('A`)ドクオはBrigade Projectにカラサワをぶち込むようです


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:07:55.07 ID:Yl3zxaUl0
地球規模の大規模な災害から数百年後、人類は「レイヤード」と呼ばれる巨大地下都市の中で、
「管理者」と呼ばれる存在の元復興を遂げていた。
企業間の抗争すら管理者の掌の中ともいわれる状況の中、唯一自由であった存在が、レイヴンであった。

“レイヴン”
彼らは“アーマード・コア”通称ACと呼ばれる全長約10mの人型汎用戦闘兵器に乗り込み、
企業や管理組織、時にはテロ集団からの依頼を受けて幾多の戦場を駆る傭兵達の総称である。

管理者が破壊されてから数年。
人類は企業の提唱した「Brigade Project」(地上開発プロジェクト)によって新しい世界の発見を急ぐとともに、地上の開発計画を行っていた。

その過程で、ある未踏査地区の調査中、調査部隊が謎の機体と衛星砲の攻撃によって全滅するという事態が多発し、
以後、その区域はサイレントラインと呼ばれることとなった。


 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:08:46.77 ID:Yl3zxaUl0
だが、時代の折り目に天才は現れる。
ある伝説的レイヴンの活躍によって、一人の科学者の願いと共にその危機も葬られた。
時は流れ、10年の歳月の中でかつてサイレントラインと呼ばれていた未踏査地区も、新資源発掘区域とその呼称を変える。
そして拮抗する三企業は、貪るように、旧世界の技術を飲み込んでいった・・・

 人類は滅びの遺産を飲み下して、何処へ向かおうとしているのだろうか。


('A`)ドクオはBrigade Projectにカラサワをぶち込むようです




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:10:34.84 ID:Yl3zxaUl0
「レイヤード」北工業地区、大手三大企業が一角「キサラギ」その下請け小企業【VIP重工】。
その工場内部を一機、灰色の中量級二脚ACが駆け回っていた。

『右方向。熱源反応多数、ミサイル接近』

 CPUからの合成音による警告が告げられる。
レーダーには計6発の小型ミサイルが急速に反応を近づけているのが伺えた。

「ん」

ACは高速機動を保ったまま、右にやや旋回し迎え撃つようにその機体を正面に向ける。
肩側面と胸の中央に備えられたミサイル迎撃装置がすぐさま迫る2つのミサイルを迎撃する。

「よいせ」

ピッピッピッ、電子音と共にロックオンサイトに高速で4機のミサイルがロックされた。
右腕に携えられたライフルが連射され、巨大な薬莢がガラガラと強化コンクリートの床に散乱し、
それと共に連続した爆発音が響く。立ちこめる粉塵を引き裂くように現れた一機の小型ミサイルがACの右肩に被弾し小爆発が起きた。
右肩から煙りを燻らせながらACは一度急旋回して速度を殺し、停止した。

『すごいなドクオ、午前の分と合わせても計7割の迎撃率だ』


 

 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:15:07.60 ID:Yl3zxaUl0
今度はCPUからの合成音ではなく、耳元のインカムからの通信が入った。

(;'A`)「いや主任、このFCSが凄すぎるんですよ。やっぱりロックオン速度が尋常じゃなく速いです」

 FCS とはFire Control System(火器管制装置)の略称だ。
その名の通り、ACやMTが銃器やブレードなどの火器類を運用するために必要不可欠な装備であり、
【VIP重工】が兼ねてから開発に力を入れている分野でもある。

 『そうかそうか!』

 音声からだけでもマイクの向こうで主任が上機嫌に頷いているのが分かった。

 『次は模擬戦だ。ミルナ君が搭乗したビショップを出す、それを撃破してくれ』

('A`)「りょ、了解」

 間もなくして演習場の耐火シャッターが開かれ、逆脚二脚の上にガトリング砲とミサイルポッドを搭載した旧式MT【ビショップ】が現れる。


 

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:19:28.26 ID:Yl3zxaUl0
『システム戦闘モードに移行します』

COMの戦闘モードが立ち上がる。

 『準備はいいかドクオ』

 ミルナからの通信だ。

(;'A`)「はい」

 『そうか、なら』

 舌を噛まないように気を付けておけ!

