( ^ω^)と魔女狩りの騎士のようです


302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 09:34:46.50 ID:WznWHEl+0
 ep4. 零距離の聖女

三日間何もないところを歩き続けると、気が遠くなる。
どこまで行けば、目的地に辿りつけるのかと。

旅の経験など大したことはないのだ。
そうなって当然だとは思う、というか、そうなって当然じゃないか。
蓄えはもうないし、外は寒いし、夜には不安感が襲う。

ああ、どうしてこうなってしまったのか。

はっ、そうだこの胡散臭い男に釣られてしまったんだ、簡単な話だった。
疲れていると記憶を引っ張り上げるのにもかなり体力を使うらしい。

うーん、前の村でもっと買い溜めしておけばよかったな。
今、どうしようもないくらい腹が空いている。
天から肉でも降ってくればいいのに。

ああ、けだるい、ああ、けだるい、起き上がれない、起きる気になれない。
  _
( ゚∀゚)「なぁ、起きてくんね?」

ノパ听)「むり」

この野郎、護衛してやってるこの私に向かって起きろ、とは。
だったら食いもん寄越せっての。こいつが飯売る商人なら、ちょっとは違うんじゃないのかな。

    「あなたたち、道端に寝そべって何やってるの?」

あっと、急にどこから声がかかった、んだけど…………なんかその声、すごく不快だ。



 
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 09:40:23.21 ID:WznWHEl+0
ξ゚听)ξ「あなたたち、道端に寝そべって何やってるの?」

聖地への路を往くなかで人とすれ違う、なんてことはしょっちゅうあるが、
ツンがこうして声をかけることは滅多にない。たとえそれが大地に寝そべる者だとしても。
もっと、それ以上にツンが気にかける理由が他にあったのだ。

ノパ听)「……なんすか?」

喉に異物を引っ掛けたような顔をして、道端の草の中から起き上がった肩ほどまで伸びた赤髪の少女。
彼女の身なりが、異常だった。

ξ;゚听)ξ「なんすかって……いえ、問題が無いなら特に用はないのよ」

頭には鍋のような物をかぶり、肩には鉄の皿と、そこから胸にまで伸びる曲がった鉄板。
腕と足には、関節を防護したいのだろうか、やはり丸い皿のようなものが当てられている。
そして腰には小さな皮の刃物入れが備えられ、防具の下は短い布の服を数枚重ねて着ていた。
  _
(  ∀ )「すいません……なんかすいません……!」

明らかに子供が遊びで作ったような、『鎧』。しかも軽装鎧。
だが、この場所の近くには村は無いはずなのだ。側に死にそうな顔で立っている男も、商人にしか見えない。

ノパ听)つ「あ、金髪姉御殿、飯くれ」
  _
(;゚∀゚)「やめろよ! 普通に考えてせびっちゃダメだろ!」

歳はツンより二つほど下だろうか。
礼儀を知らないところ、あと一つほどは低いかもしれない。

ξ゚听)ξ「飯……? もうすこし歩けば、旅の宿があるじゃない」

 

 

305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 09:45:58.31 ID:WznWHEl+0
ノハ;゚听) そ「なんだと! ジョルジュ! 先行ってる!」

言うと、赤髪は飛びあがり、道なりに真っ直ぐ走っていった。
がちゃり、がちゃり、と体の装備が擦れ合ってやかましいのだが、彼女は気にもしていない。
  _
( ゚∀゚)「あいつ、金持ってねーだろ……」

男、赤髪の様子からおそらくジョルジュという名の彼は、それを見ながら両手をぶら下げ立ちすくんでいた。
背中には人が三人ほど丸めて入っていそうな程とても大きな黒の布袋が背負われていて、これは商売品だろう。
それをよいしょ、と背負い直し、道を踏み、歩き出そうとした。

ξ゚听)ξ「あの、」
  _
( ゚∀゚)「あーい何ですかシスターさん、連れが今程失礼申した旅する恋する青年商人、ジョルジュ君ですが」

調子の整った言葉は商売文句なのか、しかし声に覇気は微塵もなかった。

ξ゚听)ξ「さっきの子、ご家族かなにかで?」
  _
( ゚∀゚)「俺の護衛ですけど」

ξ;゚听)ξ「……あれで護衛?」
  _
( ゚∀゚)「あれで護衛」

ξ゚听)ξ「……」
  _
( ゚∀゚)「あー、……何か買います? 一応装飾品とかも扱ってますけd」

ξ゚听)ξ「結構です」

 

 

306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 09:52:14.81 ID:WznWHEl+0
     「……」

それから無言の一拍、商人は赤髪の後を追い、早足で去っていった。

川 ゚ -゚)「装飾品くらい見てもよかったじゃないか、ただ漫然と歩くのも暇なんだぞ」

ξ--)ξ「あの護衛であの荷物で、あのくたびれっぷり。ガラクタしか売ってないからああなるわけでっせクーさん」

( ^ω^)「確かに、儲かってるようには見えなかったお」

三人もこの先の宿をとるつもりだったので、確実に後で再会することになる。
その揺るがない事実は、微妙にツンの足取りを重くし、先頭が遅くなることで、やはり全体も遅くなる。

川 ゚ -゚)「旅の商人の暮らしがどーいったもんかは知らんが、面白そうな人種だったじゃないか」

( ^ω^)「いいや、商業に関わる人間ってのは碌な奴がいないお。損得勘定でしか動けないから」

ξ゚听)ξ「……なんかさ、ずっと前から思ってたけどブーンって商人に対して当たりが強いよね」

( ^ω^)「あれ? ツンはショボンから聞いてなかったかお?」

ξ゚听)ξ「なに」

( ^ω^)「いや別に」

ξ゚听)ξ「チッ、言えよ」

( ^ω^)「チッ、舌打ちすんなお、チッ、」

川 ゚ -゚)「チッ、チッ、チッ、でいいのか? 流れ的に」



 
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 09:58:54.10 ID:WznWHEl+0
舌打ちの押収は続き、会話の一片に六十回程度織り交ぜなければならなくなった頃。
それはツンの口が渇いてぺたぺたになった頃。
ようやく、この日の宿が見えた。

柱のように縦に長い構造は、何に備えたものなのか。
自然に対抗するには少しやんちゃをし過ぎたような宿だった。

ξ゚听)ξ「なんか改装してる……ていうか建て直したのね」

その前に立ってツンはこぼした。
最も聖地に近いここにあったはずの宿には、彼女は何度か世話になったことがあるのだ。
初めての任務、今遣わされている任務ではないもの、を行った際にも、初めて泊まったのがここだ。

それが彼女にとって思い出深いというわけではないが、
改めてこうしてやって来ると、その頃からなかなか時間が経っていることを認識させられる。
いやあ自分も歳を食うんだなあ、などと、思いたくないことまで自覚させられて、

川 ゚ -゚)「なんだ、あれ………」

感慨にふけってみようとしたツンの思考が遮られた。
声の方を向くと、クーが宿の横に回り込んでその先を見ていた。

ξ;゚听)ξ「うわっ、なにあれ……」

二人から少し距離を置いたところで、白衣を着た人間が地面にうつ伏せに、上半身のみでぷるぷる震えていた。
下半身は地面の大きな穴に突っ込まれているようで、顔は真っ赤にふくれ、色素の薄い髪がそれをちらつかせる。

从;゚∀从「おい! 助けろ! さっきから無視されて精神的にマズイっ! 俺が死んだら世界が青ざめるぞ! ああっ!」

雄たけびのようで元気そうなのに、助けなければ死ぬらしい。

 

 

309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:06:51.13 ID:WznWHEl+0
从 ゚∀从「助かったぜ、クソが」

