('A`)が武器で、もとい('A`)と武器で戦うようです


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:45:09.08 ID:5eg4vEWy0

作者のお詫び
最終回投下の予定でしたが
間に合いませんでした。申し訳ありません。

そのため、今回は五十一話としました。

完結だけは必ずさせます。
今後ともよろしくお願いします。



 

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:45:49.91 ID:5eg4vEWy0

上 森
(,,゚Д゚)      謎
('A`)       自分に近づけたり、自分から遠ざけたりすることの出来る大剣(触手)
( ^ω^)    瞬間移動できる盾


下 工場
(*゚ー゚)      謎
( ゚д゚)      触れたものの重さを変化させるアクス  
ζ(゚ー゚*ζ    発生させた音を光に変える鍬
( <●><●>)   幻を作り出す鎌


左 岩場
ハハ ロ -ロ)ハ   放った弾丸の時を止めることが出来る銃。
( ^Дメ)     突き刺したものに空気を入れることの出来るランス
川д川      透明にできる刀
(#゚;;-゚)       空気に触れることの出来るカギ爪

 

 

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:46:46.93 ID:5eg4vEWy0


右 倉庫
/ ゚、。 /     ダメージを与えないことに出来るトライデント
(゚、゚トソン      放射した火炎を固定できる火炎放射器
(*゚∀゚)       大きさを自由に変えることの出来る包丁


中 ホテル
从 ゚∀从     武器なし
(´・ω・`)     水面から水面へ移動できる槍
( ФωФ)   触れた武器の能力を一度だけ使えるグローブ
川 ゚ -゚)      形を自由に変形できる矢を射ることの出来る弓
( ´_ゝ`)      触れた者の時間を巻き戻す大槌


・魔人は一人一能力持っている
・武器は一つ一能力

 

 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:49:48.27 ID:5eg4vEWy0




('A`)が武器で、もとい('A`)と武器で戦うようです
第五十二話「全てをのせた一撃」

 

 

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:51:20.02 ID:5eg4vEWy0

アナウンスと入れ替わりに響いた音に、ドクオの耳が痺れた。
ロビーに集合していた全員が、地図上の『下』方向から侵入した光を目撃した。
そして、それが兄者の胸を貫いたことも。

(;´_ゝ`) 「っ……!?」

ドクオは戦慄した。
兄者の胸から流れ出る血も、場に立ちこめる焦げ臭い臭いも、全て突然すぎた。
ワカッテマスが駆け寄った、状況を呑み込んでいる者は、誰一人としていなかった。

攻撃を受けた。

(;<●><●>) 「兄者さん!!」

第二波が発射されたのは、それから間もなくのことだった。

/;゚、。 /「伏せるのだ!」

ダイオードが兄者を突き飛ばした。
追い打ちを仕掛けた二発目のレーザーは、ダイオードの頭をかすめる。

(゚、゚トソン 「ダイオード様」

/ ゚、。 /「大丈夫なのだ。髪が少し焦げちゃったけど」

 

 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:52:42.10 ID:5eg4vEWy0

プギャーが声を発した。
パニック寸前の場をたしなめるような冷静な声だった。

( ^Дメ)「今すぐ全員外に出るべきです、敗者復活戦が始まった。
      すでにここは奴らの射程範囲内のようです」

(;<●><●>) 「しかし、兄者さんが……」

兄者が胸を押さえて立ち上がった。
脇腹から血が溢れていた。

(;´_ゝ`) 「俺なら大丈夫だ、傷は深くないし、武器化もしている。
       ここから逃げ出せと言われても、すぐに対応できるさ」

( ^Дメ)「わたしが手を貸します。さぁ、早く皆さん!」

('A`)「ブーン、行くぞ!」

( ^ω^)「分かったお!」

触手を伸ばし、ドクオは地面を蹴った。
ホテルから抜け出し、辺りに薄黄色の地面が広がった。
触手の刺さっていない方の手で、ブーンを掴み、最大速度で『上』へ向かう。

 



 

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:54:47.69 ID:5eg4vEWy0

ギコが空から地面へ降り立って、大剣の触手を掴んだ。

(,,゚Д゚)「今ハインから聞いた。主催者は『上側』にいるらしい」

('A`)「『上』に? それは確かか?」

大剣を自分から遠ざけて、自分は大剣に近づく。
高速で大地を突き進む武器に乗っているのは三人だった。
ギコはドクオの質問に頷いた。

(,,゚Д゚)「間違いない。モニターで確認した」

('A`)「そうか……しかし、今のはなんだったんだ」

(;^ω^)「いきなり光ったお! ゲームでよく見るレーザーぽかったけど、兄者大丈夫なのかお?」

(,,゚Д゚)「もたもたして全員やられるよりは良い判断だ。」

('A`)「レーザーね……、思ってたより敵は手強いんじゃないか」

やがて景色は緑色に変わっていった。
斜めに刺さった電柱も、露出したコンクリートもない。森だった。

 

 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:56:10.91 ID:5eg4vEWy0

('A`)「ツチのアジトんとこみたいだ……。現界の影響か?」

(;^ω^)「いでっ! 痛いお! ドクオ! 枝が! 枝が!」

('A`)「これ以上大剣で進むのは難しいな」

ドクオは能力を解除して、着地した。

(,,゚Д゚)「だいぶホテルからも離れた。柱も目と鼻の先だろう」

( ^ω^)「森が茂ってよく見えないお、それになんだか――」

(,,゚Д゚)「!」

銃声が立て続けに二発鳴った。
ドクオは反射的に辺りを見回したが、姿は見あたらない。

(;'A`)「二人とも大丈夫か!?」

ブーンが目を見開いた。呼吸は荒かった。

(;^ω^)「あ、あ、あっぶねーお! 盾がなかったら食らってたお……頭おかしいんじゃないかお!」

(,,゚Д゚)「……」

ブーンは咄嗟に盾を目の前に移動させて弾丸を防御していた。
ギコは体を斜めに傾けたまま動かない。

 

 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 21:58:38.20 ID:5eg4vEWy0
('A`)「どうしたんだ、ギコ」

(,,゚Д゚)「いてぇな……クソ……」

ギコのこめかみから弾丸がこぼれ落ちた。
そこから血液が、頬を伝って流れている。

(;'A`)「ギコ? おま、食らったのか……?」

(,,゚Д゚)「不覚だった、絶対に見つけ出してブッ倒してやる」

(;^ω^)「こめかみ撃たれてかすり傷だけかお……!? 鉄でも食べてるんじゃないかお……」

(;'A`)「しかも武器化してないしな……」

ドクオはそう言いながら、ブーンを見た。
ギコでさえ反応できなかったものを、ブーンは反応した。
やはりこいつは、ダイオードと似た能力を持っているのかもしれない。

('A`)「!」

物音に反応して、三人は重心を低く保った。
やがて森の陰から、銀色の体をした、小柄なロボットが三体姿を現す。

(十)

完全な人型で、関節も機械特有の不格好さがない。
液体を思わせる流動的な銀の体。顔の部分に十字の溝があるのみで、デザインは不気味なほど単純だった。
主催者が最先端の技術を駆使して、製造したロボットに違いない、とドクオは思った。

 



 

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:00:32.15 ID:5eg4vEWy0


(,,゚Д゚)「どうやら敵は、少数精鋭を送り込んできたようだ」

ドクオ達は武器を構えた。
背後で三発目のレーザーが発射された音を聞いて
もう多く時間は残されていない、と、三人は攻撃を開始する。

(#'A`)「斬ってやる!」

身も心も武器に任せて、ドクオは触手を伸ばした。
銀色の敵は音も立てずに、飛び上がった。

 

