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LOYAL STRAIT FLASH ♪

三章

140 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:31:45.21 ID:v9ppjQdP0



三章 覚醒


ゴキゴキッ。
ゴキゴキゴキッ ゴキゴキッ。

妙な音が、した。
木が砕かれるような。骨を鳴らしているような。骨が砕けているような、そんな音。
その音は、僕の足元―――否。

僕の足が発しているものだった。

僕の膝から下。
それが、ゴキゴキという音を響かせながら、変化している。

色は人の肌の色を失くし、白銀に輝く雪色に。
爪は猫科の大型獣のそれのように太く鋭く。
そしてその姿は人間離れしたそれ。
筋肉は大きく隆起し、金属製とも思えるほど硬い皮がそこにある。
靴はその変化した足の大きさに耐えられず、裂けていた。

気付けば足の痛みはなくなっていた。


141 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:34:57.51 ID:v9ppjQdP0

僕は、その足を見てもあまり驚かなかった。
いや、驚かなかったというのは違うのかもしれない。
驚いたけども……不思議と、不快感や嫌悪感みたいなものを感じなかったと言うか。

ずっと前から一緒にいるような感覚。
むしろこの足が本当の足だと言わんばかりの感覚。
“力”に満ちた、その感覚。

( ^Д^)「おはよう、新しい異能者君」

( ^ω^)「……お。僕も、異能者だった、のかお……」

( ^Д^)「落ちつけ。……お前、名前は?」

( ^ω^)「ブーンだお」

( ^Д^)「それじゃあ、ブーン。改めて言わせてもらおう。
     俺はある計画の為にお前達異能者を拉致らなきゃいけない。
     お前がついて来ないのなら、力ずくでもな。
     ……さぁ、ブーン。ついて来てくれるか?」

そう言って、プギャーは右手を差し出した。


142 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:39:08.97 ID:v9ppjQdP0

一瞬だけ、考える。
このまま行った方が良いのではないか、と。
暴行を加えられてから連れて行かれるよりも、自ずからついて行った方が良いのではないか、と。

だが、拉致されて行く事が良い事には思えない。
何つーか、この人怪しいし。

(;^ω^)「痛いのは嫌だお。でも知らない人についていっちゃダメだって誰かが言ってたお。
      だからついて行く事は出来ないお」

そう言って、僕は後ろに一歩下がる。
否定の意志を示した行動だった。



143 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:40:35.39 ID:v9ppjQdP0

( ^Д^)「残念だな。じゃあ力ずくで連れて行こう」

そう言うや否や、プギャーは僕に向かって左腕の鎌を振り上げた。
僕は慌てながらも、地面を蹴って後ろに逃げる。

(;゚ω゚)「ふぉっ!?」

ふいに、空気に引っ張られたような、そんな感覚が僕を襲う。
バランスを崩しそうになるが、腹筋と背筋を駆使してバランスを保つ。

一瞬の後。
ついさっきまで僕が立っていた地面には、プギャーの鎌が深々と突き刺さっていた。
鎌は夕陽の光を反射させ、不気味に輝く。

プギャーは鎌を引き抜くと、そのままひゅんひゅんと風を斬りながら言う。

( ^Д^)「ほぅ、基本能力は中々じゃないか」

そして僕は、プギャーから十メートル近く離れた位置にいた。

( ゚ω゚)「…………………」

( ゚ω゚ )「…………………」

( ^Д^)「こっち見んな」


144 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:42:10.11 ID:v9ppjQdP0

驚いて言葉が出ない。
少し離れるつもりで地面を蹴っただけなのに、ここまで離れるとは。

足に“力”の存在はびんびんに感じていたが……これほどか。
これが、異能者の力。

僕の頭に、一つの言葉が思い浮かぶ。
「人をあそこまでグチャグチャに出来る“力”」

……その“力”が、今の僕に?

