2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 11:50:31.80 ID:4SIQ8R1a0
【March 1】


朝日が窓から差し込む部屋。
なんて気持ちのいい朝なのだろう。
このまま窓を開け放って顔を出したらどんなに気持ちのいい事か。

なのに・・・・なのに・・・・・・。


川 ゚ -゚) 「だから済まなかったといっているだろう。」

( ^ω^)「済まないですむ問題じゃないお」


あの後帰宅すると僕のベットにクーが寝ていた。
引きずり出して殴ってやろうと思い近づいたのだが結局その目論見はうまくいかなかった。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 11:52:10.14 ID:4SIQ8R1a0

後数歩、本当に後僅かな距離だった。
僕はクーの数十センチ手前で躓き、そのまま倒れてしまったのだ。
既に体力の限界を感じていた僕は、腕でかばう暇も無く簡易式ベットの骨組みに額をぶつけてしまった。

そして最後は転んだ拍子に足で蹴り上げてしまった携帯ゲーム機がお尻にヒットし、気づいたら朝だったというわけだ。


(#^ω^)「僕の純潔を返して欲しいお」


ここまで言うとクーが黙った。
しまった、流石に言い過ぎたかと思ったがどうやらそれは違うらしい。
彼女の目は、今まで無かった光が宿り僕に反撃する機会をうかがっているように見えた。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:04:28.07 ID:4SIQ8R1a0

川 - ) 「お前だって・・・」

( ^ω^)「お?」

川#゚ -゚) 「お前だって消しゴムにシャーペンの芯やインクペンを刺したりするだろう!!」

( ^ω^)「・・・・。」

川#゚ -゚) 「しかも途中で心が折れて取れなくなったり、無理やり取ろうと消しゴムを彫ったりするだろう!?」


これはいけない、地雷を踏んだみたいだ。


川#゚ -゚) 「そうやって純潔を失う消しゴムも沢山いるんだ・・・。それなのにお前は・・・。」

( ^ω^)「あの・・・なんかすみませんでした。」

川 ゚ -゚) 「ふむ、分かればいいんだ。」


一瞬でクールダウンしたらしきクー。
「飯を食ってくる」といって出て行ってしまった。
消しゴムの癖に腹が減るとは、随分と燃費の悪い文房具だ。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:05:12.11 ID:4SIQ8R1a0

( ^ω^)「僕も飯、食うかお・・・」


部屋を出て階段を下りる。

今日の朝食は何だろうか、昨日はパンだったから和食だろうか。
あのカーチャンのことだ、ひょっとしたら中華かもしれない。絶対に嫌だけど。
そこまで考えて、僕は大変な事を忘れていた事に気づく。

しまった、カーチャンはクーを知らない。


(;^ω^)「ヤバイ・・・」


リビングへと走る。
もう間に合わないと分かっていても走るしかなかった。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:07:18.55 ID:4SIQ8R1a0

J( 'ー`)し「あら、おはよう。」

川 ゚ -゚) 「やっと来たか、遅かったな。」

( ^ω^)「・・・・・おはよう。」


妙にテンションが下がる。
クーとカーチャンは楽しそうに話をしていた。
ああそうか、僕の適応能力(流されやすいともいう)はこの人譲りなんだな。


川 ゚ -゚) 「なかなか面白い母親だな。」


クーのとなりに座る。
テーブルに並んでいるのは麻婆豆腐に餃子、そしてシュウマイ。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:08:14.08 ID:4SIQ8R1a0

( ^ω^)「うん。おもしろい・・・・お。」


朝食に中華を作るような母親がつまらない分けがない。
一体どういった感じのギャグなんだろう。
カーチャンの背後には調理に使われたと思われる中華なべや蒸篭が積み上げられている。
何でもある家なんだな・・・・・畜生。


