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【合作】( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです

第16世界  兵士◆X5HsMAMEOw

468 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:09:13.06 ID:1q1jk4Kh0
【魔】という存在がいた世界。

そしてそれを殲滅した五人の英雄の、五年後の物語。

あの頃と変わらない風。

でも、何かが違う空。



はかなき思いは消え行くばかりで……。





( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです




  『 IN ( ^ω^)どうやらブーンが兵士になったようです』

469 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:10:43.41 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「晴天とは実に良いことなりけりだ」

ミルナはこの日、自室にこもって報告書を書き上げていた。
マホガニーの机に向かい、黄金の万年筆をその手に取り、豪勢な椅子に座り。
そして窓から差し込む日の光を受けての作業。
ミルナの政治的地位は父と同じく宰相であり、生活の様子では優雅になっていた。

だが、戦場に出たときの顔は別人だ。
常に自らが軍の先頭に立ち、切込み隊長として先陣を切る。
その手に持たれるのは、かつての神器マルチーズ。
両の手で握っても有り余るほどの塚に、鋭い剣状となった石突。
そしてそこから左右に分かれる双の両刃は、見るものを恐怖に慄かせるほどであった。

472 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:12:39.11 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「………うまい」

ミルナは机の上の紅茶を片手に、椅子の向きを変え、窓のほうに向き直った。

そこから見えたのは、見渡す限りに広がる、ニイト城下町の景色。
だが、ミルナが見ていたのはそこではない。

真下にある、ニイト城の庭の一隅。
ただそこには緑の芝生があって、他に目立つものと言えば一本の木くらい。
その木も樹齢はあまり高くないのだろうか、大きいとは言いがたい。
が、季節がてら新緑をその実に豊かに宿らせ、そよぐ風を受けてゆれる姿は妙に美しかった。
ミルナは遠い目をしながら、その木をじっと見つめていた。

やがてハッとし、ミルナはすっかり冷めてしまった紅茶を喉に注いだ。

477 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:15:21.20 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「さて、今日の報告集もこんなもんか」

紅茶のカップを机に置き、その横にあった書類の束を持ち上げると、それを全て封筒に入れた。
ペンをとり、さらさらと流しながらその封筒に『山麓掃討作戦 報告集』と文字を書いた。

そうするともう、ミルナの事務仕事は終わりだ。


( ゚д゚ )「いい天気だな。きょうはゆっくりしていようか」

ミルナはここ最近、休暇をとっていなかった。
宰相という地位は国家権力的に皇帝の下にあるもので。
元帥と並ぶ立ち位置にありながらも、その支配力は絶大だ。

だからもとより休暇など取れるはずが無かった。
ミルナはそんな業務に追われるばかりの自分に、嫌気も差していた。

だが民のことを常に考えるミルナは、それを投げ出すわけにもいかず、律儀にこなしていた。


だがやはり、この日もミルナは休むことが出来なかった。

480 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:17:43.75 ID:1q1jk4Kh0
ミ,,゚Д゚彡「ミルナ殿! 大変です!」

一人の男が慌てて部屋に飛び込んできた。
風貌をよく見ると、赤い瞳と上品な服がよく目立つ、まだ若い青年であった。
よほど焦っていたのか、顔から脂汗を浮かべ、息も荒くし、上半身を前にかがませていた。

( ゚д゚ )「どうした、フッサール」

相対に、ミルナは落ち着いて対処した。
そのあまりの温度差に、フッサールと呼ばれた青年は落胆した。

ミ,,゚Д゚彡「どうした。じゃないですよ! 大変なんです! 大変なんですよ!」

(;゚д゚ )「ま、まあ時に落ち着け。何があったんだ」

やっとどうにか落ち着いたのか、フッサールは腕を組み、呼吸を落ち着けて話し始めた。

ミ,,゚Д゚彡「いやですねえ。なんと城に怪しいやつが忍び込んだんですよ」

( ゚д゚ )「なんと! 山麓掃討作戦から日も浅いと言うのに…」

慌ててフッサールが首を横に大きく振った。




484 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:20:04.58 ID:1q1jk4Kh0
ミ,,゚Д゚彡「山麓団の奴ではありません。どこかの浮浪者みたいな感じでしたね」

( ゚д゚ )「浮浪者?」

ミ,,゚Д゚彡「ええ。糸目で、どこかにやけた様な感じで……あの顔立ちは、ニイトの人間じゃないでしょうね」

( ゚д゚ )「糸目で……にやけた顔……?」

ミルナはその言葉に考え込むようにして黙りこくった。
何かが頭の中で引っかかっている。その顔立ちに覚えがあるような気がしてならない。
頭の中で幾度も模索するが、なぜかその正体は一向につかむ事が出来ない。
ミルナはさらに考え込もうとする……のだが。

ミ,,゚Д゚彡「…………聞いてますか?」

( ゚д゚ )「む!」

突然、フッサールに肩を叩かれてハッと気を戻す。
考えすぎると、周りのことが見えなくなるのがミルナの悪い癖であった。

ミ,,゚Д゚彡「とりあえず会って下さい。今は冷房に入れてあります。
      宰相のミルナ殿が処罰を決めてくださるとありがたいです」

( ゚д゚ )「うむ、元よりそのつもりだ」

490 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:22:52.81 ID:1q1jk4Kh0
ミルナの部屋を出、どんどんと階段を下りていく。
ニイト城の牢獄は地下にあるのだ。


地下牢獄に着いた。
もう幾年も掃除していないのか、擁壁も所々で剥がれ落ち、天井の隅では蜘蛛が巣を作っている。
それに、とても寒い。地下だと言うのに壁の所々から風が漏れている。
実を言えば、その寒さの正体は牢獄の横にある食料庫である。
食料庫には常に冷風が吹き、そこにある食品の鮮度を保っている。

言ってしまえば、擁壁も囚人が脱獄しようとした形跡なのだ。
それを適当に継ぎ接ぎしただけなので、やはり隙間風……とても寒いものが、休みなく流れ込んでくるのだ。
だから囚人にとってこの牢はまさに地獄だった。
ちなみにこの牢、その寒さの所為か看守はいない。と言うよりも、看守がいない理由は囚人が寒さでどうせ動けなくなるからである。
極刑者はそのまま放っておいて、死ぬまで待つ。それがニイトの牢獄、別名『冷房』である。

