876284 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【お気に入りブログ登録】 【ログイン】

LOYAL STRAIT FLASH ♪

三十三章四

182 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:31:08.18 ID:e8ECLFRD0

从;゚∀从「てめぇッ……殺人鬼側のつーか!」

(*゚∀゚)「うん、そうなるね」

ハインは肩を掴んでいた手を放すと、胸倉を掴み上げる。
しかしそうしても、つーの笑いは止まらない。

从#゚∀从「何がおかしいってんだ、てめぇ」

(*゚∀゚)「全てがおかしくて。面白くて仕方ないんですねぇー。く、くく」

从#゚∀从「おいてめぇ。何、勝手に『外』に出て来てんだ? 
     誰が出て来て良いっつったんだよ? あぁ?」

(*゚∀゚)「仕方ないじゃん。もう一人の私は、私の中の厚い厚い殻の奥で眠っちゃってるんだから。
    おっと、誤解しないでよ。殻の中に入れたのも眠らせたのも、私じゃないからね」

从#゚∀从「なら、誰がやったってんだ」

(*゚∀゚)「私が知るはずないとは思わないの?
    まず、私はそいつを知ろうとも思わないしね。
    私はこの通り、自由になれれば良いのさ」

从#゚∀从「あたしは良くないねぇ。とても不快だよ。
     ……さっさと『中』に潜って、つーと交代してこい。
     そして出てくるな」


185 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:33:19.68 ID:e8ECLFRD0

(*゚∀゚)「ははははははっ!! ははははっ!!ひゃははははははっ!!」

突然、狂ったかのように笑い出すつー。
しかしその笑いも突然収まり―――

(*゚∀゚)「交代? 誰がするかってーの。馬鹿なんじゃないの?」

禍々しい微笑を浮かべると、つーはハインに向かって中指を立てた。

从#゚∀从「ふざけてんじゃねぇぞコラァ!!
     調子に乗るのもいい加減にしやがれ!!
     終いにゃぶっ殺すぞ、てめぇ!!」

(*゚∀゚)「殺れるものなら?」

くくく、と笑いを漏らして、つーは続ける。

(*゚∀゚)「私を殺せば、あなたの大切なつーちゃんも死んじゃうよぅ?
    ま、どちらにせよ、今の私をあなたは殺せないけどね」

从#゚∀从「あぁ?」

(*゚∀゚)「言ったでしょ? 彼女は、厚い厚い殻に閉じ込められて眠らされているって。
    それはつまり、私は完全に開放されたって事になるんだよ?
    彼女の抵抗も何もない。戦い放題の殺し放題。私は、最強だよ」

从#゚∀从「戦ってみるか? その調子乗った口、二度と叩けないようにしてやるよ」


186 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:35:08.77 ID:e8ECLFRD0

(*゚∀゚)「戦ってあげても良いけど……あなたに得はないよ?
    私に敗けて精神も身体もボロボロになるだけ。
    それに、運良く私の意識を落とす事が出来ても、彼女は起きないしね」

从#゚∀从「……どういう事だ」

(*゚∀゚)「あーもー。同じ事、何回も言わせないでよ。馬鹿なの?
    だから、彼女は殻の中で眠らされてるって言ってんじゃん。
    私が意識を失ったところで、彼女が起きるわけじゃないんだよ」

