( ^ω^)特殊戦闘部隊VIPPERS!のようです


2 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 22:49:05.04 ID:vu5WNRm/0

 
( ><)「……大丈夫ですか?」
 
 前を見ながら、助手席に座っているワカッテマスに声をかけた。
 脇見運転は事故のもと。気をつけて運転をしなくては。
 走っているのは、だだ広い荒野なのに、自分の慎重すぎる性格が少しおかしく思えた。
 
( <●><●>)「大丈夫ですよ」
 
 そう言ったワカッテマスは、いつもと変わらない様子だった。
 昨日、目を回していた姿はとても想像できない。彼があんなにお酒に弱いなんて、思わなかった。
 ブーンさんが激怒したのも、初めて見た。普段は優しいあの人が、あんなに怒ることも知らなかった。
 
( <●><●>)「そんなに心配しないでください」
 
 二日酔いにはなっていないようだ。少し胸を撫で下ろす。
 ジープは進む。この揺れの中を平然としているのだから、強がりでもないのだろう。
 
 荷台には、ロマネスクさんが乗っている。
 彼も昨日は酔っていたけど、あの人なら心配はいらない、と思う。
 
( <●><●>)「少し、遅れていますね」
 
( ><)「ご、ごめんなさいなんです」
 
( <●><●>)「責めているわけではないですよ」
 

 

 

3 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 22:51:11.78 ID:vu5WNRm/0
 
 ニューソク市を発って、二時間が過ぎようとしていた。
 僕ら三人は指令通り、早朝に『エコー市』へと向かっている。
 戦前は、漁業が盛んな街だったと聞いていた。
 
( ><)「……他の街は……」
 
( <●><●>)「?」
 
( ><)「どういう状況……なんでしょうね」
 
( <●><●>)「……」
 
 考えたくなかったことだった。
 でも敢えて口に出したのは、覚悟をしておきたいからだ。
 
 ニューソク市も、首都のヴィップ市もそうだ。
 戦火に包まれたかつての大都市は、見る影もなく、全てを焼かれ、全てが崩れていた。
 
 今進んでいるこの荒野にも、アスファルトの残骸や廃ビルの群れがちらほらと視界に入る。
 もっと、もっともっと街はあったはずなのだ。人も、生き残っていたに違いない。
 その人達が一体どうなったのか、そこまでは、考えたくなかった。
 
( <●><●>)「エコー市。ヴィップの漁獲量の大半を占めていた街。
         ヴィップ州の沿岸部はリアス式海岸が多いために、そちらの方面に海軍本部が作られていた。
        ……軍事施設がある以上は、標的にされる事は間違いなかったはずです」
 



 
5 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 22:53:02.29 ID:vu5WNRm/0
 
( ><)「……」
 
 彼は淡々と、戦前のデータを元に現実を語る。
 
( <●><●>)「戦前の人口は約十五万人。報告によると街はほぼ壊滅状態。
         恐らくは、今の人口は一万人にも……」
 
( ><)「もういいんです」
 
 自分から振っておいた事を、強制的に切り捨てた。 
 聞く前から、それはわかっていた。
 でもやはり、簡単に覚悟のできることじゃなかった。
 
 あの時は誰も、どうすることもできなかったから。
 最も人口が多く、防衛設備も整ったヴィップですら、あっさりと蹂躙されたのだから。
 軍も壊滅していたあの状況で、他の都市を援助するなんて、到底……。
 
 十五年前、まだ六歳だった僕でも鮮明に覚えている過去。
 きっとそれは、VIPPERSの誰もが。
 
( ><)「……ごめんなさいなんです」
 
( <●><●>)「いえ、気にしてません」
 
 相変わらず冷静な口調の彼は、本当に気にしていないのだろう。
 でもきっと、胸の内は僕と変わらないはずだ。
 


 

 

7 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 22:55:32.34 ID:vu5WNRm/0
 
( <●><●>)「ビロード」
 
( ><)「……はい」
 
( <●><●>)「過ぎてしまった事は、仕方ありません」
 
( ><)「……」
 
( <●><●>)「私達は全力で出来る事をするだけです。
         その為に、“力”を身につけたのですから」
 
( ><)「ワカッテマス……」
 
( <●><●>)「それは返事ですか?」
 
(;><)「え、ち、違うんです!」
 
( <●><●>)「ややこしいですね。『ワカ』と呼んで下さい」
 
(;><)「わ、ワカ?」
 
( <●><●>)「はい。前々からそう思ってました」
 
(;><)「……ワカ……くん」
 
( <●><●>)「……呼びやすいなら、それでも」
 

 

 

