四十一章一四十一章 誰が為に彼は哭く (;゚ー゚)「あの人……!?」 部屋の奥、闇から溶け出るように歩み出てきた彼を見て、しぃは絶句する。 居てはいけない筈の人物が今、確かに彼女達の目の前に存在していた。 ( ゚Д゚)「ショボ……ン?」 (´・ω・`)「あぁ。その通り、見ての通り。僕だよ」 死者である筈のショボンは、そう告げて手を広げた。 ギコは身動きを取る事も出来ぬまま、唖然とした表情で彼を見詰める。 瞳の光は弱々しく揺れ、眉根が寄せられる。言葉を吐く唇は乾き、震えていた。 ( ゚Д゚)「何で……。だって、あんたは……」 独白のようにそう呟くと、ギコは息を呑んで後退る。 右腕を握り締め、左手に握る長剣『ロマネスク』の紅い刃先を向けた。 (;゚Д゚)「……違う。違う! あんた、偽物だろう! あんたが……ショボンが生きている筈がねぇんだ!!」 (´・ω・`)「何でそう思うのかな?」 ギコの怒鳴り声に、ショボンは平然と返す。 笑みを含んだその返事に、ギコは困惑を露わにし、首を横に振った。 (;゚Д゚)「ショボンは……俺の目の前で死んだ筈だ! ドクオを助けて、兄者の攻撃をまともに食らって!! 生きている筈がないんだよ! あの出血、冷たさ、それに―――!!」 (´・ω・`)「ん、オーケーオーケー。分かったよ、落ち着いて。 じゃあ、質問を変えようか」 ショボンは額に指を当てて、ギコを見詰める。 以前と相変わらず、何を考えているのか分からない瞳だ。 何の感情が浮かんでいるのか分からない―――いや、違う。 何の感情もない眼。彼の眼窩に収まっているのは、きっと空っぽの器だ。 そこにあるのは計略だけで、そしてその瞳に不穏な光が生じた。 (´・ω・`)「ならば何故、僕はここに居ると思う?」 (,,゚Д゚)「へ―――」 (´・ω・`)「あそこで死んだ筈の僕が、ショボンが、何でここに居ると思う? 亡霊? ロボット? それとも君が言う通り、偽物なんだろうか? 分かってる筈だよね、違うって。僕はこの通り生きてるし、偽物なんかじゃない」 何かを信じたくなさそうに、下唇を噛んで首を振るギコ。 それを見て、ショボンは口端を僅かに吊り上げる。 (´・ω・`)「答えをあげよう。僕はショボンだ。あそこで確かに死んで、でも生きている。 勿論、伝説の中のノスフェラトゥやゾンビって訳じゃあない。僕は死んだら蘇らない。 さぁ、またここで一つ問題が出てきてしまったね。これは、どういう事かな?」 (;゚Д゚)「え……あ……」 一歩、また一歩と後退していく。 声が出ない。思考もまとまらない。何が何だか分からない。 何を言っているのか分からない。何が言いたいのかも分からない。 その時、彼の襟首が掴まれ、後ろに引かれた。 体勢が崩れて、一瞬 息が詰まり、慌てて立て直す。 襟首を引っ張った犯人の手を見やると、それは魔獣の如き鋭い爪だった。 ミ,,゚Д゚彡「翻弄されるなら、『敵』の話を聞くんじゃない。退いてろ」 『敵』という単語を強調して呟くと、彼はギコの前に歩み出る。 ショボンに向けて大きく数歩を踏み、五歩の距離で止まった。 (´・ω・`)「やぁ」 ミ,,゚Д゚彡「こちらの質問は一つだけ、ガキでも答えられるくらいに簡単だ。 俺達はここを通らねばならない。貴様は、俺達の邪魔をするか?」 (´・ω・`)「挨拶くらい返したらどうだい、お兄さん」 ミ,,゚Д゚彡「黙れ」 僅かに伸びた犬歯を剥き出しにして、唸りを上げた。 ミ,,゚Д゚彡「無駄口を叩くな、質問に答えろ。イエスかノーだ。 死にたくなければノーを選ぶんだな。 イエスと答えれば、お前はここで死ぬ事になる」 (´・ω・`)「そう。イエスだ」 言葉と同時。床が爆ぜる轟音と共に、フサの身が床を滑った。 五歩の距離は一瞬で消失し、次の一瞬にはフサの右腕の爪が引き絞られている。 ミ,,゚Д゚彡「ならば死ぬことだな」 そして、圧倒的な速度で振り上げられた。 誰もが終わったと思った。 ギコもしぃも、腕を振るった本人であるフサでさえも。 速度、威力、立ち位置―――終わらない筈がない、筈だった。 そして現実、終わっていない。 (´・ω・`)「それには、ノーと答えさせてもらうよ」 彼は上半身を大きく反らした姿勢で、フサの爪を避けていた。 爪が起こした烈風で黒髪を激しくはためかせながら、細めた瞳でフサを見詰める。 (´・ω・`)「ま、ちょっと落ち着いてよ。 『今の』僕には、君達を害そうなんて気は全くないんだから」 声の調子を微ほども変えずにそう告げて、数歩を後退した。 