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LOYAL STRAIT FLASH ♪

三十九章五

8 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:19:36.31 ID:cLOoFnYk0
  
一瞬だった。
プギャーの目の前を白銀の風が抜けていき、そして彼の鎌は空を斬る。
眼の前からツンは消えており、彼の鎌は何も捉えられてはいない。

( ^Д^)「……あ?」

眉根を寄せる。

( ^Д^)「何が起こった?」

ふと、視線を横に飛ばした。
そして彼の瞳が、大きく見開かれる。

そこに、ブーンがいた。
その腕に、ツンを抱えて。

( ^Д^)「……どういう事だ。何で生きてやがる。
     何でそこにツンがいる。もしかして、こりゃ」

表情が、苦々しいものに変わる。
そして彼の頬を、一筋の汗が流れていった。

(;^Д^)「この一瞬で、ツンを連れ出したってのか?
     あれだけの毒を流し込まれて?」

あり得ねぇだろ、と乾ききった苦笑を漏らす。


11 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:22:51.57 ID:cLOoFnYk0
  
一方、ブーンに抱かれたツンは、表情を驚愕に染めていた。
目の前に、仲間の顔がある。
毒で動けなかった筈の―――死んでしまう筈だった仲間の顔が。

ξ;゚△゚)ξ「……ブーン?」

( ゚ω゚)「お」

ξ;゚△゚)ξ「何故……」

( ゚ω゚)「“力”が、目覚めたんだお」

言って、ブーンはツンを床に降ろす。
彼女は床に立つと、すぐさま彼の身を心配の眼で観察し始めた。

ξ;゚△゚)ξ「何を言ってるか分からないけど……大丈夫なの?
       あれだけ苦しんでいて、もう動いて―――」

そこで彼女は視線を止め、続く言葉を失った。

視線が止まった箇所は、ブーンの脚だ。
白銀の異形は、その異形具合を濃くし、そして範囲を広げていた。

膝までであった異形の範囲は脚の付け根まで伸び。
脚を覆う筋肉は更に分厚くなり、爪はその太さと鋭さ、長さを増している。
そしてその表皮は、まるで禍々しい鎧を纏ったような形状をしていた。

白銀の輝きは光を増し、内側に秘めた力を主張している。


12 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:26:26.29 ID:cLOoFnYk0
  
ξ;゚△゚)ξ「何、これ……。これが姉さんの言ってた、“力”の完全解放?」

( ゚ω゚)「多分、そうだお」

ξ;゚△゚)ξ「毒は? 身体は、大丈夫なの?」

( ゚ω゚)「完璧じゃないお。まだちょっと苦しいけど……」

そこで、ブーンは振り返る。
振り返った先には苦笑を顔に張り付けたプギャーだ。

( ゚ω゚)「僕は、戦える」

( ^Д^)「……更なる解放だと。ふざけんな。
     ここまで来て、何だそりゃ。
     毒はどうした、毒は」

( ゚ω゚)「知らないお」

( ^Д^)「は。知らないのかよ。素敵に滑稽だな、クソが。
     まぁ、解放された“力”の作用なんだろうな。
     要するに、異能者の特性全てが強化されてるわけだ―――そりゃ、毒も駆逐されるか」

( ゚ω゚)「そんな事はどうでも良いお。
     プギャー。僕はお前を倒して、先へ進むお」

( ゚ω゚)「お前達には、絶対に何も奪わせないお。
     僕の命も、ツンも、仲間も、日常も。
     僕はこの“力”にかけて、僕の大切なモノを護ってみせるお」


15 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:29:24.58 ID:cLOoFnYk0
  
( ^Д^)「そうかい。なら、来いよ。その“力”、叩き潰してやる。
     お前がお前の大切なモノを護るなら、俺は俺の大切な人を護る。
     その為に戦うさ。俺の全てを……存在をかけて、な」