 通信が切られるや否やバックブーストで跳躍後退したビショップから雪崩のようなミサイルの雨が降り注がれた。


(;'A`)「うおおおおおおおおおおおぉっ!なんじゃこりゃあああああああっ!」





Act01 –システム起動-







『防御力低下。テストモードを終了します』

 

 

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:23:47.48 ID:Yl3zxaUl0
 【VIP重工演習区画、休憩所】

(;'A`) フイー

 VIP重工のロゴの入ったパイロットスーツを着込んだ細身の青年。
彼の名はドクオ・ウッダシェルノゥ。
今年で20歳を迎えるVIP重工の若きテストパイロット社員だ。
男にしては少し長い黒髪を後頭部で縛り付け、疲れた顔で煙草に火を付けている。

(;'A`) y━・ スゥ

( 'A`) y━・~ プハー

(*'∀`) ニコヤカー

 ちなみに童貞である。

( ゚д゚ )「きめえwww」

('∀`)

('A`)「なんだオッサンかよ」

(;゚д゚ )「しかし、そこまで笑顔が気色悪いと俺も心配になってくるぞドクオ」

('A`) カノジョ?ナニソレオイシイノ?

(;゚д゚ )「いや、どちらかというと顔面がイレギュラー過ぎて排除される恐れがだな・・・」

(;'A`)!「そこまで!?」


 

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:27:06.90 ID:Yl3zxaUl0
( ゚д゚ )「クックック、冗談だ」

 喉を鳴らして笑うこの男の名はミルナ・クウォッジ。
ドクオと同じくロゴの入ったパイロットスーツを着ている。
年齢は30代半ばといったところか、もっともミルナ本人がそのあたりハッキリとしないでいるので正確な年齢は定かではない。
特徴的な赤い三白眼に仏頂面。撫でつけた黒髪にはちらほらと白髪が混じっている。

 ミルナもまたVIP重工のテストパイロットである。
しかしドクオがACのテスターであるのに対し、ミルナはMT専門のテスターである。
MTとはマッスル・トレーサー(Muscle Tracer)の略称であり、
大手三大企業の2社ミラージュとクレスト・インダストリアルが共同で開発した汎用作業機械の俗称だ。

レイヤードの歴史の中で軍事用としてのMT需要が普及し、
そこからより汎用性を重視したパーツの換装というコンセプト(コア思想)が生まれた。

それが旧世界の技術と融合し現代としてはほぼ最強の人型汎用戦闘兵器アーマード・コアが生み出される。
つまりMTとはある種ACの母体というべき兵器なのである。


 

 

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:31:36.97 ID:Yl3zxaUl0

( ゚д゚ )「それで、新型FCSはどうだった?」

('A`)「んー、少なくともAC仕様は難しいかな」

( ゚д゚ )「そうなのか?先日までは特に問題はなさそうだったが」
 
('A`) y━・~「模擬戦がなぁ・・・」

(;゚д゚ )「模擬戦?あ・・・」

個々の戦闘能力ではACに為す術のないMTだが、
ACに比べコストパフォーマンスに優れ、企業やテロ集団の主力として用いられている。
またMTのバリエーションは廉価モデルから高級モデル陸海空と多岐に渡り、
ある意味では開発に縛りのあるACと異なり、MTはその性能を先鋭化させやすい。
そのため一部のMTは限定的にACを凌駕する性能を誇る場合がある、のだが

(;゚д゚ )「また、やり過ぎてしまったか?」

そう、ミルナが駆っていたビショップは型落ち寸前の旧式MTなのだ。
例えドクオのACの装備が低火力のライフルだけだったとしてもACを単機で撃破するなど本来ありえない事だ。
MT単機に撃破されるACの評価など考えるべくもない。