フサは数秒の硬直の後、動こうとしたが、ショボンの「落ち着けって」という声で脚を止めた。 (´・ω・`)「良い歳なんだから、それなりの風格を見せてよ。誇りまで犬並みかい? 言ったろ? 今は戦り合う気はないって。人の話は聞きましょうって、小学生でも知ってる。 話をしたいだけなんだよ。それくらい、良いだろ?」 ミ,,゚Д゚彡「話、だ? くだらん。死に行く者の戯言を聞いてどうしろと? 何なら、砕けた顎で喋れるのか、試してみたいか?」 (´・ω・`)「そう血を滾らせるなって、面倒臭い。短気は損をするし、馬鹿は嫌われるよ? すぐにでも嫌ってほどの殺し合いをすることになるんだから、少しの話くらい許してよ。 何十年と僕の手の上で踊っておいて、数分間の話にも耐えられない訳がないんだからさ」 ミ,,゚Д゚彡「何を」 フサが顔を歪める。 嘲笑の表情だったが、隠しきれない困惑が僅かに覗いていた。 (´・ω・`)「異能者として目覚めてからずっと、君は踊っていたよ。 自分の意志でそうしているのだと疑わず、僕の手の上で、必死にね。 信じられないかい? まぁ、そうだろうね。認めたくない事を認めないのは、実に楽だから」 手を軽く広げる。 (´・ω・`)「例えそれが事実だとしても。人は弱い。君も。 ……君が話を聞かないと言うならそれでも良いけれど、果たして君はそれで良いのかい? 真実を何も知らぬまま死ぬというのも、駒としちゃ幸せかもしれないけどさ」 ミ,,゚Д゚彡「何か貴様の話を聞いたところで、信じると思うか?」 フサは自分が信じられなかった。 何を応えているのだ、と。 戯言だと分かっている筈だ。惑わそうとしているだけだと、分かっている筈だ。 (´・ω・`)「でも気になってしまってはいる、でしょ? どういうことだ、って。 聞きたくて聞きたくて、仕方ない筈だ。―――聞くだけ聞いてみればどうだい? 信じるも信じないも君次第、自由だ。殺し合いは、それからで良い」 ミ,,゚Д゚彡「……良いだろう」 聞かずにはいられなかった。 脳のどこかが麻痺しているような感覚がある。 自分の中に居る何かが、勝手に口を動かしているような。 しぃとギコが、慌てた視線を同時にフサに向ける。 (;゚ー゚)「フサさん! 良いんですか!?」 ミ,,゚Д゚彡「良い話を聞けるかもしれないだろう。モララーの事、とかな。 こいつを殺すのはいつでも出来る。 情報を引き出してからでも遅くはないだろう」 (;゚Д゚)「こうしてる間にも、皆は戦ってるかもしれないんだぞ! そんなことより、先にモララーを倒すべきじゃないのかよ!」 その通りだ、と思った。 こんなところでモタついているわけにはいかない。 しかし口から出てくる言葉は、彼の意志に従ってはくれない。 ミ,,゚Д゚彡「だからこそ、情報を引き出すのが重要だろう。 俺達は確実に奴を葬らねばならん。焦って玉砕、なんて笑えん。 それにギコ、お前だって、話を聞かずにいる事は出来ない筈だ」 歯を噛み締めた。 俺は、何を、言っている。 ギコとこいつを話させる事が、良い事である筈がない。 何故かは知らないが、こいつは自分とギコの関係を知っている。 ここでギコにその事実が伝われば、こいつの戦意が途切れかねない。 しかし、それでも自分の口を抑えられない。 本来起こる筈のない、話を聞き出したいという衝動が、抑えられない。 ミ,,゚Д゚彡「……聞かせてもらおうか。まず、何故貴様がここに居る。 ここには見張りの“管理人”が居るか、或いは誰もいないかのどちらかの筈だ。 今頃になって、“管理人”に戻ったのか?」 (´・ω・`)「いや。君の言う通り、つー、って“管理人”が居たんだけどね。 彼女に場所を譲ってもらったのさ」 ミ,,゚Д゚彡「何の為に」 (´・ω・`)「楽しむ為さ。僕も彼女も、ね」 そう言って、彼は笑った。 その笑い方がやけに不快で、フサは眉を寄せる。 ミ,,゚Д゚彡「どういう意味だ」 (´・ω・`)「そのまんまさ。 彼女は大切な人に会いに行って、彼女なりに楽しむ。 僕はここさ。ここで楽しむ」 ミ,,゚Д゚彡「……その楽しみとやらには、流血が伴うのだろうな」 (´・ω・`)「御名答」 応えて、彼はフサ達の顔を順に見回していく。 (´・ω・`)「君達全員―――いや。 今この建物の中に居る、僕以外の全員の血が流れる予定だよ」 ミ,,゚Д゚彡「させると思うか」 (´・ω・`)「君がさせるかさせないかじゃなくて、僕がするかしないかなんだよ。 僕は、する。その為にこれまでを生きてきたんだ。 