十一章7 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:12:28.41 ID:xedZTFR60十一章 星空 ミンナとプギャーとの戦闘の後、俺はしっかりと病院に行った。というよりも、運ばれた。 病院で眼を覚ました時には既に処置が施してあったので、さっさと病院から抜け出した。 病院から帰宅した後、俺はブーンとジョルジュ、ギコにメールした。 メールの内容は「今日も襲われたわけだが」。それだけで十分。 その時には、時計は十時を示していた。もちろん夜。 一分もせずに、返信が返って来る。 その内容に、俺は驚きを隠せなかった。 『僕もだお!』 『へぇーっ、ドックンも襲われたのかー』 『……やっぱり、お前も襲われたか』 こいつら……っつーか俺も含むが、また襲われたのか。 酷い運の悪さだな、と皮肉な笑みが浮かぶ。 ('A`)「運の悪さじゃなきゃ……運命、かねぇ」 自分で言った“運命”なんてくだらない響きに、噴き出しそうになった。 9 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:16:56.09 ID:xedZTFR60 俺はその後のメールで、公園で会う事を決めた。 夜十時っつっても、みんな家くらい出て来れる。 それから三十分後。 俺達は学校近くの公園に集まった。 ('A`)「よぅ、お前ら」 (;゚Д゚)「よぅじゃねぇよ。何だその包帯で構成されてますみたいな右腕は」 ('A`)「LLサイズダーツでサボテンにされてな」 (;゚Д゚)「はぁ?……あー、アレか。襲われた時か」 ('A`)「そゆ事」 (;゚∀゚)「あっちゃー、ドックン災難だねぇー」 ('A`)「まぁな……」 11 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:19:39.53 ID:xedZTFR60 (;^ω^)「そういうジョルジュも、腹と肩と足どうしたんだお!?」 (;゚∀゚)「いやー、ね。俺ッちもドックンと同じで、襲われた時にねー。 ナイフ刺されて、包帯でぐるぐるだよ。あははー」 (;^ω^)「何で笑ってんだお……」 (;゚∀゚)「笑うしかなーいの」 ('A`)「だがブーン。お前も左肩、負傷してんな?」 (;^ω^)「お?な、何で分かったんだお?」 ('A`)「お前の動きが不自然。ちょっとまだ痛みが残ってんだろ」 (;^ω^)「……あうあう」 (,,゚Д゚)「あー、俺だけか、怪我してねぇの」 ( ゚∀゚)「良いなー」 (;゚Д゚)「良いなーっつっても、まったく何もなかったって訳じゃねぇんだぞ?」 ('A`)「じゃあ、話を聞こうか。ギコ。お前は何があった?」 13 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:22:22.99 ID:xedZTFR60 ……それから、それぞれがそれぞれの体験を語る。 そして、俺を含め全員の語りが終わった。 ('A`)「あー、何つーの?やーっぱり目ぇ付けられたか。その「殺そうとしてる組織」だかに」 (;゚Д゚)「仕方ないだろうがよ」 ('A`)「これからブーンとギコはもちろんの事、俺とジョルジュも命を狙われるだろうな。 奴らは異能者であればあとはどうでも良いっぽいし」 (;゚∀゚)「うへぇ、マジですか」 (;^ω^)「……僕達はもう、普通の生活には戻れないのかお?何か方法は……」 ('A`)「……襲い来るたびに追い返して、相手が諦めるまでそれを繰り返す。それか……」 ( ゚∀゚)「ん?」 ('A`)「……こっちから、その組織を潰しにかかるしかねぇんじゃねぇか?」 (;^ω^)「……それは僕には無理だお」 (;゚Д゚)「同じく」 ( ゚∀゚)「俺はどっちでもー」 15 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:24:49.15 ID:xedZTFR60 ('A`)「ブーンはその性格から分かるとしても……ギコ、何でお前が拒否する?」 (,,゚Д゚)「……襲われた時に、襲ってきたしぃって奴が言ってたんだよ。「殺したくて殺してるわけじゃない」 「でも殺さなきゃ、悲しむ人がいるから殺さなきゃいけない」ってな。 ……誰かの為に自分を犠牲にして何かをしようとしてる奴を、俺は殺せない」 ('A`)「……はん」 ……甘々なヒューマニズム。 俺の大嫌いな物で、ギコの大切にしている物。 いつだかには、それについて話している時に、こいつに殴られた事もあったな。 人の気持ちってもんを大切にしやがれ、か……。 ('A`)「……お前は、昔からその辺が甘かったよな」 (,,゚Д゚)「………………」 ('A`)「結構好戦的なくせに、かわいそうな奴には手が出せなくなるってか」 (,,゚Д゚)「……仕方ねぇだろ。そこだけは譲れねぇ」 ('A`)「ま、お前がそう言うならこれ以上は言わねぇよ。いつだかのように殴られるのは嫌だからな。 だがな、今回はそんな気持ちじゃあ生き残れないかもしれない。 殺らなきゃ殺られると思っとけ。どんなに殺したくないと思っていても、だ」 (,,゚Д゚)「……あぁ」 16 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:27:52.05 ID:xedZTFR60 ('A`)「……ふぅ。じゃあとりあえず、この話は置いておこうか。誰か、他に何か話すべき事はあるか?」 ( ゚∀゚)ノ「はーい」 ('A`)「ん?」 ( ゚∀゚)「敵について、もうちょい知りたい。 こっちから潰しにかかる事はないにしても、これから俺達は間違いなく戦っていかなきゃいけない訳だしさ」 (;^ω^)「それは確かに……。でも、それは僕達だけじゃどうしようもないお」 (,,゚Д゚)「とりあえず全員の話を総合して、分かってる事をまとめるとだな……」 17 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:30:45.92 ID:xedZTFR60 ・人間を奴隷にしようとしている組織の人数は、分かっているだけで四人。ミンナとプギャーとつーとハイン。 ミンナは無表情でサイコキネシスを扱う細身の男。武器はナイフと金属サイコロと巨大ダーツを確認。 プギャーはにやにやしている、左腕を鎌に変化させる男。頭は悪くない。 つーは小柄で二重人格な女性。片方は明るく優しい女性で、もう片方は強靭な狂人。武器はナイフ。 ハインはオレンジ色の髪の毛を持った女性。両腕が変化する。詳細不明。 プギャーが言った「あの人」という言葉から、これよりも多くの人間がいると予想出来る。 ・異能者を消そうとしている組織の人数も分かっているだけで四人。ツン、しぃ、フサ、そして「姉さん」 ツンは金髪で目元のキツイ女性。翼を生やして、羽根を武器とする。 しぃは小柄で大人しい女性。左腕が黄金色の腕に変わり、レーザーを発射する。 フサは長身な男性。茶色いコートと帽子を着用。詳細不明。 しぃの言った「姉さん」という言葉から、少なくとも「姉さん」という人物がいる。 (,,゚Д゚)「……と、大雑把にこんなもんか」 19 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:34:11.17 ID:xedZTFR60 ('A`)「まぁ、大体そんな感じじゃね?」 ( ゚∀゚)「あと何人いるんだろうなー……」 ( ^ω^)「あ、そういえばジョルジュ。意識を失う直前にかけたっていう電話は誰だったんだお?」 (;゚∀゚)「あー、あれかー。うーん、アレは予想GUYでねー。 でもそこにかけるしかなくてさー。そもそもどうやって電話番号知られたのか分かんないんだけどねー」 (,,゚Д゚)「良いから、さっさと言えよ」 (;゚∀゚)「それh」 「僕だよ」 いきなりあらぬ方向からそう聞こえて、俺達はそちらを向いた。 そこには見た事のある顔。 見たくなかった顔。 表情の読み取れない顔。 