76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:04:45.84 ID:Yl3zxaUl0
『坊主、恐くないのか』
鉄の巨人が燃え盛る町並みの中で、その少年を見下ろしていた。
「燃えてる、父さん」
『ああ・・・そうだなァ、お前の親父は綺麗だ』
「綺麗・・・?」
『どんなもんも、燃えてる時は綺麗だろう』
少年は見つめる、紅く染まる世界を
「・・・・・・・・・」
うん、綺麗だ
('A`)ドクオはBrigade
Projectにカラサワをぶち込むようです
Act03-灼海-
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:06:12.33 ID:Yl3zxaUl0
- 【VIP重工】
『緊急事態発生、緊急事態発生、職員は速やかに避難して下さい。繰り返します・・・』
戒厳令は鳴り響く、何処かで誰かが叫んだ、明滅する非常灯、何かが焦げる匂いがする、
爆発、連続した巨大な銃声、破砕音、あれは悲鳴か
「「なにがどうなっているんだ!?レイヴンだ!馬鹿な!?何でうちみたいな小企業に!?
誰か助けてくれ、足が・・・。デミタス!?オイ待てよお前ら!!『ぐああああああああああ!』
なんでこんな事に。警備はどうしたんだ!?主任は・・・、まだ演習区画でデータを、
急げ、あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
( ;
ー )「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・」
逃げ回っていた一人の男は、予備格納庫の備品収容スペースのドアをスライドさせた。
o川;゚ー゚)o「ひっ、ネ、ネーヨさん」
どうやら先客がいたらしく、男はたたらを踏んだ。
(
;´ー`)「ハァ、ハ・・・キューちゃんかぁヨ。良いとこ隠れるね、センス良いんだーヨ」
o川;゚ー゚)o「そ、そんなトコに居ちゃ駄目です!早くネーヨさんも中に!」
(
;´ー`)「ハハハ、優しいんだーヨ君は・・・でも」
所狭しと備品の敷き詰められた空間は彼女一人でも狭すぎる程だが、
もう一人程度ならば入れない事も無い。 しかしネーヨは困った様に笑って、自分のふくよかな腹部をつねった
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:07:38.30 ID:Yl3zxaUl0
( ;´ー`)「こんな事ならダイエットしとくんだったーヨ」
o川;゚ー゚)o「え」
そう言ってネーヨは勢い良くドアを閉めた。
「ちょ、ちょっとネーヨさん!?」
(
´ー`)「あんま声出しちゃ駄目だーヨ。俺は他をあたるから、キューちゃんはそこで大人しくしてるんだーヨ?」
「・・・・・・ネーヨ、さん」
遠ざかる彼の背中に、彼女の声は届かない。
(
;´ー`)「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・、ハハッ」
少し格好付け過ぎたか、走る度腹が揺れる自分のような中年がやっても滑稽なだけだったな。
煙が立ち込める演習区画への連絡通路を疲弊したネーヨが腰をかがませながら進んでいた。
(
;´ー`)(こんな中途半端な所に残っているのは俺くらいだろうヨ)
逃げるにも、隠れるにも、ここは不向きだが今のネーヨにはこの先に用があった。
先ほどまで自分を満たしていた恐怖は、怯える彼女を見て不思議と薄れた。
彼は鬱屈した、ともすれば優しすぎる友に問わなければならない事があった。
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:10:30.83 ID:Yl3zxaUl0
- ( ;´ー`)「ノン・・・お前なのかーヨ・・・――」
ガシャンッ!!!!
