主の背中で目を閉じた吾輩に、チリンと涼しげな音が響いた。
薄眼をめんどくさそうに開け、音の所在を探る。
チリンチリンと音は続く。これは夏の音だ。
風鈴というものだったな、と吾輩は思い出した。
そういえば、吾輩がここに来た時も鳴っていた。
lw´‐ _‐ノv「おー……ろまおはよう」
吾輩のいたずらでも起きなかった主が、眠たそうに声を出す。
何故こんな繊細な音で起きるんだと思ったが、何故だかそれが必然のような気もする。
主は台所で水を飲み、また吾輩のいた場所に帰ってきた。
吾輩が座り込んだ主の膝に乗る。また風鈴が鳴った。
lw´‐ _‐ノv「夏だねえ」
主の呟きに、吾輩がにゃあと同調した。
主は満足そうに元々細い目を更に細めると、ギュウと吾輩を抱きしめる。
暑苦しいが、悪い気はしない。
やあやあなんとも良い家猫だね、と昔の吾輩が笑ったような気もする。
だが、こんな暮らしも悪くない。強がりなどではなく素直にそう思う。
きっと吾輩はこれからもたまに猫缶を食べ、良く昼寝をし、そして愛する人と過ごすのだろう。
風鈴の音と、吾輩の掠れた鳴き声が、昼下がりの青空にどこまでも突き抜けていった。
おしまい