( ^ω^)ブーンが残された時間で喧嘩を売るようです 



33 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:31:20.06 ID:5IFq2ijU0
第3話 「死ぬために」 


僕達は暗がりの洞穴の中を進んでいった。 
予想通り中はかなりの深さがあり、予想以上に入り組んでいた。 

( ^ω^)「ツン。大丈夫かお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

まだ口を聞いてはくれないが、ついて来てはくれている。今はそれだけでもありがたい。 

( ^ω^)「ここを出たら…どうするかお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 
( ^ω^)「やっぱりVIPに向かうのかお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 
( ^ω^)「さっき言ってた同じ事ってどういう意味だお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

キャッチボールの会話を繰り返す。彼女は何もせずに聞いている。いや、聞いているかも分か
らない。 
しかし、ただそこにいてくれるだけでありがたい。 
これからの自分の事を考えると不安になる。何らかの処分は免れえないだろう。 
その不安な気持ちを紛らわすために話かける。返答が無くても話しかける。 

弱い僕のために話しかける。 


34 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:31:56.23 ID:5IFq2ijU0
( ^ω^)「ここを出たら…どうするかお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

アタシは答えない。ただ彼の後をついて行く。あそこで待っていても、こうして動いても、 
結局は同じ事。それは分かっている。結局アタシを取り巻く運命は変わらない。 
けれど…一人は嫌だから…こうしてアタシはついて行く。 

( ^ω^)「やっぱりVIPに向かうのかお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

第1セクションVIP。2CHの中心。アタシが行かなければならない場所。本当は行きたくない場
所。 
けれど……いっても行かなくてもアタシにとっては変わらない。アタシを取り巻く運命は変わらな
い。 

( ^ω^)「さっき言ってた同じ事ってどういう意味だお?」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

同じ事。おなじこと。オナジコト。 
足掻く事さえ許されない。自分を変えることさえ許されない。アタシを取り巻く運命は変わらな
い。 
……本当は歩きたくなんてない。ついて行きたくなんてない。VIPになんて行きたくない。 
口を開けば恨みごとを…口を開けば妬みごとを…口を開けば嫉みごとを… 
子供のように泣き喚いて、子供のように駄々をこねて、子供のような屁理屈を言い出すかもし
れない。 
だからアタシは黙ってついて行く。何も喋らずに、何も考えずに、人形のように黙ってついて行
く。 

弱いアタシのためについて行く。 


35 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:32:19.72 ID:5IFq2ijU0
( ^ω^)「……!」 

洞穴を進むと急に空気の流れが変わった。これは…気配? 
こんな所に人がいるのか?もしや野党の類か何かか…… 
知らず知らずの内に握る拳に力が入る。 

(;^ω^)「………」 
ξ゚ -゚)ξ「?」 

ツンは気付いていないみたいだ。僕は全身の神経を研ぎ澄ます。 
いくら落ちこぼれの新米だとしても僕だってオブサーブの一員だ。素人相手に負けるとは思わ
ない。 
だけど…相手の人数が予想以上に多い場合…どうするか? 

(;^ω^)「…ツン…少しこっちに寄ってくれお。」 
ξ゚听)ξ「………」 

ツンは何かを言おうしたが、僕の表情から察してくれたようで何も言わずに近づいてくれた。 
これでいい。もしもの時は彼女を連れたまま僕の最大の武器、足を使って逃げる事が出来
る。 
気配が近づいてくる。空気の流れがまた変わる。足音が響き始める。 
気配の主の姿が見えた。だが…それは僕の予想とはまるっきり外れていた。 

(;^ω^)「………」 
ξ;゚听)ξ「………」 
( ・(ェ)・ ) 「クマー!」 

く、クマー? 


37 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:33:02.78 ID:5IFq2ijU0
(;^ω^)「………!」 
ξ;゚听)ξ「キャッ!」 
(;^ω^)「シッ!静かにするお。」 

僕はツンの体を無理矢理倒し、静かにするように注意する。 
彼らは意外と臆病で、物音等がすると驚いた弾みで人間の頭を吹っ飛ばす困ったちゃん。 
人間なんかが真正面から戦えるような存在ではない。 
更に、臆病なクセに好奇心旺盛。動く物を追いかける習性がある。 
その巨体に似合わずかなりの俊足。100mを約7秒で走るといわれている。 
とてもじゃないが僕ごときの足じゃ逃げ切れない。 

( ・(ェ)・ ) 「クマ?」 
(;^ω^)「………」 
ξ;゚听)ξ「………」 

そして、人類が編み出した対クマー用最終作戦…死んだ振り。 
むやみに反撃などしなければ、彼らもこちらに攻撃してくる事は無い。 
それに、こちらが何の反応もなくやり過ごせば興味を失い去っていってくれる。 
僕はツンに目力で喋らないように伝える。ツンもその知識があったのか、黙って死んだ振りを
続けてくれる。 


38 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:34:31.10 ID:5IFq2ijU0
( ・(ェ)・ ) 「クマー?」 

ポン ポン ポン  

ξ;゚听)ξ「!!??」 

クマーがツンの頭を数回叩く。叩くというより触ると言ったほうが正確と言えるようなソフトタッチ
だが… 
お願いだから……悲鳴とか上げないで下さい。ほんのちょっとの間ですから我慢して下さい。 

( ・(ェ)・ ) 「クマックマー?」 

モニュ モニュ 

ξ;゚听)ξ「!!!!!?????」 

ヤ、ヤロゥ!あの神聖なるツンのホッペタに触りやがったっ……! 
いや!いやいやいやいやいや!!落ち着け!落ち着くんだ僕!! 
やつぁ獣だ!あれがどんなに神秘で高貴で崇め奉らなければならない物か理解してないだけ
だ!!ノミと同類よ!! 


