二十八章二十八章 敵 怒号と悲鳴、そして笑い声が交差する。 クーとドクオを除く全ての者が、声をあげていた。 しかし、モララーの笑い声が唐突に止む。 彼はぐらりと、バランスを失ったかのようにふらついた。 その動きは一瞬。 すぐに体勢を立て直すと、彼は何事もなかったかのようにまた笑い出した。 ξ;△;)ξ「よくも! よくも、クックルさんを!!」 (#゚ー゚)「モララー……!!」 笑う悪魔に対して、翼がはためき、光が収束される。 だがそれは、クーの腕によって制された。 川 ゚ -゚)「止めろ」 (#゚ー゚)「……姉さん?」 ξ;△;)ξ「!? 何で!? 姉さん、あいつはクックルさんを―――!!」 川 ゚ -゚)「分かっている」 ミ,,゚Д゚彡「クックルの言葉を思い出せ」 横に並んだフサは、内側に熱い物を込めながらも、冷静に言い放つ。 ミ,,゚Д゚彡「本気になったモララーに、お前達は太刀打ち出来ない。無駄死にも良い所だ」 ξ#;△;)ξ「なっ―――!?」 ミ,,゚Д゚彡「……だから、アイツは戦える俺達が潰す。アイツが殺れなかった分を、俺達で殺るんだ。 アイツは少しでも俺達が負傷するのを軽減させようとした。お前達が死ねば、クックルの想いは全て無下にされた事になる」 (#゚ー゚)「…………………」 ミ,,゚Д゚彡「クックルを想っていたのなら、アイツの意志を尊重して、お前達は生きろ。絶対に、だ。 ―――行くぞ、クー」 川 ゚ -゚)「あぁ」 両手を解放しながら歩み行くフサ。 右腕を解放しつつ、氷の刀を握り締めるクー。 歩み寄って来た二人を、モララーは残骸の上から見下ろし、そして笑った。 ( ・∀・)「おやおや、『鬼神』を退治したと思ったら、今度は『魔獣』と『雪女』を相手にしなければいけないのか」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ」 川 ゚ -゚)「必死に命乞いでもするのだな。まぁ、許さないが」 ( ・∀・)「これはこれは、怖い怖い」 からかうように言って、彼はおもむろに右手を顔の前に掲げる。 そして次の瞬間、その右掌の直前の空間で、黒と銀の銃弾が踊り狂った。 「―――チッ」 舌打ちが響いて、銃弾のダンスは止まる。 モララーはそちらの方向に眼をやって、わざとらしく驚いたふうにした。 ( ・∀・)「ドクオ君じゃないか。何で私を銃撃するのかな?」 ('A`)「気にいらねえからだよ」 再度、クロを発砲。 しかし、やはりその弾は右掌の直前で弾け飛ぶのみ。 ('A`)「……っつーか、な」 ( ・∀・)「む?」 ('A`)「こいつらもお前が気に入らないらしい。悪いんだが、ちょっと死んでやってくれ」 それと同時。 ドクオの横から、壮絶な勢いの炎の舌が伸びた。 炎の舌は空気を焼きながら、モララーに襲いかかる。 だがそれが彼に到達する瞬間、彼は空間を渡ってその場から消えた。 炎の舌は虚しく空気を焼き尽くすのみ。 (,,゚Д゚)「チッ……どこに消えやがった」 「危ない、危ない」 (;゚Д゚)「ッ!?」 嘲るような声がギコの隣から響く。 ギコがそちらに眼をやれば―――そこには、長剣を振りかざすモララー。 ( ・∀・)「まったく、危ないじゃないか」 笑いながら長剣を振り降ろす。 だが、振り下ろされた長剣は唐突に軌道を変えた。 ちょうど足元への攻撃を防ぐように降ろした剣は、そこで魔獣の足を捉える。 そして剣がひるがえれば、そこで頭部へ伸びていた白銀の足を弾いた。 モララーはそこで、ギコから離れる。 