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33 名前:猪(音速)[] 投稿日:2006/12/22(金) 19:59:39.01 ID:jC9iK4Vk0
(;^ω^)「…これで…よし…だお。とりあえず…だけど」 その様子に安心したのか、その少女は大声で泣くのは止めていたが、 まだその瞳は湿っている。 (*;ー;)「………」 (;^ω^)「大丈夫…だお。おにいちゃんが付いていてあげるからフヒヒ」 笑ってますが決して性的な意味ではありません。 34 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:00:16.47 ID:jC9iK4Vk0 (;^ω^)「…おとうさんとおかあさんはどうしたお?」 (*;ー;)「……あのね」 彼女は、ぽつり、と答える。 (*;ー;)「まわりの…おじちゃんやおばちゃんが…いきなり、 おとうさんとおかあさんをつれていっちゃって…ぐすっ」 (*;ー;)「わたしのこともつかまえようとしてたから…こわくて…はしって…」 (*;ー;)「そしたら、まいごになっちゃって…ぐすっ」 (;^ω^)「…そうかお」 35 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:00:53.14 ID:jC9iK4Vk0 はっきりとは理解できなかったが、その単語単語から予想するに、 彼女の父親と母親は、あの狂った集団に捕まってしまい、 彼女が命からがら走って逃げて、ここに迷い込んでしまった。 という感じであろう。 僕は、少し安堵した。 僕以外に狂っていない人間の存在が確認できたからだ。 彼女も何らかのキッカケでこの世界に迷い込んだのであろうか? とはいえ、周りは敵だらけ。彼女を守らなければ。 そう思い、彼女を見つめると、その表情は落ち着きを取り戻していた。 そして、その瞳は、僕が最初に出会った、幼い男の子を思い出させる。 36 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:01:18.16 ID:jC9iK4Vk0 ( ^ω^)「きみ、お名前は?」 (*゚ー゚)「…しぃ」 ( ^ω^)「しぃちゃんか。かわいい名前だお。 僕はブーンっていうんだお」 (*゚ー゚)「ブーン…おじちゃん?」 (;^ω^)「…いや、まだ、おじちゃんって呼ばれる年齢では… ブーンおにいちゃんって呼んでお」 (*゚ー゚)「わかった。ブーンおじちゃん」 (;^ω^)「…いや、わかってないお…」 しかし、そのやり取りは不意に遮られる。 37 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:01:50.06 ID:jC9iK4Vk0 「いたぞ~~~!!!」 その声は入り口の方から聞こえた。 すると、その奥から無数の光の点が浮かんできた。 いきなり顔を照らされ、 眩しさのあまり、そこに誰がいるか確認できなかったが、 目を凝らして見てみると、そこは無数の人影。 数百…いやそれ以上か? その中の一人一人は、年齢、性別はばらばらだが、 共通していることがあった。 左手には懐中電灯を持ち、 右手には、木の棒やナイフ、鎌、包丁、鉄パイプなど、 各々に凶器を持っていた。 そして、再び聞き覚えのある音を耳にする。 38 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:02:26.70 ID:jC9iK4Vk0 「殺せ…殺せ…」 「殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…」 「殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…殺せ…」 「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ! 殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ! 殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」 一つの呟きがもう一つの呟きを呼び、 それは、一つの不気味な音へと変わっていく。 次第にそれは、次第に叫び声に変わる。 そして、それは統率を取り始め、次第にコールのように変わっていく。 39 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:03:06.57 ID:jC9iK4Vk0 (;^ω^)「…な!何で!何で!僕が、この子が狙われなくちゃいけないんだお!」 そのコールを切り裂くかのように僕は叫んだ。 しかし、彼らは誰も答えない。 だが、そのコールは質問に答えるかの如く、言葉を変えていく。 「社会の屑!社会の屑! 社会の屑!社会の屑! 社会の屑!社会の屑! 社会の屑!社会の屑!」 (;^ω^)「…理不尽だお!! 僕が何でそんなことを言われなきゃいけないんだお!!」 その音はまた変わっていく。 「お前は必要ない!お前は必要ない! お前は必要ない!お前は必要ない! お前は必要ない!お前は必要ない! お前は必要ない!お前は必要ない!」 43 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:04:10.34 ID:jC9iK4Vk0 (;゜ω゜)「うるさいっ!」 これ以上言っても無駄だと思った。 僕は急いで少女を背負い、 床に転がっていたバールのようなものを拾い上げる。 そして、周りを確認した。 どうやらこの工場の入り口は手前の大きいものが1つだけで、 そこは狂った群集に埋め尽くされている。 どう考えてもそっちには行けない。 ふと後ろを振り返ると階段が上に伸びていた。 そして反射的に走り出す。 それに続くかのように狂った群集は後に続く。 