2007/04/06(金)09:54
('A`)ドクオと川 ゚ -゚)クーは夢の中で出会うようです(第一話上)
1 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:08:27.42 ID:bjpGI8cC0
第一話 「コタツとミカンとうつ伏せ少女」
全てが止まっていた。
('A`)(……なんだこれ)
目の前には小太りな少年。その手には包丁。その刃の先には自分の体。
('A`)(俺刺されてるのか……)
何故か痛みはなかった。刺されていると言う事実を目で知覚することは出来ても、痛覚で感じることは出来なかった。
('A`)(後ろにも誰かいる…のか?)
背後には少し巻いた金髪が鮮やかに光を反射している美しい少女。
これもまた何故だか分からないが、姿を視認せずともそれは自然と脳内に飛び込んできた。
('A`)(よく分からんが、人に刺されるなんて初めて体験したな)
けたたましい不快音が耳を劈く。
('A`)(うるせーな……今度は何だよ)
目の前の異常な状況は徐々に消え失せ、不快音だけが耳に張り付いて離れない。
('A`)(ああ……もしかして……)
2 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:10:28.70 ID:bjpGI8cC0
('A`)「…………」
窓から射す日の光と今なお身を震わせ朝を告げる目覚まし時計がドクオの頭を刺激する。
それと共に先ほど感じた謎がゆっくりと解けていく。
('A`)「夢……だったか」
視界より思考のほうが先に明晰さを取り戻した。
目覚まし時計を止めてベッドから降り、大あくびをしてから部屋を出た。
階段を降りてダイニングに行き、両親に朝の挨拶をしてから朝食にありついた。
いつもと変わらない朝の風景。眠い目をこすりながら一口一口ゆっくりと口に運ぶ。
('A`)「ごちそうさん」
朝食を終えるとすぐに制服へと着替え始める。ゆっくりだがスムーズに朝の準備は整っていく。
面倒臭がりなドクオは朝の準備に時間をかけない。そんなことに時間を費やすくらいならもっと寝ていたい、という考えだ。
歯を磨き顔を洗い鼻毛チェックを終えた後、荷物を取りに二階へ上がる。
('A`)「いってきます」
二階から降りたらそのままの足で玄関を開け、学校へと向かった。
3 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:12:18.54 ID:bjpGI8cC0
――VIP高校――
('A`)「おはようさん」
( ^ω^)「またHR開始五分前ぴったりだお!
もしかして廊下で時計見ながら待ってたりしてるんじゃないかお!?」
教室に入るやいなや元気のいい声で話しかけてくるのは小太りな少年。
まだ朝だと言うのにその額には汗が滲んでいた。
('A`)「そんな面倒なことしねーよ。ただ時間通りに行動してるだけだ」
ξ゚△゚)ξ「時間通りに行動する方がよっぽど面倒だと思うんだけど」
ドクオの発言にすかさず突っ込みを入れる金髪の少女。
まだ朝だと言うのにその言葉には何かトゲトゲしいものが感じられる。
('A`)「ブーンもツンも朝の挨拶ぐらいしろよ」
小太りな少年と金髪の少女に注意する。そこで朝見た夢の記憶がじわじわと蘇ってきた。
('A`)「あー、お前ら見て朝見た夢のこと思い出したわ」
( ^ω^)「僕たちが夢に出てたのかお?」
ξ゚△゚)ξ「ふーん、一応その夢の内容聞いといてあげるわ」
相変わらずトゲのある言葉。
('A`)「俺がブーンに刺されててツンが俺の後ろにいた」
5 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:14:36.22 ID:bjpGI8cC0
(;^ω^)「ちょwwwwwそれ何て昼ドラwwwww」
ξ;゚△゚)ξ「それじゃ私がドクオにかばわれてるみたいじゃない」
自分の予想とは反した答えが返ってきたせいか、二人は少し驚いた表情で返した。
('A`)「多分そんな感じだろうな。まぁ痛みは感じなかったし結構面白かったぞ」
( ^ω^)「どうせなら白馬に乗った王子様役とかで出演したかったお」
ξ゚△゚)ξ「あんたが王子様になれるわけないじゃない。せいぜい豚小屋がいいとこだわ」
ブーンの言葉にすかさず毒を吐くツン。
(;^ω^)「せめて豚小屋じゃなくて豚と言ってほしかったお」
ξ;゚△゚)ξ「ちょ、豚でいいの!?もう少し自分にプライド持ったらどうなのよ」
( ^ω^)「別にいいお。ブーブー言ってるだけで餌をもらえるなんて十分幸せじゃないかお」
(;'A`)「なんかお前が可哀想に思えてきたよ」
6 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:16:48.26 ID:bjpGI8cC0