そこに入れられてぐったりしていたその囚人を見たとき、ミルナは思わず声を上げてしまった。
横にいたフッサールはガチガチと歯をきしませながら、その様子を不思議そうに見ていた。

ミ,,゚Д゚彡「どうしたんですか、ミルナ殿」

断続的に体を震わせるフッサール。
氷点下とまではいかないが、冬の半ばほどの寒さはある。

( ゚д゚ )「………お前は」

が、ミルナはその寒ささえ気にならぬほど、驚いていた。


494 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:25:16.58 ID:1q1jk4Kh0
(主^ω^)「…………」

ガタガタと震えているのは、先ほどフッサールの言っていた囚人。
確かに貴族と比べると浮浪者のような格好をしている。
だが気になるのはそこではない。その外見だ。
ミルナの頭の中で、何かが全て繋がった気がしていた。

( ゚д゚ )「内藤……内藤なのか、お前!?」

(主^ω^)「な……いと……う?」

内藤、と呼ばれた男は少し眉間に皺を寄せてミルナにたずね返す。
まるで自分のことを知らないかのように。ミルナは一瞬だけ焦りを覚えた。

ミ,,゚Д゚彡「あれ? もしや、ミルナ殿のお知り合いでしたか?」

その様子に、フッサールが横から顔を出す。

( ゚д゚ )「いや……あ、ああ! お知り合いなんてものではない、大切な友人かもしれない! とにかく、私の部屋まで運ぶぞ」

腰帯につけていた鍵束から一本の鍵を取り、ミルナは牢獄を開けにいく。
冬ほどある冷たさが格子を握るとじんじんし、こんな所に入れられている囚人は無念であると思い返していた。
ましてやそこに入っているのが自分の友人であった男。

だが。

( ゚д゚ )(内藤がこんな所にいるはずは無い……。どうして……)


ミルナには戸惑いがあった。

498 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:28:02.03 ID:1q1jk4Kh0
窓から差し込む光は溢れんばかりで、部屋全体を輝かしてはいる。
だが、その光の量の割には、あまり暖かくも無いこの部屋。
ミルナとフッサールは囚人の男を手早く牢から出し、ミルナの執務室に連れ込み、いそいで暖炉を焚いた。

ちょうど今の季節が冬でよかったとミルナは思う。
真夏の日であれば、薪など都合よく用意してはいなかっただろう。
真夏でも冷房の中は変わらぬ寒さだ。





(主^ω^)「ここは……」

やがて、男が声を漏らした。
弱弱しく、細い声。かつてミルナの聞いたそれとは違う声。

( ゚д゚ )「……気づいたか」

やはり眉間に皺を寄せてミルナは男を見た。
もしかしたらやはり人違いで。この男はただの浮浪者なのではないか。
そう思いさえした。

(主^ω^)「あなたは一体? 僕はどうしてここに……!」

戸惑う男。
だが、その思惑は無理やり止められることとなった。

502 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:31:06.42 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「今から私が言うことに答えろ」

ミルナがマルチーズをいつの間にかその手に持ち、刃先を男の首筋にしっかりとあてがえている。
男が動けばいつでもその喉元をかききれるように。
男の顔から脂汗とも冷や汗ともつかぬ液体がとめどなく流れた。
横でそれを見ていたフッサールにも緊張が走る。

( ゚д゚ )「お前の名は内藤ホライゾンか?」

男は返答に困った。
首を振ろうにも、目の前には斧の刃があるのだ。
言葉を発しようにも、震えて声が出ない。

( ゚д゚ )「さあ、答えろ」

だが、ミルナは構いやしない。
じっと刃先をその首元に当て、微動だにしない。
流石に男もその気迫に負け、おずおずと口を開いた。

(主;^ω^)「内藤ホライゾンではないです」

( ゚д゚ )「……ほう」

押し付けられた刃に力が入り、少し前に出る。
男の後ろには壁があった。下がることは出来ない。
刃先と首の接する部分から、少しだけ血が滲んでいた。
男は恐怖に慄き、顔を真っ青にしている。流石にフッサールも、ミルナの態度の豹変振りには驚きを隠せなかった。

507 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:33:11.19 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「何故城の中にいた? 答えろ」

(主;^ω^)「そ……それは……」

ミルナの冷たい視線を受けながらも男はたじろぐばかりで、何も答えない。

( ゚д゚ )「早く言わないか。
     低階級の浮浪者が城に侵入するなど重罪だ。
     私としては、今ここで首を刎ねてもいいんだがな」

首を刎ねる。すなわち、殺すことだ。
その言葉を聞いた途端に男は大きく震えだし、涙を流しながら口を開いた。

(主;ω;)「ぼ、ぼくは異世界から来たんですお。
      この世界に落ちたDATと言うものを探し出さなくてはいけないんですお。
      それで世界間を移動したとき、この城に辿り着いてしまったんですお……」

( ゚д゚ )「は……?」

頭がおかしいとミルナは思った。
同時に、彼の心に怒りのような感情がふつふつとわいてきた。
自分の旧友に似ていたから助けてみたら。そんな自分を同時に罵った。


( ゚д゚ )「……もういい。死ね」

(主;ω;)「おおおおままっまままままっま!!!」

510 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:33:57.97 ID:1q1jk4Kh0
次に見えたのは、斧を振り上げるミルナの姿だった。
巨大な斧だが、それを軽々と片手で持ち上げているミルナ。
斧が軽いのか、ミルナの力が凄まじいのか……男にはそんなことを考えている余裕も無かった。

ただただ顔中を汗が流れ、顔を真っ赤にして涙を流し、呻く。
遠くで見ていたフッサールも、もうこれは仕方の無いことだろう。
と、目を瞑り、腕を組みながらうなずいていた。






そして、ミルナの斧が一閃。


516 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:36:24.57 ID:1q1jk4Kh0
コンコン。

と、木製のドアをノックする、乾いた音が聞こえた。
その音でミルナが斧を止め、ドアのほうをじっと見る。

やがて短く舌打ちすると、ミルナは男の腹に一発蹴りを入れ、ドアの方へと向かい、ノブを回して開けた。

川 ゚ -゚)「やあミルナ。ご機嫌いかが」

そこにいた女性は、青く長い髪と深い緑の瞳を持ち、優雅な白いドレスを着た女性であった。
思わず後ろで唸っていた男も見とれていた。
そんな男の様子を見て、今まで黙っていたフッサールも男を殴った。