8 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:01:16.15 ID:vu5WNRm/0
 
 ワカッテマスは僕と同い年だ。
 いつも冷静な彼に大人びた印象をもっていたのだけれど……。
 今の会話で、少し親近感が沸いた。
 
( <●><●>)「では私も、ビロードの事は『ビロくん』と呼ばせてもらいます」
 
(;><)「えっ?!」
 
( <●><●>)「嫌ですか?」
 
(;><)「い、嫌じゃないんです! どうぞどうぞ!」
 
( <●><●>)「ではビロくん。よろしくお願いします」
 
( ><)「よろしくなんです!」
 
 僕をそう呼ぶのは、VIPPERSでは他にトソンちゃんだけだ。
 呼び名一つで、こうも雰囲気が変わるものなのだろうか。
 
 VIPPERSの仲間達は、家族のような存在だと思っている。
 十五年も一緒に過ごしてきたのだから、それは当然なのだろうか。
 
 でも、今の僕には家族というよりも、彼が───
 
( <●><●>)「頑張りましょう。ビロくん」
 
( ><)「……頑張るんです」
 

 

 

9 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:03:37.89 ID:vu5WNRm/0
 
 ワカくんは自分が悪と定めた人に容赦をしない。
 殲滅戦ではやりすぎることが多く、よく注意をされていた。
 猪突猛進なジョルジュさんよりも、だ。
 
 悪人には、罰を与えなければいけない。
 そうしないと、治安が悪化してしまうのは常識だ。
 それでも、人は人。悪人と言えども、人道に反した行為はできない。
 
 ブーンさんも僕と同じ様な考えを持っている。
 だからワカくんは、釘を刺されていた。
 
 悪を断罪する時の彼の瞳を、僕はとても恐ろしく感じていた。
 
 だけど、今のワカくんは。
 
( <●><●>)
 
 
 とても優しい瞳をしているように見えた。
 
 
───────────────────────────
 
 ─── act.3
 
                    ≪crash-α.fast≫.Start───
 
───────────────────────────


 

 

10 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:07:58.90 ID:vu5WNRm/0
 
( <●><●>)「……」
 
( ><)「……」
 
 過ぎて行く瓦礫の数が、増えてきていた。
 多分、もうここはかつての『エコー市』市内なのだろう。
 駆逐された建物は撤去されることなく、風化を待つものばかりだった。
 
 それに連れて、空気も重たいものになる。
 僕とワカくんは、自然と口を閉ざしていた。
 
 軍も、警察機関も全て壊滅してはいるが、それでも自警団はあるはずだ。
 定期的に連絡は受けていると聞く。徐々にだけど、街の復興はされているらしい。
 だけど、十五年経った今でも、凄惨な光景は残り続けていた。
 
 機械に囲まれて育った人間から機械を取り上げたらどうなるか。
 戦後、皆がそれを強制的に体験させられた。
 
 住居を建てるには土地が必要で、その土地は瓦礫に覆われている。
 それを片付けるには重機が必要だけど、肝心の重機がない。
 たとえ重機が残っていようとも、動かすためのガソリンがない。
 
 文字通り人の手で、復興をするしかないのだ。
 車が水で動いてくれるのが、せめてもの救いだった。
 
( <●><●>)「海です」
 
 その声に遠くを見ると、瓦礫の向こうに海が広がっていた。 

 

 

11 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:09:41.77 ID:vu5WNRm/0
 
( ><)「……」
 
 青い海に、真っ白な砂浜が広がる。
 空爆の影響だろうか、少しでこぼこしているように見える。
 だけどそれだけを見れば、海を見渡せる平和な街だと思えた。
 
 視線を前に戻せば、人影が見えた。
 その手前には、太い木材で造られたバリケードが横に広がっている。
 見れば、所々破壊されたような跡があった。
 
( <●><●>)「……」
 
 ここも、荒くれ者達に襲われているのだろう。
 一刻も早く、住民に危害を加える者達を片付けなくては。
 
 バリケードの手前で、車を止める。
 僕らが降りると、守衛だろうか、二人の男が声を上げた。
 
(守~Д~)「お前達、誰だ!」
 
 構える手には、自動小銃。
 僕は両手を挙げて、それに答えた。
 
( ><)「特殊戦闘部隊、VIPPERSです。連絡は行ってると思うんです」
 
(守~口~)「……証拠は」
 
( ><)「ここに」
 

 

 

12 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:10:59.92 ID:vu5WNRm/0
 
 一枚の封筒を渡す。中身を見れば、政府の人間とわかる物だ。
 守衛は中身の紙を取り出すと、太陽にかざした。
 
(守~口~)「……この透かし、間違いなく政府の紋様だ」
 
(守~Д~)「そうか……すまなかった」
 
( ><)「いいんです。仕方のない事ですから」
 
 守衛達は銃を下ろし、バリケードを開放してくれた。
 ジープに乗り込み、街の中へと進む。
 
(守~Д~)「向こうに見える白い建物が、自警団の本部だ。
      ……なるべく、静かに行ってくれ。住民達が怯えないようにな」
 
( ><)「了解です。ありがとうなんです」
 
 敬礼を交わして、徐行運転で進む。
 バリケードの中は、瓦礫の山が更に増えていた。
 危険だけど、撤去はできず放置するしかないのだろう。
 
 ニチャン大陸に地震がないのが、せめてもの救いだった。
 
( ><)「……ちゃんと自衛は、できてるみたいですね」
 
( <●><●>)「わかりませんよ」
 

 

 

