2006/12/30(土)20:35
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです(エピローグ)
100 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:50:37.78 ID:E32VWjc1O
…ここはどこだ?
…俺は何をしているんだろう?
『…先生!…患………の識……!!』
…五月蝿い。
何だこの声は。
…いや、この光は?
102 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:51:37.50 ID:E32VWjc1O
「別府さん!?別府さん!?…分かりますか?別府さん!?」
眩しい…
白い服の女…?
ッツ!!痛い!?
…どうして体が!?
…包帯?
104 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:53:38.90 ID:E32VWjc1O
「君は、交通事故のあと、この病院に運び込まれてきたんだ。
とりあえず体のほうは大丈夫だったんだが、
ここ数日、意識が戻らなくてね。」
どうやら、医師の話によると、
俺の乗っていた車がトラックと正面衝突して、
そのままここに担ぎ込まれたらしい。
どうやら、一週間意識が戻らなかったようだ。
体には、殆どの部分が包帯で巻かれており、
ミイラ人間のようになっていた。
その後医者の検査を受けたが、
後遺症も無く大きな問題も無いらしい。
また、警察とか名乗るものもやってきて、
根掘り葉掘り、色々と聞かれた。
しかし、トラックの運転手が飲酒運転していたらしく、
こちらには、ほとんど否はないということだ。
105 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:55:34.90 ID:E32VWjc1O
「あ、ここで大丈夫っすよ」
俺は看護士に礼を言った。
どうやら、自分では歩く事がままならず、
移動はもっぱら、車椅子だ。
俺は病院のロビーにいた。
病室に居ても退屈なので、
ここに置いてある新聞や雑誌を読むことにしたのだ。
とりあえず俺は、一週間分の、
社会の状況を知っておくことにした。
とりあえず色々と事件が起こっていたらしい。
俺は、今日の分の紙面に目を通す。
・安部内閣、チャレンジ法案最終案。
・亀田弘毅初防衛。喜びを語る。
・アパートの一室で男性の首吊り遺体発見。
・大学教授、盗撮の疑いで逮捕。また不祥事か。
しかし、そこまで大きな事件は起こっていないようだ。
107 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:56:52.25 ID:E32VWjc1O
『教育は、地域と学校、家庭が連携して行うべきです!!』
不意にテレビから大きな声が聞こえた。
なにやら、おエライ識者達がスタジオで討論しているようだ。
しばらく、見てみるとそれは教育関連の話らしい。
しかし、それはある事件を受けてのことだった。
それは、どうやら数日前に、地方で起こった事件らしく、
とある廃工場で、ある少年が仲間内で揉め事を起こし、
4人を殺めてしまった。
そして、警察に激しく抵抗して、射殺されたらしい。
物騒な世の中になったもんだ、と俺は思った。
109 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:57:16.10 ID:E32VWjc1O
「お世話になりました。ありがとうございます」
その声に振り返ると、
そこには30代前半らしい女性と、
白衣を着た中年の男性がいた。
「色々と手を尽くして頂いて感謝しています。
あの子も幸せそうに息を引き取っていました」
どうやら女性は、男性に礼を言っているようだった。
全ては聞き取れなかったので状況は飲み込めないが。
110 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:59:24.05 ID:E32VWjc1O
それから約一ヵ月後。俺は退院していた。
体はまだ本調子ではないが、
ようやく、二本の足で歩けるようになった。
その足で向かうのは、とあるチェーンのコーヒーショップ。
俺は、そこであるものを注文した。
「カプチーノホットのM一つに、
ホットチョコレートのS一つ。
あとキャラメルフレンチトースト二つ。
テイクアウトで」
俺は、紙袋を受け取ると、
そのまま、バス停へと向かった。
111 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:59:57.61 ID:E32VWjc1O
数十分間の間俺はバスに揺られていた。
気がつけば、周りの席には誰も居ない。
『次は終点、植草霊園前~植草霊園前~』
俺は、右手にある、赤いブザーを押した。
「ありがとうございます」
おれは運転手に礼をいうと、バスを降りた。
そこでは、山を切り崩した場所に、墓が建ち並んでいた。
俺はゆっくりと石段を登り、ある一角へと向かっていった。
その場所には、直方体の大きな石がそびえ立っていて、
『先祖代々乃墓』とか『津手家』とか刻まれている。
俺は紙袋から、一個の紙コップと、
一個のパックを取り出し、その墓前に置いた。
113 名前:猪(金歯)[] 投稿日:2006/12/23(土) 23:02:17.36 ID:E32VWjc1O
「…お供え物…というには、少し変…かもな。
でも大好きだっただろ?」
俺はそう呟くと、静かに目を閉じ、手を合わせた。
一ヶ月前。俺はトラックに巻き込まれ事故を起こした。
その車には同乗者が一人。
それは、俺のフィアンセでもあった人だ。
彼女は、俺が意識が回復するのを待たないまま、
逝ってしまった。
俺は、その事実を知り、
泣いた。叫んだ。悲しんだ。
罪の意識にも苛まれた。
でも、どうしても、彼女の後を追う気にはなれなかった。
死ぬのが怖かったんじゃない。
ただ、それはいけないと思ったからだ。
そんな事をすれば、
彼女は凄い剣幕で怒るに違いない。
それに不思議と、彼女が居なくても、
いつも彼女がそばに居るような気がしていたから。
114 名前:猪(金歯)[] 投稿日:2006/12/23(土) 23:03:04.09 ID:E32VWjc1O
そして、再び目を開け、また呟いた。
「ありがとう。俺頑張るよ」
空では雲雀が呑気に飛んでいた。
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです 完