( ^ω^)特殊戦闘部隊VIPPERS!のようです


2 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:23:08.55 ID:ZNvYiqjO0

 
 ものすげえ音がした。
 
 漫画によくある、『ドカァン!』だとか、『ズガガァァン!』だとか。
 とんでもねぇ。あんな擬音にできるなら、可愛いもんだ。
 あの時知った。『音』ってのは、間違いなく『衝撃』だってことを。
 
 馬鹿でかい音……衝撃が、何度も何度も耳を貫いた。
 その音が起こる度に、街を、家を、人を、飛ばし、焼き、抉り、殺していった。
 俺はただ、音に怯えながら震えていた。泣きながら、わめき散らしながら。
 
 
 
 やがて、音が止んだ。でも俺は、ずっと震えていた。
 そこには俺と同じくらいの年のガキが、何人もいた。
 同じ様に震え、泣いている奴、ぼーっと白い壁を見つめている奴、色々だ。
 
 何時間か、一日か経って、外に出た。
 あの音がしていた、外に出た。
 
 
 俺の生まれた街は、どこを見渡しても、どこにもなかった。
 
───────────────────────────
 
 ─── act.1
 
                      ≪contact≫.Start───
 
───────────────────────────

3 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:26:34.69 ID:ZNvYiqjO0
 
 ───ニューソク州・荒野───
 
(´<_` )「疲れたか?」
 
 弟者の声に、俺の意識は現実へ引き戻された。
 いつまでも続く殺風景な荒野が、俺に過去を思い出させていた。
  _
( ゚∀゚)「……いや、大丈夫だ」
 
 呆けてはいたが、ただ前だけを見て運転していただけなのに、鋭い奴だ。
 表情に出ていたのだろうか、どんな顔をしていたのかわからないから、確認のしようがない。
 弟者は、『そうか』、と一言呟いて、視線を前方へと移した。
  _
( ゚∀゚)「……」
 
 嫌な事を、思い出した。
 といっても、十五年も前のことなのに、未だ夢にまで現れる。
 世界中を巻き込んだ、あの忌々しい核戦争の事を。
 
 俺は……いや、『俺達』は、あの戦争で全てを失った。
 家も、親も、なにもかも、全てだ。
 痛烈な記憶は、忘れる事などできるはずがなかった。
 
 だが、忘れるつもりは更々ない。
 忘れられない事は、むしろ好都合とも言える。
 俺達の内、ただの一人もあの戦争を忘れる奴はいないだろう。
 
 それが俺達の、誓いでもあるのだから。
 

4 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:29:58.76 ID:ZNvYiqjO0
 
(´<_` )「半分、と言った所か」
 
 相変わらず揺れのひどいジープは、騒音も耳鳴りがするほどに続いている。
 その中で、弟者は俺に聞こえる音量で言った。
 話を振ってくれた事が、気を紛らわす事ができて、有り難かった。
  _
( ゚∀゚)「もう、一時間か」
 
(´<_` )「まだ経ってはいないが、予定よりも早いようだ」
  _
( ゚∀゚)「道、覚えてんのか?」
 
(´<_` )「一直線だ。迷うはずがないだろう。目印程度は覚えているがな」
  _
( ゚∀゚)「こんな荒野にそんなもんあんのか?」
 
(´<_` )「あるだろう。でかい岩場やら、でかい地割れとかな」
  _
( ゚∀゚)「へっ、できることなら、もっと色気のある目印がいいな」
 
(´<_` )「まったくだ」
 
 弟者は頭が切れる、が、普段は俺と同じぶっきらぼうな奴だ。
 そのせいか、兄者がいない時に限りコイツとは話が良く合う。
 こんな時には、最高の相手だった。
  _
( ゚∀゚)「そいや……」
 

5 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:34:27.11 ID:ZNvYiqjO0
  _
( ゚∀゚)「後ろ……静かになったな」
 
(´<_` )「そういえばそうだな。落ちたんじゃないか?」
 
 
 急ブレーキ。
 
 
(´<_`;)「おいおい……驚かすなよ」
  _
(;゚∀゚)「おま、そりゃこっちのセリフだぜ」
 
 弟者の言葉に不安になった俺は、車を急停止させた。
 実力だけを見れば、兄者はそんな『ヘマ』をする奴じゃないが……。
 出発の時の様子を思い出すと、どうにも不安が拭えない。
 
