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⊂二二二(  ^ω^)二⊃ ブーン の避難所

1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2005/12/24(土) 02:38:55 ID:dhoQVprI
スパロボ・失明スレまとめページ
http://www7.atwiki.jp/nameless/

2 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2005/12/24(土) 11:10:51 ID:61ceOryM
⊂二二二( ^ω^)二⊃

3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/12(木) 03:42:30 ID:dejqRrx6
バーロー

4 ◆kDK4STUJ8A :2006/01/12(木) 04:03:01 ID:X13kPfKg
トリ可?

5 ◆EOIUzakA3k :2006/01/12(木) 04:04:27 ID:DXy3xHPs
可能だね、13日過ぎるまで書けないと思います

糞作者より

6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/12(木) 04:38:01 ID:M0wKqLx.
そんな糞作者なんていわないで・・・。
のんびり期待して待ってますんで頑張ってください⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

7 中の人 :2006/01/12(木) 13:36:11 ID:/HeWdhKE
ああ、ちゃんと把握してもらえてよかったwww

8 ◆EOIUzakA3k :2006/01/16(月) 02:07:27 ID:GgO7lUw2
今度からスレ立てないで此方に投下すればいいの?

9 中の人 :2006/01/16(月) 08:46:07 ID:lnLg6tmE
>>8
ああ、それでもいいですね
作者さんの判断にお任せします

つーかテスト勉強中「今この瞬間スレが立ってて本文投下されて今にも落ちようとしてるのかもしれない・・・」なんてことで頭一杯で別の意味でテンパってます・・・

10 ◆EOIUzakA3k :2006/01/16(月) 22:37:53 ID:kJSHaN8I
今はいろいろ( ^ω^)スレが乱立されてるので……
落ち着くまでは立てませんよ

11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/21(土) 05:53:52 ID:MuQ8BLQc
ブーンが失明の最終話を楽しみにしてるお。
ただ作者さんは元気かお?それだけが心配だお(;^ω^)

12 ◆EOIUzakA3k :2006/01/22(日) 18:28:59 ID:6Ge31qPc
元気元気ーノシ
何か乱立止まんないっぽいッスねー…

13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/22(日) 20:01:58 ID:32yjeLCo
まあマターリ行きましょうや

14 ◆EOIUzakA3k :2006/01/31(火) 01:22:47 ID:VNboRrys
乱立おさまってきましたね…、もうそろそろ書きます



………昨日VIP引退宣言したの…どーしょ……

15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/31(火) 13:18:21 ID:01NJ5lLY
復活キターーーー( ゚∀゚)ーーーー!?

16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/31(火) 13:19:20 ID:01NJ5lLY
じゃあVIP復帰宣言すればいいじゃないか!!!!

17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/06(月) 02:27:29 ID:.1nzkbUo
いつ頃復帰しそうかな〜
wktk

18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/18(土) 15:30:06 ID:t8YQk5yM
結局投下はあったの?

19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/25(土) 13:40:49 ID:WF015CWg
もしかして、もう誰もいない・・・?( ゚д゚ )

20 ◆EOIUzakA3k :2006/02/26(日) 18:32:02 ID:xzxfMI2E
すいません……何か…書けないので………
何かもう……ごめんなさい……………最後まで出来ないンなら、最初から書かない方がよかったですね……………すいません…

21 ◆EOIUzakA3k :2006/02/26(日) 18:32:27 ID:xzxfMI2E
間違った……最後まで書けないなら…でした

22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/26(日) 21:19:56 ID:QWt/4qaI
(´;ω;`)ウッ

23 ◆EOIUzakA3k :2006/02/26(日) 23:09:28 ID:UPq8CGcs
すいません…
やっぱり、描写の限界…?というのでしょうか…失明、と言う立場の視点は、何もわかっちゃいないオレみたいなのが書くとただ失礼なダケで……
あのまま書き続けていたら……ただのオナニーにも充たなかったです………
そのつもりはありませんが、ただ失明した方に失礼なダケで…

なので……です
もし、コレから先一個でも書けたら、VIPじゃなく、ココにうpしようと思います

すいませんでした

24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/27(月) 13:36:55 ID:Bkrl7Wk2
いつまでも待ってます(´;ω;`)

25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/02/27(月) 13:50:08 ID:EiX7CE3c
そうか・・・ま、退くことも勇気だよ。

ところで作者さんってじゃがいも伯爵だっけ?

