ブーン系小説をまとめて紹介しているサイトです
HOME
|
問合せ
( ^ω^)ブーンはフォースを駆るジェダイのようです
SHOT-U
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 20:55:36.41 ID:2CyjiEApO
Episode1:ジェダイ新生
〜SHOT-2〜
( ^ω^)「さあ、どんどん撃てお」
両尻から飛び出した粒子剣を挑発するように片腕で回すブーン。
仲間の破壊劇を見せつけられたドロイド達は、たった一人の人間を駆逐する為の猛攻を開始する。
ブーンの振るうライトセイバーは、およそ一万年以上も前から使われ続けているジェダイの秘剣であった。
その概要はパワーセルより発生するエネルギーを、超々高密度のクリスタルによって制御・集束・形成した高熱量のビーム刀だ。
独特の風切り音と共に美しく輝くそれはジェダイの象徴であると同時に、実務における最終手段でもあった。。
高熱の粒子表刃はあらゆる物体を難無く切断し、ビーム弾すら叩き落とす自己循環型高出力機構を内蔵している。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 20:57:14.37 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「ほらほら。動きながら撃たないと最初の奴みたいに返り討ちにあっちゃうお」
ビームブラスターが主流の武器とされるこの時代。
音速を越える得物を相手に、攻撃方が限定されてしまうライトセイバーで戦うことは、
一見して不利になるようにも思える。
が、飛んでいる虫を箸で掴み、高速戦闘機でデブリ群の中を
悠々と運転するほどの反射神経を持つジェダイがそれを扱うとなれば話は違う。
爪*゚〜゚)「我々ジェダイは戦闘において常に受け身であります。専守防衛。過剰戦闘回避。
人を守る盾にも敵を倒す矛にもなるライトセイバーは、我々に取って非常に扱い易い武器なのであります」
今のブーンのように、たった一人で何十体ものドロイドを相手に渡り合えるのは、
超人的な運動能力と未来視を発揮するジェダイだからこその芸当である。
ジェダイは相手の力を利用して戦う。
ビームブラスターが火を吹けば吹くほど、彼等の戦闘能力は膨れ上がっていくのだ。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 20:58:52.94 ID:2CyjiEApO
爪*゚〜゚)「でも……」
岩影からブーンの演舞を見つめるスズキは溜め息を吐いた。
クールはブーンの戦い方をよく見ろと言ったが、
あんなイレギュラーな立ち回りはとてもじゃないが自分には真似できない。
爪*゚〜゚)「マスター・ギコのようなツインセイバーならともかく、両刃のライトセイバーなんて前代未聞であります。
マスター・ホライゾンの戦い方は、まるで独楽か台風のようでありますよ」
通常、ジェダイ達が使うライトセイバーは俗に言う一本刀と同じ形態を採用している。
本体のデザインや刀身の色・出力などの細かい部分こそ千差万別だが、
基本的なコンセプトは統一されているわけだ。
爪*゚〜゚)「マスター・ホライゾンのそれは本体も通常規格の倍以上はありますし……
あれがフォースの意思で形作られた物だとしたら、彼の力はかくも不可思議な物なのであります」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:00:51.11 ID:2CyjiEApO
スズキが言うように、ブーンの得物は異質中の異質だった。
最大の違いは刀身の数。
一つのライトセイバーから二本の刃が、その柄の両端から同時に吐き出されているのだ。
( ^ω^)「残り五体!」
ライトセイバーに設計図は存在しない。
ジェダイ達はフォースに導かれるまま、本能的に自前のライトセイバーを組み立てる。
同期のジェダイ達が既にオリジナルの愛剣を持ち始める中で、
制作に苦戦していたブーンがその異様な剣を完成させた時、ブーンの師は随分と目を丸くしたものだった。
ライトセイバーの中でも異質な部類とされるツインセイバーでもなければ、スーパーエージェントセイバーでもない。
全長そニメートル近い両刃を、回転させるようにして奮うブーンの舞いを見た者達は、その剣を口を揃えてこう呼んだ。
第四の秘剣『ダブルライトセイバー』と。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:02:29.53 ID:2CyjiEApO
川 ゚ -゚)「ダブルライトセイバーは、そのリーチ故に包囲戦に対して滅法強い。
おまけに白兵戦でも阿呆みたいに手数を増やして猛襲できるからな。
かつての私もブーンと試合いをした時は、あの不規則な連撃に翻弄されたものだ」
( ^ω^)「お前が最後だお!」
スクラップの山を築いたブーンは、圧倒的な戦闘能力を見せ付けられて困惑する最後のドロイドへ一気に走り寄る。
今までの標的は全てビームを弾き返して倒してしまった。
同輩の弟子が見ている手前、最後ぐらいは直接刃の餌食にしておきたい。
川 ゚ -゚)「まあ、動き自体は単調なものが多いし、
何度も戦えば癖が分かるから一概に強い剣術とは言えん。
もっとも……」
( ^ω^)「疾!」
川 ゚ -゚)「慣れた頃には、そいつの首は地面に転がっているけどな」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:04:37.03 ID:2CyjiEApO
戦闘時間、一分足らず。
ライトセイバーを懐に納めたブーンは地面に落ちたローブを手に取ると、
何事もなかったかのようにクールとスズキの元へ帰ってきた。
決して穏やかな動きではなかったが、汗一つかいていない所は流石ジェダイナイトと言うべきか。
