( ^ω^)「ブラッドソード!」


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:24:49.55 ID:NG3VPIfj0

Cap.3まぎれもない勝利の証し
──────────────────────────────

( ^ω^)「…」


神殿を出てテラスの左側へまわると、そこからほそい小道が尾根の上に続いていた。
山頂をこえた向こうには、火を吹く火口が地獄のような様子をのぞかせているのが見える。


川 ゚ -゚)「で、どこいくの?」


当然疑問に思うことを女が聞く。
男もはっきり行き先が分かっているわけではない。
こんなとき頼りになるはずのナビゲーターは、さっぱり応答しない。
きっと食後にお昼寝でもしてる最中なのだろう。


( ^ω^)「当面、尾根をつたって向こうへ」


火口の手前に見える拝殿を指して言う。
女は「ぷにー」と声を漏らした。
それがどんな意思表示か男は知る気にもならなかった。

 

 

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:26:17.67 ID:NG3VPIfj0

切っ先のような尾根は右も左も硫黄の霧に包まれている。
前方の暗がりの中にぼんやりと見える廃墟となった拝殿を目指して進む。


( ^ω^)「?」


不意に何かカリカリとひっかく物音を聞いた気がした。
それに、視界の隅に布のようなものがちらついたように思える。


( ^ω^)「念のために聞いておきたい。このあたりにはどんな物が生息しているね」

川 ゚ -゚)「あー、こんな山の中だと…死物神とか」

( ^ω^)「やたら物騒な名前についてはとりあえず置いといて」

( ^ω^)「それはアレかね、一見ブリッジして這い回っている人みたいな感じかね?」

川 ゚ -゚)「そうそう!しかもほぼ全裸だから、すっげえキモいよ!」


男は周りをすっかり取り囲んでうごめく集団を見て、すごいキモイの部分に素直に同意した。

 

 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:28:30.62 ID:NG3VPIfj0

川 ゚ -゚)「うーわー」


女はなんか悲鳴みたいなのを上げて取り囲むものたちをポカポカと蹴散らす。
するとそれらはあっさり退散した。
血の気の多い生き物でなくてよかったと男は安堵する。


川 ゚ -゚)「まったく、こういう力仕事は男子の仕事だろう、しっかり働いてくれなくては困るな。プンスカ」

川 ゚ -゚)「集団がいたということは、近くに巣があるな。探すと卵があるかも」

( ^ω^)「卵?」

( ^ω^)「…」

( ^ω^)「えっ、卵?」

川 ゚ -゚)「おいしいよ?」

 

 

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:30:17.68 ID:NG3VPIfj0

巣を探し出して物色してみると、幸いなことに卵は見つからなかった。
代わりに羊皮紙の入った壷をいくつか見つけた。
奇妙な動物が住み着く前は、古文書をためこむための穴蔵だったのだろう。

羊皮紙は、黄色く古びれた様子から相当の年月を経ていることくらいしか分からない。
書かれている文字は見たこともない文字だった。


川 ゚ -゚)「どれ、お姉さんに見せてみなさい」


女は羊皮紙を手にとって眺めると、古いマグス達の使っていたダッカンディー語で書かれている、と言った。


川 ゚ -゚)「なになに…クラースを恐怖で震撼させた巨人スクリミールは、英雄の手によって滅ぼされた」

川 ゚ -゚)「手足を切断されて、炎と氷の地に永遠に閉じ込められることになったのだ」

川 ゚ -゚)「スクリミールを操っていた反逆のマグスは捕らえられ、次元の狭間の城に封印された」

川 ゚ -゚)「そして五人の真のマグスの手によって世界に調和がもたらされ、新たな千年期の幕が開けた」

川 ゚ -゚)「…これは千年前の創世伝説について書かれたものだよ」

 

 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:32:06.39 ID:NG3VPIfj0

川 ゚ -゚)「他にもいろいろあるようだな」

川 ゚ -゚)「天使アザレルによって作り出された生命の剣と死の剣の話とか」

川 ゚ -゚)「時の輪の牢獄という名前の恐るべき黒い多面体の話とか」

川 ゚ -゚)「面白そうだけど、全部読んでたら日が暮れちゃいそうだな」


再び拝殿への小道を歩いて行く。
崖から続いた道をたどって、崩れた壁に囲まれる拝殿の中へと入る。

中には、ガーゴイルの石像に囲まれた石の祭壇があった。
祭壇には、外からのかすかな光で輝く金の深皿が置いてあった。
その中を見ると、真紅のオパールをはめた炎のような形の護符があった。


