第二十二話第二十二話 「なるようになる」 ('□`) 病院特有の鼻につく臭いが、マスク越しにドクオの鼻腔を刺激する。 ツンとした痛みに顔をしかめ、耐える。 (゚、゚トソン「――ドクオさん」 ('□`)「あ、はい」 中から顔を覗かせた看護士がドクオの名前を呼ぶ。 マスクに手を当て一つ咳をすると、長椅子から腰を上げ、中へと足を踏み入れる。 ( ゚∋゚)「今日はどうされました?」 ('□`) 筋骨隆々の屈強な身体に白衣がぴっちりと張り付いた医者が、そこにいた。 (゚、゚トソン「どうしました?どうぞそこにお掛けになってください」 (;'□`)「あ」 およそ医者のイメージからは到底かけ離れた彼の肉体に目を取られていたせいで、 椅子にも腰掛けず、ただ突っ立っていたままだったドクオに看護士が声をかける。 気まずそうな笑みを浮かべ、医者の前に用意された丸椅子に腰を下ろす。 ( ゚∋゚)「今日はどうされました?」 医者が再び問いかける。 (;'□`)「えっと、ちょっと風邪引いちゃったみたいなんですけど」 ( ゚∋゚)「ふむ。では服をまくってもらえますか」 医者に言われるまま、ドクオは自らの服を捲り上げる。 いつの間にか背後に移動していた看護士が服の裾を押さえる。 (゚、゚トソン (*'□`) ( ゚∋゚)「はい、次は後ろ向いて」 (゚、゚トソン「捲くらせてもらいますね」 (*'□`)「は、はい、こちらこそ」 ( ゚∋゚)「――風邪みたいですね。お薬出しておきますよ」 一通りの診察を終え、医者がお決まりの台詞を吐く。 (゚、゚トソン「お大事にしてください」 (*'□`)「はい。お大事に」 だが、看護士との触れ合いに悦を感じていたドクオにとって、医者から感じられた適当さなど微塵も気にならなかった。 もしかしたら、これも病院側の戦略なのかもしれない。 礼をし、部屋を出る。 (*'□`) 廊下に出た後も、ドクオはしばらくの間呆けていた。 前を通り過ぎる看護士や患者がチラと横目で彼のことを見ては、不審な物を感じ取り表情を歪めていた。 (*'□`)(たまには病院に来るのも悪くないかもな) 心の中で呟き、一人頷く。 さて、と一歩踏み出そうとした時、視界の端に見覚えのある人影が映った気がした。 つられるように首を動かす。 ノハ △ ) 俯き加減の少女が、スーッと廊下を横切った。 音もなく一瞬の出来事だったので、ドクオにはそれが幽霊か何かだったのかとさえ思えた。 しかし、その横顔には確かに見覚えがあった。 ('□`)「あれは……」 教室内で恥ずかしげもなく大声を出すヒートの姿が真っ先に浮かんだ。 だが、先程廊下を横切った彼女の姿にそのイメージはどうしても重ならなかった。 ('□`) カーチャンに奨められ、市内の大きな病院にまで足を運んでいたので、彼女がここにいてもおかしくはない。 きっと、彼女もどこか具合が悪いのだろう。そうでなければ親族の誰かのお見舞いにでも来たのだろう。 そう結論付け、ドクオは踏み出しかけた足を再び動かす。 ('□`)「ま、俺には関係のないことだな」 一人ごち、歩を進めると先程診察室にいた看護士とすれ違う。 (゚、゚トソン (*'□`) その姿に見惚れてしまい、ようやく動き始めた足は再度その動きを止められてしまった。 从'ー'从「出席をとりまーす」 翌日、すっかり具合の良くなったドクオは学校へと来ていた。 あの後、薬を飲んで夜早くに布団に入っただけで、三十七度中盤はあった体温はあっさりと平常な温度に落ち着いた。 それが薬の効力のおかげだったのか、元々風邪自体大したことがなかったのかは分からない。 从'ー'从「ドクオくーん」 ('A`)「はい」 名前を呼ばれ、返事を返す。 そのまま、視線を横へとずらす。 从'ー'从「ヒートちゃーん……あれれー?」 ヒートの席は空のままだった。 渡辺の様子から察するに、何の連絡もなく欠席したらしい。 从'ー'从「んー、まぁいいか」 ('A`)(いいのか) 無断欠席は普通許されないはずなのだが、渡辺はそんなことを気にも留めず淡々と出席をこなしていく。 連絡事項を伝え終えると、手を振りながら教室から出て行った。 ( ^ω^)「先生、テスト返してくれなかったおね」 ('A`)「渡辺先生はいつもああだろ。のんびりしてるから返却も遅い」 HRが終わるとドクオの席へとブーンがやって来た。 