三十七章二木と木の間を縫うように走る、二つの影がある。 その瞳は横手の雪色の壁を見詰め、何かを見つけ出そうと揺らいでいた。 ( ^ω^)「っ! ここだお!」 その壁に何を見付けたのか、ブーンはその場で急停止した。 彼の後ろの影―――ツンも、たたらを踏みつつ止まる。 ξ゚△゚)ξ「……あったの?」 ( ^ω^)「ほら、あそこ」 鉄柵の向こうの、雪色の壁を指差す。 一見、そこには何もないように見えるが―――僅かに盛り上がっている箇所があった。 それこそが、モナーが発見した扉だった。 ( ^ω^)「時間になったら、この柵を越えてあの扉から進入するお。 ツン、残り何分で突入だお?」 ξ゚△゚)ξ「……残り二十分よ」 ( ^ω^)「おっ。まだ意外と時間あるみたいだおね」 ξ゚△゚)ξ「そんな事ないわ。二十分なんて、すぐよ。 特にこういう時は、時間の流れは早く感じてしまうものよ?」 ( ^ω^)「戦いへの覚悟が出来てるなら、二十分は長いくらいだお。 ツンも、覚悟は決めてきたお?」 ξ゚△゚)ξ「そりゃあ、そうだけど」 ( ^ω^)「だったら、やっぱり時間は十分にあるお。 そうだお?」 ξ゚△゚)ξ「……むぅ」 どこか納得がいかないように唸るツン。 それを横目に、ブーンは傍にあった大木に寄りかかった。 そして、腰を下ろす。 ( ^ω^)「ふぅ」 ξ゚△゚)ξ「……随分とリラックスぶっこいてんじゃない」 ( ^ω^)「二十分も気ぃ張ってたら、無駄に疲れちゃうお。 それに、慣れないバイクに乗って、疲れちゃったお。 休まなきゃ」 ξ゚△゚)ξ「…………………」 ( ^ω^)「ツンも、バイクに乗って疲れたお? 休むべきだお。ほら」 自分の隣を指して、ブーンは微笑んだ。 ツンは呆れたように溜め息を吐き、しかしブーンの誘いに乗った。 大木まで歩み寄って、ブーンの隣に腰を下ろす。 その頬は、心なしか僅かに紅潮していた。 ( ^ω^)「ふぃー」 ξ゚ -゚)ξ「……ようやく、始まるのね」 ( ^ω^)「そうだおね」 ξ゚△゚)ξ「戦うの、怖くないの?」 ( ^ω^)「もう、覚悟したから。 まったく怖くないと言えば嘘になるけど、でもあまり怖くはないお。 今の僕にとって本当に怖いのは、敗けて全てを失ってしまう事だけだお」 ξ゚ -゚)ξ「……そう」 ( ^ω^)「ツンは、怖いのかお?」 ξ゚△゚)ξ「ちょっぴり、ね。 いざ戦いとなれば平気なんだけど、戦う前は、やっぱり」 ( ^ω^)「じゃあ、深呼吸すると良いお!」 ξ;゚△゚)ξ「え?」 ( ^ω^)「深呼吸だお! 怖い時とか緊張する時は、深呼吸するのが良いんだお! 深呼吸すると、心が落ち着いて怖くなくなるお!」 ξ;゚△゚)ξ「そんな単純な……」 ( ^ω^)「良いから!」 ξ゚ー゚)ξ「……プッ。 分かったわよ。するわよ」 口元に笑みを浮かべつつ、大きく息を吸った。 鼻孔を草木の香りが満たす。 吸った息を吐いてみると、少しだけ、恐怖は薄れているように感じた。 勿論、深呼吸のおかげではない。 ブーンの明るさが、彼女の緊張を解かしたのだ。 ( ^ω^)「どうだお?」 ξ゚ー゚)ξ「少しだけ楽になった……かもねw」 ( ^ω^)「おっ! それは良かったお!」 ξ゚△゚)ξ「……そういえば、ブーン。一つ、訊いて良い?」 ( ^ω^)「おっ、何だお?」 ξ゚△゚)ξ「私達が初めて会った時―――私があなたを殺そうとした時。 何であなたは、私を殺そうとしなかったの? 何で私を敵として憎まなかったの? 何で私を助けたの? 放っておけば、死んだのに」 ( ^ω^)「戦ってる時、ツンが哀しそうな顔をしてたからだお」 ξ゚△゚)ξ「え?」 ( ^ω^)「そもそも、人は殺したくないお。殺さないでいられるなら、殺したくない。 あの時、僕は殺さないで良い状況にあったから殺さなかった。 