 俺はジープを降りて、荷台の様子を見に行った。
 最後部、荷台のケツの内側に、兄者は潰れた蛙のようにへばりついていた。
 
(  _ゝ )「」
  _
(;゚∀゚)「だ……大丈夫か?」
 
 頬を叩くが、反応はない。
 訓練でVIPPRESの三半規管は常人よりも遥かに鍛えられている。
 が、流石にあの揺れには耐えきれなかったのだろうか。
 

6 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:39:05.00 ID:ZNvYiqjO0
 
:(  _ゝ ):「……み……」
  _
(;゚∀゚)「み?」
 
:(  _ゝ ):「み……ず……」
  _
(;゚∀゚)「はぁ……」
 
 水筒を取りに、運転席へ。弟者はまだ助手席にいた。
 俺が顔を出すなり、弟者は素早くこちらを向いた。
 わかりやすい。心配なら、降りてこいよ。
 
(´<_` )「大丈夫だったか?」
  _
( ゚∀゚)「落ちてはねぇけど、フラフラだ」
 
(´<_` )「まったく……兄者は乗り物に弱いんだ。好きなくせにな」
  _
( ゚∀゚)「そうなのか?」
 
(´<_` )「あぁ、ガキの頃、出発前にはしゃいでても───……」
 
 そこで、弟者は言葉を切った。
 少しの間の後。
 
(´<_` )「……なんでもない。俺も行こう」
  _
( ゚∀゚)「……あぁ、きてくれ」
 

7 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:41:46.13 ID:ZNvYiqjO0
 
 弟者も、兄者も、VIPPERSの皆は、同じだ。
 辛い過去を共有している。互いの傷を抉るような真似はしない。
 誰が言うともなく、ガキの頃の話はタブーになっていた。
 
 過去の話は、皆で語ったあの一度だけでいい。
 後は胸の内に留まらせ、燻らせておくだけで、いい。
 
 紙コップに水を注ぎ、兄者の口元へ傾ける。
 兄者はタコ口でそれを迎え、ちゅうちゅうと音を立てながら啜っていた。
 それを見て、俺に父性本能みたいな物はないと悟った。
 
( ´_ゝ`)「頭がクラクラする」
 
(´<_` )「まだきついなら吐け。少しは楽になる」
 
( ´_ゝ`)「やだ。恥ずかしい」
 
(´<_`;)「どこまで子どもなんだよ……背中は摩ってやるぞ」
  _
(;゚∀゚)「手間のかかる兄貴だぜ……」
 
 生まれた不安は、拭われなかった。
 だが、戦闘となると話は違う。そちらの不安は、一切無かった。
 二人が揃った時の実力は、俺ですら……。
 
( ´_ゝ`)「帰りたい」
 
 ……二人が、揃った時は……。
 

8 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:46:00.25 ID:ZNvYiqjO0
  _
(;゚∀゚)「弟者、運転変わってくれねぇか? 俺が荷台に乗る」
 
(´<_` )「承知した。ほら、兄者、助手席へ乗れ」
 
( ´_ゝ`)「むぅ……残念だが、致し方あるまい」
 
 流石にもうあんな思いはごめんだと、しかし渋々、兄者は助手席へ乗り込んだ。
 右手を荷台に乗せ、軽く地を蹴り飛び乗る。赤い手甲が、陽光に煌めいた。
 必要かどうかはわからないが、一週間分の荷物を積んだ荷台は、あまりスペースがない。
 
 隅に腰を下ろし、運転席の弟者へ大丈夫だと手を振って合図する。
 少し、一人で風に当たりたいこともあって、この展開は都合が良かった。
  _
(;゚∀゚)「おわっ……」
 
 予想以上の揺れに、思わず声が出た。
 なるほど、これならいくらVIPPERSでも長時間は耐えられないだろう。
 乗り物に弱いなら、尚更だ。
 
 一人で煙草を吸おうと思っていたが、気分が悪くなりそうでやめた。
 観念して、空を仰ぐ。春も終わり、いよいよ夏が訪れる空は、青と白で染まっていた。
 そこら中に生えていた高層ビルも、今は全てが崩れ落ち、遮る物は何もない。
 
 視線を下ろした大地にも、やはり、何もない。
 
 眺めて気分が良い物は、空しかなかった。
 

9 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:49:51.50 ID:ZNvYiqjO0
  _
( ゚∀゚)「……ん?」
 
 遠くの景色が、少し歪んだ。
 気温が生み出す蜃気楼。それとは、別の物だ。
 巻き上がるのは、大地と同じ色。即ち、砂塵。
 
 砂塵は布を広げるように、縦に、横に、その面積を増して行く。
 地平線に浮かぶ、いくつもの黒点。近づくに連れ、形を生み出す。
  _
( ゚∀゚)「弟者ッ! 止まれッ!!」
 
 騒音など、怒号で掻き消した。
 あれ程の砂塵を巻き上げる数の車両。一般人とはとても考えにくい。
 加えて、『あれ』はこちらへ向かってきている。
 
 俺の声に異常を察したのか、弟者はすぐに車を停止させた。
 
(´<_` )「あれは……!」
 
 俺が飛ばした視線を追って、弟者も気がついたようだ。
 ワカッテマス程じゃないが、俺もVIPPERS内では目が良い方だ。
 もう、肉眼でもはっきりと捕らえることが出来る。
 
