最上階「塔と民話のサーガ」
- 2014/06/28
- 18:24
- 塔と民話のサーガのようです
382 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:27:59 ID:c3X.ALzM0
サーガは、終わらない。
――最上階「塔と民話のサーガ」
383 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:01 ID:c3X.ALzM0
384 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:57 ID:c3X.ALzM0
385 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:31:41 ID:c3X.ALzM0
386 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:33:06 ID:c3X.ALzM0
387 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:34:13 ID:c3X.ALzM0
388 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:35:48 ID:c3X.ALzM0
389 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:37:23 ID:c3X.ALzM0
390 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:38:18 ID:c3X.ALzM0
391 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:39:14 ID:c3X.ALzM0
392 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:40:20 ID:c3X.ALzM0
394 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:42:12 ID:c3X.ALzM0
395 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:44:08 ID:c3X.ALzM0
396 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:45:45 ID:c3X.ALzM0
397 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:48:24 ID:c3X.ALzM0
398 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:49:19 ID:c3X.ALzM0
399 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:50:46 ID:c3X.ALzM0
400 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:52:13 ID:c3X.ALzM0
401 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:54:27 ID:c3X.ALzM0
402 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:04 ID:c3X.ALzM0
403 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:49 ID:c3X.ALzM0
【+ 】ゞ )「なっ……?」
腹に、一輪の真っ黒な百合が咲いていた。
ノリ, ∀ )li「あはは」
たちまちそれが枯れてゆく。
種子を撒き散らして、拡がって、花を咲かせ、二輪、三輪、四輪と。
【+ 】ゞ )「っあ゛ぁあ゛あ゛ぁぁあ゛ぁあ゛あ゛
!!!」
川;゚ 々゚)「オサム!!」
来ちゃダメだ。
しかし言葉は喉から出ていかず、苦しげに息を吐き出すばかりであった。
【+ 】; ゞ )「ぁっ、……」
崩れる。
意識が、霞む。
その視界の端で、彼女が、イラクサに足を絡めとられて、大口を開けた、怪物のような植物に、呑み込まれていった。
【+ 】; ゞ )(くるう、)
弾丸は、あらぬ方向へと飛んでいって、俺は意識を手放した。
404 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:58:18 ID:c3X.ALzM0
405 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:59:50 ID:c3X.ALzM0
(# A )「ああああ!!!」
怒声。
不意をうたれて、女がわたしから視線を外す。
黒い人影は一瞬で間を詰めて。
ノリ, ^ー^)li「っ……?」
赤い花が散った。
べちゃりと濡れた、重みのある音。
人差し指をたてた左手が床に落ちたのだ。
ノリ, ; ー )li「ぎっ……!?ぃ……ぁあ!!」
406 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:01:10 ID:c3X.ALzM0
407 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:02:37 ID:c3X.ALzM0
408 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:05:47 ID:c3X.ALzM0
409 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:06:59 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ー )li「…………」
イラクサは、私の跡を追わない。
左手を庇い、肩で息をしながら立つのもやっとという状態の彼女は、先程の魔法が精一杯の攻撃だったのかもしれない。
くるう。
オサムさん。
ドクオ。
みんなを助けて、みんなで故郷に帰るんだ。
ζ(゚ー゚*ζ(ここでは死なない!)
距離を詰めた私は力任せに斧を振る。
とてつもなく重いと感じたそれは遠心力を身につけ、凄まじい勢いでジャンヌさんの首を刈ろうとした。
ノリ, ー )li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
斧が、急速に成長した太い蔦によって阻まれる。
引き抜こうとしても抜けない。
ζ(゚ー゚;ζ「っ!」
目の前にニュッと延びる右手をとっさに交わし、同時に斧が抜けた。
その勢いで後ろへ一歩半下がる。
とたんに壺状の植物が大口を開けてわたしのいた場所を捕らえた。
410 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:08:22 ID:c3X.ALzM0
411 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:09:41 ID:c3X.ALzM0
412 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:12:03 ID:c3X.ALzM0
413 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:13:03 ID:c3X.ALzM0
陶磁器が割れるような音がした。
カチ、コチ、カチ、コチ、……カチリ。
「っあああ゛ぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁ!!!!」
耳をつんざくような悲鳴。
薄目を開けると、地に伏せた彼女が頭を押さえながら痙攣していた。
ζ( ー ;ζ「あ、ぁ……」
殺してしまった。
私が殺した。
死んでしまう。
「ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ちくしょうちくしょうちくしょうぅぅ゛」
視線を逸らすことができない。
だけど、だけどあまりにも怖かったから、横目でなちさんからもらった時計を見た。
時計は、音もたてずに溶けていた。
しゅわしゅわと、空気と同化するように。
414 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:14:19 ID:c3X.ALzM0
415 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:15:36 ID:c3X.ALzM0
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
真っ赤に染まったジャンヌさんが、大木のように背後に立ち塞がっていて。
('A`)「デレ!」
ドクオがとっさに私の前におどり出る。
すさまじい早さで生長した枝のような指がドクオに迫る。
ζ(゚ー゚*ζ「ドク……」
「動くな二人とも」
瞬間、炸裂音が響いた。
ノリ, ー )li「グギッ……」
胴体だったあたりを弾丸が貫く。
体が震える。
枝がざわめく。
ドクオが駆ける。
駆けるというには、あまりにもぎこちない動きだけど。
それでも、床に落ちていた斧を拾って。
('A`)「はぁぁ!!」
ガツン、と幹に突き立てた。
ノリ, ー )li「キィアアァアァ!!!」
甲高い叫び声に思わず頭が痛くなった。
「ドクオ逃げて!」
幼馴染みの声と同時に包帯が投げつけられる。
畳まれていたそれは、彼女にぶつかった瞬間、蛇のように絡み付いて炎を纏った。
ノリ, ー )li「アァア゛ア゛……」
木が燃えるにおいがする、肉の焦げるにおいがする。
思わず口元を押さえる。
416 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:16:41 ID:c3X.ALzM0
417 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:18:20 ID:c3X.ALzM0
418 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:21:27 ID:c3X.ALzM0
419 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:22:21 ID:c3X.ALzM0
420 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:23:34 ID:c3X.ALzM0
421 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:24:48 ID:c3X.ALzM0
422 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:26:28 ID:c3X.ALzM0
423 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:28:23 ID:c3X.ALzM0
424 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:31:01 ID:c3X.ALzM0
425 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:33:37 ID:c3X.ALzM0
426 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:35:13 ID:c3X.ALzM0
427 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:36:44 ID:c3X.ALzM0
428 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:38:28 ID:c3X.ALzM0
429 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:39:53 ID:c3X.ALzM0
430 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:41:58 ID:c3X.ALzM0
431 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:43:19 ID:c3X.ALzM0
432 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:45:01 ID:c3X.ALzM0
433 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:49:52 ID:c3X.ALzM0
434 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:55:45 ID:c3X.ALzM0
435 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:02:36 ID:od8.lJcs0
436 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:30:03 ID:Vr9pfsqM0
437 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:17:38 ID:7qSCJiHQ0
438 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:18:57 ID:D.Nzt77g0
439 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 21:41:05 ID:Waj0ZZao0
440 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 22:57:43 ID:1P8KaeIsC
441 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 23:22:29 ID:c3X.ALzM0
442 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 03:27:18 ID:39EdcuiA0
443 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 16:08:55 ID:AjVJIAX.0
444 :名も無きAAのようです:2013/10/02(水) 15:19:31 ID:AgFFnU32O
転載元
塔と民話のサーガのようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1349170489/
サーガは、終わらない。
――最上階「塔と民話のサーガ」
383 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:01 ID:c3X.ALzM0
耳元で、ごうごうと風を切る音がする。
ζ( ― *ζ(こわい)
こんなことになるなら、ツンに兄者さんのことを教えればよかった。
くるうと遊びたかった。
オサムさんと仲良しになればよかった。
もっとドクオに優しくすればよかった。
ζ( ― *ζ(しにたくない)
……光がひとつ、見えた。
ζ( ― *ζ「?」
猛スピードでやってくるそれは、白い蝶で。
ζ(゚―゚*ζ「バタフライエフェクト……?」
どうして?
誰が?
ζ(゚ー゚*ζ「ツン……っ!」
手を伸ばす。
触れたい。
たとえ死んでしまっても、ツンに触れたくて。
ζ(゚ー゚*ζ「ツン!」
手に触れた瞬間、蝶は千々に分かれた。
ζ(゚ー゚*ζ(ツン、)
ツンの手紙、読みたかった。
ζ( ― *ζ(こわい)
こんなことになるなら、ツンに兄者さんのことを教えればよかった。
くるうと遊びたかった。
オサムさんと仲良しになればよかった。
もっとドクオに優しくすればよかった。
ζ( ― *ζ(しにたくない)
……光がひとつ、見えた。
ζ( ― *ζ「?」
猛スピードでやってくるそれは、白い蝶で。
ζ(゚―゚*ζ「バタフライエフェクト……?」
どうして?
誰が?
ζ(゚ー゚*ζ「ツン……っ!」
手を伸ばす。
触れたい。
たとえ死んでしまっても、ツンに触れたくて。
ζ(゚ー゚*ζ「ツン!」
手に触れた瞬間、蝶は千々に分かれた。
ζ(゚ー゚*ζ(ツン、)
ツンの手紙、読みたかった。
384 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:57 ID:c3X.ALzM0
「諦めるにはまだ早いぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「え、?」
がしりと掴まれる手。
暗闇に浮かび上がる顔。
(´レ_` )
ζ(゚ー゚*ζ「あなたはっ……!?」
どうして、ここに?
問いかけようとして、でも言葉が出なかった。
いつのまにか、私は落ちるのをやめて、空中に浮いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの、」
(´レ_` )「ご覧、デレ。君の味方はなにもあの三人だけではないんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
たくさんの蝶が、列をなしていた。
階段上に、ずらりと。
(´レ_` )「上に戻ろう」
ぐい、と手が引っ張られる。
彼は気にせずに、蝶を踏んづけて上へと上がる。
私もそれに続く。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
振り返ると、私がのぼり終えた後の蝶たちは、紙に戻って下へと落ちていくのが見えた。
ζ(゚ー゚*ζ(あれ、なんの紙なんだろう……)