 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:04:17.68 ID:5eg4vEWy0


    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

(;゚д゚)「急ぐぞ!」

三発目のレーザーは、ミルナの顔の真横を通った。
起伏の激しいこの地形で、遠隔攻撃は出来ないだろうと考えていたが
地面さえ貫通するレーザーを前にして、どんな予測も役に立たないことがはっきりした。

(;<●><●>) 「ミルナさん、見て下さい!」

視線の先に、虫のようにうごめく銀の塊を発見した。
ミルナは舌打ちした。質より量というわけか。

ζ(゚ー゚;ζ「どんだけいるのあれ!? うちら四人だけじゃ無理じゃない?」

地鳴りが迫ってきていた。
ミルナは奥歯を噛みしめて、有効な作戦を考えられない自分を悔いた。

 

 

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:06:51.15 ID:5eg4vEWy0

(;゚д゚)「柱の破壊を優先すべきだ。奴らを倒しながら突き進むぞ!」

とても利口とはいえない作戦を口にして、ミルナはアクスを握りなおした。

四人は固まらないように努力して、徐々に形が明らかになっていく銀の塊へひたすらに駆けた。
動いているおかげか、四発目のレーザーも、ミルナ達に当たることはなく
怖じ気を除けば、行進にはなんの障害もなかった。

しかし、四人は同じタイミングで足を止めることになった。

(;゚д゚)「こいつらと……戦えってか……」

やがて銀の塊の正体が確認できるほどに接近した。
案の定、塊の正体は、不格好なロボットどもの群れだった。
ロボットの目がバチリと光った。

/▽▽ 

人型ではあるが、ところどころに角が目立つ。
銀色もくすんでいて、中にはクズ鉄を集めたようなものさえいた。
しかし、個々の質とは対照的に、その数は1000体を優に超えていた。
まともに相手をするには、あまりにも数が多すぎる。

そして、正面の一団との戦闘がいよいよ始まった。

 

 

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:09:24.51 ID:5eg4vEWy0

銃器系はレアだと言われてるだけあり、銃を使うロボットは少なかったが
力任せに振り回される腕や武器は、人間とは比べものにならないパワーで、
打ち合うたびに武器を握る手が剥げ落ちそうな衝撃だった。

(;゚д゚) 「ふっ!」

ミルナはアクスを振り下ろして、一体を叩き割ったが、状況は変わらない。
ワカッテマスは鎌を振るい、一塊を薙ぎ払ったが、状況は変わらない。
デレは、『発生した音を光に変える鍬』で、目くらましを仕掛けたが、機械には通用しなかった。

(;<●><●>) 「く……どうやって切り抜ければ……」

ζ(゚ー゚;ζ「これじゃあキリがないよ!」

銀の槍を持ったロボットに、ミルナは腕を突き刺された。
焼けるような痛みに呻いたが、すぐにアクスで反撃し、ロボットの頭が吹き飛んだ。
しかし、デレの言う通りキリがなかった。これでは体力が持たない。

半ば絶望仕掛けていたときだった。
一際大きなロボットが、しぃめがけて拳を振り落とした。

(;<●><●>) 「しまった!」

(;*゚ー゚)「!!」

非力なしぃではあの攻撃を受け止めること出来ない。
しぃは鉄扇を発動していたが、及ばないことは明白だった。

 



 

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:10:16.11 ID:5eg4vEWy0
銀色の大きな拳は地面に沈んだ。
間に合わなかったか、とミルナは悔しそうに歯を食いしばった。

(;゚д゚)「……?」

しかし、様子が変だった。ロボットの足がふらふらとおぼつかない。
間もなくして、デレの驚愕の声が響いた。

ζ(゚ー゚;ζ「えっ!?」

ミルナはデレの声に反応して、砂煙に目を凝らした。
すると、次第に、しぃの姿が浮き出てきた、それも傷一つ負っていない。 

(* ― )「はぁ……。女の子は弱くなくちゃいけないのに」

しぃが呟くと、大きなロボットは地面へゆっくりと崩れ落ちていった。
伴って生じた重たい音に、空気は震えた。
ミルナは何が起こったか飲み込めず、唖然としていた。

(* ― )「あんたのっ……せいで……!」

しぃは大きなロボットの首に、鉄扇をねじ込んだ。
魔石の青白い光が、ショートのように発生した。
核の部分を突いたのかもしれなかった。

(* ― )「私みたいな可愛い乙女に、何してくれちゃってんのかしら、まったく」

しぃは両腕を脇腹にぴたりとつけて、膝を曲げた。
辺り一帯の空間が震えはじめ、ミルナは地面に押しつけられるような感覚を味わった。

 

 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:16:29.48 ID:5eg4vEWy0
(;゚д゚)「な、なんだこれは、しぃ、これは一体――」

ミルナの質問に答えぬまま
しぃは機械の軍勢向かって、両腕を突き出した。

(*゚―゚)「破ニャン拳!!」

ホコリすら寄せ付けぬ、凄まじい轟音。
両腕から飛び出した青い光線が、ロボット達を襲った。
気がつけば、直撃を受けたロボットは消し飛び
団子のように固まっていた機械の群れには一本の道が出来ていた。

その光景を目の当たりにした三人は
ただ呆然と口を開いたまま、立ちつくせねばならなかった。

(;<●><●>) 「なんですか、今のは……」

ワカッテマスの声は届いたのか、しぃはニヤリと笑った。

(*゚ー゚)「ギコくんよりは全然劣るけどね、それでもこのガラクタどもを片づけるには十分すぎるほどよ」

その顔は邪悪に歪んでいた。

ζ(゚ー゚;ζ「し、しぃさん……? 美人が台無しですよ……?」

しぃは薄く目を開いて低く笑った。

(*゚―゚)「私が美人なのは認めるわ。でもこれが本当のあたしなの。
     猫かぶってるときよりも一万倍魅力的でなくて?」

 



 

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:17:59.18 ID:5eg4vEWy0


ミルナは生唾を呑み込んだ。

(;゚д゚)「……」

(*゚―゚)「ねぇ、何をしているの、ぼうっとしてないで、さっさと行くわよ。
     私が一般的に認められている可愛さを捨ててまで、道をつくったの。
     これを通らなきゃ、あなたたちに、それなりの報いは受けてもらうことになるわ」

(;<●><●>) 「了解しました」

しぃは三人を置いて、いち早く、その道を突き進んだ。
伸びてきた機械の手も、全て引き倒していた。どうやら合気道の類のようだった。

(*゚ー゚)「あたしは銀河系一強い男の妻なの、銀河系一強い女に決まっているでしょ
     さぁ、どんどん行くわよ、文句があるならかかってきなさいよポンコツども!」

ζ(゚ー゚;ζ「……びっくりだ」

しぃの高笑いに続いて、三人はその道を突き進んだ。
例えレーザーが直撃したとしても、しぃは笑うことをやめなかったに違いなかった。

 


 