从#゚∀从「……どうすれば起きる」

(*゚∀゚)「知ったこっちゃないね。知ってても教えないけどw」

从#゚∀从「じゃあ、そうだな。お前『中』に潜って、殻とやらを破壊してこい。
     そんでつーを起こして、交代してこい。痛い目ェ見たくないならな」

(*゚∀゚)「痛い目? 見せられるもんなら見せてみなよ、ばーか」

一瞬だった。
つーが手に持っていたベルトからナイフを引き抜き、その切っ先をハインに振るったのは。

その速さに、ハインは反応出来ない。
ナイフはつーの胸倉を掴んでいた彼女の右手の甲に、深々と突き立てられた。

血が噴き出し、続いて襲ってくる痛みにハインは胸倉を放してしまう。
彼女は低く呻くと、つーに向けて蹴りを放った。


187 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:37:05.54 ID:e8ECLFRD0

長い彼女の足は、しかしつーを捉えられない。
つーは一瞬の内に、彼女の攻撃範囲から逃れていた。

(*゚∀゚)「あれあれあれあれー? 痛い目見せてくれるんじゃなかったのかな?」

从;゚∀从「ぐッ……」

呻いて、彼女は右手に突き立てられたナイフを抜き、投げ捨てた。
その右手は、血塗れだ。傷の割には出血量が尋常でない。
ナイフが刺さった場所が悪かったのかもしれない

しかも小指と人差し指がへし折られている。
おそらくは、つーが胸倉を掴む手を外した時に折ったのだろう。

それは、つまり。
彼女は、ナイフを刺し指をへし折るという行動を、ほぼ同時に行ったという事だ。

从;゚∀从「なるほど、確かに今までとは別人のようだわな」

(*゚∀゚)「彼女の抵抗は、かなり私の力を抑えてたからね。
    それがなくなって、今はすっごく動きやすいんだ」

从;゚∀从「そうかい、だけどなァ……」

異音が、響く。
彼女の両腕が橙色に染まり、右手の傷がたちまち消えていった。


188 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:39:03.21 ID:e8ECLFRD0

从#゚∀从「てめぇを調子に乗らせるわけにはいかねぇな!!」

皮膚が硬質化し、骨格が変形し、異形となる。
もはや右手の傷は痕も見えなくなり、うっすらと腕に紅の線を残すのみだ。

ハインは左手で右手を―――折れた人差し指を握ると、力を込める。
すると鈍く痛々しい音が響いて、その人差し指は戻された。
続けて、小指も同じく。

(*゚∀゚)「うひゃー、痛そう」

从#゚∀从「あぁ、痛いねぇ。でも、これでてめぇを叩きのめせる」

(*゚∀゚)「ひゃはは。寝ぼけた事言っちゃいけないね。
    あなたは私には勝てないよ。あなたが相当に強いとは言え、ね」

从#゚∀从「私を倒してから言いな。口だけなら、誰でも最強になれる」

(*゚∀゚)「じゃあ、そうさせてもらおうかな。
    自分だけのものになった身体の準備運動って事で、ね」

从#゚∀从「言ってろよ。後でその言葉が、どうなるかね」

( ・∀・)「……ハイン」

从#゚∀从「分かってる。油断も手加減もする気はねぇよ。
     そんな事が出来る相手じゃない」


189 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:41:12.49 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「分かってるなら良い。
      ……どうする。私の助けはいるか?」

从#゚∀从「いらねぇ。こいつはあたしだけでどうにかする。
     それに、これはあたしの問題だ。あたしがつーと約束したんだ。『護る』ってよ。
     あたしがこいつを倒して、あたしがつーを救わなきゃならない」

