1:ハニワ軍団
2010/08/12 21:46:19 WqiIuB7qO
某駅の情報掲示板。そこに書かれた一行の文。
「怪異についてお困りの際は ×××-××××へ」
いたずら書きにしか見えないこの文章。掲示板の隅に小さく書いてあり、普通の人は気付かないであろう。本来なら削除されてしまいそうなこの書き込みが消されないのには理由があった。
一人の男が掲示板を見て、電話をかけている。顔色は悪く、何かに怯えているようだ。
ガチャ、という音がして、通話が開始された。
(;゚∀゚)「も、もしもし!掲示板を見たんだが…」
「ああ、お客さんですね。一体どのようなご用件です?」
(;゚∀゚)「た、助けてくれ!呪われてるんだ!殺されちまう!」
「ほう…詳しく話を伺いましょうか」
気紛れな相談屋のようです
2:ハニワ軍団
2010/08/12 21:52:46 WqiIuB7qO
喫茶店
先ほど電話をかけた男性が喫茶店の前で、やはり先ほどと同じように何かに怯えながら立っていた。終始周りをキョロキョロと見回し、その目は血走っている。
(
・∀・)「やあ、どうも」
不意に声をかけられ、男は奇声を発して尻餅をついた。
(
・∀・)「先ほどは電話どうも。何かお困りのようで」
声をかけた男の方は相手を気にすることなく一人で話し続ける。
(
・∀・)「一体どのようなご用件ですかね、ああ、立ち話もなんですからコーヒーでも。そのために喫茶店で待ち合わせしたんですからね」
そういうと男は一人で喫茶店の中に入って行った。取り残された尻餅奇声男もあわてて喫茶店内に向かう。
( ・∀・)ノシ「アイスコーヒー2つ」
先に店内に入った男はすでに注文をしていた。
(;゚∀゚)「お、おい…あんた」
(
・∀・)「注文はアイスコーヒーで良かったでしょうかね、なかなか来ないので先にまとめて注文してしまいました」
(;゚∀゚)「あ、ああ。いや、そんなことより」
(
・∀・)「ああ!そうですよね、アイスコーヒーなんかよりも大切な事がありました!自己紹介がまだでした。私こういう者です」
そう言って差し出した名刺には
『モララー』
と名前だけが書いてあった。
(;゚∀゚)「あ、ああ。どうも」
(
・∀・)「あなたの名前は?自己紹介は互いに行って初めて意味を成します」
(
゚∀゚)「…ジョルジュ長岡だ」
モララーの勢いに着いていけず、長岡は苛立ちを覚えながらも答えた。
(
・∀・)「小林さんね、なんて平凡な名前だ!」
ははは、と笑うモララー。その態度にとうとう我慢出来なくなったのか長岡が立ち上がった。
(#゚∀゚)「いい加減にしろ!からかってるのか!」
(
・∀・)「は?」
(#゚∀゚)「俺は真剣に困っているんだ!」
(
・∀・)「知りませんよ、まだ詳しい話を聞いてないんですから。あ、コーヒーがきました。ここのコーヒーは旨いんです」
(#゚∀゚)「てめえ…」
(
・∀・)「物事には順序があります。あなたが何を困っているのか、それを今から伺うんですよ」
( ゚∀゚)「…」
なんとも度し難い人物である。
(
・∀・)「さあ、話してください。呪われてるとかなんとか言ってましたね」
( ゚∀゚)「ああ…」
( ・∀・)「詳しく聞かせてもらえますか」
3:ハニワ軍団
2010/08/12 21:57:20 WqiIuB7qO
ミス 小林→長岡
長岡の話をまとめると、自分には付き合っている人が居たが、喧嘩をして自分はふられてしまった。その数日後彼女は自殺。それ以降長岡の周りでは様々な恐ろしい出来事が起き、高名な僧を尋ねたりもしたものの解決しなかった。もうここしか頼れるところがない、ということらしい。
(
・∀・)「ふむ」
(;゚∀゚)「死にかけたこともあるんだ。寺で貰ったお守りを持っている間はまだ大丈夫なんだが…」
(
・∀・)「一つ聞いてもいいですか?」
( ゚∀゚)「なんだ…」
(
・∀・)「あなたの今言った話に嘘はないですか?」
(;゚∀゚)「な、何故そんなことを」
(
・∀・)「ないですか?」
