三十四章前三十四章 相棒 戦闘訓練を開始してから、四日が経った。 ブーン達と“削除人”は互いに戦闘力を高め合い、順調に決戦への準備を整えつつあった。 (;^ω^)「おー、疲れたおー。さっさとご飯食べて風呂入って寝るお」 その日の戦闘訓練を終えたブーンは、ホテルの廊下を歩いていた。 日に日に激しさを増す訓練は、彼の身体をくたくたにしていた。 しかし、順調に強くなっているという事は実感していた。 まだまだだが、少しだけならフサに相対出来るようになってきている。 ( ^ω^)「……明日こそは、フサさんを叩きのめしてやるお」 ぐっ、と拳を握り締めた。 その時。 ( ´∀`)「ブーンくーん」 (;^ω^)「おっ!?」 息がかかりそうなくらいに、すぐ背後から声をかけられた。 首筋に走った寒気に、全身に鳥肌が立つ。 (;^ω^)「い、いきなり何ですかお!? 驚かさないでほしいお!! そもそも、あなたいつのまに僕の後ろにいたんだお!?」 ( ´∀`)「まぁまぁ、そう怒らないでほしいもな。 僕は今、ふざけたい年頃なんだもな」 (;^ω^)「あんた今何歳だおッ!!」 ( ´∀`)「ヒ☆ミ☆ツ」 (;゚ω゚)「あぁあぁぁあぁあぁぁああぁぁあぁッ!!」 ( ´∀`)「うるさいもな。落ち着けもな」 呟いて、モナーはブーンの額に水平チョップをぶちかました。 ブーンはおかしな呻きを漏らして、上半身を仰け反らせる。 額を抑えながら上半身を戻すと、モナーはブーンを指差して、けらけらと笑っていた。 ( ´∀`)σ ケラケラw ( ^ω^)………… (#^ω^)ビキビキッ (#゚ω゚)クワッ ( ´∀`)「眼が怖いもな。怒ってると老けるのが早まるもなよ」 (#゚ω゚)(こいつは……) ( ´∀`)「ほら、笑って。笑顔ほど素敵な表情はないもな」 (#゚ω゚)ビキッ ( ゚ω゚)「…………………」 ( ^ω^)ニコヤカ ( ^ω^)「……もう良いお。何の用だお?」 ( ´∀`)「あぁ、そうだもな。肝心な事を忘れるところだったもな。 君にこれを渡しに来たんだもな。はい」 それからいきなり渡された物は、一対のガントレットだった。 ブーンの足と同じ色―――白銀色のそれは、見た目よりかなり軽い。 (;^ω^)「お? 何だお、これは」 ( ´∀`)「君の武器だもな」 ( ^ω^)「お、武器……」 ( ´∀`)「そうだもな。この前の会議で言っていた物だもな。 ちょっと付けてみてほしいもな」 ( ^ω^)「お」 頷いて、そのガントレットを装着してみる。 驚いた事に、それはブーンの手にぴったりと馴染んだ。 指先から前腕部全体―――肘の近くまでを覆うそれは、しかしほとんど違和感を感じない。 やや重いグローブを付けているだけのような感覚だ。 指を曲げてみたり、手首を捻ってみたりする。 やはり違和感はなく、自由に動いた。 ( ´∀`)「どうもな?」 ( ^ω^)「……ぴったりだお。完璧に」 ( ´∀`)「そりゃ良かったもな」 ( ^ω^)「何でここまでぴったりに作れたんだお? 手のサイズはおろか、指の関節の位置までぴったりだお」 ( ´∀`)「僕がプロだからだもな」 (;^ω^)「プロだからって、長さを図りもせずにこんなぴったりの物が作れるわけは……」 ( ´∀`)「細かい事は気にするなもな。 それよりも、その籠手の説明をするもな」 ( ^ω^)「……お、頼むお」 ( ´∀`)「その籠手は君の戦い方を見て作ったものだもな。 君は足はとてつもなく強いけど、腕の方はまったくと言って良いほど使えないもな。 そりゃあ“力”は全て足の方に行ってるから、当たり前なんだけど」 ( ´∀`)「でもそれだと、とてつもなく攻撃パターンが少なくなるもな。 それに、防御方法も。足だけで防御出来る攻撃ってのは多くないもな。 でもその籠手があれば、攻撃面も防御面もカバー出来るもな」 ( ´∀`)「殴る事は勿論、突進する時なんかも使えるもな。 