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問合せ
怪盗( ΦωΦ)のようです
132 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:47:45.56 ID:sQoTmmpZ0
時は現代。
為政者も聖職者も、うちの上司も腐りきったストレス社会。
誰もが輝く夢を忘れ、日々輝きを増す頭皮に悩まされる今日この頃。
そんな暗黒の時代を照らし続ける怪盗がいた。
彼の名は、怪盗ロマネスク。
盗めぬ物は、何一つない。
怪盗( ФωФ)のようです
133 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:48:24.29 ID:sQoTmmpZ0
(; ФωФ)「ううむ、参ったのである」 ウロウロ ウロウロ
ぱっちり猫目で大柄なこの男性の名は、杉浦ロマネスク。
先程紹介した怪盗ロマネスクその人である。
だがしかし、ロマネスクには怪盗独特のオーラなど微塵も存在しない。
本人は気にしているのであまり触れないであげよう。
lw´‐ _‐ノv「あまり歩き回るな。ノミさんがいたら踏んでしまうだろう」
少々的外れなことを言っているこの女性は、ルームメイトの須直シュー。
ロマネスクの正体に気が付いた、たった一人の人物である。
稼ぎが不安定なロマネスクは、家賃が払えなくなることを真っ先に危ぶんだ。
結果、彼は少しでも家賃を減らすためにルームシェアを選んだのだが…。
残念なことに、ルームメイトのシューは無職だった。最早ルームシェアではない。
ドンドンドンドン!
(; ФωФ) そ 「ひぎぃ!来たのである!」
lw´‐ _‐ノv「そりゃ来るだろう、向こうにも生活がある」
今月の家賃、四万円。杉浦家(+須直家)の全財産、二千八百七十四円。
怪盗ロマネスク、絶体絶命である。
134 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:49:13.86 ID:sQoTmmpZ0
(; ФωФ)「ああぁぁぁ…やばいのである…このままでは我輩家なき子に…」
lw´‐ _‐ノv「まぁ落ち着けタマ。向こうに生活があるように、こちらにも生活がある」
(; ФωФ)「タマって…いやまぁそれはそうであるが…」
lw´*‐ _‐ノv「だから逃げよう!二人で地の果てまでも!」
言うが早いか、シューはロマネスクの手を握り、アパートの窓を開け放った。
ちなみにここは二階である。
(; ФωФ)「え、ちょ、まさか…えええええ!!」
シューは、落ちた。ロマネスクは、墜ちた。
(# ΦωФ)「ブバァ!」
lw´‐ _‐ノv「不時着!」
(# メωФ)「2HITォ!!」
何故か先に墜落したロマネスクの背中に、シューが文字通り不時着する。
それでもロマネスクがピンピンしているのは、生まれ持った強運のおかげだろう。
lw´‐ _‐ノv「ナイスクッションだ。タマからポチにランクアップさせてあげよう」
(# メωФ)「…光栄なのである」
かくして彼らは、大家からの逃避行に出たのだった。
135 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:49:50.90 ID:sQoTmmpZ0
無事アパートからの脱出を終えた二人は、とりあえず近くの公園に来ていた。
( ФωФ)「はぁ…これからどうすればいいのである…」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、確かに家がないのは困ったことだな」 モグモグ
(; ФωФ)「そのおにぎり、どこから取り出したのであるか」
lw´‐ _‐ノv「とりあえず金を稼ぐことが第一だろうな」
( ФωФ)「…確かにその通りなのである。家賃さえ持っていけば、大家さんも許してくれるやも」
lw´‐ _‐ノv「なぁなぁ、大家さんの家賃徴収バッグからお金を盗んで払うってのはどう?」
( ФωФ)「生憎我輩、爆弾スタンドは使えないのである」
lw´‐ _‐ノv「見た目は似てるのになー、猫的な意味で」
( ФωФ)「…それに、どうせ盗むなら」
136 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:50:37.99 ID:sQoTmmpZ0
ロマネスクの目が怪しく光った。
そこにあるのはもはや、杉浦ロマネスクの姿ではない。