(#゚ω゚)「あぁ―――じゃあ、行くお」

言葉と同時、轟音。
床が爆ぜて砂煙が舞い、そしてブーンの姿が掻き消えた。

(;^Д^)「はっ!?」

一瞬眼を見開き、身体を硬直させる。
しかしそこに何かを感じて、プギャーは脚を跳ね上げた。

枯葉色は、そこで金属音と共に白銀を捉える。

(;^Д^)「はっはぁ……予想以上に速くなってやがんな、ド畜生が」

呟き、プギャーはブーンの脚を弾き飛ばす。
そして一歩を大きく引いてから、手招きをした。

( ^Д^)「だが、どうにか出来ない事もないな。
     いくら速かろうが、テメェの“力”は両脚だけだ。速さにも限りがある。
     さぁ、来い。もう一度テメェを正面から打破して、今度こそテメェの無力を痛感させてやるよ」

(#゚ω゚)「望むところだお―――出来るものなら」

短く返し、開いた距離を駆ける。
距離は一瞬で詰まり―――


18 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:32:25.68 ID:cLOoFnYk0
  
(#゚ω゚)「おおおおぉぉおぉおおぉぉおおぉぉおおぉっ!!」

そして、ブーンの脚が増えてプギャーへと襲いかかった。
―――否、それは決して増えたわけではない。
あまりにも速すぎる脚の動きが濃い残像を生み、それが脚を多く見せるだけだ。

『輪郭が歪む』なんて生易しい速度じゃあ、ない。
先程の攻防で見せた速度を、遥かに凌駕している速度であった。

プギャーはそれを、両腕両脚をフルに活用して受ける。
―――両腕両脚をフルで使わなければ、受ける事すら出来なかった。

いや。
“力”を全開で使っていても、少しずつ追い付けなくなっている。
全力での防御に、穴が生まれ始めている。

(;^Д^)「くっ! ……っぐぅ!!」

圧倒的なブーンの速度に遅れまいと、プギャーは必死で動き回った。
両腕両脚のみを動かすのではなく、身体全体を動かしてブーンの脚を受ける。
それでも、辛うじて受けられているという状態だ。長くは持たない。

