2007/02/14(水)19:30
( ^ω^)が料理人になるようです(第十八章下)
99 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:14:05.13 ID:T9v5rC2I0
( #゚∀゚)『あぁ!! くそっ!! 面白くねぇ!!』
ジョルジュは家に帰るとすぐさま居間に陣取り、テレビにリモコンを向けた。
しかし、この時期のテレビはクリスマス・年末の特番を垂れ流しているだけで
ドラマの再放送も本来興味のない彼にとっては退屈を紛らわせる事はなかった。
腹立ち紛れにリモコンを放り投げる。
そんな父の姿に子供達は何かを感じたのか、近寄ろうともしなかった。
彼は元々自分自身の実力を発揮させてくれる店、と言うだけでバーボンハウスに入社した男である。
そういう意味では彼はクーとの付き合いが店中の誰よりも浅く、ショックも少ないと言えた。
从 ゚∀从『よぅ、どうしたジョルジュ。荒れてるじゃねーか』
床に直に胡坐をかく彼の背後のソファに腰を下ろしたのは妻のハインリッヒだ。
少し大きくなってきている下腹部をいたわる様に手を添えている。
( ゚∀゚)『あぁ、それがよ…』
ジョルジュは今日伝えられた出来事を語り始めた。
100 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:15:45.18 ID:T9v5rC2I0
从 ゚∀从『そうか。クーさんが…。惜しい人を亡くしたな』
目を閉じて夫の話に耳を傾けていたハインリッヒはこう続けた。
从 ゚∀从『…ところでジョルジュ。晩飯は7時だ』
( #゚∀゚)『あぁ!? てめぇ何時俺が晩飯の話なんかしたってんだ!?』
場違いな妻の言葉に流石のジョルジュも激昂する。
しかしハインリッヒはそれを無視。夫婦の寝室を指差して続けた。
从 ゚∀从『行け。思いっきり発散して、晩飯の時には子供達に笑顔を見せてやってくれ』
そこでようやくジョルジュは理解した。
泣いてこい。
妻はそう言ってくれているのだ。
彼の一見して唯我独尊な性格の影に潜む、人一倍繊細な面をハインリッヒは知っていた。
( ゚∀゚)『…悪いな』
そういい残してジョルジュは寝室に消える。
しばらくして漏らすような嗚咽が聞こえてきた。
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101 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:17:33.25 ID:T9v5rC2I0
昼間にもかかわらずカーテンを閉め切ったドクオの部屋で
ツーは膝を抱えて座っていた。
愛しい人は…そこにいない。
その姿からは普段彼女が見せるうっとおしい程のハイテンションは想像できなかった。
('A`)『う~っす。帰ったぞ』
玄関の扉を開けて入って来たのはドクオだ。
両手に抱えたスーパーのビニール袋を台所に下ろし、
脱いだコートをベッドの上に放り投げる。
('A`)『いやぁ、買いすぎちまった。重かったぜ。
ツー、飯作るけど何かリクエストあるか?』
(* ∀ )『…いらない』
ツーの一言に肩すかしを喰らいながらもドクオは台所の作業台に食材を並べていく。
('A`)『なんだよ。食わなきゃ体が参っちまうぜ。
休みが空けたらすぐに年末年始のラッシュが始まるんだからよ』
その彼の言葉にツーの中で何かが切れた。
ドクオに詰め寄るとその襟首を絞り上げる。
(#*゚∀゚)『ドクオ!! あんたよくこんな時にそんな事言え…!!』
102 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:20:21.13 ID:T9v5rC2I0
ドクオは…泣いていた。
ツーの手を払いのけると、流す涙を拭き取ろうともせず作業を続ける。
(;A;)『俺だって…泣きてぇよ』
(* ∀ )『……!!』
(;A;)『俺がバーボンに入社して…右も左も分からなかった時…助けてくれたのは…クーさんなんだ…
内藤にとってクーさんが道標【みちしるべ】であったように…
俺にとってもクーさんは道標【みちしるべ】だったんだ…!!』
そこまで口にして堪らずドクオは膝から崩れ落ちる。
(;A;)『俺だって悲しい…泣きたい…
でも…俺が落ち込んでいたら誰がお前を守るんだ…』
彼は…彼女を守る為に必死に己を殺そうとしていたのだ。
まるで…まるで出会った頃の感情を持たないロボットの様な彼に今だけ戻ろうとしていたのだ。
そう。彼女の為だけに。
ツーは床に膝をつき、愛しい人の頭を抱きかかえた。
(*;∀;)『ゴメンね、ドッ君…。でもわたしは大丈夫だよ。
二人でいっぱい泣こう。二人で悲しみを乗り越えよう』
ドクオもまたツーの腰に手を回す。
永遠とも思える長い時間、2人は抱き合い涙を流した。
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105 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:21:55.27 ID:T9v5rC2I0
(´・ω・`)『やれやれ…脆い物だね』
主を失ったバースペースでショボンは一人グラスを傾けていた。
周囲には空き瓶がすでに何本も転がっている。
琥珀色の液体をグラスに注ぎ、ストレートで胃に流し込む。
しかし、それでも彼は一向に酔えなかった。
クーと知り合った頃のショボンは重度のアルコール中毒患者だった。
【実力はある。酒さえ飲んでいれば】
それが当時の彼の評価。
ただひたすら。
酔う為だけに酒を飲んだ。
そんな彼を変えたのはクー。
つまり、彼がバーボンハウスの料理長にまで登りつめたのもクーの努力の結果と言える。
今ではショボンはクーの監視の目を浴びながらも酒の味を楽しめるまでに更生していた。
彼には料理長としての責任がある。
店の頂点として従業員を引っ張っていかなければならない。
それでもショボンは再度酒に逃避した。
それほどまでに、右腕と頼む人物を。
男女の垣根を越えた親友を。
密かに恋焦がれた女性を一度に失ったショックは大きかった。
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106 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:25:06.56 ID:T9v5rC2I0
約束を交わした親友の為に。
どんなに愛しても愛し足りない恋人の為に。
己を表現する為に。
自分を変えてくれた店と仲間たちの為に。
不器用な恋人の為に。
恋焦がれた女性の為に。
そして、己の夢を実現する為に。
目的こそ違えど、揃い集まり笑いあった彼ら。
しかし、一人の女性を失った事により彼らは進むべき道を失おうとしていた。
ーーーそして光は?