286 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:34:54.05 ID:ZG+gEJlG0
('、`*川伊藤が紅葉狩りに来たようです


鮮やかな紅に色づいた木々が山道に沿って広がっている。
伊藤は爽やかな秋の空気をスゥッと吸い込んだ。

('、`*川「空気が澄んでる。やっぱり秋っていいなぁ」

自然の香りを感じ心まで澄み切った伊藤は、足取りも軽く山道を登っていく。
しばらくして、座るのにちょうどいい岩を見つけたので、そこで休憩することにした。

('、`*川「さて、ペニサス特製のおむすびを食べるとしますか」

伊藤はリュックからアルミの包みを取り出す。
中には手作りのおむすびが三つ入っていた。

('、`*川「鮭は最後にとっておくとして、まずは梅から・・・」

伊藤は梅おむすびを頬張る。

('、`*川「ウマスwwww紅葉を見ながらのおむすびは格別だわ」

続くコンブのおむすびも食べ終わった伊藤。

('、`*川「さぁさぁ、いよいよサケちゃんの番ですね、フヒヒ」

伊藤はピアニストのように指をくねらせ、おむすびに手をかけようとした。
その時である――

287 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:36:08.41 ID:ZG+gEJlG0
('、`*川「ほわっ!?」

おむすびは伊藤の手を逃れ、コロコロと斜面を転がり落ちていく。

('、`*川「ば、馬鹿な・・・この日の為に用意した至高のサケにぎりが・・・」

あきらめるか。
否。そんなことは絶対に許されない。

('、`*川「逃がすか!サケにぎりいい!」

伊藤の超反応のダイブはおむすびを捉えた!

('、`*川「ぬああああああ!!」

だが頭から飛んだ伊藤は着地に失敗し、おむすびと共に草木の生い茂る
斜面の下へと転がり落ちていった。

292 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:38:29.49 ID:ZG+gEJlG0
('、`*川「う・・・うぅ・・・」

伊藤は目を覚ました。
どれくらい気を失っていたのだろうか。
いや、そんなことより・・・

('、`*川「サケにぎりは!?」

辺りを見回してもそれらしいものはない。
だが、仰向けになった伊藤の背中に柔らかい感触があった。

サケにぎりである。

('、`*川「あぁ・・・私のサケにぎり・・・」

見るも無残に潰れたサケにぎりを見て、涙ぐむ伊藤。
その涙に滲む目に、何か赤黒いものが映りこんだ。

('、`*川「あ、あれは・・・」

雄雄しくそそり立った肉付きのいい幹に、今にも張り裂けんばかりに怒張した
傘、人を悩ませてやまないその神々しいフォルムをもつのとは――

('、`*川「ま、松茸!」

296 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:40:26.26 ID:ZG+gEJlG0
災い転じて福となるとはこのことである。

('、`*川「うーん、中々太いわね・・・」

ポケットに松茸を入れる伊藤。

('、`*川「これだけかしら・・・」

伊藤が辺りを見回すと、そこら中の木の根元に松茸が生えていた。

('、`*川「うっひょー!すごい!これだけあればかなりのお金になるわ」

('、`*川「ここにも・・・あっ、ここにもある!取り放題ね」

松茸を次々とポケットに放り込む。
だが小さいポケットはすぐにいっぱいになった。

('、`*川「さすがにもう入らないわ。上のリュックを取ってこないと」

伊藤が斜面を登ろうとしたとき、他のより一回りも二回りも小さいキノコ
が視界に入った。

('、`*川「これは・・・しいたけかしら。これなら入るわ」

伊藤はしいたけを掴んだ。
その時である―

299 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:42:11.92 ID:ZG+gEJlG0
('A`) 「らめぇええええええ!!」

('、`*川「ひぃぃぃ!」

思わず手を離す伊藤。

('、`*川「な、何よ今の悲鳴・・・」

辺りを見回すが人の気配は無い。

('、`*川「空耳?それにしてはやけにはっきりしてたけど・・・」

突然の奇妙な出来事に戸惑い、伊藤は首を傾げた。

('、`*川「まあ、いっか」

再びしいたけに手を伸ばす。

('A`) 「はぁああああああん!!」

('、`*川「きゃああああ!」

思わず飛びのく伊藤。
間違いない。この奇声は目の前のしいたけから発せられている。

304 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:43:46.83 ID:ZG+gEJlG0
('、`*川「な、何なのこのしいたけ?」

