2006/12/24(日)17:28
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです(第三話一)
61 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:20:30.60 ID:YgJwQrnO0
第三話 「青年」
僕は、あのまた、見覚えのある黒い椅子に座っていた。
その視点はぼんやりと宙を見つめている。
あの出来事はなんだったのだろうか、と先程のことを思い出していた。
すごく自分より幼く、純粋な彼の放った言葉。それを理解できずに混乱していた。
だが、時はそれを整理するほどの暇を与えてはくれなかった。
再び、部屋は極限の白に染まる。そして、突如、その奥に現れるドア。
今度は、先ほど見た空より深い、青いドアだった。
再び僕は立ち上がり、今度はゆっくりとした足取りでそのドアに近づく。
そして、そのノブを握ると、再び不可解な思いに駆られた。
しかし、心の中に沸き起こる衝動は、抑える事ができなかった。
そのままそれを握った拳を回転させ、ドアを開く。
そして当然の如く、中に入り、閉じる。という行為をした。
62 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:21:13.31 ID:YgJwQrnO0
次に目の前に広がっていた空間も、不可解なものだった。
目の前は酷く薄暗い。先ほど、真っ白な空間に居たせいか、その黒は実際より色濃く感じる。
そして、目に慣れてきたころには自分が何処にいるかが把握できた。
左側には、真っ直ぐに伸びるカウンターと、それと並行するかのように並ぶ椅子。
カウンターの奥には、様々な色の瓶が整然と並べられている。
右側には、透明なガラスで出来たテーブルが一台と、
それを囲うようにした豪華な感じのソファーのような椅子が四台。
その奥にそれと同じような組み合わせがもう一つ。
そして一番奥には、一台のグランドピアノが置かれていた。
とりあえず、突っ立っていても仕方ないので、僕はカウンターの前にある一つの椅子に腰を掛ける。
そして、後ろを振り返り、再びこの空間を探るように見つめていた。
しかし、そこで背後から不意に声が掛けられる。
63 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:21:59.31 ID:YgJwQrnO0
「やぁ。ようこそバーボンハウスへ」
(;^ω^)「!?」
僕はびっくりして、カウンターの方へ振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
年齢は僕より一回り上なのだろうか?顔に刻まれた皺がそれを物語っていた。
身なりは白いシャツに蝶ネクタイを付け、黒いベストを羽織っている。
足元はカウンターに隠れて見えなかったが、どうやらスーツのようなズボンを履いているようだ。
髪は何か整髪料のようなもので整えており、上にある電球の光を受け輝いていた。
そしてその表情は眉がハの字に下がっていて、何処か気弱そうなイメージを僕に植え付ける。
64 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:22:41.78 ID:YgJwQrnO0
(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ。
このバーボンはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この店内を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない、
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、
そう思ってこの店を作ったんだ。
じゃあ、注文を聞こうか」
彼は、続けてこう語り、目の前に茶色い液体の入ったグラスを置いた。
が、僕はここに来たのは初めてだし、「また」とか言われてもピンとは来なかった。
65 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:23:09.86 ID:YgJwQrnO0
(;^ω^)「いや…「また」ってなんですかお?そもそも僕は一見さんですお」
(´・ω・`)「すまない、これは口癖でね。細かい事は水に流して欲しい」
(;^ω^)「…そうですかお。…ところで、ここは?」
三度、僕はこの店内を見回してみながら、そう訊いた。
(´・ω・`)「まあ、僕の趣味…みたいなものかな?いいセンスしてるだろう?」
(;^ω^)「…ええ、まあ…」
僕は適当に相槌を打つ。
まあ、本当の意味では答えにはなっていないが、とりあえずそういうことにしておいた。
66 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:23:37.12 ID:YgJwQrnO0
(´・ω・`)「注文はどうしようか?」
( ^ω^)「…僕はお酒が苦手だお。バーボンは無理ですお。
何か軽くて飲みやすいもの頼みますお」
(´・ω・`)「ふう…それは残念だね。わかった、少し待っていてくれ」
ふう、と彼は溜息をつきながら言うと、後ろの棚に手を伸ばし透明の液体の入った酒瓶に手を伸ばした。
そして、それを片手にカウンターの下で扉のようなものを開く。
次に、薄く半透明の液体が入ったペットボトルを残った手で取り出す。
そのまま、両手に持ったものをカウンターに置き、
横から、上下にくっついた金属のコップみたいなものを取り出す。
そしてそれを開き、またカウンターに置く。
次に再び瓶とペットボトルを片腕ずつに持ちその金属のコップのようなものに注ぐ。
そうして、残った方のコップで液体の入ったコップを閉じ、上下に数回振る。
最後に、電灯の光を受けキラキラと輝くカットの入ったカクテルグラスにその混ぜ合わせた液体を注いだ。
67 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:24:07.85 ID:YgJwQrnO0
