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LOYAL STRAIT FLASH ♪

二十八章

32 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:09:32.80 ID:Q8V7y0Uz0

二十八章 敵


怒号と悲鳴、そして笑い声が交差する。
クーとドクオを除く全ての者が、声をあげていた。

しかし、モララーの笑い声が唐突に止む。
彼はぐらりと、バランスを失ったかのようにふらついた。

その動きは一瞬。
すぐに体勢を立て直すと、彼は何事もなかったかのようにまた笑い出した。

ξ;△;)ξ「よくも! よくも、クックルさんを!!」

(#゚ー゚)「モララー……!!」

笑う悪魔に対して、翼がはためき、光が収束される。
だがそれは、クーの腕によって制された。




33 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:10:01.58 ID:Q8V7y0Uz0

川 ゚ -゚)「止めろ」

(#゚ー゚)「……姉さん?」

ξ;△;)ξ「!? 何で!? 姉さん、あいつはクックルさんを―――!!」

川 ゚ -゚)「分かっている」

ミ,,゚Д゚彡「クックルの言葉を思い出せ」

横に並んだフサは、内側に熱い物を込めながらも、冷静に言い放つ。

ミ,,゚Д゚彡「本気になったモララーに、お前達は太刀打ち出来ない。無駄死にも良い所だ」

ξ#;△;)ξ「なっ―――!?」

ミ,,゚Д゚彡「……だから、アイツは戦える俺達が潰す。アイツが殺れなかった分を、俺達で殺るんだ。
     アイツは少しでも俺達が負傷するのを軽減させようとした。お前達が死ねば、クックルの想いは全て無下にされた事になる」

(#゚ー゚)「…………………」

ミ,,゚Д゚彡「クックルを想っていたのなら、アイツの意志を尊重して、お前達は生きろ。絶対に、だ。
      ―――行くぞ、クー」

川 ゚ -゚)「あぁ」

両手を解放しながら歩み行くフサ。
右腕を解放しつつ、氷の刀を握り締めるクー。


35 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:11:31.32 ID:Q8V7y0Uz0

歩み寄って来た二人を、モララーは残骸の上から見下ろし、そして笑った。

( ・∀・)「おやおや、『鬼神』を退治したと思ったら、今度は『魔獣』と『雪女』を相手にしなければいけないのか」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ」

川 ゚ -゚)「必死に命乞いでもするのだな。まぁ、許さないが」

( ・∀・)「これはこれは、怖い怖い」

からかうように言って、彼はおもむろに右手を顔の前に掲げる。
そして次の瞬間、その右掌の直前の空間で、黒と銀の銃弾が踊り狂った。

「―――チッ」

舌打ちが響いて、銃弾のダンスは止まる。
モララーはそちらの方向に眼をやって、わざとらしく驚いたふうにした。

( ・∀・)「ドクオ君じゃないか。何で私を銃撃するのかな?」

('A`)「気にいらねえからだよ」

再度、クロを発砲。
しかし、やはりその弾は右掌の直前で弾け飛ぶのみ。




38 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:13:31.21 ID:Q8V7y0Uz0

('A`)「……っつーか、な」

( ・∀・)「む?」

('A`)「こいつらもお前が気に入らないらしい。悪いんだが、ちょっと死んでやってくれ」

それと同時。
ドクオの横から、壮絶な勢いの炎の舌が伸びた。

炎の舌は空気を焼きながら、モララーに襲いかかる。
だがそれが彼に到達する瞬間、彼は空間を渡ってその場から消えた。
炎の舌は虚しく空気を焼き尽くすのみ。

(,,゚Д゚)「チッ……どこに消えやがった」


「危ない、危ない」


(;゚Д゚)「ッ!?」

嘲るような声がギコの隣から響く。
ギコがそちらに眼をやれば―――そこには、長剣を振りかざすモララー。

( ・∀・)「まったく、危ないじゃないか」

笑いながら長剣を振り降ろす。




40 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:15:25.18 ID:Q8V7y0Uz0

だが、振り下ろされた長剣は唐突に軌道を変えた。
ちょうど足元への攻撃を防ぐように降ろした剣は、そこで魔獣の足を捉える。
そして剣がひるがえれば、そこで頭部へ伸びていた白銀の足を弾いた。

