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問合せ
川 ゚ -゚)書きつづけるようです(´<_` )
748 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:38:39.95 ID:BDMWKD2k0
薄暗い部屋の中で、時計の針が時を刻む。
ちっ、ちっ、ちっ、ちっ…。今ので四秒経過。と言ってる間にまた一秒。
こんなことを考えている場合ではないのはよくわかっている。はずなのだが、どうにも腕は動かない。
川 ゚ -゚)「いかんな、これは」
キーボードから手を離して大きく伸びをする。ついでに、椅子を傾けてバランスを取ってみたりして。
川;゚ -゚)「うおっ」
思いっきり後ろに倒れた。凄まじい音が響き渡る。後頭部がめっちゃ痛い。
隣の人から苦情とか来ないといいなぁ。…隣に人住んでたっけ?忘れた。
川 ゚ -゚)「んー」
そのままじっと天井を見つめてみる。そして思った。
川 ゚ -゚)「…汚いなぁ」
入居当時は真っ白だったそこも、今では所々に黒いシミがある。
しかしどこから生まれるんだろう、あのシミというやつは。
―全くいつの世もシミというのは女性の天敵だ。
749 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:39:37.11 ID:BDMWKD2k0
私はあまり外に出ないから気にしないが、女友達はいつも美白の話題ばかりしている。
やれあそこの美容液がいいだの、あのサプリメントは効くだの…蚊帳の外な私の気分にもなれ。
川#゚ -゚)o そ 「この世の中にはもっと大切なことがあるんじゃないかと私は強く言いたい!」
握りこぶしを天井に掲げて、主張してみた。
しかし、もっと大切なことってなんだろうな?愛?夢?お金?
(´<_` )「締め切りじゃないかと俺は思う」
…見飽きた男が、私の顔を覗きこみながら問いに答えてくれた。頼んでもいないのに。
川 ゚ -゚)書きつづけるようです(´<_` )
751 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:40:58.46 ID:BDMWKD2k0
さて、ここらで登場人物の紹介をするべきだと私は思うのだがどうだろう。
(´<_` )「うむ、基本に忠実でいいんじゃないか」
この冴えない顔の冴えない男は流石弟者。私の担当をしている編集者だ。
特技は鼻からスパゲティを食うこと。目でピーナッツを噛むこと。現実から目を背けること。
趣味は幼女の撮影。幼女の撮影。あと幼女の撮影。このロリコンめ。
川 ゚ ー゚) ピクピク
(´<_` )「お前今俺のことけなしただろ、脳内で」
_,
川 ゚ ー゚)「そんなことしてねーよ」 ピクピク
(´<_` )「じゃあなんで頬と眉がピクピクしてんだよ」
そして私の名前は素直クー。新進気鋭、バリバリ売り出し中の小説家だ。
著書は全て大ヒット、印税もがっぽがぽ。儲かって儲かってしかたない。
しかも美人なのでモテまくり、最近は某企業の御曹司にプロポーズされて困っている。
―とかだったらいいな、と思っている妄想癖の激しいしがない小説家である。φ(´<_` ) カキカキ
川 ゚ -゚) そ 「あ、こら!勝手に人のモノローグに文を追加するんじゃない!」
ついでに言うと、新進気鋭というのは大嘘で、既に中堅…いやベテランである。φ(´<_,` ) カキピク
川 ゚ -゚)「いや、心は永遠に若手だから。つかてめーも頬ぴくぴくしてんぞ」
752 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:41:54.50 ID:BDMWKD2k0
(´<_` )「とまぁお遊びはこれぐらいにして、だ。今日の分をさっさと書いてくれ」
そう弟者はのたまった。はて、何のことだろうか。生憎私には覚えがない。
(´<_` )「そうか、さっき頭を打って忘れたんだな。ならもう一度ショックを与えてみよう」
弟者が懐から取り出したのは小さなトンカチ。ところでトンカチとカナヅチは何がどう違うのだろうか?
