('A`)俺の生きる道のようです


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:38:00.82 ID:IW2Sk3bi0


 本物のスリルというのは、往々にして非日常的な空間にあるものだ。

 不良たちはケンカの場で命がけのスリルを感じることができるだろう。
 初めて女の裸を見た者だって、一種のスリルを味わったはずだ。

 けれども俺たちは不良でなければもてるような男でもなかった。
 運動、駄目。勉強、駄目。トーク、駄目。

 学校をサボる勇気は無かった。部活で注目を浴びるような男じゃなかった。
 喋りで場を賑わすことなんてできなかった。とにかく俺たちは目立たないやつらだった。

 そんな俺たちがスリルを欲したのは、中学二年生のときだ。
 いわゆるこれが、俺たちの厨二病というやつだったのかもしれない。
 俺たちはスリルを求め、日常から追い詰められていたのだ。


 俺たちは、脱ぐしかなかったのだ。


 
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:41:48.24 ID:IW2Sk3bi0


('A`)俺の生きる道


 【中学生編】




 
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:43:00.68 ID:IW2Sk3bi0

 小学校の卒業式はあまり記憶に無い。
 第二ボタンをかけ忘れ、先生から「気が早すぎる」と笑われた記憶しか残っていない。

 中学校に上がってから最初に考えたことは、どうやって不良になろうかということだった。
 不良は俺の中でスターのような存在だったのだ。

 授業に縛られず、先生にも反抗的で、それから制服の着こなしも格好良く見えた。
 俺は不良たちのように自由に生きてみたかった。
 というのは大体が嘘で、要はモテたかったというのが本音だ。


('A`)「きのうガキ使みた?」

(-@∀@)「見てねえ」

('A`)「マジ?ちょーやばかったよ。へいぽーが」

( ^ω^)「見たおwwwwwwへいぽーびびりすぎwwwwwwwww」


 
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:47:17.81 ID:IW2Sk3bi0

 どの先生なら反抗できそうか、俺は目星をつけていた。
 最初から怖い先生を避けているやつが不良になれるはずも無いのに。

 案の定、というか当たり前だが、俺は不良にはなれなかった。
 ワックスをつけることさえ相当びびっていた俺は、
 クラスの中でも目立たない、地味ーズとしてひっそりと生活することになった。

( ^ω^)「うぇwwwwwwふぇwwwwふぇwwwwwww」

('A`)「似てるwwwうぇwwww」

(-@∀@)「いや似てねーだろ」

( ^ω^)「似てるしwwwww」

('A`)「やべえwwwマジへいぽーwwwwwwwwwww」


 
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:51:25.57 ID:IW2Sk3bi0

 あさぴーは小学校の頃からつるんでいた友達だ。
 兄が相当な不良らしいが、彼は大人しい性格で、ゲーム好きという点で俺と気があった。

 ブーンと知り合ったのは、二年生に上がったときである。

 彼は俺よりも田舎の、山奥から中学校に通っている人で、
 憧れの自転車通学が許されている人種である。
 校則をちゃんと守っていて、毎朝ヘルメットを被って通学しているのがダサかった。
 俺なら絶対に被らなかったはずだ。

( ^ω^)「俺きのうもオナニーしちゃった」

(-@∀@)「マジ?」

( ^ω^)「のり天録画してんよ」

('A`)「のり天wwwwwww知ってんのかよwww」


 
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:57:39.74 ID:IW2Sk3bi0

 下ネタが大好きな年頃だった。
 ブーンは覚えたてのオナニーを毎日しているらしく、すぐに成果を報告してくる。

 オナニーに関しては譲れない部分があった。
 何故なら俺は、小学五年生の頃からオナニーをしていたベテランだったからだ。
 ただし、中学三年生まで床オナだったことは、俺だけの秘密である。

