第九話時は流れ、夜。 川 ゚ -゚)「それにしてもあの男とんだ食わせ者だった」 剣道着と竹刀。 昨日と同じ姿で素振りを続けているクー。 話しながらもその手を休めることはない。 川 ゚ -゚)「一回も成功したことのない技など技ではない! それは単なる妄想の産物に過ぎん!!」 竹刀を持つ手に力が入り、風切音が大きくなる。 ('A`)「ほんとですよねー。僕もまんまと騙されちゃいましたよー」 川 ゚ -゚)「全く、しっかりして欲しいものだ」 ('A`)「すいませんねー。 本当僕ってドジで間抜けで使い物にならなくてクーさんには頭が上がりませんよー」 小馬鹿にしたような声。 ('A`)「これからはー気をつけますんでーどうぞおごあっぐべふ!」 誰の目から見てもこうなることは分かっていた。 川#゚ -゚)「その話し方はやめろ」 クーの手から飛んだ竹刀がドクオの頬へと突き刺さる。 (#)'A`)「なんか久しぶりの感覚に思わず身震いしちゃったよ。 これって新たな性癖の目覚めだろうか」 すぐそばに落ちた竹刀を拾い上げ、クーのところへ持って行く。 その間もクーの表情は怒りで満ち溢れていた。 (#)'A`)「まぁあれだ。ああいう人種もいるってのがわかったということでよしとしましょうや」 手渡しながら話す。 その頬には真っ赤な日の丸が出来上がっていた。 川 ゚ -゚)「……ふん」 受け取るとすぐに素振りを開始する。 何が楽しいのかはわからない。ただ黙々と、その回数を重ね続けていく。 ('A`)「剣道楽しいか?」 正直ドクオの目では上手いのか下手なのか それ以前にこの素振りで正しいのかどうかすら分からなかった。 おそらく彼女も分かっていないだろう。 それでも、振り続ける。 川 ゚ -゚)「心が……研ぎ澄まされていく」 川 ゚ -゚)「楽しいとは思えない。 だが体の内、いや、体全てに通う私の精神が鋭く、清らかになっていくのを感じる」 川 ゚ -゚)「……とは言え、今の私に精神や心が存在するのかどうか怪しい所だがな」 どこか寂しげな表情。 風切音は止まない。 ('A`)「ないわけないだろ」 当たり前のように言い放つ。 ('A`)「心が無かったら精神が無かったら、そんなこと考えることすらできない」 川 ゚ -゚)「…………」 ('A`)「デカルトって知ってるか?哲学者の」 川 ゚ -゚)「いや」 ('A`)「その人の有名な言葉でな『我思う、ゆえに我あり』ってのがある。 一回くらい聞いたことあるんじゃないか?」 川 ゚ -゚)「……ないな」 ('A`)「ですよねー」 ('A`)「知らないなら知らないでいい、これから覚えとけ。 これを簡単に説明するとだな、自分を疑ってる時点で自分と言うものはもうそこで存在してるってことなんだ」 川 ゚ -゚)「ふむ」 ('A`)「お前はさっき自分に心や精神があるのか怪しいと言ったな? それは自分と言うものが存在してるのかどうか疑ってるのと同じだ」 ('A`)「つまり、お前は確かに存在する。クーと言う人間は確かにここにいる。 疑う自分こそ疑い得ない絶対のものなんだ」 ('A`)「実際はいろいろ理由があってこういう結論に行き着くわけなんだが 今言っても難しいだろうしそれは省略する。とにかく俺が言いたいことは」 ('A`)「今俺の目の前にいるのはクーと言う一人の人間、それ以外の何者でもないってこと」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「なんて、こんなこと言ってもキモいだけっすよねサーセン」 川 ゚ -゚)「ドクオ」 川 ゚ -゚)「鼻糞が飛び出してるぞ」 (;'A`)「うえっ!?マジで!?」 慌てて後ろを向きそそくさと鼻を弄りだす。 