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( ^ω^)ブーンは駆逐するようです


第6話

128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:31:02.89 ID:Q20amxjg0
第六話「静追い」

本部会議室

从 ゚∀从「頬どうしたんですか?」

(#)^ω^)「痛てーお……」

从 ゚∀从「さっきツンが怒って出て行ったようですが。」

(#)^ω^)「麻雀してたら見つかったおwwwwwwwwwwwwwww」

从 ゚∀从「あなたって人は……」

( ^ω^)「ツン最近大分元気になったお。前はあんな表情できなかったお。
      他人にしっかり怒ってやれるのは余裕があることだお。それに楽しそうだったお」

从 ゚∀从「そうですか。じゃあ私にも一発殴られる覚悟はおありですね?」

(;^ω^)「いやwwwwwwちょwwwwwおまwwwwwwwww待てwwwwwwwwww
      なぜ殴ると言って銃口を向ける?wwwwwwwwwwwwwww
      
      僕は君には感謝してるんだお!僕は君をツンの上司にして良かったと思うお。
      君みたいな優秀な人材はなかなかいないお。

      だから撃たないで」

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:31:51.34 ID:Q20amxjg0
从 ゚∀从「しかし、こんな時にわざわざ……」

( ^ω^)「む……。やはりあの街からの連絡が途絶えたかお?」

从 ゚∀从「ええ。もうここが最後の砦のような状態です。日本ではここ以北の人類生存地区は存在しません」

( ^ω^)「……」

从 ゚∀从「司令、間違いなく近いうちにここが標的にされます。いえ、敵の行軍履歴を見る限り
     ここを落とすための立ち回りですから、それを考えればもう2週間以上前から標的だったのでしょう」

( ^ω^)「……今日7月の19日かお?」

从 ゚∀从「はい」

( ^ω^)「……全く。あと少しだったのに。おしいお」

从 ゚∀从「何がですか?」

( ^ω^)「いや、気にしなくて良いお。ハイン、まともにやり合ったらこの街は何日持つお?」

从 ゚∀从「一日も持ちません。6時間が限度でしょう」

( ^ω^)「今すぐにショボン司令のところまで逃げ切るのにどれほどの犠牲がつく?」

从 ゚∀从「全人口の約5%かと。しかし、そんなことをすれば移動後の街で深刻な食糧難を招きます。
      あの狡猾な男がそんな無謀な受け入れをするとは思えません」

( ^ω^)「そうだろうお。どの道、逃げただけでは逃げ延びた場所で殲滅されるのがオチだお」


134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:32:52.59 ID:Q20amxjg0
从 ゚∀从「……撤退戦、ですか?」

( ^ω^)「やるしかないお」

撤退戦は指揮が難しい。
兵士の士気は上がりづらく、指揮系統は情報過多で麻痺しやすい。
そして最も死亡する人数が多いのもまた撤退戦なのだ。

从 ゚∀从「しかも包囲脱出の後の撤退戦ですからね……」

( ^ω^)「生き残れる見込みはどれくらいかお?」

从 ゚∀从「……」

( ^ω^)「ハイン?」

从 ゚∀从「……0.00%です」

( ^ω^)「コンピューターの予測に過ぎんお」

从 ゚∀从「司令……」

( ^ω^)「ショボン司令の領内に行くにはどうしても海を通らねばならんかお?」

从 ゚∀从「……え?はい、そのはずですが」

( ^ω^)「たしか、海底トンネルがあったはずだお。そこからのルートは考えたかお?」

从 ゚∀从「……いえ、しかしトンネル内では一度蟲に追いつかれたら全滅しますよ」

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:33:23.57 ID:Q20amxjg0
( ^ω^)「海上を船舶で行くよりはずっと生存率が上がるはずだお。至急調査してくれお」

从 ゚∀从「はっ」

駆け出すように部屋を飛び出した彼女を見送ったブーンは、それとは対照的にゆっくりと部屋を後にした。

( ^ω^)「0.00%かお……。懐かしい数値だお」

雨はやがて上がろうとしていた。




139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:34:06.34 ID:Q20amxjg0


ξ゚听)ξ「ここか……」

私の口からちょっと気が重そうな声がこぼれた。
目の前の部屋には司令室と書かれたプレートがつるされている。
司令が麻雀なんて、とジョルジュさんに愚痴ったら逆に彼に窘められてしまった。


