2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:05:28.43 ID:f5Uo/Ccx0
 
 ダイ27ワ セカイ ノ ソラ カラ キミ ヲ ヨブ
 
 
視界が真っ白に染まったのは、恐怖で意識が飛んだからではない。
切り裂いた風が白い雲を吹き上げただけに過ぎない。
 
川;゚ -゚) 「ッ……」

目を閉じずにいられたのは、きっと信じていたからだと思う。
はためく白い雲の先に見える澄んだ水面が急速に広がる様を見ても、私はしっかりと目を開けたままそれを見ていた。

( ^ω^) 「お!」

川 ゚ -゚) 「お……?」

視界を遮る白い雲が、吹き上げる風を全く感じていない様なゆっくりとした動きで下方に下がって行く。
その次の瞬間には、雲の上に寝そべった私の腹の下辺りに柔らかな、しかし確かな力を感じだ。

川 ゚ -゚) 「お……おぉ!?」

水面が近付く速度が急速に落ち、やがて完全に停止した。
そして今度は、ゆっくりと水面が遠ざかって行く。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:06:47.33 ID:f5Uo/Ccx0

それがどういう事か、考えずともすぐさま私はその答えに辿り着いた。

川 ゚ -゚) 「飛んでる……」

(*^ω^) 「お! 飛べたお!」

私の声に呼応するように、満面の笑みを浮かべたブーンの顔が私のすぐ側で歓声を上げた。

川*゚ー゚) 「見ろ、やっぱり飛べたじゃないか! やったな、ブーン!」

(*^ω^) 「うんお! やったお! ホントに飛べたお!」

私はブーンをバシバシと叩き、歓喜の声を上げる。
ブーンは痛い痛いと言いながらも、笑顔のままで喜びを顕にした。

ひとしきり喜びを分かち合うと、私はブーンの上で身体を起こし座り直した。
思った以上にブーンの上は安定しており、私程度の重さの人間がブーンの上で飛び跳ねたとしても落ちたりはしなさそうだ。
私はゆっくりと上昇するブーンの上で、360度に広がるパノラマの世界に目を向けた。

川 ゚ -゚) 「これは……」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:08:08.62 ID:f5Uo/Ccx0

川*゚ー゚) 「素晴らしい眺めだな」

眼下に広がる、草原の緑に水の青、視線を上げれば山の木々の緑、そして頭上の空の青。
見るもの全てが色鮮やかに輝いている。
まだ大した高度はないのだが、それでも飛行機ですら数えるほどしか乗った事のない、低地住まいの人間には何もかもが新鮮に見えた。

(*^ω^) 「お空から見るのは久しぶりだおー」

川*゚ー゚) 「お前はいつもこんな世界を見ていたのか。羨ましい限りだ」

(*^ω^) 「おっおっお」

晴れやかなブーンの笑顔が、くるりと円を描いた。
嬉しいのか縦横無尽に顔を動かすが、よく目が回らないものだと感心する。

(*^ω^) 「お? クー!」

川 ゚ -゚) 「ん? 何だ、下がどうかしたか?」

ブーンが身体の端の方を揺らし、下の方を指し示す。
こう高い所から、まじまじと下を覗き込むのは少し肝が冷えるが、私はブーンが示した方向を覗き込んだ。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:10:06.63 ID:f5Uo/Ccx0

( ・∀・)( ´_ゝ`)(´<_` )(*><)( <●><●>)(*‘ω‘ *)ミセ*゚д゚)リ ξ*゚听)ξ(゚、゚*トソン

川 ゚ -゚) 「あいつら……」

揃いも揃って全員が先ほど私達がいた辺りで手を振っていた。
あいつらがついて来ているのはわかっていたがら驚きはしないが、誰が尾行を提案したかぐらいは知っておくべきだろうか。

(*^ω^) 「おー!」

川;゚ -゚) 「ちょ、ブーン、あんまり揺らすな」

手を振る皆に答える様に、ブーンがその身体を揺らす。
当然、ブーンの上にいる私も揺れるわけで、その高さも相俟ってスリル満点だ。

(;^ω^) 「お、ごめんお」

川 ゚ -゚) 「いや、いいさ。楽しいんだろ、空を飛ぶのが」

(*^ω^) 「お! すっごく楽しいお!」

川 ゚ー゚) 「そうか、それは良かった」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:12:04.79 ID:f5Uo/Ccx0