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:19:27.88 ID:5eg4vEWy0


    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

(#゚;;-゚)「どうにか突破できましたね! お嬢!」

ハハ ロ -ロ)ハ「そうね、あなたのおかげよ、でぃ。 空気に触れることの出来るカギ爪の力は大きいわ」

(*#゚;;-゚)「そんな! 褒めすぎですよ! お嬢! まぁお嬢がそう言うなら、今夜はお嬢の布団の中で待ってますね」

ハハ ロ -ロ)ハ「もし私がそう口走っていたのだとしたら、一度精神科医に診て貰う必要があるわね」

(*#゚;;-゚)「そんな! 裸だなんて!」

ハハ ロ -ロ)ハ「どうやらかかりつけ医が必要みたいだわ」

プギャーは腕を振って走りながら、二人の話を聞いていた。

 

 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:20:13.03 ID:5eg4vEWy0

( ^Дメ)「百合ですか! 百合なんですかお二人さん!」

(#゚;;-゚)「うっせぇ!! テメェは黙ってろ!! 私はプギャーとゲロまみれのもずくだけは、大嫌いなんだよ!!」

(;^Дメ)「えらく酷いものと同列にされてるじゃないですか! そんなん好きな人いませんよ!」

(#゚;;-゚)「そういうことだ」

( ;Дメ)「酷い!!」

その後ろから貞子が話しかけた。

川д川「フフフフフフフフ、面白いですね……」

(;#゚;;-゚)「ひっ! 生首!」

(;^Дメ)「きゃあ!! 生首!!」

川д川「あ、すみません……わ、わたし、透明になれる日本刀なので………
      武器化して……つい気が抜けちゃうと……部分的に透明じゃなくなるんです………」

(;^Дメ)「こ、怖いなそりゃ、服まで透明になるんですか」

川д川「は、はい……長く身につけているものは透明になります。
      ですから邪神ドヴォルザーク様の姿も皆様には……」

 



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:36:54.84 ID:5eg4vEWy0

(;^Дメ)「ドヴォルザークって音楽家ですよね?」

川д川「あ、間違えました……邪神ブラザートム様の姿も……」

(;^Дメ)「それは週2くらいの頻度で見ます!!」

プギャーがせわしなく他の女性達にリアクションをとっていると
どこからか、挑発的な声が響いた。

「えらく楽しそうやな」

ハハ ロ -ロ)ハ「!」

聞き覚えのない声に、四人は立ち止まり、身を屈めた。
プギャーはでぃと、ハローは貞子と背中を合わせ、武器を構えた。

プギャーは慎重に、ぐるりと周りを見やった
しかし、仲間以外に人影は見あたらない。

( ^Дメ)(不思議なところですね……)

辺り一帯は、岩石で埋め尽くされていた。
かすかに潮の香りがすることに気付き、プギャーは海辺の岩場が影響しているのかもしれないと思った。

地面も当然、土のような柔らかいものは一切見あたらず、白っぽい岩石で埋め尽くされている。
ごつごつとした地面は足場が悪いため、姿勢を低くしたプギャーは何度も足踏みせねばならなかった。
また、高低差が激しく、死角となる部分が多い。

 



 

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:37:36.19 ID:5eg4vEWy0

プギャーは声を張り上げた。

( ^Дメ)「よくしゃべる方……ってことは、あなたがポンさんですね!」

不満げな声が返ってきた。

「ハインのやつ、ウチのことをそんな風に言ってたんか。いただけんなぁ」

ハハ ロ -ロ)ハ「でも事実のようね」

「そこまで言われて否定するわけにはいかんわな」

プギャーは片目をつむって、耳を澄ましたが
地形が原因で、声がどこから発せられているのか判断できなかった。
敵はどこに潜んでいるか分からない。その事実に、冷や汗が頬を伝った。

( ^Дメ)「パワーバカ( ФωФ)なら、どれだけ対処が楽か……」

でぃはプギャーの耳元でささやいた。

(#゚;;-゚)「なんでお前が私の背中に居るんだ……私はお嬢と……!」

(;^Дメ)「今はそんなこと言っている場合じゃないでしょう。相手は何考えてるか分かりませんよ」

(#゚;;-゚)「そんなことはない。予想できるだろ、この脳みそババロアが」

( ^Дメ)「……どういうことです」

 

 

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:38:39.72 ID:5eg4vEWy0

でぃはさらに声をひそめた

(#゚;;-゚)「奴は私達に声をかけて、この場所に立ち止まらせたんだ。
     物陰に隠れて、攻撃を仕掛けるだけなら、わざわざ声かけねぇだろ
     こんな岩場じゃあ、死角は腐るほどあんだからな、声かけねぇでブスリと行くはずだ」

(#゚;;-゚)「しかしわざわざ立ち止まらせた。
    てことは、奴らの作戦は、私達がこの場所にいなけりゃならんってことだ
    そういう話なら、仕掛けてくる作戦はおのずと限られてくる」

( ^Дメ)「と、言うと……」

(#゚;;-゚)「自分で考えられることを、他人に聞くなカニみそ野郎。
     大体私はてめぇが嫌いなんだ、今のこと教えてもらっただけ感謝しろ」

(;^Дメ)「仲間ですよね……私達」

でぃは問いかけに答えず、そっぽを向いた
プギャーは思わず苦笑する。

しかし、でぃの言葉によって、プギャーはポンの仕掛けてくる作戦が容易に想像できた。
ポンはおそらく、プギャー達の周りの岩の中にいるはずだった。

岩を破って飛び出し、武器を振りかざす。
それがポンの作戦の内容だ。
あらかじめ洞穴状に掘っておいた岩ならば、破ることなど造作ない。

ハローにこのことを伝えようと、視線を向けた。


 
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:51:21.15 ID:5eg4vEWy0

( ^Дメ)「……!」

プギャーが視線を向けると、ハローはウインクを返した。
「大丈夫」。プギャーはそういう意味だろうと考え、小さく頷いた。

ハハ ロ -ロ)ハ「ポンさん……、そろそろ仕掛けてきたらどうなの」

ポンの声は間を開けずに返ってきた。

「イソギンチャクは魚が来るまで、その場を動かん。下手に触手を伸ばしたりもせん。
アホな餌を毒で麻痺させてから、ゆっくり食うんや」

ハハ ロ -ロ)ハ「私達が毒にかかってるってことかしら?」

ポンはくつくつと笑い始めた。

「実はなー、まだあんたらの正確な位置が分からんのよ。
だから探ってるんや、寸分違わぬ、正確な位置をな」

ハハ ロ -ロ)ハ「位置が分からない……? 一体どういうことかしら」

やがてポンの笑いは枯れた。
辺りの空気が、張りつめる。

直後に、威圧感のある声が響いた。

 

 

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 22:52:18.33 ID:5eg4vEWy0

「暗い岩ん中じゃあ、あんたの声だけが頼りなんや」

言い終わるが先か、ハローが立っていた地面に、大きな亀裂が入った。
でぃは叫んだ。

(;#゚;;-゚)「お嬢! 下です!」

ハハ ロ -ロ)ハ「あら」

ハローは岩を蹴って飛び上がった。
岩を跳ね上げる音と共に、青白い剣を持った女が、地面から飛び出してきた。
砂利を纏って、ハローへ直進する。ハローはその女に銃の照準を合わせた。

ハハ ロ -ロ)ハ「でぃがいなきゃ、まずかったわね!」

女はわずかに表情を曇らせた。

イ从゚ -゚ノi,「ッ!」

ハハ ロ -ロ)ハ「外さないわ」

ハローは引き金を引いた、銃声が響く。
ほぼゼロ距離で放たれた弾丸は、感覚器官で捕らえることが出来ない。

 