(;゚∀゚)「疑われるようなことは…」
(
・∀・)「ないですか?」
(;゚∀゚)「あ、ああ…ないよ。ないさ、ないとも!俺は被害者だ!」
(
・∀・)「なるほど。その怪異は家に居る時が多いのですか?」
( ゚∀゚)「ああ、一人で居る時が多いな」
(
・∀・)「なら、今からあなたの家に行きましょう」
( ゚∀゚)「ああ…」
4:ハニワ軍団
2010/08/12 22:02:01 WqiIuB7qO
長岡のアパート
( ・∀・)「汚い部屋だなあ」
開口一番、モララーのセリフである。確かに汚い部屋だった。汚いというか、破壊されてるというべきか。
(
゚∀゚)「みんなあいつがやったんだ…!勝手に物が飛んだり、グラスが割れたり…」
長岡が言った途端、玄関のドアが勝手に施錠された。
(
・∀・)「おや」
(;゚∀゚)「ひい!」
電灯は激しく点滅し、食器棚から食器が飛び交い、本棚から本が飛び交い、部屋は阿鼻叫喚の事態に陥った。
(;゚∀゚)「うわー!やめろ、やめてくれええ!」
長岡はうずくまって泣き喚いている。
モララーはというと
(
-∀-)「対価は…そうだなぁ、寿命。僕の寿命を話した時間分くれてやる。だから少しの間僕と話しをしないか?」
等と呟いている。すると、突然、部屋の騒ぎは治まり、同時にモララーが倒れた。
(;゚∀゚)「…?おい…、おい、あんた。どうした…?嘘だろ!ちょっと待ってくれよ!おい!起きろよ!おい!おい!!」
5:ハニワ軍団
2010/08/12 22:12:36 WqiIuB7qO
何も無い真っ暗な空間。どのくらいの広さなのかも、何かがあるのかもわからない。
(
・∀・)「お話をするのに真っ暗はいただけないな」
モララーの声が響いたかと思うといきなり明るくなった。そしてよく見ると、どこかの応接室のような景観になっている。モララーが腰掛けるソファーの向かいのソファーには一人の女性が座っていた。濃い目の茶色のロングヘアーの、大人しそうな女性だ。やや長めの前髪で目許が隠れているが、中々に美人のようだ。
(
・∀・)「さて、まずはお礼を言わせてもらいましょう!よくぞ承諾してくれましたね、あなた死んでるから寿命なんてって文句言われると思ったんですが」
モララーが笑いながら言う。確かに、死んでる人相手に寿命を払っても得はない。モララーの寿命がただ単にに減っただけである。
(*゚ー゚)「…よく言うわ。あなたあの時点で寿命を一時間放棄したじゃない。応えなければ原則に反するわ」
(
・∀・)「まあね!この世は全て等価交換で成り立っていて、それには従わざるを得ない!僕が先に条件を提示して対価を払ったなら相手であるあなたは従わざるを得ない!上手く出来てますなあ!」
ははは、と笑うモララー。
(*゚ー゚)「…あなたなんなの?」
(
・∀・)「普通の人間ですよ。ただ一つ皆さんと違うのは、『価値の分かる男』だってこと。普通の人は等価交換の原則はうすぼんやり理解していても、何と何が等価なのかわからない。だから神社に願掛けしても願いは中々に届かない。でも僕は何と何が等価なのか完璧に理解している。つまり、対価さえ払えば僕はどんな願いもかなえられるわけ」
(*゚ー゚)「…いいのか悪いのか微妙な能力だわ」
(
・∀・)「まあ対価は払うわけだからね」
相手の女性はクスリと笑いながら、モララーは声を出しながら笑い、コーヒーを飲んだ。
(*゚ー゚)「で、私になんの用なの?」
(
・∀・)「ちょっと待った、まずは自己紹介から。僕の名前はモララー。微妙な能力を使い怪異専門の相談所をやっている」
(*゚ー゚)「…私はしい」
(
・∀・)「C?変な名字だ!」
(*゚ー゚)「よく言われるわ」
(
・∀・)「じゃあしいさんと呼ぼう。さてしいさん。あなたに聞きたいことがいくつかある」
6:ハニワ軍団
2010/08/12 22:18:25 WqiIuB7qO
(*゚ー゚)「何よ」
( ・∀・)「何故あの男を襲う?彼に聞く限り襲われる理由はないが」
(*゚ー゚)「…あいつは何て言ったの」
(
