十八章一十八章 大量殺戮 (;^ω^)「ぎ、ギコ? どうしたんだお、その全身の包帯やらガーゼやらは」 ブーンとドクオが弟者と戦い、ジョルジュとギコがハインに迷惑をかけられた、その次の日の朝。 まだ誰もいない教室で、ブーンはギコの体を見て呆然とした。 (メ゚Д゚)「いや……な。ジョルジュも言ってたハインリッヒとかいう奴と戦り合ってな」 彼の身体には至る所にガーゼや包帯が巻いてあり、痛々しい事この上ない状況だったのだ。 その身体をじろじろと見て、ドクオが無表情のまま言う。 ('A`)「その処置を施したのはいつだ?」 (メ゚Д゚)「? 昨日の夜だが」 ('A`)「把握。では、今の傷と痛みの度合いは?」 (メ゚Д゚)「昨夜はそれなりに酷かったが……そういや、酷かった痛みがなくなってるな」 ('A`)「……ちょっと、適当なガーゼを一枚はがしてみろ」 (メ゚Д゚)「え? あ、あぁ」 ドクオの言いたい事は分からないままだが、とりあえず頷いて、一箇所のガーゼを剥がしてみる。 そして、彼は眼を丸くした。 (メ゚Д゚)「あ、あれ?」 ( ^ω^)「お? 傷なんてないお?」 (メ゚Д゚)「いや、でも……あ、あれ?」 ガーゼがあった部分を撫でてみるが、痛みもない。 (メ゚Д゚)「おかしいな……ここには確かにそれなりにひどい傷があったはずなんだが」 頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、眉をしかめたギコ。 それに対して、ドクオはその表情にさざなみすら起こさなかった。 ('A`)「……やっぱりな」 (メ゚Д゚)「どういう事だ?」 ('A`)「あんだけ酷かった俺の傷も、もうほとんど完治してんだ。 ま、昨日の時点で既に傷は塞がり始めていたがな。 『異能者は傷が治るのが早い』ってショボンが言ってたのは本当だったようだな」 (メ゚Д゚)「……何か、本格的に人間離れしてきたな、俺達」 言いつつ、ベリベリとガーゼをはがし、包帯を取る。 ほとんどの傷は消えていた。あざすらほとんど見えない。 (,,゚Д゚)「……ま、戦う事が決まったとなりゃあ、これは便利な事なんだろうがな」 ギコは教室に飾ってある時計に眼をやる。 時計は八時五分を指していた。 (,,゚Д゚)「集合時間から五分過ぎたな」 ( ^ω^)「過ぎたお」 (,,゚Д゚)「ジョルジュは?」 ( ^ω^)「来てないお」 ギコは舌打ちをして、頭を掻く。 呆れているような仕草だ。 (,,゚Д゚)「あの糞サボり魔は今日もサボりか?」 (;^ω^)「糞サボり魔って……昨日今日とサボっただけじゃないかお」 (,,゚Д゚)「二日連続でサボればもうサボり魔だろ」 ('A`)「どんな考え方だよ」 (,,゚Д゚)「うるせぇコーヒージャンキーめ」 ('A`)「別に中毒者でも何でもないだろうが。撃ち殺すぞ」 言って、ドクオは腰のベルトから何かを抜こうとする。 それをブーンが慌てて制した。 (;^ω^)「馬鹿! お前、そういうのはここで出すなお! っつーか持ってきてんじゃねぇお!」 ('A`)「いざって時の為に持って来たんだよ。 いつどこで襲われるか分からないんだからな。最悪の状況を考えやがれ」 (;^ω^)「だったらここで出すんじゃねぇお!!」 ('A`)「ふひひ、すいません」 (,,゚Д゚)「何をそんなに慌ててるんだ?」 再度クエスチョンマークを浮かべて、眉をしかめる。 (;^ω^)「実は……」 ごにょごにょと、ギコにドクオの銃の事を耳打ちする。 ギコの顔がさっと青くなった。 (;゚Д゚)「てめぇはそんな物を出そうとしていやがったのか!」 ('A`)「ふひひ、ついカッとなったんです。反省してますぅ。ふひひ」 (;゚Д゚)「…………………」 ギコは信じられないと言いたげな表情で固まった。 ( ^ω^)「あれ? ギコ、そういえばまた制服変わってないかお?」 ('A`)「燃やしたっつって変えたばかりだよな」 (;゚Д゚)「今度は濡れたんだよ。