二十七章二十七章 悪魔 ( ・∀・)「こんにちは、みなさん。こんなにも雁首並べて、今日はどうしたのかね?」 まるで館にきた客を歓迎するかのように言って、わざとらしく腕を広げる。 それに対してクーは刀を静かに持ち上げ、モララーを睨んだのみ。 川 ゚ -゚)「貴様の命、貰い受けに来た」 ( ・∀・)「ほぅ、それは面白い」 乾いた笑いを漏らして、モララーはクーに手招きする。 そしてウィンクして見せると、声をあげた。 ( ・∀・)「どんな手を使っても構わないし、何人でかかって来ても構わない。 私を殺してみろ。そうしなければ、君達に待っているのは“死”だけだぞ?」 その言葉に、その場の全員が身構えた。 ブーンとドクオは眼前の流石兄弟に再度トドメを刺そうとするが、やはりそれは見えぬ障壁に止められる。 (;゚ω゚)「どうなってんだお……!?」 ( ・∀・)「流石兄弟はどうやらまだ死んではいないようだからね、トドメを刺すのは遠慮してもらおう。 その二人には、優秀な駒としてまだまだ動いてもらわなければならない」 (;゚ω゚)「……くそっ!」 ('A`)「チッ……」 その言葉で諦めたのか、ブーンとドクオもモララーへと向き直し、戦闘体勢を取った。 从 ゚∀从「おっちゃん。どうする? 一人で戦るかい?」 ( ・∀・)「そうさせてくれ。ここのところ、動いてなくてね」 从 ゚∀从「ふーん。まぁ良いさ。じゃあおっちゃん。あたしはどうすべきだい?」 ( ・∀・)「そこで見ていろ。ただし、『ヤツ』が来た時は少しでも良いから足止めしてくれ」 从 ゚∀从「オッケー。後でレモンティな」 ( ・∀・)「浴びるほど呑ませてやるさ」 笑って、ハインはゆっくりと隅へと移動する。 そして、戦闘が始まった。 ミ,,゚Д゚彡「おおぉおぉおぉっ!!」 両足を異形に変化させたフサが、恐るべきスピードでモララーに迫る。 フサは一瞬にしてモララーの懐へと入り込み、そして腰目掛けて足を横薙ぎに振るった。 もはや残像しか残らぬほどの速度で振るわれたそれを、しかしモララーは余裕の表情でバックステップしてかわす。 ミ,,゚Д゚彡「ッチィッ!」 舌打ちし、追撃をかける為に更に踏み込む。 しかしモララーはそこで退かず―――逆に前に踏み込んで来た。 ミ;゚Д゚彡「なっ―――!?」 予想外の動きに焦りを浮かべつつも、足を蹴り上げる様にして振るう。 モララーはそれを一歩だけ横に動いて回避。 そしてがら空きになっているフサの胸の中心に、重い掌底を捻じ込んだ。 ミ;゚Д゚彡「が、はっ!?」 フサの身体は、軽く宙を飛ぶ。 そして受身も取れずに地面に落ちそうになって―――その身体は何者かに助け出された。 川 ゚ -゚)「行け、クックル」 フサの身体を支えているのはクーだった。 そして彼女の言葉と同時、彼女の後ろからクックルが飛び出す。 ( ・∀・)「おや、『鬼神』クックルか。いやはや、これは骨が折れそうな相手だ」 ( ゚∋゚)「黙れ」 短く答えて、彼は全力のストレートを放った。 鍛えぬかれた筋肉をフルに使ってのその拳は、凄まじいまでの速度と威力を秘めてモララーの頭蓋を撃ち抜かんとする。 しかし彼の腕はモララーの頭蓋を捉える直前で止まった。まるで、見えない壁に阻まれたかのように。 ( ・∀・)「おや、どうした?」 ( ゚∋゚)「……空間の壁、か。くだらない」 呟いて拳を引き、クックルは更に拳を撃ち込む。 怒涛の勢いで撃ち込まれていく拳は、やはり彼には届かない。途中の空間で止められた。 しかし、クックルは拳を止めない。 不思議な輝きを放つその眼は、己の拳を止めている『空間』に何かを見ていた。 そして――― ( ・∀・)「……まったく、君は本当の化け物か」 彼は眉根を寄せて、後ろに跳ぶ。 それと同時にガラスが砕けたような音が響いて、クックルの拳はモララーの鼻先をかすめた。 それは、モララーとクックルの間の障壁が消えた事を現していた。 すぐにクックルは追撃をかける。 だが突き出した彼の拳が当たる直前、モララーは忽然と消え、拳は空を切った。 「テレポートは疲れるからあまりやりたくなかったのだがな」 声はクックルの後ろからだ。 ゆっくりと振り返った彼の視線の先には、やはり余裕の皮肉に笑った顔。 ( ・∀・)「それにしても、アレだけ厚く造った空間の壁を突き破るとは無茶するな。