( ^ω^)「…」


護符を手にとってみると、宝石が瞬くようにかすかに輝いた気がした。


川 ゚ -゚)「きれいだけどたぶん何の役にも立たないな」

川 ゚ -゚)「きっと邪魔になるから、私が持っておいてあげよう。ほら、よこしなさい」

 

 

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:34:07.75 ID:NG3VPIfj0

女が手をのばしてそれを取り上げようとする。
男は女の頭をおさえて近寄れないようにした。
女はパタパタと手を振り回して抵抗する。


( ^ω^)「これは…、普通の火だけでなく超自然的な炎からも守ってくれる、炎の護符だお」

川#゚ -゚)「もう!何で知ってるんだよ、見た目によらず物知りさんだな!」


そのとき小石が転がる音が耳に入った。
いまこの場所で小石が転がることとその原因について、男は二〜三の可能性を考えてみた。


( ^ω^)「うん」

( ^ω^)「だいたい想定できることだが、その前にちょっと。確認させてくれないかね」

川 ゚ -゚)「何かね」

( ^ω^)「『緊急脱出の魔法』は使えるかな」

川 ゚ -゚)「ああ、あれね。うん」

 



 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:35:44.73 ID:NG3VPIfj0

川 ゚ -゚)「私あれ使うと、ぐるぐるーってなって酔っちゃって」

川 ゚ -゚)「そういうの苦手で。けっきょく覚えなかったんだよね」

川 ゚ -゚)「でも大丈夫!」

川 ゚ -゚)「そもそも緊急脱出しなきゃいけないようなとこには、最初から近付かなければ良いのだよ」

川 ゚ -゚)キリッ


( ^ω^)「…」


男は何か言い返すのはあきらめて、ガーゴイルの数を確認した。

ガーゴイルが一匹…、ガーゴイルが二匹…
全部で五匹と、空の台座がひとつ。
元の場所から消えたものは既に出口をふさいで立ちはだかっていた。

二人を囲む他のガーゴイルも順に息を吹き返しはじめている。


( ^ω^)「!!」

( ^ω^)「出口に向かって走るお!」

 

 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:37:15.09 ID:NG3VPIfj0

男は女の腕をつかんで駆け出した。

目指す出口には、鎌のように伸びた爪を構える一匹がいる。
男は深く息を吸い込み、おのれの体の底から全力をふりしぼった。


(#゚ω゚)「ほうわああああ!」


気合いとともに、ガーゴイルの股ぐらの隙間から外へ女を放り投げる。
ズザーッと滑っていって、しばらくいった藪の茂みに突っ込んだところで女は止まった。


川;゚ -゚)「ひどくない?もうちょっと女の子っぽく扱えよ!?」

川 ゚ -゚)「というか、まあ、こちらの身の安全を考慮したという点では、その心意気は評価してやろう」

川 ゚ -゚)「…」

川 ゚ -゚)「ファイトー」

 

 

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:39:29.49 ID:NG3VPIfj0

男が廃墟から出てきたのは小一時間も過ぎた頃のことだった。
ボロ雑巾のような体を引きずりながら、やっとのことで茂みに腰を下ろす。


(メ ^ω^)ヨロッ…

川 ゚ -゚)「まさかそんな装備だけでガーゴイルx6を倒しちゃうとはな。人間やろうと思えばできるもんだな」

川 ゚ -゚)「よく戦った!感動した!」

( ^ω^)「うるせえよ。感動されたところで知ったことじゃねえよ」


*    *    *    *


イベント:苦労とひきかえに得たもの

ガーゴイルとガチで戦う(経験値360)

入手アイテム/
炎の護符


*    *    *    *

 



 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:41:16.82 ID:NG3VPIfj0

気晴らし程度のしばしの休息をはさんで、切り立った崖道を進んで行く。
あたりは深い霧に包まれている。
火山の赤い光で時折あたりの様子がうかがえる。
細く足場の悪い道は、深い火口の縁に達して、不断に曲がりくねりながら続いていた。

突然、岩影から二つの人影が飛び出してきた。
様子などから見ると山賊のようだった。


「金と命をもらうぞ!」

「あと食べ物もだ!」


山賊は刃物を突き付けて一方的に主張した。
何が楽しいのか、顔には満面の笑顔を浮かべている。
たとえどんな状況でも、ふざけた態度をしていると真面目に話を聞いてもらえるものではない。


川 ゚ -゚)「なんか言ってるけど」

( ^ω^)「相手をするにしても場所が悪いお」

 

 

