44 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 21:59:48 ID:tFikrFEk0

 結局、仕事は二人で出勤することになった。
 役所の人間はみんなそうしているらしい。

('A`)「着いたぜ」

 ドクオは、大きな建物の前で車を止めた。
 群馬総合役所と書かれている。

( ^ω^)は役人のようです
      第三話「仕事」

45 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:00:06 ID:tFikrFEk0


('A`)「ドクオ、今戻りました」

 三人を出迎えたのは、がっちりとした体格の内藤を、更に一回り大きくさせたような
 大柄の、それでいて柔和な微笑が特徴の男だった。

( ´∀`)「ふむ、ご苦労モナ」

 壮年の男に挨拶すると、ドクオは二人を置いて、自分の机へ向かってしまう。

( ´∀`)「群馬の監査委員長をしています、モナーといいます」

 言って、名刺を差し出してくる。
 内藤も反射的に名刺を構え、挨拶する。

( ^ω^)「内藤ホライゾンと言いますお」

46 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:00:23 ID:tFikrFEk0

 内藤の差し出した名刺を笑顔で受け取り、モナーは視線をツンに向けた。

( ^ω^)「妻のツンですお」

ξ゚听)ξ「よ、よろしくお願いします」

 ぎこちなく頭を下げるツンにも、モナーは変わらない笑顔を向けた。

( ´∀`)「道中お疲れでしょう、座ってくださいモナ」

 進められ、二人がソファに腰を落とすと、ドクオがやってきた。

('A`)「失礼します」

( ´∀`)「うん、ありがとう」

 てきぱきと三人にコーヒーを配り、再度頭を下げ、デスクに戻る。
 ドクオはかなりできる男なのだろう。

47 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:00:41 ID:tFikrFEk0

 モナーは置かれたお茶をゆっくり飲み、二人にも飲むよう勧めた。

( ´∀`)「彼の作るコーヒーは美味でね」

 モナーの話に相槌をうち、話を進める。

( ´∀`)「急にすまないね、ほら……」

 モナーの言葉の続きには、クックルのことがあるのだろう。
 前任者は突然行方不明になった。

( ^ω^)「わかっておりますお」

 一応の話は荒巻から事前に聞いていた。

48 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:01:00 ID:tFikrFEk0

( ´∀`)「それで、仕事中なんだけど」

 言い、視線をツンに向ける。
 ツンは困ったように視線をテーブルに向けた。

( ^ω^)「ドクオに連れてくるよう言われましたお
       どうすればいいですかお?」

( ´∀`)「確かに、宿舎にいたら事件に巻き込まれてたでしょうからね」

 笑顔で怖いことを言い、もう一度お茶で唇を湿らせる。

( ´∀`)「と、言っても……この役所の中も危険ですモナ」

 やはり、役所の中とは言え、群馬には変わりないのだろう。
 もしかしたら、このモナーという男も、先ほどのドクオという男も危険なのかもしれない。

49 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:01:23 ID:tFikrFEk0

( ´∀`)「私の部屋がありますから、そこで雑誌でも読んでいれば安全でしょう」

 不自然な笑顔が逆に恐怖を感じさせる。
 すると、横から再度声がかかった。

('A`)「モナーさん」

( ´∀`)「ん?何だね?ドクオ君」

('A`)「内藤さんにとっては、初めての群馬なんだ。
    東京での群馬の印象は知っているでしょう?」

 一瞬、モナーの笑顔が途切れ、再度作られたような笑顔に戻った。

( ´∀`)「……何が言いたいのかな?」

('A`)「他人の個室に妻を置くなんて不安でしょう……それより仕事を手伝わせたらどうです?」

50 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:01:38 ID:tFikrFEk0

 モナーが返事をしないでいると、ドクオは畳み掛けるように続けた。

('A`)「仕事もそのほうがはかどりますし、何より内藤さんも安心かと」

 口元だけは笑ったまま、冷たい視線をモナーが浴びせるも、ドクオは動じない。

('A`)「どれが一番安心ですか?内藤さん?」

 言われ、内藤は言葉に詰まる。
 その間にモナーが何か言おうとしたが、ドクオが言葉を続けた。

('A`)「奥さんはどう思います?内藤さんの傍が一番安心できませんか?」

ξ゚听)ξ「そう、ですね」

 モナーがそれは悪いと言ったが、ツンは笑顔で気にしないでくださいと続け
 その話はそれで決定になった。

51 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:05:00 ID:tFikrFEk0

 準備されていたお昼を食べ、ようやく仕事がはじまった。

 内藤の仕事は各所から送られてくる請求書と報告書を照らし合わせることで
 例えば紙が足りないという現場の報告と、紙を発注したという総務の動きを照合し、依頼された発注だったか
 また、紙を異常に発注していないか、そして代金を払い、紙を受け取ったか調べることだ。