(´・ω・`) 「くぉらああ!!誰がしいたけじゃボケェエ!!」

その時、そばに生えていたタケノコが怒号と共に地面から飛び出した。
しかし、それは明らかにタケノコではなかった。
見た目は人間だが、頭にタケノコが生えている。

('、`*川「うわああ!タ、タケノコが喋った・・・ていうかタケノコ?」

(´・ω・`) 「いかにも。僕はタケノコの精だ」

('、`*川「タケノコの精!?じゃあこっちのしいたけは・・・」

(´・ω・`) 「ゴラァ!しいたけじゃないって言ってんだろが!
       こちらのお方はこの山の主、松茸神・マラオ様だ」

('A`) 「いかにも、我が松茸神である」

低い声と共に、地面から男が飛び出してきた。
頭にはキノコが生えている。

('、`*川(どうみてもしいたけなんだけど・・・)

('A`) 「小娘、今我のことをしいたけだと思ったな?」

('、`*川「え、あの・・・そうです」

307 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:45:34.37 ID:ZG+gEJlG0
(;A;) ブワッ

(´・ω・`) 「馬鹿、そこは否定しろよ!マラオ様が泣いちゃっただろ!」

('、`*川「だってそう聞かれたから・・・すいません」

('A`) 「グス・・・まあいい、それより小娘。その松茸を置いていってもらおうか」

('、`*川「な、なんでですか!?」

伊藤は松茸を抱えて後ずさる。

(´・ω・`) 「ばかやろぅ!マラオ様は山の主、つまりこの山の所有者。
         もう分かるな?」

('、`*川「いえ、全然」

首を振る伊藤。

('A`) 「つまり我のものは我のもの。山のものも我のもの」

('、`*川「何言ってんですか!山のものは皆のものですよ
       それを横盗りしようって言うんですか!?」

この場合、山のものは山の土地を持っている人のものであり
決して、胡散臭いしいたけや金に目がくらんだ伊藤のものではない。

('A`) 「また、しいたけって言ったな!うわああああああ!」

(´・ω・`) 「マ、マラオ様!地の文に話しかけるのはタブーです!」

316 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:50:12.68 ID:ZG+gEJlG0
駄々っ子のように地面を転がり回るマラオ。

('、`*川「この隙に・・・」

隙を見て伊藤は斜面を駆け上る。

(´・ω・`) 「あっ、しまった!」

('A`) 「ふん!逃がさんぞ小娘!」

マラオは恐ろしい反射神経で、伊藤めがけて跳躍した。

('、`*川「きゃあああ!」

('A`) 「フフフ、捕まえたぞ」

マラオは伊藤を羽交い絞めにする。

('A`*) 「女体ハァハァ・・・」

('、`*川「ちょ、どこさわってんのよ!」

('A`*) 「久方ぶりの女体じゃあ・・・」

マラオは伊藤の髪に顔を押し付けクンクンと匂いをかいでいる。

('、`*川「ぎゃあああ!きもいんだよこのしいたけ野郎!」

318 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:54:32.21 ID:ZG+gEJlG0
マラオの腕を振りほどいた伊藤は、頭に生えた粗末なものを思いっきり
引っこ抜いた。

('A`) 「アッーーーー!おふくろさん!おふくろさんよおおお!!」

(´・ω・`) 「マラオ様あああああ!」

快感と激痛の狭間でもだえ苦しむマラオ。

('、`*川「うげっ、あれ一物だったの・・・後で手を洗わないと」

沢山のキノコを抱えて、伊藤はその場を走り去った。

――山のふもとの八百屋

('、`*川「あのー松茸こんなにあるんですけど、買ってくれません」

( ^ω^)「アンタ馬鹿言っちゃいけないお。これエリンギだお」

('、`*川「エ、エリンギィ!?」

伊藤はその場に脱力した。

('、`*川「そ、そんな・・・」

( ^ω^)「頭でも打ったのかお?頭にこぶがあるお」

そういえば、先ほどから頭が少し痛む。
それで見間違えたのだろうか。

319 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/10(火) 22:57:02.51 ID:ZG+gEJlG0
( ^ω^)「まあ素人はよく間違えるもんだお」

('、`*川「はぁ・・・大金の夢が・・・」

伊藤はため息をつく。

( ^ω^)「それよりアンタ。生きのいいしいたけとタケノコが取れたんだけど
       買っていかないかお?」

('、`*川「しいたけとタケノコ!?」

何か嫌な予感がする。

( ^ω^)「そう。これだお。さっき裏の林で取れたんだお」

男がおもむろにとりだしたそれは―


('A`) (´・ω・`)

( ^ω^)「どうだお?」

('、`*川「え、遠慮しときます・・・」


('、`*川伊藤が紅葉狩りに来たようです・完

('A`)「だからしいたけじゃないって」
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