気になったものの、今はそれどころではなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたは、いったいなんなのですか?」
その人は答えずに、こう言った。
(´レ_` )「君に見せたいものがある」
ζ( ー *ζ「っ!?」
その瞬間、膨大なイメージが頭の中に流れ込んできた。
ζ(゚ー゚*ζ「え、?」
がしりと掴まれる手。
暗闇に浮かび上がる顔。
(´レ_` )
ζ(゚ー゚*ζ「あなたはっ……!?」
どうして、ここに?
問いかけようとして、でも言葉が出なかった。
いつのまにか、私は落ちるのをやめて、空中に浮いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの、」
(´レ_` )「ご覧、デレ。君の味方はなにもあの三人だけではないんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
たくさんの蝶が、列をなしていた。
階段上に、ずらりと。
(´レ_` )「上に戻ろう」
ぐい、と手が引っ張られる。
彼は気にせずに、蝶を踏んづけて上へと上がる。
私もそれに続く。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
振り返ると、私がのぼり終えた後の蝶たちは、紙に戻って下へと落ちていくのが見えた。
ζ(゚ー゚*ζ(あれ、なんの紙なんだろう……)
気になったものの、今はそれどころではなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたは、いったいなんなのですか?」
その人は答えずに、こう言った。
(´レ_` )「君に見せたいものがある」
ζ( ー *ζ「っ!?」
その瞬間、膨大なイメージが頭の中に流れ込んできた。
385 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:31:41 ID:c3X.ALzM0
ζ(゚ー゚*ζ「!」
鬱蒼と繁る森の中。
その中にぽつんと小屋があって……。
ζ(゚ー゚;ζ(あれ、)
私はいつのまにか小さな小屋の前にいた。
瞬きをしたら、次には小屋の扉が開いていた。
私はなんにもしていないのに。
ふわふわと記憶が自然に千切れる、夢のなかにいるみたい。
だけど感覚はいやに生々しい。
気付けば私は小屋の中にいた。
ζ(゚ー゚*ζ(ここは、)
どこだろう。
部屋の中を見回す。
すると、小さなベッドに寝かされたジャンヌさんと、彼女の手を握るシュールさんがいた。
そうして私はやっと気付いた。
これは過去にあったことなのだと。
ノリ, ー )li「うう、」
小さな呻き声と衣擦れの音が部屋に響く。
ノリ, ー )li「ここは、」
視線を彷徨わせるジャンヌさんに、
lw´‐ _‐ノv「気がつきました?」
と、顔を覗き込みながらジャンヌさんは言った。
鬱蒼と繁る森の中。
その中にぽつんと小屋があって……。
ζ(゚ー゚;ζ(あれ、)
私はいつのまにか小さな小屋の前にいた。
瞬きをしたら、次には小屋の扉が開いていた。
私はなんにもしていないのに。
ふわふわと記憶が自然に千切れる、夢のなかにいるみたい。
だけど感覚はいやに生々しい。
気付けば私は小屋の中にいた。
ζ(゚ー゚*ζ(ここは、)
どこだろう。
部屋の中を見回す。
すると、小さなベッドに寝かされたジャンヌさんと、彼女の手を握るシュールさんがいた。
そうして私はやっと気付いた。
これは過去にあったことなのだと。
ノリ, ー )li「うう、」
小さな呻き声と衣擦れの音が部屋に響く。
ノリ, ー )li「ここは、」
視線を彷徨わせるジャンヌさんに、
lw´‐ _‐ノv「気がつきました?」
と、顔を覗き込みながらジャンヌさんは言った。
386 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:33:06 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li「!」
ジャンヌさんは慌てて起き上がってシュールさんを睨み付けた。
恐怖、敵意、それから不信感。
だけど彼女は気にせず、ジャンヌさんに飲み物を差し出した。
ジャンヌさんは受け取らなかった。
lw´‐ _‐ノv「この森にヒトが来るなんて久々」
そう言いながら、差し出した飲み物を自分の口許に運んだ。
ノリ, ^ー^)li「……わたし、魔女なのよ? こんなことしてもし騎士団に見つかったらあなたも……」
lw´‐ _‐ノv「彼らが私を捕まえるなんてないわ。私は神に愛された娘だもの。神様を慕うなら、私も慕わなくてはいけないはずよ?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
ジャンヌさんはじぃっとシュールさんを見つめた。
言葉の真意をはかることができなかったようだ。
lw´‐ _‐ノv「それにしても、魔女狩りをねぇ……」
ノリ,;^ー^)li「わたしの村だけではないそうですが……」
lw´‐ _‐ノv「……ヒトは、他人を食い潰して幸せを得る生き物だし、一定数の悪者を必要とするからね」
空になったコップを弄びながら、シュールさんは言った。
ジャンヌさんは慌てて起き上がってシュールさんを睨み付けた。
恐怖、敵意、それから不信感。
だけど彼女は気にせず、ジャンヌさんに飲み物を差し出した。
ジャンヌさんは受け取らなかった。
lw´‐ _‐ノv「この森にヒトが来るなんて久々」
そう言いながら、差し出した飲み物を自分の口許に運んだ。
ノリ, ^ー^)li「……わたし、魔女なのよ? こんなことしてもし騎士団に見つかったらあなたも……」
lw´‐ _‐ノv「彼らが私を捕まえるなんてないわ。私は神に愛された娘だもの。神様を慕うなら、私も慕わなくてはいけないはずよ?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
ジャンヌさんはじぃっとシュールさんを見つめた。
言葉の真意をはかることができなかったようだ。
lw´‐ _‐ノv「それにしても、魔女狩りをねぇ……」
ノリ,;^ー^)li「わたしの村だけではないそうですが……」
lw´‐ _‐ノv「……ヒトは、他人を食い潰して幸せを得る生き物だし、一定数の悪者を必要とするからね」
空になったコップを弄びながら、シュールさんは言った。
387 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:34:13 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「だけどただのヒトでは迫害する理由にはならないわ。だから近親姦や夜魔との姦淫といった異端の証を他人に押し付けるのよね」
立ち上がって、部屋のすみに置いてあるたらいの中にコップを入れる彼女の背中を眺めながら、忌々しそうに、そして怒りながらジャンヌさんはこう言った。
ノリ, ^ー^)li「近親姦なんか気持ち悪くて出来ないし、夜魔なんか見たこともないわ」
lw´‐ _‐ノv「事実の有無なんか関係ないのよ。ただ自分たちとは違うという意識が欲しいだけ」
戸棚からなにか取り出したシュールさんが振り返る。
そして、横にしたナイフで自分の腕を軽く叩きながらジャンヌさんを見つめた。
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「…………」
沈黙。
ぺたん、ぺたん、と肌を叩く薄刃の音がする。
今、二人はなにを考えているのだろう。
私にはわからなかった。
沈黙を破ったのは、シュールさんだった。
lw´‐ _‐ノv「だからといって、あなたが捕まる理由にはならないけれど」
そして、そのナイフで自分の肌を切り裂いたのだ。
ノリ,;^ー^)li「え、」
ζ(゚ー゚;ζ(っ……)
lw´‐ _‐ノv「正義の騎士団様は、私を見たらなんて言うのでしょうね」
ノリ,;^ー^)li「なに、して……」
呆然とした口調で、ジャンヌさんが呟く。
だって、その傷口からは真っ白な牛乳のような液体が、とろとろたらたらと溢れ出たのだから。
lw´‐ _‐ノv「見てのとおり、私のほうがよっぽど異端でしょう?という証明。まだまだ時期ではないけれど、これから私は死んで、神様のもとに行くのよ」
ζ(゚ー゚*ζ(なんて)
なんて、きれいに笑うのだろう。
シュールさんは、死ぬことをこれっぽちも恐れていないんだ。
lw´‐ _‐ノv「だけどただのヒトでは迫害する理由にはならないわ。だから近親姦や夜魔との姦淫といった異端の証を他人に押し付けるのよね」
立ち上がって、部屋のすみに置いてあるたらいの中にコップを入れる彼女の背中を眺めながら、忌々しそうに、そして怒りながらジャンヌさんはこう言った。
ノリ, ^ー^)li「近親姦なんか気持ち悪くて出来ないし、夜魔なんか見たこともないわ」
lw´‐ _‐ノv「事実の有無なんか関係ないのよ。ただ自分たちとは違うという意識が欲しいだけ」
戸棚からなにか取り出したシュールさんが振り返る。
そして、横にしたナイフで自分の腕を軽く叩きながらジャンヌさんを見つめた。
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「…………」
沈黙。
ぺたん、ぺたん、と肌を叩く薄刃の音がする。
今、二人はなにを考えているのだろう。
私にはわからなかった。
沈黙を破ったのは、シュールさんだった。
lw´‐ _‐ノv「だからといって、あなたが捕まる理由にはならないけれど」
そして、そのナイフで自分の肌を切り裂いたのだ。
ノリ,;^ー^)li「え、」
ζ(゚ー゚;ζ(っ……)
lw´‐ _‐ノv「正義の騎士団様は、私を見たらなんて言うのでしょうね」
ノリ,;^ー^)li「なに、して……」
呆然とした口調で、ジャンヌさんが呟く。
だって、その傷口からは真っ白な牛乳のような液体が、とろとろたらたらと溢れ出たのだから。
lw´‐ _‐ノv「見てのとおり、私のほうがよっぽど異端でしょう?という証明。まだまだ時期ではないけれど、これから私は死んで、神様のもとに行くのよ」
ζ(゚ー゚*ζ(なんて)
なんて、きれいに笑うのだろう。
シュールさんは、死ぬことをこれっぽちも恐れていないんだ。
388 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:35:48 ID:c3X.ALzM0
(´レ_` )「彼女には、愛するものがあったから」
ζ(゚ー゚*ζ「愛するもの」
ζ(゚ー゚*ζ(愛って、なんなのだろう)
不可解だ。
死ぬというのは、とても怖いことなのに。
だけど、愛のために本当に死ぬことができる人もいるのだと、私は今知った。
イメージの奔流は止まらない。
次に見えたのは小さな木のテーブルで、お茶をしている二人の姿。
おしゃべりをしているようだった。
ノリ, ^ー^)li「どうして魔女って悪者にされちゃうのかしら。わたしはただみんなが幸せになれるようにおまじないをしていただけなのに」
lw´‐ _‐ノv「ヒトは自分にないものは理解できないからね。だからお話のなかの魔女は最後にはみんな死んでしまう」
ノリ, ^ー^)li「あんな性悪な魔女なんてなかなかいないわよ、きっと」
lw´‐ _‐ノv「そもそもそんな意地悪なヒトは魔女でなくても嫌われているさ」
ノリ, ^ー^)li「それもそうよねえ」
けらけらと無邪気な笑い声をあげるジャンヌさんは、心底楽しそうだった。
lw´‐ _‐ノv「そういえば森の外は、今はどうなっているの?」
ノリ, ^ー^)li「小さな村がたくさんあって、その先には大きな都市があるわよ。都市には汽車?という乗り物が最近出来たそうよ」
lw´‐ _‐ノv「便利な世の中になったのね」
ノリ, ^ー^)li「そうね」
lw´‐ _‐ノv「だけど、一向に争いはなくならないのね」
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「神様に会ったらお願いするの。もっとよりよい世界にしてほしいと」
ノリ, ^ー^)li「……そう」
ζ(゚ー゚*ζ「愛するもの」
ζ(゚ー゚*ζ(愛って、なんなのだろう)
不可解だ。
死ぬというのは、とても怖いことなのに。
だけど、愛のために本当に死ぬことができる人もいるのだと、私は今知った。
イメージの奔流は止まらない。
次に見えたのは小さな木のテーブルで、お茶をしている二人の姿。
おしゃべりをしているようだった。
ノリ, ^ー^)li「どうして魔女って悪者にされちゃうのかしら。わたしはただみんなが幸せになれるようにおまじないをしていただけなのに」
lw´‐ _‐ノv「ヒトは自分にないものは理解できないからね。だからお話のなかの魔女は最後にはみんな死んでしまう」
ノリ, ^ー^)li「あんな性悪な魔女なんてなかなかいないわよ、きっと」
lw´‐ _‐ノv「そもそもそんな意地悪なヒトは魔女でなくても嫌われているさ」
ノリ, ^ー^)li「それもそうよねえ」
けらけらと無邪気な笑い声をあげるジャンヌさんは、心底楽しそうだった。
lw´‐ _‐ノv「そういえば森の外は、今はどうなっているの?」
ノリ, ^ー^)li「小さな村がたくさんあって、その先には大きな都市があるわよ。都市には汽車?という乗り物が最近出来たそうよ」
lw´‐ _‐ノv「便利な世の中になったのね」
ノリ, ^ー^)li「そうね」
lw´‐ _‐ノv「だけど、一向に争いはなくならないのね」
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「神様に会ったらお願いするの。もっとよりよい世界にしてほしいと」
ノリ, ^ー^)li「……そう」
389 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:37:23 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li「……でも、わたしはシューといると幸せだわ」
lw´‐ _‐ノv「……ふふ」
ノリ, ^ー^)li「だってわたしは」
lw´‐ _‐ノv「?」
ノリ, ^ー^)li「今まで与えるばかりで、もらったことなんて数えるくらいしかなかったもの」
ζ(゚ー゚*ζ(なんだかくるうみたい)
くるうはいつだって人のために動いていた。
私が喜ぶから遊びに誘ってくれて、オサムさんが欲しいからたくさん好きと言って。
ζ(゚ー゚*ζ(あの子のために、なにかしたことってあったかな)
なかったような気がする。
今からなにかをあげようとするのは、遅いだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも帰れるかどうかもわからないのに)
場面がまた変わる。
寝台に眠っているシュールさん。
その傍らにはジャンヌさんがいて。
彼女の髪を撫でながら、なんともいえない視線を浴びせていた。
lw´‐ _‐ノv「……ふふ」
ノリ, ^ー^)li「だってわたしは」
lw´‐ _‐ノv「?」
ノリ, ^ー^)li「今まで与えるばかりで、もらったことなんて数えるくらいしかなかったもの」
ζ(゚ー゚*ζ(なんだかくるうみたい)
くるうはいつだって人のために動いていた。
私が喜ぶから遊びに誘ってくれて、オサムさんが欲しいからたくさん好きと言って。
ζ(゚ー゚*ζ(あの子のために、なにかしたことってあったかな)
なかったような気がする。
今からなにかをあげようとするのは、遅いだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも帰れるかどうかもわからないのに)
場面がまた変わる。
寝台に眠っているシュールさん。
その傍らにはジャンヌさんがいて。
彼女の髪を撫でながら、なんともいえない視線を浴びせていた。
390 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:38:18 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ー )li(シューが好き)
ζ(゚ー゚*ζ(……?)
胸がぎゅうと苦しくなる。
なだれ込むこの気持ちは、ジャンヌさんのもの?
ノリ, ー )li(魔女なのに助けてくれて、優しくしてくれたシューが好き)
どろどろしていて、どきどきもあって。
ノリ, ー )li(シューがいるなら他になにも要らないわ)
ζ( ― *ζ「っ……」
息が詰まる。
ノリ, ー )li(だけど)
苦しい、苦しい。
ノリ, ー )li(シューにとってのわたしは、ただのヒト)
打ちのめされる。
ノリ, ー )li(特別な要素なんてなにもない)
私と彼女は違いすぎる。
ノリ, ー )li(妬ましい。こんなにたくさん愛される神が妬ましい)
真っ黒で、澱んでいて。
ノリ, ー )li「ああ、シュー……」
だけど彼女は美しい。
ノリ, ー )li(あなたをさらってしまいたい。どこまでも遠くまで逃げてしまうの)
ζ( ― ;ζ「はっ、ぁ……」
ノリ, ー )li(いっそのことバラバラにして、鍵をかけてあなたを閉じ込めて)
ぐるぐるとお腹のなかに渦巻く見知らぬ悪意が、私を食い散らしていく。
ζ( ― ;ζ(わたしは、わたしは……!)
ノリ, ー )li「それでもあなたは、神を愛すのでしょうね」
ζ( ー ;ζ「私は、違う!!」
ζ(゚ー゚*ζ(……?)
胸がぎゅうと苦しくなる。
なだれ込むこの気持ちは、ジャンヌさんのもの?
ノリ, ー )li(魔女なのに助けてくれて、優しくしてくれたシューが好き)
どろどろしていて、どきどきもあって。
ノリ, ー )li(シューがいるなら他になにも要らないわ)
ζ( ― *ζ「っ……」
息が詰まる。
ノリ, ー )li(だけど)
苦しい、苦しい。
ノリ, ー )li(シューにとってのわたしは、ただのヒト)
打ちのめされる。
ノリ, ー )li(特別な要素なんてなにもない)
私と彼女は違いすぎる。
ノリ, ー )li(妬ましい。こんなにたくさん愛される神が妬ましい)
真っ黒で、澱んでいて。
ノリ, ー )li「ああ、シュー……」
だけど彼女は美しい。
ノリ, ー )li(あなたをさらってしまいたい。どこまでも遠くまで逃げてしまうの)
ζ( ― ;ζ「はっ、ぁ……」
ノリ, ー )li(いっそのことバラバラにして、鍵をかけてあなたを閉じ込めて)
ぐるぐるとお腹のなかに渦巻く見知らぬ悪意が、私を食い散らしていく。
ζ( ― ;ζ(わたしは、わたしは……!)