('A`)「いや違う違う、安心しろよオッサン。単にFCSに問題があったってだけの話しだよ」

(;゚д゚ )「なんだそうか」

そしてそれはひとえに、このミルナという男のあまりにも並はずれた技量を意味していた。
ミルナもそれを聞いて安心したのか、ポケットから煙草を取り出してライターに火を付けた。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:38:22.61 ID:Yl3zxaUl0
('A`) y━・~「オッサンが出るってだけで最近は主任も対AC戦あたりを視野に入れてるって」

( ゚д゚ )y━・~「ふう・・・そうか、で、何が問題だったんだ?」

('A`)「ああロックオン機能が敏感過ぎんだよアレ。
    ミサイルで弾幕張られるとチラチラ火器の自動標準が引っ張られて敵機本体への射撃の邪魔になるんだよ。
    機能特化した護衛MTへの配備なら良いかも分からんけどACにはちょっと向かなそうだな」

( ゚д゚ ) y━・~「ロックの優先順位を固めてみるのはどうだ?」

('A`) y━・~「固めるとAIに若干のタイムラグが出るだろ?そうすると緩急入り乱れた実戦で、
        あのミサイルロックがスムーズに機能すんのは、やっぱ難しいだろうなぁ」

その場合はミサイルのみの迎撃でも今の状態を維持するのは困難な事にドクオは思えた。

( -д- ) y━・~「なるほどな、開発とは奥が深いものだな」

('∀`) y━・~「ハハッまったくだよな」

 そう言ってドクオは休憩室のミラージュ製液晶テレビのスイッチを入れた。

 『この番組はグローバルコーテックスと、ご覧の各社の提供でお送りします』

('A`)「お!今始まるとこかラッキ!」

 画面にはレイヴン統括企業グローバルコーテックスの主催するアリーナが映し出されている。

( ゚д゚ )「・・・アリーナか、お前も好きだな」


 

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:39:52.54 ID:Yl3zxaUl0
('∀`)b「あたりきよ!別にレイヴンじゃないけど仮にもACを手掛けてンだ。
      そうじゃなくても男の子はみんなACとACのガチバトルが大好きなのさ!」

( ゚д゚ )「ククッ、そうかも知れんな」

v('∀`)「それに今日はAランカーのクラスマッチ!wktkするってもんだよ!」

( ゚д゚ )(さっきから顔面が熱暴走してるなこいつ、きめぇw)

 まずは挑戦者からアリーナへの入場が始まる。
蒼い鋭角的フォルムの軽量二脚。両肩に背負われた小型ロケット砲、しかし何より特徴的なのは両腕のデュアルブレード。

司会が吠える。

『男だ、いや女性だ!しかしそれでも漢だ!A−3ランカー剣豪『エクレール』嬢の駆るAC『ラファール』だァ!
 ああん!ぶっといデュアルブレードをねじ込んで欲しいのぉぉぉ!』

『ワアアアアアアア!!』

(*'∀`)ハアハア「エクレールたぁぁん!」

(;゚д゚ )(駄目だこいつら、早く何とかしないと)

 そして迎え撃つように画面正面に現れた防衛者。
両肩に追加弾倉、右に高火力バズーカ左にグレネードを携えた深緑の中量二脚。
A−2ランカー『カラードネイル』の駆るAC『グラッジ』。




 

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:44:07.11 ID:Yl3zxaUl0
( ゚д゚ )(カラードネイル・・・)

 かつてのA−2ランカー『ゼロ』に家族を皆殺しにされたカラードネイルは復讐を胸にレイヴンとなり、8年前ついにゼロに挑戦を果たす。
挑戦前、カラードネイルがエンブレムを四本の爪で0を掴んだデザインから、その爪で0を砕いたモノに変更した事からも両者の対戦は俄然話題を呼んだ。
初対決、カラードネイルはあと一歩という所でゼロに敗北を喫する。

