- 107 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:22:38 ID:K627S8oc0
( ´∀`)「昨日はどうしたんだモナ?」
会社に着くなり、モナーの発した第一声はこれだった。
相変わらずの笑顔だが、昨日と違い影が見える。
内藤とツンが困惑していると、やはりこの男が横から割り込んだ。
('A`)「昨日は歓迎会の意味で我が家で飲んでいました」
( ^ω^)は役人のようです
第六話「影」
- 108 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:23:18 ID:K627S8oc0
( ´∀`)「君にそのようなことを頼んだ覚えはないモナ」
高圧的な態度でモナーがドクオに迫ったので、すかさずフォローする。
( ^ω^)「すみませんお、ブーンがドクオに頼んだんだお」
そう言うと、モナーはぐぬぬと言って机へ戻っていった。
得意げな顔でドクオを見ると、何故か怒ったような顔をしている。
('A`)「おい」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
('A`)「あまりモナーを刺激するな」
ドクオは小さい声でそう言って、視線を下に向けた。
('A`)「あの男は群馬で生まれた男だ」
- 109 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:23:32 ID:K627S8oc0
この群馬で、産まれることができた。
それ自体はすごい事だと思う。
しかし、ここは群馬なのだ。
そのくらいの経歴を持つものがいることは想像に難しくない。
内藤は無言で睨むドクオに謝る代わりに感謝の言葉を述べた。
( ^ω^)「ありがとうだお」
('A`)「なっ」
一瞬呆けたような顔をし、早口になるドクオ。
あまり、感謝されるようなことになれていないのだろう。
内藤とツンが笑うと、ぶっきらぼうに仕事始めるぞと言い、自分のデスクに戻っていった。
- 110 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:24:27 ID:K627S8oc0
( ^ω^)「やるお、ツン」
ξ゚听)ξ「ええ」
不可解なお金の動き――それだけじゃ不十分だと言うなら不可解な理由を探らなければならない。
( ^ω^)「ちょっと県長の所へ行ってくるお」
できるだけ軽く、目立たないように声を出した。
本当は無言で向かいたかったが、規則に従わねばならない。
('A`)「は?」
返ってきたのはドクオの呆けたような声と、モナーの鋭い眼光。
( ^ω^)「行くお、ツン」
ξ゚听)ξ「ええ」
気づかない振りをして、席を立った。
- 111 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:24:51 ID:K627S8oc0
頼む、そこで座っていてくれ――思いも虚しく、立ち上がる影。
('A`)「どこへ行くんだ?」
その顔はどう見ても不機嫌だった。
( ^ω^)「県長の所ですお」
('A`)「理由は?」
( ^ω^)「おっお、着任の挨拶ですお」
できるだけ朗らかに笑う。
頼む、そこをどいてくれ――その思いを視線に乗せて。
- 112 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:25:47 ID:K627S8oc0
( ´∀`)「一役人の赴任を県長に報告などしていないモナ」
気づけば、モナーまでもが立ちふさがっている。
ならば、仕方ない。
( ^ω^)「なぜ、ブーンがここに来たか、聞かされてはいないんですかお?」
にこりともせず、言った。
見れば、モナーの表情は凍り付いている。
何を考えているのか全く読めない。
流石に群馬で産まれただけのことはあるのであろう。
ξ゚听)ξ「では、失礼します」
そう言って横を通り過ぎる二人を、モナーとドクオは黙って見送っていた。
- 113 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:25:58 ID:K627S8oc0
壁の向こうに、一組の男女がいる。
何やら言い争っているが、その言葉は上手く聞こえなかった。
( ^ω^)「失礼しますお」
ξ゚听)ξ「失礼します」
中には、県長である素直クーと大柄な男がいた。
男の正体は群馬県の県議、フサギコだ。
ミ,,゚Д゚彡「なんだてめぇ」
フサギコはあからさまに不機嫌な顔をし、二人を睨みつけた。
クーはそんなフサギコを冷めた目で見つめている。
( ^ω^)「県長様に、お話がありまして」
- 114 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:26:16 ID:K627S8oc0
遠まわしに邪魔だと言った内藤にフサギコ頭を掻いた。
どいつもこいつも、そう呟くと、一人部屋を後にする。
