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問合せ
(´・ω・`)は脇役のようです
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:20:14.91 ID:oGFn9Dz10
給食が終わった昼休み。
生徒達は数々のグループに別れて話はじめている。
僕はその中で一番大きいグループの中に居たんだ。でも……
( ゚∀゚)「おらぁ!」
ガッ、と鈍い音が頬に響く。
頬に走る痛み。いや、激痛。
(♯)ω;`)「うぅ……」
僕は殴られていた。何回も、何回も。
毎日、毎日。
何で殴られていたかって?
まぁ、いわゆる「いじめ」って奴だったんだろう。
きっかけは些細なこと。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:20:44.53 ID:oGFn9Dz10
(´・ω・`)は脇役のようです
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:21:18.62 ID:oGFn9Dz10
〜一ヶ月前〜
それは、放課後の教室であった一言。
( ゚∀゚)「お前、顔でかいよなー。あのあんぱんのヒーローみたいだなww」
(;´・ω・`)「そ、そう?」
( ^Д^)「お前www小学校ころもそれでいじめられてたよなwwwプギャーwww」
忘れていた過去を掘り返される。
もう忘れていたつもりの記憶がよみがえる。
( ゚∀゚)「え?どんなんどんなん?」
( ^Д^)「えっとなー……」
次々とさらされる過去の「いじめ」の内容。
僕は聞くのがとても嫌だったから、先に帰った。
次の日には皆忘れていると思ったよ。
でも、考えが甘かった。暇を持て余していた中学生がその絶好のカモをほっとくはずはないのだから。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:21:46.89 ID:oGFn9Dz10
(;´・ω・`)「あ、あれ?」
そして最初のいじめは上履き隠し。
あまり仲の良い友達もいなくて、1人で登校する。
下駄箱には上履きが……ない。
(;´・ω・`)「ね、ねぇ、だれか、僕の上履きしらない?」
( ^Д^)「しらねぇよwww」
( ゚∀゚)「ジャムおじさんにでも助けてもらえよwww」
僕は、その時気付いた。こうなったらもう逃げられない。小学校の頃も最初はこんな感じだった。
いじめというのは、1回火種が付けば後は簡単。どんどん燃え広がっていく。
昨日まで普通に話していた友達が、今日は僕をいじめるグループにいる。
担任にいっても相手をされず、離婚して1人で苦労している母にはいえなかった。
いじめはどんどん発展していく。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:22:17.78 ID:oGFn9Dz10
教科書や机の落書き。
「死ね」
「助けて!アンパンマーン!(笑)」
「失せろ」
「きもい」
「学校にくるな」
上履きは毎日無くなり、筆箱は中身が無くなった状態で帰ってくる。
そして──今に至る。
( ゚∀゚)「顔がボコボコになってもすぐ取り替えられるから便利でいいなwww」
( ^Д^)「プギャーwww頑張れよ正義のヒーローwww」
(♯);ω(♯)「うぅ……」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:22:47.56 ID:oGFn9Dz10
僕が正義のヒーローになれるはずがない。
僕は脇役。いてもいなくても変わらない脇役。
いなくなっても誰も悲しまない。
母も、もしかしたいなくなって欲しいと思ってるんじゃないか。
こんな大きな息子、再婚にはとても不利なはず。
死のうかな。と思った。何度も何度も。そして今日も。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:23:11.22 ID:oGFn9Dz10
帰り道、1人で歩く土手。
すれ違う人全員が僕を見る。
別に不思議ではない。いつものことだった。
赤くはれた両頬に、靴が隠されたから裸足。所々破れたYシャツ。
むしろ見ない方がおかしいだろう。
夏が近づく日。蝉が一匹だけ鳴いていた。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:23:41.48 ID:oGFn9Dz10
よし、今日こそ。
僕は、土手を降りて川辺に行く。
高く伸びた雑草のおかげで人気が無く、これから人がくる感じもない。
今日こそ、今日こそ社会という舞台から降りてしまおう。
どうせセリフも何も無い脇役は、いなくても何も変わらない。
鞄を下ろして、川に近づく。
「ガバガバガッゴボッ!助けてガバッ!」
僕は足を止めた。川の中心で初老の老人が溺れている。
今まで自分の世界に入っていたせいか、まったくわからなかった。
なんとか聞き取れた「助けて」との一言。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:24:05.92 ID:oGFn9Dz10
助けるべきか。いや、助けて何になる?