ハインとの戦闘の時に、噴水に投げられた。 これは知り合いの先輩の制服だ。親同士が仲良くてな、借りれたんだ」 (;^ω^)「……な、何だか昨日は大変だったようだお?」 (,,゚Д゚)「まぁ、それなりにな。お前等は昨日何もなかったのか?」 ('A`)「俺はほとんど何もなかったが……」 ちらり、とドクオはブーンを見やる。 ('A`)「この運の悪い野郎が拉致られかけてたぜ」 (;^ω^)「お、お?」 ('A`)「お? じゃねぇよ馬鹿」 (,,゚Д゚)「……さて、じゃあお前達の話を聞こうか」 それから三人はそれぞれ、昨日の放課後に何があったかを話す。 その内容は、ブーンは戦う決意をし、ドクオはぃょぅから二挺の銃を借り、ギコはハインと戦ったという事。 あとはそれぞれ戦った敵の事についての情報をやりとりしたのみ。 そんな話が終われば、三人は普通の学生として時間を過ごす。 ブーンやギコはクラスメイトと騒いで先生に怒られ、ドクオは不本意ながらも騒ぎに巻き込まれる。 いつもと違う事といえば、ぃょぅがドクオを呼び出して何やら説得らしき事をしていたくらい。 (;=゚ω゚)「だーかーら! クロとギンって名前はやめろょぅ! 犬じゃねぇんだょぅ!? あの子達はネロとズィルヴァって名前なんだょぅ!」 ('A`)「うるせぇ。しつけぇな。撃ち殺すぞ」 (;=゚ω゚)「ぃょぅ!? お前が言うと洒落にならねぇょぅ!」 ('A`)「だってマジだもん」 (;=゚ω゚)「ょぅ!?」 ('A`)「ふひひ。ジョークですジョーク。ふひひ」 その話を盗み聞きをしていたブーンは、 「ネロ? ズィルヴァ? 何の事だかさっぱりだお」と、内容を聞くのを諦めた。 そして、昼食の時間が過ぎ、ぐっだぐだな時間がやってくる。 それは三人も例外ではなく、三人は気だるそうにすごしていた。 その三人に変化が訪れたのは、まもなくの事。 ( ゚∀゚)ノ「よぅ、お前等」 三人の前に突如、学校をサボっていたはずのジョルジュが現れたのだった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 財布の中が寒くなってしまった次の日。 ジョルジュはまたも無人の公園にいた。 彼は懲りもせずに学校をサボったのだった。 彼はベンチに寝転がり、鼻歌を歌っていた。 青空に手を伸ばし、虚空を掴んだり放したりしている。 ( ゚∀゚)「ぬー、サボったのは良いが、暇だなー」 呟いて、立ち上がる。 そして何を思ったか、彼は突然右腕を解放した。 まもなく橙色に色を変えた右腕。その手首から、ブレードを発生させる。 ( ゚∀゚)「ふっ!」 空間に向けてブレードを振るう。 ヒュッ、と軽い音が響いた。 ( ゚∀゚)「む。今更ながら、こいつはものっそい使いやすいと分かったぞ」 ブレードを掲げて、隅から隅まで見やる。 ( ゚∀゚)「しかも、もしかして綺麗かも。 刃独特の美しさに、この明るい橙色。かなりイケてるんじゃね?これは萌える」 ジョルジュはそんなアホな事を呟く。 誰かに見られてたら恥ずかしいな、と彼が笑った瞬間。 「じょ、ジョルジュ君?」 後ろから声が聞こえた。 (;゚∀゚)「…………………」 やべぇ、見られたか、とジョルジュは硬直する。 だが、すぐに何もなかったかのように笑顔で振り返った。 それはとても不自然な、ぎこちない笑顔であったが。 ( ゚∀゚)「その声はつーだなぁ!」 (*゚∀゚)「?」 その通り。彼の目の前にはつー。 ( ゚∀゚)「ほーら正解だ! 僕の予測はよく当たるなぁ! HAHAHA!」 彼はさっきの行動を、今の行動のインパクトでなかった事にしようと必死に演技をする。 そちらの行動の方が痛々しいとは気付きもせずに。 (*゚∀゚)「……あのー、ジョルジュ君?」 ( ゚∀゚)「何だい、つー? 何か聞きたい事があるのなら、何でも言ってごらん!」 (*゚∀゚)「さっき何やってたn」 (;゚∀゚)ノ「ノウ!」 (*゚∀゚)「え?」 (;゚∀゚)「それは……そう! 