第十二話第十二話 「一刹那」 ( ´∀`)「やぁ、ツン。突然なんだがこのインコを肩に乗せてみてはくれないか?」 ξ゚△゚)ξ「何ですかこれ?」 ( ´∀`)「これはね、持ち主が言った言葉を自動的に敬語へと変換して、代わりに話してくれる機械なんだよ」 ξ゚△゚)ξ「へぇー」 ( ´∀`)「じゃあ早速なんだが、そのインコに向かって小声でいいから何か話してみてくれないか?」 ξ゚△゚)ξ「わかりました」 ξ゚△゚)ξ「暑苦しい」 ( ^ω^)「ここはとても暑いですね。換気をしたほうがよいのではないでしょうか?」 ( ´∀`)「とまぁこんな風にだね たった一言言うだけでも、その中に含まれた真意を自動的に汲み取り言語化してくれるわけなんだ」 ξ゚△゚)ξ「臭い」 ( ^ω^)「ここはとても不快な匂いがしますね。換気をしたほうがよいのではないでしょうか?」 (;´∀`) ξ゚△゚)ξ「汗かきすぎ」 ( ^ω^)「そんなに汗をおかきなさって大丈夫ですか?冷房をつけたほうがよいのではないでしょうか?」 ξ゚△゚)ξ「腹出すぎ」 ( ^ω^)「お腹きつくはありませんか?もう少しベルトをゆるめた方がよいのではないでしょうか?」 (;´∀`)「ちょ……もっと善意のある言葉を言ってほしいんだけど」 ξ゚△゚)ξ「生暖かい息吹きかけないでくれる?」 ( ^ω^)「冷たい息を吹きかけてはいただけないでしょうか?」 ξ゚△゚)ξ「っていうかそれ以上近寄らないで」 ( ^ω^)「もう少し離れてはいただけませんか?」 ξ゚△゚)ξ「この場から消えろ、ピザ野郎」 ( ^ω^)「ピザを差し上げますのでこの場から消滅してはいただけないでしょうか?」 (;´∀`)「ひ、ひどすぎるううううううううううう!!」 ξ゚△゚)ξ「黙れ」 ( ^ω^)「それ以上口を開かないでいただけませんか?」 ξ゚△゚)ξ「っていう夢を見たの」 ('A`)「何か聞いたことある話だな……」 (;^ω^)「ていうか何で僕がインコ役なんだお」 晴れ渡る空の下、歩く三人。 その前方には ( ´∀`)「もっとーたーかめてはてなくこーころーのおーくまーでー」 いつものように歌を口ずさむ巨漢。 陽気な歌声は、澄み渡る空へどこまでも響き渡っていく。 ( ^ω^)「結局、三日間全部モナー先生だったお」 ξ゚△゚)ξ「これは、私の夢が現実になる伏線……」 (;^ω^)「ねーお」 大会最終日。 昨日と同じく、空は雲一つない快晴。 その下を浮かない表情で歩く、一人の少年。 ('A`)「……」 ( ^ω^)「ドクオ、昨日はちゃんと眠れたかお?」 それに気づき、ブーンが心配そうに話しかける。 ('A`)「ん?……ああ」 ( ^ω^)「なら、いいんだけどお……」 ξ゚△゚)ξ「そのわりには暗ーい顔してるんじゃなーい?」 変わらない表情に気づき、ツンが割ってはいる。 ('A`)「そうか?」 ξ゚△゚)ξ「そうよ」 ツンの方を見ていた顔が前へと戻る。 ('A`)「……まぁ気にすんな」 ドクオはそのまま、ツン達を置いて先へと行ってしまった。 ξ゚△゚)ξ「……なーんか、変よね」 ( ^ω^)「やっぱ寝不足なのかおね」 ξ゚△゚)ξ「とりあえずあんた、今日一日ちゃんとドクオのことサポートしてあげなさいよね」 ( ^ω^)「把握だお!」 元気のいい返事を返し、ブーンは小走りでドクオの後を追った。 ( ^ω^)「おっ!もっと強くいくお!」 ('A`)「おう」 ( ^ω^)「オラオラオラオラオラオラオラ!!」 ('A`) ( ^ω^)「オラオラオラオラオラオラオラ!!!」 ('A`) ( ^ω^)「オラオラオラオラオラオラオラ!!!!」 ('A`) (;^ω^)「オラオラオラオラオラ……」 (;^ω^)「ちょwwwwww大丈夫なのかお!?」 ('A`)「ああ」 (;^ω^)「ドクオ、体柔らかすぎだお」 シートの上でTの字を描くドクオの体。 その周りは同じようにストレッチをしている人や、トラックを走る人で溢れ返っている。 ( ^ω^)「予選まで大体後一時間くらいだお」 ('A`)「ああ」 覇気のない返事。 口はほとんど動かず、本当に喋ったのかどうか疑いたくなる程に、か細い声だった。 ( ^ω^)「今日は予選、準決、決勝って三回も走るんだお? もっと元気出さないとダメだお!」 ('A`)「ハードルは予選、決勝で終わりだぞ」 (;^ω^)「あ、あれ、そうだったっけ?」 ('A`)「……へっ、しっかりしてくれよな」 微笑を浮かべながらスパイクを履くドクオ。 ポンとブーンの肩を叩くと、そのままトラックへと歩いていった。 (;^ω^)「……おっ!」 少しの間を置き、後ろを振り向く。 ( ^ω^)「ドクオ!頑張れお!!」 気だるそうに歩く背中にエールを送る。 ドクオは背中を向けたまま、右手を軽く振りその声に応えた。 ただ練習をしに行くだけだと言うのに、ブーンはまるで試合前の激励のようにドクオへ声をかけた。 それは考えるより先に口から出た、純粋な言葉だった。 ( ^ω^)(ドクオなら、大丈夫だお) いつもの笑みを見ることが出来たからだろう。 ブーンの心配は、既にどこかへと消え失せていた。 ( ・∀・) ('A`)(まーたこいつか) ドクオはハードルが置かれたレーンに並び、自分の順番が来るのを待っていた。 その前には、いつものように何を考えているか分からない表情で佇むモララー。 手首や足首などあらゆる関節を回しながら、じっと前を見つめている。 関節から響く甲高い音に、次第に苛立ちを感じ始める。 ('A`)(後つかえてんだから早く行けよなぁ……) ドクオの後ろにも五人程選手が並んでおり、ドクオと同じく苛立った視線でモララーを見つめている。 ( ・∀・)「ふぅー」 大きく息をつき、ようやくスタートの構えに入る。 足をブロックに設置し、しばらく間を置いてから駆け出していった。 機械のような精密な動きで、見る見るうちに障害物を越えていくモララー。 あっという間にその巨体は小さくなり、やがてその動きも完全に止まった。 ('A`)(あんなぬけた面して速いんだもんなぁ。全く、やんなるぜ) ため息をつきながらスタートの構えに入る。 後ろのことも考慮してか、落ち着く間もなく前へと駆け出した。 踏み出す左足。問題は、次だ。 多少踏み込む力を加減して右足を前へと出す。 ('A`)(……走る分には大丈夫そうだな) 痛みが走らなかったことに安堵する。 しかし、休む間もなく次の関門。 ('A`)(後は踏み切りか) 徐々に近づくハードル。 覚悟を決め、右足で地面を強く蹴る。 ('A`)「ふっ!」 空中へ浮き上がり、そのまま障害物を軽々越えていく。 ('A`)(おっ、結構大丈夫そうだな。ただ、ちっと高すぎるのが問題か) 昨日と同じく、高く飛びすぎる体。 ギリギリを意識し、次の跳躍へ備える。 ('A`)「……!!」 その思いとは裏腹に、その体はまたも宙高く飛び上がってしまった。 (;'A`)「うわっ!」 着地でバランスを崩す。 次のハードルには足が合わないと判断し、手を前に出し無理矢理倒す。 そのまま障害物のない道を走り、レーンから脱出した。 (;'A`)「はぁはぁ」 息を整えながら後ろを向く。 次の走者が、スタートの体制に入っているのが見えた。 (;'A`)(ダメだ。