三十九章三( ^Д^)「ひゃぁあああぁああぁっはぁぁあぁああぁあぁっ!!」 前方への跳躍はその超高速の一歩で、二人との距離を大幅に埋める。 そして更に、彼の速度は羽ばたいた背の翅によって加速。 一瞬で生まれた爆発的な速度をその身に纏い、彼は一直線に二人へと襲いかかった。 ξ;゚△゚)ξ「なっ―――!?」 (;゚ω゚)「くっ!!」 瞬間。咄嗟にブーンは横へ跳躍し、ツンは上空へ羽ばたく。 そして丁度、彼らの身を掠る形でプギャーが抜け ( ^Д^)「逃がさねぇよ!!」 プギャーはそのまま、身体の向きを変える事もなく上方へ跳躍した。 体勢も整っておらず、方向も出鱈目なその跳躍は―――しかし空中で突如方向転換。 身は明確な制御を持ってツンに向かい、そしてそこで超加速。 ξ;゚△゚)ξ「翅……!!」 戦慄に言葉を漏らす。 一瞬の硬直の後、焦るようにして彼女の身も方向転換。 そして連続で翼をはためかせ、加速。 数瞬で圧倒的な速度を得たツンは、空に残像を残して飛び行った。 しかし彼女の表情に安心はない。 分かっていたのだ。 背後に迫る気配、耳に残る雑音を鳴らす羽音、押し殺した笑い声。 プギャーはすぐ後ろにいる、と。離される事無く、追ってきていると。 だから翼は止める事無く、加速のみを刻む。 そうしていれば、逃げきる事は出来ずとも、捕まる事はまずない。 そして逃げていれば――― (#゚ω゚)「僕の事、忘れてないかお!?」 ツンの願い通り、タイミングを見計らってブーンが跳び上がってきた。 彼の身体は真っ直ぐに、ツンを追うプギャーの元へと迫り――― ( ^Д^)「忘れる筈がねぇだろ、馬鹿が」 振り上げられた白銀の脚。 それは易々と枯葉色の脚で受けられ ( ^Д^)「ふんっ!」 (;゚ω゚)「ッ!?」 逆に、蹴り落とされた。 飛来の勢い以上の速度で彼は落下し、床を破壊。生まれた砂煙にその姿を消す。 それだけでなく、プギャーの身はその反動によって更に加速する。 ξ;゚△゚)ξ「ブーン! ……くっ!!」 ブーンの身が床に墜落するのを眼の隅に捉えつつも、ツンは羽ばたきを再開。 ブーンも心配だったが、今は逃げる以外の選択肢はない。 が、しかし加速を得たプギャーの身体は、彼女の加速が膨らむ直前に彼女の元に辿り着き ξ;゚△゚)ξ「ぁ、はっ……!!」 振るった草色の鎌が、彼女の背を深く長く切り裂く。 鮮血が勢い良く噴出し、彼女の白銀の翼とプギャーの顔を紅に染めた。 しかし彼女は苦痛を噛み殺し、その翼をはためかせる。 爆発的な加速を纏って彼女が取った選択は、やはりプギャーからの逃亡だった。 ( ^Д^)「また逃げるのか。いつまでそうしてる気だ!! 逃げてるだけじゃ俺は倒せないぞ!?」 ξ;゚△゚)ξ「…………!」 ( ^Д^)「その様子じゃ、何かやってやろうって事でもなさそうだなぁ? 戦闘放棄か? 俺はそれでも構わねぇぞ?」 ξ;゚△゚)ξ「……うるさい」 ( ^Д^)「なら逃げてるばかりで、どうするつもりだってんだよ!! 何だ、ブーンの助けでも待ってるのか? 待ってても無駄だぞ? 奴が墜とされたの、見たろうが!?」 ξ;゚△゚)ξ「うるさい! そんな事……分かってるわよ!!」 ( ^Д^)「分かってねぇよ」 背後、上空より音がした。 破砕を伴ったその音は、天井を蹴った音―――それによる加速の音。 そして一瞬。羽ばたく彼女の右翼を、距離を詰めたプギャーの右腕が殴りつけた。 加速を纏った強力な衝撃は、ツンの右翼の制御を狂わせる。 ξ;゚△゚)ξ「なっ……」 中空でバランスを崩し、彼女の身体は反転する。 そしてそこで、眼だけを笑みに歪ませた死神と目が合った。 ( ^Д^)「助けてもらえると、お前はそう思ってた。 逃げていれば、その内ブーンが助けてくれると。隙を見て、俺を墜としてくれると。 ……それで、『私は戦う』だ? 何だ、囮として逃げ回っていたとでも言うつもりか?」 ( ^Д^)「嘗めんな。甘ぇんだよ、思考が。 テメェで道を切り開く気がねぇなら、さっさと死ね。目障りだ」 プギャーの背で翅が叫び、彼の身体が縦に回転する。 そして彼はその回転のままに、容赦なく枯葉色の脚を振り下ろした。 ξ;゚△゚)ξ「くっ!」 ツンは制御の利く左翼だけでその脚を受ける。 が――― ξ; △ )ξ「かっ……!!」 受けきれない。 