('A`)「なあ、ジャンケンで負けたら一瞬だけちんこ出さない?」

( ;^ω^)「え!?」

(-@∀@)「今?」

('A`)「うん」

 今は昼休憩の時間だ。
 各々、教室や廊下の所々で人の輪を作りだべっている。


 
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:02:56.77 ID:4juGpbGE0

(-@∀@)「俺、いいわ。そういうの」

 あさぴーは人のいいやつだが、下ネタがあまり好きではなく、
 乗り気じゃないときは真っ向から否定する、ある意味ストイックなやつだった。

( ^ω^)「いいよ」

 ブーンは逆にノリがかなりよく、そのおかげで不良メンバーとも話せたりできる。

(;'A`)「え、マジでやんの?」

 俺はこのとき、半分以上冗談のつもりで言った。
 しかし乗り気になったブーンを止めようものなら、俺はめだたく「ビビリ」のレッテルを貼られることになる。
 引くに引けないこの状況、俺はじゃんけんをするしかなかった。

( ;^ω^)「……マジで?」

 俺の人生の中で、このときほどじゃんけんの勝利を祝ったことはない。


 
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:05:41.12 ID:4juGpbGE0

('A`)「いいよ、無理せんでも」

( ^ω^)「いいよ、やるよ」

 ブーンも引くに引けない状況らしい。
 俺は今まで感じたことのない胸のときめきを見つけていた。


 結果は、あまりにもしょうもなかった。
 ブーンが制服のチャックを降ろし、貧相なちんこを出した瞬間、
 クラス中から悲鳴が上がるのを期待していたのだが、誰もこちらを見ている者はおらず、
 もちろん悲鳴も上がらなかった。

( ^ω^)「やべえwwwww犯罪者だお俺ww」

('A`)「ちんれつ罪じゃねwwww」

 だが、これを見ていた者がいた。


 
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:08:58.86 ID:4juGpbGE0

 その日の放課後だった。

 俺たちは元々運動部に入っていたが、途中から科学部に入部し、
 幽霊部員になっていた。
 だから部活には行かず直帰し、俺の家で「バーチャファイター」をやるのが日課になっていた。

 その日も例に漏れず、さっさと家に帰ろうとしたとき、モララーから声をかけられた。
 彼はジョルジュと一緒だった。

( ・∀・)「なあ、おまえ昼にちんこ出したろwwww」

(;'A`)「え?」

 彼らはバレー部の、今でいうリア充メンバーであった。

( ^ω^)「見てたのかおwww」
  _
( ゚∀゚)「あれなにやってたん?」


 
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:11:25.33 ID:4juGpbGE0

(-@∀@)「じゃんけんで負けたらちんこ出すっていうやつ」

( ^ω^)「俺負けちゃったんだおwwww」

 あさぴーもブーンも人見知りしないタイプだが、
 俺はモララーたちが正直言うと苦手だった。
 別に彼らが悪い訳ではないのだが、なんというか、口のうまいやつは苦手なのだ。

( ・∀・)「マジかよwwwwwwきめえwww」

( ^ω^)「うっせえwwww」
  _
( ゚∀゚)「まあそんだけ。じゃあな」

 それだけで彼らはさっさと行ってしまった。
 バレー部の顧問であるクックル先生は、学校一怖い先生なので、彼らとしても俺たちと
 無駄話している暇は無かったのだろう。


 
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:14:08.93 ID:4juGpbGE0

('A`)「早くけぇーろぉーぜ」

(-@∀@)「帰りに三好寄ろうやあ」

( ^ω^)「いいおwwwwww」

 三好に寄って五十円の餓狼伝説をプレイし、焼き肉三太郎を数枚買い、
 家に帰ってバーチャファイターで闘う。
 俺たちは退屈な日々を今日もなぞっていた。

 ただし次の日から、俺たちの日常は大げさでなく一変したのだ。


 
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:20:02.83 ID:/+mXpnUH0


 次の日の昼休憩、モララーたちが集まってなにかを話していた。
 モララーグループはバレー部を筆頭に、陸上部、バスケ部、野球部、
 そして不良たちまで巻き込み、集団で遊ぶことがある。

