2009年05月24日

(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」〜助け屋ギコ〜のようです その一

(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」〜助け屋ギコ〜のようです

1 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:31:01.15 ID:oBpEWn5V0
立ったら投下します

5 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:34:09.49 ID:oBpEWn5V0
困った時は助けを呼ぼう。
電話のボタンをプッシュして、あの番号にかけるんだ。
彼が出たらこう言うのさ。

「もしもし○○ですか?今すぐ助けに来てください」

…ってね。
え、彼は誰かって?
彼はこの町の、優しさとやる気と仲間の多さなら誰にも負けないトラブルシューター。

…ギコール・ハニャーン。「助け屋」さ。


(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」〜助け屋ギコ〜のようです


一日目 午前
『開業初依頼!言葉の裏の真実が見抜けますか?』


6 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:37:10.96 ID:oBpEWn5V0
どこかの世界の、いつかの時間。
とある国の、とある町の、ぼろアパートの一室。
そこには今夜も人外達が大集合。

(,,゚Д゚)「…というわけで、なんて言うかさ、召喚師の試験に受かるまでは助け屋をすることにしました」

( ^Д^)「却下」

(,,;Д;)「うおーん。なんでー?」

泣いている男はギコール・ハニャーン。
この町の召喚師でトラブルシューター。助け屋のギコ。
…といってもほんの数分前になったばかりだが。

( ^Д^)「だいたいご主人。事件屋舐めてるでしょ」

(#゚;;-゚)「事件屋とは人聞きが悪いです。他人が聞いたら誤解します」

( ^Д^)「実際事件屋じゃないですか。人助けて金貰う非正規の稼業なんて」
11 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:40:07.98 ID:oBpEWn5V0
真っ黒い、烏の濡れ羽色の髪に、色あせた浴衣を軽く着ているこの男はプギャー。
霊獣、八咫烏の1匹でギコに使役されている。
いや、使役と言うか、単に暇だから手伝っているだけと言うか…

(#゚;;-゚)「私はご主人様に賛成です。仮にもご主人様ですから」

( "ゞ)「仮にも、を強調するのは止めてあげなさい」

(#゚;;-゚)「私がこの世で最も尊敬するのは別の方。当主様だけなのです」

顔に大きな傷。和服の猫耳尻尾付き美人はでぃ。
九十九神で猫又だ。プギャーと同じく使役されている。
でも本人的には仮の主人らしい。仮の。

( "ゞ)「では予言でもしましょうか」

ミ,,゚Д゚彡「いや、いい。先が見える人生なんかつまんないぜい」

( "ゞ)「なかなか深いことを…」

12 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:43:10.94 ID:oBpEWn5V0
巻物から声を出す彼はデルタ。
不幸を予言する、牛の体と人の顔を持つ妖怪の件。別に予言しても死なない。
普段は巻物の状態でギコの家に居候中。

ミ,,゚Д゚彡「まぁ、あれだ。俺は賛成だぜい?」

爪-ー-)「くー……」

ミ,,゚Д゚彡「だから多数決的には決定だな、麒麟は寝てるけど」

ぼさぼさの髪型でジーパンのフサ。
ギコの友達でウールヴヘジン……、狼の毛皮を着ることで狼に変身する神話の戦士。
数少ない明確な給料制の仲間だ。日夜悪い魔術師と戦うベナンダンテでもある。…本人いわく。

爪゚ー゚)「…起きた」

(,,^Д^)「おはよう、リンちゃん」

爪゚ー゚)「おはよう、ギコ」

14 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:46:08.22 ID:oBpEWn5V0
大型犬ぐらいの大きさで、角を生やしているコイツは麒麟のじぃ。
麒麟と言っても首の長いやつではない。中国の瑞獣の方だ。
その瑞獣を猫みたいに首輪をつけて飼っているギコはなかなか図太い。てかバチ当たり。

他にも様々な仲間がいるが、主なメンバーはこれぐらいだ。
もちろん他のメンバーもギコが召喚―電話をかけるという独自の方法―をすれば、来てくれる。
…60%ぐらいの確率で。

そんな個性溢れすぎている彼等が話しているのはギコの仕事について。
人助けを職業とする「助け屋」を開業するかしないかの問題。

( ^Д^)「事務所とかはどうするんすか」

(,,゚Д゚)「え?いらないでしょ」

(#゚;;-゚)「ご主人様、ご主人様。流石に事務所は必要です」

(,,゚Д゚)「じゃあ、ペニサスさんのバーで」

ミ,,-Д-彡「じゃあ、って…。しかも人の店舗……」

15 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:49:11.22 ID:oBpEWn5V0
( "ゞ)「…そもそも、電話がかかって来た時に駆けつければいいだけだろう」

(,,^Д^)「そうそう、そんな感じ」

どうも、ギコのイメージは
依頼者から電話→ギコが現場に直行→謝礼貰う
…らしい。
つくづく馬鹿で世間知らずな奴だ。

ミ,,゚Д゚彡「広告とかはどうするんだい?」

(,,゚Д゚)「口コミで」

( "ゞ)「それは無理だと…」

(,,^Д^)「でも!ペニサスさんもモララーさんも、仕事があったら回してくれるらしいし!」

爪゚ー゚)「ねぇねぇ、なんの話?」

(#゚;;-゚)「リンさんは神聖な獣なので、こんな世俗にまみれた話を聞いてはいけません」

爪^ー^)「そうかー。そうなのかー」

17 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:52:08.13 ID:oBpEWn5V0
( ^Д^)「…とりあえず、バーボンハウス行きましょう。自分とフサとご主人で」

