第二章22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 21:53:43.12 ID:aoQyhL6e0―――――― ここで一つ昔話をしよう。 150年前、世界が争った。 ニーソク大陸、VIP大陸、ラウンジ大陸、天国大陸、シベリア大陸 5大陸魔導大戦として、今日に伝わっている。 人々は持てうる技術力を駆使し自分達が世界の頂点に立とうとした。 日々、相手を倒す為の魔道機械を作り出し、大陸全土が炎に包まれる。 が、戦火が大きくなるにつれ、世界で深刻なエネルギー不足が問題となった。 どんなに巨大な魔道兵器だろうが、エネルギーが無ければただの鉄塊。 各大陸では躍起になり新エネルギーの開発が行われた。 ここで、いち早くエネルギー問題を解消したのはラウンジ大陸。 それまでは、ウランを使用した原子力開発が主流だったが、 それに取って代わる発電方法が開発されたのだ。 発電方法自体はそのままだが、原料であるウランに特殊な処置を施すことにより 従来の何倍ものエネルギーを取り出すことに成功する。 その上放射線の放射量も減り、ラウンジ大陸各地でエネルギーが有り余る状態にまでなった。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 21:55:06.61 ID:aoQyhL6e0 その後ラウンジの猛攻が始まり、他の4大陸は各様ダメージを負う。 そんな中、他の大陸に比べ傷が浅かったVIP大陸が、 ラウンジ大陸の新エネルギー精製方法を知り得る。 ここから、5大陸の中で魔導機械生産技術が最も高かったVIP大陸の巻き返しが始まった。 ラウンジ、VIPの二強大陸の猛攻により、 天国・ニーソク・シベリアの3大陸は戦争に参戦する自力さえ無くなった。 ラウンジvsVIPの構図で、その後10年に及び魔導大戦は続く。 人々は疲弊し、度重なる攻防で地形まで変わる 『魔導大戦に終焉など無いのではないか?』 そんな考えが人々に浸透して行った・・・ 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 21:57:38.14 ID:aoQyhL6e0 が、終焉は思わぬ形で突如迎えられる。 新エネルギーの精製方法を行っていた発電施設が、次々と原因不明の大爆発・・・ 全国各地に発電所を配していたラウンジ、VIPは壊滅的な打撃を食らう。 空気中に放射能が広まり、人間にこそ害は無かったが、周りの動物達には影響を及ぼしていった。 その後、全ての国では戦争をする自力を奪われ・・・そのまま自然終戦。 太陽に近づき過ぎたイカロスが翼をもがれた様に、 神に近づき過ぎた人類もまた深手を負う。 150年の時を経た今でも、大戦前の文化には足元も及ばない水準なのが現状だ。 記録によれば、この大戦前後で世界の人口が2分の1に減少したとなっている。 ―――――― 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 21:59:09.14 ID:aoQyhL6e0 (`・ω・´)「しかし何故、その若さでカコログなんて探しているんだい?」 (`・ω・´)「ドクオ君位の年頃なら、訓練学校で 同年代の人達と競い合うのが普通じゃないのかい?」 (`・ω・´)「カコログが本当に存在すると思うのかい?」 同じ様なドクオの話を聞いた大方の人達が、一様に表す嘲りの様は無く、 シャキンの表情は真剣そのものである。 (;'A`)「そ・・・そんないっぺんに質問されても答えきれませんよ」 そしてしばらく間を置き、ドクオがシャキンの質問に答える。 ('A`)「シャキンさんに似ている知り合いが居るって言いましたが」 (`・ω・´)「うん・・・」 ('A`)「そいつをね・・・俺が殺したんですよ」 ('A`)「その時あいつが言った最後の言葉が、 『僕の分まで強く生きてくれ』 だったんです」 店内には、ドクオの声と壁掛け時計が時を刻む音だけが聞こえる。 ('A`)「きっと志半ばで、未来を絶たれたのが悔しかったんでしょうね。 まぁ、その夢を自分を殺した相手に託すのも変な話ですが」 ('A`)「その後は、あいつのその言葉を実現する為。