ツンとクーが引っ張り上げると、白衣は立ち上がりざまにぷっ、と唾を吐き捨て、前髪をぶわりとかきあげる。
次に片手を腰に当て顔を斜めに傾けたと思えば、ツンらに向かってふんぞり返って見下すような眼で、今の台詞を言い放った。

从;>∀从「いってえ! やめろ!」

ツンはその顔面に手刀を落とした。白衣の背が彼女よりも低かったためである。

ξ゚听)ξ「なにあんた」

从 -∀从+「ふっ。俺はニュー速の希望の星、世界最高の自然科学者ハインリッヒ・T・フランクリンだ。ハイン様と呼べ」

ξ゚听)ξノ「なに、あんた」

∩从;>∀从∩「うぉぉぉぉぁぁぁ今言ったじゃんか! 怖いから手ぇ降ろせよ!」

川 ゚ -゚)「この穴はなんなんだ?」

クーが指差したのは白衣、ハインの後ろ。先程落ちかけていた大きな穴。
人を三人まとめて落とせそうなほどの幅で、底が見えない程度に暗く、なかなかの深さがあるようだ。

从 ゚∀从「おぅ、今日はもう暇だから爆破した」

言って、白衣の内側から筒のようなものを取り出す。

ξ゚听)ξ「なにこれ」

从 ゚∀从「俺の友人が作った新型爆薬だよ」


310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:13:58.04 ID:WznWHEl+0
( ^ω^)「わっせわっせ」

「いらっしゃいませ、血沸き肉躍る旅の宿、『虹路里』でございます」

( ^ω^)「すみませんお。今日ここにお世話になりたいんだけど、連れがまだ外なんですお」

「何名様でしょうか」

( ^ω^)「僕を含めて三名だお」

「わかりました。では荷物をお運びしますので、そちらで受付を」

( ^ω^)「あ、じゃあお願いしますお」

連れ二人を無視したブーンが宿に入ると、宿の主人が床をぎしぎしと鳴らしてすぐに出迎えに来た。
見た目は腰の低い初老の男性のようだが、何か血沸き肉躍るという。
入り口横の受付にはふくよかな女性が居り、ブーンは適当に名簿へ三名分の名前を書いた。
上に三つの名前があるのを見ると、自分達以外にも三人宿を取っている者がいるらしい。

ノハ*゚听)「もっと水くれ! 渇きは潤い、潤いは豊穣へ!」
  _
( ゚∀゚)「なんかおまえ水ばっか飲んでるな。確かに豊穣はサイコーだけども!! イェーァ!!」

騒いでいるのは先程からだったので、確認の必要すらない。
二人はあれで確定、後は残った一人、ブーンは一番上の名前を見る。

( ^ω^)「……随分、懐かしい名前だお」

フランクリン。それは、過去に出会ったある学者の名だ。
商業都市の人間だったはずだが、おそらくそのあたりの親族、なぜ『こちら側』にまで来ているのだろうか。



 
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:22:14.83 ID:WznWHEl+0
ξ゚听)ξ「爆薬? 最近の学者さんは炭鉱も掘るようになったの?」

从 ゚∀从「いやちげーよ、こっちのほうの山で使ったんだ」

ξ゚听)ξ「何に使ったのよ、この辺りは基本的にそういうのだめよ」

从 ゚∀从「石が欲しかったんだよ」

ξ゚听)ξ「石採るのって爆薬が必要なわけ?」

从*゚∀从「え? いらねーよ? ぷっ、馬鹿じゃね?」

ξ--)ξノ「……」

∩从;>∀从「あーすまん、すまん俺には必要なんだすまん手ぇ降ろせってホントごめんなさいってば」

ξ゚听)ξ「意味わかんないわよ、ふざけてんの?」

从;゚∀从「いや、だからさぁ……」

ξ゚听)ξ「だってあんたがやったこと、普通に重罪じゃない。単独ってことは無許可ってことでしょう」

从 ゚∀从「なんだ、わかってんじゃん」

ξ゚听)ξ「つまりどうしても欲しいのに誰も聴く耳持たないから勝手にやってんのね? 科学者ってそういうの多いし」

从#゚∀从「あぁ? こっちはなぁ、頭のお固い修道女になんざ一生わからねえ価値のあることをやってんだよ」

ξ--)ξ「はっ。他人に理解できないものに価値があるとは思えないけど」


313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:28:02.87 ID:WznWHEl+0
从#゚∀从「なんだとてめぇ、爆破させられてえのか」

ξ゚听)ξ「他人の技術を借りて? ああ、あんたの友人は可哀想、作ったものの価値を理解されていないみたい」

从#゚∀从「じゃあ殴ってやるよ。おら、面貸せ修道女」

ξ゚听)ξ「……言っておくけど、私は殴られたら全力で殴り返す。仮に右の頬を打たれたなら、あんたの顔をブッ飛ばす」

从 ゚∀从「いやいや…………お前……本当に修道女か? ブッ飛ばすとか、お前神父に怒られねーの?」

ξ゚听)ξ「聖書は一度、流し読みしかしてない。それに神父なんて私と直接関わらないし」

从 ゚∀从「へえ、なに? なんか事情でもあんの? 子供の頃から宗教やってたわけじゃなさそうだけど」

ξ゚听)ξ「あんたにはあんまり話したくないわ」

从 ゚∀从「いーじゃん、お前馬鹿じゃなさそうだし、面白そうじゃん?」

ξ゚听)ξ「面白くないから」

从*゚∀从「あ、そーだそっちの宿に泊まるのか? 俺も取ってるから飲みながらでも話そうぜ!」

川 ゚ -゚)「む、いきなりなんなんだこいつは」

从*゚∀从「なぁなぁ、そっちの美人さんはどういう人なんだ? よく見りゃ修道女の連れが黒づくめじゃねーか!」

ξ゚听)ξ「吸血鬼よ」

从*>∀从「んーな馬鹿言っちゃってよー! こんなとこで流行んねー嘘つくなって!」


314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:34:14.17 ID:WznWHEl+0
从;゚∀从「マジでえええええええええええええ!? ありえねえええええええええ!」

二人は白衣に連れられてきて、ブーンを差し置いてさっさとカウンターについてしまった。
白衣はすぐさま酒を持ってくるように頼み、二人に向かって話し始めたと思えばこれである。

( ^ω^)「誰だお?」

ξ゚听)ξ「ハインなんとか」

ツンの横につくブーン。
白衣、ハインはそれに気付いていないのか、一生懸命クーに質問攻めをし始めていた。
なにやら小難しい話をしており、傍からでは聞き取る気になれないほどにまくしたてている。

从;゚∀从「え、なにそれ? そういう話になるってことは、魔女はなんなの? なんかおかしくね?」

ξ--)ξ「あー、本当に魔術とかつかうわよー、そうねー、あぶないわねー」

从;゚∀从「マジでえええええええええええええ!? ありえねえええええええええ!」

川 ゚ -゚)「こいつ、ツンみたいな男だな」

ξ;゚听)ξ「え、私こんなにやかましいの?」

从 ゚∀从「待とうぜ、俺は女だ。なんならおっぱい見るか?」

( ^ω^)「あぁ、なんか口調に違和感があると思ってたお」

川 ゚ -゚)「ほう、凛々しい面構えで判断に迷っていたんだが」

ξ; )ξ「うえぇぇぇぇぇぇマジでええええええええええええ!?」


 
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:42:59.38 ID:WznWHEl+0
ツンの叫びと同時に、カウンターには酒が振る舞われた。
これにより未だ夕方を過ぎて間もないこの瞬間から三人の宴が始まってしまう。
ハインが音頭をとり、ツンやクーが仕方なしに乗る、という初手から。

