( ^ω^)は人助けをしたいようです
1 : ◆QV5rw/5D.6
:2010/01/12(火) 02:35:58.78 ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「まずは人を蹴ります」
( ^ω^)「倒れ伏してもまだ蹴ります」
( ^ω^)「血反吐を吐いても蹴りましょう」
( ^ω^)「ゴミの出来上がり」
前スレ
ttp://www7.atpages.jp/mesimarja/boon/php/1256/1256742144.php
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:37:39.04
ID:pBII/4VX0
G学校のテンプレート
前に、長岡に指揮した人助けがあった。
対象の名前は貞子。同学年A組、27番女子。
彼女は手芸部に入っている。1年の部員は彼女1人。
廃部寸前だ。ちなみに3年はもういない。これといった部活動もない。
部室として使われている家庭準備室も、放課後は彼女が独占している。
( ^ω^)「ぐひ、ぐっひっひwwwww」
家庭準備室で、彼女は泣いているだろうか。
後ろのほうから、有りもしない悪口を言われるのは辛かろう。
ヤリマン、売女、あいつ親父と援交してるんだぜ、立ちんぼ女。
朝に、下駄箱に上履きが入ってないのは辛かろう。
その上履きが下駄箱の上に乗っているのは、ちょっとした心遣いだ。
いやあ、楽しみだ。
ワクワクとテカりながら、スキップで家庭準備室へ向かう。
見よ、僕のこの軽やかな足取りを。
最高の夕暮れを越すに相応しいと思わんかね!
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:40:41.27
ID:pBII/4VX0
- 【家庭準備室前】
|ω^) )) コソッ
ドアに備え付けられた窓から、そっと中を覗く。
川д川「……」
いたいた。なんか棒切れを2本動かして、糸を絡めている。
髪は腰まであり、前髪で顔は見えない。ぎりぎり口が見える程度だ。
鬱々とした空気が彼女を取り巻いて、顔だけじゃなく全体に暗い影を落としている。
|ω^)「(あれじゃあ、いじめられても仕方ない容姿だお)」
寧ろ、今までどうしていじめられていなかったのか不思議でならない。
いつも1人でいるから、ぼっちには違いないんだろうが。
|ω^)「(少なくとも、僕はあんな子とは関わり合いになりたくないおね)」
多分、みんなも同じような心境だろう。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:41:54.19
ID:pBII/4VX0
さてさて、そろそろ実行に移すとしよう。
ここまでノープランで来てしまったが、大丈夫だ。
何故なら、僕は人助けに関しては多彩な才能を発揮するからだ!
まずは8時だよ全員集合のドリフのように!
ドアを勢いよく開ける!
( ^ω^)「ほぁちゃあ!」
Σ川д;川「えっ!?」
どがしゃあんと僕の蹴りがドアにキマる。いい吹っ飛び具合だ。
刑事物で、警察がドアを体当たりでぶち破る時よりも吹っ飛んだに違いない。
掛け声も決まった。ぶるーすりーのアクションNG集を一晩中見ただけのことはある。
三( ^ω^)ノ「おいすー」
川д;川「わ、わわっ」
棒切れを操る手を止めた。
今だ!
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:47:19.31
ID:pBII/4VX0
日本人として、まずは謝罪から。
( ^ω^)「貞子さん…ごめんだお」
川д;川「え? え?」
どうやら彼女は事態を把握出来ていないらしい。
当たり前だ、僕だって事態を把握していない。
それに、正義のヒーローがいきなり目の前に現れたら誰でも驚く。
僕だったら握手を求めて、記念写真を撮ってもらう。
( ´ω`)「実は僕、朝に見ていたんだお」
川д川「え?」
けどまあ、僕はなんとかレンジャーとかなんとかライダーではない。
有名人ではないし、知名度もないし、学もない。
彼女とは友人でも知り合いでもないどころか赤の他人だ。
だから、少し信用を置いてもらう為にゆっくりと話す。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火)
02:50:36.65 ID:pBII/4VX0
( ´ω`)「あいつらが、貞子さんの下駄箱に悪戯してるとこを偶然見てしまって」
川д川「…」
( ´ω`)「そいつらに見つかって、絶対に言うなとか元に戻すなとか釘を刺されて」
頭を項垂れながら、ごめんだお、と謝る。
やべえ、ここに来てから全部即興なのに、すらすらと言葉が出る俺やべえ。
素人の即興劇にでも出れるんじゃないのか、僕は。
川д川「なんで、あなたが謝るの?」
( ´ω`)「見てるだけで、何も出来なかったからだお、だから」
川д川「あなたは…悪くないよ」
おお、フラグ。
やけに成立が早いな。起承転結の承転もない。
エロゲの告白して即Hのような展開だ。
やっぱり、彼女も色々と溜まっていたのか。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:51:50.11
ID:pBII/4VX0
( ´ω`)「何もしてないけど、何もしないから、こその、なんて言うか、罪悪感が」
顔をあげて、左手で胸の辺りを抑える。
( ´ω`)「やっぱりごめんだお。この謝罪も、ここに来たのも全部自分の為だお」
川д川「……」
( ´ω`)「……」
おいおい何か言ってくれよ。
喋り切ったから、何か言ってくれないとこっちも言い出せないっての。
くそ、即興劇もここで終わりか。
川д川「その…私の下駄箱に悪戯してたのは誰?」
( ^ω^)「え?」
予想外の言葉に、うっかり素を出してしまった。
いけないいけない。すぐに顔を戻す。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 02:55:12.46
ID:pBII/4VX0
( ´ω`)「1年の、あの有名な不良グループだお」
川д川「ああ……やっぱりね…」
諦めたように、彼女は溜め息を吐く。
わかってくれなかったら個人名を出そうかどうか迷ったが、わかってくれて何よりだ。
一応、今後の展開を決める為に彼女に確認を取る。
( ´ω`)「先生とかに相談はしないのかお?」
川д川「先生に言っても、意味ないよ」
と言うことは、既に言ったか、本当に先生を役立たずとしているかだな。
( ^ω^)「…貞子さんは、朝早く学校に来れないのかお?」
川д川「私、電車だから無理なの…」
ふむふむ。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:01:21.61
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「貞子さん! 僕と友達になるお!」
川д;川「えっ?」
スタートジャンプでミシン台を軽々と飛び越え、僕は彼女の前に舞い降る。
そして彼女の両手をがっしと掴み、ぶんぶんと上下に振った。
持ったままの棒切れが手に刺さって痛いが、今はそんなことどうでもいい!
