411 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 02:04:21 ID:wY/K.Bbs0

( ^ω^)「朝だおね……」

新しい朝が来た。
ごく普通の朝が。

( ^ω^)「何だったっけお?」

何かの夢を見た覚えはある。
ひどく懐かしい夢だった気もする。

僕の今に大きく影響を及ぼした、そんな夢だったような。




 ( ^ω^)ブーンは魔王を倒すつもりはなかったようです 第六章



.

412 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 02:06:30 ID:wY/K.Bbs0

( ^ω^)「……思い出せないお」

僕はそれ以上夢の内容を思い出す事を諦め、ベッドから起き上がる。

時計を見ると時刻は朝の六時前。
普段の僕からすれば早すぎる目覚めだ。

( ^ω^)「まあ、昨日は随分と早寝だったからね」

まだ日のあるうちに寝てしまった事を考えると、かなり長い時間眠っていた事になる。
その所為か、身体に若干のだるさは感じるが、疲労感はない。

( ^ω^)「さて、どうするかお」

何をするにしても早すぎる時間だ。
と言っても、特に何もする事は思いつかないのだが。

( ^ω^)「ラジオ体操でもするかお」

勿論冗談だが、早起きと言えばラジオ体操というイメージが未だに残っている事を考えると、
幼少期の刷り込みはかなり効果が高いものなのだと実感する。

413 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 02:10:35 ID:wY/K.Bbs0

僕は階下に降り、パンやジュース等の適当な朝食を仕入れて戻って来る。
親はまだ眠っているだろうから、起こさぬように静かに行動する事は心がけた。

取り敢えずは朝食を取る。
それが僕の見つけたやるべき事だ。

一応、他にも彼女の手がかりを探すというやるべき事もあるのだが、流石に朝も早すぎて色々と不都合だ。
まずは腹ごしらえをしておく事にする。

【TV】<「円相場の動向は以前……」

( ^ω^)

【TV】<「残暑は未だ続き……作物の……」

( ^ω^)

【TV】<「生活保護の……民国での……」

( ^ω^)「相変わらず、息の詰まるようなニュースばかりだおね」

414 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 02:12:09 ID:wY/K.Bbs0

朝食を取りながら聴いていたニュース番組では、依然として暗いニュースばかりが報道される。
何でこうも閉塞感に満ちた世界になったのだろうか。

僕が子供の頃は、未来はもっと希望に溢れていた記憶がある。

( ^ω^)「それ自体が勘違いで、本当は昔っから未来はろくなものじゃなかったのかもしれないけどね」

単に昔の僕が無知だっただけなのかもしれない。
あの頃から未来は、こんな風にしぼんで行くだけの先のないものだったのかもしれないのだ。

( ^ω^)「……今日はなんだか昔の事ばかり思いだすおね」

早く起きた事が子供の頃の体験を思い出させているのだろうか。
何となく、落ち着かない気分ではあるが、同時にそれを悪くないと感じている自分がいる。

( ^ω^)「待ちに待ってた遠足の日の朝みたいな感じ?」

そう喩えてみたが、遠足をを待ち望んでいた事自体あっただろうか?
行事はその全てが億劫だと考えていたような気もする。

415 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 02:13:26 ID:wY/K.Bbs0

( ^ω^)「いや、あれだけは楽しみだった覚えがあるお」

そんな僕が楽しみだと考えていた行事。
小学生時代の僕を考えてみれば、そんなものはなかった気もするが、何かが僕の中に引っかかっている。

他の皆はそれほど楽しみにはしていなかったが、僕はそれほど嫌いじゃなかった行事。
それは何だっただろうか。


( ^ω^)「1 確か写生大会じゃなかったかお?
      2 確かマラソン大会じゃなかったかお?
      3 確か芋ほりじゃなかったかお?
      4 確か史跡巡りじゃなかったかお      」

安価
>>416


416 :名も無きAAのようです:2011/09/21(水) 08:45:06 ID:INB9q2NYO



417 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 00:16:57 ID:9Nmh6UOc0

( ^ω^)「確か写生大会じゃなかったかお?」

美術、いや、小学校だから図工か。
普段は一時間の授業なのだが、年に数回、丸一日かけて外で絵を描く日があった。

弁当も持参なので、ちょっとした遠足のようなものに近かったのかもしれない。

ただ、図工の時間の一環ではあるので、遠足といっても絵は描かねばならぬし、
その間は同じ場所でずっと座ってる事になるので、当時の遊びたい盛りの子供達にはあまり人気がなかった。