私はどちらも同じ物だと思うのだが、もしも両者に明確な違いがあるとしたら、
それを知らずに彼らのことを呼び続けるのは失礼に値するだろう。
ヽ川 ゚ -゚)ノ「教えてぐーぐるせんせー」
(´<_` )「トンカチは人を殴る物だ。カナヅチは泳げない人のことだ。そして」
ちょんちょん、と私の頭頂部が鉄製の何かで突つかれる。
(´<_` )「これはトンカチだ」
弟者が思いっきりトンカチを振り上げる。
―ぐしゃ。私の頭は潰れた。
人の頭って意外に簡単に潰れるんだな、と私は真っ暗な意識の中で思った。
(´<_` *)「ふひひひひ!殺しちゃった!殺しちゃった!」
753 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:42:27.57 ID:BDMWKD2k0
川 ゚ -゚)「―という小説はどうだろうか」
(´<_` )「ごめん聞いてなかった」
私のホラースリルサスペンス超大作は担当の怠慢によって日の目を見ることなく消えていった。
川 ゚ -゚)9m 「ちなみにさっきのは13行目から先が私の空想な」
つまり、弟者はトンカチ持ったままです。私の後ろで待機してます。
正直それを何に使うのか聞きたい気持ちでいっぱいです。
川 ゚ -゚)「それ何に使うんだ?」
いっぱいすぎて溢れました。
(´<_` )「肩でも叩いてあげようかなと」 トントントントン
(((川*゚ -゚)))) 「あばばばばばば」
トンカチマッサージは思いのほか気持ちが良かった。
改めて、小説家というのは肩が凝る作業なのだと思い知る。
まぁ私が世間一般で言う巨乳なのも肩こりの理由だとは思うけど。とちょっと自慢してみる。
755 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:43:25.18 ID:BDMWKD2k0
しばらくの間、トンカチマッサージは続いた。
おかげで私の手は震えっぱなし、ちょとのみすたぴpはゆrしたほしあqwせdrftgyふじこlp;@:
(´<_` ;)「ちょっとってレベルじゃねーぞ…」
さすがに事態を重く見たのか、弟者の手が止まった。トンカチさんの気持ち良さが名残惜しい。
川 ゚ -゚)「よし、執筆の邪魔だ散れ」
なのにこんなことを言ってしまう私はツンデレでしょうか。いや私はクーデレのはず。
自分のアイデンティティを崩すわけにはいかないよな。
川 ゚ -゚)「やっぱもうちょっとマッサージして」
(´<_` )「…ちゃんと小説書けよ」
(((川*゚ -゚))))「おおおおおういえええええ」
l;あうぇじ地さても真sy太lkダイアjfぁ上絵・kjはいうwじぇあ
(´<_` )「うん、やっぱ止めよう」
トンカチマッサージ終了。
757 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:44:32.80 ID:BDMWKD2k0
ヽ川*゚ -゚)ノ「肩が軽くなったッ!」
(´<_` )「じゃあ書け」
トンカチを懐にしまうと、弟者は私のベッドに座り込んだ。
その辺に置いてあった雑誌をぱらぱらと捲って読んでいる。
川 ゚ -゚)「なぁ、弟者」
(´<_` )「ん?なんだか知らんが手は止めるなよ?」
川 ゚ -゚)「…真剣な話なんだ」
(´<_` )「……」
私の声が真剣味を帯びたのを感じたのか、弟者は雑誌を放って体勢を直した。
弟者のそういう空気読めるとこ、私は嫌いじゃない。
川 ゚ -゚)「実はな、弟者」
(´<_` )「ああ」
川 ゚ -゚)
(´<_` )
川 ゚ -゚)9m 「そこで昨日ゴキ潰した」
Σ (´<_` ;)「ぬおおお!!確かになんか黒い!!」
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:45:47.80 ID:BDMWKD2k0
慌てて飛びのく弟者。ちなみに本当はゴキなんて潰していない。黒いのは『ごはんですよ』だ。
大体乙女が自分のベッドでゴキを潰すわけがないだろう。
そういうのがわからないあたり、弟者は乙女心の理解が足りないと思う。
(´<_` )「乙女って年でもないだろうに…」
川 ゚ -゚)「女性はいつまでも夢見る乙女なの」
ああそう、と投げやり気味に言って弟者は自分のズボンの尻をティッシュで拭った。
