- 2 :◆xJGXGruetE:2009/11/21(土) 22:17:39.69 ID:jPTt1Zb7O
-
「おいおい、ホントかよ……? 全部当てやがった……」
「大丈夫、親父達がいなくてもお兄ちゃんが何とかしてやる」
「だからお前は……な?」
遠くで懐かしい声が聞こえる。
今もたまには聞くはずの、でも今とは違う私の方へ向けられた声。
あの日そんな言葉と共に私の手を掴んだ大きな手。
暖かかったその手は、今はただケーキを運んでくれるだけ。
いつからそうなったのかは覚えていない。
そんな昔のはずじゃないのに、すごく前の事のように思える。
それだけ開いてしまった距離と、そして──
− ミセ*゚ー゚)リ神様inサイダーのようです(゚、゚トソン −
〜 後編@ 〜
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:19:09.49 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚−゚)リ「……朝か」
まどろみの中で見た景色は、目覚めと共に霧散した。
ひどく懐かしいような気もしたけど、それが何だったか思い出せない。
でも、思い出しても所詮は夢。
夢は夢でしかないのだ。
現実ではない。
ミセ;゚ー゚)リ「う……何か身体痛いな……」
ソファーの上で丸まっていた身体を伸ばす。
だいぶ暖かくなって来たとはいえ、布団もかけずに寝たのは失敗だったか。
伸びをしながら相変わらず忙しない音を立てる時計を眺める。
時刻は午前……
ミセ;゚ー゚)リ「5時……だと……」
まだ薄暗いことで気付くべきだったが、朝どころの騒ぎじゃない時間だった。
私にとってこの時間に寝る事はあっても起きるような時間じゃない。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:21:23.40 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*-ー-)リ「もっかい寝るか」
そう思って目を閉じるも全く寝られる気がしない。
寝るならちゃんとベッドに潜り込まないと身体も痛いし。
ミセ*゚ぺ)リ「うーむ……」
仕方なくソファーから起き上がる。
ふと、自分の姿を見れば帰宅した時のままだったことに気付く。
制服はよれよれで、お風呂にも入っていなし、何ともひどい有様だ。
ミセ*-へ-)リ「シャワーでも浴びるか……」
そんな事をすれば完全に目が覚めてしまってもう眠れなくはなるだろうけど、それも仕方がない。
私は大きく背伸びをして、バスルームへ向かった。
・・・・
・・・
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:24:13.54 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚ー゚)リ「うーん、まだちょっと寒いくらいだな」
日は差しているが、風が少し冷たい。
春よりは夏が近いけれど、朝はまだこんなものなのだろうか。
いつもなら絶対寝ている時間なのでその辺はよくわからなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「どこ行こっかな」
玄関の鍵を掛け、門扉を開ける。
朝食でも食べに行こうかと家を出た。
これといって食べたいものもないので、適当に歩き出す。
一応、大事を取って(?)制服を着てきた。
勿論さっきまで来てたのとは別のやつだが、朝っぱらから警官なんかに話しかけられるのも面倒だ。
ミセ*゚ー゚)リ「ジャージとかでも良かったんだけどね」
スポーツウェアの類ならジョギング中とかに見てくれるだろうけど、この制服も着収めだから
こっちにしてみた。
ヽミセ*゚ぺ)リノ「もう少しかわいいデザインだったら良かったのに……」
それなら制服を着るためだけに学校に通っても良かったかもしれないとバカな事を考えてみる。
・・・・
・・・
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:26:14.77 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ;゚ー゚)リ「……」
道を進み角を曲がり、歩く事約15分ほど。
周りを見回せば住宅街。
どう見ても飲食店の類は見受けられない。
別にこの辺りは不慣れな場所じゃないし、道に迷ったりはしない。
足の向くまま歩いて来たらここに来ただけで、特に他意はなかったはずなのだが。
ミセ;゚ー゚)リ「……かな?」
目の前にある一軒の家。
平屋建ての少し古い家。
小さな庭もあり、いっぱいに干された洗濯物がその家の住人の勤勉さを物語る。
ミセ;゚ー゚)リ「この辺では珍しい苗字だし……」
その門の表札には都村とある。
私の知る限りでは、この苗字を持った人間は1人しか知らない。
確か三丁目の方に住んでるとは言ってたし、奇しくもここは三丁目。
進むに任せた私の足が、ここに向かったのは何とも恐ろしい偶然だ。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:29:32.25 ID:jPTt1Zb7O
-
そう、偶然なわけがない。
無意識というか、気付いていながらそちらに足を向けていたのだ。
目的は……何だろう?
明確にあったわけではないし、何となくとしか言えない。
どうせ見つからないだろうと、駄目元な部分もあった。
こんな簡単に見つかるとは計算外だったが。
ミセ;゚ー゚)リ「……どうしよう」
他人様の家の門の前でぼーっと突っ立ってるのははなはだ不審者だが、何といってお邪魔するべきか。
それ以前に朝っぱらからお邪魔するのは失礼な気もするし、そもそも私は入りたいのかどうかわからない。
私は何しにここに来たのか。
それがよくわかっていないのだから。
何故委員長の家に足が向かったのか。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:32:26.20 ID:jPTt1Zb7O
-
<「それじゃあ、ゴミ捨ててくるぞー」
ミセ;゚ー゚)リ「うぇ!?」
ノパ听)「お?」
家の中から聞こえてきた大声とともに、玄関のドアが勢いよく開けられる。
不審者然としていた私は、中から飛び出してきた小学生ぐらいの女の子と目が合ってしまった。
ミセ;゚ー゚)リ「うぁ゙……えっと……その……おはようございます」
ノパ听)「おはよーございまーす!」
視線を外し、逃げ出すかとも考えたが、それこそまさに不審者なので何とか自然な挨拶を搾り出してみた。
女の子は元気よく挨拶を返し、しばし私の姿を観察した後、何か思いついたのか玄関のドアを開ける。
ノパ听)「おねーちゃーん、お客さんだぞー」
ミセ;゚ー゚)リ「うぇ!? あの、ちょっと!?」
どうやら制服からそう判断したのだろうが利発な子だと思う。
ただもう少し心の準備をする時間は欲しかったところだが。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:34:37.22 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「お客? こんな朝から誰が……」
ミセ;゚ー゚)リノ「はろー」
(゚、゚トソン「……」
私の努めて爽やかな挨拶に固まる委員長。
その合間に妹さんらしき女の子は一礼をしてゴミを袋抱えて走っていった。
礼儀正しい娘さんである。
(゚、゚トソン「何しに来たのですか?」
ミセ;゚д゚)リ「冷た!」
ようやく事態を理解したのか、おおよそ予想通りの反応で出迎えてくれる委員長。
私はここに来たわけを説明すべく口を開こうとしたが、よく考えたらここに来た理由が特に思いつかない。
ミセ;゚ー゚)リb「いや、そのあれだよ……えっと……」
(-、-トソン「朝は私も少し忙しいのですが……」
しどろもどろな私に、更に冷たい言葉を下さる委員長。
流石に非常識すぎて怒らせてしまったのかもしれない。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:37:08.33 ID:jPTt1Zb7O
-
ノパ听)「おねーちゃん、お客様に失礼だぞー?」
(゚、゚;トソン「ヒート? いえ、この人はお客様とかではなくですね……」
ゴミ捨てから戻って来た妹さんらしき女の子が委員長をたしなめる。
いつも他人に礼儀を持って接するように言ってるのはお姉ちゃんだと妹さん、ヒートちゃんは言う。
(゚、゚;トソン「そ、それはそうなんですが、この方は特にお客様というわけでは……」
ミセ*゚ー゚)リ「朝ご飯!」
(゚、゚;トソン「はい!?」
ミセ*゚ー゚)リ「ほら、食べたいなら食べに来いって」
(゚、゚;トソン「あ……」
ようやく理由を見つけられた私に、委員長はひどく渋い顔を見せる。
昨日の朝、そう言ったのはおそらく私が朝起きられず、来る事は絶対無いと高をくくってたからなのだろう。
(゚、゚;トソン「あ、あれは言葉の綾と言うか、その……」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:40:03.55 ID:jPTt1Zb7O
-
ノパ听)「おねーちゃんがそう言ったのかー?」
なおも渋る委員長に、ヒートちゃんが問い掛ける。
委員長は苦い顔のままヒートちゃんの方へ首を向けた。
(゚、゚;トソン「確かに言いましたけど、その……」
ノパ听)「それなら約束は守らなきゃ駄目だぞー」
(-、-;トソン「……はい」
ノパ听)「どーぞ、おあがりくださーい」
ミセ*゚ー゚)リ「ありがと、ヒートちゃん」
私は元気よく出迎えてくれるヒートちゃんに案内され、委員長の家に上がらせてもらう。
委員長は何かぶつぶつ言いながらも、私の後に続く。
口達者な委員長も、妹さんには弱いらしい。
キッチンと言うか台所と言うべき部屋に案内され、席を勧められる。
ヒートちゃんは手を洗ってくると言って台所を出て行った。
委員長はそのまま流し台の方へ向かう。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:43:12.78 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅ……ん?」
席に着き、一息ついたところで誰かの視線を感じた。
委員長はぶつぶつ言いながらも朝ご飯の支度をしているようなのでこちらは見ていない。
とすると、この視線は……
壁|<)
壁|ω^)
ミセ;゚ー゚)リ「お?」
壁|彡 サッ!
壁|彡 サッ!