次の授業の用意を後ろのロッカーから取り出すついでに立ち寄ったようだった。 ('A`)「あの熱血会長が休みなんて珍しいよな」 昨日病院で見かけたこともあってか、ヒートのことが何となく気にかかり、話題に出す。 不意に話題を変えられ、きょとんとした顔でブーンが聞き返す。 ( ^ω^)「ヒートのことかお?」 ('A`)「ああ」 首肯するドクオを見て、ブーンは未だ空席のままのヒートの席へと目をやる。 ( ^ω^)「確かに、ヒートは風邪なんてものとは無縁のような気がするお」 ('A`)「だよなー。真冬の雪山を全裸で歩いてても風邪なんて引かなそうだよな」 (;^ω^)「それは風邪とか以前に凍死してしまうと思うお」 一時間目は数学だった。 こちらは悠長な渡辺とは違い、テストの採点が終わっているようで 教卓の前に立った教師が次々と生徒の名前を呼び、答案を返却していく。 ('A`)「んー」 ドクオの点数は丁度平均点辺りだった。 いつもと余り変化のない無難な数字に、首を傾げ唸りながら席へと戻る。 (;´_ゝ`)「また負けてしまったか」 (´<_`;)「今回はいけたかと思ったんだが……」 と、その途中、流石兄弟の二人がショボンの席の近くで何やら話をしていた。 周りを見ると他の生徒達も席を立ち、各々テストについて話していたようだったので、ドクオもそれとなく話に混ざることにした。 ('A`)「おーっす、天才兄弟。テストの結果はどんな感じよ」 ( ´_ゝ`)「おお、ドクオ君か」 (´<_` )「いやはや、今回もショボン君にしてやられてしまったよ」 ('A`)「へー、やっぱショボンは頭良いんだな。何点だったんだ?」 (´∨ω・`) ドクオが聞くと、ショボンは無言のまま手に持ったテスト用紙を突き出す。 ('A`)「えーっと……なになに……1、0、0……点」 赤丸しか描かれていない答案用紙の右上には満点を示す三つの数字。 ゆっくりと読み上げ、ドクオは呆れたようにため息をつく。 ( ´_ゝ`)「最後の一問だけがどうしても解けなくてな」 (´<_` )「俺も同じく、そこさえ出来れば引き分けには出来たのだが」 (;'A`)「ダメだダメだ、頭のいい連中の話にはついていけねーや」 肩をすくめ、受け取った答案を机の上へと放る。 ('A`)「全く、この中にはどんだけいいお脳が詰まってるんだか」 軽口を叩きながら、ショボンの頭を小突く。 しかし、 (´∨ω・`) 彼は何の反応も示さず、黙って中空を眺めているだけだった。 ('A`)「……?」 ドクオはそこでようやく、彼の様子がいつもと違うことに気がついた。 彼の反応が薄いのはいつものことではあったが、ここまでの無反応振りは今まで見たことがなかった。 しかもこれは意図しての無反応ではなく、何か他の事に意識を奪われていて話に反応できない、そんな印象を受ける。 ('A`)「おーい、ショボーン」 彼の顔の前で手を振り、呼びかける。 (;´∨ω・`)「お……お?」 ハッと夢から醒めたような様子で、ショボンはドクオの方へと顔を上げた。 ('A`)「なんだよ、お前もしかして目開けたまま寝てたのか?」 (;´∨ω・`)「あ……ああ、すまない。少しボーッとしてた」 長い前髪をかきあげながら、頭を下げる。 もしかしたら本当に寝ていたのでは、と疑いたくなる程、彼は狼狽していた。 ('A`)「ふーん、お前にしちゃ珍しいな」 ( ´_ゝ`)「確かに、ショボン君はいつもしっかりとしているイメージがあるからな」 (;´∨ω・`)「……すまん」 (´<_` )「謝ることはないさ。誰にだってそういう時はあるもんだ」 丁度そこで教師がテストを全て返し終えたらしく、席に着くよう生徒達に向かって叫んだ。 そそくさと各々の席へと戻っていく周りのクラスメイトに倣って、ドクオ達も自分の席へと戻っていった。 あっという間に喧騒はおさまり、授業が始まる。 黒板に書かれる数式をノートへと写しながら、ドクオはチラとショボンの様子を伺う。 (´∨ω・`) 視線こそ前へと注がれてはいたが、やはりその意識は別のものに集中しているようだった。 シャーペンを持ったままノートもとらず、ただぼんやりと考えに耽っているように見えた。 ('A`)(何か変だな、あいつ) ヒートがいないせいかな、と一瞬考えたが、ショボンなら逆にそれを喜ぶだろうとすぐにその考えを否定する。 