2007/04/06(金)09:58
('A`)ドクオと川 ゚ -゚)クーは夢の中で出会うようです(第一話下)
19 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:43:40.49 ID:bjpGI8cC0
キンコンカンコン
六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
( ^ω^)「ドクオ早くするお!電車の時間に間に合わなくなるお!」
('A`)「そんなにあせることないだろ。このままのペースで十分間に合うさ」
ドクオは一時間目に見た不可思議な夢の話を誰にも話さなかった。
話したところで理解してもらえないだろうし、そもそも自分も完全に理解できていたわけではなかったからだ。
「今夜の夢の中で話そう」と言う言葉は頭の片隅に追いやられていたものの
しっかりとドクオの記憶の中に焼き付けられていた。
( ^ω^)「じゃあまた明日だお!」
('A`)「おう、じゃあな」
ブーンはドクオが降りる二つ前の駅で降りていった。
('A`)(あれは何だったんだろう)
ミカンの当たる衝撃やコタツの暖かさ、全ての感覚が鮮明だったもののどう考えてもあれは夢。
('A`)(まぁ……今夜になれば分かるか)
一旦取り出した謎をもう一度同じ場所にしまいなおす。
電車から見える景色はいつものようにそのスピードを緩めることなく流れていった。
20 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:45:51.05 ID:bjpGI8cC0
('A`)「ただいま」
帰宅の挨拶を済ませ二階に上がり、夕食の時間まで勉強をする。
授業を全く聞かないドクオは自主学習で遅れを取り戻す。
元々効率はいい方だったので、この二時間程の学習だけで定期テストは困らずに済んだ。
('A`)「ごちそうさん」
夕食を食べ終え風呂に入り、テレビを見た後歯を磨く。
('A`)「おやすみ」
面倒なことは嫌いと言っても挨拶はきちんとする。親との会話も人並みにするし手伝いもする。
今の高校生から見ると十分すぎるほどの親孝行者だった。
('A`)(さて、どうなることやら)
ベッドに入り電気を消す。
目を瞑ると、すぐに意識は眠りの中へと落ちていった。
21 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:48:26.30 ID:bjpGI8cC0
背中にひんやりとした感触。畳の上に寝そべっていることがすぐに分かった。
('A`)「……本当にまたここに来るとは」
川 ゚ -゚)「待っていたぞ。ドクゥオ」
無機質な顔が、そこにはあった。
('A`)「だからドクゥオじゃなくてドクオだって」
川 ゚ -゚)「それではいきなりだが話の続きをしようか」
('A`)「なんというスルー……」
川 ゚ -゚)「どこまで話したか覚えているか?」
('A`)「ええと、確か『おでかけ』がどうたら言ってたな」
川 ゚ -゚)「正解だ。褒美としてミカンをくれてやる」
(#)'A`)「いたああああああああああああい!!!」
22 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:50:32.37 ID:bjpGI8cC0
川 ゚ -゚)「で、『おでかけ』についてだが」
(#)'A`)「食べ物を粗末にするなよ……」
川 ゚ -゚)「文字通りここから『おでかけ』することを指す。
つまり君の夢のスペースから他人の夢のスペースへ移動すると言うことだ」
('A`)「はぁ」
川 ゚ -゚)「人は眠っている間しか夢を見れないが夢のスペースは君たちが起きている間も存在している。
そこに私が飛び込むことでその人を内部から操作してやろうと言うのが私の目論見だ」
('A`)「へぇ」
川 ゚ -゚)「そこで君にはここで『おるすばん』をしていてもらいたいのだ。
私が他人の夢のスペースへ移動する時にその人と入れ替わる。
その人をここで『おもてなし』しておいてもらいたい」
('A`)「なんかすごく面倒って言うかそんなことしていいのか?」
川 ゚ -゚)「元に戻るときに記憶を消去するから問題ない。元に戻る寸前に電話で連絡するからそしたらこの……」
コタツの上に錠剤が入ったビンが置かれた。ラベルに書いてある文字を読む前にクーが言う。
川 ゚ -゚)「このナンデモデルデールを飲ませてくれ」
('A`)「ナンデモデルデールワロタwwwwwwwwww」
23 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:52:27.59 ID:bjpGI8cC0
川 ゚ -゚)「……まぁ名前からして分かるだろうがこれは強力な下剤だ。
これを飲めばここから脱出できる、とでも言えばみんな喜んで飲むだろう」
(#)'A`(#)「ぼくアンパンマン」
川 ゚ -゚)「記憶が便となって放出されるようになっている。
それが確認できたら私がここに戻ってくるという寸法だ」
('A`)「なんつーか本当になんでもアリだな」
川 ゚ -゚)「他にもいろいろあるが後は実際にやってみてから追々説明する」
クーはそう言うと一息つきお茶をすすりはじめた。
('A`)「あれ?お茶なんてあったか?」
川 ゚ -゚)「君がいない間に物を増やしておいた。お茶以外にもいろいろあるぞ。
布団、冷蔵庫、電話からメリケンサックまで生活必需品はあらかた揃えた」
(;'A`)「メリケンサックは必需品じゃないだろ」
川 ゚ -゚)「とにかく明日からよろしく頼むぞ。今日の話はここまでだ」
('A`)「よろしくも何も俺はまだやるなんて一言も言ってないんだが」
25 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:54:50.89 ID:bjpGI8cC0
川 ゚ -゚)「でも君は退屈が死ぬほど嫌いなんだろ?十分すぎるほどの暇つぶしになると思うのだが」
('A`)「そりゃそうだけど……あれ?俺そんなこと言ったっけ?」
確かそんなことは話していないはずだ。そう記憶を辿りながら尋ねる。
川 ゚ -゚)「こんな生活臭のする空間だから実感が湧かないかもしれないが
