207:◆/wOcNhjd4U
10/09(月) 13:22 lN+Is5AXO


夕焼けの教室で向き合いながら立つ僕と彼女。教室の端と端に立つ二人の間はまるでお互いの心の距離を表してるようだ。





そして彼女は泣き続ける。




誰も私を見てはくれないと。



誰も私のことをわかってくれないと。





誰も私を必要としてないと。




(  ^ω^)「……誰も君を見てなくても僕は君を見ていたお」




一歩踏み出す。



(  ^ω^)「誰もわかってくれなくても僕は君のことをわかってあげるお」



更に一歩



(  ^ω^)「誰も君を必要としてなくても僕が君を必要としてるお」



ゆっくり




(  ^ω^)「それで君の笑顔がみれるなら……」




(  ^ω^)「僕は……君の笑顔を見ていたいから……」




歩みよる。








互いの距離が近くなっていく。




バチバチバチバチッッッ!!!

Σ(; ^ω^)「なっ……!! ATフィールドだと?!!」



渚「ATフィールドは心の壁さっ!!」



火花を散らすATフィールド

教室内はどんどん熱気を帯びていき……



〜〜〜


(; ^ω^)φ「はっ!?」



あまりの暑さに自分の世界から引きずりだされた。



(; ^ω^)「……あっつ。」





八月中旬





──猛暑




(; ^ω^)φ「はぁはぁ……」



原稿を見ているだけで息が上がる。暑くてシナリオ作成どころじゃない。










僕たちは今エロゲ作成の追い込みに掛かっている。


なんでも毒男が今年の『コミケ』なるところでの販売スペースのクジに当たったらしく、今までスローペースで作っていた作品をこの夏中に仕上げなければならなくなったのだ。



(; ^ω^)φ「それにしても暑いお……。毒男はよくやってられるお。」




この猛暑の中、後ろで絵を描いてるはずの毒男の未だ続く集中力に尊敬しながらふと目をやる。


(; ^ω^)φ「毒o」

(*゚A゚)φ「l\ァl\ァハァハァハァハァl\ァl\ァh」



(; ^ω^)φ「……見るんじゃなかったお」



蝕むような暑さを堪え原稿に向かう。



(; ^ω^)φ「さっきは不覚にも暑さにやられたけれど今度こそは」



意識を沈める。視覚、音、感覚が消えていく。



(; -ω-)φ「続き続き……」

208:◆/wOcNhjd4U
10/09(月) 13:25 lN+Is5AXO


次に感覚が戻った時、僕はまたあの夕焼けの教室にいた。



彼女は未だ泣き続ける。




(  ^ω^)「僕がいつまでも側にいるお! 僕が……君を守るお!!」



「……ブーン。」



彼女がそっとブーンに寄り掛かる。



ξ^竸)ξ「……ありがとう。」


〜〜〜

Σ(; ^ω^)φ「わふぅっ!!」



再び現実に戻される。しかし今度のは暑さによるためではない。



(; ^ω^)φ「……なんでツンがでて来るお。」



実はこれが初めてではない。先ほどからどんなシチュエーションで妄想しても最後はツンがでてきてしまうのだ。




( 'A`)「……リアル恋愛」


Σ(; ^ω^)φ「わおっ!!」


( 'A`)「あなたは今、『リアル恋愛』に悩んでますね?」


(; ^ω^)φ「ななんのことやら」



( 'A`)「……おまえ、いつまで『ツン』って書けば気が済むんだ?」



(; ^ω^)φ「へ?」



毒男に言われて初めて自分の腕が勝手に動いてることに気付く。



原稿にはマス目など無視してひたすら『ツン』と書き込まれていた。



( 'A`)「いいかブーン。」



( 'A`)「女なんて所詮人間だ。」




(; ^ω^)「……は?」



( 'A`)「リアルに萌えなんて存在しない。人間なんて猿の延長……いや、知恵がついたぶん猿より酷い。リアルの女は妬み、騙し、傷つけて自分の利益をだそうとするクズだ。ツンだってきっとおまえのことを利用してるだけだ。」

(; ^ω^)「なっ……!」


( 'A`)「それに恋愛なんて所詮動物的な欲求の派生に他ならない。むしろ俺たちはそんなことにも気付かずに喜んでる奴らから搾取する側だ。そんな俺たちがリアル恋愛なんかに振り回されてどうする。」



(   ω )「……」



( 'A`)「わかったらさっさt」

(# ^ω^)「毒男だってじぃちゃんとリアル恋愛してるお!!」



( 'A`)「……!!」



(# ^ω^)「……」



(  A )「……」




毒男が気まずそうに目を背ける。それが意味するのは、自分がリアル恋愛をしていると認めたということだ。




それなのに……なんで否定するんだろう?