( ^ω^)「僕も、中学校の時いじめられていたんだお」
川д川「あ、あな、たも?」
ぶんぶんと手を振ったままなので、言葉が変な場所で途切れる。
だが止めない。ここは押しが肝心なのだ。
( ^ω^)「力になれるかどうかわからないけど、友達は多いほうがいいお」
川д川「……」
彼女は黙って、両手を振られるまま上半身をがくがくと揺らしている。
長い髪の毛が生き物みたく揺れ動いて、ちょっと怖い。
お前の髪はわかめか。なまこか。メデューサか。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:05:33.14
ID:pBII/4VX0
川д;川「な、名前…」
( ^ω^)「ん?」
彼女が何か言いかけたので、両手を放す。
ぼさぼさになった前髪からは、そばかすだらけの頬が見えた。
醜い。
川д川「あなたの、名前は?」
( ^ω^)「内藤 ホライゾンですお、同じ組の」
同じ組と言う言葉に彼女は少し慌てたようだった。
別に、名前と顔を覚えてもらえてないことを咎めるつもりはない。
ここは、在学者数1000人を超えるマンモス校なのだ。
同じクラスだけでも40人は超える。どうしろと。
川д;川「ご、ごめんなさ」
( ^ω^)「いいですお、僕だって全員の名前は覚えてないですお」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:08:02.48
ID:pBII/4VX0
僕の言葉に、彼女はちょっとだけ微笑んだ。
なんだ、笑うとそれなりに可愛いじゃないか。
川д川「あの…内藤さん」
( ^ω^)「同学年ですし、呼び捨てでいいですお」
川д;川「それじゃあ、な、内藤君…」
( ^ω^)「……」
そりゃ呼び捨てじゃねえと突っ込みたいところを抑える。
根暗系は、こういうのを受け狙いでやっていないから突っ込みに困るのだ。
川д川「こんなこと聞くの、駄目かもしれないけど…」
( ^ω^)「大丈夫ですお、なんですかお?」
川д川「…内藤君は、中学の時どうやっていじめから抜け出せたの?」
おっと、ちょっと予想外の展開。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:11:05.75
ID:pBII/4VX0
川д川「私、小学校の時から同じグループに目をつけられてて…」
( ^ω^)「……」
川д川「……だから」
言おうかどうか、迷ってるフリをして答えを探す。
無難な答え。何かないかなあ。
窓に目をやると、建設中の家屋が見えた。
そうだ。
( ^ω^)「転校…したんですお」
川д川「転校?」
( ^ω^)「ですお。引っ越し」
彼女とは義務教育を共にしてないから、バレることはなさそうだ。
これでいいだろう。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:14:12.83
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「僕、そこでは友達って言う友達もいなかったから」
川д川「……」
( ^ω^)「抜け出したと言うよりは、逃げたんですお」
くさい。おざなりな台詞だ。
青春ではなく、青臭い過去だ。
川д川「…ごめんなさい」
( ^ω^)「気にしないで下さいお」
だから僕と友達になりましょう、と言う。
彼女は両手で顔を隠して、泣いた。
もう前髪で顔が隠れてるから、無意味にも程がある。
これ以上顔を隠して、どうすると言うんだろう。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:15:54.54
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「……」
女の涙は武器と言うけど、涙と鼻水が混じったものは汚いねえ。
武器と言うよりは汚物だよ。触りたくないね。
こんなのを真正面から抱ける奴の気が知れない。
ああ、それにしても。
人助けとは気持ちがいいものだ!
