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LOYAL STRAIT FLASH ♪

三十八章二

78 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:33:32.77 ID:GmLdXcG/0
   
自分が扱えるのは、強化された視覚と聴覚、左腕。
二挺の銃と、それらの新しい機能のみ。
それらをどう扱えば、この窮地から逃れられる。

答えは出ない。焦燥よりも苛立ちに、拳が軋んだ。
早く、答えを出さねば。自分は、ここで死ぬわけにはいかないのだ。
あいつらを、護らねば―――!


爆発しそうになる焦燥を抑えつけながら思考を練り上げる―――だが、その時。
ミンナの身体が、一際大きく、揺らいだ。


( д )「私は……憎んでいるんだ」


(# д )「私は……憎んでいるんだ!!
     人間を! ビロードを!! くだらないこの世界を!!」


(# д )「憎んでいない筈がない!! 憎んでいるから私は戦ってきたんだ!!
     憎んできたから、あの苦しい時期を乗り越えられたんだ!! 憎んできたから、“管理人”に入ったんだ!!
     私はこの戦いに勝って、奴らを殺さねばならないんだ! 邪魔者は殺す! 何者でも!!」

(;'A`)「!!」

空気が揺れる。
とうとう、時が来てしまった。
答えは未だ、出ていない。


80 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:36:24.84 ID:GmLdXcG/0

しかし時は、答えが出るまで待ってはくれない。
与えられた時間は過ぎた―――

ドクオを囲む無数の得物が、動き出した。

(;'A`)「ク、ソッ……!!」

一瞬ごとに、世界が変わって行く。
一瞬ごとに、死が近付いてくる。

やけに遅く感じる空間の中、“死”だけが確実に近寄って来る。

(; A )「俺は……こんなところで……!!」

思考は茫として、どこか遅々としたまま揺れる。
その中―――己の中の熱い何かだけが、急激に加速していった。


81 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:37:28.62 ID:GmLdXcG/0
   
(# A )「終わるわけには―――いかないんだよ!!」

その熱さは、一瞬で最高点まで達した。
その瞬間。


どくん、と鼓動が強く打った。

そして、左腕に鋭い痛みが走ったかと思うと―――そこで“力”と異音が弾ける。
左腕が、更なる異形へと変化を始めていた。

感覚は冴え渡り、全身に力が満ちる。痛みさえ緩和され、力に変わった。
襲い来る死の半球。それを構成する得物の一つ一つさえ、捉えられる。

両手は自然に持ち上がり、二挺をそれぞれ、得物にポイント。
そしてその二挺は、喜々として銃弾を吐き出した。


84 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:40:39.23 ID:GmLdXcG/0
   
(# д )「があああぁああぁあぁっ!!」

“力”を全力で操って、一気に半球を凝縮させる。
逃れられるはずもない、まさに必殺の決め手だった。


その筈だった。


連続で鳴り響く、壮絶な銃声と金属音。
何事かと眼を剥けば―――凝縮させた筈の半球が崩壊していくのが見えた。

(#゚д゚ )「!? 何っ!?」

崩壊していく半球の中、銃弾と紅をばら撒きながら踊るのは、ドクオ。
ミンナはその光景に驚愕し―――そして、それが笑みに変わった。

彼の眼に映ったのは、ドクオの左腕。
変化部位が肩まで広がり、禍々しいまでの異形となったそれは、まさに悪魔のそれだった。

(#゚∀゚ )「更に“解放”したか!! ドクオ!!」

その頃には半球はほぼ崩壊し―――そしてそこから、ドクオが飛び出した。
ミンナは得物を、走り来るドクオに撃ち放つ。
しかしそれらは悉く二挺の吐き出した銃弾に喰われ、ドクオを捉える事はなかった。


86 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:43:26.87 ID:GmLdXcG/0
   
(#゚A゚)「おぉおぉおぉぉおぉおぉ!!」

(#゚д゚ )「あぁあぁあああぁああぁ!!」

ドクオの右腕が跳ね上がり、振るわれるミンナの右手が風を切る。

そして、次の瞬間。
ぴたりと、その空間の全てが停止した。

(#゚A゚)「はぁー……・! はっ! はっ……! っはぁー……!」

(#゚д゚ )「…………………」

二人の得物がそれぞれ、眼の前の相手の動きを止めていた。

ドクオの右手に握られるクロは、その銃口をミンナの額にポイントしている。
ミンナの右手に持たれる、恐ろしく鋭い金属製のカードは、ドクオの首を捉える寸前で停止していた。