( ^ω^)「そういえば僕、昔は絵を描くのは嫌いじゃなかったおね」

大多数が退屈そうに絵を描く中、僕は真面目に画用紙に向かっていた覚えがある。

上手下手で言えば、そう上手い方ではなかったが、一度何かの賞をもらった事もあった。

( ^ω^)「賞といっても、佳作だったけどね」

その道を志すには到底足りず、結局の所その思い出は僕の今に何も影響を及ぼさなかったと言える。

418 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 00:23:51 ID:9Nmh6UOc0

( ^ω^)「写生大会の日の朝は、こんな気持ちだったんだろうかおね?」

そんな気もしたが、実際にそうだったかはもう、確かめ様もない。
早起きはした覚えはないが、やはりどこか楽しげな気分だったと思う。

( ^ω^)「今日が楽しい日になるだろうって思う事は、今となっては皆無だおね」

ひどく寂しい自虐の呟きを口にし、僕は視線をテレビに向ける。
丁度流れていた天気予報によると、今日は快晴らしい。

長らく続いた残暑もだいぶ緩和され、ようやく秋らしい空気になるようだ。

( ^ω^)「絶好の行楽日和ってとこだおね」

奇しくも今日は土曜日。
ヒキニートである僕には何曜日であろうが関係ないが、僕以外の健全な人生を送っている方々も、
今日は休みの所は多々あるだろう。

例えば大学なんかも今日は休みのはずだ。

( ^ω^)「まあ、ヒキニートが行楽もへったくれもあったもんじゃないんですけどNE」

419 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 00:30:04 ID:9Nmh6UOc0

好んで外に出てしまうと、ヒキニートのアイデンティティが揺らいでしまう。

とはいっても、ここ最近は同窓会に出たり弟者の家に行ったりと、割とヒキニートも脱却気味ではあるのだが。

( ^ω^)「……というか、なんで僕は出かける前提で考えてるんだお?」

冷静に考えてみればおかしな話だ。
たまの早起きぐらいでこんな風に考えている自分はどうかしていると思う。

( ^ω^)「子供じゃあるまいし」

そう口にはしてみたものの、どうも思考が子供化したような感じがするというのが一番説明としてしっくり来る。

多分、内容を思い出せないあの夢の所為じゃないかと思う。
理由はないけれど、何故かそう思ってしまう。

( ^ω^)「何だか懐かしい感覚……か」

僕は立ち上がり、押入れの方へと向かう。

( ^ω^)「どこに閉まってあったっかお……」

ほんの数日前に中身を漁ったばかりだが、卒業アルバム以外は特に見る事もなく、再び仕舞い込んでいた。

420 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 00:44:14 ID:9Nmh6UOc0

( ^ω^)「お、この辺だおね」

卒業アルバムが入っていた箱のそばの段ボール箱。
その中に小学生時代の色々な物が仕舞ってあった。

( ^ω^)「あったお」

いくつかの画用紙に描かれた絵に古びた写生道具。
律儀にちゃんと取ってあった事が驚きだが、僕自身がそうした覚えはない。
多分親が仕舞っておいてくれたのだろう。

( ^ω^)「……下手な絵だおね」

どこかの池であろう風景。
鮮やかではない青で描かれた水面、くすんだ緑の木、曇りがちの空。

( ^ω^)「もうちょっと美化して描けばいいものを」

写生、景色をそのまま描くものなのだから、これはこれで正しいのだろうが、何だか陰気な感じで気が滅入る。
そんな子供だったのだろうという事で納得は出来るが。

僕は当時どんな顔でこの絵を描いていたのだろうか。

421 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 00:55:14 ID:9Nmh6UOc0

( ^ω^)「この池は見覚えあるお」

絵の中の風景自体がどこなのかは覚えていた。
ここ最近、彼女絡みで自分の記憶に自信が持てなくなっていた部分もあったが、
どうやらこの絵に関しては大丈夫な様だった。

( ^ω^)「確か、小学校から徒歩三十分程度で行けたはずだお」

ここから小学校まで二十分弱。
合わせても一時間以内で行ける距離だ。

( ^ω^)「こっちも開けてみるかお……流石に絵の具は使えそうもないおね」

カチカチに固まってしまった赤や青の絵の具。
こうなるのはわかっていただろうから、絵の具は処分しても良かったんじゃないかと思う。

( ^ω^)「ビリジアンとかセルリアンブルーとか、青緑とか水色でいいじゃないかと思うお」

絵の具は使えそうもないので、再び段ボール箱に仕舞い込んだ。
ゴミ箱に放り込まなかった理由はわからない。

分別が面倒だと考えたのかもしれない。

422 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 01:01:42 ID:9Nmh6UOc0

( ^ω^)「鉛筆だけでもいいおね」

何がいいのかわかってはいるのだが、どうも自分の思考の異常に付いていけず、流されている様な感じだ。
僕は鉛筆を手に取り、机の上の筆箱に収める。
小型のプラスチック製の鉛筆削りも出てきたから、それも一緒に入れた。

( ^ω^)「紙は……と……」

流石にまっさらな画用紙は箱の中にはない。
代わりにクロッキー徴が出てきたが、まだ使っていないページが多数あったので、それを使う事にする。

( ^ω^)「これで準備完了」

何の準備だと自分に問い質すのも馬鹿馬鹿しい話だ。
しかし、僕は何かに促されるように写生の準備を済ませていた。

( ^ω^)「……まだ時間は早すぎるおね」

ここまで準備したのだ。
折角だから時間も小学校の時と合わせて、もう少し経ってからにしようと思う。

424 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:10:38 ID:QeB4KdvM0

( ^ω^)「あとは……」

準備自体は完了したのだが、再現するならもう二点ほど追加したいものがある。

( ^ω^)「弁当は買えばいいおね」

自分で作るのは少々無理がある。
この年になって料理の一つも出来ないという不甲斐ない身は、実家住まい故の事か。

一人暮らしをしたとしても、僕の事だから自炊はやらない気もするが。

( ^ω^)「で、と……」

僕は携帯電話を手に取り、ディスプレイに目を落とす。
再現するなら人手は欲しい所ではある。
気分的なものだしそんなに大量にはいらないので、一人ぐらいで十分だ。

( ^ω^)「誘えば喜んで来そうな気はするおね」

土曜日、休みの日にわざわざこんな酔狂な事に付き合わせるのもどうかと思う。

425 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:17:59 ID:QeB4KdvM0

しかし、先日協力を約束してくれたばかりだし、この僕の行動は恐らく彼女絡みだろうから、
連絡しないわけにもいかない。

( ^ω^)「ああ、そうかもしれんね」

ここでようやく、昨夜の思い出さなかった夢が彼女絡みだったという事に気付いた。
無意識に流していたが、そう考えれば色々と頷ける部分はある。

思い出せない中身も、突然感じた郷愁も。

( ^ω^)「さしずめ呪いの夢ってとこかおね」

( ^ω^)「何か呪いの夢というのは怖いようで怖くない様な……」

呪いという仰々しい冠詞が付いた所で中身を忘れてしまう夢なら怖がり様がない。
忘れている間に水面下で徐々に何かが進行していくタイプなら怖いだろうが、それに気付くのは最後の瞬間だろうから、
やっぱり怖がり難いと思う。

無論、彼女とは一切関係ない、ただの夢を見た可能性もあるのだが、今はその可能性は捨てておく事にする。
そうでなければ、今の僕の妙な胸の詰まりの様なもどかしい感覚の説明が付かないし。

426 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:25:40 ID:QeB4KdvM0

( ^ω^)つ】「取り敢えず、嫌がらせついでに電話してみるかお」

準備に多少時間を取られたとはいえ、時刻はまだ朝の七時前だ。
休日の朝に早く起こされるのは腹立たしい事だろう。

僕なら確実に電話をシカトする自信はある。

( ^ω^)】 プルルー プルルー

( ^ω^)】ガチャ

【】<「はぁーい! 私ジョルちゃん、お電話ありがとう!」

( ^ω^)】

【】<「いっぱいお話しましょうね!」

( ^ω^)】

427 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:32:17 ID:QeB4KdvM0

【】<「え? スリーサイズ? それはちょっとぉ……」

( ^ω^)】

【】<「で・も! あなたが──」

( ^ω^)
 つ】 ピッ

( ^ω^)「何であんなにテンション高いんだお……」

思わず電話を切ってしまったが、対処としては間違っていないはずだ。
こんな朝っぱらからあのテンションは想定外だった。
徹夜でもしたのだろうか等と考えていると、ジョルジュから折り返し電話があった。

【】<「何で電話切ったん?」

( ^ω^)】「ウザかったから、つい」

【】<「もう少しオブラートに包めよ……」

428 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:40:59 ID:QeB4KdvM0

( ^ω^)】「何で朝からそんなに元気なんだお」

【】<「え? 別に普通だけど?」

聞く所によると、ジョルジュは毎日朝七時前には起きているという事だ。
何とも健康的な生活を送っているものだ。

だったとしてもあのテンションは高すぎると思うのだが、それは言わないでおく事にした。

( ^ω^)】「イメージ的にもっと自堕落な生活を送ってると思ってたお」

【】<「お前にだけは言われたくねえな」

( ^ω^)】「そんなことよりジョルジュ、今日は暇かお?」

【】<「暇って言うか、あの件絡みで人に会う予定だったが……」

( ^ω^)】「じゃあ、いいお」

【】<「いや、そういう振り方したなら用件ぐらい言えよ。気になるだろうが」

429 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:47:09 ID:QeB4KdvM0

一応、断りの電話を入れたという大義名分を得た事で話を済ませようと思ったのだが、
ジョルジュはしつこく食い下がってきた。

勘が良いのか僕の聞き方がよくなかったのかわからないが、
僕がこんな時間に電話した事自体が大事に捕らえられてる可能性もある。

( ^ω^)】「大した事じゃないお。ちょっと写生に行こうかと考えてただけだお」

【】<「え……ふ、風俗?」

( ^ω^)】「ベタだおね。取り敢えず氏ねお」

僕は覚えていない夢の事、何となく感じた郷愁のままに絵を探した事等をジョルジュに説明する。

【】<「それも呪い……だと?」

( ^ω^)】「そうと決まったわけじゃないお」

何となくそんな気がするだけだとジョルジュに言う。
実際、明確な証拠は何もない話で、僕のこの感覚に従っているだけなのだ。

430 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:55:15 ID:QeB4KdvM0

【】<「おk、わかった、俺も行こう」

( ^ω^)】「来んなお」

【】<「つめてえ!」

【】<「つーか、さっきのは誘いの電話だったんだろうが」

( ^ω^)】「ジョルジュは別口で情報集めようとしてたんだお?」

【】<「まあ、そうなんだが……」

( ^ω^)】「そっちそっちで頼むお」

【】<「うーん……でもなぁ……」

( ^ω^)】「こっちはほとんど思い付きのようなもんだから、気にする事はないお」

【】<「よし、わかった。俺が会う予定だったやつも連れてそっちに合流するわ」

( ^ω^)】「しなくていいお」

【】<「つめてえ!」

431 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 01:09:44 ID:QeB4KdvM0

結局僕はジョルジュの押しに負け、現地で合流する事になった。
僕の身を心配して言ってくれているジョルジュの言葉を蔑ろにする事は出来なかった。

( ^ω^)「さてと……」

約束の時間まではまだ数時間ある。
これ以上用意するものもなかったのだが、折角だから何か食料でも仕入れておこうか。

( ^ω^)「弁当以外、要はおやつだお」

僕はまた階下に降り、台所を漁ってみる。
都合よくバナナがあったので、それを頂く事にした。

あとはパンの耳があったのでそれももって行く事にする。
目的地は池だし、魚や水鳥、ジョルジュのエサとして使ってもいいだろう。

そんなこんなで僕は出かける準備を済ませ、適当に時間を潰した後、目的地に向かった。
池に着くとそこには既にジョルジュの姿があり、その隣に一つの人影もある。


あれは……

 1 弟者であった。
 2 僕の知らない○○(※AA指定)であった。

安価
>>432


432 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 08:59:36 ID:5cpwSoOs0



433 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 23:26:29 ID:NlyXFU.g0
  _
( ゚∀゚)(´<_` )