( ゚д゚ )「クー様。いかがなされましたか」

ミルナが跪き、頭を垂れる。

川 ゚ -゚)「いやなに。城に侵入者が入ったと言うじゃないか」

( ゚д゚ )「ああ。こいつのことですか」

ミルナが指差す方向にいたのは、腹を押さえながら呻き泣き叫ぶ惨めな男だった。
フッサールが現在殴っているため、顔にたんこぶが出来てきている。

519 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:37:49.20 ID:1q1jk4Kh0
川;゚ -゚)「おお、これは……」

( ゚д゚ )「処罰はいかが致しましょう。私より、あなたに決めてもらいたい。
     首を刎ね、その首を民衆に曝しましょうか。それとも裸にし、民衆の前で処刑しましょうか」

川 ゚ -゚)「うむ。しかしミルナ、その男は本当に侵入者なのか?」

( ゚д゚ )「む」

確かに根拠は無い。
フッサールが侵入者だといって、冷房から引きずり出してきただけに過ぎない。

が、ミルナは宰相だ。
城にいる一般兵の顔と名前までは覚えていないが、兵士の普段着くらいは知っている。
対してこの男は、古い布切れを一枚羽織っただけだ。
股間からはちらちらとお粗末なものさえ見えている。クーと呼ばれた女性もそれに気づき、顔を赤らめた。

川 ゚ -゚)「とにかくだな。冷静になって考えてみよう。
     単身で進入したとして、このお粗末君は武装していない。
     もしかしたら後続で仲間が来るのかもしれないが、現在そういったものも見られてはいない。
     つまりだな、不可抗力で城の中に進入した……そんな可能性が考えられるのではないかと見た」

( ゚д゚ )「不可抗力ですか……」

そういえば男は先ほど、そんなことを言っていた。
世界がどうのこうの、移動がどうのこうの。電波だが。

川 ゚ -゚)「処刑はいつだって出来る。洗いざらい吐かせてみよう」


523 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:39:56.79 ID:1q1jk4Kh0
と言うと、クーはずかずかと歩き出し、男の前に向かった。
いつのまにやら、腰帯から細剣を抜いていた。銀の刀身が美しい剣だ。
だがその美しい刀身を見て男が思ったこと、それは恐怖以外に何も無かった。

(主;ω;)「ウッ!! なにをする気だお!」

川 ゚ -゚)「随分と生意気な口をきくんだな」

殴っていたフッサールをどかし、剣の柄で一発男の頭を強打した。
男は頭を抱えてさらに呻き、大粒の涙をこぼした。

だがクーは、口元を吊り上げ、面白いといった様子で。
剣の切っ先を男の首元に……先ほどのミルナのように突きつけた。
剣の刃先は斧のそれと違い、鋭い。もし男が剣先の方向に動く、またはクーがその手を前に滑らせたら。
その時点で男の人生はオワタになる。男は嗚咽をただただ漏らすばかりだった。

川 ゚ -゚)「山麓団の者か? 我が城に恨みでも?」

その言葉に、あ、と言ってフッサールが駆け寄る。

ミ,,゚Д゚彡「以前ひっとらえた山麓団のやつらに聞いたんですがね。
      こいつは山麓団とは無関係らしいですよ。そんなとこです」

川 ゚ -゚)「む、そうなのか」

(主;ω;)「山麓団ってなんだお…」

525 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:41:10.46 ID:1q1jk4Kh0
川 ゚ -゚)「まあいい。では次の質問だ。
     何故この城の中にいるんだ?」

それは、と今度はミルナが割って出た。

( ゚д゚ )「先ほど同じ質問をしました。
    自分は異世界からやってきた。
    この世界に落ちたDATを探さねばならない。
    異世界間を移動しているうち、ここに辿り着いてしまった、と」

川 ゚ -゚)「は?」

やはりそれを聞いたクーも、呆けていた。
信じろと言われても無理な話だ。だが、実際に城の中にこうしている男。
ここまで来て嘘をつくとは思えない。そう、クーは思った。

( ゚д゚ )「クー様。やはりこいつは」

川 ゚ -゚)「いや、いい。話させてみよう」

クーは剣をおろし、男の口を割らせた。

529 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:42:55.10 ID:1q1jk4Kh0
一通り、男――お粗末君が話を終えた。
クーも、ミルナも、フッサールも。全員が口を開けて唖然としていた。

( ゚д゚ )「ええと、まあお前は異世界から来たわけだ?」

(主^ω^)「ええ」

川 ゚ -゚)「その世界の崩壊を防ぐために、DATというものが必要だ」

(主^ω^)「へい」

ミ,,゚Д゚彡「DATはこの世界のどこかにある」

(主^ω^)「おう」

川 ゚ -゚)「で、お前は世界を行き来していて……この城に出てしまったと言うわけか」

(主^ω^)「そうでござんす」

( ゚д゚ )「……信じられん。
     だが、貴様が嘘をついて得することは無い」

ミルナが唸る。

川 ゚ -゚)「で、そのDATの在り処は分かるのか?」

(主^ω^)「いや……僕もこの世界のどこかに落ちたと言うことしか分からんのですお」

532 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:44:48.22 ID:1q1jk4Kh0
ミ,,゚Д゚彡「おいおい。じゃあどうすんだよ。
      この世界だって伊達に狭くないんだぜ。
      お前の探しも乗って、石ころなんだろ? そんなの……」

(主^ω^)「ま、まあそうですね。
      でも、この僕の持っているDATの欠片がこの世界のDATに導いてくれますお。
      どうやら、この近辺にDATはないようですが…」

お粗末君が懐からDATを取り出す。
形状はただの石ころだ。しかし、妙な違和感を感じる。
石の形や、光具合、色……全てをとっても、何かが不自然なのだ。

(主^ω^)「不自然だと思うでしょう?
      DATがこの世界に落ちても、人々には変わったもの程度の意識しかありませんお」

川 ゚ -゚)「そこで厄介なのが、狐か」

クーが難しい顔で言った。

(主^ω^)「そうですお。狐の意識が既にこの世界にも降り立っているはず。
      そいつに拾われては、DATを持ち帰られてしまう…。その前に、DATを見つけなければ」