ノリ, ー )li「それでもあなたは、神を愛すのでしょうね」
ζ( ー ;ζ「私は、違う!!」
391 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:39:14 ID:c3X.ALzM0
ジャンヌさんが、シュールさんの手を優しく握る。
ノリ, ー )li(なんて冷たい手なの。死んでいるみたい)
最初に見た光景の時のように。
ノリ, ー )li(でもまだ生きている。まだ彼女は神様のもとへは行けない)
だけどその意味は、あまりにも変わりすぎていた。
ノリ, ー )li「シュー、」
愛しています。
と、ジャンヌさんは、シュールさんのくちびるにキスをして。
lw´‐ _‐ノv「ん……、」
その瞬間、雪のように真っ白だったくちびるが、ほんのり薄く色付いて。
ノリ, ー )li(ああ、手が温かい)
じわりじわりと、熱はシュールさんを侵食していった。
まるで毒のように。
lw´‐ _‐ノv「……?」
キョトンとした顔で、彼女はジャンヌさんを見つめた。
無意識にジャンヌさんの手を振りほどいて、唇に指をあてて。
ノリ, ^ー^)li「ねえ、シュー。大好きなの。愛してる。たとえあなたが神のものだからといってわたしは諦めたりなんかしたくないの」
lw´‐ _‐ノv「ジャンヌ、あなた……」
ノリ,ぅ。ー^)li「ごめんね、シュー」
ぽたり、と垂れる雫をぬぐいながら彼女は謝る。
シュールさんは、なにも言わない。
ただ、ゆっくりと、上体を起こして。
lw´‐ _‐ノv「…………ごめんね、私は嫌」
ぶづんっ、と音がした。
半開きの口から赤い血が垂れる。
ノリ,; ― )li「シュー!」
ノリ, ー )li(なんて冷たい手なの。死んでいるみたい)
最初に見た光景の時のように。
ノリ, ー )li(でもまだ生きている。まだ彼女は神様のもとへは行けない)
だけどその意味は、あまりにも変わりすぎていた。
ノリ, ー )li「シュー、」
愛しています。
と、ジャンヌさんは、シュールさんのくちびるにキスをして。
lw´‐ _‐ノv「ん……、」
その瞬間、雪のように真っ白だったくちびるが、ほんのり薄く色付いて。
ノリ, ー )li(ああ、手が温かい)
じわりじわりと、熱はシュールさんを侵食していった。
まるで毒のように。
lw´‐ _‐ノv「……?」
キョトンとした顔で、彼女はジャンヌさんを見つめた。
無意識にジャンヌさんの手を振りほどいて、唇に指をあてて。
ノリ, ^ー^)li「ねえ、シュー。大好きなの。愛してる。たとえあなたが神のものだからといってわたしは諦めたりなんかしたくないの」
lw´‐ _‐ノv「ジャンヌ、あなた……」
ノリ,ぅ。ー^)li「ごめんね、シュー」
ぽたり、と垂れる雫をぬぐいながら彼女は謝る。
シュールさんは、なにも言わない。
ただ、ゆっくりと、上体を起こして。
lw´‐ _‐ノv「…………ごめんね、私は嫌」
ぶづんっ、と音がした。
半開きの口から赤い血が垂れる。
ノリ,; ― )li「シュー!」
392 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:40:20 ID:c3X.ALzM0
昇る、昇る。
神様がいる空へ、シュールさんの魂が。
だけどいけない。
彼女は人に触れてしまったから。
一度汚れてしまったら、いけないのだ。
赤くなった白は二度と白に戻れない。
ずるずると地面が隆起する。
人も家も森も村も都市もなにもかもを巻き込んで。
シュールさんの体は自分の魂を追いかける。
ζ(゚ー゚*ζ(地面が枯れていく……)
全てを塔に取り込まれてしまった世界は、私にとって見覚えのある荒野となった。
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
塔の最上階から悲鳴が聞こえる。
場面はまた変わる。
顔を上気させたシュールさんが、ジャンヌさんの頬をはたく。
lw´ _ ノv「なんてことをしてくれたの……!あなたのせいで、私は!」
ノリ, ^ー^)li「シュー、好きよ」
lw´ _ ノv「私は、大嫌いよ……!」
ぐずぐずと泣き出すシュールさん。
その体を抱こうとして、ジャンヌさんは突き飛ばされた。
lw´‐ _‐ノv「来ないで」
すっかり様相の変わってしまった小屋の中を歩きながら、彼女はなにかを探していた。
ノリ, ^ー^)li「……刃物なら、窓がなくなる前に捨ててしまったわ」
lw´‐ _‐ノv「っ……!」
ノリ, ^ー^)li「ねえシュー。いい加減に認めなさいな」
慈愛に満ちた奇妙な笑みを浮かべながら、ジャンヌさんは言う。
ノリ, ^ー^)li「あなたは神に見捨てられてしまったの」
lw´‐ _‐ノv「やめて」
神様がいる空へ、シュールさんの魂が。
だけどいけない。
彼女は人に触れてしまったから。
一度汚れてしまったら、いけないのだ。
赤くなった白は二度と白に戻れない。
ずるずると地面が隆起する。
人も家も森も村も都市もなにもかもを巻き込んで。
シュールさんの体は自分の魂を追いかける。
ζ(゚ー゚*ζ(地面が枯れていく……)
全てを塔に取り込まれてしまった世界は、私にとって見覚えのある荒野となった。
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
塔の最上階から悲鳴が聞こえる。
場面はまた変わる。
顔を上気させたシュールさんが、ジャンヌさんの頬をはたく。
lw´ _ ノv「なんてことをしてくれたの……!あなたのせいで、私は!」
ノリ, ^ー^)li「シュー、好きよ」
lw´ _ ノv「私は、大嫌いよ……!」
ぐずぐずと泣き出すシュールさん。
その体を抱こうとして、ジャンヌさんは突き飛ばされた。
lw´‐ _‐ノv「来ないで」
すっかり様相の変わってしまった小屋の中を歩きながら、彼女はなにかを探していた。
ノリ, ^ー^)li「……刃物なら、窓がなくなる前に捨ててしまったわ」
lw´‐ _‐ノv「っ……!」
ノリ, ^ー^)li「ねえシュー。いい加減に認めなさいな」
慈愛に満ちた奇妙な笑みを浮かべながら、ジャンヌさんは言う。
ノリ, ^ー^)li「あなたは神に見捨てられてしまったの」
lw´‐ _‐ノv「やめて」
394 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:42:12 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li「わたしがあなたにキスをしてしまったから」
lw´ _ ノv「やめて……!」
ノリ, ^ー^)li「たかが同性とのキスで怒って見捨てるなんて、神は無慈悲ね」
ノリ, ^ー^)li「ああでも、シュー」
ノリ, ^ー^)li「あなたがいつまでも神にすがっていても、好きでいても、想いを馳せていても、信仰しても、祈りを捧げても、助けを求めていても、わたしはあなたを愛し続けるわ」
lw´ _ ノv「…………」
ノリ, ^ー^)li「相手を赦すことが、愛しているということよね、きっと」
シュールさんは、ただぼんやりとジャンヌさんを見つめているだけだった。
lw´ _ ノv(ああ、どうしてこんなに歪んでしまったの。私の、大切な友人は……)
ぺたんと座り込んでしまった彼女の体を抱き締めて、ジャンヌさんは囁いた。
ノリ, ^ー^)li「シュー、愛しているわ」
ノリ, ー )li「だけどあなたは神を愛してる」
髪を優しく漉きながら、ジャンヌさんは優しく詩を歌った。
異国の言葉なのかはわからない、だけどひどく聞き取りにくくて、それでいて耳に馴染んで。
lw´ _ ノv「やめて、」
小さく身動ぎをするシュールさんを押さえつけながら、ジャンヌさんは歌い続ける。
lw´ _ ノv「やめて……!」
ノリ, ^ー^)li「たかが同性とのキスで怒って見捨てるなんて、神は無慈悲ね」
ノリ, ^ー^)li「ああでも、シュー」
ノリ, ^ー^)li「あなたがいつまでも神にすがっていても、好きでいても、想いを馳せていても、信仰しても、祈りを捧げても、助けを求めていても、わたしはあなたを愛し続けるわ」
lw´ _ ノv「…………」
ノリ, ^ー^)li「相手を赦すことが、愛しているということよね、きっと」
シュールさんは、ただぼんやりとジャンヌさんを見つめているだけだった。
lw´ _ ノv(ああ、どうしてこんなに歪んでしまったの。私の、大切な友人は……)
ぺたんと座り込んでしまった彼女の体を抱き締めて、ジャンヌさんは囁いた。
ノリ, ^ー^)li「シュー、愛しているわ」
ノリ, ー )li「だけどあなたは神を愛してる」
髪を優しく漉きながら、ジャンヌさんは優しく詩を歌った。
異国の言葉なのかはわからない、だけどひどく聞き取りにくくて、それでいて耳に馴染んで。
lw´ _ ノv「やめて、」
小さく身動ぎをするシュールさんを押さえつけながら、ジャンヌさんは歌い続ける。
395 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:44:08 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li(気がふれてしまわないようにおまじないをしてあげましょう。せめて少しでもあなたが幸せなように)
真っ白な床からずるりずるりと蔦が現れて、シュールさんの体に絡み付く。
lw´ _ ノv「やめて、ジャンヌ……」
ノリ, ^ー^)li「大丈夫、夢の中でたくさんあれを愛せばいいよ。現ではわたしがあなたのことを愛すから」
lw; _ ノv「やめて、」
蔦を振りほどこうとシュールさんはもがく。
だけど外れない、それどころか花まで咲いてしまって……。
lw; _ ノv「じゃんぬ……!」
ジャンヌさんを悲しげに見つめていたシュールさんの瞳が、閉じられてしまった。
ノリ, ^ー^)li「おやすみなさい、ポピーに包まれていい夢を」
うっとりとした物言いで、彼女はシュールさんに微笑んだ。
ζ( ー *ζ「っ…………」
それが恐ろしくて、私はゾッとした。
ζ( ー *ζ(これが、本当にあったこと……?)
ジャンヌさんの話と、あまりに違うじゃない。
認めたくない私に、今までの民話を思い出す。
『神様は全知全能の存在だと言われている。』
『神様は何度も仲良くするように言いましたが、 喧嘩はますますひどくなるばかり。』
『そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝。』
『それなら、みんなが弱ければ神様に助けてもらえるんじゃないか?』
『あるところに、なくしものを見つけてくれる神様のようなヒトがおりました。』
『名前って、神様がつけてくれたもので、その中にはその人の大切なものが詰まっている。』
『神様には一瞬でも、ヒトには長く感じる人生だ。』
『きっとあの旅人さんは神様だったのでしょう。』
『争いはなかったのですが、ヒト同士の繋がりがあまりにもなさすぎたものですから、神様はその国を見ても、なんにも面白いとは思えませんでした。』
『それから、神様はたくさん考えて、ヒト達に、 不思議な力を与えました。』
『ある日、その国に神様がやってきました。』
真っ白な床からずるりずるりと蔦が現れて、シュールさんの体に絡み付く。
lw´ _ ノv「やめて、ジャンヌ……」
ノリ, ^ー^)li「大丈夫、夢の中でたくさんあれを愛せばいいよ。現ではわたしがあなたのことを愛すから」
lw; _ ノv「やめて、」
蔦を振りほどこうとシュールさんはもがく。
だけど外れない、それどころか花まで咲いてしまって……。
lw; _ ノv「じゃんぬ……!」
ジャンヌさんを悲しげに見つめていたシュールさんの瞳が、閉じられてしまった。
ノリ, ^ー^)li「おやすみなさい、ポピーに包まれていい夢を」
うっとりとした物言いで、彼女はシュールさんに微笑んだ。
ζ( ー *ζ「っ…………」
それが恐ろしくて、私はゾッとした。
ζ( ー *ζ(これが、本当にあったこと……?)
ジャンヌさんの話と、あまりに違うじゃない。
認めたくない私に、今までの民話を思い出す。
『神様は全知全能の存在だと言われている。』
『神様は何度も仲良くするように言いましたが、 喧嘩はますますひどくなるばかり。』
『そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝。』
『それなら、みんなが弱ければ神様に助けてもらえるんじゃないか?』
『あるところに、なくしものを見つけてくれる神様のようなヒトがおりました。』
『名前って、神様がつけてくれたもので、その中にはその人の大切なものが詰まっている。』
『神様には一瞬でも、ヒトには長く感じる人生だ。』
『きっとあの旅人さんは神様だったのでしょう。』
『争いはなかったのですが、ヒト同士の繋がりがあまりにもなさすぎたものですから、神様はその国を見ても、なんにも面白いとは思えませんでした。』
『それから、神様はたくさん考えて、ヒト達に、 不思議な力を与えました。』
『ある日、その国に神様がやってきました。』
396 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:45:45 ID:c3X.ALzM0
ζ( ー *ζ「ああ、」
思わず、私は声を漏らしてしまった。
いつだってシュールさんは、神様のことを思っていたんだ。
どんなに深く眠っていても、ずっと、ずっと。
そして、あの夢で彼女はこう言っていたのだ。
はやくきて、と。
起こしてほしかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(私に)
いや、私の祖先たちに。
ずっとそうやって、助けを求めていたんだ。
ζ( ー *ζ「…………」
(´レ_` )「君とお姉さんは、シュールの求める人そのものだ。夢から醒ましてくれる誰かを欲していたんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあお勤めは、塔の由来を探すことではなく、シュールさんを起こすのが本当の目的なの?」
(´レ_` )「本来ならばね。けれども塔全体にあの魔女の力が加わったせいで歪んでしまったのさ」
ζ(゚ー゚*ζ「バタフライエフェクトは……」
(´レ_` )「シュールを起こすには、少しでも効率をよくすべきだろう?物事はたいして大きくはなくて、すべて小さな積み重ねなのさ」
難しいことを言っているような気がする。
それとも、簡単なことを難しく言っているのか……。
ζ(゚ー゚*ζ(わかんないなぁ、もう)
(´レ_` )「小さな蝶の羽ばたきでも、いつかは竜巻を起こすこともあるんだよ」
思わず、私は声を漏らしてしまった。
いつだってシュールさんは、神様のことを思っていたんだ。
どんなに深く眠っていても、ずっと、ずっと。
そして、あの夢で彼女はこう言っていたのだ。
はやくきて、と。
起こしてほしかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(私に)
いや、私の祖先たちに。
ずっとそうやって、助けを求めていたんだ。
ζ( ー *ζ「…………」
(´レ_` )「君とお姉さんは、シュールの求める人そのものだ。夢から醒ましてくれる誰かを欲していたんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあお勤めは、塔の由来を探すことではなく、シュールさんを起こすのが本当の目的なの?」
(´レ_` )「本来ならばね。けれども塔全体にあの魔女の力が加わったせいで歪んでしまったのさ」
ζ(゚ー゚*ζ「バタフライエフェクトは……」
(´レ_` )「シュールを起こすには、少しでも効率をよくすべきだろう?物事はたいして大きくはなくて、すべて小さな積み重ねなのさ」
難しいことを言っているような気がする。
それとも、簡単なことを難しく言っているのか……。
ζ(゚ー゚*ζ(わかんないなぁ、もう)
(´レ_` )「小さな蝶の羽ばたきでも、いつかは竜巻を起こすこともあるんだよ」
397 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:48:24 ID:c3X.ALzM0
気付けば、蝶の階段は終わりに近付いていた。
ζ( ー *ζ「……どうして、私は人を好きになれないんですか?」
(´レ_` )「……それは、」
ほんの少しの沈黙。
それから、彼は言った。
(´レ_` )「君たち双子はもともと一人の人間が枝分かれして出来た存在だ」
ζ(゚ー゚*ζ「枝分かれ……」
(´レ_` )「一人は次のお勤めに備えて子孫を残し、もう一人はお勤めにいくために、ね」
悪い予感がした。
当たってほしくない答えだった。
だけどそうにちがいない、と私は内心感じていた。
ζ( ー *ζ「じゃあ、わたしは、」
(´レ_` )「愛する人が出来てしまったら、先には進めなくなるだろう?」
これは、彼女なりの優しさだよ。
と、神様はそう言った。
ζ( ー *ζ(ドクオ……)
私はただ手をとられるがままに階段をのぼり終えた。
ドクオの姿はなかった。
ζ( ー *ζ(くるうたちのところへ戻っていったのかしら)
ζ( ー *ζ「……どうして、私は人を好きになれないんですか?」
(´レ_` )「……それは、」
ほんの少しの沈黙。
それから、彼は言った。
(´レ_` )「君たち双子はもともと一人の人間が枝分かれして出来た存在だ」
ζ(゚ー゚*ζ「枝分かれ……」
(´レ_` )「一人は次のお勤めに備えて子孫を残し、もう一人はお勤めにいくために、ね」
悪い予感がした。
当たってほしくない答えだった。
だけどそうにちがいない、と私は内心感じていた。
ζ( ー *ζ「じゃあ、わたしは、」
(´レ_` )「愛する人が出来てしまったら、先には進めなくなるだろう?」
これは、彼女なりの優しさだよ。
と、神様はそう言った。
ζ( ー *ζ(ドクオ……)
私はただ手をとられるがままに階段をのぼり終えた。
ドクオの姿はなかった。
ζ( ー *ζ(くるうたちのところへ戻っていったのかしら)
398 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:49:19 ID:c3X.ALzM0
そう思っていた時だった。
タァンッ!
と、暗闇に奇妙な音が響いた。
ζ(゚ー゚*ζ「え……?」
沈黙。
だけど、それがとても不気味で。
わたしはドクオが行ったであろうもと来た道を走り始めた。
ζ(゚ー゚;ζ(いやな予感がする)
さっきの話が本当であるなら。
ジャンヌさんは、シュールさんのことを塔の住人に知られるのが嫌で、その事実を知った私たちを殺そうとするだろう。
今までにもそうやってきたはずだ。
だから、最上階に到達した二組も出入口の国には戻って来なかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(きっと私のように、落ちていったんだ)
なんて恐ろしい魔女なのだろう。
そして、そこまで彼女を狂わせた愛というのは、もっともっと恐ろしくて、仕方がなかった。
タァンッ!