かなり丈夫に作ってあるから、相手の攻撃を防御したりいなしたりって事も可能だもな」 ( ^ω^)「お? 防御も出来るのかお? 異能者の攻撃を?」 ( ´∀`)「もな。ただし出来るだけ、攻撃に真っ向からぶつかったり、高威力の攻撃を防御しない方が良いもな。 本来異能者の攻撃は、普通の装備品なんかでは受けちゃいけないものなんだもな。 相当丈夫に作り上げたとは言え、そのガントレットも、異能者の攻撃を何度も受ければ壊れちゃうもな」 ( ^ω^)「なるほど……だお」 ( ´∀`)「だから、それは決戦の時まで使わないでおいてほしいもな。 訓練で壊れちゃ、僕の苦労が水の泡だもな」 ( ^ω^)「お、分かったお」 ( ´∀`)「以上で説明は終わりだもな。では、今日のところはあでゅー」 ( ^ω^)(また妙な言葉を……) ( ^ω^)「お。さよならですお。これ、ありがとうございますお」 ( ´∀`)「いえいえ。大切に、上手に扱ってくれれば良いもな」 言い残して、モナーはどこか足早に去って行った。 不意に現れては、すぐに消えてしまう。 まるで嵐か台風の様だと思った。 ブーンは自分の手に装着されているガントレットに眼を落とす。 見事としか言いようがないほどに造り込まれたそれは、力が湧いてくるような感覚をもたらした。 自ずから発光しているのかと錯覚させるほど、美しい白銀の輝き。 綺麗だな、とブーンは素直に想った。 ( ^ω^)「ん?」 よく見ると、親指の付け根辺りに「曙光」と刻まれていた。 ( ^ω^)「何だお、曙光って」 考えてみるが、分からない。 ( ^ω^)「まぁ説明もされなかったし、特に重要な事でもないかお。 明日にでも、モナーさんに聞いてみるお」 呟いて、彼はレストランの方へと足を進めた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ギコとジョルジュは、ラウンジで食事を採っていた。 食事と言っても、彼らの前にあるのは少量のパンとサラダ、それと飲み物のみ。 しかし二人は、それすらも残しそうに見える。 ハードな戦闘の後は、どうも食欲が湧かなかった。 (;゚Д゚)「……食う気が起きねぇな、やっぱり」 呟きながら、くるみのパンを齧る。 麦の豊かな香りが鼻を抜け、くるみの欠片が歯でこりっと軽やかに砕けた。 しかしすぐに、コーヒーでそれを押し流した。 麦の香りもくるみの歯触りも、今のギコにとっては気持ちの悪いものでしかない。 ( ゚∀゚)「どうも、訓練の後はねー。 さっきからギコちゃん、コーヒーばっか減らしてるもんね」 (,,゚Д゚)「お前もな」 ( ゚∀゚)「俺は紅茶だもん。ふふん」 (,,゚Д゚)「飲み物の種類は関係ねぇだろ」 ( ゚∀゚)「あははー。まぁねー」 (;゚Д゚)「……ぐぅ。どうも食いきれる自信がねぇぞ」 ( ゚∀゚)「いや、苦しくてもこればかりは食べないと。 必要最低限の栄養だって言われたしさ」 (,,゚Д゚)「……腹が減ってるのに食べたくないってのは、ここ最近で初めて知った感覚だ」 ( ゚∀゚)「あー、俺っちもそうかも。 ショボンとの訓練でも、食欲は湧いてたんだけどね」 (,,゚Д゚)「ここでの訓練は、確かに強くなってるって実感は湧くんだが……過酷だよなぁ」 そこでようやく一つのパンを食べ終え、またコーヒーを一口。 そのカップを置いた時に視線に入ったパンとサラダを見て、彼は辟易した。 (;゚Д゚)「マジで食えってのか、これだけの物を」 ( ゚∀゚)「はーい、マジですねー。 残したらフサさんに説教されるよー?」 (,,゚Д゚)「あいつ変な所で口うるせぇんだよな。ウチの家族みてぇだ」 ( ゚∀゚)「家族? んー、三人家族だっけ」 (,,゚Д゚)「今はな。昔は兄貴がいたらしいけど」 ( ゚∀゚)「昔は? らしい?」 (,,゚Д゚)「俺が生まれてからすぐに、行方不明になったらしいんだよ」 ( ゚∀゚)「へー、初耳。……あ、もしかして悪い事聞いちった?」 (,,゚Д゚)「いーや。構わねぇ。