2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:12:00.03 ID:GbfL8nFIP
( <●><●>) 「とりあえず下りてみましょうか」
丘を下りて、四人は囲いのフェンスを乗り越えた。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ……あそこ、扉空いてるよ」
(*゚―゚)「歓迎されてるみたいじゃない」
( ゚д゚)「……」
ミルナは慎重に扉の中をのぞき込んだ。 暗い廊下が、どこまでも続いているように見えた。
(*゚―゚)「ドーン!」
(;゚д゚)「!?」
(*゚―゚)「ビビってんじゃないわよ、此処に仕掛けられてる罠なんて
あのレーザーの命中率からかんがみれば、チャチなもんよ」
(;゚д゚)「しかし……」
(
<●><●>) 「どのみち此処を通過しないことには、柱にたどり着けませんしね」
ζ(゚ー゚*ζ「ワカッテマスさんの言う通りですよぉ」
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:13:47.58 ID:GbfL8nFIP
(;゚д゚)「……」
ミルナは反論しようと思ったが 三人の目に気圧されて
( ゚д゚)「ごめん」
と口走った。
(*゚―゚)「じゃ、いきましょうかね」
四人でぞろぞろと狭い廊下を進んでいった。 足下も見えないほど暗かったため、ミルナは途中で何度も壁にぶつかった。
何度目かの角を曲がったところで、先頭のしぃに白い光が当たった。
(*゚―゚)「敵はやる気マンマンみたいよ」
青白い壁と床で包まれた、小汚い部屋に辿り着いた。
広さはミルナの通っていた教室よりも一回り大きいくらいで、天井だけが底抜けに高かった。
その部屋の真ん中に、5メートルを越えるロボットが立っていた カエルのような湾曲した脚と、赤茶のバンクルのような部品がつけられた腕
頭部の無い胴体だけのロボットだった。
|::━◎┥
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:15:17.66 ID:GbfL8nFIP
- ζ(゚ー゚*;ζ「デカーッ!」
|::━◎┥「――んん――――ようやく来たかの」
ζ(゚ー゚*;ζ「しゃ、しゃべった!」
( ゚д゚) 「待てデレ、どうやらこれが」
丈夫の大きく開いた胴体から、皺だらけの老人が顔を出した。 あの胴体はコクピットになっているようだった。
/ ,' 3「ほっほ、そうじゃ。ワシが荒巻じゃ」
荒巻があくびをして
巨大なロボットが、蒸気を噴いてぎこちなく動いた。
/ ,'
3「レーザーに当たらず、辿り着いたことは、敵ながらあっぱれじゃ」
(*゚―゚)「あんなコントロールじゃ、少年野球でも暴動が起きるわよ」
/ ,' 3「ほっ――」
荒巻は笑った。
( <●><●>) 「私達は柱を壊したいので、通らせてもらえませんか?」
部屋には、ミルナ達が通ったものを含めて扉が四つあった。
しかし、それらは背後のものを除いて、どれも固く閉ざされているようだった。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:18:45.22 ID:GbfL8nFIP
/ ,' 3〔ワシが何のために此処にいると思っておるのじゃ〕
( ゚д゚)「だろうな……」
(
<●><●>) 「ならば、この鈍そうな機械を壊して先に進ませて頂きます」
/ ,'
3「ほっほっほ、まぁ待たんか」
鎌を腰から引き抜いたワカッテマスを 荒巻ののロボットの手が制した。
/
,' 3「お主達は、そっちの世界の"スフィンクスの伝説"を知っておるかの?」
ζ(゚ー゚*ζ
「スフィンクスって、あのライオンみたいな……」
/ ,'
3「そうじゃ、そのスフィンクスが旅人になぞなぞを出したという伝説じゃよ」
荒巻はほとんど開いていないようなまぶたから
邪悪な黒い瞳をのぞかせて、再び笑った。
/ ,' 3「『朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足、これは何か』……正解は……」
( <●><●>) 「人間。ですよね?」
荒巻は頷いた。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:20:00.63 ID:GbfL8nFIP
/ ,' 3「その通り。赤ん坊は四本足、成長して二本足、杖を突いて三本足じゃ。
大きな目的ある旅人たちには、厄介なモンスターじゃったろうに。」
(*゚―゚)「回りくどいのよ、さっさと話さないと殺すわよ」
/ ,'
3「じゃあ言おうかの、つまり、自分たちのねがいを叶えるために異世界から旅をしてきた主らと
それを阻もうとするワシは、旅人とスフィンクスという立場とそっくりじゃな。ということじゃ」
( ゚д゚)「だから何だってんだ……なぞなぞでも出そうってのか」
/ ,'
3「ピンポーン! 二問だけ出そうと思う」
( ゚д゚)「あ?」
/ ,'
3「血なまぐさいバトルよりも、ワシとなぞなぞゲームをせんかの? 柱の破壊をかけて
……もちろん、そっちにはそれ相応のものをかけてもらうがの」
突如、ロボットが蒸気を噴き出して、地面から浮き上がった。 高度は見る間に上がっていく。
ζ(゚ー゚*ζ「あぁ、逃げちゃう!」
/ ,' 3「逃げはせんよ、少し先で待ってるだけじゃ」
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:22:12.49 ID:GbfL8nFIP
ロボットは天井の高さまで一度に浮き上がると 不自然な、天井そばにある扉に入っていった。
このロボットのための、大きな扉だった。
/ ,' 3「お主ら、気付いてないようじゃがの、腕を見てみぃ」
(*゚―゚)「!」
見ると、四人の手首に、それぞれ腕輪が着けられていた。 黒い腕輪だった。
(;<●><●>) 「こ、これは一体何ですか!?」
/ ,'
3「実はのー、このロボット、歯車王はハインたちと同じサイボーグでな 魔人だったときの能力がまだ使えるのじゃ」
( ゚д゚)「能力だと?」
/ ,' 3「そういえば言ってなかったかの、ワシの異名は『超記憶』。名の通り
一度覚えたことを忘れないというのが能力じゃ。 じゃから、これだけではお主らととても戦えん」
「そこでじゃ」荒巻は不敵に笑った。
/ ,'
3「歯車王の能力は『ゲームを見届ける』じゃ。ほれ、ワシの腕にもこれがついておる。
この腕輪は装備者がゲームを放棄した瞬間に、内部に仕込まれた針が手首から体内に潜行し
心臓を経由してから、反対側の手首を突き刺す仕組みじゃ」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:24:49.20 ID:GbfL8nFIP
ζ(゚ー゚*;ζ「そんなっ……」
/ ,'
3「嘘ではない。お主らは直接の戦いよりも、なぞなぞという戦いに心が傾いたのじゃ。
柱の破壊と……歯車王が判断する相応のもの……を、それぞれ賭けてな」
(*゚―゚)「バカらしいわ、悪いわね。私はこのゲーム、降りさせてもらうわよ」
(;゚д゚)「おい、しぃ」
天井高い扉から、荒巻がしぃを見下ろした。
/ ,' 3「どうぞ勝手に。参加するものは、真っ直ぐ進むが良い。
今ロックを外したからの。本当のところ、ワシも同行すべきルールなんじゃが
ヤケクソに攻撃されても適わん。歯車王も許容範囲のようでの、ワシは先で待っておる」
(*゚―゚)「じゃあ私は帰らせてもらわ、一度外に出てから、別の道を――」
しぃがきびすを返して踏み出そうとした瞬間 じゅくりと、膿を指でかき回したような音が鳴った。
(;*゚―゚)「――あぁ!」
しぃはがくりと崩れ落ちて、咄嗟に手首を逆側の手で押さえた。
体ががたがたと震えていた。 ミルナはしぃの押さえた手首から、真っ赤な血がどろりと流れたこと認めた。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:26:41.20 ID:GbfL8nFIP
(;゚д゚)「!!」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃさん!」
(;<●><●>)
「……」
(;*゚―゚)「嘘よ……こんな……」
荒巻は表情から笑み消した。
/ ,'
3「……もう逃げることは出来んのじゃ。ワシだって同じリスクをせおっとる。
なぞなぞゲームは開始された、さぁ進め! 次の部屋に入った時点で、細かなルールを説明しよう!」
