第一話3 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:53:40.31 ID:rBNb9hRU0ある都市がある。 高層ビルが立ち並び、都会というイメージがぴったりな都市。 その高く並ぶビルの中に一際大きな建物があった。 看板にはこう書かれている。 武力会社 『フィーデルト・コーポレーション』 個人の正義は我々が代弁します。 社長室。 簡素な作りであるが高級感を同時に醸し出す空間。 その最奥。 机にしては巨大な物体。 傍らにある社長椅子に、ある人物が座っていた。 ( ・∀・)「…………」 モララー。 フィーデルト・コーポレーション(=FC社)の若き社長だ。 5 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:54:58.20 ID:rBNb9hRU0 彼は今、とにかく暇であった。 午前中は 『ダンボールに隠れて一階から最上階まで社員に見付からずに移動する』ゲーム に熱中して退屈は忘れられたものの 午後は何も思いつかず、ただただ座ってテレビを見ていた。 ( ・∀・)「暇だね、これは」 今日何度目の台詞だろうか。 モララーの傍らに静かに立っているジェイル(修理中なので上半身だけ)は思う。 爪゚ -゚)「御主人様、暇なのなら御仕事をすれば良いかと」 ( ・∀・)「今日はクリスマスだよ、ジェイル君? 皆が幸せな時に、何故に私が仕事をしなければならないのだね?」 爪゚ -゚)「社長ですから」 ( ・∀・)「ははは、冗談を」 爪゚ -゚)(……冗談なのか) 会話が途切れる。 またもや暇になったのか、モララーはチャンネルを適当に変えていった。 6 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:56:07.95 ID:rBNb9hRU0 と、その時だ。 ( ・∀・)「ん?」 あるチャンネルでリモコンを持つ手が止まる。 (V) ∧_∧(V) ヽ(^ヮ^)ノ 『はい、こちら『都市ニューソク』の中央通りです』 女性(?)リポーターが映っている。 その背景には、少々の見覚えがある『都市ニューソク』。 蟹型のリポーターは更に言葉を続けた。 (V) ∧_∧(V) ヽ(^ヮ^)ノ 『えぇ、こちらもクリスマス一色ですね! 何処も彼処もクリスマス一色ですね!』 ( ・∀・)「ふむ……」 (V) ∧_∧(V) ヽ(^ヮ^)ノ 『あ、見て下さい! サンタクロースです!』 声と共にカメラが動く。 その視点の先には、赤い衣装を身につけ大きな白い袋を背に負う男。 紛れも無くサンタクロースだ。 突如として現われたその男は、いやらしい笑みと共に子供達の方向へ歩き出した。 それに気付いた子供達が嬉しそうに走り寄る。 対して赤い男は、やはりいやらしい笑みと共に袋の中のプレゼントを配っていく。 そんなクリスマス以外に例え様のない光景。 7 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:57:17.96 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「成程……夢を配る、ね」 モララーがテレビを見つつ、顎に手をやった。 ( ・∀・)「ジェイル君、私の会社の基本営業内容は何かね?」 爪゚ -゚)「軍隊・警察などからの要請に対して武力・兵力を貸し出すことかと。 それに加えて最近は、新たな武器・防具・兵器を開発しております」 ( ・∀・)「うむ、そうだね」 椅子を回す。 背後のジェイルの方へと向いた彼の目は輝いていた。 ( ・∀・)「ならば、今日くらいは人に銃弾ではなく夢を与えるのも良いとは思わないかね?」 爪゚ -゚)「いえ、ですから御仕事は――」 ( ・∀・)「夢を与えるのが今日の私の仕事だよ」 何ともぶっ飛んだ理論である。 あまり主に強く言えないジェイルは、諦めて沈黙に入った。 それを見て満足したのか、モララーは側にある社内用電話に手を掛ける。 8 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:58:22.77 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「私だ、私。 詐欺ではないよ、はははははは。 仕事? あぁ、私は今から重要な仕事をするのでね。 