一応ここも君の頭の中だ。君が呆けた面で考えてることなどあらかた把握している」
(;'A`)「ちょ、ちょっとまて!ってことは俺の行動全てがあんたに筒抜けってことか!?」
川 ゚ -゚)「全てとまではいかない。私が一人でここにいる間そこのテレビに君の視界が映る程度だ」
(;'A`)「えぇ……それでもやっぱり見られてることに変わりないじゃないか」
川 ゚ -゚)「わかった。そこまで言うならなるべくテレビはつけない。思考を読むことも極力避けることを約束しよう」
('A`)「いまいち信用出来ないんだよなぁ……」
川 ゚ -゚)「男は度胸!!」
グダグダと気持ちのいい返事を返さないドクオに痺れを切らしたのか
コタツを激しく叩き、クーは叫んだ。
川 ゚ -゚)「……何でも試してみるのさ」
26 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:57:00.81 ID:bjpGI8cC0
川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」
(;'A`)「それって……」
川 ゚ -゚)「やりますか?やりませんか?」
(;'A`)「それもまた……」
クーはもう何も言わなかった。
ただドクオの目を一心にみつめたままその口が開くのを待っていた。
(;'A`)「…………っ……」
川 ゚ -゚)
(;'A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「……わかったよ」
27 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:59:31.92 ID:bjpGI8cC0
('A`)「ただし、俺が耐えられなくなるようなことが起きでもしたらすぐに出て行ってもらうからな」
ヽ川 ゚ -゚)ノ「バンザーイ」
両手を上げ喜びを体全体で表したクーであったが、その顔は未だに無表情のままだった。
('A`)「あんたは表情に変化がないから感情を読み取りづらいわ」
川 ゚ -゚)「生まれつきそういうのが苦手でな。だから体全体で表現するよう心がけている」
('A`)「そうなのか。で、クーさんとやら」
川 ゚ -゚)「クーでいい。同い年だからな」
('A`)「これまた新情報。で、クーに一つ質問があるんだ。
クーが他人の体に移ってる最中、俺がここで『おるすばん』とやらをするんだよな?」
川 ゚ -゚)「そうだ。『おもてなし』もな」
('A`)「ということは、だ。現実の世界の俺はその時どうなっているんだ?」
川 ゚ -゚)「君はどうやってここに来た?」
来たと言う言葉に違和感を覚えた。
夢に来ると言う感覚をドクオは体験したことがない。
('A`)「どうやってって……夢の中なんだからもちろん寝て……」
川 ゚ -゚)「そう。私が『おでかけ』している間、君の体は眠りについている」
28 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:00:55.62 ID:bjpGI8cC0
(;'A`)「それじゃ、俺はクーの都合で眠りにつかなきゃいけないってことか!?」
川 ゚ -゚)「正確に言えばつかされるかな。
『おでかけ』する前に君に合図することは基本的にない。自然と眠気に襲われそのまま眠りにつくだけだ」
(;'A`)「ちょ……一応時と場所ってものがあるんだけど……」
川 ゚ -゚)「分かっている。そこは大船に乗ったつもりで私に任せてくれ」
('A`)「大船どころか割り箸で作ったイカダに乗った気分だよ」
川 ゚ -゚)「質問はそれだけか?」
('A`)「ああ、後はなんか面倒だからいいや」
川 ゚ -゚)「そうか。それじゃどうする?
目覚めのヘッドバットをかませばすぐに朝を迎えることが出来るが?」
(;'A`)「正直ヘッドバットは嫌なんだけどなぁ……」
川 ゚ -゚)「ヘッドバットはそんなに嫌か?
他には目覚めのアイアンメイデンや目覚めの青酸カリ等があるが、そっちの方がいいか?」
('A`)「ヘッドバットでお願いします」
川 ゚ -゚)「そうかそうか。では湯のみを片付けてくるから少し待っていてくれ」
29 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:02:06.16 ID:bjpGI8cC0
クーが台所に向かった後、ドクオは考えていた。
('A`)「……ふー」
多少変わった性格と暴力癖を除けば自分にはもったいないくらいのルックスを持つ女子高生と、夢の中とは言え二人きり
現実では考えられないような条件を提示されても大抵の人なら首を縦に振ってしまうだろう。
だが、ドクオにとってそれはあまり関係なかった。
面倒なことを押し付けられるとは言え、あまりに現実離れした彼女の計画にドクオは少なからず興味を抱いていた。
表面では素っ気無い態度を見せていたが頭の中では彼女の話に夢中だったのである。
('A`)「まぁ俺が操られる心配はないみたいだし、見てる分には面白そうだし。それに……」
そして彼の心を動かした大きな要素。
('A`)「……あの目で見られちゃあな……」
何も見ていないかのようで全てを見透かしているかのような漆黒の瞳。
本来黒とは相反するはずの光をドクオは見たような気がした。
31 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:03:09.31 ID:bjpGI8cC0
ガシャン!!
何かが割れるような音が台所から響いた。
('A`)「なんだ?」
音のした方へ向かう。下を見る。
('A`)「……またか」
今日見るのは三回目であろう。
うつ伏せになっているクーとその近くに湯のみの破片。
('A`)「何があった?」
川 - )「……棚が……私の小指を……」
若干の涙声でクーは答えた。左足の小指を見てみると確かに赤くなっていた。
('A`)「とりあえず、湯のみ片付けておくぞ」
湯飲みを片付けている最中、ドクオは小さな嗚咽のようなものが聞こえた気がした。
クーの方をふと見ると少し湿った袖。
割れた湯飲みからこぼれた水分が、母の教えをただただ守る少女を救った。