( ・∀・)「ならば、私は蚊帳の外だな。
      行ってこい。約束を果たしてこい」

从 ゚∀从「おうよッ!!」

叫んで、駈け出した。
あっというまに二人の距離は縮まり、そしてハインの腕が横薙ぎに振るわれる。

(*゚∀゚)「ひゃはははははっ!!」

しかし、つーはそれを楽々と避けた。
それは下にではなく、上に。攻撃を跳んで避けたのだ。

そして、空中でナイフを放つ。
空気を切り裂いてハインに放たれたそれは、しかし到達する前に粉砕された。

从#゚∀从「っるぁああぁああぁあぁっ!!」

更に一歩踏み込んで、ハイキックを飛ばす。
それはつーを捉えた―――が、苦痛を得たのはハインだった。


191 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:43:03.99 ID:e8ECLFRD0

从;゚∀从「痛ッ―――!?」

彼女のふとももには、鋭く走る紅い線。
一瞬の後に、その紅い線からは紅の液体が噴き出した。

从;゚∀从「何が……!」

(*゚∀゚)「こういう事だよ」

着地。すぐさまバックステップして、ハインから距離を取った。
その手には、ぬらりと紅く濡れたナイフだ。

(*゚∀゚)「蹴られた瞬間に、切りつけただけ。
    ……あれあれぇ? もしかして、見えなかったのかなぁ?」

从#゚∀从「てめぇ……!!」

(*゚∀゚)「良いからさっさとかかっておいでよ。遊んであげるからさ」

禍々しい笑みを浮かべて、彼女は手招きした。
そしていつの間に巻いたのか、いくつものホルスターがぶら下がった腰のベルトから、ナイフを抜き出す。

从#゚∀从「がぁああぁぁああぁあぁあぁっ!!」

怒りも露わに、つーに突進した。
姿勢は、限界まで傾けた前傾。
引き絞られた足からは、だくだくと血が溢れ出した。


193 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:45:02.32 ID:e8ECLFRD0

そして腕が、振るわれる。
速度を味方にした腕は残像を残してつーに振り下ろされた。

(*゚∀゚)「ひゅぅ♪」

だが、つーはそれも間一髪で避ける。
―――わざと、危ない避け方をした。

そして振るわれるナイフ。
ハインはそれに反応し―――避けようとして、しかし避けきれなかった。

从#゚∀从「ッ!?」

頬が裂け、血が踊る。
ハインはそれを無視して、更に腕を振るった。

今度は単発の攻撃ではなく、連続。
眼では捉えきれぬ速度で振るわれる異形の腕。

しかし―――

(*゚∀゚)「はははっ! ひゃはははっ!! 良いよ良いよ、良い感じッ!!」

その腕は、彼女を捉えられない。
腕は全て避けられ、ナイフでいなされ、受け流された。

しかも、それだけに終わらない。
ハインの傷が、次第に増えていた。


197 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:47:03.09 ID:e8ECLFRD0

勿論その傷はナイフによるものだ。
つーは異常なほどの速度の攻撃を全て喰らわずに、しかも反撃までしているのだ。

驚くべきは、彼女のナイフにヒビ一つ走らないというところだ。

ハインの攻撃は速く、そしてそれ以上に重い。
その攻撃につーはナイフで相対しているというのに、ナイフは折れる気配を見せない。
―――それは彼女が凄まじい技術の持ち主だという事を示していた。

しかしハインもやられてばかりではいられない。
彼女も、凄まじい戦闘能力を有している人間なのだ。

从#゚∀从「ずぁぁっ!!」

叫んで、思い切り腕を振り下ろした。
勿論、そんな単純な攻撃はつーには避けられる。

間を置かず、つーは反撃に出た。

从#゚∀从「やっぱり来やがったか!!」

叫んで、彼女は笑った。
先ほどの単純な攻撃は、カウンターを誘う為のものだったようだ。

足が二度、振るわれる。
一度目で右のナイフを蹴り飛ばし、返る二度目で左のナイフを蹴り飛ばした。


199 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:49:04.75 ID:e8ECLFRD0

从#゚∀从「これでナイフは使えねぇな!
     てめぇは戦いのスキルはあるとしても、肉体は生身だ!!
     もうお前に勝ち目は―――」

言葉は、最後まで続かなかった。
つーのサマーソルトキックが、彼女の顎を打ち捉えたからだ。

吹き飛んで、やはり彼女は華麗に着地した。
しかしその口からは一筋の血液。口の中を切ったらしい。

从;゚∀从「……てめぇ」

(*゚∀゚)「生身だからって何さ。武器がなければ戦えないとでも思ってたの?」

从;゚∀从「―――クッ!」

つーの言葉に嫌な予感を感じて、ハインは大きく後ろに跳ぶ。
しかしその腹部に、鈍い衝撃が走った。

从;゚∀从「ぁが……ッ!?」

(*゚∀゚)「舐めんのもいいかげんにすれば?」

いつのまにか、つーが目の前にいた。
その右手は、ハインの腹部にねじ込まれている。

左腕が引かれ、発射される。
単純な攻撃であるその拳は、しかし驚くべき速度でハインの頬を打ちすえた。


201 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:51:48.21 ID:e8ECLFRD0

しかもそこで、つーの攻撃は終わらない。
ハインの反撃は、許されない。

膝を蹴りつけ、ハインがバランスを崩した次の瞬間には、その側頭部を足が蹴り飛ばしている。
ハインはそこで、素直に倒れる事すら出来ない。頭を掴まれ、地面に向かって投げつけられた。