ミ,,゚Д゚彡「だがさ、狐の意識がDATを持って言ったかなんて、わかりっこないんじゃないのか?」

お粗末君は首を横にふった。

535 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:46:26.84 ID:1q1jk4Kh0
目でミルナは分かっている。
手伝ってくれと、お粗末は訴えかけているのだ。

本来ならそんなことは絶対にしないのがミルナだ。
だのに、何故だろう。ミルナの心に晴れないもやもやがあった。

( ゚д゚ )「もう一つだけ聞きたい」

(主^ω^)「?」



( д )「本当に……内藤ホライゾンではないのだな?」

自然と言葉が出てきていた。
聞きなれない名前。お粗末は静かに首を横に振った。

ミルナはがっくりと肩を下ろし、そうかと一言発すると、お粗末のほうに寄った。

539 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:48:42.68 ID:1q1jk4Kh0
(主^ω^)「ど、どうかしましたかお」

( ゚д゚ )「手伝って欲しいんだろう? DAT探し……」

ミ,,゚Д゚彡「ミ、ミルナ殿。まさか」

川 ゚ -゚)「おいおい、お前は宰相だぞ…?」

制止する声を振り切り、ミルナは顔を上げた。
その目は、今まで長く付き合ってきたフッサールも、クーも見たことが無いほどまっすぐだった。

( ゚д゚ )「クー姫よ。どうか私に休暇をお与えください。
     その間の執務はフッサール元帥が行ってくれるでしょう」

ミ,,゚Д゚彡「ちょ、ミルナ殿!」

川;゚ -゚)「ミルナ……」

(主;^ω^)「なんと」

クーはミルナの君主である。
が故に、この誠実な家来の言うことを受け入れざるべきか迷っていた。

ミルナは現在、ニイトではかなりの実力者だ。
それが国を留守にしているという事が漏れれば、いつ誰が攻め込んでくるやわからない。

541 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:50:12.71 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「心配なさらず、姫。
     三日です。私は三日で戻ってまいりましょう」

川 ゚ -゚)「……そうか」

だが、そのまっすぐな目を見ていると、考える必要も無かった。
クーは己の思うままに事を進めようと。口を開いた。

川 ゚ -゚)「ミルナ。休暇を許可します。ただし三日です。
     そしてフッサール元帥。あなたにはミルナの休暇中、宰相執務を負ってもらいます」

ミ,,゚Д゚彡「ま、まじっすか」

( ゚д゚ )「すまんフッサール。迷惑をかけるのは承知だ……。
     だが、私は……」

そこまでミルナが言いかけたとき、フッサールの手がミルナの口をふさいだ。
その目は、どこか遠くを見ていた。

ミ,,゚Д゚彡「何も言わないで下さい。
      俺だって男だ、ミルナ殿に何か深い理由があるのは分かってます」

( ゚д゚ )「フッサール……すまん」

しっかりと抱擁しあう二人。
それを見て微笑むクー。


そして一人取り残されたお粗末。

545 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:51:46.63 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「あ、そういえば名がないんだったな、お前は」

ミルナの一声。
お粗末はううん、と首をひねった。

(主^ω^)「名前……ですかお」

男は目線を上に向け、考え込む。

(主^ω^)「名前が思い出せないお……」

( ゚д゚ )「記憶喪失……か?」

(主^ω^)「わかりませんお。でも、思い出せないんですお」

( ゚д゚ )「ふむ……」

そこへクーが歩み寄る。

川 ゚ -゚)「フクミというのはどうだ?」

(主^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)「貴様の名だよ。
     フッサール、クー、ミルナから一字ずつとってつけた。
     身に余るほど光栄な名前だぞ? よろこべよ」



548 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:53:26.70 ID:1q1jk4Kh0
フクミ。不思議な名前だった。
だがしかし、名づけられた男は別段嫌そうな素振りもせず。
むしろ頬を赤らめ、嬉しそうに。名づけたクーもそれを見て口元を上げて笑う。
その光景を横から見ていたフッサールとミルナも穏やかな表情となった。

ミ,,゚Д゚彡「では改めて。よろしく、福実!」

フッサールが右の手をフクミに向かって差し出す。
フクミは最初戸惑いながらも、やがておどおどと自分の右手を出し、握手をした。

( ゚д゚ )「服見か、いい名だな」

フッサールの横からミルナが割って出る。
そして今度は逆の左手をフクミと握り合い、笑いあった。


(主;^ω^)(あれ? 何だろうこの違和感は)


これが、ミルナとフクミの出会いだった。


551 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:54:50.40 ID:1q1jk4Kh0
それからミルナとフクミは一緒にニイトを出た。
行く当てが特に無いので、とりあえず大陸の各所にいる友人を回ることにした。

まずニイトのレジスタンス支部にいるビコーズに会いに行き、次にVIPにいるジョルジュに会いに行く。
そんな計画だ。


(主^ω^)「しかしこの世界。平和ですおね。
      今まで行った世界には、争いしかない世界もあった」

( ゚д゚ )「平和か。数年前まではそんな兆しも無かったんだがな」

遠い目でミルナが言う。

(主^ω^)「数年前ですかお?」

( ゚д゚ )「ああ。昔この大陸には【魔】と言う存在がいてな。
     数年前にその存在は消えたが……人間同士のいがみ合いは消えないと言うわけだ」

(主^ω^)「その、【魔】ってなんなんですかお?」

( ゚д゚ )「うむ。【魔】とはその名のとおり、人に災いをなす生き物だ。
     あれは酷いものであった。私の父も当時、【魔】の犠牲となってしまった…」

(主^ω^)「そんなことが…」

( ゚д゚ )「その時、【魔】の王を倒した男……名を内藤というのだが。
     君はその内藤にとても似ている。君が内藤の兄弟だと言われたなら、私でさえ信じてしまうほどに」

555 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:56:21.09 ID:1q1jk4Kh0
(主^ω^)「ミルナさんはその、内藤さんと知り合いなんですかお?」

( ゚д゚ )「フフ……己を尊重するわけではないが、【魔】を殲滅した五人組がいてな。
     そのうちの一人は私なのだよ。
     内藤とは、【魔】を殲滅する上で偶然知り合ったんだ。もう五年も前になるのか、いやはや」

