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問合せ
ミセ*゚ー゚)リ ミセリが深夜に出会うようです
1 :
1
:2006/12/19(火) 20:15:07.96 ID:7t1ZrQXL0
「だから・・・それはあなたのせいでしょ!!」
「何を言ってる・・・ったのは・・・じゃないか!!」
ほら、始まった。
深夜0時、決まって下の階では両親が互いに不満をぶつけ合う。
いつもの騒音が、下の階から私の部屋まで聞こえてくる。
ミセ*゚ー゚)リ「うる・・・さい」
布団を頭から被り、必死に騒音から逃れようとする。
恐い、うるさい、ウザイ、イヤだ・・・逃げたい。
必死で頭に浮かぶ負の感情を無にする。
私は、無感になりたかった。
――ミセ*゚ー゚)リ ミセリが深夜に出会うようです
4 :
1
:2006/12/19(火) 20:17:31.93 ID:7t1ZrQXL0
※
「おはよー、ねぇ昨日フマフマ見た?」
「うん、見た見た! やっぱタクマ最高だよね〜」
騒がしい、いつもの朝の教室。
窓から見える風景だけが、私を癒してくれる。
今日も空は青く、変わった形の雲が流れていく。
ミセ*゚ー゚)リ (あの雲は、どこから来てどこへいくのだろう?)
ふと、そんなことを思う。
頬杖をつき、ぼんやりと空の世界を眺め続ける。
5 :
1
:2006/12/19(火) 20:21:46.06 ID:7t1ZrQXL0
( ・∀・)「おら、ホームルームはじめっぞー。席につけー」
先生が教室に入ってくると、散らばっていた生徒はがやがやと自分の席に戻る。
見飽きた光景、機械的に流れる日常。
ミセ*゚ー゚)リ「退屈・・・」
そう呟いたところで、何か変わるわけではない。
私はため息をつき、再び窓の外へ視線を向ける。
6 :
1
:2006/12/19(火) 20:24:28.39 ID:7t1ZrQXL0
ふと、空を飛びまわる鳥達を見て思う。
私に翼があったら、この物足りない日常が少しは変わるのだろうか?
空は自由だ。何にも制限されることのない自由な世界。
・・・いや、それゆえに、そこで生きることは困難なのかもしれない。
ミセ*゚ー゚)リ(よくわかんない、な。寝よう)
机に突っ伏すると、視界を暗闇が包む。
耳から聞こえてくる退屈な授業も、やがて聴こえなくなる。
ミセ*゚ー゚)リ(・・・この退屈から、逃れたいんだ)
私の意識は深い闇へと落ちていく。
・・・・・・
・・・
8 :
1
:2006/12/19(火) 20:27:10.57 ID:7t1ZrQXL0
※
ミセ*゚ー゚)リ「・・・ただいま」
家の中へ入り、靴を脱ぐ。
挨拶が返ってくることは無い。
この時間は、二人とも働きに出ているのだ。
・・・それでも、挨拶してしまうのは習慣、というものだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅ」
鞄を玄関に放り投げ、リビングへ向かう。
テーブルの上には、いつものようにレトルト食品が置いてあった。
9 :
1
:2006/12/19(火) 20:31:53.80 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ(今日はグラタン、か)
私は夕食を確認すると、自分の部屋に戻り、電気をつける。
静粛な部屋。まるで、誰も住んでいないかのような、無音。
私はタンスから着替えを出し、制服を脱ぐ。
決まりきった行動。パターン化、というやつだろうか。
ミセ*゚ー゚)リ(もしかして、私は機械で出来ているのかもしれない)
そんな考えが頭をよぎる。
現実味の無い考え。けれど、そう言われると妙に納得してしまう。
無意義な想像をめぐらせ、私はベットに寝転んだ。
・・・・・・
・・・
10 :
1
:2006/12/19(火) 20:37:47.21 ID:7t1ZrQXL0
※
「・・・だと言っているだろ!」
「ふざけないでよ! ・・・!」
騒音。また騒音だ。
二つの罵声が私を苦しめる。
ミセ*゚ー゚)リ「やめ・・・て」
何も聴こえない。聴こえない聴こえない・・・!!
