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LOYAL STRAIT FLASH ♪

最終章

209 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:27:11.45 ID:sGLbyoZr0












              ドブネズミみたいに 美しくなりたい

              写真には写らない 美しさがあるから
















215 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:28:33.87 ID:sGLbyoZr0










              ドブネズミみたいに 誰よりもやさしい         

              ドブネズミみたいに 何よりもあたたかく


















216 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:29:25.27 ID:sGLbyoZr0












              もしも僕がいつか君と 出会い話し合うなら

              そんな時はどうか愛の 意味を知って下さい
















219 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:30:28.88 ID:sGLbyoZr0












              愛じゃなくても 恋じゃなくても 君を離しはしない

              決して負けない 強い力を 僕は一つだけ持つ












     最終章 リンダリンダ



224 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:32:44.90 ID:sGLbyoZr0
( ^ω^)ノシ『お疲れ様でしたお』

( ・∀・) 『お疲れ様です。次回も期待してますよ』

そう言って揉み手をする担当と分かれ僕は駅への道を急ぐ。
今日はスタッフが人数的に充実しており、本来ならば僕は厨房に立つ必要はない。

だが、迫る年末年始のスタッフ調整・18時からは新しく募集したバイトの面接、
限定メニューの試作などやらなければならない仕事は山積みになっている。

( ^ω^)『…荒巻さんもタクシー代くらい支給してくれてもよさそうなもんだお』

僕は一人呟いてから電車に乗った。



やがて電車はVIP駅に到着する。
車内の大多数の人がそうするように僕も電車を降りた。
辺りはすっかり夕闇に支配され、
駅前広場には賑やかに飾り付けられたクリスマスのイルミネーションが輝いている。

( ^ω^)(…あれからもう2年も経つのかお)

僕は大時計を見上げ呟いた。


230 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:35:04.76 ID:sGLbyoZr0
そう。
あの悲しいクリスマスから2年が経ち、僕の周りも大きく変化した。

ショボンさんはバーボンハウス3号店の店長として移動していった。

後釜にはギコさんが指名されていたのだが、ギコさんは突然独立を宣言。
店を辞め小さな和食ダイニングを始めた。
今ではお店も軌道に乗り、来年の春には父親になるらしい。

ジョルジュさんは相変わらずだ。

( ゚∀゚)o彡°『しぃちゃんは妊娠してまたおっぱい大きくなったぞ。
        ツンのおっぱいも大きくなりますように♪』

ξ#゚△゚)ξ『マジうぜぇ!!!』



233 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:36:53.42 ID:sGLbyoZr0
そんな訳で、現在僕が勤めるバーボンハウス本店の店長と料理長はこの2人だ。

(*゚∀゚)『いいかいっ!! どんなに忙しくても手抜きだけはしちゃだめだよっ!!
     1つの小さな手抜きの積み重ねが、
     大きな手抜きをする土壌を作りあげるんだっ!!
     忙しい時こそ声を掛け合ってミスをしない事を頭に置く事っ!!』

('A`)『…まぁ、そんな感じだ。俺からは以上』

まだまだ経験が浅い2人を本店のトップにする事は当初周囲から大きな反対があった。
その反対意見を封じ込めたのはショボンさんとギコさんの存在があったからに他ならない。
今では2人とも規制の枠にとらわれない感性を発揮して着実に営業成績を伸ばしている。

だけど、あの時のメンバーで一番環境が変化したのは間違いなく僕だろう。
僕は今では【名前だけなら全国区】の料理人として業界内に名を知らしめている。

( ^ω^)『…ちょっと寄り道するかお』

僕はそう考えて駅前の本屋に足を踏み入れた。
『話題のロングセラー』コーナーで見慣れた表紙が山積みになっているのを見つけ、
思わず手にする。
その表紙にはこうタイトルが書いてあった。



