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73 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:25:33.46 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)「君は…一体誰だお?」 僕は疑問の核心、それを短くまとめて質問した。 ξ゜ー゜)ξ「………」 彼女は、しばらく黙っていたがこう答えた。 ξ゜ー゜)ξ「…あなたは、それを知っているわ」 ξ゜ー゜)ξ「…いえ、それを思い出しつつある… って言った方が正しいかも」 ( ^ω^)「えっ…?」 僕は何か言おうとしたが、彼女はこう続ける。 75 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:30.78 ID:E32VWjc1O ξ゜ー゜)ξ「…でも、あなたはあなたのままだったわ」 ξ゜ー゜)ξ「…知らない女性の前で敬語になることも、 …私が怒るとすぐ謝るところも」 ξ゜ー゜)ξ「…熱いものを無理して飲むところも …口に物入れながら喋るところも」 ξ゜ー゜)ξ「…その穏やかな口調も、 …その子供みたいな笑顔も」 ξ゜ー゜)ξ「全部…いつもと変わらなかった」 気がつけば、観覧車は、 その半分くらいの高さのところまで登っていた。 76 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:51.19 ID:E32VWjc1O ξ゜ー゜)ξ「まさか、あなたが …訪れてくれるなんて思ってもみなかった」 ξ゜ー゜)ξ「急なことだったから… どうすればいいか分からなかったけど…」 ξ゜ー゜)ξ「ふと、思い出したの。 『来週、遊園地にでも行こう』 …ってあなたが言ってくれたこと」 ξ゜ー゜)ξ「そして、気がついたら、私はここにいた」 ξ*゜ー゜)ξ「まぁ…ちょこっと、変な形になっちゃったけどね」 そう言って、彼女は笑った。 その笑顔は、周りの光に照らされて透きとおっているようだった。 77 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:29:37.19 ID:E32VWjc1O 不意に彼女は僕の額に手を当てる。 そこに感じるのは暖かいぬくもり。 僕はちょっとだけ、ドキッ、とした。 ξ゜ー゜)ξ「…そう。色んな人に与えてもらったのね」 何かを感じ取ったのか、彼女はそう呟いた。 ξ゜ー゜)ξ「だったら…次は…私の番ね」 (;^ω^)「…?へっ?なn」 僕には彼女の言っていることが分からなかった。 ξ゜ー゜)ξ「ねぇ…聞いて?」 彼女に穏やかにこう続ける。 79 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:30:01.40 ID:E32VWjc1O ξ゜ー゜)ξ「私はこんな性格だから、 あなたに随分、うんざりとさせてしまったわ」 ξ゜ー゜)ξ「…それでも、あなたはただ笑って、 私につきあってくれた」 ξ゜ー゜)ξ「あなたを選んで、内心、鼻高々だったのよ。 …友達は色々いってたけどさ」 ξ゜ー゜)ξ「だから、私は一生あなたと一緒に歩いていこう …って決めたの」 ξ ー )ξ「…でも…その願いは…もう…」 その声は、次第にかすれていく。 81 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:06.37 ID:E32VWjc1O ξ;ー;)ξ「…私…嫌だよ…怖いよ」 ξ;ー;)ξ「…嫌っ!!離れたくない!!」 (;^ω^)「…ちょ!?ちょっと!?」 そう言うと彼女は僕に体重を預け、しっかりとしがみ付く。 その体は力を入れれば折れそうなほど華奢だった。 (;^ω^)「…な、何だかよく分からないけど… 君がそう言うなら…僕は何処にも行かないお」 僕の胸の中で、彼女は小さく震えている。 無意識のうちに僕は彼女の髪を撫でていた。 その感触はすごく柔らかかった。 82 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:38.67 ID:E32VWjc1O ξ;ー;)ξ「…ごめんなさい」 しばらくの無言の後、そう言うと、彼女は再び顔を上げる。 ξ;ー;)ξ「また…ワガママ言って…あなたを困らせちゃったね」 ξ ー )ξ「でも…もう…大丈夫…」 そう言うと、彼女は笑う。 その目は、周りの明かりに照らされて、輝いている。 しかし、どこかその表情は無理をしているようでもあった。 気がつけば、観覧車は頂上に近づこうとしている。 下の宝石箱は、さらに小さくなっていた。 84 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:16.32 ID:E32VWjc1O ξ*゜ー゜)ξ「…こんな…時くらい…素直にならなくちゃね…」 ξ*゜ー゜)ξ「…もう会えないって思っていた…」 ξ*゜ー゜)ξ「神様が…最後の願い…叶えてくれたのかな?」 そう言うと、彼女は僕の体をぎゅっと抱きしめてきた。 そして、その濡れた瞳は僕の瞳に近づいてくる。 無意識のうちに僕はそれに答えるかのごとく、抱きしめ返す。 彼女同様、僕も彼女の顔に自分の顔を近付ける。 そして、二つの顔がぶつかりそうになった瞬間、 彼女は僕の耳元で、こう呟いた。 85 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:40.53 ID:E32VWjc1O 「愛してる」 そして、僕たちの唇は重なった。 