( ^ω^)「ブラッドソード!」


2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:37:32.78 ID:jKfse4qX0

从'ー'从「これは避けがたい運命だよ〜」


占い師だと名乗った娘は焚き火の明かりに照らされたカードをじっと見つめながら、そう告げた。


从'ー'从「運命の女神のカードが出たよ、大きな仕事に取りかかることになるかも?」

从'ー'从「きっと…大切なものを探し求める旅とかそんな?」


ここはクラースの南東に広がる広大な森の端。
この森を無事に通り抜けるため、数多くの旅人がキャラバンをつくり行動を共にしていた。
原っぱはすでに野宿の準備をする行商人や狩人達でごったがえしていた。

娘は顔をあげると、その深い緑色をした瞳で向かい合った者の表情をのぞき込んだ。
カードの一枚を示して言う。


从'ー'从「この最初のカードによると、あなたは壊れたものを元通りにする仕事をすることになるって」

 

 

3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:39:25.29 ID:jKfse4qX0

从'ー'从「旅は長くてつらいものになるし、たくさんの危険な障害に立ち向かうことになるし、手強い相手を敵に回すことになるかも」

从'ー'从「でもね、最後のカードはあなたの味方をしてるよ。女神様があなたの方を向いてるの」


娘はそう言うと木漏れ日のようにやさしく微笑んだ。
炭火でモクモクと煙る屋台の向こうで忙しく作業する男は、めんどくさそうに問い返す。


( ^ω^)「それで焼きトウモロコシは食べるのかね、どうするのかね」

从'ー'从「食べたいけどお金が無いの。運命を観てあげたからそれで帳消しにならないかな?」

(#^ω^)「…」

 

 

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:41:55.29 ID:jKfse4qX0

Blood Sword!#2『魔術王を打ち破れ!』

Cap.1受け継がれた宿命
──────────────────────────────

夕日が森の向こうに沈もうとしている。
屋台の仕事を終えた男は、人混みから少し離れたところに野宿によさそうな場所を確保すると、荷物をおろした。


( ^ω^)「…」

从'ー'从「あー、この辺なら静かに休めるかも〜」

从 ゚∀从「そうだな、俺あちこち廻っておかずとか拾ってくるから、ナベちゃんはメシの支度しといてな」

从'ー'从「心得た〜」

( ^ω^)「ちょっと、ちょっと待ってくれるかな」


男は、すぐ傍をちょこまかとする二人組に声をかけた。
二人はキョトンとした顔で男を見た。

そのうちの一人はさきほどの屋台の客────いや金を払ってないので、客ではない。
そしてもう一人はその連れのようだが。

 

 

5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:43:32.75 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「えっと、何から…。うん、とりあえず誰だ貴様ら」

从'ー'从「わたしは渡辺さんだよ、ナベちゃんって呼んでいいよ」

从 ゚∀从「俺はハインリッヒちゃんだ、これでも地元じゃちょっとは名の知れた…その、あれだ、有名人なんだぞ」

( ^ω^)「いや名前を聞いたわけではなくて」


聞けば二人は、十字軍の駐屯地であるクレサンチウムからクラースまで旅を続けてきたという。
そしてさらに東の岬から海を渡り、ワイアード島まで行く旅の途中ということだった。


从'ー'从「クラースまで来たところで旅費が足りなくなってきて〜」

从 ゚∀从「それで一山当てようと、『マグス選抜 かがやけ!勝利の紋章選手権』で誰が優勝するか賭けたら、大ハズレでお財布空っぽになっちゃって」

从'ー'从「まさか大本命のバーバリアンズが負けるとは思わなかったよ〜」

从 ゚∀从「俺は神を畏れぬなんちゃらってイケメンに賭けたんだけどね。こっちも見事にハズレて」

( ^ω^)「あの大会ってそういう名前だったんだ」

 

 

6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:45:34.43 ID:jKfse4qX0

从'ー'从「それでお金が無いから先にも進めないし、帰るにも帰れないし、とりあえず誰か生活力のありそうな人に寄生してどっか行こうって決心したの〜」

从 ゚∀从「そういうことなんだぜ!よろしくな!」

( ^ω^)「よろしくねえよ。相手の都合とかも考えろよ」


でもたぶん言っても無駄な気がするので、男は放っておくことにした。

男は野営地の原っぱのはずれで薪を集める。
今夜の暖をとるためのものだ。
夕陽が差し込む針葉樹の林は、秋の終わりの寒々とした気配を含んで静まり返る。
もうじき冬になる。

