第二十四話第二十四話 「約束された勝利の剣」 ――――――――夢―――――――― パ△゚)ハ「――ほう、あのヒートが落ち込んでいるように見えた、と」 ドクオから事の次第を聞いたビートは意外そうに唸った。 ドクオと同じく、彼もあのヒートが落ち込むような性格の持ち主だとは思っていなかったらしい。 ('A`)「遠目に見ただけですからはっきりとは言えませんが、少なくともいつもの元気があるようには見えませんでした」 パ△゚)ハ「いやはや、しかし驚いたものだ。となると君は何の理由もなくここにいたわけではなく、 明確な意思を持ってここへとワシに会いに来たと言うことになる」 正確に言えばドクオから会いに来たわけではないのだが、彼はそれを訂正しなかった。 所詮、そんな些細なことは大事の前の小事に過ぎない。 パー゚)ハ「……まぁよい。さっきの君の話によればここは現実ではなく夢の中の世界。 何があっても不思議ではないということじゃな」 ('A`)「そうご理解いただけると、こちらとしても助かります」 ビートは目を瞑り、顎に手を当てる。 先程ドクオが口にしたヒートの落胆振りについて、何かしら思うところがあるようだ。 ハ-△-)ハ「あやつ……普段は明るく振舞っておるが、その実、脆い一面も持っておるからの」 ('A`)「前にもその、彼女が酷く落ち込んでしまった時があったんですか?」 パ△゚)ハ「いや、ワシは見たことはないな」 ('A`)「え、じゃあ何故そんなことが……」 疑問の表情を浮かべるドクオに対し、ビートは諭すように言う。 パ△゚)ハ「人の心とはの、対称的に出来ているものなんじゃよ、少年」 ('A`)「対称的?」 パ△゚)ハ「人との接触を好み明るくバカをやる者、人との交流を避ける孤独を愛する者、 もちろん、万人共通に言えることではないが、この二人の者はほぼ同じ性質を持っていると言える」 (;'A`)「?」 パ△゚)ハ「要するにだ、彼ら二人は全く相反する性格の持ち主であるように見えるが、 それは客観的に見た場合にのみ言えることであり、彼らの心の中には共通の意識が眠っている、とそういうことじゃ」 (;'A`)「いや、やっぱりちょっとわかんないんですけど」 パー゚)ハ「ふふ、ちょいと話が難しすぎたか。ならばもう少し噛み砕いて話をしてみようかの」 パ△゚)ハ「少年、君は自分の性格をどう思っておる?」 ('A`)「性格ですか?……んー、そんなに明るい方ではないと思ってますけど」 パ△゚)ハ「では、少なからず自分は暗い人間だと、そう思っているわけじゃな」 ('A`)「はぁ、まぁ」 パ△゚)ハ「しかし、時には周りでバカをやっている人間と同じように振舞ってみたいと思うことはないか?」 ビートの言葉に、ドクオは主にバカをやっているクラスメイトの顔を思い出す。 ( ^ω^) ( ><) ノパ△゚) ('A`) ('A`)「確かに……ないことはないかも」 パ△゚)ハ「そういうことじゃ」 ('A`)「へ」 パ△゚)ハ「平常陰気な者だって明るい一面を持っていれば、 太陽のように陽気な者がまるで水をかけられた炎のように冷めてしまうこともある」 ('A`)「あ……」 パ△゚)ハ「つまり、人の心とは陰陽のどちらもが同居する対照的なものだと、ワシが言いたいのはそういうことなんじゃ」 ここにきて、ドクオはビートの言わんとしている事がようやく掴めた。 つまりは ('A`)「彼女の心の中にもそれと同じように……」 パ△゚)ハ「そうじゃ、陽気な部分があるように暗く陰気な部分もあるということじゃな」 しかし、ここでドクオの頭には一つの疑問が浮かぶ。 先刻、彼がヒートの話をした際にビートが浮かべた意外そうな表情についてだ。 ('A`)「でも、さっきはビートさん、あなたすごい意外そうな表情をしてませんでしたか?」 パ△゚)ハ「ああ、あれか。 あれはの、別にヒートが落ち込んだことに対して驚いていたわけではない」 ('A`)「と言うと?」 パ△゚)ハ「ワシの予想だと、仮にワシが死に瀕していたとしてもそこにあやつを落ち込ませる要素はないように思えたんじゃ」 ('A`)「ビートさんなら死ぬはずがない。絶対に意識を取り戻してくれるはずだ、と」 パ△゚)ハ「そう、信じて疑わないはずじゃと思うんじゃがのう……」 ビートは手に持った竹刀へと視線を移す。 