2006/12/24(日)17:29
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです(第三話二)
75 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:28:34.20 ID:YgJwQrnO0
突然、音も無く、周りの景色がノイズのようなものに包まれる。
そして気がつくと、白髪の男は居なくなっていた。
しかも、窓の外の風景が先程まで明るかったのに、いつの間にか暗闇に染まっていた。
その窓の手前では二つの人影がある。
そこには先ほどの佐藤という男性と須名という女性が立っていた。
各々の手には試験管となにやら実験器具のようなものが握られている。
暫くの間二人は無言であった。
( )「……終ったよ。そっちはどうだい?」
川 ゚ -゚)「ああ、私の方ももう終わりだ。後は反応の結果を観察するだけだ」
突然、男性の方から口火を切った。それに女性の方が答える。
76 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:29:07.12 ID:YgJwQrnO0
( )「全くめんどくさい実験だよ。
教授もえらい無理難題を押し付けてくれたものだね」
川 ゚ -゚)「いつものことだ。気にする程ではない」
( )「…まったく、だからウチの研究室は人が居ないんだ」
川 ゚ -゚)「そうだな。しかし、君は好んでここに入ったのだろう」
( )「まあ…そうなんだけどね」
川 ゚ -゚)「なら、自業自得だ」
( )「…君はいつも一言多いよね」
川 ゚ -゚)「むぅ…そういう性格なんだから仕方ない」
( )「思ったことを口から考えなしに出す性格、直したほうがいいよね」
川 ゚ -゚)「…君も一言多いぞ。私と同じじゃないか」
( )「フフッ、違いないね。でも僕はもう少しオブラートに包むさ」
77 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:29:40.57 ID:YgJwQrnO0
テンションは低めで、二人とも冷静に語り合っているが、
その表情には自然と笑みをこぼれていた。
そして再び、周りの風景は切り替わる。
そこは、大半の闇と少しの光、そして車のエンジン音が占める世界。
周りは、家やアパート、マンションが立ち並んでいた。
そして僕が歩くその前で、先ほどの二人は歩いている。
川 ゚ -゚)「静かなものだな…」
( )「そうだね…」
( )「…僕はここ毎日夜遅く君と歩いているけど、どうなんだい?」
川 ゚ -゚)「…何がだ?」
( )「君みたいな年頃の女性っていうのは、
もっと華やかな生活を送ってるんじゃないかと思ってね」
川 ゚ -゚)「…華やかさ?私は別にそんなもの求めていないが」
78 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:30:40.27 ID:YgJwQrnO0
そう言うとおり、彼女には気品こそあれど、華美さといった類のものは見当たらなかった。
化粧っ気もなく、服装もジーンズに、白のハイネックのセーター、
その上に黒いジャケットを羽織っているだけだった。
しかし、その素朴さが彼女の魅力を引き出しているのかもしれない。
( )「食堂では聞いたんだけどさ、文学部らしい女子グループは、
今夜は、カラオケとか医学生と合コンとか言ってたんだよね。
君には浮いた話の一つもないのかい?」
川 ゚ -゚)「ふむ、君は私にカラオケが歌えると思うか?歌えても演歌くらいのものだ。
それに合コンなどというチャラチャラした雰囲気は嫌いだ」
川 ゚ -゚)「そういう君はどうなんだ?友人と遊びに行ったりしないのか?」
( )「…いま酷い事言ったよね。
僕には友人らしい友人が居ない事を知ってての言葉かい?」
川 ゚ -゚)「そうだと思って言ったんだが、何か?」
( )「…酷いよね」
79 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:31:12.80 ID:YgJwQrnO0
川 ゚ -゚)「君も同じだ。知ってて聞いたのだろう?」
( )「ばれてしまっては仕方ないね」
川 ゚ -゚)「ならば、言わなくても分かっているはずだ」
( )「そうだね。つくづく思うんだが、僕と君とは思考が似ている気がするよ」
川 ゚ -゚)「まっぴら御免だ」
( )「同感だね。僕もだよ」
そのように、悪口とも冗談ともいえない会話を聞いているうちに、彼らは一軒の家の前に差し掛かる。
