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( ^ω^)ブーンがトランプに参加するようです。

(;^ω^)「はぁっ、はぁっ」
薄暗い照明の中、校舎をひたすらに走る。
何度も後ろを振り向いた。
誰も追ってきていない。
足音を気にする走り方はなんとも疲れるものだったが、次第に慣れてきた。
(;^ω^)「ふう……ふう……」
男の名前は内藤ホライゾン。
軽くピザ気味な体型で陽気に走るその様から、仲間内では「ブーン」と呼ばれている。
彼には借金がある。
大学を卒業するとともに親が蒸発し、彼に莫大な借金を残していった。
日増しに激しくなっていく取立て。
ブーンは精神的に追い詰められていった。
ある日、取立て屋の一人が彼にこんな話を持ちかけてきた。
「お前、ゲームに出る気はないか」
彼はその話に乗った。
というより、乗るしか道はなかった。
なんのゲームか知らないが、借金が消えるなら―――。
(;^ω^)「ど、どうしよう……」
そして一週間後、彼はここにいる。
東京都内の私立大学敷地内。
いつ何が飛び出してくるかわからない闇に怯え、教室の扉をそっと開いた。
(;^ω^)「……」
中の様子を伺う。
薄暗い照明は心もとなかったが、なんとか教室の隅まで見渡せた。
(;^ω^)「とりあえずここに隠れるかお……」
「動くな」
ひんやりと、冷たい感触が彼の首に伝った。
(lli゚ω゚)「ひっ」
しゃっくりのような、なんとも情けない声が出た。
しかし今はそんなコト気にしている場合ではない。
(lli゚ω゚)「死にたくないお……た、助けてく、くださいお……」
「……」
男は答えるコトなく、ブーンのうなじを見る。
「スペードの……7、か」
(lli゚ω゚)「お願いだお……お願いだお……」
「ん? お前……ブーンか!?」
(lli゚ω゚)「お?」
('A`)「俺だよ俺!!」
(;^ω^)「ド、ドクオ!!」
男の正体はブーンの旧友、ドクオだった。
('A`)「まさかしょっぱなからお前に会えるとはな」
( ;ω;)「うう……ド、ドクオ〜」
('A`)「うわ、泣くなよ馬鹿!!」
( ;ω;)「だって……」
('A`)「お前はスペードの7なんだな。じゃあ俺とは一応無関係だ」
(;^ω^)「無関係……」
('A`)「おいおい、ルールくらい覚えてんだろ?」
ルール。
そう、このゲームのルールだ。
ゲームの名前は「トランプ」というらしい。
取立て屋の話から一週間後、ブーンはとある大学に連れてこられた。
自分の通っていた大学と比べてかなりこじんまりとした校舎だった。
校舎に入ると、すぐ脇の事務室に連れて行かれた。
取立て屋が二、三話すと、事務員(あきらかに正規の者ではなさそうだが)が焼きゴテを持って
出てきた。
面積はペットボトルの蓋くらい。
ブーンは嫌な予感がした。
予感は的中して、首の裏、うなじあたりに焼印をされた。
すぐに大き目の絆創膏を貼られた。
事務員「スペードの7です。覚えておいてください」
それだけ言うと事務員は引っ込んだ。
そこで取立て屋はブーンを残して帰っていった。
すぐに事務所近くの大きな教室に行くよう促された。
教室に入った途端、中にいる人間が一斉にこちらを見た。
不安と怯えの目。
興奮でぎらつかせた目。
生気を失っている目。
思わず尻餅をつきそうになったがなんとか絶えた。
あらためて教室内を見渡す。
ざっと50人はいるだろうか?
