十二章8 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:22:00.25 ID:i9vr4OCZ0十二章 削除人 とある十階建ての巨大豪華ホテル。 そこは見た目はただの巨大豪華ホテルだが、その用途は普通ではない。 相当な部屋数があると言うのに、そのホテルを使用しているのは六人のみ。 六人が六人、一人一階ずつ階を分けられている。部屋を分けるのではなく、その階ごと分けてあるのだ。 要するにそのホテルは、一階には広いロビーと、ミーティングルーム。二階から七階までは、六人の誰かが使用。 八階から上には部屋はなく、トレーニングジムや体育館、道場のようなものがある。 なお、屋上にはその面積いっぱいの庭園。 また、地下も存在し、そこには数台の車やバイクが置かれている。 そんな異様なホテルの一階、ミーティングルーム。 高級感の漂う茶色い壁をしたその部屋には、六人の異能者がいた。 正確には五人の異能者と一人の人間だが。 巨大な体格を持つ男以外は全員椅子にかけ、一人の女性に視線を注ぐ。 その女性は「ふむ」と一人で何かを納得すると、口を開いた。 川 ゚ -゚)「集まったか」 10 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:26:58.72 ID:i9vr4OCZ0 その言葉に、テーブルに茶色のコートと帽子を置いた長身の男―――フサが口を開く。 その際に鋭い八重歯が覗いた。 ミ,,゚Д゚彡「見れば分かるだろう。六人しかいないのだからな。それとも六という数も数えられないのか?」 川 ゚ -゚)「む。では、早々に話を始めようか」 フサの憎まれ口を華麗にスルーして、彼女はその蒼混じりの黒い長髪をなびかせた。 川 ゚ -゚)「異能者を削除し始めてからかなりの年月が経った。 そして今、ようやく―――本当にようやく、残る異能者はわずかとなった」 綺麗にカールした金髪を持つ少女、ツンがぴくんと反応する。 ξ゚△゚)ξ「わずかって……具体的には?」 川 ゚ -゚)「あの組織―――“管理人”の七人。あの少年達四人。そしてあの男。 それともしかしたら居るかもしれない未確認異能者。 未確認異能者はいないと思う。いたとしても五人程度だとして……十七人だ」 ミ,,゚Д゚彡「全国で削除し続けて、ここが最終の地、か」 川 ゚ -゚)「その通り」 短くそう言うと、長髪の彼女は立ち上がる。 12 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:29:54.10 ID:i9vr4OCZ0 川 ゚ -゚)「お前達には色々と悩ませてきたし―――今も悩ませてしまっているが、それも、あと少しだ。 四日後の日曜日。その日に、あの“管理人”を削除しに行こう。私達の“力”なら簡単な筈だ。 根城としている施設ももう把握してある。問題は何一つない筈だ」 ( ´∀`)「決断が随分と早いもなね」 どこかのどかな、柔らかい笑顔をその顔に張り付けた男が、そう口を開く。 川 ゚ -゚)「奴らが新たな戦力を付ける前に消そうと思ってな。“今出来る事は今やれ”とファーザーは言っていた」 ( ´∀`)「でも、モナはまだ君達の武器は作り終えてないもなよ?」 川 ゚ -゚)「それは各々どうにかするさ。お前の武器が最高だが、武器であれば良いと言うのならいくらでも手に入る」 ( ´∀`)「……もな」 そう呟いて、男は口を閉じる。 14 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:33:16.71 ID:i9vr4OCZ0 ミ,,゚Д゚彡「あの少年達四人……それに、あの男はどうする?」 川 ゚ -゚)「彼らは何か光る物を持っているようだが、それだけだ。“管理人”を消した後にでも削除する。 それよりも問題はあの男だ。奴は何を考えているか分からない。 組織を抜けてフリーになったかと思えば、姿をくらます。そう思えば、わざとらしく動き始める。意味が分からない。 それに奴は油断のならない強さを持っている。奴がどう動くかによって私達も動きを変え、タイミングを見て削除する」 ミ,,゚Д゚彡「……あの少年達、削除しない……というのは、無理だろうな」 川 ゚ -゚)「……?何を言っている。無理に決まっているだろう」 ミ,,゚Д゚彡「あぁ、分かってる。あくまでも確認したかっただけだ」 川 ゚ -゚)「むぅ……相変わらず、よく分からない男だ」 ミ,,゚Д゚彡「その言葉はそのままお前に返すよ」 そこで、一人の少女が手を上げる。 優しそうな顔をした、優等生のような顔立ちをした少女。しぃだ。 川 ゚ -゚)「何だ、しぃ」 16 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:37:00.93 ID:i9vr4OCZ0 (*゚ー゚)「“管理人”のメンバーの“力”って、調べついてる?」 川 ゚ -゚)「む。大雑把にだが、とりあえず調べてあるぞ」 ξ;゚△゚)ξ「何でそれを言わなかったのよ」 川 ゚ -゚)「いや、知らなくても戦えると思っていたんだが……」 (;゚ー゚)「私とツンを除くあなた達四人はそれでも大丈夫でしょうけどね、私達はそうはいかないの」 川 ゚ -゚)「むぅ。では、一度しか言わないからちゃんと聞くように。 