从*゚∀从「ぬっはっはっは! おまえすげえイケるんだな!」

ξ*゚听)ξ「私ニュー速最強なんで! ねえおばさん! じゃんじゃん持って来ないとクレームつけるわよ!」

川*゚ -゚)「ふへへ、酒はうまいなぁ……」

こんな調子に三人は、浴びるように。
ハインの波長はツンと等しいようで、最初の一杯以降、それは止まらない。
やがてそんな様子を離れて眺めていた一人は、ふらふらとその雰囲気に釣られてしまっていた。

ノパ听)「なぁなぁ、なに盛り上がってんの? それうまいの?」
 _
(;゚∀゚)「バカほんとやめてくれって! すいませんみなさん!」

( ´ω`)「いや……別に今なら、どんどん入ってきて構わないと思うお……」

後ろからの止める男はしきりに「すいません」と頭を下げるが、それを見るものは居ない。
騒ぎに飛び込んでいった赤髪を捕まえるのに必死で、三人はぎゃあぎゃあ騒いでいた。

从*゚∀从「おらおら名前なんてーの? なんならこのハイン様がつけてやろうか? やろうかぁ!」

ノハ;><)「ヒート! ヒートだから! やめろぉ! 巻きついてくんなって!」

ξ*゚听)ξ「私の巻き毛がなんだって? んん、美しいと? フハハハ貴様もそう思うかぁ!」

川*゚ -゚)「言ってないぞ! 誰も言ってないぞ! 私の髪が世界一だぞ!」

317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:49:38.31 ID:WznWHEl+0
     「俺のおっぱいが世界一だぁぁぁぁぁ」
                                 「ぬぉぉぉぉぅ私が上だぁぁぁぁぁ」
 「貴様らの絶壁なんぞ誰も吸わんわ! 見ろ!」
                                「うわっ、なんだよぉ! お前ら服を……うわぁぁぁぁぁっ!!」

( ^ω^)「まぁ……こっちはこっちでゆっくり飲めばいいお」
  _
(;゚∀゚)「あ、ども……」

男二人は軽い食事をテーブルに持ってくるよう頼むと、適当に移動した。
こちらの商人はバカ騒ぎに乗るのが苦手なのか、それとも保護者として飲めずにいるのか。
とりあえず、食事が来るのを待つついでにブーンは適当な話題から切り出した。

( ^ω^)「そういえば、自己紹介がまだだったお。僕はブーンで、金髪がツン、黒髪がクーだお」
  _
( ゚∀゚)「俺はジョルジュです。あっちのは護衛のヒートで、これから聖地に行くんですよ」

( ^ω^)「僕らもだお。聖地には行商で?」
  _
( ゚∀゚)「まあ、そんなところですね。そちらは?」

( ^ω^)「連れの修道女にちょっと用事があって」
  _
( ゚∀゚)「わざわざ聖地に用があるなんて、あの若さでありながらなかなか高位の方なんですかね?」

( ^ω^)「だお。ま、美人だからしょうがないお」
  _
(*゚∀゚)「ははっ。確かにあれだけ美しいならば、『そういった』理由で戻されるなんてこともあり得そうだ」

( ^ω^)「今の教会なんてきったねえアホと勘違いした騎士しか居ないし、そのくらいの認識で丁度いいお」

318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 10:56:07.32 ID:WznWHEl+0
それからはくだらない世間話と、騒ぐ女性達に茶々を入れてみたり、
ジョルジュが一向に酒を飲もうとしないのをヒートがひっきりなしに勧めていたり。

( ^ω^)「ていうかジョルジュは何売ってんだお? 装飾品以外だと」
  _
( ゚∀゚)「装飾品以外だと、行った場所での民芸品とか、あとは……武器が中心ですね」

( ^ω^)「武器……ということは?」
  _
( ゚∀゚)「……まあ、そういうことですね。『衣装』はまだなんですけど」

現在、携行は騎士とそれに準ずる者にのみ許されている刀剣類などの武器。
近年では火薬を用いた新型のものも商の社会に出回り始めているという話で、
それらを持っているということは、裏での力の証明に繋がる。

その中、火炎を生む腕輪のような魔導具もまれに流れており、手に入れた者を変える『衣装』と呼ばれているのだ。
しかしここ数年で『枯木の魔女』の動きがひそかに落ち着いたということもあり、この流れも収まりつつある。
そこでその減った流れで、それらを押さえ手に入れる商人。ということは、市場に影響力を持つ、ということになる。

この男ジョルジュはそれなりの若さを持ち、そういった『衣装』を含む、武器をさばく商人であるという。
『衣装』がまだとはいえ武器をさばけるようになっているということは、そこそこの手腕があるのだ。

さらに言えば、武器をさばく、すなわち誰かに武器を売り、使わせることができる。
それは、騎士への反乱分子とも言いかえることができる。

つまり彼は、ツンなどの視点から見れば、危険人物である、とも言える。

( ^ω^)「いや、わざわざそこまで言う必要は……」
  _
(;゚∀゚)「すいません……あなた達は何か不思議な雰囲気で。思わずポロッと」

 

 

319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:01:35.70 ID:WznWHEl+0
( ^ω^)「ツンは聞いてないみたいだし、まあ一応黙っておくお」
  _
( ゚∀゚)「そうですか……すいません」

ツンが最初に出会った時、『衣装』すなわち魔導具に気付かなかったのならば本当に持ってはいないだろう。
もともとツンとブーンの目的は教会の反乱分子を潰すことではないので、余計なことはしない、という考えに至った。

( ^ω^)「でも、」
  _
( ゚∀゚)「はい?」

( ^ω^)「君が『衣装』を着込もうという時は、容赦しないお」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「悪いけど、それはこの世に必要ないものだから」
  _
(  ∀ )「………いや」

( ^ω^)「ん?」
  _
( ゚∀゚)「力が得られるなら、人は仮初の『衣装』でも、喜んで着ます」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「この世には確かに必要の無いものでも、『個人』という単位には、必要な時があるんですよ」

( ^ω^)「…………君は、暗い闇に染まってもいいのかお。心まで、体の芯まで枯らされても」

     「『騎士』が正義だと言い張っている世の中なら……俺はそれでも、構いません」



 
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:06:28.23 ID:WznWHEl+0
ブーンはその言葉に彼の心を見た。
途方もない憎悪が、そこに浮かんでいたのだ。

ブーンはこれ以上に踏み込むべきか迷った。
人としての意志を尊重するべきか、それとも合理的な、理性的な答えを突きつけるか。

ふいに、泣いていた彼女を思い出す。

彼女には何度も殴られ、過去の自分も持っていた『人』を見せつけられた。
それは自分にはもう存在しない、全うな生の在り方だ。

自分がそれを、ここで否定していいのか、わからない。

どうしてあの時、彼女が泣いていたか。
それは自身がどこに在るのかわからなくなっていたからか。
旅の目的を見失って、どうしようもなくなってやつあたりをしたからか。
子供たちに同情して、その想いを代弁するように気持ちをがむしゃらにぶつけたからか。

どれも違う。

ブーンが彼女の尊厳を、一方的な理性で踏みつけたから。
それは確実に間違いではない。あの時それが正しかったことも、彼女は解っていたはずだ。

しかし人は理性だけでは動いていない。
感情をもって、意志をもって、自己をもって、生きている。

それを、『正しいから』という理由で一方的に否定してしまっていいのか。
出会って数時間の人間に対し、『自分は正しいから今すぐ考えを改めろ』と、無神経に言ってしまっても。

彼の言う『個人』というくくりは、他人が土足で入り込んでいい領域ではないと、ブーンは思ってしまっていたのだ。

 

 

322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:12:26.39 ID:WznWHEl+0
( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