台所の入り口、私が入ってきた方ではなく、ヒートちゃんが出て行った方の所に2つの小さな顔があった。
視線が合うとサッと隠れてしまったが、そのタイミングでは少々遅いと思う。
ノパ听)「2人とも、ちゃんとお客さんに挨拶しないと駄目だぞー?」
(;><)「わ、わっ!?」
(〃^ω^)「お!」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:46:39.58 ID:jPTt1Zb7O
-
ヒートちゃんに押しやられるようにして2つの小さな影が私の方へ歩いてくる。
小学生ぐらいの男の子と、まだ幼稚園ぐらいと思しき男の子。
ミセ*゚ー゚)リ「おはよう」
(;><)「お、おはようございますなんです」
(〃^ω^)「おはよーだお!」
おっかなびっくり挨拶をしたのがお兄ちゃんのビロード君、元気よく挨拶してくれたのが弟のブーン君らしい。
それにヒートちゃんを加えて委員長は4人兄弟らしい。
人見知りするらしいビロード君はちょっとぎこちなかったけど、どうやら概ね歓迎してくれているようだ。
お客さん自体が珍しいのか、随分と注目の的である。
気を使ってか、ヒートちゃんが色々聞いてきてくれたので打ち解けるのは早かった。
本当によく出来た子だ。
それ以外に家族の姿が見られない事や、食事の支度を委員長がやってる事を考えれば、色々聞きたい事もあるのだが、
一応は空気の読める私は、小さな子供の前ではそういった質問は避けることにする。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:49:08.83 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「さあ、出来ましたよ」
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「おー!」」」
食卓に並べられるおかずの数々。
ほとんど前日の晩ご飯の残りや、簡単なものしかないと言う委員長。
(゚、゚;トソン「来るなら前もって言ってくれればもう少しマシなものを用意出来ましたのに……」
ミセ*゚ー゚)リ「いやいや、十分十分。すげー美味そうじゃん」
小ネギの緑が鮮やかな玉子焼きを始め、素朴ながらも食欲を誘う色つやの良いおかずが並ぶ食卓。
すごく美味しそう。
お世辞じゃなくそう思う。
そんな私の言葉に委員長は少し困ったような引きつったような、最初の日に見たあの顔を浮かべる。
やはりそれは私の想像通り、照れているの顔なのかもしれない。
ミセ*゚∀゚)リノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「「「いただきまーす」」」」」(-、-トソン
手を合わせるのもそこそこ、早速さっきから気になってた焼き立ての玉子焼きを一切れつまむ。
玉子焼きは甘いのも醤油味のもいけるが、ネギ入りとくればやはり個人的には醤油ベースだろう。
私はふんわりとやわらかい玉子焼きを口の中に放り込む。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:53:04.41 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚∀゚)リ「うめー」
香ばしい醤油の風味が口の中に広がり、卵の甘みと程よく混ざり合って期待通りの美味しさだ。
この玉子焼きだけでご飯2、3杯はいける。
ミセ*゚ー゚)リ「こっちも美味いなー。この黒いの何だっけ?」
(゚、゚トソン「それはひじきですよ。海産の褐藻です」
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、これがひじきか。すっごい昔には食べた事あるような」
(゚、゚トソン「一般的なものですから、市販のお弁当などにもよく添えられてると思いますが」
ミセ*゚ぺ)リ「ほとんどカップ麺とかだしなー」
(゚、゚;トソン「あまり感心しない食生活ですね……」
ミセ*゚ー゚)リ「まあ、そんな事よりおかわり」
(゚、゚;トソン「もう食べたのですか?」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 22:57:26.29 ID:jPTt1Zb7O
-
ノハ*゚听)「私もおかわりー!」
(〃^ω^)「僕もおかわりだお!」
(;><)「モグモグ……モグモグ……ゲホッ……ぼ、僕もおかわりなんです!」
(゚、゚;トソン「3人とも、そんな慌てて食べなくていいんですよ?」
私の食べっぷりに呆れた様な顔を見せた委員長だが、ヒートちゃん達も私に負けずにおかわり連呼したので、
その顔はいつしか笑顔になっていた。
特に、普段は小食のビロード君までおかわりをしてくれたのが嬉しかったらしい。
そういえば委員長の笑顔を見たのはこれが初めてかもしれない。
ミセ*゚ー゚)リ「いやー、こんなに美味いと食が進むね。おかわり」
(゚、゚;トソン「居候、3杯目にはそっと出し、という言葉をご存知ですか?」
ノパ听)「おねーちゃん、ミセリさんはお客さんだぞー?」
(-、-;トソン「……はい、そうでしたね」
すかさずヒートちゃんにたしなめられる委員長。
ご厚意はありがたいが、流石に少しは遠慮すべきかなと思い始めてもいる。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:00:38.98 ID:jPTt1Zb7O
-
しかし、委員長がお弁当箱の中からご飯をよそったのを見て時既に遅かったのを知る。
ミセ;゚ー゚)リ「あー、その、お昼の分まで食べる気は……」
(゚、゚トソン「今更何ですか? 別に構いませんよ。お昼は購買で買えばいいですし」
ミセ;゚ー゚)リ「でも……」
(゚、゚トソン「大したことのない食事ですが、それだけ美味しそうに食べて頂ければ作った甲斐もあったというものです」
そういってこんもりとご飯の盛られた茶碗を私に突き付ける。
言葉通り、少し嬉しそうな表情の委員長だった。
委員長も自宅では結構笑顔を見せてくれるらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「んじゃ、ありがたく」
私は茶碗を恭しく受け取り、新たなおかずを求め食卓の隅々まで目を走らせる。
玉子焼きは既に全滅。
昨日の残りという味のよく染みた煮しめもあらかた食べ尽くした。
ミセ*゚ー゚)リ「お! ハンバーグ見っけ!」
ノパ听)( ><)( ^ω^)「「「!」」」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:02:15.34 ID:jPTt1Zb7O
-
これも昨日の残りだと聞いていたハンバーグが1つだけ残っている。
デミグラスソースのハンバーグに箸を伸ばすと、6つの目がハンバーグに集うのがわかった。
ミセ*゚ー゚)リ「ん? ……ひょっとして食べたかった」
( ><)(〃^ω^)「「うノパ听)「ミセリさんはお客様だから遠慮するなー」
表情を輝かせ、肯定の返事をしようとしていた2人をヒートちゃんが遮る。
ビロード君もブーン君もそんなヒートちゃんに合わせて私にハンバーグを食べるように勧めてきた。
目はしっかりハンバーグに固定されたまま。
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとね。でも、子供が遠慮しすぎちゃいけないなー」
あなたも子供でしょうにという委員著の呟きは無視し、ハンバーグをお箸で5つに切り分ける。
少々大きさが不均等になったけど、それをそれぞれのお皿に取り分けてあげる。
(〃^ω^)「おー!」
( ><)「ありがとなんです!」
ノハ*゚听)「ありがとー」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:04:06.22 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「私は別に……」
1人微妙な表情を見せた委員長だが、ヒートちゃん達が喜んでるのを見て私に礼を言ってくる。
そもそも勝手にお邪魔して人のご飯食べてる私が礼を言われるのもどうかと思うが、喜んでもらえて幸いだ。
ミセ*゚ー゚)リノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「「「ごちそうさまでした」」」」」(-、-トソン
こうして賑やかな食事は幕を閉じ、後には綺麗に平らげられて空っぽのお皿が並ぶ食卓だけになった。
ヒートちゃん達3人は、自分の使った分の食器を流し台に運ぶ。
それを委員長が洗い、3人はそれぞれ学校へ行く支度をしに部屋に戻ったようだ。
ミセ*゚ー゚)リ「偉いね、あの子達」
(゚、゚トソン「普通の事ですよ。……しかしまあ、素直な良い子達に育ってくれたとは思います」
例の引きつったような照れ顔は弟妹達が褒められて嬉しいからなのか。
これまででわかったのは、どうも委員長は親馬鹿らしい事だ。
親ではないのだろうけど。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:06:19.43 ID:jPTt1Zb7O
-
ノパ听)「それじゃあ、いってくるぞー!」
学校に行く準備を済ませたらしいヒートちゃん達が戻って来たのでそこで一旦話を切った。
委員長は3人の身嗜みを確認し、大きく頷く。
(゚、゚トソン「車に気を付けるのですよ。ヒート、2人をお願いしますね」
ノパ听)ノ「わかってるぞー。それじゃあ、いってきまーす! ミセリさん、またねー」
( ><)ノ( ^ω^)ノ「「いってきまーす」」
ミセ*゚ー゚)リノ「いってらっしゃーい&またねー」
(゚、゚トソン「いってらっしゃい」
委員長と一緒に門のところまで出て、3人が仲良く並んで登校するのを見送った。
3人の姿が見えなくなるまでずっと見送っていた委員長は、やはり少し親馬鹿なのではないかと思う。
(゚、゚トソン「さて、お茶でも淹れますか」
ミセ*゚ー゚)リ「ん? そんなのんびりしてていいの?」
再び委員長の家の台所に戻り、食卓に着く。
そう言いつつも出されたお茶は素直に受け取っているのだが。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:09:46.43 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「今日はあなたの家に寄らなくてもよさそうですしね」
制服姿の私を指差し、時間の余裕はあると言う委員長。
そう言えばそうだが、わたしは別に学校に行くつもりはなかったのだが。
(゚、゚トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
そして訪れる沈黙。
お茶をすする音と冷蔵庫のモーターの音が台所に響く。
お互い聞きたいことは色々あると思うのだが、聞いていいのか迷っているのかもしれない。
少なくとも、私は委員長の家の事で聞きたいことがあるし、委員長も私が何故早起きしてまで来たのか聞きたいだろう。
(゚、゚トソン「うちは両親が共に忙しいのですよ」
そんな空気を察してか委員長が自分から話し出す。
恐らく私が聞きたがってると思われる事を。
(゚、゚トソン「父親は単身赴任ですし、母親は時間が不規則な仕事ですので」
もっぱら家の仕事、弟妹達の面倒を見るのは委員長の役割らしい。
昨日の用事もそういった理由のようだ。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:11:35.92 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ;゚ー゚)リ「何か朝っぱらから起こしに来てもらったりして悪かったね」
その位なら時間の余裕はあったから気にするなと言う委員長。
気を使ってくれているのだろうが、流石に負担だった事は言わなくとも察せられる。
ミセ*゚ー゚)リ「しかし、大変だね。毎日3食用意して、あの子達の面倒を見て……」
(゚、゚トソン「いえ、面倒とかそういうのではありませんよ。家族ですしね」
親馬鹿委員長は臆面もなくそう言ってのける。
本当にあの子達が、家族が大好きなのだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「でもさ、やっぱり両親がちゃんと帰ってきて、お母さんの料理とか食べられる方がさ?」
委員長の気持ちはわかったが、多少なりとも子供らしく親に甘える事もあっても良さそうなものだ。
しかし委員長は、母親は料理が下手だと一蹴する。
ミセ;゚д゚)リ「そういう話じゃなくてさ……」
(゚、゚トソン「わかってますよ。あなたの前でこういう話をしていいのかわかりませんが……」
私の前で両親について語るのは気が引けると委員長は言うが、今更そんな事は気にしてない。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:14:33.69 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「そうですか……」
委員長は自分が両親に対して思っている事を話してくれた。
もっと暇のある仕事に転職して、家族といる時間を大切にして欲しいと思うのが本音だが、それは両親が
選んだ道だし、その稼ぎで養ってもらっている自分が言うべき話ではないと。
何とも委員長らしい真面目な意見だが、もう少し子供らしくあってもいいんじゃないかとは思う。
(゚、゚トソン「そうですね。そう思いますが……」
ミセ*゚ー゚)リ「が?」
(゚ー゚トソン「こうやってあの3人の成長を見守るのもとても楽しいのですよ」
そう言ってにっこり微笑む委員長はとてもかわいらしかった。
普段からそうやって笑えばもうちょっと付き合いやすいのにね。
そういうところは不器用なのだと思う。
しかし、本心からそう思える委員長が羨ましかったのは確かだ。
家はそんなに大きくないし、両親は共働き。
お世辞にも裕福とはいえない暮らしではあろうが、委員長はとても幸せそうに笑う。
家族と一緒に。
私には到底かなわない今を委員長は持ち合わせている。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:17:01.73 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「すみません、少し配慮がありませんでしたね」
笑顔を見せながらも内心少し凹んでいた私の様子に気付いたのか、委員長がすまなさそうに言う。
私は片手を振り、気にしないで欲しいと笑って見せた。
ミセ*゚ー゚)リ「もう慣れたし、私は私で悠々自適な暮らしを送ってるからね」
いつものウソではない言い回しで私はその場を繕う。
委員長は一瞬何か言いたげな表情をして見せたが、何も言わずに立ち上がった。
(゚、゚トソン「そろそろ行きましょうか」
ミセ*゚ー゚)リ「ん? 学校? まだ早くない?」
ここから学校までなら今から出たら少し早すぎる時間に着いてしまう。
そう主張するが、委員長は1つ見落としていたからと私の傍らを指差す。
(゚、゚トソン「手ぶらで学校に行くつもりですか?」
ミセ;゚ー゚)リ「いやー、別になくてもよくね?」
当然のごとく私の申し出は却下され、今日もあの思い鞄を持つ羽目になるようだ。
・・・・
・・・
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:19:47.86 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ;゚д゚)リ「重い〜、暑い〜」
