2007/01/31(水)01:15
( ^ω^)が料理人になるようです(第十三章下)
35 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:28:56.04 ID:ajC0DBd70
ξ;゚△゚)ξ『ちょ…なんでクーさんがここにいるのよ』
最初に口を開いたのはツンだった。
クーさんは平然と答える。
川 ゚ -゚)『なんだ、内藤withその他大勢その1。
バースペースのグラスを買うのにわたしが来て問題があるのか?』
そう言ってクーさんは軽やかにくるりと体を一回転させた。
フリルのついたスカートがふわりと翻り、白黒模様のタイツに包まれた太ももを露出させる。
川 ゚ ー゚)『みんな、わたしの私服を見るのは初めてだろう?
どうだ。なかなか似合っていると思わないか?』
透き通るような白い肌。
宝石のような瞳。
丁寧に切りそろえられた緑がかった黒髪。
バーテンダースタイルのクーさんも素敵だけど、
今のクーさんも上品な人形のような美しさがあった。
でも。
だけど…。
('A`)『クーさん確か四捨五入したら三十路ですよね?
それでそのファッションはちょっと…』
川#゚ -゚)『ドクオ。貴様は来月から無期限の減給が決定した。覚悟しておけ』
(;'A`) ガーーーーーーン!!
40 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:34:41.73 ID:ajC0DBd70
(;'A`)『…減給…減給…』
ボソボソ呟きながら肩を落としているドクオを最後尾に、僕らは料理長&マネージャーと別れビルを出た。
( ^ω^)『当たり前だお』
(*゚∀゚)『ドッ君はちょっと乙女心を勉強した方がいいかもね』
( ^ω^)『そう言えばツーさんも来年には【四捨五入したら三十路】にリーチがかかるはず…』
(#゚∀゚)『…!!』
…睨まれた。
ξ゚△゚)ξ『別にいいんじゃない? 三十路手前であの服はないと思うわよ』
( ;^ω^)(なんか最近ツンとクーさん仲悪い気がするお)
そんな事を話しながら探索を続ける。
途中ドクオとツーさんは50センチ大の竹製の蒸篭を、僕はチタン製の軽い中華鍋を購入した。
ツンは…何に使うのか分からない竹篭やら鉄鍋やらを買い込み、僕の両手はどんどん塞がっていく。
( ;^ω^)『重いお』
ξ゚△゚)ξ『男でしょ!! 頑張んなさい!!』
なんでせっかくの休みに体力消化しなきゃいけないんだ?
ヒーヒー言いながら歩くうち、僕らは西洋風の甲冑が店頭に飾られている包丁専門店に到着した。
(*゚∀゚)『ここは合羽橋道具街で最も歴史がある包丁屋の1つだよ!!ここならブーちゃんが気に入る包丁がきっと見つかるはずさ!!』
42 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:39:09.04 ID:ajC0DBd70
なぜか嬉しそうなツーさんを先頭に僕らは店に入る。
( ;^ω^)『うはwwwスゲェwww』
その空間は4面の壁全てに包丁が展示されていた。
家庭用は勿論、その道のプロが使うような専用の包丁が到る所に陳列されている。
例えば出刃包丁・柳葉包丁。
寿司切り包丁や麺切り包丁。
鋸の様な刃をしたパン切り包丁。
生まれて初めて見た鉈の様な包丁はウナギを裂く専用の包丁との事だ。
更には『鯵』『鰯』『鮪』など魚の名前が寿司屋の湯飲み茶碗風に刃に彫刻された包丁や、
竜が掘り込まれた青竜刀までなぜか展示されていた。
ξ;゚△゚)ξ『…確かに凄いわね』
(*゚∀゚)『でしょ!? ここまで充実した品揃えの店はなかなか無いさ!!』
忙しなく店内をキョロキョロと見渡すツンと、何故か自慢げなツーさん。
僕は包丁を1本1本手に取るようにチェックしていく。
……それにしても、包丁ってこんなにメーカーや種類がたくさんあったのか。
……もし、今地震がおきたら間違いなく死ぬな。
そんな事を考えながら店内の殆どの包丁を手に取り、
残るは高価な和包丁のみになりかけた時。
僕は店内の最奥片隅に『それ』を見つけた。