パキ、と枝を踏む足音がして誰かが近付いたことを知らせた。
見ると先程の娘の片方だった。


从 ゚∀从「なあなあ、名前は何て言うの?」

( ^ω^)「内藤だお」

从 ゚∀从「それとも愛称で呼んで欲しかったりするかな、んーそれじゃ『笑ってるようで笑ってない、でもちょっと笑ってるただの糸目』なんてどう」

( ^ω^)「長げえよ」

 

 

7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:47:56.50 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「というかこちらの名が内藤では何か不都合でもあるのかね」

从 ゚∀从「普通過ぎてつまんない以外は、とくに不満は」


夕日はすでに彼方の山の稜線に沈み、辺りは夜の先触れの暗がりに包まれていた。
充分な薪を抱えて野営地に戻ろうとしたときのことである。


( ^ω^)「…?」

从 ゚∀从「どうした?食べれそうな小動物でも見つけた?」


男は、地面の一角に焼け焦げた部分のあるのを見つけた。
焚き火の跡のようにも見える。
だが燃えさしが見当たらない。


( ^ω^)「…魔法の火?」


キャラバンは数日ここへ留まっているし、中には魔法を使う者もいる。
この場所で魔法が使われたとしても不思議なことではない。

念のため焦げあとを調べてみると、乱暴に踏み消された様子が見て取れた。

 

 

8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:50:11.48 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「…」

从 ゚∀从「掘ってみる?」

( ^ω^)「参考までに、なぜ掘ろうと思ったか聞かせてくれないかね」

从 ゚∀从「誰かが焼き芋を埋めて、蒸し焼きに」


男はちょっとだけ考えて、フルフルと頭を振った。


( ^ω^)「ヤキイモならいいが、それ以外の何かが出てきたら面倒だお」

从 ゚∀从「それ以外…。鳥の丸焼き…とか?」

( ^ω^)「もっと大きくて手足の付いたのが出てきたらどうするね」


从 ゚∀从「…」

从;゚∀从「!」


从;゚∀从「てっ手と足の生えた鳥が!?そんなのいるの!?大きいの!?」

( ^ω^)「ちげえよ、人間の焼死体とか出たら嫌だから止めとこうって言ってんだよ」

 

 

9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:53:09.03 ID:jKfse4qX0

留守番をさせていた女のところへ戻ると、女は小さな焚き火の上で器用にシチューを作って二人の帰りを待っていた。


从'ー'从「おかえり〜」

从'ー'从「何かね、豆とか干し肉とか入った袋があったから、今夜は贅沢なシチューだよ〜」

( ^ω^)「待ってくれ、それは非常食用の」

从*゚∀从「わーい」

( ´∀`)「わーい」


从'ー'从「そして食後のおやつはチョコレート〜!」

从*゚∀从「わーい」

( ´∀`)「わーい」

( ^ω^)「それも非常食で今食べたら非常食の意味が無くな」

( ^ω^)

( ^ω^)「待て。誰だ貴様」

 

 

10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:56:11.03 ID:jKfse4qX0

男は食事の輪にちゃっかりと紛れ込んでいる何者かの姿を見咎めた。

それはこざっぱりした衣服を身につけた旅芸人風の男だった。
年寄りではないが、頭髪は雪のように真っ白だった。
背中にギターを一本担いだ他は、荷物らしいものは見当たらない。


( ´∀`)「?」


男は質問の意味が分からないといったふうな素振りをみせた。
具体的にいうと、見ていてイラッとする感じに、かわいらしく小首をかしげた。


从'ー'从「この人は吟遊詩人さんだよ〜」

( ´∀`)「吟遊詩人モナ」

( ^ω^)「何度でも言うが、そういうことを聞いているわけではない」

( ´∀`)「一曲聞くモナ?」


吟遊詩人は頼まれてもないのに楽器を抱えて、かき鳴らす。
思いのほか悲しげな音色につい聞き入ってしまう。

吟遊詩人の奏でる調べは旅芸人たちのにぎやかな音楽とはまるで違っていた。
ふざけたように見える顔にも、どこか不思議に強い意志と誇りが感じられる気がした。

 

 