 下品なバイクに跨る、下品な連中。その誰もが、武装をしていた。
 間違いない。あれは、敵だ。
 

10 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:54:36.68 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)「弟者、数を」
 
(´<_` )「把握した」
 
 いつの間にか兄者も車から降り、戦闘態勢へと切り換えていた。
 この時ばかりは二人の名字、『流石』と言わざるを得ない。
 
 奴等はまだ、銃をこちらに向けてはいない。
 射程に入った途端に強襲する気は、ないようだ。
 
(´<_` )「七十……いや、八十か」
 
( ´_ゝ`)「おいおい、いくらなんでも多すぎないか」
 
(´<_` )「まったくだ」
 
 そう言った二人の顔に、焦りは見えない。
 悠々と、荷台から二振りの黒い棒を取り出していた。
 あれが二人の、武器だ。
 
 迎え撃つ準備は、万端だ。ジープを背に、敵を見据える。
 やはり、悪党と言う物はわかりやすい。
 連中の中央、バイクではなく、一台のジープに立っている大男の姿が見えた。
 
 恐らくあれが、あの集団の頭だろう。
 


12 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 21:59:30.33 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)「無線を入れろ。ここはまだ、ビーコンの有効距離のはずだ」
 
 ニューソク市に設置したビーコンのお蔭で、周囲百キロまでの通信を可能にした。
 ブーンとツン以外、任務・戦闘時のみに通信を許可されている無線機のスイッチを入れる。
 インカムは、常備することが義務づけられていた。
 
(´<_` )「ブーン、聞こえるか」
 
 『こちらブーン。どうしたお?』
 
(´<_` )「敵と思われる集団と接触、数は凡そ八十だ」
 
 『ッ! すぐに応援を送るお!』
 
(´<_` )「頼んだ。ラーク村までの中間地点にいる」
 
 『了解したお!』
  _
(;゚∀゚)「あ、れ?」
 
( ´_ゝ`)「どうした?」
  _
(;゚∀゚)「あの頭っぽい奴、アイツじゃねぇか?!」
 
 徐々に見えてきた、偉そうに立つ大男の顔。
 その顔には、見覚えがあった───
 

13 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:02:05.08 ID:ZNvYiqjO0
 ──十五分前・ニューソク市・トリケラント内・荷物室──
 
(  Д )「う……」
 
 目の前で項垂れる男が、呻き声を上げた。
 両手足は拘束しており、身動きはとれないはずだ。
 
( ^ω^)「起きたかお」
 
 問いかける。
 意識はまだ朦朧としているのだろう、返事はなかった。
 少しの後、“ブラックダガー”頭目、プギャーが目を開いた。
 
( ^Д^)「……」
 
( ^ω^)「自分が今、どんな状況か、わかるかお?」
 
( ^Д^)「ッ!」
 
 プギャーは僕の質問に、唾を吐いて応えた。
 それは迷彩柄のトラウザに着地し、ゆっくりと下へ垂れていく。
 こんな事に、一々腹を立てるとでも思っているのか───
 
(;^ω^)「ッ?!」
 
 呆れていた時、突然の発砲音。とほぼ同時に、
 
(; Д )「がッ?! ぐあぁぁぁ……!」
 
 プギャーが苦痛の悲鳴を上げた。

14 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:06:15.46 ID:ZNvYiqjO0
 
( <●><●>)
 
(;^ω^)「ワカッテマス、落ち着けお」
 
 僕の後方に待機していたワカッテマスが発砲した事は、すぐにわかった。
 弾丸は、プギャーの右太股を貫通していた。
 
( <●><●>)「拷問すると聞いてきたのですが」
 
(;^ω^)「じ・ん・も・ん!」
 
( <●><●>)「失礼、早とちりをしていました」
 
 『わざと』やったことは、彼の性格からとても良くわかっている。
 VIPPERSの誰もが、悪人を許す気など更々ないと思っている事も。
 僕らの中で、彼はその気持ちが頭一つ飛び抜けているのだ。
 
