第四話第四話 「寝顔、ときどき、笑顔」 ('A`) 「ふぁぁ~あ」 大きなあくび。 ('A`) 「ん……まだ終わってないか」 また目を瞑る。 (-A-)「……すーすー」 小さないびき。 (;^ω^)「……またかお」 またかと呟く。 今日はVIP高校の終業式だった。 部活や作文などの表彰を行い、校長の話を聞く。それくらいの取るに足らない行事。 生徒にとってはこの後配られる通信簿の方がよっぽど大きなイベントだろう。 ( ´∀`)「その不思議な容姿から学校中で謎を巻き起こしてるのはこの人ー!」 スピーカーから進行役の教師の陽気な声が響く。 (;^ω^)(何でエンタ風の紹介なんだお) ( ´∀`)「口癖はいつも絶好調!荒巻校長ー!」 (;^ω^)「うわ、つまんね」 ( ´∀`)「いつも学校とは関係ない話で生徒達を退屈の渦に巻き込む荒巻校長。 今日は一体どんnぐふぉ!!」 醜い悲鳴を残しスピーカーは何の音も発さなくなる。 lw´‐ _‐ノv「……それでは校長先生のお話お願いしますじこ」 (;^ω^)(一体何があったんだお) ( ^ω^)(まぁ実際モナー先生の言ってることは正しいお。 あの場で言っちゃうのは流石にまずいと思うけど) 校長の話が退屈、と言うのは小中高と変わらない不変の道理だ。 生徒達は大抵寝てるか考え事をしていて、まともに聞いている人などほとんどいない。 ( ^ω^)「さて、僕も一眠りするとしようかお」 一人そう呟くと前で寝ているドクオと同じように俯き、目を瞑った。 それは校長が話し出すのとほぼ同じタイミングだった。 / 。゚ 3「ご紹介に預かった、私が校長だ」 (;´ω`)「お?」 ――――――――夢―――――――― ('A`)「ズズッ……はぁ」 お茶をすすり、一息つく。その目の前には / ,' 3「ズズズッ……ほぉ」 同じようにお茶をすする老人の姿。 ('A`)(それにしてもクーの奴、今度は校長を乗っ取るとは) ドクオが目を覚ますとそこにはコタツに入りじっとしている新巻の姿。 荒巻が大して驚かず何も聞いてこないので、事情を説明するのは保留することにしていた。 ('A`)「ま、お茶飲ませとくだけで黙ってるんなら、こっちとしては助かるからいいんだけど」 / ,' 3「ん?何か、言ったかね?」 (;'A`)「あ、いや!何でも……ないです」 (;'A`)(やべ、口に出しちまった。聞こえてなくてよかった) / ,' 3「ズズズズッ……ふぇぇ」 ――――――――現実―――――――― (;´ω`)「なんかいつもの校長と違う感じがしたような……」 微かな異変に気づき、目を開く。 ステージの上にはいつもの校長の姿が見えた。 だが、発せられた言葉やふいんきからはいつものそれを感じとれなかった。 / 。゚ 3「…………」 ( ^ω^)(あれ、黙っちゃったお) 第一声から既に三分は経過しただろうか。 それは、カラオケに来たのに何も歌わない友達にその場のノリで ( ^^ω)「ビコーズも歌えホマ!黙っててもつまんないホマ!」 と、無理矢理曲を入れマイクを押し付け ( ∵)「………………」 そのまま歌なしで曲だけが流れ続けている時の気まずさに近いものを漂わせていた。 (;^ω^)(なんか胸の辺りがチクチクするお) / 。゚ 3(校長になったのはいいものの話す内容を考えていなかった。どうしようか) そんなことも露知らず、クーは何を話せばいいかのんびりと考えていた。 / 。゚ 3(やはり校長だから学校のことについて話すべきだろうか。 しかし、一概に学校のことと言ってもたくさんありすぎるな……) / 。゚ 3(しょうがない、これでいこう) (;^ω^)(まだしゃべらないのかお……もうこんな状況耐えられないお!) / 。