第十五話第十五話 「終わり良ければ全て良し」 鳥の囀りが響く、静かな朝。 カーテンに遮られ微かな光しか差し込まない部屋の中、ドクオは一人ぼんやりと木張りの天井を眺めていた。 目を覚ましたのは今から十分ほど前のこと。 特別何かの干渉を受けたわけではなく、自然と訪れた目覚め。 クーが夢の中に現れてからは、いつもこのようにして朝を迎えていた。 やけにスッキリとした視界で辺りを見回すと、空になった三つの布団。 流石兄弟の二人とショボンが、既に起きていることに気づく。 おそらく一階に行ったのだろうと思ったが、一人で行くのは何か気が引けてブーン達が起きるのを待つことにした。 ('A`)「はぁ」 再び目の前に広がる、清閑とした天井。 ('A`)(……勉強にトラウマか) 天井の木目を見つめながら、クーの言葉を思い出す。 あの冷たく、無機質な声を。 ('A`)(元の体の時は勉強が嫌いで嫌いでしょうがなかった、とかかなぁ? でも、あいつの性格から考えてそんな風には思えないよなぁ) 大きく口を開け、あくびをする。 ('A`)(……わっかんねーなぁ) 目を瞑ったり開いたり、横を向いたりうつ伏せになってみたりと 襲い掛かる退屈に必死に抵抗してみるが、ブーン達は一向に目を覚ます気配がない。 ( -ω-)「ぐーすかぴー」 (;><)「うーん……お……重いんです……」 幸せそうに寝息をたてているブーンはともかくとして、 その下敷きになりうなされているビロードは、いつ起きてもおかしくないと思うのだが。 ('A`)(……ん?) 閉まった襖の向こうから、階段を駆け上る足音。 音が止み、襖を開いて現れたのは 从・∀・ノ!リ (*'A`)(あ……) 淡いピンクのパジャマに身を包んだ妹者だった。 小さな侵入者はドクオと目が合うと、人差し指を口に当て静かにするよう合図を送る。 そのまま音を立てないよう慎重に、ブーン達が寝ている方へと向かい歩き出す。 そして 从>∀<ノ!リ「朝なのじゃー!!」 朝の静けさをぶち破る声と共に、ブーンの上へと飛び乗った。 (;゚ ω゚ )「ぐぉえええええええ!!」 (;><)「ぐぎゃああああああああ!!」 連鎖する悲鳴。 从>∀<ノ!リ「起きるのじゃー!起きるのじゃー!」 (;^ω^)「っちょ!妹者ちゃん!?」 自分の体の上で大声を上げ暴れる妹者に気づき、慌てて起き上がるブーン。 (;><)「おごぉ!重いんです!早ぐぅ!早くどいてほしいんでず!!」 (;^ω^)「え!?なんでビロード君が下に!?」 下から聞こえる悲痛な叫び声に、ブーンは妹者を持ち上げ急いでその場から退く。 (;><)「はぁはぁ……助かったんです」 从・∀・ノ!リ「朝ごはんの時間なのじゃ!早く下に下りてくるのじゃ!!」 (;^ω^)「あ、起こしに来てくれたのかお?」 从・∀・ノ!リ「そうじゃ!」 (;><)「もっと優しく起こすことは出来ないんですか!!」 从・∀・ノ!リ「あんちゃん達が起きるのが遅いのが悪いのじゃ!」 (;><)「それはそうなんですけど……」 从・∀・ノ!リ「ショボンあんちゃんは早起きして朝ごはんの手伝いまでしてくれてると言うのに……」 (;^ω^)「そ、そうなのかお?」 从・∀・ノ!リ「そうなのじゃ!」 ('A`) 从・∀・ノ!リ「あ、ドクオあんちゃんも早くなのじゃ!!」 (*'A`)「あ、うん」 (;^ω^)「お、ドクオも起きてたのかお」 ('A`)「まぁな」 (;><)「先に起きてたなら早く起こしてくれなんです!」 ('A`)「いや、あまりに気持ちよさそうだったからさ。起こしちゃ悪いかな、と思って」 (;><)「そ、そうだったんですか?」 ('A`)「ああ、それはもう気持ちよさそうに眠ってたぞ」 ――― ―― ( ^ω^)「ふぅー、満腹満腹」 ('A`)「今日も美味かったなー」 (;><)「お腹気持ち悪くてあんまり食べられなかったんです」 ( ´_ゝ`)「何だって!?」 (´<_` )「それは勿体ない!」 ( ^ω^)「ショボン君の作ったあれは食べたかお?」 ( ><)「え?あれってどれのことなんですか?」 ('A`)「ああ、あれは美味かったな」 ( ´_ゝ`)「確かに、ショボン君があんなに料理上手だったとはびっくりだよ」 (´<_` )「流石の母者でもあれだけ美味いあれを作るのは無理だろうな」 (;´∨ω・`)「いや、それはさすがに言いすぎじゃないか?」 ( ^ω^)「そんなことないお!