14 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:13:18.15 ID:vu5WNRm/0
 
( ><)「え?」
 
( <●><●>)「あの雰囲気、相当に警戒をしています。
         恐らくは、何度も賊の襲撃を受けているのでしょう」
 
 それは僕も、バリケードの穴を見てなんとなくわかっていた。
 
( <●><●>)「賊からすれば、こういった街は貴重な収入源です。
         全滅させたら、今度は自分達が飢えてしまいます。
         だから多分、賊は圧力をかけているだけでしょうね」
 
(;><)「……」
 
( <●><●>)「許せません。早々に滅する必要があります」
 
 そう言ったワカくんの瞳は、さっきまでとは違った深さをもっていた。
 早く、任務を遂行しなくては。
 
( ><)「……はいなんです」
 
 決意を胸に、少し速度を上げて、自警団本部を目指した。
 
 
 
 ──エコー市・自警団本部──
 
(  ゚¥゚)「ようこそ、お待ちしておりました」
 
 自警団本部。三階にある部屋に通され、一人の男が僕らを迎えた。

 


 

16 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:15:20.74 ID:vu5WNRm/0
 
(  ゚¥゚)「私の名はフォルス=モナ。自警団のリーダーをしている者です」
 
( ФωФ)「吾輩はロマネスク。こっちがビロードで、こっちがワカッテマスである」
 
( <●><●>)「よろしくお願いします」
 
( ><)「よろしくなんです」
 
(  ゚¥゚)「ズモモモモ。そんなに硬くならないで下さい。
       さぁ、こちらへおかけ下さい」
 
 差し出された手の先には、年季の入ったソファーがあった。
 ……それにしても、変な笑い方をする人だ。
 
(  ゚¥゚)「……首都の様子は、どうですか?」
 
( ФωФ)「それなりに、復旧が追いついてきたところであるな」
 
(  ゚¥゚)「そう、ですか……」
 
( ФωФ)「……こっちは、どうであるか」
 
(  ゚¥゚)「……」
 
(  -¥-)「良い状況とは、言い難いです」
 
( ФωФ)「……」
 
( <●><●>)「やはり、賊の襲撃が?」


 

 

18 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:17:12.04 ID:vu5WNRm/0
 
(  ゚¥゚)「……やはり、というと、他の街もそうなのですね……」
 
( ФωФ)「治安は、悪化の一途を辿っている。それを防ぐ為に、吾輩達がいるのである」
 
(  ゚¥゚)「VIPPERSの噂は聞いています。軍の精鋭が集まった部隊だと」
 
( ФωФ)「その通りである」
 
(  ゚¥゚)「…………」
 
( ><)「……?」
 
 フォルスさんが、じっと僕らを見つめた。
 その表情からは、感情が読み取れない。観察眼の鋭い二人なら、わかるのだろうか。
 
(  ゚¥)
 
 視線を逸らした。
 彼が見る先には、窓。その先に見えるのは、僕も見た青い海と、白い砂浜。
 
 少しの沈黙が流れた。
 
( ><)「……」
 
( ФωФ)「フォルス殿?」
 
(  ゚¥)「……住民達……いえ、『私達』は……」
 
 彼は海を見つめながら、ゆっくりと口を開く。

 

21 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:20:22.53 ID:vu5WNRm/0
 
(  ゚¥)「軍の……首都の人間を、あまりよく思っていません」
 
( ФωФ)「……」
 
(;><)「ど、どうして……」
 
( <●><●>)「ビロくん」
 
 ワカくんを見ると、人差し指を唇の前に当てていた。
 静かに聞けと言う事だ。でも、フォルスさんは、何故。
 
(  ゚¥)「首都も大変なのは、わかります。でも、十五年は長すぎた」
 
( ФωФ)「……」
 
(  ゚¥)「十五年です。物資援助も何もなく、私達は放置され続けていた。
      最近になってやっと政府の人間が訪れたと思ったら、単に調査の為だった。
      ……まあ、今更食料を配られても、何も感じませんが」
 
( ФωФ)「……申し訳ない。政府を代表して、吾輩達が頭を下げよう」
 
( <●><●>)「……」
 
( ><)「……」
 
 立ち上がり、腰を九十度曲げて、頭を下げる。
 十五年の間、僕達は訓練を続けていた。
 フォルスさんに責められても、僕らにはどうしようもないことだ。
 

 


 

23 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:23:28.43 ID:vu5WNRm/0
 
 だけど僕らは、政府の人間だ。
 そうでなくても、彼の悲痛な思いは痛いほどに胸に届いた。
 だからこそ僕達は、頭を下げた。
 
(  ゚¥゚)「……頭を上げて下さい」
 
( ФωФ)「本当に申し訳ない」
 
(  ゚¥゚)「いえ……あなた方に怒りをぶつけてもどうにもならないことは……」
 
(   ¥ )「ですが……心にあるこの感情は……どうしても……」
 
( ФωФ)「……全力を以て、この街を支援すると約束する」
 
( <●><●>)「右に、同じです」
 
( ><)「守ります。必ず」
 
(   ¥ )「…………」
 
 彼は目を伏せたまま、拳を固く握り締めていた。
 本当は、怒りを撒き散らしたくて仕方がないのだろう。
 最初に落ち着いた雰囲気だったのは、自警団の長として自制を効かせていたから。
 