気を限界まで集中させ、歯を噛み締めつつ、プギャーは想う。

戦いの初めに言った言葉は取り消しだ。
こいつはあの時、仲間にしておくべきだったんじゃない。
こいつは、殺しておくべきだったんだ、と。


22 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:35:19.62 ID:cLOoFnYk0
  
内側に、自分でも嫌悪するような化け物の“力”を飼っていても、受けるのが精一杯だと?
どこまでもふざけている。こいつこそ化け物だ。

(;^Д^)「チィィッ!!」

もう耐えられない。遅れが、取り返せないところまで行ってしまう。
悟ったプギャーは、ブーンの攻撃を受けると同時に後方に跳躍した。

衝撃を利用した後退は、二人の距離を大きく離して―――

直後、プギャーの目の前から轟音。
床が弾け飛び、砂埃が柱を作る。
振り下ろされたブーンの脚が、床に破壊を刻んでいた。

退いていなければ、あれを直に喰らっていたのか。
考えたプギャーの背筋に、厭な寒気が走る。

(;^Д^)「化け物はどっちだってんだ、畜生……!!」

言いつつ、後退で距離を稼いだプギャーは、すぐさま全力で上方に跳躍した。
加えて翅を小刻みに羽ばたかせ、一気に上昇する。

ブーンはプギャーを追うが、しかしあと少しの所で届かない。
プギャーは上昇を続けていく。

やがてある程度の高さに達すると、プギャーは上昇を辞めてブーンを見下ろした。


24 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:38:19.26 ID:cLOoFnYk0
  
(;^Д^)「完全開放……尋常じゃねぇな。クソ忌々しい」

だが、認めざるを得ない“力”だ。
現にこうして、自分は圧倒的に押されている。

死ぬ直前まで追い詰めたというのに。

( ^Д^)「……くそっ。何がきっかけで―――」

言いかけて、プギャーは気付く。

ツンを護る時に、あいつは力を発していた。
更なる解放をした時。そしてその前、ツンを落下から救い出した時。
奴は限界以上の力を発し、見事にツンを救ってみせた。

( ^Д^)「何かを護る時に、力を発する……か。
     護る為ならどんな事でも、ってか?
     っは。あいつらしい。クソ甘くて、死にやすい考えだな」

嗤って、しかしプギャーはぼそりと呟く。
「反吐が出そうなくらい、俺と似てやがんな」と。


上空へ逃げたプギャーに、ブーンは言葉を吐き捨てる。

(#゚ω゚)「正面から打破するんじゃなかったのかお?」


26 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:41:18.89 ID:cLOoFnYk0
  
( ^Д^)「取り消しだ。俺の予想より、お前はずっと速かったからな。
     変な意地を張って敗けるわけにゃいかない。
     ここなら、いくらお前が速くても優位なのは俺だ」

