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( ^ω^)ブーンはフォースを駆るジェダイのようです

SHOT-W

2 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 22:53:38.54 ID:8StCzmPu0
【知っていると嬉しい用語解説】

ジェダイ…フォースに仕える者達の総称。洗練された心技体を兼ね備えており、銀河の平和と秩序を守る正義の使者とされる。

フォース…万物に等しく流れる摩訶不思議なエネルギー。ジェダイはこのフォースと通じることで様々な奇跡を起こすことができる。

ライトセーバー…ジェダイが太古より使い続けている光線剣。いくつかの種類が存在する。

ジェダイ・マスター…ジェダイとしての高い資質を兼ね備えた者に与えられる最高称号。単純に目上の者に対して使用することも多い。

ジェダイ・ナイト…一人前と認められたジェダイに与えられる称号。

ジェダイ・パダワン…見習いジェダイ。

銀河共和国…数千の星々から成る宇宙規模の民主主義組織。また、この共和国を運営する組織を元老院と呼んでいる。

ジェダイ・カウンシル(評議会)…六人のジェダイ・マスターよって構成されるジェダイの最高意思決定機関。

ジェダイ・オーダー…ジェダイ騎士団。ライトサイドに立つジェダイ達の全体的な集まりを指す。逆にダークサイドの集まりをシス・オーダーと呼ぶ。

シス…フォースの暗黒面(ダークサイド)に魅入られた者達の総称。私欲の為にフォースを使う。ライトサイドに立つジェダイの天敵。

PMC…民間軍事企業。基本的に法人化された『ラウンジ・ニューソク・オオカミ』の三社を指す事が多い。

4 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 22:59:32.36 ID:8StCzmPu0
【登場人物紹介】

( ^ω^)…ナイトウ=ホライゾン(32)
・ジェダイナイト
・柄の両端から翡翠色の光刃を展開するダブルブレイドセーバーを愛用
・最近、威厳を保つ為に髭を生やそうかと考えてる

( ∵)…ビコーズ
・ドラム型多目的万能ドロイド
・R2-D2みたいなのを想像してくれておk
・ブーンの相棒

ξ゚听)ξ…ツン=E=アシュクロフト(15)
・ブーンのパダワン
・毒舌少女
・最近ハマっているのは肉なし肉ジャガ

攻リ゚ -ノハ…クサナギ=モトコ(??)
・法人PMCニューソク・インダストリーの士官
・サイボーグお姉さん
・通称『少佐』 性格的な意味合いを込めて『ゴリラ女』とも


5 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:02:29.21 ID:8StCzmPu0
Episode4:アーバンフォウドの銀狐       〜SHOT-4〜


(1 <∴>)「右舷、後方より魚雷接近」

(2;<∴>)「複数のレーザー照射を確認。狙われています!」

強襲艦『ハーマンジャンパー』のデッキはニューソク兵員らの喧騒に見舞われていた。
艦内はエマージェンシーランプが鳴り響き、それに併せて回転する警報灯がクルー達の顔を赤く照らしている。

いつ撃墜されてもおかしくない状況の中で、艦長のクサナギ=モトコだけが普段と変わらぬ涼しい顔で指令席に座っていた。


6 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:06:03.82 ID:8StCzmPu0
攻リ゚ -ノハ「ランダム回避運動開始。シールドの出力を三時方向に集中させろ。速力は維持。このまま目標点まで降下だ」

(1 <∴>)「し、しかし少佐。このままの速度では艦が持ちません。一度上昇すべきでは……」

攻リ゚ -ノハ「伍長。本艦は300mm厚のウーツ鋼と出力特B級のアンチビームシールドを備えいる。
       ハーマンジャンパーの本来の役割を言ってみろ」

(1 <∴>)「母艦の盾であり矛。前線の血路を開く切り込み艦であります」

攻リ゚ -ノハ「その通りだ。ならばその任を実行しろ」

果たしてクサナギ=モトコに感情というものはあるのだろうか。
そう感じさせるほどにクサナギは冷静で確実な仕事を常に納めてきた。

彼女《特殊作戦第九班》たちの御家芸であるステルス戦闘ではなく、
不慣れな駆逐艦での強襲任務をニューソク本社から突如言い渡されても
クサナギは動じることなくクルー達に指示を言い渡している。


