ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第7話
- 2014/07/05
- 16:16
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
81 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:25:53 ID:UYi6L9jc0
82 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:28:17 ID:UYi6L9jc0
83 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:30:14 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「べつに急いでもないからいいんだけど」
夢と分かると独り言も大きい。
見たところ人通りはないし、誰にも聞かれてないだろう。
特に目的地も決めず、適当に歩みを進めると、住宅街から抜けて大きな川が見えてきた。
その河川敷に、うずくまるように三角座りする女子高生が見えた。
あの金髪は、間違いない。
ツンは無遠慮に女子高生に近づき、無言で隣に座った。
84 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:31:30 ID:UYi6L9jc0
85 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:33:03 ID:UYi6L9jc0
ζ(;ー;*ζ「………何?」
無言で見つめ続けられることに耐えかねた女子高生は、声を絞り出した。
自分が泣き顔だったことを気にしてか、伏し目がちだ。
ξ゚⊿゚)ξノ「やぁ、また会ったね」
しかしやっぱりツンは意に介さず、意味深な挨拶をするのみだった。
ζ(つー;*ζ「………グスッ」
女子高生は幾らか考えた素振りを見せてから涙を拭った。
86 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:34:16 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「…そうだね。なんか、前にもこんなことあった気がする」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「…あんた、成長してないんだね」
ξ゚⊿゚)ξ「いやお前もな」
意外にも、覚えてたらしかった。
87 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:35:22 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
二人は無言で肩を並べながら川をぼんやり眺めていた。
前回のように、自分の存在を説明する手間がないというものはそれはそれで話の切り出し方に困るものだ。
例によって今回ツンがここにたどり着いたのも、自分の意志とはあまり関係のない不可抗力だったから。
着いたら着いたでこの世界に生きる自分を訪ねたことは事実だけども、いざ顔を合わせたところで、これといった目的や用件など持ち合わせていないのだ。
ついでに、財布も持ち合わせてなく完全な手ぶらなので、缶コーヒーでも買って間を持たせるなどの手段も選べない。
ξ゚⊿゚)ξ「……あ。そういえば」
ツンは一つ思い出したことを口にした。
88 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:36:27 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「今日って何日?」
ζ(゚ー゚*ζ「は?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだってさ、あたしもうすぐ誕生日なんじゃないかと思って」
ζ(゚ー゚;ζ「………はぁ」
女子高生は、アメリカナイズを思わせる深い大袈裟な溜め息をついた。
ζ(゚ー゚*ζ「まずはさ、とりあえず目の前でうら若き女子高生が泣いてたら先にそっちが気にならない?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー…いやまぁ、うーん……」
.
89 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:37:45 ID:UYi6L9jc0
ツンのその煮え切らない返事に、女子高生は一つの仮説を立てる。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、もしかして覚えてた?この日この場所で泣いてた理由」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ?」
ζ(゚ー゚*ζ「即答かよ。ですけど何か?みたいな顔すんなよ」
なんだか舌打ちが聞こえた気がしたが、女子高生はまるで無表情だった。
ξ゚⊿゚)ξ「でもなんか思い出しそうな……なーんか煮え切らない感じなのよね…」
ζ(゚ー゚*ζ「本人もそれ思ってたんだ」
.
90 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:39:08 ID:UYi6L9jc0
91 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:41:06 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「あーーーったく嫌になっちゃうよなぁ…」
女子高生は、弱々しい声でうなだれた。
膝を抱え込んだその指先や手の甲には、猫に引っ掻かれたような細い切り傷や絆創膏が目立つ。痛々しい手先だ。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ(……あぁ。そうだ)
焦点が合ったようなツンの表情に気づいた女子高生は、『思い出した?』と目で訴えかけた。
92 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:42:46 ID:UYi6L9jc0
昔から、手先は器用だった。
だから今でもその気にさえなれば、家事や自炊もそつなくこなせるほど、手作業において失敗することはあまりない。
そのルーツは、入院中の遊び相手だった、お城や飛行機のプラモデルなどの細かい作業に慣れたことに起因してると思う。
それを生かして、高校では美術部に入り主に彫刻に精を出した。
木や石に彫刻刀を入れ、形にしていくプロセスの中では、余計なことや考えたくないことは一切考えずにいられた。
93 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:44:14 ID:UYi6L9jc0
94 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:45:22 ID:UYi6L9jc0
o川*^ー^)o
今となっては、その頃の友達ほとんどに見限られ
『仲間』や『友達』、この歳になると『幼なじみ』という単語を振りかざして人を縛る、どうしようもないかまってちゃんだ。
絶縁しようものなら、何をしでかすかわからない。ある日突然後ろから刺されてもおかしくはないだろう。
それでも、当時のツンには嬉しかった。
o川*^ー^)o『おかえり』
勇気を出したから、もらえた言葉。
それで報われた気がしてた。
95 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:46:28 ID:UYi6L9jc0
今でも迷惑は被ってる。できることなら関わりたくない。
でも当時、完全に袖を分かつにはいいチャンスだと思った。
あいつとはもう違う道を歩いて、そこがツンもまだ知らぬ素晴らしい世界ならどんなに素敵だろう。
それを目指して、頑張ってたつもりだったが
.
