五章上2 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:14:24.13 ID:oMSo4Qgq0五章 朝 「おはよう」 その声に、僕は眼をうっすらと開ける。 ……朝が来てしまったようだ。 ( ´ω`)「お……」 閉じてしまいそうな眼を無理矢理に開ける。 また楽な方へ逃げようとしてしまっている自分を、現実に戻す。 眠かった。まだ眠っていたかった。 腹の奥に何か塊があるような気がする。軽い頭痛がする。 鳥の声は、聞こえない。 こんなにも目覚めの悪い朝は初めてだ。 3 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:17:19.24 ID:oMSo4Qgq0 そんな事を考える僕の視界に、ひょいっとショボンが入ってくる。ちょっと驚いた。 やっぱり感情は伺えない。 (´・ω・`)「おはよう、ブーン君。死にそうな顔だけど、大丈夫?」 ( ´ω`)「……正直、ダメだお」 (´・ω・`)「何だったら、今日一日くらい学校休んじゃえば?」 その言葉に、ちょっとぐらつく。 ただ、今日学校に行かないと、何だか不登校になりそうな気がした。 一回逃げてしまえば、人は弱い所に居続けたくなる。 ( ´ω`)「そういう訳にはいかないお……今、何時かお?」 (´・ω・`)「五時半」 五時半?眠いわけだ……起こすの早いよ……。 本来なら、それの一時間後起床だ。 4 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:19:42.50 ID:oMSo4Qgq0 (´・ω・`)「あー、起こすの早かったか。ごめんね」 ( ´ω`)「いや……良いお。それよりも、洗面台どこにあるか教えて欲しいお」 (´・ω・`)「そこの廊下の突き当りを右だよ。行けるかな?」 ( ´ω`)「大丈夫だお……」 そう言って僕は洗面台へ向かう。 背中にショボンの心配そうな視線を感じる。 だけど、元気な自分を装う元気もない。 ふらふらと所々で壁に体をぶつけながら、洗面台へと到着する。 鏡に映る自分を見て、眼を疑った。 何て顔をしてるんだ、僕は。 蛇口をひねり、限界まで水を出す。 それからその勢いのままで、顔を洗う。 乱暴に、何度も何度も。 悲しい思いを断ち切るように。哀しい思いを断ち切るように。 5 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:22:14.80 ID:oMSo4Qgq0 ( ω )「……っぷは……はぁ……はぁ」 呼吸をするのを忘れていた。 馬鹿か。死ぬぞ。 いや、死んで良いのか。 そして、また顔を洗う。 僕は何を馬鹿な事を考えているんだ。 死んで良いだと!?何を逃げようとしている!? 眼を覚ませ! 起きろ!前を見ろ!足を止めようと考えるんじゃない! 蛇口を止めて、傍にあったタオルで顔を拭く。 そして鏡を見て、無理に笑って見せた。 大丈夫。 僕は、大丈夫だ。 6 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:24:46.37 ID:oMSo4Qgq0 ( ^ω^)「……ふぅ」 少しだけスッキリ。 「よしっ」と自分に喝を入れて、ショボンの元に戻る。 (´・ω・`)「や、おかえり。少しは元気になったかい?」 ( ^ω^)「ほんの少しだけ」 (´・ω・`)「ほんの少しだけでも良いさ。 クロワッサンでも食べられるかい?」 正直、あまり食欲はなかった。 それでも、朝は何かを腹に詰め込むべきだろう。 何よりショボンの好意を無駄にしたくない。 ( ^ω^)「食べられるお」 (´・ω・`)「うん。じゃあ、これ食べてて。僕はちょっとある物を持ってくるよ」 ショボンはそう言うと、クロワッサンが三つ載った皿を僕に差し出した。 その皿の横にはブラックコーヒー。 カフェオレが良いなんて思ってないよ。 いつも以上にもっちゃもっちゃと音を立てながら、僕はクロワッサンを食べる。 中々おいしいクロワッサンだ。 