ここでこうしていてもしょうがないので、とりあえずペニサスさんのバーに向かうことに。
プギャー的にはもう少し話の通じる人に意見を聞きたいわけなのだ。


……………


( ´_ゝ`)「ふぅ…」

(´<_` )「はぁ…」

バーには2人の客がいた。
同じ顔をした双子、流石兄弟の兄者と弟者。
兄者が酒を呷り、弟者がおかわりをしたところで、

(,,^Д^)「まいどー」

チューニングができるどこぞの所長みたいな挨拶。
年がら年中ノーテンキ野郎が入ってきた。
微妙で愉快な仲間を引き連れて。

21 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:55:08.43 ID:oBpEWn5V0
ちなみにプギャーは仕事用の服(燕尾服)に着替え済み。

('、`*川「あら、ギコちゃん。ちょうどいいところに」

( ^Д^)「…怪しいな」

('、`*川「え〜っと、カラスの調理方法は、っと…」

ミ,,゚Д゚彡「まぁ、ペニサスさん。パソコンしまってください」

('、`*川「冗談よ」

( ^Д^)「(冗談に見えないんだよ、三十路前)」

('、`*川「プギャーちゃん、何か言った?」

(;^Д^)「なんでもありません…(この人は覚の能力でも持ってんのか)」

('、`*川「私はただの人間よ。ただのね」

(;^Д^)「!!」

24 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 21:58:08.16 ID:oBpEWn5V0
ペニサス覚疑惑が出たところでギコが話を戻す。

(,,゚Д゚)「それで、都合がいいって?」

('、`*川「悩み事があるんですって。あなたに連絡しようと思ってたところなの」

ペニサスは流石兄弟を見る。
2人はギコ達に自己紹介。

( ´_ゝ`)『俺達は、流石兄弟』(´<_` )

( ´_ゝ`)「俺が兄者で」

(´<_` )「俺が弟者だ」

(,,^Д^)「ギコハハハ。ご丁寧にどうも。ギコール・ハニャーンです」

ミ,,゚Д゚彡「その愉快な仲間の1人、エキセントリックボーイのフサだぜい」

27 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:01:08.08 ID:oBpEWn5V0
( ^Д^)「……これが、予定調和か……」

(,,゚Д゚)「どうしたの?」

( ^Д^)「いや、なんでもありません。…プギャーです。ご主人達共々、幾久しく」

全員自己紹介が終わったところで、席に座る3人。
ペニサスが適当な飲み物を出す。
その時、ギコが思い出したかのように声を上げた。

(,,゚Д゚)「あっ!」

ミ;゚Д゚彡「えっ、なんだぜい?」

(,,^Д^)「いやぁね、名刺を作ってきたんだよねぇ〜」

( ^Д^)「名刺?」

29 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:04:17.84 ID:oBpEWn5V0
(,,^Д^)「はい、流石兄弟さん」

( ´_ゝ`)「これはどうも」

(´<_` )「なになに……」

名刺にはこう書いてあった。

19の仲間を持つ男、ギコール・ハニャーン
    召喚師兼「助け屋」
TEL ×××−××××−××××

…シュールだ。
そして、ちょっと某冒険家兼ヒーローのあの人っぽい。
ちなみに作ったのは貞子。
無駄にスキルが多い幽霊である。

( ^Д^)「19って…。ご主人、多いのか少ないのか分かりませんよ」

('、`*川「あら。多いと思うわよ?」

31 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:07:07.22 ID:oBpEWn5V0
ミ,,゚Д゚彡「つーか19も仲間いたっけ?」

(,,゚Д゚)「いましたよー。フサちゃんでしょ、プギャーさんでしょ、でぃちゃんにリンちゃん……」

…数えてみると確かに19いた。
古今東西多種多様な仲間を持つ召喚師ギコである。
ぐだぐだと話していても仕方ないと感じたのか、兄者が話を切り出す。

( ´_ゝ`)「…さて、そろそろ仕事の話をしてもいいかな?助け屋さん」

(,,^Д^)「いやぁ〜、もちろんですよ!初の依頼人さん達」

(´<_` )「…頼みたいのは、お払いなんだ」

ミ,,゚Д゚彡「お払い?」

( ´_ゝ`)「ああ。ある場所に出る、あるものを追っ払って欲しい」

( ^Д^)「……」


35 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:10:07.33 ID:oBpEWn5V0
抽象的な言い回しだ。
「ある場所に出る、あるもの」
それを説明するように兄弟は語りだす。

(´<_` )「俺と兄者は犬を飼っている」

('、`*川「イヌ?」

ミ,,゚Д゚彡「なんでこっちを見るんすか。俺、狼だぜい」

( ´_ゝ`)「そして、毎日夜半過ぎに散歩している」

(´<_` )「こないだもいつもと同じように散歩をしてたわけだ」

(,,゚Д゚)「ふむふむ」

( ´_ゝ`)「ブラブラと夜の住宅街を歩いていると、何か声が聞こえる」

( ^Д^)「どんな声ですか」

そうだな、と弟者は考え、しばらく経った後。

38 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:13:07.70 ID:oBpEWn5V0
(´<_` )「うまく言えないが、『ひょー、ひょー』と言った感じだ」