爪*゚〜゚)「噂に違わぬ見事な演舞でありましたマスター・ホライゾン。糧とさせていただくであります」
( ^ω^)「お粗末様だお。スズキの勉強の為なら一本刀で戦った方が良かったかお?」
川 ゜-゚)「構わん。お前の剣術型はシャイ=チョーだろう。
スズキはソーレスを習得中だ。変に刺激を与えると癖が出てしまう」
( ^ω^)「ソーレス? スズキはまだ八卦の殺陣(ハッケノタテ)を修練していないお?」
爪;-〜-)「…………」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:06:07.66 ID:2CyjiEApO
痛い所を突かれたのだろう。
スズキはブーンの問いに所在無さ気な表情で小さく頷いた。
てっきり、クーが持つオリジナルの戦闘フォームを教わっているとばかりに思っていたブーンは、
落ち込む弟子に鞭を振るう師に問い掛けてみる。
( ^ω^)「スズキはクーを師事してどれくらい立つお?」
川 ゚ -゚)「もう八年近くになるな」
( ^ω^)「立派なもんじゃないかお。ちょっとぐらい教えてやってもこの子は困らないんじゃないかお?」
川 ゚ -゚)「馬鹿言うな。八卦の殺陣はソーレスを完璧しなければ再生することはできん。
スズキにはまだ早過ぎる」
爪;-〜-)「…………」
( ^ω^)「おっお。マスター・クールは手厳しい先生だお。スズキ、精進しろお」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:07:58.55 ID:2CyjiEApO
川#゚ -゚)「ふん。弟子を持とうとしない貴様に説教される筋合いなどないわ。
私とて、師範に八卦の秘術を伝授して頂くのに十五年かかったのだぞ」
鼻息を荒くするクールにブーンは少し申し訳ない気分になった。
一人前の証とされるナイトの称号を得たジェダイは、
数年のモラトリアムを過ごした後に弟子を取ることが通例とされている。
ジェダイの何たるか、フォースの何たるかは、教科書で教えられるような代物ではない。
万物を流れるフォースに直に触れ、対話し、導かれることでその真理に辿り着くのだ。
クールもブーンも、それぞれの師の元で長い歳月の修業を経た後に、ナイトとしての免許を得ている。
クールは自分の得たジェダイのいろはを少しずつ、しかし決して余分に与えぬよう愛弟子を誘導しているのだ。
そこに、ブーンの介入する余地などある筈もない。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:10:21.67 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「(フォースの真理もジェダイの真価も人によって様々な見解に別れているお。
僕はクーじゃないし、クーの真理は僕の真理ではない。
弟子の教育に他人が口を挟むのはご法度だったのに……すっかり失念していたお)」
川 ゚ -゚)「ところでブーン。随分激しい立ち回りをしていたが、ちゃんと絵は撮れているんだろうな」
( ^ω^)「え?」
ぼんやりと師と弟子の有り様を考えていたブーンに、クールがふいと問い掛けた。
川 ゚ -゚)「さっきのドロイド達とのやり取りだ。コンパクトデバイスでその映像を録画したんだろう?」
(;^ω^)「え?」
川#゚ -゚)「え?」
爪;゚〜゚)「も、もしかして撮影するのをお忘れになられてたでありますか?」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:13:09.46 ID:2CyjiEApO
なんてことだ。
クールの怒声とスズキの悲声に挟まれながら、ブーンは自分の周到の悪さを激しく呪った。
今回の任務はPMCの派遣が決定された時点で完成する。
そして、その決定の印を元老院とカウンシルから出させる為には、バトルドロイド達が存在する証拠を提出しなくてはならない。
つまり、先程のブーンとドロイド達の交戦を万能ツールたるコンパクトデバイスの動画像撮影機能で撮っていれば、
目的の半分以上が達成された事と同義であったのだ。
川#゚ -゚)「こぉんの白豚め。デバイスを持ったまま悠々と出ていくもんだから、
てっきり自分で撮影するのかと思いきや……」
爪*-〜-)「残骸ドロイドの映像ではカウンシルは良くとも、
元老院は難色を示してしまうでありますよ。証拠としては不十分であります」
(;^ω^)「す、すまんお。何せ久しぶりに剣を抜いたもんだから興奮しちゃって」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:15:39.43 ID:2CyjiEApO
過ぎたことは仕方ない。
ブーンは日が暮れて動き易い気温になったら、地下施設を訪ねてみようと二人に提案する。
「棚に上げやがって……」呑気な台詞にクールは口を尖らせる。
しかし、そもそもブーンがこの惑星に派遣された理由が、自分達の失態にある事を思い出した彼女は渋々それを承諾した。
どちらにせよ洞窟から移動する必要はあった。
日没までには、まだ十分な時間がある。
ただ、先のバトルドロイド達が増援を要請している可能性を考えると、この場に留まる事は得策とは言えない。
食欲が満たされた事で精神的な落ち着きを取り戻したクールとスズキは、ブーン先導の元で新たな隠れ家を捜す事となった。
( ^ω^)「大丈夫かお?食べたばかりでまだ栄養が身体に行き渡っていないだろうし、
キツイなら遠慮なく言ってくれお」
縦横無尽に飛び回る探査ドロイドを警戒し、なるべく死角が多い狭道を歩きながらブーンが後続するクール達に問い掛ける。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:17:24.10 ID:2CyjiEApO
川 ゚ -゚)「そんな悠長には構えられん。シールドドロイドがいると言ったろう。