大分緩和はしたが、幾分かのダメージは翼を貫通して彼女の腹部へ。 重い鈍痛が彼女の内臓を駆け巡り、彼女は血を吐き散らした。 そして、落下。 衝撃に、もはや右翼どころか左翼も思うように言う事を聞かない。 どころか、身体それ自体が思うように動かない。 視界にあるのは、遠ざかっていくプギャーだけ。 笑みの形を模したその眼の中、映り込む光は酷く冷たい。 どうにかしなければならない。 しかし、どうすれば良いのだろうか。 どうしようもない。 両の翼はしばらくは使い物にならない。 しかし、と言っても私には他の“力”なんてない。 もうダメなのだろうか。このまま落ちて、死に行くしかないのだろうか。 落ち行く中、思考にすら靄がかかる。 一瞬、脳裏に浮かぶブーンの顔。 もしかしたら彼が助けてくれるのではないか―――考えて、そして自分に絶望した。 プギャーの言葉は、間違っていなかった。 私は、ブーンが助けてくれるとどこかで思っていた。 戦うと決心したのに。覚悟を決めてきていた筈なのに。 自身の唇を噛み締める。 破れて血が滲み、口内の血の味が濃くなった。 私は、何を考えていたのだろうか。 もうダメ? ブーンが助けてくれる? 甘い、甘過ぎる考えではないか。 まだ何もしていない、何も行動していないのに、何がダメだというのだろうか? 自分の意志で戦うと決めたのに、何故、仲間の助けを前提にして考えているのだろうか? 決心はどこに行った。覚悟はどこに行った。 決心した筈ではないか。戦いを終わらせると。 覚悟した筈ではないか。その為には奪う事を恐れず、又、厭わないと。 なのに、この様は何だ。 仲間をあてにして、逃げ回って、墜とされかけて、絶望して――― まだ何もしていないというのに、姉や仲間との約束を破って勝手に死のうとしている。 そうだ。まだ終わっていない。 気付けたのなら、変われる。 否。変わらねばならない。 やれるだけの事をやってみるべきだ。 この状況すら、助けを期待していたからこそ起こったのだ。 自身で作り出した状況、自身で始末を付けるべきだ。 決心と覚悟を、嘘にしてはならない。 堅く誓った約束を、こんなところで、こんな形で壊してはならない。 足掻け!! 彼女は思考にかかっていた靄を吹き飛ばした。 そして必死で自身の助かる方法を模索して―――動く。 落下の中、彼女は全力で空を蹴った。 その動きは、彼女の身を少しだけ回転させる。 ただそれだけ。しかし、それが今の彼女にとっての最善で、全てだった。 彼女のその回転によって、彼女の身は翼を下にして落下する形を得た。 動かない翼であっても、それは異能の“力”を持った武器であり、主を護る盾である。 硬度は高いし、彼女の身を落下の衝撃からある程度は護ってくれる筈だ。 あまりに無力な、確証のない手段であった。 が、その手段を取らなければ、彼女の死は間違いのないものだったのだ。 ゼロであった可能性は、彼女の全力によって僅かな数を得た。 が。 落ち行く中、彼女は理解した。 ダメだ、と。 落下速度が速過ぎる。この速さは、翼が衝撃を吸収しきれない。 吸収しきれなかった衝撃は当然、その分自身の身が受ける事になる。 そしてその衝撃は、恐らくは身を滅ぼすのに十分なそれだ。 ξ;゚△゚)ξ「ッ――――――!!」 しかし彼女の表情に絶望や諦観の色は映らない。 安易に諦めるという思考を、彼女は先ほど捨てたのだから。 思い通りに動いてくれない翼を、それでも羽ばたかせる。 ぎこちなく動く翼は彼女の身の落下速度を僅かに落とし―――しかしまだ足りない。 ξ#゚△゚)ξ「まだ……まだ!!」 まだ死んでいない。 まだ終わっていない。 ツンは中空で、その手足をバタつかせた。 全くもって無意味な、ただ無様な足掻き。 しかしそれこそが、彼女に出来る精一杯の足掻き。 無意味で無様であろうとも、しかし彼女は諦める事はしなかった。 彼女の動作、そして表情に、上空のプギャーは軽く眼を剥く。 心中で僅かに感嘆の念を抱き ( ^Д^)「だが、もう遅ぇ。最初からそうしてりゃ良かったのによ」 言い捨てた。 同時、下方で音が響いた。床が崩れる音、砕かれた床と床とが打ち合う音だ。 そして彼の視界の隅、何かが動く。 動きは尋常でなく速い。そしてその動きの方向は、落ち行くツンへ。 その超高速の物体は――― ( ^Д^)「お、動いたか―――ブーン」 全身を埃と砂に塗れさせたブーンだった。 