|
カテゴリ:カテゴリ未分類
2 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:38:50.77 ID:jC9iK4Vk0
第四話 「少年」 いつの間にか僕の目の前にはまた新しいドアがあった。 それは先程のドアの中で見た彼女の血よりも濃い赤色。 もう、迷うまい。と思い、あっさりと扉に手を掛ける。 また変な感情が湧いてきたが気にしない。 この表現は決して作者がめんどくさくなったわけじゃないぞ。うん。 そして、そのまま扉を閉めると、 目の前には、今度は思ったより平凡な光景が浮かんできた。 それは僕にも見覚えのある光景だった。 無機質さを剥き出しにした、金属で出来たパイプ、そして、金属の板、 その上に、それとは対照的である物質で出来た茶色い板が乗っている。 なんだか見覚えがある物体。 そして、それが、6列6行の規則的な形で並ぶ。 その隊列の一番前には、一番大きいそれが陣取っている。 さらにその奥の壁には深緑色の大きな板が貼り付けてあり、 その両脇には四角い縁に囲われたガラス板が並んでいた。 そうだ、ここは学校の教室。 3 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:39:20.28 ID:jC9iK4Vk0 僕は懐かしい思いに惹かれ、すっと、机の上を撫でてみる。 なんだか硬いようで柔らかい感触がした。 そしておもむろに椅子を引き、机との間に出来た隙間に腰を落ち着ける。 ここは、中学校だろうか、高校だろうか? 残念ながら、それを判別できるものは無かったが、 それでもノスタルジーを感じるには充分の場所だった。 「おい」 不意に僕は誰かに呼ばれる。 その声は冷たく、何か敵意のようなものを感じた。 そして、教卓のほうに視線を上げるとそこには一人の少年がいた。 4 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:40:00.98 ID:jC9iK4Vk0 ('A`)「お前だよ。そこの口がニヤけてるお前」 服装は学ランで、上着の下には白シャツではなく、 派手なプリントのTシャツ。 そして、ズボンは本来の腰の位置よりも深くずり下がっていた。 さらにその上を見ると、 その髪は金色に輝き天を指すかのように尖っている。 その目は細かったが、全てのものを威嚇するかのように鋭い。 しかし、その表情は幼くも見えた。 彼は椅子ではなく、机の上に直接だらしなくあぐらを書いている。 5 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:40:37.61 ID:jC9iK4Vk0 (;^ω^)(DQNだお…) そう思うと僕は額に冷や汗を感じる。こういうタイプの人間はどうも苦手だ。 (;^ω^)「…な、何か用ですかお?」 どうみても年下の彼に、僕は思わず敬語になってしまった。 ('A`♯)「あ゛っ!?…喧嘩売ってんのかコラ!!シメるぞ!!」 こういうタイプは会話が成り立たないから嫌いだ。 ('A`♯)「人のホームに勝手に足踏み入れやがってよぉ!!」 DQNに足りないもの。それはカルシウムである。と僕は思った。 ('A`♯)「どう落とし前つけてくれるんじゃコラ!!」 (;^ω^)「…別に僕は何もしてないですお」 ('A`♯)「ハァ!?ボコすかこのガキ!?」 ガキなのはお前である。 6 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:41:05.87 ID:jC9iK4Vk0 ('A`)「…まぁいい。これからお前にやってもらう事がある」 そう言うと彼は教卓から降り、 黒板の一番下についている引き出しを強引に開ける。 そしてそこから一本の白い棒を取り出した。 次におもむろにその棒を黒板に叩きつける。 途中、棒が折れてしまったが、それでも彼は気にしない。 そしてその行為が終る頃にはこう書かれていた。 『粉し会い』 7 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:41:41.55 ID:jC9iK4Vk0 (;^ω^)「『こな…し…あい』?って何ですかお…?」 ('A`♯)「『こなしあい』じゃねぇ~~~ッツ!!!」 しかし、次に彼の口から驚愕の言葉が出てきた。 ('A`♯)「『殺し合い』だ!!『コ!ロ!シ!ア!イ!』」 (;^ω^)「なんだってー!!(AA略)」 と、叫びつつ、『合い』が『会い』であることを突っ込もうとしたが、 話がこじれるのでやめておいた。 8 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:42:19.51 ID:jC9iK4Vk0 ('A`♯)「テメェ頭悪ィだろ!!」 頭が悪いのは(ry ('A`)「とゆうわけで、みんなには殺し合ってもらいます」 どこぞのヤクザ教師が吐いたような台詞をそっくり吐き出した。 しかも、『ゆう』ではなく『いう』で(ry 9 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:43:07.68 ID:jC9iK4Vk0 しかし、その言葉とは裏腹に、表情には寒気の走るものがあった。 目の前にあるものは全て殺す。 そんな意志があるようかのように、残酷な笑みをうすら浮かべる。 ('A`)「というわけだ。お前、10秒以内にこの教室から出ろ。 それがスタートだ」 彼がそう言うと、僕の表情は凍りついた。 ('A`)「とっとと出ていかねえと、お前を 殺す」 その手には鈍く、黒く、輝く銃が握られていた。 10 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:44:12.02 ID:jC9iK4Vk0 彼の目に本気を感じ取った僕は急いで教室を後にした。 本能が生命の危険を叫ぶ。決してこれは冗談の類ではない。 その証拠に、彼の口元こそ醜く歪んでいたが、目は笑っていなかったから。 (;^ω^)「おっ!?」 僕の目に映ったのは深緑色のワックスで怪しく輝く廊下。 そして、その上を歩く、彼と同じ服を着た生徒達だった。 しかし、僕はすぐに異変に気づく。 彼らの僕を見る目。それはまさに教室にいた少年と同じものだった。 11 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:44:38.67 ID:jC9iK4Vk0 「……殺せ」 不意に誰かが呟く。 「……殺せ……殺せ」 他の誰かがそれに合わせて呟く。 「……殺せ……殺せ……殺せ」 「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ! 殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ! 殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」 その声はまるで何かの生物みたいに生々しく、 言葉と言葉が絡み合い、無気味な音を生み出していく。 12 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:45:11.41 ID:jC9iK4Vk0 (;゜ω゜)「うわあああああああああああああああああっ!!!」 そこには、今までかつて感じた事のない恐怖があった。 そう、一言で言えば『壊れている』。 その言葉がもっとも今の状況に相応しい。 僕は本能的に、無造作に床に落ちていたモップを拾い上げる。 それを必死に振り回しながら、走っていく。 走る。飛ぶ。転ぶ。起き上がる。 ただ、夢中で体を動かしていた。 何度この行為を繰り返しただろうか? 気がつけば僕は校門の前まで出ていた。 そして、そのままアスファルトの上を駆け出す。 周りは閑静な住宅街であるようだった。 14 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:45:55.39 ID:jC9iK4Vk0 (;゜ω゜)「ハァ…ハァ…」 学校が見えなくなると僕は、その場にへたれこんだ。 そして、気が付くと、モップを持つ右手が軽くなっていることに気づく。 腕から先のほうへ視線を動かしてみると、そこにあるはずの、 ふわふわとした、柔らかい部分がごっそりとなくなっていた。 いや、モップの頭すらない。 握ったところの30センチ上の方では棒が鋭く、ささくれ立っていた。 その切っ先を見て、さらに僕は青くなる。 赤、赤、赤。 その折れてしまった部分は赤く染まっていた。 15 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:47:02.67 ID:jC9iK4Vk0 (;゜ω゜)「うあああああああああっ!!」 僕は急いで、それを投げ捨てる。 誰かを殴ってしまったのか、刺してしまったのか、 どうしてそうなったかは覚えていなかった。 だが、その事実はどうであれ、戦慄を感じずにはいられなかった。 そうだ、これでは彼らと同じだ。 このまま、殺し合いを続けていたら僕も狂ってしまう。 心の中に、彼らと同じ、どろどろとした、どす黒いものがあるなんて、 絶対に信じたくはない。 …そうだ。この世界から抜け出せばいいんだ。 いつもみたく、ドアを通って。 (;^ω^)「…絶対に…僕は…抜け出してやる」 無理矢理、そう結論づけたのを、僕は口に出し確認する。 いや、そうしなければ、自分を保ってはいられなかったのだ。 しかし、次の瞬間。 16 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:47:34.13 ID:jC9iK4Vk0 目の前に、大きな鉄の塊が猛スピードで向かってきた。 それは、正面から見ると、正方形に近い四角。 その真ん中には、ガラスでできた長方形の壁。 その壁の向こうには、血走った目をした男が何か叫んでいるように見えた。 そして、その口元は裂けるようにして歪んでいた。 (;゜ω゜)「おおおおおおおおおおっ!!!!!」 僕は反射的に慌てて頭から飛び込んだ。 その先には胸ほどの灰色のブロックでできた塀。 それを超えると、次に緑色の茂みが近づいてくる。 一方その鉄の塊―――トラックは、塀に吸い込まれるように進み、 そのままそれ自身と、灰色を削っていく。 二つの接触点からガリガリッ、と火花を散らす。 そして、100mほど進んだあと、そのまま電柱に衝突し、 僕の小さな耳には入りきらないほどの轟音を立て、黒いもやを吐き出した。
Last updated
Dec 30, 2006 08:26:50 PM
コメント(0) | コメントを書く |