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( ^ω^)心のままに、のようです


第18話

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:28:02.63 ID:WnxrwJJP0
第十八話 終局の果てで 帰り道

今更だが、僕には妹が居る。
普段はツンケンしていて、その上口まで悪い。
僕がタバコを吸えば尻を蹴るし、おまけに容赦なんてものは無い。
しかしながらも、容姿端麗で、おまけに学力優秀とまできた。
まったくもって僕とは似つかわしく、よく僕は、本当に僕の妹なのかと
疑ったものだ。

幼くして両親を失った僕等は、大人を知ることとなる。
ソコにあるのは、淀み、荒み、腐った、まるでドブ川で。
時には傷つけられ、時には空腹を覚え、時には涙を流した。
幼いながらに、僕等は理解した。
他人とは、人とは、つまりはそういうものなのだ、と。
世の中、こういう風にできているのだ、と。

そんな大人たちのお陰か、僕等は力の使い方を知ることとなる。
しかし、そこには唯一信用できる者、祖父のお陰でもあったが。
程なくして財産も奪え返し、安心できる祖父と共に生活を送ってきた。

中学生の時、そのお陰で引越しをすることとなり、そこでは掛け替えの無い
モノをたくさん築いた。友、信用、信頼、心、愛情。
僕達は、今まで惑わされていたのだ。世界とは、ドブ川などではなかったのだ。
所々には光が差し入り、僕等を照らしていたのだ。

そんな僕は、高校へと入学し、初めて恋というものを体験することとなる。
憧れは次第に恋へと成長し、それはいつしか愛へと変貌を遂げていた。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:29:47.20 ID:WnxrwJJP0
( ゚ω゚)「・・・・・あ・・」

クーの左肩辺りに見えるあの突起は、包丁なのだろう。

ξ゚∀゚)ξ「邪魔」

ツンは包丁を引き抜くと、クーを押した。

川 ゚ -゚)「あっ」

途端、力が抜けたのか、はたまた突然すぎて思考回路が廻っていないのか。
クーは力に抵抗せず、そのまま倒れた。

川 ゚ -゚)「あっ・・・っ・・・!・・・」

時々、ビクッ、と。クーが身を跳ねる。
意識はあるだろうが、既に危険な状態であろうことは眼に見えて分かる。

( ゚ω゚)「クー・・・」

この心にあるものは何だ。分からない。なんと表現すればいいのだろう。
少し瞼を下ろせば、まるで色鮮やかなペンキをぶちまけたかのような光景が
映る。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:33:08.71 ID:WnxrwJJP0
( ゚ω゚)「ツン・・・」

ゆっくりと、僕は首を動かした。

ξ゚∀゚)ξ「なぁに?」

ツンが、のんびりと答えた。

( ゚ω゚)「ごめんお」

体が、動く。心が、馳せる。

( ゚ω゚)「ごめんお」

足に力が入る。手に力が入る。

( ゚ω゚)「殺しちゃったら、ごめんお」

右足に感覚が無い。血が出すぎたのだろうか。
だが、関係は無い。

殺そう。ツンを、殺そう。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:34:28.48 ID:WnxrwJJP0
ξ゚∀゚)ξ「あはっ!お兄ちゃん!」

ツンが、笑った。

ξ゚∀゚)ξ「私を、見てくれるのね!?嬉しい、やっぱり、愛してるんだわ!!」

包丁を、構えた。

ξ゚∀゚)ξ「あはははははは!!!!」

ツンが駆ける。

( ゚ω゚)「」

僕も駆ける。

よくも、やったな。
よくも、クーにまで手を出したな。
許すものか。謝ったって、泣いたって、もう、止まりはしないぞ。
殺してやる。その顔を、原型がなくなるまで、殴り続けてやる。
腕を、足を、粉々にすりつぶしてやる。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:36:50.78 ID:WnxrwJJP0
( ゚ω゚)「っ」

