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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第九話

26 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:03:13.37 ID:GYhvZpJ60
第9話 びんぼうだから妬んでます。

ーーー朝 某所ーーー

遠くから声が聞こえる。気がする。

しかしそれは、思いのほか近かった。

(*゚ー゚)「起きてよ!」

一喝。ブーンはゆっくりと目を開けた。
まず、自分の体勢に違和感を覚える。
座ったまま眠っていたはずなのだが、今自分は仰向けに寝転んでいる。
背中が妙に熱い。

次に場景に違和感を覚えた。
見上げた先に天井が無い。

あるのは赤い空。
朝焼けなんて生易しいものではない。
赤い。ひたすら赤い。静脈というよりは動脈。
目が痛い。

27 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:04:42.43 ID:GYhvZpJ60
( ^ω^)「これは……?」

目をこすって立ち上がる。
足裏が得ている感触は室内にいる時のものではない。
これは、土を踏みしめたときのものだ。

ここがあの空き部屋でないことはすでに明らかである。
赤い空。黄色い砂が目下にある。

砂漠。ここは砂漠だ。
あるいは砂丘かもしれない。
見渡す限り、オブジェクトらしきものは確認できない。

( ^ω^)「ここは、どこだお?」

見ると、ブーン以外の皆はすでに起床していたらしい。
立ち上がって、しぃですらも不安そうにしている。

(*゚ー゚)「……わからないわよ。私が起きたらこうなってた」

29 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:07:17.72 ID:GYhvZpJ60
川 ゚ -゚)「敵に嵌められたと考えるのが妥当だな」

クーが呟いた。

川 ゚ -゚)「皆がほぼ同時に眠りにつくからおかしいとは思ったのだが」
(*゚ー゚)「じゃあそのとき何か言えばいいじゃないの!」

謀られたのが腹立たしいのか、しぃが怒鳴った。

( ,,゚Д゚)「キレてもしゃーねーだろ。どうにかしねえと」
川 ゚ -゚)「敵方から赴いてくると思うんだがな」
(*゚ー゚)「……どうして?」
川 ゚ -゚)「こんな手間をかける能力があるなら、眠っている間に皆殺しすることぐらい、できるはずだ」
(*゚ー゚)「あー。楽しんで殺しましょう、ってやつ? ウザいねー」

30 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:07:50.72 ID:GYhvZpJ60
(*゚ー゚)「……にしても、暑くない? ここ」

赤い空に太陽は浮かんでいない。
だが、真夏日と思えるほどに暑い。
まるで空一面、全てが太陽のようでもある。

(*゚ー゚)「オアシスとか、ないのかな」
川 ゚ -゚)「このゲームの製作者がそこまで考えているとも思えないがな」
(*゚ー゚)「……はあ」

しぃは大きく伸びをした。

(*゚ー゚)「じゃ、待つか」

( ・∀・)「待たなくていいですよ」

(*゚ー゚)「!」

31 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:09:23.69 ID:GYhvZpJ60
砂漠の向こうに人影一つ。

その手には何か、細長い棒か何かが握られている。

ここからでは視認できないが。

( ・∀・)「今日、今日こそは!」

そう叫んでいる彼もまた、ブーンたちと同じぐらいの年齢か。

( ,,゚Д゚)「……! あいつ……」

( ・∀・)「久しぶりですねえ! ギコさん!」

(*゚ー゚)「何? 知り合いなの?」

( ,,゚Д゚)「……モララーだ」

32 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:09:57.02 ID:GYhvZpJ60
( ・∀・)「あんたを殺しにやってきましたよ!」

その目は憎しみに燃えていた。
あの手に握られている棒のようなものは、刀だった。
日本刀でいうところの、太刀のようであるが、それにしては反っていない。
いかにも中途半端な形状をした刀である。

( ・∀・)「いい気味、いい気味ですよ! あんたの耳は不自由になった!」

モララーのシャウトは嫌でもギコの耳に突き刺さる。

( ,,゚Д゚)「お前……なんのつもりだ!」
( ・∀・)「なんのつもりもありませんよ! ただ私はあんたを殺す。それだけです!」

(*゚ー゚)「ギコ、何か恨みでも買ったの!?」
( ,,゚Д゚)「身に覚えがねえよ」

( ,,゚Д゚)「確かにあいつは同級生だが……俺はあいつと何のかかわりも無い」

36 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:14:06.90 ID:GYhvZpJ60
( ・∀・)「かかわりがない、ええ、確かにそうですよねえ!」

( ・∀・)「あんたにとっては、私などゴミクズに等しいでしょうからァ!」
( ,,゚Д゚)「いや、そんなことは……」

( ・∀・)「教えてあげますよ!」

ある程度まで近づいたモララーは、ぶら提げていた刀を構えた。
玄人でないのは確かだ。

( ・∀・)「昨日、昨日弟が死にましてねえ!」
( ,,゚Д゚)「!」
( ・∀・)「おかげで本当に独りぼっちになっちゃいましたよお! どうですか、笑えるでしょう!?」

(*゚ー゚)「……何言ってんの? あいつ」

37 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:14:55.72 ID:GYhvZpJ60
( ,,゚Д゚)「あいつの家、貧乏なんだよな。それこそ、まともにメシも食えないほどに」