ギリギリで頭の直撃だけは避けたが、それに安堵する間もなく脇腹を蹴りつけられ、吹き跳ぶ。
ごろごろと床を転がり、ハインは血反吐を吐いた。

(*゚∀゚)「……何だ、激弱じゃん」

溜息と共に呟いた。
そして、後ろに跳ぶ。

その眼前の空間を、橙の腕が豪速で切り裂いた。
つーの前髪の数本が舞い落ち、そして彼女は笑う。

(*゚∀゚)「そうそう、最初からそうやってやってれば良かったんだよ」

まるで獣のような、咆哮。
そして横薙ぎに振るわれるのは、橙の右腕だ。

当たれば間違いなく身体が上下に千切れるであろうそ腕を、つーは大きく後ろに跳んで回避。
しかしその足が地面に着地する前に、彼女の腹にハインの足が突き刺さった。

小さく呻いて、吹き飛ぶつー。
その眼は喜びと、少々の驚きに満ちていた。


203 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:54:02.99 ID:e8ECLFRD0

彼女はしっかりと着地し、しかし踏み出そうとしたところで足を薙ぎ払われた。
倒れ、脇腹を蹴り飛ばされる。更に仰向けになったところで、腹に踵落としをお見舞いされた。

低く呻いて、つーは笑う。
それから一瞬で立ち上がると、繰り出された蹴りをいなし、ハインの背後に回った。

そして眼にも止まらぬ速度でベルトからナイフを引き抜き、振り下ろす。
しかしハインは振り返りもせず、そのナイフを裏拳で粉砕した。

一瞬。
その腕が、掴まれる。

(*゚∀゚)「引っかかった」

呟いて、彼女はハインを投げた。
しっかりと腕を掴んでいる上、着地も出来ない投げ方。

故にハインは、強く地面に背中を打ちつけた。
一瞬息が出来なくなり、目の前が真っ白になる。

その一瞬で十分。
つーはナイフを引き抜き、それを逆手で構えると、ハインの喉目掛けて―――

( ・∀・)「そこまでだ」

振り下ろそうとした腕は、モララーに止められた。


204 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:56:06.66 ID:e8ECLFRD0

(*゚∀゚)「……関係ないのが、横から手ェ出さないでくれない?」

( ・∀・)「関係? 大ありだね。私は君達のリーダーだ。
      勝手に戦力を削られては困るのだよ」

(*゚∀゚)「あー? あぁ、そういえばあなたはリーダーだったね」

( ・∀・)「あぁ。だから殺させるわけにはいかない」

そこで、二人の足元―――ハインの口から、呻きが漏れる。
その呻きは怒りを含んでいた。

从# ∀从「て……めぇ……!!」

そして立ち上がろうとするが―――しかしそれは踏みつけられて遮られる。
つーにではなく、モララーにだ。

( ・∀・)「落ち着け。今は諦めろ。今のお前では、こいつには勝てない」

从# ∀从「ぐっ……」

(*゚∀゚)「へぇ、あなたは分かっているんd」
( ・∀・)「喋るな」

(*゚∀゚)「ッ―――!」

声を詰まらせたつーの喉に突き付けられているのは、ナイフ。
それはつーのナイフだ。


206 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 01:58:24.69 ID:e8ECLFRD0

モララーは本人に気付かれる事なく、彼女のベルトからナイフを引き抜いたのだ。

( ・∀・)「ハインにお前を倒す事は出来ないが、私は出来ないわけではない。
      ……ハインがお前を倒すと言うから、私は手を出さなかったがね」

(*゚∀゚)「あなたに私が倒せる? はっ、やってごらんy」
( ・∀・)「喋るなと言っているのが分からないのか」

ナイフが翻る。
鋭い切っ先はつーの頬を浅く切りつけ、血を噴き出させた。

つーは後ろに退こうとするも、出来ない。
見れば、足がモララーに踏まれていた。

( ・∀・)「私はその気になれば、お前を殺せるんだ。ハインと違って、な。
      元々、つーという戦力はないものと考えていたし―――命令に従わない者は邪魔でしかない」

( ・∀・)「よって、だ―――ここで選んでもらおう。
      今この場で喉を切り裂かれて死ぬか、それとも私に従うか」

喉にぴたりとナイフを当てて、問う。
それは形式上は選択だが―――事実上、命令だ。

(*゚∀゚)「選ばせる気なんてないんじゃないの?」

( ・∀・)「“死”という選択肢もあるぞ。自由に選べば良い」


208 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:00:10.72 ID:e8ECLFRD0

(*゚∀゚)「……OK、分かった。従うよ。あなたに従う」

( ・∀・)「そうか」

それだけ呟いて、モララーはナイフを逆手に構えなおした。

そして―――振るう。
ナイフの柄がつーの顎を強打し、彼女の脳を揺さぶった。

(* ∀ )「あ―――」

( ・∀・)「一応、意識を失わせてもらう」

呟いて、腕を広げる。
そこにちょうど、意識を失ったつーが倒れ込んだ。

( ・∀・)「……良いぞ。立て、ハイン」

その言葉には無言を返し、ハインは立ち上がる。

彼女は俯き、下唇を噛み締めていた。
既に異形から戻っている拳は強く握り締められて血色を失い、肩はぷるぷると震えている。

从 ∀从「ちくしょうッ……!!」

( ・∀・)「悔しいのか?」

言葉を返そうとして開かれた彼女の口は、しかし何も吐かずに閉じられた。
言葉を出せば、一緒に涙も出てしまいそうだったのだ。


209 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:03:30.66 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「悔しいだろうな。大切な者が、こうなってしまえば」

一瞬、腕の中にいるつーに視線を送る。
その表情は安らかで―――いつものつーと何一つ変わらないように見えた。

眼を覚ませば、また明るい笑顔を見せてくれそうに見えた。

( ・∀・)「……異能者として混乱していたこいつに、失った妹の面影を重ねた。
      追っ手と“内側の恐るべき存在”に怯えたこいつは、本当に妹にそっくりだった」