僕が今まで食べたあれの中で今日食べたあれが一番美味しかったお!」 (;><)「だからあれってなんなんですか!?」 「いーもじゃちゃーん!」 突如響き渡る、甲高い少女の声。 「はーあい、なのじゃ!」 それに答えるように妹者の声が続く。 ( ^ω^)「お?妹者ちゃんの友達かお?」 ( ´_ゝ`)「ああ、今日は一緒に外へ遊びに行くらしい」 (´<_` )「ここら辺は自然の遊び場がたくさんあるからな」 交わされた少女達のやり取りから数秒後、騒がしい足音と共に、襖が勢いよく開く。 从・∀・ノ!リ「いってきますなのじゃ!」 ( ´_ゝ`)「気をつけて遊んで来るんだぞ」(´<_` ) 从・∀・ノ!リ「わかったのじゃ!」 元気のいい返事を返した妹者は開いた襖を閉めることなく、そのまま階段を駆け下りて行った。 ( ^ω^)「いってらっしゃいだおー!」 ('A`) (;><)「あれって……いったい……」 ( ^ω^)「外へ遊びに行くなんて、高校入ってから全くしてないお」 ('A`)「懐かしいな……高オニとか色オニとか」 ( ><)「何言ってるんですか!!外でやる遊びと言ったらケイドロしかないんです!」 (´∨ω・`)「……缶けり」 (*^ω^)「おっおっ!なんか無性に外で遊びたくなってきたお!」 そう言ってはしゃぐブーンを止めるように、二つの声が降りかかる。 ( ´_ゝ`)「何勘違いしているんだ?」 (;^ω^)「おっ」 (´<_` )「まだ俺達の勉強合宿は終了してないぜ?」 (;^ω^)「お……」 ( ´_ゝ`)「さぁ、休憩の時間は終わりだ」 (´<_` )「オフにしていたスイッチをオンにして、昼までみっちり勉強するとしようか」 (;^ω^)(;'A`)「……うぇーい」 (;><)「その前にあれの正体を教えてほしいんです……」 (´∨ω・`) そう言うやいなや、すぐに文机へと向かう流石兄弟。 ブーン達も渋々ながらそれに続く。 (;^ω^)「はぁ……もうこの机も見飽きたお」 ('A`)「それは分かる」 (;^ω^)「はぁ、気が重いお」 二度目のため息をついた後、ブーンは自分の荷物から勉強用具を取り出す。 何もしない時間を引き延ばすために、わざとゆっくり一つ一つ机の上へと出していく。 ( ^ω^)「ふぅ、やるかお」 シャーペンを手に取り、ノートを開く。 三度目のため息をつき、ブーンはようやく勉強へと取り掛かった。 初めは静寂に包まれた室内も、次第にカツカツと言う断続的な音によって満たされていく。 時には、勉強に疲れた者が吐いたため息によってそのリズムが崩されたり、 小休止のため生じた会話によりその音がかき消されたりもしたが、六人の勉強は比較的滞りなく進んでいった。 そして、ブーンのついた三度目のため息から数時間後。 ( ´_ゝ`)「よし、午前の部終了」 (´<_` )「昼食にしようか」 二人の声を合図に、室内は歓喜と安堵のため息によって満たされる。 (;^ω^)「ふへー、やっと終わったお」 ('A`)「そうか?俺にはなんかあっという間だった感じがするんだけど」 (;><)「あっという間なわけないんです!僕もうヘトヘトなんです!」 (´∨ω・`)「……ふぅ」 各々、今の気持ちを言葉に表していく。 ( ´_ゝ`)「さぁ、勉学の時間は終了だ」 (´<_` )「オンにしたスイッチをオフにして、疲れた頭を休めようじゃないか」 ( ^ω^)「おっ!昼食はサンドイッチかお!」 ('A`)「お、ほんとだ」 一階へと下りてきたブーン達。 居間の方へ向かうと、ラップの被せられた巨大な皿がテーブルの上に置かれていた。 透明なラップ越しに、規則的に並んだ大量の三角形が確認出来る。 ( ´_ゝ`)「例の如く、母者は出かけてるみたいだな」 (´∨ω・`)「こんな量を作ってもらってしまって……何か悪いな」 (´<_` )「気にすることはない。残さず綺麗に食べてもらえれば、それだけで十分な礼になるさ」 (*><)「僕サンドイッチ大好きなんです!」 (*^ω^)「おっおっ、僕もだお!」 ( ´_ゝ`)「もう待ちきれない二人もいるようだし」 (´<_` )「さっさと食べ始めるとしようか」 (*^ω^)(*><)「いっただきます(お)(なんです)!!」 ('A`)「いっただきまーす」 (´∨ω・`)「いただきます」 (*^ω^)「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」 (*><)「おいしいんです!」 