左足に、違和感。
次いで、何かが流れ出る。

( ゚ω゚)「!」

左腕に、摩擦熱を感じる。
次いで、肉が裂ける音。

( ゚ω゚)「おぉっ!」

ならば、と右腕を振りかぶる。

ξ゚∀゚)ξ「―♪」

ツンに、掴まれた。

ξ゚∀゚)ξ「―美味しい、お兄ちゃんの味がするわ」

僕の拳をなめると、ツンはそう言う。

( ゚ω゚)「死ね」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:38:08.35 ID:WnxrwJJP0
そのままで、腕を前に押し出す。
瞬間、拳に柔らかい感触があり、それがツンの口だと即座に理解した。

ξ Д )ξ「うぁぁあ!!」

しかし、ツンはそれさえも気にしていないように、包丁を振るった。

( ;゚ω゚)「――!!」

ザコン、と。鈍い音が聞こえる。

( ; ω )「がぁぁぁああああ!!!」

咄嗟に右腕を引っ込める。
見なくても分かる。包丁が、腕を貫通したのだ。
痛い、焼けるようだ、しかし、寒い。

ξ゚∀゚)ξ「ばいばい、お兄ちゃん」

( ; ω )「!?」

不意に、顔を上げると。
月光を浴びるツンが、立っていた。
僕を見下ろすように立つツンの手には、掲げられた包丁。
切っ先は、僕へと向いている。

ξ゚∀゚)ξ「愛してるわ」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:40:22.61 ID:WnxrwJJP0
ヒュッ、と。音が鳴った。
それは、風を裂く音。短く、しかし高いソレは、すぐ傍で聞こえた気がした。

「待ちなよ」

僕の世界が終わると思えたとき、声が耳に届いた。
包丁の切っ先は、僕の眼前にとどまる。

(´・ω・`)「いてて・・・ふぅ、疲れた」

後ろを見れば、そこには血まみれのショボンが立っていた。

( ;゚ω゚)「っショボン!!!」

よかった、生きていたのだ。
やはり、死ぬわけが無いのだ、あの二人は。
何たって、僕の親友なのだから。

なのに。

( ;゚ω゚)「ドクオ・・・は・・・?」

見当たらない。
ショボンの隣には、誰も立っていない。

(´・ω・`)「・・・ツンに、聞いてくれ」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:42:28.20 ID:WnxrwJJP0
何だ、その返事は?
もしや、ドクオを見ていないのか?
さては、逃げたのだろうか?
ははっ、そうだ、ドクオなら考えられることだ。
アイツはあれで、面倒くさがり屋だからな。それでいて実は痛いのも嫌いなんだ。
ああ、卑怯だなぁ、帰ってきたら、怒鳴ってやらなきゃ―

ξ゚∀゚)ξ「あは」

どこか、視界が歪んだ。

ξ゚∀゚)ξ「あはははははははははははは!!!!!」

全てを否定するような、その笑い声。

ξ゚∀゚)ξ「死んだわ!!アイツは死んだわ!!あははははははは!!!」

その声を聞いて、何故か、涙は零れることは無かった。
そのかわり、心に、ぽっかりと穴が開いた。

死んだ。殺された。ドクオは、存在しなくなった。
そういうことか、そうか。

(´・ω・`)「まぁ、待ちなよ」

動こうとした体を、ショボンが押さえつけた。

(  ω )「殺そうお、ショボン。もう、アイツは人じゃないお」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:44:36.72 ID:WnxrwJJP0
振り向きはしない。一瞬でもツンから眼を離せば、殺されるだろう。

(´・ω・`)「君は、ここにいてくれ。クー先生を、守るんだ。ほっとくんじゃないよ」

そう言われ、クーを見る僕。

川  - )「・・・・・」

見たところ、アレは生きている。
ははっ、嗚呼、馬鹿だな、僕は。この短時間で、生死を見分けられるまでになったか。

(  ω )「クー・・・」

匍匐全身をするように這いながら、クーへと近づく。
ようやくたどり着くと、しっかりと体を抱きしめた。

川  - )「ブーン・・・」

(  ω )「大丈夫かお?」

名前を呼ばれ、そう答える。

(  ω )「安心するお。クーは死なないお。死なせないお。僕が居るお。
     だから、生きるんだお」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:47:36.09 ID:WnxrwJJP0
クーだけは、死なせてなるものか。
いや、ツン以外の、全員だ。
僕達は、生きなければならないんだ。
ツンは、もう、生きていてはいけない。人まで殺したのだから。
たかが愛に狂った人間、されど狂人は狂人。
人にして人にあらず。ソレ即ち、人外のモノ。
人道を踏み外したら、もう人ではないのだ。

(  ω )(しかし、それも全ては、僕のせいになるのかお・・・?)

