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LOYAL STRAIT FLASH ♪

二十七章

5 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:37:17.74 ID:Q8V7y0Uz0

二十七章 悪魔


( ・∀・)「こんにちは、みなさん。こんなにも雁首並べて、今日はどうしたのかね?」

まるで館にきた客を歓迎するかのように言って、わざとらしく腕を広げる。
それに対してクーは刀を静かに持ち上げ、モララーを睨んだのみ。

川 ゚ -゚)「貴様の命、貰い受けに来た」

( ・∀・)「ほぅ、それは面白い」

乾いた笑いを漏らして、モララーはクーに手招きする。
そしてウィンクして見せると、声をあげた。

( ・∀・)「どんな手を使っても構わないし、何人でかかって来ても構わない。
      私を殺してみろ。そうしなければ、君達に待っているのは“死”だけだぞ?」

その言葉に、その場の全員が身構えた。
ブーンとドクオは眼前の流石兄弟に再度トドメを刺そうとするが、やはりそれは見えぬ障壁に止められる。




9 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:38:58.25 ID:Q8V7y0Uz0

(;゚ω゚)「どうなってんだお……!?」

( ・∀・)「流石兄弟はどうやらまだ死んではいないようだからね、トドメを刺すのは遠慮してもらおう。
      その二人には、優秀な駒としてまだまだ動いてもらわなければならない」

