2007/01/19(金)22:23
( ^ω^)が料理人になるようです(第八章上)
192 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:09:01.19 ID:qvCnUHWG0
第8章 英雄に憧れて
新感覚中華ダイニング【バーボンハウス・本店】はVIP商店街に面したテナントビル1階に存在する。
その日も僕は開店準備で慌しい薬局やおしゃれ服屋を脇目にしつつ愛チャリを飛ばしていた。
あと1時間もすればこの道は人で溢れかえるのだろう。今、限られた時間しか楽しめない風景が僕は好きだった。
10mほど離れたコンビニから見慣れた栗色の髪の持ち主が出てくるのを見つけて僕は思い切り叫ぶ。
( ^ω^)『おーい!! ツン、おはようだお!!』
ξ゚△゚)ξ『ちょっと!! 大声出さないでよ!! 恥ずかしいじゃない!!』
口ではそう言いながらも僕をその場を動かず僕を待っていてくれる。
僕がバーボンハウスに勤めだして3ヶ月。
色々な事を教わりその毎に僕の仕事も少しづつ変わっていったけど、
一番大きく変わったのは彼女、ツンが普通に話してくれる(時もあるようになった)事だった。
( ^ω^)『すまんおw 何買ってたんだお?』
ξ゚△゚)ξ『あぁ。通販雑誌とおにぎりと牛乳よ』
( ^ω^)『把握…? その小さな紙袋は何買ったんだお?』
火花を散らす勢いでツンが赤面する。
ξ#゚△゚)ξ『 聞 く な 。 変 態 』
おかしいお? なんで僕は今殴られたんだお? 教えてエロイ人。
194 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:11:06.25 ID:qvCnUHWG0
僕に強烈な右フックをお見舞いした犯人はさも当然という顔をして自転車の荷台に腰を下ろした。
ξ゚△゚)ξ『さぁ、早く行くわよ。遅刻するじゃない』
( ;^ω^)『は、把握いたしました。お嬢様w』
僕はペダルをゆっくりと踏み込む。
初めこそよたよたとしか走らなかった自転車はスピードに乗るにしたがって安定感を増し、
それに併せて朝特有の澄んだ空気が風となり僕らを包み込む。
ξ゚△゚)ξ『ん…気持ちいい風』
背中越しにそんな声が聞こえた。
195 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:12:23.40 ID:qvCnUHWG0
従業員用駐輪場に愛チャリ流星号を止め、スタッフルームの裏口を開ける。
( ^ω^)゚△゚)ξ『おはようございま…』
見慣れたスタッフルーム。だが、今日僕らの目に飛び込んできたのはいつもと違う風景。
そこには黒いビキニパンツ1枚だけの姿でドクオの肩に手をかけるショボンさんの姿があった。
( ^ω^)゚△゚)ξ『………』
(´・ω・`)'A`) 『………』
( ^ω^)゚△゚)ξ『…おじゃましました』
状況を把握した僕らは慌てて外に飛び出る。
(;´・ω・)『ちょ、ちょっと待ってよ!! 2人とも勘違いしてない!?』
扉越しに聞こえるショボンさんの声。
( ;^ω^)『見てない!! 僕らは何も見てませんお!!』
ξ;゚△゚)ξ『そうですよ!! それに恋愛は自由だと思うし…ただ、鍵は閉めたほうが…』
(;´・ω・)『誤解だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
200 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:16:31.22 ID:qvCnUHWG0
ξ゚△゚)ξ『…なるほど。そういう事だったんですか』
( ;^ω^)『ビックリしたお。 ショボンさんウホッっぽいトコがあるからてっきり…』
(;´・ω・)『ひどい言われ様だね…』
目の前にいるのはコックコートに身を包んだショボンさんとドクオ。
どうやら、ちょうどショボンさんが着替えているところにドクオが登場。
そこでちょっと大事な話をしているところに僕とツンが…と言うのが真相らしい。
(´・ω・`) 『うん。内藤君も随分慣れてきたみたいだし、ランチタイムの洗い場にはカーチャンさんも入っただろ?