俺自身、それを聞いたのは最近だしな。 いたらしい兄貴の話をされたところで、特に何も思わないな」 (;゚∀゚)「随分と淡白だね。兄貴の事を考えた事とかってないの?」 (,,゚Д゚)「ん。いや、生きてたら会ってみてぇとは思うが、まず生きてないだろ。 それに、生きてたところで、ウチの両親の血を引いてるんだ。 妙なとこで口うるせぇ、荒っぽい奴に決まってら。会ってもめんどくさそうだ」 ( ゚∀゚)「おーおー、言うねぇ。 妙なとこで口うるさい、荒っぽい男……おぉ、まさにフサさんだw 本当に兄貴なんじゃねぇの?w」 (;゚Д゚)「よしてくれ。ありそうで怖い」 ( ゚∀゚)「はははー。面白いじゃないか」 (,,゚Д゚)「……それよりもお前は食を進めろよ。さっきからあんまり減ってないぞ」 (;゚∀゚)「いや、これ以上ペース上げたらリバースする」 (,,゚Д゚)「……お前も、ギリギリだったのか」 (;゚∀゚)「かーなーりギリギリだよ。マジつれぇ」 (,,゚Д゚)「俺もだ。でもまだ半分以上あるんだよな、パンもサラダも。 ……絶対に食えないだろ」 ( ゚∀゚)「俺もそう思う。でも、この量を食えないってのはちょっと悔しくない? しぃさんとかツンさんとかでも、この二倍くらいは食べてんだし」 (;゚Д゚)「何で奴らはあんなに食えるんだ。尋常じゃねぇぞ」 ( ゚∀゚)「『慣れ』って奴じゃね? ほら、フサさんの言ってた話」 (,,゚Д゚)「『じきに身体が慣れて、食えるようになる。俺も昔は食えなかった』って話か。 ……あの話が本当だとは思えないんだよな、実際。 もう四日が経ったが、未だに全く食えねぇわけだし」 ( ゚∀゚)「いや、本当の話だと思うよ。 ブーンとか、もう結構食えるようになってるみたいだしさ」 (,,゚Д゚)「……あいつ、適応力あるよなぁ。すげぇよ」 ( ゚∀゚)「確かに、その辺は地味に尊敬出来るね。 でもブーンは『慣れた』って言うよりも、『慣らした』って感じだよね」 (,,゚Д゚)「吐き戻しそうになりながらも、無理矢理に食ってたもんな。 それも、フサと同じ量を。馬鹿じゃねぇのかと」 ( ゚∀゚)「いや、ブーンのやり方も一つの手ではあるよね。 少なくとも、俺はやる気にならないけどw」 笑って、ジョルジュはサラダに手を伸ばした。 新鮮なレタスにフォークが刺さり、瑞々しい音が弾ける。 それを口に運ぶと、彼はその音を楽しむかのように租借した。 口内に広がる独特の甘みと苦みに、ジョルジュは複雑な笑みを浮かべる。 ( ゚∀゚)「んー……サラダは結構食えるみたいなんだけどなー」 (,,゚Д゚)「やっぱパンが重いよな」 ( ゚∀゚)「重いねー。やっぱ流し込むしかないんじゃない?」 (,,゚Д゚)「……コーヒーの苦みが重くなってきた」 ( ゚∀゚)「紅茶派の俺勝ち組www」 (,,゚Д゚)「くそっ。もう一気にいっちまうか!」 言うと、ギコは凄まじい勢いでパンを口に含んだ。 そして、コーヒーで流し込む。 (,,゚Д゚)「んぐっ! んぐっ! んぐっ!」 ( ゚∀゚)「一気! 一気!」 ( ´∀`)「一気! 一気!」 (;゚Д゚)「んぐ……ッ!」 ( ゚∀゚)「おぉっ!? 詰まったか!?」 (#゚Д゚)「――――――ッ!!」 ( ´∀`)「お! 眼が本気モードになったもな!」 ( ゚∀゚)「行けるか行けるかーっ!?」 (*゚Д゚)「……っつはぁ! 飲んだぞ!!」 ( ゚∀゚)「行ったーっ!!」 ( ´∀`)「アンタが大将! アンタが大将!!」 ( ゚∀゚)「それは使い方違くね?」 ( ´∀`)「気にするなもな」 (,,゚Д゚)「よし。パンは食った。後は……!!」 ( ´∀`)「サラダだけもな!」 ( ゚∀゚)「サラダは流し込めないからね、頑張って食べるしかないよ!」 (,,゚Д゚)「よっしゃ、この勢いのまま行ってやるぜ!」 ( ´∀`)「良い心意気だもな! 男だもな! よし、行けもな!!」 (,,゚Д゚)「おう!!」 (;゚Д゚)「って、お前いつの間にッ!?」 (;´∀`)「い、いつの間に……!?」 ( ゚∀゚)「あんただよ」 (,,゚Д゚)「お前だよ」 ( ´∀`)「年上にはちゃんとした口の利き方をしろもな、下郎」 (#゚∀゚)(こいつ) (,,゚Д゚)「……で? 何か用か?」 ( ´∀`)「随分とドライもなね。もっと構ってほしかったもな。おじさんは寂しいもな」 (,,゚Д゚)「あんたの気が済むまで付き合ってたら朝になる」 ( ´∀`)「流石にそこまで遊ばないもな。誇大表現もほどほどにしろもな」 (#゚Д゚)(こいつ) ( ゚∀゚)「で、本当に何の用なのさ」 ( ´∀`)「まずはそのご飯を先に食べるもな。話はそれからだもな」 (,,゚Д゚)「……食べる勢いを一気に失くさせたのはどこのどいつだ」 ( ´∀`)「自分のミスを他人のせいにする事はとても簡単だもな。 でもそれをし続けてれば、君は成長出来ないもな。だから……」 (;-Д-)「……分かった。分かったから、ちょっと黙っててくれ」 ( ´∀`)「黙ってて『くれ』?」 (;-Д-)「黙ってて……ください」 ( ´∀`)「よろしいもな」 (#゚Д゚)(こいついつか殺してやる) 殺意を含んだ眼でモナーを睨むと、ギコはサラダを食べ始めた。 彼はジョルジュと違って野菜が苦手なようで、一口食べる度に顔をしかめる。 ( ゚∀゚)「頑張れギコちゃーん」 ( ´∀`)「君もさっさと食べるもな」 ( ゚∀゚)「……あーいよ」 返事して、渋々とパンに手を付けた。 パンはいくつかの種類を用意されていたが、しかし今のジョルジュが喜んで食べられるものは一つもない。 (;゚Д゚)「トマトだけは無理だ。絶対に無理だ」 (;゚∀゚)「ちょ、フランスパンとかナシでしょ。硬いって。食えないって。顎が粉砕骨折する」 ( ´∀`)「文句言わずにさっさと食えもな。さもないとフサ君呼ぶもな。良いのかもな?」 (#゚Д゚)(畜生!) (#゚∀゚)(こんにゃろう……!) 今度は二人の殺意が同時にモナーを捉えた。 対するモナーは楽しそうに笑って、「あと五分以内に食べ終えろもなー」と言うのだった。 五分後。 二人は与えられたノルマを完食していた。 しかし。 ( ゚Д゚)「…………………」 ( ゚∀゚)「…………………」 二人の顔から、表情は完璧に消え去ってしまっていた。 ( ´∀`)「ふむ、しっかり食べきったもなね。良い子だもな」 ( ゚Д゚)「…………………」 ( ´∀`)「さて、では話をさせてもらうもな―――って、聞いてるもな?」 ( ゚∀゚)「…………………」 ( ´∀`)「ふむ。イッちゃってるみたいだもなね」 呟いて、ポケットからごそごそと取り出した二つの物は、イチゴミルクだ。 紙パックのそれは、モナーの大好きな飲み物。 それを手に、モナーは二人に近付いていく。 そしてその飲み口にストローを刺して、二人の口元に運び――― (,,゚Д゚)「……今それを口にしたら、壮絶な勢いで吐き戻す」 ( ゚∀゚)「このタイミングで激甘な飲み物はないでしょ、常識的に考えて」 紙パックは、やんわりと押し返された。 ( ´∀`)「おや、生き返ったもな?」 (,,゚Д゚)「おかげさまでな」 ( ´∀`)「そりゃ良かったもな」 ちゅー、と音を経ててモナーはイチゴミルクを飲む。 その匂いと音を聞くだけで、ギコは込み上げる何かを感じた。 あっという間に二つのイチゴミルクを飲み終え、モナーは満足そうに頷く。 ( ´∀`)「さて、では話をするもな。ちょっと待って欲しいもな」 言って、モナーは足下にある麻袋を持ち上げた。 中には金属製の何かが入っているようで、袋をテーブルに乗せると重い金属音が鳴る。 (,,゚Д゚)「ん? 何だ、それ」 ( ゚∀゚)「物騒な音がしたけど。ガシャガシャーって」 ( ´∀`)「これを君達に渡しに来たもな」 言葉と同時に麻袋から取り出されたのは、二つの武器だった。 片方は、紅い長剣。 鉈のように幅広の刀身を持ち、その刃はやや反り返っている。 