G 終
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:18:56.59
ID:pBII/4VX0
H放課後ランデブー
そこはまあ、彼女を仲良く手々でも繋いで帰るべきなんだろう。
だがここはエロゲではない。
出会って1日で、流石にそこまで進展は出来ない。
それに、僕には他にやるべきことがある。
(
;^ω^)「ヒッキー大丈夫かお…」
窓に視線をやった時、体育館裏で数人に囲まれるヒッキーが見えたのだ。
何がどうなってそうなったのかわからない。
取りあえず、助けてやると口約束した手前、助けないわけにはいかない。
( ^ω^)「んー…でも、面倒だお…」
窓から見た惨状は、ヒッキーがアクロバティックに彼らの攻撃を避けてる場面だった。
お前いじめられていたとか嘘だろう、と小一時間問い詰めたい。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:19:59.33
ID:pBII/4VX0
ローキックを飛んで避け、パンチは身を捻って避ける。
金属バットが体に対して真横に振られた時、ヒッキーはマトリックスで避けた。
思わず口笛を吹いた。拍手をした。貞子に怪訝な顔をされた。
僕は用があるからと彼女に言い、家庭準備室を飛び出した。
ヒッキーと言えば、その間もアクロバティックな攻防をしていた。
通信空手教育よりも、彼の動きを見ているほうが勉強になる。
( ;^ω^)「お、おお、まだやってる」
ここから見える限り、既に3人ほど地面にキスしている。
よく見たら、近くの木の枝にも1人引っ掛かっていた。
もしかしたら、植え込みの茂みの中にも何人かいるかもしれない。
(;_;)「な゙い゙どゔぐん! お゙ぞいよォオオオ!!」
( ^ω^)「げ」
僕に気付いたヒッキーが、泣きべそをかきながら走り寄って来た。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:23:24.39
ID:pBII/4VX0
ヒッキーの顔は、ムンクもかくやと言わん程に強烈なものだった。
その制服も悲惨だ。汚れちゃった♪とか可愛く言える次元ではない。
鼻水が垂れ、服にべっちょりとついている。
あとなんかよくわからない黄色い液体とか赤いの茶色いのとか。
(
;^ω^)「汚っ!」
見た瞬間そう叫んだ僕を、誰も責められはしまい。
先程のストレートパンチを避けたヒッキーの真似をして、捻って避ける。
初見にしては結構上手くいった。
広げた両腕で空気を抱き締めた彼は、そのまま地面に激突する。
生み出した慣性のまま、体育館裏の地面をスライディングする。
( _ )「おべべべべべべ!」
フルボッコしようとして返り討ちにした奴の突然の行動に、不良共は驚いている。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと。
その口に、僕の背中にある弁当の残飯でも投げ入れてやろうか。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:26:53.73
ID:pBII/4VX0
夏休み前に置き去りにした弁当の中で、十分に発酵した食品だ。
臭いとか腐ってるとか、そんなあまっちょろいレベルを通り越している。
なんかもう、柑橘系の匂いが、オレンジのかほりがするのだ。
僕はそれをハンケチで包み、不良に向かって投げる。
( ^ω^)「くらえ!」
( ; ∀ )「うばほ!」
僕の攻撃をくらった不良の1人は、口ではなく顔面にくらって後ろに倒れた。
目がぁー! 目がぁー! と叫び、のた打ち回っている。
( ^ω^)「バルス!」
(#-_-)「内藤君! なんでもっと早く来てくれなかったのさ!」
僕がかっこよく呪文を唱えたら、ヒッキーが生き返った。
これは復活系呪文じゃない。その真逆に位置するものだ。
( ^ω^)「だってお前、楽そうだったじゃん。俺いらなくね?」
(;_;)「1人よりも2人のほうが心強いんだよ!」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:30:05.03
ID:pBII/4VX0
僕がどれだけ心細かったと思ってるんだと叫んだヒッキー。
青空に向かって叫んだ体勢のまま、僕に正座を強制してきた。
その状態でヒッキーの熱い講義を聞く。不良は立ちつくしている。
終わった瞬間、タイミング良く鴉が阿呆と鳴いた。
同意しようとしたら、ヒッキーの投石によって鴉は電柱から撃ち落とされた。
怖い。素直に謝ろう。
( ^ω^)「ごめんだお」
(-_-)「べっ、別に来てくれて嬉しかったわけじゃないんだからねっ!」
デレた。意味がわからない。
呆然としていた不良達も、事の終わりを把握したのらしい。
アニメにありがちな効果音と共に、その獲物を構える。
ちょっと待て不良共。
その前に、僕はヒッキーに問いたいことがあるのだ。
( ^ω^)「ヒッキー、ちょっと質問が」
(-_-)「何?」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:33:19.40
ID:pBII/4VX0
不良達が、またかよみたいな顔をして獲物を下げる。
わかってる奴らじゃないか。こいつら実は全員ノリいいだろ。
そのまま後ろでイー! イー! とか鳴けば完璧だ。
黒尽くめのタイツを着てかかって来い。ショッカーのように。
( ^ω^)「いじめられてたとか、嘘だろお?」
(-_-)「事実だよ」
