まとめブログを武器に掲示板- 指摘・要望スレ

2009年07月05日

('A`)兄弟は夏休みに冒険するようです 序章 第一章「八月一日」

('A`)兄妹は夏休みに冒険するようです
1 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:41:16.27 ID:9AnslQ8H0
立たぬなら 立つまで待とう クッソスレ

2 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:41:58.46 ID:9AnslQ8H0
―序章―

川 ゚ -゚)「兄さん、これはこっちでいいのか?」

('A`)「ああ、そこに置いてくれ。手、挟まないように気をつけろよ」

昔ながらの日本家屋。
築何年になるのかも分からない。

(;'A`)「ふぅ…」

埃まみれの椅子を軽く払い、腰を下ろす。
舞い上がった埃に咽そうになる。

('A`)「いったん休憩だ…。これだけ物が多いとやってられん」

川 ゚ -゚)「そうだな、しかしなんでこんなになるまで放っておいたんだ」

薄暗い物置を指差す俺の妹、クー。
無造作に置かれた箪笥、机、そして――鏡?

セルフフェラ注意
3 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:42:57.87 ID:9AnslQ8H0
('A`)「…あんな鏡、うちにあったか?」

ただの鏡ではない。
金の縁に派手な装飾。
率直に言うと、趣味が悪い。

川 ゚ -゚)「なんだ兄さんも知らないのか。どう見てもミスマッチだったからてっきり兄さんの趣味かと」

(;'A`)「俺にそんな成金趣味はないぞ?」

川 ゚ -゚)「むぅ。となると、とう…あの人の物か」

('A`)「……かもな」

気まずい空気に包まれる。
既に他界した俺の親父。
母がクーを連れてこの家を出た日から、その話はタブーになっていた。


5 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:44:07.30 ID:9AnslQ8H0
('A`)「しかしまあ、なんでこんなものを」

間が持たない。
仕方なく立ちあがり、鏡にへばりついている埃を雑巾で拭う。
だが感触がおかしい。

手が、鏡に突き刺さっていた。

('A`)「え?」

正確にはめり込んでいたというべきか。
鏡面に当たることなく。

川;゚ -゚)「兄さん?!」

クーが駆け寄り、俺の手を引き抜く。
慌てて確認するが、血も出ていなければ違和感もない。
鏡は、先ほどと変わらずそこに佇んでいる。

6 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:45:35.13 ID:9AnslQ8H0
(;'A`)「なんなんだよこれ……」

恐る恐る手を伸ばすが、その途中クーに腕を掴まれる。
その目は、頼りなく揺れていた。

川 ゚ -゚)「やめよう。危険だ」

はっとする。
わざわざ地雷地帯へ突っ込むような真似をする必要はない。
またクーに…辛い思いをさせたくない。

('A`)「分かった。そろそろお昼にしよう」

歩いて居間へ向かう。
無駄に敷地が大きく、移動にも少し時間がかかる。
この家の主人となり、唯一不満なのがそれだった。

クーは、やはり無言で、ゆっくりついてくる。
思わず手を引いて走りたくなるが、きっと…その資格は俺にはないのだろう。


7 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:47:11.70 ID:9AnslQ8H0
('A`)「食べたいものはあるか? ちなみにそうめんだと俺はうれしい」

だから話しかける。
俺にできるのはそれだけだったから。

川 ゚ -゚)「そうめんか…うん、久しぶりにいいかもな。兄さんの手抜きっぷりが目に見えるが」

('A`)「そうめん舐めんな。適度な手抜きこそ料理の神髄だ」

調理場に入り、麺を取り出す。
水を火にかけ、皿を用意する。
昔はこれだけでも一苦労だったが、今では手慣れたものだ。

川 ゚ -゚)「…手伝おうか?」

少し離れた所から声がかかる。

('A`)「んー、それじゃあ冷蔵庫からめんつゆ取り出して適当に薄めて。あと、わさびを加えておいてくれ」

調理場の端にある小さな冷蔵庫を指差す。
もともとこの家にあった巨大なものもあるのだが、一人暮らしでは邪魔なだけだった。

川 ゚ -゚)「味は私好みでいいのか?」

('A`)「あーうん適当で―」

なあなあに返事をして作業に戻る。
…これが失敗だった。

9 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:48:48.92 ID:9AnslQ8H0
(゚A゚)「なあ…辛いぞこれ…」

