それでも、ゴメンなさいとは言いたくないようです


96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:47:46.51 ID:uSkRt1Ld0


 この話をするとき


 いったいどこから話せばいいのかな?


 僕は忘れっぽいから


 ちゃんと思い出せないかもしれない


 いや


 思い出そうとしないかもしれない






98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:48:32.04 ID:uSkRt1Ld0


 本当は忘れていたいのかもしれない


 なかった事にしたいのかもしれない


 でもそれじゃダメだから


 僕の心がそれをわかってるから


 少しだけ、がんばってみるよ


 えぇっと


 あれは確か


 中学生の頃だよね?






 
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:49:20.12 ID:uSkRt1Ld0






            それでも、ゴメンなさいとは言いたくないようです







101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:50:02.87 ID:uSkRt1Ld0


 ( ゚∀゚)「よ、色男」


 ( ・∀・)「ん、何?何の事?」


 ( ゚∀゚)「このクラスにお前の事好きなやつがいるぞ」


 (;・∀・)「え、何?どうゆう事?」


 ( ゚∀゚)「そのまんまの意味だよwww」


 (;・∀・)「え、誰それ?ねぇ、誰?」


 ( ゚∀゚)「教えねぇよwww」




102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:50:44.24 ID:uSkRt1Ld0


 別にクラスの人気者だったわけじゃない


 どこにでもいるような普通の僕を


 好きになった人がいる


 そう聞かされた


 でもそんな話、すぐには信じられなくて


 どうせ僕をからかってるんだろうと


 僕は意識しないようにした




103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:51:30.88 ID:uSkRt1Ld0


 でも、そのウワサはすぐにクラスに広まって


 そうすると、口が軽い奴もいるもので


 結局気になっていた僕は


 そんな奴らに聞きこんで


 その子が誰なのか特定した




104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:52:55.42 ID:uSkRt1Ld0


 ζ(゚ー゚*ζ


 いつもおとなしく、僕ともあまり喋らない、接点のない地味な子だった


 別にかわいいってほどでもないけど


 僕の事を好きと言ってくれていると想像すると


 なぜだかすごく愛おしく思えた


 最初は付き合う気はなかったけど


 そんな事を考えているうちに


 僕は彼女に惹かれていった





106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:53:56.58 ID:uSkRt1Ld0


 それからしばらくたった冬の日


 彼女は入院した




107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:54:42.43 ID:uSkRt1Ld0


 彼女は病気だった


 僕もよくわからないけど、日の光にあたれない


 そんな病気のようだった


 その病気の治療をするために


 都会の病院にしばらく入院すると


 担任の先生が教卓の前で言っていたのを


 僕は目を見開きながら聞いていた




108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:55:31.99 ID:uSkRt1Ld0


 確か、バレンタインの少し前だったと思う


 いつもと同じように授業を受け


 いつもと同じように友達と騒ぎ


 いつもと同じように帰る


 そんな、何も変わらない放課後だった


 彼女の友達に呼び出されたのは




109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:56:56.06 ID:uSkRt1Ld0


 ξ゚听)ξ「はい、これ」


 差し出された、ピンク色の小さな箱


 そして、一通のラブレター


 『絶対一人で見る事』


 そんな事が、ピンクの封筒に書かれていた


 話を聞くと、入院中の彼女から預かってきたらしい


 生まれて初めての告白と


 心の準備を全くしてなかったのもあってか


 僕の心臓は大きな音をたてていた






111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:57:41.94 ID:uSkRt1Ld0


 動揺していたのもあって


 僕は家ではなく


 近くの公園でその手紙を読んだ


 彼女がくれた


 『チョコは苦手だ』と


 友達伝いに僕の事を聞いてつくったのであろう


 ピンクの小箱に入った


 かわいらしいクッキーを食べながら




112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:58:29.79 ID:uSkRt1Ld0


 その手紙には


 とても丁寧な字で


 たくさんの事が書かれていた


 突然の手紙をあやまったりとか


 本当はバレンタインに渡したかったとか


 クラスでのウワサの事とか


 そして最後に


 僕の事が好きだと


 はっきり書かれていた





 
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:59:14.15 ID:uSkRt1Ld0


 その時からすでに


 僕は


 最低だった




115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 20:59:58.24 ID:uSkRt1Ld0


 直前までどうするか迷っていた僕は


 彼女との約束を破り


 親友とその手紙を見た


 期待の気持ちより


 不安の気持ちの方が


 大きかったから






117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:01:10.99 ID:uSkRt1Ld0


 結局親友に後押しされて


 手紙の最後に書いてあったメールアドレスに


 『僕でよければ』とメールを送った


 勘違いの大バカ野郎の僕の思いは


 人生初の経験に浮かれていた愚かな僕の思いは


 この時から君を


 どんどん傷つけていった




118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:01:53.15 ID:uSkRt1Ld0


 初めての恋に


 僕はどうすればいいのかわからなかった


 迷った末


 毎日メールを送る事にした


 普段使わない絵文字を使ってみたり


 普段言わないような事を言ってみたり


 そんなメールを、毎晩送り続けた


 『今日はどうだった?』


 僕たちのメールは、いつもその言葉から始まっていた






120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:02:35.46 ID:uSkRt1Ld0


 バカだよね?


 入院している君に


 『今日はどうだった?』なんて聞くなんて


 狭い病室で


 窮屈な時間を過ごしているだろう君に


 そんな事を聞くなんて




121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:03:26.88 ID:uSkRt1Ld0


 それでも彼女は優しかった


 明らかに話題がないのに、僕のメールに返信をくれた


 それでも


 鈍感だった僕は


 自分の事に必死だった僕は


 彼女を苦しめ続けた




122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:04:19.34 ID:uSkRt1Ld0


 僕は自分を押しつけるだけで


 君を知ろうとはしなかった


 君の病気がどんなものか


 僕は一度だって考えた事はなかった


 いつだったか


 『夏になったら海に行こう』


 そうメールした僕に


 君はどんな顔で、どんな思いで


 返信をしたのかな?




