(・∀・)デジタルリマスターして発売されるそうです
266 :(・∀・)デジタルリマスター1/3 ◆Ai.p5y3NWQ
:2010/02/26(金) 21:13:18
- 「ブーンは俺が殺した」
あのカルト的人気を誇ったThe
Mondequces(ザ マンドクセ)の全タイトル5作が、デジタルリマスターされる
ことを聞いて興奮を覚えた人も少なくないだろう。解散から15年目を迎える孤高のデュオ、The Mondequcesの
リーダードクオが語る自身の生い立ち、ブーンとの日々、 「ブーンは俺が殺した」という衝撃の告白。
(インタビュー:マタンキニコフ)
(・∀・)
こんにちは。取材に応じてくださってありがとうございます。ではさっそく.....
('A`)
君らブンヤの趣向は分かってる。でも、俺が伝えたいことは半分も記事にしてくれない。
あのな、ブーンは俺が殺したんだよ。これ活字にしてくれよ。今まできた記者の奴等、全部カットしやがったからな。
つまらない小奇麗な提灯記事にされるのは我慢ならないんだ。
俺がここで述べたこと全て活字にするって、約束するか?できないなら取材を受けない。
(・∀・;)
.....はい。
267 :(・∀・)デジタルリマスター1/3:2010/02/26(金)
21:15:09
- ('A`)
ならいい。じゃあ何から喋ればいいんだ?
(・∀・;)
弊社の取材方針は「記事は人なり」なので、ドクオさんと音楽との出会いから話していただけますか。
('A`)
物心ついてないときからだよ。母親がシンガーだったんでな。若い時分にはどこかのバンドにいたらしいけど、
俺が生まれた頃には一人でバーやレストランで歌ってた。意外とシベリアにはバーとか飲み屋が多いんだよ。
それで、俺は10にもなるとバックでギターを弾かされた。3つか4つしかコードがない簡単な曲ばっかりだったけどな。
今にして思うと、ほんとの理由は子供が出るとチップをたんまりもらえたからだと思う。俺はそこで、つまり
ヲッカと騒音と酔っ払い客で溢れかえった環境で育ったんだ。まるでゴミ溜めだよ。
よかったことと言えば、タダでレッスンが受けられたこと、そして譜面の読み書きを教わったことかな。
譜面の読み書きを教えてくれたのは、たしか、アントンとかいうジャズピアニストだったと思う。いい奴だった。
ジャンキーだったからよくギグに穴を開けてたけど、生きてたら会いたいね。
270 :(・∀・)デジタルリマスター1/3:2010/02/26(金)
21:17:35
- (・∀・)
なるほど。そういう普通とは違う環境で育ったり生活した事で、何か支障はありましたか。
('A`)
学校生活にはそんなに深刻な影響はなかったよ。特に冬なんかは、日が落ちるのが早いからさっさと、8時ぐらいには
しまっちゃうんだ。でもブリザードが吹いたりすると、バーに缶詰になるから、そこから学校に通ったね。
夜じゅうすることもないんで、みんなで即興で歌ったりとかした。そうすることで、自然と曲が作れるようになったんだ。
まあ、友達みたいに放課後誰かと遊んだりってのはあまり出来なかった。それで、カーチャンを恨んだりもしたよ。
(・∀・)
そうですか。
('A`)
カーチャンを恨んだのには別の理由もあった。よく、ギグがはねると、お客や伴奏者のミュージシャンとしけこんじまうんだ。
俺は小遣いを手に握らせられて、一人で家に帰ったりした。その逆、つまり俺を通してカーチャンに会わせてくれ、ってのも
あった。小さい頃はよかったが、だんだんとものが分かるようになるに連れて、カーチャンを汚らしく思うようになった。
俺を養うため、ってのは感謝してるけど、純粋に男好きでもあったと思う。
性の目覚めの時期にそんなだから、俺はすっかり女嫌い、正確に言えば苦手になっちまたんだ。今もそうだよ。
272 :(・∀・)デジタルリマスター1/3:2010/02/26(金)
21:22:20
- (・∀・)
お母様はたしか....