ちょっと衣装を準備してもらいたい」 爪゚ -゚)(……衣装?) ( ・∀・)「クリスマスに着る、あの赤い衣装だ。 髭があると嬉しいね。 あとプレゼントを準備したまえ……あぁ、適当で構わん。 十分後に取りに行くから任せたよ」 受話器を置く。 そのまま勢いよく立ち上がったモララーの表情は、紛れも無く輝いていた。 ( ・∀・)「今日の私はサンタクロースだ!」 9 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 20:59:31.77 ID:rBNb9hRU0 夜天。 星が輝く空。 天気予報では雪が降るらしいが、未だその気配は無い。 都市ニューソク。 それがこの土地の名だ。 FC社の在る都市の隣に位置している。 ( ・∀・)「到着だ」 赤い衣装に身を包んだ彼は、人気の無い道路のど真ん中で満足そうに頷いた。 頼んだ髭は残念ながら無かったらしい。 傍らにはソリ。 そしてその先には―― 爪゚ -゚)「何故、私まで……」 上半身だけジェイルだ。 その下半身は見事な四本足。 つまりトナカイ……型の機械である。 11 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:00:46.23 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「やはりサンタクロースと言えばトナカイ&ソリだろう? 本物を用意しても良かったのだが あまり個人の行動に会社の金を使うなと社員に怒られていてね」 爪゚ -゚)「そうですか」 (このトナカイ型の脚部に、金は掛からなかったのだろうか……?) ( ・∀・)「さて、行こうか……皆に夢を配るために!」 ソリに飛び乗る。 その後部には大きな白い袋。 夢が詰まった、言うなれば夢袋だ。 それに視線を向け、満足そうに頷いた彼は手綱を握る。 ( ・∀・)「出発!」 爪゚ -゚)「把握」 シャンシャン、ズルズル ズルズル、シャンシャン 言うまでもないが飛ぶわけが無い。 実にのんびりと地面を削りながら、若きサンタクロースは移動を始めた。 12 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:01:59.27 ID:rBNb9hRU0 ある小さなアパート。 まずサンタクロースが向かった場所はそこだ。 情報によれば、ターゲットは三階部分にいるはず。 ( ・∀・)「っ!」 鉤爪付きのロープを投げる。 金属音が響き、三階のベランダへと引っかかった。 ( ・∀・)「ではすぐに帰ってくるからね」 爪゚ -゚)「警察に見付かる前にお願いします」 ははは、と軽快な笑いを残して登り始めるサンタクロース。 ( ・∀・)「ふ、ふふ……こういう遊びは小学生以来かね……っ!」 自らの体重と夢が詰まった袋を支えながら、順調に登って行く。 その姿は間違ってもサンタクロースを髣髴とはさせなかった。 何とか三階へ辿り着く泥棒、もしくはサンタ。 明かりがついてた。 気配を消して部屋の内部を伺う。 13 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:03:36.59 ID:rBNb9hRU0 ('A`)「あー、やっぱクリスマス特番っつっても微妙だな」 ドクオ。 風呂上りなのか、タンクトップ一枚でリビングに座っている。 手にはジュースとスナック菓子。 どうやら彼は彼なりにクリスマスを楽しんでいる様子である。 寝ていない。 それがモララーを悩ませた。 サンタクロースとは、寝ている子供の枕元にプレゼントを置くものだ。 朝になってそれに気付いた時の感動は子供の頃にしか味わえない。 少なくともモララーと作者は、その理論を絶対だと思っている。 ( ・∀・)(まったく……子供は早く寝ないと駄目だろう?) 高校生相手にそれを言っても無駄である。 とりあえず勝手に侵入して、彼の寝床にプレゼントを置いておこうかと考えた時。 ('A`)「あーあ……ツンは誘いに乗ってくれなかったし……。 今年も一人ですかー、つーまーんーねー」 ( ・∀・)(…………) ('A`)「サンタクロースはいねぇのかぁ? もしいるんだったら、俺に女という幸せを下さいー」 気だるそうに呟くドクオ。 むしろ家でそんな独り言を呟いている光景は、ある意味危険なのだが モララーにはそんなことどうでもよかった。 