と、暗闇に奇妙な音が響いた。
ζ(゚ー゚*ζ「え……?」
沈黙。
だけど、それがとても不気味で。
わたしはドクオが行ったであろうもと来た道を走り始めた。
ζ(゚ー゚;ζ(いやな予感がする)
さっきの話が本当であるなら。
ジャンヌさんは、シュールさんのことを塔の住人に知られるのが嫌で、その事実を知った私たちを殺そうとするだろう。
今までにもそうやってきたはずだ。
だから、最上階に到達した二組も出入口の国には戻って来なかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(きっと私のように、落ちていったんだ)
なんて恐ろしい魔女なのだろう。
そして、そこまで彼女を狂わせた愛というのは、もっともっと恐ろしくて、仕方がなかった。
399 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:50:46 ID:c3X.ALzM0
開け放たれた扉の向こうの真っ暗闇は、怪物の口のようで不気味であった。
川 ゚ 々゚)「遅いね、デレとドクオ」
その暗闇を見て、不安そうに呟くくるうの頭を俺は撫でてやった。
【+ 】ゞ゚)「そうだな」
いくらなんでも遅すぎるよな、なんて言って。
【+ 】ゞ゚)「だけどきっと帰ってくるさ」
目的をちゃんと達成できたのだから。
あとは、帰るだけ。
たったそれだけのことなのに、胸がざわつく。
まだなにかが終わっていない、と。
【+ 】ゞ゚)「…………」
正直いってとても不快だった。
師匠とともに盗人を追いかけていた時の緊張感に似ていたからだ。
【+ 】ゞ゚)(もう全て終わったはずなのに)
あとは、皆で帰るだけだ。
そう言い聞かせていた時だった。
こつ、こつ、こつ。
川 ゚ 々゚)「!」
くるうが俺の服を掴んできた。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「…………」
こつこつ、こつこつ。
人影が見える。
徐々に近付いて。
それは先ほど見たばかりの顔で。
ノリ, ^∀^)li「…………」
それを、笑顔と呼ぶにはあまりにも歪みすぎていた。
思わず背筋がゾッとして。
川 ゚ 々゚)「遅いね、デレとドクオ」
その暗闇を見て、不安そうに呟くくるうの頭を俺は撫でてやった。
【+ 】ゞ゚)「そうだな」
いくらなんでも遅すぎるよな、なんて言って。
【+ 】ゞ゚)「だけどきっと帰ってくるさ」
目的をちゃんと達成できたのだから。
あとは、帰るだけ。
たったそれだけのことなのに、胸がざわつく。
まだなにかが終わっていない、と。
【+ 】ゞ゚)「…………」
正直いってとても不快だった。
師匠とともに盗人を追いかけていた時の緊張感に似ていたからだ。
【+ 】ゞ゚)(もう全て終わったはずなのに)
あとは、皆で帰るだけだ。
そう言い聞かせていた時だった。
こつ、こつ、こつ。
川 ゚ 々゚)「!」
くるうが俺の服を掴んできた。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「…………」
こつこつ、こつこつ。
人影が見える。
徐々に近付いて。
それは先ほど見たばかりの顔で。
ノリ, ^∀^)li「…………」
それを、笑顔と呼ぶにはあまりにも歪みすぎていた。
思わず背筋がゾッとして。
400 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:52:13 ID:c3X.ALzM0
【+ 】ゞ゚)「くるう、下がってろ」
川 ゚ 々゚)「え、」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
彼女を庇うように立ち、奴にクロスボウを向けた。
あれは笑っていない。
怒っている。
殺意を込めて、感情に任せて嬲るつもりで。
そしてそれを微塵も隠さずに、こちらにぶつけていた。
【+ 】ゞ゚)(はなから帰す気なんてなかったんだ!)
突然立ち止まった彼女目掛けて引き金を引く。
川;゚ 々゚)「オサム!」
怯えたようなくるうの声。
だけどそれに構っていられなかった。
【+ 】ゞ゚)「っ……!」
ノリ, ∀ )li「…………」
矢は、刺さらなかった。
白い床から突然生えてきた蔦によって、絡めとられてしまったのだ。
ノリ, ∀ )li「ふふっ、」
楽しそうに、しかしイライラしたような笑い声だった。
ノリ, ∀ )li「なんでみんなでいかなかったのかなぁ」
装填したクロスボウを再度彼女に向ける。
ノリ, ∀ )li「 ――」
わからなかった。
異国の言葉のような、鼓膜を溶かすような、不思議な声。
いや、歌か?
【+ 】ゞ゚)「くるう!!」
それが何なのかわからないまま、俺はくるうの体を突き飛ばして。
川 ゚ 々゚)「え、」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
彼女を庇うように立ち、奴にクロスボウを向けた。
あれは笑っていない。
怒っている。
殺意を込めて、感情に任せて嬲るつもりで。
そしてそれを微塵も隠さずに、こちらにぶつけていた。
【+ 】ゞ゚)(はなから帰す気なんてなかったんだ!)
突然立ち止まった彼女目掛けて引き金を引く。
川;゚ 々゚)「オサム!」
怯えたようなくるうの声。
だけどそれに構っていられなかった。
【+ 】ゞ゚)「っ……!」
ノリ, ∀ )li「…………」
矢は、刺さらなかった。
白い床から突然生えてきた蔦によって、絡めとられてしまったのだ。
ノリ, ∀ )li「ふふっ、」
楽しそうに、しかしイライラしたような笑い声だった。
ノリ, ∀ )li「なんでみんなでいかなかったのかなぁ」
装填したクロスボウを再度彼女に向ける。
ノリ, ∀ )li「 ――」
わからなかった。
異国の言葉のような、鼓膜を溶かすような、不思議な声。
いや、歌か?
【+ 】ゞ゚)「くるう!!」
それが何なのかわからないまま、俺はくるうの体を突き飛ばして。
401 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:54:27 ID:c3X.ALzM0
【+ 】ゞ )「ぐっ……!?」
瞬間、足を引き裂くような痛みに襲われた。
よく見ると、それはイラクサのようであった。
ただし、本物のイラクサと違って立つことが出来なくなるほどの、尋常ではない痛みに襲われた。
川;゚ 々゚)「オサム!」
【+ 】ゞ゚)「来るな!」
こちらに駆け寄ろうとするくるうをいなす。
川;゚ 々゚)「で、でも」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
俺は、じっとくるうの目を見た。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だから、お前はそこにいて出来ることをしてほしい」
視線を外し、クロスボウに矢をこめる。
そして、射る。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
蔦によって絡めとられたそれに向かって、緩やかに笑いながら彼女は俺に近付いてきた。
もう彼女には、俺しか写っていなかった。
床にへたりこんで震えているくるうなど敵ではなかったのだ。
だから、
ノリ, ∀ )li「 」
川 々 )「オサムから、離れて……っ!!」
放物線を描きながら、落下してきた瓶に気付くのが遅れてしまった。
ノリ, ― )li「なっ……!?」
見上げたときにはもう遅い、目の前までそれはやって来ていた。
とっさにそれを振り払い、
ノリ,; ― )li「ギャッ……!!」
瞬間、硝子の破片が全て彼女の肌を引き裂いた。
硝子自身が、意思を持ったかのように。
グリグリと皮膚を抉り、犯し、侵略し、深々と突き刺さっていく。
瞬間、足を引き裂くような痛みに襲われた。
よく見ると、それはイラクサのようであった。
ただし、本物のイラクサと違って立つことが出来なくなるほどの、尋常ではない痛みに襲われた。
川;゚ 々゚)「オサム!」
【+ 】ゞ゚)「来るな!」
こちらに駆け寄ろうとするくるうをいなす。
川;゚ 々゚)「で、でも」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
俺は、じっとくるうの目を見た。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だから、お前はそこにいて出来ることをしてほしい」
視線を外し、クロスボウに矢をこめる。
そして、射る。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
蔦によって絡めとられたそれに向かって、緩やかに笑いながら彼女は俺に近付いてきた。
もう彼女には、俺しか写っていなかった。
床にへたりこんで震えているくるうなど敵ではなかったのだ。
だから、
ノリ, ∀ )li「 」
川 々 )「オサムから、離れて……っ!!」
放物線を描きながら、落下してきた瓶に気付くのが遅れてしまった。
ノリ, ― )li「なっ……!?」
見上げたときにはもう遅い、目の前までそれはやって来ていた。
とっさにそれを振り払い、
ノリ,; ― )li「ギャッ……!!」
瞬間、硝子の破片が全て彼女の肌を引き裂いた。
硝子自身が、意思を持ったかのように。
グリグリと皮膚を抉り、犯し、侵略し、深々と突き刺さっていく。
402 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:04 ID:c3X.ALzM0
ノリ,; ― )li「いたい、いたい、いたい!!」
体を抱き抱えるようにして、床にうずくまった頃には、あの妙な蔦やイラクサは消えていた。
【+ 】ゞ゚)「…………」
カチリ、と金属の擦れる音。
俺は、ビロードさんからもらった銃を彼女の頭に狙いを定めた。
ノリ,; ― )li「ひぐ……、うぅあ、ぁ……」
【+ 】ゞ゚)「これで終わりだ」
トリガーに指をかけて、俺は言った。
ノリ,; ー )li「そうね」
微かに笑いをこらえながら、彼女は言った。
ノリ, ∀ )li「そっちが終わりよ」
【+ 】ゞ゚)「っ……?」
鈍い痛み。
徐々に鋭い痛みを感じてきた。
体を抱き抱えるようにして、床にうずくまった頃には、あの妙な蔦やイラクサは消えていた。
【+ 】ゞ゚)「…………」
カチリ、と金属の擦れる音。
俺は、ビロードさんからもらった銃を彼女の頭に狙いを定めた。
ノリ,; ― )li「ひぐ……、うぅあ、ぁ……」
【+ 】ゞ゚)「これで終わりだ」
トリガーに指をかけて、俺は言った。
ノリ,; ー )li「そうね」
微かに笑いをこらえながら、彼女は言った。
ノリ, ∀ )li「そっちが終わりよ」
【+ 】ゞ゚)「っ……?」
鈍い痛み。
徐々に鋭い痛みを感じてきた。
403 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:49 ID:c3X.ALzM0
【+ 】ゞ )「なっ……?」
腹に、一輪の真っ黒な百合が咲いていた。
ノリ, ∀ )li「あはは」
たちまちそれが枯れてゆく。
種子を撒き散らして、拡がって、花を咲かせ、二輪、三輪、四輪と。
【+ 】ゞ )「っあ゛ぁあ゛あ゛ぁぁあ゛ぁあ゛あ゛
!!!」
川;゚ 々゚)「オサム!!」
来ちゃダメだ。
しかし言葉は喉から出ていかず、苦しげに息を吐き出すばかりであった。
【+ 】; ゞ )「ぁっ、……」
崩れる。
意識が、霞む。
その視界の端で、彼女が、イラクサに足を絡めとられて、大口を開けた、怪物のような植物に、呑み込まれていった。
【+ 】; ゞ )(くるう、)
弾丸は、あらぬ方向へと飛んでいって、俺は意識を手放した。
404 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:58:18 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ^ー^)li「ふふ、一人はおしまい」
腹から血を流しながら花を咲かせるオサムを一瞥して、それからわたしに視線を向けて、女は言った。
川;゚ 々゚)「オサム!オサム!」
狭いなかで身動きを取ろうとするが、叶わなかった。
ノリ, ^ー^)li「ずいぶんうるさいハエね」
川;゚ 々゚)「お願いだからオサムを助けて!わたしはどうなってもいいから!!」
ノリ, ^ー^)li「どっちから先に養分にしてあげようかなぁ?」
川;゚ 々゚)「…………」
狂ってる。
この人は、完全におかしい。
川;゚ 々゚)(もしかして)
もう、デレも、ドクオも、死んで……。
川;々;)「……うぁ、」
わたしのせい?
みんなで一緒にいれば、二人を助けられた?
ここにいなければ、オサムは怪我しなかった?
ノリ, ^ー^)li「あらあら泣いちゃった。お水がもったいないわ」
川;々;)「あ、ぁ……」
ノリ, ^ー^)li「じゃあ、その両目にお花を一つずつ咲かせてあげようかしら」
女が、左手を上げて、わたしの目を指差す。
川;々;)(みんな)
ごめんなさい。
腹から血を流しながら花を咲かせるオサムを一瞥して、それからわたしに視線を向けて、女は言った。
川;゚ 々゚)「オサム!オサム!」
狭いなかで身動きを取ろうとするが、叶わなかった。
ノリ, ^ー^)li「ずいぶんうるさいハエね」
川;゚ 々゚)「お願いだからオサムを助けて!わたしはどうなってもいいから!!」
ノリ, ^ー^)li「どっちから先に養分にしてあげようかなぁ?」
川;゚ 々゚)「…………」
狂ってる。
この人は、完全におかしい。
川;゚ 々゚)(もしかして)
もう、デレも、ドクオも、死んで……。
川;々;)「……うぁ、」
わたしのせい?
みんなで一緒にいれば、二人を助けられた?
ここにいなければ、オサムは怪我しなかった?
