ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです 第2話
- 2014/07/01
- 23:30
- ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
14 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 17:57:23 ID:0tlWAR460
15 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 17:58:58 ID:0tlWAR460
16 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:00:06 ID:0tlWAR460
17 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:01:41 ID:0tlWAR460
18 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:05:04 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「勿体振っても不毛だから言うわ。信じるかどうかはわからないけどね、あたしは12年後のあなたなのよ。ツンデレちゃん」
ζ(゚ー゚;ζ「!?」
.
19 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:06:15 ID:0tlWAR460
20 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:09:23 ID:0tlWAR460
21 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:11:42 ID:0tlWAR460
22 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:13:35 ID:0tlWAR460
23 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:17:11 ID:0tlWAR460
24 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:20:47 ID:0tlWAR460
25 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:25:08 ID:0tlWAR460
26 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:27:16 ID:0tlWAR460
27 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:31:11 ID:0tlWAR460
28 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:33:25 ID:0tlWAR460
◆第2話◆
XX12年 X月
その見覚えのない客人に、デレは一瞬訝しげな表情を浮かべた。
普段は人見知りをしないデレにしては珍しい、露骨に警戒するような表情だった。
ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは」
若い女性だ。
デレの警戒を解こうと試みるような柔らかい声色だった。
〃ζ(゚ー゚*ζ「………」
その声には聞き覚えがあるようなないような、不思議な感覚だったがとりあえずデレは黙って会釈した。
XX12年 X月
その見覚えのない客人に、デレは一瞬訝しげな表情を浮かべた。
普段は人見知りをしないデレにしては珍しい、露骨に警戒するような表情だった。
ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは」
若い女性だ。
デレの警戒を解こうと試みるような柔らかい声色だった。
〃ζ(゚ー゚*ζ「………」
その声には聞き覚えがあるようなないような、不思議な感覚だったがとりあえずデレは黙って会釈した。
15 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 17:58:58 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「足、まだ痛むの?」
この人は、デレの足が悪いことを知っている。
何故だかは一向にわからない。
この女性を認識する要素を、デレは何も持ち合わせてないのだ。
無意識のうちに何か手がかりを探すように、目の前の女性を不躾なまでに凝視する。
この人は、デレの足が悪いことを知っている。
何故だかは一向にわからない。
この女性を認識する要素を、デレは何も持ち合わせてないのだ。
無意識のうちに何か手がかりを探すように、目の前の女性を不躾なまでに凝視する。
16 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:00:06 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ
20代くらいだろうか、よくこの部屋を出入りする看護婦なんかと年は近そうだが、看護婦たちよりも化粧は濃いめらしい。
しかし原型がわからないほどでもなく、もともとそれなりに彫りもあり、顔立ちの整った美人さんに見える。
にも関わらず、バッチリ化粧をした顔とは不揃いなほどラフな軽装である。
薄手のロングTシャツにタオルのような素材の軽そうなショートパンツ。それに裸足でクロックスといった出で立ち。
家から出たら徒歩15分圏内しか歩けなさそうな、完全なる部屋着である。
20代くらいだろうか、よくこの部屋を出入りする看護婦なんかと年は近そうだが、看護婦たちよりも化粧は濃いめらしい。
しかし原型がわからないほどでもなく、もともとそれなりに彫りもあり、顔立ちの整った美人さんに見える。
にも関わらず、バッチリ化粧をした顔とは不揃いなほどラフな軽装である。
薄手のロングTシャツにタオルのような素材の軽そうなショートパンツ。それに裸足でクロックスといった出で立ち。
家から出たら徒歩15分圏内しか歩けなさそうな、完全なる部屋着である。
17 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:01:41 ID:0tlWAR460
ここで一つ、ある可能性が浮かんだ。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉さんも、入院患者さんですか?」
閃いた拍子に出た、若干冷静さを欠いたトーンだったが、女性は特に意に介さない。
ξ゚⊿゚)ξ「いえ?…あーまぁ昔は入院してたけどね」
一つ情報をくれたところでピンとくるわけもない。それどころか、何か大事なことをはぐらかすような物言いがやけに引っ掛かる。
なんの用ですか?
何しに来たんですか?
そんな当たり前に一番聞きたい質問が、なんだか憚れるぐらいに。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉さんも、入院患者さんですか?」
閃いた拍子に出た、若干冷静さを欠いたトーンだったが、女性は特に意に介さない。
ξ゚⊿゚)ξ「いえ?…あーまぁ昔は入院してたけどね」
一つ情報をくれたところでピンとくるわけもない。それどころか、何か大事なことをはぐらかすような物言いがやけに引っ掛かる。
なんの用ですか?
何しに来たんですか?
