後編二467 名前:後編 ◆azwd/t2EpE [] 投稿日:2006/11/19(日) 17:39:50.56 ID:zWgRdSp40歩き続けて、歩き続けて。 やがて、少し高みへ到達したりする。 そこから、見える景色が絶景とも限らない。 先の分からない道を歩き続け、それでも後退は許されず。 誰もが不安を抱き、そして躓く。 全て分かりながら歩ける道など、ないのだから。 恐らくもう、時計の針を戻そうとすることはない。 時計の針が戻っても、時の歩みは止まらない。 歩んだ道に遺した傷跡は、消えることはないのだ。 しかし、振り返って、傷跡を足跡に変えることはできる。 それが、過去への思い、未来への思いを具現化することにもなる。 日本に戻ると、空港で多くの人に出迎えられた。 拍手と歓声が鳴り響く。銀のメダルは首に掛けていて、皆がそれを見ているのが分かった。 人に囲まれて、歩きづらくなった。 疲れもあるし、早く、家に帰りたいのに。 報道陣も大勢いるし、物珍しさゆえの人も多く居ると思えた。 今この中に、本気で世界選手権の銀メダルを祝っている人が、何人いるのか。 そんなことを考えてしまっているのは、疲れのせいだけではないのだろう。 しかし、歩きにくくても、躓きかけても、支えてくれる人がいたら。 手を繋いで、共に歩いてくれる人がいたら。 470 名前:後編 ◆azwd/t2EpE [] 投稿日:2006/11/19(日) 17:43:21.04 ID:zWgRdSp40 (*゚ー゚)「ギコ君!」 そっと手を握って、混乱に乗じて人ごみから連れ出してくれた。 (*゚ー゚)「待っててくれてたの?」 ( ,,゚Д゚)「一緒に帰ろう」 (*゚ー゚)「うん!」 ぎゅっと握り締めて、歩き出した。 理由もつけようがないほどの、安心。 この人となら、と、無心が教える。 ( ,,゚Д゚)「大丈夫?」 痛みは感じなかったのに、何故か重心が右に傾いた。 ギコ君が両手で支えてくれていて、転ぶことはなかった。 (*゚ー゚)「ありがとね」 ( ,,゚Д゚)「ん。行こう」 重なる手のひら。歩き出す。 数歩、前に出て、振り返った。 二人分の足跡が、寄り添うように並んでいた。 笑って、再び前を向いた。 溢れ出す言の葉を、頭の中で楽しみながら。 476 名前:後編 ◆azwd/t2EpE [] 投稿日:2006/11/19(日) 17:46:04.40 ID:zWgRdSp40 繋いだ手と、重なる道と。 銀の指輪と、銀の勲章と。 お墓参りと、重なる手と。 友の皮肉と、桜草一輪と。 大きな背と、笑む横顔と。 眠れぬ夜と、優しい声と。 刻んだ傷と、続く足跡と。 支え合いと、助け合いと。 十時十分と、愛でし子と、そして、繋がり行く道と、手と。 果てぬ空へと。 (*゚ー゚)しぃの時計の針は戻らないようです ~The End~ ジャンル別一覧
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