ブーンが死んでしまったようです【長編】〜第三章〜
身体が、急に軽くなった
さっきまでの痛みや、身体が動かない、妙な気だるさは微塵も感じない
( ^ω^) 「あ・・・・・・そうか・・・・・・・」
周りの風景は、すでにあの病室ではなかった
草原が広がり、さらにその向こうには河が流れている
どうやらここは、よく聞く、死後の世界、とでも言うやつなのだろう
( ^ω^) 「あまり、面白みがないとこだお・・・・・・・・・・」
呟く声には、どこか余裕が見える
もう、現世に未練はない。渡したい物、伝えたいことは、すべて終えた
なら、後は・・・・・・・・・・・・・・
( ^ω^) 「すなおに、あの世に行くお・・・・・・」
河へと向かって、ブーンは歩き出した
サク・・・・・・・・サク・・・・・・・・・・
踏みしめる草の音が心地いい
ほどなくして、ブーンは河原にたどり着いた
と、そこには、
(´<_` ) 「・・・・・・・・・とうとう、お前も来たか」
( ^ω^) 「弟者・・・・・・・・・・・・・」
河のほとりの、大きめな石に腰をおろし、弟者がこちらに手を振っていた
( ^ω^) 「知ってたのかお?」
(´<_` ) 「いや、俺もこっちに来るまでは知らなかったが・・・・・」
ぽん、と弟者が手を叩くと
石の周りに、お菓子やお膳、さらにはノートPCまでもが現われた
弟者はノートPCを手にとり、ブーンに向き直る
(´<_` ) 「そなえてもらった物は、どうやらこっちに来るみたいでな」
「兄者のくれた、コイツ越しにお前の姿を見ていた・・・・・・・・」
兄者のおかげだな、と、とても爽やかに、モニターに微笑む弟者
モニターを横から覗き込めば、今は兄者が映っていた
ニヤニヤと笑いながら、弟者はモニターを指差す
(´<_` ) 「プッ・・・w 兄者も極端なやつだw」
「たかがバイトの面接だと言うのに、スーツの用意をしているw」
モニターの中では
兄者が何度も電話をかけては切り、かけては切りを繰り返していた
どうやら、お話中か何かで、繋がらないのだろう
(´<_` ) 「仕方ない・・・・・・手を貸すか・・・・・・・・・」
カタカタとキーボードを叩き、何かを打ち込む弟者
モニターの端に時刻が浮き上がり、弟者はその数字を修正。10分ほど時間を戻す
すると、その途端に兄者の電話が繋がった
( ^ω^) 「今、何をしたお?」
(´<_` ) 「電話の時間をずらしたんだ。繋がるだろう時間までな」
「あの糸に触れたおかげか、電話回線なら、そんなこともできるようになってな」
どもりながら、緊張した面持ちで何度も頭を下げている兄者を見つつ
弟者はタバコに火を点ける
( ^ω^) 「それじゃあ・・・・・・ツンの電話を繋いでくれたのは・・・・・・・・・」
(´<_` ) 「・・・・・・・・・・・・ああ、俺だ」
少しでも、恩返しをしたくってな・・・・・・・・
視線を合わさず、弟者はうなずいた
(´<_` ) 「あまり、そんなことばかりしていると、業が深くなりそうだがな・・・・・・」
( ^ω^) 「ありがとうだお・・・・・・・おかげで、最後に間に合ったお・・・・・・・」
弟者の協力がなければ、自分は伝えることも渡すことも出来ずに、死んでいただろう
弟者には、いくら感謝してもしたりない、そう思い、頭を下げる
だが
(´<_` ) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
弟者は何も言わない。目を合わせようともしない
いぶかしみ、ブーンが尋ねる
( ^ω^) 「どう・・・・・・・したお・・・・・・・・・・?」
(´<_` ) 「それも・・・・・・・余計なことだったみたいなんでな・・・・・・・・・!」
( ^ω^) 「え・・・・・・・・・・・・・・・・?」
きっ! とブーンを睨む弟者の目は、怒りに赤く染まっていた
弟者が怒る意味が分からず、ブーンは焦る
(;^ω^) 「よ・・・・・・余計じゃないお!? おかげでぼくは・・・・・・・・」
(´<_` ) 「好きだ、と伝えられた、か・・・・・・・?」
頷く
弟者は立ち上がり、ブーンの胸倉を掴み上げ、睨む
(;^ω^) 「ちょ・・・・・・・なに・・・・・・・なにするお・・・・・・!?」
(´<_`#) 「俺は・・・・・俺は・・・・!!」
あまりの怒りに、言葉が続かない
一息、それで呼吸を整える
(´<_`#) 「お前なら、きっと、俺がした以上のことをしてくれると思っていた・・・・・!」
何を・・・・・・・怒っているのか・・・・・・・・・分からない・・・・・・・・・
(´<_`#) 「それが・・・・なんだ!? お前は気持ちを伝えれば、満足か!?」
なぜ・・・・・・・・それが・・・・・・・・・・・・いけない・・・・・・・・?