 しかし悪人と言えど、拷問は僕自身避けたい行為だ。
 動けぬ者を痛めつける行為は、やはり人道に反する。
 甘いと言われるが、僕はそれを改めるつもりはなかった。
 
( ^ω^)「……大丈夫かお?」
 
(; Д )「ハッ……ハッ……」
 
 荒い呼吸を、繰り返していた。
 流石と言うべきか、動脈など急所は見事にはずしているようだ。
 大層な脂汗が浮いているが、口が利けない状態ではないだろう。
 

15 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:09:56.79 ID:ZNvYiqjO0
 
( ^ω^)「質問は一つだお。アジトの場所を吐いてもらう」
 
(; Д )「ハッ……ハッ……」
 
( ^ω^)「……」
 
(; Д )「ハッ……ヒィ……」
 
( ^ω^)「言えお」
 
(; Д )「ハッ……ヘッ……」
 
(; ∀ )「ヘヘ……ヘヘヘヘッ!」
 
( ^ω^)「……?」
 
 急に、薄気味悪い笑い声を上げた。
 気でも狂ったか、しかしただの盗賊団と言えど、三百の長がこの程度でそうはなるまい。
 こいつが、笑う状況。それは間違いなく、こいつにとって『今が』良い状況だと言うこと……。
 
( <●><●>)「黙らせますか?」
 
 言うと同時に、ワカッテマスは銃を構えていた。
 黒く、吸い込まれそうな深い瞳は、味方の僕ですら背を冷たくさせられる。
 僕が『やれ』といえば、『れ』の余韻が消える前に、彼は発砲するだろう。
 