(*^ω^) 「クーのお陰だお!」

そう言ってくれるのは嬉しいが、実際の所、私はほとんど何もしていない。
単にブーンの相談に乗っただけの様なものだ。

川 ゚ -゚) 「私はただ、ブーンとお話をしただけだぞ?」

(*^ω^) 「お話してくれて、お空飛べるようになったお!」

私が何と言おうと私のお陰だと、にこやかに微笑むブーンにこちらも微笑むしかなかった。

川 ゚ー゚) 「そうか。じゃあ、もう、悩みはなくなったか?」

(*^ω^) 「お! なくなったお!」

ブーンがそう答えた瞬間、山が大きく震えた。
空を飛んでいた所為で、それが解放の地震だと気付くのに少し遅れたが、どうやらこれで地球は守れた様だ。
随分あっさりとした物だが、何度も言うように結果さえ伴っていれば余計な英雄譚は必要ないのだ。

川 ゚ -゚) 「しかし、壮観だな……」

世界が揺れる様を空から見下ろす経験など初めてごとだ。
見下ろすと少し酔いそうなぐらい揺れている。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:14:27.68 ID:f5Uo/Ccx0
  _,
川 ゚ -゚) 「少し怖い様な、それでいて気持ち悪……ん?」

( ^ω^) 「お?」

私の視線が一点で止まる。
それに釣られたブーンも私の視線を追う。
視線の向く先は先ほどまで私とブーンがいた場所。
今は他の皆がいる場所で、その場所を端的に表すなら断崖絶壁。

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「ヤバイヤバイヤバイ、落ちる落ちる落ちる」

;;∩( ・∀・)∩;; 「ハッハッハァ、ブラザー、君なら落ちても大丈夫じゃァないですか、下は水だし」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、大丈夫かもしんないけど、怖いじゃん? こんな高さから落ちるのって」

;;∩( ・∀・)∩;; 「まあ、そういうわけで彼は大丈夫そうなんでェ、僕の方を先に引き上げてもらえませんかね?」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、抜け駆けすんなよ。弟者、俺から引き上げてくれ」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:16:09.84 ID:f5Uo/Ccx0
  _,
川 - -) 「何やってんだ、あいつらは……」

(;^ω^) 「おー……」

崖の方に寄り過ぎていたのか、先の地震でモララーと兄者が崖から足を踏み外した様で、崖にぶら下がっている。
既に揺れは収まっているし、他の皆は難を逃れた様で何よりだ。
というか、あの2人なら落ちてもたぶん大丈夫だろう。
特に心配はしない。てか、落ちた方が面白いくらいだ。

(;^ω^) 「お、助けに行くお?」

川 ゚ -゚) 「まあ、待て。下は川だしあの2人なら落ちても大丈夫だ」

(;^ω^) 「でも……」

川 ゚ -゚) 「それにモララーはともかく、兄者はお前じゃ受け止められないだろ?」

尚も助けに行こうとするブーンを私は引き止める。
別にあの2人を落としたいわけでもないのだが、わざわざブーンが行かなくても助けならあの場にいる他の皆が出すだろう。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:17:10.22 ID:f5Uo/Ccx0

(´<_` ) 「え? 何? 何か言った、兄者?」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「い、いや、助け……」

(´<_` ) 「え? 何? 聞こえない。今、光合成で忙しいんで」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「こ、光合成って、俺らそんな葉緑素ないでしょ?」

ミセ*´ー`)リ 「むー」

(´<_` ) 「俺じゃなくてミセリだよ」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「あれ、いつの間にそんなに仲良くなってんの? てか、何で吸われてないの?」

(´<_` ) 「吸われてはいるが、場所限定してもらってるから大丈夫。加減もしてもらってるし」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「何でそんなに通じ合ってんの? 俺の時は不味いとか言われたんだけど?」

ミセ*´ー`)リ 「お陽さま、ポカポカ、気持ちいい」

(´<_` ) 「ああ、いい天気だな。絶好のピクニック日和だ」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、何和んでの? こっちは死出のピクニックに片足突っ込んでんのに?」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:19:30.19 ID:f5Uo/Ccx0