( ^Д^)「何を考えてるんだ、ブーン?」

(;゚ω゚)「!?」

気付けばプギャーが目の前にいて、左腕の大きな鎌を振り上げていた。
逃げようとして、逃げられない事に気付く。
プギャーの右腕は僕の腕を掴んでいた。

クソッ!
今は考えるべき時間じゃないのに、僕の馬鹿!

離れなきゃ―――
いや、逃げられない。

腕が掴まれている。



145 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:44:17.13 ID:v9ppjQdP0

(;゚ω゚)「いや馬鹿!お前放せお!馬鹿かお!馬鹿馬鹿馬ー鹿!!」

(#^Д^)「うっせぇ!」

鎌が迫る。

逃げないと逃げないと逃げないと!
でも逃げらんない!
でも逃げないと、あの鎌に切り裂かれる!

と、なると―――

防御っ!!

そう思うや否や、僕は異形に変化した自分の足を振り上げる。
昇る白銀の線。
振り上げたその足は、見た目と違って今までの足よりも軽く感じた。

ガゥンッ……と、鈍い金属音。
火花が目の前で散って、反射的に眼を閉じる。
そしてすぐに眼を開く。

僕の足は、プギャーの鎌を止めていた。



146 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:45:29.48 ID:v9ppjQdP0

( ^Д^)「ほーぅ、防御も出来たか。ここで決着つくと思ったがな」

(;゚ω゚)「良いから放せお!」

そう叫んで、プギャーの鎌を蹴り弾く。
そして僕を掴んでる腕を無理矢理に振りほどいた。

地面を蹴る。
プギャーとの距離はすぐに開いた。

プギャーは一瞬だけ僕を追う姿勢を見せたが、それもすぐに解く。
何をしてるのか分からなかったが、これはチャンスと僕はもう一度地面を蹴る。
逃げる為に。

( ^Д^)「おーい、ブーン?」

だが、このまま逃げようとする僕の耳に、プギャーの吐いた言葉が届いた。
嫌な言葉だった。

( ^Д^)「逃げるのかよ?お前が逃げたら、俺はお前の知り合いを殺すぜ?
     お前が逃げる事によって、お前の知り合いが死ぬ事になるぜ?」

その言葉に、僕は地面を蹴ろうとしていた足を止めて、プギャーを振り返る。
相変わらず眼だけが笑っていた。


147 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:49:14.43 ID:v9ppjQdP0

(;゚ω゚)「な、何を言ってんだ、お?」

( ^Д^)「そのまんまの意味だよ。お前が逃げるって言うのなら、俺はお前の知り合いを……な?」

(;゚ω゚)「何でそんな事をする必要があるんだお!?他の人は関係ないし、僕だって関係ないお!」

( ^Д^)「必要、ねぇ……。俺は異能者を連れて帰らなきゃいけないって言ったろ?逃がすわけにはいかないのさ。
     言うのなら、この町の住人全てが、人質になるんだぜ?俺は今、それくらいの事はやれるだけの“力”がある」

(;゚ω゚)「で、でも……」

( ^Д^)「まどろっこしいのはやめようぜ。 さ、お前は逃げるのか?逃げる事は簡単だぞ?」

プギャーはそう言って、僕を見る。
今度は心底楽しそうな眼だ。

(;゚ω゚)「逃げる事が簡単?……ふざけんなお」

( ^Д^)「ふざけてないさ。至って真面目だ」

(;゚ω゚)「……逃げられないに決まってんだお……」

( ^Д^)「おっ、分かってるじゃねぇか」

そう言うと、プギャーは一度息を置いた。
何を言い出すのやら。


148 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:52:29.12 ID:v9ppjQdP0

( ^Д^)「俺はゲームが大好きでね。特に危険なゲームとかだったら眼がないくらいだ。
      そこで、だ。これをちょっとしたゲームとしようぜ。
      どんな手を使っても、お前が俺を倒せたらお前の勝ち。お前が勝てば、俺は何もせずに大人しく帰ろう。
      お前が勝てなければ、俺はお前を拉致していく。お前が逃げれば、俺はこの場で無差別大量殺人を犯す。
      簡単なルールだろ?俺は少し手を抜いてやるから、俺を倒してみろ」

……もうヤダ。
コイツ嫌いだ!
僕が逃げられないのを良い事に「ゲームしようぜ」とか言い始めやがった

149 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:53:10.27 ID:v9ppjQdP0

でも、そんな事を言っても……。
本当に、逃げられない。
逃げられないのなら、どうするんだ、僕?