もし、次に襲撃して来た連中に奴がいたら逃げ場のないあの洞窟で応戦するのは危険だ」
爪*゚〜゚)「できる事ならあえて相手の懐近くに潜んで、夕暮れになり次第直ぐさま施設に向かいたいでありますね」
( ^ω^)「だお。下手に施設と距離を取るよりそっちの方が最善かもしれないおね」
見解が一致したブーン達は、結局ドロイド達が保管されているであろう地下施設から
距離にして一キロ弱の場所で発見した洞穴に身を落ち着けることとなる。
例の毒付きヤモリがいないか確認し、そこでやっと、クールは疲弊した身体を大の字にして横たえる事ができた。
万一の時はせめて大切な弟子だけでも生き延びさせようと、常に神経を張り詰めさせていた疲れが押し寄せてきたようだ。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:19:23.19 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「まだ日没までたくさん時間があるお。
見張りは僕に任せてゆっくり休むといいお。マスター・クール」
川 - )「む。その言葉に甘えさせてもらう……」
洞穴の入り口近くの岩に座るブーンの言葉にろくな返事も返さないまま、
クールは夢の狭間へと吸い込まれていった。
やがて聞こえてくる小さな寝息。
天然秘密基地の天井に走る細長い切れ目から、太陽の光が珍しくやって来た客人達を優しく照らしている。
( ^ω^)「スズキは寝なくていいのかお? 僕に遠慮する必要はないお」
爪*゚〜゚)「いえ。マスターの計らいで、自分はそれ程体力を消耗していないのであります」
( ^ω^)「そう言えば僕がここに来た時も体力を押してやって来たのはクールだったお」
爪*゚〜゚)「あれは『未熟者は大人しくしていろ』と言われて無理矢理……」
( ^ω^)「おっおっお。クーの歯に衣着せない物言いは親愛の情の表れだお。
不器用な友人を許してやってくれお」
爪*゚〜゚)「許すだなんて……自分のような能無しに目を掛けて頂いただけでも十分過ぎるでありますよ」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:21:39.30 ID:2CyjiEApO
乾いた砂を頬に付けてはにかむスズキをブーンは笑いながら観察する。
スズキの身体に流れるフォースはとても不安定だ。
まだ二十歳にも満たぬ若きパダワン。
厳しい修業の中で、彼女なりに思う事もたくさんあるに違いない。
自虐的な言動はあまり関心しないが、それも場数と時の流れがきっと払拭してくれるだろう。
( ^ω^)「スズキは確か純正……じゃなかったおね?」
爪*゚〜゚)「はい。自分は五才の頃にタジェステリアでマスターに拾われた孤児であります」
( ^ω^)「と、なると今からもう八年近く前か。
時期的にはクーがジェダイナイトとして一人立ちして、一年くらいになるかお」
爪*゚〜゚)「父と母は当時の紛争で先に逝ってしまい、途方に暮れていた自分にマスター・クールは優しい言葉をかけて下さいました。
『美味しいもの食べさせてやるからこい』と」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:23:45.28 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「え、それは誘拐文句じゃ……」
爪*゚〜゚)「自分は二つ返事でマスターに着いていきました。そして、気付いた時には宇宙に」
( ^ω^)「……スズキに目をつけたのがジェダイで本当に良かったお」
その後に起きた騒動はブーンもよく覚えている。
惑星タジェステリアの内部紛争の観察から帰還したクールが、
到着早々、幼いスズキを引き連れて弟子を取りたいと評議会に申告したのだ。
同期の中では一番速くナイトの資格を得たクールだったが、
案の定、師弟の関係を持つにはまだ早過ぎると周囲から反対されてしまう。
ジェダイナイトのモラトリアムは往々にして二、三年が妥当だと言われているからだ。
( ^ω^)「『この子は私が育てる! 私とこの子との出会いはフォースの導きだ!』
なんて言って、カウンシルを随分困らせていたお」
爪*-〜-)「当時の自分は何がなんだか分からなくて……
でも、マスターは周りの反対を押し切って稽古を付けてくれたのであります」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:26:08.21 ID:2CyjiEApO
嗚呼、良かった。
誇らしげに自分の師を語るスズキを見て、ブーンは安堵し、また核心した。
スズキはクールの無償にして無限の愛をしっかりと受け止めている。
クールの性質をよく知らない者は、彼女を無愛想で冷血な人間だと思い込むことが多い。
対人コミュニケーションを正面から叩き切るような女性なので、
ブーンはクール本人から弟子を取る話を聞かされた時に、果たして彼女の傍らに立つ幼い少女が、
師の一挙一動の上辺だけを認識してしまうのではないかと危惧していたのだ。
( ^ω^)「(でもその心配はないみたいだお。やっぱり、ふたりの関係に僕が口を出す必要なんてこれっぽっちもないお)」
爪*゚〜゚)「マスター・ホライゾンは弟子を取られないでありますか?」
やんわりとした視線を向けてくるブーンに対してスズキが話題を切り替えた。
あまり身内話ばかりしては相手が退屈するだろうと鑑みた彼女のこの気転は、ブーンを内心で少し困らせる。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:27:32.78 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「僕は……スズキは僕のようなジェダイを異端だと思うかお?
