三十一章三十一章 守護者 ( ゚ω゚)「プギャー」 ( ^Д^)「あ?」 ( ゚ω゚)「そこを退けお」 ( ^Д^)「っは。イヤだね」 ( ゚ω゚)「死にたいのかお?」 ( ^Д^)「殺せるもんなら殺してみろよ。俺は死んでやらねぇけどな。 モララーさんを護りきるまで、俺は死ねないし死なない」 ('A`)「……はん。くだらない妄想だな。死なない、だと? だったら殺してやるよ。そんな妄想、粉々にしてやる」 吐き捨てるように言って、ドクオはプギャーに向けて駆けた。 銃は既に使えない為、扱うのは左腕だけだ。 駆けるドクオに対し、プギャーも左腕を構える。 次の瞬間には二人の腕は交差していた。 闇色の左腕が横薙ぎに振るわれ、草色の鎌がそれを弾く。 ドクオは無駄のない動きで衝撃を逃がし、再度角度を変えて左腕を振るった。 対するプギャーは、それを弾ける体勢ではない。 それもそうだ。ドクオはその眼でプギャーが対応出来ない位置を確認し、そこに攻撃を叩き込んだのだから。 しかし。 (#^Д^)「ずぁああぁっ!!」 プギャーは自ずか更に体勢を崩し、ドクオの左腕を弾いた。 しかもそれだけでなく、その無理な体勢から鎌を振り上げる。 無理な体勢からのその攻撃は、しかしドクオの顎を貫く軌道を確実に走った。 (;'A`)「ッ!?」 ドクオは驚愕しながらも、バックステップしてそれを回避。 振り上げられた鎌はドクオの顎をかすって上方へと抜けるのみ。 プギャーはそのまま体勢を崩し、肩から床に激突する。 倒れた彼にドクオは拳を振り下ろすが、彼はそれを転がって回避。すぐに立ち上がり、戦闘態勢を取った。 ('A`)「あの反撃はよくやったものだが……もう、ダメだな。 俺にはお前の動きが見える眼がある。俺に油断がなくなれば、お前に勝ち目はない」 (;^Д^)「はっ……はっ……」 ('A`)「諦めろ。そこを退けば、命までは取らない」 冷たく吐かれた、誘いの言葉。 それに対してプギャーは――― (;^Д^)「っは……あぁ、そうかい……」 額から流れ落ちる汗を拭いもせず、彼はドクオを睨みつける。 そして右手を掲げると、ビッと中指を突き立てた。その眼には、力強く輝く光。 『諦め』なんてものは、その眼の中にはなかった。 ('A`)「あくまでも、抗うか」 (;^Д^)「あぁ。遠慮せずに来いよ。怖いのか?」 ('A`)「……後悔するなよ」 言いつつ、左腕を構える。 それに対してプギャーも戦闘体勢を取り直し、互いに眼光を鋭くした。 ( ゚ω゚)「ドクオ。僕はどうするお?」 ('A`)「お前は手を出すな。お前の速さは、俺が動き辛くなる。 俺に、やらせろ」 言い残して、駆け出した。 今度は、プギャーも待つだけではない。駆ける。 二人の咆哮が重なって、鎌と腕が火花を散らして交差した。 鎌と腕はすぐに離れ、そして再度打ち合う。 単純な打ち合いが数度続き、やがて鎌が斬撃の軌道を変えた。 しかしそれには腕も応じる。火花は、散り続ける事を辞めない。 (#^Д^)「ずぁあぁっ!!」 Zの字に鎌が振るわれた。 首を横薙ぎの一撃目は上半身を反らして回避され、袈裟懸けのニ撃目は弾かれ、最後の横薙ぎは闇色の腕で止められる。 ('A`)「……こんなもんだ」 鎌を勢い良く弾かれ、隙を作られた。 そこに遠慮なく振るわれる闇色の左腕。 この距離は、避けられない。 左腕が―――鎌が弾かれている為、防御も受け流す事も出来ない。 ドクオは、勝利を確信した。 しかし。 プギャーは、左肩をドクオ側に突き出す。 胸目掛けて放たれていた腕はプギャーの左二の腕に当たり、その衝撃は彼の左半身を後ろへと引っ張った。 それはドクオにとって完全な予想外だった。 彼の考えでは、自分の腕はプギャーの胸を貫いているはずだったのだ。 