二十章4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 20:55:03.48 ID:NlXE05XN0 二十章 決心 ('A`)「あー……めんどくさかったな、今日は」 (;^ω^)「めんどくさかったって何だお」 あの後、僕達四人は公園にいた。 前にも集まった事のある、あの公園だ。 空は既に闇。 周りを見渡しても、家の灯りと街灯、わずかな月明かりくらいしか明かりはない。 僕とギコは錆びたアスレチックによりかかり、ドクオはその頂上で気だるげに座っている。 ジョルジュはすぐ隣にあったベンチで横になっている。眠ってはいないようだ。 音は、ほとんどない。 辛うじて聞こえる音は僕達の喋り声と、時折聞こえる車の走行音。 そして犬の遠吠えと、木々のざわめく音くらいだ。 ぬるい風が吹く、静かな闇の中。 そんな中で、僕達は黄昏ていた。 6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 20:57:06.50 ID:NlXE05XN0 ('A`)「めんどくさかったろうがよ、色々と。 あんなに動きまわったのは何年ぶりだぞ」 ( ^ω^)「たまには良いんじゃないかお?」 ('A`)「たまには……ふん。たまには、ねぇ?」 ( ^ω^)「何だお?」 ('A`)「これからはもっと、ずっとめんどくさくなるんじゃねぇの?」 (,,゚Д゚)「どういう事だ?」 ('A`)「お前等……どうせアレだろ? “管理人”を潰しに行くぞ、とか言っちゃうんだろ?」 ( ^ω^)「…………………」 (,,゚Д゚)「…………………」 ('A`)「その沈黙は肯定の意志、だな?」 (,,゚Д゚)「“管理人”は放っておけないだろ」 ('A`)「何で?」 8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 20:59:27.12 ID:NlXE05XN0 (,,゚Д゚)「……何で、だと? お前、今日の大殺戮を見なかったのか?」 ギコの表情が険しくなり、瞳が剣呑に輝く。 対するドクオは片目を細めて、面倒臭そうにした。 ……おっと、これは二人の言い合いが始まりそうだ。 僕は入れそうにないから、黙っておこう。 ('A`)「見たさ。異能者に興味があったから、今日だけでなく、今までの異能者の事件は全て知っている。 波はあるものの、毎年相当な数の人間が異能者に殺されてるな。それもおそらく、“管理人”に。 ―――それでも俺は『何で放って置けないんだ?』としか思えないがな」 (,,゚Д゚)「逆に問おうか。何でそう思う?」 ('A`)「俺達には何も関係がないだろうが」 (,,゚Д゚)「そうだけどなぁっ……!」 ('A`)「他所で誰が傷付こうと。誰が死のうと。誰が悲しもうと。誰が怒ろうと、俺達には何も関係ない。 何も失う物はないし、メリットもない。―――だから、何も関係ない。 それとも何か? お前は、凶悪犯罪のニュースを見る度に、その犯人をとっちめようと躍起になるのか?」 何かを言い返そうとして、ギコは口を閉じた。 いつも通り言い負かされると感じたのか、それともそんな言い合いをする元気がないのか。 ただ、いつになく静かに、ギコは再度口を開いた。 10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:00:43.20 ID:NlXE05XN0 (,,゚Д゚)「……じゃあ聞くが」 ('A`)「あん?」 (,,゚Д゚)「俺らが『行く』と言った時、お前はどうする?」 ('A`)「まぁ、行くだろうな」 (,,゚Д゚)「何でだ? お前にとっちゃ、俺らがしようとしている事は関係ない事なんだろ?」 ('A`)「……本当、何でだろうな。自分自身、何でそんなめんどくさい事をやろうとしているのか分からない。 それでも、な。義務感? みたいなのが働いてんのか良く分からないが、ついて行かねぇとって思う」 (,,゚Д゚)「……なるほど、な」 言って、ギコは溜め息を吐きつつ頭を掻いた。 (,,゚Д゚)「じゃあ、良いか」 ( ^ω^)「お?」 (,,゚Д゚)「どんな思想を持っていようが、どんな理由で戦おうが、一緒に戦ってくれる――― ついてきてくれるってんなら、それで良いや」 11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:01:48.78 ID:NlXE05XN0 ('A`)「あん?」 (,,゚Д゚)「お前のその思想は気に食わねぇが、ついてきてくれるなら、今はそれだけで良いやっつってんだ。 お前のその思想をぶっ潰すのは……そうだな。一通り終わって、平和な生活に戻れたらにしようか」 ('A`)「……っはん。くだらねぇ。まず戻れるかどうかなんて保証出来ねぇだろうが」 (,,゚Д゚)「『戻れるかどうか』だ? 違ぇだろ。『戻る』だろうが」 ('A`)「……っは」 鼻を鳴らして、ドクオは月を見上げる。 その顔は、いつもよりどこか浮かない表情だった。 風が吹いた。 ぬるい風は木々を揺らし、僕の髪を揺らす。 見れば、前髪に何かが引っかかっていた。 取ってみると、それは紅の付着した白い小さな破片―――もしかしたら、骨かもしれない。 今日の惨劇を思い出し、僕の肌には粒が立った。 14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:03:13.76 ID:NlXE05XN0 「……この後、どうすんの?」 不意にベンチから響く、横になったままのジョルジュの声。 久しぶりに聞くその声は、何だかいつもと様子が違った。 そう……何だか、冷たいのだ。 ('A`)「…………………」 (,,゚Д゚)「この後、とは?」 「分からねぇの?」 そこでやっとジョルジュは身体を起こす。 傷は少し治り、両目もしっかりと開いていた。 ―――その両目は、寒気がするほど鋭く、冷たいものだったけれど。 (メ゚∀゚)「さっき、俺らは負けたんだぜ? あの三人に、四人でかかって。 “削除人”が来なければ、俺達は連れて行かれてたんだ」 話し方もいつもと違うジョルジュに、僕達は口を出せなかった。 15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:04:54.26 ID:NlXE05XN0 (メ゚∀゚)「日曜日に、俺達はショボンと一緒に“管理人”の基地に乗り込むんだろ? だったら、このままの生活で良いのか? “管理人”は全員で七人もいるんだぞ?」 (,,゚Д゚)「……何が言いたい」 (メ゚∀゚)「今のままの生活で。学校に行ってのほほんと過ごして。そんな生活じゃあ、無駄に死ぬだけだ。 人間を“管理人”から護る前に、俺ら自身が生き残る為に何かしないといけないんじゃねぇの?」 ( ^ω^)「トレーニングって事かお?」 (メ゚∀゚)「トレーニングを始めとした、戦闘への準備だ」 ('A`)「確かに、そうしなきゃいけないだろうな」 (,,゚Д゚)「あん?」 ('A`)「俺は言われずともそうするつもりだったが……。 ブーン、ギコ。お前等はそんな事考えてなかったろ」 (;^ω^)「…………………」 (;゚Д゚)「…………………」 ('A`)「俺達は数でも力量でも劣ってるんだ。それをどうにか覆さなきゃ、俺達に残るのは死だけだ」 19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:08:51.20 ID:NlXE05XN0 (;^ω^)「つっても、どうするんだお? 普通に筋トレでもするのかお?」 (,,゚Д゚)「力は付いても、それだけじゃ……」 そこで、ドクオが大きく溜め息をついた。 そして、呆れたような眼で僕らを見る。 ('A`)「馬鹿だとは知ってたが……ここまで馬鹿だとは。あ、もしかしてギャグでも言ってたのか?」 (;゚Д゚)「なっ!?」 ('A`)「素で言ってたのかよ……」 再度溜め息をついて、首を振る。 ('A`)「俺達には最高のトレーニング相手がいるだろうが」 (メ゚∀゚)「流石ドクオ。分かってるじゃねぇの。 俺達には良い相手がいるよな。なぁ―――」 そこでジョルジュは、後ろを向く。 その視線の先には――― (´・ω・`)「ありゃ、見付かっちゃったよ」 ショボンがいた。 21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:10:26.91 ID:NlXE05XN0 (;^ω^)「ショ、ショボン!?」 (´・ω・`)「何だか久しぶり、ブーン君。それにみんな」 言いつつ、ショボンはこちらへと歩み寄ってくる。 