この日、この時の為だけに、ね」 視線を上げ、何かに陶酔したような、とろんとした瞳で遠くを見詰める。 その状態で、口が緩やかに言葉を漏らした。「大変だったよ、待ち遠しかった」、 「作り上げた物語の終焉が。喜劇の始まりが」と。 ミ,,゚Д゚彡「……イカれてやがんな」 ダメだ、と思った。こいつはもうダメだ。 言動こそしっかりしているが、奥底で何かが、狂っている。狂いきっている。 ここで殺しておかなきゃならない。―――今なら、殺れる。 密かに体勢を落とし、腕に力を込めた。 (´・ω・`)「そうかもしれないけどね、ちょっと待ってよ。 まだまだ全然、話すべきことを話していない」 ミ,,゚Д゚彡「知るものか」 言いながらも、フサは。 今にも床を蹴ろうとしていた脚から力を抜き、 ショボンと話をする体勢を取っていた。 (;゚ー゚)「フサさん、何故……!?」 困惑するしぃの声が聞こえる。 だが、最も驚き困惑していたのは、フサ自身だった。 俺は、何を。 驚きに身を固めるフサに、ショボンは満足げに頷く。 (´・ω・`)「せっかくだ。君達に、真実をあげようと思う。 ドッキリ物のテレビ番組でも、一番面白いのはネタばらしの瞬間だしね」 ミ,,゚Д゚彡「いr」 (´・ω・`)「いらない、って言ったって聞かないよ。 真実は君達の為じゃなく、僕の楽しみの為に語るんだからね」 「そうだなぁ」と彼は顎に手を当てて虚空を仰ぎ見た。 何を話そう、何から話そうかと考えている風で、 何度か唸ったり首を捻ったりを繰り返した後に、もう一度「そうだなぁ」と呟いた。 (´・ω・`)「『内藤』って人のこと、覚えてる? 君が幼い頃―――異能者として目覚めた頃に、君に全てを叩き込んだ人」 (,,゚Д゚)「え……」 フサに向けられたショボンの言葉に、しかしギコが彼よりも早く反応を見せる。 何度目かも分からない、困惑と驚愕だ。 内藤? ブーンの事か? 考えて、馬鹿らしい、と首を振った。 別人に決まっているじゃないか。 内藤なんて苗字は珍しくない。どころか、ありふれている。 それにショボンの説明の仕方は『過去の人物』を指す言葉であったし、 何よりもフサが幼い頃だと、ブーンはまず生まれていないだろう。 ミ,,゚Д゚彡「覚えているさ。忘れられる筈がない。 異能者としての俺は、あの人がいたからこそ始まった」 (´・ω・`)「尊敬しているんだね。じゃあ、あの人が死んだ理由は? 突然現れて消えた、あの人の正体は?」 ミ,,゚Д゚彡「……知らん」 (´・ω・`)「だろうね。知ってるよ」 馬鹿にしたような言葉に、フサの眉根が僅かに詰められた。 ショボンは軽く手を振って、「喋る時の癖だよ。馬鹿にしているつもりはない」と告げる。 (´・ω・`)「なら教えよう。彼を殺したのはモララーだ。 そして彼の正体は『ファーザー』。 君もよく知っている、クー達が育った『ホーム』の、まさに父だった男だよ」 一瞬、音が消えた。 フサは驚きの余り声を出せず、しぃに至っては息をするのさえも忘れている。 ギコは一人、納得のいかない顔で思考を続けていた。 『内藤』という、初めて耳にする人物。 一時的とは言え仲間になったというのに、 “削除人”が俺達にその人物の情報を与えていないというのは、フェアではないのではなかろうか。 何故教えなかった。忘れていたという事はないだろう。 何かしら、教えられない、教えたくない理由があった? それは何だ? ―――思考は、良い方向に向かわない。 (´・ω・`)「結構驚いたようだね。良い顔してるよ。見せてあげたいくらいだ」 しばらく置いてからショボンがそう告げても、フサとしぃは喋りださない。 だからギコが口を開いた。 (,,゚Д゚)「……ショボン。今度は俺からの質問だ。 あそこで死んだあんたは何だったのか、教えてくれ」 その声でようやく、フサは我に戻ったのか、顔を顰める。 ミ,,゚Д゚彡「ギコ」 (,,゚Д゚)「悪い。だが、あんたの言う通り、聞かずにはいられないんだ。 ショボンはあそこで確かに死んだ筈なんだ、確かに……」 (´・ω・`)「良いよ、答えをあげよう。これもまた一つの真実だ。 そしてこの話は、フサ君、君にも関係する」 ミ,,゚Д゚彡「……何?」 向けられた視線に、ショボンは頷きで返した。 (´・ω・`)「まずギコ君の質問に答えようか。 あそこで死んだ僕はある意味僕だけど、正確には僕じゃない。 僕と同じ顔、身体、遺伝子を持つ存在だよ」 (,,゚Д゚)「同じ……存在? それって、クローンみたいなものか?」 (´・ω・`)「違う。