( ФωФ)「もっと派手にやるのである」
そう、彼の名は怪盗ロマネスク。
lw´‐ _‐ノv「いや、杉浦ロマネスクだろjk」
どこかの電波を受信したシューがご丁寧にツッコミを入れる隣で、
ロマネスクは此度のターゲットを定めるのであった。
( ФωФ)φ カキカキ
( ФωФ)「…これでいいのである」
拝啓 警察関係者及びマスコミ関係者の皆様
今夜十時、ヴィップ銀行の大金庫より
幾許かの金銭を頂戴させて頂きます。 ―怪盗ロマネスク Φ―
137 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:51:34.91 ID:sQoTmmpZ0
時刻はもうすぐ、午後十時。
ロマネスクの予告時間まで、もう数分しかなかった。
( ФωФ)「ふむ、随分集まっているようなのである」
向かいのビルの屋上から、双眼鏡で下を眺めながら彼は呟いた。
銀行の周りには既に何十人もの警察官が配置され、厳重な警備を敷いている。
( ФωФ)「しかし、今回はいつにも増して失敗は許されないのである…」
ロマネスクには、生まれ持った強運があった。
彼に敵対するものには、予測不可能なアクシデントが巻き起こり、
反対に彼自身には、予測不可能なラッキーが舞い降りてくる。
そのおかげで、彼は今まで一度も仕事を失敗しなかった。
故に彼は、「不幸を呼ぶ黒猫」と人々に呼ばれていた。
138 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:52:16.68 ID:sQoTmmpZ0
そんな百戦錬磨の彼だが、今回は特に失敗できない理由があった。
( ФωФ)「気合を入れねばならぬのである…シューの為にも」
自分は捕まっても、牢獄という場所に「住む」ことができる。
しかしその場合、シューは家賃を払うことができず、部屋を追い出されてしまう。
それだけは避けねばならなかった。
lw*‐ _‐ノv「…ありがとう、ポチ」
lw´‐ _‐ノv「私は何もしてやれないが…頑張ってくれ」
( ФωФ)「うむ…」
しばし、二人の間に静寂が流れた。
139 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:53:27.46 ID:sQoTmmpZ0
(; ФωФ) そ 「って!何故ここにシューがいるのであるか!」
lw´‐ _‐ノv「いや、怪盗ロマネスクが仕事をすると聞いたもので」
(; ФωФ)「(ビルの入り口には全部鍵をかけたはずなのである…)」
lw´‐ _‐ノv「雑炊でも作って待っているからな。そうそう、上手くいったらランクアップだ」
( ФωФ)「…了解である」
lw´‐ _‐ノv「いい返事だ。じゃあいてら」
( ФωФ)「は?」
lw´‐ _‐ノb「お逝きなさい」
シューの小さな手が、屋上の縁に立つロマネスクの背中を優しく押した。
ロマネスクは、墜ちた。
(# ФωФ)「殺す気マンマンであるかああああぁぁぁぁ…」
ちなみにこのビル、十ニ階建てである。
時刻は丁度、午後十時。
140 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 18:54:42.84 ID:sQoTmmpZ0
―時間をほんの数分遡って、銀行前―
(,,゚Д゚)「ふぅー…全く、まさかここの警備をせにゃならんとはな」
今回の事件の警備を任された、ギコは一人ごちた。
ヴィップ銀行は前々から裏金の存在が囁かれており、ギコの兄フサギコがその一件を担当していた。
ギコとしては、銀行の警備にいまいち熱が入らないのも仕方のないことだったのである。
ちなみに、当のロマネスクは裏金のことなど知る由もない。
(,,゚Д゚)「物的証拠が挙がってくれればいいんだが…」
何かあるとわかっていても、証拠がなければ動けないのが警察である。
そのことが、余計にギコを歯痒くさせた。
(,,゚Д゚)「いっそロマネスクの野郎が暴いてくんねぇかな…ん?」
ギコが警察らしからぬことを呟いた時。その声は聞こえてきた。
144 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:00:12.21 ID:sQoTmmpZ0
(# ФωФ)「ぅぅぅぅううううおおおおおお!!」
(;゚Д゚) そ 「!?ロ、ロマネスク!?」
重力に引かれたロマネスクは、道路に見事着地―