('A`)
ああ、そうだよ。早くに死んだ。
春の夜だね、その日も俺は一人で家に帰ったんだ。
朝になって、川に女が落ちて死んでるって近所で騒ぎになった。
駆けつけてみると、女のうなじが透き通るような青白さで水面に浮かんでた。
それがカーチャンだった。
その日は真っ赤なドレスを着てたから余計に映えた。カーチャンてこんなに美人だったんだ、て驚いた。
こりゃ男が寄り付かないわけがない。多分酒に酔って道を踏み外したんだろう。
最初は何とも思わなかった。まあ、後始末で忙しかったてのもあった。
でも2週間ぐらいたった夕方、なんかすごく部屋がまぶしく感じられた。気づいたんだ。
居間には窓際に鏡台と椅子があって、そこでいつも夕方カーチャンは化粧をしていた。かなり念入りにね。
でもカーチャンいなくなって、遮るものが何もなくなった。
その時始めて泣いた。人が死ぬってのは、影を失うってことなんだって思った。
俺の17歳の春だよ。
275 :(・∀・)デジタルリマスター1/3:2010/02/26(金)
21:25:40
- (・∀・)
そうですか。その後ブーンさんと出会われたわけですね?
('A`)
君ら記者連中はやっぱりブーン目当てで俺のところに取材にくるのな。
そのあと4年間、俺は一人で活動してたんだよ。
(・∀・:)
失礼しました。ではその点を詳しく...
('A`)
まあシベリアの飲み屋で歌ってただけなんだけどな。シベリアってのは住民は穏やかだけど、
抑留されたり、凶悪犯が追放されて来る場所でもあるんだ。おまけにこの厳しい気候にうんざりしてる人も多い。
そういう奴等相手に演奏するわけさ。かなり鍛えられたな。
だいたい、クレムリン(中央)への不満がすごくある場所だから、党の指導者を揶揄したような歌を歌うと大ウケした。
ち○ちーた死ね とか 削○ェンヌ死ねとかね。恐れ、抑圧、不安、こうしたものを声高に歌うと人は共感するって分かった。
それをブルースと呼ぶってのは、もっと後になってから知った。
(・∀・)
なるほど。
277 :(・∀・)デジタルリマスター1/3:2010/02/26(金)
21:30:13
- ('A`)
で、君のお待ちかねのブーンの登場だ。どっかのもぐり酒場だ。
演奏が終わって、俺が一人で飲んでたら、近づいてきた。
( ^ω^)「すごく演奏よかったお」
この話ぶりで、俺はこいつがヴィップグラードからの流れ者だって気づいた。
('A`) 「ありがとう。君も何か演奏するのかい?」
( ^ω^)「ギターを弾くお」
('A`) 「どんなタイプのギターだい?」
( ^ω^)「エレキギターでギュンギュンいうお」
('A`) 「.......え、と」
普通こういう場合には、目標にしているギタリストの名前をあげたりとか、プレイスタイルをいうもんだ。
相当の初心者だな、と思って話をギターの話をやめようとした。そしたらバーのマスターが、
(=゚ω゚)ノ「そいつのギターはすげえぞ」
というんだ。マスターは滅多に人を褒めない。俺も褒めてもらった事が無かったから、どんなだろうと思って、
誘われるがままそいつの避難者用簡易宿舎に行ったんだ。
357 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
01:57:05
- ('A`)
そこはまるでドヤ街だった。いろいろな人種や国籍の奴等が、古ぼけたコンクリートの建物に集められていた。
人いきれと熱気で気分が悪くなった。冬だったが、湿気でコンクリの壁が汗かいてたよ。
個室、っていってもだいたい3畳ぐらいしかない。昔あったラーゲリ(収容所)を改造して使ってるらしかった。
薄汚いベットの上に、安物のエレキギターが投げ出されていて、これまたおもちゃみたいなアンプに
接続されていた。
部屋に通されてしばらく雑談したあとだ。
ブーンはアンプの電源を入れて、ヒョイとギターを取り上げた。
( ^ω^)「弾くお」
そこで、俺の時間はとまったね。
(・∀・)
それだけ、素晴らしかったと?