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:19:46.66 ID:5eg4vEWy0

イ从 - ノi,「!」

顔面に弾丸が当たり、女は大きく仰け反った。
ハローの気は緩んだ、初撃成功。

しかし間もなく、背中を舐めるような声が、上から響いた。

)リ゚ー゚从ト「油断禁物」

ハハ;ロ -ロ)ハ「!?」

ハローははっとして上を向いた。
巨大な剣が、今まさに振り下ろされていた。
すでに、指はトリガーから浮いていた。防御不能だ。

苦し紛れに銃を上に向けるが、間に合わない。
ハローは眉間にしわを寄せたが、攻撃は思わぬ形で食い止められた。

響く金属音。

)リ゚ー゚;从ト「ありゃ?」

 д 「簡単にやらせはしません」

空中に赤い唇が浮き出て、そう告げた。
そして、ハローの肩に足を置き
空中で方向を変え、口はポンに襲いかかった。

 



 

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:20:34.75 ID:5eg4vEWy0


)リ゚ー゚;从ト「うおっと!」

ポンの頬に赤い線が走った。
間もなく地面が近づいてきて、ハローと口は着地し、大きく後ろへ跳んだ。
口は姿を現して、長い髪を指でといた。

川д川「透明な攻撃をかわすなんて……」

貞子は言ってから再び消えた。
ポンは頬の血を拭って、苦笑した。

)リ゚ー゚从ト「透明になれる刀……ノーマークやったわ、かなり厄介な能力やな」

     「……」

)リ゚ー゚从ト「声も出さないんやったら、ほんまにどこいるか把握でけへん」

ハローは照準をポンに合わせた。
気がつけば、ハロー、貞子(透明だがおそらく)、プギャー、でぃで
ポンを囲むようにして陣取っていた。

しかし、囲んでいたのはポンだけではなかった。

ハハ ロ -ロ)ハ「そちらは……誰かしら」

イ从 - ノi,「……」

 

 

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:21:39.14 ID:5eg4vEWy0

返ってくる答えは分かっていたが、ハローは質問せずには居られなかった。
ポンは無邪気に顔をほころばせて言った。

)リ゚ー゚从ト「こいつはなーコンや、うちの妹」

ポンの言葉に、今まで岩に埋もれていたコンが、むくりと起きあがった。
頬骨にハローの撃った弾丸が埋め込まれており、暗い穴から顔にヒビが入っていた。

しかし、コン自身はまどろんだ目をしていて、四人は奇怪に思った。

イ从゚ -゚ノi,「違う、私が姉。ポンちゃんが妹」

)リ゚ー゚从ト「ちゃうわ。うちの方が先に産まれたんや」

イ从゚ -゚ノi,「違う、私が先」

)リ゚ー゚;从ト「あーもうええわ、じゃあコンが先や、私の方があーとー」

イ从゚ -゚ノi,「そう」

)リ゚ー゚;从ト「なんでそこだけ、やたら執着すんねん」

( ^Дメ)「……ポンさんに、コンさん。あなたたち。何故同じ場所に?」

ポンはプギャーの言葉に笑った。コンは笑わなかった。

 

 


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:39:42.16 ID:5eg4vEWy0
)リ゚ー゚从ト「何故って、うちらの異名聞いてへんの、『共戦姉妹』やで。
       二人で一つの一心同体や
、離れる方がおかしいわ」

(#゚;;-゚)「なんだ……あんたら、二人でないと戦えないのか」

)リ゚ー゚从ト「そうやな、そうかもしれん、今まで一人で戦ったことはないわ。
      ただそういうことちゃうんよ、お嬢ちゃん。
      二人じゃないと戦えないって、そういうこととちゃうで」

(#゚;;-゚)「……?」

)リ゚ー゚从ト「うちらはそれぞれ、(//‰ ゚)『制裁者』 / ,' 3『超記憶』 )リ゚ー゚从トイ从゚ -゚ノi,『共戦姉妹』
       異名が役割を表してるんや。……うちらは『共戦姉妹』。バトルパート担当なんや、それに特化しとる。
       だから、他のことやるときに二人おらんと使えんのよ、だから二人でセットなんや」

ハハ ロ -ロ)ハ「それだけ戦闘に特化してるってわけかしら」

)リ゚ー゚从ト「まぁあんたらにどう思われようが、うちは構へんけど
       言っとくわ、帰るなら今の内やで。
       モララー様に大人しく武器にされるっちゅうんなら、見逃してやらんこともないな」

ポンは頬をつり上げた。
でぃの顔が見る見るうちに黒く染まっていく。

(#゚;;-゚)「抜かせクソカス野郎! テメェらにそんな心配される筋合いねぇんだよ!! ダボがァ!!」

)リ゚ー゚从ト「おー言うねー、でも内心びびっとるんちゃう? うちの武器、ゴツいやろ」

(;#゚;;-゚)「誰がびびって……」

 



 

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:41:00.05 ID:5eg4vEWy0
でぃはポンの武器に視線を走らせた。
『双剣』――それも『双大剣』。大きさ2メートルはあろう大剣を、ポンは両手に持っていた。
なめらかな刃の上に、細かな刃がいくつもついており、それがモーター音と共に剣の縁を回転していた。
チェーンソーのような仕組みに違いなかった。

)リ゚ー゚从ト「一旦肉に食らいついたら、巻き込んで骨まで食らいつくす。
       それがこの双大剣。ええやろ、凶悪やろ、これモララー様が作ってくれたんよ。
       例の『武器化を進めるレイピア』を作るための、いわば試作品やな、でもええやろ、かっこええ」

イ从゚ -゚ノi,「……」

コンは何の武器も持っていないようだった。

( ^Дメ)「たしかに厄介だ……」

ポンは上機嫌に足を踏みならして、剣を大きく振り回していた。
回転する小さな刃からは、時折青い火花が散っていた。

)リ゚ー゚从ト「なんなら切れ味見てみる? よく見とれよ、ほんまに凄いから
       そんじゃ誰で試そうか……そんなら……」

ポンの顔が不適に歪んだ。
それを感じ取った四人は、すぐさま戦闘態勢に入る。

)リ゚ー゚从ト「透明な嬢ちゃんからやな……!」

     「!」

岩石を吹き飛ばすほどの風が巻き起こった。
暗闇の花火のように、ポンはわずかな残像を残して、何もない場所へと向かう。

 

 

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:41:43.89 ID:5eg4vEWy0

ハハ ロ -ロ)ハ「貞子っ!」

ハローは引き金を引き、ハンマーを五回叩いた。
しかし、弾丸は何故か空中で跳ね返った。ポンの動きを止めることは出来ず、ポンはそのまま二本の剣で空間を斬りつける。
耳が痛くなるような音が響いて、ポンの進行方向の延長線上にある岩石が崩れ落ちた。

)リ゚ー゚从ト「ハッハァ! ラッキー、クッキー、ビンゴやね。やっぱりポンちゃん大天才!」

崩れた岩の中から、貞子の姿が浮かび上がった。

川;д川「うぐ……何で場所が……」

ポンは剣をすり合わす。

)リ゚ー゚从ト「足音が聞こえんっちゅーことは、動いてない証拠や。
       うちはヒヨコの足音さえ聞き分けるで
       さっ、立ち上がりーヨ。寝てたら抗うこともでけへんで」

「そんで」ポンは三人の方に振り返った。

)リ゚ー゚从ト「今、弾丸撃ったのはァ――ハローか、ま、そりゃそうやな。
       アホみたいに単純な攻撃。芸がないね。
       こっちは二人だってことを忘れてるんとちゃう? 勝つ気ある?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「……」

