第四話47 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:45:08.10 ID:xJFHykxJ04/6 ( ^ω^)「どうだったかお?今回の任務は」 ( ,,゚Д゚)「敵機が4機出てきたときは終わったかと思ったぞゴルァ! でもすげーぜこいつ!すんなり2機を撃墜しやがったぞゴルァ!」 川 ゚ -゚)「……」 ( ,,゚Д゚)「さすがは『パロン』ってとこかゴルァ?」 川 ゚ -゚)「……」 ( ,,゚Д゚)「何とか言いやがれゴルァ!」 ( ^ω^)「まあまあ、落ち着くおギコ。クーはこういう奴だお」 ( ,,゚Д゚)「そうだったなゴルァ!」 川 ゚ -゚)「……失礼してもよろしいでしょうか?」 ( ^ω^)「おっおっお。ごくろうさんだお。ゆっくり休むお」 48 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:48:44.90 ID:xJFHykxJ0 上官室を出て、格納庫へと向かう。 もうすっかり歩きなれたこの廊下。 VIPに配属されて半年。 今までの基地とは比べ物にならないほどに頻繁な出撃命令。 そのたびに私は空へと飛び立った。 空を飛ぶ時間が増えた。 地上の束縛から解放される時間が増えた。 だけど、それにつれて、地上での時間が億劫になった。 開放される時間が増えるたび、束縛の時間がつらくなる。 ずっと空にいられたら。 近頃の私は、そんなことばかり考えている。 49 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:50:40.58 ID:xJFHykxJ0 _ ( ゚∀゚)「よ!お疲れさん!」 川 ゚ -゚)「……」 格納庫では、いつものこの男。 _ ( ゚∀゚)「この一ヶ月の撃墜数15!もうブーン隊長やギコ達幹部とも引けを取らないんじゃない!?」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「ちゃっかり新型の『VIP774』ももらっちゃってさ! すんごい!すんごい!おかげで俺も、整備が楽しいぜ!!」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「このシリンダー3ミリ溶接していいか?いいよな!サンキュー!!」 川 ゚ -゚)「……」 50 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:51:30.37 ID:xJFHykxJ0 こいつはいつも、楽しそう。 ひとりでいつも、ニコニコしている。 こいつは私と少し似ている。 誰にも相手をされないで、私とこいつはいつも一人。 だけど、こいつは楽しそう。 いつもひとりで、ニコニコしている。 こいつと私の違いは何? こいつはなんで、私に話しかけてくる? 51 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:52:52.80 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……なあ」 _ ( ゚∀゚)「ん?何!何!!」 川 ゚ -゚)「……おまえ、何でいつも笑っている?」 _ ( ゚∀゚)「楽しいから!」 川 ゚ -゚)「……誰からも、相手をされていないようだが?」 _ ( ゚∀゚)「飛行機械が相手してくれる!お前が相手してくれる!」 川 ゚ -゚)「……私は……」 _ ( ゚∀゚)「みんな俺のこと馬鹿にする!俺のこと、馬鹿だって言って笑う! だけどお前と飛行機械は黙って話を聞いてくれる!だから楽しい!」 川 ゚ -゚)「……」 52 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 13:54:11.86 ID:xJFHykxJ0 私は彼に背を向けて、格納庫から出る。 _ ( ゚∀゚)「またな!またな!!」 後ろから聞こえる叫び声。 私は今、うれしいのだろう。 だけど、反応の仕方がわからない。 表情の出し方がわからない。 あいつのように笑おうとしても、私の頬はピクリとも動かない。 私はパロン。 私は欠陥品。 私は人形。 私は……失敗作。 54 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:04:14.89 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「以上、首都『ニチャン』周辺のメンヘラ軍基地の偵察任務、遂行しました」 ( ^ω^)「おっおっお。ご苦労様だお。今日は休むお」 ('A`)川 ゚ -゚)「……はっ」 その日はドクオと組んでの首都周辺の偵察任務だった。 首都「ニチャン」は海のすぐそばにあるこの国最大の都市。 中央政府のみが置かれているその場所には、戦争中であるニーソク社もメンヘラ社も支社を置いていない。 ニーソク社はこの国の東の端、メンへラ社は西の端に本社を置いており、 この二社の国内戦争はこの国を西と東に分ける機能も担っている。 自然、その中間である首都近郊が戦争の最前線となる。 我々「VIP」の配備されているのも最前線である首都「ニチャン」近郊であり、 ニーソク、メンヘラ両社はその周辺の軍備を拡大している。 55 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:05:51.98 ID:xJFHykxJ0 首都「ニチャン」はこの国のちょうど中心に位置し、 そこには完璧な人種「パロン」しかいない。 「常人」はニーソク社、メンへラ社のいずれかに属し、 下っ端として軍務や作物の育成といった仕事をしている。 「パロン」がホワイトカラー的な仕事を 「常人」がブルーカラー的な仕事に従事し、それが逆転することは極めて稀だ。 そう。 「パロン」である私が飛行機械のパイロットをしていることは、極めて「稀」なことなのだ。 56 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:06:59.59 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「……おい」 川 ゚ -゚)「……」 そんなことを考えていると、ドクオが話しかけてきた。 珍しい。 しかし、悪い気はしない。 57 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:09:41.93 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「今日の任務、ご苦労だった。 お前とは、『VIP』の中で一番作戦を遂行できる」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「たいしたもんだ。