(゚、゚トソン「もう3日目ですし、いい加減慣れたのでは?」
確かに初日よりは慣れた気はするが、それでもか弱い女子高生が持つにはいささか重過ぎる鞄だと思う。
今日は体育もあるらしいので、体操服の分鞄は軽いが、体操服は体操服で別の袋で持って来ているので重量は大差ない。
昨日、一昨日と同じ様に、私たちは2人並んで学校に向かう。
今日は学校に行く気はなかったと言い出せぬままだ。
言い出せなかったのか言いたくなかったのかはわからないが。
(゚、゚トソン「やはり運動不足だと思いますよ?」
委員長は当たり障りのない話だけで、今朝の事や私が今後どうするのかと言ったような話はしてこない。
昨日の帰りに言った様に、考える時間をくれているのかもしれない。
ミセ*-へ-)リ「運動は得意な方なんだけどね」
球技とか短距離とか、そういうのは今やっても問題なくこなせる自身はあるけど、体力は落ちてるだろうな。
マラソンとかは絶対にやりたくない。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:22:22.54 ID:jPTt1Zb7O
-
委員長も運動は苦手ではないらしい。
委員長然とした外見からは想像出来ないが、あの重い鞄を軽々と持ってるところから見ても腕力はある方だろう。
家事もテキパキこなすし、そういった意味では鈍くさくもない。
ミセ*゚ー゚)リ「あ、そうだ。お昼は私がおごるからね、屋上で待ってて」
(゚、゚トソン「いえ、結構ですよ」
ミセ*゚ぺ)リ「えー、なんでさー?」
委員長もお弁当分まで食べ尽くしたのだ。
お昼をおごるぐらいしても罰は当たらないと思うのだが、委員長はきっぱりと断ってくる。
招待したのは自分だからと。
ミセ*゚ー゚)リ「だとしても食べ過ぎたしさ。美味しかったしそのくらいはさせてよ」
遠慮せずとも私の懐は暖かいのだ。
そう少しおどけた調子で言ってみたが、委員長は逆に表情を曇らせた。
(゚、゚トソン「そのお金はあなたのためにお亡くなりになったご両親が残してくださったものなのでしょう?」
委員長はいつだって真面目に私の事を考えて話してくれる。
ちょっと固すぎ、真面目すぎだけど、それでも相手の事を考えての事だというのはよくわかる。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:25:22.01 ID:jPTt1Zb7O
-
でも、私は……
ミセ*゚ー゚)リ「……違うよ」
(゚、゚;トソン「え?」
立ち止まり、声のトーンを落として答える。
それを聞いた委員長も足を止め、私の顔をまじまじと見詰める。
ミセ*゚ー゚)リ「両親が残してくれたのは借金が少し」
(゚、゚;トソン「え……では……」
ミセ*゚ー゚)リ「それを返したのは私、稼いだのもね。厳密には、実際に働いたのはお兄ちゃんなんだけど」
(゚、゚;トソン「それはどういう……」
ミセ*゚ー゚)リ「聞きたい?」
頷く委員長。
視線は私の目に固定されたままだ。
ミセ*゚ー゚)リb「だったら昼休み、屋上でね」
委員長はもう1度、深く頷いた。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:28:12.56 ID:jPTt1Zb7O
- ・・・・
・・・
ミセ*゚ー゚)リ「お待たせー」
(゚、゚トソン「ご苦労様です」
昨日と同じく青空が広がる真昼の屋上。
少し風があるお陰で、汗ばむほどではない。
午前中の退屈な授業が終わるとすぐ、私は購買へ向かいパンを買って来た。
委員長は一足早く屋上で私を待っていた。
ペニサス達にはあらかじめ2人だけにしてくれるように言ってある。
詳しくは話していないので、変な誤解だけはしないで欲しいものだ。
ミセ*゚ー゚)リ「えーっと……どこにしようか……あ、委員長、こっち!」
構内から屋上に出る階段の屋根ともで言うべき部分。
その上に登り、腰を下ろす。
ヽミセ*>ー<)リノ「うーん、やっぱり高いところは気持ちがいいねー」
(゚、゚トソン「やはり高いところが好きなんですね」
ミセ;゚ー゚)リ「やはりって?」
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:31:39.31 ID:jPTt1Zb7O
-
私は持っていた紙袋の中からパンを取り出し、委員長に渡す。
好き嫌いはないという事だったので、私の趣味で適当に選んで来た。
(゚、゚;トソン「多すぎませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「このくらいは入るでしょ? はい、飲み物もね」
紙パックのお茶といちご牛乳を差し出すと、委員長は少しためらった後、お茶を選んだ。
大方、飲み物まで受け取っていいのか迷いでもしたのだろうが、毒を食らわば皿までと割り切って欲しいところだ。
毒じゃないけども。
ミセ*゚ー゚)リ「さて、食べよう」
(-、-トソン「いただきます」
例によって礼儀正しくきちんと手を合わせる委員長。
私もそれに倣い、パチンと手を合わせる。
今日も美味しいご飯を食べられる事に感謝。
ミセ*゚ー゚)リ「やっぱサンドイッチはハムチーズが最高」
(゚、゚トソン「私は卵ですね」
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:34:30.07 ID:jPTt1Zb7O
-
食べ始めてしばらくは、割とどうでもいいような食べ物の話ばかりだった。
こちらが話し出すのを待ってくれているのか、委員長からは話を振って来ない。
話すつもりで呼んだのだから、今更勿体つける意味もないので頃合を見て本題を切り出した。
ミセ*゚ー゚)リ「私のお父さんは、会社の社長さんだった」
だから、元々はお金持ちだったと私は委員長に説明する。
しかしある時、事業の失敗やら社内紛争やら、当時はよくわからなかったからあまり覚えていないのだが、とにかく
色々まずい事が重なって経営が傾き、会社は他人の手に渡ったらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「んで、残ったのは借金と、あのお家」
当然借金を返せないとあの家は差し押さえられるわけだから、事実上は借金しか残ってなかったわけだ。
でも、それは間違いだ。
ミセ*-ー-)リ「借金だけじゃなく、家族も残ってたのにね。何であんな短絡的なことを考えたんだか……」
(゚、゚トソン「……」
私の言葉に委員長が息を飲んだのがわかった。
私が言おうとしている事に気付いたのならやはり勘が良いと言わざるを得ない。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:37:15.72 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚ー゚)リ「……未遂だったけどね」
小説やドラマの中なんかではよくある話。
自分に多額の生命保険をかけて、というやつだ。
自殺でも保険が下りるのかよくわからないけど、とにかくそういうことらしかった。
(゚、゚トソン「未遂……?」
ミセ*゚ー゚)リ「そ、失敗」
(゚、゚トソン「では、そのご両親は……」
ミセ*-ー-)リ「交通事故」
よりによって覚悟を決めたその日に2人を乗せた車は事故にあった。
どうして自殺云々の話がわかったかは、車に積んであった練炭やらガムテープから警察の人がそう判断したらしい。
ひょっとしたら私達も含めて心中の線も有り得たかもしれないとの話だったけど、本当の所はわからない。
もしそうだったのなら、私は運が良かったと言うべきなのかもしれない。
でも、あのお母さんが私達をも巻き込むような選択をするとは思えなかった。
しどろもどろになりながら、神様の話をするお母さんの顔を思い浮かべると。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:40:14.47 ID:jPTt1Zb7O
-
あの日も本当はお父さんを止めようとしていたのかもしれない。
私はそう思う。
そう思いたいだけなのかもしれないが。
ミセ*゚ー゚)リ「それでまあ、無事保険金も下り、それを借金に当てたわけだけどちょーっと足りなかったのよね」
私は自嘲気味に言う。
初めて他人に向かって話す事だけど、不思議と感情は平坦なままだった。
ちゃんと割り切れているらしい。
あの時に泣くだけ泣いたのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「残された手段は、あの家を売るくらいだったんだけど……」
お兄ちゃんからその話を聞かされた時はまた泣いたと思う。
大切な家族を亡くし、その想い出の詰まった家まで失う。
まだ子供だった私には到底耐えられなかった。
まあ、今でも子供なんだけど。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:43:10.51 ID:jPTt1Zb7O
-
(゚、゚トソン「しかし、今でもあの家に住んでますよね?」
そんな茶々を入れることもなく、真面目な顔で委員長は聞いてくる。
私は手元の袋を漁り、パンを1つ取り出す。
ミセ*゚ー゚)リ「うん、借金返したからね」
(゚、゚トソン「どうやってですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「それは……」
私はパンの包みを開け、中からパンを取り出して齧り付く。
チーズフランスは私の好きなパンの1つだ。
委員長もそれに倣ったわけでもないだろうが、同じくパンの包みを開けて食べ始める。
ミセ*゚〜゚)リ「私が──ムグ──様に──モグ──」
(゚、゚;トソン「話すのは飲み込んでしまってからでいいですから」
ミセ*゚〜゚)リ「ゴクン──失礼。私が神様にお願いしたから、かな?」
(゚、゚トソン「かみさま……?」
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:46:24.26 ID:jPTt1Zb7O
-
きょとんとした顔で問い返す委員長。
流石に唐突過ぎたか、それが何を指しているのか全くわからないらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「そ、神様だよ。私のね」
私はストローを加え、いちご牛乳を口に含む。
甘すぎるぐらい甘ったるい、人工的ないちごの味が口の中に広がる。
委員長はしばし顎に手を当て、何かを考えている風だったが、やがて何かに気付いたのかおずおずと口を開く。
(゚、゚トソン「それはあの、サイダーの……?」
ミセ*゚ー゚)リb「正解」
左手の人差し指を立て、委員長の方に軽く振る。
委員長は尚も難しい表情を浮かべているが、それも当然だろう。
答えたようで、本質的には答えていない。
むしろ、委員長の中で謎が増えたのかもしれない。
それとも、既に私がおかしくなったとでも判断してしまっているだろうか?
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:49:35.69 ID:jPTt1Zb7O
-
私がおかしいかおかしくないかの判断は委員長に任せて、私は私の話を続ける。
単なる事実の羅列。
どの様にして今に至ったかを。
ミセ*゚ー゚)リ「お兄ちゃんと私は、ちょっと歳が離れてるんだ」
唐突に先程までとは違う話を切り出す。
何の脈絡もないように見えるが、これも一連の流れの説明には必要な事なのだ。
委員長はその辺を理解してくれているのか、何も言わずに私の話に耳を傾けてくれる。
私がまだ小学生だったあの頃、お兄ちゃんはもう大学生だった。
兄妹仲は良いとか悪いとか以前に、お兄ちゃんは大学へ通う為に一人暮らしをしていたので、そんなに話す事もなかった。
突然の両親の死にいったん自宅へ戻りはしたお兄ちゃんだが、事後処理には随分頭を悩ませた事だろう。
成人していたとは言ってもまだ学生だ。
私の知らぬ苦労を背負わされていたと思う。
すごく疲れた顔をしながらも、心配するなと頭を撫でてくれたあの手の大きさは覚えている。
とても大きく、暖かい手だった。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:51:55.27 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚ー゚)リ「社交的で頭も良かったお兄ちゃんだけど、ちょっと変わった趣味があったんだ」
(゚、゚トソン「趣味ですか? それは……聞いてもよろしいので?」
ミセ;゚ー゚)リ「変わったといっても、人に話せないような変なという意味ではないからね?」
神妙な顔で聞き返して来る委員長に、私は若干の訂正を入れる。
ミセ*゚ー゚)リ「株取引、いわゆるデイトレードってやつ?」
経済学部だったお兄ちゃんは、学校の先輩に勧められそういったものも勉強していたらしい。
あんまりそういうの仕組みとか知らないから詳しくはわからないけど、お兄ちゃんはその当時から将来そういう仕事に
就きたいとは考えていたようだ。
(゚、゚トソン「なるほど、つまりそれでお兄様ががんばって借金を返されたと」
さすがに察しがいい委員長。
まあ、ここまで話せばそういう結論に達するのは当然かもしれない。
しかし……
(゚、゚トソン「それとあなたがどう関係してくるのですか?」
あなたと、その神様がと委員長は言う。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:54:05.49 ID:jPTt1Zb7O
-
流石にその件と一介の高校生、当時は小学生の私を結びつけるのは難しいのか、それとも答えの推測は出来ているけど
認め難いのかはわからないが、委員長は私をじっと見詰め、答えを待っている。
私はストローをくわえ、残りのいちご牛乳を飲み干し、喉を潤した。
話す事はもうあと少しだけだ。
ミセ*゚ー゚)リ「神様がね、流れを教えてくれるの」
(゚、゚トソン「ながれ?」
流れと空中に文字を書いて見せ、言葉を続ける。
ミセ*-ー-)リ「空気の流れ、空の流れ、場の流れ、色んなものの流れが見えるんだ」
コップの中のサイダー越しに、神様の中を通して。
私の目に映る流れ。
ミセ*゚ー゚)リ「そんな役立つ様なものでもなかったんだけどね」
いつからだろう。
お母さん達が亡くなって、悲しくて、泣きながら飲んだサイダーに、言葉では説明出来ない何かが見えた。
それが空気の流れだと気付いたのはだいぶ後だったけど、突然今日は雨が降るんだとかいうのは何となくわかってしまった。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/21(土) 23:57:18.37 ID:jPTt1Zb7O
-
ミセ*゚ー゚)リ「そんなのわかったって、何もならないしね」
(゚、゚トソン「洗濯物は助かりましたよ」
ミセ*-ー-)リ「それは良かった」
委員長の言葉に、私は軽く笑ってみせる。
気を使ってくれているのだろうけど、その辺は私がよくわかっているのだから気にしないで欲しいものだ。
ミセ*゚ー゚)リ「で、まあ、そんな時に見ちゃったんだよね、あるものの流れを」
サイダー越しに広がるブルーバックの画面。
見ようとして見たわけじゃない。
たまたま、隣で作業をしていたお兄ちゃんの手元を見るとはなく見ていたのだ。
そして浮かぶ聞いたこともない名前。
お兄ちゃんは私の口から漏れた言葉を耳聡く聞き、興味があるのかと、笑っていた。
ミセ*゚ー゚)リ「でも次の日、お兄ちゃんが顔色を変えて私に詰め寄ってきたっけな」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 00:00:07.69 ID:aBcqPB2LO