モララーはそこで、ギコから離れる。
異速の魔獣と白銀は、モララーを追尾。

だがそれらの足がモララーを捉えようとしたところで、再度、彼の姿は煙の様に消えた。
白銀と魔獣の足が交差し、同時に舌打ちを漏らす。

ミ,,゚Д゚彡「奴にはテレポートの能力も備わっている。油断はしない事だ」

吐き捨てられた言葉は、ギコに対してのものだ。

(,,゚Д゚)「…………………」

ミ,,゚Д゚彡「どうした?」

(,,゚Д゚)「……アンタ今、俺を護ったのか?」

フサの眼が、驚愕に見開かれた。
だがフサはそれを必死に隠して、ただ平然と言葉を並べる。

ミ,,゚Д゚彡「……思い上がるな。俺はモララーを狩ろうとしただけだ」

言って、向きを変える。
これ以上顔を合わせていると、何かおかしな事を口走ってしまいそうだった。


41 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:16:53.20 ID:Q8V7y0Uz0

―――その一瞬の油断。
それが、命取りだった。

(;゚ω゚)「おっちゃん! 後ろ来てるお!!」

ミ;゚Д゚彡「なっ……!?」

ブーンの声が、フサに向けて叫ばれる。
瞬間、彼は首筋に冷たい物が走るのを感じた。

首筋に振り下ろそうとしているのが分かる。
だが無理だ。かわしきれない。

一瞬で思考したフサは、覚悟を決めて歯を食いしばった。


しかしそこで響くは肉を裂く音ではなく、金属音だ。


( ゚∀゚)「注意してる方が注意力散漫ってのはダセェぞおっちゃん!」

モララーの長剣を止めていたのは、ジョルジュのブレードだ。
ジョルジュはすぐに長剣を弾き、ブレードを連続で振るう。

しかしモララーは剣技もずば抜けている様で、ブレードは彼を傷付けられない。


42 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:17:29.63 ID:Q8V7y0Uz0

やがてジョルジュはブレードを大きく弾かれ、腹に蹴りを食らった。
彼はうめいて、咄嗟にバックステップ。追撃を警戒して、腕を構えた。

だがモララーは追撃せず、それどころか軽い身のこなしで後ろに退く。

一瞬の後、彼の目の前の空間を、銀の銃弾と黄金の光線が貫いていった。
後ろに退いていなければ、彼の側頭部を銃弾と光線が貫いていただろう。

その方向に眼をやれば、銃を構えたドクオと掌を構えたしぃだ。

( ・∀・)「急な共闘にしては中々のコンビネーションじゃないか」

川 ゚ -゚)「黙れ」

( ・∀・)「おぉっと、怖い怖い」

モララーを睨むクーの眼は、絶対零度を思わせる冷たさだ。
表情には表さない彼女も、クックルの死について何も想わないわけではなかったようだ。

クーはモララーに刀を向け、ゆっくりと歩み寄りながら言い放つ。

川 ゚ -゚)「お前は、今ここで殺す。
     ホームを潰し、ファーザーを殺し、クックルを―――何人もの同胞を殺したお前は、許されない」

( ・∀・)「許される気なんてないからな」

川 ゚ -゚)「ならば喜んで死に行け」



44 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:19:06.53 ID:Q8V7y0Uz0

そして、クーの姿が消失する。
次の瞬間。彼女はモララーの目前で刀を構えていた。

その速さは、モララーのような空間移動ではない。
彼女自身の、単純だが洗練し尽くされた速さだ。

勢いと速さをそのままに、刀が切り上げられる。
だがモララーはそれを上半身を仰け反らせるだけで回避。

( ・∀・)「速いが、君の動きは先が読める」

身体を仰け反らせたまま、クーの腹部に拳を捻じ込む。