そこにいたのは弟者であった。
  _
( ゚∀゚)「よう、ちゃんと時間通りに来たな。偉い偉い」

( ^ω^)「ジョルジュ……それは?」

僕は、それ、と弟者の方を指差す。
  _
( ゚∀゚)「ん、弟者がどうかしたか? 例の件で今日会う予定だったが連れて来るって朝言っただろ?」

( ^ω^)「それはわかってるお」

状況を考えれば、弟者がここにいるのはジョルジュが連れて来たからだろうし、連れてくる理由も聞いていた。
だが僕が聞きたいのはそんな事ではないのだ。

( ^ω^)「何でこいつ、こんなフル装備なんだお?」

(´<_` )「ん、俺か? 何でと言われても写生すると聞いたからな。ちゃんと準備して来ただけだが」

434 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 23:43:55 ID:NlyXFU.g0

大き目のバッグを背負い、右手にはプラスチック製のバケツを持ち、肩と首に紐をかけ、画板を斜めに装着している弟者。
どこからどう見ても絵を描く為の姿である事はわかるのだが、そんな大袈裟な準備は必要なかった。

( ^ω^)「ジョルジュ?」
  _
( ゚∀゚)「いや、俺はありのままのお前の話を伝えただけなんだがな……」

何をしに行くかは伝えたが、何を準備しろとは一言も伝えてないらしい。
つまりこれは、弟者が自主的に考えた結果という事か。

( ^ω^)「まあ、弟者の趣味が若干ずれてるのはわかってたけどさ……」

そもそも、別に絵を描く所まで付き合ってもらう必要もなかったのだが。
  _
( ゚∀゚)「この格好で駅から出て来た時には全力で他人のふりをさせてもらった」

( ^ω^)「その時点で撒いておけお」

(´<_` )「お前らな……さっきから聞いてると随分な言い草だが、俺は何も間違ってないぞ?」

435 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 23:51:44 ID:NlyXFU.g0

(´<_` )「物事を行うにはそれ相応の準備をする必要がある」

(´<_` )「俺は万全を期すタイプなんだよ」
  _
( ゚∀゚)「形から入るタイプって感じだな」

力説する弟者と、それをからかうジョルジュ。
弟者が真面目な人間だというのは知っていたし、多少ずれた所があるのも知ってはいたが、
ぶっちゃけあまり一緒にいたくない格好だ。

(´<_` )「で、どこで描くんだ? この辺か? それとも向こうの公園辺りか?」
  _
( ゚∀゚)「何でお前、そんなに張り切ってんだよ」

弟者は僕やジョルジュとは別の小学校だったから、この池にも、ここでの写生大会にも馴染みがない。
だのに一番張り切っているのは謎だが、そのもの珍しさ故なのかもしれない。

それか本来の目的も伝えてあるはずなので、オカルトマニアの弟者としては張り切るのも当然とも言えるか。

僕の本来の目的、懐かしさに導かれるようにこの場に来た意味。
彼女の手がかりを探す為だ。

436 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 00:11:29 ID:NWzWkgI60

( ^ω^)「こないだは悪かったお。それと、今日も」

(´<_` )「ああ、いや、こないだはどっちかと言うと俺の方が悪かったかなと。すまんな」

先日僕が訪れた時、つい熱くなって僕を放っておいて議論に興じた事は弟者も気にしていた様だ。
仲良き事は美しきかなと、僕は生暖かい視線を贈る。

(´<_`;)「いや、あいつはそういうんじゃなくてだな……」

もっとも適した言葉は論敵だと弟者は言うが、ああやって遠慮なく本気で議論できる相手がいる事は良い事だと思う。

( ^ω^)「で、ジョルジュから話は聞いたんだおね?」

(´<_` )「一応な。お前が厄介ごとに巻き込まれてるとか」

僕に付き合うことで危険があるかもしれないという事は弟者も理解しているという。
むしろ望む所だと、目を輝かせていたのを見ると、流石オカルトマニアといった所か。

( ^ω^)「ありがとだお。全部終ったらあのゲームは弟者にやるお」

(´<_` )「その時は効力なくなってそうだがな」

437 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 00:17:25 ID:NWzWkgI60

(´<_` )「いや、礼はいらん。俺を存分に巻き込んでくれることがある意味礼のようなもんだしな」
 _
(;゚∀゚)「こいつの趣味だけは一生理解出来ない気がするわ」

どちらかと言えば、僕もジョルジュと同意見なのだが、こういう場合は頼もしいとも言える。

( ^ω^)「んじゃ、取り敢えず適当にぶらついて良さそうな場所を探すお」
  _
( ゚∀゚)「うし、行くか」

(´<_` )「ちょっと待った」

( ^ω^)「何だお?」

(´<_` )「今日ここに来たのって、小学生時代の再現のようなものなんだよな?」

( ^ω^)「そうだお。時間帯と、季節も確かこの時期にも来た事があったはずだお」

(´<_` )「だったらなるべく再現出来るものは再現した方がいいな」

なるべくその状況を再現した方が、心霊現象は起こしやすいものだと弟者は言う。
心霊現象を起こしたいわけじゃないのだが、昔を思い出すという意味では弟者の言う事も一理あるかもしれない。

438 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 00:24:14 ID:NWzWkgI60

ただ、その場合は問題点が一つ。
  _
( ゚∀゚)「再現はお前の行動だけでいいんじゃないか?」

すぐさまその問題点に気付いたのか、ジョルジュが口を挟む。
確かこういうイベント事は僕はほとんど一人で行動していたから、再現するとなるとジョルジュとは別行動になってしまう。

もっとも、この場には当時いなかった弟者もいるし、あくまで今回の事は僕に起因するはずだ。
僕自身の行動を皆でなぞれば良いと思う。

( ^ω^)「そうするかおね」

僕は頷き、池に沿って歩き出す。

ジョルジュと弟者はそれを追ってついて来るが、正直弟者とはちょっと距離を取りたくもある。
すでに画板は腹に押し当てて斜めにセットされ、時折鉛筆を目の前にかざしてそれっぽい仕草を繰り返しているその姿は、
何というか休日の爽やかな朝にそぐわなく思える。

( ^ω^)「どこかで撒くかお……

(´<_` )「おい、何か今こっそり不穏なこと口走らなかったか?」

439 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 00:31:31 ID:NWzWkgI60

ぽつりとつぶやいた言葉を弟者は耳聡く拾う。
周りが静かなので聞こえてしまった様だ。

( ^ω^)「静か?」

ふと僕はそこにある違和感に気付いた。

( ^ω^)「……今日は休日だおね?」
  _
( ゚∀゚)「土曜だから、そうじゃない人間もそれなりにいるだろ」

僕は足を止め、周囲を見渡した。
そう大きな池ではないが、公園も併設され、朝の散歩コースとしてはそこそこ賑わっていてもおかしくない。

交通量の少ない通りのそばだし、若奥様達が子供を遊ばせる場所としては良い環境だ。
休日ともなれば若いお父さんと一緒に子供が走り回っていてもおかしくない。

(´<_` )「少し静か過ぎるな」

どうやら弟者は僕の質問の意図に気付いたようで、僕と同じように周囲を見渡す。
そこには人っ子一人見当たらない。

441 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 23:42:08 ID:bsOQkyE60
  _
( ゚∀゚)「ここって、こんなに寂れてたっけ?」