-
お兄ちゃんは私が挙げた名前を覚えていたらしい。
小学生の口から挙がるには珍しい名前だったからかもしれない。
私の事を気に掛けてくれてたからかもしれない。
そして次の日見た結果に驚き、私に聞いてきた。
どういう基準であの名前を挙げたのかと。
ミセ*゚ー゚)リ「お兄ちゃんの言ってる意味がよくわからなかった私は、そのまま話したんだ」
お母さんの事、神様のこと、天気の事、そして昨日の事。
お兄ちゃんは何かを考える様な顔で私の顔をじっと見詰め、やがてこう言った。
ミセ*゚ー゚)リ「もう1度やってみてくれないか、と」
そこから先はもう話さなくてもわかるだろう。
私には流れが見えたのだから。
お兄ちゃんはどんどん取引を成功させ、お金を稼いでいった。
やがて敏腕学生トレーダーとして有名になり、大学を卒業後もその活躍は続く。
ミセ*-ー-)リ「その結果、晴れて借金は完済。それどころか一躍大金持ちになりましたとさ」
(゚、゚トソン「……」
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 00:01:11.41 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「これで私の話はおしまい」
私は両手を広げ、肩をすくめて見せる。
なんとも荒唐無稽なお話に聞こえるけれど、これが私の身に起こった事実の全てだ。
初めて他人に話す事だし、多少話が整理されてないのは勘弁して欲しい所だ。
ミセ*゚ー゚)リ「何か聞きたいことある?」
(゚、゚トソン「それは今も?」
ミセ*゚ー゚)リ「株? たまにね。そんなに働かなくてもよくなったからね」
お兄ちゃんは今、自分で取引をするのではなく、コンサルタント的な仕事をしているらしい。
実績もあるし、流行ってるみたいだがよく知らない。
自分で稼げるのに何でそんな回りくどい事をしているのか疑問だったけど、多分他人にちやほやされたいんだと思う。
人に尊敬され、感謝される事に優越感を抱いてる節がある。
まあ、私には関係のないことだ。
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 00:03:26.80 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「そうですか」
ミセ*゚ー゚)リ「軽蔑した?」
(゚、゚トソン「何をですか?」
私の質問に眉1つ動かさず答える委員長。
私は視線をそらし、呟くように言う。
ミセ*゚、゚)リ「だって、ズルしてお金儲けしてるんだよ?」
(゚、゚トソン「ズル……ですか……。それはどうなのでしょうね」
ミセ*゚、゚)リ「え?」
自分は神様等という曖昧な存在は信じていないので不快に思われるかもしれませんが、という前置きを述べ、
委員長は言葉を続ける。
(゚、゚トソン「あなたが言う神様の教えは、多分科学的には立証できないでしょうね」
ミセ*゚−゚)リ「うん、そうだろね」
(゚、゚トソン「ともすれば勘違い、錯覚、悪ければ狂ったとしか思われないでしょうね」
ミセ*゚−゚)リ「……」
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 00:05:14.61 ID:aBcqPB2LO
-
私は無言で頷く。
委員長は、変わらぬ調子で言葉を続ける。
(゚、゚トソン「であれば、それがズルだという立証も出来ないわけですよ」
証拠もなく、根拠もない。
私以外が試しても、それが見えることはなかった。
お兄ちゃんも自分でやってみたらしいが何も見えなかったという。
(゚、゚トソン「とするとそれはやっぱりズルではない」
ミセ*゚−゚)リ「じゃあ、何かな?」
(゚、゚トソン「あなたが最初、私に言ったように勘というのが一番正しいのではないでしょうかね?」
ミセ;゚ー゚)リ「勘……?」
委員長の言い分はわかるし、私も色々考えはしたが、散々私が神様だとか何とか言ってるのを勘の一言で片付けられると
複雑ではある。
その概念は理解出来ると委員長は言うが、実在するとは到底思えないとのことだ。
(゚、゚トソン「だから別に問題はないでしょう。法に触れているわけでもなく」
ミセ;゚ー゚)リ「でも……」
(゚、゚トソン「でも、それでもあなたがズルだと思うのなら」
ミセ*゚−゚)リ「……」
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 00:09:06.53 ID:aBcqPB2LO
-
(-、-トソン「それはあなたがそう思うから、あなたがそれを嫌がっているからではないのですか?」
ミセ*゚−゚)リ「……嫌がって」
ジジジと言う低い音と振動がし、少しの間をおいて安物のスピーカーから予鈴が聞こえて来た。
昼休みはもうおしまい。
話もここでおしまいだ。
ミセ*゚−゚)リ「私は……」
私は立ち上がれない。
委員長も立ち上がらない。
教室に向かわなければ、もうすぐ授業が始まってしまう。
引きこもりの私が授業に出ないのは構わないけど、委員長が授業に出ないのは良くないんじゃないかと思う。
(゚、゚トソン
でも、委員長は立ち上がらない。
ミセ*゚−゚)リ
どうして委員長は立ち上がらないのか、私にはわからなかった。
〜 後編@ 終わり 〜
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:19:12.36 ID:aBcqPB2LO
-
〜 後編A 〜
心のどこかで気付いていたのかもしれない気持ちを、あからさまに指摘されたから。
引きこもった理由。
私が全部どうでもよくなった理由。
何もわからなかったあの頃、お兄ちゃんが笑ってくれて、あの家に住む事が出来て。
ただ何もわからずに、私は悲しみを乗り越えて笑うことが出来る様になっていた。
神様がくれた幸せ。
でも、それはいつしか私を1人にしてしまった。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:21:47.55 ID:aBcqPB2LO
-
2度目のチャイムが鳴る。
時間切れの合図が鳴った。
ミセ*゚ー゚)リ「チャイムが鳴ったよ。次は数学だっけ? 戻らないとまずいでしょ、号令かける人いないし?」
私は早口でまくし立てるように委員長に提案する。
しかし、委員長は私の方をじっと見詰めるだけで、立ち上がろうとはしない。
ミセ*゚ー゚)リ「どしたの? 委員長がサボりは流石に……」
(゚、゚トソン「何故、私は委員長と呼ばれるのでしょうね?」
ミセ;゚ー゚)リ「は?」
突然の事に私は間抜けな声を上げるしか出来なかった。
何を言い出すのかと思えば、委員長が委員長である理由など1つしかないだろう。
ミセ;゚ー゚)リ「そ、そりゃあ、委員長がクラスの委員長だからじゃないの?」
(゚、゚トソン「現在の所は確かにそうですね。しかしながら」
委員長は腕を胸の下辺りで組むような形にし、右手の人差し指をまっすぐに上に伸ばして続ける。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:23:12.17 ID:aBcqPB2LO
-
d(-、-トソン「学年が変わって早々、まだクラス委員も何にも決まってない内からそう呼ばれるんですが」
ミセ;゚ー゚)リ「ああー……」
何故か初対面の人もそう呼び、いつの間にかクラス中に伝播して、当然のごとくクラス委員に自分がつくような流れになる
と委員長は言う。
私が納得したように頷くと、委員長は眉間に皺を寄せた。
(゚、゚トソン「先程の話にありました、流れを読むというのが可能であるなら、この流れの理由も読めますか?」
ミセ;゚ー゚)リ「いや、それは読まなくてもわかるよ……」
(゚、゚;トソン「なんですと!?」
心底驚いた顔を見せる委員長。
何の話かと思えばそこに繋がるのか。
委員長が何を意図してそういう話に繋げたかったのかよくわからないが、先の件ならそう驚く話じゃないだろう。
(゚、゚;トソン「では、あなたには私が委員長と呼ばれる理由がわかるんですか?」
ミセ;゚ー゚)リ「見た目」
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:25:31.04 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚;トソン「見た……目……」
即答する私に、またも驚く委員長。
少しは意識してああいう髪型にしてるのかと思ったが、どうやら生粋の天然絞りらしい。
見た目から立ち居振る舞い、話し方までパーフェクトに委員長だというのに。
(゚、゚;トソン「そういう話なのですか?」
ミセ;゚ー゚)リ「むしろ気付いていない委員長がすげーよ」
私は委員長の容姿や話し方の1つ1つを例に挙げて説明していく。
委員長はその1つ1つに頷いたり驚いたり、今までの中では一番表情をころころ変えて見せてくれた。
ミセ*゚ー゚)リ「眼鏡はポイント高いよ。コンタクトならだいぶ下がる」
(゚、゚トソン「眼鏡ですか……。コンタクトはちょっと怖いですから変えようがないですね」
高価なものだしと委員長は言う。
私としては、委員長はそのまま委員長然としていた方が似合ってると思うのだが、ひょっとして本人は嫌がっているのだろうか?
(゚、゚トソン「嫌というわけではないのですが……その、誰も苗字ですら呼びませんしね……」
違うクラスの子にまで委員長と呼ばれるのだと苦笑いを浮かべる委員長。
その姿が容易に想像出来るのが笑えてしまう。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:27:23.84 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「笑わないでくださいよ。一応悩んでいるのですから」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめん、ごめん。でもまあ、仕方ない部分もあると思うよ?」
(゚、゚トソン「仕方ないと言われましても、私はそういうのを意識してるわけでなく、単にそのままでいるだけなのですが」
ミセ*゚ー゚)リ「まあ、そうなんだろうけどね、他人がどう受け取るかはその人しだいだからさ」
(゚、゚トソン「それはそうなんですが」
ミセ*゚ー゚)リ「別に委員長って呼ばれた所で、実害はないでしょ?」
(゚、゚トソン「……実害ですか。そうですね……」
委員長はそこで言葉を切り、大きく息を吸い込む。
何事かと思う間もなく、委員長は再び口を開く。
(゚、゚トソン「まず、何かにつけて先生に呼ばれます。用事は主に雑用。至極どうでもいいような事で呼ばれることもあります。
委員長を便利屋か何かと勘違いしていらっしゃるのですかね? これはまた、同級生にも同じ様な事が言えます。
委員長がやってくれるから、みたいな態度が見て取れます。先日の掃除の件などがよい例ですね。
あんな風に放置され、誰かがやってくれる的な空気になった時に一斉にこちらに視線が集まります。
その場合、まず私が何か言わないと妙な沈黙が続きますし、気まずい事この上ないので仕方なく引き受けますが、
その返事もあらかじめ私が受ける事を前提に考えられたようなものがほとんどで、画一的なものばかりです。
大体、委員長に立候補した事は1度もなく、全ては他薦によるもので、時には知らない人から他薦を──」
ミセ;゚д゚)リ「ちょ、ま、ストップ、ストーップ!」
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:30:13.92 ID:aBcqPB2LO
-
早口に、しかし聞き取りやすいはっきりとした口調で苦情を並び立てる委員長。
顔色1つ変えずに言うその姿は、ほんの少し恐ろしさを感じさせたが、委員長も人間なのだから不平や不満の1つや2つ
あって当然だ。
1つや2つ所の騒ぎじゃなさそうだが。
ミセ;゚ー゚)リ「そんなに委員長やるの嫌だったの?」
(゚、゚トソン「いえ、そのこと自体は嫌ではありませんよ」
誰かやクラスやの為に何かをすること自体は嫌ではないと委員長は言う。
人の役に立ち、感謝される事はたとえ自己満足でも気持ちが良いものだと。
(゚、゚トソン「嫌いなのはそれをいい事に、自分がやるべきことを果たそうとしない人です」
ぴしゃりと言い放つ委員長。
私は、その堂々たる口ぶりに何故か拍手をしていた。
(゚、゚;トソン「何故拍手を?」
ミセ*゚ー゚)リ「いや、何となく?」
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:33:17.52 ID:aBcqPB2LO
-
聞かれても私もよくわからずに拍手をしていたのだから答え様がない。
強いて言うなら、演説が終わったから拍手をしなきゃいけない空気になったからぐらいだろうか。
そんな私に毒気を抜かれたのか、委員長は首を振り、先程よりは柔らかく感じる口調で言う。
(-、-トソン「まあ、悪い事ばかりでもないのですけどね」
当然、先生の受けは良いし、先の様な件でも注意したりする大義名分が出来るという。
(゚、゚トソン「それに、私の場合は家の事情も知られてますので、昨日のダイオードさんのように、気を使ってくれる人もいますしね」
ミセ*゚ー゚)リ「家の事情?」
両親が不在で、弟妹達の世話をしている話だと委員長は言う。
何でそんな話がクラスのみんなが知る所になっているのかと言うと、先生が美談として皆に話したらしい。
(゚、゚トソン「流石に後で抗議しに行きましたけど」
そんな事は自分の私事であって、みんなが気にする話ではない。
ましてや美談でもなんでもないのだからと委員長は言う。
(゚、゚トソン「よく、大変だねとか言われる事もありますが、大変でもなんでもないんですよ」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:36:47.35 ID:aBcqPB2LO
-
確かに育ち盛りの子供の相手をするのは疲れる事もあるが、それ以上に楽しい事も多いのだと言う。
面倒でもなんでもない、自分が好きでやってる事なのだと。
ミセ*゚ー゚)リ「あの子達かわいいしね」
(゚、゚トソン「ええ」
ミセ*゚ー゚)リ(謙遜も何もなしに即答とは、こいつはやはり親馬鹿……)
(゚、゚トソン「何か?」
ミセ*゚ー゚)リ「ううん、何でも。しかし、ヒートちゃん、えらくしっかりした子だね。小学生だよね?」
なかなか勘の良い委員長に、私はそ知らぬ顔で話題を少しずらす。
言ってみて思う事は、確かにヒートちゃんはしっかりしていたなという事だ。
しっかりし過ぎているくらいに。
(゚、゚トソン「やはりそう思われますか? 普段は子供らしいのですが、時折ものすごくしっかりして見える事があるんですよ」
面倒見の良いお姉ちゃんの部分は普段からあるのですがと委員長は呟く。
委員長も含め、兄弟の仲はとても良好に見えるのが微笑ましい。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:39:00.14 ID:aBcqPB2LO
-
(-、-トソン「両親はそれほどしっかりしていないのですけどね。全く誰に似たのやら……」
確実にお前だよというツッコミは飲み込み、軽く頷く。
弟妹達の話をしている時の委員長は本当に楽しそうだ。
委員長にとって家族がとっても大切なものだというのはよくわかる。
そんな委員長を眺めていたら、目が合った委員長は急に顔を引き締め、すまなさそうに口を開く。
(゚、゚トソン「すみません、配慮が足りず……」
私はそんなに羨ましそうにでも見ていたのだろうか?
