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23 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:04:47.32 ID:c9SnQmJu0
その何気ない会話にツンの殺気が緩んだ。 長年の経験でそれを察知したのであろうツーさんが畳み掛ける。 (;*゚∀゚)『そうだ!! ブーちゃん、ドッ君に大事な用事があって来たんだろ!? どうしたんだい!?』 一瞬のアイコンタクト。恋人同士でしか気付かないであろうそれはすでにテレパシーに近かった。 (;'A`)『そ、そうだ。何でも言って来いよ親友』 空気嫁。2人の視線が僕にそう言っている。 ξ゚△゚)ξ『ちょっと!! まだ私の話は終わ』 ( ;^ω^)『そ、そうだお!! 大事な用事があるんだお!!』 このチャンスを逃したら次は無い。 僕はツンの言葉をさえぎるように今日の経緯をドクオとツーさんに説明する。 身振り手振りを交えながら話す僕の声を3人は三者三様の姿勢で聞いていた。 ドクオはタオルで股間を隠しながら床にあぐらをかいている。チラリと見えるへそ毛がキモイ。 ツーさんは所謂女の子座りって奴だ。体に巻きつけたバスタオルの裾が上も下も非常に際どい。 そしてツンはベッドに足を組んで座っている。不機嫌そうな顔つきは相変わらずだ。 ( ^ω^)『…と言う訳で僕はドクオの力を借りたくてココに来たんだお』 (*゚∀゚)『なるほど。んじゃ、お姉さんもブーちゃんとツンの疑問に答えなきゃだねっ!!』 ツーさんは胸元のバスタオルを少し持ち上げ、話しはじめた。 (*゚∀゚)『正直、あたしも今回の辞令は納得できなかった。だからショボンさんに直接文句言いに行ったさ』 25 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:06:29.61 ID:c9SnQmJu0 ----------------------------------------------------------- (#*゚∀゚)『納得できません!!』 あたしは仕事を終えるや否やショボンさんの姿を求めてスタッフルームに押しかけた。 今日一日無口でいたのは落ち込んでいたからじゃない。 口を開いたら誰かに八つ当たりしてしまいそうだったから。 そして、この怒りを今この瞬間まで保っておきたかったから。 (´・ω・`)『やっぱり言ってくると思ってたよ。僕も君としっかり話しておきたかったからね』 外食産業において料理長の権威は絶対。 逆らったり口答えなんかしようものなら『黙って手を動かせ』の一言であしらわれるのが普通。 ベッドの中ではドッ君も同じ台詞を吐く事もあるけど…今は関係ないね、ゴメン。 とにかくあたしは自分の考えに自信を持っていたし、納得しないで大人しくしている性格でもないからさ。 (#*゚∀゚)『当たり前です!! あたしは麺場担当になる事を…ドクオ君に追いつくことを目標にやってきました!! 技術でも経験でもブーちゃんに劣っているとは思っていません!! それなのにどうして、あたしよりブーちゃんが…!!』 (´・ω・`)『うん。君が言う通りだと思う。僕も麺場の仕事で君が内藤君に劣るとは思えない』 (#*゚∀゚)『…だったら!!』 (´・ω・`)『それじゃ、逆に聞くけど君が麺場を担当するとして、内藤君のフォローのみでランチタイムをこなせると思うかい?』 28 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:09:55.29 ID:c9SnQmJu0 それを聴いてあたしは言葉に詰まっちゃったよ。 答えは否。 ドッ君ならばそれも可能かもしれないけど、今のあたしにはそこまでの実力は無いからね。 (´・ω・`)『さらに言わせてもらうと、君が麺場のメインになったら…ドクオのフォローは誰がやるんだい? 君の追い回しをしながらドクオのフォローもする。 内藤君には残念だけどまだそれほどの腕はないよ』 ショボンさんは缶コーヒーに口をつけ、言葉を続けた。 (´・ω・`)『麺場の動きが止まれば、ドクオは自分の手を止めてでも麺場の助けに入るだろう。 結果、鍋場の料理も出せなくなる。 どうだい? グチャグチャに混乱した厨房の景色が目に浮かばないかい?』 ショボンさんが言うことはもっともなのだろう。 (´・ω・`)『だけど、君なら出来る。内藤君とドクオ、2人のサポートを同時に出来る』 それでも…それでも…。 (´・ω・`)『それだけじゃない。 君なら内藤君のテンションを下げる事無く指示を出し、彼の実力以上の結果を引き出すことも可能だろう』 … (´・ω・`)『内藤君・ドクオ2人の追い回し。 そう考えると君の不満はもっともだ。 でも僕は君を【ランナー】として。ランチタイムの厨房を掌握するポジションを君に期待しているんだよ』 ----------------------------------------------------------- 31 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:13:50.66 ID:c9SnQmJu0 (*゚∀゚)『でしょ!? 大出世さ!! もう嬉しくってさ!! さっそくドッ君とお祝いしようって話になって…。 2人に報告するのも忘れちゃったよ!! それはゴメンよ!!』 ( ^ω^)『おっwwwおっwwwツーさん凄いおwww』 ξ^ー^)ξ『そうね。おめでとう』 (*゚∀゚)『いやいや、照れちゃうねコリャ。ありがとさん!!』 ( ^ω^)『で、ランナーってなんだお?』 ξ゚△゚)ξ*゚∀゚)'A`) 空気が凍った。 3人に聞いた話だと、ランナーとは料理長直属のスタッフらしい。 本来であればウェイターやウェイトレスからランナーに転身する例が多く、 その仕事内容は料理の提供やホールの状況を厨房に報告する事。 