その身体の至る所には傷や痣が生まれ、先程の墜落の衝撃と、それによるダメージを物語っている。 中でも、墜落の際に切れたのであろうこめかみは大量の血を吐き出していた。紅が鮮やかに彼の横顔を染める。 しかし彼の眼は力強く、足掻く彼女を見詰めていた。 累積したダメージもあるであろうに、そのスピードは衰えていない。 ただただ、愚直とも言えるほど真っ直ぐに彼女へと駆けて行く。 ( ^Д^)「だがテメェも、遅い。もう間に合わねぇよ。 ツンと同じだ。もっと早く、もうちょっと早く―――気付いていれば、ってな」 小さく零したその声が届いたのか―――いや、決して届く筈はないのだが。 しかし声を聞いたかのように、彼は口を開く。 眼を剥き歯を剥き、脚を全力で動かして、抗議の咆哮をあげた。 (#゚ω゚)「まだだお!! まだ―――まだ終わっていない!!」 そしてその身が、明確に分かるほどに加速した。 ともすれば倒れそうなほど身体を前傾にし、一歩ごとに床を床であったものに変えて。 しかしそんな加速の素材を考えてみたところで、彼の今の加速の度合いには到底追いつかない。 彼の加速に対して、理由が追い付かない。 ( ^Д^)「……何だと? 限界の速さ、だった筈だが」 眉根を寄せて呟き、しかしそこには焦りはない。 多少の驚きはそこにあっても ( ^Д^)「だがやはり、間に合わないな。 その努力は認めるが、努力だけじゃどうにもならないものもあるって事d―――」 言葉が詰まる。 高まりつつあった加速―――加速に、加速がかかる。 一歩ごと。いや、一瞬ごと、一刹那ごとに彼の速さが磨かれていた。 こめかみからの血がその速さに後方へと流れて、空間に紅の帯を敷く。 しかしそれでも、その加速を以てしても。 プギャーの言葉通り、彼の身は落下するツンへと届かない。 遅過ぎたのだ。気付くのが。ツンの身へと走り出すのが。 だが、だが、それでも――― (#゚ω゚)「終わりなんて、認めないお!! 無理矢理にでも―――続かせてやる!!」 彼は踏み出したその脚を深く沈めた。 続く脚も揃えて沈め、そして体勢を極限まで低く、前傾に。 咆哮と共に、大跳躍した。 (;^Д^)「……あぁ?」 彼の身はツンへと超速で向かい―――そして。 (#゚ω゚)「ッ…………!!」 その手が、彼女の背を捉えた。 それは果たして、そう言えるのかどうか分からないが―――彼は、間に合ったのだ。 助けられた、と言えるほど形の出来た物でもない、が。彼は自身の限界を超えて、彼女の身に辿り着いたのだ。 落下の危険からは、逃れた。 だが今度は―――落下から救ったその速度が、新たな脅威となる。 ξ;゚△゚)ξ「ブーン……!?」 (#゚ω゚)「舌を噛む! 口閉じてろお!!」 まるで飛びつくかのような形で彼女に辿り着いたブーンは、あまりにも低い中空で身を捩らせる。 脚を無理矢理に地面に叩き付け、そのまま爪を突き立てて急制動。 しかし勢いは止まらず、床に爪による二本の破壊の跡を残しながら彼の身は進む。 そして彼は、その途中でツンを投げ捨てた。 それは彼女の身の為に。 彼女との最初の戦闘でしたように、彼女の身を護る為に。 彼女の身は回転しつつ、翼から床に落ちた。 翼を伝わって、翼が吸収出来なかったダメージが全身を駆け巡る。 耐え難い、尋常でない痛みではあったが―――しかし、確かに生きている。 そしてブーンは、ツンを投げ捨てたと同時に、床に突き立てた爪が抜けるのを感じた。 若干緩和はされたが、彼の身には有り余った速度の全てがかかっている。 視界の先には壁。このままぶつかれば、命が危ない。 自身の限界を超え、仲間を助ける為に膨らませた力が今、彼の身を滅ぼそうとしていた。 (#゚ω゚)「ッ……グゥ、ァ……ッ!!」 身を捩じらせ、どうにかして爪を床に突き立てようとする。 しかし爪は床を削り、上手く床を捉えられない。 あるいは突き立つ事があっても、それは片足のみ。すぐに抜けてしまう。 両の爪を突き立てる事が出来ず、思うように速度を止められない。 しかし―――いや、だからと言うべきか。 彼はせめて、脚を床と接触させる。 速度を出来得る限りまで落とす為に。 そしてすぐにその時は迫り、壁も迫った。 ブーンは激突の直前、床から脚を引いて前方に。そして両腕で身をカバー。 歯を噛み締め、来る衝撃に覚悟を決める。 (; ω )「――――――ッ!!」 