ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第24話
- 2014/07/13
- 19:00
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
529 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:42:11 ID:q5DmYYDA0
530 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:43:21 ID:q5DmYYDA0
ドクオの音頭は、セオリー通りでなんの捻りもなかった。
しかし二次会ともなると、それまでの厳かな儀式の空気が一変して、気のおけない仲間同士の単なる飲み会の空気になった。
二次会の会場は、以前ブーンがドクオと一緒に働いていたあのダイニングバーだった。
既にその店は退職してるブーンは、独立してシェフ兼経営者となった。
雇われてる頃から定評のあった料理の腕はもちろん、持ち前の人当たりの良さで獲得した常連客や同業者のコネクションなんかも手伝ってか、ブーンの店はそこそこの盛り上がりを見せている。
531 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:44:17 ID:q5DmYYDA0
結果としてその成功が、二人が結婚に踏み切れたきっかけでもあった。
絶対の繁盛が約束された商売ではないが、ブーンが夢を叶えることがツンにとっても幸せであることは確かで
お互いに守るものができた二人が身を固めることに、それ以上の理屈は必要なかった。
.
532 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:45:19 ID:q5DmYYDA0
前の職場のオーナーの計らいで貸し切りにしてもらったはいいが、ブーンとツン、二人の友人を呼んでも20人と満たしていない。
いつだかの周年パーティーの時なんかより大幅に人数は少ないはずなのに、熱気だけはあの頃の窮屈とさえ感じたボルテージに引けをとらなかった。
o川*゚ー゚)o「ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!写真撮ろ、写真ー!!ねぇハインーーー!!」
こんなおめでたい席に…とも思ったが、こんなおめでたい席だからこそ、一応キュートも呼んでおいた。
しかし、さすがに厳かな席には呼びたくないテンションだし、ブーンのご両親にもあんなのが友達だなんて思われても心外なので、彼らとも円滑に付き合ってくためにもキュートは二次会から呼んだ。
だからキュートは駆け付けなはずなのだが、披露宴からずっと参加してた友人らの余韻を凌駕するかのようなハイテンションである。
いい加減動きにくいウェディングドレスにもうんざりしてきた頃のそのテンションは、はっきり言って暑苦しい。
まぁよほど誰かに迷惑かけるようならすぐつまみ出そうと大目に見て、今日は乗り切ろうと思う。
.
533 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:46:36 ID:q5DmYYDA0
('、`*川「ツンちゃんよかったね!」
从'ー'从「ツンちゃんおめでと~!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。しかしあんたらも祝福要因ね」
ツンは、小学生の頃も似たようなことを言われた気がする同級生に囲まれていた。
彼女らとは違い少々道を外したにもかかわらず、呼べばこうして駆け付けてくれる、貴重な友人である。
普段から密に連絡を取り合ってるわけではないが、久しぶりなりに話は尽きない。
.
534 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:47:33 ID:q5DmYYDA0
('A`)「しかしお前も勢いに乗るなぁ」
(・∀ ・)「さっさと出し抜けやがって畜生が!とりあえず飲みやがれ!!」
( ^ω^)「ありがとうだお。お前らもさっさと彼女作れお」
それは、ブーンも同じようだった。
いつも傍にいる密な友人たちに囲まれてるが、それでもやっぱり話は尽きない。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ^ω^)「?」
ξ*゚ー゚)ξ
(*^ω^)
新郎と新婦、各々がそれぞれの友人に囲まれてあまり二人で並んではいられないが、たまに目が合っては微笑み合い、同じ空間を共有してることを確かめ合っていた。
.
535 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:48:29 ID:q5DmYYDA0
从 ゚∀从「なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?」
そう言うハインも、お祝い仕様な今日ばっかりは華やかに決まっていた。
マゼンタベースの、ちょっとタイトなベアトップドレスは普段のハインのイメージではないが、こんな風に何を着せても似合ってしまう背の高い女はずるいと、主役のツンが少々羨むほどだった。
(゚、゚*トソン「ハインさんもその服素敵ですね!どこのブランドですか?…あ、ツン先輩も綺麗です!」
こんな風に、無垢なほどに馬鹿正直な後輩についでで褒められるのも些か心外ではあったが、自分がブーンとの仲を深めている時にこの二人もだいぶ仲良くなったらしいことに、なんだか嬉しくなった。
.
