('A`)俺の生きる道のようです
部活を辞め、授業を寝て過ごし、適当に過ごしていた俺だったが、
数学だけは真面目に勉強していた。
数学の授業は特別に二教室に分けて授業を行うのだが、
俺はその内、出来ない人たちが集まるクラスに分けられていた。
中間テストのとき、俺はなんとなく勉強し、比較的真面目にテストに取り組んだ。
テスト返却の日、俺はなんとなく学校が面倒になり、サボった。
その次の日のことだ。
('、`*川「あんたまた昨日サボったんね?」
('A`)「風邪っすよ」
('、`*川「せっかくクラストップだったのに。はい、テスト」
('A`)「……?え、トップ?」
('、`*川「うん」
(;゚A゚)「俺がトップ!?」
('、`#川「ええからはよ受け取れっちゅーに!」
全体で見れば中の上くらいの点数だったが、
俺のいたクラスがたまたま点数が悪かったため、七十一点だった俺がトップの点数だったのだ。
(´・_ゝ・`)「くそー負けたわ。俺二番目らしい。六十九」
('∀`)「…マジかwwおいおい、マジかよwww」
七十一点、決していい点数ではないが、トップを取ったというのが俺に誇りと自信を持たせた。
ひょっとしたら、勉強すれば俺でもイケるのでは?と思い始めたのだ。
この日から、俺は数学と物理だけは勉強するようになった。
これら理系教科は、うちの学校では皆あまり成績がよくなく、
ちょっと勉強すればすぐに俺でもトップクラスになれたからだ。
この頃俺は思いだしたのである。
うちの学校はしょせん、進学校では最底辺であったということを。
ただし他の科目、とりわけ英語は苦手だった。
具体的に言うと、「I am pray tenis」とか書いちゃうくらいの無知加減だった。
しかしたった二教科でも、真面目に取り組む授業が出来ると、学校の意義がわかってくる。
サボることが少なくなり、悪友であるあさぴーたちと遊ぶことも少なくなった。
これは完全に後から聞いた話だが、あの後高校に入り直したあさぴーたちだったが、
あさぴーはすぐに不登校になり、よその県の更正施設のような場所に送られてしまったようだ。
あさぴーが二度目の高校を辞める頃に、俺にメールが来たことがあった。
「今から遊ぼうよ」
夜中の十二時を回った頃だった。
俺は「ごめん。寝る」と送った。
俺たちの会話は、これが最後となった。
後から考えれば、もう少しドラマティックな感じに仕上げてもよかったのかな、と思ったりもする。
付き合っていた彼女に別れを切り出され(フラれるのはいつも俺だ)、
いよいよ勉強しか無くなった俺は、この頃から大学受験を考え始めていた。
( ´∀`)「……国立?」
('A`)「行きたいんすけど…」
( ´∀`)「……国立?」
(;'A`)「無理っすかねぇ…?」
( ;´∀`)「……国立」
(;'A`)「厳しいっすよねえ…」
( ;´∀`)「………センター」
(;'A`)「やばいっすよねえ…」
俺は国立大学に入りたかった。
単純に学費が安いということもあるが、どういう訳か私立だと負けだ、
と自分ルールを決めていたのだ。
国立に受かって、級友たちから賛辞を受けたい、という浅はかな願望もあった。
ちなみに、二年生が終わる頃の俺の偏差値は、確か四十ちょっとだ。
( ;´∀`)「偏差値……」
(;'A`)「どうしようもないっすよねえ…」
センターで受けなければならない科目は、次の五科目だ。
数学、英語、国語、物理、科学、公民。
訂正、六科目だった。
この内偏差値が五十以上に達している科目は、物理だけだった。
そしてその物理ですら、俺の行きたい大学の偏差値には達していなかったのである。
( ;´∀`)「諦め…」
(;'∀`)「…られないっすよねえ?」
高校三年生が始まるのと同時に、大学受験に向けた本格的な受験勉強を開始した。
出遅れたスタート、頼りない装備品を身につけ、受験戦争の真っ直中に俺は特攻を始めたのだ。
('A`)(何から勉強を始めた方がいいんだろう…)