(主^ω^)「そうなんですかお…。それで、現在内藤さんは?」

( д )「…………」

フクミはその一瞬の違和感に気づけなかった。
辺りの空気が、一瞬だけ変わったのに。

( д )「奴は死んでしまったよ」

(主;^ω^)「え…それはすいませんお」

( д )「いや。お前と内藤が似ているのは何かの縁なのかも知れん。あれは三年前のことだ」


自分を嘲笑するかのような態度で、ミルナは黙々と語りだした。

558 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:57:50.81 ID:1q1jk4Kh0
三年前。
冷え込む冬の出来事だった。

魔王を倒したあの日以来、五人はそれぞれの場所へと帰っていった。
ビコーズは勿論レジスタンスに、ジョルジュは放浪の旅に、ミルナはニイトに。

だが内藤とツンだけは違った。
二人の間にはいつの間にか友情を越えた恋愛感情ができていて。
それで二人は結ばれることとなって、ブーンのどこかで式を挙げたという。
そして、ブーンにひっそりと暮らし始めたと。
ミルナは少なくともそう聞いていた。


ミルナ自身はというと、ギコの跡を継いだ……というわけではない。
決して親の七光りではなく、実力で宰相の地位を取り、執務に勤しんでいた。
あの日はちょうど雨が強く降っていた。

( ゚д゚ )「……冷えるな」

机に向かうミルナは片手にペンをとり、戦の報告書を書いていた。
題名には『山麓団掃討作戦』と書かれている。

558 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:57:50.81 ID:1q1jk4Kh0
三年前。
冷え込む冬の出来事だった。

魔王を倒したあの日以来、五人はそれぞれの場所へと帰っていった。
ビコーズは勿論レジスタンスに、ジョルジュは放浪の旅に、ミルナはニイトに。

だが内藤とツンだけは違った。
二人の間にはいつの間にか友情を越えた恋愛感情ができていて。
それで二人は結ばれることとなって、ブーンのどこかで式を挙げたという。
そして、ブーンにひっそりと暮らし始めたと。
ミルナは少なくともそう聞いていた。


ミルナ自身はというと、ギコの跡を継いだ……というわけではない。
決して親の七光りではなく、実力で宰相の地位を取り、執務に勤しんでいた。
あの日はちょうど雨が強く降っていた。

( ゚д゚ )「……冷えるな」

机に向かうミルナは片手にペンをとり、戦の報告書を書いていた。
題名には『山麓団掃討作戦』と書かれている。

561 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 20:59:43.29 ID:1q1jk4Kh0
山麓団とはニイトの西部、レジスタンスや城の支配があまり行き届かぬ地域で暴れている山賊の総称だ。
ニイトではかなり標高の高いアルメニア山の麓に本拠地を立てているので、山と麓からとって山麓団と名づけた。
実際的な組織の呼び名は、山の名にちなんでアルメニア団だが、山麓団とあえて呼ぶのは蔑みだ。

実害をいくつももたらしている。
地域に住む村をいくつも崩壊させ、金品を奪い、女を犯し。
一回目の掃討で大半を壊滅させたはずであったのだが、山麓団の一人によって軍隊は壊滅させられた。

名をリインといった。
黒く長い髪が特徴的な、冷酷さ漂う剣士だと言う。
その剣の腕は常人とは離れていて、鬼人のごとき戦いざまに兵は切り伏せられ、潰走した。

父であるギコの代から、山麓団はあったのだという。
その当時もナパールという一人の剣士によって兵は潰走したと言う。
そのナパールだが、ギコがマルチーズを用いてどうにか討ち取った。
それも酷く、苦しい戦いだったらしい。大陸最強と言われたギコが苦戦すると言うのだから、ナパールは相当な剣士だと分かる。

そのナパールの息子。それがリインである。
ナパールが死んでから山麓団も暫くおとなしくしていたのだが、最近妙に調子付くようになって来た。
そしてその裏に、リインがいると分かったのは前回の山麓団掃討作戦のときであった。
ミルナ自身は参加していなかったのだが、唯一生き残ったフッサールと言う兵士から大体を聞いた。

父がナパールを討ち取ったなら。
その息子であるリインは自分が討ち取らねば。
そうミルナは心に決めていた。

563 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:01:02.08 ID:1q1jk4Kh0
父がナパールを討ち取ったなら。
その息子であるリインは自分が討ち取らねば。
そうミルナは心に決めていた。

( ゚д゚ )「しかし父が苦戦したと言う相手の息子か。
     いやはや……私一人で勝てるだろうか」

ミルナは臆病なところがまだあった。
それはギコが死んだときのトラウマがまだ微かに残っている所為である。

だからミルナは、旧友に頼ろうとしていた。
ジョルジュは連絡がつかない、ビコーズは多忙だ。
そこで思いついたのが、内藤とツンに頼むことだ。

数年前自分と一緒に戦った仲だ。
そこら辺りにいる兵士よりは腕が立つし、VIPに住んでいるとわかっているため連絡は取れる。
ミルナはどこか安心感を覚えていた。






だから。

566 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:02:33.02 ID:1q1jk4Kh0
( д )「あ……ああ………」

わからなかった。
降りしきる雨の音だけが聞こえて。
リインの嘲り笑いも聞こえなくて。

「さあ。どうした。立てよ」

( д )「わたしは……わたし……は……」

血を吐いて倒れる目の前の友人を信じることが出来なかった。
伝説の槍を手放していたものの、その実力は健在だと思っていた。
頼れる友だと思った。断る彼を無理やりつれてきた。その彼の愛する者をも差し置いて連れてきた。

だのに彼は。
自分は。

( д )「あああああああああ!!!!!!」

月夜に咆哮した。
そして、リインへがむしゃらに斧を持ち向かった。
だが、そのまま腹を蹴られ。死ぬことも許されぬまま、取り残された。

568 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:04:47.94 ID:1q1jk4Kh0
当たり前だった。
内藤はバセンジーを遠くに封印し、ツンと円満な家庭を築いていたのだ。
何年も戦いから身を遠ざけていれば、絶対的な戦闘力はどんどんと落ちていく。
対してリインは大陸を震撼させる剣士。最初から勝ち目が無いことは分かっていた。