 こうやって集団で集まるときだけ、俺たちのような地味グループも仲間に入れるのである。

( ・∀・)「トランプで負けたやつがー、ズボン脱いで廊下を走る、な」

 彼の提案は、俺の心を躍らせるには十分なものだった。
 これだけの人数が集まれば、負ける確率は相当少ない。

 つまり誰かがパンツのまま走る姿が見られるということである。

(`・ω・´)「マジかよやっべえwwwwww俺ブリーフだしwwww」

 トランプは盛り上がった。俺たちも違和感なく仲間に入り、トランプを楽しんだ。


 
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:22:59.47 ID:/+mXpnUH0

<_プー゚)フ「ぬおおおおお!マジかあああ!」

 負けたのはエクストだった。
 彼もモララーやジョルジュと同じバレー部である。
  _
( ゚∀゚)「罰ゲーム!罰ゲーム!」

 囃し立てるジョルジュに、みんなが同調した。
 エクストは、

<_プー゚)フ「ふぉおおおおおおおおおおおおwwwwwwww」

 奇声を上げながら廊下を走り、罰ゲームを完遂した。
 俺は人だかりの後ろにいてあまり見えなかったが、それがどういうものなのか、容易に想像できた。

 例え見えなくとも、女子たちの悲鳴と、男子たちの笑い声は届いていたから。



 
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:27:29.63 ID:/+mXpnUH0

 この日から「罰ゲームブーム」が始まった。
 トランプやオセロで戦い、負けたものはズボンを脱ぎ、醜態を見せつける。

 罰ゲームは徐々にエスカレートしていき、最終的にパンツまで脱がなくてはいけなくなった。

 退屈だった学校が狂喜に満ちていた。

( ・∀・)「なあ」

 言い出しっぺはいつもモララーだった気がする。

( ・∀・)「教室でオナニーできねえかな?」

 彼の一言で場の空気が変わり、話の流れが一気に傾く。
 気がつけば、モララー、ジョルジュ、ショボンは人だかりの中でちんこを出していた。

 今思えば狂気の沙汰だ。
 彼らは、昼休憩中に、教室内でオナニーを始めたのだ。


 
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:29:44.35 ID:/+mXpnUH0

 元々罰ゲームだったズボン脱ぎは、パンツを脱ぐまでに昇華され、
 そしてオナニーという究極の地点までたどり着いた。
 しかも彼らは、自主的にそれをなし得たのだ。

 俺たちはみんな、スリルに飢えていた。

 この日から、「いかに極限の状態でちんこを出せるか」という
 頭がおかしいとしか思えないチキンレースが始まった。


 
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:33:48.18 ID:/+mXpnUH0

 俺たちはみんな、競ってちんこを出し始めた。
 ある者は掃除時間中に、先生や女子たちの目を盗み、下半身を完全に露出させた。
 またある者はプールが終わった後、全裸で外を走り回った。

 時々女子に見られることもあったが、それすらも一興だった。
 絶対にしてはいけないとされる行為を、ぎりぎりの状態で成し遂げることに、
 自慰以上の快感を覚えていたのだ。

 そしてこのチキンレースは終了の鐘が無く、俺たちを止められる者はいなかった。
 女子たちから抗議がきても、反論するくらいの余裕と活力があった。

 俺たちはなんの利益も無いレースにこぞって参加し、
 誰もが最強の露出狂という称号を得るべく、ちんこをさらけ出した。


 
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:36:18.77 ID:BdzbKJXr0

 しかし意外なところにブームの終焉が待っている。
 しかも、終了の鐘を鳴らしたのは、実質的な発案者である、俺だった。




   (゚A゚)「あ」



     从'ー'从「……」



 ―――簡単に言うと、見られたのだ。
 俺は音楽の授業中に、下半身を教科書でカバーしながらちんこを出していたのだが、
 手が滑って教科書を落とし、運悪く音楽教師(♀)にガン見されてしまったのだ。