11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 00:58:47.49 ID:jKfse4qX0

音色にのせて物語が語られる。

それはスパイト火山の爆発で三つに折れた剣の物語だった。
折れた剣が夜空に散らばった様子…

刀身は星の光の集約する場所へ…
その柄は絶海の彼方のある島へ…
そして鞘は大地の奥底へ…

それがある旅の男によって見出されることを静かな調べにのせて語り、吟遊詩人は演奏を終えた。
森の空き地には歌の余韻とともに沈黙が残された。


( ^ω^)「…」


焚き火の上ではシチューの鍋がコトコトと音をたてて煮えている。
そういえば、と男は空腹であるのを思い出す。
食べ物があって、お腹を空かせた者が顔をそろえているというだけの話だ。
ごく単純なことを目の前にすると、堅苦しいことを言うのがバカバカしく思えてくることがある。

 

 

12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:00:49.13 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「まあ食べていけばいいじゃない。誰か知らないけど」

( ´∀`)「モナ」

从*゚∀从「ごはんー」

从'ー'从「いただきまんもす〜」


キャラバンがそれぞれ散らばる野営地は、既に夜の闇に包まれている。
あちこちに焚き火の明かりがともり、談笑の声が聞こえてくる。
焚き火のはぜる乾いた音が、だんだんと冷えてきた辺りに響く。

他の集団はもう食事は終えて、声をひそめて話していたり、寝る支度をしているようだった。


( ^ω^)「…」


食事を終えて、寝床とした片隅へ体を収めると、男は懐から小さな石を取り出した。
それは焚き火の明かりをうけて、たくさんの面を黒く輝かせていた。

吸血鬼の兄弟から貰った宝物の片割れの黒い宝石。
その黒い輝きに目を奪われる。

 

 

13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:02:54.50 ID:jKfse4qX0

のぞき込む。
無数の面に映るのは揺らめく炎のあかりではない。
己の姿だった。


( ^ω^)「…」


知識が自分の殻をこえて肥大していくような錯覚をおぼえる。
過去、それだけでなく未来においても直面する選択肢。
痛みと苦しみと、そして無数の死に様。

知識だけではない。

男は己の姿を見る。
耐えられない痛みは体を引き裂いていた。
地獄の苦しみは心を粉々に砕いていた。

やがて永く続いた痛みも苦しみも通り過ぎる。
千年の翌日の陽光に晒される砂丘に埋もれた髑髏は、眼孔の向こうの虚ろな空を見ていた。

 

 

14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:04:49.21 ID:jKfse4qX0

空は果てしなかった。
色も、形も、奥行きもない。
音さえ無かった。

やがて目の前に暗黒を背景に、きらめく片刃の曲刀の幻が浮かび、虚空を震わす哄笑が辺りに響き渡った。
剣の幻は消え、空に五つの星が輝く。
星は堂々とした様相の五人の王に姿を変えた。

彼らはまばゆい光を放つマントをまとっていた。
一人は真紅、一人は空の青、一人はエメラルドの緑、一人は金色、最後の一人は閃光のような白だ。


『ついに我らの計画が成就した!』


五人の王は宣言した。


『今やブラッドソードは失われ、我らの復活をさえぎる者は地上に誰一人として無い!』

『虚空より審判の音色が鳴り響く紀元千年の冬至の夜!そのときこそ!我らの調律する千年の王国が再び訪れるのだ!』

 

 

15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:06:25.64 ID:jKfse4qX0

勝ち誇った笑い声を残し、五人の王は、虚空に根をのばす大樹の幻の中へ消えていった。
まるで世界そのもののようにも見える大樹は、飢えて己の尻尾をかじり続ける大蛇に姿を変えた。

大蛇の前に、二つの剣を持つ者がいる。

片手に握る剣は、夜の海のように黒く、稲妻のような唸りを刀身に秘めていた。
もう片手に握る剣は、暁のような山吹色に輝き、尽きることのない波紋で刀身を波打たせていた。

二つの剣を持つ者が、ふとこちらを見たような気がした。


*    *    *    *


( ^ω^)「…」


男は黒い多面体から目を逸らした。
そこは見慣れた今夜の野営地だったし、宝石を握る手は干からびた骨ではなかった。

宝石はもう輝くことを止めて、のぞき込んでも幻惑を見せることはなかった。
男は宝石を大切に懐に戻すと、辺りを見回した。


 

 

16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:09:11.40 ID:jKfse4qX0

夜風が梢を揺らして暗い空にかかる雲を流すと、森のはずれの夜空には青白く冷たい色を放つブルームーンが顔をのぞかせていた。


( ^ω^)「…」


月のない夜空にかかる五連星のひとつ、ブルームーンは嘘と幻の象徴とされている。
よくないことが起こりそうだ、と男は予感した。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「起きているかね」


