第一話第一話 「コタツとミカンとうつ伏せ少女」 全てが止まっていた。 ('A`)(……なんだこれ) 目の前には小太りな少年。その手には包丁。その刃の先には自分の体。 ('A`)(俺刺されてるのか……) 何故か痛みはなかった。刺されていると言う事実を目で知覚することは出来ても、痛覚で感じることは出来なかった。 ('A`)(後ろにも誰かいる…のか?) 背後には少し巻いた金髪が鮮やかに光を反射している美しい少女。 これもまた何故だか分からないが、姿を視認せずともそれは自然と脳内に飛び込んできた。 ('A`)(よく分からんが、人に刺されるなんて初めて体験したな) けたたましい不快音が耳を劈く。 ('A`)(うるせーな……今度は何だよ) 目の前の異常な状況は徐々に消え失せ、不快音だけが耳に張り付いて離れない。 ('A`)(ああ……もしかして……) ('A`)「…………」 窓から射す日の光と今なお身を震わせ朝を告げる目覚まし時計がドクオの頭を刺激する。 それと共に先ほど感じた謎がゆっくりと解けていく。 ('A`)「夢……だったか」 視界より思考のほうが先に明晰さを取り戻した。 目覚まし時計を止めてベッドから降り、大あくびをしてから部屋を出た。 階段を降りてダイニングに行き、両親に朝の挨拶をしてから朝食にありついた。 いつもと変わらない朝の風景。眠い目をこすりながら一口一口ゆっくりと口に運ぶ。 ('A`)「ごちそうさん」 朝食を終えるとすぐに制服へと着替え始める。ゆっくりだがスムーズに朝の準備は整っていく。 面倒臭がりなドクオは朝の準備に時間をかけない。そんなことに時間を費やすくらいならもっと寝ていたい、という考えだ。 歯を磨き顔を洗い鼻毛チェックを終えた後、荷物を取りに二階へ上がる。 ('A`)「いってきます」 二階から降りたらそのままの足で玄関を開け、学校へと向かった。 ('A`)「おはようさん」 ( ^ω^)「またHR開始五分前ぴったりだお! もしかして廊下で時計見ながら待ってたりしてるんじゃないかお!?」 教室に入るやいなや元気のいい声で話しかけてくるのは小太りな少年。 まだ朝だと言うのにその額には汗が滲んでいた。 ('A`)「そんな面倒なことしねーよ。ただ時間通りに行動してるだけだ」 ξ゚△゚)ξ「時間通りに行動する方がよっぽど面倒だと思うんだけど」 ドクオの発言にすかさず突っ込みを入れる金髪の少女。 まだ朝だと言うのにその言葉には何かトゲトゲしいものが感じられる。 ('A`)「ブーンもツンも朝の挨拶ぐらいしろよ」 小太りな少年と金髪の少女に注意する。そこで朝見た夢の記憶がじわじわと蘇ってきた。 ('A`)「あー、お前ら見て朝見た夢のこと思い出したわ」 ( ^ω^)「僕たちが夢に出てたのかお?」 ξ゚△゚)ξ「ふーん、一応その夢の内容聞いといてあげるわ」 相変わらずトゲのある言葉。 ('A`)「俺がブーンに刺されててツンが俺の後ろにいた」 ξ;゚△゚)ξ「それじゃ私がドクオにかばわれてるみたいじゃない」 自分の予想とは反した答えが返ってきたせいか、二人は少し驚いた表情で返した。 ('A`)「多分そんな感じだろうな。まぁ痛みは感じなかったし結構面白かったぞ」 ( ^ω^)「どうせなら白馬に乗った王子様役とかで出演したかったお」 ξ゚△゚)ξ「あんたが王子様になれるわけないじゃない。せいぜい豚小屋がいいとこだわ」 ブーンの言葉にすかさず毒を吐くツン。 (;^ω^)「せめて豚小屋じゃなくて豚と言ってほしかったお」 ξ;゚△゚)ξ「ちょ、豚でいいの!?もう少し自分にプライド持ったらどうなのよ」 ( ^ω^)「別にいいお。ブーブー言ってるだけで餌をもらえるなんて十分幸せじゃないかお」 (;'A`)「なんかお前が可哀想に思えてきたよ」 一分もしない内に教師がやってきて教室はやっと本来あるべき姿へと戻った。 