十六章2 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 21:49:22.74 ID:wafLkDlb0十六章 橙 ブーン達に問題が起こっている一方、ジョルジュは学校をサボって町外れの公園にいた。 その公園は結構広めの公園で、中央にある大きな噴水を中心に展開している。 ジョルジュはその一角にあるベンチに座っていた。ツナギを着た良い男はいない。 居る人間は、ジョルジュのみ。 そりゃそうだ。こんな町外れの昼の公園に、今の時代、人がいるわけもない。 ただそれはジョルジュにとって、都合の良い事だった。 ( ゚∀゚)「…………………」 彼はおもむろに服をめくって、自分の腹を見る。 そこには、昨日つーに付けられた傷。 だがその傷跡は、昨日の物よりもずっと小さな物になっていた。 ( ゚∀゚)「治るの早いとは聞いていたが……早過ぎじゃねえ?」 左肩と右ももにも眼を向けてみる。 それらは傷が深かった為に、まだ傷はそれなりの大きさだった。 だが左肩も右足も、稼動するのに支障はなくなっている。 傷に触れてみる。あまり痛くなかった。 4 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 21:51:22.15 ID:wafLkDlb0 ( ゚∀゚)「ぬー、本当に人間離れしちまったかな? ま、俺にとって悪い事じゃないから良いんだけどね」 そう言って、彼はベンチに寝転がった。 彼は、悩んで学校をサボったわけではない。 「勉強が頭に入る状態じゃない」「傷の事を聞かれるのがダルい」「色々あって疲れた」という理由の、ただのサボりだ。 ( ゚∀゚)「ぬー。サボったは良いが、暇だなー」 そう呟いて、何を思ったか、彼は右腕の“力”を解放する。 まもなく橙色に色を変えたその腕を、彼は自分の目の前に掲げる。 ( ゚∀゚)「……そういや俺、こいつがどれぐらいの“力”を持ってるか知らねぇんだよな」 寝転がっていた身体を持ち上げる。 それから、自分の寝転がっていたベンチの端を握った。 ( ゚∀゚)「どりゃっ!」 叫んで、力を込める。 その瞬間。ベンチの握った部分は何の抵抗もなく、ぐしゃりと紙のように潰れた。 手応えはほぼない。少しの力で、ベンチは変形した。 5 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 21:54:16.29 ID:wafLkDlb0 (;゚∀゚)「うへ。何だか思っていた以上にすごい得物を右腕に飼ってるみたいだね、俺は」 そう呟いた、その時。 ( ゚∀゚)「……っ」 彼は背後に気配を感じた。 それも、かなりの近距離に。 一般人ではない。異能者だ、と彼は一瞬で思考。 一般人であれば今の彼の右腕を見て叫ぶだろうし、ここまで近距離になるまで彼が気付かない事はない。 「めんどくせぇなぁ」と心の内で呟いて、皮肉に笑う。 右の手首から、ひそかにブレードを出す。 緩んでいた意識を思いきり締めて、後ろを向いた。 从 ゚∀从ノ「やっほー」 そこにはオレンジ。ハインが立っていた。 「お前かよ」と、ジョルジュは全身から気が抜けたのを感じた。 (;゚∀゚)「や、やっほー。ハイン、だっけ?」 从 ゚∀从「そうそう。そういうあんたはジョルジュな。久しぶりじゃね?元気だったか?」 (;゚∀゚)「昨日会ったばっかりだが」 6 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 21:57:24.25 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「……まぁ、細けぇ事気にすんなよ」 こいつ流しやがった、とジョルジュは苦笑する。 ( ゚∀゚)「あ、そう言えばさ、昨日サンキュな」 从 ゚∀从「んー?あぁ、あれか。つーの件か?気にすんな気にすんな! あれは完全につーが迷惑かけただけだしな。部下の失態は上司が拭わねぇと、ってな」 ( ゚∀゚)「上司、ねぇ」 从 ゚∀从「上司に部下って関係よりも、あたしとつーは姉妹っぽいけどな。 知ってるか?殺人狂じゃない方のつー、めちゃめちゃ良い子なんだぜ!」 ( ゚∀゚)「あー、知ってるかも。