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:43:09.22 ID:NG3VPIfj0

武器で相手を牽制しつつ、そのままジリジリと後戻りすると二人は反対側へ回り込む小道を走って逃げた。
幸いにも山賊はこちらまで追いかけてこないようだった。

二人は足を止める。
足元から小石が転がって、火口の斜面をつたい溶岩の中に落ちる。
すると溶岩の表面にブクブクと大きな泡がわき上がった。
よく見ると泡ではない。
それは炎の精霊スキアピールだ。


ミ,,゚Д゚彡「…」

ミ,,゚Д゚彡「ややっ?」

ミ,,゚Д゚彡「トラどの、トラどのー!」

(=゚д゚)「何でござるかフサどの」


ミ,,゚Д゚彡「大変でござるよトラどの、人間がいるでござる」

(=゚д゚)「それは大変でござる」

ミ,,゚Д゚彡「護符持ってるでござる。召還されちゃうでござる」

(=゚д゚)「大変でござる」

 

 

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:44:54.82 ID:NG3VPIfj0

ミ,,゚Д゚彡「たとえば近所のスーパーで買い物してたとするでござる」



ミ,,゚Д゚彡「白菜、エノキ、ニンジン…あと何だったっけ。ああ、そうそう、カマボコ買わなきゃ」

ミ,,゚Д゚彡「え?電話鳴ってる?こんな時間に何だろ…ハイ、もしもし」

ミ,,゚Д゚彡「あ…ハイ、これからですか?」

ミ,,゚Д゚彡「…いえ、ハイ、ではこれから向かいますので」

ミ,,゚Д゚彡「ごめんちょっと召還されちゃったから行ってくるわ。買い物済まして先に帰ってて」

(=゚д゚)「大変でござる。というか誰と買い物してたでござる」

 

 

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:46:22.85 ID:NG3VPIfj0

ミ,,゚Д゚彡「または、お鍋囲んでくつろいでたとするでござる」



ミ,,゚Д゚彡「お出汁つくるの上手くなったね、白菜に味が染みておいしいよ」

ミ,,゚Д゚彡「せっかくだしビールもう一本あけちゃおうか」

ミ,,゚Д゚彡「ううん、いいんだよ今日は特別な日だから。それにもう二人だけじゃないんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「君のおなかの中にはあたらしい家族が」

ミ,,゚Д゚彡「あれ…あ、ごめん電話が」

(=゚д゚)「大変でござる。よりによってそんな日に寂しい思いをさせるのは、人間として、いや一人の男としてダメでござる」

 

 

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:48:12.66 ID:NG3VPIfj0

ミ,,゚Д゚彡「召還は一日一回まででござる」

(=゚д゚)「用法容量を守って計画的にご利用するでござる」


( ^ω^)「…」


火口の外側を下って行く坂道は、やがて先の方で石を切って造った階段へと替わっている


川 ゚ -゚)「そういや護符持ってたら精霊の話してること聞けたはずだけど。何て言ってたの?」

( ^ω^)「うん…何か使用上の注意を」


階段を進むとやがて目の前に景色が開ける。
前方には岩と小山が点在する平原が広がっていた。
その向こうには洞窟の天井に届きそうな小高い丘が見えていた。

 

 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:49:59.02 ID:NG3VPIfj0

丘の頂には、天井の岩盤の隙間から差す灰白色の光を浴びて旗がひるがえる様子が見える。
あれが勝利の紋章だ!

光の下にひるがえる勝利の紋章を目指して、霧に包まれた平原を歩く。
その足元を、親指の先ほどの小さな生き物ノームがクモの子を散らすように逃げていく。
どうやら知らぬ間に彼らの町を踏み荒らしてしまっていたらしい。

途中、石碑が一つ建っているのを見つけて、近付いて調べてみることにした。
ひび割れた石碑の表面には古代の文字が刻まれている。


川 ゚ -゚)「んーとね、200年前のスパイトの都市を全滅させた火山の噴火について書いてるみたい」


だが文字には魔力が込められていて、詳細に読み解くことは不可能だと女は告げた。


( ・∀・)「なあんだ、読めないんだ。残念」

( ^ω^)「まあここまで来て、こんなものに気を取られている場合でも」

 

 

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:51:23.42 ID:NG3VPIfj0

( ^ω^)

( ^ω^)「!?」


( ・∀・)「やあ元気?」


背後から聞こえた声に振り返ると、そこにはあまり再会したくない人物が立っていた。
神を恐れぬイコンだ。


川 ゚ -゚)「えっ誰?知り合い?」

( ^ω^)「知り合いといえば違いないが」

( ・∀・)「このさい僕の素性はともかく」

( ・∀・)「何か大切な情報が書いてるかもしれないから、ちょっと魔法かけて調べてみるね」

( ・∀・)「えい」

( ・∀・)っ 〜『眠りの雲』

 