一人だちして、もう10年近くが立とうとするジェダイナイトが、弟子も取らずにモラトリアムを謳歌する行為を」
爪*゚〜゚)「……パダワンの身である自分がマスターの行動に文句を付けること等できないであります」
( ^ω^)「若きパダワン、スズキ=タムラ。遠慮をする必要はないお。思う事を聞かせて欲しいお」
爪;゚〜゚)「…………」
どうしよう。
問い掛けたつもりが、逆に問われる側になってしまったスズキは返答に窮した。
確かにブーンはジェダイの中では異なる存在だ。
普通、厳しい試練を突破し、晴れてナイトとなったジェダイ達は、己が体得した技術を後世に伝えようと進んで弟子を取るものである。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:29:15.82 ID:2CyjiEApO
ナイトが弟子を持たなくてはならないという掟は存在しない。
が、同期の者達が次々とパダワンを従える中で、一人淡々と任務を熟すブーンの姿勢をスズキは理解することができなかった。
遠慮をするなと言われても、クールのように辛辣な台詞をぶつけるわけにもいかない。
だが、偽りの言葉を用いればブーンは直ぐにそれを見抜いてしまうだろう。
爪*゚〜゚)「不思議だとは思います。立派な技をたくさん体得してらっしゃるのに、
それを後世に伝えようとしないマスター・ホライゾンの考えを自分は理解できないであります」
( ^ω^)「ああ、まったくもってその通りだお」
爪*゚〜゚)「…………」
微笑む男はスズキの正直な発言に頷いた後、
外から吹き付ける渇いた風に身を委ねたまま黙り込んでしまった。
何とも言えない穏やかな沈黙が続く。
スズキは今のやり取りを経て、このナイトウ=ホライゾンという人間が益々分からなくなってきた。
表立った主義も主張もしない、人懐っこい笑顔だけが印象に残る人物。
先の問答のように何か意味深な詰問をした後、それに対して明確な答えを与えないまま彼はふらりと去っていく。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:33:16.14 ID:2CyjiEApO
物心つかぬ赤子の頃から所謂正統派ジェダイとして育てられたブーン。
彼の師はこの男に一体何を教えたのだろう。
川 ゚ -゚)「五月蝿い」
光線に照らされた粒子をスズキがぼんやり見つめていると、師であるクールがもぞもぞと動いて起き上がった。
( ^ω^)「あ、起こしちゃったかお?」
川 ゚ -゚)「いや。そうじゃない。さっきから地面が五月蝿いんだ」
横になってまだ半時間しかたっていない。
半開きの眼を擦りながらクールは自分の足元を指した。
訝しげな表情をしながらブーンが大地に耳を押し付けてみる。
冷んやりとした感触が聴覚を擽り、深い々い場所にある音源が鼓膜を通じて然るべき器官へと伝えられていく。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:35:50.30 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「水だお。これは水が流れる音だお」
川 ゚ -゚)「ああ。それもかなり浅い場所だ。もしかしたら、この奥に地下水脈が通っているのかもしれん」
そう言ったクールが指差す方向には光も届かない洞穴の延長線がずっと続いている。
細長く、一人がやっと通れるような狭さだ。
ブーンから光源を借りたスズキがその奥へと踏み込み、ある程度の場所で様子を探ってみる。
すると、確かに先程までは聞こえなかった水流の心地良い音が聞こえてきた。
爪*゚〜゚)「やはり地下水路があるみたいです。行ってみるでありますか?」
川 ゚ -゚)「そうしたいな。もう何日も着の身着のままだ。水浴びをして身体を浄めるとしよう」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:37:03.96 ID:2CyjiEApO
ついでに飲み水も確保しておきたいということで、三人は緩やかな坂道となった通路を慎重に下って行くこととなる。
位置的には完全な地下。
天上界の有無を言わせぬ熱波が嘘かのように、冷却された酸素がジェダイ達の肺を満たしていく。
特に入り組んだ構造になっているわけでもないようだ。
単調な歩みを続けていると、途端、先行するブーンの目に別世界が飛び込んできた。
( ^ω^)「おお、めちゃ広いお」
爪*゚〜゚)「立派な泉であります。地下水路の中継地点でありましょうか?」
川 ゚ -゚)「これは有り難い。スズキ、お前も服を脱げ。行水すっぞ」
専用の照明機具がない為、その全貌を掴む事はできないが、水の侵食によって作り出されたそれは小さな宮殿そのものだ。
ちゃぷちゃぷと滑らかな砂地に水波を寄せる様は、淡水のビーチと呼んでも差し支えないだろう。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:38:52.19 ID:2CyjiEApO
水没惑星『オニオンナ』出身のクールにとって、何か思い起こすものがあるのだろうか。
珍しく顔を綻ばせながら旅靴を脱ぎ捨てた彼女は、いの一番にその冷えた液体に疲れた足を浸し始めた。
川 ゚ -゚)「冷たい。まるで氷に突っ込んでいるみたいだ」
(;^ω^)「ぅおい! 何いきなり脱いでんだお。せめて僕がいなくなってから脱衣を始めろお」
川*゚ -゚)「ああ、ブーン。君には私達の失態で随分と迷惑をかけてしまったな。
罪滅ぼしと言ってはなんだが……一緒に浴びないか? 背中ぐらいは流すぞ。スズキがな」
爪*//〜/)「!?」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:44:12.06 ID:2CyjiEApO
いつの間にやら外衣と内衣を脱いだクール=レヴァンティエ 。
妖しい目線で女性ジェダイ御用達の下着をこれみよがしにブーンへ見せ付けてくる。
通気性と保湿性に優れたインナーだ。
デザイン自体は味気無くたいした色気を醸し出す物でもないが、ゴムとメッシュを混合させたような布質であるが故に肌との密着性がかなり高い。
つまり”着るべき人間”が着用すると、健全なる男性諸氏に対して相当な有効性を持つ視覚誘導兵器となるのだ。
フードを纏っている時には御目通りが敵わなかった豊かな胸が、ブーンの目の前でがっちりと強調されている。
かつて、ジョルジュ=ランダビートなる人物が命懸けでクールの胸囲をレーザー測定したことがある。
その後、彼は一週間行方知れずになるわけだが、ブーンの記憶が正しければ失踪する直前に、彼は間違いなく「Dだた」と言っていた筈だ。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:45:44.95 ID:2CyjiEApO