対戦はそれからも幾たびか行われたものの、結果は常に拮抗した状態からのカラードネイルの敗北であった。
二人の決闘はしばし続くものに思われていた。

 しかし、レイヴンとしての宿命か、あるミッションを受けたゼロが死亡した。
珍しい話ではない。皮肉だが逆に考えればこんな時代で復讐に手が届く距離までゼロが生きていた事はカラードネイルにとっては幸運だったのかもしれない。
 それからのカラードネイルは、何処か魂が抜かれたように連敗を喫し、一時はC−2までその順位を落とした。
だが、ある日エンブレムを突然元のデザインに戻したカラードネイルは怒濤の勢いで順位を上げA−2へと返り咲く。

 「まるでゼロを観ているようだ」

 観衆は言った。A−2という順位、ゼロのAC『クラッシング』に似た機体構成、戦闘スタイル、そして四本の爪に握られた“0”。
 彼が、何を想いそこに立っているかは本人にしか知り得ない事である。

『おおっと!ラファール背後をとられた!』

(;;'A`)「ぬおおおおおぅっ!」

 だが

 『すかさずクラッシングの爆炎豪雨がラファールにふりかかるぅうぅぅぅっ!!!ああっ!』

 その日から、カラードネイルがA−2の座を明け渡した事はない。

『ワアアアアアアア!!』


 

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:47:46.26 ID:Yl3zxaUl0
 「久しぶりに飯でもどうだドクオ、奢るぞ?」

 定時を迎え、いそいそと帰宅の用意をしていたドクオの背中にミルナがそう呼びかけた。

('A`)「あれ?オッサン今日は警備の方は休みなん?」

( ゚д゚ )「今日は阿部の当直だ」

(;'A`)「ああ、阿部さん帰ってきたんだ」

阿部高和はVIP重工と長期契約を交わしているレイヴンだ。
しかし、先月のアリーナ防衛戦で下位ランカーの『ロードオブダウン』と対峙した際、対戦者の射突式ブレードを見て何を思ったか

「良いこと思いついた、お前俺の尻の穴に射突しろ」

と旋回しながら腕部を真っ直ぐ腰と垂直にし、自らの重量級ACの尻を突き出した。
ミルナと共に、先ほどのように休憩室でアリーナを観ていたドクオは今でもそれが如何に悪夢の光景であったかをハッキリ覚えている。

『ふざけやがってぇぇぇっ!!!』

激昂する対戦相手

ジャコン、ガツン!ジャコン、ガツン!

ケツに強烈にぶち込まれる射突式ブレード。

『おうっ!イイ!イイジャナ、うっ!』

大音量で響く阿部の喘ぎ声、アリーナは静まりかえっている。

 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:48:58.16 ID:Yl3zxaUl0
やがて興奮が限界に達したのか阿部の重量級ACに装備されたマシンガンと投擲砲がフルオートで発射された。
それがあろう事かロードオブダウンの機体に全弾命中している。

『くそうっ!くそっ!うう・・・ぐぞぅ』

爆炎に包まれながら必死に射突するロードオブダウン。その音声から、ドクオは彼が泣いている事が分かった。

『・・・ミソォ、クッ・・・みそぉ!』

味噌とはいったいどういう意味なのか、
ロードオブダウンの罵声と阿部さんの喘ぎ味噌が合わさって、アリーナに木霊する 「くそみそ」。

やがて両者の機体があらぬ姿勢で小爆発と炎に包まれて大破する頃、
アリーナの医務室は気分が悪くなった観客でいっぱいになっていた。
レイヤードを震撼させた放送事故である。

阿部は重傷だったようだが、搬送された如月中央病院の担当医曰く妙に満足気だったらしい。


 

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:54:09.50 ID:Yl3zxaUl0
( ゚д゚ )「そういえばあの時の対戦者、レイヴン辞めたらしいな」

(;'A`)(ファンレター書こう、頑張って下さいってファンレター書こう!)