(´<_`#) 「気がついていないのか!? この自己中野郎がっ!!」
「最後に・・・・・・好きだなんて言われて・・・・・・・・・・・・」
「それであの娘が幸せになれると思ってんのかっ!?」
弟者の言葉は、止まらない
ブーンとツンの二人に、自分と、残してきた兄者を重ね、叫ぶ
(´<_`#) 「あの娘が可哀想だと思わないのか!?」
「最後の最後で・・・・・・そんなこと言われて・・・・・・・・!!」
「どうやって・・・・・・どんな気持ちで、あの娘はこれから生きてくんだ!?」
自分の最後で苦しむ兄者を思い出す
自分は、そんな兄者は絶対に見たくない、見たく・・・・・・・・なかった
(´<_`#) 「お前なら・・・・・・どうなんだよ!?」
「今際の際に、好きだ、なんて言われて・・・・・・・・・!!」
新しい人を横に置くことなんて・・・・・・考えることも出来ないじゃないか・・・・・・
出来ない、考えられないっていうのに・・・・・・・それでも・・・・・・・・・・
(´<_`#) 「もう、その人はいなくなっちまうんだぞ・・・・・・・・・・・!?」
「その言葉に・・・・・応えることは・・・・・・・できないんだぞ・・・・・・」
弟者は、泣いていた
弟者の腕を振り払い、今度はブーンが吼える
(#^ω^) 「じゃあ・・・・・・じゃあ・・・・・・・・・・・・・どうすればよかったお!?」
身体を震わせ、火山が噴火するかのように、感情を爆発させる
(#^ω^) 「ツンに、ぼくのことは忘れろとでも言えばよかったのかお!?」
「まだ・・・・・・まだ・・・・・・好きだと告げてもいないのにかお!?」
「それで、それで・・・・・・・・・・・!!」
興奮のせいか、弟者と同じく、言葉が出なくなる
一息、これもまた同じく、息を整える
(#^ω^) 「・・・・・・・・・・どこの誰とも知らない、そんな奴と・・・・・・!!」
「ツンに一緒になれって・・・・・・言えば良かったのかお!?」
ブーンは、涙を流し、流れるままに任せ、声を落とす
(#^ω^) 「そんなの・・・・・・・・・・・・・いや・・・・・・だお・・・・・」
(´<_`#) 「・・・・・それがエゴだって言ってんだろうが!?」
弟者はうつむくブーンにも容赦はしなかった
(´<_`#) 「結局・・・・・・・結局、お前のエゴじゃないのか!?」
「そんなもので・・・・・・彼女を一生縛る気なのか!?」
だが、ブーンもまた、負けず劣らず、噛み付く
(#^ω^) 「何もしらないくせに・・・・・・・! 勝手なことを言うなお!?」
「ぼくが・・・・・ぼくがどんな気持ちで・・・・・・・・・!!」
(´<_`#) 「知るかよっ! 自分のことしか考えられない奴の気持ちなんぞ・・・・・」
「俺はわかりたくもないんだっ!!」
「お前は・・・・・・・彼女に幸せになって欲しくないのか!?」
(#^ω^) 「なって欲しいお! そんなの決まってるお!?」
「これが、エゴだなんて、とっくにわかってるお!?」
何もかもわかっている。自分はもう彼女を幸せになんか出来ない
彼女の傍になんか、もういられない。遠くで見守ることも出来ない
それでも・・・・・・・・・・・・・・
( ^ω^) 「それでも・・・・・・・・・・・・・ツンが・・・・・好きなんだお・・・・・・・・」
(´<_` ) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どうしようもない感情は、ブーンにたったそれだけの、しかし思い言葉を呟かせる
弟者も、それ以上、ブーンを罵倒することが、出来なかった・・・・・・・・・・
タバコに火を点ける弟者
二人とも涙で目を真っ赤にして、座り込む
なぁ、と弟者がブーンに声をかけた
(´<_` ) 「なんで・・・・・・・・・・死んじまったんだよ・・・・・・」
( ^ω^) 「死にたくなんか・・・・・・・・・・・なかったお・・・・・・・・・」
そうだよな、と頷く
(´<_` ) 「俺だって・・・・・・・死にたく・・・・・・・なかったさ・・・・・・・」
でも、と続ける
(´<_` ) 「兄者も、ツンとかいう娘も・・・・・・・・まだ生きてるんだぞ・・・・・・」
「死んだ・・・・・・俺達が・・・・・・・・・・・・・・・」
「これからを、奪っていい人たちなんかじゃ・・・・・・・・ない」