右膝がぶつかるのを怖がってる) 昨日のミスが、走りや跳躍自体に影響することはなかった。 しかしその痛みが、ドクオの脳裏に恐怖を焼き付けてしまった。 今までにもこういうことは何度も体験してきた。 むしろ、一度もどこかをぶつけずに大会を終えたことなどなかった程だ。 (;'A`)(しょうがない。これ以上やってひどくなってもあれだし、後は予選で慣らすしかないな) ドクオの頭の中を渦巻くもの。それは、痛みへの恐怖ではない。 試合の途中で走れなくなる恐怖。躓き転んで全力を出し切れない恐怖。 (;'A`)「くそ、最後の地区大会だってのに……」 そして、『最後』という言葉。 これらが靄のようにドクオの体を取り巻き、四肢の自由を奪っていた。 眩しいくらいの日差し。 露出した肌に当たり、ジリジリと照りつける。 ('A`)(本当にまだ春なのかよ) ドクオは黄色いユニフォーム姿でレーン上に立っていた。 隣に視線を向けると ( -∀-)「ふぁぁーあ」 大きく口を開き、あくびをするモララー。 前々から知ってはいたが、隣に立つとその背の高さに改めて気づかされる。 ('A`)(緊張とかしたことあんのかね、こいつは) 斜め上に移動していた瞳を元に戻す。 ズラリと並んだ十の障害物。 モララーの目にはどう映っているのだろうと、何となく考えてしまう。 ('A`)(……集中集中) 「我が息子ドクオよ、が~~~んばれよ~~~~~い」 (;'A`)「へ?」 気の抜けるような声。 観客席へと目を向けると (´^┏o┓^`)「行け行けドクオー!」 J( '-`)し「ドクオー頑張ってー!」 (´^┏o┓^`)「なにやってんのカーチャン!そこは普通『押せ押せドクオー!』だろ!」 J( '-`)し「あらいけない。私としたことが」 (´^┏o┓^`)「よーし、もう一回いくぞ!せーの!」 柵から身を乗り出し、元気のいい声援を送るトーチャンとカーチャンの姿があった。 (;'A`)「うわ……」 周りの視線も気にすることなく、満面の笑みでこちらへ手を振っている。 (;'A`)「はは……ははは……」 苦笑いで手を軽く振り返すと、すぐに前を向き、スタートの合図を待った。 「位置について」 スピーカー越しに係員の声がかかった。 無言で、これから走る110mへ向け礼をする。 前へ踏み出し、脱力した体を三度跳ねさせる。 両腕を前へ振り交差させ、その反動で今度は後ろへと振る。 大腿と脹脛を叩き、小気味良い音を響かせた後、手をタータンへとつけた。 上下逆さまになった視界で両足を確認し、ゆっくりとブロックへ設置。 一度前を見てから膝をつけ、頭を下げる。 ふと、少し腫れた膝が目に入る。 恐怖が、再び頭を過ぎる。 振り払うかのように目を瞑った。 太陽の放つ熱線。肌に当たる熱さだけを考えることにした。 「用意」 目を開き、腰を上げる。 ――パァン! 炸裂音と共に、熱を帯びた体を弾き出した。 スタート直後。 モララーがいきなり視界に入るが、それもわかりきっていたこと。 ('A`)(隣を意識しちゃダメだ……) 素早く言い聞かせ、目の前のハードルへ意識を集中させる。 ――跳躍。 ギリギリとは言えないものの、練習のときよりは幾分マシになったか。 少しの安堵。 そして、それを嘲るかのように、視界の隅に映る赤色。 正確無比なハードリングで前へ前へとどんどん進み、無駄な動作などどこにも見当たらない。 ドクオが二度目の跳躍に踏み切ったとき、モララーは既に二つ目のハードルを越えていた。 (;'A`)(くっ、焦るな) 三台、四台。 前へと進むにつれ、モララーとの距離は徐々に広がっていく。 (;'A`)(今はしょうがないんだ。