 
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:42:41.80 ID:aIQuZMFa0



( ゚∋゚)「殺すぞおまえら。ああ?」


  _
( ;゚∀゚) ;・∀・)(;'A`)( ;^ω^)プー゚;)フ´;ω;`)



 ゲームに参加していた者たちは、授業中だったにも関わらず全員呼び出しを受けることとなった。
 その数、実に二十人以上。

 バレー部顧問のクックル先生は、噂に違わず怖かった。
 俺の太ももよりも太そうな二の腕を組み、一時間以上説教を受けたあと、硬いげんこつを一発ずつもらった。
 ガチのパンチというのは、本当に目から火花が出るものなんだとわかった。

(-@∀@)「だからやめとけって言ったのに」

 ゲームに参加しなかったあさぴーを、俺は少し恨んだ。


 
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:47:59.86 ID:8PNLRsF70

 学年全体を巻き込んだ「露出ブーム」も終わり、俺たちはかなり落ち着いた。
 元々不良がかなり少ない学年で、問題という問題も無かったので、そういう意味では平和だった。

 しかし俺の知らないところで、平和ではない事態が起こっていたようだ。

(´・ω・`)「なあ、やべえよ。ヒッキー、死んじゃったらしいよ」

(;'A`)「え!?」

 その日、朝の集会の時間になっても先生が来ず、
 教室はざわついていた。

 そんなとき、別のクラスのショボンが、固まって話していた俺たちのところにやってきて、
 衝撃的な事実を告げた。

 ヒッキーが死んだ。
 それは本当に、衝撃的だった。


 
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:50:58.20 ID:8PNLRsF70

 ヒッキーとは二、三回話しただけの仲なので、詳しい性格とかは知らない。
 俺と同じような目立たないやつだった気がする。

 エクストとかとつるんでいたやつで、チビでガリの、声が甲高いやつだった。

( ^ω^)「…なんで?」

(´・ω・`)「自殺だってよ。母ちゃんが言ってた」

 周りのやつらが教室を飛び出し、ヒッキーのクラスに駆けていった。
 俺も集団に混じり、ヒッキーがいたクラスに向かった。

 死んだやつの机には、花瓶が置いてあるはずだ。
 おそらく、周りの者は俺と同じで、その花瓶を確かめにいったのだろう。

 机に花瓶は無かった。
 しかし、ヒッキーの姿も無かった。


 
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:57:47.98 ID:V5dIIpWR0

 朝の集会が終わる時間になって、ようやく先生がやってきた。
 俺たちはヒッキーのことが訊きたくてうずうずしていたが、誰も彼の名前を口にはしなかった。
 ひきつった先生の顔を見たら、なにも言えなくなった。


 ヒッキーはやっぱり死んでいた。
 確証を得られたのは、俺の母親が彼の死を口にしたからである。

 自殺だった。
 母さんは俺に「学校で困ったことが無い?」と心配そうな顔で尋ねてきた。
 反抗期で、あまり母親と会話の無かった頃の俺だが、その時ばかりは自然な作り笑顔ができた。


 ショックは連鎖する。
 ヒッキーが死んだのは、なんとクラスでいじめがあったかららしいのだ。
 さらにヒッキーは、死ぬ三ヶ月前から不登校だったらしい。

(´・ω・`)「やべえよww俺あいつから五百円盗んだんだ。ばれたらまずいよね?」

 同じクラスのやつらは、大抵こういうエピソードを持っていた。
 人間のどす黒い部分に恐怖したのは、これが初めてかもしれない。


 
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:06:34.05 ID:V5dIIpWR0

 ヒッキーが死んでから一週間後に、学年集会があった。
 先生たちは「いじめはよくない」だとか「困ったら先生に相談しろ」だとか
 ヒッキーの名前を出さずに話していたが、明らかにヒッキーの死を受けての話だった。

 二週間経っても、三週間経っても、冬休みが終わっても、ヒッキーの机は空だった。
 みんなはもうヒッキーの死なんて忘れたように生活しているが、
 ふとしたときに彼の話になったりした。