異速の魔獣と白銀は、モララーを追尾。 だがそれらの足がモララーを捉えようとしたところで、再度、彼の姿は煙の様に消えた。 白銀と魔獣の足が交差し、同時に舌打ちを漏らす。 ミ,,゚Д゚彡「奴にはテレポートの能力も備わっている。油断はしない事だ」 吐き捨てられた言葉は、ギコに対してのものだ。 (,,゚Д゚)「…………………」 ミ,,゚Д゚彡「どうした?」 (,,゚Д゚)「……アンタ今、俺を護ったのか?」 フサの眼が、驚愕に見開かれた。 だがフサはそれを必死に隠して、ただ平然と言葉を並べる。 ミ,,゚Д゚彡「……思い上がるな。俺はモララーを狩ろうとしただけだ」 言って、向きを変える。 これ以上顔を合わせていると、何かおかしな事を口走ってしまいそうだった。 ―――その一瞬の油断。 それが、命取りだった。 (;゚ω゚)「おっちゃん! 後ろ来てるお!!」 ミ;゚Д゚彡「なっ……!?」 ブーンの声が、フサに向けて叫ばれる。 瞬間、彼は首筋に冷たい物が走るのを感じた。 首筋に振り下ろそうとしているのが分かる。 だが無理だ。かわしきれない。 一瞬で思考したフサは、覚悟を決めて歯を食いしばった。 しかしそこで響くは肉を裂く音ではなく、金属音だ。 ( ゚∀゚)「注意してる方が注意力散漫ってのはダセェぞおっちゃん!」 モララーの長剣を止めていたのは、ジョルジュのブレードだ。 ジョルジュはすぐに長剣を弾き、ブレードを連続で振るう。 しかしモララーは剣技もずば抜けている様で、ブレードは彼を傷付けられない。 やがてジョルジュはブレードを大きく弾かれ、腹に蹴りを食らった。 彼はうめいて、咄嗟にバックステップ。追撃を警戒して、腕を構えた。 だがモララーは追撃せず、それどころか軽い身のこなしで後ろに退く。 一瞬の後、彼の目の前の空間を、銀の銃弾と黄金の光線が貫いていった。 後ろに退いていなければ、彼の側頭部を銃弾と光線が貫いていただろう。 その方向に眼をやれば、銃を構えたドクオと掌を構えたしぃだ。 ( ・∀・)「急な共闘にしては中々のコンビネーションじゃないか」 川 ゚ -゚)「黙れ」 ( ・∀・)「おぉっと、怖い怖い」 モララーを睨むクーの眼は、絶対零度を思わせる冷たさだ。 表情には表さない彼女も、クックルの死について何も想わないわけではなかったようだ。 クーはモララーに刀を向け、ゆっくりと歩み寄りながら言い放つ。 川 ゚ -゚)「お前は、今ここで殺す。 ホームを潰し、ファーザーを殺し、クックルを―――何人もの同胞を殺したお前は、許されない」 ( ・∀・)「許される気なんてないからな」 川 ゚ -゚)「ならば喜んで死に行け」 そして、クーの姿が消失する。 次の瞬間。彼女はモララーの目前で刀を構えていた。 その速さは、モララーのような空間移動ではない。 彼女自身の、単純だが洗練し尽くされた速さだ。 勢いと速さをそのままに、刀が切り上げられる。 だがモララーはそれを上半身を仰け反らせるだけで回避。 ( ・∀・)「速いが、君の動きは先が読める」 身体を仰け反らせたまま、クーの腹部に拳を捻じ込む。 クーはそれに反応出来ず、吹き飛んだ。 そしてすぐに立ち上がろうとして、再度膝を折る。 どうやら、彼の拳は良くない位置に入ったようだ。 川;゚ -゚)「ぐっ……!」 そこで彼女の腹に連続で叩き込まれる蹴り、蹴り、蹴り。 足が叩き込まれるたびに、彼女の口からは苦鳴が漏れた。 ( ・∀・)「一応、こうしておこうか」 言う彼の左手には、空間を超えて呼び出したのであろうナイフだ。 そしてそれは倒れるクーのふとももに振り下ろされた。 