- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:06:36.34 ID:22HbQeC80
- 【March 6】
雰囲気も何もあったもんじゃない。
いきなり顔をつかまれ、こう……ガッ、と。
気がつけば彼女の顔が目の前にあって、それで…………
( ^ω^)「はぁ・・・・・・」
暖かかった。
もっとこう、なにかあると思っていたのだが、そんなものは幻想に過ぎなかったらしい。
ただ、暖かかった。これ以外になんと形容したらいいのだろうか、分かる人がいたら名乗り出てほしい。
( ^ω^)「やっぱりそういうことなのかお……」
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:09:26.53 ID:22HbQeC80
- そう、つまりだ。
あんなことをしてきたということは、それはつまりそういう事なわけで。
しかしながら、なかなか理解していない――――――いや、理解しようとしていない自分がいるのである。
('A`)「どうした、ブーン?」
突然ドクオに話しかけられて、僕は現実に戻った。
ちなみに今、ドクオはものすごい臭い。
まるでトイレで1日過ごしたような異臭がする。
(;^ω^)「お?ちょっと考え事だお」
('A`)「恋の・・・・・・悩みか」
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:11:09.28 ID:22HbQeC80
- 突然核心に迫る発言をするドクオ。
思わず肩をビクつかせる僕に何人かの視線が集まった。
(´・ω・`)「恋?」
ξ゚听)ξ「何々、何のことよ?」
特に興味を示した2人がつめよって来るが、生憎こんなところで簡単に僕の胸中をさらすわけにはいかない。
僕がだんまりを決め込んでいると、2人はドクオの発する臭気にあてられたのか少し距離を置いた。
( ^ω^)「君の臭さに乾杯、だお」
そういって僕も少しドクオから離れる。
ドクオは一人悲しそうな顔で俯いていた。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:13:30.08 ID:22HbQeC80
- ――――この辺で状況説明をしなければなるまい。
誰に?そんなの分かってるよね。
さて、あの後家を飛び出した僕はどこに行けばいいかも分からずにただ走っていた。
不器用な僕はついにあの人に出会うまで、そのことに気づかなかった。
('、`*川「あれ、内藤じゃないか」
気の抜けた声で語りかける声の持ち主は紛れも無く、僕らの担任のペニサス先生だ。
運よくお見舞いに行こうとしていた先生に出会えた僕はその後皆に合流し、今に至っている。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:16:23.67 ID:22HbQeC80
('、`*川「みんな、こっちよ〜病院の中では静かにしましょうね〜」
病院の中は、独特の薬品のにおいで充満していた。
僕は小さい頃からこの臭いが嫌いだ。
誰かを連れ去ってしまう、悪魔の香りような気がして。
('、`*川「入院しているデレさんの病室に面会したいのですが」
「失礼ですが、どのようなご関係の方ですか?」
('、`*川「彼女の担任と、クラスメートです」
「はい、承りました。204号室へどうぞ」
受付の看護婦さんに部屋番号を確認する。
面会謝絶、なんてことにはなってないようで安心した。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:19:25.67 ID:22HbQeC80
('、`*川「204、204・・・・・・ここね」
ペニサス先生に続いて僕らは病院の廊下を歩く。
先生はある扉の前で立ち止まると2、3度ノックをしてそのまま返事を待たないままにドアを開けた。
(;^ω^)(;´・ω・`)(*'∀`)「!!!」
ζ(゚ー゚;ζ「ふぇぇぇぇぇ!?!?」
そこには、ちょうど着替えでもしていたのかシャツを脱ぎかけてるデレがいた。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:21:55.29 ID:22HbQeC80
-
('、`*川「あちゃ〜、ごめんごめん」
ζ(゚ー゚;ζ「で、でていってー!!」
硬直している僕たちは先生に背中を押されて出て行く。
廊下に出ると、真っ先に飛び出したドクオがツンにボコボコにされているところだった。
ξ#゚听)ξ「なにやらしい顔してんだよ、ああ?」
('A`;)「いえ、その・・・・・・フヒッ・・・・・・」
ξ#゚听)ξ「ボインか?結局ボインがいいのかコラァァァ!」
('∀`*)「あひぃ・・・・・・もっと・・・もっとぉぉお」
余談だが、デレの胸はそこそこ大きかった。
ツンの逆鱗に触れたのもきっとその辺りが主な理由なのだろう。
・・・・・・・・・・・・間違っても口にはしないけどね。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:25:25.86 ID:22HbQeC80
('、`*川「デレちゃ〜ん、そろそろいいかな?」
先生が再度扉を叩く。
今度はきちんと返事が帰ってくるのを待ってから扉を開けた。
('、`*川「本当にゴメン」
ζ(゚ー゚;ζ「もう・・・・・・これからは気をつけてくださいね」
今度はきちんとパジャマを身につけ、ベッドに入っているデレ。
見た感じでは、特にどこかが悪そうには思えない。
というか、若干恥ずかしそうにこっちをチラチラ見てくるのは何なのだろうか。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:29:33.15 ID:22HbQeC80
(´・ω・`)「それで・・・・・・どうなんだ?」
ショボンが突然切り出した。
ζ(゚ー゚*ζ「どうって・・・・・・あ、」
一瞬考え込むも、すぐに何のことかを理解したらしい。
その顔には曇りが見える。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 00:31:39.40 ID:22HbQeC80
ξ゚听)ξ「大丈夫なの?」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ・・・・・・いつもの発作なので、そんなに大した事じゃないんです・・・けど・・・・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「でも・・・・・あの・・・・・・」
なにやら言いづらそうに口をつぐむデレ。
ζ(゚ー゚*ζ「卒業式には、出れないとおもうんです」
その一言で、空気が変わった。
- 26 :◆zhwtsxKgt.