厨房内の配置転換を考えていてね』
ξ゚△゚)ξ『配置転換?』
(´・ω・`) 『うん。いずれみんなにも話すからそれまで内緒にしてほしいんだけど…
ドクオを鍋にコンバート。麺場を内藤君とツーに任せようと思ってるんだ』
僕が麺場に…ツーさんのフォロー役だろうけど、ようやく僕も1つステップアップする事ができるのだ。
ξ゚△゚)ξ『やったじゃん!! おめでとうドクオ!! ついでに内藤!!』
(´・ω・`) 『内藤君が入社する前はドクオは鍋にいたからね。問題ないと思うけど…。
しばらくは僕も厨房で監視させてもらうつもりさ。
ついでに内藤君にも炒め物の基礎を教えておこうと思ってね』
201 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:18:19.49 ID:qvCnUHWG0
(´・ω・`) 『まずは内藤君にも麺場の基礎を覚えてもらわないと話にならないしね』
そんなわけで、ランチタイムは僕のトレーニングの為の配置転換がされた。
まず、鍋を担当するのはショボンさん。
麺場の担当がドクオ。
ドクオの追い回しに僕で、ショボンさんと僕のフォロー役にツーさん。
そんな体制だ。
正直、麺場の追い回しなんて簡単だと思ってた。
だってツーさんは簡単にこなしている風に見えたからね。
でも僕が間違っていた。あれは人間がやるもんじゃないね。神がやるもんだよ……。
デパートの地下で購入した生ラーメンを作る。
それは誰でもやった事があるだろうし、僕にももちろん経験はあった。
でもそうやって作ったラーメンは決して外食業界においての商品価値はない。
なぜなら、それはデパ地下に整列している段階で素人が作ってもある程度の美味しさになるように計算された商品であり、
料理人が知識・経験・技術を駆使して作ったものではないからだ。
外食産業は存在する価値はすべてここにある。
( ;^ω^)(そう考えると、僕が家でやっていた料理なんてここでは無意味だお)
今までの洗い場兼食材の切り出しがメインの仕事から
ドクオのフォロー役に配置転換されて、
僕はまたしても自分が甘い考えの持ち主であった事を実感させられた。
( ;^ω^)(簡単にこなしてるなんて…僕はなんてバカな事を考えていたんだお)
202 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:19:54.21 ID:qvCnUHWG0
麺をU字型のそば網に放り込みボイル器(大鍋)で1分30秒茹でる。
その間、丼にタレとスープ・背油を準備しておく。
茹で上がったら湯切りをして丼へ。
湯切りの際ダマになってしまう麺を軽くほぐしてトッピングを盛り付け。
これがバーボンハウスでの基本的なラーメンの作り方だ。
言葉にすれば簡単なんだけど、実際やってみるとその1つ1つに知識・経験・技術を要する。
('A`)『麺を大鍋に入れるときは多くても2玉づつだ』
(*゚∀゚) 『あはは!! ドクオ君、それだけじゃ意味がわかんないよ!! いいかい、ブーちゃん!!
一度にたくさん作ろうとすると時間かかるだろ!!
その間にスープは冷めるし、麺は伸びるしで良い事ないさ!!
それにホール組もそんな一度に出されても提供できないしねっ!!
だから、たくさん注文入ってる時は時間差をつけて麺を投下すればいいんだよ!!』
('A`)『麺の湯切りが甘い』
(´・ω・`)『うん。湯切りが甘いとスープが薄まったり、麺にぬめりが残ったりするからね。
そば網を振るんじゃなくて、一瞬麺を宙に浮かせてそば網の底でカウンターをぶつける感じかな』
('A`)『盛り付けが汚い』
(*゚∀゚) 『全ての盛り付けは中心を山高く立体感をつけるのが基本中の基本さ!!
ベタッと潰れたのなんか美味しそうじゃないだろっ!!
天使のように繊細に、悪魔のように大胆に…ってのがコツかなっ!!』
204 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:21:21.96 ID:qvCnUHWG0
こうして3人がかりでの指導を受けながらトレーニングは進む。
失敗した料理は容赦なくゴミ箱行きだ。
(´・ω・`)『お客さんからお金をもらう以上、品質の劣った料理を出すわけにはいかないよ』
という事らしい。
僕がドクオのすぐ側で本格的に調理に携わるのは今日が初めてだけど、
こうして一緒にやってみるとドクオがどれだけすごい技術を持っているのかがよく分かる。
あの陰気な顔が輝いて見えるほどだ。
('A`)『…』
( ^ω^) (でもキメェwww)
ツーさんはいつも以上にハイテンションだ。
普段とは違った人員配置に興奮しているのもあるだろうが、
ボクのトレーニングが近い日の人員配置転換につながる事を感じ取っているのかもしれない。
( ^ω^) (ツーさん嬉しそうだお。目標に一歩近づいてるんだし当然かもしれんね)
…それにしても騒がしい。
女3人そろえば姦しいと言うが、ツーさんが3人そろったら…考えたくない。
(;´・ω・)『…君、元気だね』
(*゚∀゚) 『フヒヒwwwサーセンwww』