(#゚ω゚)「それはどうかお? 今なら、それも分からないお」

( ^Д^)「ならここまで来いよ。教えてやる」

(#゚ω゚)「おっ!!」

言葉に応え、ブーンは跳躍した。
やはりその速度は、今までのそれを遥かに凌駕している。

だが、それでも。
空中の戦闘においての立ち位置は、変わらなかった。

( ^Д^)「おらっ!!」

跳ね上げたブーンの脚は、しかし受けられる。
そして一瞬の停滞の後、叩き落とされた。

(#゚ω゚)「チィッ!!」

着地し、すぐさま跳んだ。
今度は軌道を変えて、脚を叩きつける。

だがそれも受けられた。


28 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:45:19.72 ID:cLOoFnYk0
 
(#゚ω゚)「……ッ!?」

脚を受けたプギャーの腕を蹴り飛ばして、空中で身を旋回させる。
そして旋回を加速させるように脚を振るって、そのまま回し蹴り。

脚は、やはり受けられる。

( ^Д^)「無駄なんだよ!!」

そして脚を弾かれ、開いた身に右腕が放たれた。
咄嗟にもう片方の脚で防御したが、しかし衝撃は脚を超えて内臓を殴りつける。

鈍痛と混乱の中で、ブーンの身は落下を始めた。

(;`ω゚)「何で、まだ届かないんだお……!?」


ブーンが幾ら速くとも、しかし移動には時間がかかる。

そして二人の位置関係は地上と上空。
小さくないその距離を、ブーンは否応なく跳躍せねばならない。
そうなると、ブーンのその速度も衰えてしまう。

距離に比例して時間はかかり、時間に比例して速度は落ちる。
そしてその間、プギャーは迫るブーンを見て、待ち構えているのだ。


29 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:46:03.55 ID:cLOoFnYk0
  
それだけの距離があれば、防御くらいは出来てしまう。
例え、二人の間に圧倒的な速度の差があろうと。

そして空中であれば、地上のようにはブーンも動けない。
有り余る力があったとて、それは思うようには活かせない。


(#゚ω゚)「ならっ!!」

着地すると、ブーンは床を一直線に駆け抜けた。
そして、壁に跳躍する。先程の戦法を、再度試そうというのだ。

(#゚ω゚)「これで、どうだお!?」

壁を全力で蹴りつける。
足場にしていた壁はその威力に砕け、そして身は一気に加速した。

圧倒的な速度は、落ちる事無くプギャーへと迫って―――

( ^Д^)「あぁ、これを受けるのはキツいかもな。だが」

ブーンの脚がプギャーを捉えようとした瞬間、プギャーの身が斜め後方へ動く。
横薙ぎにしたブーンの脚は空を切り、ブーンは慣性のままに空を飛んだ。

( ^Д^)「避けりゃどうって事はねぇ。
     やっぱりだ。ここじゃあお前は勝てねぇよ」

言いつつ、プギャーは翅で身を飛ばしてブーンを追う。


31 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:49:22.75 ID:cLOoFnYk0
  
(#゚ω゚)「くっ!!」

背に迫るプギャーに、ブーンは宙で脚を振るって旋回。
その回転のままに、回し蹴りの要領で脚を叩き付けた。

( ^Д^)「遅ぇっ!!」

だがその脚は右腕で受けられる。
空中での動きはやはり遅くなり、かつ威力も消失してしまうようだ。

(#゚ω゚)「それなら……!!」

( ^Д^)「させるかよ。堕ちろ」

ブーンが更に動きを見せようとした瞬間。
プギャーの右腕が、ブーンの足首を握った。

そして振り解く間もなく、床に向けて投げ飛ばされる。

(#゚ω゚)「!! クソッ……!」

このままでは頭から床に叩き付けられてしまう。
だからブーンは脚を振るって、身を回転させようとした。

( ^Д^)「ここで終わりにしてやるよ!!」

しかしプギャーはブーンを追う―――ブーンに、体勢を立て直す時間を与えない。


35 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:52:20.21 ID:cLOoFnYk0
  
今のブーンに、プギャーに対する術はない。
プギャーに対して防御行動を取れば、着地が間に合わない。
かと言ってこのままでは、プギャーに殺されるだろう。

どうすれば良い。どうすればこの状況を打破出来る。
……どうしようもない、のだろうか?
ブーンの口から、思わず呻きが漏れた。

―――同時に、プギャーの口からも。

(;^Д^)「かっ……!?」

声と同時、プギャーの速度が目に見えて遅くなる。
それを見たブーンは、脚を振るって一瞬で体勢を立て直した。

そして、着地する。

(#゚ω゚)「何が―――」

顔を上げたブーンは、プギャーの背に何かが生えているのを視認した。
白銀に輝く、細長いそれは

(#゚ω゚)「ツンの、羽根?」

その言葉に続いて、ブーンの視界に新たな影が生まれる。

プギャーの背後。
軽やかに飛び上がり、白銀の輝きを落とす金髪の人影。
天使を思わせるそれは、紛れもなくツンであった。


37 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:55:19.74 ID:cLOoFnYk0
  
プギャーは首だけで後ろを向き、そこで己を見下ろしているツンを睨みつける。

(;^Д^)「テ、メェ……!」

ξ゚△゚)ξ「あら、どうしたの? 頭も顔も顔色も悪いわよ?
      結構深い所まで刺さったでしょ、私の羽根。疲れとか取れたんじゃない?
      スキ丸出しだったから、サービスでいっぱい刺しといたんだけど」

(#^Д^)「……あぁ、効いたよ。効きすぎて、思わずぶっ殺したくなるくらいにな!!」

歯を噛み縛り、背に刺さった羽根を次々と引き抜いていった。
血の流れが羽根の数だけ生まれ、垂れ落ちた血液は雨のように床を叩く。

そしてプギャーは咆哮をあげ、一気にツンへと接近した。

ξ゚△゚)ξ「ハッ!!」

ツンは接近するプギャーに数十の羽根を放ち、そして身を翻して飛翔する。
プギャーは翅を両腕で殴り散らし、一瞬たりとも停滞せずにツンを追った。

だが、今回はツンの方が僅かに速い。
羽根で背中を穿たれた為だろうか。先ほどよりも、プギャーの速度が遅くなっている。

二人の距離は、少しずつ離れていく。

(#^Д^)「……待ちやがれ!!」

ξ゚△゚)ξ「待てって言われて待つくらいなら、初めから逃げないわよ。
      いよいよ本当に馬鹿なのかしら?」


41 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/09(土) 23:58:16.53 ID:cLOoFnYk0
  
