876284 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【お気に入りブログ登録】 【ログイン】

LOYAL STRAIT FLASH ♪

第二話

19 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:00:02.88 ID:xJFHykxJ0
2/6


( ^ω^)「僕はVIPの隊長のブーンだお!」


明後日、私は最前線基地にあるVIPに配属された。


川 ゚ -゚)「……今日付けでVIPに配属された、クー少尉です」
  _
( ゚∀゚)「俺、長岡!俺、長岡!!よろしく頼む!」

( ^ω^)「よろしくだお!それにしても『パロン』が配属されるなんて初めてだお!」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「でも、VIPは実力がすべて。『パロン』だろうパンツだろうと差別はしないお!」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「ま、そんなとこだお。呼び出しが来るまで好きにしてていいお」

川 ゚ -゚)「……はっ」


20 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:15:17.92 ID:xJFHykxJ0
気だるい挨拶を済ますと、私は愛機のもとへ向かう。

そこだけが、私の場所。
地上で唯一安らげる、私の居場所。

  _
( ゚∀゚)「また愛機のところに行くのか!?俺も行く!!」

川 ゚ -゚)「……」


後ろからは、長岡の声。

  _
( ゚∀゚)「ほんと『パロン』って人種は変わってるな!
    俺も変わってるって言われるけど!あははは!」

川 ゚ -゚)「……」


うるさい長岡を無視して、私は格納庫に到着した。


22 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:18:29.55 ID:xJFHykxJ0
  _
( ゚∀゚)「うお!すげえ!最新型の『VIP774』だ!」


格納庫に到着するや否や、長岡はそこに格納されている機体を見てはしゃぎだした。


『VIP774』
ニーソク社が開発した最新鋭飛行機械。
機体の後部に水冷式プロペラエンジンが設置された単葉機。
まだ生産が追いついておらず、エース部隊である「VIP」にのみ優先的に配備されているようだ。


一方で私の愛機は『VIP773』
基本性能は『VIP774』と同じだが旧式。
『VIP774』と比べ、急速上昇時のエンジンの息継ぎの有無やエンジンの冷却性能に差がある。

23 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:20:47.05 ID:xJFHykxJ0
  _
( ゚∀゚)「すげえ!すげえ!早くイジりたい!」


最新鋭機を目の前にして、長岡はしきりにはしゃぐ。
そんな長岡をよそに私は愛機のもとへと向かう。

すると、私の愛機の横には珍しい機体があった。

  _
( ゚∀゚)「なんじゃこりゃ!ずいぶんと旧式だ!!」


いつの間にか後ろにいた長岡が声を上げる。

私の愛機の隣にあったのは『VIP771』
前方にプロペラエンジンが搭載されており、そのため機銃が機首にではなく両翼についた単葉機。

スピード、旋回性能ともに後部プロペラエンジンタイプの『VIP773』『VIP774』には劣り、
機首にプロペラがついているためにプロペラによる気流をモロに受けるため、
飛行に癖があり、一部の古参のベテラン兵しか使っていない旧式の飛行機械。


24 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:22:36.42 ID:xJFHykxJ0
  _
( ゚∀゚)「誰だ!こんな旧式使う物好きは!!」


どたばたと機体の周りを飛び回る長岡を無視し、私はこの旧式を観察する。
すると、尾翼に見たことのあるマークを発見する。

タバコを人差し指と中指ではさんだ右手を表したマーク。


川 ゚ -゚)「……このマークは……」


そのマークを眺めていると、操縦席からのそりと起き上がる男の姿。


25 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:23:57.50 ID:xJFHykxJ0
('A`)「………」
  _
( ゚∀゚)「あ!あんたがこの旧式のパイロット!?俺、長岡!お前は!!」

('A`)「……ドクオ」


その名を聞いて、私は確信した。

ニーソク社私設軍、伝説のパイロット、ドクオ。
いくつもの死戦をくぐり抜けてきた歴戦のパイロット。

私の大好きな空を知り尽くした男。
私の目標とする男。


26 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:24:50.13 ID:xJFHykxJ0
  _
( ゚∀゚)「この旧式いいな!俺に整備させて!」

('A`)「……帰れ」
  _
( ゚∀゚)「いいじゃんか~!頼む!頼む!!」

('A`)「……帰れ!」
  _
( ゚∀゚)「う~ん!ケチ~!」


そうぼやきながら、長岡はしぶしぶ格納庫から出て行く。
そんな彼を一瞥した後、私はドクオの姿を見つめた。


27 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:25:51.22 ID:xJFHykxJ0
('A`)「……新人か?」

