十八章二( ゚ω゚)「おぉっ!!」 大きく踏み込み、兄者との距離を一瞬にしてゼロにする。 ( ´_ゝ`)「単調な動きだ」 対する兄者は、ブーンの接近を予測したかのようなタイミングで足を横薙ぎに振るった。 ブーンはそれをギリギリでしゃがんで回避。 ( ´_ゝ`)「ほぅ、よく反応出来たな」 感心する兄者を片目で見つつ、ブーンは叫ぶ。 ( ゚ω゚)「ギコッ!!」 (,,゚Д゚)「任せろ!」 応じたギコが兄者に走り寄り、灯油入りのビンを横薙ぎに振るう。 ビンから出た灯油は横に伸びる炎の線になって、兄者に襲いかかった。 だが。 ( ´_ゝ`)「ふん」 兄者が足を振り上げると、その線は跡形もなく木っ端微塵に弾け飛んだ。 (;゚Д゚)「なっ……!?」 ( ´_ゝ`)「言ってなかったかな?私の“力”は両足と風。炎なんて風圧で弾き飛ばせる」 (,,゚Д゚)「はぁ、なるほど……」 言って、ギコは眼をギラリと輝かせる。 (,,゚Д゚)「だったらこの腕で攻撃すれば良い事だっ!」 更に距離を詰め、右腕を薙ぐように振るう。右腕を覆う鱗がジャラリと鳴った。 だがその腕は兄者の足に軽々と止められる。 兄者は防御したまま、不審そうに眉を寄せた。 ( ´_ゝ`)「……何故、力を抜いた?」 対するギコは笑顔で答えた。 (,,゚Д゚)「俺が本命じゃなかったんでね」 言って、ギコは己の攻撃を防御している兄者の足を掴む。 (;´_ゝ`)「なっ……」 ( ^ω^)「ギコ、そのまんまでっ!」 ブーンが思いきり飛び上がる。 電柱の高さを軽々と越した彼の身体は、ちょうど兄者の真上に体が来た時に落下を始めた。 (,,゚Д゚)「やれ、ブーンッ!!」 ( ゚ω゚)「おぉぉおぉぉおぉっ!!」 踵落としの体勢を空中で作りだし、落下。 対する兄者は落下してくるブーンを確認すると、ギコの腕を無理矢理弾いて後ろに下がった。 一瞬。 凄まじい音がして、ブーンが地面に落下する。 ブーンの踵が落とされた所の地面には、小規模のクレーターが出来上がっていた。 ( ´_ゝ`)「ほぅ、中々に強い足を持ってるじゃないか。それに、応用も出来ているようだ。 プギャーからの情報の通り。中々良いセンスをしている」 二人からそれなりの距離を保ったままに兄者は呟く。 (;^ω^)「っち……避けやがったかお」 (;゚Д゚)「しっかりと掴んでたんだがな……」 「まぁ、良いさ。それよりも」と、ギコは懐から何かを出す。 (,,゚Д゚)「お前はこれでも食らっとけよ!」 叫び、同時に投擲。 ( ´_ゝ`)「ふん。ちゃちな事を」 兄者は飛び来るそれが何かを確認する事もせずに、それを蹴り飛ばした。 それは完全に油断しての行動だった。 瞬間。 かしゃんという破砕音が響き、兄者の身体に液体がかかる。 兄者が破壊した物。それは、中に何かの液体が入っていたビンだった。 (;´_ゝ`)「ぶっ……な、何だ? これは……?」 (,,゚Д゚)「当ててみ?」 (;´_ゝ`)「この臭い……まさか!?」 にやりと口の端を吊り上げ、ギコは獰猛な笑みを浮かべる。 (,,゚Д゚)「正解、灯油だ」 言って、パチンと指を鳴らす。 瞬間。兄者の身体から、ゴウと火柱が立ち昇った。 (;´_ゝ`)「がぁあぁぁっ!?」 叫んで、無数のガラス片が落ちる地面を転がりまわる。 (;´_ゝ`)「熱い! 痛い! 炎が! 炎が!! ぎゃああぁあぁ!!」 炎を消そうとのた打ち回る兄者を見下ろして、ギコは吐き捨てるように言う。 (,,゚Д゚)「熱いか? 痛いか? てめぇらはその何倍もの苦痛を多くの人間に与えてきたんだぞ」 (;´_ゝ`)「あぁ! 悪かった! 悪かったから、どうかこの炎をどうにかしてくれ!!」 (,,゚Д゚)「っは。知るか。俺には炎を操る“力”はない。せいぜい転がり回って火を消せよ」 (;´_ゝ`)「そんな……そんなぁ! あぁあぁああぁぁ! 嫌だ! 熱い! 熱い熱い熱い!! 嫌だぁぁあぁ!! 炎が消えない! 消えない!! どうなってる!? ふざけるな!! 消えろ! 消えろぉおぉ!!」 狂ったように、兄者は地面を転がる。 それでも炎は消える様子を見せない。 それもそのはず。 炎が弱まるたびに、ギコは炎の勢いを強くしているのだから。 ブーンが慌てた様子でギコに駆け寄る。 (;^ω^)「ちょ……ギコッ!」 (,,゚Д゚)「何だ? ブーン」 (;^ω^)「これじゃあ本当に死んじゃうお! 火を消さないと……!」 (,,゚Д゚)「こいつは相当の数の人間を殺してる。これは罰だ」 そこで、ギコはブーンに耳打ちする。 (,,゚Д゚)「心配せずとも殺しはしない。痛みと熱さで狂いそうになった時に、無理矢理に火を消してやるさ」 (;^ω^)「お……本当に、大丈夫かお?」 (,,゚Д゚)「あぁ。任せておけ。……俺だってこいつを殺す気なんざない。 殺してしまえば、こいつらと何ら変わりなくなるからな」 視線を兄者に戻す。 兄者は未だ地面を転がり続けていた。 だが、その身体にもはや生気はない。 (;´_ゝ`)「熱い……もう、嫌だ……やめてくれ……」 力がなくなってきた兄者を見て、ギコは眼を細める。 (,,゚Д゚)「……そろそろ、か?」 その言葉を合図としたかのように。 (;゚_ゝ゚)「あぁあぁああぁぁぁあぁっ!! 嫌だ!! 死ぬのは嫌だ!!」 兄者が、狂った。 (;゚_ゝ゚)「炎! 消えろ! 消えろよ!! 死ぬのは嫌だ! 熱い! 熱い!! 炎! 消えろ!! 血が! 血が出る! 出ちゃう! 肉が切れてる! 切れてる!? あぁ! 死ぬ! 死ぬ!! 嫌だぁあぁ!!」 絶叫しながら、みじめに地面を這いずりまわる。その身体は既にガラスまみれで血塗れだ。 (,,゚Д゚)「よし、ブーン。上着を貸せ!」 (;^ω^)「おっ! 把握したおっ!」 すぐさま上着を脱ぎ、ギコに投げ付ける。ギコも上着をすぐに脱ぐ。 ギコはその二枚の上着でばたばたと兄者の身体を叩いた。 火の勢いは眼に見えて弱くなっていく。 (;´_ゝ`)「うっ……ぐ……」 (,,゚Д゚)「さて、こんなもんか」 かなり炎が弱くなった頃に、ギコは息を一つついた。 兄者は息も絶え絶えな状態だ。 (,,゚Д゚)「ちゃんと生きてるし、大丈夫だ。 これで人の痛みってのも分かっただろう」 (;´_ゝ`)「ぐっ……」 兄者が突然、苦しそうに胸を抑える。 (;´_ゝ`)「はぁ、あ、あぁああぁ……!」 (,,゚Д゚)「どうした? 何かあったのか?」 うめいて、のた打ち回る。 ギコは少し兄者に近付いてやる。 (;゚_ゝ゚)「あ、あ、あ、あ……!!」 (,,゚Д゚)「おい、どうしたんだ?」 更に近付く。 その瞬間。 ( ´_ゝ`)「油断はいけないなぁ」 兄者が勢い良く立ち上がり――― (;゚Д゚)「―――ッ!?」 ( ´_ゝ`)「おやすみ」 ―――正拳を、ギコの鳩尾に捻じ込んだ。 (;゚Д゚)「は、ぁ―――っ!?」 声にならない声で叫んで、ギコはその場に崩れる。 対する兄者は何事もなかったかのように服の汚れを払った。 ( ´_ゝ`)「私がもう動けないと誤信したな」 ギコを見下ろして冷たく言い放つ。 (;゚ω゚)「ギコ!?」 ( ´_ゝ`)「……おっと、そういえばまだ君がいたな」 うつ伏せに倒れるギコをそのままに、兄者はブーンを見やる。 ( ´_ゝ`)「さっさと君も片付けなくてはな」 (;゚ω゚)「お前……何で立ち上がれるんだお!?」 ブーンは驚愕を隠さずに叫ぶ。 