236:◆/wOcNhjd4U
10/25(水) 21:25 AGT8ngVSO


互いの軽い自己紹介を済ませたあと、クーの口から何が起きたのかを語られた。



兄者の悲鳴が聞こえたこと




トイレにいってた兄者が牛ほどの大きさの『虫』に襲われていたこと




ナイフでは傷がつけられなかったこと




脆い関節を狙って倒したこと






川゚ -゚)「兄者が小3までお漏らししていたこと」

Σ(;´_ゝ`)「そっ、それは言わない約束だろ?!」


川゚ -゚)「ブーンだけいなくて聞けなかったんだ。かわいそうだろ?」


(;´_ゝ`)「ブーン以外にも人がいるだろ!! 俺がかわいそうだとは思わないのか?!」


川゚ -゚)「思うっ!!」


(;´_ゝ`)「なら態度で示してくれっ!!」


(´<_` )「暴露大会をしようと言い出したのは兄者だろ?」


( ;_ゝ;)「だっ、だってつまんなかったんだもん!!」

( =つω-)「んー、もうあさぁ……?」



爪;~ー~)「真面目な話が……」


ξ;゚听)ξ「また個性的な……」




頭を抱えるじぃとツンをよそに残りの6人は異様な盛り上がりをみせる。いわゆる修学旅行テンションだ。


爪゚ー゚)「とりあえず私から話があるわ」



(  ^ω^)「聞かせてくれお!!」


( 'A`)「俺にも俺にも」


( =゚ω゚)「僕も!」


川゚ -゚)「他には兄者の初恋の話とか」


( ;_ゝ;)「だからなんで俺だけ」


(´<_`;)「兄者が勝手に暴露したんだろ」



爪゚ー゚)「……」










「いち、に、さん、し、ご……あら、弾が一人分足りないわ」


(; ^ω^);゚ -゚);´_ゝ`);´_>`);=゚ω゚)
「「「「「「話を進めてください!!」」」」」」


爪゚ー゚)「いい返事ね。とにかく、みんな薄々わかっているとは思うけど……」













爪゚ー゚)「次回からまたバトルものよ」


(; ^ω^)「……バトルものはメイドの時に軽い批判が……」


爪゚ー゚)「短くする!! 許せ!!」


(;;^ω^)「……なるべく短く頼みますよ?」


爪゚ー゚)「善処する!!」


(; ^ω^)「せっかくのバカンスが……」



〜この作品はどこへ向かうのか?にようこそ!〜

238:◆/wOcNhjd4U
10/26(木) 16:58 em+XN3ZlO


爪゚ー゚)「私はあの『虫』の駆除のためにここに来たの」

(  ^ω^)「あれの正体を知ってるのかお?」


爪゚ー゚)「ええ。あれは『キメラアント』。食べた生物を次の子孫に反映させる恐ろしい性質を持つ生物よ」


(  ^ω^)「……はて、どこかで聞いたような」


爪゚ー゚)「一部の機関にしか知らされてないんだけど今ある国で大型のキメラアントが異常繁殖しているの。」


(  ^ω^)「随分前に漫画かなんかで……」


爪゚ー゚)「現在、その国には『戦闘のスペシャリスト』が討伐に向かってるのだけど」

(  ^ω^)「確かHがついたような……」


爪゚ー゚)「既に一部のキメラアントはその国を脱出してしている。今回、私たちはこの島に逃げ込んでる可能性が高いと推測して調査に来たの」

川゚ -゚)「予感的中ということだな」


爪゚ー゚)「そこであなたたちに協力して欲しいの」


(;'A`)「な、なんだって?!」


爪゚ー゚)「私の知り合いで『戦闘のスペシャリスト』レベルの力があるのはあなたたちしかいない」


(; ^ω^)「ま、マジですかお……」




どこか頭に引っ掛かる設定だがそれが本当なら他人ごとではない。



一国を大混乱させてる虫がこんな島で収まるはずがない。




爪゚ー゚)「放っておけば間違いなく本州に上陸するわ」


(  ^ω^)「……わかったお。」


爪゚ー゚)「他のみんなは?」

ξ゚听)ξ「当然よ」


川゚ -゚)「放っておくわけにもいかんしな」


( 'A`)「彼女の頼みなら魔王だって倒してみせるさ」


爪///)「毒男……」


川゚ -゚) ^ω^)゚听)ξ
(はいはい、バカップルバカップル)