8 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:12:16.17 ID:8StCzmPu0
少佐となら闘える。我々はエースだ。
たとえその肩書きが傭兵に成り下がったとしても、亡国の軍人たちがクサナギに寄せる信頼は全幅かつ堅固であった。
数々の死線を共に乗り越えたからこそ、特殊作戦第九班のクルー達はそこに微塵の疑いを持つことなくクサナギの命令を忠実に実行するのだ。

( ^ω^)「(大量生産・大量消費のこの時代に少数精鋭を貫けるのは司令官の質あってこそのモノってところかお)」

ξ゚听)ξ「ブーン。もうじき目標ポイントに接近するから降下の準備をしておけだって」

機内の布張り椅子に座るブーンに、壁に供えられた受話器を降ろしながらツンが言った。

既にハーマンジャンパーは大気圏に侵入している。
地上からの迎撃と空気との摩擦熱で船は時折激しく揺れていた。
予定では紛争に紛れてこのまま地上に降下し、目標となる施設へ潜入することになっている。


10 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:16:53.86 ID:8StCzmPu0
今回の任務は二国間戦争を行っている某惑星に潜伏する死の商人の暗殺だ。

意図的に破砕率を高めた劣化ウラン弾を初めとする銀河共和国指定の使用禁止兵器を売りさばき、
民間人を巻き込んだ殺戮を煽る武器商人は戦争の癌と呼ぶに相応しい。

そんな商人たち全てを駆逐するなどということは勿論不可能に近いが、活動を抑制させることは可能である。
すなわち、見せしめの意味合いを兼ねた中堅商人の抹殺だ。

ξ゚听)ξ「確かに共和国による直々の制裁は非合法商人たちへの警告にはなると思うけど
     どうして"中堅"を対象にするの? 頭を潰したほうが速いと思うんだけど」

未完成のライトセーバーに模造クリスタルを挿入しながらツンが疑問を口にした。

攻リ゚ -ノハ「頭を無くした蛇はしつこくのたうち回るものよ。瓦解して組織を暴走させるよりかは
     両腕を切り落としたほうが、効果的なこともあるわ」

( ^ω^)「あれ。少佐、なんでここに?」


11 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:20:29.23 ID:8StCzmPu0
デッキにいるはずのクサナギがブーンとツンが待機している降下用ハッチへ入ってきた。
防弾用ベストとニューソク社公認ライフルを装備し、灰色を基調とした野戦服に身を包んでいる。

クサナギが引き連れてきた何人かのクル―も似たり寄ったりの格好をしていた。
ニューソク社の連中が現地入りするとは聞かされていない。商人暗殺はブーンたちジェダイに与えられた任務のはずだ。

攻リ゚ -ノハ「野暮用でな。本社からの命令でちょっとした調査をする必要がある。途中まで同行させてもらうぞ」

( ^ω^)「野暮用ねえ。それは僕たちには言えないことかお?」

攻リ゚ -ノハ「企業秘密だ。法人PMCとはいえ、公にすれば多大な不利益を被る仕事もある。
      ナイトウ、たとえお前であったとしてもな」

( ^ω^)「つれないこと言わないでくれお。僕と少佐の仲じゃないかお」

攻リ゚ーノハ「ふふふ。そうね。互い、熱い夜を過ごしたもの同士だもの。つまらないことで関係を壊したくはないわ。
      でも、マンネリを防ぐコツは秘密を作りあうことだって知っていたかしら?」