( ^ω^)「いやいやいや、こんだけ強くてなんでいじめられるんだお」
ヒッキーは、あー…とか気の抜けた声を出して空を見上げた。
上には夕日を受けて斑色になった、気味悪い雲があるだけだ。
(-_-)「僕、女子にいじめられてたんだよね」
( ^ω^)「それは知ってるお」
(-_-)「女子ってさ、いじめられても殴り返せないじゃん?」
( ^ω^)「…まあ、そうだお」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:35:06.97
ID:pBII/4VX0
陰口の場合、先に手を出したほうが負けだ。
女子を殴ったとしたら、尚更。
学校からも家族からも、下手すれば社会からも因縁をつけられる。
(-_-)「男子だったら、普通に殴ってもいいじゃないか」
( ^ω^)「だおね」
(-_-)「つまり、そういうことだよ」
ヒッキーは首と手の骨をぽきっと鳴らし、不良のほう見た。
何人か逃げて行く。そりゃそうだろう。
こいつは、男子にはいじめられていたんじゃない。
校門で逃げたのは、こうして殴り倒すタイミングを見計らっていたからだ。
女子には手を出せないから、その屈辱を甘んじて受け入れていたんだろう。
( ^ω^)「やっぱ俺、いらなくね?」
(;-_-)「僕が不意打ちされたらどうすんのさ!」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:38:35.53
ID:pBII/4VX0
大勢の手前、一人称を俺にしてみたけど意味はなかった。
( ^ω^)「んなこと言われたって」
僕は、ヒッキーのようには強くない。
人助けの為に自主練に取り組んではいるが、筋肉は人並みだ。
殴り合いならまだしも、本気になって獲物を取り出した不良を捌ける自信はない。
それぞれの獲物は、僕とヒッキーが素手。徒手空拳とは言えない。
不良達が、鉄パイプ、金属バット、木製バット、釘バット、メリケン、ナイフ。
地面に落ちてるヌンチャク、トンファー、割れた空き瓶、高枝切り鋏。
持ち主の手を離れている物も数えれば、獲物は20を越える。
( ^ω^)「何このバット率の高さ。野球部か」
喧嘩で使われる武器のオンパレードだ。
(-_-)「不良部だよ」
そんな部が存在するのかよ。
この学校オワテル。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:42:07.54
ID:pBII/4VX0
一陣の風が吹き、緊迫した空気を取り戻したところでヒッキーが呟いた。
(-_-)「ねえねえ、背中合わせっての、やってみようよ」
( ^ω^)「ほう」
あの、俺の背中はお前に任せた! ってやつか。
中々分かってるじゃないかと納得して、ヒッキーの要望を呑む。
状況説明をすると、ヒッキーが僕を見つけて走って来た時から囲まれてはいない。
突っ込んでいかない限り背中など最初から狙われないのだ。
僕らは背中合わせになり、そのままの状態で互いの腕を絡めた。
これで誰かに背中を狙われる事はない。
(-( ^ω^)「……」
色々と間違っている気がしないでもないが、やってしまってからは遅い。
不良共からは、ヒッキーの体は僕の体に隠れて見えないだろう。
僕だけ損をしているような気がしないでもないが、やってしまっ(ry
ヒッキーが転んで共倒れにならないよう、慎重に進む。
爪;'ー`)「……」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:45:09.22
ID:pBII/4VX0
- 僕らの行動を無言で見守ってくれてる不良Fはもう目前だ。
逃げもせず、ただ黙って目の前にいる。
武器を構えてはいない。怖気づいたか。
爪;'ー`)「う、うわあああああああああ!!」
張り詰めた空気に耐えれなくなって、不良が殴りかかって来た。
バットや鉄パイプなどの長物ならまだしも、メリケンなど怖くはない!
(-( #^ω^)「「うおおおおおおお!!」」
僕は背中にいるヒッキーと組んだ腕に力を込め、その場で思いっ切り回転した。
爪; ー )「げぼぁ!」
回転して現れたヒッキーの蹴りをくらった不良Fは、回転しながら倒れた。
そのまま転がって行って、用水路に落ちる。ドリフか。
( ^ω^)「やったお!」
(-( ^ω^)「やったね!」
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:46:12.84
ID:pBII/4VX0
残りの不良を片付ける為に、僕は前進する。
ヒッキーは後退するが、僕と背中合わせなので結果的に前進している。
ずりずりと擦るように歩く毎に、不良は1人1人と逃げて行く。
最後に残った1人に、根性あるな、と称えてやろうと向かった。
( ^ω^)「ん?」
(,, Д )「……」
( ^ω^)「もしもーし」
(-( ^ω^)「どうしたの?」
(,, Д )「……」
( ^ω^)「立ったまま口開けて気絶してるお」
立ったままは可哀想なので、せめて寝かせてやろうと膝かっくんをする。
ちなみに、真正面からの逆膝かっくんだ。
(;゚Д゚)「ハッ!?」
かっくんする前に、脱兎の如く駆け出した。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:47:20.88
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「チッ」
(-( ^ω^)「逃げてったの?」
前が見えないヒッキーの為に、僕が口で説明する。
(-( ^ω^)「追っかけていい?