7 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:27:20.59 ID:oMSo4Qgq0 一つ目を食べ、二つ目のクロワッサンに手を着けようとした時、ショボンが戻ってきた。 手には栄養ドリンクのビン。 (´・ω・`)「これでも飲んで元気出しなよ」 そう言って、ショボンはそれを差し出した。 見た事のないラベルだった。ちょっとおかしな臭いがする。 フタはもう既に開けられていた。 ( ^ω^)「ありがたくもらうお」 そう言うと、僕はそれを一気に飲み下した。 あまり美味しい物ではなかったが、良い物だったらしい。 ゆっくりと身体が熱くなるのを感じる。 ( ^ω^)「少し元気が出た気がするお。ありがとうお」 (´・ω・`)「そりゃあ良かった」 ……本当に、良い栄養ドリンクみたいだ。 頭がすっきりしてくるのが分かる。 むしろ、いつもより頭が冴えてる感じだ。 身体が、火照る。 8 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:29:56.83 ID:oMSo4Qgq0 (*゚ω゚)「これは本当に効くお。ありがたいお」 (´・ω・`)「……うん、そうだろうね」 (*゚ω゚)「ちょっと散歩行って来るお。つーかもうそのまんま学校行ってくるお」 (´・ω・`)「……本当に元気になったようで良かったよ。うん、行ってらっしゃい」 (*゚ω゚)「おっ!」 そう行って、僕は家を出た。 今だったらテポドンだって小指で止められるよ! 後ろでショボンが何かを呟いていた。 (´・ω・`)「……スピリットを混ぜ過ぎたかな」 そう聞こえたのは気のせいだろう。 10 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:32:44.82 ID:oMSo4Qgq0 アレから、一時間三十分後。 (;゚Д゚)「眼を覚ませ、ブーンッ!!」 (;゚ω゚)「ぐほぇぁっ!!」 偶然会った登校途中のギコに、腹を殴られた。 ぼ、僕が何を!? あ、あれ? 何か胃から込み上げる物を感じr (;゚ω゚)「おぶえぁぇぁあぇええぁ!!」 (;゚Д゚)「うわお前きめぇきめぇきめぇこっち来んなぁ!!」 ゲロッちゃいました☆ その後、ギコに公園に連れてかれた。 とりあえずまた顔を洗って、水を飲まされまくった。 11 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:35:15.50 ID:oMSo4Qgq0 聞くと、僕は半端じゃなく酔っていたらしい。 そんな僕を登校中のギコが発見したと。 ギコは見て見ぬ振りをしようとしたらしいが、僕がギコに (*゚ω゚)「ふひっふひっwwwギコじゃないかおwwwふひひひひひwwwwww」 とか言って寄って行ったと。 それで吐かされたと。 うーん。 記憶ないんだけどなぁ。 ギコは木のベンチに腰掛けている。まるでどこかの良い男のようだ。 彼は僕が戻ってきたのを確認すると、呆れたような口調で言った。 (,,゚Д゚)「で?落ち付いたのか?」 13 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:38:14.02 ID:oMSo4Qgq0 (;^ω^)「お。まだ頭の中がぐらぐらするけど……大丈夫だお」 (;゚Д゚)「ったく……朝から酒なんぞ飲みやがって……」 (;^ω^)「酒?そんな物飲んでないお?」 (;゚Д゚)「いーや、アレは酒の香りだ。それも相当強いな」 さ、酒……? そんな物を飲む時間なんて……。 ( ^ω^)「あ」 アレか。 ショボンに飲まされたアレか。 考えてみれば、あの変な香りはアルコールの香りか! (#^ω^)ビキビキ ショボンめ……あとでビッグサンダ―ドラムスだな。 ビッグサンダードラムス……それは、まるで大落雷が相手の睾丸を(ry 14 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:40:53.32 ID:oMSo4Qgq0 ギコが木のベンチから立ち上がり、尻の汚れをはたく。 