ここで無理をすれば、決勝で走れなくなる) 五度目の跳躍。 焦りが形となって現れたのか。 練習のときと同じように、宙高く飛び上がってしまう体。 モララーが、見る見るうちに遠ざかる。 (;'A`)(ちくしょう……) このままでいいんだ。 このままでいいのか。 今は負けてもいいんだ。 今は負けてもいいのか。 それは、一刹那の葛藤。 (;'A`)(負けても、なんて考えてる時点で、決勝の勝負も決まったようなもんか……) 目の前に迫る、七台目の障害物。 (;'A`)(今、やるしかないよな!) 踏み切り、上体を前へ、深く前へと倒す。 ハードルに擦れる左臀部。 (;'A`)(よし!) 右脚は何の抵抗も受けることなく、障害物を越えて行った。 続いて、八台目、九台目。 ドクオの体はハードルに吸い付き、だが決して衝突することなく、その障害物を超えて行く。 しかし (;'A`)(くそ!) モララーとの差は変わらない。 離れることはないが縮まることもない、変わることのない距離。 十度目の跳躍。 擦れる臀部も気にせず、モララーだけを見据える。 (;'A`)「がっ!」 右膝に強い衝撃。 思わず、苦痛の声が漏れ出る。 決して気を抜いた訳ではなかった。 それどころか、前を走るモララーへの闘志は、今までにないほどの高まりを見せていた。 しかし、その滾る闘志が、頼りない少年に不相応な熱い想いが、彼の動きを鈍らせた。 (;'A`)「くっ!」 忘れていた痛みが、蘇る。 ゴールまで、残り僅か。 ぐらついた体勢を立て直し、最後の力を振り絞る。 重い足を必死に振り上げる。 軽い腕を必死に振り上げる。 視界には徐々に近づくゴールライン。 そして、空を見上げるモララーの姿だけが映っていた。 (;^ω^)「ドクオ、お疲れだお」 (;'A`)「はぁはぁ」 心配そうな表情で駆けてくるブーン。 (;^ω^)「右膝、大丈夫かお?」 (;'A`)「どうってこと……ないさ」 (;^ω^)「とりあえず、そこにいると邪魔になるからあっちへ行くお」 膝に手をつき呼吸を整えているドクオにそう促し、隅へと連れて行く。 ( ^ω^)「途中から結構追い詰めてたんだけど、最後のハードルでミスっちゃったおね」 (;'A`)「……ああ」 タオルで汗を拭いながら、ドクオが答える。 ( ^ω^)「でも大丈夫だお!次はきっと抜けるお!」 (;'A`)「……ああ」 (;^ω^)「……とりあえず、決勝に備えてゆっくり休むお」 (;'A`)「……ああ」 日差しの当たらない屋根の下。 冷たいコンクリートの上で、ドクオは氷嚢を右膝にあて、休んでいた。 ξ゚△゚)ξ「ベストには程遠いタイムだけど、まぁ悪くはないんじゃない。 最後のハードルを覗けば、ね」 その前に記録用紙を持ったツンが立ち、いつもの調子で話している。 ξ゚△゚)ξ「次が勝負よ。しっかり休んで、今度こそあの抜け面男に勝ちなさい」 ('A`)「……」 ドクオは返事もせず、ボーっとどこかを見つめている。 ξ゚△゚)ξ「ちょっと、聞いてるの?」 ('A`)「……」 ξ#゚△゚)ξ ツンは座っているドクオに近づき ξ#゚△゚)ξ「返 事 は ! ?」 大声で怒鳴った。 (;'A`)「は……はい」 虚ろな視線が元に戻り、小さな返事が返ってくる。 ξ゚△゚)ξ「ふん!」 ツンはそれを聞くと、どこかへ歩いて行ってしまった。 (;^ω^)「……怖」 ('A`) ( ^ω^) 残されたブーンとドクオ。 無闇に言葉を交わすことなく、静かな時だけが流れていく。 トラックを見下ろすと、どうやら競歩が行われているようだった。 観客席にいる人たちも競歩を見るのは退屈なのだろうか。 