簡単な話が、僕に恋焦がれた結果が、これだ。
自分一人のモノにするために、邪魔者は排除するその思考。
そこまで狂わせるほどに、僕を愛していたのか。

(  ω )(ならば、責められるのは僕もだお)

ここにきて、冷静になり始めた僕。
だが、それでも感情が上回る。
ドクオを殺した。ショボンを傷つけた。クーを傷つけた。
僕の愛する者、大切な者を、傷つけ、壊した。
許せるものか。例え僕が原因だとしても、許せはしない。

(  ω )「クー・・・」

口から出た言葉は、愛するものの名前だった。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:49:10.62 ID:WnxrwJJP0
どこからか、またも警笛が響く。
嗚呼、もう何度目だ。僕の心よ、何故君はそんなにも敏感なのか。
次は、何が起こりうるというのか。
いつのまにか流れていた涙も気にせずに、視線をツンとショボンに向けた。

(´・ω・`)「さぁ、ツン。僕も、そろそろ限界みたいなんでね。最後に、君にプレゼントをあげるよ」

聞こえてきたのは、ショボンの声。

ξ゚∀゚)ξ「あら、一体、何をくれるのかしら?」

次いで、ツンの声。

(´・ω・`)「何、大したものじゃぁ無いよ―」

瞬間、ショボンが視界から消えた。

ドンッ、と。鈍い音が伝わってくる。
慌てて視線をツンに向ければ、そこには。

(´ ω・`)「―絶望、さ」

ツンの腹に、右拳をたたきつけたショボンの姿が見える。
しかし、見れば。

(;´メω-)「っ・・・!!」

右目を、包丁で切られたようだ。
お互いにダメージを追ったようで、しかしショボンはそのまま、立ち上がることは無かった。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:51:02.81 ID:WnxrwJJP0
心の中の警笛が、一層騒ぎ始めた。

ドクン。

何故、腹を殴ったのか。

「あ、ぁあああ・・・」

ドクン。

何故、『妊娠』している、腹を―

「あああああああああ!!!」

ドクン。

ξ;凵G)ξ「いや、いやぁああああ!!駄目、駄目よぉ!!」

ショボンが倒れたとき、ツンはずっと立っていた。
ただ、自分の腹を凝視したまま。まるで、ショボンの攻撃が聞かなかったように。

ξ;凵G)ξ「だめええぇぇ!!流産になるぅぅうぅぅ!!」

次の瞬間、世界は真っ赤に染まった。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:53:06.13 ID:WnxrwJJP0
ザクッ。

ξ;凵G)ξ「助けなきゃ・・・赤ちゃん・・・」

ザクッ。

ξ;凵G)ξ「いないの・・・何処?何処にいるの?」

ザクッ。 ザクッ。

ξ;凵G)ξ「ゴフッ!・・・赤ちゃん・・私と・・・おに・・・ちゃ・・・の・・・」

ザクッ。 ザクッ。 ザクッ。

ξ;∀;)ξ「あは・・・あはhゴフッ!!・・・あははは!!」

ザクッ。 ザクッ。 ザクッ。 

カランカラン。

ξ;∀;)ξ「あはは、あははははは!!!真っ赤!真っ赤よ!!あはh―――」

バタンッ。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:54:06.14 ID:WnxrwJJP0
(  ω )「・・・あ・・・」

ツンは、倒れた。
もう、何もいえない。イイタクナイ。
頭ガ壊レル。真ッ赤ナ世界。

(  ω )「・・・止めろぉ・・・」

心のどこか。ただ、静かに―

( ;ω;)「う、あ、あああああ!!嫌だ!止めてくれお!!うわぁぁああああああああ!!!!」

警笛は、止んだ。


第十八話 終

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/01(火) 17:56:05.24 ID:WnxrwJJP0
本日はこれにて了也。


投下しながらビビンバうめぇな・・・




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