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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第八話

5 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:37:48.94 ID:GYhvZpJ60
第8話 口下手な引き篭もり 勇気の欠けた自殺志願者

宵闇が夜暗に変わる。

空に星は無いだろう。何せ、今日は曇り空だ。

(*゚ー゚)「……じゃあ、私は寝てもいいのかなあ」

一見しただけでは、何かが起こったようには見えない。
だが、実際。
事は始まり、終わったのだ。

(*゚ー゚)「なんかすごい眠いんだけど」
川 ゚ -゚)「別に構わないと思うが……今は、フリーのはずだ」
(*゚ー゚)「ん……それじゃ」

またも、しぃは事務机によじ登る。

そこが、彼女にとっての寝床となったらしい。

(*゚ー゚)「おやすみい」
川 ゚ -゚)「……」

6 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:38:30.93 ID:GYhvZpJ60
( ,,゚Д゚)「……眠い」

ぽつ、とギコが呟いた。

( ,,゚Д゚)「俺も寝ていいか?」

クーが、無言で頷く。

( ,,゚Д゚)「……」

壁を背にギコは座ったまま目を閉じる。

川 ゚ -゚)「私も寝ようか……」

クーも独りごちた。

7 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:39:22.15 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「……この状況でよく眠れるわよね」

ξ゚△゚)ξ「目の前で人が死んだっていうのに。おかしいわよ……」

完黙の空間と化した空き部屋は恐怖心を煽り立てる。
ツンは、ブーンの傍で佇んでいた。
その場にいることに特別な理由は無い。
ただ、ツンはブーンが一番まともであると認識したのだ。
殺すことにためらいを持ち。
殺したあとに悲壮を得るブーンが。
ただ、彼も異質であることには変わりない。

ξ゚△゚)ξ「……」

ξ゚△゚)ξ「ねえ、あんた」
( ゜ω゜)「……」

8 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:40:09.64 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「あんた、確かブーンって言うんだよね」
( ゜ω゜)「……」
ξ゚△゚)ξ「……」

茫然としているブーンは一言も口にしようとしない。
彼が何を考えているのか、知る由も無い。

ξ゚△゚)ξ「……はあ」

ため息を落とす。

ξ゚△゚)ξ「ここ、パソコンないよね……」

ξ゚△゚)ξ「……」

9 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:42:07.43 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「あんたさあ。ちょっとは喋ってよ」
( ゜ω゜)「……」

ξ゚△゚)ξ「黙ってたら、怖いじゃん」
( ゜ω゜)「お……」
ξ゚△゚)ξ「ほら。何でも話とか、聞いてあげるから」

ツン。
年上の貫禄を見せてあげたいお年頃。
ブーンはのそのそと身体を動かし、体育座りのような格好をつくる。
そして、ツンを見上げた。
引き篭もりとカウンセラー、様相を比喩するならこの表現が適している。

ξ゚△゚)ξ「……これから、どうなるんだろうね」

11 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:44:42.90 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「って、まだ何も始まってないのよね」
( ゜ω゜)「これから……」
ξ゚△゚)ξ「これからあんたは……」
( ゜ω゜)「お……」

ξ゚△゚)ξ「し、しぃとか羨ましいよね」
( ゜ω゜)「……」
ξ゚△゚)ξ「な、何も感じないっていうか……楽しんでるみたいで」
( ゜ω゜)「そんなことないお!」
ξ゚△゚)ξ「!」
( ゜ω゜)「羨ましくなんか無いお! 僕は、僕はこんなの嫌だお! 楽しむなんてまっぴらだお!」
ξ゚△゚)ξ「……」

12 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:45:36.16 ID:GYhvZpJ60
気付くのが遅れた。
ツンは後悔する。
自分は想像以上に口下手なのだ。
コミュニケーションなど、文字同士でのやりとりばかり。
家族以外の、自分に向けられた声を聞くのは久々なのだ。

聞き役に回るなど到底不可能な話だった。

( ゜ω゜)「……」
ξ゚△゚)ξ「……ごめん」

13 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:46:25.30 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「私さあ、高校の頃から引き篭もり始めたの」

聞かれもしないことを話し始める。
なぜなのか。
わからない。

ξ゚△゚)ξ「三年なんて、始業式しか出てない……よくある話だよね」

( ゜ω゜)「……」

ブーンにも聞き覚えがあり、見覚えがある。
中学時代に一人いたのだ。不登校の女生徒が。

ただ、その女が何故不登校になったのか。
推測するに易かった。

14 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:47:34.54 ID:GYhvZpJ60
所謂いじめだ。
原因は身体的コンプレックス。
それまでのナルシスト全開な性格に嫌気の差した人間も多かったのだろう。
いじめの波は瞬く間に嵐と化した。