 今、彼は、一市民である自分と、自警団である自分と戦っているのだ。
 
 僕も胸が、締め付けられる。
 彼の気が済むなら、思い切り殴られてもいいと思った。




 

25 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:27:14.78 ID:vu5WNRm/0
 
(   ¥ )「長らく放置された事だけじゃ、ないんですよ」
 
( ФωФ)「……?」
 
(  ゚¥゚)「度々街を襲う、この街周辺にいるならずもの達……
       やつらの大半が、元軍人なのです」
 
( <●><●>)「───ッ!」
 
 ワカくんが、目に見えて動揺した。
 確かに、エコー市には海軍基地があったはずだ。
 街の状況を見るに、基地が壊滅している事は想像がついた。
 
 しかし、軍の人間がそこまで落ちぶれるなんて……。
 同じ立場の者として、どうしても信じる事ができなかった。
 何かの、間違いでは。
 
(;><)「……それは……確かなんですか……?」
 
(  ゚¥゚)「……間違いないです。私も、元軍人でしたから。
      知った顔を、見かけます。私自身、何度も誘われたりもしました」
 
(;><)「……」
 
( <●><●>)「……」
 
(# ФωФ)「……人を守る使命を捨てたというのか……!」
 


 

 

27 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:31:36.33 ID:vu5WNRm/0
 ロマネスクさんが、怒りを露わにした。
 ワカくんも多分、怒りを覚えていると思う。
 彼の大きな瞳が、少し細くなったような気がした。
 
 僕は正直、自分がどんな感情に包まれたのか、よくわからなかった。
 
(  ゚¥゚)「……上司からは命令がこない。ここにいた者は大概死んでますから。
      政府からも、勿論指示がない。私……彼らは、正義感だけで動いていました」
 
( ><)「……」
 
(  ゚¥゚)「しかしそれも、飢えには勝てませんでした。
       わかりますか? 日に日に食料が尽きていく恐怖が」
 
(  ゚¥゚)「最初こそ、住民達に食料を分け与えていました。
       しかしそれもすぐに底を尽き、自分達が食べる物まで無くなっていく……」
 
( ><)「……」
 
 僕達VIPPERSは、全員が戦争孤児だ。
 でも、たった一人で野に放たれたわけでもないし、一人で生きてきたわけでもない。
 ヴィップを核が覆う前に、僕達は避難させられていたからだ。
 
 政府によって。
 
 ……そんな僕達に、彼らに同情する権利が、あるだろうか。
 彼らの怒りを理解する権利が、あるのだろうか。
 
 怒りじゃない。
 僕の心にあるこれは、どうしようもないやるせなさと、申し訳なさだ。

 


 

29 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:33:35.13 ID:vu5WNRm/0
 
(  ゚¥゚)「最初に起こったのは、略奪です。辛うじて残っていた保存食から、全て」
 
(# ФωФ)「……!」
 
(   ¥ )「……人は、極限まで飢えたら、どうすると思いますか」
 
( <●><●>)「……」
 
 
 そんな。
 
 
 まさか。
 
 
 
(  ゚¥゚)「全てを奪われた住民達は、食べたんですよ」
 
 
 
 
 
(  ゚¥゚)「人間を」
 
 
 
 
 

30 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:34:53.30 ID:vu5WNRm/0
(# ФωФ)「何故……何故そんなことを?!」
 
(  ゚¥゚)「勿論、殺して食べたわけではないですよ。
       新しく死んだ人間から、順番にです」
 
(# ФωФ)「だが……それでも……!」
 
(  ゚¥゚)「……気が狂いそうでした……」
 
(   ¥ )「……人が、人を貪る光景……今でも夢にうなされます……」
 
(   ¥ )「……」
 
(  ゚¥゚)「あ、私は食べていませんよ」
 
(;><)「……何か、何か他に手はなかったんですか?!
      ほら、海もあるじゃないですか! 魚とか……船は出せないにしても、つ、釣りとか!」
 
 受け入れきれない現実に、思いついた言葉が次々と溢れ出る。
 僕はきっと、おかしい事は言っていないはずだ。
 
 だって、ここに来る前ワカくんも言っていた。
 この街は、漁業が盛んだったって。
 それなら、それなら……。
 
(  ゚¥゚)「……海は……」
 
(;><)「……?」
 
(  ゚¥゚)「見ましたか? あの海を」

 

 


32 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:38:28.17 ID:vu5WNRm/0
 さっきも見た。そしてここからも海は見える。
 また、海を見た。そこには変わらない、青と、白……し、ろ。
 