僕の小学生時代からある公園だ。
最近出来たというわけでもないから、所々施設は老朽化していて年季を経た印象は受ける。

しかしそれとは別の寂れ方をしているような気がする。
具体的に言えば人の気配が全くしない。

( ^ω^)「人気がなさ過ぎるおね」

どうやら早くも当たりを引いたのかもしれない。
思い出を辿る間もないほどの急展開に、僕はため息をついた。
 _
(;゚∀゚)「えーっと……内藤さん?」

僕と弟者の様子で状況に気付いたのか、僕の顔を覗き込み、恐る恐る尋ねるジョルジュ。
僕自身は、またか、といったようなどこか達観したような感想を抱いているが、
怖い話が苦手なジョルジュには何度も心霊現象に会うような自体は笑い事ではないのだろう。

その可能性がある事はわかっていて僕に協力する事を決めたはずだが、
どこかでそう何度も起こるはずはないと高を括っていた部分があったのかもしれない。

442 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 23:48:22 ID:bsOQkyE60

( ^ω^)「ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「何だよ」

( ^ω^)「何かごめん」
 _
(;゚∀゚)「謝んなよ。何か起こる事確定みてえじゃねえか」

( ^ω^)「みたい、と言うよりは……」

(´<_`*)「確実に起こるな、これは」
 _
(;゚∀゚)「何でお前、そんなに嬉しそうなんだよ」

( ^ω^)「多分、彼は嬉しいんでしょうお」

対照的な反応を見せる二人を前に、僕はこれからの事を考えていた。
何か起こるのであろう事はわかっていたが、実際には何が起こるのだろうか。

出来れば危険なのは勘弁願いたいのだが、池や公園で起こる心霊現象といえば何があるだろうか。

443 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 23:55:31 ID:bsOQkyE60

( ^ω^)「弟者、こういった所で起こる心霊現象っていったら何があるかお?」

(´<_` )「そうだな……、池や公園限定というのはそうないが」

(´<_` )「水関係なら色々思い付く」
 _
(;゚∀゚)「引きずり込まれるとかか?」

(´<_` )「ああ、そういうのもあるが、奇妙な水棲生物なんかの話もよくあるだろ?」

( ^ω^)「河童とかかお?」

(´<_` )「そうそう。他にも大蛇や人魚、半漁人とか色々な」
  _
(*゚∀゚)「人魚!」

( ^ω^)「西洋風は何かイメージにそぐわないおね」

(´<_` )「呪いってイメージにか? 一応、西洋にもそういう概念はあるんだがな」

444 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 00:04:43 ID:UNTBTeTU0

(´<_` )「しかし、言っている意味はわからん事もない」

この辺りの風景はどう見ても日本のそれであるから、西洋的な妖怪は似合わないと思う。
弟者もその点は同意見な様で、風情は必要だと主張する。
妖怪に風情というのもどうかと思うが。

(´<_` )「日本的な水妖だと、まずはお前が挙げた河童だろうな」

(´<_` )「他は水虎、濃ヶ池、船幽霊……はちょっと違うな」

(´<_` )「だが河童以外はマイナーだな」
  _
( ゚∀゚)「そのマイナーなのをさらっと挙げられるお前が嫌だ」

( ^ω^)「僕的には、釣り上げられる怪獣の赤ん坊という、湖のひみつが思い浮かんだお」

(´<_`;)「そのネタわかるやついるのか?」

色々と挙げてはみたが、その手の生き物関係は若干呪いとは方向性が違う気がする。
僕の置かれた状況的に何かしら出て来てもおかしくはないのだが、日は高いし、池は狭いしで雰囲気は出ていない。

445 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 00:10:29 ID:UNTBTeTU0

( ^ω^)「まあ、取り敢えず絵を描いてた場所に行ってみるお」

僕の言葉に二人は頷く。
警戒はするが、ここで立ち止まっていても仕方がないので先に進む事にした。

( ^ω^)「確かこの辺だったはずだお」

それから五分ほど歩き、目的の場所に辿り着いた。
ここに着くまで誰ともすれ違わなかったのは、想定の範囲内かもしれない。

小学生時代、何度かこの場所に来ているので、絵を描いた場所は複数あるが、今日来たのは今朝見た絵の場所だ。
多分、あれを描いたのはこの季節だったはずだと記憶している。

(´<_`*)「ほう……」
 _
(;゚∀゚)「ここかよ……」

僕の指し示した場所に、二人は対照的な反応を見せる。
これといって特徴のない池に沿った道の端、街路樹のそばに座って描いていたはずだ。

446 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 00:21:41 ID:UNTBTeTU0
 _
(;゚∀゚)「いや、特徴ないって……俺には十分すぎるほどあるように見えるんだが」

( ^ω^)「池以外は木と水草ぐらいしかないお?」
 _
(;゚∀゚)「その木がまず問題だよな」

(´<_`*)「柳とはまたいかにも風情がある」
 _
(;゚∀゚)「んで、これ、水草とは言わないだろ」

( ^ω^)「水の中から生えている草だから、水草でいいんじゃないかお?」
 _
(;゚∀゚)「何か違うだろ。何だっけ、これ? 蒲とかそういうのだろ? やたらと背の高い」

蒲かどうかは知らないが、いわゆる水中に生える水草とは違う、その手の植物だ。
葉の枯れた薄い茶色の棒状の物が水中から伸び、視界を埋め尽くす。
 _
(;゚∀゚)「かろうじて池は見えるけどさ、何でこんなとこで描いてたんだよ」

( ^ω^)「そんなの僕が聞きたいお」

447 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 00:27:47 ID:UNTBTeTU0

理由は何となく覚えているが、今は言う必要はないだろう。
多分、人目を避けたかったとかそういう理由だ。
サボろうとか思っていたわけじゃなく、ただ静かに描くために。

(´<_` )「なかなか良い場所じゃないか」
 _
(;゚∀゚)「お前の趣味には同意しかねるって言ってんだろ」

尚も言い争う二人にはかまわず、僕は池の淵に腰掛ける。
草の上に尻を着けた時、ズボンが汚れるのだろうなと少し気にしてしまった。
子供の頃はきっとそんな事は一切気にしてなかったと思う。

( ^ω^)(視線も高いおね……)

座ってから見た景色は、あの絵の中の風景と少し違うと感じたが、すぐにそれは自分自身の所為だという事に気付いた。
僕は両手を斜め後ろに伸ばして地面に着け、体を後ろに倒して視線を下げて見た。

( ^ω^)「こんな感じかおね」

これで絵の中の風景にだいぶ近くなったが、まだどこか違う様な気もする。
単に気持ちの問題なのかもしれない。

448 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 00:37:15 ID:UNTBTeTU0

(´<_` )「ふむ、この辺りの風景は味わい深いものがあるな」

いつの間にか僕の隣に弟者が座って絵筆を構えていた。
肩膝を立て、絵筆を縦に構える姿はどこか間違っている印象を受ける。

( ^ω^)「つーか何でベレー帽被ってんだお」

(´<_` )「画家といえばベレー帽だろ」
  _
( ゚∀゚)「やっぱお前、形から入るタイプだろ」

僕らのツッコミはどこ吹く風と、弟者は早速画板に画用紙を広げ、下書きを始める。
鉛筆で描くのならさっきの絵筆は何だったのかと問い詰めたいが、恐らく無駄なので放置する事に決めた。

(´<_` )「で、お前は描かないのか?」
  _
( ゚∀゚)「別に絵を描きに来たわけじゃねえし」

あくまで僕の付き添いだと言うジョルジュ。
僕としてはそれで良いのだが、なぜか弟者はジョルジュにも絵を描くように勧め始める。

(´<_` )「そんな事もあろうかと、鉛筆や画用紙は余分に持って来てあるぞ」

449 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 02:14:53 ID:UNTBTeTU0

(´<_` )「残念ながら画板はないが」
  _
( ゚∀゚)「別にいいっての」

(´<_` )「他にも釣竿もあるが」
  _
( ゚∀゚)「何でそんなもんまであんだよ」

どれだけ準備万端なのか、弟者はバッグの中から折り畳み式の釣竿を取り出す。
オカルト好きだけでなくアウトドア好きだったのは知らなかった。

とはいえ、弟者は本来リア充寄りなので、そういう趣味も持ち合わせているのだろう。
ロリコンだけども。

(´<_` )「じゃあ、フリスビー投げるから取って来るか?」
  _
( ゚∀゚)「俺は犬かよ」

尚も色々と勧めている弟者に便乗し、僕もジョルジュに提案してみる事にした。


( ^ω^)「1 ジョルジュも絵を描くといいお
      2 ここで釣りすると面白いのが釣れるかもしれないお
      3 いっそ泳いでみるかお?
      4 自由行動でいいんじゃないかお?            」

