第十一話第十一話 「二人のハードラー」 ( ・∀・) 広がる緑の上で空を見上げるモララー。 ( ・∀・)「やっぱり、眺めるならあおいそらに限る」 水滴をその身に湛えた雑草。 くの字を作り飛んでいく鳥達。 早朝特有の澄んだ空気を深く吸い込み、そして吐き出す。 ( ・∀・)「たまらないな」 一人呟き、ゆっくりと走り出した。 ( ・∀・)(35、36、37、38、39) 嵐のような豪雨が止み、今日は大会二日目。 競技を明日に控えたモララーは、軽い練習をしにサブ競技場へと来ていた。 ( ・∀・)(367、368、369、370、371) まだ早い時間ということもあって、モララー以外には誰もいない。 広々としたトラックに一つの足音だけがリズム良く響く。 ( ・∀・)(682、683、684、685、686) 一歩踏み出すごとに顔が上下に振れる。 頭の中で歩数を数えている証拠だろう。 ( ・∀・)(996、997、998、999、1000) 千歩丁度で立ち止まる。 一度深呼吸をした後、ストレッチ用に敷いたシートの元へ歩き出した。 ( ・∀・)「あ」 歩く足を立ち止まらせる、黒い点線。 ( ・∀・) その点線は、途切れることなく続いている。 ( ・∀・) モララーは自分より遥かに小さなそれらを食い入るように見つめていた。 ( ・∀・) ( ・∀・)「あ」 立ち止まり、アリの行列を眺めること十分。 ようやく当初の目的を思い出し、シートの方へと再び歩き始めた。 ( ・∀・)「すぅぅ」 両足を180度開脚し、大きく息を吸う。 ( ・∀・)「はぁー」 肺に溜めた空気を思い切り吐き出しながら、上半身を前へと倒していく。 辛そうな素振りを少しも見せることなく、そのままシートへと顔をつけた。 ( -∀-)「きもちいい」 Tの字を描く身体。 常人では到底真似の出来ないこの体勢が、そんなに気持ちよかったのだろうか。 モララーはその体勢のまま目を瞑ると、スースーと静かな寝息をたてはじめた。 ( ・∀・)「あれ」 目を開く。 90度傾いた世界にはさっきまでいなかったはずの大勢の人影。 ( ・∀・)「ああ」 自分が眠ってしまっていたことに気づく。 ( ・∀・)「よっこらせ」 Tの字のまま固まっていた体を起こすと 冷えてしまった体を温めに、もう一度トラックを走り出した。 ( ・∀・)(45、46、47、48、49) ( ・∀・) ようやくアップを終えたモララー。 ジャージを脱ぎ、その下から現れたロングタイツは彼の細く長い足を一層際立たせる。 機動性に優れた格好にスパイクを履き、彼は今、直線状に並んだハードル達を見つめていた。 ( ・∀・) 前方へ向けていた視線を下へと下ろす。 目に入ったスタートラインに手を置き、両足同時に地面を蹴りそのままブロックへと設置。 体勢が整ってからもう一度、前を見る。 ( ・∀・) 視線の位置的にハードルが重なり、見えるのは一つの障害物だけ。 ( ・∀・)「……ふっ!」 心の中で炸裂音を鳴らす。 自分だけにしか聞こえない合図と共に、聳える障害物目掛け走り出した。 吹き抜ける一陣の風。 一般男性の腰の高さまではあろうその障害物を、軽々飛び越え駆け抜けていく。 見る人によれば飛び越えていると言うより、跨いでいるようにしか見えないかもしれない。 それほどまでに、モララーのハードリングは無駄がなく、鮮やかで、そして美しかった。 ( ・∀・)「ふぅ」 計五台のハードルを飛び終え、一息つく。 ( ・∀・)「何度見ても飽きないな」 今朝見たときより少し高く昇った太陽。 空はその青さを一段と増していた。 練習、試合に拘らず、ハードルを飛び終えた後、モララーは必ず空を見上げる。 その行為に特別意味があるわけではない。 ただ、立ち塞がる障害物を全て乗り越えた後、無性に上を、空を見上げたくなるのだ。 ( ・∀・)「いい青空だ」 燦燦と輝く太陽。 ゆっくりと流れる白い雲。 眼前に広がる壮大な景色をしばらく眺めた後、振り返り、元いた場所へと歩き出した。 ( ・∀・)「ん」 と、遠くに二つの人影。 先程モララーが走り出した場所に立ち、何やら話している様子。 ( ・∀・)「……」 何となく戻るのが面倒になり、途中で立ち止まる。 ( ・∀・)「……!」 それは丁度三台目のハードルの横の位置にあたる芝生。 何かに気づいたかのように、モララーはそこへ腰を下ろした。 ( ・∀・) 膝を抱え、一点を見つめる。 他には何も見えていないかのように、何も聞こえていないかのように。 ( ^ω^)「さぁ!レッツゴーだお!」 ('A`)「いや……さすがにいきなりは無理だろ」 立ち並ぶ障害物を指差し、掛け声をかける少年。 あくまでも現実的な意見を述べる、頼りない少年。 その足元にはスタートライン。 モララーと同じく競技を明日に控えたドクオも、練習のためサブ競技場に来ていた。 ('A`)「まずは一、二台試しに飛んでからだ」 ( ^ω^)「そうかお。じゃあ僕がスタートの合図するからそれに合わせて行くといいお」 ('A`)「おう、任せた」 立った状態で右足を前に出し、構える。 ( ^ω^)「じゃあいくお」 声は出さず、首を縦に振り答える。 ( ^ω^)「よーい」 足に力をこめ ( ^ω^)「どん!」 駆け出した。 足を合わせるため緩やかに加速。 まず、一台目。 ('A`)「ほっ」 タータンの反発力のせいか、少し高く跳びすぎ着地がぐらつく。 (;'A`)(やべっ) すぐさま体勢を立て直し、二台目。 今度は蹴る力を抑え、上体を深く前へと倒す。 (;'A`)「……!」 ぶつかるスレスレを飛んだ、と思った瞬間、抜き足がハードルへと衝突。 軽い金属音と共にハードルが傾き、ゆっくりと元の位置へ戻る。 (;'A`)「っ……」 着地と同時に右膝に鈍い痛み。 すぐには止まらず、徐々にスピードを落としていく。 三台目を腕で無理矢理倒し、そのまま走り抜けた。 (;'A`)「……いってぇー」 (;'A`)(失敗した……これは明日まで残るぞ……) 赤くなった膝をさすり、苦痛の表情を浮かべるドクオ。 (;'A`)「全く、幸先悪すぎだろ」 膝から手を離し、後ろを振り向く。 痛む右足を軽く引きずりながらスタート地点へと歩いていく。 (;'A`)(あー、これは負けフラグかもわからんね) (;'A`)(いや、今こんなこと考えてる時点で勝ちフラグが立ったか?) (;'A`)(あ、でもまたそれが負けフラグに……いやでもそれがまた勝ちフラグに? いやいや、でもやっぱ――) 「あ!」 (;'A`)「へ!?」 突然耳に届いた声。 踏み出そうとした左足の動きが止まる。 ( ・∀・) (;'A`)「……」 声の主を発見し、立ち止まる。 (;'A`)「な、何?」 ( ・∀・) 返事はなく、ただ一点を見据えたまま動かない。 (;'A`)(もしかして、俺関係なかったのかな) 再び歩き出そうとする が ( ・∀・)「あ!」 (;'A`)「うぇ!?」 またも踏み出す足を引きとめられる。 (;'A`)「だから、何なのよ?」 ( ・∀・) やはり、返事はない。 ( ・∀・) ただ一点を見つめ動かないモララー。 ふと、その視線の先を追ってみる。 (;'A`)「あ」 地面を横切る黒い点線。 虫の死骸や、何だかよく分からない白い物体を運ぶ蟻の行列。 そこは丁度、ドクオが左足を踏み出そうとした場所だった。 (;'A`)「なるほど……」 ようやく状況を理解する。 前に出かかった足を戻し方向を変える。 わざわざ大きく迂回して、やっとそこを通り過ぎることが出来た。 (;'A`)(やっぱあいつ変だわ) ( ・∀・) ドクオが通り過ぎた後もモララーは動かず黙ったまま、蟻達の観察を続けていた。 ( ^ω^)「あれ誰だお?」 ('A`)「誰って、知らないのか?」 膝を抱え何かをひたすら見つめている少年を見ながら、ブーンが尋ねる。 ( ^ω^)「何となく見たことはあるような」 ため息をつきながらドクオが答える。 ('A`)「前大会110mH優勝者モララー。ちなみにお前のライバルと同じ学校だ」 (;^ω^)「え!そんなすごい人だったのかお!?」 驚いたブーンはもう一度目を凝らし、膝を抱えた少年を見る。 (;^ω^)「……そうは見えないけど」 ('A`)「まぁ、その気持ちはわからなくもない」 体育座りでじっと地面を睨んでいるその姿からは、王者の風格などこれっぽっちも感じられなかった。 「よぉ」 (;^ω^)「おっ?」 背後からもう聞き慣れた声。 振り向くと、そこには _ ( ゚∀゚)「昨日ぶりだなぁ?ブーン」 赤いハーフタイツとランニングシャツを身に纏い、スパイクを右手に携え現れたジョルジュ。 ( ^ω^)「ジョルジュかお」 その軽い口調は変わらないようだったが、ただ一つだけ、微かな変化にブーンは気づいた。 ( ^ω^)「僕のこと、豚って呼ばないのかお?」 _ ( ゚∀゚)「あぁ?なんだ、名前で呼ばれるよりそっちのがお気に入りか? だったら望みどおり呼んでやるよ、豚」 (;^ω^)「いや、そういうことを言いたかったわけじゃ……」 _ ( ゚∀゚)「まぁ、そんなことはどうでもいい」 と、ジョルジュは空いた手の方でブーンを指差し _ ( ゚∀゚)「今から俺と100mで勝負しろ」 (;^ω^)「え」 _ ( ゚∀゚)「いくら試合の次の日とは言え、スパイクぐらい持ってきてんだろ?」 (;^ω^)「いやまぁそりゃあ持ってるけど……」 _ ( ゚∀゚)「なら早く準備しろ」 (;^ω^)「でも、やるなんて一言も……」 その言葉を聞き、ジョルジュの顔が微かに歪む。 _ ( ゚∀゚)「なんだぁ?逃げるってのか?」 (;^ω^)「逃げるも何も昨日走ったばっかりだし、今やらなくても県大会でまた勝負できるじゃないかお」 _ (#゚∀゚)「俺が今やるっつったら今なんだよ!県大会まで俺が負けっぱなしなんて我慢出来るか!!」 (;^ω^)「なんて自分勝手な考え」 _ (#゚∀゚)「ごちゃごちゃうるせーんだよ!とっとと準備しやがれ!!」 ( ・∀・) 暖かな風に吹かれ、雑草が微かに揺らめく。 草のない場所を縫うように動き回る蟻達。 それをじっと見つめるモララー。 ( ・∀・) 輝く太陽は益々高く昇り、あらゆる生き物達を照らし出す。 真っ白な雲はその身を春風に任せ、穏やかに流れていく。 そこにいるだけで、心が洗われていくような春景が広がる。 モララーはそんな景色に目もくれず、ひたすらに黒い点線を眺めていた。 ( -∀-)「ふぁぁあ」 時折、大きく口を開きあくびをする。 そして、また蟻達の観察へと戻る。 このサイクルを何度繰り返しただろうか。 まるで、モララーの周りの時間だけがループしているかのようにさえ思える。 ( ・∀・) しかし、その固定された空間は突然に破られた。 近づいてくる足音。 小さな音ではあったが、草を踏みしめこちらに向かってくる音が確かに聞こえる。 それはあっという間にモララーの目の前を通り過ぎ、微かな風の揺らめきをその場に残した。 ( ・∀・)「……?」 モララーは不思議そうに、顔を右へと向ける。 ( ・∀・)「……」 その視線の先。 全身を真っ赤に染め上げた男が走り去っていく姿を捉える。 ( ・∀・)「……」 数秒見つめた後、回した首を元に戻す。 ( ・∀・)「そろそろ再開するか」 そう言うと立ち上がり、空を見上げる。 ( ・∀・)「いい青空だ」 黒い観察物に背を向け、モララーはゆっくりと歩き出した。 ――――――――夢―――――――― _ (#゚∀゚)「おいてめぇ!早くここがどこか説明しやがれ!」 (;'A`)「ちょ、ちょっと待てって!」 「どうした?」 受話器を持つドクオとそれに怒声を浴びせるジョルジュ。 その音量のせいで上手くクーの声を聞き取れず、ドクオはやきもきしていた。 (;'A`)「後で説明するから、今はちょっと下がっててくれよ!」 無理矢理に、肩を掴んでいたジョルジュの手を引き剥がす。 「何か邪魔でもされたか?」 (;'A`)「ちょっと妨害にあってな」 「そうか。やはりそいつは一度懲らしめねばならないようだな」 ('A`)「懲らしめる?」 「今回、私がこの男の体を乗っ取った一番の理由がそれだ」 懲らしめる、という言葉を聞きドクオは首を傾げた。 ('A`)「それはどういう意味で?」 「どういう意味?」 ('A`)「いやだからさ、懲らしめるにもいろいろ方法があるじゃないですか」 「ああ、そういうことか。懲らしめると言ったら、あれしかないだろう」 ('A`)「あれ?」 少しの間を置き、返答。 「拷問だ」 (;'A`)「え?」 返ってきた言葉に思わず耳を疑う。 「勘違いするな。拷問と言ってもそんなひどいことをするわけではない」 (;'A`)「いや、拷問の時点で既に酷いような気が……」 「詳しくは台所に行けば分かる。じゃあよろしくたのんだぞ」 (;'A`)「えぇ!?つーか俺がやんの!?」 受話器からの反応は途切れ、空気の流れる音だけが耳に響く。 (;'A`)「……まぁそれもそうか。あいつはここに来れないわけだし」 (;'A`)「でもやだなぁ俺別にSっ気あるわけじゃないし、最近はどちらかと言えばMっ気の方が……」 ブツブツ言いながらも台所へ向かって歩き出す。 そう何歩も歩かないうちに台所へと着き、ドクオが目にしたものは (;'A`)「うっわー」 座ればすぐにでも電気が流れてきそうなイスや、上部に顔のついた巨大な鉄製の棺桶。 一目見ただけで、それらが拷問器具だとわかった。 (;'A`)「十分酷すぎるだろこれ……」 その他にも、人一人入れそうなくらいの大きな金魚鉢 (;'A`)「おいおい」 一度叩かれただけで人生やり直せそうなトゲトゲ付きのバット (;'A`)「ちょっとちょっと」 木刀を握り締め、不気味な笑みを浮かべる男。 ('A`)「……え?」 _ ( ゚∀゚)「よーぉ」 拷問器具の中に混じり立っていたジョルジュ。 (;'A`)「あ」 数分前の記憶を辿る。 ここに来る途中で気がついておくべきだったのかもしれない。 この男が、居間から姿を消していたことに。 _ ( ゚∀゚)「なかなか口を割らない困ったちゃんにはお仕置きが必要だよなぁ?」 右手に持った木刀を左手に打ちつけ、小気味よい音が響く。 (;'A`)「ちょ、ちょっとまて!言うから!ちゃんと説明するから!」 その言葉を無視するかのように、ジョルジュは打ち付けていた木刀を肩に担ぐ。 _ (#゚∀゚)「さぁて!尋問タイムの始まりだぜ!!」 ――――――――現実―――――――― _ (;゚ -゚)「はぁはぁ」 緑の上を颯爽と駆け抜ける赤い影。 そのスピードは徐々に落ちていき、やがて完全に止まった。 _ (;゚ -゚)(しかし、すごいなこの体は) 自分の体から比べればやはり重量感はあるが、それを補って余りある脚力。 一蹴りで信じられない距離を跳ぶこの体にクーは驚き、そして歓喜していた。 _ (;゚ -゚)(あんな世界があったとは) 高速で流れていく景色。 今まで聴いたことのない風の音。 走っているクーを取り巻く全てのものが、素晴らしい心地よさを体中に与えてくれた。 _ ( ゚ -゚)(ただ、どうにも足が痛くてしょうが――) ふと、足を見やる。 