十七章下それからいくつかの月が過ぎた頃。 ミンナは、無数の組織の人間に囲まれていた。 だが彼は表情をピクリとも動かさない。 何故なら、それは初めての事じゃなく―――むしろ日常茶飯事の事だったのだから。 彼は詰まらなそうに、いつものようにただ両腕を振るうだけ。 それだけで組織の人間が持っていたナイフが舞い、斧が飛び、剣が踊り狂う。 血が舞い上がり、叫び声が響く。 十分後には、彼の目の前に立つ人間はいなかった。 それもまた―――いつものように。 ( ゚д゚ )「……くだらない。わざわざ死にに来たのか、こいつらは」 返り血で染まった手を見詰めつつ、彼は呟いた。 その時だった。 パチパチパチ……と一人の軽い拍手が響き渡る。 その音はどこから鳴っているのか分からない。 いや、どこから鳴っていないのか分からない。 それでもミンナは表情一つ変えない。 「いやぁ、見事だ。見事な大量殺戮だ」 ( ゚д゚ )「誰だ。どこにいる」 「誰か、ね―――」 そこで一旦声が途切れて、 「私は、モララーという者だよ」 彼のすぐ真後ろから、声が続けた。 (;゚д゚ )「――――――ッ!?」 ミンナは動けない。動いてはいけないような気がした。 「……まぁ、そこまで緊張しなくても良いさ」 言いつつ、声はミンナの前にまわってくる。 やがて彼の眼に入ったのは、皮肉な笑みをたたえた男。 ( ・∀・)「やぁ、ミンナ君。初めまして」 ( ゚д゚ )「……何の用だ」 ( ・∀・)「身構えないでくれるかな? 私は君の敵じゃないのだから」 ( ゚д゚ )「では尚更。何の用だ」 ( ・∀・)「うん、その用件を話したいんだけど、少し重い話になっちゃうんだ。 それでも、ちょっと話を聞いてくれるかな?」 ( ゚д゚ )「重い……話?」 ( ・∀・)「あぁ。これからの君の人生を決めるような、ね」 ( ゚д゚ )「むぅ……」 ( ・∀・)「悪い話じゃないだろう? する事もなしにたださまよっていた君の道が決まるのだから」 ( ゚д゚ )「……良いだろう。話せ」 ( ・∀・)「あぁ。……さっき言ったように、私はモララーという者だ。 そして“管理人”という、人間を粛清しようとしている異能者で構成される組織の長だ」 ( ゚д゚ )「…………………」 ( ・∀・)「ミンナ君。君も、異能者だ。サイコキネシスの“力”を持つ、立派な、ね。 そして君は人間に憎しみを抱いている。……どうだい?」 ( ゚д゚ )「つまり、“管理人”に入らないかと、そう言っているのか?」 ( ・∀・)「頭の良い人間で助かったよ。して、答えは?」 ミンナは少し顔を下げる。悩んでいるようだ。 しかし、その顔はわずか十秒で上げられた。 ( ゚д゚ )「……良いだろう。イエスだ」 ( ・∀・)「ははは。良い決断力を持っているね。嫌いじゃない」 ( ゚д゚ )「早い決断力がなければ、ここまでは生き延びられませんよ。……モララー様」 ( ・∀・)「なるほど、早速敬語か。状況適応能力もあるようだね。優秀だ」 言って、モララーは身体の向きを変える。 ( ・∀・)「ついてこい、ミンナ。お前に、居場所を与えてやろう」 ( ゚д゚ )「…………………」 歩き出すモララーに、無言でついていく。 彼らの歩く道には、血が絶えなかった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ( ゚д゚ )「まぁ大体こんなものだ」 語りを終えたミンナは、サイコロを懐に戻す。 ( ^Д^)「……お前も大変だったのな」 ( ゚д゚ )「まぁ、それなりにな。……とは言っても、お前のように命の危険に晒された事はないがな」 ( ^Д^)「俺は“力”がバレる歳が歳だったからな。戦おうにも戦えなかった。 ……それにしても、お前の友達―――ビロードだっけ、ひでぇな」 ( ゚д゚ )「あいつのせいで人生が狂ったようなものだからな」 ( ^Д^)「そいつのその後は?」 ( ゚д゚ )「知らん。知っていたら既に殺している」 ( ^Д^)「まぁ、確かにな」 ( ゚д゚ )「……そういえば、プギャー。お前、両親は?」 ( ^Д^)「両親は俺を旅立たせた張本人だよ。感謝してる」 ( ゚д゚ )「……何故だ?」 ( ^Д^)「俺の両親は、『ここに居たら殺されてしまうから』つって俺を旅立たせたんだ。 件の銅色のナイフを持たせて、ボロボロ涙を流しながらな」 ( ゚д゚ )「両親には会いに行ってるのか?」 ( ^Д^)「……たまに墓参りに行ってるよ」 ( ゚д゚ )「……殺されたのか?」 ( ^Д^)「あぁ。反異能者組織の中でも狂った奴が、『俺を逃がした』って理由で殺したらしい」 ( ゚д゚ )「…………………」 ( ^Д^)「そいつは例の銅ナイフでグシャグシャにして、墓周りに咲いてる彼岸花の肥料にしてやった」 ( ゚д゚ )「もう吹っ切れてるのか」 ( ^Д^)「あぁ。それもまた、色々とあったんだけどな」 ( ゚д゚ )「……なるほど、分かった」 ミンナは椅子から立ち上がる。 ( ゚д゚ )「私も、そろそろ吹っ切らねばな……」 ( ^Д^)「あん?」 ( ゚д゚ )「いや、何でもないさ」 言って、ミンナはプギャーを見詰める。 ( ゚д゚ )「今回は話を聞かせてくれて、感謝する。 存分に身体を休めてくれ」 ( ^Д^)「俺もお前の話が聞けて、新鮮だったよ。 じゃ、お言葉に甘えて、休むとするかな」 ( ゚д゚ )「そうすると良い」 その言葉を最後に、出て行こうとするミンナ。 その背中に、プギャーは叫ぶように声をかけた。 ( ^Д^)「ミンナ!」 ( ゚д゚ )「……何だ、プギャー」 ( ^Д^)「ビロードとかいう奴がお前を裏切ったとしても、俺はお前を裏切らないからな!」 ( ゚д゚ )「……プッ……」 ( ^Д^)「な、何だよ」 ( ゚∀゚ )「ク、ククッ……いきなり何を言うかと思えば、そんな事か。ハハハハッ……」 (;^Д^)「うるせぇ! 分かったなら、さっさと出て行きやがれ!」 少しの間笑い続けると、ミンナは笑みを消してプギャーを見詰める。 ( ゚д゚ )「プギャー」 ( ^Д^)「今度は何だよ」 ( ゚д゚ )「……ありがとう」 言って、ミンナは部屋を出て行った。 (;^Д^)「? 最後の最後まで意味が分からないな、あいつは……」 溜め息と共に、ベッドにその身を横たえる。 そして、「あっ」と眼を見開く。 ( ^Д^)「そういや、あいつが笑った顔……初めて見たな」 何だかおかしくなって、一人笑う。 その笑い声が聞こえなくなった時。 プギャーは既に夢の中だった。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|