川 ゚ ー゚)「……冗談だ」 そんな滑稽な姿を見ながら微笑む。 自分の吐いた自虐の言葉。漏れ出た弱音。 別に慰めてもらいたかったわけじゃなかった。 同情してもらいたかったわけでもなかった。 ただ何となく、自らの意思とは関係無く零れ落ちた弱気な自分。 それは心無い人が路上に吐き捨てたガムのように小さな物だった。 この少年はそんなゴミを当然のように拾い上げてくれた。 ただそれが嬉しくて ただそれが暖かくて ただそれだけで心が満たされた。 いつの間にかクーは素直に笑えるようになっていた。 少年の安堵の声と素振りの音の中、夜は深まり、朝が訪れる。 太陽が顔を出してからまだ間もない時間。 冷え切った空気に抗議でもするかのように鳥達の合唱が響き渡る。 ズラリと立ち並ぶ家々は未だにその活動を停止したままだ。 そんな中、早くも活動を始めた小さな道場。 (;´∨ω・`)「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」 太い叫び声が外にいても聞こえるほどの音量で流れる。 鳥達の合唱団はそれに驚き、どこかへ飛び立っていってしまった。 lw´‐ _‐ノv「いけーさいれんすすずかごー」 それに重なるどこか抜けたような朗らかな声。 ノハ*゚△゚)「あはははははははは!頑張れ頑張れー!!」 甲高い笑い声を合わせ奇妙な三重奏がここに完成した。 ブーンが保健室に運ばれたことでショボンが隠し持っていた木刀の存在がしぃにばれてしまった。 当然のようにしぃはシューにそれを知らせ注意するよう促した。 (;´∨ω・`)「はぁはぁはぁはぁ」 lw´‐ _‐ノv「止まるな少年よ。真っ直ぐ突き進むのだ」 なす術がないことが分かり降参するのが嫌だったのだろう。 クーは教室内を凍りつかせた後、すぐに体を解放した。 いきなり絶対零度の空間に放り出されたショボンは何が起こったのかわからずその場でうろたえることしか出来なかった。 (;´∨ω・`)「はぁ真っ直ぐはぁってはぁこのままはぁ行ったらはぁ壁じゃはぁ」 lw´‐ _‐ノv「息荒すぎマイナス10ポイント」 (;´∨ω・`)「ポイント!?」 その様子をこれまた不思議そうに見つめていたヒート。 しかし、しばらくするとどこからともなくシューが現れ、ショボンを連れ去りどこかへ消えていった。 ノハ*゚△゚)「ほらほら、また口答えするとどんどんポイントが減ってくぞー!!」 (;´∨ω・`)「だからポイントとはなんなんだ!?」 そして、今日朝練に来てみるとそこには雑巾を持ち道場内を爆走するショボンと 競馬の騎手のようにそれにまたがるシューの姿があった。 シューに連れ去られた後ショボンがどうなったかはわからない。 ただ分かるのは木刀は没収され、罰として朝練の前に道場内を雑巾がけで五周 それもシューを乗せてと言う条件付の過酷な肉体労働がショボンに課せられたということだけだ。 (;´∨ω・`)「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」 lw´‐ _‐ノv「いけーぐらすわんだーごー」 (;´∨ω・`)「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」 lw´‐ _‐ノv「止まるな休むな振り向くならづけ!!」 (;´∨ω・`)「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」 (;´∨ω・`)「おおっ!?」 超スピードで回転を続けていた足が突然空回り。 顔から雑巾へと着地。 lw´‐ _‐ノv「つるっとな」 突然止まった競走馬。 当たり前のように騎手は前のめりに倒れこむ。 (;´∨ω・`)「がふっ!」 後頭部に弾力のある柔らかな感触。 何回か跳ね上がり、やがてその運動を止める。 (*´∨ω・`)「う……」 後ろに天国、前には地獄。 起き上がろうにも起き上がれない。 正確に彼の気持ちを代弁するならそんなに起き上がりたくないのかもしれないが。 lw´‐ _‐ノv「むげーんだーいなーゆーめのーあとのー」 倒れたことはそんなに問題ではないのか、そのままの体勢でバタフライのような動き。 両腕を掻く毎に体が揺れ、ショボンの顔が押しつぶされる。 (*´∨ω・`)「うっ!おっ!ちょっ!くるっ!しぃ!」 lw´‐ _‐ノv「そーさいーとしーおもいもまけそーにーなるーけどー」 ノハ*゚△゚)「そんなこと言ってショボン、顔が緩んでるぞ!このムッツリ野郎が!!」 (*´∨ω・`)「なっ!ちがっ!ちがう!」 水に濡らされ光る床。 裸足で駆けるにはまだ寒すぎる時間帯。 道場内にはどことなく暖かな空気が流れていた。 lw´‐ _‐ノv「おーまーいらー」 ('A`)「おーっす」 ( ^ω^)「お、おはようだおドクオ!」 ξ゚△゚)ξ「あら、おはよ」 教室に入ると久しぶりに見る二つ並んだ顔。 ('A`)「お、おまえらもう仲直りしたのか?」 わかっていながらあえて聞く。 昨日はブーン達にバレないようこっそりと帰っていたので二人はそのことを知らない。 (*^ω^)「そうなんだお!やっと仲直りできたんだお!」 大声で喜び叫ぶ。 周りの生徒達が何事かとブーンに視線を集め始めた。 ξ//△//)ξ「ちょ、ちょっと!あんまり大声でそういうこと言うんじゃないわよ!」 (*^ω^)「でも嬉しいことをそのまま声に出すのはいいことだお?」 ξ//△//)ξ「嬉しいこと、だなんて……」 見る見るうちにツンの顔が紅潮し始める。 最終的には俯いてしまい、赤い顔は見えなくなってしまった。 ('A`)「あー、暑い暑い。まだ春だってのにこうも暑いとやってられないねー。 夏になったら干からびちまいそうだ」 わざとらしく手で顔を仰ぎ、笑みを浮かべる。 言葉とは裏腹にその顔からは嬉々としたものが伺えるようだ。 ( ^ω^)「今日は最高気温20度近いって言ってたお。 地球温暖化って本当怖いお」 ('A`)「俺はお前のその度の過ぎる天然さが怖いね」 ( ^ω^)「おっ?」 ('A`)「なんでもねーよ」 仰ぐのを止め、今突然思いついたかのように尋ねる。 本当は昨日から考えていたことだと言うのに。 ('A`)「あ!ってことはもうツンが怒ってた理由は聞けたのか?」 (;^ω^)「おっ?」 さっきとはどこか感じの違う疑問の声。 表情には焦りが見える。 ('A`)「まさか、理由も聞かずに仲直りしたとか?」 これもまた白々しい言い草。 だが、ブーンとツンはやはりそれに気づかない。 (;^ω^)「それは……」 ξ//-//)ξ「…………」 ('A`)「やっぱりそうか、だったら今聞かせてもらおうぜ。その理由とやらを」 苛立ちとはまた違った感情ではあったが、ドクオは二人のこの煮え切らない関係をあまりいいものとは思っていなかった。 gdgd中途半端に見せ付けるくらいならきちんと関係をはっきりさせて堂々と見せ付けろ。 ドクオはそう思っていた。 (;^ω^)「ド、ドクオ!別にそんなことどうだっていいんだお! 仲直りできたんだからもうそれでいいじゃないかお」 ('A`)「でもお前あの日電車の中で言ったよな?」 ('ω`)「明日ツンに直接聞いてみるお!何言われても諦めずに何度でも!!」 ('ω`)「それで、絶対にツンを(;゚ ω゚ )「わーーーー!!わーーー!!わーーーーーーーーー!!!」 ξ//-//)ξ「!!」 自分の名前が呼ばれ一瞬反応するツン。 