゚ 3「みなさんは『セイコウイ』と言う言葉を聞いたことがあるだろうか?」 (;^ω^) ( ゚ω゚ ) まるで予想だになかった言葉に体育館中が凍りつく。 / 。゚ 3「おそらく聞いたことがない人が大半だと思う。かく言う私も最近初めて聞いたばかりだ」 (;^ω^)(このおっさんとうとうボケたのかお) / 。゚ 3「だが、初めて聞いた人もそうでない人もこれだけは覚えておいてほしい。 雰囲気に飲まれてセイコウイに及ぶと言うのはとても愚かなことだ。 飲んだら飲むな、乗るなら乗るな。くれぐれも気をつけておいてほしい」 / 。゚ 3「それでは失礼」 軽くお辞儀をした後、ステージを降りていく。 が、もう少しで全ての階段を降り終えるという時にハプニングは起こった。 / ;。゚ 3「お……おおぅ!!」 そのまま前のめりに転び床を滑走。 頭から落ちず手で受身を取れたのが不幸中の幸いだろうか。 (;´∀`)「こ、校長!大丈夫モナ!?」 反応はない。ただうつ伏せのまま動かない。 (;´∀`)「し、死んじゃダメモナ!!あなたが死んだら誰が校長を…… あ!でも僕が代わりにやれば済むモナね!じゃあそのまmへぶっ!!」 lw´‐ _‐ノv「校長、だいじょうぶい?」 すぐ横に仰向けで横たわる巨体。 それにも一切気づいてないかのように小声で答えるクー。 / 3「手首……折れた」 lw´‐ _‐ノv「それは大変。今すぐレスキュー隊を呼ばないとんふぁー」 そう言うとくるりと一回転し lw´‐ _‐ノv「レスキュー隊参上。私が来たからにはもう安心漏れないスリム」 重さなど感じていないかのようなスピードで、クーを背中に担いだまま保健室へと駆けて行った。 何が起きたのかよく分からず呆然とする生徒達。 だがそれが続いたのもほんの僅かな間だけ、しばらくすると徐々に騒ぎ始める。 (;^ω^)(この学校これで大丈夫なのかお……) ――――――――夢―――――――― (;'A`)「ブフォッ!!」 クーがステージ上で沈黙を破った頃、ドクオはブラウン管に向かって勢いよく茶を噴出していた。 (;'A`)(生徒の前でなんつーこと言ってんだこいつ……) 後ろを振り返ると未だにのんびりと茶をすする荒巻の姿。 どうやらテレビの内容に興味はないようだ。 / ,' 3「……お茶が、なくなってしまった」 (;'A`)「あ、はいはい!今入れてきますよ」 とりあえずテレビの中のことは置いておき、台所へと向かう。 (;'A`)「しかし、校長は気づいてないが……体に戻った後どうなるんだろ」 ('A`)「……まぁ元からボケてる節はあったし、大目に見てもらえるのかな」 お茶を入れ終え、居間へと戻ろうとする。 と、黒電話が鳴っていることに気づく。 ('A`)(お、もう戻るのか) 湯のみをコタツに置き、電話の方へと向かった。 ('A`)「ほいほい」 「……もう戻る」 受話器から響いたのはいつものメリハリのない声だったが、どことなく元気がない。 ふと、テレビの方を見る。 ('A`)「……何で画面真っ暗なんだ?」 「……目を瞑っているからに決まってるだろ。記憶消去の方頼んだぞ」 そう言い残し、受話器からの応答は途絶えた。 ('A`)「……ったく」 ブツブツ言いながらももう一度台所へ向かう。 薬瓶を手に取りとんぼ返り。そのまま荒巻の向かいへ腰を下ろす。 ('A`)「校長、ボケ防止によく効く薬があるんですが、お一ついかがですか?」 そう言いながら薬を一錠差し出す。 荒巻はゆっくりとそれを受け取り、じっと眺めた後口に入れそのままお茶で流し込んだ。 / ,' 3「ズズズッ……ほぇ」 いつもの調子で一息着く。 だが、その和やかな表情が次第に変化を見せ始める。 / ,' 3「…………ひっ」 /;,' 3「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」 ('A`)「こちらがトイレでございまーす」 (;'A`)「……ってあれ?」 前回と同じくトイレの前で案内をするが、荒巻は未だに叫んだまま動こうとしない。 (;'A`)「おいおいおい!!そんなとこでされたら困るんですけど!!」 急いで荒巻を背中に担ぎトイレへと運ぶ。 何とか便器に座らせることに成功し、外へ出る。 (;'A`)「……危なかった」 ホッとしたのも束の間。 トイレから流れる不協和音がドクオの腹を刺激し始める。 (;'A`)「は……はう」 耳を塞いでうずくまり、音が止むのをじっと待つのであった。 ――――――――現実―――――――― lw´‐ _‐ノv「校長、保健室に到着しましたらこ」 (;゚ー゚)「ちょっと、シュー!なんで校長先生担いでるの!?」 シューと呼ばれた教師はしぃの言葉も気にせず、そのままベッドへと荒巻を運ぶ。 (;゚ー゚)「一体何があったのよ……まだ終業式終わってないんじゃないの?」 lw´‐ _‐ノv「校長の話は終わったから問題ナッシング」 (;゚ー゚)「そういう問題じゃないでしょ……」 lw´‐ _‐ノv「後はしぃに任せる。 煮るなり焼くなり炒めるなり、好きにしてくれんこん」 (;゚ー゚)「え!ちょ、ちょっと!!シュー!!」 しぃの呼びかけも空しく、シューは颯爽と保健室から去って行った。 (;゚ー゚)「……もぉ」 / ,' 3「お茶が……ほしいなぁ」 (;゚ー゚)「え!……あ!はいはい!!今用意しますね」 ――――――――夢―――――――― 川 ゚ -゚)「ドクオ、セイコウイとは一体何なのだ?」 (;'A`)「へ!?」 荒巻と入れ替わるようにトイレから出てきたクー。 ドクオの向かいに座ると、いきなり疑問を投げかけてきた。 (;'A`)「何って……さっき自分で言ってたじゃないか」 川 ゚ -゚)「あれは昨日保健室の教師が言った言葉をそのまま言っただけだ。 実際は何のことなのか全く分からん」 (;'A`)「なんだよそれ……」 川 ゚ -゚)「もしや、ドクオも分からないのか?」 (;'A`)「え!?……そ、そう!そうなんだよ!!俺も分からないんだ」 川 ゚ -゚)「そうか……では、また次の機会にでも誰かに聞いてみるとする」 (;'A`)「いや!それはやめといたほうがいい!!」 川 ゚ -゚)「?何故だ?」 (;'A`)「何故……って言われると困るんだけど……」 川 ゚ -゚)「ならば構わんだろう」 (;'A`)「う……でもやっぱやめといたほうが……」 川#゚ -゚)「なんだ?言いたいことがあるならはっきり言え」 (;'A`)「いや……別にないですけど……」 川#゚ -゚)「うじうじしてる奴は男ではない!!蛆虫だ!!」 (;'A`)「ちょ!!それは危ないだ――」 クーはコタツの上にあった湯のみを掴み、ドクオ目掛けて投げた。 鈍い音と共に後ろへと弾かれる頭。 川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」 その台詞が耳に届く前にドクオの意識は途切れた。 ――――――――現実―――――――― ( ^ω^)「ドクオが寝てる間すごいことがあったんだお!!」 ('A`)「へぇ」 進行役がいなくなり騒然とした体育館内だったが 残っていた教師が何とかその場を収め、生徒達はそれぞれの教室へと戻っていた。 ( ^ω^)「なんと!!あの校長が問題発言!!」 ('A`)「ほぉ、それで何て言ったんだ?」 ( ^ω^)「聞いて驚くなお?