爪*゚ー゚)「……こほん。それじゃあまず他の3人をヘリまで送らないと」










爪゚ー゚)「こっちの駆除が終わり次第連絡するわ」


( ゚∀゚)「じぃ、気をつけろよ!」


( =゚ω゚)「ブーンくん!!」

( ´_ゝ`)「……生きて戻って来いよ」


(´<_`;)「兄者が言うと締まらないな」


(  ^ω^)「……みんな、ホントに今日は楽しかったお……」

239:◆/wOcNhjd4U
10/26(木) 17:03 em+XN3ZlO


言葉が詰まる。今までひきこもりだった僕にとって、今日一日がどれだけ掛け替えのないものだったか






大勢で遊んで







人を疑うことなく







心の底から笑う








僕の心はこんな普通のことでどれだけ満たされたか





どれだけ








……どれだけ




(  ;ω;)「また会っていっぱいいっぱい遊ぶおっ!! 海にもいくおっ!! 山にもいくおっ!! 暴露大会だってやるおっ!!それからっ!!」


(´<_` )「……ブーン」


(  ;ω;)「それからっ……!!」






また失う。




また離れてく。




それが嫌で








それが怖くて




必死に繋ぎとめる。





( ´_ゝ`)「……ああ、俺たちは『友達』だからな」


Σ(  ;ω;)「!!!」


(´<_`;)「兄者……くさいな」


( =゚ω゚)「友達っ!!」






なんだ



失うと思っていたのは僕だけだったようだ。





「……ずっと」



(  ;ω;)「……ずっと……ずっと友達だおっ!! 約束だお!!」


( ´_ゝ`)「そっちこそ忘れるなよな」


(´<_` )「兄者が迷惑かけるかもしれんがな」


( =゚ω゚)「いろんなゲームやろうね!」



( ゚∀゚)「んじゃ、そろそろいくぜぃ」




エンジンが掛かる。大きな騒音が響き渡るとヘリはゆっくりと空へ浮上しはじめた。



( ´_ゝ`)「       !!」


(´<_` )「        !!」

( =;ω;)ノシ「      !!」




騒音で離れていくみんなの声はもう聞こえない。けれど何と言ってるかはなんとなくわかった。



(  ;ω;)ノシ「またねだおっ!!」






そう、さよならじゃない。






また……




次に会う日まで……











爪゚ー゚)「……行っちゃったわね」


( 'A`)「面白い奴らだったな」


ξ゚听)ξ「ブーン……」





涙を拭う



(  ^ω^)「……大丈夫だお」





約束したんだ






(  ^ω^)「いくお」





友達は






(  ^ω^)「絶対に日本にはいかせないおっ!!」








僕が守る



〜 守りたいモノ にようこそ!〜

244:◆/wOcNhjd4U
10/30(月) 08:51 y2cShlSRO


爪゚ー゚)「今回の目標は『女王』の駆除よ」




じぃを中心にして作戦会議が始まる。先ほどまでの空気とは打って変わり全員が一言も聞き逃すまいと真剣に耳を傾ける。




ξ゚听)ξ「女王?」


爪゚ー゚)「正確には女王の真似ごとをしている兵隊アリだけどね」


爪゚ー゚)「彼らは自分たちの中で階級をつけるの。本来なら女王と兵隊アリ……女王だけを守る直属護衛隊、戦闘兵をまとめる師団長、雑兵である戦闘兵に別れるのだけど…おそらく今回は師団長はいないと思うわ」


川゚ -゚)「戦闘兵というのは私が倒した奴か」


( 'A`)「どうして師団長はいないと思うんだ?」


爪゚ー゚)「戦闘兵が単独で行動していたからよ」


爪゚ー゚)「それにここまで大型なら師団長を作るにはある程度の知能を持つ生物を食べてベースにしないといけないはずだけど……、もともと女王以外に生殖能力はないわ。戦闘兵も虫の域はでていなかったしおそらく既存の虫を奇形、巨大化するのが今回の『ニセ女王』の能力ね。これなら兵隊アリが女王アリの真似ごとをすることは十分可能よ」




(; ^ω^)「……ここまでの説明を三行で」


ξ゚听)ξ「虫  全部  ブっ飛ばす」


(  ^ω^)「把握ww」


川゚ -゚)「戦闘兵のレベルは大したことなかったしな」


( 'A`)「ならそんなに辛くもないか」


爪゚ー゚)「……ただ、本物の女王アリから生まれた今回の『ニセ女王』、そして直属護衛隊は気をつけて。実際は特に『ニセ女王』は兵隊アリでも次元が違うはずよ」




一瞬弛んだ空気がじぃの言葉で引き締まる。一向にじぃの表情が崩れないのは今まで隊で培ってきた経験ゆえなのだろう。



爪゚ー゚)「キメラアントの説明はこんなとこね。何か質問は?」


ξ゚听)ξ「直属護衛隊についてもう少し説明してくれるかしら?」


爪゚ー゚)「直属護衛隊はより戦闘に特化した戦闘アリよ。数はわからないけど4匹以下であることを祈るしかないわね」


(  ^ω^)「なんで4匹以下なんだお?」


( 'A`)「女王を含めてこっちが最悪1対1で闘えるからじゃねえか。少しは考えろボケ」


Σ(; ^ω^)「ぼ、ボケ?!」

爪゚ー゚)「その通りよ。力量はニセ女王には劣るはずだけど同じだと思っておいた方がいいわ」

245:◆/wOcNhjd4U
10/30(月) 08:54 y2cShlSRO


ξ゚听)ξ「…できれば2対1で戦いたいとこね」


(# ^ω^)(毒男はあとでシメるお……)