( <●><●>)「……ッ」
 
(  ゚¥゚)「……人は、暑ければ水を求めます」
 
(  ゚¥゚)「核に焼かれた街の中、水を、海を求めたんですよ。数千、数万の人々が」
 
(;><)「そんな……じゃあ、あの白い砂浜は……」
 
(  ゚¥゚)「……骨ですよ。水を求めて、そこで力尽きた人達の」
 
( ФωФ)「……」
 
 言葉が、出なかった。
 あの一面の白が、全部、人の。
 
(   ¥ )「地獄、でした。凄惨な光景から目を逸らしても、海風が異臭を運んで……
       そんな海で、釣りなどとてもできるわけが……」
 
(;><)「……」
 
( ФωФ)「……」
 
 どうしようも、なかった。
 この人は、ここの人達は、十五年もそんな中で生きてきたというのか。
 そんな地獄の中で、はたして僕は正義を貫く事ができただろうか。
 
 わからない……わからない……。

 

 


34 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:42:16.63 ID:vu5WNRm/0
 
( <●><●>)「……ですが、貴方は今こうしている」
 
(  ゚¥゚)「……」
 
( <●><●>)「自警団の長となり、住民達を守っている」
 
( <●><●>)「正義は確かに、残っています」
 
(  ゚¥゚)「……」
 
( <●><●>)「貴方の強い意志に、敬意を表します」
 
 そう言った後、ワカくんは立ち上がり、敬礼をした。
 大きな瞳に、フォルスさんの姿を映して。
 
 僕は、動けなかった。
 ロマネスクさんも、動かなかった。
 
 そうなのだ。僕は、僕達は任務を遂行するだけでいい。
 軍隊なんかにはほど遠い、統率も取れていない賊達と、戦えばいい。
 
 でも彼らは、他のモノとも戦わなければいけないのだ。
 飢え、病気、生活の確保、全て、自分達だけで。
 エコー市だけじゃない。きっと、どこの街もそうだ。
 人の少ない村や町は、それに耐えきれず、消えていくしかなかったのだ。
 
 そんな地獄なら、それこそ、死んだ方が───
 

 

 


36 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:45:29.06 ID:vu5WNRm/0
 
( <●><●>)「貴方は今日まで生きてきた。今日からは、私達が守ります」
 
(  ゚¥゚)「……」
 
( <●><●>)「命に、代えても」
 
(   ¥ )「……ありがとう」
 
( <●><●>)「……では、その為に最初の任務に取りかかるとします」
 
( <●><●>)「お二人とも、いきましょう」
 
( ФωФ)「……わかったである」
 
(;><)「……はいなんです」
 
 立ち上がる。
 フォルスさんは俯いたまま、口を開かなかった。
 
(;><)「……失礼します」
 
 部屋を出て、僕が扉を閉めようとした時。
 
 
(   ¥ )「……私は……弱いさ……」
 
 フォルスさんが、そう呟いたのが聞こえた。
 
 少しの間彼を見つめた後、僕は静かに扉を閉めた。

 


 

40 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:49:14.04 ID:vu5WNRm/0
 
 
 ──エコー市・自警団本部・屋上──
 
 
 淡々と、ビーコンの設置を行っていた。
 フォルスの話が尾を引いているのだろう。誰も、口を開かなかった。
 
 吾輩も、その例に漏れず。
 
( ФωФ)「……」
 
 遠くに目をやれば、美しく、壮大な大海原が広がっている。
 寄せては引き、寄せては引いていく波。
 一体、あの波と共に海へと進んでいった者達は、どれだけいるのか。
 
 改めて、戦争というモノがなんなのか考えさせられた。
 きっかけは、知らない。物心ついた時から、二大強国が戦争をしていた。
 そして突然、ヴィップが戦火に巻き込まれたのだ。
 
 いや、正しくは、世界中が。
 
 無差別に、河原の小石でも放るように、核が撃ち込まれた。
 常軌を逸している。何故両国はあのような行為に及んだのか、いくら思考を繰り返してもわからない。
 
 狂っていたのか。
 恐らくは、そうだ。
 
 戦争は、人を狂わせるモノなのだ。
 

 

 


42 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:53:18.97 ID:vu5WNRm/0
 
 自問は止まない。
 人が人を食らう。それ以前に、人が人を殺す。
 そもそもそれこそが、おかしいのだと考える。
 
 感情的に、エゴの為に、吾輩達のように、正義のために。
 理由を掲げて、人を殺す。
 
 自分がしている事が間違っているとは思わない。
 弱き者達は、守らねばならない。
 
 それこそが、吾輩の正義。
 
 確かめるように、一つ一つ自答をして行く。
 正義は、貫かなければならぬ。
 約束は、はたさねばならぬ───
 
( <●><●>)「ビロくん。そこを押さえてください」
 
( ><)「あ、わかったんです」
 
 久しく聞こえたその声に、思考は中断された。
 どちらにせよ、考えても仕方のない事だ。
 答えは、出ているのだから。
 
 思考は迷い。迷いは信念を揺らしてしまう。
 頭を切り換えるに、彼らの声は丁度良い機会だった。
 
( ФωФ)「ビロくん?」
 

 


 