从'ー'从 「朝のHRをはじめまーす。まずは出席からねー」 教師は教室全体を見回した後出席簿をつけ話を始めた。話と言っても特別な行事がない限りそう長くは話さない。 ('A`)(今日の夢は面白かったな) 教師の話など気にも留めず考え事にふける。 昔の思い出だとかトラウマだとかを夢で見るというのは、マンガや映画などではよくある話だ。 ドクオはいつもそれを不思議な気持ちで見ていた。 自分はそんな夢を見たことがないし、夢とは意味のないものだと思っているからだ。 意味なく現れる異形の怪物に怯え、逃げ惑い、最後の逃走手段として目を覚ます。 昔恨みを買った人物と、思い出の場所で出会い、トラウマの引き金となる言葉を放たれ恐怖で目が覚める。 前者はよくあることだが、後者は見たことがないしこれからも見ることはないだろう。 夢とは所詮、夢でしかない。 ('A`)(また面白い夢が見れると良いな……) ドクオは面倒と同じくらい退屈を嫌った。寝てる間でさえも。 从'ー'从 「――と言うことで朝のHRは終わり。それじゃみんなお勉強がんばってねー」 教師が教室から出て行く前にドクオは眠りについていた。 目を開く。教室とは違う空間が目の前に広がる。 ('A`)「なんだここ」 体を起こすとここが六畳ほどの広さの部屋だということが分かった。 畳が敷かれ部屋の中央にはコタツがあり、部屋の端には20インチほどのテレビも置かれていた。 他にも中はよく見えないが台所らしき空間、トイレや風呂と言ったようなものも確認できた。 畳を触れば感触があるし電灯の明かりをまぶしく感じることも出来る。全てが夢の中では初めての体験だった。 ('A`)「いいねいいねー、これまた面白い夢だ。まさか夢の中でコタツに入れるとはなー………ん?」 スイッチをオンにしてコタツに入ろうとしたドクオの足の裏に何かが触れた。冷たい髪の毛のような感触。 恐る恐るコタツをあけて中を見る。 ('A`)「……何やってんの?」 うつぶせでうずくまっている少女らしき影が見えた。長い黒髪を床に垂らしたまま微動だにしない。 ('A`)「……まぁいいか夢だし。ご丁寧にミカンまで置いてあることだし食べようか―――」 何かが勢いよく衝突したような音と共に、コタツが振動した。 ('A`)「まさか」 もう一度コタツの中を見る。未だにうつ伏せのままの少女がそこにはいた。 だが、そのシルエットは先ほどよりひどく悲しげだ。 先程と同じく返事はなかったものの、今度はスルスルと足の方から器用にコタツの外へ出て行った。 無表情ながら、ドクオの目をじっと見つめている制服姿の少女がそこにいた。 艶々しく長い黒髪。それと同じ純粋な黒を帯びた瞳。 意味を知らずとも、思わず「大和撫子」と形容したくなるような美しい顔立ちを、その少女は持っていた。 川 ゚ -゚)「痛い」 ('A`)「どこが?」 川 ゚ -゚)「後頭部が」 特に痛がる素振りも見せず、少女は言う。 ('A`)「やっぱり頭ぶつけたんだな。あんなとこでうつ伏せになってるからだ」 川 ゚ -゚)「コタツをくぐりぬけたくなる衝動にかられてしまった。 もう出口だろうと思って頭を上げたらやられた」 ('A`)「それ、さっきの話か?」 川 ゚ -゚)「いや、十分ほど前のことだ。 悲しみを拭い前を向いて歩いていこうと決意した瞬間またやられたのがさっきのこと」 ('A`)「よくわかんないけど萌えた」 ドクオは何も話さずに黙々とミカンを食べ始めた。 ('A`)「…………」 川 ゚ -゚)「…………」 不思議な静けさ。 感情のない視線だけが自分の体に突き刺さり、ドクオは思わず尋ねた。 ('A`)「あんたも食うか?」 