安価
>>450


450 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 12:19:28 ID:uIDgCzoY0
3


451 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:00:01 ID:8Dm81Umw0

( ^ω^)「いっそ泳いでみるかお?」
  _
( ゚∀゚)「お前はお前で、何でそんなさらっとひでえ事言うんだよ」

( ^ω^)「僕としてはジョルジュの事を考えて言ったつもりだお」
  _
( ゚∀゚)「どこがだよ」

現在の状況は、何か出そうな雰囲気である。
恐らくこのまま黙々と絵を描いていると何かが起こる事は必至だ。

( ^ω^)「これまでの傾向からして、起こるとしたらベタな何かだと思うお」

柳の木から何かが垂れて来るとか、水の中から這い出てくるとか、そんなベタなもの。
  _
(;゚∀゚)「オーソドックスなのは地味に怖いよな」

( ^ω^)「でもそれは、このまま何もしなかったら、だお」
  _
( ゚∀゚)「どういう事だ?」

452 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:11:47 ID:8Dm81Umw0

柳の下に陣取り、池の方に向けて座る。
これでは如何にも柳からも池からも出てきて下さいと言わんばかりの布陣だ。
  _
( ゚∀゚)「確かに」
  _
( ゚∀゚)「けど、何でそこで泳ぎが出て来るんだ?」

( ^ω^)「このオーソドックスな状況を崩す為だお」

この如何にもな状況、それを崩せば起こるものも起こらなくなってしまう。
例えば誰かが賑やかに泳いでいたら、池からひっそりと何かが浮かび上がってくるなんて状況は起こらないかもしれない。
  _
( ゚∀゚)「なるほど……それなら大丈夫かも……」

(´<_` )「その場合は、その泳いでるやつが池に引きずりこまれるシチュエーションが出来そうだけどな」

( ^ω^)「ジョーズとか出るかもしれんおね」
  _
(;゚∀゚)「駄目じゃん!」

折角僕が適当にでっち上げてジョルジュを丸め込もうとしていたのに、あっさりと弟者が水を指してくれた。
思わず僕も乗っちゃったけど。

453 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:17:41 ID:8Dm81Umw0

( ^ω^)「まあ、でも、まだ夏は終ったばかりだし、泳ぐと気持ちいいかもしれんお」
  _
(;゚∀゚)「今日はだいぶ涼しい、秋らしい日になってんだろうが」
  _
(;゚∀゚)「何でそんなに俺を泳がせたいんだよ」

( ^ω^)「ちょっと場を和ませたかっただけだお」

不満顔でぶつぶつと文句を言うジョルジュに、僕は冗談だと告げる。
大体、彼女の手がかりを探しに、何かを起こしに来ているのに、その何かを起こさなくする必要はないのだし。
  _
(;゚∀゚)「だよなぁ……。結局は何か起こんなきゃ話にならねえんだよな」

( ^ω^)「そういえばジョルジュはその件で弟者に相談に行こうとしていたんだおね?」

なし崩し的に弟者もこの場に来る事になったが、ジョルジュはどこまで弟者に話したのか。
先の弟者の言では、僕が厄介ごとに、
それも心霊現象に関わる物に巻き込まれているという所までは理解している様ではあった。
  _
( ゚∀゚)「ああ、そうだった。電話ではなんだったから、簡単な説明だけで詳しくは会ってからって思ってたんだっけ」

454 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:27:17 ID:8Dm81Umw0

( ^ω^)「じゃあ、発端の話とかはまだなんだおね」

(´<_` )「発端? あれはお前の家に呪いのゲームが現れてから始まったんじゃなかったのか?」

弟者の家に行った時、結局その事は話せず仕舞いで帰って来てしまった。
話す順番を間違ったというか、予想以上に弟者が呪いのゲームの実物に食い付いた上に、妙な論争が発生してしまった故にだ。

( ^ω^)「元々は僕が同窓会で一人の女性に会った事から話は始まってるんだお」

僕は、部分的には自分の推量も含んでいると前置きし、これまであった事を弟者に説明する。
弟者は終始無言で僕の話を聞き入っていた。

( ^ω^)「というわけで、今日は見た覚えはあるけど中身は覚えていない夢に導かれてここに来たんだお」
  _
( ゚∀゚)「改めて聞くと、何とも変な話だよな」

( ^ω^)「それぞれの繋がりと、そもそもの目的がよくわからんおね」

僕の言葉に、ジョルジュは大きく頷く。
彼女の目的、それが全く見えて来ないのが一番のネックだという僕の考えにジョルジュも同意見らしい。

455 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:35:25 ID:8Dm81Umw0

( <_  )「……」

( ^ω^)「弟者?」

僕の話の後、俯いて何事かを考えていた様だった弟者が全く動く気配がない。
不審に思った僕は、弟者に声をかけてみた。

( <_  )「……す」
  _
( ゚∀゚)「す?」

(´<_`*)「素晴らしい!」

( ^ω^)「……ああ」

(´<_`*)「何だその素敵な出会いは!

(´<_`*)「目撃者多数なのに誰もその名前を知らないとは、素晴らしくミステリアスじゃないか!」
 _
(;゚∀゚)「いや、そんないいもんじゃ……」

456 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:51:52 ID:8Dm81Umw0

(´<_`*)「で、ブーンは話の細部は覚えているのに、肝心な部分だけを忘れてると」

( ^ω^)「うん、まあ……」

(´<_`*)「snog?」

( ^ω^)「それ、なんてオカルトゲー? そんな略語はねえお」

(´<_`三´_>`)「うおおおおお、テンション上がって来た!」

どうやら弟者は僕の話がいたくお気に召したらしい。
オカルトマニアの弟者からすれば、垂涎もののシチュエーションなのかもしれないが、僕にはその良さは到底理解出来ない。
  _
( ゚∀゚)「……悪い、相談相手間違った」

( ^ω^)「仕方ないお。僕も一度は相談相手に選んだぐらいだし」

これまでの付き合いで一度も見たことないようなテンションで騒ぐ弟者を余所に、僕とジョルジュと反省会を始めていた。

"(´<_`三´_>`)"「うおおおおおおおおおお!!!」

( ^ω^)(うるせえ……)

457 :名も無きAAのようです:2011/09/25(日) 23:59:30 ID:8Dm81Umw0

それから約十分後、やっと落ち着いてきた弟者に今後の相談をする事にした。
高いテンションがウザい事この上ないが、弟者のオカルト知識自体は当てに出来る。

(´<_` )「今日ここに来たのは、具体的な当てがあってというわけじゃないんだったな」

( ^ω^)「どちらかと言えば思い付きの類と、他に当てがないからだお」

(´<_` )「だったら待つしかないか」
  _
( ゚∀゚)「うわ、役に立たねえ」

(´<_` )「馬鹿、ブーンは既に彼女の呪いの一環の中にいるんだぞ?」

(´<_` )「その彼女に導かれて来たのなら、必ず向こうからアプローチがあるはずだ」

先も述べたように、半分は思い付きの様なものなので、待つだけで何とかなるかどうかは難しい所かもしれない。
加えて、弟者が言う様な、彼女に何かしらの意図があるかどうかも定かではない。

( ^ω^)「他にやる事もないし、しばらく絵を描いてみるかお」

(´<_` )「うむ」

458 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 00:06:24 ID:2pvRHDNY0
  _
( ゚∀゚)「……俺は?」