26 ◆EOIUzakA3k :2006/03/05(日) 05:00:35 ID:y/NiF/oE
>>24
出来る限り書くようにします…
>>25
ドチラ サマデ ショウカ ? ミニ オボエ ガ アリマセン デス

27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/11(土) 21:52:14 ID:R3E7EaZI
失明スレもしかして終わりなんでしょうか?

28 ( ^ω^) :2006/05/30(火) 02:02:36 ID:Y3fCTMqA
ワクワクテカテカ

29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/07(水) 22:05:10 ID:1BDoeX9s
VIPおちた( ^ω^)

30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 06:53:10 ID:DeukWYEg
中田カワイソス

31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/17(火) 10:56:11 ID:1BoOlo2o
2時間かけて読んだのに未完かあぁあぁっぁあぁぁっぁぁっぁあああぁああぁぁぁ
マアモロチンマチマストモ(´・ω・`)

32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/11/19(日) 21:24:43 ID:2u3gX0/o
初めて見たブーン系小説だったのに…
できれば最後まで続けてほしいです

33 酉キーなくしましたが、作者です :2006/12/13(水) 02:15:35 ID:n2PMvtxA
まだ見てる方はいるんでしょうか…
少しずつになると思いますが、終わりまで書いてみようと思ってます
長い期間、放置していてすいませんでした……

それと、投下はここにします
VIPにするには時間が経ちすぎているうえ、不快感を持つ方がいると思うので…
長いことホントにすいませんでした…

>>27
とりあえず再開するつもりです、少しずつですが…すいません…
>>28
wktkしてくださってありがとうございます、出来る限り期待に応えられるようガンバります
すいませんでした…
>>29
長いことVIPすら行ってなかったのでわかりませんが、しばらくVIP大変だったみたいですね…
>>30
サッカーですか?
>>31
2時間もかけて読んでくださったんですか、やっぱり読んでもらえると嬉しいですね
ありがとうございます、放置していてすいませんでした…
>>32
そうでしたか…最初だったなんて光栄です
中途半端ですいませんでした…完結はさせます、長い期間すいませんでした…


長いこと放置してましたが今からでも完結させますので、
たとえ1人の方にでも完結したものを読んでいただければ幸いです
本当に長い間すいませんでした

34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2007/01/01(月) 01:50:59 ID:d4DdwU62
ktkrwwwwwwwwwwwwww

35 とりあえず少し出来た分投下 :2007/01/05(金) 18:47:36 ID:FTbRW0Fk

それから、ボクは特に何をするわけでもなく、いつものようにリハビリをこなしていった。
毎日友人たちがお見舞いに来てくれて、住み慣れた部屋で過ごした。

そして―――



今、ボクは自分のアパートの部屋の前にいた。

やまじゅん「いいかい、ブーンくん。私たちがここを離れたら、君は『仮』退院」
     「少しの間……いや、三日間という期間を、私たち抜きで過ごしてもらう」

そう、少し強くボクに伝えた。

――大丈夫、覚悟は…している…

周りには、ツンたちがいてくれる。
彼女らがボクに光を与えてくれる。
それならば、なにも怖がることはないはずだ。

( ^ω^)「大丈夫ですお、ボクは、ボクだけじゃないお」

そういうと、先生の安心したような、優しいため息のような音が聞こえた。

36 とりあえず少し出来た分投下 :2007/01/05(金) 18:58:58 ID:FTbRW0Fk
何かあるとこのケータイの5を長押しするんだよ。
と、ボクに言い残して、先生は車のドアを閉め、戻って行ってしまった。
それと同時に、

