ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第17話
- 2014/07/09
- 20:08
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
333 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:19:58 ID:essLX21o0
334 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:21:34 ID:essLX21o0
ミセ*゚ー゚)リ「長岡君、お疲れ様ー」
( ゚∀゚)「お疲れ様っす。本当助かりました!」
ミセリの隣には、ジョルジュが付きっ切りだ。
同じ現場で仕事した時間が一番長かったのだろうし、企画の段階でいろいろ世話にもなってるはずだし
歳も近くてミセリも心開きやすいジョルジュが実質彼女のマネジメントのような仕事も担ってたので、こういう席でも何かと気を遣うのだろう。
べつに嫉妬はしないが、ただでさえあまりよく思ってないミセリ相手だから面白くないと言えば事実だ。
ただ、そう思っていられるだけ自分の立場なんて気楽なもんだとツンは思っていた。
335 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:23:08 ID:essLX21o0
336 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:25:09 ID:essLX21o0
ところが今日の飲み会はどうだ。
いかんせん、主役は若い女の子。
解せないアートを持ち味とする女の子から、吸収すべきノリッジも期待できないし、その子に喜んでもらうために必死に盛り上がる周りの連中の低俗な煽り方も、野暮ったくて見てられない。
長時間居たい席ではないと判断したツンは、どのタイミングで席を立とうか考え始めていた。
ミセ*゚ー゚)リ「あのー、お疲れ様です!」
そんなことを考えてる時に、まさかのミセリから話し掛けられた。
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れ様です」
門が立たないように気をつけたつもりの、当たり障りない声色でツンは返した。
もしかして、つまらなそうにしてるのが顔に出てしまってたのだろうか。
そんな危疑もあったからこそだった。
337 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:26:52 ID:essLX21o0
ミセ*゚ー゚)リ「申し訳ないんですけど、ブログに載せる写真、撮ってもらっていいですか?」
杞憂に終わった。
確かに、ミセリを囲む野郎共はこぞって目上の人間ばかりだから、それを押し退ければ一番近くいたツンは、下っ端の若い女の子に見えて頼みやすかったのだろう。
べつに、それぐらいなら吝かではない。ツンは了承してミセリからカメラを受け取った。
.
338 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:28:34 ID:essLX21o0
しかし何枚撮らせる気なのだと、数秒後にはげんなりしていた。
こと有名人の女の子となると、自分の写真写りには神経質になるのもわかるし、それをブログという不特定多数の人に向けて発信するフィードとなるなら尚更なのかもしれないが
それにしても、保険も甚だしいほど撮らせる。
ミセ*゚ー゚)リ「何枚もごめんなさい、ラスト一発お願いしまーす!」
酔いもあるのか、さながらモデルにでもなったかのようなテンションで近づいた先にいたのは、上司に酌をするジョルジュだった。
ミセ*゚ー゚)リ「長岡君!写真いーい?」
( ゚∀゚)「え?…あぁまぁいいっすけど」
ミセ*゚ー゚)リ「やった!でさ、ブログとか載せちゃって大丈夫?」
( ゚∀゚)「マジすか?どーしよっかな…」
カメラマンに任命されたのがツンだと気づいたジョルジュも軽い困惑を見せるが、特に嫌がりもすることなく、ミセリのペースで写真に映らされていた。
.
339 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:30:04 ID:essLX21o0
ようやくミセリから解放されたツンは、席に戻って自分の飲みかけのビールを空にした直後
ξ゚⊿゚)ξ「すみません、ちょっと疲れちゃったんでお先に失礼します」
と上司に告げて立ち上がった。
その上司に『そうか、お疲れ』と言われたのみで、盛り上がる群集からは労いの言葉をかけてもらうこともなく、それらを尻目にツンはこっそりと店を抜け出した。
.