爪゚ー゚)「質問はいいかしら?次に私たちだけど」


爪゚ー゚)「基本的にこのグループで遊撃ね。森の中を歩き回って手当たり次第倒すわ」


川゚ -゚)「……意外に普通の作戦だな」


爪゚ー゚)「敵の情報がない以上、暴れておびき出すのが一番手っ取り早いわ。それに戦闘アリだって生かすわけにはいかないし」


ξ゚听)ξ「誘い出して一網打尽ってわけね」


爪゚ー゚)「この作戦に意見はある?」


( 'A`)「女王だけ逃げる可能性は?」


爪゚ー゚)「今回の女王が戦闘力のない本当の女王アリなら考えられるけど今回の女王はあくまで兵隊アリ、手下じゃ手に負えないとわかれば必ず自ら潰しに来るわ」


(  ^ω^)「……三行」


ξ゚听)ξ「虫  全部  ブっ飛ばす」


(; ^ω^)「……把握」


爪゚ー゚)「とりあえず参考に個々の戦闘スタイルを聞かせて」


(  ^ω^)「どんな風に言えばいいんだお?」


爪゚ー゚)「例えばブーンの場合、武器がナイフと体術で間合いは近距離、スピードタイプ……こんな感じかな?」


(; ^ω^)「な、なんで僕のk」

ξ゚听)ξ「なら私は武器は体、間合いは近距離でパワータイプね」


(;'A`)「俺は武器は体術、近距離で……しいて言うならカウンター」


川゚ -゚)「私は武器は主にナイフ、他にもあるが言うのが面倒臭い。射程はオールレンジ。トリッキーとでも言っておくかな」


爪゚ー゚)「そして私は武器は銃火器。射程は遠距離でシューターね」


爪゚ー゚)「……面白いぐらいバランスがとれてるわ。これなら対地はもちろん対空、対軍、何が来ても対応できるでしょう」






「作戦会議はここまでだわ」




じぃの口から閉会を宣言される。それは同時に今までのような『話し合い』ではなくまごうことなき『実戦』の開始の合図でもあった。










「……今までの説明を三gy」

「虫  全部  ブっ飛ばす」


「……説明してくれる気はないおね」



〜なげぇよっ! にようこそ!〜

247:◆/wOcNhjd4U
11/06(月) 11:54 3Ywl5E3nO


本島から遠く離れた無人島にある小さな森。夜が明けるには少し早いその森でブーン達は互いに作戦の成功を歓喜していた。




爪゚ー゚)「作戦成功だわ!!」


( 'A`)「やったな!!」


(  ^ω^)「すごいお!!」


ξ゚听)ξ「やるじゃない!!」


川゚ -゚)「……10……20……」





森に入ってわざと敵をおびき出す



先ほどの話し合いから約5分。作戦は未だ暗い天に放たれた一発の銃声をもって目標を達成された。














ブーンたちを囲む数多の虫は口や腕など己の武器をかざし、今か今かとこちらの様子を伺っている。



川゚ -゚)「40……60……」


(; ^ω^)「……多過ぎだお。向こう側が全く見えん」


(;'A`)「……これは想定の範囲内か?」


爪;゚ー゚)「……想定の範囲外ね。ここまで増えてるとは……」


ξ;゚听)ξ「うぇ……、いっぱいいると気持ち悪い……」




見渡す限りの異形の虫。そのどれも人を食べるには十分なサイズがあり、どれもがこちらに確固とした敵意を送っている。




川゚ -゚)「……見える範囲で75匹」


( 'A`)「……てことは1人につきぴったり15匹だな」


(  ^ω^)「あれはバッタであれはカミキリムシ……あれは」


爪;゚ー゚)「私には少しキツいわね……」



ξ゚听)ξ「私がカバーしてあげるから安心なさい……あんまり触りたくないけど」




相手の数は100匹近い。ただの人ならこの状況は絶望的。しかしこの中で数に怯むものなど誰もいない。






わかっているからだ。






どちらが喰われる側で






「んじゃ、何匹倒すか競争だお」







どちらが喰う側か。

248:◆/wOcNhjd4U
11/06(月) 11:57 3Ywl5E3nO


(  ^ω^)「1、2、3……!」



虫の間を影が走る。


影が通り過ぎるとその虫はまるでパズルのように手足が外れ、支えを無くした虫たちは次々に地にへばり付いていく。



(  ^ω^)「クーの言った通り関節なら普通に切れるお」




ξ゚听)ξ「まあ私には関係ないけどね」



手に潰れた虫の腕を握りしめたままツンが応える。既に周りには原形を止めぬ骸の山。彼女の前では鉄程度の硬度など紙に等しい。



ξ゚听)ξ「それにしても……ああ、気持ち悪いっ!!」



(;'A`)「ホント、武器組みはいい……なっ!! うぇっ、またついたっ!!」



突進する虫を受け流しながら愚痴を零す毒男。攻撃を捌かれた虫は強烈な蹴りのカウンターの前にことごとく没していく。



(;'A`)「やっぱ腹は脆いな。にしても蹴りのたびに体液かかって気持ちわりぃ……」




川゚ -゚)「だったら何か武器を貸してやろうか?」



毒男の愚痴に返事を返しながらも相手の関節を破壊していくクー。しかし驚くべきは手に持つ武器。1匹をナイフで倒したかと思うとロッドを握りしめて2匹目に迫り、後ろから遅いかかる3匹目には容赦なく大鎌が振り下ろされる。



川゚ -゚)「大抵の武器なら持ち合わせてるぞ」




爪゚ー゚)「あー、昔を思い出すわ」



響き渡る銃声の中心で感慨にふけるじぃ。感慨にふけりながらもなお彼女に銃口を向けられた虫は例外なく額に風穴を開けられていく。



爪゚ー゚)「結局、頭を潰せば相手が虫でもゾンビでも関係ないのよ」











暗い暗い森の中







彼らは踊る








綺麗で醜い原始の舞いを








悲鳴を歌に








血肉を花に



〜宴 にようこそ!〜

250:◆/wOcNhjd4U
11/11(土) 22:19 ZyHTo1HCO


(  ^ω^)「とりあえず終わりますた」


ξ゚听)ξ「乙」

( 'A`)「乙」

川゚ -゚)「乙」

爪゚ー゚)「お疲れ様」



朝日の下、まるで軽い仕事を終えたかのように互いを労う5人。喜々として話す彼らの足下には先ほどまで彼らを喰わんとしていた100匹以上の虫の死骸が累々と広がっていた。




(  ^ω^)「んで、結局みんな何匹倒したお? 僕は23だお」


ξ゚听)ξ「勝ったわね! 私は26よ」


(;'A`)「俺は19かな……。効率がわりぃんだよ」


川゚ -゚)「私は34だ」


爪;゚ー゚)「……38」


Σξ#゚听)ξ「ち、ちょっと!! 人に守ってもらっといて何一番とってんのよ!!」


爪;゚ー゚)「わ、私もまさか自分が一番だとは……!!」


( 'A`)「まあ、なんだかんだで銃は効率いいしな。てかむしろクーが気になる」


(; ^ω^)「同感だお……。僕が見てる時だけで10種類ぐらい武器使ってたお」


川゚ -゚)「暗器という奴だ。まだまだでるぞ」


( 'A`)「んじゃ槍は?」


川゚ -゚)「お安い御用だ」


(; ^ω^)「ホントにでてきたお。てかそれ絶対クーの身長より長いし……。なら刀は?」


川゚ -゚)「ほい」


(; ^ω^)「マジですか」


ξ゚听)ξ「グローブ」


川゚ -゚)「そら」


ξ;゚听)ξ「そんなのもでてくるの?」


爪゚ー゚)「銃とかも……」


川゚ -゚)「抜かりはない」


爪;゚ー゚)「……ホントに持ってるのね」



衣服の至る所からでてくる武器の数々に最初は驚いていたブーンたちも余りになんでもでてくるので次第に好奇心を隠せなくなっていった。



(* ^ω^)「弓とかもでるのかお?!」


川゚ -゚)「ほい」


(* ^ω^)「おもすれーwwww」


ξ゚听)ξ「包丁…とかは」

川゚ -゚)「ほい」


ξ*゚听)ξ「すっごい!!」

爪゚ー゚)「手榴弾とか」


「ほい」


爪*゚ー゚)「こんなのまで持ってるなんて……!!」



「剣!」


「ほい」


「弓!」


「ほい」


「うまい棒!」


「ほい」


「鞭!」


「ほい」


「杖!」


「ほい」




「おっぱい!!」


「ほい」

251:◆/wOcNhjd4U
11/11(土) 22:22 ZyHTo1HCO


爪 ー )「毒男、遺言は?」


( つA )ドクドク「男は時として命を賭してやらねばならぬことがあるのだ」



(  つω )ドクドク「毒男殿、私は貴方に一生付いていきますお」


ξ  )ξ「あら残念。貴方の一生はここで終わりよ」



川゚ -゚)「……なかなかの策士だな。やられたよ」




自身を策に嵌めた相手に敬意を送るクー。


しかし額に銃を当てられている毒男と頭を鷲掴みにされているブーンにその言葉は届かない。





爪;ー;)「わ…、私というものがありながら……」


ガチャ


弾が装填される音と同時に引き金に指がまわる


(;'A`)「ちょwwwリロードwwwマジで弾でるwwwww」




ξ;;)ξ「どうせ私の胸はちっちゃいわよっっ!!」


ミシッ


さらに指が食い込むのと同時にブーンの体が宙に浮かぶ


(; ^ω^)「ちょwww首がwwwいたたたたたwwwww」




爪;ー;);;)ξ「「死ね!!」」



(  ;ω;);A;)「「まっ、マジですかっっ?!!」」











パーンッ!!