それはそうだ。 兄者の身体の所々は酷い火傷で覆われ、全身に無数のガラスが刺さっているのだから。 ( ´_ゝ`)「あぁ、こちらも言っていなかったか」 身体に刺さったガラス片を抜き取りながら、兄者は言う。 ( ´_ゝ`)「私には痛覚がないんだよ。弟者と同じでね。 異能者では普通ありえない、『二つの能力の所持』の副作用とでもいうのか、ね。 痛覚がゼロとまではいかないが、普通の人間と比べ、かなり痛みを感じづらい」 (;゚ω゚)「に、人間じゃねぇお……」 ( ´_ゝ`)「人間じゃない? 君は面白いジョークを言うのだな」 言って、兄者は突然ブーンに走り寄る。 ブーンはその動きに反応出来ない。 (;゚ω゚)「くっ……!?」 ( ´_ゝ`)「異能者が人間であるわけがないだろう」 腰を半回転させ、戻しつつ真っ直ぐに拳を突き出す。 その拳はブーンの頬を捉えた。 (;゚ω゚)「おぶっ!」 吹き飛び、ガラスの散らばる地面を転がる。 絶えがたい痛みが全身を襲うが、それに構わず無理矢理に身体を起こした。 ( ´_ゝ`)「ほう……? 今ので立ち上がれるのか。何故だ?」 (#)゚ω゚)「知るかお……!」 ブーンの口の端から血の線が垂れる。 それを拭う事もせずに、ブーンは兄者に相対した。 ( ´_ゝ`)「……おそらく、殴られる瞬間にスウェーバックしたのだろうな。 でなければ脳が揺れて使い物にならなくなるはずだ」 ( ゚ω゚)「どうでも良いおっ!」 叫んで、飛び出す。 一歩で兄者の懐へ侵入。 更に半歩踏み出し、踏み出す際の勢いを利用した拳を撃ち出す。 『足からしか攻撃が来ない』という弟者の言葉を聞いて、彼なりに考えた新しい攻撃法だった。 だが ( ´_ゝ`)「攻撃が短調だなぁ」 その拳は、悠々と避けられる。 (;゚ω゚)「お……!?」 ( ´_ゝ`)「そんな攻撃だと、カウンター食らっちゃうよ。こんな風にね」 言って、兄者は隙丸出しのブーンの腹に拳を撃ち込む。 (;゚ω゚)「がっ……!」 うめきつつも、ニ撃三撃と迫り来る拳を回避。 隙を見て大きく後ろに下がった。 ( ´_ゝ`)「もしかして距離を取れば安全だと思っていないか?」 言って、兄者は虚空に向けて思いきり足を振るう。 ブーンは一瞬何をしているのか分からなかったが、次の瞬間には兄者が何をしたのか気付いた。 (;゚ω゚)「おぉおおぉ!」 叫びつつ、自分も足を横薙ぎに振るう。 ―――兄者の蹴った高さと同じ高さで。 瞬間、足に鈍重な衝撃。続いて、脇腹に鋭い痛みが走った。 その痛みに耐えてブーンは言う。 (;゚ω゚)「風の“力”……今のはカマイタチかお?」 彼の両脇腹はパックリと切り裂かれ、血が噴き出ていた。 その傷口は鋭利な刃物で切り裂いたような傷口。 ( ´_ゝ`)「ほぅ。異能者の切り裂かれない足でカマイタチを相殺したか」 (;゚ω゚)「ギリギリでお前の意図に気付けて良かったお。 気付けなかったら、上半身と下半身が分かれてたお」 言って、ちらりと地面に転がる二つに分かれた死体を見る。 ( ´_ゝ`)「いや、“力”を加減していたからそうはならなかったさ。 とは言っても、まともに食らってれば動けなくはなっていただろうけどね」 (;゚ω゚)「……厄介な“力”だお」 ブーンは、思考する。 自分がどうすれば勝てるのか。 “力”の差は歴然としている。 経験の多さも、肉体技も、戦いに対する精神面でも自分は兄者の足元にも及ばないだろう。 まともにやっても勝てる相手ではない。 ギコが戦える状態ならば二対一で何とかやれただろうが、少なくとも一対一では勝てるはずもない。 となれば、どうすれば勝てるか。 油断を突く―――それしかない。 