( ^ω^)は忘れないようです


1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:23:49.62 ID:in2OzzoU0
「とれないおー」

「ほらっ、しっかり狙って打つのよ」

「絶対下を何かで固定してるんだおー」

「もうっ、じゃあ小さいやつでもいいから」

「なんでそんな躍起になってるんだお?」

「別に、ブーンが取ってみせるお!なんて言ったから期待してあげてるだけよ」

「おっおwww期待してくれてるのかおwwww」

「・・・・・・うるさい」



 
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:31:12.91 ID:in2OzzoU0
 僕の記憶に残っているのはあの縁日の風景だ。

 たこ焼き屋だとかお祭りによくある当たりが本当にあるのかわからないようなくじ引き、

 金魚すくいやかた抜き、色々な出店があった。

 焼きイカのいいにおいに心奪われかけたりもした。


(;^ω^)「めちゃくちゃ混んでるお」


 僕はツンを誘って祭りに来ていた。

 幼いころからの付き合いだが少なからず彼女に気があった僕は、何か彼女に良いところを見せたかったのだ。


( ^ω^)「じゃあ射的でなにか取ってプレゼントするお!」

ξ゚听)ξ「別にいらないわよ」

( ^ω^)「ブーンが取って見せるお!」

ξ--)ξ「はいはい」


 こんな会話があったりした。

 ちなみに結果は散々だった。ろくなものをゲットできなかった。




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:38:19.52 ID:in2OzzoU0
 百円ライターや、サイコロキャラメル、よくわからないキーホルダー。

 射的屋のおじさんの「うーん・・・がんばってるからコレ!」なんて言われてそんなものばかりもらった。


(;^ω^)「お・・・」

ξ;゚听)ξ「・・・・・・」


 あのときの情けなさは未だに覚えている。出来ることならその場から逃げ出したくなるくらいだった。

 出来ることなら何かここでかっこよくプレゼントしたかったのだけど。


ξ;゚听)ξ「ちょっと貸しなさいよ」

(;^ω^)「え?」


 そういうとツンは僕から強引に射的の銃を奪って構えた。

 ツンは少しだけ目を細め、一瞬の間があり、


 ぱん


 そんな音と共に景品をひとつおとした。



10 名前:ながらです:2010/05/25(火) 20:44:47.21 ID:in2OzzoU0
(; ω )「おお・・・」


 面目丸つぶれってやつだ。いいところを見せるどころか見せられてしまった。

 情けない・・・

 そんなことを思いながらうつむいているとツンがこんなことを言った。


ξ゚听)ξ「はいっ」

(;^ω^)「お?」


 えっ?なんて思う前に手に景品を渡された。

 ライターとかよりは少しだけ景品としてのグレードの高い小さなジグソーパズルだった。


(;^ω^)「・・・・・・」

ξ;゚听)ξ「・・・・・・お礼よ!」


 はぁ?そんな言葉が出そうになるが無理やりに抑えた。

 いったい何がお礼なのか、ちっとも君にいいところを見せられなかったのに。





13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:52:02.85 ID:in2OzzoU0
ξ゚听)ξ「その・・・がんばってくれたしね」

( ^ω^)「おー」

 情けない、そんな気持ちもあったがうれしかった。

「ありがとうだお」なんて言おうとした時だ。


 ひゅー、どおん

 どおん どんどん


 花火が夜空一面に広がっていた。

ξ*゚听)ξ「わー」

 喜ぶ彼女の横顔を見ていた、いや見とれていた。

 こんな日が続けばいい、そう思っていた。

( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「なあに?」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ゚听)ξ「別に感謝されるほどのことじゃないわよ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:54:12.76 ID:in2OzzoU0












( ^ω^)は忘れないようです















17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:02:18.99 ID:in2OzzoU0
 じりりりりり、じりりりりり、そんな音によって僕の夢を終わった。

 もぞもぞと布団から這い出し目覚まし時計を止める。

( つω-)「おー」

 ああ眠い。もう少しだけ寝ていたい気分だった。

 もう少しで梅雨が終わり夏が来るという季節にもかかわらず朝は寒い。

( -ω-)「でも起きるしかないお・・・」

 覚醒しきっていない頭を無理やり動かすために冷水で顔を洗う。

 まだいくらか眠気もあるがそのまま布団に戻って二度寝するほどではない。

 適当に着替えて朝食をとる。

 トーストに炒めたベーコンとスクランブルエッグだ。

 一人暮らしをして何年か経つが朝のレパートリーはこれと何品か、その程度だった。

( ^ω^)「おいしいお」

 味にはそれなりに自信がある。そもそも失敗するほどのものじゃあないが。


 

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:12:10.18 ID:in2OzzoU0
 時計を見ると時刻は9時15分になっていた。

(;^ω^)「やっべえ電車に乗り遅れるお」

 僕は大学進学のために都会へと出てきている。

 今日は久々の里帰りの日だった。

 結構な距離のため、早めに家を出たかったのだ。

(;^ω^)「いそぐお!35分には電車がいっちゃうお!」

 前日に準備しておいた荷物をつ抱きかかえて家を出る。

 素早く鍵をかけてすんでいるアパートの二階から転げ落ちるように駆け下りた。

(;^ω^)「おっと・・・」

 忘れ物はないか、一応そう思ってかばんを確認した。

( ゚ω゚)