;;∩( ・∀・)∩;; 「そろそろ引き上げてもらえるとありがたいのでェすが」

ξ--)ξ 「仕方ないわね……」

ξ゚听)ξ 「ほら、トソン、まず、あんたがこいつの腕を掴んで」

(゚、゚トソン 「腕を掴んで、それから放せばいいんですね?」

ξ;゚听)ξ 「放したらこいつ落ちるでしょうが!?」

(゚、゚トソン 「落とさないのですか?」

ξ;゚听)ξ 「何で落とすのよ!? 助けるんでしょ? そのまま掴んでなさいよ!」

(゚、゚トソン 「助……ける……?」

ξ;゚听)ξ 「何で真顔で首捻るのよ!? あんたの仲間なんでしょ?」

(゚、゚トソン 「いえ、仲間ではなく、むしろ敵ですが」

ξ;゚听)ξ 「そうだったの!?」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:21:18.62 ID:f5Uo/Ccx0

;;∩( ・∀・)∩;; 「一応、同じ国家に属する国家公務員で、任務は同じだと思ってましたがァ」

(゚、゚トソン 「確かに目的は同じかもしれませんが……」

ξ;゚听)ξ 「ませんが?」

( 、 トソン 「その同じ目的というのが仕事だけならば良かったのですけどねェ……」

;;∩( ・∀・)∩;; 「ウフフフゥ、確かにそうですねェ。その点は同意しますね」

( ><) 「何の話なんだか全然わかんないんです」

( <●><●>) 「部外者が首を突っ込むのも野暮な話でしょう」

(*‘ω‘ *) 「やれやれだっぽ」

ξ;゚听)ξ 「つーか、あんたらも助けなさいよ!」

(;^ω^) 「おー……」
  _,
川 ゚ -゚) 「あいつらは……」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:22:52.64 ID:f5Uo/Ccx0

ブーンが少し高度を下げると、あいつらが何を話しているかぐらいは聞き取る事が出来た。
このまま放っておいて落ちるのを待とうかと割と本気で思ったが、そういうわけにもいかないだろうし、何よりブーンが心配
そうな顔をするので助ける事にした。

川 ゚ -゚) 「おい、トソン」

( ^ω^) 「お!」

(゚、゚*トソン 「あ、クー先輩にブーンちゃん」

川 ゚ -゚) 「そろそろそいつ、引き上げてやれ。嫌だろうけど」

(゚、゚トソン 「引き上げるのですか? 嫌ですけど」

川 ゚ -゚) 「まあ、落ちても別に構わないのだが、どうせ死なないだろうし」

川 ゚ -゚) 「しかし、中途半端にケガでもされたら後々面倒だしな」

(゚、゚トソン 「それもそうですね。落とすならもっと確実な場所の方がいいでしょうしね」

ξ;゚听)ξ 「何が確実なのよ……」

;;∩( ・∀・)∩;; 「アッハハハァ、楽しそうな会話でェすね。まったく目が笑ってないですよ」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:24:59.71 ID:f5Uo/Ccx0

トソンが心底嫌そうな顔でモララーを引き上げている間に、私はブーンに兄者の方に寄るように頼んだ。
別にブーンから降りて崖の上を歩けば済む話なのだが、折角だからもうしばらく空を堪能したくもある。

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「クーちゃん、ヘルプ!」

川 ゚ -゚) 「おい、弟者。このまま放置したくなる気持ちはわかるがそろそろ引き上げてやれよ」

(´<_` ) 「えー? 折角ミセリが気持ちよさそうに寝てるのに?」

ミセ*´ー`)リ zzz

川 ゚ -゚) 「それなら仕方ないか」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「え? ちょっと、クーちゃん?」

川 ゚ -゚) 「しかし、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

(´<_` ) 「うーん、たぶん、兄者に比べて俺は綺麗な水で出来てるから気に入られたんじゃないかな?」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、同じじゃね? 俺もお前も、使ってんのはこの川の水だろ?」

(´<_` ) 「馬鹿言うな。俺は兄者と違ってちゃんと水をろ過してるし、こまめに取り替えてるんだ」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:27:19.19 ID:f5Uo/Ccx0