あんな大勢の前で性行――」 ξ#゚△゚)ξ「まだ懲りねぇのかてめぇはぁぁぁぁあぁぁあ!!!!!」 ( ゚ ω゚ )「あんぎゃああああああああああああああ!!!!」 昨日見た光景がまた同じ場所で再生される。 ('A`)(ごめん、ブーン。狙ってやった) 从'ー'从「はーい、席に着いてー。通信簿配りまーす」 そんなことも知らずに教室へと入ってくる渡辺。 暢気な口調で話し始める。 ('A`)「おい、ブーン。起きろ」 ( ´ω`)「……ん、あれ?僕……」 ('A`)「先生来たから席に着け。お前の楽しみにしてた通信簿が返されるぞ」 ( ´ω`)「なんか……頚動脈が痛いお……」 首を押さえながら席へと着くブーンを見届けた後、自分の席へと戻る。 ('A`)(ちょっとブーンには悪いことしたかな……) ふと考えてみると、クーの件は自分のせいではない(と思いたい)にしろブーンは相当酷い目に合っている。 ('A`)(ツンとの仲ぐらいは取り持ってやるとするか) 从'ー'从「……ドクオくーん?いないのかなー?」 (;'A`)「へ!?あ、いますいます!!」 从'ー'从「いないんならこの通信簿は細かく切り刻んで紙吹雪にしちゃいまーす」 (;'A`)「いるって言ってんだろ!!」 HRが終わり部活が始まる。 終業式の後とは言っても大抵の部活はいつものように活動する。 もちろん、陸上部も例外ではない。 ('A`)「なぁ、ツン」 ξ゚△゚)ξ「ん?」 部活の準備をしていたツンに声をかける。 ('A`)「ブーンが謝りたいらしいんだけど」 ξ#゚△゚)ξ (;'A`)「あ、謝るくらいいいだろ!?そんなに怒ること――」 ( ;ω;)「ツン!ごめんお!!」 突然ジャンピング土下座で会話に割って入るブーン。 ツンの顔が驚きの表情へと変わる。 ξ;゚△゚)ξ「ちょっと、そんなことしたらあぶ――」 ( ;ω;)「ツンに悪いことしたなら謝るお!でも僕何にも心当たりがないんだお!! 昨日の朝ツンに殴られてからの記憶がなくて……嘘じゃないお!信じてお!!」 ξ;゚△゚)ξ「え……記憶がないって……それ本当?」 ( ;ω;)「本当だお!昨日の朝ツンに吹っ飛ばされた後、気づいたら廊下で大の字になってて もう何がなんだか分からなくて……」 ξ;゚△゚)ξ「…………」 そう簡単に記憶喪失など起こるものだろうか。 いや、それ以前に保健室でのブーンの行動にもおかしいところがあった。 ξ;゚△゚)ξ(もしかして殴られたショックで第二の人格が目覚めちゃったとか?) あり得ないとは思うがそんな理由でもつけなければ説明が出来ない状況だった。 ξ;゚△゚)ξ(私のせい……なのかな?) 悩んだ末に至った結論。それは―― ξ;゚△゚)ξ「ごめん、ブーン。私が悪かったわ」 ( ;ω;)「え?」 ξ;゚△゚)ξ「ブーンの話が本当だとすると私がブーンを殴っちゃったのが全ての原因じゃない? だとしたら謝るのは私の方だわ。本当ごめん」 ( ;ω;)「ち、違うお!!ツンが悪いわけじゃないお!! 悪いのは記憶力のない僕の頭――」 ξ#゚△゚)ξ「ああもう!! 私が悪いって言ってるんだからもういいじゃない!! これ以上言いあっても不毛なだけよ。あんたは悪くない!私が悪い!わかった!?」 ( ;ω;)「う……わかったお」 (;'A`)(何という強引さ。 ツンがしゃべるだけで問題が片付いてしまった。 この俺は間違いなく役立たず) ξ゚△゚)ξ「……ところでブーン。一つだけ聞いてもいい?」 ( つω;)「ん?なんだお?」 涙を拭き終えるまで待ち、そして尋ねる。 ξ゚△゚)ξ「保健室でのことも……全然覚えてないの?」 (;^ω^)「んー……ごめんお。