秘密の特訓だよ! だから君には言えないYo! フフフフフ……!」 (*゚∀゚)「……ふぅん。まぁ良いや。 で、もう一つ質問、良い?」 ( ゚∀゚)「オーケーオーケー! 何でもウェルカムだ!」 (*゚∀゚)「そのおかしなキャラは何?」 ( ゚∀゚)「…………………」 ジョルジュは気を付けをする。 そして、これ以上ないほどに完璧な礼をして、呟いた。 (;゚∀゚)「すいません。さっきまでの事は全て忘れてくださいつーさん」 (*゚∀゚)「えっ? いや、良いけど……」 (;゚∀゚)「それは良かった」 心底安心したように溜め息を吐く。 ( ゚∀゚)「で、今日はどうしたんだ?」 そこで、つーの表情が明らかに曇った。 (*゚∀゚)「お願いがあるの」 ( ゚∀゚)「ん? 何だ?」 (*゚∀゚)「……止めて欲しいの」 ( ゚∀゚)「え?」 (*゚∀゚)「“管理人”の行動を……止めて欲しいの!」 ジョルジュの表情が、真面目な物へと変貌する。 思い出したのだ。 ハインが言っていた言葉を。 『近い内、“管理人”が人間を大量に殺す。 つーはそれを望んでいない。だから、お前を頼ってくると思う』 ( ゚∀゚)「……あー、分かった分かった。お前が何を言いたいのかはもう分かってるよ」 (*゚∀゚)「えっ……?」 ( ゚∀゚)「あれだろ? “管理人”の、人間の大量殺戮を止めてほしいってんだろ?」 (;*゚∀゚)「な、何でそれを?」 ( ゚∀゚)「ハイn……いや、お前の姉ちゃんが言ってたんだよ」 (*゚∀゚)「ね、姉さんって……私は兄弟とかいないよ?」 ( ゚∀゚)「あー、気にしないで良いよ。何でもない何でもない。それよりもさ」 不敵に笑って、ジョルジュは聞く。 ( ゚∀゚)「大量殺戮……止めてやるよ。殺戮の場所は?」 (*゚∀゚)「……場所は、ラウンジスクランブル交差点」 ( ゚∀゚)「始まる時間は?」 (*゚∀゚)「……もうすぐ始まっちゃう。始まっちゃうの!」 叫んで、つーはジョルジュにしがみつく。 (;*゚∀゚)「ねぇ、止められる!? 本当に、止めてくれる!?」 対するジョルジュは、表情を不安に歪ませるつーの頭にぽんと手を乗せた。 まるで妹にするように、安心させるように。 ( ゚∀゚)「心配すんな。任せとけ。どうにかなるから」 くるりと、首をあらぬ方向に向ける。 その方向は、ブーン達の通う学校がある方角だった。 ( ゚∀゚)「俺だけじゃあどうしようもないだろうがね……あと三人、協力してくれるおひとよし共がいる。 そいつらと、“管理人”共を止めてやんよ」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 昼食の時間を終え、少し長めの休憩時間に突入した学校。 その日は暖かい日で、その時間は学生も教師も黄昏ている時間であった。 そんなぐっだぐだな空気の中を足早に歩く、一人の影。 ( ゚∀゚)「ふっふーん。教師に見付からずに学校潜入するなんて簡単なんだぬーん」 ジョルジュは誰もいない廊下をずんずんと教室に向かって歩く。 その顔には笑み。 ただし、いつもの軽い笑顔ではなく、よく切れるナイフのような鋭い不敵な笑みだ。 ( ゚∀゚)「さてさて、あいつらはいつも通り、教室にいるだろうな」 呟いて、教室に到着する。 そこには彼の望む光景があった。 ( ゚∀゚)「……いたいた」 彼の視線の先には、気だるげにうなだれるいつもの三人。 ( ゚∀゚)ノ「よぅ、お前等」 ( ^ω^)「おっ!? ジョルジュが来たお!」 ('A`)ノシ「おぉ、ジョルジュ。よく来たな」 (,,゚Д゚)「おい糞サボリ魔。この時間にわざわざ何しに来た」 ( ゚∀゚)「いきなり酷い言い草だねぇ、ギコ君」 「まぁ、ちょっと聞いてよ。真面目な話だ」とジョルジュは続ける。 三人はすぐに黙り込んだ。 ジョルジュの眼が本気だったのだ。 その眼が何を示すのか。それを三人は深く理解していた。 ( ゚∀゚)「時間が無いから、率直に、ストレートに言うよ。