うんうん、分かる分かる」 从 ゚∀从「まぁ、殺人狂の方は会話も満足に出来ないくらいにぶっ飛んでんだけどな」 (;゚∀゚)「あー、知ってるかも。うんうん、分かる分かる」 ところでさ、と、ジョルジュは言葉を紡ぐ。 ( ゚∀゚)「今日は何の用だい?」 从 ゚∀从「暇潰し」 (;゚∀゚)「は?」 7 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 21:59:38.90 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「ひーまーつーぶーし」 (;゚∀゚)「……は、はい?」 从 ゚∀从「いやー、本当はな、ギコだかって奴と遊ぼうと思ったんだ。でも、あいつ学校だろ? だったら学校が終わるまで暇だなー、と。どうやって暇潰そうかなー、と思ってこの辺ぶらついてた訳だ」 (;゚∀゚)「……学校行っときゃ良かったかも」 从 ゚∀从「あん?」 (;゚∀゚)「何でもない何でもない。……で、暇潰しって、どうやって?」 从 ゚∀从「んー、そうだなぁー。ギターもないから、何か弾かせる訳にもいかないからなぁー」 少しの間うーんと唸って、「そうだ!」とハインは顔を輝かせる。 从 ゚∀从「あんたに一つ、情報をリリースしよう」 ( ゚∀゚)「ぬ?」 从 ゚∀从「ウチの組織……“管理人”のメンバー。そいつらの思考は、正直狂ってる」 (;゚∀゚)「あん?」 9 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:02:05.23 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「人間を粛清しようとしてるわけだ」 (;゚∀゚)「あぁ、知ってるが」 从 ゚∀从「その考えに、つーは反対してる」 ( ゚∀゚)「あー、うん。反対しそうなイメージ」 从 ゚∀从「そこで、だ。少し話は飛ぶが、“管理人”メンバーは二つの命令を出された。 “人間の大量殺戮”と、お前達“少年四人の拉致”。それを近い内に執行せよ、ってな。 もちろんつーは優しいから“人間の大量殺戮”を止めようとする。そこで、つーは多分お前を頼ってくると思うんだ」 (;゚∀゚)「へぇ。……って。ちょ、何でよ」 从 ゚∀从「つーがお前を気に入ってるんだよ。 良い子ちゃんなかわいいつーちゃんも、殺人狂で怖いつーちゃんも、な」 (;゚∀゚)「前者は嬉しいが、後者は嬉しくないなー」 从 ゚∀从「それにな」 ( ゚∀゚)「ん?」 从 ゚∀从「つー、頼れる奴が少ないんだよ。あんたに頼るしか出来ないんだ」 11 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:03:39.97 ID:wafLkDlb0 ( ゚∀゚)「……何で?」 从 ゚∀从「優しい方のつーちゃんも怖い方のつーちゃんも、どっちも取っ付きにくいらしいんだわ。 優しい方は優しすぎるし、怖い方はアレだし。しかも、それがくるくる変わるとなると、な?」 (;゚∀゚)「……あぁ、うん。確かにそうかも」 从 ゚∀从「全員が全員どっかぶっ壊れてる“管理人”達の中でも、あいつは特異なんだ。 あいつはあたしくらいにしか気持ちをぶつけられない。他の奴には、ぶつけても難なく避けられるだけだからな」 ( ゚∀゚)「どうしてさ?仲間だろ?」 从 ゚∀从「考えてもみろよ。“人間を殺したくなんかない”って言ってる奴が、突然“殺させろ”って言ってくんだぜ? どう対応すりゃ良いのか分からない。面倒臭い、怖い。 それはあいつが二重人格のせいだと分かっていても、それはやっぱり理解の及ばない怖い事な訳だ」 すぅ、と一度息を入れる。 从 ゚∀从「どれだけ優しい方のつーと仲良くなろうとも、怖い方が出てくりゃそれまでの関係はおじゃん。 あいつの理解者は離れていくばかり。頼れる者は減っていく。でもやっぱり優しいつーは人を殺させたくない。 あたしはこれでも“管理人”だから、あたしに「止めてくれ」っていうのも無理なわけだ。と、なると?」 (;゚∀゚)「……なる。