また囲まれたら面倒だからさ」
( ^ω^)「あーそれもそうだおねー」
元気な奴らが仲間を集めて、復讐に来るとかは勘弁してもらいたい。
解くのが面倒とヒッキーが言うので、僕らは背中合わせのまま後を追う。
(-( ^ω^)「これ慣れると楽だねー」
( ;^ω^)「そうかお?」
ヒッキーが体重をかけるように歩くので、正直なところ僕は辛い。
それをそのまま伝えて、背中合わせを解いた。
もう二度と背中合わせなんかしないと心の中で誓う。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:51:01.50
ID:pBII/4VX0
解いて一息をつくと、先程の不良達の悲鳴が聞こえた。
瞬時に背中に取り憑こうとするヒッキーを避け、僕は悲鳴の聞こえた場所に駆け出す。
( ^ω^)「うっわ」
到着と同時に、来なきゃよかったと後悔した。
不良と言えど人の子、人助けに内に入ると思った僕を叱咤したい。
すぐに引き返そうとするが、後ろから追い駆けて来た奴の体当たりをくらう。
2人で揉みくちゃになりながら、そいつの前に姿を晒す羽目になった。
( ´_ゝ`)「……」
そいつは黒いボロを纏った人型の肉塊を手に持って、焼却炉の前にいる。
これからの行動は言わずもがな、それを焼却炉にぶち込むんだろう。
よく見ると、その肉塊はさっき逃げた不良の内の1人に似ている。
似ているってか、まあ、本人だろう。ご愁傷様です。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 03:55:15.17
ID:pBII/4VX0
そのあまりの顔の滅茶苦茶さに合掌して黙祷する。
顔をあげたら、あの気まずいのと目があった。
(
;^ω^)「…どうも」
( ´_ゝ`)「ああ、どうも」
ぺこりと会釈されたので、僕も会釈した。日本人。
血塗れでびびったが、そういった部分は置き去りにしてないらしい。
害はないと判断したのか、後回しにされたのか。
そいつは元不良を引き摺って、焼却炉の中に投げ入れた。
『あぎゃああああああああああああああ!!!!』
焼却炉の中から、地の底から響くような怨嗟の悲鳴。
驚いた。ああなってもまだ生きていたのか。
それにしても酷い奴だ。
僕はきちんと殺してから燃やしたのに。
( ;^ω^)「ヒッキー、ヒッキー」
(-_-)「ん、んぁ?」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:00:16.31
ID:pBII/4VX0
取りあえず、次にあのバットの餌食に認定されるのは避けたい。
生きたまま焼却炉の中に入れられるなんて、以ての外だ。
僕はヒッキーを揺り起して、その場を放れた。
( ;^ω^)「ほっ」
角を曲がって、息を吐く。
あの場所では、もくもくと焼却炉の煙が上がっている。
煙と一緒に、燃えた奴らは苦痛と共に新世界へ行けただろうか。
(-_-)「なんで逃げたの? 敵っぽくなかったじゃん」
( ^ω^)「死体を燃やしてるとこを見られたら、普通はそいつも死体にするお」
僕だったらそうする。後ろめたいからではない。
見つかったら体罰どころじゃ済まない。
退学は当たり前。その上、賠償金。
そのまま子供用のブタ箱行きだ。
まあ、今の世界なら厳重注意かな。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:01:46.34
ID:pBII/4VX0
しかし、まさか、あの焼却炉を僕らと同じ目的で使う奴がいるなんてね。
いやははは、いつかのヒッキーを見ているようだ。
(-_-)「え? 焼却炉って死体を燃やす為にあるんじゃないの?」
( ^ω^)「…ヒッキー、お前も中々に狂ってるおね」
H 終
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:03:50.57
ID:pBII/4VX0
I特技は命ロスト
その一週間後。
唐突だが、近くの川が氾濫した。
台風は来てないが、連日の大雨で上流のダムが決壊したらしい。
こんな大惨事だってのに、休校にしないこの高校は狂ってる。
( ^ω^)「川に流れてる人を助けれるチャンスかもしれないのに!」
(-_-)「内藤君…今、授業中……」
僕が天に向かってオーマイガッドと呪詛を吐いていると、頭に何かこつんと当たった。
なんだ、天罰とはこんなものかと鼻で笑いながら当たったものを見ると、それはチョーク。
(
#´∀`)「内藤君、罰として外に出なさい」
外を見る。今は猛豪雨だ。
普通の生徒なら渋るが、僕には効かない。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:05:26.13
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「任せとけ!」
( ´∀`)「ちょ」
教師の言葉を、外で困っている人がいるから助けてきなさいと都合良く解釈した。
人助け用に、隣の席から縄跳びの紐をパクッて行く。
(;-_-)「ちょ!」
( ^ω^)「救助用ロープだ!」
僕のその言葉に、ヒッキーはなんだ救助用か、と呟いて席に戻った。
この高校はバカの集まりなのだ。馬鹿の集まりなのだ。
大事なことなので繰り返す。ばかの集まりなのだ。
救いようのない大莫迦者の集まりなのだ。
川が氾濫したと聞いたら、泳ぎに行って溺死する奴。
その川の近くでキャンプを試みる奴。釣りをする奴。
そんな奴らを人助けに行こうとする奴。
僕もそのバカの1人である。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:09:51.28
ID:pBII/4VX0
学校の裏にある用水路に行くと、色々と面白いものが流れていた。
家の屋根や車は勿論、サーファー、犬神家、子作りに励む夫婦を乗せたベッド。
中には応接用ソファに寝転がり、携帯をいじくりながら流れる猛者もいた。