(*^ω^)「……では、お言葉に甘えて」
川 ゚ -゚)「フィーシュ。嘘に決まってるだろう。このエセ永久賢者め。激しく反省した後、逆立ちしつつ崖から飛び降りろ。ファック」
( ^ω^)「…………」
爪;゚〜゚)「そんな哀愁漂う目を自分に向けられても困るでありますよ……」
※※ ※※ ※※
川 ゚ -゚)「良い気分転換になった。あの刺すような冷たさが身体を刺激して気持ち良いんだよ」
爪*゚〜゚)「自分には冷た過ぎるでありますよ。あんな低温の水に全身を浸かれるのはマスターぐらいであります」
( ^ω^)「お二方。ちょっと良いかお?」
結局、乙女達のあられもない姿を拝む事ができなかったブーン。
クールとスズキの水浴びが終えた後に一人寂しく冷水で身体を浄めていたのだが、その際に奇妙な物を発見していた。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:47:38.07 ID:2CyjiEApO
川 ゚ -゚)「通路?」
( ^ω^)「だお。岩の死角になってて分かりにくいけど、人工的に掘られた地下通路があったお」
爪*゚〜゚)「人工的に? ということは、何処かに繋がっているのでありましょうか」
( ^ω^)「可能性は高いお。それに気になる事もあるし……」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
クールの問いに「まあ、まだ確証はないから」といなしたブーンは、まだ湿っている髪を乾かすべく再び洞穴の入口に座り込む。
再び睡魔が振り返してきた為、クールもそれ以上の言及らせず、再び瞼を閉じて夢の世界へ落ちて行った。
遠い地平線の先にある太陽が紅くなり始めた頃。
三人のジェダイは再び地下の泉へと来ていた。
無論、行水が目当てというわけではない。
ブーンの目の前には、縦長にくり抜かれた謎の通路が暗い闇へと続いている。
( ^ω^)「レディファースト。お先にどうぞ」
川 ゚ -゚)「丁重にお断りする」
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:49:10.20 ID:2CyjiEApO
湿気が多分にある地下水路のせいで、ブーンが見つけた秘密通路の壁はヌルヌルとした気味の悪い質感を称えていた。
この先に何があるかは分からない。
行き止まりか、はたまた何かしらのサプライズがあるのか。
( ^ω^)「(でも、僕の予想が正しければこの通路は……)」
ランタンを持たされたブーンは、背中を蹴られながらひたすら続く直線を慎重に進む。
”くり抜かれた”と前述したように、この秘密通路はどう見ても人工的に掘削した痕跡が見受けられた。
近代的な機械で掘り進められたことは確かである。
つまり、この通路は何かしらの意図を持って作られた筈なのだ。
爪*゚〜゚)「随分長いでありますね。もう地下水路とも随分離れたようであります」
( ^ω^)「おっおっお。ジメジメした感じも無くなってきたお」
川 ゚ -゚)「ブーン。本当にこの通路を調べる事に意味はあるのか?」
( ^ω^)「まあまあ。僕のカンを信じてくれお」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:54:10.82 ID:2CyjiEApO
※一度地の文の形式を変えてみます
ニヤけるジェダイは、今自分が置かれている状況と似たり寄ったりの体験をしたことがあった。
地下に隠された施設。
同じく地中深くに張り巡らされた地下水路。
そして謎の隠し通路。
ブーンの経験と直感が正しければ、もうじき見えてくる筈だ。
( ^ω^)「ビンゴ」
川 ゚ -゚)「む。壁に何か付いてるぞ」
爪*゚〜゚)「照明機具であります。機能はしていないようですね」
ブーンが光に翳した壁には、剥き出しになった電球が等間隔でいくつも設置されていた。
黒いコードに繋がれたそれらはブーン達の進行方向へ延々と続き、何処かの工事現場のような光景を作り出している。
川 ゚ -゚)「さて、いい加減話してもらおうか。この地下通路はいったい何なんだ」
( ^ω^)「レジスタンス達の緊急脱出路だお」
壁の電球の具合を確かめながらブーンは言った。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:55:50.16 ID:2CyjiEApO
爪*゚〜゚)「脱出路……でも何の為に?」
( ^ω^)「往々にして、権力に反抗するレジスタンスは劣勢に立つものだお。
彼等が基地を構える時には真っ先に脱出経路の確認するお。これ鉄板事項ね」
爪*゚〜゚)「つまり、いつ撤退できても良いように?」
( ^ω^)「だお。得に有能な指揮官や幹部を失うことは、寡兵のレジスタンスにとっては相当な痛手。そんな時の為に、ってところかお」
そう言いながら、ブーンはコンパクトデバイスの立体地図を取り出してクーとスズキに見せてみる。
地図にはブーン達が秘密通路を辿ってきた痕跡がマークされていた。
小さな蛇行をしながら引かれた赤いラインが進む方向には――――
川 ゚ -゚)「成る程ね。私達が見つけたドロイド基地か」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:57:02.68 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「御明答。たぶん、この通路は例の地下基地に繋がっている筈だお」
もしそうだとすれば大健闘である。
まだ不覚定要素が多分に残っているので両手を高く上げることはできないが、
上手く事を運べれば、敵に知られることなく基地内部へ潜入できるかもしれない。
できることなら戦闘も避けたい。
船との連絡手段が枯渇している今、ブーンは何とか基地内の通信施設を利用できないかと思案していたのだ。
( ^ω^)「おお。僕って凄くね? 一組のジェダイが数日かけても辿り着けなかった場所へ半日で到達したお」
川#゚ -゚)「ふん。まだ中に入ってみないと分からんだろう」
眼前に立つのは錆び付いた金属製の扉。
背後から飛んでくる悪態を受け流しつつ、ブーンはそっとドアノブを回転させる。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 21:58:25.43 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「開かない。鍵が掛かってるお」
川 ゚ -゚)「なら開ければ良い」
頑丈で古典的な形式の扉。
型からして錠前は単純な構造のようだった。
しかし、専門道具でなければ開ける事は難しいだろう。
川 ゚ -゚)「ふん」
よろしく、と呟くブーンを横目にクールが右手を扉に向かって突き出した。