君が哀しそうな顔をしたから、何だか助けたくなった。それだけだお」 (;^ω^)「……実際、僕もよく分かっていないし、覚えてないんだお。 あの時は無我夢中で、気付いたらああしていただけだから」 ξ゚△゚)ξ「……そう。でも、あの時はごめんね」 ( ^ω^)「良いお。いや良くないけど。でももう、気にするなお。 君にとっては、やりたくなくてもやらなきゃいけない事だったんだから」 ξ゚ー゚)ξ「……何か、ごめんね。ありがと」 ( ^ω^)「いえいえ」 ξ゚△゚)ξ「……ねぇ、ブーン。あなたは、この戦いに勝ったらどうするの?」 ( ^ω^)「お? そりゃあ、あの日常に戻るだけだお。 異能者としての自分は忘れて、あの楽しい毎日に戻るんだお」 ξ゚△゚)ξ「あ、そっか」 ( ^ω^)「ツンは?」 ξ゚△゚)ξ「……分からないなぁ。私、『こういう世界』しか知らないから。 生きる事と戦う事、殺す事に必死で。『そちらの世界』は、何も知らないの。 何をしようとか考えた事もないし、どうしたいとも思わなかった」 _, ,_ ( ^ω^)「うーん……そうかお」 腕を組み、眉根を寄せて唸る。 そして何かに気付いたかのように声を漏らすと、笑顔で頷いた。 ( ^ω^)「じゃあ、戦いが終わったら考えると良いお!」 ξ゚△゚)ξ「え?」 ( ^ω^)「この平和な世界での、自分の未来を! 何かやりたい仕事を考えるでも良し、知らなかった世界を歩き回ってみるのも良し! 過去の事なんか全て忘れて、『この世界』で新しい自分の道を歩めば良いお!」 ( ^ω^)「……そうだ、僕達の学校に来てみればどうだお?」 ξ;゚△゚)ξ「な、何を……」 ( ^ω^)「みんな癖があるけど、良い奴ばっかりなんだお! きっと気に入ると思うお! 来てみると良いお! きっとツンだったら、すぐに友達が出来るお! 人気者になれるお!」 ξ;゚△゚)ξ「…………………」 あまりにも突然な提案に、絶句。 そして。 ξ゚ー゚)ξ「……プッ。 そうね、それも、考えておくわ」 おかしさに、笑ってしまった。 ( ^ω^)「おっ! それが良いお!」 ブーンの笑顔を見て、ツンは少しだけ、自分の未来について考えてみる。 あちら側の世界は、何だか楽しそうだ。 あの世界に、私は行けるのだろうか。 行けるとするなら、私はあちらの世界で何をするのだろうか。 学校とやらに行ってみるのも、楽しいかもしれない、と。 ( ^ω^)「……さて、ツン。残り何分で突入だお?」 ξ゚△゚)ξ「えっと……あっ。あと五分ってところよ。 思った以上に時間経ってるわね」 ( ^ω^)「んじゃ、準備するかお」 ξ゚△゚)ξ「えぇ」 立ち上がる。 それからブーンは、声を漏らしつつ大きく伸びをした。 ( ^ω^)「うー……ん。さて!」 ブーンの足元から、異音が響く。 まもなくその両足は異形のそれへと変化し、白銀の光を放った。 同時、ツンの背中から巨大な翼が広がる。 柔らかに風を撫ぜたその翼はブーンの“力”をコピーし、その翼もまた、白銀に輝いた。 ξ゚△゚)ξ「気、引き締めてよね」 ( ^ω^)「分かってるお」 答えつつ、ブーンはガントレットをもう一度しっかりと装着し直す。 そして足を軽く動かすと、「よし」と笑った。 ξ゚△゚)ξ「今頃は姉さん達が突入してる頃ね。 ……大丈夫かしら」 ( ^ω^)「心配ないお。クーと、ドクオが組んでるんだから。 あの二人のタッグに勝てる奴なんてそうそういないお」 ( ^ω^)「それよりも、僕達だお。 逃げ出してきた奴らの始末……僕らの動きは重要だお。 一人でも逃がしてしまえば、戦いはここで終わらなくなってしまう」 ξ゚△゚)ξ「……頑張らないとね」 ( ^ω^)「だお」 ツンは手首の時計に、ちらりと眼をやる。 そして、頷いた。 