第四章17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:26:18.75 ID:MILrhytz0―4章ー ―――都市ワクテカ 四方を、大戦の名残である防壁に囲まれ、 南側に大きな門を配置している様はまるで中世の城下町のようだ。 しかし立派な防壁とは対照的に、街中には簡素な造りの家が並んでる。 大戦の傷跡は150年の時をもっても癒しきれないという事だろうか・・・。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:27:28.71 ID:MILrhytz0 ('A`)「ふぅ・・・割と早くついたな」 野営地から半日と経たずドクオがワクテカへと到着した。 ('A`)「にしても凄ぇ活気・・・クワシク町とは大違いだな」 一週間に自分が出発した町と、 今自分が立っている町並みを見比べ一言漏らす。 この地方では比較的大きな都市なのだろう、 街の中は活気に溢れ多くの人達が行き交う。 西を見れば露店が立ち並び、 東を見れば工場が常に煙を吐き出している。 『この街もまた、昔の文明に憧れ躍起になっているのだろう・・・』 等と考えながらドクオは西へと進路を取る。 ('A`)「にしても、門番のおやっさんに聞いても 荒巻なんて人知らないって言ってぞ」 ('A`)「まぁ・・・こんだけ人が多い街だからな、 住民全員覚えてる訳無いか」 ドクオは、荒巻を見つけ出す方法を考えながら、 露店に立ち並ぶ品を眺め歩いて行く。 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:28:38.63 ID:MILrhytz0 大通りでは様々な露店が立ち並んでおり、 日常雑貨から怪しげな機械類まで品揃えは膨大な数に上っている。 ('A`)「情報収集に基本は酒場ってね。 夜になったら行ってみるか」 日はまだ高い。 荒巻の探索は酒場に明かりが灯るまで待ち、 ドクオは、瀕死状態になっている鞄の中身を助ける事を 先決する事に決める。 ('A`)「食い物はなるべく後で仕入れるとして、 まずは消毒液と時計と・・・マッチ、煙草だな」 ドクオは、街を練り歩いていると早々と古ぼけた煙草屋を見つける。 店内へ入ると、ここぞとばかりに受付の老婦人へとドクオが注文を出した。 ('A`)「すんません。パラメン10箱とマッチ10箱ください」 老婦人が奥の部屋へ下がると、2.3分と経たない内に注文の品が手渡される。 ('A`)「どもども」 『煙草屋って火事になったら一巻の終わりだよな・・・』 等と思いながらドクオは、代金を支払い店を後にする。 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:29:54.40 ID:MILrhytz0 ('A`)「とりあえず命の煙と希望の炎は補充可能っと。 次は時計か・・・」 露店では、日常品から発掘品まで様々な品が売られている。 が、その多様な品揃えと品数故か、 品物と値段が釣り合っていない物が多く見られる。 俗に言う『ぼったくり品物』だ。 大都市になればなるほどそれは多くなり 更に、機械仕掛けの物に多い傾向があるようだ。 ('A`)(ぼった・・論外・・・でか過ぎ・・ぼった・・・論外) そんな商品の餌食とならぬよう、 持てる限りの鑑識眼を働かせながらドクオは時計を見て回る。 ('A`)(ぼった・・・発掘品時計パス・・・これもぼった・・・ん?) ふと、ドクオの目に一軒の時計専門だと思われる露店が映る。 ('A`)「これは期待できるかもわからんね」 良さ気な露店を見つけ、ドクオが歩みを向ける。 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:30:46.71 ID:MILrhytz0 ( ´_ゝ`)「時に・・・時計をお探しか?旅のお方」 (´<_` )「何気ない日常に、ドキドキハラハラの冒険に」 ( ´(´<_` )「持ってて安心、流石印時計!!」 営業文句だろうか?店員を思われる双子の兄弟が、 無駄に良いコンビネーションでドクオへと言い放つ。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:32:11.79 ID:MILrhytz0 (#´_ゝ`)「時に弟者君、決め文句の際、 毎回、俺にオーバースクリーンしてくるのは辞めてくれないか?」 (´<_` )「どの様な時計をお探しで?客人」 (#´_ゝ`)「・・・」 双子の片割れが、何やら腹を立てているようだが・・・。 自分にはその声は聞こえないかのように、弟者が接客を始める。 ('A`)「旅に向いてる丈夫な奴を探してるんですよ。 なるべく小さい方が良いですね。」 (´<_` )「・・・成るほど、これなんていかがかな?客人」 弟者が一つの時計を指差す。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:33:24.17 ID:MILrhytz0 指指す方には、普通の四角型の置き時計を、 二回り小さくしたような黒い時計が置かれてあった。 (´<_` )「『象が寝転んでも壊れない』のコンセプトで 我らが作った時計だ。」 (#´_ゝ`)「・・・・・・ウン。ツクッタヨ」 ('A`)「象?・・・マジすか?」 (´<_` )「ハンドメイド故、少々値は張るが、 耐久性においては保障しよう」 ('A`)「うーん・・・」 怪訝そうな表情をしているドクオを見て、弟者がもう一押しする。 (´<_` )「うーむ。信じられないのであれば、 客人が背中に抱えている盾を時計目掛けて落としてみるが良い。」 ドクオの背中に担がれている盾を指差し、弟者が言い放つ。 (;'A`) 「え?・・・大丈夫なんですか? こいつ40キロ位ありますよ?」 商品を破壊してしまうだろう自信故か、ドクオが弟者へ再確認する。 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:34:51.93 ID:MILrhytz0 (´<_` )「問題ない。既に独自の耐久実験でテスト済みだ。 さぁ落としてみろ」 弟者に言われるがまま地面に時計を置き、ドクオが盾を落とす。 ガキッ!! 真剣同士がぶつかり合った時の様な音が響き、 水平になった盾が、右側の部分だけが地面へと着いた。 ('A`)「さぁーて・・・どれどれ」 ドクオは盾を再び背中で担ぎ上げると、地面へと視線を移す。 そこには、傷一つ付いていない時計が、 地面に少し埋まりながらも悠然と存在した。 (;'A`)「こ・・・こいつ凄ぇ」 ドクオの驚愕の表情を見た弟者はフィニッシュへと移行する。 (´<_` )「象が寝転んでも壊れないのだからな。 当然の結果だ。」 (´<_` )「価格は800リタ。どうする客人?」 800リタ・・・日本円に直すと約8000円。 確かに時計としては若干高めだが、 この世界の技術力から換算すれば良心的な値段だろう。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:36:01.86 ID:MILrhytz0 ('A`)「・・・よし。買った」 ドクオは財布から代金を取り出すと、弟者に手渡す。 (´<_` )「毎度あり」 弟者は代金を受け取ると、時計を軽く布で拭いた後、ドクオへと手渡す。 (#´_ゝ`)「何時でも何処でも貴方と供に」 (´<_` )「真心込めて作っています」 ( ´(´<_` )「買って安心、流石印時計!!」 (#´_ゝ`)「・・・・・・・・・・」 ドクオは、双子達の決め文句を聞き終えると、 買った時計をしけしげと眺めながら露店を後にする。 ('A`)「ふーむ、なかなか良い造りしてんじゃん・・・ん?」 指先に、彫り物だろうか?溝を感じた。 何かと思いふと裏面を覗くと、 【 流 石 だ よ な 俺 ら by兄者&弟者】 作者名がでかでかと刻まれていた。 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/05(火) 21:37:28.09 ID:MILrhytz0 (;'A`)「だ・・・だせぇ」 思わぬミスデザインにドクオが、肩を落としながらうな垂れなだれる。 (;'A`)「ま、まぁ機能はすこぶる良好だから目つぶっとこうか」 「弟者君、兄を邪見に扱うとは実に良い度胸だ!! そんな素直な君には俺の拳をプレゼント!!」 「OK、兄者!!ときに落ち着け!!」 「うるさい!! 問 答 無 用 ! ! 」 ドクオの後方で、何やら叫び声と暴打音が聞こえたが・・・まぁ、きっと空耳だろう。 ('A`)「ああ・・・今日も平和だなぁ」 時計が時を刻む音に耳を傾けながら、ドクオが空を見上げると、 ワクテカを照らす紅き太陽が大地に還り始めていた・・・ |