猛烈な勢いでサンドイッチをかっ食らう二人。 (;'A`)「お前ら、そんなに急いで食ったら喉に詰まるぞ」 (*^ω^)「ハムッんなハフこたぁなハフいお!」 (*><)「おいしいんです!おいしいんです!」 (;'A`)「うわ!食べながらしゃべんなよ!」 ブーンの口から、唾と小さく丸まったパン屑が飛び、ドクオの顔へと当たる。 (*^ω^)「ドクオももっと食べるお!」 そんなこともお構い無しに、ブーンはドクオへとサンドイッチを渡そうとする。 (;'A`)「いや、俺はいらない」 ( ^ω^)「なんでだお?こんなにおいしいのに」 ( ><)「そうなんです!こんなにおいしいサンドイッチ久しぶりにゴフッ!」 ('A`)「いや、俺ツナサンドダメなんだ」 ( ^ω^)「あれ?ドクオってツナサンド嫌いだったのかお?」 ('A`)「いや、好きだぜ。だけど、ツナを食べると体に水銀がたまりやすくなるんだ」 ( ^ω^)「へぇー、そうなのかお」 (;><)「ガッ!ゴフッ!ゲホッ!」 ('A`)「水銀が体内に蓄積されると、四十歳を過ぎてから心臓発作を起こしやすくなるし、髪も抜けやすくなるんだ」 ( ^ω^)「へぇー、じゃあこれは僕がもらうお!」 (;'A`)「あ、ああ……この話聞いても食べるんだ」 (;><)「オフッ!ミグ!ミグッ!ミグゥ!!」 ( ^ω^)「そんな先のことを今考えたってしょうがないお!」 (;'A`)「まぁ……生き方は人それぞれだしな」 (;><)「じぬ!じぬぅぅぅぅ!!」 (´∨ω・`)「……ほら」 (;><)「ごぶっ……ぷはぁっ!た、助かったんです……」 ( ´_ゝ`)「何とも賑やかな食卓だな」 (´<_` )「まったくだ」 「だれか!だれかいませんかー!」 突然、玄関から声が響き渡る。 ( ´_ゝ`)「ん、あの声は」 (´<_` )「ミセリちゃんか?」 サンドイッチを貪る音と騒がしい叫び声の中、二人だけがその声に気づく。 ( ´_ゝ`)「どれ、俺が見てくるよ」 (´<_` )「ああ、頼んだ」 そう言うと兄者は立ち上がり、騒々しい居間から出て行った。 ( ^ω^)「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」 ('A`)「たまごサンドうめー」 (;><)「うぇ……なんか気持ち悪くなってきたんです」 (´∨ω・`)「……うまいな」 (;><)「も……もうだめ……ト、トイレはどこなんですか?」 (´<_`;)「おいおい、大丈夫か? トイレならそこから出て左に曲がったとこの突き当たりだ」 (;><)「あ、ありがとうなんです……うぇっぷ」 生々しい嗚咽を吐き出しながら、ビロードは慌てつつもゆっくりと立ち上がる。 そして、弟者に指示された通りにトイレへ向かおうとする、が (;´_ゝ`)「う、うわぁ!!」(><;) 勢いよく居間へと入ってきた兄者と正面からまともにぶつかり、お互いに尻餅をつく。 (;´_ゝ`)「す、すまん!」 (;><)「いったいんです!!」 (´<_` )「どうしたんだ兄者、そんなに慌てて」 弟者がそう言うと、兄者はハッとしたような顔で立ち上がり、震えた声で叫ぶ。 (;´_ゝ`)「妹者が!妹者が!!」 空は見事な五月晴れ。見ているだけで吸い込まれそうな青が一面に広がっている。 そんな雲一つない空に我が物顔で居座る太陽は 五月晴れと言うには余りに見合わない、茹るような暑さを地上にもたらしていた。 ミセ;゚ー゚)リ「はぁはぁ」 そして、その焼け付くような暑さの中、必死に走る少女と五人の少年達。 (;^ω^)「はぁはぁ……あちーお……」 (;'A`)「言うなよ、余計暑くなるだろ」 (;´∨ω・`)「……はぁ」 少女を先頭に三人が続き (;´_ゝ`)「はぁ、走るのなんて……」 (´<_`;)「ひぃ、久しぶりだ……」 それから少し離れた位置に二人が続く。 揺れる視界の両側に広がる田んぼから注がれる日光が、余計に暑さを感じさせる。 ミセ;゚ー゚)リ「あそこ!あそこです!」 少女が指差す先、田んぼ道を抜けた先に見えたのは、 森と呼ぶには少なすぎる、かと言って林と呼ぶには多すぎる広葉樹の群れ。 五人は少女を追いかけるように、空から降り注ぐ熱線から逃げるように、その中へと入っていった。 (;´_ゝ`)「妹者!」(´<_`;) 太陽の日差しから逃げ切り、日陰のもたらす涼しさを感じる間もなく、兄者達が叫ぶ。 