ノリ, ^ー^)li「あらあら泣いちゃった。お水がもったいないわ」
川;々;)「あ、ぁ……」
ノリ, ^ー^)li「じゃあ、その両目にお花を一つずつ咲かせてあげようかしら」
女が、左手を上げて、わたしの目を指差す。
川;々;)(みんな)
ごめんなさい。
405 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:59:50 ID:c3X.ALzM0
(# A )「ああああ!!!」
怒声。
不意をうたれて、女がわたしから視線を外す。
黒い人影は一瞬で間を詰めて。
ノリ, ^ー^)li「っ……?」
赤い花が散った。
べちゃりと濡れた、重みのある音。
人差し指をたてた左手が床に落ちたのだ。
ノリ, ; ー )li「ぎっ……!?ぃ……ぁあ!!」
406 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:01:10 ID:c3X.ALzM0
床へと崩れ落ちる体。
それをじっと、彼は見つめていた。
川 ゚ 々゚)「ドク、オ?」
呟くように名前を呼ぶと、ドクオがちらりとわたしを見た。
だけどすぐに視線を戻し、女の頭を蹴った。
( A )「お前のせいだ」
ノリ,; ー )li「ぐっ……」
('A`)「デレを返せよ!」
何度も何度も蹴る。
女の丸まった体が揺れる。
蹴られているせいだけではない。
彼女は笑っていた。
ノリ, ー)li「彼女を助けられなかったのは、あんたのせい」
('A`)「っ……」
ノリ, ^∀^)li「見捨てちゃったんでしょう?自分かわいさに」
('A`)「違う」
ノリ, ^∀^)li「なんで手を離しちゃったの?」
('A`)「それは、」
ノリ, ^∀^)li「ね、どうしていつも守られてるのかな」
( A )「黙れ」
ノリ, ^∀^)li「あの娘さえ生きてればいい、自分なんか死んでもいいって誓ったのに」
(# A )「黙れって言ってるだろ!!」
斧が振り上げられた瞬間、わたしは気付く。
イラクサが、ドクオの体にしゅるしゅると伸びていくことに。
川 ゚ 々゚)「逃げて!!」
そう叫んだときには、遅かった。
それをじっと、彼は見つめていた。
川 ゚ 々゚)「ドク、オ?」
呟くように名前を呼ぶと、ドクオがちらりとわたしを見た。
だけどすぐに視線を戻し、女の頭を蹴った。
( A )「お前のせいだ」
ノリ,; ー )li「ぐっ……」
('A`)「デレを返せよ!」
何度も何度も蹴る。
女の丸まった体が揺れる。
蹴られているせいだけではない。
彼女は笑っていた。
ノリ, ー)li「彼女を助けられなかったのは、あんたのせい」
('A`)「っ……」
ノリ, ^∀^)li「見捨てちゃったんでしょう?自分かわいさに」
('A`)「違う」
ノリ, ^∀^)li「なんで手を離しちゃったの?」
('A`)「それは、」
ノリ, ^∀^)li「ね、どうしていつも守られてるのかな」
( A )「黙れ」
ノリ, ^∀^)li「あの娘さえ生きてればいい、自分なんか死んでもいいって誓ったのに」
(# A )「黙れって言ってるだろ!!」
斧が振り上げられた瞬間、わたしは気付く。
イラクサが、ドクオの体にしゅるしゅると伸びていくことに。
川 ゚ 々゚)「逃げて!!」
そう叫んだときには、遅かった。
407 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:02:37 ID:c3X.ALzM0
光が見えてきた。
念のため、フレイルを装備して部屋に足を踏み入れる。
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
ノリ, ー )li「…………」
まず目に入ったのは、イラクサでがんじがらめに縛られたドクオの姿。
そのそばに、泣いているくるうが檻のような花のなかにいて、お腹から血を流しているオサムさんがいた。
左腕からだらだらと血を流しながら笑っているジャンヌさんが、虚ろな目で私を見た。
ノリ, ー )li「あら、生きてたの」
忌々しげに言われたその一言に、ドクオとくるうが驚いたように私たちを見た。
川 ゚ 々゚)「デレ!」
(;'A`)「デレ!?」
安心したような顔をするくるうと驚いた表情を浮かべるドクオを少し見つめて、それからジャンヌさんへと視線を移した。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、ずっと嘘をついていたんですか?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
彼女は、なにも言わない。
ただ、その笑みをさらに深めて、わたしをにらんだ。
ノリ, ^ー^)li「お前さえいなければ、ここに余計なものを運んで来なかったのに」
それは、恐らく私の傍らにいる神様にも向かって言っているのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、どうして好きなのに、愛していたのに、シュールさんにひどいことをしたの?どうして、兄者さんを殺したの?」
ノリ, ^ー^)li「恋したことも愛したこともないやつに話したって無駄よ。あんたには人の心が分からない」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、分からないわ。どうしてドクオが私を守ろうとするのか、くるうがオサムさんを大事にするのか、ぜんっぜん分からない」
だけど、と私は区切って深呼吸をする。
本当は怖い。
自分は間違っているんじゃないかと怯えている。
(´レ_` )「大丈夫、君はお勤めでたくさんの世界を見た。二人ぼっちで世界を閉ざして引きこもっていた魔女よりたくさんのものを見てきたはずだ」
素直に言葉にしてごらん。
神様に後押しされ、ジャンヌさんを真っ直ぐ見据えて言い切った。
念のため、フレイルを装備して部屋に足を踏み入れる。
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
ノリ, ー )li「…………」
まず目に入ったのは、イラクサでがんじがらめに縛られたドクオの姿。
そのそばに、泣いているくるうが檻のような花のなかにいて、お腹から血を流しているオサムさんがいた。
左腕からだらだらと血を流しながら笑っているジャンヌさんが、虚ろな目で私を見た。
ノリ, ー )li「あら、生きてたの」
忌々しげに言われたその一言に、ドクオとくるうが驚いたように私たちを見た。
川 ゚ 々゚)「デレ!」
(;'A`)「デレ!?」
安心したような顔をするくるうと驚いた表情を浮かべるドクオを少し見つめて、それからジャンヌさんへと視線を移した。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、ずっと嘘をついていたんですか?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
彼女は、なにも言わない。
ただ、その笑みをさらに深めて、わたしをにらんだ。
ノリ, ^ー^)li「お前さえいなければ、ここに余計なものを運んで来なかったのに」
それは、恐らく私の傍らにいる神様にも向かって言っているのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、どうして好きなのに、愛していたのに、シュールさんにひどいことをしたの?どうして、兄者さんを殺したの?」
ノリ, ^ー^)li「恋したことも愛したこともないやつに話したって無駄よ。あんたには人の心が分からない」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、分からないわ。どうしてドクオが私を守ろうとするのか、くるうがオサムさんを大事にするのか、ぜんっぜん分からない」
だけど、と私は区切って深呼吸をする。
本当は怖い。
自分は間違っているんじゃないかと怯えている。
(´レ_` )「大丈夫、君はお勤めでたくさんの世界を見た。二人ぼっちで世界を閉ざして引きこもっていた魔女よりたくさんのものを見てきたはずだ」
素直に言葉にしてごらん。
神様に後押しされ、ジャンヌさんを真っ直ぐ見据えて言い切った。
408 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:05:47 ID:c3X.ALzM0
ζ(゚ー゚*ζ「愛は、お互いに想いあうから、初めて成立するんだよ」
ノリ, ^ー^)li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたのしたことでシュールさんは喜んでくれましたか?」
ノリ, ー )li「……………………ふふっ」
微かな笑い声が色のない部屋に反響する。
そして、
ノリ, ー )li「死ねよ」
(´レ_` )「デレ!」
目にも止まらぬ早さでイラクサがわたしを捕らえようとするのと、神様が前に躍り出たのは同時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「神様!」
(´レ_` )「もう言葉は通じないと思え」
ギチギチと絡みつくそれを引き剥がしながら、神様がそう言った。
それは、つまり。
ζ(゚ー゚*ζ(殺すの?)
それ以外に方法はないんだろうか、と考えようとして、止めた。
大事な友達が、みんな倒れている。
彼女に殺されかけたから。
そんな、躊躇いもなく人を手にかけられる人は、同じ方法以外で止められるとは思えなかった。
ζ( ー *ζ「…………」
姿勢を落として、走る。
床に落ちていた斧を拾いつつ、更に駆ける。
ノリ, ^ー^)li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたのしたことでシュールさんは喜んでくれましたか?」
ノリ, ー )li「……………………ふふっ」
微かな笑い声が色のない部屋に反響する。
そして、
ノリ, ー )li「死ねよ」
(´レ_` )「デレ!」
目にも止まらぬ早さでイラクサがわたしを捕らえようとするのと、神様が前に躍り出たのは同時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「神様!」
(´レ_` )「もう言葉は通じないと思え」
ギチギチと絡みつくそれを引き剥がしながら、神様がそう言った。
それは、つまり。
ζ(゚ー゚*ζ(殺すの?)
それ以外に方法はないんだろうか、と考えようとして、止めた。
大事な友達が、みんな倒れている。
彼女に殺されかけたから。
そんな、躊躇いもなく人を手にかけられる人は、同じ方法以外で止められるとは思えなかった。
ζ( ー *ζ「…………」
姿勢を落として、走る。
床に落ちていた斧を拾いつつ、更に駆ける。
409 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:06:59 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ー )li「…………」
イラクサは、私の跡を追わない。
左手を庇い、肩で息をしながら立つのもやっとという状態の彼女は、先程の魔法が精一杯の攻撃だったのかもしれない。
くるう。
オサムさん。
ドクオ。
みんなを助けて、みんなで故郷に帰るんだ。
ζ(゚ー゚*ζ(ここでは死なない!)
距離を詰めた私は力任せに斧を振る。
とてつもなく重いと感じたそれは遠心力を身につけ、凄まじい勢いでジャンヌさんの首を刈ろうとした。
ノリ, ー )li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
斧が、急速に成長した太い蔦によって阻まれる。
引き抜こうとしても抜けない。
ζ(゚ー゚;ζ「っ!」
目の前にニュッと延びる右手をとっさに交わし、同時に斧が抜けた。
その勢いで後ろへ一歩半下がる。
とたんに壺状の植物が大口を開けてわたしのいた場所を捕らえた。
410 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:08:22 ID:c3X.ALzM0
フレイルを振り回し、それをなぎ倒す。
びちゃびちゃと不愉快な音を出しながら、いやに甘ったるい匂いのする液を振り撒き、壺は枯れた。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
彼女の目の前には、ぬらぬらと光る液体の池が出来上がった
よく見ると床から気泡が出ていた。
ζ(゚ー゚;ζ「え……」
溶けてる?
その事に気付いて、サーっと血の気が引いた。
ζ(゚ー゚*ζ「!?」
しかも、毒液が意思を持ったかのような動きを始めた。
ゆらゆらと揺らぎ、盛り上がり、人形をとり、そして。
一瞬で間合いを詰められた。
毒液まみれの手がわたしに触れようとする。
斧の刃でそれを切り落とす。
ジワリと鉄が溶ける音。
パシャリと腕が落ち、飛沫がわたしの服を汚す。
ζ(゚ー゚*ζ(服の上で助かった)
そう思ったのもつかの間だった。
視界が反転し、白い天井を仰いでいた。
飛沫を踏んでしまったせいで靴のそこがすっかりダメになり、滑ったのだ。
床に頭を打ち、意識が揺れた。
足を踏み潰されかけたので避ける。
びちゃり、と飛んだ飛沫がズボンに穴を開けた。
なんとか起き上がり、距離を取ってフレイルでそいつを叩き潰した。
頭が弱点だったらしく、ふたたび動き出すことはなかった。
だけど。
('A`)「デレ!逃げろ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
びちゃびちゃと不愉快な音を出しながら、いやに甘ったるい匂いのする液を振り撒き、壺は枯れた。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
彼女の目の前には、ぬらぬらと光る液体の池が出来上がった
よく見ると床から気泡が出ていた。
ζ(゚ー゚;ζ「え……」
溶けてる?
その事に気付いて、サーっと血の気が引いた。
ζ(゚ー゚*ζ「!?」
しかも、毒液が意思を持ったかのような動きを始めた。
ゆらゆらと揺らぎ、盛り上がり、人形をとり、そして。
一瞬で間合いを詰められた。
毒液まみれの手がわたしに触れようとする。
斧の刃でそれを切り落とす。
ジワリと鉄が溶ける音。
パシャリと腕が落ち、飛沫がわたしの服を汚す。
ζ(゚ー゚*ζ(服の上で助かった)
そう思ったのもつかの間だった。
視界が反転し、白い天井を仰いでいた。
飛沫を踏んでしまったせいで靴のそこがすっかりダメになり、滑ったのだ。
床に頭を打ち、意識が揺れた。
足を踏み潰されかけたので避ける。
びちゃり、と飛んだ飛沫がズボンに穴を開けた。
なんとか起き上がり、距離を取ってフレイルでそいつを叩き潰した。
頭が弱点だったらしく、ふたたび動き出すことはなかった。
だけど。
('A`)「デレ!逃げろ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
411 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:09:41 ID:c3X.ALzM0
…………。
じくん、と棘が刺さる。
ζ( ー *ζ「いっ……!?」
ノリ, ∀ )li「ねえ、忘れてない?」
ジャンヌさんの手から延びるイラクサが、わたしの足を絡めとったのだ。
ζ(゚ー゚;ζ「放して!」
ノリ, ∀ )li「やあよ、ふふ」
('A`)「デレ……、ぁぐっ!?」
振り返ると、ドクオの足の中からイラクサが生えていた。
筋肉をずたずたに引き裂くように、痛々しく。
(´レ_` )「くっ……」
神様はイラクサだけでなく、傷口の全てから緑色の小さな新芽がずるずると生えてきていて。
川 々 )「いやぁぁぁ!!!!」
くるうは、その様を見て絶叫していた。
ζ( ー ;ζ「悪趣味……!」
ノリ, ∀ )li「あなたには分からないでしょう。綺麗な愛なんてないの、愛するものがある人は多かれ少なかれ他人を蹴落とすことしか頭にないのよ?」
ゆっくりと、彼女が近付いてくる。
よたよたと、おぼつかない足取りで。
ノリ, ∀ )li「あなたの口に冬虫夏草を植えてあげるわ。間抜けに口をあけて時が止まったかのような死に方をプレゼントしてあげる」
ζ( ー *ζ「っ……」
ノリ, ∀ )li「ここまで悪足掻きされたの初めてだもの。わたしなりの、敬意だから遠慮しないでね」
口を閉じようとしても、どこからか生えてきた蔦が私の口をこじ開ける。
ζ( Q ;ζ「ぁ、あ、ぁ、」
ノリ, ∀ )li「じゃあ、さようなら」
じくん、と棘が刺さる。
ζ( ー *ζ「いっ……!?」
ノリ, ∀ )li「ねえ、忘れてない?」
ジャンヌさんの手から延びるイラクサが、わたしの足を絡めとったのだ。
ζ(゚ー゚;ζ「放して!」
ノリ, ∀ )li「やあよ、ふふ」
('A`)「デレ……、ぁぐっ!?」
振り返ると、ドクオの足の中からイラクサが生えていた。
筋肉をずたずたに引き裂くように、痛々しく。
(´レ_` )「くっ……」
神様はイラクサだけでなく、傷口の全てから緑色の小さな新芽がずるずると生えてきていて。
川 々 )「いやぁぁぁ!!!!」
くるうは、その様を見て絶叫していた。
ζ( ー ;ζ「悪趣味……!」
ノリ, ∀ )li「あなたには分からないでしょう。綺麗な愛なんてないの、愛するものがある人は多かれ少なかれ他人を蹴落とすことしか頭にないのよ?」
ゆっくりと、彼女が近付いてくる。
よたよたと、おぼつかない足取りで。
ノリ, ∀ )li「あなたの口に冬虫夏草を植えてあげるわ。間抜けに口をあけて時が止まったかのような死に方をプレゼントしてあげる」
ζ( ー *ζ「っ……」
ノリ, ∀ )li「ここまで悪足掻きされたの初めてだもの。わたしなりの、敬意だから遠慮しないでね」
口を閉じようとしても、どこからか生えてきた蔦が私の口をこじ開ける。
ζ( Q ;ζ「ぁ、あ、ぁ、」
ノリ, ∀ )li「じゃあ、さようなら」
412 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:12:03 ID:c3X.ALzM0
右手が徐々に近付いてくる。
死ぬ。
死んじゃう。
やだ。
ζ( Q ;ζ(たすけて)
必死に身動ぎした瞬間、破れたポケットから、ナチさんからもらった時計が地面に落ちた。
かちん、と白い床にぶつかり。
かちり、と銀色の蓋が開いて。
カチ、コチ、カチ、コチ……。
秒針の音。
家にあった時計と同じ音色が響く。
懐かしい、暖かい。
その回想は、時が止まったようにいつまでも続いて。
ζ( Q ;ζ「……?」
ジャンヌさんは、動かない。
不気味な笑みを湛えたまま、凍っていた。
不思議に思った私は、口を閉じようとした。
するとこじ開けていた蔦がバリバリと、氷を砕くように崩れていった。
体に巻き付いていたイラクサも同じだった。
ζ(゚ー゚;ζ(どうなってるの?)
口のなかに入ってしまった蔦の残りを吐き出しながら、フレイルを拾った。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
ごめんなさい。
思いきり振りかぶり、目をつむり、脳天めがけてそれを降ろして。
死ぬ。
死んじゃう。
やだ。
ζ( Q ;ζ(たすけて)
必死に身動ぎした瞬間、破れたポケットから、ナチさんからもらった時計が地面に落ちた。
かちん、と白い床にぶつかり。
かちり、と銀色の蓋が開いて。
カチ、コチ、カチ、コチ……。
秒針の音。
家にあった時計と同じ音色が響く。
懐かしい、暖かい。
その回想は、時が止まったようにいつまでも続いて。
ζ( Q ;ζ「……?」
ジャンヌさんは、動かない。
不気味な笑みを湛えたまま、凍っていた。
不思議に思った私は、口を閉じようとした。
するとこじ開けていた蔦がバリバリと、氷を砕くように崩れていった。
体に巻き付いていたイラクサも同じだった。
ζ(゚ー゚;ζ(どうなってるの?)