44 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:44:40.40 ID:ajC0DBd70
見つけた…と言っても、あの感覚はなんて言ったらいいんだろう。
『それ』は鋼の
僕だけが探していたんじゃない。『それ』も僕を待っていたような気がする。
黒鉄色【くろがね】の中華包丁。
陳腐な表現だけど、まるで磁石のN極とS極の様にお互いに惹かれあう感じ。
冷たく光る刃に無骨に掘り込まれた
僕はゆっくりと『それ』に近づき。
一刀斎虎徹の銘。
おそるおそる手に取った。
45 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:45:39.96 ID:ajC0DBd70
ずしりとした重量を右手から感じる。
それでも何故かドクオの包丁を持った時のような過重感はない。
程良く伝わる重さは自己主張しすぎない位の存在感を伝えてくる。
柄の部分は太すぎず細すぎず僕の手にフィットし、
そのせいかまるで自分の手がそのまま刃物になったような錯覚すら覚える。
ξ゚△゚)ξ『…ょっと!! 内藤!!』 ( ^ω^)
遠くの方でツンが僕を呼んでいる。
振り返ると
ξ゚△゚)ξ(^ω^ )
何故か目の前10センチの距離にツンがいた。
( ;^ω^)『うおっ!! ツン、いつの間にこんな近くにwww』
ξ////)ξ『いつの間にって…ずっといたわよ!!
何回声かけても返事しないし…蹴っ飛ばそうかと思ったわ!!』
( ^ω^)(赤面する意味が分からないお)
(*゚∀゚)『ずっと見入ってたみたいじゃないか!! そんなに気に入ったのかい!?』
ドクオとツーさんまで僕の右手の『それ』を覗き込んでいる。
全く気がつかなかった。
46 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:47:18.29 ID:ajC0DBd70
('A`)『一刀斎虎徹か…西の方の刀鍛冶だったな。
もともと和包丁専門だと思ってたが中華包丁も作ってたのか。
それにしてもマニアックなの見つけたな』
ドクオが人差し指をあごにあて、思い出しながら話す。
同じしぐさをクーさんがすると綺麗だが、ドクオがするとやたらキモイ。
(*゚∀゚)『虎徹!? 凄い銘だねぇ!! ギコさんの【菊一文字】にも負けてないんじゃないかな!!
ブーちゃんが見とれてたのも分かる気がするよっ!!』
( ^ω^)『僕そんなに見とれてましたかお?』
ξ;゚△゚)ξ『気付いてないの? 魂が抜けたみたいになってたわよ』
(*゚∀゚)『う~ん、まさに魔刀だねっ!! で、ブーちゃんそれに決めたのかい!?』
僕は首を縦に振る。
( ^ω^)『僕の包丁は…これしか考えられないお!!』
48 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:48:45.38 ID:ajC0DBd70
随分長くこの店にいたらしい。
店を出た時には夏の日は落ちかけていた。
当然両手にはツンの荷物を持たされていたけど、足取りは軽い。
(*゚∀゚)『ブーちゃん嬉しそうだね!!』
('A`)『俺も初めて自分の包丁買った時の事思い出すぜ』
改めて僕は入社当時ドクオの包丁を破損してしまった時の事を思い出していた。
今ならドクオがなんであれ程怒ったのか理解できたし、
逆になんでもっと怒らなかったのか理解できなかった。
( ^ω^)(これは僕の宝物だお。 誰にもさわらせたくないお)
みんなと別れてから僕はスーパーで大根を1本購入した。
家に着くなり、さっそく箱から出した一刀斎虎徹を手にして台所に立つ。
慣れない中華包丁だったけど、意外なほどにスムーズに大根は刻まれていった。
切りすぎた大根を味噌汁の具にし、ノンオイルのゴマドレッシングをかけてサラダにした。
それでもあまったので、袋詰めにして冷蔵庫にぶち込んだ。
( ^ω^)『こんなに明日が楽しみなのは久々だおwww』
僕は丁寧に洗った包丁を箱に仕舞いこみ、枕元において寝た。
なぜかクーさんの夢を見て、
( ^ω^)(冷たいけど暖かい…僕の包丁はクーさんに似てるお)
そう思った。