('、`*川「…なんか間抜けな声ね」

( ´_ゝ`)「いや、そうとしか表せられないぞ、あれは」

ひとまず声の件は置いておく。

(,,゚Д゚)「それで、どうしたわけですか?」

(´<_` )「チキンな兄者は逃げようとした」

(;´_ゝ`)「だってお前、幽霊かもしれないじゃん」

ミ,,-Д-彡「むしろ幽霊じゃなかったら嫌だぜい。全裸のおっさんが叫んでるだけだとしたら…」

('、`*川「うわぁ…」

想像したことを後悔するペニサス。
またもや脱線しそうだったので、プギャーが話を進める。

40 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:16:12.52 ID:oBpEWn5V0
( ^Д^)「先に行きましょうよ。それで、結局どうしたんですか?」

(´<_` )「普通に散歩を続けた。だが、少し先の公園に差し掛かった時…」

( ´_ゝ`)「『ドカーン!バチィ!!ひょー!!!』…という感じになってしまった」

(,,゚Д゚)「……」

ミ,,-Д-彡「全然わかんないぜい。効果音だけで説明されても」

兄弟は、辛そうに言う。

( ´_ゝ`)「…ドカーンと音がして、バチィと何かが光って、ひょーと声がした」

(´<_` )「そして、犬者―俺達の犬だが―が、発狂したんだ…」

('、`*川「……」

ミ,,-Д-彡「…That’s just too bad……。お気の毒だぜい」

( ^Д^)「なるほど…。ご主人、もう正体はわかったでしょ?」

43 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:19:08.15 ID:oBpEWn5V0
プギャーが意味深に話を振る。
ギコは……

(,,゚Д゚)「えっ、なに?正体?え?」

…全然わかってなかった。
お約束である。…まことに嫌なお約束であるが。
小さな声で言う。

( ^Д^)「この馬鹿召喚師もどきが…」

(,,;Д;)「ぎこーん……」

泣きだしたギコは放っておくことにする。
依頼内容の確認だ。

('、`*川「…つまり、その『ひょー』の正体を突き止めればいいのね?」

( ´_ゝ`)「できれば、ソイツがもう二度と出てこないようにしてほしい」

(´<_` )「犬者が発狂したのも治して欲しいな」

47 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:22:07.62 ID:oBpEWn5V0
ミ,,゚Д゚彡「わかったぜい。ほら、ギコ。決め台詞」

(,,;Д;)「うぅ…。助け屋ギコと愉快な仲間達、その依頼確かに引き受けました…」

泣きながら言われても説得力に欠ける。パクリだし。
いや、普段のギコでも皆無だが。
しかし、流石兄弟は信頼しているようだ。

( ´_ゝ`)「ああ、頼んだぞ」

(´<_` )「任せた」

(,,゚Д゚)「じゃあ、調査に向かいます。…あとですね……」

依頼者2人に顔を寄せ、一言。
フサとプギャーは立ち上がり帰り支度。

(,,^Д^)「…犬者さんには、とうもろこしでもあげればいいですよ。では」

謎の言葉。
それにプギャーが反応する。

51 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:25:07.53 ID:oBpEWn5V0
( ^Д^)「なんだご主人、わかってたんじゃないですか」

(,,゚Д゚)「なんとくね。なんとな〜く」

( ^Д^)「やれやれ。じゃあ、失礼します」

ミ,,゚Д゚彡「さよならだぜい」

…こうして、3人は店を後にした。
報酬や活動費の話が全く出なかったのが馬鹿なギコらしい。
…店の外、プギャーが言う。

( ^Д^)「ご主人。…あの兄弟、気をつけたほうがいいですよ」

(,,゚Д゚)「え?悪い人には見えなかったけどなぁ…」

( ^Д^)「『悪』の定義なんて曖昧なものですよ。自分が生まれた時代からね」

烏に変わり、空へ飛び立つ。
八咫烏。その3本の足は「智」「仁」「勇」を表しているとも言われる。
そんな彼は、何を感じ取ったのだろうか。

55 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:28:07.75 ID:oBpEWn5V0
…残されたギコとフサはその公園に向かうことにした。
彼の言葉の意味を、噛み締めながら。


一日目 午前 終



…流石兄弟の依頼。
相手の正体は分かっている。
…皆さんは分かっただろうか?
なんにせよ、あとはどうやって話を終わらせるかだけだ…


…それはまた、次のお話であるのだが。


62 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:33:56.50 ID:oBpEWn5V0
困った時は助けを呼ぼう。
電話のボタンをプッシュして、あの番号にかけるんだ。
彼が出たらこう言うのさ。

「もしもし○○ですか?今すぐ助けに来てください」

…ってね。
え、場所は言わなくていいのかって?
ご安心。携帯で召喚術使うぐらいだから、いくらでも手段はあるのさ。
ああ、彼はこの町の召喚師のトラブルシューター。

…ギコール・ハニャーン。「助け屋」さ。


(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」〜助け屋ギコ〜のようです


一日目 午後
『声の正体!鵺の鳴く夜は恐ろしい?』



67 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:37:10.84 ID:oBpEWn5V0
どこかの世界の、いつかの時間。
とある国の、とある町の、少し山よりの住宅街。
そこの道を真夜中にも関わらず彼等は歩いていた。

(,,-Д-)「……悪かぁ……悪ねぇ……悪なぁ……」

ミ,,゚Д゚彡「俺の認識じゃ、悪って言うと魔術師なんだぜい」

(,,゚Д゚)「…俺も魔術師だけど?」

ミ,,-Д-彡「まぁ、なんつーか……、経験上」

フサはベナンダンテだ。
悪い魔術師と戦う狼男。ヨーロッパでは彼に助けられた農家も多いだろう。…多分。
彼のイメージでは、「悪」=「魔術師」なのだろう。

ミ,,゚Д゚彡「でも、妖怪や幽霊や精霊やその他…。もちろん人間もだが、悪い奴もいいやつもいるもんだぜい。だから…」

(,,^Д^)「うん。わかってるって」

ミ,,-Д-彡「…なら、いい」

71 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:40:09.08 ID:oBpEWn5V0
そうこうするうちに、例の公園についた2人。
だが『ひょー』の声は聞こえない。