でもミルナは自分の心が弱くて。
内藤を……大切な友人を死なせてしまった。

それからツンが自殺したと言う連絡を受けたときに、ミルナもまた自分の命を絶とうとした。
でも、勇気が無かった。だから戦で常に最前線に立つようにして……あわよくば命を落とそうと思った。
だが、自分の体は正直で。弓が飛んでくるものならマルチーズで叩き落し、剣が向かうなら叩き折っていた。

自分の名誉のためでもあったし、何より死ぬのが怖かった。
それでミルナは何も出来ないまま数年を過ごし、今に至っているのだ。

574 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:07:13.94 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「私は愚かだった。内藤にもツンにも、悪いことをしたというレベルでは済まない。
     だから私は……あの時の自分を捨て、リインを絶対に討ち取ると。心に決めたのだ」

(主^ω^)「そんなことが……」

( ゚д゚ )「妙なことを思い出してしまったな。
     最初はビコーズのところによる予定だったが……ブーンに行く。
     内藤の墓がそこにあるのだ。少し行きたくなってしまった」

(主^ω^)「どのくらいかかりますかお?」

( ゚д゚ )「何、馬に乗れば半日でつく。この先の町で馬を買おう」

(主^ω^)「わかりましたお」

二人は、足を急げて町へ向かった。


579 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:09:06.58 ID:1q1jk4Kh0
そして日の暮れた頃。
二人がブーンの関所の辺りまで来た頃だ。

突然フミクが懐を押さえ始めた。
そこからは、遠くで見ても分かるくらいの光が溢れている。

DATが近いことの証拠だった。


(主^ω^)「!! ち、近いですお!」

( ゚д゚ )「………もしかして、魔窟か?」

魔窟。
幾年か前に【魔】の王を打ち倒した場所だ。

そうえいばこの近くにあったなあとミルナは思い返し、そこにいくことにした。
馬を駆り、関所からは目と鼻の先だ。
フミクも同意し、そこへ行くことにした。

582 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:10:03.74 ID:1q1jk4Kh0
>>577のIDがco0

一発キャラです。時間があればクーのエピソードなども書きたかったのですが……。
ここから書きながら投下になっちゃいますブヒヒサーセンOTZllllll

591 2ch中毒(東京都) ぐはっ、フクミだ 2007/03/25(日) 21:12:52.30 ID:1q1jk4Kh0
魔窟の門は現在、重石で封印されている。
封印といっても、大した柄ではなく、ただ石で隠しているだけではあるが。

その重石がどかされている。
ミルナの胸にいやな予感がよぎった。
魔窟の存在を知っている人間自体少ないものだ。
あの時戦った五人と、スレンダーの少数関係者しか知らないはず。

ならば一体誰が。
ミルナは考える前に重石がどけられてのぞいた地下への階段を勢いよく下りる。
フクミもそれに続く。

そして、やがて見えた重い石の扉を開けたとき、中に一人の人間の姿が見えた。

593 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:14:06.20 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「貴様……リイン……!!」

ノ / ー゚ノ「おや。お前はいつぞやの。どうしたんだい?」

嘲り笑うかのようにリインはこちらを蔑んだ目で見つめていた。
ミルナもキッと口元を縛って睨み返す。
激しい二人の対峙に、フクミはただ冷や汗を流すばかりであった。

ノ / ー゚ノ「それで。君は何の用だ?」

リインの持っている剣に違和感をずっと感じていた。
前にフッサールから聞いた。リインの持つ剣は間違いなく、名匠チンコッコが鍛えたものだと。
彼の剣の特徴は、その鮮やかな桃色の刀身と、亀の頭のような剣先にある。

だが、違う。今リインの持つ剣は紫色の曲がりくねった刀身を持っていた。
明らかにこの世のものと違う違和感。間違いない。

( ゚д゚ )「DAT……!! 何故、お前が持っている!!」

(主;^ω^)「何故お前がDATを使えるんだお!? DATを知らない人間が!!」

動揺する二人を見て、リインはさらに甲高い笑を上げる。
耳障りなその声に、ミルナの斧をもつ力が少し強くなった。

597 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:16:41.01 ID:1q1jk4Kh0
ノ / ー゚ノ「生身の人間風情が。私に口を聞くこと自体が。
      間違っているのだよ! 死ぬがいい! 死ぬがいい!!」

(主;^ω^)「いけない、狐の意識に体をのっとられてる……!」

( ゚д゚ )「…………なんだ。
     ではつまり、狐の意識に体をのっとられたリインはDATを求めてここへやってきたというのか」

剣を向け、走りこんできたリイン。
その斬撃をたやすくミルナがマルチーズで防いだ。

その反射神経に驚いたのか、リインは呆けた顔をし、間合いを開けた。

ノ / ー゚ノ「生身の人間にしては。やるじゃないか」

( ゚д゚ )「…………黙れ、愚図が。
     ところでリイン。お前、自我はあるか?」

ミルナがマルチーズを構えなおす。
両の手で柄を握り、己の力を最高に発揮する構えだ。
普通の巨大な斧では、振りが大きく隙が出来てしまうために出来ないが、神器であるマルチーズだからこそ可能な戦闘態勢である。

ノ / ー゚ノ「何を言っている。私は。いつも自分の考えで動いている。
      この体を満たす充実感も! 私の自我があってこそはじめて快楽となる!!」

( ゚д゚ )「そのしゃべり方……どうやら、狐に操られているわけではないようだな」


598 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:18:56.21 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「行くぞ!」

ミルナが走り出す。
それにあわせ、リインも臨戦態勢となり、剣を構えなおした。

リインがさらに負の思いを込めると、紫の刀身が段々と変化した。
その刀身の色、周りの闇に溶け込みそうなほどの紫紺。
柄頭から鐺まではそれと対照的な、血の赤色に染まっている。
禍々しさのオーラがそれから防ぎよう無く醸し出され、ミルナはあまりの威圧感に少しだけ身震いした。
が、それに臆するほどミルナも幼くはない。