340 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:31:06 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ(…うーーーん……)
早々と帰宅したツンは、自宅にストックしてあるバランタインを見つめながら迷っていた。
飲み足りない、飲み直したい気もするが、こんな気分で飲むウィスキーもいかがなものか。
なんとなく手が伸びずにいると、バッグにしまわれたスマートフォンが震えてることに気がついた。
341 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:32:22 ID:essLX21o0
342 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:33:44 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ「…あぁ。ちょっと疲れちゃって」
( ゚∀゚)『…だとしてもさぁ』
( ゚∀゚)『一言ぐらいあってもよかったんじゃねぇの?…ミセリさんに対してもさ』
確かに、ミセリのカメラマンから解放された直後の退席だった。
そうやって飲み会の席でこき使われ、気を悪くした至りの退席と思われても不思議ではなかっただろう。
そんなつもりはなかったが、言われて初めてその可能性に気づいた。
ξ゚⊿゚)ξ「あーごめん。でもべつに機嫌悪くしたわけではないから」
( ゚∀゚)『……はぁ』
溜め息つかれた。それが最近たまにある、小言が始まる空気に変わった。
.
343 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:35:32 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…確かに、いろいろ面白くないこともあるかもしれないし、ミセリさんだってお前の好みじゃないことはわかってるよ。でも、一緒に仕事したんだから挨拶ぐらいはしないとマズイだろ』
( ゚∀゚)『最近いっつも上の空っぽいし、仕事中もそんなんだとさすがに感じわりぃよ』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
それは、ジョルジュしか気づかないほど小さな変化だったかもしれない。
しかし、気づかれたからこそ図星であることも明白で、何があったか言わないツンに落ち度があることも理解しているので
いつまでもジョルジュが味方してくれるわけじゃないことも、その声色から窺えた。
.
344 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:36:47 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…もちろん、理由もなしに、気まぐれでモチベーションが下がってるわけじゃないとは思ってるけど、何も相談してくれないんじゃ何もしてやれねぇよ』
( ゚∀゚)『やっぱり、俺には言えないことなのか?』
ξ゚⊿゚)ξ「そういうわけじゃ…」
( ゚∀゚)『じゃあ、俺が納得するように否定してくれよ』
そう言われていつも、言葉を詰まらせて話が行き詰まってしまうのだ。
.
345 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:38:25 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『……やっぱりダメか』
諦めたように、ジョルジュは吐き捨てた。
( ゚∀゚)『…ツン、俺実はさ』
( ゚∀゚)『ミセリさんに、ちょっと口説かれたんだ』
ξ゚⊿゚)ξ「!………」
さすがにちょっとショックではあったが、言葉には出さなかった。
.
346 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:39:34 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『ミセリさんって同じ専門学校の先輩でさ、もともと知らない仲でもなかったんだ』
( ゚∀゚)『だから今回もいろいろ協力してもらえて、ああいうイベントできたわけなんだけど…』
ξ゚⊿゚)ξ「…ふぅん。それは知らなかったな」
( ゚∀゚)『あぁ。言ってなかったな』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
.
347 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:40:40 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『久しぶりに会って一緒に仕事して、いろいろ相談とか提案し合いながらイベント企画して、成功して』
( ゚∀゚)『……昔の俺らも、そんな感じだったよな』
言うまでもなく、そういう苦楽を共にしたという過程があったからこそ、二人は惹かれ合ったのだった。
同じ職種で、同じ現場で
展示物や、それに付随するイベントやグッズなど、小さな要素を集めて一つの空間を作り上げるという貫徹に向けて
二人同じ気持ちで、駆け抜けた。
あの時、仕事が終わった後のビールは旨かった。
残業中のさりげないお菓子の差し入れが、嬉しかった。
.