96 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:47:39 ID:UYi6L9jc0
母が、倒れた。
過労だったそうだ。
.
97 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:49:08 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
薄々気づいてた。
三年間の入院、治療費、個室に入り三回も手術して、退院後もリハビリを続けて、そして。
それが、家計を少しずつ圧迫していってるということに。
ζ(;ー;*ζ「…………」
高校生には重すぎた。
美大どころか受験云々も怪しくなってきたとか、そんなことより………
.
98 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:50:11 ID:UYi6L9jc0
99 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 18:50:32 ID:n9X2ib9I0
100 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:51:22 ID:UYi6L9jc0
ζ(ーζ「…………」
頑張れ?諦めるな?まだ若いんだから?
いくらでも道はあるんだから―――?
22歳になった今でも、当時の自分にかけてあげられる言葉はなかった。
.
101 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:52:38 ID:UYi6L9jc0
22歳になった今だから、体を壊した母がもう元気になることはないのも知ってるし
今現実には、その母は既に生きてないことを知ってるから。
.
102 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:54:01 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「…今、お母さんは?」
ζ(゚ー゚ζ「…入院中。今日は、会いたくない」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
そうか。
今やっと、全て思い出した。
.
103 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:55:30 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚ζ「今日何日か、知りたい?」
人生最大の挫折をして
今まで生きてきた中でこんなに心細かったことなど、なかった。
それが
.
104 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:56:37 ID:UYi6L9jc0
ζ(ーζ「今日なんだよ……誕生日」
17歳に、なった日だった。
.
106 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 19:06:25 ID:CAoa7jiE0
107 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 19:06:32 ID:JqKzDjSo0
108 : 名も無きAAのようです :2013/08/15(木) 00:56:34 ID:5m2L7AWg0
◆第7話◆
XX19年 T月
例によっての薄着のツンには、少し肌寒かった。
でもこの季節は、どこにいても間違えようのない匂いがする。
この匂いがする季節はすなわち、ツンの誕生日が近いことを知らせてくれるのだ。
ξ*゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ(でも、何歳の?)
.
XX19年 T月
例によっての薄着のツンには、少し肌寒かった。
でもこの季節は、どこにいても間違えようのない匂いがする。
この匂いがする季節はすなわち、ツンの誕生日が近いことを知らせてくれるのだ。
ξ*゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ(でも、何歳の?)
.
82 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:28:17 ID:UYi6L9jc0
今ツンが踏み締めてる世界が、現実のものではないことはわかってる。
夢から覚めた瞬間は覚えてないことがほとんどだが、ひとたび夢の世界に入ってしまうと、その中で起きることや感じること全てが相変わらずリアルだ。
しかも前回、前々回で起こったことや、誰と何を話したかも踏襲したまま今この場に立っている。
この風景も例外なく、少なからず馴染みのある場所に違いない。
というか地元圏内だ。
社会人になってから地元を離れたから、ここに拠点を置いてるということは、この世界に住む自分はまだ学生なのだろう。
しかし、前回の病院前やら小学校やらとは違い、住宅が並ぶだけの土地にポツンと立たされたところで、どこに向かえば自分に会えるのか、検討がつかない。
行動範囲内ゆえに的が広すぎるのだ。
夢から覚めた瞬間は覚えてないことがほとんどだが、ひとたび夢の世界に入ってしまうと、その中で起きることや感じること全てが相変わらずリアルだ。
しかも前回、前々回で起こったことや、誰と何を話したかも踏襲したまま今この場に立っている。
この風景も例外なく、少なからず馴染みのある場所に違いない。
というか地元圏内だ。
社会人になってから地元を離れたから、ここに拠点を置いてるということは、この世界に住む自分はまだ学生なのだろう。
しかし、前回の病院前やら小学校やらとは違い、住宅が並ぶだけの土地にポツンと立たされたところで、どこに向かえば自分に会えるのか、検討がつかない。
行動範囲内ゆえに的が広すぎるのだ。
83 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:30:14 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「べつに急いでもないからいいんだけど」
夢と分かると独り言も大きい。
見たところ人通りはないし、誰にも聞かれてないだろう。
特に目的地も決めず、適当に歩みを進めると、住宅街から抜けて大きな川が見えてきた。
その河川敷に、うずくまるように三角座りする女子高生が見えた。
あの金髪は、間違いない。
ツンは無遠慮に女子高生に近づき、無言で隣に座った。
84 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:31:30 ID:UYi6L9jc0
Σζ(;ー;*ζ「!?」
ほとんど密着に近い隣人に気づき、驚いた女子高生は思わず顔を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ(……高校生ぐらいにもなればいい加減今ぐらいのあたしの面影ありそうなもんだけど……)
ξ゚⊿゚)ξ(あんたまだデレなのかよ)
.
