ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第11話
- 2014/07/07
- 13:12
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
166 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:15:43 ID:tbLElUNM0
◆第11話◆
XX24年 S月
ξ゚⊿゚)ξ(………ファ)
ツンの仕事は、ほとんど動きもなくまぁ単調なことだ。
地元も住みにくいほど田舎でもなかったが、そこから離れてより栄えた土地に拠点を移し、その市内でも観光スポットとされる大規模な美術館に勤めているのだが
今日はとりわけ動きのない、監視役を任されている。
普段は受付やグッズの販売、簡単なガイドなど多少動きのある仕事が基本なのだが、それさえもメリハリがないこともざらにあるので、無表情のまま欠伸を噛み殺す変なスキルばかり身についた。
ちなみに、ジョルジュも同じ美術館に勤務しているが、デザイン科のある専門学校で得たスキルでパンフレットやポスターなど、広告関係の仕事に駆り出されることが多いので、館内で同じ仕事をすることはあまりない。
XX24年 S月
ξ゚⊿゚)ξ(………ファ)
ツンの仕事は、ほとんど動きもなくまぁ単調なことだ。
地元も住みにくいほど田舎でもなかったが、そこから離れてより栄えた土地に拠点を移し、その市内でも観光スポットとされる大規模な美術館に勤めているのだが
今日はとりわけ動きのない、監視役を任されている。
普段は受付やグッズの販売、簡単なガイドなど多少動きのある仕事が基本なのだが、それさえもメリハリがないこともざらにあるので、無表情のまま欠伸を噛み殺す変なスキルばかり身についた。
ちなみに、ジョルジュも同じ美術館に勤務しているが、デザイン科のある専門学校で得たスキルでパンフレットやポスターなど、広告関係の仕事に駆り出されることが多いので、館内で同じ仕事をすることはあまりない。
167 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:20:52 ID:tbLElUNM0
168 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:21:54 ID:tbLElUNM0
169 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:23:29 ID:tbLElUNM0
170 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:24:30 ID:tbLElUNM0
171 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:26:18 ID:tbLElUNM0
172 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:28:31 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ=3フゥ…
そういえば、昨日見た夢も、なかなかきつかった。
苦痛というほどでもないが、何故か体の疲れが抜けきれず目覚めが良くないことがよくある。
夢の中で好き放題動き回り誰かと会話するのに、そんなにも体力を使ったのだろうか。
これは二度三度のレベルじゃないなとツンは薄々思っていた。
( ^ω^)「……お?」
音もなかったその空間で発せられた一言に、ツンは振り向いた。
173 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:30:28 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「……あら?」
どこかで見たことのある顔だった。
よもやこんなところで知った顔に遭遇するとは。…と、お互いが思ったかもしれない。
( ^ω^)「こんにちはですおツンさん、覚えてますかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤くん、だっけ?」
( ^ω^)「おっおっ。光栄ですお」
この特徴的な語尾と柔和な笑顔。
少々ふっくらした体格も、優しそうな雰囲気を醸し出すのに一役買ってるのかもしれない。
あの時はイライラしててにこりともしなかったが、実際何かと気を遣ってくれてる彼自体に悪い印象はなかった。
174 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:32:02 ID:tbLElUNM0
175 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:33:37 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「絵、好きなの?」
料理人というあまり関係のなさそうな仕事と、美術館。
ツンの中では線にならない点と点ばかりが散りばめられている。
( ^ω^)「こう見えても、絵描くのは好きなんですお」
こう言っちゃ失礼だが、なんだか意外だ。
まぁ絵かきなんて見ただけで見抜ける趣味ではないのだが。
176 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:36:21 ID:tbLElUNM0
177 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:37:41 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「………」
ブーンは一つの絵画に見入っている。
ジョン・コンスタブルというイギリスの風景画家の代表作だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……知ってる?その人」
( ^ω^)「お…初めて見ましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「…風景画は日本人には受けがいいんだけどね」
( ^ω^)「お?」
.