見つめ合う。
言葉をひり出すのが億劫になりそうなほど、ジョルジュは真っ直ぐな目でブーンを見る。

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「ジョルジュ……君の、信じるものは?」

ややあってブーンが絞った質問は、ひどく曖昧なものだった。
しかしそれは、今のブーンにはっきりと答えられる問いでもある。
この質問は、ブーンがまるで人のように振る舞うことができる、そういうもの。
曖昧である『信頼』、『信仰』は、しかしそれが自己の生の支えであるということを、ブーンは自答するように。
  _
( ゚∀゚)「屈することのない『力』と……揺らぐことのない『金』です。そしてこれからも、さらに大きなものを」

( ^ω^)「……そうかお」

ジョルジュがブーンの目から離した先に居たのはヒートだった。
あれが彼の持つ力であると、その態度が示している。
それは彼女そのものに対しての信頼か、彼女の持つ力に対しての信頼か。
彼の信じる二つをまとめて考えれば、おそらくは簡単に答えが出せる。

( ´ω`)=3「あーあ、やっぱり商業に関わる人間ってのは碌な奴がいないお」
  _
(*゚∀゚)「あははは! だから俺みたいな生き物は、いつの時代もこうやって生きて、そう言われていくんですよ」

 

 

323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:17:11.72 ID:WznWHEl+0
从*゚∀从「おまえらぁぁぁぁぁ! もっと飲まんかコラぁぁぁぁぁぁ!!!」

ξ*゚听)ξ「私の酒が飲めんのかぁぁぁぁ!!」

(;^ω^)「うーわめんどくせえのが来たお」
  _
( ゚∀゚)「仕方ないっすねー」

( ^ω^)「じゃ、そろそろぐいぐい行くかお?」
  _
( ゚∀゚)「……そうですね!」

飛び込んできた二人に、男たちは半ばやけっぱちで酒を抱える。

長い旅路、長い人生での僅かな交錯の中、少しの間でも、互いを尊重できるように。

それが自己にとって、最も幸せであると知っているから。

雁首揃えてしかめっ面をしていて、誰が得をする。

右も左も笑って過ごす、そうしていた方が満たされるだろう。

ならばこの時間が嘘だとしても、虚構虚勢で形作られていたとしても。

酒を飲み、肩を組み、思いつく限りの言葉を投げ合って。

まどろんでゆく思考に、身を任せてしまえばいい。

ノパ听)「…………」



 
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:22:15.01 ID:WznWHEl+0
(*^ω^)「あついおー」
  _
(*゚∀゚)「なははははははは!」

なんとか女達が酔い倒れるところまで二人は持ちこたえた。
ブーンとジョルジュは気力で二人ずつを背負い、部屋へと運ぼうというところ。

(*^ω^)「あ! ツン落としちゃったお!」

縦に長いこの宿、階段が狭く背負うのが大変である。
  _
(*゚∀゚)「なははははははは!」

(*^ω^)「ジョルジュ達は二階かお?」
  _
(*゚∀゚)「ですねー! こっちの人もそうだと思います!」

ジョルジュはヒートとハインをかなり無理な体勢で背負うが、慣れなのか意外と安定している。
二階に上がるとその足取りで部屋に真っ直ぐ歩いてゆき、戸の手前でブーンに会釈をした。

(*^ω^)「さてー、」

三階の部屋へと二人を運び、さっさと眠りにつかなければ。
そう思い、息を深く吸いながら。

次の瞬間には、ブーンはどこかに倒れ込んでいた。
どうやら記憶が軽く飛ぶほど飲んでいたらしく、そのままその温かさに。

瞼は意識をするよりも、早く閉じていた。




 
327以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:27:13.17 ID:WznWHEl+0
不快、不快、不快、ただひたすらに、不快だ。
どうしてここまで気持ちが悪いのか、心当たりがない。

どうしてこうなってしまったのか。

はっ、そうだこの胡散臭い男に釣られてしまったんだ、簡単な話だった。
疲れていると記憶を引っ張り上げるのにもかなり体力を使うらしい。

……いいや、違う。

もっと、その後だよ、楽しいことがあったじゃないか。
一人、二人、三人、四人、たくさん人がいたじゃないか。

なんだろう、思い出せない。

あんなに満たされたはずなのに。
久しぶりに、あんなに笑った、はず、なのに、なぁ。

痛い、頭が痛い、どうしてこんなに、痛いの?

助けてよ、助けて、頭が割れそう、辛い、辛い、辛い、ねえ、誰か。

ねえ私、どうして、こうなってしまったの?

はっ、そうだこの胡散臭い男に釣られてしまったんだ、簡単な話だった。
疲れていると記憶を引っ張り上げるのにもかなり体力を使うらしい。

さて、これからどうするんだっけ。

ノハ )「そうね……まずはあの不快な声の女を、殺しましょうね」

328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:32:08.87 ID:WznWHEl+0
ノパ听)「ここ?」

二階には白髪の女とジョルジュしかいなかった。
ならば三階。そこに、あの女がいるはずだ。

ξ*--)ξ「……くぅ、くぅ、」

川 - -)「すぅ、すぅ、」

(  ω )「う、う、う、ぅ……」

一人が惨事になっているが、関係無い。
私は本能に従う。従わなければ、ならない気がする。

腰の刃に手を伸ばした。
過去、何人もの人間を殺してきた刃だ。
護衛だっつってんのに、私を無視して商人を襲おうとするから悪い。

あれ、おかしいな、なんで、私はこの人を殺そうとしてるの、
自分から人を殺したことはない、よね?
あれ? あれ?

手が震えてる、なんで、私は殺したいんじゃ、

できないよ。
なんでこんなことしようとしてるの?
変だよ、私変になっちゃったよ、おかしいよ。

ノハ )「……うるさいわねえ、殺すのよ。……ね?」




 
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:37:05.03 ID:WznWHEl+0
ξ*--)ξ「んん〜?」

寝ている女の腹に跨り、顔を突き合わせる。
白い肌に、私の頬が当たる。

ξ*--)ξ「ぬふふ、ブーン?」

ノハ; )「!!」

ξ*--)ξ「……くぅ、」

寝言か。
驚かせやがって。

さあ、手の刃を。
この白い首に、突き立てなければ。

     「おい」

後ろの声もどうせ寝言だ。
こいつを、さあ、振り下ろして、うう、ああ、ぅぅぅぅ、

川 ゚ -゚)「何をしている」

ノハ; )「がっ!」

次の声と、同時に背中にすごい衝撃が来た。
なんだ、これ、壁が―――。

あれ? 落ちて、る?