そんな当たり前に一番聞きたい質問が、なんだか憚れるぐらいに。
18 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:05:04 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「勿体振っても不毛だから言うわ。信じるかどうかはわからないけどね、あたしは12年後のあなたなのよ。ツンデレちゃん」
ζ(゚ー゚;ζ「!?」
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19 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:06:15 ID:0tlWAR460
わけがわからない。
としか言いようがない。
さっきちょっとでも美人だと思ったお姉さんが、いやそうでなくても、目の前の見知らぬと思ってたお姉さんがあろうことか自分自身だと名乗って、素直に『そうですか』と納得できるわけがない。
ζ(゚ー゚;ζ「………」
デレは見るからに言葉を失ってる。
ξ;゚⊿゚)ξ「うっわ自分自身に向かって"ツンデレちゃん"とか言うのなんか変な感じ……最近デレなんて呼ばれないから余計になぁ…なんか、どうしよ……」
ζ(゚ー゚;ζ「………」
この女性の意味不明な動揺を見てると尚更だ
としか言いようがない。
さっきちょっとでも美人だと思ったお姉さんが、いやそうでなくても、目の前の見知らぬと思ってたお姉さんがあろうことか自分自身だと名乗って、素直に『そうですか』と納得できるわけがない。
ζ(゚ー゚;ζ「………」
デレは見るからに言葉を失ってる。
ξ;゚⊿゚)ξ「うっわ自分自身に向かって"ツンデレちゃん"とか言うのなんか変な感じ……最近デレなんて呼ばれないから余計になぁ…なんか、どうしよ……」
ζ(゚ー゚;ζ「………」
この女性の意味不明な動揺を見てると尚更だ
20 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:09:23 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの足…もっと言うと膝の骨は生れつき奇形だったのよね。小さい頃は違和感程度だったけど、小学校にあがってすぐぐらいだったかな…急に膝が痛みだして歩けなくなった。そこから少しの間車椅子で登校せざるをえなかったのよね…そうでしょ?」
女性は信憑性を高めようとしてか、デレしか知りえない情報を滑らかに語り出した。
確かにその通りだ。
でも、そんな情報どこからでも提供できそうな気がする。
女性は信憑性を高めようとしてか、デレしか知りえない情報を滑らかに語り出した。
確かにその通りだ。
でも、そんな情報どこからでも提供できそうな気がする。
21 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:11:42 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚;ζ(……誰に?どうやって?)
…とも思うが、自分しか知らない情報ってわけでもない。まだデレは警戒を緩められずにいた。
ξ゚⊿゚)ξ「今10歳ってことは…3回目の手術は終わってる頃かな。もうすぐ退院できるんじゃない?リハビリは順調?…だったはず確か。」
人に質問しておいて自己完結する。さも自分が経験したことのように。
いや、この女性の前提ではその通りなのだろうが。
…とも思うが、自分しか知らない情報ってわけでもない。まだデレは警戒を緩められずにいた。
ξ゚⊿゚)ξ「今10歳ってことは…3回目の手術は終わってる頃かな。もうすぐ退院できるんじゃない?リハビリは順調?…だったはず確か。」
人に質問しておいて自己完結する。さも自分が経験したことのように。
いや、この女性の前提ではその通りなのだろうが。
22 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:13:35 ID:0tlWAR460
でも確かに、大したモチベーションもなくほとんど惰性化してたリハビリが実を結び、少々危なっかしい足取りながらも車椅子どころか松葉杖さえなしで歩けるまでには回復している。
いつ退院と言われた記憶はないが、もうすぐというのもあながち間違いではなさそうなコンディションだ。
でもだからといって。
ζ(゚ー゚;ζ「急にそんなこと言われても…ただ困るとしか」
ξ゚⊿゚)ξ「ん。まぁ…しょうがないよね」
あたしも初めてのことだしね。と付け加えたのは引っ掛かったが、女性は相手が自分自身だとわかってるせいかあっさり言い退けた。
いつ退院と言われた記憶はないが、もうすぐというのもあながち間違いではなさそうなコンディションだ。
でもだからといって。
ζ(゚ー゚;ζ「急にそんなこと言われても…ただ困るとしか」
ξ゚⊿゚)ξ「ん。まぁ…しょうがないよね」
あたしも初めてのことだしね。と付け加えたのは引っ掛かったが、女性は相手が自分自身だとわかってるせいかあっさり言い退けた。
23 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:17:11 ID:0tlWAR460
女性の主張が真実だったとしても嘘だったとしても、相手は三年間も閉塞的な生活を強いられながら、同年代の子たちともまともにコミュニケーションを取ってこなかった子どもだ。そのことに変わりはない。
そんな子どもをわざわざ訪ねてきて腹割ろうって魂胆なら、とにかく言うべきことと言いたいことは言ったもん勝ちだ。
子どもが飽きて嫌がって追い出しでもしない限りは傍に居ても大丈夫だろう。
女性は勝手にそう結論付けた。
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、なんでもいいから聞いて。あたしが今いるこの世界はね、あたしの夢の中みたいなの」
ζ(゚ー゚*ζ「夢?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。まぁいろいろ言いたいのも聞きたいこともあるだろうけど、とりあえず暇潰しだと思って聞いててもらえる?」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
そんな子どもをわざわざ訪ねてきて腹割ろうって魂胆なら、とにかく言うべきことと言いたいことは言ったもん勝ちだ。
子どもが飽きて嫌がって追い出しでもしない限りは傍に居ても大丈夫だろう。
女性は勝手にそう結論付けた。
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、なんでもいいから聞いて。あたしが今いるこの世界はね、あたしの夢の中みたいなの」