( ,,゚Д゚)「……どんな事情があったか知らんが、弟が死んだそうだ」

淡々と告げるギコ。
同情してやりたいような気もするが、目の前で自分を殺そうとしている人間に同情するほど、ギコも善い人ではない。

( ・∀・)「事情! 教えてあげましょうか! 弟は、弟はねえ!」

モララーは地面を蹴った。

( ・∀・)「母親に殺されたんですよお!」

直線的な突進。
その先には、ギコとしぃが立っている。

(*゚ー゚)「っ!」

しぃが瞬間移動を試みる。
が。

(*゚ー゚)「あれ……」

変化はない。

38 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:15:44.90 ID:GYhvZpJ60
刀が迫る。
しかし、その刃はギコだけを狙っていたらしく。
しぃに当たる事はなかった。

慌てて離脱するしぃ。
ツンがクーをかばって、その場から距離をおいた。

(*゚ー゚)「瞬間移動が使えない……!」

( ・∀・)「無駄ですよ……」

( ・∀・)「ここは外界から隔離された空間。いかなる魔法も使うことが出来ません!」

(*゚ー゚)「外界から閉ざされた、ねえ」
川 ゚ -゚)「閉鎖空間か?」
( ,,゚Д゚)「封絶かよ」

39 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:16:44.46 ID:GYhvZpJ60
(*゚ー゚)「……ってことは、ブーンの炎も使えないって事?」

言われてブーンは右手の甲を見る。
紋章は残っていたが、輝きは失っていた。

( ^ω^)「……」

困った。
だが同時に。
安心した。

( ・∀・)「はは……もうこの際ねえ……ギコ以外の奴はどうでもいいんですよお……殺されても別にねえ……!」
( ,,゚Д゚)「わからねえな。どうしてそこまで俺を殺そうとする?」
( ・∀・)「わかりませんか! わかりませんよねえ……私はただ単にあなたが羨ましいんですよ!」

( ・∀・)「私には無いもの。境遇、財産、それら全てをあなたは持っている!」

41 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:17:36.81 ID:GYhvZpJ60
( ・∀・)「弟が死んで支えは消えた! 後は崩れるのみの私ですが、貴方だけはどうにかしておかないと気が済まない!」

(*゚ー゚)「……本当に、一方的な妬みね」
川 ゚ -゚)「くだらない」
ξ゚△゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」

( ,,゚Д゚)「……でも俺はすでに不幸を受けたぜ? 耳がほとんど聞こえねえ」
( ・∀・)「ええ……あなたの夢は医者でしたっけ!?」
( ,,゚Д゚)「よく知ってるな」
( ・∀・)「くく……でも足りないんですよ!」

笑いは狂いに直結しているのだろうか。

43 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:19:12.78 ID:GYhvZpJ60
( ・∀・)「私自身が手を下さないとねえ……気が済まない!」
( ,,゚Д゚)「へえ。殺すってか? できるのかよ」
( ・∀・)「もう一人殺しましたから……母親をね!」

色々壊れてしまったらしい。

モララーは再度刀を構えなおして、ギコを見据える。

(*゚ー゚)「……どうでもいい戦いね」
川 ゚ -゚)「加勢しないのか?」

投げやり調子なしぃの言葉に、クーが尋ねた。

(*゚ー゚)「うん」
ξ゚△゚)ξ「……」
川 ゚ -゚)「なぜ?」
(*゚ー゚)「能力使えないし。狙われてないんだったらどうでもいい」

どこまでも利己的な女だ。
その態度はある種清々しくもある。

ξ゚△゚)ξ「ブーン……」
( ^ω^)「……僕には、何も出来ないお」

44 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:20:37.51 ID:GYhvZpJ60
モララーが再び突進する。
ギコは身をかわすが、すかさず追撃が迫った。

( ・∀・)「せめて腕を斬りおとしたい! できることならぐちゃぐちゃに刻んでやりたいぃ!」

( ,,゚Д゚)「バカじゃねえの……」

ひどく大振りなモララーの刀を避けるのは意外と容易だ。

( ・∀・)「ああっぁああぁぁあぁぁああ!」

最初は満面の笑みだったモララーの表情に、焦りが見え隠れし始めた。
攻撃が命中しないことに対しての苛立ちか、それとも、身体的な疲労によるものか。

( ・∀・)「斬れ! 当たれ!」
( ,,゚Д゚)「埒があかねえな」

この時点でギコは気付いていた。

どうやら、助太刀はないようだ、と。

46 名前: ◆xh7i0CWaMo [] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/29(佐賀県庁) 22:21:48.25 ID:GYhvZpJ60
( ,,゚Д゚)(自分でどうにかしろってか……)

斬撃を回避し、一旦距離をとる。

( ,,゚Д゚)(……いけるか)

( ・∀・)「はぁ……はぁァ……!」

息の荒いモララーだが、諦める様子は微塵も無い。

( ・∀・)「次……次ィ」

最早意識もないのかもしれない。
目の前の獲物を殺すことだけを考えて、本義を忘れた獅子のようだ。

( ,,゚Д゚)「……」

懐に入り込むことができれば。
ギコはそう目論んでいた。


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