LOYAL STRAIT FLASH ♪

2006/12/24(日)17:15

( ^ω^)ブーンはユメクイのようです(第二話後)

30 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:36:55.57 ID:YgJwQrnO0 一通り遊び終えたあと、クタクタになり僕は床にへたれ込んでいた。それをよそ目に彼は、もっともっと、と服を引っ張る。この子は疲れを知らないんだろうか? (;^ω^)「ハァ…ハァ…後10分だけ…休ませてお…」 そう懇願する僕の眼に、あるものが浮かび上がる。 それは、木のようなものでできていて、その形は細長い板のようだ。しかし、その板全体は両端から中心に向かって緩やかなカーブを描くかのように曲がっている。そして、その板の中心には細長い棒のようなものが突き刺さっていた。   _ ( ゚∀゚)「…これ…なあに?」 31 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:37:31.57 ID:YgJwQrnO0 ( ^ω^)「…これは、竹とんぼっていうんだお。そうか、最近の子は知らないみたいだおね」 僕はゆっくりと上体を上げ彼の方に向きなおす。 ( ^ω^)「ちょっと貸してみるお」 そう言うのを聞くと、彼は僕の手にそれを手渡す。 ( ^ω^)「これはこうやって遊ぶものだお」 と僕は、それの棒状になっている部分を指で押さえ、そのまま両手の手のひらを合わせる。そして、その手のひらを擦り合わせ始めた。すると、それのプロペラ状になっている部分はゆっくりと回転を始めた。 32 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:38:13.28 ID:YgJwQrnO0 ( ^ω^)「これを思いっきりやると、このプロペラが飛んでいくんだお。        でも、ここでやると危ないから、お外に行って遊ぶお」 そう言うと、彼の表情は少し暗くなってしまった。少し下をうつむき、そして顔を上げて、こう呟いた。   _ ( ゚∀゚)「ぼくね…」   _ ( ゚∀゚)「おそとであそんじゃいけないんだって。ママがそういってた」   _ ( ゚∀゚)「ぼくはからだがよわいから、おそとにいくとあぶないんだって」 彼が言い終えた。でも、さっきまで僕と元気にはしゃいてたじゃないか。それに彼を見てもどこも悪そうにはとても見えない。 ( ^ω^)「だいじょうだお!!おにいちゃんが付いていってあげるお!!」 僕はそう言うと、彼の手を引っ張り立ち上がった。気がつけばベージュ色の壁には新たに茶色いドアが浮かび上がっている。迷わず僕はそのドアを開いた。 33 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:38:50.49 ID:YgJwQrnO0 目の前に広がる空間は、広大なものだった。 頭上に果てしなく広がる鮮やかなブルー。 そして、その中心でまんまるく輝くホワイト。 そして足元には、目が吸い込まれるようかの如く広がる薄いグリーン。 遠くを見れば、地平線が緩やかなカーブを描いていた。 ( ^ω^)「ここならだいじょうぶだお!!」   _ ( ゚∀゚)「………」 僕は彼の方向に振り返る。すると、彼はあんぐりと口をあけ、頭上に広がる空をぼんやりと見つめていた。 34 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:39:20.68 ID:YgJwQrnO0 ( ゚∀゚)「…すごい…すごいよ!おにいちゃん!!」 ( ^ω^)「…空は、すごくでっかいんだお。        僕が走っても走っても……決してたどり着く事が無いくらい広いんだお」 そして僕は10歩ほど足を進める。 ( ^ω^)「ここでいいかお。よし!!見てるお!!」 35 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:39:53.08 ID:YgJwQrnO0 再び、右手と左手を竹とんぼの持ち手を中心にして合わせる。そして、今度手に力をいっぱいに加え、そしてゆっくりと擦り合わせる。そのスピードが次第に速くなるとともに、プロペラの回転も激しくなる。そして思いっきり、右手を前に押し出し、左手を後ろに引いた。 そして、プロペラは、ふうっ、と彼の手を離れる。 その回転は力強く、それ自身を舞い上げていく。 次第にそれは、上に浮かぶ青の中へと溶けていった。   _ ( ゚∀゚)「うわぁ………」 溜息とも声ともつかないものが彼の口から飛び出す。その瞳は空から注ぐ光を受け、なお一層輝いていた。 36 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:40:24.78 ID:YgJwQrnO0 そのプロペラは放物線が描くと同時に力を失い、地面に吸い込まれていくように、下へと舞い降りる。僕はそれを確認するとその方向へ駆け出していった。彼も僕に続いて駆け出していく。 走り終えた頃には、地面には竹とんぼが横たわっていた。そして、僕はそれを、ひょい、と拾い上げた。   _ ( ゚∀゚)「ぼくも!!ぼくも!!」 彼は、そう言って僕を急かす。 ( ^ω^)「まあ、あわてるなお。はいだお」 そう言って僕は、彼に竹とんぼを手渡した。彼は手に取ったそれを見つめて、さらに微笑む。そして、すぐに僕と同じようにやってみるがなかなか上手くいかないようだった。 ( ^ω^)「もうすこし、肘を固定するお」 そう、僕は言い、彼の肘を手で軽く押さえ固定させる。 ( ^ω^)「そうそう、そのまま力を入れて回転させるお」 その言葉と同時に、彼は手に力を込める。そして勢いよく手のひらを離した。 37 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:41:02.31 ID:YgJwQrnO0 彼の手からプロぺラは、ふわっ、と離れる。 それは、僕がやった時よりも、力強く舞い上がる。 それと同時に少し強い風が、びゅうっ、と通り抜ける。 その風を受けたプロペラはさらに小さくなり、空に溶けていった。 暫く僕たちは無言のまま空を見つめていた。気がつけば竹とんぼはどこかに飛んでいってしまった。そして、彼は不意にこう呟いた。 38 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:41:35.92 ID:YgJwQrnO0   _ ( ゚∀゚)「…ぶぅんおにいちゃん…ありがとう」   _ ( ゚∀゚)「…いままで、だれもこんなふうにあそんでくれなかったから」   _ ( ゚∀゚)「かいじゅうごっこも、おにごっこも、かくれんぼもやったことなかった」   _ ( ゚∀゚)「おそとを、ぼくは、まどからしかみれなかったんだ」   _ ( ゚∀゚)「パパもママも、いつも、おはなしをしてくれるだけだった」 39 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:42:17.16 ID:YgJwQrnO0   _ ( ゚∀゚)「でも、おにいちゃんだけは、おそとにだしてくれて…ぼくとあそんでくれたんだ」   _ ( ;∀;)「…もっと、もっと…いっぱい、いっぱいあそびたいけど…」 そして、いつの間にか彼の声は、小さく、震えていた。驚いて彼の表情を見ると涙で溢れていた。 (;^ω^)「ちょ…ちょっと…どうしたんだお?」   _ ( ;∀;)「………ごめんね。………ぼく」 「いかなきゃいけないんだ」 40 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:43:07.51 ID:YgJwQrnO0 その瞬間、周りの時が止まる。 空に浮かぶブルーは、 その中心で白く輝く光は、 大地に広がるグリーンは、 ぴきっ。 と音を立てる。 そしてそこに生じた亀裂は、ぼろぼろ、と音を立て崩れていく。 そして周りの景色は渦を巻き始め、 ばらばらになった色の破片はその中心へと吸い込まれていく。 慌てて僕は、彼のほうを見ると、いつの間にか泣き止み、最初の時のように微笑んでいた。 しかし、直ぐにその姿は虚ろになり、周りの色に溶けていく。次第に渦はその色をも巻き込んでいく。 気がつけば僕は何かを叫んでいたが、それも周りの轟音にかき消される。そして、その渦が僕を除く全てのものを飲み込み終えようとしたとき、それは聞こえた。 42 名前:猪(過敏)[] 投稿日:2006/12/21(木) 19:43:52.38 ID:YgJwQrnO0 「おにいちゃん、ありがとう」 渦が全てのものを飲み込み終えたとき、その中心には淡い光が残っていた。それは儚く、少し息を吹きかければ消えてしまいそうだった。その光はゆらゆらと僕のほうへと向かっていく。そしてそれは僕の胸の中へと吸い込まれていき、消えてしまった。 そして、気がつけば僕は最初の真っ白な部屋に居た。

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