朝のHRの始まりを告げるチャイムが鳴った。
一分もしない内に教師がやってきて教室はやっと本来あるべき姿へと戻った。
从'ー'从 「朝のHRをはじめまーす。まずは出席からねー」
教師は教室全体を見回した後出席簿をつけ話を始めた。話と言っても特別な行事がない限りそう長くは話さない。
('A`)(今日の夢は面白かったな)
教師の話など気にも留めず考え事にふける。
昔の思い出だとかトラウマだとかを夢で見るというのは、マンガや映画などではよくある話だ。
ドクオはいつもそれを不思議な気持ちで見ていた。
自分はそんな夢を見たことがないし、夢とは意味のないものだと思っているからだ。
意味なく現れる異形の怪物に怯え、逃げ惑い、最後の逃走手段として目を覚ます。
昔恨みを買った人物と、思い出の場所で出会い、トラウマの引き金となる言葉を放たれ恐怖で目が覚める。
前者はよくあることだが、後者は見たことがないしこれからも見ることはないだろう。
夢とは所詮、夢でしかない。
('A`)(また面白い夢が見れると良いな……)
ドクオは面倒と同じくらい退屈を嫌った。寝てる間でさえも。
从'ー'从 「――と言うことで朝のHRは終わり。それじゃみんなお勉強がんばってねー」
教師が教室から出て行く前にドクオは眠りについていた。
7 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:19:01.29 ID:bjpGI8cC0
目を開く。教室とは違う空間が目の前に広がる。
('A`)「なんだここ」
体を起こすとここが六畳ほどの広さの部屋だということが分かった。
畳が敷かれ部屋の中央にはコタツがあり、部屋の端には20インチほどのテレビも置かれていた。
他にも中はよく見えないが台所らしき空間、トイレや風呂と言ったようなものも確認できた。
畳を触れば感触があるし電灯の明かりをまぶしく感じることも出来る。全てが夢の中では初めての体験だった。
('A`)「いいねいいねー、これまた面白い夢だ。まさか夢の中でコタツに入れるとはなー………ん?」
スイッチをオンにしてコタツに入ろうとしたドクオの足の裏に何かが触れた。冷たい髪の毛のような感触。
恐る恐るコタツをあけて中を見る。
('A`)「……何やってんの?」
うつぶせでうずくまっている少女らしき影が見えた。長い黒髪を床に垂らしたまま微動だにしない。
('A`)「……まぁいいか夢だし。ご丁寧にミカンまで置いてあることだし食べようか―――」
何かが勢いよく衝突したような音と共に、コタツが振動した。
('A`)「まさか」
もう一度コタツの中を見る。未だにうつ伏せのままの少女がそこにはいた。
だが、そのシルエットは先ほどよりひどく悲しげだ。
8 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:21:02.67 ID:bjpGI8cC0
('A`)「あんた頭ぶつけたろ?」
先程と同じく返事はなかったものの、今度はスルスルと足の方から器用にコタツの外へ出て行った。
無表情ながら、ドクオの目をじっと見つめている制服姿の少女がそこにいた。
艶々しく長い黒髪。それと同じ純粋な黒を帯びた瞳。
意味を知らずとも、思わず「大和撫子」と形容したくなるような美しい顔立ちを、その少女は持っていた。
川 ゚ -゚)「痛い」
('A`)「どこが?」
川 ゚ -゚)「後頭部が」
特に痛がる素振りも見せず、少女は言う。
('A`)「やっぱり頭ぶつけたんだな。あんなとこでうつ伏せになってるからだ」
川 ゚ -゚)「コタツをくぐりぬけたくなる衝動にかられてしまった。
もう出口だろうと思って頭を上げたらやられた」
('A`)「それ、さっきの話か?」
川 ゚ -゚)「いや、十分ほど前のことだ。
悲しみを拭い前を向いて歩いていこうと決意した瞬間またやられたのがさっきのこと」
('A`)「よくわかんないけど萌えた」
9 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:23:06.72 ID:bjpGI8cC0
突然現れた奇妙な少女に興味はそそられたものの
ドクオは何も話さずに黙々とミカンを食べ始めた。
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
不思議な静けさ。
感情のない視線だけが自分の体に突き刺さり、ドクオは思わず尋ねた。
('A`)「あんたも食うか?」
川 ゚ -゚)「……食べる」
剥きかけのミカンをそのまま手渡す。
また新しいミカンへと手を伸ばす。
('A`)「………」
川 ゚ -゚)「………」
会話のないまま、時だけがゆっくりと過ぎていった。