348 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:42:36 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ『お疲れ様でーす!一息つきませんか?』
(゚、゚トソン『あ、ツン先輩お疲れ様です!』
(-@∀@)『お、差し入れ?気が利くねー……ってあれ?』
(゚、゚;トソン『……これは………』
( ゚∀゚)『ちょwなんで差し入れにキュウリとか沢庵www』
ξ゚⊿゚)ξ『なによー!ちゃんと枝豆もあるわよ!』
( ゚∀゚)『そこじゃねぇよ!お前女子なら女子らしくシュークリームとかマカロンでも買って来いよwww』
ξ#゚⊿゚)ξ『ひっどい!せっかく自家製の漬物なのにそれじゃ不満だってわけ!?結構いい感じに漬かってるのに!!』
( ゚∀゚)『ババァか!お前ババァなのか!www』
(;@∀@)『…ビールどこにしまったっけなぁ…?』
(゚、゚*トソン『あ、でも意外と美味しいー』
自分がもらった差し入れのお礼のつもりで持って行ったものがきっかけで、軽い諍いにはなったが、結局その日はそのまま飲み会になってしまったり
楽しかった。本当に。
その頃の自分らと、今のジョルジュとミセリを投影させるのであれば
ジョルジュの気持ちはもう既に、ミセリに傾いてても不思議ではなかった。
.
349 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:45:13 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『べつに今すぐミセリさんとどうこうなるってわけじゃないんだ。…ただ、正直言ってちょっと揺れた』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ゚∀゚)『もちろん、ツンを一番大事にしたい。だけどツンがいつまでもそんな態度だと、俺もう自信ねぇんだよ』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ゚∀゚)『…だからさ』
( ゚∀゚)『ミセリさんのこととは関係なく、俺らは俺らで…もう終わりにしよう』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
.
350 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:48:28 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…ごめんな。俺が不甲斐なかったばっかりに』
ξ⊿)ξ「…………だ」
( ゚∀゚)『うん?』
ξ⊿)ξ「終わりにするなんて、嫌だよ」
( ゚∀゚)『………』
.
351 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:49:57 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…勝手なこと言うなよ』
( ゚∀゚)『じゃあ俺にどうしろって言うんだ?』
ξ⊿)ξ「………」
( ゚∀゚)『…またそのパターンだろ』
『ごめんな』
その一言を最後に、通話は途切れた。
.
352 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:51:14 ID:essLX21o0
ξ⊿)ξ「………」
ξ⊿)ξ「……やっぱり飲もう」
ジョルジュとの恋が終わった。
電話一本で、こうもあっけなく。
わかっていたこととはいえ、やはりいざ言われると堪える。
353 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:55:34 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりクリエーターに惹かれるか…」
ツンは二杯目のバランタインを煽った。
クリエーターである彼女と、ちょっと器用なだけの一般人である自分。
そこを天秤にかけられたらかなわない。
いや、そう思わないと報われない
。
これが自分の死へ向かっていく小さな一歩になるだなんて、やっぱり認めたくはないのだ。
結局、ジョルジュとの別れは回避できなかった。
ただ『嫌だ』と言う一言に、一生分ほどの勇気を使い果たした気分だったのに。
.
354 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:57:40 ID:essLX21o0
355 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:59:20 ID:essLX21o0
( ^ω^)
何も悪いことなどしてないのに、ツンの勝手な言い草を責めることもないどころか、謝罪まで残して去って行ったあの人。
まるで救いを求める人々が伸ばす手の先にいる仏のようなその笑顔に
自分は、手を伸ばす了見などあるのだろうか。
.
356 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 20:00:38 ID:essLX21o0
何もかも、失った。
それが自分の死を回避するための埋合だったとしても
ξ⊿)ξ「……助けてよ……」
救いを求めずには、いられなかった。
.