( ^ω^) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それだけ言うと、弟者は立ち上がり
(´<_` ) 「俺は・・・・・・・もう逝く」
「さっきは悪かった・・・・・・・世話になっておきながら・・・・」
いや、だからかな・・・・・・
(´<_` ) 「言い過ぎた。・・・・・・・・それじゃあな・・・・・・・・」
ざぶざぶと音を立て、弟者は河を渡って逝った
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・
心電図の音が、大して大きくもないのにうるさい
('A`) 「・・・・・・・!? おい!? マジかよ・・・・・・・!?」
(´・ω・`) 「ブーン・・・・? ねぇ・・・・・・うそだろ!?」
ツンを押しのけるようにして、二人はブーンのもとへ行く
ツンはされるがままに、ふらり、ふらりとブーンから離れ
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
とさ、と、病室の隅に、砕けるように腰を落とす
('A`) 「ナースコール・・・・・・・・ナースコールだ・・・・・・!!」
(´・ω・`) 「そんなのまってらんないよ!」
ダッ、とショボンが駆け出し、病室を出て行った
('A`) 「ちっくしょう・・・・・・・! あのヤブはまだこねぇのかよ・・・・・!!」
そんなに早く来れるわけはない。それどころかショボンもまだついていないはずだ
ブーンの心臓は止まっている
このままではいけない。大した知識もないのに、毒男は必死で蘇生試みる
('A`) 「くっそ・・・・・・・起きろよ・・・・・・起きろよ・・・・・!!」
ドズン、ドズン、と乱暴に、めちゃくちゃに
毒男はブーンの胸を叩くようにマッサージする
やめて・・・・・・・・やめて・・・・・・・・・・・・・・・・
ブーンを・・・・・・・ブーンを・・・・・・・叩かないで・・・・・・・・
ひどい音を立てて、毒男がブーンに何かしている
見えている、聞こえている
けれど身体はなぜか動かない
ξ゚-゚)ξ 「いや・・・・・・・・いやぁ・・・・・・・・・・・・・・・!」
ツンの指で、ブーンがくれた指輪が光る
『 ( ^ω^) 「ずっと・・・・・・ずっと・・・・・・・すきだ・・・・・・・った」 』
ブーンの言葉が甦る
('A`) 「起きろよぉ・・・・・・・・目を開けろよぉ・・・・・・・・・・・・!!」
医者 「く・・・・・・患者は!?」
(´・ω・`) 「先生!! はやく、はやく、ブーンを・・・・・・・!!」
ドタバタと室内を動き回る人たちの動きは、ツンの目には入らない
ただ、ブーンの指輪と、ブーンの最後だけが繰り返し、目の前を流れる
ξ゚-゚)ξ 「アタシ・・・・・・・アタシだって・・・・・・・・・・・・・・」
続きを、言おうとして、飲み込む
アイツに届かないなら、それを言う意味なんて・・・・・・・・・・・・ない
医者は、早々に、ブーンの蘇生を止めた
('A`) 「おい・・・・・・・なに・・・・・・やってんだよ・・・・・・・・?」
医者 「・・・・・・・残念ですが・・・・・・・・」
(´・ω・`) 「なに・・・・が? なにが・・・・残念なのさ・・・・・・・・?」
首を振る、医者
毒男はうつむく医者に食ってかかる
('A`) 「なに言ってんだよ!? ・・・・・・・おまえ医者だろ!?」
医者 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
('A`) 「なんとか言えよ!? 助けろよ!? それが仕事だろ!?」
(´・ω・`) 「続けてよ! まだ・・・・・・まだ、きっと・・・・・・・・!!」
医者 「ですが・・・・・・・もう・・・・・・・・・・・!」
医者 「・・・・・・ご臨終・・・・・・・・・です・・・・・・!」
('A`) 「嘘だろ・・・・嘘だろ・・・・・・・・うそなんだろ・・・・・・!?」
(´・ω・`) 「そうだよ・・・・まだ・・・・まだ・・・・・・・・!!」
ああ・・・・・・・・・ブーンがいっちゃう・・・・・・・・・・・
目の前の出来事がすべて擦りガラスごしのように、ぼやけて見える
ツンの目には涙がたまり、ぼろぼろとこぼれていく
アタシ・・・・・・・・・・・まだ・・・・・・・・答えてないよ・・・・・・・?