15 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:05:06.34 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)(女という幸せ、かね……) 深い問いだ、と思う。 そもそも女とは統一されているわけではない。 性格の良いのもいれば、悪いのもいる。 外見だって人それぞれで、しかも年齢によっても変動するだろう。 ( ・∀・)(ドクオ君……君は意外と哲学者なのだね) うんうん、と頷くモララー。 そして背後の袋からゴソゴソとプレゼントと取り出した。 『つよきす』 パッケージにはそう表示されていた。 ( ・∀・)(哲学者である君は頭が硬いのだろう。 だからこういう軟派なゲームをやってみるのも一興。 それに女の子がたくさん出てくるから一石二鳥だと思うよ?) さて、問題はどうやって渡すか。 このまま侵入して置いておくのもサンタらしいとは思うが 相手はあのドクオだ。 彼が普通の置き方で満足するだろうか? ( ・∀・)(否……ッ!!) 彼は望んでいるはずだ。 非凡という現象を。 16 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:06:34.58 ID:rBNb9hRU0 思うや否や行動。 つよきすを袋に直して 引っ掛けてあるロープを掴み、一直線に地面へと降りる。 爪゚ -゚)「終わりましたか?」 ( ・∀・)「これからが始まりだよ」 先ほどのつよきすを取り出す。 一枚の紙を用意し、『めりーくりすます』と適当に書いた。 それを張ったプレゼントを手に持ち、思い切り振りかぶる。 ( ・∀・)「ふっ!!」 短い気合の声と共に投擲。 それは軽い放物線を描きながら三階部へと飛んで行き―― がっしゃーん 「おぉわ!? な、何だ!?」 ガラスをぶち破る音。 そしてドクオと思われる男の悲鳴。 20 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:08:02.37 ID:rBNb9hRU0 それを聞いたモララーは満足そうに ( ・∀・)「ミッション完了……さっさと逃げよう」 爪゚ -゚)「……了解」 シャンシャン、ズリズリ ズリズリ、シャンシャン 21 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:09:14.73 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「次はここかね」 爪゚ -゚)「はい」 逃亡した二人は違うアパートの前にいた。 先ほどとは違い、小奇麗な建物だ。 どうやら築数年ほどの新しいアパートらしい。 爪゚ -゚)「情報によれば、このアパートの201号室にギコ様としぃ様が……」 ( ・∀・)「いつの間に同棲していたのかね、あの男は。 この調子ならすぐにでも籍を入れそうで困る」 爪゚ -゚)(何故に困る?) ( ・∀・)「さぁて、例外に漏れずここにも嫌がらせ――いや、プレゼントを配らねば」 爪゚ -゚)「今回はどうやって?」 ( ・∀・)「正面から堂々と行こうか。 ギコ君相手にコソコソする必要もあるまい」 22 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:10:30.82 ID:rBNb9hRU0 歩き出す。 階段を上り、201号室の扉の前へ。 インターホンをポチッとな。 ぴんぽーん 間抜けな音が響く。 そして間も無く扉が開いた。 ( ,,゚Д゚)「はい、どちら様――」 ( ・∀・)「サンタクロースだよ!!」 ばたん ( ・∀・)「あ、あぁ! 何故に扉を閉めるのだね!? 私だよ、わ・た・し!!」 『帰れ』 ( ・∀・)「ふふふ、私は生憎放置プレイは好きではないのでね?」 『何故、貴様がここにいる?』 ( ・∀・)「そこに夢があるからさ」 『聞いた俺が馬鹿だった。 さっさと帰れ』 23 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:11:41.58 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「釣れないね……ならば私にも策があるよ!」 