 

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:53:14.76 ID:NG3VPIfj0

*    *    *    *


川 ゚ -゚) ^ω^)



( ^ω^)

( ^ω^)「!?」


男は我にかえって辺りを見回した。
平原にはもうイコンの姿は無かった。
してやられたのだ。


( ^ω^)「…わざわざ姿を見せなくても出し抜けただろうに。よほどこちらの事が腹に据えかねていたとみえる」


いくらかの喪失感を味わいながら、男はそっと体を動かしてみた。
幸いにも負傷はしていないようだった。
神を恐れぬイコンは、それほど陰険な男でもないらしい。


 

 

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:55:12.94 ID:NG3VPIfj0

そして気晴らしの意味もふくめて、隣で目を開けたまま寝ている女の鼻と口をそっと塞いだ。
いや違う。優しく起こしてやることにした。


川 ゚ -゚)「…」

川 ゚ -゚)!?

川 ゚ -゚)フムッフ!?

川 ゚ -゚)フムッ!モフッ!?



川#゚ -゚)「ぬばあっ!?」

川#゚ -゚)「どっどげんと!?ぬしゃ、どっげんしよるち!?」

( ^ω^)「お目覚めかね」

川#゚ -゚)「あやうく二度と目覚められなくなるところだったがな!」

 

 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:57:01.59 ID:NG3VPIfj0

ふたたび平原を歩いてゆく。
今度の足取りはやや重い。
追いかけたところでイコンはもう勝利の紋章を手にしてマグス達のもとへ凱旋しているに違いない。

すべては今や虚しくなってしまった。
あの丘の上で風になびく勝利の紋章を手にすることは叶わなかったのだ。
地上の光をあびて輝く、あの勝利の紋章をこの手に掴むことは叶わな…


( ^ω^)「あれ?」


男は目をゴシゴシして、もう一度見た。


( ^ω^)「まだある…ようだが」


急く気持ちとともに丘へと駆ける。
それの目の前に立つと、それは確かに勝利の紋章だった!

手を伸ばしかけて、男はふとためらう。
確実に先に来ているはずのイコンが何故これを手にしていないのか。


 

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 15:59:12.14 ID:NG3VPIfj0

そんな疑問にモヤモヤしていると、女が袖を引いてそれとは別の疑問を口にした。


川 ゚ -゚)「なあなあ、あそこに浮かんでるのって何かな」


女が指して示した方向には、地面が大きく丸くエグレている場所があった。
直径100メートルほどの範囲がまるでスプーンでアイスをすくい取ったようなクレーターになっている。
そして穴の真上に、巨大な玄武岩の島が何の支えもなしに浮かんでいた。
島の上半分は尖塔がいくつも連なって、城塞のような様相をしていた。

クレーターの周囲まで近付くと、ブロンズの銅鑼とハンマーが転がっているのを見つけた。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「ここにあるからには、上に浮かんでるアレに何か関係ある品だろうが…」

( ^ω^)「何か魔法が仕込まれていないかどうか調べることはできるかね」

 

 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:01:05.44 ID:NG3VPIfj0

言われて女はそれの近くまで行く。
膝を抱えて側にしゃがみ込んで、指先でそっと撫でてみたりする。


川 ゚ -゚)「んー、ものすごい転送の魔法?っぽい感じ?」

( ^ω^)「どういうこと。ものすごいって」

川 ゚ -゚)「町一つまるごと隣の国に引っ越せるくらい」

( ^ω^)「すげえな」


男は思案する。
そこまでのものなら、城の上まで行くための道具ではない。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「むしろ城の方がこれで呼び出されたと考えれば」


ふと心に引っかかるものを感じた。
別の場所…、別の次元に閉じ込められた城…
つい最近そんな話を耳にした事がなかっただろうか。

その城にはおそろしく迷惑な者が閉じ込められていて…

 

 

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:03:02.91 ID:NG3VPIfj0

( ^ω^)「これに関しては、見つけなかったことにするのが正解のような…」

川 ゚ -゚)「あれ?あそこにいるの、さっきの人じゃない?」

( ^ω^)「え?」


いろいろ考慮したうえで引き返そうと決めたそのときである。
クレーターの底と平原をせわしなく行き来する人影があるのに気が付いた。


〜(; ・∀・)

(・∀・ ;)〜


イコンだった。
何か大きな骨のような、化石のようなものを集めてきては、クレーターの中央に積み上げていた。


( ^ω^)「紋章も取らずに何を…」

( ^ω^)

(; ゚ω゚)「ッ!?」

 

 

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:04:39.42 ID:NG3VPIfj0

細切れの断片だった情報がそのとき恐るべき結論に組み上がるのを、男は感じた。

遠い過去からの警告は何と告げていた?
かつて世界を滅ぼしかけた巨人は、どこに封印されたと羊皮紙に書かれていた?