終息するとき、その女は不登校になった。

極めて順当な成り行きだった。

そこまで考えて再度ツンを見上げる。

視界は明晰ではないが、辛うじて確認できる彼女の顔は、
若干鋭い印象はあるものの、許容範囲に十分収まる美人である。

インプレッションにおいては、彼女が不登校であるとはどうにも思い難い。

ξ゚△゚)ξ「……どうかした?」

彼女の問いかけに慌てて首を振る。

16 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:49:06.84 ID:GYhvZpJ60
一方のツンも考えていた。
こんな話をして、自分は何がしたいのだろうと。

ξ゚△゚)ξ「ま、そ、そんなわけだからこのごろあんまり人と話したことがなくて……ね」

ξ゚△゚)ξ(……あぁ、そうか)

ξ゚△゚)ξ「さ、さっきは変なこと言ってごめん」

ξ゚△゚)ξ(結局……私、言い訳したかっただけか)

( ゜ω゜)「お……」
ξ゚△゚)ξ「?」
( ゜ω゜)「ぼ、僕も言いすぎたお……ご、ごめんだお」
ξ゚△゚)ξ「……バカ」
( ゜ω゜)「お?」
ξ゚△゚)ξ(なんで謝るのよ……)

18 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:51:12.73 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「……それにしても、皆一斉に寝ちゃったよね」

それぞれの人物の間には溝があるように思えて仕方ない。

ξ゚△゚)ξ「あんた、眠らないの?」
( ゜ω゜)「……ちょっとだけ、眠いお」
ξ゚△゚)ξ「じゃあ、寝たら?」
( ゜ω゜)「……」

それには答えず、ブーンは膝に顔を埋めた。

ξ゚△゚)ξ「……」

ξ゚△゚)ξ「おや……すみ」

19 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:51:56.35 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「……」

眠気が無いといえば嘘になる。
だが寝たくない。
なぜかはよくわからない。
先ほど暴漢に襲われたから、ではないのはわかっている。

ξ゚△゚)ξ「……寝場所が変わると眠れないとか?」

口に出してから理解する。

そういえばここ数年間、自分のベッド以外で寝たことが無い。

20 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:53:06.95 ID:GYhvZpJ60
ξ゚△゚)ξ「無駄に神経過敏になってんの……」

怒りを含めたツンの声色。
誰に対してでもない。
自分に対する怒りだ。

ξ゚△゚)ξ「……キモいよね」

いつか、誰かに言われたことを自分で言ってみる。

ξ゚△゚)ξ「……キモいよ」

ξ゚△゚)ξ「……死ねばいいのに」

ξ゚△゚)ξ「来ないでよ……あっち行けよ……」

自分を責めて何になるのだろう、と。
言いながら、涙を流しながら、考える。

・・・

・・



21 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:54:56.01 ID:GYhvZpJ60
目を閉じて0.93秒で睡眠につくなんてことができるのはメガネのアヤトリ名人ぐらいである。

ブーンにそんな珍技ができるわけもなく、目を閉じてもしばらくは外界の音と接していた。
ツンの声も聞こえていた。

一つの疑問が解けた。
ツンが不登校になった理由も、どうやらいじめにあるらしい。

古今東西、一つの事象が発生する原因など限られているということだろうか。

そこで、不意にドクオの顔が浮かんだ。

彼もいじめられていた。
それでも不登校になることなく、学校に来ていた。
そして最終的に、自殺しようとした。

22 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:55:37.32 ID:GYhvZpJ60
強かったわけではないだろう。弱かったのだ。
何かが欠落していたのだ。

そう考えて、ふと。
ブーンは思う。

自分は何を呑気に、殺した相手の検証などをやっているのだろう、と。

狂気は順調に段階を踏んで、進行中である。

そのうち考えるのが面倒になって、睡眠に没頭することにした。

眠れないと思っていたが、意識はすぐに消えてなくなった。

・・・

・・



24 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 21:56:16.37 ID:GYhvZpJ60
( ・∀・)「準備は完了……と」

( ・∀・)「後は夜明けを待ちましょうか……」

( ・∀・)「……」

( ・∀・)「あひゃ」

・・・

・・



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