ごそごそ じゃじゃーん ( ・∀・)「ピッキングセットー」 『犯罪はやめろ』 ( ・∀・)「もはや合意の上だよ? 開けられるものなら開けてみろ……君は私に挑戦しているのだね?」 『頼むから病院逝け』 ( ・∀・)「ははは、私は子供の頃から風邪知らずでね?」 『精神病院だ』 ( ・∀・)「もどかしい、もどかしいよ君は! だから私はテンションアップ!」 がちゃがちゃ きゅりきゅり きゅい――――ん!! ががががががぎぎぎががががぎぎぎぎ! 『お、おい! ピッキングの音ではないぞ!?』 ( ・∀・)「当然だ。 ドリルで破壊しようとしているのだから」 24 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:12:40.49 ID:rBNb9hRU0 『しぃ! しぃ! 警察を呼べ!!』 ( ・∀・)「はは、それは困るね。 仕方ない……プレゼントはここに置いておくから、後から回収したまえよ?」 流石に会社の社長がお縄になるわけにはいかない。 モララーはプレゼントの箱を置いて、さっさと逃亡することにした。 爪゚ -゚)「どうでした?」 ( ・∀・)「あの男め……どうしても私を犯罪者にしたいらしい。 いくら私が素晴らし過ぎて嫉妬していたとしても、犯罪者扱いはひどいと思わないかね?」 爪゚ -゚)「はぁ……」 ( ・∀・)「では行こう。 次はもっと難易度が高いよ」 シャンシャン、ズリズリ ズリズリ、シャンシャン …… ………… ……………… 26 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:13:56.33 ID:rBNb9hRU0 ( ,,゚Д゚)「……行ったか」 慎重に扉を開く。 よく見れば、外側のノブが外されかけていた。 その周囲には削ったような傷跡がたっぷりこってり。 ( ,,゚Д゚)「……弁償してもらうぞ、モララー」 憎々しげに呟く。 その脇からしぃが顔を出した。 (*゚ー゚)「あれ? ギコ君、プレゼントがあるよ?」 ( ,,゚Д゚)「気をつけろ、しぃ……爆弾が入っているかもしれん」 (*゚ー゚)「流石にそれはないと思うけど……」 持ち上げる。 大きさの割りには意外と軽かった。 (*゚ー゚)「何が入ってるのかな?」 ( ,,゚Д゚)「慎重に開けるんだ……もしかしたらダイナマイトが敷き詰められているかもしれん」 (;*゚ー゚)「小説の読みすぎじゃないかな……?」 27 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:15:17.43 ID:rBNb9hRU0 開く。 中からは―― (;,,゚Д゚)「……花火?」 (;*゚ー゚)「どう見ても今年の夏の余り物だね……」 どうする? と二人で顔を見合わせた。 (*゚ー゚)「勿体ないし、やっちゃう?」 ( ,,゚Д゚)「ベランダでか? 寒いぞ?」 (*゚ー゚)「大丈夫だよ、花火が暖かいだろうし……ギコ君が隣にいれば大丈夫」 (*,,゚Д゚)「む……わ、解った」 (*゚ー゚)「あー、顔が赤いよ? 照れてる? 可愛いなぁ、もう」 (*,,゚Д゚)「ち、違う! これは、その――寒いからだ!」 二人は花火を片手に、仲良く部屋へと入っていった。 29 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:16:36.84 ID:rBNb9hRU0 爪゚ -゚)「次はここですか」 ( ・∀・)「ふふ、腕が鳴るね?」 二人は巨大な門の目の前にいた。 その奥には巨大な屋敷。 アストクルフ家だ。 ツンとフサギコがここに住んでいるはずである。 爪゚ -゚)「では、インターホンを――」 ( ・∀・)「待ちたまえ!」 ばしっ 爪゚ -゚)「……何ですか」 ( ・∀・)「サンタクロースが堂々とインターホンを押すわけが無いだろう?」 さっきアンタ思い切り押してただろ。 30 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:17:41.86 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「サンタとはクリスマスの到来を告げる者として神話にも残っている。 だから私もそれに習いたいと思っていてね」 ここまでくると、この男の虚言癖も犯罪である。 ( ・∀・)「というわけで、ソリに備え付けた装備が役立つ時が来たようだ」 ごそごそ かちっ、かちっ うぃーん ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ―― 33 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:19:04.59 ID:rBNb9hRU0 ξ゚△゚)ξ「~♪」 ツンは広大なリビングで紅茶を飲んでいた。 片手には雑誌、目の前には適当に集めた菓子類。 ドクオの誘いを断り、彼女は悠々とクリスマスを楽しんでいた。 ξ゚△゚)ξ(まぁ、それほど仲良くないしねぇ……もうちょっと先の話だわ、デートなんて) ずずーっと紅茶を飲みながら考える。 きっとドクオは寂しくクリスマスを過ごしている頃だろう。 しかしこっちも似たようなものである。 バレンタインくらいまでには、もう少し近付いていると良いのだが。 と、そんなことを考えていた時だ。 突如としてリビングの巨大な扉が開かれた。 駆け込んで来るのはフサギコ。 ミ;,,"Д゚彡「も、申し訳ございません、お嬢様! 敵襲なので少々騒がしくなると思います!」 ξ;゚△゚)ξ「え? 敵襲?」 36 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:19:54.38 ID:rBNb9hRU0 脳裏に浮かぶは、一ヶ月ほど前の事だ。 あの時は自分の命も危うかった記憶がある。 ξ゚△゚)ξ「で、敵って……どんな奴ら?」 またアイツらのような残忍な者達だろうか。 ツンはそれを恐れていた。 ミ;,,"Д゚彡「な、何というか……」 珍しくフサギコが言いよどんでいた。 ξ゚△゚)ξ「?」 そしてフサギコは意を決したように言い放つ。 ミ;,,"Д゚彡「えっと……敷地内に侵入して暴れているのは――サンタクロース、です」 39 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:21:08.76 ID:rBNb9hRU0 轟音と共に、それはアストクルフ家の敷地内を暴走する。 ソリだ。 そして上半身人間・下半身獣の半獣っぽい物体。 それを巧みに操るのはソリに乗った―― ( ・∀・)「ははははははは! いやいや、快なりっ!」 サンタクロース。 赤い衣装に身を包んだ男が、敷地内を爆走する。 ソリの背後からは炎が噴き出していた。 ロケットみたいな感じ。 「と、止まれ貴様!」 警備兵が慌てて止めようと走ってくる。 ( ・∀・)「やらせぬよ!」 ぽちっ うぃー、がっしゃん ソリから銃口が生える。 そしてスイッチを押した途端、火を噴いた。 41 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:22:11.29 ID:rBNb9hRU0 ががががががががが 連続した銃声。 それらは一気に警備兵に向かって突撃し―― 「ぐあぁぁぁ!!」 命中。 銃弾を受けた警備兵は、やたら格好良い断末魔を上げながら吹き飛ぶ。スローで。 しかし死んではいなかった。 というか、出血さえなかった。 ( ・∀・)「やはりゴム弾と言えど、銃でぶっ放したらああなるのだね」 爪゚ -゚)「試し撃ちをしないでぶっつけ本番はどうかと思います」 会話を続けながらもソリは走る。 地を削り、たまにある石像を破壊しながらも。 ミ;,,"Д゚彡「モ、モララーさん!?」 玄関から出てきたフサギコが、サンタクロースの正体に気付いて声を上げる。 何という男だろうか。 あの神秘のベールに包まれたサンタの正体を一目見ただけで見破ってしまうとは。 ミ;,,"Д゚彡「いえ、あんなことをするのはモララーさんしかいないでしょう……常識的に考えて」 それもそうか。 42 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:23:21.56 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「やぁやぁフサギコ君! メリー!?」 ミ;,,"Д゚彡「え? ク、クリスマス?」 ( ・∀・)b ビシッ ミ;,,"Д゚彡「は?」 気づけ、フサギコ。 理解しようとしても無駄だということに。 気を取り直して、フサギコは更に声を上げた。 ミ;,,"Д゚彡「あ、あの! 