第二話第二話 「マリオネットは止まらない」 ('A`)「……朝か」 昨日と同じ朝の日差しが窓越しに差し込む。 昨日から変わったことと言えば目覚まし時計が鳴っていないことと奇妙な少女との出会いが記憶に残っていることくらいだ。 ('A`)「やっぱり夢じゃなかったんだなぁ。いや、夢なんだけれども」 いつもと同じようにベッドから降りて、これから身を震わせ始めるはずの目覚まし時計を止める。 一度大きくのびをしてから部屋を出た。 J( 'ー`)し「おはよう、ドクオ」 ('A`)「おはよう」 ダイニングに行くといつものようにカーチャンが朝食を用意していた。 今日の朝食はごはんに大根の味噌汁と焼き魚。まさに日本の朝食といった感じだ。 (´^┏o┓^`)「おはよう、ドクオ」 ('A`)「おはよう」 ドクオが起きてくるとトーチャンは大抵新聞のスポーツ欄を見ている。 (´^┏o┓^`)「今年の世界陸上は楽しみだな。トーチャン見に行っちゃおうかな」 昨日は月曜日だったので部活が休みだったが、ドクオは陸上部に入っている。 高校時代陸上部に入ってたトーチャンの影響もあったが、入部は自らの意思で決めた。 (´^┏o┓^`)「この際だから有給使って三人で見に行くってのも悪くないんじゃないか? なんせあの110mH金メダリストのブーム・クンが来るんだぜ!!」 トーチャンはハードラーだった。全国とまでは行かないがこのニューソク県内では上位に入賞するほどの実力者だった。 ('A`)「確かにブーム・クンの走りは見たいかも。自分に生かせるものが吸収できるかもしれないし」 ドクオもまたハードラーだった。だが、やはりこれもトーチャンの影響が全てと言うわけではない。 トーチャンは息子に強制するような父親ではなかったし、ドクオもまた人に流されるような弱い意思の持ち主ではなかったからだ。 (´^┏o┓^`)「決まりだな!よーし、トーチャンカレンダーに予定を書き込んじゃうぞー」 ('A`)「ちょwwww気が早すぎるwwwww」 まだ三月だと言うのにカレンダーに予定を書き込もうとするトーチャン。 こんな陽気な性格の父からドクオが生まれたのが最大の謎だ。 J( 'ー`)し「まだ五、六ヶ月くらい後の話だっていうのにあなたったら」 洗い物を終えたカーチャンが朝食の席に着く。 いつものトーチャンの奇行に穏やかな口調で突っ込む。 (´^┏o┓^`)「昔のことわざであるだろ『予定は早めに書き込みましょう』って」 ('A`)「それことわざじゃないだろ」 いつも、こうなのだ。 ('A`)「ごちそうさん」 (´^┏o┓^`)「ごちそうさん」 トーチャンとほぼ同時に食事を終える。 一緒に食べ終えた食器を台所まで持って行く。 (´^┏o┓^`)「地区大会まで後一ヶ月くらいだっけか?」 ('A`)「うん、そうだよ。確か金、土、日の三日間だったかな」 (´^┏o┓^`)「日曜はトーチャン休みだから応援しに行くぞ。 トーチャンが見てるからって緊張して転んだりすんなよぉ?」 そう言いながらトーチャンはニヤリと笑った。 ('A`)「トーチャンこそ女子のケツばっか見てちゃダメだぜ?」 (´^┏o┓^`)「ははは、気をつけるよ」 二人で笑いあった後、朝の準備をするためドクオは洗面所へと向かった。 歯を磨き顔を洗い終え、鼻毛チェックをしている時ふと思う。 ('A`)(……この格好もクーから丸見えなのかな……) 「私が一人でここにいる間そこのテレビに君の視界が映る程度だ」 視界が映る、ということは裏を返せば普段はドクオの姿が見えないということだ。 だが、今は違う。 ('A`)(鏡の前で鼻の中を一生懸命覗いてる俺って……) いつもより早く鼻毛チェックを終え、二階へと上がっていった。 ('A`)「ええと、今日は部活があるから着替え持ってかないとな」 クローゼットから薄い生地のTシャツと運動用の靴下を取り出しカバンの中に詰める。 ('A`)「勉強用具は入れっぱなしだから大丈夫だな。それじゃ行く―――」 こんな時間に来るはずのない来訪者がドクオの頭に訪れた。 ('A`)「あれ……これって……まさか……」 フラフラとした足取りながら何とか意識のある内にベッドへ辿り着き、そのまま意識を失った。 川 ゚ -゚)「おはよう」 ('A`)「……」 暗転した世界は一瞬にして明るさを取り戻した。 川 ゚ -゚)「悪いが言い忘れたことがあってな、それを伝えるために少し眠ってもらった」 ('A`)「俺学校行かなきゃならんのだけど」 川 ゚ -゚)「そんなことは知ってる。昨日も行ってたじゃないか」 (;'A`)「いやいや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて時間の―――」 言いかけてやめた。その視線はクーの両手にあるダンベルに注がれていた。 ('A`)「……その物騒なものは何?」 川 ゚ -゚)「物騒?このダンベルのことか?」 ('A`)「それ以外に何があるって言うんだ」 川 ゚ -゚)「何故これが物騒なんだ?これは体を鍛えるためのものだぞ」 ('A`)「知ってるか?人間をダンベルで殴り続けると死ぬんだぜ」 川 ゚ -゚)「何!?そうだったのか。これはいいことを聞いたぞ」 (;'A`)(あれ?もしかして冗談として受け取ってもらえてない?) (;'A`)「豆知識でもなんでもないんだがな。 話すなら手短に頼むぜ。こっちには時間がないんだ」 川 ゚ -゚)「じゃあ簡潔に話そう。今日から早速『おでかけ』しようと思うのだがその相手についてだ」 ('A`)「その相手ってのはやっぱり俺の身近な人なわけ?」 川 ゚ -゚)「もちろん。君が昨日の朝話していた二人のどちらかにしようと思うんだ」 (;'A`)「ツンとブーンのことか?出来るだけ下手な行動は避けてくれよな」 川 ゚ -゚)「大丈夫だ。君がそこの電話で連絡してくれれば ある程度の要求は受け付けよう。後は私に任せてくれ」 テレビのある位置と対極にあたる位置に置かれた黒電話を指さしながら、クーは自信満々に答えた。 ('A`)「それまた面倒な役目を与えてくれたな……」 川 ゚ -゚)「なんてことはない。相手の要求を聞いて私に伝えるだけだ。猫でもできる」 ('A`)「さすがに猫には無理だろ……」 川 ゚ -゚)「ちなみに電話は君にしか使えない。 もし向こうが文句を喚き散らしたとしても私には一切聞こえないから多い日でも安心」 ('A`)「大変な所は全部俺任せってことですか……マンドクセ……。 ま、とりあえずは把握しましたよ」 それではこんな時間にここに呼び出してしまった侘びだ。 今日は特別な方法で目覚めさせてやろう」 (;'A`)「お、おい……まさか……」 川 ゚ -゚)「このダンベ―――」 (;'A`)「待て待て!!さっきの俺の話聞いてなかったのかよ!?」 川 ゚ -゚)「そんなわけないだろう。しっかりと聞いていたぞ。 ダンベルで人を殴り続けると快適な目覚めが得られるのだろう?」 (;'A`)「全然聞いてねーじゃねぇか!!死ぬって言ったんだよ!!死ーぬー!!」 ドクオの荒げた声を聞き、クーがため息をつく。 川 ゚ -゚)「……全く、冗談の一つも通じないのか。 本気で殴ろうとするわけがないだろう。 ちょっとしたシベリアンジョークだ」 (;'A`)「お前の言うことは冗談に聞こえないっての……。 そもそもシベリアンじゃなくてアメリ――」 発言を遮られたのはこれで何回目だろうか。 クーの間違いを指摘し終える前に、ドクオの視界は真っ暗になった。 (;'A`)「あばばばばばば。もうこんな時間じゃないか!!」 いつもならとっくに家を出ている時間を指している時計を見て、ドクオは急いで一階へと駆け下りる。 (;'A`)「いいいいってきまあああああす!!」 中からの返事を待たずに玄関から外へ飛び出した。 J( 'ー`)し「こんな時間に家を出るなんて、ドクオにしては珍しいわねぇ」 朝のニュースを見ながら呟くカーチャン。 J(;'ー`)し「もしかして彼女でも出来たのかしら。それで一緒に行く約束とかして…… ハッ!!そのまま教室には行かず屋上であんなことやこんなことをしてる可能性も…… いやいや!!もしかしたらもうすでに妊娠させてしまっていて今から産婦人科に向かうなんてことも…… そそそそんなことになってたらどどどどどどうしましょおおお!!!!」 