565:名無しさん
11/24(土) 01:15 gZSviKgtO

 
四十六重 『過ぎ行く思い』
 
私が思い出すのは妹と彼。
戦いの中だって例外じゃ無い。
デレもブーンも私を置いて行くなら追い掛けるしかないんだ。
いや、二人に……ついでだから皆来てくれればいいんだ。
だから私は行動した。
だから私は頑張った。
友を殺し、失った。
かつての友人のコピーで命を弄んでしまった。
戻らない。
否、戻れない。
だから私を止めないで。
 
ξ( 、  ξ「私は止まらない だから邪魔しないで……」
 
光が生まれ、瞬き、消える。
突如、発砲音が乾いた空気を切り裂いた。
光の生死が瞬き、その間を小さな弾丸が一つ、少女の心臓を目掛けて進む。
心臓を弾が貫いた。
凍り付く心。

566:名無しさん
11/24(土) 01:17 gZSviKgtO

 
从;゚∀从「……呆気ないが仕留めたのか?」
 
デレの胸から小さく、何かが割れる音がした。
 
('A`)「わからん……何かあるかもしれない」
 
光の瞬きは止まらない。
輝きは増す。
 
(;'A`)「近付くな!!」
 
从;゚∀从「あ、あぁ」
 
ドクヲがデレの生死を確認しようとしたハインに叫ぶ。
ドクヲはデレの双肩に浮かぶ光の輪に光が二つ、吸い込まれるのを見た。
能力が残っているということは生きているか、もしくは生き返るか。
ドクヲの頭には有り得ないという五文字が過ぎる。
そして無自覚だが口に出した。
 