ミ,,゚Д゚彡「おー。夜の公園ってのも乙なもんだぜい」

カポカポカポ……

ミ,,゚Д゚彡「ん?」

( ・−・ )「………」

ミ,,゚Д゚彡「なんだ、シーンか」

首のない馬に乗ってやって来たのはシーン。軽く頭を下げる。黙礼。
見てくれは笠を被った侍。しかし、彼には角がある。鬼なのだ。
ある国の一部では、「夜行さん」という名で知られている。
忌み日に外をうろつくと、この夜行さんに蹴り飛ばされたり投げ飛ばされたりするのでご注意を。

ミ,,゚Д゚彡「なんなんだぜい?こんな夜中に」

( ・−・ )「某は元来夜行性。夜中にうろついているのが普通。しかし、今はその話はよい」

75 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:43:17.07 ID:oBpEWn5V0
ミ,,゚Д゚彡「藪から棒になんだ?」

( ・−・ )「…この公園には、近寄らない方がいい。命が惜しくばな」

カポカポカポ…

シーンはそれだけ言い残すと、去っていった。
今日は夜行さんがうろつくと言われる節分でも大晦日でも忌み日でもない。
だとすれば、わざわざ忠告に来てくれたのだろうか。

ミ,,-Д-彡「ギコ、シーンもそう言ってることだし、そろそろ帰ろうぜい」

(,,゚Д゚)「……感じる」

ミ,,゚Д゚彡「え?」

(,,゚Д゚)「なんか…。いるよ、この公園……」

ギコは公園のトイレの上辺りを見ながら、言う。
フサも見てみたが、雲の切れ間から月が出ているだけであった。
召喚師の名は伊達ではないということか。

79 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:46:08.74 ID:oBpEWn5V0
(,,゚Д゚)「今日は帰ろう。尖り矢もないことだしさ」


……………


アパートの部屋の扉を開ける。
ちなみにギコの部屋は13号室。西洋では悪魔の数字と言われているあの数字。
というかこのアパート、部屋番号はまともなやつがない。
4号室、6号室、9号室、13号室……
…建てた人間はよほどひねくれた人間だったのだろう。どの部屋でも呪われそうだ。

(,,゚Д゚)「ただいまー」

(#゚;;-゚)「お帰りなさいませ、ご主人様。お帰りなさいなのです」

ミ,,-Д-彡「…むぅ。家に帰れば和服の美人…。結婚しようかな……」

フサは20代。
狼男ではなく狼憑きなのだから、人間に戻ることもできる。…多分。
真面目に結婚を考えるフサなのであった。

82 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:49:08.28 ID:oBpEWn5V0
そんな彼に話しかける女。

川д川「あらー。なら私と結婚するー?」

ミ,,゚Д゚彡「そう思うのなら、さっさと成仏して生まれ変わるんだぜい」

貞子は、自縛霊だ。
だが自分がなぜ死に、なぜ自縛霊になっているのか覚えていない。
なので、成仏しようもない。
本人は気にしてないらしいので別にいいのだが。

(,,゚Д゚)「リンちゃんは…、寝たのか」

爪-ー-)「くー……」

ミ,,-Д-彡「なら、俺もそろそろ帰るぜい。眠たくなってきた」

(,,^Д^)「わかったー。今日はありがとねー」

ミ,,゚Д゚彡「用がある時はいつでも召喚するんだぜい」

85 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:51:41.29 ID:oBpEWn5V0
フサは帰り、部屋にはギコ、でぃ、貞子が残った。
貞子が言う。

川д川「うふふー。では私も帰りますねー。ご飯は冷蔵庫にありますからー」

(,,^Д^)「うん。いつもありがとう」

川д川「いえいえー」

貞子も帰り、部屋にはギコとでぃのみ。
姿の見えないデルタは、押入れで寝ているのだろう。
ギコはでぃに聞く。

(,,゚Д゚)「どうするでぃちゃん」

(#゚;;-゚)「どうせ暇なのです。ここにいましょう。ご主人様はどうしますか?」

(,,-Д-)「う〜ん…、ちょっと勉強しようかな…」

独学ではない、正規の召喚術の勉強。
とりあえず魔道書から基本でも学ぶことにしたギコ。

88 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 22:55:08.03 ID:oBpEWn5V0
対してでぃは、

(#゚;;-゚)「〜〜♪」

三味線を弾き始めた。
猫又と言えば、三味線であろう。
もしくは油舐め。
勿論上手い。

夜風が心地よい部屋に響く旋律。
ギコはなんとなく、勉強がはかどりそうな気がした。
…結局はかどらなかったが。
なぜなら、彼は馬鹿だから。


91 名前:モララー登場!これより中二?:2009/05/23(土) 22:58:09.11 ID:oBpEWn5V0
……………


バーの扉が開く。
入ってきたのは2人の男女。
眼帯をしたスーツの美形と、几帳面な感じのする美人。

('、`*川「あら、いらっしゃい」

( φ∀・)「おう」

(゚、゚トソン「こんばんは」

('、`*川「こんな夜中に夫婦でデート?あやし〜」

茶化すように言う。
客2人はカウンターに座り、否定する。

( φ∀・)「深夜のデートは確かに楽しいが、そうじゃない」

(゚、゚トソン「今日は頼んでいたものの受け取りに来ました」

94 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:01:07.06 ID:oBpEWn5V0
('、`*川「わかってるわよ。ちょっと待ってね」