ここに来て一気に腕をあげたな」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「お前にはブーン隊長でもかなわんだろう。お前がここのエースだ」 川 ゚ -゚)「……何を言う」 ('A`)「ん?」 川 ゚ -゚)「……私は、あなたに遠く及ばない」 誰もいない、閑散とした基地の廊下。 私は、ドクオを見つめた。 58 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:11:00.42 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「そんなことはない。俺はお前を同格に見ている」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「お前は『パロン』だ。 たかが常人の俺なんぞ、もうすぐ簡単に超えるだろう」 ドクオが静かに私を見返す。 その瞳は、ギラリと輝いている。 獲物を見つけて喜ぶ獅子の瞳。 彼の瞳の輝きを、私はそう理解した。 59 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:13:17.68 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……私は……失敗作だ」 ('A`)「……」 川 ゚ -゚)「……『パロン』として造られた私は、アカデミーで『統治者』としての教育を受けた。 『常人』を従え、この国を繁栄させるための頭脳として、私はひたすらに教育を受け続けた」 ('A`)「……」 川 ゚ -゚)「……私たち『パロン』は完璧な人間。『常人』はただ戸惑えるだけの群れ。 その群れを完璧な我々『パロン』が統治する。これぞ民主主義の究極だ、と」 ('A`)「……」 川 ゚ -゚)「……だけど、私はそれを理解できなかった。 ほかの『パロン』と違い、私には表情が無い『欠陥品』だった。 造られた我々が、なぜ完璧なのか? 表情の無い私が、なぜ完璧なのか? 私はそれを、アカデミーの教授に問うた。 その結果、私は『失敗作』としての烙印を押された」 60 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:15:58.96 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……同胞である他の『パロン』は私を『失敗作』だとののしった。 『近寄るな』 『欠陥が移る』 『出来損ない』 仕舞いには私はアカデミーを追われた。 親も親戚も無い『パロン』である私は、地上に一人で放り出された」 ('A`)「……」 61 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:16:59.21 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……幸いにも、私は軍に拾われた。 しかし、表情の無い『パロン』である私が『常人』になじめるはずは無かった。 いつでも私はののしられた。 いつでも私は一人だった。 そんな声から私を解放してくれる唯一の場所が『空』だった」 ('A`)「……」 川 ゚ -゚)「……その空を一番知っている男があなただ、ドクオ。 私はあなたを尊敬している。どうか、私に空のすべてを教えてくれないだろうか?」 閑散とした基地の廊下に、私の声が響いた。 62 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:19:27.01 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「『自然の理に反する者達 … People Against a Law Of Nature』 略して『PALON』。 遺伝子操作で完璧を目指し造られた人間。 お前さんたちも大変だな」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「だが、お前は何か勘違いしている。 俺は空のすべてなど知りはしない。 知っていることといえば、空で生き延びる方法。ただそれだけだ」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「それにお前は俺を尊敬していると言ったな。それこそ大きな勘違いだ。 俺は尊敬に足る人間ではない。お前と一緒で地上では喜びを見出せない、欠陥品だ」 川 ゚ -゚)「……」 64 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:20:45.22 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「俺がこれから何をしようとしているか、わかるか?」 川 ゚ -゚)「……いや」 ('A`)「町に女を買いに行くんだよ」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「俺はそんな下賎な人間だ。じゃあな」 そう言って、ドクオは私から離れていく。 私はそんなドクオの手を握った。 65 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:21:54.80 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……それなら私を抱け」 ('A`)「……はあ?」 川 ゚ -゚)「……あなたに抱かれれば、あなたのすべてがわかるかもしれない」 ('A`)「……んなわけねーだろう…」 ドクオは呆れた声を出す。 ドクオは私の手を振り解くと、私をにらみつけた。 66 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:23:00.54 ID:xJFHykxJ0 ('A`)「……」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「……どうしてもって言うならついてこい。基地で抱くわけにはいかん」 川 ゚ -゚)「……ああ」 そして、私たちは軍用車で町へと向かった。 軍用車は、風を切って進む。 やっぱり、地上の風は気持ちが悪い。 67 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:24:16.81 ID:xJFHykxJ0 翌日 湿っぽい、寂れたホテルの一室。 私はそこのベッドの上で眼を覚ます。 ドクオはそこにいなかった。 そして、基地にもドクオはいなかった。 ジャンル別一覧
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