(,, ^ω^) 改造されたようです


1 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:53:31.73 ID:hLu0VFHg0
第二話 ”物語始動”



(,, ^ω^) 「……え?」

午前2時、内藤はタービュレンス号に乗って、自分の住んでいたアパートへと戻ってきた。

ハイツニュー速203号室。しかし、その表札には「内藤」の文字はない。
それどころか、「山崎」という、彼の知らぬ苗字が書いてあった。

(,, ^ω^) 「どういうこと……だお?」

ドアノブを掴んで回してみようとするが、扉は開かない。カギがかかっているのだ。

ふところからカギを取り出そうとして、自分が見覚えのない服装をしており、その服には見知らぬサイフと、
死体から奪ったものしか入っていないことを思い出した。

(,, ^ω^) 「こんな時間だけど……」

2 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:54:29.50 ID:hLu0VFHg0
恐る恐る、ドアをノックしてみる。
返事はない。
今度は少し強めにノックしてみる。

するとだんだんと、自分のわけのわからない境遇に対する悲しみが湧き出てきた。

ノックをする手に力が籠る。
いつしかノックは殴打に変わっていた。

(#  ^^) 「うるさいですね!!何ですかこんな時間に!」

部屋から、見知らぬ男が出てくる。

(; ^ω^) 「おっ……あの、ここは……えっと……」

(   ^^) 「ハイツニュー速203号室ですが何か?」

(,, ^ω^) 「あの……その……僕……内藤地平の部屋じゃ…?」

(#  ^^) 「………はあ?」

目の前の男が、見るからに不機嫌になる。
それはそうだ。深夜に叩き起こされたと思えば、「ここは僕の部屋ではないか」などと問われれば、誰でもそうなる。

(#  ^^) 「っざけんなァ!!こちとら半年近く、大家に許可取ってここに住んでんだよォ!
        何が『僕の部屋』だコラ、そんなくっだんねーことで俺を叩き起したのかオイオイオイ!?」

(; ^ω^) 「おっ……いや、あの、ごめんなさいお!!失礼しましたおぉおおお!!」

(#  ^^) 「何だアイツは……!ってか速っ……」

3 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:56:17.71 ID:hLu0VFHg0
完全に気圧され、内藤は逃げた。

……家を、失ってしまった。
もはや今夜寝るところもない。

朝になったら、大家さんと話してみよう。
それまでは、仕方がない。コンビニで時間を潰し、ついでに何か食べるものを買おう。

そう考えて、内藤は近所のコンビニへ入って行った。

(,, ^ω^) 「……お。」

とりあえず目についた、草大福を手に取る。

ふと目にとまった賞味期限は、明らかに可笑しい数字だった。

(,, ^ω^) 「……草大福の賞味期限がこんな長いハズないおwwwww
      1年以上先じゃないかおwwwww店員さーん、これ、賞味期限間違ってるおー!」

(´・_ゝ・`) 「え、マジっすか?……いや別におかしくねッスけど?」

(,, ^ω^) 「よく見るお!賞味期限が、2010年になってるおwwwww」

(´・_ゝ・`) 「ハァ。2011年だったらヤバくないすか?」

(,, ^ω^) 「なんでもっと伸びるんだおwwww2009年だろうがおwwwww」

(´・_ゝ・`) 「はぁ?そんな古いもの置けねッスよォ。」

(,, ^ω^) 「………へ?」

4 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:57:08.60 ID:hLu0VFHg0
内藤の頭の中を、言葉が巡る。

          ―― 2010年 ――

                  ―― 半年近く住んでんだよ ――

まさか、まさか、まさか、まさか……………


(,,  ω ) 「今日って、何年の何月何日でしたっけ……?」

(´・_ゝ・`) 「あぁwwww勘違いしてたんすね、お客さんwwwwwww」


        ―― 今日は2010年9月20日っすよ ――


(; ゚ω゚) 「うっ………ぐ………」

内藤は草大福を放り捨て、コンビニから駆け出る。

(;´・_ゝ・`) 「ああっ!お客さん!?困りまs……速っ!」

脱兎の如く走り、路地裏に飛び込んで……内藤は、嘔吐した。

(;  ω ) 「っげぇええええええええええ!!おぅえええええええええええ!!」

5 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:58:11.52 ID:hLu0VFHg0
吐瀉物が地面にあたり、水っぽい音が出る。
食べた覚えのない麺類が混じっている。