席に座ってご飯を食べたり雑談をしたりと、各々激しく続いた応援の合間の休憩をとっているようだ。 (;^ω^)(競歩の人は可哀想だお) そんなことを思いながら、眼下に広がるゆったりとした空間を眺めていた。 ('A`)「……っと」 しばらくすると、ドクオが氷嚢を置き、立ち上がった。 ( ^ω^)「アップかお?」 ('A`)「ああ」 脚を見ると、まだ赤く腫れあがった右膝。 ( ^ω^)「……ドクオ」 ('A`)「ん?」 歩き出そうとするドクオの足を止める。 ( ^ω^)「ドクオはもう全部わかってると思うから、僕から言うことは何もないお」 ('A`)「……」 ( ^ω^)「だけど、一つだけやってほしいことがあるんだお」 ('A`)「やってほしいこと?」 首をかしげるドクオ。 それを見て、力強く頷く。 ( ^ω^)「勝利のジンクスみたいなもんだお」 (;'A`)「――それって、この前お前がやった奴じゃねぇかよ」 ( ^ω^)「そうだお!だからこそやるんだお!」 自信満々にブーンは答える。 いつもと同じ、太陽のような笑みをその顔に浮かべて。 (;'A`)「つっても、打ち合わせした上でやるのは相当恥ずかしいんだが」 ( ^ω^)「気にしちゃダメだお!これも勝利のためだお!」 (;'A`)「んー……」 ドクオはポリポリと頭を掻き、困ったような表情で考え込む。 しばらく思案した後、ようやく顔をあげ (;'A`)「あー……コホン」 わざとらしい咳をしてから、口を開く。 ('A`)「俺の走り、見ててくれよ」 真っ直ぐ立てられた親指。 堂々と突き出すドクオの顔に、迷いはなかった。 ( ^ω^)「もちろんだお!」 ブーンも同じように、立てた親指を真っ直ぐ前へと突き出した。 ('A`)「じゃ、行ってくる」 ( ^ω^)「がんばれお!」 ドクオは背中を向けたまま、軽く手を振り応える。 この光景を見るのは今日二度目だ。 ( ^ω^)「これできっと、ドクオは勝ってくれるお」 一人残されたブーン。 と 「よぉ」 (;^ω^)「お」 背後から聞きなれた声。 振り向かずとも、誰だかわかった。 _ ( ゚∀゚)「よくも昨日は逃げてくれたなぁ?ブーン」 (;^ω^)「ジョルジュ……」 よく見ると、顔に擦り傷のようなものが見える。 (;^ω^)「その傷どうしたんだお?」 それを聞き、突然声を荒げ激昂するジョルジュ。 _ (#゚∀゚)「知らねーよ!!てめぇと話してたと思ったらいつの間にか草の上で寝ててよ。 足は痛いわ、腹は痛いわ、顔は痛いわで何が何だか俺の方が聞きてぇよ!!」 (;^ω^)「え、でもいきなり走り出したのはジョルジュじゃないかお」 _ (#゚∀゚)「はぁ?んなことした覚えがねーから言ってんだろうが!!」 大声で捲し立てるジョルジュ。 その勢いに押され、ブーンはただたじろぐしかなかった。 _ (#゚∀゚)「てめぇが何かしたんだろ?」 (;^ω^)「え?」 _ (#゚∀゚)「てめぇが薬とか催眠術とか使って俺に何かしたんだろ!?」 (;^ω^)「ちょwwwwwwwwそんな無茶なwwwwwwwww」 _ (#゚∀゚)「うっせー!!それ以外考えられねぇんだよ!!」 (;^ω^)「そんなもん僕に使えるわけないじゃないかお!」 _ (#゚∀゚)「だぁぁぁまれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 声のボリュームを更に上げ、掴みかかろうとしてくるジョルジュ。 (;^ω^)「うわ!や、やめろお!」 _ (#゚∀゚)「ぶっ飛ばす!!」 ブーンは必死にその手から逃れる。 慌てて走り出し、その場から離れようとすると ( ´∀`)「はぁー、スッキリしたモナ。