それからやけに膨れているバッグを手に掴んだ。 (,,゚Д゚)「ま、お前が大丈夫ならそれで良いさ。さっさと学校行こうぜ」 ( ^ω^)「おk、把握」 そう返事すると、僕はギコと一緒に歩み出した。 くだらない話をしながら学校へ。 何度も言おうとして、やめる。 結局昨日の話は言い出せなかった。 15 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:43:13.86 ID:oMSo4Qgq0 「生徒NO.5535 内藤ホライゾン。確認しました。お通りください」 「生徒NO.5546 ギコ。確認しました。お通りください」 カードリーダーを通り、教室へ向かう。 その時、チラリと時計を見た。 八時ジャスト。 いつもはこの三十分以上後に登校するのだが……。 ( ^ω^)「来るの早かったみたいだおね……」 (,,゚Д゚)「俺はいつもこの時間だぜ?」 ( ^ω^)「お?何でそんな早いんだお?」 (,,゚Д゚)「学校で朝飯食ってんだよ。俺は親父と仲悪いからな。同じ空気を吸いたくねぇ」 (;^ω^)「朝そんなに早く来るほど仲悪いのかお……」 (,,゚Д゚)「まぁな」 気付けば、そう話している内に教室の目の前まで来ていた。 17 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:45:40.30 ID:oMSo4Qgq0 ふと、何かが聞こえて足を止める。 話し声だ。 教室からの話し声。 こんな時間に誰が……? そう思って、ちらりと中を覗く。 そこには、ジョルジュとドクオがいた。 (,,゚Д゚)「ん?アイツらが早く来るとは……珍しいな」 ギコはそう言うと、少し驚いたような顔をした。 ジョルジュとドクオは、何やら二人で何かを話しているようだ。 それも、結構ちゃんとした話らしい。 朝のドクオがあんなしっかりとした眼をしているのは初めて見たし、ジョルジュの真面目な顔は久しぶりに見た。 何よりも、僕達がすぐそこにいるのに気付いていない。 ( ゚∀゚)「……俺の方はそんな物騒じゃなかったがな。むしろ自由にしろって空気が強かったぜ」 ('A`)「……じゃあ、俺だけか。俺の方はそれなりに危なかったんだがな……」 うーん。何の話かまったく分からない。 18 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:48:12.99 ID:oMSo4Qgq0 とりあえず、このまま話を聞いてるのも何だし、声をかける事にする。 ( ^ω^)「ドクオ、ジョルジュ。何を話してるんだお?」 (;゚∀゚)(;'A`)「―――っ!?」 僕の言葉に、二人はすごい勢いで僕を見る。 おっと。 驚かせないように話しかけたつもりなんだけどな。 (;゚∀゚)「ぶ、ブーン……それとギコか。いきなり話しかけんなよ、ビックリするじゃんよ」 (;^ω^)「いや……じゃあどうすれば良かったんだお?」 (;'A`)「……ノック?」 (,,゚Д゚)「ねぇよ」 ( ^ω^)「で、何の話をしていたんだお?」 と、そこで二人の表情が曇る。 まるで聞かれたくない事を聞かれたような感じで顔を見合わせ、眼を泳がす。 21 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:50:38.84 ID:oMSo4Qgq0 (;^ω^)「な、何なんだお?」 (;゚∀゚)「あー、いや、何でもない話だよ。どうでも良い話な」 (,,゚Д゚)「さっきの会話を聞く限り、そうは思えないがな」 (;'A`)「……あー、でも、な。うん。まぁ、気にすんなよ」 (,,゚Д゚)「良いから話せ」 ('A`)「……いや、無理だな。常識的に考えて……」 (,,゚Д゚)「あぁん?何だそれ。言えねぇってのか?」 ('A`)「……まぁな」 その言葉に、ギコはドクオに歩み寄る。 そして、伸ばした右手でその胸倉を掴んだ。 23 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:53:48.00 ID:oMSo4Qgq0 (;^ω^)「ちょっ!