(#^Д^)「―――この!!」

プギャーは更に、翅を早く羽ばたかせる。
翅があげる耳障りな唸りは、耳が痛くなるほどに大きくなっていた。

彼の身は加速し、ツンとの距離を狭めていく。
だが無理な加速だ。動きは一直線になり、自由な動きは出来なくなる。

その事に、彼は気付いていない。
ツンに挑発された彼は怒りに浸りつつあり、彼女に追いつく事だけが彼の思考だった。

それがツンの狙いだとは、気付かない。

ξ゚△゚)ξ「ふッ!!」

鋭い呼気と共に、彼女は翼をこれまでとは逆に羽ばたかせる。
生んだ速度を一気に、停止直前まで殺したのだ。

そして、脚を前に伸ばした。
そこで彼女の足裏は、柔らかく壁を捉える。

(#^Д^)「何を……!!」

ξ゚△゚)ξ「知らなくて良いわ。
      あなたはただ、これで堕とされれば良い」

呟き、彼女は壁を蹴った。


43 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:01:18.03 ID:E70mBj+I0
  
そして、全力を込めた羽ばたき。
速度を失った身は、一瞬にして再加速。

一気に速度を得た身は、次の一瞬で形状を銃弾に変える。
そして銃弾の軌道は、飛ぶプギャーに正面からぶつかる形だ。

(;^Д^)「なっ!?」

彼女の作戦に気付いた時には、もう遅い。
無理な加速をしていた彼に、急な方向転換は出来ない。

プギャーから、避けるという選択肢は既に奪われていた。
残る選択肢は―――

(;^Д^)「受けるしかないってか、クソッタレ!!」

咆哮をあげて、両腕と両脚を振るう。

直後、彼と銃弾が接触して、激しい火花が散った。
同時に凄まじい衝撃が全身を襲う。

(;^Д^)「っぐぅぅうぅううぅぅぅうぅぅっ!!」

加速が付いていた為、力ではツンの銃弾とほぼ対等に渡り合えている。
だが加速が付いていた分、身にかかる負担は増加した。

歯を噛み締め、絶叫をあげて銃弾を跳ね返さんと力を込める。
力を込めただけ、衝撃と負担が身を襲う。
全身の骨が軋みをあげ、内臓が厭な痛みを訴え、鼓動がやけにうるさく聞こえた。


