ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第14話
- 2014/07/08
- 22:18
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
247 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:33:39 ID:CBudCD2k0
248 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:35:19 ID:CBudCD2k0
更に、自分は将来、ブーンと結婚する?
それは、理性をなくしたブーンがまた口を滑らせて知らされただけのことかもしれない。
でも、今それを知らされても、そればっかりはどう気持ちを処理すればいいかわからなかった。
.
249 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:36:57 ID:CBudCD2k0
普段のツンのように言いたいことをぶちまけて、ようやく落ち着いたブーンの提案で二人は場所を移した。
ブーンの家だ。
ということは、自分がその一生を終える時に過ごしてた家とも言える。
マンションの8皆。
郊外だが見晴らしは良かった。
家具一つ一つ、シンプルなようでどこか高級感のあるものばかりで、それなりに不自由のなさそうな生活が窺い知れた。
もちろん、一人、二人で住む仕様の広さじゃない。
結婚したというなら、子どもができる体でのこの間取りなのだろう。
自分が死ぬ前に、授かったかどうかはわからないが、今この家にはいないようだ。
.
250 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:38:24 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「まだ、料理の仕事してるの?」
ツンが知ってるブーンは、しがない雇われの料理人だった。
と言っても、22歳でシェフになれれば群を抜いて有能である。
しかし、当時のブーンのその実力を知らないツンにはわからないことだった。
( ^ω^)「独立したんだお。今は、自分で経営してる」
なるほどそれゆえの甲斐性か。
( ^ω^)「だから、こうやってまとまった時間が作れるのは、今ぐらいなんだお」
そういえば、この世界のこの時期はお盆だった。
個人経営の飲食店なら、確かにオフシーズンだとツンも納得した。
251 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:39:51 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「なんか飲むかお?」
そう言ってブーンはキッチンに向かって行った。
( ^ω^)「っていうかお腹空いてないかお?夢の中でお腹空くかどうかはわかんないけど」
道中で、ツンは自分がいかにしてこの世界に降り立ったのかを簡単に説明していた。
その時のブーンは、理解したのかしてないのかよくわからない鈍い反応だったが、お盆シーズンに見かけた自分を幽霊と勘違いしたくらいだ。
そんな不思議な現象を聞いても、特に異を唱えることもなかった。
252 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:42:05 ID:CBudCD2k0
253 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:44:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「やっぱり僕、なんかつまみ作ってくるお」
場所を変えて一息ついたものの、特に核心を突く話をするわけではなかった。
でも、そうでなければ改めて話す場所を設けた意味がない。
わかっちゃいるが、こうも改まるとどう話を切り出していいかわからない。
しかも、ツン本人とはいえ10個も年下の女の子の前で大泣きした後だ。
できればツンからいろいろ質問をしてくれた方が話しやすいのだが、そんな時に限って彼女は当たり障りのない質問しかしない。
そして今は、それすらも途絶えて口を噤んだまま何か考え込んでるようで、こちらから話し掛けてもいまいち反応が鈍い。
致し方ない。
一応気丈に振る舞って見せてはいたが、あまりにもショッキングな話を聞かされ、心の平静を失った後なのだ。
ただこの気まずさを払拭したいだけの自分なんかよりも、よほどやるせない思いをしてるはずだ。
254 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:46:20 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あたしがやる」
キッチンに向かおうとしたブーンを制止して、ツンが立ち上がった。
現実世界においてまだ『ブーンのオススメ』を食べたことがないツンは、そのブーンの腕を今は知らないままでいたかった。
幸い、ツンも人並みに料理はできる。
10年という年月を経て、特に結婚してからは腕を上げたかもしれないし、それ以前の料理でプロを持て成すというのも若干抵抗はあるが、お酒のつまみ程度なら許してくれるだろう。
それに何故か、この状況においては自分がキッチンに立ったほうがブーンのためにも良いような、そんな気がした。
255 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:47:53 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…そうかお。食材は好きに使ってくれていいから。ありがとうお」
軽く目で頷いて、ツンはキッチンへ向かう。
と言ってもブーンがいる居間から離れてはおらず、彼の視線を背中でキャッチできる距離なので、何かあればいつでも言い付けられる。
ブーンも、ツンの料理の腕はある程度知っている。
それが10年前の姿であっても何を危惧するわけでもないが、キッチンに立つツンの背中から目が反らせなかった。
256 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:51:40 ID:CBudCD2k0
料理しながら、手の届くところにウィスキーの入ったグラスを忍ばせておくことを忘れない。
そんな癖も、ブーンが知ってるあの頃のままで
手が空いた隙に一口、また一口とウィスキーを舐め、グラスが空くとさりげなく注ぎに行く。
これも、いつものブーンの役目だった。
そして
ξ゚ー゚)ξ「ありがと」
そんな笑顔も、自分の妻であった頃のツンそのままの笑顔だった。
.