その視線の先は (;^ω^)「高っ!」 青空を、澄んだ黄緑色に染め上げる一本の大木。 鮮やかなオリーブ色の中で、泣き叫ぶ一つの影。 从;∀;ノ!リ「こわいのじゃー!!」 遥か上空で必死に枝にしがみつき、悲痛な声を上げ続ける妹者の姿は その高さも相まってますます小さく、そして弱弱しく見えた。 (;'A`)「どうやってあんなとこまで登ったんだ」 ミセ;゚ー゚)リ「前にもこの木を登ってたりしてたんですが、いつもはもっと低い位置で登るのをやめてたんです。 だけど、今日は何か調子がいいって言って、そのままあそこまで……」 何気なくぼやいた言葉に、返ってくる少女の答え。 (;'A`)「調子がいいっていうレベルじゃねーぞ……」 (;´_ゝ`)「離せ!弟者!」 (´<_`;)「馬鹿野郎!ろくに走れもしない貧弱な身体であんな高さ登れるわけないだろ!! それに万が一登れたとして妹者を担いで降りてくるなんて不可能だ!!」 (;´_ゝ`)「だからってじっとしてろってのか!?妹者はこのままでもいいってのか!?」 (´<_`;)「そんなこと言ってないだろ!冷静に考えて言ってるだけだ!!」 視線を下に落とせば、幹にしがみつき叫ぶ兄者とそれを止める弟者。 (;^ω^)「ちょ、二人とも落ち着くお!ここは他の人に任せた方が……」 ミセ;゚ー゚)リ「内藤さんは登れないんですか?」 (;^ω^)「僕はちょっと……」 (;'A`) もう一度上を見上げる。 目に入るのは、未だに泣き続ける妹者の姿。聞こえるのは、悲痛な泣き声。 (;'A`)「……くっ」 助けにいこう。ドクオの頭から、身体中に信号が送られる。 しかし、それを阻む背筋の寒気。 一瞬で身体中を震わせ、一瞬で消え去る。 そして、それと共に頭の天辺から足の裏まで突き抜けた、恐怖と言う名の一本の槍は そのまま地面へ深々と突き刺さり、ドクオをその場へと縛り付けた。 (;'A`)「……くそ」 震える足に苛立ちをぶつけるかのように、下を俯く。 恐怖から目を逸らすために、俯く。 (;'A`)(結局何しにきたんだよ……俺は) 兄者の話を聞いてから、すぐにドクオ達は家を飛び出した。 今思えば、もう少し準備なりなんなりしておくべきだったのかもしれない。 (;'A`)「こういう時ってどうすりゃいいんだよ……レスキュー隊でも呼べってのか?」 かろうじて正常に機能する頭で、今自分に出来る最善の策を考える。 しかし、浮かぶ考えを実行に移すことが出来ない。 これが果たして正しいことなのだろうか。一度考え出すと、踏ん切りがつかない。 ドクオは頭の中の整理に手一杯で その声を耳で拾うことは出来ても、どういうものか理解することがすぐには出来なかった。 「俺が……登る」 自らの強い意志を示す、少しくぐもった声を。 (;^ω^)「おっ?」 振り向くブーンの横を通り過ぎ、その声の主は大木の根元まで歩を進める。 (;´_ゝ`)「む?」 (´<_`;)「ん?」 その足音に気づき、兄者達も後ろを振り向く。 声の主は兄者達の前で立ち止まると、おもむろに靴を脱ぎ出し素足になる。 (;´_ゝ`)「もしや……妹者を」 (´<_`;)「助けに、行ってくれるのか?」 黙ったまま頷き、視線を上へと向ける。 (;´_ゝ`)「木登りの経験は?」 上を向いたまま、今度は首を横に振る。 (´<_`;)「大丈夫なのか?あの高さだぞ……」 視線を戻し、答える。 (´∨ω・`)「それでも……いくしかないだろう」 (;^ω^)「ショボン君大丈夫かおね……」 長々と聳える大木に向かい立つ、その後姿を眺めながらブーンが呟く。 ミセ;゚ー゚)リ「私達に何か手伝えることってありますかね?」 (;^ω^)「……」 ミセ;゚ー゚)リ「見てるだけって言うのも何かもどかしいものがありますよね……」 (;^ω^)「……今思ったんだけど、ミセリちゃんって結構大人っぽい話し方だおね」 ミセ;゚ー゚)リ「え!?そ、そうですか?」 (;^ω^)「いや、別にそれが悪いとか言ってるわけじゃないんだお。 ただ、僕がそう感じただけで……」 そう言うと、ブーンは喉を鳴らすように唸る。 自分より一回りも小さな少女に抱いてしまった変な劣等感を吐き出すかのように。 (;^ω^)「あ゛ー、とりあえず、もしもの時のためにも木の下の所に居た方がよさそうだおね。 ミセリちゃんは危ないからここにいるんだお?そいじゃ、いってくるお!!」 