 あ、違う。これ枕だ。
 
「おおおおおおおお!!!」

 結局間に合ったが電車に乗ったとき僕はもう半分泣いていた。

 

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:22:38.09 ID:in2OzzoU0
( ;ω;)「おおおお・・・」

 ぜえぜえ、ぜえぜえ、ごええがはあ

 そんな風に息を荒げながら電車に乗り込んだ僕を乗客の人々は冷たい目で見てくる。

 全力疾走で火照っていた体が急に冷めた。冷や汗でだけど。

 なんとか指定席に座り一息つく。

( ^ω^)「・・・・・・」

 上京後、故郷に帰るのはコレがはじめてだ。とはいえ数年間程度だけど。

 だけど僕にはそれがとても長く、永劫の時にも感じた。

 家に帰っても家族が居なかった。

 それなりに友人は出来たが、気の置けない仲と言える友人は居なかった。

 そしてなにより、

( ^ω^)「ツンと会えなかったのは寂しかったお」




* * * * * *





 

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:33:26.68 ID:in2OzzoU0


* * * * *


 電車がやって来る。

 もう少しでさようなら、そう思うとぽろぽろと涙が出てきた。

ξ゚听)ξ「ほら、泣くんじゃないの」

( ;ω;)「ごめんお・・・」

ξ゚ー゚)ξ「なに言ってるの、行きたいんでしょ? その大学」

( ;ω;)「行きたいお、でも・・・」

ξ゚ー゚)ξ「だったらシャンとしなさい」

ξ゚ー゚)ξ「待っててあげるから、ね?」

( ;ω;)「・・・・・・うん」

 がたん、がたん

 ごとん、ごとん

 段々と音が大きくなる、別れが近づいてくる。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:45:53.96 ID:in2OzzoU0
「ほら、涙をふいて」

「お・・・」


 がたん がたん


「忘れ物はないわね?」

「いくら僕でもそれはないお・・・」


 がたん、 ぷしゅー

 扉が開いた

 乗り込む時間だ


「ほら、のりなさい」

「お・・・・・・」





24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:52:02.37 ID:in2OzzoU0

* * * * *


( ^ω^)「・・・・・・」

 電車に乗って揺られながら出発の日のことを思い出していた。

 我ながらヘタレすぎると思い、苦笑した。

( ^ω^)「あ、そうだお」

 鞄の中を漁る、やけに奥にしまいこんでしまったらしい。

 ( ^ω^)「あったお」

 出てきたそれはパズルだった。

( ^ω^)「・・・・・・」

 あの縁日の日のパズルだ。

 一度完成させたのだが地震で一度落ちてしまいバラバラになっていた。

( ^ω^)「いい暇潰しだお」

 僕はパズルに取り掛かった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:01:10.52 ID:in2OzzoU0
(;^ω^)「うーん・・・」

 思うように進まない。

 一度完成させたものだしすぐに完成するだろうなんて思っていたが甘かった。

 意外と記憶ってのは不確かな物だと痛感する。

(;^ω^)「これは・・・こっちかお?」

 これは中々骨が折れそうだ。




* * * * *





26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:09:11.20 ID:in2OzzoU0




* * * * *

ξ゚听)ξ「だから、ここはこうだって」

( ^ω^)「おお! そこだったかお!」

ξ--)ξ「さっさと完成させなさいよ」

 縁日から数日、僕らはパズルと悪戦苦闘していた。

 いや、正確には僕だけが悪戦苦闘していたのだけど。

 そこまで大きなパズルではない。

 でも、普段触らない僕にとってはそれはとても大変だった。



28 名前:投下遅くてごめんね:2010/05/25(火) 22:25:12.11 ID:in2OzzoU0
(;^ω^)「おー・・・」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

(;^ω^)「ここが、こうで・・・えーと」

ξ#゚听)ξ「あー! もう!」

(;^ω^)「おお!?」

ξ#゚听)ξ「ここがこう! そんでこう!」

(;^ω^)「おおー」

 僕と比べてはるかに早いスピードでパズルが完成していく。

 気がつくと既に8割は完成していた。

(;^ω^)「おーすっごいお・・・」

ξ#゚听)ξ「ほらっ、続きは自分でやる!」

(;^ω^)「わかったおー」

 そうだ、彼女はいつだって僕を引っ張っていてくれた。

 僕を助けてきてくれた。





30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:35:43.78 ID:in2OzzoU0




* * * * *




( ^ω^)「・・・・・・」

 昔を思い出しながら少しづつパズルピースをはめていく。

 段々と思い出していく記憶と共にパズルは形になっていくように感じた。

( ^ω^)「しかし・・・」

 思い返せば返すほどツンには頼ってばかりだったなあ。

 そう思った。

 パズルは半分くらいまで出来ていた。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:45:34.94 ID:in2OzzoU0
 電車は走る。