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「そんな事してたの? つーか俺にもその水分けろよ」

ミセ*´д`)リ 「……もが?」

( ^ω^) 「お?」

ミセ*うд`)リ 「……ブーン? クー?」

(´<_`#) 「ああ、兄者がうるさいからミセリが起きちゃったじゃないか」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「この状況なら騒がずにはいられないじゃん、俺? 生きるか死ぬかの瀬戸際なんだし!」

大袈裟に言う兄者だが、確かモララーが来た時、崖から川に飛び込むとか言ってたような気がする。
ならば落ちても平気なはずなのだが、状況からパニクっているのだろうか。
それもまあ、面白いので敢えて指摘はしない。

ミセ*゚д゚)リ 「クー! お空、飛んでる! ミセリ、一緒、飛ぶ!」

すっかり目が覚めた様子のミセリが弟者から飛び跳ねる様に離れ、崖の端まで歩いて来る。
放っておくと突風でも吹いた時に怖いので、またブーンに頼んでミセリの方に寄ってもらった。

川 ゚ -゚) 「ほら、来い」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:28:44.46 ID:f5Uo/Ccx0

ミセ*゚∀゚)リ 「とぉー」

ブーンの上に飛び乗るミセリを捕まえ、肩に乗せる。
風があるのでしっかり掴まっているようにミセリに言い含めた。

川 ゚ -゚) 「すまんな、弟者、ミセリは借りてくぞ?」

(´<_` ) 「ああ、気にするな。ミセリにとってはクーが一番なのは知ってるからな」

ミセ*゚ー゚)リ 「弟者、ありがと、またあとで」

(´<_` ) 「ああ、またあとでな。落ちない様に気をつけろよ?」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、和んでないでそろそろね……」

川 ゚ -゚) 「面倒だな、重そうだし。……ああ、そうだ、ブーン」

( ^ω^) 「お?」

川 ゚ -゚) 「ちょっと兄者吸って軽くしてくれ」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「いや、何言ってんの? 普通に引き上げて──」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:30:15.06 ID:f5Uo/Ccx0

( ^ω^) 「お、わかったお」

;;∩(;´_ゝ`)∩;; 「ちょ、ブーン、止めて! 何すんの!? いや、吸われる! いやぁぁぁぁ!!!」

(´<_` ) 「うるさいな」

川 ゚ -゚) 「あと頼むな、弟者」

(´<_` ) 「はいはい、面倒だけど引き上げますかね」

;;∩{ヽ _ゝ }∩;; 「いや……お前らさ……真面目に助けろよ……」

兄者の怨嗟の声を聞き流し、少し広がったブーンに寝転がり、また上昇してくれるように頼んだ。
ブーンはゆっくりと舞い上がり、ある程度の高さでその上昇を止めた。

川 ゚ -゚) 「自在に飛べるんだな」

( ^ω^) 「飛べるお!」

嬉しそうに言うブーンだが、やはり原理はよくわかっていないらしい。
とはいえ、私もどうやって歩いているのかと問われた所でちゃんとそのメカニズムを説明出来るわけでもないので、
そんなものなのだろう。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:32:21.07 ID:f5Uo/Ccx0

それからしばらく、ブーンに飛んでもらってのんびりとこの星を眺めていた。

滅びの星、私が名付けた所のハインは、こうして見ると本当に穏やかな星だ。
この全てがハインであり、そしてどこかにワタナベがいるのだろうか。

ここから大声で呼べば、彼女は答えてくれるのだろうか。

ミセ*゚д゚)リ 「高い! お空! 高い!」

川 ゚ -゚) 「ああ、高いな。だから落ちないようにな?」

ミセ;゚〜゚)リ 「落ちる! 怖い! 高い!」

(;^ω^) 「落ちちゃったら追い着けないから気をつけてお」

川 ゚ -゚) 「これ以上スピードは出せないのか?」

(;^ω^) 「おー……、僕はあんまり速く飛べないお」

川 ゚ -゚) 「そっか。少し残念だが仕方ないか。無理言ってすまないな」

今更言い訳する気もないが、私はやはりスピード狂らしい。
もう少し風を感じたいと思う自分がいる。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:34:15.73 ID:f5Uo/Ccx0