掌を柔らかく広げ、何かに触れようと彼女は意識を集中させる。
ガチャリ
直後。扉から何かが回転するような音が聞こえた。
クーは既に伸ばした手をローブの奥へと引っ込めている。
一部始終を見守っていたブーンが再びノブに手をかけると、果たして錆び付いた音と共に金属板が動いた。
鍵が外れたのだ。
( ^ω^)「ご苦労様だお」
川 ゚ -゚)「むしろ、こういうのはスズキの方が得意なんだがな」
爪*゚〜゚)「マスターが面倒だからといつも私に押し付けるからでありますよ。
お陰で民間レベルの電子錠なら余裕シャクシャクであります」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:02:05.41 ID:2CyjiEApO
重い扉を開けた先には真っ暗な世界が広がっていた。
埃っぽい空気が鼻腔を突く。
何かの倉庫のようだが、人の手がまるで行き届いていない。
完全に放置された状態だ。
( ^ω^)「流石のドロイドもここまで目を光らせてはいないかお」
川 ゚ -゚)「一部しか見てないが内部構造はそれほど複雑ではない。どうする?」
( ^ω^)「船と連絡を取りたいお。秘密通路があるぐらいだから通信設備ぐらいある筈だお」
先ずは連絡ありき。
今度はクールを先頭に、三人は視界の効かない部屋を抜け出し、最低限の明かりだけが点いた廊下へと出た。
ドロイドの姿はない。
金属壁と土の壁が雑多に組み合わされた基地だ。
いかにもレジスタンスが好みそうな仕様である。
先のクールの言う通り、内部構造はそれほど複雑にはできていないようだった。
懐の武器を取り出し、不意の遭遇に用心する。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:05:55.03 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「おお」
開いた先は大きな格納庫。
相変わらずの薄暗さだが、手に持つ光源だけでも整然と並べられたバトルドロイドが何十体と目に入った。
目測、百体強といったところか。
体育座りにも似た形で折り畳まれたドロイドは、ブーンが倒した型と一致している。
この地下基地がレジスタンスの遺産の隠し場所であることに間違いはないようだ。
川 ゚ -゚)「撮ったか?」
( ^ω^)「勿論。後は通信室を見つけてチェックメイトだお」
爪*゚〜゚)「急ぎましょう。あまりモタモタしていると……!」
一同が格納庫から離れようとした時、突如として基地内に警報が鳴り響いた。
耳に障るけたたましい音に、三人のジェダイは一斉にライトセイバーを展開する。
理由は分からないが、どうやら見つかってしまったようだ。
せわしない音が遠くから聞こえてくる。
( ^ω^)「これはマズイ。駆け足で行くお」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:08:15.96 ID:2CyjiEApO
通信室はすぐに見つかった。
この部屋も長年放置されてきたせいで、そこら中が埃まみれになっているが、機械自体は何とか機能しそうだった。
クールとスズキに警戒を任せたブーンは、コンソールのスイッチを入れて電源を立ち上げようとする。
(;^ω^)「げ。パワーが入らないお」
ところが、レバーを引けども倒せども画面に光が戻る気配が一向にない。
考えられる理由は一つ。
電力を供給する大元の電源が死んでいるのだ。
当然と言えば当然かもしれない。
何せこの施設が人間の手を離れて数年が経過しているのだ。
使いもしない電気機器にエネルギーを供給する必要性など皆無だろう。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:09:46.48 ID:2CyjiEApO
川 ゚ -゚)「しかたない。私が発電施設のパワーを立ち上げてくる。スズキはブーンのサポートだ」
( ^ω^)「クー。大丈夫かお?」
川 ゚ -゚)「ナイトに言う台詞では無いな。初めて潜入した時にそれらしき場所を見かけた。三分ほど持ちこたえてくれ」
( ^ω^)「了解」
川 ゚ -゚)「ああ……それと」
五月蝿い警報が未だに反響する中で、駆け出し間際のクールがスズキに振り向いた。
川 ゚ -゚)「スズキ、シールド型が来るかもしれん。万一の時はエージェント機能を使え」
スズキの顔が輝く。
彼女の手にある剣が強く握り締められた。
( ^ω^)「さて、若きパダワン。君の成長ぶりもしかと見せてもらうお」
爪*゚〜゚)「共闘はこれで二度目でありますね。前回のようなヘマはしないであります」
( ^ω^)「それは心強い」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:14:02.77 ID:2CyjiEApO
クールを見送った後、間髪入れずにバトルドロイドが死角から顔を出した。
通信機器を壊されては堪らない。
廊下に踊り出たブーンとスズキは、互いに背中を任せ合う形で敵を迎え撃つ。
『キサマラヲ タイホスル!』
爪*゚〜゚)「だが、断る。であります!」
スズキの打ち出すライトセイバーは淡青色だ。
細い腕に構えられたライトブルーの一本刀が赤い閃光を弾き返す。
狭い空間ではダブルライトセイバーを振るう事ができないブーンも、本体片側の機能だけを作動させてスズキと同じ一本刀で敵陣に対抗する。
(#^ω^)「疾ッ!」
途中、幾重にも襲い掛かるビーム群の不毛さをブーンは感じる。
左手を剣の柄から離し、広げた掌をドロイド達に突き出した。
『!?』
すると、掌の先にいたドロイド数体が前触れもなく吹き飛んだ。
宙を二転三転した機械達は、そのまま床に転げ落ちると立ち上がることなく沈黙してしまう。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:19:31.21 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「ふふん」
一見して何かの超能力のようにも見えるこの現象は、勿論ブーンが意図的に起こしたものだった。
ライトセイバーがジェダイの外的な要素ならば、フォースはジェダイの内的な要素である。
フォースは決して概念やマヤカシのような存在ではない。
ジェダイに限らず、あらゆる生物・物質はフォースの影響を受けながら存在している。
フォース操作に心得があるジェダイは、時として自らの意思でそれらを利用する時があるのだ。
爪*゚〜゚)「くっ! 次から次へと……これでも喰らえであります!」
今度は、スズキが先程のブーンのように片手を突き出した。
自らの内に流れるフォースを指先に集中させつつ、彼女はバトルドロイドの配線回路を脳裏に強くイメージする。