(# ФωФ)「できるかああああああああダバア!!」
できずに、激突した。
道路からモクモクと、アスファルトの煙が上がる。
(;゚Д゚)「…きゅ、救急車だ!救急車呼べ!」
\(^o^)/「タイーホ」
(#゚Д゚)「んなもん後回しだバカヤロォ!!」
ギコはロマネスクの落下地点に駆け寄る。
(;゚Д゚)「常識的に考えりゃ、生きてるわけねーが…」
だが、怪盗は常識で生きているのではない。
怪盗とは、非常識の中で生きる者なのだ。
145 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:01:00.51 ID:sQoTmmpZ0
(,,゚Д゚)「…やれやれ。あいつの体はどうなってやがるんだ」
落下地点には、漫画のように人型の穴が空いていた。
そして、その先には。
(# メωФ)「…帰ったらシューには一発くれてやるのである」
目の前の大金庫に手をかける、ロマネスクがいた。
幾重ものロックが、まるで魔法のように外されていく。
(,,゚Д゚)「この真下に金庫があることまで見越してたってわけか…」
無論、偶然である。
( ФωФ)「…む?これは…?」
せっせとお金を回収するロマネスクの目に、ふと入ってきたものがあった。
それは、何十枚かの書類を綴じたファイルだった。
146 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:02:03.24 ID:sQoTmmpZ0
( ФωФ)「…なるほど。ここの金は、そういう金だったのであるか」
何枚かの書類に目を通し、ロマネスクはやっとこの銀行の黒い部分に気がついた。
ヴィップ銀行にはやはり、裏金が存在していたのである。
( ФωФ)「これは警察の仕事であるな」
(,,゚Д゚)「あんたを捕まえるのも俺らの仕事だがな」
( ФωФ)「…それもそうなのである」
ギコに背を向けたまま、ロマネスクは喋る。
( ФωФ)「しかし、我輩の仕事はもう済んだのである。仕事が終わったら家に帰るものである」
( ФωФ)「美味い雑炊も待っているのである」
(,,゚Д゚)「てめーの帰る先は牢獄だ。クサい飯も待ってるぜ。…かかれ」
その声を合図に、警官隊が一斉にロマネスクに向かっていった。
あっという間に逃げ場を失うロマネスク。
それでいてなお、彼の目は輝きを失わなかった。
147 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:02:38.21 ID:sQoTmmpZ0
( ФωФ)「この程度で我輩を捕えようとは、片腹痛いのである」
ロマネスクの言葉に続くように、部屋の照明が落ちる。
(,,゚Д゚)「…!ブレーカーが落ちたのか!?くそっ、用意周到というか…!」
言うまでもなく偶然である。
( ФωФ)「我輩、猫目なので全然問題ないのである」
パニックに陥る警官隊の隙間をゆうゆうとすり抜けていくロマネスク。
その彼の右手に、突然手錠がかかった。
(,,゚Д゚)「わりぃな。実は俺も猫目なんだ」
(; ФωФ)「…そういえば、貴殿も猫キャラだったのである」
(,,゚Д゚)「何をわけわからんことを。とにかくこれでお前もお縄頂戴ってわけだ」
148 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:03:16.66 ID:sQoTmmpZ0
( ФωФ)「…ところで刑事殿。我輩大変なことに気がついたのである」
(,,゚Д゚)「なんだ?逃げようったってそうはいかねーぞ」
ニヤリとギコが笑う。
(,,゚Д゚)「その手錠は特注品だ。鍵は俺しか持ってねーし、合鍵も作れない」
( ФωФ)「この手錠」
ギコの言葉を遮るように、ロマネスクは喋り出す。
( ФωФ)「鎖が錆付いているようである」
(,,゚Д゚)「あ?」
( ФωФ)「ご覧の通り」
ロマネスクの鋭い蹴りが、錆びた鎖を一閃する。
二人の男を繋ぐものは、何もなくなった。
(;゚Д゚)「…冗談だろ?」
神はどこまでもロマネスクの味方だった。
150 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:04:02.14 ID:sQoTmmpZ0
( ФωФ)「では、これにて失礼するのである」
(#゚Д゚)「あっ…こら、待てちくしょ」
(; ><)「あわわ、転ぶんです!」
(#゚Д゚)「う”っ!」
慌てて駆け出そうとしたギコに、数人の警官が倒れこんでくる。