俺くらいしかいないわけか」 13 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:06:09.94 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「まぁつまりそういう事。あたしは今、あんたに四つの情報を与えたからな。 ウチの組織は大量殺戮を始める。そして、お前達四人の身柄を狙う。 つーはあんたを気に入ってる。よって大量殺戮を止めようとするつーは恐らくお前を頼る。 良い情報だろ?感謝しろよ感謝。暇潰しに教えるって情報にしちゃでかすぎる情報だぞ。 あいつに知られたら殺されかねないw」 ( ゚∀゚)「一つ聞いても良いかい?」 从 ゚∀从「ん?」 ( ゚∀゚)「何でそれを俺に教えんの?」 从 ゚∀从「あー、それな。一言で言うと、面白くなりそうだから、かな」 _, ,_ (;゚∀゚)「あ、あぁん?」 从 ゚∀从「お前は多分、つーに頼られたら断れないだろ?となると、お前達は大量殺戮を止めようとするわけだ。 ほーら、面白い。人間を大量に殺して、なおかつお前達を拉致しようとする“管理人”。それを止めようとするお前達。 プギャーとつーとミンナから聞いた所だとお前達はそれなりの戦闘能力持ってるみたいだし、考えただけで面白いね」 (;゚∀゚)「…………………」 从 ゚∀从「この四つの情報量は免除してやっよ。楽しくなりそうだし、“管理人”メンバーへの口止め料としてな」 15 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:09:29.48 ID:wafLkDlb0 (;゚∀゚)「……最終的に、あんたは「戦いが始まるぞ。心の準備しとけ」って言いたいわけか?」 从 ゚∀从「まぁそんな感じ。前もって告知しといた方がより面白いかと思ってねー」 ( ゚∀゚)「うん、まぁ、それについてはサンクス。ところでさ」 从 ゚∀从「あん?」 そこでジョルジュは携帯を取り出し、時刻を確認する。 ( ゚∀゚)「ただいま十二時半。これからどうすんのさ、あんたは」 从 ゚∀从「あー、んー、そうだな。どうすっかね。まだ時間あるしなー」 ( ゚∀゚)「良かったら、メシでも食いに行くか?時間的にも昼食時だし、情報もリリースしてもらったしな。 情報料と言っちゃ何だが、一食分くらいおごるぜ?」 その言葉に、ハインはこれまでにないほど顔を輝かせる。 从*゚∀从「ひゅー。イカすねあんた!OKOK!行こう行こう!」 (;゚∀゚)「ぬ。すげぇテンションの違いだな……って、ちょ、待て!引っ張るな引っ張るな!ノォォォォ!!」 それからジョルジュは、ハインに文字通り引き摺られてファミレスへ。 そして、彼は人生最大の後悔をする。 18 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:12:10.60 ID:wafLkDlb0 ―――ファミレスにて 从*゚∀从「ハフッ!ハフハフッ!ハムッ!!」 ハインはものすごい量の食料を、ものすごい勢いで口に運んでいた。 テーブルは、彼女が空にした皿が所狭しと並べられている。 (;゚∀゚)「おい、まだか!まだ腹は満たないのか!?」 ジョルジュは焦りを隠さずに叫ぶ。 だが、彼女は容赦しなかった。 从*゚∀从「店員カモーン!」 川д川「はっ、はいっ!!」 从*゚∀从「さっきの奴あと二皿!それと海鮮サラダにペペロンチーノ、ラム肉のステーキだ!!」 (;゚∀゚)「ゲェーっ!?」 川д川「か、かしこまりました」 それからも彼女のハイペースは衰えを見せず、テーブルの上の皿は時間に比例して数を増やしていった。 20 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:14:25.88 ID:wafLkDlb0 そして、三十分後。 ( ゚∀゚)「…………………」 ジョルジュの精神は既にどこかへトリップしていた。 口元にはうっすらと笑みすら浮かべている。どこか楽しい世界に行っているようだ。 从*゚∀从「くっはー!満腹!」 彼女の声で我に返る。 こいつ殺してぇ、と彼女を一瞥。 ( ゚∀゚)「…………………」 川д川「あのう……お会計……」 ( ゚∀゚)「……いくら?」 