咲く血華。叫びを押し殺した苦鳴。 川;゚ -゚)「モララー……貴様ッ……!!」 ( ・∀・)「そこで指をくわえて見ていろ、クー」 言いつつ、右手を前に出す。 次の瞬間、その右手の前の空間に無数の白銀の羽が突き刺さった。 ( ・∀・)「お前の仲間がどんどんと死に行く様を」 二度、何もない空間を切るように腕を振るう。 その次の瞬間には、ツンの背中の翼が見るも無残に切り飛ばされた。 “力”を失った無数の羽根が、ただの羽根となって空間を埋め尽くす。 羽根のカーテンの隙間を縫うようにモララーに撃ち込まれたのは、黄金の光線だ。 しかしモララーはそれを余裕で回避。 そして捻じ曲げた空間から取り出した槍を、しぃ向けて投擲した。 槍は吸い込まれる様にしぃの肩を貫き、彼女を壁に縫い止めた。 (#゚Д゚)「てめぇっ!」 ギコは右腕を持ち上げる。 彼の中の獲物を待ちきれない炎の龍が、掌からちろりと小さな舌を出した。 ( ・∀・)「ここで炎を打つのか? 私は構わないが、状況を考えた方が良いとは思うぞ」 ギコは訝しげに彼を睨んだ後に、ハッとして、悔しげに歯噛みする。 今、空間の多くを羽根が舞っている。 ここで炎を放てば、自分達もタダではすまない。 しかもモララーは空間を操れるのだ。下手すれば、無駄死にしかならない。 ( ゚∀゚)「だったら俺が行くさ!」 ジョルジュが叫んで、右腕の形状を禍禍しい巨大な爪へと変える。 そして走り寄ると、全てを引き裂き叩き潰すかのような勢いで爪を振り下ろした。 ( ・∀・)「そんなに早く死にたいか」 言いつつ、モララーはそれをバックステップで回避。 ジョルジュの爪は地面を捉え、床を破壊して埃と土砂を巻き上げた。 モララーはすぐにジョルジュへと接近。 そしておもむろにジョルジュの左腕を掴むと、彼を投げ飛ばす。 その方向には、どうしようかと思案していたギコ。 彼は突然投げ飛ばされたジョルジュに対応出来ず、二人一緒に地面へと叩き付けられた。 (;゚∀゚)「痛っ……悪いね、ギコちゃん」 (;゚Д゚)「ぐっ……あ、あぁ」 よろめきつつも立ち上がった二人は、そこで同時に苦痛に顔をしかめる。 モララーに投げ飛ばされた際に無理な力がかかったからか、ジョルジュの左腕はおかしな方向に折れ曲がっていた。 そしてギコの腹には、深く刺さった二本のナイフだ。 (;゚Д゚)「かっ……! い、いつのま……に……!?」 ( ・∀・)「今だよ、今。君が立ち上がったその瞬間に投擲した。 いや、違うな。君の立ち上がるタイミングを予測して投擲した。 ははは。もっとゆっくり立ち上がれば良かったな」 (;゚Д゚)「ふざけやがって……!!」 忌々しげにそう吐いて、ギコは倒れる。 彼から流れ出した紅が、ゆっくりと己の範囲を広めていった。 (;゚∀゚)「ギコ……!!」 ジョルジュはギコからナイフを引き抜き、咄嗟に右腕を彼の傷口に乗せる。 そして右腕の形状を、傷口の形に合わせて変化させた。 傷口が綺麗に塞がれ、出血が止まる。 しかし、これで彼はギコからは離れられなくなった。 これだけで二人、戦闘不能だ。 ミ#゚Д゚彡「がぁああぁぁぁああぁっ!!」 フサの咆哮。 両腕、両足が解放され、魔獣へと姿を変えた。 眼が血のような紅に染まり、犬歯が異常に伸びる。 ミ#゚Д゚彡「モララー……貴様ぁあぁ……!!」 ( ・∀・)「ハ。獣風情が。弟と仲間を殺されて、とうとうキレたか?」 ミ#゚Д゚彡「―――ふざけるな、下衆が!! 貴様の存在を抹消してやる!!」 硬い床を抉り飛ばして、眼を剥く速度で駆け出す。 