まず脚が壁にぶち当たり、そして両腕のガントレットが衝突する。 硬い金属音が高らかに響く暇もなく、彼の肩が、腿が、身体が壁に激突した。 響くのは余りにも痛々しい、鈍い肉の音と骨の軋む音のみ。 叫び声は響かない―――その衝撃と苦痛に息が詰まり、叫び声をあげる事も出来ない。 脳が痺れ、思考に靄がかかり、呼吸が停止する。 そして一瞬。 激突のエネルギーは壁によって反発を受け、彼の身は壁で弾けて飛び、床を跳ねる。 掠れた息を絶え絶えに漏らし、彼は歯を食い縛って拳を握り締めた。 行き場を失くして全身を暴れまわる苦痛に、何とか耐えようとしているのだ。 眼は見開かれて床を睨みつけ、這う唸りが不気味に響く。 こめかみからの出血は床に小さな紅の円を作り、彼を尚も紅く染めた。 そしてそこに、噛み締められた歯の間から漏れた紅が加わる。 ξ;゚△゚)ξ「ブ……ブーン!!」 身を起こしたツンが、口端から血の筋を作りつつ叫ぶ。 膝で立ち、自らの身を両腕で抱き締めた彼女は、やはり苦悶の表情。 しかし眼に見えてブーンよりもダメージは少なく、彼女の声や呼吸はそれなりに安定していた。 痛みに浅く呻きつつも、彼女は立ち上がって彼へと駆ける。 足取りは若干頼りなく、速度も遅かったが、死が待っていた筈の未来としては随分と軽傷だろう。 彼女は彼の隣りに跪き、彼の上半身を抱きかかえる。 そして彼のダメージに息を呑み、僅かに首を振りつつ言った。 ξ;゚△゚)ξ「何で……何で、私を助けたの!? 自分がこんな事になってまで、どうして私を!?」 対するブーンは、細く、しかし必死で体内に酸素を送り込みながら応える。 (;`ω゚)「君が……僕を、待っていたから。 そして、僕自身が、君を助けたかったから……失いたく、なかったから。 僕はこうして、怪我で、済んだ。でもあのままだったら、君は死んでしまっていたから」 (;`ω゚)「それに、後悔、したくないんだお。 君を見殺しにして、全てが上手く行ったとしても……僕は喜べない」 ツンとの最初の出会いの時と同じ事を言って、ブーンは頷いた。 その動作、瞳の光。全てが、力強い。愚直なまでに、ただ素直で真っ直ぐだ。 ξ;゚△゚)ξ「……私は、助けられる資格なんてなかったんだよ? 助けて貰えるなんて甘えた考えで戦って、墜とされて……。 全部自業自得なの。私が受けるべき罰で、痛みなの。なのに」 続こうとした彼女の呟きを、持ち上げられたブーンの手が遮る。 そして彼は呟く。良いんだお、と。 (;`ω゚)「君は確かに、ちょっとだけ甘い考えで戦ってたかもしれない。 でも君は、気付けた。足掻いて……自分のミスを取り戻そうとした。 それで、十分だお」 (;゚ω゚)「それに、君の考えは、間違っていたわけでもない。 僕達は互いに助け合って……助けられ合って、戦っていけば良い。 僕達は、仲間なんだから」 ξ;゚△゚)ξ「――――――」 言葉を失ったツン。 そして代わるように、彼女の背後、上空から声が響いた。 ( ^Д^)「まさか、あの位置から間に合うとはな。 驚いたぜ。流石、モララーさんにも一目置かれるだけはあるな、ブーン」 ( ^Д^)「だが、テメェの行為は無駄で、途轍もなく勿体のないものだった。 甘ェ考えをした、戦力にもならない奴を助けるくらいなら、お前は俺が油断してる隙に俺を叩き墜とすべきだったんだ。 アレだけの速さがあれば、俺をどうにか出来たかもしれないのによ」 彼の言葉に、ブーンはまず一言を返す。 静かに、しかし内側に激情を含んだ声で。 「うるさいお」と。 そして彼は、身を支えていたツンの肩を借りて立ち上がった。 全身が軋み、ともすればくずおれそうに身体が揺らぐ。 しかし白銀に輝く両脚で、無理矢理身体を確立。未だ抜けぬ痛みを声に変え、言い放った。 (#゚ω゚)「誰かを犠牲にして得る勝利なんか、こっちから願い下げだお。 そんなものはいらない。そんなものは、勝利じゃない」 ( ^Д^)「―――は。綺麗事を。 人間なんてのはな、何かを犠牲にして何かを得てんだ。知らないわけじゃないだろ? よもや、何も失わず、勝利だけを持って行こうなんざ考えてないだろうな?」 (#゚ω゚)「あぁ、その通りだお。僕は何も、失うつもりはないお。 日常も、自分も、仲間も。 失わず、自分の力が及ぶ限りの全てを拾い集めて、そして勝利するお」 ( ^Д^)「欲張ってんじゃねぇよ、馬鹿が。 ……こんな簡単な事も分からねぇか。なら、その身を以て知れ。 二兎を追う者は一兎をも得ず。欲張れば何も得られない。何も護れず、敗けて、死ね」 (#゚ω゚)「なら僕は敗けないお。逆に証明してやるお。 お前の言う事なんて、何も理解しない。言うこと全て、根っこから否定してやるお。 僕は二兎どころか、百でも千でも追って、その全てを得てやるお。全てを護って、勝って、生きてやるお」 プギャーが表情を笑みに歪ませ、ブーンがその両脚を肩幅に開いて構える。 ブーンに続いて、ツンも構えようとしたが――― ξ;゚△゚)ξ「……最悪」 彼女の背の翼は、力なく沈黙したままだった。 力を込めてみても、僅かに鈍重な動きをするだけ。 このままでは、彼女は戦力にもなり得ない。 彼女の力は、翼のみなのだ。 少なくとも、両翼の機能が回復するまでは。 悔しさに身を震わせるツンに、身構えたブーンが告げる。 ( ゚ω゚)「良いお、ツン。安全なところで休んでいてくれお。 戦闘に介入するのは、翼が回復してからで良い。 無茶しちゃダメだお」 ξ;゚△゚)ξ「でも、ブーン。あなたは怪我していて……むしろ私よりも、あなたの方が」 ( ゚ω゚)「大丈夫。僕は、敗けない」 ξ;゚△゚)ξ「……あなたの方こそ、無茶よ。せめて、私が回復するまで―――」 ( ゚ω゚)「逃げ回っていろ、っていうなら、それは呑めないお。 僕のよりもあいつの“力”の方が上。戦うことよりも、逃げる事の方が困難だお。 それに僕は……あいつを、ぶちのめさなきゃいけないから。証明、しなきゃいけないから」 言って、そこで精神を完全に戦闘にシフト。 限界まで、いや、限界以上にその脚に力を込めて――― ξ;゚△゚)ξ「……頑張って。絶対に、死なないで」 背中にツンの声を受けて、跳んだ。 ( ^Д^)「馬鹿が、死にに来やがったか!!」 (#゚ω゚)「僕は生きるお。死ぬのはお前だお、プギャー」 上昇の勢いの中、脚を蹴りあげる。 その脚は、同じタイミングで振り下ろされた枯葉色の脚を捉え――― (#`ω゚)「!!」 火花が目の前で爆ぜ、そして互いの破壊力が相殺し、反発する。 ブーンは僅かな落下と、逆回転の動きを得て (#゚ω゚)「お、ぉっ!!」 停滞する事なく躊躇する事なく、逆の回転の脚をそのまま叩きつけた。 幾分か勢いの落ちた、しかし十二分の威力を内に持った脚は―――易々と、左腕で受けられる。 ( ^Д^)「話になんねぇな。幾ら速くてもよ、“力”が両脚だけってのh」 言葉は遮られる。 肉の打つ音と、液体がぶちまけられる音を伴って。 彼の頬を、ブーンのガントレットが打っていた。 不安定な体勢だった為にその威力は低い、が。 度重なる衝撃にて少々の歪みを得たガントレットは、逆にその歪みによって新たな突起を会得。ダメージを、増幅させる。 しかし、とは言ってもやはりダメージは大きくない。 だがプギャーの表情から、精神から、余裕が消えた。 冷静で、練り上げられた思考が―――僅かにブレる。視界が、狭まる。 対するブーンの表情は、まるで吸い取ったかのように挑発の笑みに。 勿論のこと―――完全なる虚栄の笑顔ではあったが。 (#゚ω゚)「ほら、一発。『話になんねぇな』って言った口は、どの口だお? もしかして、たった今僕が殴って血みどろになってる口じゃあないおね?」 ( ^Д^)「……てめぇ」 (#゚ω゚)「おや、どうしたお。顔が引き攣ってるお?」 (#^Д^)「……良いだろう。テメェは惨殺だ」 血を吐き捨て、即座。 プギャーの左腕が大きく跳ね上げられ、ブーンの脚が弾かれる。 そして、ブーンの体勢が崩れた直後―――プギャーの背の翅がけたたましく叫んだ。 (#^Д^)「墜ちろ!!」 叫ぶプギャーの身は、翅の推進力によって前へ。 そして横に開かれた彼の右腕の内肘が、ブーンの首へとかかった。 その腕は、振り抜かれる。 (;`ω゚)「ぐぇ……っ!」 空中。急に体勢を変える事も出来ず、ブーンの身はただプギャーのするがままに。 つまりは、落下。 プギャーの翅による加速を伴った落下だ。 (;゚ω゚)「く―――ぐぅうぅっ!!」 動かぬ身を必死で捩り、落下の体勢を作りあげる。 しかし十分な体勢を作っても、落下による衝撃は脚を伝わって体内を駆け廻った。 衝撃は脳までも届き、疲労した精神を一瞬真っ白にする。 