('A`)「先生との話は終わったかい?」

( ^ω^)「…ドクオ、盗み聞きしてなきゃこんないいタイミングで出てこないお」

たしかに、これは失敗したな、とドクオの軽い声がした。

あの日、ショボンの出した提案。
今日は、ドクオとショボンと街を見に行く予定だ。
明日は1人で家で過ごして、明後日はツンと近所を少し、散歩する。
と言った風に、ボクは提案した。

(´・ω・`)「じゃれてないで早く用意しなきゃ、日が暮れちゃうよ?」

ショボンの呆れた声と共に、部屋からかけっぱなしにしていたラジオが12時を報せてくれた。

(;^ω^)「おっおっ、12時…さっさと用意するから待っててくれお」

それを聞くと、ショボンたちからため息とも苦笑したとも取れる音が聞こえた。
まぁ、たぶん以前とあまり変わっていないボクに少し呆れたのだろうからどちらでもいいけれど。

37 とりあえず少し出来た分投下 :2007/01/05(金) 18:59:23 ID:FTbRW0Fk
それにしても、光の届かなくなってしまったボクにとって、ラジオほど重要なものはないかも知れない。
ニュースや時間を報せてくれたり、ラジオ番組で退屈を忘れたり出来る。
落ち着きたい時にはクラシックが流れている局だってある。
おそらく今一番お世話になっている電気機器だろう。
それと、あまり関係はないがボクはあのザラザラとしたノイズに阻まれながらも聞こえる音。
テレビなどにはない、あのノイズがかった音が大好きだった。
古臭いというかなんというか…よくわからないがあのふいんき(ry がたまらない。

そんなくだらないことを考えていると、用意は気づいたら終わっていた。

( ^ω^)「出来たおー」

('A`)「うっし、そんじゃあ行くか」

(´・ω・`)「うん、行こうか。ほら、ブーンも靴履いて」

38 ここまで、全然書けてませんが・・・ :2007/01/05(金) 19:01:50 ID:FTbRW0Fk

妙に幼いというか、二人の楽しそうな声が聞こえる。

(;^ω^)「靴くらいゆっくり履かせてくれお」

(´・ω・`)「何言ってるんだい、こうしてる間にも時間は流れてるんだよ?ほら、杖も持って」

毒づきながらも、ボクは笑みをこぼしていたと思う。

だって友達と街に出て遊ぶなんて、すごく久しぶりだったから――

ショボンに差し出された杖をつかみ、ボクは立ち上がり、外に出た。

……………………

( ^ω^)「鍵も閉めたし、行くかお!」

それに続いて、やる気のない声と落ち着いた声がはいはい、と続く。
そしてボクたちはアパートを後にした。

39 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2007/01/05(金) 19:30:58 ID:gf1/oYQk
うはwww再開キタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜ー!!

40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2007/01/06(土) 13:54:12 ID:LOmip0Ng
>>36の予定の部分…間違ってた……
明日→1人で近所
明後日→ツンと

41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2007/08/04(土) 07:10:04 ID:/MtDUITk
7ヶ月ごしで支援

42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/03/06(木) 12:37:16 ID:hUBLHv/A
さらに7ヶ月ごしで支援

43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/16(日) 22:37:43 ID:n/RJslMk
そこになんと17ヶ月ごしで支援

44 中の人 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:26:01 ID:9bdD2vS.
うわ、今なら書ける気がして久しぶりに開いたらつい最近支援が…。
本当に、申し訳なく思っています……

書き直して、投下を再開しようと思います。
初めての投下から数年経って、僕自身いろいろなことを経験し、いろいろな人と話、成長しました。
なので、書き方や心情の変化、プロットやストーリーも変化しています。
文章力も以前に比べればマシになっているはずです。
テーマも、僕自身の能力から見れば不相応な程大きなモノですが、最後まで走ってみようと思います。

酉キーは失くしてしまいましたので、必要ないとは思いますが、これが新しい酉になります。
投下ペースはたぶん凄まじく遅いかも知れませんが…。

では、書き直し第一話投下します、もう既に内容がかなり変わってるけど…。

45 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:27:02 ID:9bdD2vS.