あいつの夢を叶える為。 四六時中強くなる事だけを考えて過ごしました。」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:01:12.10 ID:aoQyhL6e0 ('A`)「そのお陰か、中級訓練学校の中では飛び抜けた実力を身につけましてね」 ('A`)「そんな力を認められたのか、 貧民街出身の俺に上級学校からお呼びが掛かりましてね。 もう少しで・・・アイツの言葉を実現できる所まで行ったんですが」 ―――上級学校 中級学校の中で選ばれた、ほんの一握りの者だけが進学できる学校。 ここへ進学できること即ち、 将来専攻した分野で上級の位置へ就けると同義語だろう。 しかし、上級学校の実状は、 権力者や金持ちの子供達に大多数の席を埋められて居る。 貧しい者や、後ろ盾が無い者には雲の上の世界だと言える場所だろう。 ―――――――――――― ('A`)「あともう少しだったんですがね」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:02:03.50 ID:aoQyhL6e0 ドクオが物憂げに呟く。 ('A`)「権力に全て奪われました」 ('A`)「・・・」 ('A`)「その時気付いたんです。 俺一人の武力じゃ権力には勝てない。 かといって、後ろ盾も何も無い俺じゃ権力を得る術は無い」 ('A`)「だから強くなるには、 権力を超える武力を手に入れるしかないってね。 カコログに行けばそれが叶う気がするんです。」 まるで自分に言い聞かせる様に、静かにドクオが言葉を重ねていった。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:03:20.94 ID:aoQyhL6e0 (;`・ω・´)「もし・・・権力を超える武力とやらを得たら、 ドクオ君はどうしたいんだい?」 そのシャキンの質問の後しばらくの間、店内には時計が時を刻む音だけが鳴る。 重苦しい空気の中ドクオが呟く。 ('A`)「それを手にした時点で、アイツの願いは叶えられたと思いますからね。 あまり考えて無いですが・・・」 ('A`)「もしそれが叶うなら・・・・・・神様でも倒しましょうかね」 (;`・ω・´)「神?・・・倒す?」 ('A`)「神様に勝てるなら、それに相応した力を 持っているって事を証明できる訳でしょう?」 筋が通るようで、矛盾している? 矛盾しているようで、筋が通る? そんなドクオの話を聞きながら、シャキンが堰を切ったように話し出す。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:04:03.74 ID:aoQyhL6e0 (;`・ω・´)「実はね・・・僕も若い頃、考古学者として 大陸各地の5大陸魔導大戦前後の品を発掘、研究してたんだ」 (;`・ω・´)「今・・・この世界は、昔の栄華を取り戻そうと躍起になってるが、 あの文明は人間の許容範囲を遥かに超えている」 (;`・ω・´)「発掘品の破片からですらも、テクノロジーの高さが解かる。 魔導大戦時の文化は、人類に何時か必ず災いをもたらすだろう」 (;`・ω・´)「もし、完璧な状態の高度な魔導兵器が見つかれば・・・ それとそれを扱う物は神となれるだろうね」 『自分が世界を牛耳る支配者を生み出してしまうかもしれない』 (;`・ω・´)「そんな思いが、日々押し寄せてきてね。 ある日、とうとう僕は、怖くなって発掘研究施設から逃げ出したんだ。」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:05:01.55 ID:aoQyhL6e0 (;`・ω・´)「・・・・・・」 (;`・ω・´)「神を作り出すような真似が・・・君にはできるのかい? そして君はそれを倒せると思っているのかい?」 (;`・ω・´)「カコログを探し当てるというのは、多分そういうことだよ?」 シャキンはカウンターから前のめりになりドクオに詰め寄る。 ('A`)「・・・」 ('A`)「どんな犠牲を払うとしても、アイツとの約束を叶えたい。 