536 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:49:46 ID:q5DmYYDA0
ブーンと付き合い始めてからも四年が経ったが、ここに集まってるみんながみんな、自分が知ってる頃のままだった。
ずっと変わらず、いつまでもこうしていられたらいい。
けどいつか終わることがわかってるからこそ、このままでいたいと思えるのかもしれない。
.
537 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:50:55 ID:q5DmYYDA0
o川*´ー`)o「うぅ~~~もぅらめ……」
いや、こいつだけはちょっとぐらい変わってほしいかもしれない。
駆け付けのくせに、シャンパンのような酔いが回りやすい酒を急ピッチで流し込んだりでもしたのか、既に呂律が回っていない。
そんなに極端にお酒に弱いわけでもないキュートが、動けなくなるほど酔っ払うなんて珍しいことなのだが、なんでよりによってそれが今日なのだろうか。
538 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:51:58 ID:q5DmYYDA0
从;゚∀从「あーあ…やられたなこりゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「ったくろくなことしないんだから」
そう言って、辛うじて椅子には座ってるが今にも崩れ落ちてしまいそうなキュートの腕を自分の肩にかけて、無理矢理立たせた。
从 ゚∀从「大丈夫か?あたし連れて行こうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫。ついでに外の風にも当たりたいし」
そう言ってツンは、キュートの体を支えつつ店の外に出た。
('A`)「…キュートさんも懲りねぇな」
(;^ω^)「………」
(・∀ ・)「………」
そんなキュートの姿に痛い目でも見たのだろうか、昔一緒に飲んだ野郎共も呆れ顔だった。
.
539 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:53:47 ID:q5DmYYDA0
店自体は大きな通りからちょっと外れたところにあるが、少し歩けばすぐ車通りの多い道には出れる。
ツンはキュートを引きずりつつ、タクシーでも捕まえようと大通りを目指していた。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた少しはしっかりしなさいよ…」
呟くような声だったが、ほとんど密着しているキュートにも聞こえない声ではなかったと思う。
しかしフニャフニャと言葉にならない声を発するだけで、起きてるのか寝てるのかもわからないキュートに届いてるかどうかは怪しいところだ。
.
540 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:55:06 ID:q5DmYYDA0
本物の酔っ払いを支えるのは、さすがに重い。
以前ハインが酔ったふりをした時と同じ体勢だが、あの時彼女がいかに手加減してくれてたかが、今になってよくわかる。
外に出たいからと率先した自分も自分だが、仮にも主役にここまで手を煩わせるのも、自覚がなさそうなだけに余計始末が悪い。
そろそろ30を手前にしてるというのに、こうも変わらないのは腐れ縁といえど考えものである。
.
541 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:56:30 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「うぅ~~……うぅうぅ~~~……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと大丈夫?まさか吐きそうとかやめてよ?」
ぐずるような、か細い呻き声だった。
吐きそうと言うより、今にも泣き出してしまいそうだ。
o川* ー)o「……ツン……ごめんね……」
キュートとの付き合いも長いはずのツンが、一度も聞いたことがないくらいしおらしい声だった。
声色以前に、キュートが自ら過ちに気づいて反省するなど、少なくともツンの目の前ではついぞなかったのだ。
542 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:57:41 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…わかってくれたならまぁいいわ。とにかく無事に帰りなさい」
キュートのことを見直すにはまだ足りない一言だったが、反省してるなら咎める気もなくなる。
意外と言えば意外ではあったが、何かの気まぐれで片付けられるその一言にはあまり意識を向けず、ツンはタクシーを捕まえるために大通りに走る車の流れを目で追っていた。
.
543 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:59:13 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「ツン……ごめんね……わかってるんだけど…ごめんね……」
o川* ー)o「…でも、あたし…嬉しかったんだよ……ごめんね…」
それでもまだ、キュートは謝り続けている。
その一言一言を、たどたどしくも少しずつ伝えていこうと懸命に絞り出してる気さえする。
.
544 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:02:28 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……何が?」
これはもはや、今日一日ちょっと迷惑かけただけのことに対する謝り方ではないように、ツンには聞こえた。
o川* ー)o「……ほんとに…ダメなの、今までも…たぶん、これからも……」
今まで。これから。
そしてダメだとキュートは言う。
まるで要領は得ない。
.