ペニサスは一度裏に引っ込み、アタッシュケースを持って帰ってきた。
細長く、大きなケース。
それをカウンターに置こうとするが…

('、` 川「…っと」

( φ∀・)「無理するな、俺がやろう」

('、`*川「相変わらず優しいのね」

( φ∀・)「しまった、つい癖で…」

つい癖で人に優しくして、
つい癖でフラグを立ててしまうのがモララーである。
そんなわけで、彼がトソンと結ばれるまでには色々あった。因果応報であることも、そうでないことも。
紆余曲折で、回り道、寄り道、獣道のオンパレード。たとえるなら、障害物競走のフルマラソンのような理不尽さ。
血みどろの運命に翻弄されながら、やっとのことで自らの使命を果たし、掴んだ幸せ。
それが今の彼等だ。

…それはまた別のお話であるので、ここでは語らないことにしよう。

97 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:04:08.07 ID:oBpEWn5V0
(゚、゚*トソン「開けてもいいですか?」

('、`*川「どうぞー」

( φ∀・)「嬉しそうだな、おい」

トソンは心底嬉しそうにケースを開け、中身を取り出し、組み立てる。
ペニサスは適当にカクテルを作り始め、モララーはあきれた顔でトソンを見ていた。
なぜなら、彼女が組み立てていたものは――

(゚、゚*トソン「できましたー」

('、`*川「おっきいわねー」

( φ∀・)「体に当たったら体ごと吹き飛びそうだ」

(゚、゚トソン「実際そうらしいですよ。威力は対戦車ライフル以上ですから」

――狙撃銃だったのだから。
超大型のフォルム、対戦車ライフル以上の威力で、音速を軽く超える弾丸を発射するそれ。
なんに使うつもりだよ、と言いたくなるようなレベルだ。とりあえず人に向けるものではない。
実際そう思ったペニサスは聞いてみた。

100 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:07:08.86 ID:oBpEWn5V0
('、`*川「でも、そんなものなんに使うつもりなの?」

当然の問い。
モララーはニヤリと笑い、こう言った。

( φ∀・)「俺もトソンも、弓は得意ではないからな。それに、わざわざトドメを刺しに行くのもめんどくさい」

…意味は、わからなかった。


……………


次の日。

賽は投げられた。
声の主を止める為、ギコと仲間達は会議をしている。
ちなみにじぃは散歩中なのでいない。今頃ビッコと遊んでいることだろう。

(,,^Д^)「とりあえず、説得してみよー」

(#゚;;-゚)「ご主人様、それは無理です。きっと無理なのです」

103 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:10:07.39 ID:oBpEWn5V0
(,,゚Д゚)「えー。なんでー」

( "ゞ)「相手が相手ですからね。話が通じるかどうか…」

(,,;Д;)「ぎこーん…」

ミ,,゚Д゚彡「まぁ、あれだぜい。説得は無理として、対策は練るべきだぜい」

今日はプギャーがいない。
呼んのだが来なかったのだ。
策士たる彼がいなければ、良い案も出ない。
と、思われたのだが、

「自分に考えがありますおー」

どこからかそんな声がする。

(,,゚Д゚)「西川さん?」

106 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:13:10.51 ID:oBpEWn5V0
モクモクモク…

押入れから出たそれ。
煙状の何かが人型になり、話し出す。

( ^ω^)「呼ばれて飛び出ておっおっおー。西川だおー」

(#゚;;-゚)「(呼んでません。ご主人様は、呼んでいません)」

(,,^Д^)「ギコハハハー。今出すから」

押入れを開け、古びたランプを取り出す。
魔人が出てきそうなランプ。
いや、実際現在進行形で西川が出てきてるわけだけども。

( ^ω^)「知恵者と言えばソロモン王だおー。僕に任せるお」

彼はジンの西川。
いわゆる、「ランプの精」である。
本人いわく若い頃はソロモン王に仕えていたらしい。

109 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:16:07.78 ID:oBpEWn5V0
( ^ω^)「アイツの動きを止めればいいんだおね?」

そのことを確認し、西川は自分の策を話し出す。


……………


ある夜。
件の公園から離れたあるビルの屋上に、2人の男女がいた。
1人は大きな狙撃銃の手入れをし、もう1人は観測手として風を見ている。

( φ∀・)「風はほとんどなし。距離はおよそ1000ヤード。…大丈夫か?」

モララーの言葉。
女はあきれた顔で言う。

(゚、゚トソン「私を誰だと思っているのですか。この距離で、あの目標なら外しませんよ」

( φ∀・)「…フフ。そうだな、杞憂だった」

113 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:19:10.26 ID:oBpEWn5V0
(゚、゚トソン「でも、あまり気が進みませんね」

( φ∀・)「あの助け屋さんが上手くやってくれれば、無駄に血を見なくて済むさ」

そう言うと、双眼鏡を覗いた。
レンズ越しに公園の彼等が見える。
…なんか若干一名泣いているが。

( φ∀・)「くわばら、くわばら。…?」

気配を察知し振り向く。
しかし、そこには誰もいない屋上が広がるだけだ。

( φ∀・)「…気のせいか」

(゚、゚トソン「それ死亡フラグですよ。…気づいているくせに」

( φ∀・)「…フン。おい、さっさと出てきたらどうだ」

腰から銃を抜き、向ける。
…ただ暗闇があるだけの空間から声がする。

115 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:22:07.26 ID:oBpEWn5V0
「いやー、駄目か。この程度じゃ」