多分、俺が今生きてるのはその約束があるからですから」 ('A`)「最後位は・・・自由に生きてみたいんですよ」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:07:14.50 ID:aoQyhL6e0 (`・ω・´)「そうかい・・・」 ドクオの返答を聞き終えると、シャキンは暫し腕を組みながら考えむ。 そして一人で何度も頷きながら開口した。 (`・ω・´)「解かった!! 誰かの夢を摘み取る権利は僕には無いからね。 若い頃に、思いっきり無茶してみるのも良い思い出になるさ」 そこには先ほどまでの必死の形相は無く、元の温和なシャキンの表情があった。 (`・ω・´)「此処から北にある『ワクテカ都市』の『荒巻』って人を訪ねて見ると良い」 ('A`)「その人がカコログについて何か?」 (`・ω・´)「少なくとも・・・この辺りではカコログについて、一番精通している人物だと思う。 当ても無く探し歩くよりは良いと思うよ」 (`・ω・´)「ただし・・・自分のしていることへの 自覚と覚悟だけは持ち続けて欲しい。 これは君一人の問題じゃなくなるからね」 ('A`)「はい・・・解かりました。 どうもありがとうございます」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:08:15.66 ID:aoQyhL6e0 若い頃にしか出来ない事は山ほど在る。 そして、それが出来なくなってから初めて、人はそれが出来ない事に気付くものだ。 もしかすると・・・シャキンは、 自分の果たせなかった夢をドクオへと託したのかもしれない。 (`・ω・´)「ん?空が明るんできたみたいだね。 そろそろ出発の時間じゃないかな?」 時刻を確認するような素振りも見せず シャキンが唐突に切り出す。 ('A`)「え?ここ地下1階ですよ、なんで解かるんですか?」 (`・ω・´)「この店の閉店時間は空が明るくなった時間だからね。 なーに、職業病って奴だよ。 自慢じゃないが、これだけは外した事が無い」 ('A`)「あーそうなんですか。 どうも色々ありがとうございました」 ドクオは、閉店の時間が差し迫っていることを知ると、 グラスに残っていたカクテルを一気に飲み干した。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:09:04.59 ID:aoQyhL6e0 (`・ω・´)「なーに、若いお客さんとこうして話せる機会なんて滅多に無いからね。 僕も楽しかったよ。ありがとう」 二人は別れの挨拶を交わし、互いに頭を下げる。 ('A`)「あ、ここ煙草置いてますか?」 席から腰を上げようとしたドクオが、思い出したように尋ねる。 (`・ω・´)「銘柄はないんだい?」 ('A`) 「できればパーラメント。無ければ何でも良いですよ」 (`・ω・´)「うーん・・・ちょっと待ってね」 シャキンは店の奥へと消えると、手に小箱を持ち、再び姿を見せる。 (`・ω・´)「すまない。3箱しかなかったが足りるかな?」 ('A`)「十分ですよ。 じゃ、カクテル代と煙草代ここに置いときますね」 (`・ω・´)「どうもありがとう。 また何時でも来るといい」 ('A`)「では、またいつか」 お互いが軽く手を振り終えるとドクオは扉を開け、 外の光へと吸い込まれた。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/09/04(月) 22:09:47.97 ID:aoQyhL6e0 ('A`)「うぉ!!まぶし!!」 空から降り注ぐ光がドクオの両目を突く。 ドクオが空を見上げると、空は赤く色付き白んだ空と交わっていた。 ドクオは、再び天を仰ぎながら目を閉じる。 (-A-)「まってろよ・・もう直ぐ終わらせてやるからな」 誰に投げかけているのだろう・・・ その言葉は、ドクオの頬を撫でた朝の爽やかな風に乗り消えていった。 ドクオは、朝露を含んだ朝の空気を深呼吸し終えると、 目を開き両手で左右の頬を叩く。 ('A`)「よっしゃ!!部屋戻って出発だ!!バッチコイ!!」 こうして、今日もドクオの旅が始まる。 ジャンル別一覧
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