              僕は料理人になるようです。





240 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:39:14.80 ID:sGLbyoZr0
これが僕が【名前だけなら全国区】の料理人になった理由だ。

ブログ本ブームで、人気があるブログには大手出版社が飛びついてくる昨今。
幸運な事に僕の所にも御指名がかかり、軽い気持ちで返事をしたのが始まり。

同業者を中心に予想外の反響を呼び、
そこに目をつけた荒巻さんが【あのブログの筆者の勤める店はここだ!!】
と、大々的にアピール。
面白料理人としてテレビや雑誌で取材を受けるまでになっていた。

今では【バーボンハウスグループ宣伝部長兼本店副料理長】と言う
名前だけはご大層な肩書きをもらっている。

( ^ω^)(…肩書きだけじゃなくて給料上げて欲しいお)

そんな事を考えながら、僕は僕の本のページをめくる。
一番気に入っているのは、何度も読み返した【リンダリンダ】と題うった話だ。


242 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:40:48.79 ID:sGLbyoZr0

              リンダリンダ
     
     これを読んでくれている同業さんなら分かると思うけど、
     料理人の手って言うのは決して綺麗なもんじゃない。
     
     それは衛生的なものじゃなくて、
     火傷・切り傷・皸などがいたる所にあるからだ。
     
     治り掛けの傷の上に新たな傷がつき、瘡蓋に瘡蓋が重なる。
     最初はそれを疎ましく感じていた。
     
     でも最近では朝起きてから傷だらけの右手を眺めるのが楽しみになって来た。

     これが僕が歩いてきた料理人としての人生の証。

     僕の右手には写真には写らない美しいものがたくさん詰まっている。

     知識。

     経験。

     そして掛替えのない仲間たちと過ごした時間…。

( *^ω^)『…照れくさいお』

僕はそう呟いて本を元の位置に戻し、書店を後にした。



250 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:45:52.74 ID:sGLbyoZr0
(*゚∀゚)『おっ!! お疲れちゃん!! 宣伝部長様!!』

【従業員専用出入り口】のプレートが貼られた扉をくぐり、
スタッフルームに足を踏み入れた僕を待っていたのは店長『様』だ。

すでに厨房に入る機会は少なくなったはずなのに、
上半身はコックコート・下半身はミニスカートと言う非常にアンバランスな格好。
椅子に腰掛け、机の上に両足を放りだして書類を読んでいる。
はっきり言って見えるから止めて欲しい。
また、ツンやドクオに説教されるから。

( ^ω^)『ただいまだお』

言いながら僕は冷蔵庫を開き、最近のお気に入り『イチゴ豆乳』の紙パックを取り出す。

(*゚∀゚)『あれあれあれ~? ブーちゃん、そんな事してていいのかなっ!?』

( ^ω^)『ん? なんでだお?』

答えながら至福の味を一口。

(*゚∀゚)『じ・か・ん』

そう言って指差した壁時計は18:05を少し過ぎており、僕は盛大に噴き出した。

( ;^ω^)『や、やばいお!! 遅刻だお!! ツンに殺されるお!!』

僕は咽返りながら、濡れた口元をティッシュで拭う。
寄り道した本屋で思ったより時間を使っていたらしい。
服を脱ぎ捨て、代わりに純白のコックコートを羽織ってスタッフルームを飛び出した。

254 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:48:30.18 ID:sGLbyoZr0
 全力で足を動かし。
コックコートのボタンを留め。
呼吸を整える。
この3つの作業を同時進行させながら僕はバースペースに足を踏み入れた。