川 ゚ー゚) 「地球に行ったら、速い車に乗せてやろう」

(*^ω^) 「お! 楽しみだお!」

ミセ*゚ー゚)リ 「ミセリも、車、乗る」

川 ゚ー゚) 「ああ、お前も乗せてやろう」

川 ー ) 「……ただし、途中で降ろせとか言うなよ?」

ミセ;゚д゚)リ 「クー、怖い!」

(;^ω^) 「お!? 何か乗らない方がいいような気がしてきたお……」

その後私達は、ゆっくりと地上へ、皆の所へ降り立った。
またいつか、一緒に飛ぶ事を約束して。
やるべき事に向かう為に、私はまたこの世界と向かい合う。

・・・・
・・・


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:36:03.09 ID:f5Uo/Ccx0

( ・∀・) 「おじゃましまァーす」

(゚、゚トソン 「お邪魔します」

( ><) 「お邪魔しまなんです」

( <●><●>) 「お邪魔します……」

(*‘ω‘ *) 「邪魔するっぽ」

ξ゚听)ξ 「邪魔するわよ」

( ^ω^) 「お邪魔だお」

ミセ*゚ー゚)リ 「お邪魔、ミセリ、お邪魔?」

(*´_ゝ`) 「女の子の家ハァハァ」

(´<_` ) 「兄者氏ね、お邪魔する」

川 ゚ -゚) 「うむ、その辺適当に座ってろ」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:37:35.78 ID:f5Uo/Ccx0

それから私は全員を引き連れ、ワタナベの家まで帰る事にした。
皆からは避けられていた場所ではあるが、全てを理解した今、ワタナベを怖がる理由はなくなったのだ。

これからの事を色々と話す必要もあるし、それならばと皆にここで話す事を提案したのだが、先のような理由もあり、
特に誰からも異論は出なかった。

山からそれなりの距離はあったが、歩みの遅かったブーンも今は飛べるので、歩くよりは速く移動出来る。
私もマシンは使わずに歩く事にした。
どう見ても掃除機なそれの説明が面倒なのもあるが、乗る時のダサい格好をモララー達に見られるのは少々頂けない。

マシンはブーンに乗せてもらい、皆で歩いてここまで戻って来た。
もっとも、ツンだけはブーンの上にいたが。

(゚、゚トソン 「先輩」

川 ゚ -゚) 「……うん、やはりワタナベの姿は見えないな」

ワタナベの名を呼び、他の部屋を回ったが見付からず、手ぶらで戻って来た私にとソンが声をかける。
私一人じゃないからか、それとも、もう伝える事がなくなったからか、ワタナベは今朝同様その姿を見せる事はなかった。

川 ゚ -゚) 「まだ、話す事はあったのだがな……」


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:39:25.61 ID:f5Uo/Ccx0

向こうに伝える事がなくても、私には話したい事があった。
それはこの星の事や、私の任務に関わる事も当然あったが、それ以外にも私個人としてもだ。

私は友達としてちゃんとワタナベに話をしたかった。

( ・∀・) 「おンや、良い匂いがすると思ったら、既に夕餉の支度がなされてますねェ」
  _,
川 ゚ -゚) 「適当に座ってろと言っただろ。勝手に動き回るな」

いつの間に移動したのか、台所の方から戻ってくるモララーを睨み付け、入れ替わる様に台所に入る。
一応、この馬鹿もやっていい悪ふざけとダメな悪ふざけをわかる程度には良識はあるだろうが、念の為、お茶を淹れるついでに
台所を確認する事にした。

川 ゚ -゚) 「ん……?」

台所に入ると、まずモララーが言った様に、良い匂いがする事に気付く。
またワタナベ私がいない間に用意してくれたのだろう。
それ自体は昨日もあった事なので、特に不思議はない。

川 ゚ -゚) 「随分多いな……」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:41:10.90 ID:f5Uo/Ccx0

食卓の上には所狭しと料理が並んでいた。
こちらに来てからずっとお世話になってる見慣れたワタナベの料理だが、その量が半端ない。
どう考えても一人では食べきれない量だが、それも当然だろう
並べられた小皿やお箸、フォークやスプーン等、私達全員分を想定して用意されているようだ。