唯一の武器となる左腕を自分から壊させるとは思いもしなかった。 それに驚いている暇もなく、ドクオの左頬をプギャーの右の拳が撃ち抜いた。 ドクオは低くうめいて、宙を舞って地面を跳ねる。 (;゚ω゚)「ドクオッ!」 叫んで、ドクオに駆け寄った。 ドクオは舌打ちをすると、血の塊を吐き捨てて立ち上がろうとする。 その身体が、急激に崩れ落ちた。 彼は頭を抑えて低くうめいている。どうやら、プギャーの一撃で脳が揺さぶられたようだ。 (;^Д^)「はっ……へ、へへっ……。ざまぁみやがれってんだ」 右腕で、左の二の腕を抑える。 完全に骨が粉砕されていた。この腕では鎌で戦う事はおろか、動かす事さえ不可能だ。 ( ゚ω゚)「……無茶する奴だお」 (;^Д^)「お前等には言われたくねぇよ」 ( ゚ω゚)「何にせよ、お前はもう戦えないお。退けお」 (;^Д^)「っは。戦えない、だ? 笑わせんなよ」 苦しそうながらも笑って、プギャーは右腕を掲げる。 (;^Д^)「腕の一本でもある限り。いや、俺が動ける限り―――諦めない限り、戦えるんだよ。 “力”なんて使えなくても、俺は戦う。モララーさんの為に戦い続ける。それが、俺の生きるたった一つの意味だからな」 言って、右腕を構えた。 “力”のある左腕をだらんとぶら下げた、不自然な戦闘体勢。 しかしそこに無力感はない。むしろ、力強さを感じるほどだ。 (; ∀ )「プ……プギャー」 その時彼の足元から、うめくようなモララーの声が聞こえてきた。 ( ^Д^)「意識が戻りましたか。モララーさん」 (; ∀ )「そこを……退け、プギャー。死ぬぞ。こいつらは私が……!」 ( ^Д^)「良いんです」 モララーの言葉を遮って、プギャーは言葉を紡ぐ。 その眼には、覚悟。 敵を叩きのめす為に戦う覚悟―――それとは違う。 誰かを護り通す為に戦う覚悟だ。 ( ^Д^)「俺に、戦らせてください。あなたを護らせてください」 (; ∀ )「だが……っ!」 ( ^Д^)「……正直、今のモララーさんでは、間違いなく彼等に殺されてしまうと思います。 俺には、モララーさんしかいないんです。あなたのいない世界は、俺にとって生きる意味がないんです」 「それに」とプギャーは言葉を続ける。 ( ^Д^)「元々ないはずだったこの命。あなたにもらった、この命。 それを今、あなたの為に使えるなら……俺は、本望です」 言葉を置き去りに、走り出す。 モララーの静止の声は、もう既に彼には届かなかった。 (#^Д^)「おぉあっ!」 咆哮と共に、右拳を突き出す。 腰の入ったその拳は、常人同士の戦いならば「良い拳」となったろう。 しかし相手はブーン―――異能者だ。 ( ゚ω゚)「馬鹿な……」 ブーンは言いつつ、足を軽く持ち上げる。 それだけでプギャーの放った拳はブーンの足に当たり、ブーンにダメージは与えられない。 それどころか、右の拳を痛めてしまったくらいだ。 (;^Д^)「痛ッ……!」 プギャーが手を引くのと同時、彼の目の前からブーンが消失する。 跡に残るのは爆砕された床の残骸だけ。 そしてプギャーが驚愕する暇もなく、彼はプギャーの真横に現われた。 横薙ぎに振るう為に、足を引いた状態で。 (;^Д^)「速―――ッ!?」 慌てて左腕で防御しようとするも、左腕は持ち上がらない。 右腕などでは、防御にすらならない。 ( ゚ω゚)「死ねお」 残像を残して振るわれる右足。 頭を狙って振るわれたその一撃は、プギャーの頭を爆散させようとして――― 軽い破砕音が響いた。 ガラスを何枚も砕いたような。 そして、ブーンの足は止まった。 棒立ちになっているプギャーの頭の横。 そこに掲げられた、血塗れの手の前の空間で。 その手は、モララーの物だった。 (;゚ω゚)「おっ……!?」 (;^Д^)「モララー……さん?」 