ξ゚△゚)ξ「ブーン」 ( ^ω^)「行くかお」 ξ゚△゚)ξ「えぇ」 言葉と同時、二人の姿が地上から姿を消した。 二人の姿は、上空。 背の高い鉄柵の、更に上。 ( ^ω^)「おぉっ!」 上空から、凄まじい勢いで着地する。 土煙が舞い上がり、着地したところの地面が少し陥没した。 ξ゚△゚)ξ「気を抜かないでね。 今この瞬間に、そこから現れるかもしれないんだから」 ふわりと着地しながら、ツンは言う。 地面には、彼女の翼から抜け落ちた羽根が突き刺さっていた。 ( ^ω^)「OKだお」 ξ゚△゚)ξ「……突入、三十秒前」 二人の瞳が細められ、身体に力が込められる。 その姿は、さきほどまでの二人とはまったく違うものだった。 ξ゚△゚)ξ「……突入っ!!」 ( ^ω^)「おっ!!」 地を蹴り、扉に一瞬で接近。 そして、思い切り蹴り飛ばした。 扉はあちら側にひしゃげ、吹き飛んで行く。 ブーンはその勢いに乗ったまま、中へと突入していった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 基地の西側、鉄柵に沿って歩く二人。 その足取りは急ぐでもなく、その表情もまた、焦りなどは感じていないように見える。 ( ´∀`)「ここだもな」 言って、唐突に足を止めた。 彼の後ろにいるジョルジュは、胡乱気に眉根を寄せる。 ( ゚∀゚)「ここ? は? どこにあるってのさ」 ( ´∀`)「あそこあそこ」 鉄柵の向こう側、雪色の壁を指差す。 そこにあるのはやはり、扉の形に薄らと盛り上がりのある壁だ。 ( ゚∀゚)「おっ、あったあった。 それにしても、巧妙に隠したね。 ズルい事を考えるもんだねぇ、“管理人”も」 笑う。 その笑みは、既に鋭い。 驚くほどの鬼気が、その笑みには込められていた。 ( ゚∀゚)「さて、モナーさん。あと何分で突入だい?」 ( ´∀`)「あと十分だもな」 (;゚∀゚)「俺達、ゆっくりしすぎたんじゃね? 残り十分で突入とか、心の準備が!」 ( ´∀`)「もう出来てるんだから、良いじゃないかもな」 ( ゚∀゚)「うん、まぁ、確かにねー」 ( ´∀`)「心の方の準備が出来てるんだから、後は装備の確認だけ。 実際は五分もあれば十分だったんだもな」 ( ゚∀゚)「あ、そういえばさ、今回はどんな武器持ってきたの?」 ( ´∀`)「メインは薙刀だもな」 ( ゚∀゚)「あ、背負ってるその長いやつね。 ……ん? メインはって?」 ( ´∀`)「近接専用に、小太刀を二本。 それにナイフをいっぱいと、あと手榴弾とか」 (;゚∀゚)「……そんな物騒なもん、どこに隠し持ってんだか」 ( ´∀`)「秘密だもなー」 ( ゚∀゚)「む。……ま、良いや。それよりも、今日は頼むよー? 相棒として、頼りにしてんだかんねー?」 ( ´∀`)「勘弁してほしいもな。 人間のおっさんである僕をこき使うのは良くないもな。 異能者であり若者である、君こそが働くべきだもな」 ( ゚∀゚)「おっさんは物騒な武器を振り回したりしません。 それに、あんたに限っては人間も異能者もないでしょw 異能者相手に互角以上に戦う人間なんて、あんたくらいなもんだwww」 ( ´∀`)「そんなことないもな! 探せば、きっともっといる筈だもな!」 ( ゚∀゚)「はーいはい。ところで、さ。おっちゃん。 おっちゃんはさ、この戦いが終わったらどうすんだい?」 ( ´∀`)「昔馴染みの友人のところに行くもな」 ( ゚∀゚)「へぇ、良いじゃん! どこに住んでるんだい?」 ( ´∀`)「大都会シベリアの、高ーい高ーいところにいるもな」 ( ゚∀゚)「え? 何々? 偉い人なの?」 ( ´∀`)「ふふーん。秘密だもな。 ジョルジュ君は?」 ( ゚∀゚)「ん? そりゃ、前と同じく学校生活さ。 ただ……そうだね。