そしてそこから現れたのは1人の男。

( ^Д^)「自分でもいい感じに気配消せたと思ってたんですけどね。アンタ達相手じゃ無意味でしたか」

( φ∀・)「いーや、いい線いってたよ」

(゚、゚トソン「ただし、気づいたのは10分以上前ですが」

プギャーはため息を漏らす。

( ^Д^)「はぁ…。じゃあ、自分がこのビルに近づいた時にはもう気づいていた訳ですか」

(゚、゚トソン「そうなりますね」

( ^Д^)「流石、『ファーストナンバー』都村トソンですね」

(゚、゚トソン「やめてくださいよ。そんなちゅーにな異名恥ずかしいだけです。それにもう、苗字は変わりました」

結婚したので「都村」は旧姓になった。
新妻なトソンである。

118 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:25:10.27 ID:oBpEWn5V0
( φ∀・)「それで、なんの用かね」

( ^Д^)「それはこっちの台詞です」

(゚、゚トソン「?」

( ^Д^)「アンタ達みたいな政府の犬―犬は犬でもケルベロスレベルですが―がなんのようですか」

国の特務機関FOXのエージェントだったモララーとトソン。
まさしく、政府の犬だ。

( φ∀・)「政府の犬ねぇ…。いや、FOXだから狐か」

(゚、゚トソン「…悪いことですか?それって。私は誇りを持っていますよ」

( φ∀・)「ただし、役回りはまんま悪役だがね」

(゚、゚*トソン「『テメェがトソンを否定するなら…。…俺の正義は、俺のエゴは悪でいい』って言ったのは誰でしたっけ?」

(;φ∀・)「ばっ、お前、そんな昔のことを……」

( ^Д^)「あ、すいません。夫婦漫才は家でお願いします」

120 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:28:08.26 ID:oBpEWn5V0
的確な突っ込み。
馬鹿ップルののろ気に付き合う義理はない。
軽く咳払いするモララー。

( φ∀・)「予防だよ、予防」

( ^Д^)「ご主人が失敗した場合のですか?」

( φ∀・)「その通り。君のご主人が上手くやってくれれば、なにもしなくていいのさ」

(゚、゚トソン「そういうわけで、烏さん。あなたのご主人様の元へ言ってあげてください」

そんなことを言うトソン。
その時突然モララーが真剣な顔で、

(;φ∀・)「…待て。彼は鳥・悪タイプだ。電気タイプのライコウじゃ、分が悪い」

(゚、゚;トソン「ハッ!!確かに…。ここは1つ、地面タイプを……」

( ^Д^)「いや、『確かに…』じゃないですよ。なにポケモンみたいな解釈してるんですか」

本人的にはシリアスシーンだったのに、愉快な夫婦に突っ込み疲れしたプギャーであった。

123 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:31:08.11 ID:oBpEWn5V0
……………


(,,;Д;)「プギャーが出ない…」

ギコは、泣いていた。
西川の作戦はプギャー主体のものだ。
彼がいなければどうしようもない。

(#゚;;-゚)「ご主人様、ご主人様。大人しく他の方にかけましょう、電話しましょう」

ミ,,゚Д゚彡「そうだぜい」

夜の公園でリュックを背負いおお泣きする男とそれを慰める和服猫耳尻尾付き女+ジーパンぼさぼさ男。
うん、シュールだ。
ギコはやっとあきらめたのか、別の相手に電話する。

(,,゚Д゚)「もしもし、クックル?今すぐ来て!!」

『………』

ブチッ

128 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:34:07.86 ID:oBpEWn5V0
(,,;Д;)「ぎこーん…。何も言わずに切られた…」

ミ;゚Д゚彡「もしかして、嫌われてるんじゃ…」

(,,;Д;)「うおーん……」

再チャレンジ。

(,,;Д;)「あの?クックル……?」

『………』

ブチッ

(,,;Д;)「ぎこーん……」

(#゚;;-゚)「ご主人様、ご主人様。尋常じゃなく嫌われているのでは?」

(,,;Д;)「うおーん……」

131 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:37:07.67 ID:oBpEWn5V0
再々チャレンジ。
断るにしても、理由を聞きたい。
それぐらいの権利はあるはずだ。
なぜならギコは、クックルの主人なのだから。

(,,;Д;)「あの、クックル…。ごめん…」

ミ,,゚Д゚彡「(なんでこの人謝ってるんだろう…)」

(#゚;;-゚)「(どう考えてもご主人様は悪くない。きっと、悪くないのです)」

ギコがしたことと言えば、電話をかけただけだ。
謝る必要などどこにもない。

『………三顧の礼』

(,,;Д;)「え?」

『こちらでは、そのような言葉があると聞いた』

135 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:43:08.05 ID:oBpEWn5V0
その頃。

( ^Д^)「はっくしゅん!!」

( φ∀・)「Bless you」

( ^Д^)「あ、どうも」

(゚、゚トソン「…ここは英語圏ではないですよ?」

そんなやり取りがあったのだが、まぁ、関係ない。

139 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:46:08.92 ID:oBpEWn5V0
(,,;Д;)「…じゃあ、来てくれるんだね、クックル!!」

『…ただしギコ、テメーはダメだ』

ブチッ

(,,゚Д゚)「……」

ミ;゚Д゚彡「(クックル性格悪ッ!!)」

ずいぶん懐かしいネタを出され、何も言えないうちに切られてしまった。
もはや泣くこともできないギコ。
放心状態。
そして数分後、

…もちろん大泣きしましたよ。

(,,;Д;)「うわぁぁぁぁんんん!!もうみんな嫌いだぁぁあぁ!!!」


142 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:49:10.60 ID:oBpEWn5V0
…あせる人外2人。