(´・ω・`)「これは『ギムレット』というカクテルだ。
ドライジンとライムジュースを4:1で割ったものだよ。
本当は女性に勧めるカクテルだが、まあ仕方ない」
淡白いその飲み物は、
カクテルグラスが反射する光に混ざって、神秘的な雰囲気を醸し出していた。
周りの薄暗さがさらにそれを引き出しているのかもしれない。
( ^ω^)「他に、お客さんはいないのかお?」
(´・ω・`)「さあ?…どうやらそのようだね」
(;^ω^)「そのようだねって…まあいいお。いつもはどんな感じだお?」
(´・ω・`)「いつも僕が来る時は様々だね。
数人来る事もあれば、今みたいに一人しか来ないときもある。
僕の知り合いが来るし、君みたいに知らない人も来るようだね」
( ^ω^)「そうですかお…」
68 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:24:54.07 ID:YgJwQrnO0
そう言うと、ボーン、ボーンと大きな音が静かな店内の中を埋め尽くす。
どうやらそれは、目の前の青年の頭の上の時計から発せられているようである。
その時計は十時を指していた。
(´・ω・`)「こんな時間まで誰も来ないとなると、今日のお客さんは君一人だけだね。
そうだ、閉店までの間、暇つぶしに僕の話につきあってはくれないか?」
( ^ω^)「…う~ん、まあ…いいですお」
(´・ω・`)「ありがとう」
(´・ω・`)「これは、ある男の物語なんだ。
彼はこの店にも幾度となく訪れたことのある。その恋人と一緒にね」
(´・ω・`)「話はその二人のなり染めから始まるんだ」
そう言うと、彼は一言溜息をつく。そしてもう一呼吸おいてまた語り始めた。
(´・ω・`)「それは十年以上も前のことだ」
69 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:25:15.87 ID:YgJwQrnO0
―――彼は、その頃大学生だった。彼はとある大学の理系の学部に所属していてね。
その彼の毎日は平凡な生活の繰り返しだった。
ただ、講義に参加して、終わったあとはアルバイト。
そして家路につく。ひたすら、繰り返しの毎日だった。
彼自身、そんな毎日にうんざりしていたみたいだが、惰性的にそれを続けていた。
しかも、彼は凄く偏屈な人間でね。友人はお世辞にも決して多いとは言えなかった。
彼は退屈な時間の中を孤独に暮らしていたようだった。
彼はその状況を満足には思っていなかったが、受け入れてはいた。
いや、受け入れざるを得ない状況だったんだ。
しかし、彼の生活に突如として、変化が起こったんだ。
70 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:25:48.81 ID:YgJwQrnO0
僕は、彼の話を静かに聴きこんでいた。
彼の語り口調は凄く穏やかで、その声は、聞く物の心を落ち着けているように思えた。
そして、彼の話が進むにつれてさらに、その物語の中へと吸い込まれるように感じた。
…いや、感じたんじゃない。僕は紛れも無く、その物語の中にいたんだ!!
71 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:26:21.22 ID:YgJwQrnO0
気がつけば、そこは理科の実験室のような空間に居た。
壁を沿うように並ぶ棚はガラスで塞がれており、その中には茶色い瓶が並んでいた。
その瓶には『塩酸』だとか『エタノール』とか書かれたラベルが貼られている。
むしろ、僕が見たことの無い名前の方が多いような気がする。
そして、その空間の真ん中には、大きなベージュ色のテーブルが数台並んでいた。
ぼんやりと辺りを見つめていると、不意に、ガタッ、と背後から音がする。
そしてそれと同時に扉が開いた。
ドアの向こうから出てきたのは、自分より少し若そうな男と、白髪の目立つ中年の男性。
それぞれが、白衣に身を包んでいる。
(;^ω^)「…ごっ!ごめんなさいですお!!
…あの、その、これには深いわけがあって…」
僕は、慌ててその二人に対して謝る。どう見ても自分は不審者です。ありがとうございました。
72 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:26:51.70 ID:YgJwQrnO0
しかし、必死に謝る僕をよそに、
二人はドアから一番近い席に向かい合って座り何事も無いかのように語りだす。
へ?と僕は狐につままれたかのような感覚に陥った。
とりあえず恐る恐る二人に近づくも、なお彼らは気にするそぶりすら見せない。
仕方無く、僕は後ろにちょうど置いてあった椅子に座ろうとした。
だが、僕のお尻は空を切り、そのまま地面とぶつかってしまった。
突然の出来事に驚き、椅子に手を掛けようとしたが、それも虚しく空をつかむ。
この状況を飲みこんだ僕は、ようやく悟った。彼らには僕の姿は見えていない。
というより、僕の方が恐らく霊体のようなものになってしまったのだろう。
証拠に他のものに触ろうとしたが、どれも空を切ってしまう。
そうこうしているうちに突然、再び扉が開く。その先には、黒髪の長い女性が居た。
彼女の顔はどのパーツも整っており美しく、気品漂う雰囲気を醸しだしていた。
年齢はこれまた、僕より少し若い感じだろうか?
74 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/21(木) 21:27:40.17 ID:YgJwQrnO0
川 ゚ -゚)「失礼いたします」
そう一言発すると彼女は、二人のほうへと近づいていく。
ミ,,゚Д゚彡「彼女はこの研究室に新しく入ってもらうことになった。須名くんだ
で、こちらの彼は、この研究室のメンバーの佐藤君だ」
( )「……佐藤です。宜しくお願いします」
川 ゚ -゚)「………こちらこそ。須名です。宜しく」
二人とも、言少なめに自己紹介を終えると、それ以上言葉を発することは無かった。
ミ,,゚Д゚彡「ん?……もういいのか?だったら、実験の話に移ろうか」
そういうと、白髪の男はなにやら二人に話し始めた。
「塩基」がどうとか「配列」がどうとかなにやら専門用語が飛び交う。
僕にはとても難しい話だった。