( ・∀・)「護れなかった妹を、今度は護りたくて、強くなった。
      そして絶対的な自信を得られるほど強くなった―――だがその自信はたった今、本人に崩された」

かつてハインから聞いた言葉を、淡々と述べるモララー。
その言葉一つ一つが力を持ち、ハインの涙腺を刺激する。

( ・∀・)「……あぁ、悔しいだろうな。
      昔よりずっとずっと強くなったはずなのに、敗けた。
      つーを―――妹を護りたかったのに、護れなかった」

その言葉が、とどめになった。

ハインの瞳から、つぅっと涙が溢れる。
溢れ出した涙は、もう止まってはくれない。

彼女の足元に雫が落ちて、染みが出来上がる。
いくつも、いくつも。


211 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:05:10.00 ID:e8ECLFRD0

「あたしは……どうすれば良いんだ」

声は震えていた。
それは悲しさからの涙声だろうか。それとも、己への耐えがたい怒りだろうか。

( ・∀・)「どうするもこうするも、つーを取り戻すには方法は一つしかないだろう?
      この殺人狂に、つーを起こしてもらうしかないんだ。
      お前はまず、こいつに勝てるようにならねばならない」

「……勝てるようになって、それからどうすれば良いんだ?
 こいつが自分からつーを起こそうと思うようにならないと、つーは―――」

( ・∀・)「そこは自分で考えろ。悔しくて悲しいからって、甘えるな。
      言っておくが、お前がこいつをどうにか出来なければ―――私は躊躇なくこいつを殺すぞ。
      本人にも言った通り、私にこいつを殺してはいけない理由はない。お前と違ってな」

( ・∀・)「強くても扱えない駒は邪魔でしかない。
      邪魔者は殺す。敵だろうと、かつての仲間だろうとな。
      殺されたくないと言うのなら突破口を開け。お前が諦めるまでは待ってやる」

そう告げて、モララーはつーをハインに向けて軽く投げた。
ハインは一瞬躊躇したものの、つーを受け止める。

そしてモララーは二人から視線を外すと、プギャーとミンナの戦いに眼をやった。
まるで、もう二人には興味がないと言いたそうな素振り。


214 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:07:04.61 ID:e8ECLFRD0

―――しかし紡がれた言葉は

( ・∀・)「お前は強いよ」

ハインを案じた言葉だった。

( ・∀・)「お前は強い。私とやりあえるくらいにな。
      お前は強い。私がこうして認めるくらいにな。
      ……そんなお前に、出来ない事があるのか?」

( ・∀・)「少なくとも私は、ないと思うがな。
      そこまで強いお前であれば、いかなる壁でも打ち砕ける。
      そこに苦悩や挫折はあるかもそれんが、お前ならそれすらも跳ね飛ばせるだろう」

( ・∀・)「今は勝てない相手でも―――今は為せない事でも、やがてお前はやってのける。
      いつも言ってるだろう? 『あたしがナンバーワンだ』と。その通りだ。
      自分の言った言葉には責任を持て。ナンバーワンの意地を見せてみろ」