口のなかに入ってしまった蔦の残りを吐き出しながら、フレイルを拾った。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
ごめんなさい。
思いきり振りかぶり、目をつむり、脳天めがけてそれを降ろして。
413 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:13:03 ID:c3X.ALzM0
陶磁器が割れるような音がした。
カチ、コチ、カチ、コチ、……カチリ。
「っあああ゛ぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁ!!!!」
耳をつんざくような悲鳴。
薄目を開けると、地に伏せた彼女が頭を押さえながら痙攣していた。
ζ( ー ;ζ「あ、ぁ……」
殺してしまった。
私が殺した。
死んでしまう。
「ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ちくしょうちくしょうちくしょうぅぅ゛」
視線を逸らすことができない。
だけど、だけどあまりにも怖かったから、横目でなちさんからもらった時計を見た。
時計は、音もたてずに溶けていた。
しゅわしゅわと、空気と同化するように。
414 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:14:19 ID:c3X.ALzM0
('A`)「デレ!」
ドクオに呼ばれ、振り返る。
気付けば、あの恐ろしい悲鳴は止んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ……」
足を引きずりながら、彼は必死に私に近付こうとする。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ、いいよ、歩かなくて」
('A`)「だめだ、俺がしたいんだ」
ずるずると引きずる足と血のあとがあまりにも痛々しくて、私は少しだけ駆け寄って、彼の体を抱き締めた。
('A`)「ごめん、デレ。情けないや」
ζ(゚ー゚*ζ「バカ、私は平気だってば」
だけどなぜかむしょうに安心して、腰が抜けてしまって、ゆっくりと地面に座り込んでしまった。
('A`)「……怖かったんだな」
ζ( ー *ζ「平気」
('A`)「平気じゃない、足震えてるし」
ζ(゚ー゚*ζ「だから大丈夫だって」
ああ、生きている。
みんな生きている。
私は安心していた。
すっかり油断していた。
神様もくるうも、気絶していたし、なんにも動く気配がないから助かったと思っていた。
だから
ノリ, ー )li「ゆるさない」
音もなく、立ち上がったそれに気付かなかった。
ドクオに呼ばれ、振り返る。
気付けば、あの恐ろしい悲鳴は止んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ……」
足を引きずりながら、彼は必死に私に近付こうとする。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ、いいよ、歩かなくて」
('A`)「だめだ、俺がしたいんだ」
ずるずると引きずる足と血のあとがあまりにも痛々しくて、私は少しだけ駆け寄って、彼の体を抱き締めた。
('A`)「ごめん、デレ。情けないや」
ζ(゚ー゚*ζ「バカ、私は平気だってば」
だけどなぜかむしょうに安心して、腰が抜けてしまって、ゆっくりと地面に座り込んでしまった。
('A`)「……怖かったんだな」
ζ( ー *ζ「平気」
('A`)「平気じゃない、足震えてるし」
ζ(゚ー゚*ζ「だから大丈夫だって」
ああ、生きている。
みんな生きている。
私は安心していた。
すっかり油断していた。
神様もくるうも、気絶していたし、なんにも動く気配がないから助かったと思っていた。
だから
ノリ, ー )li「ゆるさない」
音もなく、立ち上がったそれに気付かなかった。
415 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:15:36 ID:c3X.ALzM0
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
真っ赤に染まったジャンヌさんが、大木のように背後に立ち塞がっていて。
('A`)「デレ!」
ドクオがとっさに私の前におどり出る。
すさまじい早さで生長した枝のような指がドクオに迫る。
ζ(゚ー゚*ζ「ドク……」
「動くな二人とも」
瞬間、炸裂音が響いた。
ノリ, ー )li「グギッ……」
胴体だったあたりを弾丸が貫く。
体が震える。
枝がざわめく。
ドクオが駆ける。
駆けるというには、あまりにもぎこちない動きだけど。
それでも、床に落ちていた斧を拾って。
('A`)「はぁぁ!!」
ガツン、と幹に突き立てた。
ノリ, ー )li「キィアアァアァ!!!」
甲高い叫び声に思わず頭が痛くなった。
「ドクオ逃げて!」
幼馴染みの声と同時に包帯が投げつけられる。
畳まれていたそれは、彼女にぶつかった瞬間、蛇のように絡み付いて炎を纏った。
ノリ, ー )li「アァア゛ア゛……」
木が燃えるにおいがする、肉の焦げるにおいがする。
思わず口元を押さえる。
416 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:16:41 ID:c3X.ALzM0
ノリ, ー )li「ァ、ァ、ァ、……シュウ、シュウ、」
シュール。
死の間際まで彼女はシュールさんのことを想っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い)
人の気持ちが分からない私は、そうとしか感じられなかった。
(´レ_` )「やれやれまったく」
全身から血を流しながら、木に近付く神様は呆れたように呟いた。
(´レ_` )「そこまで人を愛せたのに、どうして君は優しくなれなかったのだろうね」
神様が火に触れると、それはますます勢いを増していった。
断末魔。
全てを焼き尽くす熱。
強まる悪臭。
火炙りにされた魔女。
それは、とてもおぞましい光景だった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
それでも私は、目を開いてそれを見つめていた。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
彼女は、どこで間違えてしまったんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ(最初から、出会わなければよかったのかな)
崩れ落ちていく体を見つめながら、私は考えた。
シュール。
死の間際まで彼女はシュールさんのことを想っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い)
人の気持ちが分からない私は、そうとしか感じられなかった。
(´レ_` )「やれやれまったく」
全身から血を流しながら、木に近付く神様は呆れたように呟いた。
(´レ_` )「そこまで人を愛せたのに、どうして君は優しくなれなかったのだろうね」
神様が火に触れると、それはますます勢いを増していった。
断末魔。
全てを焼き尽くす熱。
強まる悪臭。
火炙りにされた魔女。
それは、とてもおぞましい光景だった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
それでも私は、目を開いてそれを見つめていた。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
彼女は、どこで間違えてしまったんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ(最初から、出会わなければよかったのかな)
崩れ落ちていく体を見つめながら、私は考えた。
417 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:18:20 ID:c3X.ALzM0
ボロボロになった私たちの体の怪我は瞬時に治ってしまった。
神様が、魔療とはまったく違う不思議な力を使って治してくれたのだ。
彼の手に傷口が触れると、それがずるりと抜け落ちてどこかに消えてしまう、触れたところはきれいさっぱり、元通りになってしまっていた。
(´レ_` )「すまなかったね、無茶をさせて。魔女の力が及んでいるとどうしても思うように使えなくてね」
その言葉を少し複雑な気持ちで私は受け取った。
川 ゚ 々゚)「オサム、痛くない?」
【+ 】ゞ゚)「俺はいいんだが、くるうのほうこそ大丈夫か?」
('A`)「跡もなにも残ってない……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
他のみんなはそうでもなかったらしいので、私はそのまま黙っていた。
(´レ_` )「さて」
と、神様は煤で汚れてしまった扉を見つめた。
(´レ_` )「そろそろ彼女を起こしに行かないと」
君たちも、来るだろう?
その言葉に私は頷いた。
神様が、魔療とはまったく違う不思議な力を使って治してくれたのだ。
彼の手に傷口が触れると、それがずるりと抜け落ちてどこかに消えてしまう、触れたところはきれいさっぱり、元通りになってしまっていた。
(´レ_` )「すまなかったね、無茶をさせて。魔女の力が及んでいるとどうしても思うように使えなくてね」
その言葉を少し複雑な気持ちで私は受け取った。
川 ゚ 々゚)「オサム、痛くない?」
【+ 】ゞ゚)「俺はいいんだが、くるうのほうこそ大丈夫か?」
('A`)「跡もなにも残ってない……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
他のみんなはそうでもなかったらしいので、私はそのまま黙っていた。
(´レ_` )「さて」
と、神様は煤で汚れてしまった扉を見つめた。
(´レ_` )「そろそろ彼女を起こしに行かないと」
君たちも、来るだろう?
その言葉に私は頷いた。
418 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:21:27 ID:c3X.ALzM0
(´レ_` )「シュール」
真っ白な寝台で眠るその人に、神様は優しく声をかけた。
寝台を埋め尽くしているポピーの花をむしりとりながら、神様は呼び続ける。
からからに枯れてしまったそれは、乾いた音とともに床に落ちた。
lw´‐ _‐ノv「…………」
(´レ_` )「シュール、起きておくれ」
lw´‐ _‐ノv「……………………」
ζ(゚ー゚*ζ(シュールさん)
どうか早く起きてください。
神様は、ずっとずっとあなたに会いたがっていたんです。
あなただって、会いたかったでしょう?
無意識に祈りながら、私はじっあとシュールさんを見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「………………………………、ぁ」
小さな声が漏れた。
本当にわずかな声。
みんなが固唾を飲んで見守っていなかったら、かき消えてしまったかもしれなかった。
(´レ_` )「シュール?」
lw´‐ _‐ノv「ぁ……、……あな、た?」
ゆっくりと、言葉が吐き出される。
(´レ_` )「そうだよ、シュール」
真っ白な寝台で眠るその人に、神様は優しく声をかけた。
寝台を埋め尽くしているポピーの花をむしりとりながら、神様は呼び続ける。
からからに枯れてしまったそれは、乾いた音とともに床に落ちた。
lw´‐ _‐ノv「…………」
(´レ_` )「シュール、起きておくれ」
lw´‐ _‐ノv「……………………」
ζ(゚ー゚*ζ(シュールさん)
どうか早く起きてください。
神様は、ずっとずっとあなたに会いたがっていたんです。
あなただって、会いたかったでしょう?
無意識に祈りながら、私はじっあとシュールさんを見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「………………………………、ぁ」
小さな声が漏れた。
本当にわずかな声。
みんなが固唾を飲んで見守っていなかったら、かき消えてしまったかもしれなかった。
(´レ_` )「シュール?」
lw´‐ _‐ノv「ぁ……、……あな、た?」
ゆっくりと、言葉が吐き出される。
(´レ_` )「そうだよ、シュール」
419 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:22:21 ID:c3X.ALzM0
眠そうな目が二回か三回、瞼によって磨かれる。
そのうち瞼が完全に目を覆ってしまったけど、彼女はちゃんと起きているようだった。
lw´‐ _‐ノv「……ずいぶん、姿を、変えたのですね」
(´レ_` )「最初は蝶になってこの塔に入ろうとしたのだけど、なかなか彼らが手紙を送ってくれなくてね」
ちらりと私のほうを見て、神様は言った。
(´レ_` )「人形をとろうとしたらよそ者を受け付けないように魔法をかけられていたから、塔から落ちてばらばらに砕けていた勤めの者の体を借りたのだ」
lw´‐ _‐ノv「そう」
体を起こそうともがいて、しかし力がうまく入らないのかそのまま横たわっているシュールさんの体を、神様が抱き抱えた。
(´レ_` )「ご覧、シュール。彼らが君を助けてくれたのだ」
再び目が見開かれる。
そして一人一人の顔を記憶するかのようにまじまじと見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「……神様」
(´レ_` )「ん?」
lw´‐ _‐ノv「夢を見ました。不思議な夢でした」
(´レ_` )「どんな夢なのか聞かせておくれ」
lw´‐ _‐ノv「時計の夢でした」
(´レ_` )「時計」
ぽつりぽつりと吐き出される彼女の言葉を、神様は拾う。
lw´‐ _‐ノv「最初はなにもなかったのです。しかしある日を境に動かない懐中時計が私のそばに現れました」
(´レ_` )「…………」
lw´‐ _‐ノv「だけど、それが動かないことに疑問を抱きませんでした、動くのには早かったのです」
そのうち瞼が完全に目を覆ってしまったけど、彼女はちゃんと起きているようだった。
lw´‐ _‐ノv「……ずいぶん、姿を、変えたのですね」
(´レ_` )「最初は蝶になってこの塔に入ろうとしたのだけど、なかなか彼らが手紙を送ってくれなくてね」
ちらりと私のほうを見て、神様は言った。
(´レ_` )「人形をとろうとしたらよそ者を受け付けないように魔法をかけられていたから、塔から落ちてばらばらに砕けていた勤めの者の体を借りたのだ」
lw´‐ _‐ノv「そう」
体を起こそうともがいて、しかし力がうまく入らないのかそのまま横たわっているシュールさんの体を、神様が抱き抱えた。
(´レ_` )「ご覧、シュール。彼らが君を助けてくれたのだ」
再び目が見開かれる。
そして一人一人の顔を記憶するかのようにまじまじと見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「……神様」
(´レ_` )「ん?」
lw´‐ _‐ノv「夢を見ました。不思議な夢でした」
(´レ_` )「どんな夢なのか聞かせておくれ」
lw´‐ _‐ノv「時計の夢でした」
(´レ_` )「時計」
ぽつりぽつりと吐き出される彼女の言葉を、神様は拾う。
lw´‐ _‐ノv「最初はなにもなかったのです。しかしある日を境に動かない懐中時計が私のそばに現れました」
(´レ_` )「…………」
lw´‐ _‐ノv「だけど、それが動かないことに疑問を抱きませんでした、動くのには早かったのです」
420 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:23:34 ID:c3X.ALzM0
(´レ_` )「うん」
lw´‐ _‐ノv「毎日毎日あなたのことを考えながら、それを眺めていて」
すぅ、と息を吸う音。
一呼吸おいて、言葉が響く。
lw´‐ _‐ノv「動かさなくてはいけないと思いました」
(´レ_` )「どうして?」
lw´‐ _‐ノv「時計が動かない限り、あなたに会えないと思ったのです」
(´レ_` )「そうか、シュー。君は、彼女達を助けてくれたのだね」
その言葉に、私以外のみんなは不思議そうな顔をしていた。
なちさんの時計が動いたのは、シュールさんの夢と関係があるのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも、なちさんもシュールさんの夢の一部だけど)
今まで私が見てきた人たちはみんな夢の産物だったのだ。
本当に、信じられないことだけど。
そしてやっと、ここに来てあの時計が役に立ってどうにか行き長らえたのだけども。
ζ(゚ー゚*ζ(本当に助けてくれたのかな)
それか、ここまで救いの手が伸びているのになかなか来ないものだから、しびれをきらしたのかもしれない。
いずれにせよ、私はあの時計を持っていなければ今ごろ変な草木になってしまっていただろう。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い怖い)
冷や汗を流していると、シュールさんがとても眠そうにあくびをした。
lw´‐ _‐ノv「毎日毎日あなたのことを考えながら、それを眺めていて」
すぅ、と息を吸う音。
一呼吸おいて、言葉が響く。
lw´‐ _‐ノv「動かさなくてはいけないと思いました」
(´レ_` )「どうして?」
lw´‐ _‐ノv「時計が動かない限り、あなたに会えないと思ったのです」
(´レ_` )「そうか、シュー。君は、彼女達を助けてくれたのだね」
その言葉に、私以外のみんなは不思議そうな顔をしていた。
なちさんの時計が動いたのは、シュールさんの夢と関係があるのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも、なちさんもシュールさんの夢の一部だけど)
今まで私が見てきた人たちはみんな夢の産物だったのだ。
本当に、信じられないことだけど。
そしてやっと、ここに来てあの時計が役に立ってどうにか行き長らえたのだけども。
ζ(゚ー゚*ζ(本当に助けてくれたのかな)
それか、ここまで救いの手が伸びているのになかなか来ないものだから、しびれをきらしたのかもしれない。
いずれにせよ、私はあの時計を持っていなければ今ごろ変な草木になってしまっていただろう。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い怖い)
冷や汗を流していると、シュールさんがとても眠そうにあくびをした。
421 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:24:48 ID:c3X.ALzM0
lw´‐ _‐ノv「……神様」
(´レ_` )「シュー?」
lw´‐ _‐ノv「とても、ねむくて」
(´レ_` )「寝てしまいなさい。あとのことは任せてくれればいい」
髪を梳きながら、優しく寝かしつけるように囁いて
lw´‐ _‐ノv「……かみさま、」
(´レ_` )「うん」
lw´‐ _‐ノv「つれていって」
すがるようなその声に、
(´レ_` )「勿論だよ、シュー」
と返されて
lw´‐ _‐ノv「……よかった」
彼女の息が、止まった。
('A`)「……死んだ、のか?」
(´レ_` )「いいや、ずっと一緒だ」
心なしか口角をあげながら、神様は私たちに告げた。
(´レ_` )「これでお勤めは終わりだ。御苦労様」
川 ゚ 々゚)「お家に帰れるの?」
(´レ_` )「責任を持って君たちを送り届けよう。しかしひとつ約束をしてほしい」
【+ 】ゞ゚)「約束?」
訝しげな表情をするオサムさんを見据え、神様は答える。
(´レ_` )「シュー?」
lw´‐ _‐ノv「とても、ねむくて」
(´レ_` )「寝てしまいなさい。あとのことは任せてくれればいい」
髪を梳きながら、優しく寝かしつけるように囁いて
lw´‐ _‐ノv「……かみさま、」
(´レ_` )「うん」
lw´‐ _‐ノv「つれていって」
すがるようなその声に、
(´レ_` )「勿論だよ、シュー」
と返されて
lw´‐ _‐ノv「……よかった」
彼女の息が、止まった。
('A`)「……死んだ、のか?」
(´レ_` )「いいや、ずっと一緒だ」
心なしか口角をあげながら、神様は私たちに告げた。
(´レ_` )「これでお勤めは終わりだ。御苦労様」
川 ゚ 々゚)「お家に帰れるの?」
(´レ_` )「責任を持って君たちを送り届けよう。しかしひとつ約束をしてほしい」
【+ 】ゞ゚)「約束?」
訝しげな表情をするオサムさんを見据え、神様は答える。
422 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:26:28 ID:c3X.ALzM0
(´レ_` )「君たちを送り届けた後に、塔の外の世界を元通りにする。荒れ地を整え、動物や植物を繁殖させ、再び人間が暮らせるようにする」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
(´レ_` )「それができるまでは塔から出ないでほしい」
川 ゚ 々゚)「でもでも、外にでないと様子が分からないよ?」
(´レ_` )「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせる」
('A`)「ユキ?」
【+ 】ゞ゚)「なんですか、それは?」
聞いたことのない言葉だった。
すると神様は少し困ったような顔をして、
(´レ_` )「そうか、ユキを知らないか」
と呟いた。
(´レ_` )「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまう」
聞いているだけだと、なんだかけったいな物のように思えた。
やっぱり一度もそんなものは見たことも聞いたこともないし、きっとツンも父も、そのまたずっと昔にいた人もユキなんて知らないような気がした。
(´レ_` )「塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
私の考えに気付いたのか、苦笑いしながらそう言われた。
(´レ_` )「今言ったことを、みんなに伝えて欲しいんだ。今を生きている人だけでなく、これから生まれる人にもね」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
必ず伝えよう。
塔の出来事も、魔女の愛も、神様の約束も。
それから、娘の、巫女の結末も。
(´レ_` )「さぁ、目を瞑って」
ζ(‐ー‐*ζ「…………」
皮膚一枚を隔てた薄暗がり。
それはいつのまにか真っ暗闇に変わった。
風を切る音がする。
ひゅうひゅう、ごうごう、と。
だけど怖くない、恐ろしくない。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
(´レ_` )「それができるまでは塔から出ないでほしい」
川 ゚ 々゚)「でもでも、外にでないと様子が分からないよ?」
(´レ_` )「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせる」
('A`)「ユキ?」
【+ 】ゞ゚)「なんですか、それは?」
聞いたことのない言葉だった。
すると神様は少し困ったような顔をして、
(´レ_` )「そうか、ユキを知らないか」
と呟いた。
(´レ_` )「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまう」
聞いているだけだと、なんだかけったいな物のように思えた。
やっぱり一度もそんなものは見たことも聞いたこともないし、きっとツンも父も、そのまたずっと昔にいた人もユキなんて知らないような気がした。
(´レ_` )「塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
私の考えに気付いたのか、苦笑いしながらそう言われた。
(´レ_` )「今言ったことを、みんなに伝えて欲しいんだ。今を生きている人だけでなく、これから生まれる人にもね」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
必ず伝えよう。
塔の出来事も、魔女の愛も、神様の約束も。
それから、娘の、巫女の結末も。
(´レ_` )「さぁ、目を瞑って」
ζ(‐ー‐*ζ「…………」
皮膚一枚を隔てた薄暗がり。
それはいつのまにか真っ暗闇に変わった。
風を切る音がする。
ひゅうひゅう、ごうごう、と。
だけど怖くない、恐ろしくない。
423 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:28:23 ID:c3X.ALzM0
だってみんながいる。
故郷に帰れる。
ツンに、会える。
「ところでデレ」
ζ(‐ー‐*ζ「?」
「もう君は、片羽の蝶である必要はない。君は、普通の人であるべきだ」
それは、どういう意味ですか?
