四十章二从#゚∀从「だが、やるしかないわけだ。良いじゃねぇか。その自信、得物ごと叩き折ってやるよ」 ( ´∀`)「望むところだもな。出来るのなら」 その言葉に弾かれたかのように、ハインの足音が高く床を叩いた。 一気に接近していく。だがやはり、攻撃範囲に入る前に薙刀が振るわれた。 間一髪、横に身をズラして避ける。そして一歩を踏み、鋏を突き出した。刃先はしかし、空を切る。 モナーは接近された分を退いていた。そしてそこから、薙刀を振るう。 ハインは苛立たしげに呻きを漏らし、その刃を鋏で受ける。 とんでもない重さの衝撃に、僅かに上半身が揺られた。 从#゚∀从「逃げやがって、畜生が……!!」 ならば、と身を護るように鋏を構える。そのまま突進した。 数瞬ごとに叩き付けられる衝撃に耐え、掠る薙刀の刃先に血を撒き散らす。 だが距離は縮まった。鋏は届く。逃げる時間なんて与えない。 防御に使った鋏を振り上げ、容赦なく振り落とす。 だがそこで捉えたのは硬質。横に構えられた薙刀が、鋏の刃を受け止めていた。 ハインはすぐに鋏を引こうとしたが、しかしそんな間もなく、押される。 薙刀を横に構えたまま、モナーは前進を始めていた。 迫る薙刀の柄に身を押される。僅かに体勢を崩したところで、鋏を構える間もなく薙刀が振るわれた。 後退せざるを得なかった。一歩を素早く退き、そこから跳ぶようにして距離を取る。 それでも薙刀の刃は彼女の頬を浅く捉えた。頬に斜めに細い傷が入り、つっと赤い液体が零れる。 ( ´∀`)「……今のを避けるとは。流石だもなね」 从#゚∀从「そいつぁ皮肉か? 馬鹿にしてんのか」 ( ´∀`)「いやいや、純粋な称賛だもな。僕は今、首を飛ばすつもりだったもな」 とんとん、と首に指を当てる。 从#゚∀从「あぁそうかい。随分と自分の技術に自信を持ってんだな」 ( ´∀`)「当たり前だもな。僕は自分の力を信じている。信仰してると言って良いもな。 君を打ち破れると、信じてやまないもな」 少しおどけたような口調に、ハインは歯を噛んだ。 ふざけやがって。すぐにでも、お前のその汚い戦り方を叩き潰してやる。 奴の戦い方は分かっている。受け身だ。 自分の攻撃を待ち、薙刀のリーチに相手が入り込み次第、猛攻を仕掛ける。 そして自分の鋏の攻撃範囲に入る前に巧みに距離を取り、そうしつつも攻撃の手を止めない。 突進すれば、薙刀の柄で押し返される。そして自分の体勢が崩れると同時に、命を狩りにかかる。 おそらくは、突進以外の方法を以て接近しても、何らかの方法で距離を取らされるのだろう。 また、『柄で押し返される』というのを分かった上で行動しても、きっと別の方法で押し返される。 受け身の相手は厄介だ。 敵方の動きを見た上で動けるので、反応出来る速ささえあれば、防御は勿論の事、攻撃も仕掛けられる。 所謂カウンターだ。モナーは防御と攻撃と回避を、巧みにこなしていた。 ならば。奴のスタイルを叩き潰すのはどうしたら良いか―――。 そんな事を考え始めると同時、事態は動き出した。 ( ´∀`)「何を考えてるもな?」 呑気な声を発しながら、彼は接近を始めていた。 ハインは一瞬、狼狽し、次の一瞬には激昂する。 どこまでも人を馬鹿にしたように動きやがって、と。 その心中を察したように、モナーが口を開く。 ( ´∀`)「そろそろこちらからも行かせてもらうもな。君に、僕の攻略法は与えない」 それにハインが言い返す間もなく、彼は必要な距離を詰め切った。 ハインのリーチの外から、薙刀が振るわれる。 一歩を退いて回避した。その一歩を、モナーは即座に踏破。更に連撃を加えていく。 退いた分だけ詰めてくる。だがやはり、鋏の攻撃範囲に入るような接近はしない。 从#゚∀从「クソが!!」 大きく一歩を退いて、モナーが詰め切ってくる前に鋏を構える。 振るわれる薙刀を、弾き飛ばしてしまえ。そうしてしまえば、リーチの長さも何も関係ない。 それから薙刀を構え直す時間を与えず、すぐさま距離を詰めて、戦えぬようにしてしまえば良い。 間もなく、モナーがハインを捉える。 薙刀が振るわれた。 ハインはそれに、鋏を叩きつけて――― しかし弾き飛ばされたのは、ハインの持つ大鋏の方だった。 手を抜けた大鋏は、そう遠くない位置の床に突き刺さる。 空間が一瞬、止まったように感じられた。 从#゚∀从「っつ……!!」 手に鋭く痺れが走る。 何だ、今の衝撃は。そんな事を考える暇はなかった。 止まった空間が動き出す。振るわれたばかりのモナーの薙刀が、振り上げられていた。 咄嗟に橙の腕で受ける。途轍もない衝撃が、腕から全身に伝わった。 重過ぎる。何だこの重さは。何故、こんなにも。 そこで気付く。受けた腕に、浅いが傷が入っている。