393:名無しさん
10/07(日) 11:46 iNv+4YQ1O
三十四重 『なぜならば』
暗く、暗く、暗く。
深く、深く、深く。
( ゚∀゚)「……」
何も考えたくはなかった。
思考が止まる。
ただ、フラフラと歩くだけ。
目標無くフラフラと。
止まったはずの思考が、また働く。
今、自分がここにいる意味を考える。
勿論答えなど見つかるわけがない。
この繰り返しだった。
考えては真っ白になり、考えては真っ白になり。
足取りも覚束ない。
394:名無しさん
10/07(日) 11:47 iNv+4YQ1O
( ゚∀゚)「……なんだっけ」
だが、今度は違う。
何か懐かしい気持ちがした。
思い出さなければならない気持ちがした。
暗い記憶を探る。
( ゚∀゚)「……」
思い出せないから思い出せる記憶から思い出すことにした。
それはいくつの時だっただろうか。
今の自分から遥かに幼く、まだ世の中がわからなくて。
でもいっちょ前に背伸びしたくて、一生懸命だった。
それでも、背伸びして背伸びして憧れる姿に近付きたくて。
395:15◆p7NLwd/q.6
10/07(日) 11:48 iNv+4YQ1O
少し悪ぶって、信号を無視して渡ってみた。
周りの視線を浴びて、高鳴る心臓を抑えようと頑張って。
そして、車に撥ねられた。
視線を浴びてたのは車にぶつかる不幸な自分だった。
背伸びをしても届かない憧れ。
それが汚く見えて、諦めた。
入院して、退院して。
そして自分は変わった。
自分にできることを精一杯。
そして人にしてあげられることを精一杯。
精一杯の精一杯。
人に偽善だと言われようが、自分は人のために頑張って、自分のために頑張って……何か手に入れたのだろうか。
何で自分は頑張っていたのだろう。
自分は誰のために頑張っていたのだろうか。
396:名無しさん
10/07(日) 11:49 iNv+4YQ1O
入院して、自分は変わった。
入院して何が起きたのか、思い出せない。
思い出せるのは自分の心が変わったこと。
人と自分への精一杯。
人への精一杯でありがとう。
感謝されたいからやったわけじゃないが、やはり心が踊る。
でも、他人からありがとうを言われるためにやっていたんだろうか。
違う。
絶対に。
理由があった。
どんな?
大切な、何か。
大切な何かを忘れたなら、それは大切ではないんじゃないのか。
397:名無しさん
10/07(日) 11:50 iNv+4YQ1O
忘れたわけじゃない。
心の片隅……いや、真ん中にあった。
ただ、思い出すきっかけがないから薄くなっている。
それだけだ。
フラフラと歩く。
月が目の前に大きく。
後ろには地球が小さく。
異様なのは真っ暗だということ。
だが真っ暗の中で赤く光りを放つ球が遠くに浮いている。
赤い球へと進もうとしたが、月と被るように男が立っていた。
戦うことにうんざりしていた男はここで死ぬ気でいた。
398:名無しさん
10/07(日) 11:51 iNv+4YQ1O
(∵)「…君はそれでいいのか」
能面のような顔をした男が口にする。
( ゚∀゚)「……」
(∵)「約束、守るんだろ」
そうだ、約束のために精一杯頑張って。
頑張って……死んだら何も残らないのに、精一杯。
約束の意味、ないんじゃないのか。
(∵)「君が生きている今、この時は過去で死んでしまった…未来を生きたかった人の未来だ」
男が表情を変えずにはっきりと言う。
( ゚∀゚)「…だけど死んだら意味はないんだ」
(∵)「確かに意味はないかもしれない」
( ゚∀゚)「だったら…」
(∵)「だが、君に約束した人たちは意味がないとは思っていなかった だから約束したんだ 君はその人たちの分まで頑張って、それでもダメなら解決する方法を見つける それが生きている君の理由になる」
( ゚∀゚)「わかんねぇよ」
頭の中は真っ白で。
考えることは難しい。
399:名無しさん
10/07(日) 11:52 iNv+4YQ1O
(∵)「私は天 答えを出す者」
男が両手を前に出す。
(∵)「人は生きている 理由は人それぞれだ 意味なんて無くていいんだ」
ぃょぅとペニサスが現れる。
(#゚∀゚)「てめぇの人形か!!」
考えることも難しい。
だがわかるのはぃょぅとペニサスが憎いということ。
(∵)「私のアルカナはTHE HERMIT 悟りを導きし隠者」
(∵)「君の心の隙間から死角を作り、考えや記憶を探る」
ぃょぅとペニサスが殖える、殖える、殖える。
男が消える。
(#゚∀゚)「ふざけんなよ!!」
頭に血が上る。
手から光を放ち、ぃょぅとペニサスをジャンクに変える。
胴体が破壊された人形は消える…弱点だ。
400:名無しさん
10/07(日) 11:55 iNv+4YQ1O
(;゚∀゚)「うぎっ…!!」
突然現れたぃょぅに腹を殴られた。
(∵)「怒りは隙間を作る」
ペニサスに頭を殴られ、血が流れる。
だが意識ははっきりしていた。
(∵)「ここで死んで約束を破るか、過去の人の未来を背負い生きるか 答えは君が出すんだ」
記憶が朧げに蘇る。
自分が病院で入院して。
でも体の傷は悪くなかった。
気まぐれで車椅子を押してあげて。
その娘が笑顔で「ありがとう」って。
自分の、他人への精一杯はあの娘のためだった。
自然にあの娘に優しくできるように、あの娘が困らないように常に精一杯頑張って。
精一杯が精一杯じゃなくなって、もっと精一杯できるようにって。
微かな記憶で自分は少女が座る車椅子を押していた。
あの娘は優しく微笑んでいた。
そうだ…。
俺はあの娘の笑顔が好きだったんだ。