   「「 動けば殺す 」」

二人の声が重なり、そして押し殺した笑い声が重なった。
二人は、死を目の前にして、笑っていた。

(#゚д゚ )「その左腕……更なる解放をしたか、ドクオ」

言って、ドクオの左腕に眼をやった。
近くで見ると、分かる。その悪魔の腕の、余りの禍々しさが。


88 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:46:28.90 ID:GmLdXcG/0
   
色は闇色、形状は悪魔。
全体がやけに骨張り、そしてそれを補佐するかのように筋肉が隆起している。
しかし肩と肘からは、巨大化・尖鋭化した骨が皮膚を突き破り、角のように飛び出していた。

腕全体をミッドナイトブルーの血管が網の目のように這い、不気味に脈動している。
指は奇妙なほど長く伸び、爪もまた長く、そして鋭く伸びていた。
そして何より―――手の甲に存在する黄色の瞳が、爛と輝いていた。

見れば見るほど不気味で、禍々しい腕である。

(#゚A゚)「知らねぇな。何だそれは」

(#゚д゚ )「知らないなら知らないでも良いが―――。
     言うなれば、お前のその腕。そして、感覚だ」

(#゚A゚)「あぁ、何やらやけに冴えてるが、それがどうした?」

(#゚д゚ )「考えれば分かるだろう。
     異能者の力を、可能な限りまで解放する事。それが更なる解放だ」

(#゚A゚)「俺が今、それをしてると? なるほどな。どうでも良い」

(#゚д゚ )「どうでも良い?」

(#゚A゚)「てめぇを潰せて仲間を護れりゃそれで良いんだよ、俺は。
    更なる解放? んなもん、知ったこっちゃねぇな」


90 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:47:35.02 ID:GmLdXcG/0

(#゚A゚)「腕がやたら気持ち悪くなろうが、感覚が鋭くなろうが、そこに意味はない。
    てめぇを潰せて初めて、意味を持つ。だから、まだまだ。もっとだ。
    もっと強く、もっともっともっと強く―――てめぇを潰せるだけの力を。仲間を護れるだけの力を!!」

(#゚д゚ )「ッ!!」

躊躇はなかった。
眉間に押しつけられていたクロは、当然であるかの如く、火を噴いた。

ミンナは寸前で、頭を横にズラす。
放たれた銃弾はミンナの右耳を吹き飛ばし、血飛沫を巻き上げて背後へと抜けた。

同時、バックステップしたドクオの首から血が踊る。
ミンナはドクオが銃を撃ったその瞬間に、手からカードを飛ばしていたのだ。
しかしカードはドクオの首を掠り、薄く皮を裂いていくのみ。

二人は同時に大きく離れ、走りながらお互いに得物をぶつけ合う。
停滞はない。そこにあるのは、先の見えぬ加速のみ。


91 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:50:59.43 ID:GmLdXcG/0
 
加速。
ドクオの銃弾とミンナの得物は、互いに互いを潰し合う。

加速。
いくつかの銃弾や得物が抜け、互いの身体の各所が血を噴いた。
遅滞はない。加速していく。銃弾も、得物も、空間も、思考さえも。

加速。
“力”の使い過ぎで、ミンナのこめかみの血管が爆ぜて血煙が舞った。
しかしドクオにも、鋭い頭痛が走る。―――遅滞は、ない。

加速。
足音。銃声。金属音。咆哮。全てが重なって、途切れぬ一つの音となった。
音はどんどんと大きくなって―――

(#゚A゚)「!!」

(#゚д゚ )「!?」

同時。二人の足首が鈍く叫び、二人は床に肩から突っ込んだ。
ミンナの足首には銃弾が食い込み、ドクオの足首にはサイコロが食い込んでいる。

しかし、未だ止まらない。
床に倒れ込んだ状態から、ドクオはミンナに銃を向け、ミンナはドクオに得物を向ける。

そしてようやく、停滞した。
しかし、荒い呼吸、強く打つ鼓動、滴る血液―――音だけが停止せずに、戦闘の続行を告げていた。


95 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:53:27.88 ID:GmLdXcG/0
   
(#゚д゚ )「はぁーっ……随分と、強くなっているじゃないか。
     面白い……はぁっ……やはりお前は面白いぞ、ドクオ。
     私の邪魔者として、最高の敵だ! 殺すのがこんなにも楽しい人間は、これまでにお前だけだ!」

(#゚A゚)「息を切らしながら……っはぁー……言う事じゃねぇな。
    てめぇはやっぱり気にいらねぇ……俺の最期の敵にはなれねぇな、お前は。
    俺はやっぱりここで死ぬわけにはいかねぇよ。てめぇを殺して、俺は生きる。生きて、護る」