好きだった、そう言ったのに、
ねぇ・・・・・・・せめて・・・・・・・・・最後に、言わせてよ・・・・・・・・・
答えを告げる前に、ブーンは逝った
言っても、もうけして、届かない言葉を残したままに、ブーンは逝ってしまった
医者は、そう告げ、告げるよりも前に、ツンは気づいていた
なんで・・・・・・・・・・・・アタシを置いてくの・・・・・・・・・・・・・・
身体が、心が、風景が、言葉が、音が
すべて残らず、重たい・・・・・・・・・・・
まだ、二人は諦めていないのか、医者に怒りと無力感をぶつける
しかし、ツンはもう諦めた
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・・・わかってた・・・・・・・・・」
あの時、アーケードでブーンが消えたときには、もう・・・・・・・・
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・・・・・・気づいてたもの・・・・・・」
涙は、もう枯れた
泣くのも、もう、疲れた
だから、ツンは鞄に手を伸ばし
ξ゚-゚)ξ 「あはw・・・・・・・・・・さよならは・・・・・・・言わないよ・・・・・・・・?」
荒巻からもらった包丁を、その手にとった
包丁は、研いだばかりのその包丁は
日本刀のように鋭く、そして美しい
ツンはそれをしばし見つめ・・・・・・・・・・・・・・・
ξ゚-゚)ξ 「いま・・・・・・・・・・・・・・いくね・・・・・・・・・・・・」
ドシュっ、ドシュっ、ドシュっ・・・・・・・・・・・・・・ドサ
('A`)・(´・ω・`) 「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
二人が、ツンの異常な声を聞き、振り返るとそこには
ξ゚-゚)ξ 「!? グゥッ・・・・・・・・・・・・う・・・・・・・・・・」
腹から血を流し、倒れるツンの姿があった
('A`) 「・・・・・・!? ・・・・・・・ばっかやろおおおおお!!!!」
(´・ω・`) 「ツンさん!? ねぇ! ツンさん!?」
包丁を抜き、傷口をふさごうとする二人
だが、念入りに、三回も突き刺した傷は、そう簡単にはふさがらず
ツンの血は、どんどんと流れていく
それを見ながら、ツンは呟く
ξ゚-゚)ξ 「まってて・・・・・・・・・・・ね・・・・・・・・・・・・?」
医者 「!? ・・・・・なんて馬鹿な真似を!」
すぐさま傷の確認をする
しかし・・・・・
医者 「これは・・・・・・・まずいな・・・・・・・・・」
('A`) 「おい!? まさか、まさか、ツンまで・・・・・・・!?」
(´・ω・`) 「なんとかならないんですか!?」
医者は、苦々しく顔をゆがめる
医者 「包丁の・・・・・・刃渡りが長い・・・・・・・・」
「これはもしかしたら、内臓まで達しているかもしれない・・・・・」
('A`) 「!? ・・・・・・・・・どうにか、なんないのか、それ・・・・・?」
(´・ω・`) 「なんとか・・・・・・・なんとかしてよ・・・・・・・・・・・・・!!」
通常、筋肉までなら、出血やショック死などの恐れはあるが、
それを除けば、命に別状はない