12 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:23:51.02 ID:8StCzmPu0
ツンが怪訝な顔つきをする中、艦内スピーカーから降下準備が整ったという報告が入った。
降下用デハッチ内の気圧調整が完了し、開閉信号が青色に灯る。

重いハッチがゆっくりと開き始めると吹きすさぶ風と共に外界の眩しい光がブーン達を包んだ。
空は赤や青の光線群が四方八方を飛び交っている。

ξ゚听)ξ「この弾幕の中を飛ぶの? 流れ弾に当たったら洒落にならないじゃない。船ごと降りた方が安全だと思うんだけど」

( ^ω^)「今回の戦争と僕らの関係性は皆無だお。つまり、戦っている両軍は敵でもなければ味方でもない。
       だから下手に着陸して無用な注目を引きたくないんだお」

今回の戦場の主役は二惑星間の軍隊であって、法人PMCであるニューソク社や銀河共和国は表立った介入をしていなかった。
目標となる商人は気ままな流浪者を気取っており、消息を掴むことが難しい。
今回の居場所にしてもニューソク社の諜報部が多大な労力を払って入手した情報であり、
これを逃せば次の機会はいつになるのかも判らなかった。


13 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:28:47.43 ID:8StCzmPu0
そこでニューソク社本部から提案された作戦が予め鹵獲したハーマンジャンパー級に乗り込み、
今現在大気圏突入を試みている艦隊の一隻として偽装潜入するというものであった。

攻リ゚ -ノハ「戦場は混乱している。地上についてしまえばこちらのものだ。
     よし、各員時間差でパラシュート降下しろ。地上で会おう」

ξ;゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「ま、流れ弾なんてそうは当たらないから大丈夫だお」

霞んで見える地上を冷や汗混じりに見下ろすツン。心境を代弁するかのように青い両眼が大きく揺れている。
パラシュート降下に関しては仮想訓練しか経験のない弟子に対して「時間がないので」と言いながらブーンはツンの背中を蹴っ飛ばした。

少女は呪いの言葉を発しながら為すすべなく落ちていき、それを皮切りにメンバーが次々と空へ身を投げ出していく。
全ての人員を吐き出し終えたハーマンジャンパーは再び空高く飛翔していった。


14 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:31:57.96 ID:8StCzmPu0

**********

■地上:ジャングル

(;^ω^)「いやあ。見事にバラバラになりましたな」

ξ゚听)ξ「あと少しで着地できたのに……突風だなんてツイてないわね」

総勢六名の落下傘部隊は突如巻き起こった突風によって二分されてしまっていた。
クサナギ配下の兵員らとブーン達の着地点が大きくずれてしまったのだ。

攻リ゚ -ノハ「起きてしまったことを悔やんでもしかたがないだろう」

ハーネスとパラシュートを草木の茂みに隠しながらクサナギは携帯端末を首筋に付いたコネクタに結線した。

俗にサイボーグと呼ばれる全身義体を自身に施しているクサナギは電脳を搭載している。
簡単にいえばパソコンや携帯電話のどの機能を脳に持たせたようなもので、クサナギはあらゆる電子端末を
電脳に結線することで他の人間とは比較にならないほどの能力を発揮できた。


15 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:35:54.94 ID:8StCzmPu0
無論、電脳化すれば誰しもが超人になれるわけではない。
クサナギが『エスパーより貴重な存在』とよばれる理由をブーンはよく知っている。

( ^ω^)「部下たちは無事かお?」

攻リ゚ -ノハ「心配ない。それよりこのまま北上して目標点に向かう」

情報によれば暗殺目標となる人物、ラマ=クレイトンは最近になって用心棒を雇い始めたとのことだった。
自身の未来に不吉を感じたのか、それともただの気まぐれなのか。
なぜ今になってそのような保険をクレイトンがかき込んだのかは不明だが、ブーン達の任務の障害が増えたことは確かである。