炎と氷の地と呼ばれる場所。
それはクラースの北の果てに隔絶された、このカルーゲンの地底火山のことではないのか…?

あの次元の狭間から呼び出された城は、千年の怨念を閉じ込めた牢獄だったのだ!


-ニ三(; ゚ω゚)

バビュンッ!

川 ゚ -゚)「うわ?何?そんな急いでどうした」


男は駆け出していた。
世の中には、他の全てを投げ出してもやらなければならない事がある。
いま目の前で行われようとしている事、その目論見を遂げさせてはならない。

神が人の世にもたらしたという創世の伝説には、その終わりの時もまた記されている。
神の手によって創られ、五人の真のマグスが調律する世界…
それは千年の時の終わりと共に壊され、あらたに創り変えられるというが

だがそれは今ではない!

 

 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:06:41.25 ID:NG3VPIfj0

( ・∀・)「?」

( ・∀・)「何だい?僕いまちょっと忙しいんだけど」

( ^ω^)「…」

( ・∀・)「どいてくれないかな、これで最後なんだ」


イコンは、目の前に立ちふさがった男に静かな声で告げた。
声は落ち着いているのだが、その目の色は正気の色を失っていた。


( ^ω^)「察するに『盲目的服従』の魔法に支配されているようだが」

( ^ω^)「あの宙に浮かぶ城で何があったお」


イコンは男の目をまっすぐに見返したままで何も言わなかった。


( ^ω^)「答える気にならないかね。では質問を変えよう」

( ^ω^)「これで終わりと言ったが…それは、そのふざけた土塊を掘り出してくるお使いの事かね。それとも」

( ^ω^)「この千年期の世界を終わらせるつもりだとでも言うのかね」

 

 

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:08:28.32 ID:NG3VPIfj0

その言葉に答えたのはイコンではなかった。
彼の足元から噴き出して体を包むように燃え上がった、邪悪にゆがむ顔だった。


『千年の時を越えた世界にも、察しの良い者はいるようだな!』

『左様、スクリミールが甦ればそれは世界の終わりと同じ事だ』

『あの忌まわしきブラッドソードが失われた今となっては、誰一人としてスクリミールに傷をつけることなどできるものではない』

『まがい物のこの世界が、マグスの王であるこのマグス・ジンに滅ぼされる様をそこで見ているがいい!』


邪悪な顔は地下世界に響きわたる哄笑とともに、巨大な火の玉を吐き出した。


( ^ω^)「!!」


男が悲鳴を上げる間もなく火の玉は男を飲み込んで、火柱となって燃え上がった。

 

 

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:09:49.15 ID:NG3VPIfj0

( ・∀・)「…」

( ・∀・)「さあ、この心臓の化石で最後だ。よいしょっと」


クレーターの中心にはもう既に巨人の骨格が組み上げられていた。
正気を無くしたイコンは、巨人の肋骨の中に花崗岩のような濁った色をした化石の心臓を置いた。

すると冷たい一陣の風が、泣き叫ぶように平原を駆けぬけて吹き付けてきた。
スクリミールの魂が死の国から甦ろうとしているのだ!

やがて干からびた骨の上に苔のように皮膚がひろがりはじめた。
頭蓋骨のからっぽな眼孔の奥で命の光がキラリと光った。

イコンとそれにまとわりつくマグス・ジンの亡霊は目の前で起こっている巨人の復活に気をとられている。
行動を起こすのは今しかない。


「…」

ポッピッポ、

プルルル…

「…あ、もしもし?いま大丈夫かな」

「うん、さっそくで悪いが、ひと仕事…」

 

 

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:11:39.21 ID:NG3VPIfj0

やがて、分厚い筋肉が皮膚の下にボコボコと膨れ上がり、巨人の形になってゆく。
肋骨の中に収まる心臓は不気味に脈打ちはじめていた。
ポッカリと穴の開いた胸の上にも皮膚は広がっていき、もうじき巨人は完全に目覚めるだろう。


ヒュン!