携帯で警察でも呼ぶか?
いや、普通の警察がコイツを扱えるわけがない。
死人が増えるだけだ。
警察に保護してもらった所で、コイツは他の人を殺す。

それならどうするんだ?
どうする……どうする……どうする……どうする……。



僕が戦うしか、ないじゃないか。



ものすごく怖いけど、仕方がない。
勝てるわけがないけど、どうしようもない。
どうしようもない事すらも、仕方がない。
人生なんて所詮理不尽なものだちくしょう。

考えてみれば、負けても殺されるわけじゃないし。
僕一人拉致されるだけで、みんなが助かるのなら。

でも、抵抗しないわけにはいかない。
少しくらい抵抗してみても良いよね。


150 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:55:18.52 ID:v9ppjQdP0

プギャーの眼を見据える。
ピクリと、その眼が動いた。

( ^Д^)「やる気になったか」

(;^ω^)「……やるしかないだけだお。戦いたくなんてないお」

( ^Д^)「そりゃそうだわな」

そう言って、プギャーは鎌を構えた。

プギャーと僕との距離は、大体十メートル。
僕の方は、あっちがどう頑張って動いても、相手のモーションを見て防御するだけの余裕はある。
それに対して、僕はこの足があるからこの距離を一歩で動ける。
確証はないけど、多分そんな感じ。

でも僕は自分から仕掛ける勇気はない。
攻撃を防御されたら、そこには必ず隙が出来るってばっちゃが……ギコが言ってた。
だったらここはプギャーの攻撃を確実に防御して、反撃に出るべきだろう。



151 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:56:59.82 ID:v9ppjQdP0

そう思った僕は、いつでも足を防御に使えるようにしてプギャーの攻撃を待った。
プギャーも何かを思考しているのか、動かない。

一分……二分……。

紅い夕焼けが道を真っ赤に照らし、どこかのカラスが一鳴きした時。

プギャーが僕に向かって走り出した。

( ^Д^)「おぉぉおぁぁぁああぁ!!」

足は加速しながら、左腕の鎌を振り上げる。
振り上げるって事は……上からか、右斜め上からかの攻撃。

あと一秒……!
タイミングを計って……!


思いきり右足を振り上げる!!


金属音が響いて、火花のような物が目の前で爆ぜた。
さっきと同じように……いや、さっき以上にプギャーの鎌は大きく弾かれる。
僕は振り上げた右足を、そのままプギャーの左脇腹を狙って振り抜いた。
風を斬る音と、白銀の残像が残る。

これで終われ!
終わってくれ!


152 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 22:58:37.28 ID:v9ppjQdP0

( ^Д^)「甘ぇ!」

その声と共に、再度金属音が響く。

僕の足は脇腹には入らなかった。
どうやらさっき僕がプギャーの腕を弾いた時、プギャーは咄嗟に肘を曲げたようだ。

腕が弾かれる時、肘を曲げていれば隙は非常に小さくなる。
プギャーは接触の後、すぐに腕を防御に使ったのだろう。

……もしや、そもそも最初からそのつもりだったのか。

( ^Д^)「素人にしては中々良い腕してんじゃんかよ。ま、六十点くらいか」

そう言って、プギャーは僕の足を大きく弾く。
僕の体はプギャーに対して大きく開き、隙丸出しの体勢となる。
勢いよく弾かれた足はすぐには戻せず、防御にも回避にも移行出来ない。

