476:15◆p7NLwd/q.6
11/04(日) 10:20 Y8Sd5HGZO
三十九重 『充たされないフラスコ』
祖父は優秀な学者だった。
何をした人間かは知らないが、人類の発展に大いに役立ったらしい。
父も研究を手伝っていた。
彼もまた、祖父と同じように優秀だった。
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477:名無しさん
11/04(日) 10:21 Y8Sd5HGZO
ξ(゚△゚*ξ「近くにいた私たちは疑問の異変に気付いていたが止められなかった だが、冥王の一撃からは生き残った」
ξ(゚、゚*ξ「冥王は生き残った私たちに興味を持った 冥王は私たちの寿命と惑星の寿命を繋げた 星が滅べば私たちが死に、私たちが死ねば星が死ぬ」
少女が周囲に浮かんでいる球体を見渡す。
長岡は少女を焦点の合わない目で見たあと、樹が時折輝くことに気付いた。
輝く頻度が少しずつ早くなる。
ξ(゚、゚*ξ「(…時間がない) 気まぐれな冥王はその後、眠りについた 私たちは与えられた悠久の時を星の観察と自らの研究にあてた 意味が無いことはわかっていた…けれど探求心は留まらない」
478:名無しさん
11/04(日) 10:22 Y8Sd5HGZO
ξ(゚△゚*ξ「私は地球を日々観察していた でも地球の生物は恐竜から先へ発展しなくなっていた 私は行き詰まった」
ξ(゚、゚*ξ「星の寿命を削れば地球に命を増やし更なる発展が望めた だけど私は怖かった」
ξ(゚△゚*ξ「一度壊滅的なダメージを負った地球を再生させたことで寿命を削り過ぎたから 星の寿命を削ることは自分の命を削ること」
デレの頭上にある‘月’と書かれた球体がちょうど半分ほど薄い黄色で光っている。
まるで半月のように。
ξ(゚、゚*ξ「そんなときに冥王が目覚め、囁いた 「命をあげようか」と」
ξ(゚△゚*ξ「願ってもいない好条件 私はすぐに頷いた…何も考えずに」
479:名無しさん
11/04(日) 10:23 Y8Sd5HGZO
ξ(゚、゚*ξ「生き残った私たちは集められた 冥王は自分の暇つぶしに私たちに戦いをさせた そして勝者には自分が吸収した命と寝ていて余った莫大な太陽のエネルギーを与えた」
ξ(゚△゚*ξ「勝者は太陽 敗者は私たち」
月が少しずつ輝きを増す。
本当に少しずつ…だが確実に。
ξ(゚、゚*ξ「太陽は他の惑星に与えるエネルギーのせいで自分はギリギリのエネルギーしか得られなかった 生命の無い星の観察でフラストレーションが溜まっていた そのエネルギーの塊を他の惑星に落とした」
ξ(゚△゚*ξ「太陽のエネルギーは加工することで命を作ることができる けれど何も手を加えていないエネルギーは惑星自身を簡単に傷付け、壊す」
ξ(゚、゚*ξ「地球以外の生命は滅び、地球には少しの大型動物と多数の小動物が生き残った 幸い人類の祖となる生き物もいた だが悠長に観察できる寿命は残っていなかった」
480:名無しさん
11/04(日) 10:24 Y8Sd5HGZO
ξ(゚△゚*ξ「しかも私は戦いで弱っていた 私のせいで地球が死なないように離れた そして太陽によって破壊され、別れた一部を月として私は自身を月に繋げた 月は地球を見守る為に周りを回る」
ξ(゚、゚*ξ「だが地球の神がいなくなれば滅んでしまう 私は閃いた 地球の生き物を神とすることに」
ξ(゚△゚*ξ「でも生き物は貧弱だった だから私は手を加えた」
ξ(゚△゚*ξ「祖のうちの一人に私が望む最低の発展まですぐに上り詰めるように、才能を、言葉を、文化を、知識を、与えた その祖をヒト、と私たちは呼んだ」
ξ(゚ー゚*ξ「桜は素晴らしいわ 私が干渉せずとも生まれた偉大な生命 そして自らクローンを造り、個は種へと殖えた」
(;゚∀゚)「なんで桜の話なんか…」
ξ(゚△゚*ξ「ネズミ算式に殖える点ではヒトも同じ あなたの世界はすぐに発展したわ あなたが習った歴史より」
481:名無しさん
11/04(日) 10:25 Y8Sd5HGZO
ξ(゚ー゚*ξ「そしてようやく発展した世界があなたの生きていた地球 さて、あなたは地球というパソコンの中のデータの一部だとする どうやって出てきたの?」
(;゚∀゚)「……(´・ω・`)知らんがな」
ξ(゚△゚*ξ「……あなたが地球を喰ったと私は言った 少し表現に違いがある」