546 : ↓>>545の前ですすみません :2013/08/28(水) 02:11:37 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……本当だよ。あんたには昔っから振り回されてたし、今更急には変わらんだろうけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「…でも、今までのあんたがいくらダメでも、これからあんたがいくらダメになろうとも」
ξ゚⊿゚)ξ「今この瞬間のキュートは、ダメなやつじゃないよ」
今まであったこと全てを水に流すことはできない。
これからもまた、無自覚に振り回されて迷惑被ることなんていくらでもあるんだろうと思うと、うんざりする。
しかし今そうやって、拙くもひたすらに謝り続ける彼女の心情は、腐れ縁だからこそ、なんとなく伝わるものがあった。
.
545 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:07:40 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「どーーーせ素面になったら何も覚えてないんでしょうけど」
ξ゚ー゚)ξ「少しでも自覚があるなら今後はあんまり連絡よこすなバーカ」
そんな酔っ払った時の戯言一つで、良い変化への兆しだなんて浅はかには思い難いが
差し当たり、キュートに文句を言う気はなくなった。
とにかくだらしない酔っ払いは、早めに退散させるに限る。
.
547 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:14:29 ID:q5DmYYDA0
「おーい、大丈夫か?」
タクシーを探すツンの前に、一台の車が停まった。
(・∀ ・)「キュートさんなら俺が送ってくよ。今日飲んでないし」
ブーンの友人らに混ざってた青年だった。
飲み会の席も共にしたことがあり、顔と名前ぐらいは知ってたが、個人的にちゃんと話をしたことはなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「…大丈夫なの?」
キュートを預けるという責務が、なんだかやたら申し訳なく思える。
方法として可能なのかそうでないのかでなく、意識的に無理がないかどうかというニュアンスで、つい聞いてしまった。
.
548 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:16:19 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「そんな状態の女の子一人で帰らすのも危なっかしいだろ。俺は大丈夫だからキュートさん乗っけてくれる?」
拍子抜けするほど頼もしい返事だった。もしかして、前にもこんなことがあったのだろうか?
とりあえずツンは言われた通り、青年の車の後ろの席にキュートを寝かせる体勢で放り込んだ。
そのキュートの寝顔を見て、なんだか幸せそうだな、と青年は呆れたように呟いた。まさに、遊び疲れて寝てしまった子どもの寝顔を見守る父親の目そのものだった。
549 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:18:13 ID:q5DmYYDA0
その青年の車は、男性のステータスとは言い難いような、あまり格好のつかない小さな軽だった。
キュートはシートを占領してるとはいえ、なんだか窮屈そうだが無理矢理詰め込んだ。
(;・∀ ・)「あんまり乱暴にしてやるなよ…じゃあ、先失礼するわ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。キュートお願いね」
そう言って見送ろうともせずに振り返ったが、『あ、ツンさん』という青年の何か思い出したような声に呼び止められた。
.
550 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:20:18 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「…兄貴も、おめでとうって言ってたよ」
『斎藤先輩だよ』
『斎藤?』
『斎藤モララー先輩』
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
ξ゚⊿゚)ξ「…お兄さん、元気?」
(・∀ ・)「うん、まぁ。っていうかこういうめでたい席で兄貴の話するのもどうかとは思ったんだけど…」
.
551 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:21:59 ID:q5DmYYDA0
ツンが特に覚えてもいなかった人に、おめでとうだなんて言われて良いのだろうかと、ちょっと戸惑いもある。
でも、巡り巡ってこんなに近くで繋がった人の輪もまた、決して軽忽なことではないのだという気づきのほうが、肺腑に染みるようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「…ううん。気にしないで。っていうか」
.
552 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:24:08 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…ありがとう。斎藤君」
その『斎藤』は兄と弟、どちらに向けられたものかはツン自身もよくわからなかった。
照れたような満足したような表情で軽く頷いた青年は、何も言わずに車を走らせた。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
何故か目を反らせなかったツンは、その車の後ろ姿が見えなくなるまで放心状態のままだった。
.
554 : 名も無きAAのようです :2013/08/28(水) 02:56:52 ID:D4CL0L9o0
◆第24話◆
XX28年 Y月
('A`)「それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして乾杯!」
「「「「「カンパ―――」」」」」
('A`)「――をしたいと思います!」
「「「「「……………チッ」」」」」
('A`)「(チッ?)…では、今度こそ皆様ご唱和ください!!」
「「「「「カンパーーーーイ!!!!!!」」」」」
.