荒巻は扉の奥に消えた。 四人は互いに顔を見つめ合い、呆然とした。
いつの間にか敵の手中に収まっている、一体これはどういうことだ。
( ゚д゚)「とにかく……進むしかない」
(*゚―゚)「……」
他の三人は静かに頷いた。 ミルナは先頭に立って、解錠された正面の扉を開いた。
暗い廊下を過ぎると、照り返る光が眩しいほどの、真っ白な部屋に出た。
どこからともなく、籠もった音で荒巻の声が届いた。
〔それじゃあ、細かなルールを……〕
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:32:01.97 ID:GbfL8nFIP
( ゚д゚)「……待て、荒巻。」
ミルナは考えをまとめていた。
直接の戦いと、なぞなぞゲーム。どちらを選ぶかという問いかけに 俺達四人は、全員がなぞなぞゲームに心が傾いた。
『勝負を見届ける』能力の歯車王は、より希望に添った形での勝負を実現するため
なぞなぞゲームを開始した。こちらが二問なぞなぞに答えさえすれば、柱が破壊できる。
それならばミルナたちに有利だ。しかし、"もし間違えた場合"……。
( ゚д゚)「俺達が賭ける、それ相応のものは、なんなんだ」
〔それは全て歯車王が決めることじゃ、ワシには全く分からん〕
ただし、と荒巻は付け足した。
〔ワシは死んでも、お主らに柱の破壊をさせる気はない〕
( ゚д゚)「……」
ミルナはあごに手を当てた。 本当に勝負を見届けることが、歯車王の能力ならば、『なぞなぞ』自体も、正当なものであるはずだ。
もし正当でなかった場合、ミルナたちに勝ち目はない。
〔ルールを説明しよう、ワシの出したなぞなぞに、お主たちが正解する。
それを二回成功させれば、ゲームは主たちの勝利じゃ。〕
-
-
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:38:41.09 ID:GbfL8nFIP
- ζ(゚ー゚*ζ「もし……間違っちゃったら」
〔今から出すなぞなぞでは、お主たちが何度か質問する必要がある。
一つの問題につき、一人一つの質問しか出来ん。もし間違った場合は "相応のもの"を、お前たちは支払うことになる〕
( <●><●>) 「なるほど……、一度だけ質問出来る。などのなぞなぞならば
私達には四回の解答権があるわけですね」
( ゚д゚)「理論上はそうなるな……」
(
<●><●>) 「?」
( ゚д゚)「……」
荒巻の息を吸う音が聞こえた。
〔ほっほっほ、準備は出来たかの? では始めようぞ!〕
ミルナたちの背後の扉が音を立てて閉まった。
(*゚―゚)「……!」
〔それでは……第一問じゃ!〕
荒巻のかけ声と同時に、真っ白な部屋が揺れだした。 四人は慌てて構えた。全員が、罠にかけられたと感じた。
しかし、そうではなかった
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:39:50.96 ID:GbfL8nFIP
- (*゚―゚)「あれは……なにかしら」
部屋の揺れと共に、壁から一体の人形と、二つの扉が姿を現した。
まるで、壁を水面のようにしてすり抜けてきたのだ。 それは機械ではなく、木を掘って出来ているようだった。
〔ある国では、必ず嘘をつく人だけが住む村と 正直者だけが住んでいる村が、となりあって位置していたという。
〔正直村に用事のあった商人が、その国に入国したが、間もなくして左右に広がる分かれ道にさしかかった。
一方は正直村に続いており、もう一方が嘘つき村に続いていることは分かった。
しかし、肝心の道のりが分からない。商人は困ってしまった〕
〔しかし幸い、その分かれ道の真ん中に、一人の少年が立っていた。〕
(・ ・)
〔少年は、嘘つき村か正直村の住人のようじゃ。
それでは、彼に一度だけ質問して、正直村への道を教えてもらうにはどうすれば良いじゃろうか〕
〔さぁ、考えてくれ。おっと言い忘れておった、制限時間は二問合わせて10分間じゃ〕
ζ(゚ー゚*;ζ「10分!?」
〔歯車王が決めたことじゃ。ワシはなんも関与しとらん〕
荒巻が言い終わる前に、壁を水面のようにして、デジタルのタイマーが出現した。 タイマーは 9:55 と表示されている
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
21:46:54.06 ID:GbfL8nFIP
(;<●><●>) 「ちょ、ちょっと待って下さい。そんな10分て……」
( ゚д゚)「なぞなぞは至極真っ当なものらしいが……」
(*゚―゚)「私こういうロジック、頭痛くなってくるのよね……」
( ゚д゚)「……」
9:41
ミルナはずっと気にかかっていた。
相応のもの――相応のもの――。
死を覚悟して臨む戦闘の代わりである"なぞなぞゲーム"で払う代償とは 一体どれほどのものなのだろうか。
一度の質問に、かかる代償とは一体。
9:30
ζ(゚ー゚*;ζ「えっと、正直村はこっちですか……じゃ駄目か、もし嘘つきだったら……」
(*゚―゚)「10分で……あーもう! こういうちまちましたの出さないで欲しいわ!!」
( ゚д゚)「ううむ……」
正直村と嘘つき村。 正直者が立っていれば、ストレートな質問をぶつければ良い。
嘘つき村の住人が立っているならば、逆の質問をせねばならない。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:10:50.76 ID:GbfL8nFIP
9:09
『正直村でない方を教えて下さい』
……駄目だ、嘘つきが立っていたとしたら、正直村を指してしまう。
『こっちが正直村で、あっちが嘘つき村ですか』
合っていたら正直者ははいと答えるが……これもやはり嘘つきなら……
『あなたが正直者だとしたら、正直村はどちらですか』 正直者だとしたら? 嘘つきが正直者だとしたら、正直村は……
これもなんの意味がない。全く同じ事だ。
『あなたは正直者ですか』
……問題外だ、それが分かったところで道は分からないし そもそもこの質問ではそれすら判断できない。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:16:04.61 ID:GbfL8nFIP
8:18
自分の呼吸音と、心臓の鼓動が、体内に響いた。 全員視線を床に向けて、黙り込み
ちらちらとタイマーに目をやっていた。時間は恐るべき速さで進んでいる。
( <●><●>)
「嘘つき村と、正直村ですね」
不意に、ワカッテマスはそう言った。
ミルナが顔を上げると、ワカッテマスはつかつかとあの人形に向かった。
そして、二つの扉に挟まれた人形の前に立った。タイマーは7:57を表示していた。
(
<●><●>) 「この問題……思い出しました、聞き覚えがあったんです……」
ワカッテマスは、黒い大きな瞳で じっと、その人形を見つめ 口を開いた。
(
<●><●>) 「こっちが正直村の道ですかと聞いたら、あなたは「はい」と答えますか?」
ワカッテマスが右の扉を指さしていった。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:19:06.17 ID:GbfL8nFIP
7:51
ζ(゚ー゚*;ζ「え!?」
デレは困惑していたが、ミルナとしぃは深く頷いた。
(*゚―゚)「ふーん、なるほどねっ」
( ゚д゚)「そうか、それなら」
仮にワカッテマスの指さした右側が、正直村だったとしよう。
少年が正直者だとしたら、こっちが正直村の道ですか。という問いに対して
「はい」と答えるだろう。だから、あなたは「はい」と答えますか。という問いに対しても、「はい」と答える。
逆に少年が嘘つきだったとしたら、こっちが正直村の道ですか。という問いに対して、嘘をついて
「いいえ」と答えるだろう。だから、あなたは「はい」と答えますか。という問いに嘘をついて「はい」と答える。
指さした側が嘘つき村だったならば、同様に答えは「いいえ」となる。
すなわち、「はい」という答えが返ってきたら、そのまま進み、「いいえ」が返ってきたら、逆側の道を進めばよい。
( ゚д゚)「間違いない。正解だ」
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:20:15.16 ID:GbfL8nFIP
( <●><●>) 「……」
部屋の中に、ノイズが入った。
荒巻がマイクのスイッチを入れたのだろう。 ミルナは待った。荒巻の「正解」という言葉を。
しかし――――!