45 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:05:25.30 ID:E70mBj+I0
  
(#^Д^)「ぅぅうぅぅううぅ―――がぁぁああぁぁぁあぁあぁあぁぁあぁっ!!」

だが、プギャーは更に翅を羽ばたかせ、身を前方に押す。
その分だけ苦痛が増し―――しかし、プギャーの力も増していった。

そして、やがて

(#^Д^)「っらぁ!!」

銃弾の動きが停止し、そして声と共にプギャーに全力で殴り飛ばされた。

銃弾は、相当な速度で落下していく。

ξ;゚△゚)ξ「くぅ……!」

すぐさまツンは翼を展開。はためかせた。
だが、それでも間に合わない。

ツンの身は速度を殺しきる事も出来ず、轟音と共に床に落下した。
床が爆ぜ、埃が舞う。


46 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:06:03.73 ID:E70mBj+I0
  
プギャーはすぐに、そこへ降りようとしたが―――

(#^Д^)「……あ?」

そこで何かを感じ、そして一瞬。

(;^Д^)「……ッ!!」

表情を焦燥に変え、そして背後に腕を飛ばした。
腕はそこで、圧倒的な速さを纏った白銀の脚を捉える。

(#^Д^)「また、テメェか!! どこまで俺の邪魔をすれば……!!」

(#゚ω゚)「勝つまで、だお!!」

叫び、そしてブーンはプギャーの腕を蹴りつける。

プギャーは耐えようとしたが―――無理。
“力”を解放し、加速を纏ったブーンの脚は、疲労しきったプギャーの腕では止められない。

プギャーの腕は弾き飛ばされ、ブーンはもう片方の脚を叩きつける。

(#^Д^)「甘ぇんだよ!!」

その脚を、枯葉色の脚で受け―――
しかし直後、もう片方の足が再度跳ね上げられた。


48 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:09:26.10 ID:E70mBj+I0
  
(;^Д^)「なッ……!?」

何故、こんなにも動く。
告げようとした言葉は、しかし食い縛った歯によって留まった。

咄嗟に、腕で受ける。
伝わってくるのは、思った以上に軽い衝撃。

不審に思った、直後。

(#゚ω゚)「おおぉおぉおおぉっ!!」

受けた腕を、ブーンは足場にして蹴りつけた。
衝撃に防御は弾かれ、ブーンの身は旋回する。

そこでプギャーは気付く。
今の蹴りは、弱まった勢いを加速する為の―――
四発目の為の一撃だったのだ、と。

だが、防御は間に合わない。
腕は悉く弾かれてしまっている。

咄嗟に彼が取れた行動は、翅で後方へ全力で飛ぶ事だけであった。

しかしそれでも避けられない。
ブーンの横薙ぎの脚は、プギャーの腹部へと叩きつけられた。


51 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:12:20.04 ID:E70mBj+I0
  
(;^Д^)「がっ……は、ぁ……!?」

内臓が全て口から出てきてしまいそうな、そんな嘔吐感。
一瞬の後に、それは内臓を握り潰されたかのような苦痛に変わる。
口からは内臓の代わりに、血液が溢れ出た。

だが、それはまだ幸運だったのだ。
実際、内臓が破裂していてもおかしくなかった。

プギャーの腹部が殻に覆われていて、
プギャーは翅で後退していて、
なおかつブーンの速度が大幅に落ちていたから、その程度で済んだ。

……その程度と言っても、その苦痛はプギャーにとって耐え難いものであるのは確かだが。

(;^Д^)「ふざ、けやがって……!! こ、の……!!」

血を吐き散らしながら、プギャーはそれでもブーンを睨みつけた。

宙を落下していくブーンは、今なら完全に無防備。
殺りたい放題―――殺すなら、これが最後のチャンスだろう。

思考し、プギャーは翅を唸らせようとして―――

(;^Д^)「あ?」

直後。
プギャーは背に……いや、翅に軽い衝撃を受けた。


53 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:15:23.81 ID:E70mBj+I0
   
そして、それに引っ張られる。

(;^Д^)「は―――!?」

瞳を混乱に染めて、その直後に背が壁に叩き付けられた。
何事かと翅を見れば

(;^Д^)「!? クソが……!!」

二対の翅。
その内、一対。左右一枚ずつが、白銀の羽根に貫かれている。

翅を貫いた羽根が、プギャーを壁に磔にしていた。

ξ゚△゚)ξ「あら、良い格好ね。
      虫の標本みたいで格好良いじゃない。
      まぁ、あながちそれも間違いじゃないんだけど」

声の方向に視線を飛ばせば、そこには抉れ削れた床に立つツンがいた。
その翼はひどく損傷している。先程の落下の際、翼で身を護った為だろう。

だがやはり、ツンにもダメージは行っているようだ。
彼女は苦痛に表情を顰め、両腕で身を抱いている。

その肩に、手が置かれた。
やや拉げた白銀のガントレットに包まれた、力強い手。

そしてツンの前に歩み出た手の主は、ブーンだ。


55 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:18:19.93 ID:E70mBj+I0
  
(#゚ω゚)「終わりだお、プギャー」

ブーンはそのまま、脚を止める事無くプギャーに歩み寄っていく。

(;^Д^)「くっ……」

プギャーは呻きを漏らし、歩み寄るブーンを見つめた。

どうする。どうする。どうすれば良い。
翅は半分を失った。速度では、もうツンにも劣るだろう。
そうなると、ブーンへの優位な立場も消える。例え、空中でも。

勝機はあるか?
―――この状況において、それはない。

ブーンは毒を受けているとは言え、それでもアレだ。
ツンは翼を損傷しているが、しかしあの様子じゃまだ動けるだろう。
対して、自分は? ひどく疲労し、二対の翅の内一対を失った。

ならば自分はどうすべきだ?
持つ力全てを使って、決死の攻撃か?
それに、どれだけの意味がある? どれだけのダメージを与えられる?