XX28年 Y月
('A`)「それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして乾杯!」
「「「「「カンパ―――」」」」」
('A`)「――をしたいと思います!」
「「「「「……………チッ」」」」」
('A`)「(チッ?)…では、今度こそ皆様ご唱和ください!!」
「「「「「カンパーーーーイ!!!!!!」」」」」
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530 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:43:21 ID:q5DmYYDA0
ドクオの音頭は、セオリー通りでなんの捻りもなかった。
しかし二次会ともなると、それまでの厳かな儀式の空気が一変して、気のおけない仲間同士の単なる飲み会の空気になった。
二次会の会場は、以前ブーンがドクオと一緒に働いていたあのダイニングバーだった。
既にその店は退職してるブーンは、独立してシェフ兼経営者となった。
雇われてる頃から定評のあった料理の腕はもちろん、持ち前の人当たりの良さで獲得した常連客や同業者のコネクションなんかも手伝ってか、ブーンの店はそこそこの盛り上がりを見せている。
531 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:44:17 ID:q5DmYYDA0
結果としてその成功が、二人が結婚に踏み切れたきっかけでもあった。
絶対の繁盛が約束された商売ではないが、ブーンが夢を叶えることがツンにとっても幸せであることは確かで
お互いに守るものができた二人が身を固めることに、それ以上の理屈は必要なかった。
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532 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:45:19 ID:q5DmYYDA0
前の職場のオーナーの計らいで貸し切りにしてもらったはいいが、ブーンとツン、二人の友人を呼んでも20人と満たしていない。
いつだかの周年パーティーの時なんかより大幅に人数は少ないはずなのに、熱気だけはあの頃の窮屈とさえ感じたボルテージに引けをとらなかった。
o川*゚ー゚)o「ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!写真撮ろ、写真ー!!ねぇハインーーー!!」
こんなおめでたい席に…とも思ったが、こんなおめでたい席だからこそ、一応キュートも呼んでおいた。
しかし、さすがに厳かな席には呼びたくないテンションだし、ブーンのご両親にもあんなのが友達だなんて思われても心外なので、彼らとも円滑に付き合ってくためにもキュートは二次会から呼んだ。
だからキュートは駆け付けなはずなのだが、披露宴からずっと参加してた友人らの余韻を凌駕するかのようなハイテンションである。
いい加減動きにくいウェディングドレスにもうんざりしてきた頃のそのテンションは、はっきり言って暑苦しい。
まぁよほど誰かに迷惑かけるようならすぐつまみ出そうと大目に見て、今日は乗り切ろうと思う。
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533 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:46:36 ID:q5DmYYDA0
('、`*川「ツンちゃんよかったね!」
从'ー'从「ツンちゃんおめでと~!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。しかしあんたらも祝福要因ね」
ツンは、小学生の頃も似たようなことを言われた気がする同級生に囲まれていた。
彼女らとは違い少々道を外したにもかかわらず、呼べばこうして駆け付けてくれる、貴重な友人である。
普段から密に連絡を取り合ってるわけではないが、久しぶりなりに話は尽きない。
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534 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:47:33 ID:q5DmYYDA0
('A`)「しかしお前も勢いに乗るなぁ」
(・∀ ・)「さっさと出し抜けやがって畜生が!とりあえず飲みやがれ!!」
( ^ω^)「ありがとうだお。お前らもさっさと彼女作れお」
それは、ブーンも同じようだった。
いつも傍にいる密な友人たちに囲まれてるが、それでもやっぱり話は尽きない。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ^ω^)「?」
ξ*゚ー゚)ξ
(*^ω^)
新郎と新婦、各々がそれぞれの友人に囲まれてあまり二人で並んではいられないが、たまに目が合っては微笑み合い、同じ空間を共有してることを確かめ合っていた。
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535 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:48:29 ID:q5DmYYDA0
从 ゚∀从「なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?」
そう言うハインも、お祝い仕様な今日ばっかりは華やかに決まっていた。
マゼンタベースの、ちょっとタイトなベアトップドレスは普段のハインのイメージではないが、こんな風に何を着せても似合ってしまう背の高い女はずるいと、主役のツンが少々羨むほどだった。
(゚、゚*トソン「ハインさんもその服素敵ですね!どこのブランドですか?…あ、ツン先輩も綺麗です!」
こんな風に、無垢なほどに馬鹿正直な後輩についでで褒められるのも些か心外ではあったが、自分がブーンとの仲を深めている時にこの二人もだいぶ仲良くなったらしいことに、なんだか嬉しくなった。
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536 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:49:46 ID:q5DmYYDA0
ブーンと付き合い始めてからも四年が経ったが、ここに集まってるみんながみんな、自分が知ってる頃のままだった。
ずっと変わらず、いつまでもこうしていられたらいい。
けどいつか終わることがわかってるからこそ、このままでいたいと思えるのかもしれない。