〔ざぁぁああああんねんッ!!〕
(;<●><●>) 「えっ!?」
(;゚д゚)「は」
(;*゚―゚)「ちょっ……どういうこと!?」
ζ(゚ー゚*;ζ「!? !?」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:24:08.45 ID:GbfL8nFIP
7:46
(;<●><●>) 「馬鹿な! そんなはずはありません!」
〔残念じゃったのう〜〜 ワカッテマスくん。 その質問じゃあ、駄目じゃ〕
(;<●><●>) 「おかしいです! これが正解だと言うことはワカッテマス!」
〔駄目なんじゃよ。ほれ、そろそろ体に変化が現れるじゃろうて〕
( <●><●>)
「え――」
と、突然。ワカッテマスの口から血が飛び出した。 ワカッテマスは口に手を当てて、驚いた。
(;<●><●>) 「な……うァ!!」
(;゚д゚)「ワカッテマス……!」
ワカッテマスは腹を抱えて、床に倒れた。 血の臭いがすぐに漂ってきて、ワカッテマスは何度も咳をした。
咳をする度に、おびただしい量の血が流れ出す。
ミルナは寝転がるワカッテマスの首に手を回した。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
22:59:14.91 ID:GbfL8nFIP
- (;゚д゚)「大丈夫か……一体どうした」
(;<●><●>)
「わ、わかりま……ゲホッ! ゲホッ!」
(;゚д゚)「おい……しっかりしろ」
"相応のもの"ミルナの脳に、その言葉がよぎった。
ζ(゚ー゚*;ζ「大丈夫ですか? どこか痛いんですか?」
デレもミルナに続いた。 しぃは立ったまま、考え込んでいる。
ワカッテマスは吐血する。
(;<●><●>) 「は、腹が……ゲホッ! うう……」
(;゚д゚)「荒巻……こいつはどういうことだ」
〔わしに相応のものは分からん。
じゃが、何も持っていない主らが賭けるものといえば、命しかないじゃろう……〕
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな!」
〔ほっ。じゃがこの程度の賭けで、命を取るのは不公平じゃな。
おそらく、吐血しているところを見ると、内臓は一つ二つ、破裂したのかもしれんの〕
ζ(゚ー゚*;ζ「一つ二つって……」
( ゚д゚)「チッ……」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:02:38.01 ID:GbfL8nFIP
武器化してるとはいえ、内臓一つが破裂してしまえば、自力で立ち上がることすら出来ないだろう。
それどころか、痛みのショックや、内出血多量や、窒息で死ぬかもしれない。
元は人間なのだ。放っておけば間違いなく死んでしまう。その内臓が、最悪二つも……?
ζ(゚ー゚*;ζ「あぁあ、なんで、どうして……?」
(*゚―゚)「あんた達、そいつを看護してる場合じゃないわ」
( ゚д゚)「何だと……?」
(*゚―゚)「もう、時間がないわよ」
ミルナははっとして、タイマーに目を向けた。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:04:53.54 ID:GbfL8nFIP
武器化してるとはいえ、内臓一つが破裂してしまえば、自力で立ち上がることすら出来ないだろう。
それどころか、痛みのショックや、内出血多量や、窒息で死ぬかもしれない。
元は人間なのだ。放っておけば間違いなく死んでしまう。その内臓が、最悪二つも……?
ζ(゚ー゚*;ζ「あぁあ、なんで、どうして……?」
(*゚―゚)「あんた達、そいつを看護してる場合じゃないわ」
( ゚д゚)「何だと……?」
(*゚―゚)「もう、時間がないわよ」
ミルナははっとして、タイマーに目を向けた。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:08:44.04 ID:GbfL8nFIP
3:21
(;゚д゚)「馬鹿なッ!」
(*゚―゚)「馬鹿はあなたよ。タイマーは速まったりしてない、じっと見つめてたら遅すぎるくらいだわ。
残り200秒。私たち、まだ一問目すら解けていないのよ」
3:16
(;<●><●>) 「ぐ……」
(;゚д゚)「だが……ワカッテマスの答えは完璧だった……」
3:12
(*゚―゚)「私もそう思う。……わけがわからないわ」
3:07
ζ(゚ー゚*;ζ「少年に正直村への道を教えてもらうには……なんでっ、どーして? えーと、えーと」
2:51
ミルナはデレに顔を向けた。 今、なんと言った?
( ゚д゚)「教えてもらう……?」
デレの言葉に何故か違和感を覚える。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:24:49.61 ID:GbfL8nFIP
2:44
( ゚д゚)「デレ……荒巻はたしかにそう言ったのか?」
2:41
ζ(゚ー゚*ζ「えっ? 何、何のこと? たしかにって……?」
2:35
( ゚д゚)「教えてもらう、と言っていたのか!?」
2:32
ζ(゚ー゚*;ζ「へ? 私今なんて言った? 教えてもらう? だ、誰が、私が、ミルナさんにってこと……?」
2:23
(#゚д゚)「違う! 少年に正直村への道を……」
ζ(゚ー゚*;ζ「ああ! そうです! 間違いないですよ! 問題は教えてもらうって言ってました!」
( ゚д゚)「本当だな……? ということは……」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:26:19.29 ID:GbfL8nFIP
- ミルナは人形の方へ歩き出していた。
ワカッテマスの答えは、正直村がどちらかということは分かるが
"直接少年に教えてもらっているわけではない"。
「いいえ」と答えたら、逆側の道へ進むとか
「はい」と答えたら、そのまま進むとか それは少年から得た情報を整理し、自分で判断しているに過ぎない。
いかなる場合でも、少年が正直村の道を教えてくれるように質問しなければならない。
"正直村の道を教えてもらう"というのは、そういうことなのだ、教えてもらった方に進まなくてはならない。 それならば、答えは。
( ゚д゚)「お前の村はどっちだ」
(・ ・)
1:54
再び、ノイズが走る。
荒巻が言った。
〔ふむ、正〜解じゃ〕
二つあった扉が、同時に開いた。
先にはまた同じ様な部屋と、同じ様な人形が見える。
やはりだ。
この質問ならば、嘘つき村に住む嘘つきは、嘘をついて正直村を指すし 正直村の正直者は、正直に正直村を指す。
旅人は、"教えてもらった方"に進めばよい。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:29:17.18 ID:GbfL8nFIP
- ( ゚д゚)「ワカッテマス……立てるか」
ミルナはワカッテマスに肩を貸した。
( <●><●>) 「……えぇ、なんとか……」
よろよろとワカッテマスは歩き出す。
しぃとデレは一足先に、次の部屋へ足を踏み入れた。 タイマーを見れば 1:36 と表示している。
(*゚―゚)「100秒もないわ」
ワカッテマスがミルナと一緒に、部屋へ踏み入れた。
1:29
ζ(゚ー゚*;ζ「あー、あーあー」
(#゚д゚)「さっさと問題を出せ、荒巻」
ミルナは口にしてから、この部屋の人形が三つあることに気がついた。 そして、扉も三つ。 嫌な予感しかしなかった。
〔ほっほっほ、第二問じゃ〕
ワカッテマスが壁にもたれて、うつろな目で凄まじく高い天井を見上げた。
1:21
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:32:14.27 ID:GbfL8nFIP
※
荒巻は、ミルナ達のいる部屋の先。 柱の周りに作ったコントロールルームに座っていた。
そして第二問を告げた。
/ ,' 3「ある国では、必ず嘘をつく人だけが住む村と
正直者だけが住んでいる村と
日によって嘘つきになるか、正直者になるかの、いい加減なものだけが住んでいる村とが、三つなりあって位置していたという。