( ゚д゚ )「それでどうだ?何か予定でもあるのか?」

('A`) ヨテイ?ナニソレ?ワカラナイ・・・ワカラナイ

( ゚д゚ )「まあ、ないだろうなwww」

('∀`)b「オッサンの奢りなら行くに決まってンだろ、この高給取りめ!」

 レイヴンと比べれば決して多い金額ではないが、
卓抜した腕を持つミルナはMT警備としては破格の給与を会社から支給されていた。

( ゚д゚ )b「まwwかwwwせwwろwwイレギュラーww」

('A`)b





「・・・すまん」
「うん

 

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 03:55:40.39 ID:Yl3zxaUl0
レイヤード北西区画、シティ「ラウンジ」繁華街。
中華料理店【王大人】

(:`ハ´)「チョイナチョイナチョイナ!ホアッチャー!アッチナー!マジナベアッチナー!」

 二人が向かったのは工場からさして遠くない北西区画の中華料理店である。
就労後の工業地域の人間で店内は混み合っていた。
カウンターを挟んで向こうの厨房では料理人が忙しなく中華鍋を振るっている。

( ゚д゚ )「今日も混んでいるな」

('A`)「いつものことっしょ」

 二人は今し方席を立って会計を済ませていた客のテーブルに腰を下ろした。
すぐさま紺色のエプロンを着けた女性店員がメニューを持ってやってくる。

川*`-´)「いらっさいアル!あ、ミルナさんいらしゃいアル!今日もいい男アルね!今テーブル片づけるヨ!」

('A`) オレモイルヨー

川 `-´)「昨日特番でドクオそくりの生物兵器見たヨ!親戚カ?」

('A`) オイ、マジカヨ、ユメナラサメ…

(;゚д゚ )「と、とりあえず生2つ!」

川*`-´)「はいナ!」

 テーブルを片付け終えると店員は一度店の奥へと消えていった。

('A`)

(;゚д゚ )

('A`)「いっぱい食うぞ、俺」

(;゚д゚ )「ああ!食え!いっぱい食うんだ!」


『ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・』


 

 

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:01:18.19 ID:Yl3zxaUl0
(*'∀`)「オッサンと会ってからもう一年になんのか〜w」

あれからしばらく、べろべろに酔っぱらったドクオは顔を上気させて四皿目の餃子をつまみに酒を煽った。

( ゚д゚ )「早いものだな・・・」

 それに比べてどうやらミルナはかなりの酒豪らしく、ドクオと同じ量の酒を口にしているのだが微塵も酔いを感じさせない。

(*'∀`)「ホントだよ〜、最初はこのオッサン大丈夫か?って思ってたけどあっちゅう間に俺の方が奢られてんだもの〜、立場変わりすぎwww」

( ゚д゚ )(1年か・・・)

 1年は、こうも短いものか。ミルナはふと、そう思った。

 二人が出会ったのは、北工業地区をさらに北に進んだレイヤードの壁面に位置する倉庫街の一角だ。
企業連が積極的に開発を進める区画とは反対方向であり、レイヤードの中では治安の芳しくない地区でもある。
納品に向かっていたドクオの車両が、道の真ん中に行き倒れていたミルナを見つけ、
なんやかやと世話を焼いている内結局は自ら勤めているVIP重工に就職させてしまった。

( ゚д゚ )「ククッまったくだw」

(*'∀`)「いや〜行き倒れの癖にMT乗れるなんて最初は、嘘臭せぇwワロスw
      とか思ってたけどアンタ何処の達人ですか?wレイヴンですか?wあんたレイヴンですか?www」

( ゚д゚ )「レイヴンはMT乗らんわwww」

(*'∀`)「俺もwレイヴンになれたらww彼女出来ますかwww」

( ゚д゚ )「それは無理www」

(*'∀`)「なぜだ!・・・ww」

 そう言ってドクオはテーブルに突っ伏してしまった

 