腕が熱くなり、スズキから明確な破壊の意思を受けたフォースが爆ぜた。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:25:31.85 ID:2CyjiEApO
『ウッ!?』
またもや吹き飛ばされるドロイド達。
端から見れば、ドロイドは不可視の衝撃波で倒されただけのように見えるだろう。目立つ外傷も無い。
が、ドロイドのダメージは外部ではなく内部にしっかりと与えられているのだ。
これこそ、戦闘時におけるジェダイの十八番『フォース・ショック』である。
スズキは自らの内に内在するフォースを操作し、自立機械の生命線とも言えるAIを焼き切ったのだ。
見た目の派手さこそ無いが、対ドロイド戦では高い効力を発揮する、使い勝手の良い技である。
クールが地下通路の鍵を外した行為もフォースショックの応用したものであった。
爪*゚〜゚)「(まあ、対象が複雑な内容の場合は干渉が困難になるのが珠に傷でありますね)
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:30:49.30 ID:2CyjiEApO
フォースの使い道は千差万別。
物体操作・未来予知・筋力増加。果ては人心の操作すらも可能な摩訶不思議な力。
常に動き続けるフォースの流れを意識し感じ取ることによって、ジェダイはあらゆる奇跡を起こすことができる。
使い方を誤れば自身を傷付けかねないライトセイバーも、フォースの導きがあるからこそ、その能力を遺憾無く行使できると言っても過言では無い。
( ^ω^)そ「む!」
きっちり三分。
何か大きな物が稼動する音と共に暗い廊下が明るくなった。
見れば、天井の照明機器が作動しているではないか。
クールが発電機を起動させたのだ。
( ^ω^)「スズキ。ここを頼むお」
爪*゚〜゚)「イエス、マスター! 死守に徹するであります」
それを見るや否や、ブーンは再び通信室へと駆け戻る。
コンパクトデバイスを起動させ、復活した通信コンソールにそれを接続する。
数年の眠りから甦った機械は、時が来たと言わんばかりに世話しなく稼動していく。
やがて、聞き慣れた相棒の声がブーンの耳に届いた。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:32:32.62 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「ビコーズ、聞こえるかお? これから送るデータを大至急評議会に送信して欲しいお」
通信先のアストロメクドロイドにそう告げたブーンは、直ぐさま戦線に復帰すべくコンソールに背を向ける。
これで任務の大半は達成された。
PMC派遣の承認自体は、ものの数分で認可されるだろう。
主要惑星に常駐するPMCが動いたとして、ブーン達のいる星に辿り着くまでには早くとも十分は掛かる。
それまでの間、ドロイド達からの猛攻を三人だけで防がなくてはならない。
( ^ω^)「う!」
前触れもなく、開け放した扉から強烈な光と何かが爆発する音が聞こえた。
スズキに何かあったのでは。
慌てたブーンはライトセイバーを起動しつつ廊下へ飛び出す。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:36:38.38 ID:2CyjiEApO
焦げた臭いがブーンを包む。
肝心のスズキはどうやら無事らしい。しっかりと剣を握って戦っている。
彼女の周辺には先程までは見受けられなかった何体かのドロイドが、身体を真っ二つにされて転がっていた。
( ^ω^)「おっおっお。さっきの光はやっぱり君のだったかお」
爪;*゚〜゚)「まさかこんな狭い場所で突撃してくるとは……でも、厄介な奴を一体片付けれたであります」
スズキの足元に今までのバトルドロイドとは姿形がまるで違う兵器の残骸がある。
ボーリングの球から脚を三本生やしたようなシルエットだ。
恐らくは、例のシールド型ドロイドだろう。
真横一文字に叩き切られたその様を見て、ブーンは改めてスズキの持つ秘剣の威力に驚かされた。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:39:00.02 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「(流石はスーパーエージェントセイバー。偏向シールドすら突破する程の火力は相変わらず健在かお)」
川 ゚ -゚)「ここで颯爽と美少女ジェダイが参上。随分と派手にやってるな」
( ^ω^)「年増のオバサンが何を言うかお」
黒髪を揺らすジェダイが帰って来た。
同期の嫌みを兼ねた突っ込みに彼女は眉をひそめる。
川#゚ -゚)「お前達の寿命で私の若さを計るなバカモン。それより連絡はできたのか」
( ^ω^)「もちろん」
川 ゚ -゚)「ではとっとと地上へ脱出しよう。私達の姿があった方がPMCも見つけ易いだろうしな。それとスズキ。パワーセルの再チャージをしておけ。
エージェント機能を使ったな? その様子ではまたオーバーヒートさせただろう」
爪;*゚〜゚)「うぐ……」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:46:22.42 ID:2CyjiEApO
何やら黒い煙を出し始めたスズキのライトセイバーを一瞥し、クールは再び先頭に立って果敢にドロイド達を切り伏せていく。
彼女の剣はスズキのそれよりも深い色をした青光刃だ。
迫る殺意の弾丸を、寸分の狂いもなく相手に打ち返すその技にブーンは関心の声を上げる。
( ^ω^)「いやあ。やっぱりソーレスの体得者がいると楽チンだお」
川 ゚ -゚)「防御術を徹底した戦闘フォームだからな。攻撃力はシャイ=チョーより劣るが勝手は良いぞ」
生誕から二万年以上もの歴史を誇るジェダイは、あらゆる武術・剣術と通じるうちにライトセイバー専用の戦闘型(フォーム)を編み出していた。
無数に生まれ続けたそれらは実戦を重ねる毎に融合と強化を繰り返し、最終的には七つの型へと体系化されている。
現代ジェダイ達は、それら七種類の型から自分に合ったものを修練しているのだ。
詳しい記述は後の物語に譲るとして、兎にも角にもクールの繰り出す守りの戦闘型『ソーレス』は、その威力を存分に奮いながらブーン達の血路を開くのであった。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:49:22.69 ID:2CyjiEApO
『ソコマデダ! キサマラハ カンゼンニ ホウイサレテイル!』
( ^ω^)「うげ」
爪;*゚〜゚)「囲まれた……罠だったでありますか!?」
難無く地上の出入口へと到着した三人。
時刻は既に夕方。
渇いた外界へと踊り出たブーン達に待ち受けていたものは、複数のシールド型ドロイドだった。