委員長は私の前で家族の事を楽しそうに話した事を謝って来たようだが、何度も言うように気にしないで欲しいものだ
家族なら私にもまだいるのだから。
ミセ*゚ー゚)リ「いいってば。もう慣れたんだし。それより、だいぶ話がずれたみたいだけど……」
そもそも私の話をしていたはずが、いつの間にか委員長の話になっていた。
もう授業開始のチャイムが鳴ってから結構経ってしまっている。
今からでも委員長を授業に行かせるべきだろうか。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:42:12.08 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「そうですね。話が逸れてしまいました、すみません」
また謝ってくる委員長だが、私としては委員長の事の話は面白かった。
委員長の意外な一面というか、知らなかった事を色々知る事が出来てよかったと思う。
(゚、゚トソン「ですが、あながちそれほど逸れたわけでもないのですよ」
ミセ*゚ー゚)リ「どゆこと?」
(゚、゚トソン「私も委員長と呼ばれ、委員長としての役割はこなしていますが、それ以外の面も持っています」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃそうだろね」
至極当たり前の事を言う委員長。
未だにその意図がわからず、私は首を傾げて委員長を見る。
しかし、委員長がふとため息をついたかと思うと、急に視界から消えた。
それが委員長が後ろに倒れ込んで、仰向けに寝転がったのだと気付くのにはさほど時間はかからなかった。
(-、-トソン「数学は苦手なのですよ」
ミセ;゚ー゚)リ「は?」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:44:38.00 ID:aBcqPB2LO
-
寝転んだ委員長がぽつりと呟いた。
私はしばしその意味を考えていたが、考え付く前に委員長が再度口を開く。
(-、-トソン「満腹で午後一の数学はだるいです。たまにはサボりたい事もあります」
ミセ;゚ー゚)リ「へ?」
(゚、゚トソン「委員長でもね」
ミセ*゚ー゚)リ「……ハハ」
私は委員長と同じ様に、勢いよく後ろに倒れ込んだ。
青い空が視界一面に広がる。
何ともまどろっこしい前置きだったが、要するに話を続けようという提案だったのだろう。
委員長だからって、絶対授業をサボっちゃいけないわけでもないと。
いや、本来は授業はサボるべきものじゃないよね、うん。
私が言うなという話は置いといて。
ミセ*゚д゚)リ「回りくどい。つーかわかりにくい」
(゚、゚トソン「そうですか? それはあなたの理解力の問題では?」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:47:05.58 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚д゚)リ「いーや、10人が聞いて10人共わかりづれーよって突っこむレベルだよ」
(゚、゚トソン「そうですかね? 理路整然としてたはずですが」
ミセ*゚д゚)リ「大体初日から、あのカレーの例とかわけわかんない話してたしさ」
(゚、゚トソン「でも、あなたはあれで納得してたじゃないですか?」
ミセ*゚д゚)リ「あれは納得してたというか、煙に巻かれただけだよ」
(゚、゚トソン「煙に巻かれた等と難しい言葉をよくご存知でしたね」
ああだこうだと寝転がったまま言い争いを続ける私達。
数日前まで全く知らなかった人と何をやってるんだろうかと思う話だが、何だかすごく自然に話せていた。
そのほとんどが文句なんだけど、それはそれで本音トークだ。
くだらない、たわいもない言い合い。
あまりにくだらなさ過ぎて、いつしか吹き出して、笑ってしまっていた。
委員長も同じ様に笑っていた。
屈託なく、歳相応のかわいらしい笑いだった。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:50:12.83 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*-ー-)リ「数学嫌いだとか、そんな理由でサボる委員長とか初めて見たわ」
(-、-トソン「私も、引きこもり自体初めて見ましたよ。生引きこもり」
ミセ*-ー-)リ「生とか言うな。しかし残念、もう学校に来てるから引きこもりじゃないんだな」
(-、-トソン「授業をサボってるんだから同じ様なものですよ」
ミセ*-ー-)リ「お前もサボってるじゃんか」
(-、-トソン「先生には、ミセリさんに脅されてと伝えますので」
ミセ;゚д゚)リ「ふざけんなー!」
くだらない文句の言い合いもいつしか途切れ、私達はただ空を見ていた。
隣は何を考えているのかわからないが、私自身は色々考えてる事がある。
何で自宅で委員長に神様の話をしたのか。
何で委員長の家に行ったのか。
何でまた学校に来たのか。
何で神様の本当の話をしたのか。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:53:02.70 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*-ー-)リ「何でだろう……」
(゚、゚トソン「何がですか?」
考えてる事がいつの間にか口に出ていたらしい。
こちらを見ている委員長の視線に気付く。
ミセ*゚ぺ)リ「何で委員長に色々話しちゃったのかなーって」
話したといっても、実際は途中で途切れたままで全部ではないのだが、それでも何故委員長に本当の事を話したのか
私にはわからなかった。
しかし委員長は、勤めて平静な調子で答えを提示する。
(゚、゚トソン「あなたが話したかったからではないのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ
うん、そうかもしれない。
私が誰かに、委員長に話したかっただけなのだろう。
でも、それを何故かと聞かれたら、やはり私は正直に答える事が出来るだろうか?
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:56:05.62 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「そっちは、何であんな話したの?」
話を続ける口実なら、あそこまで回りくどく話さなくてもよかったはずだ。
委員長が私に話した理由は、ひょっとしたら私と……。
(゚ー゚トソン「私がミセリに話したかったからでしょうね」
ミセ* へ )リ「そっか……同じだね」
私は目を伏せ、湧き上がる感情を必死に抑える。
こんな単純なことで。
こんな簡単な答えを。
はっきりと言える委員長、でも、私は……
ミセ* ー )リ(敵わないな……)
まっすぐに正直に生きる瞳に、私は憧れたのかもしれない。
早々に諦めた私は、逃げる事を選んだのだ。
最初は何もわからず、気付いた時には遅く。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:59:11.76 ID:aBcqPB2LO
-
本当は遅くなかったのかもしれない。
でも私は、そこで諦めた。
達観したふりで、楽な生き方が出来ると。
だから、今度はちゃんと1歩前に出よう。
ミセ*゚ー゚)リ「そんな無理に変えようとせず、トソンはトソンらしくればいいんじゃないの?」
(゚、゚トソン「え?」
ミセ*゚ー゚)リ「さっきの話、委員長らしく見られるってやつ」
私は、自分の思ったままを口にする。
その答えは、多分自分自身に向けてのもの。
トソンがどんなつもりで私に話をしたのかわからない。
単に愚痴りたかっただけなのか、それとも、私を慮ってなのか。
でも結局それを私が勝手に受け取って、私自身が処理をしただけなのだ。
結局私は自分の思いの全てを話していない。
引きこもった本当の理由、諦めた理由。
でも、私は気付いた。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:00:55.33 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「私らしく……ですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「そ、自分らしく。どうせ無理に変えたところで、結局自分が出ちゃうんだしね」
(゚、゚トソン「自分……ですか……」
しばらく考えた後、深く頷くトソン。
私はただ、その様子を見守っていた。
私の答えもきっと同じ。
私がやりたい様に私らしく。
ミセ*゚ぺ)リ「お?」
スピーカーから5限目の終わりのチャイムが鳴り響く。
随分と話し込んでいたらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「……行きますか」
私は勢いよく起き上がり、トソンの方へ身体を向ける。
トソンはゆっくりと上体を起し、私を下から覗き込むように顔を傾けた。
(゚、゚トソン「よろしいのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「何が?」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:03:11.74 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「……いえ、大丈夫のようですね」
トソンがどこまでわかっているのか、私にはわからないが、少なくとも私が何かを決めた事は気付いたのだろう。
安心した様な笑みを浮かべている。
ミセ*゚ー゚)リ「……明日からも学校行くわ」
(゚、゚トソン「はい」
ミセ*゚ー゚)リ「自分で起きる」
(゚、゚トソン「はい」
ミセ;゚ー゚)リ「……かもしれない」
(゚、゚トソン「……しばらくは様子見に足を運びます」
ミセ*゚ー゚)リ「よろしくね」
(゚ー゚トソン「はい」
私達は、晴れ渡った空が広がる屋上を後にする。
何も変わってないはずの校内は、ほんの少しだけ居心地が良く感じられた。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:05:12.22 ID:aBcqPB2LO
-
・・・・
・・・
ミセ*゚ぺ)リ「私と2人の関係って何だと思う?」
('、`*川「「……」」/ ゚、。 /
帰りのホームルームが終わり、5限目の件で質問攻めに会う前に逆に2人に質問してみる。
2人は呆気に取られた表情を見せた後、何故か気の毒そうな視線をこちらに向けた。
('、`*川「……日射病?」
/ ゚、。 /「拾い食いでもしたか?」
ミセ;゚д゚)リ「何だ、その反応は?」
いささか質問が抽象的過ぎたのか、それとも質問自体が何かおかしかったのか、2人の反応は芳しくない。
ペニサスに至っては私の額に手を当てて熱がないか確認してくる始末だ。
そういうのではないと否定するが、だったらどういう意味なのだと聞き返されても聞いたままの意味でしかないから
困ってしまう。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:07:15.33 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ;゚ー゚)リ「いや、だからさ……今こうやって同じクラスだけどさ、その……」
/ ゚、。 /「はっきり言え、はっきり」
ダイオードの女子にしては大きな手が机に突っ伏した私の頭を掴む。
そのまま俯いてると、徐々に引っ張り起されるというか、引き上げられていく。
ミセ;゚д゚)リ「いだだだだ!? 強すぎ! 強すぎ!!!」
私の悲鳴にダイオードは離して欲しければ話せと駄洒落かと突っこみたくなる様な交換条件を持ちかけてくる。
話せと言われても話してる事が伝わらないのだからどうしようもないのだが。
/ ゚、。 /「お前は何が言いたいのだ?」
ミセ;゚ー゚)リ「うーんっと、その、こないだ私が登校してきた時、話し掛けて来てくれたけどさ……」
引きこもり脱却初日の話かと聞かれたので無言で頷く。
ミセ;゚ー゚)リ「あの時、同じクラスじゃなくても校内で会ったら話しかけて来た?」
/ ゚、。 /「……質問の意図がよくわからんが、多分話しかけてただろうな」
ミセ*゚ー゚)リ「何で?」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:09:01.96 ID:aBcqPB2LO
-
/ ゚、。 /「珍しいから?」
ミセ*゚ぺ)リ「ああ……」
まあ、そんなとこだろうと呆れた様に頷くと、珍しくペニサスがダイオードを小突く。
逆はよく見られるが、ペニサスがダイオードをたしなめるのは滅多にない。
('、`*川「適当な事言わない。……私もあんたが何言いたいんだかよくわかんないんだけどさ」
ミセ*゚−゚)リ「うん……」
('、`*川「確実に話しかけてたでしょうね」
勿論ダイオードも、とペニサスが言う。
その理由を尋ねようとしたが、それよりも先にペニサスが続けて口を開く。
('、`*川「だって友達だしね。……あんたがどう思ってるかはさて置きね」
ミセ*゚−゚)リ「友……達……」
('、`*川「何? その反応? ……あんたやっぱりそう思ってなかったわね?」
ミセ;゚−゚)リ「え……いや……その……」
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:11:31.55 ID:aBcqPB2LO
-
あっさり見透かされていた事に私は少し動揺した。
それなりに上手く繕って接していたはずだが、そんな事を言われるくらいには大根だったのかもしれない。
/ ゚、。 /「金づるとでも答えて欲しかったのか?」
('、`*川「茶化すな。つーか、こいつといると逆におごらされるでしょうが」
動揺する私を尻目に、2人は漫才のようなやり取りを繰り広げている。
見た所、不快には思っていないのかもしれないが、さっきの私の反応は褒められたものではなかったはずだ。
('、`*川「で、まだ何か考えてんの?」
ミセ;゚−゚)リ「え……その、何で友達って言えるの?」
私はこいつらに何もしてあげていない。
むしろ迷惑ヲ掛けてた事の方が多い。
ミセ;゚−゚)リ「どうやったら友達になれるの?」
どうしてそんな私を友達と呼べるのだろうか?