その言葉が、最後だった。
今度こそモララーはプギャー達の戦闘に意識を向ける。

それからしばらく、ハインは何もせずに俯いていた。
モララーの言葉を自分の中で反復しているのか、何度か頷くような仕草を見せる。

そして一度咳払いをすると、ハインは涙を拭った。
もう、涙は出ない。

腕の中のつーに、視線を向ける。
そしてその頭を優しく撫で、強く抱き締めた。


219 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:09:07.01 ID:e8ECLFRD0

「……OK」

呟き。
それからゆっくりと、ハインは顔を上げた。

そして彼女は、笑った。

眼に涙はない。
そこにあるのは、強い光―――決心の光のみだ。

从 ゚∀从「こいつの事は、任せろ。あたしがどうにかしてみせる。
     強くなって、叩き伏せて―――従わせる。
     つーを、取り戻してやんよ」

モララーから、反応は返ってこない。
ハインも、それ以上言葉を発さなかった。

ハインはモララーに背を向けると、つーを背負った。
そして部屋に向かうべく、足を進める。

しかし少し進んだ辺りで、また足を止めた。

从 ゚∀从「あぁ、言い忘れた事があった」

モララーに背を向けたまま、呟いた。

「ありがとよ」

言葉は、少し恥ずかしそうな笑みを含んでいた。


222 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:11:02.12 ID:e8ECLFRD0

そしてやや足早に、ハインは部屋に向かう。
モララーはその背をちらりと見やると、口元に笑みを浮かべた。

( ・∀・)「……まったく、不器用なものだな」

「まぁ、私も言えた事ではないか」と続けて、彼はプギャー達に視線を戻した。


モララー達が思っていた通り、二人の戦闘能力は拮抗していた。

ミンナがサイコロを飛ばせば、プギャーはそれを回避・防御しつつ距離を詰めた。
しかしそこですかさず、ミンナはプギャーの目の前にサイコロを無数に降らせる。

そこでプギャーが左腕で防御すれば、開いた脇腹をサイコロが襲う。
回避して突っ込もうとすれば、後ろからサイコロの嵐だ。

結果、プギャーは回避して、詰めた距離をまた離す事となる。
しかしミンナもミンナで、決定打を与えられずにいた。

互いに浅い傷は付けられるが、しかしそれは勝利からは随分と遠い。
プギャーは攻撃手段があまりにも少なく、ミンナは防御が薄すぎた。

( ・∀・)「……そこまでだ。二人とも、ちょっと来い」

およそ二十回目の相対。
そこで、モララーは二人の戦いを止めた。

二人は肩で呼吸しながらも、駆け足でモララーへと寄って来る。


225 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:13:12.16 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「二人にそれぞれ、話がある」

(;^Д^)「は……話、ですか?」

( ・∀・)「あぁ。重要な話だ。だからまずは、呼吸を整えてくれ」

言った瞬間、二人は膝に手を着いた。
運動量と緊張から、疲労は限界に達していた。

ややプギャーの方が疲労が激しい。
己の“力”のなさをカバーする為に、動き回らねばならなかったからだろう。

数分後。
ようやく二人は落ち着き、モララーは再度口を開いた。

( ・∀・)「率直に言わせてもらう。
      次の“削除人”との戦いでの鍵は、お前達だ」

(;゚д゚ )「……え?」

( ・∀・)「聞こえなかったか?」

(;゚д゚ )「いや、聞こえましたが……」

(;^Д^)「どういう事ですか?」


229 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:15:01.57 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「次の戦闘までに、お前達の戦闘能力は格段に伸ばせるんだ。
      私やハイン、流石兄弟などの“力”は、もうある意味出来上がってしまっている。
      これ以上の強い“力”を得るには、“力”の完全開放しかない」

( ・∀・)「しかし、お前達の“力”はまだいくらでも伸ばせるんだ。
      お前達が今扱っているのは、“力”であって“力”ではない。“力”の片鱗の片鱗に過ぎん。
      “力”出し方と扱い方を覚えれば、真の“力”を扱えるようになる」

( ^Д^)「真の―――“力”?」

( ・∀・)「あぁ、そうだ。今からお前達に、真の“力”の扱い方を教える」

( ゚д゚ )「嬉しいのですが……何故、今まで黙っていたのですか?」

( ・∀・)「必要ないと思っていたし、何よりお前達がそれを扱えるような力を持っていなかったからだ。
      眠っている“力”を起こす事は、身体にとてつもない負担をかける」

( ゚д゚ )「……分かりました。では、どうすれば?」

( ・∀・)「イメージするんだ」

( ゚д゚ )「……イメージ?」

( ・∀・)「そう。イメージ。
      例えばミンナ。お前はいつも、攻撃する時はどうしている?」

( ゚д゚ )「念じています。浮け、降り注げ―――等と」


234 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:17:13.15 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「ならば、それをまず変えてみようか。
      ……プギャー。左腕を解放しろ。
      解放したら、自分の身を護るように、左腕を前に出せ」

( ^Д^)「はい」

異音が響き、プギャーの腕が異形へと変化する。
そして、左腕を胸の前で構えた。

( ・∀・)「では、ミンナ。プギャーの左腕に、サイコロを撃ち込んでみてくれ。
      ただし、念じるな。イメージしろ」

( ・∀・)「己の手からサイコロが浮き上がる様を。
      そのサイコロが、プギャーの左腕に撃ち込まれる様を。
      出来る限り鮮明に、そこに意識を注ぎ込んでだ」

