143 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:25:12 ID:6XuMoZG20
 闇が来る。
 漆黒の闇が、全てを染める、最強の色が、群馬を覆っていく。

 その光景を、漆黒の肌の女が眺めていた。

 ゜゜

 そこは県庁の一室だった。
 明かりはついていない薄暗い部屋。
 引き裂かれたままのカーテンに一瞬視線を移し、女は口端を歪ませた。

 それは嘲笑だった。
 顔半分に歪な笑みを浮かべる女は、それでいて目元は全く笑っていない。



( ^ω^)は役人のようです
      第8話「禁忌」

144 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:25:29 ID:6XuMoZG20

 整備されていない道を黒い車が走った。
 時々、ガコンガコンという音をあげ、車は進んでいく。

 過去にあった大きな地震の影響で、道が悪くなっているのだろう。
 大地震は数年前だったのに直さないのは、予算がないからか、必要がないからか。

 道の途中に水溜りが見えた。

( ^ω^)「……雨が降ったのは一週間前ですおね?」

 その問いに、フサギコは「ああ」と短く答えた。
 アスファルトは水を染み込みにくい。
 しかし、一週間前の雨水がまだ残っているのはやはり異常だ。

 案の定、車は大きく跳ね、三人の体を揺らした。

145 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:25:42 ID:6XuMoZG20

( ^ω^)「……道は直さないんですかお?」

ミ,,゚Д゚彡y―~~「……ああ」

( ^ω^)「……ですかお」

 そう言われると、何も言えなくなる。
 内藤はふと息を着くと、窓の外へと視線を移した。

 バッタが跳ね、地面へ着地する。
 その様子に視線を向け、ツンは内心大きくため息をついた。

 もう10分くらい、誰も口を開かない。
 何を言ってもフサギコが短く返すからだ。

146 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:25:56 ID:6XuMoZG20

ξ゚听)ξ「……」

 静まり返った車内には、重苦しい空気が流れていた。
 ツンはふと視線を車外に移した。

 屋根のない家の前で、少年と少女が談笑している。
 そこに大人の男が近づき、少女に何かを渡し、そして少女は少年を追い払った。

 そこで、見えなくなった。
 木々が視界を遮ったからだ。

 やがて、また視界が開けた。
 そこから、しばらくは何もない風景が続いた。

 これが旅行で来たのなら、そののどかな光景に、心休めていたのだろう。
 しかし、人のいないその空間に、ツンは恐怖を感じていた。

 車は、ゆっくりと、しかし確実にどこかに向かっている。
 その行き先を知るものはフサギコしかいない。

147 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:26:41 ID:6XuMoZG20

 ―――


 体を弾丸のように素早く動かし、男はその部屋に忍び込んだ。
 纏った服のあちこちには、赤黒い染みが付着している。

 右手に短いナイフを逆手に持ち、男はゆっくりと顔をあげた。
 あげた視線の先には、エラの張った男がこちらを眺めている。

<ヽ`∀´>「ようこそ来たニダ、県長の僕君」

 県長の僕と言われた男は、ポケットから煙草を取り出し、口に咥えた。
 そしてそのままライターを取り出し、火をつける。

<ヽ;`∀´>「ずいぶん余裕ニダね」

 エラの張った男の名前はニダー。
 この指導者で、裏社会では有名な男だ。

148 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:26:56 ID:6XuMoZG20

<ヽ`∀´>「まぁいいニダ、それで?」

 そう言って、ニダーは近くにあったグラスを二つ手にした。
 棚から上質のワインを取り出し、注ぐ。
 テーブルの端に注がれたグラスを一つ置き、その反対側に設置されたソファーに座った。