 きっとヒッキーが生き続けていたら、こんなに話題に上ることはなかっただろう。
 しかし、誰も悲しみはしなかった。

 ヒッキーが死んだってわかったとき、泣き出した女子もいたけれど、
 そんな子だって今や彼氏の話やうざい先生の話題で笑ったり愚痴ったりしている。
 人一人の命は、俺たちの日常に変化を与えることはなかった。

('A`)「可哀想だよな、あいつ」

 ヒッキーの机は、使われていない教室に運び出され、ロッカーの荷物も回収されている。
 彼の痕跡は、俺たちの記憶の中だけになった。

 記憶の中ですら、彼の印象は限りなく薄いというのに。


 
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:09:01.76 ID:V5dIIpWR0

 俺が友達だったら、絶対に助けてやったのに。
 俺は本気でそう思っていた。

 だって、「中学生日記」とかでも、友達は友達を助けるもんだし、
 「空飛ぶ教室」でも「マイフレンズオーバーユー」でもかけがえのない友達が支えとなった。
 俺はそういう人間になれると、思っていた。
 思い上がりだった。


 中学三年生に上がり、少し経った頃。
 あさぴーが学校に来なくなった。


 
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:12:02.35 ID:V5dIIpWR0

('A`)「おまえ北高だっけ?」

( ^ω^)「そうだお。ドクオは?」

('A`)「西高」

( ^ω^)「どっちの?」

('A`)「頭悪い方の」

( ^ω^)「ブボボwwwwwwwwww」

 三年生に上がってから、急に成績を気にしだした。
 二年生まではそれはもう酷かった。
 総合得点、二百五十点満点の期末テストで、百点前後しか取れなかった時代もある。


 
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:17:11.63 ID:/d40bqDG0

 学校のテストの成績は、受験を受ける高校を選ぶ指標となる。

 簡単に分けると、二百十点〜二百五十点の間だと、トップランクの高校に受かるレベル。
 百六十点〜二百点くらいが、一応進学校に行けるというレベル。
 それ以下が商業高校だったり、農業高校だったり、あまり勉強ができない人が行く高校となる。

 俺は公立の進学校に行くつもりだったが、ブーンはあまり勉強ができなかったので、
 私立の高校を受験する予定でいた。

 俺とブーン、そしてあさぴーは、二年生が始まったときは同じような成績だったが、
 いつの間にか俺が一番上だった。
 俺が特別頭がいいわけではなく、二人が全く勉強しなかっただけなのだが。

('A`)「なんか、最近あさぴーみねえな」

( ^ω^)「だお。なんか休んでるみたいだお」


 
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:22:58.59 ID:/d40bqDG0

 あさぴーは頭がよかった。
 決して学校の成績はよくないが、それは単に勉強をしなかったというだけで、
 思考能力や適応力は抜群によかった。

 全く勉強していないはずなのに、数学と国語の点だけはトップクラスだったし、
 勉強する気さえあれば優秀な進学校に受かる素質は間違いなくあっただろう。

(;'A`)「なんか、あさぴーやばくね?」

( ;^ω^)「うーん?なんだろね?」

 それだけに、あさぴーが学校に来なくなったことは心配だった。

 その頃携帯なんて持っていなかったので、連絡を取ることもできず、
 家を訪問するような勇気や甲斐性も無かった。


 
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:27:18.00 ID:/d40bqDG0

 彼が学校に来なくなるような前兆など何一つ無かった。
 今思い返しても、全く無いと断言できる。
 なぜなら彼はいつも俺たちと一緒にいたからだ。



 ある夜、俺は一大決心を胸に、真夜中、家を飛び出した。
 あさぴーの家は、俺の家から一分もかからないほど近い。

 俺はあさぴーの家の前までいくと、あさぴーがいるはずの部屋に明かりがついているのを確認し、
 小さな声であさぴーを呼んだ。

 あさぴーが反応しなかったので、小石を窓にぶつけ、様子を見た。
 カーテンが揺らぎ、あさぴーがすき間から顔を出した瞬間、俺はしまったと思った。
 俺はその人物が、近所でも名物の不良であるあさぴーの兄だと思ったからだ。