( ゚д゚ )「…………………」

頷いて、ミンナはサイコロを一つ取り出す。
そして掌を前に突き出すと、眼の前の虚空を睨みつけるように凝視した。

サイコロは、ぴくりとも動かない。

( ・∀・)「まだダメだ。気を抜いてはいけない。
      もっと鮮明にイメージしろ。自分の意識の全てを、イメージに費やせ」

言葉に頷いて、ミンナは更に空間を凝視する。
そこにサイコロが浮かび上がる様をイメージしているのだ。
出来る限り、鮮明に。


238 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:19:04.04 ID:e8ECLFRD0

やがて額の血管が浮かび上がり―――

(#゚д゚ )「ぐっ……!」

サイコロが、浮かび上がった。
しかしそれは今までのように、ふわりとは上がってくれない。
それはぐぐぐ……と、徐々に徐々に、ミンナがイメージした箇所に上がった。

ミンナの視線が、虚空からプギャーの左腕へと移動する。
そして今度は、彼はそこを凝視した。

額の血管は大きく浮かび上がり、どくどくと脈打っている。
限界まで見開かれた眼には、プギャーの左腕しか映っていない。

否。
その眼に映っているのは、己が描いたイメージだ。

(#゚д゚ )「……がぁああぁあぁッ!!」

咆哮。
それに応じたかのように、サイコロは撃ち放たれた。

その速度は、今までのそれとは桁違いだ。
同じく、威力も。

甲高い音が響く。
ミンナの放ったサイコロはプギャーの腕で跳ね返り、床に食い込んだ。

プギャーは、驚愕の表情を浮かべていた。


239 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:21:03.33 ID:e8ECLFRD0

(;^Д^)「……何だ、今の威力は」

( ・∀・)「どうだった」

(;^Д^)「マグナムによる銃撃を防御した時のような―――いや、それ以上の衝撃でした」

( ・∀・)「こういう事だ、ミンナ」

ミンナに視線をやる。
彼は左手で頭を押さえて、荒い息をついていた。

( ・∀・)「どうだった」

(;゚д゚ )「……とてつもなく、疲れました。
     今のやり方は、尋常でない集中力が必要です」

( ・∀・)「しかし、今のサイコロの威力は聞いた通りだ。
      いつもの威力の比ではない」

( ・∀・)「これから、ずっとだ。
      イメージで“力”を扱うような訓練をしろ」

( ・∀・)「やがて自然にイメージで“力”を扱えるようになるはずだ。
      そうなれば、“力”の限界も広がる。攻め方が増える。
      多種多様な攻撃手段を持ち、その一つ一つが高威力……訓練次第では、そうなれる」

( ・∀・)「そうなった時、お前は『鍵』になる。
      期待しているぞ」


240 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:23:01.94 ID:e8ECLFRD0

( ゚д゚ )「……精進させていただきます」

( ・∀・)「あぁ。そうしてくれ。頼んだぞ。
      ……さて、プギャー」

(;^Д^)「は、はい!」

( ・∀・)「今度はお前の番だ。胸の前で、左腕を右手で掴め」

言われた通りに、構える。
その姿はまるで、右手で草色の鎌を握っているかのようだ。

( ・∀・)「眼を閉じろ」

( ^Д^)「はい」

( ・∀・)「何が見える」

( ^Д^)「? ……何も見えません」

( ・∀・)「では、お前にも“力”をイメージしてもらおう」

( ^Д^)「……イメージ」

( ・∀・)「あぁ、そうだ。異能者の“力”には、精神面が大きく関与する。
      だからこそ、イメージするという行動が重要なのだよ」

( ^Д^)「なるほど」


241 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:25:04.05 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「だから、イメージしろ。プギャー。
      お前の身体の中心―――心臓の辺りには、魔物がいる。
      その魔物は今は眠っていて、右腕と両足を折り畳んでいる」

( ・∀・)「しかし左腕だけは伸ばされていて―――それはお前の左腕となっている。
      お前のその左腕が、体内の魔物に繋がっているとイメージしてくれ。
      そうしたら、左腕に“力”を注げ」

( ^Д^)「“力”を?」

( ・∀・)「あぁ。いつも腕を解放する時は、そこに“力”を込めているだろう?
      その量を、限界まで増やせ。全身に満ちている“力”を、そこに注げ。
      ……この作業には、集中力が必要だぞ」

( ^Д^)「はい」

意識を、左腕に集中させる。
右腕から伝わる硬い手触りが、ミシリと音を経てた。

( ^Д^)(呼応……しているのか?)

左腕の異形と生身の間―――肘の辺りが、熱くなる。
集中すればするほど、イメージすればするほど、その熱さは高まっていった。

その熱さは、何故か心地良かった。



243 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:27:05.27 ID:e8ECLFRD0

( ^Д^)(全身の“力”を……左腕へ)

イメージする。
右足、左足から“力”が昇り、左腕に注ぐ様を。
左腕に触れる右の掌から、直に“力”が注ぎ込まれる様を。

そこで、プギャーは気付く。
左腕が、熱くなっていた。

右腕から伝わる左腕の感触は、硬い表皮の中に脈動するものを見付けた。

( ^Д^)(俺の中にいる……魔物。
      この左腕は、そいつの左腕。
      つまりこれは……魔物が、起きようとしている?)