が、それすら無視し、ほぼ意志だけで再度跳躍。 一直線にプギャーへと向かう白銀の流星は、その勢いのままに足を振り上げて――― ( ^Д^)「馬鹿じゃねぇの。一直線過ぎんだよ」 易々と、右腕で受け止められた。 そして翻る左腕で腹部を浅く切りつけられ (#゚ω゚)「おぉぉおぉおぉっ!!」 痛みを噛み殺して振るったもう一つの脚ですら、枯葉色の脚に止められた。 止められた脚は、しかしそのまま停滞するではなく ( ^Д^)「っるぁ!!」 押し飛ばされた。 再度、身は落下する。 そして再度、彼は苦痛を身に宿しつつも着地する。 ξ;゚△゚)ξ「ブーン! やっぱり、無茶よ!! 飛べるようになったあいつは、あなたの“力”じゃどうしようも出来ないわ!!」 (#゚ω゚)「どうしようも出来ない事なんてないお。 あいつが飛べるようになってるってんなら、その翅、引き千切ってやるお。 地上に、引き摺り落としてやるお」 ξ;゚△゚)ξ「だから、それをどうやってするつもりなのよ!? あなたじゃ、空中での戦いで遊ばれるだけだわ! だから、私が回復するまで―――」 (#゚ω゚)「そういうなら、君は僕に構わず、翼の修復に集中してくれお。 ……僕は、逃げたくないんだお。諦めず、ただやれる事を全力でやっていたいんだお。 あいつだって、無敵じゃない。可能性はいくらでもある。僕はその可能性に向かっていくだけだお」 ξ;゚△゚)ξ「ただ向かっていくだけが戦いじゃないのよ!?」 (#゚ω゚)「……分かってるお。でも、今の僕はこうするしかないから。 プギャーに、ただ何度もぶつかっていくしか。 ―――プギャーの注意を君に向けさせないで、君の回復を待つしか」 ξ:゚△゚)ξ「え……?」 ツンの驚愕の呻きを背で聴いて、ブーンは地を疾駆していった。 彼女は彼の背を見詰めつつ、僅かに眉根を寄せる。 ξ;゚△゚)ξ「私を、あいつから護る為に―――?」 彼はただ、戦意に任せて愚直に戦っていたわけではなかった。 出来るだけ速くプギャーに向かっていくことで、ツンの存在をプギャーから護ろうとしていたのだ。 ツンが言った通り、翼を持たぬブーンがプギャーに向かっていくのは、彼がいかに速くとも不利だ。 ならば、翼を持つツンが戦線に復帰したならば? 形勢逆転とまではいかずとも、今よりはずっと戦況が良くなる筈だ。 それを本来、プギャーが放っておくだろうか。 答えは明確。否だ。 翼を使えぬ内に始末を付けてしまおうというのが、本来だろう。 だがブーンは、挑発と攻撃を重ねる事によって、その眼を彼に集中させた。 ツンは翼を復帰させるチャンスを得て―――ブーンはそれを護る為に、奮闘する。 ξ;゚△゚)ξ「それなのに、私は……」 言った事を、悔やむ。 だが、直後。 その眼がかっと見開かれ、前を睨みつけた。 唇を噛み締め、拳を握り―――“力”を、翼に送りつける。 悔やむ時間すら、今は惜しい。 悔やむ事なら後でも出来る。死んだ後でも。 今は悔やむべく時じゃなく―――敗北と死の悔しさを感じぬ為にも、この翼を蘇らせることだ。 もう、彼が稼いでくれる時間を、一瞬たりとも無駄にはしない。 僅かにくすんで光を失った翼に、白銀の光が宿る。 そして歪み変形したその形状が、不快な異音と共に修復を始めた。 ξ゚△゚)ξ「ごめんね……ありがとう。すぐ行くから、待ってて。ブーン」 ―――彼女の視線の先。 ブーンは地を疾駆していた。 上空のプギャーを睨みつけながら駆ける彼は、しかしただ無暗に走っているわけではない。 ツンから離れるように。そして―――壁を目掛けて、彼は駆けていた。 ( ^Д^)「どこに行くつもりだよ!!」 その動きに不審さを感じたのか、上空で停滞していたプギャーが動く。 ブーンの方向へと一気に移動、それに伴って降下した。 降下すれば安全ではなくなるが、しかし彼にはそれでも勝てる自信があった。 両腕両脚に“力”がある上、いざとなれば上空へ逃げる事だって出来る。 それにのんびりと戦うつもりはなかったし、ここでブーンに妙な活路を与えてしまうのも嬉しいことではない。 そろそろ、終わらせても良い頃合いだろう。 決着を付けてしまおう。 ( ^Д^)「っらぁ!!」 加速した降下の勢いのまま、中空で飛び蹴りの体勢を作る。 直線となった身は、駆けるブーンの背へと突き進んで (#゚ω゚)「来たかお!!」 ブーンは一歩で疾駆の勢いを抹殺。 