( ^ω^)「泳ぐかお?」
  _
( ゚∀゚)「嫌に決まってんだろうが」

(´<_` )「暇なら適当に散策でもして来い」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、そうす──」

(´<_` )「ただこういった場合、一人別行動取ったやつが何かに巻き込まれてってシチュエーションが……」
 _
(;゚∀゚)「止めとくわ。お前らが描いてるのを見てるよ」

あまり冗談になっていない弟者の言葉に、ジョルジュは地面に座り込む。
心なしか、こちらに身を寄せてくるのが若干気持ち悪い。

( ^ω^)「じっと見られてると描きづれえお」
  _
( ゚∀゚)「ケチケチすんなよ。おお、何か上手そうに見えるな」

( ^ω^)「こういうのは下描きの段階では大体上手そうに見えるもんだお」

459 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 00:17:04 ID:2pvRHDNY0
  _
( ゚∀゚)「そうか? あっち見てるとそうは思えないんだけど」

( ^ω^)「あっち?」

僕はジョルジュがあっちと指差した方、弟者の絵を後ろからこっそり覗き込んでみる。

( ^ω^)「うわ……」

思わず驚愕の声が漏れるほど弟者の絵は凄まじかった。

歪な線の重なり合わせで出来ている池から、妙に太い例の水草らしきものが生えている。
多分、柳と思われる木には真四角な葉っぱらしきものが刺さっていた。

見ていると何か不安な気持ちになる絵だ。

( ^ω^)「何、この画伯?」

そんな僕の呟きも、当の本人は全く耳に入らないくらい集中している様だ。
一心不乱に鉛筆を動かし、時折視線を上げて鉛筆を目の前にかざしてはまた画用紙に向かっている。

460 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 00:25:55 ID:2pvRHDNY0
  _
( ゚∀゚)「な? 下描きでも駄目なもんは駄目だろ?」

( ^ω^)「だおね」

ジョルジョの言葉には頷いたが、実はこれでもまだマシな方なのかもしれない。
これに色が付いたら、一体どんな事になるのやら。

( ^ω^)「これが呪いの絵画というオチは勘弁願いたいお」
  _
( ゚∀゚)「無いとも言い切れないのが嫌だな」

僕は苦笑いを返し、自分の絵の方に向かった。
何となく、自分が描いた物にしては上手いような気がしたのは弟者の絵のお陰かもしれない。

ただ、しばらく描いてはいないとはいえ、小学生時代よりは上手くなっているはずだ。

( ^ω^)(でもきっと、昔よりは余計な事を考えて描いてるおね……)

今の弟者ほどではないが、当時の僕も一心に絵を描いていた覚えがある。
今になって思えば、絵を描く事はやはり好きだったのかもしれない。

そうでなければ、覚えて無い夢が写生大会の事を思い出させてくれるとは思い難い。

493 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:11:01 ID:vCRsZPfM0

( ^ω^)(いや、余計な事ではないおね)

考えているのは、多分必要な事なのだ。
今を生きる為に、生活して行くために。

子供の頃は知らなかった事、考えなくても良かった事を、今は考えなければならない。

( ^ω^)(まあ、今の僕はあんまり考えてないんだけどNE)

ヒキニートである僕は、その余計に考える事から逃げてるとも言える。
でも、逃げ切れなかったから、時々こうやって考えてしまうのだろう。

いつかは終ると知っているこの時を、僕はきっと恐れているのだ。
  _
( ゚∀゚)「釣れねえ」

考えながらでも筆は動く。
いつの間にか全体の構図は取り終わり、雑ながらも僕の絵は下描きが終っていた。

一体どのくらい没頭していたのかわからないが、いつの間にかジョルジュが少し離れた場所で釣りをしている事に気付く。

494 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:16:31 ID:vCRsZPfM0

( ^ω^)「何やってんだお?」
  _
( ゚∀゚)「見ての通りだよ」

そう言ってジョルジュは釣り竿を振り、糸を引っ張り上げる。
その先端の釣り針には、白い塊が付いていた。

( ^ω^)「練り餌かお」
  _
( ゚∀゚)「詳しくは知らん。弟者が用意してた餌だ」

ジョルジュは再び竿を振り、針を池に投げ込む。

( ^ω^)「釣れるのかお……という以前に、ここって釣っていいのかお?」
  _
( ゚∀゚)「いいらしいぜ、弟者の話だと」

(´<_` )「ここはただの池だからな。公園の敷地内だと駄目だったはずだが」

僕達の声が届いたのか、画伯がジョルジュの話を補足する。
僕達の声が聞こえたという事は、絵が一段落着いたのだろうか。

あまり率先して確認したくはないので、その事には触れずにいた。

495 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:26:25 ID:vCRsZPfM0
  _
( ゚∀゚)「まあ、釣ってもいいとしても、全然釣れないんだけどさ」

( ^ω^)「腕の問題じゃないかお?」

(´<_` )「確かに、ジョルジュが黙って釣りをしてる姿は想像出来ないな」
  _
( ゚∀゚)「人を落ち着きのないガキンチョみたいな扱いすんじゃねえよ」
  _
( ゚∀゚)「これ、餌が悪いんじゃね? この白いの、何なんだよ?」

(´<_` )「小麦粉の塊だ」
  _
( ゚∀゚)「小麦……魚って小麦食うの?」

( ^ω^)「食わなさそうだおね」

画伯の説明だと、水で溶いた小麦粉を練ったものらしい。
材料はそれだけのようだ。
  _
( ゚∀゚)「つーかそれ、うどんじゃねえか」

( ^ω^)「うどんは塩も使うお」

496 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:33:35 ID:vCRsZPfM0

その辺は些細な違いで、確かにこれは練り餌というよりはうどんだ。
本来練り餌は米、麦の粉やサツマイモなどを煮て練り固めたもので、更に魚粉などで香り付けをするものである。

(´<_` )「本来はな。これはいわゆる子供用の練り餌だ」

画伯の説明だと、本来の練り餌の様に手の込んだものは子供の頃に用意するのは難しかったから、
どの家にでもある小麦粉で代用していたとの事だ。

一応、今回の集まりである昔を再現するという試みを意識して用意したらしい。

(´<_` )「さっきから画伯画伯って、誰の事だ?」

( ^ω^)「気にすんなお」
  _
( ゚∀゚)「で、この小麦粉で魚は釣れるのか?」

(´<_` )「たまーにな。間の抜けた魚が引っかかってくれる」
  _
( ゚∀゚)「何か期待出来そうもねえ話だな」

(´<_` )「子供の釣りなんて雰囲気を楽しんでたようなもんだからな」

498 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:42:05 ID:vCRsZPfM0

(´<_` )「こんな池で魚を釣っても処分に困るだろ」
  _
( ゚∀゚)「食えばいいじゃん」

(´<_` )「食用になる魚がこんな町中の池にいるか」

( ^ω^)「河口辺りか、渓流の方に行かなきゃいなさそうだおね」

僕らの説明にジョルジュは納得して頷いたようだが、まだ不満があるらしい。

何と言うか、弟者が見立てた様に、ジョルジュに釣りは向いてない気がする。
  _
( ゚∀゚)「うーん、食える食えないは置いといても、やっぱり釣れない釣りはつまんなくね?」

(´<_` )「餌が気に入らんなら、その辺でミミズでも捕まえて来い」
 _
(;゚∀゚)「うぇ、ミミズとか触れねえよ」

(´<_`;)「お前、意外と軟弱なんだな……」

499 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 00:52:56 ID:vCRsZPfM0

( ^ω^)「でもジョルジュ、昔はミミズとか捕まえてなかったかお?」
 _
(;゚∀゚)「あー、ガキの頃はな」
 _
(;゚∀゚)「でも、ある時期から駄目になったな。虫とかも」