彼は、自分が最後にした食事の内容さえも知らない。

(;  ω ) 「うっ………大学の籍も……多分もうねぇお……。」

(,,(::::ω::) 「何より……糞ッ、畜生……」

(,,(:>M<:) 「この体じゃ……誰も僕を受け入れてくれないお……ッ!」

6 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:59:05.99 ID:hLu0VFHg0
某日、某市内・警察署では、中年の刑事が資料と睨めっこをしていた。

(; ゚Д゚) 「むぅ……今月だけで、こんなにか。」

(,, ´∀`) 「モナモナ。そうだモナ。
       今月だけで、5件の『超常殺人』が起きてるモナ。」

(,, ゚Д゚) 「某薬品会社ビルでの、『一撃で蹴り殺された』かのような死体、及び『蜘蛛の糸で窒息させられた』かのような死体、
       路地裏で発見された、同じく『一撃で蹴り殺された』かのような死体、『脳の血管が焼き切れて死んだ』民政党議員3名、
       組員全員が『素手で引きちぎられて』の山下組の壊滅、そして『消化液で溶かされた』かのようにしての一家惨殺……。」

(,, ´∀`) 「しかも、2件目の路地裏では『怪人』の目撃情報があるモナ。これがその写真。」

(; ゚Д゚) 「これがまたピンボケで、かろうじて人間と虫が混ざったような生き物に見えなくもないって程度で……」

(,, ´∀`) 「ちなみに自称目撃者の外国人留学生は『バッタと人間が混ざった生物』と言ってたらしいモナ。」
                                                        バズ
(;-Д-) 「その留学生が噂を広めてくれやがって、『ぶぅんぶぅん』って言ってたから『怪人Buzz』だとぉ?」

(,, ´∀`) 「確かに、『蹴り殺した』事案については、バッタ人間の仕業と考えられないこともないモナ。
       バッタが人間サイズになったと考えれば、そりゃあもうとんでもない脚力で、人間の首くらい吹っ飛ばすかモナ。」

(,,-Д-) 「……ったく。常識で考えろってんだ。そんなバケモン、居るわけねーだろ……。」

(,, ´ー`) 「……ギコ。」

7 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/20(木) 23:59:50.40 ID:hLu0VFHg0
(; ゚Д゚) 「お、何だ?」

(,, ´ー`) 「あまり、常識に囚われない方がいいかもしれんぞ。今回ばかりはな。嫌な予感がする。……モナ。」

(,, ゚Д゚) 「……おう。わかった。じゃあ怪人の線も踏まえて、捜査を進めるとしようか。」

(,, ´∀`) 「了解モナ。奴……あるいは奴らは、明らかに目的を持って行動してるモナ。
       行動を予測するヒントが、どこかにあるハズだモナ!」

二人の刑事が、動き出した。



一方で、闇も既に動いていた。


(; ´_ゝ`) 「どうして上はこんな重大なことを隠すんだ!?」

市内某所では、白衣を着た男が壁を殴り、気持ちを吐き出していた。

(,, ´_ゝ`) 「先日俺が解剖に立ち会った死体……明らかに人間のものじゃなかった。
       外見は人間だったが、中身は全く違う……蜘蛛の糸を溜めるような臓器さえあった!
       ……上はアレについて何かを隠したいのか?だがアレを隠すなんて許せん、アレは危険だ!」

彼は息を吐き、続けて言う。背後の影には気づかず。

(; ´_ゝ`) 「やむを得ん……俺が、あれの存在を公表する……!」

(:::::::::::::::) 「困るんだよなァ、そんなことされちゃよォ。」

8 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:00:44.93 ID:7XCrIg2O0
(; ´_ゝ`) 「何者ッ!?」