クーはそれに反応出来ず、吹き飛んだ。

そしてすぐに立ち上がろうとして、再度膝を折る。
どうやら、彼の拳は良くない位置に入ったようだ。

川;゚ -゚)「ぐっ……!」

そこで彼女の腹に連続で叩き込まれる蹴り、蹴り、蹴り。
足が叩き込まれるたびに、彼女の口からは苦鳴が漏れた。

( ・∀・)「一応、こうしておこうか」

言う彼の左手には、空間を超えて呼び出したのであろうナイフだ。
そしてそれは倒れるクーのふとももに振り下ろされた。

咲く血華。叫びを押し殺した苦鳴。


46 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:21:05.71 ID:Q8V7y0Uz0

川;゚ -゚)「モララー……貴様ッ……!!」

( ・∀・)「そこで指をくわえて見ていろ、クー」

言いつつ、右手を前に出す。
次の瞬間、その右手の前の空間に無数の白銀の羽が突き刺さった。

( ・∀・)「お前の仲間がどんどんと死に行く様を」

二度、何もない空間を切るように腕を振るう。
その次の瞬間には、ツンの背中の翼が見るも無残に切り飛ばされた。

“力”を失った無数の羽根が、ただの羽根となって空間を埋め尽くす。

羽根のカーテンの隙間を縫うようにモララーに撃ち込まれたのは、黄金の光線だ。
しかしモララーはそれを余裕で回避。
そして捻じ曲げた空間から取り出した槍を、しぃ向けて投擲した。

槍は吸い込まれる様にしぃの肩を貫き、彼女を壁に縫い止めた。

(#゚Д゚)「てめぇっ!」

ギコは右腕を持ち上げる。
彼の中の獲物を待ちきれない炎の龍が、掌からちろりと小さな舌を出した。



47 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:22:34.71 ID:Q8V7y0Uz0

( ・∀・)「ここで炎を打つのか? 私は構わないが、状況を考えた方が良いとは思うぞ」

ギコは訝しげに彼を睨んだ後に、ハッとして、悔しげに歯噛みする。

今、空間の多くを羽根が舞っている。
ここで炎を放てば、自分達もタダではすまない。
しかもモララーは空間を操れるのだ。下手すれば、無駄死にしかならない。

( ゚∀゚)「だったら俺が行くさ!」

ジョルジュが叫んで、右腕の形状を禍禍しい巨大な爪へと変える。
そして走り寄ると、全てを引き裂き叩き潰すかのような勢いで爪を振り下ろした。

( ・∀・)「そんなに早く死にたいか」

言いつつ、モララーはそれをバックステップで回避。
ジョルジュの爪は地面を捉え、床を破壊して埃と土砂を巻き上げた。

モララーはすぐにジョルジュへと接近。
そしておもむろにジョルジュの左腕を掴むと、彼を投げ飛ばす。

その方向には、どうしようかと思案していたギコ。
彼は突然投げ飛ばされたジョルジュに対応出来ず、二人一緒に地面へと叩き付けられた。

(;゚∀゚)「痛っ……悪いね、ギコちゃん」

(;゚Д゚)「ぐっ……あ、あぁ」

よろめきつつも立ち上がった二人は、そこで同時に苦痛に顔をしかめる。


50 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:24:47.10 ID:Q8V7y0Uz0

モララーに投げ飛ばされた際に無理な力がかかったからか、ジョルジュの左腕はおかしな方向に折れ曲がっていた。
そしてギコの腹には、深く刺さった二本のナイフだ。

(;゚Д゚)「かっ……! い、いつのま……に……!?」

( ・∀・)「今だよ、今。君が立ち上がったその瞬間に投擲した。
      いや、違うな。君の立ち上がるタイミングを予測して投擲した。
      ははは。もっとゆっくり立ち上がれば良かったな」