ミ;゚Д゚彡「ヤバイぜい!泣き出しちまった!はやくおやびんにコーラを…、じゃなかった、オレンジジュースを!!」

(;#゚;;-゚)「買ってきます!今すぐ私が買ってきます!!」

…さらに数分後。

(,,;Д;)「うぅ…ひっぐ……」

公園のベンチには泣き止んだギコ。
そして、そのために駆けずり回ったでぃとフサが。
どこの自販機にでもあるものと思っていたオレンジジュース。
存外ないものだ。

(,,;Д;)「…ごめんねぇ……。迷惑かけちゃって……」

ミ;゚Д゚彡「いや、別にもう……」

(;#゚;;-゚)「(もう慣れた、とは流石に言えません。言えないのです)」

148 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:52:07.94 ID:oBpEWn5V0
きっと、2人はいい親になることだろう。
ギコ以上に手のかかる子供などなかなかいないからだ。
まったく。来年成人とは思えない。

(#゚;;-゚)「ところで、ご主人様」

(,,;Д;)「…ん?」

(#゚;;-゚)「ノーネはもう呼びましたか?呼んだのですか?」

(,,゚Д゚)「……まだ」

ため息が出そうになるフサ。舌打ちをしそうになるでぃ。
それをギリギリで押さえる。
そしてフサは、笑顔を作り一言。

ミ,,^Д^彡「ノーネは召喚じゃなく呼び出しでいいですよね?」

(,,゚Д゚)「…うん。ノーネちゃんは早いし、こっちを見つけてくれると思うから」

ミ,,^Д^彡「なら、僕がやりますよー」

150 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:55:08.08 ID:oBpEWn5V0
素早く携帯を奪い取り、ノーネにかける。
呆然としているギコ。その背中をさするでぃ。
…親子みたいだ。

そんな光景より少し離れるフサ。

『…はい。ノーネ。今、ちょっと疲れ気味で…』

小さい、だがドスの利いた声で言う。

ミ#゚Д゚彡「今すぐ来い」

『え、いや、だから、疲れ気味…』

ミ#゚Д゚彡「さっさと来い。今すぐ気配伝ってかきつばた持って来い」

『あのー、疲れ気味…』

ミ#゚Д゚彡「イエスかノーで答えろ」

153 名前:VIPがお送りします:2009/05/23(土) 23:58:12.34 ID:oBpEWn5V0
『ノ……』

ミ#゚Д゚彡「ただしノーと言った場合にはお前を八つ裂きにして喰うからな」

『イエスッ!イエスイエスイエェェェスッ!!』

ミ,,゚Д゚彡「…よし」

『…欝だ。死にたい……』

ブチッ

…まったく、ノーネも災難である。
ギコ以上に、彼は何も悪くないと言うのに。
上司は選びたいものですな。


157 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:01:08.51 ID:FKMT2wEp0
……………


真夜中。
空は曇り公園には不気味な声が響き渡る。
兄者の言う通り、確かに「ひょーひょー」と聞こえるのだ。
風を擦り合わせているような、恐ろしい声。

ミ,,゚Д゚彡「不気味だぜい…」

(#゚;;-゚)「『鵺の鳴く夜はおそろしい』」

( ノAヽ)「なにそれ…」

(#゚;;-゚)「有名な言葉です。有名なのです」

( ノAヽ)「はぁ…。早く帰りたい……」

公園には人外が1人増えていた。
竜と蛇の間のような姿をした彼を、人は「蛟」という。

160 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:04:08.19 ID:FKMT2wEp0
(,,゚Д゚)「ノーネちゃん、頼みましたよ」

( ノAヽ)「はいはい…」

ノーネは手に持っていたかきつばたをむしゃむしゃ食べる。
ギコはリュックから秘密兵器を出し、でぃとフサは体をほぐす。
と、その時。

(;*゚ー゚)「やっぱりここら辺から気配が…」

しぃが来た。
なぜか巫女装束で。
ギコは吃驚した。

(;゚Д゚)「えっ!しぃさん!?」

しかし、それ以上になぜかフサが驚いた。

ミ;゚Д゚彡「!!アイツは…」

163 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:07:09.52 ID:FKMT2wEp0
(#゚;;-゚)「どうかしましたか?どうかしたのですか?」

ミ;-Д-彡「いや、しかし、でも……」

(,,゚Д゚)「?」

ミ;゚Д゚彡「…やっぱ、ダメなんだぜい!!」

素早く狼の毛皮を被り変身。
そして公園から走り去っていく。
ギコ達は声もかけられなかった。

(,,゚Д゚)「…え、なに?」

( ^Д^)「さーね」

( ・−・ )「某には全く理解できぬな」

(;*゚ー゚) 「あっ、ギコ君……って、きゃぁぁぁあ!!!」

166 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:10:15.16 ID:FKMT2wEp0
しぃは出てきて早々気絶。
どうも彼女は首が取れたものに弱いらしい。
いや、そんなグロいものに強い人間など滅多にいないとは思うが。

(;゚Д゚)「ぬぉ!しぃさん!!そして、プギャーさんにシーンさん!」

( ^Д^)「どーも、ご主人。遅くなりました」

(,,゚Д゚)「ごめん。忘れてた」

( ^Д^)「だろうと思った」

もう慣れっこのプギャー。
対してシーン。

( ・−・ )「この公園には来ぬ方が良いと、忠告したはずだぞ」

(,,^Д^)「いやぁ、なんて言うか、頼まれちゃって…。えへへ…」

( ・−・ )「つくづく酔狂な奴よな」

169 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:13:18.59 ID:FKMT2wEp0
首の取れたグロい馬から降り、笠を脱ぐ。
倒れたしぃを抱き起こし、ベンチに寝かせる。
優しい。流石だ。