川 ゚ -゚) 「見てたのかな?」

ハインを通じて私達が全員ここに来る事をワタナベは知ったのかもしれない。
それでわざわざ、全員分の食事を用意してくれたのだろう。

川 ゚ -゚) 「……」

私はありがたく思うと同時に、少し寂しい気持ちが浮かんでいる事に気付いた。
知っていたのなら、待っていて欲しかったと思う。
ワタナベも一緒に、食事を取れたらきっと楽しかったと。

川 ゚ー゚) 「この水は、ミセリのかな?」

少し大きめの水が張られたガラスの器も食卓にあった。
ただの水ではないのか、何かが底に沈んでいる。

川 ゚ -゚) 「ミセリの事、もう少し詳しくハインに聞いておくべきだったかな」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:42:58.40 ID:f5Uo/Ccx0

これを用意したのがワタナベだとしたら、その知識の出所はハインであろう。
これから、皆を地球に連れて行くに当たって、一番心配なのがミセリの事だ。
あいつが一番、客観的に見てよくわからない生き物だし、自分でも自分の事をよくわかっていない。
日々の食事を始め、病気やケガ等、有事の際にどう対応すべきか難しい物がある。
  _,
川 ゚ -゚) 「構造的に診る人間は医者なのか獣医なのか樹医なのか、誰が相応しいんだろうな」

この辺りはあとで兄者達に相談しておくか。
性格はなんだが、その知識や技術は我々の誰よりも高い物を持っているだろう。
特に技術に関しては、地球のそれを遥かに凌駕しているはずだ。

もっとも、現在当人達は、それら技術からは少し離れた生活を送っているようだが。
それに昼間の滅びの因子の話で、技術的な事に関わるのを嫌がるかもしれない。
その場合は当人達の好きにさせたいとは思うが、地球へ全員を連れて行く為には彼らの技術がいるかもしれない。

川 ゚ -゚) 「……っと、その前に地球行きの話をしないとな」

よく考えたらその話はまだブーンにしかしていない。
あの時私とブーンの話を盗み聞きでもしていたなら既にわかっているかもしれないが、まずはその話をすべきだろう。
その相談の為にここに集めた様なものだ。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:44:30.81 ID:f5Uo/Ccx0

川 ゚ -゚) 「さてと、お茶お茶と……」

考えをまとめると同時に、台所に来た目的のもう1つを思い出した私は、保温されたポットから急須にお湯を注ぐ。
ここに来てからは家事全般はワタナベがやってくれていたので、何だかお茶汲みが随分と懐かしく感じる。

川 ゚ -゚) 「この急須じゃ全員分は無理か」

何度か汲みに来ればいいだろうと判断し、急須と湯飲みをお盆に乗せ、居間に戻る。

川 ゚ -゚) 「ほれ、茶だ」

ξ゚听)ξ 「ありがと」

(゚、゚トソン 「言ってくだされば私が用意しましたのに……」

川 ゚ -゚) 「お前はこの家の事を知らんだろ? 気にするな、今日の所は私がホストだ」

気遣いはありがたいが、この家のは地球のそれと少し勝手が違うのだとトソンを納得させる。
実の所、お茶に関してはそう変わらないのだが、このくらいなら説明するより自分でやった方が早い。

急須のお茶を注ぎ終えた私は再び台所に戻り、残りの人数分のお茶を用意する。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:46:38.44 ID:f5Uo/Ccx0

( ・∀・) 「初めてクーちゃんにちゃんとしたお茶を淹れてもらった気がしますねェ」

川 ゚ -゚) 「ご希望なら雑巾の絞り汁を足してやろうか?」

大袈裟に首を振ってみせるモララーを無視し、残りをテーブルに置く。
適当に並べ、飲みたいやつが飲めとホストにあるまじき適当さでお茶汲みを終えたが、お茶を飲めるかわからないやつらも
いるのでそれも仕方ないだろう。