44 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:55:43.83 ID:vu5WNRm/0
 
 ここへと出発する前と、ビロードの呼び名が変わっていた。
 疑問、というよりも、少しイメージにそぐわないワカッテマスに、純粋に興味が沸いた。
 
( ><)「移動中にお話してたんです。こう呼び合おうって」
 
( <●><●>)「私が『ワカッテマス』だとややこしいので変えてもらいました」
 
( ФωФ)「ああ……」
 
( ><)「ワカッテマスはこれからワカくんって呼ばせてもらうんです!」
 
( <●><●>)「良い機会なので、私もビロードの事はビロくんと」
 
( ФωФ)「なるほど。そうであったか」
 
( ><)「ロマネスクさんもそうしますか? 『ロマ』さんって……」
 
 
 
 ───ロマ。
 
 
 
( ФωФ)「……いや、吾輩は今まで通りでいいのである」
 
( ><)「わかったんです!」
 
( <●><●>)「……」
 


 

 

46 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/27(土) 23:58:40.83 ID:vu5WNRm/0
( ФωФ)「……」
 
 ビロードが『ロマ』と言った時。
 そのすぐ後に、懐かしい声が頭に流れた。
 
 昔、吾輩をそう呼ぶ『友』がいた。
 バカで、単純で、純粋な友がいた。
 
 勿論、VIPPERS全ての隊員達が、仲間であり、家族であり、友であることは同じだ。
 だがその中でも、心から友と呼べる者がいた。
 
 こういう存在を、『親友』、とでも呼ぶのだろうか。
 
( ФωФ)「……」
 
 もう、八年も前に、そいつは死んだ。
 あの骨達と同じ、海の中で、永遠に眠っているはずだ。
 
 
 ───ロマ。
 
 
(;ФωФ)「……ッ」
 
( ><)「? ロマネスクさん?」
 
(;ФωФ)「……な、なんでもないのである」
 
 先程以上に、集中力を奪われた。
 まだ、拭いきれていないということか。

 


48 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:02:44.91 ID:KOmUbbft0
 
 活発な少女だった。
 異性としての意識は、特になかった。
 純粋に、気があっていただけだ。
 
( ФωФ)「……」
 
 ワカッテマスは吾輩が何を考えているか察しているだろう。
 吾輩も、まだまだ未熟だ。
 未だ友の死を、受け入れる事ができずにいる。
 
( ФωФ)「……」
 
 静かに、拳を握る。
 アイツと交えた拳の感覚が、鮮明に思い出せる。
 力強い拳、熱い心、腹から上げたあの声が。
 
 生きているのだ。
 
 吾輩の中で、彼女はまだ生きているのだ。
 
 だから、吾輩は二人分の信念を背負い、貫かねばならぬ。
 
 その身で果たせなかった、彼女のためにも。
 

 


 

50 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:04:03.02 ID:KOmUbbft0
 
(;ФωФ)「さぁ、早く作業を終わらせるのである」
 
( ><)「はいなんです」
 
 
 ───いっしょに、悪人達をやっつけよう!
 
 
( ФωФ)「……」
 
 
 約束は、守るさ。
 吾輩の正義は、いつもお前と共にあるのだから。
 
 
 お前が残るこの拳で、必ずだ───
 
 
 
 
 ──エコー市・自警団本部・客室──
 
 
 ビーコンの設置を終えた頃、陽は既に沈みかけていた。
 電波が安定するまでに、まだ数日はかかる。
 治安維持を図りつつ、それまで吾輩達はここに留まる必要があった。
 

 

 


52 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:06:14.61 ID:KOmUbbft0
 
( ФωФ)「うむ。良いお茶である」
 
( <●><●>)「それはどうも」
 
 ワカッテマスが煎れた茶は、うまかった。
 どこから調達したのかは謎だが、口に広がる渋みが、心地良い。
 
 あてがわれた部屋は、三人が寝るに十分すぎる広さだった。
 この自警団本部は、焼け残った建物を改装して造られたらしい。
 我々は野宿でいいと言ったのだが……待遇に、感謝しなくては。
 
( ><)「他のみんなも、もう街へ着いてるんでしょうか」
 
( ФωФ)「何もなければ、今頃は吾輩達と同じ様にしているであろう。
        心配はいらぬよ。彼らなら、大丈夫である」
 
 ブーンによる選出は、非常にバランスが取れていた。
 吾輩達のαチーム、流石のβチーム、そしてショボンのγチーム。
 どのチームも、人選に問題は見受けられない。
 
( ><)「……はい」
 
 フォルスの事で、士気が落ちているのだろう。
 ワカッテマスはいつもと変わらない様子だが、ビロードには酷だったようだ。
 吾輩は吾輩で、また色々と考えさせられたのだが。
 
 結局は、動くしかない。
 それはビロードも、わかっているはずだ。
 

 