しかし、内臓は、そうはいかない。下手をすれば、即死だ
医者 「・・・・・まだ、息はある・・・・・・・・・!」
医者は立ち上がり、ナースコールを押す
まだ、尽くせる手があるのなら、諦めるわけには・・・・・いかない
河のほとりで、ブーンは座っていた
正直、今すぐにでも河を渡りたかった。だが
( ^ω^) 「ぼくのエゴ・・・・・・・・・・・・・・・・」
さっきの、弟者の言葉が、耳から離れない
( ^ω^) 「ツンは・・・・・・・どう思ったんだお・・・・・・・・・・・・」
エゴだ、エゴだと、弟者は言ったが
それをツンは、どう受け止めてくれたのだろうか
ブーンは、今の今まで、ツンならきっと平気だと思っていた
いつも、毅然としていたツン
頭がよく、そしてキレイなツン
自分には高嶺のさらにその上の花だと思っていた
そんなツンが、自分の告白で、揺らぐことはなく、生きていける
そう、信じていた
しかし、
( ^ω^) 「アーケードで・・・・・・・・・ツンは、泣いてたお・・・・・・・・」
それは、ブーンの知る、強くて美しい彼女が見せたことのない弱さだった
一瞬、それが嬉しく、だが今では、それが不安だった
弟者のように、自分にはノートPCのような道具はない
下の様子を知りたくても、知る術はないのだ
ならば、ここにいても、なんの意味はないはずだった
だが、ブーンは河を渡るのを躊躇った
嫌な、嫌な予感が、この河からする。その予感とは・・・・・・
( ^ω^) 「ここを渡ったら・・・・・・・・・・・何もかも忘れてしまいそうだお・・・・・」
神話にあるレテ河
その水を飲んだものは、生きていた頃のことをすべて忘れ、そして生まれ変わるという
これがその河なのかどうかは、ブーンには分からない
何しろ、ここは日本だ。日本ならばきっと、ここは三途の川なのだろう
だが、もし、そうではなく、
真実、ここが伝説にある、忘却のレテ河だったとしたら
( ^ω^) 「これを・・・・・忘れるわけには・・・・・・・・・いかないお」
弟者が残していった、自分の行動への疑問
まだ、自分の中ですらその決着はついていないのだ
( ^ω^) 「せめて、自分なりの答えを・・・・・・・みつけるお」
なに、時間なら悠久に近いほどある
じっくり、そして、後悔がないぐらい、考えよう・・・・・・・・・・・
そう、ブーンがスパンの長い決心をした時だった
突然、後ろから声が聞こえた
ξ゚-゚)ξ 「もしかして・・・・・・・・・ブーン・・・・・・・?」
(;^ω^) 「!? その・・・・・・・・こえ・・・・・・・・・・は・・・・」
嫌だ・・・・・・・嫌だ・・・・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
振り返りたくない、後ろを、声の主を、確認したくない
まさか・・・・本当にまさかじゃないか、そんなことは!!
会いたい、会って話したい、会って告白の続きをしたい
でも、それは、考えちゃいけない、叶っちゃいけない願い事じゃないか!?
そんな、現実見たくない
これは幻で、聞こえる音は幻聴だ!
必死に、祝詞のように何度も何度も打ち消すブーン
ガタガタと震えるのは恐怖かそれとも悲哀からか?