川 ゚ -゚) 「兄者達は飲めるのか?」

( ´_ゝ`) 「飲めるよ」

(´<_` ) 「味が好みに合うかは置いといて、普通に摂取は出来るさ」

川 ゚ -゚) 「やっぱり緑色になるのか?」

(:´_ゝ`) 「いや、その程度で簡単には変わらないよ」

(´<_` ) 「水分が足りない時に茶の中に漬かって吸収すれば変わるとは思うが」

川 ゚ -゚)+


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:48:19.01 ID:f5Uo/Ccx0

(´<_`;) 「何でそんな目を輝かせてんの? やらないからな?」

そんな事をする為に集まったわけじゃないだろうと正論を説く弟者に私は渋々頷く。
まあ、確かに今はそんな時ではないのは確かだ。
やるならまた別の機会にしようと心に誓う。
お茶だけでなく、コーラとかトマトジュースとか色々な物で試してみるのも面白そうだ。

(:´_ゝ`) 「何かクーちゃんがすっごい俺らの事見てるんだけど」

(´<_`;) 「目を合わせるな兄者よ。そしてクー、ブーンからその手を放せ」

川 ゚ -゚) 「大丈夫、ブーンに吸わせようなんて今は考えてないから」

(:´_ゝ`) 「今は!? 今は、ってどういう事?」

(゚- ゚ 川 プイッ

細かい部分に拘る兄者をスルーし、私はブーンに尋ねる。
ブーンが体表以外から水分を取っている所は見たことないが、果たしてブーンはお茶を飲めるのだろうか。

( ^ω^) 「お! 飲めるお!」

意外にあっさりと肯定したブーンから、視線をツンの方に移す。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:50:04.75 ID:f5Uo/Ccx0

ξ゚听)ξ 「そいつ、普通に口から飲めるわよ?」

川 ゚ -゚) 「そうなのか。てっきり身体から吸収するだけかと思っていたよ」

詳しい事はわからないが、どうやら栄養を吸収する器官、人間でいう所の胃とか内臓に当たる部分には体表から吸収された
水は届かないらしいとツンは言う。

ξ゚听)ξ 「外側のもこもこしたとこは毛とか甲羅みたいなのに当たるみたいね」

( ・∀・) 「それは中々興味深い構造ですねェ」

川 ゚ -゚) 「……おい、変な気は起こすなよ?」

私はブーンに興味を示したらしいモララーを睨み付ける。
これから、ブーン達皆を地球に連れて帰るに当たり、最も気を付けなければいけない点がそこなのだ。
ブーン達は我々地球人と大きく異なる姿形をしており、当然、その構造や持つ能力も違う。
それは一部の研究者連中にとって大いに魅力的に映るだろう。

( ・∀・) 「わかってまァすよ。彼らは我々と同じ人であり、尊重されるべェき人権がありますからね」

いつもの冗談染みた言い方をするモララーだが、その目は真剣なものだった。
当初から外交に来るという姿勢を国側の指針で持っていたのだから大丈夫だとは思いたいが、時に好奇心というものは厄介だ。
ブーンたちが研究材料扱いされるのだけは身命を賭しても避けなければならない。

それが外交官としてブーン達を地球に招く私の責任なのだ。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:53:23.39 ID:f5Uo/Ccx0

(;^ω^) 「お茶ってちょっと苦いお」
  )旦(

そんな事を考えていると、ブーンは身体の一部を畳んで器用に動かし、自分で湯飲みを掴んでお茶を飲んでみせた。
味はあまり口に合わなかったみたいだが、問題なく飲めるらしい。
そういえば今日、乗せて飛んでもらった時に今と同じ様に、身体の一部を手の様にして下方を指差したりしていた事を思い出した。

川 ゚ -゚) 「意外と器用なんだ」

ブーンと何度か一緒に食事を取った事もあったが、その時は直接口の中におにぎりを放り込んでいたので気付かなかった。
それかツンがブーンに食べさせていたから、ブーンが自分で持って何かを口に入れるのは初めて見た事になる。
布というか綿の様な外見をして外見をしてはいるが、地面を這う事も出来るのだから器用に動かせるのも頷ける話だ。

川 ゚ -゚) 「では、ブーンはいいとして、あとはお前だな」

ミセ;゚ー゚)リ 旦~
  _,
川 ゚ -゚) 「うん、流石に熱いのは無理だろ?」

ミセ;゚ー゚)リ 「お茶、熱い? 熱い! ダメ」

ミセリは恐る恐る根っこというか足を湯飲みの中に入れた様だが、すぐに湯飲みから飛びいた。
一応淹れたものの、やはり無理らしい。
水にしてあげれば良かったとも思ったが、晩ご飯も既に水が用意されているし、もう少しだけ我慢してもらおう。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:55:13.99 ID:f5Uo/Ccx0