振り返りざまの前蹴りで、プギャーの脚を真正面から止めた。 しかしプギャーが纏っていた衝撃で、彼の軸足は地を削りつつ後方へと押されていく。 その中で、咄嗟にブーンは前蹴りの脚を横に。衝撃を逃がした。 ( ^Д^)「とっ」 流されて前方に崩れかけた体勢を、翅の羽ばたきを以て正す。 そして間髪置かずに叩きつけられる脚を腕で受け、一歩を引いた。 ( ^Д^)「へへ、降りてくるのを誘ったってか? だが残念、仕留められなかったなぁ?」 (#゚ω゚)「仕留めるのは、これからだお」 プギャーが開けた一歩の距離が、刹那の間に消える。 そして一瞬。突如ブーンの両脚が、明確な輪郭を失った。 (#゚ω゚)「はぁぁぁぁあぁあぁぁぁああぁぁぁぁあぁっ!!」 全力全速で、脚を叩きつける。 しかもただ闇雲に叩きつけるわけじゃなく、少しでも隙のある個所を狙って。 その速さ故に脚の輪郭は歪み、白銀色の残像と衝突の音だけがそこに残る。 (;^Д^)「よっ、よっ……よっと!!」 しかし、両腕両脚に“力”を宿すプギャーには届かない。 あと少し、数センチ、というところで阻まれる。 先程の攻防と同じだ。攻めるが阻まれ、加速していく戦況はその内側に停滞を抱き始める。 だがここで、ブーンは状況の停滞を許さない。 停滞すれば、相手に考える時間を与えてしまう。速度に慣れられてしまう。 速く、速く。唯一プギャーを上回れる点であるこのスピードで、展開すらも早くしてしまえ。 速さで勝っているのなら、この速さを以てして、奴を展開に追い付かせなければ良い。 追い付かせない展開を作れば良い。 そうすれば―――勝利が、見える! (#゚ω゚)「弾けろお!!」 横薙ぎに振るった左脚を、プギャーは軽く縦に構えた右腕だけで受けようとした。 しかしそのブーンの脚が、突然の加速を纏う。 (;^Д^)「なっ!?」 その突然の加速は、ブーンにとっての賭けの一撃だった。 全身を大きく傾がせ、かつ軸を大きく回転させて、そして体重を出来る限り脚に乗せた一撃。 当たらねば大きく体勢を崩し、戦況は一気に不利となっていただろう。 まさに賭け。 威力は大きいがモーションも大きいその一撃は、当たる可能性は低い―――筈であったが (;^Д^)「……ッ!!」 プギャーは、それを受けてしまった。 それも、右腕一本で。 当然と言えば、当然。 ブーンの連撃を防ぐ為に、プギャーもある程度必死であったし――― 突然シフトされたその攻撃に応じれるのならば、まず先程のブーンとの攻防はなかった。 ブーンとの攻防が拮抗していた……いや、少々プギャーの方が勝っていた故に、ブーンの賭けは成功した。 プギャーは咄嗟に、右腕に全力を込めたが――― ほぼ無意味。僅かに脚の速度を緩めたのみで、右腕は弾かれた。 (;^Д^)「ぐ、ぅぅ……っ!!」 瞬間、全力で後方へ跳ぶ。 しかし翅の加速をも受けたその後退を以てすら、プギャーの腹部を白銀が撫でて抜けた。 ほぼ掠っただけだと言うのに、硬化した腹部の皮が裂けて血が踊り、内臓を悪夢のような苦痛が殴りつける。 そして、まだ終わらない。 全力の後退が、しかしそれを上回る速度の一歩によって淘汰された。 間髪置かず、アッパー気味のガントレットがプギャーの腹を抉る。 腹部の傷が広げられて血が滴り、更に増幅した体内の苦痛に、プギャーは呻きと共に血を吐き散らした。 しかし、その程度。 硬化したプギャーの表皮―――『殻』は、ブーンの全力の拳ですらも『その程度』で終わらせる。 本来ならば気絶するようなダメージも、相当軽減してしまう。 だが、ブーンはそれを予測の上で攻撃を繰り出していた。 現に、かなり軽減されてるとはいえ、プギャーにはダメージが届いている。 ブーンにとっては、プギャーの殻こそが『その程度』だったのだ。 だから容赦なく、ブーンはもう片方の拳を、プギャーの頭蓋目掛けて裏拳で横薙ぎに。 だがプギャーは、寸前で上半身を反り返らせてその拳を回避。 白銀のガントレットは抜け、その隙にプギャーは後退しようと動き ―――直後。動きを読んだかのように、ブーンの手が彼の肩を掴んで固定。 突き出された膝がプギャーの腹部に叩き込まれた。 まもなく苦痛に染まったプギャーの眼は、その直前の一瞬、混乱に揺れていた。 何故、こんなに追い込まれる。何故、こんなにも奴の思い通りに事が運ぶ。 奴の方が速いとは言え、何故、こうも。 