( ・∀・)「…?」

( ・∀・)「!!」

バシッ、


そのとき不意を付いて背後から飛んできた刃物を、イコンは振り向きざまに払い落とした。
短刀はクレーターの地面にむなしく突き刺さる。


( ^ω^)「…」


魔法の火柱は消えていた。
そこには短刀を構えた男が立っていた。
その姿を見て亡霊とイコンは驚いた表情をする。

 

 

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:13:20.19 ID:NG3VPIfj0

( ・∀・)「あ、無事だったんだ」

『ほう…、このワシの一撃を受けてなお立ち上がってくるとは』

『だがもう遅い、スクリミールは再び生命を得た!貴様は最初の生贄となるのだ!』


亡霊の声と共に氷の巨人が起き上がった。
それは切り立つ氷壁のように男の前にそびえ立った。
分厚い筋肉を閉じ込めた皮膚からは冷気が吹き出して氷柱をつくり、巨人の体を覆う氷の鎧となった。
そしてゆっくりと踏み出すと、目の前のほんのちっぽけな獲物の姿を見つけた。


(; ^ω^)「…!!」


男は正直生きた心地がしなかった。
タイミング的に、猶予はほんのちょっとしか無かった。
その隙にうまくやってくれただろうか。
はてしなく不安になる。
何しろマイペースな人達だから。



 

 

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:15:23.65 ID:NG3VPIfj0

(; ^ω^)「お二方ー!準備はできたかなー?」


すると巨人の胸のあたりから返事をする声が聞こえる。



 間に合ったでござるー

 準備完了でござるー



『何だ、いったい何をしている?』

( ・∀・)「…」


( ^ω^)「それでは…、ハートキャッチしちゃう?」


 

 

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:17:04.47 ID:NG3VPIfj0


 心得たでござる。えい、神左爆熱掌でござるー

 右魔暗黒掌でござるー



すると氷の巨人は突然胸をかきむしり、巨体をよじらせて苦痛の悲鳴を上げた。
巨人は大地に倒れた。
ものすごい巨体が激突した衝撃で大地がグラグラと揺さぶられる。
吹雪と土煙が舞い上がる向こうで、心臓から噴き出した炎で巨体を焼かれてゆく巨人の姿が見える。


( ^ω^)「これは…壮絶な」


炎はもう数分もすれば巨人スクリミールの体を焼き尽くすだろう。
立派に役目を果たして、精霊さんたちは帰って行った。

 

 

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:19:07.28 ID:NG3VPIfj0

マグス・ジンの亡霊は悲痛な叫び声を上げた。


『なんということだ!世界を滅ぼすスクリミールがこんなことで!』

『このままでは終わらせんぞ!』


亡霊はイコンの体から離れるとスクリミールに取り憑いた。
精霊の火に焼かれるままになっていた巨体がふたたび脈動する。
亡霊の乗り移った巨人は片手を支えにして体を起こした。
氷柱が剥がれおちて、解けた水が滝のように流れる。


『この体が滅びる前に、せめて貴様らだけでも地獄に送ってくれるわ!』


巨人はおそるべき呪いの言葉を吐いて腕を振るった。
岩のような腕は、運悪く目の前に立っていた者を襲う。


( ・∀・)「!!」


イコンは抵抗もできずになぎ払われた。
離れたところまで飛ばされて、それきり動かなくなった。

 

 

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:20:52.97 ID:NG3VPIfj0

『忌々しいマグス共の手先め!影も形も無いようにしてくれるぞ!』

(; ^ω^)「…!!」


巨人のこぶしが男めがけて振り下ろされる。
このままではその言葉どおりの有り様になるだろう。
とっさに逃れることもできずに、男は立ち尽くしていた。

そのときである。
飛び込んできた大きな二つの塊が、男に代わって巨人の一撃を受け止めた。
衝撃は大地に伝わって地面が大きくヒビ割れる。


「約束の時間に、間に合ったようだな!」

「借りを返しに来たぞ!」


( ^ω^)「…!」


それはいつぞやのバーバリアンだった。
頼もしさと、そしてほんの少しばかり後ろめたさを感じさせる二つの背中が男の目の前にあった。
巨漢の戦士二人は力を合わせて巨人の攻撃を弾き返した。

 



 

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:22:50.72 ID:NG3VPIfj0

「何としてもあれに一太刀報いるぞ、相棒!」

「ああ、一緒に仕掛けるぜ、兄弟!」


戦士達は勇ましく武器を構えて巨大な姿の敵を迎え撃とうとするが、男はそれを止めた。


「どうした、怖じ気ついている場合ではないぞ」

「仲間がやられて気落ちしているのは分かるが、今は奴をどうにかするのが先だ」


( ^ω^)「元々仲間では…いやそれはともかく。切り札はもうすでに切ってある」

( ^ω^)「あとは花火が上がるのを待つだけだお」


男は巨人の姿を見た。
胸にあいた穴の奥では炎がくすぶり続けている。
精霊はちゃんと仕事をしてくれた。
水に触れた金属カリウムは炎をあげて反応を続けている。
そして最後には…

 

 

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:24:29.37 ID:NG3VPIfj0

( ^ω^)

( ^ω^)!!