「司令はそんないい加減な人間じゃない。あの人がリラックスしてる時はそうしてもいい時ってことだ」


と。
実際ブーンさんはもう今日の仕事は終わっていたらしい。
それを知らずとも上官に対してああも言うのは非礼だったと自分でも思う。

だから、まぁ、謝っておこうと思ったのだ。

ξ゚听)ξ「一応、けじめはつけないといけないし……」

踏ん切りのつかない自分を声で納得させて彼の部屋をノックする。

ξ゚听)ξ「司令! ちょっと良いですか?」

返事はない。
おかしいな、ジョルジュさんは司令とハインさんがここにいるって言ってたのに。

140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:34:36.61 ID:Q20amxjg0
ξ゚听)ξ「入りますよ」

ガチャリ、とドアをあけ中に入る。
中に人はいない。電源を消し忘れたのかコンピューターだけが低い機械音を上げている。
司令室にはとても彼の趣味には合わなさそうな荘厳な雰囲気を持つ絵画がかけられていた。
それぞれ年齢の違う4人の人間が自らの世界に浸っているようだ。

ξ゚听)ξ (変わった絵ね……)

やけにこの絵に引き込まれる。
いや、確かに絵は美しい。
きっと私は知らないが名のある人が描いたのだろう。
だけど私の胸に一番最初に芽生えたのは、そんな不思議な魅力やその美しさではなかった。

ξ゚听)ξ (歪んでる)

そう。確かにそう思った。この絵は歪んでいると。
いや絵の内容ではない。
ここから語りかけられるモノが歪んでいるのだ。
私はしばらくその絵に目を奪われていた。

絵の中の暗い部屋の中で卑屈な笑みを浮かべる男は何故だか見覚えがある。
見覚え……とは少し違う気もする。

143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:36:51.30 ID:Q20amxjg0
おじいさん「およ? ツンちゃん司令に用事かい?」

中を覗き込んだままの私に、通りかかった掃除のおじいさんが声をかけてくれた。

ξ゚听)ξ「はい。どこにいるか分かりませんか?」

おじいさん「さっき用事があると言って出て行ったよ。今夜は遅くまで帰らないらしい。」

ξ゚听)ξ「……そう、ですか。」

不思議な絵と彼の不在で、意気込んでいたものが空振りしてしまった。
私は掃除のおじいさんにお礼を言った後、ブーンさんが消し忘れたPCを消そうと思って中に入った。
現在日本でははネット回線がダウンしているため、文書作成などがメインの目的のようだ

デスクトップは何の変哲もなかったが、私は一つだけ英語で書かれたその項目が妙に気になった。
もちろん、司令のPCの中身を勝手に見るなど規律違反だ。
見つかったら大変なことになるかも知れないが、好奇心がその恐怖感を上回った。

ξ゚听)ξ「The Ark? 何これ?」

ダブルクリックで開いてみると、広がったウィンドウには画面いっぱいの英文と簡易な図が現れた。

ξ゚听)ξ「研究資料? でもこれって……」

それは一度は見たことがある資料。
私がアメリカの大学で研究中だったもの、つまり蟲の関する遺伝子研究データである。

144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:37:43.30 ID:Q20amxjg0
ξ゚听)ξ「そっか、そういえば司令もアメリカの大学で研究してたって言ってたっけ」

それならば別にここにこれがあっても――

ξ゚听)ξ「――あれ?でもそれだと……」

ブーンさんが日本に来たのは6年程前だったはずだ。
蟲が最初に現れ始めたのもちょうどそれから1年後くらいの時だった。
蟲の遺伝子研究が本格的に行われ始めたのは約4年前。

その頃にはもう日本のネット回線なんかとっくに蟲に破壊されている。
当然アメリカになんか物理的手段で到達できない。

この研究データの入手経路が存在し得ない。

ξ゚听)ξ「しかもこの資料、私見たのよりずっと詳しい……いや、そうじゃなくて」

研究データは確かに私が研究していたものより詳しい。だけどそれとは別の違和感がある。

ξ゚听)ξ「……」

何だろう、この違和感は。
何かは分からないがはっきりと知覚できる。
このデータはどこか根本的におかしいのだ。

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:38:18.57 ID:Q20amxjg0
ξ゚听)ξ「……なんだろう? 別に資料的にはおかしくないのに」

その資料には蟲たちの特性がそれぞれ細かく書かれ、次に工学的な見地からの検証が為されている。


蟲は全部で5種類いる。

最も数が多く、繁殖力が強いスカラベ。
巨大なハエを思わせる体長3mくらいのフライ。
ムカデのような外見と機動性が高い体長5mくらいのワーム。
巨大な体躯と特に頑丈な甲殻を持って突撃を仕掛ける家のように大きなアーム。
そして人類の電子兵器をことごとく無効化してきた体長200mをこえるエレ。

これらを総称して人類はその存在を蟲と呼んできた。

特にエレは世界で数匹しか確認されておらず、
特殊な電磁波を出して人類の近代兵器に対抗し、未だ一度も撃墜されていない。
まさしく人類の恐怖の象徴だった。

ξ゚听)ξ (エレに関するデータは……ないか)

エレに関するデータなんてあるはずがない。だってまだサンプルの死骸や
体の部分さえ人間は手に入れられていないのだから。
私は少し安心する。もしここに『あるはずのないデータ』まであったら……。


あったら、それは何を意味するのだろうか?