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:03:32.60 ID:Yl3zxaUl0
( ゚д゚ )「やれやれ」

川 `-´)「アイヤー、ドクオ今日も見事に潰れたネ」

( ゚д゚ )「ちょうどよかった、姉さんお勘定を頼む」

川*`-´)「はいナ!」

 ミルナは席を立ってレジへ向かった。

川*`-´)「今日も沢山飲んでくれてありがとアル!」

( ゚д゚ )「こっちこそ、いつも旨い飯をありがとう」

会計を済ませると、少し伏し目がちに女性店員が呟いた。

川 `-´)「ミルナさんも、ドクオも、ずっと常連さんでいて欲しいアル」
 
( ゚д゚ )「心配しないでも、余所に浮気はせんよw」

川 `-´)「・・・違うアル」

( ゚д゚ ) ?

 困惑するミルナを尻目に、彼女は視線を厨房前のカウンター席に向けた。

川 `-´)「あの席、長谷川さんの指定席だたアル」

 客で賑わう店内で、その端の席だけがひっそりと空席になっている


 

 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:06:29.15 ID:Yl3zxaUl0
( ゚д゚ )「・・・マルタ爺さんに、なにかあったのか?」

川 `-´)「死んじゃたアル」

( ゚д゚ )「っ!」

 マルタスニム長谷川はこの店に古くから通い続ける常連だ。
クレストの下請けで長年働いている昔気質の技術者で、ミルナもドクオも兼ねてから面識があった。

( ゚д゚ )「・・・爺さんが、・・・そうか」

川 `-´)「工場、レイヴンに襲撃されたらしいアル。長谷川さん調整中のラジエーター避難させてて逃げ遅レタ」

( ゚д゚ )「レイヴン・・・」

川 `-´)「最近、企業の小競り合イまた増えてきタ・・・こんな時代アル、仕方ないって分かってるアル、でも」

 でも、分かってても

川 -)「・・・やりきれないヨ」

 普段は快活な表情を曇らせた彼女の切れ長の瞳が、少し潤んでいるように見えた。

(* A )「死なねぇよ、ウップ」

( ゚д゚ )「!ドクオ、起きてたのか」

( A )「俺達は死なない、例えレイヴンが来ても武装集団に襲撃されても衛星砲に工場がぶち抜かれても、
    どうにか逃げ出して、ここに飯を食いに来る!うっ、ごめん、ちょっとオッサン厳しい。とても」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:09:39.66 ID:Yl3zxaUl0
 力尽きたようにフラフラとミルナの肩に寄りかかるドクオ。

(;゚д゚ )「おい、大丈夫かお前」

(*'A`*) ウイーップ

(;゚д゚ )「・・・・・・」

川 -)「酒気帯び全開の赤ら顔の酔っ払いが格好付けてモ全然格好良くないアル」

(;゚д゚ )「面目ない」

川 -)「でも」

川*`ー´)「ドクオにしては上出来アル」

(゚д゚ )

(*'A`*) スピー ファー ブルスコー

( ゚д゚ )「ククッ!そうだな。違いない」

「フフフッ」

「ククッ、ハハ!」



(*'A`*) アアン エクレールタァン スピー


 

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:13:09.18 ID:Yl3zxaUl0
地上都市 中央区画【グローバルコーテックス】本社 【???】

会議室程度の無機質な部屋。薄暗く照明を調節された室内で、二人の男が対峙していた。
大仰な椅子に座った男は机に肘を乗せ、慣れた動作で葉巻の先を落としそれに火を付けた。