「プギャーは、殺らせない」 プギャーの背後からの声。 それと同時にブーンの足を止めていた空間が凝縮され、塊となる。 その塊はブーンの足を弾き飛ばし、続いてその頭を殴り飛ばした。 (;゚ω゚)「おぶっ!?」 吹き飛び、地面を跳ねるブーン。 すぐに立ち上がって体勢を立て直すが、その眼に浮かんだのは恐怖。 血を吐きながら、モララーが立ち上がっていた。 (# ∀ )「……消えろ。消えてしまえ。この世からなくなってしまえ!!」 咆哮と共に、クロスするように振るわれる両手。 その動きに一瞬遅れて空間の刃が発生し、それは異速でブーンに迫った。 (;^ω^)「おっ……!?」 困惑しながらも、空間の刃を異形の両足で破壊する。 そこで戦闘態勢を取ろうとして―――ブーンは驚愕に眼を見開いた。 モララーが、いつのまにか目の前まで迫っていた。 (# ∀ )「っしゃぁぁ!!」 振るわれる右拳。 それは的確にブーンの頬を捉え、宙で回転させながら吹き飛ばした。 そして、一瞬でモララーの姿が掻き消える。 次の一瞬には、立ち上がって今まさに走り出そうとしていたドクオの目の前に現われていた。 (;'A`)「なっ!?」 驚く暇すら与えられない。 悪魔の腕は、既に振るわれているのだから。 (# ∀ )「がぁああぁっ!!」 (;'A`)「ぐっ……!?」 振るわれる腕を、辛うじて避けた。 だが彼は止まらない。凄絶な勢いで拳を放ち、蹴りを飛ばす。 (;'A`)(こいつ……純粋な戦闘能力も半端じゃねぇ) ドクオは攻撃をかわし、往なし、弾きながらも眉根を寄せた。 左腕を使う機会が―――攻撃する暇が、ない。防御だけで手いっぱいだ。 しかも、その防御すら間に合わなくなってきている。 攻撃が見えても、それに対しての身体の反応が間に合わないのだ。 (;'A`)「くっ!」 左腕で防御した次の瞬間、モララーに生まれたほんのわずかな隙。 そこに一か八か右腕で反撃を試みた。 アッパー気味に繰り出した右拳は、モララーの顎に噛み付こうとして――― (# ∀ )「邪魔だぁっ!」 声と同時、避けられて上方へ流れて行く右拳。 そして次の瞬間に訪れた、腹への鈍痛。抜けていく全身の力。 足腰が崩れ行く中、ドクオはやけに冷静な頭で考える。 鳩尾に入れられた。 この程度なら、すぐに戦線復帰出来る。 だが―――その前に殺される……! 抜けていく力を必死で保とうとするが、しかし足腰は言う事を聞いてくれない。 ドクオの膝が地面に付いた瞬間、モララーの手には鉈のように無骨で荒々しい刃が出現。 彼は一瞬の内にそれを両手で握り締めると、その刃をドクオの首目掛けて振り下ろそうとして――― (#゚ω゚)「おおぉおぉっ!!」 ブーンの足に弾かれ、振り下ろされた刃は折れ飛んだ。 その直後に、モララーの前に一つの影が現れる。 その影は一瞬の内に右腕を青の異形へと変化させ、そして振りかぶり――― 川#゚ -゚)「くたばれっ!!」 モララーの腹目掛けて、振るった。 ガラスが砕けるような音を残してモララーは吹き飛び、そして壁に激突して停止する。 (;´∀`)「クー! 動けるように……!?」 川;゚ -゚)「あぁ、ギリギリな。それよりも……!」 言葉を吐きつつモララーをちらりと見て、そしてクーはブーン達に叫んだ。 川;゚ -゚)「逃げるぞ!!」 (;゚ω゚)「おっ!?」 川;゚ -゚)「このままじゃ全滅する! 良いから逃げるぞ!!」 (;゚ω゚)「でも、クー。あいつにはもう戦う力なんてないお。このまま戦えば―――」 川;゚ -゚)「まだ分からないのか!?」 (;'A`)「……どういう事だ?」 ドクオが起き上がり、苦しそうにしながらもしっかりと体勢を整える。 その眼には不安。彼も、何かを感じ取っているのだろう。 川;゚ -゚)「アイツは今、完全に壊れようとしている。 