147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:39:06.01 ID:Q20amxjg0


   「ツーンちゃーん?」

ξ゚听)ξ (まずい……)

私は急いでコンピューターをシャットダウンして司令室を飛び出した。
扉から出たところでしぃさんに捕まる。

(*゚ー゚)「どこ行ってたの? もう晩御飯だよ」

ξ゚听)ξ「あ、すいません。司令を探してて」

(*゚ー゚)「そっか、司令が出かけちゃったこと知らなかったんだ。
     あ! 今日は流しそうめんだから早く行かないと全部食べられちゃうよ?」

ξ゚ー゚)ξ「そうですか。じゃあ急いでいきましょう」

いつもより少し歩調を速めて歩くしぃさんの会話は全然頭にはいってこない。
私の関心はさっきの資料に9割以上寄せられていた。

……蟲は一体何なのだろう?
単なる進化の途中で生まれ出た一生物なのだろうか?
それとも、人を殺すために生まれ出てきた存在だったりするのだろうか?

そんなことあるはずない。

148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:39:45.84 ID:Q20amxjg0
けれど、何なのだろう?
蟲は何なのだろう?

思考がループする。

わかりっこないことを考えてる?
そうだ、わかりっこないことを考えている。
本当に?
何かを見落としている気がする。
見逃してる?
そう。けど、それは……。

何を?                                       分からない。
                         何を?
何を?                                       人……?
                         人を?
え?                                        違う、蟲。
                         人?
人を。                                       誰?
                         人?
誰?                                        アレ?
                         彼を?
彼?                                        違う。
                         ブーン……さん?
見落としてる?                                   違う。
                         蟲?
違う。                                       違う。
                         何が?
人だ。                                       違う。
                         何が?

149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:40:30.16 ID:Q20amxjg0

何が?



ξ゚听)ξ (ダメね……頭の中がおかしくなりそう)

思考に靄がかかってはっきりしない。

ξ゚听)ξ (情報が足りない……、もう一回詳しくあの資料見てみなきゃ。蟲のことが分かるかも知れない)

そもそも何故あんな資料があそこにあるのだろうか?
しかも、彼がアメリカにいたときのものだと考えるとアレはもう6年以上前の資料ということになる。
蟲が蔓延るようになったのは5年前だから、そんなことはありえないのだ。

(*゚ー゚)「ツンちゃんどーしたの? ぼうっとしちゃって?」

ξ゚听)ξ「いえ。……そうだ、しぃさんって司令といつから知り合いですか?」

(*゚ー゚)「んっと彼が中佐になってからだから……4年前くらいからかな?」

ξ゚听)ξ「それから司令ってアメリカに行ったことありますか?」

(*゚ー゚)「いや、ずっと日本にいたよ。私達の街をずっと守ってくれてる」

ξ゚听)ξ「そう……ですか」

152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:41:21.87 ID:Q20amxjg0
(*゚ー゚)「なんで?」

ξ゚听)ξ「いえ、たいしたことじゃないんですけど」

(*゚ー゚)「あー!!やっぱり先に食べてる!!待ってて言ったのに!」

しぃさんは私の手をもって小走りに駆け出した。

やはり今はまだ情報が少なすぎる。
もう一度資料を見直してみよう。


屋外に設置された流しそうめんの食卓は、幹部と通信兵の人たちで既に盛り上がっている。

从 ゚∀从「早く来ないとなくなるぞ〜。」

私達を視界に捉えたハインさんが大きく手を振る。
今だけはみんなが蟲の恐怖を忘れて夕暮れ時の晩餐を楽しんでいた。

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 07:41:47.84 ID:Q20amxjg0
少し前の買出しに行った時、ブーンさんが言っていたことを思い出す。
『僕はこの笑顔をずっと見ていたいお』と。
はしゃいでいた子供だったか、それを見た彼は静かにそんなことを呟いた。

次々と死に絶えてゆく同胞をみながら、彼はこの街で必死に蟲に抗い続けてきたのだろう。
そして彼が守ってきたこの街では確かにそこに守りたい日常があった。
彼がこの様子を見たらきっと大喜びするだろう。
それとも、一緒になってはしゃぐのだろうか。
彼が守り続けてきた笑顔は確かに街のなかに芽生えていた。

今はただ、私もそれを楽しむことにした。





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