( ゚∀゚)「どういうことだ」
ξ(゚、゚*ξ「地球自体の処理能力を使い、あなたのコピー機とした 中のデータを全てあなたとしてコピーし、一つ一つが絡み、魂を形成した 地球を限界まで使ったから惑星として機能しないわ」
( ゚∀゚)「…肉体は?」
ξ(^ー^*ξ「良い点に気付いた あなたの体はあなたの記憶を元に私が造った」
デレの声が少し高くなり、顔に満面の笑みを浮かべる。
(;゚∀゚)「造ったってなぁ」
ξ(゚△゚*ξ「本題はそこじゃないの 今のあなたは要は実験のモルモット」
(;゚∀゚)「へ?」
ξ(゚、゚*ξ「地球の全てを使って魂を造るなんて始めてなの 仮想の物であったあなたの命をリアルに造ったしっぺ返しは私か、あなたか、両方か、必ず来る」
482:名無しさん
11/04(日) 10:27 Y8Sd5HGZO
(;゚∀゚)「なんでそんなことするんだよ!! 俺は望んじゃいない!!」
ξ(゚ー゚*ξ「そうだよね…ごめんなさい でも、どうしてもあなたの力が必要 頼みもある」
(;゚∀゚)「……なんで」
ξ(゚△゚*ξ「冥王はもう起きるの 戦いは強制で行われるだろう だけど私は弱い だから私が大切に育てた地球の中のあなたに頼む その代わり地球が機能しなくなったけど……頼みは冥王の戦いで勝利し、冥王を殲滅すること」
(;゚∀゚)「断rξ(゚△゚*ξ「あなたは地球を背負った…というより地球を命の糧とした さて、返事は?」
(;゚∀゚)「……断る」
ξ(゚д゚*ξ「( ゚д゚ )チキンがっ」
483:名無しさん
11/04(日) 10:28 Y8Sd5HGZO
(;゚∀゚)「……」
ξ(゚ー゚*ξ「却下されました さて、これはなんでしょう?」
デレが長岡に見えるように掌を上にする。
掌から浮かんだのは青色に光る文字。
見覚えがあった。
(;゚∀゚)「俺の名前……返されてなかったのかよ」
ξ(゚△゚*ξ「これが全ての要なのに返してあげるわけない あなたの名前がわかるのは少しだけ記憶にぶち込んだから」
(;゚∀゚)「どうするんすか」
ξ(^ー^*ξ「冥王戦には名前の登録で参加するの でも嫌なら豚とかデブの仮称としてあなたの名前を与えちゃおうかなぁ わかりやすく言うと あのデブ!!があの長岡!!に豚野郎!!が長岡野郎!!になったあと名前を返してあげる」
(;゚∀゚)「名字だけならなんとか……」
ξ(^ー^*ξ「勘違いしないで 世界に長岡をあなただけにしてフルネームで呼ばせるつもり」
笑顔。
正に太陽のように輝く笑顔とはこのことか。
484:名無しさん
11/04(日) 10:29 Y8Sd5HGZO
(;゚∀゚)「……戦います」
ξ(゚△゚*ξ「そう言ってくれると思ってた でも安心して 地球のバックアップは取ってあるからあなたが勝ったら地球を冥王星の力で箱庭からリアルへと移してあげる」
(;゚∀゚)「なんか変わるの?」
ξ(゚、゚*ξ「なんと私が神様に!!」
( ゚∀゚)「……」
ξ(゚△゚*ξ「……」
( ゚д゚ )「……」
ξ(゚д゚;ξ「……」
空気が固まった。
ξ(゚、゚*ξ「え、と…戦いで神に選別されるあなたたち旅人は全員がヒトの末裔…まぁ例外として侵入した神もいたけど ハインに頼んで調べてもらった子達を集めた ところで回避できる死を本当に設定したと思う?」
固まった空気が動き出す。
485:名無しさん
11/04(日) 10:32 Y8Sd5HGZO
(;゚∀゚)「……」
ξ(゚△゚*ξ「まぁしたわ ただ、その人が絶対に回避しない方法で おかげで皆死んだけど」
(;゚∀゚)「……俺は普通に生きたかったんだがなぁ」
ξ(゚、゚*ξ「誰だって幸せに暮らす権利がある……難しいのはその享受 誰だって幸せに暮らす権利がある……難しいのはその履行 誰だって幸せに暮らす暮らす権利がある……難しいのはその妥協……ってね」
(;゚∀゚)「お、おいっ…」
ξ(^ー^*ξ「地球の人が生きるために頑張ってくだしあ ヒトの末裔 期待してるわ 最後に戦いを冥王に教えたのは太陽」
(;゚∀゚)「なっ…」
月の光は輝きを増す。
4分の3は黄色く光るようになっていた。
疑問の樹が光る。
赤く、そして美しく。
ξ(゚ー゚*ξ(采は投げられた 私の計画の成就……それには長岡に頑張ってもらわないと ヒトを作り直した意味がやっと訪れる 長かった)
月は更に輝きを増す。
金色の光を。