一卵性双生児として生まれた、僕の片割れだよ。 分かりやすく言えば、双子の兄さんさ。シャキン、って言うんだ」 (;゚Д゚)「……!? それはつまり、ショボン。 あんたは、兄貴と一緒に二人一役を演じて、俺達を騙していたのか!?」 その声にショボンは唸って、また顎に手を当てる。 今度はその体勢のまま口を開いた。 (´・ω・`)「うーん……。捉え方によってはそうなるのかもしれないけど、ちょっと違うかな。 まぁ、これは後々、詳しく説明するよ。 次はフサ君の番だ」 ミ,,゚Д゚彡「真実とやらか。言ってみろ」 (´・ω・`)「ビコーズ、って人を覚えているかい? 会ったことはある筈だけど」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ、覚えている。確か、VIPとか言う組織の一員だったか。 一度だけ会ったな。反異能者の人間共に囲まれた時に、助けてもらった。 監視と言う名目で保護してくれて、脱走しようとした俺を何も言わず逃がしてくれた」 そうだね、とショボンは頷いてみせる。 ミ,,゚Д゚彡「それがどうした。その男とお前の兄とやらに、何の関係がある」 (´・ω・`)「こういうのは、思わぬところに関係があるのさ」 ミ,,゚Д゚彡「もったいぶるな。言え」 若干苛立った彼の言葉に、ショボンは微笑を浮かべた。 今度はギコもしぃも、顔を顰める。 ショボンのその微笑みには、暖かさなどが一切なく、 爬虫類や、それを実験・観察する科学者のような不気味な冷たさだけがあったからだ。 (´・ω・`)「そうだね、言うとしよう。 あの二人は、二人とも僕の仲間―――いや、違うな。 僕の手駒、或いは操り人形ってところだ」 ミ,,゚Д゚彡「……何を言っている」 (´・ω・`)「流石に、信じられないかい?」 「じゃあ、一から説明をしようか」と笑う。 (´・ω・`)「まず、僕の“力”。知ってるだろうけど、テレパシーだ。 正確に言えば、精神感応だとか遠隔精神反応、シンクロニシティやら遠感現象って言うようだけど。 他人の思考を読むこの能力は、同時に相手に僕の思考を読ませる事が出来る。強制的に」 そこで一旦、言葉を切ると、ショボンは指をこめかみに押し当てた。 それと同時、三人の脳内に声が響く。 ―――『こんな風にね』と。 (;゚Д゚)「これは……」 (;゚ー゚)「! 何……今の」 厭な感覚に、頭を押さえて表情を歪める二人。 その隣で、フサだけが落ち着いた表情でショボンを見詰めていた。 ミ,,゚Д゚彡「……頭に直接声を響かせるのか。 便利な能力だな。喋る必要がなくなる」 (´・ω・`)「そう。でね、この“力”は、ちょっと工夫して使うと全く違う顔を見せる。 他人の思考・感情・意志を操作したり、認識を操作する“力”になるんだ。 ―――これが、さっきの話と繋がる」 ミ,,゚Д゚彡「言ってみろ」 (´・ω・`)「まずビコーズからかな。彼はね、VIPPERとして、僕に会いに来たんだ。 君の言い方をすれば、保護という名目の拘束の為にね。 だから僕は、彼の心を壊してやったんだ。粉々にね」 何でもない事のように言う彼に、フサは顔を歪める。 ミ,,゚Д゚彡「……続けろ」 (´・ω・`)「その頃僕は丁度、“力”の扱い方を持て余していた。 だから実験も兼ねて、心の壊れた彼に“侵入”してみたんだ。 そうしたら、思いの外上手く行ってね」 ミ,,゚Д゚彡「どうなった」 (´・ω・`)「操れたんだよ。とんでもなく体力は使うけどね」 人形を操っているように、指をくねくねと動かした。 彼の信じ難い話に、しぃが疑問の声を発する。 (;゚ー゚)「どうしてそんな事が……」 (´・ω・`)「これはあくまでも僕の推測だけど、僕の“力”は相手の脳に作用するのだと思う。 神経シナプスにおける情報伝達か、脳内物質の内分泌か、ドーパミン作働性ニューロン系か……。 その辺りに干渉したり、或いは異常を起こしたり出来るんじゃないかな」 (;゚ー゚)「そんな、手も触れずに? 出来る筈がないよ」 (´・ω・`)「異能者の“力”は常識で測れない。だろ? 君の“力”なんか、まさにそうじゃないか」 眉根を寄せて黙ったしぃに頷きかけると、彼は「話を続けるよ」と言った。 (´・ω・`)「だから相手の脳の働き、つまりは抵抗を止めた上で全力を注げば、 相手の思考―――脳の働きに、深く干渉出来るんだと思う。支配レベルにまで、ね。 だから心を壊した相手を操作出来たってわけさ。制御室を奪った感じ、って言えば分かりやすいかな?」 (;゚Д゚)「おい、待てよ……。 という事はもしかして、あそこで死んだショボン……いや、シャキンは」 (´・ω・`)「そうだね。彼自身の心はない。僕が操作していた。 まぁ、ある意味は、君が言う通り二人一役だね」 ギコは複雑な表情で頷く。 理解は出来たが、納得がいかなかった。 心を失くしていたとは言え、実兄の身体を操作したという事が、だ。 理由は聞く気になれなかった。聞くべきではないと思った。 (;゚ー゚)「お兄さんは……事故で? 植物状態か何かに?」 しぃの問いに、ショボンは怪訝な表情を浮かべた。 何を言っているのか理解し難い、という表情だ。 (´・ω・`)「違うよ、何を言っているんだい?」 (;゚ー゚)「え?」 (´・ω・`)「僕が壊したんだよ。決まっているじゃないか」 平然と、言い放った。 ギコとしぃの表情が凍り、ぞわりと背中に寒気が走る。 (;゚Д゚)「――――――!!」 ミ,,゚Д゚彡「……チッ」 (;゚ー゚)「じ、実の兄でしょう!? 何でそんな事を……!!」 (´・ω・`)「単純だよ。駒が二つ欲しかった。特に、僕として動ける駒がね。 そうしたらすぐ傍に居たんだ。“力”も持っていない、凡人の兄が。 この時ばかりは神に感謝したよ。こんな兄を与えてくれてありがとうってさ」 即座にしぃが反論する。 自然に声が荒げられ、身体が憤りに震えていた。 孤児として『ホーム』で育ったしぃには、血の繋がりというものがない。 クーやツンとの心の絆こそあれど、しかしそれは肉親の代わりには為り得ない。 だからしぃにとって普通の家族は羨望の対象であり、そしてそれを自ら踏み躙ったショボンを許せなかった。 (;゚ー゚)「家族なんでしょう……!? 血の繋がった、代わりのない家族なんでしょう!?」 (´・ω・`)「関係ないね。家族でも他人でも違いはない。刺せば死ぬ。 利用出来るなら、誰でも利用するさ。両親でも、兄弟でも、恩師でもね。 だから僕は兄さんを壊して利用したし、彼の身体で君達を欺いた。彼の身体だから出来た」 (;゚Д゚)「何でそこまでして、俺達を欺こうと思ったんだ!? 実の兄を殺してまで―――!!」 ショボンはギコに向き直ると、軽く首を傾げる。 (´・ω・`)「厳密には殺してはいないけど、まぁ良いや。 理由は簡単。面白そうだからだよ。復讐は人を最も強くするからね。 君達に復讐の力を与えてあげたかった」 (;゚Д゚)「何d」 (´・ω・`)「何度も言わせないでよ。……楽しむ為だってば。 弱い君達だと、一瞬で終わっちゃうから。 強い君達と、出来るだけ長く戦いたかった。楽しみたかったんだ」 (;゚Д゚)「……そん、な」 ギコの絶望的な表情に、ショボンは笑みを返す。 (´・ω・`)「―――そう、そうだよ。今、君が考えた通りだ。 僕は、君達に対して何の感情も抱いていない。君達は道具と同じとしか思っていない。 あの特訓も、僕の言葉も、僕の死も、全部この時の為だけの演技だ」 ギコが眼を伏せる。 信じられなかった。信じたくなかった。 仲間だと、頼れる存在だと思っていた者が、こうまでも自分達の“敵”であったとは。 ショボンは喜悦を顔に浮かべ、更に言葉を浴びせようとして ミ,,゚Д゚彡「お前、兄の事が嫌いだったのか?」 フサの言葉に、遮られた。 (´・ω・`)「―――君らしい質問だけどさ、どうしたのさ、いきなり?」 ミ,,゚Д゚彡「黙って答えろ、クズ野郎」 冷酷な声に、ショボンはやれやれと首を振る。 それから一つ呼吸を置くと、静かに語りだした。 (´・ω・`)「……兄さんの事は嫌いじゃなかったように思う。結構、好きな方だったんじゃないかな。 双子だからか、気もよく合ったし、兄さんは僕の事を大切に思ってくれていた。 頭も良くて、周囲のくだらない事ばかりを考えている輩よりもずっと崇高な考えを持っていたよ」 (;゚ー゚)「嫌いじゃなかったの? なら、どうして……」 彼女は混乱していた。 彼が何を言っているのか分からない、と。 問いに、まず返ってきたのは溜息だった。 (´・ω・`)「僕の話、ちゃんと聞いてた? 関係ないんだよ。家族でも他人でも、好きでも嫌いでも。 僕の楽しみに利用出来るか、そうでないかだけが、問題なんだよ」 ミ,,゚Д゚彡「自分の娯楽の為だけに、実兄を殺した、か。 はっ。あぁ、よく分かった」 笑うフサに、ショボンは首を傾げる。 (´・ω・`)「何がだい?」 ミ,,゚Д゚彡「テメェは最低のクソ野郎ってことがだよ。地獄に堕ちやがれ。 