178 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:39:18 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「その頃のイギリスの画壇ではね、宗教画とか肖像画が主流で古典的であることを至上とする風潮だったから、風景画はあまり人気なかったの」
ξ゚⊿゚)ξ「今でこそモネやセザンヌなんかの印象派は有名だけど、当時もバルビゾン派といわれるターナーなんかが現れるまで、彼は日の目を見ることはなかったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「それどころか、彼の作品の多くは、同業者から未完成品だと馬鹿にされて、当然爆発的に売れることもなかった」
( ^ω^)「お…こんなに綺麗なのに…」
ξ゚⊿゚)ξ「…そうね。あたしは好きなんだけど。特に…」
ツンは一つの絵画を目指して歩みを進めた。
.
179 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:40:51 ID:tbLElUNM0
ξ゚ー゚)ξ「これが、あたしのオススメ」
悪戯っぽいような、なんだか誇らしげのような。
ブーンが初めて見たツンの笑顔だった。
.
180 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:41:44 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「おー…夕日かお…」
『ハムステッド・ヒースの木立、日没』と書かれたそのタイトルを、ブーンは目で追う。
ξ゚⊿゚)ξ「ハムステッド・ヒース…ロンドンの北のほうなんだけど、病弱な奥さんを気遣ってそこに引っ越したんだって」
その空や風景を描いたのがこれ。とツンは微笑みながら絵画を見遣る。
181 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:43:05 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「…あたしが彼を気に入ったのは、ただ絵が素晴らしいからってだけじゃなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「流行に媚びることなく、売れなくても誰も見向きもしなくても、ただ描きたいものだけを頑なに描き続けた姿勢が好きなんだ」
( ^ω^)「なるほどおー…確かに、今の芸術家さんたちにも共感できる部分が多そうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、後にフランスのドラクロワにも衝撃を与えたって言われてるし、なんだかんだ言ってバルビゾンの先駆者は彼だと思ってる人もいるだろうから、全くの孤高とも言えないと思うけどね」
仕事半分でガイドしてるつもりだったツンは、だんだんそこに本音が混じり合ってきたことに気づき、急に気恥ずかしくなって巻き上げるように締めた。
182 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:44:38 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「…それにしてもツンさん詳しいお。ツンさんこそ美術関係の学校でも通ったのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「これも一応仕事ですから」
『へ?』とキョトンとするブーンに、首から下げた社員証を見せる。
( ^ω^)「…仕事中にしては、緩みすぎだおw」
先ほどブーンが近づいた時、声でもしなければ気づきもしなかった緩さ加減をやんわりと指摘した。
ξ゚⊿゚)ξ「いーの!こうしてちゃんと仕事したんだし、知識レベルも問題ないでしょ?」
きっと、彼女なりにいろいろ勉強した賜物だったのだろう。
その涙ぐましさと誇らしさが見て取れる。
183 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:46:04 ID:tbLElUNM0
184 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:47:37 ID:tbLElUNM0
ξ*゚ー゚)ξ「今度食べに行くから。ブーンのオススメお願いね」
(* ^ω^)「おっおっ。合点承知だ
( ゚∀゚)「………」
その二人を見つめる姿があることに気づきもしないほど、普段あまり愛想のないはずのツンは夢中で話に花を咲かせていた。
186 : 名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 17:02:03 ID:54Y4jdIk0
ξ゚⊿゚)ξ「……」
展示物が変わるたびに多少のマンネリ解消にはなったものの、これでも高校生の頃月に一度くらい通ってた頃ほどの感動は最早なくなってきたが
展示物を提案する学芸員の話を聞くのも面白かったし、単純に美術品に囲まれたこの空間に居続けてれば、気持ちの荒れようがない。
展示物が変わるたびに多少のマンネリ解消にはなったものの、これでも高校生の頃月に一度くらい通ってた頃ほどの感動は最早なくなってきたが
展示物を提案する学芸員の話を聞くのも面白かったし、単純に美術品に囲まれたこの空間に居続けてれば、気持ちの荒れようがない。
168 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:21:54 ID:tbLElUNM0