正直村に用事のあった商人が、その国に入国したが、間もなくして三本に別れる道にさしかかった。
一つは正直村に、もう一つは嘘つき村へ、残る一つがいい加減村へ繋がっていることは分かった。
しかし、肝心の正直村への道のりが分からない。商人は困ってしまった
しかし幸い、その分かれ道の真ん中に、三人の少年が立っていた。少年達はそれぞれ、この三つの村の住人のようじゃ。
この内誰か二人を指名し、一回ずつ質問することで、正直村の場所を知るには、どうすれば良いじゃろうか
ただし指名する二人は、同一人物であってはならない」
〔いい加減村って……〕
デレの声がスピーカーを通じて聞こえた。 荒巻はにやにやと顔をゆがめて、白い部屋を移すモニターを見た。
タイマーは0:56と表示されていた。
荒巻は今までに何度もこのゲームをしてきたが、成功したものは一人としていなかった。
制限時間は10分とされているが、実質は半分以下だ。 彼らは"相応のもの"という言葉に慎重になり、どんな簡単な問題であっても
必ず三分間は考え込むのだ。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:37:42.03 ID:GbfL8nFIP
そしてひとたび間違えようものなら、肉体の一部が破裂する。
肉体破裂の危機でパニック状態に陥り、疑心暗鬼。冷静な判断が不可能な状態へ。
仕上げに、一見複雑そうな問題を二問目へぶつければ、彼らの思考は停止する。
頭が良い悪い、冷静であるなし は関係なかった。
真っ白な部屋に飛び散る赤い血を見れば、誰でも動揺するもの。
荒巻は、手首についた黒い腕輪を握りしめた。
もしかすると自分が負けるかもしれないというスリル。 正義面したものが"なぞなぞ"で敗れる様。
それら二つを荒巻は楽しんでいた。
0:43
/ ,' 3「嘘つき村……」
荒巻はモニターから視線をそらした。 非人道的、非人間的、悪魔、冷酷、嘘つき。
研究を実用的に、なおかつ強力に進めていった結果、荒巻はこう呼ばれた。
誰も自分は分かってはくれなかった。
自分たちが正直村になるために、彼らは嘘つき村を排除した。
また、それを敢えて民衆に示すことで、明るい行政が行われているとアピールした。
さらに異端者と呼びながら、荒巻達を利用し続け 荒巻達を薄暗い研究室に監禁し、ただ技術だけが搾り取っていった。
/ ,' 3「あのニューソク国を潰すことを……こんなガキどもが阻めるわけがないw」
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:44:18.28 ID:GbfL8nFIP
モニターに目を向けると、タイマーは0:32を表示していた。 デレが人形に向かった。
時間切れになれば、全員不正解で、内臓が破裂するのだから当たり前だ。 是が非でも答えなければならない。
〔えっと……でも、いい加減村の人が……いるから…………〕
しかし、デレは人形の前に立ったまま、ぼそぼそと呟いていた。 荒巻はきゅっと笑った。
デレの行動は思考が停止している証拠に違いなかった。 しかも、この問題は二回質問する必要がある。
不正解ならばデレ以外もう一人の内臓が破裂し、時間切れになれば、全員の内臓が加えて1つ2つ破裂する。
ワカッテマスは質問出来ないだろう、不正解ならば確実に死ぬ。
そうとなれば、答えることが出来るのは一度だけだ。(三人の内二人) このプレッシャーの渦中で、他人を巻き込んで答えることなど
出来るはずがない。
-
-
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:53:52.57 ID:GbfL8nFIP
- 0:24
〔待て、デレ、やけになるな……!〕
〔でも……!〕
〔ギリギリまで考えろ、まだ、時間は……〕
〔時間は、もう、ないわよ〕
0:14
荒巻の心臓が血液を全身に激しく流し込む。 歯をかちかちと震わせて、荒巻は口をつり上げた。
時間はもうない、もうない、もうない、もうない。
0:08
〔ミルナさん!〕
0:06
〔…………〕
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
23:59:50.14 ID:GbfL8nFIP
0:03
ミルナの足が前に進まない。
〔こんなところで……ッ!〕
しぃがうつむいて涙を流した。 タイマーを見て、観念しきったような、落ち着いた声を出した。
〔…………あぁ〕
0:00
荒巻はタイマーを見て、笑い出した。
/ ,'
3「ほ、ほ、ほ、ほっほ」
荒巻は歯車王のコクピットから立ち上がった。
/ 。゚
3「あはははははははっはっははは!!」
モニターに映るミルナが、口から血を吐き出した。
しぃも、膝から崩れ落ち、しぃはショックで気を失った。 全員、戦闘不能だ。
荒巻は驚喜して、前のめりに、マイクのスイッチを入れた。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:01:06.49 ID:8zca7QPHP
/ 。゚ 3 「馬鹿め、馬馬鹿め馬鹿め馬鹿め馬鹿め鹿め」
/ 。゚ 3 「馬鹿めぇええええええ!! 」
コントロールパネルを両手でたたきつけた。
/ 。゚ 3 「ワカッテマスがさっき言ったのにのー!
こちらが正直村と聞いたら「はい」と答えますか…… お主らの脳は、そんなことも忘れてしまったのか!」
〔え……〕
デレが口からだらだらと血を流して言った。
/ 。゚
3 「答えじゃよ! ぅくっくっくっく、馬鹿どもめ! これが異世界人の記憶力か!
ィーッヒ、世界を救うための、なぞなぞでぇ、不正解で内臓破裂!
たまらん! お主らのような馬鹿をあざ笑うのは、この上なく愉快じゃ!」
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:02:31.71 ID:8zca7QPHP
※
(;゚д゚)「そうか……・」
ミルナはあふれ出る血と、腹部の痛みに悶えた。
『こちらが正直村と聞いたら貴方は「はい」と答えますか。』 この質問で、一問目と同じじゃあないか。
どこの村の住人かに関わらず、この質問で正直村を指せば 誰でも「はい」と答える。
それを一問目で確認したはずだったのに
つまり、少年Aに、『Aの道が正直村と聞いたら貴方は「はい」と答えますか』
と聞く、「はい」と答えれば、Aの道が正直村への道である。
「いいえ」と答えた場合は、別の少年Bに道だけを変えて同じ質問をする。
少年Bが「はい」と答えれば、Bの道が正直村に続く道で 「いいえ」と答えたならば、指を指していないCの道が正直村への道だ。
ミルナはうつむいた。 何故、あと少し早く気がつかなかったんだ。 こんな猿でも分かるような問題を何故。
〔そういえばどこが破裂したのかのー、胃か肝臓か脾臓か…… ふーむ……分からんから、ワシが今から腹を裂いて見てやろう!〕
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:04:09.57 ID:GbfL8nFIP
(;゚д゚)「……ん?」
ミルナは背後で音を聞いた。 気絶したはずのしぃが、むくりと起きあがっていた。
眉間に皺を寄せて、不機嫌な様子だ、ミルナも立ち上がった。
(;゚д゚)「おい、しぃ」
(*゚―゚)「何よ」
(;゚д゚)「あ、いや……」
しぃはミルナの側を通り過ぎた、
そして、人形の前に立ち、扉を一つ指さした。 しぃはぶっきらぼうに言った。
(*゚―゚)「こっちが正直村って聞いたら「はい」って答える?」
(・ ・)「……」
〔……なんじゃ? お主ら何をしておる?〕
ミルナは、荒巻の訝しげな声を聞いた。
やれやれと、しぃの側に立って、ミルナは別の扉を指さした。 ミルナは重く低い声で言った。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:06:15.64 ID:8zca7QPHP
( ゚д゚)「こちらが正直村と聞いたら「はい」と答えますか」
(・ ・)「……」
〔今更何をしておる! もう答えたところで――――〕
荒巻がミルナ達に罵声をあびせ終わる直前
がちゃりという解錠音が、心地よく響き
"三つの扉が勢いよく開いた!"