相当なやり手がクレイトンに付いたと言われているからだ。

ξ゚听)ξ「ふ、ふん。所詮は金で雇われた傭兵じゃない。ジェダイの敵じゃないわ」

遠くに聞こえる戦闘の木霊に耳をそば立てながら、ツンがジャングルの草木をかきわける。
必要以上の速度で前進するツンの後ろを、くすりと笑うクサナギとライトセーバーを片手で玩ぶブーンが続いた。


17 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:40:44.21 ID:8StCzmPu0
攻リ゚ -ノハ「ジェダイの最期はだいたいが殉職という形になるが、
     その中で一番の死因は以外にも一対一の決闘らしい」

クサナギが思い出したようにツンの背中へ言葉をかける。

ξ゚听)ξ「…………」

ツンの歩調が少しだけ速まった。

攻リ゚ -ノハ「一流の傭兵。高級なフリーランスの定義の一つはジェダイ殺害の有無だ。
     戦士のひとつの完成点はジェダイだからな」


攻リ‐ーノハ「それに勝利したとなればクライアント側も傭兵に対して相応の評価をするだろう。
      旧時代には殺したジェダイのライトセーバーを収集する奴もいたそうよ」

( ^ω^)「少佐。あまり僕の弟子をいじめないであげてくれお」

ξ゚听)ξ「別にびびってなんかいないし。超余裕だし。問題ないし」


18 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:44:07.14 ID:8StCzmPu0
そう言いながらツンは上空を飛ぶ爆撃機がもっと沢山のビームチャージクラスターを落とせばいいのにと内心呟いた。

嫌なことを聞いてしまった。
確かに傭兵達の間ではジェダイ殺しが一種のステータスになっているという噂をツンもどこかで聞いた覚えがあった。

クサナギの台詞がどこまで本気なのかは分からないが、
何せこの紅眼のサイボーグは典型的なポーカーフェイスで言動の真意が読み取れない。

心技体に直結するフォースのゆらぎも極端に少ないので無意識のうちに表れる真相心理を探ることも難しかった。
肉体が機械化されているせいもあるだろうが、幾戦の経験を通じるうち、クサナギは本能的に閉心術を心得たのだろう。

ξ゚听)ξ ザッザッザッ

(;^ω^)「ちょ。ツン、進むの速いお。もう少し慎重に……」

攻リ゚ -ノハ「ツン。足元に蛇がいるわよ」

ξ#゚益゚)ξ「フンガ―!!!」グチョ

(;^ω^)「ああ! 限りある命が……!!」

攻リ゚ -ノハ「ずいぶん殺気立っているわね」


21 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:50:31.33 ID:8StCzmPu0
クサナギほどの戦士が巷を跋扈していることはないにしても、彼女相当の者を相手にすればジェダイであっても骨を折ることは間違いない。
事実。ツンには知る由もないことだがクサナギはとある理由からブーンとの一騎打ちを演じた経験があり、見事これに勝利を納めていた。

( ^ω^)「あっ。ツン、綺麗な花が咲いてるお。戦火に咲く一輪の花って感じだお〜」

ξ#゚Д゚)ξ、「……マズイ」ペッ

( ^ω^)「ひどい」

無論そこはただでは倒れぬナイトウ=ホライゾンである。
屈辱の白星をゴリラ女にくれてやるのと引き換えに、彼女の擬体をジャンク同然の状態に追いやった。
おかげでクサナギは思考戦車一両並の価格をする身体をそっくり換装する破目となった。

攻リ゚ -ノハ「見えた。あれだな」

少し切っ立った崖に到達すると、クサナギが下方にぽつりと建っている白い邸宅を指差した。
白い細指が向ける先にはジャングルには似合わない立派な屋敷がひとつ。
望遠鏡で覗くと庭や屋上には何人かの番兵がうろついている様子が見える。