通路の窓硝子の澄んだ破砕音が、彼の呟きを書き消した。
そこから壁を砕き、重い駆動音を響かせた漆黒のACの巨大な頭部が覗き込んでいた。
ACのサーチライトが、彼を狂おしい程にくっきりと通路に照らし出した。
( ; ー )「くっ・・・!」
『研究員だな。FCSの所在の確認を求める』
頭部に設置されたスピーカーから淡々とした女性の声が響く。
硝煙の鼻をつく香りが漂うそれは、ドクオや阿部の乗っているACとは全く異なる威圧感を纏ってネーヨを竦み上がらせた。
『貴方のこの場での生命を保証しよう』
事務的な呼びかけに籠もる有無を言わさない力関係に、彼はまるで自分が虫けらにでもなった様な錯覚を覚える。足が震える。虫けら。
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:11:56.91 ID:Yl3zxaUl0
( ;´ー`)「・・・ハハ」
確かに戦車すら容易に捕食する鳥達を前にして生身の自分など虫けらに過ぎないかもしれない。
現に返答次第では自分を迷いなく殺すであろうレイヴンの声からは、その殺気すら感じられない。 虫けら。路傍の石。
だが、そう思うと、何故だかネーヨは笑ってしまった。
『返答を』
( ´ー`)「・・・・・・シラネーヨ」
次の瞬間放たれた弾丸が、通路ごと彼を粉々の肉片に変えた。
『・・・・・・』
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:13:09.54 ID:Yl3zxaUl0
- 【キサラギ 機密整理部】
「おい、何見てんだ」
「【スネイクチャーマー】の資料映像」
「何年前のだよ、あいつもう10年前に死んでんだろ」
「だけどウチの火炎放射機のお得意さんだった、見といて損ないし、それに」
「それに?」
「今日こんなの見つけた」
「・・・なんだこれ、インタビュー?」
『ザー・・・ザザ・・・ガッ―、名前は――・・・ヨハン・フレデリック・・・――、スネイクチャーマーだ』
砂嵐の混じる荒れた画面の中央、パイプ椅子に座る一人の男が映し出されていた。
『――俺は今、化け物を育てている』
【VIP重工 演習区画上部 モニタリングルーム】
(#´・ω・`)「回収作業を急げ!くっ!?よりによって阿部の非番を狙って来たか!」
室内では最低限残された古参の研究員達によってFCSのデータ回収が行われていた。
(;・ e ・)「・・・・・・」
(´・ω・`#)「ノォォンッ!ぼさっとしてんじゃねぇっ!?」
(;・ e ・)そ「す、すいません!」
呆然と立ち尽くしていたノンに対しショボンの鋭い活が飛んだ。
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:15:09.23 ID:Yl3zxaUl0
- (´・ω・`)「聞こえるか、ドクオ」
『・・・はい、主任』
備え付けられたスピーカーから、階下のテストACに搭乗するドクオの声が響く。
その上ずった声からはドクオの隠しようも無い動揺が感じ取れた。
(´・ω・`)「落ち着いて聞いてくれドクオ。時間はあまり無い」
『・・・はい』
(´・ω・`)「恐らく襲撃者達の目的は我々の新型FCSと見て間違いはないだろう。 阿部は幸いにもすぐにつかまったが到着までは早くとも10分はかかる。自警団も同様だ」
『は、はい!』
(´・ω・`)「だがその間にも襲撃者はここに到着するだろう」
『・・・』
(´・ω・`)「今、試作機はお前のACに搭載されているものだけだ。お前は速やかにACごとここから避難しろ」
『・・・!そんな俺だけなんて主任達はっ・・・!?』
(#´゚ω゚`)「時間がねぇつってんだろうが!?少し黙らねぇとかっぴらいたその口にまた俺の肉棒で栓すんぞガキが!?」
『ちょっ!?』
(´・ω・`)「いいか、ドクオ。これは命令だ。お前みたいなペーペーにこのショボン様に対する拒否権はない」
『主任・・・・・・』
(´・ω・`)「それに俺達だって別に死ぬ気はない。つーか死ぬかよ、ぶち殺すぞお前」
- 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:16:01.87 ID:Yl3zxaUl0