)リ゚ー゚从ト「油断せん方がええよ……ハローだけじゃなくて、そこの二人もな」

 



 

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:42:31.48 ID:5eg4vEWy0

イ从゚ -゚ノi,「……フ!」

(#゚;;-゚)「!」

振り上げられたコンの拳。
それはうなりをあげて、でぃに迫る。
でぃは空間を蹴った。

コンの拳は空を切る。

(;#゚;;-゚)「くっ!」

イ从゚ -゚ノi,「……」

)リ゚ー゚从ト「あっはー、良い感じやね。これで戦場が二つに分かれたわ
      コン、二人ずつ相手にするって事で文句ない?」

イ从゚ -゚ノi,「ない」

ポンは頷き
ハローと貞子に剣を向けた。

 



 

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:43:22.56 ID:5eg4vEWy0


)リ゚ー゚从ト「さて攻撃開始や、五分とお待たせしませんよー」

川д川「……」

ハハ ロ -ロ)ハ「やれやれね……」

コンは無表情のまま
両手を大きく広げた。

イ从゚ -゚ノi,「……」

( ^Дメ)「全くどんな能力か分からないです」

(#゚;;-゚)「あいつ、ただ拳で攻撃するだけなのか?」

様々な思惑を胸に
『左』の戦いが始まった。

 

 

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:44:03.32 ID:5eg4vEWy0


    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・


(*゚∀゚)「相性が良かったさね」

つーはガラクタを踏みしめて呟いた。

/ ゚、。 /「そうなのだ、我らに適う敵などそういないのだよ」

ダイオードはトライデントをくるりと回した。

(-、-トソン 「……」

トソンは目を瞑って、ダイオードの側を歩いていた。



 
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:45:01.49 ID:5eg4vEWy0

/ ゚、。 /「どうやらこの辺りはあのホテルへの供給施設が建ち並んでいるようなのだ」

丸屋根の倉庫が、所狭しと並んでいた。
食料の倉庫に、諸々の機械を動かすための粉末魔石の倉庫。
倉庫がある以外は殺風景で、地面も平坦だった。

(*゚∀゚)「この粉魔石を、灯油みたいに入れてストーブ動かすのかなー」

(゚、゚トソン 「かもしれませんね、魔力は全ての源のようですし、電気に変えたりもするのでしょう」

(*゚∀゚)「凄いさねー、なんだかロマンを感じるよ」

/ ゚、。 /「そうであるか? 死体の粉末なのだぞ」

(;*-∀-)「そうだったさ、忘れてたよ」

/ ゚、。 /「……むむ?」

ダイオードは目を凝らした。
我の目に間違いがなければアレは……。

/ ゚、。 /「どわあ、まだ機械人形達がいるようなのだ」

(*゚∀゚)「え、マジ?」

 

 



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:45:42.35 ID:5eg4vEWy0

/ ゚、。 /「それに柱までの距離が目測と違う気がするのだ。
       我が間違ってるわけないから、いつかの幻なのだよ」

(゚、゚トソン 「共戦姉妹がかけているものですね」

(;*゚∀゚)「てか、また戦うわけー? ダイちゃん、今度はどれくらいいるの?」

/ ゚、。 /「ざっと五千は いるのだ、レゴブロックを彷彿とさせるな!」

(;*゚∀゚)「ご、ごせんて、聞いてないよそんなー、びっくりコーンさ」

/ ゚、。 /「HAHAHA ま、我についてこい! 我に任せておけば、万事休すなのだ!」

(;*-∀-)「休しちゃダメでしょ」

ダイオードはつーの言っている意味が分からなかった。つーは時々おかしなことを言うのだ。
と、その時、我の耳の奥で電気が走った。
あまり良い直感では無さそうだった。

(゚、゚トソン 「……ダイオード様どうかなされましたか」

/ ゚、。 /「なにか……来るのだ」

(゚、゚トソン 「何か?」

/ ゚、。 /「分からん、でも気をつけだ。なんだかヤバいぞ」

(*゚∀゚)「ヤバいって――」

 



 

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:46:37.54 ID:5eg4vEWy0

ダイオードは足を止めた。見れば隣の二人も足が止まっていた。
倉庫の陰から、今までに感じたことのない雰囲気を纏った、巨大な物体が近づいてきた。
大きさは三メートル。長い両手に、赤く光る目玉。ノイズに混じって聞こえる歯車の音。

(/‰ ゚)

目撃した瞬間は、人間かと思った。
しかし、すぐにヒトではないということが分かった。
両腕は地面に着くほど長く、銀色の金属をまとって規格外に大きかった。
顔面もほとんど金属で覆われており、赤いランプが右目の位置について光っている。

頭に髪も生えていたが、きらきらと光っていることから、特殊な繊維だと推測できた。
アーミー柄のタンクトップと、太めのズボンを着ていたが、似合っていなかった。
筋骨隆々ではない。尋常ならざる化け物だ。武に特化した醜い塊。

軋んだ音を立てて、それが一歩、また一歩と近づいてきた。
ダイオードの耳の奥で、再び嫌な電流が走った。
ダイオードは重心を低く保った、銃器の攻撃が来る気がした。

(;*゚∀゚)「あいつ……ッ! サイボーグ横堀! ダイちゃん!」

/ ゚、。;/「に、逃げるのだ!」

(*゚∀゚)「え?」

瞬く間に展開された横堀の両脇腹から、煙を上げて何かが飛び出した。

 

 



88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:47:17.94 ID:5eg4vEWy0

それは二発のミサイル弾。
全くブレずに軌道にのっていく。
横堀の目は赤く光ったままだった。

/ ゚、。;/「退避ーッ!」

爆音。
強烈な熱風が吹きつけ、勢いに押されて跳んできた砂利が顔に当たった。
碁盤目状にはりめぐされた倉庫の間を駆けて、ダイオードは声を張り上げた。

/ ゚、。;/「つーのバカ! あんな時に声かけるな! 」

(;*゚∀゚)「ははは、ソーリーソーリー、かなりデンジャラスだったさね」

/ ゚、。;/「まったくもう……世話がかかるのだ」

(゚、゚トソン 「しかし面倒なことになりました。情報によれば、彼はサイボーグ横堀でございます」

(*゚∀゚)「どうしよっか……五千のロボットも近づいてきてるんだよね」

/ ゚、。 /「むぐぐ、横堀、今までで一番危険な感じがしたのだ。あれは手間がかかるぞ」

慌てて走りながら、ダイオードは作戦を考えた。もたもたしていてはやられてしまう。

/ ゚、。 /「つーが一人で柱に向かうのも、手かもしれないのだ」

(*゚∀゚)「マー、オレの武器は多人数に強いしね、でも横堀を二人で止められる?」

 

 

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:48:02.41 ID:5eg4vEWy0

(゚、゚トソン 「止めてみせます」

/ ゚、。 /「やるっきゃないのだ」

(*゚∀゚)「はぁ。さすがセレブは物事を決めるのが早いね。
     じゃあオレが柱に向かうさ、でも怖いなぁ、サポートしてよね」

/ ゚、。 /「そんな問題じゃないようなのだ、もう、見つかってる」

(;*゚∀゚)「え?」

ずしん、と重い音がして、横堀が上空から目の前に降り立った。
ダイオードはトライデント握りなおした。
第一ラウンド開始なのだ。

横堀の目が、黄色く光った。
ダイオードの直感が冴える。

/ ゚、。 /「レーザーなのだ!」

三人とも散開。
空気がぐらりと歪むのが分かった。
次の瞬間に、肌が焼けるような熱量を持ったレーザーが発射され、轟音と共に倉庫を貫いた。

つーは崩れた倉庫を蹴み台に、隣の倉庫に跳びのぼった。
屋根の上で、ぴょんぴょん跳びはね、後方宙返りを最後に決めて、ぺろりと舌を出した。

 