川 ゚ -゚)b「大丈夫大丈夫、黒いスーツだし大して付いてないし目立たないから」
(´<_` )「でも落ちなくなったら困るだろ」
川 ゚ -゚)「だったら洗濯機で洗っておけ」
(´<_` )「じゃ、お言葉に甘えて」
何の躊躇いもなくズボンを脱ぐ弟者は変態だと思う。
そのままいそいそと洗面所に向かう弟者は変態だと思う。
そしてトランクスのまま戻ってきた弟者は変態だと思う。
多分彼の兄も変態だと思う。姉も変態だと思う。
妹は…可愛かった。間違いなく血が繋がっていない。
759 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/20(月) 23:47:08.64 ID:BDMWKD2k0
っていうか、そんなことはどうでもいい。
_,、_
川 ゚ -゚)「なんか履けよ」
タンスからスーツのズボンを取り出す私は優しいと思う。
女物だから多分穿けないだろうがな。ざまぁ。
(´<_` )「見てみてー!」
うっざ、という本音は隠して弟者のほうを向く。
弟者はズボンをちゃんと穿けていたが。
(´<_` )「ウエストゆっるーい」
川 ゚ -゚)
私は自分の中にどす黒い意識が生まれるのを感じた。
それは渦を巻いて一点に集まっていき、かと思えば霧散して心を覆い尽くす。
私の真っ白な心は漆黒に染められていった。怒りと憎しみ、その二つによって。
ぶっちゃけものすごくムカついたってだけなんですけどね。
766 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:15:51.39 ID:aNL2T+U+0
川#゚ -゚)「お前それでも成人男子か!実は成人男子じゃなくてもやしだろ!」
(´<_` )「健康体なだけだ」
じゃあ健康なもやしだ!
川#゚ -゚)「じゃあ健康なもやしだ!」
大切なことなので地の文と会話文とで二回言いました。
(´<_` )「ダイエットも大切だぞ」
(´<_` )「ダイエットも大切だぞ」
(´<_` )「俺も大切なことなので二回言いました」
川 ゚ -゚)「弟者の顔並ぶときもいな」
あ、つい本音を言ってしまった。…私素直クールだししょうがないな、うんしょうがない。
私は自信の属性を遺憾無く発揮しただけだから。
(;<_; )
それでも、素直な言葉は人を傷つけてしまう。それゆえ私は孤独を選ぶ。
おお、なんかかっこいいな。厨ニ病バトル物でも書くときに使おう。書かないけど。
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:17:22.19 ID:aNL2T+U+0
川 ゚ -゚)φ カタカタカタカタ
(;<_; )
弟者は涙目で体育座りしている。私にきもいと言われたのが相当効いたらしい。
さて、せっかくうるさい奴が静かになったので少々独り言でも述べてみようと思う。
皆さんは『小説家の苦悩』というものを考えたことがあるだろうか。
人によって違うとは思うが、私にはこれだと言える苦悩が一つある。
それは、話を書き進められないということだ。
ネタが浮かばないのだったり単純に時間が足りなかったりと色々理由はあるが、
とにかく結果として話が書き進んでいない場合私はかなり悩む。
で、何が言いたいのかというと。
弟者が凹んでいようと本来私は知ったこっちゃないのだが、このまま黙られたままだと非常に困る。
理由は先ほど述べた通り。
というわけで、素直クールとしてここは素直に謝ってみようと思う。
川 ゚ -゚)「おい、弟者」
(;<_; )
川 ゚ -゚)「なんていうか…ごめんな」
(´<_` )「わかればいい」
…私は弟者の立ち直りの速さに謝ったことを少し後悔したが、大人なので水に流した。
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:18:45.26 ID:aNL2T+U+0
川 ゚ -゚)「もう二度と謝ってやんねー」
(´<_` )「水に流してねーじゃねーか」
回転椅子を元の向きに戻して執筆作業を再開する。
まぁとにかく苦悩は解消された。これで書くことは湯水のように溢れてくれる。そして邪魔な分はこぼす。
(´<_` )「いやこぼすなよ、全部使えよ」
弟者が何か言っているが無視。湧いたものを全部使おうなんてのは欲張りがやることだ。