それとなく事情を理解したのだろう、その表情に真剣味が帯びる。 ('A`)「なんだよ、事実だろ?そんな大声で隠さなくても」 (;^ω^)「ドクオはいつからそんな空気の読めない奴になったんだお! ちょっと考えれば分かることだお!!」 ('A`)「えー、僕にはわかんないやー。ブーン先生kwsk教えてくれませんかー?」 (;^ω^)「おちょくってんのかお!?いい加減にしないと――」 ξ//-//)ξ「わかった」 ツンが重い口を開く。 ξ//-//)ξ「今から、説明する」 (;^ω^)「おっ……」 ('A`)「ふふん、なら聞くとしましょうかね」 待ってましたと言わんばかりに微笑むドクオ。 固唾を呑んでその時を待つブーン。 二人が見守る中、ツンは俯きしばらく思案した後 ξ//-//)ξ「私がブーンを避けてた理由って言うのはね」 ゆっくりと語りだす。 ξ//-//)ξ「私がブーンのノハ*゚△゚)「おっはよおおおおおおおおお!!!」 ('A`)「なんとなく予想はしていた」 ( ^ω^)「おっ!おはよーだお!」 ξ - )ξ「……からなのよ」 鼓膜を突き破らんが如く響き渡った轟音。 喉の奥から一言一言搾り出すように話すツンの声は当然のように掻き消された。 (;^ω^)「おっ、ごめんお。重要な所が聞こえなかったお。 悪いんだけどもう一度言ってくれないかお?」 ξ - )ξ「…………」 ('A`)(なんか嫌な悪寒がするぜ) ヒートに挨拶を返すブーンとそれを見て表情を曇らせるツン。 これに似た状況をドクオはこの数日の間で何度も見てきた。 が、今金色の髪に隠されたツンの顔からはこれまでにないほどの何かが (;^ω^)「ツン?」 ξ - )ξ「……やらない」 (;^ω^)「え?」 ξ#゚△゚)ξ「一回しか言わないって言ったでしょ!! あんたにはもう教えてやらない!!」 (;^ω^)「ええええええええ!?」 (;'A`)「やっぱり怒った」 熟れた顔はそのままにツンが吼えた。 伏し目がちだった顔が突然前を向き、茶色がかった瞳はカッと見開かれている。 (;^ω^)「一回しか言わないなんて言ってないと思うんだけどお」 ξ#゚△゚)ξ「うるさい!」 ノパ△゚)「お?どうした、朝っぱらからそんな大声で」 ξ#゚△゚)ξ「あんたに言われる筋合いはない!!」 近づいてくるヒートも一蹴。 ノハ;゚△゚)「え、何?私なんか悪いことしたか?」 身に覚えの無い怒りを浴び思わず慌てる。 (´∨ω・`)「…………」 焦るヒートを尻目にショボンがツカツカと歩み寄ってきた。 (;'A`)(うわ、まさか昨日のことでなんか言いに来たのかな) しかし、ドクオの予想に反してショボンはブーンの目の前で立ち止まる。 (´∨ω・`)「…………」 (;^ω^)「おっ?」 ブーンの目をじっと見つめた後、口を開く。 (´∨ω・`)「昨日はすまξ#゚△゚)ξ「なんなのよあんた!今ブーンは私と話してるとこなの邪魔しないで!!」 (;^ω^)「えっ?昨日が何だお?」 ξ#゚△゚)ξ「昨日あんたが倒れたのはこいつのせいなの! こいつとこの子が意味分からないチャンバラごっこなんかやったせいであんたは気絶しちゃったのよ!」 (;´∨ω・`)「…………」 ノハ;゚△゚)「…………」 自分達が悪いだけに何も言い返せない二人。 マシンガンのようにぶっ放される怒号をただただその身に受けるだけ。 ( ><)「朝からなんなんですか!もう少し静ξ#゚△゚)ξ「う る さ い !」 (;><)「も、申し訳ないんです」 ( ‘ω‘ )「女一人黙らせることも出来ねぇのかこのクズは」 (;><)「…………」 ('A`)「これはなかなかひどいカオス」 ξ#゚△゚)ξ「あーもー!何でいつもいつも私の話を邪魔するのよ!! 