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537 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:50:55 ID:q5DmYYDA0
o川*´ー`)o「うぅ~~~もぅらめ……」
いや、こいつだけはちょっとぐらい変わってほしいかもしれない。
駆け付けのくせに、シャンパンのような酔いが回りやすい酒を急ピッチで流し込んだりでもしたのか、既に呂律が回っていない。
そんなに極端にお酒に弱いわけでもないキュートが、動けなくなるほど酔っ払うなんて珍しいことなのだが、なんでよりによってそれが今日なのだろうか。
538 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:51:58 ID:q5DmYYDA0
从;゚∀从「あーあ…やられたなこりゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「ったくろくなことしないんだから」
そう言って、辛うじて椅子には座ってるが今にも崩れ落ちてしまいそうなキュートの腕を自分の肩にかけて、無理矢理立たせた。
从 ゚∀从「大丈夫か?あたし連れて行こうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫。ついでに外の風にも当たりたいし」
そう言ってツンは、キュートの体を支えつつ店の外に出た。
('A`)「…キュートさんも懲りねぇな」
(;^ω^)「………」
(・∀ ・)「………」
そんなキュートの姿に痛い目でも見たのだろうか、昔一緒に飲んだ野郎共も呆れ顔だった。
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539 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:53:47 ID:q5DmYYDA0
店自体は大きな通りからちょっと外れたところにあるが、少し歩けばすぐ車通りの多い道には出れる。
ツンはキュートを引きずりつつ、タクシーでも捕まえようと大通りを目指していた。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた少しはしっかりしなさいよ…」
呟くような声だったが、ほとんど密着しているキュートにも聞こえない声ではなかったと思う。
しかしフニャフニャと言葉にならない声を発するだけで、起きてるのか寝てるのかもわからないキュートに届いてるかどうかは怪しいところだ。
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540 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:55:06 ID:q5DmYYDA0
本物の酔っ払いを支えるのは、さすがに重い。
以前ハインが酔ったふりをした時と同じ体勢だが、あの時彼女がいかに手加減してくれてたかが、今になってよくわかる。
外に出たいからと率先した自分も自分だが、仮にも主役にここまで手を煩わせるのも、自覚がなさそうなだけに余計始末が悪い。
そろそろ30を手前にしてるというのに、こうも変わらないのは腐れ縁といえど考えものである。
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541 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:56:30 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「うぅ~~……うぅうぅ~~~……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと大丈夫?まさか吐きそうとかやめてよ?」
ぐずるような、か細い呻き声だった。
吐きそうと言うより、今にも泣き出してしまいそうだ。
o川* ー)o「……ツン……ごめんね……」
キュートとの付き合いも長いはずのツンが、一度も聞いたことがないくらいしおらしい声だった。
声色以前に、キュートが自ら過ちに気づいて反省するなど、少なくともツンの目の前ではついぞなかったのだ。
542 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:57:41 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…わかってくれたならまぁいいわ。とにかく無事に帰りなさい」
キュートのことを見直すにはまだ足りない一言だったが、反省してるなら咎める気もなくなる。
意外と言えば意外ではあったが、何かの気まぐれで片付けられるその一言にはあまり意識を向けず、ツンはタクシーを捕まえるために大通りに走る車の流れを目で追っていた。
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543 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 01:59:13 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「ツン……ごめんね……わかってるんだけど…ごめんね……」
o川* ー)o「…でも、あたし…嬉しかったんだよ……ごめんね…」
それでもまだ、キュートは謝り続けている。
その一言一言を、たどたどしくも少しずつ伝えていこうと懸命に絞り出してる気さえする。
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544 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:02:28 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……何が?」
これはもはや、今日一日ちょっと迷惑かけただけのことに対する謝り方ではないように、ツンには聞こえた。
o川* ー)o「……ほんとに…ダメなの、今までも…たぶん、これからも……」
今まで。これから。
そしてダメだとキュートは言う。
まるで要領は得ない。