J( 'ー`)し「それにしても・・・まさかこの子が彼女を連れ込むとはね〜」



( ゚ω゚)・;。゚:*

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:10:25.46 ID:4SIQ8R1a0

盛大に吹き出してしまった。
彼女?何故?コイツは消しゴムだ。人間と言う前提条件にすら当てはまらない。


J( 'ー`)し「"私は彼のものなんだ"だなんて・・・。やるわねぇ?」

( ^ω^)「とりあえず否定させてもらうお。それと何で疑問形何だお。」

J( 'ー`)し「またまた照れちゃって〜」


溢れんばかりの笑顔を顔に浮かべる母親が、これほど憎いと思ったことは無い。
クーもクーで表情一つ変えずに餃子を食べている。
少しは否定しろ。あと朝からそんなもの食べたら口臭が酷いぞ。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:11:45.14 ID:4SIQ8R1a0

川 ゚ -゚) 「否定したらここに居れなくなるだろう。」

(;^ω^)「う・・・。」


また言いくるめられてしまった。
仕方なく僕も食事をする事に・・・・・・あれ?


( ^ω^)「クーさん?」

川 ゚ -゚) 「なんだ?」

( ^ω^)「麻婆豆腐と餃子、そしてシュウマイが見えない。」

川 ゚ -゚) 「当然だ。私の腹の中だからな。」


本当に燃費が悪い文房具だ。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:12:26.95 ID:4SIQ8R1a0

―――――まだ少し肌寒い。
朝窓を開ける暇が無かったのは正解だったようだ。

いつもの通学路。
ここも後2週間もすればもうあまり通ることはないだろう。
今日は土曜日、通常なら学校は休みなのだが、今日に限っては試験の結果を報告しに行かなければならない。


( ^ω^)「で、なんで付いて来るんだお?」

川 ゚ -゚) 「暇だからさ。」


暇だから・・・か。
燃費が悪いのだからあまり動かないでいて欲しいのだが、これも悪くは無い。
3年間通った道。たとえ消しゴムと言えど女の子と歩くのは初めてだ。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:14:25.26 ID:4SIQ8R1a0

('A`)「おはよう」

( ^ω^)「おいすー。」


もう学校に着くだろうかというところでドクオに出会う。
コイツは2週間前、"勉強"という物のやり方自体がわからない僕にそれを教えてくれた友人だ。


('A`)「で、結果はどうだった?」

( ^ω^)「何とか受かったお。もうこの1週間気が気じゃなかったお。」

('∀`)「受かったか、良かったな!!」

( ^ω^)「本当にドクオには感謝してるお」


ちなみにこのドクオ、既に私立の超進学校に受かっている。
偏差値70以上って何だよ。納得いかないよ。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:15:29.67 ID:4SIQ8R1a0

川 ゚ -゚) 「こいつはお前の友達か?」

('A`)「ん?」

(;^ω^)「あ・・・」




一瞬、時が止まったかのように思えた。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:16:55.21 ID:4SIQ8R1a0

( A )「ブーン?」

( ^ω^)「はい?」

(#'A`)「こんなカワイイ彼女作りやがって!!死ね!氏ねじゃなくて市ね!!」

(;^ω^)「一体どれだお?というか彼女じゃないお。」


というか口頭では何が言いたいのか全く分からない。
それに君、彼女いるだろ。しかも結構カワイイの。

胸は無いけど。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:17:28.77 ID:4SIQ8R1a0

川 ゚ -゚) 「いや、彼女だ。」


そしてやはりキッパリと言い切るクー。
とことんその設定で行くつもりなのか知らんが、ドクオにとってそれは致命傷になりうる・・・。


('A`)「イヤァァァァァァァァァァァァ」


ああ、遅かった。
物凄い速さで走っていくドクオ。水泳部なのに、陸でもあんなに早いのか。


川 ゚ -゚) 「面白い奴だな。」


流石に文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、クーには何を言っても無駄そうだった。
今朝から負けっぱなしだよ。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:18:55.06 ID:4SIQ8R1a0
――――「良かったな!」

結果を報告すると担任の先生は心から喜んでくれた。
かなり高望みした学校に受かったのだ、自分は勿論嬉しいが他人にこんなに喜んでもらえるとは思わなかった。


( ^ω^)「しかし気分いいものだお。晴れて受験から開放された気分だお。」


クーは校内を散策すると行ってどこかへと消えてしまった。やはり文房具なだけに学校が落ち着くのだろうか。
一時的にとはいえ、新しい悩みの種が消えてくれたのだ。
今この時間を楽しまない手は無い。


