2006/12/30(土)20:34
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです(第五話四)
73 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:25:33.46 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)「君は…一体誰だお?」
僕は疑問の核心、それを短くまとめて質問した。
ξ゜ー゜)ξ「………」
彼女は、しばらく黙っていたがこう答えた。
ξ゜ー゜)ξ「…あなたは、それを知っているわ」
ξ゜ー゜)ξ「…いえ、それを思い出しつつある…
って言った方が正しいかも」
( ^ω^)「えっ…?」
僕は何か言おうとしたが、彼女はこう続ける。
75 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:30.78 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ「…でも、あなたはあなたのままだったわ」
ξ゜ー゜)ξ「…知らない女性の前で敬語になることも、
…私が怒るとすぐ謝るところも」
ξ゜ー゜)ξ「…熱いものを無理して飲むところも
…口に物入れながら喋るところも」
ξ゜ー゜)ξ「…その穏やかな口調も、
…その子供みたいな笑顔も」
ξ゜ー゜)ξ「全部…いつもと変わらなかった」
気がつけば、観覧車は、
その半分くらいの高さのところまで登っていた。
76 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:51.19 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ「まさか、あなたが
…訪れてくれるなんて思ってもみなかった」
ξ゜ー゜)ξ「急なことだったから…
どうすればいいか分からなかったけど…」
ξ゜ー゜)ξ「ふと、思い出したの。
『来週、遊園地にでも行こう』
…ってあなたが言ってくれたこと」
ξ゜ー゜)ξ「そして、気がついたら、私はここにいた」
ξ*゜ー゜)ξ「まぁ…ちょこっと、変な形になっちゃったけどね」
そう言って、彼女は笑った。
その笑顔は、周りの光に照らされて透きとおっているようだった。
77 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:29:37.19 ID:E32VWjc1O
不意に彼女は僕の額に手を当てる。
そこに感じるのは暖かいぬくもり。
僕はちょっとだけ、ドキッ、とした。
ξ゜ー゜)ξ「…そう。色んな人に与えてもらったのね」
何かを感じ取ったのか、彼女はそう呟いた。
ξ゜ー゜)ξ「だったら…次は…私の番ね」
(;^ω^)「…?へっ?なn」
僕には彼女の言っていることが分からなかった。
ξ゜ー゜)ξ「ねぇ…聞いて?」
彼女に穏やかにこう続ける。
79 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:30:01.40 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ「私はこんな性格だから、
あなたに随分、うんざりとさせてしまったわ」
ξ゜ー゜)ξ「…それでも、あなたはただ笑って、
私につきあってくれた」
ξ゜ー゜)ξ「あなたを選んで、内心、鼻高々だったのよ。
…友達は色々いってたけどさ」
ξ゜ー゜)ξ「だから、私は一生あなたと一緒に歩いていこう
…って決めたの」
ξ ー )ξ「…でも…その願いは…もう…」
その声は、次第にかすれていく。
81 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:06.37 ID:E32VWjc1O
ξ;ー;)ξ「…私…嫌だよ…怖いよ」
ξ;ー;)ξ「…嫌っ!!離れたくない!!」
(;^ω^)「…ちょ!?ちょっと!?」
そう言うと彼女は僕に体重を預け、しっかりとしがみ付く。
その体は力を入れれば折れそうなほど華奢だった。
(;^ω^)「…な、何だかよく分からないけど…
君がそう言うなら…僕は何処にも行かないお」
僕の胸の中で、彼女は小さく震えている。
無意識のうちに僕は彼女の髪を撫でていた。
その感触はすごく柔らかかった。
82 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:38.67 ID:E32VWjc1O
ξ;ー;)ξ「…ごめんなさい」
しばらくの無言の後、そう言うと、彼女は再び顔を上げる。
ξ;ー;)ξ「また…ワガママ言って…あなたを困らせちゃったね」
ξ ー )ξ「でも…もう…大丈夫…」
そう言うと、彼女は笑う。
その目は、周りの明かりに照らされて、輝いている。
しかし、どこかその表情は無理をしているようでもあった。
気がつけば、観覧車は頂上に近づこうとしている。
下の宝石箱は、さらに小さくなっていた。
84 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:16.32 ID:E32VWjc1O
ξ*゜ー゜)ξ「…こんな…時くらい…素直にならなくちゃね…」
ξ*゜ー゜)ξ「…もう会えないって思っていた…」
ξ*゜ー゜)ξ「神様が…最後の願い…叶えてくれたのかな?」
そう言うと、彼女は僕の体をぎゅっと抱きしめてきた。
そして、その濡れた瞳は僕の瞳に近づいてくる。
無意識のうちに僕はそれに答えるかのごとく、抱きしめ返す。
彼女同様、僕も彼女の顔に自分の顔を近付ける。
そして、二つの顔がぶつかりそうになった瞬間、
彼女は僕の耳元で、こう呟いた。
85 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:40.53 ID:E32VWjc1O
「愛してる」
そして、僕たちの唇は重なった。
まるで、それは元々一つのものであったかのように。
その、感触は、柔らかくて、暖かかった。
その瞬間、僕の体の奥底から、
ほとばしるように、眩しい光がこみ上げてくる。
そうだ、彼女は…!!