80 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:31:40.54 ID:YgJwQrnO0
( )「クリスマスツリーだよね」
川 ゚ -゚)「クリスマスツリーだな」
二人の目の前には彼らの背丈ほども無いくらい小さいもみの木が置いてあった。
その枝々には色とりどりの電球が巻き付けられている。
川 ゚ -゚)「電気代がかかりそうだな。このくらいの規模だと、
消費電力が一秒当たり…」
( )「…君にはロマンチズムというものが、無いのかい?」
川 ゚ -゚)「何だ、それは?美味しいのか?」
( )「…君の冗談はつまらないよ」
川 ゚ -゚)「ならば、振るのはやめて欲しい」
81 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:32:21.19 ID:YgJwQrnO0
( )「…ちなみに、君はイヴをどう過ごすんだい?」
川 ゚ -゚)「イヴ?…ああ、24日のことか。
そういえば、家で飼っているマリモの形が歪んできたな。
多分マリモを丸める作業をしていると思う」
( )「…イヴに一人でマリモを丸める女子大生なんて見た事ないよ…。
僕はそろそろ君のジョークに突っ込みきれなくなるよ」
川;゚ -゚)「いや、本気だが」
(; )「…僕の思考では君の行動は測りきれないようだね」
川 ゚ -゚)「それも、君は充分承知しているはずだが?」
82 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:33:06.34 ID:YgJwQrnO0
( )「…うん。まあそうなんだけどね。
…ところで、君が良ければ24日にどこかに
行 か な い か?」
Σ川// -/)「…えっ!?」
終始冷静に言葉を返していた彼女が、急に動揺しているかのように見えた。
心なしかその表情は、赤くなっているようにも見れる。
(; )「いや、うん。丁度ね、
教授から貰った『人体の不思議展』のチケットがあってね。
その期限が丁度24日までなんだ。まあ…その…君の嗜好に合うかと思ってね。
僕は友達なんていないし、一緒にどうか…と思ったんだ」
そう投げかけるの彼の表情も、クリスマスツリーの電飾のせいか、赤く染まっているように見える。
83 名前:VIP皇帝[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:33:38.67 ID:YgJwQrnO0
川// -/)「むぅ…しかし、残念ながらそれは先週、観に行ってしまってな…」
(; )「………」
川// -/)「だがな…田代城なら…丁度行きたいと思っていたところだ…
そこならば、一緒に行ってやらんこともない…」
(; )「…本当に、君の嗜好は僕の斜め上を行く思考だよね」
川// -/)「その駄洒落も面白くないぞ…」
(; )「…偶々なんだけどなあ…」
84 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:34:16.10 ID:YgJwQrnO0
こうして、また僕の視界はノイズに包まれていく。そして、気づけば、そこは見慣れない風景だった。
アパート…だろうか?六畳間足らずの空間。
その狭い空間には所狭しと物で溢れていた。しかし、それは上手く整頓されている。
どうやら、その大半が書物で占められているようで、それが色々とジャンル分けされている。
『有機化学理論』『分子構造と反応』とか書かれた小難しいタイトルから、
『田代藩の歴史』『日本人とその文化』とかいう歴史物、
はたまた『デカルト』とか『虚無主義』とか哲学に触れるものなど、多数の書物で溢れていた。
そして、本棚以外のスペースには、水槽が一つ。そこには不揃いの形のマリモが浮かんでいた。
87 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:34:41.97 ID:YgJwQrnO0
川 ゚ -゚)「まあ…何だ。何か飲むか?」
(; )「いや…そもそもキッチンにコップを見かけなかったんだけど…」
川 ゚ -゚)「…心配ない。研究室から拝借したビーカーが何個かある」
(; )「結 構 で す」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ。蒸留水で洗浄は済ませてある」
(; )「そういう問題じゃないんだけど…」
川 ゚ -゚)「私はいつも使っているが平気だぞ」
(; )「…いや、どっちかというと、メンタル面な問題だよね」
川 ゚ -゚)「むぅ…仕方ないな」