川д川「三万四千五百円です」 ( ゚∀゚)「……俺、何も食ってないんだけどな」 川д川「そんな事知りませんよぅ」 ジョルジュは財布を取り出し、物悲しい眼をしながら金を抜き出す。 22 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:17:19.38 ID:wafLkDlb0 川д川「ありがとうございましたー」 店を出る。 ジョルジュの表情は虚ろだった。 (´゚∀゚)「……俺の、諭吉さん達が……」 从 ゚∀从「あん?」 そして、抜けるような青空に向けて叫ぶ。 (#゚∀゚)「 諭 吉 さ ん 達 が ぁ あ ぁ っ !!」 そんなジョルジュに、ハインはうっとおしそうに眼を細める。 从 ゚∀从「騒ぐなようっせぇなー」 (#゚∀゚)「お前が言うなお前が!!」 从 ゚∀从「お前がおごるって言ったんだろー?」 (#゚∀゚)「普通の人間は食っても二千円程度だっ!お前があんだけ大食らいなんて知るわけないだろ!! 遠慮ってもんを知れ!おごるっつっても、他人様の金だぞ!もっとこうさ、「こんなに食べちゃっても良いの?」とかさ!」 25 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:19:16.30 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「こんなに食べちゃって良いのー?」 (#゚∀゚)「遅ぇ!遅ぇよ!言うの遅ぇよ!!」 そこでハインは携帯で時刻を確認。 そして、叫びを止めないジョルジュを無視して走り出した。 从 ゚∀从「おっと、そろそろ学校終わる時刻臭ぇな。じゃあバイビー。美味しかったぜー」 (#゚∀゚)「待て貴様ぁぁあぁあぁ!!」 追いかけるが、ハインは足が速かった。 ジョルジュは「本当に、学校行っときゃ良かった」と呟いた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 27 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:21:37.47 ID:wafLkDlb0 (,,゚Д゚)「―――と、ジョルジュと何があったのかは分かった。んで?俺には何の用だ?」 从 ゚∀从「はははー、ピリピリしてんねー。だから、さ、遊ぼうよっての」 ジョルジュとハインが最初に会っていた、噴水のある無人の公園。 街が夕焼けに染まる頃、二人はそこで対峙していた。 (,,゚Д゚)「遊ぶ?俺が、“管理人”のてめぇとか?っは。ふざけんなよ」 从 ゚∀从「“管理人”だとかどうとか、小せぇ事を言ってんじゃねえよ。馬鹿か。男らしくねぇな」 (,,゚Д゚)「小さい事、だと?これまでに人を無数に殺してる奴が、よくもそんな事を言えるな」 从 ゚∀从「へぇ、“管理人”のやってきた事とかは知ってんのか」 (,,゚Д゚)「あぁ。だから、俺はお前達が大嫌いだ。虫唾が走る。塵にしてやりたいくらいだ」 从 ゚∀从「っはん。甘ったるい考えをお持ちのようで」 (,,゚Д゚)「……質問だ。人を殺すとか、お前はどれだけ偉いつもりだ? その人間が積み上げてきた物を崩すなんて、何様のつもりだ?」 从 ゚∀从「んー、さしずめ、神様?いんや、あたしは神様よりも偉い。あたしがナンバーワンだ」 (,,゚Д゚)「……腐ってやがるな」 舌打ちをして、右腕を解放する。 ハインは驚きも焦りもしない。“力”を解放する事もなく、ただ楽しそうに笑うだけ。 30 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:24:01.98 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「あれ?遊んでくれんの?」 (,,゚Д゚)「勘違いするな」 ギコはおもむろに懐から何やら液体の入ったビンを取り出す。 そして、その中身を少し右腕にふりかけると――― (,,゚Д゚)「腐ったものは焼却処分すべきだと思っただけだ」 ―――彼の右腕から、ゴウという音を立てて炎が燃え上がった。 从 ゚∀从「……はん。パイロキネシスの“力”、か?」 (,,゚Д゚)「そんなもんだ。灯油を右腕にかけて、着火した」 从 ゚∀从「熱くねぇの?」 (,,゚Д゚)「この右腕、耐熱なようでな。熱くも何ともない」 言って、ギコは燃え盛る右腕に更に灯油をかける。 炎は更に勢いを増す。 (,,゚Д゚)「正直な所、女と戦り合うのは心苦しいが……いや、お前達“管理人”は別だな。 何はともあれ……行くぞっ!!」 叫んで、ぶんっと投球するようにその場で右腕を振るう。 それと同時に、いくつかの火の玉が彼の手から発射された。 32 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:26:35.40 ID:wafLkDlb0 从;゚∀从「お、おおうっ!?」 予想外の攻撃に驚きながらも、彼女は右に跳んで、それを回避。 慣性のままに進む火の玉は彼女の後ろにあった大木に衝突。消え去った。 从;゚∀从「ひ、火の玉?あんたの腕は火球を撃てるのか?」 (,,゚Д゚)「違うな。正解は灯油だ」 从 ゚∀从「……あー、ちょっと分かった」 (,,゚Д゚)「火のついた灯油を投げつけた。ただそれだけだ。それだけで、十分だがな」 言って、ギコはハイン目掛けて走り出す。 (,,゚Д゚)「おらっ!」 縦に腕を振るう。 ハインはそれを身を引いて避け、反撃しようとする。が――― 从;゚∀从「熱っ!?」 ―――腕を振った時に同時に発生した火の玉がハインに着弾。 ハインは慌てて火を揉み消す。 从;゚∀从「あー、めんどくせぇ!」 35 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:29:14.58 ID:wafLkDlb0 (,,゚Д゚)「便利な事を考えたろう?攻撃すれば、それと同時に火球が発生するんだからな」 言って、連続で右腕を振るう。 ハインはギコの腕と火球の両方に意識を伸ばさねばならず、どんどんと状況は悪くなる。 从;゚∀从「ちょ、危っ!いや、熱っ!!待て、待て待て待て待て!」 (,,゚Д゚)「待てと言われて誰が待つか」 ギコは攻撃の速度を更に上げる。 対するハインもそれに応じて防御・回避。 だが、反撃する余裕は彼女にはなかった。 (,,゚Д゚)「っし!」 从;゚∀从「うぉっと!」 突き出された正拳、そして飛び来る火球を避け、ハインはバックステップで後ろに下がる。 対するギコは彼女を追わずに、おもむろに懐から灯油入りのビンを取り出す。 そしてすぐさまその栓を抜き取り、ハインに向けてビンを振るった。 (,,゚Д゚)「らぁっ!!」 ビンからはもちろん灯油が流れ出る。 しかし―――ビンからは灯油ではなく、うねる炎が姿を現した。 37 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:31:32.34 ID:wafLkDlb0 从;゚∀从「はぁ!?ちょっと待……おかしいだろ!」 狼狽しながらもうねる炎を避ける。 炎は砂利の地面にその身体を横たえ、燃え盛ったまま動かなくなった。 ギコは舌打ちを一つ。 (,,゚Д゚)「避けやがったか」 从;゚∀从「うぁー、厄介だな、お前の“力”。具体的にどんな“力”だ?」 (,,゚Д゚)「てめぇに言う必要はない」 从 ゚∀从「それはフェアじゃねぇな。ジョルジュ辺りからあたしの“力”は聞いてんだろ? だったらあたしにも教えろよ。互いに互いの“力”を知り合って、ようやく勝負だろ」 (,,゚Д゚)「……フェアじゃない?っは。良いだろう。教えてやるよ」 ギコはハインから敵意を逸らさないままに言う。 (,,゚Д゚)「簡単に言えば、発火能力と炎の勢いを増す“力”だ」 从 ゚∀从「何だ、それだけなのか?」 (,,゚Д゚)「それだけ、の“力”に慌ててたのはどこのどいつだ」 从 ゚∀从「“力”の内容が分かればもう慌てる必要はないねぇ。あまり便利な“力”でもなさそうだしな」 (,,゚Д゚)「あん?」 39 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:33:27.63 ID:wafLkDlb0 ハインは足元で燃える炎をちらりと見やる。 从 ゚∀从「あんたの“力”は点火能力と、炎の勢いを増すだけ。となると、炎を操る“力”はないわけだ。 だったら別に焦る必要はないわな。