123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:05:02.10 ID:uSkRt1Ld0


 カッコつけたくて


 君のお見舞いに行こうとした僕を


 必死に拒んだ理由


 今ならわかるよ


 病気で弱った姿を


 見られたくなかったんだね?


 つくづく


 あの時の僕は最低だったと思う




124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:05:48.03 ID:uSkRt1Ld0


 そしてようやく


 君は退院した


 僕はうれしかった


 ようやくカップルらしい事が出来ると


 でも


 結局


 僕らは


 メールでしか会話できなかったね




125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:06:41.81 ID:uSkRt1Ld0


 ウワサの影響か


 僕らがシャイだったのか


 学校では


 一言も話さず


 毎晩同じように


 メールを送るだけ


 『今日はどうだった?』


 そう送るのが


 僕の精一杯だった




126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:07:33.32 ID:uSkRt1Ld0


 でも、ホワイトデーの日


 僕は勇気を振り絞って君を呼び出した


 悩んで買った


 安物の


 緑の装飾の入った腕時計を渡したかったから


 僕は胸を震わせて


 放課後を待った




127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:08:15.35 ID:uSkRt1Ld0


 (;・∀・)「や、やぁ……」


 ζ(゚ー゚;ζ「………」


 (;・∀・)「……こ、これ……」


 ζ(゚ー゚;ζ「………うん」


 (;・∀・)「…………」


 ζ(゚ー゚;ζ「…………」


 (;・∀・)「じゃ、じゃあね!」






138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:31:56.81 ID:uSkRt1Ld0


 本当は、もっと話をしたかった


 でも、目を合わせることすらできなかった


 僕は、その場から逃げるように立ち去った


 心臓はバクバクで、今にも飛び出そうだった


 そんなみっともない姿を見せて


 落ち込んでた僕だけど


 夜、君からもらったメールの


 『ありがとう』が


 僕の心を救ってくれた




139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:32:49.27 ID:uSkRt1Ld0


 そう


 君は


 あまりにも


 優しくて






141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:33:30.06 ID:uSkRt1Ld0


 そう


 僕は


 あまりにも


 最低だった




142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:34:35.31 ID:uSkRt1Ld0


 僕は限界だった


 日ごとに少なくなるメール


 デートにも一回も行かない


 どれもあまりに勝手で


 幼稚で


 自己中心的な心




143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:35:44.34 ID:uSkRt1Ld0


 僕は


 ここまできて


 ようやく


 君を心から愛していないと


 確信した




144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:37:04.46 ID:uSkRt1Ld0


 好きでもないのに


 断ったら可哀想だからと


 好きだと思い込んで


 そんな理由で


 僕は君と付き合った


 でも


 結局


 僕たちは


 不幸になった





146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:38:34.60 ID:uSkRt1Ld0


 別れ話を書いたメールを送った時


 『あなたがそう望むなら、私はそれでいいよ』


 君はそう言った


 君は最後まで優しかった


 僕たちの恋は


 メールで始まり


 メールで終わった


 わずか3カ月の


 小さな小さな恋だった




147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:39:28.23 ID:uSkRt1Ld0


 それからしばらく


 僕は君を憎んだ


 君から送られたメールを消して


 君のアドレスを消して


 君からもらった手紙を燃やした


 それはまるで


 君に責任を


 押しつけるように




148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:40:10.43 ID:uSkRt1Ld0


 本当に憎いのは


 自分だったのに


 君があまりにも


 優しかったから


 僕がどれほどひどくて


 最低だったかわかるのに


 こんなに


 時間がかかってしまった




149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:40:56.10 ID:uSkRt1Ld0


 あれからもう


 何年もたって


 僕は


 少しは大人になれたのかな?


 でも


 それを見てくれる


 君はもういない


 僕たちは今


 別々の道を歩いている






 
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:50:17.60 ID:uSkRt1Ld0


 ( ・∀・)「僕は最低だった」


 ( ・∀・)「君をたくさん傷つけた」


 ( ・∀・)「君をたくさん悲しませた」


 ( ・∀・)「でも」


 ( ・∀・)「僕は謝りたくはないんだ」


 ( ・∀・)「謝ったら」


 ( ・∀・)「僕たちの関係全てが」


 ( ・∀・)「悪い事のようになってしまう」


 ( ・∀・)「そんな気がするから」




160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:50:58.86 ID:uSkRt1Ld0


 ( ・∀・)「だから」


 ( ・∀・)「ゴメンなさいのかわりに」


 ( ・∀・)「ありがとうを言わせてほしいんだ」


 ( ・∀・)「こんな僕と付き合ってくれてありがとう」


 ( ・∀・)「こんな僕の話を聞いてくれてありがとう」


 ( ・∀・)「こんな僕を好きになってくれてありがとう」


 ( ・∀・)「こんな僕を愛してくれてありがとう」


 ( ・∀・)「本当に、ありがとう」






162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:53:54.12 ID:uSkRt1Ld0


 こんな形でしか


 君に思いを告げられない僕を


 どうか許してください


 それでも、ゴメンなさいとは言いたくないから


 感謝の言葉を言わせてください


 ありがとう


 そしてどうか


 幸せになってください


 最低な僕からの、最後のお願いです




164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 21:54:36.57 ID:uSkRt1Ld0






            それでも、ゴメンなさいとは言いたくないようです







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