もう片方は、橙色の妙な武器。呼び方があるとすれば、『爪』 ナックルダスターのような持ち手から四本の鉤爪が伸び、かつ拳と前腕を護る為のプロテクターが付いている。 そして二つの武器は両方とも、身震いするほど美しく、鋭かった。 (;゚Д゚)「こ……これは?」 ( ´∀`)「君達の武器だもな。 赤い方がギコ君の、オレンジ色の方がジョルジュ君のだもな」 ( ゚∀゚)「……前言ってたアレ?」 ( ´∀`)「察しが早くて助かるもな。 そう、前言ってたアレ―――君達四人に作った武器だもな。 じゃあちょっと、装備して感触を確かめてみてほしいもな」 ( ゚∀゚)「ん、あいよ」 頷いて、それぞれ武器を装備する。 そして両者同時に、感嘆の音を漏らした。 (,,゚Д゚)「これは……すごいな」 ( ゚∀゚)「わお」 ( ´∀`)「どうもな?」 (,,゚Д゚)「何が、と言われると分からないが、しっくりくる」 ( ゚∀゚)「同じく。ずっと使ってきた物みたいに、違和感ってのがない」 ( ´∀`)「なるほど、そりゃ良かったもな」 (,,゚Д゚)「……どう作ったんだ? 何だ、このフィット感は」 ( ´∀`)「その剣の柄には、君の指に合うように窪みを入れたもな。 ジョルジュ君の爪には、指の部分やプロテクターの部分を君の指や腕に合わせたもな」 ( ゚∀゚)「うん? どうやって?」 ( ´∀`)「見て」 ( ゚∀゚)「見て?」 ( ´∀`)「もな」 (;゚∀゚)「……え?」 ( ´∀`)「だーかーら、君達の指とか腕を見て、それに合わせて作ったんだもな」 (,,゚Д゚)「見るだけで合わせた、だと? そんな事が出来る筈が……」 ( ´∀`)「そんな事が出来るのが、僕だもな。職人舐めちゃいけないもな。 それよりも、武器の説明するもなよ」 (;゚∀゚)「納得いかないけど……うん、お願い」 ( ´∀`)「ジョルジュ君のその武器は、君の反射神経を生かした戦い方が出来るようにしたもな。 攻撃を避けたところからの攻撃を、その爪で。 攻撃を往なしたり防御したりというのを、そのプロテクターでこなせるもな」 ( ´∀`)「また、相手の攻撃をその変幻自在な右腕で塞いでから、その爪でリンチという事も出来るもな。 相手の動きに合わせて用途を変えられる武器が、それだもな。 持ち手がナックルダスターだから、力も込めやすい。使い方次第では相当強いもな」 ( ゚∀゚)「へぇ……これ、そんなに良いものなんだ」 ( ´∀`)「もな。でも、出来るだけ攻撃メインで使ってほしいもな。防御は―――」 ( ゚∀゚)「わーってるよ。異能者の“力”を防げるのは、異能者の“力”だけだもん」 ( ´∀`)「む。君、実は結構頭良いもな? 見かけによらず」 (;゚∀゚)「見かけによらずって何さ。馬鹿に見えるってーの?」 ( ´∀`)「もな」 (;゚∀゚)「否定してよ」 ( ´∀`)「まぁそこはどうでも良いもな。それよりも、ギコ君の武器の説明だもな」 (#゚∀゚)ビキビキ (,,゚Д゚)「あぁ、頼む」 ( ´∀`)「君の“力”は遠距離も近距離もこなせる、超攻撃型の“力”だもな。 まぁ君の頭が良ければ防御にも使える“力”なんだろうけど、まぁそれは良いもな」 (#゚Д゚)ピキッ ( ´∀`)「君はその“力”を生かした戦い方―――相手に攻撃する暇を与えない猛攻をかけるべきだもな。 でも君の攻撃はいちいち大振りで隙も大きい。 そこでその刃が生きるもな」 ( ´∀`)「一撃と一撃の間を、その刃の斬撃で埋めるもな。 バランスの良い、扱いやすい刃だから、きっとそれが出来るもな。 それにいざとなれば、その幅広の刃は防御も受け流しも出来るもな」 (,,゚Д゚)「……確かにこれは、扱いやすそうだな。 今すぐにでも、これで戦えそうな気さえする」 ( ´∀`)「不器用な君にぴったりだもな」 (#゚Д゚)「何だその言い方は」 ( ´∀`)「でも、君は不器用だもな?」 (;゚Д゚)「……まぁそうだけどよ」 ( ´∀`)「やっぱり」 (,,゚Д゚)「やっぱり?」 ( ´∀`)「うん、やっぱり。君は僕の二人の友達に似ているんだもな。 変に熱血で、ちょっと不器用で……」 (,,゚Д゚)「……お?」 ( ´∀`)「……いや、何でもないもな」 (,,゚Д゚)「何だよ」 ( ´∀`)「良いから忘れろもな。しつこい男はもてないもな」 (;゚Д゚)「ちっ……何なんだよ」 ( ´∀`)「……そうだ。教え忘れるところだったもな。 その刃の名前は、『ロマネスク』 大切に使ってやってくれもな」 (,,゚Д゚)「ロマ……ネスク? 名前の意味は?」 ( ´∀`)「ヒ☆ミ☆ツ」 (#゚Д゚)「…………………」 ( ゚∀゚)「え、何? 名前とかあるの? じゃあじゃあ、この爪の名前は?」 ( ´∀`)「あるにはあるけど……ギコ君の『ロマネスク』ほどの意味はないもなよ? だからブーン君にも言わなかったんだけど」 ( ゚∀゚)「いーから。せっかくだから、愛着持ちたいの」 ( ´∀`)「……その爪は『尖鋭』だもな。意味はそのままだもな。 鋭く尖って―――敵という敵を貫き、引き裂き、道を斬り開く刃となれば良い、って」 ( ゚∀゚)「おぉ! 良い名前じゃないの! じゃあ、ブーンの武器とやらの名前は?」 ( ´∀`)「『曙光』」 (,,゚Д゚)「む……光輝いてみんなを照らせーってか?」 ( ´∀`)「そんな安直な意味の名前は付けないもな。君、どうしようもなく馬鹿もな?」 (#゚Д゚)ビキビキビキッ ( ´∀`)「『曙光』という言葉には、未来への希望という意味もあるもな。 勿論、光という意味も。 だからそれらを組み合わせて、未来への希望を導き出す光……という意味だもな」 言うた否や、モナーはくるりと身体の向きを変える。 ( ゚∀゚)「ん? どったの?」 ( ´∀`)「……僕は忙しいもな。君達と遊んでる暇はないもな」 (,,゚Д゚)「忙しいだと? 嘘を吐くなゴルァ。 さっきまで散々遊んでいたのはどこのどいつだ」 呟いて、ギコはモナーの服の裾を掴んだ。 止められたモナーは、鬱陶しそうにギコを見やる。 ( ´∀`)「放せもなー」 (,,゚Д゚)「何故逃げる」 ( ´Д`)「逃げてないもな。放せもな」 (,,゚Д゚)「だったらもう少しゆっくりしていけばどうだ?」 (#´Д`)「ええい! 放せ!! 放せもな、無礼者!!」 (,,゚Д゚)「放してほしい理由を素直に話せば放そう」 ( ゚∀゚)「何で逃げんのー? ねー」 (#´Д`)「何故ってそりゃお前! 恥ずかしいからに決まっとろうが!! 敵を貫きだの、希望だの光だのって、わしゃ何歳じゃち言う話じゃい!! そこで『まだここに留まれ』と!? そりゃ拷問ってもんじゃぞ!! 恥辱死するわい!!」 (;゚Д゚)「…………………」 唖然として、ギコは思わず服の裾から手を放した。 その隙にモナーは跳ぶようにして距離を取り、そしてそのまま走り行く。 最後に「あでゅー!!」と言う声を残して。 残された二人はしばらく沈黙して、 (,,゚Д゚)「……なぁ」 ( ゚∀゚)「はい」 (,,゚Д゚)「最後のあれは何だ? 方言か何かか?」 ( ゚∀゚)「いやー、違うでしょ。絶対に。 凄まじくいいかげんな、方言っぽい言葉の羅列じゃない?」 (,,゚Д゚)「そうか。じゃあもう一つ質問だ。 さっきのアイツは何だ?」 ( ゚∀゚)「さぁ? とりあえず、ギコちゃんが変なとこのスイッチ押しちゃったのは確かじゃない?」 (,,゚Д゚)「……俺のせいか?」 ( ゚∀゚)「きっとそうだよ。っつーかお願いだから俺のせいにしないで。 ヤだよ、俺っちのせいでいたずらおじさんがブッ壊れたとか」 (,,゚Д゚)「……俺の、せいか」 ボリボリと後頭部を掻いて、ギコは眼を細めた。 それは眠そうな、しかしちょっと楽しいものを見たかのような表情だった。 (,,゚Д゚)「まぁ、良いか。少しは、あいつに対する怒りも治まった。 それよりも―――飯食ったんだから、寝ようぜ。