 パズルは形作られていく。

( ^ω^)「・・・・・・」

 今僕はどれだけ変わっているのだろうか。

 あの日君と別れてからどれだけ変わったのだろうか。

 君はどう思うんだろうか。

 喜ぶだろうか、それともがっかりするだろうか。



 がたん がたん



 電車は走る。

 パズルは形作られていく。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:50:37.29 ID:in2OzzoU0
 ぱちり ぱちり


「ここがこうだお」


 ぱちり ぱちり


「それでここがこうで」


 ぱちり、


「・・・・・・」

「できたお」


 きいいい、きいい

 電車が止まる。到着だ。



 
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 23:02:50.47 ID:in2OzzoU0



ξ゚听)ξ

( ^ω^)

 

 ホームに降りる。

 懐かしい顔があった。

 何を話そう。たくさん話したいことがあるはずなのに。

( ^ω^)「えっと、これ」

ξ゚听)ξ「あ・・・」

 パズルを渡す。彼女は覚えていてくれただろうか。

 ねえ、ツン、色々なことがあったんだよ。

 ひとつひとつしゃべって聞かせたいんだ。

 なんでまた最初にこれを自力で完成させたことを報告しようとしているんだろうねえ?




40 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:34:00.41 ID:in2OzzoU0
「なつかしいじゃない」

「一度、地震の時に落ちてバラバラになってしまったお」

「あら、自分で治したんだ」

「それぐらいできるお」

「むかしはできなかったのにねえ」


 僕は彼女の手を取った。

 きっと僕は変わった。

 でも彼女も変わったんだろう。





43 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:37:26.37 ID:in2OzzoU0
「こんどまた縁日にいこうお!」

「いいわよ」

「こんどこそ僕が射的でなにかゲットするお!」

「・・・・・・また失敗するんじゃないでしょうね」

「・・・・・・それは断言できないお」


 段々と会話が滑らかになる。

 きっともう少ししたら前みたいに笑いあうのだろう。

 でもその前に行っておこう。

( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「なによ」







45 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:40:10.68 ID:in2OzzoU0



          「ただいまだお」



          「言うのが遅いわよ」




           「おかえり」






46 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:44:38.41 ID:in2OzzoU0

 縁日に来ている。彼女の横顔を見る。

 あの日幼さを残していた彼女今ではすっかり女性になった。

 変わるものだっててある。

 きっと僕も彼女も変わっていくんだろう。

 それはきっと悲しいことじゃない。

( ^ω^)「ツン、射的するお」

ξ゚听)ξ「はいはい」

 リベンジだ、きっとうまくやってみせる。

( ^ω^)「おっちゃん、一回頼むお」

「あいよ」

 



49 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:51:41.12 ID:in2OzzoU0
 狙いをつける。

 今度は失敗しない。


 ぱあん

 ぽとん


 そんな音が聞こえた。

( ^ω^)「とれたお」

ξ゚听)ξ「・・・・・・やったじゃない」

 昔の失敗を挽回できただろうか、まあいい。

( ^ω^)「これ、あげるお、もう今のツンにあげるにはおもちゃ過ぎるけど」

 そういって渡したのは時計だ。

 背伸びした子供がつけるような時計だったが昔の自分に勝った気がした。

ξ゚听)ξ「・・・・・・ありがとう」

( ^ω^)「でも、流石にちゃっちいお」



51 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:55:51.59 ID:in2OzzoU0
( ^ω^)「それに」

 それはいつか言われた言葉。

ξ゚听)ξ「?」

( ^ω^)「別に感謝されるほどのことじゃないお」

ξ゚听)ξ「それ私がパズルあげたときに言ったことじゃない」

( ^ω^)「おっおww覚えてかお」

ξ゚ー゚)ξ「ばかねえ」


 ひゅー、どおん

 どおん どんどん


 ふたり手をつなぐ、

 空は花火によって鮮やかに彩られている。

( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「なによ」



52 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/25(火) 23:58:54.78 ID:in2OzzoU0
( ^ω^)「また僕は休みが終われば帰ってしまうお」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

( ^ω^)「でも、また来るお」

( ^ω^)「その、それで学校卒業して僕がちゃんと仕事に就いたら」

( ^ω^)「僕と、」

 ひゅー、どおん

 どおん どんどん


( ^ω^)

ξ゚听)ξ

 ひゅー、どおん

 どおん どんどん


( *^ω^)

ξ*゚ー゚)ξ



54 名前:ほんとおそくてごめんよ:2010/05/26(水) 00:03:20.08 ID:i3SRqNwh0


「その約束、わすれちゃだめよ」

「絶対わすれられないお!」

「・・・・・・待ってるからね」

「お!」

 彼女の顔を見た。

 きっと同じような毎日は続かない。

 でも、きっと色々が変わり続けても、

 ( ^ω^)「ツン」

 変わらないものがあるはずだから、

ξ゚听)ξ「なによ」

 僕は彼女を抱きしめた。

 花火のが空に輝いた。


( ^ω^)は忘れないようです 終わり




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