兄者は自分を弱者と見下してくれているし、「殺してはいけない」という制約の元で戦っている。 ならば油断は必ず生まれる物だろうし、突けない物でもない。 ―――よし。 決して高くはない勝利の可能性を思い浮かべて、ブーンは唾を飲み込んだ。 ( ゚ω゚)「行くおっ!」 ( ´_ゝ`)「来い」 脇腹から血を滴らせながら、走り寄る。 ( ゚ω゚)「おおぉっ!」 叫びつつ、足を振るう。 それは簡単に兄者の足に受け止められた。 ( ´_ゝ`)「工夫というものを知れ」 ( ゚ω゚)「単調な攻撃でも繰り返していればいつか入るお」 言って、今度は逆の足を繰り出す。止められる。 蹴り上げる。避けられる。 突き出す。避けられる。 薙ぐように振るう。止められる。 繰り返し、繰り返し、繰り返す。 幾度目かも分からない攻撃。それもまた止められる。 だが、そこでブーンは――― (;゚ω゚)「おぉぉおぉっ!!」 ―――叫びつつ、兄者の頬目掛けて拳を突き出した。 ( ´_ゝ`)「そろそろそう来ると思ったよ」 その場から退く事もせず、兄者は顔を動かすだけでそれを回避する。 ( ´_ゝ`)「足での攻撃が入らないからと、拳で攻撃か。 言ったよね。そういう安易な行動は、カウンターを食らうよ、ってさ」 同時。めり、という鈍い音が響く。 兄者の拳がブーンの腹に食い込んだ音だった。 (;゚ω゚)「え、はっ……!!」 うめいて、息を吐きつつその場に倒れる。 兄者はブーンを見下ろしながら言う。 ( ´_ゝ`)「ふむ、これで私の分の拉致は完了だな」 (;゚ω゚)「た……の、は……フェ……だお」 ( ´_ゝ`)「む? 何を言っている?」 絶え絶えな言葉で紡がれた言葉を聞き取ろうと、兄者が近寄る。 (;゚ω゚)「っは……が、はっ……!!」 ( ´_ゝ`)「さっき言った言葉、聞こえなかった。もう一度言ってくれ」 (;゚ω゚)「た、倒れたのは……」 ( ´_ゝ`)「倒れたのは?」 ( ゚ω゚)「倒れたのはフェイクだお」 がばっ、とブーンは足を器用に使って、バネのようにして起き上がる。 そしてすぐさま、兄者の顎を狙って拳を伸ばした。 ( ゚ω゚)「おぉぉぉおぉっ!!」 腰を回転させるようにして、爆発的な威力と共に飛び行く拳――― ( ´_ゝ`)「知ってたよ」 ―――だがそれはいとも簡単に避けられ、ブーンは足を払われた。 (;゚ω゚)「おっ!?」 視界が反転し、地面に叩きつけられる。 すぐさま置き上がろうとしたが、首を抑え付けられ、立ち上がれなかった。 (;゚ω゚)「うぇ……!」 首が締まり、おかしな声が出る。 ( ´_ゝ`)「君が考えているような事は簡単に想像がつくさ」 更に首を締める手に力を込める。 (;゚ω゚)「―――ッ!?」 ( ´_ゝ`)「このまま落として、意識がなくなった君を連れて行こう。 なに、心配しなくても良いさ。三人の仲間も一緒だから」 呼吸が困難になり、少しずつ脳に血が行かなくなる。 彼の世界は少しずつ明るさを失っていった。 逃げないと。 でも、どうやって? 分からない。 ダメだ。物事を考えられない。 ( ´_ゝ`)「じゃあ、おやすみ」 首を握るその手に一層力がこもった。 世界が一瞬真っ白になり、やがて暗転する。 その時。 「死になさい」 どこかで聞いた事のある声が響き、首から手が離れた。 (;゚ω゚)「ゲホッ! ハァッ! ハァッ……!」 咳をして、無理矢理酸素を体内に取り込む。 未だぼやける眼で彼が見た物は、草色に輝く翼だった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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