そしてその勢いをそのままに―――否、更に加速させて、全てを打ち砕く拳を放った。 だが、その拳は何もない空間を打ち砕いたのみ。 モララーは既に、彼の背後へと空間を渡っていた。 ミ#゚Д゚彡「グルゥゥウウァアァアァッ!!」 しかしフサは勢いを全て殺しきり、背後のモララーへと無数の拳を浴びせた。 モララーは弾丸のように放たれる全ての拳を、その両手で受け止めてみせる。 受け止める度に、ガラスが砕けるような音が響いた。 モララーは掌の前に空間の壁を瞬時に作り、フサの拳の勢いを殺して受け止めているのだ。 ミ#゚Д゚彡「小癪! だがそれも無駄と知れ!!」 叫んで、フサは右足を後ろに引く。 そして、まるで砲弾のような勢いで、右足はモララーの頭部へと放たれた。 これには流石に、空間の壁も意味を為さない。 フサの右足は、モララーの頭部を粉砕するだろう。 だが、そこでモララーはフサの思惑を裏切った。 彼は、もはや視覚出来ないほどのフサの足を避けたのだ。 ミ#゚Д゚彡「なっ……!?」 ( ・∀・)「“力”を解放すればするほど、おつむの方も獣になるのだな」 モララーの拳が、隙だらけのフサの腹へと吸い込まれる。 その衝撃に、彼は身体をくの字に折り曲げた。 そしてその顔に叩き込まれる膝。 血華が咲き、彼は仰け反る。 そして、とどめと言わんばかりの勢いで打ち込まれる胸への掌底。 血塊を吐き出して、フサは大きく吹き飛んだ。 それを見て、モララーは笑う。 だがまたもその身体は一瞬、ぐらりと揺らいだ。 やはりすぐに体勢を直し、軽く頭を振るう。 それからは何もなかったかのように、言葉を浴びせた。 ( ・∀・)「―――違ったアクションを起こす際に、予告するような事言ってどうするんだ? 心理操作を狙わないのなら、戦闘に言葉は必要ない―――君が一番分かっていると思っていたがね」 ミ#゚Д゚彡「ぐ……き、貴様ぁぁあぁ……!!」 震えながらも、彼は立ち上がる。 しかし既に限界だったのか、白目を剥いて倒れ込んだ。 四肢が普通の腕に戻った事からも、彼が意識を失った事が分かった。 それに伴うかのように、舞っていた羽根がゆっくりと地面に落ちていく。 全ての羽根が舞うのを辞めた時。 立っていたのは―――戦闘が出来るのはブーンとドクオ、そしてモララーの三人だけとなっていた。 ('A`)「……ブーン。むやみに突っ込むんじゃねぇぞ。戦闘可能なのは、俺とお前だけだ」 ( ゚ω゚)「分かってるお」 ('A`)「本当に分かっているんだか」 溜め息を吐きつつも、ドクオの眼はモララーから離れない。 微細な筋肉の動きでさえ、その瞳は捕らえている。 だが、肝心のモララーは――― ( ・∀・)「……来たか、クソ兄貴」 部屋の入り口の方を見て、眼を細めていた。 何を言っているのかと、ドクオは眉根を寄せる。 しかし部屋のそちらを見る事は出来ない。油断は、見せられない。 その代わり―――その耳に、新たな音が飛び込んだ。 ('A`)「……足音?」 ( ゚ω゚)「お?」 ('A`)「……何かが、すごい勢いで近付いてきてるな」 その声に弾かれたかのように、ハインが口角を吊り上げる。 そしてゆっくりと壁から背中を剥がし、巨大な鋏を手に取った。 从 ゚∀从「来たね」 その声と、同時――― 青い槍を携えた人間が、その場に足を踏み入れた。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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