アイツが壊れたら―――アイツの“力”の制御装置が壊れたら、今の私達ではとても話にならない!!」 言葉と、同時。 モララーが背中を預けていた壁が、突如爆散した。 (;゚ω゚)「おぉっ!?」 (;'A`)「何だ……っ!?」 驚愕する二人の隣―――静かにクーは、眉根を寄せる。 川;゚ -゚)「間に合わなかったか……!」 彼女の眼に映るのは、修羅。 全身に傷を負い、血塗れになりながらも笑う―――最悪の悪魔。 ( ∀ )「はははははははははっ!! ははははははっ!!」 笑いながら、モララーは両腕を無造作に振り回す。 その腕の動きに一瞬遅れて、無数の空間の刃と塊が発生。ブーン達に襲いかかった。 (;゚ω゚)「おおぉおぉぉっ!?」 (;'A`)「ぐっ……!」 川;゚ -゚)「耐えろ! 耐え抜け! そして―――」 三人はそれぞれ、己の変化した部位で攻撃を防ぐ。 そしてやがて、嵐のような攻撃が止み――― 川;゚ -゚)「逃げろっ!!」 クーが、駆けた。 走る先は、しぃとツンの元だ。 モララーの攻撃は、ない。 見れば彼は一人、虚ろな眼をして笑っていた。 (;゚ω゚)「おっ!? おっ!?」 (;'A`)「……どうやらヤバそうだ。ブーン、クーに従っとけ。それよりも、ジョルジュ! 来い!」 (;゚∀゚)「え? いや、え? 何この状況。どうなってんの?」 今まで必死でギコの出血を止めていたのか、状況を把握しきれないようにジョルジュは戸惑う。 ギコは未だ意識を取り戻さないようだ。 (;'A`)「話は後だ! 良いから来い! ギコは傷口を抑えたまま、背負って来い!」 (;゚∀゚)「意味が分からないけど……無茶言うねぇ……!」 言いつつも、ジョルジュはギコを背負った。折れていた左腕は、ほとんど回復しているらしい。 右手はその形状をギコの傷口の形に変えて、出血を抑えている。 そしてそのまま、走り出す。 ドクオ達の元へ。 (;'A`)「遅ぇな! さっさと行くぞ!」 (;゚∀゚)「どこに!」 (;'A`)「逃げるんだよ!! おい、ブー……ン?」 そこでようやくドクオは気付いた。 今まで傍にいたブーンが、忽然といなくなっている事に。 (;'A`)「あの野郎……こんな時に何を……!」 言いつつ、ドクオは周りを見渡す。 そしてやがてある一点でその眼は止まり―――そして、驚愕に見開かれた。 (;'A`)「ブーン!?」 ブーンはドクオ達に走り寄って来ていた。 しぃを背負っているクー、そしてモナーと一緒に。その両腕には、フサとツンを抱えて。 (;゚ω゚)「何してんだお!? 早く逃げるお!!」 (;'A`)「こっちのセリフだ馬鹿! 何してんだ!?」 (;゚ω゚)「見て分かるお!? ツンとフサだかっておじちゃんを運んでるんだお! 放って置いたら死んじゃうし、このおじちゃんは人を運べる身体じゃないお! それにクー一人じゃ運びきれないお! 」 (;'A`)「そうじゃねぇよ! そいつらは“削除人”……敵だぞ!? 敵助けてどうすんだ馬鹿!!」 (;゚ω゚)「あ……」 (;'A`)「分かったら放って置け! そんなのを運ぶ余裕はねぇぞ!!」 (;゚ω゚)「でも……でも……!」 (;'A`)「……こんの馬鹿が……!!」 (;゚∀゚)「ドックン。よく分かんないけど、今は話してる時間もないんでしょ? だったらここでブーンを説得する時間を取るのは得策じゃない。急ごう」 (;'A`)「……えぇい! もう何でも良い! 行くぞ!」 叫んで、ドクオは走り出す。 その後ろをギコを背負ったジョルジュが。しぃを背負ったクーが。 ボロボロのモナーが。そして、フサとツンを抱えたブーンが、走っていく。 だが、たった十歩ほど走ったところで。 ピタリ、と背後の笑い声が止んだ。 間髪入れず、背中にぶつけられる殺気。 