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546 : ↓>>545の前ですすみません :2013/08/28(水) 02:11:37 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……本当だよ。あんたには昔っから振り回されてたし、今更急には変わらんだろうけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「…でも、今までのあんたがいくらダメでも、これからあんたがいくらダメになろうとも」
ξ゚⊿゚)ξ「今この瞬間のキュートは、ダメなやつじゃないよ」
今まであったこと全てを水に流すことはできない。
これからもまた、無自覚に振り回されて迷惑被ることなんていくらでもあるんだろうと思うと、うんざりする。
しかし今そうやって、拙くもひたすらに謝り続ける彼女の心情は、腐れ縁だからこそ、なんとなく伝わるものがあった。
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545 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:07:40 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「どーーーせ素面になったら何も覚えてないんでしょうけど」
ξ゚ー゚)ξ「少しでも自覚があるなら今後はあんまり連絡よこすなバーカ」
そんな酔っ払った時の戯言一つで、良い変化への兆しだなんて浅はかには思い難いが
差し当たり、キュートに文句を言う気はなくなった。
とにかくだらしない酔っ払いは、早めに退散させるに限る。
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547 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:14:29 ID:q5DmYYDA0
「おーい、大丈夫か?」
タクシーを探すツンの前に、一台の車が停まった。
(・∀ ・)「キュートさんなら俺が送ってくよ。今日飲んでないし」
ブーンの友人らに混ざってた青年だった。
飲み会の席も共にしたことがあり、顔と名前ぐらいは知ってたが、個人的にちゃんと話をしたことはなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「…大丈夫なの?」
キュートを預けるという責務が、なんだかやたら申し訳なく思える。
方法として可能なのかそうでないのかでなく、意識的に無理がないかどうかというニュアンスで、つい聞いてしまった。
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548 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:16:19 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「そんな状態の女の子一人で帰らすのも危なっかしいだろ。俺は大丈夫だからキュートさん乗っけてくれる?」
拍子抜けするほど頼もしい返事だった。もしかして、前にもこんなことがあったのだろうか?
とりあえずツンは言われた通り、青年の車の後ろの席にキュートを寝かせる体勢で放り込んだ。
そのキュートの寝顔を見て、なんだか幸せそうだな、と青年は呆れたように呟いた。まさに、遊び疲れて寝てしまった子どもの寝顔を見守る父親の目そのものだった。
549 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:18:13 ID:q5DmYYDA0
その青年の車は、男性のステータスとは言い難いような、あまり格好のつかない小さな軽だった。
キュートはシートを占領してるとはいえ、なんだか窮屈そうだが無理矢理詰め込んだ。
(;・∀ ・)「あんまり乱暴にしてやるなよ…じゃあ、先失礼するわ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。キュートお願いね」
そう言って見送ろうともせずに振り返ったが、『あ、ツンさん』という青年の何か思い出したような声に呼び止められた。
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550 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:20:18 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「…兄貴も、おめでとうって言ってたよ」
『斎藤先輩だよ』
『斎藤?』
『斎藤モララー先輩』
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
ξ゚⊿゚)ξ「…お兄さん、元気?」
(・∀ ・)「うん、まぁ。っていうかこういうめでたい席で兄貴の話するのもどうかとは思ったんだけど…」
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551 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:21:59 ID:q5DmYYDA0
ツンが特に覚えてもいなかった人に、おめでとうだなんて言われて良いのだろうかと、ちょっと戸惑いもある。
でも、巡り巡ってこんなに近くで繋がった人の輪もまた、決して軽忽なことではないのだという気づきのほうが、肺腑に染みるようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「…ううん。気にしないで。っていうか」
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552 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/28(水) 02:24:08 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…ありがとう。斎藤君」
その『斎藤』は兄と弟、どちらに向けられたものかはツン自身もよくわからなかった。
照れたような満足したような表情で軽く頷いた青年は、何も言わずに車を走らせた。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
何故か目を反らせなかったツンは、その車の後ろ姿が見えなくなるまで放心状態のままだった。
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554 : 名も無きAAのようです :2013/08/28(水) 02:56:52 ID:D4CL0L9o0
乙!!