ギコ!いきなり何してんだお!」 (,,゚Д゚)「黙ってろ、ブーン」 ('A`)「……放せよ」 (,,゚Д゚)「放すかっつーの。 おい、ドクオ。てめぇ……俺が隠し事が大嫌いだって事くらい、知ってるよなぁ?」 ('A`)「……まぁな」 (,,゚Д゚)「それに、聞いただけだと今の話はそれなりに深刻っぽい話みてぇじゃねぇか? 物騒じゃねぇだの、危なかっただの、よ?それを俺に話さねぇってか?」 ('A`)「……それでも言わないって時点で、そんな簡単な話じゃねぇって事ぐらい考えろよ」 (,,゚Д゚)「……そうかよ。ガキの頃からずーっと一緒で、それでも話せねぇってか」 ('A`)「だから言ってんだろうがよ。……これは他人に話せるレベルの話じゃねぇんだよ。 これを話せば、お前らが俺達を見る眼が変わる。……それは例えブーンでも、てめぇでもな」 (#゚Д゚)「……はぁ?ふざけんじゃねぇぞ?」 ('A`)「……あぁん?」 24 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:56:14.14 ID:oMSo4Qgq0 (#゚Д゚)「てめぇに何かがあろうと、俺のお前の見方が変わるわけねぇだろ!! どんな事があろうとてめぇはてめぇだろうが!あぁ!?それとも何だ!? 俺は、そんな「何かあっただけで人の見方が変わる人間」だとでも思われてたのか!?ふざけんじゃねぇぞ!!」 (#'A`)「んな事言ってねぇだろうが……!」 まずい。 これは殴り合いになりかねないぞ。 思えば、この二人は一番喧嘩が多いんだ。 仲良いくせにぶつかり合いも多いってどんなんだよ! 止めないとやばい。 直感でそう感じた。 (;^ω^)「ちょ、本当にやめるお!」 (#゚Д゚)「黙ってろっつったろ、ブーン」 (;^ω^)「そんな放っとくわけにはいかないお!」 (;゚∀゚)「あーあー、めんどくさい事に……」 (;^ω^)「んな事言ってないで、ジョルジュも止めろお!」 26 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 22:58:49.40 ID:oMSo4Qgq0 (#'A`)「良いからまずは手を放せ、ギコ。いつまで掴んでるつもりだ?あぁ?」 (;^ω^)「そ、そうだお!まずは手を放して、ちゃんと温和に話を―――」 進めよう、と、そう言いかけた所で。 僕の足が、ビクンと痛んだ。 続いて、びりびりとした痛み。 これは―――“共振”? ふっと、ショボンの言葉が頭をよぎる。 『異能者は、異能者が近くにいれば、痺れで分かる』 もしや。 いや、そんな事はないだろ。 じゃあ、この痺れは? この痺れは、どうやって説明するんだ? 「っつ……!」 そんな声に、反射的に顔を上げる。 28 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:01:31.03 ID:oMSo4Qgq0 そこに広がっていたのは、予測通りの光景。だがそうなって欲しくはなかった光景。 ギコはドクオを放し、ドクオはギコから離れ、ジョルジュはロッカーに寄りかかって。 そして三人とも痛みを耐えるような顔で、腕を抑えていた。 ドクオは左腕を。ギコとジョルジュは右腕を、だ。 (;゚ω゚)「み、みんな……?」 (;゚Д゚)「痛ぇ!何だこの痛みは!?邪鬼眼か!俺は邪鬼眼を持っていたのかぁ!?」 (;'A`)「っち……またこの痺れか」 (;゚∀゚)「痛ててて。昨日のと同じ痛みだ」 そのドクオとジョルジュの言葉。 ……そして、さっきの会話。 もしや。……いや、やっぱりというべきか。 (;゚ω゚)「……もしかして、ジョルジュもドクオも、昨日の僕と同じ体験を?」 その言葉は、勝手に口から出てきた。 言ってすぐに、もしかして違ったらどうするのかと思って、自分の口の軽さに恐怖した。 29 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:03:53.20 ID:oMSo4Qgq0 (;'A`)「昨日のお前がどんなのか知らんが」 (;゚∀゚)「ま、普通じゃなさすぎる体験はしたけどもねー」 (;゚Д゚)「何だ昨日の体験て!?