〔なッ……!!〕
扉が半回転して、壁にたたきつけられた。 そこに生じた乾いた音が、白い部屋に響き渡る。
( ゚д゚)「ワカッテマス、すまない。待っていてくれ」
(;<●><●>) コクリ
ワカッテマスは声を出さずに頷いた。 ミルナも小さく頷いた。 ワカッテマスの目は焦点が合っていなかった。
よく頑張ってくれた。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:09:24.18 ID:8zca7QPHP
ミルナは廊下を走り抜けた。 しぃとデレも続いた。 長い一本道を終えると、青白く光る柱が、目の前に姿を現した。
青白い光に包まれた、複雑な機械とモニタの並ぶ部屋。 赤、青、黄、白の、様々なランプが光っている。
部屋の中心から生えている柱は、天井を突き抜けていた。
これが境界を支える柱だ。
(*゚―゚)「残念だったわね、荒巻」
柱の陰から、歯車王に乗った荒巻が 放心状態でミルナたちを見た。
/ ,゚ 3「お、おぉおおお……なんじゃ、一体……何が」
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、上手く成功した」
ミルナはアクスを持って、前に出た。
( ゚д゚)「まだタイマーは、0:00になっていなかった。
やはり貴様の手元にタイマーは表示されていなかったようだな」
/ ,゚
3「……何を言っておる、意味が分からない」
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:12:28.51 ID:8zca7QPHP
- ζ(゚ー゚*ζ「本当のところ、ワシも同行すべきルールなんじゃが
って、言ってたでしょ、だからそっち側にタイマーは表示されないだろうって……
ワカッテマスさんが言ってたの」
/ ,゚
3「……? あの部屋に仕掛けた隠しカメラで、ワシは部屋の中を見ておった!
ワシが見ていたタイマーは、お主らが見ていたタイマーじゃ!」
(*゚―゚)「あのタイマーは幻なのよ」
/ ,゚ 3「幻じゃと……?」
( ゚д゚)「そう、ワカッテマスの能力。
『三回質問した相手に幻を見せることができる』
ワカッテマスは、あんたと最初に話したときすでに……制限を満たしていた」
(*゚―゚)「私たちが吐いた血も、全て幻。
敵を侮る貴方のような性格なら、ゲームに勝った途端これでもかと喜ぶはず……。
私の知り合いにもいたわ……そんな人、テレビゲームの勝敗にこだわる人」
( ゚д゚)「答えを言わずとも、ヒントくらいはと思ったんだが 全てぶちまけたから、手間が省けた。
ちなみに、タイマーに幻をかけたのは、二つめの部屋に入ってからだ」
/ ,゚
3「ワシはタイマーから目を離さなかった……」
( ゚д゚)「一秒を遅くすれば、不自然な変化は表れない。
ワカッテマスは虫の幻を作って、俺達に作戦の内容を伝えた。 おいまだ説明が必要か。 俺達の勝ちだ」
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:14:26.10 ID:8zca7QPHP
- ミルナはアクスを柱に向けた。
( ゚д゚)「柱の破壊が、てめぇの賭けたものだったな」
/ ,゚
3「あ……」
( ゚д゚)「テメェがこれを破壊することを阻めば、手首から心臓まで、クソ太い針が潜行する」
( ゚д゚)「俺達の勝ちだ」
荒巻は震えた。 歯車王のコントロールレバーを引いて。
引いた手がそのまま固まった。
しかし
/ ,' 3「まだじゃ……」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ?」
/ ,' 3「まだ勝負はおわっとらん!」
歯車王は蒸気を上げて動き出した。
(*゚―゚)「っ! なんのつもり? 私たちに攻撃したら、あなた死ぬのよ」
/ ,' 3「そいつはーどうじゃろうなー」
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:17:51.84 ID:8zca7QPHP
- |::━◎┥
歯車王が壁に太い腕を突き刺す。 電気回線がショートして、青白い火花が飛び散った。
( ゚д゚)「……!?」
歯車王は、壁から一本の細い鉄パイプを抜き取った。
(*゚―゚)「何をするつもり?」
/ ,' 3「これをぉぉおおッ!」
歯車王は鉄パイプを自分の胴体部分――荒巻の乗るコクピット――に向けて、思い切り振り下ろした。
荒巻が悲痛な呻き声をあげた、血の滴る音もする。 鉄パイプが、荒巻の腕を貫通したのだ。
(;゚д゚)「何考えてやがる!」
/ ,゚ 3「痛い……痛いのう……! 涙ちょちょぎれるわ……。
じゃが……これで針は心臓まで登って来られまい……!」
(;゚д゚)「なんだと」
/ 。゚
3「腕を切り離しても、針は空すら飛んで心臓に突き刺さる仕組みじゃ……
ならば、腕にパイプを刺して、針が登ってくるのを阻めばよい。
いずれ、このパイプすら貫通するじゃろうが、貴様らを倒すには十分な時間が手に入るわ」
荒巻の片腕は痙攣して、青くなっていた。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:22:45.70 ID:8zca7QPHP
/ 。゚ 3「まだゲームは終わっとらんぞ! ここからが本当の勝負じゃ……、超記憶の荒巻の力を見せてやろう!」
歯車王が激しく蒸気を吹き上げた。 大きな歯車同士がかみ合う音もする。
腕を大きく振り上げて、三人に向かって横薙ぎの攻撃を繰り出した。
三人は散開して、回避した。
歯車王の攻撃で、部屋の床がえぐれて 横薙ぎに払った腕が、モニターの並ぶ一角を破壊した。
(*゚―゚)「パワーはあるみたいね」
( ゚д゚)「だが、動きはとろそうだな」
ミルナは加速した。
アクスを腰に当てて後ろに引き 歯車王の膝目がけて、突きを放った。
アクスは槍と斧の、二つのメリットを併せ持つ。
だが。
/ ,' 3「いつの死刑囚だったかのう〜」
(;゚д゚)「!?」
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:24:17.62 ID:8zca7QPHP
- ミルナは思わず攻撃を中断した。
歯車王の胴体から、もう一本腕が飛び出したのだ。
太くはない。コードの先に拳がついているだけだが まるで予知したかのように、ミルナの真ん前に立ちはだかった。
/
,' 3「今の姿勢の下げ方、アクスの引き方。 そうじゃ、120年前のモカー一家殺人事件を犯した死刑囚じゃ」
(
д )「がっ!」
ミルナの顔面に、拳がめり込んだ。 よろけたところで襟元を掴まれ、放り投げられる。
ミルナは矢のように飛んでいき、壁にめりこんだ。
(; д゚)「がはぁッ!」
ζ(゚ー゚*;ζ「ミルナさん!」
/ ,゚ 3「人の心配をしてる場合かの?」
ζ(゚―゚
;ζ「はっ!」
/ ,' 3「貴様は二十三年前の、美人通り魔に戦闘スタイルが似てるわい」
ζ( ー
*;ζ「うぁ!」
デレの腹に拳がめり込む。 ねじ込むようにして加えられた力で デレは床を転がった。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:25:45.03 ID:8zca7QPHP
- ζ( ー *;ζ「いっ……!」
デレは半ばうずくまった姿勢で、起きあがり 荒巻を睨んだ。
柱に近づこうとしたが、さっき通った廊下が真後ろにある場所まで押し戻された。
ζ(゚ー゚*;ζ「な、何なのよぉ……あのマジックハンド……」
(;゚д゚)「くっ……畜生、油断した……」
ミルナは背中の痛みをこらえて起きあがった。 肩で息をしながら、じりじりと歯車王を見据えて距離を取る。
当の荒巻は不適な笑みさえこぼして、こちらを見ていた。
(;゚д゚)「ちっ……」
胴体からタコのように伸びた細い腕が十数本。 荒巻の『超記憶』で、過去に見た(おそらく人体実験だろう)人間を投影し