(;゚Д゚)「ふざけやがって……!!」

忌々しげにそう吐いて、ギコは倒れる。
彼から流れ出した紅が、ゆっくりと己の範囲を広めていった。

(;゚∀゚)「ギコ……!!」

ジョルジュはギコからナイフを引き抜き、咄嗟に右腕を彼の傷口に乗せる。
そして右腕の形状を、傷口の形に合わせて変化させた。

傷口が綺麗に塞がれ、出血が止まる。
しかし、これで彼はギコからは離れられなくなった。

これだけで二人、戦闘不能だ。



51 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:26:40.21 ID:Q8V7y0Uz0

ミ#゚Д゚彡「がぁああぁぁぁああぁっ!!」

フサの咆哮。

両腕、両足が解放され、魔獣へと姿を変えた。
眼が血のような紅に染まり、犬歯が異常に伸びる。

ミ#゚Д゚彡「モララー……貴様ぁあぁ……!!」

( ・∀・)「ハ。獣風情が。弟と仲間を殺されて、とうとうキレたか?」

ミ#゚Д゚彡「―――ふざけるな、下衆が!! 貴様の存在を抹消してやる!!」

硬い床を抉り飛ばして、眼を剥く速度で駆け出す。
そしてその勢いをそのままに―――否、更に加速させて、全てを打ち砕く拳を放った。

だが、その拳は何もない空間を打ち砕いたのみ。
モララーは既に、彼の背後へと空間を渡っていた。

ミ#゚Д゚彡「グルゥゥウウァアァアァッ!!」

しかしフサは勢いを全て殺しきり、背後のモララーへと無数の拳を浴びせた。
モララーは弾丸のように放たれる全ての拳を、その両手で受け止めてみせる。

受け止める度に、ガラスが砕けるような音が響いた。
モララーは掌の前に空間の壁を瞬時に作り、フサの拳の勢いを殺して受け止めているのだ。


52 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:27:16.97 ID:Q8V7y0Uz0

ミ#゚Д゚彡「小癪! だがそれも無駄と知れ!!」

叫んで、フサは右足を後ろに引く。
そして、まるで砲弾のような勢いで、右足はモララーの頭部へと放たれた。

これには流石に、空間の壁も意味を為さない。
フサの右足は、モララーの頭部を粉砕するだろう。

だが、そこでモララーはフサの思惑を裏切った。
彼は、もはや視覚出来ないほどのフサの足を避けたのだ。

ミ#゚Д゚彡「なっ……!?」

( ・∀・)「“力”を解放すればするほど、おつむの方も獣になるのだな」

モララーの拳が、隙だらけのフサの腹へと吸い込まれる。
その衝撃に、彼は身体をくの字に折り曲げた。

そしてその顔に叩き込まれる膝。
血華が咲き、彼は仰け反る。

そして、とどめと言わんばかりの勢いで打ち込まれる胸への掌底。
血塊を吐き出して、フサは大きく吹き飛んだ。

それを見て、モララーは笑う。
だがまたもその身体は一瞬、ぐらりと揺らいだ。

やはりすぐに体勢を直し、軽く頭を振るう。
それからは何もなかったかのように、言葉を浴びせた。


54 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:29:15.41 ID:Q8V7y0Uz0

( ・∀・)「―――違ったアクションを起こす際に、予告するような事言ってどうするんだ?
      心理操作を狙わないのなら、戦闘に言葉は必要ない―――君が一番分かっていると思っていたがね」

ミ#゚Д゚彡「ぐ……き、貴様ぁぁあぁ……!!」

震えながらも、彼は立ち上がる。
しかし既に限界だったのか、白目を剥いて倒れ込んだ。
四肢が普通の腕に戻った事からも、彼が意識を失った事が分かった。


それに伴うかのように、舞っていた羽根がゆっくりと地面に落ちていく。

全ての羽根が舞うのを辞めた時。
立っていたのは―――戦闘が出来るのはブーンとドクオ、そしてモララーの三人だけとなっていた。

('A`)「……ブーン。むやみに突っ込むんじゃねぇぞ。戦闘可能なのは、俺とお前だけだ」

( ゚ω゚)「分かってるお」

('A`)「本当に分かっているんだか」

溜め息を吐きつつも、ドクオの眼はモララーから離れない。
微細な筋肉の動きでさえ、その瞳は捕らえている。



57 : ◆tAdHw/rYVY :2007/08/23(木) 21:29:49.66 ID:Q8V7y0Uz0

だが、肝心のモララーは―――

( ・∀・)「……来たか、クソ兄貴」

部屋の入り口の方を見て、眼を細めていた。

何を言っているのかと、ドクオは眉根を寄せる。
しかし部屋のそちらを見る事は出来ない。油断は、見せられない。

その代わり―――その耳に、新たな音が飛び込んだ。

('A`)「……足音?」

( ゚ω゚)「お?」

('A`)「……何かが、すごい勢いで近付いてきてるな」

その声に弾かれたかのように、ハインが口角を吊り上げる。
そしてゆっくりと壁から背中を剥がし、巨大な鋏を手に取った。

从 ゚∀从「来たね」

その声と、同時―――

青い槍を携えた人間が、その場に足を踏み入れた。







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