('A`)
いや、素晴らしいとか美しいとか、そういう批評の基準を越えているんだ。
だいたいミュージシャンというのは仲間の演奏を聞くときに、分析しながら聞いているものだ。
でも、そういった部分を停止させるようなー音楽と共に流れていきたいと思わせるような感覚さ。
一言で言えば、エクスタシーだね。
気がつくと演奏が終わっていた。俺は何も言わず指でもう一回、と合図した。2度目、俺は無意識のうちに
アンプに耳を近づけて脳髄で演奏を感じていた。夜だったんで、隣の部屋から壁を殴られたが、構わず
聴き続けた。アンプが安物だったから音が割れてたけど、コンクリ壁のリバーブと相まって渦を巻くような
サウンドになった。俺はその渦に巻き込まれた、ってわけさ。
359 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
01:58:55
- (・∀・)
なるほど。それでブーンさんとデュオを組むことを決意なさったわけですね。
('A`)
ああ。
(・∀・)
デュオの命名について教えてください。Theがついていますが、なんか響きはフランス語のような....
('A`)
何てことはないよ。
二人でいろいろとデュオ名の候補を挙げていったんだ。でもどれもしっくりこなかった。
それで俺が、「考えるのマンドクセ」っていったんだ。そしたらブーンが気に入ってね。
(・∀・)
なんだ、そういうことだったんですね。
('A`)
なんだとはなんだ。
361 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:01:27
- (・∀・;)
いえ.....。えっと、あの、
それで第一作目の「Motor and Wings」が生み出されるわけですね。
このアルバムはおもにカバー曲で構成されていますが、ドクオさんの地を這うような歌唱にブーンさんの
炸裂するようなギターソロが好対照を成す、初期の名盤です。
ではまず、このアルバムタイトルの意味について教えていただけますか?
('A`)
これはブーンを紹介してくれた酒場のマスターの言葉を借りたんだ。
俺たちがデュオを組んだときにこう言ってくれた。
(=゚ω゚)ノ「ドクオ、お前のその力強い情念的な歌は、言ってみりゃエンジンのモーターだ。
ブーン、お前のその飛び上がるようなプレイは、飛行機の翼だ。
お前たちが一緒になるなら、どこまでも飛んでいける。」
ってね。ほんとはだからタイトルは「Airplane」にしようかと思ったんだけど、まだ俺たちが一つになりきれてるかどうか
解らなかった。だからあえて「Motor and Wings」にしたんだ。でもこのアルバムをリリースした時には、迷いは確信に
かわってたよ。
(・∀・)
ああ、なるほど。それで2作目は「Airplane」になったわけですね。
カバー中心ですが、オリジナルはその頃歌ってなかったのですか?
('A`)
いや、結構歌ってたよ。でも、スタジオ代がかさむのがいやだったから、アレンジが鉄板なオリジナルにしたんだ。
もちろんブーンは天才だったから即興でも十分演奏できたけど、それでもアレンジとしてうまく行くかは別問題だ。
363 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:05:22
- (・∀・)
ジャケットの裏にいくつかの言葉が書いてあります。
「どんな鳥も想像力より高く飛ぶことはできない」
「記憶される前から空はあった そして
飛びたいと思う前から俺は両手を広げていたのだ」
とありますが、これは?