そのどちらでも構わないし、どうでもいい
ただ、後ろにある光景が、何かの間違いであってくれさえするならば・・・・・・・・
だが、そんなブーンの思いもむなしく
ξ///)ξ 「えへ・・・・・・・・・・・来ちゃったw」
(;^ω^) 「つ・・・・・・・・・・・・ツン・・・・・・なの・・・・かお・・・・・・・」
ξ#゚听)ξ 「む!? それ以外の誰に見えるのよっ!?」
( ^ω^) 「あ・・・・・・・あ、ああ・・・・・・・・・!!」
あっけらかんと、背後の現実は、ブーンに深い絶望をたたきつけた
打ちのめされ、前に倒れるブーン
それを心配して、ツンが駆け寄る
ξ゚-゚)ξ 「ちょ・・・・・!? 大丈夫!? まだ、頭が・・・・・・・?」
(;^ω^) 「い、いや・・・・・・・平気だお・・・・・・・ただ」
ξ゚-゚)ξ 「あ、そうよねw アタシも貴方も・・・・・・・・・もう、死んでるんだもんねw」
(;^ω^) 「!?」
ブーンに最後まで言わさず、ぺろ、と舌を出し、また照れたように笑うツン
その、あまりのあっけない言い方とは対照的に、ブーンはすさまじい衝撃を受けた
ξ゚-゚)ξ 「そういえば・・・・・・アタシもおなか、痛くないもんねぇ?」
( ^ω^) 「え・・・・・・・!? おなか・・・・・・? どう・・・・したんだお?」
立ち直る暇も惜しみ、尋ねると、ツンは困ったように笑い・・・・・・・・
ξ゚-゚)ξ 「えーっと・・・・・・・・ね? その・・・・・・・・・・・包丁で、刺したの、自分で」
(;^ω^) 「刺し・・・・・・・・・・た・・・・・・・・・?」
三度目の衝撃は、やはり慣れる事無くブーンをぶちのめした
何故、どうして、何のために・・・・・・・・・疑問が津波となって押し寄せる
なぜ、ツンはこんなに明るい?
どうして、そんな辛い死に方を選ぶ?
何のために、そこまでできるというのだ?
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・・ちょっと、もう少し・・・・喜んでよ・・・・?」
何を
ξ゚-゚)ξ 「せっかく、アタシが来たのよ? アンタなんかを追っかけて!」
どうして
ξ゚-゚)ξ 「どうしてって・・・・・・・・・アタシは・・・・・・・」
ξ///)ξ 「その・・・・アタシは・・・・・・・アンタに・・・・・・会いたかったから・・・・・・」
ブチン・・・・・・・・・・・・・・・・
(#^ω^) 「ぼくは会いたくなんかなかったお!!!!!!」
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
キレた
弁解も弁明も言い訳のしようもないぐらいに、ぶちキレた
ξ#゚听)ξ 「ちょ・・・・・・・・・・何よ・・・・・・・!」
( ^ω^) 「とっとと帰るお」
ξ゚-゚)ξ 「なに・・・・・・・・・・よ・・・・・・・・・・?」
ああ、弟者の言う事が、ようやく理解できた
なんて・・・・・なんて自分は馬鹿だったんだ・・・・・・・・!!
( ^ω^) 「ぼくが好きだったツンは、ここになんかいないお!!」
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・え・・・・・・え・・・・・・・・・?」
好きだと伝えて、満足して、本当になんて馬鹿だったんだ
ぜんぜん、伝えきれていないじゃないか・・・・・・・・!!
( ^ω^) 「ぼくが愛したツンは、強くて、頭が良くて、カッコよくって・・・・!!」
それだけじゃない・・・・・・・・・・・・
そんな、言葉なんかじゃ言い表せない・・・・・・・・・
でも、これだけは言える
( ^ω^) 「それで・・・・・・強く、生きているのが僕が愛したツンだお!!」
ξ;;)ξ 「どう・・・・・・して・・・・・・・・・?」
あまりのブーンの剣幕に、ツンが涙する
ξ;;)ξ 「ねぇ・・・・・どうしてよ!?」
「アタシは・・・・・アタシは、アンタが好き!! 好きなの!!」
告白・・・・・なのだろうか
しかしこれは、ブーンが望んでいた言葉なんかじゃ・・・・・・ない
ξ;;)ξ 「アタシはアンタが好きなの・・・・・・死んだって、好きなの・・・・・」
ブーンは何も言わない。言えない、ではなく、言わないのだ
ここで、口を開けば、また、好きだと言ってしまう
しかしそれは、きっと流されて出る程度の、軽い言葉だ
そんな、そんな軽い気持ちで、言いたくは、ない
ξ;;)ξ 「なら・・・・・・・なんでよ・・・・・・・・・・?」
