十四章3 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:20:17.55 ID:TI1YI5Wn0十四章 管理人 森の中の、とある施設。 かなり大規模な施設で、それなりに離れなければその全景は見えない。 と言っても、離れれば見えると言うわけではない。 その施設は森に囲まれる様に建っている為、離れれば森によってその姿は隠される。 その施設は、雪色。 ただただどこまでも際限なく―――雪色過ぎるほどに、雪色。 その雪色の施設の高い位置には曇りガラス。 その施設は昔、研究所として使われていた施設だった。 4 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:23:36.50 ID:TI1YI5Wn0 その施設の中には、七人の異能者。 正確には六人の異能者と一人の捻じ曲がった人間。 その七人が七人、全員が同じ部屋に存在している。 ドーナツ型のテーブルにその七人は腰掛け、無言。 双子らしき兄弟がパソコンをタイプする音以外、何も聞こえない。 しばらくして、その七人の一人―――どこか皮肉っぽい笑顔を顔に張り付けた男、モララーが口を開いた。 ( ・∀・)「やぁ、よく集まってくれた」 从#゚∀从「人が嫌だつってんのを強制的に連れて来といて、よくそんな事が言えんな」 オレンジ色のハインがそう言うが、男はそれを無視。 ( ・∀・)「今回の話はあの少年達四人の件なのだが……あの四人、出来るだけ早く連れて来てほしい」 その言葉に、眼だけが笑ったプギャーが口を開く。 ( ^Д^)「……またいきなり。どうしてです?」 ( ・∀・)「あの“削除人”達が、またもや動き出そうとしている。 それがあの少年達を削除しようとしている物なのか、それとも私達を削除しようとしているのかは分からない。 だがどちらに転んだとしても、あの少年達をこの手に収めといて悪い事はない」 6 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:26:25.81 ID:TI1YI5Wn0 从 ゚∀从「なぁ、何でこっちからあの“削除人”を潰しに行かねぇの?」 ( ・∀・)「……“削除人”は、簡単に潰せる物ではない。もっと戦力を付けなければ、どちらが勝つかは分からない」 从 ゚∀从「そんなもんかね?あたしとお前がいれば、それでもう十分潰せると思うがね」 ( ・∀・)「その油断は危険だぞハイン。考えてみろ、“削除人”のメンバーを」 从 ゚∀从「確かに危険な奴はそれなりにいるがよ……」 ( ・∀・)「少しでも敗ける要素があるならば、それは徹底的に排除すべきだ。 私は勝たない賭けはしない。賭けと言う物は、勝ってなんぼのものだ」 細身のスーツを着たミンナが、その眉を寄せながら言う。 ( ゚д゚ )「……今回私達を集めた理由は、それだけでしょうか?」 ( ・∀・)「いや、もう一つあってね」 从 ゚∀从「当ててやろうか?」 8 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:29:50.93 ID:TI1YI5Wn0 ( ・∀・)「面白い。当たればレモンティーをおごってやろう」 从*゚∀从「っは。それで何度おごってもらった事か。ま、あたしはレモンティ飲めるから良いんだけどな。 お前が言いたい事はあれだろ?「それなりに人間をぶちまけてこい」だろ?」 ( ・∀・)「正解。ほら、これで二本ほど飲めるだろう」 そう言う彼の手の上には、いつのまにか五百円玉が乗っていた。 彼はそれをキィンと弾き、ハインがそれをキャッチする。 从*゚∀从「さーんきゅ。つーかお前、勝てない賭けはしないんじゃなかったのか?」 ( ・∀・)「今のは賭けじゃなく、ただのお遊びさ」 从 ゚∀从「っは。屁理屈こねんじゃねーよ」 (;^Д^)「あ、あの」 ( ・∀・)「む?」 (;^Д^)「……今回の集まりはこれで終わり、ですか?」 9 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:32:50.72 ID:TI1YI5Wn0 从 ゚∀从「あーん?てめー、人が話してる時に、人の話し相手を取るんじゃねぇy」 ( ・∀・)「今回の人間大量虐殺は、いつもより多めにやってくれって事を添えとこう。 それで今回の集まりは終わりだ。それだけの理由で集めて悪かったね」 ( ^Д^)「いえ。それでは、俺はこれで」 プギャーは、そう言って部屋を退出する。 他の者も続いて出て行き、その場に残る者は怒りに震えるオレンジだけとなった。 从#゚∀从「あたしを無視するんじゃねぇえぇ!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 10 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:36:20.11 ID:TI1YI5Wn0 (*゚∀゚)「み、ミンナさんっ!」 部屋から出た後、つーはミンナに後ろから話しかけた。 ( ゚д゚ )「む?呼んだか?」 振り向きながら、ミンナは彼女を見る。 彼の鋭い目付きに、彼女は少し怯えに近い感情を抱いた。 ( ゚д゚ )「おぉ、つー。どうした」 (*゚∀゚)「今回のモララーさんの指令の話なんだけど」 ( ゚д゚ )「む」 (*゚∀゚)「あの少年達に協力するようにお願いするっていうのは分かるけど……。 何で……人を殺す必要があるの?」 ( ゚д゚ )「またその質問か。……まぁ良い。詳しく聞こう」 12 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:39:38.35 ID:TI1YI5Wn0 (*゚∀゚)「別に、人を殺さなくても良いんじゃないのかな?生かしておいて何か問題になる事なんて、何もないよね?」 ( ゚д゚ )「モララーは人に恐怖を植え付けようとしているんだ。これから先に、人間が異能者に反抗しないようにな」 (*゚∀゚)「でも、殺す必要なんてないじゃない」 ( ゚д゚ )「見せしめ的な意味として殺す事で、恐怖は早く広まる。 人間を私達、異能者の下に置くには、恐怖が最も必要なんだ」 (*゚∀゚)「……まず、人間を異能者の下に置くって考えが、私は嫌なんだけどな。 ほら、もっとさ、異能者と人間の共存……とかさ、色々あるじゃん!」 ( ゚д゚ )「その考えを主としたいのならば、この組織からは抜けろ」 ゆっくりと、しかし力強くミンナは言う。 ( ゚д゚ )「この組織の人間は、みんな人間に何かしらの恨みや憎しみを抱いている。 その苦しみを分からせてやる為に、私達は人間を異能者の下に置こうとしているのは知っているだろう。 あの組織が異能者を削除する“削除人”なら、対する私達は人間を管理する“管理人”になるんだ。 それが今更共存だと?馬鹿げている。反吐が出る。人間の愚かさに、何故私達がひれ伏さなければならない」 13 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:42:08.00 ID:TI1YI5Wn0 (*゚∀゚)「でもっ……でもさぁ!」 ( ゚д゚ )「そんなに人を殺すのが嫌ならば、“彼女”に代わってもらえば良いじゃないか。彼女は生粋の殺人狂だろう?」 (*゚∀゚)「……私は人を殺すのも、人が殺されるのも、人に殺させるのも嫌なのっ!」 ( ゚д゚ )「命とは何かを犠牲に成り立つ物だ。諦めろ」 彼は冷たくそう言うと、つーに背を向けた。 もうつーと話すつもりはないらしい。 つーも、もうミンナと話すつもりはないらしい。 つーは一人、研究所の出口へと向かって行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 14 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:45:33.86 ID:TI1YI5Wn0 カタカタカタッ、と、軽い無機質な音が響く。パソコンのタイピングの音だ。 その部屋の中には二人の人間。よく似ている。双子の兄弟のようだ。 その二人は言葉を交わさない。 キーボードをタイピングする音と、マウスを押し込む音だけが、その部屋の中の音だった。 かなりの時間、それが続く。 その音を破ったのは、キーボードをタイピングしている方の男の声だった。 ( ´_ゝ`)「―――時に、弟者」 (´<_` )「どうした、兄者」 ( ´_ゝ`)「今回のモララーの命令……「少年四人の拉致」と「人間の大量虐殺」についてだが」 (´<_` )「うむ。聞こう」 ( ´_ゝ`)「我ら二人がその命令のどちらかに固まるというのはひどく非効率的だと思うのだ。 命令は効率的に済ませよう。「人間の大量虐殺」についてはこの兄に任せて、弟者は「少年四人の拉致」を頼む」 (´<_` )「うむ、構わない。確かに「人間の大量虐殺」については、この弟よりも兄者の方が優れているだろう。 OK、把握した。「少年四人の拉致」はこの弟に任せよ」 15 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:48:26.78 ID:TI1YI5Wn0 その言葉に、兄者と呼ばれた男が立ち上がり、拳を突き出す。 ( ´_ゝ`)「流石だな、弟者」 その言葉に、弟者と呼ばれた男は、拳をぶつける。 (´<_` )「流石だな、兄者」 その声を合図にしたかのように二人同時に拳をひねり、手の甲をぶつける。 そして、二人は同時に言った。 ( ´_ゝ`)(´<_` )「流石だよな、俺ら」 ゆっくりと、二人は部屋を退出する。 部屋にパソコンと静かな殺意を残しながら。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 17 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:51:15.55 ID:TI1YI5Wn0 その部屋は、その施設の中では異様な部屋だった。 壁は白い防音壁。 その壁には、黒の刃と銀の刃で構成された人の半身ほどもありそうな巨大なハサミが立て掛けられている。 部屋の中には何種類ものギターと、大きなグランドピアノ。 そしてオレンジ色のソファに、ミニテーブル。 数ある部屋の中でもずば抜けてカラフルなこの部屋。 その中には二人の人間。 一人は眼だけが笑って見える男、プギャー。 もう一人はオレンジの頭髪を持つ女、ハイン。 ハインはソファに座って、プギャーを前にしていた。その手にはペットボトルのレモンティ。 対するプギャーは困ったような顔で、ハインを見ている。 (;^Д^)「……何ですか、ハインさん?何で俺を拉致したんですか?」 从 ゚∀从「いやー、な!アレなんだ!」 ( ^Д^)「何ですか?」 从 ゚∀从「暇だからちょっと付き合えよ!」 プギャーは深く溜め息。 