(  A )「……わかった。少し俺の昔話をしてやる」




〜むかーしむかしにようこそ!〜

210:◆/wOcNhjd4U
10/11(水) 10:30 X+8Dnx3bO


小学生の時、俺はいわゆる苛められっ子だった



その時もなにもしてないのにいつものように苛められてた




けど……その日は少し違った


〜〜


DQN1「おらおら、何倒れてんだよ!」



(;'A`)「ぐ…」



DQN2「ホントよえーなあ!」


いつものように続く殴打。小学生レベルとはいえ、体格の小さい俺には十分辛かった。








なんで僕が……






「こらっ!! 貴方たち何してるのよ!!!」




DQN1&2「やべ! 逃げろ!!」



( 'A`)「……」






……初恋だった



(´・ω・`)「大丈夫?」



〜〜



( 'A`)「待て」


(  ^ω^)「どうしたお?早く続けるお」



( 'A`)「何故、回想の女の子役がショボンなんだ?」



(  ^ω^)「この作品は致命的に役者不足です。単発の毒男の昔話なんかの為に貴重な女性キャラは割けません。」



( 'A`)「……マジですか?」


(  ^ω^)「セリフはちゃんと女の子にしといてあげましょう」



( 'A`)「……代弁乙」








(#´・ω・`)「もう、男の子なんだからちょっとぐらい殴り返しなさいよ!!」



(*'A`)「……ごめん」


(#´・ω・`)「なんで謝るのよ!!」




そのあともいろいろ説教されていたはずだがまるで頭に入っていない



僕の頭は既に彼女でいっぱいだった







その後、僕は彼女とたまに遊ぶぐらいの仲になった




(´・ω・`)「毒男、 いく……よっ!!」


パンッ  


(;'A`)「痛っ! も、もっと優しくてよ……」


パンッ


(´・ω・`)「ほらほらっ!!」


パンッ


(;'A`)「あぅ!! ……だ、ダメだって……壊れちゃう」

パンッ


(´・ω・`)「どう?! 私のテクニック……はっ!」


パンッ


(;'A`)「うあっ!! す、凄いよ……速くて……じんじんする……」


パンッ


(´・ω・`)「さぁ!! 私をもっと楽しませて!!」




※キャッチボール




苛められっ子の俺にしてはホントに頑張ったと思う




そしてちょうど今頃の夏……、俺は小さい勇気をふり絞って彼女を夏祭りに誘う決心をしたんだ

211:◆/wOcNhjd4U
10/11(水) 10:36 X+8Dnx3bO


(;'A`)「ぼぼぼぼくととなな夏祭りにいってくれませqあwせdrftgyふじこlp」



(;´・ω・`)「あ、えっと……ごめんなさい! 私その日お母さんが急病なの!!」



( 'A`)「……ななら、仕方ないよね」


(;´・ω・`)「ごめんなさい。私そろそろ帰らなくちゃ。じゃね。」



こうして俺の初恋は終わった




(; ^ω^)(女の子ももっとマシな嘘をつけばよかったのに……)