そう問おうとして、私の意識は黒に飲まれていった。
……若草の匂いが溶け込んだ、優しい風を感じる。
春の風だ。
少し涼しくて、とても懐かしい。
ζ(゚ー゚*ζ「ん……」
頬を撫でる草の感触がくすぐったくて、私は起き上がった。
家々から少し離れたところにある、丘だった。
私以外のみんなはまだ眠っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(帰ってこれた)
故郷に。
出入口の国に。
それが嬉しくて、胸が暖かくなってざわめきが大きくなって、私は言葉にならないなにかを叫びながら笑った。
故郷に帰れる。
ツンに、会える。
「ところでデレ」
ζ(‐ー‐*ζ「?」
「もう君は、片羽の蝶である必要はない。君は、普通の人であるべきだ」
それは、どういう意味ですか?
そう問おうとして、私の意識は黒に飲まれていった。
……若草の匂いが溶け込んだ、優しい風を感じる。
春の風だ。
少し涼しくて、とても懐かしい。
ζ(゚ー゚*ζ「ん……」
頬を撫でる草の感触がくすぐったくて、私は起き上がった。
家々から少し離れたところにある、丘だった。
私以外のみんなはまだ眠っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(帰ってこれた)
故郷に。
出入口の国に。
それが嬉しくて、胸が暖かくなってざわめきが大きくなって、私は言葉にならないなにかを叫びながら笑った。
424 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:31:01 ID:c3X.ALzM0
ツン。
ツンに、会いたい。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ!くるう!オサムさん!」
冷えかけている体を揺さぶり私はみんなをたたき起こした。
('A`)「んん……デレ……?」
川 ‐々‐)「まだねむいよう……」
【+ 】ゞ゚)「くるう、起きなさい」
こんな時になっても、みんなはいつも通りだ。
目に見えて浮かれているのは私だけのようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「早く!早く帰ろ!」
(;'A`)「うおっ!?」
ドクオの手を取って、私は走り出した。
なぜだかはわからない。
だけど、くるうはきっとオサムさんと一緒の方がいいだろう。
もし彼女のほうが起きるのが早かったら、絶対にオサムさんを真っ先に起こしていたに違いない。
だから。
ζ( ー *ζ(なんとなく顔が熱いのは気のせいだ)
言い聞かせるように、胸のなかで呟いた。
ツンに、会いたい。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ!くるう!オサムさん!」
冷えかけている体を揺さぶり私はみんなをたたき起こした。
('A`)「んん……デレ……?」
川 ‐々‐)「まだねむいよう……」
【+ 】ゞ゚)「くるう、起きなさい」
こんな時になっても、みんなはいつも通りだ。
目に見えて浮かれているのは私だけのようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「早く!早く帰ろ!」
(;'A`)「うおっ!?」
ドクオの手を取って、私は走り出した。
なぜだかはわからない。
だけど、くるうはきっとオサムさんと一緒の方がいいだろう。
もし彼女のほうが起きるのが早かったら、絶対にオサムさんを真っ先に起こしていたに違いない。
だから。
ζ( ー *ζ(なんとなく顔が熱いのは気のせいだ)
言い聞かせるように、胸のなかで呟いた。
425 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:33:37 ID:c3X.ALzM0
家のデッキで、安楽椅子に座って誰かが編み物をしていた。
ξ ゚ー゚)ξ「…………」
少し大人びた表情の彼女は、昔と変わらないはずなのにどこか違って見えた。
私より幾分か、年を取っていそうな気がして、足が止まりかける。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「デレ」
ドクオの声に、思わず手をきゅっと握る。
暖かい。
('A`)「行こうよ」
だけど、と言いかけて私は考え直す。
たしかに私とツンの間で流れていた時間は違ったのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ(だから、なに?)
昔のままでもいいじゃないか。
私はあの時間のなかでしか年を取ることができなかったのだから。
('A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ゆっくりと歩き出す。
いつのまにか手をほどいてしまっていた。
どちらから手放したのかは分からない。
ドクオは私の手を求めなかったし、私もドクオの手を取らなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
叫んだ瞬間、ツンは手を止めて顔を上げた。
ξ ゚⊿゚)ξ「…………」
ξ ゚ー゚)ξ「…………」
少し大人びた表情の彼女は、昔と変わらないはずなのにどこか違って見えた。
私より幾分か、年を取っていそうな気がして、足が止まりかける。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「デレ」
ドクオの声に、思わず手をきゅっと握る。
暖かい。
('A`)「行こうよ」
だけど、と言いかけて私は考え直す。
たしかに私とツンの間で流れていた時間は違ったのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ(だから、なに?)
昔のままでもいいじゃないか。
私はあの時間のなかでしか年を取ることができなかったのだから。
('A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ゆっくりと歩き出す。
いつのまにか手をほどいてしまっていた。
どちらから手放したのかは分からない。
ドクオは私の手を求めなかったし、私もドクオの手を取らなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
叫んだ瞬間、ツンは手を止めて顔を上げた。
ξ ゚⊿゚)ξ「…………」
426 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:35:13 ID:c3X.ALzM0
信じられない、というような表情で私を見つめて、彼女は立ち上がった。
緩慢な、歩くような早さでこちらに駆け寄ってくる。
ζ(゚ー゚*ζ(体の調子が悪いのかな?)
少し心配になりながら、私は走った。
ξ ゚⊿゚)ξ「デレ……!」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
大きく広げられる腕。
思いきり、胸のなかに飛び込んだ。
……心なしかツンの胸が膨らんでいるような気がした。
そして、お腹も。
ξ ゚⊿゚)ξ「……あんた今失礼なこと考えたでしょ」
ζ(゚ー゚;ζ「気のせい気のせい」
笑って誤魔化す。
ツンはそれ以上なにも言わなかった。
ただ、私を抱き締めたまま、心底嬉しそうに
ξ ー⊿ー)ξ「おかえりなさい」
と、言った。
ζ(゚ー゚*ζ「……ただいま、お姉ちゃん」
そう言えたことが、とても嬉しかった。
緩慢な、歩くような早さでこちらに駆け寄ってくる。
ζ(゚ー゚*ζ(体の調子が悪いのかな?)
少し心配になりながら、私は走った。
ξ ゚⊿゚)ξ「デレ……!」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
大きく広げられる腕。
思いきり、胸のなかに飛び込んだ。
……心なしかツンの胸が膨らんでいるような気がした。
そして、お腹も。
ξ ゚⊿゚)ξ「……あんた今失礼なこと考えたでしょ」
ζ(゚ー゚;ζ「気のせい気のせい」
笑って誤魔化す。
ツンはそれ以上なにも言わなかった。
ただ、私を抱き締めたまま、心底嬉しそうに
ξ ー⊿ー)ξ「おかえりなさい」
と、言った。
ζ(゚ー゚*ζ「……ただいま、お姉ちゃん」
そう言えたことが、とても嬉しかった。
427 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:36:44 ID:c3X.ALzM0
――パタン、と本を閉じる。
(゚A゚* )「ふー……」
ため息をひとつ吐いて、椅子から立ち上がる。
ずらりと本が収まっている書架に向き合い、これがどこにしまわれていたのかを探した。
(゚A゚* )(まったくあいつは、出しっぱなしにして。どうしようもないんだから)
心の中でごちながら、あたしはかなり上のほうの段を眺めた。
(゚A゚* )「お、あった」
はしごを使って登らなくてはいけないような場所に、ちょうど一冊入るようなスペースがあった。
恐らくそこに入っていたのだろう。
少し離れた場所に放置してあったはしごを持ってきて、書架に掛け、本を小脇に抱えて登る。
ギシギシと木の軋む音が心臓に悪い。
かなり年季の入ったものだから、正直使いたくはないのだけど、材料となる木が最近軒並み腐り始めているから作ってもらうこともできないのであった。
(゚A゚* )「…………」
しっかりと片手ではしごに掴まりながら、もう片方の手で本を掴んで隙間に押し込める。
(゚A゚* )「む……」
なかなか入っていかない。
できれば隙間を広げて本が痛まないようにしまいたいのだが、それは難しいようだった。
(゚A゚* )「っ……この……!」
と、格闘して、ようやく入った時だった。
左足が落ちる。
いや。
踏ん張っているのに、しっかりはしごを掴んでいたのに、落ちていた。
(゚A゚* )「あ……?」
書架が視界から消える。
(゚A゚* )「ふー……」
ため息をひとつ吐いて、椅子から立ち上がる。
ずらりと本が収まっている書架に向き合い、これがどこにしまわれていたのかを探した。
(゚A゚* )(まったくあいつは、出しっぱなしにして。どうしようもないんだから)
心の中でごちながら、あたしはかなり上のほうの段を眺めた。
(゚A゚* )「お、あった」
はしごを使って登らなくてはいけないような場所に、ちょうど一冊入るようなスペースがあった。
恐らくそこに入っていたのだろう。
少し離れた場所に放置してあったはしごを持ってきて、書架に掛け、本を小脇に抱えて登る。
ギシギシと木の軋む音が心臓に悪い。
かなり年季の入ったものだから、正直使いたくはないのだけど、材料となる木が最近軒並み腐り始めているから作ってもらうこともできないのであった。
(゚A゚* )「…………」
しっかりと片手ではしごに掴まりながら、もう片方の手で本を掴んで隙間に押し込める。
(゚A゚* )「む……」
なかなか入っていかない。
できれば隙間を広げて本が痛まないようにしまいたいのだが、それは難しいようだった。
(゚A゚* )「っ……この……!」
と、格闘して、ようやく入った時だった。
左足が落ちる。
いや。
踏ん張っているのに、しっかりはしごを掴んでいたのに、落ちていた。
(゚A゚* )「あ……?」
書架が視界から消える。
428 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:38:28 ID:c3X.ALzM0
視界がゆっくり反転して、天井を見上げるようになる。
それは、段々遠ざかっていって。
(゚A゚* )「?」
ふんわりとなにかによって抱き止められた。
視界の端に写ったそれは、シーツかなにかのようだった。
川 ゚ -゚)「間に合ってよかった」
白い布に埋もれるあたしの顔を覗きこみながら、彼女は言った。
(゚A゚* )「クー!」
そうだ、魔法を使えるのは彼女だけである。
魔法、といっても昔話に出てくるような魔法ではなくて、物を浮かせる程度だと彼女は言うけどあたしからすればとてもすごいことだと思った。
だってあたしは、なにも持っていないからだ。
川 ゚ -゚)「ん」
差しのべられた手を掴み、体を起こす。
布はゆっくりと床に着地して、それからあたしは立ち上がった。
川 ゚ -゚)「はしごが折れてしまったんだね」
(゚A゚* )「ずいぶん年寄りだったし、しゃーないよ」
川 ゚ -゚)「ふむ」
それは、段々遠ざかっていって。
(゚A゚* )「?」
ふんわりとなにかによって抱き止められた。
視界の端に写ったそれは、シーツかなにかのようだった。
川 ゚ -゚)「間に合ってよかった」
白い布に埋もれるあたしの顔を覗きこみながら、彼女は言った。
(゚A゚* )「クー!」
そうだ、魔法を使えるのは彼女だけである。
魔法、といっても昔話に出てくるような魔法ではなくて、物を浮かせる程度だと彼女は言うけどあたしからすればとてもすごいことだと思った。
だってあたしは、なにも持っていないからだ。
川 ゚ -゚)「ん」
差しのべられた手を掴み、体を起こす。
布はゆっくりと床に着地して、それからあたしは立ち上がった。
川 ゚ -゚)「はしごが折れてしまったんだね」
(゚A゚* )「ずいぶん年寄りだったし、しゃーないよ」
川 ゚ -゚)「ふむ」
429 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:39:53 ID:c3X.ALzM0
そう言いながら、クーははしごの残骸から書架へと視線を移す。
川 ゚ -゚)「のーが本を読むなんて、珍しいな」
槍でも降ってくるんじゃないかとからかう彼女に、
(゚A゚* )「シーンのやつが出しっぱにしてたから、なんとなく読んでたのさぁ」
と従兄弟の名前をあげるとクーは納得したようだった。
(゚A゚* )「というか全然読まないわけでもないし」
小さい頃はここでシーンと一緒に本を読んでいた。
あたしのご先祖様の冒険譚はあらかた覚えている。
同じ話を何回も読む気にはあまりなれなかった。
川 ゚ -゚)「どのあたりを読んだんだ?」
(゚A゚* )「いっちばん終わりの方」
川 ゚ -゚)「ああ、悪い魔女と戦うところか」
(゚A゚* )「そーそー」
部屋の隅に置いてあった箒と塵取りを手に取りながら答える。
はしごの破片を集めるためだ。
(゚A゚* )「でもさぁ、本当にここは塔の中なのかなぁ」
あの話のなかでは、あたしたちの暮らしている国は出入口の国というところで、外界に繋がる扉と巫女の見た夢が反映された世界に繋がる扉があるのだという。
だけど、外界に繋がる扉とやらは今は蔦に覆われてしまって開けられない。
上層へと繋がると言われていた扉はまだ残ってはいるけど、開けてみたら真っ白な壁が立ちはだかっていて、一歩たりとも進むことなんて出来やしなかった。
川 ゚ -゚)「のーが本を読むなんて、珍しいな」
槍でも降ってくるんじゃないかとからかう彼女に、
(゚A゚* )「シーンのやつが出しっぱにしてたから、なんとなく読んでたのさぁ」
と従兄弟の名前をあげるとクーは納得したようだった。
(゚A゚* )「というか全然読まないわけでもないし」
小さい頃はここでシーンと一緒に本を読んでいた。