ある程度はこぼし、受け皿に溜めておくことでいつでも使えるようにしておくのが賢いやり方なのである。
放置しすぎると腐ってしまうのが困り物ではあるが。
(´<_` )「ま、順調に進んでいるんなら言うことは何もないけどな」
川 ゚ -゚)「いやそれはそれで困るんだが」
さっきも言ったが会話が途絶えるのは大問題だ。ノルマに足りなくなる。
(´<_` )「はいはい。しかしお前も変な話を考えたもんだよな」
弟者が画面を覗きながら言った。彼が眺めるディスプレイには、大量の文字が並んでいる。
今日だけでなく、ここ数ヶ月ほどずっと書き続けている小説だ。
もっとハイペースで書ければ楽なのだが、悲しいかな現在この小説は一日に少しずつしか進まない。
それは私のやる気がないからでは断じてなく、時間が絶対的な物であるせいだ。
そう、この小説に書かれているのは―
771 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:20:15.68 ID:aNL2T+U+0
(´<_` )「俺たちの歴史、だからな」
川 ゚ -゚)「おい、それ一番見せ場の台詞だったんだけど」
…少々予定は狂ったが、まぁいい。つじつまを合わせるのも小説家のスキルの一つだ。
弟者が言った通り、私が今書いているこの小説は私達二人の生活を描いたものである。
完全ノンフィクションでお送りするため、リアルタイムに書き進めているのだ。
出版がいつになるかはわからない。そもそも出版するかもわからない。それでも私は書いている。
これは、私の夢の一つだから。
とここまで考えたところで、弟者が話し掛けてきた。というわけで夢についての話は後にする。
(´<_` )「美味しい場面ぐらい旦那に譲ってくれてもいいんじゃないか?」
確かに主人公の想い人というのは美味しい場面をかっさらっていくのがセオリーだろう。
でもお前にはかっさらわせん。お前はそういうキャラじゃないからな。
(´<_` )「しかし俺が言った言葉は書かざるを得ない…難儀な小説だな」
ああ全く、本当に難儀だよ。しかし書き始めたからには何としても書き終える。
それが私の小説家としてのポリシーだ。
(´<_` )「何がポリシーだ。パソコンの中に何本未完の話が眠ってるんだよ」
川 ゚ -゚)「いつかは全て完結させるさ。…ところで時間はいいのか?」
772 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:22:21.15 ID:aNL2T+U+0
横目でデジタル時計を見ながら言う。
時計はもうすぐお昼を回ろうか、というところだった。
川 ゚ -゚)「今日は原稿取りの日だろう?」
弟者は私の夫ではあるが、私専属の編集者ではない。他にも何人かの小説家を担当している。
その誰よりも私と過ごす時間が長いことは確実だが、かといって一日中横に付いているわけにもいかない。
(´<_` )「そうしたいのはやまやまだけどな」
私が書いたモノローグにツッコミを入れるのは止めろというのに。
(´<_` )「んじゃ行って来るわ」
川 ゚ -゚)「おう、頑張って来い」
モニターからは目を離さず、口だけで弟者を見送る。
いってらっしゃいのキスぐらいはしたほうがいいのだろうか、とも思うが…流石に恥ずかしい。
弟者がこの文を見たら、せがまれるだろうな。しないけど。
(´<_` )「俺がいない間もちゃんと書けよ」
書けよ、とはこの小説のことではなく、私が別に抱えている作品のことだ。
…ちなみに、そっちの締め切りは約一ヶ月後に迫っている。正直そろそろ本気出さないとやばい。
川 ゚ -゚)「わかってるわかってる」
私の生返事を背中に受けて、弟者は部屋を後にした。
773 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:24:45.00 ID:aNL2T+U+0
というわけで今日の分の書き溜めはここで終了にしようと思う。
誤字がないか確認するために画面をスクロールする。
そしてある一文を発見。
『これは、私の夢の一つだから。』
川 ゚ -゚)「そういえばそんなことも書いたっけ」
よし、それでは最後に私の夢について語ることにしよう。
そのために私がこうして小説家になったきっかけの話から始めようと思う。