ドクオは無表情、ギコは驚愕、ジョルジュは鋭い微笑みで迎えた。 僕は……多分、ギコと似たような表情を浮かべているのだろう。 (´・ω・`)「今日は大変だったみたいだね。行く前に呼んでくれれば良かったのに」 (メ゚∀゚)「悪いな。そうする時間がなかったんだ」 (´・ω・`)「まぁ、君達が無事で良かったよ」 ('A`)「危ない所だったけどな」 (´・ω・`)「何はともあれ……日曜日、来てくれるんだね?」 (メ゚∀゚)「話聞いてたら分かるだろ?」 (´・ω・`)「……ありがとう。本当に」 24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:12:42.73 ID:NlXE05XN0 ('A`)「とは言っても、俺は乗り気じゃねぇけどな」 (´・ω・`)「なら何で来てくれるんだい?」 ('A`)「それはだな……いや、説明がめんどくさい。 勝手に心の中でも何でも覗いてくれ」 頷いて、ショボンは眼を閉じる。 その眼が開くと同時に、静かに口が開いた。 (´・ω・`)「……なるほどね。三人を護らなきゃ、か」 ('A`)「へぇ。俺のこの気持ちは、そういう風な気持ちだったのか?」 (´・ω・`)「すごく深いところにあったから、読むのが大変だったよ。 多分、意識していない内にそう思っているんだろうね」 (,,゚Д゚)「お前、そんな風に思ってたのか……」 ('A`)「らしいぜ」 (;゚Д゚)「ちっともそうは思えねぇな」 ('A`)「思わなくて良いさ」 27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:13:56.37 ID:NlXE05XN0 僕は多分、ドクオの気持ちをどこか分かっていた。 いじめられていたあの時も、ドクオは僕を護ってくれていた。 危ない事をする時は、いつもドクオが傍にいてくれた。 ドクオはいつも、そういう奴だった。 僕達が何かしようとしてる時は、いつのまにか傍にいてくれていた。 ショボンが言った通り、自分自身でも分かってないんだろうけど。 ( ^ω^)「…………………」 ('A`)「何でこっち見詰めるんだよ気持ち悪い」 (,,゚Д゚)「ジョルジュ。お前が戦う理由は?」 (メ゚∀゚)「今日までなかったが、ついさっき出来たよ」 (,,゚Д゚)「ん?」 (メ゚∀゚)「いや、ね。大した事じゃねぇよ」 (,,゚Д゚)「何だ?」 (メ゚∀゚)「今日味わったこの屈辱を返そうと思ってな。 こうして普通でいるが、結構怒ってたりするんだぜ」 (;゚Д゚)「…………………」 29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:15:45.89 ID:NlXE05XN0 どうやらジョルジュは怒っていたようだ。 なるほど。 ジョルジュのおかしな言動にも納得がいく。 (´・ω・`)「じゃあ、明日から日曜日までの二日間。みっちりと練習するよ。 “力”の使い方と、戦闘への慣れをメインとした練習。 異能者は回復が早いから、いきなり実戦地味た事をやっても大丈夫だね」 ('A`)「大丈夫じゃね? 死にはしないだろ」 (,,゚Д゚)「……誰かを救えるのなら、いくらでも」 (;^ω^)「頑張るお」 (メ゚∀゚)「あのクソ共ぶちのめせるなら、どんな鍛錬でもついて行くさ」 (´・ω・`)「…………………」 ( ^ω^)「ショボン。僕達は、戦うお」 ショボンを見詰める。 ショボンは僕を見詰め返すと、深く頷いた。 31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:16:44.03 ID:NlXE05XN0 ( ^ω^)「僕は、いつも通りの日常を取り戻す為に」 (,,゚Д゚)「じゃあ俺は、悲しむ奴を減らす為に」 ('A`)「俺は……まぁ、お前等を護る為に……か?」 (メ゚∀゚)「俺は、この屈辱を晴らす為に」 (´・ω・`)「僕は……自分勝手なようだけど、僕自身の為に」 「戦おう」 月明かりの下。 僕達は、戦う決意をした。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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