ある時期とは言ったが、その時期がいつかはわからないとジョルジュは言う。
気付いたらいつの間にか駄目になっていたらしい。

昔はミミズどころか蛇とかも捕まえていたはずだが、随分と変わったものだと思う。

(´<_` )「大人になったら、というのはよく聞く話ではあるな」

( ^ω^)「子供は怖いもの知らずってことかおね」
  _
( ゚∀゚)「何も考えてなかっただけかもしれねーな」

(´<_` )「それなら、今も考えてなさそうだから触れそうなもんだがな」
  _
( ゚∀゚)「うるせえよベレー帽」

500 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 01:02:22 ID:vCRsZPfM0

それからも僕と弟者は絵を描き、ジョルジュは釣りをし、時折無駄話をして過ごした。
話題が子供の頃の事ばかりになるのは、この場の空気がそうさせたのか、それとも彼女の手による物だろうか。

どちらにしろ、僕らは随分と話をしたと思う。
特に弟者とは高校からの付き合いなので、子供の頃の姿は全く知らなかったから興味深かった。

弟者が昔からちょっと変わっていたのだろうという事は、話を聞いただけでも理解出来た。

( ^ω^)「ふぅ……」

僕は鉛筆を置き、少し距離を空けて絵の全体を眺めてみる。
思ったよりだいぶ上手く描けている事に自分でも驚いた。
  _
( ゚∀゚)「普通にうめえな」

( ^ω^)「……ありがとだお」

普段の様に軽口で返そうとしたのだが、口を吐いたのは礼の言葉だった。
その理由は何となくわかるけど、わざわざ確かめるまでもない。

501 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 01:08:07 ID:vCRsZPfM0

( ^ω^)「そっちの釣果はどうだお?」
  _
( ゚∀゚)「上手に屏風に絵を描いたってとこかな」

( ^ω^)「聞くまでもなかったおね」

ジョルジュは全く引く様子のない釣竿を地面に置き、大きく伸びをする。
僕もそれに倣うよう、両手を組み、頭上へと伸ばした。

( ^ω^)「意外と凝ってるおね」
  _
( ゚∀゚)「そりゃずっと同じ姿勢で描き続けてりゃな」

それほど長い時間描いていたつもりはないのだが、日はもう下りに入っている。
お昼はとっくに過ぎていたようだ。

( ^ω^)「飯にするかお」
  _
( ゚∀゚)「いいねえ」

僕は弟者にその旨を告げようと視線を向けたが、
まず紫とか黄土色とか毒々しい元は白い紙だったものが目に飛び込んできたので、そっと視線を逸らした。

502 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 01:15:00 ID:vCRsZPfM0

( ^ω^)「外で冷えたお弁当ってのも随分久しぶりな気がするお」
  _
( ゚∀゚)「だな」

ジョルジュは同意を示し、僕の方に歩み寄ると、手の平を上に向け右手を伸ばして来た。
それが何を意味するのか、さほど考えるまでもなく答えが思い当たる。

( ^ω^)「……ジョルジュ?」
  _
( ゚∀゚)「配給制じゃねえの?」

( ^ω^)「……荷物少ねえなとは思ってたけどさ」

ほぼ手ぶら同然で来ていたジョルジュは、当然の様に昼食の類も持ち合わせてなかったらしい。
わざとなのか天然なのかはわからないが、その辺で適当に買って来いというのも付き合ってもらっていて忍びない。


僕は……

 1 そっと弁当を差し出した。
 2 そっとバナナを差し出した。
 3 そっとパンの耳を差し出した。
 4 そっと弟者の方を指差した。
 5 ※自由記述

安価
>>503


503 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 01:19:54 ID:2ZiEbwX.0
3


506 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 00:32:35 ID:uKXHdaqA0

僕はそっとパンの耳を差し出した。
  _
( ゚∀゚)「何これ?」

( ^ω^)「見ての通り、パンの外殻だお」
  _
( ゚∀゚)「耳って言えよ。何か剥ぎ取ったような言い方すんなよ」

僕はジョルジュにビニール袋に詰めたパンの耳を手渡すと、自分の弁当を取り出し、地面に座る。
  _
( ゚∀゚)「いや、そうじゃなくてだな」

( ^ω^)「何か問題あったかお?」
  _
( ゚∀゚)「問題つーか、配給これだけなのとか、何でパンの耳なのとか、自分だけ弁当食いやがってとか」
  _
( ゚∀゚)「色々と思う所はある」

おおよそ、弁当としてパンの耳を渡されたら誰でも言いそうな不満を並び立てるジョルジュ。
そもそもの前提として、自分が弁当持って来てないのが悪いという事を完全に無視している。

507 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 00:41:12 ID:uKXHdaqA0

( ^ω^)「配給じゃなくて慈悲だお」
  _
( ゚∀゚)「もうちょっと高級なお慈悲を頂けませんかね」

( ^ω^)「他にあげられるものを持ってないお」

バナナもあるが、あれは僕のおやつなのでその存在を容易く明かす事はしない。
遠足とかで外で食べるバナナは格別なのだ。
  _
( ゚∀゚)「大体、何でパンの耳なんか持って来てんだよ」

( ^ω^)「池だし、魚とか鳥とかジョルジュとかにあげてもいいかなって思っての事だお」
  _
( ゚∀゚)「“とか”の繋ぎがおかしいと思うんだ、うん」

( ^ω^)「他にはあれだお、絵を描く時の消しゴム代わりに使うとか」
  _
( ゚∀゚)「妙に本格的だけど、お前普通に消しゴム使ってたよな」

なかなかパンの耳の存在に納得がいかないらしいジョルジュ。
その眼は僕の手にある弁当に注視されている所を見ると、半分分けろとでも言いたいようだ。

508 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 00:47:10 ID:uKXHdaqA0

だがしかし、育ち盛りの僕は分ける気はない。
如何にジョルジュが友達であろうと、それとこれはまた別の話である。

( ^ω^)「あ、いい事考えたお。それを餌に魚を釣って食べれば万事解決だお」
  _
( ゚∀゚)「ナイスアイデア!」
  _
( ゚∀゚)「あ、でも火がねえな……」

(´<_` )「火ならあるぞ。ほれ」

どこから話を聞いていたのか、弟者がジョルジュに火、チャッカマン的なやつを差し出す。
  _
( ゚∀゚)「おお、これで焼き魚が食える」

随分と気の早い発言をするジョルジュだが、まずは釣ってからの話だ。

ただそれ以前にも色々と問題がある。
最初に話したように、食べられる魚がいるのかとか、ここで火を焚いていいのかとか。

509 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 00:53:12 ID:uKXHdaqA0
  _
( ゚∀゚)「何とかなんじゃね? 人もいねえしよ」

ここに来てから数時間は経過したが、相変わらず僕ら以外の姿は誰一人として確認出来ない。
その時点でおかしな状況なのだが、それ以上のおかしな事が起こらないのも不気味といえば不気味だ。

その異常さにジョルジュも気付いているはずなのだが、敢えて深く考えないようにしているのかもしれない。
考えると怖いだろうから。
  _
( ゚∀゚)「よし、じゃあ、いっちょやってみっか」

ジョルジュは早速餌を練り餌からパンの耳に変え、釣りにかかる。

( ^ω^)「冗談だったのに」

(´<_` )「その辺に買いに行けば済む話だからな」

僕は弟者と顔を見合わせ、肩をすくめた。
何でジョルジュがあんなに釣りに乗り気なのかわからないが、流石に現地調達は冗談のつもりでしか言ってない。

弟者が言う様に買いに行けば済む話なのだ。
ここから十分も歩けば、適当なコンビニぐらいあったはずだ。

510 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:00:36 ID:uKXHdaqA0

( ^ω^)「てか弟者、あれだけ準備万端だったんだから……」

(´<_` )「ああ、弁当もたんと用意してるぞ」

予想はしていたが、弟者は弁当も多めに持って来ていたようだ。
バッグからレジャーシートを取り出して広げ、その上に五段重ねの重箱を置く。

どこにそれだけの量が入っていたのかというツッコミは無粋だろうか。

( ^ω^)「それを途中で言ってくれれば良かったのに」

(´<_` )「いや、まあ、その……放って置いた方が何か面白かったし」

( ^ω^)「それは僕も同意するお」

弟者の指し示すまま、僕はレジャーシートの上に座る。
どうせ一人では食べ切れないからと、弟者は僕に紙皿と割り箸を手渡す。

(´<_` )「さあ、遠慮せず食ってくれよ」

511 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:09:19 ID:uKXHdaqA0

弟者は重箱の蓋を開け、上から段を外してレジャーシートの上に並べて行く。
一つの重には大量のおにぎりが所狭しと詰められ、その他の重にも大量の色取り取りのおかずが詰められていた。

