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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第一話

1 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:13:38.45 ID:ZDbl99HO0

第一話「猿」


焼け付くような空気が肌を焦がす。


痛みにも似た喉の渇きが、絶え間無く襲ってくる。


(`・ω・´)「……」


男は頭にすっぽりとフードを被り、砂漠を一人歩いていた。


4 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:14:58.44 ID:ZDbl99HO0

どこまでも続く死の砂漠。

(`・ω・´)「……ん?」

男はふと顔を上げた。
遙か前方から砂埃を舞い上げて、近づいてくるモノがある。

家畜にまたがり、砂漠を駆ける小柄な人間。
それが近づくにつれ、姿形がはっきり見えるようになった。

一直線にこちらに向かってくるその砂埃は、家畜のものではないということも。

「助けて!! 助けてーっ!!」

助けを求める声は、まだ幼い子供のものだった。
ラクダとも馬ともいわない家畜に、必死に鞭を入れる。

フードに隠されたお互いの顔がようやく視認出来る距離で、家畜の後ろの砂が盛り上がる。
姿を現したのは、巨大なミミズの化け物だった。


5 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:15:34.54 ID:ZDbl99HO0

「ひいいいいいっ!!」

その衝撃で家畜が横転し、乗っていた子供は砂漠の上に放り出された。

巨大なミミズが頭を垂れる。
開いた大きな口の中には、鋭い牙が生え揃っていた。

「ひいいっ!! た、助けて!! お願い助けて!!」

子供は男に助けを求めるものの、ミミズの口から目を離せなかった。
それを合図にミミズが動き出す。


7 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:16:00.29 ID:ZDbl99HO0

(`・ω・´)「ふっ!!」

男は一つ息を吐き、初動作無しで跳躍した。
ミミズがそれに反応し、標的を変えた時には、男は喉元に強烈な蹴りをめり込ませていた。

くぐもった声を漏らし、自らの巨体を砂の上に倒すミミズ。
その上に、男が止めを刺さんと舞い降りる。

(`・ω・´)「……」

太い胴体にまたがり、男は眉一つ動かさずにピンと伸ばした五本の指をミミズの体に突き刺した。
何かを探るように、ミミズの体内の腕をかき回す。
ミミズはその動作に合わせて体を痙攣させていたが、やがてそれも小さくなっていった。


8 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:16:23.57 ID:ZDbl99HO0

「す、すごい……」

その隣では、家畜と一緒に子供が腰を抜かしていた。

(`・ω・´)「なぁ坊主」

「は、はいっ!!」

急な呼びかけに背筋を伸ばす。
男は子供に顔を向けずに話しかけた。


(`・ω・´)「コイツの脳味噌って……どの辺にあるんだ?」


すでに動かなくなったミミズにまたがり、男はなおも腕を動かしていた。


9 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:16:38.31 ID:ZDbl99HO0

「わ、わかんない……」

(`・ω・´)「そうか」

乱暴に腕を引き抜く。
赤い液体の代わりに、刺激臭のある透明な液体が溢れ出てきた。

「あっ!! ま、まずい!!」

(`・ω・´)「?」

「サンドワームの体液は他の仲間を呼ぶんだ!!」

(`・ω・´)「仲間……」

「早く逃げよう!! ホラ、後ろに乗って!!」

家畜を引き起こし、二人はそれにまたがった。


11 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:18:05.73 ID:ZDbl99HO0

「お礼がまだだったね。ありがとう。助かりました」

子供は被っていたフードをとり、男に顔を見せる。

(`・ω・´)「お前……」

( ・∀・)「お兄さん、人型(ヒトガタ)なんだね。大丈夫、僕は差別とかしないよ!!」

その顔は、男が見知った人間のモノではなかった。
男が知る中での、「猿」と呼ばれる動物のモノ。

( ・∀・)「どこから抜け出してきたの? まさか革命軍の奴らじゃないよね?」

(`・ω・´)「……俺はここらの者じゃないんだ。詳しく教えてくれないか?」

状況がいまいち飲み込めてない男に、子供の猿は笑いながら答えた。

( ・∀・)「えーっ? だからそんな嘘つかなくていいって」

子供はしばらく男の言うことを信じていなかったが、やがて半信半疑のまま喋りだした。


12 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:18:22.77 ID:ZDbl99HO0

( ・∀・)「僕は猿(エン)のモララーだよ。この砂漠を抜けたとこにある町に住んでんだ」

(`・ω・´)「エン……?」

( ・∀・)「え、ホントに知らないの!?」

信じられない、とモララーは大げさにおどけて見せる。

( ・∀・)「君達人型を支配する種族のことさ」

(`・ω・´)「支配だと……」


(`・ω・´)「猿の惑星、みたいだな」

確か昔そんな映画があったはずだ。
しかし男はモララーの言う事を疑わなかった。


13 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:18:39.84 ID:ZDbl99HO0

( ・∀・)「何か言った?」

(`・ω・´)「何でもない。俺の名前はシャキンだ」

(`・ω・´)「ここらじゃ俺ら……人型はどういう扱いを受けているんだ?」

( ・∀・)「奴隷だよ」

気づけば二人は砂漠を抜けていた。
周りには少しずつ緑が見え始め、整備された道も現れる。


14 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:18:57.70 ID:ZDbl99HO0

( ・∀・)「でも最近人型の反乱が起こったんだ。僕らは革命軍って呼んでる」

(`・ω・´)「ほう……」

( ・∀・)「でも僕らエンにはフサギコがいるからね。可哀想だけど人型に勝ち目はないよ」

(`・ω・´)「フサギコ?」

( ・∀・)「あ、ホラ!! 僕の町が見えてきたよ!!」

モララーの指差す方向に、大きな壁が見えてきた。
要塞のようにぐるりと町を囲む壁に、出入り口の門には武装をした男が二人。

猿の顔をした門番にモララーはペコリと頭を下げ、二人は町に入った。


15 名前:VIP足軽utu[] 投稿日:2006/12/03(日) 02:20:09.75 ID:ZDbl99HO0

( ・∀・)「お礼がしたいから、僕のお家に招待するよ」

(`・ω・´)「俺ら人型は奴隷と言ったな。大丈夫なのか?」

( ・∀・)「僕と一緒に居れば大丈夫さ!!」

シャキンは明るく笑うモララーの顔を見て溜息をついた。


(`・ω・´)「俺の心配じゃないんだがな……」






第一話「猿」

終わり



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