「なんで・・・・・最後に、好きだなんて・・・・・・・言ったのよ・・・・・・・・・!」
( ^ω^) 「!!!!!」
涙混じりに、ツンは、ブーンの一番弱いところをついた
( ^ω^) 「そ・・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・・・」
言葉に詰まる
ξ;;)ξ 「アタシは・・・・・・・・・嬉しかった・・・・・・・!!」
「でも! でも・・・・・言うだけ言って・・・・・・・・・・・」
「言うだけ言っておいて! それで追いかけたら・・・・・・・これなの・・・・・?」
ξ;;)ξ 「なんとか言いなさいよっ!?」
( ^ω^) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ツンの頬を伝い、涙が落ちる
ブーンはそれをそっと指でぬぐい、ツンを抱きしめた
ξ;;)ξ 「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
( ^ω^) 「ごめん・・・・・・・・だお」
声に動揺はない
しっかりとした口調で、ブーンは続ける
( ^ω^) 「ぼくは、ツンのことを、少しも考えていなかったお」
抱きしめる腕に、ブーンは力を込める
ツンの小さな身体はすっぽりと、その腕の中におさまり
今は、その身体をさらに縮こまらせ、固まっている
ξ;;)ξ 「なに・・・・・・・よ・・・・・? いきなり、なに・・・・・よ・・・・・・」
( ^ω^) 「気づかなかったお」
ブーンは笑う
笑って、ツンを力いっぱい抱きしめる
ξ;;)ξ 「ちょ・・・・・・くるしい・・・・・・・・・・!」
( ^ω^) 「うん、そうだと思うお」
ξ;;)ξ 「なら、離して・・・・・・・よ・・・・・・・・」
( ^ω^) 「こんなに・・・・・・・・・・・・」
ξ;;)ξ 「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
しみじみと、何度もうなずくブーン
( ^ω^) 「こんなに、ツンは、小さくて、弱かったんだお・・・・・・・・・」
なんで・・・・・・・・・・・・・・・・
( ^ω^) 「なんで、いままで、きづかなかったんだお・・・・・・・・」
ξ;;)ξ 「いいから・・・・・・・・離して・・・・・・・・・・・よ・・・・・・!」
腕の中で、ツンが暴れようとする
でも、ブーンは腕をほどこうとはしない
じたばたと、しかしその動きは、ブーンから見れば、酷く弱い
( ^ω^) 「離さないお・・・・・・・・・・・・」
ξ;;)ξ 「なんで・・・・・・・よ・・・・・・・・・・・・?」
いまだ、泣きじゃくるツン
その目から、涙がもうこぼれないよう、自分の胸に押し当てる
( ^ω^) 「ツンは・・・・・・・・さっきっから、泣いてるお」
ξ゚-゚)ξ 「だ、誰の所為よっ!?」
( ^ω^) 「ふふwごめんだお・・・・・・・」
顔をあげ、誰にとなく、ブーンが独り言のように言った
( ^ω^) 「ツンは、こんなにちっちゃくて・・・・・・・・・・・・・・・・」
「弱くって、泣き虫なんだから・・・・・・・・・・・・・・」
「一人で立てるわけが、なかったんだお」
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・・・・・・・?」
( ^ω^) 「だから・・・・・・・ぼくはツンに寄りかからないで・・・・・・・」
「支えてあげなきゃ、いけなかったんだお」
まったく、馬鹿みたいだ、とひとしきりブーンは笑い、そして謝る
( ^ω^) 「ツン・・・・・・・本当に、ごめんだお・・・・・・・」
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・それ、どういう・・・・・・・・!?」
( ^ω^) 「ぼくは、きっと、ツンを好きなんかじゃなかったんだお」
ξ゚-゚)ξ 「!?」
ブーンの言葉に、ツンは身体をビクリ、と震わせ、恐怖する
まさか・・・・・・そんな・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、その不安も長くは続かなかった
( ^ω^) 「ぼくはツンを・・・・・・・・・愛してるお」
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・・・・・・・・!」