こちらの攻撃を阻む……。
(;゚д゚)「厄介だな……」
ミルナは額に汗をかいたが
しぃは、この状況下でも平然としていた。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:27:29.72 ID:8zca7QPHP
- (*゚―゚)「……」
/ ,' 3「ほっほ、お主は向かってこないのかの」
(*゚―゚)「鉄扇じゃあ、太刀打ち出来ないわね……」
/ ,' 3「良い判断じゃが……生かして帰さんぞ!」
(*゚―゚)「あんなパワーを受け流す自信は、いくら私でもないわ……」
しぃはくるりと振り返って、今来た道を走って戻った。
(;゚д゚)「なっ! しぃ!?」
ζ(゚ー゚*;ζ「逃げるの!?」
(*゚―゚)「どのみち、ここにいたらやられるわよ!」
ミルナとデレはしぃを見倣って、思わずその廊下へ滑り込んだ。
すんでのところで歯車王の特大パンチが、追うようにして突き刺さる。 部屋全体が揺れ、瓦礫がパラパラと天井から振ってきた。
(;゚д゚)「っぶね……!」
ζ(゚ー゚*;ζ「しぃさん! 逃げ続けて時間を稼ぐの?」
/ ,'
3「馬鹿め! まだゲームは終わっていないのじゃ! 途中放棄すれば、針は突き刺さる!」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:28:27.16 ID:8zca7QPHP
- 荒巻は高らかに笑ったが
冷静沈着な響きをもったしぃの声が
「でも、ゲームで使われた部屋に戻るのは、ルール違反じゃないでしょ」
と、告げた。
/ ,゚
3「むむむ……!! ワシが絶命するまで逃げ切ろうというのか!」
すでに、荒巻の右腕は、溢れだした血で真っ赤に染まっていた。
しかし、その痛みを感じさせぬほど吼えて、荒巻は歯車王を前進させた。 廊下など関係なく、壁を壊して突き進む。
/
。゚ 3「逃がさん! 逃がさんぞ! 最初の部屋まで行けば袋のネズミじゃあ!」
歯車王は無茶苦茶に腕を振り回して、しぃ達に迫る。
ミルナは走りながら振り返って、破壊音に消されないよう大きな声で尋ねた。
(;゚д゚)「どうする気だ
しぃ! このままでは奴の言う通り袋のネズミだぞ!」
(*゚―゚)「うっさいわね! 黙ってなさいよ! 何の策もなしに、こんなことするわけないでしょ!」
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あの、じゃあその策を……」
/ 。゚ 3「ぉおおおお!!」
一際大きな音が轟いた。 デレは「ひぃ」と肩を強張らせて 一目散に走り抜けた。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:29:37.45 ID:8zca7QPHP
- そして、白い小部屋に辿り着く。
ワカッテマスが意識をもうろうとさせて座り込んでいた。
(;<○><●>) 「あぁ……皆さん……どうかし……ゲホッ!」
( ゚д゚)「無理をするな……」
(*゚―゚)「私がワカッテマスを奥の部屋に連れて行くわ」
ζ(゚ー゚*;ζ「えっ? でも策は……」
しぃは一回転して、両一差し指を両頬に当てた
(*゚ー゚)「ごめぇーん、しぃちゃん難しいこと分かんないのぉ★」
(;゚д゚)「あァ!? 何言ってんだ!」
(*゚ー゚)「だってぇー、あのときあのままだったら、ヤバかったじゃん?」
しぃはワカッテマスに肩を貸して立たせた。
(;゚д゚)「おい、ちょっと待て、本気で言っているのか」
(*゚―゚)「っさいわね! また破ニャン拳撃とうと思ってたんだけど、体力戻ってこないのよ!
あーもう、あんな雑魚に使うんじゃなかった! 去年習得した必殺技なのに!」
(;゚д゚)「おいおいおい」
(*゚ー゚)「じゃ、おとこのこクン頑張って! しぃの鉄扇の能力『物理攻撃以外を跳ね返す』なの。
炎とか電気とか跳ね返せるけど、この戦いじゃ、まず戦力にならないから! じゃ!」
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:31:47.56 ID:8zca7QPHP
- しぃが一問目の部屋にワカッテマスを連れて入った。
ミルナとデレは顔を見合わす。
ζ(゚ー゚*;ζ「どうします?」
(;゚д゚)「どうする……?」
ζ(゚ー゚*;ζ「えっと、じゃあ……」
向かい合っていた二人の頬に 細かな瓦礫が力強く吹き付けた。
/ 。゚ 3「追いついたぞぉ〜?」
体長5メートルの歯車王に乗った荒巻が 口をにんまりとゆがめて、追いついた。
(;゚д゚)「さっきより部屋狭いじゃねぇか……」
距離を取ろうとして下げたかかとが、壁にぶつかった。
天井だけが馬鹿に高い部屋は、利用できそうなものも、一切無かった。
しかし。
ζ(゚ー゚*ζ「ミルナさん!」
(;゚д゚)「なんだ?」
デレはミルナの耳もとでささやいた
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:33:43.08 ID:8zca7QPHP
- (;゚д゚)「なに……?」
ζ(゚ー゚*ζ「私、しぃさんにも言ってきます!」
デレは一問目の部屋へ駆けていった。
(;゚д゚)「お、おい!」
/ 。゚
3「いちゃいちゃと楽しそうじゃのう!」
(;゚д゚)「!」
先に見た、あの横薙ぎを、歯車王は再び繰り出した。
しかし、先と違うことがあった。
(;゚д゚)「逃げ場がない……!」
この狭い部屋では、あの攻撃は回避できない。
/ 。゚ 3「じゃから言ったじゃろう! 袋のネズミだとなぁ!」
迫る豪腕。 ミルナはアクスを構えた。 よく考えれば、逃げ場はあるじゃあないか。
( ゚д゚)「『触れたものの重量を変えるアクス』……そして、『触れたものの重量を変える』能力武器化!」
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:35:13.21 ID:8zca7QPHP
( ゚д゚)「『触れたものの重量を変えるアクス』……そして、『触れたものの重量を変える』能力武器化!」
歯車王の腕が迫る。
( ゚д゚)「間に合え……!」
ミルナはほこりのように、ふわりと舞い上がった。
/ 。゚ 3「むう!?」
歯車王の腕は地面をえぐりとるのみ。 そしてミルナは舞い上がった状態で、更にアクスを振りかざした。
"この部屋の電気を、全て壊して下さい"
( ゚д゚)「おらよ!」
天井を頂上とするなら、壁のちょうど中腹部分に蛍光灯がついていた。
ミルナはアクスで壁を割った、そして蛍光灯についていたコードを、引きちぎった。 途端に、白い部屋が、黒い部屋へと変貌する。
「ムゥ? 何のつもりじゃ!」
( ゚д゚)「なるほど……奴が見ることで記憶を呼び覚ましているのなら――」
ミルナはアクスを引き抜いて、着地した。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:36:50.83 ID:8zca7QPHP
- ( ゚д゚)「視界をふさげば、能力は無効化できる!」
荒巻も理解したのか、感心するように声を発した。
「ふむ、なるほどのぉ、しかし、見えぬのは貴様とて同じじゃ!」
( ゚д゚)「……だが、荒巻。動きのとろい歯車王の場所は……大体――」
ミルナがおぼろげな記憶を頼りに、歯車王の位置を想定して、走り出した瞬間。 部屋全体が、強力な発光体に照らし出された。
アクスを振り上げたミルナは目を細めた、が。
ζ(゚□゚*ζ「――――――ッ!!」
|::━◎┥
( ゚д-)「そういうことかっ!」
『発生させた音を光に変える鍬』 すでにデレは武器化していたのか。
部屋は、ふっと暗闇へと舞い戻る。 しかしミルナは確実な歯車王の位置を認識して、
音のない咆吼を体全体で表して、襲いかかった。
「なんじゃ今のまぶしさは……うう……」
( ゚д゚)(もらったッ!)