襲撃者達が脱出するのを見越して待ち伏せしていたのだろう。
円を為すようにして完全に囲まれてしまっている。
( ^ω^)「(クー。君の剣で何とかならないかお?)」
川 ゚ -゚)「(無茶を言うな。ニ、三体ならまだゴリ押しで倒せるが、この数となると……)」
面倒な事態に陥った、とブーンは舌打ちをする。
シールド型ドロイドの武装はニ門一組の固定型ブラスターだ。
攻撃そのものはたいした驚異ではないが、逆にこちらが跳ね返した攻撃も無力化してしまう事がネックである。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:51:05.28 ID:2CyjiEApO
いたちごっこを続けるうちに少しずつ包囲を狭められてしまえば、いくらジェダイでも抗いようがない。
( ^ω^)「(もう一度基地に戻るかお? でもあんな狭い所で追撃されたらキツイお……)」
威嚇をしながら少しずつ迫ってくるシールドドロイド。
勿論、投降する気などブーン達にある筈もなく、それぞれが背中合わせに剣を握っている。
と、その時だった。
『ナ、ナンダ!?』
彼方から飛来した真っ赤な閃光。
どう見ても携行型ブラスターとは思えないその極太の火線は、ドロイドの展開する偏向壁を易々と撃ち砕き、炸裂した。
続いて次弾、次々弾と現れたビームが慌てふためくドロイドを次々とスクラップにしていく。
事の次第を察知したブーン達は、ビームの巻き添えを喰らわないよう別々の方向へ一斉に離脱する。
そう、これは味方からの援護射撃なのだ。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:54:29.60 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「思っていたより早かったお」
為す術なく破壊されていく兵器達。
冷たくなり始めた土に伏せながらブーンは嬉しそうに呟く。
やがて、地平線から三つの影がやって来た。
重低音を唸らせながら大峡谷上空を飛ぶその正体は、反重力制御が施された強襲兼人員輸送用のガンシップだ。
短く突き出した尾翼にはナイフを加えた狼のロゴマーク。
民間軍事企業オオカミ・コーポレーションの誇る重力下航空部隊である。
共和国から任務を委託されたPMCがついに到着したのだ。
(狼 [〓])「マスタージェダイ。お怪我はございませんか」
シールドドロイドを一掃し、地表でホバリングをするガンシップから戦闘員が降り立つと、直ぐさまブーンの元へ駆け寄ってきた。
全員が甲冑にも似た真っ白な装甲を纏っている。
オオカミ社の主戦力であるクローン兵だ。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 22:57:20.27 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「僕は大丈夫だお。それよりも先程はありがとう。随分と腕の良い狙撃手を抱えているお?」
(狼 [〓])「なんなら、今度は三キロ先の林檎を撃ち落としてみせましょう」
( ^ω^)「そいつは頼もしい。地下基地はたいして入り組んだ構造はしていないから、例のドロイド軍はすぐに見つかる筈だお」
(狼 [〓])「情報に感謝しますマスタージェダイ。後は我々にお任せ下さい」
クローンコマンダーらしき兵はブーンに敬礼すると、突入命令を待つ小隊の元へと走り去った。
川 ゚ -゚)ノ「よっ。お疲れ」
簡素な構造のガンシップにブーンが足をかけると、そこには既にクールが乗り込んでいた。
平和維持活動をするジェダイはPMCに対する監察責任を負っている。
本来ならば、今回の任務を担当しているクールとスズキが基地突入部隊に随伴すべきなのだが、
そこは面倒臭がりなクールらしく、自分の弟子にそれら全てを押し付けてしまったようだ。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 23:00:24.05 ID:2CyjiEApO
( ^ω^)「よくあの子がグレないと思うお」
川 ゚ー゚)「ふっ。何事も勉強よ」
突入部隊の第ニ波が基地へと入って行く。
中にいたドロイドはブーン達が殆ど片付けてしまっているので、制圧も長くはかからないだろう。
いつの間にか夕日は沈み、夜の帳が下りていた。
空を見上げてみれば、どうやら今夜は満月らしい。
赤い月を見つめながら、ふと今回の一件のせいでろくに身体を休めていない事にブーンは気付く。
VIPに帰ったら何がなんでも休暇を取ってやる、と鼻息を荒くするジェダイなのであった。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 23:02:12.22 ID:2CyjiEApO
〜Reloading〜
(;゚ω゚)「ほぉおおおおお……」
惑星VIPに設置されたジェダイ聖堂。
その中に設けられた一室。
真っ白なベッドの上で、ジェダイナイト・ナイトウ=ホライゾンは悶絶していた。
( 〇ゝ〇)「マスター・ホライゾン。お加減は如何です?」
(;゚ω゚)「超……最低……」
( 〇ゝ〇)「でしょうね」
ニ日前。
無事、施設の制圧を完了したPMCは一部の小隊だけを残し、ブーン達を母船に連れて行く為に大峡谷を後にすることとなった。
悲劇はその時に起きた。
ガンシップに紛れ込んでいた例の原生生物が、隙だらけのブーンに全力で噛み付いたのである。
勿論、クール達を苦しめた悲劇は等しくブーンにも襲い掛かかってきた。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 23:03:26.75 ID:2CyjiEApO
(;'゚ω"゚)「せ、先生……薬とかは無いのかお?」
( 〇ゝ〇)「無理ですね。この手のタイプは納まるまで我慢するしかありません」
(;'゚ω"゚)「そんな殺生な……」
( 〇ゝ〇)「まあまあ。とりあえず脱水症状を防ぐ為に点滴打ちますんで。腕を出して下さい」
(;'゚ω"゚)「おごごごごごごご。クーの奴、命の恩人に対して見舞いの一つも来ないとは何事かお」
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2009/02/28(土) 23:07:04.89 ID:2CyjiEApO
( 〇ゝ〇)「ああもう。変にお腹に力を入れるからですよ。トイレは部屋を出た右手にあります」
==┌(;'゚ω"゚)┘「チクショー!!」
Episode1:ジェダイ新生 完
EpisodeU SHOT-Tへ
HOMEに戻る
ニュー速VIPのブーン系小説まとめ
Copyright © 2008 Boon Novel. All Rights Reserved.