話を聞いてるだけで胃がムカムカして、反吐が出そうだ」 (´・ω・`)「大切な弟の為に自分の人生を投げ捨てた君からすれば、尚更そうだろうね。 良い兄の鑑だね。美しく素晴らしい兄弟愛? うんうん、涙が出そうだよ。 まぁ、知ったこっちゃないけれど」 ショボンの言葉に、フサが一瞬、身を硬くした。 ミ,,゚Д゚彡「……言うな」 笑みを消し、低い声で凄む。 ギコは知らなくて良い。少なくとも、今は。 全てが終わって、言うべき時が来るまで、あいつは何も知らなくて良い。 あいつが俺の事で戸惑い、気負い苦しむ必要はないんだ。 しかしそのフサの想いに対して、ショボンは言葉を止めない。淡々と、言葉を告げる。 (´・ω・`)「そんな君の努力も、結局は無駄になっちゃったねぇ。 弟も、結局は異能者になってしまった。 生と死の境にある、この戦いに参加してしまった」 (,,゚Д゚)「え……?」 思わず、疑問の声が漏れた。 何を話している? フサの、弟? 異能者? この戦いに参加している? 誰だ? ミ#゚Д゚彡「黙れ、と言っているんだ……!!」 フサは既に牙を剥き、全身の筋肉を引き締めていた。 ショボンはそんな彼を見て、あろう事か手招きをしてみせる。 (´・ω・`)「どうしたんだい、飛びかかってくれば良いじゃないか」 ミ#゚Д゚彡「――――――!!」 フサの脚が一歩を踏み、体勢が低くなる。 床に爪が食い込み、撓められた筋肉が解放されようとして――― しかし、飛び出せない。 飛び出してはいけないような、そんな感覚が全身を支配していた。 ミ#゚Д゚彡「グッ……ゥゥゥウ……!?」 (´・ω・`)「……出来ないのかい?」 苦しげに顔を歪め、額から汗を滴らせるフサに、ショボンは嘲笑の笑みを浮かべた。 (´・ω・`)「どうしてか、答えをあげようか。これが、僕の“力”なんだよ。 相手の脳からの指令を妨害し、書き換える。さっき言った、意志の操作だよ。 気付かないもんだろ? 戦闘になっちゃうと、この“力”を使う余裕はないんだけどね」 ミ#゚Д゚彡「―――解け」 低く、呻く。 ショボンは手を広げ、「慌てるなって」と首を振った。 (´・ω・`)「戦う時になれば、僕は嫌でも解かなきゃならなくなるさ。 でもちょっと待ってよ。話はまだ終わっていない。 一番教えたかった真実が残ってる」 ミ#゚Д゚彡「これ以上、何を言うつもりだ……!」 (´・ω・`)「さっき、『内藤』の話をしたね? モララーに殺されたって。 モララーに『内藤』の情報を与えたのは、僕なんだよ」 フサの表情が一瞬、呆けた物に変わり。 そして次の一瞬には、怒りという感情で埋まった。 ミ#゚Д゚彡「……貴、様……!!」 (´・ω・`)「うん、良い顔だ。よし、もっと良い顔にしてみようか」 そう言うと、ショボンはフサから視線を外し、ギコへと向き直った。 フサの顔が、青ざめる。 ミ#゚Д゚彡「おい……まさか、貴様。何を言おうとしている!? 辞めろ! その喉を噛み千切ってやるぞ!?」 (´・ω・`)「歓迎だね。出来るのなら」 首だけ向けて、応えた。 (´・ω・`)「さて、ギコ君。 君には、君が生まれてすぐに行方不明となった兄が居たね?」 (,,゚Д゚)「あぁ……だが、何でそれを」 (´・ω・`)「君の兄は、フサ君だ」 何のためらいもなく、言い放った。 フサが歯を噛み縛り、ギコの顔から表情が消える。 ミ; д 彡「――――――!」 (,,゚Д゚)「え―――」 (´・ω・`)「フサ君は君が生まれてからすぐ、君を異能者にはしまいと、家を出たんだよ。 覚醒させない為にね。そして君に異能者を近付けさせない為に、“削除人”に入った」 (;゚Д゚)「な、何だよ、それ。なぁ……」 ギコはフサに視線を向け。 視界の先にあった表情で、それが真実だと分かった。 (;゚д゚)「……マジ、なのかよ」 フサは一度俯くと、憎悪に満ちた瞳でショボンを睨み上げる。 ミ#゚Д゚彡「貴様……!!」 (´・ω・`)「さて、次は君だ、フサ君」 再度フサに向き直ると、歩み寄り、耳に口を近付けて――― (´・ω・`)「君の弟、ギコ君を覚醒させたのは、僕だ」 ミ ゚Д゚彡「――――――」 ざわり、とフサの両腕と両脚を覆う獣の毛が、蠢いた。 (´・ω・`)「正確にはギコ君達、だね。 僕が“管理人”に情報を与え、ギコ君達四人のところに“管理人”を向かわせた。 手違いがあったのか、ギコ君のところには“管理人”は訪れなかったけどね」 一つ、呼吸を入れて、「そう」と、言葉を続ける。 (´・ω・`)「この時点で、ギコ君だけが異能者にならなかった。 