あたしのご先祖様の冒険譚はあらかた覚えている。
同じ話を何回も読む気にはあまりなれなかった。
川 ゚ -゚)「どのあたりを読んだんだ?」
(゚A゚* )「いっちばん終わりの方」
川 ゚ -゚)「ああ、悪い魔女と戦うところか」
(゚A゚* )「そーそー」
部屋の隅に置いてあった箒と塵取りを手に取りながら答える。
はしごの破片を集めるためだ。
(゚A゚* )「でもさぁ、本当にここは塔の中なのかなぁ」
あの話のなかでは、あたしたちの暮らしている国は出入口の国というところで、外界に繋がる扉と巫女の見た夢が反映された世界に繋がる扉があるのだという。
だけど、外界に繋がる扉とやらは今は蔦に覆われてしまって開けられない。
上層へと繋がると言われていた扉はまだ残ってはいるけど、開けてみたら真っ白な壁が立ちはだかっていて、一歩たりとも進むことなんて出来やしなかった。
430 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:41:58 ID:c3X.ALzM0
だから、この話を信じる人はあたしも含めてあんまりいなかった。
ただのおとぎ話だという人もいるし、はなから作り話だとバカにする人もいた。
川 ゚ -゚)「わたしは、信じるよ」
クーはぽつりと呟いた。
川 ゚ -゚)「ひいひいおばあちゃんが、そう言ってたから」
(゚A゚* )「あー……トール婆はくるうさんに会ったことあるんだっけ?」
川 ゚ -゚)「そうそう」
(゚A゚* )「…………」
(゚A゚* )(ご先祖様と会った人と話が出来ていたら、あたしもそう思うようになったのかなぁ)
それか、クーみたいに能力の名残みたいなものがあったら……。
と、そこまで考えてあたしには双子の姉も弟もいないことを思い出した。
バタフライエフェクトは、双子にしか使えないのだ。
(゚A゚* )(一人っ子だし、従兄弟じゃだめだよねー)
箒に寄りかかって、ため息をついた時だった。
(;・-・ )「のーちゃん!大変!!」
シーンが珍しく大声でそう言いながら部屋に入ってきた。
(゚A゚* )「あー!あんたねえ、本出しっぱなしにしてくんじゃないよ!」
(;・-・ )「そ、それはごめんだけど……。外!外!」
川 ゚ -゚)「外?」
(;・-・ )「冷たい雨が降ってきたの!」
そう言われて、あたしは外に洗濯物を干していたことを思い出した。
(゚A゚; )「ああああ!洗濯物濡れる!!」
川;゚ -゚)「そんな、さっきまで晴れてただろう?」
そう言いながら、クーが窓のカーテンを開けた。
ただのおとぎ話だという人もいるし、はなから作り話だとバカにする人もいた。
川 ゚ -゚)「わたしは、信じるよ」
クーはぽつりと呟いた。
川 ゚ -゚)「ひいひいおばあちゃんが、そう言ってたから」
(゚A゚* )「あー……トール婆はくるうさんに会ったことあるんだっけ?」
川 ゚ -゚)「そうそう」
(゚A゚* )「…………」
(゚A゚* )(ご先祖様と会った人と話が出来ていたら、あたしもそう思うようになったのかなぁ)
それか、クーみたいに能力の名残みたいなものがあったら……。
と、そこまで考えてあたしには双子の姉も弟もいないことを思い出した。
バタフライエフェクトは、双子にしか使えないのだ。
(゚A゚* )(一人っ子だし、従兄弟じゃだめだよねー)
箒に寄りかかって、ため息をついた時だった。
(;・-・ )「のーちゃん!大変!!」
シーンが珍しく大声でそう言いながら部屋に入ってきた。
(゚A゚* )「あー!あんたねえ、本出しっぱなしにしてくんじゃないよ!」
(;・-・ )「そ、それはごめんだけど……。外!外!」
川 ゚ -゚)「外?」
(;・-・ )「冷たい雨が降ってきたの!」
そう言われて、あたしは外に洗濯物を干していたことを思い出した。
(゚A゚; )「ああああ!洗濯物濡れる!!」
川;゚ -゚)「そんな、さっきまで晴れてただろう?」
そう言いながら、クーが窓のカーテンを開けた。
431 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:43:19 ID:c3X.ALzM0
(゚A゚* )「!」
ねずみ色の暗い空。
さっきまで輝いていた太陽は、雲に覆われてしまったらしい。
その代わりに、ちらちらと灰のようなものが空から落ちていた。
(゚A゚* )「…………」
窓を開ける。
感じたこともないような冷たさの風が吹き込み、鳥肌が立つ。
手を伸ばして、それに触れる。
小さなそれは、よくみると灰色ではなくて白色であった。
よく手にとって見ようとしたけど、それは水に戻ってしまった。
(゚A゚* )「……つめたい」
思わず呟いて、思い出す。
――「君たちを送り届けた後に、塔の外の世界を元通りにする。荒れ地を整え、動物や植物を繁殖させ、再び人間が暮らせるようにしてあげよう」
神様は、さらにこう付け加えました。
「それができるまでは塔から出ないでほしい」
困ったような顔で、くるうは言います。
「でも神様、外にでないと様子が分かりません」
それに神様は答えます。
「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせよう」
「ユキ?」
「なんですか、それは?」
ドクオとオサムは戸惑ったように言いました。
聞いたことのない言葉だったので、想像がつかなかったのです。
神様は少し困ったような顔をして、
「そうか、ユキを知らないか」
と呟いて、こう説明しました。
「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまうんだ。塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
ねずみ色の暗い空。
さっきまで輝いていた太陽は、雲に覆われてしまったらしい。
その代わりに、ちらちらと灰のようなものが空から落ちていた。
(゚A゚* )「…………」
窓を開ける。
感じたこともないような冷たさの風が吹き込み、鳥肌が立つ。
手を伸ばして、それに触れる。
小さなそれは、よくみると灰色ではなくて白色であった。
よく手にとって見ようとしたけど、それは水に戻ってしまった。
(゚A゚* )「……つめたい」
思わず呟いて、思い出す。
――「君たちを送り届けた後に、塔の外の世界を元通りにする。荒れ地を整え、動物や植物を繁殖させ、再び人間が暮らせるようにしてあげよう」
神様は、さらにこう付け加えました。
「それができるまでは塔から出ないでほしい」
困ったような顔で、くるうは言います。
「でも神様、外にでないと様子が分かりません」
それに神様は答えます。
「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせよう」
「ユキ?」
「なんですか、それは?」
ドクオとオサムは戸惑ったように言いました。
聞いたことのない言葉だったので、想像がつかなかったのです。
神様は少し困ったような顔をして、
「そうか、ユキを知らないか」
と呟いて、こう説明しました。
「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまうんだ。塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
432 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:45:01 ID:c3X.ALzM0
(゚A゚* )「!!」
ユキだ。
ユキが、降ったんだ。
(゚A゚* )「二人とも、早く行こう!」
川;゚ -゚)「どこに?」
(゚A゚* )「蔦の扉!これ、ユキなんだよ!」
( ・-・ )「!」
洗濯物なんかあとでいい。
濡れてしまったならまた洗えばいいのだ。
あたしたち三人は外へ飛び出して、とにかく走った。
他の人たちはみんなユキに怯えて家のなかに入っていたり、不思議そうにそれを眺めていた。
誰一人として、民話のことを思い浮かべている人はいないようだった。
(゚A゚* )(ああ)
民話は、サーガは、終わっていなかった。
あたしたちとデレたちは繋がっていた。
それがなんだか嬉しくて、息が切れても走り続けて。
川 ゚ -゚)「扉……」
息も絶え絶えに、クーが呟く。
ユキだ。
ユキが、降ったんだ。
(゚A゚* )「二人とも、早く行こう!」
川;゚ -゚)「どこに?」
(゚A゚* )「蔦の扉!これ、ユキなんだよ!」
( ・-・ )「!」
洗濯物なんかあとでいい。
濡れてしまったならまた洗えばいいのだ。
あたしたち三人は外へ飛び出して、とにかく走った。
他の人たちはみんなユキに怯えて家のなかに入っていたり、不思議そうにそれを眺めていた。
誰一人として、民話のことを思い浮かべている人はいないようだった。
(゚A゚* )(ああ)
民話は、サーガは、終わっていなかった。
あたしたちとデレたちは繋がっていた。
それがなんだか嬉しくて、息が切れても走り続けて。
川 ゚ -゚)「扉……」
息も絶え絶えに、クーが呟く。
433 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:49:52 ID:c3X.ALzM0
蔦だらけだったはずなのに、それはみんな枯れて地面に落ちていた。
そして、扉がほんのすこしだけ開いていた。
( ・-・ )「……僕、少し怖いな」
川 ゚ -゚)「うん、わたしも」
不安そうな二人の声に、
(゚A゚* )「大丈夫」
あたしはなるべく明るく答えながら、扉に手を掛けた。
( ・-・ )「…………」
クーとシーンが顔を見合わせて、ドアノブを握る。
暖かい。
三人一緒なら、怖いものはないような気がした。
ゆっくりと、重い扉を押しながら考える。
(゚A゚* )(もしも、世界が元通りになったなら、)
あたしも、それを後世に伝えたい。
そうして、いろんな人に見てもらうのだ。
ギィ、と重たい音をたてながら、扉が開く。
川 ゚ -゚)「!」
( ・-・ )「わぁ……」
(゚A゚* )「行くよ、二人とも!」
そうして、あたしたちは塔の外へ出ていった。
サーガは、終わらない。
そして、扉がほんのすこしだけ開いていた。
( ・-・ )「……僕、少し怖いな」
川 ゚ -゚)「うん、わたしも」
不安そうな二人の声に、
(゚A゚* )「大丈夫」
あたしはなるべく明るく答えながら、扉に手を掛けた。
( ・-・ )「…………」
クーとシーンが顔を見合わせて、ドアノブを握る。
暖かい。
三人一緒なら、怖いものはないような気がした。
ゆっくりと、重い扉を押しながら考える。
(゚A゚* )(もしも、世界が元通りになったなら、)
あたしも、それを後世に伝えたい。
そうして、いろんな人に見てもらうのだ。
ギィ、と重たい音をたてながら、扉が開く。
川 ゚ -゚)「!」
( ・-・ )「わぁ……」
(゚A゚* )「行くよ、二人とも!」
そうして、あたしたちは塔の外へ出ていった。
サーガは、終わらない。
434 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:55:45 ID:c3X.ALzM0
しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
>>331 第十二階層「常闇の国」
>>352 断章「出入口の国」
>>353 最上階「神さまに愛された娘」
>>381 断章「出入口の国」
>>382 最上階「塔と民話のサーガ」
塔と民話のサーガはこれでおしまいです
お題提供、支援や乙をしてくれた方々ありがとうございました
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
>>331 第十二階層「常闇の国」
>>352 断章「出入口の国」
>>353 最上階「神さまに愛された娘」
>>381 断章「出入口の国」
>>382 最上階「塔と民話のサーガ」
塔と民話のサーガはこれでおしまいです
お題提供、支援や乙をしてくれた方々ありがとうございました
435 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:02:36 ID:od8.lJcs0
完走乙!!!
すごく面白かったよ
すごく面白かったよ
436 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:30:03 ID:Vr9pfsqM0
完結乙!
最初から読み返してくる
最初から読み返してくる
437 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:17:38 ID:7qSCJiHQ0
完結乙!
デレとドクオは結婚したのかな。よかったな
デレとドクオは結婚したのかな。よかったな
438 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:18:57 ID:D.Nzt77g0
よかった
439 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 21:41:05 ID:Waj0ZZao0
乙
なんか色々すとんと納得がいった。
なんか色々すとんと納得がいった。
440 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 22:57:43 ID:1P8KaeIsC
全体的に満足感と寂しさが残るお話だった
蛇足な疑問なんだけど塔の外がただの荒野なら何でクルウ両親は帰って来れなかったの?
蛇足な疑問なんだけど塔の外がただの荒野なら何でクルウ両親は帰って来れなかったの?
441 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 23:22:29 ID:c3X.ALzM0
442 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 03:27:18 ID:39EdcuiA0
おお、乙
神様も粋なことするぜ
神様も粋なことするぜ
443 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 16:08:55 ID:AjVJIAX.0
乙!
本当に待っててよかった!
本当に待っててよかった!
444 :名も無きAAのようです:2013/10/02(水) 15:19:31 ID:AgFFnU32O
一気読みした。面白かった
映画一本観終わったような読後感だ
色々とダークな部分はあったのに、なんだか清々しい
乙乙! デレとドクオ、オサムとくるうがどうなったか気になる
はくちのくには、白痴と白地と白血と吐く血の他に何か掛かってるんだろうか
映画一本観終わったような読後感だ
色々とダークな部分はあったのに、なんだか清々しい
乙乙! デレとドクオ、オサムとくるうがどうなったか気になる
はくちのくには、白痴と白地と白血と吐く血の他に何か掛かってるんだろうか
転載元
塔と民話のサーガのようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1349170489/