 

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:48:56.09 ID:5eg4vEWy0

(*゚∀゚)「にゃろめ!」

つーの腕と包丁が一瞬に巨大化する。
15メートルまで成長した銀の刃が、惑うことなく横堀に振り下ろされた。
びゆん、と風を斬る音がした。軌道にあった倉庫は障害にさえならない。

しかし、横堀に攻撃は通らなかった。
回避されたわけではない。
この強大な攻撃を、片腕一つで受け止められたのだ。

横堀の目が黄色く光った。

(;*゚∀゚)「レーザー出してこっち向くとかやめて……さ、ねぇー!!」

横堀はレーザーを出したままグルリと首を回し、360度滅茶苦茶に破壊した。
足場にしていた倉庫が壊れ、つーは背中から落下した。

だが、この攻撃は広範囲にわたるゆえ、大きな隙が生まれた。
ダイオードはその隙をつき、素早く懐に飛び込む。
ダメージを与えないモードのトライデントで、数撃叩き込んだ。




 
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:50:02.07 ID:5eg4vEWy0
ダイオードは叫んだ。

/ ゚、。 /「行くのだつー! こっちは任せろ!」

(;*゚∀゚)「ダイちゃん頑張って、死なないでね!」

/ ゚、。 /「するめなのだ!」

(゚、゚トソン 「あたりめ」

/ ゚、。 /「あったりめーなのだ!」

つーが駆け出す。
トソンが固定した火炎で、横堀に斬りかかった。

(゚、゚トソン 「ダイオード様、行きます!」

/ ゚、。 /「行け!」

(/‰ ゚)「……」

横堀は火炎を腕で受け止めた。
しかし、このタイミングでダイオードが武器のモードを変更した。
横堀の腹に撃ち込まれた数撃が、爆弾のように破裂する。

(/‰ ゚)「!」

横堀の体はわずかにバランスを崩した。
トソンはこれを見逃さず、火炎の剣で、横堀の首の関節を斬りつけた。
しかし、ダメージがあるようには見えない。横堀の目がぎろりとトソンへ向いた。

 

 

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:50:42.61 ID:5eg4vEWy0
(゚、゚トソン 「!」

(/‰ ゚)「ヌルいぞ」

振るわれた機械の大腕を、トソンは火炎で防御した。
しかし、それは凄まじい威力だった。
どん、と衝突した次の瞬間に、トソンは倉庫の瓦礫に埋もれていた。

( 、 ;トソン 「ぐ……」

耳に轟音の余韻だけが残っている。
肺が紙風船のようにしぼんでしまったようで、呼吸が難しく
背中は太陽を擦りつけられているような熱さと痛みだった。

したたり落ちた血を、トソンは見送った。

/ ゚、。;/「トソン! 救急車! 救急車!」

ダイオードはトソンに駆け寄った。
トソンは左手を軽く挙げた。

( 、 ;トソン「問題ないです……、ただ若干予想外でございました」

/ ゚、。;/「立てるか? 大丈夫か?」

(゚、゚;トソン「……ダイオード様は、今悲しみでございますか?」

/ ゚、。;/「そっそそっそりゃそーなのだ、悲しみなのだ」

(゚、゚;トソン 「それはダメでございます……ダイオード様はいつも、喜びでなくては……」



 
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:51:26.62 ID:5eg4vEWy0

トソンは立ち上がった。
横堀はその場に立ちつくしていた。

(゚、゚トソン 「不覚でした、次は首にねじ込みます」

(/‰ ゚)「……やっテミろ」

/ ゚、。 /「硬いのだアイツ、一筋縄ではいかんぞ……」

(゚、゚トソン 「わたくしの忠義に比べればゼラチンも良いところです」

銃声が響く。
横堀の展開された胸部から、勢いよく銃弾が発射された。
まるでトーチカのような、圧倒的な弾幕だった。

/ ゚、。 /「こっちへ来るのだトソン!」

倉庫を盾に逃げ回るが、それさえ破壊して重機関銃の攻撃は迫る。
横堀はトリッキーな攻撃は一切ないが、火力と装甲が尋常ではない。
小さな要塞が歩いているようなものだった。

 

 

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:52:13.80 ID:5eg4vEWy0

ダイオードの頭に、嫌な予感が立て続けに走る。

/ ゚、。;/「先回りされてる気が……」

正面から、横堀が猛スピードで向かってきた。

(゚、゚;トソン 「速い……!」

/ ゚、。;/「二手に別れるぞ!」

ダイオードはトソンと反対方向に足を向けた。
間一髪で横堀の攻撃から逃れ、呼吸荒く、また別の倉庫の陰に隠れた。

/ ゚、。;/「あんなやつの攻撃直に食らったらおしまいなのだ」

そして、どうやってダメージを与えようか、ダイオードは考えた。
トソンは意気込んでいるが、火炎の攻撃は通らないと考えて良い。
あの装甲の硬さ。超火力の攻撃もそうだが、あの装甲をうち破るのは難しい。

ダイオードは思い出す。
我は奴の腹に八撃入れて、同時に破裂させた。
並の人間ならこれで意識を失う。つーの場合でも十撃ほどだった。

しかし、横堀は多少バランスを崩した程度、ダメージを受けた様子はない。
果たして何撃加えれば、奴にダメージらしいダメージを与えることが出来るだろうか。
十撃か、三十撃か――もしかしたら百なんて事も。


 
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:54:52.93 ID:5eg4vEWy0

側の倉庫の壁が吹き飛んだ。
巨体の頭部についた、赤く光った目玉がダイオードを捕らえる。

(/‰ ゚)「見ツけタゾ……」

/ ゚、。;/「そんな簡単に崩れる壁じゃないと思うのだけれど――」

(/‰ ゚)「首をモいデヤロう……!」

紫の禍々しい気が見えた。
瞬間、横堀の右腕が突き出された。

/ ゚、。;/「ひうぅっ!」

にわかに信じることなど出来ぬ速度だ。
予感を頼りに、ダイオードはすんでのところで上体を反って、回避した。

それから伸びきった腕に、二撃叩き込み、
きびすを返して、思い切り駆けだした。

/ ゚、。;/「1on1でもやろうかと思ったけど、こいつぁ無理なのだ!」

(/‰ ゚)「……」

 

 

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:55:57.31 ID:5eg4vEWy0


休む間もなく幾度目かの予感が走った。ここまで間を開けずに感じたのは初めてだった。
駆けながら振り向くと、横堀は片膝を突いて、両肘を向けていた。
角を曲がろうとしたときには、すでに銃声が鳴り響いてしまった。
散弾銃だ。

/ ゚、。;/「いっ!」

倉庫の陰に飛び込んだが、逃げ遅れた足に、弾丸が突き刺さった。
ダイオードの目の前の倉庫に、細かな穴が無数に空いていた。
今逃げ遅れていたなら、蜂の巣になって即死だったに違いない。

