二章81 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:12:15.04 ID:v9ppjQdP0二章 共振 気付いたのは、あれからどれくらいか経ってからの事だった。 空は美しい紅。 頭の痛みは消え、心臓の痛みもなくなり、視界も普通に戻っている。 少しだけ足にうずくような痛みがあるが、それだけ。 でも、考えなきゃいけない事はそんな事じゃない。 82 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:13:51.66 ID:v9ppjQdP0 (;^ω^)「お?何だおこの汚い物体は。教えてエロい人」 僕の周り、半径二メートルの地面は鉄の臭いのする紅だ。 そして、よく分からない肉のような物がびちゃびちゃと散乱している。 ピンクだったり赤だったり白だったり。大きさもまちまちだ。 一体何だろう、これは。 夢の中でも見た気もするけど。 ( ^ω^)「……お?不審者の方は?」 そう思って僕は周りを見渡す。 何だか所々に黒い切れ端がいっぱい落ちてる。 おそらく服の断片だろう。 ( ^ω^)「んー………」 (;^ω^)「いや、本当に何が起こったんですかお?教えてエロい人」 それにしても、本当に何が起こっているんだろう。 何だろう、この紅い液体は。 ……血? まぁそれはないか。 あー、頭が働かない。 眠っていた……あぁ違う違う。 意識を失っていたからかな。 83 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:15:28.74 ID:v9ppjQdP0 んーっと。 今の状況を整理しよう。 まず、何が起きたんだっけ? ( ^ω^)「ジョルジュ達の今日の議題は“異能者のおっぱいについて”で……」 そんな事を考えようとしていた、その時。 (;゚ω゚)「お、おうっ!?」 僕の足が、ビクンっと痛んだ。 弾けるようなその痛みに、僕は軽く声をあげてしまう。 痛みはびりびりと続いた。 痛みの部位は足全体。 ……いや、膝から下、かな。 痛みは弱まる事を知らず、治まりそうもない。 むしろどんどんと強くなる一方だ。 84 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:16:49.73 ID:v9ppjQdP0 (;^ω^)「こ、これは早急に美人な女医さんの診察を受けてハァハァしないといけないかもわからんね……」 そんな事を考えて、顔を上げた。 そこには。 ( ^Д^)「……お前か? 俺の同属は」 眼だけが笑っている、ちゃらちゃらしている男が僕の目の前にいた。 男は左腕を掲げながら、僕を見て言う。 ( ^Д^)「俺のこの反応に、お前のその反応。間違いねぇよなぁ?」 僕に問いかけているみたいだが、僕はよく分からない。 とりあえず「おっ?」と首を傾げてみた。 (;^Д^)「んーうぅー? 何、もしかしてお前“力”を持っていないとかか?」 ( ^ω^)「何だお、力って。どこの勇者の話だお? 僕の家系には竜王を倒す運命を持った勇者がいるのかお?そんな話は聞いた事もありませんお」 (;^Д^)「いや、持ってないはずはないんだがなぁ。…だってどう見ても“これ”はお前の仕業だし」 男は僕の言った事をスルーすると、そんな事を言いながら紅い地面を見る。 85 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:18:00.42 ID:v9ppjQdP0 ん? “これ”って何だよ。 まずこの紅くて臭い液体は何なのか詳しく。 (;^Д^)「……もしかしてお前、何も分かってないとかか?」 ( ^ω^)「お。さっきから何を言ってるんだお?」 そう言うと、男は考え込むように目を閉じた。 時々「むぅ」と唸ったりした。 それから数十秒。 男はパッと眼を開けて、僕に言う。 ( ^Д^)「お前、どこから覚えてる?」 ( ^ω^)「えーっと。人を殺したって言ってる、全身黒尽くめの変なおじさんが僕の前に現れて……。 そしたら意識が飛んで、さっき起きたお。……あ、頭の中で「おはよう」って聞こえたお」 ( ^Д^)「あぁ、じゃあ俺が説明してやるよ。お前の意識が飛んでから戻るまでの事を」 そう言うと、その男は息を一つ置いて話し始める。 それは僕の聞きたくない話だった。 86 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:19:33.98 ID:v9ppjQdP0 ( ^Д^)「これはあくまでも予測であって、可能性の高い事柄を整理しただけだが……。 お前はその“変なおじさん”とやらを殺したんだよ。