( ^ω^)「例の武器商人のセーフハウスってところかお。もうじき戦火がこの辺りにも広がってくるはず。この混乱に乗じて潜入するお」

ξ゚听)ξ「敵が攻めてきているのに何でとっとと逃げないのかしら」

( ^ω^)「さあ? グリーンカラ―の考えることはよくわからんお。少佐、ラマ=クレイトンは確かにあそこにいるおね?」


22 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:54:32.68 ID:8StCzmPu0
お前たちジェダイもグリーンカラ―≪職業軍人≫とさして変わらないだろう、と思いながらクサナギはブーンの質問に対して首を縦に振る。
クレイトンは自身がプロデュース(と本人は述べている)した作品が戦場で実際に動く様を直に見ることを好むという。
今回の戦争であの男が何を売り込んだのかは分からなかったが、弾丸が己の頬をかすめるまでは梃子でも動かないに違いない。

攻リ゚ -ノハ「(諜報部の報告によれば、最近フリーランスの企業スパイが活発に動いているとのこと。
      どいつの面もクレイトンの息がかかった輩ばかりだ。情報が真実ならばこの作戦でその裏付けをとらなくてはな)」

今回、一級士官であるクサナギ自身がわざわざ現地入りをした理由がここにあった。

攻リ゚ -ノハ「(ブーン達に殺される前に奴自身の口を割らせるか、或いはデータベースをハッキングするのも手だな)」

今より数か月前。ニューソク・インダストリー創設以来三百余年の英知を結集させた兵器が誕生した。

絶対不沈戦艦『ネヴカドネザル』
全長1.5km 300mmレーザー砲 プロトン魚雷 1800mm荷電粒子砲 などの各種大型武装を標準搭載した銀河最大の戦艦だ。
四百機以上の艦載機を抱え込む空母でありながら、旧銀河共和国の初期アタック・クルーザーを
遥かに凌ぐ戦闘能力と排水量を実現させたその仕様は、まさに『戦艦の代名詞』と呼ぶに相応しい存在である。

ラウンジ・カンパニー社製・多脚型大陸移動空母『アンナ=フランシスカ』
オオカミ・コーポレーション社製・甲殻四脚要塞『ギガントスフォー』
ネヴカドネザルはこれら法人PMCが誇る第三のジャイアントキリングとして産声を上げたのだ。


23 : ◆909zxcTVWc :2010/03/07(日) 23:58:03.68 ID:8StCzmPu0
攻リ゚ -ノハ「(ネヴカドネザルは我が社の威光を知らしめるマスコットキャラクターだ。
      あれには門外不出の高級技術が惜しげもなく使われている。
      もしその技術が外部にリークされたとしたら……)」

ラマ=クレイトンはその仕事柄の延長線として情報屋としての顔も持っており、
お抱えのA級のハッカーを使って各企業の機密を盗み出すことも間々あった。

そんな命知らずの男が法人PMCのマスコットに強い関心を持ち始めたという情報が耳に届いたのだから、
ニューソク社の幹部たちは心中穏やかではいられない。

そこらの死の商人ならばいざ知らず、相手は大型武器兵器密輸シンジゲートの重鎮なのだ。
ネヴカドネザルの設計図や構造ルーチンが露出すればどれほどの経済的・物理的被害を被るか分からない。
決して油断してよい相手ではなかった。

( ^ω^)「さて。どう攻めるかな」

小型単眼鏡を覗き込みながらブーンが呟く。

ξ゚听)ξ「警らの連中に見つかったら面倒よ。バレずに侵入する方法はないのかしら?」

( ^ω^)「うーむ。衛星写真で外観はわかるけど内部がなあ……少佐、何か案はあるかお」

攻リ゚ -ノハ「どうせ中で戦闘になる。三手に分かれてそれぞれのルートで攻めるというのはどうかしら」


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24 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:00:48.02 ID:EhR2kI560
ツンがあからさまに嫌な顔をした。
ブーンと離れて行動することに不安が過ぎったのである。
青二才と言われればすぐに喰ってかかるツンだが、今回ばかりは借りてきた猫になるほかない。