後ろのほうの席に座ったところで、自分の知ってる顔があることに気づいた。
('A`)「……」
ドクオだ。
ブーンの数少ない友達。
最近連絡をとっていなかったが、間違いなくドクオだ。
(;^ω^)「ド、ドク
「ソコ!! 私語は慎め!!」
(;^ω^)「……!!」
教壇に立つ黒服の男に一喝された。
教室内が静まり返ると、黒服は咳払いして話し始めた。
黒服「あ〜、人数もそろったようなので、これから説明を始めます」
黒服「質問はあとで受け付けます。一切私語は認めませんので、そのつもりで」
黒服はそう前置きして、わざとらしくオホンと咳払いした。
教壇に両手をついて声のトーンを上げる。
黒服「これから皆さんにはこの大学内を使ってゲームをしてもらいます」
黒服「首に押された記号は覚えてますね? え〜、それは一応トランプの記号と数字です」
皆自分の首に手をやった。
黒服「あ、まだ絆創膏は剥がしちゃダメですよ〜」
黒服「ハート、クローバー、スペード、ダイヤ。これらが1から13までですね」
黒服「時間内に自分とは違う記号の、そして同じ数字の人の首を集めてください」
(;^ω^)「(首……!?)」
黒服「例えばハートの5の人はクローバー、スペード、ダイヤの5を集めればいいんですね」
黒服「え〜、そのセットで五千万です。関係ない記号数字は首一つあたり10万しか出ません」
「あ、あの」
ブーンの隣に座っていた中年のオヤジがおずおずと手を上げた。
「く、首を集めるって一体どうやって……!?」
黒服「え〜、質問はあとで……って言っただろうがボケ!!」
「ひっ」
黒服にどなられて中年オヤジは小さくなった。
ぱっと見ただけでも気が小さそうな印象を受ける。
黒服「はい。でもいい質問ですね。首を切り取るのに素手では無理でしょうから、皆さんにナイ
フを配ります」
黒服「時間は48時間です。時間が来たら放送しますんで。その時点で首を所持してる方に賞
金を出します」
黒服「え〜、一応大学敷地内からは出ないでくださいね。監視はちゃんとしてるんで」
黒服「うん。こんなトコですかね。じゃあお待ちかねの質問ターイム!!」
おどけた言い方は逆にこの空間では不気味だった。
説明を受けて初めてわかったゲーム内容。
これから52人で……殺し合いをさせられる。
いまいち状況についていけないブーンの頭をよそに、ドクオが静かに手を挙げた。
('A`)「……はい」
黒服「はいそこのきみ」
(;^ω^)「(ドクオ……)」
('A`)「記号数字……その、頭は、放送の時点で所持していないと無効なんですか?」
黒服「これまたいい質問ですね!!」
何が嬉しいのか黒服のテンションはあがっていた。
黒服「そうです、無効です!! だから皆さん自分がゲットした首を奪われないようにしてくださ
いね」
('A`)「……」
(;^ω^)「(ドクオ……お前は「やる気」なのかお!?)」
黒服「他にはありませんか?」
「あのよ、タッグを組むってのは別にいいんだろ?」
黒服「はい、問題ありません」
そう言って金髪の男は誰かに目をやった。
中に知り合いでもいるんだろうか。
アイコンタクトのような感じだった。
/ ,' 3 「あの……」
黒服「はいそこのあなた」
手を挙げたのはさっきの中年オヤジ。
見かけによらず積極的なヤツだ。
/ ,' 3 「あの……あのですね。ええと……」
黒服「?」
/ ,' 3 「と、途中で降りる、ということは出来ないんでしょうか……」
黒服「……」
黒服の表情が変わった。
終始笑顔を貼り付けてきた表情に、皺がよっていく。
黒服「……あのなぁ」
黒服「てめえなんでここにいるか分かってんのか!? もう後がねぇからだろうがよ!!」
/ ,' 3「ひっ!! ひいぃ……」
黒服「チャンスくれてやってんだぞコラ!? いやならさっさと臓器でもかっさばけ!!」
今にも飛び掛りそうな黒服を、教室の隅に立っていた別の男が制止する。
黒服「チッ……」
黒服「はい、じゃあ他に質問はないですね」
問いに沈黙で答える。