それほどの威力だという事に、ハインは信じられない想いがした。 だがそれどころではない。鋏を回収しなければ。 両腕のリーチでは、薙刀にとても対抗出来ない。防御の一手になってしまう。 そこでまたも叩き付けられる薙刀を腕で受けつつ、ハインは鋏へと走った。 飛び込むようにしてその柄を掴んで引き抜き、停滞なくそれを上に構える。 直後、上方から叩き潰さんとするような衝撃。身体を支えている脚が、僅かに叫びをあげた。 从#゚∀从「―――なるほどな」 今の一瞬、見えた。モナーの動きだ。 何て事無い。奴は、薙刀という武器の特性をとことん利用しているだけだった。 この衝撃の正体は、放ち得る限りの力を凝縮した結果だ。 身の動かし方、遠心力とてこの原理、そして使い手自身の腕力。それらが合わさってとんでもない破壊力を発揮している。 それ故に軌道は単純なそれとなり、変化させる事は難しくなる。筈。 だがモナーはその欠点を、柔軟で慣れきった自身の動きでカバーしていた。 ハインは後退し、ならば、と構える。 力比べといこうじゃないか。 モナーはやはり距離を詰め、渾身の力を込めて薙刀を振るう。 ハインはそれに対して、やはり渾身の力で応えた。 回転、それによる遠心力。異能者の腕力。今度は鋏が離れないよう、しっかりと掴む。 (;´∀`)「く……!」 从#゚∀从「ッ!!」 壮絶な金属音。眼に痛い輝きが生まれた。 結果、弾かれたのは―――薙刀の方だった。 モナーの顔が驚愕に歪み、ハインの口元が鋭く笑みを浮かべる。 ハインはそこで、流れを掴み取ったことを肌で感じた。 モナーは少なからず狼狽している。最大の攻撃方法が真正面から破られたのだ。 恐らくは、戦い方を変えてくるだろう。変えざるを得ないのだ。 自ずからではなく、変えざるを得ないから戦い方を変える。これは、後手に回ったということだ。 さきほどまではハインが後手だった。逆転だ。 この勢いで攻めたてろ。相手が後手の内に、慣れぬ前に、決着を付けてしまえ 从#゚∀从「らぁああぁあぁあぁぁあぁッ!!」 咆哮をあげ、鋏を連続して振るった。 大剣の如き質量を持つ鋏は重く、しかし鋭く空間を刻みつけていく。 モナーは退きつつ、それを受けた。だが逃れられない。退いた分を、ハインが素早く詰めているせいだ。 圧倒的な速さと力による、まさに猛攻だった。 さきほど見せたモナーの猛攻とは、言葉は同じでもまったく種類が違う。 彼の猛攻は技術だった。考え抜かれ、研ぎ澄まされた攻撃方法で、彼はハインを追い詰めていた。 だが彼女は違う。暴力的で感覚的で、圧倒的だった。 モナーの攻撃が的の中心を射るようなものだとすれば、ハインの攻めは的ごと粉砕するようなそれだった。 異能者の腕に振るわれる大鋏は速く、次々と翻っていく。 強化された感覚や肉体は、人間であるモナーを容赦なく攻め立てていく。 彼女は異能者と人間の間にあるどうしようもないものを、これでもかと利用して戦っていた。 (;´∀`)「こんなん、ずるいもな……!!」 咆哮をあげて迫る彼女に、控え目に不平を漏らした。 化け物らしく、異能者らしく戦う彼女に、その不満は妥当と言える。 だが対するモナーも、ただの人間と呼ぶには語弊があるように思える。 そもそも、人間は異能者に対抗出来るものではないのだ。 人間は異能者の戯れのような動きにも抵抗すら出来ずに殺され、 だからこそ異能者による殺人事件などはとてつもない数の死傷者が挙がる。 数人、数十人でかかってようやくどうにか出来るか出来ないか、そういう世界だ。 ならば、一人で、しかもかなり強靱な異能者とほぼ対等に戦っているモナーは、果たして「ただの人間」と形容出来るだろうか。 モナーは攻め寄られながらも、慌てる事無く応じていた。 薙刀を縦横無尽に振るい、ステップを踏む彼は、舞っているようにも見える。 圧倒的な力を受けるではなく、薙刀を回転させて流していた。 間髪置かず叩き付けられる鋏に対しては、石突きや柄で受け、薙刀はまたも回転する。 ハインの動きに柔軟に対応する薙刀は、しかし防御のみで終わらない。 モナーはその状況にあって、攻撃までもを繰り出していた。 防御しつつ、時折、薙刀の回転を防御から攻撃にシフトさせている。 薙刀という武器は刃物であり、しかし鈍器の面も持ち合わせている。 刃という扱い方も出来れば、棍としての使い方もある。 攻撃部位は刃だけに留まらず、石突きや柄、言ってしまえば全てが攻撃部位になる得物だ。 当然、柄や石突きによる攻撃も、刃と同じく威力は高い。 ハインはそれを受ける、あるいは避ける事を強要される。 (#´∀`)「もなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」 从#゚∀从「させるかよ!!」 