予想と真逆のその言葉に、ツンは言葉を失う
( ^ω^) 「好きだなんて、甘えたことは言わないお。愛してる」
「愛してるから・・・・・・・・・・・・・」
「ツンは、これからぼくが守るから・・・・・・・・・・・・」
大きく息を吸い込み、それと同時に腕に力を込め
( ^ω^) 「ここでお別れだお!!」
ξ゚-゚)ξ 「え、な・・・・・・・!? きゃっ・・・・・・・・・!!!!」
ブンッ、と思いっきりツンを突き飛ばし
その勢いで、ツンは宙を舞い、そして意識を失った
ξ゚-゚)ξ 「あ・・・・・・・待って!! ブーンっ!?」
ガバッッと起き上がると、そこは河原などではなく
ξ゚-゚)ξ 「うそ・・・・・・・・・・・・?」
そこは・・・・・・・・ブーンのいた病室、そのベッドの上だった
ふと自分に視線を落とすと、なぜか病院の患者服とでも言うのだろうか
それを着ていた
ツンが、状況把握に苦労していると、病室のドアが開き、白衣の男が入ってきた
医者 「目は・・・・・・覚めたかね?」
ξ゚-゚)ξ 「ここ・・・・・・・・・は・・・・・・・?」
「いや、ブーンは・・・・・・・つぅっ!?」
思わず、起き上がろうとして、腹部の痛みにうめく
医者 「ああ、まだ動いたらいけない。手術をしたばかりなのだから・・・・・・」
ξ゚-゚)ξ 「手術って・・・・・・・・・・・」
と、聞きかけ、自分で気づく
自分は腹を三回、包丁で刺したのだ・・・・・手術をしないはずがない
医者は不機嫌そうな顔でツンを見ながら嫌味に言う
医者 「まったく・・・・・・・内臓までぶっ壊す奴があるかね・・・・・・・」
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・すみま・・・!? いや、それより、ブーンは!?」
守るって言った、これからは守るって・・・・・・・
だったら、だったらきっと・・・・・・・・・・・・・・・・!!
医者 「彼なら、あの時点で亡くなっていたよ・・・・・・・・・・・・」
ξ゚-゚)ξ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
奇跡なんて、そうは起きない・・・・・・そんなの、わかってた
ブーンは向こうで、ああ言ってくれたけれど、現実はこれだ
嘘つき、と罵りたくても、罵る相手は、空の上だ
どの道、ブーンがいない人生なんて・・・・・・・・
と考えていると
医者 「君は・・・・・・またブーン君を殺すつもりかね・・・・・・・・?」
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・・・・・・・・?」
この人は一体、何を言っているんだ?
まるで、理解が出来なかった
医者は指を三本たて、こう言った
医者 「彼は、一度、頭を殴られ、撲殺された」
これが一度目、と、指を一つ折る
医者 「そして、彼の身体を私が解剖して、これで、二度目だ」
私もこれで、殺人者だw と、もう一つ折る
医者 「最後に、君が、その命を絶つことで・・・・・・・・・」
残った指をツンに向ける
医者 「移植した、彼の一部を、君はまた殺す気なのかね?」
ξ゚-゚)ξ 「!? ・・・・・・・・・・・え、一・・・・・部・・・・?」
思わず、自分の身体を見る。が、そんなツンを見ようともせず、医者は続ける
医者 「損傷が酷かった部位は、そのまま切除したよ。あのままなら壊死しただろうから」
「そこで、新鮮な彼の臓器を提供してもらったんだ・・・・・・・・・」
そこで一旦、言葉を区切り
医者 「彼は、その身をもって、君の命を救ったんだよ・・・・・・?」
「君は、自分ごと、生き残った彼の臓器まで、殺すのかい?」
ぶわっ、と涙があふれる
ξ;;)ξ 「そ・・・・・・・・・んな・・・・・・・・・・・・?」
医者 「普通なら、絶対にそんなことはしないんだがね・・・・・・・」
何故だろう、と首を傾げる医者
医者 「ドナーカードまで偽造している自分がいたよ」
犯罪じゃないの・・・・・・・・・と、ツンは思い、同時に気づく
ξ゚-゚)ξ 「守るって・・・・・・こういうことだったの・・・・・・・ブーン・・・・・・・・・・?」
ドクン・・・・・・・・・・・・・
ξ゚-゚)ξ 「え・・・・・・・・・・?」
医者 「おや? おなかがもう空いたのかね? ははw経過は順調だなw」
違う・・・・・・そんなんじゃない
今、確かに、感じた
ブーンは今、ここにいるんだ・・・・・・・・