2007/01/07(日)21:57
( ^ω^)が料理人になるようです(第三章上)
視点は再び( ^ω^)に戻ります。
50 名前:料理[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 23:33:07.23 ID:T5DMejVm0
第3章 人にやさしく
月曜日。
僕は出勤2時間前に布団を出た。
普段から目覚まし時計なんて使わずに目が覚めるまでひたすらダラダラ寝ているだけの生活だったから、
目覚まし時計を使わずにこんなに早起き出来た自分にちょっと驚いていた。
( ^ω^)『遠足前の子供みたいだお』
そんなありきたりの文句を頭の中で並べながら洗濯したてのシャツを身に着ける。
昨日のうちに買っておいたサンドウィッチとおにぎりで朝食を済ませ、
新品の歯ブラシと衝動買いした男性用洗顔フォームで身支度を整える。
慣れない洗顔フォームなんか使ったせいで狭い洗面所は水浸しになったけど、
そんな事は気にならない位僕は上機嫌だった。
( ^ω^)『これが天才料理人内藤ホライゾンのデビューだったw』
頭の中でナレーションが流れる。
出勤時間より1時間も早く家を飛び出し、僕はチェーンを新しくした自転車にまたがった。
灰色でもなければ真っ青でもない、青空に薄い白を被せた様な空の色。
僕は鼻歌を歌いながら愛チャリを漕いだ。
( ^ω^)『聞~こえるかい、ガンバレ~♪』
51 名前:料理[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 23:35:27.04 ID:T5DMejVm0
VIP駅から徒歩1分。飲食店ビルの1階にバーボンハウスはある。
従業員用駐輪場に自転車を止め、僕は裏口からスタッフルームに入った。
たったそれだけの行動なのに、
( ^ω^)(僕も立派な社会人だおwww)
そんな風に思えて自然に笑みがこぼれた。
スタッフルームではショボンさんがスチールテーブルに尻を半分預ける形で寄りかかり新聞を広げていた。
(´・ω・`)『やぁ、おはよう。今日からよろしく頼むよ』
( ^ω^)『おはようございますだお。こちらこそお願いしますお』
挨拶を交わしながら新聞を折りたたむショボンさん。
(´・ω・`)『これが制服ね。さっそくだけど着替えちゃってよ。荷物はそこのロッカーに入れてくれればいいから』
クリーニング屋のビニールに包まれたそれを広げる。純白のコックコートがそこにあった。
(´・ω・`)『多分サイズは大丈夫だと思うんだけど』
(´・ω・`)『汚れたユニフォームはそこのダンボールに放り込んでおいて。毎日交換してもらって構わない』
(´・ω・`)『靴のサイズいくつ?商店街のABCDマートでコックシューズ買ってレシート持ってきてね』
そんな感じで着替え中の僕にショボンさんが色々話しかけてきていたみたいだけど、
ピザの耳に真珠ってやつで僕の耳には全く入らなかった。
(´;ω;`)ブワッ
52 名前:料理[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 23:40:56.15 ID:T5DMejVm0
染み1つないコックコート。
黒いスラックスと真っ白な前掛け(エプロン)。
すっぽりと頭全体を覆う黒いバンダナ。
これらを身に着けた僕が鏡の中にいた。
( *^ω^)『・・・ヤバイお。似合いすぎてるお』
ちょっとピザ気味な僕はどんなおしゃれ服を着ても『控えめに言っても微妙だよねwww』的反応しか帰ってこなかった。
ところが鏡に映る僕はピザ気味なバディが逆にマッチしていて、ありもしない威厳まで漂わせている様に見える。
( *^ω^)『やっぱり僕は料理人になる運命の下に生まれたのかもしれんね』
そう考えると今まで上手く就職が決まらなかったのも合点がいく。
神様が決めた運命に逆らってるんだもん。そりゃダメに決まってるさ。
(´・ω・`)『うん。よく似合ってるよ』
そう言ったショボンさんの目は少し赤い。
寝不足ですかお?