そこらの異能者よりよっぽど戦りやすい」 (,,゚Д゚)「……っは。どうでも良い。燃えてなくなれ」 ギコは中身が四分の一程度になったビンを取り出し、右腕にかける。 と、その時。 ハインがギコに向けて、何の前触れもなく走り出した。 (;゚Д゚)「―――っ!?」 慌てて右腕を振るう。 だがハインはそれを楽々と避け――― 从 ゚∀从「いやっほぃ!」 ―――ギコが左手に握ったままのビンを、蹴り飛ばした。 ビンは地面に叩き付けられて砕け、地面に灯油の染みを作る。 (;゚Д゚)「なっ!?」 从 ゚∀从「あんた火種がなきゃ“力”使えないだろ?灯油がなけりゃ何も出来ないわけだ! ははっ!やっぱり不便な“力”だな!」 41 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:35:26.84 ID:wafLkDlb0 ハインはビンを蹴った足で、そのままギコを蹴り飛ばそうとする。 ギコはそれをすんでの所で防御。 (,,゚Д゚)「いや……」 从 ゚∀从「あん?」 (,,゚Д゚)「炎なんざ元々オプションくらいにしか考えちゃいねぇよ」 炎が上がる右腕を繰り出しながら言葉を紡ぐ。 ハインは笑ったまま回避を続ける。 从 ゚∀从「オプションにしては結構頼ってたねぇ?んんぅー?」 (,,゚Д゚)「新しく手に入れた物は使いたがる性分なだけだ」 攻撃のスピードを上げる。 ハインはまったく焦った様子を見せない。 ギコは攻撃を止めないままに口を開く。 (,,゚Д゚)「何故本気を出さない?」 戦闘が始まってからの、彼の疑問だった。 ハインは実際、本気になっていない。 両腕の“力”を解放すらしていないのだから。 ギコは本気で戦っているというのに、どこか遊ばれているような感覚だった。 44 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:37:54.65 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「だから、あたしは遊びだっつってんだろ?本気出したらすぐに終わっちゃうもん」 (,,゚Д゚)「そうか。だったら俺も本気出さねぇ」 そう言った途端、ギコは攻撃を止めた。 ハインも攻撃を止める。 その時、彼女は初めて不機嫌そうな顔を見せた。 从 ゚∀从「あぁん?何のつもりだ、てめぇ」 (,,゚Д゚)「俺はお前と遊ぶつもりなんぞ毛頭ない。戦うのならば同じ条件で戦いたい。 お前が本気を出さないのならば、俺も本気を出さないまでだ」 从 ゚∀从「あたしを殺したいんじゃなかったのか?」 (,,゚Д゚)「……殺したい、とは、違う」 从 ゚∀从「あん?」 (,,゚Д゚)「殺したいっていうのは、何か違う。殺すってニュアンスは好きじゃない。 こう……打ち負かしたいんだ。お前は間違っているってのを、お前の体の底に教えてやりたい」 从 ゚∀从「何言ってんのかよく分かりません」 (;゚Д゚)「俺だってよく分かってねぇんだよバーロー」 45 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:39:47.99 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「要するに、『お前等は嫌いだけど、殺したくはない。だから改心させますよ』って事か?」 (;゚Д゚)「それも違う。改心じゃ、ないんだ。何かこう……あぁ!何で分かんねぇの!?」 从;゚∀从「んな事言われても」 (;゚Д゚)「要するに、だなぁ!俺はお前等に、自分達が犯した罪の重さを理解してほしいわけだ! それで、なぁ!その上で……こう……罪をあがなうって言うか……」 从;゚∀从「改心で合ってんじゃねぇの?」 (;゚Д゚)「違うんだっつーの!」 从 ゚∀从「……まぁ良いや。とりあえず、こんな事話しててもキリなくね?さっさと戦おうよ」 (,,゚Д゚)「……だったら“力”を解放させな。じゃないと俺も力を抜くぞ。 俺はフェアな戦い以外はする気はない」 从 ゚∀从「……プッ」 「ははは」と、ハインリッヒは軽く笑う。 (,,゚Д゚)「何がおかしい」 从 ゚∀从「ジョルジュもあんたも面白いな!良いねぇ!面白い物は、おじさん大好物だよ!」 