三日ぶりのウンコは格別モナ」 ハンカチで手を拭きながら歩いてくる巨漢。 (;^ω^)「せ、先生!」 ( ´∀`)「どうしたモナ?」 そのままその巨体に隠れる。 _ (#゚∀゚)「何隠れてんだゴルァ!!」 (;´∀`)「な、何モナ?何が起こってるんだモナ?」 (;^ω^)「先生!助けてくださいお!」 モナーを挟み膠着状態を続ける二人。 (;´∀`)「助けてって、一体どういうことなんだモナ?」 _ (#゚∀゚)「さっさと出て来いや!!」 (;^ω^)(くそ、このままじゃ埒があかないお……こうなったら) ( ^ω^)「あ!あんなところに、バスト推定91cmおっとり天然系のお姉さんが!」 _ (;゚∀゚)(;´∀`)「なにぃ!?」 _ (;゚∀゚)「どこだ!?どこにいる!?」 (;´∀`)「どこにいるモナ!?あずさ似の巨乳お姉さんは!」 慌てて首を回し、ブーンが言うバスト推定91cmおっとり天然系のお姉さんを探す二人。 _ (;゚∀゚)「おい!どこにもいやしねーじゃねーか!!」 視線を元に戻すが _ (;゚∀゚)「あれ」 そこにブーンの姿はなかった。 _ (#゚∀゚)「あのやろおおおおおおおおおお!!!絶対にぶっ殺す!!!!」 背中にはコンクリートの冷たさ。 脚にはタータンの冷たさ。 同じ冷たさでも、それぞれが独特の感触を持ち、火照った体を冷やしていく。 ('A`) 目の前に広がる灰色の天井。 徐々に視線を下げていくと、その切れ目から青々とした空が顔を覗かせる。 ドクオは今、110mH決勝の召集を待っていた。 今行われている競技が終わり、しばらくすれば プログラムを持った係員が来て、レーン順に選手の名前を呼んでいくだろう。 と、突如現れる巨大な人影。 ( ・∀・) ドクオの目の前を通り過ぎたかと思うと、すぐ隣へ腰を下ろした。 ('A`) ( ・∀・) 変化のない時間が、しばし流れる。 ( -∀-)「ふぁぁーあ」 今日聞くのは二度目。 ('A`)(またかよ) ( -∀-)「……」 モララーは大きなあくびをすると、目を閉じそのまま寝息を立て始めた。 (;'A`)(試合前だっつうのに……) ドクオは呆れたような表情を浮かべ、ため息をつく。 ('A`)「はぁー」 ('A`)(やっぱ、こいつは大物だな) その行動に、呆れつつも感心する。 何となく真似するように、ドクオも目を瞑る。 黒に覆われる視界。 意識は真っ逆さまに、暗闇の底へと落ちていった。 川 ゚ -゚)「膝は大丈夫なのか?」 目を開くと、そこにはクーの姿があった。 (;'A`)「あれ、俺寝ちゃったのか?」 川 ゚ -゚)「いや違う。私が呼んだだけだ」 見ると、クーは正座をし、改まった様子でこちらを見つめている。 川 ゚ -゚)「で、どうなんだ?」 (;'A`)「え?何が?」 川 ゚ -゚)「さっき私が言ったことを、聞いてなかったのか?」 言われて、数秒前の記憶を拾い上げる。 (;'A`)「……ああ、膝のことか」 ふと、右膝を見やる。 今尚赤く腫れあがるそれをしばらく見つめた後、クーの目を真っ直ぐ見つめ、答える。 ('A`)「大丈夫かどうかなんて気にしてられねーよ。今はただ、走ることに集中するだけだ」 川 ゚ ー゚)「……そうか」 迷いのない瞳を見つめ返し、クーが呟く。 川 ゚ ー゚)「ならば私からも、何も言うことはないな」 立ち上がり、ドクオへと近づく。 ゆっくりと上げた手を肩に掛け 川 ゚ ー゚)「頑張って来い」 ('A`)「へっ、言われなくても」 川 ゚ -゚)「私の敵討ち、頼んだぞ」 ('A`)「へ――」 疑問の言葉は声にならず、ドクオの視界は一瞬にして暗転した。 