ただ、彼女が今日学校に来ていないこととショボンの様子がおかしいことには何かしらの関連があるのではないか。 その関連がどういったものなのかは予想もつかないが、ドクオは漠然とそう思った。 ノハ △ ) ふと、俯いたまま病院の廊下を横切るヒートの姿が頭をよぎる。 ('A`)「……ふー」 今考えてもしょうがないな、と首を振る。 大したことではない。後でショボン本人にそれとなく尋ねればいいだけの話なのだ。 コツコツと教師が軽快なリズムでチョークを鳴らす。 シャーペンの芯を出し、黒板の内容をノートへと写す作業に戻った。 昼休みになり、教室内が騒がしい空気に包まれる。 ( ><)「ちんぽっぽちゃーん!購買に行くんです!」 (*‘ω‘ *)「ぽぽ」 扉の前で一際甲高い声を放つビロードに付き従うようにして、ちんぽっぽが教室から出て行った。 それを見送りながらドクオ達はいつもの定位置に集まり、食事に取り掛かる。 ( ^ω^)「今回のテストはなかなかの出来だお!」 誰に話しかけるともなく、ブーンが口を開く。 ('A`)「おー、ちゃんと勉強合宿の成果が出てるってことだな」 ( ^ω^)「みたいだお!本当、兄者君たちには何度お礼を言っても足りないくらいだお」 ( ´_ゝ`)「ははは、それはよかった」 (´<_` )「そう言ってもらえると企画した俺達からしても嬉しい限りだよ」 しばしの間、テストの話題に花を咲かせる。 数学の点数が二倍に伸びただとか、今回の古文は簡単でよかったなど、ブーンが一方的に喋りかけ、 他の皆がそれに相槌を打つ形で時間は過ぎていく。 (´∨ω・`) 脇の方で無言で弁当をつまむショボンは、話に積極的に加わろうとはしないものの、先程の思い詰めたような表情を浮かべてはいなかった。 休むことなく話し続けるブーンに対し、頷くであるとか軽い相槌を打つ程度には、意識もはっきりとしているようだった。 ( ^ω^)「やっぱり信じる力って大切なんだお」 ('A`)「おいおい、言ってるそばから勉強合宿の恩恵を否定かよ」 (;^ω^)「違うお!もちろん勉強は大事!とっても大事だお!」 自らの言わんとすることをはっきりと皆に伝えるため、ブーンはうろたえながらも椅子から立ち上がり、一際大きい声で続ける。 ( ^ω^)「だけど、それだけじゃダメなんだお! みっちり勉強をした自分と、その先に待ってる輝かしい未来を信じなければ、良い結果は現れてこないんだお!!」 ('A`)「何恥ずかしいこと言ってんの……」 ( ´_ゝ`)「うむ、確かにその通りだ」 (´<_` )「自信なくして良い結果は得られないからな」 ('A`)「お前らまで……」 ( ^ω^)「ドクオだって経験したことあるんじゃないかお?」 ('A`)「なにを?」 ( ^ω^)「んー、例えば……部活の試合の時にもんの凄い自信とか確信みたいなものが湧いてきて 実際走ってみたらその通り見事な勝利を収めちゃったこととか!」 ('A`)「勝つぞって意気込んだのに見事レース途中のハードルに足引っ掛けて転倒したことならありますけど」 (;^ω^)「あ……」 (;^ω^)「ご、ごめんお。別にそういう意味で言ったわけじゃないんだお」 ('A`)「分かってるよ。今のはただのネタだ。自虐ネタ」 目を瞑り、ドクオは自嘲じみた笑みを浮かべる。 ('A`)「お前の言いたいことは分かるよ。俺も経験したことはある」 ( ^ω^)「やっぱり!」 ('A`)「ま、俺の場合は逆のパターンなんだけどな」 ( ^ω^)「逆?」 ('A`)「それに俺自身のことではないし」 ( ^ω^)「それは具体的にはどういう――」 と、ブーンが聞き返そうとした瞬間 ( ><)「ほうりゃ!!」 幼児のはしゃぎ声を思わせる幼い掛け声と共に、袋に入ったパンがドクオ達が囲んでいる机の上に飛んで来た。 (;'A`)「おわっ!あぶね!!」 幸い皆の弁当箱を避けるように着地したため、被害はなかった。狙い通りの位置にパンを放れたことにビロードが喜び叫ぶ。 (*><)「やったんです!ホールインワンなんです!!」 (;'A`)「バカ!お前危ないだろうが!!」 (*><)「大丈夫なんです。自信はありましたから!!」 (;'A`)「そういう問題じゃなくてだな……」 ( ´_ゝ`)「やはり自信こそが成功の秘訣なのだな」 (´<_` )「俺達も……次こそは!」 (*><)「さーって、気分もいいところでパンを――」 ( ‘ω‘ ) と、ビロードが軽い足取りで机へと向かおうとすると、突然ちんぽっぽが後ろから彼の襟首を掴み、無理矢理に教室の外へと引っ張り出した。 ( ^ω^)「おっ?」 それから数十秒が立った後 (ヽ><)「……ご、ごふっ」 (*‘ω‘ *)「ぽっぽ」 可愛らしいえくぼを両頬に浮かべたちんぽっぽが、腹を押さえ前屈みになったビロードを引き連れ、再び教室内へと姿を現した。 ( ^ω^)「……なんだったんだお、今の」 ('A`)「さぁ?」 キンコンカンコン 終業のベルが鳴り、教室内は喧騒に包まれる。 教室掃除の当番だったドクオは自分の机を教室の前へと寄せると、箒を取りに掃除用具入れへと向かった。 ('A`)「掃除かったりーなぁー」 ( ^ω^)「面倒だからってサボっちゃダメだおー!ちゃんと掃除やるんだおー!」 ドクオに一声かけると、ブーンは肩に提げた重そうな荷物を物ともせず、凄まじい速さで教室から飛び出して行った。 ('A`)「張り切るねぇー。俺も見習いたいもんだ」 まぁ俺の柄ではないんだけどな、とぼやくと、ドクオは凝った肩を揉み解し、掃除へと取り掛かる。 言葉とは裏腹にマメな性格の持ち主であるため、教室の隅から埃を掻き出し、丁寧に集めていく。 数分も経つと、教室内に存在するゴミは全てここに集まっているのではないかと思いたくなる程大きなゴミの山が、教室の中央に完成していた。 (´∨ω・`)「ありのまま今起こったことを話すぜ。俺が掃こうと思った時には全てのゴミがここに集まっていた」 気がつくと、ゴミの山の前に箒を持ったショボンが立ち尽くしていた。 驚愕に打ち震えるような台詞を吐いてはいるが、その顔は至って冷静である。 ('A`)「ちりとりを持ってこい、ショボナレフ」 (´∨ω・`)「誰がショボナレフだ」 無表情で突っ込みを入れながらも、ショボンはドクオの言うことに素直に従い、掃除用具入れの方へと向かった。 ('A`)「行くぜぇ、ショボナレフ……絶対にちりとりを手放すなよ、いいな?」 (´∨ω・`)「だから、誰がショボナレフだ」 口を開けたちりとりの中へと箒でゴミを掃き入れていく。 埃一つ残さぬよう、ドクオは散らばろうとするゴミ達を逃さず掻き集め、ショボンもその動きに合わせてゆっくりと後退していく。 ('A`)「朝は元気なかったように見えたけど、そうでもなかったみたいだな」 (´∨ω・`)「は?」 脈絡なく放たれた言葉に、ショボンは一拍間を置いてからドクオの顔を見据える ('A`)「いや、数学のテスト返された時にさ、お前ボーっとしてたじゃん」 ショボンは今日一日の出来事を思い返すように視線を泳がす。 数秒も経たぬうちに思い当たる節が見つかったようで、ああ、と一言漏らす。 ('A`)「てっきり会長が休んでるせいで落ち込んでるのかと思ってたぜ」 (;´∨ω・`)「は!?何でヒートがいないだけで俺が落ち込むんだ!?そんなわけないだろう!」 ショボンの声と同時にちりとりが音を立てて教室の床へと倒れる。 その衝撃で開いた口からは、先程集めたゴミが僅かながら溢れ出ていた。 (;'A`)「ちょ、いくらなんでも怒りすぎだろ。冗談だよ、冗談」 (;´∨ω・`)「……くぅ」 ('A`)「あーあ、またゴミ集めなきゃなんねーじゃねーか」 (;´∨ω・`)「す、すまん」 倒れたちりとりを起こし、ドクオは零れたゴミを再度集め始める。 ささやかな仕事さえ奪われたショボンは、居心地悪そうにゴミの周りをうろうろとし始めた。 ('A`)「にしても、会長が休むなんて珍しいよな」 (;´∨ω・`)「……」 (;'A`)「あ、言っとくけどさっきの話を蒸し返そうとしてる訳じゃないからな。単純に気になっただけだぞ」 慌てて取り繕うドクオを一瞥し、ショボンは顔を伏せ小さく呟く。 (´∨ω・`)「……あいつだって休む時くらいはあるさ」 ('A`)「ま、そりゃそうなんだけどさ。昨日病院にいたから風邪でもこじらせたのかね、信じられないけど」 (´∨ω・`)「病院?」 ('A`)「ああ、なんかこういつもの様子からは考えられないくらいに暗ーい表情でさ。ありゃまるで幽霊みたいだったな」 (´∨ω・`)「……ほう」 ('A`)「何か悪い病気じゃないといいけどな」 散らばったゴミが再度同じ場所へと集まっていく。 