ぐちゃぐちゃに、完膚なきまでにな。 その証拠がお前の周りの血と肉片、そして黒い布切れだろ。 おそらく、お前の命の危険を感じて、“力”が“覚醒”したんだよ。 だからお前の頭ん中で「おはよう」って聞こえたんじゃね?」 あくまでも俺の予想でしかないけどな、と男は話す。 は? 何ですかそれ? 新種のギャグですか? 笑えないギャグですね、あははははは。 声さえも出ませんよ、あははははは。 いや、真面目にさ。 この男の言う事は意味が分からない。 理解できない。 と言うよりも理解したくない。 僕があのおっさんを殺したと? どうやってだよ。 僕にはそんな力も器具もないぞ。 87 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:20:54.41 ID:v9ppjQdP0 (;^ω^)「……タチの悪い冗談はやめてほしいお。僕に人を殺せる力なんてないお」 ( ^Д^)「その“力”が“覚醒”したんだっつーの」 (;^ω^)「まずその“力”って何なんだお? 普通、人の力で人をここまでぐちゃぐちゃには出来ないお?」 (;^Д^)「あー、それはだな……。 んぅー、何て説明するかな……」 そこでまた考えるように眼を閉じる。 僕は、男が眼を開けるのが怖かった。 またこの男が変な事を言い出しそうで。 そこで、眼が開く。 口元には邪悪な笑みが浮かんでいた。 ( ^Д^)「体感した方が早いわな」 男がそう言うと、男の左腕の肘から先……そこから音がした。 何事かと思ってそこを見ると―――そこに、人の腕は存在しなかった。 そこは、人の腕から“何か”に変化し始めていた。 88 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:22:44.82 ID:v9ppjQdP0 ゴキッ。 ゴキゴキゴキッ ゴキゴキッ。 そんな不気味な音を響かせながら、男の左腕の肘から先は変化し続ける。 肌の色は草色になり、手首があったところにはカマキリのような鎌。 そして変化した部位のリーチが伸びる。 それはまるで、死神の巨大な鎌だ。 数秒後。 ゴキゴキという音が終わると、男はその鎌を振って見せた。 風を斬る音と共に、金属と金属が擦れ合う音が聞こえる。 どうやら皮が金属製のそれになり、それが幾層か重なって鎧のようなそれになったようだ。 左腕の肘から先。 そこをカマキリの鎌に変化させている異形がそこにいた。 89 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:24:56.43 ID:v9ppjQdP0 (;゚ω゚)「――――――っ!?」 ( ^Д^)「とりあえず、名乗っとこうか。俺はプギャー。体の一部を虫の特性に変化させられる異能者だ。 とある目的の為に異能者を拉致らなきゃいけない。 だからお前を少し拉致させてもらう」 僕の頭の隅に、先生の話が浮かんだ。 この人が、例の異能者か。 僕はこういう時、無理矢理自分を冷静にさせる。 目の前にいる男……プギャーは異能者だ、命を奪われるかもしれない。 ここは慌てずに、逃げる隙をうかがおう。 足の痛みは酷いけれど、全く走れないってほどでもない。 (;^ω^)「何で僕を拉致るんだお?僕は異能者じゃないお」 ( ^Д^)「……異能者ってのは共鳴……いや、共振しあうものでな。 俺は俺の“力”に共振する奴を見付けてるわけだよ」 (;^ω^)「それで何で僕なんだお?」 ( ^Д^)「お前のその足が、俺のこの左腕と共振しているからさ」 90 名前:1[] 投稿日:2007/01/15(月) 00:27:01.13 ID:v9ppjQdP0 僕はその時、逃げようとした。 プギャーに隙が出来たからだった。 でも逃げられなかった。 足の痛みが急に強くなったからだった。 ドクン、ドクン、と。 心臓の鼓動のリズムと同じように、足の痛みが強弱を繰り返す。 やがて立てなくなり、僕はその場に突っ伏した。 耐えがたい、狂ってしまいそうな痛みが足を襲う。 (;゚ω゚)「おっ……おぉぉおっ……!?」 ( ^Д^)「……じゃ、お前の“力”はどの程度なのか。拝見させてもらおうか。 おい、お前。“解放”って、心の中で唱えてみな。痛みがなくなるぜ」 そんな言葉に、僕はたまらず従う事にした。 痛みがなくなるのならば、どうでも良いと思った。 後になって、後悔も反省もしているのだが、その時はもう仕方がない。 “解放” ゴキッ……。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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