(;゚ω゚)「……くそっ!」

('A`)「チッ……」

その言葉で諦めたのか、ブーンとドクオもモララーへと向き直し、戦闘体勢を取った。

从 ゚∀从「おっちゃん。どうする? 一人で戦るかい?」

( ・∀・)「そうさせてくれ。ここのところ、動いてなくてね」

从 ゚∀从「ふーん。まぁ良いさ。じゃあおっちゃん。あたしはどうすべきだい?」

( ・∀・)「そこで見ていろ。ただし、『ヤツ』が来た時は少しでも良いから足止めしてくれ」

从 ゚∀从「オッケー。後でレモンティな」

( ・∀・)「浴びるほど呑ませてやるさ」

笑って、ハインはゆっくりと隅へと移動する。


そして、戦闘が始まった。


10 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:41:00.27 ID:Q8V7y0Uz0

ミ,,゚Д゚彡「おおぉおぉおぉっ!!」

両足を異形に変化させたフサが、恐るべきスピードでモララーに迫る。
フサは一瞬にしてモララーの懐へと入り込み、そして腰目掛けて足を横薙ぎに振るった。

もはや残像しか残らぬほどの速度で振るわれたそれを、しかしモララーは余裕の表情でバックステップしてかわす。

ミ,,゚Д゚彡「ッチィッ!」

舌打ちし、追撃をかける為に更に踏み込む。
しかしモララーはそこで退かず―――逆に前に踏み込んで来た。

ミ;゚Д゚彡「なっ―――!?」

予想外の動きに焦りを浮かべつつも、足を蹴り上げる様にして振るう。
モララーはそれを一歩だけ横に動いて回避。

そしてがら空きになっているフサの胸の中心に、重い掌底を捻じ込んだ。

ミ;゚Д゚彡「が、はっ!?」

フサの身体は、軽く宙を飛ぶ。
そして受身も取れずに地面に落ちそうになって―――その身体は何者かに助け出された。



13 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:43:51.16 ID:Q8V7y0Uz0

川 ゚ -゚)「行け、クックル」

フサの身体を支えているのはクーだった。

そして彼女の言葉と同時、彼女の後ろからクックルが飛び出す。

( ・∀・)「おや、『鬼神』クックルか。いやはや、これは骨が折れそうな相手だ」

( ゚∋゚)「黙れ」

短く答えて、彼は全力のストレートを放った。
鍛えぬかれた筋肉をフルに使ってのその拳は、凄まじいまでの速度と威力を秘めてモララーの頭蓋を撃ち抜かんとする。

しかし彼の腕はモララーの頭蓋を捉える直前で止まった。まるで、見えない壁に阻まれたかのように。

( ・∀・)「おや、どうした?」

( ゚∋゚)「……空間の壁、か。くだらない」

呟いて拳を引き、クックルは更に拳を撃ち込む。
怒涛の勢いで撃ち込まれていく拳は、やはり彼には届かない。途中の空間で止められた。

しかし、クックルは拳を止めない。
不思議な輝きを放つその眼は、己の拳を止めている『空間』に何かを見ていた。


14 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:45:45.43 ID:Q8V7y0Uz0

そして―――

( ・∀・)「……まったく、君は本当の化け物か」

彼は眉根を寄せて、後ろに跳ぶ。
それと同時にガラスが砕けたような音が響いて、クックルの拳はモララーの鼻先をかすめた。

それは、モララーとクックルの間の障壁が消えた事を現していた。

すぐにクックルは追撃をかける。
だが突き出した彼の拳が当たる直前、モララーは忽然と消え、拳は空を切った。

「テレポートは疲れるからあまりやりたくなかったのだがな」

声はクックルの後ろからだ。
ゆっくりと振り返った彼の視線の先には、やはり余裕の皮肉に笑った顔。

( ・∀・)「それにしても、アレだけ厚く造った空間の壁を突き破るとは無茶するな。クックル」

( ゚∋゚)「黙れ」

壮絶な勢いで突き出される拳。
だがそれは軽く受け流され、その隙にモララーはクックルの懐へと入り込む。




15 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:47:31.81 ID:Q8V7y0Uz0

( ・∀・)「君のような筋肉に包まれた肉体には、打撃よりも斬撃だろうな」

呟くモララーの手には、いつのまにか鋭いナイフが現われていた。
そしてそれは鮮やかに大きな弧を描き―――クックルの胸板に、細くも深い一線を残した。
一瞬遅れてその傷から大量に血液が噴き出し、モララーと床を紅で濡らす。

モララーは反撃を受ける前にバックステップし、クックルから距離を取る。

クックルは突然現われたナイフにも、胸板の深い傷にも無関心だ。
虚空の広がる瞳でモララーを一瞥し、胸から垂れた血液を手で軽く払い飛ばしたのみ。

ξ;゚△゚)ξ「クックルさん!」

(#゚ー゚)「モララー……!!」

ツンとしぃが声をあげ、睨み合う二人に駆け寄ろうとする。
だがクックルは、腕を上げてそれを静止した。

( ゚∋゚)「お前達ではこいつは手に負えん。俺に任せろ」

ξ;゚△゚)ξ「でも、その傷じゃ……!」

( ゚∋゚)「構わない」

短い答えに、ツンは絶句する。



18 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:49:16.60 ID:Q8V7y0Uz0

クックルの出血量は膨大だ。
このままでは失血死はせずとも、かなりの量の血液が失われる。
出血量を減らすか戦闘を止めるかせねば、しばらく何も出来なくなるだろう。

それを案じた言葉への答えが、「構わない」。
それは暗に、「死んでも構わない」と示しているのと同じだ。

ツンの動揺を知ってか知らずか、クックルはただただ無感情に言葉を紡ぐ。

( ゚∋゚)「こいつを殺せれば、俺はもう満足だ。他の異能者は、お前達が削除してくれるだろう。
     俺はここで死のうとも構わない。今の俺の仕事は、お前達に傷を負わせない事と、こいつを殺す事のみだ」

ξ;゚△゚)ξ「そんな……」

( ゚∋゚)「こいつは生かしておけば、お前達の大きな障害となる。その前に、俺がこいつを殺す。
     俺は“削除人”だ。お前達の手で削除出来ぬ異能者は、この手で削除する。その為の俺だ」

ツンはそれに口を出そうとするが、言葉を見付けられず、口を閉ざした。

( ゚∋゚)「それと、お前等」

言って、彼はブーン達四人を見やる。

( ゚∋゚)「死にたくなければ、邪魔をするな。戦闘に介入しようものなら、お前等も攻撃対象に含める。
     本当は今すぐにでも殺したいところだが―――今は、こいつが優先だ」

言って、クックルはモララーに向き直す。
彼は嘲る様に眼を細めると、わざとらしく涙を拭うような仕草をした。


19 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:51:10.57 ID:Q8V7y0Uz0

( ・∀・)「自己犠牲で憎き悪を倒す……いやぁ、感動だね。笑いを堪えるのが大変だよ」

( ゚∋゚)「であれば、笑えぬようにしてやる」

クックルの足元には大きな血溜まりだ。
かなり深い胸元の傷から流れ出る紅は止まる事を知らず、その血溜まりは更に成長する。

だが、血溜まりの成長は突然止まった。


クックルが、咆哮をあげる。
それと同時に、彼の身体に変化が起きた。

筋肉が異常に盛り上がる。
ゴキリという耳障りな音が響き、骨の形状・サイズが変化した。

肌の色が赤銅色へと変化し、瞳の色が朱へと移り変わる。
爪は伸びて鋭くなり、引き裂くのに適した形状へと変わった。

そして、額から一対の角が生え出る。

二メートルを優に越す、赤銅色の肌と一対の角を持った魔神。
それは、まさしく鬼―――『鬼神』であった。


引き締められた筋肉で傷は塞がり、出血も止まる。
その様子を見て、モララーは額に汗を浮かべた。


21 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:53:26.26 ID:Q8V7y0Uz0

(;・∀・)「まさか、更なる解放をしてくるとはな」

(*゚∋゚)「……………」

( ・∀・)「良いのか? 更なる解放は、その“力”の持ち主にも多大なる負担があるのだぞ?
      その出血量で解放の負担がその肉体にかかれば……命の保証も出来んなぁ」