何でこんなに顔を真っ赤にして怒鳴らなくちゃならないのよ!!」 机を思いっきり叩き、立ち上がる。 (;^ω^)「そんなに怒らなくても」 ξ#゚△゚)ξ「あぁ!?」 (;^ω^)「いや……なんでもないですお」 (;^ω^)(昨日の涙はなんだったのかお……) ヌッと現れる二つの人影。 ( ´_ゝ`)「全くまだ朝だと言うのに」 (´<_` )「小うるξ#゚△゚)ξ「 黙 れ ! 」 (;´_ゝ`)「な、何!?俺たちの芸術的コンビネーションが」 (´<_`;)「防がれξ#゚△゚)ξ「黙れって言ってるのがわかんないの!?」 (´<_`;)「ていうか俺のセリフだけ邪魔されてる気がするんだけど」 ('A`)「まーまー、そんなに怒るなよ。 しゃべりたきゃ好きなだけ話していいからさ」 ξ#゚△゚)ξ「…………」 ドクオの声で弾丸を吐き出し続けていた口が閉じる。 しかし、まだ腹の虫は収まっていないらしく視線を下に泳がせながら不満そうな表情を浮かべていた。 ξ#゚△゚)ξ「もう……話すことなんてない」 ('A`)「はぁ?じゃあ何でみんなを黙らせたりしたんだよ?」 ξ#゚△゚)ξ「…………」 (;^ω^)「もういいおドクオ。 僕はツンと仲直りできただけで十分なんだお」 ('A`)「でもさー、このままじゃ気持ち悪くてこの後の授業も部活も集中できないじゃないですかー」 ξ#゚△゚)ξ「!!」 ピクッ、とツンの耳が何かを感じ取り反応する。 ξ# △ )ξ「わかったわよ。そこまで言うならもう一度だけ教えてあげる」 ('A`)「お、じゃあ聞かせてもらうとしますか」 (;^ω^)「…………」 ξ# △ )ξ「ただし、ただでは教えない。一つだけ条件があるわ」 ('A`)「へ?」 (;^ω^)「お?」 さっきまでの喧騒が嘘のように辺りは静寂に包まれる。 ツンの言葉の意味がよく分からずハテナマークを頭の上に浮かべる二人。 その二つのマークを射抜くようにツンが言い放つ。 ξ#゚△゚)ξ「今度の地区大会で優勝する、それが条件よ!!」 (;'A`)(;^ω^)「えぇ!?」 あまりに唐突過ぎる話。 何故この件に部活の大会が関わってくるのか。 (;'A`)「何でそんなのが関係するんだよ」 ξ#゚△゚)ξ「うるさい!私が話をする条件を私が決めたの! 何か文句ある?」 先程までの威勢はどこへやら。 喧嘩腰のツンに思わずたじろぐドクオ。 (;'A`)「ったく、またややこしい話にしやがって。 ……はぁ、本人が言うんだからしょうがないな、せいぜい頑張ってくれブーン」 ξ#゚△゚)ξ「あら?もしかして誤解してるかしら?」 (;'A`)「へ?」 ξ#゚△゚)ξ「私は『二人』が優勝するっていう意味で言ったんだけど」 (;'A`)「俺もなの!?」 ξ#゚△゚)ξ「何あんた?大会に出るっていうのに優勝する気もなかったの? だったら出るだけ無駄よ、棄権したら?」 久しぶりにツンの毒舌が冴え渡る。 今までの鬱憤を晴らすかのように饒舌に言葉を紡いでいく。 (;'A`)「くそ、何で俺がこんなズタボロに言われなきゃなんないんだよ」 ξ#゚△゚)ξ「あらー?何か言ったかしら?」 ツンには聞こえないよう音量を最小限に抑え呟いたのだがそれも呆気なく聞き取られる。 どうやらツンは地獄耳の持ち主らしい。 (;'A`)「い、いや!なんでもないですよ!はは、はははは」 ξ#゚△゚)ξ「ふーん、ならいいんだけど。 と言うことで今日からみっちりしごいてあげるわ」 (;^ω^)「ひ!?」 ブーンが頼りない声を上げる。 ξ#゚△゚)ξ「喜びなさい?私の出した条件をクリアするために私が直々に手伝ってあげるんだから。 私ってなーんて優しいのかしら!!」 狂気の笑みを浮かべ声高らかに笑い出す。 