( ^ω^)「気合入り過ぎじゃね?」

思わずよだれが垂れそうなほど美味しそうな弁当だ。
このよくわからない写生会にここまでの物を用意して来るとは、力の入れ所を明らかに見誤っているのではなかろうか。

( ^ω^)「つーかさ、ジョルジュから話し聞いてから、そんなに時間なかったはずだお?」

(´<_` )「家族総出で準備したからな」

弟者の家は今の時代にしては珍しく家族が多い。
父母に姉や兄、それに妹と、皆でやれば確かに間に合うかもしれないが、何故そこまでしてという思いは浮かぶ。

(´<_` )「半分ぐらいは昨晩の残りだから、そこまで大変だったわけでもないぞ」

( ^ω^)「普段からいいもん食ってんだおね」

(´<_` )「それと、こういうイベント的な集まりは、楽しくやるというのがうちの家訓みたいなもんだからな」

512 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:16:04 ID:uKXHdaqA0

友達と公園で絵を描くという話をしたら、それならばという流れでこの弁当が用意されたという。

( ^ω^)「何と言うか、すごくいい家庭だおね」

(´<_` )「ああ、俺も気に入ってる。さあ、話はこの辺にして食べようか」

( ^ω^)「いただきますお」

僕はおにぎりを手に取り、箸でから揚げを掴み、その両方を口いっぱいに頬張る。
空腹だった事もあり、両方ともものすごく美味かったが、冷えたおにぎりからは何だか懐かしい味も感じた。

( ^ω^)「遠足のお昼って感じだお。こんな豪華なのはなかったけど」

(´<_` )「冷えたおにぎりと、しんなりした海苔の食感がいかにも外での食事って感じだよな」

( ^ω^)「たまにはこういうのもいいもんだお」

(´<_` )「そうだな。……って、そういやジョルジュはいいのか?」

( ^ω^)「いや、流石に何も言わなくても気付くお?」

513 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:21:10 ID:uKXHdaqA0

釣りをしているジョルジュから多少離れているとはいえ、僕らが何をしているか目を向ければわかる距離だ。
こちらに来ない所をみると、ジョルジュは随分と釣りに集中しているらしい。
これまでほとんど釣りをした事がないと言っていたジョルジュだが、釣りが気に入ったのだろうか。

(´<_` )「練り餌をパンの耳に変えた所で、魚は釣れんだろ」

( ^ω^)「簡単に水中で剥がれ落ちそうだおね、パンの耳」

すぐにこちらに飛んでくると思っていたジョルジュは、予想外に粘っている。
これだけの量の弁当を二人で食べ切れるとは思えないし、僕はジョルジュを呼びに行く事にする。

( ^ω^)「ジョルジュ、もう釣りはいいからご飯に──」
  _
(*゚∀゚)「キタ─────!!!」

( ^ω^)「お?」

突如奇声を上げるジョルジュ。
その視線の向く先に目を向ければ、水面に上がる水飛沫が一つ。

(;^ω^)「マジかお……」

まさかの食い付きに、僕はジョルジュに声をかけようと片手を挙げた姿勢のまま、水面の動きに見取れてしまう。

514 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:29:14 ID:uKXHdaqA0
  _
(*゚∀゚)「来たよ来たよ、この引き、大物だ!」

(´<_`;)「おいおい、ホントかよ」

僕とジョルジュの様子に、何が起こったのか察した弟者が駆けつける。
その顔には信じられないという表情がありありと浮かんでいた。

( ^ω^)「仕込んでるわけもないし、本当なんだろうおね」

魚がいないわけでもないし、釣れる可能性もゼロではなかったのだが、実際にかかってみるとやはり驚いてしまう。
あの餌と明らかにド素人のジョルジュの腕で釣れるわけがないと、僕と弟者は先ほどまで決め込んでいたのだし。
  _
(*゚∀゚)「さてさて、どんな魚が釣れたのかねえ……」

嬉々として竿を引くジョルジュ。
釣りの醍醐味ともいえるこの瞬間が楽しくないわけはないだろう。

(´<_` )「……魚かな?」
  _
(*゚∀゚)「あ? 魚以外に何が釣れるってんだよ」

515 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:35:11 ID:uKXHdaqA0

( ^ω^)「ベタに長靴とか」
 _
(:゚∀゚)「むしろそれ釣る方がすげえよな」

僕らのやり取りには加わらず、神妙な顔付きで何事かを考え込む弟者。
その間にも水飛沫はどんどん岸に近付いて来る。

(´<_` )「いや、何だか平和で何も起こらないから失念しているのかもしれないが……」

( ^ω^)「あ……」

弟者が何を言いたいのか、皆まで言われずとも僕は気付いてしまった。
長閑過ぎて忘れそうになっていたが、一応僕らは怪奇現象の最中にあるはずだ。
 _
(:゚∀゚)「……魚だよな?」

( ^ω^)「かもしれないし……」

(´<_` )「そうじゃないかもしれない」

僕らの言葉に、竿を引くジョルジュの手が緩む。

517 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 01:45:34 ID:uKXHdaqA0

果たしてこのまま釣り上げてもいいのだろうか。
 _
(:゚∀゚)「魚じゃなくても亀とかそういうのだったり……」

( ^ω^)「ただし、首が四つある、とか?」
 _
(:゚∀゚)「こええよ! 変な喩えすんじゃねえ!」
 _
(:゚∀゚)「どうしよう? これ、逃がしちまった方が……」

+(´<_`*)「釣ーれ! 釣ーれ!」
 _
(:゚∀゚)「だー、オカルトマニアの目が途端に輝き出しやがった!」

もう水飛沫はすぐそこまで来ており、あまり迷っている時間もない。
どうするべきなのか、僕は咄嗟に思い付いた答えを口にする。


( ^ω^)「1 何か起こるなら好都合だお。釣り上げろお!
      2 取り敢えず釣ってから考えるお
      3 バナナあげるから魚は諦めろお
      4 ジョルジュ、あとは任せたお!         」

安価
>>518


518 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 02:43:47 ID:mVJvT.wQ0
2


520 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 23:41:43 ID:G7SakK9Y0

( ^ω^)「取り敢えず釣ってから考えるお」
 _
(:゚∀゚)「すっげえアバウト!」

そうは言うが、結局の所釣り上げない事には話は進まない。
何かを起こしに来ている以上、変化を避けても仕方ないのだ。

+(´<_`*)「釣ーれ! あ、それ! 釣ーれ!」
 _
(:゚∀゚)「それはそうなんだが……弟者うるせえ!」
 _
(:゚∀゚)「釣ったらいきなり……がぶり! 何て事はねえよな?」

( ^ω^)「大丈夫だお」
 _
(:゚∀゚)「ホントか?」

( ^ω^)「その時はちゃんと骨は拾ってやるから安心しろお」
 _
(:゚∀゚)「安心出来NEEEEEEEEEEEE!!!」

521 :名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 23:55:00 ID:G7SakK9Y0
 _
(:゚∀゚)「つーか駄目じゃん! 俺死んじゃう前提じゃん!」

( ^ω^)σ「ジョルジュ」
 _
(:゚∀゚)「あ?」

等と冗談を言っているうちに、水飛沫はもう目と鼻の先である。
覚悟を決めたのか反射的にかはわからないが、ジョルジュは竿を引き、何かを釣り上げた。
 _
(:>∀<)「ド畜生ぉぉぉぉぉ!!!」

(´<_` )「あ……」

( ^ω^)「お……」

水音を上げ、空を舞うそれに、僕と弟者は間の抜けた声を漏らしていた。



      第六章  了



                              つづく・・・


  次へ戻る inserted by FC2 system