抜かれた剣に反応し、ミルナは斧を体の前に構えて走る。
リインが自分の前方にいる限り、攻撃はそこからしか来るはずは無い。

だが、次の瞬間、ミルナは背後に少しだけ風の音を感じる。
戦いの勘からだろうか、反射的にマルチーズを逆手に持ち替え、後方へと突き出す。

そして、鈍い音。
剣が斧によって受け止められていることを、ミルナは音とその斧にかかる凄まじい力で把握した。

( ゚д゚ )「ぐぅっ…!」

逆手にした右手だけでその衝撃を支えきれず、ミルナは両手で斧に力を込める。
が、その瞬間、斧にかけられた力は一気に消え去り、ミルナは自分の力の方向にバランスを崩して倒れこみそうになる。
そして、予測していたように逆の方向から迫り来る剣先を、ミルナは左の目で捕らえていた。

600 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:21:49.14 ID:1q1jk4Kh0
逆手にした右手だけでその衝撃を支えきれず、ミルナは両手で斧に力を込める。
が、その瞬間、斧にかけられた力は一気に消え去り、ミルナは自分の力の方向にバランスを崩して倒れこみそうになる。
そして、予測していたように逆の方向から迫り来る剣先を、ミルナは左の目で捕らえていた。

( ゚д゚ )「なんのこれしき!!」

が、ミルナは臆しない。
右足を軸に踏ん張り、マルチーズの石突を勢いよく地面に突き刺し、力の反動で宙へ。
棒高跳びの原理と同じだ。得物はしならないので、ミルナは腕の力だけで舞った。
剣を突きの体制で突進させていたリインは、そのまま地面に突き刺さったマルチーズにその刃先を当てることになる。
その途端にミルナは素早くリインと逆側に着地、同時にマルチーズの柄を握り、一気に振りぬく。

だがしかし、手応えは無く、刃は空を切った。
見れば、リインは後退し、間合いを取っていた。


( ゚д゚ )「中々やるな! 流石はDATの力といったところか…?」

対峙しながらミルナが言う。
その言葉の裏には、ある意味での逆撫でもあった。

ノ / ー゚ノ「クク……貴様のような生身に人間が。
      DATの力に反発しようなど。所詮は無理なことなのだ」

( ゚д゚ )「笑止! ならば貴様は生身の人間以下だ!」

ミルナも、リインも、武器の柄を握る力が少し強くなる。

602 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:23:44.21 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「フクミ、DATは思いで力を変えるといったな?」

(主^ω^)「え? え、ええ」

( ゚д゚ )「お前の持つDAT、借りるぞ! 私の思いは……!」

(主^ω^)「……待つお」

リインがこちらをじっと見据える最中、フクミはそれでも真剣に言った。

(主^ω^)「DATは確かに思いで力を変えるお。
      綺麗な思いは魔を退ける聖剣になる。
      でも、邪な思いは血を求める魔剣ともなりえるお……それこそ、リインの様に」

( ゚д゚ )「思いの力……」

ハッと気づいた。
今、自分の思いはどちらかと言えば後者なのだ。
邪とまで至るかはわからない。だが、単に復讐などという気持ちでいれば、DATに体をのっとられるやもわからない。

だが。

( ゚д゚ )「それでも」

フクミの手からDATを素早く奪取する。
それをマルチーズの柄に近づけると、吸い込まれるようにして消えた。

ただそれだけだ。
だが、マルチーズを通して……ミルナの中に溢れるような力が湧き出てきていた。

605 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:26:27.05 ID:1q1jk4Kh0
ノ / ー゚ノ「無駄なことを」

( ゚д゚ )「無駄か、試してみろ!!」

ミルナが駆ける。
だが、先程とは速さが違う。

そもそも、生身の状態のミルナがDATを使ったリインと対等に渡り合っていたのだ。
ならばDATを使ったミルナは? リインに遅れをとるはずが無い。
リインに負けてから三年間。ミルナは死ぬ気で修行に打ち込んでいた。

対してリインは、己の名声に酔い、堕落していった。
その差が、今となって現れたのだ。


( ゚д゚ )「マルチーズ、ミルナ式。第一」

リインの脇を通り、過ぎる最中にマルチーズの両刃が閉じ、片刃の斧となる。
重心を一手にすることで、叩き切ることによる威力を高めるマルチーズの形態。
DATの力を借りて、この世界の神器は変貌を遂げた。ミルナの思いによって。

608 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:30:42.58 ID:1q1jk4Kh0
ノ /; ー゚ノ「何!?」

勢いよく振りぬかれた斧の刃が、リインの肩を確実に捕らえた。
斧の斬撃だけでなく、単純に降りぬかれた力もプラスされる。

リインは力の方向へ吹っ飛び、後ろの壁ごと粉砕された。

あまりの威力に、ミルナ自身もフクミも唖然としていた。
だが、ミルナの猛進劇はまだ終わらない。

( ゚д゚ )「マルチーズ、ミルナ式。第二」

片刃の斧が、断罪ギロチンのような形となっていく。
それはまさに、エクスキューショナー。

その刃先は次の瞬間には既に、リインの首元へと向かい、勢いよく刎ねた。

611 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:33:41.09 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「ハァ、ハァ……」

あまりの衝撃に粉塵が立ち込めていた。
だが、確実に手ごたえがあった。

事実、目の前には胴体と別れを告げたリインの首が転がっていた。


なのに、どうして。


ノ / ー゚ノ「ククククハハハハハハ!!!」

リインの首だけが。
首だけが、胴体と離れて自我をもったように、狂い叫び声をあげているのだ。

流石に目の前の事態にミルナも気がおかしくなりそうになった。
確かに殺したはずなのに。もしかしてこれは何かの呪いなのかと。

ミルナの心の底にしまっていた弱い部分がふつふつと、姿を現した。

614 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:37:04.20 ID:1q1jk4Kh0
(主^ω^)「ミルナさん! 惑わされないで!
      それは狐の意識が乗り移っているだけ! DATの力で断罪を――」

( ゚д゚ )「……マルチーズ、ミルナ式。第三」

フクミの言葉にすぐうなずき、しかしその目はどこか遠くを見ながら、断罪者の斧となったマルチーズを振り上げる。
次の瞬間、マルチーズが白光する。
全てを浄化するような眩しさ。思わずフクミもミルナ自身も目を瞑る。


だが、その光はミルナの斧の一閃とともに消えて。
次の瞬間、耳にこだまする何者かの絶叫がした。
それはまるでこの世のものではなく、地鳴りのように響いて……全てが終わったことを、同時に知らせてくれていた。