('A`)
これはブーンが壁に貼ってた言葉なんだよ。確か、日本の詩人の引用だったと思う。
ブーンは空を飛びたがってた。文字通り、奴はよく手をおっぴろげて「ブーン」と飛行機の真似をしてたよ。
そして、本名の「ナイトウ」と呼ばれるのを激しく嫌った。これは日本の名字だと思うんだが、さっきの言葉も
もしかしたら父親から聞いたのかもしれない。結局奴は自分の身の上についてはあまり明かさなかったよ。
孤児院の出身ということになってるけど、多分事情はもっと複雑だろう。
同じ詩人の言葉で、「俺は俺自身の重力でもあり揚力でもあった」てのがあるんだ。
すなわち、ブーンに重くのしかかってたものは、ブーンを飛び上がらせる力にもなった。
でもそれには長い滑走が必要だ。俺の役割はブーンを飛び上がらせるためのエンジンなのさ。
だから、しがらみの多いこの地上から離れて、空を飛ぶってのはある種のメタファーだったんだ。
ブーンはそれを音楽でやってみせた、ただ一人の男だ。
/⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
| / ブーン
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
365 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:07:55
- (・∀・)
ありがとうございます。
2作目は一転して全曲オリジナルで構成されています。題名はもちろん、「Airplane」ですけど
このアルバムからお二人は活動をヴィップグラードに移されるわけですね。
('A`)
そうだよ。シベリアを離れていく、っていう意味もタイトルには込められている。ブーンはずっとヴィップグラードに
帰りたがってた。俺も、大きな街で大勢の人を相手に自分の歌を聞かせたかった。それで、奴の規制が
解かれたと同時に活動の拠点を移したんだ。
(・∀・)
このアルバムにはあなたたちのエバーグリーンとも言える名曲がズラリと並んでいますが、
アルバムの最後にある「リア充死ね死ねブルース」は物議を醸しました。
('A`)
これはさ、シベリアで前歌ってた「ち○ちーた死ね」とか「削○ぇんぬ死ね」の歌の替え歌なんだよ。シベリアに
支配者対抑圧された人々っていうのがあるのと同じように、ヴィップグラードにも同じような2項対立があった。
それが、リア充と非リア充だったんだ。俺は非リア充に少なからず共感できるところがあったから、思い入れたっぷりに
歌った。それが結構評判が良かった。でも、非リア充の代弁者とか持ち上げられていくうちに気持ちが悪くなった。
それでラジオのショーで、「非リア充死ね死ねブルース」に変えて歌ったんだ。そうしたらものすごい反感をかった。
抗議の電話がなりやまなくてさ、殺すとまで言われた。物議を醸したのはそういう経緯さ。まあ宣伝にはなったと思う。
367 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:11:59
- (・∀・)
私は、「ラノベの世界にいけたなら」が一番好きですね。
この曲の最後入ってる何かが燃えるような音は一体?
('A`)
あれだろ、主人公の願いがかなってラノベの中に遂に入れた、って曲だろ?
その後、母親がそのラノベを暖炉にくべて燃やしちまうんだ。それを表してる。
(・∀・;)
なんと
('A`)
まあこれもさっきと同じようにヴィップグラードのマーケティングから生まれた曲なんだがな。
2nd dimension とか everyday
is sunday とかもそうだ。
俺が一番気に入ってるのは、shadowless ladyで、カーチャンをモチーフにしてる。
(・∀・)
これはブーンさんの煌めくようなソロが美しいです。
('A`)
これはさ、雨の音をコピーしてるんだ。ブーンは譜面が読めなかったから、俺は毎回ブーンに曲ができると
ギターで曲を教えた。ブーンは耳を傾けながら、窓の外の雨を眺めていたんだ。そして、ギターで
雨のしずくが滴る音をコピーし出した。コードにない不協和音が大量なのは、そのためだよ。
でもそれが不思議と美しいんだ。
371 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:15:08
- (・∀・)
なるほど。
3作目はライブアルバム、「ksk」です。ヴィップグラード公会堂での伝説的ライブですが、
このkskというのは?
