2007/02/20(火)22:55
( ^ω^)が料理人になるようです(最終章下)
250 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:45:52.74 ID:sGLbyoZr0
(*゚∀゚)『おっ!! お疲れちゃん!! 宣伝部長様!!』
【従業員専用出入り口】のプレートが貼られた扉をくぐり、
スタッフルームに足を踏み入れた僕を待っていたのは店長『様』だ。
すでに厨房に入る機会は少なくなったはずなのに、
上半身はコックコート・下半身はミニスカートと言う非常にアンバランスな格好。
椅子に腰掛け、机の上に両足を放りだして書類を読んでいる。
はっきり言って見えるから止めて欲しい。
また、ツンやドクオに説教されるから。
( ^ω^)『ただいまだお』
言いながら僕は冷蔵庫を開き、最近のお気に入り『イチゴ豆乳』の紙パックを取り出す。
(*゚∀゚)『あれあれあれ~? ブーちゃん、そんな事してていいのかなっ!?』
( ^ω^)『ん? なんでだお?』
答えながら至福の味を一口。
(*゚∀゚)『じ・か・ん』
そう言って指差した壁時計は18:05を少し過ぎており、僕は盛大に噴き出した。
( ;^ω^)『や、やばいお!! 遅刻だお!! ツンに殺されるお!!』
僕は咽返りながら、濡れた口元をティッシュで拭う。
寄り道した本屋で思ったより時間を使っていたらしい。
服を脱ぎ捨て、代わりに純白のコックコートを羽織ってスタッフルームを飛び出した。
254 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:48:30.18 ID:sGLbyoZr0
全力で足を動かし。
コックコートのボタンを留め。
呼吸を整える。
この3つの作業を同時進行させながら僕はバースペースに足を踏み入れた。
( ;^ω^)『遅れて申し訳ないお』
ξ#゚△゚)ξ『遅い!!』
クーさんの後を継ぎ、バースペースの新しい主となったのはツン。
僕の大切な人だ。
( ;^ω^)『だから謝ってるじゃないかお』
ξ゚△゚)ξ『謝るんなら…』
テーブル席の1つに視線を向ける。
ξ゚△゚)ξ『彼に謝りなさい!!』
そこでは緊張した面持ちの青年が僕を待っていた。
ツンから受け取った彼の履歴書に簡単に目を通す。
高校中退後、3年間無職。アルバイト経験なし…か。
( ^ω^)『…なるほどだお』
僕はガチガチに固まっている彼の前に腰を下ろした。
( ^ω^)『…ヒッキー君。で良かったかな?』
259 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:53:10.43 ID:sGLbyoZr0
(-_-) 『…ひゃ、ひゃいっ!!』
盛大に噛んで赤面する彼に僕は微笑みかける。
( ^ω^)『緊張しなくていいお』
通勤時間。時給。正社員登用制度。そんな話を一方的に僕が話す形で面接は進む。
彼はただ壊れた人形のように首を上下に振るだけだ。
( ^ω^)『最後に質問なんだけど…ヒッキー君がここで働きたい。
そう思った動機を話してほしいお』
(-_-) 『え…あの…その…』
あうあうと意味不明な言葉を口走っていた彼は、一度大きく息を吐き出すと真剣な目つきで語りだした。
(-_-) 『ぼ…僕!! ヒキコモリなんです!!』
( ^ω^)『……』
(-_-) 『小学校からずっと虐められてて…高校もそれで中退しました。
それからは部屋にずっと…両親や自分に甘えて生活して、
それでも自分を変えたくて、だけど勇気がなくて…
そんな時に出会ったのがあなたの本だったんです!!
僕はあなたのように変わりたいんです!!』
そこまで一息に話した彼は僕の視線に気付くと、また最初のように縮こまってしまった。
( ^ω^)『君の話はよく分かったお。でも…料理人になろうなんて考えは止めた方が良いお』
262 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:57:23.42 ID:sGLbyoZr0
(-_-) 『…え?』
彼は僕の言葉を聞いて呆然としていたが、その意味が分かるにつれ青ざめていった。
(-_-) 『…そんな…どうして…』
( ^ω^)『厨房は…地獄だお』
僕は続ける。
真夏は40℃を超え、真冬でも凍てつく水に両手を突っ込む。
何重にも重ねられた火傷と切り傷。
週に一日あるかないかの休みでは体の疲れが抜ける事もなく、
毎朝目を覚ますたびに体のどこかが悲鳴を上げる。
泥と汗と油にまみれたコックコート。
常に高温を保つフライヤーや、切れ味抜群の中華包丁。
人生に絶望した誰かが新興宗教の経文を唱えながら暴れだしたら、間違いなく死人が出るだろう。
( ^ω^)『…それが料理人の現実だお。
悪い事は言わないから止めた方がいいと思うお』
(-_-) 『それでも…それでも僕はあなたの様に…』
彼は俯き、両肩を震わせている。
( ^ω^)『それでも、君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…』
僕はそこで言葉を区切り目を閉じた。
267 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:02.30 ID:sGLbyoZr0
真っ暗な瞼の奥。
僕は『それ』が現れるのを待つ。
最初、ぼんやりとした『それ』は僕に近づくにつれ輝きを増し
幾つもの人の形となって僕を取り囲む。
『それ』は僕を今まで導いてくれた光だ。
不安気な笑顔。
どことなく悪人っぽい笑顔。
自信に溢れた笑顔。
キモイ笑顔。
天真爛漫な笑顔。
一途な笑顔。
不機嫌そうな笑顔。
そして…最後に紫水晶色の瞳をした女性の…静かな笑顔。
その全てが僕を見守り、後押ししてくれている。
さぁ、伝えよう。
僕を導いてくれた光の全てを。
その輝きを永遠に絶やさぬ為に。
ヒッキー君。それでも君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…
268 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:33.22 ID:sGLbyoZr0
( ^ω^)『僕は…僕は君の道標【みちしるべ】になりたい』
( ^ω^)が料理人になるようです。 完
この作品の最後の部分は、書き直しがあるかもしれないようです。
そうなればこちらとしては、喜んでまとめたいと思っております。