今から僕は死ぬのに、そんなことをしても意味が無いしめんどくさい。
僕も一緒に死んでしまおうか。そんなことを思っていた。
「ガッ…ゴボッ…!」」
とても苦しそうな表情。何故だか母の顔が浮かんだ。
川 ゚ -゚)「ショボン、困っている人を見つけたら助けてやれ。まぁ、ショボンは優しいから助けると思うが」
いつもいってた母の口癖。僕が優しいというのもよく言っていた。
ここまで育ててくれたんだ。死んでしまうのは悪いけど、最後に母の言うことを聞こうと思った。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:24:33.62 ID:oGFn9Dz10
服を脱ぎ、肌着だけになる。
日差しが暑く、半裸でも暑くは無かった。
(´・ω(♯)「おじいちゃん、今行くよ!」
もうすでに力尽きそうな老人の下へ泳ぐ。水の冷たさなんか気にならない。
でも、頬の傷に水がしみてヒリヒリと痛かった。
こうみえても小学生の頃水泳教室にかよっていたので人並みには泳げた。
すぐに老人の下へたどり着き、老人の手をつかみ進路を正反対へ向ける。
無我夢中だったのか、この時疲れはあまり感じなかった。
すぐに陸地へあがり老人を横にさせる。
あまり水も飲んでなかったようで、頬を叩くと目を覚まして1時間ほどで元気になった。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:25:08.09 ID:oGFn9Dz10
「すまんのう……」
(´・ω(♯)「困っている人を助けろと母に教えられました。当然の事をしたと思っています」
なんだか偉そうな口調に、自分でも驚いてしまう。
でも老人の顔は笑顔に変わる。
( -m-)「いい母親じゃのう。世の中捨てたもんじゃないわい」
(´・ω(♯)「あの、じゃあこれで」
話が長くなるかもしれないのでこの場所から去ろうとするが、老人に手をつかまれる。
( -m-)「少し、つきあってくれんかのう」
僕は頼みを断る事が出来ず、頷いてしまった。
──また、老人の顔は笑顔に戻った。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:25:48.31 ID:oGFn9Dz10
( -m-)「と、いうわけじゃ」
この老人は、自殺をしようとしていたらしい。
友人に騙され抜け出せない借金地獄に陥ってしまった。
借金の騒動の時に妻と娘と別れ両親も逝ってしまい、自分が死んでも迷惑がかかる人がいないから自殺を決意したのだという。
自分よりも桁が違う話だけれど、その老人には親近感をすこしもっていた。
( -m-)「ところで、君は何かあったのかい?」
いままで下を見ていた顔を上げて老人は僕を見る。僕は少し驚いてしまった。
(´・ω(♯)「あ、それは……その」
( -m-)「フォッフォッ。失礼かも知れんが、目が死んでるよ。生きる気力が感じられん。」
僕は何故だかこの人になら全てが話せるような気がして、思い切って話してみたんだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:26:26.92 ID:oGFn9Dz10
いじめのこと、親のこと、顔の大きさのこと。
……最後に僕は社会という舞台の上では一生脇役なんです。と漏らした。
全て言い切って、いままで溜めていたものが少し無くなった様な気がする。
こんなことを関係ない、もっと大変な事を抱えている人にいうの申し訳ない気がした。
僕は顔を上げて老人を見る。こんな話をしたのにも関わらず、変わらない大きな笑顔で僕を見ていた。
すると、頬に熱いものが流れる。それは止められなくて、ずっと僕の頬に流れ続けていた。
( -m-)「人生の脇役、か。なかなかおもしろいたとえじゃのう」
僕は息が詰まって声が出せなかった。相槌すら打てない。でも老人は話し続ける。
( -m-)「別に、その大きな舞台に最初から立たなくていいんだ」
( -m-)「君はその舞台では脇役かもしれない。だが──」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:27:03.79 ID:oGFn9Dz10
( -m-)「君は、私の人生という舞台で今はヒーロー。もう主演男優賞ものだ」
(´;ω(♯)「ヒー……ッ……ロー?」
( -m-)「うむ。最初から大きな舞台に立てる役者はいない」
( -m-)「ちいさな舞台から地道に足を前に出していく」
( -m-)「そして最後に、一番大きな舞台でキミは本物のヒーローになるんだ」
( -m-)「おっと、年をとると話が長くていけないのぅ」
涙はもう歯止めがきかない。今までで一番多いかもしれない。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:27:30.76 ID:oGFn9Dz10
