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177 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:56:47.96 ID:T9v5rC2I0
--------------------------------------------------------------------------------------------------- ( ^ω^)『ここは…どこだお?』 内藤ホライゾンは真っ白い空間に一人立っていた。 壁もなく天井もなく床もない。 ただ本当に虚無の空間。 ( ;^ω^)『誰か…誰かいませんかお?』 内藤は小さく声にしながら、とりあえず足を前に進める。 歩いてもどこにも辿り着けそうになかったが、それでも何となく歩き出す。 ( ;^ω^)『……』 歩いても歩いても何も見えてこない。 内藤の緊張は頂点に達した。 ( ;^ω^)『誰かー!! 聞こえたら返事してくれお!!』 ついに大声を張り上げる。 その時だった。 ーーー内藤。わたしは今ものすごく怒っている。 彼が最も聞きたかった女性の声が空間に響きわたった。 180 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:02:00.26 ID:sGLbyoZr0 ( ゚ω゚)『…!! どこだお!! どこにいるんだお!!』 内藤は辺りを見回す。 だがそこにあるのは一面の白。 彼女の姿はどこにも見えない。 ーーーわたしが何度も呼びかけていると言うのに全く気付かないとはな。 ( ゚ω゚)『一目でいい!! 一目でいいから姿を見せてくれお!!』 ーーー…それは出来ない。 ( ゚ω゚)『そんな…どうして…』 内藤はがっくりと両膝をつく。 ( ;ω;)『あなたを失ったから…僕は道標【みちしるべ】を失ってしまったから… …どうやって歩いていけばいいのか分からなくなってしまったんだお。 お願いだお…顔を見せてくれだお…僕を助けて…。 僕を導いてくださいだお…』 項垂れた内藤の瞳から大量の涙が零れ落ちた。 181 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:05:42.83 ID:sGLbyoZr0 ーーーお前はなにを言っているんだ? どことなく呆れ返った声が空間に響く。 ーーーわたしが何度声をかけても耳を閉ざし、目を背けていたのはお前の方ではないか。 ( ゚ω゚)『目を背けていたのは…僕?』 ーーーそうだ。 なおも声は続ける。 ーーーわたしはお前の道標【みちしるべ】だ。 昔も。今も。これからもずっと。 お前が最後にわたしに言ってくれた言葉だ。忘れたとは言わせんぞ。 ( ゚ω゚)『…これからも…ずっと…』 ーーー休暇は終わりだ、内藤ホライゾン。立ち上がれ。 その言葉と共に内藤の体は白い光に包まれる。 冷たいけど…暖かい光に。 ーーーもし、お前が道に迷った時。また来るといい。 わたしはいつでもここにいる。 ーーーわたしはいつでもここで君を照らしている。 185 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:10:53.42 ID:sGLbyoZr0 --------------------------------------------------------------------------------------------------- ( ゚ω゚)『ま、待って!!』 そう叫んで彼は跳ね起きた。 目に入る風景は白い空間ではなく、散乱した彼の部屋。 すぐ横では彼の恋人が寝息を立てている。 一体どれだけの時間抱き合い、寝ていたのだろう。 時計を見ると5時間かもしれないし、29時間かもしれない。 とにかく彼は羽化を待つ蛹の様に眠り続けた。 部屋の片隅でうっすらと月明かりに輝く何かを見つけて ( ^ω^)『…なんだろう』 彼は布団を抜け出した。 そこにあった物。 唯一被害を免れた彼の包丁。 冷たく暖かい輝きをした彼の愛刀。 一刀斎虎鉄。 内藤はそれを拾い上げ、初めて出合った時の様にただ見つめた。 188 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:14:42.07 ID:sGLbyoZr0 ξ゚△゚)ξ『内藤…どうしたの?』 そんな彼の背後に歩み寄って来たのはツンだ。 まるでローブのように毛布を体に巻きつけている。 ( ^ω^)『…ツン、すまなかったお。大丈夫かお?』 内藤はいつもと同じ笑顔をツンに向ける。 ξ////)ξ『だ、大丈夫よ!! でもあんた準備も出来てないのに何度も入れるから… ヒリヒリして歩きづらいッたらないわ』 ( ^ω^)『ツン…僕は道標【みちしるべ】を見つけたお』 疲れて足を止める事もあるだろう。 悩んで下を向く時もあるだろう。 でも道標【みちしるべ】は消えていない。 この光がある限り。 僕はどこまでも歩いて行ける。 僕はいつまでも走り続けられる。 僕は… 僕は料理人として生きていく。 ( ^ω^)『行こう、ツン。僕にはやらなくちゃいけない事があるはずだお』 恋人をやさしく抱きしめ、内藤は言った。 190 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:17:00.44 ID:sGLbyoZr0 臨時休業明け初日。 バーボンハウスの空気は最悪と言えた。 バースペースに籠城する料理長を筆頭に、 事ある毎に物を蹴り飛ばす者。 無口なランナー。 まるで集中力のない鍋場責任者と、 今にも泣き出しそうなウェイトレス。 …葬儀会場かと思うような重い空気。 理由を聞いた常連客は美しいバーテンダーの早すぎる死に肩を落とす。 活気のない中華料理店で誰が食事を楽しみたいと思うだろうか? ( ,,゚Д゚)『…少し早いが…今日は店を閉めるぞ』 ギコの言葉に一同帰り支度を始める。 その時だった。 内藤の形をした風がツンをつれて飛び込んで来たのは。 ( ^ω^)『…みんな…なにをやっているんだお?』 ( ,,゚Д゚)『…見りゃ分かるだろ。帰り支度だ』 194 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:18:42.01 ID:sGLbyoZr0 違う!! 内藤は激しく首を横に振る。 ( ^ω^)『これじゃ…こんなんじゃ…クーさんが愛したバーボンハウスじゃないお!!』 ( ,,゚Д゚)『…!! 貴様に何が分かる!!』 ギコが内藤に詰め寄る。 ( ,,゚Д゚)『クーは…あいつは死んじまったんだ!! 俺は…俺達は…誰か一人抜けてもやっていけない!! そんな関係だったんだ!! あいつがいない店で…昔のように出来るものか!!』 いつの間にか、2人の周りにはスタッフが輪を作り取り囲んでいた。 ( ^ω^)『それが…それが違うって言ってるんだお!!』 ( ,,゚Д゚)『…なんだと貴様』 ( ^ω^)『ここにいないのはみんな…みんなの心がここにいないんだお!! クーさんはここにいるのに…!!』 内藤は自らの胸に手の平を押し当て叫ぶ。 『光は…僕達の中で消えていない…!! クーさんは…クーさんは僕達の中にいるんだお…!!』
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Feb 19, 2007 04:39:18 PM
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