('A`)
ヴィップグラードの連中はとてもノリがいいんだ。若いのも多いしね。で、奴等は乗ってくると「カソク」と言ってくるんだ。
それの略さ。ブーンは根っからのヴィップグラードっ子だったから、囃される度にものすごいプレイをしていった。
曲の枠を飛び越えて演奏するんだよ。イマジネーションが尽きては枯れない泉のようだった。
それで、一曲一曲が長くなってしまったんだ。
(・∀・)
最後の曲で、ブーンさんはソロをとっていません。
('A`)
この時さ、ブーンは観客からの歓声に気をよくして、ステージの端から端までブーン、って走り回ってたんだ。
観客の歓声、という風を受けて、奴は確かにその晩飛んでいたんだ。
-
372 :(・∀・)デジタルリマスター2/3:2010/02/28(日)
02:18:52
- (・∀・)
このライブとアルバムによって、あなた方はヴィップグラードの音楽シーンに確固たる地位を占めました。
しかし、このライブ直後、あなたたちは ヴィップグラードから24時間以内の退去処分を受けています。
ショーの一部で、不適切な部分があったといわれますが、どうですか?
('A`)
一言いっておくと、俺たちは何も知らなかった。
興業主が、俺たちにかこつけてきわどいショーをやっていた。俺たちがでる数時間も前さ。
年端もいかない娘たちが出るやつでな、それを警察に嗅ぎつけられたんだ。
俺たちは何も関わって無いのに、巻き添えを喰らった。
でも俺とブーンはシベリアに帰りたくなかった。だから役人に賄賂を渡して、見逃してもらったんだ。
表向きは滞在許可税だけど、実質賄賂だ。よくあることだ。みんな忌々しげに●(ウンコ)と呼んでたよ。
確かに俺たちはこのライブとアルバムで確固とした地位を築いた。でも、俺とブーンの不協和はこの時
既に鳴っていたんだな、今にして思うと。
そして俺はブーンを殺してしまうんだ。
-
-
431 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:07:20
- (・∀・;)
そう、ですか。
でもリスナーとしては、そんなことは感じさせません。あなた方の4枚目のアルバム「Mosaic」は、緻密なアレンジの曲と
ブーンさんのアドリブを全面に押し出した曲とが入り混じった傑作です。
('A`)
このアルバムで俺が作った曲はブーンはほとんど参加していない。逆に、ブーンの曲では俺は参加していない。
実質的な2人のソロアルバムだ。タイトルの「Mosaic」は、そういう寄せ集めの感を表している。あと、見せたくない
部分をごまかすという意味合いもある。
(・∀・)
なるほど。
やはり音楽性の違いが顕著になってきた、ということですか。
('A`)
それはあるけど、でも一番の原因じゃない。2人で続けていくモチベーションが下がったということなんだよ。
そういうのは、ささいな行き違いとか、もう昔みたいにいかなくなったという実感かな。成功の代償であるのかも知れない。
でもこのアルバムは売れに売れたね。俺の曲は、必死で受けのいいアレンジとメロディーを考えたからね。
432 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:11:06
- (・∀・)
ブーンさんの方はその自由奔放なアドリブをさらに推し進め、未だにカルト的な人気を誇っていますね。
('A`)
そうだな、ブーンの最高傑作だ。ブーンはアーティストとして成功して、俺は商業音楽家として成功したんだ。
このあと、映画のサントラとか、いろいろと仕事の幅が広がった。
(・∀・)
この曲の中で、あなたはキャリアの中で唯一のラブソング(失恋の歌ですが)を弾き語りで歌っています。
とても心に迫る曲で、私も5年間付き合ってた彼女から「別れましょう」と言われたときに毎日聞いては
泣いていました。この名曲「behind you」については?