返答も待たずに木の根元へと駆け出す。 走り出してからすぐ、ブーンの耳が微かに捉えたのは 慌てたような少女の声と何かが地面へと倒れたような生々しい音だけだった。 ――――――――夢―――――――― 从;∀;ノ!リ「!?」 目の前に広がっていた途方もない高さが、一瞬の内に消え去る。 その代わりに現れたのは、落ち着いた雰囲気の漂う和室。手に感じるざらついた畳の感触。 救いの手を求めるように、襲い掛かる恐怖を紛らわすように、精一杯喉を震わせ叫んでいた妹者の動きが、突然に止まった。 从;∀;ノ!リ「こ……ここは?」 滲む視界で辺りを見渡す。 目に映るのは、ぼやけた天井、ぼやけたちゃぶ台、ぼやけた人影。 从:∀;ノ!リ「あ!」 うつ伏せに横たわる見覚えのある人影を発見し、妹者は慌てて駆け寄ろうとする。 が、その前に 从:∀;ノ!リ「……ッスン……」 鼻をすすり、息を整え、右手で痛いくらいに強く涙を拭い取る。 涙でくしゃくしゃになった顔が幾分マシになる。 从・∀・ノ!リ「あんちゃん!あんちゃん!!」 ('A`)「……ん」 从・∀・ノ!リ「起きて!起きてなのじゃ!!」 ('A`)「んぅ……」 (*'A`)「うお!!」 目の前に突如現れた妹者の顔に驚き飛びのく。 その顔には焦りと照れの入り混じったような表情が浮かんでいる。 从・∀・ノ!リ「ここはどこなのじゃ!?」 (;'A`)「うぇ!?」 いきなり投げかけられた問いに焦りの色が濃くなるドクオ。 状況を把握しようとするが、その間にも問いは投げかけられ続ける。 从・∀・ノ!リ「ねぇあんちゃん!ここは一体どこなのじゃ!?なんで妹者はここにいるんじゃ!?」 (;'A`)「え、いや、ちょ待って!そんないきなり言われても――」 从・∀・ノ!リ「あ!もしかして!!」 何か閃いたのか、畳み掛けるように繰り出されていた妹者の声が一段と大きくなる。 从・∀・ノ!リ「あんちゃんが妹者を助けてくれたのか!?」 (;'A`)「へ?」 从・∀・ノ!リ「あんちゃんが妹者を助けてここまで連れて来てくれたんじゃな!?」 (;'A`)「いや、それはちがくて――」 从・∀・ノ!リ「あんな高い所から妹者を助けてくれるなんて、あんちゃんすごすぎなのじゃ!」 (;'A`)「いやだから――」 从・∀・ノ!リ「助けてくれてありがとうなのじゃ!!」 (*'A`)「……」 無垢な表情で真っ直ぐドクオの目を見つめ、素直な気持ちをそのまま言葉に表す妹者。 その純粋で汚れのない姿に心奪われ起こる、一瞬の思考停止。 そして、奪われた心が戻ってくると共に、妙な冷静さがドクオの頭へ訪れる。 ('A`)「……」 从・∀・ノ!リ「む?どうしたのじゃ?」 見慣れた景色を見回し、思考する。 どうするべきか、考える。 ('A`)「……」 从・∀・ノ!リ「?」 (;'A`)「……はぁ」 きょとんとした顔の妹者を見て、答えは決まったようだった。 (;'A`)「喜んでるとこ悪いんだけど、まだお家には帰れそうにないんだ」 从・∀・ノ!リ「なんでなのじゃ?というかここはどこなのじゃ?」 (;'A`)「んー、それは答えられないんだ」 从・∀・ノ!リ「なんでなのじゃー?」 (;'A`)「それも言えない」 バツが悪いような表情で言葉を続けるドクオ。 ('A`)「だけど、絶対に君をお家に帰すから。それだけは約束するから」 そう言いながらリモコンを手にとり、テレビの方へと向ける。 ('A`)「だから、心配しないで」 電源ボタンを押し、テレビに光が宿り始める。徐々に鮮明になっていく映像。 完全にその光景が映し出された所で、ドクオの背筋に再び嫌な寒気が走る。 (;'A`)(とは言ってみたものの……クー、大丈夫かなぁ) ――――――――現実―――――――― 从;゚ -゚ノ!リ「くっ……」 余りの高さに目が眩む。 脳裏にちらつく、死の恐怖。 从;゚ -゚ノ!リ(この身体に入ったまま死んだら、どうなるのだろうか……) 恐怖は思考を負の方向へと導いていく。 頭の中を覆い尽くす、死。 从;゚ -゚ノ!リ「……ダメだ。こんなことを考えていては」 頭を振り回し、恐怖を外へと追い出す。 そのまま下を向くことなく、視線を後ろへ。 从;゚ -゚ノ!リ「……降りよう」 呟くと、枝にしがみついた体勢のまま幹の方へとずり下がる。 幹のところへ到着するとゆっくり身体を起こし、ささくれ立った木の表面へと手を当てる。 从;゚ -゚ノ!