( ^ω^)かつては青く、緑だったようです
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金) 19:42:05.60
ID:uSkRt1Ld0
彼女は、美しかった
ただひたすらに、美しかった
綺麗な肌
透き通った瞳
艶やかな髪
そのどれもが
この世の言葉では表せないほどに
美しかった
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:43:00.55 ID:uSkRt1Ld0
だから僕は
どうしても彼女が欲しかった
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:43:41.83 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕に手に入らないものはないんだお」
( ^ω^)「だからあの子も、きっと僕のものになるお」
( ^ω^)「あの子を僕のものにするために」
( ^ω^)「僕はあの子に思いを伝えるんだお」
( ^ω^)「あの子に僕の思いを伝えるために」
( ^ω^)「僕は手紙を書くお」
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:44:23.12 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「でも、僕はペンを持ってないんだお」
川 ゚ -゚)「だから私の所へ来たのですか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「光り輝く羽をもつ神鳥さん」
( ^ω^)「あなたの羽で文字を書けば」
( ^ω^)「きっとその文字も光り輝くお」
( ^ω^)「そうすれば」
( ^ω^)「僕の思いが何倍にもなって届くはずだお」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:45:09.72 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「だから僕に羽をくださいお」
川 ゚ -゚)「……残念ですがそれはできません」
川 ゚ -゚)「私にとって羽は命そのもの」
川 ゚ -゚)「これを抜いてしまえば」
川 ゚ -゚)「私の体はたちまち灰になってしまうでしょう」
川 ゚ -゚)「貴方に羽は渡せません」
川 ゚ -゚)「どうかここから立ち去ってく」
( ^ω^)「そんな事はどうでもいいお」
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:45:49.15 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は羽をもらいに来たんだお」
( ^ω^)「神鳥さんの命なんて聞いてないお」
( ^ω^)「早く羽をよこすお」
川 ゚ -゚)「………貴方は私が死んでもいいのですか?」
( ^ω^)「何度も言わせるなお、そんなものはどうでもいいお」
川 ゚
-゚)「………貴方は、私の命を奪ってまで、何がしたいのですか?」
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:46:35.52 ID:uSkRt1Ld0
そんなの決まってるお
あの子が、欲しいだけだお
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:47:17.44 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「ペンは手に入ったけど」
( ^ω^)「今度は書く紙がないお」
/
゚、。 /「だから、私の所に来たのか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「大きな大きな神木さん」
( ^ω^)「あなたを材料に使った紙は」
( ^ω^)「どんな紙より神々しいでしょう」
( ^ω^)「それを使えば」
( ^ω^)「僕の思いはよりあの子に届くはずだお」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:48:09.69 ID:uSkRt1Ld0
/ ゚、。 /「………それはすなわち」
/ ゚、。 /「私に死ねという事ですか?」
/ ゚、。 /「貴方より何千年も早くこの地に根付いてきた私に」
/ ゚、。 /「死ねというのですか?」
/ ゚、。 /「言語道断です、どうぞお帰り」
( ^ω^)「そんな事は聞いてないお」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:48:51.97 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は紙が欲しくて来たんだお」
( ^ω^)「あなたの歴史なんてどうでもいいお」
( ^ω^)「今から切るから、静かにしててくれお」
/ ゚、。
/「………貴方は命の歴史を何だと思ってるのですか?」
( ^ω^)「僕は黙ってろって言ったんだお、いい加減にするお」
/ ゚、。 /「………私を切り刻んでまで、貴方がしたい事とはなんですか?」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:49:32.92 ID:uSkRt1Ld0
わかりきった事を聞くなお
あの子が、欲しいだけだお
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:50:14.89 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「原料は手に入ったけど」
( ^ω^)「紙は木だけじゃ作れないお」
川д川「だから、私の所へいらしたのですか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「きれいなきれいな聖水さん」
( ^ω^)「あなたで紙を清めれば」
( ^ω^)「僕の思いも清められたのと同じだお」
( ^ω^)「そうすれば」
( ^ω^)「きっと彼女にも思いが伝わるお」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:50:55.67 ID:uSkRt1Ld0
川д川「………申し訳ありませんが、それはできません」
川д川「私は今まで一度たりとも他者から干渉された事はありません」
川д川「それゆえ、私は聖水なのです」
川д川「他者の干渉を許せば、私の体はたちまち穢れ」
川д川「聖水ではなくなってしまいます」
川д川「申し訳ありませんが、お引き取り願」
( ^ω^)「そんな事はどうでもいいお」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:51:38.46 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は聖水を使いに来たんだお」
( ^ω^)「あなたがどうなろうと知らないお」
( ^ω^)「さっそく紙を作るお」
川д川「………どうかおやめください、このままでは私は私でなくなってしまいます」
( ^ω^)「うるさいお、そんな事知らないし、どうでもいいお」
川д川「………私の存在を奪ってまで、貴方は何をしようというのですか?」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:52:30.65 ID:uSkRt1Ld0
何度も言わせるなお
あの子が、欲しいだけだお
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:53:11.31 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「紙もペンもそろったけど」
( ^ω^)「肝心のインクがないんだお」
(*゚ー゚)「だから」
(*゚∀゚)「俺たちの所に」
(#゚;;-゚)「来たのですか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「七色に光る蛍さん」
( ^ω^)「そのきれいな色で文字を書いて」
( ^ω^)「あの子に思いを伝えたいんだお」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:53:54.52 ID:uSkRt1Ld0
(*゚ー゚)「………残念ですがそれはできません」
