- 22 : ◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:04:35 ID:TgOuEkqc0
太陽の運動は東京と変わらないようで、群馬駅についた二人に希望の光を灯してくれる。
内藤がふと視線を向けると、崩壊した金網の向こうで、一人の男が煙草を吸っていた。
駅に人は一人しかいない。
きっと、彼が役所まで案内してくれる男なのだろう。
( ^ω^)は役人のようです
第二話「役人宿舎」
- 23 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:04:59 ID:TgOuEkqc0
( ^ω^)「あの人かお?」
ξ゚听)ξ「スーツだし、そうなんじゃないかしら?」
群馬の役人は一体どんな怪物なのだろうと思っていたが
案外貧相な体つきだ。
噂ほどの場所じゃないのかもしれない。
その思いもすぐに改めさせられることになるのだが、二人はある種の安心感のようなものを覚えた。
('A`)y−~~「あんたか?」
その男の第一声は、こんな言葉だった。
- 24 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:05:14 ID:TgOuEkqc0
正面から見ると、小柄ながら筋肉で覆われた体で、
痩せた頬が印象的な男だ。
やはり、この地での勤務は激務なのだろう。
('A`)y−~~「新しく来た役人ってのは?」
言って、男は値踏みするかのように足元から頭まで睨みつける。
ふんっと鼻で笑い、鼻から白い煙を吐き出した。
('A`)y−~~「しっかし、女連れ、ねぇ」
今度はツンの胸の辺りを凝視する。
- 25 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:05:30 ID:TgOuEkqc0
ξ;゚听)ξ「……」
どうしていいかわからないといった表情のツンに、助け舟を出した。
( ^ω^)「妻ですお
ツンといいます」
会話をすることで、男の意識を自分に向けようとしたのだ。
内藤の企みは成功し、男は内藤に向き直った。
('A`)y−~~「俺はドクオ」
ドクオ、と名乗った男は、吸っていた煙草を地面に投げ捨て、内藤に顔を近づけた。
そして、二カッと笑い、告げる。
('∀`)「名前くらいは聞いたことがあるだろう?」
- 26 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:06:02 ID:TgOuEkqc0
内藤が困ったように笑い、ツンは内藤に一体誰なの?有名な方?とでも聞きたそうな視線を配った。
幸い、その視線はドクオには気づかれなかったようで、上機嫌のままドクオは言った。
('∀`)「そう、香川でうどん以外のものを食った男が、この俺さ」
ξ;゚听)ξ「……え?」
あの香川で、うどん以外を口にする。
簡単に見えて、なかなかできることではない。
貧相だと思った男が、まさかそこまでの実力者だとは思わなかった。
- 27 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:06:23 ID:TgOuEkqc0
そういえば、前任者はどんな人だったのだろう。
('A`)「しっかし、クックルの代わりがこんな男だとはねぇ」
ξ;゚听)ξ「……クックル?」
( ^ω^)「前任者だお
札幌ですすきのに行かなかった男、だお」
それが意味するのは、人間の欲望に打ち勝った男、ということだ。
そしてそんな男ですら、群馬という土地に安住することはできなかった。
('A`)「で、あんたは?」
きた。
一体自分の夫は何かすごいことをしたのだろうか?