その背中に、クーの「県長は私だぞ」という声が降りかかったが、フサギコは片手をあげて返した。
ξ;゚听)ξ「怖い人ね」
ツンの言葉に笑顔で返し、扉をゆっくりと閉める。
そして、次はクーに向き直った。
川
゚
-゚)「それで、話とはなんだ?」
クーは相変わらずの冷たい視線を二人に向けている。
( ^ω^)「まずは挨拶を」
内藤はそう切り出し、自分の仕事と氏名をクーに語った。
- 115 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:26:39 ID:K627S8oc0
( ^ω^)「最も、クーさんの邪魔をするつもりはありませんお」
まず、味方だと思わせなくてはならない。
そうすれば、モナーの下という今の立場でも動きやすくなるだろう。
( ^ω^)「ブーンは不正と思われたものをクーさんに持って行きますお」
その後は、任せます。
( ^ω^)「クーさんが不正じゃないと思えばそのままでいいし
不正だと思ったらブーンに言ってくださいお」
簡単に言うと取引だ。
クーやクーの味方の不正は見逃そう。
しかし、クーの敵が不正をしたら、それを教えて欲しい、つまりはそういう事になる。
- 116 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:27:05 ID:K627S8oc0
川 ゚
-゚)「それで?」
クーはその提案を鼻で笑い、話を続けさせようとした。
( ^ω^)「それで?とはなんですかお?」
川
゚
-゚)「見返りは何が欲しい?」
クーは内藤を、いやツンも合わせた二人を、品定めするかのようにじっくり見つめる。
たまらず、ツンは視線を逸らすが、クーの眼光は変わらなかった。
内藤が黙っていると、クーは自傷気味に笑い声を漏らす。
川
゚ー゚)「まさか、私の政策に同意して、少しでも役に立てば、なんて考えていないだろう」
言って、再度表情を堅くする。
川 ゚
-゚)「わかってるさ、誰も望んでいないことくらい」
早く条件を言え!クーは怒ったようにまくし立てた。
- 117 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:27:50 ID:K627S8oc0
- ( ^ω^)ooO(方針を、変えるかお)
きっと、クーは条件を提示しなければ信用してはくれないだろう。
( ^ω^)「実は、お願いがあるんですお」
切り出し、できるだけ作り笑いに見えるような笑みを浮かべた。
案の定、クーは口端を上げ、嘲笑を作る。
ξ;゚听)ξ「……」
そして、内藤はその言葉を告げた。
川
゚∀゚)「アッハッハッハッハ」
結果は、想像通りだった。
川 ゚ -゚)「いいだろう!その条件、乗ってやるさ」
- 118 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:28:05 ID:K627S8oc0
部屋から出ると、先ほどの男、フサギコが廊下にもたれかかっていた。
ミ,,゚Д゚彡「おい」
内藤は視線を向け、感情を図るが、フサギコの顔は至って冷静のようだった。
( ^ω^)「なんですかお?」
ミ,,゚Д゚彡「なぁ」
フサギコは眉を寄せ、内藤に近づいてくる。
ミ,,゚Д゚彡「何故、あの女に協力する?」
( ^ω^)「……」
内藤が答えず、じっと視線を送ると、フサギコははぁーと大きく息をついた。
- 119 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:28:42 ID:K627S8oc0
ミ,,゚Д゚彡「てめぇ、群馬の者じゃねぇな」
フサギコはポケットに手を入れ、煙草を取り出した。
口に銜え、火をつける。
辺りにじんわりとした煙が広がった。
煙草の香りが鼻を抜ける。
ミ,,゚Д゚彡y―~~「今日、仕事終わったら時間あるか?」
( ^ω^)「?」
ミ,,゚Д゚彡y―~~「少し、話があるんだ」
フサギコは少し距離を置き、窓から群馬の森を眺める。
釣られて、内藤が森を眺めると、フサギコはにっと笑った。
ミ,,゚Д゚彡y―~~「なんにせよ、市役所にいるってことは異動でここに来たんだろ?」
ミ,,゚Д゚彡y―~~「つまり、しばらくは群馬の住民だ……なら」
- 120 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/09(水) 21:30:40 ID:K627S8oc0
一拍置いて、フサギコは再度二人を見つめる。
窓からの光がフサギコの額に反射し、なんとも言えない光景を作っていた。
ミ,,゚Д゚彡y―~~「本当の群馬、見てもらうぜ?」
内藤がツンに視線を向け、困った顔を見せると、危険はねぇ、そこは約束すると言って、フサギコは笑みを作った。
ξ゚听)ξ「本当の……」
( ^ω^)「群馬ですかお」
フサギコの額を反射した光は、二人の瞳に容赦なく入り込んでいた。
( ^ω^)は役人のようです
第六話「影」
終
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