だから、四人が教室に集まったところで僕が接近して、彼らの“力”を刺激した。 これでめでたく、ギコ君も異能者入りってわけさ」 ( ゚Д゚)「……俺達四人が異能者になったのは」 (´・ω・`)「そう。全部、僕のせい。 君達が戦う羽目になったのも、それを助けたのも、戦い方を教えたのも、決意を固めさせたのも、全ては僕のシナリオだ。 一種の自作自演だね。理由なんて聞かないでよ。楽しくする為だからね」 沈黙が訪れた。 誰も喋らないし、動かない。静かだった。 やがて、フサが口を開く。 言葉は、有り余る憤怒で震えていた。 ミ Д 彡「何で、こいつらだったんだ」 (´・ω・`)「特に理由はないよ。残念ながら。 強いて言えば、同じクラスの仲の良い四人組が、全員異能者なんて面白いじゃない。 本当はもっと異能者にしても良かったんだけど、増やし過ぎても何だか、だしね」 ミ Д 彡「面白い、という理由だけで、こいつ等を……ギコを、異能者にしたのか」 ショボンは微笑を浮かべ、頷いてみせる。 (´・ω・`)「そう。そして、それだけじゃない。 僕がいなければ『内藤』……『ファーザー』は死ななかったかもしれない。 つまり、クー達も戦わなかったかもしれないし、“削除人”もなかったかもしれない」 しぃの身体が震えた。 (´・ω・`)「あれだけやり手だったビコーズが生きていれば、VIPはモララーにやられなかったかもしれない。 そうなれば、異能者達の事件は少なくなって、もしかしたら異能者と人間は和解していたかもしれない。 モララーだって、ここまで歪んでいなかったかもしれない―――それも全部、僕のせいだよ。どう?」 それはまるで、手伝いの出来を父親に尋ねる子のような口振りだった。 誇らしげに、楽しげに。これから投げかけられる言葉に期待を寄せた、得意げな口調。 しぃとフサの身体が飛び出そうとして、しかし硬直する。 動いてはいけない、という、内からの抗い難い命令だ。 噛み締められたしぃの歯が軋み、握られた拳の関節が音を鳴らした。 ミ# Д 彡「…………!!」 フサは眼に見えぬ束縛を解こうと、全身に力を込めていた。 剥かれた牙の間からは唸り声が漏れ、 若干赤みを帯びた鋭い瞳は、射抜き殺さんという視線でショボンを睨みつけている。 (´・ω・`)「……! 凄い“力”だね。 抑えるのが大変だよ。 そんな事しなくても、ホラ―――」 次の瞬間、フサとしぃの体勢が崩れ、膝を着いた。 唐突に、身体を支配していた存在が消え失せたのだ。 二人の視線が上がり、床にフサの脚の爪が食い込んだのと同時。 (´・ω・`)「ゲーム・スタートだ」 その言葉は、床が弾け飛ぶ音によって掻き消された。 ミ#゚Д゚彡「ガ―――ァァアアアァァアアァアァッ!!」 獣の咆哮が地を滑り、一瞬でショボンへと到達する。 間髪置かず振るわれた爪は、しかし大股のバックステップで躱された。 ショボンはそこで止まらず、更に三歩を後退し、そこから横に床を蹴りつける。 直後。彼が立っていた床に、幾本もの眩い光の熱線が突き立った。 床が蕩けて音と煙が上がり、そしてその煙を貫いて、極太の光線がショボンへと放たれた。 (´・ω・`)「へぇ。君も、こんなに強い“力”を持っていたんだ。 本気、だね? 今まで本気で戦えなかった君が、何故?」 光線を軽く避けつつ、それを撃ち放った張本人のしぃに尋ねる。 彼女は瞳を怒りに燃え上がらせ、彼を睨みつけて言い放った。 (#゚ー゚)「私はね、戦うって事が大嫌いなの。誰かが傷付くから。 戦わないでいられたらって何度考えた事か、想像出来る? 出来ないでしょうね! 答えてあげる。そんなあなたには、手加減する必要がないからよ―――!」 (´・ω・`)「そりゃあ良かった。真実を話した甲斐があったってもんだよ」 更に放たれた光線を回避しつつ、彼の身は唐突に沈み込む。 一瞬。彼の目の前、床から立ち上る煙が勢い良く霧散し、そこからフサが飛び出した。 脚が横薙ぎにされ、それはまさに間一髪で、ショボンの頭上を抜ける。 (´・ω・`)「おっと、危ない危ない」 軽く言うショボンの脚が床を水平に薙いだ。 鈍い音を経てて、フサの脚が払われる。 次の瞬間には、彼の腹部にショボンの拳が捻じ込まれていた。 ミ#゚Д゚彡「かッ……!!」 (´・ω・`)「速いし、強いね。でも、残念でした。 思考を読める僕には、君が何をしようとしているか分かってしまうんだ。 どんなに不意を突いたつもりでも、どんなに速くても、意味がない」 ショボンはそう言って、フサを殴り飛ばした。 