英語 40/200
数学 90/200
国語 100/200
物理 78/100
化学 36/100
公民 55/100
('A`)(まあ結局全部やらなあかんわな…)
三年生のとき、担任教師が受験担当の教員だった。
受験担当というのは、どこの大学を受験すればいいかの相談や、勉強の相談など、
受験のこと全般を総合的に担当しているポジションである。
相談しよう、そうしよう、ということで再び担任教師であるモナー先生のところへ訪ねた。
( ´∀`)「いいか、センターというのは基本的な問題しか出ないモナ」
('A`)「へーへー」
( ´∀`)「というか、センターというのは教科書からしか問題が出ないんだモナ。
つまり……あとはわかるな?」
('A`)「教科書を使って勉強しろ…?」
( ´∀`)9m「ザッツライ!ジャスッドゥーイッ!」
しかしやはり俺は途方に暮れた。
例えば数学の教科書では、章末問題は難し過ぎるし、例題などは逆に簡単すぎる。
物理や化学の教科書は問題の数が少ないし、どこを覚えればいいのかもわからない。
英語、国語、公民に至っては開く気も起こらない。
('A`)。0( ( ´∀`)「公民は新聞を読んでいれば解けるモナ!」 )
俺にはどうも、先生がとても非効率的なことを言っている気がしてならなかった。
(;'A`)「どうすればいいんだろう…」
母さんに訊いてみた。
J(
'ー`)し「私は国語くらいしかわかんないからなあ…」
('∀`)「国語も難しいぜ母ちゃんwww試しにこの模試やってみてよwwww」
♪
J(*
'ー`)し「自己採点したら193点あった。嬉しいわー」
つと
(;゚A゚)「脳みそ取り替えてくれ母ちゃん…」
母さんがその道の本職なのを忘れていた。
それはそうと、父さんにも勉強について訊いてみた。
すると、
( ФωФ)「勉強法か…」
('A`)「先生は教科書をやれとか、新聞を読めとか言うけど…」
( ФωФ)「教科書?いらんいらん。あんなもん使っても時間の無駄だ」
(;'A`)「そうなの?」
( ФωФ)「センターテストなんて完全に形式が決まっているテストだろう。
だったらその形式に対応した教材でやる方が効率がいいに決まってる。
センターが教科書を元にして作られているなら、センターを元にして作られた
参考書を使うのがいいだろう」
...φ('A`)「なるほど。参考書か…」
( ФωФ)「参考書は基本的に人気のあるもの、売れているものがカタい。
しかし自分に合うかどうかが一番だから、そこは吟味するように。
それともちろんセンターの過去問は解いておくに限るが、
一度だけではなく、解き方、問題の本質への理解ができるまで、
三度、四度と同じ問題をやり続けなさい。いいか?
理系科目、特に物理と数学は解き方ではなくエッセンスの理解が重要だ。
物理では具体的な事象を用いた問題を扱うから、頭の中で
力学的なイメージを描き、それを自由に数式化出来る力を。
数学では様々なアプローチから解を導けるような基礎力と
癖のあるセンター問題にいち早く慣れることを念頭に置いてやりなさい」
φ('A`;)「ちょ、いっぺんに言われてもよくわかんない…」
( ФωФ)「そしてこれは理系に進む者だけに通ずる勉強法だが、英語はひたすら単語を覚えなさい」
('A`)「単語だけでいいの?」
( ФωФ)「単語だけでいい。そして長文問題を解きなさい。
文法とかは捨てろ。熟語ももちろん覚えた方がいいが、まずは単語だ。
単語帳を毎日見るんだ。夢に出るまで見て、そして覚えろ。たぶん1400語くらいで十分だ。
それでセンターなら8割取れるだろう」
(゚A゚)「8割!マジかよ!」
( ФωФ)「わからないことがあれば、ワシに訊きなさい。
おまえの学校の先生よりは、受験に強いだろう」
('A`)「さすがは父ちゃん…二回も大学受験をしただけはあるな」
( ФωФ)「それでおまえ、母ちゃんと知り合えたんだから結果オーライだろ」
