第十六話第十六話 「やわらかなひととき」 从・∀・ノ!リ「なぁなぁ、おっきい兄者ー」 ( ´_ゝ`)「ん、なんだ?」 从・∀・ノ!リ「手ー離して欲しいのじゃー」 ( ´_ゝ`)「ダメ」 从・∀・ノ!リ「むー」 从・∀・ノ!リ「……じゃあ、ちっちゃい兄者ー」 (´<_` )「ん、なんだ?」 从・∀・ノ!リ「手ー離してくれなのじゃー」 (´<_` )「ダメ」 从・∀・ノ!リ「むー」 ( ´_ゝ`)「……おとなしくしてなさい」(´<_` ) 从・∀・ノ!リ「わかったのじゃー!だからこの手を――」 ( ´_ゝ`)「ダーメ!!」(´<_` ) 少し西へと傾いた太陽の下、地上の熱を冷ましていく涼しげな風の中、 凹の字に並び田んぼ道を歩く、三つの影。 从・∀・ノ!リ「歩きづらいのじゃー」 ( ´_ゝ`)「我慢しなさい」 从・∀・ノ!リ「むー。それなら……こうじゃ!!」 (;´_ゝ`)「うおっ!!」(´<_`;) 妹者の掛け声と共に、乱れなく整っていた凹の字が形を崩す。 从・∀・ノ!リ「らくちんなのじゃー!!」 (;´_ゝ`)「こら、妹者!ぶらさがるんじゃない!!」(´<_`;) 从・∀・ノ!リ「だったら手を離せばいいのじゃ!」 (;´_ゝ`)「ぬ……そういう手できたか」(´<_`;) 掴んでいた手を中央に引っ張られ、二人の表情が歪む。 しかし、すぐにその焦りは姿を消し、代わりに現れたのは自信溢れる不敵な笑み。 ( ´_ゝ`)「ふっ……ならばいいだろう!」 (´<_` )「俺達、流石兄弟の力!」 ( ´_ゝ`)「特と見せてやろう!!」(´<_` ) 兄者は左手に弟者は右手に、渾身の力をこめ妹者の身体を持ち上げる。 片手に妹者をぶら下げたまま、二人は全力で走り出す。 (;´_ゝ`)「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」(´<_`;) 从>∀<ノ!リ「きゃーーーーーーーーーー!!!」 自らの体力も省みず駆ける。舗装されていない荒れたでこぼこ道を、全速力で駆け抜ける。 重なる二つの咆哮はあっという間に遠ざかり、やがて消え失せた。 (;^ω^)「何という兄弟パワー……」 ミセ*゚ー゚)リ「素晴らしい……兄弟愛ですね」 ('A`)「途中で力尽きると予想」 (´∨ω・`) 一連の流れを後ろから見送りながら、三人の少年と一人の少女は一歩一歩足元を確かめるようにゆっくりと歩く。 先程ここを通った時に纏わりついてきた貼りつくような暑さも、今は前から後ろへと吹きぬける心地よい風により若干の和らぎを見せていた。 風の行き先は緑の群集。細々とした緑の粒が風に揺らされ、静かにざわめく。 それから歩く四人の間に会話はなかった。 それは引きずる身体の重みのせいでもあったし、精神的な疲労のせいでもあった。 吹き抜ける風は貼りつくような暑さと共に四人を覆う沈黙の膜まで剥がし取っていく。 その感覚の心地よさに淡い眠りの染みが頭の中に広がっていき、 四人の身体はオートパイロットの飛行機のように、無意識の状態で歩を進めていった。 ミセ*゚ー゚)リ「あ、着きましたね」 ('A`)「……お」 ミセリの声に意識を呼び戻すと、いつの間にか塀の上から群青色の屋根が顔を覗かせていた。 (;^ω^)「疲れたお……早いとこどこかに腰を下ろして休みたいお」 ('A`)「そうだな」 屋根から視線を下げると、玄関前に三つの影を確認する。 それは先程見た凹の形ではなく、凸の姿でそこに佇んでいた。 从・∀・ノ!リ「兄者達すごいのじゃ!尊敬なのじゃ!!」 交互に首を回し、はしゃいだような声をかける妹者。 ( _ゝ )「どうだ……妹者……」 ( <_ )「俺達……流石だろ……」 その両側では地面に両膝と両手をつき全く同じポーズでうなだれる流石兄弟の二人。 从・∀・ノ!リ「流石なのじゃ!やっぱり兄者達は流石なのじゃ!!」 ( _ゝ )「ははは……そうだろう……」 ( <_ )「俺達に……不可能なことなんてないさ……」 (;'A`)「すげぇな……ここまでもったのか」 (;^ω^)「何という兄弟パワー……」 ミセ;゚ー゚)リ「でも、真っ白に燃え尽きてますね」 从・∀・ノ!リ「ねーねー、もっかい!もっかいやってほしいのじゃ!!」 ( _ゝ )「それは勘弁してくれ」( <_ ) (´∨ω・`) 風が、木の葉を運んでいく。 (´∨ω・`)「……ん」 ふと、頭に違和感を覚える。 その正体を確かめようと手を伸ばす。 荒れた手の平で掴んだのは一枚の木の葉。 ショボンはそれを指でつまみ、じっと眺める。 手首を返し、表と裏を交互に眺める。 散るには早すぎる、生き生きとした緑色に塗りたくられた一枚の木の葉。 再び、風が吹く。 ショボンは指を離し、木の葉を吹き抜ける風へと乗せる。 木の葉はあっという間に手元から離れ、不規則に回転しながら橙色の空へと飛んでいった。 从・∀・ノ!リ「ただいまなのじゃー!」 静かな家の中に妹者の声が響き渡る。 当然、返事はないかのように思われた、が (ヽ><)「お……おかえりなんです……」 从;・∀・ノ!リ「うぉわっ!!」 壁を伝いフラフラとした足取りで奥から現れたのはビロード。 その頬はこけ顔色は青白く、今にも死んでしまいそうな様相を呈している。 ミセ;゚ー゚)リ「え!?大丈夫なんですか!?」 (;^ω^)「ちょ!ビロード君大丈夫かお!?」 (;'A`)「おいおい、口のまわりになんかついてるぞ」 (ヽ><)「ああ……これは……」 (;'A`)「お、おい!!」 ビロードは壁から手を放し口元を拭おうとするが、震える体は支えを失いゆっくりと倒れていく。 从;・∀・ノ!リ「ち、ちっちゃいあんちゃん!大丈夫なのか!?」 (ヽ><)「あれって一体……何だったん……です……か……グフッ」 从;・∀・ノ!リ「あんちゃーーーーーーーーーん!!」 从;・∀・ノ!リ「あんちゃん!寝ちゃダメなのじゃ!!寝たら死んじゃうのじゃ!!」 横たわる小さな身体の元へ駆け寄り必死に呼びかける。 从;・∀・ノ!リ「くぅ……こうなったら」 そう言うと妹者は右手を大きく振りかぶり 从;・∀・ノ!リ「起きろ!起きるのじゃ!!」 青白く生気のない顔に向け、思いっきり振り下ろした。 (#)><)「げぶっ!」 从;・∀・ノ!リ「眠っちゃダメなのじゃ!死んじゃうのじゃ!!」 (><(#)=(#)><)「いだっ!いだぃ!ぎゃっ!ぶぇっ!」 妹者の掛け声と共にビロードの顔が勢いよく左右へと振られる。 青白い顔は見る見るうちに赤く腫れ上がっていった。 (;^ω^)「い、痛そうだお」 ('A`)「慣れればそうでもねぇよ」 (;^ω^)「え?」 ('A`)「……なんでもない」 (#)><(#)「……」 从・∀・ノ!リ「いやー危ないとこだったのじゃー」 (;^ω^) 从・∀・ノ!リ「顔色もよくなったみたいだし、一安心なのじゃ」 ('A`)「よくなったと言うのか……この場合」 (;´∨ω・`) 从・∀・ノ!リ「どうじゃちっちゃいあんちゃん、具合の方は?」 (#)><(#)「顔が……ヒリヒリするんです……」 从・∀・ノ!リ「それは大変じゃ!今オロナインを持ってくるから待っておれ!」 (#)><(#)「もう余計なことしなくていいんです!!僕はもうお家に帰りたいんです!!」 「何……勘違いしているんだ……」 (#)><(#)「!?」 覇気のない掠れ声が耳に入る。 どうやらそれは玄関の方から発せられたらしい。 「まだ……俺達の勉強合宿は……終了してないぜ……」 从・∀・ノ!リ「おっきい兄者とちっちゃい兄者!!」 ( ´_ゝ`)「まだだ……まだ終わらんよ……」 (´<_` )「さぁ……勉強の時間だ……」 玄関の方へと目を向ける。 そこにはお互いに肩を貸しあい、よろめきながらも何とか立っている二人の姿があった。 (;'A`)「んなこと言ってもお前らフラフラじゃねぇかよ」 (;^ω^)「そうだお!無理はしないほうがいいお!!」 ( ´_ゝ`)「何……馬鹿なこと言ってるんだ……」 (´<_` )「俺達を……誰だと思ってる……」 (;><)「で、でも……もう十分勉強したじゃないですか」 ( ´_ゝ`)「甘い!甘すぎる!!」 (´<_` )「勉強に十分なんて言葉はない!!」 ( ´_ゝ`)「さぁ!やるぞ!!勉強合宿再開だぁぁぁぁぁ!!!」(´<_` ) 肩を組んだまま背中を仰け反らせ、天井へ向け咆哮する。 先程までの掠れ声がまるで嘘だったかのような大声を張り上げて。 (;'A`)「いきなり回復しすぎだろ常識的に考えて……」 ――― ―― ― ('A`)「やっぱり母者さんはまだ帰ってこないのかな?」 ( ´_ゝ`)「母者の行動パターンは俺たちでさえ把握しきれていないからな」 ( ^ω^)「ご飯のお礼とか言いたかったのに……残念だお」 (´<_` )「気にするなと言っただろう?誘ったのは俺たちのほうなんだからな」 (´∨ω・`)「今度、何かお礼の品でも……」 (;´_ゝ`)「おいおい、だから気にするなと言ってるだろう」 (ヽ><)「早く……帰りたいんです……」 从・∀・ノ!リ「あんちゃん大丈夫か?オロナイン飲むか?」 ミセ;゚ー゚)リ「妹者ちゃん、オロナインは飲むものじゃないよ」 从・∀・ノ!リ「あれ?オロナインの半分は優しさで出来てるんじゃなかったか?」 ミセ;゚ー゚)リ「それはバファリンだよ」 耳をすませば、絶え間なく聞こえてくるスズムシやカエルの鳴き声。 太陽が沈み、薄暗い青に染まった空には白く輝く三日月が浮かんでいる。 流石兄弟の咆哮から数時間が経ち、短いようで長かった一泊二日の勉強合宿もとうとう終わりを告げた。 ( ´_ゝ`)「バス停まで送らなくて本当に大丈夫なのか?」 ('A`)「ああ、大丈夫だ。道ならこいつが覚えてる」 (´∨ω・`)「……」 ( ^ω^)「ミセリちゃんはまだ帰らないのかお?こんなに暗いと一人で帰るの危ないんじゃないかお?」 ミセ*゚ー゚)リ「帰りはお母さんが迎えに来るので大丈夫です」 从・∀・ノ!リ「ミセリちゃんちとうちは家族ぐるみのお付き合いなのじゃ!」 ( ^ω^)「そうだったのかお。なら心配いらないおね」 ミセ*゚ー゚)リ「お気遣いありがとうございます。内藤さんも帰りはお気をつけて」 ( ^ω^)「おっおっ、ありがとうだお!」 ('A`)「それじゃ、帰るか」 (ヽ><)「帰りたいけど歩きたくないんです……」 ( ´_ゝ`)「みんな、今日は迷惑をかけてすまなかった」 (´<_` )「ほら、妹者!お前もちゃんと謝りなさい」 从・∀・ノ!リ「う……ごめんなさいなのじゃ……」 ( ^ω^)「気にすることないお。無事に助かって本当よかったお」 ('A`)「うんうん」 ( ´_ゝ`)「特にショボン君。結果はどうであれ君が妹者を助けに行ってくれたことには本当に感謝している」 (´<_` )「本当にありがとう」 (´∨ω・`)「いや、俺は……」 从・∀・ノ!リ「え?妹者を助けてくれたのはドクオあんちゃんじゃよ?」 ( ´_ゝ`)「何言ってるんだお前は」 (´<_` )「寝ぼけたこと言ってないでちゃんとお礼を言いなさい」 从・∀・ノ!リ「何を言っておるのじゃ!兄者達だってちゃんとテレビの中にいたではないか!」 (;´_ゝ`)「おいおい、本気で言ってるのか?」 (´<_`;)「まさか落ちた時に頭でも打ったんじゃ……」 从#・∀・ノ!リ「嘘じゃないのじゃ!頭もちゃんとしてるのじゃ!兄者達の方がおかしいのじゃ!!」 (;´_ゝ`)「どうする弟者?やはり病院に連れて行くべきだろうか」 (´<_`;)「そうだな。母者が帰ってきたら相談してみるとしよう」 从#・∀・ノ!リ「だーかーら!妹者はおかしくないのじゃ!!」 ミセ;゚ー゚)リ「ちょ、ちょっと、妹者ちゃん落ち着いて」 (;´∨ω・`)「ケンカ……しないでくれ」 全く同じ顔を持った二人が不安気な表情で妹の異常について話し合い、その横で小さな少女が飛び跳ねながら怒りを叫ぶ。 それを見て、年不相応の落ち着きを漂わせた少女と寡黙な長髪の少年は慌ててその場を沈めようとする。 (;^ω^)「妹者ちゃん……大丈夫かおね」 ('A`)「大丈夫だろ」 (;^ω^)「でも、万が一って事も……」 ('A`)「心配ないって」 そう言いドクオは空を見上げる。 ('A`)「きっと、夢でも見てたんだろうさ」 白く光る月の周りには疎らに星が輝いている。 空は星達の輝きが増すにつれ、青黒くその身を染め上げていった。 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) ('∀`) 川;゚ -゚) ('∀`) 川;゚ -゚) ('∀`) 川 ゚ -゚) (#)'A`) (#)'A`)「殴るのは酷いと思うよ」 川 ゚ -゚)「お前が人を馬鹿にしたような顔をするから悪い」 座布団に座り向かい合う二人。 ('A`)「さて、次は俺の番か」 そう言うドクオの手には一枚 川 ゚ -゚) 何も言わずドクオの顔を見続けるクーの手には二枚のトランプがあった。 ('A`)「無表情ってのはこういう時役に立つのかね」 川 ゚ -゚) ('A`)「ま、つっても結局選ぶのは俺だからな」 目を左右に動かし熟考する。 時折、無表情な顔へ視線を移しながらじっくりと考える。 ('A`)「決めた」 川 ゚ -゚) ('A`)「……右だな」 川 ゚ -゚)「本当にそれでいいのか?」 と、無表情を固く保ったままクーが問いかける。 伸ばしかけた手が、止められた。 ('A`)「なんだ?今度は言葉で揺さぶろうってか?」 川 ゚ -゚)「そんなくだらない手など使わない。私はただそのままの意味で君に問いかけているだけだ」 ('A`)「ふーん、まぁどちらにせよ俺には関係のないこった」 川 ゚ -゚)「では、こちらでいいんだな?」 ('A`)「ああ」 川 ゚ -゚)「ならばもう何も言うまい。さぁ取るがいい」 ('A`)「……変なやつ」 そう鼻で笑うと伸ばしかけていた手の動きを再開する。 迷いなく、右のカードを掴み取る。 ('A`) 川 ゚ -゚)「さて、次は私の番だな」 川 ゚ -゚) まるで壁に飾られた肖像画のように身じろぎ一つしない顔の中で、凛と見開かれた瞳が左右に揺れ動く。 その視線の向けられている先はもちろんドクオの手元にある二枚のカード。 ('A`)「なぁ」 川 ゚ -゚)「何だ?」 ('A`)「何で妹者ちゃんを助けようと思ったんだ?」 川 ゚ -゚)「何で?それは理由を聞いているのか?」 ('A`)「ああ、そうだ」 会話の間もクーの瞳は左右に動き続けていた。 挨拶を交わす時のように大したことではないといった感じで、問いに答える。 川 ゚ -゚)「人を助けるのに理由なんているのかい?」 ('A`) 川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」 ('A`) 川 ゚ -゚)「ただそれだけのことさ」 ('A`)「……そうか」 川 ゚ -゚)「そうだ」 ('A`)「お前の父ちゃん……カッコいいな」 川 ゚ -゚)「だろう?」 ('A`)「でも、結局助けてないよな」 振り子のように揺れていたクーの瞳の動きが止まる。 ('A`)「ムカデ見て落ちちゃったし」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「兄者達がいなかったらどうなってたことやら」 川 ゚ -゚)「……しょうがないだろう。あれはどうしようもなかった」 ('A`)「ま、普段は冷血なクーさんでもあんな声上げることがあるってのはちょっとびっくりだよなぁ」 川 ゚ -゚)「お前だってあんなもの間近で見たら、私と同じようなことになっていたはずだ」 ('A`)「そうかなぁ?」 川 ゚ -゚)「そうに決まっている。なんなら次に君がここに来たときにでも用意しといてやろうか」 ('A`)「何を?」 川 ゚ -゚)「ムカデ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「でも、そんなことしたら……お前がとんでもないことになるんじゃないか?」 川 ゚ -゚)「……それもそうだな」 川 ゚ -゚)「まぁいい、もうこの話は終わりにしよう」 ('A`)「そっすね」 一息つき、瞳の動きを再開する。 しばらく考え込む素振りを見せた後、瞳の反復運動が再び止まる。 川 ゚ -゚)「……左だな」 ('A`)「本当にそれでいいのか?」 川 ゚ -゚)「ああ」 ('A`)「本当に本当にそれでいいんだな?」 川 ゚ -゚)「ああ」 ('A`)「……ならばもう何も言うまい。さぁ取るがいい」 川 ゚ ー゚)「ふん、芸のない奴だ」 そう鼻で笑い、腕を視線の先へと伸ばす。 川 ゚ -゚) ('A`)「さてと、次は俺の番だな」 戻る 目次 次へ 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