(;゚ω゚)「ちょっ、ちょ待てお!タイムタイム!」

( ^Д^)「誰がそんな事聞くかっ!」

そう叫んで、プギャーは鎌を振り上げた。
僕の方は間に合わない。

やっぱりダメだったか……。

いつか来るであろう痛みに、眼を閉じる。


153 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:00:44.18 ID:v9ppjQdP0

だが、いつまで経っても攻撃は襲ってこなかった。

その代わりに、プギャーの「ぐぁっはっ!」と叫ぶ声が聞こえ、僕の頬を強い風がなぶった。

何事かと思って、眼を開く。


そこには、新たな登場人物がいた。

スーツに近いような服を着て、拳を目の前に突き出した格好で固まってる男。
「ふぅ」と息を吐くと、男はその拳を下げる。
そして、僕の方を向いた。

表情の読み取れない、どこか呑気そうな。それでいて、優しそうな顔。
男は、その顔を柔らかい笑顔に変えて、僕に言う。

(´・ω・`)「やぁ、ヒーローの登場だよ」

いきなり何か言ってるよ助けてママン。



154 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:01:56.15 ID:v9ppjQdP0

(;^Д^)「うぇっ……っは……あぁ……」

見ると、プギャーは数メートル先の所に転がっていた。
腹をおさえて、低くうめいている。
相変わらず眼は笑っているが、その口元は苦痛に歪められている。鳩尾にでも入ったのかもしれない。

(´・ω・`)「やぁ、僕はショボン。たまたまこの辺を通った善良で素敵なヒーローさ。
      何か異能者同士で戦ってたからさ、とりあえず悪い方を殴り飛ばしておいたよ」

(;^ω^)「お?お、お?……あ、ありがとうございますお……」

(´・ω・`)「いえいえ」

え、あ、うん?
いや……。

……一体、何だこの人は。

普通、異能者がいたら逃げるだろう。
命を奪われかねないんだぞ?

それに何だ「悪い方」って。
見た目で分かるってのか?


155 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:03:24.28 ID:v9ppjQdP0

僕は男……ショボンに、何なのかと問おうと口を開く。
その瞬間にショボンは言葉を発した。

(´・ω・`)「あぁ、それはね、僕も異能者なんだよ。
      相手の思考を読んで、自分の思考を無理矢理読ませる。
      ……俗に言うテレパシーの“力”を持つ異能者。よろしくね、ブーン君?」

(;゚ω゚)「!?」

この人も、異能者……!?

(´・ω・`)「おっと、来るようだ」

そう言うと、ショボンは前を向く。
僕もざっとそちらを向いた。

そこには、腹を抑えつつも立ち上がっているプギャーがいた。
眼は笑っているが、その眼は憎々しさに満ちている。



156 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:05:33.02 ID:v9ppjQdP0

(#^Д^)「あぁ、いってぇ……。てめぇ……いきなり何すんだよコラ」

(´・ω・`)「やぁ、おはよう。いや、善良な一異能者にいけない事をしようとしてる男がいたからさ」

(#^Д^)「てめぇは関係ねぇだろうがぁ!!」

(´・ω・`)「んー、あぁ、じゃあ助っ人って事で。 
      君はさっきブーン君に「どんな手を使っても」って言ったみたいだしね。
      よもや助っ人はナシなんてふざけたルールじゃないだろうね」