父さんに繋いでもらったネットを使って、さっそく人気の参考書を探し始めた。
すると、あるサイトが頻繁にヒットするのを発見した。
言わずと知れた、2ちゃんねるである。
大学受験板では、各科目のお勧め参考書を挙げるスレというのがある。
そこで多数の参考書が、実際に使った人の意見も併せて載せられていた。
俺はメモを取り、さっそく次の日、学校が終わってから本屋に直行した。
メモした参考書を手に取り、中身をよく吟味してから、各科目の参考書を一括で購入した。
ゆうに一万を超えたが、これで成績が上がるならと、出し惜しみはしなかった。
(*'A`)「565サーティーンおもれーwwww」
その日から、参考書を使った勉強にシフトした。
何よりも復習が大事であり、参考書は二巡してから本領を発揮するという父さんの言葉を信じ、
各教科を一日、一時間から二時間やり、基礎から知識をため込んでいった。
('A`)「学校の勉強もあるじゃん。中間テストとか、期末テストとかもあるし。
それやりながら受験勉強するの大変なんだよね」
( ФωФ)「学校のテストなんて無視しろ。あんなの受験では役に立たん。
教師だって受験のエキスパートではなく、あくまで各科目のエキスパートというだけだ。
教え方のうまい教師なんていないと思え。みんなカスだカス。参考書の方がよほどいい教師になるぞ」
('A`)「さすがだぜ父ちゃん。教師をそこまでボロクソに言う公務員は父ちゃんだけだぜ」
俺は父さんの助言通り、学校の授業は完全シカトで受験勉強を進めた。
おかげで学校のテストは涙が出そうになるほど酷かったが、
模試の偏差値は相対的に上がっていった。
初めは俺の学校の成績に文句を言う教師がいたが、
俺の偏差値がずっと上り調子になってから、俺に文句を言ってくる教師はいなくなった。
俺はひたすら勉強した。
('A`)「church……教会?…よし」
通学、帰宅のとき、電車の中で単語帳を広げ、朝覚えた単語を帰りに覚えているかどうか試し、
その繰り返しで単語を覚えていった。
配点の多い国数英は毎日やり、物理と化学を交互に進めた。
公民の勉強法だけは確立することが出来ず、とりあえず寝る前に参考書を眺めるだけはしておいた。
自分の勉強法が確立されると、学校の授業はただの骨休めでしかなかった。
国語の時間などは、先生に隠れてこっそりと英単語や化学式を覚えたりしていた。
夏休みになった。
級友たちは学校で開催されている勉強会というものに行っているらしい。
俺は行かなかった。
先生は尊敬しているが、受験の面では役に立たないと決めつけ、
ひたすら一人で勉強を続けた。
夏休みの間、一日に十時間から十二時間勉強した。
今まで無駄に過ごしていた時間を取り戻さないといけないと思った。
J( 'ー`)し「…夜食持ってきたよ」
('∀`)「サンキュー」
かけた迷惑の分だけ、俺には努力の義務があると思った。
夏休みが終わりに近づき、模試の日がやってきた。
久しぶりに会う級友たちは、みんな白い肌をしていた。
俺は窓の傍で勉強していたため、腕の辺りを少し焼いていた。
(´・_ゝ・`)「焼けてんじゃんww勉強してたのかよwwww」
('A`)「したっつーのw」
みんな自信満々な顔をしていた。
俺は不安で仕方が無かった。受験生で勉強会に来なかったのは、数人だけらしい。
俺の努力の成果が、数字になって帰ってくる日。
とてつもなく緊張した。これで駄目なら夏休みの勉強が丸々無駄になるのだと思っていた。
俺は二年生のとき、模試で学年最下位を取った。
夏休み最後の模試、俺は学年トップ3に躍り出た。
('∀`)「母ちゃん!模試、すっげえよかった!見てよこれ!」
J(
'ー`)し「あらあ、すごいじゃない。さすがは私の子」
( ФωФ)「さすがはワシの子」
そういえば、学年最下位を取ったとき、てっきり怒られると思ったが、二人は大笑いしていた。