その様子を見つめながら、ショボンが再び口を開く。 (´∨ω・`)「……病気なのはヒートではないんだ」 ('A`)「へ?」 (´∨ω・`) ('A`) (´∨ω・`)「多分、ヒートは」 ('A`) (´∨ω・`) ('A`) (´∨ω・`) (´∨ω・`)「祖父の様子を……見に行ったんだと思う」 ―――― ―― ('A`) 部活中、ドクオの意識はある一つの考えに注がれていた。 ヒートの祖父についてのことだ。 ショボンの話によると、ヒートの祖父は三日程前にくも膜下出血で倒れたらしい。 そして、すぐに病院に運ばれ何とか一命は取り留めたものの、未だ意識は戻らないままである、とのことだった。 ξ゚△゚)ξハイ、オツカレサン 昨日、ドクオが見たのは、いつまでも目を覚まさない祖父の元へと向かうヒートの姿だったのだろう。 ショボンにはヒートの祖父との直接の面識もあるらしく、彼の見た限りではヒートは祖父にとても懐いていたようだったらしい。 ヒートがあれ程までに暗い様子に見えたのも、恐らくはその愛情故か。 ( ^ω^)オツカレダオ!! ここまでの流れでドクオが一体何について悩むと言うのか、一見何もないようにも見える。 しかし、彼の夢の中にいるクーの存在。そして、彼女の持つ能力に彼は一つの可能性を見た。 ξ゚△゚)ξキョウノハシリハナカナカヨカッタワヨ 彼女の能力により、ヒートの祖父の意識を呼び戻せるかもしれない、と言う可能性を。 そして、その一方で彼は一つの葛藤に苛まれている。 成功する確証がない上に、ヒート達からすればそれ程面識があるわけでもない自分がそこまで関わる意味はあるのだろうか。 だが、これは他人には不可能なことだ。正に俺がやらねば誰がやる、と言った状況でもある。 (*^ω^)オッオッ、ウレシイオ しかし、そこからまた彼の自問は再び上の問いへと戻ってしまう。自分にそこまでする必要はあるのか、と言う問いに。 ξ;゚△゚)ξバッ!!ベ、ベツニホメテルワケジャナイワヨ!! これまでの自分の行動を省みるに、ドクオは自分にはお節介すぎる節があるのではないかと思い始めていた。 妹者の件、ビロードの件、そして、ついこの前にあったつーの件。 ξ;゚△゚)ξナカナカッテイッタデショ!!ナカナカッテ!! もちろん記憶は消されているため、彼らがドクオの行った行動を覚えているわけはないのだが、これも彼の心が余りに優しすぎるため故なのか、 自らの善意すら余計なものなのではないかと疑ってしまう。そんな被害妄想ならぬ加害妄想に、彼は陥っていた。 ( ^ω^)ナカナカッテホメテルウチニハイラナイノカオ? 結局、彼はこの時間に答えを出すことは出来なかった。 ξ゚△゚)ξジャア、ソコソコネ、ソコソコヨカッタワ 後は、彼女にこの考えを伝えるか否か。 (;^ω^)……テキビシイオ 夢の中に住む、あの不思議な少女に。 ('A`)「あのさ、クー」 川 ゚ -゚)「ん」 ドクオの呼びかけに対し気のない返事を返すクーの目の前には、巨大なトランプタワーが築かれていた。 行儀悪くコタツの上に立ちながら、彼女はまた一つまた一つとトランプを積み重ねていく。 ('A`)「ちょっと聞きたいんだけどさ」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`)「寝てる人とか意識を失ってる人の夢の中にも」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`)「お前は入ることが出来るのか?」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「おーい」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`)「俺の話聞いてる?」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`)「聞いてない?」 川 ゚ -゚)「ん」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)ハァ 川 ゚ -゚) ('A`)「こりゃ駄目だな」 川 ゚ -゚)「あ」 (;'A`)「へ、ってどああああああああああああ!!!!」 