川 ゚ -゚)「……食べる」 剥きかけのミカンをそのまま手渡す。 また新しいミカンへと手を伸ばす。 ('A`)「………」 川 ゚ -゚)「………」 会話のないまま、時だけがゆっくりと過ぎていった。 川 ゚ -゚)「……聞かないのか?」 永遠に続くかとさえ思われた沈黙は突然破られた。 ('A`)「何を?」 川 ゚ -゚)「いろいろあるだろ。氏名、年齢、住所、電話番号とか」 ('A`)「じゃあそれ全部教えてくれ」 川 ゚ -゚)「教えられるわけないだろ。個人情報だぞ」 さっき自分で言ったことなど記憶にないかのように少女は言った。 ('A`)「ああ、そっすか……」 その理不尽ささせ感じさせる発言にただただ圧倒されるドクオ。 また沈黙が続く。 川 ゚ -゚)「私の名前はクーだ」 ('A`)「……教えてんじゃねえか」 川 ゚ -゚)「君の名前はドクゥオだろ?」 ('A`)「ドクオな」 川 ゚ -゚)「何故私が君の名前を知っていると思う?」 ('A`)「夢だからだろ」 川 ゚ -゚)「ブッブー、残念でした。正解知りたいか?」 ('A`)「別に」 川 ゚ -゚)「知りたいだろ?」 ('A`)「別に」 川 ゚ -゚)「知りたいと言え」 ('A`)「何で?」 川#゚ -゚)「いいから知りたいと言え!!このヘチマ野郎!!」 (;'A`)「ぎゃああああああああああ!!!」 (;'A`)「ミカンが……俺のミカンが……」 先ほどまでドクオが食べていたミカンたちはコタツの下敷きになり、見るも無残な姿に変わり果てていた。 川 ゚ -゚)「そこまで知りたいと言うなら教えてやろう」 ('A`)「知りたいなんて一言も言って――」 ドクオの発言はクーの投げたミカンによって遮られた。 鈍い音と共にドクオの顔が無理やりにその方向を変えられる。 (#)'A`)「夢なのに痛い……」 川 ゚ -゚)「当たり前だ。これはただの夢じゃない」 ('A`)「……どういうこと?」 川 ゚ -゚)「これは確かに夢だが今まで君が見てきた夢とは違う」 川 ゚ -゚)「正確に言うと君が今まで見てきた夢のスペースを私が占領させてもらったということだ」 ('A`)「……はぁ?」 今まで聞いたこともないような単語を口にされ、訳の分からない表情で返事を返す。 川 ゚ -゚)「人間は眠りにつくと夢をみる。 その夢とは夢のスペースに毎晩毎晩ランダムに設置される。 そのスペースに私が定住したと言えば少しは理解してもらえるかな」 ('A`)「……はぁ」 理屈は何となく理解できたが何故そのようなことをしなければならなかったのか?何が目的なのか? 重要な部分が、未だにドクオの中で理解できていなかった。 ('A`)「で、そのクーさんとやらは何でそんなことをしたのかな?」 川 ゚ -゚)「……私は他人になりたかった。君もそう思ったこと、一度はあるだろ?」 ('A`)「俺は別にないかな」 クーはいつの間にかうつ伏せになっていた。 呼びかけても何も言わず、うつ伏せになり腕の上に顔を伏せた状態でピクリとも動かない。 その姿はコタツの中で見たそれとほぼ同じだった。 ('A`)「なんなんだよこの人……」 川 ゚ -゚)「涙を人に見せてはいけない」 ('A`)「は?」 川 ゚ -゚)「そう母に教えられた」 体を起こしながら答える。 どうやら表情に出た悲しさを悟られまいとしてうつ伏せになっていたらしい。 川 ゚ -゚)「そうだそうだ忘れていたな。 とにかく、君のような無粋者には分からないのかもしれないが、 時に人は他人になってみたいと思うことがあるのだ。私はその気持ちが人一倍強かった」 ('A`)「無粋者って意味分かって言ってんのかな」 川 ゚ -゚)「その気持ちが届いたのか私は人の夢に住めるようになった。 もちろん住むだけでは他人になったとは言えん。 