 そのシルエットは、たばこをくわえていた。

(-@∀@)「よう」

 窓を開け、顔を出したのは、紛れもなくあさぴーで、
 かれは片手にたばこを持っていた。



 
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:30:10.58 ID:/d40bqDG0

(;'A`)「お…おお〜…ばんわー」

(-@∀@)「久しぶり」

('A`)「たばこ吸ってんだ」

(-@∀@)「あ?…ああ」

 いつも通りの童顔、ニキビ顔、丸めがね。
 そして、記憶の中のあさぴーより、少し長い前髪が印象的だった。

(-@∀@)「そっち行くわー」

(;'A`)「お、おお」

 あさぴーは屋根を伝い、二階からこちらに降りてきた。
 手慣れた感じだった。今思えば、それは夜中によく抜け出す者の動きだった。


 
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:33:39.63 ID:/d40bqDG0

 たばこを持ったまま俺の前に現れた彼は、
 異世界の住人のような雰囲気を持っていた。
 なにせ、たばこなんて不良という限られた人種のみがもてるものだと思っていたから。
 まだ彼が、そういう人種なんだと信じられなかったから。


('A`)「…なに吸ってんの?」

(-@∀@)「マル金」

('A`)「マル金?」

(-@∀@)「これ」

 スウェットのポケットから取り出したマルボロライトは、金色のパッケージだった。
 聞いたことのないたばこの略称を、さも常識のように言う彼を遠く感じた。


 
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:36:31.12 ID:7Y4ss2XA0

('A`)「最近、学校、来てないけど…」

(-@∀@)「ああ…じゃあ明日から行くわ」

(;'A`)「え?マジで?それ」

(-@∀@)「ああ」

('A`)「なんで来てなかったの?風邪?」

(-@∀@)「だるかっただけ」


 頭がくらくらした。だるかった、ただそれだけで、彼は二週間以上も学校を休んだのだ。
 同じ時間を共有していたはずだったのに、あさぴーが全く理解できなかった。

 
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:41:45.20 ID:7Y4ss2XA0


 次の日、あさぴーは本当に学校にやってきた。
 ただし、給食が終わって昼休憩になってからだった。

( ^ω^)「ちょwwwww久しぶりだお!」

(-@∀@)「久しぶり」

('A`)「昼飯はどうしたの?」

(-@∀@)「お母さんが焼きそば作ってくれた」

( ^ω^)「羨ましいおwwww」

 それからもあさぴーはちょくちょく学校を休んだ。
 しかし、最初のように何週間も休んだりはせず、時々思い出したように自主休校する感じだった。

 もしもあの夜、俺があさぴーの家に行かなかったら、あさぴーはずっと登校拒否し続けていたのだろうか。
 ヒッキーのように、永遠に学校に来なくなっていたのだろうか。

 今考えても、それはわからない。


 
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:47:08.54 ID:XDIX1pIr0



 秋になり、衣替えの時期になった。
 木々が色づき、風が肌寒くなったこの季節、俺は恋をしていた。


o川*゚ー゚)o「おはよー!」

('A`)「おはよう」


 彼女は別のクラスだが、よく俺の教室に遊びに来ている子だった。
 二年のときは同じクラスで、たまに話をすることもあった。

 俺は彼女と付き合いたいと思っていた。
 クラスの男子がたまに話している「キス」や「デート」や「セックス」をしたいとも考えていた。


 
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:53:37.52 ID:XDIX1pIr0

 なぜ彼女に恋をしたかというと、彼女が俺のことを好きになっているようだったからだ。
 俺がそう感じた理由は、あえて省く。


 実は一年のとき、同じクラスの女子と付き合ったことがある。
 あのときも同じだった。向こうが先に俺のことを好きになったのだ。

 あの頃の俺はただのアホで、彼女持ちというステータスが欲しいというためだけに付き合い始め、
 俺の化けの皮が剥がれたとき、向こうから別れを切り出された。

 ―――ああ、今思えばこの頃、ちょっとしたモテ期だった。

 それはそうとして、俺はこの子を相手に、一年のときと同じ過ちを繰り返そうとしていた。
 恋に恋をしていたといえば、少しは聞こえがよくなるが、要はやらしいことがしたいだけだった。