美術関係への進路を絶ち、挫折した身としては、そちらの世界に精通した学芸員たちや研究者、学生のアルバイトさえも美大生がほとんどであることに対し、最初は多少の劣等感も否めなかったが
展示物をガイドするために真面目に勉強する姿が認められ、学芸員の小難しい蘊蓄にも相槌を打てるほどの知識レベルとなった今、自分の立ち位置に疑問を持つことも少なくなった。
しかし暇だ。
監視役と言われればなんだか物々しいが、実際見物客が展示物に触れたり壊したりなんてことは稀である。
少なくとも、ツンがこの美術館に勤め始めてから今に至るまでは一度もない。
それどころか、今ツンが監視すべきフロアには、見物客は一人もいない。
展示物をガイドするために真面目に勉強する姿が認められ、学芸員の小難しい蘊蓄にも相槌を打てるほどの知識レベルとなった今、自分の立ち位置に疑問を持つことも少なくなった。
しかし暇だ。
監視役と言われればなんだか物々しいが、実際見物客が展示物に触れたり壊したりなんてことは稀である。
少なくとも、ツンがこの美術館に勤め始めてから今に至るまでは一度もない。
それどころか、今ツンが監視すべきフロアには、見物客は一人もいない。
169 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:23:29 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「………」
この狭い行動範囲内の、すべての展示物が見渡せる場所でただ座り込むのも飽きたので、ツンは歩き回りながら展示物に近づいた。
さながら一見物客である。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
近代美術。
壁画からキャンバスに変わり、文学や神話などの縛りから解放され、モチーフが自由化された時代の作品。
個人的には耳慣れた、やれルネサンスやマニエリスム、ロココなど有名な単語で引き付けた題材を提案するよりも、ビザンティンやロマネスクといった、王や神などの宗教権力者へ捧げられた美術の方が勉強する上では深みがある気がするが
実はこんな掘り出し物ありました!と言わんばかりにあまり日の目を見なかった作品にスポットを当てる。
この提案の仕方は、実は結構気に入っていた。
.
この狭い行動範囲内の、すべての展示物が見渡せる場所でただ座り込むのも飽きたので、ツンは歩き回りながら展示物に近づいた。
さながら一見物客である。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
近代美術。
壁画からキャンバスに変わり、文学や神話などの縛りから解放され、モチーフが自由化された時代の作品。
個人的には耳慣れた、やれルネサンスやマニエリスム、ロココなど有名な単語で引き付けた題材を提案するよりも、ビザンティンやロマネスクといった、王や神などの宗教権力者へ捧げられた美術の方が勉強する上では深みがある気がするが
実はこんな掘り出し物ありました!と言わんばかりにあまり日の目を見なかった作品にスポットを当てる。
この提案の仕方は、実は結構気に入っていた。
.
170 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:24:30 ID:tbLElUNM0
もともと日本においては、西洋の近代美術に触れること自体マイナーなはずなのだ。
単語単語に聞き覚えがあっても、ほとんどの人は中学校の授業で習うレベルか、それ以下でしか認識してない。
ポピュラーな作品なら、わざわざ美術館で目にする必要もないくらいそこらに溢れてしまってるので
少しくらい派生した方が、高を括った見物客をいい意味で裏切ることになるだろう。
しかし、さすがにこんな平日の昼間じゃ見物客はいない。
単語単語に聞き覚えがあっても、ほとんどの人は中学校の授業で習うレベルか、それ以下でしか認識してない。
ポピュラーな作品なら、わざわざ美術館で目にする必要もないくらいそこらに溢れてしまってるので
少しくらい派生した方が、高を括った見物客をいい意味で裏切ることになるだろう。
しかし、さすがにこんな平日の昼間じゃ見物客はいない。
171 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:26:18 ID:tbLElUNM0
高校生の頃通った美術館だって、長期の休みシーズンでもない限りはほとんど人はおらず、だからこそ気に入ったというのも理由の一つだった。
単にその地元の美術館が地味だったせいだと思ってたが、そうでなくてもこの人出のなさだ。
きょうび現代人とは衣食住のみを生活の基盤として重んじるあまり、プラスアルファで心を豊かにするツールにはあまり興味がないらしい。
基盤の衣食住さえも、安く済むに超したことはないと、驚くほど見境ない人だって多々いる。
それが賢明で強かさで、大人になったらそれが当たり前だというのなら
高校生の頃、ただ興味があるからという理由だけで気が済むまで突き詰めたいと志したことが、本当に淡く儚い希望だったんだと思う。
単にその地元の美術館が地味だったせいだと思ってたが、そうでなくてもこの人出のなさだ。
きょうび現代人とは衣食住のみを生活の基盤として重んじるあまり、プラスアルファで心を豊かにするツールにはあまり興味がないらしい。
基盤の衣食住さえも、安く済むに超したことはないと、驚くほど見境ない人だって多々いる。
それが賢明で強かさで、大人になったらそれが当たり前だというのなら