以前よりも、素直に生きてみようかな」 ( ´∀`)「それが良いもな。君は確かに、ちょっと自分を作り過ぎてたもな。 今は作ってないようだけど、あんな生き方だといつか息が詰まるもな」 (;゚∀゚)「……待って。作ってた事、気付いてたの?」 ( ´∀`)「そりゃあね。世の中の兄貴舐めちゃいけないもな」 (;゚∀゚)「っちぃー……こりゃあ予想外だ」 ( ´∀`)「もなもな。素直に生きるのが良いもな」 ( ゚∀゚)「そうさせてもらうよ。……さて、そろそろ突入かな?」 ( ´∀`)「えーっと……おおう。あと三分だもな」 ( ゚∀゚)「よし、突入準備だね」 鉄柵に向かって、足を進める。 その右手は異音を発し―――まもなく橙色に色が変わった。 同時、その手は巨大な鉤爪を備えた異形の腕に変化。 鉄柵に辿り着くや否や、それは大きく振り抜かれた。 ( ゚∀゚)「おりゃっ!!」 その腕に喰らいつかれた鉄柵は、耳障りな音を立てながら湾曲する。 鉄柵の一部はへし折れ、そこにはちょうど、人が一人通れるくらいの空間が出来上がった。 ( ´∀`)「グレイト」 ( ゚∀゚)「よーっし! 行こうか!」 発見した扉の前まで、のっしのっしと歩む。 モナーは薙刀を構え、ジョルジュは左手に装備した『尖鋭』を軽く一振り。 ( ゚∀゚)「突入まであと何秒だい?」 ( ´∀`)「あと十秒だもな」 ( ゚∀゚)「よーっしゃ! 行くぞ!!」 ( ´∀`)「もな!」 ジョルジュが走り出した。 まもなく扉に到達し、右腕を振るう。 硬い素材であるはずの扉はいとも簡単に引き裂かれ、そして蹴破られた。 扉の残骸を足蹴に、二人は基地の中へと突入していった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ミ,,゚Д゚彡「残り時間は?」 (*゚ー゚)「あと十分」 ミ,,゚Д゚彡「妥当な時間だな。丁度一服出来る」 傍らに生える木に、寄りかかった。 そしてコートの中に手を差し込み、煙草を取り出す。 慣れた仕草で口に咥え、そして火をつけた。 (,,゚Д゚)「煙草、辞めろよ。身体に悪い」 ミ,,゚Д゚彡「うるせぇ。人の決めた生き方に口出すな」 (#゚Д゚)「……人が心配してやってるというのに」 ミ,,゚Д゚彡「無用な心配だ。大体な、煙草ってのは吸い始めたらもう遅ぇんだよ。 吸わせたくないってんなら、そうだな。 ずーっと昔にタイムスリップでもして、煙草を吸い始めようとしてる時の俺をどうにかしてこい」 (#゚Д゚)「出来るか!」 ミ,,゚Д゚彡「そりゃあな。出来たらバケモンだ」 (#゚Д゚)「こんの野郎……ッ!!」 (;゚ー゚)「こらこら、戦闘前から戦ってんじゃありません。 落ち着いて」 (,,゚Д゚)「……ちっ」 舌打ちして、ギコは左手に握った赤い刃『ロマネスク』を振るった。 風は鋭く切り裂かれ、ギコはその感触に満足げに頷く。 そしてもう一度振るおうとして――― ミ,,゚Д゚彡「辞めておけ」 フサが、煙と共に言葉を吐き出した。 (,,゚Д゚)「お?」 ミ,,゚Д゚彡「無駄に体力を浪費するな。 この後、どれだけ戦うか分からないんだからな。 この十分で、出来得る限り体力を回復させておけ」 ミ,,゚Д゚彡「エンジンをかけるのは、もっと後で良い。 今はただ休んで、戦る気だけを練っていろ。 ―――死にたくないなら、な」 口に咥えたままの煙草から立ち上る煙。 それをぼんやりとした眼で見詰めながら、彼は言った。 ミ,,゚Д゚彡「休憩は取れるところで取っとかないといけねぇもんだ。 十分……いや、一分程度の休憩が、後々大きく響く。 だから、休め。この後はずっと、殺し合いだ。休む事は出来なくなる」 それは、経験だ。 放浪していた時期、反異能者組織から逃亡していた時期に学習した、経験。 