パ△゚)ハ「あやつの目からすれば、ワシはまるで強さの権化のように映っていたはずじゃ」 正眼に構え、彼は言葉を続ける。 パ△゚)ハ「よもやワシが死んでしまうなどと言う可能性に心が押し潰されてしまったなどということは、ないとは思うんじゃがのう」 パ△゚)ハ「はぁっ!!」 再び室内に、ビートの蛮声が響き渡る。 空気がビリビリと振動する感覚に、ドクオは思わず息を呑む。 ('A`)「ビートさんってやっぱり凄く強かったんですか?」 パ△゚)ハ「本人にそんなことを聞いて素直な答えが返ってくると思うか?」 (;'A`)「あ、いや……それは」 最もな答えを返され、うろたえるドクオ。 そんな彼を見て、ビートは小さく微笑む。 パー゚)ハ「ふっ……まぁあやつの数万倍強い自信くらいはあるがの」 そう軽口のように言ってのける、彼の表情は緩い。 しかし、その弛緩した表情を再び引き締め、彼は続ける。 パ△゚)ハ「……だが」 ('A`) パ△゚)ハ「人はどれだけその身を鍛えても強さの象徴になることは出来ん」 パ△゚)ハ「あやつはそこを勘違いしとる節がある。 本来強さの象徴となり得るものは物理的に強さを付与する武器や精神的な面で人に力を与える勇気だけ。 人など強さの象徴になるどころか逆に弱さの象徴とも言える程に脆く儚いものじゃよ」 ビートは顔を伏せながら、そう語る。 その目には今まで彼が見せたことのない、人としての弱さが映っているようにドクオには感じられた。 パ△゚)ハ「もし、あやつがまだそれを理解していないようじゃったら言っておいてやってくれんか」 再び強さの宿った瞳が、ドクオの顔を見据える。 パ△゚)ハ「ワシは強さの象徴などではない。お前はそれを理解した上でワシを目指せ、とな」 ('A`)「でも、それは……」 ドクオはビートが何故そんなことを自分に伝えさせようとするのか、その真意までを見抜いてしまった。 だからこそ、彼は一人の老剣士の頼みを素直に受け入れることが出来なかった。 パ△゚)ハ「君の言いたいことは分かる。だがの、何もワシはすでに死を受け入れているわけではないぞ。覚悟しているだけじゃ」 ('A`)「なら、自分で……自分の口から伝えればいいじゃないですか」 パ△゚)ハ「本当ならワシだってそうしたいところじゃが、実際死との戦いがいつまでかかるか分からん。 ならば、ワシより早く確実にあやつに伝えることの出来る君にこの役目を頼んだ方がよかろう?」 否が応にもビートの死を想起せざるを得ない状況。 室内に暗いムードが広がっていく。 だが、ビートはそんな雰囲気を物ともせず、豪快に言ってのける。 パ△゚)ハ「それにの、死を覚悟しておるとは言ったものの、実は負ける気がこれっぽっちもしないのよ」 彼の言葉に、ドクオが顔を上げる。 パ△゚)ハ「自惚れとは違うんじゃ。何というか自分が死に屈する場面を未だ想像出来んというべきか」 自分の感じている感覚を上手く言葉に言い表すことの出来ないもどかしさを感じる一方で、 彼の表情は次第に、ドクオが初めに見た好奇心に満ち溢れたものとなっていく。 パー゚)ハ「ふふっ、いかんいかん。今から自分は死ぬやもしれんと言うのに笑いが止まらん。 人間一度の敗北はすでに生まれた時から決まっておるものよ。じゃがの、その敗北を先延ばしにすることくらいは人間にだって出来る。 自らの勝利を初めから確信し取る、ぬるま湯に浸かりきった死とか言う輩の唖然とする様を思うとな、ふふ、顔のにやつきを止めることが出来んのよ」 彼のその笑いは、死への恐怖に対する虚勢などではなかった。 本当に、心の底から湧き出てきた素直な笑みと武者震い。 そこには強大な敵に立ち向かわんとする老剣士の姿が、確かにあった。 パ△゚)ハ「そうじゃの、少年。やはり、もう一つ言伝を頼まれてはくれんか」 ビートの手の中の竹刀が、ドクオを指す。 パー゚)ハ「ワシが目を覚ましたらまた厳しく鍛えてやるからの、しょぼくれて鍛錬に手を抜いていたなどと言いおったら承知せんぞ!、とな」 ―――― ―― ノパ△゚) 行き交う看護士や患者達の中を、ヒートは祖父の眠る病室へと向け黙々と足を進めていた。 母親には自分の具合を理由にしたものの、やはり彼女が診察を受けようとする様子はない。 