モナーは流れを掴もうと、連撃を仕掛けようと動く。 だがハインはそれをさせんと猛攻の手を強める。 結果、状況は変わらず、ハインの優位が続いた。 どこまでも危うい、ともすれば一瞬で形成が逆転しそうな戦闘だった。 双方の力は拮抗しており、もはや攻めとも守りとも取れぬ応対が続く。 その状況の瓦解は、緩やかにやってきた。 从#゚∀从「はっ!!」 叩き付けた大鋏が、同じく叩き付けられた薙刀によって弾かれる。 僅かにそこに出来上がった隙。しかしそこに、モナーは付け込まなかった。 攻撃に出る事もなく、依然として防御の構えを保っている。 从#゚∀从「……!?」 不審。ハインは攻撃を再開しながらも、モナーはどうしたのかと思案した。 何かを狙っている? 決定的な隙を探している、か? 横薙ぎにした鋏。一歩を軽く引いて避けられる。 モナーはそこで素早く距離を詰めようという動きを見せて―――しかし、やはり退いて防御の構えを作った。 从#゚∀从「はっ。なるほどな」 ハインは悟る。 相手は疲弊してきている、と。 異能者と人間の違いに、肉体の再生力の差がある。 それは疲労などに関しても同じで、同程度の運動をしても、異能者と人間では疲弊の具合がまるで違う。 つまりこの場でモナーが疲弊するのは当然なのだ。 ハインほどの人間を前にして、これほど肉体も精神も擦り減るような戦闘を繰り広げて、疲弊しない筈がない。 人間の、しかも肉体の全盛期を超えた者がそこまでやれる事だけでも僥倖だ。 ハインの体勢が変わる。 大鋏を両手から右手だけに持ち換え、腰の位置を高くした。 力よりも、速さに重みを置いたスタイルだ。軽くステップを踏む。 一気に、加速した。 从#゚∀从「おらおらおらおらおらおらおらおらおらっ!!」 (;´∀`)「ぐっ……!」 駆け、右手で握る鋏を叩き付けていく。 威力はもう大して必要がない。最低限で良い。 薙刀を弾き飛ばす必要はなくなった。 時折、別角度から迫る薙刀は左腕で受ける。重さは、先程まではなかった。 右腕で斬撃を振るいながら、左腕で受け、そして蹴りを放っていく。 モナーは鋏だけでなく、脚にも注意を払わなければならなくなった。 从#゚∀从「どうしたよ、モナー。人間の意地だとか何だとか抜かしておいてそれか! そんなんでモララーを止められると、それどころか、あいつのところまで辿り着けると思ってんのか!! 所詮口だけか!? 自分で言ったことに、責任くらい持てねぇのかよ! 悔しくねぇのか、コラ!!」 モナーはそれに対し、苦い表情を浮かべる。 苦笑を浮かべたかったのだが、状況からして笑えなかった。 ジョルジュはと言えば、ハインのその言葉を妙に感じていた。 ( ゚∀゚)(……モナーにかける言葉にしては、どうも不自然だな。 何で敵に発破かけてるんだ。戦意を削るでもなく、昂らせてどうする) なら別の意味があるのか、と考える。 しかし言葉をそのまま捉える限り、別の意味は思い浮かばない。 何だ、と眉根を軽く寄せた時、ハインの表情が眼に入った。 怒り、焦っている表情―――しかし今は、そこに他の感情も入り混じり、乱れていた。 どこか哀しげで、辛そうに見える。ジョルジュの頭に、ふと思考が生まれた。 ( ゚∀゚)(あるいは、意味は変わらず、自身に向けた言葉……かね) 頭を振り、そんな思考を振り払う。 どうしてか、自分はハインに味方するような、肯定するような思考をしてしまいがちだ。 奴は敵だ。情が移りかねないような事を考えるべきではない。 それに、そこに至るには飛び過ぎている。 ありえない話じゃないが、根拠に欠けている。 忘れよう。今は戦線復帰が最優先だ。 力を込める。大分、痛みは薄れていた。もう少しだ。 从#゚∀从「らぁっ!!」 鋏を袈裟掛けに振り下ろしながら、一歩を踏む。 モナーは薙刀で鋏を受け、身体を斜めに傾がせた。 直後、掠るようにして、跳ね上げられた脚が上方へ抜ける。 だが息を吐く間もなく、脚を払われた。 体勢が崩れ、しかし倒れてしまう前に、薙刀の石突きで床を突く事で身を持ち上げる。 体勢を立て直し、そこでモナーは踏み込んだ。 薙刀を鋭く突き込む。銀の煌めきはハインの喉目掛けて突き進み、しかし後方へ抜ける。 ハインは身体を僅かに横にズラし、首を傾げただけで、それを回避していた。 やはり、遅くなってきてしまっている。奥歯を噛む。 だが悔しがってる間もなかった。ハインが動いていた。 避けた薙刀の柄を掴み、それを引っ張りつつ踏み込んでくる。 柄が掴まれている為に、逃げられない。 薙刀を放せば良いことなのだが、しかしモナーは一瞬、そこで躊躇してしまった。 その一瞬の間に、ハインが距離を詰め切る。 从#゚∀从「消えろ!!」 咆哮をあげ、至近距離で大鋏を横薙ぎにする。 