自分がすべきことは、自分が最優先にすべき事は―――

( ^Д^)「……モララーさんを護る事だ」


58 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:21:18.24 ID:E70mBj+I0
  
ならば、と漏らし。
そしてプギャーは壁を蹴りつけた。

翅が引き千切れ、そして身は自由になる。

(#゚ω゚)「!! 逃がすかお!!」

プギャーの行動に、ブーンは即座に跳躍した。
しかしプギャーは、一対の翅で全力で飛翔。
ブーンの脚は空を切り、回避したプギャーは飛翔の方向を下へと向ける。

( ^Д^)「ここは退かせてもらうぜ! 
     俺が死ぬべきは―――命を使うべきは、ここじゃない!!」

叫び、そしてプギャーは着地。
遅滞を生じる事無く床を駆け、更にそこに翅での加速を加えた。

全力での疾走は、部屋の出口へと向かう。

(#゚ω゚)「待てお!!」

ブーンも追う姿勢を見せるが、しかし留まった。
ツンを置いていくわけにはいかないし、それにプギャーは速かった。
あのまま追ったところで、追いつけはしなかっただろう。

(#゚ω゚)「クソッ……!」

思わず、漏らす。


60 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:24:21.91 ID:E70mBj+I0
  
その直後に、彼の隣にツンが立った。

ξ゚△゚)ξ「逃がしちゃったね」

( ゚ω゚)「ツン……」

ξ゚△゚)ξ「怖い顔しないで。
      こんな形だけど、私達は勝って、先に進めるんだから」

( ゚ω゚)「…………」

ξ゚△゚)ξ「決着は、この後で付ければ良いわ。
      どちらにせよ、奴とはまた戦うんだから。
      だから、気を楽にして? ずっと殺気立ってたら、疲れちゃうよ?」

( ^ω^)「……お」

ツンの言う通りだ。
とにもかくにも、一応の戦闘は終わったんだ。
焦る必要も、怒りに塗れる必要もない。

そう、気を抜いた。

その瞬間だった。

(;゚ω゚)「うっ……!!」

酷い吐き気が込み上げ、そしてブーンは激しく嘔吐した。
血液と何かが混ざった、どろりと濁った吐瀉物が床にぶちまけられる。


64 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:27:22.89 ID:E70mBj+I0
  
ξ;゚△゚)ξ「ブーン!?」

ツンの声も、しかしブーンには届いていない。
ブーンの耳には、自身の心臓の音しか聞こえていなかった。

嘔吐が終わると、間もなくブーンに次々と症状が現れる。
まず頭痛が起き、そして目眩が襲う。

床に倒れ込んだブーンに訪れたのは寒気と震え。
そして、内と外―――全身に、耐え難い苦痛が来た。

ξ;゚△゚)ξ「まだ毒が……!?
       ねぇ、ブーン!? ブーン!!」

ブーンの身体には、まだ毒が残留していた。
ブーンはそれを“力”である程度緩和し、更に根性で無理に毒を抑えつけていた。

そしてその状態で、ブーンは戦ったのだ。
“力”を解放した、その状態で。


65 : ◆tAdHw/rYVY :2008/08/10(日) 00:27:53.33 ID:E70mBj+I0
  
“力”を完全に解放する事は、決してノーリスクじゃない。
まず溢れ出す“力”に身体が耐えられるかという障害があり、
それによって身体は少なからず疲弊する。

そして大きな“力”を振るう為に、宿主にかかる負担もやはり増大する。
傷や疲労の回復力、毒を殺す力などは強まるが、しかしそれでも負担は増える。

その疲労やダメージすらも、ブーンは精神の力で無理矢理に蓋をしていた。
『ツンを護る』『全てを護る』という想いで、身体を動かしていた。

だから気を抜いた瞬間に、溜めていたモノが溢れた。
殺しきれなかった毒、疲労、肉体へのダメージ。
それが、今のブーンのこの有様だった。

ξ;゚△゚)ξ「ブーン! ねぇ……ねぇ!?」

膝を床に付き、ブーンの上半身を抱くツン。
その耳元に、囁くように―――絞り出すように、ブーンは告げた。

(; ω )「僕は、大丈夫……少し休めば、どうにかなる。
     だからちょっとだけ、休ませt―――」

最後の言葉を言い終える前に、ブーンの意識が飛んだ。





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