( ^ω^)「お・・・?」


校舎から出る。
そこに、僕の目を引くものがあった――――否、居た。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:19:56.01 ID:4SIQ8R1a0

ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・。」


彼女は誰もいない校庭の真ん中に立ち、校舎を見上げていた。
ここからではよく表情が伺えないが、彼女はどこか悲しそうにしているように見える。

妙に気になる。
今日は先にもあるとおり結果報告のための登校なので、3年生しかいないはずだ。
だが彼女を見た事はこの3年間、一度も無い。

気が付けば僕は彼女のほうへ向かい、声をかけていた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:21:06.55 ID:4SIQ8R1a0

( ^ω^)「君は?何をしているんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「・・・・思い出」


そう呟いた彼女の声はとても綺麗だった。


ζ(゚ー゚*ζ「あなたには思い出、ありますよね?」

( ^ω^)「思い出?勿論あるお。」

ζ(゚ー゚*ζ「私にも、あります。でもそれは決していいものではない。」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:22:22.10 ID:4SIQ8R1a0

視線は依然、校舎に向いたまま。
それでも彼女は確かに僕と話しをしている。


( ^ω^)「君は・・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「もう帰りますね、話しかけてくれて嬉しかったです。」


校門へ向かっていく彼女。
彼女は最後に振り向いて――――


ζ(゚ー゚*ζ「デレ、って言います。3年6組です。」


そう言って、今度こそ本当に帰っていった。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:24:16.73 ID:4SIQ8R1a0
――――僕は、考えている。

現在進行形、thinkingだ。
校庭で出会ったデレという少女。
彼女が言った3年6組とは僕のクラスでもある。


( ^ω^)「デレなんて子、いたかお?」

川 ゚ -゚) 「デレ?」


僕の独り言に、クーが反応する。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:25:36.82 ID:4SIQ8R1a0

( ^ω^)「そうだお。クラスメイトみたいなんだけど、一回も見た事がないんだお。」

川 ゚ -゚) 「デレ・・・デレ・・・聞いた事があるな」

( ^ω^)「何でクーが知っているんだお?」

川 ゚ -゚) 「ほら、消しゴムの時にセ○ンイレブンでな、聞いた気がするんだ。」

( ^ω^)「・・・・。」


商品かよ。
というか今でも消しゴムなんじゃないのか。

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:26:42.02 ID:4SIQ8R1a0

川 ゚ -゚) 「一応人間だぞ。しかし・・・思い出せんな。」


そうか。
というか心を読まないで欲しい。この世にはプライバシーというものがあるんだ。
・・・・ちょっと違うか。


( ^ω^)「寝るお。」

川 ゚ -゚) 「ん?そうか。おやすみ。」


いつまで考えていても埒が明かないので寝る事にする。

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:28:08.81 ID:4SIQ8R1a0
歯を磨いて、トイレに行って部屋に戻ってくるとクーが布団に入っていた。
これでは昨日の二の舞になってしまう。
昨日、床で夜を明かした僕は体のあちこちを痛めて散々な目にあった。

なんか肛門も痛かったし、絶対に床で寝たせいだ。


( ^ω^)「・・・クーさん?」

川 ゚ -゚) 「なんだ?」

( ^ω^)「そこは僕の布団だお。」

川 ゚ -゚) 「正確には簡易ベットだな。」


そんな事はどうでもいい。
そいつには僕の尻の命運が託されてるんだ。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/09(日) 12:28:45.23 ID:4SIQ8R1a0

( ^ω^)「関係ないお。とりあえずどいてくれお。」

川 ゚ -゚) 「一緒に寝ればいいじゃないか。」


( ^ω^)「・・・・。」


願っても無い。
僕は有難く布団にもぐった。


川 ゚ -゚) 「あ、何かしたら殺すからな。」

( ^ω^)「消しゴムが何を言ってるんだお。」


あ、人間なんだっけか。
しかし、いつもなら少し劣情を抱いたりしたかも知れないが今日はいろいろ考え過ぎて疲れた。
僕はすぐに眠りに落ちていった。


  次へ戻る inserted by FC2 system