間一髪のところで、しゃがんで回避した。 だが直後、その腹を蹴り上げられる。 (;´∀`)「がっ!」 僅かに身が持ち上げられ、そこで更に回し蹴りが来る。 堪え切れず吹き飛んだ。鈍い痛みが腹に残る。 すぐさま立ち上がって、薙刀を握り直した。蹴られたおかげというべきか、距離は取れている。 从#゚∀从「チ、外したか」 ハインは苛立たしげに言葉を漏らす。 そして追撃の体勢を見せ――― ( ゚∀゚)「おっと、お待たせ」 声。そして姿が、モナーの横に並んだ。 モナーの表情に安堵が広がる。 (;´∀`)「本当に、待ち侘びたもな。遅いもな」 ( ゚∀゚)「ごめんごめん。でもそのおかげで、大分良い感じになったよ」 ( ´∀`)「ならそれだけの働きを期待するもな」 言葉に、ジョルジュは本気で嫌そうな顔をした。 (;゚∀゚)「えー」 ( ´∀`)「えーじゃないもな」 会話を聞くハインの表情が、とうとう怒りに染まった。 充血した瞳を鋭く細め、歯を剥く。握り締められた拳が軋んだ。 口からは毒言が漏れている。焦っているのにどうしようも出来ない自分が何よりも腹立たしかった。 そんな彼女を見て、ジョルジュが言う。 ( ゚∀゚)「お待たせ、ハイン。これで二対一だ」 从#゚∀从「待ってねぇよそのまま野垂れ死ねゴミ野郎。 二対一だ? んなもん関係ねぇ。何も変わらねぇよ」 ( ゚∀゚)「へぇ? おじちゃん一人に危なげだった割には、随分と自信満々だね」 口の端を吊り上げ、言った。 从#゚∀从「……テメェは挑発するしか能がねぇのか。 良いから来いよ。二人まとめて叩っ斬ってやる」 ( ゚∀゚)「そいつぁ楽しみだ!」 声を上げると、彼は駆けだした。少し遅れてモナーが続く。 対するハインは大鋏を分解。二本の歪剣にして、二人に相対した。 ( ゚∀゚)「容赦はしないからね!!」 最初に打ち合ったのは、橙の右腕と黒の歪剣だった。 会話を聞くハインの表情が、とうとう怒りに染まった。 充血した瞳を鋭く細め、歯を剥く。握り締められた拳が軋んだ。 口からは毒言が漏れている。焦っているのにどうしようも出来ない自分が何よりも腹立たしかった。 そんな彼女を見て、ジョルジュが言う。 ( ゚∀゚)「お待たせ、ハイン。これで二対一だ」 从#゚∀从「待ってねぇよそのまま野垂れ死ねゴミ野郎。 二対一だ? んなもん関係ねぇ。何も変わらねぇよ」 ( ゚∀゚)「へぇ? おじちゃん一人に危なげだった割には、随分と自信満々だね」 口の端を吊り上げ、言った。 从#゚∀从「……テメェは挑発するしか能がねぇのか。 良いから来いよ。二人まとめて叩っ斬ってやる」 ( ゚∀゚)「そいつぁ楽しみだ!」 声を上げると、彼は駆けだした。少し遅れてモナーが続く。 対するハインは大鋏を分解。二本の歪剣にして、二人に相対した。 ( ゚∀゚)「容赦はしないからね!!」 最初に打ち合ったのは、橙の右腕と黒の歪剣だった。 袈裟掛けに振り下ろされたショートブレードの右腕が、跳ね上げられた黒の歪剣によって受けられる。 そして引く間もなく、黒色が素早く翻った。喉目掛けて、空間を撫で切りにする。 ジョルジュはそれを、知覚する前に回避。間髪置かず追撃を仕掛けてくる銀色は左腕の爪で受けた。 そこで舌打ちを漏らし、ジョルジュの前からハインの姿が消える。 直後、ジョルジュの目の前を青の流線が両断した。軌跡は、ハインの身に僅かに届かない。 (#´∀`)「逃がさないもなっ……!!」 更に踏み込む。 薙刀による刺突。ハインはそれを後退しつつ、銀の歪剣で受け流した。 その剣筋の流れで、黒と銀を合わせる。金属音が一つ響いて、二本の歪剣は大鋏へと変わった。 薙刀は刺突から跳ね上がり、続いて振り下ろしの軌跡を刻む。 ハインは一筋目を受け流し、二筋目の重い振り下ろしに正面からぶつかった。 大鋏と薙刀の間で火花が散り、音が爆発する。 その衝撃に、モナーが一瞬、怯んだ。 ハインは追撃の姿勢を見せて―――しかし何もせずに後退のステップを踏む。 一瞬遅れて、彼女の居た空間を橙の槍が貫いた。 (#゚∀゚)「ちょこまかと……!」 槍をブレードに変化させつつ、ジョルジュが彼女に迫る。 大股の踏み込みから、右腕を横薙ぎにした。 ハインはそれを、体勢を低くして回避。その体勢のまま、ジョルジュの足元に潜り込んだ。 反応させる間もなく、足払い。重心が上がっていたジョルジュの身が、大きくバランスを崩す。 (;゚∀゚)「うぉっと!」 咄嗟、右腕を床に突き立て、床に身を叩きつけられることを避ける。 だが直後、肩に鈍い衝撃が来て、結局身は床に叩き付けられてしまった。 追撃が来るか、と身構えるが、しかし予想に反して彼女は跳び離れる。 慌てて立ち上がれば、モナーがハインに攻め入っていた。 