やっぱり何も思い出せないお」 何となく分かりきっていた答えが予想通りに返ってくる。 ξ゚△゚)ξ「……そっか」 予想していたとは言え、やはりショックなものはショックだ。 表情には出さなかったものの、その語気は心なしか沈んでいた。 (;^ω^)「本当に……ごめんお」 ξ゚△゚)ξ「バカ、あんたのせいじゃないんだから謝らないでよ。 ほら、もう他のみんなはアップ行っちゃったわよ。早く練習始めなさい」 (;^ω^)「おっおっ!?本当だお!!ドクオ!早く行くお!!」 (;'A`)「お、おう」 ξ゚△゚)ξ「…………」 ブーンは悪くない。かといって自分が悪いのかと言えば、はっきりそうとは言い切れない。 昨日の出来事は自分に大きな期待と大きな失望を与えた。 確かなことはそれだけ。 やり場のない気持ちを抱えたまま、ツンは走り去るブーンを見つめていた。 ('A`)「……なぁ」 川 ゚ -゚) 「……っ……ほっ……なんだ?」 この夢を見るようになってから三日目。 実は日を重ねるごとに部屋の中の物が増えている。 ('A`)「ブーンの体乗っ取ってる時ってどんな感じだった?」 それは歯磨きセットから電子レンジまで、ジャンルを問わず少しづつ増えていた。 川 ゚ -゚) 「くっ……どんな感じ……と言われてもな」 そして、今日新しく増えた物、それは―― ('A`)「だからさ、ブーンになっていろいろ経験した訳だろ? その感想とかをだnぶへぇ!!」 川 ゚ -゚) 「あ、すまん。手が滑った」 (#)'A`)「……お前は俺が来るとどうしても顔に何か当てなきゃ気がすまないらしいな」 道化師の鼻を思わせる赤い玉、それを束縛するかのように糸で繋がれた十字状の剣。 本来その剣により動きを制限されているはずの赤い玉は 飼い主を無理矢理引っ張る犬のようにドクオの頬目掛け飛んでいった。 川 ゚ -゚)「剣玉とは意外と難しいものだな。すぐに手から離れていってしまう」 ('A`)「それは難しい以前の問題だと思うが。それより俺の質問に答えてくれよ」 川 ゚ -゚)「ああ、感想だったか? 特にはないが、強いて言えば体が重くて動きづらかったくらいか」 ('A`)「参考にならない意見をありがとう。じゃあ具体的に聞く」 ためるように一息つき、目を合わせたまま真剣に尋ねる。 ('A`)「ツンに告白しようとした時、どんな気分だった?」 川 ゚ -゚)「む……」 昨日のことを思い出し、少し顔をしかめながら答える。 川 ゚ -゚)「何てことはない。邪魔さえ入らなければ告白は成功していただろう」 ('A`)「いや……そういうことじゃなくてさ。 いろいろあんだろ、ワクワクした!とか、ドキドキした!とか」 川 ゚ -゚)「ワクワクと言う感情がよくわからないが とりあえず、告白について多少の期待は抱いていたぞ」 ('A`)「ドキドキは?」 川 ゚ -゚)「ドキドキ?緊張のことか?」 ('A`)「そうだ。失敗したらどうしようとか考えなかったか?」 川 ゚ -゚)「全く」 さもそれが当たり前なのだろうと言うかのように答えるクー。 ('A`)「やっぱりな……」 そして、その返答も予め予期していたかのように返すドクオ。 ('A`)「クー、それは恋とは言わない。 ただのごっこ遊び。ままごとみたいなもんだ」 川 ゚ -゚)「ままごととは何だ?」 ('A`)「そこは突っ込むとこじゃないだろ常識的に考えて……」 ('A`)「だから、結局俺が言いたいのはだな 他人の体使って恋愛しようとしたって意味ないってこと。 そんなことしたってお前の求めてるものは得られないんだよ」 川 ゚ -゚)「何故そう言い切れるんだ?」 ('A`)「恋愛ってのは常にドキドキするもんなんだよ。 