絶望――というのは様々な場面から生まれてくる。

失恋。

落第。

試合での敗戦。

物を失くす事。

尊敬する者や親しい者の死。

多くは"失くす"と言うことから生まれてくる。

例えば、"光"―――。

しかし生きていれば"希望"と言う光も見えてくる。

その"闇"に潰されてしまえば、消えてしまうほど儚い"光"。


よく、『這い上がってきた人は強い』なんて言葉を耳にする。
一度下まで行ってしまえば、あとは上がるだけだからなのか。

精神というモノは、些細なことで折れてしまうほど弱いが、ふとしたことで直ってしまう雑草並みの強さを持つ。

そうした"成長"という面に関して、絶望というモノはパンドラの箱みたいなモノなのだろう。


開かれてしまったことに対して、目を背けて閉じてしまえば、

置かれた状況に対して、潰され諦めてしまえば、

中に見える小さく細い線状の光も見逃して閉じてしまう―――。

46 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:27:52 ID:9bdD2vS.

( −ω−)「んお……」


( ^ω^)「お……?」


 窓から差し込む日差しの所為であるのか、生暖かい気温に包まれ若干の寝苦しさを感じる。
 もう、朝――気温的には昼かも知れないが、太陽の嫌がらせを受け、僕の新しい一日は幕を開けた。


( ^ω^)「今日はやけに暗いNE!!」


 体感している温度は、汗ばんで少しの不快感を感じる程度なのだ、が、どうにもおかしい。
 まだ、意識が覚醒していないのかと、いつもより大きく伸びをし、血の巡りをよくする。

 体に不調だと感じる点は、今日もなし。
 病的だと言われるほどに健康なこの体だ。
 ある訳がないだろう、と少し自慢げに笑う。

 頭の回転が遅いだのと言われている、この脳だって生まれてから二十年も共に過ごしていれば、自分にとってはかわいいものさ。
 などと思っていたが、ふと思い出す。

 急にからっぽになったような、なんとも言えない虚無感。

 だから、回転が遅いだなんて言われるんだぞ、僕の脳みそ。


 ――自分から、光が失われてしまったことすら、忘れてしまっていたなんて。

47 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:28:23 ID:9bdD2vS.


( ^ω^)「・・・・・・・・・」


 僕の現実が現実ではなくなってしまってから三日。
 未だに自分の身体の変化を受け入れることなんて、出来ていない。

 病的だと言われるほどに健康な、この自慢の体。
 だけど、あぁ、何故なんだ。
 何故お前は光と言うモノを、ありとあらゆるモノを、映したがらなくなってしまったんだ。


 一寸先は闇、なんて諺がある。
 四方八方、3.03cm以下の距離だって暗闇で覆われている。
 そんな状況に置かれているのだった。



 また今日も、あの日から変わらず光なんて差し込みやしない、ある程度の広さのある井戸の底でモゾモゾと蠢くだけのような一日が始まる。



 この先に道はあるんだろうか。
 "まぁなくても歩く意味はあるよ"だなんて、何処かの誰かがそんな詩を書いていた。

 先と言わず、今生活しているこの空間、座っているベッド、鏡に映っている自分
 ―――それすらも視えない状態じゃ、歩くことすら困難だ。
 意味を求める、そのスタートラインに立つことも出来ない。

48 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:29:05 ID:9bdD2vS.

 いっそ、こんな暗い世界で生きていくのならば、光なんて存在しない世界で生きていくのならば、消えてしまいたい――

 未だにそんなことを考える。
 自分の体の部位くらいは、把握出来ている。
 少し手を伸ばせば、ほら、簡単。
 呆気なく僕の茎に当たる首に触れることが出来た。


(  ω )「ドク…ドク…ドク……」


 両手を添え、意味もなく自分がまだ砂時計を落としている最中だと言うことを確認する。
 あれから何もせずに、ひたすらベッドに居座り続けるだけの自分の生命を、愛おしくも感じる――。


 僕が、何をしたんでしょうか神様。
 いらっしゃるのなら、貴方は残酷な方です。
 生きているのに、何も映らない世界へと落とすのですから―――。

49 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:29:32 ID:9bdD2vS.