一体何をしているんですか!? っていうか敷地内の破壊した物、ちゃんと弁償して下さいよ!?」 ( ・∀・)「全てはサンタクロースがやったのだ! モララーがやったのではないっ!」 ミ;,,"Д゚彡「最悪だー!!」 どうやら話すだけ無駄らしい。 ようやくそのことに気付いたフサギコは、懐からハンドガンを取り出す。 ミ,,"Д゚彡「止まらないと撃ちますよ!」 ( ・∀・)「ははは、ではその前に用事を済ますとするかね」 手綱を巧みに操作し、フサギコの元へとソリを走らせる。 43 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:24:39.41 ID:rBNb9hRU0 ミ,,"Д゚彡「え? え?」 ( ・∀・)「あれ、ブレーキは無いのかね?」 爪゚ -゚)「車じゃあるまいし」 そのままソリは一直線にフサギコに元へ―― ミ,,"Д゚彡「う、うわぁ!?」 慌てて回避するフサギコ。 ターゲットを見失ったソリはそのまま玄関へと突っ込んでいった。 がっしゃーん どどどどどど ごしかぁん ξ;゚△゚)ξ「な、何!? 何なの!? ドーピングコンソメスープ!?」 突如として屋敷内に突っ込んできたソリを目の当たりにし、ツンは混乱した。 ( ・∀・)「やぁ、メリークリスマス」 鼻血をダラダラと流しながら起き上がるモララー。 その手にはプレゼントが入った箱だ。 46 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:25:48.02 ID:rBNb9hRU0 ξ;゚△゚)ξ「あ、え、えと……どうも」 何気にしっかりと受け取る。 それを満足そうに見て頷いたモララーは ( ・∀・)「さて、次へ行こうか」 爪゚ -゚)「御主人様、上半身と下半身の接続が外れました。 早急に再接続を希望します」 ( ・∀・)「はは、世話が掛かるトナカイだね? だがそれがいい」 かちかち……がしーん! ( ・∀・)「では、また会おう!」 シャンシャン、ズリズリ ズリズリ、シャンシャン 来た時より比べて随分とのんびりした調子で玄関から出て行くソリ。 そして呆然としているフサギコの隣を通り過ぎる時に ( ・∀・)「メリークリスマス」 と、プレゼントを放って寄越す。 47 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:26:43.65 ID:rBNb9hRU0 ミ;,,"Д゚彡「は、はぁ……どうもです」 何が何だか解っていない様子のフサギコは、警戒する様子も無く素直に受け取った。 ( ・∀・)「では、次は『バーボンハウス』かね。 ジェイル君、全速前進!」 爪゚ -゚)「把握」 シャンシャン、ズリズリ ズリズリ、シャンシャン そのままサンタクロースは夜道に消えていった。 数分後。 呆然と固まっていたフサギコとツンが、はっ、と目を覚ました。 ミ;,,"Д゚彡「っていうか――」 #゚△゚)ξ「敷地内の破壊物、弁償しなさいよぉぉぉぉ!!?」 49 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:27:54.68 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「さて、そろそろ『バーボンハウス』だね」 爪゚ -゚)「ショボン様、兄者、弟者様、ジョルジュ様がいらっしゃると思われます」 ( ・∀・)「何故に兄者君が呼び捨てなのかは気にしないでおこう」 シャンシャン、ズリズリ ズリズリ、シャンシャン しばらく夜道を進んでいると (´・ω・`)「やぁ、来たね」 ショボンだ。 いや、彼だけではない。 ( ´_ゝ`)「兄者惨状」 (´<_` )「間違えているぞ、兄者」 ( ゚∀゚)「ふあぁぁぁ……ねみーよ、おい」 バーボンハウスに居候する他の三人もいる。 それらは一列に並んで、道を塞ぐように立っていた。 50 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:29:15.77 ID:rBNb9hRU0 ( ・∀・)「こんばんは。 さてさて、こんな夜にどうしたのかね?」 (´<_` )「それは俺が聞きたい、モララーさん。 何でアンタは味方であるはずの俺達に対してテロ行為など……」 ( ・∀・)「テロ?」 (´・ω・`)「ドクオの家のガラス破壊、ギコさんとしぃさんの家の扉破壊。 