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問合せ
( ^ω^)心のままに、のようです
最終話
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 18:55:21.26 ID:eM8JlZ390
最終話 風船 心のままに
ξ;凵G)ξ『グスン・・・グスン・・・』
夕刻など当に過ぎた午後八時。
季節はまだ冬で、身を襲う寒風は突き刺さるような痛みだった。
( ´ω`)『ツン、いい子だから、泣き止むんだお・・・』
時は遡る事10年。
その日、僕達は親族による嫌がらせにより、外に放り出されていた。
父と母が死して早二年。未だ七歳だった僕には、何故このような仕打ちを受けるのか
到底理解できはしなかった。
今思えば、目障りだったのだろう、それだけだと思う。
散々に人の金を貪り、挙句は残された僕達にこのような仕打ちを振舞うその傲慢さ。
ξ;凵G)ξ『寒いよぉ、お兄ちゃん』
軒先で半裸の妹は言う。
( ´ω`)『ツン、こっちに来るんだお。ほら』
手招きをして、妹を抱き寄せた。
寒いといっている割に、体は温かいのだ。
下着姿の僕は、そう思うだけだった。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 18:57:01.20 ID:eM8JlZ390
ξ;凵G)ξ『もう、嫌だよぉ・・・パパとママに会いたいよぉ・・・』
( ´ω`)『おっ・・・』
父よ、母よ。
あなた方には到底思いつくまい。
愛した我が子が、このような仕打ちを受ける日々など、どうして考えようか。
あなた方がこの世を去ってからというもの、僕達は生傷を負い、心は陵辱され、
挙句は人を呪う事まで覚えてしまったのだ。
こんなにも無常な話はあるだろうか。いや、あってはならないのだ。
( ´ω`)『・・・ツン』
他人とは、人とは。要は利用し、されあう仲なのだと。
信用などせず、敵を作り、壁を作り、蟠りに溢れているのだと。
幼いながらに、理解した。
( ´ω`)『大丈夫だお、ツン。もう、父ちゃんと母ちゃんはいないけど・・・』
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 18:58:12.48 ID:eM8JlZ390
ただ、それでも。
誰か一人だけでも、僕の隣に居て欲しかった。
いや、実は初めから居たのだ。いつだって、何処でだって。
彼女は僕の隣を歩き、時には先を行き、後を着いてきた。
( ´ω`)『僕が居るお、ツン。大丈夫、僕が、いるんだお・・・』
生きよう。強く、生きよう。
大丈夫、一人なんかではない。隣には、いつだって僕の妹が寄り添ってくれるのだから。
凍てつく寒空の下。闇は僕等を包み、そうして飲み込んでいくだろう。
だが、怖くなどは無い。一人ではないのだから。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:00:03.58 ID:eM8JlZ390
( ^ω^)「・・・・・」
夢を見た。幼き日の夢だ。
当時、蔑まれ生きていた僕とツンの夢だ。
あの時、世界の全てが敵であった。
僕達へした仕打ちの数々は、確かに親族のソレであっただろう。
しかしながらも、境遇とは、神が、世界が与えるものであるだろう。
だから、僕は当然神が嫌いだった。世界が嫌いであった。
罪も無い僕等へ与えた仕打ちは、何時の日か必ずや返そうと。
そう思っていた。
( ^ω^)「また、ここかお・・・」
眼を見開いたとき、世界は光に包まれていて。
同時に、何時か嗅いだことのある匂いが鼻腔へと伝わると、ここが病院であるのだと
直ぐに理解できた。
「やっと起きたのかい」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:01:18.95 ID:eM8JlZ390
隣から聞こえてきた声に、僕は反応する。
首を動かそうとして、しかし、筋肉痛なのかなんなのか、ともかく痛みが伝う。
少し惜しみながらも、眼だけを動かして、この声の持ち主を見た。
(´メω・`)「やぁ、お早う」
右目に包帯を巻いたショボンが、そこには居た。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:04:15.56 ID:eM8JlZ390
( ・∀・)「やぁ、お帰り」
ナースコールを押して暫く。
真っ先に駆けつけたのは、看護婦でもなく、モララーであった。
( ^ω^)「・・・どうも、ですお」
退院して早三日にしての帰還など、前代未聞もいいところだ。
彼はそう言うと、僕のベッドに腰掛けた。
( ・∀・)「・・・大変だったね」
( ^ω^)「・・・・・」
大変、だと?