笑いを止めずに、ハインは両腕を解放する。 ―――戦闘態勢だ。 46 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:42:34.62 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「ははは!おっけー!良いじゃん!殺さない程度に本気出してやっよ! “力”を解放したあたしが遊べるくらいの意地を見せてみな!ひゃははっ!!」 (,,゚Д゚)「……行くぞ」 静かに呟いて、飛び出す。ハインもそれに応じるように飛び出した。 (,,゚Д゚)「ぬんっ!」 飛び出した勢いを利用して拳を繰り出す。 从 ゚∀从「ひゃはっ!攻撃が短調だねぇ!」 笑いながら叫んで、繰り出された拳を掴む。 そして、ギコの勢いを更に利用して、彼女はギコを投げ飛ばした。 (;゚Д゚)「おぉうっ!?」 投げ飛ばされた彼が向かう先は噴水。 彼は噴水に大きなしぶきをあげて落下した。 ハインは笑いながら噴水に歩み寄っていく。 从 ゚∀从「ほれほれ!本気出させといてこれかぁ!?」 その声に応じるように、彼は噴水から立ち上がる。 そして水に濡れて重くなった上着を投げ捨てると、叫んで走り出した。 (,,゚Д゚)「行くぞゴルァッ!!」 47 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:45:10.79 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「ひゃはぁっ!来いよ!遊んでやる!」 鋭く右腕を突き出す。 ハインはそれを、同じく変化した腕でいなし、カウンターを叩き込もうと逆側の腕を突き出す。 ギコはバックステップ。そして、ハインの腕が伸びきったのを見て、再度足を踏み出す。 (,,゚Д゚)「るぁっ!!」 殴る―――と見せかけて、今度は右肘を突き出す。 从 ゚∀从「おっ!ちょっとは考えたか!だがね……」 ハインはそれをバックステップして避ける。 从 ゚∀从「不意を突けたのは良いが、それだとリーチが短くなるねぇ!ひゃははっ! ちょっとは考えたみたいだが、それだけじゃああたしにゃあ攻撃は当たらないよ!」 対するギコは、そこでにやりと不敵に微笑む。 (,,゚Д゚)「あぁ、考えさせてもらったよ」 呟いて、足をスライドさせる。 そして折り曲げていた右肘を伸ばし、裏拳を振るった。 从;゚∀从「なっ……!」 彼の右拳は、慌てて受け流そうとしたハインの腕をすりぬけて、彼女の左肩へ。 “力”を解放した腕での、裏拳。その威力は半端な物じゃなかった。 50 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:48:23.18 ID:wafLkDlb0 从;゚∀从「がっ……!!」 ハインの身体はものすごい勢いで回転しながら吹き飛ぶ。まるで指で弾かれたコインのように。 その回転は、彼女の身体が地面に落ちてからも何度か続いた。 幾度目かの回転を終えると、ハインはうつ伏せで動きを止める。 (;゚Д゚)「っちゃぁ……やりすぎた臭ぇな。 この腕は強いんだが、いかんせん力の加減が上手く出来ねぇな」 ギコは頭を掻きながら言う。 先ほどの彼の裏拳は、下手したら肩が吹き飛んでもおかしくないような物だった。 表情を苦々しげに歪ませながら、ギコは呟く。 (;゚Д゚)「“管理人”っつっても、やっぱり女を殴るってのは気分悪ぃな。……おい、ハイン。生きてるか?」 彼女の身体は反応しない。 彼の頭の中を、嫌な考えが走り抜ける。 51 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:50:46.65 ID:wafLkDlb0 (;゚Д゚)「……おい、ハイン。ハイン!」 慌てて彼はハインに駆け寄り、うつ伏せの身体をあお向けにする。 从 -∀从「…………………」 (;゚Д゚)「ハイン!おい!起きろよ!ハイン!?」 彼女は眼を開かない。 ギコは思考する。 もしかして左肩を殴った時に、その衝撃で心臓を止めてしまったのではないかと。 (;゚Д゚)「お、おい……ちょ、マジかよ。ふざけんな!」 脈があるかを見ようと、首に手を伸ばす。 