257 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:53:24 ID:CBudCD2k0
(*^ω^)「おっおっ!いい匂いだお!」
出来た料理を目の前にして、ブーンのテンションが目に見えてに上がった。
小鉢に盛られた、サラミとパプリカを使ったサラダ。
リンゴ酢やハチミツ、オリーブオイルを合わせてマリネ風な仕立てになっている。
もう一品は、スモークサーモンと茸のちゃんちゃんホイル焼き。
味噌とウィスキーの意外な相性の良さが、ツンの好みだった。
どちらもわりとスモーキーな食材だったが、冷菜と温菜の二種類を用意してくれる凝った仕上がり様と、ちょっと華奢にも見えるボトルのウィスキーが、テーブルを華やかにしてくれた。
258 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:55:43 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「さすがコックの家だけあって食材とか調味料は充実してるのね。まさかサーモンがスモークしてあるなんて思わなかったわ」
( ^ω^)「おっ。実は店の余り食材だお。早めに使ってくれてよかったお」
ツンが料理してる間にも、ウィスキーは順調に減ってゆき、もともと詮が空いてたこともあったせいか出来上がる前にボトルが空になってしまったので、ブーンはキッチンの奥から持ってきたラガヴーリンを開けようとしていた。
259 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:57:18 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「え、大丈夫なの?それ開けて」
比較的高価なそのウィスキーを、取るに足らんと言わんばかりに自然に開けようとするその姿に、さすがのツンも少々面食らったようだ。
( ^ω^)「いいんだお。どのみちツンのために用意したお酒だお」
本人が味わえるならそれが一番だお、と躊躇うことなく詮を開け、グラスに注いで再び乾杯をした。
.
260 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:59:24 ID:CBudCD2k0
ツンの料理は、どちらも文句なく旨かった。
ただそこにあった食材を使って仕上げただけじゃなく、ちゃんとウィスキーのつまみであることが加味された出来栄えに、プロであるブーンも感嘆した。
( ^ω^)「ごちそうさまだお」
ξ゚⊿゚)ξ「おそまつさま」
そう言って空になった皿を流し台に戻そうと、ツンは立ち上がった。
.
261 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:01:10 ID:CBudCD2k0
そうやって、洗い物をしてるツンの背中を眺めるのもいつ以来だっただろうか。
それが当たり前だった頃の日常が、擬似的なものとはいえ今目の前にあるというのに、あくまで非日常。
目の前にいるのは確かに、正真正銘生身のツンなのに。
.
262 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:02:36 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「………ツン」
その小さな背中に、ブーンは呼び掛けた。
( ^ω^)「君は、ここにいられる時間は、限られてるのかお?」
広義的に言えば、それは確かだ。
いつまでもここで、こんな姿で過ごしていられるわけじゃない。
でもブーンが聞きたいことにはもっと別のニュアンスが含まれていることに、ツンは気づいた。
263 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:03:55 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「…わからないわ。たぶん、現実で目を覚ます時に突然消えてしまうかも」
そのタイミングまでは…と言いかけて振り向いた時、既にブーンが自分のすぐ後ろに立ってることに気づいたツンは言葉を詰まらせ、じゃあ、とブーンに遮られた。
.
264 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:05:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…もし今のツンが嫌じゃなければ、君が目を覚ますまで、一緒にいてくれないかお?」
いつの間にか、そっと握られた左手からは、ブーンの言葉にできない哀切が、粛々と伝わってきた。
.
◆第14話◆
XX34年 P月
嫌な予感が的中した。
10年後には、自分はこの世にいないらしい。
自分の墓まで見せられたら、実感が湧かないとも言ってられないが
何故かその場では泣けなかった。
10年前の自分にそれを見せて、今を生きる自分には一体何をどうしてほしいんだろう。
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XX34年 P月
嫌な予感が的中した。
10年後には、自分はこの世にいないらしい。
自分の墓まで見せられたら、実感が湧かないとも言ってられないが
何故かその場では泣けなかった。
10年前の自分にそれを見せて、今を生きる自分には一体何をどうしてほしいんだろう。
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248 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:35:19 ID:CBudCD2k0
更に、自分は将来、ブーンと結婚する?