(*゚∀゚)「俺たちが綺麗に光れるのは自分の体液のおかげなんだ」
(#゚;;-゚)「それに、その体液は一匹からほんの少量しかとれません」
(*゚ー゚)「手紙を一枚書くには、私たちの仲間の全ての命が必要でしょう」
(*゚∀゚)「そんな残忍な事はされたくないんだ」
(#゚;;-゚)「すみませんが、貴方の願いは叶えられな」
( ^ω^)「そんな事はどうでもいいお」
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:54:37.73 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は、インクを集めに来たんだお」
( ^ω^)「全員から絞るのはちょっと大変だけど」
( ^ω^)「やるしかないお」
(*゚ー゚)「………おやめください、仲間を殺さないでください」
( ^ω^)「やめないお、全員分じゃなきゃ、足りないお」
(*゚∀゚)「………俺たちの生活を奪ってまで」
(#゚;;-゚)「………貴方は何をしようというのですか?」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:55:32.43 ID:uSkRt1Ld0
しつこいお
あの子が、欲しいだけだお
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:56:15.98 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「こうして僕は手紙を書いたお」
( ^ω^)「でも、それだけじゃきっと思いは届かないお」
(,,゚Д゚)「だから、俺の所に来たのか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「遥か空までそびえる神山さん」
( ^ω^)「あなたの中にある鉱石を使って」
( ^ω^)「指輪を作りたいんだお」
( ^ω^)「それを渡せば」
( ^ω^)「きっとあの子は喜んでくれるお」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:56:57.58 ID:uSkRt1Ld0
(,,゚Д゚)「………悪いがそれはできないな」
(,,゚Д゚)「その鉱石は、俺の奥底にある」
(,,゚Д゚)「掘り出すと、俺の体はやせ細ってしまう」
(,,゚Д゚)「そうなると、俺の上に住む動植物もろとも崩れてしまう」
(,,゚Д゚)「鉱石は惜しいだろうが、ここは諦めて」
( ^ω^)「そんな事はどうでもいいお」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:57:38.44 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は鉱石を掘りに来たんだお」
( ^ω^)「あなたが崩れようと」
( ^ω^)「僕は諦めないお」
(,,゚Д゚)「………俺が崩れたら、俺の上に住む動植物はどうなる?」
( ^ω^)「そんなのどうでもいいお、勝手にしろだお」
(,,゚Д゚)「………生命の住処を奪ってまで、お前がしたい事とは何なんだ?」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:58:21.63 ID:uSkRt1Ld0
これで何度目だお
あの子が、欲しいだけだお
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:59:02.06 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「きれいな指輪が出来たお」
( ^ω^)「きれいな指輪には、きれいな入れ物だお」
('、`*川「だから、私の所に来たのですか?」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「優しく光る糸を出す蚕さん」
( ^ω^)「その糸で箱を織って」
( ^ω^)「あの子に渡したいんだお」
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
19:59:43.54 ID:uSkRt1Ld0
('、`*川「………それは無理な相談です」
('、`*川「私は、この糸に包まらなければ成長できません」
('、`*川「そして、次の世代に、命をつなげなければなりません」
('、`*川「ずっと続いてきた事を、私で止めるわけにはいきません」
('、`*川「どうか、この話はなかった事にして」
( ^ω^)「そんな事はどうでもいいお」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:00:24.73 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)「僕は糸が欲しくて来たんだお」
( ^ω^)「あなたの先祖」
( ^ω^)「ましてや子孫の命なんて知った事じゃないお」
('、`*川「………どうかおやめください、私の母に、息子に顔向けできません」
( ^ω^)「やめないお、あなたの母も息子もどうでもいいお」
('、`*川「………私たちの未来を奪ってまで、貴方はしなければならない事があるのですか?」
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:01:13.22 ID:uSkRt1Ld0
いい加減にするお
あの子が、欲しいだけだお
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:01:57.66 ID:uSkRt1Ld0
そして
僕はついに
彼女に思いを打ち明けた
神々しく清められた紙に
七色のインクを使って書いた手紙と
優しく光る小箱に入った
まばゆく光る指輪を携えて
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:02:38.53 ID:uSkRt1Ld0
なのに
( ゚ω゚)「お………お……」
あんなに綺麗だったのに
あんなに美しかったのに
彼女はもう
昔を思い出せないほど
醜かった
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:03:19.52 ID:uSkRt1Ld0
赤茶色の肌
ヘドロの色をした涙
髪の毛も、いたるところが抜けている
もう
美しい彼女は
手に入らなかった
誰のせいかって?
そんな事
言わなくったってわかるでしょ?
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:04:00.45 ID:uSkRt1Ld0
川 ゚ -゚)「美しかった肌に黒いシミをつけたのはお前だ」
/ ゚、。
/「艶やかだった髪を抜いたのはお前だ」
川д川「透き通った瞳を穢したのはお前だ」
(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)「綺麗に光っていた肌の色素を奪ったのはお前だ」
(,,゚Д゚)「可憐だった皮膚をそぎ取ったのはお前だ」
('、`*川「彼女の未来を奪ったのはお前だ」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:04:42.63 ID:uSkRt1Ld0
みんなみんな
お前らのせいだ
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:05:23.07 ID:uSkRt1Ld0
( ;ω;)「嘘だおッ!」
( ;ω;)「こんなの嘘だおッ!」
( ;ω;)「嘘に決まってるおッ!」
( ;ω;)「僕に手に入らないものはないんだおッ!」
( ;ω;)「僕らにッ!」
( ;ω;)「僕らに手に入らないものはないんだおッ!」
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:06:10.62 ID:uSkRt1Ld0
一体いつまで
こんな事を言い続けるのだろう?
一体いつまで
命を殺し
水を汚し
山を崩し
未来を潰し
母なる大地を
踏み続けるのだろう?
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/30(金)
20:06:52.16 ID:uSkRt1Ld0
( ^ω^)かつては青く、緑だったようです
-
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