そんな障害物に目を取られながら、僕は目的のものを探す。
いた。
( ^ω^)「流されている人を発見!」
上流から浮き沈みを繰り返しながら流れて来る乙女がいる。
ミセ*;д;)リ「た、助けげばぼべっぶぁっ!」
前言撤回。
僕の好みじゃない。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:14:06.64
ID:pBII/4VX0
しかし、助ける人命を選んではいられない。
ピーチ姫がどんなブスに変わろうと、マリオは助けに行かねばならんのだ。
( ^ω^)「これに捕まるお!」
紐の先を結んで輪っかを作り、流されている人に向かって投げた。
投げた縄は、見事流されている人に引っ掛かる。
首に。
( ^ω^)「やべ」
ミセ; Д
)リ「ぐえっ!?」
蛙が潰れたような声を発して、その人は動かなくなった。
水流に身を任せ、ざっぱんざっぱんと浮いている。
たまに流れて来る家具に当たっても、何の反応もしない。
( ^ω^)「やっちまった」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:15:19.93
ID:pBII/4VX0
やっちまったモンはしょうがない。
そう言い出したのって誰だろう。きっと僕みたいな奴だ。
( ^ω^)「さよならですお」
僕は持っていた縄跳び用の紐を、川に引っ張られるままに渡す。
死体は数回浮き沈みを繰り返して、すぐに見えなくなった。
ああ、後で紐をヒッキーに買って返さなきゃ。
金が勿体無いからいいか。
J 終
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:18:53.33
ID:pBII/4VX0
J便所飯フレンド
VIPで色々見ていると、ぼっち大学スレに珍しい書き込みがあった。
そいつは大学生ではなく、高校生らしい。
気になったので、煽りながら遠回しにそいつの高校を聞く。
( ^ω^)「『構ってちゃんはどこ中だお?』っと…」
IDの末尾がOの癖に反応が鬼のように早く、すぐにレスがついた。
『1000人以上いる、VIPでも有名なマンモス校』
そりゃあ、VIP立ブーン系高校と名前を教えたのを変わりねえよ。
だが、僕の趣味は人助け。
このぼっちは友人がいなくて困っているらしい。
ここは一つ、何かをしてやらねば。
( ^ω^)「うーんぼっち、ぼっち…ぼっちと言えば……」
ぼっちは基本的に1人だ。ひとりぼっち。当たり前だよね。
グループ作成でハブられたり、自由席で隣に誰も人が座って来なかったり。
たまにリア充に紛れてキョロ充と化す奴もいるが、救われたとは言い切れない。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:23:09.34
ID:pBII/4VX0
基本的に常に1人なので、一緒に飯を食う相手もいない。
そんな奴は周囲の視線に耐え兼ねて、便所で飯を食うと言う。
糞尿の悪臭が支配する密閉空間で、よく飯を食えたもんだ。
( ^ω^)「はっ! そうだお!」
僕は携帯のボタンを壊す勢いで乱打した。
『便所飯OFFしようぜ!』
安価先は、同じ高校のそいつ。IDはone/rT1HOだ。
( ^ω^)「こいつ、IDにまでハブられてやがるwwwwww」
鼻糞をほじる暇もなく、返事はさっきよりも早くついた。
この速度、PCで更新して、携帯で書き込んでいるのではないかと疑ってしまう。
『それじゃあ、1階のZ組教室に1番近いトイレで!』
( ^ω^)「どこ」
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:24:33.86
ID:pBII/4VX0
- 【1階Z組付近男子トイレ】
( ^ω^)「ここか」
僕の片手には、購買で買ったあんパンひとつ。
ジュースは持って来てはいない。
元より、こんなところで飯を食おうとは思ってはいない。
( ^ω^)「お邪魔しまーす」
誰も入っていないのを確認し、一番奥の個室に入って鍵をかけた。
むわっと悪臭が立ち昇る。くさい。なんだこれは。掃除しているのか。
(
;^ω^)「こんなトコで飯を食うなんて…ぼっちってのは気が狂ってるお」
一応、全てのぼっちがそうじゃないことをここに記しておく。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:28:26.64
ID:pBII/4VX0
悪臭に耐え切れなくなった僕は、一度便所を出て窓を開けた。
通気性が悪いのか、あまり風が入って来ない。
効果は薄そうだが、気持ちだけでも少し楽になりたい。
( ;^ω^)「あー…くさいお、早く出たいお」
腕時計で時間を確認する。12時半。
昼休み終了まで、まだ後40分もある。
( ^ω^)「なんという地獄」
思えば、スレでは何時に会うとかそういったことすら話してなかった。
初っ端からgdgdになりそうな予感がする。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:33:32.84
ID:pBII/4VX0
- 【一番奥の個室】
( ^ω^)「……」
小便をしに何人か来たものの、個室に入る輩はいない。
小学校ならうんこしてる奴をやたらと覗きたがる奴がいる。
しかし、ここは腐っても高校なので、そういった無粋な輩はいない。
ぼっちだから顔を合わせたらまずいと思い、個室から出ないで待つこと10分。
( ^ω^)「(もしや、あの時のあの書き込みは女子…?)」
だとしたら、どうすればよいのだ。
自分は男子であるから、女子トイレに入れる道理はない。
それは向こうも同じこと。女子は男子トイレには入れない。
( ^ω^)「(いやいやいや…そんな夢物語あるはずがないお)」
女子ぼっちの便所飯など、聞いたことも見たこともない。
図書室で一人、DSをぴこぴこしている女子を見た時は期待した。
しかし、その後すぐに女子は友達と思われる数人に囲まれたのだ。
