第五話48 :現在のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:42:52.02 ID:Sub43J8S0スコア |1|2|3|4|5|6|7|8|9|R|H|E| ROK|1.| .| .| .| .| .| .| .| .| .|1.|0.| VIP .| .| .| .| .| .| .| .| .| .| .|1.|0.| 投手成績 内藤( ^ω^) 投球回:1 打者:4 被安打:1 被本塁打:1 奪三振:1 四死球:0 失点:1 自責点:1 畑(^・J・^) 投球回:0/3 打者:1 被安打:1 被本塁打:0 奪三振:0 四死球:0 失点:0 自責点:0 50 :現在のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:44:33.51 ID:Sub43J8S0 野手成績 ヴィッパーズ 長岡( ゚∀゚):右安 荒巻/ ,' 3: 毒田('A`): ニダ<ヽ`∀´>: ショボン(´・ω・`): 笑野( ^Д^): 椎名(*゚ー゚): 津村ξ゚△゚)ξ: 内藤( ^ω^): ロケッターズ 井蓋(◎´∵`◎):右本 高掛(['][,]):左飛 近城( ´金`):遊ゴ 榊彡 ´ー`):空振 村者(ムΘラ): 古者[`↓´]: マムウェイ(0´く`0): 哀歌(^亮^): 畑(^・J・^): 51 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:46:27.37 ID:Sub43J8S0 【第5話『弥縫』】 荒巻はバントの構えを崩さない。キャッチャー哀歌は送球しづらい体勢になり、二塁に投げようとしたときには、既に長岡が二塁ベースに触れていた。 再び荒巻は右手をベンチに向かって突き出す。たった2球で、ノーアウト二塁のチャンスを作った。 (実・Д・)『荒巻のバントばかりを警戒したのでしょうか、ロケッターズバッテリー。完全に盗まれました!』 (解´Д`)『今のは怖い作戦ですねぇ。初球から走るとは……良く言えば、長岡が果敢でしたが……怖いもの知らずというか……」 (実・Д・)『長岡は常々こう言っています。「盗塁なんて簡単だ。真っ白なベースをとある物に見立てて走れば自然に体が動く」と。その"とある物"が何かを明かしたことはないそうですが、そこに盗塁王の秘訣があるのでしょう!』 畑がロージンを手の上で跳ねさせる。長岡のほうへ視線を向けることはなかった。 打者荒巻を見据え、そして、第二球。 (実`・Д・)『おーっと! ここでバント! 荒巻上手く三塁側に転がしました! 長岡は三塁へ!』 (;^亮^)(ちっ……) ロケッターズにとっては、最も迎えたくない打者を迎えてしまった。 隙のない天才打者が、左打席でゆらりとバットを揺らす。 (実・Д・)『さぁ、ワンナウト三塁で毒田が打席に入ります! ロケッターズ、どう抑えるのか!』 (解´Д`)『厳しいですねぇ……毒田に外野フライも打たせないというのは……』 (実・Д・)『.3291、28HR、111打点! 今年で六年連続の三割を記録、そして現在バットマンレースでも、僅か7毛差ではありますがトップ! 三度目の首位打者なるかどうかは、今日の成績にかかっています!』 ライトスタンドから引っ込め引っ込めの大合唱が聞こえる。主に女性ファンの声が多かった。 52 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:49:06.10 ID:Sub43J8S0 (実・Д・)『そして今日もライトスタンドに響きます、引っ込めコール! もちろん全員ヴィッパーズのファンです!』 (解´Д`)『ははは、ユニークですね』 (実・Д・)『二年前、毒田が一時不振に陥っていた際、とあるヴィッパーズの女性ファンが"引っ込めブサイク!"と叫んだ瞬間に逆転サヨナラホームランを打ったことから、チャンスに登場するときはいつも引っ込めと野次られています!』 (;'A`)(さすがに慣れたけど……ちょっと切ないぜ……) (実・Д・)『しかし球場全体にこだまする引っ込めコールは、言わばファンの多さを表すようなもの! 