耳を両手で塞ぐ。
ギリギリと、嫌な音がする。
・・・私の歯を食いしばってる音だろうか。
15 :
1
:2006/12/19(火) 20:42:10.65 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「イヤだ・・・イヤだ」
私は耳をふさいだまま、玄関から外へ飛び出した。
ミセ*゚ー゚)リ「・・・っつ!」
月の下を、走る――。
どこかへ行く訳でもなく、ただひたすら走った。
ミセ*゚ー゚)リ「はぁ・・・はぁ・・・っ!」
やがて息が切れ、足を止める。
辺りを見回すと、人気の無い土手。
ミセ*゚ー゚)リ「はぁ・・・ふぅ」
私は何をやっているんだろう。
無意識のうちに、家を飛び出してしまうとは・・・。
18 :
1
:2006/12/19(火) 20:46:44.22 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「はは、あはは・・・」
息を切らしながら、自分に呆れ、笑う。
こんなことをして、意味があるわけでもない。
寒いし、風邪をひくだけだ。
「・・・静かにしてくれ」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・え?」
自分の足元から、声が聞こえた。
('A`)「だーっ! またわかんなくなっちゃったじゃん!」
ふと、脇を見ると一人、草むらに屈んでいる男。
・・・今、私に話しかけてきたのはこの人だろうか?
('A`)「ちょいとあんた、四葉のクローバーがどれかわからなくなっちゃったじゃん」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・え?」
男は立ち上がると、私を見てため息をつく。
20 :
1
:2006/12/19(火) 20:56:07.49 ID:7t1ZrQXL0
('A`)「これだから最近の若者は・・・まったく」
ぶつぶつと何か文句をいいながら、再び男は草むらとにらめっこをする。
この人は、何なんだろう?
妙な好奇心が沸いてくる。
ミセ*゚ー゚)リ「あの、こんなとこで・・・何やってるんですか?」
('A`)「ん? 見てわかるだろ。幸運探し」
ミセ*゚ー゚)リ「幸運って・・・四葉のクローバー、ですか?」
('A`)「そうだよ。さっき見つかりそうだったのに・・・ったく」
四葉のクローバー・・・ふと、草むらを見る。
そこには、一つだけ葉の多いクローバーがあった。
22 :
1
:2006/12/19(火) 21:00:18.61 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「これ・・・ですか?」
私はクローバーを摘み、男に見せる。
('A`)「なんだよ・・・ってあぁぁ!!」
ミセ*゚ー゚)リ「え、え、何ですか?」
('A`)「なんで先に見つけちゃうんだよぉ!!」
ミセ*゚ー゚)リ「え、え?」
男はあーあ、とつぶやき肩を落とす。
('A`)「四葉のクローバーは、最初に見つけた人が幸運になるルールなんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「そう、なんですか?」
('A`)「くっそー、横取りされるとは・・・不覚だった」
何だか、すごく悪いことをしてしまったような気がした。
ミセ*゚ー゚)リ「あ、あの・・・これあげましょうか?」
私は四葉のクローバーを差し出す。
24 :
1
:2006/12/19(火) 21:04:58.50 ID:7t1ZrQXL0
だが、男は頭を横に振る。
('A`)「あーダメダメ。それは見つけたあんたのだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「え、でも・・・探してたんじゃ・・・」
('A`)「いや、クローバー自体が欲しいわけじゃないよ」
男はズボンをパン、パンと手で掃う。
('A`)「ま、先に見つけられたんじゃしょうがね。規則は規則だ」
ミセ*゚ー゚)リ「規則・・・ですか?」
('A`)「そう、規則。それじゃあ、願いを聞こうか」
・・・願い?