そして即座に、後退する。 直後、彼の腹部のシャツを掠めて、光線が抜けた。 (´・ω・`)「こちらも、同じくね」 (#゚ー゚)「この……!」 しぃは左腕の異形を構えると、連続で光線を放つ。 狙う位置を変え、放つ場所を変え、形を変え。 しかしそのどれもが、ショボンに容易に回避されてしまう。 (´・ω・`)「この通り、分かってしまう。君達がどうやって僕を殺そうとしているのかね。 さぁ、楽しませてくれ。思考を読める僕を相手に、君達三人はどう戦うのか見せてくれ。 僕を殺さなきゃいけない理由は与えたよ。後は殺るだけだ。だろう? ほら、殺ってみせてくれ」 表情も変えず言い放つショボンに、しぃは動きを止める。 舌打ちを一つ打ち、横目でフサの表情を窺った。 (;゚ー゚)「……フサさん、どうしましょうか? がむしゃらに戦うだけじゃ―――」 ミ ゚Д゚彡「行け」 しかし、返ってきたのは、一言だった。 思わず、訊き返してしまう。 (;゚ー゚)「え?」 フサは視線をしぃに送り、それからギコに送ると、出口を顎で指した。 ミ ゚Д゚彡「ギコと共に、行け。ここは、俺がやる」 ギコとしぃが、同時に同じ表情を浮かべる。 困惑と疑問だ。 (;゚Д゚)「な……!?」 (;゚ー゚)「そんな! 何を言っているんです!? この男を相手に、一人で戦うなんて―――」 ミ ゚Д゚彡「この男だからこそ、だ。 俺は恐らく、“獣”にならなきゃならんだろう」 しぃの息が一瞬、停止した。 (;゚ー゚)「“獣”に……!?」 背に寒気が走る。 “削除人”として共に戦ってきたしぃには、その言葉の指す意味の恐ろしさが分かっていた。 ミ ゚Д゚彡「知っているだろう。“獣”になってしまえば、俺に敵味方の区別は出来ん。 お前達と一緒に戦っていれば、奴だけでなく、お前達も殺してしまいかねん。 俺の意志は意味を失くしてしまう。だから、行け」 (;゚ー゚)「そんな事をしなくても、三人で戦えば……!」 ミ ゚Д゚彡「どうなる。思考を読まれて動きを読まれて、一人一人潰されていくだけだ。 こいつを相手に、人数は意味を為さない。 必要なのは、読まれぬ思考と、読まれた上でも躱しようのない破壊力だけだ」 (;゚ー゚)「…………!!」 唇を噛み締めた。 確かにその通りだ。自分達が居ても、仕方がない。 しかし、かと言ってここでフサ一人に任せて良い物とは思えない。 見殺しにするようなものではないか。 いや、完全な“獣”になってしまえば可能性はある。 だがそうなってしまえば、彼はもはやフサではない。 意志を失くしてしまう以上、元に戻れるという保証もない。 そしておそらく、説得は出来ない。 彼はもう決めてしまった。自分一人で、ここを突破すると。 ミ ゚Д゚彡「すぐに追い付くさ。心配するな。 行け。くだらないことで自ら命を落とそうとするな。 お前には夢があるのだろう、ならばその為に進め」 しぃは呻き声を漏らし、地面を数秒睨みつける。 彼を説得出来る何か良い言葉はないか、最善の方法はないのか。 しかし結局、それらの問いに答えは出ない。 (;゚ー゚)「……はい、分かりました。 でも、フサさん。今の言葉、忘れないでくださいよ。 絶対に追い付いてくださいね」 ミ ゚Д゚彡「当り前だろう。何を言っている」 彼の言葉に頷くと、しぃはギコに視線を向ける。 ギコは軽く首を振り、「少し待ってくれ」と呟くと、フサの顔を見詰めた。 (,,゚Д゚)「……フサ」 ミ ゚Д゚彡「何だ」 (,,゚Д゚)「あんた、本当に俺の兄貴なのか?」 フサは即座に否定しようとして、しかし一瞬、言葉に詰まる。 そして口から出てきた言葉は、曖昧な答えだった。 ミ ゚Д゚彡「……さぁな」 (,,゚Д゚)「そうか」 短く返すと、ギコは歩みを進める。 離れていく背に、フサは迷った挙句、声をかけた。 ミ ゚Д゚彡「ギコ」 (,,゚Д゚)「何だよ」 面倒臭そうに、振り返る。 ミ ゚Д゚彡「この戦いが終わったら、話をしよう。 話したい事、話さなきゃいけない事が沢山ある」 (,,゚Д゚)「分かった。死ぬなよ」 淡白な言葉を投げかけると、ギコはしぃと共に駆け出した。 ミ ゚Д゚彡「……お前こそな」 小さく、呟いた。 弟の背を見詰める瞳は獣の如く鋭かったが、 そこにある光は暖かい、弟を想う兄の物であった。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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