ツンは死に、ドクオまでもが死んだ。
僕とショボンなど、入院をされる羽目にまで怪我を負ったのだ。
挙句、クーまで―
( ;゚ω゚)「って、クーは何処だお!?」
突然に、思い出した。
現在、この病室には僕とショボンのみ。どのベッドにもカーテンはしかれていない。
見通しはよく、誰がいるかなど直ぐにでも分かる。
しかし、クーの姿は、そこには居なかった。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:05:15.25 ID:eM8JlZ390
( ・∀・)「?・・・ああ!あの女の人かい?彼女なら大丈夫さ」
( ;゚ω゚)「ど、どこにいるんだお!?」
身体中を不安が纏わりつく。まるで嘗め回すようなこの不快感は、次第に
膨れ上がり、次の一言で零れ落ちた。
( ・∀・)「入院はしていないよ。何、刺傷があったのは左肩だけだったからね。
出血もそこまで大したもんじゃなかったし、生活は出来るさ。
先ほど、君たちが目覚めたことは連絡しておいた。直ぐに来るだろう」
何とも言えない安心感が、今度は身体中に広がる。
そうか、クーは無事なのか。よかった。
(´メω・`)「先生」
安堵の湯に浸かっていると、ショボンが口を開いた。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:10:03.60 ID:eM8JlZ390
(´メω・`)「―ドクオは、どうなったんですか」
ドクン。
ドクオ。そうだ、彼は―
( -∀-)「・・・・・」
何故、黙る。
(´メω-`)「・・・そう、ですか・・・」
何故、理解する。
( ;゚ω゚)「・・・は?・・・いや、何処に居るんだお?」
何故、首を振る。
( ;゚ω゚)「ははは・・・いや、うん。そうか、お・・・」
何故―愚問だ。
言っていたじゃないか。奴自身が。殺した、と。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:12:03.28 ID:eM8JlZ390
( ;゚ω゚)「・・・ツン・・・」
見たじゃないか、最後を。
自ら腹を割き、存在しない我が子を助け出そうとする様を。
( ;゚ω゚)「・・・ははっ・・・」
どこかで、僕を嘲笑うような声が聞こえた気がした。
『オメデトウ、これで晴れて一人ぼっちだぜ』
( ; ω )「・・・ははっ・・・」
幼き日。あの日、ツンと契りを交わした日。
僕達は世界で二人だけの存在だと、約束しあったあの日。
何があろうと、何時如何なる時であっても、消えてはならないと願ったあの日。
契りは、破れた。
果たして、しかし。
神よ、その傲慢さ、身をもって知るのだろうが。
生憎ながら、僕は一人ではないのだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:14:00.48 ID:eM8JlZ390
(´メω-`)「ブーン・・・」
ショボンが、僕の肩に手をかけた。
しかしながら、ショボンよ。既に、僕は泣いているんだ。
よく泣くようになったと、改めて思った。
まるで、あの頃の僕のようだった。
あの頃、何かある度に泣き、心の中で暴れ、憎み、荒んだ。
それでも、ツンの前では決して涙を見せないところが、やはり僕らしかった。
( ;ω;)「ツンも・・・ドクオも・・・僕の大切な者は・・・全部居なくなるんだお・・・」
予めそういう風にできているのだろうか、人生というモノは。
気づいたときには父と母は死に、お世話になった祖父さえも二年前に亡くなった。
心から親友と思えるほどの男を、ドクオを亡くし―
かつて契りを交わした、最後の身内ですらもこの世から去ってしまった。
( ;ω;)「僕には、生きる価値なんてあるのかお・・・」
まるで、僕に関わる人間は、全員が不幸に陥るようで。
つまりは、僕は歩く病原菌だ。存在しているだけで害になる。
生きる事とは、何と非道なものか。
(´メω-`)「・・・それでも」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:16:00.32 ID:eM8JlZ390
気づけば、肩にショボンの手は無かった。
目線をショボンに向ければ。
(´メω;`)「それでも、生きるんだよ、ブーン」
泣いていた。
(´メω;`)「頼む、ブーン。思いつめないでくれ。君は何一つとして悪くなど無いんだ。