今日、これからまもなく、酷い事件が起きる。 今日、ラウンジスクランブル交差点で、“管理人”による人間の大量殺戮があるんだ」 (;゚Д゚)「……は? 何言ってんだお前」 ( ゚∀゚)「信じられないだろうが、とある“管理人”から手に入れた情報だ。事実だよ。嘘じゃあない」 笑みを崩さないままジョルジュは言う。 ( ゚∀゚)「今までにあった異能者の大量殺戮の事件。それは優に五十人を超えたよね? それが、今回の大量殺戮には三人の異能者が関わってるって話だ」 (;^ω^)「……単純な計算だけでも、百五十人が死ぬお」 ( ゚∀゚)「よく出来ました。単純計算だけで、百五十。 他の色々な要因から、死亡者は二百を軽く越えるだろうね」 (;゚Д゚)「……ふざけてやがる。どんだけだよ、あいつら……」 ('A`)「……っは。“管理人”、ねぇ。狂ってやがんな」 (;^ω^)「と、止めに行かないと!」 ( ゚∀゚)「ヒュゥ。さっすがブーン。言いたい事が分かってるね」 (,,゚Д゚)「ブーンの言う通りだ。さっさと止めに行くぞ。 ラウンジスクランブル交差点つったら、この街で最も人通りが多い所だ。 何百人の死者が出るか分からねぇ。早急に止めに行くぞ」 走り出そうとするギコ。 だが、それを、後ろからドクオが制した。 ('A`)「いや……ちょっと待てよ」 (,,゚Д゚)「……あぁ? 待て、だ? どういうつもりだ、てめぇ」 (;^ω^)「ど、ドクオ?」 ('A`)「何で他人の為に動かなきゃならん? いや、まぁそれは良いとしよう。 “管理人”を止めるって事は、公衆の面前で“力”を解放するって事だぞ? ……このギリギリでしがみついてる平和な生活を手放して良いのか?」 (#゚Д゚)「細けぇ事気にしてんじゃねぇ! 人が大勢死ぬんだぞ!?」 ('A`)「どう考えても細かくないだろうが。それにな、多くの人間が死んだところで、俺達に何の被害がある。 止めに行った所で何か得られる訳でもない。リスクばかりで、何もメリットがないじゃないだろ」 (#゚Д゚)「人の命を損得で計んじゃねぇ! 良いから行くぞ!!」 ('A`)「……っはん。ま、良いけどよ」 四人は教室から飛び出す。 途中で教師に何回か見付かったが、全てスルーした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ラウンジスクランブル交差点。 四人の住むニューソク市の中心に位置する、ニューソク市で最も人通りの激しい交差点だ。 近頃はその付近に駅や巨大なショッピングモールが出来た為、更に人通りは増えた。 いつもは人々の楽しそうな声や笑い声、車の騒がしい音、店の宣伝などで賑わっているその交差点。 だが今日はどうやら様子が違った。 いつも通り騒がしいのだが、その騒がしさがいつも通りじゃあなかった。 楽しそうな笑い声は響かない。 代わりに無数の泣き叫ぶ声が響く。 鳴り響くパトカーや消防車、救急車のサイレンの音。 それを掻き消すほどの大きさの絶叫。泣き声。怒声。―――恐怖で狂ってしまった者達の冷たい笑い声。 いくつもの車が倒れて炎上している。中にはパトカー等の車も炎上しているのも見えた。 無数の人が倒れ、頭のない死体や、中身をはみ出させた死体が転がる。 その死体の数は時に比例して増えていった。 見れば、地面が紅や灰色、緋色で染まっていた。 「助けてぇえぇ!!」 「いやぁ! 異能者! 異能者よ!!」 「おらぁっ! どけクソババァ!!」 「パパ! パパッ!!」 「ヘリカル! どこだヘリカル!!」 「お……おい、死ぬなよデミタス! デミタス!? うわぁぁあぁ!!」 ただ恐怖する者。 大切な者を失い、慟哭する者。 逃げる事だけに必死になる者。 「慌てないでください!」 避難させようとする消防士の必死な声。それすらも掻き消された。 助けたいという想いすら届かない。 倒れた車や死体などで、人の避難は遅れている。パニックとなっているのだから、尚更だ。 