高校生の頃、ただ興味があるからという理由だけで気が済むまで突き詰めたいと志したことが、本当に淡く儚い希望だったんだと思う。
172 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:28:31 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ=3フゥ…
そういえば、昨日見た夢も、なかなかきつかった。
苦痛というほどでもないが、何故か体の疲れが抜けきれず目覚めが良くないことがよくある。
夢の中で好き放題動き回り誰かと会話するのに、そんなにも体力を使ったのだろうか。
これは二度三度のレベルじゃないなとツンは薄々思っていた。
( ^ω^)「……お?」
音もなかったその空間で発せられた一言に、ツンは振り向いた。
173 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:30:28 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「……あら?」
どこかで見たことのある顔だった。
よもやこんなところで知った顔に遭遇するとは。…と、お互いが思ったかもしれない。
( ^ω^)「こんにちはですおツンさん、覚えてますかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤くん、だっけ?」
( ^ω^)「おっおっ。光栄ですお」
この特徴的な語尾と柔和な笑顔。
少々ふっくらした体格も、優しそうな雰囲気を醸し出すのに一役買ってるのかもしれない。
あの時はイライラしててにこりともしなかったが、実際何かと気を遣ってくれてる彼自体に悪い印象はなかった。
174 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:32:02 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「みんなからはブーンと呼ばれてますお」
と、律儀にも改めて差し出した名刺には、なんだか洒落てそうなダイニングバーの名前とシェフ、いわゆる料理長という偉そうな肩書きが記されていた。
ξ゚⊿゚)ξ「…なんで?」
『内藤ホライゾン』と書かれた名刺のどこを見ても、ブーンのブの字も見つけられなかったツンは、軽く目を細めた。
( ^ω^)「うーん…なんか、昔からのあだ名ですお」
よく聞かれるのだろう、由来のはっきりしないその質問になんとなしに答えながら、目線は絵画に向いている。
と、律儀にも改めて差し出した名刺には、なんだか洒落てそうなダイニングバーの名前とシェフ、いわゆる料理長という偉そうな肩書きが記されていた。
ξ゚⊿゚)ξ「…なんで?」
『内藤ホライゾン』と書かれた名刺のどこを見ても、ブーンのブの字も見つけられなかったツンは、軽く目を細めた。
( ^ω^)「うーん…なんか、昔からのあだ名ですお」
よく聞かれるのだろう、由来のはっきりしないその質問になんとなしに答えながら、目線は絵画に向いている。
175 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:33:37 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「絵、好きなの?」
料理人というあまり関係のなさそうな仕事と、美術館。
ツンの中では線にならない点と点ばかりが散りばめられている。
( ^ω^)「こう見えても、絵描くのは好きなんですお」
こう言っちゃ失礼だが、なんだか意外だ。
まぁ絵かきなんて見ただけで見抜ける趣味ではないのだが。
176 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:36:21 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、もしかして美大出身とか?」
( ^ω^)「いえ、もちろん興味はあったんですけど…生業とするならやっぱり料理かなって。たまに時間ができた時に見たり描いたりする程度ですお」
ツンとは違い、二つの道を天秤にかけた上で美術関係とは違う道に進みながら、今でもこうして趣味として手元に置き続けてる。
なるほど愚直そうに見えて、案外器用な生き方かもしれない。
一見要領良さそうで、全てか無かでしか欲しいものを選べないツンとは、まるで真逆だ。
( ^ω^)「いえ、もちろん興味はあったんですけど…生業とするならやっぱり料理かなって。たまに時間ができた時に見たり描いたりする程度ですお」
ツンとは違い、二つの道を天秤にかけた上で美術関係とは違う道に進みながら、今でもこうして趣味として手元に置き続けてる。
なるほど愚直そうに見えて、案外器用な生き方かもしれない。
一見要領良さそうで、全てか無かでしか欲しいものを選べないツンとは、まるで真逆だ。
177 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:37:41 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「………」
ブーンは一つの絵画に見入っている。
ジョン・コンスタブルというイギリスの風景画家の代表作だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……知ってる?その人」
( ^ω^)「お…初めて見ましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「…風景画は日本人には受けがいいんだけどね」
( ^ω^)「お?」
.