邪鬼眼か!?もしやお前らみんな邪鬼眼を!?」 そこで、確信した。 (;゚ω゚)「……三人とも、異能者だったんだおね?」 (;'A`)「嬉しくはないが、正解。そんで、お前もそうっぽいな」 (;゚∀゚)「……その話をしてたんだよ、ドクオとはな」 (;゚Д゚)「いや、お前ら何の話してんだよ!何だよこの痺れは!?」 ('A`)「うるせぇ。空気読め」 (#゚Д゚)「あぁーん!?いいかげん殴るぞてめぇ!」 30 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:06:17.28 ID:oMSo4Qgq0 (;^ω^)「……ギコ。“解放”って……心の中で念じてみろお」 (;゚Д゚)「あん?あ、あぁ……」 それからまもなく。 ギコの右腕の肘から先が異形の物へと変化を遂げる。 あの忌々しい、ゴキゴキと言う音を響かせながら。 ギコはそれを唖然とした表情で見詰めていた。 数秒後、ギコの右腕は紅と黄色の混じった炎のような色をした腕になった。 その形状は凹凸の大きい、まるで真紅の蜥蜴の腕。 鱗のようになっている、厚い金属質の皮。 鋭く、太くなって伸びた爪。 それを軽く掲げ、ギコは消え入るような声で呟く。 (;゚Д゚)「何、だ……これは?一体、なん……?」 (;^ω^)「ぎ、ギコ?しっかりしろお?」 (;゚Д゚)「え……あ……あ?」 (;'A`)「あーあー。パニくってんじゃねぇよ、ダリぃな……」 31 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:08:39.85 ID:oMSo4Qgq0 その時、僕はチラリと時計を見る。 八時二十分だ。 ( ^ω^)「あと十分もすれば人が来るお……」 (;゚∀゚)「げー!マジかよ!」 ('A`)「……話はどうするか」 ( ^ω^)「みんな、屋上に行こうお。あそこは誰も来ないはずだお」 ('A`)「屋上か……良いアイディアだ」 (;^ω^)「でも、授業どうするお?」 ('A`)「そんなん、どうにでもなるだろ。こっちの話の方が重要だ。ほれ、決まったんだからさっさと行くぞ」 ( ゚∀゚)「おっけー。オラ、ギコちゃん!目ぇ覚ませー!」 ジョルジュはそう言うと、ギコの尻を思いきり叩いた。 ギコは「あ、あぁ……」と中身のない返事をすると、僕達にフラつきながらもついてくる。 32 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:11:03.60 ID:oMSo4Qgq0 屋上への階段を昇る。初めての行為だった。 そして、屋上へのドアを目の前にした時、ドクオがこう言った。 ('A`)「カギ開いてないんじゃね?」 僕は ( ^ω^)「カギなんて必要ないお」 と返事をすると、足を開放させる。 その足はまもなく、昨日の夕方。あの時と同じ白銀の足に変化する。 ('A`)「おぉ……」 ( ゚∀゚)「ヒュゥ!中々イカすじゃんよ!」 (,,゚Д゚)「…………」 ( ゚Д゚ ) ( ^ω^)「こっち見んな」 とりあえず、ドアを蹴破る事にする。 どうせまだ誰も学校に来てないだろうから、音を気にする必要はない。 ドアを思い切り前蹴りする。 たったの一度の蹴りで接合部が弾け飛び、妙な音が響いてドアが吹っ飛んだ。 34 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:13:26.52 ID:oMSo4Qgq0 屋上に出る。 上空特有の強い風が、僕の頬をなぶった。 空を見上げると、僕の気分とは裏腹に、昨日以上の快晴。 屋上の地面は、その日差しを受けて少し暖かくなっていた。 四人向かい合うように立つ。 一番最初に口を開いたのは、ギコだった。 ギコは右腕を掲げ、半ば叫ぶように言う。 (;゚Д゚)「どうなってんだよ……。何だこの腕は!?」 ( ゚∀゚)「いや、何だって言われても困るんだぜ?」 ('A`)「その質問に答えるとすれば、その答えは“能力”または“力”だろうな」 (;゚Д゚)「俺は。