/ ゚、。
/「知らん」
('、`*川「同じく」
ミセ;゚−゚)リ「知らないって……」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:14:33.94 ID:aBcqPB2LO
-
/ ゚、。 /「友達とかそういうのは、考えてそうなるものでもないだろう」
('、`*川「本人がそう思ったらそうなんじゃないの? そんなのよくわかんないわよ」
ミセ;゚−゚)リ「でも……」
/ ゚、。 /「阿呆の癖につまらない事を難しく考えすぎるな」
ダイオードが私の頭を再び掴む。
('、`*川「阿呆の子なんだから、阿呆な事を考えるのよね」
ペニサスが私の頬をつまむ。
ミセ;゚、゚>リ「いひゃひゃひゃ!?」
/ ゚、。 /「少なくとも、1年の時にお前と遊びに行ってたのは楽しかったぞ?」
ミセ;゚д゚>リ「そへは……わひゃひも……」
('、`*川「なら、それでいいんじゃないの?」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:16:29.67 ID:aBcqPB2LO
-
ペニサスが私の頬から指を離し、ダイオードの手をどけさせる。
代わりに私の頭を掴み、強く下に押し付けながら髪の毛をくしゃくしゃにする。
クシャ*>д<)リ「ちょっ!? うへあ!?」
('、`*川「……そんなに悩んでたんなら、私らに相談ぐらいしなさいよ」
/ ゚、。 /「引きこもる前にな」
もう1本の手が添えられ、さらに髪の毛が大変な事になる。
でも、不思議と心地良く、何だか心が軽くなった気がした。
グシャ*>ー<)リ「……ごめん」
('、`*川「あんたは阿呆なんだから、阿呆が考え込んでもろくな事にはならないのよ」
/ ゚、。 /「阿呆は阿呆らしく、阿呆みたいに泣き付いて来い」
グッシャ*>д<)リ「うん、ごめん……でも、ちょっと阿呆言いすぎ」
さらに繰り返される阿呆の連呼に、私は2人の手を払いのけ、反撃に移る。
同じ様に髪の毛をくしゃくしゃにしてやろうかと思ったが、ペニサスには軽くあしらわれ、ダイオードに至っては届かない。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:18:21.58 ID:aBcqPB2LO
-
/ ゚、。 /「……小さいな(笑)」
クシャ;゚д゚)リ「うるせー、お前がデカすぎるんじゃー!!!」
なおも抗ってみるも努力は実らず、仕方なく諦めて自分の髪を整え、一息つくと私は何かに気付いた。
こちらに向けられる視線。
その元には予想通りの姿がある。
ミセ;゚−゚)リ「いつから見てたの?」
(゚、゚トソン「『何だ、その反応は?』と仰ってた辺りからでしょうか」
ミセ;゚д゚)リ「ほとんど最初っからじゃねーか!」
(゚ー゚トソン「中々楽しげな青春模様でしたね」
そう言って微笑むトソンに私達3人はばつの悪い表情を浮かべる。
当事者からすればまあ、納得のいく話し合いだったとしても、そういうのを他人に見られるのは少し恥ずかしいものだ。
/*゚、。
/「委員長は意外と意地が悪いのだな……」
ミセ;゚ー゚)リ「意外どころかすげー悪いよ、こいつは」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:20:20.75 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「失礼ですね。邪魔しないように離れて見守ってたというのに」
心外だとでも言わんばかりに肩をすくめるトソンに、私も同じく肩をすくめて見せた。
何だか今日は色々疲れた。
主にというか、全て自分のせいではあるのだけど。
ミセ*-ー-)リ「まあいいや。それよっか、帰ろ。今日は疲れた」
今の正直な感想を述べ、空の鞄を掴み立ち上がる私。
その鞄を取り上げ、机の中から教科書を詰め込むトソン。
(゚、゚トソン「私には聞かないのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「何を?」
教科書を詰め込みながら、トソンはそう聞いてくる。
聞き返してはみたものの、その質問の意味は理解している。
ミセ*゚ー゚)リ「ま、聞くまでもないからね」
私はトソンからずっしりと重い鞄を奪い取り、教室の後ろのドアに向かう。
そのまま振り返らずに手を振って、教室を出た。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:22:48.33 ID:aBcqPB2LO
-
そこから数歩歩いた所で後ろ手に閉めたはずのドアがすぐに開く。
歩み寄る足音が3つ。
友達の足音が近付いて来る。
('、`*川「何、しれっと帰ろうとしてんのよ?」
/ ゚、。 /「まだ5限目の話を聞いていないのだが?」
ミセ*゚ー゚)リ「トソンに聞けばいいじゃんか」
(゚、゚トソン「私の口からはとても……」
/*゚、。 /「「な、何があったの!?」」('、`*川
ミセ;゚д゚)リ「おい、よくわからん誤解を招く表現はすんな!」
トソンなりに気を使ってくれてるようだが、そういう言い方はあらぬ誤解を招く。
私は、適当にウソと、でも本質は誤魔化してない話をしながら帰路に着いた。
それは何の変哲もない下校風景。
それが今日からの私の日常になるのだろう。
・・・・
・・・
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:24:16.62 ID:aBcqPB2LO
-
結局、私は何を悩んでいたのだろうか?
帰り着いた家のソファーに座り、1人考える。
茜色の光が、レースのカーテンを通して室内を柔らかく照らす。
客観的に見れば、どうでもいい事で悩んだポーズをしてた、ただの構われたがりなんじゃないかと思えてくる。
置かれた境遇は確かに特殊だったけど、そんなに悩むような話ではなかったはずだ。
でも、私は悩んでた。
そして諦めていた。
私は何に悩み、何故諦めていたのか。
トソンに話はしたものの、あれは半分も話せてない。
私が悩んでる事は察してた様だけど、肝心の悩みの中身は話せなかった。
むしろ私がトソンの悩みを聞く形になってたし。
あれはあれで少し嬉しかったのは確かだが。
そもそも、話すに以前に私は私の悩みを正しく理解していない。
ミセ*-−-)リ「……本当に?」
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:26:15.62 ID:aBcqPB2LO
-
私は口に出し、私自身に問いかける。
こんな簡単な答えに気付かないはずはないのだ。
ただ私は、それを考えたくなかっただけで。
子供で大人でわがままで我慢して。
それでよくわからなくなって、投げ出したというようなポーズで諦めて。
でも、本当は……
ミセ*゚ー゚)リ「……答えはわかってる」
私は立ち上がり2階の私の部屋に走る。
机の上から目的のものを掴むと、リビングのテーブルの上に設置した。
電源とケーブルを繋ぎ、スイッチを押す。
ミセ*゚ぺ)リ「どこだっけ……自分じゃ開かないからな……おっと、あっちも用意しなきゃ」
私は再び立ち上がり、キッチンへ向かう。
冷蔵庫からサイダーを取り出す。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:28:23.95 ID:aBcqPB2LO
-
あの後お兄ちゃんが入れておいてくれたらしい。
そう大きくもないあの鞄の中に何本入れてたのか聞きたいぐらいの数のサイダーが冷蔵庫に収まっていた。
ミセ*゚−゚)リ「わかりやすいなぁ……」
サイダー以外も買ってきてくれればいいのに。
などと言ってみたところで、こちらは何と言うか業務用なのだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「まあ、好きだけどね」
コップとビー玉は空いた手に掴み、リビングに戻る。
適当なそれらしい言葉で検索を掛け、いつもお兄ちゃんが開いてるようなページに辿り着いた。
ミセ*゚ー゚)リ「おお、こんな感じだったよな」
いつもは見るとはなしに見ていたページ。
昔は興味を持っていてもよくわからなく、今は見たくもないページに成り下がっていたので、どんな事が
書かれているのかをじっくり見るのは初めてかもしれない。
ミセ*゚ぺ)リ「まあ、今見てもよくわからないんですけどね」
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:31:48.38 ID:aBcqPB2LO
-
相応に専門知識を必要とするそのページは、私が見てもさっぱりだった。
ああ見えてお兄ちゃんはちゃんと勉強して来たのだとほんの少し感心した。
それはともかくとして、今私に必要な部分はこの一部だけなので、特に問題はない。
ミセ*゚ー゚)リ「さてと……」
私はコップにサイダーを注ぎ、ビー玉を沈める。
ミセ*゚−゚)リ「神様か……」
何の変哲もないビー玉。
サイダーの中で泡にまみれる透明なガラス玉。
ミセ*゚−゚)リ「神様はいつから神様だったんだろ……」
いつから、それは2つの意味でいつからなのか。
初めてお母さんに話を聞いたあの日なのか、初めて流れを教えてくれたあの日なのか。
私にはよくわからない。
もう1つ、神様はいつまでがただのビー玉で、いつから神様に変わるのだろうか。
それもよくわからない。
改めて考えてみると、すごくあやふやなもの。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:33:45.50 ID:aBcqPB2LO
-
トソンは、神様は信じてないといっていた。
正しくは、そういう概念的なものは信じるが実在するとは思わないと言っていた。
じゃあ、実際に見えるこれはなんなのだろう。
いつの間にか私にはいくつもの浮かんでくる名前が見えていた。
神様は教えてくれる。
でも、これが神様じゃないとしたらなんなのだろう?