グチャ







男どもの情けない悲鳴と共に虫の死骸を漁っていた鳥たちが一斉に空へ羽ばたいた。









(; -ω-);-A-)「……」






(  ^ω^)「……おろ?」



自分が未だ意識を持っていることに気付き固く綴じていた目を開ける。そこには先ほどまで頭を鷲掴みしていたツンの姿はなく、おそらく同じ心境であろう不思議そうに目を開ける毒男の顔があった。



(  ^ω^)「……」


( 'A`)「……」






(ノ^ω^)ピト


( ノ'A`)ピト



互いに自らの額に手を当てる。どうやら風穴が空いたり砕け散ったりはしてないようだ。



(; ^ω^)「た、助かったお……」


(;'A`)「けど今の音は?」








──なるほど。私の兵では相手にならないわけだ。












後ろから








今までにない寒気と共に










人ではない『何か』の声がした




〜畏怖 にようこそ!〜

253:◆/wOcNhjd4U
11/16(木) 17:22 ErY1O3tmO


(; ゚ω゚)「……」


瞬時に前へ跳び、後ろにいる『何か』との間合いをとる。

そしてその『何か』を視認して初めて今まで引っ掛かっていた違和感が無くなった。





「こんなところで『レアモノ』に会えるとはな」




こちらに視線を送る『虫』。大きさ自体は今までの虫よりは多少小型。自分たちと同じくらいだがそんなことはどうでもいい。


いや、だからこそより確信に近付く。








地面に垂直に立つ2本の足





肩から下ろされた2本の腕







あの身体は間違いなく……







川゚ -゚)「……『人間』か」


爪;゚ー゚)「……ええ。女王は一度気に入った餌を何度も狙うことがあるの。……こいつらの女王は『人間』を喰ったのよ」


Σ(;'A`)「なんだって?!」


(; ^ω^)「……そんな馬鹿な話が」




……正直、虫がちょっと他の生き物を食べて強くなったぐらいで一国がパニックになるとは考えられなかった。


だが食べたのが『人間』となれば話は違う。



人の知能を持ち虫の力を持つそれが何百……何千もいるとしたら









爪;゚ー゚)「……本物の女王がいる国は壊滅寸前。むしろ国一つで済めばいい方だわ」



(  ゚д゚)「向こうですらろくに拝めなかったのだが……5人もいるとは」


こちらを見ながらなおも呟く虫。おそらく表情を作る筋肉がないのだろう、表情の変化は見られない。


ξ゚听)ξ「いきなりこんなもの撃っといてよくそんなことが言えるわね」



言い返すツンの手には滴る赤い血と共に野球ボールほどの虫が握り締められている。毒男の側に同じようなものが打ち落とされているところをみるとどうやら先ほどの音はこれを倒したものだったようだ。



(  ゚д゚)「私の尖虫(せんちゅう)を止めたのは貴様らが初めてだ」


ξ゚听)ξ「あら、誉められてるのかしら?」


(; ^ω^)「あんま挑発するなお」


軽口を叩いているがツンの手から流れている血はその尖虫というものの威力を物語っている。


ツンが捕らえてあのダメージだ。











直撃すれば死ぬ。

254:◆/wOcNhjd4U
11/16(木) 17:24 ErY1O3tmO


(;'A`)「……おまえが王か?」



重い空気の中、毒男が誰もが聞きたかった問いを投げ掛ける。長く短い沈黙のあとに返ってきたのは






(  ゚д゚)「……いかにも。私はこの島の王、ミルナだ」




王と名乗るに相応しい堂々たる言の葉だった。



(  ゚д゚)「私のことを知っているということは貴様らもハンターか。……おまえらの『念』というのは少々厄介だな」


川゚ -゚)「……」


(;'A`)「ハンター?」


爪;゚ー゚)「戦闘のスペシャリストたちの総称よ」


(; ゚ω゚)「『念』っていうのは?」


爪;゚ー゚)「それは私も……ただ、ハンターたちはみな不思議な術を使うわ。おそらくそれのことだと……」


(  ゚д゚)「……なんだ。ハンターではないのか」


表情がない以上、感情を声から読む。奴の言葉は安堵しているかのようなものだがその声色はどちらかというと落胆しているように感じられた。


ξ゚听)ξ「そんなことはどうでもいいわ。どっちにしろあんたはわたしたちにをぶっ殺されるんだから」


(  ゚д゚)「……まあ私の兵も随分やられたしな」








「どの道生かしはしない」



やはり表情を変えることなく淡々と死刑判決を下す。


そして残響するミルナの声に応えるように文字通り後ろの森が揺れ、3匹の虫が現れた。





蜘蛛









蟷螂




ベースの種類はわかるものの、そのどれもが奇形でどれもがトラックほどの大きさを誇る。








今までの比ではない。



爪;゚ー゚)「……直属護衛隊ね」


(  ゚д゚)「こいつらは私が作った兵で最高の出来だ。そう易々とは死なんぞ」



(; ^ω^)「王を含めて敵は4匹……どうするお?」


爪;゚ー゚)「……王に2人、他は1人づつぶつけるわ」


爪;゚ー゚)「私は蜂、クーは蜘蛛、毒男はカマキリをお願い」


(; ^ω^)「……てことは」


ξ;゚听)ξ「……そうこなくちゃ」


(  ゚д゚)「……抗うか」








キメラアント編、ついに最終局面へ




〜って言っても更新遅いだけでそんな長編でもないんだよな…… にようこそ!〜

255:◆/wOcNhjd4U
11/18(土) 17:29 O7+MnaqFO


(;'A`)「……やー、やっぱ改めて見るとデカいわ」



返してくれる人がいないとわかっていても言わずにはいられない。


自分を優に超えるカマキリに出会えるなど誰が想像できようか。



(;'A`)「クーの指示通り王からは離れたけど……じぃは大丈夫かな?」



目前の敵を凝視しながらも思わず恋人の顔を思い浮かべてしまう。




爪^ー^)「心配しないで。大丈夫よ、私の方が経験は豊富なんだから」




別れ際に彼女はそう言っていた。しかし彼女はやはりこのメンバーの中で戦闘力は一番劣る。心配しないはずがない。できるだけ早く助けに……




(;'A`)「……いや、それはじぃを信じてないってことになる。彼氏の俺が信じないで……」



急にこちらを伺っていたカマキリの右腕が振り上げられ、毒男の頭上に落とされる。大木ほどの腕は地面に打ち込まれ、




(;'A`)「誰が信じるんだよっ!!」




毒男の廻し蹴りが炸裂した。





聞いたことのない金切り声をあげるカマキリ。ダメージはあったようだが未だにその腕は健在している。



(;'A`)「……くそっ! やっぱり関節と腹以外はかてぇな」



続いて降り落とされる左腕。先ほどのように紙一重で躱し、蹴りを入れるもやはり目に見えるダメージは与えられない。精一杯後ろに跳び、もう一度膠着状態に入る。



(;'A`)「……潜り込めるか?」



胴体の下のスペースを見ながら自身に問い掛ける。しかし自分は動きまわりながら攻撃を仕掛けるのは不得意だ。そして敵も王ほど強くはないものの自分の土俵を降りて勝てるほど弱くもない。潜り込む前にあの腕で潰されるのがオチ。足も同様。