「これ以上落ちることが無いよ。よかったね」と俺に軽口を叩いたくらいだ。
二人は俺のことを信頼していたから、あの日の最下位を笑い飛ばしたのだろうか。
いや、無いな。たぶんこの両親はなにも考えてないんだと思う。いい意味で。
俺は自分の勉強法に確信を抱いた。
鈴木さんの言葉を借りれば「自信が確信に変わりました」ということだ。
こうなると俺の躍進は止まらなかった。
スランプ状態もあったが、すぐに脱却し、また偏差値を上げていく。
元々底辺だったから、俺の伸び率は相当なものだっただろう。
しかし俺の目標としている大学の判定は、いつまで経ってもE評価だった。
センター直前の模試の判定も、Dという際どいもの。
( ´∀`)「目標を変え…」
(;'∀`)「…ませんよ絶対に」
( ´∀`)「強情モナー……まあ、好きにやるといいモナ」
('∀`)「はい!」
親からは、浪人しても構わないと言われている。
だが俺は、落ちたら死ぬ覚悟で、センターに挑むつもりだった。
俺はみなぎっていたのだ。
センターが終わった。
センター評価は、D判定だった。
散ってもいい。今まで逃げ続けてきたから、今度こそは。
俺は目標大学を変えることはせず、二次試験の勉強に取りかかった。
国立大学は前期と後期、二回試験が受けられるが、その様相は大いに異なる。
まず合格定員が違うし、受験科目も前期と後期で違う。
具体的なことは言えないが、俺の大学は後期に受かる方が難しいシステムだった(実は大概の大学がそうだが)。
つまり、俺は前期に落ちると一巻の終わりなのである。
友達には私立の滑り止めを受験する人もいたが、俺は私立受験の暇さえ惜しいと思い、
滑り止めの受験は全くしなかった。
とにかく前期一本に絞り込み、最後の詰め込みを行った。
( ФωФ)「大学の二次試験は過去問がセンターよりも重要になる。それは何故か?」
('A`)「さっぱりわかりません」
( ФωФ)「作ってるのが各大学だからだよ。つまり適した参考書が存在しないんだ。
さらに大学によっては完全に過去に出た問題を出すことがあるし、
意図的に傾向を似せることもある。二次試験は難しく、大門を最後まで解くのは至難の業だ。
だが各大門を8割、完璧にこなせるようにしていれば、カタいぞ」
('A`)「よくわからんけど、二次試験の過去問やっとけってことだな。よしきた」
センターが終わってから、全員参加しなければならない勉強会が学校で行われていた。
俺は先生にその勉強会のことを相談しようとしたのだが、
('、`*川「勉強会?どうせ出る気ないでしょw
あんたは自分で勉強できるやつだから、一人で頑張ってみんしゃい」
('∀`)「ありがとー。やっぱ結婚すると人って余裕出るんすね」
('、`*川「余計なこと抜かすな」
先生はなんだかんだ言って、俺のよき理解者だったと思う。
授業全く聞かずに別の勉強したりしてごめんなさい。
しかし俺はこのとき、とある誘惑につられ気味で、微妙に勉強が手につかなかった。
それは―――恋!―――ではなく、友!――――でもなく―――。
ニコニコ動画だった。
俺は自慢ではないがニコニコ動画を(仮)時代から見ている猛者だ。
あの頃ニコニコ動画は、総合ランキングで陰陽師が常に一位、テニミュが常に二位だった。
実に懐かしい(若干記憶があやふやなので、既に仮じゃなかったかもしれない)。
特に俺がハマっていたのはミュウツーの逆襲風の動画を、
スマブラをベースに作ったやつだった。
かなり燃える動画なので、是非検索して確かめて欲しい。
それはそうと、俺はかなりニコニコ動画にハマっていて、一日十時間やるはずだった勉強も
八時間に留め、残りの二時間をニコニコに回すほどのフリークスだった。
もちろんそんな余裕は無かったのだが、毎日新しい投稿が来ているニコニコ動画が気になり、
チェックしないと気が済まなかったのだ。
('A`)「よう兄弟、また会ったな…と」カタカタカカタ
(゚A゚)(やべえ!勉強しないと!)