だがやはり、あしらわれてしまっているように見える。ジョルジュは眉根を寄せた。 (;゚∀゚)(何でだ……!?) 何故、状況が変わらない? 一対一であそこまでやれたというのに、二対一になったこの状況で、何故圧倒出来ない。 むしろ、押されているではないか。一対一で戦り合っていた時の方が、まだマシだ。 そこで、気付く。 ( ゚∀゚)(……二対一、じゃあないな) 考えてみれば、彼女は先ほどから一人を相手している。 巧みに動き回り、決して二人同時に相手をしたりはしない。 相手を倒し、大きな隙を作っても、無理な追撃をかけない。 視野を広く持ち、それでいて目の前の敵に十二分に対応する。 やや受けに回りがちだとは言え、それをする事がいかに難しいか。 ジョルジュはハインの戦闘能力の高さに、改めて戦慄を覚えた。 ( ゚∀゚)「でも、分かればこっちのもんかね」 呟き、そして地を蹴った。 予想通り、ハインはさりげなく、しかし早々に動きを見せる。 自分とジョルジュの間にモナーを置くように、巧みに動いたのだ。 だが、もうその思惑には乗ってやらない。 大股の一歩で、モナーに並ぶ。 そして伸ばした右腕のブレードを、逃げようとするハインに向けて振り上げた。 ハインの眼が、一瞬、驚愕に見開かれ――― (#゚∀゚)「っそら!!」 振り下ろされる。橙の軌跡が真っ直ぐに、空間に線を引いた。 響く金属音。ハインはモナーに対して振るおうとしていた大鋏を、咄嗟に防御に使った。 その隙に、すかさずモナーは薙刀を回転させる。 壮絶な勢いを纏って振るわれた石突きは、しかしハインの後退によって空を打った。 そしてハインは一気に数歩を退いた。瞳は忌々しげに、ジョルジュを睨んでいる。 ( ゚∀゚)「おっちゃん。ちょっと聞いて」 ( ´∀`)「もな?」 ( ゚∀゚)「すごく簡潔に言うよ。さっきから、ハインは巧く動いて一対一の状況を作ってる。 だからどうも流れが良くならない。だから挟み込むような形で動いて、二対一の状況を作り上げたいと思うんだけど。 どうかな? まず、理解出来た?」 (;´∀`)「え―――」 何を、と言いかけた口は、しかし喉元まで来た言葉を呑み込んだ。 戦闘の最初に抱いたあの疑念。 その正体が、今のジョルジュの言葉とぴたり重なったのだ。 なるほど、二人で圧倒出来ない理由はそれだったか。 何て事はない。二人で戦ってるわけじゃなく、一対一、一対一で戦っていたからじゃないか。 ならば良し。ここから、本当の意味での二対一を作り出そうじゃないか。 ( ´∀`)「うん、オーケーだもな」 ( ゚∀゚)「おや、呑み込みが早いね」 当たり前だもな、と頷き、 ( ´∀`)「挟み込むようにして戦う、と言ったもな?」 ( ゚∀゚)「うん。二人で並んで戦うと、動かれて結局一対一になるから」 ( ´∀`)「把握。じゃあ、行くもな」 ジョルジュの返事を待たず、モナーは駆け出した。 向かう先はハイン。その左側だ。 苦笑を洩らし、だがジョルジュも遅れずに駆ける。 モナーの反対側、ハインの右側目指して。 待ち受けるハインは、もはや怒りや苛立ちを表現しようともしなかった。 そんな意思がなくとも、全身からその意思がこれでもかと溢れ出している。 鋭く細められた眼は同時に二人を捉え、剥かれた歯は獲物を前にした猛獣を思わせた。 戦闘能力の高い二人を前にし、しかしハインは諦めや絶望感などを抱かない。 こんなところでは死ねない。死んではならない。自分はまだ、為すべきことがある。 大切な者が待っている。救わねばならない。そうするまで、自分は死ぬ筈がない。 こんな戦いなんてどうでも良い。さっさと終わらせてやるだけだ。その程度のものだ。 一度、視線を落とす。そして一つ深呼吸をして 从# ∀从「待ってろよ、つー。すぐに、行くから」 視線を上げる。眼の前に、既に二人が迫っていた。 即座、大鋏を二本の歪剣に分離。後退しつつ、同時に叩き付けられる斬撃を受けた。 (#´∀`)「今度こそ倒してやるもな!!」 ( ゚∀゚)「行くよ、ハイン!! 覚悟は出来てるよね!?」 言いつつ、連撃を仕掛けてくる二人。 ハインはそれに対して、低く 从#゚∀从「残念ながら。私の覚悟は、こんなところで使うほど安いもんじゃねぇ」 呟いた。 そして、その身が回転の動きを持つ。 対する二人は咄嗟に得物を前に構えた。 直後、その得物を叩く金属音が連続して三つ。 ハインは両腕に握った歪剣を、回転の動きで二人に叩き付けたのだ。 回転が止む。ハインは間断なく駆けた。 姿勢を極限まで低くしてモナーの脚元に潜り、そのまま背後へ抜ける。 そこで更に身を半回転。低い体勢のまま、歪剣を横薙ぎにした。 振り返りつつの斬撃はモナーの脚を両断せんと駆ける。 (#´∀`)「甘いもなッ!!」 しかし斬撃は、床に突き立てられた薙刀の柄によって停止。 モナーはすぐさま、薙刀を振るおうとして――― 从#゚∀从「お前もな」 薙刀を突き立てた方とは逆側より、脚が振るわれた。 モナーはそれに反応出来ない。見事に脚を払われる。 ハインは立ち上がると、倒れたモナーの腹部を踏んで跳躍した。 モナーの漏らした苦痛の呻きには反応も示さない。 跳躍した先、中空で、ハインは両手を合わせる。 小気味良い金属音が鳴り、歪剣が鋏へと変化した。 そして落下していく。その先には、モナーの援護に回ろうとしたジョルジュが居た。 从#゚∀从「死に腐れ!!」 (#゚∀゚)「そいつぁ無理ってもんだ!!」 両腕をクロスさせ、大鋏の斬り下ろしを受ける。 途轍もない衝撃が得物を打ち捉え、次の一瞬に全身に広がる。 大鋏それ自体の重さ、落下の勢い、ハインの腕力。 それらが合わさった斬撃は尋常でない重さを持ち、ジョルジュの身を蹂躙していった。 左腕の爪が再度、厭な声をあげ、呼応するように全身が軋む。 ジョルジュはしかし、決して押し負けなかった。 彼にだって、ハインのそれに負けない想いがある。気付けた想いがある。 だから彼は、自分のそれをぶつけるかのように、壮絶な咆哮をあげ――― (#゚∀゚)「もう決めちまったんだよ、生きるってな!!」 交差させた腕を、振り放った。 ハインの身は吹き飛ばされ、しかし綺麗に着地してみせる。 間髪置かず、その身が後方へ跳ぶ。 直後、彼女の目の前の床が爆ぜ飛び、彼女の前髪が数本、はらりと宙で舞った。 圧倒的な速さと破壊力を持ったその刃は、まるで意志を持つかの如く跳ね、ハインを追う。 それを握り、意志を与えているのは、モナーだ。 ハインは次の一歩で後退を辞め、前進へとシフト。 モナーはそれが分かっていたのか、驚く事もなく薙刀を袈裟掛けに振るった。 それは正面からぶつけられた大鋏によって止められ――― (#´∀`)「もなぁあぁぁあぁあぁあああぁああぁぁあぁッ!!」 否、止まらない。 大鋏と接触するや否や、薙刀は逆向きの回転を始め、石突きをハインに向けて叩き付ける。 それが受けられると、今度は方向を変えてまた回転。回転、回転、回転。続いていく。 回転の動きはやがて、その中に刺突や柄による攻撃なども含み始める。 一本の薙刀から生まれているとは思えぬほどの速さの連撃だった。 重さや長さによる減速を塵ほども感じさせない。 だがその連撃ですら、ハインは受けきってしまう。 両腕に宿る“力”を使ってるとは言え、それは生半可なことじゃない。 モナーの斬撃が、唐突に止む。 ハインの右腕が、突き出された彼の薙刀を握り締めていた。 (;´∀`)「な……!?」 从#゚∀从「残念でした」 言い、彼女は左腕に握った大鋏を横薙ぎにした。 モナーは一瞬遅れてそれに反応するが、遅い。 鋏の刃が、彼の肩に侵入する。 皮を裂き、肉を斬り、そして骨に触れた。 モナーは痛みに呻きを漏らし、覚悟に歯を噛み締める。 腕一本くらいなら、と。 だがその時、唐突に刃が止まった。 一瞬、混乱に動きが止まり、次の一瞬には飛び退る。 骨は無事だ。痛みは尋常じゃないが、まだ動かせる。 それから、唐突に動きを止めた大鋏を見た。そして思わず眉根を寄せる。 黒と銀で構成される大鋏。その真ん中辺りに、橙色の帯のような物が巻き付いていた。 何だ、と伸びる帯を辿り、次の瞬間に理解する。思わず声が出た。 (;´∀`)「ジョルジュ君、もな……!?」 ( ゚∀゚)「正解!」 声の方向。それは、大鋏に巻き付く帯が伸びている方向だった。 ジョルジュの右腕が、肘辺りから厚みを徐々に失くし、帯になっていた。 それは数メートル先のハインの大鋏を固定し、空間に橙の線をぴんと張っている。 (;´∀`)「それは……その“力”は!?」 ( ゚∀゚)「さぁ。形状変化の“力”の延長線上なのかね? 俺もよく分からない。止めなきゃ、と思って、気付いたらこんなんなってた」 信じられない、というような表情を浮かべるモナー。 それを横目に、ジョルジュは「さて」と呟いた。 橙の帯が、ゆるりと空気を撫でる。 ( ゚∀゚)「そろそろ、俺達も攻めさせてもらおうか」 一瞬。その帯が、勢い良く引かれた。 ハインの身が僅かにバランスを崩し、その間にジョルジュは右腕を元の形状に変化させる。 同時に駆けた。ハインとの距離を埋めきるのと同時に、右腕がブレードの形を持つ。 ( ゚∀゚)「おりゃっ!」 从#゚∀从「!!」 振るわれた。ハインはそれを回避しようと動くが、やや間に合わない。 二の腕に赤い線が入り、次の一瞬にそこから血液が噴き出した。 後退する。ジョルジュから離れて、しかし次の一瞬には慌てたように体勢を落とした。 