リ(いけるか?) 遥か下方からは悲鳴にも似た叫び声が聞こえる。 しかしその声も、今のクーには届かなかった。 从;゚ -゚ノ!リ「……はぁー」 深く息を吸い、深く息を吐く。 从゚ -゚ノ!リ「いくか」 両手を幹にかけ、感触を確かめる。 安定していることを確認し、意識を右足へ。 从;゚ -゚ノ!リ「っ……」 短い足を精一杯伸ばし、幹へと巻きつける。 次は、左足。 しかし、枝へと残った左足は中々その場から離れようとしない。 名残惜しそうに枝へと絡みつき、離れようとしない。 从;゚ -゚ノ!リ「くそ……」 言うことを聞かない足に、苛立ちのような焦りのような感情を覚える。 下からの声が、徐々にクーの意識を侵食し始める。 「妹者!そこでじっとしてろ!!」 「危ないから動くんじゃない!!」 冷静さを失った二つの声。感情をむき出しにした本能の声。 流れるようなコンビネーションも今となっては見る影もなかった。 (;´∨ω・`)「!?」 幹に手をかけ、覚悟を決めたその時だった。 後ろにいる兄者達の声が悲鳴に近いものへと変わる。 それを聞き、視線を上へ向けると (;´∨ω・`)「な……」 しがみつく対象を枝ではなく、太い幹へと移した妹者の姿。 そこから予想される行動は (;´∨ω・`)「自力で降りる気なのか!?」 先程までの姿からは全く予想できなかった光景。 だからこそ、ショボンは自らの危険を冒してまで助けに行こうと決めたのだ。 (;´∨ω・`)「くっ……」 その光景に焦りが浮かぶ。まとまりかけていた考えがバラバラに散らばっていく。 冷静に、慎重に事を運ぼうと考えていた矢先に起こった、想定外の出来事。 散らばった欠片を集めている余裕など、残されてはいない。 幸いにも妹者は未だ左足を枝にかけたままの状態で固まっている。 ショボンは上へと向けた視線を元に戻し、幹へとかけた両手に力をこめ、自らの身体を上へと運んでいった。 从;゚ -゚ノ!リ(大丈夫だ……いける) 動かない左足へと言い聞かすように、心の中で呟く。 枝へと絡みついた左足は緩やかに動き出し、そのまま木の表面へと着地する。 从;゚ -゚ノ!リ「……ふぅ」 四肢全てが枝から離れ、それと共に襲い掛かる自らの体重。 その負担も予想の範疇内に収まり、木にしがみついた小さな身体は安定を保つ。 从;゚ -゚ノ!リ「ふっ!」 手に力をこめると共に、口から漏れる強い吐息。 視界を覆いつくすゴツゴツとした木皮がスクロールしていく。 从;゚ -゚ノ!リ(よし、この調子だ) 予想外の滑りも負担も訪れず、僅かな安堵を覚える。 しかし、手足にこめる力、張り詰めた気、その両方を決して緩めることはしなかった。 木皮の感触を一回一回噛み締めるように、ゆっくりと身体を下へ滑らせていく。 遥か下方から聞こえていた声が徐々に近づく。 増大していく声はクーの意識を侵すことなく、その場に響き渡っていた。 ――――――――夢―――――――― (;'A`) 食い入るようにテレビの画面を見続けるドクオ。 映し出される映像にほとんど変わりはなく、木の表面が下から上へと流れていく微かな変化ぐらいしか確認出来ない。 しかし、その微妙な変化こそが、クーの行動がうまくいっていることを示す唯一のサインだった。 从・∀・ノ!リ「ねぇねぇあんちゃん。さっきから何を見てるのじゃ?」 (;'A`)「え?」 すぐ横で大人しくしていた妹者が突然に問いを投げかける。 从・∀・ノ!リ「ずっと木しか写ってないけど、これは一体何の番組なのじゃ?」 (;'A`)「ああ……ええとねー」 目線を泳がせ苦笑いを浮かべる。 数秒間を置き、少女の問いに答える。 (;'A`)「せ……世界の木の表面からって番組だよ。今日からN○Kで始まったんだ」 从・∀・ノ!リ「へぇー。つまんないから他のチャンネルに変えてもいいか?」 (;'A`)「いやー残念なことにこのテレビ○HKしか映んなくてさー。ごめんね」 从・∀・ノ!リ「えぇーつまんないのじゃー」 ――――――――現実―――――――― (´∨ω・`)(よし) 開かれた片眼の見据える先、少女の姿がすぐそこまで近づいていた。 (´∨ω・`)(もう少し……もう少しだ) クーが降りてきてくれたおかげで、それ程高く上ることなく合流することが出来そうだった。 このまま何の問題もなく行けば、彼らは無事に地上へと戻れるだろう。 从゚ -゚ノ!リ 一方クーは、下から助けが来ていることに気づきもせず、ひたすらに木皮の上を滑る手足へと意識を集中させていた。 