見なくとも分かるような、背後の空間の急激で異常なほどの歪み。 「待てよ」 声が、かけられた。あまりにも、普通に。 止めたくもないのに、足が止まってしまう。そして振り返れない。 背後の『歪み』が強くなるのを感じる。 このままではいけないのに。逃げなくてはならないのに。 その時、背後から轟音が鳴り響いた。 一瞬身体が強張ったが―――しかし次の瞬間、彼らの表情は驚愕に染まった。 「振り返るな。行け。ここは、俺に任せろ」 彼らの背後からのその声。 それは―――クックルの物だった。 川;゚ -゚)「ク、クックル……!?」 驚愕の呟きと共に、クーは振り返ろうとする。 しかしその行動は、余りにも力強い「振り返るな」という声で止められた。 「行けと言っている。長くは持たない。俺の命を無駄にする気か?」 川;゚ -゚)「…………………ッ!!」 (;´∀`)「クー。……クックル」 「行け」 言葉通り、クー達は振り返らずに歩みを進める。 歩みはやがて、走りに。 クーとモナーはその顔に、これ以上ないほどの苦痛の表情を浮かべていた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 赤銅色の肌。筋骨隆々の肉体。額から突き出た一対の角。朱の瞳。 右腕を失くし隻腕となり、右眼を失くして隻眼となった鬼人は、再度立ち上がった。 (*"∋゚)「…………………」 無言でモララーを睨む彼。その左足は今、グシャグシャだ。 逃げるブーン達の背中に放たれた空間の塊を、全て蹴り砕いた結果だった。 音が響く。耳障りな、ゴキリという連続した音。 クックルの異能者としての細胞が、次々と破壊された組織を再生している音だ。 既に死んでもおかしくない状況下でも、完全に解放された状態の彼の細胞は、未だ彼を生かそうとしていた。 しかし。 ( ∀ )「退けよ」 (*"∋゚)「拒否する」 彼自身は、生きようとはしていないようだった。 絶対に勝てるわけのない状況。覆せない優劣。 それが分かっていても、彼は逃げようとせず―――戦う意志を真っ向からぶつけた。 逃げれば、命くらいは助かるかもしれないというのに。 (*"∋゚)「クー達は信用してくれた。信用には、答える」 ( ∀ )「ならば死ね。屑が」 (*"∋゚)「殺してみろ。下種が」 言うのと同時、クックルが駆けた。 一瞬でモララーの懐へと辿り着き、右足を跳ね上げる。 だがその右足は軽く往なされ、それどころか空間の刃ですねの辺りを半ば以上まで切り裂かれた。 しかしクックルは、止まらない。 左腕だけで、凄まじいラッシュをかける。 拳はモララーに届くまでに空間の塊によって止められ、それだけでなく傷だらけになっていった。 拳の形が変わるほどに殴り続けて、やがてクックルは左足を振るう。 やはりその左足も空間の塊で止められ、空間の刃でズタズタにされた。 すぐさま高速で再生が行われるとは言え、その両足で立てるはずもない。 クックルはその場に、受身も取らずに倒れ込んだ。 ( ∀ )「死ね」 立つ事の出来ないクックルに、モララーは全力でその腕を振るう。 腕の振るいに一瞬遅れて不可視の刃が生まれ、クックルの上半身と下半身を断った。 クックルの腹から。口から、凄まじい量の血が吐き出される。 しかし、クックルは――― (*"∋゚)「狙い通りだ」 呟いて、低く笑った。 ( ∀ )「……狙い通り、だ?」 (*"∋゚)「今の俺の役目はお前を殺す事じゃない。お前から、クー達を護る事だ。 ……使い過ぎで消耗しきっていた“力”を無理矢理ひねり出して、俺を殺す為にこれだけ使った。 今のお前に、“力”はもうほとんど残っていない。クー達を追い駆けても、返り討ちにされるような“力”しか使えない」 (# ∀ )「―――ふざけた事を……っ!!」 (*"∋゚)「憎いか? ならば殺せ。