ゴオオオオオ!!

一瞬、音のない閃光に包まれて時が止まったような感覚に襲われる。
とてつもない爆音と衝撃が一緒に押し寄せてきたと気が付いたのは、ものすごい勢いでクレーターの端まで吹き飛ばされた後のことだった。

スクリミールは骨のかけらも残らなかった。
それに取り憑いたマグス・ジンの亡霊も同様だろう。

二人のバーバリアンはさすがに頑丈だったようで、気を失っているだけでまだ息はあった。
この二人が壁になっていなければ今頃どうなっていたかと、男は冷や汗を拭う。

 

 

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:26:32.15 ID:NG3VPIfj0

( ^ω^)「…」


辺りを見る。
イコンと呼ばれていたものは亡骸となっていた。

語るほどのことではない。
誰の側にも常につきまとって、人生に暗く陰を落とす『死』というものが、この男の身にも訪れたというだけのことだ。
男は静かにクレーターを後にした。

丘の頂に立つ。
ずいぶんな回り道をしたが、ついにここまでたどり着くことができた。

真っ白な霧に覆われた頂では、勝利の紋章が強い風におおきくひるがえり音を立てている。


( ^ω^)「…」


紋章を手にすると、青白い光の柱が降りてきて、男と同行者は光の中に包まれた。
それは地上へと転送する魔法だ。

気が付くと、クラースの大聖堂の中にいた。
競技の勝利者を褒め称えるためにマグス達が一同に会していた。

 

 

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:27:49.27 ID:NG3VPIfj0

そのうちの一人が近付いてきて、男に告げる。


( ФωФ)「すべてのマグスを代表して、ここに告げる」


それはマグス・バラザールだった。


( ФωФ)「年に一度の試合に勝つ以上のことをやってのけてくれたな」

( ФωФ)「我らの先祖の時代からの恐るべき敵スクリミールを倒したのだ!我らは惜しみなく最高の報酬を与えよう!」


バラザールが手を打って呼ぶと、召使いが宝物を山積みにした銀の盆を捧げ持って進み出た。
すべてのマグスが彼らに称賛の拍手をおくった。

 

 

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:29:04.12 ID:NG3VPIfj0

*    *    *    *


イベント:絶叫の巨人

スクリミール討伐(経験値800)

入手アイテム/
金貨三百枚
逃げ足のお守り
魔力の指輪


*    *    *    *

 


 

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:31:10.79 ID:NG3VPIfj0

こうして彼らはダンジョンから戻った数少ない生存者の一員となった。
マグスの試合は命を賭した危険な試合なので、生存者がいない年もしばしばだった。


( ФωФ)「イヤアアアッハー!」

||‘‐‘||レ「ヒャッホウー!」


大聖堂でのグランドフィナーレの式典もつつがなく済んで、ここはマグス・バラザールの屋敷。
雇い主のバラザールはハイテンションを通り越した上機嫌だった。
彼は他のマグス達から広大な領地を獲得することができたのだ。


( ФωФ)「やったよ!我輩やったよ!人生勝ち組の仲間入りだよ!」

||‘‐‘||レ「よかったですね!ご主人様!これで借金生活ともお別れですね!」

川 ゚ -゚)「ビバ金持ち!」


彼らは心底うれしそうにハイタッチを交わす。
一人余計なのがまぎれているのは誰も気にしていなかった。

 

 

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:32:59.26 ID:NG3VPIfj0

( ФωФ)「おめでとうそしてありがとう!そち達には感謝しておる。しばらくは我が館でゆっくりしていくがよい」

||‘‐‘||レ「ゆっくりしていってね!」


ひとしきり歓喜の余韻に浸っていたあと、バラザールはようやく主賓に言葉をかけた。


( ФωФ)「以後数年、試合に参加する資格は無いがそんなのはどうということもあるまい」

( ФωФ)「今はただ、この苦労の末に勝ち取った偉大な勝利をあじわうがよかろう」


衛兵に護衛されて大通りへと出る。
昼下がりの通りにはすでに人垣ができていた。
両側の建物から顔を出した人々が、花びらをまきながら手を振っている。
群衆からはまるで嵐のような歓呼の声があがった。
今日は、彼らが暴君以外を褒め称えることのできる、年に一度の日なのだ。