 
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:41:42.26 ID:WznWHEl+0
川 ゚ -゚)「なんだこいつ……どうしたんだ……?」

ノハ# )「ハァァァァァァァァァァ……ァァァァァ……」

三階からヒートごと壁を蹴破ったクーは、その落下点に飛び降りた。
するとそこには落下の衝撃にまったく動じていない、様子のおかしな彼女がいる。

深く息を吐き続け、眼は真っ赤に充血し、肩ほどだった赤い髪が腰まで伸びていた。
そのうえ落下の衝撃にふらついて立ちあがったのかように見えたのだが、その体に傷は無いようである。

川 ゚ -゚)「ああ、これが魔導具とかいうやつか?」

ノハ# )「……」

川 ゚ -゚)「……ん? でもツンは魔導具を察知できるんじゃなかったのか?」

ノハ# )「……」

川 ゚ -゚)「おいヒート、」

ノハ# )「?????」

川 ゚ -゚)「それ、」

     「………ハァ……」

熱い息がクーの鼻に掛けられた。
二人の距離はすぐそこまでに迫っていたのだ。
そのままヒートは両手でクーの肩を鷲掴み、頭を後ろに振りかぶり。
赤髪を一本の太い線のように視認した時には、クーのその顔に、ヒートの額が突き刺さっていた。


 
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 11:47:15.46 ID:WznWHEl+0
川  - )「くっ、そ……私の頭はなぜ頻繁にこんな目に……!」

全体重での頭突きを喰らい、クーは仰向けに地面に伏した。
肩が軽く地にめり込んでいるが、そんなことを気にしてはいられない。

ノハ# )「ぎ、」

クーの真上に立ったヒートが、固めた拳を振り上げていたのだ。

川 ゚ -゚)「悪いが、少し腹が立ったぞ」

拳は待つことなく垂直に下ろされた。
しかしクーはそのヒートの拳を、握った両の拳で左右から叩き潰すように止める。

ヒートは一瞬怯んだ。手の痛みによってなのか、止められたことによってなのかは読めない。
だがクーはおかまいなしに、止めた拳を両拳で蛇口のように捻り、ヒートの半身ごと腕をねじる。
ねじった勢いを逃がさないように拳を解き、すぐさまヒートの腕を掴むと、さらにねじる。

川 ゚ -゚)「私に歯向かったことをせいぜい後悔しろ」

クーは立ちあがりながら、ねじり、ねじり、無理矢理引っ張り、腕の付け根に拳頭を叩き入れる。
するとヒートの肩の関節が外れ、ぶらりと腕がしなった。
そしてその腕を片手で掴んだまま、クーはヒートの脇腹に爪先を突き刺した。

ノハ; )「がっ!」

一度、二度、ヒートの体を横にへし折ろうというのか、その脇腹のあたりに踵や脛で何度も蹴りを入れた。
四度目以降、ヒートの口から血が玉のように出てくるが、クーに容赦はなく、止まらない。

川 ゚ -゚)「おい。土下座するかここで死ぬか選ばせてやるから、生きろ」


 
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします  :2010/04/17(土) 12:00:03.22 ID:WznWHEl+0
十六度目の蹴りを入れた途端、ヒートは全身の糸が切れたかのように体を野垂れさせた。
クーがその背中を蹴り倒すと、べしゃり、と彼女自身の血だまりにうつ伏せに倒れ、ぴくりともしなくなる。

川 ゚ -゚)「ああ、死んだか、」

ノハ*゚听)「――ねえ! あなたなかなか強いわね! どういうものなのかしら? ん?」

しかし、うつ伏せの体の頭だけをクーに向け、突然ヒートは夕方の時のような軽い調子の声で、狂ったように目を見開いた。

川 ゚ -゚)「…………何だ?」

ノハ*゚听)「あなたは知ってる? これは私の構築した二百個目の秘蹟、『レーヴァテイン』なの。
     この力はねえ、すごいのよ? 最初の秘蹟の上位互換といったところかしら。ね。
     私の魔術での肉体活性と放出層を感情、記憶、生命力と直結させて、自動的に無尽蔵になるように書きつけたのよ。
     そしてね、どうしてこれが『レーヴァテイン』なのか、ここが一番推したい部分なんだけど、わかるかしら?」

捲し立てるヒートは、自身の声でないような、饒舌なものをクーへと。

川 ゚ -゚)「知らん」

     「この子達は、私の『剣』なのよ」

言葉を言いきる寸前、倒れていたヒートの血が弾けた。

ヒートは血を口から垂れ流したまま、蜘蛛のような無茶苦茶な体勢で飛びあがったのだ。
それと同時に耳を引き千切ろうとしたのか、手をかぎづめのようにクーの頬に伸ばす。
クーは寸前で避け距離を取ったが、僅かに掻かれそこから血を流してしまった。

川 ゚ -゚)「秘蹟ということは………魔女、……なのか?」


337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:05:23.33 ID:WznWHEl+0
ノハ*゚听)「へえ、やるじゃない。あなたもなかなか物を知っているのね。
      いい匂いがするのはそういうわけかしら? ふふ、やったことが多すぎてわからないわね。
      でもね、違うの、間違ってる、私は魔女じゃないわ、私はもうとっくにそれを越えている、」

川 ゚ -゚)「ならば貴様は、」

ノパ听)「神」

川 ゚ -゚)「……なんだと?」

ノハ*゚听)「私は、神だから、もう人とか越えてるから、すごいんだから。
     どうして『秘蹟』なんて名づけたか知らないでしょう? これは昔の教会への皮肉。
     神に給われるものだと勘違いしている愚か者に、教えてあげてるのよ。
     私が万物を操るの、私が全てを司る者なの、ねえあなたには、わかるかしら?」

川 ゚ -゚)「わからん」

ノパ听)「――解れよ、間抜け」

話しながらヒートが接近していたことを、クーは気付いていなかった。
正確にいえば、気付けなかった。彼女の真っ赤な眼に無意識で釘づけにされていた。
「間抜け」。その言葉がクーの耳元で囁かれたのは、既に過去のこと。
クーの体は、ヒートに足を向けて宙を舞っていた。

側頭部をヒートの拳に殴り飛ばされていたのだ。
クーがそのことに気付くのは、つい先程まで酒を飲んでいた席に、木の破片を崩しながら自分が飛び込んでいた時。
宿の一階は大きな穴を壁に空けると、ぱらぱらと割れたものが崩れ、クーはふらつく頭でそこを遠目に覗いた。
しかしその先にあったのは、これほどの力があるとは到底思えない、月下の草原に立つ少女の小さな影一つだけだった。

川  - )「む…………ならば……本気で殺してやっても構わんか……」


 
339以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:10:55.02 ID:WznWHEl+0
ノパ听)ノシ「ねー! あなたは死にたいかしらー? 今度はあなたに選ばせてあげるわよー!」

ヒートは手を振って、暗い宿の中に大声をかけた。

ξ#゚听)ξ「死にたくないわー! ドアホー!」

彼女に声を返したのは、ばたばたと階段を駆け降りてきたツンだった。

ノハ#゚听)「あ゛! 気に入らねえ女ぁぁぁぁっ!!」

川 ゚ -゚)「あ、ツン……起きたか……」

ξ゚听)ξ「なにあれ、どうなってるわけ?」

川 ゚ -゚)「あれは、魔女の剣だとか、なんとか、」

ξ;--)ξ「うーん? 剣とは言っても……魔導具じゃないはず。けど、魔術の波は感じるのよねぇ……」

二人の方にじりじりと歩いてくるヒートを見つめながら、ツンは考える。

あれには、彼と同じものを感じるような気がする。
ならばどう対応すべきなのだろうか、戦う意味はあるか。
もし戦ったとして、問答無用で消せるほど生半可な力なのか。

ノハ#゚听)「てめえ吹き飛ばすからせいぜい覚悟しとけ!!」

ヒートの宣言の通り、彼女のだらしなく下げられた両手から小さな光が漏れていた。
蝋燭の明かりのような小さな赤の光は、徐々に彼女の腕全体を侵食し、濃度を増やす。
気がつけば鈴を鳴らすような音をもって空気を削っており、明らかな力の集約を感じた。
しかも今の「吹き飛ばす」という言葉。なら、あれをこちらに向けてくれば、どうなるか。

 

 

340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:15:59.29 ID:WznWHEl+0
ξ゚听)ξ「クーさん、寝てる人たちを宿から出して」

川 ゚ -゚)「いけるのか?」

ξ゚听)ξ「そっか、まだクーさんは見てないもんね」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「多分いける。あの子の手で留まってる力は、きっと魔術と同じもの」