ゆえに返ってくる答えは『NO』だ。



(;'A`)「……まったく。こっちのが難しいに決まってんだろ」



腕の関節を見据えてもう一度問い掛ける。サイズがサイズなので関節の位置はどうしても高いところになる。攻撃できるのは相手が腕を振り下ろす瞬間のみ。最小の動きで躱し最大の攻撃を入れなくてはならない。


躱せなければ一撃で死ぬ。







だってのに……




答えはとっくに返ってきている













『KILL!!』と

256:◆/wOcNhjd4U
11/18(土) 17:32 O7+MnaqFO


(;'A`)「いつから俺はこんな自信家になったんだか……」



こちらから攻める気がないことがわかったのか敵は少しづつこちらに近付いてくる。


2本の腕は今にも自分を潰さんと顔の下で構えられている。まるでファイティングポーズだ。



( 'A`)「まあさっきの早さならまだまだ余y」

ビシュッッ!!


Σ(;'A`)「?!!」



予想だにしない出来事に慌てて離れる。しかし自分の腕は千切れると言わんばかりの悲鳴をあげた。



(;'A`)「……やられた」



自分の右腕からは夥しい量の血が流れている。いや、繋がっているだけ殊勝だ。



(;'A`)「今までのは様子見ってことか」





これが敵の本来の攻撃。






構えられた2本の腕によるゼロモーションの打突。


先ほどまでのように振りかぶらない分スピードが脅威的に上がり、仕掛けてくるタイミングもとりづらい。さらにすぐに構えの姿勢に戻るため攻撃できる時間は刹那。




その動きはまさに獲物を捕らえるカマキリそのもの。



(;'A`)「まるでジャブだな。……落ち着け。やることは変わらない。」



そうだ。相手の攻撃が遅かろうが速かろうが関係ない。





カウンター





俺にできるのはこれだけ。











俺にしかできない。



(;'A`)「大丈夫だ。俺ならできる」



今までにじり寄ってた敵も既に目前であの構えのまま静止している。


次の瞬間で勝敗は決まる。




( 'A`)「……」












ビシュッッ!!




先ほどよりさらに速い撃ちだすような突きが繰り出される。



しかし




その腕は二度と敵の体に戻ることはなかった。




( 'A`)「……俺の勝ちだ」



右腕を無くし鼓膜が破れるほどの鳴き声をあげて暴れるカマキリ。続けて振るわれる左の腕は今までのような突きではなく振り落とし。






もはや勝負はついた。



( 'A`)「虫にしてはなかなか強かったぜ」



毒男の飛び蹴りにより左の腕も切り離される。




再び奇声をあげる顔も







毒男のかかと落としによってその巨体に別れを告げた。



( 'A`)「……さて、ちゃっちゃかブーンたちのとこにいくか」




〜毒男VS蟷螂 にようこそ!〜

258:◆/wOcNhjd4U
11/20(月) 09:53 KeqsDmdVO


爪;゚ー゚)「はぁ、はぁ……」


太陽を背にして森を駆け抜ける。当然自分の影は前にくる。

その影を見つめ……自分の影がより大きな影に飲まれた瞬間


爪;゚ー゚)「はっっ!」


全力で横に跳ぶ。


木の折れる音と共に自分の横に突撃を掛ける巨大な蜂はまたしくじったかとでも言いたげに大きな羽音をあげ再び空へ舞い戻っていった。



爪;゚ー゚)「これで3回目……どうやらあの蜂の攻撃パターンは空中からの突撃以外にはなさそうね」



この蜂の攻撃パターンは攻撃が終わるとすぐに空へ逃げるヒットアンドアウェイ。

自分の分配が正しかったと改めて実感する。



爪;゚ー゚)「毒男は近距離だから蜂は不適切。クーでもなんとかなったかもしれないけど……蜘蛛はおそらく私には倒せない」


しかし決して自分が楽な選択をしたわけではない。


私の銃という特性を考えても飛行型の敵は私が請け負うのは必定。それに……



爪;゚ー゚)「……私だけみんなの足を引っ張るわけにはいかない」



空に浮かぶごま粒ほどの黒い点を一睨みして再び走り始める。とにかく拓けた場所に出なければ攻撃にまわれない。
しばらくするとまた聞こえてくる羽音。もう一度自分の影を確認する。


後ろを逐一確認しながらでは奴に捕捉される。ゆえに前を向いて全力で走ったまま木々の影に紛れた奴の影と羽音で突撃のタイミングを測るしか方法はない。



爪;゚ー゚)「はぁ……早く……拓けた場所に……はぁ」


既に息は途切れ途切れ。もうそんなに長くは……





爪;゚ー゚)「くるっ!!」


言うが早いか真横の茂み飛び込む。しかし


Σ爪;゚ー゚)「なっ! しまっ」



茂みの先に地面はなかった。

急な傾斜に足をとられてそのまま10メートルほど転げ落ちる。全身に打ち身を負いながらもすぐに顔を上げて状況を確認する。



爪メ゚ー゚)「……Oh my god.」


そこには校庭ほどの大きさの野原が悠々と広がっていた。

259:◆/wOcNhjd4U
11/20(月) 09:57 KeqsDmdVO


爪メ゚ー゚)「拓けた場所にでた。あとは……」



左足を引きずりながら野原の中心に向けて歩く。どうやら茂みに飛び込んだ時に挫いてしまったらしい。



爪メ゚ー゚)「くっ……」



ゆっくりゆっくりと進んでいく。黒い点は私を見失ったらしく空をずっとうろうろとしている。



爪;゚ー゚)「お願いだから……気付かないで」



一歩進むたびに体中が悲鳴をあげ、それに伴なって歩幅が狭くなっていく。そして



爪メ゚ー゚)「ここなら……」



目的の場所に着くと同時に




彷徨っていたごま粒はじぃの正面で静止した。



爪;゚ー゚)「ここからは私の腕が試されるわね……」



みんなとの別れる際、蜂に私を認識させるために撃った銃弾はその甲殻によってことごとく弾かれた。


銃弾でのダメージは微細



爪メ゚ー゚)「一発で貫通できないなら……」



銃を遥か彼方にいる蜂に向ける。




目に自身の持ち得る全ての神経を注ぐ。





次第に嗅覚、聴覚、触覚と消えていき






視覚以外の感覚が全て無くなった時






絶対に見えないはずの






こちらに向かってくる蜂の頭を『視認』した。



爪メ゚ - )「打ち込んでやるわ。何発でも」



バァァンッッ!


