2007/01/09(火)22:01
( ^ω^)が料理人になるようです(第四章下)
137 名前:料理[] 投稿日:2006/12/29(金) 23:37:13.70 ID:5sbnfksy0
開店してから暫くの間は入客はほとんどなく、
スーツを着たサラリーマンがぽつぽつと訪れラーメンをすすって帰っていくだけだった。
(*゚∀゚)『この時間はまだまだ暇でしょ!!葱でも刻んでおくれよ!!
こっちの青い部分は薬味に使うから小口切りにするんだっ!!
白い部分は・・・こうやって開いて白髪葱にしておくれ!!
包丁はこの牛刀を使っていいよ!! 店の備品だから遠慮しないでっ!!
ブーちゃんMY包丁は持ってる? 料理人ならMY包丁はあったほうがいいよ!!
うん、そんな感じ。ちょっと太いけどギリギリOKさっ!!』
僕が渡されたのはカーチャンが使っていたものよりはるかに長い30センチほどの刃渡りをした包丁だった。
ずしりとした重みが右手に伝わる。
( ;^ω^)『けっこう重いお』
(*゚∀゚)『そうだね!! でもすぐ慣れるさ!!
じゃ、今日はこれだけ目標でやってみよう!!』
そう言って僕の目の前で写真撮影でもするかのように2本指を立ててポーズを決めた。
( ^ω^)『え・・・と2本でいいんですかお?』
それなら楽勝、と僕の言葉が終わる前に
(*゚∀゚)『ブーちゃん冗談がうまいねっ!!
でもそんなの10分で使いきっちまうよっ!!
そこの隅に積んである葱2ケース、全部やっちゃおう!! 遠慮はしなくていいからね!!』
ってこれ何十本あるんだよ!!絶対無理だって!!
コレナンテイジメデスカ??
140 名前:料理[] 投稿日:2006/12/29(金) 23:41:12.52 ID:5sbnfksy0
・・・トンッ・・・・・・トンッ・・・・・・トンッ・・・・・・
僕がなれない包丁でおっかなびっくり葱を刻んでいる後ろを
ツーさんが小動物の軽快さで何度も往復している。
初めて持った大型の包丁は全く僕が意図するように動いてくれず、指を切らないようにするのが精一杯だった。
(*゚∀゚)『あたしはドクオ君の追い回しだからねっ!!』
(*゚∀゚)『追い回しって言うのは簡単に言えばフォロー役さ!!』
(*゚∀゚)『いつかドクオ君から麺場のポジションを奪い取ってやるんだ!!』
僕の意思に徹底的に逆らう包丁を力づくで動かしていると、
いつの間にか段々と客席が騒がしくなってきたので僕はホールを覗き込んだ。
ガラガラだったはずのテーブル席に次から次へと人が案内されていく。
自動ドアをくぐって入店したお客様を順番に席に振り分けていくのは募集広告のあの娘だ。
ξ^ー^)ξ『いらっしゃいませ。ご案内いたします』
ファーストフードショップで訓練された様な笑顔をふりまいている。
Yシャツの袖を肘まで捲り上げたショボンさんとしぃちゃんはテーブルの間を縫うように歩き回り
厨房からあがってきた丼を運んだり、
折りたたみ式の電子手帳‐ファミレスなんかで見たことがある‐を広げて注文を受けたりしている。
それに応じて、厨房とホールを挟み込むように設置されたカウンターテーブル上の小型プリンターが
電子音を響かせながら止まることなく伝票を吐き出し続けていた。
(*゚∀゚)『さぁ、忙しくなるよ!! ブーちゃん気合入れて頑張ろう!!』
ツーさんが叫んだ。
143 名前:料理[] 投稿日:2006/12/29(金) 23:49:11.25 ID:5sbnfksy0
( ;^ω^)『・・・これは一体全体ちんぷんかんぷんなにがどうなっているんだお』
そんな事を言われても分からないと思うので説明しよう。
うん。何がなんだか僕にも分からない。
目の前のあるのは食器洗浄器に放り込まれる運命の皿や丼の山、山、山。
しょぼくれ眉毛が。おっぱい娘が。しかめっ面が。時には
(*゚∀゚)『いや~悪いね!!』