(´゚ω゚`)「そうだろお前ルァァアァッ!!!!」
「「「「 たりめーだっっっ!! 」」」」
こんな状況にありながら、残された男達は普段と変わらない雄雄しい叫びを上げる。
マイクの向こうで、ドクオの小さな笑い声が漏れた。
『みんな・・・、了解しました!皆絶対に死なないで下さいね!』
(´・ω・`)「当然だ、急げドクオ」
『はい!!』
階下の演習場を脱出する灰色のAC。男達は一度作業の手を止めてそれを見送った。
(´・ω・`)「・・・行ったか」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ 「我ながら良い社員達を持ったものです」
(;´・ω・`)「・・・社長、ええ、まったくですよ」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ
「ふふふ、生きて帰ったら皆で高級ソープでも行きましょうか」
「「「「 いやっっっほう!!!! 」」」」
(#´・ω・` )「てめぇら仕事しろやぁぁっ!!!!」
青筋を浮かべたショボンの怒声で、再び室内に緊迫した空気と、喧騒と、忙しない回収作業が帰ってくる。
(´・ω・`
)「・・・ん?・・・ノン?」
そこからは一人の優秀な研究員の姿が忽然と失われていた。
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
07:17:20.10 ID:Yl3zxaUl0
- 【インタビュア】
『――あいつを拾ったのは、レイヤード南西区画の高級住宅街だ』
『あの日の俺はテロ組織の依頼を受けた、払いが良かったからな』
『内容はミラージュの庇護下にあるあの地域を使った企業への見せしめ・・・、まあなんだ、俗に言う虐殺ってやつだ――』
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:13:58.37 ID:Yl3zxaUl0
- 【VIP重工 開発区画 予備格納庫】
敷き詰められた備品の隙間で彼女は一人膝を抱え、震えていた。
爆音と悲鳴が、遠くで木霊している。その都度暗い室内は小刻みに振動し、天井からはパラパラと埃や細かなコンクリート片が落下する。
o川; ー )o「・・・!・・・もうヤダよ・・・」
襲撃当初ミルナは整備中のMTばかりが置かれた機体整備室を後にし、他の整備担当の男達にキュートを預けて警備部までMTをとりに向かった。
しかし整備班は突如壁を突き破って現れた白い二脚ACに襲撃され、散り散りになってしまった。
去り際に見てしまった、あの巨大な鉄塊に踏み潰される同僚の姿。
o川; ー )o「ひっ!」
彼女は血が滲むほどに強く自らを抱きしめた。 あの時、彼は、確かに「助けて」と言っていた。
o川; ー
)o「ごめんなさいごめんなさいごめんあさい・・・うぐ、ひっく」
溢れ出す涙を拭う事も忘れて彼女はさらに強く自身を抱いた。
こうしていなければ自分がバラバラになってしまいそうで恐ろしかった。
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:16:13.97 ID:Yl3zxaUl0
- o川; ー )o「ね、ネーヨざぁん・・・どうして行っちゃたんですかァ」
あの時彼が付いていてくれたなら、どれだけ心強かっただろうか。
「「助け!たすけ!ぎゃあぁぁぁああぁぁっっ!!!!」」
『タタタタタタッ!』
o川; ー
)o「ひぃっ!!!」
今の絶叫と、発砲音は、今までと比べようもなく近かった。
『――――♪――♪』
o川; ー )o「なに、この音・・・?」
ズン、ズン
不可解な音は、巨大な振動と共に、すこしづつ近付いて来る。
細かなコンクリート片が、それに合わせて、パラパラとキュートの頬を撫でる。
o(
д;川o「・・・・・・・・・・・っ!?」
反射的にキュートは扉を背にし、頭を抱えてうずくまった。
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:22:44.37 ID:Yl3zxaUl0
- 音は、振動は、次第に明瞭に重厚に、その距離を詰めて行く。
ズン、ズン
『――フン♪フフン♪』
o( д;川o「・・・歌ってる、の?」
ズン!