そしてついさっき連絡があったフサギコさんとツンさんの家の、敷地内暴走+破壊……。 これはどう説明してくれるんだい?」 ( ・∀・)「あぁ、アレは私ではないよ。 サンタクロースがやったのでは?」 (´<_` )「では、アンタは誰だ?」 ( ・∀・)「サンタクロース」 (;゚∀゚)「今スゲェ矛盾を見た」 gdgdになりそう。 ショボン、何とかしてくれ。 (´・ω・`)「……というわけで、僕達は貴方を止めなければならない。 『バーボンハウス』を護るためにも」 51 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:30:13.61 ID:rBNb9hRU0 ( ´_ゝ`)「っていうか、その背後にあるプレゼント全部寄越せ」 (´<_`;)「サンタ強盗はみっともないぞ、兄者……」 ええい、兄者は黙ってくれ。 お前が喋るとgdgdになるだろう。 ( ´_ゝ`)「ひ、ひどいわ! 『戦い護る』は私が中心に成り立って――」 えいっ ( ´_ 「ぐあぁぁぁ」 (´<_` )「兄者ァァァァァ!!」 ( ・∀・)「これで三人……どうかね? やるかね?」 (;´・ω・`)「くっ! 自分の力で倒したわけじゃないのに何て偉そうなんだ!」 ( ・∀・)「勝てば良いのだよ、勝てば!」 もはや悪役である。 ブラックサンタクロースか。 何かそんなのあったな、確か。 52 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:31:21.22 ID:rBNb9hRU0 ( ゚∀゚)「やるっきゃねぇ……俺達の真の力を見せてやろうぜ!」 (´<_` )「いや、そんなのないから」 (;゚∀゚)「せっかく作者が介入してんだから、そこんとこ御都合主義でいこうぜ!?」 御都合主義怖い御都合主義怖い……。 (´・ω・`)「仕方ない……ここは自分達の力で何とかするしかないよ」 ( ゚∀゚)「しゃーねぇか」 ( ´_ 「あぁ、そうだな」 アンタ、ゴキブリ並みにしぶといな。 ( ・∀・)「さぁ、来たまえ!」 (´・ω・`)゚∀゚)「「「「おぉ!!」」」」(´<_`( ´_ この激戦は、後に『ブラックサンタの戦い』として教科書とかには――決して載りはしなかった。 ちなみに、もちろんだが近所の人達に怒られたのは言うまでもない。 54 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:32:20.97 ID:rBNb9hRU0 十分後。 ( ・∀・)「終わりかね?」 ( ´_ 「何故に俺ばかり殴るのだ……がふっ」 (´・ω・`)「つ、強い……!」 (´<_` )「何て野郎だ!」 ( ・∀・)「御近所の人に怒られたのが効いたようだね。 ふふ、もう一度騒げば警察呼ばれるので、私もある意味リーチなのだが」 爪゚ -゚)「御主人様、そろそろ――」 ( ・∀・)「そうだね……では、君達にクリスマスプレゼントを――」 すかっ ( ・∀・)「?」 背後に腕を伸ばすが、その手が掴むものはなかった。 ……あ。 爪゚ -゚)「おそらくはアストクルフ家に突撃した時に落としたかと思われます」 ( ・∀・)「何という失敗……聞いただけで絶望してしまった……これは間違いなく私の凡ミス」 55 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:33:24.79 ID:rBNb9hRU0 爪゚ -゚)「どうされますか」 ( ・∀・)「逃げるに決まっている」 ぽちっ (´<_`;)「!?」 突如、ソリの背後から煙。 ロケット口から炎が立ち上り―― ( ・∀・)「メリークリスマス」 声と共に噴射。 多量の燃料を一気に消費するその一発限りのこの装置は 『サンタブースト』と呼ばれるモノだった。 原理はよく解らないが、どかーん、と一気に遠くへ移動出来るのだ。 どかーん 激音と共にソリが飛ぶ。 それはまるで何処かのミサイルのように天高く昇っていった。 56 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:34:34.08 ID:rBNb9hRU0 後に残るは多量の煙。 それが晴れる頃には、付近に静寂が戻っていた。 (´・ω・`)「げほっ、げほっ……」 (´<_` )「逃げられたか……」 ( ゚∀゚)「まぁ、いいんじゃね? 