急に変なことを言い出す人だ。
25 :
1
:2006/12/19(火) 21:08:20.45 ID:7t1ZrQXL0
('A`)「ほら、早く。何でもいいよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あの、意味がわかんないんですけど・・・」
男は、ぽかん・・・と口を開けたまま呆然と私を見る。
そして、「ああ、そっか」と言い、どこに持っていたのか杖と付け髭を取り出す。
('A`)「これでどう?」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・え、いや何が、ですか?」
わからない。この人は何を訴えているんだろう。
付け髭をつけ、杖を片手に持った男が月の光に照らされる。
('A`)「わかんないかなー。魔法使いだよ、魔法使い」
ミセ*゚ー゚)リ「魔法・・・使い?」
26 :
1
:2006/12/19(火) 21:11:29.12 ID:7t1ZrQXL0
男は力強く頷き、杖で地面をトン、と叩く。
・・・私の目の錯覚だろうか?
男はふわふわと宙に浮いている。
('A`)「どうだ? これで信じられるだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「え、な、なんで? 手品!?」
('A`)「ふーむ、まだ信じられないか・・・ほい!」
私が動揺していると、男は私に向かって杖を振る。
ゆっくり、ゆっくりと私の体が重力に反し、宙に浮き始めた。
27 :
1
:2006/12/19(火) 21:14:36.97 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「きゃっ! な、なにこれ!?」
私は手足をバタバタと振り回す。
その動きに応じて、私の体は前のめりになったり、さらに上空へ上ったりする。
('A`)「ふふ、これで信じてもらえたかな?」
男がすーっと上空へ上ってくる。
これはもう、手品じゃない。本物の魔法使いだ・・・。
ミセ*゚ー゚)リ「ほんとだったんだ・・・すごい。魔法使いっていたんだ!」
('A`)「はは、普段は天界にいるからめったに会うことはないけどね」
男は付け髭を触りながら得意そうに微笑む。
私はなんとかバランスを取り、空中で体勢を整えた。
28 :
1
:2006/12/19(火) 21:16:38.34 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「あの、私ミセリっていいます! は、初めまして!」
('A`)「ふむ、私は自然の魔法使い。ドクオ、と天界ではそう言われている」
私は今、すごく興奮してる。
本や映画の世界でしか存在し得なかった魔法使いが、
今、私と名前を名乗りあったんだ・・・。
ミセ*゚ー゚)リ「あの、ドクオさん!」
('A`)「何かな?」
どうしよう、聞きたいことがたくさんある。
色んな質問が頭の中を駆け巡る。
29 :
1
:2006/12/19(火) 21:17:14.24 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「天界って、どんな所なんですか?」
ドクオは、ふむ。と髭を触りながら笑う。
('A`)「なあに、こことたいして変わらんさ。皆、下界をみながらのんびり暮らしている」
ミセ*゚ー゚)リ「すごい・・・そんな世界があるなんて・・・」
本や映画のイメージ通りの世界が本当に存在してたんだ。
ふわふわの雲の道、自由に飛び回る天使達、何一つ不満のない、楽園。
30 :
1
:2006/12/19(火) 21:19:03.58 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「そ、それじゃ、さっき願いを叶えてくれるっていいましたよね?」
私はさっき、ドクオさんが言ったことを思い出す。
('A`)「ああ。・・・と、いっても私の出来る範囲でだがね」
私はなんて幸運なんだろう。
この退屈な世界から離れ、幸せな世界への切符を掴んだのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「私、その天界に行きたいです!」
('A`)「な、なんと! 天界に行きたいと・・・」
言っちゃった。
これであの両親の夫婦喧嘩ともお別れ。
退屈な日々とも、機械的な私ともお別れ。
初めて、生きてて良かったと思う。
31 :
1
:2006/12/19(火) 21:21:04.84 ID:7t1ZrQXL0
('A`)「残念だが・・・それは出来ない」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・え?」
期待が、崩れてゆく。
一体、どうして? と目で訴えると、ドクオさんは私の目をしっかりと見る。
('A`)「すまんな・・・。天界に下界人を呼ぶのは規則で禁止されてるんだ」
ミセ*゚ー゚)リ「規則・・・って、さっきも言ってましたけど・・・」
('A`)「天界にも規則がある。そして、それを破れば厳しい罰が下されるんだ」
厳しい現実が突き刺さる。
天界、というのは完全な自由だと思っていた。
そんな束縛があるなら、ここと変わらないじゃん・・・。
33 :
1
:2006/12/19(火) 21:22:26.38 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「・・・そう、なんですか」
('A`)「すまない。私も万能というわけじゃないんだ」
だったら、だったら願いなんて・・・もう。
ミセ*゚ー゚)リ「もう、いらない・・・っ!」
('A`)「・・・」
ミセ*゚ー゚)リ「願いとか、幸運なんていらない! こんな腐った世界もう嫌なの!」
嫌だ、嫌だ。
ここまで夢を見させておいて、また現実に戻るのは嫌だ!!