ノパ△゚)(じーちゃん……) 彼女の頭にあるのは祖父の容態がどうなっているか、それのみ。 他の事など眼中にはなかった。 ここ数日この病院へと通いつめている彼女が道に迷うはずもなく、 それから間もなく、集中治療室の前へと到達する。 ノパ△゚) 扉の前で彼女はベッドに横たわるビートの姿を想う。 もう目覚めることのない彼の姿を。 病室の前の長椅子へと目を向ける。 ここに腰を下ろし、彼の弱く儚げな姿に絶望していた頃が遠い昔のことのように思えた。 今、そこには何の人影もない。 一応、室内へと入る前にノックをする。 そこで、彼女はふと扉の向こうに人の気配を感じた。 ノパ△゚)「?」 父親は仕事、母親は先程家にいたのを確認したし、弟と妹は学校のはずだ。 見舞いでなければ、医師や看護士だろうか。 とにかく、中に誰かがいることはほぼ間違いない。 彼女はそれを考慮し、ノブに手をかけゆっくりと扉を押し開く。 次第に開けていく、病室内の様子。 彼女の目に飛び込んできたのは、 (;'A`)「なっ……!!」 ノハ;゚△゚)「えっ……」 ビートのベッドの傍らに立ち尽くす、全く予想外の人物の姿だった。 (;'A`) ノハ;゚△゚) 期せずして対面することとなった二人は沈黙を保ったまま硬直を続ける。 (;'A`)(くっそ……塞ぎこんで家の中に引きこもってるのかと思ってたら、ここに通ってただけだったのか。 全く、詰めが甘いな……俺は) ドクオは予測出来たはずの結果に、自らの計画の杜撰さを痛感し ノハ;゚△゚)(何でじーちゃんの病室にこの……えーっと、何だっけブーンと仲の良い…… あ、そうだそうだ、ドクオ!こいつがいるの……?) ヒートは全く予想していなかった見舞い客との対面に、訳もわからず混乱しきっていた。 どちらから口を開くべきなのか見当もつかない。 二人はしばらくの間、今自分はどうすべきか、脳内の整理に終始していた。 こんな時、第三者の突然の登場があれば、沈黙を破るのは容易いことではあったのだろうが、 残念ながらヒートが閉めた扉が開く気配も、ベッドの上で横たわるビートが目を覚ます気配もなかった。 彼か彼女、どちらかが口を開かない限り、この沈黙が破られることはない。 ノハ;゚△゚)「どうしてここに……?」 普段の彼女からは想像も出来ないほどのか細い声で、ヒートは問いかける。 (;'A`)「いや、ちょっと……あの、えーと……」 対するドクオは未だにどう言い訳すべきか悩んでいる様子で、 しどろもどろになりながらも必死に言葉を紡ごうとしていた。 (;'A`)「ショ、ショボンに聞いてさ。お前のじいちゃんが倒れたって……それで……」 ノハ;゚△゚)「ショボンが?」 (;'A`)「あ、いや、でもあいつから言ってきたわけじゃないんだ!俺がさ、日曜にお前をここで見かけて それで落ち込んでるみたいだったから、それをショボンに話して、そしたら教えてくれて……」 事実を述べてはいるものの、その筋道がめちゃくちゃなため、聞いている方のヒートとしては何が何だかさっぱりだった。 辛うじて理解できたのは、ショボンからビートが倒れたことを聞いたことくらい。 その他は、どこがどうやってここでの彼との邂逅に繋がるのか全く理解不能だった。 ノハ;゚△゚)「あの、ちょっと落ち着いてよ。 色々と説明してくれてるのは分かるけど、何でここに来たのかが全然伝わってこない」 (;'A`)「あ、あぁ、悪い。要するに、だからな……えっと、こ……ここには偶然来ただけなんだよ! 今俺風邪引いててさ!病院へはそれで来てたんだ!で、たまたまここの病室見つけて、ショボンからも話聞いてたし、 苗字がお前と同じだったからもしかして、と思ってついさ……入っちゃったんだよ……ごめん」 咄嗟の言い訳にしては一応の筋は立っているものの、やはりここにいる理由としては少し苦しいものがあった。 しかし、突然のことに驚いていたこともあってか、ヒートはそれを聞くと、それ以上詮索はしなかった。 (;'A`) ノハ;゚△゚) 再び、沈黙が広がる。 ヒートからしてみれば、余り関わりのない人間との同室。 普段の彼女であればそれでも何ら関係なく会話を楽しむことは出来たであろうが、今は状況が違う。 出来れば、一刻も早くドクオにはここを立ち去ってもらいたかった。 一方、ドクオからしてみれば、これは計画の最中に起こった突然のハプニング。 