その単調かつ繊細な反復運動は、順調に滞りなく進んでいく。 从゚ -゚ノ!リ(あとどれくらいだろうか) ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。 しかし、その疑問をすぐに解決しようとは考えなかった。 いずれ答えは分かるのだ。そんなせっかちな真似をして今のペースを崩しては元も子もない。 クーは、至って冷静だった。 从゚ -゚ノ!リ「……ん?」 突如、視界の下隅に現れる赤い影。 その正体を突き止めるまで、僅か数瞬。 時が、止まり 从゚ -゚ノ!リ そして、動き出す。 从;゚ -゚ノ!リ「ッキァァァァァァァァァァ!!!!」 耳を劈く金切り声。 黒板を尖った爪で思いっきり引っかいたような不快音。 こんな音を人間の口から発することが出来るのかと問いたくなるほどに、その悲鳴は高く、洗練されていた。 从;゚ -゚ノ!リ「ァァァァァァ――」 声帯をがむしゃらに震わせながら気づく。 自分の視界が見る見るうちに開けていくことに。 気づけば、真っ逆さまに落下する身体。 心臓を置いてけぼりに、身体だけが落ちていく感覚。 遠くに見えたのは、オリーブ色の点に埋め尽くされた、青空。 (;´∨ω・`)「!?」 手を伸ばせば今にも届きそうな距離まで来ていた少女の身体が突然バランスを崩す。 耳が痛くなるような悲鳴を上げながら、体勢を保てない身体がゆっくりと落下を始める。 それを認識するよりも早く、ショボンは左手を伸ばす。 自分の身体を支える重要な柱とも言えるその左手を、惜しげもなく空中へと差し出す。 (;´∨ω・`)(間に合え!) 仰向けに落下する少女の身体。 両足をこちらに向け、ショボンの目の前を通り過ぎようとする。 左手に触れる少女の左足。 滑り落ち 通り過ぎ 視界から、少女の姿が消える。 左手に残る、滑らかな肌の感触。 その余韻を感じる間もなく、背筋に走る嫌な寒気。 ショボンはうなだれるように、首を下へと向けた。 ――――――――夢―――――――― (;゚A゚) 目をこれでもかと言うくらいに見開き、固まるドクオ。 その視線の先に置かれたテレビは、黄緑色に覆われた空を映し出していた。 画面下部に赤い影が映ってから間もなく、嫌な悲鳴と共に画面は大きく揺れ、気づけばこの映像を映し出していた。 この一連の流れが意味するもの。ドクオは当然のようにそれを理解し、そして凍りついた。 从・∀・ノ!リ「あ!おっきい兄者とちっちゃい兄者!!」 (;'A`)「え」 突然、画面の中に姿を現した同じ顔。 心配そうにこちらを、クーの顔を見つめている。 (;´_ゝ`)「大丈夫か!?妹者!!」(´<_`;) 从・∀・ノ!リ「お!もしかしてこちらが見えているのか!?」 自分の名前が呼ばれたことで、反応を示す妹者。 画面へ向かって手を振り、大声で叫ぶ。 从・∀・ノ!リ「おーい、兄者達ー!妹者はこの通り無事なのじゃー!!」 (;'A`)「……」 从・∀・ノ!リ「なんでテレビに出てるのじゃー!?妹者も出たいのじゃー!!」 (;'A`)「……よかった」 状況を理解し、安堵の息を漏らす。 目線の先では兄者達が相変わらずの表情で、妹者と噛み合わない会話を続けている。 ('A`)「お?」 と、ホッとしたのも束の間、黒電話のベルの音が響き渡る。 ドクオは重い腰をあげ、音源の元へと向かう。 ('A`)「もしもし」 「事は済んだ。元に戻る」 ('A`)「……随分と簡潔な物言いだな。あんなことがあってすぐだってのに」 「……もう終わったことだ」 (;'A`)「つってもなー、こちとら血の気が引いたんだぜ? お前がムカデなんかで驚いたりするから……」 「なんか、だと?あれの恐ろしさを間近で見たことがないからそんなことが言えるのだ」 (;'A`)「そんなものよりよっぽど恐ろしい体験を、俺だってさっき味わったばっかだっつーの」 (;'A`)「あ」 「なんだ?」 (;'A`)「話を元に戻すけどさ。元に戻るにあたってちょっとお願いがあるんだけど……いいかな?」 「回りくどい。単刀直入に言え」 (;'A`)「う……じゃあ、言うよ?」 「早く言え」 (;'A`)「記憶を消さずに妹者ちゃんを元の身体に戻すことって……出来ない?」 遠慮がちにドクオがたずねる。 訪れる、しばしの沈黙。 (;'A`)「やっぱ……無理、かな?」 