……俺は……異能者なのか?」 その質問に、僕は頷く事しか出来なかった。 ギコは眼を閉じて、少しだけ辛そうな顔をする。 (,,-Д-)「そう……か……」 36 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:15:49.86 ID:oMSo4Qgq0 ( ^ω^)「……大丈夫かお?」 (,,゚Д゚)「パニくっても仕方ないからな。いや、パニくってるんだけどな。 どうしようもない事に悩んだって仕方ねぇし、そんな事は後で考えられる」 ギコのその言葉に、僕は少なからず驚いた。 こんな問題をそんな風に片付けられるギコを羨ましいと思ったし、ギコらしいとも思った。 そして、少しだけ。 少しだけだけど、この事で悩んでいる僕を馬鹿らしく思えた。 (,,゚Д゚)「それよか、四人集まって何するんだ?それがこれに関係する話なのか?」 ( ^ω^)「……みんなの話を聞きたいんだお」 ('A`)「……ま、ジョルジュと俺は元々それを話してたんだから構わないが」 (,,゚Д゚)「……最初からそうだと言えば良かっただろうに」 ('A`)「あぁ?「私は異能者でした」なんて言っても、お前信じねぇだろうが。 信じるまで説明するだけで時間かかる」 (;゚Д゚)「……ま、いきなりそんな事言われても、信じられないだろうが。だがな……」 ('A`)「あーあー、分かった分かった。「それでも俺のお前を見る眼は変わらない」とでも言いたいんだろ?」 (;゚Д゚)「……まぁ、その通りだ」 38 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:18:16.18 ID:oMSo4Qgq0 ('A`)「どうだかな。あの時、俺達が異能者だって分かっても普通に接してられたか?」 その言葉に、ギコはドクオの肩を掴んだ。 また喧嘩な空気になるかと思ったが、それは違った。 ギコは、ドクオの眼を見ていた。 そして、そのままの状態で言う。 (,,゚Д゚)「……当たり前だ。信じろよ」 ドクオはちょっと驚いたような顔をして。 それから、ドクオは少し笑った。 口元だけじゃなく、嬉しそうに。 ('∀`)「はっ……!真っ直ぐ人を見ながら言うセリフじゃねぇよ、それw」 (,,゚Д゚)「……あ?」 ('∀`)「分かった分かった、信じてやるって。そんな臭ぇセリフ吐かれて、拒否する事なんて出来ねぇよw」 (*゚Д゚)「る……るっせ!」 40 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:20:48.70 ID:oMSo4Qgq0 ……ドクオの笑顔は、久々に見た。 ギコの誠意が伝わったのだろうか。それとも、ただ単にギコを面白がっただけなのか。 感情を滅多に表に出さないドクオからそれを知るのは難しい。 ……でも。 ドクオの機嫌が、多少良くなってる事だけは分かった。 それで、十分だった。 ('A`)「あぁ、悪い。話がずれたな。……じゃ、話そうか」 ( ゚∀゚)ノ「はいはいはーい。俺から話して良い?」 (,,゚Д゚)「おう」 ( ゚∀゚)「じゃ、とりあえず昨日の話をしようか。 昨日の俺っちはだな……」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 41 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:23:13.48 ID:oMSo4Qgq0 俺はブーン達と別れ次第、右手をいじり始めた。 どうも、さっきからぴりぴりと痺れている。 変な感じだ。 痺れている部位は、右腕の肘から指先まで。 血流を止めた時の痺れよりも、若干痛みが強い。 だが、動きには問題はない。 手を開閉してみても何も障害はないし、つねってみれば痛みもある。 いつもの痺れかの確認に軽く掌を叩いてみたが、痛みは強弱せず、一定を保っていた。 ただの痺れじゃないってか? 何かちょっと怖ぇな。 ……ま、どうせ一時的なものだろうし、この程度の痛みであれば心配する必要もないか。 ( ゚∀゚)「…………っと、とりあえずはOKかな」 俺は一人そう呟くと、歩みを再開する。 ( ゚∀゚)「ふぅ……お馬鹿ちゃんの振りも楽じゃねぇよなぁ……」 そんな事を呟きながら。 42 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:25:35.69 ID:oMSo4Qgq0 家までの道程を、足早に歩く。 さっさと家に帰って、今日の授業の復習をしなくてはならない。 学校では真面目に勉強している姿は見せられないから、家でするしかないのだ。 真面目な姿を見せると、俺は居場所を失くしてしまう。いや、居場所……と言うよりは、ポジションと言うべきか。 だから、めんどくさいがお馬鹿ちゃんの振りは辞められない。 今日は何を習ったんだっけか……? そんな事を考えた時。 また右腕が疼いた。 それはさっきまでの痺れや痛みとは、何か別格の物。 まるで腕から何かが溢れ出てきそうな、そんな感覚。 (;゚∀゚)「あぁん……?何だよさっきから……?」 ウルシにでもかぶれたか? いや、この辺にウルシなんざないはず……。 ( ゚∀゚)「……まぁ、良いか」 44 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:27:56.94 ID:oMSo4Qgq0 考えたって仕方ないと判断し、また歩みを再開する。 しかし、疼きを感じてから痺れは少しずつ強くなっていった。 (;゚∀゚)「……もしかしたら、ちょっとヤバイかも」 そう感じて、足を速める。 何か、嫌な予感がする。 さっさと家に帰って、それからどうにかしねぇと。 しかし、痛みはどんどんと大きくなる。 強くなった痛みは、強弱を繰り返した。 それは単純な強弱ではなく、まるで波の様に。 痛みが押しては引き、押しては引き。 やがて、大きな“引き”が来た。 (;゚∀゚)「おっ……!?」 まずい。 波は引けば引くほど大きな波になって押し寄せて来る。 これは……! 45 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:30:27.46 ID:oMSo4Qgq0 (;゚∀゚)「……あぐっ……!」 波が来る事によって思わずもれそうになった声を、必死で押さえる。 右腕を中心に、全身に痛みが走った。 痛みの中心の右腕はというと、痙攣したように自由が利かなくなっている。 その次の瞬間。 ぐらり、と。 ひどい貧血になった時のような症状が、俺に現れた。 視界が安定せず、焦点が合わなくなる。 それに続いて、頭痛。吐き気。 (;゚∀゚)「はぁ……!?……っはぁ……ちょ、待とうぜオイ……!」 そう呟いて、俺は道の横の壁に背中を預けた。 症状は嘔吐感に頭痛、めまいに右腕の痛み。 前者三つは急性の何かだとして、今も強くなり続けている右腕の痛みは何だ? 骨折やそんなんはありえない。熱感はあるが、どこも骨折したような跡はない。 じゃあ何だ? この原因不明の苦しみは、一体何だ? (;゚∀゚)「んなもん分かるかよ……ぐっ……!」 そして、もう一度痛覚の波。 呻き声も出せぬほどに痛みが押し寄せ、俺の頭はオーヴァーフローしそうになる。 46 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:32:58.86 ID:oMSo4Qgq0 どうすれば良い? 助けを求めるしかないのか。 そう思って、携帯を取り出す。 かける相手はドクオだ。 ドクオなら頭の回転は速いし、アイツはゆっくり歩くからここからアイツまでの距離はあまりない。 だからすぐに駆けつけてくれるはず。 救急車でも呼ぼうと思ったが、俺のいる場所をこの状態で教えるのは難しいから却下。 電話帳から、ドクオを探す。 しかし、痺れから上手くボタンを押せない。 (;゚∀゚)「……っぐ……!」 そううなりながらも、俺はドクオに電話をかけた。 呼び出し音が鳴り続く……。 だが、あいつは出ない。 (;゚∀゚)「さっさと出ろよ、あんにゃろう……!」 そうして、電話をかけてから二十秒が経過した。 未だドクオは出ない。 と、その時。 また痛覚の波が押し寄せ、俺は携帯を落としてしまった。 