まるで、それは元々一つのものであったかのように。 その、感触は、柔らかくて、暖かかった。 その瞬間、僕の体の奥底から、 ほとばしるように、眩しい光がこみ上げてくる。 そうだ、彼女は…!! 僕は思い出した。 彼女は―――僕にとって一番大事な人。 87 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:37:24.66 ID:E32VWjc1O 乾いた衝撃音に気がつくと 目の前は眩しくなっていた。 まるで、その光景は、 空に大きな向日葵が咲いたように広がる。 そしてその花びらは、次第に散って、 小さなカケラに変わってゆく。 それは、何千、いや何万個にも分裂して、 僕らの上から降り注いできた。 そして、その光の粒は僕の頬にそっと触れる。 それはとても優しく、暖かい。 僕たちは名残惜しそうに、 お互いの体を離す。 しかし、その視線だけは離さないままだった。 88 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:38:34.52 ID:E32VWjc1O (;^ω^)「………そうだ…君…は…!!」 ξ゜ー゜)ξ「やっと…思い出したのね…馬鹿」 しかし、彼女の表情は穏やかであった。 ξ゜ー゜)ξ「…でも…もう…時間みたい…」 再び、僕は、あの、不穏な空気を感じていた。 …いや…そんな…まさか… …止めてくれ!!お願いだ!! …もう少し…時間を!! 90 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:41:54.07 ID:E32VWjc1O 僕の淡い期待とは裏腹にそれは起こった。 びきっ。という鈍い音。 それは、今までのそれより嫌なものに感じた。 その変化は、まず、僕らに乗るコーヒーカップに起こる。 そして、それに続くかのように、 大きな円を支えていたパイプも欠け始めた。 下を見てみると、小さな宝石にもヒビが入っていた。 みるみるうちに、その輝きは細かく、ばらばらになる。 慌てて僕は彼女を見た。 その姿は心なしか虚ろに見えた。 僕は、再び彼女を抱きしめる。 決して逃がさないように。 決して離さないように。 すると、僕の耳に、優しく、穏やかな声が入ってくる。 91 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:42:19.00 ID:E32VWjc1O 「…ごめんね…」 何で謝るんだ。君は何も悪くない!! 「…私も…まだ…一緒に…居たい」 そうだよ!!まだ遊びきっていないじゃないか!! 「…でも…それは…ワガママ…あなたを困らせる…」 気にしなくていい!!困ってなんかいない!! 「…あなたには…あなたの…未来があるから…」 僕の未来は…君と一緒に歩く事なんだ!!! 93 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:44:34.94 ID:E32VWjc1O 突然、僕の腕は空を切る。 すると、彼女の姿は、宝石の破片に埋もれていた。 (;^ω^)「待ってくれ!!…まだ…」 透きとおった彼女の表情は、優しく微笑んでいた。 そして僕の目が、それを、 人であったことが確認できなくなってきたとき、 背後では、大きな黒い渦が、 まるで大きな生き物のように全てを飲み込んでいく。 (;^ω^)「まだ何にも伝えちゃいないんだ!!…だから!!」 その声も虚しく、周りの世界の、 あんなにも鮮やかだった色は黒に染まっていく。 そして、最後の色の欠片が吸いこまれようとしたとき、 彼女の声は聞こえた。 94 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:45:09.58 ID:E32VWjc1O 「大丈夫。私はいつまでもあなたの中に居るから」 その場に残ったのは僕と、 目の前の闇の中に一点だけ浮かぶ光。 それは、前に見たそれよりも、弱く、儚く見えた。 その光は否応無しに僕の中に入っていく。 そうして、僕は彼女の夢を喰い尽くしてしまった。 気がつけば、再び僕は最初の白い部屋の中にいた。 96 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:47:29.31 ID:E32VWjc1O 僕は、奇妙な感覚に襲われていた。 この気持ちはなんだろう? 喜び?怒り?悲しみ?楽しみ? それが、ぐるぐると僕の体の奥底で渦巻く。 どんなに、体に力を入れても、 どんなに、歯を食いしばっても、 どんなに、拳を握り締めても、 それは僕の中では抑えきれなかった。 ( ;ω;)「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」 僕は思い切り拳を、真っ白な壁に叩きつける。 ドンッ、と鈍い音がした。 97 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:48:21.15 ID:E32VWjc1O ぴきっ。 あんなに叩いても壊れなかった壁に、ヒビが入る。 それは、大きな亀裂を生む。 さらに亀裂は、壁の、床の、天井の上を走る。 それに気づいた時には僕は立っていれなかった。 一瞬宙を浮いた感覚。 そして、下に吸い込まれるような感覚。 僕は奈落の底へと堕ちていった。
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Dec 30, 2006 08:34:35 PM
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