358 : 名も無きAAのようです :2013/08/20(火) 21:34:46 ID:FNlnxtt.0
◆第17話◆
XX24年 T月
「「「「ミセリさん、お疲れ様でしたー!!!」」」」
とある居酒屋の広い個室。
イラストレーター、ミセリを囲んだ飲み会だった。
ツンの職場である美術館にて期間限定で催された、本人によるファンサービスのイベントが今日で終了した。
まだミセリの絵自体は展示されたままなのだが、本人がこの美術館に仕事しに来るのが最後ということで、打ち上げと洒落込んだわけだ。
XX24年 T月
「「「「ミセリさん、お疲れ様でしたー!!!」」」」
とある居酒屋の広い個室。
イラストレーター、ミセリを囲んだ飲み会だった。
ツンの職場である美術館にて期間限定で催された、本人によるファンサービスのイベントが今日で終了した。
まだミセリの絵自体は展示されたままなのだが、本人がこの美術館に仕事しに来るのが最後ということで、打ち上げと洒落込んだわけだ。
334 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:21:34 ID:essLX21o0
ミセ*゚ー゚)リ「長岡君、お疲れ様ー」
( ゚∀゚)「お疲れ様っす。本当助かりました!」
ミセリの隣には、ジョルジュが付きっ切りだ。
同じ現場で仕事した時間が一番長かったのだろうし、企画の段階でいろいろ世話にもなってるはずだし
歳も近くてミセリも心開きやすいジョルジュが実質彼女のマネジメントのような仕事も担ってたので、こういう席でも何かと気を遣うのだろう。
べつに嫉妬はしないが、ただでさえあまりよく思ってないミセリ相手だから面白くないと言えば事実だ。
ただ、そう思っていられるだけ自分の立場なんて気楽なもんだとツンは思っていた。
335 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:23:08 ID:essLX21o0
ツンの職場では、こういう飲み会が催される機会は少ない。せいぜい忘年会や新年会程度である。
だからこそ、このイレギュラーなゲストを迎えた飲み会が新鮮なのか、それともイベントを終えた達成感なのか、思いの外盛り上がってるようだが
そのどちらにも属さない立ち位置のツンからしてみたら、自分との温度差はただ事じゃなかった。
もともとお酒は好きなツンだから、機会があれば飲み会に参加するのは大いに結構なのだが
歴史的遺産である芸術品や絵画、画家の歴史背景を研究している博士や学芸員、『マニア』の域を出ないかもしれないが、研究者らに負けず劣らない知識を誇る館長などを囲み、彼らの見聞でも聞いてる通例の飲み会の方がよほど身になるとツンは思う。
どうせ酔っ払いなどしないのだ。
ただ盛り上がるだけの飲み会なら、適役な酔っ払いに任せておけばいいし、それを尻目にしてるだけのツンはそもそも、行く必要性を感じない。
だからこそ、このイレギュラーなゲストを迎えた飲み会が新鮮なのか、それともイベントを終えた達成感なのか、思いの外盛り上がってるようだが
そのどちらにも属さない立ち位置のツンからしてみたら、自分との温度差はただ事じゃなかった。
もともとお酒は好きなツンだから、機会があれば飲み会に参加するのは大いに結構なのだが
歴史的遺産である芸術品や絵画、画家の歴史背景を研究している博士や学芸員、『マニア』の域を出ないかもしれないが、研究者らに負けず劣らない知識を誇る館長などを囲み、彼らの見聞でも聞いてる通例の飲み会の方がよほど身になるとツンは思う。
どうせ酔っ払いなどしないのだ。
ただ盛り上がるだけの飲み会なら、適役な酔っ払いに任せておけばいいし、それを尻目にしてるだけのツンはそもそも、行く必要性を感じない。
336 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:25:09 ID:essLX21o0
ところが今日の飲み会はどうだ。
いかんせん、主役は若い女の子。
解せないアートを持ち味とする女の子から、吸収すべきノリッジも期待できないし、その子に喜んでもらうために必死に盛り上がる周りの連中の低俗な煽り方も、野暮ったくて見てられない。
長時間居たい席ではないと判断したツンは、どのタイミングで席を立とうか考え始めていた。
ミセ*゚ー゚)リ「あのー、お疲れ様です!」
そんなことを考えてる時に、まさかのミセリから話し掛けられた。
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れ様です」
門が立たないように気をつけたつもりの、当たり障りない声色でツンは返した。
もしかして、つまらなそうにしてるのが顔に出てしまってたのだろうか。
そんな危疑もあったからこそだった。
337 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:26:52 ID:essLX21o0
ミセ*゚ー゚)リ「申し訳ないんですけど、ブログに載せる写真、撮ってもらっていいですか?」
杞憂に終わった。
確かに、ミセリを囲む野郎共はこぞって目上の人間ばかりだから、それを押し退ければ一番近くいたツンは、下っ端の若い女の子に見えて頼みやすかったのだろう。
べつに、それぐらいなら吝かではない。ツンは了承してミセリからカメラを受け取った。
.