433 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:12:39
- ('A`)
君も隅に置けないな。
でもこの曲は男女の恋愛をモチーフにしたものじゃないんだ。
ブーンとの距離が広がったことについて歌っているんだ。
自分にないものを相手に発見する、こいつと一緒ならきっと毎日楽しいんだろうな、と思う。
でも相手を知るに連れて、求めることが多くなりすぎる。もう昔のようには行かない。
これっていわゆるリア充ラブソングでよく歌われていることじゃないか、と思ったんだ。実際の男女の場合が、
性的魅力で、俺たちの場合がお互いの音楽的才能だったんだ。でも長く付き合うに連れて、人間的な部分が
衝突するようになってきた。
売れるってのは良い事だよ。でも責任も増えるんだ。期待に答えなきゃいけない、一般受けしなきゃいけないっていうね。
俺は責任を果たそうとした。ブーンは、自分の才能に忠実であろうとした。
-
434 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:15:20
- 売れるってのは良い事だよ。でも責任も増えるんだ。期待に答えなきゃいけない、一般受けしなきゃいけないっていうね。
俺は責任を果たそうとした。ブーンは、自分の才能に忠実であろうとした。
ある日、俺が渡した譜面がレコーディング室のゴミ箱に入れられていた。俺はすぐに奴をとっつかまえて、ブーンの横っ面を
殴った。ブーンはすぐさま俺のみぞおちに反撃した。とっくみあいさ。
('A`)
この野郎、俺が夜も寝ないで仕事している時にも遊びほうけていやがって!
( ^ω^)あ!?このワンマン野郎!ブーンをそんなに支配したいのかお!
('A`) だれがお前なんかを支配したいと思うか。ナイトウ、どこの馬の骨とも解らない混血野郎め!
( ^ω^)ナイトウって、ナイトウって言うな!お前こそあばずれの母子家庭じゃないかお!
最悪だった。お互いが持っている傷に塩を塗りこみまくったんだ。それから3ヶ月間、俺たちは絶縁状態だった。
だから外部のミュージシャンがたくさん起用されているのさ。
437 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:21:01
- (・∀・)
そうでしたか、そのような壮絶な内幕が.....
その後どのように関係を回復したんですか。
('A`)
完全な回復なんて最後までなかったよ。でも、どうにかしなきゃってのはあった。
だから俺はブーンの家にいって、また昔みたいにやろう、って持ちかけたんだ。
俺はブーンのために特注のギターを用意して奴の家にいったんだ。ちょうど結成から5周年の節目さ。
オフの日の午後、ヲッカを何本か持ってな。
ブーンはギターをとても喜んでくれたよ。
それから、テレビを見ながらとりとめのない話をした。
奴は猫を飼い始めてたから、猫の品種の話をした。
ブーンは少しうつむいた。そして新品のギターを手にとって、
( ^ω^)「弾くお」
と言った。
でも、どんなにアンプに耳を傾けても、もうあの時みたいには聞こえないんだ。
あの頃よりも数段にいいギターとアンプなのにさ。
結局、音楽を聞いているのは人の心なんだ。
俺は「いいね」とだけいった。お土産に冷凍ピロシキをもらって家に帰った。
439 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:24:16
- (・∀・)
なるほど。
いよいよ最後のアルバム、make up
になります。このアルバム制作中に、ブーンさんが不慮の事故でなくなっていますが....
('A`)
冒頭でいっただろ。
俺が、殺した。
(・∀・;)
でも警察の発表では不慮の事故だと...
('A`)
俺はこれが言いたくて今日の取材を受けたんだ。
裁かれたくても裁かれない俺を、君の新聞の読者に裁いてほしいんだ。
では話そう。
440 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:26:56
- 俺はそのころアシスタントの娘と付き合っていた。
というよりも、彼女が付き合ってくれていた、ともいうべきかな。
しぃ っていった。
俺は長いこと女性を信頼できないでいた。
加えて、有名になってからというものへつらいで近づいて来る奴ばっかりだった。
そんなときに、そうだな、生まれたときから持っているようなやさしさで接してくれるっていうのかな
その娘だけだった。
まわりの奴等は俺が何をレコーディングしても「いい」としか言わなかった。
レコード会社の奴等は、数字でしかものを言わなかった。
でも彼女ははっきりとものを言ってくれた。ブーンと仲直りするように進言してくれたのも彼女さ。
俺は、女をずっと遠ざけてたけど、この娘とだったらやっていけると思い始めてた。
441 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:31:43
- でもある日、ツアー先のホテルで、ブーンの部屋からしぃが一緒に出てくるのを見てしまったんだ。
二人は俺に気づかなかった。
俺は心がめちゃくちゃになってしまった。
特に打ちのめされたのは、彼女が耳たぶに俺が数日前に挙げたエメラルドのイヤリングをしてたってことだ。
その時、俺はカーチャンのことを思い出した。
カーチャンはよく男からプレゼントされたものを身につけて、別の男と遊び歩いていた。俺はそれが嫌でたまらなかったんだが、その姿がよぎった。
どっと疲労感が押し寄せた。そのあとにムラムラと、ブーンを殺したい、と思った。
でもそれはできないから、奴の分身を粉々にしてやろうと思った。
その日のライブは7時からだったから、夕方には楽屋入りした。
( ^ω^)おいっす
('A`)
( ^ω^)ん?気分でも悪いのかお?