数学の勉強はセンター前から徐々にこなしていたので、
あまり問題も無いようだったが、実は物理が危なかった。
センター物理というのは、個人的にいえば最も簡単なセンターの科目である。
覚える要素がかなり少なく、コツとパターンさえ掴んでおけば百点さえ狙える教科だからだ。
(実際に二度、模試で満点を取っている。俺の自慢である)
しかし二次試験の物理はかなり難しい。
実際に過去問を解いてみると、その難解さに頭を抱えるほどだ。
物理というのは実に奥が深く、面白い教科なのである。
数学もそれなりに面白いが、実際の事象を突き詰めて考える様により好感を…。
そんなことはどうでもよく、俺は明らかな物理の勉強不足を抱えたまま、
前期試験当日を迎えるハメになってしまったのだ。
大学は他県だ。
初めての新幹線は、別に新鮮でもなんでもなかった。
同じく前期試験を受けるために乗っているのだろう高校生、浪人生がごった返しており、全く席に座れないまま、
およそ三時間の間、ずっと立ったままであった。
行きの新幹線で問題を解いて暇を潰そうと思っていたため、
これにはかなり面食らった。
向こうのホテルに着く頃には、既にへとへとである。
ホテルにチェックインを済ませ、部屋に荷物を運び込むと、ひとまずベッドの上でうたた寝…。
するほど俺はテンションが低くなかった。
(*'A`)(観光しよう!)
両親からかなり多めの旅費をもらっていた。
田舎から出てきた俺には、でかいビル、でかい道路、人波の全てが真新しく、
車のクラクション、宗教勧誘、信号機のメロディ、街頭CM、雑踏の全てが心を躍らせた。
うまい飯を食い、
街を歩き回り、
タワレコで洋楽を聴き、
マックで一息つき、
ドトールでお茶をして、
夜の十二時頃、ホテルに戻った。
今でも覚えている。
「ギャグ漫画日和」を一巻から五巻まで買い、寝るまで読みふけった。
腹を抱えて笑ったのだ。
せめて……せめてドラゴン桜だったら……。
前期当日。
数学。
(*'∀`)スラスラスラスラスラスラ…
物理。
ヽ(;A;)ノ
帰りの新幹線の喫煙室で、俺は禁煙していたたばこを吸っていた。
完全に終わった。
ズタズタだった。
ギャグ漫画日和を一度ゴミ箱に投げ捨て、親の金で買ったことを思い出し、
また拾った。
今までの自分の浅はかな行為全てを呪い、両親に対する申し訳なさに泣き、
自分に対するふがいなさに怒り、どうしようもない悲しみにうなだれた。
近くに同じ大学を受けた女子がいたので、破れかぶれでナンパしてみた。
とてつもない勢いで断られ、また落ち込んだ。
また頭がおかしくなりそうだった。
地元の駅に着くと、母さんが車で迎えに来てくれた。
俺は正直に、駄目だったと話した。
母さんは予想通りの表情で、軽く笑って、今日はお鍋よ、とだけ言った。
俺はニコニコ動画を封印した。
覚悟が足りなかったのだと反省した。
後期に受ける科目に全身全霊をかけて、一日十四時間以上勉強し始めた。
食べるときも、トイレのときも、参考書を手放しはしなかった。
落ちたら終わりとか、本気で死のうとか、そんなことは考えていなかったが、
自分の全力をかけてみたかったのだ。
俺はこんなところで終わる男じゃない、そう証明したかった。
J( 'ー`)し「夜食、作ったよ」
(`A´)「ありがとう。置いておいて」
全ての雑念を振り払い、全身の細胞に知識をすり込ませるつもりで勉強に挑んだ。
すると、今まで理解できなかった部分が、すらすらと解けていくようになった。
だが、後期まで時間が全く無かった。
一秒たりとも無駄にしたくはなかった。
( ФωФ)「ドクオ。いい予備校を見つけたぞ」
(`A´)「ありがとう。でも気がはええよ」
数式が暗闇を舞い踊る夢を見た。
自分が振り子の上に立って揺られる夢を見た。
体中が記号になって分解される夢を見た。
俺はいい感じに頭がおかしくなっていった。
しかし、しかしやはり、やはりここで、
俺を暗闇へと誘い込む魔の手がまた意識に介入を始めたのだった。
大層な表現をしたが、要はまたニコニコ動画が見たくなってきたということだ。
(;'A`)(駄目駄目駄目駄目駄目歴史は繰り返される歴史は繰り返される…)
百%の努力、自分の限界で受験をするには、一分たりとも無駄な時間は過ごしてはならない。
実際には五分、十分息抜きしたところで、結果には響かないだろうが、
立てた誓いを破り、また弱い自分に戻るのが嫌だった。
(;'∀`)(三十分くらいならいいかな?)