その、もはや貧弱としか言えないような“力”で殺してみせろ」 嘲りの意が込められていない嘲りの言葉は、モララーの怒りを増幅した。 咆哮と共に振り下ろされる、モララーの腕。 一瞬遅れて発生する空間の刃。 首を跳ね飛ばすつもりで全力で振るったその刃は――― しかし、クックルの首に少し深い傷を残しただけだった。 それでも十分人は殺せる。現に、クックルは喉から血を噴き上げて絶命した。 だが、この程度の“力”で複数の異能者を相手に戦えるか―――答えはノウだ。 ギリリッ、とモララーは歯を噛み締める。 それから一つ溜め息を吐くと、ゆっくりと振り返った。 ( ・∀・)「……プギャー」 (;^Д^)「は、はい!」 ( ・∀・)「私の為に死ぬなんて言うなと、以前にも言ったはずだが?」 (;^Д^)「で、でもっ……!」 ( ∀ )「まったく……仕方ない奴……だ……」 ( ^Д^)「……モララーさん?」 ( ∀ )「――――――ッ」 ゆっくりと、モララーは倒れた。 プギャーはそれを受け止め、そして眼を丸くする。 (;^Д^)「モララーさん!?」 焦りながらも脈を取り、首に触れてみる。 脈も体温も普通だ。……どうやら、意識を失っただけのようだ。 ( ^Д^)「……俺の命があなたの為じゃないなら、俺に生きる意味はないんですよ」 ぼそりと呟いて、プギャーはモララーを抱えて彼の部屋へと向かった。 他の“管理人”も部屋に運んで治療しなきゃならないのかと思うと、妙な疲労感が押し寄せてきた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ クックルと別れてから―――モララーからの逃亡を始めてから十数分。 (;'A`)「ブーン! 遅ぇぞ!」 (;゚ω゚)「んな事、言われても……!」 (;'A`)「どうしたってんだ!」 (;゚ω゚)「足が何だかおかしいんだお! 思ったように動いてくれなくて……!」 (;'A`)「“力”の使い過ぎか……? ……チィィッ!」 舌打ちしつつ、ドクオはブーンに走り寄る。 (;'A`)「ほれ、さっさとそのおっさん貸せよ! 俺が担ぐ!」 (;゚ω゚)「……ドクオ?」 (;'A`)「早くしろつってんだ!」 ( ゚ω゚)「……お!」 答えて、フサをドクオに預けた。 かなり足が楽になった。さっきよりは早く走れそうだ。 川;゚ -゚)「もうすぐ出口だぞ!!」 クーが叫んだ、その瞬間。 笑い声が聞こえ、右からナイフが飛び来る。 そして左からは、鈍く輝く立方体の群れ。 (;'A`)「伏せろ!」 叫んで、一斉に伏せた。 その一瞬の後に、自分達の頭上をナイフと立方体が飛び抜ける。 (;'A`)「……またてめぇか」 ( ゚д゚ )「あぁ。また、だ」 (;゚∀゚)「……つー」 (*゚∀゚)「やっほ」 それぞれ言葉を交わした後、ミンナとつーは扉の前に立つ。 丁度、ブーン達の行く先を遮る形だ。 (;゚ω゚)「何でこうタイミングの悪い時に……!!」 ( ゚д゚ )「恨むならそこの“削除人”を恨むんだな。後でゆっくりと殺せば良いと、トドメを刺さなかった甘さだ」 (*゚∀゚)「その甘さが自分達の命取りになるとは、思わなかったろうね。 見れば君達は今、誰もまともには戦えなさそうじゃん。これは皆殺しルートだね」 そこで、ブーン達の表情が更なる焦燥の物へと変化した。 この状況から、どう逃れるか。この二人を相手に、どう生き残るか。 答えかと思えた馬鹿げた考えが浮かび、すぐにそれを打ち消し。そしてそれを一瞬のうちに何度も繰り返して――― ―――答えは、浮かばなかった。 (;゚ω゚)「ドクオ……」 (;'A`)「話しかけるな。必死で考えてるところだ……!」 (゚ω゚;)「ジョルジュ……」 (;゚∀゚)「……あいにく、だよ。全然考えが浮かばない。 