2007/01/27(土)11:41
( ^ω^)が料理人になるようです(第十一章上)
52 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:51:20.93 ID:KW8Sy17O0
第11章 月の爆撃機
8:30
俺は自然と目を覚ます。
一応携帯の目覚ましはセットしてあるのだが、それが鳴り出す前に目が覚めるのは
もう5年も続いている習慣のせいだろう。
かすかに鼻に香ってくるシャンプーと入れたてのコーヒーの香り。
ツーが朝のシャワーを浴びている音が聞こえる。
あと10分もすればツーが入れたてのコーヒーを両手に持って姿を現すはずだ。
俺は上半身を起こしサイドボードからタバコを探り当てると、それに火をつけた。
('A`)『そう言えば今日はスペシャルラーメンで内藤がトマトラーメンを作りたいって言ってたな』
トマトラーメンと聞いて最初俺は苦々しげな顔をしたらしいのだが、
内藤はホールトマト缶、ひき肉、豆板醤などを使って見事なミートソースを作り上げてきた。
この中華風ミートソースとサラダ用のほうれん草、フライドオニオンを使ってトッピングするつもりらしい。
('A`)『俺も負けてられないな』
麺場に移ってからの内藤、ランナーとしてのツーは日々活躍の場を増やしている。
まるで水を得た魚だ。
それならばこっちも先輩としてダラけてはいられまい。
俺はタバコをもみ消し、ベッドの下に落ちているだろう下着を探し始めた。
53 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:52:51.48 ID:KW8Sy17O0
9:40
ツーを自転車の荷台に乗せて店に到着する。
内藤とツンはすでに着替えを終えており、パイプ椅子に腰を下ろして朝食をとっていた。
( ^ω^)『おっwww2人ともおはようだおwww』
ξ゚△゚)ξ 『また同伴出勤? 朝から熱いわね』
(*゚∀゚) 『いやいや!! ブーちゃんとツンほどじゃないよっ!!』
ξ*゚△゚)ξ『何言ってるのよ!! あたしの趣味は白馬に乗った将軍様って言うか…』
( ^ω^)『おっwwwおっwwwまさに僕のことだおwww』
ξ゚△゚)ξ 『 一 回 死 ぬ か イ タ リ ア 名 物 ? 』
そんな会話を聞きながらロッカーからクリーニングしたてのコックコートと前掛けを引っ張り出す。
('A`)『ツー。早く着替えちまえ』
全く。
何でこいつ等朝からこんな元気なんだろうな。
54 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:54:24.46 ID:KW8Sy17O0
10:15
冷凍庫を覗き込み本日のスペシャルランチを決める。
('A`) 『牡蠣が随分あるな…』
内藤が肉を使うならこっちは魚介類で勝負だ。
('A`) 『葉にんにくや筍を使ったオイスター炒めにするか』
倉庫に筍の缶詰をとりに行くとツーがなにやら業者と揉めていた。
( ´∀`)『そんな事言われたって…これだってトマトには違いないモナ』
(*゚∀゚) 『確かにそうだけどね!! わたしはちゃんと熟れたトマトが欲しいのさ!!
こんな青いトマトもらったってお客に出せないよ!!
熟れるまで待てとでも言うのかい!!
とにかくこんなのじゃお金は払えないね!!』
うん、これなら大丈夫だ。
バーボンハウスが契約している青果業者【モナーフレッシュサービス】はこっちが目を離すととたんに
食材の質を落としやがる。
モナーが悪質ってわけじゃない。どこもこんなもんだろう。
安く仕入れて高く売りたいって考えるのは当然だ。
中にはもっとセコイ手を使う業者だってたくさんいる。
だが、相手がツーではそれも通用しない。
('A`) 『あぁ、モナーさん。悪いが時間の無駄だ。
取引中止されたくなかったらとっとと戻ってちゃんとしたトマト持って来い』
俺がそう言うとモナーはすごすごと退散していった。
61 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:59:50.90 ID:KW8Sy17O0
10:45
朝礼。
今日のスペシャルについて説明する。
( ^ω^) 『今日のスペシャルはトマトラーメンだおwちょっと辛いからお子様には注意して欲しいお』
試食用に取り分けられた小皿を口元に運びながらウェイトレスは真剣に耳を傾ける。
ξ゚△゚)ξ『意外と美味しいけどちょっと辛すぎない?』
( ^ω^) 『夏だから辛めに仕上げてあるおww』
続いて今日のイベント情報。
(´・ω・`)『今日は18時からVIPアリーナでペニサス伊藤のコンサートがあるよ』
それを念頭に置いた仕事が必要になるわけだ。
11:00
開店。
いつも通りちらほらと入客があるのみ。
だが、ここで手を抜くと一日中尻をひっぱたくような目にあうのは経験上分かっている。
俺も内藤も自分のポジションの食材は何度も確認し、
少しでも少ない物があるとすぐに交換できるように準備する。
山のように積み上げられていたキャベツ、人参、ニラ、青梗菜、浅葱、ナス、アスパラガス…
それらは既に切り刻まれ俺たちに料理されるのを今か今かと待っている。
戦闘準備完了。
67 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:03:19.95 ID:KW8Sy17O0
12:00
堰を切ったような入客ラッシュが始まる。
どこにこんなに隠れていたんだと思うほどだ。
ξ゚△゚)ξ『3番テーブル5名様ご案内です!!』
ツンの声は叫び声に近い。
ただでさえお客様の会話や厨房の物音で店内は騒然としている。
それに加えて各自が自分の作業に夢中になっているので、
叫ぶくらいの声で無いとスタッフが聞き取れないのだ。
(*゚∀゚)『新規オーダー!! 醤油ラーメン3丁いただいたよっ!!』
ツーはプリンターから吐き出される伝票を一目見ただけで暗記し、
読み上げつつ俺と内藤のフォローをする。
(*゚∀゚)『2人とも7番テーブル行くよ!!
ドクオ君!! これはスペシャルの筍とパプリカ、麻婆豆腐の豆腐も切ったからね!!
ブーちゃん!! 遅れないでよ!!』
( ;^ω^)『7番!? くっ!! まだ6番のバーボンセットが出てないお!!』
(*゚∀゚)『はぁ!? 何分それに時間かかってんだいっ!?
作業台が散らかってるから時間かかるのさ!! ちゃんと片付けながら作業しないと遅れるよ!!』
('A`) 『ツー!! 俺は大丈夫だ!! とっとと内藤のフォローしてやれ!!』
料理を盛り付けた皿の縁に跳ねたソースをを拭き取りながら叫ぶ。
72 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:05:51.24 ID:KW8Sy17O0
ツーはあんな事を言ったが、決して嫌味で言うわけではない。
だから内藤もそれで凹むような事はない。
必死で俺のスピードに喰らいつこうとしている。
内藤の最大の欠点は慌てると周囲を散らかすことだ。
散らかるから作業スペースが小さくなる。
作業スペースが小さくなるから作業がしづらくなり、思うように動けなくなり作業が遅れる。
作業が遅れるからまた慌てる。
('A`) 『悪循環だな』
こればかりは内藤が自分で意識して解決するしかない。
俺がどんなに言っても解決の糸口にしかならないが、
自信で悩んで掴んだきっかけは内藤の実力を飛躍的に向上させるだろう。
( ;^ω^)『すまんお!! 7番いつでもいけるお!!』
(*゚∀゚)『7番は今出たよっ!! ちゃんと伝票確認して!!
しぃ!!そこのスペシャルラーメン7番に運んで!!
一番左が麺固めさっ!! さぁ、8番9番一気に行くよ!! 超ダッシュさっ!!』