これ以上下手に詮索されて、怪しまれることは避けたい。 ならば、言うまでもなくすぐにこの場を後にするのが最善の策だ。 二人の利害は一致していた。 ならば、この後ドクオがこの部屋を辞去するのは当然の帰結のはず。 (;'A`)「じゃ、俺はそろそ――」 しかし、 (;'A`)ハッ!! ドクオはそれをしなかった。 (;'A`)(駄目だ……気持ちとしてはすぐにこの部屋を出たいけど、それは出来ない。 今、何とかしなきゃ。こいつの中で燻ってる何かを……!!) 先程、ビートから預かった言伝。 彼と言葉を交わした状況が状況のため、そっくりそのまま伝えることは流石に適わない。 だが、それでも、ドクオは彼女に何かを伝えねばならないと言う使命感に駆られ、ここから立ち去ることを拒んだ。 (;'A`)「あ、あのさ」 ノハ;゚△゚)「え?」 (;'A`)「そんなに落ち込むことないんじゃないかな……? お前のじーちゃんだったら何かこう気合でどあーって病気とかいろいろ吹き飛ばしちゃいそうだしさ。 すぐに目覚ますって」 ノハ;゚△゚)「……」 (;'A`) ノハ;゚△゚) ('A`) ノパ△゚) ノパ△゚)「別に私は……落ち込んでなんかないよ」 ('A`)「強がらなくてもいいって。 自分の弱い面を表に出すことなく生きていける人間なんていないんだ。それが普通だよ」 ノパ△゚)「強がってるわけじゃない。私は本当のことを言ってるだけ」 ('A`)「……なら、なんでそんなに暗い調子なんだよ。いつもと明らかに違うじゃないか」 ノパ△゚)「これは……」 ヒートは一瞬言い淀み、目線をドクオから外す。 何かを自分の中で確認するように唾を飲み、彼女は再び口を開く。 ノパ△゚)「私は受け入れたの。だからこれは落ち込んでるのとは違う。違うの」 ('A`)「受け入れた?何を」 ノパ△゚) ('A`) ノパ△゚)「じーちゃんが……死んだこと」 (;'A`)「は?」 ドクオもヒートの祖父であるビートですらも予測できなかった彼女の言葉に、彼は唖然とした表情で聞き返す。 ノパ△゚)「私はそれを悲しんでるわけじゃない。 受け入れて、その上でじーちゃんの命が本当に終わってしまう瞬間を見届けるためにここへと来ているだけ」 (;'A`)「ちょ、ちょっと待てよ。死んだって……お前のじーちゃんはまだちゃんと生きてるだろ?」 ベッドの上で眠るビートに目をやり、ドクオは訴える。 ノパ△゚)「確かに心臓は今でも動いてる。でも、それは今だけの話でしょ。 その内、多分もうすぐ、止まっちゃうんだよ。じーちゃんは……死ぬんだ」 (;'A`)「な、何だよそれ……何でそんな風に決め付けるんだよ」 ノパ△゚)「……これは私じゃなきゃ分からないよ。じーちゃんの強さを直に味わったことのある私でなきゃ。 あんなに強かったじーちゃんが、こんなに……こんなになって……」 ヒートはベッドの方へと目をやり、細く呟く。 顔を伏せ、言葉を続ける。 ノハ △ )「こんなになったじーちゃん……」 ノハ △ ) ノハ △ )「死んじゃったのと同じだよ……。負けちゃったのと……同じだよ……」 (;'A`) ノハ △ ) (;'A`)「何だよ……それ」 ノハ △ ) (;'A`) ノハ △ ) (; A ) ノハ △ ) (; A )「くっ……」 ノハ △ ) (; A ) ノハ △ ) (; A ) ノハ △ ) (; A )「――けんなよ……」 この行動がこの場に適したものでないことは分かっていた。 (; A ) この行動が彼女の心を傷つけてしまうかもしれないということも理解していた。 (# A ) しかし、そんな抑止力さえ頭の中から消えてしまうほどに、ドクオの心は怒っていた。 (#'A`)「ふざけんなよ!!!!」 (#'A`)「何が受け入れただよ……何が私以外には分からないだよ……」 ノハ;゚△゚)「え……何いきなり」 (#'A`)「そんなのお前の中で自己完結した、ただの決め付けだろ!?」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「負けてねーよ!死んでねーよ!!」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「心臓が動いている限り、お前のじーちゃんは生きていて戦ってるんだ!!」