大きな両の足は、生まれたままの姿でそこに佇んでいた。 _ ( ゚ -゚)(……道理で) 右手を見ると真っ赤なスパイク。 クーは火照った体を芝生へ預けると、その身と同じように素足を真っ赤に染め上げていった。 _ (;゚ -゚)「おおっ!」 スパイクを履き、走り出す。 素足で草の上を駆けていた時とは段違いの反発力に、体が勝手に前へと進んでいく感覚。 これ以上走り続ければ止まれなくなる、そう感じたクーは加速する体を必死に制御する。 _ (;゚ -゚)「――っく!」 緩やかになっていく脚の回転。 クーは真っ直ぐ敷かれた線からはみ出し、トラックの内側へと走り抜けた。 _ (;゚ -゚)「はぁはぁ……」 膝に手をつきながら辺りを見渡す。 ( ・∀・) 長い足を目一杯前へと伸ばし、ハードルを飛び越えるモララーの姿がそこにあった。 モララーはあっという間に五台全て飛び終え、苦しい顔一つせずに空を見上げた。 _ ( ゚ -゚)「……ふぅ」 額を流れる汗を拭う。 大きく息を吐くと、スタート地点へと向かい歩き出した。 ( ゚ -゚) スタートラインに立つ。 遠くから見るとそう高く感じなかったハードルが、今はとてつもなく巨大に見える。 _ ( ゚ -゚)(きっと大丈夫。あれだけの速さで走れたのだ、こんなものなんてことはない) 前に出した右足。深く下げた左腕。 見様見真似ではあるが、それなりにしっかりとした体勢でスタートに備える。 _ ( ゚ -゚)(よし!) 心の中の掛け声と共に右足で強く地面を蹴る。 歩数や踏切りの足など考えることなく、がむしゃらに加速する。 _ (;゚ -゚)「おおぅ!」 案の定、ハードルの直前で飛び上がり、足を引っ掛け転倒。 _ (;゚ -゚)「ぐえっ!」 顔を擦り、腹を打ち、足を捻ってしまったクーは、そのままうつ伏せになり動かなくなってしまった。 ( ・∀・)「どうした?」 いつの間にか、モララーがクーのそばまで来ていた。 _ ( - ) 質問には答えず、ただ小さな嗚咽と小刻みな震えを繰り返す。 ( ・∀・)「……」 返事がないことに特にイラつく様子もなく、また心配する様子もない。 モララーはうつ伏せに倒れているクーをしばらく見つめた後、顔の下に敷かれていた両腕を無理矢理引っ張り上げた。 そのまま、クーの体を引きずっていく。 ( ・∀・)「とりあえず、邪魔だから」 そう言うと、掴んでいた両腕を離し立ち去っていった。 _ ( - )「うっ……ぐっ」 鼻をつく草の匂いと、時折腕に登ってくる蟻達に不快感を感じながらも クーはそこから動くことはせず、小さな嗚咽と小刻みな震えを繰り返し続けていた。 ――――――――夢―――――――― (#)'A`)「――ってわけです」 凶器を持ったジョルジュに、ドクオは為す術もなくボコボコにされた。 _ ( ゚∀゚)「なんだそりゃあ?ちっとはマシな嘘付けよ」 何とか怒りを鎮めることに成功し諸々の事情を話すも、ジョルジュはそれを信じてくれなかった。 何の証拠も見せていないのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが。 ('A`)「信じないんなら最初から聞くなっつーの……」 _ ( ゚∀゚)「あぁ?何か言ったか?」 (;'A`)「いや!何も!」 _ ( ゚∀゚)「……ならいいが。とにかく、早くここから俺を出せ。 そうすりゃ、これ以上叩いたり殴ったり蹴ったり嬲ったりしねーからよ」 ('A`)「だから、さっきからここから出すって散々言ってただろうが……」 _ ( ゚∀゚)「あぁ?何か言ったか?」 (;'A`)「いえいえー!何も言ってないですよー?」 _ ( ゚∀゚)「ならさっさとここから出る方法を教えろ!」 (;'A`)「はいはーい、ちょっと待っててくださいねー」 ('A`)「これを一錠飲めば、たちまちあなたは元の世界に」 台所から持ってきた薬瓶と水の入ったペットボトルをジョルジュの目の前に置き、そう告げる。 _ ( ゚∀゚)「……」 目の前に置かれた瓶を睨みつけ、訝しがるジョルジュ。 _ ( ゚∀゚)「まさか、毒とか入ってんじゃねーだろうな?」 疑念の眼差しを向けられるドクオ。 ('A`)「そんなわけないじゃないですか」 あくまで平静を保つ。 と、自ら薬瓶を手に取り、中から一錠取り出した。 そして ('A`)「ほら、なんともないでしょ。僕はここの住人みたいなもんですから効き目自体はないですけどね」 薬を口へと運び水で流し込んでから、ケロッとした顔でそう言ってのけた。 _ ( ゚∀゚)「……ふん、まぁ疑いだしたらキリがないか」 それを見たジョルジュも同じように薬瓶を手に取り、中から取り出した薬を口の中へと運び水で流し込んだ。 (;゚∀゚)「うおっ!」 途端に苦しそうな声をあげ、腹を押さえながら立ち上がる。 _ (;゚∀゚)「て、てめぇ!騙しやがったな!!」 握り締めた右手を開きながら、ドクオは笑みを浮かべた。 開かれた手の平の上には、口内へ消えたはずの小さな粒。 ('A`)「こんな単純なトリックに騙される方が悪いんじゃないか?」 先程の猫なで声からは想像もつかない下卑た声。 形勢は、逆転した。 _ (;゚∀゚)「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!」 ('∀`)「こちらがトイレでございます」 立ち上がり、ジョルジュを導くようにトイレへ向かって歩き出す。 _ (;゚∀゚)「覚えてやがれえええぇぇ!出すもん出したら必ずぶっ殺してやるからなあああぁ!!」 歩き出したドクオを途中で追い抜き、ジョルジュは勢いよく扉の中へと駆け込んだ。 ('A`)「残念でした。そりゃ不可能だ」 水流音。 川 ゚ -゚) しばらくすると扉が開き、クーが現れた。 ('A`)「はぁー、やっと解放された」 川 ゚ -゚)「……」 ('A`)「全く、お前があんなもん用意するからこっちはとんでもない目に遭ってたんだぞ?」 川 ゚ -゚)「ドクオ」 ('A`)「あぁ?」 川 ゚ -゚)「明日はあのハードルを飛ぶのか?」 ('A`)「へ?」 唐突な質問に一瞬戸惑う。 ('A`)「飛ぶけど。それがどうかしたか?」 川 ゚ -゚)「……気をつけろよ」 一言呟くと、クーは横になりそっぽを向いてしまった。 (;'A`)「??」 (;^ω^)「ドクオ!」 ('A`)「……ん?」 目を開くと、そこには心配そうな顔でこちらを見つめるブーンとツンの姿があった。 ξ;゚△゚)ξ「あんた本当に大丈夫?昨日今日と、いきなり倒れたりなんかして」 体を起こすと、ここが観客席だということが分かった。 下に敷かれたシート越しにコンクリートの冷たさが染み入る。 (;^ω^)「いきなり倒れるもんだからびっくりしちゃったお。 まぁそのおかげでジョルジュから逃げることが出来たわけなんだけど」 ('A`)「そうか……ブーンが運んできてくれたのか」 ξ゚△゚)ξ「そんな体で明日走れるの?大怪我してからじゃ遅いのよ?」 ('A`)「心配いらねーよ。別にどこも痛く――」 右膝に走る鈍痛。 ('A`)(……忘れてた) 空を見上げる。 昨日あれほど待ち望んでいた日差しが、目に射しこむ。 だがそれも、今はただ鬱陶しく煩わしいものにしか感じられず、ドクオはすぐに顔を背けてしまった。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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