ζ(゚ー゚*ζ「夢?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。まぁいろいろ言いたいのも聞きたいこともあるだろうけど、とりあえず暇潰しだと思って聞いててもらえる?」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
24 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:20:47 ID:0tlWAR460
何をまた訳のわからないことを言い出してるんだろう。
…とも思う。でも何故か、興味が湧いてきた。
なんとなく、とりあえず最後まで聞いてみる気にはなれた。
ξ゚⊿゚)ξ「現実でのあたしは今22歳。さっきも言ったけど12年後のツンデレね。普通に仕事終わって帰ってきたら、いつの間にか寝ちゃってたみたいで…」
ξ゚⊿゚)ξ「気がついたら、あの桜の下にいたの」
と、窓からも見える満開の桜をチラッと指差す。
…とも思う。でも何故か、興味が湧いてきた。
なんとなく、とりあえず最後まで聞いてみる気にはなれた。
ξ゚⊿゚)ξ「現実でのあたしは今22歳。さっきも言ったけど12年後のツンデレね。普通に仕事終わって帰ってきたら、いつの間にか寝ちゃってたみたいで…」
ξ゚⊿゚)ξ「気がついたら、あの桜の下にいたの」
と、窓からも見える満開の桜をチラッと指差す。
25 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:25:08 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「桜と言えば、病院。ってのがあたしのイメージでね。入院中はいつもそこの窓から桜見てたなーって、退院してからも毎年思い出すんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「桜どころか、病院まであったもんだからさ。すぐに思い出したわ。あたしが入院してた病院だーって」
ξ゚⊿゚)ξ「それまでの感覚…五感でわかるかな。すべてがやたらリアルだなぁ…とは気づいてた。でもやっぱり夢は夢だしさ、なんとなく久しぶりに病院覗いてみようかなーって入ってみたら」
ξ゚⊿゚)ξ「あまりにも、何もかもが当時のままなの。」
ξ゚⊿゚)ξ「桜どころか、病院まであったもんだからさ。すぐに思い出したわ。あたしが入院してた病院だーって」
ξ゚⊿゚)ξ「それまでの感覚…五感でわかるかな。すべてがやたらリアルだなぁ…とは気づいてた。でもやっぱり夢は夢だしさ、なんとなく久しぶりに病院覗いてみようかなーって入ってみたら」
ξ゚⊿゚)ξ「あまりにも、何もかもが当時のままなの。」
26 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:27:16 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「受付の人も、すれ違う先生や看護師さんも、みんな見覚えがあったの。おかしいでしょ?あたしが入院してたのって12年も前の話よ?それが今でも、何も変わらないわけないじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、来てみたの。当時のあたしがいるはずであろう、この病室にね」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
なるほど。この女性が現れた経緯はわかった。
残念ながらその話全てを信じる決定打はなかったけども。
デレの動きのない表情を見て、女性もそれを察したようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「だから、来てみたの。当時のあたしがいるはずであろう、この病室にね」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
なるほど。この女性が現れた経緯はわかった。
残念ながらその話全てを信じる決定打はなかったけども。
デレの動きのない表情を見て、女性もそれを察したようだ。
27 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:31:11 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、あたしの話はそんなところよ。見たところあんたはもうすぐ退院みたいだし、一番辛いピークは越えた後だったみたいね」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん」
女性の話を鵜呑みにしたわけではない。
ただ、女性の言う『一番辛いピーク』には、経験した者にしかわからないような妙な重みがあった。
デレはこの年にして、理にかなわない現象を容易く信じることに抵抗があった。
だから女性の言葉の節々に時々感じる『重み』や『説得力』をただの『違和感』としか思わず、それが何に起因するものかまで深くは考えられなかった。
そのことに、女性も何故か納得してるように見える。
ζ(゚ー゚*ζ「……うん」
女性の話を鵜呑みにしたわけではない。
ただ、女性の言う『一番辛いピーク』には、経験した者にしかわからないような妙な重みがあった。
デレはこの年にして、理にかなわない現象を容易く信じることに抵抗があった。
だから女性の言葉の節々に時々感じる『重み』や『説得力』をただの『違和感』としか思わず、それが何に起因するものかまで深くは考えられなかった。
そのことに、女性も何故か納得してるように見える。
28 : ◆7mt.DZ.sYo :2013/08/12(月) 18:33:25 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「でもピーク越えたとはいえ、退院してからもリハビリは続くんだからあまり慢心しないことね。痛む時は痛むんだから」
と言い残して去ろうとする女性の露出された膝になんとなく目をやると
自分と同じ位置についた、三回も手術をされた痛々しい傷痕に気がついた。
ζ(゚ー゚*ζ「あっ…」
その一瞬で、女性はまるで最初からそこにいなかったかのように音もなく姿を消していた。
と言い残して去ろうとする女性の露出された膝になんとなく目をやると
自分と同じ位置についた、三回も手術をされた痛々しい傷痕に気がついた。
ζ(゚ー゚*ζ「あっ…」
その一瞬で、女性はまるで最初からそこにいなかったかのように音もなく姿を消していた。