川 ゚ -゚)「すまん、手が滑ってしまった」 (;'A`)「び、びっくりしたー……」 もう少しで頂上か、と言うところで崩れ落ちた巨大なトランプタワー。 その下敷きになったドクオが情けない声を上げる。 川 ゚ -゚)「悪い悪い」 (;'A`)「別に怪我するほど重いもんでもなかったからいいけどさー」 川 ゚ -゚)「次は気をつける」 (;'A`)「いや、ちょっと待て」 川 ゚ -゚)「む」 ('A`)「その前に俺の話を聞いてくれ」 川 ゚ -゚)「――意識を失ったままの人間の夢の中に入れるかどうか、か」 先程とは打って変わって真剣な表情を浮かべるクー。 ドクオは彼女の顔を見つめながら言葉を続ける。 ('A`)「実はな、ヒートのじいちゃんが倒れて、未だに意識が戻らないらしいんだ」 川 ゚ -゚)「ヒート、とは私の宿命のライバルのことか?」 ('A`)「いや、宿命かどうかは知らないけど」 クーは腕を組み、視線を左右へと泳がせる。 何かしらを考えているようだ。 川 ゚ -゚)「それは急な病に倒れた、ということか」 ('A`)「くも膜下出血らしい」 川 ゚ -゚)「ふむ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「結果から言えば、やってみなければ分からない、としか言えない」 ('A`)「そうか……」 川 ゚ -゚)「が」 ('A`) 川 ゚ -゚)「何故君がそのようなことを聞く?」 ('A`) 川 ゚ -゚)「ヒートの祖父と君の間には何か直接の面識でもあったのか?」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「いや」 ('A`)「ないけど」 川 ゚ -゚)「ならば、やはり何故だ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「純粋に」 川 ゚ -゚) ('A`)「試してみたかったんだ」 川 ゚ -゚) ('A`)「俺にしか出来ない方法があり」 川 ゚ -゚) ('A`)「それで人一人を救うことが出来るかもしれない」 川 ゚ -゚) ('A`)「だったら」 ('A`)「やってみるしかないじゃないか」 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「ふむ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「まぁ、実際は私の能力なんだがな」 (;'A`)「う」 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚)「とりあえず、理解したよ」 川 ゚ -゚)「君がやろうとしていることについては」 川 ゚ -゚)「意識を失っているヒートの祖父。彼の夢の中に私がおでかけし、あわよくば彼の意識を回復させてしまえるのではないか」 ('A`) 川 ゚ -゚)「それを狙っているわけだな」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「そうだ」 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「君がやると言うのであれば私は協力するよ」 川 ゚ -゚)「出来れば私も彼を救いたいと思うしな」 川 ゚ -゚)「だが、一体いつどうやって彼の夢の中に入ればいいんだ?」 ('A`)「とりあえず、明日は風邪がぶり返したってことにして、学校に遅れていこうと思う」 川 ゚ -゚)「では、明日の朝決行すると」 ('A`)「そゆこと」 川 ゚ -゚)「ふむ、ならばやはり私の頭にはまたちょっとした疑問が湧いてくるな」 ('A`)「なんだよ」 川 ゚ -゚)「学校をサボってまでこの計画を実行する」 川 ゚ -゚)「君を突き動かすものとは一体何なんだ?」 ('A`) 川 ゚ -゚)「別に悪いことだと言っているわけじゃないぞ。 むしろこれは純粋なまでの善意に満ち溢れた正しい行動だと私は思う」 川 ゚ -゚)「そして、だからこそ疑問を感じる」 ('A`) 川 ゚ -゚)「君は何故、自らの身体に帯びた使命感に、ここまで忠実に行動することができるのだ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) (;'A`)ウー 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚) (;'A`)ムー 川 ゚ -゚) (;'A`) (;'A`)「……分からん」 川 ゚ -゚)「分からん?」 (;'A`)「お前が納得するような最もらしい理由を思いつくことができない」 川 ゚ -゚)「思いつこうとしてる時点で、それは本当の理由ではないような気がするが」 (;'A`)「だって、正直に答えたら」 ('A`)「俺がやりたいからやるの!やるったらやるの!!」 川 ゚ -゚) (;'A`)「これだけで終わっちゃうんだもの」 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ ー゚)プッ (;'A`)「ぬ」 川 ゚ ー゚)「はは、君らしいな」 (;'A`)「悪かったですねー、本能のままに生きる獣みたいな返答しか出来なくて」 川 ゚ ー゚)「馬鹿にしているわけじゃないさ。そこが君の良いところだと私は思うよ」 (;'A`)「ふ、ふーん(べ、別に嬉しくなんかないんだからね!!)」 川 ゚ -゚)「では、明日の具体的な計画について聞かせてもらおうか」 (;'A`)「え」 川 ゚ -゚)「明日は病院内でおでかけをすることになるのだろう? いつもと違って少々面倒なことになる可能性もあるのではないか?」 (;'A`)「あ、そだなー。 まぁ適当に病室探して病室の前に置かれてる長椅子とかに座って眠りに落ちればいいかなーなんて」 川 ゚ -゚)「ほう」 (;'A`) 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚)「結構大雑把な計画だな」 (;'A`)「す、すいません……」 川 ゚ -゚)「まぁいい。困るのは私ではなく君だからな」 (;'A`)「うわぁ、すごく心に突き刺さる言葉だわぁ」 川 ゚ -゚)「とにかく、目的の人物を君の視界に入れない限りは、お出かけすることは出来ない。 そこだけ気をつけてくれさえすれば、後は全て君に任せるよ」 ('A`)「あぁ、分かった。何とか頑張る」 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「助けられるといいな」 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな」 川 ゚ -゚)「人の善意とトランプタワーは似ているな」 ('A`)「は?」 川 ゚ -゚)「積み重ねすぎて困ることがない」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「でも、さっき俺下敷きになったんですけど」 川 ゚ -゚)「それはきっとあれだ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`) 川 ゚ -゚)「それも成功した場合と言う条件下においてのみ言えること、というわけだ」 ('A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「失敗した場合はトランプタワーと同じように善意も人に牙を剥くと?」 川 ゚ -゚)「そういうことだな」 ('A`) 川 ゚ -゚) (;'A`)「た、助けられるといいな……」 川 ゚ -゚)「今更びびるな、男だろ」 (;'A`)「ふぁ、ふぁい。がんばります」 川 ゚ -゚)「それに元より助けられるかどうかも分からない。これは言わば賭けのようなものだろう」 (;'A`)「そ、そうですね」 川 ゚ -゚)「君はその賭けの土俵に上がるまで、そこまで頑張りさえすればいいんだ。 あとは全て、私の能力に懸かっていると言っても過言ではない」 (;'A`)「そう言われるとお前に全部託しちゃったみたいで申し訳ない気もするんだけど」 川 ゚ -゚)「そんなことは気にするな」 (;'A`) 川 ゚ -゚)「全ては、なるようになるさ」 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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