殺されそうな恐怖。迫り来る恐怖。逃げられない恐怖。あまりの恐怖に狂う者も現われていた。 何せ、人々の希望であったその場に駆けつけた警察官が、一人の余りもなく殺されたのだから。 パニックになっている者達の足元には、まるでボールのようにそこに存在する警察官の頭があった。 そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中心にいるのは、三人の異能者。 細身のスーツを着た、無表情の男。 病的に白く、病的に細い、長身の二人の双子の男。 ―――それはミンナと兄者、そして、弟者だ。 ( ´_ゝ`)「時に、弟者。そしてミンナ」 両足を草色の異形へと変化させた兄者が言う。 ( ゚д゚ )「ぬ?」 (´<_` )「どうした、兄者?」 ( ´_ゝ`)「うむ」 兄者はブンッ、と兄者が水平に足を振るう。 すると、その足の延長線上にいた数人の上半身が空を舞った。 更なる叫び声が巻き起こる。 まるで竜巻のように、中心に存在する三人を除く周囲は混沌を極めていた。 ( ´_ゝ`)「私は今の殺戮で六十七人をカウントしたが……そちらはどうだ?」 (´<_` )「この弟は十二人を殺戮した」 ( ゚д゚ )「二人ともよくきっちりと覚えていられるな。私は大体十五人前後だ。 兄者、あなたの殺戮数が飛び抜けているな。殺戮が始まってまもないというのに、すごい事だ」 ( ´_ゝ`)「なに、私の“力”は人を殺すのに向いているだけさ」 言って、兄者は弟者を見る。 ( ´_ゝ`)「何せ、二人分の“力”だからな」 ( ゚д゚ )「あぁ、あなたはそういえば、弟者が本来持つべきであった“力”をその身に宿しているのであったな。 両足に“力”を宿しておきながら、風も操れるとは……素敵な“力”じゃないか。 本来はそのどちらかだったのだろう?」 ( ´_ゝ`)「あぁ。運命の悪戯とはこの事を言うのだろうか」 ( ゚д゚ )「弟者は異能者の『傷が早く治る』という特性のみを授かったのだったか?」 ミンナは言いつつ、車から割れ落ちた無数のガラス片の内いくつかを、逃げようとする人間に“力”を使って撃つ。 ガラス片は人間の首をかするように飛び行き、その首から噴水のように血を噴き出させた。 (´<_` )「あと、痛覚と感情の欠落さ」 ( ゚д゚ )「欠落、とは言ってもそれはある意味プラスじゃないか」 (´<_` )「……どうだかね」 言って、近くに居た人間の顔を殴り飛ばす。 そのあまりの威力に、その者の首はあらぬ方向に折れ曲がり、地面を跳ねる。 (´<_` )「十三人目……」 ( ゚д゚ )「ふん。異能者特有の“力”なぞなくても強いじゃないか」 ミンナが笑いもせずにそう言った時。 ミンナの顔の数ミリ横を、銀の銃弾が抜けて行った。 一瞬の後、ミンナの頬に一筋の紅い線が走り、つぅっと血が流れる。 ミンナは一瞬驚いたような顔をしたが、銃弾の飛んで来た元を見て「ほぅ」と声を挙げた。 ( ゚д゚ )「また貴様か―――ドクオ」 ミンナの視線の先には、四人の異能者。 信じられないといった表情で周りを見渡すブーン。 ミンナに二挺の銃を向けているドクオ。 怒りに満ちた眼で三人を睨むギコ。 そして、いつになく真面目な表情を見せるジョルジュ。 ('A`)「あぁ俺だよ。二度と会いたくなかったぜ、ミンナ」 言って、再度発砲。 左手に握るギンの銃身から放たれた銀の弾はミンナの額を撃ち抜くラインを飛ぶ。 しかし、ミンナが腕を前に出すと、その銃弾は勢いをなくして地面に落ちた。 ( ゚д゚ )「無駄だ」 ('A`)「っは。サイコキネシス、ねぇ」 ( ゚д゚ )「以前、この“力”で痛い目を見たのを覚えてないのか?」 ('A`)「覚えてないっす。サーセン」 ( ゚д゚ )「……ふん。懲りてないようだな」 くいっと腕を挙げる。同時に、いくつかのガラス片が宙に浮かぶ。 ( ゚д゚ )「ならばもう一度思い出させてやろう」 ふっと腕を振るう。同時に、浮いたガラス片がドクオに向かって高速で飛び行った。 ('A`)「はん」 慌てる様子を見せずに黒と銀の二挺の銃を構え、連射。 全てのガラス片は軽い音を立てて、ドクオを捉える前に砕け散った。 ( ゚д゚ )「……ほぅ。素人にしては中々の腕じゃないか」 ('A`)「前々から銃は撃たせてもらってたからな。趣味として。 それにこの眼があれば、迅速かつ正確に標的に標準を合わせられる」 ( ゚д゚ )「ほぅ。だがまぁ、そんな事などどうでも良い。 ……この状況下、私が聞きたいのは二つだけだ」 ('A`)「何だよ」 ミンナはそこで、視線を四人に送る。 ( ゚д゚ )「貴様等は“管理人”になる気はないか?」 対する四人は間髪入れずに答えた。 ('A`)「まぁ、まったくねぇな」 ( ^ω^)「糞喰らえだお」 (,,゚Д゚)「同じく。ぶっ潰してやるさ」 ( ゚∀゚)「めんどくせぇ事は大嫌いなんで」 四人の返答にもミンナは表情一つ変えない。 まるでそれが予想通りだったかのように。 ( ゚д゚ )「ふむ、残念。では、もう一つの質問だ」 (,,゚Д゚)「何だよ」 ( ゚д゚ )「貴様等はここで、私達の邪魔をする気か?」 間髪入れず、四人は一斉に口を開く。 「当たり前だ(お)」 やはりミンナは表情を変えない。 ( ゚д゚ )「そうか、残念だ」 ただそう呟いただけだった。 ( ^ω^)「邪魔する気がなければ来るわけないお?」 両足を解放させながら、ブーンが言う。 まもなく、その足は白銀の異形へと姿を変えた。 (,,゚Д゚)「これ以上、人は殺させねぇよ。てめぇらみたいな腐りきったゴミ共は焼却処分してやる」 右腕を解放させながら、ギコが苦々しく言い捨てる。 まもなく紅い異形に変化した右腕に灯油をかけ、右腕から炎を発生させた。 ( ゚∀゚)「……ま、頼まれちゃったしね」 右腕を解放させながら、仕方なさそうにジョルジュは言う。 オレンジ色に変化した手首からは鋭い音を経ててブレードが飛び出した。 ('A`)「おひとよし共に付き合ってやるとするか」 二挺の銃は構えたまま、左腕を解放する。 やがて闇色の異形に変化した左腕は、その腕に握る銀色の銃とよく合った。 対する三人は、あくまでも無表情に答える。 ( ´_ゝ`)「邪魔をすると言うのなら仕方ない。君達を半殺しにしてモララーに献上しよう」 草色の異形の両足で地面を踏みしめながら兄者は言う。 彼の周りには微かに風が巻き起こり始めていた。 (´<_` )「人間の大量殺戮。君達四人の拉致。その両方が一度に達成出来るとはね」 動きもせず、表情を変えもせず、弟者は言葉を紡ぐ。 そこに人間らしさを見出す事は出来なかった。 ( ゚д゚ )「まぁ、想定していた事の範囲内だ」 軽く両腕を持ち上げる。 それと共に、彼の周りにあった無数のガラス片がふわりと舞った。 四人と三人は対峙する。 彼らの周りの人々は、「また異能者が増えた」と更に混沌を深めた。 混沌を増した竜巻の中で、七人は敵意を向け合う。 (´<_` )「時に兄者。大量殺戮と拉致、どちら優先だ?」 ( ´_ゝ`)「……拉致、だろうな。殺戮はいつでも出来る」 (´<_` )「OK、把握した」 「さて」と三人は四人を見る。 ( ゚д゚ )「どう戦おうか。単純に四対三か?」 ( ´_ゝ`)「いや、それでは混沌となる。相手を決めて戦おうじゃないか」 (,,゚Д゚)「何でも良い。叩き潰す」 兄者の言葉に、ミンナはドクオを見る。 ( ゚д゚ )「じゃあ私はあの小僧と戦ろう」 ('A`)ノ「ドックンご指名入りましたー」 「じゃあ」と、兄者は残る三人を見て、顎に手を当てる。 ( ´_ゝ`)「私は二人の相手をしようか。 ブーン、ギコ。私は兄者。君達の相手を私がしよう」 ( ^ω^)「……分かったお」 (,,゚Д゚)「っは。燃やし尽くして灰にしてやるよ」 (´<_` )「となると、私の相手は……」 ( ゚∀゚)「自動的に俺っちだねー」 ( ´_ゝ`)「うむ、それぞれ相手は決まったな」 ( ^ω^)「決まったお」 (´<_` )「私達は全力で君達を拉致しよう」 (,,゚Д゚)「だったら俺らは全力でてめぇらを叩き潰す事にする」 (;゚∀゚)「いや、一般人を助ける事が最大の目的でしょ。