( 'A`)「これで終わってたならまだマシだった。」




夏祭り当日、俺は一人で祭りに来ていた。



周りの空気と幼さのおかげでフられたショックも幾分か忘れかけていた。



(´・ω・`)「      」




けど、彼女は現れた。




(*'A`)「あ、来れたんd」


(`・ω・')「        」




他の男の子と一緒に。




会話は遠くて聞こえなかったけどとても楽しそうだった。





だから……俺はそっとその場をあとにした。





(  ^ω^)「……」



( 'A`)「……お母さんが急病なら仕方ないと思ってた」



(  ^ω^)「……?」



(#;A;)「なのに……彼女は信じてた俺の心を踏み躙ったんだ!!」



(  ^ω^)「……」



(  ^ω^)ノシ「……せんせー、質問がありますお」



(#;A;)「……何かね?」



(  ^ω^)「確認しておきたいのですが……お母さんが急病って話が嘘だってことは言われた時にわかってたんですよね?」



(  ^ω^)「仕方ないって返答したのはあくまで全てを悟った上で……ですよね?」






( 'A`)「いや……、夏祭りで会うまで疑いもしなかった」


(  ^ω^)「……」



( 'A`)「急に倒れたお母さんのために夏祭りを捨てる……なんていい子だと思った」



(  ^ω^)「こ れ は ひ ど い」



( 'A`)「ともかく……」



( 'A`)「その後、成長した少年は自分勝手な女共を裁く『仮面レイパー』として生まれ変わったんだ……」











( 'A`)「毎週日曜の朝八時だ」


Σ(; ^ω^)「な、なんですとー」





「ほら、テレビ欄」



「……ちょwwwマジで載ってるおwwwwwww」




〜毒男の過去にようこそ!〜

212:◆/wOcNhjd4U
10/11(水) 18:43 X+8Dnx3bO


( 'A`)「というわけでリアル女はクソだ」



(; ^ω^)「……」



いろいろ考えるとこはあるが大筋は間違っていない気がする。





結局、女なんて自分勝手で都合のいい生き物なのかも……


( 'A`)「今日だってじぃちゃんを夏祭りに誘ったのに……」



(  ^ω^)「……断られたのかお?」



( 'A`)「……ああ。」



(  ^ω^)「……残念だったお」






(  ^ω^)「それで……なんて言われて断られたお?」



( 'A`)「なんでも急にアメリカの街でTウィルスが蔓延したとk」

(  ^ω^)「それはいかせてあげるお」



Σ( ;A;)「なっ、おまえまでっ!!」


(# ^ω^)「あたりまえだお!! 毒男のためにゾンビだらけになってたまるかお!!」



♪テーテテーテー テーテテーテー テーテテーテー
ぷりきゅ(ry



( 'A`)]「あ、電話だ。もしもし……じぃちゃん?」



(  ^ω^)(うぜー着信だお)



(;'A`)]「……えっ!? セーブポイント見つけたから帰れるようになった!? もうこっち戻ってる!? わかった、すぐにいく!!」



(  ^ω^)「……んなアホな。」



(#'A`)「てめぇは邪魔だ!!どけ!!」



Σ(;#)ω゚)「ひでぶっ!!」












( #)ω^)「……は!?」



周りを見渡す。窓からは既に光は射しておらず、部屋は真っ暗だった。当然、毒男もいない。


( #)ω^)「……いて」



何気なく触った頬に鈍痛が走る。

どうやら毒男の不意打ちによって不覚にも気絶したらしい。





(  ^ω^)「……あの野郎はあとでシメるお。」



誰もいない無音の部屋で一人呟く。



全く他の音に干渉されない自分の声はどこか強がっているような印象を受ける響きだった。



(  ^ω^)「……寝ようかお」




毒男は今ごろじぃちゃんと夏祭りか……



コン



(  ^ω^)「ん?」



コン



先ほどまで静かだった部屋に軽い音が響く。それはどうやらドアではなく窓から鳴っているようだ。



(  ^ω^)「カラスでもいるのかお」



ガラッ

213:◆/wOcNhjd4U
10/11(水) 18:48 X+8Dnx3bO


完全に覚醒してない頭でとりあえず窓を開ける。一番初めに視界飛び込んできたのは






自らに向かって襲いかからんとする直径30センチクラスの……



(  メメメ)「ぶふっ!!」



ξ;゚听)ξ「あ……」








(  メメメ)「……で、でてくる気配がないから石を窓に当てて気付かせようと」



ξ;^竸)ξ「途中からなんか日頃のストレスがこもっちゃって……」



(  ^ω^)「てかドアノックするなり携帯で電話するなり他に方法があるお」



ξ;゚听)ξ「しょ、しょうがないでしょ!! 原作がそうしてるんだから!!」



( ^ω^ )「この作品はこのように原作に対するツッコミをする場でもあります」



ξ゚听)ξ「それに私だったらドアの鍵を開けるぐらいわけn」

(  ^ω^)「それはやめろと言ったお」






(  ^ω^)「で、今日のご用件は?」



ξ゚听)ξ「あ、えっと……」




ドーンッ




突然、太鼓を叩いたような大きな音が響く






聞き覚えのある音に反射的に上を見上げると





夜空に久しくみなかった大輪の花が咲いていた。




ξ///)ξ「一緒に花火……見ませんか?」







比較的人の少ない河原を二人で歩く。





ドーンッ



また夜空に花が咲く




先ほどまで祭りを飾っていたこの花も今では終わりへのカウントダウンに意味あいを変えていた



(  ^ω^)「……そろそろ終わりかお」



ξ゚听)ξ「……ブーン。」


(  ^ω^)「なんだお?」



ξ///)ξ「手……、繋いであげてもいいわよ?」



ツンがそっと右手を寄せてくる。



(* ^ω^)「あ……、うん」



僕は突然の誘いに戸惑いながらも自然と自分の右手で握っていた。



ξ*゚听)ξ「……ブーン。」


(* ^ω^)「なんだお?」



ξ゚听)ξ「これでどうやって歩くつもり?」



(  ^ω^)「……お?」



言われてから気付く。これでは握手ではないか。




ξ*^竸)ξ「ホント……だめな奴ね」



ツボに入ったのか心底楽しそうに笑うツン。





ドーンッ



おそらく最後であろう花が散っていく







こうして





また一つ大切な一日が幕を閉じた。



〜花火にようこそ!〜

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