第三話65 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:33:54.83 ID:BhbTGWmH0第3話 いじめられるのが日常です。 崩れ落ちたブーンに、ギコが近づいた。 ( ,,゚Д゚)「……大丈夫か?」 肩を叩き、心配そうな表情を浮かべる。 どうも、ギコが一番まともな人間感情を持ち合わせているらしい。 ( ;ω;)「お……」 ブーンがその顔を見上げる。 そして、未だ潤ったままの目を見開いた。 ギコの両目は色が違っていた。 右目は緑、左目は青。 オッドアイというやつだろうか。これも、ゲームでしか見たことが無い。 ブーンの観察するような目に気付いたギコが苦笑する。 ( ,,゚Д゚)「……この眼か。ああ、オッドアイってやつだよ」 川 ゚ -゚)「正しくは虹彩異色症だ」 横からクーが口を挟む。 66 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:35:10.89 ID:BhbTGWmH0 ( ,,゚Д゚)「……ああ、ブーン。俺に話すときは少しでかい声で喋ってくれな」 ( ;ω;)「?」 川 ゚ -゚)「虹彩異色症は聴覚障害を引き起こしやすいんだ。ギコは……難聴だ」 静かに、淡々と告げるクー。 自らが盲目だからか、同情のようなものは、言葉からは感じられない。 ( ,,゚Д゚)「……」 ( ;ω;)「……わかったお」 あきらめのような表情で、ブーンは首を縦に振った。 67 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:36:47.74 ID:BhbTGWmH0 (*゚ー゚)「ああ、そうだ。ブーン」 どんよりとした空気を切り裂いて、しぃの声が響いた。 (*゚ー゚)「お酒買ってきて」 ( ;ω;)「え……お酒……?」 当然ながらブーンは二十歳未満。 しぃも、セーラー服から考えれば二十歳には到達していないと思われる。 (*゚ー゚)「いーから、ほら! このビルの左に自販機があってね。そこの年齢認証システム、壊れてたから」 そう言いながら、しぃはブーンに財布を投げ渡す。 しばらく、ブーンは財布としぃを交互に見ていたが、反論は無意味でしかないと悟ると、とぼとぼと出口のドアに向かって歩き始めた。 (*゚ー゚)「逃げようとしても無駄だからね。わかってると思うけど」 不条理も、ここまでくると滑稽だ。 ・・・ ・・ ・ 68 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:38:01.38 ID:BhbTGWmH0 ーーー路地裏ーーー 一階まで降りてアスファルトを踏みしめる。 周囲を見ても灰色の壁ばかり。知っている場所ではない。 ( ゜ω゜)「……」 しばらく自失したブーンだが、すぐに我に返る。 振り返って、雑居ビルを見上げる。 廃れた看板が見えた。 ( ゜ω゜)「都会……かお?」 車の排気音が聞こえてくる。 大通りから一歩入った路地裏、現在地はそんなところだろう。 ( ゜ω゜)「えっと、左……」 今のブーンは非常に従順だ。 69 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:39:09.40 ID:BhbTGWmH0 まっすぐ歩くこと3分ほど。 しぃの言葉通り、自販機が見えてきた。 ( ゜ω゜)「……」 ボロボロの自販機だ。 確かに年齢認証システムはガムテープで塞がれている。 ( ゜ω゜)「えっと……」 受け取った財布から小銭をまさぐるブーン。 と、そのとき。 少年の悲鳴が聞こえてきた。 70 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:43:22.86 ID:BhbTGWmH0 (´・ω・`)「痛い、痛いよ!」 「うるせーよ」「金ださねーからだろーが!」 「もっとやっちまおうぜ」「サンドバッグ代わりにはなるよなぁ……」 罵声と打撃音が交じり合う。 (´・ω・`)「もうやめて……」 色とりどりの頭をした不良生徒の中心に、腹をおさえて倒れこんでいる少年がいた。 「金がねーんだろ!?」「お仕置きだよ、お仕置き」 「ゲーセン行けねーじゃねーか、ボケ!」「明日は2万、もってこいよ」 路地裏に更なる悲鳴がこだまする。 ( ゜ω゜)「……」 そんな光景を、ブーンはただ見つめていた。 いつもと同じポジション。 主人公ではなく、野次馬Aが似合うのである。 やがて、サンドバッグにも飽きたのか、少年を取り囲んでいた男子生徒は方々に散っていった。 下品な笑い声をあげる連中。ブーンは慌てて身を隠した。 71 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:44:33.62 ID:BhbTGWmH0 (´・ω・`)「……」 男たちが去った後も、うずくまったままの少年。 