正面衝突しても相当苦しいだろうし、そもそもみんな背中に誰かを背負ってる。戦える状況に、ない」 その答えにブーンが歯噛みしている横で、クーは眉根を寄せる。 いつもは冷静な頭が、どうやっても冷静になってくれない。 みんなを護らねばならないのに。ここで頭を真っ白にしている暇などないのに。 ( ´∀`)「……クー」 川;゚ -゚)「何だ」 ( ´∀`)「僕が行くもな」 川;゚ -゚)「ッ!? 何を言っている!? お前は戦える身体では―――」 ( ´∀`)「それはみんな一緒だもな。フサ君もツンちゃんもしぃちゃんも君も、戦えない。 ブーン君やドクオ君、あるいはジョルジュ君は戦えるかもしれないけど……。 戦ってしまえば、その背に乗せた誰かが死ぬかもしれないもな」 「だから」とモナーは続ける。 ( ´∀`)「僕が行くもな。誰もが戦えない中で、戦えるのは僕だけもな。僕が一番生き残れる可能性が高いもな。 まぁ、少しだけ血が足りないけど……どうにかなるもな」 その言葉と、同時。 モナーはベルトに手を差し込み、そして引き抜いた。 次の瞬間にその両手に現われていたのは投擲用の小さなナイフだ。 ( ´∀`)「いってきます、だもな」 川;゚ -゚)「ダメだモナー!! お前は、戦える身体じゃ―――!!」 クーの必死の静止を無視し、ゆらりとモナーが動いた。 (*゚∀゚)「ひゃはははっ!! きたきたきたきたぁっ!!」 ( ゚д゚ )「そんなボロボロの身体で何が出来る。再生能力もない、所詮ただの人間風情が」 ナイフを握るつー、そして金属サイコロを浮かばせたミンナ。 その二人を前に、しかしモナーは笑ってみせた。 ( ´∀`)「そう、僕は人間だもな。でも君達だって、人間だもな」 ナイフを手に、突進するモナー。 それを眼にして、いよいよ楽しそうに笑ってそれに応じるつー。 重く大きな金属音が一度響き、そして軽い金属音が無数に続く。 つーの神速のナイフ捌きと、モナーの天下の武器捌きがぶつかりあった。 ( ´∀`)「君達にはちょっと珍しい力があるだけもな。僕達と、何も変わらないもな。 こんなに人が溢れてる世界で、同じ人間なんて誰一人いないんだから」 つーと打ち合いながらも、モナーは続ける。 その口調には、何か覚悟のようなものがあった。 (*゚∀゚)「何が言いたいのさ!? そんな言葉並べたって、あんた一人じゃあたし達は倒せないよ!! 何てったって、あたし達は異能者だ! ボロボロの人間一人に、異能者二人がやられるわけがないんだよ!!」 ( ´∀`)「倒すつもりなんて、毛頭ないもな。僕は、クー達が生き残ってくれればそれで良いもな」 一瞬。まさに、一瞬だった。 モナーがつーの両のナイフを弾き、そして彼女に肉薄した。 小柄な彼女の身体は容易に吹き飛ばされ―――そしてミンナに激突する。 (#´∀`)「もなぁあぁああぁああぁぁぁっ!!」 そのまま、モナーはミンナごとつーを押し倒した。 ミンナとつーは低いうめきを漏らして、モナーに床へと押しつけられる。 (#´∀`)「クー! 今もな! 行ってくれもな!!」 川;゚ -゚)「ッ!?」 (#´∀`)「僕は君達の後に行く! 今は僕が二人を抑えてるから! その間に……行けもなぁああぁっ!!」 川;゚ -゚)「……分かったっ!!」 応えて、クーは足を進めようとする。 だが。 (#゚д゚ )「させるかぁあぁぁあぁっ!!」 ミンナが、モナーの身体の下で微かに手を動かす。 それだけで、先程モナーに弾かれたつーのナイフが宙を舞い―――モナーの背に突き刺さった。 (;´∀`)「がっ―――!」 一瞬、モナーの身体から力が抜ける。 その隙にミンナは彼の身体の下から抜け出した。 そして無理矢理モナーの身体を起こすと、思いきり壁に投げつける。 背中を強く打ちつけ、息が詰まるモナー。 