ああ今目合った絶対あいつ俺のこと好きだよ、とか うわあの子俺の席座って友達と話してる絶対俺のこと好きだよ、とか うはwwwww挨拶されちったwwwww絶対(ry」 川;゚ -゚)「お……おい……ドクオ」 ('A`)「それなのに女って生き物はちっとも俺に寄ってこようとしない。 あんなに思わせぶりな態度とっておいて告白したらはいごめんなさい。 もうね、アホかとバカかと。そこまでしたら普通OKするだろと。 問い詰めてやりたいね。小一時間、いや小一時間とはいわずもっと――」 川;゚ -゚)「しっかりしろドクオ!目を覚ませ!!」 そう言いながら肩を掴み激しく揺さぶる。 ('A`)「そもそも男女と言う性別をなくしたらいいのかもしれないな。 そうだ!そうだよ!みんな無性生殖出来るようになればいいんだ。 そうすれば俺みたいに苦しむ奴も出なくなるし男女格差もなくなる。 何という名案。これ一つで複数の問題が解決できてしまう。間違いなくこれはノーヴェフッ!!」 川#゚ -゚)「しっかりしろと言ってるのが分からんのかこの天ぷら野郎!!」 パァン!パァン!と言う小気味良い音がリズムよく響く。 (#)'A`)「ブフッ!ベフッ!ボフッ!バフッ!」 川#゚ -゚)「これでもか!これでもか!これでもまだわからんか!?」 (#)'A`(#)「ちょっ!グッフェ!クーさボフッ!やめ……やめてぇぇぇぇ!!!」 快音が何回響いたか丁度数え切れなくなる頃、その音は止みドクオは開放された。 (#)'A`(#)「暴走してたとは言えこれはひどい……お前は往復ビンタの鬼か!!」 川;゚ -゚)「す、すまん。ちょっとやりすぎたな」 (#)'A`(#)「ちょっとってレベルじゃねーぞ!! おたふく風邪引いたみたいになってんじゃねえか!!」 川 ゚ -゚)「言われてみるとそうだな。笑える」 (#)'A`(#)「笑えねーよ!!」 ('A`)「……で、さっきの話の続きだが」 川 ゚ -゚)「もう腫れが引いている。さすがドクオ」 ('A`)「何がさすがなのか……とりあえずそんなことはいいとして 要するに俺が言いたいのはだな、もう他人の体で恋を知ろうとするのはやめろってことだ」 川 ゚ -゚)「何故だ?」 ('A`)「無限ループって怖くね? とにかく恋ってのは自分で味わうものであって人の体じゃ絶対に体験できないものなんだよ! だから、そんなに体験したいなら自分の体へ戻れ。わかったか?」 川 ゚ -゚)「…………」 ('A`)「……ってまだお前の口からは聞いてなかったな。すまん」 触れてはいけないところに触れてしまった、そんな気がして口ごもる。 川 ゚ -゚)「……いいんだ」 川 ゚ -゚)「本当はもう少しこの状況を上手く説明できるようになってから話そうと思ったんだが わかった。分かるところまででいいなら説明しよう」 ('A`)「……記憶が……ない?」 その言葉を聞いたとき、ふとブーンの顔が脳裏を過ぎった。 川 ゚ -゚)「ないと言っても完全な記憶喪失とは違う。断片的に抜け落ちていると言うべきか」 川 ゚ -゚)「自分の住んでいた地名や通っていた学校の名前は思い出せない。 だが、家の間取りなどは何となく浮かぶし、学校の教室の様子もそれとなく思い出せる。 例えて言えばピースが足りないジグソーパズルのように、所々隙間があると言った感じか」 ('A`)「クーにしてはなかなか分かりやすい例えだな。 ってことは……やっぱりお前には今も自分の体があるんだな?」 淡々と説明し続けるクーだったが、本題に触れられると急に黙り込んでしまう。 川 ゚ -゚)「…………」 ('A`)「そこまではまだ分からない……か?」 口を閉じたまま頷くクー。 ('A`)「そうか……」 川 ゚ -゚)「君が昨日言ったように、私は無念を残したまま死んでしまい 成仏できずに夢の中へ住み着いた幽霊なのかもしれない。 万が一、今も体は存在しているとしても私の意識はここにあるんだ。 病院のベッドの上で覚めることのない眠りについている可能性だってある」 ('A`)「…………」 突然話し始めるクー。その目をじっと見つめたまま話を聞くドクオ。 今までにない重い空気が、二人の間に漂っていた。 川 ゚ -゚)「考え始めたらキリがない。可能性はいくらでもあるんだ。 もちろん、私の体が今も正常に活動している可能性だって十分ある」 その言葉は、まるで自分に言い聞かせているかのように聞こえた。 川 ゚ -゚)「悩んでいても仕方がない。 だったらせっかく得られたこの機会だ。生かさない手はないだろう?」 そして、無理をして強がっているようにも。 ('A`)「……最初にここに来たときはどんな感じだったんだ?」 川 ゚ -゚)「ここに来るまでのことは覚えてない…… いきなりこの部屋で目が覚めて、ここの機能についての情報が頭に流れ込んできた」 ('A`)「よくそんな状態で冷静に俺に説明が出来たな」 川 ゚ -゚)「あの時は不安より期待の方が大きかったからな。ドキドキ、というやつか?」 ('A`)「いや、それはワクワクだな」 川 ゚ -゚)「違いが分からん」 ('A`)「その内分かる」 ('A`)「……まぁ大体のことは把握した。 そういうことならしょうがない、俺に出来る範囲でならお前の体を探す手伝いしてやるよ」 川 ゚ -゚)「だが、もしかしたら死んでいるかもしれないんだぞ?」 ('A`)「でも、もしかしたら生きてるかもしれないんだろ? だったら少しでもその希望にかけてみるべきだろうが」 川 ゚ ー゚)「……そうだな。ドクオ、ありがとう」 今度ははっきりと確認できた。 その顔に湛えるのは紛れもない笑み。純粋な笑顔だった。 (*'A`)「べ、別にお前のためじゃないぞ!!! ただ、早くお前に出て行ってもらいたいだけなんだから!! 勘違いしないでよね!!」 川 ゚ ー゚)「……ああ、わかってる」 (*'A`)「じゃあ、今から俺が剣玉の手本と言うものを見せてやる!よーく見とけよ!?」 川 ゚ ー゚)「……わかってるよ」 自分の記憶が欠けていると言うのはどんな気分なのだろうか。 自分の体の有無が分からないと言うのはどんな気持ちなのだろうか。 これまでそんなことを考えたことがなかった。 いや、そんなことを考える必要がなかったのだ。 答えの出ている問題に考える時間を費やす方がおかしい。 この日 ドクオは初めてクーの気持ちを感じ取れたような気がした 自らの過去を思い出せない悲しみ 自らの生死が分からない不安 そして 自らを助けてくれようとする少年に出会えた喜び クーは感情を表に出すのが苦手だと言ったがそれは間違いだ 正しく言い直すとすれば感情ではなく喜び 嬉々としたものを表現するのが苦手なのだ 不安や悲しみなんてものは意図せずとも勝手に滲み出てくる 言わば染みのようなもの 対して喜びとは自らの思いを表現した芸術作品 よっぽどの自信がない限り進んで人前に出そうとは思わないものだ だが 満を持して発表された芸術作品はより一層深い感動と大きな衝撃を見る者へと与える クーがドクオに見せた笑顔はそれを確かに証明してくれた ベッドの上で眠りにつく少年 その顔には少女の笑顔に勝るとも劣らない微笑みが惜しげもなく刻み込まれていた 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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