ほとんど密着に近い隣人に気づき、驚いた女子高生は思わず顔を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ(……高校生ぐらいにもなればいい加減今ぐらいのあたしの面影ありそうなもんだけど……)
ξ゚⊿゚)ξ(あんたまだデレなのかよ)
.
85 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:33:03 ID:UYi6L9jc0
ζ(;ー;*ζ「………何?」
無言で見つめ続けられることに耐えかねた女子高生は、声を絞り出した。
自分が泣き顔だったことを気にしてか、伏し目がちだ。
ξ゚⊿゚)ξノ「やぁ、また会ったね」
しかしやっぱりツンは意に介さず、意味深な挨拶をするのみだった。
ζ(つー;*ζ「………グスッ」
女子高生は幾らか考えた素振りを見せてから涙を拭った。
86 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:34:16 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「…そうだね。なんか、前にもこんなことあった気がする」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「…あんた、成長してないんだね」
ξ゚⊿゚)ξ「いやお前もな」
意外にも、覚えてたらしかった。
87 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:35:22 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
二人は無言で肩を並べながら川をぼんやり眺めていた。
前回のように、自分の存在を説明する手間がないというものはそれはそれで話の切り出し方に困るものだ。
例によって今回ツンがここにたどり着いたのも、自分の意志とはあまり関係のない不可抗力だったから。
着いたら着いたでこの世界に生きる自分を訪ねたことは事実だけども、いざ顔を合わせたところで、これといった目的や用件など持ち合わせていないのだ。
ついでに、財布も持ち合わせてなく完全な手ぶらなので、缶コーヒーでも買って間を持たせるなどの手段も選べない。
ξ゚⊿゚)ξ「……あ。そういえば」
ツンは一つ思い出したことを口にした。
88 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:36:27 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「今日って何日?」
ζ(゚ー゚*ζ「は?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだってさ、あたしもうすぐ誕生日なんじゃないかと思って」
ζ(゚ー゚;ζ「………はぁ」
女子高生は、アメリカナイズを思わせる深い大袈裟な溜め息をついた。
ζ(゚ー゚*ζ「まずはさ、とりあえず目の前でうら若き女子高生が泣いてたら先にそっちが気にならない?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー…いやまぁ、うーん……」
.
89 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:37:45 ID:UYi6L9jc0
ツンのその煮え切らない返事に、女子高生は一つの仮説を立てる。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、もしかして覚えてた?この日この場所で泣いてた理由」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ?」
ζ(゚ー゚*ζ「即答かよ。ですけど何か?みたいな顔すんなよ」
なんだか舌打ちが聞こえた気がしたが、女子高生はまるで無表情だった。
ξ゚⊿゚)ξ「でもなんか思い出しそうな……なーんか煮え切らない感じなのよね…」
ζ(゚ー゚*ζ「本人もそれ思ってたんだ」
.
90 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:39:08 ID:UYi6L9jc0
高校生。金髪。
おそらくツンの感情の起伏が一番激しかった時期だ。
付き合いこそ完全には切れなかったものの、違う高校に進学したあのメンヘラに触発されたわけでも感化されたわけでもないが
まだそいつの手綱を握らされてた頃ならば、心当たりがありすぎる。
でも一つ一つは思い出すに足るほどのことじゃないような気がして、もっと他にあるんじゃないかとも思うが…
おそらくツンの感情の起伏が一番激しかった時期だ。
付き合いこそ完全には切れなかったものの、違う高校に進学したあのメンヘラに触発されたわけでも感化されたわけでもないが
まだそいつの手綱を握らされてた頃ならば、心当たりがありすぎる。
でも一つ一つは思い出すに足るほどのことじゃないような気がして、もっと他にあるんじゃないかとも思うが…
91 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:41:06 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「あーーーったく嫌になっちゃうよなぁ…」
女子高生は、弱々しい声でうなだれた。
膝を抱え込んだその指先や手の甲には、猫に引っ掻かれたような細い切り傷や絆創膏が目立つ。痛々しい手先だ。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ(……あぁ。そうだ)
焦点が合ったようなツンの表情に気づいた女子高生は、『思い出した?』と目で訴えかけた。
92 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:42:46 ID:UYi6L9jc0
昔から、手先は器用だった。
だから今でもその気にさえなれば、家事や自炊もそつなくこなせるほど、手作業において失敗することはあまりない。
そのルーツは、入院中の遊び相手だった、お城や飛行機のプラモデルなどの細かい作業に慣れたことに起因してると思う。
それを生かして、高校では美術部に入り主に彫刻に精を出した。
木や石に彫刻刀を入れ、形にしていくプロセスの中では、余計なことや考えたくないことは一切考えずにいられた。