ギコちゃん」 ( ゚д゚ )「では……」 ('A`)「始めようか。 じゃあ、全員。 Are you ready?」 「――――――Go!」 叫んで、天に向かってクロを発砲。 その音を合図に、全員が一斉に動き出した。 ブーンとギコは兄者へ。 ジョルジュは弟者へ。 ドクオはミンナへ。 それぞれの想いを、それぞれの“力”にしながら。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ “管理人”三人と四人が衝突した、ちょうどその時。 その場所から眼と鼻の先ほどの距離しか離れていない所に建っている、五階建ての小さな廃ビル。 そこの屋上には、小柄な少女―――つーがいた。 その頬には雫が流れており、その眼は眼下の混沌を捉えている。 (* ∀ )「――――――」 殺戮が起こってしまった事。 止められなかった事。 止めたくても、止められるだけの“力”がなかった事。 結果、多くの人間を見殺しにしてしまった事。 自分の無力を理由にして、四人に戦わせてしまった事。 彼女はそれらの事が、ただ悲しかった。 自分に勇気があれば。力があれば。 『さっさとあたしに身体を寄越せば良かったんじゃないの? そうすれば多くの人の命を救えたかもしれないんだよ?』 頭の中で声が響く。 “彼女”の声だ。 (* ∀ )「……うるさい。あんたなんて、止めるどころか殺しちゃうじゃない」 『あれぇ、バレてたぁ!? きゃははっ!』 (* ∀ )「……あんたのせいで、私は独りなんだ。あんたさえいなければ……!」 『どうでも良いけどさぁ』 脳で響く彼女の語勢が強まる。 『早くあたしに身体をちょうだいよ。この血の臭いで、殺したくてうずうずしてんだ』 ビクンッと、つーの身体がこわばる。 “彼女”が、つーの身体を無理矢理に奪おうとしていた。 自分の意識が侵食されていく。 白いキャンパスに黒の絵の具が垂らされたかのように。 自分の身体が自由に動かない。精神までも蝕まれる。 (;* ∀ )「…………!」 『殺させて。殺させてよ! ほら、あの太った男! 化粧臭い女! 醜い人間達!! 殺したい殺したい殺したい殺したい! 殺させろ殺させろ殺させろ殺させろぉおぉ!!』 (;* ∀ )「殺らせるもんか……負けるもんか……っ!!」 歯を食いしばって、つーは己の身体を侵食する“彼女”に抵抗する。 目の前が明滅する。それでも、眼を見開いて、意識を保とうとする。 (;* ∀ )「ジョルジュ君達は、私の代わりに戦ってくれてる……! その負担を、増やすわけにはいかないんだっ!」 『そんな奴の事なんか私には関係ないんだよぉおぉっ!! 良いから殺させろ! 私に血を! 私に肉を! 私に絶叫を! 私に身体を寄越せっ!!』 全身に痛みが走り、涙が溢れ出す。 身体を乗っ取られそうになって、つーは叫ぶ。 (;* ∀ )「これ以上、人が死ぬのは見たくないんだぁあぁっ!!」 「こうなると思ったよ。来て良かった」 後ろから、そんな声が聞こえた。 つーはそれを誰か確認するだけの余裕はない。 後ろからの声はつーに構わず言葉を続けた。 「おい、てめぇ。つーの中で暴れてるてめぇな」 気のせいか。 自分の中で暴れている“彼女”の精神の侵食が、弱くなった。 不思議に思いながらも、つーはまだ気を許さない。 後ろからの声は言葉を続ける。 「てめぇがつーの身体を奪って人を殺そうとするのは良いけどよ、あたしはそれを止めにかかるぜ? つーがお前のやりたい事を望んでいないのなら、あたしはそれを止めにかかるだけだからな」 声が、語勢を強める。 「あんたがつーの身体を乗っ取った時点で、あたしはお前の意識を全力で止めにかかる。 つーの望む事は人を殺させる事じゃないし、ましてやあの四人を殺させる事でもないからな」 かつ、かつ……と、声の主はつーに歩み寄る。 