338 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:28:34 ID:essLX21o0
しかし何枚撮らせる気なのだと、数秒後にはげんなりしていた。
こと有名人の女の子となると、自分の写真写りには神経質になるのもわかるし、それをブログという不特定多数の人に向けて発信するフィードとなるなら尚更なのかもしれないが
それにしても、保険も甚だしいほど撮らせる。
ミセ*゚ー゚)リ「何枚もごめんなさい、ラスト一発お願いしまーす!」
酔いもあるのか、さながらモデルにでもなったかのようなテンションで近づいた先にいたのは、上司に酌をするジョルジュだった。
ミセ*゚ー゚)リ「長岡君!写真いーい?」
( ゚∀゚)「え?…あぁまぁいいっすけど」
ミセ*゚ー゚)リ「やった!でさ、ブログとか載せちゃって大丈夫?」
( ゚∀゚)「マジすか?どーしよっかな…」
カメラマンに任命されたのがツンだと気づいたジョルジュも軽い困惑を見せるが、特に嫌がりもすることなく、ミセリのペースで写真に映らされていた。
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339 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:30:04 ID:essLX21o0
ようやくミセリから解放されたツンは、席に戻って自分の飲みかけのビールを空にした直後
ξ゚⊿゚)ξ「すみません、ちょっと疲れちゃったんでお先に失礼します」
と上司に告げて立ち上がった。
その上司に『そうか、お疲れ』と言われたのみで、盛り上がる群集からは労いの言葉をかけてもらうこともなく、それらを尻目にツンはこっそりと店を抜け出した。
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340 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:31:06 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ(…うーーーん……)
早々と帰宅したツンは、自宅にストックしてあるバランタインを見つめながら迷っていた。
飲み足りない、飲み直したい気もするが、こんな気分で飲むウィスキーもいかがなものか。
なんとなく手が伸びずにいると、バッグにしまわれたスマートフォンが震えてることに気がついた。
341 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:32:22 ID:essLX21o0
ジョルジュからの着信だ。
そういえば、ジョルジュに断りも挨拶もなく店を出てしまった。
気がつけば店を出てから随分時間も経ったことだし、飲み会も一段落したのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「もしもし?」
意識はしてなかったが、我ながらなんだか憮然とした声だった。
( ゚∀゚)『…おぅ。いつの間に帰ったの?』
あまり抑揚はないが、いつも通りと言われればそうとも聞こえる。
ジョルジュの胸懐までは、電話越しからは伝わらなかった。
そういえば、ジョルジュに断りも挨拶もなく店を出てしまった。
気がつけば店を出てから随分時間も経ったことだし、飲み会も一段落したのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「もしもし?」
意識はしてなかったが、我ながらなんだか憮然とした声だった。
( ゚∀゚)『…おぅ。いつの間に帰ったの?』
あまり抑揚はないが、いつも通りと言われればそうとも聞こえる。
ジョルジュの胸懐までは、電話越しからは伝わらなかった。
342 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:33:44 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ「…あぁ。ちょっと疲れちゃって」
( ゚∀゚)『…だとしてもさぁ』
( ゚∀゚)『一言ぐらいあってもよかったんじゃねぇの?…ミセリさんに対してもさ』
確かに、ミセリのカメラマンから解放された直後の退席だった。
そうやって飲み会の席でこき使われ、気を悪くした至りの退席と思われても不思議ではなかっただろう。
そんなつもりはなかったが、言われて初めてその可能性に気づいた。
ξ゚⊿゚)ξ「あーごめん。でもべつに機嫌悪くしたわけではないから」
( ゚∀゚)『……はぁ』
溜め息つかれた。それが最近たまにある、小言が始まる空気に変わった。
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343 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:35:32 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…確かに、いろいろ面白くないこともあるかもしれないし、ミセリさんだってお前の好みじゃないことはわかってるよ。でも、一緒に仕事したんだから挨拶ぐらいはしないとマズイだろ』