ミセ*゚ー゚)リ「こんな世界・・・壊してよ!! もう、壊してよ・・・」
涙が目から落ちる。
私はなんでこの世に生まれてきたんだろう?
どうして、こんなに不幸なんだろう?
34 :
1
:2006/12/19(火) 21:24:34.26 ID:7t1ZrQXL0
('A`)「・・・わかった」
ミセ*゚ー゚)リ「え・・・?」
ドクオさんはそう言うと、杖を掲げ、呪文を唱え始める。
('A`)「テクノ・ク・マヤコン!!」
杖の先から光が溢れ、視界が真っ白に覆われる。
体がすごいスピードでどこかに流されていく。
ミセ*゚ー゚)リ「・・・っ!!」
――――そして、どこかの地点に止まる。
35 :
1
:2006/12/19(火) 21:25:57.74 ID:7t1ZrQXL0
※
ズシン、という重みのある感覚。
魂が体に戻った。言い表せばそのような感覚だ。
・・・視界が、真っ黒に染められていく。
やがて、誰かの声が聞こえてくる。
「・・・であるから、ここの式は」
ミセ*゚ー゚)リ「!!」
視界が元に戻る。
そこには、見慣れた教室の風景。
前で先生が退屈な授業を行っていて
クラスメイトはノートを取ったり、寝ていたり、話していたり
いつもの、授業中の風景だった。
37 :
1
:2006/12/19(火) 21:27:37.43 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ(夢・・・だったの?)
記憶をたどってみるが、やはり鮮明に覚えている。
しかし、冷静になって考えれば、魔法使いなどいるはずがない。
ミセ*゚ー゚)リ(・・・夢、か)
くだらない夢を見てしまった。
私は、体を起こしため息をつく。
ミセ*゚ー゚)リ(やっぱり、現実は――)
瞬間、地面が割れるような轟音が鳴り響く。
机がカタカタと震え、やがて教室が横に揺れ始める。
39 :
1
:2006/12/19(火) 21:29:07.97 ID:7t1ZrQXL0
(;・∀・)「じ、地震だ! みんな、落ち着いて!」
そう、先生が言った直後、ものすごい音と共に教室が激しく揺れる。
机がまるでダンスでも踊っているかのように吹き飛び、窓ガラスが勢い良く割れる。
悲鳴すらその轟音に消され、動くことも出来ない生徒達は吹き飛ばされ、倒れる。
ミセ*゚ー゚)リ「う、うああ!!!」
私は必死に机にしがみつく。
だが、それも無駄な抵抗。
天井が、巨人に潰されたかのように迫ってくる。
痛みも感じる間も無く、私の体は校舎と共に崩れ落ちていった。
・・・・・・
・・・
40 :
1
:2006/12/19(火) 21:30:44.09 ID:7t1ZrQXL0
・・・一体、何が起きたんだろう?