制服は土や靴跡で汚れてしまっている。 (´・ω・`)「……よい……しょ」 だが、フラフラと立ち上がる。 そして、壁を伝って歩き始めた。 ( ^ω^)「……」 さすがに心配になったブーンが、しょぼんを見つめる。 と、そんな視線に気付いたらしい。 しょぼんは首を傾けて、ブーンを見た。 (´・ω・`)「……」 ( ^ω^)「あ……」 (´・ω・`)「気に、しないで」 たどたどしい声で少年は言う。 72 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:45:35.27 ID:BhbTGWmH0 (´・ω・`)「これが、僕の日常だから」 その言葉は、ある種達観しているようにも聞こえた。 少年はそれだけ言い残すと、さっさとその場を後にしてしまった。 ブーンはそれをただ見送る。 そして、ふと気になった。 自分の日常は、これからどうなるのだろう。 ・・・ ・・ ・ 74 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:47:18.25 ID:BhbTGWmH0 ーーー雑居ビル三階 空き部屋ーーー (*゚ー゚)「ごくろーさま」 酒の缶を前にして、しぃは満足そうに頷いた。 ( ^ω^)「それで、よかったかお?」 (*゚ー゚)「大丈夫。どれでもいけるから」 ぶっきらぼうにそう答えると、しぃは早速缶を開けた。 プシュッと、小気味よい音がする。 ( ^ω^)「……」 飲み始めたしぃを、ブーンはただ見守っていた。 声をかけるのもはばかられる。 見ると、他の二人はそれぞれ、静かに座っていた。 75 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:47:55.66 ID:BhbTGWmH0 ギコが携帯を覗き込んでいる。 ガチャガチャと、やかましい音が響いていた。 ( ^ω^)「何してるお?」 居心地の悪さに耐えられなくなったブーンが、ギコに少し大きな声で話しかける。 ( ,,゚Д゚)「ん、ああ。テレビだよ」 そういってギコは携帯のディスプレイを指し示す。 ( ^ω^)「ワンセグってやつかお」 ( ,,゚Д゚)「ああ、まあな」 ( ^ω^)「高いやつじゃないのかお?」 ( ,,゚Д゚)「俺、こう見えてもお坊ちゃまなんだぜ?」 そういうギコの顔は笑っているが、疲れの色は隠せていない。 76 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:49:15.28 ID:BhbTGWmH0 ( ,,゚Д゚)「この時間はニュースばっかだ」 気がつけば陽も落ちかけている。 画面を見れば、真面目そうなキャスターが外交問題についてゲストと討論していた。 ( ,,゚Д゚)「……ったく、つまんねー」 チャンネルを変える。 やはり映るのはキャスターだ。 「……では、先ほど入りましたニュースをお伝えします」 「今日午後5時ごろ……」 そんなアナウンスとともに映し出された映像を見て、ブーンが驚く。 ( ^ω^)「……僕の家?」 その呟きは小さすぎて、ギコの耳には届いていない。 78 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:51:15.58 ID:BhbTGWmH0 「この家の住人二人が庭で倒れているのを、訪ねてきた近所の住民が発見しました」 そしてテロップが流れる。 ( ゜ω゜)「!」 見間違えるはずも無い。 死亡、という文字の下に表示されている名前は。 ブーンの両親である。 「警察では、殺人事件と見て捜査を続けています」 「また、同居している高校2年生の長男の姿が見えなくなっていることから、警察は長男が何らかの事情を知っていると見て……」 ( ゜ω゜)「そんなはずないお!」 ブーンの叫びに3人が一斉に反応する。 79 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 21:51:47.68 ID:BhbTGWmH0 ( ,,゚Д゚)「あぁ?」 ( ゜ω゜)「か、かーちゃんが、し、死んだって……」 (*゚ー゚)「ふーん」 さして興味もなさそうなしぃの声。 (*゚ー゚)「ありがちな設定。だよね、クー」 川 ゚ -゚)「両親が死んでいる。悪の組織に追われる……ありがちだな」 (*゚ー゚)「悪の組織って警察のことになるのかな?」 川 ゚ -゚)「大人はみんな汚い……ありがちな基本定義だ」 (*゚ー゚)「なるほどね……」 二人の世間話など聞こえるはずも無く。 ブーンは拳を震わせ、どうすることもできないまま突っ立っていた。 日常は、もう戻ってこないらしい。 ジャンル別一覧
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