川 ゚ -゚)「違ったらどうする」

ξ゚听)ξ「じゃあ、あれは『絶対』に魔術よ」

川 ゚ -゚)「………わかった、任せる」

クーは一気に宿を駆けあがった。
主人たちは離れの小屋に住んでいる。寝ている彼らを回収すればどうにかなる。

ξ゚听)ξ「とは言っても、」

ヒートの手に溜まる力の判別はどう取るべきなのかわからない。
枯木の魔女ではないことは確か。昔ブーンから聞いていたが、魔女はむかつく顔らしいから。
しかしこの空気の割れるような感覚は、間違いなく魔術のものだと言いきれる。

ツンは全身に施された錬金術により、空気中に魔術の香、臭いがあれば常にそれを分解するようになされている。
それによりツンは、負の感情を喰らって魔術を発生する魔導具の存在を、香の強い方に向かえば追うことができる。
同時にその恩恵として、空気中の魔術を分解する際、分解した分の魔術を自らの身体能力の糧としているのだ。

そして現在、宿の外に居るヒートからは魔術の奔流を感じ、ツンの体は完全に活性化していた。



 
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:20:42.04 ID:WznWHEl+0
ξ゚听)ξ「ほんと、どうしたもんかな……」

貫通した大穴から宿の外に出ると、さらにその先でヒートが喚きながら立っている。

ノハ#゚听)「ぁぁぁぁぁあ? そこで喰らってみるかクソガキ! この距離ならてめえが氷山だろうがかっ消すぞ!」

ξ゚听)ξ「あなたそんな子じゃなかったじゃない」

ノハ#゚听)「こいつの話なんざ知るか! てめえが近くに居たらいちいち断線してうぜえんだよ! 繋ぐ苦労も考えろ!」

長い赤髪を振り乱し、同様の色に染まった赤の腕がツンの方を向いて小刻みに震えだした。
おそらくその様子は、魔術を放出する準備ができているということだ。

ξ゚听)ξ「全っ然、わけわかんないんだけどさ、」

だがそれはツンにとってはあまりも遅く、緩慢とした動きに見えた。
ヒートから溢れる魔術の流れは、それだけツンを強くしている。

ξ゚听)ξ「それ、めちゃくちゃ危ないよね」

正面に立ち、ヒートが手前に伸ばしていた両掌を、ツンの掌が掴む、いや、握る。
少女がまるで遊戯でもするかのように、ツンの掌とヒートの掌は組まれた。

ノハ# )「ぁぁ………っぜえなぁ……だったらこいつごと消えやがれ!!」

がっしりと絡みあう指、しかし暴れるヒート。ツンの眼前で叫び倒して、掌の上から全身まで響かせるように暴れ狂う。
そのヒートに伴うように、組まれる手の間では先程の力の集約、躊躇いを知らないヒートの赤色の魔術は、きりきりと光を強めていく。

彼女の掌には放出という衝撃。やがて一瞬の間を置き、破壊と破壊の破壊は、零距離でぶつかり合った。


343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:25:30.66 ID:WznWHEl+0
ξ# )ξ「ぐおおおおおいってえなちくしょおおおおおおっ!!」

赤が滝のようにヒートの掌から生まれた。それは僅かに手の間を飛び散り、足元の草原の一部を弾き飛ばした。
魔術は組まれたツンの掌を直接、突き刺すかの勢いで押しにかかっていた。

ノハ#゚听)「なんだ……? てめえ、どうなってんだよ!!」

真っ赤な目を見開き、ツンの鼻に噛みつきかかる狼のようにヒートは吠える。
二人の掌の上では血のように赤い滝の衝撃と、太陽のように白い閃光が拮抗していたのだ。

ξ# )ξ「私にはねぇぇぇぇぇぇ!! 魔術は効かないぃぃぃぃぃぃたいいたいたいたいってばああああああ!!」

更に手を握る力を強めるツン。この衝撃の一片すら逃がさないように、強く。
掌は大きさを増した白に覆われ、白はヒートの赤を喰らいつくすように徐々に広がっていた。
それはツンからヒートへ、ヒートの掌からその体へ。

ツンの白の光は、ヒートの魔術の源泉に向かって走る。

ノハ;゚听)「なっ、くそ、再構築が、追いつかない……っ!!」

ξ#゚听)ξ「なに言ってるか、わかんねえっつうの!!」

組んだ手、徐々に弱まる力にヒートの動揺が見えた。
その隙を狙い、分解した魔術の恩恵を受けた体で一発の頭突きを全力で見舞う。

ノハ; )「!!」

脳に響く鈍い音はヒートの額を割り、血液が噴水のように飛び散った。
勢いのままツンが地面に押し倒すと、彼女の気絶に伴うように、赤の魔術も潮が引くように消えていく。
同時に、息を切らしたまま垂れる額の血は、消し飛ばした魔術よりも深い赤色をしているなあと、ツンは思った。

 

 

344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:30:44.93 ID:WznWHEl+0
ξ;;)ξ「いぃぃぃ―――っ!!」

ヒートが完全に落ちたのを見て、暗い草原にのたうちまわり始める。
気合で押し通したとはいえ、魔術を分解していても衝撃を逃がし切れてはいなかったのだ。
手を必死に押さえて、見づらい中でその様子を確かめてみるが、一応傷がなかったのが救いだった。

川 ゚ -゚)「見てたぞ、ツン」

と、背後にクーが立っていた。
そこに向かって飛びつくようにツンは草原を転がる。掌の痛みを、何かどこかに報告しなければいけないような感じに。

ξ;;)ξ「あぁぁぁ、クーさん……いたぁい………」

川 ゚ -゚)「なんかすごいな、あれ」

ξ;;)ξ「うん……でもなんでヒートが魔術を……」

川 ゚ -゚)「いやお前の話なんだが……」

ξ゚听)ξ「そだ、みんなは避難させた?」

川 ゚ -゚)「あー、一応、な」

ξ゚听)ξ「ん、歯切れ悪いね?」

川 ゚ -゚)「ブーンの奴の顔がゲロ塗れだったし、」

ξ;゚听)ξ「えぇ……またかよあいつ……」

川 ゚ -゚)「あと、……ジョルジュと言ったか? そいつが居なかったぞ」

 

 

345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:35:31.71 ID:WznWHEl+0
⊂从*=∀从つ-ω-ノハ--)

ξ゚听)ξ「確かに、部屋には居なかったわね……」

川 ゚ -゚)「あ、ハインまでゲロまみれに……」

ξ゚听)ξ「とりあえず、ヒートが起きるまで待ちましょう」

川 ゚ -゚)「宿がぶっ壊れているが、大丈夫なのか?」

ξ゚听)ξ「いいのよ。ここ、結構な頻度で壊れて建て直しまくってるから」

川 ゚ -゚)「なぜ」

ξ゚听)ξ「たまーに、過激派が攻めてくるのよね。ラウンジ教潰し隊みたいなやつ」

川 ゚ -゚)「ほう。で、宿がぶっ壊れているが、大丈夫なのか?」

ξ゚听)ξ「え? だから、」

川 ゚ -゚)「これじゃ危なくて寝れんぞ」

ξ゚听)ξ「……寝るつもりだったの?」

川;゚ -゚)「え? 寝ようよ! 私寝たいよぉっ!」

ξ゚听)ξ「ヒートが目を覚ました時に私達が寝てたら逃げられちゃうじゃない。ていうかなにいまの」

川 ゚ -゚)「ツンは子供には弱いから、寝ても文句言われないようにな。いやー、これは見事な予防線だなあと我ながらおm


346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:40:32.02 ID:WznWHEl+0
( −ω−)=3「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

