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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第四話

5 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:40:04.41 ID:zFeeZu5W0
第4話 もしものときは、ころしてください。

(*゚ー゚)「……ふぁ」

鈍重な雰囲気のなか、しぃが一つ欠伸をした。

(*゚ー゚)「クー、今ってどっち?」
川 ゚ -゚)「……フリーだ。おそらく」
( ゜ω゜)「?」
(*゚ー゚)「そう……んじゃ、私寝る……眠いや」

酒の缶がしぃの足許に幾本か転がっている。
飲みすぎたのか、しぃは片手で頭をおさえた。

事務机の上のものを手で除けて、そこに寝転がる。

もう一度、大きな欠伸。

(*゚ー゚)「適当な時間に起こして……」

そして彼女は、周囲を気にすることも無く睡眠に陥った。

6 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:41:15.22 ID:zFeeZu5W0
ヒュウ、と吹き荒ぶ風の音が聞こえる。

ブーンは佇み、動くことすらしない。
すでにテレビの音は聞こえなくなっている。
ギコが電池の残量を気にしたらしく、携帯は閉じられていた。
無音の空間が漂う。

川 ゚ -゚)「……ブーン」

小さな呼び声がブーンの耳に届いた。

( ゜ω゜)「……」
川 ゚ -゚)「ブーン……どこにいる?」

7 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:42:01.77 ID:zFeeZu5W0
座ったまま、首だけを傾けて目的の人を探している。
盲目とはどういうものなのだろう。
光すら感じなくなるのだろうか。
少なくとも、ブーンの知るところではない。

( ゜ω゜)「なんだ、お……」

涙が邪魔して言葉が詰まる。

川 ゚ -゚)「ん……少し、こっちに来てくれないか?」

そういいながら、クーはあらぬ方向に向かって手を動かしている。
音の方向を把握しきれないのだろうか。

言われるままにブーンは歩み寄る。
至近距離まで近づいたところで

川 ゚ -゚)「ここに座ってくれ」

と、クーは自らの隣を示した。

8 名前: ◆xh7i0CWaMo [sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:42:45.95 ID:zFeeZu5W0
言葉通りに、ブーンは散らかった書類の上に座り込む。

( ゜ω゜)「何か、用かお」

川 ゚ -゚)「……うん」

川 ゚ -゚)「しぃを殺すなら今だぞ」
( ゜ω゜)「え……」

予想だにしていなかった言葉を聴いて、ブーンはたじろぐ。
同時に、盲目の彼女に対する恐怖を抱いた。

9 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:43:20.14 ID:zFeeZu5W0
川 ゚ -゚)「今はフリーだ。行動するなら、今」
( ゜ω゜)「フリーってなんだお?」
川 ゚ -゚)「この『ゲーム』にはミッションタイムとフリータイムが設けられている」

そこで、クーは一息。

川 ゚ -゚)「ミッションタイムの間は、私たちの行動は制限される……が、フリータイムは基本的に自由に行動できる……はは」

話終えたクーは突然、笑い声をあげた。

川 ゚ -゚)「こんなことを本気で話している自分を殴り飛ばしたいよ。まるで思春期の妄言だ」
( ゜ω゜)「……」
川 ゚ -゚)「で、どうする? 殺すか?」

殺せるわけが無いと叫喚したい。
だが、解放されたいという気持ちが膨張するのも止められない。

10 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:44:23.09 ID:zFeeZu5W0
川 ゚ -゚)「もう一度人を殺しているんだ。慣れたんじゃないか?」

言葉に絞められているような感覚。
窒息しそうだ。

( ゜ω゜)「ぼ、僕は無理……だお」
川 ゚ -゚)「……そうか」

ふっと、空気が和らいだ。
クーが小さく笑った。

川 ゚ -゚)「やはり慣れるものでもないんだな」
( ゜ω゜)「……」

ブーンの目には、クーが拷問を終えた刑務官のように映っていた。

川 ゚ -゚)「……ふ……ふふ」

また笑った。

11 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:45:45.22 ID:zFeeZu5W0
川 ゚ -゚)「ブーン。私がいつから盲目になったか、わかるか?」
( ゜ω゜)「わ、わからないお」
川 ゚ -゚)「今朝だ。朝起きたら、まだ夜だったよ」
( ゜ω゜)「……」