私は昔から本を読むこと、そして書くことが好きだった。
人と話すことが得意ではなかった私にとって、この趣味は何物にも換えがたい大切な物だった。
そうして成長するにつれ、私はそれを仕事にすることを考え始めた。
何本もの小説を書きあらゆる賞に応募したが、全てが日の目を見ることなく終わっていった。
このまま私の本は世に出ることなく終わっていくのかもしれない、と思うこともあった。
それでも私は書きつづけた。私にはこれしかないのだ、と信じていたから。
そんなある日、一人の男から電話がかかってきた。私が小説を投稿した会社の編集者だった。
皆さんお察しの通り、その男が弟者だ。
(´<_` )「君の小説、読ませてもらった。まだまだ改善点は多いが、俺は面白いと思う」
それは、生まれて初めて生で聞いた賛辞の言葉。
(´<_` )「うちで書いてみる気はないか?」
断るはずがなかった。
775 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:27:07.80 ID:aNL2T+U+0
そうして処女作を書き始めたはいいが、完成するまでは本当に大変だった。
書く。没。書く。没。その繰り返し。嫌になったことも何度もある。
何度目かのそんな気分に陥った時、弟者が私に言った。
(´<_` )「俺はお前の作品が好きだ。だから、中途半端な形で世に出すことは絶対にしたくない」
その細い目の中には、確かに炎が燃えていた。
私はこの人の情熱に応えたいと思った。ここまで言ってくれた人をがっかりさせるわけにはいかないと思った。
それからは不思議と筆が進んだ。みるみる内に作品は形を為していき、ついに完成した。
自分の人生の中で最高の作品だと、心の底から思った。
売上も新人としては上々であり、それからも私は小説家として食べていけることになった。
川*゚ -゚)つ目「「かんぱーい!」」目⊂(´<_` *)
好調な滑り出しを祝ってささやかな祝賀会が行われた。会場は私の家。参加者は二人。
(´<_` *)「いやー良かった!本当に良かった!なぁ素直!」
川*゚ -゚)「全部流石さんのおかげです。流石さんがいなかったら、絶対に完成してませんでした」
このときはまだ、お互いに名字で呼び合っていた。私は弟者に敬語を使っていた。
二人の関係は作家と担当だったし、弟者は私より年上だったので当然といえば当然だ。
(;<_; *)「本当、俺はお前と仕事が続けられて嬉しい!」
弟者はぼろぼろ涙を流して喜んでくれた。多分、うちの親族より喜んでいたと思う。
私の作品が売れたことを、自分のことのように喜んでくれる彼に、私は惹かれた。
そして彼も、本に対してひたむきな情熱を捧げる私に惹かれてくれていた。
777 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
[]2008/10/21(火) 00:30:17.62 ID:aNL2T+U+0
お互いの気持ちを打ち明けたのは、私の三作目が出版されてから。
そして私達は恋人同士になり…私には、一つの夢が生まれた。
彼との人生を形に残したい。私が大好きな、小説で。
随分長くなってしまったが、これが私の夢である。
この夢のため、私は彼との人生を文章として書きつづけている。
ただ、さっきも言ったが出版しようとかそういう気持ちはあまりない。
川 ゚ -゚)「…それにしても…改めて書くと、何やら恥ずかしいな」
特に弟者の台詞なんかくさすぎて困る。今同じことを言ってくれと頼んだって絶対に言わないだろう。
ふと、視線が時計を捕らえた。弟者が部屋を出てから、一時間近く経過している。
…思ったより長い間、思い出に浸ってしまったようだ。
川 ゚ -゚)「さて…そろそろ本気出すとするか」
私は十作目となるはずの小説のファイルを開いた。
次で記念すべき十作目…完成したら弟者と優雅にディナーなんてのもいいかもしれない。
そうだな…その時は思う存分キスでもしてやろう。たまにはデレも必要なはずだ。
そう遠くない未来に思いを馳せながら、私はこのファイルを閉じたのだった。
川 ゚ -゚)書きつづけるようです(´<_` ) 終
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