その頬を、ミンナの拳が強打した。 硬く握られた拳は止まらない。腹、胸、頬、顎……。 やがて一際強く頬を殴られて、モナーは血塊を床にぶちまけた。 口の中が、酷く切れたらしい。 (#゚д゚ )「お前等は行かせない。逃がさない。絶対にだ。 全員殺す。皆殺しだ。そしてモナー……お前がその一人目だ!!」 叫ぶ彼の手には、ナイフだ。 そのナイフは全力で振り上げられると、モナーの首元目掛けて振り下ろされ――― 「そんなに溜めちゃダメだね。隙ありまくりんぐ」 気の抜けた声と同時、モナーの喉元直前でピタリと動きが止まった。 ミンナが驚いてナイフを見てみれば、そこにあるのは橙色の槍。 その槍の先にいるのは、ジョルジュ。 槍は、彼の右手が伸ばされた物だった。 (;゚д゚ )「チィィッ! ……!?」 ミンナは眼を見開く。 ジョルジュの背に、ギコがいない。 ギコは、どこに――― 「邪魔臭ぇんだよっ! さっさと退けカス野郎がぁっ!!」 突然、横から聞こえてきた怒声。 それと同時に、ミンナの腹に凄まじいまでの勢いで回し蹴りが捻じ込まれた。 呻き声すらも、出ない。壁に激突して、白目を剥いて倒れるのみだ。 それを見て、つーは楽しげに口の端を吊り上げる。 (*゚∀゚)「うぉーう……」 そしてゆっくりと、ベルトのホルスターからナイフを抜き出し――― (*゚∀゚)「そんな状態で動いて良いのかな? ねぇ、ギコくn―――」 (#゚Д゚)「退けつってんのが分からねぇのかよ」 つーの言葉を途中で遮って、ギコは彼女に右手を構える。 そして次の瞬間には、その掌から膨大な量の炎が吐き出された。 (;*゚∀゚)「えっ!? ちょ、熱っ……!!」 襲ってきた炎の龍に全身を焼かれるが、つーはすぐにその中から退避する。 そこに待っていたのは、全力で振り抜かれた拳だ。 重く鈍い音を響かせながら、拳はつーの腹へと吸い込まれた。 こちらも同じく、呻き声もなしに床へとくず折れる。 それを見て、ギコは荒く熱い息を吐く。 そして悪い目付きを更に悪くして、八重歯を口の端からちらつかせて言った。 (#゚Д゚)「ほれ、行け。もたもたすんな」 川;゚ -゚)「うっ……?」 (#゚Д゚)「行けっつってんだ! こっちは痛みでイライラしてんだ、これ以上イラつかせんじゃねぇ!! 焼き尽くすぞ!!」 川;゚ -゚)「―――ッ!」 クーは頷いて、走る。 (;゚ω゚)「ギコ……お前……」 (#゚Д゚)「話は後だ。お前等もさっさと行け」 少し考える素振りを見せたが、ブーンもクーに続く。 そしてドクオも外へと走り出て――― ( ゚∀゚)「お疲れさん。その限界超えてる身体で、よくやってくれたね」 (,,゚Д゚)「あぁ」 ( ゚∀゚)「だから―――」 (,, Д )「……あ、ぁ」 息を漏らしつつ、ギコは前のめりに倒れた。 ジョルジュはそれを受け止め、再度ギコを背中へと乗せる。 ( ゚∀゚)「……さて、行こうか」 呟いて、ジョルジュもクー達に続く。 こうして、戦いと血に塗れた一日は終わりを遂げた。 二人のかけがえのない命を落とし、全身と心に深い傷を負って。 失った物は大き過ぎた。 それに代えて、何を得られたのだろうか。 ―――少なくとも、今は誰一人、それを考える事は出来なかった。 --------------------以下、おまけ------------------------ モナーどうなったの? あぁあぁぁああぁ!! すいません! 完全に書き忘れていました! ギコの助太刀によってモナーは死を免れ、クー達と一緒に脱出しました。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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