ツンの内心を悟るブーンは三手ではなく二手に分かれようと提案する。
クサナギはすんなりとそれを承諾した。
自身の任務の特性上、クサナギはブーン達と別行動さえ取れればそれで良かったからだ。


26 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:05:01.25 ID:EhR2kI560
攻リ゚ -ノハ「崖を降りたら散開だ。私の無線の周波数は知っているな?」

( ^ω^)「もちろんだお。何かあれば連絡をくれお」

攻リ゚ -ノハ「ああ。無茶をするなよ」

( ^ω^)「ふん。用心棒ごときにこのナイトウ=ホライゾンは遅れはとらないお」

攻リ゚ -ノハ「そういうことじゃないわ。やっきになって無用な騒ぎをおこさないで、と言ってるのよ」

(;^ω^)「そりゃこっちの台詞だお。少佐こそブチ切れて邸宅を木端微塵にしないでくれお」

攻リ゚ーノハ「あら。いつのお話をしているのかしら。まだサレディンでの一件を根に持ってるの?」

紫の前髪の奥にある紅眼が微笑する。

ξ゚听)ξ「……ねえ。なんの話をしているのよ」

攻リ゚ーノハ「ふふ。ツン、君の師匠によおく伝えておいてくれ。今度は間違えてプロトン魚雷に乗らないように、とな」

ξ゚听)ξ「?」

(;#^ω^)「(クッソォ……こんのゴリラ女め。電脳にウィルスぶち込まれて風邪でもこじらせちまえ)」


27 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:11:07.70 ID:EhR2kI560
両手をくねらせて壮絶な呪いの波動を放射するブーンを無視し、クサナギは「お先に」と言いながら崖を滑り降りて行った。

崖の落差はゆうに三十メートルはある。
そこを滑走できるのは強化された擬体を持つ彼女が故の芸当だ。

ジェダイといはいえども真似をすれば問答無用の骨折が待ち構えているのは目に見えているので、
仕方なくブーン達は崖を迂回してセーフハウスへ向かうことにした。

成功の秘訣はいつの時代も急がば回るなのだ。

*** *** *** *** ***


( ^ω^)「疾ッ!!」

(;・±・)「グッ。うぐう……」

音もなく背後から現れた男。
間一髪それに気付いた番兵は手に持つブラスターを男に構えるが、
縦一門字に構えられた光刃によってその銃身ごと問答無用に切り捨てられた。

ライトセーバーの超高熱をもってすれば例えパリスチール鋼であろうとも難なく溶断できる。
切り口を瞬時に焼かれた番兵は出血することなくその場に倒れた。


28 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:13:43.05 ID:EhR2kI560
( ^ω^)「うむ。太刀筋に乱れはないおね。暫らくブランクがあったけど流石は僕だお」

ξ゚听)ξ「ったく。自画自賛する前に少しは隠すの手伝ってよ」

翡翠色に光るダブルブレイドセーバーを眺めてひとり頷くブーンに文句を言いながら、ツンは絶命した番兵の骸を物陰に隠す。

セーフハウスへの侵入は施設外部を警戒する番兵の始末から始まった。

必要なら殺し。不必要ならば意識だけを奪う。
ただ、相手側の意識が時々刻々と近づいてくる爆撃音に対して鋭敏になっているため、
カ―シェスバイトでブーンが行ったような高度な催眠誘導を施すことは出来なかった。

フォースによる意識の断絶・誘導は対象の油断や怠慢に因るところが大きい。
心の隙を突く技なので相手の殺気や気配を瞬時に感知する一流の戦士にはマインド・トリックは通用しにくいのだ


29 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:17:53.44 ID:EhR2kI560
( ^ω^)「相手の脳を操作するフォース・トリックはフォース・ショックと違って針に糸を通すような精密作業を強いられるお。
       緊張したり精神が乱れた状態で使えば相手を廃人にしかねないし、下手を打てば不発になることもあり得るお」