615 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:40:08.80 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「奴の持っていたDATだ。フクミ」

魔窟から出ると、
あたりはすっかり夜になってしまっていた。
月明かりが辺りを照らしていて、星空が綺麗だった。

その星に負けないくらい強い光を放ったDATを、ミルナはフクミに投げた。

フクミは慌てながらもそれをしっかりとつかみ、微笑んだ。
そして自分の持つDATと二つ並べて今までにないくらい笑った。


(主^ω^)「ミルナさん、本当にありがとうございましたお。
      あなたの協力が無かったら、狐の意識……いや、リインからDATを取り戻せなかった」

( ゚д゚ )「礼を言うのはこちらだ。
     あんな形にせよ、私はリインを打ち倒すことが出来た。
     リインは子孫を残していない。長かった山麓団掃討作戦もこれで終わったし、内藤の敵も討てた」

ミルナは虚ろな目で言った。

620 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:44:29.80 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「ただ一つ疑問なんだ。
     どうして狐の意識はリインに憑いたのだろう」

(主^ω^)「む……それは……」

暫く考える風にしていたフクミだが、それでも顔をしっかり上げてこう言った。

(主^ω^)「リインからは凄い負のオーラを感じましたお。
      恐らく彼は、殺人者になりたくしてなったのではない。
      ナパールでしたっけ? 彼の父に殺人を叩き込まれてきたんでしょうお。
      だからいつしか負の感情がたまりにたまって……それで狐の意識は、そんなリインに憑いてしまったと」

( ゚д゚ )「ふむ、それがお前の見解か。
     だがしかし、そうだとするとリインも哀れな奴だ」

ミルナは遠くを見ながら、自分とリインを重ねていた。

共に父をなくした生活を送っていたという共通点がある。
まして、リインの父は自分の父であるギコに殺されているのだ。
ナパールが悪事をしていたから処刑は当然だが、リインにはそんなことは関係なかったろう。

621 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:47:36.90 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「改めて恩にきる。
     お前に出会えてよかった」

はじめてあった時の様に、ミルナは左手をフクミに差し出した。
フクミはDATを懐にしまうと、そっと自分の左手を差し出し、握手した。


(主^ω^)「僕もあなたに出会えてよかった。
      ミルナさん、僕はもう次の世界へ行かなければなりませんお。
      あなたは強い人だ。この先挫けそうになったとき、あきらめずに進んでくださいお」

( ゚д゚ )「ふん……言わずもがなだ。
     それは貴様もだ、フミク。次の世界に行ったときは、せめて他人に疑われない礼儀作法をしたまえよ」

(主;^ω^)「ど、努力しますお」


二人で笑いあい、最後に抱擁した。

ミルナは無性に、人肌恋しくなっていた。


623 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:51:03.62 ID:1q1jk4Kh0
主^ω^「ミルナさん。さようなら。クーさんとフッサールさんにもよろしくですお」

( ゚д゚ )「ああ。元気でな、フクミ」

フクミの体がやがて段々と光の粒となり、月明かりの空へと上っていった。
その粒子一つ一つがまるで星の欠片のような美しさを持っており、ミルナは暫く見ほれていた。


そして気づくと、ミルナは涙を流していた。
心の中で、いくつ物思いが交錯していた。


内藤のこと。
ツンのこと。
フクミのこと。
リインのこと。
ギコのこと。


考えるたび、無性に涙が止まらなくなった。
だが、ミルナはその涙を止めようとはしなかった。

誰も見ていない静かな夜だったから。
ミルナは声を上げて、咆哮して、泣いた。

632 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:57:43.93 ID:1q1jk4Kh0
ミルナは進む。
これからも、どこまでも。

たとえどんなことがあっても挫けはしないだろう。
背負ってきた思いが強いほど、その理念も強くなる。

DATの思いもそうなのだ。
フクミが言っていた。邪な思いは魔剣となると。

それは、思いなどというもの、一時は必ず邪である。
だが、それを乗り越えて強く、清らかな思いにするか……留め、邪な思いのままにするかは自分しだいなのだ。


やがて国に帰ったミルナはやがて本を一冊出版した。

単純な自叙伝だ。
題名はフクミという、不思議なものであった。
その意味を知るものは、ミルナと。フッサールとクーしかいない。


ミルナとフクミのであった証はしっかりと。
今もここに残り、歴史的英雄となったミルナの本当の姿を知らないものでも。
その本とともに、必ず思いは形として残っている。


思いの強さが、時代を結ぶ。
そしてその強い思いがある限り、人もまた生き続けるのだろう。


〜終〜

638 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 21:59:51.07 ID:1q1jk4Kh0
次回予告

( ^ω^)ブーンが天国にいったようです

641 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 22:02:56.17 ID:1q1jk4Kh0
( ゚д゚ )「次回はブーンが天国に逝ったお話だそうだ」

川 ゚ -゚)「しかしそこを天国といっていいのか。
     争いの耐えないところだ。人々は銃をもち、生きるために殺す」

ミ,,゚Д゚彡「お、おそろしい!!」

( ゚д゚ )「そんな世界に舞い降りたDATは一体どんな役目を果たすのだろうか」

川 ゚ -゚)「wktkですね」

( ゚д゚ )「ええ」

ミ,,゚Д゚彡「では次回、ブーンが天国にいったようです。
      読んでくれなきゃ……泣いちゃうぜ!!」


川 ゚ -゚)「きめぇ」


ミ,,;Д;彡

648 2ch中毒(東京都) 2007/03/25(日) 22:07:08.46 ID:1q1jk4Kh0
はい。すいません。かなり手抜きですOTZlll
時間は有に会ったのですが、毎日仕事でして…。
朝の八時に家を出ては、夜の九字に帰り。

書く暇も無かったんです。言い訳ですが('A`)
で、やっと休みを取れたと思ったらそれがなんと今日でしてOTZlll

今日一日で書き上げるしかないか……と頑張ったのですが間に合いませんでした('A`lll)


途中は書きながらやってました。
ほんとすいません。
最初に立てたプロットではクーとフサもついてきて、ジョルジュやビコーズとの絡みもあったんですが…('A`)

うう、また合作があったら……その頃は多分今の仕事はやめているのでいけると思います。
合作の汚点ですな、僕は。


なんかもうごめんなさい。



チンコうpするからゆるして


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