その理由は簡潔。ブーンが、その展開を望んでいたからだ。 速度で勝るブーンは、数秒で考えた己の展開を次々と行っていった。 その全てが、ほぼ賭けである展開は―――しかしプギャーの戦闘能力であったが故に、成功した。 ブーンが劣っている部分があったが故に、勝っていた『速度』が彼の展開を思うがままにした。 ブーンはプギャーの動きを読んでいたのではなく、その速度を以てして作り上げていたのだ。 そして作り上げられた動きは、展開は―――『ここまで』じゃあない。 この次の一手が彼の思い描いていた展開で、そして決め手。最後の賭け、であった。 (;^Д^)「が、あぁ、げっ……!!」 連続で叩き込まれた腹への苦痛に、プギャーはとうとう身を折った。 吐瀉物の中には血が混じっている―――いや、血の中に吐瀉物が混じっていると言うのが正しいだろう。 苦痛に視界は歪み、意識が白く染まっていく。 だが僅かに上げた眼で、彼は見た。 (#゚ω゚)「――――――!!」 ブーンが決死の眼でこちらを睨みつけ、その脚を持ち上げているのを。 プギャーは、悟る。 その眼はプギャーの背にある翅を捉えており、その脚はその翅を砕かんとするものだと。 今、プギャーは身を折った体勢―――翅を、差し出しているかのような体勢だ。 翅を砕くには絶好の体勢であろう。 そして翅を砕かれれば、プギャーは優位なポジションを失う。 そうなればブーンと同等の戦闘能力しか持っていない……あるいは、今となってはそれ以下か。 ほぼ確定していたと言っても良いプギャーの勝利は、揺らぐ。 戦慄。 そしてプギャーは歯を食い縛って意識を呼び戻し (#^Д^)「―――させるかぁっ!!」 プギャーは身を折った体勢から、膝を折って前転した。 彼の体勢は―――背の位置、翅の位置は一瞬で下がり、ブーンの脚は翅の先端のみを砕いて抜ける。 (#゚ω゚)「く……っ!」 間髪置かず、もう片方の脚を低位置で振るうが、僅かに遅い。 プギャーの身はブーンの脚の下を抜け、そこですぐさま枯葉色の脚を以て離脱する。 ブーンは焦燥に、歯を食い縛った。 (#゚ω゚)「逃がすかおぉっ!!」 歯を食い縛り、直ちに追った。 逃がすわけにはいかない。ここで逃げられたら、ここまで追い詰めた意味がなくなってしまう。 逃げられれば、もう奴は降りてこないだろう。つまり、一方的な戦いになってしまう。 それだけは、どうにか阻止せねば!! 一歩で限界まで加速し、そして二歩目でプギャーとの距離をかなり詰める。 しかしプギャーも必死だ。距離を完全に詰め切られる前に、全力で上方へ跳躍した。 その跳躍に僅かに遅れて、ブーンがプギャーの足元に到着。そして (#゚ω゚)「おおぉおおぉおおぉおおぉおおぉっ!!」 プギャーのそれを上回る速度で、跳んだ。 彼の身は一気にプギャーへと迫り (#`ω゚)「う、うぅ―――!!」 必死で伸ばした手は、足首を掴もうとして――― (;^Д^)「させるか!!」 瞬間。翅によってプギャーの身の上昇が加速し、掌を滑って抜けた。 握り締めた拳は、中に何も残らない。 (;゚ω゚)「あ……」 逃がして、しまった。 あと一瞬で捕まえられたというのに。 上昇のエネルギーを失い落下していく中で、ブーンは唖然と、離れ行くプギャーを見やる。 翅を唸らせ、力の差を見せつけるようにブーンを見下ろすプギャー。 その表情に、視線に、離れていく距離に―――戦意が、失われていく。 だが (;^Д^)「はっは……! 惜しかったなぁ、ブーン!! 言ったろう! テメェは俺には勝てないんだよ!!」 その声に、ブーンの意識に火が灯った。 力なく開けられていた口は歯を剥き、絶望に歪んでいた瞳は鋭く細められる。 (#゚ω゚)「ざっけんなお……!!」 低く呟くと、ブーンはすぐさま着地の体勢を整え、失った戦意を再度練り上げた。 先程の攻防で、プギャーには大分ダメージを与えられた筈だ。 ならば、圧倒的劣性という立場は、多少崩れるだろう。 止まるな。まだ、終わっていない。 思考の完了と同時、着地。 そして一瞬を置いて、再度上空へ跳躍した。 しかしそれはプギャーに向けてではなく、壁に向けて。 ( ^Д^)「あ? 何を?」 プギャーの声をよそに、跳んだブーンはまもなく壁に到達。 位置はプギャーの高さとほぼ同じ。 そして彼は咆哮をあげ、到達した壁を足場にして跳躍した。 戻る 目次 次へ |