僕は思い出した。
彼女は―――僕にとって一番大事な人。
87 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:37:24.66 ID:E32VWjc1O
乾いた衝撃音に気がつくと
目の前は眩しくなっていた。
まるで、その光景は、
空に大きな向日葵が咲いたように広がる。
そしてその花びらは、次第に散って、
小さなカケラに変わってゆく。
それは、何千、いや何万個にも分裂して、
僕らの上から降り注いできた。
そして、その光の粒は僕の頬にそっと触れる。
それはとても優しく、暖かい。
僕たちは名残惜しそうに、
お互いの体を離す。
しかし、その視線だけは離さないままだった。
88 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:38:34.52 ID:E32VWjc1O
(;^ω^)「………そうだ…君…は…!!」
ξ゜ー゜)ξ「やっと…思い出したのね…馬鹿」
しかし、彼女の表情は穏やかであった。
ξ゜ー゜)ξ「…でも…もう…時間みたい…」
再び、僕は、あの、不穏な空気を感じていた。
…いや…そんな…まさか…
…止めてくれ!!お願いだ!!
…もう少し…時間を!!
90 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:41:54.07 ID:E32VWjc1O
僕の淡い期待とは裏腹にそれは起こった。
びきっ。という鈍い音。
それは、今までのそれより嫌なものに感じた。
その変化は、まず、僕らに乗るコーヒーカップに起こる。
そして、それに続くかのように、
大きな円を支えていたパイプも欠け始めた。
下を見てみると、小さな宝石にもヒビが入っていた。
みるみるうちに、その輝きは細かく、ばらばらになる。
慌てて僕は彼女を見た。
その姿は心なしか虚ろに見えた。
僕は、再び彼女を抱きしめる。
決して逃がさないように。
決して離さないように。
すると、僕の耳に、優しく、穏やかな声が入ってくる。
91 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:42:19.00 ID:E32VWjc1O
「…ごめんね…」
何で謝るんだ。君は何も悪くない!!
「…私も…まだ…一緒に…居たい」
そうだよ!!まだ遊びきっていないじゃないか!!
「…でも…それは…ワガママ…あなたを困らせる…」
気にしなくていい!!困ってなんかいない!!
「…あなたには…あなたの…未来があるから…」
僕の未来は…君と一緒に歩く事なんだ!!!
93 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:44:34.94 ID:E32VWjc1O
突然、僕の腕は空を切る。
すると、彼女の姿は、宝石の破片に埋もれていた。
(;^ω^)「待ってくれ!!…まだ…」
透きとおった彼女の表情は、優しく微笑んでいた。
そして僕の目が、それを、
人であったことが確認できなくなってきたとき、
背後では、大きな黒い渦が、
まるで大きな生き物のように全てを飲み込んでいく。
(;^ω^)「まだ何にも伝えちゃいないんだ!!…だから!!」
その声も虚しく、周りの世界の、
あんなにも鮮やかだった色は黒に染まっていく。
そして、最後の色の欠片が吸いこまれようとしたとき、
彼女の声は聞こえた。
94 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:45:09.58 ID:E32VWjc1O
「大丈夫。私はいつまでもあなたの中に居るから」
その場に残ったのは僕と、
目の前の闇の中に一点だけ浮かぶ光。
それは、前に見たそれよりも、弱く、儚く見えた。
その光は否応無しに僕の中に入っていく。
そうして、僕は彼女の夢を喰い尽くしてしまった。
気がつけば、再び僕は最初の白い部屋の中にいた。
96 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:47:29.31 ID:E32VWjc1O
僕は、奇妙な感覚に襲われていた。
この気持ちはなんだろう?
喜び?怒り?悲しみ?楽しみ?
それが、ぐるぐると僕の体の奥底で渦巻く。
どんなに、体に力を入れても、
どんなに、歯を食いしばっても、
どんなに、拳を握り締めても、
それは僕の中では抑えきれなかった。
( ;ω;)「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
僕は思い切り拳を、真っ白な壁に叩きつける。
ドンッ、と鈍い音がした。
97 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:48:21.15 ID:E32VWjc1O
ぴきっ。
あんなに叩いても壊れなかった壁に、ヒビが入る。
それは、大きな亀裂を生む。
さらに亀裂は、壁の、床の、天井の上を走る。
それに気づいた時には僕は立っていれなかった。
一瞬宙を浮いた感覚。
そして、下に吸い込まれるような感覚。
僕は奈落の底へと堕ちていった。