第十八話第十八話 「確信を打ち砕け」 緊張と静寂が教室中を覆っていた。 何の変化も動きもないこの空間内で、時計の針だけが淡々と時を刻み続けている。 教卓の前に立った渡辺は退屈そうな表情で、秒針が描く緩やかな円軌道をぼんやりと眺めていた。 从'ー'从「……それじゃ、はじめー」 悠揚迫らぬ声と共に紙をめくる透き通った音が教室内を満たす。 再び戻る静けさの中には、先程までとはまた違った種類の慌しさが感じられた。 机に置かれた問題用紙と対峙する生徒達。 焦りの表情を浮かべる者もいれば、顔を伏せ早速眠りに就こうとする者までいる。 ( ><) そんな中ビロードだけは、裏返しの問題用紙もそのままに物憂げな表情を浮かべていた。 両手を机の上へと乗せ、頭を垂れたまま身じろぎ一つしない。 微かに開いた口から時たま漏れ出るため息が、真っ白な紙の上に細波のようなうねりを立たせていた。 从'ー'从「……」 从'ー'从「……ビロード君?」 (;><)「!?」 そんな様子を見ていた渡辺はビロードの席へと静かに歩み寄り、小さな声で呼びかける。 ビロードは渡辺が近づいてきたことに気づいていなかったらしく、驚きの表情で顔を上げた。 从'ー'从「どこか具合でも悪い?」 (;><)「いえ、そういうわけじゃ……」 从'ー'从「……ならいいけど、もうテスト始まってるよー? そんなにのんびりしてていいのかなー?」 (;><)「あ、はい。すいませんなんです……」 返事を聞くと、渡辺は微笑みながら小さく頷き、教卓の方へと戻っていった。 ( ><)「……」 ビロードの作戦が無様な結果に終わってから数日が経ち、今日は中間テスト二日目。 テストがもう一日残っていると言う何ともスッキリしない気分になる嫌な一日である。 ( ><) だが、この少年にとってそれはさほど大した問題ではなかった。 作戦失敗の日から今日まで、ビロードはいつも通りの生活をいつも通りこなしてきた。 毎朝ちんぽっぽと一緒に登校し、昼になればドクオ達と飯を食べ、放課後もちんぽっぽと二人で下校する。 変わらぬ一日をただ繰り返していく日々。 ビロードはその単調な日々がもたらす平穏に依存しつつも、それに対し心の奥底で確かな苛立ちを感じていた。 ( ><)「あっ……」 筆圧に耐え切れなくなったのか、シャーペンの芯が頼りない音を立てて折れる。 ( ><)「……」 手にこめられた力は黒い染みとなり、まっさらな用紙の上へと残った。 ( ><)(……何で) 芯の出ていないシャーペンを強く握り締める。 何も今に始まったことではない。この単調な日々は随分と前から続いていたことなのだ。 無変化な毎日に対する苛立ちも今程ではないにせよ、前々から少なからず感じていた。 今に始まったことでは、ないのだ。 だからこそ単調な日々を、自らを無下に扱うちんぽっぽの態度を、そして自分自身を変えるべく、 ビロードはなけなしの勇気を振り絞り、行動を起こしたのだ。 ( ><)(……何でいつも……うまくいかないんですか) だが、支払われた勇気に対する見返りとしてもたらされたのは、やはりいつもと変わらない失敗と不運の結果だけだった。 道を歩けば犬に襲われ、石を投げれば顔に当たる。 変化を求め自ら行動を起こしても良い結果は得られず、増えるのは生傷ばかり。 ( ><)(僕は……どうすればいいんですか……) 何もしなければ変わらない。何かをしても変わらない。 どちらも変わらないのなら、何もしない方がいいのかもしれない。 何かをしても躓くだけ。何かをしても転ぶだけ。 痛みと瘡蓋しか生まないのなら、やはり何もしない方がいいのかもしれない。 頭の中で浮かんでは消える疑問と正論としての答え。 鬱積した苛立ちは解消されることなく、益々募っていくばかりだった。 ――― ―― ― キンコンカノハ*゚△゚)「終わったあああああああああああああああああ!!!!」 テスト終了を告げる鐘の音をヒートの大音声が遮る。 