( ФωФ)「皆のもの、英雄に惜しみない拍手を!」


 

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:34:45.75 ID:NG3VPIfj0

川 ゚ -゚)ノシ「ありがとう!ありがとーう!」

川 ゚ -゚)ノシ「わたしが英雄だよ!」

川 ゚ -゚)ノシ「もっとだ、もっと褒めて!」



( ФωФ)「あれ?内藤は?」

 

 

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:36:53.13 ID:NG3VPIfj0

*    *    *    *


クエスト:勝利の紋章を掴め!

コンプリート(経験値1000)

イベント/
lw´‐ _‐ノvの好感度↑(経験値120)
ネビュラロン討伐(経験値500)
バーバリアンのフラグ(経験値200)
親娘の対話(経験値150)
ガーゴイルとガチで(経験値360)
スクリミール討伐(経験値800)

入手アイテム/
ビスレットの短剣(1D4+2 投擲用( ^ω^)回数無制限)
宝剣フレイムタン(2D6+1 両手剣( ・∀・)火属性の追加効果)
炎の護符(火属性無効( ^ω^)精霊召還可能)
逃げ足のお守り(回避回数+1 ( ^ω^)
魔力の指輪(魔術師ランク+1 川 ゚ -゚)
バラザールの魔術書(無断で入手川 ゚ -゚)
金貨三百枚


*    *    *    *

 

 

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:38:41.57 ID:NG3VPIfj0

*    *    *    *


キャラクターノート:

( ^ω^)経験値+3430

クラス/盗賊ランク6→7
性格/ますます抜け目なく
筋力/そこそこ
機転/きくほう
根気/なし
集中力/わりと
耐久力/人並み

所持品/
ビスレットの短剣
逃げ足のお守り
輝く多面体
炎の護符
煙草
金貨二百五十枚


*    *    *    *

 

 

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:40:20.42 ID:NG3VPIfj0

*    *    *    *


キャラクターノート:

川 ゚ -゚)経験値+1150

クラス/魔女ランク3→4+1
性格/実力を伴わない自信家
筋力/まるでない
機転/きかない
根気/まったくない
集中力/すごい
耐久力/もやし

魔法/
未来予知 new!
ネメシスの電光 new!
ファルタイン召還
メイクアップ

所持品/
魔力の指輪
バラザールの魔術書
ポーチ的なもの
金貨五十枚

*    *    *    *

 

 

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:42:00.42 ID:NG3VPIfj0

丘に立ち込めていた霧はいつしか晴れていた。
地上の風に頬をなでられて、男は目を覚ます。


( ・∀・)「…」

( ・∀・)「僕…あれ?」


男の傍らには、宝飾の施された大きな剣が大地に突き刺さっている。
この冒険で得た宝物だ。

あたりを見回す。
激しく焼けた痕跡の残るクレーターがあった。
他には何も無かった。

男は体を起こした。
その拍子に首元で何かカチャリと音がして、小さなものが壊れたのに気が付いた。

それは緑色の宝石がはめ込まれた、甲虫を象った金細工のペンダントだった。
宝石はヒビ割れていた。


( ・∀・)「僕、こんなの持ってたかな」

( ・∀・)「…」

( ・∀・)「でもきっと…、大切な物だ」

 

 

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:44:01.53 ID:NG3VPIfj0

男は、地上へとのびる青い光の柱の方へ歩いていった。
勝利の紋章はもうそこには無い。
誰かが持ち去った後だった。


( ・∀・)「…」


青い光に包まれて景色が遠ざかっていく中で、男は不意にふとしたことを思った。
あのニヤケた顔をした男がいま隣にいたら、きっとこう言うのではないだろうか。


( ^ω^)「なるほど確かに、この冒険で満足な成果を得ることはできなかった」

( ^ω^)「それは不本意な事ではある。しかし、こう考えてみてはどうかね」

( ^ω^)「今そうして生きている…、それこそがまぎれもない勝利の証しではないのかと」

( ^ω^)「すなわち、人生という名の冒険の!」

( ^ω^)+


得意げに言う様子が想像できて、男はちょっとだけイラッとした。


【戻る】    【次へ】

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 16:46:21.90 ID:NG3VPIfj0


Cap.3まぎれもない勝利の証し/ここまで
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See you next ( ^ω^)Blood Sword!#2『魔術王を打ち破れ!』
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