目を覚ますと何故か草原の上に寝そべっていたブーン。
起き上がって周りを見ると、昨日寝ていたはずの宿が崩壊しているではないか。

(;^ω^)「こいつぁ一体……ッ!!」

ブーンの横では、女達が全員寝ているうえにゲロ臭い。
これは降り注ぐ太陽光に、ゲロの処理を任せるしかないのでは。

( ^ω^)「いや、さすがに井戸借りるか……」

主人たちの家の方に井戸があるという話を既に聞いていたので、そちらへと歩いていった。


ノハ;゚听) そ 「ぬぱっ!」

( ^ω^)「あ、起きたかお?」

ノパ听)「……?」

起きたヒートは不思議そうに、大きな桶を持ったブーンを見つめる。
そのまま手を地面に触れたり、濡れた自分の体に触れたり、何かを確かめるように。

( ^ω^)「ヒート、宿が酷い有り様なんだけど何か知ってるかお?」

ノハ;゚听)「も……? あぁーれぇすいません……あなた、どちらさまで?」

( ^ω^)「……あら…………ら?」


 
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 12:45:33.45 ID:WznWHEl+0
やってきた主人たちに、ようやく起きたツンがこの惨状をブーンとハインもまとめて説明した。
魔術云々は説明がしにくいので、今居ないジョルジュが爆発した、ということで納得させて。
そのため主人たちは壊れた宿の復興手続きのため、再度家に戻って書類などの準備をするという。

そこで隙をついて、今の内に宿の一階に滑り込んで全員を座らせることにしたブーン。
大穴の程度は人三人分くらいだったので、そこそこ大きなこの宿、まだ崩れるほどではないという判断である。

( ^ω^)「で、結局?」

ξ゚听)ξ「まさかヒートの記憶が飛んでるなんて……」

( ´ω`)「ジョルジュったらあの野郎……悪い奴じゃなかったのにねぇ……」

ξ゚听)ξ「いや、ぶっ壊したのはヒートなんだけど……彼女、純粋な魔術を使ってたのよ」

( ^ω^)「……何か変なこと言ってたかお? まさか魔女が化けてたりするかも」

ξ゚听)ξ「え? 私にぎゃーぎゃー叫んでたからわかんないし、わかんない」

( ^ω^)「んー。じゃあ、魔女ではないお。魔女だったらべらべらべらべらなんかしゃべる筈だから」

ξ゚听)ξ「魔女ではない、ってじゃあなによ。私が崩せるんだから魔術使ってたわけだし、」

川 ゚ -゚)「ツン、魔女の剣だと言っていたと言っただろう」

( ^ω^)「なにそれ、イッテイタトイッタ?」

川 ゚ -゚)「ヒートはレーヴァテインという秘蹟だと言っていた。ちなみに私はヒートにぶっ殺されかけた」

从 ゚∀从「なにがなんだかわかんねーけど、ヒセキって宗教の話か? 俺暇なんだけど」



 
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:02:03.62 ID:WznWHEl+0
( ^ω^)「秘蹟……あぁ、なるほど」

川 ゚ -゚)「お前と同じようなものか?」

( ^ω^)「経緯は違うだろうけど、多分同じ」

ξ;゚听)ξ「え……? ってことはあんたも魔術使えるの? 狩っていい?」

( ^ω^)「僕のは別に秘蹟によって魔術が使えるようになるわけじゃないお。名前違うし」

川 ゚ -゚)「二百個目の秘蹟とも言っていたな。それから、あのときのヒートは様子がおかしかったぞ」

( ^ω^)「ふーん、二百ねぇ……。いいお、とりあえずヒートに聞いてみるお」

ξ゚听)ξ「でも、あの子は何も覚えてないでしょう?」

( ^ω^)「ツンが秘蹟を壊したなら、その直前までの記憶ならありそうだお」

そう言って、カウンターのグラスを勝手にいじるヒートの方を向いた。
いじりながら時折きょろきょろと頭を回して、納得のいかないような不思議そうな顔し、またグラスをいじっていた。

見たことのない場所、見たことのない人が居て、自分はどうしていいのかわからないらしい。
それでも落ち着きの無いところは本質的な部分のようで、それだけは、彼女が彼女であると示しているようである。

ノパ听)「……あのー、ここ何処なんですか?」

( ^ω^)「君は自分のことをどれくらいわかっているんだお?」

ノハ--)「あー、そういえば私は誰なんですかねー? みなさん的にはヒートでいいのかな? 私は別にそれでもいいけど」


352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:07:11.54 ID:WznWHEl+0
( ^ω^)「ツン、」

ξ゚听)ξ「ええ、これは、うん」

从;゚∀从「なんか事態が深刻じゃねーか! 何があったんだよ! 俺の手は臭かったしよー!」

( ^ω^)「なんだろ、魔女の剣……剣ってことは、まさか人じゃないのかお?」

ξ゚听)ξ「いやいや、それは流石に話が飛びすぎじゃ……」

( ^ω^)「……『ホムンクルス』?」

ξ )ξ「………いや、」

( ^ω^)「ツンなら知っているはずだお。過去、錬金術師たちが手を伸ばそうとした愚行を」

从 ゚∀从「あー、それなら知ってるぜ。昔のイカれた錬金術師がやってた研究な。
      人間造るとか、ヤりゃデキんだから必要ねえだろうに」

ξ゚听)ξ「あれは一度たりとも成功しなかったわ、現存するどの文献にも、まともな記録はないもの」

( ^ω^)「枯木の魔女は、それを成功させたかもしれない」

ξ゚听)ξ「あり得ない、私の父も、祖父も、それを否定する側の人間だった」

( ^ω^)「あいつは世界を知ってるお、それくらい不可能じゃないのかもしれ――」

ξ#゚听)ξ「――絶対にあり得ないってば! あんな方法で、人を作れるはずがない!」

( ´ω`)「わーかったお、なんでそんなに怒るんだお。じゃあその可能性は置いておくお………」

 

 

353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:13:10.22 ID:WznWHEl+0
川 ゚ -゚)「まあまあそれはないとして。魔術以外の要因かもしれないじゃないか。ツンの頭突きとか」

从 ゚∀从「魔術はよくわかんねーけどよー、頭突きでそんだけ記憶飛ぶなんてそれこそありえねえって」

( ^ω^)「やっぱ考えんの無理。とにかくこの子、どうするお」

ξ゚听)ξ「うーん、ヒートがこんな感じだとジョルジュの動向も気になるし……」

( ^ω^)「あいつは聖地に行くって言ってたお。荷物は置いてないし、多分そこに向かってるはず」

ノハ;゚听)「あーのぉ……私どうしたら? 金髪姉御たちについてく感じなの?」

( ^ω^)「いや、行かない方がいいと思うお」

ξ゚听)ξ「それには賛成。ジョルジュのところに行ったら、何が起こるかわからないわ」

川 ゚ -゚)「でもお前達はそっちに行くんだろう? 私が適当なところに連れて行ってもいいが、いかんせん人脈がない」

ξ゚听)ξ「じゃあハインは? ハインはニュー速だったよね?」

从 ゚∀从「ああ俺か? まあ別にいいけど、ヒートはどうしたい?」

ノパ听)「うーん、どうしよ……」

ξ--)ξ「こっちに来たら頭が突然爆発するわよー」

ノハ;゚听)そ「なにぃっ! じゃあハカセの人にする! 爆発は絶対やだ!」

从 ゚∀从「ハカセっつーか……まあいいや、俺はハインな。行くあてがないなら助手としてコキ使ってやるよ」


 

 

354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:18:23.78 ID:WznWHEl+0
部屋から荷物を取り出し、五人はそれぞれ、ここを発つ手筈を整える。
ヒートはハインについていくことに文句はないらしく、黙って自分の荷物、主に宿からもらった食料を担いでいた。