93 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:44:14 ID:UYi6L9jc0
一つ、また一つと作品を仕上げていったが、もちろん怪我もたくさんしたし、他人と勝負できるほどの特別な才覚が開花したわけでもない。
でも高校生にもなり進路希望を問われると、まず視野に入ったのが美術関係だった。
興味があるから。
突き詰めたいから。
それだけで充分だ。
欲しいものがある時に、手を伸ばす勇気を出した代わりに得られるものの大きさを、ツンは知っていたから。
でも高校生にもなり進路希望を問われると、まず視野に入ったのが美術関係だった。
興味があるから。
突き詰めたいから。
それだけで充分だ。
欲しいものがある時に、手を伸ばす勇気を出した代わりに得られるものの大きさを、ツンは知っていたから。
94 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:45:22 ID:UYi6L9jc0
o川*^ー^)o
今となっては、その頃の友達ほとんどに見限られ
『仲間』や『友達』、この歳になると『幼なじみ』という単語を振りかざして人を縛る、どうしようもないかまってちゃんだ。
絶縁しようものなら、何をしでかすかわからない。ある日突然後ろから刺されてもおかしくはないだろう。
それでも、当時のツンには嬉しかった。
o川*^ー^)o『おかえり』
勇気を出したから、もらえた言葉。
それで報われた気がしてた。
95 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:46:28 ID:UYi6L9jc0
今でも迷惑は被ってる。できることなら関わりたくない。
でも当時、完全に袖を分かつにはいいチャンスだと思った。
あいつとはもう違う道を歩いて、そこがツンもまだ知らぬ素晴らしい世界ならどんなに素敵だろう。
それを目指して、頑張ってたつもりだったが
.
96 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:47:39 ID:UYi6L9jc0
母が、倒れた。
過労だったそうだ。
.
97 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:49:08 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
薄々気づいてた。
三年間の入院、治療費、個室に入り三回も手術して、退院後もリハビリを続けて、そして。
それが、家計を少しずつ圧迫していってるということに。
ζ(;ー;*ζ「…………」
高校生には重すぎた。
美大どころか受験云々も怪しくなってきたとか、そんなことより………
.
98 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:50:11 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「…あの頃入院してた時、楽しいことなんて一つもなかったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「入院してたからこそ身についたこの器用さも、後になって無駄じゃなかったんだって、思ったけど」
ξ⊿)ξ「結果的にその時あったことが、進路を絶つ原因になっちゃって」
ξ⊿)ξ「…お母さんの体まで……壊しちゃって…」
そうだ。そうだったのだ。
高校生にして初めて、人生に絶望した日だった。
.
ξ゚⊿゚)ξ「入院してたからこそ身についたこの器用さも、後になって無駄じゃなかったんだって、思ったけど」
ξ⊿)ξ「結果的にその時あったことが、進路を絶つ原因になっちゃって」
ξ⊿)ξ「…お母さんの体まで……壊しちゃって…」
そうだ。そうだったのだ。
高校生にして初めて、人生に絶望した日だった。
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99 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 18:50:32 ID:n9X2ib9I0
なんと……
100 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:51:22 ID:UYi6L9jc0
ζ(ーζ「…………」
頑張れ?諦めるな?まだ若いんだから?
いくらでも道はあるんだから―――?
22歳になった今でも、当時の自分にかけてあげられる言葉はなかった。
.
101 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:52:38 ID:UYi6L9jc0
22歳になった今だから、体を壊した母がもう元気になることはないのも知ってるし
今現実には、その母は既に生きてないことを知ってるから。
.
102 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:54:01 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「…今、お母さんは?」
ζ(゚ー゚ζ「…入院中。今日は、会いたくない」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
そうか。
今やっと、全て思い出した。
.
103 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:55:30 ID:UYi6L9jc0
ζ(゚ー゚ζ「今日何日か、知りたい?」
人生最大の挫折をして
今まで生きてきた中でこんなに心細かったことなど、なかった。
それが
.
104 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/14(水) 18:56:37 ID:UYi6L9jc0
ζ(ーζ「今日なんだよ……誕生日」
17歳に、なった日だった。
.
106 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 19:06:25 ID:CAoa7jiE0
おつ
107 : 名も無きAAのようです :2013/08/14(水) 19:06:32 ID:JqKzDjSo0
乙
面白い
面白い
108 : 名も無きAAのようです :2013/08/15(木) 00:56:34 ID:5m2L7AWg0
乙、次回も楽しみにしてます