なんて言いつつツーさんまでがノンストップで汚れ物を送り込んでくる。
たいして広くない汚れ物置きカウンターは目を離せばすぐに重ねあげられた食器の壁ができ、
僕はそれを片っ端からシンクに漬け込んでいく。
大人でもすっぽり入れるサイズのシンクでもすぐにいっぱいになってしまうので、
油ぎったお湯に肘まで突っ込み取り出しては次々ラックに並べ洗浄器に放り込む。
それだけでも頭が・・・それどころか髪の毛までが真っ白になるような忙しさなのに、
(´・ω・`)『グラスが足りないんだ。急いで頼むよ』
(*゚∀゚)『角皿と黒丼が全然ないんだっ!! 大至急お願い!!』
(*゚ー゚)『汚れ物たまってます。下げてください』
(´・ω・`)『すまない。レンゲを洗ってほしいんだが・・・』
とこんな感じで前から後ろから。右から左から催促がかかる。
( ;^ω^)『こ、こんなの聞いてないお』
新たな力に目覚めた主人公に秒殺される雑魚キャラっぽい台詞を吐きながら、僕は狭い洗い場を走り回った。
145 名前:料理[] 投稿日:2006/12/29(金) 23:55:35.90 ID:5sbnfksy0
(´・ω・`)『お疲れさん。今日は初日だしこの辺で終わりにしてあがろうか』
15:00
突然始まった混雑がようやく落ち着く頃、ようやく僕は解放された。
(*゚∀゚)『いやぁ、やるじゃん。初日でこれだけできれば十分だよ!!』
( ;^ω^)『ありがとうございますだお。でも言われた葱全然刻めませんでしたお』
('A`)『・・・気にするな。あとは俺がやっとく』
つか、なんだあの忙しさ!!
葱刻むってレベルじゃねーぞ!!
(*゚∀゚)『うん、あとはお姉さんたちに任せておきな!!』
( ^ω^)(・・・なんでこの人はこんなに元気が余ってるんだお?)
(*゚∀゚)『今日はわりかし暇でよかったよ!! 絶好のトレーニング日和だったんじゃないかな!!』
これで暇なのか・・・。
僕は一瞬不安になった。本当についていけるのか?
『天才料理人内藤ホライゾン伝説の幕開け』なんてフレーズは頭の片隅にも残っていない。
(´・ω・`)『うん。焦らなくていいから確実に仕事を覚えてほしい』
僕の心を見透かした風にショボンさんが言う。
ピカピカに光っていた筈のコックコートは汗と汚水と油で体に張り付き、
小学校の水彩画の時間に筆を洗ったバケツの水色に所々汚れが染み付いていた。
148 名前:料理[] 投稿日:2006/12/30(土) 00:03:14.67 ID:psNSxvjO0
産まれたての子鹿状態の足をひきづってスタッフルームの扉をくぐった僕が見たのは、
きわどいチャイナドレスにもかかわらずパイプ椅子にあぐらをかいて座りテーブルにあごを乗せている女性だった。
栗色の髪をいかにも「テキトー」にゴムで纏め、難問を前にした数学者のような顔つきでテーブルに置かれたペットボトルを凝視している。
( ^ω^)『お疲れ様ですお』
ξ゚△゚)ξ『お疲れ』
( ^ω^)『・・・何してるんですかお』
ξ゚△゚)ξ『成分表示読んでる』
( ;^ω^)『・・・面白いですかお?』
ξ゚△゚)ξ『面白くないからこんな事してるの』
これ以上会話をしてもいいことがなさそうだ。僕の本能がそう告げていた。
おかしい? 全知全能の神が与えたもうたフラグがベキベキじゃないか・・・こんなバカな事があっていいはずがない!!
ξ゚△゚)ξ『ねぇ』
( ^ω^)『はいですお!!(再フラグktkr!!)』
ξ゚△゚)ξ『・・・着替えるならトイレで着替えてね。汚い物見たくないの』
( ;^ω^)『・・・はいですお』
僕は体にべったり張り付いたコックコートを引き剥がすように着替えた。
帰り道、膝が自分の物ではないように感じて自転車を真っ直ぐ走らせるだけでも困難だった。
帰ってすぐブログの更新をしたが、いつまでたってもコメントがないので諦めて寝る事にした。