(;'A`)「有り得ない……」
 
そう、眼前で起きた出来事は有り得ないのだ。
 
ξ(゚ー゚*ξ「有り得ないなんて有り得ない、でしょ?」
 
デレの胸付近が不純物を浄化するように輝き、喋り始めた。
心臓が砕けたはずのデレが。

567:名無しさん
11/24(土) 01:18 gZSviKgtO

 
ξ(゚、゚*ξ「この光が私の能力 光は命 私は光の、地球の命の数だけ蘇る」
 
沢山の光が呼応するかのように輝いた。
 
ξ(゚△゚*ξ「一度倒したら安心するなんてナンセンス」
 
デレが手を軽く前に差し出す。
呼ばれたように、いや喚ばれたのだ。
そして光の本が現れた。
アルカナの集まった本が。
 
(;'A`)「ラスボスっぽいな」
 
从;゚∀从「あっちは生き返るから私たちが敵かもしれん」
 
(;'A`)「コンティニューは反則だろ」
 
光を落とす。
弾丸で、硝子玉で、命の源を。
 
ξ(゚、゚*ξ「行動が早い、けど甘い甘い」
 
輝く本のページが開く。
本の姿は消え、デレは微笑んでいた。
 
ξ(゚ー゚*ξ「数が減ったなぁ……仕方ないから増やそうか」
 
光が全て集まり、デレはそれを右手で握りしめた。
デレは、唱えた。
アルカナを。
他人のアルカナを。

568:名無しさん
11/24(土) 01:20 gZSviKgtO

 
ξ(゚△゚*ξ「FOOL:神の模倣」
 
(#'A`)「おまえ!! ビコーズのアルカナを!!」
 
ξ(゚ー゚*ξ「強者の自由よ、ドクヲ ギャラリーフェイク」
 
右手が開かれ、光が宙を舞う。
そして左手にも同数の光。
二倍に輝く光。
 
ξ(゚△゚*ξ「どうやら主人公が私のゲームみたい さいきょー状態の主人公は反則並に強いよ」
 
本が現れ、ページが勝手にめくられる。
 
ξ(゚ー゚*ξ「さぁ、いくよー」
 
ξ(゚、゚*ξ「JASTICE:飛燕」
 
白と金の鳥が空を、風を、切り裂く。
 
从;゚∀从「ちっ」
 
弾丸を撃つが当たらない。
的が速い。
 
('A`)「落ち着け 狙いを定めろ 焦るな」
 
ドクヲが硝子玉で光を落としながら声をかける。
鳥は宙を旋回している。
 
从 -∀从「……」
 
目を閉じ、深呼吸。
心が落ち着き、撃つことに集中する。
狙いを落とすことに集中する。
 
从 ゚∀从「……」
 
燕がこちらに狙いを定めた。
その一瞬、隙ができる。
刹那、二羽の鳥が凍り付き、地に落ちる。
翼をもがれた鳥のように地に堕ちる。

569:名無しさん
11/24(土) 01:21 gZSviKgtO

 
ξ(゚、゚*ξ「長岡の心じゃ無駄か……SUN:紅炎」
 
燃え盛る炎が迫る。
 
('A`)「……」
 
ドクヲが少し後ろに下がる。
そしてハインが前衛に現れ、炎を撃つ、撃つ、撃つ。
炎が凍る。
 
ξ(゚、゚*ξ「……」
 
火力を増し、紅の炎が全てを焼き尽くすかのように進む。
そして、止まる。
氷に炎が閉ざされ、止まる。
 
なんで、邪魔をするの。
なんで、止まらないの。
なんで、立ち塞がるの。
何度も、何度も、何度も。
違う人間なのに同じように私の進路を閉ざすの。
 
从;゚∀从「撃つほど威力が上がる」
 
ξ(゚△゚#ξ「邪魔は消す!! 私は進む!! 前へ!!」
 
炎が消え、本が現れる。
そして輝く。

570:名無しさん
11/24(土) 01:22 gZSviKgtO

 
ξ(゚△゚#ξ「MOON:射守月」
 
本が消える。
 
ξ(゚、゚#ξ「朔望する思い!! 新月!!」
 
そして、風が、強い強い風が、吹き荒れた。
ハインとドクヲは反射的に腕で風を防ぐ。
そして、見えない矢が腕に傷をつけた。
切り傷から血が滲む。
 
从;゚∀从「見えないぞ」
 
(;'A`)「光がまだあるが防御に回すか」
 
ドクヲとハインを中心にいくつかの硝子玉が回転しだす。
硝子の玉と硝子の玉がぶつかり合う音が響き、次第に音は聞こえなくなった。
周りを見えない何かが回っていることだけハインにはわかった。
風が途絶える。
 
ξ(゚△゚#ξ「なんでドクヲも邪魔するの!? 私はドクヲのようにクーだけに星を、ワタナベのように麻薬と兵器と実験生物を研究したわけじゃないのに!! 私は皆を生き返らせて平和な世界を創りたいだけなのに!!」
 
風が舞い上がる。
デレの髪を浮かせる。
 
从;゚∀从「……どういうことだ? ドクヲ」
 
('A`)「……デレの言った通りだ クーを生き返らせるために試行錯誤していた それだけさ」
 
从;゚∀从「ロマネスクにデリートされてぶちギレたのは」
 
('A`)「……今までの記録が消えたからだ」
 
ドクヲはハインを見据えて答える。
ハインも目を反らさない。
 
从;゚∀从「……」
 
('A`)「だからかな わかったんだよ」
 
遠くでは雲が流れ、ちぎれ、形を変える。

571:名無しさん
11/24(土) 01:24 gZSviKgtO

 
从;゚∀从「……何にだ」
 
('A`)「……限界さ」
 
ξ(゚、゚*ξ「限界なんてない 箱庭には私以外は皆いるもの」
 
('A`)「だけどまがい物でコピーなんだよ」
 
ξ(゚△゚*ξ「そのまがい物に精神を同調させてあなたたちが入って来た 本物と変わらないからこそ出来たはず」
 
デレをドクヲは見据える。
 
('A`)「確かにな だが、本物は俺なんだ コピーは所詮コピーだ」
 
ξ(゚、゚*ξ「私の研究は完璧 何度も試行錯誤を重ね、ロマネスクの邪魔にも耐え、完成させた オリジナルと同性能のコピー なら本物と代わりない あそこにはクーもいた ジョルジュも、ブーンもいた 楽しかったでしょ」
 
('A`)「あぁ、楽しかったさ」
 
ξ(゚、゚*ξ「ハインだってジョルジュと話せて……いや、模倣VIPに入る前からジョルジュと楽しんでた」
 
从 ゚∀从「……違うな」
 
ξ(゚△゚*ξ「……あなたたちが私に協力してくれるなら皆……」
 
从 ゚∀从「断る あいつは長岡なんだ ジョルジュとは違う それにジョルジュはもういないんだよ」
 
('A`)「そうだな 違うんだよ あいつらはクーであって、クーじゃないしブーンであってブーンじゃないんだ」
 
ξ(゚、゚*ξ「……」
 
('A`)「いいか、デレ……いやツン もう皆とは会えないんだ」
 
从;゚∀从「ツンだと……?」
 
ξ(゚△゚#ξ「そんなわけない!! 私が皆を生き返らせて、仲良く過ごすんだ!! ブーンとデレと一緒に!!」

572:名無しさん
11/24(土) 01:26 gZSviKgtO

 
(#'A`)「皆死んだんだよ!! 受け入れろ」
 
ξ(゚、゚#ξ「受け入れている!! ジョルジュは生き返った!! だから皆を生き返らせて…」
 
(#'A`)「ジョルジュが生き返ったわけじゃないだろ!! あいつは長岡であってジョルジュじゃない!! おまえが旅をさせて育った人工知能を単に蛋白質をベースに造った肉体に埋め込んだだけだ!!」
 
ξ(゚△゚#ξ「でもジョルジュのように喋り、動き、生きた!!」
 
从 ゚∀从「“ように”じゃダメなんだよ……“ように”だとただ似せて造っただけだろ」
 
ξ(゚、゚#ξ「……っ!! でも……」
 
('A`)「いいか? あいつらには俺らとの記憶がない ブー……内藤と話をした時、長岡と話をしたとき、ツ……デレと話をしたとき、一番悲しいのはおまえξ(゚△゚#ξ「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
 