直後、薙刀が振るわれた。橙の髪を喰い千切って、頭上を抜ける。 すると間もなく、地を這うようにして橙のブレードが迫る。 歯を噛んで、横に転がった。すぐ横の床が音をあげて切り裂かれるのが眼の端に映る。 横転の勢いから、一気に身を持ち上げて駆ける。轟音。自分の踵のすぐ後ろに、薙刀が圧倒的な破壊力を以て叩き付けられていた。 ( ゚∀゚)「うひょぅ! 今の、よく避けきれたねー!」 从#゚∀从「テメェ……!」 ( ゚∀゚)「称賛を贈るよ、ハイン! ただし、手は緩めないけどね。 このまま一気に、あんたを負かせてもらうよ!」 言いつつ、駆けた。応える声もなしに、すっとモナーも動き出す。 从#゚∀从「っざけんじゃねぇぞ!!」 対するハインは退かない。 劣勢の今、これ以上退いたら押せなくなる。 ここで状況を変えるしかない。自分と覚悟を信じろ。 (#´∀`)「も゛な゛ッ!!」 最初に振るわれたのは薙刀だった。 そのリーチを活かし、遠くから破壊力満点の一撃を振り下ろしてくる。 受ける余裕はない。ハインは身を横にズラし、避けた。 薙刀はそのまま床を捉え、その残骸を弾けさせる。 ハインの視界に邪魔が入る。だが跳ぶ灰色の残骸の中、迫る橙はこれでもかと鮮明に映り込んだ。 从#゚∀从「ハッ!!」 大鋏でそれを叩き落とす。橙の爪だ。 しかし息を吐く暇もない。叩き落とした橙色のその向こうに、もう一つの橙が迫っていた。 高速で来る、限界まで伸ばされた橙のブレード。一撃目の爪は、フェイクだった。 ( ゚∀゚)「喰らえ!!」 从#゚∀从「喰えるもん出してから言いな!!」 両手で握っていた大鋏から片手を解放。 真正面から突き出される刀身を、ハインは左手で拳を作り、同じく真正面から応えた。 大音量の金属音が鋭く響く。ブレードの切っ先は、ハインの拳によって受けられていた。 だが双方、止まらない。ブレードは拳を叩き斬ってでも進もうとし、拳はブレードを殴り折ろうとしている。 甲高い金属音が続く。ブレードの切っ先が僅かに鋭さを失い、ハインの拳には浅くない傷が刻み込まれ始めた。 永遠に続くかと思われたその戦いは、しかし唐突に終わりを告げる。 風切り音。それを聴いて、ハインはジョルジュのブレードを殴り飛ばす。大きく跳び退った。 彼女を追うようにして空を切り裂いたのは青の輝きだ。 斬撃はそこで終わるでなく、二撃、三撃とそのまま彼女を追い続ける。 从#゚∀从「しつっけぇな、このクソブラコン野郎が!!」 叫び、大鋏を振り上げた。薙刀を弾き飛ばすつもりらしい。 だがその時、唐突に彼女の身がバランスを崩す。 彼女が驚愕に染まった瞳で足元を見れば、自分の脚を、モナーの脚が払っていた。 (#´∀`)「貰ったもな!!」 ( ゚∀゚)「ひょぅ! ナイス、おじちゃん!!」 間髪置かずモナーが薙刀を振り上げ、追いついたジョルジュもブレードに力を込める。 二人で彼女を挟むような形で二人は得物を構え、そして同時に振り下ろされた。 从#゚∀从「くっ―――!!」 ハインは崩れたバランスを、しゃがんで立て直した。 見上げずとも、風の流れと音で分かる。振り下ろされているな、と。 動かねば、終わりだ。 从#゚∀从「らぁぁぁあぁああぁあぁあぁぁぁッ!!」 判断は一瞬。 咆哮をあげると、大鋏の刃を開き、振り上げた。 直後、金属音が二つ。 刃の範囲を広げた大鋏は、二本の得物をしっかりと捉えていた。 衝撃が全身を苛むが、歯を噛んで耐えた。噛み続けた奥歯が痛み、それでも喉から呻きが漏れた。 停滞はない。 彼女は刃を捉えたまま立ち上がり、上方へと得物を弾き飛ばす。 そして大鋏を更に広げ、二本の歪剣に分離した。 (;゚∀゚)「マジかよ!!」 (;´∀`)「くっ……!!」 狼狽しつつ、二人は再度得物を叩き付ける。 だがそれらはたった今分離した二本の歪剣によって受けられた。 二人は一瞬の停滞の後、後退しようと動く。 从#゚∀从「甘ぇンだよ!!」 歪剣を振るった流れのまま、右腕が。そして左足が動いた。 まず最初に右腕が折り畳まれる。現れたのは皮に包まれた鋭い骨。肘だ。 振るわれる。それはジョルジュの腹部に突き刺さった。 同時、跳ね上がった長い左足がモナーの腹部を抉る。 結果、ジョルジュとモナーの二人は全くの同時に吹き飛んだ。 (;゚∀゚)「うぇッ……!!」 呻きを漏らしつつも、しかしジョルジュは着地してみせる。 ハインは両腕の歪剣を鋏に戻しつつ、容赦なく彼を追撃しにかかった。 (#゚∀゚)「半端じゃねえな、化け物め……!!」 右腕を横薙ぎにする。しかし、左腕に難なく受けられ、弾かれた。 続けて左腕の爪を振るう。だがそれは鋏に受けられ――― 从#゚∀从「こいつが邪魔だッ!!」 その刃が開かれ、そして閉じた。 