17 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:13:23.35 ID:ZNvYiqjO0
 
( ^ω^)「だめだお」
 
( <●><●>)「……」
 
 一瞬、深淵の瞳が僕に向いた気がした。
 彼は銃を構えた腕を下ろし、直立に戻る。
 どうやら、僕の意見を尊重してくれたようだ。
 
( ^ω^)「……さて、プギャー」
 
(; ∀ )「……」
 
( ^ω^)「何がそんなに、おかしいんだお?」
 
(; ∀ )「へっ……これが笑わずに……いられるかよ……」
 
( ^ω^)「どういうことだお」
 
(; ∀ )「……」
 
 この男……僕が拷問しないと踏み、少しでも優位に立とうと……?
 それとも、時間稼ぎ、か。だとしたら、何故。
 
( ^ω^)「……言うなら、今のうちだお」
 
(;^Д^)「……だ、誰が……」
 

18 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:16:38.79 ID:ZNvYiqjO0
 
 少しの脅しで、揺らぐ。その意思は、限りなく弱そうだ。
 
( ^ω^)「ツン」
 
 インカムを通して、ツンを呼ぶ。
 同じ“トリケラント”内にいた彼女は、すぐに荷物室に現れた。
 
ξ゚听)ξ「来たわ」
 
(;^Д^)「へっ……ストリップでも、始めてくれるのか?」
 
ξ゚听)ξ「……ブーン、どうしたの?」
 
( ^ω^)「こいつの顔、よく見てほしいんだお」
 
ξ゚听)ξ「……」
 
(;^Д^)「おいおい……興奮するじゃねぇか……」
 
(  ω )「黙れ」
 
(;^Д^)「……」
 
( ^ω^)「……ツン、資料にあった写真の男に、間違いないかお?」
 
ξ゚听)ξ「……」
 

19 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:20:02.88 ID:ZNvYiqjO0
 
ξ゚听)ξ「……やっぱり、どこか違うわ」
 
 ツンは今、記憶の中の写真とこの男の顔を、頭の中で照合している。
 どうやらそれは、一致しなかったようだ。
 絶対の信頼を寄せている彼女の能力に、僕は確信した。
 
( ^ω^)「“お前”は、“誰”だお?」
 
(;^Д^)「……」
 
( ^ω^)「もう、黙ってても意味ないお。お前は、プギャーじゃない」
 
(; Д )「……」
 
 男の動揺が、手に取るようにわかった。
 後一押し……と思った、その時。
 
 『ブーン、聞こえるか』
 
 戦闘任務時以外、僕以外にツンしか使用していないインカムから聞こえた、男の声。
 声から、それが弟者であることを瞬時に認識する。
 
( ^ω^)「こちらブーン、どうしたお?」
 
 『敵と思われる集団と接触、数は凡そ八十だ』
 

20 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:24:15.65 ID:ZNvYiqjO0
 
( ^ω^)「ッ! すぐに応援を送るお!」
 
 『頼んだ。ラーク村までの中間地点にいる』
 
( ^ω^)「了解したお!」
 
(;^Д^)「ヘッ……ハハッ!」
 
( ^ω^)「時間稼ぎ、だったのかお」
 
(;^Д^)「フンッ……俺達の間じゃ、お前等の事は有名だったよ。
      お前等がニューソク州に来たと聞いてなぁ……先手を打たせてもらったぜ……!」
 
( ^ω^)「……先手?」
 
 『あ、れ?』
 
 ジョルジュの声だ。構わずに、僕は言葉を続けた。
 
( ^ω^)「どういうことだお。もう、話せお」
 
 ジョルジュの声には、兄者が答えていた。
 目の前の『プギャー』は、未だ語らない。
 
 『あの頭っぽい奴、アイツじゃねぇか?!』
 
 ジョルジュの驚嘆の声は、インカムを通して荷物室全体に響いた。
 彼の驚いた様子から、男の口を介さずとも、答えが、見えた─── 
 

21 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:29:41.91 ID:ZNvYiqjO0

 ──ニューソク州・荒野──
 
  _
(;゚∀゚)「こいつ……プギャーじゃねぇか?!」
 
( ,,^Д^)「プギャーを知ってるってこたぁ……お前らがVIPPERSだな」
 
 横に伸びた盗賊団の集団、その中央。
 偉そうにジープの上で仁王立ちする男。
 そいつは、数時間前に捕らえたはずのプギャーだった。
 
 おかしい。
 ニューソク市の本隊からは取り逃がしたなんて報告を受けていない。
 ブーンの様子からも、そんな事態は伺えなかった。
 
( ,,^Д^)「三人……か。へっ、半分は来ると思ってたが……こりゃうまいことハマってくれたみたいだな」
 
 混乱する俺を尻目に、不適な笑みを浮かべ一人納得をしている。
 兄者も弟者も黙り込み、プギャーをじっと見つめていた。
 
 しかし、こいつは……。
 
( ,,^Д^)「状況が理解できない……と言った様子だなぁ?」
 
 その一言で、こいつのタイプがなんとなくわかった。
 


23 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:33:12.70 ID:ZNvYiqjO0
  _
(;゚∀゚)「……どういうことだ?!」
 
 敢えて狼狽えた様子でプギャーに問いかける。
 俺は頭が悪い。それは認める。
 だが、俺が思うに恐らくこいつは……。
 
( ,,^Д^)「ククッ……“ブラックダガー”頭領は奴じゃなかったというだけのことよ」
 
(´<_` )「俺達が捕まえたのは影武者……ということか」
 
( ,,^Д^)「ほう。なかなか頭の切れる奴がいるじゃねぇか」
 
 やはり。
 こいつは、調子に乗るとベラベラと語り出すタイプだ。
 そこまで言われれば、俺にだってあいつが影武者だったってことはわかる。
 それならこっちも、乗せられてやるだけだ。
  _
(;゚∀゚)「てめぇは……誰だ!」
 
( ,,^Д^)「“ブラックダガー”真の頭領、“タカラ”様よ!」
 
(´<_` )「なるほど、な」
 
( ´_ゝ`)「聞こえたか、ブーン」
 
 『ばっちり聞こえてるお』
 


24 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:37:39.04 ID:ZNvYiqjO0
 
 インカムから聞こえるブーンの音声。
 奴にこの音声は漏れていない。会話は筒抜けだった。
 そうとも知らず、タカラはご丁寧に口を滑らせ続ける。
 
( ,,^Д^)「貴様らVIPPERSがニューソク州に入ったって情報を聞いた。
       俺らの間じゃ、貴様らのことは有名だ。えれぇ強いってなぁ……」
 
(´<_` )「それは光栄だな」
 
( ,,^Д^)「そこで俺様は、釣り針を仕掛けたわけよ。
       貴様らが動くように、わざと目立った動きをしてな」
 
(´<_` )「ラーク村を襲うタイミングがやけに良いと思ったら……そういうことか」
 
( ,,^Д^)「ククク……貴様らはそれに引っかかり、まんまと分断されたわけよ!」
 
( ´_ゝ`)「……馬鹿が」
 
( ,,^Д^)「……あぁ?」
 
(´<_` )「見たところ数が少ないようだが……お前達まだ百五十人くらいいるんじゃないのか?」
 
( ,,^Д^)「ハハッ! 残りはニューソク市に向かっているのさ!
       貴様らを殺した後で合流し、残りの奴らも地獄に送ってやるぜ!」
 
( ´_ゝ`)「だそうだ、ブーン」
 
 『了解。そっちは大丈夫かお?』
 

25 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:40:51.42 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)「余裕っす」
 
 『じゃ、任せたお』
 
( ,,^Д^)「……おい。何をぶつぶつ言ってる」
 
( ´_ゝ`)「あぁ、なんでもないよ。解説ありがとうな」
 
( ,,^Д^)「……?」
 
(´<_` )「おい悪党、ツメが甘いな」
 
( ,,^Д^)「なんだと?」
 
(´<_` )「残りの百五十人、こちらへ向かう手筈なんだろう?」
 
( ,,;^Д^)「ッ!」
 
(´<_` )「“ブラックダガー”の資料では、頭領はプギャーとなっていた。
       これは昨日今日集めた情報じゃない。お前らは普段から影武者を立てていたということだ」
 