ξ゚听)ξ「私はまだ脳科学の課程を修了してないからなあ。フォース・ショックなら簡単に使えるのに」

自分の右手を見つめながらツンが悔しそうに唸る。

( ^ω^)「馬鹿のひとつ覚えだお?」

ξ#゚听)ξ「う、うるさいわね。これから覚えるんだからいいのよ」

だが、その馬鹿のひとつ覚えが歴代ジェダイの中でも群を抜くほど強力で希少であることをツンは知らない。

( ^ω^)「ツン。後ろの警戒を頼むお」

ξ゚听)ξ「う、うん」

邸宅周辺の掃除を終えたブーンがセーフハウスの裏口に手をかける。
扉には当然のように施錠されていたが、フォース・グリップを心得ているブーンにとってそれは障害にならない。
もっとも、今回のような古典的物理施錠ではなく、電子制御が施された代物となると話は変わってくるが……。


30 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:23:49.62 ID:EhR2kI560
( ^ω^)「(少佐はもう中に入ってるかおね?)」

中へ入ると成金臭い赤絨毯が床一面に敷き詰められた光景がふたりの目に飛び込んできた。
侵入したセーフハウスはそれほど広い敷地ではない。ラマ=クレイトンは直ぐに見つかるはずだ。

ξ;゚听)ξ「アッ。やばっ……」

( ^ω^)「ツン。何も恐れることはない。
       僕たちはジェダイ。ジェダイはフォースを駆る者。
       万物の理力に身を委ね、精神を研ぎ澄ませろ」

同時に招かねざる客の到着に室内をたむろしていた番兵達が気づくのも直ぐだった。

(1:益:)そ「な、なんだお前! どこから来ッぐわ!」

(2:益:)「くそおっ! 仲間を――――グぎゃアッ!!」

(3:益:)「え? え? ア"ッ!?」

一閃。瞬滅。

( ^ω^)「そうすれば、おのずと敵の殺気は視えてくる」

ξ;゚听)ξ「…………」


31 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:26:52.87 ID:EhR2kI560
強い。
ただその一言だった。

扉を潜り、敵三人を視認するや否やライトセーバーを展開。同時に最も近くにいた二人の懐へとブーンは飛び込む。
先ずは最も速く自分たちの存在を感知した敵のブラスターをブーンは叩き切る。発砲音による周囲への無用な注意を作らせないためだ。
ブラスターの引き金が絞られた時には持ち主の首は胴体と分離していた。

次いで、一人だけやや遠目の場所にいた敵をフォース・ショックで吹き飛ばす。
強すぎず。弱すぎず。絶妙なコントロール下に置かれたブーンのフォースは静かに相手の意識を刈り取った。

最後は事態を把握でず、最も対応が遅れた番兵を尋問のためにCQFC(クローズ・クォーター・フォース・コンバット)を用いて床へと叩き伏せる。
この間、僅か二秒。

ξ;゚听)ξ「(ぜんぜん見えなかった。なんであんなに速く動けるんだろう)」


33 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:32:35.99 ID:EhR2kI560
これぞ、数百の戦場を獅子の如く駆け回り、瞬間制圧・無音暗殺に特化した戦闘フォーム『独楽(コマ)』
を独自に生み出したナイトウ=ホライゾンの真骨頂である。

フォーム(戦闘型)の代表格である『シャイ=チョー』と、対ジェダイ用の『マカーシ』を元に編み上げたこの剣術は、
現存する七つのフォームのどれよりも実戦的な仕様となっていた。

銃弾が飛び交う戦場。特に乱戦においては三百六十度全方向からの脅威に備えなくてはならない。
一対一に重きを置くマカーシでは目と耳の数が足りず、汎用性に長けるシャイ=チョ―では火力が弱い。
実戦に重きを置くブーンが己の両刃の剣に似合うフォームを欲するのに時間はかからなかった。