そのDS女子はぼっちではなく、友人の為に席を取っていただけだったのである。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:34:34.02
ID:pBII/4VX0
それに、女と言うのは誰もが清潔好きなのではないのか。
女が便器に跨り、悪臭漂う個室で物を食むなど想像できない。
電車で地べたに座り込む汚ギャルはともかくとする。
こんこん。
( ^ω^)「…おっ?」
戸を叩く音。
他に開いてる個室は沢山あるのに、わざわざ一番奥の戸へ何故。
( ^ω^)「入ってますお」
「……」
向こうから返事はない。
下から見える靴の色からして、同学年のようだ。
「すみませんでした…」
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:39:28.47
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「……」
やけに遅い謝罪をして、すぐ隣の個室に入った。
それから、ベルトを外す音もなく、そのままトイレに腰掛けた音がする。
やっと来たこいつは、あのぼっちなのかどうか。
下手に話しかけて間違えたら、恥をかくのは僕だ。
( ^ω^)「(しくったお。捨てアド晒して、情報交換すべきだったお)」
今更悔やんでも遅い。何か書かれていなかと、携帯でスレを開く。
隣の奴が携帯をいじくる音が聞こえた。新着レスを見る。
色々な煽りや慣れ合い乙に交じって、応援レスがちらほらとある。
ID:one/rT1HOのレスを抽出して、それを追いかける。
( ^ω^)「(ふむふむ)」
どうやら、隣のこいつはトイレに人がいるのにびびって入れなかったらしい。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:41:38.94
ID:pBII/4VX0
直接対面するわけでもないのに、そんなんで大丈夫なのか。
こんな状態で、便所飯OFFにおkを出した意味がわからない。
人に会いたくないなら、そもそも学校に来なければいいと思うのだが、どうか。
( ^ω^)「(ID:one/rT1HOの最終レスは…)」
『隣の人ですか?』
そのレスで、ID:one/rT1HOのレスはぴったりと止まっている。
スレを追いかけていたので、その書き込みがあってから5分程過ぎていた。
隣から、携帯をいじくる音はしない。
トイレの中に、うんこを出す時とかまた違った、張り詰めた空気が漂っている。
( ^ω^)「(まあ、最初から裏切るつもりはないんだけど)」
『そうですお』
( ^ω^)「(送信っと)」
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:46:16.87
ID:pBII/4VX0
( ^ω^)「(うはうぇwwww返事早杉ワロスうぇwwwwwwwwwwww)」
さあ、悪臭の中で上手いメシを食おう。
ズボンを脱いで便器に腰掛け、食ったものをそのまま出す。
トイレの前を通る足音に共に怯え、壁を隔て弾む会話。
尿意と混じる、弁当のかぐわしきにほひ。
いいじゃないか。なあ。
これもまた、異質な形の青春さ。
なんてクサイこと言って〆てみる。
J 終
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:49:28.39
ID:pBII/4VX0
K動物虐待スターダスト
内藤君のお陰で、学校生活もそれほど苦ではなくなった。
いつも一人で食べていたお弁当も、隣に友達がいれば結構進むんだ。
(*-_-)「ふふ、ふふふ」
いつもは半分ぐらい残していた中身も、今日は空っぽだ。
おかずの区分けをしていた紙さえも、今は僕の腹の中に収まっている。
その所為か、ちょっとお腹が張ってるような気がしないでもない。
はっ! そうか、これが満腹感ってやつなんだね!
(*-_-)「いやっほぉおおおおお!!」
ハイテンションになった僕は、昨日TVで見たパルクールを披露した。
塀を乗り越え屋根を飛び越え、街中を縦横無尽に駆け回る。
途中で、何度か携帯を向けられたのを見た。
きっと、僕の雄姿を電子機器に納めてるんだ。
そのまま携帯を耳に押し当てた人は、多分記者を呼ぶつもりなんだろう。
(*-_-)「ぐふふふふ、ぐひっひっひっひ」
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:51:12.82
ID:pBII/4VX0
(-_-)「調子に乗り過ぎた」
いつの間にか、暴走族の集会によく使われる廃工場に来てしまった。
どうやってここに来たのかは覚えてない。
何か運命的なものが働いたような気がする。
(;-_-)「早く帰ろ…」
ここにいて暴走族に見つかったら、自慢のバイクで轢き殺されてしまうかもしれない。
僕が廃工場に背を向けると、中から声が聞こえてきた。
珍走かと思ったけど、声は女の子だ。
スケバンは架空の存在だと信じているので、多分普通の女の子だろう。
(-_-)「(まさか、エロゲ的展開…?)」
何話か前で、ビッチを公衆便所に置き去りにしてきたのもある。
僕は少しだけ期待して、廃工場の中を見た。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:54:24.90
ID:pBII/4VX0
川#゚д川「死ね! 死ね! クソッタレ!」
(;-_-)「!?」
目の入った光景が信じられなくて、思わず後ずさる。
期待を裏切られたことなんて、曇り空の彼方へ吹き飛んだ。
驚いて声をあげないよう気持ちを落ち着かせて、もう一度中を見る。
川#゚Д川「なんだよあのデブ! マジウザイし!
マジで死ね!」
(-_-)「(あれは…貞子ちゃん?)」
僕の脳内にある女子生徒データベースに欠損はない。
けど、学校で見る彼女と今の彼女はあまりにも違う。
一体何があったのか…。
川#゚д川「あーもーマジムカつくし!