黒服「じゃあ今からナイフと紙を配ります。紙にスタート地点が書いてありますんで受け取った
ら早速移動してください」
黒服「開始の合図は放送しますんでね。フライングはダメですよ」
一人、また一人と教室を出て行く。
ブーンはドクオの様子を伺っていたが、こちらには目もくれず行ってしまった。
慌てて紙を開き、場所を確認する。
「B棟二階男子トイレ」
(;^ω^)「男子トイレ……」
思わず声に出してしまった。
周りに聞かれたんじゃないかと周囲の人間を確認した。
……誰もこっちを見ていない。
安堵のため息を漏らしたそのとき
ξ゚听)ξ
(;^ω^)「……ツン!?」
教室を出て行く群集の中に、幼馴染のツンがいた気がした。
黒服「はいそこ!! 開始までお喋りは禁止ですよ!!」
(;^ω^)「あうあう……」
驚いて黒服の方を見やり、視線を戻したらツンの姿はなかった。
(;^ω^)「B棟B棟……」
紙には男子トイレと書いてある。
スタート地点がトイレだったから不満だったのではなく、
そこが閉鎖空間であるということがブーンにとってプレッシャーになっていた。
(;^ω^)「ここだお……」
ゆっくりと男子トイレに入る。
中から独特の匂いがしてきた。
程なくして黒服の声がスピーカーから流れた。
『はい、いいですか皆さん。始めますよ』
時刻は午後8時。
『それじゃあ……スタート!!』
二日間の悪夢が始まった。
(;^ω^)「(……そうだお。それからブーンはがむしゃらに走ってたんだお)」
('A`)「……お前まだ誰にも会ってないのか?」
(;^ω^)「あ、うん。ドクオに会ったのが初めてだお」
('A`)「俺もだ。まぁまだ始まったばかりだしな」
(;^ω^)「……」
二人の間を沈黙が包んだ。
ブーンは何か話しかけようとしたが、ドクオが先に口を開いた。
(;^ω^)「ド
('A`)「ブーン。俺の記号数字はダイヤのKだ」
(;^ω^)「お?」
('A`)「スペードの7には関係ない。まぁ10万にはなるらしいが……」
ブーンはとんでもないという意思表示で首を振った。
('A`)「そこで、だ。手を組もうぜブーン」
('A`)「さっきあからさまに質問してたヤツいたろ。このゲームは違う数字同士がどこまで協力で
きるかが鍵だ」
(;^ω^)「あ、う、よ、喜んで!!」
('A`)「よっしゃ……お前なら信用できるしな。よろしく頼むぜブーン」
(;^ω^)「……こちらこそだお」
協力する。
なにを?
人間の首を切り落とす協力。
ブーンはまだ実感がわかなかった。
('A`)「さて……いつまでもくっちゃべってる訳にもいかねぇな」
そう言ってドクオは大き目のショルダーバックを肩にかけた。
容量はでかそうだが、中身が入ってないようでぺしゃんこになっている。
(;^ω^)「なんだおソレ?」
('A`)「あ? ああ、さっき倉庫で拾ってきたんだよ」
いいだろ?とでも言うようにブーンに見せる。
(;^ω^)「いや、何に使うんだお?」
('A`)「馬鹿だな。首入れんだよ首」
(;^ω^)「……く……くび……」
ドクオはしっかり現実を受け止めているようだ。
それどころかこのゲームに乗り気なような気がする。
('A`)「さて……とりあえず移動……ん?」
廊下から足音が聞こえ、二人は身構えた。
反射的に身を屈める。
ブーンは心臓が張り裂けるかと思った。
近づいてくる足音。
警戒しているんだろうか、ゆっくりとしたものだった。
ブーンはパニックになってドクオを見た。
ドクオはしっかりナイフを腰に構えていた。
慌ててブーンもナイフを構えようとする。
しかし、ナイフはブーンの手から落ちて、床と接触し甲高い金属音を立てた。
(;^ω^)「は!! あ!!」
(;'A`)「(馬鹿!!)」
急いでナイフを拾う。
足音が止まった。
二人は呼吸も忘れて固まっていた。
(;^ω^)「……!!」
(;'A`)「……」
辺りを静寂が包む。
相手も警戒しているんだろう、全く音がしなかった。
(;'A`)「(ブーン、いいか……)」