クックル」 ( ゚∋゚)「黙れ」 壮絶な勢いで突き出される拳。 だがそれは軽く受け流され、その隙にモララーはクックルの懐へと入り込む。 ( ・∀・)「君のような筋肉に包まれた肉体には、打撃よりも斬撃だろうな」 呟くモララーの手には、いつのまにか鋭いナイフが現われていた。 そしてそれは鮮やかに大きな弧を描き―――クックルの胸板に、細くも深い一線を残した。 一瞬遅れてその傷から大量に血液が噴き出し、モララーと床を紅で濡らす。 モララーは反撃を受ける前にバックステップし、クックルから距離を取る。 クックルは突然現われたナイフにも、胸板の深い傷にも無関心だ。 虚空の広がる瞳でモララーを一瞥し、胸から垂れた血液を手で軽く払い飛ばしたのみ。 ξ;゚△゚)ξ「クックルさん!」 (#゚ー゚)「モララー……!!」 ツンとしぃが声をあげ、睨み合う二人に駆け寄ろうとする。 だがクックルは、腕を上げてそれを静止した。 ( ゚∋゚)「お前達ではこいつは手に負えん。俺に任せろ」 ξ;゚△゚)ξ「でも、その傷じゃ……!」 ( ゚∋゚)「構わない」 短い答えに、ツンは絶句する。 クックルの出血量は膨大だ。 このままでは失血死はせずとも、かなりの量の血液が失われる。 出血量を減らすか戦闘を止めるかせねば、しばらく何も出来なくなるだろう。 それを案じた言葉への答えが、「構わない」。 それは暗に、「死んでも構わない」と示しているのと同じだ。 ツンの動揺を知ってか知らずか、クックルはただただ無感情に言葉を紡ぐ。 ( ゚∋゚)「こいつを殺せれば、俺はもう満足だ。他の異能者は、お前達が削除してくれるだろう。 俺はここで死のうとも構わない。今の俺の仕事は、お前達に傷を負わせない事と、こいつを殺す事のみだ」 ξ;゚△゚)ξ「そんな……」 ( ゚∋゚)「こいつは生かしておけば、お前達の大きな障害となる。その前に、俺がこいつを殺す。 俺は“削除人”だ。お前達の手で削除出来ぬ異能者は、この手で削除する。その為の俺だ」 ツンはそれに口を出そうとするが、言葉を見付けられず、口を閉ざした。 ( ゚∋゚)「それと、お前等」 言って、彼はブーン達四人を見やる。 ( ゚∋゚)「死にたくなければ、邪魔をするな。戦闘に介入しようものなら、お前等も攻撃対象に含める。 本当は今すぐにでも殺したいところだが―――今は、こいつが優先だ」 言って、クックルはモララーに向き直す。 彼は嘲る様に眼を細めると、わざとらしく涙を拭うような仕草をした。 ( ・∀・)「自己犠牲で憎き悪を倒す……いやぁ、感動だね。笑いを堪えるのが大変だよ」 ( ゚∋゚)「であれば、笑えぬようにしてやる」 クックルの足元には大きな血溜まりだ。 かなり深い胸元の傷から流れ出る紅は止まる事を知らず、その血溜まりは更に成長する。 だが、血溜まりの成長は突然止まった。 クックルが、咆哮をあげる。 それと同時に、彼の身体に変化が起きた。 筋肉が異常に盛り上がる。 ゴキリという耳障りな音が響き、骨の形状・サイズが変化した。 肌の色が赤銅色へと変化し、瞳の色が朱へと移り変わる。 爪は伸びて鋭くなり、引き裂くのに適した形状へと変わった。 そして、額から一対の角が生え出る。 二メートルを優に越す、赤銅色の肌と一対の角を持った魔神。 それは、まさしく鬼―――『鬼神』であった。 引き締められた筋肉で傷は塞がり、出血も止まる。 その様子を見て、モララーは額に汗を浮かべた。 (;・∀・)「まさか、更なる解放をしてくるとはな」 (*゚∋゚)「……………」 ( ・∀・)「良いのか? 更なる解放は、その“力”の持ち主にも多大なる負担があるのだぞ? その出血量で解放の負担がその肉体にかかれば……命の保証も出来んなぁ」 (*゚∋゚)「お前を殺せるのなら、命などいらん。この命と引き換えにお前を殺せるのなら、安いものだ」 ( ・∀・)「“削除人”の鏡だな。ふん、忌々しい」 (*゚∋゚)「誉め言葉にしか聞こえんな」 赤銅色の拳が振り上げられる。 モララーは一瞬、空間の壁を作ろうかと思案したが、すぐにバックステップした。 そこに、音を後ろに置き去りにするような速度で振り下ろされる拳。 それはモララーの代わりに地面を捉えた。 そして巻き起こるは、爆散。 クックルの拳に秘められたエネルギーは地面を陥没させ、床や土を巻き上げる。 (;・∀・)「……チィッ……!」 