('A`)
(; ^ω^)なんか.....あったのかお?
俺は何も言わず、俺がプレゼントしたブーンのギターを取り上げた。
そしてそれをアンプに叩きつけて粉々にしてやったんだ。
444 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
19:35:54
- 俺は憤然として会場を去って、その晩はすっぽかして近くのバーで酔いつぶれていた。
奴は楽器がなくなって、近くのインチキな楽器屋から整備不良のギターとアンプを借りざるを得なくなった。
で、リハ中に感電死した。
翌日俺が帰ってみると大騒ぎさ。
(・∀・;)
確か、公式の発表では楽器の輸送中に不手際があったのでレンタル機材を使ったと...
('A`)
マネージャーがかばったんだよ。運送会社の連中は相当な責めを追わされた。
俺はそれを訂正もできずにいたんだ。腰抜けの最低野郎だろ。
俺は既に無感覚になっていた。現実感がなかった。
あの女が知ったらどんな顔するだろうな、と心のどこかで思ってさえいた。
448 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:02:43
- ところが、翌日しぃが俺に近づいてきたんだ。
(*゚ー゚) これ.....昨日ドクオにプレゼントしよう、ってブーンと朝から計画してたの
でも、もう...
ってビンテージのギターを渡された。それとしぃとブーンが書いたカードのようなものを渡された。
昨日は俺たちのデュオ結成記念日だった。二人で内緒で準備していたんだ。
全部俺の思い込みに過ぎなかったんだ。
目の前が真っ暗になった。えぐり出して捨て去りたいと思うほど、胸が痛んだ。
自分を激しく痛めつけたい、と思い、睡眠薬を大量に飲んだ。
それでも俺は死にきれなかった。
死ねないなら、死んだように生きるしかない。俺はドラッグに手を染めた。
449 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:04:44
- (・∀・;)
あなたの罪悪感は深いものかも知れません。ですが、これは事故であって、あなたに直接の
責任は無いと思います。
('A`)
俺はブーンを疑い、憎んだ。そしてブーンは死んだ。俺が願っていた事がその通りになったんだよ。
それ以外の何がある?
聖書にもあったろう、「誰でも汝の兄弟憎む者これすなわち人殺しなり」って。
人殺しには金輪際音楽を人に聞かせる資格なんてないんだ。
(・∀・;)
そんなことは決して....最後のアルバムは、
('A`)
知ってるかい?