男は二人組がいる辺りに声をかけた。
暗がりの向こうで、どちらか片方がビクッと身じろぎする様子がうかがえた。


从;゚∀从「なっ何か?」

从;゚∀从「こっこんな夜更けに闇にまぎれて女子の寝床に何か用でも?」

 

 

17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:11:32.67 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「武器になるものは手元にあるかね」

从;゚∀从「さっきからずっと刃物を握りしめてますけど!?」

( ^ω^)「結構。何か近くに気配を感じたら、容赦せずに斬りつけることだお」


从;゚∀从「やだ怖い!自信ありげなのが逆に怖い!もうこのさき陵辱エロゲ的展開しか想像できない!」


果てしなく勘違いしている様子の娘は放っておいて、男は辺りの様子をうかがった。
頭上に鬱蒼と茂る木々の枝の隙間から、夜空に冷たく宝石のように光るブルームーンが覗いている。
空気は凍りつきそうに冷たい。


( ^ω^)「?」


男は何か胸騒ぎを感じて、もう一度ブルームーンを見上げた。
するとそれは一瞬鋭い閃光を放った。

 

 

18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:13:39.00 ID:jKfse4qX0

驚いて夜空に目を凝らす。
青い光が流星となって地上へ降ってくるのが見えた。


( ^ω^)「!?」


最初は虫ほどの大きさだった青い光は見る間に大きくなっていく。
地鳴りのような音が静かな夜を震わせる


( ´∀`)「あれは真のマグスの使いモナ」


男の傍らには、いつのまに現れたのか吟遊詩人がいた。
詩人は夜空から降る流星を見据えて淡々と告げる。


( ´∀`)「永遠のものへと成り果てるため夜空に転生を果たした五人の真のマグス…」

( ´∀`)「それは己を脅かすものを滅ぼすためならば、ありとあらゆる事をしてくるモナ」

 

 

19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:15:38.33 ID:jKfse4qX0

吟遊詩人は空を見上げたままだった。
顔に浮かぶ表情からは、どんな感情も読みとれなかった。
その言葉が誰に向けて語られたものか判断がつきかねて、男は問いを発した。


( ^ω^)「稀な事情が起きているのは把握したが、それは誰の身に降りかかる災難かね」

( ´∀`)「それは秘密モナ」

( ^ω^)「ああもう、イラッとする人だな」


やがて流星は木立の間を抜けて原っぱに激突し、辺りに青い光と炎が飛び散った。

激突した地面から立ち上る蒸気の中に、何物かの姿があった。
真っ黒のマントを羽織り、深くフードを下ろしたその奥から、青い炎を宿した四つの目で目の前に立つ者達を睨みつけていた。

似たようなものを前にも見たことがある。
地獄から呼び出される悪魔だ。
その目にはぞっとするような憎しみが込められていた。

 

 

20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:17:31.32 ID:jKfse4qX0

悪魔はカギ爪の両手を振りかざして、男めがけて襲いかかってきた。


(; ^ω^)「!!」

(; ^ω^)「…」

( ^ω^)

(^ω^ )

(^ω^ )「あれ?」


悪魔は男と吟遊詩人がいる前を素通りする。
見ていると、それは二人組の娘の寝床に襲いかかった。


(^ω^ )「あっち?」

(´∀` )「予想外モナ」

 

 

21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:19:40.74 ID:jKfse4qX0

从;゚∀从「キャー!キャー!?」

从;゚∀从「ナベちゃん起きろ!大変だよ!スーパー淫獣陵辱タイムだよ!」

从'ー'从「むに…ハインちゃん静かにしてよ…何か悩んでるならあとで相談にのるから」

从;゚∀从「そうじゃなくて!いや今のは自分でもどうかと思うけど!」


息を荒げて掴みかかろうとする悪魔の攻撃をヒョイヒョイと避けつつ、起きてる方の娘は片手に持つ剣で悪魔に切りつける。
どうやらそれなりに腕は立つようだ。

だが悪魔はそれに怯む様子もない。
それどころか、剣はゼリーでも突いたようにプルンと悪魔の体を素通りして、傷ひとつ付く気配が無い。


从;゚∀从「なにこいつ。ひょっとして物理攻撃とか効かない系?」

从;゚∀从「こうなったらナベちゃん、魔法で!ばーって焼いちゃって!」

从'ー'从「そうだね、何でも思い通りになる魔法があればいいのにね。おやすみハインちゃn…Zzz」

从;゚∀从「ダメだこの人!つかいものにならないや!」

 