(#^Д^)「助っ人だと……ふざけやがって。なら……お前からぶっ殺してやるよぁっ!!」

プギャーはそう叫ぶと、ショボンに向かって大きく一歩踏み込んだ。

元々、ショボンとプギャーの距離はあまりない。
それこそ大きく一歩踏み込めば、ショボンはプギャーの巨大な鎌の射程距離内だ。

(#^Д^)「両断してやるよ!!」

そう叫ぶと、プギャーは鎌を袈裟懸けに斬り抜いた。
残像が眼に残って見えるほどの速度。




157 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:07:43.59 ID:v9ppjQdP0


ショボンは動かない。
僕はたまらず叫ぶ。

(;゚ω゚)「ショボn」
(´・ω・`)「あぁ、大丈夫だよ」

そんな声を聞いて、僕は驚愕した。

ショボンはプギャーの袈裟斬りを、腰を大きく後ろに反らせて避けていた。
見ると、プギャーも驚愕の表情を浮かべている。

(´・ω・`)「甘いね」

ショボンは一言そう呟くと、反らせていた腰を勢いよく戻す。
そしてその勢いを利用して、プギャーの顎に思いきり肘をぶつけた。

(;^Д^)「あぐぅっ!!」

そんな呻き声と鈍い音がして、プギャーは跳ねる。
そしてドシャッと地面に叩き付けられた。


158 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:09:34.80 ID:v9ppjQdP0

(´・ω・`)「終わりかな?」

スーツの裾をはたきながら言うショボンのそんな声に、プギャーはまた起き上がる。
顎を殴られた事で口を切ったのか、口の端からは一筋の血が流れていた。
その顔は怒りと困惑とでごちゃ混ぜだった。

(´・ω・`)「お、タフだね。あの勢いで顎を殴られて起きるなんて。流石異能者。
      いや、それともただ単純に、僕の殴る場所が悪かっただけかな?」

その言葉を無視して、プギャーは口の中の血を吐き捨てる。

(#^Д^)「てめぇ……ただ者じゃねぇな?」

(´・ω・`)「ん?あぁそっか。君はさっきの僕とブーン君との会話を聞いてなかったのか」

(#^Д^)「あぁん?」

(´・ω・`)「僕は異能者だよ。“力”はテレパシー。
      テレパシーってのは、相手の思考を無理矢理読み取るものだからね。君の行動は読めちゃうわけだよ」

(#^Д^)「……っは。てめぇも異能者か。なるほどな」

(´・ω・`)「ニ対一は分が悪いよね。帰った方が良いんじゃないのかな?」


159 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:11:32.40 ID:v9ppjQdP0

(#^Д^)「いや、お前達二人とも連れていく。
     異能者を発見したのに連れて行けないってのは、あの人に怒られちまう」

(´・ω・`)「あの人…………」



(#^Д^)「それはてめぇには関係のねぇ事だぁあぁっ!!」



そう叫ぶのと同時に、プギャーは左腕を横に大きく開く。
横に斬り抜くつもりなのだろう。

今までとは勢いが違う。
まだ振ってもいないのに、風を切る音が聞こえそうな。


まるでその姿は、罪人の首を狩らんとする死神のような。




160 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:12:38.18 ID:v9ppjQdP0

ショボンはどうするつもりなのかと見る。
その瞬間。

(;^Д^)「がっ……っはっ!!」

ごりっ……という音に続けて、プギャーが吹き飛んだ。
見ると、ショボンは深く腰を落として肘を突き出しているポーズのまま固まっていた。

(´・ω・`)「隙丸出し」

ショボンはプギャーが腕を開いた瞬間に、プギャーの胸に肘を撃ち込んだのだった。
ショボンが人の思考を読める異能者だったとしても、恐ろしくすごい事だ。

何が起きるのか分かっている人間でも、それを回避する事が出来るとは限らない。
斬られるのが分かっていても、それを避ける、または反撃する事は簡単ではない。
それには鋭い反射神経と運動神経が必要だ。