又、料理長の代役としててんてこまいの厨房内で作業指示を出す進行役を勤める事もある。 ちなみにバーボンハウスでのランナーは<料理長補佐>的な意味合いが強く、 厨房内スタッフを手足の如く使いこなして料理を作りあげ、 それを今度はホールスタッフに指示を出して各テーブルに提供させる。 エネルギッシュで嫌味がない性格でないと勤まらないであろう仕事であり、その意味ではツーさんは正に適役。 先先代のランナーはショボンさんが新巻オーナーが料理長を兼任している時に勤めあげ、 先代のランナーは現在バーボンハウス2号店で料理長をしていると言うから、 ツーさんにとって『ドクオに追いつく』と言う目標への道が 全く別の形で開けたと言っても過言ではないわけだ。 33 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:15:50.86 ID:c9SnQmJu0 ξ゚△゚)ξ『はぁ…なんか心配して損したって言うか、安心したらどーでもよくなったって言うか』 内藤、帰りましょ。 ツンは僕の腕を引き、立ち上がらせながら言った。 (;'A`)『や、やっと帰ってくれる気になったか!?』 (;*゚∀゚)『忘れ物ないね!! 言っておくけど、私達これから一緒にシャワー浴びなおすから絶対ドア開けないからね!!』 ξ゚△゚)ξ『…んな事しないわよ。明日じっくり話は聞くけどね』 (;'A`)*゚∀゚)『…』 ツーさんの言葉を証明するかのように、僕とツンが外に出た瞬間内側から鍵がかけられた。 ドクオはともかくツーさんには悪い事をしたかもしれない。 ξ#゚△゚)ξ『何よ、感じ悪いわね!!』 ( ^ω^)(そりゃそうだお・・・) 34 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:18:42.40 ID:c9SnQmJu0 ドクオが住む社宅から僕とツンの家の方向は途中まで一緒になる。 なぜか無言で歩くツンの横を僕は自転車を押しながら歩いた。 僕らの正面には大きな満月が浮かんでいる。 ξ゚△゚)ξ『…ねぇ内藤』 ツンが意を決したように口を開いた。 ξ゚△゚)ξ『あの2人見て・・・どう思った?』 ( ^ω^)『どうって・・・ツーさんのシャンプーの匂いがたまらんかったおwww』 ξ#゚△゚)ξ『ドクオのシャンプーの匂いかもよ』 ( ^ω^)『それはちょっと勘弁だお』 ξ゚△゚)ξ『・・・あたしはね、ちょっと羨ましかった。 同じシャンプー。同じベッド。同じ時間。あの2人はあたしには無い物を自然に持ってるから』 ( ^ω^)『おっwwwおっwwwおっwwwツンが乙女になってるおwww』 ξ゚‐゚)ξ『・・・あたしだって女の子よ。あんな素敵な二人を見たら羨ましくなるわ』 ( ;^ω^)『(ヤバイ、地雷踏んだかお!?)え・・・と、ツンはどんな男がタイプなんだお?』 ξ゚‐゚)ξ『タイプってのは無いんだけど・・・。ナヨナヨした男は生理的に受け付けないの。 侍みたいな人って言うか・・・。野武士のような王子様が理想ね』 ( ;^ω^)(侍? 野武士?) 35 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:23:54.58 ID:c9SnQmJu0 それからまたツンは黙りこくってしまった。 時折遠くの方で車が走っている音が聞こえる。 ξ゚‐゚)ξ『・・・羨ましいのと同時に寂しくなったわ』 別れ際、ツンが急に立ち止まり重々しく口を開いた。 ξ゚‐゚)ξ『しぃにはギコさんがいる。ドクオにはお姉ちゃんが。お姉ちゃんにはドクオがいる。 でも、あたしは一人。お姉ちゃん。友達。妹。 当たり前の様にそばにあったものがいつの間にか無くなって最後はあたし一人になる。 そんな感じがして寂しいの。怖いの』 ツンは伏し目がちに搾り出すように声を出す。 相手が僕じゃなくても良かったのだろう。 ただ、声にしたいだけ。 声に出す事で自分自身の存在を確認しているだけ。 それでも僕は。 そんなツンがとても儚げに見えて。 弱弱しく思えて。 ( ^ω^)『ツンには僕がいるお!!』 叫んでいた。 36 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:29:40.64 ID:c9SnQmJu0 突然大声を上げた僕をツンは目を見開いて見つめてくる。 そんなツンの表情を見るのは貴重な体験だったけど、そんな事は微塵も気にならなかった。 両手を離した自転車が大きな音を立てて倒れた。 ( ^ω^)『ツンには僕がいるお!! 例え僕が地球の反対に行っても!! 宇宙に行っても!! 恋人が出来ても!! 結婚しても!! 僕は・・・僕だけはずっとツンのそばにいるお!!』 自分でも何を言っているか分からなかった。でも、ツンを見ていたら叫びたくなった。 ツンは僕から目を離さず、2歩3歩と近づき・・・ ( °ω°)『ペレストロイカッ!!』 みぞおちに強烈な正拳を撃ちこんだ。 ξ゚△゚)ξ『ピザがカッコつけてんじゃないわよ』 じゃ、あたしの家こっちだから。 そう言って走り出す。少し距離が開いたところで振り返り叫んだ。 ξ゚△゚)ξ『内藤!! でも今の言葉は悪くなかったわ!! 100点はあげられないけど合格点はあげる!!』 ( ;^ω^)『・・・そりゃどうもだお』 ξ^ー^)ξ『また明日!! いつものコンビニで待ってるからね!!』 何故だか跳ねる様に駆けていくツンの後姿を眺めながら ( ;^ω^)『何がなんだか分からんお』 僕はそう呟いた。
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Jan 21, 2007 11:15:45 AM
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