(#゚Д゚)「ってー…おいこらさっさとどけ!」
(; ><)「ごごごごごめんなさいなんです!足元が見えなくて、それでその」
(#゚Д゚)「んなこたいい!ロマネスクの野郎はどこ行った!?」
周りを見渡すが、既に怪盗の姿はなかった。
いつの間にか電気も点いている。
ロマネスクを見守る神は、演出面も心得ているようだった。
151 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:04:49.80 ID:sQoTmmpZ0
(#゚Д゚)「…くそっ。警官隊は外を捜索だ、一応検問も張っておけ」
( <●><●>)「了解しました」
(,,゚Д゚)「それから被害状況の確認だ。後は…ん?なんだこりゃ?」
足元に落ちていたファイルを拾い上げるギコ。
中身を粗方読んだ彼の顔は、ほんの少し緩んでいた。
(,,゚Д゚)「…どうやら、兄貴の努力は無駄にせずに済みそうだな。こいつは押収させてもらおう」
( <●><●>)「被害が確認できました」
(,,゚Д゚)「おう、速かったな」
( <●><●>)「どうやら五百円玉が大量に盗まれたようです。足がつくのを恐れたのでしょうか」
(,,゚Д゚)「ほう…どれぐらい盗られてるんだ?」
( ><)「細かくはわかんないんですけど…ざっと二、三十万円ってところなんです」
(,,゚Д゚)「…どうせならもっと盗ってけばいいのにな…裏金だし」
( <●><●>)「正直なところ、同意せざるを得ません」
(; ><)「警察がそんなこと言っちゃいけないと思うんです…」
152 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:05:53.54 ID:sQoTmmpZ0
( ФωФ)「ふう…やれやれ、一時はどうなることかと思ったのである」
五百円玉が大量に入った袋をぶら下げて、ロマネスクは我が家に舞い戻った。
ちなみに手錠はとっくに外れていた。特注品ということで、少々時間はかかったが。
( ФωФ)「ただいまなのである」
lw´‐ _‐ノv「おかか」
( ФωФ)「これで三ヶ月分の家賃も返せるのである」 ジャラジャラ
lw´‐ _‐ノv「でかしたポチ。一気に猫又までランクアップだ」
(; ФωФ)「妖怪扱いであるか…」
lw´‐ _‐ノv「まぁ疲れたろう。ちと待て」
( ФωФ)「?」
台所から戻ってきたシューが持っていたのは、大きな土鍋だった。
( ФωФ)「雑炊であるか」
lw´‐ _‐ノv「ウィ、ムッシュ。約束したからな」
153 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:07:05.19 ID:sQoTmmpZ0
シューが蓋を開くと、辺りに何とも美味そうな匂いが広がった。
米料理に関してシューの右に出るものはいないだろうと、ロマネスクは思っていた。
( ФωФ)「いただきます」
lw´‐ _‐ノv「私もー」
( ФωФ)「…うむ、いつもながら美味である」
lw´‐ _‐ノv「今日の隠し味は事故米だ」
( ФωФ)「洒落にならん」
lw´‐ _‐ノv「私からの労いの気持ちも入れておいた、ありがたく味わえ」
( ФωФ)「…それはありがたいのである」
lw´‐ _‐ノv「それにしても鮮やかな盗みっぷりだったな」
( ФωФ)「突き落とされなければもっと鮮やかだったのである」
結果的には時間短縮に繋がったわけだが、体中に作られた擦り傷は鮮やかとはいえなかった。
それで一発いれてやるつもりだったのをロマネスクは思い出したが、
美味い雑炊に免じて水に流すことにした。
154 :
怪盗( ΦωΦ)のようです
:2008/09/20(土) 19:07:56.51 ID:sQoTmmpZ0
lw´‐ _‐ノv「…そうそう。実は私も大切な者を盗まれてしまったようでな」
( ФωФ)「?何を、であるか?」
lw´‐ _‐ノv「私の、心です」
( ФωФ) ブッ
lw#‐ _‐ノv「おい、米がもったいないだろうが!ぶっ飛ばすぞ!」
(; ФωФ)「え!?ちょ、今のは何だったんであるか!?」
lw#‐ _‐ノv「問答無用斬捨御免!」
ガスッガスガスッギャアーァーァー…
彼の名は、怪盗ロマネスク。
盗めぬ物は、何一つない。
もちろん、乙女の心でさえも。
怪盗( ФωФ)のようです 終
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