのは初めてだ、ヘリコプターらしい。

( ´_ゝ`)「迎えが来たようですね、少し待っててください」

(* ^ω^)「凄いお! 凄いお!」

( ´_ゝ`)「うるさい、黙れ」

( ;ω;)「おぉ……」

(;´_ゝ`)「分かった! 悪かったから!」

( ^ω^)「それでいいんだお」

(#´_ゝ`)「…………弟者、もういいか?」

そういって立ち上がり、ベランダへ出て、ヘリの運転席にいる人に話しかける中佐。
弟者と呼ばれた男、遠くから見ても分かるぐらい、中佐と顔がそっくりだ。というかほぼ同じである。
[302] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:11:16.80 ID:GuOK5EKy0

J( 'ー`)し「双子ですか?」

問いかけてみる、中佐は振り返りもせず答える。

(    )「ええ、そうです、弟です。」

(´<_` )「兄者が敬語を使うなんて珍しいな」

(    )「うるさいぞ、弟者。目上の人には使ってるだけだ」

(´<_` )「すいませんね、こいつ上司を上司と見ない奴で。敬語使うこと自体稀なんですよ。
       要するに、この男に尊敬されてるんですね、これは珍しい」

( ´_ゝ`)「いい加減煩いぞ、では此処から乗ってください」

J( 'ー`)し(これが噂の「つんでれ」なのかねぇ………………?)
[307] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:13:18.47 ID:GuOK5EKy0
疑問に思いながらヘリに乗り込んだ。
後ろからブーン君も乗り込んできた。

(* ^ω^)「凄いお! 凄いお!」

J( 'ー`)し「凄いねぇ……持ち出して平気だったんですか?」

(´<_` )「平気ですよ、ちゃんと許可得ましたし」

辺りを見渡す。
いるのは、中佐、弟者さん、ガシュー少佐、フィル少佐、それから……。

J( 'ー`)し「リレントさん……」

(ゝ○_○)「おや、局長さん。こんにちは」

爽やかな声で返答がきた。
彼とはよく顔を合わせていた、同じ研究所で働いていたからだ。
局長補佐、という実質ナンバー2の席に座っていた彼が兄者派だとは知らなかった。
[309] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:16:01.44 ID:GuOK5EKy0
J( 'ー`)し「あれ……ドラル少佐はどこですか?」

ふと気になったことを口に出してみる、

少し沈黙が流れ、やっと気づき、はっと口を押さえる。
ここにいない、という事は討ち取られたのだろう。

よく見るとフィル少佐も彼方此方に包帯を巻いている。
やはりこれだけの人数、無傷で済むわけがなかった。

一人目を瞑り、ドラル少佐に黙祷を捧げた。
[311] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:17:50.78 ID:GuOK5EKy0







( ´_ゝ`)「鮫島戦か…………歴史に残る戦いだったな」

中佐の呟く声を聞いた後のこと。
私は疲れていたのか、意識が深い闇へと誘われていった。
最後の力を振り絞り、瞼をこじ開け空を見る。

雲ひとつ無い、天辺の青い空。

それが、鮫島付近で覚えている最後の情景。




[315] ◆0DYMPSQP72 : 2007/08/29(水) 01:19:53.44 ID:GuOK5EKy0
――――――――現在の鮫島

戦争のときとは比べ物にならないほど、綺麗な景色だ。
石油採掘施設も、試作機の研究所も跡形も無く、
自然に溢れていた。




たけし……見てるかい……?
カーチャン、今少しずつだけど、目標達成に向けて歩き続けてるよ。

―――「戦争の傷跡を引き摺ってる人の心に、生きる希望っていう灯火をつけて廻る」って言う目標にね




J( 'ー`)し カーチャンが息子の仇を討つようです

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