(#゚д゚ )「私の台詞だ、それは。お前を殺して、私は生きる。生きて、殺す。
     自分の存在を証明する為に。自分の生きている意味を、無理矢理にでも確立する為に。
     ……お前には分からないだろうな、この気持ちが」

(#゚A゚)「あぁ、分からねぇな。分かりたくもねぇよ、そんな気持ちなんざ。
    俺は生きる意味の為に、戦ってんだ。生きる意味を探す為に戦ってるクズとは違う」

(#゚д゚ )「生きる意味の為に戦う? お前は何を言っている」

(#゚A゚)「そのまんまだよ馬鹿。生きる意味―――大切なモノと一緒に在る為に、俺は戦うってんだ。
    そういうもんがてめぇになければ、まぁ、分かる筈もない言葉だがな」

(#゚д゚ )「……大切なモノ……か。
    ふん。私にも、あったさ。なくなってしまったがな。
    大切だったモノは私から逃げ出して、そして全てを奪ってしまったよ」

(#゚A゚)「てめぇがそれだけの存在だったって事だろ。
    その『大切なモノ』から命を奪われなかっただけ、ありがたいと思ってろよ」

(#゚д゚ )「あぁ、感謝しているよ。命があるおかげで、お前と殺し合えるのだからな。
    そうだ、お前を殺したらそいつを殺せるんだ。楽しい事が続いてしまうな」


97 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:56:23.95 ID:GmLdXcG/0
   
(#゚A゚)「てめぇは死んで、何も果たせずに逝くんだ。哀しい事続きだろ」

(#゚д゚ )「それは殺し合いの末、死神が決めてくれるさ。
     さぁ、ドクオ! 殺し合おうじゃないか!!」

(#゚A゚)「あぁ、喜んで」

立ち上がろうと、足に力を込めようとして―――
しかし、ふいに力を抜いた。

(#゚A゚)「そうだ。おい、ミンナ。言い忘れたことがあった。
    どうせこの後は、ゆっくりと喋る事なんざ出来ないから、今の内に言っておく」

(#゚д゚ )「何だ?」

(#゚A゚)「伝言。てめぇに伝えてほしいって言われてる事がある」

(#゚д゚ )「伝言? 誰からだ? 何と?」

(#゚A゚)「ビロードからだよ。知ってんだろ?
    てめぇが異能者として糾弾される切欠を作った、あの男だ」

(#゚д゚ )「!?」

ミンナの瞳が見開かれ、そして揺れる。
笑みの形に歪んでいた唇は力なく開き、荒かった呼吸は細くなって、今にも止まりそうだ。


99 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 20:59:26.86 ID:GmLdXcG/0
   
( ゚д゚ )「ビロード……だと?」

(#゚A゚)「あぁ。『助けてくれたのに、ゴメン』だとさ」

( ゚д゚ )「…………………」

(#゚A゚)「あいつは今、異能者への考え方を改めて、警察をやってる。
    異能者の起こす事件に当たって、出来るだけ異能者を救おうとしていた」

( ゚д゚ )「……そうか……」

(#゚A゚)「お前の事を、後悔していた。心の底から、申し訳ないと思っていたぜ。アイツは。
    だから将来は、社会の異能者への見方を変えたいんだとよ。お前みたいな奴を出さない為に。
    ……はン。殊勝だよな、馬鹿みてぇに」

( ゚д゚ )「……そうか」

頷いて、ミンナは一つ、溜息を吐いた。
そして、口元が歪む。笑みの形に。
細かった呼吸は荒くなり、瞳はドクオを捉える。

ただし―――瞳は揺れず、不安定な雰囲気も彼から消えた。

(#゚A゚)「―――それだけだ」

(#゚д゚ )「そうか。ならば」


101 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 21:02:32.21 ID:GmLdXcG/0
   

(#゚A゚)「あぁ。始めよう」


同時。二人は足首の傷に、指を捩じ込んだ。
燃え上がるような痛みを無視し、指を更に深くまで潜り込ませていく。

(#゚A゚)「ぐっ……うあぁ!!」

(#゚д゚ )「がああああああっ!!」

咆哮。それと同時に、傷口から互いの得物が取り出された。
血に濡れたサイコロと銃弾が床を跳ね、軽い金属音が二つ。

音が響く頃には、二人は既に立ち上がっている。
そして、ひびが入っているであろう足を酷使して、またも得物の撃ち合いを続けた。

しかしもう、互いに攻撃の精度が落ちている。
全身には新たな傷がどんどんと生まれ、また、攻撃の速度も時間に比例して落ちて行った。

(#゚A゚)「チッ……」

このままでは、どうしようもない。
何か、動かねば。決定打になる攻撃を、せねばならない。


103 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 21:05:22.47 ID:GmLdXcG/0
   