舞う砂埃に視界が遮られ、モララーは焦燥に舌打ちした。 鍛えているとは言え、彼の身体は普通の人間と変わりない。 しかも、ドクオのように特別に感覚器官が強いわけでもない。 攻撃は予測出来ず、攻撃が当たれば即致命傷だ。 (;・∀・)「どこだ、クックル……!?」 狼狽する彼の背後。立ち込める埃の中に、赤銅色の影があった。 影はゆっくりと拳を振り上げ―――そして、振り下ろす。 モララーがそれに気付けたのは、まさに奇跡であった。 彼は全力で身を前に投げ出す。 そのすぐ後ろを、クックルの拳が落ちていった。 すぐにモララーは立ち上がり、鬼を睨みつける。 拳が掠ったのか、その背はパックリと切り裂かれていた。 (*゚∋゚)「……しぶとい」 (;・∀・)「化け物どころか、本当の鬼か。ジョークにもならない。ふざけるな……!」 呟く彼の手には、いつのまにか長剣が握られている。 そして果敢にも突進すると、連続で斬り付けた。 腕、肩、胸、腹。 次々と紅い線が増えていくが、クックルはまるで慌てない。 厚い筋肉はダメージをことごとく軽減していた。 (*゚∋゚)「邪魔だ」 裏拳気味に、軽く拳を振るう。 それだけで長剣は簡単にへし折れてしまった。 (*゚∋゚)「死ね」 そして放たれる拳。 残像が残るほどの速さの拳は、モララーの頭蓋目掛けて突き進んだ。 だが、そこで。 すぅっ、と。モララーの表情が変わる。 それは皮肉で、歪んだ笑み。 ―――彼が、本気になった印だ。 クックルの拳は、虚空を爆砕して終わる。 モララーはその場から忽然と消えていた。 そして、次に彼の姿が現われたのは、伸ばされたクックルの腕の上だ。 ( ・∀・)「考えてみれば、君の“力”は筋肉の異常増強だ。 であれば二次覚醒した君の身体に、あんな刃が通じるわけもない」 そしてその手に握られるのは、長剣。 ( ・∀・)「ならば、どうするか? ―――筋肉のない箇所を潰さねばね」 彼はそれを構えると―――無造作に、長剣を前に突き出した。 (*゚∋゚)「ッ!?」 クックルは反射的に、モララーが乗っていない方の拳でモララーを殴り飛ばそうとする。 しかしモララーは笑いながらそれを回避、床の上に着地した。 クックルの腕から降りた彼の手に、長剣はない。 何故ならその長剣は今、クックルの右の眼に突き刺さっているのだから。 ξ;゚△゚)ξ「クックルさん!?」 その余りの衝撃に、ツンの足がニ・三歩進む。 だが、それをクックルは手を上げて制した。 (*"∋゚)「問題ない。片方の眼がなくなっただけだ。……まだ戦える」 短く答えて、クックルはモララーに向き直す。 モララーは笑いつつも、その手に再度長剣を握っていた。 ( ・∀・)「頑張るねぇ。ならば、こうしてみようか」 モララーは長剣を、空に向かって斬り付ける。 もちろんそこには何もない。剣の斬撃の延長線上にクックルがいるだけだ。 だが、そこに、ゴトリという音が響いた。 見れば、クックルの右腕が床に転がっていた。 ツンの、しぃの叫び声が。 ブーンやギコの驚愕の声が、こだまする。 (*"∋゚)「……空間の断裂? いや……空間を固める“力”を応用しての空間の刃の作成か」 だがあくまで、クックルは慌てた様子を見せない。 逆にモララーが疲労の表情を浮かべていた。 (;・∀・)「ふふっ……どうも、頭が痛くなってきたな」 (*"∋゚)「“力”の使い過ぎだな。疲れただろう。そろそろ眠れ」 平気な顔をして歩み寄って来るクックル。 モララーは疲労しつつも、やはり笑って両手を掲げる。 ( ・∀・)「何、疲れきってしまう前に終わらせるさ」 その両手が下ろされるのと同時。 クックルの頭上の天井が、いきなり崩れた。 声をあげる暇もなく、クックルは天井だったものに押し潰される。 やがて彼の姿が見えなくなった。 モララーは天井の残骸の山に登り、そして残骸の中へと長剣を深々と刺し込んだ。 残骸の中から呻き声が少しだけ聞こえ―――そしてやがて、途切れた。 嘲るような笑い声と怒号。悲鳴が交差して、奇妙な旋律を奏でた。 残骸の下から漏れ出る紅が、ゆっくりと床を侵食していた。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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