特に子供の人気は絶大の毒田選手です!』 畑が第一球を投げ込む。インローにストライク。 ('A`)(インローにズバッと決まるのは調子が良いときの畑だ……厄介だな……) 続いて第二球、シンカーが低目に外れる。毒田はひたすら球を見ていた。 ('A`)(ストレート、シンカー……次は、もっかいストレートか?) 第三球、高めのストレート。バットが動き、ミートする。バックネットへのファール。 バットの上で捉えてしまっていた。少し首を捻る毒田。 そして第四球でボールになるフォークが投じられるも、読みきった毒田は余裕で見逃す。 観客からの応援が一瞬静まる。スタンドが、勝負に注目し始めた。 第五球。 (実`・Д・)『掬い上げた! 打球はセンター前に落ちる! センター前ヒィィィーット!!』 長岡があっさりホームを駆け抜ける。毒田が一塁ベース上で拳を突き上げた。 54 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:53:11.50 ID:Sub43J8S0 (実`・Д・)『やはり毒田、天才! 低目の難しいボールを掬い上げてセンター前へのタイムリー! ヴィッパーズ同点に追いつきました!』 (解´Д`)『これは、苦しいですね……畑……』 勢いに乗ったヴィッパーズ打線は止まらない。 四番ニダのレフト前ヒット、五番ショボンのフォアボールで、ワンナウト満塁のチャンス。 そして、六番笑野が打席に入る。 (実・Д・)『ワンナウト満塁の大チャンスで、元三冠王が左打席に入ります! 六番笑野! 首位打者一回、本塁打王三回、打点王二回を誇るヴィッパーズの大砲!』 (解´Д`)『……しかし、今年はどうしてしまったんでしょうねぇ……』 (実・Д・)『やはり衰えは隠せないのか…….256、21HR、69打点と信じられないような不振に陥っています』 (解´Д`)『眼が悪くなったらしいですね……時々物がぼやけて見えると』 (実・Д・)『迫り来るボールも』 (解´Д`)『ぼやけていては、芯で捉えられるわけがありません』 畑から投じられた二球目のストレートを笑野が打ち損じ、打球はピッチャーの前に転がる。 ホームに送球され、そして一塁へ。ホームゲッツーとなり、スリーアウト。 (実・Д・)『スリーアウト、チェンジです。しかしヴィッパーズ1点を返し同点! 試合はまだまだ分かりません!』 内藤はキャッチボールを終えて再びマウンドへ向かう。今度は、マウンドが高い場所だとはあまり思わなかった。 右足をプレートに置いて、冷静に打者を見つめる。そして、ショボンの動作へと目を移す。 サイン通りにいかない球はあっても、甘いところへは行かない。内藤は腕の振り方を思い出したような気分になっていた。 (実・Д・)『打った! これはライト毒田ほぼ定位置! 内藤、村者と古者の5・6番をあっさり打ち取りました! ツーアウト!』 55 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 22:57:21.24 ID:Sub43J8S0 内藤は呼吸を整えた。落ち着いている。慎重に、丁寧にいけば、打たれない。そう思って、ある種安堵に近い感情が指先を支配していた。 そして、七番マムウェイへのフォアボール。 (実・Д・)『……淡々とツーアウトを取りましたが、その後フォアボール……』 (解´Д`)『これは良くないですねぇ……嫌なパターンですよ』 ヴィッパーズナインと、ヴィッパーズファンの不安は的中する。八番哀歌への初球はカーブが高めに浮いてしまい、右中間を破るツーベース。ツーアウト1・3塁のピンチを招く。 (実・Д・)『ロケッターズ、勝ち越しのチャンスを掴みました! 打席にはピッチャーの畑が入ります!』 (解´Д`)『この人はピッチャーらしからぬ打撃を見せますからね、要注意ですよ』 (実・Д・)『今季打撃成績は.205、2HRの8打点! 自身で決勝点を放ったことも二度あります!』 (実・Д・)『野布良さん、内藤はプロで初めてピンチを迎えているわけですが……ここは、ショボンのリードに期待、といったところでしょうか?』 (解´Д`)『期待できませんねぇ、正直言って』 (実・Д・)『……ですか?』 (解´Д`)『私はショボンのリードを全く評価していません。本人は奇抜なつもりかも知れませんが、基本を知らなさ過ぎる。斬新さってのは基本の上に成り立つんですよ』 (実・Д・)『はぁ……』 (解´Д`)『内藤は初めて得点圏にランナーを背負った。こういうときこそ、キャッチャーはしっかりしたリードで投手を導かなきゃいけない。しかし、ショボンにそれができるかどうか……』 (実・Д・)『果たして、ショボンはどういうリードを見せるのでしょうか……』 (^・J・^)(内藤が今までに投げた変化球はカーブとスライダー……他の球は、とりあえず思考から外しておくか。投げるかどうか分からんしな……) 畑が右打席に入って、フォームを構える。野手さながらの迫力あるバッティングフォームだった。 58 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 23:01:17.58 ID:Sub43J8S0 ショボンが畑を見つめ、そして内藤にサインを出す。 初球、まずは高めに外した。 (´・ω・`)(畑は配球を読むのが上手い。それが投手らしからぬ打撃成績に繋がっている、が……逆に言えば、読みさえ外せば打たれる危険はほとんどない) 二球目、ストレートが内角低目に上手く決まってワンストライクワンボール。 (^・J・^)(次は変化球でストライクを取りに来るか……) 第三球、今度は外角高目へのストレート。読みを外した畑が一旦打席を外した。 ツーストライクと追い込まれた畑。再びリードを頭の中で想定する。 (^・J・^)(三球連続ストレート……本当に自信があるのは榊さんに投じたスライダーだろうに……) (^・J・^)(決め球には……やはり、スライダーを持ってくるのか?) 畑がバットを構える。ショボンがサインを送る。 畑は、はっとして一瞬動きを止めた。内藤がサインに首を振っている。 (^・J・^)(首を振った……!? この場面で……) (^・J・^)(……ストレートにはさほど自信がないと見る……内藤は、スライダーで三振を取りに行きたいはずだ。さっき榊さんを空振らせた球だからな) (^・J・^)(ショボンのサインがスライダーなら首を振るはずがない……カーブでも、頷くだろう。首を振るとしたら……ストレートだ) ショボンが再度サインを送る。今度は、頷いた。 61 :第5話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/08(月) 23:05:06.01 ID:Sub43J8S0 (^・J・^)(ストレートを嫌って、首を振った……そして、ショボンは恐らくスライダーにサインを変えたはずだ) (^・J・^)(間違いない。アウトコースのスライダーで勝負してくる!) 内藤がセットポジションから、第四球目を、投じた。 右手から離れた白球は、畑の胸元を抉るようなストレート。畑は全く反応できなかった。 (実`・Д・)『見逃し三振ッ! 内藤、このピンチを三振で脱しました!』 ショボンがボールをその場に放ってベンチに帰っていく。不敵な笑みを、畑に見られないようにしながら。 (;^ω^)("首を振れ"なんてサイン、本当に使うのかと思ったけど……しっかり覚えて正解だったお) 内藤はベンチに座って打席を見つめていた。七番椎名が二球目を引っ掛けてしまい、セカンドゴロに倒れていた。 そして八番津村は畑の速球や変化球にほとんどタイミングが合わず、三振。早くもツーアウトとなる。 (実・Д・)『畑、内藤に負けじと好投を見せます! 初回の乱れを感じさせないピッチングです!』 (解´Д`)『元々この人はスロースターターですからね。これからドンドン良くなっていくでしょう』 (実・Д・)『さぁ、そして打席には内藤! プロ初打席の内藤です!』 内藤がヘルメットを被る。帽子よりも不似合いに見えるその格好は、会場の笑いを少し誘った。 バットを手に、右打席へ。プロ初打席へ。 第5話 終わり ~to be continued 第六話へ |