静寂に包まれる場内。スタート前に訪れるひと時の静けさ。 吹き抜ける涼しげな春風の音と心臓の鼓動音だけが耳に響く。 ( ・∀・) 何の因果か、隣に再度現れた赤い巨人。 きっと、親切な係員が――いや、親切な神様がこの舞台を整えてくれたに違いない。 「位置について」 スピーカーから流れる声。 一礼をし、前へと出る。 いつものように体を動かし、いつものように準備は整った。 いつもと違うのは、この熱く燃え滾る胸の内だけ。 (-A-) 目を閉じ 「用意」 ('A`) 開き ――パァン! 炸裂音と共に、決勝の舞台へ、決着の場へと駆け出した。 ('A`) (;^ω^) ξ;゚△゚)ξ あっという間だった。 ('A`) (;^ω^) ξ;゚△゚)ξ 気づけば、いつの間にか、ハードルに脚を引っ掛け いつの間にか、地面へ這い蹲る自分の体。 ('A`) (;^ω^) ξ;゚△゚)ξ もちろん、そんなことになってモララーに勝てるはずもなく それどころか | ^o^ |「じゅんゆうしょうは わたしです」 ('A`)「……あんなやつに負けてしまった」 | ^o^ |「しょうぶのあとのコーラ おいしいです」 ('A`)「……欝だ」 (;^ω^)「そ、そんな落ち込むことないお」 ξ;゚△゚)ξ「そ、そうよ!こういうこともたまにはあるわよ!」 ('A`)「……死にたい」 (;^ω^) ξ;゚△゚)ξ ドクオのぼやきはしばらく続き、ブーン達はそれをじっと眺め 時たま、効果のない慰めを送ることしか出来なかった。 | ^o^ |「いとこの ゆうたろうです よろしく」 (;^ω^)「ドクオ!元気出すお!」 ('A`) (;^ω^)「まだ次があるお!県大会で今度こそ勝ってやればいいじゃないかお!」 ('A`) 騒々しい走行音が耳に響き、体には不規則な揺れが襲い掛かる。 帰りの電車内、ブーンは相変わらずドクオを励まし続けていた。 (;゚ ω゚ )「今日はたまたま……ってああ!!」 ブーンの視線の先。 開いていた扉が、空気の抜けるような音と共に閉まっていく。 (;゚ ω゚ )「お、下りるの忘れちゃったお……」 ('A`) そんなブーンの叫びにも何の反応も示さず、ドクオはただ、虚ろな視線を前へと向け続けていた。 (;^ω^)「……しょうがないお。このままだと心配だから、ドクオの駅まで乗っててあげるお」 再び電車は走り出し、やがてまたそのスピードを落としていく。 (;^ω^)「ドクオ!もうそろそろつくお!」 ('A`) やはり返事はない。 電車は完全に止まり、扉が開く。 (;^ω^)「ほら!下りるお!」 いつもは軽いドクオの体。 今は全身の力が抜けているのだろうか。 想像以上の重さが腕にのしかかり、ブーンは必死に体を支えドクオを電車から下ろした。 (;^ω^)「今日はゆっくり休むんだお!」 ('A`) 空虚な顔はやはり何の反応も示さないまま、閉まるドアによってかき消される。 (;^ω^)(あそこからちゃんと帰れるのか……心配だお) (;^ω^)「ふぅー、疲れたお」 肉体的にも精神的にも疲弊しきった体を、シートへと預ける。 ( ^ω^)(やっぱり、この時間になると電車の中もガラガラだお) 落ち着いたところで周りを見回す。 他のシートにはチラホラとしか人は見られず、ほぼ空になった箱はその速さを変えることなく走り続けていた。 ( ^ω^)「お」 ふと、遠くの方に目をやる。 そこには制服を着た、長い黒髪の美しい少女が座っていた。 ( ^ω^)(見たことない制服だお。どこの学校かお?) 背筋をピンと張りお手本のような正しい姿勢で、手に持った本を無表情で見つめている。 ( ^ω^)(そういえば、明日は学校だお) 明日は月曜。 いくら三日連続の大会に疲れきっているとは言え、ブーンにとって学校は楽しみでしょうがないものだった。 ( ^ω^)「またしばらく、のんびりできるお……」 暗闇に広がる点々とした光を眺めながら、小さく呟いた。 (;^ω^)(あ、そういえば乗り換えるの忘れてたお) (´^┏o┓^`)「うひゃひゃひゃwwwwww」 ('A`) J(;'-`)し「ちょ、ちょっと!あなた笑いすぎよ!」 食卓に広がる家族団らんのひと時。 そんな中、対照的な表情を浮かべるドクオとトーチャン。 (´^┏o┓^`)「だ、だってwwwwwwあんな壮絶なコケ方wwwwwww わwwwww笑いが止まんねwwwwwwwww」 J(;'-`)し「あなたもう止めてよ!そんなに笑うと……」 J( 'ー`)し「あひゃwwwwww私まで釣られちゃうじゃないwwwwwwww あひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwwwww」 ('A`) 重なるけたたましい笑い声。 二つのノイズを背中に受けながら、ドクオは自分の部屋へと戻っていった。 ('A`)「はぁぁぁ」 大きなため息をつくドクオ。 川 ゚ -゚) それを無言で眺めるクー。 ('A`)「はぁぁぁぁ」 川 ゚ -゚) ('A`)「はぁぁぁぁぁ」 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) 川 ゚ -゚)「そんなに、悔しいか」 静寂を破り、クーが口を開く。 ('A`)「……悔しいね」 それに答えるドクオ。 川 ゚ -゚)「そんなに、悲しいか」 ('A`)「……悲しいね」 川 ゚ -゚)「そんなに、泣きたいか」 ('A`)「……泣きたいね」 川 ゚ -゚)「そうか」 そう言うと、クーは台所の方へと向かった。 帰ってきたクーが手に持っていたもの。 それは 川 ゚ -゚)「さぁ、これで存分に泣くといい」 ('A`)「……何これ」 コタツに置かれたそれを見てドクオが尋ねる。 川 ゚ -゚)「見ればわかるだろう。タマネギと包丁とまな板だ」 ('A`)「いや、それはわかるんだけどさ」 川 ゚ -゚)「これを切れ。どんな切り方でもいい。バラバラに切り刻んだって構わない。 とにかく、胸の内に溜め込んだ想いを思い切り吐き出しながら、好きにやればそれでいい」 ('A`)「好きにしろと言われても……」 川 ゚ -゚)「涙を人に見せてはいけない」 相変わらず暗い表情のドクオを見ながら、クーが言い放つ。 川 ゚ -゚)「だけど人の涙は、枯れるまで見届けてあげなさい」 川 ゚ -゚)「そう母に教えられた」 ('A`)「……」 無言のまま包丁を握り、タマネギへと振り下ろす。 ('A`)「……」 切り方など気にせず、思うがままに包丁をタマネギへと振り下ろす。 ('A`)「……くそ」 見る見るうちに粉々になっていくタマネギ。 ('A`)「ちくしょう」 タマネギが小さくなればなるほど、ドクオの声は大きくなっていく。 ( A )「ちくしょう!」 一旦手を休め、顔を伏せる。 (;A;)「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 顔を上げながら大声で叫び、包丁を一心不乱に振り下ろす。 ドクオの目に溢れかえる涙。それらは緩やかに頬を伝い、切り刻まれたタマネギの上へと落ちていった。 川 ■□■)「これが……青春か」 サングラスとマスクをつけたクーはその光景を見ながら一人、年寄り臭い事を呟いていた。 戻る 目次 次へ |