急にすごい音がして・・・校舎が、崩れて。
そっか、私、死んじゃったのかな?
あの夢は、夢じゃなかったんだ。
――体が、動かない。
いや、指が・・・手が、足が。
少しづつ、感覚が戻ってくる・・・。
ミセ*゚ー゚)リ「う・・・うぅ」
2,3回瞬きをすると、光が視界に溢れた。
42 :
1
:2006/12/19(火) 21:32:43.54 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「・・・私、生きてる?」
足に力を入れてみる。・・・痛くは無い。
ゆっくりと立ち上がり、辺りを見回す。
ミセ*゚ー゚)リ「――ひっ」
そこには、無残にも崩れ去ったコンクリートの残骸。
そして、ついさっきまで一緒の教室にいたクラスメイトの無残な死体。
ミセ*゚ー゚)リ「い、い、いや・・・」
体が震え、心拍数が激しく乱れる。
コレは何? コレは何? コレは何?
また夢なの? こんな、こんなことがあるの?
43 :
1
:2006/12/19(火) 21:34:00.35 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「や、だ。やだぁ!!」
――その場から、逃げるように走る。
怖い、怖い。
頭の中が急激な刺激に対処しきれない。
家に帰りたい、退屈な日常に戻りたい。
半壊した街を見ないようにして、私は家へと向かう。
ミセ*゚ー゚)リ「パパ・・・ママ・・・うっうう・・・」
愚図りながら、走る。
やがて、家・・・いや、家のあった場所までたどり着く。
44 :
1
:2006/12/19(火) 21:35:46.46 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「パパ・・・ママぁ・・・?」
山積みになった瓦礫を前に呆然と立ち尽くす。
ミセ*゚ー゚)リ「どこ、どこにいるの・・・怖いよ・・・」
家のあった場所をウロウロと歩く。
恐怖のあまり、涙を流しながら捜し歩く。
「ミセ・・・リ」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・ママ?」
「よ・・・く・・・」
ミセ*゚ー゚)リ「――ッ!」
そこには、血にまみれ瓦礫の下敷きになった人・・・。
それは、間違いなく――
46 :
1
:2006/12/19(火) 21:37:28.30 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「ママぁ! いや、死んじゃやだ!!」
「ご・・・め・・・」
こぽっ、という音と共に血が口から流れ出る。
生気が徐々に消えていき、その動きは・・・止まった。
ミセ*゚ー゚)リ「や・・・」
これは、夢だ。ありえない。
つい先日まで、パパと言い争っていたじゃないか。
嫌というほど自分を苦しめてきたじゃないか!
47 :
1
:2006/12/19(火) 21:39:02.38 ID:7t1ZrQXL0
夢、夢で・・・あって、ほしい。
ミセ*゚ー゚)リ「いやぁぁぁぁ!!!!!!」
体から力が抜け、目の前が真っ暗になる。
・・・もう、何もかもが終わってしまった。
自分のせいだ。
自分の・・・
・・・・・・
・・・
49 :
1
:2006/12/19(火) 21:40:18.77 ID:7t1ZrQXL0
※
('A`)「気がついたかい?」
ミセ*゚ー゚)リ「あ・・・」
気がつくと、目の前にドクオさんが立っていた。
ここは・・・土手?