ミセ*-−-)リ「おっと、今はこっちを……」
私は浮かんできた名前をメモ帳に書きとめる。
いつも通りの作業だが、1人でこなしたのは初めてだ。
色々と抜けがある気もするけど、今日の所は練習だからこれでいい。
私は意識を神様から離し、乱雑に並ぶ文字列に目を落とす。
ミセ*゚−゚)リ「……」
私はそれを画面と見比べ、別の紙に綺麗に清書し、封筒に入れて机の上に置く。
今日は多分来ないと思うけど、一応念のためだ。
これから毎日この作業を続けなければならない。
それが目的の日までで済むのか、それとも死ぬまでなのかはわからないが、今は何も考えずに割り切る事に決めた。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:35:39.46 ID:aBcqPB2LO
-
・・・・
・・・
お兄ちゃんは意外に早く、それから約1週間後に姿を見せた。
こんなに早い間隔で訪れるのは最近ではなかったと思う。
何か大事な取引でもあるのかもしれない。
それなら却って好都合だ。
( ^Д^)「久しぶり、元気してたか?」
ミセ*゚ー゚)リ「1週間前に会ったばかりだよ」
( ^Д^)「そうだっけ? まあ、いいや。 ほら、お土産」
そういってビニール袋に入った箱を私に手渡す。
中身はいつも通りケーキだろう。
いつもより重く感じるのは、きっとまだ新作が出てなかったから定番のものを余分に買って来たのだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう。私も、これ」
私はお兄ちゃんに封筒を手渡す。
お兄ちゃんは首を傾げ、私から封筒を見ると中身を取り出した。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:38:05.19 ID:aBcqPB2LO
-
(:^Д^)「お前……これ……」
ミセ*゚ー゚)リ「あらかじめ見といた」
(:^Д^)「そ、そうか……ありがとう」
普段とは違う私の行動にお兄ちゃんは戸惑っているようだ。
しかし、その顔はすぐに笑顔に変わり、私に再度礼を告げる。
話が早くて助かったとでも思っているのだろう。
( ^Д^)「えーっと……ああ、そうだ、こいつは冷蔵庫にでも入れておくな」
鞄からサイダーを数本取り出した。
私は無言で頷き、お兄ちゃんの行動を見守る。
キッチンから戻って来たお兄ちゃんは、机の上に置かれていた鞄を手に取って私の方を向いて言う。
( ^Д^)「それじゃあ、そろそろ俺は行くよ。ありがとな」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
それがお兄ちゃんの答えだった。
予想はしていたけど、やはり実際に目の当たりにすると少し寂しい。
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:41:11.72 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚−゚)リ(……寂しいか)
心の中で自然に湧いた感情。
至極単純な理由。
私が認めなかった答えは、そんな簡単なものだったのかもしれない。
( ^Д^)「んじゃ、身体には気を付けろよ」
ミセ* − )リ「……」
玄関まで見送り出て来た私に、テンプレートな言葉を掛け、お兄ちゃんは玄関のドアに手をかける。
私は頃合を見計り、意を決して声をかけた。
ミセ* − )リ「……出来れば、それは買わないで欲しい」
( ^Д^)「あ?」
お兄ちゃんの動きがぴたりと止まる。
私が何を言っているのかわからないのか、怪訝な表情を浮かべて。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:43:35.49 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚−゚)リ「もしそれを買うんだったら、もうここには来ないで欲しい」
(;^Д^)「な……お前?」
ようやく私が言っている事の意味が理解出来たのか、目に見えて狼狽した様子で何かを言おうとしたが、私はそれを遮って
言葉を続ける。
ミセ*゚−゚)リ「ああ、心配しなくていいよ。その場合でもちゃんと教えるから」
もう1人で見れるようになったから、見たものをメールで伝える。
それ以外に用もないのに、わざわざ足を運んでもらう必要はないと私は玄関のドアの方に向かいながら言った。
(;^Д^)「え? いや、何で……」
ミセ*^−^)リ「じゃあ、そういうことだから、バイバイ」
私はお兄ちゃんを強引に押しやる形でドアを閉め、鍵とチェーンを掛けた。
突然の事に反応出来なかったのか、私のなすがままに押され、お兄ちゃんはしばらく玄関の前に突っ立っていたようだが、
ようやく我に返ってドアを開けようとするも当然開かない。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:46:08.92 ID:aBcqPB2LO
-
鍵を開けたところでチェーンもかかってて入れないとわかると、お兄ちゃんは私に呼びかけて来たが、私はもう2階の自分の
部屋に引っ込んでいた。
電話線はあらかじめ外してある。
携帯は着信拒否。
しばらくはお兄ちゃんの声らしきものがドア越しに聞こえていたが、その内静かになった。
諦めて帰ったのだろう。
もう夜だし、ご近所さんの迷惑も考えてくれたのだろうか。
ミセ*゚−゚)リ「……これでいいんだよね」
私はベッドの上で膝を抱えて座ったまま、誰に言うでもなく呟く。
これでいい。
これは私が決めた事なのだから。
私は両腕に力を込め、身を固くして縮こまる。
明けない夜はないのだと、陳腐な言葉が頭をよぎり、少し笑ってしまった。
眠れないと思っていたのだが、どうやら普通に眠れそうだ。
阿呆が阿呆みたいに抱えてた重さが取れ、随分と軽くなったらしい。
私はベッドに寝転び、目を閉じた。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:49:10.68 ID:aBcqPB2LO
-
・・・・
・・・
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「こーんにちはー!」」」
ミセ*゚ー゚)リ「おお、よく来たね、いらっしゃい」
(゚、゚トソン「どうも、本日はお招きに預かり、大変──」
ミセ;゚д゚)リ「硬いし長い。いいからあがってよ」
明けて翌日、休みという事もあり暇を持て余した私はトソン達をうちに招待した。
あれから何度かご馳走になっている朝ご飯ごはんのお礼とういう形で、晩ご飯をご馳走するという名目で。
(゚、゚トソン「あまりお気になさらずとも良かったのですが……」
ミセ*゚ー゚)リ「なら、そっちも気にしないで欲しいね。私はただ友達を家に呼んだだけなんだからさ」
当然、トソンに直接言ったら遠慮されるのは目に見えてたので、最初にブーン君やビロード君、そしてヒートちゃんを
あらかじめ籠絡しておいた。
3人にせがまれたらトソンも断り切れないだろうという私の目論見は見事に功を奏したようだ。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:51:09.14 ID:aBcqPB2LO
-
(〃^ω^)「お! ホントにテレビでやってる新しいゲームがあるお!」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃあるさー。ミセリお姉ちゃんはウソつかないからね」
(゚、゚トソン「ブーン、他人様の家のものを勝手に──」
ミセ;゚ー゚)リ「だからお前は硬いと。一緒に遊ぶために呼んだんだからいいんだよ」
羨望の眼差しを向ける3人のため、私は早速テレビゲーム機をセッティングする。
みんなで遊べるようなゲームもいくつか持ってはいるので、どれをやりたいか3人に選んでもらう事にした。
友達のいない引きこもりが何でそんなものを持っているのか聞かれても返答に困る。
強いて言うなら、多人数プレイのゲームを1人でやってコンピュータをいじめて優越感に浸るのは楽しいからかな。
トソンにそう言ったら、何故かものすごい哀れみの視線で肩をポンポンと叩かれてしまった。
(〃^ω^)「これにするお!」
ミセ*゚ー゚)リ「おお、4人対戦格闘ゲーム、ワロッシュブラザースね。中々目の付け所がいいね」
私はソフトをセットし、ゲームを開始させる。
使う機会は来ないだろうと漠然と認識しつつも買っていたコントローラーを3人に手渡す。
無駄にならなくて良かったと、少し笑みがこぼれた。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:54:11.07 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「ここをこうして……よし、これで遊べるから、取り敢えず練習がてら3人で遊んでてね」
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「はーい」」」
重なる3つの元気な返事は、すぐに歓声に変わる。
3人がゲームに夢中になっているのを確認すると、私はトソンの方へ身体を向けた。
ミセ;゚ー゚)リ「トソン……って、あれ?」
しかし、先ほどまでソファの辺りに立っていたはずのトソンの姿が見えない。
立ち上がり、辺りを見回すとキッチンの方で何やら探し回っているようなトソンがいた。
ミセ;゚ー゚)リ「何してんの?」
(゚、゚トソン「私達は晩ご飯にお呼ばれしたのですよね?」
ミセ*゚ー゚)リ「そだよー?」
(゚、゚トソン「確か、手作りの料理を食べさせるとか」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、そう言ったね」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:56:53.74 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「ここにはどう見ても材料しかないですが、今から作るのですか?」
時刻は午後3時頃。
ブーン君たちと遊ぶ予定もあったから早めに呼んだのだ。
今から作っても晩ご飯には十分間に合うだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「そ、今から作るの。……トソンが」
(゚、゚;トソン「……はい?」
ミセ*゚ー゚)リ「いや、私料理とか出来ないし」
(゚、゚;トソン「いや、出来ないしじゃなくて、ならば何故呼んだのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「晩ご飯ご馳走するため?」
(゚、゚;トソン「作れないのでしょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「材料はちゃんと買っておいたから、料金は私持ちじゃん?」
(゚、゚;トソン「そういうのをご馳走すると言いますか?」
呆れた顔で正論を並べるトソンに、私も正論を返す。
私が作る微妙な料理をあの子達に食べさせるのと、トソンが作る真っ当な料理を食べさせるのはどちらが良いかと。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:59:03.77 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚;トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
(-、-;トソン「……ハァ」
(゚、゚トソン「ミセリも手伝ってくださいね?」
ミセ*゚ー゚)リ「オッケー」
渋々ながらも折れるトソン。
随分とひどいホストだと思われたかもだが、どうせ鍋か焼肉にしようと思ってたのだから、駄目でも材料を切るだけ
だったから、私でも出来たはずだ……多分。
(゚、゚トソン「この材料なら鍋でしょうかね」
ミセ*゚ー゚)リ「それならそんな急がなくても作れるでしょ? ちょっとお茶にしますか」
私は冷蔵庫からサイダーを取り出しコップを3つ用意する。
ミセ*゚ー゚)リ「私はコーヒーにするけど、トソンはどうする?」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:00:17.12 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「サイダーじゃないのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつもそればっか飲んでるわけじゃないよ」
とはいえ、あの子達にはサイダーの方がいいだろうから冷蔵庫を開ける。
私は3つのコップにサイダーを注ぎ、それぞれにビー玉を沈める。
トソンの何か言いたげな目を、私は見詰め返した。
ミセ*゚ー゚)リ「おまじない。神様が見守ってくれますように、ってね。それだけだよ」
(゚、゚トソン「やはりそれはあなたにとって神様なのですね」
ミセ*-ー-)リヾ「うーん……どうなんだろね……」
よくわからなくなってると、私は正直に今の気持ちを白状した。
ミセ*゚ー゚)リ「元々はお母さんの作り話だけど、私はそれを信じてた」
それが作り話だとわかった上で。
それはきっとお母さんが好きだったから。
一生懸命私のためにお話を作ったお母さんの気持ちが嬉しかったから。
私はそれを信じていた。
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:02:02.83 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*-ー-)リ「もう増やす事の叶わない、お母さんとの大切な想い出だったからね」
トソンは黙って頷く。
背後からは子供達の楽しげな歓声や悲鳴が聞こえて来る。
ミセ*゚ー゚)リ「それだけで良かったんだけどね」
お母さんとの想い出、それだけだったはずの神様は、いつしか私に教えてくれるようになった。
それが私を幸せにして、そして不幸せにした。
ミセ*-ー-)リ「何でこうなったのか、それが私の、神様のせいなのかよくわからないけどね」
結果的にそうなったけど、何が悪かったのかを言い切れないと思う。
いくつも重なった小さな事が、今を作っただけなのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「他人のせいにはしたくないしね。多分私が、ちゃんと言わなかったのが駄目だったんだろね」
(゚、゚トソン「ミセリ……」
辛そうな眼差しを向けるトソンに、私は胸を張り、親指を立てて答える。
私はもう、平気だから。
自分でちゃんと答えに向き合ったのだから。
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:04:06.73 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リb「大丈夫、やるだけやったから。あとは結果待ちなのさ」
(゚、゚トソン「結果待ち? 何を……」
実を言うと、昨日お兄ちゃんに渡した紙は出鱈目だ。
あの通り買ったら、お兄ちゃん、いや、お兄ちゃんのお客さんは大損するだろう。
その場合、お兄ちゃんは怒鳴り込んでくるかもしれない。
でも、またメールで次からは正しい情報を伝えるつもりなのですぐに取り返せるだろう。
それでまた、お兄ちゃんはいつも通り、楽しい毎日が送れるはずだ。
でも、もしお兄ちゃんが買わなかったら。
(゚、゚;トソン「何でそんな事を……?」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん……何でだろうね」
ほとんど思い付きだし、穴だらけの計画だ。
例えばお兄ちゃんがあの紙の通り買ったのに、買ってないと言っても私にはその真偽を確かめる術がない。
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:06:25.55 ID:aBcqPB2LO
-
(゚、゚トソン「ですね。だったらそれは……」
ミセ*゚ー゚)リ「そう、全てはお兄ちゃん任せ」
私なりに考えた上での結論を渡したので、あとはお兄ちゃんの考えに任せようと思う。
どう受け取られるかはわからない。
でも、どういう結論を出すにしても考えて欲しい。
私の事を。
ただそれだけなのだ。
(゚、゚トソン「それでいいのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん、それでいい」
私は3つのコップを両手に抱え、リビングに向かう。
同じく私の後ろを付いて来るトソンがまた問いかけて来た。
(゚、゚トソン「それが神様じゃないとしたら、あなたに教えてくれた神様はどこにいるんでしょうね」
私も思った同じ疑問。
でも、多分もう答えは出てる。
私にそんなお節介を焼いてくる人は1人しかいなかったし、その人がいるとすればここしかない。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:08:09.58 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「多分ここだろうね」
コップを持ったままの手の親指で、私自身を指差す。
心臓の辺り、それが何を指すか、トソンはすぐに理解したようだ。
(゚ー゚トソン「そうかもしれませんね」
ミセ*゚ー゚)リ
トソンは私からコップを受け取り、1つをテーブルの上に置く。
私も残りをテーブルに下ろし、3人に向かって声をかけた。
ミセ*゚ー゚)リ「おーい、お前らジュースだぞー」
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「はーい」」」
ゲームに夢中かと思った3人はすぐさまゲームを止め、こちらを振り向く。
聞きわけが良いのか食い意地が張っているのかはわからないが、素直なのは良い事だ。
ミセ*゚ー゚)リ「おっと、食い意地といえばあれ忘れてた。あ、トソン、インスタントでいいから適当にコーヒーお願い」
(゚、゚トソン「はいはい。カップは勝手に使いますよ」
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:10:10.11 ID:aBcqPB2LO
-
( ^ω^)「おー? これ、どうして丸いのが入ってるのかお?」
ノパ听)「ホントだー。何だこれ?」
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、それは……トソン、お願い」
(゚、゚;トソン「へ!? いや、何故あなたの家の風習を私に振るのですか?」
驚いた表情でこちらを凝視するトソンを無視し、私は再びキッチンに向かう。
冷蔵庫から紙箱を取り出し、お皿に取り分けようとしたが、それぞれに選ばせるかと考え直し、そのままお皿とフォークと
一緒に抱えてリビングに戻った。
d(゚、゚トソン「というわけで、神様がみんなの幸せを見守ってくれますようにというおまじないらしいのです」
文句は言っていたものの、トソンはちゃんと3人に説明してくれたようだ。
聞いてると少し話はアレンジされていたが、それでいいと思う。
私とお母さんとの想い出のように、トソンとこの子達の想い出なのだから、その方がいいのだ。
(*><)「すごいんです!」
(゚、゚トソン「あくまで見守ってくれているだけですから、ちゃんと自分の事は自分でやらないと駄目ですからね?」
……少しどころじゃなくアレンジされてるかもしれないがそれもまあ、いいか。
お母さんが残してくれた神様が、少しずつ形を変えながらみんなの心に残ってくれるのなら私は嬉しいと思う。
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:12:08.98 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「はーい、そんじゃおやつにしようか」
私は4人が座るの真ん中辺りに箱を下ろし、蓋を開けた。
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「ケーキだー!」」」
(゚、゚トソン「わざわざ買って来たのですか? そんな気を──」
ミセ*゚ー゚)リ「違う違う、昨日お兄ちゃんからもらったやつだよ」
定番のイチゴショートにチョコレートケーキ、チーズケーキにモンブラン、プリンアラモード、その他諸々と、どう考えても
1人じゃ食べ切れないケーキの量に、トソンも納得してくれたようだ。
ミセ*゚ー゚)リ「好きなの食べていいよ。あ、ケンカしちゃ駄目だからね?」
ノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「はーい!」」」
(゚、゚トソン「私が取ってあげますから、好きなのを言ってみてください」
ノパ听)「ブーン、好きなの選んでいいよ」
( ^ω^)「お、ヒートが先でいいお」
( ><)「僕は一番最後でいいんです」
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:14:02.25 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「お前ら謙虚だな。じゃあ、私が……って誰か突っこめよ」
子供を厳しく躾けすぎてないかと思いはしたものの、3人の様子を見る限りは無理に言わされている感じはしない。
きっと3人とも本心から譲り合っているのだろう。
仲のいい兄弟だ。
羨ましいくらいに。
最終的にトソンお姉ちゃんから選ぶという事に3人の結論が落ち着きそうなのを、トソンは苦笑して遮り、歳の若い順に
しましょうと、ブーン君にケーキを勧める。
(゚、゚トソン「それじゃあ、ブーン、どれにしますか?」
(〃^ω^)「おー、いっぱいあってどれにするか迷うおー」
ミセ*゚−゚)リ「……」
ケーキを取り分けるトソン達4人の姿が、私の記憶の中の家族の姿に重なる。
あまりうちにいることはなかったお父さん。
やさしかったお母さん。
ちょっと調子に乗る事が多かったけど、頼りになったお兄ちゃん。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:16:11.24 ID:aBcqPB2LO
-
記憶の中の私達は、仲の良さでは目の前の4人には圧倒的に負けてるけど、それでも楽しい日々を送っていた。
今となってはもう、過去の風景。
失われた想い出。
それでも、私にはまだ残されたものもある。
私はそれを、取り戻せるのだろうか?