初発の銃声を合図にデッドレースが幕をあける。


ルールは簡単。


今までの計算から奴が私に到達するまで約20秒。それまでに打ち落とせなければ負け(Death)。



次々と鳴り響く銃声。その一発の間隔は0.1秒を下回り、装弾数である15発を撃ってリロードするまでに5秒も掛からない。


だというのに




死は容赦なく迫りよってくる!





あと10秒

既に奴はごま粒からピンポン玉ほどに




あと7秒

3回目のリロード




あと4秒

依然スピードは全く落ちない



3秒

4回目、最後のリロード




2秒

全貌を認識。





1

「…………」









──0


凄まじい衝突音と共に地面が震え土煙があがる。蜂はそのまま慣性に従って木々を薙ぎ倒し、大地を削りながら進んでいき








額に風穴を残したままじぃの左後方20メートルほどのところで生命活動を停止した。



爪メ゚ー゚)「……Great!!」


〜じぃVS蜂 にようこそ!〜

263:◆/wOcNhjd4U
11/28(火) 18:03 BDaMao8oO


川゚ -゚)「さて、どうしたものか」


目の前に広がる無数の蜘蛛を一望する。大きさは小型の犬程度だが数は前に戦った戦闘アリの二倍を超える。一体一体は雑魚だが自分は大多数と戦うのには不向きだ。


川゚ -゚)「全く、我ながら面倒臭い能力だ」


苦笑しながらも焦りの類いは全くない。









──この程度で怯んでは『ハンター』の名が廃る。




川゚ -゚)「……爆弾かな」


ズボンのポケットに右手を入れる。再び現れる手の中には機械の玉のようなモノが握り締められていた。




クーの右手を離れ、弧を描く玉。それはゆっくりと蜘蛛の群れに着陸し










目が潰れるほどの閃光と空気を震わす爆音があたりを支配した。


森にできた小さなクレーター。地面ごと抉られた半径10メートルほどの円内には蜘蛛はおろか草一つ存在することを許さなかった。


その前で未だ佇むクー。


川゚ -゚)「……本体だけは逃れたか」




Σ川゚ -゚)「!!!」


何かをうちだす音に反応して大きく横に跳躍する。


続けてなる発射音、その度に跳躍で回避を続ける



が、足に絡み付いた糸によって空中から思い切り地面に叩き付けられた。


川゚ -゚)「く……、糸か……」


受け身をとったためダメージはあまりない。しかし右足に絡み付いた糸は自分を地面としっかり固定していた。




動けない。


川゚ -゚)「……なるほど。糸で捕獲してから食べるというのは大きくなっても変わらないのか」


目の前にいる蜘蛛は答えるはずもなくゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。


足を固定されてるため逃げるのは不可能。接近戦も満足に行えない。飛び道具の類いはほとんど使ってしまった。


まずは糸をなんとかするべきか……






……糸




川゚ -゚)「……そういえばそんな武器も『登録』していたな」


両の手を再びポケットに突っ込む。先ほどとはまた違い、今度はその手に爪の装飾が付いた黒い手袋が装着されていた。


川゚ -゚)「私の『アームズ』をなめるなよ」


そっと腕を広げる。





その瞬間、見えるか見えないかほどの微細な光が辺りを迸った。

264:◆/wOcNhjd4U
11/28(火) 18:06 BDaMao8oO


光に反応してか蜘蛛の体が強張る。


川゚ -゚)「流石は虫だな。人ではまず気付かないのだが……」


蜘蛛は依然動くことなく周りを警戒する。



そして距離をとるためか八本ある足のうちの一本で一歩下がり











蜘蛛の体はバラバラの肉片に変貌した。


川゚ -゚)「おまえの糸と違ってな。私の糸はよく切れるんだ」


当然、肉片は返事を返さない。





彼女の圧倒的な勝利だった。




川;゚ -゚)「……この糸、とれない」








(  ゚д゚)「なかなかやるではないか」


ξ#゚听)ξ「このっ!うろちょろと……!!」


森の中、空気を震わせながら続く攻防。周りの木々を巻き込みながら互いに敵を粉砕せんと渾身の一撃を放つ。


(  ゚д゚)「いいチームワークだ」


ξ#゚听)ξ「うっさい!!」

今までで最強の突きが繰り出される。しかしミルナは大きく跳躍してそれを回避し、また大樹が空を舞った。


(  ゚д゚)「私には力に秀でた貴様があたり、それを邪魔する私の虫は素早さに秀でた奴が防ぐ。考えたな」


ξ゚听)ξ「……」


佇むツンに後ろから突撃する尖虫。しかしそれはツンの周りを走る影によって再び遮られた。


ξ゚听)ξ「今のは私でも受け止められたわよ」


(  ゚ω゚)「いいからそっちをさっさと片付けるお」


ブーンはそのままツンの後ろで答えると再び影に戻る。


ξ#゚听)ξ「言われなくてもわかってるわよっ!!」


散らすように返事を返しまたミルナに肉薄する。嵐のような攻防の第二ラウンドが開始した。





……相手は飛行する小型の虫による多方向からの同時攻撃を主とする戦法。ならば格闘戦は弱いはず


そう思っての戦法だったが……



(; ゚ω゚)(ツンでも思ったより手間取ってるお……)


もう何匹目かわからない尖虫を弾く。



パワー、技術を総合した攻撃力なら間違いなくツンが上。しかし奴の防御力は段違いに高い。反射神経もさることながらやはり要はあの甲殻。たまに入る腕もあの硬度ではろくなダメージにならない。


ξ#゚听)ξ「ちっ……



思わず舌打ちする。





わかっている。






このままじゃ負ける。


〜クー対蜘蛛 そして最終局面へ にようこそ!〜

269:◆/wOcNhjd4U
12/03(日) 04:02 F6zUYGYvO


(  ゚д゚)「長引くとそちらが不利だぞ」


ξ#゚听)ξ「減らず口をっ!!」


手数はこちらの方が圧倒的に大きい。しかし時折入るミルナの攻撃は着々とツンの体力を削っていく。


(; ゚ω゚)(ミルナは攻撃力もかなり高いお……)



このままでは



ξ#゚听)ξ「……!!」




先にツンが力尽きる。



(; ゚ω゚)(ツンの攻撃じゃ関節は狙えないお。僕がやるしか……)


しかし三匹の尖虫は未だ隙あらばツンと僕を襲ってくる。そして人に近付いたミルナの身体は関節の数こそ多いもののどれも小さく切るのは至難。




相手の意表を突かなければ




(  ゚ω゚)(ミルナは僕が尖虫を防ぐことに専念してると思っているはず……)


だがそれだけでは足りない


次に三匹全ての尖虫が僕を狙った瞬間









(  ゚ω゚)「ツンっ!! 伏せるおっ!!!」


今しかない!!