もっとも、オリジナルフォームを編み上げるなどという芸当を一朝一夕で出来るわけもなく、
ブーンは独楽を完成させるのに十年以上もの歳月をかけることとなった。

(3:益:)「が……あ……」

( ^ω^)「こちらの質問に答えれば命は助けるお。ラマ=クレイトンはどこにいる?」


34 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:35:53.70 ID:EhR2kI560
番兵の髪を乱暴に掴み、起動したライトセーバーをちらつかせたブーンは「質問は一度しかしない」と脅迫する。
その際、首を跳ねた仲間の死体を番兵の視界の端に入れさせることも忘れない。
身近な人間の死は当事者の正常な判断を狂わせる。

(3:益:)「さ……三階にいる……三階の書斎」

( ^ω^)「避難経路は? 地下通路か?」

(3:益:)「そんなものはな……ほ、本当だ!
       この屋敷は戦争が近いってんで放棄されたところをボスが気まぐれに拾った場所なんだ。
       移動手段は屋上のヘリしかない。嘘じゃない!!」

番兵の言葉に偽りはないと見たブーンはセーフハウス内にいる敵の数や武装を一通り聞きだすと、
そのまま相手の脂汗に濡れた額を軽く小突く。
大きく目を見開いていた番兵は眠るようにして瞼を閉じた。

( ^ω^)「場所は解った。行くおツン」

ξ゚听)ξ「了解」

(^ω^ )「……なに拗ねてんだお?」

ξ゚听)ξ「別に拗ねてなんかいないわ」


35 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:38:14.43 ID:EhR2kI560
一階から二階へ。二階から三階へ。
目当ての階へ辿り着くまでに計三度の戦闘が行われたが、結局ツンが剣を振るうことは一度もなかった。
クサナギが施設内部へ侵入しているせいもあるだろう。騒ぎは階を登るにつれて少しずつ大きくなり、
書斎へと続く広間に着くころにはブーン達の存在は完全に先方に知られていた。

ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「…………」

そんな時だった。
順調に任務達成へ近づくブーン達に待ったの声をかける存在が表れた。


37 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:43:34.05 ID:EhR2kI560
ξ゚听)ξ「ブーン。こいつは……」

( ^ω^)「迂闊に切り込まなっかたのは正解だおツン。たぶんこいつが例の用心棒だお」

大きなテーブルだけが置かれた広い長方形の部屋の端。ブーン達の進路を阻むようにして一人の男が仁王立ちをしていた。

その出で立ちには一分の隙も見当たらず、数々の死合いを潜りぬけてきた歴戦の戦士としての貫録が漂っている。
両眼に宿る眼光は鋭く。見つめられるだけでこちらが捕食される側であるような錯覚を受けてしまう。

強敵。その二文字がジェダイたちの脳裏に浮かぶ。

(    )「ふっ……」

不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと組んでいた両腕を用心棒は降ろす。

( ^ω^);゚听)ξ「!!!!」


38 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:46:09.03 ID:EhR2kI560
瞬時に戦闘の構えを見せるブーンとツン。


(    )「…………」


緊張する二人のジェダイの様を見遣り、勝利に対する余裕の笑みを見せるその用心棒は――――――




<_プー゚)フ「はいっ!!オレでしたぁあああーーーーー!!!」





ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「…………」


39 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:47:19.81 ID:EhR2kI560


ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「…………」

<#プД゚)フ「残念だったなジェダイども!! ここから先はこのエクスト=プラズマンがしちゅ!……死守するんだぜえ!!」




その用心棒は――――――

ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「…………」

<_プー゚)フ「…………」





40 : ◆909zxcTVWc :2010/03/08(月) 00:50:01.44 ID:EhR2kI560
用心棒は――――――

ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「…………」

<_プー゚)フ「……いや、噛んでね―から」

ξ゚听)ξ「もちっとマシな嘘つけよ。糞モミアゲ」

ただの馬鹿だった。


to be continued...



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