( ´_ゝ`)「そんな臆病者のお前が、自ら出向いている。
       となれば、より確実に俺達を殲滅できるように仕向けるはずだ」
 
(´<_` )「最初から全員でこちらに現れなかったのは、本隊への牽制だろう?」
 
( ,,;^Д^)「……」
 


27 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:43:35.86 ID:ZNvYiqjO0
 
(´<_` )「自信があるのなら、ラーク村で全戦力を投入してきたはずだ。
       それを避けたはずなのに、自警団もいるニューソク市を半数で攻めるなど……
       どう考えてもおかしいだろう」
 
( ´_ゝ`)「ならば、最も少数である俺達を最大戦力で叩く……そうするはずだ」
 
( ,,^Д^)「……」
 
 なるほど、こいつらはやはり、流石だ。
 ……難しい事はよくわからねぇ、が。
  _
( ゚∀゚)「おい」
 
( ,,^Д^)「……?」
  _
( ゚∀゚)「囮にした連中は……仲間じゃねぇのか」
 
( ,,^Д^)「ふん……あんな駒、どうでもいいわ」
  _
( ゚∀゚)「……」
 
( ,,^Д^)「プギャーは俺の双子の弟だが……俺の影武者として、よく働いてくれたよ。
       似てるから利用しただけだったけどな」
 
( ,,^Д^)「まぁ、いい。バレてちゃ仕方ねぇ……
       どっちみちてめぇらはここで死ぬん───」
 

28 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:46:56.17 ID:ZNvYiqjO0
 
 轟音。
 
 声も、奴らが『ふかす』バイクの音も、全て掻き消えるほどの。
 亀裂が走る荒野に、新たに生まれた亀裂達。
 その中心には、真紅に染まった俺の腕。
 
(´<_` )「さて……うちのエースも、お怒りのようだ」
 
( ,,;^Д^)「なっ……」
  _
(# ゚∀゚)「あぁ……もういいぜ……」
 
 仲間を、仲間とも思っていないコイツに遠慮する必要は、ねえ。
 
( ´_ゝ`)「これより戦闘に入る。混乱を避ける為通信を切り替える。また後で、だ」
 
 『了解』
 
 無線を局地回線へ切り替える。
 俺一人でも十分だが、流石兄弟も頭にきた物があるはずだ。
 
(´<_` )「同じ双子の身として、俺は悲しく思う」
 
( ´_ゝ`)「俺達が、お前に灸を据えてやろう」
 
( ,,#^Д^)「……殺せッッ!」
 
 戦闘が、始まった。
 

29 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:50:34.49 ID:ZNvYiqjO0
 
 タカラの合図と同時、一斉射撃が始まる。
 俺は左に、弟者は右に。視界の端で、兄者がジープの陰に隠れるのが見えた。
 
( ´_ゝ`)『敵は欠けた月のように布陣している。新月にしてやろう』
 
(´<_` )『了解だ』
 
 俺が左翼、兄者が中央、弟者が右翼。
 タカラがいる中央に突っ込みたかったが、集中砲火は流石にきつい。
 
 初撃で俺達を蜂の巣にできると思っていたのだろうか。
 あっさりと避けられた事に、敵は早くも、狼狽えていた。
 
 甘い。甘すぎる。
  _
(# ゚∀゚)「オラッッ!」
 
 最端へ突っ込む。
 十数人が慌てて俺に照準を合わせ、マシンガンを乱射してくる。
 銃口の向きさえ見えていれば、躱すのは簡単だ。
 
 一歩、二歩。手甲を盾に瞬時に間合いを詰めた。
 狙いは───
  _
(# ゚∀゚)「つァッ!」
 
 最端の、バイク。
 

30 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:55:08.40 ID:ZNvYiqjO0
 
 右腕を思いきり真一文字に薙ぐ。
 ご丁寧に整列してくれているバイクは、一台、二台と仲良く押し潰されていった。
 
(盗メ~口~)「うわっ?! がぁっ!」
 
 五台ほど巻き込んで、勢いは静止した。
 同時に敵も、静止。片腕でバイクを吹き飛ばした事に、驚いているようだ。
  _
( ゚∀゚)「おい」
 
 銃を撃つことも忘れ、間抜け面で棒立ちしている連中に向けて。
 
  、
( ゚∀゚)「ブッ飛ばされてぇ奴は前に出ろッッ!」
 
 
 数名が、びびって後ずさる。
 だが、中にはマシな奴もいた。
 再び始まる射撃。数発を手甲で防いだ後、俺は更に横へと飛ぶ。
 
 オーケイ。
 
 そうこなくちゃ……面白くねぇ!
 