( -m-)「じゃあ、がんばって。あ、未来のヒーローと今のうちに握手をしておこうかのう」
老人に手を出される。僕はそれに少しづつ手を近づけ、握った。
その手は小さい。でも僕にはとても大きくて、暖かく感じられた。
( -m-)「元気でな」
老人は僕に背中を向ける。僕は声を振り絞った。
(´;ω(♯)「あり……ヒッ……がとうござ……ウック……います」
聞こえたのか聞こえてなかったのか。老人は背を向けたままこちらに手を振ってくれていたんだ。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:31:31.16 ID:oGFn9Dz10
「こんなところかな」
目の前の男性は話し終わったのか、その男性の前にあるビールのジョッキに手をつける。
同窓会で再開の喜びがあるのか、周りは皆騒がしい。
でも僕ともう1人と向かい側に座っているその男性の周りには音を通さない壁があるように思えた。
ジョッキを空にして、男性……いや、ショボンはこっちを見る。
(´・ω・`)「ごめん。こんな話をしちゃって」
ショボンはこっちを何故かもうしわけなさそうに見ている。
一時期光が無かった瞳。でも今はあふれんばかりの力が詰まってそうだった。
すこし沈黙が続く。僕は口を開いた。
( ^ω^)「でもすごいお。知り合いからこんなスター……いやヒーローが生まれるなんて思わなかったお」
(´・ω・`)「はは、よしてくれよ。まだまだ僕はヒーローにはなれそうにもない」
(;'A`)「でもよ、俺達……本当にごめんな」
隣の友人も話し始める。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:32:01.28 ID:oGFn9Dz10
僕達はショボンがいじめられている時なにもできなかった。
いや、何もしなかった。
もし助けたらこんどは僕が狙われる。
自分の保身だけで目の前の友達を見捨てた。助けを求めていた友達を。
(´・ω・`)「もう気にしてないって。それより今のことを話そうよ」
(;^ω^)「そりゃあいやだお。なに話してもショボンに負ける気がするお」
(;'A`)「負けるも勝つもねぇだろ」
少し雰囲気が和む。そこに、携帯の着信音が流れてきた。
(´・ω・`)「あ、ごめん。電話だ」
ショボンは襖を開け、同窓会の会場から出て行った。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:32:32.66 ID:oGFn9Dz10
('A`)「それにしても、すげぇよな」
友人は酔いが回ってるのか顔が少し赤くなっていた。
('A`)「高校卒業後、金銭面の問題で大学にいかずユニット結成。有名なCD会社に声を掛けられCDデビュー。か」
( ^ω^)「ほんと、すごいお。今は知らない人はいないくらいだお。今年には映画の主題歌になるらしいお」
ショボンは、忙しい中時間を見繕って同窓会に来てくれたらしかった。
いやな思い出しかない高校生活だと思うのに、わざわざきてくれる理由は僕にはまったくわからない。
(´・ω・`)「ごめん、もういかなくちゃ」
いつのまにかショボンは後ろに立っていた。
( ^ω^)「そうかお。じゃあ電話番号おしえてお」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:32:59.05 ID:oGFn9Dz10
ショボンは少し驚いた顔をしていた。それと同時に、少し疑いも見える。
(´・ω・`)「電話番号? なんで?」
( ^ω^)「今度時間があるときに「今」の話をするお。ブーンのことも話すお。だからショボンも教えてくれお」
(´・ω・`)「……うん」
携帯の赤外線で電話番号を交換する。ショボンは何故か嬉しそうだった。
( ^ω^)「じゃあ、今度電話するお」
('A`)「忙しいときに電話かけても迷惑じゃないか? かけて貰えよ」
(;^ω^)「あ、それもそうだお。ショボン、忙しくないときにかけてくれお」
(´・ω・`)「うん、電話するよ。じゃあ、また今度」
( ^ω^)「ばいばいだお!」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/24(金) 02:33:28.48 ID:oGFn9Dz10
ショボンは同窓会の会場から出て行った。
きっとショボンはこれからも芸能界で活躍し続けるだろう。
ショボンとその歌声はいつか……そんな遠くないときに僕達、いろんな人たちを救ってくれるはず。
……そう、皆のヒーローになるんだ。
(´・ω・`)は脇役のようです 終!
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