ドクオが小声で耳打ちしてきた。
(;^ω^)「(わ、わかったお)」
ぎ、ぎぎぎぎ……
教室の後ろにあるドアが軋んだ音を立てる。
ブーンはゆっくりと顔を出した。
薄暗い照明が廊下を照らす。
周りに人はいなかった。
(;^ω^)「はぁっ……はぁっ……」
ナイフを胸に構えたまま足を出す。
体が完全に教室から出ても、何も反応はなかった。
(;^ω^)「……」
すり足に近いスピードで廊下を進む。
聞こえるのは自分の心臓の音。
ブーンは一度だけ振り向いた。
自分の脳天目掛けてナイフを振り下ろそうとしている女の姿があった。
(lli゚ω゚)「うわ!!」
ブーンは目をつむってがむしゃらにナイフを振った。
女の胸をかすり、二人とも体勢を崩した。
女「いぃいいぃいいいいいいいぃぃいいいい!!」
今度は女がナイフを振り回してきた。
ブーンはそれをかわしたが、足がもつれて転倒してしまった。
女「あはっ!!あはあっはああhっはh」
口から涎をたらしている。
目はちゃんとこっちを向いているのだろうか。
ブーンは死の恐怖より、目の前の女の形相のほうが恐ろしかった。
女が再びナイフを振り上げる。
もうだめかと目をつむろうとしたが、
女「あぅっ」
女は間抜けな声を出してブーンの隣に倒れた。
女の後ろにはドクオの姿があった。
突き出したナイフが赤く染まっている。
女「いたいいいたちちちあいいい!!!!!」
女はピンで止められた虫のように手足をバタつかせた。
(;'A`)「っくそ!!」
ドクオが舌打ちして女に跨る。
左手で髪を掴んで、そのまま右に持ったナイフを首に当てた。
(lli゚ω゚)「あ、やめっ!!」
(;'A`)「ふっ、くっ」
女「ああっ、あぃっあああ……っひゅ……」
だんだんかすれ声になっていく女。
必死に手足をバタつかせていたが、次第に動きが緩慢になっていく。
(;'A`)「中々……かてぇ……くそ!!」
骨でドクオは手こずっていた。
最初はすんなり入ったナイフも中々進まない。
業を煮やしたドクオは女の頭に足を乗せ、ナイフを両手で持ち、大工のような構えをとった。
(;'A`)「お……らぁ……!!」
すでに女はピクリとも動かなくなっていた
(;'A`)「はぁ……はぁ……」
ドクオは荒い息で女のうなじを見ていた。
(;'A`)「スペードの……3……ちくしょう」
無造作にバックに頭を詰める。
女の服を破り、ナイフの血糊をふき取った。
(;'A`)「今ので……誰かに場所がばれたかもな……」
(;'A`)「早いトコ移動しよう……」
(lli゚ω゚)「……お」
ブーンは魅入られたようにドクオの後を追った。
A棟二階のとある教室。
隅でうずくまり、黙ってナイフを見つめている男がいた。
男の名前は荒巻スカルチノフといった。
/ ,' 3「……」
彼はとても真面目で働き者だった。
ギャンブルや闇金などとは無縁の生活を送っていた。
年齢よりは若く見られることが多いが、去年、晴れて定年退職をした。
仕事一筋だった彼は、これからは妻に寂しい思いをさせないと誓った。
その矢先の出来事だった。
息子がギャンブルで借金をこさえてきたのだ。
荒巻は息子の借金を肩代わりすることになったが、今度は妻が倒れてしまった。
手術には莫大な金がいるという。
もちろんそんな金はどこにもない。
それこそ体を切り売りしてでも金を手に入れようと思っていたが、取立てにきた若い男からこの
ゲームの存在を知った。
妻を助けられるのならばと勢いで参加してしまったが、荒巻はこのスタート地点から動くことが
出来ない。
彼の本質はとても繊細だった。
首を切る、切られるなんて話についていけない。
/ ,' 3「やるしか……ないのか……」
キラリと光るナイフを見つめながら、何度目になるだろうという台詞をはいた。
/ ,' 3「……」
ナイフを持つ手に力を込めて、荒巻は立ち上がった。

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