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「その結果なんて誰にも分からない」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「ましてや、受け入れたなんて綺麗な言葉使って、体よく現実から目を背けてるお前になんて分かるはずもない!!」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「お前のじーちゃん強いんだろ?それを一番分かってるのはお前なんだろ?だったら信じろよ!!」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「お前のじーちゃんが死に打ち勝って、目を覚ますことを信じろよ!!」 ノハ;゚△゚) (#'A`) ノハ;゚△゚)「な、何だよ……いきなり」 (#'A`) ノハ;゚△゚)「何も知らないくせに……私の気持ちも知らないで」 (#'A`)「いいや、分かるね」 ノハ;゚△゚)「な……」 (#'A`)「お前はじーちゃんが死ぬのが、本当は怖いんだ」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「だから、その可能性をあらかじめ事実として受け止め、 実際その状況に直面した時の悲しみを和らげようとしてる」 ノハ;゚△゚)「……」 (#'A`)「分かりやすく言えば、お前は逃げてるんだよ」 ノハ;゚△゚) (#'A`)「残されたものとして唯一託された使命である、信じるって行為を放棄してな」 (#'A`) ノハ;゚△゚) (#'A`) ノハ; △ ) (#'A`) ノハ; △ )「ち……違う……!!」 (#'A`) ノハ; △ )「私は……逃げてるんじゃない……!!」 (#'A`) ノハ; △ )「強くなったから……成長したから……」 (#'A`) ノハ; △ )「私は、受け入れたんだ……」 (#'A`) ノハ; △ )「受け入れたんだよ!!」 (#'A`) ノハ; △ ) (#'A`) ノハ; △ ) ('A`) ノハ; △ ) ('A`) ノハ; △ ) ('A`)「俺が三歳の時、俺のじーちゃん死んだんだ」 ノハ; △ ) ('A`)「死因はよく覚えてないけど、前から入院してたから多分何かしらの病気だったんだと思う」 ノハ; △ ) ('A`)「じーちゃんの死に目に、俺はあったよ」 ('A`)「あん時は、俺もちっちゃかったからな。それに……こんなこと言ったら天国のじーちゃんに申し訳ないけど 入院してたじーちゃんとはあんまり会う機会もなかったし、それ程愛着もなかったんだ」 ノハ; △ ) ('A`)「だから、じーちゃんの容態が急変して今わの際って時でも、 ああ、じーちゃん死んじゃうのかー、とか軽い気持ちで思ってただけだった」 ノハ; △ ) ('A`)「で、そん時は薄情ながらもそれで終わったわけだ」 ノハ; △ ) ('A`)「でもな、最近信じる力は大事だ、なんてある奴が言ってたのを聞いて俺思ったんだよ」 ノハ; △ ) ('A`)「なら、あの時じーちゃんを殺したのは、俺だったのかもしれないな、って」 ('A`)「ま、実際そこまで深刻に考えたわけじゃないぞ」 ノハ; △ ) ('A`)「要するに、あの時俺がじーちゃんが生還することを信じていたら、 もしかしたらじーちゃんは死なないで済んだのかもなって、そう考えたわけだ」 ノハ; △ ) ('A`)「理由なんてものはない。今、お前がしている決め付けと本質的にはなんら変わらないもんさ」 ノハ; △ ) ('A`)「違うのは、可能性に対する姿勢」 ノハ; △ ) ('A`)「俺の、生還を信じればきっとその人は生きていてくれるって言う決め付け。 