( ゚∀゚)『最近いっつも上の空っぽいし、仕事中もそんなんだとさすがに感じわりぃよ』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
それは、ジョルジュしか気づかないほど小さな変化だったかもしれない。
しかし、気づかれたからこそ図星であることも明白で、何があったか言わないツンに落ち度があることも理解しているので
いつまでもジョルジュが味方してくれるわけじゃないことも、その声色から窺えた。
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344 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:36:47 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…もちろん、理由もなしに、気まぐれでモチベーションが下がってるわけじゃないとは思ってるけど、何も相談してくれないんじゃ何もしてやれねぇよ』
( ゚∀゚)『やっぱり、俺には言えないことなのか?』
ξ゚⊿゚)ξ「そういうわけじゃ…」
( ゚∀゚)『じゃあ、俺が納得するように否定してくれよ』
そう言われていつも、言葉を詰まらせて話が行き詰まってしまうのだ。
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345 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:38:25 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『……やっぱりダメか』
諦めたように、ジョルジュは吐き捨てた。
( ゚∀゚)『…ツン、俺実はさ』
( ゚∀゚)『ミセリさんに、ちょっと口説かれたんだ』
ξ゚⊿゚)ξ「!………」
さすがにちょっとショックではあったが、言葉には出さなかった。
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346 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:39:34 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『ミセリさんって同じ専門学校の先輩でさ、もともと知らない仲でもなかったんだ』
( ゚∀゚)『だから今回もいろいろ協力してもらえて、ああいうイベントできたわけなんだけど…』
ξ゚⊿゚)ξ「…ふぅん。それは知らなかったな」
( ゚∀゚)『あぁ。言ってなかったな』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
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347 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:40:40 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『久しぶりに会って一緒に仕事して、いろいろ相談とか提案し合いながらイベント企画して、成功して』
( ゚∀゚)『……昔の俺らも、そんな感じだったよな』
言うまでもなく、そういう苦楽を共にしたという過程があったからこそ、二人は惹かれ合ったのだった。
同じ職種で、同じ現場で
展示物や、それに付随するイベントやグッズなど、小さな要素を集めて一つの空間を作り上げるという貫徹に向けて
二人同じ気持ちで、駆け抜けた。
あの時、仕事が終わった後のビールは旨かった。
残業中のさりげないお菓子の差し入れが、嬉しかった。
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348 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:42:36 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ『お疲れ様でーす!一息つきませんか?』
(゚、゚トソン『あ、ツン先輩お疲れ様です!』
(-@∀@)『お、差し入れ?気が利くねー……ってあれ?』
(゚、゚;トソン『……これは………』
( ゚∀゚)『ちょwなんで差し入れにキュウリとか沢庵www』
ξ゚⊿゚)ξ『なによー!ちゃんと枝豆もあるわよ!』
( ゚∀゚)『そこじゃねぇよ!お前女子なら女子らしくシュークリームとかマカロンでも買って来いよwww』
ξ#゚⊿゚)ξ『ひっどい!せっかく自家製の漬物なのにそれじゃ不満だってわけ!?結構いい感じに漬かってるのに!!』
( ゚∀゚)『ババァか!お前ババァなのか!www』
(;@∀@)『…ビールどこにしまったっけなぁ…?』
(゚、゚*トソン『あ、でも意外と美味しいー』
自分がもらった差し入れのお礼のつもりで持って行ったものがきっかけで、軽い諍いにはなったが、結局その日はそのまま飲み会になってしまったり
楽しかった。本当に。
その頃の自分らと、今のジョルジュとミセリを投影させるのであれば
ジョルジュの気持ちはもう既に、ミセリに傾いてても不思議ではなかった。