黒と銀の刃が、四本の橙の刃を挟み込む。 厭な金属音。軋む。どこまでも、嫌な予感。 (;゚∀゚)「お前、何を!? 辞め―――」 退こうとした、その瞬間。 硬い物が砕ける音が連続して四つ。空中に、きらきらと橙の光が舞う。 同時に、左腕の抵抗がなくなった。 橙の四本の爪は、ことごとく、中心の手前辺りで砕かれていた。 (;゚∀゚)「な―――」 一瞬、言葉が詰まり、 (;゚∀゚)「おいおいおい、ちょっと待てよコラ!!」 思わず漏らす。 動揺に、動きが制御出来なくなっていた。 危険だ、と思うも、しかしどうしようもない。突然過ぎた。 (;´∀`)「退くもな!」 すかさず、モナーがジョルジュの前に出る。 構えられた薙刀に連続して斬撃がぶつけられ、モナーの喉から呻きが漏れた。 (;゚∀゚)「おじちゃ……」 (;´∀`)「良いから退くもな! 邪魔だもな!!」 (:゚∀゚)「―――!!」 無言で頷き、飛び退った。 冷静になる必要があった。 視線の先では、モナーがハインと切り結んでいる。 モナーは防御に徹している。ハインはそれを打ち崩せないでいた。 从#゚∀从「邪魔ばっかしやがって! いい加減諦めろクソ共!!」 (#´∀`)「その言葉、そのまま君に返してやるもな!!」 斬撃の嵐の中から、大きく一歩を退く。 そして薙刀を浅く持つと、彼女のリーチの外から振るった。 威力の高いその一撃に、ハインは数歩を後退。薙刀は空を斬り、同時にモナーは後退する。 ハインは追わない。この混沌とした戦況は、彼女にとっても嬉しいものではなかったのだろう。 モナーは間もなくジョルジュの横に並び、荒い息を吐いた。 やや、疲労の色が強い。強靱な方だとは言え、彼は人間だ。異能者とやりあえば、精神・肉体共に、相応に消耗する。 しかし、休もうという気配は皆無だった。 表情は引き締められ、眼は鋭くハインを―――否、その先にある何かを睨みつけている。 疲れ、傷付こうとも、彼に止まる気は一切なかった。それだけの覚悟を、何年も前からしてきていた。 (;゚∀゚)「た、助かったよおじちゃん。さんきゅ。 ……あと、ごめん。『先鋭』が」 ( ´∀`)「気にするなもな。尖鋭は鋭く作り過ぎた。僕のミスだもな」 (;゚∀゚)「でも」 ( ´∀`)「良いから。そんなこと気にするくらいなら、集中するもな。 咎める事は後でも出来る。でもここで死んだら冗談にもならないもな」 ( ゚∀゚)「……分かった」 頷き、ジョルジュはハインを見る。 砕かれた『先鋭』のショックは消えてはいなかったが、確かにそれどころじゃあない。 得物が右腕一本になったのだ。これで攻めも守りも、遅くなる。抜けた穴を埋めるだけの戦い方が、必要だった。 視線の先、彼女も荒い息を吐いていた。 当然だろう。手練二人の猛攻を、一人で何とかしているのだ。 しかも、焦っている。戦闘を早く終わらせようと攻撃にも動いている彼女の運動量は、二人のそれを遥かに上回っていた。 彼女の眼はジョルジュ達を睨みつけている。 しかし、ジョルジュはそれが、自分達を見ていないことを感じていた。 モナーのように、その先にある何かを見ている。そんな風に、感じた。 彼女が纏う焦りは、当然であるが、時間が経つに連れて濃厚になってきている。 今も、混沌とした戦局をクリアにする為に離れたのに、すぐにでも飛びかかろうとしていた。 焦る自分を抑えるのが、大変になっていた。冷静になれ、という内なる声は、力を失くしていく。 从#゚∀从「遅くなって悪いな……すぐに行く。待っていてくれよ」 気付けば、小声でそう呟いていた。贖罪のように。 そして、大切な者の名を呼ぶ。 从#゚∀从「すぐに、絶対に助けてやるぞ。絶対だ。 安心しろよ―――つー」 その名に、応じたかのように。 硬い音が響き、そして勢い良く、部屋のドアが開かれた。 そしてブーツの踵が床を叩く音が、四歩分。 三人の視線がそこに向かい、三者三様の反応を取った。 (;´∀`)「また敵かもな……!?」 モナーは苦い表情を浮かべ。 ( ゚∀゚)「……? お前、何でここに?」 ジョルジュは訝しげに眉を寄せ。 从;゚∀从「……どういう事だ」 ハインは、氾濫を始めた思考の渦に呑まれそうになりながら、大きく眼を見開いた。 唇は閉じる力を失い、そこから音が漏れる。「つ」と一つの音。 全身に漲らせていた力がなくなり、ともすれば大鋏を取り落としそうになるほどに脱力する。 明らかな動揺だった。 あそこまで張り詰めていた鬼気が、消えている。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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