237:名無しさん
09/07(金) 14:31 /tk5tZwWO
二十二重 『命の値段』
煙が晴れる。
一人の男がその場に立っていた。
手には「焔」と「雷」の文字が輝き、紅蓮の焔が包む。
(,,゚Д゚)「…呆れるくらいに丈夫だな」
焦げた地面に釣り合った黒い十字架に守られた穴。
( ^ω^)「能力での攻撃は無効化するお」
にやけ面の男が穴から這い出し、答える。
(,,゚Д゚)「無効? そこまで強力な能力は護りか攻めに偏るからな、どうせ攻撃は出来ないんだろ?」
( ^ω^)「それはないお」
白い本が開く。
それに呼応するかの如く、手の「刺」「天」の文字の輝きがさらに増す。
238:名無しさん
09/07(金) 14:32 /tk5tZwWO
(,,゚Д゚)(さっき5thの溜めが吸われていた そして開いた後には穴が空いていた…まさか)
男が両手を掲げる。
先程より小規模な爆発がまたも周囲を包む。
その直後に電気が男を包み光る。
空気を裂く音が響く。
空気が震える。
(;^ω^)「幕放電!?」
(,,゚Д゚)「俺は火を電気に、電気を火に変えられる 規模は物にもよるが雷に近い威力までなら一瞬だけ自分の周囲に出せる」
(;^ω^)「雷って」
(,,゚Д゚)「人が出せるエネルギーごときが雷に勝てるとでも思ってんのかよ」
(;^ω^)(電気が流れただけで音が響き震えたお……高いエネルギーを含んだ電気が空気中で放たれて空気が膨張した証拠だお)
(,,゚Д゚)「無効のみじゃ俺には勝てない」
手の焔が大きく燃える。
烈火の如く。
火花が散り、紫電がほとばしる。
239:名無しさん
09/07(金) 14:34 /tk5tZwWO
砕けた橋を尻目に一人の男が膝をつき、もう一人は口から血を流し片腕からは夥しい血が流れ出していた。
ミ,,゚Д゚彡「まさか自分の歯を飛ばすとは思わなかったな」
(;'A`)「三本しか折れなかったけどな」
ミ,,゚Д゚彡「まさか俺の拳を歯で破られるとはな……」
(;'A`)「歯は数十kgの重さにも耐えるからな」
彼の能力は弾となる物質を不可視な筒により打ち出す。
筒は自由に操ることができる。
彼は気付いた。
この能力を最大限に活用する方法に。
筒から放たれる瞬間から、目的に到達するまでが最高速度。
筒を繋げることで更に速度が増すことに。
240:名無しさん
09/07(金) 14:35 /tk5tZwWO
ミ,,゚Д゚彡「溜めが二つに割かれるとは思わなかったが腕にかすったな?」
(;'A`)「問題ねぇよ」
腕から血が流れる。
死ぬには足りなく、普通に動くことにも足りていない。
ミ,,゚Д゚彡「だが満足には動かせないだろ」
男が立ち上がり、走り出す。
(;'A`)「動かせなくても勝てるだろ」
ミ,,゚Д゚彡「やはり死にたくはないか」
5thが2ndに拳を振るう。
小石を拳に向けて打ち出す。
拳ごと体が退く。
241:名無しさん
09/07(金) 14:36 /tk5tZwWO
(;'A`)(片腕使え無くても戦えないわけじゃ…)
ミ,,゚Д゚彡「俺の拳は威力を溜める 自分の攻撃も もちろん相手の攻撃も」
のけ反りながら拳を宙に振る。
拳から吐き出されたかのように塊が放たれる。
(;'A`)「お前が溜められるように俺は狙いを外せるんだ」
筒の手前を塊に、先を地面に向ける。
塊は突然曲がり、地面を砕く。
ミ,,゚Д゚彡「…何をした?」
拳を打ち鳴らす。
(;'A`)「能力を使ったに決まってんだろうが」
彼は気付いた。
筒は無条件で通った物を加速させる性質に。
242:名無しさん
09/07(金) 14:37 /tk5tZwWO
ミ,,゚Д゚彡「死から逃げ、生に執着する……この緊張感こそが俺の求めた物」
拳を打ち鳴らす。
(;'A`)「別に死のうが生きようが興味ねぇよ」
ミ,,゚Д゚彡「じゃあなぜお前は生きているんだ」
拳を打ち鳴らす。
(;'A`)「知らん 前はゲームを楽しんでるだけだった」
ミ,,゚Д゚彡「前は? 今はどうなんだ?」
拳を打ち鳴らす。
(;'A`)「俺には仲間がいるからな 俺が死んだらお前は他のところに行くんだろ」
ミ,,゚Д゚彡「そりゃあ仲間だからな」
拳を打ち鳴らす。
(;'A`)「あいつらは不器用だからな、一人で精一杯なんだ お前まで相手にしてられないんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「じゃあどうするんだ」
(;'A`)「おまえを倒すんだよ」
243:名無しさん
09/07(金) 14:39 /tk5tZwWO
ミ,,゚Д゚彡「それは無理だな」
(;'A`)「生きることに執着するからこそ恐れが生まれ、動きが鈍る」
ミ,,゚Д゚彡「…」
(;'A`)「俺は死んでもいいんだ あいつらが生きてれば だから俺はここで死ぬ」
ミ,,゚Д゚彡「死を目前にしたとき、おまえは同じ事が言えるか」
(;'A`)「言う必要はないんだ 心に留めておけるかどうか 外に出すと零れるかもしれないから」
ミ,,゚Д゚彡「そうか だがその意味はないだろう なぜならおまえは死に、俺は生きるから」
男が拳を振る。
今までと同じように。
違うのはエネルギーの密度。
凝縮された純粋な破壊の力。
(;'A`)「俺は死ぬつもりだ おまえを道連れにな」
歯の威力ではきっととめられないだろう。
だが、彼は自らの頬を殴り、口から折れた歯を取り出す。
歯を握る。
(;'A`)「俺の命一つだけだと安いかもしれないが、勝たせてくれよ 大事な戦いなんだ」
男は呟く。
迫る死に、自らを差し出すように。