 
54 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:08:52.96 ID:KOmUbbft0
 
( <●><●>)「……」
 
( ФωФ)「?」
 
 吾輩とワカッテマスが、同時に扉を見た。
 少し遅れて、ビロードも視線を向ける。
 
 人の気配がしたのだ。
 
 吾輩が扉に近づくと、扉の向こうでノックをする音がした。
 
 「失礼します」
 
 フォルスの声に、吾輩は扉を開き迎え入れる。
 
(  ゚¥゚)「……先程は、失礼しました」
 
 入り口で立ったまま、いきなり頭を下げられた。
 誰も責める気など無いが、彼がそうしたいなら、何も言うつもりはなかった。
 少しの間の後、彼はゆっくりと頭を上げ、言葉を続ける。
 
(  ゚¥゚)「……明日、賊達がここにやってきます」
 
( ФωФ)「明日?」
 
(  ゚¥゚)「はい。奴等は定期的に街を訪れるのです」
 
( ФωФ)「……年貢、というわけか」
 

 


 

56 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:12:42.43 ID:KOmUbbft0
 
 殺されたくなければ、期日までに食料を寄越せと。
 そういうことなのだろう。
 
 はらわたが煮えくり返りそうになったが、向こうから現れるなら、都合が良い。
 
(  ゚¥゚)「自警団、と言っても名ばかりです。
       せめて住民達に危害が及ばぬよう、間に立つ事しかできません……」
 
 彼はそう言った。
 だが最初は、きっと勇敢に戦ったのだろう。
 
 元軍人達の集団となれば、基地は既に奴等の手に落ちていたはずだ。
 いくらか武器も、そこに残っていたはず。
 武装した軍人の集団に、一般人が勝てる見込みはゼロに等しい。
 
( ФωФ)「……?」
 
 何かが、違う。
 
(  ゚¥゚)
 
 昼に会った時の彼と、何かが。
 
 それは、吾輩に似た様な……。
 
(  ゚¥゚)「この街を……よろしくお願いします」
 
 その一言を残して、フォルスは部屋を立ち去った。
 

 


 

58 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:15:03.63 ID:KOmUbbft0
 
 吾輩は、確たる『色』をフォルスに見た。
 
( ФωФ)「ワカッテマス」
 
( <●><●>)「ええ。私も気が付きました」
 
( ФωФ)「流石であるな」
 
(;><)「?」
 
 フォルスが最後に残した言葉に見た、色。
 
 
 即ち、覚悟。
 
 
 そして、瞳に浮かんでいたもの。
 吾輩と、同じ瞳をしていた。
 吾輩だから感じ得た、決意の火。
 
( ФωФ)「ビロード」
 
(;><)「は、はい」
 
( ФωФ)「行くであるぞ」
 
 
 ───明日では、遅いのだ。
 

 

 


60 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:17:46.90 ID:KOmUbbft0
 
 
 ──エコー市郊外・元海軍基地周辺──
 
 
 海から吹きつける風が、相変わらず心地悪い。
 肌を舐めるように、絡みついてくる。
 はたしてそれは風だけの所為なのだろうか。
 
(  ゚¥゚)「……」
 
 いつからか異臭がすることは、なくなった。
 臭いに慣れたのか、鼻が馬鹿になったのか、それはわからない。
 
 『来たか』
 
 闇の中で、声がした。
 それは私が、とてもよく知っている声だ。
 
 驚かず、声のした方を見る。
 私はこいつに、会いに来たのだから。
 
( ´ー`)「相変わらず暗い顔してんな。フォルス」
 
(  ゚¥゚)「お前はいつもと変わらないな。シラネ」
 
 シラネ=ヨーダ。
 軍人時代の友であり、賊の長である男。
 

 

 

61 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:19:30.39 ID:KOmUbbft0
 
( ´ー`)「次が最後だ。あの時、俺はそう言ったな?」
 
(  ゚¥゚)「ああ、覚えている」
 
 次の誘いが、最後だ。
 前に会った時、シラネはそう言っていた。
 
 俺を賊に誘うのは、これが最後という意味だ。
 かつての友のよしみでとは、よく言ったものだ。
 
( ´ー`)「なぁ、フォルス。悪い事は言わねえ。こっちへこいよ」
 
(  ゚¥゚)「……」
 
( ´ー`)「こんな世だ。こうして生きるのが賢い。弱者は死ぬ。当たり前のことだろ?」
 
(  ゚¥゚)「……そうだな……弱者は、死ぬ世界だ」
 
( ´ー`)「おまけに、あいつらは人を食ったバケモンだ」
 
(  ゚¥゚)「───ッ」
 
( ´ー`)「なぁ、あいつらは人間じゃねえんだよ。そいつらから食料を奪う。
      楽だぜ? 何を迷う必要があるんだよ」
 
(   ¥ )「…………」
 
 こいつは……俺の友は……こんな事を言う奴だったか……?
 人が安心して暮らせるよう、頑張ろうと、俺達は軍人時代に誓ったはずじゃないか。

 

 