俺は疲れたよ」 ( ゚∀`)「あー、言われると確かに。 疲れたね。眠いや」 (,,-Д゚)「……よし、寝よう。じゃあな」 ( ゚∀`)「ん。おやすみ。ぐっない」 二人は手を振り、使っていた皿とカップを持って、それぞれの部屋へ行く。 ―――その手にはしっかりと、渡された相棒を持って。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ('A`)「……ふ」 自室。 短く溜め息を吐いて、ドクオはカップから口を放した。 カップに注がれている黒の液体は、いつも通りコーヒー。 しかしそれは安い缶コーヒーなどではなく、ブルーマウンテンのNo.1。 最高級のコーヒーだ。 ('A`)「噂通り、確かに良い物だな」 呟き、再度カップに口を付けた。 鼻から秀逸な香りが抜け、舌を繊細な味わいが撫でる。 飲み込めば、深くも軽やかな苦味が喉を滑り落ちた。 彼はそこでもう一度息を吐き――― ('A`)「だが、俺にはやっぱり合わねぇな」 最高級のコーヒーを、味わう事もせずに一気飲みした。 ('A`)「俺には缶コーヒーが一番だ。 変に背伸びした高級コーヒーじゃ、どうもダメらしい」 カップを叩きつけるようにテーブルに置き、そして傍らの缶コーヒーに手を伸ばす。 慣れた仕草で蓋を開け、そしてそれを口内に流し込んだ。 安っぽいコーヒーの香りが鼻を突き、思わず眉根を寄せそうになる苦味が舌を殴りつける。 さきほどの最高級のコーヒーとは比べ物にならない粗悪な味わい――― しかしドクオは、満足そうに頷いた。 ('A`)「背伸びをしない、自分らしさ。 素直な自分が、結局は一番なんだ。 コーヒーなんていう身近なものからそれを教わるとは、思わなかった」 まるで誰かに語るように彼は呟く。 そして缶コーヒーを、これも一気飲みした。 ('A`)「素直が一番だと言うのなら、言ってやろうじゃないか。 俺は仲間を、大切なものを今度こそ護りたい。その為なら、身を削ってだって敵を撃って討ってやる。 ……だがその為には友から譲り受けた奴らが必要だ」 ('A`)「俺は無力だ。独りでは、何も出来ない。 だがみんながいれば、何でも出来る。出来ないことなんて、俺にはない。 “削除人”達がいれば。ブーン達がいれば。ぃょぅがいれば。ショボンの想いがあれば」 ('A`)「だけど、まだ足りない。最後のピースが足りない。 相棒が―――まだ、この手にない」 そちらを見る事もなく、ゴミ箱に缶を投げ入れた。 そして深く息を吸うと、言う。 ('A`)「俺の相棒は、生き返ったか? モナー」 ( ´∀`)「ばっちりだもな」 いつのまにかそこにいたのか、ドアの前にはモナーがいた。 その両手には、二挺の銃。 一方は黒い銃身に銀の線が数本入り、 もう一方は銀の銃身に黒の線が数本入っている。 黒の銃の銃身には『Nero』と刻み込まれ、 銀の銃の銃身には『Silber』と刻み込まれている。 ドクオは何も言わずに振り返り、モナーを見つめた。 モナーはその視線に何を感じたのか、力強く頷き、手の中の二挺を差し出した。 ドクオも頷き、その二挺に手を伸ばす。 二挺に触れた瞬間、声が聞こえた気がした。 ドクオは、それに応える。 ('A`)「……おかえり、ギン。クロ」 言った瞬間、欠けていたピースがはまり込んだような感覚を覚えた。 身体に力が満ち、全ての細胞が疼く。 まるで手の中の二挺が、『戦わせろ』と言っているように思えた。 グリップを握り締める。 慣れ親しんだ太さ。安心する感触。 くるくると回して、ベルトの中にねじ込んだ。 無機物であるはずのそれは、しかし服越しに暖かさを伝えてくる。 ( ´∀`)「どうもな?」 ('A`)「あぁ……良い感じだ。クロとギンが、戻ってきた。 ―――ありがとう、モナー。礼を言っても言いきれない」 ( ´∀`)「礼には及ばないもな」 ('A`)「そうか。……でも、ありがとう。 それで、こいつらの中身は―――」 ( ´∀`)「勿論、強化してあるもなよ。君の依頼も取り込んだもな。 