川 ゚ -゚) 「さて、そろそろ皆落ち着いたと思うから本題に入らさせてもらうぞ?」

私はミセリの前の湯飲みを手に取り、一口飲んで喉を潤した後、話し始めた。
別に今の言葉に反応を求めているわけでもないので、そのまま話を続ける。

川 ゚ -゚) 「ブーンには話したし、お前らも盗み聞きしてたから知っていると思うが、全員地球に移住してもらおうと考えている」

川 ゚ -゚) 「それについて異論はあるか?」

そこで一旦言葉を切り、皆を見回すが特に異論があるものはいないようだ。
滅びの因子であった事を前向きに受け止め、生きる道を考えてくれるのは本当にありがたいと思う。

川 ゚ -゚) 「ありがとう」

ξ゚听)ξ「何で礼を言うのよ?」

川 ゚ー゚) 「気にするな。ただ私が言いたかっただけだ」

再びお茶を口に含み、ツンから意図的に視線を逸らす。
私の礼の意味合いを理解した数名が軽い笑みを浮かべていたが、気にせず話を続ける。

川 ゚ -゚) 「で、具体的に地球に行く手段なんだが、考えられるのは2つ」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:00:30.25 ID:f5Uo/Ccx0

( <●><●>) 「外宇宙を航行出来る船舶を建造し、地球を目指すか……」

(゚、゚トソン 「我々が通って来た道、巨大な次元の裂け目を通るか、ですね」

川 ゚ -゚) 「うむ」

2つと言ったものの、実際の所は後者の一択だと考えている。
いわゆる宇宙船の建造に関しては、私に全く知識がなく、モララーとトソンも似た様なものだろう。
とてもじゃないが具体的な方策を考えられるレベルじゃない。

川 ゚ -゚) 「というわけで前者に関しては地球の人間は全く役に立たないのだが」

( ´_ゝ`) 「出来なくはないが、まず制作の人手と材料に関して厳しいものがあるだろうな」

兄者に視線を向けると、聞くまでもなくその意図がわかったようで説明をしてくれる。
材料に関しては、この家を素材として使えるなら作れなくもないらしい。
とはいえ金属の精錬等を行い、強度を高める必要もあるし、足りない分は採掘するなりしないと無理の様だ。

(´<_` ) 「この星には鉱物資源はそこそこ残ってはいる様だが、設備がないので少々時間がかかるな」

そして燃料の問題もあると弟者は続ける。
宇宙船を飛ばすだけの高純度のエネルギーを精製するにはそれこそちゃんとした設備が必要らしい。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:05:01.40 ID:f5Uo/Ccx0

川 ゚ -゚) 「やはり現実的ではないか」

( ´_ゝ`) 「それに、船が出来たとしても地球の位置がわからないしな」

星間航行図がないと兄者は言ったが、私には全く聞き覚えのない言葉だ。
何となく字面から意味合いは察せられるが、恐らく地図のような物だろう。

(´<_` ) 「地球の大きさや構成物質がわかれば探せなくもないが、距離次第では辿り着くまでに相当時間がかかる」

川 ゚ -゚) 「となるとやはり後者しかないか……」

わかってはいた事ではあるが、やはりそちらの方が現実味はある様だ。

( ><) 「じゃあ、皆であれに飛び込めばいいんですね?」

(*‘ω‘ *) 「そんなに簡単じゃないっぽ」

そしてこちらも、ちんっぽっぽが言う様に事はそう単純ではない。
地球の人間が犯した過去の失敗を考えるに、この人数で無策で飛び込むのはリスクが高過ぎる。
しかしながら、地球へ皆を連れ帰るという道を考えていた私は、この件に関しての解決策を既に思い付いていた。

川 ゚ -゚) 「それについてなんだが、私の方で考えがある」

大して悩んだ様子も見せずに宣言した私の言葉に、皆は驚きの表情を持って私の方に目を向けた。
 
 
 第27話 了  滅びから解かれ、一時の安らぎを共に 〜 
 

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