23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:24:38.30 ID:jKfse4qX0

油断をした隙をついて、悪魔の腕は目の前の娘を捕らえた。


从;゚∀从「きゃっキャーッ!?」

从 ゚∀从「…」

从;゚∀从「ヤバい!なんか柔らかくてプルプルしてる!」

从;゚∀从「この感触はアレだ、ゲルトーマ素材的な…!体にやさしい感じの!」

从;゚∀从「もうこのあとに起きることが確定しそうな、そんな!」


見事なポンコツぶりを発揮する娘二人の様子を離れたところで見ながら、男は考える。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「まあ今すぐ生命の危険があるならまだしも。それより先に」


 

25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:26:37.10 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「ブルームーンの象意は、嘘と幻…」


男は夜空のブルームーンを見上げる。
それは寒々とした色で野営地を見下ろしている。
流星の落ちた場所に燃え続ける青い火と、炎まで長く延びた悪魔の影。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「えっ、影?」


男は眺めに違和感をおぼえる。
影の延びる向きが逆なら話は分かる。


( ^ω^)「いや、そうではない。単純に考えると…」

( ^ω^)「あちらの方が…影?」


見ると悪魔は、娘を抱え上げて、ちょっと言うのをはばかるようなことをしている。
信じられない話ではあるが、考えた末に男はそういう結論に至る。

 

 

26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:28:54.34 ID:jKfse4qX0

それに、と男は思い返す。
森のはずれで見かけた焦げ跡はずいぶん慌てた様子で消されていなかっただろうか。


( ^ω^)「…」

( ^ω^)「えい」


男はためしに青い火を踏み消してみた。
すると悪魔の姿は、あっさりとかき消すように消えた。


从 ゚∀从「…!」

从;゚∀从「プ、プヨヌッ、ヌムッ!プハァ!」

( ^ω^)「大丈夫かね。いや大丈夫ではなさそうだが」

 

 

27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:30:45.55 ID:jKfse4qX0

从;゚∀从「なんかプルプルしたのがヌメヌメッてして!ベロンチュルンッて!もう大変なことに!」

从#'ー'从「もう!ハインちゃんうるさい!目が覚めちゃったじゃない!」

从;゚∀从「気持ち悪いのに気持ち良かったりとか!もうどうしたら!」

从#'ー'从「眠いのに隣で延々とエロ妄想語られるのがどれだけウザいか、今度思い知らせてあげるから」

从;゚∀从「妄想じゃないよ?本当だったんだよ?」


( ^ω^)「まあ無事に済んで良かったお」


*    *    *    *


イベント:青い月が見せる悪夢

悪魔を追い払う(経験値120)

入手アイテム/
なし


*    *    *    *

 

 

28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:33:47.94 ID:jKfse4qX0

*    *    *    *


キャラクターノート:

从 ゚∀从

クラス/ヤンキー♀ ランク3

性格/ノリで行動して後で後悔するタイプ

術/技
幻魔相破
タイガーランページ

所持品/
幻魔(片手剣)
妖魔の小手
ジャージ


*    *    *    *

 

 

29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:35:55.14 ID:jKfse4qX0

*    *    *    *


キャラクターノート:

从'ー'从

クラス/ふわモテ愛されガール ランク3

性格/天然で腹黒い

術/技
マジカルヒール
幻夢の一撃
硝子の盾

所持品/
妖魔の剣
羊っぽい帽子
それなりにイイ感じの服


*    *    *    *

 

 

30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:37:48.72 ID:jKfse4qX0

*    *    *    *


キャラクターノート:

( ^ω^)

クラス/盗賊 ランク7

性格/抜け目ない

術/技
波紋疾走

所持品/
ビスレットの短剣
逃げ足のお守り
輝く多面体
旅装束


*    *    *    *

 

 

31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:40:08.01 ID:jKfse4qX0

そのとき突然、焚き火の燃えさしの向こうから低いうめき声が聞こえた。
一同は行ってみると、吟遊詩人が草むらに倒れ込んでいるのを見つけた。


从;'ー'从「わ〜!吟遊詩人さんが大変〜」

从;゚∀从「えっ何?どうしたの?」

( ´∀`)「モナはもう虫の息モナ…」

( ^ω^)「おかしくないかな。自分でそういうこと言うかな」

( ^ω^)「そもそも虫の息になる理由が何かあったっけ」


娘の片方が駆け寄って応急処置を試みたが、ゆっくりと首をふって望みのないことを皆に告げた。


从'ー'从「残念だけど、私では手の施しようが…」

从 ゚∀从「かわいそうに。旅の途中で命を落とすなんてな」

( ^ω^)「ねえ聞いてる?この人絶対死んでないよ?」

 