七人の名前と特徴は前に言ってあるから、“力”の性質を言えば良いな?」 (*゚ー゚)「うん、そんな感じ」 川 ゚ -゚)「『反射神経強化の二重人格者』『サイコキネシスト』『両腕変化』『空間操作』 ―――そして、『両足と風』『蟲』『無』」 ξ;゚△゚)ξ「いきなりで悪いけど、いくつか質問良い?」 川 ゚ -゚)「む?」 ξ;゚△゚)ξ「『両足と風』……それと、『蟲』と『無』って何?」 川 ゚ -゚)「むぅ……それが、よく分からんのだ。 一人の異能者に二つの能力、というのはないはずだし、『蟲』と『無』についてはまったく分からん」 (*゚ー゚)「……気は抜かない方が良いかもね。予期しない出来事なんて、望ましくないものばかりだから」 17 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:39:55.39 ID:i9vr4OCZ0 川 ゚ -゚)「うむ。それでは、突撃時の段取りだが……」 と、そこで穏やかな笑顔をしている男がいきなり立ち上がる。 ( ´∀`)「僕はここで去らせてもらうもな。僕は集団行動じゃなく、一人であいつだけを狙うもなー。 という事で、僕はドロンさせてもらって、ちょちょいと武器を造ってくるもな」 そう長髪の彼女に向けてやんわりと言い放ち、彼はミーティングルームから出て行く。 その後のミーティングルームには、笑い混じりの溜め息があった。 ξ;゚△゚)ξ「うー、相変わらずモナーさんはマイペースだなぁ」 川 ゚ -゚)「仕方ないさ。あいつは本来、私達の中には入るべきでない人物―――異能者でない、ただの人間だからな」 ぷはー、と。彼女の言葉をどこか馬鹿にするように盛大に紫煙を吐き出して、フサが言う。 ミ,,゚Д゚彡「まぁ、そんな事は最早どうでも良い事だ。あいつは俺達を裏切らない。あいつは“反異能者組織”の人間じゃない。 俺達の仲間だ。それだけで十分だ。十分過ぎる」 その言葉に、彼女はフサにふわりと右手を向ける。 その仕草はまるで自然。そうするのが当たり前だと言わんばかりの仕草。 川 ゚ -゚)「そんな事は分かっている。それよりもお前は煙草を辞めろ。 臭いし、身体に悪い。まさに百害あって一利無しだ。合理性がまったくない」 18 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:43:17.97 ID:i9vr4OCZ0 彼女がそう言い終えるのと同時。 フサの煙草から立ち昇る紫煙が、ぴたりと止まった。 それを確認して、彼女は「よし」と手を降ろす。 ミ,,゚Д゚彡「……そんなのは俺の勝手だろう」 呆れたようにそう言って、彼は煙草を投げ捨てる。 その煙草の先は、湿りきっていた。 (;゚ー゚)「ほら、話の軌道がズレてきてる。戻って戻って」 川 ゚ -゚)「おっと。危ない危ない。では、突撃時の段取りだが」 ξ゚△゚)ξ「今回はどういう形になるの?」 川 ゚ -゚)「うむ。まずはいつも通り、ツンに上空から様子を見てもらう。 それからフサとクックルの戦闘能力の高い二人に突入してもらって、敵を乱す。 そこで私としぃ、ツンが突入。あとはその施設の中を、異能者を探して削除しながら進んでいく。 頭を叩けば蛇は死ぬ。だが私達は蛇を跡形もなく、見る影もなく―――削除しなければならないからな」 ミ,,゚Д゚彡ξ゚△゚)ξ「把握」 19 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:45:54.57 ID:i9vr4OCZ0 (*゚ー゚)「またモナーさんは一人で適当な頃合に突入するの?」 川 ゚ -゚)「あぁ、恐らく。奴は自分自身で思考して突入する。と、思う」 ξ;゚△゚)ξ「時々あの人ドタキャンするからね……」 (*゚ー゚)「姉さん、武器はどうするの?」 川 ゚ -゚)「むぅ。私はいつも通りに刀を使うさ。お前達はどうする」 ξ;゚△゚)ξ「私、武器扱うの下手だからいらない」 (*゚ー゚)「武器を扱うのは好きじゃなーい」 ミ,,゚Д゚彡「俺はいらん。武器はなくとも十分戦える。クックル、お前もそうだろう?」 フサが、立って腕を組む巨大な男に眼だけを向ける。 今まで一言も喋らなかった男は視線も動かさず、やはり喋らない。 ( ゚∋゚)「…………………」 沈黙だけを残し、男はただ頷く。 20 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/17(土) 22:48:05.61 ID:i9vr4OCZ0 川 ゚ -゚)「何だ、私だけか持っていくのは」 ミ,,゚Д゚彡「そういう事になるな」 川 ゚ -゚)「……むぅ」 彼女は軽くそう唸ると、これまでとは違う声の高さで四人に言う。 川 ゚ -゚)「何か質問はないか?ないならばお開きにしようと思っているのだが」 ξ゚△゚)ξ「ないよ」 (*゚ー゚)「私もないよー」 ミ,,゚Д゚彡「同じく」 川 ゚ -゚)「うむ。クックルはないか?」 ( ゚∋゚)「…………………」 巨体の男が頷いたのを確認して、彼女も頷く。 川 ゚ -゚)「む。では、お開きだ。四日後まで各自好きなように過ごせ。鍛錬は怠るな」 その場の全員の返事。 順番にミーティングルームから異能者達は出て行き、ミーティングルームは空になった。 戻る 目次 次へ |