これは悲しい現実に直面する覚悟をした上で取る、前向きな姿勢」 ノハ; △ ) ('A`)「対してお前の、あれ程強かった人がここまで弱ってしまえばもう死んでいるのと同じだ、と言う決め付け」 ノハ; △ ) ('A`)「これは悲しい現実に直面することを恐れ、希望を諦めて自分の心を守ろうとする臆病者の姿勢だ」 ノハ △ ) ('A`)「はっきり言って、この二つの決めつけ、どちらを選ぶかで結果が変わるかなんて分からない」 ノハ △ ) ('A`)「もしかしたら、俺達の目には見えない力で何かが変わっているのかもしれないし やっぱりそんなもんには何の力もなく、物事は全てなるようにしかならないのかもしれない」 ノハ △ ) ('A`)「だが、それでも、俺は絶対に後者を選んだりはしない」 ノハ △ ) ('A`)「生死の境を彷徨っている人に出来るのが死と戦うことだけなら 残された者に出来るのはその人の勝利を信じることだけだ」 ノハ △ ) ('A`)「間違っても、敗北を信じることなんかじゃ決してない」 ('A`) ノハ △ ) ('A`)「悪かった……途中から説教臭くなっちまって」 ノハ △ ) ('A`)「ていうかこれはもう説教そのものか……はは」 ノハ △ ) ('A`) ノハ △ ) ('A`)「とにかく、悪かったよ。こんな赤の他人が勝手に病室忍び込んで、その上偉そうに説教までかましちまってさ」 ノハ △ ) ('A`) ノハ △ ) ('A`)「でも、今俺が話したのは全部本心から言ったことだから」 ノハ △ ) ('A`)「それだけは、分かってくれよな」 眠るビートに目をやり、ドクオはふっと笑う。 そして、立ち尽くすヒートの横を通り過ぎ、扉のノブへ手をかけて一言こう言い残した。 ('A`)「……学校早く来いよな」 開かれた扉が閉まる音。 ノハ △ ) 俯き、その場へと立ち尽くすヒートが、未だ眠り続けるビートと共に病室へと残された。 ノハ △ ) ノハ △ )「……分かってるよ」 彼女は誰に言うともなく呟く。 ノハ △ )「自分が臆病者なことくらい……」 ノハ △ ) ノハ △ )「自分が凄く弱い人間だって事くらい……分かってるよ」 彼女は顔を上げ、ビートが横たわるベッドの傍へと歩み寄る。 今まで、遠くてはっきりと見えなかった彼の顔が次第に露わになってくる。 ノパ△゚)「……じーちゃん」 目を瞑ったまま返事を返さない彼に呼びかけた時、 ノパ△゚) ノパ△゚)「あ……」 彼女は気づいた。 ノハ;゚△゚) ノハ;゚△゚)「あ……あぁ……」 今まで見たことはなかったが、彼女は確信した。 彼のことを他の誰よりも知っていたからこそ、確信した。 ハ ー )ハ 彼の表情が、強大な敵を前にした剣士が浮かべる、興奮と好奇を孕んだ不敵な笑みそのものであることを。 ノハ;゚△゚)「じー……ちゃん……」 彼女はそれと共にもう一つの事実を確信する。 ノハ; △ )「くっ……」 それは、彼が今も尚確かに生きていることを証明していた。 ノハ; △ )「うっ……」 一人の老剣士は恐らく今、史上最大の敵と対峙していることだろう。 ノハ;△;)「ううっ……えぐっ……」 彼が勝利を収めることは至難の業だ。何せ彼は強さの象徴になり得ることのない、人間なのだから。 ノハ;△;)「じーちゃん……じーちゃん……!!」 だから、彼女は信じた。 ノハ;△;)「勝って……!!生きて……!!」 彼の勝利と彼の生還を。 ノハ;△;)「じーちゃん!!……負けないで!!」 その思いが彼に届くのか、そして、それが実を結ぶのかは、誰にも分からない。 だが、それでも彼女はこの瞬間、臆病者の考えを捨て、祖父の勝利と生還を祈り、信じた。 ノハ;△;) 彼女の流す強く清い涙が、頬を伝う。 ハ ー )ハ 傍らで泣き続ける少女をあやすことなく、彼は眠り続ける。 ノハ;△;) ハ ー )ハ それは、何の根拠もなく彼の勝利を確信させる、暖かな光景だった。 彼の自信はこうして形を成し、見る者全てに共通の、理由のない安心感を振りまいていく。 ノハ;△;)「……じーちゃん」 彼女が彼に呼びかける ハ ー )ハ それに対する返答はない しかし、もし仮に返答することの出来る状態にあったとしたら、きっと彼はこう言い放つことだろう パー゚)ハ「ワシが負ける訳なかろうが!こんなとこにおらんでさっさと鍛錬をしに行かんかい!」 今と同じく、不敵な笑みを浮かべたまま、豪快に勇ましく―― 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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