第十話48 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:26:45.63 ID:GYhvZpJ60第10話 生存……? ( ・∀・)「……あああああぁぁああァ!」 若干動きが鈍くなってきている。 元々体力がある方ではなかったはずだ。 突進するモララー。 一呼吸おいて、ギコも彼に向かって走り始める。 ( ・∀・)「!」 ( ,,゚Д゚)「うらっ……!」 斬撃を避ける。ここまでは成功。 右手で拳をつくり、モララーの腹を目がけ、放つ。 だが、直後。 ギコは、自分の目論見が甘かったことを知った。 49 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:28:06.33 ID:GYhvZpJ60 拳は確かにモララーの腹部にめり込んだ。 だが、それとほぼ同時に振り上げられたモララーの刀。 ( ・∀・)「がふっ……!」 モララーの呻き。 だが、それはギコの耳には届かなかった。 彼は、左半身に妙な違和感を覚えていた。 吹き出す血液。 51 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:28:51.04 ID:GYhvZpJ60 痛みが拡散するまでにしばらく、無感覚の時間があった。 すう、と風が吹き荒ぶような感覚に襲われる。 左半身が宙に浮いたようだ。 ( ,,゚Д゚)(なんだ……) 体勢が崩れ落ち、砂地に手をつく。 片手だけ。 おかげで、そのまま左方向に転がってしまった。 ( ,,゚Д゚)(どうした……) 直後、痛みが全身を駆け抜けた。 53 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:29:43.42 ID:GYhvZpJ60 ( ・∀・)「ぐひゃ、や、やったっぐふっ……げほ」 呼吸を途絶えさせながらも、 モララーは腹を押さえた姿勢のまま奇声をあげている。 一方のギコは右手で何かを探していた。 痛みが身体を貫くようだ。視界すらはっきりしない。 ( ,,゚Д゚)(無い……) 自分の周囲の砂が血の色に染まる。 ( ,,゚Д゚)(ねえよ……) 右手を乱雑に動かす。 ( ,,゚Д゚)(左腕がねえよ……) 首をわずかに傾けた。 あった。 地面に落ちていた。 55 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:30:41.97 ID:GYhvZpJ60 ギコの左腕は、上腕の真ん中辺りから斬りおとされてしまっていた。 何がどうなってこうなったのか。 振り上げた刀が左腕を奪ったのか。 ギコにはわからなかった。 ショックすら受けない。 今はとにかく、痛かった。 遠くで誰かの悲鳴と、足音が聞こえてきた。 ( ,,゚Д゚)(なんだこれ……) ( ,,゚Д゚)(冗談じゃねえよ……) 血が抜けて、頭がクラクラする。 常人なら、死んでいるのではないだろうか。 ( ・∀・)「やった、やった!」 ・・・ ・・ ・ 57 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:31:22.77 ID:GYhvZpJ60 ( ゜ω゜)「ギコ!」 川 ゚ -゚)「……?」 ツンが悲鳴をあげる。 遠目から見てもはっきりとわかることだ。 ギコの左腕が彼の本体から離れ、砂漠に落ちた。 その横で、モララーがうずくまったまま、大声で笑っている。 (*゚ー゚)「チャンス……」 ブーンたちの傍らで、しぃが目を輝かさせる。 そして、一目散に二人の元へと駆けた。 ξ゚△゚)ξ「……行かないと……!」 その後にツンが続く。 ブーンも、クーを連れ立ってギコの方に向かっていった。 ・・・ ・・ ・ 58 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:32:24.66 ID:GYhvZpJ60 ( ,,゚Д゚)(あー……ダメ……なのか?) 朦朧とする意識の中で、ギコは何かを考えていた。 ( ,,゚Д゚)(……畜生……なんであんな野郎に) 自分は裕福な人間だ。 一方、モララーは、とても恵まれた環境に育ったとはいえない人物。 優越感が無かったといえばウソになる。 今、そのモララーに自分の腕を奪われたのが無性に悔しかった。 笑い声がまだ聞こえてくる。 ギコは歯軋りした。 ( ,,゚Д゚)(……崩れたじゃねえか) 夢は医者になることだった。 だがそんな夢が、刀の一振りで崩壊した。 虚脱感は計り知れない。 59 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:33:22.06 ID:GYhvZpJ60 (*゚ー゚)「死ねよ!」 突然、嬉々とした声が響いた。 そういえば、足音が聞こえていた気がする。 目の前に落ちていた刀が誰かの手によって持ち去られた。 辛うじて首を動かす。 一瞬後、ザクッという肉を刺す音が届いた。 モララーの高笑いが途切れる。 (*゚ー゚)「あははははははは! やった!」 代わりにしぃの笑い声が耳を劈く。 ( ,,゚Д゚)(やったのかよ……) ( ,,゚Д゚)(クソが……) ・・・ ・・ ・ 60 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:34:16.27 ID:GYhvZpJ60 目の前を走っていたしぃは、ギコには目もくれず 刀を拾い上げ、モララーの背中に突き刺した。 ξ゚△゚)ξ「……」 あまりにも戸惑いのない行動に、愕然とするツンとブーン。 ξ゚△゚)ξ「そうだ、ギコ……」 ギコは身動き一つせず、砂地に横たわっている。 血の海とはこのことをいうのだろう。 ( ゜ω゜)「ギコ、大丈夫かお!?」 呼びかける。 反応は、ない。 62 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:35:12.97 ID:GYhvZpJ60 ( ,,゚Д゚)(なんだぁ、こいつ……) しかしながら、ギコはその叫びを聞いていた。 ( ,,゚Д゚)(さっきまで高みの見物と洒落込んでやがったクセに……) ( ,,゚Д゚)(いい身分してやがるなぁ……) ただ、応答する気がなかっただけだ。 ( ,,゚Д゚)(どうしろってんだよ……ボケ……) 何もかもが虚しい。 今のギコの精神状態は、思春期的なそれの延長線上にある。 63 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:35:49.73 ID:GYhvZpJ60 ξ゚△゚)ξ「こんなのどうすればいいのよ!」 ギコを抱き起こしたツンが泣くように叫んだ。 その手は血で真っ赤に濡れている。 ξ゚△゚)ξ「ねえ、ブーン!」 ( ゜ω゜)「ぼ、僕には何もできないお!」 ξ゚△゚)ξ「ああ、もう!」 ツンの中で、何かが限界に達した。 そのとき。 赤い空が崩れ始めた。 黄色い砂が溶けるように消えていく。 画面がドット単位で欠けていくように。 モララーが創った世界は破壊した。 ジャンル別一覧
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