一際大きく部屋が揺らぎ、振動が止まる。
o( д;川o「ひっ」
『・・・・・・』
o( へ;川o「・・・・・・」
『――見ぃつけた』 o( д;川o「キャアッ!!!」
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:23:47.77 ID:Yl3zxaUl0
- 次の瞬間、扉は轟音と共に壁もろとも引き剥がされた。
ガタガタと震え、逃げる事はおろか立つこともままならない彼女を見下ろす純白の巨兵。
紅い単眼のカメラアイが、暗がりに滑らかな曲線を描いた。
o川 ;д;)o「あ、ああ・・・」
『生体センサーって、ホント便利』
ACの右肩に備えられたチェインガンの銃身が軽快な駆動音を立てて高速回転を始める。
「誰か、助けて」
―――タタタタタタタタタタタタッ・・・
- 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:27:26.08 ID:Yl3zxaUl0
- 【インタビュア】
『簡単なヤマだったよ、MTがゾロゾロ出てきたが揃って燻製だ』
『相手も一匹、レイヴンを飼ってたようだが名前も思い出せねぇ下位ランカーだ』
『MTの燻製の他に焼き鳥が一品加わっただけの話しよ、笑わせるぜ』
『その帰等中だ、道の真ん中にガキが立ってやがった』
- 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:28:53.71 ID:Yl3zxaUl0
- 【演習区画付近 VIP重工敷地内】
噴煙を巻き上げてVIP重工が燃えている。
灰色の中量級ACが敷地外を目指して高速で移動していた。
(;'A`)「くそ!もう、メチャメチャじゃねぇか」
ここがあのVIPだと言うのか、ドクオの脳裏に辛酸なめあった同僚達の顔がよぎる。
彼等は無事だろうか、無意識の内にドクオはACのアクセルを緩め立ち止まってしまった。
(; A )「皆・・・」
『それに俺達だって別に死ぬ気はない。つーか死ぬかよ、ぶち殺すぞお前』
(; A )「 」
『『『『 たりめーだっっっ!! 』』』』
(#'A`)「・・・うん、行こう!俺は俺の役目を果たす!」
その時、遠ざかっていく演習場の一角からけたたましい爆音が上がった。
-
-
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:30:19.31 ID:Yl3zxaUl0
- ( A ;)「!!」
『いいか、ドクオ。これは命令だ。お前みたいなペーペーにこのショボン様に対する拒否権はない』
(; A )「・・・・・・」
ショボンがドクオを行かせたのは若い彼の命だけを思ってのことではない、
今日までのVIPの魂ともいえる次世代FCS、ドクオが託されたのはVIPの未来そのものだ。
ドクオもその事は充分過ぎる程に理解している。だが
( 'A`)「ハァ・・・・・・また、しょっぺぇのかな」
充分過ぎたとしても、それでも尚、今の彼の意思を曲げるには充分ではなかったのかもしれない。
-
-
-
- 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:32:50.72 ID:Yl3zxaUl0
- ('A`#)「レイヴンがなんぼのもんじゃい!!!」
ブースターが火を噴き、機体は演習区画目指して鋭く旋回する。
普段は閉じられた後背部のハッチが開き、そこに内蔵された大出力ブースターが
機体内部のジェネレーターからのエネルギーを収束し、機体の背に蒼い光が膨らんでいく。
('A`#)「童貞を!!」
OB(オーバーブースト)クレスト製ACのコアに標準装備されている超高機動用巨大ブースター。 強烈な燃費の悪さを犠牲に、瞬間的にだが従来のブースターでは在り得ない超高速機動を実現した、 クレスト・イン・ダストリアルの傑作的機動システムだ。
('A`#) 「舐めるなぁぁァァァアァァアァッッッ!!!!!!!!!!」
蒼い俳炎を翼のように背負い、灰色の弾丸が戦場へと撃ち出された。
- 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
09:36:46.44 ID:Yl3zxaUl0
- 【VIP重工 開発区画 予備格納庫】
タタタタタタタン!タタタン!