 

32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:42:51.55 ID:jKfse4qX0

娘達は吟遊詩人の傍にかがみこみ、最後の言葉を聞き取ろうとする。


( ´∀`)「奴らは長くモナの命を狙って…そして、ついに!」

( ´∀`)「こんなものを拾ったばっかりに、今までずっと命を狙われていたモナ」


そう言うと吟遊詩人は、ベルベットの布地にくるまれた細長い何かを取り出した。
それは金箔の施されたみごとな造りの鞘だった。
ちりばめられた宝石が夜空の星の光をうけて、まばゆい輝きを放っている。


( ^ω^)「これは?」

( ´∀`)「ブラッドソードの鞘モナ」

( ^ω^)ブホッ

( ^ω^)「何でそんなの持ってるの」

 

 

33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:45:21.13 ID:jKfse4qX0

吟遊詩人は有無をいうヒマを与えず、それを男に押し付けた。


( ´∀`)「五侯は力を取り戻しつつあるモナ」

( ´∀`)「真のマグスはまもなくこの世に復活するモナ。そのとき、このブラッドソードだけが奴らを食い止めることができるモナ」

( ´∀`)「あとの部分をみつけて剣を完成させるモナ。とりあえず柄はワイアード王国の魔術王が持ってるらしいって話モナ」


吟遊詩人はそこまで言うと、首をかっくりと落として目を閉ざした。
二人の娘はそれぞれ神妙な顔で手を合わせて、鎮魂の祈りを死者に向けた。

夜空にはもう不吉な青い月はなく、本当の三日月が上っていた。

 

 

34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:47:26.68 ID:jKfse4qX0

( ^ω^)「因果の巡り合わせにしても、話が急過ぎて実感が…いや、あれ?」


男がちょっと目をはなした隙に、吟遊詩人の姿は地面の上から消えていた。
そこはチョロリと草が生えているだけの地面だった。
さっきまで人が寝そべっていた気配など、影も形も残っていなかった。


从'ー'从「あれれ〜?吟遊詩人さんが居ないよ〜?」

从 ゚∀从「そうか、吟遊詩人さんはお星様になったんだな…」


从'ー'从「わたし達、あなたのこと忘れないよ。グスン」

从 ゚∀从「吟遊詩人さん、俺達この悲しみを乗り越えて一回り強くなってみせるよ!」

( ^ω^)「都合のいいように解釈しないで、すこしは疑おうよ」

( ^ω^)「…」


( ^ω^)「それにしても残ったのは、やっかいなモノを押し付けられたという事実だけか」


 

36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:49:23.89 ID:jKfse4qX0

*    *    *    *


やがて東の空から白が広がり、夜を凍えさせていた三日月は薄れて消える。
翌日の日の出と共にキャラバンは出発し、森を抜けるには数日を費やした。

その夜以来、不吉なブルームーンが空に昇ることはなく、追っ手も姿を現わさなかった。

二人の小娘と男の一行は、街道に出てさらに数日歩き続ける。
厚い雲に覆われた灰色の空の下、石灰岩の白い崖にミストラル海の波が打ち寄せる。
道の先にはもうじき港町カノングが見えてくるはずだ。


从'ー'从「でも逆に考えてみると!」

从 ゚∀从「ナベちゃんどうした、急に大っきな声だして」

从'ー'从「わたし達このまま内藤君に付いて行ったら、ワイアード島に行けるんじゃない?」

从 ゚∀从「!」

从 ゚∀从「その発想はなかった」

( ^ω^)「何が逆かいまいち分からないし、まだ行くと決めた訳でもないけど」

 

 

37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/13(火) 01:51:22.82 ID:jKfse4qX0

男はそこでふと疑問を口にする。


( ^ω^)「そういえば、キミタチそもそもワイアードに何しに行くの」

从 ゚∀从「頼まれて手紙を届けに行かないといけないんだよ。なあ、ナベちゃん」

从'ー'从「そうなの。トキノ君に手紙を」

( ^ω^)「そうなんだ」


从'ー'从「ミワクノ君に頼まれて」

( ^ω^)「いや誰でもいいけど」


歩き続ければ、昼には港町に着くだろう。
今夜はやわらかなベッドで休めるはずだ。
温かい食べ物にもありつけるだろう。

誰にも邪魔されなければの話だが。



Cap.1受け継がれた宿命/ここまで
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