この流れも最早恒例となったのか、声の方へと視線を向ける生徒の数は前と比べ大分少なくなっていた。 ノハ*゚△゚)「ショボン、部活だ!部活に行くぞ!!」 (´∨ω・`)「……部活は明日からだろ」 ノパ△゚)「そんなことは関係ない!私がやりたいからやるんだ!!」 (´∨ω・`)「何だその無茶苦茶な理由は……」 ノパ△゚)「ほら!つべこべ言ってないで行くぞ!!」 (´∨ω・`)「はぁ……少し荷物の整理に時間がかかる。先に道場の方へ行っててくれ」 ノパ△゚)「おう!じゃあ先に行ってるぞ!!」 返答を聞くと、ヒートは教室の出口まで駆けていき、勢いよく廊下へと飛び出して行った。 (´∨ω・`) ヒートがいなくなり、ショボンは作業に取り掛かる。 机の中にある教科書類を取り出し、持ち帰るものと置いていくものとに手際よく分別していく。 と 「あ!!」 聞き慣れた声が廊下から響く。 そして ノパ△゚)「ショボン!まさか、さっきの嘘じゃないだろうな!?」 ショボンの視線の先に、ヒートが再び現れた。 (´∨ω・`)「……は?」 ノパ△゚)「だから!さっき私に言ったこと嘘じゃないだろうな?って聞いてんの!!」 (´∨ω・`)「さっき……?」 ノパ△゚)「少し整理に時間がかかるとか言ってたあれだよ!!」 (´∨ω・`)「……どうして俺がそんなことでいちいち嘘をつかなきゃならないんだ?」 ノパ△゚)「私を先に行かせておいて自分だけこっそり帰るつもりだったんじゃないかと思って」 (´∨ω・`)「……」 ノパ△゚)「で、どうなんだ!嘘なのか!?本当なのか!?」 (´∨ω・`)「……そんな嘘つくはずがないだろう」 ノパ△゚)「そうか!ならいいんだ!!」 とんぼ返るヒート。 ノパ△゚)「じゃあ、待ってるからな!!」 元気のいい声を残し、再び教室から飛び出して行った。 (´∨ω・`) その後姿を呆れたような表情で見送るショボン。 (´∨ω・`)(……もし嘘だと答えていたら、あいつは一体どうするつもりだったんだ?) 些細な疑問を抱きながらも、机の上に積み重なった教科書類へと目を戻し作業を再開した。 ('A`)「いろいろと苦労してるみたいだな」 黙々と作業を続けるショボンの背中に声がかかる。 振り向くと、そこには眠そうな顔をしたドクオの姿があった。 (´∨ω・`)「……まぁな」 ('A`)「いいのか?テスト期間中まで部活なんてやってて」 (´∨ω・`)「特に問題は無いだろう。テスト勉強なら夜にでもやるさ」 ('A`)「まぁ、お前は頭いいからな」 (´∨ω・`)「……」 ('A`)「あ、そういえば」 ('A`)「今日の数g( ´_ゝ`)「ショボン君!今日の数学の出来はどうだったかな!?」(´<_` ) (;'A`)「うぉわ!びっくりした……」 (;´∨ω・`) ( ´_ゝ`)「おおっと、驚かせてしまったか」 (´<_` )「すまないすまない」 (;'A`)「いや、別にいいけどさ……」 二人の会話に突然割って入ってきたのは流石兄弟の二人。 うろたえるドクオに一言詫びると、すぐさまショボンの方へと視線を戻し問いを続ける。 ( ´_ゝ`)「で、どうだった?」 (;´∨ω・`)「どうだったって……」 (´<_` )「俺達的にはこの前の期末テストより難度が下がったと思うんだが」 (;´∨ω・`)「まぁ、ぼちぼちかな……」 ( ´_ゝ`)「大問5のベクトルの問題なんかはそこそこ手ごたえはあったが」 (´<_` )「他はそこまで難しい問題ではなかったと思うんだ。ショボン君はどうだった?」 (;´∨ω・`)「まぁ、そこそこかな……」 (;'A`)「……」 マシンガンのように放たれる質問の嵐をただただ受け続けるショボン。 ドクオはそんな光景にどこか疎外感を感じ、それとなくその場を立ち去ろうとした。 ('A`)「お……」 (*‘ω‘ *) (;><)「ちょ!ちんぽっぽちゃん!!痛いんです!!」 床に下ろしたバッグを肩に背負い直し、出口の方へと目を向ける。 