鼻がつーんとして涙が出る。
舌がぴりぴりしてまともに味が分からない。

川 ゚ -゚)「む、そうか?」

俺のめんつゆと取り替えて一口。
もぐもぐと口を動かし…

川 ゚ -゚)「ちょうどいいな」

この化け物め。

('A`)「…俺、ちょっと休んでくる」

頭がくらくらしてきた。
居間を出て、自室へ足を向ける。
クーが不思議そうな目で見るが無視だ無視。


10 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:50:24.81 ID:9AnslQ8H0
ジー、ジージー。
ああ、うるさい。
蝉の鳴き声が耳に障る。

('A`)「夏休み、か」

親父が死んでも疎遠になったままだった母。
しかし毎年、夏休みの間だけはクーを預けてくれる。
…単に手間がかかるからと押しつけただけかもしれないが。

('A`)「今年は何をしようか…」

せめて夏休みの間だけは一緒に遊びたかった。
でもこうやって考えているうちにあっさり終わってしまう夏休み。
今年こそは、今年こそは、と。

そんな事を考えていると、足が止まった。
そこは――あの古びた鏡がある、物置。

11 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:51:31.26 ID:9AnslQ8H0
(;'A`)「あー、道を間違えたか」

今みたいにぼけっとしていると、こうなる。
あまりに大きすぎる家の弊害。
小さなころは、クーとかくれんぼなんてして遊んだものだった。

('A`)「……」

鏡が、目に入る。
気がつくとその縁へ手をかけていた。

危険だ、とクーの声が思い出された。
しかし声は弱弱しく、今の俺には届かなかった。

頭を、突っ込む。
ぬめり、とも言える気味の悪い感触を超え。


――俺はそこに、世界を見つけた。

―序章・END―

12 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:52:49.82 ID:9AnslQ8H0
―第一章「八月一日」―

(;'A`)「クー! すごいぞ!」

居間へ駆け込んだ。
早く、伝えたかった。

川 ゚ -゚)「ん、兄さん? 休んでくるんじゃなかったのか?」

(;'A`)「とにかくすごいんだ! 来てくれ!」

その手を引っ張る。
あんなに躊躇していたのが嘘のように、その手は軽く柔らかかった。

廊下を駆け抜ける。
それはまるで、ずっと一緒だった昔に戻ったかのようで。

足を留める。
薄暗い物置も、いまでは宝物庫のように見えた。


13 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 13:54:53.18 ID:9AnslQ8H0
川;゚ -゚)「どうしたんだこんなに慌てて。黒い悪魔でも出たのか」

(;'A`)「これだよこれ!」

川;゚ -゚)「鏡か? 危ないからしまっておくんじゃなかったのか?」

('A`)「ああ、でも違うんだ。向こうを見てみれば、分かる」

怪訝そうな顔をするクーを前へ押し出す。

川 ゚ -゚)「向こう?」

(;'A`)「ああ、顔だけでいい」

そっと顔を近づけるクー。
その顔が鏡を突き抜ける。

数秒の後、手足をじたばたさせる。
俺はクーの頭を引き抜いた。

15 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:00:53.89 ID:b2sm7NsE0
川*゚ -゚)「兄さん! あれは何だ?!」

(*'A`)「すごいだろ! 見たこともない所だ!」

川*゚ -゚)「ああ、すごく――」

(*'A`)「わくわくする!」

二人してはしゃぎあう。
二人一緒、探検と称して近所を闊歩していた日々。
二度と戻らないはずのその日々が。
この鏡の向こうにはあったのだ。

16 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:01:58.81 ID:b2sm7NsE0
川 ゚ -゚)「兄さん! 缶詰は?!」

('A`)「上の棚にあるはずだ! リュックサックは用意したか?」

川 ゚ -゚)「ああ、万全だ!」

物資を集める俺とクー。
まるで遠足の準備みたいだ。
胸がどきどきして落ち着かない。

慌ただしく屋敷内を駆けまわる。
しばらくして、その足音がうってかわって静まり返る。
俺達はまた、鏡の前に立っていた。


17 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:03:40.87 ID:b2sm7NsE0
(*'A`)「いいな、クー?」

問いかける。
でも答えなんて、分かり切っていた。

川*゚ -゚)「ああ、行こう!」

言うが早いか、鏡へ飛び込む。
ためらいなんて、微塵もない。

今年の夏休みは、絶対! 最高に! 楽しいぞ!
そんな、小学生みたいな高揚感だけが俺たちに残っていた。

18 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:05:09.43 ID:b2sm7NsE0
川*゚ -゚)「おおぅ!」