ただ、君は心のままに、思うが侭に生きたんじゃないか。
一体、誰がソレを侮辱できる?できるわけないんだ。誰もがそうしたいからだ」
僕の肩に乗っていた手は、拳へと変化していた。
(´メω;`)「ドクオだって、ツンだって、そして、僕だって。皆が皆、心のままに生きてきた。
僕とドクオは君を助けるために、そして、ツンは君への愛のために。
誰が間違っているとか、誰の責任なんて、ありはしない。
あるとしたら・・・それは、自己責任なんだ」
そう言い切ると、ついに彼は大声で泣き出した。
もう、何と言えばいいのだろう。
いっそ、思うことさえ億劫だ。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:18:01.12 ID:eM8JlZ390
( ω )(心の、ままに・・・)
そう言えば、ツンも言っていたな。
ただ、心のままに、思うが侭に、生きているのに、と。
一体、誰が難癖付けられるだろう。無理に決まっているんだ。
何故なら、誰しもがそのように生き、生きていたいと願うからだ。
( ω )(でも、僕の心は、何を望むんだろうお・・・)
答えなど、決まっている。
ただ。
川 ゚ -゚)「やぁ、元気かい?」
クーを愛するだけだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:20:00.62 ID:eM8JlZ390
気づけば、夕焼けが世界を覆う時刻。
やはり、この季節の外は寒く、風もなかなかに強い。
しかしながらも、どうにか苦労して屋上まで来たとき。
夕焼けは、思うよりもはるかに輝いていた。
川;゚ -゚)「・・・本当に、大丈夫なのか?身体中傷だらけなのに」
( ^ω^)「大丈夫だお」
本当は、歩くたびに激痛が走る。
四肢は全て、ツンによる暴力でメチャクチャだ。
おまけに首も強く痛む。体調は最悪といったところだ。
カチッ。
( ^ω^)「ふぅ・・・」
なんとか動く指先で、タバコに火をつける。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:22:04.73 ID:eM8JlZ390
川;゚ -゚)「おい、本当に、大丈夫なのか?タバコ吸うと、治りが遅くなるぞ?」
( ^ω^)「・・・いいんだお」
そう言い、僕は柵に凭れ掛かる。
( ^ω^)「クー」
川 ゚ -゚)「ん?」
クーを見れば、彼女もタバコに火をつけたところだった。
川 ゚ -゚)「どうした?」
キョトン、とした顔を見て。
やはり、僕は彼女を愛しているのだと、改めて思う。
( ^ω^)「・・・僕とツンは、小さい頃、そりゃぁもう、酷い目にあいまくったお」
唐突に、昔話を始めてみた。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:24:42.34 ID:eM8JlZ390
( ^ω^)「いつからか僕達は人を、大人を、世界を憎んで、そのうち全部が敵に見えたお」
川 ゚ -゚)「・・・・・」
夕焼けが、クーの眼鏡を照らす。
まるで、クーに告白されたときのようだ、と思った。
( ^ω^)「だから、僕とツンは誓ったお。例え何があっても、僕等は二人で一人。
唯一の味方は、互いに一人ずつ」
ふと、空を仰いで見る。
この遥かに広がる大空は、今、淡いオレンジを纏う。
( ^ω^)「強く生きようと。誰にも負けないと。信用するなと。僕等は二人だけなんだと。
そう、思い続けてたお・・・」
世界よ、僕の生きるうえで、なんの支障が君にあるというのか。
ただ、生き続けてきた。本当は、この世は明るいのだと知った。
友も出来た。恋をした。愛することを知った。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:26:14.55 ID:eM8JlZ390
( ;ω;)「けど、本当は違ったんだお。世界はこんなにも素晴らしく、光に満ち溢れてるんだお。
ドクオとショボンに出会って、それを知ったお。
けど、もう、ドクオはこの世にはいないお。僕が巻き込んだんだお。殺したも同然だお」
ショボンはああ言うが、それでも僕は自分を責めた。
( ;ω;)「恩なんて数え切れないお。アイツが居なかったら、今の僕は居ないお。
なのに、死んでしまったお」
罪なのだろうか。
( ;ω;)「ツンだって!僕が殺したも一緒だお!二人で誓ったのに!ずっと二人は一緒だって!