そこには、ちんぽっぽに腕を掴まれ無理矢理廊下へと引き摺られていくビロードの姿があった。 ('A`)「……」 (;><)「……またここですか」 (*‘ω‘ *) 学校を出た二人が向かった先は、何やら怪しい雰囲気を漂わせた極彩色の建物。 所々に配されたネオンランプが、その彩りを一層攻撃的なものへと仕立て上げている。 (;><)「ちんぽっぽちゃん」 (*‘ω‘ *)「ぽ?」 (;><)「テスト期間中にゲーセンに遊びに行くのはもう卒業しませんか?」 (*‘ω‘ *) (;><)「そりゃ帰りが早いから長い時間遊べるって言うのはわかりますけど、僕達ももう三年生なんですし……」 (*‘ω‘ *) (;><)「って聞いてるんですか!?」 (*‘ω‘ *) (;><)「あ!待ってなんです!!ちんぽっぽちゃーん!!」 ビロードの言葉に耳も貸さず、ちんぽっぽは足早に店内へと入っていく。 それを追うビロードの後姿は、どこか微笑ましい滑稽さと哀愁をほのかに漂わせていた。 (*‘ω‘ *) ( ><) 自分達の背丈より少し小さいくらいのイスに腰掛ける二人。 視線の先に広がった横長のモニターには、何頭もの競走馬達が映し出されている。 青々と繁ったターフの上を颯爽と駆け抜けるその姿は、現実のそれと比べても引けを取らない程に美しく生き生きとしていた。 ( ><) そんな躍動感溢れる映像を、頬杖をつきながら退屈そうに眺めるビロード。 ( ><) チラ、と横を見る。 (*‘ω‘ *) 食い入るようにモニター画面を見つめるちんぽっぽの姿をそこに認め ( ><)「……はぁ」 聞かれないよう小さくため息をついた。 ( ><)「お馬さんのゲーム楽しいですか?」 (*‘ω‘ *) ( ><)「……と言っても聞いて無いですよね」 (*‘ω‘ *) 相変わらず無反応なままのちんぽっぽ。 その視線はモニターの中を駆け抜ける競走馬達に注がれており、顔に張り付いた表情はどこか楽しげだ。 ( ><)(……僕はちんぽっぽちゃんにとって、一体どんな存在なんでしょうか) (*‘ω‘ *) ( ><)(ただの友達?幼なじみ?それとも……) と、突然ビロードの肩が叩かれる。 ( ><)「え」 (*‘ω‘ *) 顔を向けると、そこには右手をこちらに差し出しているちんぽっぽの姿。 その細く綺麗な指先の間には、千円札が一枚垂れ下がるように挟まれている。 (;><)「……また僕が両替役ですか」 (*‘ω‘ *)「ぽっぽ」 不服を唱えるビロードに対し、ちんぽっぽは可憐な微笑みで応対する。 (;><)「た……たまには自分で行ったらどうなんですか!!」 (*‘ω‘ *) (;><) (*‘ω‘ *) (;><) ( ‘ω‘ )「……いいから早く行けよ」 ( ><) 肩を落としトボトボと歩くビロード。 右手には一枚の千円札が握られている。 ( ><)(結局、僕はちょっとしたパシリに過ぎないってことですか……) 陰鬱な空気を纏ったその背中が、賑やかな店内に異質な空間を作り出していた。 ( ><)「はぁ」 ため息をつきながら両替機までの道のりをひた歩く。 と (;><)「おわっ!!」 ビロードの前に突如現れる黒い影。 俯き加減で歩いていたせいかとっさの反応も間に合わず、そのままぶつかり尻餅をついてしまう。 (;><)「ああ!す、すいませんなんです!!」 ( ^Д^) 冷たい床に尻をつけたまま慌てて顔を上げる。 そこに立っていたのは、こちらを遥か上空から見下ろす大柄な高校生。 制服から見るにどうやらVIP高校の学生ではないようだ。 ( ^Д^) (;><)「あ……」 ビロードの謝罪に対し何の反応も示さないまま、その大柄な学生は腰を折り曲げ足元へと手をやる。 その手の行く先を目で追い、ビロードは気がついた。 自分の右手に握られていたはずの千円札がいつの間にか姿を消していることに。 ( ^Д^) 学生は床に張り付いた千円札を拾うと、そのまま体を起こし手に持った札へと視線を落とした。 