そこから『おでかけ』をしなければならないのだ」 ('A`)「『おでかけ』?」 川 ゚ -゚)「それについては今夜の夢の中で話そう。 そろそろ一時間目が終わる頃だ。私が夢から解き放ってやる」 ('A`)「解き放つって……え……?」 クーが近づいてくる。体だけでなく顔まで。 (*'A`)「ちょwwwwwこれってまさか目覚めの……」 ドクオの中にちょっとした期待が湧き上がる。 川 ゚ -゚)「そう。目覚めのヘッドバットだ」 近づいてきた無機質な顔はゆっくりとその距離を離していき、弾かれたパチンコ玉のようにドクオに衝突した。 少年の心に生まれた青臭い希望は脆くも崩れ去ったのだった。 ('A`)「……ん……?」 ( ^ω^)「ドクオ起きるお!もう1時間目終わっちゃったお!」 先ほど衝突した顔とは対照的な、暑苦しい顔が目の前に現れた。 ( ^ω^)「1時間目から寝るなんてドクオは学校に何しに来てるんだお」 ('A`)「……まぁいいじゃねぇか」 ブーンとなんてことのない会話をこなしている内に二時間目の教師が教室に現れた。 いつもどおりの授業風景。ドクオはその時間を睡眠か考え事に当てている。 この後も三時間目と五時間目を睡眠に当てたがクーが夢に現れることはなかった。 そして、普通の夢を見ることもなかった。 六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。 ( ^ω^)「ドクオ早くするお!電車の時間に間に合わなくなるお!」 ('A`)「そんなにあせることないだろ。このままのペースで十分間に合うさ」 ドクオは一時間目に見た不可思議な夢の話を誰にも話さなかった。 話したところで理解してもらえないだろうし、そもそも自分も完全に理解できていたわけではなかったからだ。 「今夜の夢の中で話そう」と言う言葉は頭の片隅に追いやられていたものの しっかりとドクオの記憶の中に焼き付けられていた。 ( ^ω^)「じゃあまた明日だお!」 ('A`)「おう、じゃあな」 ブーンはドクオが降りる二つ前の駅で降りていった。 ('A`)(あれは何だったんだろう) ミカンの当たる衝撃やコタツの暖かさ、全ての感覚が鮮明だったもののどう考えてもあれは夢。 ('A`)(まぁ……今夜になれば分かるか) 一旦取り出した謎をもう一度同じ場所にしまいなおす。 電車から見える景色はいつものようにそのスピードを緩めることなく流れていった。 帰宅の挨拶を済ませ二階に上がり、夕食の時間まで勉強をする。 授業を全く聞かないドクオは自主学習で遅れを取り戻す。 元々効率はいい方だったので、この二時間程の学習だけで定期テストは困らずに済んだ。 ('A`)「ごちそうさん」 夕食を食べ終え風呂に入り、テレビを見た後歯を磨く。 ('A`)「おやすみ」 面倒なことは嫌いと言っても挨拶はきちんとする。親との会話も人並みにするし手伝いもする。 今の高校生から見ると十分すぎるほどの親孝行者だった。 ('A`)(さて、どうなることやら) ベッドに入り電気を消す。 目を瞑ると、すぐに意識は眠りの中へと落ちていった。 背中にひんやりとした感触。畳の上に寝そべっていることがすぐに分かった。 ('A`)「……本当にまたここに来るとは」 川 ゚ -゚)「待っていたぞ。ドクゥオ」 無機質な顔が、そこにはあった。 ('A`)「だからドクゥオじゃなくてドクオだって」 川 ゚ -゚)「それではいきなりだが話の続きをしようか」 ('A`)「なんというスルー……」 川 ゚ -゚)「どこまで話したか覚えているか?」 ('A`)「ええと、確か『おでかけ』がどうたら言ってたな」 川 ゚ -゚)「正解だ。褒美としてミカンをくれてやる」 (#)'A`)「いたああああああああああああい!!!」 (#)'A`)「食べ物を粗末にするなよ……」 川 ゚ -゚)「文字通りここから『おでかけ』することを指す。 つまり君の夢のスペースから他人の夢のスペースへ移動すると言うことだ」 ('A`)「はぁ」 川 ゚ -゚)「人は眠っている間しか夢を見れないが夢のスペースは君たちが起きている間も存在している。 そこに私が飛び込むことでその人を内部から操作してやろうと言うのが私の目論見だ」 ('A`)「へぇ」 川 ゚ -゚)「そこで君にはここで『おるすばん』をしていてもらいたいのだ。 私が他人の夢のスペースへ移動する時にその人と入れ替わる。 その人をここで『おもてなし』しておいてもらいたい」 ('A`)「なんかすごく面倒って言うかそんなことしていいのか?」 川 ゚ -゚)「元に戻るときに記憶を消去するから問題ない。元に戻る寸前に電話で連絡するからそしたらこの……」 コタツの上に錠剤が入ったビンが置かれた。ラベルに書いてある文字を読む前にクーが言う。 川 ゚ -゚)「このナンデモデルデールを飲ませてくれ」 ('A`)「ナンデモデルデールワロタwwwwwwwwww」 これを飲めばここから脱出できる、とでも言えばみんな喜んで飲むだろう」 (#)'A`(#)「ぼくアンパンマン」 川 ゚ -゚)「記憶が便となって放出されるようになっている。 それが確認できたら私がここに戻ってくるという寸法だ」 ('A`)「なんつーか本当になんでもアリだな」 川 ゚ -゚)「他にもいろいろあるが後は実際にやってみてから追々説明する」 クーはそう言うと一息つきお茶をすすりはじめた。 ('A`)「あれ?お茶なんてあったか?」 川 ゚ -゚)「君がいない間に物を増やしておいた。お茶以外にもいろいろあるぞ。 布団、冷蔵庫、電話からメリケンサックまで生活必需品はあらかた揃えた」 (;'A`)「メリケンサックは必需品じゃないだろ」 川 ゚ -゚)「とにかく明日からよろしく頼むぞ。今日の話はここまでだ」 ('A`)「よろしくも何も俺はまだやるなんて一言も言ってないんだが」 ('A`)「そりゃそうだけど……あれ?俺そんなこと言ったっけ?」 確かそんなことは話していないはずだ。そう記憶を辿りながら尋ねる。 川 ゚ -゚)「こんな生活臭のする空間だから実感が湧かないかもしれないが 一応ここも君の頭の中だ。君が呆けた面で考えてることなどあらかた把握している」 (;'A`)「ちょ、ちょっとまて!ってことは俺の行動全てがあんたに筒抜けってことか!?」 川 ゚ -゚)「全てとまではいかない。私が一人でここにいる間そこのテレビに君の視界が映る程度だ」 (;'A`)「えぇ……それでもやっぱり見られてることに変わりないじゃないか」 川 ゚ -゚)「わかった。そこまで言うならなるべくテレビはつけない。思考を読むことも極力避けることを約束しよう」 ('A`)「いまいち信用出来ないんだよなぁ……」 川 ゚ -゚)「男は度胸!!」 グダグダと気持ちのいい返事を返さないドクオに痺れを切らしたのか コタツを激しく叩き、クーは叫んだ。 川 ゚ -゚)「……何でも試してみるのさ」 川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」 (;'A`)「それって……」 川 ゚ -゚)「やりますか?やりませんか?」 (;'A`)「それもまた……」 クーはもう何も言わなかった。 ただドクオの目を一心にみつめたままその口が開くのを待っていた。 (;'A`)「…………っ……」 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「……わかったよ」 ヽ川 ゚ -゚)ノ「バンザーイ」 両手を上げ喜びを体全体で表したクーであったが、その顔は未だに無表情のままだった。 ('A`)「あんたは表情に変化がないから感情を読み取りづらいわ」 川 ゚ -゚)「生まれつきそういうのが苦手でな。だから体全体で表現するよう心がけている」 ('A`)「そうなのか。で、クーさんとやら」 川 ゚ -゚)「クーでいい。同い年だからな」 ('A`)「これまた新情報。で、クーに一つ質問があるんだ。 クーが他人の体に移ってる最中、俺がここで『おるすばん』とやらをするんだよな?」 川 ゚ -゚)「そうだ。『おもてなし』もな」 ('A`)「ということは、だ。現実の世界の俺はその時どうなっているんだ?」 川 ゚ -゚)「君はどうやってここに来た?」 来たと言う言葉に違和感を覚えた。 夢に来ると言う感覚をドクオは体験したことがない。 ('A`)「どうやってって……夢の中なんだからもちろん寝て……」 川 ゚ -゚)「そう。私が『おでかけ』している間、君の体は眠りについている」 川 ゚ -゚)「正確に言えばつかされるかな。 『おでかけ』する前に君に合図することは基本的にない。自然と眠気に襲われそのまま眠りにつくだけだ」 (;'A`)「ちょ……一応時と場所ってものがあるんだけど……」 川 ゚ -゚)「分かっている。そこは大船に乗ったつもりで私に任せてくれ」 ('A`)「大船どころか割り箸で作ったイカダに乗った気分だよ」 川 ゚ -゚)「質問はそれだけか?」 ('A`)「ああ、後はなんか面倒だからいいや」 川 ゚ -゚)「そうか。それじゃどうする? 目覚めのヘッドバットをかませばすぐに朝を迎えることが出来るが?」 (;'A`)「正直ヘッドバットは嫌なんだけどなぁ……」 川 ゚ -゚)「ヘッドバットはそんなに嫌か? 他には目覚めのアイアンメイデンや目覚めの青酸カリ等があるが、そっちの方がいいか?」 ('A`)「ヘッドバットでお願いします」 川 ゚ -゚)「そうかそうか。では湯のみを片付けてくるから少し待っていてくれ」 ('A`)「……ふー」 多少変わった性格と暴力癖を除けば自分にはもったいないくらいのルックスを持つ女子高生と、夢の中とは言え二人きり 現実では考えられないような条件を提示されても大抵の人なら首を縦に振ってしまうだろう。 だが、ドクオにとってそれはあまり関係なかった。 面倒なことを押し付けられるとは言え、あまりに現実離れした彼女の計画にドクオは少なからず興味を抱いていた。 表面では素っ気無い態度を見せていたが頭の中では彼女の話に夢中だったのである。 ('A`)「まぁ俺が操られる心配はないみたいだし、見てる分には面白そうだし。それに……」 そして彼の心を動かした大きな要素。 ('A`)「……あの目で見られちゃあな……」 何も見ていないかのようで全てを見透かしているかのような漆黒の瞳。 本来黒とは相反するはずの光をドクオは見たような気がした。 何かが割れるような音が台所から響いた。 ('A`)「なんだ?」 音のした方へ向かう。下を見る。 ('A`)「……またか」 今日見るのは三回目であろう。 うつ伏せになっているクーとその近くに湯のみの破片。 ('A`)「何があった?」 川 - )「……棚が……私の小指を……」 若干の涙声でクーは答えた。左足の小指を見てみると確かに赤くなっていた。 ('A`)「とりあえず、湯のみ片付けておくぞ」 湯飲みを片付けている最中、ドクオは小さな嗚咽のようなものが聞こえた気がした。 クーの方をふと見ると少し湿った袖。 割れた湯飲みからこぼれた水分が、母の教えをただただ守る少女を救った。 目次 次へ ジャンル別一覧
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