―――思考して、ドクオは

(#゚A゚)「おおぉおおおおぉおおおおおぉおおっ!!」

咆哮。そして、地を蹴った。
接近していく。
より巨大になった左腕をやはり盾にして、四方八方からの攻撃を銃で撃ち落として。

(#゚д゚ )「させるか!!」

攻撃が、激化する。
しかし強化された視覚と聴覚は、襲い来る得物の全てを補足していた。

黒と銀の銃弾は鮮やかに得物を撃ち落とし、ドクオはミンナに到達する。

ミンナは咄嗟に壁を作り上げ―――ドクオは左腕で、その壁を薙ぎ払う。


壁は呆気なく破壊され―――そして


(#゚A゚)「ゲームオーバー。終わりだな、ミンナ」

(#゚д゚ )「……・そうみたいだな」

ドクオの右手のクロが、ミンナの眉間に押し当てられた。
引き金は限界近くまで引き絞ってあり、撃つのに一瞬とかからない。


107 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 21:08:21.70 ID:GmLdXcG/0
   
(#゚A゚)「お前には死んでもらう……が、一つ答えろ」

(#゚д゚ )「何だ?」

(#゚A゚)「最後。何故、力を抜いた?」

(#゚д゚ )「…………………」

(#゚A゚)「壁をブッ壊した、あの瞬間。俺に攻撃が届いた筈だ。
    しかしお前はその攻撃をしなかった―――
    いや、壁を作り出したあの瞬間から、お前は戦いを放棄していた」

(#゚д゚ )「…………………」

(#゚A゚)「答えろ」

瞬間。
ミンナの身体から、ふっと力が抜けた。

まるで、縛られていた何かから解放されたかのように。

( ゚д゚ )「……何だかもう、どうでも良くなってしまってな。
    張ってた意地が、切れてしまったようだ」

('A`)「あ?」

( ゚д゚ )「私はな、ドクオ。どうやら、人間を憎んでいなかったようだよ。
    ただただ、くだらない意地を張っていただけのようだ。
    ……だから私は、ビロードの言葉を聞いて、どうでも良くなってしまったのさ」


110 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 21:11:22.95 ID:GmLdXcG/0
   
( ゚д゚ )「想えば私は、その言葉を待っていただけなのかもしれないな。
    いや―――私は、ビロードを待っていたのかもしれない。
    それとも、寂しかっただけなのかもしれないな」

('A`)「……何なんだよ。お前は何を言っている」

( ゚д゚ )「分からないさ。ただ言えるのは……私は今、良い気分だよ。
    敗けたというのに、おかしなものだな。それとも、敗けたからこそ、なのだろうか。
    解放されたような、清々しい気分だ。心なしか、身体すら軽い」

( ゚д゚ )「礼を言う、ドクオ。お前のおかげで、私は楽になれた」

('A`)「いらねぇよ。俺は、お前が邪魔だから倒しただけだ。
   てめぇを楽にしてやろうだとか、そんな事を考えてたわけじゃない。
   ……礼を言う相手は俺じゃねぇだろ、ミンナ」

( ゚д゚ )「あぁ。……じゃあ、そうだな。ビロードに。
    帰ったら、ビロードに伝えてくれ。『ありがとう』とな」

('A`)「チッ……めんどくせぇな」

( ゚д゚ )「良いじゃないか。一生の頼みだ」

('A`)「……仕方ねぇな。あいよ。分かった。じゃあ―――」

クロを握る右手。
その親指が、銃把の上部にある小さな突起を押し込む。

何か空気が抜けるような、微細な音。


112 : ◆tAdHw/rYVY :2008/03/29(土) 21:13:26.21 ID:GmLdXcG/0
   
( ゚д゚ )「あぁ、さよならだな」

('A`)「そういう事だ。じゃあな。……良い夢、見ろよ」

そして引き金が、引き絞られた。

響く銃声は、先ほどまでとは比較にならない爆音。
銃口から飛び出した銃弾は―――

( д )「――――――ッ」

ミンナの眉間に黒点を穿ち、脳漿と大量の血液と共に、後頭部から抜けた。
ミンナは上半身を反らすようにして吹き飛び、床で跳ねる。

不明瞭な呻きが喉から溢れ出て、手足が死の痙攣に震えた。
しかしそれもやがて治まり……ひゅ、と静かな呼気が漏れる。

もう、動かなかった。
もう、動かない。

ドクオは動きを止めた彼を見下ろして、どこかバツが悪そうに言った。

('A`)「……良い顔で死んでやがんな」

ミンナの表情は、どこまでも安らかなそれであった。






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