・∀・)「喧嘩の末自分はふられた。その後君が自殺した、と」
(*゚ー゚)「よく言うわ…ふったのは向こうなのに」
(
・∀・)「詳しく聞かせてもらえますかな」
(*゚ー゚)「喧嘩したのは本当よ。理由はあいつが浮気をしてて、その浮気相手と結婚するからって」
(
・∀・)「ふむ」
(*゚ー゚)「私にも結婚したい、いつ籍を入れるか、なんて話もしてたのに…」
(
・∀・)「なるほど、で、手酷くふられた末自殺、彼を呪い殺そうと」
(#゚ー゚)「そうよ!何か問題ある!?あんたあいつに私をどうにかするように頼まれたんでしょ!邪魔するならあんたから殺してやる!」
(
・∀・)「まあまあ落ち着いて。結論から言えば僕は彼を助ける気はない。だってまだ対価を頂いてないから。もっと言えば、彼は僕に嘘を吐いた。僕は嘘吐かれるのが一番嫌い。さらに、君みたいな美人さんを悲しませるような奴は気に入らない」
(*゚ー゚)「…ずいぶん適当な相談屋ね」
(
・∀・)「僕だって人間。助けたい奴、助けたくない奴は居る。そして今回の場合、僕は君の方を助けたい。悪霊になって現世をさ迷うのは苦痛の極みだ。早く天国に行ってもらいたいからね」
(*゚ー゚)「…協力してくれるの?」
(
・∀・)「対価をくれれば」
(*゚ー゚)「私にあげられるものなんて…」
( ・∀・)「そうだな…なら約束を果たしてもらおう」
7:ハニワ軍団
2010/08/12 22:19:06 WqiIuB7qO
(*゚ー゚)「約束?」
(
・∀・)「君が天国に行き、生まれ変わった暁には、必ず幸せになること。変な男にひっかかったりせずにね」
(*゚ー゚)「…そんなのでいいの?」
(
・∀・)「そんなのっていうけど、結構難しいよ?そもそも生まれ変わってまた人間に転生するには天国で余程頑張らなきゃならない。無事生まれ変わっても幸せになるなんて難しい話さ。現に君は現世じゃ無理だった」
(*゚ー゚)「…」
(
・∀・)「ま、だからこそ、次は幸せになる権利があると思うんだけどね」
(*゚ー゚)「うん…」
(
・∀・)「約束出来る?」
(*゚ー゚)「うん、頑張る」
(
・∀・)「いよし!契約成立!じゃあ行きますか!」
(*゚ー゚)「どこに?」
(
・∀・)「決まってるでしょ」
そう言ってモララーは笑った。その笑みは優しいようで、反面、とても冷たく、悪魔のような笑みだった。
9:ハニワ軍団
2010/08/12 22:25:57 WqiIuB7qO
( ・∀・)「!」
(;゚∀゚)「うわあああ!」
モララーが急に起き上がった事でまたしても長岡は奇声を発して尻餅をついた。
(
・∀・)「ふう」
立ち上がり伸びをするモララー。
(;゚∀゚)「あ、あんた…一体何があったんだ?急に倒れて」
(
・∀・)「ああ、すいません。持病の貧血がね、や、全く困ったもんだ!」ははは、と笑うモララー。長岡はそんなモララーを気味悪そうに見ている。
(
・∀・)「実は貧血している最中に悪霊をやっつけましてね、もう安心ですよ!」
(;゚∀゚)「な、なんだって?」
(
・∀・)「いや、だから悪霊はもう除霊しました。貧血起こしたのはそのせいなんですよ。見てください、怪異も治まっているでしょ?」
(;゚∀゚)「あ、ああ…」
(
・∀・)「さ、これにて一件落着!」
(;゚∀゚)「そ、そうなのか…」
(
・∀・)「ええ!金輪際あなたが悪霊の怪異にうなされることはありません!」
怪しいセールスマンのようなモララーの口振りに不信感を露にする長岡。
(
・∀・)「ま、ないと思いますが、今後また何かあれば連絡を下さい」
( ゚∀゚)「ああ…」
( ・∀・)「それで、対価の件なんですが」
(
゚∀゚)「ああ、いくら払えばいいんだ?一応命の恩人なわけだからな」
( ・∀・)「そうですねぇ…何をもらいますかねえ」
(
゚∀゚)「金じゃないのか?」
( ・∀・)「うーん、うーん、迷うなあ…あ」
( ゚∀゚)「決まったか?」
(
・∀・)「いや、一つ思い出したことがありましてねえ。喫茶店であなたに確認しましたよね?嘘ついてないですよね、って」