デレが叫び、空気が揺れる。
 
ξ(゚ー゚#ξ「もう話をする意味ない 死ね」
 
デレの頭上に白い光を放つ月が現れた。
大きさはデレを包み込んでもゆとりが保てるほどだ。
 
(;'A`)「前の戦いのときのやつか」
 
ドクヲの頬には汗がうっすらと滲んでいる。
 
ξ(゚△゚#ξ「上弦・下弦!!」
 
月が半分に割れる。
割れた月の上半分がその場に留まり、下半分が突撃してきた。
 
(;'A`)「防ぎきれねぇな」
 
从;゚∀从「マジか」
 
そして下半分の月が激突。
硝子玉の回転に阻まれ、月のカケラと硝子の破片が散らばった。

573:名無しさん
11/24(土) 01:27 gZSviKgtO

 
(;'A`)「次が来るから避けろ!!」
 
从;゚∀从「あれは避けられねぇよ!!」
 
(;'A`)「今のうちに月の上半分を撃ち抜け!! 俺はアルカナを使い切ったから出す よって少し遅れる」
 
从;゚∀从「把握!!」
 
月に撃ち込み続ける。
簡単に削れはするが、全体から見るとほとんど減っていない。
だが、諦めずに撃ち続ける。
薬莢が落ちる。
何個も、何個も。
 
ξ(゚、゚#ξ「そろそろ死んで!!」
 
上半分の月から光が放たれる。
道を覆うような広く、大きい光が。
 
(;'A`)「これは死んだな」
 
从 ゚∀从「諦めんなよな この程度じゃ私は死なないし」
 
銃弾が一つ、光に向かう。
一筋の氷の道が続く。
光とぶつかり、凍る。
 
从;゚∀从「チャージを使い切ったから次に同じかこれ以上の技が来たら防げないぞ」
 
('A`)「いや、問題ないな 奥の手がある」
 
氷が、溶ける。
凍っていた光が放たれ、周囲が輝いた。

574:名無しさん
11/24(土) 01:29 gZSviKgtO

 
ξ(゚△゚#ξ「うざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい!!」
 
ξ( 、 #ξ「満月」
 
金色の巨大な月が、空を覆う。
 
ξ(゚ー゚*ξ「消えてよゴミ」
 
月が落ちてくる。
 
从;゚∀从「ヤバイな」
 
('A`)(声潜めろ)
 
从 ゚∀从(なんでだ)
 
('A`)(ばれたら終わりだ これ使え)
 
从;゚∀从(こりゃあ……)
 
('A`)(これを使って光を撃ち抜け 一瞬だけだ 光を全て潰したらデレの腕を砕いてすぐに俺によこせ)
 
从;゚∀从(把握した)
 
('A`)(二つのアルカナは体に負担をかけすぎるから一瞬だ わかったな)
 
从;゚∀从(あぁ)
 
月が上空から少しずつ迫る。
地が金色に照らされる。
 
ξ(゚△゚*ξ「死ぬ前に雑談なんて余……」
 
一発分だけ発砲音が聞こえた。
そしてデレの命の光が凍りつき、全て砕けた。
 
ξ(゚、゚;ξ「しまった……ギャラリーフェ」
 
右腕が凍り、砕ける。
アルカナの発動がキャンセルされた。
命は自らのストックのみ。
本は宙に浮いている。
防ぎきれなければ敗北。
月は未だ、落ちる気配無し。

575:名無しさん
11/24(土) 01:31 gZSviKgtO

 
从 ゚∀从「ドクヲ!!」
 
('A`)「よくやった!! これで終わりか…」
 
そしてドクヲの姿が消えた。
「MAGICIAN:神眼」という声があとからデレに聞こえた。
 
神眼は0と1の間の情報速度の速さへと身を投じることが可能になる能力。
速度のLimitを限りなく0に近付けるため、殆ど止まって見える。
 
('A`)「そろそろ終わりか 呆気ないな」
 
ハインと本を宙に浮いている道の終点、冥王に投げ入れる。
ヒートとの戦いの最中に鍵付近に埋まっていた硝子玉を砕く。
デレに腕を突き刺し、自らのアルカナとヒートのアルカナも投げ入れる。
そして能力が解除された。
デレにとっては一瞬の出来事だった。

576:名無しさん
11/24(土) 01:32 gZSviKgtO

 
ξ(゚、゚;ξ「あ……れ?」
 
('A`)「……」
 
从;゚∀从「は……?」
 
一瞬の出来事にハインとデレは着いていけなかった。
たがデレの胸がドクヲの腕に貫かれ、貫いたドクヲは血だらけだ、ということが目の前にある情報だった。
デレとドクヲが血を吐き、倒れた。
そして地上にある鍵付近の硝子玉が砕けた。
ハインを道へと進ませるために巨大なポーンをいくつも造った地面はあまりに脆い。
ポーンは土を使い、形を成す。
脆くなった地面には穴が空き、鍵を練り込んだポーンはその穴に落ちた。
そしてヒートだったポーンが落下、土のポーンを砕いた。
鍵が露出する。
光の道が消える。
ドクヲとデレが下に落ちて行く。
そして冥王の球体はハインを中に入れたまま、閉じた。

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