その足はつーから十センチも離れていない場所でやっと動きを止めた。 「お前がつーを乗っ取っても無駄なんだよ。失せな。殺人狂」 『……っち』 内側からの声が舌打ちする。 そして、“彼女”はつーの身体を乗っ取るのを止めた。 (;*゚∀゚)「っはぁ! はぁ、はぁ……!」 張り詰めていた緊張が解けて、つーは肩で息をする。 膝ががくりと折れそうになって、後ろからの声の主に支えられた。 「おっと、大丈夫か?」 (*゚∀゚)「大、丈夫……だよ」 言って、つーは首だけで後ろを見る。 そして、にこりと微笑んだ。 (*゚∀゚)「ありがとね、ハイン」 対するオレンジは、底抜けに明るく微笑んだ。 从 ゚∀从「おう!」 ふっと息を吐いて、つーは自分で立つ。 ハインが心配そうに見たが、「大丈夫だから」と笑って見せた。 (*゚∀゚)「ねぇ、ハイン。何で“彼女”を抑えられたの?」 从 ゚∀从「あいつはあたしを怖がってんだよ。何度もあたしに意識落とされてるしな」 (*゚∀゚)「へぇ。……じゃあ、もう一つ質問、良い?」 从 ゚∀从「ん?」 (*゚∀゚)「何であたしを助けてくれたの?」 从 ゚∀从「それ、何回目の質問だよw」 ははっ、と、ハインは軽く笑う。 从 ゚∀从「言ったろー? あたしはな、頑張ってる子にはめっぽう弱いんだ。 だからお前が本気で“あいつ”に出て来てほしくない時には、あたしがあいつを止める」 「それにな」とハインは続ける。 从 ゚∀从「今回ばかりは、“あいつ”にどうしても邪魔されたくなかったんだ」 (*゚∀゚)「え?」 从 ゚∀从「つっても、一般市民を助けたいってわけじゃないんだ。残念ながらな。 あたしが邪魔されたくないってのーのは、あれだよ」 言って、ハインは廃ビルの下を指差す。 その方向には戦いを繰り広げている七人の姿。 从 ゚∀从「あんな面白そうな戦いを邪魔されたくはないんだ」 (*゚∀゚)「面白そう……?」 从 ゚∀从「あぁ。“管理人”の三人に、あの四人の新人異能者だぜ?」 ハインの髪を、下からの風がなびく。 从 ゚∀从「両足に“力”を持ち、なおかつ風も操れる特異異能者の兄者。 あらゆる武道に精通し、異能者並の回復力と頑丈さを誇る出来損ない異能者の弟者。 そんであのやっかいなサイコキネシスの“力”を持つミンナ。 感情がまったくない実力派の三人のタッグだ」 「ま、ミンナは結構感情出ちゃう方かもしれないけどな」と笑う。 从 ゚∀从「そんで、その三人に対抗するのがあの四人だぜ?」 (*゚∀゚)「……何が言いたいの?」 从 ゚∀从「プギャーとかミンナとかお前を退けた少年達だぜ? 素人のくせに、よ? ミンナはもちろんの事、プギャーだってお前の中の“あいつ”だって、戦闘能力は相当なもんだろ?」 (*゚∀゚)「……あぁ、うん」 从 ゚∀从「面白いじゃねぇか。面白過ぎるよ」 (*゚∀゚)「でっ、でも……!」 从 ゚∀从「うん?」 (*゚∀゚)「いくら戦闘が出来るって言ったって、あの“流石兄弟”とミンナさんが相手だよ!?」 思わず声を荒げてしまったつーに対して、あくまでもハインは声の調子を変えずに答える。 从 ゚∀从「人ってーのはな、何かを護ろうとする時に最高の力を発揮出来るんだよ。 あの四人は、何百何千の人間を護ろうとしてるんだ。良い勝負になるに決まってるだろ」 言って、ハインは屋上の縁ギリギリまで歩んでいく。 つーもそうした。 从 ゚∀从「さて……期待通り、中々良い勝負っぽいぜ」 (*゚∀゚)「……ッ」 再度下から風が舞い上がってきて、眼をつむってしまう。 そんな中、ハインは眼も閉じずに笑って見せた。 从 ゚∀从「さーて……ジョルジュ。ギコ。あたしに面白い勝負を見せな」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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