(゚∀゚)「あ、ああ」
長岡の顔色が悪くなる。分かりやすい男だ。
(
・∀・)「あれ嘘ですよね?」
(;゚∀゚)「い、いや。嘘なんか吐いて」
(
・∀・)「ショックだなあ、僕嘘吐かれるのが一番嫌いなんですよ」
(;゚∀゚)「い、いや、あれは」
(
・∀・)「ショックだなあ、とても。何回も確認したのになあ」
そう言って長岡を見るモララーの表情は笑みこそ浮かべているが、底知れぬ恐ろしさを孕んでいた。
(;゚∀゚)「わ、わかった!わるかった!許してくれ、対価は払うから!」
(
・∀・)「それは嘘を許すための対価ですか?」
(;゚∀゚)「ああ、なんでもする!だから許してくれ!詮索はしないでくれ!」
11:ハニワ軍団
2010/08/12 22:35:50 WqiIuB7qO
( ・∀・)「注文の多い人だなあ」
ははは、と笑うモララー。しかし今までの笑いとは明らかに雰囲気が違う。
(
・∀・)「それはそうと…言ったな?」
(;゚∀゚)「な、何を…」
(
・∀・)「なんでもする、と」
(;゚∀゚)「あ、ああ。だから…!」
(
・∀・)「確かに言ったね?ふふふ、なんでもするんだね?あはは!じゃあ言うこと聞いてもらおうかな!」
明らかにおかしいモララーの態度にガクガクと震えだす長岡。
(;゚∀゚)「な、なにを」
モララーがぱちん、と指を鳴らした。するとまたしても部屋中の物が飛び交い、電灯は激しく点滅し、ラジカセはけたたましく鳴り、パソコンは謎の文字列を延々と写し出した。
(
;∀;)「うわあああ!」
長岡は涙を流しながら悲鳴をあげている。
(
・∀・)「あ、長岡さん、嘘についての対価は今から払って頂きますが、怪異についての対価は結構です、なぜなら」
(;゚∀゚)「?」
(
・∀・)「悪霊、まだ退治してませんから!あははは!」
モララーが笑うと同時にしいが姿を現した。
(;゚∀゚)「ぎゃあああああ!!」
絶叫する長岡。
(
・∀・)「嘘についての対価、まだ何をもらうか言ってませんでしたね。僕があなたに要求するもの、それは…『大人しく彼女に殺される』ことですよ!」
(;゚∀゚)「うわあああ!やめてくれええ!」
(*・∀・)「自業自得ですよ、殺されるに値することをしたんですから!ましてや『なんでもするから許してくれ』なんて魔法の言葉吐いちゃって!等価交換を無視してオーケーと言ってるようなものですよ!ええ、嘘吐いたのは許してあげますとも!あーはははは!」
部屋の惨状は更に酷くなっていく。
(
;∀;)「あわわわわ」
失禁までしている長岡に、しいは話し掛ける。
(*゚ー゚)「色々あなたのわがままを聞いてきたから、最期くらいは私のお願い聞いて」
(
∀)「あ…う…」
もはや放心してしまっているようだ。
(*゚ー゚)「死んで」
しいが言葉を放つと同時にry
12:ハニワ軍団
2010/08/12 22:39:29 WqiIuB7qO
( ・∀・)「満足かい?」
(*゚ー゚)「当然でしょ。そのために悪霊になったんだから」
(
・∀・)「そっか」
(*゚ー゚)「ねえ、質問していい?私天国いけるの?人殺したのに…」
(
・∀・)「等価交換」
(*゚ー゚)「え?」
(
・∀・)「ただの殺人者は天国には行けない。ただ、君の場合はあくまで『対価としての殺人』だ」
(*゚ー゚)「ご都合主義な世の中ね」
(
・∀・)「そんなもんさ。この世はみんなが思うほど清くない。ひどく事務的に、セカイはまわっているのさ」
(*゚ー゚)「そっか…。じゃ、私そろそろ行くね」
(
・∀・)「ん、約束は守ってよ。対価なんだから」
そう言ってモララーは微笑んだ。どこか悲しみを帯びた目だった。
(*゚ー゚)「うん、頑張る」
ニコッと微笑んで、しいは旅立った。
( ・∀・)「やれやれ…難儀なセカイだねえ」アパートを出て、自販機で買ったコーヒーを飲む。ポケットで何か震えてる。携帯電話だ。
(
-∀-)「ふう」
一息吐いて、電話に出る。
( ・∀・)「はい、もしもし。お客さんですか?」
おわり