前列の者が転んでも後列の者たちは構わずその上を進んでいく。 「殺せ」のコールの中に悲痛な叫び声が混ざる。 まさにここは地獄絵図だった。 44 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:04:50.06 ID:jC9iK4Vk0 僕は時折振り返り、バールのようなものを振り回し、威嚇。 そして前を向き走る。それを必死に繰り返す。 階段の下にたどり着くと、急いで駆け上がる。 追従者達は、我先に、と階段になだれ込む。 一番前のものが転んでも、その上を踏みつけ前へ進む。 それは次第に、人が人の上をよじ登っているように見えてくる。 まるで地獄の亡者が、 天から降りてきた一本の糸に群がるかのように醜かった。 45 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:05:53.34 ID:jC9iK4Vk0 そして僕は階段の終わりにたどり着くとそこにはドアがあった。 鉄で出来ていてさび付いた茶色いドア。 そして、急いでそれを開く。 開けたら閉める、僕はそれをいつも以上に素早く行った。 そして、ドアノブの上の鍵を回す。 目の前は、埃の被ったスチール製の机や椅子が散乱していた。 後ろの方では鈍い衝撃が響く。 僕は背中の少女を床に下ろした。 そして、すぐさま転がっていた机を引っ張り、入り口のほうへ向かう。 机でドアの前を塞ぎ、また新たに机を引っ張る。 それを繰り返すと目の前には強固なバリケードが出来上がっていた。 46 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:06:43.16 ID:jC9iK4Vk0 あらかた、作業が終り、冷静になってみると、 入り口の反対方向の壁全体に窓が付いていることに気づく。 僕はそこから外の様子を伺う。 そこには絶望的な状況があった。 見渡す限りの人の波。波。波。 それは、一斉に、この工場に向かっている。 これでは窓から脱出しようとしても、直ぐに捕まってしまう。 僕は、体の力が抜けたかのようにその場に腰を落としてしまった。 47 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:07:14.00 ID:jC9iK4Vk0 ふと顔を上げると、そこには心配そうに僕を見つめる少女の姿があった。 しかし、僕の様子を見て、彼女も不安そうだ。 (;^ω^)「だ、大丈夫だお!!なんとかなるお!!」 そうだ、自分がしっかりしないでどうする。 誰が、あの狂った群集から彼女を助けるんだ!! 僕だ!!僕にしか出来ない!! そう思い直すと僕は、すっく、と立ち上がる。 そして僕は彼女の頭を優しく撫でた。 すると彼女は僕の右足に抱きついてきた。 そうだ、彼女はまだ幼いんだ。怖かったのであろう。無理もない。 48 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:07:53.60 ID:jC9iK4Vk0 (*゚ー゚)「おじちゃん…」 彼女はこう口を開く。 (;^ω^)「こわかったおね。でもおにいちゃんがついてるお」 僕は慰めるようにそれに答える。 (*゚ー゚)「ううん…だいじょうぶだよ」 彼女は横に首を振る。 (*゚ー゚)「おじちゃんは、わたしを…たすけてくれた」 その口調は穏やかだった。 49 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:08:25.59 ID:jC9iK4Vk0 (*゚ー゚)「だから、こんどは…わたしのばん…」 (;^ω^)「へ…?」 僕は何か聞き返そうとするが、構わず彼女は続ける。 (* ー )「こんどは…わたしが…たすけて…あげる…」 (;^ω^)「ッ!?」 50 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:09:15.42 ID:jC9iK4Vk0 その言葉を聞き終えた瞬間だった。 妙な違和感を右足に感じた。 僕は、視線を下にやる。 すると、そこには、 太腿に深々と突き刺さるナイフがあった。 そして、その先からは赤い液体が流れ落ちている。 (* ー )「…このくるしみから」 51 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:10:12.28 ID:jC9iK4Vk0 (;゜ω゜)「うあああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああ!!!!!!!」 太腿に走る激痛。それは直接喉を刺激し、叫びをこぼれさせる。 ぼくは、余りの痛さに立っていられずに、その場にしりもちをついた。 そして、太腿を押さえ悶える。 (* ー )「ふふふ……」 そして、彼女の方を見ると、その表情は見覚えのあるものだった。 口元は醜く歪み、瞳は大きく見開き、血走っていた。 そう、あの狂った群集のように。 先程までの瞳の輝きはそこにはもうなかった。 52 名前:猪(進化系)[] 投稿日:2006/12/22(金) 20:10:58.54 ID:jC9iK4Vk0 (* ー )「じっとしていてね…たすけてあげるから…」 そういうと彼女はスカートのポケットからもう一つナイフを取り出す。 僕は、その様子に戦慄を覚える。 (;゜ω゜)「くるなあああああああああ!!!」 僕は、へたれこんだ姿勢のまま、そのまま後ずさった。 彼女は、ゆっくりとそれを追いかけてくる。 何メートルか動いたあと、僕の腕は何かにぶつかる。 振り返ってみると、それは壁だった。 いつの間にか僕は壁に背を向けていた。
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Dec 30, 2006 08:28:47 PM
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