ξ゚听)ξ「!!!」

(  ゚д゚)「!!!」


大きく屈むツンの上を飛び越えそのままミルナに向かってダイブする。


(  ゚д゚)「馬鹿め。いくら速いと言えど正面から……」


ミルナは真っ直ぐに飛んでくるブーンを打ち落とさんと腕を構え








見失った。



Σ(; ゚д゚)「なっ?!!」


同じく目標を失った尖虫は勢いを殺せずミルナを襲う。


未だ混乱する中、続く尖虫の三撃を弾くものの


(  ゚ω゚)「ふっ!!」

ξ゚听)ξ「はあぁぁっ!!」


四撃、五撃は躱せない。



(;;゚д゚)「ぐあっ……!!!」


空を切りながら数本の木を薙ぎ倒しもの凄い速さで木に叩き付けられるミルナ。そして木にめり込んだまま捻り出すように呻き声をあげると力なくその場に落下した。


(  ゚ω゚)「やったお!!」


ξ;゚听)ξ「……」


奇襲の成功を喜ぶブーンの傍らでツンは改めてブーンの実力を認識する。







──空中での跳躍




至極単純でありながら本来ありえない物理運動。


ブーンの速さで目の前で横に跳躍されれば……しかも跳躍できるはずのない空中でとなれば間違いなく見失う。そして混乱する頭では正面の尖虫はなんとかできても両サイドからの私たちの攻撃にまでは対処しきれない。





シンプルが故に効果は絶大。

270:◆/wOcNhjd4U
12/03(日) 04:04 F6zUYGYvO


ξ;゚听)ξ(……そういえば私もこれにやられそうになったのよね)


あの時は私の方が腕をもらう結果になったが尖虫のような追撃があればそうはいかなかっただろう。



(; ゚ω゚)「……倒したのかお?」


ξ;゚听)ξ(ブーン……恐ろしい子っ!!)

極めて真面目




(; ゚ω゚)「た、確かめるお」

相手の生死を確認しようと横たわるミルナに近付く。


ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと……」


漠然とした不安を覚えブーンを止めようとする。しかし片腕はブーンに切断され胸にも私の会心の一撃によって大きな穴が空けられている。遠目でもわかる。あれは死んでいる。


もし死んでなければ化物だ。



ξ;゚听)ξ「……でも」


遠く飛ばされたミルナの前で屈みこむブーンを見つめる









そして私は





その認識の甘さを死ぬほど後悔した。





ξ゚听)ξ「……」



ブーンの体が一本の棒によっ浮いている。




棒?



違う


あれは腕




浮いている?




違う


あれは貫かれている





もし死んでなければ化物?