俺は弱かった。
パソコンを立ち上げている最中にも、勉強は続ける。
デスクトップ画面になったら、最速でマウスを操作し、IEを開いた。
開いた瞬間のトップページはyahooにしてある。
ここで俺は、とてつもなく重大なことを思い出したのだ。
('A`)(そういえば今日は、前期の合格発表の日だ)
まあ重大といえば重大だが、不合格は既に自分の中で確定していたので、
一応見るだけ見ておいてさっさとニコ動を観ようと、大学のホームページを開いた。
ずらっと並んだ合格者の受験番号の中で、
自分の番号が無いことを確認し始め、番号を見つけると、俺はお気に入りのニコニコ動画を開こうとして、
手を止め、もう一度番号を確認し、やっぱり自分の番号があるのを確認すると、受験票を取り出し、
番号を確かめ、もう一度ホームページの番号を確認し、やっぱり自分の番号を見つけ、受験票を取り出し、
番号を確かめ、もう一度ホームページの番号を確認し、やっぱり自分の番号を見つけ、受験票を取り出し、
番号を確かめ、もう一度ホームページの番号を確認し、やっぱり自分の番号を見つけ、咆哮した。
(゚A゚)
('A`)
(゚A゚)
('∀`)
(゚A゚)
('∀`)
十分ほど経ってから、父さんに電話しないといけないと思い、電話した。
父さんは出なかった。仕事中だろう。
母さんに電話した。母さんは出なかった。仕事中だろう。
ニコニコ動画を観ながら折り返しの電話を待った。
約三十分後、父さんから電話がかかってきた。
『もしもし』
(*'∀`)「……父さん、受験…合格のことなんだけど、合格したんだ!(?)」
『おお、よかったなー』
('∀`)「……」
('∀`)「え、そんだけ?」
『え?』
('A`)「……うん、こっちはそんだけ」
『よかったなー』
きっと父さんは携帯を握りしめ、ガッツポーズを取り、
近くにいる女子社員から「んもう、親ばかなんですからー」とからかわれていたに違いない。
そうじゃないと俺が泣く。
母さんから一時間後に電話がかかってきた。
(*'∀`)「受かった受かった受かったよー!」
『キャー!よかったわねー!』
(*'∀`)「よかったねー!」
『今日なに食べるー?』
(*'∀`)「鍋ー!」
世界が俺を中心にぐるぐると回っていた。
脳内麻薬のせいで落ち着かず、しばらく家の中を走り回っていたが、
さすがにテンションが下がってくると、ベッドでしばらく寝た。
しかし一時間もせずに起きてしまい、両親が帰ってくるまでやっぱりニコニコ動画を観て待つことにした。
相変わらず下らない動画ばかりだったが、腹を抱えるほど面白かった。
一度捨てて薄汚れていたギャグ漫画日和も読み返した。
涙が出るほど面白かった。本当に。
引っ越しも終わり、入学式を終えた頃、俺は完全に戦闘態勢に入っていた。
憧れのキャンパスライフ、死ぬほど楽しんでやると校舎に誓った。
ホームシックになるかもしれないと、マザー2をプレイしたことのある俺は心配だったが、
一人暮らしを始めて、数年が経った今でも、未だにホームシックにかかったことはない。
Q:人生で一番頑張ったことはなに?
A:大学受験です
Q:人生で一番嬉しかったことはなに?
A:大学合格です
これが俺の本気だ。
どうだ、参ったか。
( ´∀`)「へへー」('、`*川
【高校生編】 終わり
【大学生編】 へ続く
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