それは、理性をなくしたブーンがまた口を滑らせて知らされただけのことかもしれない。
でも、今それを知らされても、そればっかりはどう気持ちを処理すればいいかわからなかった。
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249 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:36:57 ID:CBudCD2k0
普段のツンのように言いたいことをぶちまけて、ようやく落ち着いたブーンの提案で二人は場所を移した。
ブーンの家だ。
ということは、自分がその一生を終える時に過ごしてた家とも言える。
マンションの8皆。
郊外だが見晴らしは良かった。
家具一つ一つ、シンプルなようでどこか高級感のあるものばかりで、それなりに不自由のなさそうな生活が窺い知れた。
もちろん、一人、二人で住む仕様の広さじゃない。
結婚したというなら、子どもができる体でのこの間取りなのだろう。
自分が死ぬ前に、授かったかどうかはわからないが、今この家にはいないようだ。
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250 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:38:24 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「まだ、料理の仕事してるの?」
ツンが知ってるブーンは、しがない雇われの料理人だった。
と言っても、22歳でシェフになれれば群を抜いて有能である。
しかし、当時のブーンのその実力を知らないツンにはわからないことだった。
( ^ω^)「独立したんだお。今は、自分で経営してる」
なるほどそれゆえの甲斐性か。
( ^ω^)「だから、こうやってまとまった時間が作れるのは、今ぐらいなんだお」
そういえば、この世界のこの時期はお盆だった。
個人経営の飲食店なら、確かにオフシーズンだとツンも納得した。
251 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:39:51 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「なんか飲むかお?」
そう言ってブーンはキッチンに向かって行った。
( ^ω^)「っていうかお腹空いてないかお?夢の中でお腹空くかどうかはわかんないけど」
道中で、ツンは自分がいかにしてこの世界に降り立ったのかを簡単に説明していた。
その時のブーンは、理解したのかしてないのかよくわからない鈍い反応だったが、お盆シーズンに見かけた自分を幽霊と勘違いしたくらいだ。
そんな不思議な現象を聞いても、特に異を唱えることもなかった。
252 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:42:05 ID:CBudCD2k0
そう言いながら戻ってきたブーンの手には、ツンが好きなスコッチウィスキーと、氷が入ったロックグラスが二つ。
その、比較的安価で手に入りやすい平べったいボトルのバランタインは、外で飲む贅沢なシングルモルトよりも、ツンにとっては馴染みの味だった。
生前の彼女のコレクションの一つだろうか、既に何杯か飲まれた形跡がある。
( ^ω^)「勝手に手をつけると怒られるから、本人と一緒でないと開けられないんだおw」
なるほど確かにそうだろうな。
少量でも自分の記憶よりも減ってると思うと、目敏く見つけては『ブーン!飲んだでしょー!!』と青すじ立てる自分の姿が手に取るように思い浮かぶ。
大概それは酔っ払った自分の記憶違いであり、濡れ衣を着せられたブーンが冷や汗垂らして『違うお!僕じゃないお!!』と、必死に、でもどこか逃げ腰な様子で抗戦する。
そんな夫婦だったんだろうな。
と、ツンは記憶にもないはずの二人の夫婦像に、素直に納得した。
その、比較的安価で手に入りやすい平べったいボトルのバランタインは、外で飲む贅沢なシングルモルトよりも、ツンにとっては馴染みの味だった。
生前の彼女のコレクションの一つだろうか、既に何杯か飲まれた形跡がある。
( ^ω^)「勝手に手をつけると怒られるから、本人と一緒でないと開けられないんだおw」
なるほど確かにそうだろうな。
少量でも自分の記憶よりも減ってると思うと、目敏く見つけては『ブーン!飲んだでしょー!!』と青すじ立てる自分の姿が手に取るように思い浮かぶ。
大概それは酔っ払った自分の記憶違いであり、濡れ衣を着せられたブーンが冷や汗垂らして『違うお!僕じゃないお!!』と、必死に、でもどこか逃げ腰な様子で抗戦する。
そんな夫婦だったんだろうな。
と、ツンは記憶にもないはずの二人の夫婦像に、素直に納得した。
253 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:44:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「やっぱり僕、なんかつまみ作ってくるお」
場所を変えて一息ついたものの、特に核心を突く話をするわけではなかった。
でも、そうでなければ改めて話す場所を設けた意味がない。
わかっちゃいるが、こうも改まるとどう話を切り出していいかわからない。
しかも、ツン本人とはいえ10個も年下の女の子の前で大泣きした後だ。
できればツンからいろいろ質問をしてくれた方が話しやすいのだが、そんな時に限って彼女は当たり障りのない質問しかしない。
そして今は、それすらも途絶えて口を噤んだまま何か考え込んでるようで、こちらから話し掛けてもいまいち反応が鈍い。
致し方ない。
一応気丈に振る舞って見せてはいたが、あまりにもショッキングな話を聞かされ、心の平静を失った後なのだ。
ただこの気まずさを払拭したいだけの自分なんかよりも、よほどやるせない思いをしてるはずだ。
254 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:46:20 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あたしがやる」
キッチンに向かおうとしたブーンを制止して、ツンが立ち上がった。
現実世界においてまだ『ブーンのオススメ』を食べたことがないツンは、そのブーンの腕を今は知らないままでいたかった。
幸い、ツンも人並みに料理はできる。
10年という年月を経て、特に結婚してからは腕を上げたかもしれないし、それ以前の料理でプロを持て成すというのも若干抵抗はあるが、お酒のつまみ程度なら許してくれるだろう。
それに何故か、この状況においては自分がキッチンに立ったほうがブーンのためにも良いような、そんな気がした。