訂正しよう。こんな両親からドクオが生まれたのが最大の謎である。 総生徒数650人。VIP駅から徒歩10分のところに位置する県立高校。 進学率100%とまではいかないが大抵の生徒が大学へ進学する、至って普通の進学校である。 校則は特別厳しすぎず、緩すぎもしない。そんな高校にドクオは通っていた。 (;'A`)「やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!」 学校への道を全速力で駆け抜ける。流石は陸上部といったところか。 (;'A`)「あばばばば、門がしまりかけてるうううううう」 HR開始を知らせるチャイムが鳴ると先生が正門を閉め始める。 ドクオの視界に門が入った時、門の3分の2は閉まりかけていた。 ( ´∀`)「ほらほら、まだ隙間は残ってるモナよ?」 そうニヤけながら言う教師だったが、隙間はその巨体によって塞がれていた。 (;'A`)「くそ、実質閉まってるようなもんじゃないか」 ( ´∀`)「どうしたモナー?隙間が開いてる内に早く通るモナ。 ただし通れるものなら、だけどモナ。ハハハハハ」 それにしてもこの教師、ノリノリである。 そう言いながら、ドクオは既に閉まっている門の方へと走った。 (;'A`)「とぅあ!」 掛け声と共に右足で地面を蹴る。左足が真っ直ぐに伸びきりそのまま門の上を通過していく。 右足もそれを追うようにして難なく門を超えていく。 (;´∀`)「えぇぇぇぇぇ!?そんな方法で行っちゃうモナ!?」 自らの腰骨あたりまではあろう高さの門を軽々飛び越えていくドクオを見ながら教師はそう叫んだ。 ( ´∀`)「……僕ももう少し痩せてればあんな風に飛べたモナかね」 膨らんだ腹を気にしながら呟かれた小言は誰の耳にも届くことなく空しく響き渡った。 階段を必死に駆け上がるドクオの視界に人影が映った。 从'ー'从「あれれー?ドクオ君じゃない。こんな時間に登校なんて珍しいわねー」 (;'A`)「あ、先生。おはようございます」 ドクオのクラスは二年二組。その担任を受け持っているのがこの人、渡辺先生だ。 从'ー'从「私がまだ教室に入ってなかったからよかったものの時間的には遅刻だよー? もうすぐ春休みだからって気ぃ抜いちゃだめだぞー?」 (;'A`)「すんません、ちょっと寝坊しちゃって」 从'ー'从「ま、明日からは気をつけなさいね。今日は大目に見てあげる」 そう言いながら渡辺は教室へと駆け出す。 从'ー'从「あははー。 でも私より後に教室に入ったらしっかり遅刻扱いにしてあげるから、頑張って走ってきてねー」 (;'A`)「鬼かあんたは!!」 束の間の休息を終え、ドクオはまた走り出す。 (;'A`)「あ……危なかった……」 呼吸を整えながら教室の戸を開く。 それとほぼ同時に、教室の前の戸が開く音。 从;'ー'从「はぁはぁ……負けちゃったか……」 呼吸を荒げた二人の人間が同時に入ってきたことで、教室中が静まり返る。 ( ^ω^)「とうとう記録が破れたお!残念だったおドクオ」 席に向かう途中、茶化すようにブーンが話しかけてきた。 ('A`)「今日は不測の事態が起きちまってな。遅刻にならなくて済んだだけよしとするさ」 ( ^ω^)「そんなこといって実は相当悔しいんじゃないかお? 我慢することないお!!もっと大声で悔しがった方が――」 ξ#゚△゚)ξ「うるっせえええええ!先生来てるんだから静かにしろおおおお!!」 ( ゜ω゜)「あんぎゃああああああああああああ!!!」 (;'A`)「おいおい。 いつもの夫婦漫才とは言えこれはやりすぎじゃ……ってあれ……」 今朝体験したばかりの脱力感。必死に抵抗するが ('A`)「ああ……もうだめ……ぬるp」 そのままブーンと同じように、ドクオの体はゆっくりと冷たい床に着地した。 ξ;゚△゚)ξ「え?まだ30%の力しか解放してないのに……こんなに吹っ飛ぶなんて」 ξ;゚△゚)ξ「ちょっと!だれか保険委員の人来て!ブーンが!」 隣で倒れているドクオのことはそっちのけ。 自らの手で倒したブーンを抱え上げ、ツンは必死に助けを呼んだ。 ('A`)「……ん……」 ( ^ω^)「ドクオ!!起きるお!!」 ('A`)「あれ、こんな場面確か昨日も……」 ( ^ω^)「しっかりするお!何か変なとこに閉じ込められちゃったんだお!」 ブーンが変なとこと称する場所。ドクオにとってはもう見慣れた場所であった。 ('A`)「……あいつ、時と場所を考えろって言ったのに……」 ため息を吐きながらブツブツ呟くドクオを見て、ブーンが不思議そうに尋ねた。 ( ^ω^)「あいつって誰のことだお?ドクオはこの状況に心当たりがあるのかお!?」 ('A`)「ん?……あー……まぁ……うん……」 ( ^ω^)「教えてくれお!ここはどこなんだお?僕たちは何でここにいるんだお!?」 鼻息荒く、ブーンが尚も尋ねた。 部屋の隅にあるテレビに視線を向けながら答える。 ( ^ω^)「???テレビなんてつけて何になるんだお?」 ('A`)「いいからいいから、つけてみれば分かるって」 そうドクオに言われ渋々テレビの電源を入れに行くブーン。 ( ^ω^)「スイッチONだお!」 大きな掛け声と共に真っ暗だったブラウン管に映像が映り始める。 (;'A`)「ちょwwwwww俺白目wwwwwwwww」 そこに映った顔は、今朝鏡で見たそれとは到底かけ離れたものだった。 白目を剥いたまま口はだらしなく開き、その様子はさながらホラー映画に出てくるゾンビのようだった。 (;^ω^)「こ……これは恐ろしいホラー映画だお。 何て映画なんだお?」 (;'A`)「これ俺だよ!!俺!!」 ( ^ω^)「僕はオレオレ詐欺にはひっかからないお!!」 (;'A`)(ダメだこいつ……早く何とかしないと……) この状況をはじめから丁寧に説明してやる。しっかり聞いて記憶しろよ」 ( ^ω^)「だったら最初からそうしてくれお!全く、ドクオは気が利かない男だお」 ('A`)「死ね。んじゃ説明始めるぞ。まずそのテレビに映ってるものについて説明する」 (;^ω^)「今なんか死ねって聞こえたような……」 ('A`)「いいか?今お前の体はある女によって乗っ取られている。 つまりお前の意識だけがここに閉じ込められているだけであって お前の体は今もしっかり動いているんだ」 常識ある一般人ならば、こんな現実離れした話を聞かされたところですぐに信じられるわけがないだろう。 だが (;^ω^)「えええ!?!?ってことは今ここにいる僕は僕だけど僕じゃないってことかお!?」 この少年は違った。 ('A`)「分かってるのか分かってないのかわからんがまぁそんな感じだ。 すぐに受け入れてもらえて俺は嬉しいよ」 ( ゚ ω゚)「私は大丈夫。早くドクオを保健室へ運ぼう」 ξ;゚△゚)ξ「あれ?ブーン?体大丈夫なの?」 いきなり起き上がったブーン(以降クーとします)に戸惑いを隠せないツン。 ( ゚ ω゚)「大丈夫だと言っただろう。このとおり怪我一つない。 さぁツン、私と一緒にドクオを保健室まで連れて行くんだ」 そう言いながらクーはドクオの体を背負い教室から出て行った。 ξ;゚△゚)ξ「ちょ……ちょっとまってよ!!」 ツンがそれを慌てて追いかける。 教室には不思議な静寂だけが残った。 从'ー'从「ふぅー……息も整ったことだし朝のHR始めますかー」 未だに息を整えていた渡辺は今さっき起きた出来事に気づいていなかった。 この時ばかりは、担任がこの人であったことを感謝すべきだろう。 ('A`)「……とまぁかくかくしかじかでこうなったわけだ」 ( ^ω^)「なるほど!説明が長ったらしいから省略したってことだおね?」 ('A`)「そういうわけだ。本当便利な世の中になったよな」 ドクオの天才的説明によってブーンは状況をやっと飲み込めたようだった。 (#^ω^)「しかし、そのクーとか言う女許せないお!! ドクオに無理やりこんなことさせるなんて!!」 (;A;)「俺も本当は友達の身にまで被害がいくことは避けたかったんだ ……でも……あの女……ブーン、本当にすまん」 ( ;ω;)「違うお!!ドクオが悪いんじゃないお!! 僕だって『ダンベルで死ぬまで殴り続ける』 なんて言われたらきっとドクオと同じ選択をしていたお!!」 (;A;)「ブーン……ありがとう……」 前にも言ったがドクオは効率のいい少年だ。 大抵のことでは動じないし、機転も利く。 (;A;)(面白そうだからやらせたなんて言ったら面倒なことになりそうだしな。 それに少なからず罪悪感はある。記憶を消すことは言ってないし 望みを叶えてやってるんだからこれくらいは構わないよな?クー) この頭脳を他の面で生かそうとしないドクオの性格が、本当に悔やまれるものだ。 ドクオとブーンがテレビから目を離している間に、クーとツンは保健室に到着していた。 ξ;゚△゚)ξ「あっれー?先生どこ行っちゃったんだろ?」 鍵は開いていたものの中には誰もいなかった。 ( ゚ ω゚)「……とりあえずドクオはこのベッドに寝かせておこう」 そう言い、クーはドクオの体をベッドへと降ろした。 ξ゚△゚)ξ「そうね。 ただこのまま無断で置いて行けないし…… 先生が来るまでここで待ってるしかないわね」 椅子に座り向かい合う二人。 沈黙が訪れる。 ξ゚△゚)ξ「…………」 ( ゚ ω゚)「…………」 ξ゚△゚)ξ「……ブーン何か変じゃない?」 今まで流されるままにここまで来てしまったツンだったが、その間に浮かんだ疑問をクーにぶつける。 (;゚ ω゚)「ど……どこがだ?私はいつもどおり普通だぞ」 あんたいつも自分のこと私なんて言わないじゃない」 (;゚ ω゚)「そ、そうだったな。ミ、ミーとしたことがついうっかり……」 ξ;゚△゚)ξ「ミ、ミー!??? あんた本当に頭おかしくなっちゃったの!?僕でしょ!!僕!! いっつも『僕の頚動脈を狙うのはやめてくれお!』って言ってたじゃない!」 (;゚ ω゚)「あ……ああ!!そうだったそうだった!! 僕だったな。いや、最近物忘れが酷くてな。困った困った」 ξ;゚△゚)ξ「…………」 必死に弁解するクーだったがツンは尚も疑念の眼差しを向けてくる。 (;゚ ω゚)(一人称で疑われるとは想定外だった。 もっと下調べをしておくべきだったな……) 一見してみれば頭脳明晰冷静沈着、ドクオより遥かに知能の高さを伺わせる外見を持つクーであったが 実際はそうでもなかったらしい。 ('A`)(全く、まだ入れ替わったばっかだってのにもう疑われてるじゃねぇか) ため息をつきながら、立ち上がるドクオ。 ( ^ω^)「早速お願いしに行くのかお?」 ('A`)「ああ、まだ肝心な部分が直ってないからな」 ( ^ω^)「肝心な部分?」 首を傾げながら尋ねる。 ('A`)「自分で気づかないとは……まぁ見てれば分かる」 ブーンの度が過ぎる天然さに呆れつつ電話の元へ向かう。 ('A`)「確か受話器とるだけで繋がるんだったよな」 冷たく黒光りした受話器を取り耳に当ててみる。 しかし、何の音も反応もない。 ('A`)「……あれ……繋がらない」 「用件を早く言え」 感情のない声がいきなり耳の中へと響いた。 「今言ったじゃないか。 こっちにはあまり時間がないんだ。手早く済ませてくれ」 ('A`)「さっきまでツンに痛いとこつかれて慌ててたくせに、よくそんなことが言えたもんだな」 「あ、慌ててなどいない。十分想定内の出来事だった」 感情のなかった声に初めて焦りが見えた。 ('A`)「お前の焦ってる声なんて初めて聞いたよ。 じゃあお望みどおり手短に話す。話すときは語尾に必ず『お』をつけろ。 ブーンの特徴とも言えるそれがないから、お前はツンに疑われてるんだ」 「お?」 ('A`)「例をあげると 『さすがの僕でも電池は食べられないお!』とか 『あ、でもティッシュぐらいなら全然いけるお!』みたいな感じ」 「何だかすごく分かりづらい例えだな」 ('A`)「そこは気にしない。とりあえず語尾に『お』と一人称は『僕』 ってのを気をつければそれ以上は疑われないはずだから。後、変な行動も慎めよ」 ドクオは念を押すように付け加えた。 (;'A`)「恋?……ちょ!!おま――」 受話器からの反応は完全に途絶えた。 (;'A`)「……何か大変なことをしでかしそうな………」 嫌な予感が脳裏を過ぎり、ドクオは慌てて受話器を置きテレビの前へと向かった。 ( ^ω^)「お?お願いは終わったのかお?」 ('A`)「ああ、一応な。何か変化あったか?」 テレビに目をやりながらブーンに尋ねる。 ( ^ω^)「さっきからツンが話しかけてもずっと無反応だったんだけど……」 ブーンが言い掛けた時、画面の中の世界に変化があった。 ξ;゚△゚)ξ「ちょっと!!ブーンどうしたのよ!!」 ドクオとの話を終えたクーが慌てて返事を返す。 (;゚ ω゚)「すまんすまん。ちょっとボーっとしていただけだ……お」 かろうじて同じミスを繰り返すことは避けられたようだ。 ξ;゚△゚)ξ「さっきからずっと話しかけてたのよ? 返事してくれないと心配しちゃうじゃない!」 ( ゚ ω゚)「本当にすまなかったお。心配してくれてありがとうお」 ξ//△//)ξ「べっ、別にあんたのこと心配してたわけじゃないわよ! ただあんたまで意識失っちゃったら先生に説明するのが面倒になると思っただけ! 勘違いしないでよね!!」 ( ゚ ω゚)「なら礼を言うのはお門違いだったなお。訂正するお」 ξ;゚△゚)ξ「あ……あぁ、うん……そうね」 ( ゚ ω゚)「それよりツン」 真剣な面持ちで話を切り出すクー。 ( ゚ ω゚)「実はツンに大事な話があるんだお」 (;'A`)「こ、これは……」 ( ^ω^)「大事な話って何かお?あいうえお作文でも始めるつもりなのかお?」 (;'A`)「そんなわけねーだろ!男女が二人きりでする大事な話と言ったら」 ('A`)「……告白しかないだろ」 (;^ω^)「こっここっこコックおっくくあくkはこくはく!??!??!?」 (;'A`)「とりあえず早く止めないと。 電話して聞き入れてくれるかは分からんがダメ元でやってみるしか――」 その時、ドクオの頭に稲妻が走った。 名案、いや、名案と呼ぶには少々博打性が強すぎる、ある一つの考えが浮かんだのである。 ('A`)「……いやまてよ、これはもしかしたら……」 絶対的な根拠があるようで、その実ほとんどないようにも見える。 矛盾しているようだが、言葉で表すとすればこれは妥当な表現だろう。 これは間違いなく正真正銘の賭けだ。 しかし、ドクオはこの賭けに揺るぎない確信を抱いていた。 (;^ω^)「何さっきからブツブツ言ってるんだお! 早く止めないと本当に告白しちゃうお!!」 ('A`)「ブーン、お前にとって見ればあり得ない選択かもしれない。 だが、俺はあえてそれを選ぶ。恨むなら恨んでくれていい」 (;^ω^)「何言ってるんだお?そんなことはどうでもいいから早く電話を――」 ('A`)「このまま黙って画面を見続けよう」 間違いなくこの時、時間は正常にその働きを為していた。 だがブーンには、周りの全てが止まったかのように見えていた。 ( ^ω^)「……え?」 自分の耳を疑う。しかし、その言葉は紛れもなく本物だった。 ('A`)「今から電話しても間に合うかどうか微妙だ。 それにきっとあいつは俺の言うことを聞いてくれないだろう。 だったらこのまま、この状況の行く末を見届けよう」 自分の体が勝手に告白するのを見てろって言うのかお……?」 ('A`)「…………」 ドクオは何も答えなかった。 (#^ω^)「そんなのひどすぎるお!! いくら脅迫されてるからと言ってもそこまでは僕も許せないお!!」 ('A`)「…………」 ブーンの怒声に対しても何の反応も見せず、ドクオはただただ沈黙を続けるだけだった。 ( ;ω;)「何か言ったらどうなんだお!!……ドクオ!!」 ('A`)「…………」 とうとうドクオはブーンの方へ体を向けるのさえやめた。 その体はゆっくりと、テレビの方へ向けられた。 ( ;ω;)「う……うう……うわあああああああああああああああ!!!!」 何も答えないドクオに対し怒りと悲しみが湧き上がり、感情が爆発した。 ブーンは小さな嗚咽を繰り返しながら畳の上へと涙を零し続けた。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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