2007/02/14(水)19:29
( ^ω^)が料理人になるようです(第十八章上)
86 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 04:55:46.72 ID:T9v5rC2I0
第18章 夢
( ,,゚Д゚)『全くあのバカには困ったもんだぞゴルァ』
【本日臨時休業】の張り紙が張られたバーボンハウス内。
誰一人口を開こうとしない内藤達の中心で大声を上げて笑っているのはギコだ。
( ,,゚Д゚)『あいつは昔から人を騙すのが好きなんだよ。
店が倒産したとか、荒巻さんに多額の借金があるとか。
練った小麦粉と食紅で本物そっくりのちんこを作った時もあってな。
それを女子トイレの便器においておくんだ。
何も知らないウェイトレスが便器の蓋を開けると、そこには切り落とされたちんこが…』
普段であればスタッフ一同喰いついてくる絶好のネタだった。
しかし、今日は誰一人としてギコの話に乗ってくる者は居ない。
皆、ショボンの性格はよく知っていた。
つまらない冗談が好きであるという事も。
そして、人の死をネタにする男ではないという事も。
呆然とする者。
嗚咽を漏らす者。
恋人の肩を抱く者。
それでも大声で笑う者。
それぞれがそれぞれのやり方で、やがて扉をくぐって来るであろう男を待っていた。
89 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 04:59:08.98 ID:T9v5rC2I0
(´・ω・`)『…みんな待たせてゴメン。警察やら色々あってね』
そう言いながらショボンがやって来たのは結局それから一時間ほどしてからだった。
皆の視線に気付かぬように冷蔵庫に向かい、そこから缶コーヒーを取り出して蓋を開ける。
その顔は青白く、一切の生気を感じ取れない。
(´・ω・`)『…原因は出血多量によるショック死。
クリスマスに浮かれた若者の飲酒運転だったらしいよ』
誰に話しかけるでもなく、ただ義務感から口を開く。
( ,,゚Д゚)『おい、ショボン。悪い冗談はやめろ』
ギコがショボンに詰め寄る。
(´・ω・`)『…僕は本気だよ』
とたんにショボンの体が吹き飛び、床に衝突する。
ギコが彼を殴り飛ばしたのだ。
( ,,゚Д゚)『本気だと!! もっと悪い冗談だ!!』
そう言いながらショボンのネクタイを掴み無理矢理体を引き起こす。
( ,,゚Д゚)『あいつが…クーが死ぬものか!!
俺達は約束した筈だ!!
3人でこの店を盛り上げ』
91 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:01:53.82 ID:T9v5rC2I0
次に吹き飛んだのはギコだった。
食料棚に衝突し、彼の頭上に大量の瓶や缶が降り注ぐ。
( ,,゚Д゚)『てめぇ…!!』
(´・ω・`)『そう言えば』
ショボンがネクタイを緩めつつギコに歩み寄る。
(´・ω・`)『君とは昔よく殴りあったけど、決着はまだついていなかったね。
ちょうどいい。今ここでケリをつけようか』
( ,,゚Д゚)『…上等じゃねぇかゴルァ』
ギコが身を起こしショボンに掴みかかろうとした瞬間ーーーーー。
( ゚ω゚)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
内藤が吼えた。
94 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:05:58.12 ID:T9v5rC2I0
( ゚ω゚)『僕が!! 僕が悪いんだ!! 僕があの時…クーさんと一緒に!!
僕が!! 僕がクーさんを殺した!! 僕が!! 僕が!!』
叫びながら内藤は何度もスチール製の机に自身の頭を叩きつける。
ξ;△;)ξ『内藤!! 止めて!!』
そう言って止めに入るツンの体を力任せに弾き飛ばし、尚も自身を傷つけようとする。
( ゚∀゚)『…!! いいかげんにしろ!! このバカ!!』
半狂乱になって暴れる内藤を床に押さえつけたのは、
全スタッフで最も力と体重のあるジョルジュだった。
( ゚∀゚)『…少し落ち着きやがれ!!…ってうおっ!!』
それでも内藤はそのジョルジュすら跳ね飛ばし立ち上がる。
( ω )『僕は…僕は道標【みちしるべ】を失ってしまった…。これからどこへ…どうやって…』
( ゚ω゚)『あああああああああああああああああああああああああっ!!』
ξ;△;)ξ『内藤!!』
叫びスタッフルームから逃げ出した内藤をツンが追う。
後に残ったものはただ静寂。
(´・ω・`)『…とにかく店は3日間休ませてもらうよ。今日はこれで解散しよう』
そのショボンの言葉に彼らは一人・二人と店を後にしていった。
95 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:08:22.26 ID:T9v5rC2I0
---------------------------------------------------------------------------------------------------
( ,,゚Д゚)『くそっ!! ショボンの野郎思いっきり殴りやがって…!!』
昨夜あんなに降っていた雪はすでに止み、
空にはギコの曇った心とは正反対に輝く青空が顔を見せている。
あれ程クーが愛した雪の絨毯は道路の端に寄せ集められ、灰色の小山を形作っている。
そのギコの後ろを俯き歩いているのはしぃだ。
(*;ー;)『なんだか…嘘みたいだね』
( ,,゚Д゚)『嘘に決まってるだろうが!!』
振り返り怒鳴ったギコだったが、すぐに思い直したように『すまねぇ』と恋人に頭を下げた。
コートのポケットに両手を突っ込み歩き出す。
しぃもまた先ほどと同じ距離を保ってギコの後を追った。
( ,,゚Д゚)『なぁ、しぃ』
…返答はない。
それでも構わずギコは続ける。
( ,,゚Д゚)『俺の…昔の話。覚えてるか?』
98 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:12:28.54 ID:T9v5rC2I0
ギコの言葉にしぃはきょとんとしつつも答えた。
(*゚ー゚)『えっと…お父さんのお店を横取りされちゃって、それからずっと日本中放浪してたって話?』
( ,,゚Д゚)『そうだ』
しばらくして彼は重々しく口を開く。
( ,,゚Д゚)『…あの頃の俺は行く先々の店で問題を起こしては留置所の中と外を行き来するような毎日だった。
元々和食一本でやって来た俺がバーボンで働けているのも、
今お前とこうしていられるのも全部クーのおかげなんだ』
(*゚ー゚)『そうだったね…』
しぃは目を細める。
(*;ー;)『クーさんに呼ばれてバースペースに行ったら…固まってるギコ君がいて…
覚えてるよ…なんで…なんでクーさん…』
( ,,゚Д゚)『俺は…俺達は約束したじゃねぇか!!
勝手に死ぬなんて許さねぇぞ!!』
聞こえるか?
聞こえるなら答えろ、クー!!!!!
ギコはこの空のどこかにいるであろうクーに向けて雄叫びをあげる。
その声はどこまでも青すぎる空に吸い込まれ消えていった。
---------------------------------------------------------------------------------------------------