付き合ってるとかンなワケねーだろカスが!」
彼女は怒鳴りながら、足元にあるゴミを力の限り蹴っ飛ばしている。
まるで滾る殺意をゴミにぶつけているようだ。
んん? 違う、あれはゴミじゃない。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 04:57:32.58
ID:pBII/4VX0
(;-_-)「(カラス…犬? なんかの動物の死骸!?)」
川#゚∀从「死ね! 死ね!」
綺麗なストレートが、山姥のようなぼさぼさの髪になっていく。
蹴り続ける足は変わらない。
死骸の皮膚が破けて、紐のようなものが彼女の足に絡みついた。
从#゚∀从「クソがっ!」
足に巻きついた紐を、素手で豪快にぶちりと千切る。
それを遠くに投げ捨てると、さっきよりも強く死骸を蹴り始めた。
(-_-)「(疲れないのかなあ…)」
从#゚∀从「死ね! 死ねっ! あのデブ!」
(-_-)「……」
それにしても、彼女のあの姿を見ていると、何かを思い出しそうだ。
なんだっけ、なんだっけ。えーと…。
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:01:09.59
ID:pBII/4VX0
(;-_-)「(そうだ! ハイソリッヒ! ハイソリッヒじゃないか!)」
僕の愛用しているエロゲ。夜のお供。ベッドインナイトフィーバー。
その名も(
・□・)ブーン系小説でギャルゲーを作るようですR18。
それに出てくる赤毛の髪がトレードマークの男勝りな女性キャラ。
(;-_-)「(なんてことだ…まるで二次元から飛び出して来たかのようにそっくりだ)」
从 ゚∀从 二次元
从#゚∀从 現実
僕は夢でも見ているのだろうか。それとも幻覚か。
ヤバイ薬をキメた覚えはないし、寝不足でもない。
つまり、これは現実に他ならない。
(;-_-)「(ああ神様!
これが夢なら覚めないで!)」
あまりの感動に、地の文と台詞すらも噛み合わない。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:02:26.63
ID:pBII/4VX0
从 ゚∀从「ふぅ…」
死骸が原型を留めないくらいにぐちゃぐちゃになったところで、ようやく彼女は止まった。
靴にこびりついたヘドロを床に擦り付けて、死体にボロ布を被せる。
そして、すっきりとした、爽快感に満ちた顔で去って行った。
(-_- )「……」
彼女の姿が見えなくなるのを確認してから、僕はそっと廃工場の中に入って行く。
ぐちょぐちょになったものは、元が何の動物かわからない。
彼女はこれを蹴って、一体何をしていたんだろう。
死ね、デブ死ね、クソッタレをひたすら繰り返した彼女の真意は読み取れない。
やっぱり、ストレス解消だろうか。
(-_-)「貞子ちゃん…ストレスが溜まっているんだね」
日頃の鬱憤を、これらにぶつけているのか。
死骸を蹴っていたのは、生きているものを蹴ると反撃されるのが怖いから?
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:05:32.80
ID:pBII/4VX0
例え動物であろうとも、誰かに傷つけられるのが怖い…。
ああ、なんて乙女なんだろうか。
(-_-)「……」
こうして死骸を目に入れると、元気に死骸を蹴飛ばす貞子ちゃんの姿が浮かぶ。
もう一度、あの爽快感に満ちた顔を見たい。出来れば話してみたい。友達になりたい。
(-_-)「よーし…」
恋愛モノでは、相手を落とすには相手が好きなものをプレゼントする、
彼女が好きなのは、この動物の死骸に違いない。
これから死骸を毎日届けることにしよう。
成功シュミレーションはこうだ。
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:09:34.08
ID:pBII/4VX0
------------------------------------------------
まずは彼女の部屋にそっと贈り物を届ける。
それが僕だということに気付かれてはいけない。
見知らぬプレゼントに困惑する彼女。
「一体、誰なの?」
思い当たる人物はいない。
一体誰がこんな贈り物を…。
日に日に贈り物を届ける人物への思いが募っていく。
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:13:43.97
ID:pBII/4VX0
届ける人物が気になって、寝ずに張り込みをする彼女。
そして見つけられる僕。
「あ、あなたが…!」
「違う! 待ってくれ、僕は君のことが」
「言わなくてもわかるわロミオ、私はどこかであなただと感じていたの」
「ジュリエット……」
「ああ、ロミオ……」
ラスト、結ばれる二人。
----------------------------------------------------------
(*-_-)「ふひっ、ふっひひひひひひひひ!」
そうと決まれば、早速死骸の調達だ!
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:18:04.74
ID:pBII/4VX0
が、そう都合よく道路に死骸がある訳ない。
という事で、近くの家のポチとシロ(仮名)に、早速死骸になってもらう。
これだけじゃ足りないので、保健所からも適当にかっぱらう。
▼;ェ;▼「きゃうん! きゃうん!」
(#-_-)「んもー」
ぎゃわぎゃわ煩いので、全部首を絞めて殺した。
保健所の中で毒殺されて焼却処分されるより、かなり価値ある人生だよ畜生共。
何せ、あのハイソリッヒに足蹴にされることができるんだから!
僕に感謝してよね!
(-_-)「さてと…」
死骸をその辺にあったゴミ袋に詰めて、彼女の家に向かう。
何故彼女の家がわかるのかって?
そんなの、この匂いを辿ればあっと言う間さ!
(-_-)「あ、ここだね」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 05:20:26.51
ID:pBII/4VX0
彼女の部屋はまだわからないから、居間らしきところに放り込んでおこう。
僕は勢いをつけて、ゴミ袋を窓に向かって投げる。
がしゃーん
貞子ちゃん、喜んでくれるといいなあ。
ふふふ。
「や、な、何これ…いやあ、い、いや、きゃああああああああああああああ!!」
K 終
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