中国は外交巧者と言われます。しかし、周辺の小国に対してはしばしば見くびって
失敗します。完全に手なずけていたはずのミャンマーにも逃げられ、米国側に走られました。
2018年3月28日 水曜日
◆金正恩か金与正、訪中? 北朝鮮の「ミャンマー化」を恐れる中国 3月27日 鈴置高史
クリントンを招待した金正日
「中朝の結束」が大事、という主張ですね。
鈴置:最後の部分で再びそれを強調しました。ただ、それだけでは説得力が薄いと考えたのでしょう。北朝鮮に対し「中国なしで韓米日に対抗できないぞ」と脅しました。
- For North Korea, it would be difficult and dangerous to cope with Seoul, Washington and Tokyo all alone. China's support can defuse many risks.
北朝鮮の対話攻勢に関し、日本や米国では核武装を完成するための時間稼ぎ、といった見方が多い。さらに韓国の保守は「時間稼ぎを幇助する韓国は米国から目の敵にされる」と危機感を増しています(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。
しかし中国では「米朝首脳会談を期に北朝鮮が一気に米国側に鞍替えする」との警戒感が高まっているのです。
2000年10月、当時の指導者、金正日(キム・ジョンイル)総書記がクリントン(Bill Clinton)米大統領を平壌(ピョンヤン)に招待したことがありました(日経・電子版「北朝鮮と米国の対話、20年前の既視感」参照)。
1994年、米朝は核問題で対立し戦争の瀬戸際まで行きました。が、1999年9月にミサイル発射の中断と引き換えに対北制裁を解除するという妥協が成立。その後は米国が食糧援助に乗り出す一方、北朝鮮は米国の大統領を招待するに至ったのです。
米朝蜜月を日中で阻止
クリントン大統領は訪朝しませんでした。
鈴置:さすがに米国内で、大統領の北朝鮮訪問には反対の声があがったからです。クリントン政権はオルブライト(Madeleine Albright)国務長官を訪朝させるに留めました。
この時の中国の態度が面白いものでした。現在と同様に、公式には米朝対話を大歓迎しました。でも、日本の朝鮮半島専門家に対し「米朝が手を握ることは中国と日本にとって望ましいことではない。中・日が協力して阻止すべきではないか」と持ちかけてきたのです。
中国にとって米国の影響力が韓国だけではなく、朝鮮半島全体に及ぶのは何としても避けたかったのです。親米国家が中国と国境を接することになりますからね。
中国は外交巧者と言われます。しかし、周辺の小国に対してはしばしば見くびって失敗します。完全に手なずけていたはずのミャンマーにも逃げられ、米国側に走られました。
2010年11月、ミャンマー政府が民主化運動の指導者、アウンサン・スーチー(Aung San Suu Kyi)氏の軟禁を解いたのがきっかけでした。
もちろん、米国と水面下で交渉した結果でした。これを期にミャンマーは米国や日本との関係を正常化したうえ、外国からの投資も本格化しました。
中国は国境を接するミャンマーを「失った」のです。このころ、米国の次のターゲットは北朝鮮だ、との見方も浮かびました(「次は北朝鮮に触手? 米国、中国包囲網づくりへ全力」参照)
米中が勢力圏を巡り争い始めた、との認識が定着したからでもあります。中国指導部としては「ミャンマーの悪夢」を繰り返すわけにはいかないのです。
先制攻撃を主張する大統領補佐官
では北朝鮮側に、中国の希望に応じて最高指導部を訪中させる必要があるのでしょうか。
鈴置:あります。北朝鮮も米国に騙されるのではないかと疑心暗鬼に陥っているはずです(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。
米朝首脳会談でトランプ(Donald Trump)大統領が「核・ミサイルを直ちに廃棄せよ」と迫る。拒否したり、しなくとも時間稼ぎに出れば、それを名分に米国が北朝鮮を先制攻撃するかもしれないのです。
ことに3月22日、トランプ大統領は国家安全保障問題担当の大統領補佐官にボルトン(John Bolton)元国連大使を指名しました。同氏は北朝鮮の核が「差し迫った脅威」であると主張し、先制攻撃を主張しています。
2月28日にWSJに寄稿した「The Legal Case for Striking North Korea First」でも先制攻撃の正当性を説いています。最後の1文が以下です。
- It is perfectly legitimate for the United States to respond to the current “necessity” posed by North Korea’s nuclear weapons by striking first.
米国は「何をするか分からない国」になりました。そんな米国に向き合う北朝鮮は「中国の後ろ盾」が欲しくなるのです。
(私のコメント)
昨日は一日中テレビを時々見ていましたが、結局野党が要求した佐川局長証人喚問は視聴率か稼ぎのテレビショーで終わってしまった。野党が佐川証人をつるし上げたところで何も出てこないのは最初からわかっていた。むしろ国有地の払い下げに政治家が関与していないことが、公開された改ざん前の文書ではっきりした。
むしろ国会で議論しなければならないのは、米朝関係であり、米中関係も大きく変化し始めている。しかし日本のマスコミや特にテレビは朝から晩までモリカケ問題一色だ。しかし1年間かけても出てきたのは財務省の文書改ざん問題であり、財務省の組織改革が必要だ。
北朝鮮の金正恩はなぜ中国を突如訪問したのだろうか。中国が呼んだのか金正恩が中国に駆け込んだのかわかりませんが、中国は北朝鮮のミャンマー化を恐れている。金正恩が中国を裏切ってアメリカと突如手を組むということも考えられますが、父親の金正日は嘗てそうしようとした事がある。
北朝鮮が突如ミャンマー化したら日本にどのような影響が出るだろうか。ミャンマーは中国と国境を接しており、裏切ることは考えられませんでしたが裏切られた。北朝鮮がミャンマー化したら韓国との緩やかな連邦ができる可能性もある。そうなる可能性は薄いが、それが実現できればトランプ大統領の成果になる。
しかし金正恩は突如中国を訪問して、ミャンマー化しないことを約束したのだろう。そうなると米朝会談は無意味になりますが、むしろ会談は実現せずに戦争の可能性が濃くなってくる。韓国と北朝鮮との会談も無意味になる可能性も出てきた。韓国の特使が北朝鮮とアメリカを訪問しましたが、この時点では北のミャンマー化も考えられた。
しかし金正恩の中国訪問で御破算になった可能性がある。中朝の間で何があったのだろうか。たとえ、米朝会談が行われても何も変わらないことを約束させられたのだろう。そして時間稼ぎができれば核とミサイルは完成する。つまり金正恩の訪中は戦争の危険性が高まったことになるのですが、国会では森友問題一色だ。
金正恩は中国とアメリカを両天秤にかけていますが、アメリカに対してはミャンマー化をそそのかして、中国には後ろ盾になることを期待している。韓国もアメリカの後ろ盾を期待しながら中国との関係を深めようとしている。しかし中国もアメリカもこのような虫のいい外交に乗らないだろう。
問題は日本ですが、北朝鮮がミャンマー化すれば、ミャンマーへの経済援助のような問題が北朝鮮に対して発生する。アメリカもそれを期待しているだろう。鈴置氏はそのような動きに対して「米朝が手を握ることは中国と日本にとって望ましいことではない。中・日が協力して阻止すべきではないか」と持ちかけたとありますが、中国の狼狽ぶりが目に浮かぶ。