その思考が為された時には、左肘の熱さは最高潮になっていた。
左腕の脈動は速く、強くなっている。

その時だった。

( ^Д^)(あ……?)

彼の内側―――中心辺りで、何かが蠢いた。
とてつもなく強大で、とてつもなく恐ろしい何かが。

瞬間、凄まじい恐怖と不安に襲われる。
何故かは分からない。
とにかくその何かが、とてつもなく怖かった。


245 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:29:28.67 ID:e8ECLFRD0

同時。
左腕が、動き出した。

自分で動かしているのではない。勝手に動いているのだ。
右腕の制止を振り切ろうとするかのように。

(;^Д^)「うわ……あぁ……!?」

( ・∀・)「恐れるな」

(;^Д^)「モ、モララーさん……これは、一体……」

( ・∀・)「お前の中の魔物が、目覚めようとしているんだ」

ドクン、と心臓が強く打った。
まるで、異能者として覚醒したあの時のように。

呼吸が、荒くなる。

左腕の脈動は、既にはっきりとしたものになっていた。
そしてそれは―――プギャー自身の鼓動と、同じリズムを刻んでいた。

( ・∀・)「まだだ。まだ気を抜くな。
      “力”を、余す事なく注ぎ込め」

頷く。
しかし“力”を送り込むたびに、己の中の魔物の動きは大きくなっていった。
それと同時に、恐怖も大きくなる。



246 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:31:27.25 ID:e8ECLFRD0

心臓の鼓動はひどく大きく、強くなり、もはや痛みを伴っている。
貧血を起こした時のように体が不安定になり、たまらず床に膝をついた。

(;^Д^)「一体……どうなって……!!」

ぞわり。
内側で魔物が今までになく大きく蠢いて、寒気がした。

そして心臓の痛みがピークに達した時―――直感で感じ取った。


   『魔物が、眼を覚ました』


ふっ、と心臓の痛みが消える。
それと同時に、左肘の熱感も、左腕の脈動も―――全てが消え、平常に戻った。

(;^Д^)「くっ……」

呻きながら、立ち上がる。
いつのまにか、左腕は元に戻っていた。

(;^Д^)「今のは……一体……」

左腕を見つめながら、呟く。
さきほどまで異常を起こしていた左腕は、何事もなかったかのように沈黙していた。


250 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:34:06.71 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「おめでとう」

モララーは、笑っていた。

( ・∀・)「お前の中の魔物は、目覚めたようだな」

(;^Д^)「何故分かったのですか?」

( ・∀・)「“力”を解放してみれば分かる」

( ^Д^)「…………………?」

戸惑いながらも、左腕を解放させる。
異音が響き、その形状が変化して―――

(;^Д^)「えっ……?」

左腕が、異形へと変わった。
変化する範囲は今までのように肘から先だけではなく―――左腕全体。

( ・∀・)「眠っていた魔物が起きた。
      それはつまり、封じられていた“力”が解放されたという事だ」

( ・∀・)「これから少しずつ、解放した際に変化する箇所が広がるだろう。
      今は左腕全体だが―――やがて、全身が異形へと変化する事になる。
      そうなれば、フサやクーにも引けを取らんぞ」

( ^Д^)「俺が……そこまで強くなれる?


251 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:36:05.61 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「お前の“力”次第では、奴らなど足元にも及ばないほど強くなれる。
      それはプギャーだけでなく、ミンナもだ」

( ・∀・)「もう一度言おう。お前達は、『鍵』だ。
      お前達次第で、勝つか敗けるかが決まると言っても過言ではない。
      ……期待しているぞ。“削除人”を、打ち倒そう」

言って、モララーは二人から視線を外した。
そして、つーの部屋へと歩み行く。

(;^Д^)「……俺達は、どうすれば?」

「あぁ、言うのを忘れていたよ」

そこで首だけを二人に向けて、言った。


252 : ◆tAdHw/rYVY :2007/12/26(水) 02:36:19.42 ID:e8ECLFRD0

( ・∀・)「それぞれ、自分の“力”の強化に強めてくれ。
      ミンナはイメージで“力”を扱う訓練。
      プギャーはひたすら解放して、変化範囲を広げろ」

返事を待たずに、彼はまた歩き出す。
その表情は、複雑なものだった。

( ・∀・)(つー……か)

変わってしまった仲間を想った故の、その表情。

( ・∀・)(これ以上、仲間を失う事はしたくないな)

大切なものを失う事は、とても悲しい事だ。
それを一番知っているのは―――モララーなのかもしれなかった。






戻る 目次 次へ


Copyright (c) 1997-2017 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.