全体をバランス良く強化。その中でも、連射力を重点的に強化したもな。 連射力を強化する為に、色々と工夫もしてあるもなよ」 ( ´∀`)「まず、微々ながらも威力を落としたもな。 そうする事によって反動を減らし、かつ銃身へのダメージを減らしたもな。 これで連射性はかなり伸びたもな」 ( ´∀`)「また、銃の様々な所を硬いものにしたもな。 防御をする際に使うバレルを重点的に。 その他、連射性を高める為に何箇所かを硬くしたもな」 ('A`)「なるほど。それで……」 ( ´∀`)「分かってるもな。君の依頼通り、そっちの方も造り上げたもな。 親指を少し上げた所に、ボタンがあると思うもな。 そこを押せば、それぞれ新機能が出てくるもな」 ( ´∀`)「ネロが右手、ズィルヴァが左手で良かったもなね?」 ('A`)「あぁ、そうだ。だが、間違いが一つ。 ネロとズィルヴァじゃねぇ。クロとギンだ」 (;´∀`)「変なとこにこだわるなもな」 ('A`)「お前だって『名前は大事だ』っつってたじゃねぇかよ。 あんだけ作ってある武器一つ一つに名前を付けてあるとか、異常だぞ」 ( ´∀`)「武器を作る度に、名前の付け方に苦悩するもな」 ('A`)「……作る武器の数を減らすか、名前を付けないかすれば良いだろうに」 ( ´∀`)「両方無理な話だもな」 ('A`)「ま……良いけどよ」 呟いて、ドクオは腰元の二挺に眼をやった。 そしてどこか嬉しそうに、眼を細める。 ('A`)「もう一度、礼を言う。本当にありがとう、モナー。 こいつらを、もう一度戦わせてやれる。 今度こそ―――今度こそこいつらを、暴れさせてやれる」 ( ´∀`)「どういたしまして、だもな。 それじゃあ」 ('A`)「ん? あぁ。何か用でもあるのか?」 ( ´∀`)「クーちゃんにも刀を渡さなきゃいけないんだもな。 それに『偵察』もこなさなきゃいけない。多忙だもなー」 ('A`)「そんなに動いて大丈夫なのか?」 ( ´∀`)「傷は幾分か良くなってるし、傷に影響するような動きじゃないから平気だもな。 それに、『偵察』なんかをこなす時間があるのは僕だけもな。 君達には時間をいっぱいいっぱいに使って、強くなってもらわなきゃ困るもな」 ( ´∀`)「決戦までの時間は少ないもな。 それまでの間に、君達はやれるだけの事をやっている。 僕もやれるだけの事くらいはやりたいもな」 ('A`)「……そうか。無理するなよ」 ( ´∀`)「心配しないでも大丈夫だもな。 こう見えても僕は強いもな。何せ『VIPPER』だったもなよ? あ、『VIPPER』というのは―――」 ('A`)「知ってる。異能者に関する事件を取り扱ってたって組織『VIP』の構成員だろ? ずーっと前に、数人の異能者に壊滅させられたって話だな。 ……あんたが『VIPPER』だったとは、びっくりだがな」 ( ´∀`)「びっくりしてるように見えないもなw それにしても、君は本当に物知りだもなね。僕の方こそ、さっきからびっくりしっぱなしだもな」 ('A`)「さっきから?」 ( ´∀`)「ドクオ君、優しくなってるもな。すっごく。 僕の身体を心配してくれた時は、気でも狂ったかと思ったもな」 ('A`)「……何だそりゃ」 ( ´∀`)「ドクオ君、変わってきてるもな。 最初は人間かどうかも疑わしかったのに……」 ('A`)「馬鹿にしてるのか褒めてるのかはっきりしてくれ」 ( ´∀`)「半々ってところだもな。では、あでゅー」 ('A`)「……あいよ。じゃあな。さんきゅ」 ( ´∀`)「もなもなー」 頷いて、モナーは出て行った。 残されたドクオはしばらくそのドアを見詰め――― ('A`)「俺が変わってきてる……か」 不思議そうに、呟いた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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