ミルナはアクスを振り下ろした。
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:47:20.53 ID:8zca7QPHP
――しかし。
アクスは、何者かの手によってはじき飛ばされた。
ミルナの手からアクスが離れ、後方の床に突き刺さった。
(;゚д゚)「なにっ!」
「ひひははは!! どうやら攻撃を防いだようじゃの! 歯車王の性能をナメてもらっては困る!
音を探知し攻撃するAUTOモードに切り替えたのじゃ!」
立て続けにミルナの喉に拳が突き刺さった。
暗闇に紛れて、その姿を認めることは一切出来ない。 ミルナは背中から倒れて、呼吸の仕方を忘れた。
(; д
)「はっ――――、あっ、ゲホッゲホッ! くあ、あぁー! ハァー、ハァー!」
「はじめからこちらにしておけば良かったかの!
このモードならば、例えネズミの足音さえ捕らえるぞ! はぁっ! 覚悟ミルナ! 自らの呼吸音で死ねぇ!」
(;
д )「そのモード……今すぐといた方がいいぜ……」
「なにッ!?」
ミルナは目を苦しそうに半分開けて
声を絞り出した。
(;゚д゚)「こっちに一人、音を全く生じさせない奴がいる」
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:48:51.34 ID:8zca7QPHP
- 「な――――」
突然、歯車王が光った。 そこで鍬を突き立てているのは 言うまでもない。
ζ(゚ー゚*ζ「――――!」
デレだ。
/ 。゚ 3 「き、貴様――! ぐお! 光が!」
ζ(゚□゚*ζ「――――――ッ!!」
デレはコクピットに乗り込んで、歯車王を無我夢中で"耕し続けている"。
衝突する度に、星を散らしたような、まばゆい光を放ち そしてついには、あの5メートルの巨体が、傾き始める。
/
。゚ 3 「な! 歯車王が! ワシの歯車王が!」
(;゚д゚)「どんだけマジックアームがついていても……感知されないんじゃ意味ねぇよ」
/ 。゚
3「馬鹿な! ワシが負けるなど! ありえん! ありえん……!!」
世界さえ揺れるような、とてつもない震動。
歯車王が、地面に沈み込んだ。 とてもあの巨体が崩れただけでは発生し得ない轟音。
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
00:52:33.90 ID:8zca7QPHP
- 何か、重たく冷たいもの全てが
世界へ吸い込まれていくようだ。
「あ、あぁ………」
震動が、止んだ。 それが全てを表していた。 歯車王の機能は、完全に
停止した。
「あり……えん……そんな……」
暗闇に、今までとはうってかわって かすれた苦しそうな声が響いた。
まるで、古い映画テープのような音。
「ワシのぉ……全て……技術、知識、記憶……」
「秘薬で二倍に伸ばした寿命、人生、ワシの……」
「ワシの……恨み、憎しみ……力……」
「そ、そんな…………全て、全てが……終わるわけ……」
「終わる……はずが……」
「…な………………」
「…………」
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:14:17.37 ID:8zca7QPHP
荒巻は横に寝ころんだコクピットの中で 心臓に手を当てて、絶命した。
ミルナはしわしわの老人を見下ろして、静かに呟いた。
( ゚д゚)「俺達の……勝ちだ」
デレは光を放つのやめ、部屋は暗闇を取り戻した。 何も言わないまま、ミルナは廊下を歩き、あの柱を目の前にした。
デレもそれを見つめて、口を固くむすんだまま。
アクスと鍬の攻撃に、柱は砕け散った。
天まで伸びていた柱が地響きを上げて、四方に飛び散った。 ミルナとデレは、真下で舞い降りる結晶を眺めた。
荒巻の全て、知識、記憶、技術、恨み、憎しみ、力、寿命、人生。 荒巻がもし、この能力に生まれていなかったら。
荒巻が研究者としての道を歩んでいなければ。
荒巻の全ては、何に変わっていただろうか。
ミルナはぼんやりと、考えた。
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:16:30.47 ID:8zca7QPHP
せりあがった岩場に、プギャーは飛び退いた。 戦場を二つに分け、プギャーとでぃは戦っている。
この岩場を越えたところでは、ハローと貞子が戦っている。
(#゚;;-゚)「こっちだ!」
空中からの攻撃、でぃの能力は『空気に触れることの出来るカギ爪』 コンの頭を捕らえた。
(#゚;;-゚)「もらった!」
迫る爪。 鋭い銀のカギが、光ってコンへと突き刺さる。
しかし、コンの目はまどろんだままだった。
(;#゚;;-゚)「まただっ……!」
イ从゚
-゚ノi,「……」
カギ爪は見えない何かによって、防がれていた。 数分の攻防で、二人はコンの能力に疑問を抱いていた。
(#゚;;-゚)「ちっ!」
でぃが空気を蹴って、空気に着地した。
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:21:32.16 ID:8zca7QPHP
(#゚;;-゚)「一体どういうことだよ! プギャー!」
( ^Дメ)「それが分かっていれば、この乱れた髪を直すくらいの余裕は出るでしょうかね」
イ从゚
-゚ノi,「……」
ハローの弾丸が撃ち込まれたコンの頬は、いまだに穴が開いたままだ。 プギャーは考えていた、コンの能力。
しかし、いくら考えても埒があかない、ランスをぐいいと、後ろにひいた。
( ^Дメ)「多少のリスク込みでも……全力で撃ち抜いてみましょうか!」
最大限平たい石の道を見つけ出し、プギャーはコンに急速接近した、 だが、コンは全く動じずに、空を見つめている。
プギャーは目玉をかっと見開いて、コンの心臓目がけてランスを突き抜いた。
今までにない、凄まじい音が駆けめぐった。
プギャーは眉間に皺を寄せて、目の前に現れた物体を見た。 青白い立方体が、ランスの強襲を阻んでいた。
( ^Дメ)「これは……!?」
イ从゚ -゚ノi,「貴方……強い」
コンは右手をすう、と上げた。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:25:32.16 ID:8zca7QPHP
- イ从゚ -゚ノi,「……見えちゃった」
(;#゚;;-゚)「プギャー離れろ! なにかまずい!」
イ从゚
-゚ノi,「魔力の盾……」
(;^Дメ)「!」
コンの周りに、かまいたちを思わせる旋風が数個巻き起こった。
螺旋の中心に、青白く光るつぶてが、発生した。 プギャーは後方へ跳んだ、しかし、間に合わない。
つぶてはたちまち弾丸となって、プギャーの体へ撃ち出された。
(;^Дメ)「ぐあッ!!」
防御姿勢を取ったが、構えた腕を突き抜けて 胸に弾丸が突き刺さった。
プギャーは弾丸の勢いに押され後ろのめりに倒れた。
(;#゚;;-゚)「プギャー!」
イ从゚
-゚ノi,「次は貴女……」
コンの周りに、またもや旋風が巻き起こった。
(;#゚;;-゚)「つっ!」
イ从゚ -゚ノi,「躱せる……?」
青の閃光が、残像を残して襲いかかった。
-
-
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:29:25.72 ID:8zca7QPHP
- (;#゚;;-゚)「くぅっ!」
でぃは空中で手を着いて、弾丸を回避した。 だが、コンの攻撃は休むことをしらない。
次々に生成された弾丸が、でぃを追い続ける。
(;#゚;;-゚)「なんて攻撃……ッ!」
イ从゚
-゚ノi,「……」
空気を蹴っては手をついて、ついた手で体を別の方向へ押す。 攻撃にリロードが存在しないと判断すると
でぃは、下降して、岩に身を潜めた。
(;#゚;;-゚)「これじゃあ近づけないッ! ……それにあの青白い盾」
( ^Дメ)「どうやら、彼女の能力が判明したようですね」
(;#゚;;-゚)「! テメェいつの間に!?」
( ^Дメ)「彼女、逃げる相手には興味ないようで。戦いを楽しんでいるようですね。
ポンさんに比べしっかりしているように見えましたが、こと戦闘に関しては少々ルーズなようです」
(#゚;;-゚)「そんなことはどうでもいい。それよりお前、傷は大丈夫なのか? 直に食らっていただろ」
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:31:05.44 ID:8zca7QPHP
- ( ^Дメ)「幸い。急所は最初から膨らませておきました。弾丸は効きません。
『突き刺したものに空気を入れるランス』
思わず体をかばうために使ってしまった腕は、ごらんの通り深手ですが」
(#゚;;-゚)「そうか……それで、奴の能力は」
( ^Дメ)「私たちが見た異世界。あれを作り出しているのも幹部だと聞きました。
それがおそらく彼女、コンさんなのでしょう。 正確に言えば『空気中の魔力を操る』といったところですかね」
(#゚;;-゚)「魔力を操る?」
( ^Дメ)「魔力は万物の源、全ての物質から放出されているよう。
そして魔界、境界は空気中の魔力濃度が高い。
万物から放出された魔力を操作し、万物を作り出すのが彼女の能力」
(;#゚;;-゚)「なっ……そんなクソ無茶苦茶な話があるわけねーだろッ!