敵ばかりの世界で生き抜くために学習した、生存の為の知識。 対するギコは一瞬、きょとんとした顔で立ち竦む。 そして数秒後 (,,゚Д゚)「……あ、あぁ。分かった」 頷いて、ロマネスクを腰に下げた。 フサは「ふん」と鼻を鳴らし、煙草を大きく吸う。 しぃはそれを見て、笑った。 (*゚ー゚)「相変わらずだね、フサさんw」 ミ,,゚Д゚彡「…………………」 煙を吐きつつ、フサは顔を背ける。 その様子を見て、ギコは首を傾げた。 (,,゚Д゚)「何だ? 相変わらずって」 (*゚ー゚)「あぁ。あのね、フサさんはいつも……」 ミ,,゚Д゚彡「余計な事を言うんじゃないぞ」 (*゚ー゚)「……だってさ。ダメだって」 (,,゚Д゚)「いつも、何なんだよ」 ミ,,゚Д゚彡「うるせぇ。黙って休んでろ」 (,,゚Д゚)「あーん? ……意味分からねぇな。畜生」 ミ,,゚Д゚彡「分からなくて良い。休んでろ。 ―――いや」 そこで、一際大きく煙草を吸い込んだ。 そして、指先で短くなった煙草を弾き飛ばす。 ミ,,゚Д゚彡「残り三分。突入の準備をしろ」 煙を吐きつつ、言った。 ぼんやりとしていた筈のその瞳は、鋭い獣の眼へと変化していた。 (,,゚Д゚)「残り三分? ……何故分かる」 ミ,,゚Д゚彡「煙草一本、七分だ。不安なら、しぃに聞いてみろ」 (,,゚Д゚)「……どうなんだ?」 (*゚ー゚)「確かに、残り三分だよ」 ミ,,゚Д゚彡「という事だ。準備をしろ」 寄りかかっていた木から、背を離す。 そして、異音が三つ、重なった。 ギコの右腕は、龍のそれを思わす紅き異形へ。 しぃの左腕は、神々しいまでに黄金色に輝く異形へ。 そしてフサの両足は、禍々しい魔獣の両足に。 ギコは持ってきたバッグの中身を確認すると、腰に下げた『ロマネスク』を抜く。 しぃは胸に手を当てると、未来への希望を呟いて頷いた。 そしてフサは、新たな煙草を咥えて、火を付ける。 ミ,,゚Д゚彡「よし。じゃあ、しぃ」 (*゚ー゚)「おっけー」 異形の左腕を、鉄柵に向ける。 同時にその掌に光が集束し――― (*゚ー゚)「はっ!」 そして甲高い音と共に飛び行ったのは、光線だ。 鉄柵は光線に蹂躙され、焼き切られる。 そしてまもなく、そこにはぽっかりと穴が開いた。 (*゚ー゚)「完了っ!」 ミ,,゚Д゚彡「上出来だ」 煙をたなびかせて、フサはその穴を通過する。 それにしぃが続き、ギコが続いた。 ミ,,゚Д゚彡「さて、しぃ。時間になったら、この扉にも穴をブチ開けてもらうわけだが……。 残りどれくらいだ?」 (*゚ー゚)「ん、もう一分ないね。……今、残り四十秒」 ミ,,゚Д゚彡「よし」 満足げに頷くと、フサは眼の前の雪色の施設を睨みつける。 そして、がちがちと歯を噛み合わせた。 僅かに赤い瞳、そして伸びた犬歯は、彼が『獣』であるという事を証明していた。 ミ,,゚Д゚彡「時間は?」 (*゚ー゚)「あと十秒」 ミ,,゚Д゚彡「準備は?」 (,,゚Д゚)「完璧だ」 ミ,,゚Д゚彡「覚悟は?」 (,,゚Д゚)(*゚ー゚)「「 決まってる 」」 ミ,,゚Д゚彡「よし、じゃあ―――行こうか」 高音。そして発射される光線。 扉はまるで紙のように焼き払われ、そして大穴が開けられる。 三人の戦士が、その穴に飛び込んで行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 最初に放たれた音は、風が切り裂かれる音。 それに間髪置かずに放たれる、連続した銃声。 そして、「伏せろ!!」というドクオの叫びだった。 伏せた二人の頭上、ちょうど首があった位置を『何か』が凄まじい勢いで斬り裂いて行った。 その内いくつかは壁に刺さり、火花をあげて動きを止める。 顔を上げたクーは、壁に刺さったそれを見て驚愕の呻きをあげた。 川;゚ -゚)「カード……だと!?」 ('A`)「鉄のカードとか、そういったものだろ。 それより―――」 川 ゚ -゚)「あぁ、分かってる!」 声と同時、二人は弾かれたように横に転がる。 一瞬。二人が伏せていた位置が粉々に爆ぜた。 床を粉砕したのは不可視の刃。濃密な風で作られた刃だ。 二人は間を置かずに立ち上がる。 そして、クーは右腕を、ドクオは左腕を全力で振り抜いた。 響きは軽いものと、金属質の硬いもの。 クーが砕いた物は風の刃で、ドクオが弾いた物は金属のサイコロだ。 ('A`)「……どうも。やってくれんじゃねぇか。ミンナ」 ( ゚д゚ )「今回も殺すつもりでやったのだがな。 まだ、甘かったか」 ('A`)「良いライン行ってたと思うぜ。 あの時の俺だったら、確実に死んでたからな」 ( ゚д゚ )「なるほどな。短期間の内に、余計に厄介になったわけだ」 ('A`)「そういう事だ」 クロでミンナに標準を合わせながら、ドクオは相手の人数を確認する。 相手は三人。ミンナに、流石兄弟の二人だ。 厄介な相手だ、と、内心で舌打ちをした。 ( ´_ゝ`)「おや、『こちら側』は二人しかいないのか?」 川 ゚ -゚)「……他の四人はどこにいる」 ( ´_ゝ`)「おいおい、私の質問は無視か? まぁ、良いが」 川 ゚ -゚)「他の四人はどこだ? 答えろ!」 ( ´_ゝ`)「そりゃあ、クー。決まっているだろう?」 兄者の口元が、邪悪に歪む。 ( ´,_ゝ`)「お前のお仲間の相手をしているだろうさ」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 突入した勢いが、停止した。 何故ならば。その理由は簡潔。 そこに敵が存在したからだ。 (;^ω^)「プギャー……!?」 ( ^Д^)「……よぅ、ブーン」 廊下の真ん中に佇んで、静かに言うプギャー。 しかしブーンは、彼に尋常でない戦慄を覚えた。 ξ;゚△゚)ξ「……ブーン。あいつ」 (;^ω^)「分かってるお」 違う。 何かが違う。 ついこの前までのプギャーとは、何かが違う。 それは言うなれば、纏う雰囲気だろうか。 これは……以前のように、容易く圧倒出来るプギャーのものではない。 いや――― 人間が纏う雰囲気では、ない。 ( ^Д^)「どうした? いつものように、突っ込んでくれば良いじゃないか」 プギャーは眼だけを笑みの形に歪ませて、両腕を広げた。 (;^ω^)「お前……何があったお?」 ( ^Д^)「……へぇ、気付いたか?」 (;^ω^)「誰でも気付くお」 ( ^Д^)「そうか。まぁ、良いや。 今は気にするなよ。お楽しみって奴さ」 異音が響く。 変化が起きる箇所は―――左腕のみ。 鎌へと変化した左腕を一閃して、プギャーは笑った。 ( ^Д^)「まずは、これだけで相手してやるよ。 遠慮はいらねぇ。二人でかかってこい」 (;^ω^)「プギャー! お前……!」 ( ^Д^)「俺に何があったか? それは、戦って、俺を圧倒すりゃ分かる事だよ。 ……否応にでも、な」 そして、プギャーが走り出した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ( ゚∀゚)「……うん、いないね」 気合いを入れて突入したものの、しかしその通路には誰もいなかった。 モナーは胡乱気に眉根を寄せたが、しかし気は抜かないまま言う。 ( ´∀`)「もしかしたら、今すぐにでもこの通路に現れるかもしれないもな。 気は抜かない方が良いもな」 ( ゚∀゚)「そりゃ分かってるけどさ。……どうする?」 ( ´∀`)「中央に向けて、進入するもな。 その際に敵が来たら、潰す」 ( ゚∀゚)「おっけー」 全身の筋肉を撓めつつ、通路を先へと進む。 やはり敵は現れず、それどころか足音や声すら聞こえない。 ( ゚∀゚)「どういう事かな?」 ( ´∀`)「……不自然。いや、不可解だもな」 と、その時。 二人は同時に足を止めた。 ( ゚∀゚)「……モナーさん」 ( ´∀`)「うん。分かるもな」 ( ゚∀゚)「ピアノの音……?」 聞こえてきたのは、軽やかなピアノの音だった。 首を傾げつつ、足を進める。 するとやがて、一つの部屋に辿り着いた。 ピアノの音は、そこからのもののようだ。 ( ´∀`)「……開けるもなよ」 ジョルジュは頷きで返し、眼を細める。 そしてその眼は、ドアが開かれるのと同時に見開かれた。 眼に入るのは、様々な色だ。 多種のギターの、多種な色。 壁に立てかけられた巨大な鋏の、黒と銀。 ソファとテーブルの、橙。 そして、巨大なグランドピアノの黒と、それを弾く橙の頭髪だ。 ジョルジュ達が部屋に入っても、演奏は止まない。 その曲調はどこか物悲しいそれだ。 しばらくその演奏は続き―――そしてやがて、止んだ。 ( ゚∀゚)「……おい、ハイン。どういうつもりだ?」 从 ゚∀从「はっは。今の曲を、お前達への鎮魂歌にしてやろうかとな」 椅子から離れ、壁に立て掛けた鋏を手にする。 そしてそれを二つの歪剣に分けると、その刃をそれぞれジョルジュとモナーに向けた。 (;゚∀゚)「……やっぱり、戦り合うことになるわけだな。あんたとも」 从 ゚∀从「当り前まえだろ? ジョルジュ。 お前、何か勘違いしてんな」 嗤う。 それは楽しそうな―――しかしどこかに引っかかりのある笑みだ。 从 ゚∀从「私は“管理人”で、あんたはその敵だ。 前にあんたと色々あったっつっても、そこは変わらねぇんだよ。 今から私はあんたを殺しにかかる。あんたは私を殺しにかかる。それだけだ」 (;゚∀゚)「くっ……」 歯を噛み締めて、ハインを睨みつけた。 ハインはそれを無視して、モナーに向かう。 从 ゚∀从「改めて―――ようこそ、“管理人”の家へ。 そして、さようならだ。あんた達は、ここで終わりだ」 ( ´∀`)「終わるのはお前だもな、ハイン」 从 ゚∀从「っは。ほざいてろよ。 すぐにその目玉抉り出して、脳漿ぶちまけてやる」 そして、三人が同時に動き出した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ミ,,゚Д゚彡「……いないな」 突入したフサ達は、そこに敵がいない事を確認する。 (,,゚Д゚)「あぁ。どういう事だ?」 ミ,,゚Д゚彡「さぁな。ただ少なくとも、ここの近くに敵はいない。 鋭敏化したこの嗅覚が、敵の臭いを感じ取ってないからな」 (*゚ー゚)「……姉さん達のところに、敵全員が居るとかって事はないよね? 大丈夫だよね? ……私達はどうするべきなの?」 ミ,,゚Д゚彡「知らん。何にしても、足を進めるしかないんだ。 行くぞ。気は緩めるなよ」 (,,゚Д゚)(*゚ー゚)「「 了解 」」 慎重に、しかし迅速に足を進めた。 ややこしい造りをした“管理人”の基地を、しかし迷うことなく進んでいく。 心配からか、しぃの表情に余裕はない。 フサは何か嫌な予感を感じているのか、苦い顔だ。 ギコはといえば、戦る気に瞳を剣呑に輝かせるばかりだ。 そして、広めの部屋に三人が辿り着いた、その時だ。 「待ってたよ」 聞き覚えのある声が、三人の耳に届いた。 しぃとフサは緊張に身を硬め、どこからの声か特定しようと周囲を見渡す。 対してギコは一瞬、自分の耳を疑い、そして脳を疑った。 その顔から、表情が消える。 瞳の中の光は弱々しく揺らぎ、光を失くした。 全身の筋肉が弛緩し、喉からは掠れた息が漏れる。 ( ゚Д゚)「今の声は……」 「やぁ、久し振り。……僕だよ、ギコ君」 果たして、部屋のあちら側に姿を現したのは――― (´・ω・`)「ショボンだよ」 眼の前で死んだ筈の、あのショボンだった。 戻る 目次 次へ |