さんさんと照らす太陽。
はるか海の向こうの水平線。

(*'A`)「やっぱすげえ…」

誰の足跡もついていない砂浜。
ふと逆を見ると、先の見えない鬱蒼とした森。

日本、いや世界中探したってこんなところがあるものか。
なぜか、そう確信していた。


19 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:07:04.34 ID:b2sm7NsE0
('A`)「鏡はこっちにもあるのか…」

頭をくぐらせて覗きこむと、見慣れた物置が目に入る。

川*゚ -゚)「帰り道の心配なんて、その時でいいさ」

(*'A`)「だな! あーちくしょう、どこに行くか迷うな」

川*゚ -゚)「夏休みだ、時間はたっぷりあるぞ」

そんな中、こちらへゆっくりと降りてくる鳥が見えた。
いや、あれは――


21 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:09:21.38 ID:b2sm7NsE0
(;'A`)「――人?」

川 ゚ -゚)「こっちだと空飛ぶ人間までいるんだな…」

大真面目に言うクー。
でもそれすらも本当のように感じた。

(;'A`)「…なんか俺達の方を睨んでないか…?」

川 ゚ -゚)「兄さんのことだ。下からスカートの中を覗き込んだりしたんだろう」

(;'A`)「ばっ、してねえよ!」

白だった。

23 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:10:44.79 ID:b2sm7NsE0
二人で大騒ぎしていると、空を飛んでいた人がこちらへ歩いてきた。
美しい金髪、蒼い瞳を持つ女性。
日本人ではないことは確かだった。

ξ゚听)ξ「あなた達、何?」

しかしその言葉は日本語。
それもたどたどしくなく、流暢なそれ。

川;゚ -゚)「あいむじゃぱにーず、ふーあむあーい?」

冷静にパニくるクー。
ここは俺が答えるしかないのだろう。

(;'A`)「えーっと、旅行者です」

無難な答え。
嘘ではないし、リュックを背負っている俺達はそう見えるはずだろう。


25 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:12:08.04 ID:b2sm7NsE0
ξ゚听)ξ「嘘よ。だってここ、立ち入り禁止で結界だって張ってあるもの」

しかし返ってきたのはとげとげしい言葉。
そして腰にかけた剣を気にするようなそぶり。
本当のことを言わなければばっさり、ということだろうか。

(;'A`)「その鏡、向こう側から抜けてここに来たんです」

彼女の眼が鋭くなる。
全てを見透かすような瞳。

ξ;゚听)ξ「…嘘ではないみたいだけど。そんなの私、知らない。どうすればいいのかしら」

剣を抜き、額にあてる女性。
数秒の後。

ξ゚听)ξ「…モナー様が…いえ、私の上官があなた達に会いたいそうよ。案内するわ」

そう素っ気なく言うと、その剣を地面に突き立てる。
漫画で見たような魔法陣。それが姿を現した。

26 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:13:32.49 ID:b2sm7NsE0
川*゚ -゚)「すご…」

ξ*゚听)ξ「こんなの基礎中の基礎だけど…。あの鏡を抜けてきたんなら知らないのも無理はないかしら」

魔法陣がくるくると回りだし、俺達を囲う。
空へ、浮かぶ。

(;'A`)「うわあああああああ! 飛んでる! 飛んでるよ俺!」

川*゚ -゚)「おおおおお…」

ξ--)ξ「あー…もう、いちいちうるさいわね…。まるで小さな子供みたい」

子供のままでも構わない。
こんな冒険ができるなら。
そう、思った。

27 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:15:16.82 ID:b2sm7NsE0
遥か大空に浮かぶ島。
金髪の彼女はそれをこう呼んだ。
――空中要塞ヴィップ。
その名前を聞くだけで手が震えるほどにわくわくした。