 もう一つ、ニダーの手の内にあるグラスにも赤い液体は注がれている。

<ヽ`∀´>「何のようニダ?」

 わざとらしい笑みを作り、ニダーはその赤い液体を口に含んだ。
 侵入者もテーブルに置かれたワイングラスを手に取り、その液体を口に含む。

(´・ω・`)「ふふふ、今日は顔見せ程度かな?」

<ヽ;`∀´>「顔見せで部下を始末したニダか?」

 予想しなかったその答えに、ニダーは表情を崩した。
 ショボンは悪びれもせず、「だって会わせてくれなかったんだもん」と続けた。

149 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:27:10 ID:6XuMoZG20

<ヽ;`∀´>「県長の使いといえば通したニダよ」

(´・ω・`)「いやぁ、公的な使いじゃないからね」

 ショボンがため息をつきながら、手をひらひらさせた。
 その様子にニダーは黙り込み、視線をふと伏せる。

(´・ω・`)「ま、顔見せも済んだし、そろそろ帰ろうかな?」

<ヽ;`∀´>「本当に顔見世だけが目的だったニダ?」

 ニダーはため息をつき、再度ワインを唇に当てた。
 ショボンもグラスを傾け、赤い液体を全て流しこんだ。

<ヽ;`∀´>「次回からは顔パスにしておくニダ」

 ニダーの言葉に、ショボンはウインクで返した。

150 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:27:25 ID:6XuMoZG20

(´・ω・`)「ああ、最後にひとつだけ聞いていいかな?」

 ショボンの言葉に、ニダーは軽く首を傾げた。

(´・ω・`)「僕とよく二人っきりになろうと思ったね」

 部屋の奥に多くの部下を忍ばせていたことも
 途中から迎撃の部隊を動かさなかったことも理解し、ショボンは尋ねた。

 いくら部屋の奥に部下がいても、殺されてからじゃ対処ができない。
 いきなり襲撃した男がショボンだとは推測もできなかったはずだ。

 その条件で、ニダーは部下の迎撃を辞めさせた。

151 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:27:36 ID:6XuMoZG20

(´・ω・`)「僕に殺されるとは思わなかったの?」

<ヽ`∀´>「ホルホルホルホル」

 ニダーは特徴的な笑い声をあげ、ショボンを真っ直ぐに睨みつけた。

<ヽ`∀´>「伊達や酔狂でこの村を治めているわけではないニダよ
      ニダーが一対一で勝てない相手なら、この村全員でかかっても結果は変わらないニダ」

 その返事に、ショボンは再度手をひらひらさせて答えた。
 ニダーはやはり、その特徴的な笑い声で返した。


 ―――

152 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:28:02 ID:6XuMoZG20

 気づけば景色は色を変え、群馬とは思えない光景を映し出した。

 日の落ちた街路にはネオンが輝き、若い男女が無数にいきかっている。
 それは、まるで都市部のような賑わいを見せていた。

ミ,,゚Д゚彡y―~~「……着いたぜ」

 フサギコがそう言って、二人に視線を向けた。

( ^ω^)「高崎……ですかお?」

 高崎――歓楽街で有名なその町は、ある裏家業で有名な一派が切り盛りをしている。

ミ,,゚Д゚彡y―~~「……ああ、来たことあんのか?」

( ^ω^)「ええ……まぁ」

 そう言って、ブーンは言葉を濁した。
 ツンが呆けていると、フサギコはなぜか歪な笑みを浮かべた。

153 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/06/01(水) 00:28:15 ID:6XuMoZG20

ミ,,゚Д゚彡y―~~「……会わせたい人がいる」

ξ゚听)ξ「……会わせたい人?」

( ´∀`)「おや、珍しい組み合わせモナね」

 歓楽街から顔を出したのは、予想外の人物だった。
 その意外な人物――モナーは、人懐っこい笑顔を振りまき、こちらへよってくる。
 身をこわばらせるブーンとツンに対し、フサギコは先ほどからは想像もできないやわらかい表情を浮かべている。

ミ,,゚Д゚彡y―~~「よお、待たせたな」

( ^ω^)「モナーさんが、会わせたい人かお?」

 ブーンの問いに、フサギコはやはり「ああ」と短く答えた。



      第8話「禁忌」 終

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