彼が振りかえるとそこには、金の髪を逆立てた、不良っぽい格好の男が居た。

((( )))    イチモンジ ヨウタ
(´∀` ,,) 「俺は一文字 洋太。覚えなくていいぜ。なんたって……」

((( )))
(:>∀<:),,) 「アンタは……」

 /  /
(:>M<:),,) 「すぐ、死ぬからね。」


その日、また一体、『蹴り殺された』ような死体が発見されたという。




10 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:01:50.60 ID:7XCrIg2O0
9月21日、内藤は住む家を探していた。
といっても、今の自分がアパートを借りたりすることは難しいだろう。
しかし、彼には宛てがあった。町はずれの山のあたりの、かなり人通りの少ないエリア。
そこに、廃工場がいくつかあったはずだ。
施錠され、入ることはできないと聞いているが、今の自分ならばどうとでもなるだろう。
そこなら、あのクモ男の仲間にも見つかりにくいだろうし、世間の目も逃れられる。

(,, ^ω^) 「おっおっお……新居探しと考えれば、少しは楽しいお。ね、タービュレンス。」

今や、彼の友達はタービュレンス号だけとなっていた。
そのタービュレンス号を飛ばすこと30分ほどで、彼は目的の廃工場群に到着した。
10ほどあるそれらの中から、適当なものを選ぶ。

(,, ^ω^) 「おっおっおっ、上からも見てみるかお。……誰もいないおね。」

周囲をうかがい、彼は一気に跳びあがった。変身せずとも、彼の脚力は既に人間の域を出ていた。
そして上空から工場群を眺め、降りてきてから、この先の住処を決める。

(* ^ω^) 「おっおっおっ!この工場がいいお!屋根が赤いお!赤い屋根の家に住んでみたかったんだお〜!」

なんとも適当な決め方である。

彼はその工場の入り口前にタービュレンス号を停めると、扉にかかった鎖についた錠前を蹴り壊した。
そして、タービュレンスのメットインスペースから新しい錠前を取り出し、鎖にひっかける。
この錠前を今までの錠前の代わりに使えば、留守にするとき、入口に鍵をかけておけるというわけだ。

そして、廃工場に入った内藤の第一声は……

(; ^ω^) 「……掃除道具も買ってくるかお。」

11 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:02:34.64 ID:7XCrIg2O0
クモ男の財布に意外と多額のお金が入っていたおかげで寝袋を買えたため、寝られると思っていたのだが、
廃工場の中は、はっきり言って寝袋を敷いても寝られる環境ではなかった。
邪魔になるモノこそあまりないものの、埃が床や何かの機材の上に積もって、汚い雪のようだ。
視界の端で小さい何かが機材の裏へ走って行ったのも、内藤は見逃していなかった。
どうにか出来ないかと思っていると、作業所の端に掃除用具入れをみつける。

(,, ^ω^) 「おっ……」

結局、その日一日は掃除で潰れた。

疲れ果て、寝袋に入るのもおっくうになった内藤は、そのまま床の上で寝てしまった。
明日のことも考えずに、ぐっすりと。

そして時は過ぎ、内藤は少しずつ、廃墟での暮らしにも慣れていった。

近くに川があったため、水には苦労しなかったし、山に入れば食べられるものもあった。
食べられる木の実や草についての本も買ってきたし、
打ち捨てられた山で暮らす動物たちは、彼の俊足と跳躍力から逃れる術を持たなかった。

しかし、彼には依然悩みがあった。

まず、食べ物は確かに山でも得られるが、それだけで生きていけるほどではないということ。
山の食べ物は時期に大きく左右されるし、彼の体は常人より多くのエネルギーを必要としたのだ。
ただしこれは、街に出れば解決できる問題ではあった。
お金が全くないわけではない。しばらくならば凌げる……。

12 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:03:25.98 ID:7XCrIg2O0
それよりも重大なのは、彼の心を焦がす、熱い思い。
忘れようと努めても、捨て去れぬ気持ち。
大学の親友……いや、恋人に限りなく近い存在でさえあった、ツンのことである。

(,, ´ω`) 「ツン……逢いたいお……もう一度、君の笑顔が見られたら……」

しかし、彼はいまや怪人である。
しかも、無職童貞ホームレスである。
こんな自分が、彼女に会っていいのか。その資格があるのか。そう考えていた。

また、彼は恐れていた。
あのクモ男を殺したことで、あれの仲間が自分を襲ってくるかもしれない。
街に出れば人目に付き、その危険は上がる。
かつ、もしもその危険がツンにまで及んだら……。

そう考えると、彼は身動きができなくなってしまうのだ。

しかし、このまま廃工場で孤独に暮らすことに、耐えられるのだろうか……?