20 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:36:21.77 ID:xedZTFR60 (´・ω・`)「うわ、みんなそんなあからさまに嫌そうな顔しないでよ」 そう言いながら、ショボンはこちらに歩いてくる。 俺はいつでも左腕を解放出来るように準備した。 眼と耳は既に解放。ショボンの動きを逃さないで捉えられる状態だ。 ('A`)「止まれ」 (´・ω・`)「ぴたり」 ('A`)「何しに来た」 (´・ω・`)「いや、ちょっと話す事がね」 ('A`)「こっちはもう聞くべき事は聞いたはずだが?」 (´・ω・`)「だから、また情報を手に入れたんだってば。 それに、戦う事が確定しちゃった君達に言う事もあるでしょ?」 ('A`)「……どうだかな」 21 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:39:59.84 ID:xedZTFR60 (;゚∀゚)「あー、ドクオ。ちょっと話聞いてみようぜ。聞かないでいる必要なんてないだろ?」 ……ジョルジュの口調が、軽い物じゃなくなっている。 呼び方も「ドックン」から「ドクオ」になっている。 ふん、ちょっと真剣なのか。 俺は口を閉ざした。 (´・ω・`)「さすがジョルジュ君。分かってるね」 (,,゚Д゚)「……聞こうか。何の話だ?」 (´・ω・`)「敵についてだよ」 ……正直、もっとも得たかった情報だった。 だが、こいつはどうも信じられない。 信じたくない。 うさんくせぇんだよ、こいつ。 嘘をついている……または、何かを隠しているような話し方。 それに、あの電話の内容……。 だがしかし、こいつから情報を引き出すのは良いかもしれない。 こいつが敵についての事で嘘をつく必要はないし、おそらく本当の話だ。 ('A`)「……OK、聞こう」 22 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:42:32.26 ID:xedZTFR60 (´・ω・`)「じゃあ話そうか。まず、それぞれの組織の人数が分かった」 (,,゚Д゚)「……どれくらいの人数だ?」 (´・ω・`)「やっぱり両方とも少数だったね。人間を奴隷にしようとしている組織の方は七人。 異能者を削除しようとしている組織の方は六人だよ」 ( ^ω^)「その能力は分からないのかお?」 (´・ω・`)「無理言わないでよ。これでも、ついさっき調べた情報なんだから」 ( ゚∀゚)「どう調べたのさ?」 (´・ω・`)「ちょっと良い情報屋がいてね。 じゃあ次の情報―――とは言ってもあまり必要ない情報だけど、それぞれの組織の名前が分かった。 人間を奴隷にしようとしている方は“管理人”、異能者を消そうとしているのが“削除人”だってさ」 (;゚Д゚)「何だそれ」 (´・ω・`)「さぁ。何か意味があるのかもね」 ('A`)「ショボン」 (´・ω・`)「ん?」 23 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:45:20.73 ID:xedZTFR60 ('A`)「……何故調べたんだ?」 (´・ω・`)「え?」 ('A`)「敵についてだよ。わざわざ俺達の為に調べたってのか?それはねぇよなぁ?何でだ?」 (´・ω・`)「本当に疑り深いね。めんどくさいなぁ」 ('A`)「良いからさっさと言えよ。何故調べたんだ?」 (´・ω・`)「別に、君達の為じゃないよ。自分の為に調べたんだ。僕はそれを君達に教えてあげてるだけだよ」 (;^ω^)「じ、自分の為って……?」 (´・ω・`)「あぁ、そう言えば言ってなかったね。僕は、その二つの組織を潰しに行こうと思ってるんだ」 (;゚Д゚)「……は?」 (´・ω・`)「ん?何か?」 (;゚Д゚)「七人と六人……合わせて十三人。それを一人で相手しようと?」 (´・ω・`)「……まぁね」 24 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:47:47.32 ID:xedZTFR60 (;゚Д゚)「死にに行くつもりか?」 (´・ω・`)「そのつもりはないけど……」 (;^ω^)「……何で潰しに行こうとしてるんだお?」 (´・ω・`)「耳触りの良い理由を挙げるとすれば、異能者達は人間を殺そうとしているから。 実際、“管理人”は相当な数の人間を殺しているしね」 ( ゚∀゚)「本当の理由はー?」 (´・ω・`)「両方とも邪魔なんだよね。 “管理人”のおかげで、異能者の僕は精神的に肩身が狭くなるし。 “削除人”には命を狙われるしさ」 (;゚∀゚)「でもさ、それって死にに行くようなもんじゃんか」 (´・ω・`)「死なない為に、僕は体を鍛えてる。それにさ……」 ( ゚∀゚)「ん?」 (´・ω・`)「このまま生きてたってつまらないし」 ('A`)「……あぁん?」 25 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:50:16.01 ID:xedZTFR60 (´・ω・`)「命を狙われながら、難儀しながら生きるなら、命を賭けてでも順調な暮らしをしたいって事だよ」 ……なるほど。 ('A`)「……あんたが俺達に情報を与えたり、あんたがブーンを助けた理由が分かった」 (´・ω・`)「………………」 ('A`)「あんた、一緒に戦って欲しいんだろ」 (´・ω・`)「……正直、どれだけ頑張ろうとも一人で生き残れるとは思ってないからね」 ('A`)「……なるほど、な」 (´・ω・`)「……ダメかな?」 (;^ω^)「……正直、僕は戦いたくないお」 ( ゚∀゚)「俺っちはみんな次第かな」 (,,゚Д゚)「俺は“管理人”とやらとは戦える。そんな腐った考えは叩きのめさなきゃな。 だが……俺は“削除人”とは、戦えないと思う」 (´・ω・`)「……そっか。分かった。……でも、最後に希望をかけて良いかな」 ( ゚∀゚)「ん?」 26 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:53:12.72 ID:xedZTFR60 (´・ω・`)「……僕は五日後の日曜日の午前十時に、ここにいる。それから三十分後に出発しようと思う。 これから五日間、僕と一緒に来てくれないか考えておいてくれ」 そう言うと、ショボンはくるりと向きを変える。 そして、来た方向へ消えていった。 残された俺達はもう話す事もなく、そのまま解散する事になった。 それから家に着いたのは十一時半ほど。 俺はベッドに体を預けると、考え事を始めた。 その内容は戦う事について。 俺は別に戦いたくないって事はない。 俺の“力”なら、油断さえしなければ生き残れるだろうし。 相手を傷付けるのが好きって訳ではないが、傷付けるのに躊躇はない。 ……いつから俺はこんなんになったんだろうな。あのいじめられていた中学前半の頃か? それにしてもこれは歪み過ぎだろう。 我ながら、自分を気持ち悪いと思う。 罪悪感を感じる事はないし、恐怖だとかそういう感情もあまりない。 戦う事が嫌でないと思える自分が嫌だ。 27 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/15(水) 22:55:39.16 ID:xedZTFR60 ブーンは人を傷付けるのを嫌がって。 ギコは人情からか、戦うのを渋って。 ジョルジュも内心怖がってるはず。 あいつは結構自分を隠そうとしてるからな。 でも、俺は……。 恐怖をなくして。人の心を失って。感情もがらんどうになって。 俺は何なんだ? ('A`)「……っち。くだらねぇな。俺は厨二病かっつーの」 そう呟くと、俺は思考を停止した。 別に、良いじゃねぇか。 どうせ一人で考えてたって答えは出ない。 人は何か大きな出来事があると、成長する。 きっと、今回の戦いで、俺は何かを得られるはずだ。 それが、この疑問の答えであると信じよう。 俺は目を閉じる。 やがて、俺の意識は暗闇へと堕ちて行った。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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