18 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:54:33.31 ID:TI1YI5Wn0 (;^Д^)「またそんなんですか?」 从 ゚∀从「おう!悪いか?」 (;^Д^)「今回は本当に勘弁してくださいよ」 从 ゚∀从「あーん?何でだよ。お前、大量虐殺の方にも拉致の方にも行かないくせぇじゃねぇか」 (;^Д^)「……何でそれを知ってるのかは置いておくとして。 俺、もう体ボロボロなんですよ。何回か戦闘重ねて、それなりに重いものも食らっちゃいましたから。 異能者は治るの早いって言ったって、そろそろ休まなきゃ俺もスクラップになっちゃいます」 从 ゚∀从「あんな奴の命令に従順になってるからだよ。あんな奴の命令なんて無視しちゃえば良いじゃんよ」 その言葉に、プギャーの肩がピクリと動く。 ( ^Д^)「あの人の事を……馬鹿にしないでいただけますか?」 从 ゚∀从「あん?あぁ、そういえばお前はそんなだったな。悪い悪い。謝るよ」 突如声色の変わったプギャーにも、ひょうひょうとした態度でハインは接する。 プギャーはまた一つ溜め息。 彼にとってハインは厄介な上司であった。 19 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:57:07.28 ID:TI1YI5Wn0 ( ^Д^)「……で、もう行ってもよろしいでしょうか」 从 ゚∀从「あー、待て待て!そうだ!用事を思い出したぞ、うん!たった今思い出した!」 (;^Д^)「……何ですか?」 そこでハインはおもむろにソファから立ち上がり、プギャーにギターを渡す。 明るい緑と黒の入り混じったエレキギターだった。 从 ゚∀从「あたしがレモンティ飲んでる間、BGMとして何か弾いてくれよ!」 ( ^Д^ ) 从 ゚∀从「こっち見んな。ぶち殺すぞ」 (;^Д^)「い……いや、あなたいきなり何を?」 从 ゚∀从「あーん?エレキは嫌いか?アコギもあるぞ?」 (;^Д^)「いや、そういう事じゃなくてですね」 从 ゚∀从「あーん?何だよ。さっさと言えよ」 22 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 22:59:40.23 ID:TI1YI5Wn0 (;^Д^)「まず、あなたがレモンティを飲んでる間のBGMとして何か弾けってのもおかしいでしょう。 あなたはどれだけ偉いんですか」 从 ゚∀从「アタシより偉い奴なんていねぇよ。アタシがナンバーワンだ」 ハインのそんな言葉を無視して、プギャーは続ける。 (;^Д^)「それにですね、俺はギター弾けないんですよ。 ギターどころか、楽器全般弾いた事ないです」 从 ゚∀从「弾いた事なくても、勘で楽器くらい弾けるだろ」 (;^Д^)「そんなのあなただけですって。普通の人は長い期間練習しないと弾けませんよ」 从 ゚∀从「そんなもんなのか?どうも分かんねぇな」 そこでハインはレモンティを一口。 从 ゚∀从「つーっても、なぁ。やる事ないしな」 ( ^Д^)「それは良かった。モララーさんの命令を遂行してきたらどうです?」 从 ゚∀从「大量虐殺も拉致も、あたしにとっちゃ楽過ぎるんだよ。つまらねぇ」 ( ^Д^)「良いじゃないですか。たまにはつまらない事でもやっても良いと思いますよ」 23 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 23:02:14.21 ID:TI1YI5Wn0 从 ゚∀从「っは。やーだね。あたしは楽しい事以外やりたくねぇんだ。楽しくない事は昔に嫌ってほどやったよ」 ( ^Д^)「……そうでしたね」 从 ゚∀从「あー、くっそ。暇だ。暇で暇で仕方がねぇ。異能者の誰かに喧嘩売ってくるかな」 (;^Д^)「そいつ死んじゃうじゃないですか。あなたは“削除人”じゃあないんですよ?」 从#゚∀从「じゃあこの暇をどう潰せと言うんだ!」 (;^Д^)「知りませんよ!!」 从#゚∀从「もう良い!お前なんて出て行けこの野郎!役立たずめ!」 (;^Д^)「何でキレてんだよ!!」 狼狽しながらも、プギャーはその部屋を逃げるように出る。 彼はそのまま自室へと向かった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 24 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/24(土) 23:04:38.47 ID:TI1YI5Wn0 ( ・∀・)「…………………」 モララーはとある一室で、写真を見ていた。 その写真には一人の男。どこかのどかな笑顔をしている。 ( ・∀・)「…………………」 くしゃり、とモララーはその写真を握り潰す。 そして皮肉な笑みを浮かべたまま、誰にでもなく呟いた。 ( ・∀・)「次の戦争、あんたは来るのかな?」 潰れきった写真を、ぐっと握り込む。 次に彼が手を開いた時、その写真は消え失せていた。 ( ・∀・)「来ても、来なくても、何も変わらないがね。私は次の戦争で終わりにする気はない」 声も出さずに、口の端を吊り上げる。 ( ・∀・)「次の戦争は、私にとってはただのお遊びだからね。 終わりってのはもっと終わっているべきだ」 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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