そんなツンの視線を感じつつ、内藤は短く答えた。
( ^ω^)「何もないですお」
- 28 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:06:42 ID:TgOuEkqc0
そう、特に何もないのだ。
役所に入って、荒巻という男の部下として、普通に業務をこなしてきた。
なぜ群馬に配属になったか、その答えは全くわからない。
('A`)「え?」
('A`)「……あ、いや、そうか、うん、逆にいいかもな」
言葉が見つからないのだろうか
それとも、すぐ死ぬ男だと思い、それを告げるのはあまりにもかわいそうだと思ったのか、
ドクオは言葉を濁し、うんうんと一人頷いた。
- 29 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:06:58 ID:TgOuEkqc0
会話の最中も車は進み、街中に入っていく。
ξ゚听)ξ「日本にまだこんな場所が残っていたのね」
思わず、といった感じで、ツンはそう呟いた。
まるで、小人が住むような小さな家に、ツギハギの服を来た村人が
身なりのいいよそ者を乗せた車を監視をするように睨みを効かせている。
('A`)「そんなこと言うもんじゃねぇ」
ドクオは煙草を取り出し、少し考えるように煙草を見つめ、箱に戻した。
( ^ω^)「煙草、吸われても大丈夫ですお」
ブーンの気遣いに、ドクオは消え入るように笑った。
- 30 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:07:13 ID:TgOuEkqc0
('A`)「何もお前らに遠慮なんかしてねぇよ」
内藤がどういうことだろうと首を傾げると、ドクオは早口で続けた。
('A`)「まだ死にたくないってことさ
窓を開けたらお前らの不用意な発言が筒抜けになっちまうだろう」
香川でうどん以外のものを食った程の男が、これほどまでに怯えるとは、
一体これからどうなるのだろうか、そんな不安が内藤とツンに一筋の冷や汗を流させた。
('A`)「大丈夫だよ。
街の人を怒らせなければ、ここは東京と変わらない」
そう言って笑うドクオを見て、思う。
その言葉の裏には、怒らせれば東京とは違う結末を迎えることを意味しているのだろう。
わかりましたお、とブーンが言うと、ドクオは満足そうに頷いた。
- 31 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:07:31 ID:TgOuEkqc0
('A`)「市役所の仕事は、知ってるか?」
( ^ω^)「そのくらいは……存じておりますお」
('A`)「金髪女、お前はどうなんだ?」
ξ゚听)ξ「夫の仕事くらいは」
内藤の仕事は、監査委員だ。
市のお金や仕事を監視し、正しい計画にもとづいて、正しくお金が使われているか検査をするのが主な仕事だ。
ツンのその言葉を聞いて、ドクオはふっと、鼻で笑った。
('A`)「で、内藤は?」
( ^ω^)「……」
('A`)「まぁ、言いたくないよな」
- 32 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:07:55 ID:TgOuEkqc0
含みを持たせた言い方。
何が違うというのだろうか。
('A`)「監査委員の仕事は市のお金や仕事を監視し、不正な動きがあった時は未然に正しい数値に誤魔化し
市長が汚職をしていたら何も言わず、その他が悪さしてたら市長に告げる仕事だ。」
(;^ω^)「……え?」
動揺する内藤に、ドクオは笑うと、言った。
('A`)「ま、少なくとも群馬じゃそうだ」
動揺する二人を乗せ、車は進んでいく。
('A`)「着いたぞ」
- 33 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:08:48 ID:TgOuEkqc0
ドクオが車を止めたのは、古びた建物で、
それが役員宿舎と気づくのは、しばらくたってからだった。
何事もないようにドクオは僕たちに鍵を渡し、ふぅと一息く。
そして、動かない二人を見て、怪訝な顔をした。
('A`)「どうした?早く荷物を置いて来い」
ξ;゚听)ξ「これは……」
( ^ω^)「ツン……行くお」
役員宿舎の中は、外観と比べるとすごく綺麗だったが、
今までと比べると、ツンは大きく肩を落としていた。
- 34 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:09:05 ID:TgOuEkqc0
ξ;゚听)ξ「せまいわね」
( ^ω^)「ツン、ごめんお」
ξ*゚听)ξ「あなたと一緒なら大丈夫よ」
鍵がついてるだけありがたいわよ、と笑う彼女を、
内藤はたまらなく愛しく思った。
( ^ω^)「じゃあ、ブーンは行ってくるお」
ξ*゚ー゚)ξ「うん、帰ってくるまでに住めるようにしておくわ」
軽く口付けし、愛の確認をする。
そして、内藤は早足でドクオの元へ向かった。
- 35 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:09:19 ID:TgOuEkqc0
にやけ顔を必死に隠して戻る内藤を迎えたのは、焦ったドクオの顔だった。
(;'A`)「おい、あの女は?」
( ^ω^)「ツンかお?」
(#'A`)「馬鹿野郎!
早く連れてこい」
そう言って、内藤をも置き去りにして、走る。
(#'A`)「糞が」
ドクオが思いっきりドアノブをまわす。
しかし、鍵がかかっていて開かない
- 36 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/02/27(日) 22:09:30 ID:TgOuEkqc0
(;^ω^)「ツン!開けるお」
内藤の声を聞いて、ツンはゆっくりと鍵を開けた。
ξ;゚听)ξ「どうしたの?
(#'A`)「馬鹿野郎!ここをどこだと思ってやがる!」
ドクオは、最近女を狙った事件が多発していること。
部外者は特に被害を受けやすいこと。
そして、役人は狙われやすいことを大声で説明した。
( ^ω^)は役人のようです
第二話「役人宿舎」終
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