32 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 22:58:28.99 ID:ZNvYiqjO0
( ,,;^Д^)「なにやってんだ?! こ、殺せ! 殺せええええ!」
 
 頭領はと言うと、指示も糞もない。殺せ殺せと、馬鹿の一つ覚えだ。
 今すぐ顔面を潰してやりたいが、流石に数が多い。
  _
( ゚∀゚)「っと!」
 
 再び敵陣に突っ込んだ俺の足元に、賊の一人が横から吹っ飛んできた。
 全身を痙攣させ、泡を吹き白目をむいている。
 
 やったのは恐らく、兄者だろう。
 
( ´_ゝ`)『ふんッ!』
 
(´<_` )『はァッ!』
 
 インカムから二人の掛け声が聞こえる。
 まだ合流していないようだが、二人が組めば恐ろしい程の実力を発揮する。
 この程度の相手なら、そのコンビネーションを発揮せずとも、どうにでもなるだろう。
 
 二人が振りかざす黒い棒に、時折蒼白い火花が散る。
 その正体は一メートル程の電磁警棒だ。
 警棒と言われると地味に聞こえるが、その威力は計り知れない。
 
 常人ならば電撃に触れただけで身動きがとれなくなる代物だ。
 兄者はそれを右に構え、弟者は逆に左へと構える。
 
 “紫電の双剣”
 
 一糸乱れぬ二人の動きと、対象へ触れた瞬間、紫の電流が迸ることから付けられた、二人の異名だ。

33 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:01:59.96 ID:ZNvYiqjO0
 
 “真紅の弾丸”と呼ばれる俺も、負けていられない。
  _
(# ゚∀゚)「オラッッ!」
 
 二人の活躍を視界の端に捉え、負けじと俺も猛攻をかける。
 ラーク村の連中よりは、統率がとれているように見える。
 というより、同士討ちを恐れ手を出しあぐねている印象を受けた。
 
 そちらの方が、俺もやりやすい。
 
 拳銃を拾い上げ、転がっていたバイクへ発砲した。
 途端ガソリンに引火し、派手な爆音と共に敵陣で炎が舞い上がる。
 連中は更に、混乱した。
  _
( ゚∀゚)「ふっ!」
 
 数人が炎から逃れようと、身を翻し後退する。止まった所に先回りをして、土手っ腹に一撃を放つ。
 呻き声とともに前のめりに倒れる賊。一人、二人、三人、次々に。
 弟者の見立てでは八十人程だったか、既に半数近くが沈黙しているようだ。
 
(賊;`口´)「なんだこいつら……バケモノだ!」
  _
( ゚∀゚)「てめぇらが……よええんだよッ!」
 
 次々と仲間がやられる様子に、ようやく敵わないと悟ったのか、逃げ出す連中が出始めた。
 中央を見れば、タカラも転がったバイクに乗り移り、逃走を試みようとしている。
 
 雑魚はどうでもいいが、奴を逃すわけにはいかない。
 

34 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:05:51.36 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)『どこへいく』
 
 インカムからは、兄者の声。
 兄者はタカラに追いつき、バイクの後輪に電磁警棒を突き立てていた。
 回転を力尽くで止められた車輪が回ることはない。
 兄者の声の次に聞こえたのは、停止した状態で空しく吼える排気音と、
 
( ,,;^Д^)「ひ、ひぃぃぃ!」
 
 情けない、怯えた馬鹿の悲鳴だった。
  _
(# ゚∀゚)「おッ……ラッッ!」
 
 深く踏み込み、タカラが最初に乗っていたジープを、赤い手甲で思い切りぶん殴る。
 逃げ惑う賊達の頭を飛び越え、派手な音を立ててジープが転がり落ちた。
 青ざめた表情で一斉に、しかしゆっくりとこちらへ振り返る賊達。
  、
(# ゚∀゚)「俺達を倒したいなら……この百倍は連れてきやがれッッ!!」
 
 一瞬の静寂。
 直後、連中は悲鳴を上げて一斉に逃げ出していった。
 タカラを助けようとする奴は、誰一人いない。
  _
( ゚∀゚)「……はっ」
 
 反吐が出る。
 

35 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:08:47.81 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)「さて、お前には聞きたい事があるのだが」
 