/ ゚、。;/「くっそぉ……」

踏み出そうとして、ダイオードは脚のダメージを思い知らされた。
右脚がはじけて、多少痛みはするものの、震えるばかりで感覚がなかった。
歯を食いしばって、足から血が出ていないと自分に言い聞かせたが
傷穴は蛇口のように血を垂れ流して、止まるところを知らなかった。

/ ゚、。;/「今のでたった二撃だぞ……あんなの……どうやって」

絶望は絶望を呼んだ。
先の倉庫の陰から、横堀がぬらりと姿を現したのだ。
その顔に、表情はない。ダイオードは立ち止まった。

思わず呻き声が出る。

 

 



106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:56:41.82 ID:5eg4vEWy0

/ ゚、。;/「なっ……うう……」

(/‰ ゚)「……」

/ ゚、。;/「ぐ……」

ダイオードに背中を向ける勇気はなかった。

(/‰ ゚)「戦いとゲームは異ナる……」

/ ゚、。;/「……」

(/‰ ゚)「遊びではナい……貴様が、トップレべルだろうと
      俺達幹部を、倒すことは、到底不可能」

横堀の目が、眩しいほどの黄金に輝き出した。

(/‰ ゚)「一人目ダ」

横堀の目が光り
ダイオードの目に涙が浮かんだ

その時だった。

 



 

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:58:01.86 ID:5eg4vEWy0

(#´_ゝ`) 「横堀ィ――ッ!!」

(/‰ ゚)「!?」

兄者がどこからともなく現れ、その大槌で、横堀を殴った。
ごうんと鈍い音がして、不意をつかれた横堀はバランスを崩した。
そこにもう一人の人影が浮き上がる。

(゚、゚トソン 「ダイオード様!」

(#´_ゝ`) 「トソン! 行くぞ!」

(゚、゚トソン 「かしこまりました」

兄者とトソンが同時に横堀に攻撃を仕掛けた。
大槌と火炎扇、二つの強大な衝撃を受けた横堀の体は吹き飛んだ。
派手な音を響かせて、倉庫の壁を突き破り、飛んでいった。

トソンはすぐさまダイオードに駆け寄る。

(゚、゚トソン 「お怪我はありませんかダイオード様」

ダイオードは目をこすって、涙をごまかした。

/ ゚、。 /「へ、へっちゃらなのだ、それよりも――トソン?
       兄者がどうして此処に、いるのだ。トソンが呼んだであるか?」

(゚、゚トソン 「それが……」

 

 

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:58:57.72 ID:5eg4vEWy0

兄者はダイオードを大槌で叩いた。
すでに200文字の文を読まされていたダイオードの傷は、一瞬で回復した。

( ´_ゝ`) 「こっちで爆発が見えた。それに――弟者が教えてくれた」

/ ゚、。 /「おとじゃ?」

兄者は破壊した倉庫を、そしてその先で倒れている横堀を睨みつけた。
大槌を肩にかけ、横堀に指を指した。

( ´_ゝ`) 「弟を倒したお前を倒さなければ、兄としての示しがつかない……。
       サイボーグ横堀! 貴様をスクラップに変えることが俺の願いだ!
       兄の威厳を保つために、粉みじんに砕いてやる。ネシひとつ残すものか!」

横堀は瓦礫から起きあがった。
その体には、傷一つついていなかった。

(/‰ ゚)「戯言ヲ……」

弾丸の装填音が、空間に醜く響きわたった。

 

 

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/01(木) 23:59:39.00 ID:5eg4vEWy0

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

荒巻の手引きでオオカミの闘技場に侵入したモララーは
中にいたニューソク国王を殺し、願いを叶える水晶を手に入れた。
しかし、水晶には闘技場のルールと同じ制限が課せられていた。

モララーは地下倉庫の、武器の失敗作品を手にして、その問題を解消した。
外に出た頃にはすでに、ポンとコンが都市を制圧しており
二人とも満身創痍だった。特にコンは好戦的で無鉄砲な性格のため、目も当てられぬ姿だった。

荒巻の頭脳を手に入れ、ニューソクを潰す計画は更に現実味を帯びた。
そして、上半身だけとなってもまだ生きていた、人外ともいえる、最強の戦士横堀を改造し
サイボーグ横堀として蘇らせて、仲間に加えた。
また、横堀の改造の実験体も兼ねて、瀕死だった双子の少女も、改造しておいた。
更に夢は現実へと近づく。

/ ,' 3「貴様は何故、ニューソクを潰そうとしているのじゃ?」

 



 

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:01:21.90 ID:t0PfKuoC0

その後、ニューソクを"この手で"叩くために、最強の武器を欲した。
それにはやはり水晶を使うしかなかったため、はじめはどこかで闘技場を開こうかと企てた。

しかし、モララーの攻撃は魔界に大きな波紋を呼んでいた。
魔界第二の国家オオカミが潰れたことによって、戦争を起こしていた国も、自国防衛のために
続々と停戦協定を締結しだした。

これほどまでに警戒されていては、一種道楽と言える闘技場など、誰も参加はしないだろう。

そんな時に、荒巻の"能力"によって、過去に異世界へ渡った人間がいることが判明した。
不良品の武器を異世界の人間に渡せば、闘技場と同じ事が出来るかもしれないと考えた。

また、荒巻によって、ロボット(荒巻曰くマシーン)を作り出す技術が手に入ったため
ロボットにも武装させようと、最強の武器以外にも、強力な武器を入手しようと計画した。
そのためには、『武器化を進行させる武器』が必要だった。

武器を作り出すことも、荒巻の頭脳があれば実現した。
ただし、それには時間がかかった。試作品は二年かかって作り上げた。
これはポンが一人で戦うことを想定して作った、ポンも喜んでそれを受け取った。

更に四年かけて、『武器化を進行させるレイピア』をつくった。
武器の硬化が複雑だったため苦戦した、しかし、これで異世界の人間を武器に変えることも出来るだろう。
参加者のほとんどを武器に変えれば、ニューソクを完璧に潰すことが出来る。

 

 

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:03:11.39 ID:t0PfKuoC0

そしてついに、異世界へ進んだ。
入り口は海の底にあった。荒巻の聞いていた伝説の通りであった。
しかしたどり着いた場所は小さな世界で、境界と呼ばれる場所だった。

モララーはここに、Сибиръ(スィビーリ)と名付けた。
しかし、舞台はもう一つ奥の真の魔界だったため、ここには長居しなかった。

真の魔界の扉を開くと、資源が充実し、文化レベルも私達の住む世界とさほど変わらない魔界が現れた。
ここなら大丈夫だと思った。モララーは参加者に詮索されないよう
自らの世界を魔界と呼び、この世界を敢えて現界と呼ぶことにした。

しかし、現界には大きな問題があった。
現界には魔石や、魔力という概念が、著しく欠けていた、死んだ人間も魔石に変わらず、食物のように腐るだけだった。

そして空気中の魔力濃度も低かった。
実験してみると、武器装備者が気絶すると、武器は壊れてしまった。
武器装備者から発せられる、わずかな魔力の供給が唐突に消えるためだと思われた。

そのため、最終的な闘技の舞台は、Сибиръでやろうと決めた。
Сибиръは魔界と同じように魔力濃度は濃かった。
これならば、十分に武器化した人間を、武器に変えることが出来る。

そして、Сибиръに工場とホテルを建てて
水晶の制限を着々とこなしていった。
そして情報の開示に取りかかろうとしたとき、ハイン、渡辺の調査であることが分かった。

 

 