(,,  ω ) 「無理だお……無理だお……誰か……助けてくれお……ッ!」

人間は、ただ一人では生きていけない。
改造されても、それは同じであった。

とにかく、彼は街へと出かけた。
なるべく目立たぬ服装で、周りを気にしながら。
最初に買ったのは、顔を隠せるサングラスであった。

13 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:04:23.44 ID:7XCrIg2O0
その努力が報われてか何事もない日々が続き、そんな生活も板に付き、彼がいつものように街へ出かけたある日。

彼は、見てしまった。街のスーパーで買い物をしている






                  ξ゚听)ξ




最愛の人の姿を。

(,,▼ω▼) 「ッ……!」

彼の心に電撃が走る。
目には涙が満ち、彼の体は今にもそちらへ駆け出しそうになる。

ツン、元気そうでよかった。姿を見られて良かった。
ツン、近づきたい。話したい。君に触れたい。……

14 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:05:12.44 ID:7XCrIg2O0
だが、それは叶わない。自分が彼女に近づくことは許されない。
自分はきっと、怪人たちから狙われる。

結局、その日は何も買わずに廃墟へと帰った。

そして彼はスーパーへと向かう。

その道中で、彼は見てしまった。

通常人ならば気づかないであろうほどに闇に溶け込み、今まさに上空からある1人の女性を狙っている

(;`v=v´) 「……!」

巨大なコウモリを。

人間くらいはありそうな体躯は、明らかに自然に生まれたモノではなく。
また、人を攫ってすぐに路地裏へ入るのも、悲鳴を上げさせぬよう口をふさぐ判断も明らかに人間のそれに近くて。

気づけば内藤は、バイクを降りて路地裏へ入っていた。

(;`v=v´) 「ふぅ〜、今晩は、お嬢さん。私は秘密結社VIPの改造人間008号・怪人コウモリ男と申します。
      このたび、貴方を我がVIPにスカウトしに参りました。……もちろん、強制で。」

(,,▼ω▼) 「……あ……。」

内藤は、路地裏に入ってすぐ、後悔した。

明らかに、大きい。人間くらい?とんでもない。

身の丈2メートル半以上はある。そんなコウモリが、自分の目の前で喋っている。

15 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:05:59.60 ID:hLu0VFHg0
だが、自然と声が出て。それを悔やんでももう遅くて。

(;`v=v´) 「まぁ、驚かないよ?付いてきていたのはわかってたんだからな。
      足音を殺したつもりかもしれないけど、俺には丸聞こえだからな。」

(;`v=v´) 「お前は捕獲対象じゃ……ん、なんか見たことあるような?
                     サ ン グ ラ ス を 取 れ 。」

低い声で命令され、畏怖から手がサングラスに伸びる。
抗う術は、なかった。

(; ^ω^) 「お………。」

(;`v=v´) 「………あぁ、思い出したぞ。」

ドクン、内藤の中で、心臓が跳ねる。

(;`v=v´) 「逃走した、改造人間020号って、お前だろ。仲間を殺して逃げたんだっけ?
      大したモンだよ全く。VIPを敵に回すなんて、ホント、大した馬鹿だよねぇ。」

彼の中を、高速でとりとめもない思考がめぐる。

改造人間?020号?仲間?VIP?
僕は改造されたのか。だからあんな姿なのか。20番目なのか。クモ男は仲間だったのか。VIPってのが仲間の集まりか。

そして、コウモリ男は内藤のもっとも聞きたくない言葉を発した。

16 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:07:09.54 ID:7XCrIg2O0
(;`v=v´) 「お前も抹殺指令が出てるし、死んでよ。」