48 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:35:19.75 ID:oMSo4Qgq0 (;゚∀゚)「ッチ……今日は何なんだよ、ちくしょう……!」 そう呟いて、携帯に手を伸ばす。 そして、驚愕に目を見開いた。 携帯の横には、足があった。 も、もしかして。 人がいるのか!? そう叫びそうなのをこらえて、顔を上げる。 そこには、心配そうに俺を見る女がいた。 (*゚∀゚)「だ……大丈夫?」 (;゚∀゚)「あー、いや……大丈夫じゃないかな。あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど」 (*゚∀゚)「何?」 あー、ドクオっつっても分からないだろうから……。 (;゚∀゚)「救急車を呼んで欲しい。身体の痛みがひどいんだ」 (*゚∀゚)「……いや、その必要はない、かな」 49 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:36:45.36 ID:oMSo4Qgq0 ……はぁ? な、何だこいつ。 (;゚∀゚)「……ちょ、何言ってるのさ。ふざけないでよ」 (*゚∀゚)「ふざけてないよ。だって、そんな物呼ばなくても、アナタのその痛みはなくせるもん」 (;゚∀゚)「な、何だって?」 (*゚∀゚)「アナタの痛みを消す事が出来るって、そう言ったよ」 (;゚∀゚)「そんな簡単な物なのか?それとも何か痛み止めみたいな物を?」 (*゚∀゚)「……あのね、“解放”って……心の中で、唱えてごらん?先に言っておくけど、ふざけてないよ」 50 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:38:04.04 ID:oMSo4Qgq0 ……この女が何を言っているのかが分からない。 だが、この女が俺を騙して何かが得になるわけでもない。 それに、信じて失うものは無い。 俺は女の言葉に従う事にする。 “解放” 次の瞬間。 ブゥゥ………ン、と。 俺の右腕が、そううなった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 51 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:40:22.55 ID:oMSo4Qgq0 ( ゚∀゚)「―――と、そういう訳だよ」 そう言うと、ジョルジュは右腕を掲げ上げた。 ( ^ω^)「お?何だお?」 ( ゚∀゚)「そしてこれが、その後に変化した俺っちの腕だよん」 それからまもなく、その腕は、スゥッと鮮やかな橙色へと色を変えた。 だが、形は変わっていない。 ( ^ω^)「お?色が変わっただけだお」 (,,゚Д゚)「それもオレンジ色とは……」 ( ゚∀゚)「まぁ見てなよ」 ジョルジュがそう言うと、手の甲辺りから何かが勢い良く飛び出した。 (;^ω^)「おぉっ!?」 ('A`)「おぉ……」 (;゚Д゚)「何だこれ……」 52 名前:1[] 投稿日:2007/01/17(水) 23:42:52.96 ID:oMSo4Qgq0 ( ゚∀゚)「じゃーんっ!」 ジョルジュの腕から現れた物。 それはブレードのような物だった。 陽光に光を反射させている。良く切れそうだ。 ( ゚∀゚)「好きに形状を変化させられるみたいでねー」 そう言うと、ジョルジュはそのブレードを盾のような形に変える。 ジョルジュがそれから僕達三人に雨のようなリクエストを受けたのは言うまでもない。 ジョルジュの腕は、本当に何にでも変わった。 爪付きの篭手の様にも出来たし、手首から先全てを刃にする事も出来た。 ('A`)「すげぇ便利そうだな。横になりながら離れたリモコン取れるじゃん」 (;゚Д゚)「リアルでヘボい発想をするな」 (;^ω^)「……で、ジョルジュ。その後は?」 ( ゚∀゚)「ん?あぁ、その後か。その後は――――」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 戻る 目次 次へ |