ってことは、あれか? つまり……無から有を作り出すって……」
( ^Дメ)「上手い言い回しですね、流石でぃっぺ」
(#゚;;-゚)「でぃっぺとかセンス芋虫なあだ名つけてる場合かよ……!
あいつは自在に、銃も剣も盾も、好きなところに作れるってことだろ……!」
( ^Дメ)「ものによっては、時間のかかるものもあるようですがね」
- 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:35:27.51 ID:8zca7QPHP
(;#゚;;-゚)「んなこと言ってもっ……、あぁ……どうすりゃいいんだよ」
でぃは頭を抱えた。
( ^Дメ)「弱気ですね」
(#゚;;-゚)「私の着地しなくてもいいってだけの能力と、テメェの風船つくる能力で
なんでもつくることの出来る能力の奴にどうやって勝つっていうんだよ……」
( ^Дメ)「……ハハハ、ま、そこで
でぃさんの腕、もとい太ももの見せ所ですよ」
(#゚;;-゚)「……! テメェはそんな軽口――」
言いかけて、でぃは身を寄せていた岩から体を起こした。 プギャーの顔色が悪く、撃たれた両腕がぐったりとくたびれていた。
浮かべている笑顔も、ぎこちない。
(#゚;;-゚)「お前……!」
( ^Дメ)「……冗談もつまらなくなってきましたかね、実は結構きついんですよ。
無茶苦茶に撃つもんだから、拳作るのですら精一杯です。 武器化してるだけ、まだマシですけど」
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:53:51.71 ID:8zca7QPHP
(;#゚;;-゚)「……!」
( ^Дメ)「さて、どうしますか、敵も待ってくれません
でぃさん策はありますかね」
(;#゚;;-゚)「策……!」
耳元で、ジュッとものの焼ける音がした。 プギャーとでぃの間に、一本の青白い光が通る
なんでもつくれるならば、レーザービームだって可能か コンの威圧感ある声が続けて聞こえた。
イ从゚
-゚ノi,「……戦え」
でぃは岩から跳びはね、続けて空気を駆け上がった。
(#゚;;-゚)「当てれるもんなら、当ててみろ!」
イ从゚ -゚ノi,「……」
コンは黙ってでぃを見上げ 右手を上げた。 髪が浮き上がって、旋風を巻き起こす。
イ从゚
-゚ノi,「……ふ」
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
01:58:10.52 ID:8zca7QPHP
弾丸がうなりをあげて、襲いかかった。 でぃはプギャーから譲り受けた"一本の針"を持って逃げ回った。
この針さえあれば、コンにダメージを与えられるかもしれない。
(;#゚;;-゚)「痛っ!」
弾丸の一つが、でぃの肩をかすった。 でぃの能力は重力を無視できるわけではないため
上昇したときの速度が遅く、弾丸を回避しきれない。
だが、それでもでぃは粘った。
コンの上空を回りつづけ、注意を下から上へと引き寄せる。 でぃは確信した。コンの性格は、戦闘には不向きだ。
彼女は戦闘を楽しんでいる、そのため細かなことを気にはとめない。
イ从゚ -゚ノi,「……素早い」
(;#゚;;-゚)「それだけが取り柄でね……」
イ从゚ -゚ノi,「……」
(#゚;;-゚)「あんた、頭はあっちのポンとかいう奴より弱いみたいだな」
イ从゚ -゚ノi,「……どうして」
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
02:00:25.02 ID:8zca7QPHP
でぃを真上に見つめたまま、コンは右手を降ろした。
イ从゚ -゚ノi,「あの男はどこ」
(#゚;;-゚)「教えるもんか」
でぃは舌を出した。
イ从゚ -゚ノi,「答えて」
(#゚;;-゚)「嫌だね」
イ从゚ -゚ノi,「答えて!」
コンの声に大気が震えた。
でぃははじめ驚いたが、それから頬の端をつり上げて 「こいつもしかして」と、小声でしゃべった
(#゚;;-゚)「あんたさぁ」
イ从゚ -゚ノi,「何」
(#゚;;-゚)「戦闘が下手なこと、コンプレックスなんでしょ、小物だねぇ」
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
02:05:19.74 ID:8zca7QPHP
- イ从゚ -゚ノi,「! ……黙れ!」
(#゚;;ー゚)「あれ……何、その顔。怒ってんの?」
イ从゚
-゚ノi,「女……!」
(#゚;;-゚)「ポーカーフェイスかと思ったら、劣等感隠すために皮かぶってただけかよ
そういうとこが小物っぽいわ、お姉ちゃんに頼んで、脳みそ分けてもらえば?」
イ从゚
-゚ノi,「……口を閉じろ……」
(#゚;;-゚)「臭いものには蓋。どうせそうやって生きてきたんだろうさ
馬鹿だねぇ……、頭蓋骨柔らかいまんまで、頭の中発育途中なんじゃないの?
あっは、もしかして、首も据わってないんじゃない? こっち見上げたまま全然動かないけど!」
イ从#゚
-゚ノi,「口を閉じろォ――!!」
コンの背後の岩が、大きな音を立てて崩れ落ちた。
すでに膝に力の入っていたコンは、全身に汗を浮かせて振り向いた。
だが、その動作に一瞬の遅れが生じた、注意は上空にだけ向いていたのだ。
イ从;゚ -゚ノi,「男か!」
体を半回転させる動作の中で コンは右手に剣を作り出した。 飛び散った岩の中から、出てくる人影に鋭い刃を向けた。
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
02:08:23.34 ID:8zca7QPHP
しかし――
( ^Дメ)「残念」
振り向いたコンの背後、つまりコンがもともと向いていた方向から
岩石の破壊音。同時に、プギャーが姿を現した。 その手には、しっかりとランスが握られている。
イ从;゚
-゚ノi,「――!」
(#^Дメ)「うおぉおおお!」
太く鋭いランスは、振り向きかかったコンの腹を串刺しにした。
プギャーはその返り血を浴びて ランスを引き抜いた。
イ从; - ノi,「ぐあ……あ……」
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/03(土)
02:12:01.27 ID:8zca7QPHP
( ^Дメ)「あなたがハローさんを襲うために使った穴 予想通り、広範囲にわたっていましたよ……
そうでないと、応用が利きませんからね」
(#゚;;-゚)「あんたがさっき反応したのは、私が投げた針で割った"風船の音"
ただし! プギャーが地下から岩を膨らませて作った、特別製だけどな」
( ^Дメ)「怪我したこの腕じゃあ、"一瞬"で貴女を倒すことは出来ません。
ですから二重フェイント、"一時"が必要だったんです。
風船、空中……そして挑発。素材が何であろうと、頭の良い方が勝つんですよ」
イ从; -
ノi,「う……うあぁ……」
うつろな目のまま立っていたコンが、ばったりとうつぶせに倒れた。
しかし、プギャーとでぃは異変に気がつけなかった。
コンの体が、見る間に硬化していくことを
|