川 ゚ -゚)「……」


彼は操縦席から私を見下ろして言う。


('A`)「……お前も帰れ。邪魔だ」

川 ゚ -゚)「……」


私はくるりと振り返ると、そのまま格納庫の出口へ向かう。

ドクオ。
私の目標。

彼と話をしたかったが、私にはその方法がわからなかった。


28 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:27:44.79 ID:xJFHykxJ0
チャンスは思いがけずやってきた。

VIPでの初任務のパートナーがドクオだった。
任務は敵基地の詮索。

空は快晴。
軽やかに滑走から飛び立つと、私たちは安定飛行に入る。

操縦を、オートパイロットに切り替える。
私はキャノピー越しに空を眺める。

右前方には、ドクオの機体『VIP771』

きれいな飛行姿勢。
風の流れに逆らわず、風の隙間を縫うように進んでいく。

オートパイロットではこうは行かない。
きっとドクオは手動で操縦している。

私も負けじと操縦を手動に切り替える。


29 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:30:18.72 ID:xJFHykxJ0
('A`)「……ザザ……まもなく敵基地守備空域に入る。以後、無線での連絡は禁止」

川 ゚ -゚)「……了解」


敵基地は目視できない。
しかし、彼にはここからが敵基地の空域だとわかるようだ。

これがベテランのパイロット。
これが空を知り尽くした男。

私は右前方を飛行する彼の機体を見つめていた。
すると、彼の機体が急上昇する。

あわてて前方を見ると、3機の飛行編隊。
あの形状は、敵であるメンヘラ社私設軍のスタンダード飛行機械『ラウンジ443』

性能は私の愛機『VIP773』と何の遜色もない。
そして2対3。

伝説のパイロットのお手並み拝見だ。


30 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:33:24.31 ID:xJFHykxJ0
ドクオに合わせて私も上昇。
敵機も上昇してくる。

敵機のうち、二機が右へ。
一機はそのまま突っ込んでくる。

ドクオは右の二機のほうへ。
私は突っ込んできた一機の方へまっすぐ向かう。

距離が急速に縮む。

まだ……まだだ。



31 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:36:02.37 ID:xJFHykxJ0

今だ。

私は羽根を地面に垂直に立て、そのまま右方向へ旋回。
そのコンマ数秒前に敵機が放った機銃が、私がいたはずの場所をすり抜けていく。

羽根を垂直に立てたまま、右旋回を続行。
ちょうど機首が180度反対を向いたところで、敵機と平行飛行に入る。

羽根を垂直に立てたまま、機首を敵機の方へ。
そして、トリガーを引く。

火線が敵機に向けて放たれる。
敵機の尾翼に命中。

敵機はそのまま下降しながら旋回。
基地のほうへ戻っていく。


32 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:43:25.37 ID:xJFHykxJ0
川 ゚ -゚)「……深追いはまずいな」

そう判断した私は、ドクオと交戦中の二機を探す。
上には、いない。

背面飛行で下を目視。
……いない。

すると、禁止されているはずの無線から低い声。

('A`)「任務完了。帰還する」

川 ゚ -゚)「……敵機は?」

('A`)「撃墜した。迎撃してきた機体数で敵基地の大方の戦力状況も推測できる。詮索任務完了」

川 ゚ -゚)「……了解」

いつの間にかドクオは私の隣を飛行していた。
私が一機を迎撃している間に、ドクオは二機を軽々と撃墜。

悔しいが、実力はドクオが相当上。
現実を目の当たりにして、私は初任務を終えた。


33 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:46:49.64 ID:xJFHykxJ0
( ^ω^)「おっおっお。ご苦労さんだお。ゆっくり休むお」

川 ゚ -゚) ('A`)「……了解」


隊長に報告を済ませ、私たちは部屋から出る。

今回の索敵で、敵基地の現状が大方把握できた。
残り数回の調査の後、敵基地への『VIP』による大規模攻撃が始まるそうだ。

そんなことはどうでもいい。
私はもっと空を飛びたかった。

地上の風は気持ち悪い。

地上はしがらみで溢れている。
重力、人間……すべてが私を束縛する。

空を飛ぶことだけが、私をそれから解放してくれる。


34 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 12:49:51.97 ID:xJFHykxJ0
('A`)「……おい、新人」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「お前は敵機にぎりぎりまで近づき、紙一重で交わしてカウンターをかましていたな。
    ……あんな戦闘の仕方だと、近いうちに必ず死ぬぞ」

川 ゚ -゚)「……」


思いがけず、ドクオに話しかけられる。

私は何も言えない。
私は表情を変えられない。

言わないのではなく、言えない。
変えないのではなく、変えられない。

だって私は『パロン』だから。
その中でも、失敗作だから。

うれしくても
悲しくても
何も反応できない。

まるで、無機質な人形のよう。


Copyright (c) 1997-2017 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.