('A`)「すまんな。少しばかり強烈すぎたか」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・今のは、夢?」
私は自分の体を見る・・・パジャマのままだ。
ドクオさんはふむ、と小さく頷く。
('A`)「おまえさんの願い、空想上だが叶えたぞ」
・・・怒りが沸いてくる。
いくらなんでも酷い。
51 :
1
:2006/12/19(火) 21:41:45.07 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「なんてことするんですか! あんなの見せられて私は・・・!」
('A`)「私は?」
ミセ*゚ー゚)リ「怖かったし、悲しかったし・・・」
思い出すと、ゾクッと背筋が寒くなった。
ドクオさんは、真剣な目で私を見つめる。
('A`)「君が望んでいたもの・・・これでわかったかい?」
53 :
1
:2006/12/19(火) 21:43:17.17 ID:7t1ZrQXL0
ミセ*゚ー゚)リ「あ・・・」
そこで初めて思い出す。
そうだ、あれは私が・・・ドクオさんに頼んだ願い。
('A`)「君は、あの夢を見てどう思った?」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・悲しくて・・・怖かった」
そう、怖かった。
見慣れた日常が壊れていく。
それがこんなにも怖いものだと、初めて知ったのだ。
('A`)「わかっただろう? 退屈な世界がいかに大切なものか」
ミセ*゚ー゚)リ「・・・うん」
('A`)「君は、この世界が嫌だと言った。けどね・・・」
ドクオさんは私の頭にぽん、と手をのせる。
('A`)「それなら、君が世界を自分好みに変えればいい」
ミセ*゚ー゚)リ「世界を・・・私の好みに?」
('A`)「そうだ。不満ばかり言ってないで、行動するんだ。きっと、何か変わるさ」
58 :
1
:2006/12/19(火) 21:54:15.30 ID:7t1ZrQXL0
――ふと、今までかかっていた心のモヤに光が射し込む。
今まで、自分の不幸を棚に上げて、全部、周りのせいにしていた。
戦うことすらせず、ただ事実から逃げ回り、愚痴をこぼしていた。
ミセ*゚ー゚)リ「あ――」
不意に、何かが心の中で弾ける。
そして、涙が目に溢れてくる。
ミセ*゚ー゚)リ「う、うわぁぁん・・・」
止め処なく溢れてくる涙。
何が悲しいのか。
なんで泣いているのか。
そんなの、もうわからない。
ただ、全てを涙にして出し尽くしたかった。
('A`)「大丈夫、君ならやっていける」
59 :
1
:2006/12/19(火) 21:55:54.04 ID:7t1ZrQXL0
ドクオさんは、そう言うと杖を振った。
再び光が視界いっぱいに溢れ、体が軽くなっていく。
('A`)「強くなれ・・・君には幸運な未来を得る権利がある」
光の中、ドクオさんはゆっくりと離れていく。
私の体は、徐々に光の中へ吸い込まれていく。
ミセ*゚ー゚)リ「私、変えるから・・・ッ! 絶対、幸せって言える世界に変えるから!!」
――視界が白一色になる。
最後に見えたドクオさんの顔は、笑っているように見えた。
そして・・・私は光に包まれていった。
・・・・・・
・・・
60 :
1
:2006/12/19(火) 21:57:31.63 ID:7t1ZrQXL0
※
そうして、どのくらいの時間がたっただろうか?
ふわふわとした感覚は、いつのまにか消え、体の重みが戻ってくる。
「・・・きなさい」
近くで声が聞こえる。
徐々に意識が回復し、その声がはっきりと聞き取れる。
「おきなさい、ミセリ!」
ミセ*゚ー゚)リ「ん・・・」
61 :
1
:2006/12/19(火) 21:59:08.24 ID:7t1ZrQXL0
「もう、いつまで寝てるの? ・・・昨日は晩御飯食べてないみたいだし」
目を擦り、体を起こす。
声の主は、ママだった。
ミセ*゚ー゚)リ「あ・・・れ。ここ、私の家・・・」
「寝ぼけてるの? ・・・もう、土曜日だからって気が抜けてるわ」
夢・・・? 違う。
今度は、現実。私の前にいるママは生きている。
家も倒壊してない。
ミセ*゚ー゚)リ「ママっ!!」
私はママに抱きつく。
あったかい・・・。やっぱり、生きてる。
62 :
1
:2006/12/19(火) 22:01:04.72 ID:7t1ZrQXL0
「ど、どうしたの・・・ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「私、これから勉強も頑張るから! お手伝いもちゃんとするから!」
私は顔を埋めながら、叫ぶ。
私の、本当の心の内を・・・。
ミセ*゚ー゚)リ「だから、パパと喧嘩しないで・・・お願い」
「ミセリ・・・」
ずっと、言いたかったことを・・・言った。
触れるのが怖くて、ずっと胸にしまっていたこと。
「・・・うん、ごめんね。・・・ごめんね」
ママは私を抱きしめる。
私は、そのまま静かに目を瞑る。
63 :
1
:2006/12/19(火) 22:02:28.51 ID:7t1ZrQXL0
よかった・・・。大事な一歩、踏み出せたよ?