 何も考えたくはないのに、様々な思考の渦に飲まれていく。

 聞いた、というより聞こえた話によると、この部屋は個室らしい。
 僕から発せられる音以外は、自然の微かな音と時計の音しか聞こえない。

 規則的に刻まれる秒針の音
 速くなったり遅くなったり、不規則に刻まれる生命の音
 そしてそれに連動するかのようにこぼれる呼吸音―――

 絶望の淵に立たされても、この健康自慢の体だけは人生というレースを諦める気はないらしい。
 意識下でなら、既に君の相方の脳は諦めていると言うのに。

 健康自慢なだけあって、根性だけは一人前なようだ。

 持ち主の僕はと言えば、文字通りお先真っ暗。
 だが、白旗を持っているだけで、振る勇気なんて持ち合わせちゃいない。


 たまに、僕はまだ夢の中で彷徨っているだけなのではないか、なんて現実からの逃避を行う程度の行動力しか、今はない。

50 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:30:16 ID:9bdD2vS.

 視覚、と言う情報が脳に伝達されなくなってから、僕は思考の沼に頭までどっぷりと浸かるようになった。
 今だって、耳が規則的な音の世界に飛び込んできたイレギュラーを拾わなければ、沼から這い出すのはもう少し後の話になっただろう。

 前方上空から、鳩の鳴き声を真似た電子音が九つ、規則的に耳に届いた。

 そう言えば五感と言うモノは、一つ失えば残りの機能が活発に働き、その作用を補おうとするらしい。
 確かに、聞いた話の通りに聴覚が異常に冴え始めた気がする。


( ^ω^)「9時かお…」


 僕の記憶が確かであれば、まどろみの中で最後に数えられた鳴き声は十回だった。

 十一時間も睡眠を採っていたなんて、一時間遅ければ、半日も無駄にするところだった。


( ^ω^)「三日もベッドから動いてないのにwwwww今更半日が惜しいかおwwwwwwwwwwwwww」


 自らの思考に、自嘲気味に笑う。

 そう言えば、笑うと言う行為には精神を安定させる物質を発生させる作用があるらしい。
 つまり、自分はもう壊れかけているのか、なんて考えまた一人で大げさに笑ってみた。

 病室に一人、現実と言う闇の中で独り。
 そんな中で笑っている自分は、壊れかけと言うより既に壊れている気がして、余計に可笑しくなった。

51 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:30:42 ID:9bdD2vS.

 なんて傍から見れば心配されそうな状態でも、聴覚と言うモノは働いている。
 遠くから、床を蹴り歩いて来る音が聞こえてきた。
 ザ・イレギュラー第二段。

 規則的に鳴らされる音のペースは速く、木で硬い物を叩く音に似ている。
 次第に大きくなる音に対し、僕の心は萎んで行く。

 "またか"なんて考えてしまう自分に、嫌悪感が湧いた。

 音が止まると、ドアが壁にぶつかりレールの上を滑る。
 空気から鼓膜まで振動は伝わり、誰かの来室を報せてくれた。

 目覚めてから三日の間で、この時間に来る人物が誰かはわかっているからわざわざ報せてくれなくてもいいよ。
 なんて爽やかに言ってみる、心の中で。


ξ゚⊿゚)ξ「おはよ」

( ^ω^)「……おはようだお」

52 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:31:09 ID:9bdD2vS.