(゚、゚トソン「ミセリは何がいいですか?」
思考の海に沈んでいたのを不意に引き上げられ、私は少し慌ててしまう。
ミセ;゚ー゚)リ「うぇ!? お、みんな取った? ……ってお前がまだじゃんか」
(゚、゚トソン「私は最後でいいですよ」
ミセ*゚ー゚)リ「客なんだからトソンが先だってば」
私はどれも食べた事があるしと説得して、何とか先に選ばせた。
それでもまだ4つほど余ってるので、選択幅は広い。
私はチーズケーキを選び、トソンにお皿に入れてもらった。
残りの3つは帰りに持って帰ってもらうかな。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:18:30.35 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚∀゚)リノハ*゚听)(*><)(〃^ω^)「「「「「いただきまーす」」」」」(゚、゚トソン
(*><)「美味しいんです」
(〃^ω^)「美味しいお!」
ノハ*゚听)「美味しいぞー!」
あっという間に食べてしまいそうな3人の勢いに、私はトソンと顔を見合わせて微笑む。
ロマネスク亭のケーキはいつも通り美味しかったけど、いつも以上に美味しく感じられたかもしれない。
どんな時でも美味しいなんて前に言ったような気もするが、もっと美味しくする手段はあったようだ。
ミセ*゚ー゚)リ「食べ終わったら勝負しようぜ?」
ノパ听)「よーし、負けないぞー」
(〃^ω^)「お! ゲームで遊ぶお!」
( ><)「がんばるんです!」
(゚、゚トソン「……食事の支度は手伝わないつもりですかね? まあ、いいですけど」
- 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:35:03.40 ID:aBcqPB2LO
-
トソンの呟きは敢えて無視し、コントローラーを1つ手に取る。
まだ時間はあるので、ご飯の支度はそう急がなくてもいいだろう。
そう思い、コントローラーのボタンを押そうとしたが、それは玄関から響く硬質なチャイムの音がそれを遮った。
ミセ*゚ー゚)リ「お?」
(゚、゚トソン「来客ですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「だろうね。トソン、パス」
(゚、゚;トソン「ちょ、えっ? 私ですか?」
私はコントローラーをトソンに投げ渡し、立ち上がる。
ゲームなんかやったことないから無理というトソンを尻目に玄関に向かう。
やったことなくても子供の相手ぐらい出来るだろうと思うが、逆さに持ったコントローラーを見る限りでは駄目かもしれない。
ミセ*゚ー゚)リ「はいはい、どなた──」
(;^Д^)「おう……」
ミセ*゚−゚)リ「お兄ちゃん……」
来るだろうとは思っていたが、こんなに早く来るとは考えていなかった。
緩みそうになる気持ちを抑えるべく、私は俯いた。
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:37:06.33 ID:aBcqPB2LO
-
(;^Д^)「……」
ミセ − )リ「……」
それっきり、不自然な沈黙が続く。
後方から、賑やかな家族の歓声が届いて来る。
こちらの家族は、不協和音すらも響かせないというのに。
(;^Д^)「……あの」
ミセ − )リ「……」
私は答えない。
私の答えは出したから。
私は答えを聞くだけなのだ。
(;^Д^)「……そのな」
ミセ − )リ「……」
しどろもどろになるお兄ちゃん。
きっとそれが答えなのかもしれない。
結果を見て、事の重大さに気付き、何とか取り繕おうとしている。
ほんの少し目線を上げ、覗き見たお兄ちゃんの顔は、私の目にはそう映ってしまった。
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:40:07.99 ID:aBcqPB2LO
-
(;^Д^)「……えっと」
ミセ − )リ「……大丈夫、ちゃんとメールはするから」
(;^Д^)「……え?」
答えを待つはずなのに、自分から答えを出してしまった。
何とも堪え性のないことだ。
リビングからの楽しげな声は、さっきからトソンの悲鳴が一番目立つ。
どうやら弟妹達にこてんぱんにやられてるらしい。
姉の威厳を保てるよう、レクチャーしてあげようか。
早くあの楽しそうな空間に戻りたい。
ここは……寂しくて……
(;^Д^)「いや、違う! そんな事はどうでもいいんだ!」
ミセ − )リ「え?」
- 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:45:39.68 ID:aBcqPB2LO
-
(;^Д^)「あれは買ってない」
ミセ − )リ「ウソ……」
(;^Д^)「いや、ウソじゃないって。そりゃ証拠もないし、実際直前までは勧めようとしたけども……」
ミセ − )リ「……」
(;-Д-)「どうしても買えなかった……お前の顔が浮かんでな……」
ミセ*゚−゚)リ「私の……顔……?」
そう言ってうなだれるお兄ちゃん。
調子の良い顔ばかり見せていたお兄ちゃんのそんな顔を見たのは久しぶりだ。
あの日、お母さん達が亡くなった時以来かもしれない。
(;-Д-)「すまん、お前がどういうつもりであんな事を言ったのか俺にはわからなかった。しかし……」
ミセ*゚−゚)リ「……」
(;^Д^)「理由はどうあれ、もう2度とお前に会えないのは嫌だからな」
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:47:45.31 ID:aBcqPB2LO
-
お兄ちゃんは私に自分の答えを提示した。
私はその目をまっすぐ見据える。
(;^Д^)「今日はそれだけ伝えたかった。また来るよ」
一瞬、寂しそうな陰が瞳をかすめる。
それはきっと私の目に浮かぶものと同じ色をしたもの。
ミセ*゚−゚)リ「あ……」
いくつも点が線となり、何かが流れる。
ミセ*゚−゚)リ(これ……神様の……)
私の中の神様が教えてくれる。
お兄ちゃんの言葉を。
家族の言葉を。
真実を。
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:50:18.60 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ* ー )リ(そっか……ありがとう、お母さん)
(;^Д^)「それじゃあな」
ミセ*゚−゚)リ「待って!」
背を向けて去ろうとするお兄ちゃんに、咄嗟に手を伸ばした。
掴んだその手は、あの日の記憶と同じく暖かく、大きな手だった。
(;^Д^)「ミセリ?」
ミセ*゚−゚)リ「……友達が来てるんだ」
(;^Д^)「あ、ああ、さっきから賑やかだなとは思ってたんだが……」
( ^ー^)「楽しく暮らせてるみたいだし、本当に良かったよ」
ミセ*゚−゚)リ「……お兄ちゃんは、お父さん似だよね」
(;^Д^)「え? 何だ、突然?」
やさしく微笑むお兄ちゃんの顔を見て、唐突に浮かんだそんな言葉。
お父さんも、時々こんな顔を見せてくれた。
お父さんはお兄ちゃんほど愛想は良くなかったし、仕事ばっかりの人だったけど、家族の事は大切に思ってくれていたと思う。
特に何かを言ってくれたわけでもないけど、気付けば家族を見守る目がそこにはあった。
不器用で、それを表すのが下手だっただけなのだ。
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:52:08.39 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚−゚)リ「何でもない。それよりも友達なんだけど、兄弟連れて来てるんだ」
( ^Д^)「ああ、なるほど。それでこんな賑やかなわけか」
何を勘違いしたのか、お兄ちゃんはそれならば何かお菓子やジュースでも買って来ようかと提案して来たが、私は首を振った。
ミセ*゚−゚)リ「それはあるからいいよ……って、その袋は?」
( ^Д^)「ああ、忘れてた。これ、いつもの……」
ミセ;-д-)リ「……お兄ちゃん? 昨日ももらったのに、これで何個になると思ってんの?」
袋には昨日より一回り大きい箱が入っているのがわかる。
もしトソン達が来ていなかったら、これから1週間ぐらい毎日朝晩のご飯はケーキになりそうな勢いだ。
つーか流石に太るわ。
(;^Д^)「す、すまん。そういえばそうだったな。ちょっと動揺してたらしい」
目に見えて狼狽するお兄ちゃん。
平謝りに謝って来るが、別に私は怒っていない。
むしろ食べ盛りがいっぱいいるので丁度いいぐらいだ。
- 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:55:18.16 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「いいって。まあ、タイミングも良かったし。ありがとう」
(;^Д^)「お、おう……」
私は空いた手でケーキの袋を受け取り、礼を述べる。
お兄ちゃんは少し面食らったような顔をして、軽く頷いた。
ミセ*゚ー゚)リ「……上がっていく?」
(;^Д^)「え……いいのか? って、友達が来てるんじゃ……」
ミセ*゚ー゚)リ「向こうも兄弟連れなんだから、こっちも兄妹連れでいいんじゃない?」
( ^Д^)「え……そういうもの? でも……」
ミセ*゚ー゚)リ「いいからいいから、ほら、上がって」
私は少し強引にお兄ちゃんの手を引っ張る。
お兄ちゃんはよろけながらも引かれるまま、私に続く。
元々後ろ向きの手を掴んだのだ。
歩きづらいだろうが私は手を離さない。
手を伸ばし、掴んだ答えを私は離さない。
神様が教えてくれた、私の選んだ答え。
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 23:58:49.03 ID:aBcqPB2LO
-
ミセ*゚ー゚)リ「よーし、みんなちゅーもーく」
ノパ听)( ><)( ^ω^)「「「「?」」」」(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リノ「ケーキの追加来たよー! あと、ついでに私のお兄ちゃん」
(;^Д^)「俺はついでか……」
ミセ*^ー^)リ「あはは」
思わず吹き出した私に、お兄ちゃんも苦いながらも笑みを浮かべる。
視界の端には、4つの笑顔。
ねえ、神様、ちゃんと見てくれていますか?
笑顔に囲まれた私を。
あなたが教えてくれた幸せは、きっとずっと続いていきます。
あなたの想い出とともに。
− ミセ*゚ー゚)リ神様inサイダーのようです(゚、゚トソン −
〜 おしまい 〜
戻る