(  ゚д゚)「……ふん」



何を言ってるのだろう



(  ゚д゚)「トドメも刺さずに不用意に近付くとは……愚か過ぎる」




あれは初めから化物だ




ξ;;)ξ「ぶ、ブーンっっ!!」


やっと現状を理解する。


(  ゚д゚)「……ああ、そうかっ! 人は胸に穴が空いた程度で死ぬ弱い生き物だったなっ!!」

(  ゚д゚)「私の風穴の仕返しにと思ったが……そちらは死ぬのでは些か不公平だったかっ!! ふ……ふははははははっっっ!!」


ξ;;)ξ「あ……、あ……」


大声で笑い狂う奴を見ても何も思わない。


ただ奴に貫かれているブーンが


ピクリとも動かないブーンが




ブーンを失ったという事実が



私の思考を埋めていく







私から全ての力を奪っていく

ξ;;)ξ「あ……」



膝が崩れる。



戦意など既にカケラもない。





全てが










どうでもよくなった。



〜悲痛 にようこそ!〜

271:◆/wOcNhjd4U
12/03(日) 04:09 F6zUYGYvO

訂正


>ブーンの体が一本の棒によっ浮いている。

ブーンの体が一本の棒によって浮いている。



見直しが甘かった…

273:◆/wOcNhjd4U
12/07(木) 09:28 TdUR6e4ZO


(  ゚д゚)「ほら、受け取れ」


勢いよく放られたブーンの体はそのままツンの前に打ち捨てられる。


(  ゚д゚)「最後の別れぐらいは許そう。もっとも……、すぐに後を追うことになるがな」


ξ;;)ξ「……ひっく……えぐ……」



力の入らない体で一心不乱にブーンの元まで這っていく。





彼の元までいってどうするのか。




自分にできることなど何もない。






それでも




空になった心がなお必死に私を突き動かす。




ξ;;)ξ「……ブーン…………ひぐ……」


縋るように彼の名を呼ぶ。抱き起こす時に力なく垂れた腕は壊れて捨てられた人形を連想させた。


(  ゚д゚)「はっはっはっはっっ!! これは愉快だっ!! 人間はつがいが死ぬたけでこれほど骨抜きになるとはっ!!」



響き渡る嘲笑も今のツンにはただの音にしか聞こえない。


(  ゚д゚)「こんな弱小生物がここまで繁栄してるのは実に不愉快だ。やはり私が王とならねば……」




延々と続く雑音。



ただ流れていく音の羅列。



その中に










「全く…、こんな ゴ ミ ばかり増えては辛抱堪らん」





心を握り潰す不快な音が混ざりこんだ。



ξ  )ξ「……今なんて言ったの?」


(  ゚д゚)「おおっ、お気に召さなかったかなっ?! そこの ゴ ミ をさっさと片付けなければと言ったのだっ!!」


ξ  )ξ「……」



体は震え視界の焦点は合わなくなる。奴の発した音が残りの意識をもぎとっていく。







虫けらに何がわかる。





大切な人を奪われた悲しみが



大切な人を侮辱された苦しみが



空の心に黒いものが注がれていく









憎い



ξ  )ξ「……アンタはシネ」



頭の白いまま腕に力を込める。




私はどうなってもいい。




「これ」を使えば奴を








ξ  )ξ「……『じゅ」


「……ツン」



Σξ゚听)ξ「?!!」



聞き覚えのある微かな声が




真っ白な世界に再び色を取り戻した。

274:◆/wOcNhjd4U
12/07(木) 09:36 TdUR6e4ZO


(;  ω )「いる……かお?」


(  ゚д゚)「……ほう。まだ生きていたか」


ξ゚听)ξ「……ブーン……生きて……」


(;  ω )「童貞のままじゃ……死ねないお」


ξ;;)ξ「……バカっ!! アンタはこんな時まで……!!」



ブーンが生きている。



その事実に再び涙が溢れる。しかし彼は目を開けることは叶わなく夥しい量の血が死へのカウントを無慈悲に報せていた。




(;  ω )「ツンは……意外に泣き虫だから……困るお」


ξ;;)ξ「だって……ぐす……アンタがいけないんじゃない……ひっく」



違う。



そんなことが言いたいんじゃない。



ξ;;)ξ「……ブーン……」


(;  ω )「……頼みがあるお」


ξ;;)ξ「……なあに?」

(;  ω )「……アイツを……任せたお……」


ξ;;)ξ「……」



(;  ω )「絶対に……友達……は……」




「……約束……したんだお……守るって……」





ξ;;)ξ「……大丈夫よ。だからアンタは少し休んでなさい」


(;  ω )「……」


少しでも延命を計るためだろう。ブーンは最後まで聞くことなく意識を体に奪われたようだ。



死の縁だというのに



その顔はとても安らかなものだった。











ξ  )ξ「……任されちゃった」


(  ゚д゚)「生かさんよ」



どこに隠れていたのか三匹の尖虫が再びミルナの頭上に姿を現わし、背を向けるツンに向かって射出される。






当然、防ぐ影があるはずもなく今までの最高速度で迫るそれは











「モユルウデ」






ツンの炎を纏う腕によって一瞬で灰と化した。




ξ゚听)ξ「アンタは……私が倒す」


(  ゚д゚)「……貴様、やはり」


ξ゚听)ξ「私は『呪炎』と呼んでるけど……『念』ってこれのことでしょ?」



赤く燃え盛る腕に視線を落とす。炎はそれに呼応するようにより一層荒々しく揺らいでみせた。





彼が死ぬ寸前でなお守ろうとする友との『約束』





ξ゚听)ξ「時間がないわ。さっさと終わらせましょう」





それを私は託された。






なら






ξ゚听)ξ「……守ってみせる。絶対にっ……!!」




〜託す にようこそ!〜

276:◆/wOcNhjd4U
12/08(金) 10:54 RuxiiVQGO


(  ゚д゚)「念が使える程度で私に勝てると思ってるのか。戯けが」


言い放ったミルナの後ろから続々と現れる尖虫。その数実に三十。



今までの十倍。



(  ゚д゚)「今までは加減してやったのよ。これだけの数は防げまい」


ツンを中心に半球型に展開した尖虫は


(  ゚д゚)「蜂の巣となれ」


ミルナの合図で一斉に弾丸と化した。










「エンバツノチカラ」






(  ゚д゚)「……な」


ミルナは思わず言葉を失う。


無理もない。



ツンは微動だにせず



ξ゚听)ξ「同じね。私も加減できないの」




再び周りの尖虫を灰に変えたのだから。


(; ゚д゚)「馬鹿な……」


尖虫を消した炎の衝撃波は周りの木々に引火し異質な空間を作り出す。


炎が照らし息をするだけで命を削る灼熱の世界







炎獄



ξ゚听)ξ「アンタは絶対に許さない」


(  ゚д゚)「ぬかせ」


尖虫が無駄とわかるや否やすぐさま接近戦に持ち込むミルナ。

しかし今までのそれとは全く違う。



「カグツチノコロモ」



(; ゚д゚)「く……」


ツンの纏う熱気は近付くだけでミルナの体を蝕む。加えて熱によって歪められた空気のせいで急所を狙うことすら満足にいかない。

そして一層燃え盛る腕は触れた箇所に容赦なくその力の烙印を残していく。



幕を開けた第三ラウンド。見た目は前と同じでも状況が全く違う。



(  ゚д゚)「……ちっ」



先ほどとは真逆。


長引けばやられるのはミルナ。



(  ゚д゚)「……はっ」


蹴りの反動で大きく後ろに跳び距離をおく。


(  ゚д゚)「……仕方がない」

ξ゚听)ξ「逃がさないわよ」


(  ゚д゚)「……すぅぅぅぅぅ」


大きく息を吸い空気を取り込む。

そして体中の『共鳴器』を使い






一気に外へ



ξ゚听)ξ「?!!」


頭部を刺すような音が赤い森に響き渡る。ミルナの体中から発せられる超音波により近場の石は吹き飛び森が震動する。




そして




明らかに"震源の違う"震動が焼ける地面を揺さぶった。

277:◆/wOcNhjd4U
12/08(金) 11:01 RuxiiVQGO


ξ゚听)ξ「……カブトか」

(  ゚д゚)「私の最強の兵だ」

これはもしものための切り札。
高さは十メートルを越え普段から山にカモフラージュして隠さなければならないほどの巨体。こいつが繰り出す突進は文字通り山をも砕く。



まさか人間などに使うとは



(  ゚д゚)「……潰せ」


合図と同時に山が走りだす。


荒れ狂う大地。


弾け飛ぶ木々。


全てを押し潰しながら猛進するこいつを止められるのは誰も……





「ホウメツノウデ」





(  ゚д゚)「……馬鹿……な……」



奴の何百倍もあるカブトが



たったの一撃で




(; ゚д゚)「……やられただと」


ξ゚听)ξ「終わりね」


額を腕に貫かれたカブト虫はその大きさに関わらずツンの炎によって消炭と化す。

黒色の山は一度吹いた強風によって黒煙となり炎に照らされる赤い空へと運ばれていった。




ξ゚听)ξ「ふっ!!」


(;;゚д゚)「がぁぁっっ……!!」


余りの結果に惚け正面からもろに突きを受ける。
そのまま吹き飛び燃え上がる木に叩き付けられると次は声すらだすことなく根元にずり落ちた。



「アンタは虫に頼りすぎよ」


アリエナイ



「最後の言葉ぐらい聞いてあげるけど」



この私が



「話すのすらままならなそうね」




人間風情にやられるなど……



「……それじゃあそろそろ終わりにしましょうか」






ξ゚  )ξ「ミルナ」







──ああ、そうか


吹き荒ぶ炎の嵐の中、ゆっくりとこちらに歩いてくる奴の姿を見て理解する。


(  ゚д゚)「……はは。なんだ。間違っていたのは私の方か」


右腕で首を掴まれ、持ち上げられているという状況で思わずそんな言葉が零れる。


ξ゚听)ξ「随分間抜けな遺言だこと」




なんてことはない



奴は人ではなく





ξ゚听)ξ「じゃあね」






──鬼なのだから






「ホウラクノケイ」









天を貫く灼熱の柱



その跡地に佇む鬼は



今は亡き右腕の中身を





虚ろな目でただただ見つめていた。



〜ツンVSミルナ にようこそ!〜

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