アイツは!自分に素直なだけだったんだお!心のままに生きてただけなんだお!
なのに!死んだ!死んだお!殺したんだお!僕が殺したんだお!!」
この心は、何故変わっていくんだろう。
( ;ω;)「皆!誰もが!心のままに生きてるのに!ドクオも、ツンも!僕だって!!
けれど、それでも死ぬんだお!いや、違うお!僕の、こんな心があるから!!
僕が、心のままに、生きようと思わなかったら!!全部無かったことになるんだお!!
ツンも、ドクオも!!生きていたんだお!!」
突然に、身体を抱きしめられた。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:28:50.45 ID:eM8JlZ390
川 ; -;)「そんなことはない!!違う、お前のせいなんかじゃないんだ!!
ドクオも、ツンも!!二人とも自分のために死んだんだ!!」
黄昏時、雨が降った。
川 ; -;)「ドクオは!お前を守るために死んだ!ツンは!愛する我が子を救うために死んだ!
二人とも、己が心のままに生きたんだ!!そして、死んだんだ!!」
タバコに雨が落ちる。火が消える。
川 ; -;)「それに!!お前が否定したら、私はどうなるんだ!?私まで、否定するのか!!
許さないぞ、ブーン!!偽りなのか!?」
( ;ω;)「違うお!!僕はクーを愛してるお!!」
強い口調で、僕は返す。
( ;ω;)「この心に、偽りなんかは無いお!!愛してるお!!
けど!!それでも!!僕のせいなんじゃないかって!!二人は僕のせいなんじゃないかって!!」
川 ; -;)「生きるということは!死ぬということだ!!」
戻れない。嗚呼、今は見ること無きあの日々。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:30:23.74 ID:eM8JlZ390
川 ; -;)「だが、それでも!!二人は最後まで心のままに生きたんだ!!
だから、ブーン!!」
ツン、ドクオ。
川 ; -;)「生きろ、ブーン!!強く生きるんだ!!心のままに、生きろよ!!」
( ;ω;)「っぁ、わああああああああああああああ!!!!」
君たちは、死んでしまった。
それは、もしかしたら、僕のせいなのかもしれない。
いや、きっとそうなんじゃないか。
けど、ショボンも、クーも。否定したんだ。
嗚呼、二人とも。僕のコレは、罪なのか?
ただ、心のままに、生きた。
君たちも、そうだったんだろう?
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2008/04/02(水) 19:32:00.50 ID:eM8JlZ390
誰もが、心のままに生きる。
それは、当たり前のことだろう。
ただ、心は人それぞれである。
ドクオのように、守る心。ツンのように、愛する心。
僕は、やはりクーを愛する。だから、この心は、愛する心なんだ。
クーは言った、生きろ、と。
だから、僕は生きようと思う。
何故なら、僕の心が、それに強く鼓動したからだ。
最終話 終
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