( ,,;^Д^)「な、なななな、なんでもする! だから命だけは助けてくれ!」
  _
(# ゚∀゚)「……」
 
 戦闘が終わり、後ろ手に手錠をかけられ倒れ込むタカラ。
 見ているだけで、苛立った。
 
(´<_` )「今回の事、誰に入れ知恵をされた」
 
( ,,;^Д^)「……そ、それは……」
 
(´<_` )「……その様子だと、やはり黒幕がいるようだな」
 
( ,,;^Д^)「いや、し、しらねえ! 俺は何も……」
 
 無言で、足を踏み付けた。良い音がした気がする。
 
( ,,;^Д^)「あっ……ぎゃあああああぁぁぁぁ!」
 
 途端、馬鹿が叫んだ。足が折れただけで、大袈裟な奴だ。
 やりすぎだと弟者に注意され、数歩下がって煙草に火をつけた。
 
( ´_ゝ`)「手荒な真似はしたくないが……言った方が身のためだと思うぞ?」
 
(´<_` )「手遅れな気もするがな……」
 


37 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:13:02.75 ID:ZNvYiqjO0
 
 その時、インカムからノイズが走る。
 通信が強制的に切り替えられた時に生じる音だ。
 
 『こちらブーン、ニューソク市付近にいた“ブラックダガー”を発見した後、これを掃討したお』
 
( ´_ゝ`)『あぁ、ご苦労さん。こっちも終わった。
       頭のタカラは拘束してある。ジープがオシャカになってしまったから、迎えにきてくれ」
 
 『了解』
 
 手短に、通信は切れた。
 
( ´_ゝ`)「さて頭領、“ブラックダガー”は壊滅だ」
 
( ,,;^Д^)「……」
 
( ´_ゝ`)「お前は重大犯罪者として連行されるわけだが……」
 
(´<_` )「言え。誰に入れ知恵をされた?」
 
( ,,;^Д^)「な……」
 
( ´_ゝ`)「俺達がニューソク州に入ったという情報を『聞いた』、と言ったな?
       誰に聞いたんだ?」
 
(´<_` )「それは、“ブラックダガー”の手の者ではないだろう?」
 

38 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:15:50.66 ID:ZNvYiqjO0
 
( ´_ゝ`)「色々と、おかしいだろう。俺達の噂を聞いてるとは言っていたが……。
       臆病者のお前が、俺達が訪れたという事だけでいきなり策を仕掛けてくる。
       本来なら、もっと慎重に動いていたはずだ。ビビってな」
 
( ,,;^Д^)「……」
 
(´<_` )「『半分はくると思っていた』、そうとも言ったな?
       ただの賊が、俺達の人数まで把握しているとは到底思えん」
 
( ,,;^Д^)「……」
 
( ´_ゝ`)「言え。誰に入れ知恵をされた」
 
( ,,;^Д^)「……と」

( ´_ゝ`)「……」
 
( ,,;^Д^)「……突然……現れたんだ……」
 
( ´_ゝ`)「誰がだ?」
 
( ,,;^Д^)「……白い外套を羽織った……男……」
 
(´<_` )「……」
 
( ´_ゝ`)「……そいつは、誰だ」
 

39 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:20:14.11 ID:ZNvYiqjO0
  _
( ゚∀ )「……っと」
 
 傍観していて、いつの間にか煙草が半分まで燃えていた。
 紫煙が目を刺し、思わず目を閉じ顔を背けた。
 
 目を開け、空に視線を移そうとした時。
 
 遠く。
 
 崩れ落ちたビルが、視界に入った。
 
 そこで何かが、光っ───
  _
(;゚∀゚)「あぶねェッ!」
 
( ´_ゝ`)「───ッ!」(´<_` )
 
 叫んだと同時。
 
(;´_ゝ`)「チッ!」
 
 兄者が警棒を前へ。タカラの、頭の側方へ───
 
               ───だが、間に合わない。
 

40 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:24:38.76 ID:ZNvYiqjO0
 
( ,,; Д )「ッ」
 
 大きく一つ、身震いをした後。
 そいつがもう一度動く事は、二度と無かった。
 三人同時に、遠くの廃ビルへ視線を飛ばす。
 
(;´_ゝ`)「……あそこか」
 
(´<_`;)「やってくれる……」
  _
(;゚∀゚)「……」
 
 構え、追撃に備える。
 あのビルまで、数百メートル……一キロ近く、あるだろうか。
 そこからの、狙撃だった。
 
 場を緊張が包んだが、追撃が来る気配はない。
 弾丸は正確に脳天を貫き、タカラを即死させていた。
 
(;´_ゝ`)「……油断、したな」
 
 こちらから仕掛ける装備は、持ち合わせていない。
 ワカッテマスがいれば反撃に出られたかもしれない、が……。
 
 狙撃の後、速やかに撤収したのだろう。
 目的は俺達ではなく、口封じだったことは、間違いない。
 
( ´_ゝ`)「……思った以上に、面倒事が起こりそうだな」
 

41 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/15(月) 23:28:26.34 ID:ZNvYiqjO0
  _
(  ∀ )「……」
 
 やるせない。
 こいつもそうだったが、用が済めば仲間であろうと見捨て、切る。
 時代の所為か、悪党ばかり見てきた所為か。
 
 そんな奴等、ばかりだ。
 
(´<_` )「……ニューソク州。一筋縄では、いかないようだな」
 
 面白い。
 その方が、やり甲斐がある。
 
 俺が、俺達VIPPERSが、全部片付けてやる。
 
 最早敵は去ったであろう廃ビルを、じっと見つめる。
 
 次は、降りてこい。
 
 てめぇに俺の赤い拳を、拝ませてやる。
 
 
 
 
                                 act1.≪contact≫──END.



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