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:04:18.95 ID:t0PfKuoC0

从 ゚∀从「どうやら、二つの世界が繋がったことで、現界の各地で物が消え始めているようです」

从'ー'从「このままではぁ、全部消えちゃうかもしれませぇん」

モララーは焦った。
ここまでして準備を整えたというのに、参加者に消えてもらっては困る。
まだ十分に設備は整っていなかったが、すぐさま闘技を開始することにした。

時間に余裕があり、夢を持っており、体力がある人間。
それには高校生が当てはまった。魔界と同じ学校制度だった。

そしてランダムに手紙を送りつけ、横堀をリーダーとして
荒巻の作ったロボット達で、逐一全て戦闘の報告をさせた。
最低条件の一万人に到達する頃には、最初の頃から二週間以上経っていた。

このごろから横堀が不穏な行動を示すようになった。
完全に洗脳したはずだったが、最強の戦士は侮れない。しかし構っている余裕もなかった。

こういった過程の中で、モララーは密かに"ヒート"を蘇らせることに成功した。
現界へ渡る前に、彼女の魔石を掘り起こし、それをベースに、全ての技術を駆使してヒートを蘇らせた。

サイボーグは死にかけに魔石を入れてつくるが、ヒートは魔石を再生した形になるため
単純な文節の分解しか出来ず、成長も全くしなかったが、それはヒートだった。
おそらくこれから時間をかけて、私の愛したヒートへ変貌を遂げるだろうと思った。

一回戦が終わると、情報開示はギリギリで終わった。
しかし、本は不自然な訳文のようになったり、文字の違いに気付かず作ってしまったホテルの
訂正などは、ずさんな物になってしまった。

 

 

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:05:36.06 ID:t0PfKuoC0

そして参加者達は、願いを叶えるわけでもなく、モララーの目的を止めるわけでもなく
自分たちの世界を救うために、モララーへ刃を向けた。
敗者復活戦を発見して、Сибиръを支える四つの柱を壊そうと躍起になっている。

モララーは一つの柱にもたれかかって、空を見上げていた。
くすんだ、魔界のような空だった。それもヒートが一度死んだ後の空。
モララーは側のヒートに話しかけた。

(::・∀・)「ヒート、どこかで遊んできなさい」

ノパ听)「モララーは遊ばない?」

(::・∀・)「うん、僕はこれから仕事があるからね」

ノパ听)「そうか……」

(::・∀・)「ごめんね。でもあっちへ行っちゃダメだよ、悪い人たちに何かされてしまうから」

ノパ听)「わかった!」

 


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:06:50.60 ID:t0PfKuoC0

ヒートはホテルの方向に目もくれず、駆けていった。
もう少しで全てが手に入る。ヒートのための全てが。

(::・∀・)「……」

私が作り出した三体のロボットは、どれだけ奴らにダメージを与えているだろうか。
そしてここには誰が来るだろうか、参加者は二十人ほどいたはずだ。

しかし、必ず私の元へ来るであろう人間が、一人いる。

(::・∀・)「ギコ……異世界への扉を開くことが出来る能力を持った魔人の子孫か……」

モララーは視線の先の森をぼうっと見つめた。
もう少し、もう少しだ。モララーはヒートを遊びに行かせたことを後悔した。

(::・∀・)「ヒート……」

モララーの胸は、締め付けられるように痛んだ。

 

 

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:07:58.01 ID:t0PfKuoC0

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

ホテルの四方から、攻撃に向かった奴らが取り逃がしたロボットが
続々と押し寄せてきた。
ホテルの屋上に上って、クーは弓を構えた。

川;゚ -゚)「あいつら……サボりすぎだ」

クーはきりりと弓をしぼっては、視界に映った敵を撃った。
しかし、距離が離れているためか、一撃では倒せなかった。
あの大群と衝突するのは時間の問題だろう。

クーは溜め息をついた。
兄者は、ロマネスク( ФωФ)のコピー能力で回復したが
何かに吸い寄せられるようにして、右側へと駆けだしてしまった。
これではロマネスクの能力も発揮しにくい。

川 ゚ -゚)「計画が狂いっぱなしだ……」

 

 

119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:09:18.59 ID:t0PfKuoC0

真下ではショボン(´・ω・`)がせっせと水を撒いて
ロマネスクは"下"から飛んできたレーザーの様子をうかがっていた。
ハイン从 ゚∀从は、ホテルに残っていたロボットを改造して、味方に仕上げているらしかった。

(´・ω・`)「よーし、水撒き終わったぁー」

接近戦はほとんどショボンに任せることになるだろう。
果たして守りきれるだろうか。
クーは不安を抱えたまま、ぐるりと体を回した。

川 ゚ -゚)「……ん」

一つ、見慣れない影が見えた。
無骨な他のロボットと違い、その形は人間に近い。
クーは気がついて奥歯を噛みしめた。

川 ゚ -゚)「渡辺か……!」

从'ー'从

どこに潜んでいたのか、渡辺がホテルに向かって全力で駆けていた。
ハインの話では、渡辺は洗脳されてしまったということだったが
あの眠たげな表情は間違いなく渡辺であったため、クーは考えた。

彼女も我を取り返してるのではないだろうか。

 

 

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:10:13.14 ID:t0PfKuoC0

川 ゚ -゚)「いや……」

思い始めて、すぐにその考えを振り払った。
冷静に考えることは必要だが、判断に遅れが生じてはならない。
クーは弓を引き絞り、渡辺に向かって射った。

風を切って直進した矢が、渡辺の胸に刺さった――

――かに思われた。

川 ゚ -゚)「私の攻撃は予想済みというわけか」

放った矢は、渡辺の胸の前で捕らえられていた。
この距離では敵の防御も間に合う、クーの姿を認めているならば尚更だ。

しかし、攻撃を受け止めても表情を一変させない渡辺は間違いなく敵だった。
クーは舌打ちをして、来たるべき衝突に備え、自分の能力を確かめた。
素直クールは、ついに武器化した。心の中でそう唱え、"あの"イメージを明確にする。

川 ゚ -゚)「世界が滅亡する直前だからこそ、出せる力もあるものだ」

クーの体が電気のように歪んだ。

 

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:11:31.39 ID:t0PfKuoC0


    ・

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    ・

    ・

ミルナはレーザー照射装置を叩き割った。
多くの機械兵を倒さずに突破したが、柱をはっきりと視認できるところまで行進した。
ミルナは長い息を吐いた。

( ゚д゚)「これを操作できる位置に研究所はあるって事だな」

(*゚―゚)「そういう、こと、でしょうね……」

(;゚д゚)「……」

 

 

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 00:12:52.43 ID:t0PfKuoC0

気丈に振る舞ってはいたが、しぃはあの破ニャン拳とやらを放ったせいで
明らかに体力を浪費していた。あごから汗がしたたり落ちている。

(;-д-)「大丈夫か」

(*゚―゚)「当たり前よ……あんぐらい、ちゃんと、修行して身につけたんだから……」

一足先に歩を進めていたデレが
小高い丘を登り切って声を上げた。

ζ(゚ー゚*ζ「あ! ミルナさん! 着きましたよ! ハインちゃんの言ってた研究所!」

( ゚д゚)「( <●><●>) 「本当ですか」

(゚д゚ )

( ゚д゚)「……本当か」

デレ以外の三人も、薄黄色の丘を登り切った。
目の前に広がったのは、急斜面の坂と、そのふもとに広がる研究施設だった。
柱を囲むようにして駐在している。

( ゚д゚)「……こいつは基地と言った方が自然だな」

 

 


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