 少し感情の感じられない一投目をキャッチし、少し遅れてから投げ返す。
 例え闇の中で在れ、会話と言う心のキャッチボールが出来ることがせめてもの救いか。


ξ゚⊿゚)ξ「相変わらず、起きる時間は変わらないのね。健康大魔神」

( ^ω^)「相変わらず、来る時間は変わらないおね。捻くれ女神」


 売り言葉に買い言葉。
 肩慣らしに変化球を投げ合う異常なキャッチボール。
 それは、昔から変わらない。

 今が変化した現実で在ることを報せる鐘としては、十分過ぎる。


ξ゚⊿゚)ξ「通学中だからね」

( ^ω^)「学校への一本道から少し外れなきゃ、ここには着かないお」

ξ゚⊿゚)ξ「誰かさんの所為で、早起きが身に付いちゃったのよ」

( ^ω^)「たった六日間で、起きる時間まで変わるかお」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、変わるわよ。生物は変化に適応していく存在だから」

( ^ω^)「減らず口を」

ξ゚⊿゚)ξ「どっちが」


 一言放ち、彼女は鼻からの吐息を漏らす。

53 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:31:47 ID:9bdD2vS.


( ^ω^)「適応…出来るとは思えないけどね」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ…受け入れられそうもない?」

( ^ω^)「流石に」

ξ゚⊿゚)ξ「……そう」

( ^ω^)「光の素晴らしさを、実感したお」


 返答はない。

 そもそも、"生物は変化に適応していく存在"だなんて
 "適応したくない人間"は、その自らの存在を否定しているのだろうか。

 ドロドロと、濁った感情が沸々と湧いてくる。
 軽口を、叩くな。


( ^ω^)「ツンに、わかるかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

( ^ω^)「光を奪われて、その存在が偉大で在ったと気づいたのは、奪われた後」
      「もう遅い、零れた水は盆には返らないと、わかったのに」

 ――それを、未だに信じられずに水を眺めている人の気持ちが。

54 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:34:09 ID:9bdD2vS.

 五感には含まれていないが、第六感と言うモノだろうか。
 彼女の気分の変化が、空気を伝わり僕を刺激した。


 適応出来るのならば、した方が楽なのだろう。
 しかし、それを行うまでが大変だ。
 現在置かれている場所を認識しなければいけない。

 認識する為には、それを信じなければいけない。
 信じたくないモノを信じることが、苦痛だとは知らなかった。


 だから僕は、未だ適応していない―――。


( ^ω^)「簡単に適応出来るのならば、適応するお」
      「でも変化が信じがたい程に大きなモノであったなら、それは三日やそこらで適応出来る訳がない」
      「簡単に受け入れられるモノだと、思わないで欲しいお」


 言い終え、息を吸う。吐く。
 一度に長い言を発し、少し興奮してしまったことに気づく。

 そして彼女を傷つけてしまったかな、とまた自己嫌悪に陥る。
 やはり、返答はない。

55 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:34:44 ID:9bdD2vS.

 長い沈黙だ。

 やたらと過敏になった耳は、秒針が314回揺れたことすらも聞き取ってしまう。
 沈黙は不思議なモノで、一日の288分の1程度の短い時間すらも、それ以上の長さのモノに感じてしまう。
 具体的な数字に直すと、多いのか少ないのか曖昧に感じてしまうが。

 気づけばまた思考の渦に飲まれていた。
 この脳は、回転が遅いなどと言われている割には無駄なことに対しては回転数を上げる。
 これも光を失った影響だろうか。

 ふと、聞き慣れた音が聞こえる。
 椅子の足が床を擦る音。
 彼女は席を立ち、また足音を響かせ始めた。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの言いたい気持ちはわかるわ」
     「でも完全に、アナタの全て理解できる訳じゃない」
     「もしかしたら、私も10の内の2割」
     「いや、理解してるのは1割にも満たないかも知れない」
     「だけどアナタもきっと、1割も理解していない」


 何を理解していないと言うのか。
 少し癇に障る言い方をした彼女に、苛立ちを覚える。


(#^ω^)「何を―――」

ξ゚⊿゚)ξ「私やドクオとショボン、友人達の気持ちを」




 ―――――アナタの変化を取り残されたけど、受け入れようと必死になってる周りの人達の気持ちを。


 言い掛けた言葉は、無理やり飲み込まされた。

56 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:36:03 ID:9bdD2vS.