5枚目のアルバムは、デモをかき集めた寄せ集めだよ。
それを外部のアレンジャーに委託して聞けるものに仕立てただけなんだ。
その後も俺のキャリアはだらだらと続いた。
死ぬべき時に死ねなかった、善人にも悪人にも中途半端なのが俺さ。
452 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:11:23
- (・∀・;)
私はあなたのこれまでだけでなく、これからの活動にも注目したいと思っています。
('A`)
どんな物好きだよ。俺の音楽はチャートから姿を消してもう久しい。レコード会社との契約も満了したし、もうこれ以上ゴミを作らなくて
済むと思うと気が楽だよ。死にきれない俺に罰を与えるには、生きて恥を晒す以外に無いとずっと思っていた。
でも、今回のリマスターの話が出て、俺はようやく楽になれる、と思ったよ。ブーンの影はなかなか死んでくれなかった。
真実を晒して、俺は、ブーンの影にとどめを刺すんだ。
ああ、今思い出したよ。俺に音楽を教えてくれたアントンな、そういやあいつはもともと別のところに妻子がいたんだ。
でも捨ててシベリアに逃げてきたんだ。でも、悪行後日祟るだな、心を患ってジャンキーになったんだ。
よくこのバーカウンターの奥で苦しそうに呻いてたのを思い出すよ。俺はそれを禁断症状のせいだとおもってた。
でも今はわかる。あいつは、あいつの中にいる誰かの影に苛まれてたんだ。不思議と俺は他人事のように思わなかった。
みんなバカにしてたけど、どこか共感するところがあった。あいつは今の俺だ。
でも、そういう奴にもシベリアってのは優しい所だよ。
455 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:14:28
- ******
以上が掲載が予定されているインタビュー記事である。
マタンキニコフはこの記事を掲載することに非常な懸念があった。
もしこの記事を出すとすれば、それは棺桶に生きながら入っているドクオに上から封をするようなものとなろう。
だが、すべての言葉を掲載すると約束してしまった彼は揺れ動いていた。
その数日後、リマスター盤の発売元から弊社に申し入れをする人物があった。
販売部長であるというその女性は、記事の原稿にすべて目を通したのち、
「ブーンは俺が殺した」という部分から下を残らず削除するように依頼してきた。
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( ,_ノ`
)y━・「ですがね....すべての言葉を掲載すると約束してしまったものでね....」
販売部長 「しかしドクオの言葉には確証がなく、当人の思い込みに当たる部分が非常に多いといえます。
今まで取材を行ったすべての雑誌は、こちらの要望をのんでくださいました。
もしこのようなものを掲載して当社の新製品への売上減少などが起こった場合、しかるべき法的措置を
とらせていただきます」
457 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:17:36
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( ,_ノ` )y━・「まあ落ち着いて」
(・∀・;) 「編集長、こちらは?」
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( ,_ノ` )y━・「ああ、来たな。君が取材してきた事に申し入れをしたいとのことだ。
レコード会社の販売部長だ」
(・∀・;)
(*゚ー゚)
(・∀・;) 「ひょっとして、しぃ....さん?」
(*゚ー゚) 「なんで私の名前を....」
(・∀・;) 「エメラルドのイヤリングをされていたものですから...いや驚きました...
それ、ドクオさんが....」
(*゚ー゚) 「.......」
(・∀・;) 「.....ドクオさんはブーンさんの影に苛まれていました」
(*゚ー゚) 「....ばかね...本当にばか」
(・∀・;)
461 :(・∀・)デジタルリマスター3/3:2010/03/03(水)
20:23:37
- (*゚ー゚) 「今のドクオは、罪悪感に浸っているのではなく、ナルシシズムに陥ってるだけ。
歌を歌わない言い訳にしてる。本当に腹が立つ」
_、_
( ,_ノ`
)y━・「ふむ。なるほど。
販売部長さん、あんたはドクオの才能と歌を深く愛しているんだな。」
(*゚ー゚) 「編集長さん、あの記事を掲載させてドクオは...多分自分にとどめを刺すつもり。
でもこのまま終わりにするのは卑怯。それが悔しくて。
わたし、ドクオの最高のアルバムを発売できたら、と思ってずっと仕事してきたの。それなのに.......」
_、_
( ,_ノ` )y━ 「あんたの気持ちは良く解るよ。でも削除依頼は認められない。それに、そうしたところでドクオが救われるとも思えない。
彼の尊厳のためにも、俺はあのまま記事にして掲載するよ。
そのかわりといってはなんだが、あんたの話をここで聞かせてもらえないだろうか。その思い出を、今の正直な気持ちを。
それを今度の記事と同時に掲載する。どうだ?」
しぃは号泣した。嗚咽の満ちる中、窓の外の木々は静物画のように沈着していた。
記事は15日に掲載される。
(終)
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