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349 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:45:13 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『べつに今すぐミセリさんとどうこうなるってわけじゃないんだ。…ただ、正直言ってちょっと揺れた』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ゚∀゚)『もちろん、ツンを一番大事にしたい。だけどツンがいつまでもそんな態度だと、俺もう自信ねぇんだよ』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ゚∀゚)『…だからさ』
( ゚∀゚)『ミセリさんのこととは関係なく、俺らは俺らで…もう終わりにしよう』
ξ゚⊿゚)ξ「………」
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350 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:48:28 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…ごめんな。俺が不甲斐なかったばっかりに』
ξ⊿)ξ「…………だ」
( ゚∀゚)『うん?』
ξ⊿)ξ「終わりにするなんて、嫌だよ」
( ゚∀゚)『………』
.
351 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:49:57 ID:essLX21o0
( ゚∀゚)『…勝手なこと言うなよ』
( ゚∀゚)『じゃあ俺にどうしろって言うんだ?』
ξ⊿)ξ「………」
( ゚∀゚)『…またそのパターンだろ』
『ごめんな』
その一言を最後に、通話は途切れた。
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352 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:51:14 ID:essLX21o0
ξ⊿)ξ「………」
ξ⊿)ξ「……やっぱり飲もう」
ジョルジュとの恋が終わった。
電話一本で、こうもあっけなく。
わかっていたこととはいえ、やはりいざ言われると堪える。
353 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:55:34 ID:essLX21o0
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりクリエーターに惹かれるか…」
ツンは二杯目のバランタインを煽った。
クリエーターである彼女と、ちょっと器用なだけの一般人である自分。
そこを天秤にかけられたらかなわない。
いや、そう思わないと報われない
。
これが自分の死へ向かっていく小さな一歩になるだなんて、やっぱり認めたくはないのだ。
結局、ジョルジュとの別れは回避できなかった。
ただ『嫌だ』と言う一言に、一生分ほどの勇気を使い果たした気分だったのに。
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354 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:57:40 ID:essLX21o0
でもそれが、自分の死を回避したいがために出た言葉なのか、消え去ってもいないジョルジュへの好意から出た言葉なのかは、正直言ってよくわからない。
現に、今ツンを支配する虚無感は、結局ジョルジュと別れてしまったがために
突き放してしまったあの人の笑顔ばかり思い出す、薄弱な自分に対するものなのだから。
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現に、今ツンを支配する虚無感は、結局ジョルジュと別れてしまったがために
突き放してしまったあの人の笑顔ばかり思い出す、薄弱な自分に対するものなのだから。
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355 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 19:59:20 ID:essLX21o0
( ^ω^)
何も悪いことなどしてないのに、ツンの勝手な言い草を責めることもないどころか、謝罪まで残して去って行ったあの人。
まるで救いを求める人々が伸ばす手の先にいる仏のようなその笑顔に
自分は、手を伸ばす了見などあるのだろうか。
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356 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/20(火) 20:00:38 ID:essLX21o0
何もかも、失った。
それが自分の死を回避するための埋合だったとしても
ξ⊿)ξ「……助けてよ……」
救いを求めずには、いられなかった。
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358 : 名も無きAAのようです :2013/08/20(火) 21:34:46 ID:FNlnxtt.0
乙
ツン……
ツン……