 
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 02:57:17.88 ID:XDIX1pIr0

 中学校生活最後の冬休みが終わり、三学期が始まった。
 俺はこの頃本格的な受験勉強に乗り出し、毎日数時間受験勉強に費やしていた。

o川*゚ー゚)o「ねえ、ドクオくん」

 俺が恋し、俺に恋する女の子、キュートは、少しぽっちゃりしているが、笑顔の可愛い子だ。

o川*゚ー゚)o「今度の期末テスト、勝負しようよ」

('A`)「いいよ」

o川*゚ー゚)o「勝った方がなんでも言うこと聞く!いいよね?」

 二年生のとき同じクラスだったので、ある程度のことは知っている。
 彼女は真面目な女の子だった。


 
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 03:00:48.85 ID:jMdqdXb10

 でも、あんまり勉強できるタイプではなかった。

('A`)「い、いえーい俺の勝ちー…」

o川*゚−゚)o「ええー…」

 俺はがっかりした。
 この勝負、負けたかった。

 彼女の悲しむ顔が見たくなかったんだぜ、とかそういう格好いいことではなく、
 おそらく彼女に、この勝負を使って俺と仲良くなろうとしていた算段があったはずだからだ。
 なにせ彼女は、俺より勉強ができると思い込んでいたから。

('A`)「じゃあ、英語の宿題代わりにやってくれない?」

o川*゚ー゚)o「いいよ」

 英語のノートを渡してから、少し後悔した。
 そういえば俺は、字がど下手だったんだ。



 
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 03:06:25.50 ID:jMdqdXb10

 彼女は不器用な女の子で、俺は要領の悪いガキだった。
 俺たちの恋は停滞と前進を繰り返しながら進んでいった。

 しかし、俺は恋に恋をしていただけで、
 彼女は彼女で、俺の全てを見ていた訳ではなかった。
 そんな恋愛がドラマみたいにうまくいくわけがなく、やはりしょうもない結果に終わったので、
 ここから先は割愛する。



 バレンタインデーに、彼女からチョコをもらった。

 卒業式の日、彼女に第二ボタンを渡し、告白。OKをもらう。

 中学を卒業したあとの春休みに、彼女とディズニーの映画を観る。

 デートの帰り、キスをする。

 高校生になり、忙しくなり、疎遠になる。

 彼女から別れを切り出される。

 終わり。

 めでたしめでたし。


 
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 03:13:16.85 ID:jMdqdXb10

 もしも彼女が俺と同じ高校に進んでいれば、こんなに簡単に別れることはなかったかもしれない。
 ひょっとしたら、彼女とセックスしていたかもしれない。

 そうだとしても、やはり結果は、しょーもない、だろう。


 ちなみに、ブーンとあさぴーは同じ私立高校に入った。
 俺は少し遠い進学校に入り、仲良し馬鹿三人組は、それぞれ別の道を歩み出した。

 今でもたまに中学校のことを思い出す。
 主にちんこのことばかりだが、あの頃が一番楽しかった気がする。
 ちんこをさらけ出せたのは、あの頃だけだったしな。

 高校生になった俺は、新しい環境、新しい友達、部活と、目まぐるしい日々を送っていた。
 そんな俺を待ち受けていたのは、不良たち、2ちゃんねらー。

 そして、豹変したあさぴーだった。


 
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 03:16:47.79 ID:05RwI7qo0


 【中学生編】  終わり





 【高校生編】 へ続く



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