だが、その手はいきなり握られ――― 从 ゚∀从「どりゃぁっ!!」 ―――楽しそうに笑うハインによって引っ張られ、彼は思いきり地面に押し倒された。 そして彼と変わるようにハインは立ち上がり、彼の額に変化した腕を突き付けた。 从 ゚∀从「はっはぁー!まんまと騙されやがったなー!」 (;゚Д゚)「てっ、てめぇ!!」 53 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:52:36.76 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「迫真の演技だったろ?完全に騙されてたもんな、ギコちゃん? 慌てるお前は可愛かったぜー!?ひゃははっ!」 (*゚Д゚)「う、うるせぇ!この卑怯者が!!」 从 ゚∀从「そんな事言うのかー。お姉さんショックだなー。 このまま襲っちゃおうかなー?ひゃはははっ!」 (#゚Д゚)「ぬ、ぬがぁあぁっ!!」 本気で慌てて、バタバタと立ち上がろうと暴れるギコ。 だがハインは「冗談だ冗談。襲わねぇから暴れんなw」と軽く抑えつけるのであった。 从 ゚∀从「聞きたい事があんだよ」 (#゚Д゚)「あー!?んだよ!」 从 ゚∀从「あんたにとって、あたしは敵だよなぁ?」 (#゚Д゚)「たりめーだ!天敵!天敵だ!!」 从 ゚∀从「まぁ、何でも良いがよ。じゃあ質問だ。 あたしが死んだと思った時、あんたは何で、敵のあたしを心配すんだ?」 (,,゚Д゚)「―――っ」 言葉が詰まる。 何でか分からなかった。 54 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:54:38.77 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「あれはどう見ても、本気で焦ってたよな。本気で、あたしが死んだのかと心配してたよな。 何でだ?敵は死んだ方が好都合だろ。それを、お前は『起きろ』とまで言った。何故だ?」 (,,゚Д゚)「それ、は―――」 やはり言葉が出て来ない。 何で、俺は敵を心配したんだ? 自分にそう聞きたいくらいだった。 (,,゚Д゚)「―――それは……」 从 ゚∀从「……プッ」 「ヒャハハ」と楽しそうに笑って、ハインはギコの上から退く。 从 ゚∀从「んっとに面白ぇな、お前!」 (,,゚Д゚)「あぁ……?」 从 ゚∀从「面白いくらいに優しくて、熱い男ね!うん、面白い!これは面白いぞ! それに、結構堅物な真面目君か!いじりがいがあるねぇ!」 57 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:56:56.93 ID:wafLkDlb0 (;゚Д゚)「は、はぁ?堅物で、真面目君?」 从 ゚∀从「どう考えてもそうだろ」 ふふっと、面白そうに笑う。 从 ゚∀从「自分の感情の分からない部分を全て説明しようとするところとか、まさにそうだろ。 良いんじゃねぇの?『分からねぇよ』でよ?感情に全部説明が付けられる奴なんていねぇんだから」 (,,゚Д゚)「あ……」 ようやく気付き、ギコは呆然とする。 从 ゚∀从「ほれ、立ち上がれよ。まだ遊びは終わってねぇぜ?w」 言われてようやく気付いたのか、はっと驚いてギコは立ち上がる。 それから少し距離を置き、相手の動きを見れるようにする。 (,,゚Д゚)「何か、なぁ」 从 ゚∀从「あぁん?」 (,,゚Д゚)「ジョルジュの言う通りだ。お前、おかしな女だな」 58 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/03/03(土) 22:58:09.57 ID:wafLkDlb0 从 ゚∀从「誉め言葉か?w」 (,,゚Д゚)「それに……」 ふふっ、と、ギコは不敵に笑う。 それは、とても楽しそうに。 (,,゚Д゚)「中々に格好良い女じゃねぇか!」 口元を笑わせながら、ギコは飛び出す。 从 ゚∀从「っは!今まで何度それを言われた事か!」 ハインはそれを迎え打つ。 彼女も、とても楽しそうに。 夕焼けでオレンジに染まった公園で、紅と橙が交差した。 互いに笑いながら、遊んでいるように。 戻る 目次 次へ |