(*'A`)「あんたはそこで住んでるのか?!」

ξ゚听)ξ「あんた、じゃなくて私にはツンという名前があるの。
     …住んでるってわけじゃないけど、たいていはそこにいるわね」

川*゚ -゚)「すご…すご…ラピュタだ」

ξ;゚听)ξ「…ラピュタ…? それで、あんた達はなんて名前? 私が名乗ったんだから今度はあなた達が教えなさいよね」

('A`)「あ、ドクオです。職業は…学生?」

川 ゚ -゚)「同じく、クーだ」

ξ゚听)ξ「ま、よろしくね。モナー様がなんとおっしゃるかによってはすぐにさよならだけど」

(;'A`)「怖いこというなよ…あんた…じゃないツン」

そんな雑談をしていると、いよいよ島が見えてきた。
クーが、ラピュタと呼んでいたがそれはまさしくそうだった。


29 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:17:14.48 ID:b2sm7NsE0
俺達が島に降り立つと、魔法陣は消えた。
しかしまだ空を飛んでいるような感覚に襲われ、ふらふらする。
これは…

(;'A`)「うートイレトイレ」

ξ;゚听)ξ「トイレ…あっちだけど。吐くならちゃんと着いてからにしなさいよね。」

ずっと向こうにある建物。
あそこまで持つのだろうか…。

ξ゚听)ξ「…飛翔魔法酔いしたみたいね。あんなに騒ぐから…。クーはなんともないの?」

川 ゚ -゚)「私は平気だ。…さっきのはやはり魔法なのだな」

ξ゚听)ξ「ええ、飛翔魔法、文字通り空を飛ぶ魔法よ。慣れてないと彼みたいになるけど」

千鳥足で歩く俺を指差すツン。
見世物じゃないぞ、と文句を言いたいがそんな余裕はなかった。


30 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:18:20.68 ID:b2sm7NsE0
すっきりした後、ツンに連れられて島の内部を歩いていた。
光が差し込まない石造りの壁。
天井で頼りなく光を放つ、ランプだけが頼りだった。

ツンが足を留める。
目の前に、古びた木製の扉があった。

ξ゚听)ξ「モナー様はここよ。失礼のないようにしなさいよね」

頷き、扉を開いた。

―第一章「八月一日」・END―

32 名前: ◆BUKIniDIeE []:2009/07/05(日) 14:22:01.36 ID:b2sm7NsE0
本日はここまで。投下終了です。
支援ありがとうございました。

読んだりまとめたりしてるうちに創作意欲に負けて初投下。
ここまで緊張するとは…

質問などなければ終了します。

35 名前:VIPがお送りします[]:2009/07/05(日) 14:37:20.07 ID:JfbkgCtoO

まとめ武器の中の人?
書いたりするんだね

37 名前: ◆BUKIniDIeE []:2009/07/05(日) 14:51:11.97 ID:b2sm7NsE0
>>35
そうです。
読むのは好きなのですが、書くのは初ですね…。

ではこのへんで落ちます。
次の投下は一週間後くらいになりそう。
乙ありがとうございました!



('A`)兄妹は夏休みに冒険するようです
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1246768876/

自分で自スレまとめとかありだっけ?と思いつつ…。
支援、乙等して下さった方、ありがとうございました。
15:26 | Comment(5) | ブーン系小説-長編| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする 2ちゃんねるブログランキング
この記事へのコメント
  1. 名前:( ^ω^)は名前が無いようです:2009/07/05 16:40:09
  2. ドックンドックン〜!ふぅん!クーにゃーんにゃーん
    これからも期待

  3. 名前:( ^ω^)は名前が無いようです:2009/07/06 21:28:07
  4. これは期待
    魔法冒険モノかな?

  5. 名前:( ^ω^)は名前が無いようです:2009/07/06 22:28:49
  6. 面白い。
    続きwktk

    >>中の人
    (^q^)携帯からだとCSSがむき出しになってるからコメントしてくれるとぼきうれしい@docomo

  7. 名前:fiare:2009/07/06 22:53:42
  8. CSSがむき出しというと…。CSSソースがそのまま表示されていると言うことでしょうか?
    当方au環境で確認出来ないので、もしよろしければ詳細を教えて頂けると幸いです…。
    お手数をおかけいたしまして申し訳ありません。

    それと皆様、期待のコメントありがとうございます。
    初作品で不安だったのですが大変励まされました。

  9. 名前:( ^ω^)は名前が無いようです:2009/07/07 04:55:35
  10. hr{color:red;background:red;}だったかな?が見えてました。
    CSSを記述する際に、<!--CSS内容-->という感じで囲めばおkです。ちなみにdocomoには効きませんw

    が、閲覧には支障ないのでセフセフ

    現行もまとめも頑張ってくだしあ><

コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]