川 ゚ -゚)「びっくりしたさ。瞼が接着されているのかとも思った」

台詞は冗談めいているが、全く笑えない、面白くない。

川 ゚ -゚)「さっき、しぃが私のことを『なんちゃって全知全能』と言っていただろう?」
( ゜ω゜)「……お」
川 ゚ -゚)「私は、知識すらも書き換えられたんだ」

おかしくてたまらないというよりは、笑わずにはいられないといったふうに。
クーは笑みを浮かべ続けている。

12 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:47:17.37 ID:zFeeZu5W0
川 ゚ -゚)「自分でいうのもどうかと思うが、私はこれまでそれなりの努力をしてきた。おかげで、相応の学力を得ることができた」

川 ゚ -゚)「有名どころの大学を目指していた……よ」
( ゜ω゜)「……」
川 ゚ -゚)「その学力が消失した。代わりに得たのが、ふざけたゲームの設定だ」

学力を失い、ゲームの知識を得た。
どう考えても等価ではない。

川 ゚ -゚)「は、はは……ブーン、笑ってくれ」
( ゜ω゜)「わ、笑えないお……」

途端、クーは手探りでブーンを見つけると、その身体を手で激しく揺さぶった。

川 ゚ -゚)「笑うんだ! 罵倒してくれ、こんな『勉強はできました』みたいな記憶だけを持ち、それに見合う知識を失った私を、笑ってくれ!」

クーの中で何かが燃え上がる。
おそらく、狂気。あるいはそれに準じたもの。

13 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:49:44.30 ID:zFeeZu5W0
今のクーは、口だけ達者な中学生のようなものだ。
もしかしたらクー自身、自分より下の、プライドだけはやけに高い人間を無意識に見下していたのかもしれない。
だからこそ今、同じ状況になってしまった自分を見て、過剰に衝撃を受けているのかもしれなかった。

川 ゚ -゚)「さっきまで、ずっと泣いていた……怖い、不安だ、何もかもが見えない!」
( ;ω;)「ご、ごめんだお……」
川 ゚ -゚)「……」

ひたり、と、狂気が終息した。
クーはブーンから、ゆっくりと手を離す。

川 ゚ -゚)「なぜ君が謝る?」
( ;ω;)「え……」
川 ゚ -゚)「変な奴だな、君も」

そういってまた笑う。もう聞き飽きた。

( ;ω;)「……うぁああぁあ」

ブーンは、自分の頬を両手でおさえた。
唐突に、何かを潰したくなったのだ。

14 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:50:35.04 ID:zFeeZu5W0
謝った理由は自分でもわからない。
ただ、ドクオを殺してしまったからか。
全てが自分の責任であるように思えてしまっているのは事実だ。

そんなブーンの呻きを聞いて、クーは更に声高く冷笑した。

ギコは二人を不安げに見つめている。
しぃは気にもとめず、睡眠に没頭していた。

川 ゚ -゚)「それにしても、どうして私はこんなことを、君に話したのだろうな」
( ;ω;)「え」
川 ゚ -゚)「顔が見えない、からかな」

ブーンは慌てて耳を塞いだ。
数秒後、恐る恐る手を離してみる。
聞こえたのはやはり、笑い声だった。

16 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 20:52:50.88 ID:zFeeZu5W0
川 ゚ -゚)「……そうだ、ブーン。一つ約束してくれないか」

引き締まった顔になったクーが言う。

( ;ω;)「なんだお」
川 ゚ -゚)「もしも、このゲームがクリアできないとわかったときは、私を殺してくれないか」
( ;ω;)「……」
川 ゚ -゚)「正直な話、私は知識を取り戻したい。少なくとも、記憶に対応するほどの知識を」
( ;ω;)「でも、殺すって……」
川 ゚ -゚)「叶わなかったときの話だよ」

川 ゚ -゚)「君なら、殺し方を心得ているだろうからな」

肯定も、否定もできない。

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