 飲み込まされた言葉の所為か、僕の心に沸々と湧いていた黒々とした気持ちは鎮火された。

 最後に一言、"長岡さんと先生に起きたことを伝えておくね、行って来ます"
 そう残して彼女はまたカツカツと鳴らしながら音を遠ざけて行った。

 幾分か、いつもより少しクリックが早い気がするのは気の所為か。


 一人残された部屋で、僕は頭を抱え込み、俯く。
 回転の遅い脳も、理解したらしい。

 彼女達と僕との気持ちの違い。
 置かれた状況の違い。
 事の大きさの違い。

 それはあるだろう。
 世間的に見ても、一般論で通してみれば僕の方に同情する人の方が多いと思う。

 しかし、どうだろうか。
 視点を変えてみると、あら不思議。
 そもそも土俵が違うのだ。


 当事者と、それを取り巻く人々。

 当事者には当事者の悩みや不安、葛藤。
 しかしそれは取り巻く人々にもある。
 種類や大きさ等の違いがあるのは当然である。
 そしてそれは土俵の違う者が全てを理解出来る訳がない。

57 第一話 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 03:39:59 ID:9bdD2vS.

 暗闇の中、云々と唸り考える。
 全てを理解することは出来なくても、何割かを共有して先に進むことは出来る筈だ。


 しかし、それを行う為に僕は、僕を如何すれば受け入れられるだろう―――。


 現状が怖い、目を開いても閉じても、暗闇が、迫ってくる。
 夢を見た、夢を見てる。
 目が見えなくなった事を知ってから、同じ夢を、ずっと、寝る度に。

 笑っていたんだ。
 "僕が"じゃない、"僕を"だ。
 モヤモヤとした、黒い霧状の人型が、僕を見て。

 そいつから笑い声が聞こえるんじゃない。
 四方八方、暗闇から僕を中心として、囲み込むように笑い声で埋め尽くされた空間。
 叫んでも泣いても、かき消される大きな笑い声達。

 でも見えるのは、人型と暗闇だけ。
 現状を受け入れれば、あの暗闇は消えて、人型も消えてくれるだろうか。

 笑い声も、僕の声を聞く為に黙ってくれるだろうか――。

 少し、意味を求めながら歩く為のスタートラインに立ちたいと、
 悪夢を消し去る為に、周りの人々の為に―――そして何より自分の為に、受け入れて変化に適応したいと、思った。



 そうしてまた別の足音が、僕の病室へと近づいてきた―――。

58 中の人 ◆9tTDIdQBuU :2009/08/23(日) 04:02:47 ID:9bdD2vS.
以上で書き直しの第一話は終わりです。


初めて投下をした時は、ゴールを決めていませんでした。(それが失踪の要因かも…)
そもそもプロットと言う存在すら知らず完全に行き当たりバッタリの"ながら投下"でした…。


今回は、ゴールも決め、当初からある芯も変えず、プロットなどもキッチリ作って臨んでます。
何より読みやすさやテンポも考慮して、伝えたいことが伝わりやすいようにと書いています。
いや、芯は当初と少し違うかも…。
僕自身が身を持って知った、"人と関わることの大きさ"と、"一歩踏み出すことの大切さ"が今回の芯かも。
多くの人は、それを知っていると思います。
ですが、やはりそれは素晴らしいと、僕は声を大にして言いたいです。


不明瞭であることは、人の興味をそそりますよね。文も不明瞭であるから想像が膨らみます。
そして不明瞭の先を見ようとして人は成長します。物語は進みます。


先を見ようとして進み続けた結果、僕の思想なども変わりました。
そう考えると、物語の変化などは仕方ないのかな。
しかしおかげ様でブーンもツンも既に性格が原型を留めていない…。
誰この人たち…。
大丈夫かコイツら…ちゃんと動いてくれるか……。


以上、一話あとがき。
あとがきと言うか、なんか僕が好き勝手に喚き散らしただけになってますね…w


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