『バーボンハウス』は護られたんだし」 (´・ω・`)「だね。 じゃあ、帰って寝よう寝よう」 ゾロゾロと店に戻っていく三人。 そして放って置かれた男が一人。 ( ´_ 「ねぇ、これいつになったら戻るの?」 知らん。 57 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:35:24.28 ID:rBNb9hRU0 (;^ω^)「な、なんじゃこりゃぁぁぁ!?」 J( 'ー`)し「あらあらまぁまぁ」 川 ゚ -゚)「ふむ」 いきなり轟音がしたので、慌てて庭に出てきたブーン達。 そこにはとんでもない光景が広がっていた。 ソリ&動物の下半身。 それがメチャクチャになりつつも、しかし辛うじて形を保って存在していた。 煙が上がり、所々から火花が出ている。 (;^ω^)「な、何だお、これは……」 川 ゚ -゚)「おそらくは空から降ってきたのだろうな」 クーの冷静な声に釣られるように、上を見上げた。 58 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:36:18.50 ID:rBNb9hRU0 白い小さな粒。 それが空から降ってくる。 ( ^ω^)「雪だお!」 川 ゚ -゚)「うむ、綺麗だな」 J( 'ー`)し「そろそろ中に入りましょう。 ハインリッヒちゃんが待ってるし、御飯も食べなきゃね」 ( ^ω^)「把握」 二人は中に入っていく。 というか、残骸は放っておいていいのか? 一人残ったクー。 空を見上げてふと呟いた。 川 ゚ -゚)「……クリスマス、か」 59 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:37:21.43 ID:rBNb9hRU0 空は良いものだ。 風が優しく吹き、髪を、頬を撫でる。 モララーとジェイルは空にいた。 その背にはパラシュート。 ( ・∀・)「いや、万が一の事を考えて準備しておいてよかったよ」 爪゚ -゚)「そうですか」 ふらふらと揺れながら下降していくモララーと上半身だけのジェイル。 ソリやら下半身やらは衝撃で何処かへ吹き飛んでしまった。 巧みにパラシュートを操りながら安全な地上を目指す。 爪゚ -゚)「ところで」 ( ・∀・)「何かね?」 爪゚ -゚)「内藤様、クー様、ハインリッヒ様の家には行かなかったようですが?」 ( ・∀・)「私は夢を与える、と言ったではないかね」 爪゚ -゚)「夢、ですか」 ( ・∀・)「彼らは現状のままでも夢いっぱい幸せいっぱいだよ……うんうん」 満足げに頷くサンタであった。 60 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:38:07.45 ID:rBNb9hRU0 ふと、彼の視界に何かが入る。 続いてジェイルもそれに気付いた。 爪゚ -゚)「雪です」 ( ・∀・)「予報通りだったね……ホワイトクリスマスというやつだ」 それはみるみる内に量を増していく。 この分だと、明日の朝にはたくさん積もっていそうだ。 予測したモララーは一度頷く。 そして視界に目一杯広がる都市を見下ろしながら呟いた。 ――――メリークリスマス おわり 67 名前: ◆BYUt189CYA [] 投稿日:2006/12/25(月) 21:44:38.97 ID:rBNb9hRU0 終わった終わったー え? クオリティ? 知らんがな ついつい溜まってしまったギャグへの鬱憤を形にしてしまった 反省はしていない さて、そろそろ『戦い護る』シリーズとは別の新規作品を書きたいと思うこの頃 書きたいだけで、書くかは知らん では、おやすみなさい 70 名前:角焼もち[] 投稿日:2006/12/25(月) 23:01:40.92 ID:6xnbyapaO 今北 乙カレー 抗い護る(だっけ?)も期待してます。 72 名前:ウリ坊[] 投稿日:2006/12/26(火) 01:03:35.00 ID:ab18K37/0 乙 73 名前:年賀状(お年玉つきでよろ)[] 投稿日:2006/12/26(火) 01:49:05.53 ID:WG02SnIw0 あぁ、リアルタイムで見たかった・・・orz でも面白かった 乙!! ジャンル別一覧
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