( ,_ノ )y━・~「モララー・トリスタン、いやカラードネイルか。どちらで呼べばいい?」

( ・∀・)「要件は依頼だろう。貴様如きに馴れ馴れしく名を呼ばれる謂われはない」

 モララーと呼ばれた青年。彼はそう吐き捨てて壁に背中を預けた。

「なるほど、道理だ」

男は葉巻に口を付け、一拍置いて紫煙を吐き出した。

( ・∀・)「・・・悪趣味な部屋だな」

 窓もないその部屋に、所狭しと散乱する資料の束、旧世界の遺物のレプリカ、ミニチュア。

( ,_ノ )y━・~「なあカラードネイル。こうやって旧世界の遺物を掘り起こしていると分かることがある、それは無人兵器とレイヴンの闘争の歴史だ」

( ・∀・)「・・・」


 

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:15:41.15 ID:Yl3zxaUl0
( ,_ノ )y━・~「多くの旧遺物がそれを示している。
        大き過ぎる力は細かに調律された平和な世界に不要だと、遺産は私にそう語りかける。
        一番最近の事で言えば管理者がまさにそれだ。
        そして、その管理者が築き上げてきたこの都市は人類にとって、優しい、揺りかごのようなものだ」

(#・∀・)「この世界が優しい?ハッ!笑わせるな!」

男は激昂する青年を尻目にクツクツと喉を鳴らして笑った。

( ,_ノ )y━・~「フフッ優しいさ、それを考えれば10年前のあの事件も私にはまるで母の愛のような途方もない優しさを感じてしまうがね」

( ・∀・)「10年前・・・サイレントラインか」

( ,_ノ )y━・~「ハッ人の口からその言葉を聞くのは私でもひどく懐かしいよ。
        なあカラードネイル? 思えばあの頃に比べて随分と世界は変わったと思わないか?
        アリーナにしてもそう、あの頃の君はまだアリーナでもCクラス以下の有象無象だった」

( ・∀・)「馬鹿にしてくれる」

( ,_ノ )y━・~「そう勘ぐらないでくれ。あの頃、メビウスリングは王座奪還に燃えていた、
        フォグシャドウは縦横無尽に困難な依頼をこなしていたし、
        ゼロは生きていて君は彼への復讐の為に銃を握っていた。
        当時にしてみればあの凡庸なリトルベアなんて下位ランカーが、今のアリーナでB−2を誇っているなんて想像だに出来なかったよw」

(#・∀・)「俺は世間話をするつもりは・・・!」

( ,_ノ )y━・~「そしてチャンピオンがいた」

( ・∀・)「!」


 

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/02(金) 04:17:53.06 ID:Yl3zxaUl0
( ,_ノ )y━・~「君も彼と何度か相対したことがあるだろう?
        彼は優秀なレイヴンにしてあまりに圧倒的な、アリーナの王だった。
        彼が頂点に君臨していたのは時間にしてみればほんの僅かなものだったろう。
        だが、当時を知るものは今でもチャンピオンと聞けば彼を思い浮かべる」

( ・∀・)「・・・ナイトウッド・ブーン・ホライゾン」

( ,_ノ )y━・~「今から君に依頼するのは8年前、ゼロが成し得なかった任務だ」

( ・∀・)「! まさか!?」

( ,_ノ )y━・~「依頼内容の詳細は追って通達する」

「良い返事を期待しているよ、カラードネイル」

 青年が去り、部屋は奇妙な静けさを取り戻した。

( ,_ノ )y━・~「やれやれ、いつの時代も鳥達にはこの揺りかごは狭すぎるようだ」

 立ち上がった男は、青年が寄りかかっていた壁の近くに置かれたACの頭部パーツのレプリカを撫でる。
その色は、血のように紅い。

( ,_ノ )y━・~「皆が皆、自らの力をわきまえずその身に釣り合わない不相応な高みを目指す。
        あの男にしてもそうだ、死んだ人間を追いかけて天国まで飛んでいこうとでもいうのか?・・・ハハッ」

 空虚な嘲笑が室内を震わせた。男は誰もいない筈の、自らの席に向き直る。
 _、_
( ,_ノ` )y━・~ 「【ナインボール】、お前の目に、この世界の鳥達はどう映る?」

机上に開かれたPCのデスクトップが、答えるようにぼんやりと光った。



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