ショボンはプギャーの攻撃の意図を読み取ったのと、ほぼ同時に攻撃を繰り出していたはずだ。


僕には、ショボンがどれだけの“力”を持っているのか分からなかった。




161 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:13:50.61 ID:v9ppjQdP0

(´・ω・`)「今のでアバラを結構痛めつけたよ。あまり動かない方が良いと思うな。
      今の君は体を大きく動かすだけでアバラが砕けるよ?」

(;^Д^)「て、てめぇ……」

(´・ω・`)「あまり酷い事はしたくないんだけどね。君がその気なら、僕は手加減出来ない」

そこで、ショボンは少し息を置く。
そして右目だけを閉じて、プギャーに告げた。

(´-ω・`)「帰るなら僕は止めないよ。僕は横から入ってきただけだしね。ブーン君次第だ」

そう言って、ショボンは僕をチラっと見る。

(;^ω^)「僕は構わないお。と言うかさっさと帰ってほしいお」

(´・ω・`)「だってさ。どうする、プギャー君?」

そんなショボンの言葉に、プギャーは眼を閉じる。
もうすでに三回目の考えてるポーズだ。

数秒後に、プギャーは眼を開ける。
その眼に、感情は伺えない。

そこでプギャーは左腕の変化を、解いた。


162 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:15:50.32 ID:v9ppjQdP0

( ^Д^)「……酷く不満で不快で不順で不機嫌だが……。
      今回は帰らせてもらおうか。考えてみれば、チャンスは今回だけじゃない」

そう言って、プギャーは僕達を指差す。

m9( ^Д^)9m「次だ!次に会った時、お前達を捕獲させてもらう!絶対だ!」

そう言うと、プギャーは向きを変えてどこかに歩いていく。
プギャーの姿が見えなくなった頃、僕はある事に気付いた。


僕の出番ナッシング☆


あ、いやそんな事じゃなくて。

(;^ω^)「あ…………」

(´・ω・`)「どうかしたかい?」

(;^ω^)「足……どうやって直すんだお」

そうなんだ。
足がまだ元に戻っていない。



163 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:17:33.86 ID:v9ppjQdP0

(´・ω・`)「ん?あぁ、そう言えば知らなかったね。簡単だよ。“戻れ”って念じてごらん?」

そんな簡単な事なのかと疑いつつも、僕は従う事にする。


“戻れ”


そう念じるのと同時に、足がゴキゴキという音と共に変形していく。
白銀で雪色の人間離れした肌は、肌色の人の肌に。
獣のそれのような太く鋭い爪は、何の変哲もないただの爪に。
まるでそれはさっきの巻き戻しのように。

数十秒後には、完全に元の足に戻っていた。
生まれてから今までずっと一緒だった足に。



164 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:18:49.35 ID:v9ppjQdP0

しばらくぼーっとその足を見ていた僕の肩を、ショボンがポンと叩いた。

(´・ω・`)「それじゃ、行こうか?」

(;^ω^)「お?」

な……。
何だこの人!
もしかしてこの人も僕をどこかに連れていくってオチか!?
それともアレか?
この人はうほっな人か?
行くのは公園ですか!?
するのはksmsですかぁぁぁ!?

(´・ω・`)「妙な妄想すんなぶち殺すぞ」

( ^ω^)「あ、すいませんお」

やっぱり読まれた。


(´・ω・`)「まったく。……異能者の話とかその足とかの詳しい話だよ。聞くでしょ?」

その質問に、僕は少しだけ考える。
その話を聞いてしまえば、自分は異能者としての道を歩む事を認めてしまうような気がしたからだ。



165 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:21:12.48 ID:v9ppjQdP0

僕は、異能者だった。
変な男に目を付けられた。

これから僕には否応なく色々とあるだろう。
いつしか、今の様に、戦わなくちゃいけない事もあるだろう。

僕が僕を異能者と認めなくても、現実は既に僕を異能者としてしまっている。
逃げようにも逃げられない道で、それでも僕は現実から逃げるのだろうか?

ちょっと、それは悔しいな。

そう考えた。

そして。

( ^ω^)「……僕は知らない事がいっぱいあるおね?」

(´・ω・`)「うん、そりゃあ、知っておくべき事も知らないだろうね」

決断した。


166 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 23:21:45.01 ID:v9ppjQdP0


( ^ω^)「よろしくお願いするお、ショボン」

(´・ω・`)「うん、じゃあついて来てね」

そう言うと、ショボンはプギャーの行った方向とは逆の方向に足を進めた。
僕もそれを慌てて追いかける。

沈みかけの夕陽が、僕達を紅く照らしていた。


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