その姿はまるで魔女。 無力な少年二人は、嫌に耳につく笑い声を聞きながらただその場に跪くしかなかった。 ――― ―― ― 耳を劈く乾いた炸裂音。 それを合図に地を駆ける音。 春にしては張り切りすぎな太陽がジリジリと照りつけ、乾燥した砂が地面を叩く音を追従するように巻き上がる。 (;^ω^)「……はぁはぁ」 手をつき大きく息をつき、荒げた呼吸を整える。 (;'A`)「……はぁはぁ。やっぱり速いなブーンは」 少し間を置き同じ体勢に入るドクオ。 大げさな呼吸音が二つ重なる。 (;^ω^)「はぁはぁ、ドクオこそハードルがあるとは思えない速さだお」 (;'A`)「……っへ!そいつぁ嬉しい言葉だね」 息が整い軽口を叩く。 その様子を後ろから見つめる鬼が一人。 ξ#゚△゚)ξ「ごるぁ!!!いつまで休んでんの!!さっさと走って戻る!!」 (;'A`)(;^ω^)「は、はい!今戻ります!!」 ξ゚△゚)ξ「位置について」 軽く一礼した後前に出る。 自分が今から駆ける前方50メートルを見据え、ゆっくりと息を吐く。 とは言っても、何も無い直線と言う訳ではなくその間には三つほどハードルが置かれているのだが。 ('A`)「ふぅー」 チラッと隣を見るとブーンは既にスターティングブロックに足を掛けその感触を確かめている最中だった。 ドクオはそれに焦ることなく軽くジャンプをしながら肩を回し、自分のリズムを作り上げていく。 試合前の儀式を終え、ようやく体勢を低くしクラウチングスタートの構え。 手を地面に添えもう一度前を見つめた後、下を向く。 束の間の静寂。 自らの心音だけが響く。 ξ゚△゚)ξ「よーい」 腰を上げる。 パァン! 炸裂音と共に身を前へと弾き出し、砂煙を上げながら駆け出していった。 ('A`)「ただいま」 J( 'ー`)し「おかえり、ご飯用意出来てるわよ」 ('A`)「ああ、二階に荷物置いてきてから食べるよ」 そう言い残し、重い足取りで階段を上っていく。 J( 'ー`)し「……今日は元気がないわね」 J(;'-`)し「まさか!クラス替えで仲の良い友達と離れてしまい教室内で孤立 自己紹介で放った渾身の一発ギャグ『桜田門外の変』は見事に滑り ついたあだ名は『井伊直弼』昼食の時はいつもいじめっこに 『ほら!早く安政の大獄起こしてみろよ!』なんていじめられてたりしてるんじゃ!?」 ('A`)「それはねーよ……」 J(;'ー`)し「あ、あらドクオ!早かったのね」 いつの間に下りてきたのか。 長々と独り言を呟くカーチャンの後ろでドクオは腹を押さえながら立っていた。 ('A`)「もう腹減りすぎて死にそう。早く飯にしよう」 J(;'ー`)し「あ、はいはい」 ('A`)「ねぇカーチャン」 J( 'ー`)し「ん、何?」 ('A`)「俺、次の大会で優勝できると思う?」 箸で焼き魚をつつき、そのまま乱暴に口へと運ぶ。 骨が口の中に刺さり苦い顔。 J( 'ー`)し「んー、どうかしらねぇ。でもこの前の大会は準優勝だったじゃない。 十分狙えると私は思うけどなぁ」 (;'A`)「そ、そっかぁごほっげふっ」 少し涙目になり、麦茶で骨ごと魚を喉奥へ押し流す。 J( 'ー`)し「何?ドクオ今度は優勝目指して頑張ってるの?」 (;'A`)「……まぁね。やるからには一番とりたいじゃない」 その言葉を聞きカーチャンの微笑みが一層深まる。 J( 'ー`)し「それはいい心がけだわ。 勝ち負けにこだわらなかったドクオがこんなに陸上に打ち込むなんて やっぱりあの人の血を受け継いでるのねぇ……」 遠い目でそう呟く。 (;'A`)「何かその話し方だとトーチャンが死んでるみたいな感じがするからやめようよ」 「たっだいまー!!」 陽気な声が玄関から響く。 