62 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:21:48.10 ID:KOmUbbft0
 
 変わった。
 変えられてしまった。
 
 あの戦争が全てを変えて、狂わせてしまった。
 
 
 もう。
 
 
(   ¥ )「もう……戻れないのか……」
 
( ´ー`)「あん?」
 
(  ゚¥゚)「あの頃に、人を守ろうと誓ったあの頃には、戻れないのか?!」
 
( ´ー`)「人じゃねーよ、あいつらは。バケモンだ」
 
(# ゚¥゚)「……ッ!」
 
( ´ー`)「もう、守ってもらうだけじゃ、生きていけねーんだよ。
      自分の身は自分で守る。弱い奴は死ぬ。それが今の世界の常識だ」
 
(   ¥ )「…………そうか」
 
( ´ー`)「なぁ、フォルス」
 
( ´ー`)「お前も、こっちへこい」
 
(   ¥ )「…………」

 

 

63 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:24:15.60 ID:KOmUbbft0
 
 差し伸べられた、友の右手。
 
 あの手に触れたら、私はもう迷わずにすむのだろうか。
 
(  ゚¥゚)
 
 十五年、悩み続けた。狂い続けた。戦い続けた。
 
 それが全て、あの手に触れれば、消え去るのだろうか。
 
 
(  ゚¥゚)っ
 
 
 静かに、手を伸ばした。
 
 
 違う。
 
 
 そうしたとしても、それは違う。
 
 
 固く、拳銃を握り締めた手を、シラネに向けた。
 
 
( ´−`)「フォルス……てめえ……」
 

 

 

64 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:27:31.65 ID:KOmUbbft0
 
 違う。
 
 
 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うッッ!
 
 
 彼らがバケモノだと?!
 
 ならば生きるために人を殺す人は、何だというのだ!
 
 生きるために、屍肉を食った! それがなんだと言うのだ!
 
 彼らは弱い、弱いから、私に力がないから! そうするしかなかったのだ!
 
 自分を守る為に、子ども達を守る為に、飯を食った! それだけだ!
 
 それが狂っていると言うならば、私はそれでも……それでも……!
 
 
(  ゚¥゚)「弱者を守ると、私は誓った! お前とだ!」
 
 
( ´ー`)「……しらねーよ……そんなことは!」
 
 
 シラネが声を上げると同時に、後方の闇が盛り上がる。
 賊だ。ほとんどがかつての仲間だった、賊達だ。
 まさかこのまま、街を襲うつもりだったのか。
 

 

 

65 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:31:23.29 ID:KOmUbbft0
 
( ´ー`)「フォルスよ……これが最後だぜ?」
 
 
 
(  ゚¥゚)
 
 
 
( ´ー`)「俺の仲間に、加われ」
 
 
 
(  ゚¥゚)
 
 
 
(  ゚¥゚)「私は……」
 
 
 
(# ゚¥゚)「私は! 私の正義を貫き続ける!
       人々を……弱者を守ることが───それがッ! 私の正義だッッ!!」
 
 
(# ´ー`)「……馬鹿が」
 
 静かに、シラネが手を下ろしたと同時。
 
 闇から咆哮を上げたいくつもの発砲音が、耳を貫いた。

 

 

66 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:33:35.63 ID:KOmUbbft0
 
 
 
 
 
 
 
 だが───
 
 
 
 
 
 
 私の体を銃弾が貫く事は、なかった───
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(; ゚¥゚)「ッ?!」
 
 

 


 

68 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:36:05.47 ID:KOmUbbft0
 
( ><)「あまり無茶はしないでください!」
 
 ビロード。たしか、そんな名だった。
 特殊戦闘部隊、VIPPERS。軍の精鋭が集められた隊だと、聞いていた。
 
(; ゚¥゚)「……あなた達……」
 
 抱えられたまま、瓦礫の陰に降ろされる。
 残りの二人、ワカッテマスと、ロマネスクも、そこにいた。
 
( <●><●>)「改めて敬意を表したいところですが……それは後で」
 
 特徴的な大きな瞳をしていた彼。
 その両手には、サブマシンガン。
 古い資料で見た事がある。確か、H&KのMP7、だったか。
 
 いや、そんな事はどうでもいい。
 
(; ゚¥゚)「多勢に無勢です! 街に戻って、援軍を……!」
 
( <●><●>)「問題ありません」
 
 彼が見つめる先。
 
 その先には、数十の銃口を向けられた男が。
 ロマネスク。いつの間にか、あそこまで……。
 
( ´ー`)「……誰だ?」
 

 

70 : ◆OJ9SDUGQ8oh9 :2010/03/28(日) 00:38:55.90 ID:KOmUbbft0
 
 
(# ФωФ)「特殊戦闘部隊VIPPERSの、ロマネスクだ」
 
 
 一瞬、目を疑った。
 
 男の背に、まるで炎が立ち昇っているような、そんな錯覚が。
 
( ><)「あの人を怒らせたら、止まらないんです」
 
(; ゚¥゚)「……」
 
( <●><●>)「止める気はありません。そして、止まる気も、ありません」
 
 
 この三人は……あの人数に、このままで戦うというのか……?!
 
 
 
 
 
 
(# ФωФ)「覚えておけ! 貴様等が、最期に聞いた名だッッ!!」
 
 
 
 
 
                               act.3≪crash-α.fast≫──END.

 

 

 


【戻る】     【次へ】
inserted by FC2 system