39 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:35:11.92 ID:5IFq2ijU0
( ・(ェ)・ ) 「クママ?」 

クン クン クン 

ξ;;)ξ「!!!!!!!!!?????????」 

あっ涙目。カワイイ……そうじゃなくて!あんの獣(けだもの)!!レディーに対して鼻寄せて匂
い嗅ぐたぁ男のやる事じゃねぇ!! 
もっとこういう場合は紳士的作法に乗っ取ってだな!!くそう!!羨ましいなチクショ
ウ!!!!! 

ちょっと待ってください。ツンさん?その開いたお口は何をしようとされてるのですか? 
やめてよね。本気で戦ったりしたら、人間がクマーにかなうはずないだろ? 

ξ; )ξ「……………………!!!!!!」 


キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!! 


40 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:35:49.66 ID:5IFq2ijU0
( ・(ェ)・ ) 「クマッ!?」 
(;゚ω゚)「ぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」 

ツンを担いで全力で走る!走る!!走る!!! 
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ!!!!!ハ!!シ!!レェェェェエエエエエエ
エ!!!!! 

(`・(ェ)・´)「クマーー!!!」 
(;゚ω゚)「ぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!???」 

追ってきたぁぁああ!!ぐぁぁあああ!!!うぉぉおおお!!!!ぬりゃぁぁぁあああ
あ!!!!! 
振り向くな!!前だけを見据えろ!!!考えるなカンジロォォォオオオオ!!!!! 

(`・(ェ)・´)「クマー!!!」 
(`・(ェ)・´)「クマー!!!」 
(`・(ェ)・´)「クマー!!!」 
(`・(ェ)・´)「クマー!!!」 
(・(ェ)・)「コグマー!!!」 
(;゚ω゚)「ぶふぉ!!!qあwせdrftgyふじこlp !!!!」 

増えてるぅぅぅぅううう!!!!!!!!うきゃぁぁぁぁぁぁ…………… 


41 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:36:15.37 ID:5IFq2ijU0
(;゚ω゚)「ひっはっふっはっふっはっひっは……」 
ξ;゚听)ξ「………」 

後ろを振り向く。先程とは打って変わって静けさだけが辺りに漂う。 
何とか…撒けたのか?僕は今更のようにツンを抱きかかえている事を思い出した。 

(;^ω^)「うおっ!?あ、お、ご、ゴメンだお。」 
ξ;゚听)ξ「………えっ?あ、ううん。ありがとう。」 
ξ////)ξ「あっ!!か、勘違いしないでよね!別にさっきの事許したとかそういうんじゃないん
だからね!!」 
ξ////)ξ「そ、それともう降ろしなさいよ!もう大丈夫なんでしょ!?」 
( ^ω^)「………」 

言われた通りに床に降ろす。意外とよく喋るんだなぁ… 
抱きかかえられた事が恥ずかしかったのか、頬を赤らめて喋るツンを見ながらそんな事を考え
ていた。 

ξ*゚听)ξ「そ、それにしても、足…速いのね。クマーから逃げ切るなんて。」 
( ^ω^)「…そういやそうだお。」 
ξ゚听)ξ「そういやそうって…何が?」 
( ^ω^)「あ、いや、うん。そうだお。僕は確かに足が速い事で有名だお。」 
ξ゚听)ξ「?」 

確かに僕は足が速い。駆けっこじゃ子供の頃から今まで誰にも負けた事がない。 
しかし…無我夢中で気付かなかったが、さっきのは確実にいつもより速かった。 
よくよく考えると異常なスピードだ。クマーより早く走るなんてありえない。 

( ^ω^)「まぁいいお。」 

結果として逃げる事ができた。それでいいじゃないか。 
きっと追い詰められていたから普段出せない力が働いたとかそういうモノだろう。 
僕は疑問を無理矢理押し込め、地上を目指して歩き始めた。 


42 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:37:19.34 ID:5IFq2ijU0
( ^ω^)「お?」 

あれは人工灯?ってことは地上にまで辿り着けたって事か? 

( ^ω^)「ツン!やっと着いたお!」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 
( ^ω^)「どうしたお?」 
ξ゚ -゚)ξ「何でも…ないわ。」 

何でも無いと言ったその顔は、どう見ても何でも無い人間がする表情じゃなかった。 
先程の言葉を思い出す……同じ事。これが何か関係しているのだろうか? 

ξ゚听)ξ「…行きましょう。」 
( ^ω^)「…そうするお。」 

重苦しい空気が流れる。今までのように馬鹿にされている方が気が楽だったんじゃないかと思
うほどに。 
僕は先程までのように喋りだす事ができないでいた。彼女も何も喋ろうとはしなかった。 


43 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:37:49.82 ID:5IFq2ijU0
(;^ω^)「………」 
ξ゚ -゚)ξ「………」 

特に何かを考えていたわけじゃない。この空気が耐えられなかったから何となくした質問だっ
た。 

(;^ω^)「ツンは…何でVIPにまで行くんだお?」 
ξ - )ξ「………」 
ξ ー )ξ「何でかって?」 

僕は後悔した。僕の浅はかさを後悔した。僕の考えなしな行動を後悔した。 
彼女は顔を歪めた。もしかしたら笑顔を作ろうとしたのかもしれない。だとしたらそれは完全に
失敗していた。 
見るに耐えない笑顔。こんな悲しい顔をした笑顔を…僕は生まれて初めて見た。 


              死ぬためよ 



第3話 「死ぬために」  終 




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