女性の顔を左手で掴み固定して、右腕を振るう。
その長い長い腕は、簡単に彼に到達した。

(;(:>M<:) 「うわァッ!!」
               ヤ
(;`v=v´) 「変身した……闘るのか。まぁ、いいけど。どうせ女は気絶してるし。」

既に彼の中に、抗いの意思はない。
ただ、殴られる恐怖に、体が勝手に反応して、変身しただけ。

ゆえに

17 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:08:22.09 ID:7XCrIg2O0



(;(:>M<:) 「……見逃して……下さい。」



こんな言葉も出てくる。

(;`v=v´) 「………は?」

(,, ;ω;) 「逆らうつもりはないんですお……ただ、生きていきたいだけで……だから、見逃して……
      改造とか、記憶がないんですお……仲間を殺したのも、怖かったからで……」

(;`v=v´) 「………あぁー、なるほどねぇ。」

コウモり男は、しばらく考え込み、言った。

(;`v=v´) 「……まぁ、改造人間同士だし?見逃してやらんでもないけど?
      …我々の邪魔はしない、人目につかずに生きていく、今後二度と変身しない。
      この三つは約束してもらうんだからな。破ったらスグ殺しに行くからな?」

(;`v=v´) (実際、俺より後の番号の改造人間だからな。闘わないに越したことはない。
      それに、俺以外のヤツが見つけたら始末するだろ。見つからなかったら、コイツの運がよかっただけの話だ。)

(,, ;ω;) 「……お!本当ですかお!ありがとうございますお!!」

(;`v=v´) 「バカ、お前声でけーよ。さっさと消えろ。」

(,, ;ω;) 「お……失礼しますお……」

18 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:09:06.44 ID:7XCrIg2O0
……結局、彼は何も救えなかった。
攫われた女性は、そのまま連れて行かれるだろう。
だが、これも仕方ないのかもしれない。

彼にも罪悪感は、ある。
だが、これで彼は、奴らから狙われる心配をしなくてもよくなった。(と思っている)
それは彼にとって、やはり喜ばしいことだった。

(,, ^ω^) (これで……)

ツンに、会いに行ける。

だが

(; ^ω^) (でも僕が、僕なんかが、ツンに会いに行ってもいいのかお……?)
    バ ケ モ ノ
彼は改造人間だ。
助けられたかもしれない人を、彼は見殺しにした。
それは事実だ。

だが、それとは関係なしに、彼は迷っていた。

というかチキっていた。

とりあえず、その日は買い物だけして帰った。

しかし数日後、彼はツンに会うべく、彼女の家へと向かった。
既に、寂しさが限界に達していたのだ。

19 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:10:01.29 ID:7XCrIg2O0
(,, ^ω^) 「サングラスなしで街に来るのは久々だお……ツン、待っててくれお。
      数年越しだけど、会いに行くお!ツン、きっとびっくりするお……。」

意気揚々と彼女の家の玄関に向かっていく。道端に咲く花さえ、彼を祝福するように思えた。
だが、彼は聞いてしまった。
彼女の家から漏れる、泣き声を。

(; ^ω^) 「ツン!?」

内藤の耳は、通常の人間とは違う。その耳には、家から漏れる彼女の泣き声が、はっきりと聞こえた。

20 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:10:46.51 ID:7XCrIg2O0





「……1年前にブーンが誘拐されて、今度は私のお母さんまで行方不明……」





(,, ゚ω゚) 「………!!!」

それを聞いた瞬間、彼の体に電撃が走る。

ツンノ、オカアサンガ、ユクエフメイ?

まさか、まさか、まさかまさかまさかマサカマサカマサカマサカマサカ

時期的には符合してる。だが、そんなことはありえない。考えたくない。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………


結局、彼はツンには会えず、そのまま逃げるように帰って行った。



第二話 ”物語始動” 了
第三話へ続く。

21 名前: ◆VBDMmckcvQ :2010/05/21(金) 00:11:32.85 ID:7XCrIg2O0


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