(*゚∋゚)「お前を殺せるのなら、命などいらん。この命と引き換えにお前を殺せるのなら、安いものだ」

( ・∀・)「“削除人”の鏡だな。ふん、忌々しい」

(*゚∋゚)「誉め言葉にしか聞こえんな」

赤銅色の拳が振り上げられる。
モララーは一瞬、空間の壁を作ろうかと思案したが、すぐにバックステップした。

そこに、音を後ろに置き去りにするような速度で振り下ろされる拳。
それはモララーの代わりに地面を捉えた。

そして巻き起こるは、爆散。
クックルの拳に秘められたエネルギーは地面を陥没させ、床や土を巻き上げる。

(;・∀・)「……チィッ……!」

舞う砂埃に視界が遮られ、モララーは焦燥に舌打ちした。
鍛えているとは言え、彼の身体は普通の人間と変わりない。
しかも、ドクオのように特別に感覚器官が強いわけでもない。

攻撃は予測出来ず、攻撃が当たれば即致命傷だ。


22 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:55:13.10 ID:Q8V7y0Uz0

(;・∀・)「どこだ、クックル……!?」

狼狽する彼の背後。立ち込める埃の中に、赤銅色の影があった。
影はゆっくりと拳を振り上げ―――そして、振り下ろす。

モララーがそれに気付けたのは、まさに奇跡であった。

彼は全力で身を前に投げ出す。
そのすぐ後ろを、クックルの拳が落ちていった。

すぐにモララーは立ち上がり、鬼を睨みつける。
拳が掠ったのか、その背はパックリと切り裂かれていた。

(*゚∋゚)「……しぶとい」

(;・∀・)「化け物どころか、本当の鬼か。ジョークにもならない。ふざけるな……!」

呟く彼の手には、いつのまにか長剣が握られている。
そして果敢にも突進すると、連続で斬り付けた。

腕、肩、胸、腹。
次々と紅い線が増えていくが、クックルはまるで慌てない。
厚い筋肉はダメージをことごとく軽減していた。

(*゚∋゚)「邪魔だ」

裏拳気味に、軽く拳を振るう。
それだけで長剣は簡単にへし折れてしまった。


23 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:56:52.58 ID:Q8V7y0Uz0

(*゚∋゚)「死ね」

そして放たれる拳。
残像が残るほどの速さの拳は、モララーの頭蓋目掛けて突き進んだ。

だが、そこで。


すぅっ、と。モララーの表情が変わる。
それは皮肉で、歪んだ笑み。

―――彼が、本気になった印だ。


クックルの拳は、虚空を爆砕して終わる。
モララーはその場から忽然と消えていた。

そして、次に彼の姿が現われたのは、伸ばされたクックルの腕の上だ。

( ・∀・)「考えてみれば、君の“力”は筋肉の異常増強だ。
       であれば二次覚醒した君の身体に、あんな刃が通じるわけもない」

そしてその手に握られるのは、長剣。

( ・∀・)「ならば、どうするか? ―――筋肉のない箇所を潰さねばね」

彼はそれを構えると―――無造作に、長剣を前に突き出した。



24 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 20:57:58.80 ID:Q8V7y0Uz0

(*゚∋゚)「ッ!?」

クックルは反射的に、モララーが乗っていない方の拳でモララーを殴り飛ばそうとする。
しかしモララーは笑いながらそれを回避、床の上に着地した。


クックルの腕から降りた彼の手に、長剣はない。
何故ならその長剣は今、クックルの右の眼に突き刺さっているのだから。


ξ;゚△゚)ξ「クックルさん!?」

その余りの衝撃に、ツンの足がニ・三歩進む。
だが、それをクックルは手を上げて制した。

(*"∋゚)「問題ない。片方の眼がなくなっただけだ。……まだ戦える」

短く答えて、クックルはモララーに向き直す。
モララーは笑いつつも、その手に再度長剣を握っていた。

( ・∀・)「頑張るねぇ。ならば、こうしてみようか」

モララーは長剣を、空に向かって斬り付ける。
もちろんそこには何もない。剣の斬撃の延長線上にクックルがいるだけだ。

だが、そこに、ゴトリという音が響いた。


見れば、クックルの右腕が床に転がっていた。


28 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:00:27.08 ID:Q8V7y0Uz0

ツンの、しぃの叫び声が。
ブーンやギコの驚愕の声が、こだまする。

(*"∋゚)「……空間の断裂? いや……空間を固める“力”を応用しての空間の刃の作成か」

だがあくまで、クックルは慌てた様子を見せない。
逆にモララーが疲労の表情を浮かべていた。

(;・∀・)「ふふっ……どうも、頭が痛くなってきたな」

(*"∋゚)「“力”の使い過ぎだな。疲れただろう。そろそろ眠れ」

平気な顔をして歩み寄って来るクックル。
モララーは疲労しつつも、やはり笑って両手を掲げる。

( ・∀・)「何、疲れきってしまう前に終わらせるさ」

その両手が下ろされるのと同時。
クックルの頭上の天井が、いきなり崩れた。

声をあげる暇もなく、クックルは天井だったものに押し潰される。

やがて彼の姿が見えなくなった。
モララーは天井の残骸の山に登り、そして残骸の中へと長剣を深々と刺し込んだ。
残骸の中から呻き声が少しだけ聞こえ―――そしてやがて、途切れた。


嘲るような笑い声と怒号。悲鳴が交差して、奇妙な旋律を奏でた。
残骸の下から漏れ出る紅が、ゆっくりと床を侵食していた。





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