 その中で、報告漏れを見つけ、現場にただし、必要があれば関係各所に連絡をする。

 地味ながら、役所を正しく動かす大切な仕事である。

( ^ω^)「ん?何かおかしいお?」

('A`)「どうした?」

( ^ω^)「暴徒鎮圧費のとこだお」

 費用の中でも、特に目立つ項目だ。
 おかしいのは、費用がばらばらな点。
 10万円代の料金から、100万円を越す料金まである。

 しかも、記録長には、100万円を越す出費時の記録が存在しないのだ。

 逆ならわかる。小規模の騒ぎを記録に残さないなら、理解の範囲内だろう。
 しかし、逆はあり得ない、不正の匂いだ。

52 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:05:24 ID:tFikrFEk0

('A`)「ああ、不正だろうな」

( ^ω^)「どうするんだお?」

('A`)「誰がやったか、が先だ」

 当然、そのくらい調べている。

( ^ω^)「いっぱいいるお、ツン」

ξ゚听)ξ「はいこれ」

 内藤に言われて、ツンは不正を行ったものの氏名一覧を出した。
 総勢7名。

('A`)「それはどうやって調べた?」

 そのリストは100万円代の領収書のサインを書いた者を連ねたものだ。
 それを告げると、ドクオはやれやれといった具合に首を振った。

53 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:05:40 ID:tFikrFEk0

('A`)「50点だな」

 ドクオはため息をついて、説明を始める。

('A`)「あのな、上司にこれサインしておいてって言われたら
    サインする内容なんて確認するか?」

ξ゚听)ξ「しないの?」

 ツンの何気ない一言に、ドクオは一瞬表情を崩した。

('A`)「ツンさんだっけ?あんたはいい人なんだな」

 そう言って、自嘲的に笑ったドクオは内藤に視線を移した。

( ^ω^)「確認、しないかもしれないお」

ξ゚听)ξ「どうして?」

54 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:06:15 ID:tFikrFEk0

ξ゚听)ξ「どうして?」

('A`)「お役所仕事って聞いたことないか?
    間違ったからと言って怒られない、まぁ上司が言ったことだからそもそも間違ってない
    誰からもお咎めのないことに本気になって、わざわざ上司の反感買うやつなんて、ここにはいない、ぜ」

ξ゚听)ξ「あら?」

 そこでツンは一旦区切り、言った。

ξ゚听)ξ「あなたもそうなのかしら?ドクオさん?」

 ツンの問いに、ドクオは笑って返した。
 当たり前だ、と。

55 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/01(火) 22:08:59 ID:tFikrFEk0

 ツンは眉間に皺を寄せることで反発の意を唱えたが、ドクオはひらひら手を振って相手にしない。
 その間にも、内藤は資料を食い入るように見つめている。

('A`)「どうした?」

 興味を持ったのか、ドクオが身を乗り出すが、内藤は首を振って顔をあげた。

( ^ω^)「まぁ、これだけの情報じゃ調べられないお」

 ドクオは鼻を鳴らし背を向け、ツンは話をまとめようとする内藤を睨みつけた。


( ^ω^)は役人のようです
      第三話「仕事」 終


おまけ


59 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/02(水) 08:49:45 ID:yqss.NVY0
群馬県民だけど安心して遊びにオイデヨ

60 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/02(水) 10:40:45 ID:xf1aOgtA0

>>59

 背筋が震えるとは、こういうことをいうのだろう。
 まさか、僕が群馬に招待されるなんて

 しかも、安心して遊びにオイデヨという文句で――

 一体群馬の遊びとはなんなのだろう?

 それだけで、体の振るえは止めることはできなくなっている。
 さらに、安心して、という言葉

(;^ω^)「どういうことだお?」

('A`)「あん‐じん【安心】ってのは、二つの意味がある」

 ドクオの言葉が、追い討ちをかける。
 額から流れる冷や汗はもはや制御しきれず、足元に小さい水溜りを形成している。

(;^ω^)「わかってるお
       ひとつが仏教の功徳により、迷いがなくなった安らぎの境地
       もうひとつが、阿弥陀仏の救いを信じて浄土往生を願う心のことだお」

61 :◆Ymtt.Y6YOc:2011/03/02(水) 10:41:03 ID:xf1aOgtA0

('A`)「そうだ、そして浄土往生とは、死後、仏や菩薩の住む浄土に生まれ変わることを意味する」

 では、その二つの共通点は――ある考えが浮かび、作者はそれを振り払うように大きく首を振った。
 作者は必死に考えを巡らせるが、浮かんでしまったその考えを打ち消すことはできない。
 安らぎの境地とは、死後の世界のことではないか?
 そして、浄土往生もまた、死後を意味している。

 つまり、死んでから、更に群馬流の遊ばれ方をする――ということではないのか?

 そしてそれは、さらにもう一つの仮説を打ち立てることができる。
 死んでから行く群馬とは――――言えない、ここでは、言うわけにはいかない。

 検閲されているのだ。

(;^ω^)「ごめんなさいお、ついカッとなって書いてしまっただけなんだお」

 思えば、全ての始まりはあるネタ画像を見た時だった。
 真逆――それすらも奴らに操作されていた?
 それが、作者の最後の記憶だった。

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