( ・−・ )「敵は雷獣『鵺』。昔天皇家も苦しめた恐るべき妖怪よ」

( ^Д^)「伝承では源頼政が山鳥の尾で作った尖り矢で倒し、落ちたところにトドメを刺したわけで…。ご主人、弓矢は?」

(,,゚Д゚)「持ってきてない」

(;^Д^)「なんで!?とうもろこしの時点で正体わかってたでしょ?」

近くに雷が落ち―特に雷獣の場合で―気が触れた者はとうもろこしがよく効くとされる。
犬に効くかどうかは知らないが、多分、大丈夫だろう。
多分ね、多分。


172 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:16:10.55 ID:FKMT2wEp0
(,,゚Д゚)「だって…」

ギコはしれっと言う。
当たり前のように、当然のように。

(,,゚Д゚)「…弓矢なんて射ったら鵺を傷つけちゃうでしょ?」

その場にいた、皆が思った。
「ああ、なんてコイツは馬鹿で優しく世間知らずなんだろう」と…。
誰も傷つかずに解決できる問題など、この世にほんの僅かしかないというのに。

(;^Д^)「ご主人、アンタって人は……」

思わず頭を下げる。
あの2人に聞かせてやりたいものだ、とプギャーは思った。
すぐに武力に頼ろうとするのは強い者…、いや、弱い者の怠慢でしかない。
誰も傷つけようとしない気概こそ、真の「強さ」なのだ。
感服しつつプギャーは聞く。

( ^Д^)「…それで、策はあるんですか」


174 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:19:07.43 ID:FKMT2wEp0
……………


雷の速度を知っているだろうか?
秒速30万キロメートル。
想像もできない、まさしく刹那の速さ。

雷の威力を知っているだろうか?
およそ10億ボルト。
何でたとえれば良いかさえわからない。

その絶対的な速さと威力が、「雷」の「神鳴り」たる所以。
そんなモノを扱える獣がいれば、間違いなくソイツは強い。

( ・3・)「ヒョー!!」

(メ;^Д^)「間抜けな顔に間抜けな鳴き声のクセにめっちゃつえー!!」

サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビ。
雷獣、鵺だ。
…なぜかこの鵺、大変間抜けな顔をしているが。

175 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:22:07.92 ID:FKMT2wEp0
雷獣と霊獣が激しい空中戦を展開する。
鵺はエネルギー節約のためか、射程の短い雷を撃つ。
プギャーは必死で回避する。
分かりやすく、ポケモンでたとえてみよう。


( ・3・) 鵺:LV65
きりさく…トラの つめで きりさく
こうそくいどう…すばやく いどう する
ほえる…あいてを いかくし せんとうを おわらせる
じゅうおくボルト…いっしゅん ためが いるが ほとんど いちげきひっさつ

( ^Д^) プギャー(八咫烏):LV73
つばさでうつ…なんの ひねりもなく つっこむ
みきり…あいての うごきを よんで みきる たぶん
あくのはどう…みずからの くろい はどうを ぶつける
れいじゅうのちから…じぶんの のうりょくを すべて だしきる すてみの こうげき


…余計にわかりにくくなった。

179 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:25:10.08 ID:FKMT2wEp0
そのころ、地上では。

(,,゚Д゚)「…よし!」

ギコが気合を入れていた。
彼の手にあるのは、麻縄の両側に大きな黒い石をつないだもの。
印地撃ちが使うような原始的な武器。

(#゚;;-゚)「大丈夫ですか、ご主人様」

(,,゚Д゚)「まかせて!」

( ・−・ )「(はてさて。安心して任せられるような戦火を貴公があげたことがあったかな)」

( ノAヽ)「(正直めっちゃ心配…)」

トンボを捕まえるやり方と同じだ。
誰もが一度はやったことがあるだろう。…多分。
小さな石を糸の両端に結びつけ、それを投げ上げるとトンボが突っ込んでくるのだ。

182 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:28:09.81 ID:FKMT2wEp0
…この場合違うのは、鵺はトンボのように突っ込んでこない。
なので、相手が止まった瞬間を狙い、カウボーイよろしく、投げる。

(,,゚Д゚)「なんか今日は、空も飛べる気がする!」

(#゚;;-゚)「(死亡フラグ?)」

(,,゚Д゚)「皆…、全部終わったら、ペニサスさんのバーに飲みに行こう!」

( ・−・ )「(死亡フラグか?)」

(,,^Д^)「ああ、きっとさ。絶対だ!」

( ノAヽ)「(ダメだこれ。完全に失敗するわ。間違いなく死亡フラグ)」

根拠のない自信に溢れるギコ。
その時人外達は、こう思ったという…。

187 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:31:08.94 ID:FKMT2wEp0
(#゚;;-゚)『(早く逃げる準備しないと…)』( ・−・ )( ノAヽ)

…この主人に、この魔物達あり。


一日目 午後 終



チャンスは一回。
失敗すれば、なんらかの犠牲が出ることは間違いない。
馬鹿でも泣き虫でもどうしようもない駄目人間でも、やらなきゃいけないときもある。


…それはまた、次のお話であるのだが。


188 名前:VIPがお送りします:2009/05/24(日) 00:31:18.45 ID:GC1VBtqjO
ちょい休憩します
落ちたら、まぁ、そのうちに

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