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LOYAL STRAIT FLASH ♪

十七章下

57 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:12:40.56 ID:duD8w2qe0

それからいくつかの月が過ぎた頃。
ミンナは、無数の組織の人間に囲まれていた。

だが彼は表情をピクリとも動かさない。
何故なら、それは初めての事じゃなく―――むしろ日常茶飯事の事だったのだから。

彼は詰まらなそうに、いつものようにただ両腕を振るうだけ。
それだけで組織の人間が持っていたナイフが舞い、斧が飛び、剣が踊り狂う。

血が舞い上がり、叫び声が響く。

十分後には、彼の目の前に立つ人間はいなかった。
それもまた―――いつものように。

( ゚д゚ )「……くだらない。わざわざ死にに来たのか、こいつらは」

返り血で染まった手を見詰めつつ、彼は呟いた。

その時だった。


パチパチパチ……と一人の軽い拍手が響き渡る。


その音はどこから鳴っているのか分からない。
いや、どこから鳴っていないのか分からない。

それでもミンナは表情一つ変えない。


60 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:14:15.23 ID:duD8w2qe0

「いやぁ、見事だ。見事な大量殺戮だ」

( ゚д゚ )「誰だ。どこにいる」

「誰か、ね―――」

そこで一旦声が途切れて、


「私は、モララーという者だよ」


彼のすぐ真後ろから、声が続けた。

(;゚д゚ )「――――――ッ!?」

ミンナは動けない。動いてはいけないような気がした。

「……まぁ、そこまで緊張しなくても良いさ」

言いつつ、声はミンナの前にまわってくる。
やがて彼の眼に入ったのは、皮肉な笑みをたたえた男。



61 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:15:42.40 ID:duD8w2qe0

( ・∀・)「やぁ、ミンナ君。初めまして」

( ゚д゚ )「……何の用だ」

( ・∀・)「身構えないでくれるかな? 私は君の敵じゃないのだから」

( ゚д゚ )「では尚更。何の用だ」

( ・∀・)「うん、その用件を話したいんだけど、少し重い話になっちゃうんだ。
      それでも、ちょっと話を聞いてくれるかな?」

( ゚д゚ )「重い……話?」

( ・∀・)「あぁ。これからの君の人生を決めるような、ね」

( ゚д゚ )「むぅ……」

( ・∀・)「悪い話じゃないだろう?
      する事もなしにたださまよっていた君の道が決まるのだから」

( ゚д゚ )「……良いだろう。話せ」




63 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:17:05.22 ID:duD8w2qe0

( ・∀・)「あぁ。……さっき言ったように、私はモララーという者だ。
      そして“管理人”という、人間を粛清しようとしている異能者で構成される組織の長だ」

( ゚д゚ )「…………………」

( ・∀・)「ミンナ君。君も、異能者だ。サイコキネシスの“力”を持つ、立派な、ね。
      そして君は人間に憎しみを抱いている。……どうだい?」

( ゚д゚ )「つまり、“管理人”に入らないかと、そう言っているのか?」

( ・∀・)「頭の良い人間で助かったよ。して、答えは?」

ミンナは少し顔を下げる。悩んでいるようだ。

しかし、その顔はわずか十秒で上げられた。

( ゚д゚ )「……良いだろう。イエスだ」

( ・∀・)「ははは。良い決断力を持っているね。嫌いじゃない」



64 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:18:33.70 ID:duD8w2qe0

( ゚д゚ )「早い決断力がなければ、ここまでは生き延びられませんよ。……モララー様」

( ・∀・)「なるほど、早速敬語か。状況適応能力もあるようだね。優秀だ」

言って、モララーは身体の向きを変える。

( ・∀・)「ついてこい、ミンナ。お前に、居場所を与えてやろう」

( ゚д゚ )「…………………」

歩き出すモララーに、無言でついていく。

彼らの歩く道には、血が絶えなかった。


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65 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:19:47.63 ID:duD8w2qe0