『あぁん!?』
白い軽量級ACは突如、側面から掃射されたガトリングに被弾し、右肩を跳ねさせる形で僅かに傾いだ。
ACが伺った方向に佇む、全長7mほどの逆脚MTビショップ。 見れば、格納庫内には他にも三機の人型MTが重厚なボディアーマーを身につけバズーカを構えている。
o川 ;ー;)o「嘘・・・」
涙で顔を濡らしながら呆然とするキュートに向かって、ビショップから音声が発せられる。
『すまない、遅くなった』
o川 ;ー;)o「ミ、ミルナさん!!」
『今助ける』
-
-
- 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
10:00:04.44 ID:Yl3zxaUl0
- 持ち直したACの銃口がビショップへと向けられ、チェインガンの弾道が空気を裂いて殺到する。
しかし本来MTを一瞬で鉄屑に変えるはずの弾丸は空を切り、格納庫の壁にビシビシと穴を穿つ。
『あ?』
標的を見失ったレイヴンの真上。 弾道を予測していたミルナのMTがその死角からガトリングを連打した。
『おお!?』
照準を目標に固定したまま宙空で機体を捻ったビショップは、そのまま速度を殺す事無くACの背後に着地
今度はACの背面に向けて絶え間なく弾丸が撃ち込まれ、 被弾した機体装甲が火花を散らしながら鈍い音を立てて周囲に散乱する。
『なんで!?MTがそんなに動・・・!?』
背後に向けて旋回を試みたACの肩口目掛け、ガトリングとは比べ物にならない衝撃が続け様に爆ぜる。
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
10:01:46.92 ID:Yl3zxaUl0
- 『うおっ!』
『俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ』
カメラアイが視認した先で抱えられた砲身から煙を上げる三機の重層人型MT。 猶予なく新たな砲撃が発射される。
『なんだいなんだい?やべぇな、こりゃ・・・マジで、ん?』
気が付けばガトリングの掃射が止んでいる。
前方MTのバズーカ砲に対し回避行動を行おうとしたパイロットは、背筋に粟立つものを感じ迫る弾幕の中に自ら身を投じた。
『ハハハハハハハッなんだありゃ!?』
容赦なく機体を痛めつける砲撃の豪雨の中、パイロットは先程まで自機の立っていた位置を夥しい数の小型ミサイルが通過するのを視認した。
ミサイルの一群はそのまま直進を続け壁面に連続して衝突、爆発を繰り返し、その衝撃は格納庫全体を強く揺さぶった。
次の瞬間逆脚を畳んだビショップがブースターを全力で展開させ立ち込める爆煙の中にその身を眩ませる。
-
- 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
10:06:04.85 ID:Yl3zxaUl0
- MTの弾幕を跳躍して回避したACは、上空から煙幕に目掛け右腕の高火力マシンガンを乱射する。
ACの着地とともに宙を舞っていた薬莢が澄んだ金属音を上げて床に散らばった。
『・・・・・・ハ、ハハッ!』
煙が晴れた時、そこにはビショップの姿はなく。 直径5mほどの巨大な穴が、壁面にポッカリと開いていた。
『ヒャハハハハッ!!勝ち逃げたぁ、やりやがる!色男め!』
キュートも同様にその姿を眩ませていた。
『なんだよなんだよなんだよなんだよなんだよなんだよなんだよなんなんだよあのMTはっ!?
ハハハハハハハwwあー・・・燃える、燃えるなぁ・・・追っかけようか、やべぇな惚れちまいそうだw』
『行かせると思っているのか?』
棒立ちでその場に立ち尽くすACを三機の重層MTが取り囲んでいた。
『手負いの鳥がいつまでも飛んでいられると思うなよ』
『・・・・・・邪魔するなよ虫けらが』
- 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
10:12:11.09 ID:Yl3zxaUl0
- 【インタビュア】
『―――専門家が言うには、脳の構造がそもそも異常だったらしい』
『それでも本来なら、なんら普通の人間と変わりない筈だった、だが、はっはは―――』
『幼少時の致命的な精神負荷』
『俺のアートが!あいつを起こしちまったらしい。そういう点では俺達は同類だったのさ』
- 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金)
10:15:12.92 ID:Yl3zxaUl0
- その時ACは不可解な動きを見せた。
いや、実際にACに乗った経験のある者を除いてその特異性に気付く者は少ないだろう。
乳白色の二脚ACは、両肩のチェインガンを、同時に展開し、マシンガンを構えた。
『20秒だ、せいぜい美しく』
燃えて魅せろよ、虫けら
左腕部で金色のブレードが妖しげに瞬いた。
『――――脳の使用領域が凡人の三倍、そいつを強化人間にするなんて』
燃えるだろう?
NEXT
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