255 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:47:53 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…そうかお。食材は好きに使ってくれていいから。ありがとうお」
軽く目で頷いて、ツンはキッチンへ向かう。
と言ってもブーンがいる居間から離れてはおらず、彼の視線を背中でキャッチできる距離なので、何かあればいつでも言い付けられる。
ブーンも、ツンの料理の腕はある程度知っている。
それが10年前の姿であっても何を危惧するわけでもないが、キッチンに立つツンの背中から目が反らせなかった。
256 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:51:40 ID:CBudCD2k0
料理しながら、手の届くところにウィスキーの入ったグラスを忍ばせておくことを忘れない。
そんな癖も、ブーンが知ってるあの頃のままで
手が空いた隙に一口、また一口とウィスキーを舐め、グラスが空くとさりげなく注ぎに行く。
これも、いつものブーンの役目だった。
そして
ξ゚ー゚)ξ「ありがと」
そんな笑顔も、自分の妻であった頃のツンそのままの笑顔だった。
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257 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:53:24 ID:CBudCD2k0
(*^ω^)「おっおっ!いい匂いだお!」
出来た料理を目の前にして、ブーンのテンションが目に見えてに上がった。
小鉢に盛られた、サラミとパプリカを使ったサラダ。
リンゴ酢やハチミツ、オリーブオイルを合わせてマリネ風な仕立てになっている。
もう一品は、スモークサーモンと茸のちゃんちゃんホイル焼き。
味噌とウィスキーの意外な相性の良さが、ツンの好みだった。
どちらもわりとスモーキーな食材だったが、冷菜と温菜の二種類を用意してくれる凝った仕上がり様と、ちょっと華奢にも見えるボトルのウィスキーが、テーブルを華やかにしてくれた。
258 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:55:43 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「さすがコックの家だけあって食材とか調味料は充実してるのね。まさかサーモンがスモークしてあるなんて思わなかったわ」
( ^ω^)「おっ。実は店の余り食材だお。早めに使ってくれてよかったお」
ツンが料理してる間にも、ウィスキーは順調に減ってゆき、もともと詮が空いてたこともあったせいか出来上がる前にボトルが空になってしまったので、ブーンはキッチンの奥から持ってきたラガヴーリンを開けようとしていた。
259 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:57:18 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「え、大丈夫なの?それ開けて」
比較的高価なそのウィスキーを、取るに足らんと言わんばかりに自然に開けようとするその姿に、さすがのツンも少々面食らったようだ。
( ^ω^)「いいんだお。どのみちツンのために用意したお酒だお」
本人が味わえるならそれが一番だお、と躊躇うことなく詮を開け、グラスに注いで再び乾杯をした。
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260 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 17:59:24 ID:CBudCD2k0
ツンの料理は、どちらも文句なく旨かった。
ただそこにあった食材を使って仕上げただけじゃなく、ちゃんとウィスキーのつまみであることが加味された出来栄えに、プロであるブーンも感嘆した。
( ^ω^)「ごちそうさまだお」
ξ゚⊿゚)ξ「おそまつさま」
そう言って空になった皿を流し台に戻そうと、ツンは立ち上がった。
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261 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:01:10 ID:CBudCD2k0
そうやって、洗い物をしてるツンの背中を眺めるのもいつ以来だっただろうか。
それが当たり前だった頃の日常が、擬似的なものとはいえ今目の前にあるというのに、あくまで非日常。
目の前にいるのは確かに、正真正銘生身のツンなのに。
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262 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:02:36 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「………ツン」
その小さな背中に、ブーンは呼び掛けた。
( ^ω^)「君は、ここにいられる時間は、限られてるのかお?」
広義的に言えば、それは確かだ。
いつまでもここで、こんな姿で過ごしていられるわけじゃない。
でもブーンが聞きたいことにはもっと別のニュアンスが含まれていることに、ツンは気づいた。
263 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:03:55 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「…わからないわ。たぶん、現実で目を覚ます時に突然消えてしまうかも」
そのタイミングまでは…と言いかけて振り向いた時、既にブーンが自分のすぐ後ろに立ってることに気づいたツンは言葉を詰まらせ、じゃあ、とブーンに遮られた。
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264 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/18(日) 18:05:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…もし今のツンが嫌じゃなければ、君が目を覚ますまで、一緒にいてくれないかお?」
いつの間にか、そっと握られた左手からは、ブーンの言葉にできない哀切が、粛々と伝わってきた。
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