(´・ω・`)『・・・スタッフが来るまでそこに座っててよ。・・・それで汚れたユニフォームは・・・・・・』
そう説明を始めるショボンさんはどことなく切なげだ。
上を向いて歩きましょうショボンさん。まだ1日は始まったばかりじゃないですか。
そんな事を考えていると。
???『・・・うぃ-す』
???『おはようで~す!!』
扉が開き、1組の男女が入ってきた。
54 名前:料理[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 23:43:44.45 ID:T5DMejVm0
最初に入ってきたのはガリガリに痩せた見るからに陰気そうな男だった。
僕以上にファッションセンスを感じ取れない黒尽くめの服。
ボサボサに寝癖のついた頭髪。猫背。
スタッフルームに入るなり、
僕には目もくれず大きなあくびを1つしてくしゃくしゃの煙草に火をつけた。
( ;^ω^)『なんだお、こいつ』
それが僕の第一印象だ。
そしてもう一人。
明るい色の髪を後頭部で纏め上げた女性だ。
薄手の上着の下は胸を強調するタンクトップと嫌味にならない程度に短いスカート。
くわえ煙草で『これが俺の朝飯だ』とかなんとかブツブツ言っている男に笑顔で説教しながら
チラチラと僕の方を気にかけている。
( ^ω^)b『・・・合格!!!!!』
一目見てそう思った。
(´・ω・`)『あ~、2人ともちょっといいかな? 今日から一緒に働いてもらう事になった内藤君だ。自己紹介してあげて』
( ^ω^)『内藤ホライゾンですお。よろしくですお』
('A`)『・・・ドクオだ。頑張ろうな』
天井に向けて紫煙を吐き出してから男はそれだけ返してきた。
うん、間違いなくこいつは童貞だ。
同じ道程を行く童貞同士仲良くしたいものだがこの男に人並みのコミュニケーションは取れるのだろうか?
56 名前:料理[] 投稿日:2006/12/28(木) 23:45:33.00 ID:T5DMejVm0
だが、もう一人の女性の挨拶は更に僕の意表をついた。
(*゚∀゚)『あたしツー!!よろしくね!!あ、内藤君の事はショボさんから聞いてるよ!!一緒に頑張ろうね!!
内藤君って何歳? へぇ、じゃああたしの方がお姉さんだ!!
内藤君って呼びづらいなぁ・・・あだ名無いの!? ブーン? じゃ、ブーン君って呼ぶね!! みんなにも言っておいてあげるから
ブーン君は調理経験あるの? ・・・大丈夫だよ!! お姉さんが手取り足取り教えてあげる・・・ってえっちな意味じゃないからね!!
ブーン君彼女いる? 嘘ぉ!! 絶対いるように見えるけどなぁ!! あたし? いないよぉ!!夏までにはほしいと思ってるんだけどさ!!
好きな人? それはいるよぉ!! 年頃の女の子だもん!! でもなかなか恋の道は険しくてねっ!!
ブーン君色々教えてよ!! え? だってブーン君モテそうじゃん!!』
( ;^ω^)『お?wwwおwおぉ?www』
予想外のマシンガントークに僕が固まっていると
('A`)『つー。早く着替えちまえ。おしゃべりは後だ』
爬虫類フェイスから助け舟。いい仕事するじゃん。流石童貞。
拗ねた子供のように『はぁ~い』と間延びした声で答えたツーさんはビニールバッグを抱えて隅のカーテンの奥に消えた。
(´・ω・`)『・・・ゴメンね』
( ;^ω^)『・・・いえ』
正直ウゼェ。女じゃなかったら渾身の力で殴ってるところだ。
・・・そしてもう1つのサプライズはすぐに起こった。
(*゚∀゚)『じゃ~~~ん!! ブーン君どうだぁ!!』
彼女が身に着けているのはチャイナドレスではなく、僕と同じ純白のコックコートだったのだ。
・・・うん、それもアリかな。・・・・・・・・・合格。