全ては、ここから始めるんだ。
今まで逃げてきた現実と、今度は正面から戦う。
今度は、もう逃げない。
もう、弱音ばかり言わない。
こっちから先制攻撃するくらいで、ぶつかってやるんだ。
幸運を掴むために。
――私の未来の為に。
それでいいんでしょ? ドクオさん・・・
65 :
1
:2006/12/19(火) 22:03:56.32 ID:7t1ZrQXL0
※
「でさー、この前のフマフマで・・・」
「ほんと? そこ見逃したよ〜」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、あのさ」
「ミセリ、さん?」
ミセ*゚ー゚)リ「わ、私もこの前のフマフマ見たんだ。た、タクマかっこよかったよね?」
「・・・」
「・・・」
ミセ*゚ー゚)リ(うう・・・失敗かな)
「・・・まじで?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
66 :
1
:2006/12/19(火) 22:05:16.50 ID:7t1ZrQXL0
「ミセリさんフマフマとか見るんだ!! え、すっごい意外!」
「ねぇねぇ、どのコーナーが好き?」
ミセ*゚ー゚)リ「私は・・・!!」
教室に、3人の楽しそうな話し声が響く。
本当に、幸せそうに。
皆、笑いながら。今を楽しみ、生きている
67 :
1
:2006/12/19(火) 22:06:59.91 ID:7t1ZrQXL0
('A`)「それでいいんだ。下界も、悪くないだろう? ミセリ」
天界から、一人下界を見て微笑む。
ドクオはポケットから四葉のクローバーを取り出し、それを眺める。
('A`)「幸せってのは、案外近くに転がってる・・・か」
( ^ω^)「なーに一人でつぶやいてるお?」
('A`)「うおっ! ブーン!?」
ブーンはニヤニヤしながらドクオの肩に手を置く。
( ^ω^)「クローバー・・・下界に落としたこと、神様にばれてるお」
('A`)「うそっ!」
ブーンはふふ、と不気味に笑っている。
68 :
1
:2006/12/19(火) 22:07:58.49 ID:7t1ZrQXL0
ブーンはいつのまにかドクオの腰に縄を巻いている。
そして、それを思いっきり引っ張る。
( ^ω^)「罰として始末書1000枚だそうだお! さあこっちくるお!」
('A`)「痛い痛い!! やだやだ! 始末書やだー!!」
天界に、むなしくドクオの叫び声が響き渡る。
これもまた、幸せなのだろう。
人生山あり谷あり峠あり。
・・・でも、そんな中に、幸せはあるんじゃないだろうか?
私は、そう思った。
('A`)「こんなラスト、納得いかーーーん!!!!!」
fin
73 :
1
◆NscXkUt6VE
:2006/12/19(火) 22:13:58.47 ID:7t1ZrQXL0
※あとがき&反省
すいません、ミセリというキャラの性格がおもっきししぃと被ってました。
多重人格ダッタンダヨー。総合でこのキャラ作ってくれた方、申し訳ない。
とりあえず、このキャラが気に入ったのでつい使ってしまいました。
ストーリーは・・・今回、初めてまともなドクオに挑戦しました。
読んでくれた方、支援してくれた方、ミセリ製作者の方。
本当にありがとうございました。
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