その静けさに耐え切れず、もう一度確認するように問う。 それからまたしばらくの間を置き、 「……出来なくはないが」 (;'A`)「ほ、本当か?」 「だが、私としては記憶をしっかりと消した上でそこへ戻りたい」 (;'A`)「でもさ!この場所の説明はしてないし、妹者ちゃんもここが夢の中だなんて気づいてない。 消さなきゃなんないような事は何一つしゃべってないんだぜ!?だったらわざわざ消す必要もないんじゃないかなぁ!?」 「……」 (;'A`)「な?お前だってあんなかわいい子に下剤なんて飲ませたいと思わないだろ?」 「……」 (;'A`)「なぁ!頼むよ!!」 「……かわいい、からなのか?」 (;'A`)「へ?」 「かわいいから下剤を飲ませるような酷い真似をしたくないのか?」 (;'A`)「いや、言ってる意味がよくわからないんだけど」 「……まぁいい。わかった、そこまで言うのなら記憶を消さずにこの身体を解放しよう」 (;'A`)「本当か!?」 「ああ」 (;'A`)「よかった……」 「その子をトイレに一人で入れて、水を流すレバーを引かせる。 それで私がそちらへと戻り、その子の意識はこちらへと戻ってくるだろう」 (;'A`)「そんな簡単なことでいいのか?」 「ああ」 (;'A`)「そうか……ありがとう」 「礼を言うほどのことか。それでは、後は頼んだぞ」 その言葉を最後に電話は切れる。 ドクオは受話器を下ろすと、テレビへ向かい賑やかに話しかける妹者の方へ顔を向けた。 从・∀・ノ!リ「お!おっきい兄者とちっちゃい兄者!」 (;´_ゝ`)「妹者!!」(´<_`;) 从・∀・ノ!リ「あれ?さっきまでトイレにいたはずなのじゃが……」 (;´_ゝ`)「お……」(´<_`;) 从・∀・ノ!リ「何故妹者はこんなところにいるのじゃ?」 ( ;_ゝ;)「おお……」(;<_: ) 从・∀・ノ!リ「兄者達もテレビの中――」 ( ;_ゝ;)「よかったああああああああああああ!!!!」(;<_: ) 从;・∀・ノ!リ「うはっ!な、何をするのじゃ兄者達!苦しい!苦しいのじゃ!!」 ( ;_ゝ;)「この馬鹿妹者!もうあんな危ない真似二度とするんじゃないぞ!!」(;<_: ) 从;・∀・ノ!リ「それはわかったから離して!離してなのじゃ!!」 ( ;_ゝ;)「離さん!しばらくこのままでいさせろ!!」(;<_: ) 从;・∀・ノ!リ「苦しい!苦しいのじゃ!!」 ( ;_ゝ;)「うおおおおおおおおおおおお!!」(;<_: ) (;^ω^)「……よかったお」 流石兄弟の両腕に抱えられ、何が何だか分からないような表情を浮かべる妹者。 微笑ましく、どこか心温まるようなその光景を眺めながらブーンが呟く。 ミセ;゚ー゚)リ「よかっ……た」 (;^ω^)「あんまり長いこと反応がないもんだから、どうかしちゃったのかと思ったお……」 ミセ;ー;)リ「うぅ……よかった」 (;^ω^)「お?」 ミセ;ー;)リ「うぁぁぁぁぁぁん!!」 その光景を見て安心しきったのか、ミセリはその場に崩れ落ち一際細く甲高い声で泣き始める。 ミセ;ー;)リ「よかった……よかった……」 ( ^ω^)「……」 ミセ;ー;)リ「うぁぁぁぁぁぁん」 ( ^ω^)「……なんだかんだ言っても、やっぱり小学生だおね」 ( ^ω^)「本当に……よかったお」 (´∨ω・`) 熱を帯び、ヒリヒリとした痛みを感じる両手の平を見つめる。 微かに滲んだ血。息を吹きかけ、視線を前へと戻す。 ('A`)「とんだ登り損だったな」 横から声がかかる。 顔を向けずに目線だけを動かし、その姿を確認する。 ('A`)「結局あの二人に手柄取られちゃってちょっと悔しかったり?」 (´∨ω・`)「……」 ('A`)「……なんて、ちょっと不謹慎だったか。わりぃ」 (´∨ω・`)「……いいんだ」 先程まで自分のいた場所を見上げる。 その高さを改めて確認し、身体の底から疲れがこみ上げる。 (´∨ω・`)「助かったのなら……それで」 ('A`)「……そうだな」 滲む汗。ぼさぼさに乱れた髪の毛。疲労感に覆われた顔。 いつにも増してしょぼくれた表情の奥深く。 そこに隠された嬉々とした感情を認め、ドクオは小さく微笑んだ。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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