ξ゚听)ξ「それじゃ、私達は聖地に」

从 ゚∀从「俺たちはニュー速に、だな。またどっかで会おうぜ、はみ出し者」

ξ゚听)ξ「あんたこそめっずらしー女性研究者なんだから、なんかすごい発明でもしなさいよ」

从 ゚∀从「まー待ってろって。未来はこの手にあんだからよ」

( ^ω^)「……き、…………」

川 ゚ -゚)「未来か。お前が科学の教本にでも載る日があるのならば、それを楽しみにしているぞ」

从;゚∀从「あ、そういやあんたは長生きなんだっけ? やべーなぁ、なんもできなかったら言い訳できねえ」

ノパ听)「私ものるのか?」

从 ゚∀从「俺様の助手としてな。逃がさねーから覚悟しとけ」

ノパ听)「ふーん、じゃあ頑張る」

ξ゚听)ξ「頑張ってね。私も私の目的を果たす」

从 ゚∀从「ま、お前のほうは結局よくわかんなかったけどな。そのうち名を挙げることがあったらなんか食わせろ」

( ^ω^)「……うん。君達の造りあげる未来、楽しみにしてるお」

ξ--)ξ「さー、行くわよ」

 

 

355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:21:19.81 ID:WznWHEl+0
彼らは宿を去って、一つの別れが訪れた。

ノパ听)「……」

その背中を見つめて、思う。
彼らは旅の途中、この宿に泊まったのか。

だったら自分はなぜここにいたのだろう。
彼らのように、旅をしてきたのでは?

从 ゚∀从「どした?」

ノパ听)「ハインはここに何しに来たの?」

从 ゚∀从「この辺の山で磁石採ってただけだけど」

ノパ听)「じゃあさ、私は何をしていたと思う?」

从 ゚∀从「え? 旅だろ?」

ノパ听)「だよね、」

漠然とし過ぎていた。
『どうして』旅をしていたか、それを本当に覚えていない。
まるで、思い出すのを拒んでいるような。

ノパ听)「ま、いっか」

从;゚∀从「あ! おい待て! そこはでっかい穴が!」


356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:24:14.79 ID:WznWHEl+0
ノハ;゚听)「ぬぉわっ!」

大きな穴に、足を突っ込んで。
頭からゆっくりと落下していった。

体が宙を転がる。
滅茶苦茶に土がぶつかる。
頭を打つ、肩を打つ、腰を打つ、腕を打つ、足を打つ。

痛い。

ノハ;><)「あうっ、死ぬかと思った………」

从;゚∀从「大丈夫か!」

ノハ;--)「大丈夫……だ、よ、?」

頭がぼんやりとする、なにか、ひっかかる。あーっ、あーっ、うーん。
あれ、衝撃でちょっと記憶が戻りそうなの、かな?

从;゚∀从「ロープ的なもの借りてくるからちょい待ってろ!」

なんだっけ、そうだ、旅をする理由。
あの商人、そうだ、ジョルジュ。
あいつだ。

あいつが言っていたこと、あいつの目的、あいつとの旅、何か、何かあった。

あと少し、あと少しで思い出せる、そうだ、壁に頭突きしよう、


357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:27:22.82 ID:WznWHEl+0
    「ラウンジ教は愚者の集い」          「連れていけ」
                      「神、神、神」
 「ここで証明をしてみせる」                           「素晴らしい力だ、これが神の力だ」
                    「じゃあ私が生贄になってもいいよ?」
  「宗教なんて真に受けるな」
                         「信じてないから、やってもいいって言ってるんだよ」

     「さあ、このお守りを、困っている人達に配りましょう」
                                      「私の娘は呪われてしまった」
  「ああ、ああ、血だらけじゃないか」  あ、思い出せた。
                                    「大丈夫、これでも生きているから」
 「ラウンジ教の騎士は、教えなど全うしていない」
                                 「そうだ、力ばかり振り回して、商の妨げになる」
  「しかしラウンジ教は、騎士を正当化している」
                                  「神の力が要る」 「神はここにある」 「神は人についている」
 「まずは私のお守り、私の一部を、世界中に」
                              「力の無い商人達は、ここで連合をつくる。横暴な騎士共には振り回されんぞ」

 「いつか我らが神の温床が広まった時、その時に力をもった俺達商人の力で、ラウンジ教を、騎士達を潰そうじゃないか」

 「やぁ、俺はジョルジュだよ。色んなところを回って、お守りを配ってきたんだ」

 「私はヒートだけど、何? 商人なの?」                 「あら、今度はあの子が旅に出るのね」

 「まあね。それより、君は最初の聖女だって聞いたよ」         「礎となってくれたあの子には、感謝をすればいいのかしら」

 「またその話か………私は嫌だって言ってるじゃん」          「だったら、あの子が出掛ける前に」

 「違うよ。ここを離れて旅にでも行こう。世界はとても広いんだ」    「私の剣となるための、補填をしなきゃ。ね、」


358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:30:21.16 ID:WznWHEl+0
ノパ听)「ジョルジュは…………そっ、か……。ねえハイン! ちょっといいかな!」

从 ゚∀从「どした! 体が死んだか!」

ノパ听)「さっきの金髪姉御は? あれ修道服だよね?」

从 ゚∀从「あ? そうだけど、もう行ったぞ?」

ノパ听)「私思い出したんだ! ジョルジュが聖地に向かってた理由!」

从 ゚∀从「なんだー? 俺別に興味ねーぞー」

ノパ听)「あいつ! 悪い奴らと結託して武器を運んで、聖地を潰そうとしてるんだよ!」

从 ゚∀从「……マジで?」

ノパ听)「神がどうとか言ってた! そいつが先導して、ジョルジュとかにお守りを作ってた!」

从 ゚∀从「なんだよまーた宗教かよ……。そんなの別に、騎士が勝手に片付けるだろー?」

ノハ;゚听)「いや違うんだって! 本当にあの女、すげー力を持ってて!!」

从 -∀从「わかったってばー。お前これから俺の助手なんだから、そういうの考察できるくらいにならねーと」

ノハ;゚听)「信じてくれよ! ジョルジュ達はそのお守りとかを運ぶために分散して動いてるんだ! やばいんだよ!」

从 -∀从「まじでー? ちょーやべーじゃん? 宗教バンザーイってか? とりあえずロープ借りてくるから、さっさと帰るぞ」

ノハ;゚听)「私の頭の中に居たのも、その神とか言ってた奴なんだってば! 私が金髪姉御を殺そうとしたのも、きっとそのせいだ!」


359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 13:33:23.28 ID:WznWHEl+0

( ^ω^)「そういえば、」

ξ゚听)ξ「ん」

( ^ω^)「聖地で祭りでもあるのかお?」

ξ゚听)ξ「なんで? ないはずだよ?」

( ^ω^)「もう数日歩けば聖地ってところで、なんか馬車持ちがやたら多くないかお?」

川 ゚ -゚)「乗せてもらえんか頼むか、楽だし」

ξ゚听)ξ「そんな図々しいのは……」

川 ゚ -゚)b「止まれぇぇぇっ! 死にたくないならなぁ!」

「ん? なんだあんたら修道女連れかよ、何言ってやがんだ。消えろ」

川 ゚ -゚)b「おうおう死にたいのかぁ? 乗せてもらえんとマジギレ温泉宿だ!」

「……あー? そういうこと、か? んじゃ、後ろの武器乗せた荷台、ちょっと空いてるから乗れよ」

≡川 ゚ -゚)「かたじけないっ!」

ξ゚听)ξ「……聖地の方にこんなに武器運んでどうするのかしら? 直接行ったら普通に捕まるのに」

( ^ω^)「うーん、これはまったくしっくりこないお。ま、楽させてもらえるからいいけど」

 ep4. 零距離の聖女 おしまい。

 


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