ビロードは尻を両手で叩きながら立ち上がり、感謝の言葉を述べる。 (;><)「あ、ありがとうなんです!」 ( ^Д^) (;><) ( ^Д^)「……何が?」 (;><)「え?」 返ってきた言葉の意味が分からず困惑する。 謝礼に対しての返答としてはどこか噛み合わない、おかしなやり取りだった。 (;><)「いや、何がってその……お金を拾ってもらったから……」 ( ^Д^)「ああ、これ?」 そう言いながら、学生は手に持った千円札をヒラヒラと揺らす。 (;><)「それ以外に何が……」 ( ^Д^)「これ、俺の」 (;><)「……は?」 ( ^Д^)「いや、だからこの千円札は俺のだって」 (;><)「いやいやいや!それは確かに僕の持ってた――」 ( ^Д^)「んなの知らねーよ」 ビロードの言葉が遮られる。 小さな体に、震えが走った。 (;><) ( ^Д^)「これはな、今俺がこの場所でたまたま拾ったもんなんだよ。分かったかチビ?」 挑発的な言葉と共に威圧的な視線が飛んでくる。 血の気が引き体温が急速に奪われていくような感覚に襲われ、ビロードはどうすることも出来なかった。 ( ^Д^)「チッ」 (;><) 舌打ちを残し、学生は去って行く。 遠ざかる背中と大きな手の中でヒラヒラと揺れる千円札をビロードは何も言わず見送った。 (;><)「……お金」 声にならない声で呟く。 (;><)「……どうしよう」 どうしようもないということを分かっていながら。 (*‘ω‘ *) (;><)「あの……ちんぽっぽちゃん……」 何も持たぬまま帰還したビロードが言いづらそうに口を開く。 ちんぽっぽは声の方へ振り向きもせず、黙ったまま手の平を差し出す。 (;><)「いや……それがその……」 (*‘ω‘ *) (;><)「お金は……その……」 (*‘ω‘ *) (;><)「と、取られちゃったんです」 ( ‘ω‘ )「……は?」 (;><)「だからそのカツアゲと言うか……そういったものに遭ってしまって……しょうがなかったんです……」 ( ‘ω‘ ) (;><)「ご、ごめんなんです」 ( ‘ω‘ )「……ごめんで済むとでも?」 (;><)「いや、それは……ってうわ!何するんですか!!」 イスを降りたちんぽっぽは素早い動作でビロードのポケットに手を突っ込み、黒い二つ折り財布を抜き取る。 (;><)「あ!ぼ、僕の財布!!」 そして、そこから一枚の千円札を抜き出しビロードの目の前に掲げた。 (;><) ( ‘ω‘ ) (;><)「な、何ですか?」 ( ‘ω‘ )「……もう一回行って来い」 (;><)「いや、でもそれ僕のお金……」 ( ‘ω‘ )「いいから早く!」 (;><)「あぅ……わ、わかりましたよ……」 (*‘ω‘ *) ( ><)「……はぁ」 モニターを見つめるちんぽっぽと頬杖をつきため息を吐くビロード。 先程と全く同じ光景が、薄暗い店内に広がっていた。 ( ><) 壁にかかった時計にふと目をやる。 ここに来てから既に数時間が経とうとしていた。 ( ><)(……今日も散々な一日だったんです) 一日を振り返り、ビロードはもう一度ため息をつく。 モニターの中では相も変わらず二次元の競走馬達がターフの上を駆け抜けていた。 (*‘ω‘ *) ( ><)「あ、終わりですか?」 画面横に付けられた差込口からカードを抜き取り、ちんぽっぽがイスから体を下ろす。 (*‘ω‘ *)「ぽっぽ」 ( ><)「そうですか。それじゃ帰りましょう」 床に置いていたバッグを肩に担ぎ、出口へと向かう。 ガラス越しに差し込む夕日を見て、ビロードは改めて一日の終わりを感じた。 ( ^Д^)「お」 (;><) 扉を押し開け外に出たビロードを待ち受けていたのは、数刻前にぶつかった大柄な学生。 店の前の道路でブロック塀に寄りかかりながら、プカプカとタバコの煙を空に浮かべていた。 ( ^Д^)「こりゃいいタイミングだ」 学生は火のついたタバコを手に持ったまま、ビロードの方へと歩み寄る。 ( ^Д^)「俺さっきの金使い切っちゃってさぁ、丁度暇してたんだよね」 (;><) ( ^Д^)「俺の言いたいこと、分かるよな?」 (;><) ( ^Д^)「……チッ」 (;><)「おわっ!!」 何も言わないことに怒りを感じたのか、学生はビロードの胸倉を思い切り掴み上げる。 ( ^Д^)「連れの女にかっこわりぃとこ見られたくねーだろ? 素直に金を渡せば殴らないでおいてやるからよぉ」 (;><)「う……くぅ……」 (;><)(何でいつも……) 軽く身体を持ち上げられ、首が絞まる。 (;><)(僕は……こんな目に……) 歪んだ口元から苦しげな息が漏れる。 (;><)「ぐぅ……うぅ……」 観念し、ポケットへと手を伸ばす。 ( ^Д^)「へっ……」 目の前の大男が満足そうな笑みを浮かべていた。 その時 ( ‘ω‘ ) (;><) 首を捻りずらした視線が、ちんぽっぽの顔を捉えた。 ( ‘ω‘ ) (;><) ( ‘ω‘ ) (;><) ( ‘ω‘ ) ( ><) ビロードが感じたもの。 ( ^Д^)「おい、何してんだ早くしろ」 それは、悔しさだった。 (; )「……せ」 ちんぽっぽの視線に込められていたのは哀れみでもなく蔑みでもない ( ^Д^)「あぁ?」 ただの確信だった。 (; )「……せって……てるんです」 ビロードがすんなり金を差し出すと確信し、それ以外の事態にはまるで期待もしていない。 ( Д )「あんだ……!!」 そんな確信を抱かれる自分が情けなくて そんな確信を抱かれることが悔しくて そして、その確信を打ち砕きたくて (;><)「その手を離せって言ってるんです!!」 少年は、再び勇気を振り絞った。 叫ぶと同時、胸倉を掴む手を力任せに振りほどき、そのままの勢いで後方へと突き飛ばす。 (;‘ω‘ )「!!」 (;><)「うわあああああああああああああああああ!!」 自らを奮い立たせるような大声を上げ、バランスを崩した敵目掛け突進。 大きな身体は呆気なく倒れ、地面へと着地する。 (;><)「ちんぽっぽちゃん!逃げるんです!!」 (;‘ω‘ )「ぽっぽ!」 激しい動悸を感じながら、無我夢中でちんぽっぽの左手を掴む。 右手の汗ばみも気にせず、ビロードは掴んだ手を力強く引っ張り、その場から駆け出した。 (;><) (;‘ω‘ ) 吹き付ける向かい風を切り裂いて、歩き慣れた道を全速力で駆け抜ける。 身体中を覆う脈動も、今は何故だか心地よく感じられた。 ( ゚ Д゚)「……」 道路の上で大の字に寝そべる、一人の大男。 ( ゚ Д゚)「こんな痛い目に遭うとは……聞いていないぞ」 身を起こし、後頭部をさすりながらぼやく。 と 「おーい、聞こえるか?」 突如、脳内に響く声。 ( ゚ Д゚)(……ああ) 「何だ、元気ないな」 ( ゚ Д゚)(……) 「……そう怒るなって。いきなりこんなことさせたのは俺だって悪いと思ってる。 でも、一刻を争う状況だったんだ。そこら辺は分かってくれよ」 ( ゚ Д゚)(……別に怒ってるわけじゃないさ) 「なら、いいんだけどな」 「じゃあ、そろそろこいつをそっちに戻すから」 ( ゚ Д゚)(ああ、わかった) 「あ、くれぐれもゲーセンから遠く離れた場所に行っておいてくれよ。 俺が出ていく時に絡まれたらたまったもんじゃないからな」 ( ゚ Д゚)(この少年が怖いのか?) 「うん」 ( ゚ Д゚)(……素直だな) 「殴られるのは夢の中だけで十分だっつーの。現実の世界でくらい平和に暮らさせてくれよ」 ( ゚ Д゚)(そう思うのなら、こんな面倒な事にも首を突っ込まないはずじゃないか?) 「まぁ、そりゃそうだけどさ……」 ( ゚ Д゚)(あの小さな少年のこと、気になっていたのだろう?) 「……へ?」 ( ゚ Д゚)(あの二人の後をこっそりとつけ、タイミングを見計らって私を少年の方に『おでかけ』させる) 「ちょ、お前何言って……」 ( ゚ Д゚)(そして、君がそこから私に指示を出し、二人の仲を良い方向へと導くよう仕向ける) 「……」 ( ゚ Д゚)(結局作戦通りには行かなかったが……どうなんだ?結果としてこれは成功なのか?) 「……お前……俺の頭の中読みやがったな」 ( ゚ Д゚)(すまんな。退屈すぎてすることがなかったんだ、許してくれ) 「退屈ってお前なぁ……あれだけ読むなって言っぐぉえ!!」 ( ゚ Д゚)(む、どうした?) 「うぅ……くそ、あいつまた暴れだしやがった……。 ともかく、早い内にそこから離れとけよ!こっちに戻ってきたらたっぷり説教してやるからな!!」 ( ゚ Д゚)(ふふ、それは楽しみだ) 話を終え、クーは店の入り口へと近づく。 ( ゚ Д゚) (-A-) ガラス越しに見えたのは、ゲームの筐体に顔を伏せたまま眠りにつくドクオの寝顔。 近くを通る学生達は、あらぬ場所で眠りについているその少年の姿を不思議そうに眺めていた。 ( ゚ Д゚)「……ふっ」 そんな可笑しな光景を見て、クーは小さく笑う。 そして、思う。随分とおせっかいな奴だ、と。 ( ゚ Д゚)「まぁ、それが君のいいところなのかもしれないな……」 ガラス越しに見える寝顔に向かい、呟く。 ( ゚ Д゚)「さてと……そろそろ行くか」 微かな笑みを浮かべた大男は頭をさすりながら踵を返すと、人気の無い道へ向けゆっくりと歩き始めた。 (;><)「はぁはぁ……」 (;‘ω‘ ) 膝に手をつき、呼吸を整える二人。 後ろから誰も追ってきていないことを確認し、安堵の表情を浮かべる。 (;><)「ここまで逃げれば……安心なんです……」 (;‘ω‘ ) 息も切れ切れに呟き、顔を上げる。 視界に入ったちんぽっぽの顔は赤く上気し、いつもの冷静さは欠片も見当たらなかった。 (;><) (;‘ω‘ ) 視線が触れ合い、しばしの沈黙。 空いている方の手で額から流れてくる汗を拭う。 頭上の電線に止まったカラス達が、まるで痴話喧嘩でもしているかのように鳴いていた。 それからしばらく経ち、ちんぽっぽの視線がビロードの顔からズレる。 (;><) (;‘ω‘ ) 向かった先には、固く繋がれた二人の手と手。 (;><) ( ‘ω‘ ) 蘇る、冷酷な表情。 (;><)「……あ」 ( ‘ω‘ ) 固く握り締めていた手が引き剥がされた。 と (;><)「え?」 (*‘ω‘ *) 蘇った冷たい表情が再び影を潜める。 そして ( ><)「あ……」 (*‘ω‘ *)「……ちんぽっぽ」 ちんぽっぽはビロードの左側へと歩み寄る。 その小さくも逞しい左手を、握り締めるために。 ( ><)「ちんぽっぽちゃん……」 (*‘ω‘ *)「ぽっぽ」 ( ><)「……あ」 突然、何かを思い出したように声を上げるビロード。 (;><)(そうだ、殺し文句!今言うしか無いんです!!) (;><)(ええっと、何でしたっけ……んーと……あ、そうだ!携帯!!) (*‘ω‘ *)「ぽ?」 (;><)「ちょ、ちょっと待ってください!」 未だ温もりの残る右手で、慌ててポケットを探る。 (;><)(……あ……そういえば、携帯壊れてたんでしたっけ……) (*‘ω‘ *)「?」 (;><)「……」 (*‘ω‘ *)「……ぽ?」 ( ><)「……いえ、何でもなかったんです」 (*‘ω‘ *)「ぽっぽ」 ( ><)「はい、それじゃ帰りましょう」 手と手を固く繋いだまま、歩き慣れた道を二人で歩く。 目に映るのは見慣れた風景、手に感じるのはどこかむず痒い人の温もり。 沈みかけた夕日はまるで二人を祝福するかのように、一つになった二人の影を細く長く伸ばしていた。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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