:2008/10/18(土) 01:12:59.24 ID:22HbQeC80
ζ(゚ー゚*ζ「お医者さんが・・・・・・人が大勢いて、緊張するようなところに行くのは良くないって・・・・・・」
(;^ω^)「そ・・・・・・そんな」
ζ(;ー;*ζ「私・・・・・・私・・・・・・、せっかく学校に行けて・・・・・・」
そういう彼女の目には涙が溢れていた。
卒業式を、皆との思い出を一番強く待ち望んでいた彼女。
精一杯、頑張っていた。誰よりも強く、願っていた。
神様は、あまりにも理不尽だ。
- 28 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:15:13.17 ID:22HbQeC80
- 病院からの帰り道。
夕暮れの道を、僕は一人で歩いていた。
「デレがいない分、頑張るよ」
「きっと卒業式までに良くなるって」
僕らは、そんな言葉しかかけることが出来なかった。
それが物凄く、悔しかった。
( ^ω^)「なんで上手くいかないんだお・・・・・・」
もう少し、もう少しで、中学校生活の最後を、を最高の思い出で飾れたんだ。
ドクオにショボンにツンにデレに―――もちろんクーも、誰一人としてかけることなく。
- 29 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:17:34.99 ID:22HbQeC80
(#^ω^)「畜生!」
足元にあった小さな小石を蹴り飛ばす。
何かに当たってしまうなんて、まるで滑稽な子供だ。
そんな自分がまた嫌になって、はあとため息をついた。
そのときだった
_,
川 ゚ -゚)「イテッ」
( ^ω^)「ご、ごめんなさい・・・・・・え?」
そこにいたのは、つい数時間前喧嘩別れ(?)をしたクーだった。
- 30 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:20:34.85 ID:22HbQeC80
川 ゚ -゚)「人に石をぶつけておいて、え?じゃないだろう」
( ^ω^)「う・・・・・・ごめんお」
川 ゚ -゚)「なあブーンよ、さっきのことd・・・・・・おい、どうかしたのか?」
( ^ω^)「お?」
クーが僕の目元を拭う。
川 ゚ -゚)「泣いているのか?」
( ^ω^)「・・・・・・おっ」
- 31 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:23:28.40 ID:22HbQeC80
- 気づけば、僕は涙を流していた。
ふがいない自分が嫌になったのか、このあまりにも悲惨な運命が嫌になったのか
川 ゚ -゚)「お前らしくも無い。どうしたんだ?言ってみろ」
( ^ω^)「・・・・・・それは」
僕は全てを打ち明けた。
彼女にあんなにひどいことをしたのに、僕はまた彼女にこんな自分勝手なことを。
- 32 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:25:33.82 ID:22HbQeC80
川 ゚ -゚) 「そうか・・・・・・」
しかし彼女は、一瞬空を見上げると立った一言創つぶやいただけだった。
( ;ω;)「お・・・・・・怒らないのかお?」
川 ゚ -゚) 「何故だ?」
( ;ω;)「だ・・・・・・だって僕は、クーにあんな酷いことを」
一度拭ってもらったほほもまた涙に濡れていた。
- 33 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:27:27.14 ID:22HbQeC80
川 ゚ -゚) 「私はお前の彼女だからな、今考えてみれば馬鹿だったのは私のほうなんだ」
( ;ω;)「おっ・・・・・・」
川 ゚ -゚) 「なあ、ブーン」
彼女が僕に少し詰め寄る。
ふわりと舞った髪の毛がとても美しい。
川 ゚ -゚) 「友達は、大事か?」
( ;ω;)「も・・・・・・もちろんだお」
川 ゚ -゚) 「私は・・・・・・大事か?」
( ;ω;)「当然だお、クーは僕の自慢の彼女だお」
- 34 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:28:12.45 ID:22HbQeC80
- 僕がそう答えると、彼女は満足したように頷く。
そしてその透き通るような瞳でまっすぐに僕を見据えて、
あの時よりも長い長い、口付けをした。
- 36 :◆zhwtsxKgt. :2008/10/18(土) 01:30:55.71 ID:22HbQeC80
川 ゚ ー゚) 「さて、私にはやることが出来たようだ」
( ;ω;)「おっ?」
川 ゚ -゚) 「このふがいない彼氏が、涙を流すのを見たくないんでな」
最後に彼女は微笑んで、僕が来たのと同じ方向に走っていく。
その夜、クーが帰ってくることは無かった――――――。
続く
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