ドア一枚隔ててると言うのにここまで聞こえるのだから相当の音量で叫んだのだろう。 J( 'ー`)し「あらあら、噂をすればなんとやらね」 カーチャンが箸を置き立ち上がる。 向かう先は玄関。 J( 'ー`)し「私が言うのも何だけど、ドクオとあの人が余りにも似てないものだから少し心配だったのよね。 でも、安心した。あなたはやっぱりあの人の子だわ」 そう言うと、声色を変え「おかえりなさーい、あなたー!!」と高らかに叫び出て行ってしまった。 ドクオはその様子をしばらく見つめた後、食事を再開する。 ('A`)「心配って自分で産んだ息子だろうが」 白飯を口に運び、モゴモゴと口を動かす。 その顔は微かに綻んでいた。 ('A`)「疲れたー!」 畳の上に大の字になり天井へ叫ぶ。 川 ゚ -゚)「……」 宙を掻くクーの視線。 ('A`)「二つじゃ意味ないだろ常識的に考えて……」 川 ゚ -゚)「何?それは本当か?」 視線がドクオへと向けられる。 その間もクーの手は器用にお手玉を続けていた。 ('A`)「そんなん狸でも出来るわ。俺たちは人間だぜ? だったらもっと多くしないと」 川 ゚ -゚)「成程」 途端、円運動を続けていた二つの玉が止まる。 クーはそれらを畳の上に置き台所へと向かった。 (;'A`)「うお!?それはいくらなんでも多すぎるだろ」 帰ってきたクーが抱えていたのは大量のお手玉。 おそらく数十個はあるであろうと思われるそれらはクーが歩くごとに少しづつ零れ落ちていた。 川 ゚ -゚)「馬鹿を言うな。これを全て一気に使うわけではない。 段々と数を増やしていき最終的にはこれら全てを使うのが目標なだけだ」 (;'A`)「最終的には全部使うんじゃねぇか!」 ドクオのツッコミを無視し三つの玉が円運動を再開する。 川 ゚ -゚)「自分で自分を定めるな。限界はいつだって目に見えない透明なものだ」 川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」 ('A`)「まーたいつもの名言集ですか」 単調な作業を繰り返すクーに思わず見入ってしまう。 一つ増えても難なくこなすその姿に少し驚きもあったのだろう。 その口はしばらく開きっ放しのまま放って置かれた。 クーの手の上で踊り続ける玉の数は次第に増え、気づけば六つにまで達していた。 (;'A`)「す、すげー」 川 ゚ -゚)「お前は見ているだけか?」 (;'A`)「え?」 川 ゚ -゚)「透明なそれがどんなものか知りたいとは思わないか?」 突然の問いに視線を天井へと戻し、しばし思案する。 川 ゚ ー゚)「ふん、怖いのか?自分の限界を知るのが」 (;'A`)「そ、そんなんじゃねーよ!」 思考を途中で止めきっぱりと否定する。 川 ゚ ー゚)「ならやってみろ」 ギリッと歯噛みし (;'A`)「わかったよ!やりゃいいんだろ!! 見てろよ!?軽ーく優勝してやるからな!!」 (;'A`)「ブハッ!」 飛来する冷たい流星群。 川 ゚ ー゚)「まずは三つから。なんせ私達は人間だからな」 (;'A`)「つか、何でお手玉が冷たいんだ?」 川 ゚ ー゚)「冷蔵庫に入れておいたから冷えているのは当たり前だ」 (;'A`)「あー、そーゆーこと」 畳の上に落ちた小さな星を拾い上げる。 手に冷たく柔らかい感触。 頬に当てる。 (*'A`)「ちべてー」 川 ゚ -゚)「次は二週間後くらいの話になりそうだ」 (*'A`)「へ?」 川 ゚ -゚)「独り言だ。気にするな」 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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