178 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:39:18 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「その頃のイギリスの画壇ではね、宗教画とか肖像画が主流で古典的であることを至上とする風潮だったから、風景画はあまり人気なかったの」
ξ゚⊿゚)ξ「今でこそモネやセザンヌなんかの印象派は有名だけど、当時もバルビゾン派といわれるターナーなんかが現れるまで、彼は日の目を見ることはなかったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「それどころか、彼の作品の多くは、同業者から未完成品だと馬鹿にされて、当然爆発的に売れることもなかった」
( ^ω^)「お…こんなに綺麗なのに…」
ξ゚⊿゚)ξ「…そうね。あたしは好きなんだけど。特に…」
ツンは一つの絵画を目指して歩みを進めた。
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179 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:40:51 ID:tbLElUNM0
ξ゚ー゚)ξ「これが、あたしのオススメ」
悪戯っぽいような、なんだか誇らしげのような。
ブーンが初めて見たツンの笑顔だった。
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180 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:41:44 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「おー…夕日かお…」
『ハムステッド・ヒースの木立、日没』と書かれたそのタイトルを、ブーンは目で追う。
ξ゚⊿゚)ξ「ハムステッド・ヒース…ロンドンの北のほうなんだけど、病弱な奥さんを気遣ってそこに引っ越したんだって」
その空や風景を描いたのがこれ。とツンは微笑みながら絵画を見遣る。
181 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:43:05 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「…あたしが彼を気に入ったのは、ただ絵が素晴らしいからってだけじゃなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「流行に媚びることなく、売れなくても誰も見向きもしなくても、ただ描きたいものだけを頑なに描き続けた姿勢が好きなんだ」
( ^ω^)「なるほどおー…確かに、今の芸術家さんたちにも共感できる部分が多そうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、後にフランスのドラクロワにも衝撃を与えたって言われてるし、なんだかんだ言ってバルビゾンの先駆者は彼だと思ってる人もいるだろうから、全くの孤高とも言えないと思うけどね」
仕事半分でガイドしてるつもりだったツンは、だんだんそこに本音が混じり合ってきたことに気づき、急に気恥ずかしくなって巻き上げるように締めた。
182 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:44:38 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「…それにしてもツンさん詳しいお。ツンさんこそ美術関係の学校でも通ったのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「これも一応仕事ですから」
『へ?』とキョトンとするブーンに、首から下げた社員証を見せる。
( ^ω^)「…仕事中にしては、緩みすぎだおw」
先ほどブーンが近づいた時、声でもしなければ気づきもしなかった緩さ加減をやんわりと指摘した。
ξ゚⊿゚)ξ「いーの!こうしてちゃんと仕事したんだし、知識レベルも問題ないでしょ?」
きっと、彼女なりにいろいろ勉強した賜物だったのだろう。
その涙ぐましさと誇らしさが見て取れる。
183 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:46:04 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「お。いろいろありがとうだお。勉強になったお」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあお礼と言っちゃあなんだけど…」
( ^ω^)「ちょw普通それ僕がその気になったら言うことwww」
ツンはまた悪戯っぽい笑顔で先ほど貰った名刺をヒラヒラさせた。
.
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあお礼と言っちゃあなんだけど…」
( ^ω^)「ちょw普通それ僕がその気になったら言うことwww」
ツンはまた悪戯っぽい笑顔で先ほど貰った名刺をヒラヒラさせた。
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184 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/16(金) 13:47:37 ID:tbLElUNM0
ξ*゚ー゚)ξ「今度食べに行くから。ブーンのオススメお願いね」
(* ^ω^)「おっおっ。合点承知だ
( ゚∀゚)「………」
その二人を見つめる姿があることに気づきもしないほど、普段あまり愛想のないはずのツンは夢中で話に花を咲かせていた。
186 : 名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 17:02:03 ID:54Y4jdIk0
最後のブーンのセリフがなぜかスネークで再生されてわろた
乙
乙