( ゚д゚ )「まぁ大体こんなものだ」

語りを終えたミンナは、サイコロを懐に戻す。

( ^Д^)「……お前も大変だったのな」

( ゚д゚ )「まぁ、それなりにな。……とは言っても、お前のように命の危険に晒された事はないがな」

( ^Д^)「俺は“力”がバレる歳が歳だったからな。戦おうにも戦えなかった。
      ……それにしても、お前の友達―――ビロードだっけ、ひでぇな」

( ゚д゚ )「あいつのせいで人生が狂ったようなものだからな」

( ^Д^)「そいつのその後は?」

( ゚д゚ )「知らん。知っていたら既に殺している」

( ^Д^)「まぁ、確かにな」

( ゚д゚ )「……そういえば、プギャー。お前、両親は?」

( ^Д^)「両親は俺を旅立たせた張本人だよ。感謝してる」

( ゚д゚ )「……何故だ?」



66 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:21:09.22 ID:duD8w2qe0

( ^Д^)「俺の両親は、『ここに居たら殺されてしまうから』つって俺を旅立たせたんだ。
      件の銅色のナイフを持たせて、ボロボロ涙を流しながらな」

( ゚д゚ )「両親には会いに行ってるのか?」

( ^Д^)「……たまに墓参りに行ってるよ」

( ゚д゚ )「……殺されたのか?」

( ^Д^)「あぁ。反異能者組織の中でも狂った奴が、『俺を逃がした』って理由で殺したらしい」

( ゚д゚ )「…………………」

( ^Д^)「そいつは例の銅ナイフでグシャグシャにして、墓周りに咲いてる彼岸花の肥料にしてやった」

( ゚д゚ )「もう吹っ切れてるのか」

( ^Д^)「あぁ。それもまた、色々とあったんだけどな」

( ゚д゚ )「……なるほど、分かった」

ミンナは椅子から立ち上がる。

( ゚д゚ )「私も、そろそろ吹っ切らねばな……」

( ^Д^)「あん?」

( ゚д゚ )「いや、何でもないさ」



67 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:22:52.67 ID:duD8w2qe0

言って、ミンナはプギャーを見詰める。

( ゚д゚ )「今回は話を聞かせてくれて、感謝する。
     存分に身体を休めてくれ」

( ^Д^)「俺もお前の話が聞けて、新鮮だったよ。
      じゃ、お言葉に甘えて、休むとするかな」

( ゚д゚ )「そうすると良い」

その言葉を最後に、出て行こうとするミンナ。
その背中に、プギャーは叫ぶように声をかけた。

( ^Д^)「ミンナ!」

( ゚д゚ )「……何だ、プギャー」

( ^Д^)「ビロードとかいう奴がお前を裏切ったとしても、俺はお前を裏切らないからな!」

( ゚д゚ )「……プッ……」

( ^Д^)「な、何だよ」

( ゚∀゚ )「ク、ククッ……いきなり何を言うかと思えば、そんな事か。ハハハハッ……」

(;^Д^)「うるせぇ! 分かったなら、さっさと出て行きやがれ!」

少しの間笑い続けると、ミンナは笑みを消してプギャーを見詰める。


68 : 配管工(東京都):2007/04/03(火) 23:23:37.00 ID:duD8w2qe0

( ゚д゚ )「プギャー」

( ^Д^)「今度は何だよ」

( ゚д゚ )「……ありがとう」

言って、ミンナは部屋を出て行った。

(;^Д^)「? 最後の最後まで意味が分からないな、あいつは……」

溜め息と共に、ベッドにその身を横たえる。

そして、「あっ」と眼を見開く。

( ^Д^)「そういや、あいつが笑った顔……初めて見たな」

何だかおかしくなって、一人笑う。

その笑い声が聞こえなくなった時。
プギャーは既に夢の中だった。





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