( ;^ω^)『遅れて申し訳ないお』

ξ#゚△゚)ξ『遅い!!』

クーさんの後を継ぎ、バースペースの新しい主となったのはツン。
僕の大切な人だ。

( ;^ω^)『だから謝ってるじゃないかお』

ξ゚△゚)ξ『謝るんなら…』

テーブル席の1つに視線を向ける。

ξ゚△゚)ξ『彼に謝りなさい!!』

そこでは緊張した面持ちの青年が僕を待っていた。
ツンから受け取った彼の履歴書に簡単に目を通す。

高校中退後、3年間無職。アルバイト経験なし…か。

( ^ω^)『…なるほどだお』

僕はガチガチに固まっている彼の前に腰を下ろした。

( ^ω^)『…ヒッキー君。で良かったかな?』

259 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:53:10.43 ID:sGLbyoZr0
 (-_-) 『…ひゃ、ひゃいっ!!』

盛大に噛んで赤面する彼に僕は微笑みかける。

( ^ω^)『緊張しなくていいお』

通勤時間。時給。正社員登用制度。そんな話を一方的に僕が話す形で面接は進む。
彼はただ壊れた人形のように首を上下に振るだけだ。

( ^ω^)『最後に質問なんだけど…ヒッキー君がここで働きたい。
       そう思った動機を話してほしいお』

(-_-) 『え…あの…その…』

あうあうと意味不明な言葉を口走っていた彼は、一度大きく息を吐き出すと真剣な目つきで語りだした。

(-_-) 『ぼ…僕!! ヒキコモリなんです!!』

( ^ω^)『……』

(-_-) 『小学校からずっと虐められてて…高校もそれで中退しました。
    それからは部屋にずっと…両親や自分に甘えて生活して、
    それでも自分を変えたくて、だけど勇気がなくて…
    そんな時に出会ったのがあなたの本だったんです!!
    僕はあなたのように変わりたいんです!!』

そこまで一息に話した彼は僕の視線に気付くと、また最初のように縮こまってしまった。

( ^ω^)『君の話はよく分かったお。でも…料理人になろうなんて考えは止めた方が良いお』


262 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:57:23.42 ID:sGLbyoZr0
 (-_-) 『…え?』

彼は僕の言葉を聞いて呆然としていたが、その意味が分かるにつれ青ざめていった。

(-_-) 『…そんな…どうして…』

( ^ω^)『厨房は…地獄だお』

僕は続ける。

真夏は40℃を超え、真冬でも凍てつく水に両手を突っ込む。
何重にも重ねられた火傷と切り傷。
週に一日あるかないかの休みでは体の疲れが抜ける事もなく、
毎朝目を覚ますたびに体のどこかが悲鳴を上げる。
泥と汗と油にまみれたコックコート。
常に高温を保つフライヤーや、切れ味抜群の中華包丁。
人生に絶望した誰かが新興宗教の経文を唱えながら暴れだしたら、間違いなく死人が出るだろう。

( ^ω^)『…それが料理人の現実だお。
       悪い事は言わないから止めた方がいいと思うお』

(-_-) 『それでも…それでも僕はあなたの様に…』

彼は俯き、両肩を震わせている。

( ^ω^)『それでも、君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…』

僕はそこで言葉を区切り目を閉じた。


267 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:02.30 ID:sGLbyoZr0
 真っ暗な瞼の奥。
僕は『それ』が現れるのを待つ。
最初、ぼんやりとした『それ』は僕に近づくにつれ輝きを増し
幾つもの人の形となって僕を取り囲む。

『それ』は僕を今まで導いてくれた光だ。

不安気な笑顔。

どことなく悪人っぽい笑顔。

自信に溢れた笑顔。

キモイ笑顔。

天真爛漫な笑顔。

一途な笑顔。

不機嫌そうな笑顔。

そして…最後に紫水晶色の瞳をした女性の…静かな笑顔。

その全てが僕を見守り、後押ししてくれている。

さぁ、伝えよう。
僕を導いてくれた光の全てを。
その輝きを永遠に絶やさぬ為に。

ヒッキー君。それでも君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…

268 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:33.22 ID:sGLbyoZr0









         ( ^ω^)『僕は…僕は君の道標【みちしるべ】になりたい』



















                   ( ^ω^)が料理人になるようです。  完


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